仮面ライダー&プリキュア・オールスターズ~奇跡の出会い、運命の共闘~ (風森斗真)
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―序章―
えっと、一言で言うならば、やりたいからやりました。
ほかの作品との兼ね合いやまだ序章しか出来上がっていないという事情で、かなり更新は遅くなると思います。
それでもよければゆっくりしていってください。
なお、平成ライダーは主にクウガ、電王、キバ、ディケイド、W、OOO、ウィザードが主。
プリキュアはハートキャッチ、スイマル、ハピネスチャージ、Go!プリンセス、魔法使いが主になる予定です。
……まぁ、それしかまともに視聴してないっていうのが本音ですが。
――人々は知らない。
世界の平和の裏には、それを守るために戦う英雄が存在しているということを。
だが、だからこそ英雄は願っている。
誰かの笑顔が、今日も守られ続けていることを……。
――自分たちが戦うその先に、大切な人たちの笑顔があることを。
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仮面ライダー。
悪の組織によって、あるいはその組織を知る科学者の手によって、あるいは古代の力に目覚めたがために改造人間となった青年たち。
そして、人でありながら人ではない哀しみの中で、正義と平和のために戦う、孤独な戦士。
プリキュア。
妖精たちと心を通わせる、笑顔と平和を愛する少女たち。
世界を征服しようとたくらむ組織から、人々を守るために戦う、愛の戦士たち。
彼らは、様々な次元、異なる世界でそれぞれの世界を守るために戦い、人々の希望の灯となった。
彼らはそれぞれ別の世界に存在している。
それゆえに、互いの存在を知ることはなく、また、互いの戦いを知ることもない。
だが、ひとたび、一つの世界が滅亡の危機を迎えたとき、世界の垣根をこえて、戦士たちは共闘する。
ただ一つの目的、人々の希望を守るために。
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冒険家、五代雄介。
彼は二千の技を持つ、心根の優しい、非常に穏やかな青年だ。
しかし、彼には一つ、秘密があった。
それは、へその下、武術の世界や東洋医術の世界で"丹田"と呼ばれる部位に埋め込まれた霊石"アマダム"にあった。
かつて、長野県の山奥にある遺跡で、研究チーム全員が惨殺されるという事件があった。
それを皮切りに、謎の生命体、のちに未確認生命体、あるいは"エム"と呼ばれる怪人たちによって東京の人々が大量虐殺される事件が起きた。
その怪人たち、グロンギと呼ばれる古代の戦闘部族の中で唯一、彼らと死闘を繰り広げた「未確認生命体第四号」という怪人がいた。
その正体が、彼、五代雄介だ。
彼は、遺跡からの出土品である"石のベルト"を身につけたことで、"クウガ"と呼ばれる古代の戦士となった。
『みんなに笑っていてほしい』
その思いを胸に、生来の優しく、臆病で泣き虫な心を押し殺して、彼は戦士クウガとなって、戦い続けた。
その死闘の末、雄介は再び冒険野郎に戻り、世界各地を旅しながらみんなを笑顔にしてきた。
その旅先で、彼は一人の青年と出会った。
彼の名は、火野映司。
彼もまた、旅を愛する穏やかな、しかし雄介と同じく秘密を持つ青年だ。
世界を股にかける旅を続けてきた彼が日本に帰国した時、一つの事件に巻き込まれ、怪人と戦うことを余儀なくされた。
『傷つく誰かを見過ごせない』
その思いと欲望が、彼を"
だが、この時の二人は、目の前にいる青年が自分と同じ、仮面ライダーであることを知らなかった。
そんな思いもよらぬ邂逅から数か月。
五代雄介は、実に十二年ぶりに日本を訪れていた。
だが、彼は、到着したことを知り合いに連絡することもなく、空港のターミナルでのんびりと飛行機を眺めていた。
「……突然だけどさ、俺、辛い時に笑顔でいられることってすっごいことだと思うんだ」
傍らで泣いている少年に向かって、雄介は微笑みながら自分が旅先で見聞きしたこと、経験したことを話し始めた。
しかし、少年はなおも泣きやまなかった。
雄介はそれでも決して穏やかな表情と笑顔を崩すことなく、少年の頭に手を置いた。
「……まぁ、お父さんやお母さんとはぐれたら、やっぱり不安だよな」
しかし、雄介は困った顔一つせずに、懐からボールを取り出して、ジャグリングを披露した。
物珍しさのあまり、少年は泣き止んで雄介のそれを凝視していた。
五分ほど、だろうか。
雄介が投げていたボールをすべて受け止めると、少年は笑顔になって手を叩きだした。
すると、少年の母親のものだろうか。
名前を呼ぶ声が聞こえてくると、少年は女性のもとへまっすぐと向かって行った。
その背中を見送った雄介はぐっと背伸びし、バイクが置かれているはずの駐車場まで歩いていった。
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同時刻。
雄介がジャグリングをしていた場所から少し離れた場所に、四人の少女がいた。
そのうちの一人は、まるで顔を隠すかのように、レンズが少し大きいサングラスをかけていた。
「お迎え、ありがとね。はるはる、みなみん、トワっち」
「ううん!きららちゃんが日本のファッションショーに出るって聞いたら、居ても立っても居られなかったの!!」
「こうしてみんながそろうのも、一年ぶりだものね」
サングラスをかけた少女の言葉に、花の髪飾りをつけた少女と、青い髪の少女が微笑みながら答えた。
ふと、サングラスをかけた少女――きららは、もう一人の紅い髪をした少女の方に視線を向けた。
「まさか、トワっちがこっちに来てるとは思わなかったよ」
「えぇ。わたくしも、まさかホープキングダムとこの世界が再びつながるとは思いませんでしたわ」
トワっち、と呼ばれた少女、紅城トワは、自身でも言うように、この世界の人間ではない。
彼女はこの世界と隣り合わせで存在する世界、ホープキングダム、と呼ばれる城で育った、れっきとした
彼女の故郷、ホープキングダムは、かつて"絶望の魔女"ディスダークによって支配されていた。
ディスダークの目的は、今彼女たちがいるこの世界の希望を絶望に塗り替え、自分たちの勢力下に置くことだった。
だが、ホープキングダムの王子カナタの手によって、かつてディスダークを退けた伝説の戦士"プリキュア"に必要となるアイテム、"ドレスアップキー"と"プリンセスパヒューム"を妖精であるアロマとパフに託し、この世界へと送りこんだ。
それらのアイテムを手にしたはるか、みなみ、きららの三人は、夢を守る伝説の戦士"プリンセス・プリキュア"となり、ディスダークと戦った。
その中で、ディスダークの娘と名乗る"絶望のプリンセス"トワイライトとなっていたトワを救い出した。
トワは、自分の国を絶望に染め上げた罪を清算するため、自身もプリキュアとなって、はるかたちと戦うことを決意した。
そうして、一年にわたる戦いは終わりを告げ、四人はそれぞれの夢に向かって別々の道を歩き始めた。
ホープキングダムとこの世界を結ぶ扉は、ディスダークとの戦いが終わるとともに消滅し、もう二度と、トワに出会うことはできない、と思われていた。
だが、どういうわけか、ここ最近、再びホープキングダムとこの世界を行き来するための扉が復活し、こうして、この世界に顔を出すことができるようになっていた。
「また四人そろうなんて、まるで奇跡だよ!素敵すぎる!!」
と、はるかはみなみときららに飛び掛かり、抱き着いた。
むろん、きららのすぐ隣にいたトワもそれに巻き込まれたが、彼女は迷惑そうな顔を一つもせず、嬉しそうに微笑んでいた。
だが、その表情と裏腹に、トワの心中には一つの不安があった。
ホープキングダムとこの世界をつなぐ扉が再度出現した。
それは、この世界か、ホープキングダムに再び災いが降りかかる、ということなのではないか、と。
今はその災厄が何であるかはわからないし、もしかしたら、本当に偶然なのかもしれない。
だが、胸から消えることのないこの不安に、トワは一人、戸惑っていた。
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「再戦」
雄介がバイクを止めている駐輪場へ向かう道中、その事件は突然起きた。
先ほど自分が出てきた空港のターミナルから、大きな爆発音が響いてきたのだ。
何かの事故か、はたまた、テロ事件か。
あるいは。
雄介の脳裏にある事件が浮かび上がってきた。
だが、同時に、それを無理やりかき消した。
ありえない。
彼らは、自分が、自分と仲間の警察が、多くの犠牲を払って倒したのだから。
だが、それでも雄介は気になって仕方がなかった。
そのため、答えを知るために、再びターミナルへと駆けだした。
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雄介が向かった先では、多くの人が逃げまどい、大混乱が起きていた。
その原因は、人々が逃げてきた場所にあった。
逃げ惑う人々を追いかけるように、蜘蛛のような姿をした怪人が暴れまわっていた。
被害から逃れるため、乗客たちは全員、外へと走っているが、数名は、蜘蛛のような怪人が吐き出した糸で首や胴体を縛られ、身動きが取れずにいた。
怪人が捕えた人間の首をつかんだ。
「……ひっ!!や、やめ……」
「
怪人は、首をつかんでいる手に力を込めると、ごきり、と鈍い音を立てた。
その音が響くと、首を捕まれていた人間の口から、ごぽり、と赤いしずくが滴り、全身から力が抜けたように、腕がだらんと垂れた。
「
蜘蛛怪人はまるで興味を失ったかのように、その人を地面に叩きつけ、再び獲物を求めて人々が逃げていった先へと向かって行った。
が、その進行方向に、四っつの人影があった。
「……って、ゼツボーグじゃない?!」
「な、なにあれ……」
「たとえ、ゼツボーグじゃなくても……」
「えぇ。
その人影は、サングラスの少女とそれを出迎えていた三人の少女――はるかたちだった。
彼女たちの手には、パフュームと鍵が握られていた。
