S級ヒーローの中にハジケリストたちがいる。 (にゃもし。)
しおりを挟む

S級7位「キング・オブ・ハジケリスト」

 

 

A市に災害レベル「竜」の怪人が何の前触れもなく出現。ヒーローが駆けつけるも圧倒的なパワーに返り討ち、戦闘不能に陥る。その容赦のない力で街を蹂躙、建物を破壊していく。その力は泣き叫ぶ女の子にも向けられる。巨大な手で握り潰される瞬間――――

 

 

「HEY! ボーズ♪ そこにいると危ねぇぜ?」

 

「ぐっはぁぁぁぁぁ!?」

 

 

黄色いアフロ頭の長身の男が「ハッハッハ♪」と陽気に笑いながら怪人をブルドーザーで撥ね飛ばして、瓦礫の山に頭から突っ込ませる。

怪人を轢いたあとブルドーザーから降りて傍らに立っているヒーローに問い掛ける。

 

 

「この街をメチャクチャにしたのはあの怪人なのか、ヘッポコ丸?」

 

「ボーボボさん、俺にはイナズマックスってヒーロー名があるんですが…」

 

 

イナズマックスが名前の訂正を指摘してると、瓦礫の山が崩れて中から怪人が姿を現す。

ブルドーザーで撥ね飛ばされたにも関わらず怪我らしい怪我を負っていない。

 

 

「――不意打ちとはいえ、私に一撃を与えるとは……何者だ、お前は?」

 

 

質問を投げかける怪人にボーボボは仮面を被ったテロリストがしてそうなポーズを取りつつ…

 

 

「俺の名はボボボーボ・ボーボボだ。そういうお前は何者だ?」

 

「私はきさまら人間どもが環境汚染を繰り返すことによって生まれた、ワクチンマンだ」

 

「お前、話長すぎぃぃ――――っ!!!!」

 

「ぐぉぉ――――っ!?」

 

 

突然キレたボーボボが怪人――ワクチンマンを殴り、地面に叩きつける。

イナズマックスがボーボボの突然の奇行に「ええ――!?」と思わず叫ぶ。

 

 

「今ので大体わかった。お前は救いようのない野郎だな、ワクチンマン」

 

「あの怪人、自分の名前と誕生した理由しか言ってませんでしたけど!?」

 

「身内の敵討ちのために罪のない人々を傷つけるとは…」

 

「んなこと一言も言ってませんでしたよね!?」

 

 

ワクチンマンは体を震わせながら起き上がり、血走った目でボーボボたちを睨み付ける。

 

 

「あいにく私は地球の意思によって生まれた者。身内なんてものはいないハズなんだが…?」

 

「とぼけるな! これを見ろ!」

 

 

どこからともなくパネルを取り出すと…

 

 

「お前、コイツの身内かなんかだろ!?」

 

 

そのパネルには緑色の肌をしており、頭髪が一本もなく、額に二本の触手が生えた怪人の姿が描かれていた。どことなくワクチンマンに似ていないこともない。

 

 

「知らんわ! そんなヤツ!」

 

「それじゃコッチの方か!?」

 

 

別のパネルを取り出す。今度はUFOに乗った三等身の黒い怪人。

 

 

「私は地球の意思によって生まれた、といっとるだろうが!?」

 

 

周囲に丸い光弾を十数個作り出してボーボボに向けて放つ。

ボーボボは向かってくる光弾をジグザグに動きつつ分身を残しながら躱わしていく。

 

 

「残像を残すほどに速い! さすがボーボボさんだ!」

 

 

イナズマックスがボーボボの動きに驚嘆し称賛の声を上げる。

 

 

「「パネルの角アタック!!!! ×4」」

 

 

「ぐはぁっ!?」

 

 

四体のボーボボがワクチンマンの肋骨と肋骨の隙間にパネルの角、尖った部分を突き刺す。

 

 

「比喩なしに殖えてる!? 技がショボい! でも地味に痛そう!」

 

 

技を喰らったワクチンマンは上へと飛んでいき、遥か上空で頭を下にして落下。その体勢のまま地面と激突、砂塵を巻き起こす。

やがて煙が晴れると白目を剥いて口から紫色の泡を吹いた状態のワクチンマンが姿を現す。

 

 

「自分の生まれた星に帰るんだな、ワクチンマン」

 

 

倒れたワクチンマンにそう言い放つとその場から去っていく。それを無言で見送るイナズマックス。

 

 

「あれ? 怪人が出たっていうから来たんだけど? うわ、死んでる…」

 

 

いつの間にかヒーロースーツを着たハゲが来ていた。

 

 

「ああ、その怪人はボーボボさんが倒したんだよ」

 

「え、マジかよ…せっかく来たのに…」

 

「ヒーロー名簿に見ない顔だけど、もしかして未登録のヒーローか?」

 

「ヒーロー名簿って何?」

 

「そんなことも知らなかったのかお前。ヒーロー名簿に登録しないと変な目で見られるから登録しといた方がいいぞ?」

 

「え、マジで!? じゃあ俺登録するぜ」

 

 

こうしてA市を襲った怪人はボーボボの手によって倒され、イナズマックスは新たなヒーローを勧誘した。

 

 




 
 (´・ω・)にゃもし。

 時系列からいって、ここが妥当かと…
 サブタイ変更した。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

S級17位「首領パッチ」

 

 

J市に突如現れた怪人の集団。海人族。その長である「深海王」。ヒーローたちは果敢に立ち向かうも一人、また一人と倒されていった。ヒーローたちのピンチにS級ヒーロー「ぷりぷりプリズナー」が駆けつけて戦うも彼は悟った。このままでは勝てない――――と、彼は決意する。禁断の姿への変身を…

 

 

「仕方ない……『変身』するか」

 

 

 覚悟しな、変☆身!!!!

 

 

 ぷりぷりプリズナー、エンジェル☆スタイル!!!!

 

 

七色の光がぷりぷりプリズナーを照らしてシルエットだけになる。

囚人服が弾け飛び、千切れた衣服が桃色の花弁と化して辺りに舞う。

大柄な男のシルエットが徐々に萎んで小さくなり、形も変えていく。

変身を終えたのか、七色の光が収まりぷりぷりプリズナーが居た場所には別の者が立っていた。

それは太陽のような…金平糖のようなトゲトゲを持ったオレンジ色の身体に細長い手足が生えたような存在。大きさも一緒にいる囚人ソニックの半分ぐらいだろうか?

彼は自信満々に語る。

 

 

「待たせたな俺の名は「首領(ドン)パッチ」…ぷりぷりプリズナーのもう一つの姿だ」

 

 

その場に居合わせた者は沈黙する。

やがて深海王が口を開いて問う。

 

 

「あなた何者? さっきまではギリギリで人間だったけど…今はどう見ても怪人よねぇ?」

 

「怪人だと!?」

 

 

深海王の怪人呼ばわりに憤慨したのか…

 

 

「ふざけんなテメェ、どこから見ても可愛い可愛い天使だろぉがっ!?」

 

「とりあえずお前は天使に謝れ」

 

 

自称天使発言する首領パッチにソニックがすかさずツッコム。

 

 

「まぁ、どっちでもいいわ。私が倒すことに変わりはないんだから…?」

 

 

深海王がいつの間にか首領パッチに接近、上から真下へと拳を振り下ろして首領パッチを地面へと叩きつける。

ボールのように弾んでソニックの元に転がっていく。

 

 

「ちぃっ…エンジェル☆スタイルでも歯が立たないのかよ…」

 

「まだ言うか…」

 

「こんなときに首領パッチソードさえあれば…」

 

