黒死斑の魔王(ブラック・パーチャー)と共に異世界へ (ヴィヴィオ)
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1話

 

 

 

 

 30歳になって魔法使いへとクラスチェンジしたオタクでニートな俺はいきなりの心不全で死亡した。そして、異世界の伯爵家の十番目に生まれていた。能力も低く、意味の分からない能力を持つ俺は無能の烙印を押されて飼い殺しをされる毎日を送っていたようだ。

 成人を迎えて数年経ったら次男以下の俺達は他家との婚姻して力を得る事や繁栄の為に送り出された。十男である俺も例外ではなく、辺境に有る男爵領。それもそこの三女の婿養子として送られていた。本来は次女の年増と結婚する事になったのだが、そこはごねてお淑やかさとおてんばを兼ね備えた成人したばかりの三女にして貰った。そして、彼女と結婚した俺はこんな何もない辺境に押し込められたストレス解消の為に、送られた酒や薬を飲んで美少女の嫁さん、アーデルハイト・リーゼンフェルトこと、アリスを徹底的に犯した。実家の力関係も有り、彼女の両親や兄達も助けず数日に渡って楽しんで気絶するように眠りについた。

 そして起きた俺は前世の事も含めて全てを思い出していた。目の前には壊れたような虚ろな瞳をして宙に視線を彷徨わせる赤紫髪の白濁に染まった見覚え有る美少女。

 

「どうすんだよ、これ」

 

 身体をゆすっても、微かな反応しかない。完全に壊れてしまっているのかも知れない。とりあえず、身体を拭いて綺麗にして看病をする事、数分。彼女は目覚めてこちらを見るなり震えながらすり寄ってくる。そんな彼女を抱きしめて、頭や身体を撫でて落ち着くまでゆっくりと過ごしていく。

 

「……あっ、あぁ……」

「大丈夫だ。しばらくはしないからな」

 

 ほっとした感じで頷く少女の感触を楽しみながら、この世界の事を思い浮かべる。時代はよくある中世ヨーロッパのファンタジー世界。魔法を含めた神秘が満ち溢れた世界であり、人にはそれぞれギフトスキルが与えられる。俺は今まで意味の分からなかったギフトスキルが有る。そのギフトスキルはかなり特殊な物だ。俺のギフトは空想ガチャ。これは知っている空想のキャラクター本人やキャラ達が持つスキルなどの力や容姿を得られるというものだ。ガチャという仕組みを理解しないと使えない仕様となっていたので今まで使えなかった。だが、記憶が戻ったオレにはなじみがある物なので問題ない。画面を調べると設定のボタンが有ったの押してみる。すると色々と出来る事が判明した。その一つがキャラクター本人を召喚する場合、隷属させた状態で呼び出したりも出来るという事だ。やるなら隷属させておかなければかなり危険だと思われる。

 とりあえず、空想ガチャを起動してみる。すると、ガチャボックスが複数出て来た。ランダムガチャとアイテム・スキルガチャ。

 

「……?」

「俺のギフト能力だ。それより、喋れないのか?」

「……ぁ、ぁぁ……」

「そうか、悪いな」

 

 どうやら、トラウマになって喋れなくなってしまったようだ。治療も考えてアイテム・スキルガチャがいいのだろうか? チュートリアル用なのか、初回10連は無料になっている。このガチャは10連をすると一枚はSR……スーパーレアが確定となるようだ。ちなみにランクはノーマル、レア、スーパーレア、レジェンド、エクストラがあるようだ。とりあえず、引いてみよう。アイテム・スキルガチャの10連のボタンを押してガチャを回すと10個のアイテムが出現した。中を調べる。

 

 N体力回復薬・初級×3

 N魔力回復薬・初級×3

 R疾風の腕輪×1

 N魔力自動回復・初級

 Rすごい鋼の剣

 R食物の種

 SR眷属強化

 N白パン×5

 Rエロ本

 N塩×10kg

 

「残念ながら外れだな。まあ、思った通りのものが当たるなんてまずないか」

「?」

「なんでもないさ」

 

 アイテム・スキルガチャの上には1万と10万と書かれていた。これが単発と10連の値段だろう。ランダムはキャラクターも出るようだが、色々と出るようだ。

 

「ん?」

「ぁ」

 

 彼女が身体を動かした拍子にランダムガチャのボタンを押していた。幸い、10連だったのでよしとしよう。見学していると、8回目と10回目でガチャ自体が物凄く光った。

 

 Nヒノキの棒

 Rニワトリの卵

 N麦わら帽子

 R初級魔術教本

 R大根×3

 Rルビー

 SR魔力量増大・上級

 EXキャラクター

 R折り畳みベッド

 EX人物憑依(インストール・キャラクター)

 

「なんか凄いの出たな。よくやった」

 

 怒られると思って頭を抱えて震えていた彼女を撫でる。ほっとしたようで、彼女は身を預けてくる。そんな状態でEXを確認していく。

 まず、キャラクターだが、これは使用するまでわからないみたいだ。使用すると魔力を何割か消費して召喚するようだ。人物憑依(インストール・キャラクター)はキャラの力、人格などをインストールするようで、あくまでも統合されるみたいだ。そして、これらはカードで出て来ており、絵柄が書かれている。どちらも女性で、インストールの方は俺の腕の中に居る少女に非常に似ている。どちらも隷属を入れられるので、早速使う。

 

「我慢しろよ」

「ひっ!? やっ!」

 

 逃げ出そうとする彼女にインストールの方を使う。すると、彼女の中にカードが入っていき、身体から禍々しい闇が噴き出していく。裸だった彼女は黒いチャイナドレスのようなものと斑模様のスカートに変わり、髪の毛は黒いリボンに結ばれた。

 

「離しなさい。何時まで抱きしめているのよ、気持ち悪い」

「そういうなよ。夫婦だろ?」

「ふん、この変態め。身の程を弁えなさい」

「弁えてるだろ。俺はお前のマスターで夫だろ、ペスト」

 

アリスよりペストという方がしっくりと来る。いや、アリスの愛称として決めよう。

 

「ちっ、むかつくけれど逆らえないのよね」

 

 明らかに性格まで変化している。このインストールは文字通り、経験や知識まで植えつけられるのかも知れない。改めてガチャを見ると、説明が増えていた。インストールは基本的にその子だが、先に言った通り、経験や知識を得て人格が変わる場合があるようだ。ましてや、彼女の場合は問題児達が異世界から来るそうですよ? に出てくる黒死病の8000万人の死者の霊群を元にした魔王にして神霊だ。主人格は彼女でも、その影響ははっきりと受けるだろう。

 

「で、大丈夫なのか?」

「問題ないわ。あるとすれば変態に身体を好き勝手にされた事かしら?」

「悪かったって。でも、止めるつもりはないな」

「好きにすればいいわ。私に選択肢なんてないのだし。私はただ、家の資産として育てられただけの小娘だったんだから」

「そういうな。これから仲良くしていこうぜ」

「マスターが望むなら、売られた私は大人しく言う事を聞いてあげる」

「ああ。今はそれでいいや。んで、次だな」

「何が出るの?」

「わからないが、人だな」

「召喚?」

「そんな感じだ」

 

 キャラクターカードを使用すると、魔力が足りませんという表示が出た。なので、魔力量増大・上級を覚えて魔力量を増やしてから使用する。するとカードは俺の中に消えて魔法陣が出現した。その中から光が集まり、一人の少女が現れた。黒い鎧とマントを身に着け黒の聖剣と旗がついた槍を持つ金髪金眼の美少女。

 

「サーヴァント・アヴェンジャー。召喚に応じ、参上いたしました。どうしました、その歓喜に満ち溢れた顔は。さ、契約書です」

 

 現れたのは大好きなキャラクターの一人であった。

 

 

 

 

 



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2話

 

 

 

「サーヴァント・アヴェンジャー。召喚に応じ、参上いたしました。どうしました、その歓喜に満ち溢れた顔は。さ、契約書です」

 

 召喚された美しい少女の名前はジャンヌ・ダルク〔オルタ〕‎。本来の彼女は百年戦争にてフランスを救おうとするも、魔女として貶められた挙句、炎に焼かれて処刑された聖処女である。そんな彼女の闇落ちしたしたジャンヌ・オルタはジル・ド・レェが万能の願望機である聖杯に復活を願った。しかし、聖杯を以ってしてもジャンヌの復活が叶わないと知ったジルは、その力で自分が正しいと信じるジャンヌを新たに創造した。それこそが、彼女である。つまり、彼女は聖女ジャンヌ・ダルクの別側面、というわけではなく、ジル・ド・レェが聖杯によって創り出した存在なのだ。その為、ジルが抱いたフランスへの怒りと憎しみ、願望が強く投影されたものとなっている。ゆえに“竜の魔女”として蘇った彼女はワイバーンの群れと邪竜ファヴニール、そして召喚したサーヴァントの軍勢を引き連れ、フランス国王シャルル七世とピエール・コーション司教を殺害してフランス全土に恐怖をもたらした。討伐された。

 彼女は歴史を歪められた人類史の中で創り出した架空の存在。故に、英霊の座に本体は存在せず、彼女は再召喚されることは極小である。何せ、召喚した英霊を力尽くで支配し、唯一望んだジルも倒されたのだから。だが、極小であってもゼロではない。何故ならば、どう屈折した創造であろうとも、竜の魔女という概念が生まれた以上、存在そのものを消すことはできない。

 誰も自分の復活を望まないのならば、この世で絶対に自分を望まない「救国の聖女」の願望を引き摺り出し、力尽くで再生するまで。たとえ、自分が僅かの可能性によって生み出された紛う事なき贋作であろうとも、陰に潜むつもりはない。

 この世は嘘に塗れ、虚飾を良しとしている以上、贋作が真作を凌駕してはいけないと誰も言ってない。

 だから、自分が贋作であろうとも、世界にその存在を否定するなどと、誰も決めていない。

 多くの人間が“あんな最期を迎えた女なら復讐する権利がある”―――そう夢想して堕ちた魔女は殺意と憎悪を羊水として産み落とされ、贋作であっても確固たる意志を持った反英雄「復讐者」のサーヴァントとして現界した。

 それが、彼女だ。その彼女がキャラクターカードより召喚されたのだ。彼女はフェイト/グランドオーダーで登場するのだが、その中でも史上最高の攻撃力と虚弱性を持つ火力特化の彼女は戦争やモンスターの絶えないこの世界では優秀な護衛となるだろう。もちろん、美少女であるがゆえにあちら方面でもだ。

 

「どうしたのですか? まさか、返事すら出来ない愚物ですか? ああ、愚物でしたね。そのような幼子を手籠めにしているのですから」

「誰が幼子よ! これでも成人してるし結婚もしてるわよ!」

「おやおや、それにしては……小さいですね。どことは言いませんが」

「……殺す……」

 

 ペストが手を振るうと、彼女の服の袖から黒い風がジャンヌへと襲い掛かる。

 

「ふん」

 

 それを彼女が軽く旗を振るって弾き飛ばす。本来なら有り得ない光景だ。何せ、ペストの攻撃は死の恩恵を与えるという命あるものを殺すという事に関しては絶大な力を発揮するのだ。

 

「……能力が下がっている?」

「ふふふ、次はこちらですね。これは憎悪によって磨かれた我が魂の咆哮……」

「殺す気まんまんじゃねえかっ!?」

 

 いきなり宝具をぶっぱしようとするジャンヌを慌てて止めようとする――

 

「吼え立てよ、我が……え? ちょっ!? 何よこれっ!!」

 

 ――が、急に蹲り、旗のついた槍で身体をなんとか支えているジャンヌ。

 

「えっと?」

「あははははは、馬鹿じゃないの! 魔力切れよ、ばーか」

「なんですって!? そこの糞マスター! さっさと魔力を寄越しなさい! こいつを殺せないじゃない!」

「はっ、やれるもんなら殺ってみなさい!」

 

 バチバチと火花が散りそう感じで睨みあう二人。しかし、魔力供給か。ならば、やる事は一つだな。

 

「いいぞ、魔力を供給してやる」

「そうよ、さっさと……ちょっと、なんで近付いてきてるの?」

 

 ジャンヌを抱き上げてベッドに寝かせる。ペストも何をしようとしているのか、ニヤニヤと笑いながら服を剥いでいく。

 

「ちょっ!? やめなさいっ! 私は聖処女なのよっ!」

「魔力が欲しいんだろ? 残念ながらそこまで魔力がないんだよ。だから、こっちでたっぷりとくれてやるよ」

 

 実際、原作のフェイトでも主人公であるシロウがアルトリアに魔力を供給する為にやる事をやっている。魔力量増大・上級を所持していてもジャンヌを現界させていられるのが限度だ。そもそも、このスキルは元の魔力量を10倍にするスキルだ。元が低い俺ではたかが知れている。

 

「ふふふふ、私だけされるのは不公平よね」

「そんなの知らな……」

「コルネリウスも私より、胸の大きな貴女の方が好みでしょう。たっぷりと可愛がってもらいなさい」

 

 胸の事とか、無茶苦茶恨みに思っているようだ。憎しみを込めて揉みしだいている。

 

「ほら、さっさとしなさい」

「まあ、そうだな。じゃあ、やるか。魔力が無くなれば消えるかも知れないしな」

「まっ、まっ……待ってっ!?」

 

 迫る俺に余裕が無いのか必死になっているジャンヌ。

 

「わかったわ。するのはいいの。消えたくないし、受け入れるわ。でも、せめて二人っきりでしましょう。ね?」

「駄目よ。アンタがちゃんとその無駄な脂肪で奉仕する所を見せて貰うんだから」

「わかった。なら、三人ですればいいんだな」

「ちょっ!?」

「……そうね、それがいいわ」

 

 急いで逃げようとするペストをジャンヌが腕を掴んで引きずり寄せて抱きしめて拘束する。

 

「離せっ、このっ!」

「ふふふ、一人だけ逃がすなんてする訳ないじゃない」

「馬鹿なのっ!? アタシが逃げればアンタは二人だけで……」

「よく考えたら、贋作である私は別にレイプされようが必要とされるならいいのよ。でもね、一人で堕ちるのは寂しいでしょ?」

「こいつ、最悪ね!」

「そう、私は災厄の魔女だから当然ね」

「まあ、裸の付き合いも親睦を深めるにはいいだろう。二人纏めて可愛がってやる。妻である二人には仲良くして欲しいからな」

「あら、私も妻になるの?」

「そうだ」

「結婚して直ぐに浮気とか、最低ね」

「別に愛ある結婚でもないだろ。俺はペストの事が好きだが」

「ふん。それもそうね。アタシは売られたんだから、好きにしなさい」

 

 資金援助や伯爵家との縁を繋ぐ為に嫁に差し出されたんだから、ペストが俺を愛しているなんて事は有り得ない。それはこれから紡いでいくものだ。

 

「マスター、先ずは……」

「キスからだろ」

 

 ジャンヌと口付けを交わし、そのまま二人への魔力供給を開始する。しかし、ジャンヌが簡単に俺を受け入れる辺り、隷属だけでは無く好意を抱くようになっているのかも知れないな。

 

 

 

 

 

 

 目覚めた後、布で身体を拭いていく。二人も目覚めたので軽くおはようのキスをする。スキンシップは大切だと思うからな。とりあえず、ベッドから出て窓を開けて換気をする。その間に二人はさっさと服を着てしまった。俺も着替えていく。それが終われば椅子やベッドに座る。

 

「さて、これからどうするかだ」

「この家を乗っ取るのよ」

「あっさりと言ったわね。家族じゃないの?」

「別に売られたのだし、どうでもいいわ」

「まあ、乗っ取るかは別としても、どうせなら発展させないといけないしな。ガチャを回すのに金がかかる」

「そう」

 

 ランダムガチャは魔晶石一個で一回となっていた。この魔晶石というのは膨大な魔力を蓄積された物で、モンスターが体内に持つ魔石を結晶化させた物だ。金額すると小さな奴でも100万はする。つまり、ガチャをするにはお金を溜めて魔晶石を買うか、モンスターを狩って魔石を集めて魔晶石にするしかない。極稀にモンスターやダンジョンの宝箱から魔晶石が手に入る場合もある。なので、モンスターを積極的に狩る方がいい。

 

「私としてはどうでもいいので、マスターの好きになさってください」

「そうか。ペストは乗っ取りたいのか?」

「ここが発展して住民が安全に過ごせるなら別に構わないわ」

「そんなに民が大事なのですか?」

「そうよ。彼らは友なのよ」

「あらあら」

「なによ?」

「べっつに~」

「ちっ」

「喧嘩するな。それは禁止する」

「わかったわよ」

「ええ、仕方ありませんね」

 

 とりあえず、発展させる為にはやらなければいけない事が多いな。

 

「リーゼンフェルト領の生産はライ麦が主流よ」

「それだけだと不味いな」

「どういう事?」

「何れ小麦に喰われる事になる」

「それは……」

 

 嫌そうな顔をするペスト。彼女もペストとしてインストールされて知識があるのだろう。産業革命が起これば一発だ。いや、そもそも魔術があるのだから既に市場は縮小傾向に有るのかも知れない。

 

「なら、別の産業を考えてはどうですか? ライ麦はとりあえず食べれたらいいでしょう」

「まあ、戦争もあるだろうし食料はいくらあってもいいし、放置しておこう。それよりもモンスターを狩りたい。何処か近場にないか?」

「あるわよ。ここが辺境と呼ばれているのは魔の領域が存在するからよ」

 

 魔の領域はモンスター達の住処であり、強力なモンスターが存在している場所だ。

 

「西に魔の森が有り、南には山脈が有るわ。山脈の上の方にワイバーンとかが出るからとても危険ね。森には動物型を初めとしたモンスターが蠢いているわ。こちらは街を防衛しながら開拓して生存圏を広げていっているの。まあ、それも森から出て来るモンスターで思うようには言っていないのだけれど」

「モンスターを狩れば金になるか?」

「それはもちろん。その為にハンターが居るのだし」

「ハンターか」

 

 ハンターは冒険者とかと一緒だ。だが、問題は結構な額が中間マージンとして取られる上に辺境であるここにはそんなものが無い。普通はもっと北の都会やダンジョンがある街に作られている。

 

「出来たら狩りたいわ。害獣駆除と同時に食料確保も出来るのだから」

「そうだな。食事は質素な物しか出ないし、食料の確保は大事だ」

「なら、ワイバーンが出るという山脈にいきませんか? ワイバーンなら操る事ができます」

「それはそうだが、他にも強いのが居るんだよな?」

「もちろん」

「なら、山脈に行く前に森でレベル上げだな」

「そうね。それがいいわ」

「まあ、いいわ。どちらにしろ、いたぶれる獲物が居るのだし」

「じゃあ、飯を食べたら向かうとするか」

「なら、私は消えているわ」

 

 そう言って、ジャンヌが霊体となって空間に溶けるようにして消えていった。

 

「消えたけれど?」

「直ぐ近くに居るさ」

「便利ね」

「そうだな」

 

 俺はペストと共に食堂へと移動する。もっとも、食堂といっても辺境にある男爵家の家ではリビングみたいな物だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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3話

 

 

 

 リビングに出ると既に昼時だからか、ペストの家族が揃っていた。父親の名前はベルノルト・リーゼンフェルト。母親の名前はヘレナ・リーゼンフェルト。兄の名前はドミニク・リーゼンフェルト。姉のユリアーネ・リーゼンフェルト。その四人が食事をしていた。

 

「おはようございます」

「ああ、おはよう」

 

 俺の挨拶に驚く父親。まあ、前の俺はかなり傲慢な嫌な奴で挨拶を自分からする事などなかっただろうし、数日間も部屋に引きこもって娘とやっていたような奴だしな。

 ペストは両親を無視してそのままスープとパンを取って来る。席が四つしかないので、さっさと座る。

 

「こっちに来い」

「わかったわ」

 

 取って来てくれたペストを呼び寄せて膝の上に乗せる。ペストは相変わらずの無表情だが、硬いパンを千切ってスープにつけて食べ始める。俺も一緒になって食べていく。

 

「仲良くできているようで、なによりだ」

 

 ベルノルトが感情の無いような声でそういってくる。兄のドミニクはこちらを睨むように見て来ている。彼からしたらさっさと出ていってほしいのだろう。後継者として安泰だったのが、妹が婿養子を取って来たのだから。姉であるユリアーネは妹が結婚相手を取ったと思っているのだろう。

 

「それで、これからどうするのだね? こちらとしてもいつまでも養っておく余裕はないのだが……」

 

 居たければお金を支払えという事だろう。シュタインフェルト伯爵家から貰って来た持参金はまだ一銭も渡していないからな。持参金は八千万もあるが、シュタインフェルトの資金力からしたら、これくらいで勢力を広げられるなら痛手でもない。逆にリーゼンフェルトからすれば喉から手が出る程の大金だ。それと持参金以外にもライ麦の売買契約をシュタインフェルトと結んでいる。伯爵領は広くてその分人も多いので安い食料はそこそこ売れるのだ。この時代、領同市の販売はその地の領主の許可が有り、税金も領主が自由に掛ける事が出来るので売買契約で税金を少なくして貰えれば結構儲かる。シュタインフェルトからしても戦争になった場合、一番必要なのは食料なので大量生産されていて、安く手に入るライ麦は使い道がある。それを役立たずの俺で手に入れられるなら八千万くらい構わないのだろう。

 

「そうですね。先ずは領地を別けて頂きましょう」

「ふざけるなっ!」

「落ち着きなさい、ドミニク。別けるのは構わないが、場所による」

『五月蠅いわね。殺してしまいましょうか?』

『止めておけ』

『残念ね』

 

 ジャンヌを止めつつ、ペストを抱きしめる事で兄達を睨み付ける彼女を抑える。

 

「ええ、もちろんです。こちらが欲しいのは魔の領域である森と山です」

「あそこか」

「出て来るモンスターの防衛から処理までこちらで引き受けましょう。ですから、その代価として二つが欲しいのです」

 

 リーゼンフェルト家にとってモンスターから畑や街を守る為の常備軍は痛い出費だろう。それをこちらで引き受けると言っているのだ。もっとも、これはジャンヌとペストが居なければ出来ない案だ。弱体化していても反英雄であるジャンヌ・オルタと魔王であるペストが居るのだから。しかし、よく考えたらどちらも悪役だな!

 

「それは大丈夫なのか?」

「持ってきた資金で人を雇いますし、モンスターから出た素材を使って品物も作ります。それを売れば資金が出来るでしょう。もっとも、監視くらいはしばらくこのままでお願いしますが」

「いいだろう。有ってないような場所だ。しかし、本当に大丈夫なのか?」

「ええ、問題ありません。もちろん、準備期間と人は多少頂きますが」

「わかった。それでは契約書を書こう」

「はい」

 

 契約書を書いて土地を別けて貰った。これで色々と出来るので、午後から二人と一人で外に出て食料を買った後で魔の領域を目指す。

 

 

 町から出て少しすると、隣を歩いているペストがこちらを振り返ってくる。

 

「それで、どういうつもりなの?」

「ペストの望む通り、あのまま領地ごと全てを貰ったら面倒じゃないか。それならペストの大事な人達だけ貰っていけばいいだろ」

「戦力が整ってから丸ごと頂くのですね」

「そうだ」

 

 隣に現れたジャンヌの言葉に答える。

 

「その時、あの塵共の顔が楽しみね」

「わかったわ。それで、これからどうするの?」

「先ずは住処の確保だ。森を切り開いて家を建てる」

「森を切り開くとなると、モンスターが襲い掛かって来るわね」

「望むところじゃないか。そいつらを駆逐して魔石や魔晶石を手に入れてガチャを回す」

「わかったわ。それじゃあ、さっさと行きましょう」

「ですが、その前にお客さんですね」

「みたいね」

「客か?」

「そう、招かれざる客よ」

 

 そう二人が言うと、俺達を追い越した馬車が前方で止まって、そこからごろつきのような連中が出てきた。手には手入れされていないような剣や短剣を持って居る。背後からは走ってこちらにやって来た奴等も居る。

 

「賊か」

「金と女を置いていきな」

「大量の金を持っているのはわかってんだ」

 

 確かに八千万もの金がマジックアイテムの鞄に入っている。しかし、それを知っているのは極限られた者達だけだ。それはつまり、リーゼンフェルト家の誰かの仕業という事になる。

 

「殺さずに押さえろ。情報を聞き出したい」

「そうね。まあ、どうせ兄か姉でしょうけれど」

「ふふふ、拷問ね。とても楽しいわ」

「ごちゃごちゃ喋ってんじゃ……え?」

 

 男達の身体を地面から生えた幻影の黒槍が貫いて串刺しにしていた。即死するような致命傷は無く、両手両足が貫かれているだけだ。

 

「ばっ、化け物めっ!」

「そうよ、私は化け物よ。それがどうしたのですか?」

 

 背後からジャンヌに斬りかかろうとした男達は、ジャンヌが振り返って片手を振るうだけで煉獄の業火が呼び出され、その身体と遠くに至るまで地面を焼き尽くしていた。

 

「あら、弱すぎよ」

「ていうか、やりすぎよ。情報が貰えないじゃない」

「まあ、よいではないですか。少しは残りましたし」

「ひっ!?」

「ジャンヌ、好きに一人を拷問しろ」

「いいの!?」

「ああ、たっぷりと苦しめてから殺せ。俺の女を奪おうとしたんだ。それ相応の報いは受けて貰おう。残りにはそれから聞けば素直に答えるだろう」

「見せしめね。わかったーーわかりました」

 

 爪を剥がされ、足先からゆっくりと焼かれていく男は悲鳴を上げ続けた。それを楽しそうに眺めるジャンヌと無表情で眺めるペスト。俺はペストを抱きしめて柔らかい頬っぺたをぷにぷにして遊ぶ。

 

「鬱陶しい」

「仕方ない。撫でるだけにしておこう」

「同じよ、変態」

 

 拷問の途中であっさりと吐いた男達が言うには男に依頼されたそうだ。その特徴を聞く限り、ドミニクだった。

 

「我が兄ながら、馬鹿すぎるでしょ」

「アホでもありますね。人を挟まずに自分で依頼とか……ないわぁ~」

「全くだな。まあ、こいつらをどうするか考えるか」

「全部貰うわ」

「モンスター共を誘き寄せる餌にしましょう」

「ひっ!?」

「喋ったら助けてくれるんじゃ!」

「「「そんな約束はしていない」」」

 

 俺達の言葉ははもった。実際、そんな約束はしていない。だが、殺すだけでは勿体ないし、働いて貰おう。

 

「目的地まではどれくらいある?」

「走れば後三時間くらいね」

 

 だとすれば歩けば五時間か。

 

「ジャンヌって単独行動って出来るか?」

「距離が余程離れていない限りは出来るわ」

「何かあれば困るし、馬車に繋いで走らせるか。ペスト、悪いが先に空を飛んでいって偵察して来てくれ」

「私って飛べるの?」

「飛べるはずだ」

「ふむ……」

 

 可愛らしく、その場で何度かジャンプしては地面に降りるペスト。ニヤニヤ見ていると怒られそうだ。いや、こちらを顔を赤くしながら睨んできた。ジャンヌはニヤニヤしてからかう為に口を開くが、その次の瞬間には宙に浮きだした。

 

「行って来るわ」

「逃げたわね」

「逃げたな」

 

 ペストが高速で飛翔していく。俺とジャンヌは男達を縛ってから馬車を動かしていく。俺は運転できないので賊の一人に動かさせ、後ろでジャンヌを配置し、脅しながら運転させた。残りの賊は馬車に繋いで走らせる。

 

「さて、今の間にスキルを覚えるか」

 

 手に入れている残りのスキルは眷属強化だけだ。これはジャンヌとペストを指定出来るようなので覚えておく。これで能力が1.5倍になる。後は使えそうなのは移動速度が上がる疾風の腕輪と凄い鋼の剣。後は初級魔術教本、折り畳みベッドか。それ以外は食料だったり、回復アイテムだったりするので後回しだ。凄い鋼の剣を装備する。これは俺が使う。

 

「ジャンヌ」

「なによ……なんですか?」

「これ、やるよ」

「マジックアイテムですね。高価な物だけれど、いいの?」

「ああ。移動速度が上がるから、それを使って俺をしっかりと守ってくれ」

「ええ、任せなさい。それと、その、ね……」

 

 顔を赤らめて言いずらそうにしているジャンヌに何がしたいのか、理解した俺は彼女に口づけを行って唾液を交換して飲ませていく。粘膜摂取による魔力の補充を行うのだ。回りからの視線が痛いが、気にしない。そのままジャンヌの身体を弄って楽しみながら進んでいく。

 

 

 

 

 

 



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4話

 

 

 

 

 ペスト(アーデルハイト・リーゼンフェルト)

 

 

 

 

 命令通りに空を飛んで森を目指す。前の自分では信じられない事だけれど、実際に空を飛んでいる。それに私は彼女であり、彼女は私である事が理解出来る。でも、本当はジャンヌみたいな贋作である。でも、偽者が本物を超える事だってあるのだから頑張るだけ。それに彼女の境遇は私と同じだから自分だと信じ込める。それは弱い私と決別出来るという事にほかならない。

 

「私は、アタシはペスト。黒死斑の魔王(ブラック・パーチャー)。だから、空だって飛べる」

 

 空を自由自在に駆けて魔の領域である森へと向かう。身に纏うのは斑模様のワンピースだけれど、風圧すら気にならずどんどん速度が上がっていく。気が付けば森の縁を超えて内部まで飛んでいた。慌てて止まると、遠くの方に大きな水の塊が見えた。その先はなんだか線のようになっていて、太陽が輝いている。

 

「むかつく太陽ね」

 

 見てるだけでイライラしてくる。腕を組みながら耐えていると、身体から勝手に黒い霧みたいなのが出てくる。

 

「なにこれ?」

 

 不思議がっていると、森から巨大な鳥がこちらに高速で突っ込んできた。

 

「っ!?」

 

 慌てて回避すると、相手も通り過ぎてから軌道を変えて再度突撃してくる。

 

「邪魔よ」

 

 手を振るうだけで、黒い霧が黒い風となって巨大な鳥に襲い掛かり、その身体を真っ二つに切断してしまった。

 

「これ、凄い。これが、私達、8000万の力……」

 

 両手を上げて袖で口元を隠す。両手は大きな袖の中に隠れて見えない。この袖の中から黒い霧や黒い風を出せるみたいで、適当に地面に放つとそれだけで地面に裂け目が出来てしまった。

 

「ん?」

 

 私の攻撃を受けてか、森から沢山の鳥が飛び上がって来る。それらは一斉に私に向かって突撃してくる。

 

「性能を試す糧となりなさい」

 

 腕を振るい、死の恩恵を黒い風の無数の刃へと変化させてばら撒く。それだけで掠った鳥達は墜落していく。中には魔法を放ってくる者も居て私に雷や炎が迫って来る。

 

「ふふふ、何これ。凄く面白いわ」

 

 黒い霧を操作して攻撃を防ぐ。こちらの視界が外れた瞬間、死角へと回っていた鳥が突撃してくる。本来は速いのかも知れないけれど、スイッチの入った私には遅く見える。なので、横にずれて避けながら蹴りを放つ。すると鳥は吹き飛んで地面に激突し、クレーターを作り出した。

 

「害虫駆除は大事よね。誰が支配者か、しっかりと教育してあげるわ」

 

 私の風は自由自在に思い描くように形を変えていく。全方位から協力して突撃してくる鳥達に対しては、自分の回りを黒い風の球体で覆って塞ぐ。それから範囲を広げて纏めて殲滅する。

 

「? 力が増えた?」

 

 戦っているうちにどんどん威力が増しているのに気付いた。使えば使うほど、力は私の身体に馴染んでいく。

 

「まあ、気にしなくていいわね」

 

 踊るように敵を殺して回る。次第に翼の生えた人型のモンスター、ハーピィも動き出した。彼らは互いに身体を抱きしめながら私を見てガタガタと震えている。地上を見れば、私が殺したモンスターを別のモンスターが咥えて逃げようとしている。

 

「お前達」

「ぴぃっ!?」

「タスケテ、タスケテ……」

「殺されたくなければ、あいつらから私が殺したモンスターを取り返しなさい。そうしたら助けてあげる」

「ワカッタッ!」

「トリカエス!」

 

 ハーピィ達が一斉に森へと降下して死体を回収して来てくれる。ハーピィ達が手に負えそうに無いモンスターは私が殺せばいい。しかし、鶏肉の確保は出来たから、今夜は御馳走になりそうね。

 

 

 

 

 

 

 馬車で進む事、二時間半。無事に魔の領域であるリーゼンフェルトの森へと到着した。本来はもっと早くに着けたが……お荷物が居るので仕方がない。

 

「さて、ペストは……」

「あそこね」

 

 ジャンヌが空を指さす。その先では空を飛ぶペストがハーピィ達に指示を出してモンスターの死骸を運ばせていた。

 

「全く、この私を差し置いて随分と派手にやってくれたようですね」

「みたいだな」

 

 森の縁へと到着し、馬車から降りると盗賊共は恐怖に震えていた。それだけ、大量のモンスターの死骸が積み上げられていたのだ。

 

「ようやく来たのね」

「これは?」

「……少し身体の調子を確かめていただけよ」

 

 そっぽを向いて答えるペスト。

 

「それだけじゃないですよね」

「大方、速度を出し過ぎて森の中にでも入ったんだろ」

「うっ、うるさいっ!」

「図星か」

「図星ね」

「ふん。そんな事よりも仕分けを手伝いなさい」

「この鳥もどきはどうするのですか?」

「配下にしたわ。便利でしょう?」

「そうだな」

 

 とりあえず、仕分けと解体を行うか。

 

「お前達、今から縄を外してやるが、逃げようと思うじゃないぞ」

「へっ、へいっ!」

「ああ、わかってるよっ!」

「じゃあ、解体して貰う。見張りはハーピィ達とジャンヌが頼む」

「また私ですか?」

「ああ。ペストには木を切り倒して貰いたいからな。簡単でもいいからさっさと家を作らないと野宿になっちまう」

「仕方ありませんね」

「わかったわ」

 

 まあ、帰ってもいいんだが……ペスト達がドミニクになにをするかわからないからな。それなら、ここでさっさと拠点を作った方がいい。

 

「じゃ、行くぞ」

「ええ」

 

 ペストと共に森へと入って木を倒してスペースを作って貰う。

 

「切り倒すのは簡単だけれど、運ぶのが大変ね。乗せて運ぶのって今一なのよ」

「それなら風で作った手をイメージしたり、すればいいんじゃないか?」

「ありがとう。やってみる」

 

 次々と斬られた丸太が持ち運ばれていく。

 

「ついでに切り株も邪魔だから退けてくれ」

「人使いが荒いわね」

「それは仕方ないだろう」

 

 生憎、俺にはまだ武器も力も無い。というか、8千万あるんだし、ガチャを回して能力を増やすか。家形のアイテムが当たれば儲けものだしな。

 

 

 

 

 

 

 

 



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5話

 

 さて、ガチャを回そう。回すのはアイテム・スキルガチャだ。1回1万で10連続で100万。ただし、10万はSR以上が一つ確定となる。とりあえず、10回回そう。

 空想ガチャを起動して10連のボタンを押す。

 

 

 N胡椒5kg

 N毒消し

 SR鑑定・上級

 N体力回復薬・初級×3

 R魔力回復薬・中級

 N体力回復薬・初級×3

 SR魔術回路

 Rカレールー

 Rカップ麺詰め合わせ

 SR盗賊王の鍵

 

 

 これ、ほしいのじゃねえ。魔術回路や鑑定の上級は使えるだろう。盗賊王の鍵? 危険すぎるので放置。とりあえずもう一回押す。

 

 N飴×5

 Nクリームパン

 N牛乳パック

 N普通の剣

 N剣術

 N飴×5

 R低級魔石

 SR無限収納鞄

 SR対魔力A

 SRウルティマ・へカートⅡ

 

 無限収納鞄は便利だ。対魔力A? 早速習得しておこう。そして、アンチマテリアルライフルですか。シノンいねえよ! 次だ次!

 

 Nカツラ

 Nエロ本

 N素麺500g

 Rカセットコンロ(コンロ付き)

 N腕時計

 SR魔術回路

 N鉄の盾

 N穴あきコ○ドーム

 Rギャルのパン○ィ

 SR陣地作成B

 

 魔術回路が被った。試しに2つ使ってみると全身に激痛が襲って来た。

 

「ちょっと、大丈夫?」

「あ、ああ……なんとか」

 

 身体の中に魔術回路が200本出来ていた。1個につき100増加のようだ。これは有り難い。陣地作成も今は十分に使える。鑑定上級も合わせて習得しておく。

 

「さて、次だ」

「ちょっと、何処までやる気なのよ」

「もち、EXを引くまでだ」

「……後7回ね。これから色々と使うんだから」

「くっ、仕方あるまい」

 

 それから7回やってみた。SRが25枚。EXは無し。内訳は魔術回路8枚、豪華キッチンセット、持ち運びログハウス、露天風呂、魔導冷蔵庫、魔術教本・上級、金塊×6、対魔力A三枚、騎乗A2枚、魔力量増大・上級3枚、雷撃魔術・上級、陸上装甲艦タルタロス、経験分配。だった。色々と突っ込みが有る。陸上装甲艦タルタロスってなんだよ! いや、テイルズで出て来た水陸両用の軍艦だけどさ。使えねえよ! それ以外はまあ、使えそうだ。とりあえず、対魔力Aは二枚を使ってジャンヌとペストにも覚えさせよう。騎乗は俺とジャンヌだ。ペストは飛べるしいらんだろう。雷撃魔術は俺が覚えて、魔力量増大・上級も全部俺に使って強化する。経験値分配は俺が覚えて二人からの経験値を得られるようにする。魔術回路も全部使って凛と同じ1000本に増やす。

 

「ログハウスを手に入れたからこれを使おう」

「いいけど、100万も支払った分は取れたの?」

「もちろんだ。まあ、EXが出なかったから負けたといえるのだが……」

「まあ、滅多に出ないでしょうね」

 

 ログハウスを召喚し、オプションとして露天風呂、豪華キッチンセット、大型魔導冷蔵庫などを設置しておく。設定が完了し、召喚する。出現したログハウスはかなり大きく、一般家庭が住むには広めの一軒家くらいはある。

 

「ここに住むのね」

「そうだ。ベッドもあるはずだし、SRだけあって結界つきだから便利だ」

「それは助かるわ」

「露天風呂もあるしな」

「露天風呂って何?」

「知らないのか。露天風呂ってのはだな……」

 

 ペストに説明しながら中を確認していく。それから、男達は縛り上げて拘束して外に繋ぐ。その後、露天風呂に3人で入った。

 

 

 

 

 



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6話

出したいキャラは言ってくれれば考えます。


 

 

 

 

 露天風呂へとやって来た。正確にはその脱衣所だ。メンバーは俺、ペスト、ジャンヌとフルメンバーである。

 

「さて、ここで服を脱いで貰う」

「こんな所でするの?」

「するかも知れませんが、別の事です。ほら、さっさと脱ぎなさい」

「ちょっ、離しなさいっ!」

 

 ペストがジャンヌに服を剥ぎ取られ、素っ裸にされる。恥ずかしいのか、顔を赤らめながら両手を使って大事な所を隠す。

 

「隠すような身体ですか」

「死にたいようね」

「貧相な身体だから隠すのでしょう? 自身があるのならば曝け出してみなさい。どうせ、ここには全てを見られた夫であるマスターと私しか居ないのですから」

「っ!? わかったわよ!」

「ちょろい」

「何か言った!?」

「いえ、別に」

 

 そんな会話がされている間に俺も脱いで、改めて二人の綺麗な裸体を鑑賞しておく。成人しているが、成長が遅くて12歳くらいのペストと17歳か18歳くらいのジャンヌの身体はとても綺麗だ。

 

「マスター?」

「ああ、なんでもない。それよりも風を引いてしまうからさっさと服を仕舞って中に入るぞ」

「待ちなさい。脱ぎ散らかさずに綺麗に畳むのよ」

「面倒ね」

「駄目よ。炊事洗濯は女の役目よ」

「それ、貴族のお姫様が言う事じゃないわよ」

「家は貧乏だから仕方ないわ」

「世知辛いわね」

「全くだな」

 

 伯爵家ではメイドや料理人が全てやってくれたが、ここではペストがやってくれるようだ。ペストは素早く俺の服とジャンヌの服も含めて皺を伸ばして綺麗に畳んでくれる。慣れているというか、プロ並みだ。というか、ペストは原作の「問題児が異世界から来るそうですよ?」でメイドをしていたのだから、その知識とか経験も得ているのかも知れないな。今度メイド服を着せてみるのもいいかも知れない。

 

「では、改めてこっちだ」

 

 扉を開いて中に入ると石畳の地面が見え、遠くには竹藪が見える。風呂になっている部分の一部は屋根があり、雨を防げるようになっている。明かりとして灯篭や鹿威しなども設置された日本風の露天風呂だった。更に滝から源泉が流れて来ているようで、溢れたお湯は何処かに消えている。

 

「露天風呂ってこれ?」

「ああ。この中に入るんだ」

「大丈夫なの?」

「ああ、気持ちいいぞ。というか、普段身体を洗うのはどうしているんだ?」

「お湯で濡らした布で身体を拭くだけよ」

「後は水浴びくらいですね。湯を使う事自体が贅沢なのです」

「まあ、この時代からしたらそうだな。先ず、入り方を説明する。この桶にお湯を掬って身体に掛ける」

 

 お湯は少し熱めのようだが、これは風とかで冷やされるので良い感じになるだろう。

 

「で、次にこの設置されているスポンジにボディーソープをつける。これは身体の汚れを取る薬みたいなものだ。口に入れたり、目に入れたりしないように」

 

 初期だからか、タオルにスポンジ。ボディーソープ、シャンプー、コンディショナーが設置されている。脱衣所にはバスタオルも有ったのでサービスだろう。まあ、無くなると不味いのでガチャで補充しないといけなくなるだろうが。

 

「こうやって身体を洗っていくんだ。ただ、自分じゃ届かないから、他人に洗って貰うんだ。二人でやってくれ」

「それがルールなら仕方ないわね」

「そうですね」

 

 嘘はついていない。本当の事を言っていないだけだ。だが、そのおかげで美少女二人に身体を隅々まで洗って貰うという幸せな展開になった。まあ、何か違うとバレているかも知れないがな。なんせ、ペストの知識があるならノーネームの風呂には入ってるだろうしな。

 

「次は頭だ。頭はシャンプーを使ってだな……」

 

 説明を終えて、ペストから洗っていく。染み一つ無い綺麗な幼い肌はぷにぷにで大変気持ちがいい。

 

「くすぐったいわよっ」

「我慢しろ」

「それにしても、汚いですね」

「汚くないわよ!」

「まあ、仕方ないだろ。風呂に入っていなかったらな」

 

 白い泡が変色したりしているので、何度も洗って白に変える。頭もそうで徹底的に綺麗に洗いまくる。頭もしっかりと綺麗にしたらぐったりしだしたので、床にバスタオルを引いて寝かせてジャンヌを洗っていく。

 

「奉仕させているみたいでいいですね。それに実際に気持ちいいですし。褒めて差し上げます」

「それはどうも」

「って、なぜ執拗にそこを揉むのですか……」

「そんなの決まってんだろ」

「はぁ……まあ、魔力供給は大事ね」

「そうそう」

 

 ジャンヌを綺麗にした後、二人をもう一度汚してから綺麗に洗って一緒に湯船に浸かる。ジャンヌを右に座らせて肩を掴んで抱き寄せ、ペストを膝の上に乗せる。ペストには少し深いだろうし、これでいい。

 

「気持ちいいけれど、これは恥ずかしいわ」

「俺はいい気分だぞ」

「でしょうね」

「しかし、これはこれでいいですね。贅沢極まりないですし」

「まあ、張った水に火の魔術でもぶちこめば簡単に出来そうだがな」

「それもそうですね」

「魔術を使う事自体が勿体ないわよ。一体、魔術師を雇うのにいくらすると……」

「焼いた石で代用できるがな」

「どちらにしろ問題は水でしょうけれどね」

「まあ、そうだな。これは心配ないだろうし気にしなくていいだろう」

「これが毎日入れるなら幸せね」

「そうね」

「というか、毎日入って貰うからな。肌の手入れはしっかりとして貰わないと」

 

 二人の身体を撫でて感触を楽しみながら言うと呆れて来た。だが、この気持ちの良い身体に止められるはずもなく、そのまま三人で堪能する。

 

「そうだ。やらなければならない事があった」

「なに?」

「なんですか?」

「ガチャだ!」

「はぁ~あれだけ引いたのよ?」

「風呂に入りながら引くといいのがでるというジンクスがあってだな」

「いいじゃないですか、一度だけですよ」

「ちょっと、一回一万もするのよ」

「私達も引けばいいのです」

「そうだな。一人一回10連を回そう」

「聞いてないし」

「ペスト、頼むよ」

「仕方ないわね。一人一回だけよ。10連は却下よ」

「ちっ」

 

 空想ガチャを起動すると、拠点会得記念ガチャというのが有った。1回10万で10連で100万だ。100万の方はキャラクターかインストール・キャラクターが確定みたいだ。当たるのは生産系列のアイテム、スキル、キャラクターが出やすくなっているようだ。

 

「ペスト、これは引かないと」

「駄目よ。一回だけ」

「ちっ」

「えいっ」

「ちょっ!?」

「ジャンヌっ!?」

「ふふ」

 

 ジャンヌが10連のボタンを勝手に押しやがった。ガチャが始まり、10枚が排出されてくる。Nが3枚、Rが4枚、SRが2枚、Lが一枚だった。Lはレジェンドだ。Nはポーションとシャンプーセット、醤油だった。R錬金術書・初級、低級魔石、紙片、牢屋だった。SRはリスキーダイス、魔結晶×10。Lはキャラクター・黒髭。うん、なんだ。

 

「売却ってできるし、これでいいな」

「これ、キャラクターよね?」

「そうですが……」

「こいつ、ロリコンの変態なんだよね」

「あっ、要らないわね」

「間に合ってるから廃棄ね。売りましょう」

 

 売却ボタンも有ったので売却する。なんと、魔結晶20個だった。やったね!