「……
怪人ははるかたちの方へ視線をむけた。
はるかたちは怪人が何を言っているのかわからず、疑問符を浮かべていた。
だが、少女たちがやることは変わらない。
「「「「プリキュア!プリンセスエンゲージ!!」」」」
鍵をパフュームに突き刺し、四人は同時に叫んだ。
その瞬間、空っぽだったパフュームに香水が満ち、ピンク、青、黄、紅の四色に輝いた。
香水を周囲に吹き付ける中で、少女たちの衣装は変わっていき、最後には、まるでおとぎ話や絵本に出てくる"お姫様"のような衣装へと変わっていた。
「咲き誇る、花のプリンセス!キュアフローラ!」
「澄み渡る海のプリンセス!キュアマーメイド!」
「煌めく星のプリンセス!キュアトゥインクル!」
「真紅の炎のプリンセス!キュアスカーレット!」
「強く!」
「優しく!」
「美しく!」
「Go!」
「「「「プリンセス・プリキュア!!」」」」
姿を変えた四人は、名乗ったと同時に、怪人に向かって駆けだした。
四人は、それぞれの方向に分散し、四方向から同時に攻撃を仕掛けた。
だが。
「……えっ?」
「……なっ!」
「……うそっ!」
「……固いっ?!」
渾身の力を込めて、フローラたちは握った拳を怪人に叩きつけた。
しかし、怪人はまったくダメージを受けていないかのように、平然と立っていた。
「
フローラたちの攻撃を受け止めた怪人が腕を振るうと、フローラたちを同時に、簡単に吹き飛ばした。
続けざまに、怪人は正面にいたフローラにむかって、白い糸を吐き出し、フローラを縛った。
だが、彼を相手にしているのはフローラだけではない。
「はぁっ!!」
「たぁっ!!」
マーメイドとトゥインクルが同時に怪人の背に蹴りを加えた。
正面に気を取られていたらしく、怪人はその攻撃で体勢をわずかに崩した。
その隙を逃さず、スカーレットは鍵を一本取り出し、手にしているヴァイオリンの弓の先端に突き刺した。
「滾れ、炎よ!プリキュア!スカーレット・フレイム!!」
スカーレットの声とともに、弓から炎が渦を巻き、怪人に向かって飛んでいき、包み込んだ。
「
怪人は突然、炎に包まれたことに驚愕し、苦痛の叫びを上げた。
だが。
「
蜘蛛怪人は愉快そうに笑いながら、炎の中から出てきた。
「なっ?!効いてない?!」
「うそでしょ?!」
「……だったら!」
蜘蛛怪人の様子に驚愕しながらも、マーメイドは鍵を取り出し、杖を手にした。
どうにか意図から抜け出したフローラも鍵を取り出し、手にした杖の先端に指し込んだ。
「リリィ!舞え、百合よ!!プリキュア!リィス・トルビヨン!!」
「アイス!高鳴れ、氷よ!プリキュア!フローズン・リップル!!」
フローラが手にする杖の先端からは百合が、マーメイドが手にする杖の先端からは雪の結晶が現れると、花びらの吹雪と氷のつぶてが同時に蜘蛛怪人に襲い掛かった。
だが、そう簡単に技が決まるわけはない。
怪人は天井に向かって糸を吐き出し、見た目の通りの動きで上空へと非難し、二人の技から逃れた。
だが、怪人は四人のコンビネーションを見くびっていた。
「シューティングスター!キラキラ、流れ星よ!プリキュア!ミーティア・ハミング!!」
上空で待機していたトゥインクルが、大量の流れ星を怪人に向けて発射した。
流れ星の嵐に巻き込まれ、怪人は再び地面へとたたきつけられた。
だが、怪人は立ちあがり、少女たちをにらみつけた。
「……
怪人がまたもわけのわからない言葉をつぶやくと、今度は雄叫びを上げ、空気を震わせた。
その振動と、怪人から放たれている殺気で、フローラたちは身がすくんでしまった。
ディスダークとの戦いを乗り越え、グラン・プリンセスとなった彼女たちだが、「本当の殺気」というものを感じるのは、これが初めてだった。
このままでは殺される。だが、恐怖で体が動かない。
そんな彼女たちの前に、一人の青年が躍り出た。
「あ、あなたは……」
「危険です!逃げてください!!」
「ここは、私たちが……」
フローラたちは青年に向かってそう叫んだ。
いくら身動きができないとはいえ、目の前にいる青年がこのままあの怪人と戦えば、どうなるか、それは火を見るより明らかだ。
だが、青年――雄介は視線をこちらに向け、優しい表情で、大丈夫、と答えた。
「俺は、前にあいつと戦ってるから……」
そういうと、雄介は両手を腰の前にかざした。
その瞬間、まるで体から浮き出るように銀色のベルトが出現した。
「
出現したベルトに、怪人は驚愕の声を上げた。
だが、雄介はそれを気にすることなく、右手を左側につきだし、左手を腰の右側に回した。
ベルトから、何かが回転しているかのような音が響く中、雄介はゆっくりと右手を右に、左手を腰の左側に動かした。
「……変身っ!!」
その声と同時に、怪人に向かって走りだした。
怪人は、向かってきた雄介を殴りつけたが、それを受けとめ、殴り返した。
その瞬間、受け止めた手と怪人を殴った手に紅い手甲が現れた。
同時に、雄介の体にが赤い鎧に包まれ、足も黒く変わり、足首に紅い宝石が埋め込まれた装飾品が現れた。
最後に、雄介の顔に、金色に輝く二本の角と昆虫の複眼のような二つの赤い目がついた仮面に覆われた。
その姿は、古代の遺跡に、こう記されている。
邪悪なる者あらば、希望の霊石を身に付け、炎の如く打ち倒す戦士あり、と。
だが、その姿を知るものは、かつて雄介に協力してくれた警察組織と友人だけだった。
「……あ、あれはっ?!」
「へ、変身した……」
「って、あの人もプリキュアだったの?!」
「……いえ、あれはプリキュアではありませんは……けれど、いったい……」
四人は雄介の変身に驚愕の声を上げた。
だが、雄介はそれを気にすることなく、怪人を少女たちから引き離すため、体当たりをしかけ、窓ガラスを突き破って外へ出た。
「……
「……ふっ!!」
窓ガラスを突き破り、滑走路へ出た雄介は、怪人を空港の建物から引き離すため、飛行機や建築物があまりない、広いエリアへ向かって走った。
怪人は雄介を追いかけ、走りだした。
「
怪人は叫びながら、雄介を追いかけた。
雄介はある程度、怪人との距離が離れたことを確認すると、立ち止まり、腰を落とした。
「ふぅぅぅぅぅぅぅ……」
ゆっくりと息を吐き、意識を右足に集中させた。
その瞬間、右足に炎のような光が宿った。
感覚で、炎の力が足に宿ったことを知ると、雄介は怪人に向かって走りだした。
一歩一歩踏み出すごとに、光は小規模の爆発を起しているかのようにはじけた。
怪人との距離が徐々に詰まっていき、雄介は地面をけり、宙に飛び上がった。
空中で一回転し、炎の力が宿る右足を、怪人に向かって突き出した。
「うおりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
走ってきた怪人の胸に、雄介の飛び蹴りが命中した。
蹴りの勢いで、怪人は吹き飛んでいったが、怪人は諦めることなく、ふらふらと立ちあがった。
だが。
「……ぶっ!!」
怪人は突然、苦しげにうめきだした。
その胸には、雄介の足に宿っていた炎の力が、封印を示す古代の文字となって浮き出ていた。
その炎は、徐々に怪人の腰へと移っていき、腰の装飾品に光が到達した瞬間、装飾品が割れた。
「
断末魔にも似た絶叫とともに、怪人は爆発した。
幸い、周辺になにもなかったため、爆発による二次被害はなかった。
雄介は元の姿に戻りながら、怪人に背を向け、空港へと戻ろうとした。
だが、その足は目の前までやってきた少女たちによって止められた。
「って、もう終わってる?!」
変身を解除したきららが爆発を見つめながら、驚愕の声を上げる一方で、トワとみなみは警戒のまなざしを雄介に向けていた。
「……あなたは、いったい何者なんですの?」
「普通の人じゃ、ありませんよね?」
その問いかけに、雄介は、困った、といいたそうな表情で頭を掻いた。
会話から、目の前にいる少女たちが先ほどグロンギと戦っていたドレスの少女たちということは、だいたい察することが出来た。
変身する場面を見られたことは、まだいい。
以前にも、一度、目の前で変身するところを見られたことがあるし、何より、今回は緊急事態だった。
だが、
どう説明したものか、と悩んでいると、はるかがみなみとトワの前に立った。
「で、でも!この人がいなかったら、私たちも危なかったかもしれないですし!というか、その前にここで話すのもあれだから、どこか落ち着ける場所に……」
その慌てた様子に、雄介は思わず笑みを浮かべた。
その笑顔に、みなみとトワも毒気を抜かれたらしく、威圧する表情から一転、微苦笑を浮かべて、雄介に視線を向けた。
「それもそうね……それに、警察にも知らせないとだし」
そういいながら、みなみは携帯を取りだし、110番を押そうとした。
「あっ!ちょっと待って!110番じゃなくて、この番号に電話して!杉田って刑事さんにつないでほしいって伝えて」
「えぇ、構いませんが……なんて伝えれば?」
警察に知り合いがいて、警視庁の番号を持っているというのもそうだが、なぜそう話すのか、疑問を感じた。
雄介は、少し考えるようなそぶりを見せてから、思いついたかのように、口を開いた。
「……五代雄介が帰ってきた、いま近くにいるって伝えてくれれば、たぶん俺に変わるよう話してくれると思う。そしたら、俺が状況を説明するよ」
「……はぁ……」
いまだに聞きたいことはいろいろあるが、ひとまず、みなみは雄介の指示通りに電話をかけた。
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「再会」
―8:00 p.m 空港―
雄介の言葉通り、みなみは警視庁捜査一課に所属する杉田刑事に連絡を回し、雄介に電話を変わった。
和気あいあいとした雰囲気で話が進んだが、途中から、少し離れたみなみたちにも聞こえるほどの大声が電話口から聞こえてきた。
『なにぃっ?!未確認がまた現れた?!』
「いってて……はい。あ、でも俺が変身して倒しました。滑走路の空いている場所にうまく誘導ででたので、まわりに被害はありません」
雄介がそう答えると、杉田は落ち着きを取り戻したのか、さきほどの怒鳴り声はもう聞こえなくなった。
