魔法科高校の劣等生〜もう1人のイレギュラー〜 (主任大好き)
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入学編Ⅰ
では、お願いします。
Devil May Cry
3月下旬、先日受けた国立魔法大学付属第一高校の結果発表が届いた。張り出しもあったのだが仕事の用事があったため行けなかったのだ。
郵便受けから結果の入った封筒に取り出し、封を切る。
「さてさてー、結果はどうかねー?」
倒れていた椅子を蹴り上げ、回転しながら落ちてきた椅子にどっかりと座り、足を机の上に乗せ鼻歌交じりに目を通す。そこに書いてある文字は2文字。ということは───
「へー、受かったのか。実技でオワタと思ったんだがな」
そんな独り言を漏らしながら上を向き昼食の残りのオリーブ抜きのピザを持ち上げ、口の真上へと持ってくる。
prrrrrrrr prrrrrrrr prrrrrrrr
「はぁ・・・・・・タイミングが悪ぃな」
ため息混じりにそうつぶやき組んでいた足を片方上げて強く下ろす。
ダアンッ!
と大きな音をたてて固定電話の受話器が飛び上がり、横に伸ばした手に収まる。
「DevilMayCry・・・・・・すまねーが、その依頼は受けねーって言ってんだろ。しつけーぞ」
そう言い、電話を受話器に向かって軽く山を作るように投げ、受話器を元に戻す。相手は高い依頼料を払うと言ったが気分が乗っていない時に受けたくはない。食事の時間を邪魔されただけで気分が乗らないから、はいやめます。は、普通は通らない。しかし、この少年は腕がよく、仕事はかなりド派手にめちゃくちゃにするくせに、そのくせ最終的にはうまく物事が収まるのだ。よって、彼の話が尾ひれを引くことも多々あるのだが、そのおかげで仕事もあるため否定したくても否定出来なかったりしている。
先の電話より、数分してもう一度電話が鳴り、受話器を取り耳に当てる。
「・・・・・・jackpot!
どうやら合言葉ありのようだ。電話の相手は十師族の中でも頭1つ抜きん出ているところだ。なんでも、最近活発化している人間主義を唱える組織の同行を探れ、らしい。情報の高さによって報酬金が変わる。いわゆる歩合制というやつだ。もっとわかりやすく言えば自分の実力次第ということ。
「毎度毎度、何の嫌がらせだ?俺の実力を試しやがって。もううんざりだよ」
『それは仕方ないことですよ。一番最初に依頼した出来が完璧すぎたのですから、貴方の限界を知りたいのでしょう。それに毎回毎回、期待以上の成果を上げる方が何を今更』
「はんっ、そりゃどーも。どうせお宅の兄妹に渡すんだろ?」
『ええ』
「いつまでに情報をやりゃあいい?」
『入学までにと聞いております』
「ふざけんな、期間短すぎんだろ!ったく、葉山!真夜にこう伝えろ、過保護だなってよ!」
そう吐き捨て、電話を思いっきり叩きつける。
「くっそ、ふざけんじゃねーぞ!いっとき寝れねーな、おい」
これから忙しくなることに多少腹を立てながらもこれから始まる波乱の日常を予感し不敵な笑みを浮かべるのであった。
───────────────────────
「納得いきません!」
国立魔法大学付属第一高校の入学式当日、その場所で大きな声が響く。
「まだ言っているのか?」
新入生総代の妹ともに学校に早く来た達也は何度目繰り返したその問答の回数をまた増やす。しかし、妹の深雪のエキサイティング具合は収まらずに続いている。
「なぜお兄様が補欠なのですか!本来なら入試の成績がトップだったお兄様が総代に相応しいはずなのに!」
「ここは魔法科高校なんだからペーパーテストよりも実技が優先されるのは当たり前のことだろう?むしろ二科生でも入れたことが奇跡なくらいだ」
「そんな覇気のないことでどうするんですか」
深雪は未だに納得していない模様。達也も苦笑を浮かべることにとどまっている。
「それに、お兄様が本当の力を使えば「深雪!」っ!」
「それは言っても仕方の無いことだよ」
「・・・・・・すいません。失言でしたね」
「いいんだよ、深雪。お前が俺のことで怒ってくれる。それだけでも俺はかなり救われているんだ」
「お兄様・・・・・・」
2人は向かい合い、今にもキスをしてしまいそうなほど顔が近い。しかし、ここは学校で早めの時間とは言っても在校生や新入生が通ることもある路上。しかも2人のことをある程度知っている人からすればからかいの対象になるわけで───
「おう、おふたりさん。今日もお熱いようで何よりだな」
ハッハッハっ!と高笑いしながら近づいてきたのは十一だ。達也と深雪も会うのは久しぶりだ。
「じゅ、十一さん!?」
「お前はからかうのが好きだな」
照れる妹に、呆れる兄。いつも通りの2人を見て満足げな十一は深雪に総代の集まりがあるんじゃないかと聞く。深雪は思い出して慌ててた様子でかけていった。
「どうだ、商売繁盛してるか?」
「ボチボチでんなーってところか?」
「ふっ、嘘だな。噂は耳にしているぞ。この間も派手にやったみたいだしな」
「あー、あれかぁ。ありゃあ仕方ねーよ。警察もこの際派手にやってくれてもかまわねー、なんていうからよ。本気出しちゃった」
「やりすぎだ。叔母に聞いた時は思わず吹き出してしまったぞ。っと、立ち話もなんだし椅子にでも座るか」
「そうだな」
十一と達也が今話していたのは、先日十一が受けた依頼で数日後に取り壊しが確定していた廃墟にテロ組織のアジトになっていると伝えられ警察から『派手にしてもらっても構わないから全員捕まえてくれ』とのこと。いつも苦渋を舐め続け、今回は特にひどく、警察の方も死者こそ出てはいないが怪我人が多く出てしまったのだ。結果、その依頼が十一のところに回ってきたのだ。
2人が世間話に花を咲かしていると遠くから「二科生のくせに」とか、「雑草
「そういえば時間は時間は大丈夫か?」
「あぁ、そろそろだな」
そういい、2人は腰を上げたところで声をかけられた。
「新入生の方ですか?そろそろ開演の時間ですので移動をお願いしますね」
十一と達也は立ち上がるもある一点に目が行く。場所は手首だ。そこには一般生徒に携帯が許可されていないCADが巻いてあるからだ。CADの携帯が許可されているのは一部の組織だけである。
「私は生徒会長の七草真由美。ななくさ、と書いてさえぐさと言います」
「(へー、あのナンバーズのねぇ。俺あそこ嫌いなんだよなぁ。毎回毎回、政治関連の依頼を持ち込みやがって・・・・・・合言葉は拒否しないって奴、今更無しーってならねーよな)」
そう、七草の現当主は十一に毎度のことながら政治関連の依頼を持ってくるのだ。それも、面倒な裏工作。流石に嫌気がさして政治関連の報酬料は初期よりだいぶ高くしたのだが、流石は十師族。金をいくらでも積み上げる。結局、十一は諦めるしかなかったのだ。