 

「さて、ガチャはこれで終わりね」

「まだ引きたいのだけど……」

「いや、これからが始まりだ」

「お金を無駄にするのは駄目よ?」

「いや、無駄にはしない。なんせ、攻略アイテムが手に入ったからな」

 

 俺は立ち上がる。

 

「ちょっと、急に立ち上がらないでよ!」

「悪い悪い」

 

 湯船に沈みそうになったペストをジャンヌが抱えて止めてくれていたので、俺は受け取ってお姫様抱っこで脱衣所まで運んでいく。

 

「まだ話は……」

「後で説明してやるよ」

 

 着替えてから外に出て、繋がれている男達の下へとやって来た。

 

「おい、頼むから解放してくれよ!」

「家には腹を空かした妹たちが待ってんだ!」

「俺は母親が……」

「いいだろう、解放してやる。ただし、お前達にコイツを五回振って貰ってからだ」

 

 リスキーダイスを実体化させ、一人に渡す。

 

「こいつで大吉を降ったら、このボタンを押して貰う。それを五回繰り返したら解放してやる」

「マジか!」

「ああ、マジだ。食料も渡してやるから頑張れよ」

「よし、俺がやるぞ!」

「いや、俺だ!」

「順番だ。順番」

 

 俺は順番に男達を並ばせていく。

 

「うわぁ、悪い顔してるわね」

「素敵な顔じゃない。これからどうなるか楽しみね」

 

 ペストとジャンヌは少し離れて話しているが、気にせずに男にダイスを渡す。

 

「さあ、振れ」

「おう!」

 

 男が20面体ダイスを振るう。出目は大吉だった。

 

「では、ボタンを押してくれ」

「わかった」

 

 男がボタンを押すと空想ガチャが動き、虹色に光り輝くEXと書かれたアイテムが出て来た。内容は人物憑依(インストール・キャラクター)だ。※【()】の《》部分は、<>のキーを押して変換したものが正しいのでお気を付け下さい。

 

「じゃあ、もう一回だ」

「おう!」

 

 今度も大吉だ。そもそも、このダイスは大吉と大凶しかなくて大吉が19面に描かれている。大凶は1面だけだ。次はEXで槍が出て来た。その次は何かの石がLで出た。その次は対魔力EX。

 

「次で最後だな」

「よし、行くぞ!」

 

 男が降った出目は黒い文字で大凶。

 

「ぐっ、がぁああああああああああああああぁぁぁぁぁっ!?」

 

 大凶を出した瞬間、男が苦しみだして胸を押さえる。そして、ボンっという音ともに破裂する音が聞こえ、口から大量の血を吐いて倒れた。

 

「これが大凶ですね」

「今までの大吉分の不幸が一気に来るのね」

「そうだ。大凶を出したら待っているのは確実な死だ」

「ひっ!?」

「いやだっ、いやだっ!」

「安心しろ。たった五回だ。ほら、次はお前だ」

「たっ、頼むっ、助けてくれっ!?」

「助けてやってるだろ? 俺達を襲った時に死んでたはずの命だ。それを生かしておいてやってるんだ。さらに五回振ってくれれば助かるんだぞ」

「そ、それは……」

「二十分の一なんて滅多にでねえよ。そいつは運が悪かっただけだ。お前は大丈夫だ」

「そ、そうだな……よし、やってやる!」

 

 そして、男がリスキーダイスを振る。結果はエリクサー、聖剣の鞘、深淵の魔導書、精神干渉無効、魔槍だった。

 

「うぉっしゃああああああああああぁぁぁぁっ!?」

「おめでとう、解放だ」

「良かったわね」

「ちっ、残念ね」

「つ、次は俺だな……」

 

 次の男は初っ端で大凶を出して死亡。次の男も初っ端で大凶を出したが、何も起こらなかった。

 

「運がいいな。大吉が前に出ていなかったから助かったようだ」

「ほっ。なら、いくぞ!」

 

 そいつはEXキャラクターとEX禁忌魔力、錬金工房、EXキャラクター、王の財宝を出してくれた。その次の奴は爆死した。その後、エリクサーや若返りの薬、EXキャラクター、魔物吸引のお香などが出て来た。

 

「残ったのは三人か。おめでとう。諸君らを解放しよう」

「やったっ!」

「助かった……」

「これで俺達は……」

「では、食料を渡してやる」

 

 食料などが入った袋を渡して解放してやると、三人はもうここには居たくないといったような感じで一斉に街へ向かって走りだした。

 

「で、まさかこのまま帰すの?」

「俺は解放してやっただけだ。約束通りな」

「マスター、それはお勧めできないのだけれど」

「そうよね。能力を見られている訳だし、彼らから伝われば面倒な事になるわ」

「おいおい、俺は何から解放してやるなんて言ってないぞ」

「?」

「まあ、直ぐにわかるさ」

 

 しばらくすると男達が去った方から悲鳴が聞こえて来た。同時にバサバサと羽音も。そして、俺達の回りの上空を見ると大量のハーピィ達がいつの間にか飛んでいる。その瞳はギラギラと輝いているが、ペストが居る為に攻撃して来ない。そいつらは降りて来て甘えるように身体を擦りつけたりしている。ペストは鬱陶しそうにしながらも撫でてやっている。次第に悲鳴が聞こえた方からもハーピィ達が飛んで来る。その足には三人の男達の死骸が掴まれていた。ハーピィ達はお土産というふうに死体を差し出してくる。

 

「あれ、これって……なるほど、そういう事ですか」

「これってお香?」

「そう、お香だな」

 

 モンスターを呼び寄せるお香だ。彼らの仲間が出した物だ。それを袋の中に少し入れておいてやったのさ。上手く逃げられれば助かっただろうが、かわいそうに。

 

「まあ、恐怖からは解放してやった」

「そうね」

「まあ、自業自得ね。それより、当たった物を確認しましょうよ」

「そうだな」

 

 確認するとEXキャラクターはジャンヌ・オルタだった。

 

「私ね」

「被った。これは合成とか出来るのかね?」

「どうかしら。というか、これはルーラーの方ね」

「試してみるか」

 

 ジャンヌに入れるようにしてみると、ダブルジョブとして習得する為、SR以上のカードを一枚捧げろと書かれていたのでダブっているエリクサーを突っ込んでみる。

 

「どうだ?」

「これはルーラーとしての力も習得しましたね」

「撃たれ弱さが無くなったか」

「素晴らしい」

「他のキャラクターは?」

「そうだな……」

 

 キャラクターカードの名前を確認するとラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ。EXの槍は聖約・運命の神槍(ロンギヌスランゼ・テスタメント)。

 

「おい」

「どうしたのよ?」

「危険すぎる奴だ」

 

 |人物憑依≪インストール・キャラクター≫を確認すると、こちらもラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒだった。どうやら、獣殿の場所に当たってしまったようだ。

 

「ふう」

「それで、どうするのですか? 売るのは勿体ないのでしょう?」

「そうなんだよな。とりあえず、俺に|人物憑依≪インストール・キャラクター≫は使うか」

「それがいいわね」

 

 |人物憑依≪インストール・キャラクター≫でラインハルト・ハイドリヒを使ってみる。その前に精神干渉無効を使っておく。これで大丈夫だろう。

 そもそも彼は聖槍十三騎士団・黒円卓第一位・首領であり、部下からは「ハイドリヒ卿」、副首領カール・クラフトからは「獣殿」と呼ばれる。元々は第三帝国の高官であり、ゲシュタポ長官にして階級はSS大将。作中では「人体の黄金比」とまで言われている金髪金眼のイケメンである。

 魔名は「愛すべからざる光(メフィストフェレス)」

 さあ、やってみよう。インストール!

 

 

 

 

 暗い世界。唯一の光は玉座に肘を付きながら座り、こちらを睥睨する金髪金眼のイケメン。その存在が発する存在感は半端ない。

 

「卿が私の力を継ぐか。夢物語であるが、面白い。くれてやろう」

「あれ、あっさりくれるの?」

「私は全てを愛している。それに卿は私を知っているのであろう。ならば、私の力もわかってなお求めるのだろう」

「力は流出。エイヴィヒカイトの最上位であり、殺した相手の魂を吸収し、不死の奴隷として自身の軍団(レギオン)に加える。また、聖痕を刻むことで刻んだ相手が殺した者も自身の軍団(レギオン)とし、自身と同化させるだったか」

「よかろう。では、しっかりと受け取るとよい」

「え、あれ、それってつまり……ぎゃぁあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 悲鳴を上げ、気づけば元の場所に戻っており、不安そうな二人が居る。

 

「姿が少し変わったけれど、大丈夫?」

「ああ、問題ない」

「髪の毛が伸びているわね」

 

 鏡を見てみると、獣殿を若くした感じになっていた。聖約・運命の神槍(ロンギヌスランゼ・テスタメント)も有るのがわかる。使いこなせるかはわかないが。いや、無理だな、うん。

 

「このキャラクターカードは……」

「ジャンヌみたいにしてみたらどう?」

「そうだな」

 

 キャラクターカードは無事に飲み込めて、出力が更に上がった気がした。ひゃっほう、これで俺も人外だぜ。

 

「それで、他のカードは?」

「あーこっちは女のEXで、こっちはEX男。こっちはLの女か。なんだろ、ルサルカでも来るのか?」

「ルサルカ?」

「いや、なんでもない。試してみよう。ぶっちゃけ、男は要らんから置いておくが」

 

 いざという時ぐらいだろうな、召喚するのは。売るのが大概だ。黒髭はわかりやすかったからなあ。それを見ると、どちらも小さな女の子っぽいな。

 

「ほら、さっさと召喚なさい」

「そうだな。魔力もぎりぎり足りる」

 

 召喚すると現れたのは赤いワンピースを身に纏う金髪碧眼の美少女。髪の毛は長く、三つ編みにされている。もう一人の少女はピンク色の髪の毛をストレートロングにしており、前髪をセンターで分けて額を出している。瞳の色も同じで、こちらは薄汚れた鼠色の奴隷服を着せられ、両手と両足には手枷と足枷が嵌めれている。そして、手枷から伸びる鎖は千切れてしまっている。即座にこちらに襲い掛かろうとするが、俺の瞳を見た瞬間に震えて失禁までしてしまった。こちらの力を感じ取ったか。獣に育てられただけはある。

 

「とりあえず、こっちは風呂だな」

「おい、お前は誰だ。お前はオレが誰なのか知っているだろう。なんとなく、繋がりがある。教えてくれ。全てが断片的で、霞がかったように輪郭がさだまらないんだ」

「ねえ、どういう事? どっちも問題ありまくりなんだけど」

「よりによって、あの場面での召喚かよ……」

「マスター、名前だけでも教えてあげたら?」

 

 しかし、記憶障害が起きているのならば色々とやりやすいな。

 

「そうだな。こっちの記憶喪失の子は……」

 

 俺の女にしやすい。外道? 大いに結構。なんせ、回りには悪側や敵側しかいないからな! それに彼女はちょっといろんな意味で危険すぎる。下手をしたら世界が分解される危機が訪れる。

 

 

 

 

 

 




リスキーダイス:ハンターハンター、グリードアイランド編に出て来る運を操作するダイス。大吉なら幸運を、大凶なら死を運ぶ。
黒髭はFGO仕様
ルーラ・ジャンヌ・オルタはオルレアンのボス仕様。
ラインハルト・ハイドリヒ、Diesiraeの表のラスボス。

誰が召喚されたかわかるかなー? ヒントはタグです(ぁ


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7話

 

 

 

 

 

 二人の召喚した少女はペストとジャンヌにお願いして風呂に入れて貰った。その間にココアと食事を用意する。それと彼女達の着替えも用意しておく。食事はレトルトだが、パスタのカルボナーラにしておいた。

 食事の用意が終わる頃には四人とも出て来たので席について貰う。汚れていた二人は見違えるほど綺麗になっている。

 

「話は食事を終えてからにしよう」

「この子の世話は私がするわ」

「頼む」

 

 ピンクの髪の毛をした女の子に食べさせるペスト。大人しく差し出されるものを食べている。もう一人の娘も食べ方は覚えているようでしっかりと食べている。

 

「ジャンヌも食べろよ」

「あら、いいの?」

「ああ。必要無いとはいえ、ジャンヌも家族だからな。一緒に食べよう」

「わかったわ」

 

 そんな話をしていると、こちらをじっと見詰める視線がある。

 

「どうした?」

「なんでもない」

「そうか」

 

 食事を終えると、ペストが洗い物をしてくれる。俺達はソファーに座って金髪碧眼の美少女と対峙する。ピンク色の髪の毛の娘はソファーに寝転んで俺の膝の上に頭を乗せている。

 

「さて、先ずはこの子から説明しよう。お前の名前はアリエッタだ」

「……あ……た……?」

「ア、リ、エッ、タだ」

「……あ、り……た……?」

「アリエッタだ」

 

 ピンク色の髪の毛の少女はテイルズ オブ ジ アビスに登場するローレライ教団神託の盾(オラクル)騎士団第三師団師団長にして、六神将の一人。原作では16歳で身長が148cm。彼女はホド近隣の諸島にあるフェレス島の出身者であり、赤ん坊の頃にホドの崩落に伴う大津波で両親を亡くした。その後、魔物のライガクイーンに育てられたのだ。その過程で魔物と会話する能力を身につけた者。 小柄な体格や乏しい語彙は、特殊な環境で満足な栄養を摂れず、十分な教育を受けられずに育ったためである。召喚時点ではこの状態であると思われる。彼女は原作でイオンのオリジナルの導師守護役で、最も彼に懐いていたが、オリジナルイオンが亡くなりレプリカのイオンが導師に就任すると、レプリカイオンの経緯を秘匿する為守護役を解任された。その後、黒幕であるヴァンに誘われて六神将になり、イオンの守護役に戻るように頑張っていたが、主人公達に母親であるライガクイーンを殺され、更にはレプリカとは知らないままイオンも殺されて、主人公を恨んで決闘を行って敗北し、死亡した報われない少女である。だが、こちらではこの狼少女には幸せになって貰おう。

 

「んんっ」

 

 頭を撫でてやると気持ち良さそうに目を細める。

 

「アリエッタ、今日からお前は俺のモノ、番になって貰う。わかったな?」

「ん」

 

 アリエッタはあっさりと頷いて頭を擦りつけてくる。獣は生き残るために強い者に従ったり、自分より強い雄を好むからな。獣として生きてきたアリエッタにもその本能が有るかもしれない。

 

「ペットの間違いでしょ?」

「やる事はどちらも変わらん」

「それもそうね」

「それで、次は俺の番だ。俺は誰なんだ。答えろ」

「先程も言った通り。お前はキャロル・マールス・ディーンハイム。錬金術師だ」

「キャロル……錬金術師……」

 

 そう、キャロル・マールス・ディーンハイムは戦姫絶唱シンフォギアGXに登場するラスボスである。奇跡という言葉に対して激しいまでの憎悪を向け、奇跡を殺すと豪語する欧州の深淵より来た錬金術師。彼女は世界解剖計画「万象黙示録」を完遂するべく自動人形(オートスコアラー)を率いシンフォギア装者達に敵対する策謀に長ける人物。見た目こそ幼い少女そのものだが、その正体は錬金術の奥義にて精製したホムンクルスにオリジナルのキャロル・マールス・ディーンハイムの記憶を転写・複製するという手法で数百年にも及ぶ長き時を生きており、膨大な時間を錬金術の統括・習得と、自らの計画遂行の為の暗躍に費やしてきた。

 錬金術によって四大元素(アリストテレス)をはじめとする様々なエネルギーを自在に使いこなす事ができ、強大な戦闘能力をその幼い肢体に秘めている。しかし、それを扱うには蓄えてきた「想い出」を償却し使い捨てのエネルギーと変換錬成する必要がある。

 また、彼女が用いるホムンクルス躯体は完璧以上に完成した個体に限定され、それ以外の存在は廃棄物として労働力の他、生体実験用の献体として扱われる。そんな彼女もかつては天真爛漫を絵に描いたような少女であったが、万象黙示録の計画を進める内に自らを「オレ」と称し、目的の為なら手段を選ばない冷徹さと、不慮の事態に激情して暴走してしまう感情的な二面性の持ち主へと変貌を遂げていった。

 またかつて父イザークの研鑽による功績を「奇跡」の一言で片付けられ、挙句異端者として火刑に処された過去を持ち、その過去自体を「消えてしまえばいい想い出」と悲観する。その経緯もあり、目的の為に非情となる一方で炎を前にかつての悲劇を想い出し涙を流す一面を持ち合わせる。そして、最終的には全ての思い出をエネルギーに変えて主人公達と戦ったが、敗れて記憶障害を起こしている。

 

「他には何を知っている」

「それは有料だ」

「だが、オレに支払えるものなどない」

「あるでしょう。心とその身体よ」

 

 キャロルの後ろへと回ったジャンヌが彼女の首に抱き着きながら耳元で囁く。

 

「それは代価になるのか?」

「ええ、十分になるわよ。ねえ?」

「ああ、もちろんだ」

「……」

「放っておけば魔力が切れて消えて無くなるわよ」

「なんだと?」

「消滅よ。この身体も心も、マスターによって生み出されたのですから。錬金術師なら、自分が何に構成されているかわかるでしょう? 私と同じ紛い物の贋作さん」

 

 キャロルは原作でもクローン体だ。オリジナルの記憶と知識などを持つがまた別の存在だ。

 

「……確かに、その通りだ」

「そう、それによく考えなさい。貴方を生み出したのはマスターよ。つまり、マスターは貴方の父親なのよ」

 

 流石は魔女。人を落とすのは似合っている。

 

「父親……パパ……っ!? ぐぅっ!?」

「おい、大丈夫か?」

「へ、平気だ……」

 

 苦しんでいるキャロルの下へと移動する。

 

「……わかった……記憶を……戻してくれ……このままでは役立たずだ……」

「良い子ね」

「ふん。オレもこのまま消えるのは嫌なだけだ。特にこの状態は不安だ」

「治せるの?」

「まあ、エリクサーで試してみるか」

「エリクサー、生命の水。神の血か。代価としていいだろう」

「じゃあ、マスター。どうせなら」

 

 ジャンヌの囁きを採用し、エリクサーを口に含んでキャロルに口付けをして、口移しで流し込む。

 

「っ!?」

 

 目をぱちぱちとした後、顔を真っ赤にして慌てだすが、ジャンヌに押さえられて暴れられない。そのまま口内と舌を堪能させて貰う。

 

「ぷはっ!? 何をする!?」

「キスだな」

「キスよ。うぶなのね」

「くっ……っ!? ぐぅっ!? おのれおのれおのれっ、シンフォギアぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 記憶が戻ったのか、絶叫をあげるキャロル。

 

「心地よい憎悪ね」

「そうか。俺にはわからんな」

「残念ね」

 

 しばらくすると、落ち着いたのか、こちらを見詰めて来る。

 

「さて、わかっているな?」

「契約の不履行は駄目ですよ」

「ああ、わかっている。錬金術の基本は等価交換だからな。オレはお前のモノになる。だが、一つ頼みたい事がある。オレの記憶を操作する事は可能か?」

「可能でしょう。自己改造のスキルがあったはずです。ですよね?」

「まあ、確かにランクは低いけれどあるな」

 

 Cのなら出ている。しかし、記憶を操作したいとはまた何をするつもりだ?

 

「これだ」

「ああ、確かに」

 

 自己改造を習得したキャロルは早速、改造しているようだ。それが終わったのか、キャロルは俺に抱き着いてこちらを見上げて来た。

 

「よろしく、パパ」

「おや」

「おいおい」

 

 どうやら、父親の記憶を俺に書き換えたようだ。既に父親の命題やその答えを知っていて、自分がオリジナルのコピーのコピーだと知っているからこそ出来たのだろう。どちらにしろ、これはアレみたいだ。

 

「まあ、いいだろう。これはこれで有りだ」

 

 魔物に育てられた魔物使いの少女アリエッタと錬金術師の少女キャロルが仲間に入った。二人の召喚コストとジャンヌの召喚コストで結構きつくなっている。ジャンヌが800でキャロルが600。アリエッタが400の1800。現在の俺の最大コストが2000なので空きが200しかない。つまり、常に全魔力の十分の九がコストして上限を支払っている事になる。まあ、彼女達の為なら安い物だ。

 

「さて、今夜からたっぷりと楽しませて貰おう。何せ、体内に聖痕を刻まないといけないからな」

「楽しみですね」

「お手柔らかに頼む、パパ」

「?」

 

 彼女達の娘を孕む場所に聖痕を刻み、我が眷属とした。四人はとても可愛く美しかったが、これで彼女達が殺した奴も軍団に取り込む事が出来る。

 

 

 




堪えは
シンフォギアGXよりキャロル。
テイルズ・オブ・ジ・アビスよりアリエッタ。


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8話

 

 

 

 キャロル・マールス・ディーンハイム

 

 

 

 

 

 目が覚めると男性の胸が見える。顔を上げれば二人目のパパの姿が見える。身体を起こそうと少し身じろぎすると身体の節々に痛みが走る。特に股間からの痛みが響く。それに中に物が入っているような違和感もある。これの原因はわかっている。昨日、散々犯されて出されたからだ。反対側には同じように犯されてうつ伏せで眠っているピンク色の髪の毛の少女が居る。確か、アリエッタという名前らしいな。

 

「こほっ!?」

 

 口の中にも違和感がある。だるい身体をどうにか動かして口を拭う。それから身体を調べる。それにしても気を失った後も好き勝手に身体を使われたようだ。無茶苦茶にされても、逆らう事も逃げる事も出来ない。

 錬金術で解析した結果。この身体は主の魔力によって構成されている事が判明した。つまり、簡単に言ってしまえばオレは使い魔や召喚獣という扱いとなる。身体の中には世界に干渉するような様々な術式が施されている。その中には主人であるパパに対して逆らえなくする隷属術式もある。これを解析し、代わりの肉体を作らねば現状から抜け出す事は不可能だ。もっとも、下手をすれば魂にすら隷属の術式が刻まれている可能性もある。普通なら有り得ないと思えるが、オレは魔女の言う通りオリジナルの贋作の贋作だ。ならば制作の過程で隷属術式が刻まれていても不思議ではない。それに彼が死ねばオレ達も死ぬだろう。故に現状ではこの状態を維持するしか無く、運命共同体となるしかない。それに心の何処かでは受け入れているオレも居る。やはり、オレにとってパパは大事な存在だ。この男もオレを生み出した事に変わらず、パパであるのだから。それにパパも言っていた。人と人が分かり会う事こそ、オレ達に与えられた命題なのだと。ならば、新しいパパとなら分かり合えるように努力しよう。

 それにしても犯されている最中に身体の中に変な物を仕込まれた。さっさとこれを解析しないと危険かも知れない。

 

「あら、起きたようね」

「魔女か」

 

 声がした方を向くと、ジャンヌと名乗った魔女がベッドの脇にいつの間にか立っていた。その姿はオレと同じく一糸纏わぬ姿だ。

 

「気分はどうですか?」

「最悪だな」

「本当にそうですか?」

「黙れ」

「い・や・よ」

「ちっ」

 

 身体を起こして睨み付けるが、こちらの顔を両手で挟んで顔を近づけて来る。そして、口をペロリと舐められた。

 

「離せ、魔女」

「拭ってあげただけよ。それよりも起きたのならマスターに奉仕するわよ」

「貴様、本当にジャンヌ・ダルクか?」

「あんな奴と一緒にしないでくれる? 私はアイツとは違う。次、そんな事を言ったら、覚悟なさい」

「ほう、面白い」

 

 睨み合いながら、互いに相手を潰す準備を行う。こちらは錬金術を起動して風の元素を集めて掌に小さな嵐を生み出す。相手は幻影の槍を作り出している。

 

「「死ね」」

「何をしているの?」

「痛っ!?」

「ぐっ!?」

 

 互いに攻撃しようとした瞬間、頭を思いっきり叩かれた。攻撃して来た方を見ると、赤紫の髪の毛をした少女が黒い風を操ってハリセンの形にしていた。

 

「なんだ、あれは……っ!?」

 

 頭を抱えながら解析した瞬間、それに内包されている力に驚く。これは死そのものと呼べるほどの概念を乗せた風で形成されている哲学兵装か。いや、概念兵装と言えるな。

 

「殺す気か!」

「そうよ、普通なら死んでいるわよ!」

「コントロールくらいしているわよ」

 

 ちゃんとした生物ではなく、疑似生命体だからこそ手加減されて無事であったが……コイツは生命体の天敵だな。普通の人間ならば問答無用で即死している。

 

「さっさと起こして食事にするわよ」

「そうね」

「わかった」

 

 それから、パパをキスや舐めて起こしてから食事を取る。朝食は焼いたパンにレタスや卵を挟んだサンドイッチだった。他にもスライスされたパンがあった。

 

 

 

 

 食事を終えればそのまま皆で一緒に紅茶を飲む。これからの予定を聞かねばならないからだ。

 

「それで、今日の予定だが……森を切り開いて住める場所を作らないといけない」

「それで、もっと具体的な事はどうしますか?」

「そうだな……ペスト、飛んでて何か見えたか?」

「巨大な湖みたいなのは有ったわね」

「それはどんなものだ?」

「えっと視界の端まで全部水っぽかったわね」

 

 ペストの言う通りならばそこには海が存在するはずだ。しかし、それをするなら塩がいいか。

 

「海だろうな」

「海?」

「説明は後にしましょう」

「そもそも、オレは目的を聞いていないが、何をするのだ?」

「開拓と資金稼ぎだ」

 

 確か、今の時代についても情報がインストールされている。人や人間はもちろん、信じられない事にノイズでは無くモンスターが存在している。それに人間以外の亜人も居る。

 

「ふむ。ならば塩を量産するといいだろう」

「確かに売れそうだな」

「塩は確かに高いわね」

「なら、作れるか?」

「任せてくれ。塩など容易く錬成出来る。なんなら、金も錬成しようか?」

「それも頼むかも知れない。とりあえず、ペストは森を切り開いて道を作ってくれ」

「わかったわ」

「キャロルは海の近くに港を作ってくれ」

「了解した。だが、道具や素材はあるのか?」

「ガチャで出たのが有るから好きに使ってくれ。足りないのはどうにかするしかないな」

「私はどうしますか?」

「森を切り開けばモンスターが出て来るだろう。ジャンヌはその相手をしてくれ」

「任せてください」

「アリエッタは俺と勉強だ」

「ん」

 

 しかし、港を作れとは簡単に言ってくれる。とりあえず、リストを見てみると錬金工房に更にとんでもない物があった。この石は我々錬金術師にとってはなによりの宝だ。

 

 

 

 

 

 

 



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9話

 

 

 

 さて、全員で一旦外に出た俺達はログハウスを仕舞ってから森の方へと向かう。海に向かって道を作るのだ。ちなみにキャロル達は元の姿のままだが、アリエッタはあまり服を着たがらないのでワンピース一つと逃げ出さないように首輪とリードを取り付けている。リードはこちらで握って随時、アリエッタが四つん這いで歩こうとするのを矯正していく。

 

「ペスト、頼む」

「ええ、任せて」

 

 ペストの一撃で木々が切り倒される。しかし、これだと海まで行くのに時間が掛かりそうだ。ましてや木々を切り倒したからか、森から何かが出て来る。

 

「これは大人しく道から作った方が良さそうだな」

「そうね」

「……こわ……い……」

 

 アリエッタが森を見ながら俺の服の裾を掴んでくる。その森からは嗅ぎたく無い程臭い腐敗臭が漂って来て、森の中から朝方だというのにゾンビが出て来た。更に骨だけになって動くスケルトンまで現れた。

 

「こいつらは……」

「見覚えがあるの?」

「ええ。三年前に国から開発を名目として近くの領地の人や国の騎士と共同で魔の領域である森の開拓事業を頼まれたの。結果は見ての通り」

 

 ゾンビやスケルトンはこの国の鎧を着ている。

 

「なるほど」

「お蔭で人手が無くなって大変だったわ」

「だろうな」

「愚か者の犠牲者ですか」

「ふん。どうでもいい。どちらにせよ、オレ達の邪魔をするなら排除するだけだ」

「ええ、そうですね」

 

 ジャンヌが手から煉獄の炎を呼び出してゾンビを焼き払う。キャロルは錬金術で地面を隆起させて切り株ごと串刺しにしていく。どう見ても過剰戦力だ。

 

「おい、武器や鎧まで燃やすな。骨は砕いて肥料にするから消し炭にするなよ」

「面倒くさい注文ね。まあ、いいでしょう」

 

 ジャンヌは魔術ではなく、槍を振るって敵を粉砕していく。スケルトン達はジャンヌの動きに付いてこれておらず、簡単に倒されていく。

 

「この程度のモンスターでは肩慣らしにもなりませんわね」

「さっさと片付けてくれ」

「わかった、パパ」

 

 キャロルが広範囲に渡って風の錬金術で台風を発生させて、周りを殲滅してしまった。周りの森も被害が出て大きな広場が出来た。

 

「かなり派手にやってるじゃない」

「パパに言われたのだから、仕方あるまい」

「これ、もっと襲ってこない?」

 

 ペストがキャロルの攻撃の惨状を見て非難の言葉を口にする。確かに更に奥の方からモンスターを呼び寄せる事になるかも知れない。

 

「働いていないペストに言われる筋合いはないですわね」

 

 それをジャンヌがキャロルを庇う。

 

「五月蠅い! ゾンビとか相性が悪いのよ!」

「まあ、生きていないからな」

 

 ペストの弱点は生命体じゃないゴーレムやアンデットだろう。命があれば殺して見せるのだろうが、命が無いなら殴って物理で壊すしかないのだ。

 

「そんな事より、道を整えるから邪魔な物を退かしてくれ」

「そうだな。頼む」

 

 アリエッタにも協力させて皆で武器や防具、遺品を拾い集めて無限収納鞄へと入れていく。

 回収が終わればキャロルが土の錬金術で切り開かれた地面を均した上で、綺麗な石畳の道へと作り変えてくれた。

 

「これで馬車が行き来しやすくなる。ありがとう、キャロル」

「ふん。この程度なんでもない」

 

 頭を撫でてやるとそっぽを向くキャロル。止めてみると、こちらをじーと見て来る。撫でるのを再開すると気持ち良さそうに目を細めるが、直にそっぽを向いてしまう。

 

「ん、アリエッタも……」

「ああ、良い子だ」

 

 二人の頭を撫でてやると嬉しそうにする。周りを見るとジャンヌがニヤニヤしていて、ペストはさっさと先へと行ってしまった。

 

「なんだ、魔女」

「べっつに~」

「何か言いたい事があるのか?」

「随分と気持ち良さそうね、とか、甘えん坊、とか別に思ってないわよ、お嬢ちゃん」

 

 そう言ってさっさと奥へと向かうジャンヌにキャロルが走って追いかける。

 

「行こうか」

「ん」

 

 俺は二人の後を二足歩行に慣れていないアリエッタと一緒にゆっくりと歩いていく。

 

 

 その後、20キロにも及ぶ道を作成してその日は終了した。夜は勉強会を開き、アリエッタはもちろんの事、キャロルやジャンヌ、ペストにも色々と教える。夜の勉強会は始まったばかりだ。

 

 

 

 

 次の日、港の予定地に居るのだが、そこは切り立った崖の上だった。そこで大規模な工事を行う事にした。主にやるのはキャロルだが。そう、キャロルの錬金術で崖の手前を掘り下げて崖を防壁の代わりにしつつ港町を作るのだ。いくらキャロルといえど、生半可な事ではないのでベッドを設置して魔力供給をしながらの作業となる。当然、丁度いいので皆の身体の開発も行っている。

 

 

 一週間後、上下水道と湾岸施設が完成したので入手していた陸上装甲艦タルタロスを海に浮かべて生活拠点とする事にした。動かす事は出来なくても住むくらいは出来るのだ。それにキャロルが解析してくれたので使用方法もわかる。人手が無くて動かせないだけだ。本当にキャロルは便利な子だ。キャロルに港を任せているので、俺達は森を探索したり、アリエッタの勉強を見たり、畑を作ったりしていた。

 

 



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10話

 

 

 

 

 ペスト(アーデルハイト・リーゼンフェルト)

 

 

 

 

 港が驚きの速度である程度完成した。それと同時に売り物になる塩の生産装置をキャロルが作ってくれた。驚いた事にその生産装置で作られる塩は真っ白な塩と海藻の旨味成分を凝縮したらしい藻塩。それと岩塩の三つを用意してくれた。今日は皆と別行動を行い、塩を持って私は空を飛んで本家があるフェルトの町へとやって来た。

 家の庭に直接降りて玄関の扉を開いて中に入る。流石に二週間程度では全然変わっていない。なので、リビングへと入って誰か居ないかを確認する。しかし、誰も居ないのでお父様の執務室へと移動する。今回やって来た目的は塩を渡す事と魔の領域であるリーゼンフェルトの森の一部を支配下に置くことに成功した事を伝える為だ。

 

「お父様、居る?」

 

 扉を開けて顔だけで中を覗いてみる。

 

「アリス、ノックをしなさい」

 

 部屋の中で執務机に向かいながら仕事をして居たお父様に叱られてしまった。だけれど、私は気にせずに入る。すると、部屋の中にお兄様も居て、私を驚愕の表情で見詰めて来る。

 

「どうしたの、お兄様? まるで()()に会ったみたいな表情をして」

 

 クスクスと笑いながらお兄様に声をかけると、苦虫を噛み潰したような表情をした。

 

「げっ、元気そうだな?」

「ええ、お蔭さまで」

「どういう事だ……?」

「お兄様が送ってくれた人達のお蔭で随分と楽が出来たわ」

 

 愚か者のお兄様が送ってくれた者達にリスキーダイスを振らせたら、キャロルが当たったのだから、お兄様に感謝の言葉を伝えるのは当然よね。

 

「私はそんな連中を送っていない!」

「そう、それなら別にいいわ。それでお父様、こちらを見て欲しいの」

「なんだね?」

 

 机の上にそれぞれの塩を入れた小瓶を肩に下げたバックから取り出して置く。

 

「これはガラスか? 一体何処でこれを手に入れたんだ……」

「それは秘密よ。それよりも中身の相談よ」

 

 蓋を開けてお父様の手に塩を振りかける。

 

「舐めてみて」

「ふむ……っ!? これは塩か!」

「そうよ。とっても美味しいでしょ?」

「あ、ああ……」

「俺にも食わしてくれ!」

 

 二人は競って塩を舐めだす。今まで食べた塩よりも遥かに美味しいのだから、仕方ないでしょう。

 

「この塩をどうしたんだ!」

「作ったのよ」

「製法は!?」

「当然、秘密よ」

「ふざけるなっ!? 今すぐ教えろ!!」

「嫌よ。これは私達の資金稼ぎに使うんだから」

「お前……っ!?」

「さて、お父様。約束通り人を貰いに来たわ。この塩はお土産よ」

 

 約束通りとはいえ、ごねられたら面倒だからお土産を持ってきたのよね。

 

「この塩は売って貰えるのか?」

「もちろんよ」

「父上! 何を言っているのですか! 買わずに貰えばいいではないですか!」

「そんな事は出来ん。しかし、安くはしてくれんか?」

「両親のお願いだから、少しは安くするわ。でも、旦那様が言うにはここを通る販路が出来るから、このフェルトの町にも十分に利益が出るそうよ」

「商隊が来てくれるのか」

「それ相応のメリットがあるでしょうね」

 

 現状では内陸部に売る為には陸路を使うしかない。そうなるとフェルトの町を経由する連中が多いでしょう。まあ、もう少ししたら船による海路でも販売するそうだけれど。

 

「わかった。同意する者達を連れていけ。塩の値段はいくらだ?」

「1キロ1万の所を5千でいいわ」

「無茶苦茶高いじゃないか!」

「これだけの質なのだから、当然よ。そうそう、購入した塩を転売するのは駄目だから。それを発見した場合、もう割引で売らないからね」

「っ!?」

「まあ、当然だな」

 

 悔しそうな顔をするお兄様。だけど、お父様はちゃんとわかっている。

 

「では、普通の塩を30キロほど買おう」

「ええ、わかったわ」

 

 直に鞄から10キロ分の塩が入った壺を三つ取り出す。この鞄もキャロルが作ってくれた物で、中身はタルタロスにある倉庫に繋がっていて思った物を取り出せる仕様だ。

 

「お金は後程届けさせよう。今はどの辺りに住んでいるんだ?」

「森を切り開いて作った道の先よ。結構大きな場所だから分かりやすいわ」

「わかった」

「じゃあ、またねお父様」

「ああ」

 

 さっさと部屋から出て町へと向かう。街に出て畑の方へと歩いていくと直に知り合いが声を掛けてくれた。

 

「お嬢さま」

「アリス様だ~」

「みんな、久しぶりね」

 

 幼い子供は私に抱き着いて来るので、受け止めて頭を撫でてあげる。幼い頃から外で平民の子達と一緒に遊んで育ってきた私に幼い子達も懐いてくれている。

 

「あそぼ、あそぼ」

「それはまた今度ね。皆にちょっと話があるんだけど集めて貰える?」

「もちろんです」

 

 家にあった本から知識を得て、畑の改良なんかもしていたから大人の覚えもいいので簡単に集まってくれた。

 

「皆、私が結婚したのは知っているわよね?」

「もちろんです」

「俺が嫁にしたかったのに」

「お前だと無理だって」

「ごめんね」

「気にせんでくだせえ、こいつもわかってた事ですし」

「うるせぇよ!」

「ふふふ、それで話なんだけど。私と夫の領地に皆に一緒に来て欲しいの」

「それは……」

「俺達はいいぜ!」

「餓鬼は黙っとれ。これはそう簡単な問題じゃないんじゃ」

「ああ、そうだな」

 

 子供達や同い年の幼馴染達はあっさりと頷いてくれたけれど、大人はやっぱり簡単にはいかない。これはわかり切っていた事だから大丈夫。

 

「もちろん、土地や家を手放して知らない場所に行くのだから不安なのはわかるわ。だから、家と畑はこちらで用意してあるし、しばらく食べ物も無料で支給するわ」

「おぉ、それなら……」

「だが、領主様の許可は……」

「それなら取ってきているわ」

 

 皆がそれぞれ家族と相談し始める。これなら後一押しくらいね。

 

「税も最初は免除するし、今なら塩を使い放題よ」

「塩をですか?」

「ええ。この塩を毎月各家庭に人数分渡すわ」

 

 鞄から塩と焼いた鶏肉を取り出して彼らに渡していく。

 

「何これ、無茶苦茶美味いんだけど!」

「ほんとだ!」

「おかわり!」

「これは何の肉じゃ?」

「おかわりは向こうに来てくれたらね。それとその鳥はイーグルファイターよ」

 

 凶暴なモンスターで空を自由に飛び、上空から一気に急降下して来て上から襲い掛かる為に普通のハンターではかなりの危険が伴う。全長も二メートルも有り、その爪は皮はもちろんの事、木を簡単に切断したりしてしまう。そんなのがあのリーゼンフェルトの森には大量に居た。同じく空を飛び、死の風をばら撒く私には楽勝だったのだけれど。

 

「そんな高価なモンスターをわしらは食したのか……」

「大量に狩ったから今ならその肉もつけるわ。一家に一匹はあるから、干し肉にしたり、保存しておいてもいいわよ。信じられない事に長期保存する場所もちゃんとあるから」

「それは素晴らしいですな」

「俺は行くぞ!」

「私はやっぱり……」

「まあ、しっかりと考えてね。将来の事も考えるのよ」

 

 普通なら住んでいる町から別の所に移るなんて結婚して嫁いでいくくらいしか許されない。そもそも与えられている土地だって領地からの貸し出しなのだし。

 

「二日か三日後にまた来るからしっかりと決めておいて。じゃあ、私は別の所にも行きたいからこれで」

「もういっちゃうの?」

「ごめんね。また今度遊びましょ」

「うん!」

「またね、お姉ちゃん!」

 

 子供達に惜しまれながらも、別れて町の外へと出る。そして、街から少し離れたところまで歩き、自分以外誰も居なくなった所で空を飛んで別の街へと移動する。

 しばらく高速で空を飛んでいると目的地の近くに着いた為、そこからは近くの森に降りて徒歩で移動する。しばらく歩いていると街道を挟んだ左右の森から人が出て来て私の前に立ちはだかる人が居た。

 

「はぁ……こりないのかしら? いや、違うか」

 

 流石にこんな所まで手の者が居るはずない。なんせ、馬車だと5日は掛かる場所だし。私の場合は空を飛んで直通ルートで速度を出して来ただけだし。

 

「金目の物を寄越しな!」

「いや、よく見たら上玉じゃねえか」

「おい、どう見ても子供だろ」

「それがいいんじゃねえか」

「まあ、そうだな」

「ちっ、このロリコン共め」

 

 吐き捨てながら、掌を向けようとして止めた。だって、普通に考えて街の近くに賊が出るなんておかしくない?

 

「あ? 観念したか?」

「そうね」

 

 ゆっくりと近付いて距離を縮めた後、一気に接近して殴りつける。

 

「ぐはっ!?」

 

 男は吹き飛んで街道をしばらく転がった先で止まった。

 

「なななななっ!?」

「相変わらず、人外ね」

 

 残りの男に裏拳を叩き込む。身長の差でお腹に命中して吹き飛んだ。もう一人は飛び上がって頭を掴んで地面に叩き付ける。

 

「ぎゃっ!?」

「うぎぃっ!?」

 

 幸い、握りつぶす事は無かったけれど力の加減が難しいわね。まあ、殺しても問題ないから実験台になって貰いましょうか。

 

「ば、化け物っ!?」

「化け物だっ、逃げろっ!!」

「失礼ね。私は化け物じゃなく、人間よ。……きっと、多分」

 

 自分でも自信が無いわ。だって、神霊でもあるし、魔王でもあるのだから。

 

「でも、逃がさない」

 

 少しして、山賊達の血で街道が赤く染まった。生きているのは多数居るけれど、死んでいるのも結構居る。でも、こいつらの魂は私が吸収して、聖痕を通して旦那様の軍団に入る。まあ、こんな雑魚は要らないかも知れないけれど有効活用出来るみたいだし。キャロルが魂は良い素材になるって言ってたし。

 

「さて、情報を吐いて貰いましょうか」

「たっ、助けてくれっ、俺達は雇われただけで……」

「そうだ。ここを一人で通る餓鬼を攫ってくれって言われただけで……」

「誰に?」

「それは……ドリーム商会だ!」

「なるほど。まあ、いいわ」

 

 とりあえず、生きている連中を縛り上げて残りの死体はどうしようかしら?

 

 

 

 

 

 

 



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11話

 死体の処理はその辺に居るモンスターに任せて、生きている者の処理を行うとしましょう。

 

「で、ドリーム商会ね。そこは置いておくとして、アンタ達のアジトに案内してもらいましょうか」

「「えっ!?」」

「こういう場合、本拠地もろとも叩き潰すのが常識でしょ」

「そんな事ねえから!」

「そうだそうだ!」

「おかしいわね……」

 

 アタシの得た知識ではそうなっているんだけど。まあ、やる事は変わらないわね。

 

「それで、さっさと教えてくれないかしら? 喋らないのなら、爪を剥いで少しずつ叩き潰して行くわ」

「わっ、わかった」

「おい、いいのか?」

「いいんだよ!」

 

 まあ、大人しく案内してくれるならいいわね。どちらにしろ、死体から回収した魂の情報を閲覧すればいいだけなのだけれどね。私は死者の霊群の集合体でもあるので魂から直接情報を引き抜ける。

 

 

 彼らに案内された先は近くの山で、山頂の方にある洞窟がアジトになっているみたい。そのまま彼らの案内に従って奥へと入っていく。すると、背後から衝撃が来て眼を瞑った。

 

 

 次に目を開けると、拘束されていた。両手両足に枷を嵌められており、回りを見渡すと目の前には鉄格子が有り、その先には部屋が存在している。アタシの居る部屋の隅では泣いている女性や女の子の姿が見える。彼女達のほとんどは服を着て居なかったり、破られていたりしており、身体にも複数の痣が有った。

 周囲を観察していると、扉が開いて男達と女が入って来る。彼らに連れられた裸の女性からは嗅ぎなれた臭いがしてきている。更に扉が開いた先からきつい臭いと女達の悲鳴が聞こえて来る。

 

「おい、こいつか?」

「へい、兄貴っ!」

 

 声に従って視線を向けると、そこにはいやらしい気持ち悪い笑みをした大きな男。

 

「上玉じゃねえか」

「でしょう? でも、かなりの馬鹿力ですぜ」

「どんな馬鹿力だろうが、突っ込んじまえば女なんて簡単だ」

「そうっすね!」

「んじゃあ、早速身体に聞こう」

「嫌よ」

 

 この身体は旦那様の物だし、汚らわしい男なんかにこれ以上身体を使わせるなんて絶対に嫌よ。旦那様だけは夫だから仕方がないのだけれど、身体の中を好き勝手にかき回されるのは気持ち悪い。回を重ねるごとに頭が真っ白になって自分が自分でなくなるような、怖い時が多くなって来ている。

 

「へぇ、目覚めてたのか」

「というか、気を失ってなどいないし」

「なに?」

「ならなんで……」

「面倒だから、案内して貰ったまで」

 

 力を込めて引っ張ると枷が壊れた。そのまま足の枷も破壊して自由になる。

 

「なんだとっ!?」

「嘘だろっ、鉄製だぞっ!」

「くだらない。アタシを拘束したければもっと硬い物を持ってきなさい」

 

 そう言いながら、鉄格子を掴んで力強くで開いていく。

 

「にっ、逃げろっ!」

「武器を持って来いっ!」

 

 牢屋から叫んでいる男達の居る場所へと出て、逃げようとする男を殴りつける。続けて兄貴と呼ばれた男に近付いて股間を蹴りつける。

 

「ぎゃぁああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!?!!?!」

 

 気持ち悪い感触と共に何かが潰れた感触がした。けれど気にせずに汚らわしい物を叩き潰して先へと進んでいく。

 

「逃げろっ! 逃げろぉぉぉぉっ!」

「逃がさないわ」

 

 先回りして、逃げようとする男達を蹴散らして血だまりに沈める。

 

「くそったれぇぇぇっ!」

「邪魔よ」

 

 突撃してくる武器を持った連中を死の風で薙ぎ払い、叩き潰す。それらが終われば、捕らえられている女の人達を助けて街へと送っていくとしましょうか。

 

 

 

 

 

 



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12話

 

 

 さて、賊共のアジトの制圧が終わったわね。隅々まで黒の風で調べ尽したので取りこぼしも無く、残ったのは数人の捕虜と捕まっていた女性だけね。男達は縛り上げてから端に転がして、上半身の服を奪ってから牢屋に移動する。

 

「ひっ!?」

「たっ、助けて……」

「安心なさい、助けてあげるから。先ずはこれで身体を拭きなさい」

「あ、ありがとう……」

 

 女達に男から奪った服を渡す。それから、直にアジトの内部を探索して犯されていた女達を調べていく。

 

「……ぁぁ……」

「……ころ、して……」

「……たすけ……て……」

 

 死を望む者達には安らかな苦しむ間もない死を与え、助けを求めた女達は運んで牢屋に居る人達に渡して介抱して貰う。

 

「この人達もよろしく」

「は、はい……」

「あの、何か他に手伝う事はありますか?」

「そうね……なら、服や連中の持ち物、取られた物を回収するのを手伝って貰いましょう」

「はい!」

 

 手伝って貰いながら奴等が溜め込んだ財宝を全て貰う。ついでにリーダーであろう連中の首も回収して運んでおく。賞金首ならお金になるからだ。回収した物はある程度、表に有った馬車に詰め込む。収納鞄には本来じゃ入らない量が入るのだけれど、出すのは非常に面倒だから。

 

「いやぁ、その鞄はとても便利ですね」

「ええ、便利よ」

 

 手伝ってくれる助けた女の一人がそう言ってくる。

 

「そうね。とても便利よ」(上と合わせて二回言ってる?)