それから五分もしないで、雄介は電話を切り、みなみに携帯を返した。
「ありがとうね。それと、事情を聞きたいって刑事さん言ってたから、たぶん、少ししたらくると思う」
「ど、どういたしまして……あの、さっき電話で"未確認"っていってましたけど、それってまさか"未確認生命体"のことですか?」
みなみの言葉に、その場にいたはるかたちはきょとんとした顔で、首を傾げた。
唯一、雄介だけは、驚愕の表情を浮かべていた。
未確認生命体、正式にはグロンギと呼ばれる戦闘民族によって起きた殺戮事件が起きたのは、約十五年前。
そして、つい三年前にも、未確認生命体による事件は起きた。
だが、その事件は余計な混乱を招くという、内閣官房調査室の意向とマスコミがまったく注目していないという点から、調査されていたこと自体、一般の人間には知られていない。
となると、彼女が言っているのは、十五年前の、最初に起きた連続事件のことだろう。
見たところ中学生くらいの彼女たちが、いや、一般の人間が今もその事件のことを覚えているとは、思い難かったのだ。
「……覚えて、るんだ……」
「深くは知りません。ただ、昔の新聞で、その記事があったことを思い出して……それに、もしかして、ですけど、その記事に出てた"第四号"というのは……」
「その話は、署の方でゆっくりしよう」
みなみの声を遮るように、男性の声が響いてきた。
声がした方へ振り向くと、そこにはやや小柄なスキンヘッドの男性と一回り若い女性がいた。
雄介は二人の姿を確認すると、明るい笑みを浮かべ、二人の元へ駆け寄った。
「お久しぶりです。杉田さん、実加ちゃん」
「あぁ。久しぶりだな、五代くん」
「お久しぶりです、五代さん。いつから日本に?」
「今さっきだよ。いや、ほんとまいっちゃったよ。着いたとたんに、これだから……まぁ、詳しい話は署の方でってことで!」
にっこりと笑いながら、刑事ドラマでよく耳にするセリフを言うと、杉田も実加も苦笑を浮かべた。
「それじゃ、俺はバイクで向かいますんで、あの子たちのこと、お願いします」
「あぁ、わかった。車を回すから、ついてきてくれ」
「はい!」
返事を返し、雄介はバイクがある駐輪場へと向かっていった。
その背中を見送り、杉田は警察手帳を取りだして、四人に見せた。
「警視庁の杉田だ。こちらは部下の」
「夏目実加です。あなたが、通報者の?」
「は、はい。海藤みなみ、です。この子たちは私の友人です」
「「「ごきげんよう」」」
みなみに紹介され、三人は優雅にお辞儀をした。
あまりに丁寧なあいさつに、刑事二人は少し面食らってしまったが、時間もあまりないため、杉田はさっそく、四人を車まで案内した。
六人乗りのミニバンに乗り込んで少し走ると、背後に一台のバイクがついてきている様子が、バックミラーに映っていた。
「……よし、五代くんはついてきてるな」
「ビートチェイサーやトライチェイサーじゃないのが、少し残念ですね」
「……無線で話しできないってのは確かに残念だが、追い抜かれたらたまったもんじゃないだろ……しかし、彼とは、もう三年ぶりか」
「あ、あの、ちょっとよろしいでしょうか?」
不意に、みなみが運転席の二人に問いかけてきた。
実加は運転中のため、杉田だけがみなみの方へ視線を向けてきた。
「あの人……五代雄介さんという方は、もしかして、未確認生命体第四号なんじゃ?」
「……なぜ、そう思うんだ?」
「私たちの目の前で変身したんです。五代さん」
みなみの言葉を引き継ぐかのように、後部座席の後ろの方にいたはるかが答えた。
なお、その隣にいたきららは、聞こえない程度の小声で、まぁ、私たちも人のこと言えないんだけど、とつぶやいていたが、杉田と実加には届かなかった。
「……なら、隠しても仕方ないな。まさか、夏目くんと同じような状況で四号のことを知る人間が増えるとはな……」
杉田は諦めたかのようにため息をつき、未確認生命体第四号が五代雄介であることを、そして、かつて彼と未確認生命体対策本部が協力して未確認生命体との苦戦を繰り広げていたことを話した。
むろん、その先にあった結末も。
その話を聞いたはるかたちは、苦しい思いをして戦ってきたのは、自分たちを含めたプリキュアだけではないことを知り、唖然とした。
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―9:00 p.m 警視庁―
杉田の要請で、小会議室を一つだけ、使わせてもらうことになり、はるかたち四人と、雄介、杉田、実加の七人だけがその場にいた。
「さて、改めて……久しぶりだな、五代くん。何の連絡もなかったから、心配したぞ?」
「すみません。三年前の事件の後、一条さんとちゃんとお別れしてから、もう一度、海外に行っちゃったので」
杉田の拗ねたような目で睨まれた雄介は、苦笑を浮かべながら、今まで自分が何をしていたのか、簡潔に説明した。
だが、その数字に疑問を持った人間が一人いた。
「え?三年前って、その時にはすでに未確認生命体の事件は解決していたんじゃ……」
「あぁ、そうか……これは、オフレコでお願いしたいんだが……」
杉田は四人が三年前の事件を知らないことを思い出し、三年前に何が起こったのか、そのあらましを説明した。
その話を聞き、驚愕しないほど、はるかたちは大人ではなかった。
だが、杉田はそんなことはお構いなしに、話を続けた。
「さて、話が少しそれたな……そんなわけだから、未確認生命体のことについては伏せておきたいんだ。けど、こっちとしても調査しないわけにはいかないから、詳しく、事情を聞かせてくれ」
調査しないわけにはいかない、それはつまり、今後も、未確認生命体による犯行が発生する可能性があるということだ。
人の命が、ただの快楽のためだけに奪われる。
そんなことを許すわけにはいかない。
はるかたちの想いは、一つだった。
「……わかりました。ただ、ショックが大きかったこともあるので、思い出せる範囲でのお話になりますが……」
「かまわない。むしろ、嫌なことを思い出させてしまい、申し訳ない」
自分たちがプリキュアであることは隠さなければならない。
その思いがあってか、杉田の言葉にトワが受け応えた。
その意図を察したはるかたちは、無言でうなずいた。
杉田と実加はその言葉を、当然のものとして受け止めていたが、雄介だけは、黙って彼女たちの話を聞いていた。
トワたちが話し終わり、杉田と実加が調書をまとめあげたとき、会議室に突然、二人を呼び出す内線がつながった。
その呼びだしに応じ、杉田は、雄介にはまだ聞きたいことがあるし、はるかたちも保護者に迎えに来てもらう都合があるため、ここで待機するように、と言い残すと、実加を連れて、会議室を出た。
彼らを見送ると、雄介はトワたちの方へ視線を向けた。
「そういえば、自己紹介まだだったね?俺は、五代雄介。杉田さんと実加ちゃんから聞いた通り、"未確認生命体第四号"だ……けど、長いし言いにくいから、俺は"クウガ"って言ってる」
「"クウガ"、ですか……」
「古代の言葉で、"戦士"って意味なんだってさ。ほら、これがそう」
そういって、雄介は自分の着ているTシャツに記された紋章を指さした。
そこには、二本の角が生えた虫の顔のようなマークがあった。
「で、君たちは?」
人懐っこい笑顔を見せながら、雄介ははるかたちに問いかけた。
その笑顔に毒気を抜かれたのか、はるかたちは立ちあがり、優雅にお辞儀をしながら名乗った。
「ノーブル学園中等部二年、春野はるかです」
「同じく、中等部三年、海藤みなみです」
「ノーブル学園中等部二年、天乃川きららです。ただ、今はモデルの仕事で休学中だけどね」
「ホープキングダムの王女、プリンセス・ホープ・ディライト・トワと申します。先ほどは危ないところを助けていただき、ありがとうございました」
あまりに優雅で、上品なあいさつに、雄介は面食らってしまい、驚きのあまり沈黙してしまった。
「……ず、ずいぶん、丁寧なあいさつだねぇ……もしかして、プリンセス・ホープ・ディライト・トワさん以外も、いいところのお嬢様だったり?」
「えっと、みなみさんは海藤グループの娘さんで、きららちゃんはボロロ・ボアンヌさんの専属モデルなんです……わたしは、至って普通の和菓子屋さんの子で……」
雄介の質問に答えたはるかは、一人だけ気まずそうに乾いた笑みを浮かべていた。
その様子がおかしかったのか、雄介はなおも微笑みを浮かべたまま、胸ポケットから名刺を四枚取り出して、はるかたちに手渡した。
「これ、俺が作った名刺。よかったら、持っておいて」
そこには、あったものは、"夢を追う男、2000の技を持つ男・五代 雄介"という文字と、笑顔でサムズアップをするキャラクターが描かれていた。
そこに書かれていた言葉に、はるかたちの頭には疑問符が浮かんでいた。
「夢を追うって?」
「あの、2000の技って、どういう……」
「てか、連絡先も職業も書いてないじゃん」
「……これは、どういったものなのでしょう?」
三者三様ならぬ、四者四様の反応に、またも雄介は笑顔を浮かべながら、書いてあることを説明し始めた。
「職業が書いてないのと、"夢を追う男"っていうのは、俺が冒険家だから。2000の技は本当だよ?ちなみに、1番目と2000番目の技はもう君たちに見せたよ」
「夢を追う、かぁ……なんだか、素敵ですね!」
雄介の言葉に、目をきらきらと輝かせながら、はるかがそういうと、他の三人は呆れたといわんばかりに苦笑していた。
そんな様子を眺めながら、久方ぶりに心が安らいでいくのを感じていた雄介だったが、一つだけ、気になったことがあり、問いかけてみようか、という考えがよぎった。
だが、自分から聞くのはやめよう、と考え、四人の様子を見守ることにした。
そのことに疑問を覚えたのは、雄介を最初から警戒していたみなみだった。
「……聞かないんですか?わたしたちのあの姿のこと」
「うん?まぁ、気になるっちゃ気になるけど、君たちも俺と同じで訳アリでしょ?」
ぽりぽりと頭を掻きながら、雄介はトワの問いかけに答えた。