「司波達也です」
達也は、そう短く答え十一の方に目を向ける。これに対しても折れることしか出来なかった十一。
「一十一だ。漢数字のいちって書いてにのまえだ」
十一の名前はよく間違えられるためそう答える。
しかし、真由美の反応は2人の予想に反して大きかったのだ。
「君たちがそうなの・・・・・・」
2人は実技が悪すぎたことによるすそものだと考えたがこれもまた予想と違っていた。
「ペーパーテストで前代未聞の点数をたたき出した2人って。職員室で噂になってるわよ」
「えっ?」
達也は意外そうな顔で十一を見る。十一はなんだよといった顔で達也の顔を見返す。
「言っておくけどな達也。俺のCAD全部自作だぞ」
「あんな特殊なものまでか?」
「おう」
「あの、おふたりは友達ですか?」
「ええ」
「そう、類は友を呼ぶってことね」
ふふっ、と笑った真由美を見た達也は何かを感じたのか早めに会話を切り上げ、そそくさと去っていった。
「どうしたのかしら、達也くん」
「さぁ?」
十一は口の端を少し釣り短くそう返すのだった。
───────────────────────
「おぉ、綺麗すっぱり分けられてるな」
「ここまで来るとなかなか面白いものがあるな」
「差別意識が強いのは差別されてる方ってのはよく言ったもんだな」
達也も同じことを考えたのかしきりに頷いている。無用な面倒を起こすのも嫌なので、結局ほかと同じように後ろの方に座る。
「ふぁ〜あ〜あ」
「大きな欠伸だな。寝不足か?」
「ここ1週間、一睡もしてねーんだよ。終わったら起こしてくれ」
「体には気をつけろよ」
「うるへー。お前にだけは言われたかねーよ」
「そうだな」
と、達也は軽く笑うが達也が思っている理由とは違う。達也は自分が遅くまで研究していることを指していると思っているが、十一は『四葉』からの依頼で寝れていない。今は達也が分かることではないが、皮肉通じないため、体を背けて寝るのだった。
「おい、起きろ」
「おう?あぁ・・・・・・あぁ、もうそんな時間か」
「達也くん、その人誰?」
「え、エリカちゃん」
寝る前と違い達也の隣に2人の女子がいる。片方は明朗快活そうな美少女、もう片方は正反対のおとなしめの美少女と言ったところだ。
「達也、ナンパか?」
「お前は俺を何だと思ってるんだ?ん?1度話し合おうじゃないか」
「冗談だ。っと、悪いな。俺は一十一つって、漢数字のいちって書いてにのまえって言うんだ」
と、真由美の時と同じような自己紹介をする。
「えっ?てことは十師族?そんな家聞いた事ないですけど・・・・・・」
「聞いたことないんだったらそういう事だろ。ところでお嬢さん方は?」
「お嬢さんって・・・・・・私は千葉エリカ。よろしくね」
「私は柴田美月です」
「おう、よろしくな。エリカ、美月でいいよな。」
「うん」
「いいですよ」
自己紹介を済まし、IDカードを受け取るために、達也とともに4人で行動することになった。
「みんな何組?」
「俺はE組だ。達也は?」
「俺もだ」
「わ、私もです」
「なーんだ、みんな同じなんだね」
「そいじゃ、このあとどうするよ」
「済まないが妹を待つことになっていてな」
「妹?達也くん妹がいるの?」
「もしかして、新入生総代の司波深雪さんですか?」
「え?そうなの?それじゃあ双子?」
「よく聞かれるけど違うよ。俺は4月生まれで深雪は3月生まれなんだ。よく分かったね。あんまり似てないと思うんだけど」
「ホントだよな。今思えばその通りだ」
「いえ、なんとなくというより、オーラが似てますから・・・・・・」
この言葉に達也と十一は大いに驚いた。オーラというからにはそれなりの眼があるということだ。そのことから考えると───
「(霊子放射光過敏症か・・・・・・)」
達也も同じ結論にたどり着き、意地の悪い返しをして美月が肩を震わす。やりすぎだと達也にアイコンタクトを送ったところで深雪の声が聞こえる。
「お兄様、入学早々デートですか?」
男の俺もいるんですがそれは・・・・・・なんて考えていた十一は苦笑いを浮かべる。
「ここには十一もいる。それに、2人に失礼だろう」
「すいません、お兄様」
深雪は少ししょぼんとした雰囲気で達也に謝る。またこの2人は人目を憚らずによくそんなことを、なんて考えていると、今度は女子たちの間で自己紹介が進む。
「深雪、生徒会の方々は用事があるんじゃないか?」
はっとした深雪は急いで後ろを振り返るが、真由美が手で制しこう続ける。
「いえ、今日は挨拶だけですから。それに深雪さんもご用事があるようですし」
「会長!それでは・・・・・・」
しかし、副会長が異を唱えるが結局、生徒会の話はまた後日にということでこの場は収まった。しかし、副会長は去り際に十一と達也を睨みつけることを忘れることは無かった。
「ハッハッハっ!早速目ぇつけられたな」
「すいません、お兄様。十一さん」
「気にすることないさ。お前が謝ることじゃあない」
「そういえば、最近ここの近くに出来たケーキ屋に行かない?」
「お兄様、どういたしましょうか?」
「いいんじゃないか。せっかく知り合いになったことだし。同性、同年代の友人はいいくらいても多すぎるといことはないだろうからな」
「達也と深雪は相変わらずだなぁ」
「ねぇ、十一くん。いつもああなの?」
「初めてあった時からああだな。美月、何を妄想してるのか知らねーが、さすがのあいつらもそんなことはねーと思うぞ」
「へっ!?そ、そうですよね!」
なおも顔を赤らめている美月は、この反応だけでこれから先からかいの対象になることは間違いないことだった。
───────────────────────
「おっ、こりゃあ意外といけるじゃねーの」
時刻は10時過ぎ。実力次第の仕事を途中まで終わらせ別の仕事を受けた十一は仕事の残りを早めに終わらせ、自作の夕食に舌鼓を打っていた。一時期、一人暮らしである以上ある程度料理ができないといけないと考え、料理に熱を注ぎ込みすぎたことあるせいで料亭に出せるほど腕になり、今回は新メニューを考案し試食していた。
しかし、十一にとってその至福時間はすぐに終わることになる。
prrrrrrrr prrrrrrrr prrrrrrrr
十一は舌打ちしながらもその電話に出る。今回はテレビ電話だ。
『あら、美味しそうな料理じゃない。彼女かしら?』
「自作だばーろー。何の用だよ、このすっとこどっこい」
『これは手厳しいわね』
「葉山から伝言聞いたかよ」
『えぇ、笑ってしまったわ』
「ケッ、皮肉が分かんねぇわけじゃねーだろ」
クスクスと笑うその女性は四葉真夜。現在、十師族の四葉家現当主である。その容姿は本当に40代前後ではなく、完全に20代前後だ。なぜそんな重要人物と親しくしているかと言うと、合言葉の依頼を持ってくる人間は、組織のお偉方やら裏のブローカー。十師族の他、十八家などが主な仕事相手だ。