 

よほど慌てていたのか店の品が放置されたままの八百屋を指差して…

 

 

「そこの八百屋にネギがあるが…?」

 

「おお!? あるじゃねぇか首領パッチソード! これさえあれば深海王なんぞ敵じゃねぇぜ!」

 

 

八百屋からネギを取ってきて深海王へと突撃する。

しかし、あっさりと返り討ちに遭い顔中をアザだらけにして戻ってくる。

 

 

「負けちゃった…」

 

「当然だろ」

 

「くそぅ…こんなときに首領パッチハンマーさえあれば…」

 

 

首領パッチが予備として持ってきた数本のうちの一本を手に取って…

 

 

「ネギならあるぞ?」

 

「おお!? あるじゃねぇか首領パッチハンマー! これさえあれば百人力だぜ!」

 

 

ソニックからネギをひったくって、再び深海王へと突撃する。

どうせ同じ結果になるだろうと冷めた目で見るソニック。しかし…

 

 

「勝ったー!」

 

 

地面に横たわって倒れている深海王とネギを頭上に翳してる首領パッチ。

 

 

「うそーん!?」

 

 

こうしてJ市を襲った海人族の侵略はS級ヒーロー「ぷりぷりプリズナー」またの名を「首領パッチ」が解決した。

 

 




  
 (´・ω・)にゃもし。

 唐突に思いついて、唐突に書いた。悔いはない。
 ここまで読んでくれて、ありがとうです。
 評価と感想があると助かるです。
 サブタイ変更した。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編:実験体サンプル66号と天の助

  

 

ゾンビマンがヒーロー名簿に登録する十数年前…

 

 

とある山奥にある朽ち果てたビル。見た目だけならそう思うだろう。しかし、その建物の下――――地下深くにはその危険思想故に学会から追放され、世間から忘れ去られた一人の狂った科学者が世にもおぞましい実験を繰り返していた。彼の名はジーナス博士「進化の家」の創始者である。余程上機嫌なのか「くっくっく…」と不気味な含み笑いが薄暗い研究室内に木霊する。

 

 

「……遂に手に入れたぞ、最高の生命力と不死同然の再生能力を持ち合わせた怪人――――」

 

 

幽鬼のような青い顔に道化師が浮かぶ狂喜の笑みを張り付けさせて白衣の男――――ジーナス博士が見つめるその先には巨大な水槽に入れられた一体の怪人。大雑把な四角い人型をした水色の怪人。それが静かに目を閉じて水槽の中でプカプカと浮いていた。ジーナス博士はその怪人の名を口にする。

 

 

「ところ天の助を!!!!」

 

 

名を呼ばれた怪人は静かに目を開いて…

 

 

「悪いんだけど、もうちょっと静かにしてくれない? 震えるんで、声で」

 

 

怪人の体がゼリーのようにプルプルと小刻みに震えていた。

 

 

「すいません…」

 

 

バツが悪そうな顔でジーナス博士は謝罪した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何度見ても凄まじい再生能力ですね。この細胞の謎を解き明かせて取り込むことができれば…」

 

「死なない兵隊、旧人類撲滅用の更なる強化が…」

 

「我々の目的である人工的進化」

 

「そのためにももっと彼のことを調べねば…」

 

 

ジーナス博士と同じ顔をした男たちが研究機材を雑多に並べて天の助の周囲を取り囲んでいる。彼らはジーナス博士が造り出したクローン。そのうちの一人、モニターを観察していたのが驚きの声を上げる。

 

 

「どうした? 何か発見したのか?」

 

「いや、これが関係あるのどうか正直…心底どうでもいいかなと…」

 

「今は一つでも情報が欲しい。もしかしたらその情報がきっかけになる可能性もある。言ってみてくれないか?」

 

 

モニターを見ていたクローンが小さく頷いてから至極真面目な顔で答える。

 

 

「天の助の体の成分、95%がところてんで残り5%がゼリーなんだ…」

 

「本当に心底どうでもいい情報だな…いや、待て「ところてん」ってあの「ところてん」なのか…?」

 

「ああ」

 

「動物が怪人化したんじゃなくて、食べ物が怪人化したものなの、これ?」

 

「そうなりますね」

 

「マジか?」

 

「マジで」

 

 

暫し見つめ合い静寂が流れる。

 

 

「――でも驚異の再生能力を持っているのは事実だ。予定通り天の助の細胞を実験体サンプルに組み込もう」

 

「そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「――んで彼が僕の細胞に適応した唯一の被験体ってわけ、ジーナスちゃん?」

 

「君ほどの再生能力はないがそれでも他の生物と比べたら群を抜いているよ。彼は人類の進化の到達点の一つといっても過言ではない。あとちゃん付けはやめてくれないか?」

 

 

天の助とジーナス博士の前には一人の青年が手術台の上で大の字で拘束されている。

 

 

『やめろォ、進化の家!! ぶっとばすぞォ――――っ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「何はともあれこれで「豆腐撲滅」と「ね撲滅」へ一歩近づいたことになるな」

 

 

ワイングラスを片手に「ふっふっふ」と笑う天の助とジーナス博士。

 

 

(――悪いが天の助君、君の下らないことに付き合うつもりはない。頃合いを見て君を研究所の地下深くで拘束、封印させてもらうよ。君の細胞はまだ利用価値があるからね?)

 

 

突如、研究所内が点滅。「ウゥゥゥッ――――!!!!」と警報がけたたましく鳴り響く。

 

 

「何事だ!?」

 

 

すぐさまジーナス博士が画面のモニターに向かって叫ぶと返答が返ってくる。

 

 

『大変です! 実験体サンプル66号が脱走しました!』

 

 

さらに研究所内にて爆発音とともに建物が微かに揺れて、扉が爆風で吹き飛ばされる。その奥からは両手にアタッシュケースと散弾銃、背中には日本刀を背負った青年――実験体サンプル66号が現れる。激しい戦闘でもあったのか体のところどころを血で赤黒く染めている。

 

 

「そいつには「豆腐撲滅」も「ね撲滅」しようとする意思は微塵もないぞ、天の助…」

 

 

――とアタッシュケースを地面に置いて中身を見せる。中に入ってあったのは「ね」と書かれた御札数枚と豆腐等の大豆加工製品が数点。

 

 

「どういうことだ…? 俺を騙していたのか…?」

 

 

信じられない、と言わんばかりにジーナス博士を見つめる天の助。

 

 

「別に騙していたわけではないさ、いずれは説得しようと思っていたんだがね…? それに君の力をこんな下らないことに使うなんて間違っているさ……ししゃもぉ――――っ!?」

 

 

天の助が投げた巨大なししゃもがジーナス博士の顔面に命中。後ろに仰け反り背中から倒れる。

 

 

「きさまらは豆腐の恐ろしさを知らないからそんなことが言えるんだよ! このメガネイケメンヤロー! お前とは縁を切らせてもらう!」

 

「それじゃお前は今後進化の家とは協力しないと判断していいのか?」と青年。

 

「当然だ、俺を誰だと思ってる?」

 

 

「残念だよ…君とはいい友達になれそうと思っていたんだけどね…」

 

 

鼻を押さえながらジーナス博士が起き上がる。近づく複数の足音。銃を持ったジーナスのクローンたちが部屋へと乱入。二人を取り囲み銃口を突きつける。

 

 

「天の助君。君のその再生能力は驚異的だが、こと戦闘能力に関しては低い。君にここを抜け出すことができるのかな?」

 

 

「問答無用! 純情な乙女心を弄んだその罪、俺も天も決して赦しはしない! そして裁かれるがいい、天王星の裁きを!!!!」

 

