仮面ライダー??? (高二病真っ盛り)
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Wのベルト/その『E』NDは最低で

ドイツ 廃ビル5階

 

「ハア…ハア…」

 

「待ちやがれクソガキ!」

 

「クッ!」

 

廃ビルの中で12、13程の少年が走る。逃げる。

背後に迫るは女性しか操縦出来ない世界最強の兵器「IS」。

彼は織斑一夏、今現在IS操縦者の中で最強を決める大会「モンド・グロッソ」の優勝候補”織斑千冬”の弟である。

 

(クソッタレ!こっちが脅迫に手間取ったすきに逃げ出すだと!)

 

彼が逃げている理由は至極単純な物だ。

このISを装備した女が思考したとうり織斑千冬の決勝戦辞退の脅迫材料にされそうなところを間一髪逃げ出している、それだけだ。

 

(……駄目だ。追いつかれる!)

 

しかし、それも長くは続かない。

先程あった様にISは世界最強の兵器、人の、子供の足で到底逃げ切れるものでは無い。

 

むしろ、彼はよく逃げている方だ。

建物内というISには動きづらいフィールド、瓦礫や砂埃という障害物、子供という体格の小ささを活かした回避。

自らが使える手札を出し惜しみする事なく十全に使って彼はこの瞬間まで逃げている。

 

「クソが……なめてんじゃねぇぞクソガキ!!」

 

「!?」

 

ドゴォォン

 

「ガアッ!」

 

爆発、その衝撃に堪らず一夏は階段から足を滑らし転げ落ちる。

 

「グゥ……()……」

 

「ち…やっちまった。まぁいい、これでもう逃げられねぇだろ」

 

階段から落ちた際に頭でも打ったのか一夏は微動だにしない。

しかし、コヒューコヒューと呼吸音が聞こえることから女は問題無いと判断した。

 

(捕まったら……どうなる……?)

 

最早指一本すら動かせぬ状況で一夏は思考する。

脅迫、殺害、拷問、洗脳、臓器売買、湧くイメージに希望の欠片も無い。

 

(死にたく……無い…)

 

徐々に黒に侵される視界に幻覚の様に浮かぶのは唯一の肉親である姉の姿。

 

(千冬…姉…)

 

彼女の元に帰らねば、その思い虚しく彼の意識は闇に沈む。

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

風都タワー?

 

「……?」

 

目を開け、むくりと一夏が起き上がる。

そこは必死の逃亡劇を繰り広げた廃ビルでもなく、見慣れた商店街でもない。

 

「……風車?」

 

上を見上げれば、曇天の中で巨大な風車がグルグル回っている。

名も場所も風景も知らぬ一夏は周りを見渡し––––––––––

 

「来たか。バカな奴だ」

 

「え?」

 

戦慄した。

 

声のした方を向けば五人の人影。

しかし、この五人から発せられる雰囲気は一般人と言っても差し支えの無い一夏を震え上がらせるには十分だった。

 

【ETERNAL!】

【LUNA!】

【TRIGGER!】

【HEAT!】

【METAL!】

 

五人の人影は五体の異形に姿を変える。

横倒しのEの意匠を頭上にあしらわれられた真っ白なリーダー格の男が一夏に向かい宣言する。

 

「NEVERの恐ろしさを思い知らせてやろう……さあ、地獄を楽しみな」

 

「〜〜ッ!」

 

恐怖に慄き後ずさりをするが、生憎と逃げ場はない。

そんな時、一夏は自分の左手に赤い物が握られている事に気付いた。

 

(これは……?)

 

見た事が無い筈なのに見覚えのあるそれを見つめハッと気づく。

目の前の集団のリーダーと思われる男。

彼が腰につけているものとそっくりだと。

 

(もしかして…)

 

まさかと思いながらも”それ”を腰に当てる。

カシャリという音と共にベルトが装着され、いつの間にか右手に握っていた黒いUSBメモリのような物のボタンを押す。

 

【JOKER!】

 

(ジョーカー……”ジョーカーメモリ”!)