「訳アリだったら、こっちから聞くのはちょっと気が引けるからさ。君たちが話す気になったらでいいよ……誰にだって、隠しておきたいことはあるしね」
そういいながら、雄介は自分の拳を掌で包んだ。
まるで、今も痛み続ける傷を包むかのようなそのしぐさが、雄介が隠しておきたいことを表しているかのように思えて、みなみはそれ以上、何も聞くことが出来なかった。
それから少しして、杉田が部屋に帰ってくると、はるかたちの保護者が迎えに来ていることと、今後のことについて、雄介に話しておきたいことがあるということだったので、はるかたちはその場から離れようとした。
だが、部屋を出る直前、みなみは雄介の前に立ち、頭を下げた。
「ごめんなさい!」
「え?何が??」
「わたし、あなたがあの化物と同じものだと思っていました」
最初こそ、なぜ謝罪されているのかわからなかった雄介だったが、どうやら、警戒して鋭い視線を飛ばしていたことについて謝罪しているらしいということに思い至った。
「……まぁ、仕方ないよ。あんな現場に居合わせたんじゃ、自分の知り合い以外はみんな敵だって思っちゃうだろうし……何より、目の前であんなことしちゃったらね。むしろ、俺の方こそ、ごめんなさい、かな」
「え?」
「怖い思い、させちゃったもんね。だから、ごめん」
雄介もそういいながら、頭を下げて謝罪した。
あの場では仕方がなかったとはいえ、あそこで変身しなければ、彼女たちがどうなっていたかはわからない。
最悪、死んでしまっていたかもしれない。
だが、怖い思いをさせてしまったことに変わりはないのだ。
「……ふふふっ、なんだか、お互い謝って、変な感じですね」
「そうだね……あっ!」
みなみのほほ笑む顔を見て、雄介は笑顔を浮かべながら、驚きの声を上げた。
その行動に疑問を感じたみなみだったが、雄介の次の一言で、なぜか納得してしまった。
「やっと、笑った!」
「なんですか、それ……ふふふ、五代さんって、おかしな人ですね」
そういいながらも、みなみは微笑みを絶やさず、それでは、と一礼してその場を立ち去った。
雄介はサムズアップをみなみに向けて見送り、杉田たちの方へと視線を向けた。
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「邂逅」
―久留間市運転免許センター 10:28 p.m―
杉田と実加に連れられ、雄介は運転免許センター内にある「特殊状況下事件捜査課」と記された部屋を訪れた。
免許センターにこんな場所があったのか、と、好奇心で目を輝かせながら杉田の後を付いていく雄介の耳に、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ですから、
「いやぁ、だからってねぇ……そもそも、仮面ライダーは
聞き覚えのある声の主にしては珍しく、感情を暴露している声に、まるでそれを諭すかのように落ち着いた声が部屋から聞こえてきていた。
その様子に、ただならぬものを感じた雄介だったが、そんなものはお構いなしといった様子で、杉田は扉を開けた。
「失礼します。警視庁の杉田です」
「あ、あぁ、あぁ、ちょうどよかった!もう、どうにかしてくださいよこの人!さっきから説明してるのにまったく理解してくれなくて!!」
頭髪がやや寂しくなってきている小柄な男性が、精悍な顔つきの男性の背中を押し、半ば無理やり杉田の前に連れていきながら、そう愚痴をこぼした。
杉田も実加も、そして雄介も、この人物なら確かにそうだ、と苦笑を浮かべた。
そこにいるのは、未確認生命体関連事件で杉田とともに最前線で活躍した、一条薫警部補だった。
だが、杉田と実加の姿を一条は、なおも冷静さを取り戻すことはなく、再び小柄な男性の方に向き直り、抗議を続けた。
「止めないでください、杉田さん。これ以上、五代や夏目くんに負担を強いるようなやり方を、私は認めるわけには……」
「俺なら、ここにいますよ?」
杉田の影に隠れて見えなかったのか、それとも、杉田と実加のほうに意識が行っていたのか、雄介の存在を声を聞いてようやく認識した一条の思考はフリーズしてしまい、何も言えなくなってしまっていた。
そんな一条に、雄介は笑顔を向けながら、いつも言われる言葉を一条に伝えた。
「遅いぞ、五代!……ですよね?一条さん」
「……お前というやつは!人がどれだけ心配したと」
ちゃかされたような気分になり、一条は雄介に怒号を向けようとしたが、深くため息をついて、それ以上、何も言わなかった。
ただ、頭を二、三度、軽く左右に振り、気分を落ち着かせて、再び雄介に顔を合わせると。
「よく戻ったな、五代」
そういいながら、雄介にサムズアップを向けた。
「……ただいま、帰りました」
雄介もサムズアップを向け、一条の言葉に答えた。
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―海藤グループホテル 10:30 p.m―
そのころ、海藤グループが経営するホテルの一室に集まったはるかたちプリンセス・プリキュアのメンバーは、先ほどの出来事について話し合っていた。
だが、わからないことが多すぎるという理由で、重い沈黙だけが部屋を支配していた。
「……あぁ、もうっ!!こんなんじゃ、安心してショーに臨めないじゃんっ!!つか、そもそもなんで三年前に全滅したはずの未確認生命体が行動してんの?!」
「気持ちはわかるけれど、落ち着いて、きらら……まさかと思うけれど、ディスダークやほかの敵も復活している、なんて事態になっていないかしら……?」
「ちょっ!みなみさん、余計に不安になるようなことを……」
「……いえ、みなみの言う通りですわ。ずっと、疑問に思っていたことがございますの」
はるかの言葉を遮るように、トワが自身が気になっていることを話し始めた。
「奇妙だとは思っていたのです。ホープキングダムとこの世界が、なぜ突然つながったのか」
本来であれば、異なる二つの世界。
それらはつながるはずがないものだ。
だが、一度、いや、これまでに何度か、そのつながらないはずの世界がつながったことがある。
それらの要因はすべて、この世界に何らかの危機が訪れたことだった。
そして、今回の未確認生命体の一件。
これは、この世界に何らかの危機が訪れているという予兆なのではないか。
トワはそう感じざるを得なかった。
「……なぁるほど、たしかに、トワっちの言う通りかも」
ベッドに横になりながら、真剣なまなざしをトワにむけながら、きららはかすかにため息をついた。
本来、このファッションショーが終了すれば、一週間ほどの休暇が許されていたので、久方ぶりにはるかたちとゆっくり過ごそうかと思っていたのだが、どうやら、そうもいかなくなってしまったらしい。
しょうがない、とつぶやきながら、きららは携帯を手に取った。
「きららちゃん、どうしたの?」
「ちょーっと先輩たちに連絡入れて、一応、用心しておくよう伝えておこうかなって思って」
先輩たちというのは、今回、ファッションショーに参加する予定だった知人、蒼乃美樹、花咲つぼみ、来海えりか、明堂院いつき、白雪ひめの五人のことだ。
五人とも、はるかたちよりも前に活躍していたプリキュアで、夏休みなどの長期休暇の時期には、他のメンバーと集まって遊びに出かけているほど仲がいい。
なお、はるか、みなみ、きららの三人は、昨年の春、ハルモニアという国に招待された折に、先輩のプリキュアたちとすでに顔見知りとなっていた。
この中で、自分たちのほかにプリキュアが存在しているということを知らないのは、トワだけだ。
そんな中、携帯をいじりながら、きららは顔を暗くし、ぽつりとつぶやいていた。
「……本当は、はるはるたちだけじゃなくて、先輩たちにも目いっぱい楽しんでもらいたかったんだけど……」
それは、なにもきららだけでの願いではなかった。
美樹にしてもえりかにしても、そして、ひめにしても、今回のファッションショーは大いに楽しみにしていたし、仲間のプリキュアたちも応援に駆けつけてくれることになっていた。
だからこそ、その応援に報いたいと思っているし、報わなければ意味がないときらら自身は思っていた。
「……まさかと思うけど、あたしたちのショーを邪魔するようなことになったら、このあたしが許さないんだから……」
今回の一件に何が関与しているのかはわからない。わからないが、間違いなく関与しているであろう存在に、怒りを込めてつぶやきながら、きららはメッセージを送信した。
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―地下バー 11:38 p.m―
東京都内の某所にある、地下バー。
すでに閉鎖されて久しいそのバーに、数名の人影があった。
そのうちの一人は、白いドレスをまとい、額に薔薇の形をした白いタトゥーをしていた。
女性の名は、ラ・バルバ・デ。警察からは"薔薇のタトゥーの女"あるいは"未確認生命体B-1号"と呼ばれている、グロンギたちの
彼女は、十五年前に一条と遭遇して以降、消息を絶ち、三年前に一度だけ、姿を現してそれきりになっていた。
だが、彼女はいまもこうして生きている。
そして、彼女の前には、今回、その半数以上が
「……改めて聞かせてもらおう。なぜ、我々をよみがえらせた?」
「ほぉ?グロンギというのは現代の言語を理解できないほど知能指数が低いと思っていたが、存外、そういうわけでもないようだねぇ」
痩身の、バルバよりも派手な衣装をまとっている老婆がにやりと笑いながらそういうと、バルバは殺気を込めた視線を老婆に向けた。
「
バルバは蜘蛛怪人が話した言葉、グロンギの言語で老婆にそう告げ、なおも殺気を込めた視線を送り続けていた。
その視線を飄々と受け流しながら、気味の悪い薄ら笑いを浮かべていた。
「ひっひっひ、なにも貴様らの文化を侮辱したわけではなさいさ。あたしゃ知性の欠片もない連中が好かないだけでね」
「くだらんな……まぁ、いい……それで?我が同胞をよみがえらせたのはなぜだ?」
バルバは目の前にいる老女が自分の同胞をよみがえらせたと考えているらしく、そう問いかけたが、老婆の方は眉をひそめていた。
「何を言っている?貴様らが私をよみがえらせたのではないのか?」