 

部屋全体が「ぬ」の文字で埋め尽くされてジーナス博士とクローンたちがわけのわからん攻撃で吹っ飛ばされ、ついでにメガネが「パリーン」と割れて気を失う。

 

 

「なんか変な技出した!?」

 

「よし今のうちに脱出するぞ! 俺たちにはゆっくりしている暇はない!」

 

 

言うな否や出口へと駆け込んでいき、青年も後を追う。

こうして実験体サンプル66号、のちのゾンビマンと天の助は進化の家を脱走したそうな…

 

 




 
 (´・ω・)にゃもし。

 ここまで読んでくれて、ありがとうー。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

進撃のマルゴリ

  

 

本来なら人で賑わっているであろう繁華街。しかし今は人の気配が感じられず、まるでゴーストタウンのように静まり返っている。その道路のど真ん中で仁王立ちする大小様々な影が四つ。

 

 

「あれがマークしていた筋肉兄弟なのか、イナズマックス?」

 

 

一番大きな影――ボーボボが傍らにいるイナズマックスに確認を取る。それもそのはずヒーロー協会がマークしていた兄弟は人間。少なくとも身長200メートルを越す者を人間とは呼ばない。そして件の巨人は彼らの視界の遥か先、山間の合間を縫ってこちらに向かって歩を進めている最中だ。

 

 

「おそらく兄が弟を改造、もしくは危険な薬品を使用したんだろう」

 

 

ところてんの肉体を持った限りなく不死に近い男、天の助が憶測を立てる。事実、兄が作った薬品を弟が飲んで怪人――巨大化したのだ。

 

 

「どちらにしろ俺たちがあの巨人を止めることに変わりはない!」

 

「首領パッチさん、止めるったってどうやって止めるんですか?」

 

 

意気込む首領パッチに水を指すようにイナズマックスが質問する。当然と言えば当然だが、そんなイナズマックスに対してボーボボは何か確信でもあるのか自信満々に答える。

 

 

「大丈夫だ。私にいい考えがある」

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘による被害を極力減らすために街の入り口付近に移動したボーボボ一行。迫り来る筋肉兄弟を前にしてボーボボは拡声器片手に警察官の制服を着用、首領パッチは中年の女性、天の助はメガネにスーツ姿で待ち構える。

 

 

『――犯人に告ぐ、それ以上の進行を直ちに止めなさい。あなたたちの両親が泣いてるぞ?』

 

 

ハンカチで目元を拭いながら啜り泣く首領パッチにそっと抱き締めて慰める仕草をする天の助。

 

 

「イヤイヤ、無理でしょ!? コレ!」

 

 

――とイナズマックスが手をパタパタと振るが…

 

 

「パパン? ママン?」

 

 

巨人は彼らの前で足を止めて、確かめるように声をかける。

 

 

「めっさ、騙されてる!?」

 

 

あの変装で騙せるとは思ってなかったイナズマックスは至極驚いた。

 

 

(――でも、これであの巨人と戦わずに済むんだ。儲け物と考えた方がいいな…)

 

 

イナズマックスが内心で考えを改めると、いつの間にか筋肉兄弟の兄――フケガオが地面に降り立っていた。

 

 

「騙されるな弟よ! そいつらは偽者だ!」

 

 

怒りで顔を赤く染め上げる兄は女装した首領パッチ、その唇を指差して…

 

 

「よく見ろ! こいつは口紅が濃い!」

 

「判断基準、そこ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「残念だったな…よくできた変装だが、この私を騙せるほどではない」

 

 

勝ち誇った顔でボーボボたちを「ウキョキョキョ」笑うフケガオ。それに対して悔しそうに顔を歪ませるボーボボたち。

 

 

「やってしまえ弟よ! 我々、兄弟を騙そうとしたコイツらを痛めつけてやれ!」

 

 

兄の号令の下、雄叫びを上げながら巨大な拳を振り下ろす弟のマルゴリ。ボーボボたち三人は避ける間もなく拳の直撃を受けて下敷きになる。

 

 

「ボーボボさん!?」

 

 

身を案じたイナズマックスの呼びかけに応じて拳の下から這い出る三人。しかし、その体は一枚の板のように潰されていた。

 

 

「スゴいぞ、S級が束になっても敵わない! 我々、兄弟を止めることができる者はいないぞ!」

 

「はたして、そうかな?」

 

 

ぺらぺらになった体を起こして立ち上がるボーボボたち。

 

 

「弟の攻撃をまともに受けて死ななかったのは流石だが、その身体で一体何ができるというのだ?」

 

 

自分たちの勝ちを揺るぎないと確信したフケガオはボーボボたちに嫌らしい笑みで問う。

 

 

「いや、まだだ! 今の俺たち、三枚の板だからこそできる事があるハズだ! 考えろ! 今の俺たちにできる事を! 行くぞ、首領パッチ! 天の助!」

 

 

ボーボボが叫び二人が頷くと首領パッチ、天の助、ボーボボの順に空中に縦一列に浮かび上がり、光が迸る。

 

 

『真ゲッター1、参上!!! なんとかギリギリ足りたぜ!』

 

 

光が収まるとコウモリのような羽を持った赤と白のツートーンカラーのロボットが誕生した。

 

 

「ボーボボさん! どう見ても板三枚じゃできませんよ、それ!」

 

 

『構わず、ゲッタービィィィ――――ッム!!!!』

 

 

ロボットのお腹から淡いピンク色の光の束が発射され、マルゴリの巨体に直撃、巨人の姿が跡形もなく消失。いや、クレーターの中心に人影――元の姿に戻ったマルゴリが力なく頭を垂らしていた。そこに合体を解いたボーボボが近づいていく。

 

 

「マルゴリよ、お前と拳を合わせてわかったぞ。お前の先程の巨人の姿はお前の望んだ姿ではないことをな…」

 

「ボーボボさん…」

 

「大方、お前の兄が喜ぶから実験に付き合ったのだろう。正直、お前にとっては兄の望みなど二の次じゃなかったのか?」

 

「……………………」

 

「だがそれは大きな間違いだ。家族なら間違ったことをしたなら叱ってやれ、本当に家族を思う気持ちがあればな…幸い、人的被害は出てなかったようだし、大きな罪にはならないだろう」

 

 

マルゴリに背を向けるボーボボ。その先には弟の元へと駆けつけてきたのであろう息を切らしたフケガオが立っていた。

 

 

「ただしフケガオ、お前はダメだ!」

 

「ぎゃぁぁ――――っ!?」

 

 

二本の鼻毛をムチのように長く伸ばしてフケガオを十字に交差するように打ち付ける。

 

 

「「ええ――――っ!?」」

 

 

「ちょっとボーボボさん!? 何でうちの兄さんを!? 大きな罪にはならないだろうって言ったばっかりじゃないですか!?」

 

 

「うきょきょきょが腹が立つんだよ、あと何かキモい。ヘドが出るぜ」

 

 

ペッと地面に唾を吐いて悪態をつくボーボボ。

 

 

「「ヒデぇー!!!!」」

 

 

こうして巨人襲来事件は幕を閉じた。

 

 




 
 (´・ω・)にゃもし。

 ここまで読んでくれて、Thank You


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ガンバれ! ゾンビマンと天の助さん!