 

メモリから発せられた音声…ガイアウィスパーを聞いた瞬間一夏の脳内に情報が浮かぶ。

 

自分が腰に当てたのは『ダブルドライバー』自分の手にあるのは切り札の記憶を宿した『ガイアメモリ』目の前の集団の内リーダー格の男以外は『ドーパント』……自分がなにを持ち、相手が何なのか一夏は漠然と理解した。

 

(……って事は)

 

ダブルドライバーの右側の差込口に風の記憶を宿した緑色のメモリ…”サイクロンメモリ”が転送される。

事情も原理も状況も、なに一つとしてわからない。ただ一つ本能的にわかる事は、戦わなければ死ぬという事。

 

(死んでたまるか。絶対に!)

 

「変身!」

 

【CYCLONE!JOKER!】

 

二つのメモリを押し込みダブルドライバーを文字通り『W』の形に展開、風と切り札の力が解放され一夏の周りにエネルギーが舞う。

そのエネルギーを纏った時、『織斑一夏』は消え、『W サイクロンジョーカー』が姿を現した。

 

「ハッ……やれぇ!」

 

リーダー格の男が指示を出した瞬間、Wは四体のドーパントに囲まれる。

 

「らぁぁぁぁ!」

 

「ぐっ……」

 

鋼の様な硬い体を持つ灰色のドーパントがWに接近戦を仕掛け、右手が強力な銃となっている青色のドーパント、不思議な挙動をする腕を持つ黄色のドーパント、高温の炎熱を操る赤色のドーパントの三体が援護をするという厳しい状況に追い込まれてしまう。

 

(なら……)

 

多少の被弾を許しつつ、Wは一気に灰色のドーパントから距離をとる。

その直後、自らの直感に身を任せしゃがみ、ジャンプ。

 

「あら?」

 

「!?」

 

どうやら直感は正しかった様で、顔を狙った黄色の鞭のような一撃はしゃがんだ頭上を見事にスカり、青色の足元を狙った時間差の射撃はカスる事もなく地面に当たる。

 

「らぁぁぁぁ!」

 

しかし、そんな事はお見通しだとばかりに灰色は跳躍する。

それに対しWは慌てることなく右腰を叩く。

 

【JOKER!MAXIMUM DRIVE!】

 

「なっ!?」

 

身動きの取れない空中を狙った灰色はWから響くガイアウィスパーに驚愕する。

 

Wは窮鼠、猫を噛むが如くしゃがんだ際に引っこ抜いたジョーカーメモリを、右腰のマキシマムスロットに叩き込んでいたのだ。

 

「しま…うおっ!?」

 

Wを中心に竜巻の如き突風が吹き始める。

自身もまた、空中に行った事を逆手に取られ吹き荒れる風に身体を取られる灰色のドーパント。

カナヅチの様に空中をもがく彼に向かいWは必殺技を放つ。

 

「ジョーカーエクストリーム!」

 

緑と黒を分ける中央の銀のラインに沿ってWが割れ、風を纏った二段蹴りが炸裂する。

強力な二撃を碌な防御も出来ずに受けた灰色のドーパントはガイアメモリを残し爆散した。

 

「っし……これだ」

 

【METAL!】

 

【CYCLONE!METAL!】

 

必殺技の勢いで援護射撃に徹していた赤色のドーパントに接近したWは、空になっていた左の差込口に闘士の記憶を宿した灰色のメモリ…”メタルメモリ”を差し込む。

Wの左半身が黒から銀に変わり、背中にハンマー型ロッド『メタルシャフト』が出現した。

『W サイクロンメタル』である。

 

「ヤァァアアア!」

 

ビュオン

 

「!?」

 

【METAL!MAXIMUM DRIVE!】

 

リーチを活かしたWの刺突に赤色は硬直してしまう。

チャンスと言わんばかりにWはメタルメモリをメタルシャフトのマキシマムスロットに差し込む。

 

「くっ」

 

苦し紛れに炎弾が撃たれるが、Wに届く前に巻き上がる風に吹き消される。

 

「メタルツイスター!」

 

解放された風を纏い、メタルシャフトから放たれる烈風と衝打の連撃、当たりどころが良かった故か赤色はメモリを残して爆散した。

 

「っし…次は……」

 

「ほう、中々やるようだな」

 

ギィン!