「商人にとってはとても欲しい代物ですが、何処で手に入れたのですか?」

「知り合いに貰ったのよ」

「それは売って貰う事は可能ですか?」

「さあ? アタシにはわからないわ」

「そうですか……」

 

 馬車の準備が出来たので、アジトである洞窟の中に入って女の人達を呼びに行く。すると、首輪を着けた一人の女の子が泣いて死んでいた女の人に縋り付いていた。

 

「死んだ人は燃やして埋めるわよ」

「…………」

 

 死んだ人を運び、燃やしてから埋める。これはアンデット化しない為に必要な行為で仕方のない事だ。

 

 

 彼女達を連れて馬車に乗って街を目指す。業者は手伝ってくれた人だ。彼女に馬車の操作を任せて、アタシ自身は連中が持っていた依頼書を読んでいく。すると、彼らが本来攫おうと思っていたのは別の人で、カモフラージュと資金稼ぎも兼ねて攫っていたみたい。それでその攫おうとした少女は既に捕まえられて助けた中に居るようだ。捕まった女の中で既に隷属の首輪を嵌められて奴隷にされた娘も居るのでその子がそのようだ。書いてあった特徴は縋り付いていた子と同じ。連中はアタシが通った道以外にも罠を張っていたようね。アタシの方が時間がかかった為に入れ違いにはなっていなくて助かったわ。

 

「ねえ、奴隷にされた娘はどうなるの?」

「解放する為にお金を支払うか、拾った人が貰うか、売り払う事になりますね」

「無理矢理されてても?」

「はい。それが証明できませんし、契約の魔法は絶対ですから。まあ、証明出来たら解放されるでしょうが」

「そう。でも、それには領主の協力が必要なのよね?」

「そうですね」

「そう、ありがとう」

「いえいえ」

 

 なら、あの娘は解放される事が無いわね。依頼主は領主のようだし。しかし、むかつくわね。このままだとあの娘は売り払われてその領主の物になるのよね。どういう娘かはわからないけれど、無理矢理奴隷にして自分のモノにしているんだから待ってる未来は暗いわね。

 

「ねえ、貰うにはどうすればいいの?」

「教えても構いませんが、私は商人です」

「お金?」

「商売の種が欲しいです。商品も奪われて飲み干されてしまいましたし」

「行商人なのかしら?」

「そうです」

「そう。なら、アタシの領地に来なさい。儲けさせてあげるわ」

「ありがとうございます。それじゃあ、契約の方法ですが……」

 

 教えて貰った契約の方法を使う為に中に入ると、隅っこの方で虚ろな瞳をしながらぼーとしている。彼女に近付くと、壊れているようね。

 

「埋める時はまだ大丈夫だったのだけれど、それがトドメになったのかしら?」

 

 触ってみてもこちらに反応しない。まさに人形といった感じね。まあ、目の前で母親を犯されて殺されたのだから仕方ないわね。本人も暴行を受けていた訳だし、アタシと同じくらいの子の娘じゃ耐えられなくても仕方ないか。アタシはこの子よりましだけれど、かなりきつかったし。

 まあ、どっちにしろお人形なら気兼ねなく旦那様にあげられるわ。これでアタシの負担が減ればそれはそれで助かるし、ここの領主への嫌がらせにもなる。それに一度壊れたのなら、アタシみたいに出来るかも知れないしね。

 契約だけしてさっさと御者台に戻る。

 

「出来ましたか?」

「ええ。それと売りたい物があるのだけれど」

「なんですか?」

「塩よ。これを試験にしてあげるから、高値で売り払ってちょうだい」

「畏まりました」

「じゃあ、名前を教えて。アタシはアーデルハイト・リーゼンフェルト。愛称はペストね。ペストでいいから」

「これは失礼致しました。私はアニタです。よろしくお願いします」

「ええ、それじゃあよろしくね」

「こちらこそ」

 

 ゆっくりと進み三時間後、無事にバルテンの街へと到着した。バルテンの街はバルテン子爵が収める街で、それなりの大きさで主な産業は農業ね。この国、ラングハイム皇国が収める穀倉地帯の一つで、領地もかなり広い。我が男爵家とは全然規模が違い、資金力もかなりの差がある。だからこそ、食い荒らすのには丁度いいのだけれど。

 

「止まれ。バルテンの街に何の用だ」

「盗賊の引き渡しと買い物よ」

「盗賊だと……?」

「ええ、こいつらね」

 

 捕らえた男達は縛り付けて馬車と一緒に歩かせていたので、彼らに見せる。

 

「こいつらは……わかった。引き渡してくれ」

 

 兵士の顔が一瞬だけ苦々しいものに変わったわね。まあ、領主と繋がっているのだからそうでしょうね。男達の方もどこか太々しい態度を取っているわね。まるで自分達は解放されると思っているみたい。

 

「断るわ」

「なんだと!?」

「こいつらは貴族であるアタシを襲ったのよ。それ相応の処罰をこちらでするわ」

「きっ、貴族だと?」

「そうよ」

「騙りは重罪だぞ」

「事実よ」

 

 懐からリーゼンフェルト家の家紋が刻まれた自害用の短剣とシュタインフェルトの家紋が刻まれた指輪を見せる。どちらもアタシの身分を保証するもので、短剣は生まれた家で貰うもので、指輪は夫の家から結婚する時に婚約指輪として貰う。この場合、リーゼンフェルト家の娘として生まれて、シュタインフェルト伯爵家の嫁になった事を意味する。どちらの家系とか関係無く、これは両家の親族を示す意味合いがあるので効果がある。つまり、この場合は爵位の高いシュタインフェルト伯爵家の方を優先する。何故なら、アタシは自らどちらかとも言っていないし、相手が勝手に判断するしかないのだ。そうなればもしもの時を考えて高い方の爵位を選んで対応するしかない。

 

「しっ、失礼しました! ですが、どうかお引渡しを……」

「くどい。こっちは忙しいの。さっさと通しなさい。さもないと……」

 

 力を解放して威圧すると、兵士はへたり込んで水音を立ててしまった。どうやら、強すぎたようで、少し解放してやる。すると、ガタガタと震える兵士を放置して、離れた位置に居て多少は威圧から助かった別の兵士が慌てて対応してくれた。

 

「かっ、畏まりました! どうぞお通りくださいっ!」

「ええ、ありがとう」

 

 そのまま街の中に入り、先ずは中立であるハンターギルドへと向かう。ハンターギルドは国を跨いで活動する組織でどの国に対しても中立を宣言している。これはハンターが人類の敵であるモンスターを狩る為の組織だからで、為政者としては援助金を少し出すだけで害虫を駆除してくれる上に素材という富を運んでくれる掃除屋だからそれ相応に地位が高い。それに基本的にその国のメンバーで構成される為に愛国心もあり、自国の発展を優先してくれるので国としてはありがたい組織ね。そして、この組織には治安維持とはまた少し違うのだけれど、国や民からの依頼で犯罪者の討伐依頼も出される。それは全ての国で共有されるため、国から逃げ出しても指名手配は討伐される事が多い。

 

「賞金あるといいですね」

「そうね。どちらにしろ、売ればお金になるでしょう。とくに大金で購入してくれるでしょうね」

「そうなんですか?」

「ええ」

 

 連中にとっては自分達の悪事の証拠なのだから、是非とも処分したいでしょう。既に全ての情報が抜かれているとは思わないでしょうし、どれくらいで売れるか楽しみね。力尽くで襲い掛かって来るなら、それはそれで楽しみね。

 

 

 

 

 

 

 

 



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13話

 

 

 バルテンのハンターギルドへと向かう途中、様々な人の姿を見かける。平民の農民や商人、親子連れの買い物客、柄の悪いハンターや立っているだけで気を抜いている兵士などだ。治安維持の為に街頭に立っているはずの兵士ですら、気を抜いている。

 彼の目の前で子供が大人にぶつかって弾き飛ばされる。

 

「なにしやがるっ! このクソガキがっ!」

「ごめんよっ」

 

 逃げる子供を見送る大人の容姿を確認した兵士は、そのまま放置した。かと思えば、裕福そうな別の人がぶつかられると子供を殴って捕まえ、子供が盗んだ持ち物を返す。

 

「すいませんね」

「いえいえ、気を付けてくださいね」

「ありがとう。これは少ないけれど一杯でもやってください」

「どうも、すみませんね」

「離してっ、離してっ!」

 

 小遣いを貰った兵士に連れられて路地裏へと連れて行かれる。

 

「どうしましたか?」

「少し気になったのよ」

「ああ、アレですか。何時もの事ですよ。兵士はお金を持っている人の味方ですから」

「それだけならばいいのだけれど」

 

 少しして路地裏から悲鳴が聞こえて来る。普通なら雑踏に紛れて聞こえない声だけれど、アタシにはしっかりと聞こえる。

 

「おすすめしませんよ」

「構わないわ」

 

 路地裏の方に進んでいくアタシにアニタが警告してくるけれど、無視して進む。

 

「まあ、あれだけ強いなら大丈夫でしょう。私はここで待っていますね」

「ええ」

 

 アニタに馬車を任せて裏路地に入る。少し入り組んだ道を進んだ先の路地で先補の兵士が、捕まえた子供の服を脱がし、口に脱がした服の切れ端を加えさせていた。子供の両手は上にあげられて纏められ、これも切れ端で縛られていた。

 

「なるほど、これが助けた理由ね」

 

 最初のスリは男の子で取られたのはお金を持ってなさそうな男性だった。次はお金の持っていそうな人で、取ったのは女の子だった。つまり、こいつは職務にかこつけて悪事を働いている奴ね。

 

「あ? お前らも混ざ……おいおい、ここはお嬢ちゃんが来る所じゃないぜ? なあ?」

「そうだぜ。じゃなきゃ、怖いおじさん達の玩具にされるからよ」

「まあ、もう遅いけれどな」

「違いねえ」

 

 男の声にアタシの後ろから別の汚らわしい声が混じる。同時に一人がアタシに肩に手を置こうとしてくる。

 

「その子を置いて失せなさい。今なら殺さないでおいてあげるわ」

「おいおい、違うだろ。お嬢ちゃんが命乞いをする場面……」

 

 アタシの背後の男が肩に手を置こうとした瞬間、身体が硬直して崩れ落ちていく。

 

「なっ、なんだっ!?」

「どうなってやがるっ!?」

「貴方達は殺して欲しいのね。わかったわ」

 

 アタシの両手が隠れた服の袖から大量の黒い風を放出しながら、両手を振るう。

 

「さようなら」

「まっ!?」

「ひっ!?」

 

 アタシの位置に近かった数人は纏めて黒い風に触れて死に絶え、倒れていく。

 

「魔術師だっ! にっ、逃げろっ!」

 

 くるりとその場で回りながら黒い風で立っていた男達を薙ぎ払う。残ったのはしゃがんでいて助かった最初の兵士だけ。

 

「お、お前っ、こんな事をしてただですむと思っているのか! 俺はバルテン子爵の兵士だぞ!」

「関係無いわ。貴方達はアタシに殺される事を選択した。だから、殺した。それだけよ」

「た、助けてくれっ、頼むよっ! 俺には妻子が……」

「そう、残念ね。貴方は選択を誤った。運が無かったのね、可哀想に」

「やっ、やめろぉおおおおぉぉぉっ!?」

「さようなら」

 

 黒い風に飲まれて男はズタズタに切り刻まれて死亡した。残ったのは恐怖で震える女の子だけ。

 

「たっ、助けて……」

「ええ、助けてあげるわ。代わりに街の案内をお願いしたいわ」

「それぐらいなら……」

「あと、貴女みたいな孤児とかは多いの?」

「孤児じゃなくても、多いよ。税金が払えなくてスラムに逃げ込んだり、売られるのが嫌で逃げ出したりしてるから……」

「そう。でも、捕まったら売られるのかしら?」

「そうだよ。だから、逃げたり隠れたりしてるの」

 

 話を聞きながら殺した男達からお金や服を剥ぎ取っていく。服は女の子に与える。お金は後であげましょう。

 

「なるほど。ありがとう。先ずは宿屋に案内してくれるかしら?」

「うん」

 

 子供の案内に従って宿を教えて貰う。

 

「アニタは宿の手配をしたらこの子を綺麗にしてちゃんとした服を着せておいて。お金はこれね」

「畏まりました。それで、ペスト様はどちらに?」

「アタシはハンターギルドに行って来るわ」

「ハンターギルドはあのおっきな建物だよ」

「そう、ありがとう。このお姉さんのいう事をきくのよ。まだこれから案内して貰う場所があるから、ここで着替えたら食事でもして待っていなさい」

「いいの?」

「ええ」

「ありがとう」

「任せるわ」

「はい」

 

 アニタに任せてさっさと教えて貰ったギルドへと向かう。飛んだら速いのだろうけれど、流石に不味いわね。それに盗賊達も連れていくのだから。

 

 

 34分ほど歩いてハンターギルドであろう大きな建物に入る。入った瞬間、視線が集まって来るのだけれど、無視してそのまま受付カウンターに進んでいく。女性の受付には人が並んでいるのだけれど、こっちを気持ち悪い視線で見て来る男よりはましと思いたい。けれど待つのは嫌なので若い少女の所にしておきましょう。

 

「いらっしゃいませ。バルテンのハンターギルドへどのような御用件でしょうか?」

「賞金首の確認とギルド施設の派遣よ」

 

 カウンターの上に盗賊の首を取り出して、名前など必要事項を記入していく。

 

「ひぃっ!? なっ、生首っ!?」

 

 少女は後ろに扱けて動かなくなった。

 

「申し訳ございません。確認させていただきますね」

「ええ」

 

 別の職員が来て、さっさとサイコメトリーの魔導具を使って確認していく。このサイコメトリーで犯罪経歴を調べたりする事が出来、各ギルドや詰所などに置かれているのよね。

 

「かっ、確認が取れました。赤熱の山賊団の頭領、エグモントとその一味ですね。壊滅させたのでしょうか?」

「そうよ。こいつらが生き残りね」

 

 男達は黙って立っている。彼らを見た受付嬢は少し震えているわね。何かあったのかしら?

 

「それと救助した人も居るわ」

「わ、わかりました。しっ、しめて54万になります」

 

 それなりの金額なのだけれど、おかしいわね。確か、盗賊団の規模で決まるはずなのだけれど。

 

「安いわね」

「ハンター証はお持ちですか? お持ちでないなら金額は減ってしまいます」

「そう。なら、正式な手配書を見せてちょうだい」

「え?」

「聞こえなかったの? ギルドの本部が発行している手配書を見せて、と言ったのよ」

「そっ、それは出来ませんっ」

「何故?」

「規則ですので……」

「おかしいわね。どこのギルドでも見せて貰えるはずだけれど?」

「それでしたら、あちらに張られている方をご覧ください」

 

 指さされた先を見ると、手配書が張ってある。でも、金額の部分は切り取られている。

 

「はぁ、そういう事ね」

「あの、それでは手続きに……」

「結構よ」

「え?」

「聞こえなかったのかしら? 手続きは要らないと言ったのよ」

「で、でも……」

「ここでお金に変えるのは止めにするわ」

 

 さっさと首をバックに仕舞っていく。

 

「まっ、待ってください!」

「待たないわ」

 

 だいたい、値段が低すぎるのよ。それで値段の書いてないない手配書だけとか、ふざけているわ。すくなくとも30人は居たし、三桁はいくはずなのよ。どんだけピンハネしているのかは知らないけれど、別の街のギルドで売った方がいいじゃない。

 

「こっ、困りますっ!」

「何故?」

「……そっ、それは……手配書が残ったままになってしまいます……」

「別に被害が出ないのだから問題ないわね」

「の、ノルマが……」

「知ったことではないわ」

「わっ、わかりました。別室でお話しましょう。派遣の件もありますし」

「いいわよ」

「それでは、こちらへどうぞ」

 

 案内された応接室で少し待っていると、大きな太った男と先程の女性が入って来た。

 

「ほほぅ、これはまた可愛らしいお嬢さんだ。特別な方にお出しするお茶を持ってきなさい」

 

 こちらを舐めまわすように見てくる豚が、女性にお茶を入れてくるように言うと、女性はさっさと出て行った。

 

「誰?」

「おお、これは失礼しました。私はバルテンのハンターギルド、ギルドマスターをしているヨルダン・アーメントです」

 

 苗字があるという事は貴族ね。他の貴族に関してはあんまり詳しい事は知らないのだけれどね。リーゼンフェルトは辺境の男爵家で夜会とかにも滅多に出ないし、出たとしてもお父様やお兄様くらいだから。

 

「それで、ギルド施設の派遣という事でしたが……場所はどこですかな?」

 

 両手を机の上に乗せながら答えていく。

 

「お茶です」

「どうぞ」

 

 出されたお茶は飲まずにそのまま話を進める。一秒でも早く、ここから出たいし、会話も出来ればしたくない。

 

「場所はここから南に下がったリーゼンフェルト領にある魔の領域よ」

「あの討伐を失敗した所ですな」

「ええ」

「でしたら、費用は8億になりますな」

「高すぎるわね」

「しかし、こちらとしましてもそれだけ費用がかかります」

「二年前に2千万と言われたのだけれど?」

「そちらは討伐に失敗する前ですから。それに我れらも財政難でして」

「財政難ねぇ……」

 

 豚を見る限り、それはないわね。

 

「そうですな。赤熱の山賊団を引き渡して頂けるなら、こちらも勉強させて貰って2億まけて6億にしましょう」

「それでも高いわよ」

「でしたら、私の女に……」

「結構よ。アタシは結婚していて旦那様のものなのはわかるでしょ」

「一晩だけでも……」

「黙りなさい、豚」

「なっ!? 無礼ですぞっ!」

「どちらがかしら? まあ、どうでもいいわ。こちらの要件は終わったのだから、帰らせて貰うわ」

「派遣はいいのか!」

「ええ、別の街のギルドに頼めばいいだけなのだし」

 

 そういうと、勝ち誇ったようないやらしい笑みを浮かべた。

 

「どこも変わりませんぞ。それに暴言を吐いた貴女はブラックリストに入れさせて貰いますからな」

「勝手になさい」

 

 部屋を出てカウンターがある表に移動すると、兵士が居て盗賊団の生き残りを連れていこうとしていた。

 

「何をしているのかしら?」

「何って、引き取りに来たのですが……」

「交渉は決裂したわ。引渡しはしない」

「そんな……」

「黙りなさい。そうね……欲しければ8億で売ってやると貴方達の主に伝えなさい。いくわよ」

 

 男達を連れてギルドから出て、宿へと戻った。

 

 

 

 宿に戻ると、アニタが待っていた。女の子の方は食堂で急ぐように食事をしている姿が遠目にわかる。

 

「売らなかったんですか?」

「そうよ、悪い?」

「いえ、ご機嫌斜めですね」

「まったくよ。まさか、豚と会話させられるとは思ってもみなかったわ。悪いけれど、直ぐに動くのは無理だから、もう少しゆっくりしておいて」

「ええ、わかりました。彼らはどうしますか?」

「こっちで安全な場所に送っておくわ」

「畏まりました。部屋はこちらです」

「ありがとう」

「いえ」

 

 案内して貰った部屋に入ると、扉を閉めて男達とアタシだけになる。と、思ったら壊れた人形のような女の子がベッドに寝かされていた。まあ、動かないから放置で問題ないわね。

 

「さて、お前達は眠りなさい」

「「え?」」

 

 男達を殴りつけ、気絶させた後はバッグに頭から突っ込む。これで大丈夫だろうし、問題ないわ。

 

「ああ、いらつく! なんでハンターギルドまで腐敗してんのよっ! ほんとっ、使えない塵共ねっ!」

 

 地団駄を踏むと、急にグラグラと宿が揺れて慌てて止める。

 

「はぁ、あっちのアタシがアタシを倒したければ星を砕けって言っていた意味がわかるわね」

 

 もっと力を使いこなせるようになれば、本気を出して星を砕く事も可能になるんでしょうね。そうじゃないとあんな言葉は出ないでしょうし。

 

「まあ、いらついていても仕方ないわね。ここは本でも読んでゆっくりしましょう」

 

 ベッドに座って女の子の頭を膝に乗せ、バッグから適当に本を取り出す。出て来たのは黒い分厚い重厚な本で、表紙には金色の縁が取られており、中心部には深紅の魔法陣があり、魔法陣の中心部には紫の宝石が嵌められている。

 

「これは……相当高位な魔導書ね」

 

 出鱈目なほど膨大な魔力を持つその魔導書は触れるだけで、精神を浸食してくる。

 

「黙りなさい。鬱陶しいわ」

 

 黒い風を浸食させていくと、大人しくなってきた。例え、なんであれ、生きているものなら殺してみせるわ。大人しくなった魔導書を開けて読んでみる。

 

「ふむ……さっぱりわからないわね。そもそも読めないし。どこの言語よ」

 

 魔導書ごとベッドに倒れる。そのまま眼を瞑って少ししてから魔導書を置いてベッドから起き上がって鞄からカードみたいなのを取り出して魔力を流す。

 

「キャロル、聞こえる?」

『……んんっ……ペストか、どうした……?』

「お母さん、もしくはママでしょ」

『……』

 

 少し待っても返答がない。もう一度魔力を流す。でも、返事が無い。また魔力を流す。今度は多めに。

 

『鬱陶しいわっ! ちょっ、やめてっ! いまっ、連絡中だからっ!』

 

 向こうから聞こえて来るキャロルの声は上ずっていて、どこか辛そうね。まあ、やってるんでしょう。あっ、向こうで爆発音が聞こえたわね。

 

「キャロル、ハンターギルドの交渉が失敗に終わったの」

『はぁっ……はぁっ……ハンターギルド? ああ、あれか。失敗って?』

「8億も要求されて、減らすなら身体を差し出せとか、馬鹿な事を言って来たから」

『よし、そいつ殺そうぜ。なに、ちょっと局地的な台風が襲うだけだ。なんの問題も……』

「あるでしょ」

『ちっ、なら倉庫にある赤い水晶をギルドに適当に投げ込んでくれ。それで解決だ』

「中身は?」

『ただの労働力だ』

「戦闘力は?」

『奇跡の神器を分解する程度だな』

「それ、程度じゃないから」

『なんだ、アルカノイズは駄目か。相手を触れただけで神器を身に纏った物以外を炭素にかえてくれるクリーンな兵器なんだが』

 

 確かにクリーンでしょうけれど、かなりえげつない兵器ね。

 

「駄目でしょ。それより、ハンターギルドを誘致出来ない事が問題よ」

『なんでだ?』

「なんでって……」

『森や山の防衛や開拓なんて、オレ達でなんとかなる。特にドラゴンが住んでる山なんて、あのムカつく女の独壇場じゃないか』

「倒した素材はどうするのよ?」

『オレが加工すればいいだけだろ。ほら、ハンターギルドなんて要らない。商品の出荷は商人に任せればいいし、金が貯まれば船を買うかガチャで手に入れて輸送すればいいだけだ』

 

 確かにその通りね。ええ、別に要らないわね。なにこれ、接触損?

 

「殺人的な量になるわよ」

『現在、生産用のクローンを制作中だから問題無い』

「そう、それじゃあお願いね」

『ああ。っと、そろそろ戻る』

「ええ、頑張ってね」

『そっちも気を付けろよ……まま』

「今なんて言った?」

 

 聞き返したら既に切られてた。仕方ないから真っ赤になってるキャロルでも想像しましょう。うん、少しは怒りがましになったわ。

 

「でも、この街……もう要らないわね……」

 

 そんな事を思っていると、扉がノックされた。

 

「どうぞ」

「ペスト様、領主の使いという者が参っていますが……」

「要件は?」

「晩餐の招待だそうです」

「晩餐、ね」

 

 どうせその間に襲うつもりなのでしょうね。でも、倉庫に預けているから無駄骨になるわね。しかし、宿の客達の被害は……まあ、どうでもいいわね。

 

「話を聞きにいくわ」

「はい」

 

 下に降りると馬車が止まっていて、騎士達が威圧するように整列していた。

 

「貴女がアーデルハイト・リーゼンフェルトですな」

「そうよ」

「バルテン子爵様が貴女を晩餐にご招待なさるとの事です。これは光栄な事であり……」

 

 使者はつらつらとどうでもよい事を話していく。私はいらいらがつのってつい、足踏みをしてしまうと宿がまた揺れた。

 

「ふぅ……お断りよ」

「なんですと!?」

「あのね、事前連絡もなしに今日いきなり来いと? ドレスも持ってきてないのに?」

「それは……その、こちらで用意しますゆえ……」

「そう。なら……っ!?」

 

 禍々しい気配を感じて振り返る。

 

「どうなさいましたか?」

「なんでも……いえ、これは……しまったわっ!」

「どうなさったのですか!?」

「おいっ!」

「うるさいっ! ちょっと待ってなさいっ!」

 

 急いで部屋に戻る。部屋の前に到着すると、中から禍々しい魔力が溢れ出している。扉を蹴破って中に入ると、ベッドの上には膨大な魔力を巻き散らかしながら黒っぽい紫色の髪の毛を靡かせる少女が立っていた。服装は黒いドレスのような服で、頭にヘッドドレスがある。その少女は碧眼をこちらに向けて来て……こちらを見るなり、犬耳と尻尾を生やし頭を抱えて蹲って涙目で震えながら恐る恐るこちらを伺ってきたのだけれど、どうしたらいいのかしら?

 

 

 1.始末する。

 2.とりあえず、撫でる。

 3.見なかった事にする。

 4.抱きしめる。

 5.キャロルに助けを求める。

 

 

 

 さて、どれにしようかしら?

 

 




誰かわかるかなー?


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14話

 

 

 1.始末する。

 2.とりあえず、撫でる。

 3.見なかった事にする。

 4.抱きしめる。

 5.キャロルに助けを求める。

 

 目の前に居る女の子に対して、アタシが選んだのはとりあえず、撫でて見る事にした。耳を。

 

「ひうっ!?」

「本物みたいね……」

 

 肌触りもよく、もふもふしているわ。彼女自身はかなり震えているのだけれど。

 

「貴女、名前は?」

「……ナコト写本……」

「それが魔導書の名前なのね」

「そう」

「それで、一体どうなったの?」

「揺れて魔導書が依代に触れた。そこから、繋がって壊れた精神同士でお互いを取り込んで融合した。ナコト写本の魔導書とその精霊になった」

 

 これは放置したアタシの責任ね。揺れた事も原因みたいだし。

 

「そうなのね。それで、これからどうするのかしら?」

「私はマスターの道具。マスターに従うだけ」

「マスターは誰なの?」

「貴女」

「アタシ?」

「イエス、マスター。だから、契約を……」

「契約したら破棄も出来るのかしら?」

「それは……出来る」

「そう。なら、仮契約しましょう。契約方法は?」

「口付け」

「それは嫌よ。そのままでもしばらく戦闘したりは大丈夫なの?」

 

 女同士でキスとかあり得ない。

 

「問題ない」

「なら、このままでいいわ。ちょっとこれを持って付いて来なさい」

「イエス、マスター」

 

 彼女に鞄から無限収納鞄を取りだして、そこに大量の塩を入れて持たせる。それから部屋を出て一階へと戻る。

 

「アニタ、解決したから貴女達はこの子を連れて当初の予定通りに行動して。護衛はこの子がしてくれるから」

「畏まりました。よろしくお願いします」

「マスター?」

「この三人を守るのとそこからアイテムを取り出すのが初仕事よ。いいわね?」

「イエス、マスター」

「さて、行きましょうか」

「あっ、あぁ……」

 

 騎士達に案内され、表に停められた馬車に乗って領主の館を目指す。すこしして到着した領主の館は宝石や金をあしらった成金趣味だった。

 

「それではこちらでお着換えください」

「ええ」

 

 用意された部屋でメイドに手伝って貰いながらドレスに着替える。貧乏な家ではこんな事はなかったので少し緊張するわね。逆ならあったのだけれど。しかし、我が家もメイドを雇わないといけないわね。

 

「終わりました」

「ありがとう」

「いえ……」

 

 着替えが終われば、そのまま晩餐へと参加する。幸い、嫁に出される為にテーブルマナーはしっかりと教え込まれているのでなんとでもなる。

 

「本日はお招きありがとうございます」

「うむ。そちらもよくぞ来てくれた。ささ、先ずは座るがよい」

「はい。失礼します」

 

 席につくとコース料理が運ばれて来る。それを食べながら相手を観察する。ハンターギルドの豚のように太っているのではなく、鍛え抜かれた身体を持つ初老の男性。髪の毛は後ろで纏めてオールバックにしている。その背後には銀色の髪をした短髪の青年騎士が立っている。二人共武人といった感じで、どちらも強そうではあるわね。特に青年騎士は身に着ている装備からも相当な使い手だと思われるわ。

 

「聞くところによればリーゼンフェルト男爵家のお嬢さんとか?」

「ええ、そうです。シュタインフェルト伯爵家の方と結婚しております」

「いやはや、残念ですな。結婚なされておらねば我が息子の嫁にいただいたものを……」

「回りくどい事は無しでいきましょう。時間の無駄でしょ?」

「そうですな。単刀直入に言うと、捕らえた賊を引き渡して頂きたい。我が領地で暴れていた者達が他領に引き渡されるのは面子に関わりますので」

「それだけじゃないでしょう? 随分とあくどく儲けてるみたいじゃない。噂だけれど例えば……」

 

 両手を机の上に乗せながら、調べた内容の一部を話していく。

 

「盗賊団と組んで商隊を襲い、積み荷や奴隷を入手してその上前を頂いているとか」

「なんの事か存じ上げませんな」

「ええ、ですから噂といっています」

「なるほど。それはますます調べねばならないですな」

「こちらとしては買ってくれるならそれで構いませんよ」

「値段は8億とか」

「ええ。それがここのハンターギルドのギルドマスターに言われた金額ですもの」

「いささか高すぎますな。3千万でどうですかな?」

「安くしても7億ね」

「おやおや」

「ふふふふ」

 

 お互いに見つめ合いながら笑う。

 

「馬車二台分の食料もつけましょう」

「馬車込みで6億5千万ね。そうね、人手不足だから、スラムに居る人達をくだされば2億、下げましょう」

「スラムの住人ですか」

「別に要らないでしょう?」

「まあ、そうですな。税金も払わず、犯罪に手を染める奴も多いですから。ですが、まだ下げて貰いませんと」

「なら、奴隷と移動を希望する住民でいいわ」

「それは駄目ですな」

「一般市民でいいですから」

「では、10組までなら認めましょう」

「なら、3億ね」

「高いですな」

「現金1億で残りは奴隷で構わないわ。もちろん、食料もつけて貰うけれど」

「いいでしょう。交渉成立です」

 

 バルテンが立ち上がってこちらに来る。アタシも立ち上がって相手が片手を差し出してくるので、こちらも同じように()()する。

 

「では、引き渡しは明後日でいいかしら? こちらも準備があるので」

「いえ、本日でお願いしたい」

「そちらも今日中に用意できるのかしら?」

「ええ」

「ならそれで構いません」

「では、よろしくお願いします。ところで、体調は大丈夫ですかな? 顔が赤いですが」

「ええ、全然大丈夫です」

「そうですか。何かあればぜひ我が家にお泊りください」

「ええ、そうさせていただきます」

 

 食事を終えてさっさと帰る。相手はしきりに体調を心配してきたのだけれど、何の問題も無いのでそのまま帰る。毒なんてアタシには効かないわ。どうせ、捕まえてアタシをいう事の聞く人形にでもしたかったんでしょうけれどね。

 

 

 

 

 宿に帰った後、引き渡す為に男達を倉庫から取り出しておく。それから少しして、騎士達がやって来て約束の物を置いていった。奴隷に関しては手形で購入していけとの事なのでさっさと購入していく。人間以外の亜人は人間至上主義であるこの国では安く売られているのでその子達を買っていく事にするわ。

 

「いらっしゃいませ」

「奴隷を買いに来たわ。安くしなさい」

 

 恐怖で倒れた商人を優しく()()()()あげる。

 

「かっ、畏まりましたっ!」

 

 威圧を与えて安く買わせて貰う。魔王の威光に逆らえる商人なんていないわ。

 

 アタシが奴隷を買っている間にアニタも女の子とナコト写本を連れて大量の塩を色んな店で売りさばいて現金を確保して来てくれた。

 

「じゃあ、スラムに行きましょう。ナコト写本は奴隷の護衛をしていなさい。アニタは奴隷達に食事を与えて」

「畏まりました」

「イエス、マスター」

 

 女の子を連れて行き、スラムへと入る。

 

「あの、どうするの?」

「孤児を全部引き取るわ。それと貴女達に優しくしてくれた人達もアタシの領地に招待してあげる。そこで住みなさい。ちゃんと住む場所も用意してあるから。それと、この街はもう直ぐ……」

 

 女の子の耳元で囁いてあげると、恐怖にガタガタと震えながらこくこくと頷いてくれた。それから、必死にスラムの子達を説得して回る。邪魔しに来る人達は捕らえて連れて行くことにする。リスキーダイスの生贄になって貰う為に。

 

 

 

 

 翌日、昼頃にスラムの住民と少数の街の人とその家族。それに大量の奴隷達を連れてアタシ達はリーゼンフェルトを目指して出発した。見送りに来た領主と握手してから

 

「あの、こんな大所帯で大丈夫ですか?」

「どうせ途中で呼んだ迎えと合流するわ」

「そうですか」

 

 数時間進むと、前方に三角帽子を被ったどこか疲れた少女、キャロルが現れた。

 

「また随分と連れて来たな」

「いいでしょ、別に」

「まあ、問題ないな。さっさとこの円の中に入ってくれ」

「じゃあ、皆、順番に入って」

 

 巨大な魔法陣みたいなものが描かれており、そこに乗ると人が消えていく。最初こそ警戒していたが、さっさと入って貰う為に威圧して命令すれば楽に入ってくれたわ。

 

 

 ほぼ全ての人を転移させ、残ったのはアタシとキャロルだけだ。キャロルは後始末の為に残らないといけない。

 

「アレは?」

 

 視線の先ではバルテンの街の方から騎兵が駆けて来ている。

 

「招かれざる客ね」

「なら、潰すか」

「任せるわ」

「ああ、さっさといけ」

「ええ」

 

 キャロルが懐に手を入れて赤い水晶の便みたいな物を取り出して、放るとそこから不気味な変な生き物が出て来た。

 

「アルカノイズ共、アレを始末した後は適当に暴れて自壊しろ。いけ」

 

 その生物はキャロルの命令に従って駆けていく。それを見送って転移する。転移先は港町の前で、先に転移した人達が旦那様の指示で動いていた。

 

「ここで住民登録を行う。氏名や年齢、職業、ギフト、スキルを教えて貰う」

 

 住民登録とか、面倒そうね。

 

「ペストも手伝え」

「はいはい」

 

 アタシも一緒になって作業をしていると、キャロルが転移して来た。それから、キャロルにも手伝って貰う。もちろん、アニタや文字が書ける者達もだ。

 

「ちょっとっ、寄ってくんじゃないわよっ!」

「遊んでよー」

「抱っこー」

「ああ、もうっ、鬱陶しい! ほら、これで遊ぶのよ」

 

 ジャンヌが子供達に囲まれてあたふたとしている姿は面白かった。

 

 

 

 

 

 

 



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15話

 

 

 

 

 

 

 バルテン子爵

 

 

 

 

 

 我が領地はラングハイム皇国有数の穀倉地帯の一つであり、豊富な食料がある。それを使って大量の馬を養い、大規模な騎兵隊を組織してある。お蔭で我が騎兵隊はこの皇国有数の部隊である。その騎兵隊を連中に差し向けた訳だ。目的は殲滅して奴隷と金を取り返す事だ。一緒に付いて行った連中は奴隷にしてしまえばいい。しかし、媚薬が効いておればあのまま監禁して手籠めにした後、調教したのだが。

 

「そろそろ報告が来る頃だな」

「そうですね」

 

 高級なワインを飲みながら、吉報を待っていると扉が急に開けられた。

 

「無礼ですよ」

「構わん。どうした?」

「騎兵隊が3騎を残して正体不明のモンスターに襲撃され、全滅したようです!」

「なんだと!?」

「そのモンスターはどうなった?」

「こちらに向かってきているようです! 数は不明っ! 物理攻撃は一切効かないそうです」

「ちっ、直ちに門を閉じて戦闘配備! 魔術師隊を緊急招集!」

「はっ!」

 

 兵士が出て行った後、戦の準備をする。騎兵隊を崩壊させるようなモンスターの討伐となれば戦わねばなるまい。立ち上がり、壁に掛かった大剣を取る。

 

「父上、その手はどうなさいました?」

「む? なんだ、この斑模様は?」

「内出血でしょうか?」

「何処かにぶつけた覚えはないのだが。ふむ……大した事はあるまい」

「わかりました」

 

 支度が完了し、外に出て防壁の上に登る。すると遠くの方から不気味な見たことも無いモンスターがこちらへと向かってきていた。

 

「あれか」

「のようですね。物理攻撃が効かないそうですが……」

「魔術師隊、準備はいいか!」

「「はっ!」」

「詠唱はじめ!」

 

 魔術師隊が魔術を放ち、化け物達へ攻撃する。幸い、すこしダメージを受けているようで、だんだんと削れていっている。この分だとどうにかなりそうだ。

 

「父上、あれを」

「むっ、あそこに居るのは少女か?」

 

 三角帽子を被った少女が遠目に見えた。その少女は謎のモンスターから離れているが、様子をみているようだ。

 

「どちらかわからんが、どちらにしろ先ずは目の前のモンスターだ。魔術が効くといく事は魔術が付加された魔装具ならば問題あるまい」

「おそらくは……」

「ほ、報告を忘れておりました。連中に触れられると身体が砂のようになって崩壊します」

「ちっ、接近戦は無理か」

「しかし、とほうもない数ですね。これは増援を呼んだ方がいいでしょう」

「ああ。ハンターギルドにも要請しておけ」

「畏まりました!」

 

 しかし、こんなモンスター見た事も無いぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 キャロル

 

 

 

 

 

 転送陣の後始末をしてから、見学に来たのだが……予想外にアルカノイズの性能が下がっていた。いや、下がっているというよりはこちらの世界には魔法や魔術がありふれているからだ。つまり、神秘が満ち溢れている。神器であるシンフォギアとまではいかないとしても、アルカノイズに十分ダメージを与えられるようなのだ。故に数を増やして追撃までさせてみたのだ。

 

「このまま攻め滅ぼすのも余裕かと思ったが、既に種は巻かれていたか。ならば、オレが手をくだす必要も無いか。お前達、あの街を封鎖して閉じ込めておけ」

 

 アルカノイズ共に命令し、転送の術式が刻まれた結晶を破壊して転移する。

 

 

 

 

 



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16話

 

 

 住民登録と戸籍の発行。これらは管理する為に便利なものだ。よって、導入した訳なのだが、大変だった。まあ、登録が終わったら、彼らを割り当てた建物に案内して食料を配って、住民に共同の炊事場を使って炊き出しをしてもらう。もっとも、各家にはちゃんと炊事場が用意されている。だが、先ずはここで食事を取って貰う。食事をさせながらこの港町のルールを説明していく。

 

「良くぞ呼び掛けに答え、我が領地に来てくれた。先ずはその事を卿等に感謝しよう。我はこの領地の領主であるコルネリウス・フォン・リーゼンフェルトだ」

 

 演説などまともに出来る訳はないので、我が内部に居る獣殿の因子を活性化させて獣殿のように振る舞わせて貰う。

 

「さて、我は卿等を愛玩動物のように飼いならすつもりは無い。よって、卿等にも住民登録の際に聞いた職業とギフトを精査して働いて貰う。しかし、最初から援助なしでは立ち行かぬであろう。故に一年間を準備期間とし、その間の食事は炊き出しを行う。住居も貸し出そう。こちらは家賃を支払って貰えればそのまま住んでいただいて構わぬ」

 

 準備期間の間に職業訓練を行って貰い、素人から玄人まで成長していただく。炊き出しに行われる食料は狩りと農業で賄えば良い。狩りは森と海で行い、農業はキャロル特製の植物瞬間成長薬を使わせて貰うので供給量は問題無い。

 

「さて、ここに住むにあたって重要な事を説明する。まず一つは犯罪行為は許されぬと心得よ。その為に警邏隊を組織する。警邏隊の隊長はアリエッタだ」

「……よろしく……」

 

 ぬいぐるみを抱いたアリエッタが挨拶をする。子供に皆が不思議がるが、それ以上に背後に控えているハーピィ達に驚いている。妖獣のアリエッタの名に相応しく、ハーピィ達を支配下に置いているので警邏に関しては彼女以上の適任が居ない。

 

「彼女は子供のように見えるが既に成人している。それと見ての通り、優秀なモンスターテイマーである。つまり、空からハーピィ達が卿等を守ってくれる。そして、手紙や簡単な荷物の宅配も行ってくれる」

「……ハーピィ便……報酬は適当な食料……」

「無論、彼らを操ったり事務をしたりする者も募集する」

 

 アリエッタだけでは明らかに人手が足りないからな。実働部隊はモンスターで構わないが、指揮官が必要だ。

 

「さて、軍部は彼女、ジャンヌに担当して貰う」

「ジャンヌです。マスターの命により鍛えてさしあげます。覚悟のある方だけ来てください。意気地の無い方は……しっかりと手取足取ちょ……教育してさしあげます」

 

 軍部に関してはジャンヌに任せる。ハートマン軍曹を超える訓練を施し、とても素晴らしく強靭な軍隊を作ってくれるであろう。この軍部にはキャロルの作った装備も配布予定な上に竜騎士を量産する予定なので皇国一の部隊になるだろう。何せ、竜の魔女が率いる竜騎士隊なのだから。

 

「開発部門はキャロルに担当して貰う。彼女がこの街を作った張本人だ」

「キャロル・マールス・ディーンハイムだ。錬金術によるアイテムの開発などを担当する。開発関係の全部署はオレの支配下に置かれる。やる事は多岐にわたるから、基本的にオレの部下になる者が多いだろう。だから一つだけ言っておく。オレの邪魔をするな、逆らうな。オレはお前達に期待していない。先ずは成果を示せ。それだけだ」

 

 キャロルは相手を信じていない。ほとんど全てを自分一人でやってしまうだろう。実際にやれてしまうのだ。自分自身のクローンを用意し、数百年の時を費やして世界を分解した彼女だからこそ、説得力は絶大だ。

 

「我とペスト、アーデルハイト・リーゼンフェルトで政務を行う。そこで平民であろうが、奴隷であろうが、能力のある者は採用する。逆に能力が無い者は年齢に関係無く採用しない。良い暮らしをしたければ力を示せ」

「給金もちゃんと支払うから安心してちょうだい。それと子供に関してはこちらで預かり、教育を施すわ。昼食はこちらで出すし、子供の養育費や食費もこちらで提供するから心配しないで」

 

 所謂学校を作って徹底的に英才教育を施し、人材を育成する。ペストの望みの為や戦乱の兆しが見え始めている昨今、何れ打って出る必要があるだろう。ましてや、この国の腐敗はかなり進んでいるのだから。

 

「では、今回はこれぐらいとしておこう。今日はこのまま食事をして身体を休めよ。明日は街の探索をして地理を把握するといい。明後日より、本格的に働いて貰う」

「では、解散」

 

 さて、俺はペストを連れて自宅にしているタルタロスへと戻る。城はまだ完成していないからな。

 

 

 

 自宅に戻った俺はとりあえず、ペストの横に居る彼女について質問しよう。彼女は斬魔大聖デモンベインに出て来るキャラクターだ。主人公のライバルにしてラスボスであるマスターテリオンのパートナーにして、 人類誕生以前に古の種族によって書かれたという最古の魔導書の写本、ナコト写本の精霊。性格は物静かで冷酷。マスターテリオンに心酔している一方、彼の興味は主に主人公に向けられているため、常に主人公に嫉妬している。小さくなるマスコット化が出来たり、その名の元ネタであるアレイスター・クロウリーの愛犬にちなんでその忠誠心から忠犬などと呼ばれる。そのせいか、犬耳や尻尾が生える時がある。本人の力もそうだが、何より恐ろしいのは魔導書ナコト写本より召喚される深紅の鬼械神リベル・レギス。その外見は、翼や髑髏を模した頭部と、カッターナイフのように鋭い指先が特徴的である。その装甲は星の爆発に掠り傷を負わない程である。神の影を召喚するとはよくいったものである。あえて言うなら、明らかな過剰戦力である。

 

「で、なんでエセルドレーダが居る」

「この子、エセルドレーダという名なの?」

「そうだ。ナコト写本なんて引いた覚えは……」

「深淵の魔導書とかいうのよ」

「あれか! 確かに深淵だな。とんでもないぐらいの。大丈夫だったのか?」

「まあ、調教してあげたから大丈夫よ」

「そうか。それでどうする?」

「あげるわ」

「マスターっ!? 捨てないでくださいっ、マスター!」

 

 エセルドレーダがショックを受けて縋り付く。

 

「嫌よ。アタシは要らないの。そもそも、貴女は旦那様にあげる予定だったのだし付きまとわれるのも鬱陶しいわ」

「ま、マスター……」

「仮契約は破棄。貴女は要らないのよ」

「そんな……」

 

 ペストは縋り付くエセルドレーダの手を弾いてさっさと出ていってしまう。残された彼女は泣いている。

 

「……わ、わたしは……どうすれば……」

「何も心配するな」

「あっ……」

 

 エセルドレーダを背後から抱きしめる。そのまま耳元で囁いていく。わざわざペストがお膳立てしてくれたのだ。貰う物は貰ってしまおう。

 

「俺がお前のマスターになってやる。安心しろ、俺は絶対にお前を捨てないし、見捨てない。愛してやる」

「……ぁっ、ぁぁ……」

 

 今のエセルドレーダなら、簡単に落ちて俺に依存する。ペストがマスターのままでは俺に嫉妬して不味い事になるかも知れない。このわんこは力だけならとてつもなく危険な存在だからな。

 

「マスター、マスターっ!」

 

 そのままベッドに連れ込んでやる事をやってしまって本契約を結んでおく。本来なら相応しくなくて弾かれたり、乗っ取られたり、精神が崩壊したりするだろうが、そこは対魔力とライハルト力。それに召喚によって出ているのだから、隷属の効果でなんとか契約にこぎつける。

 

 

 

 

 エセルドレーダの身体を堪能させて貰うと同時にたっぷりと可愛がってやって気絶まで追い込んだら、扉が再度開いて顔を真っ赤にして股を擦り合わせながらペストが入って来た。

 

「……んっ、んんっ……終わった……の?」

「ああ」

「なら、アタシも……お願い……盛られたみたいなの……」

「ほう。やり返したか?」

「もちろんよ……黒死病をばら撒いてやったわ……」

 

 寄って来たペストを抱きしめてベッドに移す。それだけで彼女は震えてしまう。

 

「ならいいか」

「……はやく……」

「なら、おねだりしてみろ」

「変態っ、鬼畜っ、ロリコンっ!」

「否定はせん」

「……だ、旦那様ので……気持ち良く……して……」

「愛の言葉が足りんな」

「このっ」

「俺は愛してるぞ」

「……あ、アタシは……あっ、あい……やっぱり無理っ! 恥ずかしすぎるわっ」

「全く、可愛いな」

「ふん!」

 

 そっぽを向くペストの可愛さに負けて、その後たっぷりと可愛がってやると同時に丁度いいので身体を開発していった。

 

 

 

 

 

 翌日、起床してから口付けを交わし、汗を流す為に風呂でペストとエセルドレーダに身体を使って洗って貰う。エセルドレーダはペストを睨んでいたが、ペストは気にしていなかった。

 食事を取る為にペストが台所に行くと、エセルドレーダが俺の膝の上に乗って身体を擦りつけて甘えて来る。アリエッタも来て同じように甘えて来る。

 

「がるるる」

「くぅーん」

 

 こんな感じになってしまったが、二人を均等に撫でる事で解決させた。

 

「喧嘩も嫉妬も駄目だ。ちゃんと可愛がってやるから、わかったな?」

「イエス、マスター」

「む」

 

 そんな話をしていると、キャロルがやって来る。何時もの席はエセルドレーダに取られている。何を思ったのか、真ん中に入って、ぽすっと座ってしまった。

 

「凄い光景ね」

「そうね」

 

 台所からジャンヌとペストが朝食を持って来てくれる。

 

「これは、面白そうね」

「ジャンヌ?」

「ふふ、マスター、あーん」

「「あっ!?」」

「なにやってるのよ?」

「座ってる三人にい・や・が・ら・せ」

「それは……いえ、好き嫌いを無くさせるのにも丁度いいわね。旦那様」

「わかった」

「「っ!?」」

 

 逃げ出そうとする二人を抱きしめる事で逃亡を防ぐ。エセルドレーダはわかっていないが、気にせずそのまま食べさせて貰う。キャロルとアリエッタも我慢して嫌いな物を食べていく。

 

「偉いぞ。頑張ったご褒美にデザートをやろう」

「やった」

「仕方ない……貰ってやる」

「仕方ないのならあげないわよ」

「いる!」

「よしよし」

「むぅ」

 

 キャロルの頭をペストと一緒に撫でるとむくれてしまった。なのでさっさとアイスクリームを出して与えると直に機嫌が直った。

 

「さて、ジャンヌ」

「ええ、行きましょうか」

「マスター?」

「修行だ。付いてくるか?」

「イエス、マスター」

 

 

 

 

 

 外に出て甲板でジャンヌと対峙する。互いの手には刃が潰された槍を持っている。エセルドレーダは端の方で座らせている。

 

「行くぞ」

「ええ、何時でもどうぞ」

 

 踏み込んで槍を横に薙ぐ。振るわれた槍をジャンヌは槍を同じように振るって打ち払って来る。そして、互いに弾かれるが、ジャンヌは回転して柄の部分で殴りかかって来る。それを強引に戻した槍で受け止める。それから互いに槍を振るって弾き合う。どちらも高速で一秒間に一回から二回は振るっている。

 

「これくらいは防ぎますか」

「大分、身体に馴染んできているのでな」

「では、どんどん速度を上げていきますよ」

「ああ」

 

 ジャンヌは片手で軽々と槍を振るって来る。それを弾くと、いつの間にか反対の手で握った槍で振り下ろしてくる。両手を器用に切り替えて放たれる乱舞に、こちらは両手で持って柄の部分で受ける。しかし、防戦一方になってしまう。

 

「体術をもっと意識なさい」

「っ!?」

「さもなければ、こうなります」

 

 槍を持っている手を強打され、槍を落としてしまう。次の瞬間には首元に槍の矛先が添えられている。

 

「マスターっ!?」

「大丈夫だ」

「ちゃんと手加減していますから」

「ああ。もう一度頼む」

「ええ。でも吸収した魂全ての経験を共有するのでしょう。必要かしら?」

「経験を得ても十全に使いこなせるとは言えんからな。それに全ての経験を利用して技術を極めるのも面白い。しかし、山賊程度では魂の質も経験もいまいちだ。いや、犯す経験はそれなりにあって多少は使えるのだがな」