『そんなことよりも今回もさすがの出来ね。期待以上よ』
「はんっ、よく言うぜ。このくらいはあんたらでも調べられんだろーが。そこんとこどうよ」
『いえ、分からないわ。こんなに多くの正確な情報をくれるのは貴方くらいよ。何はともあれ助かったわ』
「はんっ、そうかい。そんなら、とんだ人材不足だな」
『貴方に比べたら誰でもそんなものよ』
十一は何でもないように言っているが、この場合、十一が異常なのであって四葉の力が小さいわけではない。四葉も情報収集力でほ他家を数段凌ぐがそれでも十一には及ばない。そう考えるとどれほど十一が異常かが分かるだろう。
「それよりまだまだ続くぜぇ。俺と達也次第ってところじゃねぇの?」
『どういうことかしら?』
「考えてみろよ。アンティナイトを大量に仕入れてるだろ。どう考えても、魔法師対策じゃねーか」
『それは分かってるわ』
「一高完全に標的だ」
『他のところご狙われる可能性は?』
「100%一高だな。それももうタイミングを見計らってるぜ。潜伏している場所の目処はそっちも立ってんだろ?」
『もちろんよ』
「まだ調べる必要がある。直前まで全部は分からねーから報酬料は今日の分まででいい」
『分かったわ。ありがとう。貴方は仕事早くて助かるわ。葉山に用意させてるからそちらで受け取ってちょうだい』
「毎度毎度、葉山も御使いご苦労なこった。ところでおふたりには祝いの電話はしたのかよ」
『あっ、まだだったわ』
「そっちから先にやれよ・・・・・・」
お互いその会話が最後になり電話を切る。はぁとため息を漏らし、今後学校生活もあるため、依頼の受付時間を考えるのだった。
誤字脱字、感想などがあればとてもありがたいです。特に誤字脱字は今後、いい作品がかけるようにお願いします。感想はあればとても励みになります。
ISの方を見てくださっている方もいるかもしれませんが、本当に申し訳ありません。今現在下書きをしておりますので早ければ2時頃には投稿できるかと・・・・・・
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入学編 Ⅱ
そんなこんなで2話目です。どうぞ
駅から出ると偶然にも達也と深雪と会った。
「おはよう達也、深雪も」
「おはよう。狙ったか?」
「おはようございます」
「んなわけねーだろ。そういや、和尚さんのとこに行った?」
「あぁ。今朝行ってきたばかりだ」
十一が和尚さん、達也が師匠と言った人物は九重寺の坊主である。しかし、坊主のくせにけっこう俗っぽいというのが十一たち3人の共通の感想である。
「また深雪にちょっかいか?んで、お兄様がプンプン丸になったか」
「ところどころ言い方にイラッとくるがそんなところだ」
3人はそのまま学校に着き、深雪が一科生、十一と達也は二科生なので別れくないといけないのだがそこでまた2人のドラマを作り上げた。十一は、またかといった様子でその場面を眺めるだけにしていた。
「おはよう十一くん、達也くん」
「おはようございます」
「おーす」
「おはよう」
エリカと美月が声をかけてくる。そう言えばと思い、エリカと美月に話しかける。
「なぁなぁ、聞いてくれよー」
「なになに?」
「今さっきさー、達也と深雪がさ───」
達也は席に着いて早々に履修登録を済ませようとするが、十一は先ほど、達也と深雪が作り上げたドラマを教える。エリカは「もう慣れたかもしれない」と、口にし、美月はずっと恥ずかしいのを我慢するように顔を赤らめ下をずっと向いていた。
いつの間にか、達也は席の前にいる男子と自己紹介をしていたのだが、その男子はエリカと口喧嘩になってしまった。いつものように自己紹介をするとその男子も自己紹介で返す。
「俺は西城レオンハルト。レオでいいぜ」
「おけ、把握」
そこで予鈴がなり、自分の席へと戻る。しかし、ここで予想外のことが起きた。教室のドアが開き、教師らしき人が入ってきたのだ。一科、二科制をとっているのは一高、二高、三高までである。けれど教師の数はその人数に全く足りておらず、二科生は直接授業を受け持ってもらえることは出来ず、映像での授業となる。
「はじめまして。私はこの学校で総合カウンセラーを務めている小野遥です。皆さんの相談相手となり、適切な専門分野のカウンセラーが必要な場合はそれを紹介するのが私たち総合カウンセラーの役目になります」
「(へー・・・・・・まっ、俺には関係ねーな)」
なんでも、カウンセラーは合計で16名ほど在任しているらしく、男女各1名でペアとなり各学年1クラスを担当するとのこと。また、カウンセリングは端末を通してすることも可能とのこと。
自己紹介とカウンセリングの説明が終わり、カリキュラム案内や履修登録へと移る。終わっている人は退室しても構わないらしいがガイダンス開始後は退室不可とのこと。
案内や履修登録を素早く終わらせた十一は今後、反社会的組織についての今後の動向を、得た情報をまとめるために思考の海へと潜り込んでいくのだった。
───────────────────────
ふと気が付けば昼までどう行動するか話していた。なんでも、レオは見た目と合わずに工房に行きたいらしい。
「闘技場じゃないのか?」
と、達也が質問する。実際、十一も同じことを考えていた。
「硬化魔法は武器術との組み合わせで最大の硬化を発揮するもんだからな。自分で使う武器の手入れくらい、自分で出来るようになっときたいんだよ」
とは、レオの弁。
「でしたら、一緒に工作室に行きませんか?」
そこから、行き先は決まったのだが・・・・・・「オメーはどう見ても肉体労働派だろ。闘技場に行けよ」とレオ。「あんたに言われたくないわよこの野性動物」とエリカ。十一は聞きに徹していたのだが我慢の限界で吹き出してしまった。どちらも的を得ている発言に思われたからだ。
そんなこんなで、今後も行動を共にする友人が固まりつつあり、一緒に帰ろうとしていたところ、深雪と合流。するとそこで一悶着あった。脇の方で達也が深雪に力づけるために「お前のせいじゃない」と返事をしている。
「それにしてもよぉ、まさか美月があんな性格とは思いしなかったぜ」
「それに関しては同感だな」
───────────────────────
今回の一悶着の原因の第一幕は昼食時のことだった。食堂が混むことを予感し、早めに専門課程の見学を切り上げ食堂に着いた十一たち5人は、苦労して席を探すことなく席に着き食事を済ませる。驚いたことにメニューにはオリーブ抜きのピザとストロベリーパフェ。これを食べない理由がない、そう判断した十一はその昼食に舌鼓を打っていたその時だった。
