艦隊これくしょん-艦これ- 超兵器戦争 (第六駆逐隊司令)
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永遠が終わる時

砲弾が体を抉り、爆ぜる

 

 

 

 

内外から爆炎が上がり、焼き尽くされる

 

 

 

 

自身も砲撃を放つが、その数倍の数の砲弾が、体を貫いていく

 

 

 

 

そして、体の中が大きく爆ぜて、水が急激に流れ込む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…総員退避。」

 

 

 

 

 

傾いていく私を見た艦長が命令を告げる。

 

 

 

 

 

その命令は、私の「敗北」を意味していた。

 

 

 

 

 

敗北した(ふね)の末路は、ただ一つ。

 

 

 

 

 

海に飲み込まれ、その底で永遠に眠りにつく。

 

 

 

 

 

しかし、私に搭載されている機関は、たとえ粉々になってもその駆動を止めることはない。

 

 

 

 

 

すなわち私は、意識を永遠に保ったまま、海底という牢獄に封じられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…すまない。

 貴様の姉の仇…取れなかったな。」

 

 

 

 

 

艦長が私に触れ、語りかける。

 

 

 

 

謝るべきは、私の方だ。

 

 

 

 

私は…貴方の力に、なれなかった。

 

 

 

 

私に流れ込んでいく水は、やがて貴方を飲み込み、その命を奪うだろう。

 

 

 

 

そして私は、貴方やその他大勢の、棺桶となる。

 

 

 

 

 

 

 

―――ごめんなさい、大佐。

 

 

 

 

 

 

―――――ごめんなさい、姉さん。

 

 

 

 

 

 

そう言いたかったが、できない、できるはずがない。

 

 

 

 

 

 

だって私は、物言わぬ「艦」なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なおも爆ぜ続ける私の体は、遂に海の中に消え、

 

 

 

 

 

「島」とも称された私の巨体を、冷たい水が埋め尽くしていく。

 

 

 

 

 

 

そして体中が水で満たされ、私に閉じ込められた「命」がすべて潰えた後、

 

 

 

 

 

 

私は、「底」にたどり着いた。

 

 

 

 

 

 

かつて煮えたぎる「赤い海」に沈められた私は、

 

 

 

 

 

今度は暗く冷たい「青い海」に沈む。

 

 

 

 

 

そうして再び、私は「永遠」に閉じ込められる。

 

 

 

 

 

 

―――今度は、何万年ここにいるのかな?

 

 

 

 

―――――それとも、今度こそずっとこのまま?

 

 

 

 

 

 

そんなことを思いながら、私は「永遠」に身を委ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…しかし、それから数か月が経った、ある日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の「意識」は、突然途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めると、私は海の上にいた。

 

 

 

 

あの時と変わらない、青い空と青い海。

 

 

 

 

あの時と違うのは、近くに陸地のない、大海原の真っただ中であること。

 

 

 

 

 

―――私は、海の底にいたはず。

 

 

―――――何より、私の意識は失われたはず。

 

 

―――――――すなわち、私の機関は止まり、私は「死んだ」はず。

 

 

 

 

 

次々と浮かぶ疑問は、一つの言葉を生み出し、私はそれを口にした。

 

 

 

 

 

 

「どうして…?」

 

 

 

 

 

瞬間、私は驚愕した。

 

そして、自分に起きた「最大の異変」に気が付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私…人間になってる…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手がある、足がある、好きな方向を見れる、

 

 

そして何より…声が出せる。

 

 

 

「異変」に困惑しつつも、私はもう一つ、変わっていることに気付く。

 

私の背中に、背中を覆うほどの大きな機械が付いているのだ。

 

その機械には、レーダーや砲塔が備わっている他、両肩に担がれるように伸びた一対のアームの先に、大型のボウガンが備わっていた。

 

そしてその外側の側面には、飛行甲板らしき模様の入った長い板が。

 

私はその正体に、一瞬で気が付いた。

 

 

 

 

―――このボウガンは、あの時切り離した、私の飛行甲板だ。

 

 

 

 

まさか、こんな形で再会できるなんて。

 

 

 

私は、そのボウガン…いや、飛行甲板を、そっと撫でる。

 

 

「…今度は、ずっと一緒にいたいな。」

 

 

 

 

 

 

そのとき、レーダーの反応に気付く。

 

この反応は…艦船だ。

 

ここから数百十km前方に6隻、そしてそれに高速で接近する、1隻の反応。

 

このスピードは…間違いなく通常艦じゃない。

 

となれば、答えはただ一つ。

 

 

 

 

 

この艦は、私と同じ、()()()

 

 

 

 

 

…また、戦うのか。

 

 

 

そう思いつつも、私は走り始める。

 

 

 

背中の機関が駆動し、私の足は水面を高速で滑る。

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、私の3度目の戦いが、幕を開けた。



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