「ろくでもないわね。なら、高名な騎士を狩りに行きましょうか?」

「そこまでは必要あるまい。我が師は目の前に居るのだから」

「私はそこまで槍が強い訳ではないわよ。あくまでも戦場で使っていたあのいけすかない聖女のものですから」

「しかし、それだからこそ得る物はあるのだ。だが、実際に相手が居ないのも問題だ」

 

 練習ではなく、実際に戦って殺す感覚を覚えたい。

 

「マスター、僭越ながら私が力をお貸しします」

「エセルドレーダ?」

「来なさい。ジョゴス」

 

 エセルドレーダが召喚したのはスライムのような不定形の体をしており、その外見通り姿形を自由自在に変えることができる生命体。牙の覗く口や目玉が至るところに付いている。

 

「これならば相手になるでしょう」

「こんな不気味なものをよく扱えるわね」

「使えるものは何でも使う。それがマスターの為になるのなら」

「まあ、よい。行くぞ」

 

 流石に普通の武器では相手を出来ないので聖約・運命の神槍(ロンギヌスランゼ・テスタメント)を呼び出して戦う。ロンギヌススランゼの力はすさまじく、あっさりと倒せてしまった。

 

「これでは駄目だな」

「過剰よね。普通に行きましょうか。私もサポートするわ」

「ああ」

 

 ジャンヌにサポートして貰って、今度は殴り倒す。時間が掛かったが、それなりに戦えるようにはなった。そもそも聖痕を刻んであるジャンヌやペスト達の能力も多少は使えるのだから、戦う方法はいくらでもあるのだから。

 

 

 

「今日の訓練はこれぐらいにしましょう」

 

 二時間ほど戦い、汗もたっぷりとかいたのでジャンヌの言葉で切り上げる。

 

「ああ。ならばシャワーに行くか」

「ええ」

「エセルドレーダも来るか?」

「イエス、マスター」

 

 シャワーを浴びながらジャンヌの汗の匂いなどを堪能しながら、魔力供給を行っておく。エセルドレーダにも同じようにしておく。

 

「相変わらず絶倫ね」

「素敵です、マスター」

 

 つやつやしている二人にげっそりとしている俺。とりあえず、ガチャ産の精力増強ドリンクを飲んで元気を取り戻す。

 

「お昼からどうするの?」

「そうだな。森にアリエッタと散歩に行くつもりだ。狼が欲しいからな」

「マスターと散歩なんてずるい」

「エセルドレーダも連れていってやる」

「イエス、マスター!」

 

 尻尾をだしてパタパタと嬉しそうに振るうエセルドレーダ。完全なわんこだ。

 

「護衛としてジャンヌも頼む」

「ええ、了解よ。キャロル達は誘わないの?」

「キャロルは城の作製で、ペストはリーゼンフェルトの街に迎えに行っているからな」

「そう。食事はどうするの?」

「ペストがお弁当を用意してくれている」

「なら、問題ないわね」

「マスター早く行きましょう」

 

 エセルドレーダが首輪をつけてリードを差し出してくる。リードを受け取って首輪から外す。

 

「マスター?」

 

 悲しそうにするエセルドレーダ。だが、これは駄目だ。

 

「領主である俺がそんな事をすれば流石に問題だからな。」

「認識阻害をすれば大丈夫です。お願いします、マスター」

 

 涙目上目遣いには勝てない。

 

「まあ、それならいいか」

「アリエッタも喜びそうね」

 

 結局、二人に首輪とリードを付けてのお散歩となった。もっとも、四つん這いになろうとしたのは流石に止めたが。森の中では目的の狼を手に入れる為に奥へと進んでいった。いろんなモンスターが出て来たが、アリエッタが気に入って仲間に入れるか、こちらの誘いを拒否したり、アリエッタが気に入らないモンスターは処理して進んでいく。森の奥では大きな白い狼達が居たのでそいつらを捕獲してアリエッタの言う事を聞くようにさせてから帰宅した。

 

 

 

 一ヶ月後、リーゼンフェルトのベルノルトからバルテンの街で疫病が流行り、住民のほとんどが発症し、死に絶えたそうだ。領主までもが危篤だと知らせを受けた。更には不気味なモンスターが街を覆っていて、近づけないそうだ。

 

「怖い事だな」

「本当にそうね」

 

 俺の膝の上に座らせて一緒に読んでいたペストが無表情でそう言った。この病気がこちらまで来ない事を切に願おう。後はモンスターだな。

 

 

 

 



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17話

 

 

 

 ジャンヌ・ダルク〔オルタ〕

 

 

 

 港町から5キロ程離れた場所に私が居る地下施設が有る。そこではこの一ヵ月間、昼夜問わず悲鳴が聞こえる素晴らしい場所になっている。

 

「ちんたら走ってんじゃないわよ蛆虫共っ!」

「「「ひぃっ!?」」」

「返事はどうしたのかしら?」

「「「ひぎゃぁあああああぁあぁぁぁっ!?」」

 

 裸に首輪と錘の手かせ足かせを着けただけでひたすら広いトラックを走っている年齢がバラバラな男女。そいつらに容赦なく地獄の業火で火炙りにしてあげます。まあ、だからこそ裸なのですが。ちなみに連帯責任で纏めて焼いてあげます。

 

「この程度でくたばるとはだらしないですね、この蛆虫共は」

 

 キャロルに作らせた回復薬を満たした風呂にぶち込んであげて、一気に回復させる。隷属の首輪で縛られた彼らは直に出て来て罰として腕立て、スクワットなどを500回してからまた走る事になる。徹底的に肉体を破壊し、強靭な肉体に再生させるこの計画はキャロルの薬による強化も合わさって順調です。睡眠は10分だけ与えて徹底的に扱きましたが、流石に子供には辛かったようですね。いえ、ほぼ全員が虚ろな瞳をしていますが。なにも問題ありませんね。

 

「さて、そろそろ武器を持たせましょうか。全員、並びなさい」

「「「イエス、マイロード」」」

 

 私の命令に並んだ男女の前にキャロルに作らせた武器を置いて、全員に選ばせる。全員、強化人間として基礎は仕上がって来ているのでそれなりに使える。

 

「これに着替えて武器や体術系のギフトを持つ者の動きをトレースなさい」

 

 身体を自動的に操作する仕組みでマリオネットにして、ギフトを持つ連中の動きを他の連中にも徹底的に仕込む。身体が壊れるが、そんなのは修復して更に強靭に作り変えればいいだけなので無視です。100人の戦闘系ギフトを持つ連中を集めただけあり、なんの問題もなく戦闘技術系のギフト持つ者同士で組み手をさせてその動きを他の連中にもトレースさせます。身体が壊れる心地よい音や悲鳴が聞こえてきます。

 

 

 一ヵ月間。更に徹底的な強化を行い技術レベルも及第点となったので、続いて魔術の修行に入らせます。魔力の無い者は肉体を更に鍛えさせ、魔力を吸収したり無効化する魔装具を与えますので問題ありません。

 魔術の訓練は適正を持つ属性に合わせてやる事は違います。火なら地獄の業火で炙り続け、土なら呼吸が出来るようにして埋めます。水なら同じように沈めます。風はキャロルに作って貰った四方八方から強風が吹き荒れる装置の中に突っ込んでおきます。ボロボロになろうが知った事じゃありません。

 

 

 魔術の訓練が終われば次は拷問の訓練です。

 

「貴女達は苦痛と快楽にも耐えられるようになって貰います。私達の情報を漏らされたら困りますからね。ですが、男は問題ないでしょうが、女性は処女を散らすのは可哀想なので他の所で覚えて貰いましょう」

「許してくださいっ!」

「お願いしますっ!」

「誰が意見していいと言ったかしら? 犯させた後、ぶち殺すわよ」

「「申し訳ございません!」」

「ふん。でも、可哀想だから別の方法にしてあげるわ」

 

 私が笑う姿を見て、全員が恐怖に身体を震わせる。子供は失禁までした。失礼ね、全く。

 

「感覚をリンクする魔術があるの。それを使ってたっぷりと感じさせてあげるわ。女はこれ、男はこれね」

 

 そして始まる淫らな宴。寝転んだ者達は痙攣して沢山の体液を吐き出す。感覚の元はわんこのエセルドレーダに媚薬を大量投入してマスターに三日三晩相手をして貰った時のもの。内容は鬼畜凌辱から純愛まで色々。SMプレイや拷問もある。マンネリは駄目だから、私達のも含めてある。男の方はマスターのと女の、両方を与えた。

 少しして蘇生させて、縛って吊るしてむち打ちをしながら再開させる。

 

 四ヶ月目に入れば肉体改造も終わり、戦闘技術もデミサーヴァント並みになって来ました。肉体改造のせいか、美男美女が多くなっているけれど、これはまあよしとしましょう。

 

「ここでの訓練は終わりよ。これより、装備を身に纏って討伐に向かいます。準備なさい」

「「「イエス、マイロード!」」」

 

 用意された黒色の軍服を渡していく。これは聖槍十三騎士団とかいう組織の服を基にしてキャロルが作り上げた魔装具です。武器と合わせて様々強化が施されています。

 

「蛆虫がようやく人らしくなりましたね。では、次は我が軍団に相応しい兵士となりましょう。行きますよ」

 

 逃げられないように完全封鎖していた転移門を通って、外に出ます。出た先はリーゼンフェルトの魔の山脈。ワイバーンだけではなく竜の住まうと言われている場所です。

 

「目的は我等の騎竜となる竜の確保です。見つけ次第、殺さない程度に痛めつけなさい。回復魔術、回復アイテムの使用は認めます。いいですね、もし二ヶ月以内に一人一匹、捕まえられなければ……お仕置きです」

「「「イエス、マイロード!!」」」

「これはサバイバル実習も含んでいます。順位は従えた竜の数と質です。行きなさい」

 

 命を下すと全員が必死に山脈に入っていく。道を駆け上がり、崖をかけ登って行く。早速、山脈の方からワイバーンが飛んできました。しかし、地面から生えた黒い影が瞬く間に拘束して引きずり降ろしました。使用されたのは影の魔術で闇属性ですね。しばらくすると先程のワイバーンに赤髪の少女が乗って飛び立っていきました。

 

「アンナが一番ですか。まあ、闇魔術が得意ですからね。精神支配でもしたのでしょう」

 

 そんな事を思っていると、そのワイバーンに対して地上から爆発の魔術が加えられて墜落しました。放ったのも赤髪でアンナの姉であるエレオノーレ。

 

「なにすんのよっ!」

「奪ったもん勝ちだろ!」

「このっ!」

 

 戦いを始めた二人は回りを破壊していく。最初のワイバーンは余波で死亡しました。戦闘能力はかなり高いのですが、性格に難が有りですね。まあ、どうでもいいですが……私も上に行きましょうか。

 

 

 

 二ヶ月後、頂上に居る私の足元には黒いドラゴンを始め、沢山のドラゴンが横たわっている。私が竜の魔女として支配下に置いたのです。この子達は可愛いペットね。

 

「終わったようね」

 

 大量のワイバーンやドラゴンを連れて来る。

 

「どうやら合格のようね。竜騎士隊は出来そうね」

 

 次は騎乗訓練を行いましょうか。この山脈はドラゴンの大量生産場所としておきましょう。これからどんどん増やしていきましょう。

 

 

 

 




休みが今日で終わりです。


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18話

 

 

 

 

 マスターに報告する為にタルタロスへと帰還し、会議室で円卓を囲んで置かれた席に座りながら成果を発表します。参加者はマスターを始め、ペスト、キャロル、アリエッタ、エセルドレーダね。エセルドレーダはマスターの後ろに控えてお茶くみや書類を渡したりしている。

 

「では、報告を聞こう。アリエッタ」

「……治安維持、良好……悪い人、捕まえた……」

 

 配られた書類には商店から盗みを働いた者が居たようで、追跡に白狼達の鼻を使って犯人を特定し、ハーピィ達と空と地上から連携して捕らえたようね。

 

「ふむ。軽犯罪であれば処刑する訳にもいかんな。罰を与えねばならん」

「鞭打ちかしら?」

「それでは軽いだろう。いっそ、罰として軍隊に放り込んで矯正しようぜ」

 

 ペストの意見は確かに軽いわね。逆にキャロルの意見はいいわね。

 

「任せなさい。しっかりと矯正してあげるわ」

「では、そうしよう。3年の強制超用とする」

 

 玉座に座るマスターの決定で軽犯罪者達の末路が決まりました。良い事ですね、ええ。

 

「次はキャロルだ」

「港町と行政機関が入る城は完成した。残りは内装の一部だけだから、配下の者に任せた。次にオレは軍港の作製に取り掛かっている。場所は5キロ離れた地点だ。ジャンヌに要請されて仮組みだけした施設を本格的に作製する」

「港はいいけれど肝心の船はどうなのよ?」

「え、船?」

「ねえ、まさか船を作れないとか言うんじゃないでしょうね。稀代の錬金術師様がねえ?」

「っ、作れるに決まってるだろ! 誰に物を言っている!」

「本当?」

「ふん、見ていろ。度肝を抜く船を作ってやる!」

 

 キャロルはそう言って出て行きました。

 

「おい……まあ、良いか」

 

 マスターは肘を付き、身体を腕で支えている。その膝の前に跪いたエセルドレーダが膝に頭を乗せている。開いているマスターの手が適当にエセルドレーダの頭を撫でていて、幸せそうに眼を細めている。

 

「ペスト、そちらはどうだ?」

「こちらは問題ないわね。住民の割り振りも終わり、本格的に働いて貰っているから。塩の生産も問題ないし、問題があるとすればキャラバンを組織したいそうよ。でも、護衛が居るからそっちは軍部が整い次第ね」

「それならば出せますよ。小隊を護衛にすれば問題ないでしょう。全員が竜騎士(ドラグーン)ですから」

「それって過剰戦力じゃ……いえ、構わないのだけれど」

「ふむ。では、ジャンヌよ。報告を頼む」

「ええ。預かった全員がデミサーヴァントクラスの戦闘能力を所持し、ワイバーン、またはドラゴンを従えました」

「ほう、それは素晴らしい成果だ」

「この私が関わったのですから、当然よ」

 

 胸を張って答えます。私が鍛え上げたのだから、生半可な戦力じゃありませんよ。ええ、フランスを実際に落とせる程度の戦力はあります。この世界ではどうかわかりませんが。

 

「どんな訓練をしたのだ?」

「そうですね。例えば……」

 

 私は詳しく話していきました。

 

「……」

「……」

「どうしましたか?」

「ギルティ」

「ギルティね」

「……だめ、です……」

「なんでよっ!?」

「いや、やりすぎでしょ」

「うむ。何人壊れた」

「壊れたのはインストールにすればいいじゃない」

「駄目だ。仕方あるまい。ガチャでエリクサーを出すぞ。精神を回復させる」

「そうね。こればかりは仕方ないわ。犯罪者なら構わないのだけれど」

「うむ。して、ジャンヌにもお仕置きをせねばな」

「ちょっと、待ってよ! 本気なのっ!?」

「ええ、もちろん。とりあえず、縛って吊るしましょうか。鞭撃ちからかしら」

 

 私は急いで逃げる。窓を突き破って外に……

 

「令呪を持って命ずる」

「ちょっ、それ反則っ!!」

 

 マスターに捕まった私はお仕置きという名の調教を受けました。鞭打ちから始まり、木馬や焼き印まで色々な事をされたわ。まあ、ちゃんと回復してくれたのだけれどね。

 

 

 

 三日三晩、マスターとの爛れた勤めを終えて外の空気を堪能していると、キャロルがやって来た。

 

「どうだジャンヌ! ちゃんと船が出来たぞ!」

「船、ねえ。いいでしょう、見てあげます」

「ふん、度肝を抜かれるといい!」

 

 キャロルに連れられて港へと移動すると、そこには確かに船と呼べるかも知れない物が有りました。外見は確かに船ね。

 

「ねえ、船は空を飛ばないと思うのだけれど?」

「何を言っているんだ。あのタルタロスは飛んでるじゃないか」

「そうね。あれは陸上でも運用する為でしょう? でも、これは海だけじゃないかしら? なのに海面についてないのだけれど」

「うっ、うるさいっ、うるさいっ! 船には変わらないし、用途は問題ないだろ!」

「まあ、そうね。でも、普通の船を作ればもっと簡単に……」

「知らん。オレはシャトーを初めとした空中に浮かぶ物しか作った事がない」

「まあ、あれはあれで使えそうだからいいわね」

「じゃあ、20隻ほど作ったから好きに使ってくれ」

「作り過ぎでしょ」

「ドラゴンを地上に置くのは問題だからな。基本的に山脈と海上に配置だ。艦載機の扱いにするからな」

「しかたないわね。軍港が出来るまでの我慢ね」

「じゃあ、よろしく。暇だったら漁でもしてくれ」

「それ以前に運用出来るかが問題なのだけれどね」

「錬金術で作ったクローンを操作端末として各艦に配置しているから問題ない。後はそっちで色々としてくれ」

「わかったわ。ありがとう」

「ふん」

 

 これで本格的に働いても大丈夫かしら? まあ、やる事は地図の作製からでしょうね。それが終われば商売を始める港かしら。どちらにしろ、手に入れた資金で奴隷を買って戦力を増やしましょう。訓練内容を変えるつもりはないのだけれど、五月蠅いから少しは手加減してあげましょう。五ヶ月コースを半年コースにするぐらいね。一年コースなんてちんたらやってらんないわ。そうだ、キャロルに精神を記録して元に戻す装置を開発して貰いましょう。それなら問題ないわね。基礎訓練中の記憶なんて別にいらないのだし。そうしましょう。ああ、なんて素晴らしい事かしら。

 

 

 

 

 

 

 



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19話

 

 

 コルネリウス(主人公)

 

 

 

 

 ジャンヌの後処理として許可を貰ったのでガチャを起動する。行う場所は円卓がある玉座だ。リスキーダイスを使いたいが、現在、殺しても良い者は居ないので使えない。領地に引きこもっているのだから仕方あるまい。しかし、資金はペストから一億も引っ張て来たので問題ない。ちなみに許可を貰ったというのはこれだ。財政管理はペストの担当だからだ。俺が管理するとガチャに消えるのは明白だからな。

 さて、玉座に座りながら空想ガチャを起動する。すると、普通のガチャ以外にも新規でガチャが追加されていた。それは作品別ガチャ。この名前からも分かる通り、作品で別けられているようだ。現在、使用できるのは【Dies irae~聖槍十三騎士団~ガチャ】のみだ。

 

「ふむ……このガチャの解放条件はこれか。存外、難しいものだな」

「イエス、マスター。三つの条件は厳しいかと」

 

 わかりやすく言えば、その作品のキャラクターカードを二枚以上所持する事だ。これはラインハルト・ハイドリッヒのインストールカードとキャラクターカードを所持しているので一番目の条件はクリアした。

 二番目の条件は国家すら滅ぼしてしうると言われた魔人と呼ばれる彼らと同等以上の戦闘能力を有した者を三人以上揃える事。こちらはジャンヌ、ペスト、キャロルが居るのでクリアした。

 三番目として聖槍十三騎士団またはそれに類する組織を結成する事。こちらは聖槍十三騎士団の制服とジャンヌに作らせた軍部でクリアだ。

 よって、このガチャが解放されたようだ。

 というか、聖槍十三騎士団にはまともな奴が殆ど居ない。どいつもこいつも狂った連中しか居ない。はっきり言って碌でもない連中だ。下手なのを引いたら、それこそ目も当てられない。メルクリウスとか、カール・クラフトとか。自称吸血鬼とか小物とかもな。

 必要資金は1回1千万。魔結晶では10個。10連も当然ある。初回の10連はEX一枚確定のようだ。魔結晶はモンスター狩りで1060個溜まっている。これは魔石をキャロルの錬金術で魔結晶にして貰った為だ。魔の森のモンスターをほぼ狩り尽す勢いで行った為、もはや魔の森と言えぬ場所となっている。残っているのは食用や使い道に向く者達だけで、それ以外は根絶やしにした。繁殖も管理して個体数の回復にも努めている。魔石も出来る上に食料にもなる。大変便利だ。

 

「マスター、引かないの?」

「引くに決まっておるだろう」

「ん……」

 

 膝の上に頭を乗せているエセルドレーダを撫でてからガチャのボタンを押す。先ず資金は勿体ないので初回の10連は魔結晶で行う。まあ、魔結晶の方が価値が高いだろうが、キャロルの手間賃が掛かっていない分だけ格安だ。

 

「光った」

「ああ」

 

 ゲーム内で見た黄金錬成の魔法陣が展開され、カードが排出される。出て来たのは白、黒、金、白、金、銀、虹、虹、黒、黒。白がノーマルで、黒がレア。銀がSRで金がレジェンド。虹がEXだ。

 

「よもや、EXが連続だと……?」

「何が出たましたか?」

「ふむ……ある意味ではまだましか」

 

 引いたEXは聖槍十三騎士団・黒円卓第八位ルサルカ・シュヴェーゲリン。魔名は魔女の鉄槌(マレウス・マレフィカルム)。聖槍十三騎士団・黒円卓第九位エレオノーレ・フォン・ヴィッテンブルグ。魔名は魔操砲兵(ザミエル・ツェンタウァ)。どちらもインストールカードであり、女性だ。

 ルサルカはラインハルトにすら幸の薄い少女と言わしめたほどの少女だ。魔女ではないのに、村人の嫉妬から魔女にされた上、夫に裏切られて殺されかけたところ、メルクリウスに本当の魔女にされてしまい、十代前半の少女の姿で固定され数百年の時を生きている。拷問が趣味であり、聖遺物はエリザベート・バートリーの拷問器具である。様々な拷問器具を形成でき、拷問器具が1つや2つ破壊された程度ではルサルカ本人への影響は殆どない。 また、彼女は生粋の魔女である為、己の影に他者の魂を込める事で影を怪物と化し、それを操作する魔術、食人影(ナハツェーラー)も持ち合わせている。食人影(ナハツェーラー)と拷問器具を合わせて拷問城の食人影(チェイテ・ハンガリア・ナハツェーラー)は追いつけないなら先に行く者の足を引っ張りたいという彼女の渇望を具現化したもので、 影を踏んだ者の動きを完全に封じる効果がある。本来は喰らったら詰みなのだが、化け物連中を相手にしている為に結構破られている。

 エレオノーレは代々騎士を輩出してきた名門貴族に生まれ、ラインハルトの悪魔的な力に魅せられて、ラインハルトに絶対の忠誠を誓う。その後は魔道へと落ちると、その才を遺憾なく発揮して彼の近衛となる。聖遺物は武装具現型の極大火砲・狩猟の魔王(デア・フライシュッツェ・ザミエル)。ドーラ列車砲を素体とする超巨大な聖遺物で凄まじい火力を誇るが、幅7m・高さ11m・奥行き47mという巨大さ故に形成される事は滅多になく、普段は空中の魔法陣から炎熱の砲弾を発射する活動位階の能力のみを使用する。とはいえ一番弱い活動位階の砲撃ですら、創造位階の相手を一瞬で消し炭にできる威力を有する。 また、この列車砲を運用するには砲の制御のみで1400人程度、砲の護衛や整備などのバックアップを含めると4000人以上もの人員を必要とした。その為、列車砲を運用する兵団を率いる事ができ、拳銃やパンツァーファウストなどの様々な火器を召喚可能。

 

「どうしますか?」

「適当に部隊にインストールするか。もうこのガチャを引く気は無いゆえな」

「どうしてですか?」

「危険すぎるからだ。エレオノーレはともかく、ルサルカは不味い。まあ、拷問官として使えるだろうが」

「監視をすれば問題ないですね」

「うむ。ジャンヌ」

『何よ?』

 

 呼んだら一瞬で念話に返事をした。

 

「優秀そうな女を軍部から数人連れて来てくれ」

『わかったわ』

 

 連れられて来た連中に試した所、インストール出来たのは赤髪のアンナとエレオノーレの姉妹だった。やはり、名前が同じだからか? だが、あちらと違ってアンナは結婚もしていなければした事も無く処女だった。エレオノーレもだが。二人は農村で奴隷狩りにあってバルテンに連れて来られて販売されていたようだ。美少女と美人の姉妹としてセット販売される予定だったようだ。どちらにしろ、幸薄い少女のアンナだった。

 

「二人以外は下がってよい」

「「はっ」」

 

 アンナとエレオノーレを除いて下がらせ、改めて対面する。

 

「意識の混濁はどうだ?」

「はっ。問題ありません」

「ごめん、こっちはありすぎよ。なにこれ? 悲惨な目にしかあってないんですけど。それにこのメルクリウスって奴、絶対にぶっ殺す」

「おい」

「ごめん、お姉ちゃん。こほん。ご主人様、ルサルカ・シュヴェーゲリン。これから未来永劫、忠誠と愛情を誓います」

「愛情もか?」

「はい。ですから、愛人にしてください」

「アンナ」

「私は出来たら一人に尽くしたいの! あの新婚生活をやり直すのよ!」

「申し訳ございません。混濁が激しいようです」

「構わん。彼女のような美少女なら歓迎だ。もちろん、貴公もな」

 

 あえて言うなら、こんな危険な連中を野放しに出来るか。身内にさっさと放り込んでおいた方がいい。ルサルカはともかく、エレオノーレのドーラ砲はまじでやばい。いや、ルサルカもかなりやばいがな。

 

「了解致しました。姉妹共々、お世話になります」

「お前達、マスターと私の邪魔をしたら殺す」

「心得た。肝に銘じておこう」

「面白いっていいたいけれど、死にたくないし了解。これからよろしくね、エセルドレーダちゃん」

「ふん」

「仲良くしろ」

「イエス、マスター。マスターのご命令とあれば」

 

 魔王の次は魔人が手に入った。どんどん戦力を強化しようか。どこまでいけるかはわからないがな。

 

 

 

 

 




あえて言おう。ディレスイレで一番好きなのはルサルカです。攻略ルート、まだー? あんなバッドエンドじゃなくてちゃんとしたものを!

あと、フェイトグランドオーダーで実際にドレイクとジャックが連続出来ました。
海軍にメアリー、諜報部隊にサモンナイトの人と、ジャックちゃんが欲しいですね。


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20話

アスタリアで二万ほど使ってリタちゃんをお出迎え。ヴェイグもでましたが、こちらは確定ガチャででました。


 

 

 さて、エレオノーレはこのまま名前でいいし、アンナはコードネームも兼ねてルサルカでいいか。この二人の配置はどうするか。現状を考えるに俺から魔力供給の関係であまり離れられないジャンヌの代わりに部隊を率いて貰う事になる。ジャンヌは魔力回復のスキルがあるので、単独行動も可能だが、流石に長期間離れたりするのは難しいだろう。なので、しばらくはエレオノーレに部隊を率いて貰おう。彼女ならカードの方が大隊長をしているので、その経験が生かせる。それと彼女は簡易砲撃とドーラを召喚しての爆撃といえる砲撃があるので海軍を率いて貰おう。畑違いかも知れないが、海上でまともに戦力になるのがキャロルくらいだろう。しかし、キャロルは街から出す訳にはいかないし、そもそも俺からあまり離れられない。ペストは傍に居て政務を手伝ってもらわねばならないし、アリエッタも離れられない。キャラクターカードによる召喚の難点はこれだな。まあ、つまり選択肢が彼女しかいない。

 

「エレオノーレ。軍の兵士50人を連れて船に乗ってこの大陸の周辺を探り、海図を作れ。港を見つければ寄港して貿易を行え。ここの事は知らせて構わん」

「はっ。謹んで拝命致します」

「ルサルカは兵士20人と専属商人であるアニタを連れて内陸部に塩を売りに行け。同時に地理の把握と地図の作製を命じる。航空部隊を利用して精度の高い地図を作るのだ」

「任せてくださいな」

「卿等の働きによっては褒美を与える。励め」

「「はっ!」」

 

 軍隊式の敬礼を行った二人を下がらせ、ガチャの続きを行う。スキル・アイテムガチャを行う。あの二人は問題無かったが、絶対に壊れた者が居るはずだからだ。

 

「よし、始めるか」

 

 10連のボタンを押す。大量のガチャが回されて食料アイテムから便利道具を始め、色々なものが出て来る。その中で伝説級アイテムとして変なのが出て来た。

 

 Rシスターのパンティー

 Nリンゴジュース1ケース

 SR長距離無線機

 N菓子パンセット

 NピザLサイズ

 Rハイマジックポーション5個セット。

 Lレイジングハート・エクセリオン

 N茶葉セット

 N大人の玩具一個

 Rパイングミ

 

「よもや、これがレジェンドアイテムか」

「なんなのですか?」

「これはとある白い悪魔と呼ばれた魔導師が使っていた杖でな……」

 

 管理局の白い悪魔こと、高町なのはが使っていたデバイス(杖)がこのレイジングハート・エクセリオン。魔力を溜めておいた弾丸を使用し、瞬間的に使用する魔力を上昇させる効果も持つ。伝説なのかと言われたら、あの世界の人達にしたら伝説かも知れない。なんせ、掘り起こされたアーティファクトみたいな物だった気がするしな。

 

「誰にあげますか??」

「そうだな……高町なのは……なのはと言えばスターライトブレイカーだな。ふむ……ならばライト繋がりでアリエッタに渡して置こう」

「イエス、マスター」

 

 アリエッタに渡せば魔法少女りりかるアリエッタに……なるかも知れない。星の光を集めるスターライトブレイカーではなく、邪悪な光を集めるイービルライトブレイカーになるが。あれ、結構似合っているな。

 

「今度はエセルドレーダも引いてみろ」

「いいのですか?」

「ああ」

 

 エセルドレーダにもガチャをさせて楽しみながらアイテムとスキルを回収していく。数撃てば当たるという事で目的のエリクサーを手に入れ、それをキャロルに薄めて精神回復部分だけを残して貰い、軍部の者達に配布した。

 

 その夜、俺のベッドの布団を捲るとルサルカが侵入しており、舌を出して笑っていたのでそのまま望み通り食べてやった。姉の方はこなかったので、やはり妹は淫乱だった。まあ、俺以外の相手はしないようにきつく命じておいた。

 

 

 

 

 

 数日後、ルサルカがアニタと共に20人の護衛部隊を連れて行商の旅へと出かけて行った。同時にエレオノーレも50人を引き連れて船で海へと旅立った。残った軍人は30名だが、彼らには山と森の警備をお願いしておいて。街の部分はアリエッタの管轄だからな。そんな訳で、こちらは農業と畜産に力を入れていく。ペストが推す小麦の大量生産と俺の推す稲の大量生産とで意見が分かれたのだが、両方する事で合意したので事なきを得た。少し、夫婦喧嘩で地形が一部変わってしまったが、そこは溜池となったのでよしとしよう。

 

 

 二ヶ月後、内政は順調に進み農地開発も最低限自給自足出来るくらいになった。軍港も完成し、船を作るドックも完成した。その成果としてオーバーテクノロジーの船が何隻も作られ、海洋に出て漁を行っている。そこで取れた魚はこの港町やリーゼンフェルトの街へと運ばれて売られて行く。

 

「順調だな」

「そうね。でも、そんな時に限って問題が発生するのよ」

「そういうものか」

 

 フラグという奴だな。

 

「ええ。実際、アタシ達はキャロルの薬でどうにかなっているのだけれど、天候不順で晴れの日が少なく、寒さで作物が育ってないみたい。そのせいで飢饉が発生している所もあるそうよ」

 

 ペストが執務机に向かって椅子に座っている俺の膝の上に座りながら読んでいる手紙の内容を教えてくれる。これはアニタが定期的に送ってくれる物だ。エレオノーレからは長距離無線機で定時連絡が入って来るのでそちらは問題無い。既に3つほど港を発見したそうで貿易も順調との事だ。

 

「しかし、天候不順か。これはいよいよ流行しそうだな」

 

 ペストの柔らかくぷにぷにのほっぺをつついて感触を楽しむ。

 

「なによ?」

「いや、別に?」

「やめなさい」

「いや、気持ち良くてやめられないな」

「いいからやめなさい。いい加減、エセルドレーダの殺気が鬱陶しいわ」

「あー」

 

 隣の部屋へと続く扉が少し開いており、そこからエセルドレーダがこちらを見詰めている。

 

「エセルドレーダ、お前も来い」

「イエスっ、マスターっ!」

 

 大喜びで尻尾を振りながらやって来るエセルドレーダにペストが身体をずらして席を空ける。

 

「失礼します」

 

 エセルドレーダもペストと同じように膝に座り、持って来ていた緑茶と紅茶、手紙を執務机に置く。

 

「その姿で緑茶とか似合わないわね」

「いいじゃないか、好きなんだから」

「そうです。マスターの嗜好が何よりも優先されます」

「はいはい。それで、その手紙は?」

「ああ、なにか慌ててやって来た偉そうにしていた愚か者の伝令が持って来た奴ですね。鬱陶しかったので身の程を弁えさせましたが」

「おい、その伝令はどうした?」

「? マスターの所へ勝手に行こうとしたので餌にしました」

 

 良い事をしたから撫でてください。っと、いうように頭をぐりぐりと擦りつけてくるエセルドレーダ。餌という事は白狼達かハーピィ達が食べたのだろうな。勿体ない。せめてリスキーダイスを振らせてから……いや、待て。大分邪悪に染まって来ているぞ。しっかりと気を持たねば覇王フラグ待った成しではないか。ただでさえ、回りには邪悪な連中ばかりだというのに。

 

「これは不味いわね」

「どうした?」

「バルテン子爵がリーゼンフェルト男爵家に宣戦布告して来たわ」

「ほう。そういえば、バルテンと言えば伝染病に犯された街ではなかったか?」

「ええ、そうよ。どうやらモンスターが消えて外に出られるようになったようね」

「それでどうしていきなり宣戦布告になったんだ?」

「自分達の不衛生な事を棚に上げてこの伝染病がアタシ達のせいだって言ってきたのよ」

「あってるだろ」

「ええ、そうね。だって、気持ち悪かったんだもん。悪い?」

「いいや。むしろ、良くやった」

 

 むすっとしたペストの頭を撫でる。

 

「ま、ますた~」

「エセルドレーダ、こういう手紙はさっさと持ってくるように。わかったか?」

「イエス、マスター。これからは最速でお届けします」

「邪魔だからと言って、殺しては駄目だぞ」

「……御心のままに」

 

 殺す気まんまんだったな。危ない危ない。

 

「それで、続きは?」

「彼らは領主軍を引き連れてこちらに向かってきているわ。といっても領都の方にだけれど」

「こっちには来ないのか。ならば放置だな」

「そうしたいのだけれど、お父様が援軍を寄越してくれって。腐ってもバルテン子爵は武闘派の人だから。国に抗議文を送っても何時返事が来るかわからない訳だし」

「マスター、放置して潰された辺りで助けて逆侵攻を掛けましょう」

「それがベストなのよね。お父様とお母様にはこちらに避難してくるように通達だけしておけばいいし。死んでもアタシが居るからそれでリーゼンフェルト家は旦那様とアタシの物になる」

 

 ペストは売られた事をまだ根に持っているようだ。実際、このまま見捨てて攻め落とされた辺りから援軍に行くのがベストなんだよな。

 

「そういえば逆侵攻をするとどうなる?」

「どう、とは?」

「奪い取った領地だよ」

「それはリーゼンフェルト家の物になるわよ。今回はあちらから言いがかりをつけて仕掛けて来たんだから。表向きわね」

「いや、奪った領地は俺の物になるのか、それともあちら本家の物になるのかだな」

「そうね……奪っただけ損になるわね。絶対、お兄様やお姉様がなんだかんだ言って掠め取っていくわ」

「骨折り損のくたびれ儲けというのは嫌だぞ」

「言い得て妙な言葉ね」

「纏めて滅ぼせばいいかと」

「でも、やっぱり両親だから……」

「なら、愛すべき者達にチャンスをくれてやろうではないか。それを生かし切れなければ次が無くなるだけだ」

 

 全てを愛し、愛するが故に壊す。そういうのもまた一興だな。なんせ、獣殿なのだから。

 

「チャンス?」

「そうだ。こちらが助ける条件として我等が奪い取った領土は我等が貰い受けるという条件を出すのだ。その条件を飲むのならば我等で彼奴の背後を打つと。故にそちらは耐えるだけでよい。とな」

「面白いわね。でも、耐えられるかしら?」

「少数部隊を派遣しよう。派遣するのはアリエッタと……」

 

 扉が急に開き、中に一人の美少女が入って来る。

 

「ルサルカ・シュヴェーゲリン、任務を終えて戻ってきたから報告に来たよ」

「失礼します。売り上げを持ってきました」

 

 ルサルカとアニタが行商より帰還したようだ。あの手紙は前に送られて来た奴を読み返しただけだったのだな。

 

「ルサルカ、早速で悪いが別の任務だ」

「ふえ? ちょっと、少しは休みたいんだけど……」

「リーゼンフェルトの街へと出向いての防衛任務だ。好きに敵兵で遊んでいいぞ。ただし、出来る限り捕虜を取れ。そして、勝つな。あくまでも勝ってるように見せかけて足止めを行え」

「うわぁ、凄い面倒な任務だ~でも、ルサルカちゃんはやっちゃうよー。その任務、大得意だからね!」

「そうか、では頼む」

「でも、一人じゃ寂しいから誰かつけて! あ、エセルドレーダちゃん以外で」

「マスターの下を離れるくらいなら……」

「本当に、お願いね!」

「ああ。では、アリエッタをつける。装備も与えた訳だし、実戦テストを行って貰おう。サポートしてやれ」

「了解! わんこと一緒ならもふもふできるし、全然オッケー! じゃあ、準備してくるね!」

「いや、明日は休日としておけ」

「わ~い、じゃあ、今夜よろしくね。たまってるから」

「ああ」

 

 これで問題ないだろう。なんでジャンヌを送らないかと言うと、どう考えても酷い事になりそうだし、侵攻組でいいだろう。まあ、さっさと手紙を出そう。そう思ったが、既にペストが書き上げてくれていたので本当に出すだけだった。

 

 

 

 

 

 




バルテン子爵が耐えているのは回復魔法やポーションとかのお蔭です。もっとも、イタチごっこですが


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21話

 

 

 

 ルサルカ(アンナ)

 

 

 

 

 ペストとアリエッタを連れてリーゼンフェルトの領都へと馬車三台で移動する。10人ほど軍人を連れての移動だ。今回はドラゴンもワイバーンも無し。

 その間、暇なので旦那様の事について色々と話している。体位とか、どんな感じが好きとか、色々と女子同士じゃないと出来ない赤裸々な事をたっぷりと話して貰う。

 

「アリエッタはどんな体位が好き~?」

「……後ろから、覆いかぶされてするの……好き……」

「ふむふむ。ペストは~?」

「五月蠅いわよ」

「ほらほら、答えなさいよ~ちなみに私は正常位ね」

「……あ、アタシは……座りながらが……って、何言わせるのよ!」

「ほうほう。玩具みたいに動かされるのが好きなのね」

「ちがっ」

「……喘ぎ声……違う……」

「だって」

「……もうこの話は終わり! それよりも戦争の事よ。そっちの方が大事でしょ!」

 

 顔を赤らめながらそっぽを向くペストの頬っぺたをぷにぷにと押して揶揄う。本来ならこんな事は指揮系統的に出来ないけれど、私は閣下であるご主人様の愛人、妾でもあるから出来るのよね。ちなみに、この馬車は私達三人だけしか居ない。御者もおらず、引いているのはアリエッタの配下である白狼達なので聞かれる心配もない。

 

「……駄目、仕事大事、です……」

「二対一ね。さて、領都だけれど、防衛施設はそれなりね。魔の領域が近い事も有って、防壁は高さ10メートルはあるわ」

「……それなり? 最低限だと思うのは気のせい?」

「仕方ないじゃない。お金が無い上に労働力も足りてないのよ。ちなみにうちの防衛施設は異常なくらい堅牢なのよ?」

「まあ、防壁すら私達やドラゴン達が居るから本来なら要らないくらいだしね~」

「ん、邪魔、です」

「まあね」

 

 我が港街(正式名称未定)は湾岸城塞と言った感じで港と一緒に海側も含めて巨大な五角形の高さ20メートルの防壁に包まれているのよね。厚さは500メートルで、内部に入って防衛する為の攻撃手段などが設置されているわ。それに何の材質かは不明なのよね。見た目だけは鉄っぽく見えるんだけれど、明らかに強度がおかしいのよ。それに多数の防御魔術がエンチャントされていて、魔術ではなく法則の書き換えを行っている魔法が使われているわ。その防御力はアハト・アハトの一撃で少しへこむくらい。でも、キャロルがその実験結果を見て怒り狂ってたから更に強化されてそうね。ジャンヌが試そうとした時はキャロルが必死に止めてたのだけれど。でも、アリエッタの言う通りぶっちゃけ邪魔なのよね。ここに集まってる戦力をどうこうできる存在が居るとは思えないのよね。それに防壁が有ると出入り口も限られていて、非常に面倒な場面があるの。まあ、管理上仕方ないのだけれど。ちなみに防壁の上にはドラゴン達の寝床が用意されているので、いざという時には飛び立てるわ。本当、えげつないわね。

 

「足止めは難しいと思うけれど……頼むわ」

「ルサルカちゃんに任せなさ~い。あっ、でも、適度に攻めさせた方がいいのよね?」

「ええ。それにアリエッタの武装のチェックもあるからね」

「頑張る、です」

「なら、やっぱり適度に攻めさせるか。ついでに捕らえたのは餌にして……」

「……性的な意味で?」

「……駄目、です……」

「違うわよ! 私はマレウスじゃないし、一途なんだから。ご主人様以外の相手はお断りよ。だから、食人影(ナハツェーラー)で単純に魂を取り込むだけよ」

「……なら、いい、です……」

「そうね。ああ、でも生きたままがいいわ。リスキーダイスを使ってガチャをさせたいから。それが終わって死んだ所を食べさせたらいいわ」

「面倒ね~。でも、仕方ないか。資源は有効活用しないとね」

「資源、ね」

「?」

「あちゃー、やっぱ感覚が引っ張られてるか~。まあ、おいおい修正していくわ」

「お願いよ」

 

 どうにか性的な事だけは防げているけれど、その分殺人とかの忌避なんて一切ないのよね。むしろ……止めておきましょう。考えたらもっと悪くなりそうだし。幸い、敵以外には適応されないしね。

 

「具体的な内容はお父様と話し合って決めるけれど、打って出る事はないわ」

「常識的に考えて防衛の方が有利だからね~」

「そうよ。それとアタシ達は夜に動くのを基本方針とするわ。こっちの戦力を見られるのは面倒にしかならないのだから」

「それはいいのだけれど、ルサルカちゃんは影がないと戦力半減どころか、十分の一だけど」

「火を焚いて無理矢理影を作りなさい。もしくは拷問器具だけで対処なさい。それぐらいがいいハンデになるでしょう」

「仕方ないか~」

「ああ、それと旦那様からルサルカにプレゼントがあるわよ」

「ふえ? ほっ、本当に本当?」

「ええ」

「やった! なになに?」

「これよ」

「? ルービックキューブ?」

 

 渡されたのはルービックキューブが描かれたスキルカードだった。

 

「ええ、呪いのスキルアイテムみたいよ。ルサルカにぴったりな」

「呪いのアイテムか~。もっと指輪とか期待したのにな~。はぁ、まだ貰えないか~」

「そのうち貰えるでしょ」

「ん、そうよね。よし、ルサルカちゃん、頑張っていくわー! とりあえず、これね」

 

 解析するとこのスキルで現れるルービックキューブは組み替える事で32個の機構に変形し、拷問器具となって相手に襲い掛かるようになっているみたい。私の創造と合わせればかなり使えそうね。

 

「とりあえず、習得しましょ」

「……いいの……?」

「今更呪いがなんだー!ってね。それにご主人様から貰った物を使わないとかありえないって」

「まあ、大丈夫でしょう。呪いくらいどうとでもなるでしょうし」

「そういう事」

 

 実際に習得してみたけれど、この程度の呪いなど大した事がない。たかが数百人程度拷問したくらいで何よ。こっちとら千は軽く超えてるっての。格が違うのよ、格が。

 

「でも、これは良い暇つぶしになりそうね」

 

 ルービックキューブを取り出してガチャガチャと変形させて遊ぶ。

 

「面白そうね」

「……ん……」

「やってみる?」

 

 それから三人で弄り回して遊びながら到着するまで時間を潰すことにする。この馬車も錬金術で作られた振動を無効化してくれるもので見た目は普通だけれど、その実態は超高級馬車というものなので非常に快適だから伸び伸びとやれるわ。

 

 

 

 しばらくしてリーゼンフェルトの街へと到着した私達は早速、領主の館へと進む。領民は恐怖に怯えている。その中には逃げようとしている者達も居るわね。回りの道に座り込んでいる人達も居る。

 

「どうしたの?」

「腹が減って動けねえんだよ……って、これはアーデルハイト様、失礼いたしました」

「気にしないで。それより食事を取ってないというのはどういう事?」

「それが、食料を徴収されて食う物にも困る有様で。食料が欲しければ志願しろって事でさ……」

「酷いわね」

 

 志願兵と徴兵の違いは結構酷い。徴兵は領主の命令なので最低限の給金は与えられる。でも、志願兵にはそんなの無く全部が戦争の終わった後の功績次第という事になるし、武器とかの配布もほぼ無くて自ら持ち込まないといけない。今回の場合は食事だけは用意してくれるみたいだけれど、それは囮の肉壁になれと言っているような物ね。

 

「ルサルカ」

「ペスト、それは駄目よ。軍人として私達の食料に手を付けるのは駄目よ」

 

 ()()()に駄目な事よ。

 

「でも……」

「ん、可愛そう……」

「うっ……」

 

 二人でこっちを見詰めて来るけれど、駄目な物は駄目なのよね。軍事物資の横領とか、かなりやばい事になるし。

 

「駄目ったら、駄目」

「なら、こっちで徴兵するのは……徴兵権が無いわね」

「それに問題になるわ」

「志願でも問題になるはずね。面倒な事に」

「……どうしようも……できない、です……?」

「そうね」

 

 他の住民も含めて暗い顔をするけれど、こればかりは仕方ない。本家の領地なのだから、特に問題がある。

 

「まあ、本家に話を通しての炊き出しなら……」

「無理よ。おそらく、お兄様達がそれすらも徴収するでしょうね……」

 

 ペストが親指の爪を噛みながら考えている。

 

「いいわ。炊き出しをなさい。食料を出すわ」

「ペストっ」

「これは命令よ」

「正気なのかしら?」

「ええ。ここの領民も今は出て行ったとはいえ、私を育ててくれた人達だもの」

「……お姉ちゃん……大丈夫、です?」

「まあ、なるようになるでしょ」

「はぁ~仕方ないわね。炊き出しを行いなさい」

 

 部下である10人に命令を出す。問題行動ではあるのだけれど、ある意味では美味しい展開になるでしょうし。

 

「よろしいので?」

「構わないわ。責任は私とペストで取るから、気にしないでやりなさい」

「「「イエス、マイロード」」」

 

 10人が早速、動き始める。ペストは既に人を集めているようだ。料理は彼らにさせて、配らせるのも彼らにすればいい。こっちの人員は食料の護衛と監視にあてればいい。

 

「ルサルカ」

「ん?」

「感謝するわ」

「本当、貧乏くじよ。この貸しは大きいから……ん?」

 

 帽子を深く被ってそんな事を言っていると、軍服の裾が引っ張られた。そっちを見ると、アリエッタが引っ張っていた。

 

「どうしたの?」

「……責任、アリエッタも……一緒、です……」

「だってさ」

「二人共、ありがとう」

「ペストに後で何をして貰おっか?」

「……お菓子、欲しい、です……」

「だって。よろしくね」

「仕方ないわね。じゃあ、ガチャ産のお菓子を後で食べましょうか」

「ん」

 

 さて、こっちはこれでいいとして……命令違反どころか、横領ね。一応、連絡は入れておきましょうか。

 

「こちら、ルサルカ・シュヴェーゲリン。本部、応答願います。どうぞ」

『こちら、本部。本人確認を完了。内容をどうぞ』

「ご主人様、閣下にお伝えしたい事があるから、繋いで。どうぞ」

『了解しました。少々お待ちください』

「はいはい」

 

 少し待つと、あちらから不機嫌そうな声が聞こえてきた。

 

『今、マスターと楽しい散歩中なのだけれど?』

「エセルドレーダちゃん、ちょーとご主人様に変わってくれる? 直終わるからね」

『……』

「重要な事だから」

『ちっ』

 

 舌打ちされた後、ご主人様が出てくれた。それから炊き出しの事などを報告する。

 

『卿等の心意気は理解した。やってしまった物は仕方あるまい。追加物資も送ろう。だが、罰は与えねばならん。後で三人共お仕置きだ』

「性的な?」

『うむ。ジャンヌと同じようにしっかりと痛めつけてやろう』

「ご褒美ね!」

『何を聞いておる。これは罰だ』

「了解しました! では、任務に戻ります!」

『うむ。というか、事前に連絡を寄越せばそれで……』

 

 通信を切り、ニヤニヤと笑う。計画通り。これで堂々と可愛がってもらえるわ。

 

「何か悪どい顔をしているわね」

「失礼よ。ただ、ご主人様にお仕置きされる時の事を想像しただけよ」

「変態ね。ドМなのかしら?」

「私、ルサルカはご主人様の望む通りにどっちにでもなるだけよ。女の子ってそういうものじゃない? 愛する人の為に変わるんだから」

「あっそ。どうでもいい事よ」

「アリエッタも楽しみでしょ?」

「ん、楽しみ、です」

 

 この子の場合、遊んでもらえると思っているだけでしょうけどね。でも、ご主人様から与えられる物ならなんだって喜びそうね。

 

「そういえば、アリエッタは魔力供給は大丈夫なの?」

「……大丈夫、です……いっぱい、持ってきたから……」

 

 何やら密閉されたドリンクケースを取り出すアリエッタ。中身が何か気になるけれど、もしかしてアレ?