深雪は一科生を後ろに控えて来たのだが、達也を見るとそこへ合流しようとして、後ろに控えている一科生の方を振り向き、一緒に食事は取れないと断りを入れたのだが、そこから一科生たちの傲慢な言い種に発展。辟易した達也はその場を離れようとアイコンタクト。5人は移動することとなった。
第二幕は午後の専門課程見学中のこと。
射撃場と呼ばれる遠隔魔法用実習室では、3年A組の実技が行われていた。
生徒会長のクラスで、もちろん新入生の見学する最もな理由だった。真由美ほ10年に1度の英才とまで言われている。
ただ、一科生に遠慮する二科生がほとんどの中、十一たちは堂々と最前列の一番見やすいど真ん中に陣取っていた。この時、十一は先ほど食べたピザとパフェの味の評論のため頭をフル回転させていた。
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場面は戻り、第三幕。現在進行形で美月が一科生に啖呵を切っている真っ最中。
「いい加減諦めたらどうですか?深雪さんは、お兄さんと帰ると言ってるんです。他人が口を挟むことじゃないでしょう」
相手は昼食時に深雪の後ろに控えていた面子。深雪を待っていた達也たちに深雪クラスメイトたちが難癖つけたというのごことの発端。
「(あーあー、こりゃあ風紀委員会待った無しだな)」
なんてことを十一は人事のように考えていた。しかし、思いやりと言うかなんというか、変なものを燃え上がらせてしまった友人たちはますますヒートアップ。
「僕たちは彼女に相談することごあるんだ!」
「そうよ!司波さんには悪いけど、少し時間を貸してもらうだけなんだから!」
と一科生たちの意見。
しかし、彼らの勝手な言い分をレオは鼻で笑い飛ばす。
「はんっ!そういうのは自活中にやれよ。ちゃんと時間がとってあるだろうが」
「相談だったら予め本人の了承とってからにしたら?深雪の意思を無視して相談も何もあったもんじゃないの。それがルールなの。高校生にもなって、そんなことも知らないの?」
と、エリカの正論すぎる正論を食らった一科生たちは逆ギレ。まぁ、挑発するような真似をしているエリカもエリカなのだが。
「うるさい!他のクラス、ましてやウィードごときが僕たちブルームに口出しするな!」
差別的ニュアンスがある、などといった理由で『
しかし、意外にもこの暴言に真正面から反応したのは、意外と美月だったのだ。
「同じ新入生じゃないですか。あなたたちブルームが今の時点での一体どれだけ優れていると言うんですかっ?」
大して大きな声を出した訳では無い。けれど、美月のその声は不思議と校庭に響いたのだ。
「・・・・・・あらら」
「~♪いるじゃねーか。美月のこと気に入ったぜぇ」
「気楽なものだな。マズい事態だろう」
両者共に非常に危ない状態になったことは分かっているが、考え方が違うようだ。十一はその場の流れを楽しむことに重点を置いているが、達也はできるだけ荒事は立てたくない。そんな場面でそんな2人の考え方が合うはずもないだろう。
「・・・・・・どれだけ優れているのか、知りたいなら教えてやるぞ」
美月の主張は校内のルール、社会的な考え方としては正当なのだが、同時に、ある意味でのこの学校のシステムを否定するものでもある。
「ハッ、おもしれぇ!是非とも教えてもらおうじゃねーか!」
一科生の威嚇とも最後の通達または退路の無いことを伝えるものとも取れるその言葉にレオが威勢よく挑戦的に大声で応じる。ことここに至れば今更だが、完全に「売り言葉に買い言葉」の状態だ。
そんな状態において十一は肩を震わせて笑っていた。達也は気付いているようだが無視を決め込むらしい。
「しっかしまぁ、道理は美月にあるのになぁ」
「だからこそ、一科生の者はいい思いはしないだろう」
「だったら、まるっきり子供だな」
「あのー、お兄様方、そんなことを言ってる場合ではなくなってしまったのですが・・・・・・」
「おっ?進展ありか・・・・・・あれは、まずいな」
深雪が2人にかけた言葉を聞いて十一と達也がそちらに目を向ける。すると、ただでさえ一触即発の状況がついに動き始めていた。
「だったら教えてやる、一科生の力を!」
学外における魔法の使用は法令で細かく規制されている。学外はそれよりももっと厳しくなる。
しかし、CADの所持が校外で規制それているという訳では無い。
意味が無いのだ。
CADは今や魔法師の必携ツールだが、魔法の行使に必要不可欠という訳では無い。CADは無くとも使えるため、CADの所持そのものを法令は禁じてはいない。十一の場合、殆どがそれだ。
よって、登校時に所持している者はCADを預け、下校時に返却を受けるのだ。
「特化型!?」
だがそれが同じ学校の生徒に向けられるとなれば、異常な事態であろうことは簡単に想像できるだろう。
向けられるCADが、攻撃特化型であるならば尚さらだろう。
見物人の悲鳴が多数聞こえる。
なるほど、さすが一科生。口先だけではないようだ。
CADを抜き出す手際、照準を定めるスピード、どちらも明らかに魔法師同士の戦闘に慣れている者の動きだ。
レオは即座にそれに反応し、その一科生に向かって走りCADに掴みかかろうとする。
「(さすが森崎家、と言ったところかな。でもまぁ、その程度で今だけのプライドじゃあ、伸びるものも伸びねーだろうよ)」
「お兄様!」
達也は隣から深雪の叫び声とも取れるその声を聞くまでもなく
しかし、十一は達也のその行動を見てから達也の前に腕を出して静止させる。十一のとった行動は次に何が起こるのかが把握しきっている行動だ。
「何のつもりだ?」
「まぁ、見てろよ」
十一がそう言った瞬間───
「ヒッ!」
───カコン・・・・・・カラカラカラ
悲鳴を上げたのは銃口をレオに向けていた一科生の方だった。いや、レオも若干「ウオッ!」と驚いていた。
「(ほう、あの千葉家の血筋が確定したな。俺も、面倒を呼び寄せるなんて達也のこと言えねーな)」
なんて、呑気なことを考えているとエリカとレオは口論に、いや、レオは軽くあしらわれているだけのようだ。
十一はこの場の誰もがエリカとレオの繰り広げるグダグダな漫才に呆気に取られている中、先ほどの、CADを弾き飛ばされた一科生の後ろの集団にいた女子生徒が腕輪の形状をしたCADに指を走らせるのを見つけた。
十一は感覚的に
系統外魔法である事を把握する。どうやらそれを弾丸の様に打ち出して魔法式を破壊し発動を阻害するようだ。確かに成功すれば安全かもしれないが外れたり、タイミングがズレたりすると向けられた相手は大怪我をする可能性が高い。
「(仕方ない、かな?)」
十一は自分の中でそう判断を下し右腕を持ち上げ親指と中指を合わせた、所謂指鳴らしの状態にする。
「
パチン!