  

 

ヒーローの中には副業を営む者もいる。有名なところでは喫茶店を経営している「バネヒゲ」マジシャンを兼任している「テジナーマン」普段はホテルの料理人をやっている「ブッチャー」そして中でもS級ヒーローの「天の助」――彼は少々風変わりな店を開いていた。

 

そんな彼の元に妙な縁で天の助と知り合いになった一人の男、元実験体サンプル66号ことゾンビマンが訪ねる。

 

 

「確かここら辺に天の助が経営している「ぬ」の店があるハズなんだが…」

 

 

目的の店はすぐに見つかったが、件の店――看板に「ぬ」と書かれた店は地震がきたかのように潰れて、その隣に建っている「ね」と書かれたお店には人だかりができて繁盛していた。天の助の姿はどこにもない。

 

 

「 “ ぬ ” の店が潰れて代わりに “ ね ” の店が繁盛しているゥ――――っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「今度こそ、ここに天の助がいるんだよな…?」

 

 

ゾンビマンが次に向かった場所は「メルヘンチック遊園地」彼は周辺の聞き込みの調査の結果、ここを探り当てることができた。そこに天の助がいるということも。

 

 

「えーと、俺は天の助の知り合いなんだが天の助はいるか?」

 

 

園内にいる人間の毛髪を刈りそうなコスチュームを着用した従業員らしき男に声をかける。後頭部に刃物でも刺されたことがあるのか大きな絆創膏を貼ったハゲ頭の大男。強面の見た目に反して彼は快く案内をする。その案内した先が…

 

 

「公衆便所にしか見えないんだが…?」

 

「それじゃ俺は仕事がありますんで」

 

「え、ちょっと!?」

 

 

そのままゾンビマンを残してスタスタと去っていく。どうしたものかと悩んだあと彼は公衆便所に入ることにした。

 

 

「何をやっているんだお前は?」

 

 

天の助はすぐに見つかった。彼は便所内にある巨大な大釜に入ってグツグツと煮込まれていた。その近くには彼の部下と思われるハゲ頭の従業員二人が何とかして大釜から彼を出そうと奮闘していたが当の本人は「イヤーン、エッチぃ!」と意味不明で無意味な抵抗をしている。従業員が必死なところを見ると天の助が自ら大釜に入ったようだ。心底どうでもいいが…

 

天の助はゾンビマンの気配に気づくと「久しぶり」と片手を上げて声をかける。便所内で会話をする気がないゾンビマンは親指で外を指して外へと促す。

 

 

「どうでもいいんだが何でお前が経営している「ぬ」の店が潰れて「ね」の店が繁盛しているんだ? おかげで探すのに手こずったぞ…?」

 

 

園内にあるベンチの一つに並ぶように腰かける二人のヒーロー。天の助は事の顛末を静かに語り始める。

 

 

「ぬの店のことを知っているなら話が早い。あの店は奴ら “ ね ” の者の裏工作で潰されたんだ…」

 

 

「あ、そう…」と興味がなさそうに相槌を打つ。

 

 

「奴らのせいで住む場所を失った俺を見かねてボーボボがこの遊園地を建ててくれたんだ」

 

「随分とお人好しなんだな」

 

 

まるで他人事のように答えるゾンビマンに天の助は言った。

 

 

「一日で」

 

「ええぇぇ――――――――っ!? スゲェな、おい!?」

 

 

予想外の工事期間の短さにゾンビマンはバカみたいに口を開いて驚いた。

 

 

「気をつけろゾンビマン。あの店は「ね」の怪人が絡んでいる」

 

「お前、怪人のせいにすれば何でも許されると思ってないか?」

 

 

その時に緊急避難警報が流れる。災害レベルは「鬼」街一つが壊滅する恐れのある災害だ。

 

 

「園長、大変です! 平仮名の「ね」の形をした怪人が「ね」の店から現れて暴れまわってます! しかも複数です! 駆けつけたヒーローたちもすでに何人かやられています!」

 

 

先ほどゾンビマンを案内した大男が二人の元に駆けつけて報告する。その背後には文字通り体が「ね」の形をした怪人が数体、口から炎や氷、雷を吐き出しながら園内の人間を襲い、そのうちの一体が彼のあとを追いかけていた。

 

 

「マジだった!」

 

「呆けてる暇はないぞゾンビマン!? 俺たちがやらなくて誰がやる!?」

 

 

青いオーラを纏って地面すれすれを滑空、体ごと怪人にぶつかる天の助。数体の怪人が天の助の攻撃を受けて断末魔を残す暇もなく塵と化す。

 

 

「よし、このまま「ね」の店まで突っ込むぞ! おそらくそこが奴らの本拠地になってるハズだ!」

 

 

天の助の活躍で活気づく園内。ゾンビマンはそんな彼を見て「天の助のくせにカッコいい」と嫉妬した。

 

 

 

 

 

 

 

 

数名のヒーローの手助けもあったお陰か、さほど時間をかけずに怪人たちを倒して遊園地に戻った天の助たち。

 

 

「そういやゾンビマンは何しに来たんだ? 遊園地に遊びに来たの?」

 

「んなわけないだろ。とりあえずこれに目を通せ」

 

 

天の助に新聞を手渡して記事の一部を指差す。そこには新人のヒーローが活躍したことが書かれていた。事件を解決したヒーローたちの顔写真も同時に載せられている。ハゲ頭のサイタマと金髪のサイボーグ、ジェノス。

 

 

「何々新人のヒーロー二人、進化の家を壊滅させてS級に昇格? へぇ、スゴいね」

 

「それだけか? 進化の家だぞ?」

 

 

額に青筋を浮かべて詰問する。天の助は何のことかと暫くキョトンとした表情をしていたがやがて「あ」と声を出して思い出す。天の助はどこか遠い目をして…

 

 

「進化の家か…手強い相手だったな…」

 

「俺たちは何もしてないぞ。それに壊滅したと決めつけるのはまだ早い」

 

「何でだ?」

 

「クローンの死体は見つかったが肝心のジーナス博士のは見つかっていないらしい」

 

「それはつまり…」

 

「進化の家はまだ滅びていない」

 

 

 

 

 

 

 

 

「――んでここが進化の家の拠点なのか?」

 

「ああ、何度も拠点を変えて調査が難航したが間違いない」

 

 

確認のためにゾンビマンに問う天の助。彼ら二人が移動したのは何の変哲もない一軒のタコ焼き店。その店頭。

 

 

「貴様らも今日で終わりだ! 進化の家!」

 

 

タコ焼きを作っている最中のゴリラの怪人に銃口を向けるゾンビマン。その隣には看板娘のつもりか昆虫と人間を合わしたような女性の怪人もいる。両手両足が義手義足なのは過去の戦闘で失ったのか…

 

 

「え、進化の家を倒しに来たヒーローの人? すいません進化の家はもう壊滅しました」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「……………………えっ?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

                         ワンパンマン、進化の家編。終劇。

 

 

 

 




 
 (´・ω・)にゃもし。

 ここまで読んでくれて、ありがとう。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

左目に三本の傷がある男のお話

   

 

「我が名はG4 “ 組織 ” によって作られた機神なり」

 

 

こんにちは皆さん。俺はしがない一般人の一人です。風格のある見た目のせいで「キング」と呼ばれています。真昼の住宅街、ゲームソフトを買った帰り道。俺の目の前には中世の騎士みたいな格好の怪人がいます。どうもロボットっぽいです。背丈はそこら辺の住宅ぐらいありそうです。大きくて強そうです。その怪人が身の丈ほどの大剣を背中から取り出すとその切っ先を俺に突きつけて言いました。

 

 

「最強ヒーローのボーボボだな、貴様を抹殺する!!」

 

 

俺は今、人生最大の危機に陥ってます。大ピンチです。

 

 

 

 

 

 

 

 