 

「クッ!」

 

今迄傍観の立場を貫いて来たリーダー格の、Wとよく似たベルトをつけた男が細身のナイフで切りかかる。

メタルシャフトで防ぐWの声は苦しそうだ。

 

「これで終わりか?」

 

「まだ…だ……!」

 

リーチの短いナイフよりも長いロッドの方が有利なのは当然だが、密着した戦いとなるとその有利不利は逆転する。

そう、まさに今の様に。

 

「ターッ!」

 

ギャイン!

 

「ほう…!」

 

小回りの効きにくいメタルシャフトで相手どれる程甘い相手ではないと判断し、鍔迫り合いを弾く形でメタルシャフトを放棄、新たに赤と青、二つのメモリを取り出す。

 

【HEAT!】

 

【TRIGGER!】

 

【HEAT!TRIGGER!】

 

熱き記憶を宿した”ヒートメモリ”と銃撃手の記憶を宿した”トリガーメモリ”を差し込み、ドライバーを展開。

緑の右半身が赤色に変わり、銀の左半身が青色に変わる。

右手には青色の特殊銃『トリガーマグナム』が出現した。

 

「これで…!」

 

『W ヒートトリガー』に姿を変え、バックステップで距離をとりながら狙撃をしようと思ったその時だった。

 

「ゲームセット…」

 

ドキュゥン!

 

「なっ!?」

 

「んもう!無視なんて酷いじゃない!」

 

「グゥッ⁉︎←ここ」

 

狙いを定めたWに放たれた強力無比な青色のドーパントの一撃。その衝撃に思わずたたらを踏んだWは黄色のドーパントの腕に拘束される。

 

(しまった……!)

 

連続でドーパントを倒し、リーダー格の男の参戦によって疎かになっていた二体への注意。

リーダー格の男を巻き込まぬ為に今迄なにも無かったのだと理解した時はもう手遅れだった。

 

「終わりだ!」

 

【ETERNAL!MAXIMUM DRIVE!】

 

「なっ!?……ぐあぁぁ!!!!」

 

リーダー格の男が先程の自分と同じ様にナイフのマキシマムスロットに白いメモリを差し込んだ瞬間、変身が解除され『W』から『織斑一夏』へと戻される。

最早ただの人間の彼にリーダー格の男の青い炎を纏った蹴りを防ぐ術は無かった。

 

「……千冬…姉…」

 

崩れ落ちる一夏、彼の意識は再び闇に沈む。




次回、仮面ライダー???

【Start Up】

「ショッカーの奴ら、『IS〜インフィニット・ストラトス』の世界に逃げやがった。」

「人間の味方をするのなら、誰であろうと俺は倒す!例え君が…オルフェノクであっても!!」

失われた楽園(パラダイス・ロスト)


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失われた楽園

前回の仮面ライダー???は…

ドイツにて誘拐にあった織斑一夏。彼は謎のISの爆撃により意識を失う。

目が覚めた彼の前に現れたのは白、黄、赤、青、灰色の怪人だった。

手に持ったダブルドライバーで抵抗を試みた一夏だったが、奮闘虚しく白い戦士にやられてしまった。


スマートブレインアリーナ?

 

「ガハッ!……ハァ…ハァ…」

 

悪夢から目覚めた朝の様に一夏は跳ね起きる。

 

辺りを見渡せばそこは先程までの風車では無く、大勢の人によって埋め尽くされたスタジアムのグラウンド中央だった。

 

【【【Complete】】】

 

呆然と立ち竦む一夏を、何人もの軍人の様な男達が取り囲みベルトのバックルを倒し変身する。

 

「ッ!?」

 

風車の時と同じく一夏は状況が飲み込めていないが、戦わなければ死ぬことは確かだと理解した。

 

【5 5 5……Standing By】

 

またもいつの間に握っていたベルトを腰に巻き、携帯電話…ファイズフォンに起動コードを入力する。

 

(もう二度…あんな思いを……死ぬ思いをしてたまるか!)