 

 

 

 

 

 さて、炊き出しを行わせている間に私達は領主の館へと向かって来た事を兵士に告げて中に入れて貰う。直に応接室に通され、しばらく待たされる。一時間半ほど待たされて、ようやく扉が開いた。

 

「すまん、待たせたな。報告が途中で止まっていたようで気付くのが遅れた」

「別にいいわ。それよりも、街の事なのだけれど……お父様、アレはどういう事かしら?」

「アレ? すまん、わからん。最初から説明してくれ」

 

 あれ、これは領主自身が知らないのかしら? それとも、別なの?

 

「どういう事だ! そんな事、儂は命令しておらん!」

 

 顔を真っ赤にして怒鳴るペストのお父さんに私はアリエッタの耳を塞いでおく。

 

「だと思った。どうせお兄様達でしょ」

「あの馬鹿共が……いっそ……いや、それどころではないな。すまないな。炊き出しの件は正式に許可しておく。それで戦力の件だが……」

「ええ、先に知らせた()()()()なら、こちらは問題ないわ」

「ああ、()()()()だな。それで構わないが、本当にいいのか?」

 

 何かおかしいわね。何か食い違っている?

 

「ええ、いいわよ」

「待って。契約内容を確認させて」

「君は?」

「私はルサルカ・シュヴェーゲリン。今回の指揮官よ。以後お見知りおきを、おじ様」

 

 スカートをつまんで挨拶をしておく。

 

「アリエッタも」

「……アリエッタ……よろしく、です……」

「小さい娘達ばかりだが、大丈夫なのか?」

「平気よ。かなり強いわよ。それにルサルカは魔術の使い手だし、アリエッタはモンスターテイマーでありながら、魔術師でもあるわ」

「魔術師ならば年齢は関係無いな。どうかよろしく頼む」

 

 どうやら、この人は比較的まともみたいね。ペストが嫌ってるわりには切れないのも納得ね。むしろ、売られた事以外は根に持ってないんでしょうね。

 

「こちらこそ、よろしくお願いします」

「……お願いする、です……」

「うむ。それで契約の件だったな。こちらに届いた内容はこちらがひきつけているうちにそちらが相手側の領地を攻めてくれるという内容だった。間違いないか?」

「ええ」

「報酬は全て我が家に寄付すると書かれていた」

「待って。こちらが送った内容と違うわ。こちらが送ったのは、こちらが手に入れた領地はアタシ達が貰うという内容だもの」

 

 すり替えられていたようね。どうりで、あちら側がこちらを心配しているような感じだった訳ね。

 

「やはりか。こちらもおかしいとは思っていたのだ。そちらばかりが損をしている」

「恐らく、お父様に届く前にすり替えたのでしょうね」

 

 新しい契約書を書いて改めて契約する。

 

「度々すまんな」

「早く処分した方がいいですよ。幸い、継ぐのはペス……アーデルハイト様が居ますし」

「うむ……しかし、だな。あんなのでも血を分けた子供なのだ……それに妻が可愛がっていてな……」

「お父様、民達にとっては良い迷惑よ。早く廃嫡した方がいいわ。ここはアタシと旦那様が継ぐから」

「わかった。妻とも相談して決める」

「そう。まあ、今回の件でしっかりと見ているといいわ。私達がそちらの言い分に従うのは今回までよ。それ以降は義理を果たしたとして、こちらの好きにさせて貰うわ」

 

 話は終わりだとばかりに席を立って部屋を出て行こうとドアノブに手を付けるペストに続いて私達も移動する。

 

「アリス……」

「アタシはお兄様やお姉様のお守は御免だから」

「お前達は血を別けた兄弟姉妹なのだぞ」

「関係ないわ。もう、アタシは……前のアタシとは違うの。民と旦那様だけの為に動くわ。そこに肉親なんて関係ない」

「そうか……あの結婚は間違いだったのだろうか……」

「さあ、知らないわ。でも、力を得られた事は感謝しているわ」

「あれ、ご主人様にはどうなのかな~?」

「っ!? す、少しくらいよ! ほら、行くわよ!」

「はーい。行こうか、アリエッタ」

「ん」

 

 部屋から出て廊下を歩いていると、偉そうに真ん中を歩いて来る男性と女性が居た。こちらを見るなり、ニヤニヤといらつく顔をしている。男の方は私達をいやらしい目でも見て来るし……いっそ、私が殺しちゃおうかな? この程度の警備なら楽勝だし、ばれないようにやれば相手の暗殺者だと思われるし……いえ、それだと危険ね。やはり、外に誘い出して討ち死にを演出させる方がいいわね。それで、妹の方は兄を追って自殺。いいかも知れないわね。

 

「よう、アーデルハイト。元気みたいだな」

「ええ、ここに来るまではいい気分だったわ」

「そう? でも、せいぜい私達の為に頑張ってね」

「貴女達の為にじゃないけれど、頑張るわよ。領地が増えるんだから」

「そうだな」

「ええ。それと、貴女達のどちらかは知らないけれど、貴女達のいたずらにお父様はたいそうお冠よ」

「「っ!?」」

「それじゃあ、ね」

 

 さっさと出て行って街へと戻る。領主の館で泊まらないかと使用人に聞かれたのだけれど、ペストが断って逃げ出した住人の家を徴収して使う事にした。

 

 

 

 

 

 



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22話

 

 

 

 

 徴発した家のベッドで目覚めた私は身体を起こす。すると布団がずれて素肌が曝されると同時に寒さからか、隣から非難めいたうめき声が聞こえる。ベッドから出て布団を私と同じように一糸まとわぬ姿で寝ているペストとアリエッタに掛けなおす。昨日は三人で互いのアソコを舐めあったりして満足してから眠りについた。アリエッタが魔力供給の為に持ち込んでいるご主人様のアレを別けて貰ったりもしてスッキリした。お蔭で衝動的に殺す事は無くなったわね。

 

「今日はなんの下着にしようかな~? 黒い服だから白ね」

 

 白い下着を選んで履いて、ガーダーベルトを設置。白いニーソックスを履いて軍服を着こむ。部屋から出てリビングに持ち込んだ鏡の前で軽く化粧をして身嗜みをチェックして終わり。私の軍服はマレウスと同じ物だから、しっくりとくる。他はちゃんとしてあるんだけどね。

 

「うし、今日もルサルカちゃんは元気! 今日も一日頑張るぞー!」

 

 気合いを入れたら朝食とお弁当の用意をする。といっても、ペストが昨晩に用意してくれているので少しの手間で終わる。パンを焼いて卵とマヨネーズを混ぜてからサンドイッチを手早く作成していく。タマゴサンドにレタスサンド。お肉は駄目。朝から重たいし、脂肪は天敵よ。後は果物と野菜を魔術で粉砕して野菜ジュースを作成。水筒に入れてサンドイッチはバスケットに。これでお弁当は完成。朝食は卵焼きを焼いたトーストに乗せて後はサラダだけ。手早く食べて外に出る。

 

 

 外に出た私は軽く準備運動を行う。あの、地獄の訓練所に居た時、これをしないと大変な事になったから習慣として行っている。まあ、やっても大変な事になるんだけどね。そんな事を考えながら食料を仕舞ってある徴発した家へと向かう。

 

「准尉、おはようございます」

「うん、おはよう。炊き出しはどう?」

 

 部下の人達が挨拶をしてくれる。階級はまだ制度として出来ていないけれど、一応私は准尉で、お姉ちゃんは大隊長という事になっている。100人しか居ないのだから仕方ない。まあ、私は長年の経験値があるし、お姉ちゃんはちゃんと士官学校を卒業した経験もある左官だからね。そのお姉ちゃんが認めた教本が有るので、それで勉強中。ナチスドイツの物だけれど、そこは色々と修正して使用するのよね。

 

「問題ありません。本部からの物資も届いております」

「そう。夜勤だけど何か問題は? 疲労とか大丈夫?」

「疲労は問題ありません。この程度、あそこと比べれば全然ですから」

「まあ、そうよね。瞬間回復が体質として刻まれちゃってるか」

「その分、食事量が多くなりますが……」

「そこは我慢よ」

 

 食事の量は他の人達より増えている。私はマレウスをインストールして融合したから、そんな事は無いけれどね。

 

「それと、報告したい件が二件有ります」

「面倒事?」

「はい。それが、炊き出しでは無く食料配給を希望するという者が居ます。また、騎士の一部が食料を徴発しようと来ましたので追い返しました。それから食料配給を希望する者が増えました」

「そう、わかったわ。食料配給は無しよ。希望する者には理由を聞いて、動けない人が居るという事ならこちらで確認してから持っていって直接本人に渡すようになさい」

「了解です」

「騎士は再三警告しても聞かないなら排除していいわ」

「よろしいので?」

「ええ、ただし殺したり骨を折ったりしないように」

「通達しておきます」

「お願いねー」

 

 炊き出しを作るのを手伝ってから領主館へと作戦会議の為に向かう。ペストはあくまでも交渉の為だし、アリエッタは武装テストの為に着いて来ただけ。軍事に関しては私が代表だしね。

 

 

 

 案内された作戦会議室にはまだ誰も居なかった。言われた通りの時間に来たんだけど、早めに伝えられたようね。でも、これは予想通りである意味ではラッキーな事よね。

 

「だって、調べたい放題だしね」

 

 口元に指をあてて笑う。それから色々と物色していく。見つけた地図とこちらの地図を示し合わせる。圧倒的にこちらの地図の精度が高いけれど、細々と書かれた現地に行かないとわからないような情報も書かれている。それらを見つけた報告書などと吟味して書き写して行く。それと紅茶をポケットから取り出して自分で入れて飲む。この軍服のポケットは倉庫と繋がっているから非常に便利なのよね。この倉庫も個人用と軍事用の場所に繋がっているから、紅茶はもちろん個人用よ。

 

「さて、と」

 

 軍事用からインカムを取り出して耳に装着する。

 

「こちら、ルサルカちゃんですよー。そっちはどんな感じかな~?」

『敵軍の規模は約3365人。誤差は有ります。騎兵は380騎。残りは歩兵ですが、その殆どは農民のようですね。それと……』

「何?」

『遠目ですが、黒い斑模様をした者達が多数見受けられます。中には行軍中に倒れる者もしばしばいるようで、数は更に減ると思われます』

「そうね。それで、倒れた者はどうなっているのかな?」

『放置されていますね』

「そう……それじゃあ、回収しちゃおっか♪」

『よろしいので?』

「ええ。回収して治療を施して貰うわ。そうね、回収は航空部隊を使いましょう。助けた恩義を着せて我が領の領民になって貰いましょう。これから人手は沢山欲しいからね」

『了解しました。続いて進軍速度と地理からそちらへの到着時間は……』

 

 報告を聞いてあちらの地図の上に敵の駒を置いて街にはこちらの駒を配置してから、しばらくゆっくりしていると扉が開いてようやく彼らが入って来た。時間は三時間後くらいか。

 

「もう来ていたのか」

「感心ですわね」

 

 ペストの兄と姉が入って来るなり、そう言うけれど無視して紅茶を飲む。うん、いい味。高いだけあるわねー。

 

「お構いなく、有意義な時間でしたから」

 

 紅茶を飲み終わったので、一応返事をする。

 

「礼儀のなっていない小娘だな……」

「平民ですから、仕方ありませんわお兄様」

「そうだ。流石は……」

「ですが、呑気に会議している時間は無くなったわよ」

「っ!?」

 

 私の言葉で驚くけれど、知った事ではないわね。

 

「どういう事だ?」

「敵軍は直ぐそこまで迫って来ているからよ」

 

 そう言いながら地図を指さす。

 

「残り時間は二時間くらいでしょうね」

「何故そんな事がわかる!」

「何故って、偵察を出しているからに決まっています。まさか、偵察隊も出していなかったの?」

「それは……」

 

 図星のようね。本当、軍事のぐの字も知らないんじゃないかしら?

 

「はぁ……とりあえず、敵軍の規模は約3365人騎兵は380騎。残りは歩兵よ。騎兵だったらすぐに迫って来るわね」

「う、嘘よっ!」

「とりあえず、街の門を閉めましょう」

「待て、それでは打って出れないではないか!」

「打って出るって、正気なの? こっちは防衛戦で相手は数倍の戦力を持っているのよ」

「その為にお前達が居るのだろう! いいから打って出て俺に勝利を寄越せ!」

 

 いや、まあ約3365人くらい訳ないけどね? というか、何。こっちの勝利を自分の手柄にするつもりなの?

 

「本当に打って出るのでいいの?」

「むろんだ!」

「ところで、領主様はどうしたのかしら?」

「体長不良で寝込んでいる。故に次期領主であるこの俺が全軍の指揮を執るのだ!」

「カッコイイですわ、お兄様」

「うむ!」

「はぁ~それじゃあ、さっさと準備なさい。直に出ないと開戦の位置が致命的になるわ」

「何を言っている。門の前の平原でいいではないか」

「ちょっと待ちなさい。森も使わないで勝てるつもりなの?」

「当然だ! お前達は魔の領域の魔物を支配したのであろう。ならば容易かろう!」

「そうよ、指揮官のお兄様に従いなさい!」

「そうだぞ! 俺が総司令官なんだからな。お前も今夜相手をするなら好待遇を……」

「お断りよ。こちらは準備が有るからこれで失礼するわ」

「おい待て!」

「勘違いしているようだから言ってあげる。私は私の部隊の指揮権まで渡したつもりは無いわ。やるのは援軍としての援護だけよ。精々頑張りなさい」

「まっ、待て!?」

 

 さっさと片付けて部屋から出て行く。後ろで何を喚こうが知った事じゃないのよ。

 

「本当、無能な上司って最悪よね。敵より、味方の無能が恐ろしいって本当ね」

 

 まあ、中世くらいならこれが普通なのかも知れないのだけれどね。

 

「さて、整列」

 

 戻った私は部下を食料警備の一人を除いて全員呼び出し、机に広げた地図の前に整列させる。

 

「これから戦争が始まる訳だけれど、4人はアリエッタと共に森に入って敵軍を迂回。背後を取りなさい」

「はっ」

「残り五人は街の警護よ。防壁の上と下から敵兵を一切通しちゃ駄目だからね」

「准尉はどうされるのですか?」

「嫌だけれど、お守かしらね」

「ご愁傷さまです」

「本当よ、まったく……ねぇ、戦場じゃ流れ弾なんてよくある事よね?」

「ありませんね。少なくともこの世界では」

「ちっ」

 

 銃が無いし、魔法だけなのよね。守るのは自分だけにして後は放置がいいかな~? でも、民兵を助けないとペストが五月蠅そうだし……そうか、そっちはペストに守らせればいいのよね。そうしましょう。

 

「うん、そもそも私には守るとか合わないのよね~」

「ですね」

「どう考えても殲滅とか虐殺ですね」

「拷問とかも……」

「へぇ~そんな事言っちゃうんだ?」

「「「失礼致しました。失言です」」」

「まあ、事実だからいいんだけどね。ああ、命令(オーダー)は捕獲だから、殺し過ぎないようにね」

「「「イエス、マイロード!」」」

「あ、24時間勤務で休憩は一人一時間半だから、ご飯はお弁当があるから、はい」

「ありがとうございます」

「戦場にしては休憩、多く無いですか?」

「ぶっちゃけ、こんだけでも余裕だしね。ああ、一応ご主人様、元帥閣下より命令が下るまで殲滅したり逃走に追い込むのは駄目だから、適当に相手をしてあげなさいよ」

「「「イエス、マイロード」」」

 

 本当に面倒よね。殲滅だけなら三十分くらいで終わるんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 



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23話

 日が昇り、正午となるとリーゼンフェルトの街の前にある平原にペストの兄であるドミニク・リーゼンフェルトが率いる防衛隊900人が集まり、1キロくらい先でバルテン子爵軍の約2800人が待ち構えている。人数差、1900人。でも、リーゼンフェルト防衛軍はまともに戦えるのが500人でその中で騎士は200人。では、残り400人は何かと言えば戦えない女や年寄りだ。なんのつもりかと言えば、こちらの人数を誇張させて見せ、更に自らの勇志を見せつける為だそうだ。

 

「ほんと、くっだらないわね~」

「何か言ったか?」

「気のせいじゃないかな~」

 

 さて、これからどうしよっかな? っと、敵軍の中から誰かが出て来たわね。

 

「やあやあ、遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ、

 我こそは、バルテン子爵の次男、ヨーゼフ・フォン・バルテンなり! 卑劣なるリーゼンフェルトの者よ、臆さぬのならば出て来るがよい!」

 

 作法なのか、相手が名のるとドミニクも出ていったわね。ばっかじゃないの? いえ、馬鹿だったわね。

 

「我こそはリーゼンフェルト男爵家、嫡男であるドミニク・フォン・リーゼンフェルトである! 言われも無き無実の罪を着せる傲岸無知なる愚かな侵略者共よ、死にたくなければ即刻立ち去るがよいっ!」

 

 え? そんな事言っちゃうんだ? ブーメランじゃないかしら?

 

「何を言うか! そちらが……」

「馬鹿な事を……」

 

 低レベルな罵り合いが続く中、一つのひらめきが有った。

 

「言葉などいいじゃない。それよりも一騎打ちで決着をつけたらどうかしら?」

「良かろう!」

「ふむ。確かに。では、こちらは……」

「皆っ、大将同士の一騎打ちだって!」

 

 大声で叫ぶと、一気に回りから歓声が上がる。

 

「何を言って……」

「良かろう! 我とて武門のバルテン子爵家に生まれし者よ! その勝負、乗った!」

「なななっ! 何を言っているんだ!」

「む、まさか臆したか! これは片腹痛いわ!」

「まったくよね。ヘタレにもほどがあるわ。へ、た、れ! へ、た、れ!」

「へ、た、れ! へ、た、れ!」

 

 こちらの思惑を理解した部下達も叫び、直に他の人も続いていく。こうなればやるしかないでしょ。

 

「貴様っ、どっちの味方だ!」

「何言ってるのよ、ルサルカちゃんはご主人様であるコルネリウス・フォン・リーゼンフェルト様の味方に決まってるわよ~」

 

 指を唇にあててクスクスと笑う。ドミニクは真っ赤だけれど気にしない。

 

「コルネリウス……確か、シュタインフェルト伯爵家より、無能がリーゼンフェルト家へと婿入りしたと聞いたな」

「あ?」

「なんだ、貴様等はあの無能の穀潰しの手の者か!」

「ちょっと、アンタ……今なんて言ったのかしら?」

「怒ったのか? しかし、仕方ない事よ。なんせギフトを使えぬ者など貴族にあらず、平民にすら劣る畜生よ」

 

 よし、その喧嘩、勝ってやるわ。私の、私達のようやく出会えた愛しい夫を貶(けな)すとか、許さないわ。

 

「おい?」

「黙れ。こいつはアタシが痛めつけて殺す」

「あ、ああ……」

「ふん、小娘が何を吠えるか……」

「何をって、決まってるじゃない。アンタを無残に殺してやるのよ。数百年間の時の中でようやく出会えた人を侮辱されたら、許せる訳ないでしょ?」

「何を言って……」

 

 男を無視して詠唱を開始する。

 

In der Nacht, wo alles schläft(ものみな眠るさ夜中に)

 

 深紅に光り輝く魔法陣が私の回りの地面に展開される。

 

Wie schön, den Meeresboden zu verlassen.(水底を離るることぞうれしけれ)

「貴様っ、魔術師かっ!」

 

 男がわめきながら騎馬に乗って突撃して来る。

 

Ich hebe den Kopf über das Wasser,(水のおもてを頭もて、)Welch Freude, das Spiel der Wasserwellen(波立て遊ぶぞたのしけれ。)

 

 だけど気にしない。

 

  「|Durch die nun zerbrochene Stille, Rufen wir unsere Namen《澄める大気をふるわせて、互に高く呼びかわし》Pechschwarzes Haar wirbelt im Wind(緑なす濡れ髪うちふるい)

 

 魔法陣から黒い影が噴き出し、風圧で私の服の裾を捲りあげる。

 

Welch Freude, sie trocknen zu sehen.(乾かし遊ぶぞたのしけれ!)Briah―(創造)

 

 影が人の形を取り、溢れ出て来て私を守る壁となる。

 

Csejte Ungarn Nachatzehrer(拷問城の食人影)

「この程度の雑兵っ、突破してくれるわっ!」

 

 突撃してくる馬鹿が、影に触れた瞬間。一切の間もなく完全に停止した。

 

「な、なんだこれはっ!?」

「お、おい、周りがおかしいぞ!」

「どうなっている!?」

 

 創造は異界を創り出す。ジャンヌに言わせれば固有結界となるでしょうね。赤く染まった世界に影の食人が動き出す。振れれば止まる。たかだか魂を一つしかもっていない連中ならばよほどの事が無い限り突破される事はない。

 

「誰に喧嘩を売ったか、教えてあげる」

 

 動けなくて恐怖に染まるヨーゼフの頬を撫でる。

 

「ぜ、全軍突撃! 我を助けよっ!」

「あれ、一騎打ちじゃないの? そっか、じゃあ遠慮はいらないわね。私の力ってこっちで強化されてるのよ?」

「何を言って……」

「だって、ねぇ? こっちじゃ人より強い魂を持つ者なんて、沢山いるんだから。こんな風に」

 

 指を鳴らすと、影から人ではなく影で作られた巨大な翼を持つモンスター、ワイバーンやドラゴンが出現する。もちろん、多数の拷問器具が現れて影達がそれらを使って敵軍に襲い掛かる。

 

「ねぇ、もしかして自分はここで死ぬ人間じゃないーなんて思ってる?」

「当たり前だ! 我は貴様等とは違うのだ!」

「そう。それじゃあ死にたくなるまで遊んであげる」

 

 ルービックキューブを身体の中から取り出す。

 

「んっ、んんっ……ふふ、さあお前の力を示しなさい。3000人を拷問し、絶望に染まった魂を美味しく食べちゃいましょう」

 

 多数の拷問器具が出現して襲い掛かる。私は自ら愚か者を拷問する。だけど、その途中で私の世界はーーあっさりと壊れた。

 

「え?」

「あんた、なにしてんの?」

「ペスト。何って……」

 

 周りを見ると、血の海の中に居て目の前には貼り付けにされて、爪を剥がされ、杭が身体の至る所に打ち付けられて()()()()()()ヨーゼフ・フォン・バルテンが居て少し離れた所には血の泉が広がっている。

 

「やり過ぎちゃった。てへ」

「てへじゃないわよ! どうすんのよ、これっ!」

 

 ペストが後ろを指さす。そこには蹲って私を震えながら見詰めてくる兵やリーゼンフェルトの街の人達。

 

「えっと、後悔はしているわ。でも、反省はしていないわね」

「あんたは……」

「まあ、いいじゃない。遅かれ早かれこうなるんだか。どうせ軍は暴力装置よ」

「まあ、そうだけど……それで、コレはどうするの?」

「どうしよっか。どうしてほしい?」

 

 私が声を掛けると、殺してくれ、としか言ってくれない。だから、魂を取り込んで永遠の地獄を苦しんで貰いましょう。

 

「さて、こっちだけれど~」

「ば、化け物めっ! 近寄るんじゃない!」

「あらあら」

「ペスト、はやくその化け物をどうにかしろ!」

「お兄様、ルサルカは化け物じゃないわ」

「いいよ、ペスト。私は化け物。それは事実だからね。それよりもちゃっちゃと残りの処理もしちゃうわ」

「ルサルカがそう言うなら仕方ないわね」

「気にしちゃ負けよ」

 

 それよりも、アリエッタの事を……忘れていたわね。探しに行ってみると、地面に杖でのの字を書いて悲しそうにしているアリエッタを見つけた。他の部下たちも必死に慰めている。

 

「ごめん、ごめんね、アリエッタ!」

「……うぅ……どうせ、アリエッタは……」

「よ、よーし、このままお姉ちゃんと一緒に侵攻しちゃおう! そうしよう!」

「また勝手な事を……」

「いいじゃない。それにこのままだと不味いわよ」

「そうね。私は後処理をしておくから、進みなさい」

「はーい」

 

 即座に魂を回収して目的の場所に移動する。

 

 

 

 しばらくして、敵の防衛拠点が見えて来た。なのでアリエッタがかなり距離があるのに杖を構えた。そして、数秒後には基地を飲み込むほどのクレーターが出現していた。どう考えても火力が過剰すぎる武器ね。

 

 

 

 

 



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24話

 

 大空を支配下に置いたドラゴンに乗り、目的地であるバルテン子爵領を目指している。俺はジャンヌの後ろに乗り、落ちないようにジャンヌの身体をしっかりと抱きしめている。

 

「マスター、こういう時は普通お腹に手を回すんじゃないかしら?」

「そうか? だが、ここの方が心地が良いからな」

「ええ、そうでしょう。そうでしょうとも。何せ、この私の胸を掴んでいるんですからね」

 

 そう、俺はジャンヌの胸を掴んでいる。

 

「落ちても知りませんよ」

「落ちたくらいじゃ死なないだろう」

 

 ラインハルトの力を引き継いで永劫破壊(エイヴィヒカイト)を習得しているので滅多な事では死なない。

 そもそも永劫破壊(エイヴィヒカイト)は聖遺物を人間の手で取り扱うための魔術である。その使用・発動には人間の魂が必要となり、この術を施された者は、魂の回収のために慢性的な殺人衝動に駆られるようになる代わりに、所持している聖遺物を破壊されない限りは不死となる。

 また、人を殺せば殺すほどに魂が聖遺物に回収され、感覚を含む身体能力や防御能力が向上していく 。特に防御能力に関しては、回収した魂の数に比例した霊的装甲を纏うことで肉体の耐久度が格段に向上する。

 対人武器は最大効率で使用しても一撃一殺が限度であるため、何千人もの魂を纏った肉体に傷一つ負わせられない。一発で何千人も殺せる核兵器クラスの武器でなければ話にならず、仮に肉体が損傷・欠損しても、魂を糧に損傷度合いに応じて再生する事も可能である。 故に基本的には聖遺物の使徒は聖遺物の使徒でしか倒せない。

 聖遺物による攻撃は物理的・霊的の両面で防がなければ止められず、その傷は通常の負傷ではなく歴史を重ねることで蓄積された想念という呪いであり、致命的な毒となりうる。霊的装甲及び聖遺物の破壊には、同じ聖遺物が必要不可欠。 ただし、能力の性質で一般人でも倒せるようなデメリットを背負ってしまっている場合はその限りではない。

 この魔人練成とも呼ばれる術理は習得が極めて高難度である。 その困難さは魔人となるにはまず超人であらねばならない。基準を底辺に合せていないと作中で述べられるほど。凡人では最初の活動位階すら制御できずに自滅してしまう可能性が非常に高い。

 能力の強さはそれぞれ活動、形成、創造、流出の四位階が存在する。

 

 永劫破壊の第一位階活動。Assiah(アッシャー)と呼ばれるこれは聖遺物の特性を限定的に使用可能になり、身体能力は常人より遥かに高くなっているものの、聖遺物の力の暴走の危険性が高い。

 

 永劫破壊の第ニ位階形成。名称はYetzirah(イェツラー)であり、術者の魂と融合した聖遺物の武器具現化、及びそれを可能にする状態を指す。人と魔術武装の霊的融合が成される事により、この位階に入ったものは人の範疇から外れた超人となる。

 

 永劫破壊の第三位階創造。名称はBriah(ブリアー)であり、聖遺物を用いた戦闘における必殺技を使用可能になる位階である。この位階に達した術者は、心の底から願う渇望をルールとする異界を作り出す能力を得る。心の底から願うといっても、それは常識などを度外視した狂信の領域であることを要し、この領域に達したものは一見理知的でも、根本的に常識とかけ離れた価値観、常識を持つ者が多い。ようは真性の狂人になれという事だ。もっとも、こちらでは魔術が世界の常識である為にある程度は鍛錬でなれるのであろう。

 更に人が抱く渇望には求道と覇道の類別がされており、どちらの渇望を持つかで創造の能力が求道型と覇道型に大別される。

 求道型は内に向かう渇望であり、~になりたいという渇望。覇道型は外に向かう渇望であり、~~したいといった渇望が該当。ちなみにルサルカは覇道型だ。

 

 永劫破壊の最終位階流出。名称はAtziluth(アティルト)。己が願いによって全世界を塗りつぶす力だ。覇道型の創造位階の能力によって作り上げられた異界と法則を永続的に流れ出させ、世界を塗り替える。

 流れ出した法則は既存の世界法則と激突し、勝利すれば新たな世界法則と化す。ようは旧き神と新しき神の戦いである。 一旦始まってしまった流出は、術者が死ぬまで永久に続き、術者自身でさえも途中で止めたり消したりする事は不可能。これは全能とされる神でさえどうしようもなく、もし流出から解放されたければ、別の流出で塗り替えるしかない。 ただし、流出で世界を変える事ができるのは覇道の渇望をもつ者に限られる。 求道の渇望を持つ者は、自らの内に展開した異界が永劫閉じないようになり、術者自身が世界の理から外れた完全存在となるからだ。

 さて、ここまでの説明でどれだけぶっ壊れた性能であるか理解しただろう。そもそも|永劫破壊≪エイヴィヒカイト≫とは、神になる為の補助装置だ。神が作り出した永劫回帰の法下では、魂は死した瞬間に生を受けた母の胎内へと回帰し、再び同じ生を繰り返す。だが、エイヴィヒカイトにより聖遺物に取り込まれた魂は回帰する事ができなくなる。 本来回帰すべき魂を聖遺物という媒介に溜め込む事により神の下に還る魂の流れを塞き止め、世界を破壊する為の血栓を作り出す事。 それこそがエイヴィヒカイトの真の目的である。魂を吸収蓄えて得られる力はその副次効果である。ちなみにラインハルトは流出まで至っている為にその力を受け継いだ俺も生半可な手段では死なない。それと殺人衝動だが、それはモンスターの魂でも代用できる上にこの世界の人間は少なからず魂を吸収して力を得る術を持っている。それが経験値でありレベルや位階、ランク、クラスと呼ばれる物だ。

 

「全く、マスターは本当に変態ですね。それに趣味も悪い」

「おいおい、趣味も悪いか?」

「ええ、このような贋作な私に構い、近付いて来るのですから。本当に燃えてしまいますよ?」

「ジャンヌに燃やされるのなら、それはそれで構わんかもな」

「正気ですか? 本当に燃やしますよ」

「愛している愛しいジャンヌになら、それも一興だ」

「っ!? 何を馬鹿な事を言ってるんですかっ! ふぐっ!?」

 

 振り向いた顔の赤いジャンヌの唇を奪い、そのまま口内に舌を入れて楽しむ。

 

「この色欲魔は……」

「失敬だな。愛しているという事を直接的に表現したのだが……」

「本当に贋作を愛するなんて、物好きね」

「生まれがどうであれ、ジャンヌはジャンヌだろう。それに代わりはない。元のジャンヌとはまた別だ」

「ふん、勝手になさい。どうせこれから向かうのは戦場ですし、魔力も大事ですからね」

「ああ、たっぷりとやろう」

 

 そのままジャンヌとイチャイチャとドラゴンの上で楽しんだ。車ではなく、ドラゴンで。しかも、地上ではなく空で。刺激が強かったとだけ言っておこう。

 

 

 

 

 ジャンヌ

 

 

 

 物好きで変態なマスターに可愛がって……違う。好き勝手に犯されてから余韻を楽しみつつ……違う。抱きしめられ、身体の中に有る暖かい物に身を委ね、気怠い疲労感の中で身体の隅々まで満たされていく感じがことさら気持ち良く……違う。そうじゃないわ。こんなので懐柔なんてされないんだから。でも、魔力が満たされるのは良い事ね。

 

「しかし、本当に私でよかったの?」

「何がだ?」

「ロリコンマスターの事だから、キャロルとかを連れてくればよかったじゃない」

「誰がロリコンだ」

「あら、否定できないのではないですか?」

「それは……」

「ペスト、キャロル、アリエッタ、ルサルカ」

「ぐっ……」

「私くらいですよね。エレオノーレはまだですし」

「そ、そうだな」

 

 タジタジになっているわね。それと、頭を撫でるくらいで誤魔化されません。

 

「そういえば、ジャンヌは髪を長くできたりするのか?」

「ええ、もちろんです。と、言いたいのですが……まだ力が足りませんね」

「そうか。それではもっと仲良くならねばな」

「ええ。まだ絆は6程度です」

「6か。5は超えているのだな」

「当然です。身体を重ねたのですから……って、何を言わせるんですかっ!」

「いや、勝手にジャンヌが言っただけだろ。まあ、ジャンヌからも愛されていてよかったよ」

「っ!? 愛してなどいません! ええ、愛してなど……っ!?」

「おい、どうした?」

 

 地上から見えた光に私は瞬時に身体を傾けてマスターを抱きかかえつつ、手綱を引っ張る。ドラゴンは必死に悲鳴を上げて身体を傾けながら旋回する。

 

「ギュラァアアアアアアァァッ!」

 

 飛来した光を纏った槍がドラゴンの右翼を貫き、後方へと抜けて行きます。右翼を失ってバランスを崩したドラゴンはそのまま地上へと私達ごと落ちていきます。

 

「話していた通りになりましたね」

「落ちる落ちないの話か。全く、その通りだ」

「マスター」

「わかっている。Yetzirah(イェツラー)

 

 マスターは聖約・運命の神槍(ロンギヌスランゼ・テスタメント)を呼び出し、ドラゴンを突き刺して殺し、魂を回収する。

 

「最後の役に立ちなさい」

 

 私はドラゴンを蹴り飛ばし、攻撃された地上にドラゴンの身体を弾丸として放った。

 

 

 

 

 



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25話

賛否両論あるかも知れないけど、後悔はない。何故なら、やりたかった一つだから。


 

 

 

 ドラゴンから飛び降りた私達はそのまま地上へと()()()いきます。高度の有るこの場所からはバルテン子爵が治める領都が見えます。その領都の前から視線をこちらに戻していくと農業地帯が見えます。その先、近場に戻すと、そこには木で作られた簡易の砦の姿が見えます。そちらには現在、ドラゴンの死体が高速で飛来していっています。どうなるかとても楽しみです。

 

「ジャンヌっ!?」

 

 マスターの声にドラゴンを注視すると、ドラゴンの身体から光る物が見えた。それを槍で打ち払って防ぐ。

 

「っ!?」

 

 光物の正体はドラゴンを貫いて高速で飛来する光を纏っただけの()()()()ね。ただの槍の癖に、ドラゴンを貫いてくるなんてやってくれるわ。

 

「なるほど。この世界の敵は全てが塵芥かと思いましたが、少しは出来るようですね」

「ドラゴンを、()()か。この世界の常識を疑う言葉だな」

「私にとって、ドラゴンとは手足であり、従えるべき者、ペットですから」

「そうか。では、どうする?」

「当然、私のペットを傷物にしてくれた借りは返さないといけませんね」

 

 殺したのは私達ですが、そこは関係有りません。

 

「ふむ……また来たぞ」

 

 敵の砦から飛来してくる槍をマスターが防ぎます。

 

「多少のクールタイムが有るようですが……厄介ですね」

「今度は矢か」

「煉獄の業火に燃えなさい」

 

 数百にも及ぶ大量の雨のような矢を片手を振るって爆炎を放ち、焼き尽くします。しかし、矢の次に大量の槍が飛ばされて来ました。明らかに槍の方が威力が高いです。

 

「ち、厄介だな。ならば……」

「マスターっ!?」

 

 マスターは何を思ったのか、私をお姫様のように抱っこして来た! 凄く嬉し……じゃないっ!

 

「マスター?」

「このまま敵陣に突入するぞ。煉獄の業火を背後に放て」

「正気ですか!?」

「無論」

『いいからマスターの言う通りになさい。さもないと、殺すわよ』

 

 マスターの腰に下げられた本から不快な声が聞こえてくるわ。

 

「はっ、やれるものならやってみなさい! アンタは羨ましいだけでしょ、この駄本。最初っからずっと殺気を放ちやがって、鬱陶しいのよ!」

『上等よ』

「やめぬか」

「「しかし、マスター!」」

「二度は言わぬ。それよりも急げ。エセルドレーダに防御を任せる」

「……ええ、わかったわ……」

「イエス、マスター」

 

 マスターに抱き着き、両手を後ろにやって煉獄の業火で敵陣に向かって加速する。

 

『ン・カイの闇よ、マスターを守りなさい。ついでにこの女も』

 

 前方には禍々しい障壁みたいなのが展開されて私達を援護してくれる。

 

「ジャンヌ、もっと加速せよ」

「どうなっても知らないわよ!」

「構わぬ」

「なら、全力よ!」

 

 身体を起こして首に抱き着きながら、背後に向かって炎を全力で放つ。加速を得る中、マスターは私のお尻に手をやって支え、空いた片方の手で槍を構えた。

 

「槍の返礼には槍であろう。行け、スピア・ザ・ロンギヌスランゼ・テスタメント」

 

 そう言って聖約・運命の神槍(ロンギヌスランゼ・テスタメント)を打ん投げた。聖遺物でマスターの命のはずなのだけれど。

 

 

 聖約・運命の神槍(ロンギヌスランゼ・テスタメント)は敵陣のど真ん中に爆音と共に命中し、丘が消し飛んで巨大なクレーターを作り上げたわね。その槍の上にマスターが降り立って周りを見渡す。

 

「ふむ。やはり、威力過多であったか」

「まあ、当然ですね」

『流石はマスターです』

 

 砂煙が張れて視界が回復すると、先の方に兵士の集団が居る事がわかった。驚いた事に殆どが軽傷ね。その中には無傷の奴まで居る。

 

「ほぅ、我が一撃を受けて無事とは驚いたぞ」

 

 マスターが身体を傾け、地面に刺さった聖約・運命の神槍(ロンギヌスランゼ・テスタメント)を引き抜いて手に持つと同時に私も降ろされる。少し残念ね。いえ、そんな事はありません。せいせいします。ええ。本当ですよ。決して嘘ではありません!

 

「それはこちらの台詞だ」

 

 彼方側から一目で強力なマジックアイテムだとわかるような鎧を着た銀髪の青年騎士と青い長髪の剣士の少女。その二人を引き連れた初老を迎えたような鎧を着た男性がこちらにやって来ているわ。

 

「我が名はルーカス・フォン・バルテンである! 貴公は何者だ!」

「私はコルネリウス・フォン・リーゼンフェルトだ。つまり、卿等の敵である」

「はははははっ! これが無能と言われていたシュタインフェルトの倅か!」

「むっ」

 

 無能と言われた上に片手を頭に当てて大笑いする男に槍を握る力が増す。

 

『殺しましょう。今すぐ塵も残さずに……』

「珍しく気が合いますね。ええ、塵も残さず消失させましょう」

 

 私達も笑いながら魔力を高めていく。それに伴い、後ろの騎士と剣士も武器を構える。

 

「ヒポグリフがグリフォンを産んだか。これは面白い」

「そうか。しかし、我等にはどうでも良い話である。投降されよ。さすれば命だけは助けて差し上げよう」

「断る!」

「そうか。では……」

「だが、この二人を降せば考えてやらんでもない」

「ほう……」

「2対2で勝負しようではないか。勝利した方が相手の条件を飲むという事でな」

「良かろう」

「「マスター!?」」

 

 そんな事をせずとも、私達が滅ぼしてやるのに。

 

「被害を出さない方がありがたいのだ」

「ちっ。ならば、私が出ます」

「もとよりそのつもりだ」

『マスター、私も出ます!』

「そうか」

 

 エセルドレーダも出るみたいね。

 

「良かろう。そちらの提案を飲もう。ただし、3対3でならだ」

 

 本の姿から人の姿に変わったエセルドレーダに一瞬驚きの表情を浮かべるが直に真剣な表情に戻った。

 

「精霊か……構わんぞ。では、ルーカスよ、行け」

「はい、父上」

 

 出て来たのは走竜と呼ばれるドラゴンに騎乗した青年の騎士。その手には槍が握られていて、私達を襲ったのはおそらくこいつでしょう。

 

「では……」

「マスター、私が出ます。よろしいですね?」

「良かろう。任せるぞ」

「ええ、任せて」

「負けたら承知しないわよ」

「黙って見てなさい」

「戦闘を始める前に場所を変えぬか?」

「それもそうであるな」

 

 移動してから草原で互いに対峙する。

 

「私はルーカス。ルーカス・フォン・バルテンだ」

「特別に教えてあげる。私の名はジャンヌ。ジャンヌ・ダルクよ」

「馬鹿な……」

 

 こいつ、私を知っているのかしら? まあ、どうでも良い事ね。

 

「始めっ!」

「ドラゴンハウリング!」

「GYRUUUUUUUUUUUUU!!」

 

 即座に咆哮を上げさせ、聞こえる者に恐怖を与えて動けなくしてから駆け抜けて来るルーカス。

 

「無駄よ」

 

 幻影の槍を放ち、串刺しにしてやる。

 

「コンセントレイト、オーラブレイド、パリィング!」

 

 片手に一つずつ持った槍を高速で振るって槍を破壊する。

 

「ソニックウェーブ!」

 

 更に衝撃波を放って来る。それを槍で吹き飛ばし、煉獄の業火で作り出した弾丸を放つ。

 

「くっ、ウォータドラゴンブレス!」

 

 ドラゴンから強力な凍てつく吐息を放ち、炎を消火していく。水蒸気が発生し、視界が埋め尽くされる。その中から槍が飛んでくる。

 

「無駄よ」

 

 槍を弾くと一瞬で視界が切り替わり、いつの間にかルーカスが目の前に居た。

 

「なんでっ!?」

「ヘッドクラッシュ、ジョイントビート、スパイラルピアース、ハンドレッドスピア!」

 

 驚く暇も無く、的確に急所を狙って来る回転させて貫通力を強化した槍の連続突きを槍でさばいていく。後ろに飛ぶ事で距離を取る。

 

「逃がさんっ!!」

「ちぃっ!」

「宝具など使わせんぞっ!」

「やっぱり、こっちを知ってるわねっ!」

「無論! ブランディッシュスピア、ハンドレッドスピア!」

 

 スキルの重ね掛けにより、一撃一撃の攻撃範囲が一気に広がった上で連続攻撃を仕掛けて来る。避ける事も防ぐ事も崩された体勢では不可能でダメージを負っていく。

 

「なにやってるの!」

「ジャンヌ!」

 

 マスターの目の前で醜態を晒す? あり得ない。この私がよ? もう、許さない。

 

「その程度の攻撃でこの私を抜けると思うなぁっ!!」

「なにっ!?」

 

 攻撃を自らの身体で受け止め、槍の軌道を見極めて脇と両手で握り絞めて防ぐ。ダメージ? そんなもの、ルーラーの特性も持っている私には大した事はありません。痛いですけれど。ええ、痛いですけれど!

 

「ちぃっ!?」

 

 相手は槍を手放し、即座に別の槍を()()しようとする。それに対してやる事など一つです。

 

「報復の時は来た!」

「っ!?」

 

 相手の槍を捨て、再度呼び出した自らの旗を地面に突き刺す。

 

「これは憎悪によって磨かれた我が魂の咆哮……吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)!」

 

 周囲の怨念と聖痕を通してマスターの中にある魂を燃やして魔力変換して焚きつけ、相手の不正や汚濁、独善を骨の髄まで燃やし尽くす。

 

「ぐっ、しまったっ!」

 

 ルーカスの足元から魔法陣が現れ、炎が噴き出して火柱を形成し焼き尽くしていく。

 

「これで私の勝ちでしょうが、まだね」

 

 そのまま炎の中に突撃して槍を突き刺す。しかし、変な手ごたえがしたわね。

 

「っ!?」

 

 即座に下がった場所に剣が振り下ろされる。

 

「まだだ」

 

 炎の中から出て来たのは深紅の鎧を身に纏った氷の剣を片手に一つずつ持つルーカス。

 

「ちっ、しぶといわね」

「火属性耐性が100%でなければ死んでいた」

「出鱈目ね」

「そちらもだ、サーヴァント」

「これは少し不味いわね」

「ならば降参するのだな」

「誰が……するもんですか! なめんじゃないわよ!」

 

 瞬時に接近して槍を振るう。相手は剣で防いでくる。

 

「ツーハンドクイッケン」

「ちぃっ!?」

 

 スキルを使った瞬間。二本の剣速が数倍の速度となり、一秒間に何度も斬りかかってくる。それに対して、幻影の黒槍を召喚して対応するしかない。こちらも剣を抜いて槍を完全に盾にしながら剣と幻影の黒槍で攻撃する。

 

「バーサーク、イグニッションブレイク!」

 

 地面に叩き付けられた剣によって爆発が起きて吹き飛ばされる。空中で回転しながら幻影の黒槍を放ち、自身は体勢を整えて着地する。

 

「く……」

「手こずっているようね」

「五月蠅いわよ! 相性が悪いのよ!」

「ジャンヌ。無理は止めてくれ。最優先はジャンヌの身の優先だ」

「……ざ……」

「ジャンヌ?」

「ざけんじゃないわよぉぉぉぉっ!! もう怒った! 絶対にぶっ殺す!」

「おい!?」

 

 ふふふ、そうよ。絶対に殺してやる。だいたい、この私が手段を選んで正々堂々とやってやる必要なんてないじゃない。

 

「ふふふ、そう、私は竜の魔女よ」

「何を言っている?」

 

 掌を差し出し、マスターから魔力を、魂を貰っていく。

 

「呼んであげるわ。今すぐ来なさい! ええ、今すぐ来なさい! ファフニール!」

「「おいっ!?」」

 

 聖杯を使う代わりに魂を直接魔力に変換して召喚魔法を行使してやる。上空に巨大な魔法陣が展開され、黒き竜が召喚される。

 

「ちぃっ!?」

「そうよ、炎が封じられたなら物理で殴り殺したらいいのよね!」

「た、確かに……真理だな」

 

 舐めて貰ったら困るわ。これはただの時間稼ぎ。本気でやってやるんだから。そう、オルレアンを落とした時のように!