「……なに?どういうことだ?」
どうやら、この老婆もまた、何者かの手によってよみがえったらしい。
互いに、どういうことなのか、疑問を投げかけるが、どれも結論を出すには決定打に欠けるものばかりであり、そもそも目の前にいるこの存在をよみがえらせることに、何の利益も存在しないことに気づいた。
となれば、自分たちをよみがえらせた存在というものは、別に存在することになる。
果たして、その存在は何者なのか。
その疑問が二人の頭をよぎったとき、不気味な声が響いてきた。
『貴様とグロンギをよみがえらせたのはこの私だ!』
「この声は……貴様は何者だ?!」
「……また貴様か、死神博士。いや、ショッカー、と呼んだ方がいいか?」
バルバは声の主の名を告げながら、闇の方へと視線を向けた。
すると、闇の中から、身の丈以上ある黒いマントを見にまとった老紳士と、数名の黒いタイツに身を包んだ集団が姿を現した。
彼らこそ、六十年以上前から世界征服をたくらみ、人々に危害を加えてきた秘密結社「ショッカー」だった。
「……ふふふふ……はっははははははっ!!いかにも!我こそはショッカー大幹部の一人、死神博士なり!!」
死神博士が高笑いをしながら二人にそう名乗ると、黒タイツの集団は甲高い声で、イーッ!、と叫びながら右手を高く上げ、敬礼していた。
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「起動」
―久留間市運転免許センター 8:03 a.m―
雄介が目を開けると、そこは見知らぬ天井だった。
いや、見知らぬ、というのは多少語弊がある。正確には、見慣れない天井、だろう。
今、雄介がいるのは久留間市運転免許センターにある仮眠室だ。
昨晩、この運転免許センターを訪れて、一条と再会を果たし、今後の対策について、"仮面ライダー"と呼ばれている「
雄介は課長の好意で免許センターの仮眠室を貸してもらうことになった。
ベッドから身を起こし、雄介は寝ぼけた顔をしながら、お手洗いへと向かった。
廊下に出て少し歩くと、背後から若い男性の声が雄介にかけられた。
「あ、おはようございます。五代、雄介さん……でしたよね?」
「Good Morning, Mr.Godai。今朝の目覚めはいかがかな?」
「……ん?あぁ、おはようございます。はい、五代です」
振り返るとそこには、二十代半ばほどの精悍な顔つきの青年がいた。
その腰には、自分の腰に埋め込まれているアークルを連想させる、特徴的な形のベルトが巻かれていた。
だが、もう一つ聞こえてきた声の主の姿がまったく見えない。
そのことに気づいた雄介は、疑問符を浮かべながら、進ノ介に問いかけた。
「あの、もしかして、お巡りさんって腹話術できます?」
「腹話術?いや、俺はできませんけど」
「……それじゃ、さっきの声は……」
雄介が周囲を見渡していると、再び、姿なき声が聞こえてきた。
「どうやら、私をお探しのようだね、Mr.Godai?」
「……え?」
「私はここだよ、Mr.Godai。進ノ介のベルトのあたりだ」
いわれるがまま、雄介はベルトに視線を向けると、そこにはベルトのバックルが何かの顔のような形に光っていた。
心なしか、笑っているようにも見える。
「初めまして、Mr.Godai。私はクリム=スタイン=ベルト、進ノ介の
「あ、ご丁寧に。五代雄介です……って、ベルトがしゃべった?!」
「……ふむ、いつ見てもこの光景は新鮮だね」
雄介が驚愕すると、ベルトはなおも笑っているような顔で返した。
どうやら、驚かれること自体になれていて、今ではむしろ、驚かれることを楽しんでいるようだ。
「ベルトさん、人が悪いな……すみません。ちょっと事情があって、ベルトさん、今はこんな姿になってるんです」
進ノ介が苦笑いを浮かべながらそう説明するが、細かなところは教えてくれないようだ。
もっとも、雄介も相手の深い事情に立ちいるほど図々しくはないし、度胸があるわけでもない。
そのため、これ以上、深く聞くつもりはなかった。
「親しみを込めて、ベルトさんと呼んでくれたまえ」
「じゃ、俺も雄介で。よろしく、ベルトさん」
そういいながら、雄介は胸ポケットから名刺を取り出し、進ノ介とベルトに手渡した。
もっとも、ベルトには手と呼べる部分がないので、二枚とも進ノ介に渡すことになるのだが。
その名刺にかかれていた言葉に、進ノ介は眉をひそめた。
「……"2000の技を持つ男、夢を追う男"?なんだ、こりゃ」
「これこれ、進ノ介。本人を前に失礼だぞ?」
「いや、いいですよ。夕べも同じようなこと言われましたから」
「夕べ?」
ベルトのフォローに、苦笑いを浮かべながら話す雄介の言葉に、進ノ介は疑問符を浮かべた。
昨晩、ということは、空港での事故の後にこの名刺を誰かに渡した、ということになる。
では、その誰か、とは誰なのか。
その正体が、昨晩、雄介と一緒に保護されたノーブル学園に所属する三人の女子中学生と、ホープキングダムという国の王女だということに気づくまで、それほど時間はかからなかった。
「なるほど。ノーブル学園の彼女たちにも渡したんですね?」
「えぇ。初対面の人には渡すことにしてるんです」
雄介は微笑みを浮かべながら、進ノ介にそう答えた。
同時に、どちらからだろうか、空腹を告げる音が聞こえてきた。
「ふむ。どうやら、話の続きは朝食を食べてから、ということになりそうだね」
呆れた、という表情なのだろうか、目を八の字にしたベルトがそう告げると、どちらからとなく賛成し、食堂へと向かって行った。
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―警視庁地下 秘密階 8:48 a.m―
警視庁の地下にある、一般人はおろか、
そこにあるシミュレーションルームでは、青い外装の鎧を身に着けた人間が立っていた。
右肩には、「G3-X」と黄色い文字が記されている。その顔に取りつけられた仮面、いやヘルメットの赤い複眼は、未確認生命体第四号の姿を彷彿させた。
『G3-X、動作試験、開始します』
機械音が響くと、シミュレーションルームの壁の一部が開き、そこから鉄球がいくつも同時に飛び出してきた。
その大きさは、砲丸投げで用いられる鉄球を二回り以上の大きさはあった。
こんなものがぶつかれば、生身の人間はもちろん、一般の乗用車も大破は免れない。
その鉄球を、青い装甲の装着員は紙一重で回避した。
回避された鉄球は、背後の壁に半分以上がのめりこんだ。
それでもなお、鉄球は休みなく装甲者に向かって向かってきた。
だが、装着員は腰に差していた拳銃のような武器を引き抜き、鉄球に向かって引き金を引いた。
拳銃から発射された弾丸は、全弾、鉄球に命中し、粉々に粉砕した。
すべての鉄球が、弾丸によって破壊されると、動作試験終了の合図であるブザーが鳴り響いた。
『動作試験を終了します』
「お疲れ様、氷川くん」
機械音が試験終了をアナウンスすると、オペレーターを務めている女性が、装着員にねぎらいの言葉を贈った。
その言葉を聞き、氷川、と呼ばれた装着員はヘルメットを外し、オペレーションルームに視線を向け、うなずいた。
ここは、警視庁地下に設けられた未確認生命体対策班、通称「G3ユニット」のオペレーションルームだ。
クウガ、すなわち、未確認生命体第四号の活躍により、未確認生命体の首魁と思われる存在、第0号が消滅し、終息を迎えた未確認生命体による大量虐殺事件だが、まだ未確認生命体がどこかで活動している可能性が考慮され、急きょ、組織された、いわば未確認生命体の対策に特化した
だが、その初陣は当初予定されていた未確認生命体との戦闘ではなく、未確認生命体と同等あるいはそれ以上の能力を秘めた謎の生命体、通称アンノウンと呼ばれる存在との戦闘となり、敗北という、不名誉な結果となった。
それから数々のアンノウンとの戦闘を経て、チームを巡る庁内での紆余曲折を経て、当初のプロトタイプだったG3を改良し、誕生したシステムが、さきほど動作試験を行ったG3-Xだ。
そして、今、このG3-Xの動作試験を行っていた装着員が、当時、G3ユニットの装着員として抜擢された氷川誠だ。
だが現在、アンノウンによる事件が終息を迎えたために、G3ユニットは解散、G3システムも封印が決定されたため、
ここ数年の間に再び現れた、未確認生命体ともアンノウンとも異なる存在、通称「機械生命体」への対策として、再びG3システムの復活が秘密裏に決定され、こうしてメンテナンス後の動作試験が行われる運びとなったのだ。
オペレーションルームに戻った誠は、オペレーターの小沢澄子の背後に歩み寄った。
その気配を背中で感じ取ったのか、澄子は振り返ることなく、誠に語りかけた。
「問題なさそうね。あとは、例の機械生命体が発生させるっていう"どんより"への対策だけれど……こればかりは、特状課に任せるしかないんじゃないかしら?それにしても久しぶりね、氷川くん。相変わらず警官やってるんだ?」
「小沢さんもお変わりないようで。ですが、よかったんですか?大学の方は放っておいても」
アンノウンの事件が終息したのち、澄子は警察を辞職し、ロンドンの大学で教授を務めているはずだった。
しかし、日本での事件をネットで知り、警視庁からの要請もあったことから、こうして呼び戻され、現在は警察官としてではなく、あくまでG3システムの
「大丈夫よ。これも仕事だから、大学側が少し時間をくれたの……それより、氷川くん、やっぱり少し老けた?」
「そりゃ、あれから十年も経ってますからね。まだ現役のつもりですけど」
「そうでなかったら困るわ。今のところ、あなた以外にこのシステムを任せていいって思える警官がいないんだもの……北条のバカなんてもってのほかね」
なお、澄子と犬猿の中である北条透は、現在、警視庁捜査一課の課長の席に就いている。
むろん、彼の耳にも今回の未確認生命体関連と思われる事件は耳に入っているが、参事官から関わるな、ときつく言い渡されているため、関与しない方針を取るらしいというものが、もっぱらの庁内の噂だ。
もっとも、誠も澄子も、おとなしくしているとは思えない、という、共通の認識があるのだが、いまそれを考えていても仕方がない。