 

「変身!」

 

【Complete】

 

高らかに叫び、掲げたファイズフォンをバックルに叩き込む。

紅いフォトンストリームが一夏の身体に張り巡らされ金属繊維の鎧が構築される。

 

一瞬の煌きと共に『織斑一夏』は『ファイズ』へと姿を変えた。

 

「……」

 

変身したはいいものの、二十、三十ばかりいる黄色い兵士、『ライオトルーパー』に対し使える手は持っていない。

否、ある事はあるがそれを使う為に必要なツールが現在装着されていないのだ。

 

(どうする……)

 

必死に打開策を考えるファイズ。

せめて、取り囲まれているこの状況をどうにかせねば–––––––

 

スガガガガ!

 

「「「!?」」」

 

膠着状態のライオトルーパーに対し上空からガトリングの掃射が襲う。

ある程度ファイズの周りからトルーパーを引き離すと掃射を行っていた人影はファイズの横に降り立つ。

 

「オート……バジン…?」

 

ファイズの問いに頷きながらピロロロロと電子音声で返すのは人型戦闘支援ビークル『オートバジン』。

これでもれっきとしたバイクである。

 

「これは…?」

 

ピロロロロ!

 

オートバジンはファイズに腕時計型強化ツール『ファイズアクセル』を手渡す。

 

「使えってことだよな……よし、やってやる!」

 

【Ready】

 

右腰のトーチライト型デバイス『ファイズポインター』にフォン上部の『ミッションメモリー』を差し込み、右足に装着する。

 

【Complete】

 

フォン上部にファイズアクセルのアクセルメモリーを差し込む。

胸部装甲が展開し、フォトンストリームが銀色に変化、黄色の複眼は赤く染まり『ファイズ アクセルフォーム』へと強化変身を遂げる。

 

【Start Up】

 

左腕に装着したファイズアクセルを起動させファイズは10秒間限定の超高速の世界に突入する。

 

【Three】

 

その内の7秒を使い、全てのライオトルーパーを空中に打ち上げる。

 

【Two】

 

敵が身動き出来なくなったのを確認し、打ち上げられたトルーパー全員に円錐状の紅いポインターを射出、拘束する。

 

【One】

 

残り1秒。たったそれだけの時間でファイズは全ての敵に必殺のキック『アクセルクリムゾンスマッシュ』を放つ。

 

【Time Out】

 

カウントが終了すると共に全てのライオトルーパーに紅いφの紋章が刻まれ、青い炎を上げて消滅する。

 

【Reformation】

 

解除されていたリミッターが再度かけ直され、展開していた胸部装甲が元に戻る。

 

(やった……)

 

心中でファイズはガッツポーズをする。

IS、ドーパントと二度死ぬも同然なな体験をさせられた彼にとってようやくの心の安寧である。

 

(それにしてもこの『ファイズ』ってなんだ?ISの……類似品かな?)

 

自らが装着しているそれを新品の服の様にジロジロとファイズは眺める。

ISだというのであれば男の自分が使えるのは可笑しいし、何よりも先程の『W』もそうだが頭に浮かぶ使い方に説明がつかない。

 

(とにかく、早く千冬姉の元に戻らないと…)

 

ふぅと息を吐きながら変身を解除しようとするファイズ。

彼の心には彼が思った以上の疲労が溜まっていた。

 

しかし、この状況にファイズが思う様な甘さは無かった。

 

ピロロロロ!

 

ガァン!