 

「物理で殴ると言っておきながら距離を取っただと!?」

 

 距離を取った私は地面に手をつく。

 

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が大師シュバインオーグ。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

「待て、貴様はサーヴァントだろう!」

「知った事ですか! 閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)!」

「くそ、させるか!」

「お兄様っ!」

「ルーカス!」

 

 上の連中もファフニールの召喚に呆然としていたのが回復したみたいね。更に召喚しようとしている事で危機感が芽生えたのでしょう。ですが、もう遅い。

 

「繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する―――――Anfang(セット)」

 

「おい、これって間接的に俺が召喚する事になるのか?」

「イエス、マスター。私もあの女もマスターの使い魔みたいな者ですので」

「告げる。告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の……いえ、私の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。誓いを此処に。我は常世総ての悪と成る者、我は常世総ての憎悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、我が守り手よ―――!」

 

 ファフニールが倒され、地面に横たわる。私は彼女を撫でてあげる。

 

「時間稼ぎご苦労様でした。事は成りました」

「しまったっ!?」

 

 駆けて来るルーカス。だけど、もう遅い。

 

「しかし、ジャンヌの守り手か……贋作英霊か?」

「え? ちょ、ちょっとたんまっ!」

 

 マスターの言葉で嫌な予感がして、急いで召喚を解除しようとする。だけれど、無常にも召喚は成ってしまった。

 

「食らえっ!」

 

 私に振るわれたルーカスの剣は()()()()()()()()()()()()()()()()()で受け止められた。その大槍を片手で軽々と振り回して相手を吹き飛ばす。

 

「やっぱりか」

 

 しかも、直に私を抱きしめてきた。

 

「うわぁ……やっぱりこいつか……」

「私の愛するお姉様に何をしようとしているのかしら? 殺すわよ。さあ、お姉様。あんな奴は放っておいて、私と良い事をしましょう」

「い・や・よ! 鬱陶しいから離れなさい!」

「あふんっ!? はぁはぁっ、いいですっ、愛しい人(ご主人様)! もっと、もっと詰ってください! 私の愛する方は、お姉様だけです! お姉様の愛を全身で受け止めます!」

「場所と時を考えなさい、この変態女! だいたいっ、そういう! 愛は! 求めて! ない! っつーの!」

 

 無理矢理引きはがしてやる。本当になんでこうなったのかしら? ただ、私は同性でフランクな友達がほしかっただけなのに……いえ、違うわ。配下に一人くらい女がいてもいいって思っただけよ! ええ、そうよ! こんなのなんて、絶対に求めてないんだから!

 

「そんな……変態だなんて……情熱的すぎます……ぽっ」

「ああ、もう、鬱陶しい! 後で虐めてあげるから、さっさとアイツを倒すわよ!」

 

 蹴り飛ばし、転がしてやる。

 

「ひゃん!? わかりました、お姉様っ!」

「火はだめだから物理で殴り殺すわよ、ブリュンヒルデ」

「畏まりました。しかし、うらやましいですね!」

「もうやだ……絶対後で送還してやるっ!」

 

 立ち上がったド変態の女、ブリュンヒルデと共に殺しに掛かる。

 

 

 

 

 

 




あのイベントはチョー楽しかった。ジャンヌ・ダルク・オルタを5万くらいでジャックとドレイクと一緒にお出迎え出来た。こちらに居るジャンヌとジャンヌ・オルタを愛でながらジャンヌ・オルタ対ジャンヌ・オルタをやりました。
しかし、おかしいぞ! 最初はペストにジャックを召喚させるはずだったのに。それより早く、ジャンヌ・オルタがブリュンヒルデを召喚しちゃったよ!


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26話

 

 

 

 ブリュンヒルデと共にルーカスに襲い掛かる。ブリュンヒルデなら、こいつの火属性耐性も無視できるはず。

 

「くっ、これは……」

 

 流石に左右からの攻撃には対応できないでしょう。

 

「そこまでだ! 勝者、ルーカス!」

「え? ちょっと、なんでよ!」

 

 勝者の宣言に抗議する。私は何の問題も起こしていないわよ?

 

「これは一対一だ。一対二になった時点でルーカスの勝利だ」

「召喚したんだからなんの問題もないじゃない!」

「そうです! お姉様の言う通りです!」

「しかし、そこの精霊を認めたのだから召喚は認められぬな」

「マスターっ!?」

「良い。下がれ」

「くっ……召喚して損だらけじゃない!」

「そんなっ!? あ、あんまりです……うぅ……」

 

 泣き崩れるブリュンヒルデを無視してマスターの元に戻る。

 

「マスター……」

「気にするな。相性が悪かっただけだ」

 

 マスターは私を抱きしめて頭を撫でてくれる。

 

「ふんっ」

 

 私はそっぽを向いてされるがままになる。

 

「きぃーっ!? お姉様にそのような事を……羨ましいです! 妬ましいです!」

「負け犬が……」

「なんですってっ!? 誰が負け犬よ!」

「喧嘩は寄せ。それよりもブリュンヒルデをどうするかだ」

「当然、送還します」

「お姉様っ!? 何故ですか!」

「だって、鬱陶しいし」

「そんなっ!?」

「戦力にはなるのだ。このまま維持しておく」

「正気ですか!? 私は嫌よ!」

「マスター、流石に危険すぎます」

「問題無い。ブリュンヒルデ」

「なんですか? さっさとお姉様から離れてください。そこは私の席です」

「俺はジャンヌのマスターだ。故にお前のマスターでもある。だから、ブリュンヒルデも俺のモノになって貰おう」

「嫌です」

「対価として偶にジャンヌと一緒に抱いてやろう」

「ちょっと!?」

 

 絶対にろくなことにならないわよ! 特に私が酷い目にあわされるわ!

 

「わかりました。マスターのものになりましょう」

「アンタもあっさり納得してんじゃないわよ!」

「だって、お姉様との一夜ですよ! それ以上に素晴らしものなどこの世にはありません! ええ、ありませんとも!」

「もう嫌っ!」

 

 私に抱き着こうとしてくるブリュンヒルデから逃れる為にマスターに抱き着いて後ろに隠れる。

 

「やれやれ……ブリュンヒルデも少しは抑えろ。嫌われるぞ」

「仕方ありませんね」

「もうよいか? 続きを始めるぞ」

「ああ、待たせたな。エセルドレーダ」

「イエス、マスター」

 

 エセルドレーダがマスターの命令を受けて中央に進み出ると、相手側からも青い長髪の少女が出て来たわ。

 

「セニア、頼むぞ」

「任せてくれ」

 

 両者は私達の中央で少し距離を開いて対峙する。本来なら前衛と魔術師の戦いでは距離が近いから前衛が有利なんだけど、アイツはムカつくけど桁違いに強いのよね。

 

「マスターの敵は殲滅します」

 

 膨大な魔力を迸らせ、胸の辺りまで上げた掌の上にエセルドレーダの本体である魔導書が現れる。

 

「これは……不味いかな」

 

 彼女の額に汗が流れる。でも、戦うつもりはあるのか、剣を抜き構える。すると、彼女の周りから禍々しいオーラが出現する。アレは私と同じような存在ね。怨霊や怨念から生まれた存在。

 

「来なさい。格の違いというものを教えてあげる」

「行くぞ。ツーハンドクイッケン、ブレイクシールド、テレポート」

 

 一瞬で剣士の少女が掻き消え、エセルドレーダの背後に転移して回転させた突きを放つ。

 

「スパイラルピアース、バッシュ!」

 

 スキルの重ね掛けを行い、火力を増加させてからの一撃は無防備なエセルドレーダの背中へと命中するはずだった。しかし、いつの間にか出現した闇の壁が剣を()()()。そう、喰らう。突き出された剣はえぐり取られて壁が触れた部分が消失した。

 

「消えたのは驚いたけれど、それだけね」

「くっ!?」

 

 闇の壁から無数の弾幕が放たれ、相手の少女は瞬時にテレポートで逃げる。

 

「無駄よ。私からは逃げられない」

 

 エセルドレーダが放つ闇が広範囲に広がって、その上に有る物全てを飲み込んでいく。ルサルカが使う食人影(ナハツェーラー)の上位互換と言った感じの魔術……いえ、もう彼女のは魔法の領域ね。

 

「くそっ!」

 

 転移した先の地面は闇で覆われていて、連続で逃げるしかない。アレはもの凄く高い重力の塊みたいだし、危険ね。ひょっとしたら、ブラックホールかも知れないわね? しかし、その闇から触手みたいなのが出てきていて、空中すら安全じゃなくなってきているわ。

 

「エセルドレーダ、殺すな」

「イエス、マスター」

 

 闇が変化して触手のような物が実体を持つようになり、数が一気に増えた。

 

「お姉様、アイツやばいんですけど……」

「でしょうね」

「いえ、神格というか、邪神というか、そんな類の存在なんですけど……」

「私達にお似合いじゃない」

「流石はお姉様です!」

 

 マスターが信じているようですし、大丈夫でしょう。なにも心配する事はないわ。きっと、多分。

 

「ABRAHADABRA 死に雷の洗礼を」

 

 魔導書を持ったエセルドレーダがそう言うと、辺り一帯に強力な落雷が降り注ぐ。

 

「ふむ」

 

 マスターが槍でこちらに落ちて来る雷を薙ぎ払ってくれる。

 

「ちょっと、こっちまで来てるんだけど!」

 

 マスターの後ろから抗議してやる。

 

「ちっ」

 

 そしたら舌打ちしてきやがった。

 

「エセルドレーダ」

「申し訳ございません。わざとです」

「わざとですって!」

「当然です。コントロール出来ないほど愚かではありません」

「ぐぎぎぎぎ」

「お姉様になんて事を……」

「エセルドレーダ。仲良くしろ。それとさっさと片付けろ」

「イエス、マスター。ハイパーボリア・ゼロドライブ」

 

 瞬時に周りの温度を下げ、敵の行動を阻害する。いえ、それ以前にあんなの喰らったら即死よね。

 

「終わりです」

 

 片手に水色の光を纏わせて、転移して来る空中に先回りしたエセルドレーダが殴りに掛かる。その瞬間、どこからともなく矢が撃ち込まれた。それはエセルドレーダの自動防御能力か何かは知らないけれど、闇が勝ってに防いだ。

 

「そこですね」

 

 無数に撃ち込まれて来る矢に向かって片手を振るうエセルドレーダ。それによって発生した闇が矢を飲み込んで放った者が居るであろう場所まで纏めて地面を削り取っていく。

 

「逃げて、セニア」

「姉さんっ!?」

 

 現れたのは金髪の十代後半ぐらいの少女。お腹を出した衣装の上にミニスカートという露出の多い恰好ね。

 

「しかし、姉妹ね」

「私達と同じですね!」

「ち・が・う!」

 

 エセルドレーダは一旦、距離を取ったわね。

 

「何をしている! お前には待機を命じたはずだぞ!」

 

 ルーカスが声を荒げて怒っている。

 

「何って殺されそうだった妹を助けただけよ」

「これで、試合は……」

「よいではないか。まだ……」

 

 あちらが何かを言う前にマスターが念話を使ってか、指示を出したみたい。

 

「エセルドレーダ」

「イエス、マスター。ン・カイの闇よ」

「っ!? 逃げなさいセニア!!」

「姉さんっ!!」

 

 膨大な量に膨れ上がった闇はまるで津波のように彼女達を飲み込もうとする。少女はどうにかセニアだけを吹き飛ばした。そして、自身は闇に飲まれてそのまま地面に溶け込むように消えていく。

 

「此度はそちらの反則負けだな」

「そ、そうだが……セシルは何処に……」

「飲み込んだわ。生きているかどうかはわからないわね」

「さて、その事はもうよかろう。彼女の方から襲い掛かってきたのだから。そちらが何かを言うなら、こちらはドラゴンの事を追及せねばならぬのでな」

「よかろう」

「父上!」

「ルーカス、仕方あるまい。次は儂が出る」

「ふ、ご老体に相手が務まるか?」

「無論よ! 全力で来るがいい!」

「では、遠慮なくそうするとしよう。エセルドレーダ、来い」

「イエス、マスター!」

 

 歓喜に震え、マスターに抱き着いたエセルドレーダがマスターの中に溶けるように消えていく。そしてマスターの肩の上に小さな犬耳と尻尾をつけたエセルドレーダが現れた。

 

「マギウススタイル。未熟な我がエセルドレーダの力を使うに丁度良い形態よ」

「素敵です、マイマスター」

 

 そう言って楽しそうにしているエセルドレーダ。それにしても、マスターは勝つ気満々ね。

 

「いざ、勝負!」

「うむ。行くぞ」

 

 そして、始まった戦いは光り輝く聖約・運命の神槍(ロンギヌスランゼ・テスタメント)の一撃により、勝負が決まったわ。何故なら、大地が斬撃によって裂け、そこから闇を噴出させた。その闇は振れただけで全てを飲み込むのだから。

 

「まだやるか? 卿等に勝ち目は無いのだが……殺し合いを望むというのならば、相手になってやろう」

「ぐっ……わかった」

 

 この言葉でこちらの勝利が決まった。でも、実は力が使いこなせなくてこのまま戦闘したら酷い事になるから、負けを認めろって言っているだけなのよね。たぶん、最初の一撃だって当てる気だったんでしょうし。

 

「では、此度の戦は……む、通信か」

 

 マスターが何やら通信機器を取り出して通話をする。

 

「了解した。バルテン子爵よ」

「なんだ?」

「此度の戦は条件次第で手打ちで構わん」

「何?」

「穀倉地帯の3割を頂く。その内の2割は私の名義で譲渡して貰おう」

「たったの3割で良いのか? 勝者なのだから、もっと持ってゆくのが普通だが」

「うむ。構わん。だが、もう一つ貰っていくモノが有る」

「なんだ?」

「彼女だ」

「はっ、離してっ!」

 

 マスターはこちらを睨み付けていた剣士の少女の腕を掴んで、引き寄せて無理矢理抱きしめた。

 

「戦利品として彼女を頂こう。それで構わぬぞ」

「良かろう」

「父上!」

「人質でもあるのだろう」

「好きに取るがいい」

「ならば、そうさせて貰おう。どちらにしろ、主らと関係を持つのは得策であるからな」

「それは重畳だ。そうだな、妾としよう」

「くっ……誰が姉さんを殺した貴方の妾なんかに……」

「黙りなさい。マスターの妾になるという名誉を頂けるのです。拒否などさせません。それとも、他の連中を皆殺しにした後で家畜として飼ってあげましょうか?」

「わ、わかった……妾でもなんでもなる……だから……あまり酷い事をしないでくれ……」

 

 この子はどうか知らないけれど、他の連中はかなり酷い事をしてきたのだし、自業自得よね。いえ、ひょっとしたら知っているからこそ止めろと言ってきているのかしら?

 

「無論だ。では、詳しい話をしようではないか」

「ああ」

 

 これで今回の戦は終わりね。しかし、私の課題が見えたわ。それと、問題も。

 

「お姉様、お姉様!」

「いいから、離れなさい! 暑苦しいのよ!」

「ああ~お姉様の匂い。くんかくんか!」

「嗅ぐなこのド変態! アンタは豚なの!?」

「はいっ、私はお姉様の雌豚ですっ! だからっ、だからっ、お姉様、もっと!」

「ざっけんな! お断りよっ!」

 

 引きはがして転がし、踏みつけて押さえつける。嬉しそうな声が聞こえてくるけれど、無視よ、無視!

 

「マスター、本当に送還しちゃ駄目?」

「……悩むな……だが、もう少しだけ様子を見よう。躾ければいいだけかも知れんしな」

「マスターがそういうなら仕方ないわね」

 

 どうやら、このド変態としばらく付き合う事になりそうね。

 



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27話

 

 コルネリウス

 

 

 

 契約が終わり、戦後処理へと移行した。まず、俺達が手に入れたのは農村三つとそれに伴う田畑だ。これにより、港町一つと村三つを支配する事になった。これは領地としては男爵規模だ。そして、リーゼンフェルトの本家には村一つを渡しておいた。本来は二つなのだが、一つはアリエッタの魔術、いや魔法によって消し飛ばされたのだから仕方あるまい。さて、次は戦利品だ。これはセニア・バルテンともう一人居る。

 

「ご主人様、どうぞ」

「うむ」

 

 戦後処理の書類を纏めていると、メイド服を着た蒼髪の少女、セニアがコーヒーを持って来てくれる。彼女はメイドとして傍に置く事にした。

 既に初夜は終わり、肉体関係も有る。無論、最初は抵抗するので無理矢理といった感じに……はならなかった。何故ならーー

 

「セニア、私にも」

「はい、姉さん」

 

 ーーこちらを憎悪する原因であったはずの姉が生きているからだ。ましてや、二人はエセルドレーダによって調……躾けをされた為に従順になっており、初夜で隷属と忠誠を誓って足を舐めて来たほどだ。足を舐めたのは父親がそのような事を他の女にさせていたからだそうだ。ちなみに姉のセシルは父親に既に前以外を犯されていたようだ。二人共、捕らえた綺麗な村人に無理矢理産ませた子供のようで、生まれたら生まれたで放逐し、二人が綺麗に成長したので母親の面倒を見るという約束で呼び寄せたそうだ。ルーカスには妹という事で良くされていたようだが、父親には性欲の捌け口ととある実験の実験体にしか見られておらず、セシルがセニアを守る為に相手をしていたようだ。

 

「それで、どうだったのだ?」

「ええ、お蔭さまでお兄ちゃんの協力も有ってお母さんを連れて来られたわ」

「それは良かったな」

「でも、お城に住まわせて貰って良かったの?」

「構わん」

 

 セニアの言葉にしっかりと即答する。どうせ広いのだし、三人が増えた所で問題ない。というか、この城には軍の宿舎だけでなく、地下にマンションも建築されている。太陽の光が届かぬのだが、そこは錬金術で疑似的な太陽光を作り出しているそうだ。また、軍港や防壁とも動く床によって地下で繋がっているので移動も便利だ。どう見てもチートなキャロルのオーバーテクノロジーである。

 

「さて、セニアにはメイドとして働いて貰うが、セシルは……」

「メイドとか無理だから」

「うん、姉さんには無理」

「だろうな」

「なにおー! やってやれない事は……」

「家事能力ゼロなのに?」

「少しはあるからね!」

「マイナスなのに?」

「減った! どういう事!?」

「部屋を片付ける前より散らかすのは当たり前で、血塗れになってたり……」

「それは狩って来た獲物を解体してから着替えるのを忘れてただけで……」

「駄目だろ」

「ぐっ……」

 

 さて、このセシル。彼女の力は()()()()()からしたら凄まじいの一言に尽きる。何故なら、彼女の弓兵としてのスキル、アローシャワーによって無数に分裂した矢を放ってくるのだ。そこにダブルステレイフィングも合わせて倍に膨れ上がる。そして、ヴァフォメットカードがセットされて一撃が範囲攻撃になる弓によって放たれる雨のような矢。あの時襲われた矢の殆どが彼女によって作り出されたものだ。

 彼女の正体はラグナロクオンラインに出て来るセシル=ディモン。妹のセニアはイグニゼム=セニアだ。どうやら連中の中にリヒタルゼンの関係者か、俺と同じ転生者が居るのだろう。まあ、その筆頭候補はルーカスなのだが。アイツの使っていたスキルや装備は全てラグナロクオンラインの物なのだから。もう一つの可能性は国そのものがリヒタルゼンの生体工学研究所と同じ事をしている可能性だな。まあ、これは少ないだろう。

 

「それで、身体はどうなのだ?」

「そっちは大丈夫」

「平気だよ」

「そうか」

 

 検査をした結果。彼女達の身体の中にはペスト達と同じようなカードが存在している事が判明している。それによって力を得ているのだろう。今度、ルーカスと会った時にでも聞くとしよう。

 

「まあ、セシルはアリエッタの部隊に配属する」

「街の治安部隊?」

「それと防衛もだな。得意だろ?」

「もちろん」

 

 この配属には出来たらレンジャーに進化してくれたらいいなという思惑もある。何せ、レンジャーは狼使いだしな。ああ、後セシルには鷹もやらんとな。

 

「じゃあ、頑張って働いてくれ」

「ええ」

「わかった」

 

 二人と別れて俺の自室から隠し階段を通ってある一室に入る。そこは石畳で作られた牢屋が有る。その中に入ると、少女達の喘ぎ声が聞こえてくる。そして、視界に映るのは吊り下げられて、あられもない姿で木馬に乗せられているペスト、アリエッタ、ルサルカの姿だ。

 

「ふふふ、もっと鳴きなさい!」

「ひぐっ!?」

「あひっ!?」

「んくぅぅっ!?」

 

 そして、彼女達に威力が減らされ、音だけが強化された鞭を振るっているエセルドレーダ。彼女の手には蝋燭が握られていたりする。まあ、これも問題無い奴なのだが。

 

「マスター、準備は整っております」

「うむ」

 

 お仕置きとして数日間閉じ込めておいたのだ。三人は完全に出来上がっていて、とても他の男には見せられない顔だ。これ以上はちょっと時間的にも仕事量的にも不味いのでここで終わりだ。

 

「さて、頑張った三人にご褒美だ」

 

 三人を解放し、ベッドに連れて行けば向こうの方から襲い掛かってくるのでたっぷりと満足するまで可愛がってやった。エセルドレーダによって直前で止められていた三人が満足するまでたっぷりとだ。

 

「マスターは甘いです」

「これでいいんだよ」

「イエス、マスター」

 

 幸せそうに眠る三人を撫でた後、エセルドレーダとも行う。

 

 

 

 

 

 次の日、まだ抜けきらないのか、顔を赤らめて身体を俺に擦りつけながら俺の膝の上に収まり、仕事をするペスト。

 

「身体がだるくて面倒……」

「そう言うな。大量にあるのだから」

「そうね」

 

 机の上には大量に存在する書類の山。その中には本家のドミニクからの文句が書かれた内容もある。手に入れた領地が少ない事に対する事だ。だが、これでも全て奪ったのは渡している。契約書は領主の体調不良で偽造されたのがそのまま使われたらしい。よって、こちらが奪った分は全て本家の物となった。だが、そこには()()されている分は含まれていない。当然だ。これは俺が貰ったのだから。

 

「そういえば面会が出来たのか?」

「それが無理だったのよ。会わせてくれない……」

「気を落とすなよ」

「ふん。元から消すつもりだったんだから、なんとも思わないわ」

 

 そう言ってそっぽを向くペストの頭を優しく撫でてやる。

 

「しかし、こうなると諜報部隊が必要だな」

「そうね。今、うちに居るのってどいつもこいつも我が強い連中だし」

「全くだ」

 

 そんな話をしていると、扉が開いてジャンヌが入って来る。

 

「どうした?」

「匿って!」

 

 それだけ言って、執務机の下に入り込むジャンヌ。少しして扉が開いてブリュンヒルデが入って来る。

 

「お姉様を知りませんか!」

 

 二人で下を軽く見ると、ジャンヌはこちらを見詰めて来る。

 

「お姉様の匂いがするのですが……」

「っ!?」

「どうしました?」

「別になんでもないわ」

 

 見れば、ジャンヌが俺のを咥えて指でペストのを弄っていた。

 

「あら、これは……お邪魔しました。お姉様、愛しのお姉様はどこに~!」

 

 そう言って去っていく。

 

「ふぅ、危機は去ったわね」

「ちょっと、何してくれるのよ?」

「全くだな。これで終わりとかはないからな」

「……わかってるわよ。奉仕ぐらいしてや……」

「ジャンヌが仕事を手伝ってくれるって」

「それはありがたいな」

「そっち!? そっちなの!?」

「もちろんだ」

「タイミングミスったわ!」

「さあ、楽し……くない書類との格闘だ」

 

 ジャンヌにも手伝わせて書類の処理を進める。これでも大分ましなのだが、軍を動かしたのだから大変だ。

 

 書類と戦うこと数時間。扉がノックされる。

 

「入れ」

「失礼します」

 

 メイド服のセニアが紙の束を持ったエセルドレーダと共に入って来る。

 

「どうした?」

「報告です。船が帰投しました」

「その書類がこれです。エレオノーレから来て欲しいとの事です」

「ほう?」

「そうか。では行こう」

「ええ、いってらっしゃい」

「じゃあ、私も……」

「ジャンヌはこっちよ」

「そんなっ!?」

「エセルドレーダも書類を手伝ってやれ」

「……イエス、マスター」

 

 切実に文官も欲しいな。これは禁断の手を使うとするか。

 

 

 

 軍港の方に向かうと明らかにおかしい量の船とその前に立つエレオノーレと拘束された大量の男達に迎えられた。

 

「おい、これはどういう事だ?」

「はっ! 航海中に海賊共に襲われましたので応戦し、捕獲致しました!」

「待て、明らかに軍船と思わしきものもあるが?」

「我が船を拿捕しようとしたのですから、おそらく軍人崩れの海賊でしょう」

「ふむ。それはもっともな意見である」

「ふがががっ!?」

「黙れ! 閣下の御前であるぞ!」

「ふぐぅうううう!!」

 

 猿轡された軍人であろう男達がわめくが、エレオノーレが容赦なく蹴り飛ばす。

 

「失礼いたしました」

「良い。ふむ……そいつらは牢屋に入れてルサルカを呼んで来い」

「ルサルカをですか?」

「そうだ。情報を絞れるだけ絞り出させる」

「了解致しました。伝令! 聞いていたな。ただちに連れて来い! 閣下が呼んでいると言えば飛んでくるはずだ」

「はっ、畏まりました!」

「残りはそいつらを別けて牢屋に入れておけ。それとキャロル嬢を……」

「オレは既に来ている」

 

 エレオノーレが指示を出す姿を見学していると、いつの間にか隣にキャロルが居た。

 

「お前達、さっさと解析しろ」

「「「はい!」」」

 

 キャロルの部下達が船に群がっていく。その中の殆どがキャロルと同じ顔をした幼い少女達だ。

 

「キャロル、文官として使いたいから何人かクローンをくれ」

「わかった。直に用意する。だから、パパ……」

 

 キャロルを抱き上げて視線を合わせる。

 

「ああ、わかっている。落ち着いたら遊びに行くぞ」

「やった。こほん。それじゃあ、仕事してくる」

「ああ、頼む。それともう一つお願いがある」

「なに?」

「ここから手に入れた農村までの道を作りたい。しかし、山があるのだ」

「……トンネルを掘れ、と」

「そうだ。出来るか?」

「任せて。それぐらい直ぐだから」

「良い娘だ。今日は俺の部屋に泊まりに来ると言い」

「わかった」

 

 可愛い我が娘を解放し、エレオノーレが検分を始めるのを観察していると、後ろから抱き着かれた。

 

「だ~れ~だ~」

「ルサルカだろ」

「正解! ご褒美になんでもしちゃう!」

 

 遠くを見ると、伝令の兵士が急いでこちらに走って来ている。ルサルカは闇魔術でさっさとこっちに来たのだろう。

 

「じゃあ、仕事をしてもらおうか」

「拷問? 拷問だよね! 得意分野だよ! うふふふ、頑張って吐かせるぞー!」

「待て。殺すなよ。それと中には可愛らしい女の海賊も居た。そいつは閣下に献上する。壊さんように情報を引き出せ」

「え~? 要らないじゃん!」

「貴様が決める事ではない」

「そうだな。その子は俺も付き合おう」

「ちぇー。どうせ可愛いかったら食べちゃうんでしょ」

「戦力は大いに越した事はないからな」

「仕方ないな~ちゃんと私も可愛がってよ?」

「昨日してやっただろ。まだ足りないのか?」

「ん~まだ先でいいかな。うん」

 

 そんな感じで牢屋へと向かう。捕らえた可愛らしい少女の下に向かう。その子は青み掛かった銀色の長髪の少女と短髪の少女だった。服装はハイレグのゴスロリ。どう見ても海賊には見えない。

 

「えっと、名前は不明。長髪の方は強力な魔術師でエレオノーレ相手に……砲撃戦を行った!?」

「相当な化け物だな」

 

 ルサルカが驚くのも無理はない。報告書には創造を使用し、撃ち倒したと書かれている。つまり、まともな砲撃戦では被害が大きいと判断したのだろう。

 

「魔術師だから、既に魔力を封じる効果のある隷属の首輪を装着している、と。つまり、今はただの小娘ね。短髪の方はカットラスで接近戦を行うみたい」

「海賊としておくのは勿体無いな」

 

 しかし、二人共、人形みたいな少女だな。この娘達が海賊とか信じられん。まあ、いい。襲ってきたのだから事情は身体に聞くとしよう。

 

「ルサルカ、やれ。分かっているな?」

「はいはい~ルサルカちゃんにお任せあれ~! ご主人様専用にしっかりと躾けてあげるからね!」

 

 それから、他の男は拷問して壊したり、情報を吐かせる。それが終れば、リスキーダイスでガチャを引かせる。この銀髪の少女達は姉妹なのかはわからないが、どちらにしろ確保しておく。男でも使えそうなのは使う。だが、やはり女の方が調教できる分扱いやすいのは事実だ。ルサルカ達に相手をさせて支配させるという手段なら、男もできるのだが、流石にそれは俺が嫌だしさせるつもりはない。普通の連中は軍に入れて鍛えればいい。そういうのはジャンヌが得意だしな。丁度、ブリュンヒルデで鬱憤も溜まっているのだから、解消には丁度いいだろう。

 使えなさそうな凶悪な連中はリスキーダイスで処理をしたのだが、それでも相当数いて面白いのを引いた。引いたガチャは期間限定、ロリっ娘ガチャ・海系インストールピックアップというふざけたものだったが、面白いので引いてみた。次回は女性ガチャと予告が出ていた。

 さて、そんなロリっ娘ガチャで引いたカードは天才魔術師ソーニャ。これは珊海王の円環に出て来る海賊だそうだ。そして、メアリー・リード。こちらはフェイトに出て来る娘で海賊だ。次はハイスクールD×Dに出て来る白音こと小猫だ。この子は悪魔だな。ここまではまだいい。

 だが、問題は……北方棲姫ことほっぽちゃん。頭の左右に黒い角、白いワンピースにミトン状の手袋。しかも何気に黒の紐パン着用。左のふとももに黒いリング、両足首にも黒いリング。艦装は、周りに猫耳のようなものが生えたたこ焼きがいくつかあり、右側には離島棲鬼の艦装と似たようなものが配置され、左側の艦装の口からはクレーンが出ている。しかもクリスマスとバレンタインの奴まで出た。

 ルサルカに任せて数日後、少女の海賊はもののみごとに壊れた。情報を抜き出せた事は抜き出せたようだが。

 

「えっと、彼女達は生まれた時から海賊ね。両親は捕らえられた魔術師で魔術は親から教えられたみたい。長髪の方の魔力量は母親が魔術協会から奪った宝玉を実験で使ったみたいね。母親はその時に死亡。それからずっと海賊として育てられてきたみたい。ちなみにどっちも船員達の玩具にされていて、心と身体が壊れているから人形みたいになっている、と」

「なるほど。で?」

「えっと、それでね……元から壊れてるのにさらに壊しちゃったから、戻らなくなっちゃった♪」

「そうか。まあ、良い。他に捕らえられている子はいるのか?」

「見つけたアジトから救出したけど、殆ど死んでたり、壊れてたわよ?」

「このさい壊れていて構わん」

「おっけー」

 

 とりあえず、身体をエリクサーで全て綺麗に修復してから魔術師の娘にはソーニャをインストールし、短髪の方にはメアリーをインストールする。さて、もう一人。連中の所で壊れていた更に幼い少女……この子は二人のどちらかの子供らしい。その子に北方棲姫をインストールする。すると、身体から艦装が出現し、身体も成長した。出た物全部インストールした。こちらは同じ娘なので問題なかった。

 これで我が海軍もかなり強化された事になるだろう。後は三人共美味しく頂いて主人が誰か、しっかりと教え込んでやろう。とくにほっぽには反抗されたらシャレにならん。白音のカードはもしもの為に置いておこう。

 

 

 

 

 

 



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28話

 

 

 

 

 

 さて、新たな仲間を迎え入れた訳だが……これからが大変だ。まずは一気に増えた戦力を改めて考えよう。まず、近衛がセニアで陸軍はセシル。海軍。ソーニャとメアリー。そして北方棲姫ことほっぽちゃん。ソーニャとメアリーは従順で海軍でも問題無く働いてくれるだろう。問題はほっぽだ。彼女は現在、特別室に閉じこもっている。

 

「どうだ?」

「カエレ、カエレ!」

 

 扉を開けて部屋の中に入ると、即座に声が返ってくる。部屋を見渡せば隅っこの方にベッドを盾のように立てかけて壁にし、布団や毛布を使って隠れ家というか、秘密基地というか、そんな感じの場所にほっぽが入り込んでこちらを睨んでいる。

 

「何故そんなに嫌うんだ」

「ニンゲン、キライ!」

「何故嫌う?」

「……ニンゲン、ホッポノ……タイセツナモノ、トッタ」

「なんだ? 何を取られた?」

「ホッポノプレゼント、ウバワレタ!! コナイデッテ、イッタノニ! ヒシモチ、ウバワレタ! コナイデ、ヤメテッテイッタノニ!」

「提督~!」

「チョコモ……クルナ、イッタノニ」

「……すまん。本当にすまんかった」

 

 イベントでドロップするからと、幼女である北方棲姫からクリスマスプレゼントや菱餅やチョコレートを奪っていったんだ。ほっぽからすればぼこぼこにされて持っていかれるのだ。それも何度もくるのだから。

 

「直にプレゼントを用意するからな」

「ホント?」

「ああ、ちょっと待っていろ」

「ン、マツ」

 

 急いで戻り、お菓子を用意する。それからほっぽに渡す。しばらくは彼女のご機嫌取りが必要なようだ。だが、これはある意味では戦闘経験が豊富な事を意味するのでよしとしよう。

 

 

 さて、俺は会議室の一室で皆と会議をしている。エレオノーレとルサルカの報告を元に高性能な地図と海図を作製した。これでこの辺り一帯の調査は完了し、より優れた戦略が立てられる。

 

「エレオノーレ、連中とはここで接敵したのだな」

「はっ。この場所で攻撃を受けました」

 

 海図の上に赤い駒がエレオノーレの手で置かれる。

 

「ルサルカ、連中の事は判明したか?」

「もちろんよ。まず連中が言う国の名前はベルニエ王国。そこの軍船と乗組員ね」

「隣国ね」

「隣国か。面倒な事になったな。やはり、海賊として処理するか」

「駄目でしょ。まあ、仮想敵国だから問題無いかも知れないけれど」

「ほう……エレオノーレ。こちらのことはバレておらんな?」

「当然です。目は全て潰しました」

「よし、ならばしらばっくれるぞ。キャロルに言って船は改修させるか」

 

 さて、これで色々と問題があるが、放置するとしよう。

 

「仮想敵国ならば何れ戦争になるだろう。その準備もせねばならん。エレオノーレ、前線基地に良さそうな場所はあるか?」

「あります。海賊共がアジトとして使っていた場所ですが、整備すれば使えるかと思われます」

「そうか。では前線基地を造ろう。ついでに内陸部の土地は手に入らないから、これからは海に進出する。ちょうど海軍に使える者達も増えて来た。後は海底資源を採取できるほっぽも居るからな」

「では、そのように。ルサルカは配下の者達に商隊の護衛として出てくれ」

「おっけー」

「海軍は全員で資材を運んでくれ」

「はっ。それと一部部隊は海賊になって貰おう」

 

 海賊として敵の勢力を減らせばいいだろう。同時に物資を奪えばいい。そう、討伐した海賊連中の代わりになるのだ。そして、罪は全て海賊にかぶってもらう。

 

 

 

 

 

 数日後、準備が整った。そして、同時に初期から手に入れていた艦の初航海でもある。

 

「タルタロス、始動!」

「エンジン始動! 第五音素(フィフスフォニム)安定!」

「浮上開始!」

 

 タルタロスの巨体が浮き上がり、海へと入っていく。

 

「目標はE43だ」

「進路確定! 出ます!」

 

 この軍艦タルタロスは660人まで乗れる。今回はバカンスも兼ねているのでこの艦は改造されている。そんな訳で、ガチャで出た水着に着替えて甲板に作ったプールで遊ぶ。

 

「パパ、泳ぎに来た教えてくれ」

「ああ、いいぞ」

 

 キャロルの手を握って泳ぎ方を教える。いつの間にか他にも泳げない娘達も居たので纏めて教えることにする。逆に泳げるほっぽ達は好き勝手に泳いでいる。更にほっぽは海に入って魚を取ってきたりしている。

 そんな風にバカンスを楽しみながら航海し、アジトが有った島に着いたら過ごしやすいように改造していく。もちろん、転移陣を設置して港町とも行き来出来るようにしておいた。

 

 

 

 

 

 



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29話

 

 

 

 

 海賊のアジトを改造して早数ヶ月。ベルニエ王国に対する海上を監視する施設とリゾート施設としての設備も完成した。

 海上リゾート施設はこの世界には存在しない。その理由はこの世界の海特有の生物……魔物の存在のせいだ。海の生物は基本的に大きく、水の中では動きが素早く体力が多い。そんな相手が多いのだ。だが、こちらにはほっぽが居る。彼女は陸上基地をモデルに作られているが、深海棲艦である。つまり、その名の通り海の中でも活動できる。その為、この辺り一帯の狩りをお願いしたら殆ど始末してくれたのだ。流石に潜水艦は無いのである程度しか始末できなかったが、それでもリゾート施設として安全圏を確保出来た。

 その為、妻達や娘に家族サービスで長期休暇を楽しんでいる。

 

「これはこれでよいか」

 

 砂浜にビーチパラソルとリラックスチェアを配置し、俺は水着姿でサングラスを装備して寝転がっている。砂浜や海ではアリエッタやキャロルを初めとした娘達が元気に遊んでいる。ジャンヌやセシル達も水着姿で楽しそうに遊んでいる。

 

「ご主人様、どうぞ」

「ああ、ありがとう」

 

 夏用の色々と短くしたメイド服のような水着を着たセニアがトロピカルジュースを持って来てくれたので受け取って喉を潤す。隣ではエセルドレーダが身体を焼いている。ペストはほっぽと海の底へと出かけている。

 

「閣下」

 

 軍服を着たエレオノーレと水着姿のルサルカがやって来た。二人は仕事のはずなのだが、ルサルカは水着姿だった。その姿で仕事をしていたのだろうか?

 

「どうした?」

「伝令です」

「聞こう」

「本日、1400に本家からの伝令が有りました。ベルニエ王国より、宣戦布告がなされたそうです。よって貴族の者は軍を組織して参戦せよとの事です」

「ふむ」

「参戦出来ない場合は資金と食料の援助をするようにとの事ですが、いかがいたしましょうか?」

 

 大貴族や貴族の一部で参戦したくない者や参加できない事情のある者が金などで参戦義務を免除して貰う事が可能だ。

 

「当然、参戦する。本家はなんと言ってきているんだ?」

「免除金を用意せよ、との事です」

「全く、ふざけてるわよね~。全部、こっちに支払わせる気よ? 後、()()するなって」

「参戦されて手柄を立てられたら困るからか」

「でしょうね」

「肝の小さい連中ですな。しかし、どうなさいますか?」

「リーゼンフェルト家としては参戦しない。だが、伝手は他にも有る。ジャンヌ!」

「何よ?」

 

 ジャンヌが水着姿のブリュンヒルデを砂に埋めながら聞いてくる。

 

「ドラゴンを出してくれ。それとペストも呼んでくれ。実家に向かう」

「いいわよ」

「お、お姉様! 私は……」

「そのままよ」

 

 ジャンヌが召喚陣を作り、瞬時にドラゴンを呼び出す。

 

「咆哮をあげなさい」

 

 そして、ドラゴンは命令通り咆哮を上げる。すると沖合の方で二つの塊が海面から出てこちらに飛んで来る。それはほっぽを抱えたペストだ。

 

「どうしたの?」

「シュタインフェルト家へ向かう。ペストも付いて来い」

「いいけれど……」

「他の者は進軍する準備をしておいてくれ。我々はベルニエ王国との戦争に参戦する。休暇は終わりだ」

 

 ジャンヌと共にペストを抱き抱えてドラゴンに乗る。しかし、順番的に微妙なので俺の前にジャンヌを置き、ジャンヌにペストを抱っこして貰う。

 

「キィィィッ! ずるいっ、ずるいです! 私も行きます!」

「却下よ、却下」

「ブリュンヒルデはエレオノーレを手伝え」

「そんなぁ~」

「ジャンヌ、出せ」

「ええ、任せて」

「コレ、ドウスル?」

 

 ほっぽが持っていた魚や大きな真珠を持ってくる。

 

「ふむ、手土産には丁度いいか持って行こう。キャロル」

「任せて。はい」

「助かる」

 

 キャロルに任せてさっさと出発する。何故なら後で届けて貰えばいいからだ。

 

「ジャンヌ、向こうについたらワイバーンかドラゴンを出してくれ。それも手土産にする」

「ドラゴンは無理ね。ワイバーンくらいなら問題ないでしょうが、乗り手が相応しくなければ喰らい殺されますわよ」

「それもそうか」

「でも、それってあっちの責任じゃない」

「まあな。しかし、選ばせるのはあちらでいいだろう」

「なら、卵にしてしまいましょう。それなら文句はないでしょう」

「だな」

 

 そのまま数時間雲の上を飛行し、シュタインフェルト領に入る。だいたい、目的の場所に着いたら降下していく。ちなみに空の上で暇な間で遊んでいた。

 

「マスター、このまま降りると不味いわよね」

「そうだな」

「私が行く?」

「いや、必要無い。これを使う」

「旗?」

「そうだ」

 

 街が見えてくれば、あちら側もこちらに気付いて慌てた気配を見せる。防壁の上でバリスタの準備が整えられていく。こういう時は早いな。

 

「バリスタが届かない距離で待機だ」

「ええ」

「大丈夫?」

「ああ」

 

 旗を出して一定の感覚で振る。すると、あちらも旗を振ってくる。旗の信号によって敵味方を識別しているのだ。これは勉強させられたのだが、なんとか覚えていてよかった。

 

「よし、降りてくれ」

「ええ」

 

 門の前に降りると門の上から守備を任されている騎士団団長が確認してくる。

 

「コルネリウスだ。父上に用が有る」

「内容はなんでしょうか?」

「妻の紹介と此度の戦についてだ」

「畏まりました。その、ドラゴンは……」

「ああ、問題ない。ジャンヌ、送還してくれ」

「ええ」

 

 送還した事で問題が無くなり、街の中へと入れてくれる。

 

「しかし、よもやドラゴンを使役するとは素晴らしい術者ですね」

「当然だ。我の自慢の妻の一人であるからな」

「それはそれは……」

 

 しかし、やはり警戒されているな。まあ、当然か。ドラゴンなんて危険生物を召喚できるのだから。

 

 領主館へと向かい、応接室で待つ。

 

「お館様がお会いになるそうです。もうしばらくお待ちください」

「ああ。ジャンヌ、ペスト。手土産を用意する」

「ええ」

「わかったわ」

「手土産ですか?」

「そうだ」

 

 それから許可を貰ってドラゴンとワイバーンの卵を呼び出す。他にもあちらで加工してくれた魚や真珠のネックレスを倉庫に繋がるバックより取り出す。そんな事をしていると父上が護衛の兵と兄の一人を連れて入って来た。

 

「よく来たな。出来れば先ぶれを欲しかったのだが……」

「申し訳ありません。何分、急な事でしたので」

「急な事か。なんだ?」

「戦争の事です。ですが、その前に妻を紹介してもいいですか?」

「それもそうだったな。どちらがそうなのだ?」

「どちらも、ですね。正妻のアーデルハイトとジャンヌです」

「よろしくお願いします」

 

 ペストは普通にしているけれど、ジャンヌは真っ赤になってそっぽを向いている。だが、その立ち位置は座っておらず護衛といった感じで俺の後ろに立っている。

 

「しかし、随分とあれだな」

「これ」

「失礼。久しぶりだな」

「ええ、兄上も壮健そうで何よりです」

「さて、今度はこちらが紹介しよう。私はランベルト・シュタインフェルト。こちらはコルネリウスの兄であるアドルフ・シュタインフェルトだ。こちらこそよろしく頼む。それで、戦の事で来たと。まさか、戦の資金を寄越せと?」

「まさか」

「であろうな。ドラゴンを連れている時点で有りえん」

「出たら武功は思いのままだろう」

 

 確かにドラゴンを連れだせば殆どの兵は叩き潰せる。

 

「それが、リーゼンフェルトの本家より参戦するなと言われてしまってね」

「馬鹿な……」

「うちの連中は馬鹿よ。どうやら、お兄様達のせいで父上も臥せっておられるようだし」

「なるほど。それでこちらから参戦しようというのだな。アドルフ、どうだ?」

「問題ありません。こちらとしても戦力が増えるのはありがたい。

 ベルニエ王国との決着は望む所です」

「いや、参加させて貰うが一緒に行くのではない」

「ほう?」

「こちらは海より攻め込ませて貰う。それに伴い、手に入れた領地と武功を認めてもらえるように王に進言して貰いたい」

「海、という事は船があるのか」

「父上、海をコルネリウス達が対応してくれるならばありがたいです。我が国に海軍はございませんので」

 

 こちらの国の軍は陸上が主流で、海上戦闘では負けるのだ。それに船も漁をする程度のものしかもっていないし、造船技術が無いのだ。これには殆ど海に面している場所が崖の上だったり、魔の領域があるからだ。

 

「そうだな。そういう事ならば陛下もお喜びになるであろう」

「紹介するメリットも十分にあるな。いや、それよりも最近出回りだした塩は……」

「私のところで作っております。それと協力頂けるなら手土産としてこちらも差し上げます」

「その大きな卵は……」

「ワイバーンとドラゴンの卵です。我々に協力していただけるならこちらと成功報酬として調教済みのワイバーン2頭も差し上げましょう」

「任せてくれ」

 

 これで我等は参戦する事が出来る。命令としては本家よりシュタインフェルトの方が上だからな。

 

 

 

 

 

 

 



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30話

 

 

 ペスト

 

 

「どうぞ、お座りください」

「失礼します」

 

 挨拶が終わった後、旦那様は詳しい話をしていく事になり、その間に私とジャンヌは別の部屋で旦那様のお母様と話をする事になった。

 

「貴女もどうぞ」

「私はいいわ」

「駄目です。貴女も妻なのですから、お座りなさい。娘は母親の言う事をきくものですよ」

「誰が母親よ」

「私です。貴方はコルネリウスの妻なのですから、私の義理の娘になります」

「ふん。果たして貴女は私の事を知っても娘と言えるのでしょうか?」

「当然よ」

「ちょっ、ちょっと!?」

 

 ジャンヌが抱きしめられてあたふたしているわね。ひょっとして、抱きしめてくるのは遺伝かしら?

 

「いいからよく聞きなさい、私はーー」

「魔法生物。もしくは使い魔かしら?」

「っ!?」

「凄い技術ね」

「いや、なんでわかるのよ?」

「私のギフトは鑑定だからよ。だから、アリスちゃんが凄い力を持ってるのもわかるわよ?」

 

 危険ね。病死でもして貰おうかしら? いえ、それはそれで問題があるわね。

 

「安心なさい。言ったでしょ、私は母親だって。娘は大切にするわ。それよりもコウの事を教えて。婿養子に出されてから連絡一つ寄越さないのよ? 結婚式にだって出れなかったんだから」

「そもそも開いてないわよ」

「あらあら、それは駄目ね。ちゃんとドレスを着て結婚式をあげないといけないわ。一生の思い出になるのよ? そうよ、二人一緒にあげましょう」

「それは……」

「確かに……」

「まあ、直にはあげられないでしょうけれど。とにかく、計画だけはしておくわ。それとコウの事を色々と教えて貰うわよ」

「ええ……」

 

 今までの事を一部除いて話す。

 

「あの子って小さい娘が好きだったのね」

「みたいよ?」

「どっちでもいいのかも知れないけれど」

「まあ、子供の頃にメイドに襲われたから仕方ないですが」

「そんな事あったの……」

 

 どうやら、子供の頃に襲われたみたいで大人の女性に抵抗があるかも知れないのね。まあ、どうでもいい事ね。

 

「ところで、子供はどうなのですか? 孫の顔を見たいのですが……」

「できそうな事はほぼ毎日やってるんだけど……」

「娘ならあの気に食わない小娘が居るじゃない」

「え?」

「養子みたいなものよ。旦那様の事をパパと呼んでいるから、()()の子供になるのね」

「私達じゃないわ。私を混ぜないでくれる?」

「あらあら、それは楽しそうね。会ってみたいわ」

「それに娘といってもマスターの女だしね」

「そうなのね」

 

 普通は軽蔑したりするのかと思ったのだけれど、大丈夫みたいね。なんでかしら?