思考を切り替えるためか、誠は別のことを澄子に問いかけた。
「そういえば、聞きましたか?また
「聞いたわ。四号も復活したとか言っていたけど、正直、私は信じない。自分の眼で確かめない限りは、ね」
基本的に科学者であるためか、簡単には噂を信じないという気質なのだろう。
澄子はそういって、これ以上、この話は無駄、といいたげに話を切った。
この時、澄子は十年という時を超えて、自分が生み出したG3システムが本来の目的である未確認生命体との対決を、それもデザインのモデルとなっている第四号と共闘という形で行うことになるとは、全く予想だにしていなかった。
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「共謀」
あれは嘘だ。
すみません、いいたかっただけです。
予定を少し変更して、プリキュアはハートキャッチ以降、ライダーは平成ライダー全部を出演させます。
といっても、メインになるのは私が知っている、覚えている範囲のものになりますけれども(汗)
オンドゥルを期待している方もいらっしゃるようなので、そこは書けるようにがんばります。
―海藤グループ系列ホテル 9:00 a.m―
はるかたちが宿泊していたホテルのロビー。
そこに、今回のファッションショーにゲスト参加することになった少女たちが集まっていた。
その中には、来海ももかという、現役女子高生のトップモデルも含まれていた。
その光景に、はるかは目を輝かせていた。
「ま、まさか……きららちゃんとももかさんのツーショットが見れるなんて!!」
「はるか、うれしいのはわかるけど、あまり騒がないようにね?」
素敵すぎる、と喜びと感動のあまりに大声で叫ぶと、みなみは苦笑を浮かべて忠告した。
もっとも、その忠告が聞こえているかどうかは、定かではないのだが。
少しの間、その場にいた全員が和気あいあいと話をしていると、ロビーにスーツを着た精悍な顔つきの男性と、記憶に新しい青年が入ってきた。
その姿をいち早く見つけたのは、さきほどまで感動で半ば放心していたはるかだった。
「……あれ?五代さん!」
「おはよ、はるかちゃん。よく寝れた?」
ひらひらと手を振り、微笑みながら、雄介ははるかに声をかけた。
はるかも、にこやかな笑顔を向けながら、ぱたぱたと雄介に近づいていった。
その後ろを、みなみとトワがついてきた。
「「ごきげんよう」」
「えっと、海藤グループのみなみさんと、ホープキングダムのトワさんだよね?おはよう」
一日でノーブル学園流の挨拶に慣れたのか、雄介は微笑みながらみなみとトワに挨拶を交わしたのだが、連れの男性、一条薫は、その挨拶の仕方に面食らってしまった。
だが、元来、冷静な男である一条はすぐに平静さを取り戻し、警察手帳を三人に見せた。
「警視庁の一条です。少し、お聞きしたいことがあるのですが」
警察、という単語と、聞きたいこと、というフレーズで、三人は昨晩の未確認生命体のことについて聞きに来たのだと理解するまで、それほど時間はかからなかった。
三人は顔を見合わせ、互いにうなずき合うと、一条の方へ顔を向けた。
「お伺いしたい内容はわかっています……ですが、話は応接室の方で」
そう話すみなみの視線は、打ち合わせをしているきらら、ももかの方に向けられていた。
事情を察しかねている一条に、雄介はこっそりと耳打ちした。
「これから大事な打ち合わせがある子たちがいるんですよ。その子たちに気を使ってるんです」
「……そういうことか。わかりました。お願いします」
雄介の耳うちにうなずき、一条は応接室へと三人を案内した。
だが、その姿に気づいたきららは、ももかとの打ち合わせを途中で区切り、三人の後を追いかけた。
その背中を見た、黒い長髪で眼鏡をかけた少女もまた、その後を追いかけた。
雄介は一条のすぐ後ろを歩きながら、自分たちについてくる足音が増えていることに気づき、視線をわずかに後ろに向けていた。
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―海藤グループ系列ホテル 応接室 9:08 a.m―
応接室に入った三人は、一条から未確認生命体に遭遇した時の様子を問いかけられ、自分たちがプリキュアであることを隠すため、思い出せる範囲で答えることになる、と前置きをしてから答え始めた。
その内容に、一条は黙りこみ、何かを思案していた。
それは、雄介も同じことだった。
二人の脳裏には、「ゲーム」という単語が浮かんでいた。
それは、未確認生命体――グロンギたちの言葉は"ゲゲル"と呼ばれている言葉だ。
彼らにとって"ゲーム"とはリント、すなわち、人間を
かつての未確認生命体による殺戮事件は、ある一定のルールに基づいて行われていた。
そのため、どのようなルールなのか、その謎が解明できれば、次の犯行を阻止し、未確認生命体を討伐できた。
もっとも、それは謎が解明されるまでの間に、多くの犠牲者を生み出すことになる。
だが、今回の事件には、そういったルールのようなものが感じられなかった。
ただ目についた周囲の人間を殺戮していった。そんな印象しか受けないのだ。
「……改めて確認しますが、何か共通の特徴を持った人……例えば、特定の体格をした人とか性別の人を狙っていた、ということはなかったんですね?」
「えぇ……五代さんが来るのがもう少し遅かったら、わたしたちもどうなっていたか……」
一条の言葉に、みなみはそう答え、あくまで自分たちが変身して戦っていたことには触れなかった。
五代だけなら、そのあたりのことを含めて説明してもよかったのだが、目の前にいるのは五代だけではない。
普通の警察官であるはずの一条に、自分たちが"
「……どうやら、今回はゲームではなく、あくまで殺戮が目的だったみたいだな」
「……てことは、
「そうなるな……君たちも、念のために不要な外出や人が多く集まる場所に行かないようにお願いしたいのですが……難しい注文、ですよね?天乃川きららさん??」
雄介の言葉に、これから殺戮ゲームが始まることを予感した一条は、目の前にいる三人に、不要な外出や人が密集する場所に行くことは控えるように忠告したが、扉の向こうにいたきららにそう問いかけた。
すると、ゆっくりと扉が開き、その向こうから、気まずそうに微笑むきららと、ほほに冷や汗を伝わせている黒髪の少女がいた。
「……ばれてたんだ?」
「私ではなく、五代が、ですがね……そうだろ?五代」
一条は半眼になった目を雄介にむけ、問いかけた。
雄介は苦笑を浮かべながら、まいったな、と頭をかいた。
「一条さんにはほんっと隠し事で気ないですねぇ」
苦笑しながら、雄介はそう返しながら、きららと、もう一人の少女に席を勧めた。
一条としては、この二人の入室は断りたいところなのだが、どのみち、さきほどの話を聞かれてしまった可能性がある、いや、ほぼ確実に聞かれてしまった以上、話すことは話さなければならない。
そう判断して、一条は特に咎めることはしなかった。
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―地下バー 9:30 a.m―
バルバは冷めた瞳で店内を見まわした。
そこには、ボードゲームに興じている二人組の男たちや、爪の手入れをしている若い女性、あるいは本を読んでいたり、トランプのカードをいじっていたり、はたまたマネキンをこれでもかと言うほど殴りつけていたりしている屈強そうな男たちがいた。
彼らはかつて、バルバが進行役を務めた
しかし、その中に奇妙なものも混じっている。
一見すれば普通の人間となんら変わらない姿をしているが、そのものたちから感じ取れる威圧感は、彼らが普通の人間ではないことを物語っていた。
もっとも際立っているのは、骨のようなデザインが施された黒いタイツをまとい、目だし帽をかぶった奇声を発するものたちと、砂袋のような顔をしたものたち、そして、全身黒いタイツで覆われた、サングラスをかけたものたちだ。
最初のものはまだ人間らしさがあるが、あとの二つはどうにも人間のようには思えない。
むしろ、
だが、自分たちは自分たちがしたいことをするだけ。
バルバがそう考えていると、自分の眼の前に、一人の同胞が躍り出た。
黒い長そでの服に身を包み、黒い帽子と手袋をしている。
男の名は、ズ・ゴオマ・グ。
以前、ダグバに封印を解かれた時は、ゲームが始まる前に勝手に獲物を狩り始めたため、ゲームの順番を先送りされ、最終的にダグバによって"整理"された同胞だ。
どうやら、彼も復活したらしい。
「
「……
バルバが冷たくあしらうと、グロンギは舌打ちをしてその場を去った。
無理やり自分が始めてもいいのだが、そうなるとバルバから制裁を受けることになる。
自分の力がバルバには遠く及んでいないことは、自分が一番よく分かっているのだ。
そのやり取りを脇で見ていた、全身を黒いレザースーツで覆った、メタル風の眼付の悪い男が、バルバの前から立ち去ったグロンギの方へと歩み寄っていった。
「よぉ、しけた顔してんな」
「……誰だ?今の俺は機嫌が悪い、消されたくなければさっさと失せろ」
以外にも流ちょうな日本語で返され、男は面食らったが、いやらしい笑みを消すことなく、話しかけ続けた。
「そうカリカリすんな。俺だって早いところ俺らの目的を果たしたいんでな」
どうやら、現状が気に入らないもの同士、手を組もうということらしい。
気に入らないが、今は
その欲に負け、ゴオマは男の話に乗ることにした。
「いいだろう。俺はゴオマだ」
「クローズだ」
クローズと名乗ったメタル風の男は、いかにもあくどいことを考えています、という顔で笑みを浮かべていた。
ゴオマとクローズ。
だが、この二人は気づいていなかった。
この二人が手を組み、行動を起こそうとしているように、彼らの宿敵もまた、図らずも同じ場所に集っているということに。
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「変身」
えっと、先に弁明します。
私、アギトを全部見ていません(な、なんだってーっ?!)