 

「ぐぁ!?」

 

突然、オートバジンに弾き飛ばされるファイズ。

なにをする!と憤怒するよりも先に鳴り響くジェット音の正体に気づき絶句する。

 

「Good to see you……let the game begin」

 

白いボディに青いラインの走った飛行する人影。腰に装着されたベルトは自分と酷似しており、その顔はギリシャ文字のΨを思わせるものだった。

英語で放たれた言葉はわからないが、相手にあるのは完全な敵意である。

 

「悪りぃ。助かっ––––っ!?」

 

奇襲から救ってくれたオートバジンに礼を言いながら立ち上がろうとした時、背後の強大な気配に戦慄する。

 

「人間の味方をするのなら、誰であろうと俺は倒す!」

 

白の戦士と同じく自分と酷似したベルト。黒色のローブに金色のラインが走りΩを思わせる顔の剣士が自身に向かってくる。

 

白い戦士とは桁の違う敵意、今迄受けたことも無い程の憎悪、その手の剣が握りつぶされそうな程込められた殺意。

 

「……空飛ぶ白いのは任せたぜ」

 

ピロロロロ!

 

鳥肌が立ちながらも竦む足を抑え、ファイズは黒の剣士に向かって構える。

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

光写真館

 

「よっ、待たせたな”士”」

 

「別に待っていたつもりはないんだがな、”鉱汰”」

 

写真館の中でソファーに深々と座り、マゼンタのカメラを首から下げた青年『門矢士』に神々しい鎧と鮮やかな金髪の青年『葛葉鉱汰』が語りかける。

 

「悪いな。新世界の構築で忙しいお前に頼んでしまって」

 

「いいっていいって。ミッチやザックだって巻き込まれてんだ。俺だけ他の星から眺めるなんてできねぇよ」

 

「それで…どうだ?」

 

士は鉱汰にかねてより調査を頼んでおいた、ショッカーの残党の行方を聞く。

 

「ああ。黄金の果実の時空を超える力でようやく見つけたぜ。ショッカーの奴ら、『IS〜インフィニット・ストラトス』の世界に逃げやがった。」

 

「……なるほど、力を蓄える為に仮面ライダーもスーパー戦隊もいない世界を狙ったか」

 

「しかも、あちらの世界はショッカーっていう異物に対してかなり不安定になっている。……早くなんとかしねぇと…」

 

始まりの男、葛葉鉱汰は歯嚙みをする。

できることならば、自分が今すぐにでも助けに行きたいが、自分が下手に動いたことによってIS世界が別世界のヘルヘイムに目をつけられては本末転倒だからだ。

 

「大体分かった。その世界には俺が行く」

 

通りすがりの仮面ライダー、門矢士は鉱汰から情報を得るとスクッと立ち上がる。

次元を渡り、破壊するのは自分の分野だからだ。

 

「頼む。……そういや他の奴らは?」

 

鉱汰は士が快く了承してくれたことに胸を撫で下ろす。

彼は、自分の世界じゃないからと見て見ぬ振りは出来ない優しい男だ。

 

「……最近新しくできたショッカーがあるらしくてな。ユウスケも夏みかんもそっちに行った」

 

「嘘だろ!?」

 

「嘘じゃない。そいつらの名前は……”ノバショッカー”だ」




次回、仮面ライダー???

ピロロ……ロロ…
「オートバジン⁉︎」

(殺される……死んだらまた殺される……!)

「薔薇の合言葉は”愛”……」

「やあ。暇そうだね士」
「……海東」

––––黄金の最強


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黄金の最強

前回の仮面ライダー???は…

目がさめると四面楚歌同然の状況の一夏はファイズギアとオートバジンの力を借りて撃退する。
しかし、そんな彼の前に現れたのは飛行ユニットを背負った白い戦士と金色の剣を握る黒い剣士だった。

一方、光写真館ではショッカーについて話していた葛葉鉱汰に門矢士が新たなショッカーの存在を告げていた。


スマートブレインアリーナ?

 

「はあぁぁあああ!」

「たあぁぁあああ!」

 

ファイズエッジと金色の剣が唾競り合う。

互いの得物からフォトンブラッドが迸りあたりを眩しく照らす。

 

「ぐぁ!」

 

弾かれるのはファイズ。

たたらを踏みながらも黒い剣士に防御の姿勢をとったのはWの時の教訓か。

 

(駄目だ。基本のスペックから次元が違う!)