 

「どうして平気なのよ? 娘よ?」

「だって、王族や貴族でも血を濃くしてより良いギフトを継承する為に良くやっている事よ。それにあの人の血を引いているのだから、女にだらしないのは納得よ。妾とかも沢山いるのだし」

 

 子供を産ませて優秀なギフトを手に入れる為に数撃ちを行っているのでしょう。

 

「まあ、あの子が元気そうでなによりよ。にしても、戦争に参加するって話なんだけど、大丈夫なの?」

「マスターは私が守りますから大丈夫です」

「ええ、問題ないわ」

「それならよかったわ」

 

 義理のお母様とお話していると、私のお母様とは全然違う事がわかるわね。それにしても、今度の戦争はどうなるのかしら? 手っ取り早いのは私が敵国に単身突入して病魔をばら撒けばそれで終わりなのだけれど、それじゃあ困るのよね。せっかく成り上がれる戦争が台無しになってしまうのだから。

 しばらくして、迎えに来た旦那様と一緒に王都へと向かう事になった。どうやら、話しているとこのまま勝手に動くのは流石に不味いので陛下の許可を頂こうという事らしい。その為、ドラゴンとワイバーンで移動する事になったという訳ね。

 

 

 

 

 

 コルネリウス

 

 

 

 

 ラングハイム皇国王都。皇王の居城である巨大な宮殿を中心に数百万人が住んでいると言われる巨大な城塞都市。その宮殿に有る玉座の間に現在、俺は居る。

 

「シルヴィオ・ジ・ラングハイム皇王陛下、ご入来!」

 

 銅鑼が鳴り響き、壇上の左右にある大きな門が開き、一人の年老いた男性が入ってくる。年齢は50歳くらいか。その男性が玉座に座ると大臣であろう男性が色々と言っていく。

 

「続きましてはシュタインフェルト伯爵より、火急の要件との事です」

「うむ。申せ」

 

 巨大な皇帝のような若本規夫ボイスが聞こえて来る。

 

「はっ。此度のベルニエ王国との戦争の事でございます」

「ふ~む。もしや、止めろというのではないな?」

「滅相もございません。むしろ、是非このまま進めましょう」

「では、なんだ?」

「海軍の対策についてです」

「海軍か。あれは鬱陶しいものよ。して、対策とは?」

「はっ。我が息子が船を作り上げて、ベルニエ王国海軍を捕縛したとの事です」

「ほぅ……」

「鹵獲した船は既に解析され、量産を行っているもようです」

「馬鹿なっ、それほどの技術が……」

「いや、ならば早速その技術を提供して貰い……」

「お断り致します」

「なんだと!?」

「船に関する技術は我々の秘匿技術の一つでありますゆえ、提供するのはお断り致します」

 

 色々とやばい技術もあるのだ。どのような事でも断るさ。

 

「貴様っ!」

「よい」

「しかし、陛下!」

「良いと言っておる。しかし、独占を許すのだ。それ相応の事をして貰うぞ」

「勿論。物資の輸送から海戦までそれ相応の代金を頂けば担当しましょう」

「うむ。今回の戦から可能か?」

「可能です。ただし、国の旗と支配下に置いた地は我等が収めさせて頂きたい」

「それは……」

「ふむ。貴様が欲しいのは港であろう」

「その通りです。内陸部は要りませぬ」

「良かろう。ならば奪い取った土地は好きにするが良い。しかし、失敗したらわかっておろうな?」

「はっ」

「ならばよい。そなたの働きを期待する。旗と支度金をくれてやれ」

「御意」

 

 これで堂々と戦える。旗は多数貰って船と占領した場所に立てればいい。頂いた資金はガチャに使ってしまう。

 

 

 

 

 

 



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31話

 

 謁見が終わり、待っているペストと合流する為に王宮の廊下を歩いている。ジャンヌとエセルドレーダは姿を消して俺の護衛をしてくれている。

 少し歩くと前方から黒髪の青年がやって来た。美形の青年は俺を見るなり固まった。しかし、それはこちらも同じだ。まさか、こいつが居るとはな。いや、ある意味では正しいのだが。

 

「馬鹿な……」

「おや、これはルドルフ殿下」

 

 俺の前を歩いていた父上が正体を明かしてくれる。しかし、殿下ね。

 

「そちらは?」

「我が息子であります」

「そうか……彼と少し話したいのだが……」

「畏まりました。では、私は先に帰っております」

「ああ、すまない。付いて来てくれ」

 

 そのまま付いていくと豪華な一室に通される。そこは個人的な部屋のようだ。豪華な椅子に座り、対面を行う。

 

「さて、まさか獣殿がこの世界に居るとは思わなかったな。本人か?」

「半分正解だ。そういうそちらは悪逆皇帝かゼロか」

「その名前でいうな。確かに容姿はそうなのだがな」

「絶対遵守か」

「そうだ。俺のギフトであるが、劣化している。いや、回りに対策されているという事だが」

「ほう」

「相手の対魔力を抜かねばならんからな」

 

 ならば問題ないだろう。こちらの対魔力EXを抜けるとは思えん。

 

「で、そちらは?」

「獣殿の知識と経験。融合していると思ってくれればいい」

「それは敵対したくはないな」

「私としては卿が敵対しないのであればその必要はない」

「そうか。なら、味方になってくれ。分かっていると思うが……この国は名前こそ違うがブリタニアみたいな物だ。国是が弱肉強食だからな」

「武力が欲しいか」

「その通りだ。報酬はこの国だ」

「ほぅ。卿が収めるのではないのか?」

「ぶっちゃけ、無理だ。ルルーシュと同じような事を俺に出来る訳もない。だが、暗殺される可能性が高い上に他の皇子達は馬鹿ばかりでな」

「それは困るな……」

「だから、ベストはある程度の地位を手に入れて田舎か何処かに引っ込む事だ。だから、国が欲しければ好きにするといい」

「まあ、国などどうでもいいのだが」

 

 手に入れようと思えば手に入れられる。しかし、面倒なのだ。街を一つ支配下におくだけでも面倒なのに、国全体とか面倒すぎる。まあ、キャロルのクローン達を使えばどうという事はないのだがな。

 

「だよな。なら、別の報酬を用意するが、希望は?」

「今のところはやはり、金か」

「俗物的だな」

「しかし、力であるのは事実だ」

 

 俺の場合はガチャがあるので特にだ。

 

「金か。自由に出来るお金も少ないんだよな。っと、自己紹介もしていなかった。俺はルドルフ・ラングハイム。この国の第八皇子だ」

「上ではないか」

「三人分だがな」

「私はコルネリウス・リーゼンフェルトだ」

 

 そんな話をしていると、扉がノックされる。ルドルフが許可を出す。すると扉が開いてメイドが入ってくる。そのメイドは簡易な木製の車椅子に乗った綺麗な金糸のような長い髪の毛をした幼い美少女を連れてきた。彼女は目を閉じている。そして、足が完全にないようだった。

 

「お兄様、お客様ですか?」

「そうだ。そういえば約束をしていたか。シエル、すまないが少し待っていてくれ」

「はい」

 

 彼女は部屋の隅にあるテーブルの方に連れて行かれる。メイドは飲み物を用意しに出て行った。

 

「彼女は?」

「ああ、俺と同じ母親の第17皇女、シエルだ。事故で足と目を失った()()()()になっている。雷の属性に適正が有り、将来を有望視されていたんだがな」

 

 おそらく、他の後継者にやられたのだろう。有能なら潰してしまえばいいという事だろう。

 

「さて、そんな事より報酬だな」

「ならば彼女を頂こうか」

「おい」

 

 目や足なら治せるのだから、こちらの戦力になるだろう。それに、いざという時の大義名分を手に入れられるのだ。

 

「金も出せないというのなら、人だろう? 特に女ならな」

「貴様っ!?」

「まあ、考えておくがいい。卿がどのようにしようが、私にはどうでもよい事だ」

「っ!?」

 

 こちらを睨み付けてくるルドルフ。こいつはまともな様ではあるな。だが、それはそれで問題だ。

 

「何時までも前の世界と同じように考えていると足元を掬われるぞ」

「知っているっ!」

「そうか。では、好きにするがいい。此度の戦で私が持つ力を見せつけてやろう」

 

 部屋から出ようと立ち上がり、ドアの方へと進んでいく。

 

「待ってください」

「ん?」

 

 可愛らしい声に立ち止まる。

 

「シエル?」

「どうか、お兄様を手伝ってくださいませんか?」

「それがどういう意味か分かっているのか?」

「もちろんです。目が見えず、足も動かないこんな私で良ければお好きにお使いください。ですが、その代わりにお兄様をお願いします」

「馬鹿な事を言うのは止めろ!」

「嫌です。こんな身体でもお兄様やお母様達は愛してくれました。だから、今度は私の番です」

「そんな事は気にしなくていい!」

「駄目です! このままだとお母様やお兄様も殺されてしまいます」

 

 殺されるってどんだけ親族仲が悪いんだ……と、言いたいがこれからの事を考えると反乱などさせない為に殺してしまうのがベストなのだろう。

 

「しかしだな……」

「もはや、卿の事は関係ない」

「おい!?」

「シエルと言ったか、娘よ」

「はっ、はい」

「卿と契約して汝の力となってやろう」

「あ、ありがとうございます!」

「待て待て、どうしてそうなる!」

「代価を用意したのはこの娘だ。故に契約者はこの娘になる」

「それはそうだが……」

「それに彼女にとっても得が有ろう。私の下でなら彼女の傷を治す事も可能だ」

「本当か!?」

「ほ、ほんとうですか!?」

「ああ、これを使えばすぐだろう」

 

 懐から念のために所持しているエリクサーを出す。

 

「それは?」

「エリクサー。命の水とか言われるものだ」

「馬鹿な……本当に……」

「お兄様?」

「まあ、ゆっくりと考えるがいい。シエルよ」

「はい」

「お前の家紋が入った旗はあるか?」

「ありません……」

「なら、家紋を教えてくれ。我が旗に入れておいてやろう。そうすればお前の手柄になる」

「は、はいっ!」

 

 これで俺は彼女達の派閥に入る事になる。まあ、構わないだろう。これからは後ろ盾は必要なのだし、面倒な連中が群がって来るだろうからな。

 

「では、吉報を待っているといい」

「はい」

「くっ」

 

 さっさと外に出て、旗と資金、許可書を受け取る。それからペストと合流する。

 

「知らない女の臭いがするわね。ジャンヌ」

「ええ、お姫様の一人を自分の玩具にしましたわ」

「人聞きの悪い事をいうな」

「ええ、まだしていませんね」

「どっちにしろ、面倒な事になりそう……って言いたいけれど、確かにこのままだと鬱陶しいのが多くなるわね」

「王族関連は特に鬱陶しいからな。それならこちらの傀儡に出来る者を用意すればいい」

「幸い、今回の事で壊して傀儡にする手間が省けましたね」

 

 ジャンヌの言う通りだ。彼女の傷を治すと同時に力を与えてこちらに従順になるように教育すればいいだけなのだからな。いや、もっと手っ取り早く聖痕を刻むと同時に魂もろとも我が物とすればいいか。

 

「とりあえずもう二、三日はこっちよね?」

「いや、必要な物は受け取ったから、このまま帰るつもりだったが……」

「観光したいわ」

「いいですね」

「なら、明日は転移で帰るか。土産も買わなければな」

「ええ」

 

 宿屋へと向かい、部屋を取る。そこでベッドに座りながらペストを膝の上に乗せて抱きしめながらガチャをする。ジャンヌも後ろから覗き込んで来ている。そのせいか、俺に抱き着いている為に背中にジャンヌの胸が当たっている。隣を見ればジャンヌの綺麗な顔が直ぐ横にある。

 

「この体勢にも慣れてきたわね」

「そうか」

 

 ペストの頭に顎を乗せつつ、ガチャを起動する。まだ前のロリっ娘ガチャ・海系インストールピックアップが残っているので、こちらを引く。リスキーダイスは有るが、殺して問題無い奴もいないので連発はしない。

 

「確か、前の奴は爆死したままだったよな」

「そうね。それで終わったわ」

「なら大丈夫か」

「振るの?」

「ああ」

 

 リスキーダイスを振ると大吉が出た。

 

「ジャンヌ達も振ってみろ」

「引く前なら大丈夫かしらね?」

「さあな。だが、ジャンヌは再召喚出来るし、ペストは即座にエリクサーを飲ませれば大丈夫だろう」

「むしろ、生半可な事でも起きない限り、この身体だと大丈夫でしょう」

「だな」

「じゃあ、私からですね。まあ、面白味もありません」

 

 ジャンヌは大吉だった。次にペストが持って振る。

 

「あっ」

 

 大凶が出た。しかし、ペストは小首を傾げるだけだ。

 

「どうだった?」

「少し、お腹に違和感がした程度ね」

 

 もう一度振ると大吉が出た。

 

「じゃあ、引くか」

「ええ」

「楽しみですね」

 

 三人で同時にガチャのボタンを押すと初っ端からEXが出た。EX駆逐棲姫、SR戦艦タ級、EX駆逐棲姫、EX戦艦レ級、N弾薬1000、N真珠、R高級修復剤80、Rスクール水着、R魚雷10。

 

「突っ込みたい事が色々とあるな」

「そうなの?」

「化け物が入ってるからな。まあ、いいや。それよりどんどん引いてくれ。後はペストがな」

「ええ、わかったわ」

 

 戦艦レ級。ボス級である姫や鬼に匹敵する特殊な艦艇であり、もはや、戦艦の皮をかぶった何かだ。 可愛らしい笑顔と裏腹に異常なほど強いのが最大の特徴。 解りやすく言うと、「ぼくのかんがえたさいきょうのせんかん」「超兵器」それでも分からないなら空を飛ばない「宇宙戦艦ヤマト」。これが説明である。

 

「あ、失敗した。痛い……蚊に刺されたくらい」

「桁違いの防御力ね」

 

 それから、ペストがひたすらガチャをしていく。色々と当たったが、めぼしい物はフェイト・テスタロッサやシエル・メサイア、それにアンチラだった。後半、海に関係なかった。流石はピックアップといった所だ。もちろん、艦娘ではない多数の船舶は手に入ったのだが。

 

 

 

 



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32話

やばい、課金しすぎたよ。
でも、そのおかげで酒呑童子が来ました。もっとも、課金のしすぎはジャンヌのせいですけどね!


 

 

 

 

 昨夜、王都の宿でガチャをしてからやる事をやって眠りについた。ジャンヌは一旦外に出たのだが、直に戻って来た。それから寝る前や目覚めた後も三人の美少女、ジャンヌ、ペスト、エセルドレーダの身体を楽しませて貰った。三人はぐったりとして全身や身体の中に俺の体液が入り込んでいる。

 現在、エセルドレーダが俺の膝の上に座って蕩けた表情で余韻に浸っている。ペストとジャンヌはベッドで生まれたままの姿のまま、身体を横たえて休憩している。

 

「ん~」

 

 頭を撫でてやると気持ち良さそうに甘えてくるエセルドレーダ。そのまま可愛がりながら運試しにガチャを回す。ロリっ娘ガチャ・海系インストールピックアップの奴は終わったようで、新しいガチャが有った。

 

「英霊召喚か」

 

 実際にfateのキャラ限定召喚のようだ。値段はなんと一回1億の金か魔結晶1万個というふざけた内容だった。ただし、インストールか召喚かを選べるようだ。

 

「今の所持金はいくらだったか?」

 

 王から貰えた支度金は4億。既に昨日のガチャで2億を使っている。残りは2億。それと貯金の1億を合わせた3億が限界だ。もっとも、稼げばいいだろう。

 

「とりあえず、一億だな」

 

 ガチャを回すと呪文が流れてくる。

 

「これを読めという事か」

 

 エセルドレーダを撫でながら声に出して詠唱する。

 

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ 。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。

 繰り返すつどに五度 ただ、満たされる刻を破却する

 ―――――Anfang(セット)

 ――――――告げる

 ――――告げる

 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。

 誓いを此処に我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。

 汝三大の言霊を纏う七天抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ」

 

 ガチャから排出されたのはある意味ではとんでもない者だ。迷わず召喚を選択する。すると即座に令呪が現れ、小さな人影が生み出される。

 

「アサシン、酒呑童子。ふふ。うちを召喚してくれて、おおきにありがとう。好きにやるけど――かまへんね? 好き者の旦那はん」

 

 現れたのは鬼の角を持つ着崩れた着物の鬼の少女。酒呑童子は京で若者や姫君の失踪が相次ぐため、安倍清明が占ったところ、酒呑童子の仕業であることが判明する。討伐を命じられた源頼光率いる頼光四天王は、山伏を装って鬼の居城を訪れる。酒宴にて頼光らは酒呑童子たちに毒酒を飲ませ、寝込みを襲って、これを成敗した。切り落とされた酒呑童子の首は頼光に襲い掛かるが、神より与えられた兜によって阻まれたという。酒呑童子は伊吹童子という別名があり、八岐大蛇の力を持っているとも伝えられている。

 

「全てを好きにやるのは駄目だ。だが、私の下でならある程度自由を許そう」

「しゃあないなぁ~。ほんでうちも食べられるん?」

「無論よ」

「ほんまに好きもんやな」

「否定はせん」

 

 服を脱ぎ棄て、こちらにやって来る酒呑童子はエセルドレーダの横にやってくる。

 

「まあ、やるのはまだいい。とりあえず、服を着ろ」

「そうなん? なら、楽しみにしてますわ」

「うむ。エセルドレーダ、二人を起こせ」

「いえす、ますた~」

 

 エセルドレーダが名残り惜しそうに俺から離れて二人を起こすと、二人は怠そうに身体を起こす。

 

「また女が増えてるわね」

 

 そして、酒呑童子の事を教える。

 

「全く、これだからマスターは……」

「まだ増やすさ」

「なら、これを押したらええんやね」

「おい!?」

 

 酒呑童子が出しっぱなしだったガチャのボタンを押した。すると1億が消費され新に召喚された。それは赤い髪の毛をツインテールにした少女と同じ赤い髪の毛の少年。彼女と彼は古代インドの民族叙事詩・ラーマーヤナの主人公であるラーマとその妻シータだ。シータは貞淑かつ聡明な女性で、常に夫を想い、その助けになりたいと願っている。しかし、この二人が寄り添う光景は現実には決して叶わないのだ。

 その原因は、生前のラーマが猿同士の抗争に介入した際、味方の猿であるスグリーバを助ける為とはいえ、敵対する猿のバーリを騙し討ちにした事でバーリの妻の怒りを買い、ある呪いを掛けられてしまった事に起因する。

 それは后を取り戻すことができても、共に喜びを分かち合えることはないというもの。 つまり、シータとラーマは決して会う事が出来ない、互いに視界に捉える事すら出来ない。出来るのは片方だけという余りにも残酷な呪いだ。

 実際に、原典ではラーマはシータを魔王ラーヴァナから救い出せたものの、その後彼女に疑いの目を向けた民衆を納得させる為にやむを得ず彼女を追放、愛する者を永遠に失う事となった。

 更にこの呪いは2人が死後に英霊の座へ至っても消えず、ラーマとシータは英霊の枠を共有するという制約によって、聖杯戦争で"ラーマ"と言う英霊を召喚した場合はラーマかシータのどちらかが"ラーマ"として召喚され、2人が同時に召喚されることは決して無いのである。

 

「これはどうするか……」

「どうしたのよ?」

 

 ペストとジャンヌが着替えてこちらにやって来る。エセルドレーダは服を着るのが面倒なのか、魔導書に戻って俺の腰に収まった。

 

「実はだな……」

 

 ペスト達に説明する。俺としてはどうにかしてシータとラーマを合わせたいという気持ちもあるが、シータが欲しいという思いも確かにある。

 

「つまり、あれよね。呪いを解いて幸せにしてあげたいけれど、彼女を自分の女にしたいと」

「身も蓋もないが……」

「まあ、それでこそマスターですね」

「欲望に素直な旦那はんですわ。ほな、解決策はきまっとります」

「そうね。ガチャを引いてもう一枚出せばいいのよ。それでインストールでラーマを旦那様に融合させ、シータの方は召喚かこちらもインストールでいいでしょう」

「確かにベストだが……果たしていくらかかるやら……」

「いいじゃないですか。幸い、資金稼ぎの場所があります。略奪してしまいましょう」

「おい。っといいたいが、有りだな」

 

 今から行うのは戦争だ。連中の資金を頂けば問題ないだろう。となると、戦力を増やさなくてはいけないな。

 

「じゃあ、今日の予定は予定通り観光にするか?」

「観光は観光でも特殊な場所にいきましょう。いいですね?」

「私は別にいいけれど、何処に行く気よ?」

「面白いところなら構いまへんよ」

「そうだな。では、ジャンヌに案内して貰うとしよう」

「ええ、任せてください」

 

 それから、ジャンヌに連れられて一緒に街を歩く。左右にジャンヌとペストを侍らせ、エセルドレーダが俺の肩車にさせられている。酒呑童子は前を歩いて串焼きなどを食べている。

 

「これって周りからどう見えるんでしょうね?」

「家族でしょ」

「そうだな。嫁と娘二人か」

 

 外からは一家団欒に見えるだろう。

 

「マスターの嫁……」

「違うでしょ」

 

 肩車されているエセルドレーダにジャンヌが突っ込む。このポジションからして子供側だろう。

 

「くっくく、ならうちも娘でありんすな」

「妻はジャンヌだろうしな」

「わ、私っ!?」

 

 顔を真っ赤にするジャンヌ。組んでいる腕に力が入る。普通なら折れているのだろうが、幸いにして俺の身体は獣殿と同じなので頑丈だ。

 

「悔しいけれど、そうでしょうね。私は小さいし……」

「胸が?」

「身長よ!?」

 

 ぺストの言葉にジャンヌも持ち直したようで、弄ってくる。

 

「しかし、何処に向かっているんだ?」

「そうね……シュテン」

「任せなはれ」

 

 直ぐに人込みの中に消えていく酒呑童子。そして、悲鳴が聞こえてきた。

 

「大丈夫なのか?」

「ええ、問題ありません」

 

 そのまま進んでいくと、酒呑童子が子供を押し倒して踏みつけていた。

 

「ああ、旦那はん。こっちやえ」

「そいつは?」

「スリですわ。幼気なうちの懐からおこずかいを盗んでいきはったんや」

「なるほど」

「マスター、殺しましょう」

 

 殺意を滾らせるエセルドレーダを止める為に降ろす。そのまま子供を掴んで引きずっていく。

 

「離せっ、離せっ!」

「マスター、こちらです」

「場所は分かっているのよね?」

「もちろんですよ。霊体化して調べてありますから」

 

 既に調べてあるなら問題ないだろう。そのまま付いて行くと、どんどん大通りから外れて奴隷商や風俗などといった場所に到着する。更に先に進んでいくと入り組んだスラムみたいな所に到着した。その更に奥へと進む。

 

「離せっ、離せよっ!」

「マスター」

「ああ、わかっている」

 

 奥へと入ったせいか、周りは既に何者かに囲まれていた。そいつらは俺達を包囲したからか、出てきた。

 

「卿等は何用だ?」

「お貴族様がこんな所に入ってくるとどうなるかという教育をしてやろうと思ってな」

「そんな上玉ばかり引き連れて俺達グリザーノファミリーが支配する場所にやって来やがったんだ。俺達にも別けてくれんだろ?」

「そうか、いいだろう」

「話がわかるじゃねえか」

「ああ、別けてやる。適度に生かせ」

「なにを言って……」

 

 そう言った男の身体は一刀のもとに叩き切られた。いつの間にか酒呑童子が身の丈を超える大剣を持っていたのだ。それで叩き切ったのだ。他にも幻影の槍で貫かれた者達。更にエセルドレーダが作り出した闇が男達を拘束する。

 

「な、なんだこれは……」

「身の程を知らぬからこうなるのだ。さて、ジャンヌよ。ついでに王都の掃除をするのだな?」

「ええ、そうです。資金と人材を犯罪者から根こそぎ略奪しましょう」

「いいでありんすねぇ」

「そうね。掃除は大事よね。でも、聞き出せるの?」

「ルサルカにやり方を聞いています。それにエセルドレーダなら楽勝でしょう?」

「面倒」

「マスターの役に立てるわよ?」

「いいでしょう。闇よ」

 

 あっさりと前言を翻したエセルドレーダの闇が男達を飲み込んでいく。

 

「さぁ、永久の闇の中で全てをさらけ出しなさい」

 

 キャロルの自白剤をつかえば早いのかも知れないが、これはこれでいいだろう。少ししてからエセルドレーダが報告してくれる。

 

「マスター、違法営業の奴隷商が三件あります。それと廃棄所、と呼ばれる場所があります」

「なるほど。ではジャンヌと酒呑童子で奴隷商を叩き潰して根こそぎ奪って来い」

「ええ」

「任せなはれ。それとうちの事はシュテンでいいですわ」

「そうか、わかった。ペストは……」

「私はこの子供の相手をしているわ。行ってきなさい」

「ああ、助かる。エセルドレーダは共をせよ」

「イエス、マスター」

 

 エセルドレーダがジャンヌ達に場所を教えてから共に廃棄所と呼ばれた所へと向かう。

 廃棄所。そこはテイミングしたモンスターの飼育所でもあった。そこには廃棄された人形になった少女や女性、男性が餌として確保されていた。

 

「死体も再利用か」

「イエス、マスター。モンスターの餌にする事でコストも抑えられています。貪るだけ貪った後なのでもう必要ないのでしょう」

 

 人形となった壊れた少女達は娼館や性奴隷として働かされたり、玩具にされて壊された子達だ。特に玩具にされた子は酷く、手足が無いものや拷問の跡が多数残されている子も居る。

 

「マスター、家畜にも使えそうなのが居ます」

「どれだ?」

「こちらです」

 

 案内された場所に踏み入ると、憎しみの籠った目をしながらここの支配者やその部下であろう男達に犯され、拷問されている多種多様な種族の少女達が居た。

 

「なんだお前達は!」

「邪魔だ」

 

 呼び出した聖槍で両手両足を切断し、彼女達と同じようにしてやる。お楽しみの最中だった連中は簡単に制圧出来た。

 

「マスター、施設の確保が完了しました」

「そうか、ご苦労」

「ありがたき幸せです」

 

 闇を操り、施設を制圧したと報告して来るエセルドレーダの頭を撫でてやりながら、少女達を男達から退けて集めていく。奴等と同じようにこちらを睨み付けて来る子や、助けを求める子なども居る。総じて全てが放置すれば死に至る事は明白だ。

 

「卿等にチャンスをやる。私の物となるならば、新しき命と強靭なる肉体。それに伴う力を与えて助けてやろう。拒否するのならばこのまま痛みも無く殺してやろう」

 

 何人かが殺してと言って来る。

 

「その力でこいつらに復讐させてやるが、返答はいかに」

 

 カリスマ性を発揮し、彼女達を支配する。

 

「……や……る……」

「……殺す……殺してやる……」

「……死にたくない……」

「良かろう。ならば受け入れよ」

 

 彼女達の首に用意されていた隷属の首輪を設置して契約を行う。契約後に用意したのはEX駆逐棲姫、SR戦艦タ級、EX戦艦レ級、アンチラ、白音。

 猫耳の子には白音をインストールして肉体から作り直されていく。これで彼女は銀髪の悪魔の子へと変化する。

 金髪の子にはグランブルーファンタジーのアンチラをインストールする。髪の毛がピンクの少女には駆逐棲姫をインストールする。すると髪の毛が真っ白になり、瞳が紫へと変化した。それだけでなく、足の無かった彼女には禍々しい艦装が現れた。

 角と尻尾の生えた少女は戦艦レ級に適応し、尻尾は凶悪な艦装へと変化した。髪の毛も青色から白へと変化してしまった。

 戦艦タ級はここに適応できる娘が居なかったので残しておく。

 適応が終わり、適応できなかった子達も居るが、それはそれで問題ない。そちらはリジェネポーションを与えて身体を修復させる。

 

「さあ、お前達。そいつらを好きにしていいぞ」

「コロス」

「ユルサ、ナイ」

「カタキ、カタキ」

 

 言葉がカタコトになったが、身体能力はかなり上がっている上に艦装もあるので圧倒的な火力で男達はミンチにされて艦装に喰われた。その間に帳簿や取引先などを調べておく。しかし、流石というかなんというか……取引に貴族が多い。それも爵位が高い連中まで居る。これを訴えたら面白い事になるだろが、揉み消されるかも知れないので止めておく。

 

 

 

 その後、戴くものを頂いてから外に出てペストの下に戻ると沢山の子供が食事を食べていた。

 

「ペスト?」

「彼らを連れていくことにしたわ。いい?」

「まあ、構わない。ちゃんとルールを守るならな」

「いいわね?」

「「「は~い」」」

 

 子供達も問題ないだろう。どちらにしろ、人手不足なのだからな。戦力の確保はこれで問題ないだろう。

 

 

 

 

 

 

 



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33話

 

 

 

 ジャンヌ

 

 

 

 

 

 私は酒吞と共に違法な奴隷商へとカチコミを行っています。近付いた私達に門番は不振がっておりますが、客だと思ったのかそのまま近付けたので排除します。

 

「た、助け……助けてくれぇえええええええええええぇぇぇっ!!」

「燃えなさい」

 

 頭を掴んで男を焼却し、消し炭にします。即座に酒吞がもう一人の男を切断していきます。

 

「これからどうするんでありんす?」

「騒ぎは起こしました。次は侵入します」

「忍び込むでありんすね」

「ええ、正面からですが」

 

 霊体化して堂々と店の中に入っていきます。武装した男達が慌てて門へと向かっていきますが、無視します。そのまま奥へと進み騒いでいる奴隷商であろう男を発見しました。そいつは慌てて逃げる準備をしているのか、金庫を開けています。

 

「ご苦労様です」

「な、なに?」

「それはうちらが有効活用してあげるさかい、おとなしゅうこっちに渡し」

 

 瞬時に護衛を槍で突き刺し、酒吞が心臓を抜き取る。

 

「ひっ!?」

「あんさんもこうなりたくないやろ?」

 

 いつの間にか設置されていた机に座った酒吞が美味しそうに手に持った物を食べていきます。

 

「わかったらさっさと全部出しなさい。もし、全てを出さなければ火炙りの刑です。それとも串刺しがお望みですか?」

「わ、わかった! わかったからどうかお助けを!」

「ならきびきび動きなさい、屑が」

「は、はい!」

 

 奴隷商が出して来た書類や金貨を受け取ります。

 

「では、帰りましょうか」

「待つでありんす」

「どうしました?」

「こいつら、どないすんの? うちが食べてもええけれど」

 

 どうするか考えながらふと手元の書類を見てみます。すると面白い事を思いつきました。

 

「酒吞」

「なんでありんすか?」

「王都の裏を支配下に置きましょう」

「それは面白そうやなぁ~」

「先ずは譲渡書を書いて貰いましょうか」

「ひぃ!?」

「さあ、書きなさい」

「動かん手はいらんで? 切り落としてしまうか?」

「わ、わかった、わかった!」

 

 慌てて譲渡書を書いて渡してくれる。

 

「奴隷の権限も全て頂きましょう。そうすれば幸せにしてさしあげましょう」

「も、もちろんです!」

 

 財産を全て貰った後、捕らえられていた違法な奴隷達の所有権を全て貰います。同時に販売先も聴いておきました。

 

「さて、これでもう貴方は用済みですね」

「聞きたい事は聞いたでありんす」

「こ、これで助かったのか……」

「ええ、楽に煉獄へと誘って差し上げましょう」

「なっ⁉ や、約束が違う!」

「馬鹿じゃないの? アンタのような屑とした約束なんて守る訳ないじゃない。ばーか」

「ふ、ふざけるなっ!!」

「五月蠅いなぁ、酒がまずうなるわ」

 

 酒吞がそう言いながら奴隷商の男を蹴り飛ばすと、吹き飛んで壁を粉砕して何処かへ飛んで行きました。

 

「何をしているんですか。しっかりと首をとらないと駄目じゃないですか」

「証拠なんやね。でも、どうとでもなるで?」

「まあ、どうでもいいですね。次に行きましょう」

「降伏した奴等はどないするん?」

「縛って後程処理します」

「了解や」

 

 それから別の所の奴隷商も襲撃して支配下に置きます。ついでに聞き出した回りの組織も二人で粉砕していきます。

 

 

 王都の裏の制圧が終わり、最後の場所にやって来ました。そこはこの王都でも整理され、高い壁に囲まれた特別な場所です。

 

「酒吞、投げてください」

「ええで」

 

 両手を組んだ酒吞の手に足を乗せて上にあげて貰います。そのまま壁を越えて中に侵入します。酒吞は普通に飛び上がって壁に爪を突き刺して登ってきました。

 

「で、どこからいくんや?」

「あそこからですね」

 

 指さした屋敷に霊体化して潜入し、目的の場所に到着するとそこにある物を根こそぎ頂いていきます。方法としてはキャロルから貰った倉庫に繋がる袋です。

 

「で、次はどないするんや?」

「奴隷を助け出します」

「その後は?」

「考えていません」

「なら、うちが支配下に置いて収めるとしまひょうか」

「お願いします」

 

 奴隷を助け出し、こちらも別の袋に入れて倉庫に送っておきます。それからどんどん襲撃を行っていきます。

 

 

 昼夜からの襲撃に王都が騒がしくなりますが、気にせず貰う物は貰ったので戻ってきました。

 

「マスター、戻りました」

「随分と派手にやったようだな」

「ええ、ですが成果は……」

「この通りでありんす」

 

 大量の金貨が入ったお金を積み上げます。調度品ももちろん頂きましたが、そちらは既に倉庫に送ってあります。

 

「人もあっちに送っておきました」

「そうか。では、我等も帰るとしよう」

「マスター。その前に捕らえた者達を教育してもよろしおすか?」

「ああ、構わん」

「では、少し待っといてくだはれ」

 

 酒吞が魅了を使って男達を支配下に置きました。それから一部に戦利品を持たせて逃がします。彼らがいい囮となってくれるでしょう。

 

「では、帰投する。ついてこい」

「モット、コロシタイ」

「キゾク、コロス」

「ダメ?」

「ボクも皆に賛成かな」

 

 深海棲艦達が騒ぎ、金色の雲に乗った少女が賛同する。

 

「今は殺すのは不味い。先ずはもっと力を手に入れてからだ」

「シカタナイ」

「ワカッタ」

 

 それから、私達はそのまま検問を通って王都を出ました。殆ど何も持っていない私達は簡単に通して貰いました。まあ、王族の後ろ盾があるから当然でしょうね。

 

 

 

 

 

 



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34話

 

 

 

 さて俺達は王都を離れて王都から見えなくなったくらいで、我が領土に転移で戻った。行きは父上が居たので使えなかったが、今は問題無い。連れて来たのは大人数の奴隷と浮浪児達だ。彼等は領地に残って貰うペストに任せる。

 そして、俺達は準備しておいてくれたタルタロスを初めとした船に乗船して敵国であるベルニエ王国を目指す。酒呑童子とエセルドレーダはペストと街の護衛として残す事にした。エセルドレーダは渋々だったが、帰るべき場所は大切なので頼んでおいた。

 この街はキャロルによって住民から魔力を微かに徴収し、集めた魔力に俺の魔力を入れて増幅してサーヴァントや召喚した少女達に配布できるように作られているので街の防衛と戦闘自体は問題ない。

 

「閣下。航路も問題無く、予定通りの時刻に到着致します」

「そうか」

「にゃぁ~」

 

 タルタロスの指揮官専用の席に座り、膝の上に居る白猫娘を撫でる。この猫は白音だ。彼女達は前の名前を捨ててインストールしたキャラの名前を使う事にしている。

 

「ならば指揮は任せる。ほっぽを助けてやってくれ」

「御意」

「ガンバル」

 

 艦長席にはほっぽが提督の服を着て座っている。そのまま部屋に戻る。そこにはレーこと戦艦レ級やクーこと駆逐棲姫が居る。アンチラも居るが、俺のベッドでアリエッタと共に寝ている。俺が入るとクーとレーは服を脱いでこちらに四つん這いで寄ってくる。

 

「そういうのはいい」

「ソウ?」

「男ハ喜ブ」

「詳しく教えてくれ」

 

 話を聞くと彼女達は家畜や性処理道具として使われていたのだ。食事などは四つん這いで犯されながらされていたらしい。そのせいか、そういうふうにした方がいいと思ったようだ。

 

「ちゃんと人として扱うから安心しろ」

「バケモノナノニ?」

「ソウ、バケモノニナッタ」

「関係無い。お前達は人だよ。俺の大切な子だ」

 

 抱きしめてやると、震えて離れようとする。しかし、直に身を任せてくる。

 

「男が怖くて嫌いか?」

「キライ」

「イヤ。デモ、特別」

「レイガイ」

 

 どいうやら二人共、俺は例外として設定してくれたようだ。まあ、そうでないと困る。そのまま抱き上げてベッドに連れていく。

 

「スル?」

「スキニシテ」

「そうだな。じゃあ、可愛がって上書きしてやろう。子供が出来ても安心しろ。きちっと面倒をみてやるからな」

「ン」

 

 そのまま二人の身体に快楽を教え込んで記憶を上書きしていく。キャロルに作って貰った媚薬も与えてたっぷりと新しくなった身体を堪能して貰う。

 

「ずるい、ボクもしてよ~」

「……私も、お願い……です」

「にゃぁ~」

「わかってるさ」

 

 それから到着するまでの間、新しく入った深海棲艦の子達を始め、交代で他の娘達も相手をした。

 

 

 

 

 ラングハイム皇国を出発して3日目でベルニエ王国の海域へと入った。タルタロスやホバー艦は高速で移動出来るが、ガチャで大量に出たり、鹵獲したガレオン船はそうもいかないのでタルタロス達で牽引して運んでいる。

 

「閣下、お楽しみの所申し訳ありません」

「エレオノーレか、どうした?」

 

 部屋に入ってきたエレオノーレが敬礼しながら報告してくれる。

 

「前方400に皇国に向かっている敵艦隊を捕捉致しました」

「わかった。直に向かう」

「はっ! お待ちしております!」

 

 メイドのセニアに着替えさせて貰ってから外に出る。ブリッジに到着すると、艦載機が撮った情報を送って来ていた。

 

「如何致しましょうか?」

「ほっぽはどうする?」

「センメツスル」

 

 艦長席から飛び上がったほっぽはそのまま外へと走っていく。

 

「こら! 全く、彼奴は……」

「気にするな。それに丁度いい」

「そうですね。奴等の実力を測るには丁度よいですか」

「ああ。クーとレーも出せ」

「はっ」

 

 甲板に出たほっぽは海に飛び込んでいく。それに遅れる事数分。レーとク―も海へと飛び込んで海底へと消える。

 

「これは面白そうだな」

 

 キャロルが入って来てそう言いながら俺の膝の上に乗る。俺はそのまま抱きしめてやる。

 

「そうだな。ふむ、始まったか」

 

 画面にはこちらに向かってきていた船がいきなり爆発したり、側面をクレーンで抉り取られて沈んでいく。クレーンはほっぽだろうが、爆発はおそらくクーかレーの魚雷だろう。

 

「あの馬鹿共がっ! 船は鹵獲しろと言ったはずだぞ!」

「まあ、そう怒るな。初陣なのだからな」

「はっ。閣下がそう仰られるのでしたら……」

「艦載機も出したか」

「不思議な武器だな。あんなちっこいのにあの性能か」

「全くだ」

 

 敵艦から魔法が飛び交うが、海底からの奇襲や高速で動き回る三人には命中すらしない。文字通り、相手にならず海に引きずりこんで殺しまくっている。

 

「しかし、ここまで血を流すとモンスター共が寄ってくるのですが……レーダーに反応はあるか?」

「ありません! いえ、むしろ全力でこの海域より逃げているようです」

「海底もか?」

「海底は……死骸だらけですね。シーサペントを始め、鮫なども全て駆逐されています」

「恐らく、ほっぽの仕業でしょう。時間が掛かっておりましたから」

「そうか」

「ん? なんだコレ?」

「どうした?」

「パパ、なんか高エネルギー反応が出てきたんだけど……」

 

 画面を見ると沈んだ船がモンスターの死骸を吸収して変化していき、クーリーチャーのような存在が生まれてきた。

 

「あれはわかりますか?」

「深海棲艦の駆逐艦だな」

「これは面白いな。ぜひ調べたい」

「程々にな」

 

 血の海へと変わり、多数の駆逐艦が生まれた。これは恐らくク―が作ったんだろう。

 

「叱った後、褒めねばな」

「回収した後、敵国へ進軍する。あいつらには交代で邪魔なモンスター達を排除するように伝えておけ」

「はっ」

 

 そのままキャロルを撫でていると、白い小さな猫となった白音がキャロルの膝の上に乗って丸まってしまう。それを撫でていくキャロル。そのままセニアが入れてくれたお茶を飲みながらゆっくりと過ごしていく。

 

 

 

 

 数日後、海の上を自由に走り回る三人によって二つの港と軍港が落ち、制海権は我が物となった。むろん、三人と駆逐艦はそのまま海で他の港とかを支配しに行ってもらう。

 そして、部隊は海から地上へと移動する。タルタロスとエレオノーレの聖遺物であるドーラ列車砲で街を落としていく。ドーラの一撃により、城門は破壊されるので簡単に制圧できた。大概、一撃をいれたら降伏してくるのだから。

 

 

 



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35話

 

 

 

 とある女性

 

 

 

 ベルニエ王国王都、ベルティエに存在する居城。そこに私は居る。本来、私は前線でラングハイム皇国の軍勢と相対していたのだが、急遽この国の最大戦力である私が呼び戻されたのだ。

 現在、我が国とラングハイム皇国は戦争状態となっているのだが、本来なら楽に勝てる戦だった。その為の準備も入念に行ってきた。実際、陸では被害を出しながらも勝利している。しかし、海の方で問題が起こった。

 

「では、我等が派遣した艦隊が全滅し、ラングハイム皇国に近い港が二つも抑えられたのだな?」

「その通りです」

「馬鹿なっ!? 連中に船を作る技術などないはずだ!」

「しかし、実際に落とされております!」

 

 陸を囮として海から王都に一気に攻め上げる予定だった。しかし、蓋を開けてみれば逆に海側から我等が攻められている。

 

「奪還部隊を組織せねばなりますまい」

「既に派遣した。だが、誰一人として戻らん!」

「だからこそ、ヘイゼル様にお戻り願ったのだ。これで大丈夫だろう」

 

 会議をしていた視線が一気に私へと向いてくる。私はマフラーを口元にあげながら頷く。おそらく、どうにかなるだろうと思う。何せ、私はサモンナイト3に出てきたヘイゼルの力にウィゼルが作り出した魔剣全てを所持している。もちろん、サモナイト石も持っていて適正も高い。

 

「ヘイゼルならば問題無いでしょう。女王陛下、それでよろしいですな?」

「お姉様……大丈夫ですか?」

「任せて」

 

 玉座に座るのは赤い髪の少女。彼女は先に病で亡くなったこの国の女王の跡を継いで即位した私の父親が違う妹だ。私の母は貴族の出ではなく、平民だったのだがこの国の王が母の美貌を認めて父親を殺して奪っていった。母が王の物になる条件として私をちゃんと王宮で育てる事だったのでここで生活している。むろん、そんな母を疎ましく思って殺そうとしてきた奴等は多いけれど、その全てを返り討ちにして逆に殺してやった。そしたら……気づいた時には王位継承権の一位が妹のシーナになっていた。無論、私と母には継承権など存在しない。そんな私達に大臣がすり寄って来て、私達を疎ましく思っている女王と王の排除を伝えてきた。纏めて暗殺してやったら、大臣の天下になった。私と母、妹は特に気にしないし。

 

「でも、陸軍はどうする?」

「そちらは王都の騎士団を派遣しましょう」

「わかった。私の部下もつける。シオンさん。ユエル」

「はい」

「ユエルはここだよ」

 

 二人は私が召喚した者だ。サモンナイトに存在するキャラを8人まで召喚する事が可能だからだ。現在、召喚しているのはシオンさん、ユエル、クノンの三人。シオンさんには諜報部隊として忍軍の訓練をお願いしてある。ユエルも似たようなものだ。クノンはシーナの護衛を任せてある。

 

「シオンさん、ユエルのシルヴァーナを足として陸軍の援護をお願いします」

「任されましょう」

「ユエルは?」

「焼き払ってやれ」

「うん! だから、ミニスも呼んで欲しいな」

「わかった」

「やった」

「よかったですね」

「これであちらも大丈夫だろう。私は敵の上陸部隊と海軍を叩く」

「お願いします」

 

 しかし、生半可な敵ではないだろう。だが、魔剣さえあれば勝てるだろう。

 

 

 

 

 アリエッタ

 

 

 

 ベルニエ王国、内陸部。アリエッタはタルタロスに乗って支配下に置いた街を見ている。今、ラングハイム皇国から文が届いたみたい。

 

「それで、使者はなんて言って来たんだ?」

「陸軍が押されているから援軍を寄越せだと」

「はっ、ふざけた連中だ。このまま首都を落とされて手柄を独り占めされるのが気に食わないんだろうぜ」

 

 キャロルがご主人様の膝の上に乗って悪態をつく。ちょっと羨ましい。ずっとあそこに座ってる。エセルドレーダとペストが居ない今がチャンスなのに。

 

「ふむ。援軍か。直に向かうのならば空路がいいか。アリエッタ」

「……なん、です……?」

「陸軍の増援として敵を滅ぼして来い」

「ご褒美、欲しい、です」

「いいぞ。出来る事ならなんでも聞いてやる」

「やる、です」

「あ、それならオレも……」

「一人で十分、です」

「ちぇっ」

「いや、一人は不味い。ルサルカを付けるから暴れて来い」

「私!?」

「そうだ。おまえ、前はアリエッタの獲物まで奪っただろ。今回はサポートに回ってやれ。軍人のルサルカなら向こうとの折衝も出来るだろ」

「まあ、確かにできるけど……」

「だ、め?」

「まあ、いっか。よーし、ルサルカさんに任せなさい」

 

 前の雪辱を晴らす、です。

 

「ついでに改造したこいつのテストも出来るか」

「?」

「レイジングハート・エクセリオンにダーインスレイブやバロールの瞳を突っ込んでおいた。レイジングハートというよりデモンズハートだな」

「ん、わかった。ルサルカ行く、です」

「おっけー! じゃあ、ルサルカ・シュヴェーゲリンとアリエッタ。任務の為、本隊より離脱します!」

「しま、す」

 

 ルサルカの真似をして敬礼すると、ご主人様達も返してくれる。

 

「許可する。旗も持っていっとけ」

「はーい! あっ、おやつはいくらまでかな?」

「5万だ」

「ぉぉ!」

「ついでだし物資も持っていきなさい」

「ありがとう、お姉ちゃん!」

「必要だからだ。気にするな」

 

 エレオノーレさんが大量の食材が入ったアイテムバックを渡してくれた。後はこれを持って空を飛べばいいだけ。

 

「あ、移動にドラゴンを使っていいかな?」

「駄目だ」

「ああ、駄目だ。代わりにレアバードを使え」

「それも駄目だろ。まあ、移動にドラゴンを使うのは認めるが戦場では使うなよ」

「もちろん!」

 

 それからアリエッタ達は高度1900mの空を飛んで目的地についたら降下した。アリエッタは自力で飛んで、ルサルカはパラシュートを使った。このまま落ちても大丈夫だとは思う。不死身だし。

 

 

 

 



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36話

 

 

 

 アリエッタ

 

 

 

 夜空を自由気ままに飛びながら目的の場所を目指す、です。隣には影で出来たワイバーンに乗ったルサルカお姉ちゃんが居る。

 

「あ、あそこみたいね。降りるわよ、アリエッタ」

「はい、です」

 

 下に人がいっぱいに居る場所についたので、ゆっくりと降りて行く、です。ルサルカお姉ちゃんはそのまま飛び降りた、です。もちろん、近くの場所に降りた、です。

 

「止まれ。ここはラングハイム皇国陣地だ。貴様等は何者だ!」

「私達は増援として派遣された者よ」

「嘘を申すな! 貴様等のような小娘が増援な訳があるか! 帰れ帰れ!」

「なんですって……」

「それとも、娼婦としてか?」

 

 私はお姉ちゃんの服の裾を引っ張る。

 

「アリエッタ?」

「行く、です」

「そう。じゃあ、行きましょうか。でも、何処にいくの?」

「あっち、です」

 

 私は敵陣を指さす、です。

 