人類最強と名高いS級ヒーロー7位、キング・オブ・ハジケリスト「ボボボーボ・ボーボボ」

彼は身体を使った攻撃は元より、鼻毛を伸ばしたり、変身したり、他のS級ヒーローである首領パッチ、天の助と合体して強化したり、致命傷のキズが一瞬で治ったりします。

これだけ聞くとヒーローというよりは怪人っぽいのですが彼は一応、歴としたヒーローです。

 

 

「ヒーロー、ボーボボだ! ボーボボがいるぞ!」

「じゃあ大丈夫じゃん!」

「ボーボボ、やっつけろ~~~!」

 

 

そのヒーローに俺は間違えられています。因みに俺は背は高い方ですがアフロはしてません。サングラスもかけてません。寧ろ共通点を探せという方が難しいです。一応、本人にはない三本の傷が左目にあるのですが…

 

 

「あの~、すいませんが俺はボーボボじゃなくて別人なのですが――――」

 

「惚けてても無駄だ。俺の高性能AIが99.8%貴様をボーボボ本人と判断している…」

 

「捨ててしまえ! そんな高性能AI!」

 

「それだけの元気があれば今から戦闘しても支障はあるまい、行くぞ」

 

「ひぃぃぃ――――――――っ!!!? 誰か助けてぇ――!!!!」

 

 

怪人が片手で大剣を横に薙ぎ、体が上下二つに分断される寸前に鋼鉄の腕を持った金髪の青年が大剣の腹を叩き割って阻止する。

 

 

「お前はS級のサイボーグのジェノスか……何故、邪魔をする?」

 

「G4と言ったか? その男はボーボボではない。左目を見てみろ」

 

 

機械音を鳴らしながら一つしかない目で直視するG4

 

 

「むっ、ボーボボなら多少の傷でも再生する。左目に傷のあるこの男はよく似た別人か!?」

 

「お前らの判断基準そこだけ!?」

 

「よくも我に恥を掻かせてくれたな、貴様には死を以て償わせてくれる…」

 

「俺そこまで重罪!?」

 

 

だがG4が襲ってくることはなかった。ジェノスが上腕を切り離して発射させ、G4を突き飛ばしたのだ。

 

 

「こいつは俺が食い止める! お前は安全な場所に避難するんだ!」

 

 

ジェノスに言われるまでもなく、俺は彼らに背を向けて逃げ出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『緊急避難警報! M市上空に巨大な黒鳥が出現、災害レベルは鬼!』

 

 

ロボットの怪人から逃走中に、その警報が流れると同時に巨大な黒い鳥が一直線にこちらに向かって飛来してくる。

 

 

「ぎゃぁぁ――――――――っ!? 何か来たァ――!?」

 

 

今からでは避けようにも間に合わない。もうダメだと両目を閉じる。しかし、いつまで経っても衝撃が来ない。

 

 

「おい、怪人はもう倒した。安心していいぞ」

 

 

どこかで聞き覚えのある声に恐る恐る目を開けていく。前方には頭を失った巨鳥が道路に仰向けで倒れていて、俺の目の前には衣服を赤く染めたハゲ頭の男が立っていた。S級の新人サイタマ。髪の毛こそないがそれは紛れもなく以前助けてもらった恩人、他ならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前には災害を引き寄せる何かがあるのかもしれないな」

 

「はい、昔からこういう体質で仕事も怪人のせいで長続きしなくて…」

 

「それはなんというか災難だな…」

 

 

怪人騒ぎのあと公園のベンチに並んで座って話をしていた。

 

 

「先生、その話が本当ならメルヘンチック遊園地に行ってみてはいかがでしょうか? あそこはS級の天の助やボーボボがいるようですし、従業員の募集広告を出してるみたいですよ」

 

「ジェノスか、随分と手こずったみたいだな」

 

 

ロボットの怪人と死闘を繰り広げたのだろう。片腕を失い、金属を剥き出しにしたジェノスが近づいてきた。

 

 

「どうせ暇だし、行ってみるか? メルヘンチック遊園地」

 

 

 

 

 

 

 

 

遊園地園内にある飲食店の一つにボーボボはいた。オープンテラスになっている店の外、植木の中で両手に枝を持って彼は静かに立っていた。

暫く無言で観察していると従業員らしき制服を着たスキンヘッドの男がボーボボに近づいて…

 

 

「お疲れ様、ボーボボさん。もう上がっていいですよ」

 

「「それ仕事だったの!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「話は聞かせてもらった」

 

「俺は一言も喋ってないんですけど?」

 

「そういうことなら、このメルヘンチック遊園地でスタッフとして働くといい。天の助には俺が言っておこう」

 

「いえ、そんな急には決められません」

 

「時給2()0()0()0()円からのスタートになるんだがいいか?」

 

「是が非でもやらせてください」

 

 

時給2000円と聞いて真顔で答えるとボーボボさんは「はい、これ仕事道具ね」と二本の木の枝を手渡してきた。

 

 

「…………………………」

 

 

かくしてメルヘンチック遊園地のスタッフになった俺だが未だに仕事の内容や意味がわかっていません。でもS級ヒーローがいて、時給2000円なので聞く度胸がありません。今日も俺は二本の木の枝を持って立っています。

 

 




 
 (´・ω・)にゃもし。

 次のボロス編で終わりにしようと思うんだ。原作が進んでいないし…
 ここまで読んでくれて、ありがとう。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

巨大宇宙船襲来

 

 

突如、A市上空に現れた巨大な宇宙船。その巨大宇宙船が街の上空に留まると何の宣告もなしに砲撃を放ち、街を一瞬で瓦礫の山へと変えた。

 

大予言者シババワが残した予言による災害。その対策で協会本部に集められていたS級ヒーローたちは様子を見るために建物の屋上へと移動するも……そこには瓦礫と化した建物の残骸がどこまでも続く、見るも無惨な変わり果てた街の光景があった。

 

さらに二回目の攻撃の前兆か…? 宇宙船の下部、船底部分の所々から光が発したと思った瞬間、轟音とともに巨大な砲弾がヒーローたちに向かって幾つも撃ち出された。

迫り来る巨大な弾丸にボーボボ、首領パッチ、天の助は――――

 

 

「「ああ、もう~さっきから「ボッボッボッボッ」うっさいわねぇ~~~」」

 

 

()()()()()してハタキで砲弾を粉砕、巨大な弾丸が次々と空中で爆発して散っていく。

 

 

「「遠近法、無視して攻撃してるゥ――――っ!!!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「でもこれで邪魔されずに宇宙船に乗り込むことができるな、ちょっと行ってくるぜ」

 

 

サイタマはそう言うと屋上の床を蹴って跳躍。高速で一直線に飛んでいき宇宙船へと消えていく。

 

 

「なんという身体能力だ。悔しいが俺たちには真似できんな…」

 

「ここは俺に任せろボーボボ! プルプル真拳奥義『ところてんトランポリン』これで宇宙船まで跳んでいけるぞ! さあ、俺に乗って跳ぶんだ!」

 

 

天の助が体をトランポリンの形に変形させるが…

 

 

「別にいいよ。俺たち普通に空、飛んで行けるし」

 

「ええっ!?」

 

 

ボーボボ、首領パッチの二人は体に黄金のオーラを纏わせて宙に浮くと…「ドギュン!!」と派手な音を出して宇宙船を目指して飛んでいく。体を変形したままの天の助が取り残されて静寂が場を支配する。

 

 

「ちょっと待ってくれよ―、俺を置いて行かないでくれよ―」

 

 

場の空気に耐えられなくなった天の助が二人のあとを追って飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふはははは! よくぞここまで来たな侵入者!」