 

仮面の中で性能の違いに悩むファイズ。

リミッター解除(アクセルフォーム)という切り札を既に使ってしまった以上彼に残された手札は多くない。

 

ピロロロロ!

 

アリーナの天井近くで白い戦士と空中戦を繰り広げるオートバジンの戦況も良いものではない。

ファイズ以上の格闘能力を保持しているバジンの拳は一発で白い戦士に有効打となるが、その一発が当たらない。

 

白い戦士は単純な空中での機動力がバジンよりも遥かに上回っており、高火力のガトリングも掠りもしない。

幸いなのはバジンの高い防御力によってバジンも有効打を貰っていないことだ。

 

(いつまでもつきあってられない、一気にケリをつける!)

 

【Exceed Charge】

 

バックステップで黒い剣士から距離をとり、バックルのファイズフォンのエンターキーを押す。

ガイダンス音が鳴り右腕へのフォトンストリームを濃縮されたフォトンブラッドが駆け巡る。

 

エネルギーが充填され赤熱したファイズエッジを地面に掠らせる様に振るう。

放たれた光は地面を伝わり黒い剣士に着弾、円柱状に展開し拘束する。

 

「ヤァァアアア!」

 

エッジを構え疾走、必殺の『スパークルカット』を繰り出そうとした時だった。

 

「フン!」

 

「なに!?」

 

黒い剣士は力づくで拘束を解除、攻撃態勢で無防備なファイズを剣で突く。

 

「ぐっ」

 

強烈なカウンターに倒れこむファイズ、黒い剣士はそこへ鋭く切り込む。

 

「終わりだ!」

 

ズガガガガ!

 

「!?」

 

地面を転がるファイズに黒い剣士が剣を振り下ろそうとした時、頭上からオートバジンが強襲する。

 

「今の内に……うわっ!?」

 

「you will die!」

 

バジンが剣士を相手取っている間に起き上がろうとしたファイズの足首を白い戦士が掴み飛翔する。

 

「っの…!」

 

【1 0 6 ……Burst Mode】

 

逆さまの形で今にも天井に叩きつけられそうなのを判断し、ファイズフォンをフォンブラスターへ変形させ白い戦士のフライトパックに撃つ。

 

「!?」

 

「らぁ!」

 

フライトパックを撃たれ飛行能力を失い、体制を崩した白い戦士をファイズは地面に向かって蹴る。

 

「これで…」

 

【Ready】

 

「〜〜!」

 

【Ready】

 

ファイズは左腰のカメラ型デバイス『ファイズショット』にミッションメモリーを挿入し手にはめ、同様の動作を白い戦士もビームトンファーで行う。

 

【【Exceed Charge】】

 

白い戦士はビームトンファーを、ファイズはファイズショットを構え同時にフォンのエンターキーを押す。

 

「とどめだあぁぁぁ!」

 

「haaaaaaaaa!」

 

緋と蒼の激突。

一見互角にも思えたそれは、一瞬の内に決着となる。

 

「shit……」

 

白い戦士にφの紋章が浮かぶ形でだ。

 

上から下へと重力に乗る形で拳を繰り出したファイズ。

下から上へと重力に逆らう形で武器を出した白い戦士。

どちらが勝つなど、実は最初からわかっていたことであった。

 

「っと……グエッ!?」

 

白い戦士の灰を被る形で着地するファイズ。

 

そんな彼に鉄塊が飛んでくる。

 

「痛たたた……いったいなんなんだ…」

 

頭を抱えながらファイズは鉄塊を見て–––––––––

 

「…よ……!?」

 

––––––絶句した。

 

ピロロ……ロロ…

 

「オートバジン⁉︎」

 

ガトリング内蔵のホイールが取り付けられた左腕がもげ、痛々しい程に傷ついた左足からは火花が散っている。

 

「おい。大丈夫か?おい!」

 

自分が地上を離れて1分も経っていない間にボロ雑巾の様にされていたオートバジンに必死でファイズは呼びかける。

 

【Exceed Charge】

 

呼びかけに夢中になっているファイズを一瞥し、黒い剣士は剣を構える。

 

「なっ⁉︎」

 

ファイズが電子音声に気づいた時はもう遅い。

黒い剣士は黄金の噴光を振り下ろした。

 

「ぐ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

宇宙エレベーター付近?