そのため、結局、翔一がどうなったのか、知らないんです。
なので、G3-Xが出たなら、アギトも!、と期待してくださっていたアギトファンのみなさん。本当に申し訳ございません!!
いや、出します!ちゃんと出しますから!!
プリキュアも……オールスターズって名乗れないから、他の二次創作を読んでのレベルになりますけど、全員……出せるように頑張ります、はい。
―後楽園ホール 5:57 p.m―
その日、後楽園ホールではボアンヌのファッションショーが行われる予定だった。
大勢の人でにぎわい、あでやかな舞台となるはずだった後楽園ホールの現在の様子は、その予定から大きくかけ離れた凄惨なものとなっていた。
ショーが行われる会場のベンチには、顔を鋭いもので切り裂かれ、顔面を血で濡らし、倒れている男性や、首筋から血を流し、目を見開いたまま倒れ伏している女性、あるいは、首があらぬ方向へ曲がってしまっているまだ小さい子供など、多くの人々がすでに息を引き取った状態で倒れていた。
他にも、檻のようなものに閉じ込められ、目を閉じている人々が多数みられた。
この原因を作った存在は、いま、ステージから離れた広場やホール内に分散し、敵対する者たちと戦っていた。
警察の通達により、非難が完了した広場では、南京錠のような顔をした3m以上はあろうかという化物と戦う、ドレスをまとった少女たちが。
同じく、非難が完了したホールでは、蝙蝠のような姿の怪人と今日のような顔を持つ怪人が赤い鎧をまとった二本の金色の角を持つ怪人と、「仮面ライダー」として知られている赤い鎧をまとった戦士。そして、青い鎧をまとい、肩に"G3-X"と書かれた戦士が激戦を繰り広げていた。
なぜ、笑顔と歓声があふれるはずだったこの場所が、まったく正反対の光景に染まってしまったのか。
それを説明するには、時を少しばかり、さかのぼる必要がある。
--------------------------------------
―海藤グループ系列ホテル 9:30 a.m―
なりをひそめていた未確認生命体、それもかつて雄介が倒したはずの個体が再び出現した。
そして、まだ確認できてはいないが、他にも、倒されたはずの未確認生命体の人間態を見かけた、という情報も上げられている。
もし仮にこの情報が正しかったとすれば、かつて雄介が倒した未確認生命体がすべて復活したことになる。
そしてそれは、東京が再び彼らのゲームの会場になることを意味している。
その話を一条から聞いたきららと、立ち聞きしていた眼鏡をかけた少女は、驚愕していた。
いや、少なくとも、きららだけはその額に青筋が浮かんでいた。
「……ですから、ファッションショーは取りやめるよう、会社の人に説得する手伝いを」
「却下」
「……は?」
「だから、却下って言ってんの。何度も言わせないで」
きららは明らかに不機嫌そうな顔で一条にいい返した。
一方の一条は驚愕で目を見開いていた。
杉田から話を聞いていたが、彼女たちは明らかに巻き込まれた一般人だ。
普通ならば、未確認生命体に襲われたショックで、これ以上、未確認生命体に関わりたいと思うはずがない。
だというのに、人が多く集まるファッションショーの中止を、わざわざ中止せず、続行させたい、と言ってきているのだ。
よほど、このファッションショーに思い入れがあるのか、あるいは、幼さゆえの考えの至らなさなのか。
とにかく、ボアンヌ専属モデルであるきららを説得しないことには、これ以上の話は進まないと考えた一条は、なおも説得を試みた。
「ですが、今度はあなただけではない。あなたの友達や、ファンのみなさん、関係のない人々が巻き込まれる可能性があるんですよ?!」
「それでもっ!!あたしたちのショーを楽しみにしてくれてる人たちがいるのよ?それをわざわざ潰すっていうの?!その人たちの楽しみを奪おうっての?!」
「……うん、これは一条さんの負けですよ?」
いい返そうとする一条の声を遮るように、雄介は穏やかな顔で告げた。
一条からの反論があるだろうことは予測できていたが、雄介の口から、それも仲間であるはずの一条の敗北宣言を聞くことになるとは思っていなかったのか、きららも、はるかたちも、この部屋の中ではもっとも付き合いの長い一条でさえも、驚愕で目を見開いた。
その視線に驚きはしたものの、雄介はなおも穏やかな表情で続けた。
「楽しみにしてる人がいるから、残念な思い、させたくないもんね。それはわかるよ……でも、きららちゃんも、わかってるんじゃないかな?このままだと、自分だけじゃなくて、仲間や友達、それにファンの皆を危険な目に会わせることになるっていうのは」
「そりゃ!……そうだけど……」
「……なら、一条さん。俺がこの子たちのショーを守ります」
「しかし、五代!!」
やや興奮気味に返す一条に、雄介はただ穏やかな表情で返した。
「実加ちゃんには無理させられないですし、俺だったら、最悪、ここを撃ってくれれば、強制的に変身は解除できると思うので……たぶん、ですけど」
雄介はへそのあたりを軽く叩いた。
そこは、雄介が変身するために必要な霊石が埋め込まれている場所であり、現状、グロンギやクウガにとって、唯一の急所だ。
霊石を撃つということは、つまり、最悪の場合、雄介を殺すことになる。
この場にいる人間の中で、そのことをわかっているのは、
それを理解していない五人は、なんのことだかさっぱりわからず、ぽかんとしていた。
しばらくの間、沈黙が続いたが、その沈黙は、一条によって破られることとなった。
「……本当に、大丈夫なのか?」
「根拠はないですけど、大丈夫ですよ」
大丈夫。
雄介のその言葉は、根拠がないにも関わらず、なぜか聞く人を安心させる力がある。
これを、昔の人間の言葉で"言霊"というのだろう。
そう思いながら、一条はついに。
「……わかった。できる限り、警備を厳重にできるよう、俺の方からもかけ合ってみましょう」
その言葉で、その場にいた少女たちは歓喜の声を上げた。
だが、その声は、一条の一喝ですぐに収まることとなった。
「ただし!」
一条の声に驚いたのは、少女たちだけではなく、隣にいた雄介もだった。
部屋の中が静まると、一条は静かな声で続けた。
「危険だと我々が判断した場合は、すぐにショーを中止。観客とあなた方には、すぐに避難してもらいます……よろしいですね?」
一般人の安全を守るという、警察らしい言葉が一条の口から出てきたことに安心したのか、少女たちは安堵の表情を浮かべていた。
一方、雄介は微笑みを浮かべながら、一条にむかってサムズアップを向けていた。
その態度に、一条は、のんきなものだ、と感想を抱きながら、ため息をついた。
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―地下バー 10:36 a.m―
グロンギたちが最初に集合した、都内の地下バーのカウンター席では、ゴオマとクローズが座っていた。
ぼそぼそと、何かを話し合っているようにも見えるが、付近にいるグロンギたちもショッカーの戦闘員も、まったく興味がなさそうで、互いに酒を呑んだり、トランプで勝負をしたりと、各々の行動で待機時間を過ごしていた。
だが、一人の女がバーに入ってくると、彼らの視線は一斉にそちらのほうへ向いた。
そこにいたのは、ズ・メビオ・ダと呼ばれる、グロンギの一族で、現在のゲームのプレイヤーだ。
本来は、その手首に、カウンターである"グゼパ"が取りつけられているはずなのだが、なぜか破壊されている。
それをみた審判者のバルバはグロンギの言葉でメビオに問いかけた。
「……
「
メビオは本当に忌々しそうに、顔をゆがめた。
一方、のバルバは新たなグゼパを手渡しながら忠告した。
「
メビオが宣言した人数は、2日で72人だ。
本来なら、今日、ゲーム達成の報告を聞くはずだったのだが、グゼバが壊されてしまった以上、ゲームはやりなおしとなる。
つまり、残りわずかな時間で72人の人間を狩らなければならないのだ。
「
バルバの言葉にそう答えながら、メビオは一枚の紙片を手渡した。
そこには、後楽園ホールで行われる予定のボアンヌファッションショーの広告がかかれていた。
それを横目で見たクローズが悪い笑みを浮かべていたということは、言うまでもない。
「おい、ゴオマ。どうやら、暴れることができるまで、そう遠くはないみたいだぜ?」
「……なに?」
いぶかしげな眼差しを向けながら、ゴオマはクローズの言葉に疑問を持った。
なぜ、暴れることが出来るまでそれほど時間がかからない、といえるのか、それがわからないのだ。
「後楽園ホール、って場所に行けば、俺の宿敵にも会うことが出来る。そして、そこには多くの人が集まる……あとは、わかるな?」
「……そういうことか。いいぞ、いいぞ……乗ってやろう」
クローズの言葉に、ゴオマは笑みを浮かべていた。
もっとも、それに気づかないほど、バルバも疎くはなかった。
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―後楽園ホール 5:48 p.m―