その言葉とともに指を鳴らす。その音は不思議とその空間の中に響き渡る。すると、周りの動きが石のように動かなくなってしまった。
そう、十一は
現代魔法は3つの要素が重要視されていてその中に演算規模も入っている。
その要素から見れば十一は全世界でトップだ。しかし、これは十一がまともに使える魔法の中だけという制限があるのだが。
「これで終わりだな」
十一は発動の最中だった魔法式をキャンセルし、また、生徒会長の放った系統外魔法の弾丸を霧散させた。
「このままここにいると厄介ごとになるのは目に見えてるしなぁ。校門で待っとけばいいだろう」
そう残して十一は校門で魔法を解くために移動する。
「1人の時間はもう終わりだ。
そう呟くと共に、指を鳴らし音を響かせる。
すると、時ほ急速に加速し始め最終的には元の時の流れへと戻るのだった。
───────────────────────
「おいおい、悪かったって。そんなに起こるなよ。男前の顔が台無しだぞ」
「お前に言われても嬉しくないんだが」
十一は現在、先ほどの騒ぎのから逃げたために謝っている。しかし、どう見ても謝っているようには見えないのだが。
「お、お兄様、深雪も十一さんと同じでいいと思いますよ」
「あ、私もー」
「わ、わ私もいいと思いますよ」
深雪、エリカ、そして先ほどの魔法を発動させようとした女子生徒の光井ほのかが十一の言葉に賛同する。
「そう言えば十一。お前、どうやってあの場からいなくなったんだ?あのあと、結構騒ぎになったんだぜ。光井の魔法が発動しなかったー、なんて騒ぎが起きたあとに聞いた時びっくりしたぜ?」
「あれ、どういうこと?」
レオとほのかの親友の北山雫が十一に聞いて来るがそうそう言えるものじゃない。拾ってしまえば今の生活ができなくなるところの話ではなく、世界から狙われることになるのだから。
「そんなの言えるわけねーだろ。まぁ、これだけは言える。解明できなかった物理学を発展させた魔法だってことは」
「えぇ!?魔法を理論的に開発したんですか!?」
「そんなに驚くことじゃねーだろ。達也だってしてるし」
「おい」
達也は余計なことを、と言いたげに目を向ける。まぁ、そのくらいで怯む十一ではないのだが。
「しっかし、エリカのあの警棒面白いな。あれだったらいつでも携行できる新しいCADが作れるかもなぁ」
「お前のは既に持ち歩いているようなものだろう」
「え?」
「っていうか、2人ともあの一瞬で分かっちゃうの?」
「おう」
「こいつの場合は特殊だからな」
「え?その警棒デバイスなの?」
「普通の反応ありがとう。みんな気づいてたら恥ずかしいじゃない」
そのやり取りを聞いて、レオが更に、訝しげに問う。
「・・・・・・何処にそんなシステムを組み込んでるんだ?さっきの感じじゃ全部空洞ってわけじゃないんだろ?」
「ブーっ、正解は「柄以外はすべて空洞だったぞ。多分だが刻印術式で強度を上げてるはず。じゃないとぶっ壊れる」・・・・・・えー、私が説明しようとしたのに・・・・・・」
十一が被せて説明し、ふてくされ気味のエリカを見て鼻で「フッ」と笑う。
「え?ちょっと待て、術式を幾何学紋様かして、感応性の合金に刻んでサイオンを注入することで発動するってことだよな。よくガス欠にならないな」
そう、レオの言ったとおりなのだが、これには問題がある。刻印術式自体が、燃費が悪すぎてあまり使われていない技術であり、硬化魔法をかけ続けなければならないのだ。普通は、の話なのだが。
「おっ、流石得意分野。でも残念。それはずっとかけつけるかけ続ける場合でしょ?強度ご必要になるのは振り出しと打ち込みの瞬間だけ。その刹那を捉えてサイオンを流してやれば、そんなに反応しないわ」
兜割りの原理と同じよ、とあとに続けたエリカだったがみんな感心と呆れ顔がブレンドされた空気にさらされて、居心地悪げに訪ねたエリカに美月が言うのだった。
「十一さん、達也さん、深雪さんもすごいけど、エリカちゃんも充分すごい人だったのね・・・・・・うちの高校って、普通の人がいない?」
「・・・・・・魔法科高校に通ってる時点で普通の人はいないと思う」
美月が驚きとともにこぼしたその一言に雫が静かに切り返す。それを聞いていた面々は微妙な空気を感じていたが十一が吹き出したことによってその空気が軽くなったようだ。
最近寝不足なんですよね。突然何を言ってるのかわかりませんが新幹線に乗るために早くに起きて眠いです。講義受けてても眠くなるんですよね。いえ!流石に寝ませんけどね。←なんて言えたらかっこいいですがたまに寝ます。
はい、自分の話はおしまいにしてどうでしたでしょうか。みなさんが少しでも面白く感じられたのならば大変嬉しいところでございます。しかし、前書きにも書いたようにいっときISの方に入り浸りますのでご了承いただければと
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入学編 Ⅲ
うーん、ギャグ物書きたいし、ゴッドイーターのも書きたい。デレマス(アニメ未視聴)も書きたいし、ACfaとストライクウィッチーズ(アニメ未視聴)も書きたいしなぁ……オリジナルも書きたいでござる。けどそんなに書いてたら一作一作がクオリティが低く……うごごごご
「達也さん、会長さんとお知り合いだったんですか?」
「一昨日の入学式の日が初対面のはず・・・・・・なんだがな」
美月が疑問に思い、その旨を口にする。が、達也の方も疑問に思っているようだ。
一緒にいるのは、既に『いつもの』と言っても過言ではないメンバーが揃っている。
「達也くん、おはよー。深雪さんも、おはようございます。あっ、他のみんなもね」
「扱いがぞんざいすぎませんかねぇ・・・・・・」
思わず、そう漏らす十一を誰が責められようか、いや、言うほうがおかしいか。
「あら、十一くん、昨日は達也くんたちと一緒に見なかったけど、どうかしたの?」
「いやぁー、用事がありましてねー」
達也や他のメンバーからもジト目で見られ、かなり間延びした棒読みで返事をする。まぁ、逃げた十一が悪いのだから誤魔化すこと以外は出来ないが。
「それで、ご要件はなんです?深雪の生徒会入りの件だと思うのですが?」
達也はなるべく早くこの空間を打破したいのか話をまとめようとする。まあ、生徒会長から往来で大きな声で呼びかけられたのだから目をつけられたくない達也にとって当然なのかもしれないが。
「ええ。それで、生徒会室に来ないかしら。ダイニングサーバーがありますし、それに食堂で問題起こすよりも余程いいと思うのだけれど」
「・・・・・・分かりました。伺いましょう」
「大丈夫よ。はんぞーくんはいつもお昼ご飯は部室で摂ってるから。何だったら皆さんで来てもいいのだけれど」
「あ、私はパース」
「あー、すいません。俺も食堂で飯食べてた方が良いんで」
「す、すいません。私も・・・・・・」
「んじゃ、達也昼は別々だな。俺はレオたちと一緒に食堂で飯食っとくぜ」
十一は早速厄介事だと検討をつけその場を離れようとするがそうは問屋が卸さなかった。
すぐに離れようとする十一の前に真由美は前を遮るように立ったのだ。そして笑顔を浮かべてこう言った。
「あ、十一くんも来てね。じゃないと校内放送で呼び出しちゃいそうだから」
その言葉に十一はピタッと動きが止まる。そして首をがっくりと落として諦めたように上げかけていた手を投げやりに下ろす。
「・・・・・・はぁ、マジか。あー、その、拒否権は?」
「あるわけないじゃない」