 

 

一足先に宇宙船に乗り込んだサイタマを待ち構えていたのは幹部を名乗るグロリバース。食虫植物のような頭と両手が特徴的な異星人だ。そこへ――――

 

 

「ピアノミサイルゥ!!!!」

 

 

ボーボボが黄金色のピアノを押しながら爆走、グロリバースを轢いて更にピアノの下敷きにする。

 

 

「他にも侵入者がいたのか…この俺様にケガを負わせるとは中々ヤるじゃねぇか…」

 

 

下敷きになったグロリバースがピアノを押し退けようと両手に力を込め始める。

 

 

「時間もないのにザコが粘るな! もう一丁、ピアノミサイルゥ!!!!」

 

 

どこから調達したのか、もう一台のピアノ、合計二台のピアノに押し潰されてグロリバースは完全に沈黙した。

 

 

「やっと追いついたぜサイタマ。単独行動は危険だ。俺たちもついていくぞ?」

 

 

ボーボボの両隣には首領パッチと天の助が立っていた。

 

 

「ボーボボ、のんびりしてる暇はなさそうだ。騒ぎを聞きつけた連中がやって来るぞ」

 

 

天の助の言う通りに夥しい数の足音がボーボボたちに近づいていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでだ! 地球人! 大人しく言う通りにしろ!」

 

 

銃を持った宇宙人が殺到。ボーボボたちを囲んで銃口を向けるが…

 

 

「安心しろ。侵入者はこの通り、この首領パッチ様と天の助が捕まえた」

 

 

首領パッチと天の助が持つ縄、それぞれのその先には虚ろな表情で両手首を縄で縛られたサイタマとボーボボの姿が…

 

 

「おお、よくやった。これでボロス様も大喜びになるに違いない」

 

「へっへっへ、ボスに直に報告したいからよォ~、ちょっと部屋まで案内してくれねぇか? 何せ俺たち二人は新人なもんで――」

 

「おう、いいぜ。ついてきな」

 

 

首領パッチの言葉をあっさり信用して案内を始めてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがボロス様のいる部屋だ。くれぐれも粗相のないようにな?」

 

 

――と案内された場所は大きな扉がある部屋の前。

 

 

「ヴァカめっ! 俺たち二人も地球人なんだよ!」

 

 

部屋まで案内した宇宙人を背後からネギと大根で斬りつける首領パッチと天の助。宇宙人は突然の奇襲に躱わすことができずに「ぎゃ―!?」という絶叫とともに背中から血を勢いよく噴出して倒れた。

 

 

「よっしゃ――! あとはボスをボコって終わりだ! 行くぞバカども!」

 

「「イエッサ――――!!!!」」

 

 

熱くなったボーボボに敬礼で応える二人。そんな三人と倒れた宇宙人を見て「お前らヒデェな…」と呟くサイタマ。

四人は扉を砕いて中へと侵入する。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ我が船へ」

 

 

あまりの広大さに認識できない広さの空間。その中で待ち構えていた人物が二人。言葉をかけてきたのは単眼の男。

 

 

「我々の船で随分と舐めたマネをしてくれたな。貴様らは船員を騙してここまで来たと思ってるようだが、実際はこの場で処分するために敢えて泳がせていたんだよ」

 

 

単眼の男の隣に立つ黒いタコのような外見の宇宙人が喋る。

 

 

「貴様らは宇宙一の念動力使い…ゲリュガンシュプが挽き肉にしてくれる!」

 

 

大小の瓦礫を浮かせて纏わせ、竜巻のように周囲を流れる。

首領パッチと天の助が未来的な銃で応戦するがゲリュガンシュプの周囲に浮いている瓦礫に阻まれる。

 

 

「俺たちのネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲が通用しねぇ!」

 

「ボーボボ隊長、奴を倒すにはどうすればいいんですか?」

 

 

切羽詰まった天の助に位の高そうな軍服姿のボーボボが答える。

 

 

「奴を大釜に入れて茹でるんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

大釜に入れられ「ぐつぐつ」と煮込まれているゲリュガンシュプ。やがて黒かった体が赤く変化する。

 

 

「赤くなったら食べ頃です」

 

 

足の一本を輪切りにして食するボーボボたち。

 

 

「何をやらすんじゃ!? 地球人!」

 

 

大釜から這い出て、瓦礫の破片を浮かせてボーボボたちにぶつけていく。

 

 

「なあ、ちょっとその銃をくれないか?」

 

 

瓦礫をぶつけられながらも、サイタマは首領パッチに銃を指差して要求してきた。

 

 

「別にいいが奴の周囲に浮いてる瓦礫のせいで攻撃が届かないぞ?」

 

「いや、別にいいよ。こうやって使うから」

 

 

言うや否、手渡された銃を投げるサイタマ。ゲリュガンシュプの頭部を砕いて更に飛んでいく。

頭部を左右に割かれたゲリュガンシュプの体は力なく床に横たわって動かなくなる。

一部始終を見ていた単眼の男は自分の仲間が倒されたのにも関わらずボーボボたちを称賛した。

 

 

 

 

 素晴らしい、と。

 

 

 

 




 
 (´・ω・)にゃもし。

 ここまで読んでくれて、ありがとー。
 元ネタの幾つかはガンガン作品からです。とりあえずボロスと戦って完結にする。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

全宇宙の覇者

 

 

鎧を着た単眼の男は自分の仲間であるゲリュガンシュプが目の前で倒されても、怒るどころか敵であるハズのボーボボたちを褒め称えた。

 

 

「俺は暗黒盗賊団ダークマターの頭目であり全宇宙の覇者ボロスという者だ」

 

 

そしてボロスの口から地球にやって来た目的を聞かされる。要約すると「退屈しのぎ」彼は戦う相手を求めて地球に飛来、特に理由もなく街を一つ壊滅させたのだ。

 

 

「今、確信した。さあ俺の生に刺激を与えてくれ、そのために来たんだ」

 

「許さねぇ…そのためだけに…」

 

 

握り拳を作って怒りで体を震わせる首領パッチ。彼の頭の中ではボロスが不気味な人形をひたすら殴り続ける光景が、同じようにして天の助も「ぬ」の文字でびっしり埋められたハンカチをビリビリに破くボロスの姿が映し出されていた。

 

 

「え? そんなのあったけ?」とサイタマが尋ねるが二人は無視。親の仇でも見るような目付きでボロスを睨む。

 

 

そして例に漏れずボーボボの頭の中でも回想が始まった。壮大な音楽が流れたかと思うとオペラ劇場のような建物が出現。観客の動物たちが見守る中、豪奢な深紅の幕が左右に開いていく。

 

 

学生姿のボロスがひたすら住宅街を駆け抜けていく。曲がり角を曲がったそこへ――――

 

 

「HEY! ボーイ! 余所見をしてると危ねぇぜ?」

 

 

ボーボボが運転する黄色いオープンカーのタクシーに撥ね飛ばされて「完」の文字とともに劇は唐突に終わる。

 

 

撥ねられたボロスは宇宙船内にある柱の一つと激突。大の字になって柱にめり込む。

 

 

「馬鹿か、お前。退屈な人生に刺激が欲しくて他の星を襲うなんてOLでも考えねえぞ」

 

 

タクシーから降りたボーボボがそう言い放った。

 

 

「――――強大すぎる俺の力を封印する役目を持つ鎧が砕かれた…」

 

 

その言葉とともにボロスは柱から抜き出す。身につけていた鎧が剥がれ落ちて、その下に隠されていた昆虫の甲殻のような体と胸部にある大きな目玉がさらけ出され、肉体から漏れだした力の余波が突風となって巻き起こる。