 

「うわぁぁあああ!!!……はぁーはぁーはぁー……」

 

悲鳴をあげながら一夏は飛び起きる。

過呼吸気味に息をしながら彼は理解した。

 

(殺される……死んだらまた殺される)

 

理解した瞬間、体が一気に震え上がる。

爆発で階段から落ち、無防備な内臓を蹴り潰され、圧倒的な熱量に焼き尽くされた。三度『死』を与えられた彼の心はすでにボロボロだった。

 

「……またか」

 

周りを見渡せば大勢の昆虫の様な怪物…『ワーム』がこちらを見つめていた。

 

(もう…死にたくない……死にたく、ない!)

 

「カブトゼクター!」

 

もう、ここがどこかなどどうでもいい。

目の前の脅威に対し、彼が真っ先に選んだ行動は『抵抗』だった。

 

「変身……!」

 

どこからともなく現れた赤いカブトムシ型の機械…『カブトゼクター』を掴み、腰の『ライダーベルト』にジョイントする。

 

【HENSIN】

 

ベルトから全身にかけて銀色の鎧が構築される。

ヒヒイロカネの装甲を纏い終わった時、『織斑一夏』は『カブト マスクドフォーム』に姿を変えた。

 

「キャストオフ!」

 

【CAST OFF】

 

変身すると同時にゼクターホーンを左から右へと倒す。

一瞬、重厚な装甲が浮き上がり、次の瞬間には散弾のように飛散する。

 

【CHANGE BEETLE】

 

顎を基点に『カブトホーン』が起立し顔面の定位置に収まる。

現れた緋の装甲は非常にスマートな印象を与えるが、決して弱々しさを感じさせないしまったフォルム。

『カブト ライダーフォーム』である。

 

「クロックアップ!」

 

【CLOCK UP】

 

カブトはベルトの右側面のボタンをプッシュ。

身体に流れるタキオン粒子を操作し高速の時間流に乗る。

 

「はぁ!てい!やあ!」

 

カブトは目に見えるスピードを超えていく動き(モーション)で辺りのワームが一ヶ所に向かうよう攻撃を加えていく。

 

【ONE TWO THREE】

 

ワーム共を一ヶ所に集めたカブトはベルト上部のフルスロットルを入力。

ゼクターに三つの明かりがともったのを確認し、ゼクターホーンを右から左に倒す。

 

「ライダーキック」

 

【RIDER KICK】

 

再びゼクターホーンを左から右に倒す。

ゼクター内部で波動化したタキオン粒子が一度カブトホーンに送られ、カブトの右脚に充填される。

密集し、もはや塊といっても差し支えのないワームに向かい回し蹴り。

 

【CLOCK OVER】

 

時間の流れが元に戻ると同時に数多のワームは一斉に爆散。

 

目の前に見える脅威は全て撃退したカブト、しかし彼は辺りを注意深く見渡す。

 

(まだ…くるはず……!)

 

『W』『ファイズ』の時のことを考えればこの程度で終わる筈など無い。

最低でも一人、自分を狙う強敵が現れる筈。彼は半ば確信しながら戦闘態勢を整え、感覚を研ぎ澄ます。

 

「薔薇の合言葉は”愛”……」

 

(来た…!)