背景に幾つもの花を咲かせるような綺麗な笑顔を浮かべながらズバッと言うあたり、十一が昨日あの場から逃げ出したこと自体を知っているようだった。
「了解・・・・・・お嬢ちゃん」
ちょっとした意趣返しにと思い、そう返すのだった。
───────────────────────
授業終了の鐘が鳴る。それと同時に立ち上がり新しく出来た友人たちと和気藹々といった具合にそれぞれ昼食を摂るために席を立って移動する。
そんな様子を十一は突っ伏した状態で顔だけを上げて見ていた。
「そろそろ行くぞ」
「あー、行きたくねぇな・・・・・・」
「はっはっはっ、俺はドンマイとしか言えねーけどな」
「くそっ、お前なんて女子の中で気まずい空気の中で食ってろっての」
「おう、割と本気で有り得そうだからやめーや」
結局、レオはエリカたちと合流して食堂に向かっていった。
それを見送ると同時に十一はどこから出したのか冷めたピザを魔法を使い温めながら匂いをまき散らして達也と重い足を生徒会室へと向けて移動し始めたのだった。
そして現在、壁のインターホンを目の前にしてどちらが押すか話してると後ろから声をかけられる。
「何をしてるのですか?」
「いや、深雪を待っていたのとどちらがインターホンを押そうかとな」
「なるほど・・・・・・それにしても十一さん?流石に校内でピザはどうかと思うのですけど・・・・・・それに魔法を使って温めるなんて、一応違反ですからね?」
クスッと笑いながら十一の持つ宅配ピザの入れ物を見る。もう既に何度か見てきた光景なのだろう。
「仕方ないんだよ。俺はピザかストロベリーサンデーのどちらかを食べないと震えが止まらなくなるんだよ」
「それは病気なのだが・・・・・・まぁ、いい。深雪も来たことだし入るか」
達也がそう言ってインターホンを押す。それに対してスピーカーから歓迎する胸が伝えられ、達也は深雪を庇うような形で扉を開ける。深雪も深雪で礼儀作法の手本のようなお辞儀を見せることにより生徒会室にいた役員たちもたじろいでいるようだった。
しかし、インパクト的には達也、深雪と続いた十一の方が強かったらしい。
「失礼しまーす」
なんていう、軽い挨拶はいいとして手に持っているものに目が吸い寄せられる。そして、そこから漂う香ばしい匂いにも。
「あ、あのぉ?十一くんの持ってるそれは?」
「え?昼飯ですけど?」
「・・・・・・」
簡潔に答えられ、言葉に詰まる真由美。
「まぁ、いっか。どうぞ掛けて。お話は食事をしながらにしましょう」
その言葉をきっかけに、十一らは役員らと顔を合わせるような形に席に座る。
それを待っていたかのように、真由美が役員を紹介していくようだった。
「私の隣に座っているのが市原鈴音、通称リンちゃん」
「・・・・・・私のことをそう呼ぶのは会長だけなのですが」
「その隣は既に知っていますよね?風紀委員の渡辺摩利。そして、その隣が書記の中条あずさ、通称あーちゃん」
「会長・・・・・・お願いですから下級生の前で『あーちゃん』はやめてくださいってばぁ・・・・・・」
若干涙目で両腕をわきわきと上下に振り回す。その姿は先ほどの『リンちゃん』とほ違い、確かに『あーちゃん』だなと納得させた。
その姿を見ていた十一は『あーちゃん』と呼んで少しだけ虐めてやろうかと思い、ニヤリと口の端を釣り上げたところで達也に見られ軽い肘鉄を食らう。
「そしてもう1人、副会長のはんぞーくんを加えたメンバーが、今期の生徒会のメンバーです」
「私は違うがな」
そう自己主張する摩利に十一はさっき紹介で聞いたと思いながら適当に右から左へとスルーしていた。
そこでやっとダイニングサーバーのパネルが開き料理が十一とまり以外のところへと運ばれる。
「あー、やっと食えるぜ。いただきます」
と、堂々と宅配ピザの箱を開ける。中にはたっぷりとチーズとサラミやピーマン、ベーコンなど所狭しと並べられたピザが湯気を出しながら強烈な匂いを爆発させたかのような勢いで部屋に広がる。換気をしているためか、部屋に匂いは充満していない。
その行動に達也と深雪以外は苦い笑いを浮かべそれぞれの食事に舌鼓を打った。
十数分した頃に真由美が本題へと入るために口を開いた。
「当校は生徒たちの自治を重視しており、生徒会は学内で大きな権限を与えられています。何も、これは投稿だけでなく、公立高校では一般的な傾向です」
説明が進み、最終的に深雪の勧誘が終わると次は風紀委員関係の話へと移る。
切り出したのは、風紀委員長の肩書きを持つ渡辺摩利だった。
「つまり、風紀委員には二科生の縛りは存在しない。だから、二科生から選んだとしても規定違反にはならないはずだ」
「摩利、貴女・・・・・・」
十一は次に言われる言葉を確信した。それと同時に断ろうと決意。元々、十一はやりたいことがあったのだ。それが断られるかも分からない状態で話を受けるのは勿体ない。
「ナイスよ!」
「はぁ?」
隣で口を開けて間抜けな声が漏れてしまっている達也を見ながらどのタイミングで断ろうか悩んでいた。
しかし、一向に話は十一に回って来ず。ずっと達也と押し問答のような形で昼休み終了の予鈴が鳴り、返事は一度お持ち帰りとなったのだった。
───────────────────────
午後の授業を終え、エリカとレオのムカつく声援と美月の済まなそうな謝罪を背に2人は生徒会に向かう。
2人の足は、昼休みと比べても格別に重い。途中深雪とも合流して生徒会室へと向かっていた。
「はぁ・・・・・・わざわざ行きたくもねーのに」
「あぁ。本当にそう思う」
若干肩を落とす2人の背中は、深雪からしたら珍しく苦笑を浮かべていた。
そんなこんなで生徒会室の前へとたどり着き達也はIDカードを認証させ入室する。2人もその後に続いて入ると、十一と達也は対して強い敵意を感じていたが、ふっと軽くなる。十一はそれが気になり、元をたどってみるとなるほど、深雪に関心が向いているようである。
「副会長の服部刑部です。司波深雪さん、生徒会へようこそ」
その言葉に苦笑いを浮かべていると横から声をかけられる。
「いらっしゃい。3人とも御苦労様ね」
「よっ、来たな。じゃあ、着いてきてくれ」
そう言われて摩利について行こうとすると後ろから声がかけられる。
十一はまた面倒事か・・・・・・などと思いながらも声をかけられた方へ振り向く。
そこにはやはりと言うべきか、先ほどの副会長だった。敵意丸出しといった感じでトゲのある口調で言葉を発している。
十一はふと気になり深雪の顔を見て達也の脇腹をつついて深雪を指して小さく話す。
「(そろそろやばいんじゃねーの?)」
「(あぁ・・・・・・そのようだな)」
そこで達也は深雪へと顔を向け目を伏せる。深雪は不承不承と言った感じで頷いたのだが、次第に深雪にとって聞くに耐えない言葉が増えてきた。
そしてそれはついに───
「待ってください!」
爆発した。十一は多分こうなるだろうと思っていたのでため息をついただけだが、達也はそう思っていなかったらしく慌てて深雪へ振り向く。
「(あーあーあーあー、どこで断ろうかねぇ。この空気じゃどう考えても、『すいません。やりたいことがあるのでやめていいですかー?』なんて言えないんだけどなぁ・・・・・・どうせ長引くんだろうしいつ帰れるんだろ。てか、メンバー集めねぇとな。レオなんかは山岳部とか言ってたし)」
十一は頭の中でそんなことを考えていると、話は佳境へ入っていたらしく、某黒の剣士のセリフである『
仕方ないからここで言うか、そう思って口を開くが───
「あの俺やりたくな「思い上がるなよ、補欠の分際で!」いので帰って「何がおかしい!」いいです「魔法師は冷静を心掛けるべき、でしょう?」か?「くっ!」」