 

 

 

 

 

 

 

 

船内に乱雑に立てられた柱の数々。一本一本が天にまで届きそうな柱の群れ。しかしその殆どが抉られ、折られ、無事な物が少ない。同様に床も戦闘による破壊の跡が刻まれていた。

 

 

「よくも首領パッチと天の助を…!」

 

 

薄汚れたボーボボとサイタマ。彼らの横には白目を剥いて倒れた二人の姿があった。

 

 

「だが止めを刺したのはお前たちだぞ!?」

 

 

片腕を失ったボロスが反論。事実、二人が倒れたのは味方の攻撃のせいである。

 

ボロスが片腕と足を交えて乱打。サイタマは無表情のまま半開きにした両手で次々と受け止め、防いでいく。

 

そこへ気合いを込めた一撃をボロスが放ち、サイタマの脇腹に命中。背中から飛んでいき柱と激突、半ばめり込む。

 

追撃をかけようとするボロスにボーボボは鼻毛を伸ばして腕に巻きつかせるが…逆に鼻毛を引っ張られ、飛ぶように手繰り寄せられ、距離が縮まったところで腹部に鋭い一撃を貰う。

 

苦しそうな声を漏らしながら背中と両足の一部分がスライド、中からロケットのブースターが出てきて点火、ノズルから勢いよく炎が噴き出して…

 

 

「なんてスゴい威力なんだぁぁ――――っ!!!!」

 

 

宇宙船の天井へと飛んでいく。

 

 

「なんて奴だ。一撃でボーボボを吹っ飛ばすなんて…」

 

 

片膝をついた天の助が恐ろしいものでも見るようにボロスを見つめて、サイタマが手をパタパタ振って否定する。

 

 

「イヤイヤ! アイツ、自分から飛んでいってねぇか!?」

 

 

飛んでいったボーボボの跡を追いかけるべく、ボロスも床を両足で蹴って高く跳ぶ。

 

 

「俺たちも跡を追うぞ! ヘイ! タクシー!」

 

 

天の助が片手を上げると、首領パッチが運転しているボーボボが使ってたタクシーが到着。二人が乗り込む。

 

 

「ボーボボの跡を追いかけてくれ!」

 

「それじゃ飛ばしますんで、しっかり掴まってください」

 

 

タクシーがフワリと宙に浮き、後ろのトランクが開いてロケットブースターが現れる。

 

 

「え? 飛ばすって、そういう意味?」

 

 

返事がないままタクシーは垂直で上へと駆け抜けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい動きだ。さすがに強いな!」

 

 

宇宙船の鋼板に躍り出た一同。向かい合って対峙する両者たち。戦闘中にも関わらずボロスは無邪気に笑っていた。

 

甲殻の隙間から光が漏れて全身を輝かせる。胸部の目玉が大きく見開く――――同時にその瞳からエネルギーが放出される。

 

 

「体内にある莫大なエネルギーの放出! 雑魚がこれに触れれば骨すら残らんぞ!?」

 

 

「どうする!?」と言わんばかりに表情を輝かせるボロス。

 

 

「なんのキサマのそれに勝るものは俺たちの友情だ! 喰らえ奥義「友情波」!!!!」

 

 

両手を上下に開いて前に突き出す三人。しかし掌からは何も出ず、力の塊は頭上から出て空へと消えていった。

 

 

「上に出たぞ!?」

 

 

身を守る術を失った三人は炎の奔流に飲み込まれて、さらに炎は宇宙船の上部を焼き尽くす。巨大な建造物を揺らすほどの勢い。やがて炎の勢いが弱まり、爆煙の中から三人の姿が浮き出てくる。

 

 

「ふぅ…助かったぜ…」

 

 

ボーボボは二人を盾にして防いでいた。

 

 

「友情のカケラもね――――!!」

 

 

未だに煙が辺りを覆う中を走る影が一つ。それはサイタマの背後へと回り込み…

 

 

「後ろだ!」

 

 

ボロスの裏拳がサイタマの首に直撃した。

 

 




 
 (´・ω・)にゃもし。

 長くなりそうなので分けた。
 戦闘シーンを文字にするのって難しいね。

しかっり → しっかり
後のトランク → 後ろのトランク …に直したぜ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

地球最強と宇宙最強

 

 

「手ごたえあった。どうやら勝敗が見えてきたな」

 

 

背後からボロスの奇襲を喰らい、その場で静かに立ち尽くすサイタマ。

 

 

「何故だか、わかるか?」

 

「知りたいワン♪ すごく知りたいワン♪」

 

 

顔が露出した犬の着ぐるみを着て「ハッハッ」と尻尾を振るボーボボ。

 

 

「いいだろう。ならば教えてやる…」

 

 

気分を良くしたボロスが説明をしようとしたその時、ボーボボは着ぐるみのまま「おアタ――!!」と雄叫びを上げつつ、ボロスの喉元にラリアットを喰らわす。

 

 

「御託はいい。さっさと掛かって来い」

 

「まだ何も言ってないぞ、アイツ」

 

 

静観していたサイタマが口を開く。

 

 

「でも、ボーボボの言う通りだな。もう終わりなのか? 戦いは?」

 

 

どこか落胆した声で問う。その場にいた者は彼の力量の一端を知って臆したのか押し黙る。

 

 

「いや、まだだ」

 

 

右腕の切り口から肉が盛り上がって見る間に復元。

ボロスは腰を低く落として片手指先を床につけると、放電を放ちながら自身を中心に暗い半円形状のエネルギーの幕を生成。周囲の鉄板一つ一つが捲れ上がって宙に浮かんでは砕け散る。

 

 

『 メテオリックバースト 』

 

 

昆虫の甲殻のような体から変化。力の塊が人の形を取っているとでも形容すべき姿へと変貌を遂げた。

 

 

「くっ、なんて凄まじい力なんだ!!!? 相手の了承を得ない合体は不完全になる危険を伴うが致し方ない!!!!」

 

 

ボーボボは二本の鼻毛を伸ばすと白眼を剥いて気を失った状態の首領パッチと天の助に絡ませ、アフロの中へと引き寄せる。

 

 

『 鼻毛真拳究極奥義聖鼻毛融合(ボーボボ・フュージョン)!!!! 』

 

 

閃光が発し、収まった後には…

 

 

「融合完了。俺様の名は『ボボパッチの助』」

 

 

肩アーマーのついた黒いコートの青年が立っていた。ただし全体的に線が歪んでおり、幼児が書いた落書きのように雑。

 

 

「どう見ても不完全だ――――!!!!」

 

「力が落ちた分、融合時間は五時間に延びている。決して不完全ではない」

 

「明らかに不完全だぞ!? それに融合時間、ムダに長くない!?」

 

「気をつけろ、奴が来るぞ…」

 

 

ボロスがボーボボたち目掛けて一直線に駆ける。

迎え撃つべく、ボボパッチの助は鞘から剣を抜くが…腕の関節が一つ増えている。

 

 

「腕の形、おかしくなってるぞ!?」

 

「魔剣エクスカリバー」

 

 

彼の持つその剣は線が途切れてる上に、はみ出てる箇所があり…武器としての機能を果たしてるとは到底思えない。

 

 

「その剣じゃ、切れないだろ!?」

 

「俺の本気を見せよう」

 

 

サイタマに背中を向けるボボパッチの助、その背中は大きな四角に平仮名で「せなか」と書かれたお粗末な作りになっていた。

 

 

「背中はもっとヒデェ!!!!」

 

「いくぞ!」

 

 