 

後方より現れるのは右肩に特徴的な三本の角をつけた黄金の戦士。

そのセリフにあつらえるためか右手には青い薔薇が握られていた。

 

「クロックアップ!」

 

【CLOCK UP】

 

姿を見るやいなやカブトは右腰を叩く。

高速の時間流に再度乗り、黄金の戦士に近づいてゆく。

 

「愛と共に……」

 

【HIPER CLOCK UP】

 

【MAXIMUM RIDER POWER】

 

「……散りなさい」

 

「……え?」

 

しかし、黄金の戦士はいつの間にか自分の真正面でキックの体勢に移っている。

カブトが理解したのは自分が蹴られたその瞬間のみであった。

 

–––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

光写真館

 

「ノバ…ショッカー……?」

 

「ああ。既存のショッカーに疑問を持ち、反旗を翻した集団のようだ」

 

舞台は再び写真館に戻る。

 

鉱汰は既に始まりの男としての装束ではなく、人間時代の青いパーカーに変わっている。

 

「ああ。少し長くなるからコーヒーでも……悪い、お前は飲めなかったな」

 

キッチンに向かおうとした士は再度椅子に座る。

 

「気にすんなって、俺が選んだんだから……んで、反旗を翻したってことはいい奴らなのか?」

 

「いや…今までのショッカーの力づくの世界征服に反感を抱いて、経済の方から征服を目指す組織…らしい」

 

いつもは何に対しても「大体わかった」な士もこの件には釈然としない。

 

自身が大首領を務めた大ショッカーを始めとして、ショッカーの類が行うのは武力による侵略。

武力行使のために作戦を立てることはあれど力づくをやめた作戦など今まで聞いたことが無い。

 

何よりショッカーは『仮面ライダー1号』『仮面ライダーディケイド』『歴史改変マシーン』etcetc……これらを創り上げる高い技術力を保持しているのだ。

ショッカーから派生した以上多少なりともこの技術力があるであろうし、無理に世界の経済に合わせる必要など無いのだ。

 

「–––まさか、『財団X』か!?」

 

鉱汰が推測を述べる。

 

経済支配と聞いて士も真っ先に思い浮かべたのは財団Xだ。

かつて、自身と何度か共闘したWを苦しめた謎の組織。

世界征服を狙わず『ガイアメモリ』『メダルシステム』『コズミックエナジー』『ロックシード』『コア・ドライビア』を始めとした超技術に資金援助を行いその技術を得ているということしかわからず、その目的の一切が不明だ。

 

鉱汰は巻き込まれなかったが『ムネモシュネ』の一件を見れば財団Xも世界征服を可能にする力があるのは明らかであるし、少なくとも仮面ライダーに友好的な組織では無い。

 

「いや、それは無い」

 

しかし、士は鉱汰の言葉をバッサリ切り捨てる。

 

「そもそも財団Xは既に経済を掌握するだけの力を持っている。ショッカーの裏切り者と手を組むというリスクに見合うメリットが無い」

 

「……だよなぁ。ユグドラシルにまで経済援助していたらしいしな」

 

「だな……」

 

そう。だとしてもノバショッカーの背後に財団Xはありえない。士の言葉通り、財団に対してのメリットが余りにも少ないのだ。

むしろ、掌握によって経済が停滞した場合、痛い目を見るのは財団も同じなのだ。

 

「だーっ!クッソわかんねぇよ!ショッカーとかノバショッカーとか!」

 

「落ち着け」

 

苛々を口にする鉱汰とそれをたしなめる士。

そんな彼らに来客が訪れる。

 

「やあ。暇そうだね士」

 

「……海東」

 

海東大樹。門矢士がカメラマンとして世界の風景を『撮る』旅人(通りすがり)というのなら、彼はその苗字が示す通り世界の風景を『盗る』怪盗(トレジャーハンター)

最も、怪盗は自称であり盗み方は強盗や火事場泥棒と大差は無いが。

 

「何の用だ?悪いがお前の相手をするほど暇じゃないぞ」

 

「つれないね。今日ばかりは味方としてきたつもりなのに」

 

「……何?」

 

似合わぬことをしれっと言いのける海東に士は眉を寄せる。

 

そんな士を見て海東は不敵に笑った。




次回、仮面ライダー???は…

「お宝の名前は『ノバエネルギー』…」

「なめてんじゃねぇぞ!こっちにはISがあんだぞ!ああ!!」

「『フォーゼ』タイマンを張らしてもらいます」

「オルァァァ!!!」
「セイヤーッ!!!」

–––一・斉・掃・射と赤のコンボと決着


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