『えっ?』
十一以外の声が同時にハモって聞き返してくる。
「えっ?誰一人聞いてなかったんすか?だから、俺他にやりたいことがあるんですやりたくないんすよ」
「・・・・・・今、言うの?」
「だって昼休みの時もあの後はもう達也と押し問答の形で時間になりましたし、今も副会長が突っかかってきてこんな感じでしたし」
「え、えっと・・・・・・で、お前のやりたいことって?」
「相互扶助部の立ち上げですかね。別に部員1人でも立ち上げは出来るって聞いたんで。まぁ、今のうちに部の理念を言うと『協力し合い絆を深めていこう』的な?」
「え、えぇ・・・・・・」
「あ、達也。模擬戦頑張ってね。どうせあいつらと帰る予定だし、あいつらも時間まで待ってるって言ってたから応援するぜ」
十一以外の間に漂う微妙な空気のせい、なのかおかげ、なのかは分からないがその後は流れる様に模擬戦の準備が整っていった。
───────────────────────
「お前・・・・・・あそこでぶっ込んでるか?」
「だって俺元々するつもりねぇし?ン拒否するゥ!って言いたかったんだけどあの後お前と先輩たちの押し問答じゃん。逆に感謝して欲しいくらいだぜ?深雪の怒りも副会長の敵意もどっかに吹っ飛んだんだからいいじゃねぇか。なぁ、深雪」
「その点はありがとうございます。でも、逃げるためですよね?」
クツクツとかわいらしく笑う深雪に、そりゃあ、余計な火の粉は被りたくないしな、と言外に片眉を上げて笑う。
「ま、頑張れよ」
会話を続けながら歩いていると指定された場所へと着く。扉を開けると既に全員揃っているようだった。
「すみません、お待たせしました」
じっくりと準備を行い、準備万全の状態へと持って行き、所定の位置につく。反対側は既に服部がついていて口の端を少しだが釣り上がっている。
「ねぇ、十一くん。どっちが勝つと思う?」
「・・・・・・ぶっちゃけ言っていいなら言うけどいいんすか?」
「ええ」
「達也」
その問答を横で聞いていた深雪はふふんと自慢げに胸を張っている。
「どうしてかしら?はんぞーくんだって三巨頭ではないけれど1年間負け無しなのよ?」
「・・・・・・見てれば分かりますよ。リンちゃん先輩も、あーちゃん先輩もよく見ておいた方がいいですよ。数秒で終わりますから」
「分かりました」
「・・・・・・キンチョーしますね」
「あーちゃん・・・・・・」
鈴音はチラッと十一のことを見て言葉を続けたのだが、あずさはちゃっかり十一が自分のことを『あーちゃん』呼びしていることを、緊張のしすぎで気づいていない。それに気づいた深雪と真由美は顔を見合わせてクスクスと笑っている。
その間にルールの説明が行われていたようだ。
『ルールはいたって簡単だ。直接攻撃、間接攻撃問わず死に至らしめる術式は禁止。回復不能な障害を与える術式も同様に禁止。相手の肉体を直接攻撃損壊させる術式は捻挫以下であれば許可。武器の使用は無し。素手はありだが蹴りの場合は靴を脱いで学校指定のソフトシューズへ履き替えること。
勝敗は、一方が負けを認めるか、審判が続行不能と判断した場合に決する。』
「以上だ。準備はいいな?始め!」
遂に、開戦の狼煙が上がった───
が、すぐに終わった。秒殺である。
達也が横目で摩利を見る。その視線に数秒ほどして気づいた摩利はゆっくりと勝者を告げる。
「おう、お疲れさん。相変わらず容赦のない攻撃方法だこと」
「あぁ、ありがとう。仕方ないだろう、これが一番早い上に俺が勝率のある方法だ」
「待て」
試合が終わり、片付けのためにケースを置いていた場所へと向かうが急に背中に声が掛けられる。
「今の動きは・・・・・・自己加速術式を予め展開していたのか?」
そこから達也の得意な説明が入る。
十一が、やぁーっと終わりかー、なんて考えていると説明を聞き終えた摩利が爆弾発言を投下。
「さぁ、十一くん。君の実力も見せてもらおうか。相手は私が努めよう」
「あー、十一くんごめんね?さっき申請だしてきた時にもう書いちゃってるのよね・・・・・・」
「はぁ?ちょっと意味わかんないんすけど・・・・・・てか、なんで勝手にやってるんすか?」
「いや、なに。私相手にどこまで戦えるか見たいだけだ。もし戦わなければ相互扶助部?だったかな?それの立ち上げはなしにしてもらうぞ」
すると、十一は達也と目を合わせている。達也もこの事は知らなかったようで、若干目が見開いている。
「何言ってんすか?風紀委員ともあろう者が風紀乱してどうするんすか?脳筋ですか?それに、俺のメリットがないんですが・・・・・・どうせいい勝負したらしたで風紀委員直行でしょ?やですよそんなの」
「ぐッ・・・・・・!ええい!いいからやるんだ!」
「・・・・・・はぁ、めんどくせぇな。わーりやしたよ。ただし、これは依頼とみなして貸し1つですよ?」
と渋々だが了承する。摩利もそれに了承する。これによってもう一試合、模擬戦が行われることになった。
「まぁ、そのなんだ?ドンマイ」
背中に掛けられる声には若干同情の混じっていた。
二試合目の合図は真由美が行うらしく、中央線の横にたっている。ここルールの変更があった。さっきのルールの一部分を変更になった。ルールの変更点は以下のようになった。
『素手あり、蹴り、武器の使用も許可。』
「位置についたわね?それじゃあ、始め!」
模擬戦二試合目の鐘が鳴る。
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入学編 IV
正体不明の、複数の大学による学生への同時襲撃。
その殆どは成功し、学生は拠って立つ夏休みの生活リズムを大きく揺るがされた。
そして、大学の教授らの名で、ごく短い声明が学生に発信される。
それは全ての学生への明確な宣戦であった。
学生は怠惰な夏休みの生活リズムを放り出し、狂気の大学に対することを余儀なくされ、
学生らは覚束ない足元にはじめて気づいたかのように、それを恐怖するしかなかった。
開始の合図が耳に入ったと同時に摩利はどこからか取り出した短めの木刀を手にし、自己加速術式を使用して十一へと掛けていく。
一方で十一の方はと言うと、組んでいた腕を解いて何かに備える。しかし、その時には既に目の前に摩利が木刀を振り下ろしていた。
そして、絵では振り切られる───
が、十一はその場におらず、もといた場所の後方に数m移動していた。
「えっ!?」
真由美が驚愕を露にする。達也以外の面々もそうだった。深雪に関しては、達也から話は聞いていたのか少し驚いてる程度で済んでいるが。
「
恭しく片手を前に頭を下げ、流れる様な動作で挑発する。あくまで自分が上であることを誇示するかのように、一度区切って向かわせるように大きく声を出す。その一連の動作が、外見と相まって違和感を感じないのだから達也は苦笑を浮かべていた。
その意味を十一が意図した通りに受け取った摩利は青筋を浮かべ空気弾も交えて攻撃を始める。
しかし、十一はそれを全て避ける。具体的には『ダッシュ』を展開していた。『ダッシュ』とは十一が使える魔法の一つで相手に攻撃され、当たる瞬間に使えば攻撃はすり抜けていく。言い換えれば、瞬間的な無敵状態へと持っていくことが出来る。
たまに、ダッシュを行いながら摩利へ突撃し、空中へ逃げる。それを撃ち落とすために空気弾を放つが十一は『スカイスター』を展開。これは空中版の『ダッシュ』と考えれば説明がつくだろう。
「くっ、何故当たらないんだ・・・・・・!」