止める間もなく剣を片手にボロスへと走る。

 

 

「いっちゃった――――!!」

 

 

しかし、並みの怪人なら一撃で消し去るであろうボロスの拳をその剣で受け止めた。

 

 

「予想外に強い!?」

 

 

だがボロスの攻撃はそれで止まらず、拳から放出された力の奔流が扇状に広がって宇宙船を破壊していく。二人もその濁流のような力の流れに呑み込まれてしまう。

 

その中をボロスは距離を縮めるべく懐へと跳んでいく。接近に気づいたボボパッチの助は下段から掬い上げる一閃で剣を振るうが…ボロスは直前で左に跳んで躱わし、標的をサイタマへと切り替える。

 

サイタマはこれに対処することできずに膝蹴りを喰らい――――真上に蹴り上げられて、視界から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

遥か上空で岩石と激突して大の字になるサイタマ。見上げるとそこには地球。ボロスの蹴りで月まで飛ばされたのだ。

 

 

「無事か、サイタマ!?」

 

 

そこへどうやって来たのかボボパッチの助が現れた。宇宙空間にも関わらず普通に喋っている。サイタマは思わず吹き出しそうになった。

 

 

「来い! バトルホッパー!」

 

 

ボボパッチの助が剣を掲げると、誰も乗っていない緑色のママチャリが砂塵を巻き上げて爆走。二人の前で止まる。

 

 

「よし乗れ、さすがのお前でもこの宇宙空間では呼吸できないだろう」

 

 

ママチャリに跨がり、その後ろにサイタマが乗る。

サイタマは何でお前は呼吸ができる上に喋れるんだ、と思ったが伝えることが出来ないので黙る。

 

 

「時を越えて、空を駆けろ! この星のために! バトルホッパー!」

 

 

そう吼えるとペダルを漕いで箒星のような尾を引きながら宇宙の海を進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

宇宙船に飛来物が垂直に落下して大きく傾く。二人を乗せたママチャリが落ちたのだ。二人は無事だが落下による衝撃でママチャリは無惨にひしゃげている。

その一部始終をボロスが息を切らしながら眺めていた。

 

 

「バイバイ、マスター…」

 

 

ママチャリのライトが点滅しながらその言葉を紡いで…最後に光が消えて沈黙する。サイタマが「ママチャリが喋ったぞ!?」と驚くが誰も答えない。

 

ボロスが落下した二人に攻撃を仕掛ける。

始めは揺るかに駆けて、段々と加速。流線となって二人に攻撃の手を一方的に加える。

 

――がサイタマからの反撃。その一撃でボロスは目を真っ赤にして血を吐き、飛ばされた。

 

 

「それでこそ倒しがいが――――!!!?」

 

 

体勢を立て直したボロスの目の前には拳を構えたサイタマ。右腕が神速の動きで霞んで見えなくなり、ボロスの体が四方八方に弾ける――――直後、散った体が宙で停止。一ヶ所に集まり肉体を形成、再生する。

 

 

「ならば、もう一つの切り札を喰らえ!」

 

 

宙に浮かび、口から雷が迸る。

 

 

 

 

『 崩 星 咆 哮 砲(ほうせいほうこうほう) 』

 

 

 

 

傾いた鋼板に立つ二人目掛けて高密度の光の束を吐き出す。

 

 

「伝説の首領パッチソード!」

 

 

ボボパッチの助がネギを縦に構えて、二つに割れた光が両脇を通り過ぎていく。

だが徐々に欠けていくネギに焦る。その空気を察したか…

 

 

「この星もろとも消え去るがいい!!」

 

 

さらに大きさを増す光。

 

 

「ならこっちも切り札を使うぜ、必殺『マジシリーズ』――――」

 

 

 

 

『 マ ジ 殴 り 』

 

 

 

 

光の壁が大きく抉られて――――散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

雲一つない青空。サイタマのマジ殴りはボロスの魂を込めた一撃を散らし、背後の雲を消失させた。

 

 

「俺は…敗れたのか…?」

 

 

サイタマの攻撃でボロスは両腕、下半身、体の大部分を失い。その瞳は黒く濁っていて…もはや死者と見紛うほどの有り様。

 

 

「予言の通り対等な、いい勝負だった」

 

「ああ、そうだな」

 

 

言葉が途切れて沈黙が流れる。暫くしてボロスは自虐めいた嘲笑を浮かべて途切れ途切れながら…

 

 

 

 

 嘘だな、お前にはまだ余裕があった。

 

 

 まるで歯が立たなかった。

 戦いにすらなっていなかった。

 

 

 お前は強すぎた。

 

 

 サイタマ……

 

 

 

 

ボロスを背に立ち去るサイタマ。その表情は逆行のせいで見えない。

 

 

「終わったようだな。サイタマ…」

 

 

道中でボボパッチの助と会う。ボロスの攻撃のせいだろう、衣服に損傷が目立つ。

 

 

「長年求めた相手。しかし自分は足元にも及ばない…」

 

「……………………」

 

「だが忘れるな奴は侵略者であり、A市を壊滅させた極悪人だ。そして俺たちはヒーローだ。サイタマ」

 

「……わかってるよ」

 

「俺たちには戦いが終わったことを伝える義務がある。戻るぞ俺たちの帰るべき場所へ…」

 

 

崩れてゆく宇宙船の中を歩き出す。

やがて宇宙船は派手な音ともに墜ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

地上に落ちてバラバラになった宇宙船を背景にS級たちとA級のアマイマスクの間に険悪な空気が漂っていた。そこへオープンカーのタクシーが疾走。アマイマスクを撥ね飛ばして、さらに轢く。

 

 

「おい、今なんか轢かなかったか?」

 

「気のせいだろ」

 

 

タクシーに乗っていたのはサイタマとボーボボ。後部座席には首領パッチと天の助の姿も。

 

 

「君たちがいながらこのザマなのかい? ボーボボ君? それと人を轢くな!」

 

 

顔面を血で滴らせながらタクシーの下から這い出るアマイマスク。その彼に…

 

 

「おのれ! 宇宙人! まだいたか!」

 

 

鼻毛をムチのようにしならせてアマイマスクを上空に打ち上げる。

その後、頭部を下にして地面に落下。白目を剥いて気絶する。

 

 

「俺は俺よりもモテる男の存在を赦さない…」

 

 

鼻毛をくねらせ伸ばした両手を前に突き出して奇妙なポーズを取るボーボボ。

 

 

「「ただの私怨!!!?」」

 

 

「うるさいのがいなくなったから、勝戦祝いに焼き肉パーティーに行くぞ――!」

 

 

アマイマスクをその場に放置。ボーボボを先頭に一行は移動する。

かくして巨大宇宙船襲来事件は幕を閉じた。そして――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の願いを聞いてくれるとは思わなかったぜ」

 

 

街から遠く離れた郊外。サイタマと対峙するのはボーボボ含むハジケリスト三人組。

 

 

「最初に言っておくが『ボボパッチの助』でいられる時間は一分だけだ」

 

 

飴玉に変身した首領パッチがボーボボの口の中へ、天の助は開いたアフロの中に乗り込む。

ボーボボの体が光輝き、ボーボボの姿がウェーブのかかったロングヘアーの女性に変わっていた。

 

 

「誰!!!?」

 

「大人の女、またの名を横浜の純子」

 

「横浜!? 純子!?」

 

 

人知れぬ場所にて人智の及ばない激しい戦いがあったそうな…

 

 




 
 (´・ω・)にゃもし。

 原作進んでないからキリのいいところで完結するぜ。
 ここまで読んでくれて、ありがとー。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。