きららと、ファッションショーにゲスト参加することなっている花咲つぼみ、来海えりか、明堂院いつき、白雪ひめの四人は、後楽園ホール内にある控室にいた。
開始が差し迫っており、当日の衣装合わせがある、ということもあり、男性は室内にはいないのだが、実加と進ノ介の
なお、会場の出入り口、会場内、ステージ裏など、襲撃がありそうな場所はすべて、G3ユニットのメンバーは
本来は、雄介も会場内部の方へ回るべきなのだろうが、人間態となってきららたちに襲い掛かってこないという保証がないため、ここに配属されることとなった。
そんな彼の隣には、久留間市の運転免許センターで出会った、進ノ介と進ノ介の腰に巻かれたスタインベルトが立っている。
本来は、彼らもステージや会場の入り口にいるべきなのだろうが、人間の姿となった未確認生命体が会場内部に入り込んで、彼女たちを襲撃しないとも限らない。
そうでなくとも、狭い通路が多い裏方に、大量の人員を配属するわけにはいかない。
だからこそ、最大の戦力であるこの二人を配属したのだ。
「シカシ、なんとも奇妙な気分だね」
いつあるかわからない未確認生命体の襲撃に、緊張した空気が流れるなか、突如、ベルトが口を開いた。
「何がだよ、ベルトさん?」
「いや、本来、我々"特状課"は
それも、かつて彼らと戦った四号と一緒とは。
その言葉に、進ノ介は納得したのか、うなずいていた。
ベルトのその言葉で、ほんの少しだけ、場が和みはしたが、彼らの顔にはすぐに緊張が走った。
二人が取りつけているインカムに、未確認生命体が会場に出現したという報告が入ってきたのだ。
すでに、S.A.Tのメンバーと、G3-マイルド、と呼ばれる量産型の対未確認生命体強化アーマードスーツの装着者が向かっているとのことだったので、二人はこの場を離れても問題ないと判断した。
だが、念には念を入れておきたい。
雄介は控室の扉を二度、ノックし、中にいる実加に声をかけた。
がちゃり、とドアがわずかに開き、実加が顔を出した。
その顔を見れば、すでに連絡が入ったことはわかる。
「五代さん、行ってください。ここは、私と霧子さんが」
「わかった。無茶はしないでね」
雄介はそれだけ言って、会場に向かって走っていった。
それを追いかけるように、進ノ介も走り出した。
「霧子、その子たちを頼む!」
走り去りながら扉の向こうにいる相棒にむかって叫び、走り去っていった。
その声が聞こえていたのは、何も実加と霧子の二人だけではなかった。
戦える人間は、他にもこの後楽園ホールにいた。
きららとひめ、そしてつぼみたちは進ノ介の声を聞き、それぞれのカバンからあるものを取りだし、実加と霧子の制止を振り切って、控室から飛び出し、雄介たちの後を追った。
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―ファッションショー会場 5:50 p.m―
雄介と進ノ介が未確認生命体が出現したという現場に到着すると、そこはすでに阿鼻叫喚の地獄絵図だった。
いや、倒れ伏している人間の数が目視するだけでも十人以下で収まっていることと、入場している人がまだ少なかったことを考えれば、これまでの事件の中ではまだ被害は小さい方だ。
だが、それでも一般人に犠牲者が出た。
そのことが、雄介と進ノ介の闘志に火をつけることになった。
先に行動したのは、本来、未確認生命体と戦うために、笑顔を守るために戦ってきた戦士である、雄介だった。
腰の前に手をかざし、アークルを出現させ、雄介は変身のポーズを取った。
アマダムが回転音を響かせながら光出した。
「変身っ!!」
その叫びとともに、雄介は腰の左側に取りつけられたスイッチを左手の甲で押し、両腕を広げた。
その瞬間、雄介の姿は赤い鎧をまとった、
それに一拍遅れて、進ノ介が動きだした。
「……いくぜ、ベルトさん」
「OK!Start Your Engine!!」
ポケットからミニカーのようなものを取りだしながら、腰に巻いたベルトに語りかけると、ベルトは、流ちょうな英語で返した。
進ノ介は、左腕に装着したブレスレットのような機械にミニカーをセットし、レバーをいじった。
「変身っ!!」
「Drive!Type,Speed!!」
レーシングカーのエンジン音のような爆音が響く中、進ノ介の姿は、雄介と同じ、赤いものへと変化した。
だが、その眼は白く、まるで車のヘッドライトのようだ。
そして、胸にはタイヤのようなギミックが取りつけられた。
「五代さん、ひとっ走り、付き合ってください!!」
「うんっ!」
言うが早いか、五代と進ノ介は現れた未確認生命体、メビオに向かって突進していった。
だが、このとき二人は完全に油断していた。
敵は、メビオ以外にもいたのだ。
「お前たちの夢!絶望の檻に閉じ込めてやる!!クローズ・ユア・ドリーム!!」
突如、会場内に謎の男の声が響くと、南京錠のような顔をした化物が数体、その場に出現した。
それだけではない、闇の中から蝙蝠の姿となった
あまりに突然のことで、雄介は踏ん張り切れず、吹き飛んでいってしまった。
「五代さん!!くっそ!」
進ノ介も応戦しようと、専用武器であるハンドルが取りつけられた青い刀身の剣を取りだした。
だが、雄介と距離が離れてしまったため、実質的には一対多数の戦闘となっている。
進ノ介も徐々に追い詰められていった。
「進ノ介!このままではまずいぞ!!」
「わかってるけど!この状況は!!」
離れた場所で、雄介と3号が戦闘を繰り広げているが、やはりどこからか現れた南京錠の怪物の襲撃も同時に受けてしまっている。
こんな時に、剛がいてくれれば、と進ノ介は心底、思った。
だが、その思考が、一瞬の隙を生んだ。
「ゼツボーグっ!」
「しまっ!!」
それを見逃さず、南京錠の怪物が拳を進ノ介に振り下ろしてきた。
が、突如、怪物にいくつもの弾丸が命中し、吹き飛んでいった。
「な、なんだっ?!」
「……進ノ介、右だ!」
ベルトが示す方向を見ると、そこには、右肩に"G3-X"と書かれた青い装甲の戦士がいた。
「大丈夫ですか?!泊巡査!!」
「なぜ俺のことを?!」
「今はそんなことよりも、四号の援護を!!」
「あ、あぁ!!……けど、こいつらは!」
進ノ介はG3-Xの言葉に賛同はしたものの、目の前にいる
最悪、5号だけならばどうにかできる。
だが、この南京錠の怪物を相手にするには、少し数が多い。
G3-マイルドとS.A.Tの混成部隊は、観客の避難誘導に回っているため、到着までには時間がかかる。
それまでに、持ち応えることが出来るか。
そう考えたその時、会場に少女たちの声が響いた。
『こいつらは、わたしたちに任せてください!』
声がした方を見ると、そこには、非難したはずのはるか、みなみ、トワ、ゆり、そしてひめの友人と名乗った三人の少女と、きらら、つぼみ、えりか、いつきが立っていた。
「なっ!君たちは……早く非難しろ!!」
「ここは、私たちに任せて、君たちは安全な場所へ避難したまえっ!!」
「危険だから、早く非難を!!」
守るべき対象がいることに動揺を隠せず、進ノ介とベルト、そしてG3-Xは叫んだ。
だが、彼女たちはそれを聞き入れず、ポケットから何かを取りだした。
「先輩方!プリキュアに、変身です!!」
『えぇっ!!』
はるかのその言葉に、少女たちはいっせいにうなずいた。
すると、つぼみ、えりか、いつき、ゆりの四人は淡い光を放つワンピース姿に、はるかたち、プリンセス・プリキュアの四人は淡い光を放つコルセット姿に、そして、ひめとその友人の三人は、淡い光のマントのようなものをまとった。
「「「「プリキュア!オープンマイハート!!」」」」
「「「プリキュア!くるりん、ミラーチェンジ!!」」」
「プリキュア!くるりん、スターシンフォニー!!」
「「「「プリキュア!プリンセス・エンゲージ!!」」」」
少女たちがそれぞれのアイテムを手にそう叫ぶと、その姿が徐々に変化していった。
全員の姿が変わり、少女たちはステージの上に立った。
「大地に咲く、一輪の花!キュアブロッサム!!」
「海風に揺れる、一輪の花!キュアマリン!!」
「陽の光浴びる、一輪の花!キュアサンシャイン!!」
「月光に冴える一輪の花、キュアムーンライト!!」
「世界に広がる、ビッグな愛!キュアラブリー!!」
「天空に舞う、青き風!キュアプリンセス!!」
「大地に実る、命の恵み!キュアハニー!!」
「夜空に輝く、希望の星!キュアフォーチュン!!」
「咲きほこる、花のプリンセス!キュアフローラ!!」
「澄み渡る、海のプリンセス!キュアマーメイド!!」
「煌めく星のプリンセス!キュアトゥインクル!!」
「真紅の炎のプリンセス!キュアスカーレット!!」
全員が、まるであらかじめ示し合わせたかのような配置に立つと、それぞれにポーズを決め、名乗った。
彼女たちはプリキュア。
世界が闇に包まれるとき、突如として現れる、伝説の戦士。
今ここに、仮面ライダーとプリキュア、二つの正義が会いまみえた。
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