「なるほど、行きましょうか」

「ん」

「待てっ、何処に行くっ!!」

 

 兵士の声を無視して、私達は進んでいくです。私は空へと飛び上がり、お姉ちゃんは足元の影からワイバーンを呼び出した。私達はそのまま空から敵の砦へと進んでいく。

 

 

 

 

 

 夜空を駆けながら、私は心の中から湧き上がる歌を口ずさむ、です。すると服が変わっていくです。黒と赤のドレスのような服になったです。杖も黒くて、球体の部分が瞳になってるです。

 

「うわぁ、禍々しいわね。大丈夫?」

「ん、大丈夫、です」

 

 杖を前方の砦に合わせて魔力を集めるです。数日間も戦闘が行われた戦場なだけあって、魔力がいっぱい漂っている。

 

「全力でやっちゃいなさい」

「本気、出しちゃうんだから……終わり、イービルライト・ブレイカー!」

 

 何発もの弾丸を消費して魔力を上乗せして砦全体に放つ。闇の奔流は砦を飲み込んで全てを消失させた。

 

「……全力でやっちゃってって言ったけど、消せとまではいってないんだけど……」

「やりすぎた、です?」

「まあ、そうね。とりあえず、旗を突き刺して次にいきましょう」

「はい、です」

 

 地上に降りて私達とお姫様の旗を突き刺す、です。

 

「じゃあ、次に行きましょうかーー」

「はい、でーーえ?」

 

 ルサルカお姉ちゃんが私を突き飛ばした。その胸から刀が生えていた。

 

「アリエッタ、逃げてっ!」

「お姉ちゃんっ! お前っ!」

 

 魔法を放とうとすると、空から炎弾が飛んでくる。私はそれを後ろに飛んで避ける。空には白いワイバーンとそれに乗っている女。

 

「ユエル、さっさと片付けますよ」

「誰を片付けるって?」

「なに?」

 

 お姉ちゃんは胸を貫いている刀を片手で掴んで片手を背後に回して男を掴んだ。

 

「ねえ、私を刺しといてただで帰れると思ってんじゃないでしょうね?」

「嘘!?」

「心臓を確実に刺しているはずだが……これは不味い」

「逃がすか! ナハツェーラ!」

「猿飛の術!」

 

 一瞬で転移した男がワイバーンの上に現れる。

 

「ダークネスシューター」

 

 大量の闇弾を生み出して相手へと放つ。そして、同時に空へと飛び上がる。

 

「逃げますよ」

「うん!」

「逃がさない、です」

「そうそう。私は足が遅いから、逃がさないわよ」

 

 私が回り込んで、影のドラゴンに乗って飛び上がってきた、です。

 

「やれやれ、これは大変ですね。ですが、逃がさせて頂きます。出でよ、ガイエン」

 

 現れたのは大きな剣を持つ巨大な鬼。

 

「撤退!」

「ちっ、アリエッタは追いなさい!」

「任せて」

 

 私は飛んで行く。飛びながら闇の弾丸を放つ。でも、ナイフみたいなので防がれる。

 

「ネガティブゲイト」

「ユエル」

「うん!」

 

 相手は空で宙返りして避けた。でも、負けない。

 

「残念ですが、タイムアップです」

「逃がさない。イービルライト!」

 

 バロールの瞳により、即死の効果がある光線を放つ。でも、その前に相手が掻き消えるように消えていった。

 

「たお、した……です?」

 

 後ろを見ると、お姉ちゃんが横たわった巨大な鬼を踏みつけていた。

 

「ごめん、逃げられた……です」

「まあ、しょうがないか。召喚師みたいだし」

 

 強い敵、おおい。でも、次は倒す。

 

 

 



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37話

 

 

 

 港からゆっくりと内陸部に対して侵攻し、確実に支配地域を増やしていった俺達にまさかの報告が届いた。その為、タルタロスの内部で緊急会議を行っている。

 

「よもや、ルサルカが殺られるとはな……」

「殺されてないから!」

「シカシ、奴ハ我等ノ中デ最弱……」

「ざけんな! その喧嘩、買ってやりましょうか! 地上でね!」

「そこは海でも買えよ」

「いやよ! 負けるじゃない! 深海棲艦相手に海とかやってられる訳ないでしょ! 引きずり込まれて終わりよ!」

「オレは勝てるぞ」

「アンタは例外よ!」

 

 キャロルと深海棲艦のレーに色々と突っ込まれるルサルカ。実際、海戦ならルサルカが負けるだろう。陸上戦なら火力の穴を抜けてナハツェーラを接敵させれば勝てるだろう。というか、その気になれば深海棲艦すらもナハツェーラとして取り込める時点で時間が経てば海でもルサルカが勝つ可能性も有る。

 キャロルは問答無用で分解してくるからどこでも勝てるだろうな。流石はラスボスだ。

 

「というか、馬鹿妹よ。殺されたのは事実であろう」

「うっ……でも、逃げられただけで負けてないし?」

「愚か者。殺された上に逃げられた時点で負けよ。再教育が必要かしら?」

「うっ、うわぁぁぁん! ご主人様っ、みんなが虐めるの~!」

 

 そう言って俺に抱き着いて身体を擦りつけて来るルサルカをこちらからも抱きしめて撫でてやる。

 

「卿等もその辺にせよ」

「まってパパ。そいつ、パパに甘えてるだけ」

「はぁはぁ」

「良い。殺されたのは事実であるからな」

「勝った」

「ちっ、後で覚えてろよ」

「知らないも~ん」

 

 甘えて来るルサルカを可愛がりつつ、寄って来て裾を引っ張るアリエッタも抱き上げて二人を膝に乗せる。

 

「さて、改めて報告を聞こうか」

「了解! 相手はザ・ニンジャって感じの奴だったわね。後は白いワイバーンに乗った獣耳の子が居たわ」

「へぇ、白いワイバーンとは面白いですね」

「ジャンヌ、何か知っているか?」

「いえ、知りません。ですが、竜という事なら任せてください」

「頼む」

「しかし、それだけではわからんな」

「ん、データある」

「アリエッタ、ツカエル」

「私が使えないみたいに言わないでよ!」

「……事実……?」

「ほっぽちゃん、何か言ったかな? かな?」

「ほっぽ、チガウ。今ノ、レー」

「ケタケタ」

「貴様かぁー!」

「止めよ。御前であるぞ」

 

 声を出して止める前に発砲音が聞こえてレーとルサルカが仰け反る。それぞれの額には弾丸が命中しており、ぽろりと落ちる。

 

「エレオノーレ、発砲はやりすぎだ」

「はっ、失礼致しました。続きをどうぞ」

「ん。デモンズハート」

『yes』

 

 虚空にスクリーンが展開されてアリエッタとルサルカの二人。それに敵であろう二人と一匹。それに鬼神の姿が見えた。

 

「おい、待て。なんだこれは」

「何って鬼でしょ?」

「良く勝てたな」

 

 思わずルサルカを褒める。何故なら、こいつは鬼神将ガイエン。鬼妖界・シルターンより呼ばれる、人の側に立って悪鬼と戦った古の鬼神武将。そも、鬼神とは神々でも荒々しい神格を持った存在のことで、言ってしまえば神なのだ。

 

「え? 弱かったわよ」

「おい待て。弱かったってなんだ。どう考えても強いだろ!」

「私でも対抗できるかどうか……」

「いやいや、そんなはずないでしょ。だって、動き止めてぼこぼこにしてやっただけだし」

 

 キャロルとエレオノーレの言葉にあっさりと答えるルサルカ。

 

「コイツ、嵌メ殺シシヤガッタ」

「……コワイ……」

「ええ、まあ一撃受けた時点で終わりに近いわよね。まあ、抵抗できるでしょうけど、こんだけ群がられたらレジストしきれないでしょう」

 

 そんな話をしていると扉が開いてセニアがトレイを押して入って来た。隣にはセシルも居る。

 

「お茶が入りました」

「とりあえず、休憩にしない?」

「そうだな」

 

 セニアが皆にお茶を配ってくれる。

 

「……ノンジャ、ダメ……」

「チッ」

「ウゴクナ」

 

 ほっぽが止めてレーとク―が俺に向けて艦装の主砲や副砲を構える。

 

「おい、貴様等どういうつもり……」

「良い。ヤレ」

 

 即座に発砲される銃撃は俺の頬を掠り、後方へと抜けて金属音が響いた。そして、即座に動く風の動き。それに対して三人から容赦の無い銃撃の雨が放たれるが、相手は捕まらないようだ。

 

「キャロル」

「やってる! ちっ、気配も何もしやがらない。サーモグラフィーでなら……ヒット! そこか!」

 

 キャロルが成長して鎧を纏った姿となる。まるでブラックマジシャンガールみたいな恰好だが、ケルト神話に於けるダーナ神族の最高神、ダグザの振るいし金の竪琴を使うその力は桁が違う。鋼糸魔弦を使った糸によって敵を捕らえる為に放つが、あっさりと切断される。

 

「ちっ、どこに……パパっ!!」

 

 キャロルの焦る声に振り返りたいのを我慢してそのままで居る。すると背後から降り降ろされる圧倒的な力を持つ剣は差し出された槍によって防がれる。

 

吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)

 

 炎が敵を包み込み、そこに銃弾の雨とエレオノーレからの砲撃が叩き込まれる。

 

「殺ったか?」

「それ、フラグだから」

 

 そうルサルカが呟いた瞬間。碧と深紅の剣に斬られた深海棲艦の三人が吹き飛ばされて壁を貫いて外へと飛んで行く。

 

「いい加減姿を見せたらどうだ、侵入者よ。それとも、無理矢理にでも出させてほしいのか?」

 

 アリエッタ達を降ろし、玉座に肘を置いたままそう発する。

 

「なあ、碧の賢帝(シャルトス)紅の暴君(キルスレス)の使い手よ」

 

 一瞬だが、空気が変わった。そこにセシルが矢を放つ。相手は剣で矢を叩き切るか、接近したセニアが斬りかかる。それに対してもう片方の魔剣で対抗する相手。だが、その背後にはアリエッタが放ったシューターが大量に配置されている。

 

「よくやった。殲琴・ダウルダブラ」

 

 キャロルが放つ絶唱はダインスレイフの呪われた旋律を用いる事で世界を壊す歌を口ずさむ事が可能であり、その出力はフロンティア事変終盤に於いて紡がれた70億の絶唱すらも凌駕するというとんでもないもの。では、そんな攻撃を受けた相手はもちろん……タルタロスがどうなるかなんて言わなくてもわかるだろう。ああ、半分が消し飛んだ。

 

「逃げたか……」

「手ごたえは有ったんだけどな……」

「魔剣の数だけ倒さねば意味がない。奴は我等と同じような存在だからな」

「限定的な不死か」

 

 エリクサーを飲んで記憶を回復させるキャロル。タルタロスが壊れた時点でこちらだけの痛手となる。いや、そもそもサモンナイトの連中なのだ。それがサモナイトソードを目的として作られた魔剣を所持している奴が近接戦闘だけだと? ありえぬ。

 

「警戒せよ。まだ終わっておらぬ。ルサルカ、エレオノーレ、創造を使う」

「御意」

「ええ、任せて!」

 

 直に詠唱を開始する。開いたタルタロスの先に見える空にはワイバーンに乗った奴等の姿が見え、同時に空に展開される巨大な魔法陣の姿が見えてきた。それぞれ色が違い、赤い色に青い色、碧の色に鉄色の魔法陣だ。使用されている魔力と魔法陣の大きさから現れるのは推定Sランク召喚獣だと想定される。

 

In der Nacht, wo alles schläft(ものみな眠るさ夜中に)Wie schön, den Meeresboden zu verlassen.(水底を離るることぞうれしけれ)Ich hebe den Kopf über das Wasser,(水のおもてを頭もて、)Welch Freude, das Spiel der Wasserwellen(波立て遊ぶぞたのしけれ)|Durch die nun zerbrochene Stille, Rufen wir unsere Namen《澄める大気をふるわせて、互に高く呼びかわし》Pechschwarzes Haar wirbelt im Wind(緑なす濡れ髪うちふるい)Welch Freude, sie trocknen zu sehen.(乾かし遊ぶぞたのしけれ!)Briah―(創造)Csejte Ungarn Nachatzehrer(拷問城の食人影)

 

 世界が塗り替えられ、城から無数の人影が出て来る。

 

Was gleicht wohl auf Erden dem Jägervergnügen(この世で狩に勝る楽しみなどない)Wenn Wälder und Felsen uns hallend umfangen,(狩人にこそ、生命の杯はあわだちあふれん)|Diana ist kundig, die Nacht zu erhellen,《角笛の響きを聞いて緑に身を横たえ、藪を抜け、池をこえ、鹿を追う》Wie labend am Tage ihr Dunkel uns kühlt.(王者の喜び )Die Bewunderung der Jugend(若人のあこがれ! )

 

 更に塗り替えられ、幅7m・高さ11m・奥行き47mという巨大さ故に形成されるドーラ列車砲を素体とする超巨大な聖遺物。極大火砲・狩猟の魔王(デア・フライシュッツェ・ザミエル)。彼女はまだもう一段階上の切り札を残しているが、問題無いだろう。

 

「|Dieser Mann wohnte in den Gruften, und niemand konnte ihm keine mehr,《その男は墓に住み あらゆる者も あらゆる鎖も》|nicht sogar mit einer Kette,binden《あらゆる総てを持ってしても繋ぎ止めることが出来ない》|Er ris die Katten auseinander und brach die Eisen auf seinen Fusen.《彼は縛鎖を千切り 枷を壊し 狂い泣き叫ぶ墓の主》|Niemand war stark genug, um ihn zu unterwerfen. 《この世のありとあらゆるモノ総て 彼を抑える力を持たない》Dann fragte ihn Jesus. Was ist Ihr Name?(ゆえ 神は問われた 貴様は何者か)Es ist eine dumme Frage. Ich antworte.(愚問なり 無知蒙昧 知らぬならば答えよう)Mein Name ist Legion―(我が名はレギオン)Briah―(創造)Gladsheimr―Gullinkambi fünfte Weltall(至高天・黄金冠す第五宇宙)

 

 |至高天・黄金冠す第五宇宙《グラズヘイム・グランカムビ・フュンフト・ヴェルトール》は“全力を出す機会が欲しい” という渇望を具現化し、ラインハルトが全力を出すための場である“城”を創造する。武装親衛隊を中心とした兵員を召喚する事が可能となり、城の中で死んだ者を戦奴に加える事ができる。故に拷問城が姿を変え巨大な別の城へと変貌する。

 

「さあ、楽しい戦争を始めよう。相手も準備が出来たようだ」

 

 新たな城作られた城の中には空に居る連中だけでなく、ローブ姿の沢山の人影が遠くに存在する。連中は次々と召喚獣を呼び出して来る。

 空には機神ゼルガノン、龍神オボロ、牙王アイギス、レヴァティーン。ロレイラル、シルターン、メイトルパ、サプレスが誇る巨大な力を持つ王達。しかし、相手が悪かった。

 

「はっ、私に竜で挑もうなんていい度胸じゃない! アンタ達は私の物よ!」

 

 ジャンヌがそういうと、二匹は制御を外れて暴れ出す。おそらく、相手の支配とジャンヌの支配でのせめぎ合いで暴走しているのだろう。敵陣で暴走してくれるのはありがたい。

 

「エレオノーレ、機械は私が相手をする。雑魚は任せる」

「はっ」

「じゃあ、私はワンコちゃんでも相手にしてようかな」

「ご主人様……アリエッタが、相手をする……」

「そうか。キャロル、サポートしてやってくれ」

「パパはどうする?」

「うむ。奴と殴り合いだ。と、言いたいが……飛ばねばならぬな」

「まあ、放っておいても向こうから来るだろうけどな」

「そうだな。では、各自で健闘を祈る。散会」

 

 皆がそれぞれの敵へと進んでいく中、待つ。戦場では世紀末のような、世界の終わりのような光景が繰り広げられている。何故なら、戻って来た深海棲艦の子達も合わせて砲撃の雨を召喚士達に叩き込んだりしているからだ。

 アイギスはルサルカによって嵌め殺しにされているし、アリエッタがゼルガノンに対してキャロルと一緒に砲撃を放っている。余波だけで大地は隆起し、地割れが出来ていく。

 

「来たか」

 

 そんな中、俺の前には一人の女性が現れた。その姿はサモンナイト3に出て来るヘイゼル。そう、2のパッフェルさんでは無く暗殺者赤き手袋のヘイゼルだ。しかし、その手にはシャルトスとキルスレスが握られている。その為、姿が少し変わっている。髪の毛が白くなっていて、瞳も赤と碧のオッドアイみたいになっている。トレードマークのマフラーはしっかりと有る。

 

「私の名はコルネリウス・リーゼンフェルト。この軍の指揮官だ。卿の名は?」

「ヘイゼル・グランフェルト。赤き手袋の指揮官」

「私と似た同輩よ、降伏してくれぬか? 我等が戦えばどうなるかわかるまい。悪いようにはしない事を約束しよう」

「……命令は殲滅。それに妹を助けられるとは思わない。だから、戦う」

「こちらの戦力を見てもか」

「驚いた。予想以上の戦力だから……でも、貴方を倒せば終わり」

「果たしてそれはどうかな? 少なくとも私よりも強い奴が後に控えているぞ」

 

 エセルドレーダとかがな。

 

「問題ない。全て斬り伏せる」

 

 虚空に消えて、一瞬で背後に現れて斬りかかって来る。それを回転する事で薙ぎ払う。既に相手はその場におらず、槍を振るった衝撃波で数キロにわたって大地が粉砕された。

 

「当たれば終わりだが……」

「あたらなければどうという事はない」

「シャアか」

「赤いから」

 

 通常の三倍どころか、数十倍の速さで動き、斬りかかってくるヘイゼルに槍でなんとかさばく。ジャンヌとの特訓が無ければ早々に死んでいただろう。

 

「親衛隊よ、一斉砲撃せよ」

 

 武装親衛隊。召喚したナチスのSSが銃弾の雨を放つがそれすらも避けて召喚を行って来る。

 

「焼き払いなさい、ゲルニカ」

 

 ドラゴンが召喚され、ブレスが吐かれる。

 

「それも貰いね!」

「ちっ、邪魔」

 

 ブレスは逆にヘイゼルへと放たれる。だが、一瞬で切断されて消えていく。

 

「ジャンヌ、そっちはどうだ?」

「手古摺ったけれど、支配下に置いたわよ」

「ならばよし。二人でゆくぞ」

「そうね。まさか卑怯だなんて言わないわよね、暗殺者さん」

「好きにすればいい。勝つのは私だから」

 

 高速の剣劇を二人で弾く。その為に突きを出したのだが……相手は無防備に受けて肉片となり弾き飛ばされた。だが、次の瞬間には再生して俺の片腕を赤い炎の剣で切り落とし、ジャンヌの胸に青い剣が突き刺さっていた。

 

「ちぃっ、こんなところで……」

「戻れ」

「ええ、また後で。生き残りなさいよ」

「当然だ」

 

 ジャンヌが消えてカードとなって俺の下へと戻ってくる。再召喚にはそれなりの準備が必要だ。だが、問題はこれでレーヴァティーンとオボロが相手の支配下に戻った事だろう。

 

「しかし、何本の魔剣を持っているのだ」

「いっぱい?」

 

 小首を可愛らしく傾げているが、持っているものが物騒すぎる。不滅の炎(フォイアルディア)果てしなき蒼(ウィスタリアス)。まだ持っていそうだ。ひょっとして全てか? だとしたらサモナイトソードに覇王の剣はやばい。

 

「私はまだまだ死なない。何度だって蘇る」

「ちっ」

 

 こっちの不死性は相手が神器クラスの武器なので意味が無い。

 

「仕方あるまい」

「降参するの?」

「まさか。やれるだけはやるさ。妻達に見せる顔がないのでな!」

「そう、どうでもいい。さっさと死んで」

「貴女がね」

「っ⁉」

 

 ヘイゼルの胸に小さな掌が突き抜けてきて、そこには心臓が握られていた。貫いた小さな手は普段は服の袖の中に隠れてしまっているものだ。

 

「あら、本当に再生するのね」

 

 心臓を砕いて引き抜いた血塗れの手を振るって血を飛ばす少女。綺麗な紫色の髪の毛をし、深紅の瞳の可愛らしい無表情な斑模様の服を着た少女。ヘイゼルは少し離れた場所で再生されている。その手にはフォイアルディアの代わりに曲刀の紫紺の蛇刀(バルバーリア)が握られていた。

 

「何者だ」

「この人の妻よ。それにしても、よくも夫の腕を斬り落としてくれたわね。この落とし前、高くつくわよ」

「問題無い。殺すだけ!」

 

 瞬時に掻き消えてペストに斬りかかるヘイゼル。

 

「ふぅ~ん。で?」

「なっ!?」

 

 しかし、無防備に曝された肩に剣が命中したが、その柔肌に一切傷をつける事もなく、剣が止まっている。その剣をペストが片手でそれぞれ掴んで圧し折った。

 

「ほら、どうしたの? 次を出しなさい。ひょっとした星を砕く程度の力を持っている物があるかも知れないわよ? まあ、全部砕くのだけれど」

 

 普段のペストからは想像が出来ない程怒っているようだ。そう思いたいが、どうなのだろうか?

 

「さあさあ、早くしないとお仲間たちが全滅するわよ?」

「何?」

 

 戦場をみると黒い風が縦横無尽に戦場で大暴れしている。触れた者は容赦なくその命を落としていっている。流石は生きとし生ける者の天敵だ。

 

「この国の人間は皆殺しよ。今、そう決めたわ」

「させるかっ! 来い、覇王の剣っ! サモナイトソードっ!」

 

 剣を呼び出し、握ろうとするヘイゼル。しかし、握る前に蹴り飛ばされ、剣はペストの手の中へと入った。

 

「馬鹿ね。わざわざ待ってやる訳ないでしょ」

 

 蹴り飛ばした先に先回りして、頭を掴んで地面へと叩き付ける。大地が粉砕されてクレーターが作成される。

 

「貴女が何度復活できるか、楽しみね。先ずは一回目ね。じゃあ、二回目と行きましょうか」

 

 それから行われたのは戦いというには一方的な悲惨な状態だった。途中で止めなければ完全に殺していただろう。いや、完全に死んでいた。聖痕を通してその魂を収集し、キャロルによってクローンを作らせて魂を叩き込んで生き返らせたに過ぎない。お蔭でクローンの急速成長の限界である幼女と少女の中間のような状態になってしまった。まあ、キャロルの状態になるように調整されているのだから仕方のない事だろう。

 

「で、なんでそんなニヤニヤしているのよ? 腕を切り落とされたのに」

「いやぁ、ペストに愛されているなっと思ってな」

「ちっ、違うわよ! 助けに来たのはキャロルとジャンヌに頼まれたからよ! 仕方なくよ! わかった?」

「ああ、わかった」

「そう、それならいいわ。それよりもさっさと腕を治しなさい。目ざわりよ」

「いやいや、口移しで頼む」

「ふざけないで」

「いや、真面目に」

「しっ、仕方ないわね……今回だけよ」

 

 そう言って、エリクサーを口に入れて口移しで飲ませてくれるペストの顔は真っ赤だった。これで腕は再生した。

 その後は膝の上に乗せて一日中ずっと一緒に居た。口では嫌がるペストも自分からは離れようとしなかった。

 

「パパ、それでどうする?」

「なにがだ?」

「タルタロスが大破した訳だけど、足は?」

「あー速攻で修理は……」

「無理」

「諦めて歩きかドラゴンね」

「この辺りで進軍を止めるのも手ではあるな」

「待ってくれ……」

 

 その声に床を見ると、首輪をつけられ下着姿で手枷と足枷をされた幼いヘイゼルが居る。

 

「何よ?」

「妹が居るんだ……」

「そういえば私では無理みたいな事を言っていたな」

「この国の女王だからだ」

「なるほど」

 

 それは確かに普通なら無理だろう。

 

「頼む、なんでもするから妹を助けてくれ」

「どうするの?」

「ペストはどうしたい?」

「私は別にもういいわよ。コイツの力は役に立つでしょうし」

「そうか。妹共々、私のモノとなるならば助けてやろう」

「っ!? それは……」

「仕方ないんじゃない? そうじゃないとアンタはともかく、妹は危険すぎるわよ」

「……わかった。だが、酷い事は私が引き受ける。だから、妹は優しくしてやってくれ」

「いいぞ。ゆっくり休んでいろ。セニア」

「わかった」

 

 セニアがヘイゼルを連れていく。これで諜報部隊を手に入れた事になる。

 

「で、本当に妹を助けるの?」

「相手次第だ。だが、このまま王都まで進軍する。どの道、ジャンヌを復活させるには大量の生贄が必要だからな」

「そうね。たっぷりと略奪させて貰いましょう」

「ああ、それで思い出した。いっそ、ペストとアリエッタで空を飛んで王都に突撃し、女王を誘拐してくるか?」

「いいわね、それ。キャロルを抱いて交代で飛べば王都から転移で逃げたらいいし……って、キャロルも飛べるわね」

「本当に便利だな、キャロル」

「そうね。でも、そんなことよりも可愛い娘よ」

「それはそうだな。後で可愛がってやるとするか」

「ええ」

 

 一日、まったりと過ごしてからジャンヌ復活の準備を整える。それからまだまだ修行が必要だ。ラインハルトの力を使いこなすにはまだまだだからな。そもそもあたればここまでヘイゼルに苦戦する事もないのだからな。

 

 

 

 

 

 



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38話

 

 

 ペスト

 

 

 アリエッタとその妖獣部隊。それに加えてキャロルの三人で空を飛び、ベルニエ王国首都、ベルティエに到着した。目的はヘイゼルから頼まれた女王の拉致と略奪。私達が制圧しないのは面倒な戦後処理を避ける為とこれ以上やり過ぎない為に他の連中に手柄を与える為。今回の戦争で少なくとも軍港を含む港に軍艦とそのドック、生産技術。その付近の領地を支配下に置いている。

 これ以上は流石に文句が出るでしょうし、どうでもいい場所なので譲ってあげる事にした。

 

「だけど、賠償金は頂くわ」

 

 両手を振り上げて黒い霧を上空から散布していく。

 

「アリエッタは計画通りに襲って資金を回収しなさい」

「ん、行く」

 

 ハーピィを初めとしたモンスター達が一斉に降下していく。見張りは既に死に絶えているのであっさりと侵入できる。

 

「じゃあ、オレ達も行こうぜ」

「ええ」

 

 城へと侵入した私とキャロルは騎士を殺し、その情報を引き出して使用人の部屋に潜入してメイド服を奪って着こんでから女王様を探す。メイド姿の二人で城を進んでいく。何人もの邪魔者が来るけれど、敵じゃない。

 

「こいつらって殺しちゃ駄目なのよね?」

「勿体無いからな。何せNINJAだから」

 

 そう、邪魔者はヘイゼルが召喚したシルターンの忍者。私達の弱い諜報部隊にする予定なので出来る限り殺さないようにしておかないといけないわね。

 

「っと、ここね」

「ああ。だけど、なんか声が聞こえるな」

 

 二人で扉をこっそりと開けて中の様子を確認する。

 

「ちょっとっ、本当なの! あのヘイゼルが負けたって!」

「ええ、間違いありません」

「うそっ、使えない姉ね! あんなに目を掛けてあげたのに!」

「陛下、そのような言葉は……」

「五月蠅いわよ! 下劣で下等な血が入ってる殺人鬼なんかに姉と呼ばないといけない苦しみがわかるの! 上手い事利用して邪魔者を排除させたのに!」

 

 聞くに堪えない言葉が続いていく。

 

「ふぅ、これは駄目ね」

「そうだな。中身が腐ってやがる。どうする?」

「ヘイゼルにとっては可愛い妹なのよね?」

「ああ、そうだな。猫を被ってたようだしな」

「なら、中身を変えてしまいましょうか」

「何を入れるんだ?」

「要るじゃない、ベストな子が」

「それもそうか。なら、邪魔者はさっさと殺してしまおう」

「ええ。必要なのは身体だけ。後は要らないわ」

 

 扉を蹴破って中に入る。

 

「なっ、なによアンタ達! 無礼よ!」

「近衛兵っ、こやつらを斬れ」

「邪魔よ」

 

 片手を振るって黒い風で切り刻む。大臣の方はキャロルが取り押さえて自白剤を無理矢理飲ませている。

 

「さて、ごめんなさい。間違って身体まで死ぬかもしれないけれど、勘弁してよね?」

「ひっ!?」

「ああ、でも身体はオレが作ってやるから一部さえ残していたらいいぜ」

「それもそうね」

 

 近衛兵が使っていた剣で頭を掴んだ少女の片腕を切り落とす。鮮血と悲鳴が轟く中、精神だけを殺していく。

 

「あ、駄目ね。やっぱり難しいわ」

 

 身体にまで斑模様が出てきてしまった。失敗ね。

 

「まあ、クローンで作るから問題ないさ」

 

 キャロルが切り落とした腕をケースに入れて保存する。

 

「じゃあ、後は適当に病死にでもしてもらいましょう。いえ、大臣が乱心した事にしましょう」

「それがいいな」

 

 薬を飲ませてから宝物庫などに移動していく。その途中で美術品から様々な高価そうな物を貰っていく。宝物庫についたら抉じ開けて一切合切を貰っておく。外では大騒ぎになっているので、そのまま外に出てアリエッタと合流する。

 

「そっちはどう?」

「ばっちり、です」

「そう、よくやったわ」

「ん」

 

 街の貴族街などからとくに火の手が上がっていたりするけれど、気にする必要はないわね。

 

「リスキーダイス用の人は確保した?」

「ん、問題無い、です」

「じゃあ、帰りましょうか。キャロル」

「ああ、任せてくれ」

 

 キャロルの転移でタルタロスの場所に戻った私達は早速、女王シーナの肉体のクローンを制作する。同時に材料としてシータとラーマのカードをシータを選択して入れておく。

 

「これでこっちはいいわね。シーナという名前は捨てさせた事にしてシータと名乗らせましょう。ヘイゼルには襲われていて間に合わなかった。とでもいえばいいわ」

「記憶の継承もさせておけば問題ないな。もちろん、性格はシータで」

「ええ、お願いするわ。じゃあ、私達は戻るわ」

「ああ、引けよ」

「任せなさい」

 

 手に入れた美術品達も資金に変更してリスキーダイスを使ってガチャを引かせ捲る。国家予算や国庫の金額が湯水のように使われていく。そして15回目でシータとラーマのカードが出てくれたわ。残り資金が2億だけど、まあ次のガチャに回しましょう。

 

 

 



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39話

 

 

 

 ペストから連絡を受けてラーマを自らにインストールする。これにより、二人をインストールする事で激痛が身を焼く事になるが、新たにシータを迎える為なら問題は無い。そう思っていたら暗い空間の中に居た。そこはラインハルトと会った所だ。

 

「卿もようやく来たか」

「ああ」

 

 目の前にはラインハルト・ハイドリヒが聖約・運命の神槍を構えており、その横には倒れている赤髪の少年が居た。

 

「彼は……」

「中に入ってきていきなり襲い掛かってきたのでな……蹴散らした」

「ぐっ」

「おいおい」

 

 身体の様子を確認すると問題無いみたいだ。取り敢えず、席を作って話し合いを行う。

 

「いや、丁度いい。卿にも訓練をつけてやろう。あのようなぶざまを晒すなど、同じ私としても許容できん」

「っ⁉ わ、わかった」

 

 聖約・運命の神槍を呼び出し、稽古をつけて貰う。訓練で徹底的にぼこぼこにされるが、目指すべき理想が目の前にあるので実力がどんどん上がっていくのを感じる。

 そんな事をしていると、ラーマも起きたようで弓を構える。

 

「魔王めっ、今度こそ余が成敗してくれる!」

「ふはははは、良い、良いぞ。二人がかりでくるがいい。Dies irae, dies illa, solvet saeclum in favilla.(怒りの日 終末の時 天地万物は灰燼と化し)

 

 やばい詠唱が行われていく。あれが完成されたらマジでやばい。

 

「おい、協力してこの場を乗り切るぞ」

「うむ。余も流石にアレは無理だ」

 

 俺が前衛を務め、ラーマが弓を持って後衛を務める。

 

「ふはははっ、ぬるいっ、ぬるいぞっ! 卿等っ、もっと奮起せよ!」

 

 徹底的に訓練を施される。殺されても復活させられ、また殺される。この繰り返しだ。

 

 

 訓練が終わり、ようやく話し合いとなった。もちろん、内容はシータの事だ。

 

「つまり、余がシータと再会する為に融合するつもりなのか。しかし、それならば余を召喚すれば……」

「それは断る」

「貴様っ、シータが目当てかっ!」

「そうだ」

「っ⁉ おのれっ!」

「そちらは一度失敗しているだろう。それにこのままでは永遠に出会えないぞ。しかし、こちらの方法なら問題なく出会える可能性がある」

「それは……」

「それにそちらは俺の一部として出会えるのだ。これは譲歩している事だ。別に俺は彼女だけでも構わんのだが」

「くっ、形はどうであれシータと共にいられるのであれば……致し方ないか。だが、必ずシータを幸せにするのだぞ」

「無論だ」

 

 ラーマの説得が終わり、融合を開始する。これで俺は彼でもある事になる。

 

 

 

 

 気が付くと数時間が過ぎていた。回りを見渡せばペストに連れてこられたのであろう、赤い髪をツインテールにした可愛らしい少女が俺が寝ているベッドの隣に寝ていた。彼女を見ると心の奥底から愛しいという感情が湧き上がって来る。

 

「起きたのね」

「ああ、待たせたようだな」

「別になんでもないわよ。それより、これ」

 

 そう言ってペストがフェイトのカードを渡してくれる。これがシータを引く為に出た余りなのだろう。あまりとは言わないか。本命ではないとはいえ、彼等は英霊なのだから。

 

「ありがとう」

「別にいいわよ。それより、わかってるわよね?」

「ああ。ペスト達の事もちゃんと愛するさ」

「違うわよっ!」

「くっくく」

 

 真っ赤になったペストを撫でていると、起きたのかシータが身体を起こす。そして、回りをきょろきょろとしだした。その後、自分で顔を触っていく。

 

「どうしたの?」

「……み、見えません……」

「まさか……」

「声は聞こえるのですが……旦那様、ペストさん……どこですか……?」

「こっちだ」

 

 震えるシータを抱き寄せる。それからペストが瞳をみていく。

 

「呪いね。どうやら、防ぎきれなかったみたいよ」

「どうにかして手段を講じないとな」

「あの、大丈夫ですから、無理はしないでください……私は旦那様と触れ合えるだけで幸せですから……」

「いや、必ず何か方法があるはずだ」

「そうね。でも、先ずはシータを安定させる為に魔力供給を行いましょう」

「シータは大丈夫か?」

「はい、問題ありません。どうぞ、旦那様のお好きになさってください……」

 

 それから二人と口づけを交わしていく。ペストもシータに対抗していつも以上に尽くしてくれる。肝心のシータだが、そちらはやはり目が見えないので不安そうだが、その分敏感になって気持ち良くなってくれた。

 

 

 

 次の日、両脇で眠っているペストとシータの頭を撫でながらシータの目をどうにかする方法を考える。

 

「呪いを消去……呪いを強制解除……生半可な方法では……それこそルールを破壊するような……」

 

 そう考えてると一つ思い付いた。昨日、ペストから受け渡されたカードをみていく。そこには丁度欲しいカードが二枚あった。どちらもキャスターで同じ存在だ。ただ、違うのは年齢にあたる。

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖には我が大師シュバインオーグ。降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

 詠唱を行い、彼女を召喚する。

 

「サーヴァント、キャスター。メディアです。あの、よろしくお願いしま……っ⁉ あわわ」

 

 召喚したのは14歳のメディアだ。身長は149cm。そう、リリィバージョン。こちらのメディアなら比較的簡単に俺のいう事を聞いてくれるだろう。そんなメディアは顔を真っ赤にして両手で顔を隠している。そんなメディアにベッドから出て近付くと更に真っ赤になる。

 

「メディア。俺はお前のマスターで夫だ。愛してやる」

「……ふっ、ふつつかものですが……お願いします……」

 

 抱きしめて耳元で囁いてやると、簡単に身体を預けてくる。彼女は純粋で人を信じやすく、マスターに対しても最大限好意的に接する。更に恋話が大好きで、特に“お見合いから始まる恋愛結婚”に目が無く、“白馬の王子様思考なお姫様”という言葉がふさわしい。つまり、ちょろいのだ。

 

「さて、お願いしたい事がある」

「はい、なんですか?」

「彼女の目を直してくれ」

「はい」

 

 先ずは二人を起こしてメディアを紹介する。それから彼女の宝具、修補すべき全ての疵(ペインブレイカー)を使って貰う。

 

「どうだ?」

「だめでした……少し見えたのですが……」

「これはあれです。この呪いの状態が元の状態だと認識されてしまっているので、私の宝具では無理ですね」

「そうか。なら、これを使おう」

「はい」

 

 メディアにキャスター・メディアのカードを入れて合成させる。合成させるのは第五次に召喚された大人のメディア。元々は故郷のコルキスで家族と国民に愛され平和に暮らす箱入り王女であった。しかしイアソン率いるアルゴー船一行の上陸により彼女の運命は狂い始める。女神アフロディテの呪いによってイアソンを妄信的に恋するようにされた彼女は、追っ手を退けるために弟をバラバラに殺害し、アルゴー船へと乗り込む。その後もイアソンに言われるがまま己の魔術で多くの非道を働き、英雄たちや人間たちから「裏切りの魔女」として非難・中傷を受け、そこまでして尽くしたイアソンも一度も労わることなく彼女を裏切る。その後はコリントスの一件でイアソンに復讐。晩年は人々の復讐に遭い死んだとも、不老不死となりギリシャの地を彷徨っているとも言われている。そう、彼女の愛した故郷の土をついぞ踏む事は無いままとなった。そんな彼女の願いは故郷に帰る事だ。そんな彼女が持つ宝具が破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)である。これは歪な形をした短剣。攻撃力は普通のナイフと同程度しかないが、「あらゆる魔術を初期化する」という特性を持つ最強の対魔術宝具である。

 

「そのルールブレイカーを使えばいいのよね」

「それで問題ないはずだ」

「では覚悟はいいですか?」

「はい、お願いします」

 

 メディアがシータの身体に短剣を突き刺す。そして、宝具を発動させる。するとゆっくりとシータの瞳に光が灯っていく。同時にメディアが俺にも突き刺してきた。

 

「これで大丈夫のはずです。相互補完するようにされていたので、破壊しました」

「どうだ?」

「見えますっ、見えます……」

「俺の一部だけがラーマなのだが、構わないか?」

「姿は違ってもラーマ様ですから」

 

 シータが泣きながら抱き着いてくる。同時に俺の瞳からも涙が出てきた。

 

「むぅ、ずるいです」

「いいから、いくわよ。後で可愛がって貰ったらいいでしょ」

「それもそうですね」

 

 二人が出て行ったあと、互いに全てを確かめるようにしていく。それから一日中、シータと抱き合って過ごした。

 

 

 

 次の日、メディアを抱いた後に地下室でルサルカに凌辱されていたヘイゼルをシータと共に助け出す。これは殺されたルサルカの気晴らしの理由でもあるし、手加減するように言ってある。シータの姿を見たヘイゼルも安心したようでなによりだ。そのまま彼女達を抱いて楽しんでいく。

 そんな事を数日間していると、混乱状態であるベルニエ王国王都、ベルティエが落ちた。これにて戦争は終わり、事後処理となった。こちらの戦力は更に強化された事もある。何より妻も増えたので楽しみだ。

 

 

 

 



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40話

 

 

 

 ラングハイム皇国王城にある式典などが行われるホールに俺は居る。隣には俺と同じく軍服を着たエレオノーレが立っている。他には豪華な衣装に身を包んだ貴族達や、鎧を着た騎士達だ。そのような中なので明らかに俺達は浮いている。ドミニクも出席している。貴族は全員出席させられる。来られない場合は代理が特別の場合のみ許可されている。

 

「シルヴィオ・ジ・ラングハイム皇王陛下、ご入来!」

 

 銅鑼が鳴り響き、壇上の左右にある大きな門が開いて一人の年老いた皇王が入ってくる。その後ろからは王族の者達が付いてきている。その中にはルドルフやシエルも居る。

 皇王が壇上の真ん中に立ち、その背後に王族の皇子や姫が並んでいく。

 

「此度の戦により、古き時代より我等が宿敵であるベルニエ王国を滅ぼせた事を嬉しく思う。よくやった。ながったるい話は抜きにする。併合にはまだいくばくかの時間があろうからな。おい」

「はっ。これより此度の戦での功労者を発表する」

「お待ちください」

「なんでしょうか、エアハルト殿下」

「消滅した砦の件について、シエルに聞きたいのです」

「陛下」

「よい。答えてやれ」

「その……別の人にお願いします……あの、来てください」

 

 まあ、彼女には何があったかはわからないだろう。とりあえず、呼ばれたので出て行く。ドミニクは真っ青だ。下手をすれば一家断絶とかもあり得るのだからな。

 

「お前は……」

「コルネリウス・リーゼンフェルト男爵です。此度、シエル皇女殿下の配下としてお仕えさせていただきました」

「貴様が……」

「さて、此度の砦の件との事ですが、いたって簡単です。増援要請が送られて来たのでは私の配下である魔導師二名を派遣しました」

 

 魔導士という事で回りがざわついていく。魔法を使う者のランクは基本的に魔術師、魔法師、魔導師となる。それぞれ初級、中級、上級、戦略級とある。一概にはいえないが魔導師の戦略級が一番強いという事になる。今回は砦の破壊から魔導師の戦略級が関わっている事になる。アリエッタの破壊力だけなら、戦略級といえる。むろん、隣にいるエレオノーレもだ。戦略級はぶっちゃければワンマンアミーと考えればいい。文字通り一騎当千という連中の事だ。

 

「私の所には来なかったぞ!」

「エアハルト殿下が布陣している陣地に向かった所、陣にすら入れてもらえず門前払いを受けたそうです。ましてや捕らえられそうになったとの事でした」

「嘘を申すな!」

「事実です。そして、二人は勅令でもあるのでそのまま帰るのはまずいので、邪魔になっている砦を消し飛ばして援軍としての仕事を果たしたという事です。陛下、問題ありますでしょうか?」

「あるはずがなかろう。援軍としての役目は見事果たしておる。後程、褒美を取らす」

「ありがたき幸せ」

 

 後は下がればいい。こちらを睨んでいる連中は無視する。

 

「では、続きです」

 

 それから、様々な者達が褒章を受け取っていく。基本的に切り取った領地の統治権を認めたり、飛び地になる場合の領地を入れ替えたりだ。それと元ベルニエ王国の国民を奴隷とする許可だ。まあ、こちらは事後承諾なのだが。このような時代の敗戦国の扱いなど植民地か奴隷かしかない。領主によっては民にするのだろうが、基本的に反乱など起こされたらたまらないので世代を超えて帰属するまでは奴隷にされる事がほとんどだ。今回の場合は長年争っていたのだから、確実に奴隷とする。さもなければ反乱が起こるのは目に見えているからな。普通なら。

 

「コルネリウス・リーゼンフェルト」

「はっ」

 

 呼ばれたので前に出る。

 

「ベルニエ王国水軍の撃破及び軍船の捕縛。軍港及び港とその周辺地域一帯の制圧を称え……伯爵とする。また、我が国における船舶の扱い、製造の全権を……認める」

「馬鹿なっ!?」

「ありえぬっ!」

「なにかの間違いだろう!」

 

 王族や他の貴族が騒いでいるが、当然だろう。何せ一番の旨味が全て掻っ攫われたのだから。国内の流通を牛耳る事は難しいだろうが、船による大量輸送で経済を牛耳る事は出来る。

 

「静まれ。続きを」

「はっ。ただし、その代わりとしてラングハイム皇国の水軍としての役割を全うする事が条件である。これにともない、水軍を組織し、その長として元帥の位を授ける」

 

 現在、ラングハイム皇国には陸軍の元帥が居るので、完全に陸と海とで別系統となる。

 

「海や川における戦時に軍事物資の輸送も担当する為、各領地への立ち入りを川とその周辺にのみ領主の許可を必要ないものとする」

 

 当然、反発は起こるが、陛下の一言で黙るしかない。これで新しくなった元ベルニエ王国の領地では特に活躍できる。なんせ、あちらは大きな川が沢山あるのだから。

 

 

 

 功労者の発表と褒美の授与が終わり、ドミニクは急いで帰っていった。俺はルドルフとシエルと個室で話す。

 

「まさか、伯爵に元帥とは……」

「これで力を手に入れたぞ」

「はい。どうかお兄様をよろしくお願いいたします」

「まあ、しばらくは卿等に護衛を付けさせてもらう。エレオノーレ」

「はっ」

「彼女とその妹であるルサルカが護衛につく」

「おい、まさか……」

「そちらの想像通りの力を持っている。それと、来い、酒天」

 

 俺が呼び掛けると、虚空から滲み出て来るように酒呑童子が現れる。

 

「彼女達の護衛を頼むぞ」

「了解や。でも、うちにもかまってくれへんかったら……退屈で食らってしまうかもしれへんで?」

「安心しろ。定期的に抱いてやる」

「まてやこら! どんだけ戦力いるんだよ!」

「まだまだ居るぞ。少なくとも、貸し出すくらいにはな……」

「羨ましすぎるんだが……」

「そうだな。卿は魔力がどれくらいある?」

「赤ん坊のころから鍛えていたからな、かなりあるぞ」

「そうか。では卿への援助としてサーヴァントを与えてやろう」

「本当か!?」

「うむ」

 

 シータを手に入れる為に出て余っている手持ちのサーヴァントから選ぶ。持っていてもコスト制限とかで全ては呼び出せんしな。

 

「卿は自らの運に自信はあるか?」

「あるわけない」

「そうか。だが、あえて引かせてやろう」

 

 カードをシャッフルして選ばせてやる。

 

「さあ、引くがいい」

「くっ……君に決めた!」

 

 引いたカードはアサシン。

 

「よりにもよって、彼女だと!?」

「女神を引き当てたか。当たりではないか」

「いやいや、めちゃくちゃ大変そうなんだが……」

「諦めろ」

「いや、まあどうにかなるか? 使い方は?」

「こうだ」

 

 教えてやって、早速召喚させてやる。

 

「サーヴァント、アサシン。貴方が私を召喚したマスターね? 女神たる私を使役しようなんて、いい度胸じゃない」

「あっ、ああ、そうだ。よろしくな……しかし、すごいな。本当に出たぞ」

「当然だ」

「それより、他には何が有ったんだ?」

「ヴラド二枚に、エウリュアレ、メドゥーサ三枚、クー・フーリン4枚、エミヤ、プーティカだ」

「そう、じゃあ、この娘達もお願いね」

 

 そう言って、女神ステンノはメドゥーサとエウリュアレのカードをすっと抜いていきやがった。

 

「おい」

「何? 文句でもあるのかしら? 姉妹で一緒に居たいと思うのは当然ではないかしら?」

「奪い返しますか?」

「まあ、怖い」

「返すんだ」

「まあ良かろう。ただし、金はいただこう。出世払いだ」

「交渉成立ね」

「ぐっ……わかった」

「あの、どういう事ですか? いきなり気配が増えたのですが……」

「ルドルフに嫁が出来たという事だ」

「それは素晴らしいですね」

「嫁って」

「あら、間違いではないわよ、マスター」

 

 抱き着くステンノに慌てるルドルフ。まあ、仕方あるまい。美の女神であるステンノに抱き着かれているのだから。

 

「さっさと召喚しておけ」

「ああ……」

「そうね」

「しかし、閣下。護衛は必要なのでしょうか? サーヴァントが三体も居れば必要ないのでは?」

「そうもいかん。アサシンにアーチャー、ライダーと揃ってはいるが、あくまでもルドルフに関してだ。お前達はシエルをメインに護衛しろ。それに表立ってお前達が護衛するのにも意味がある」

「はっ」

「さて、エリクサーを与えておくが、対外的にはまだ見えないという事にしておくように。その方が警戒されないからな」

「わかりました」

 

 これでここでの要件が終わったので、俺は制圧した軍港へと戻る。その地下で犯罪を犯した者達を生贄にささげてジャンヌを復活させるのだ。

 

 

 

 

 

 



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