「ハッハッハー!仕方ない、このままじゃ埒が明かないからな。俺に一撃食らわせたらそちらの勝ち、俺はあんたを床につけたら勝ちって事はどうだ?」
「くっ、後悔するなよ!」
開始から数分。今まで動き続けていた十一は急停止する。このまま行けば決定打がなかったからだ。しかし、地に伏せることは出来る。だからそれを選んだ。その為にはまず、自分に攻撃してもらわなければならないのだ。そのための挑発だったりもした。
今までよりも早く摩利は動く。自己加速術式を展開した時には既に十一の目の前だった。摩利は既にモーションに入っていてコンマ数秒で当たる。
しかし、十一の口は弧を描いてた。摩利がそれに気づいた時には既に遅し。摩利の攻撃が十一に当たると同時に、肩には十一の手が添えられ───
「
もといた場所へと返され、背中から地面に着いた。
強く押し出された訳では無いのだが、押し返された時にそれなりのダメージが入ったのか、起き上がるのに少々時間が掛かっている。
「ハッハッハー、
「しょ、勝者、一十一・・・・・・」
十一の言葉を聞いて止まっていたそれぞれの時が動き出す。
「え、えっと・・・・・・今の、何?」
「最後の?最初のも途中のも最後のも内緒っす。そっちの方がおもしろいでしょ?」
ふふん、と鼻を鳴らして胸を張る。しかし、胸を張ったことによって、室内にある時計が目に入った。
時刻は5時35分。そろそろ、約15分後には約束の時間となる。
「流石だな」
「お兄様から話は聞いていましたが、本当におもしろい魔法を使うんですね」
「ん?俺の魔法見るのは初めてだったか?まだまだ面白い魔法は沢山あるぜ?」
達也と深雪に声を掛けられる。十一はありがとう、と返して時計を示す。話を早く切り上げて帰ろうぜ、と言外にそう言う。
達也もそれに同調するかするかのように、退室する為に続こうとしたのだが、摩利や数人に声を掛けられる。
「十一くん、ホントに入る気はないか?私はますます君がうちに欲しくなったよ」
「そうね・・・・・・それにしても今年の1年生は面白い子が多いわね」
「入りませんよ。それにさっき言ったじゃないすか、『依頼なら受けます』って。そんなに来て欲しいなら、依頼として受けますよ?」
すると、摩利は十一の肩をかなり強い力で掴んできた。無言の圧力を受けて言葉を待つと、摩利は依頼内容を口にする。
「明日から1週間、協力してくれ」
「あ、それなら私からもお願いね。たまにでいいから生徒会の仕事をお手伝いして欲しいのよ」
その言葉に、内心満面の笑みで「毎度ありー!」なんて、言葉を思っていたのだが、顔にするのは呆れた感じで、「分かりましたよ」と返答。
結局、十一と達也は明日からの説明を受けるために風紀委員室へと赴いた。
「えっ?」
そこで聞いた話は意外なことで、先日のなんたらこうたらという一科生の人が教職員枠で入ることになったのだ。
そのことに、掃除していた達也はCADを落としそうになり慌てて持ち直す。十一も掃除はしていたのだが、そのなんたらこうたらという人物のことを知らなかった為、右から左へと流していた。
「はぁ・・・・・・どちらも入れないというのはどうでしょうか?」
ため息混じりにそう呟くと、摩利からストレートな質問を受ける。顔も笑っておらず、正直に話せと言っているようだ。
「・・・・・・正気なところ、面倒だ、と思っていますが、今更引き下がれないとも思っていますよ」
「屈折しているな、君も」
そんな会話をしている2人を他所に十一は掃除が終わって暇だったのか、1人で椅子に座り、舟を漕いでいた。
その後、数人の風紀委員と顔を合わせたところで今日は解散となった。
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「ん?ほぉ・・・・・・なるほどねぇ。じゃあ、裏の方は俺が調べておこうか?」
『そう言うのは儂らに任せんか。丁度これが儂らの最後の仕事だ』
『あぁ、貴殿はまだ若いし学生ときた。逆に今までが働きすぎなのだ。それに、幼い頃から長として働いておられる』
『そうね。次回からは娘たちが当主になるのだからその時は先輩としてお願いね』
帰ってきた言葉はしゃがれた男性特有の声と比較的若い男性の声。さらに、同じように比較的若い女性の声が端末から流れる。
「えーっと、どこで顔合わせって決めてた?」
『まだだな。済まないが、私の家はどうだろうか。広いし、そこそこ充実していると思うが?』
少しきつく感じるが、どこか楽しそうにはなすその言葉をきっかけに、肯定の意が返ってくる。誰も反対する気など無いかのように穏やかに物事が決まっていく。
「ま、こっちは任せろ、夏頃までにはそれぞれ情報を集めておいてくれ。頼んだぞ」
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「と言うことでさ、俺が創る部活入ってくんね?」
「あぁ、えっと・・・・・・悪ぃな。もう入る部活決めちまっててよ」
「わ、私も見て回って決めようかなぁって思ってて」
放課後、ちょっとした時間に達也以外のいつものメンバーに声を掛ける。レオと美月は乗り気ではなかったみたいだが、部活が休みの時とかだったらやってみたいと言ったのでその時は来てもらうことになったのだ。
しかし、以外だったのがエリカだった。以前のように「パース」と言って難しいかと思ってら思いの外「面白そう!やってみたい」とのこと。
「じゃあ、来週から私と十一くんが部員?ちなみにどんな活動内容なの?」
「名前の通り、生徒たちから依頼を受けてそれを遂行。その生徒の名前とこっちで控えを取ることで、こっちの仕事のために依頼してきた人を使ったり?」
「なるほど、だから
「おう。当たり前だ。ある程度のものは備えるつもりだぜ」
その後、達也に呼ばれて生徒会室を介して風紀委員室に近道をする。
「あいつらの反応はどうだった?」
「レオと美月は他の部活をしながらじゃねーか?見て回りたいって言ってたし。ただ、以外だっのがエリカなんだよな。なんと『面白そう!』って言って来週から部員ですぜ」
「・・・・・・ホントに以外だな。ただ、放課後の暇つぶしだと思うが」
「多分そうだろうな。つっても部員なんだから仕事はしてもらうぜ?」
風紀委員室に着くとまだ誰もいなかったため軽口を叩きながら話していると、ぞろぞろと入室してくる。
2人は立ち上がり最低限の挨拶を済まし席に座る。そんな様子を摩利は満足気に見ている。
最後にやって来たのは、昨日の話題に出ていた人物である、なんたらこうたらという1科生の生徒が入室早々、十一と達也を見て声を荒らげる。
「何故お前らがいる!」
そんな質問を十一は右から左へと聞き流し、達也は達也でため息を吐きながら呆れた声でそれを咎める。もちろん、摩利にも「騒がしい!」と一喝。居心地が悪くなったようだ。
「全員揃ったな?」
その質問に1年生の3人以外は首肯する。
「そのままでいい。さて、今年もまた、あのバカ騒ぎの1週間がやって来た。風紀委員にとっては新年度最初の山場だ」
バカ騒ぎ、新年度最初の山場、などと風紀委員の間で揶揄されているモノ。それは部活勧誘だ。普通科高校と違い、九校戦のためにも入試の優秀成績者を引き込みたいと意気込む部活ばかりなのだ。
「いいか、くれぐれも風紀委員が率先して騒ぎを起こすような真似はするなよ?いいな?今年は大人しく、それでいてきっちり仕事をこなしてくれ」
同じ言葉ではなかったが、何度も強調するところを見ると去年までは風紀委員も騒ぎを起こしていたのだろう。
達也はチラリと隣を見る。もちろん、十一だ。その目は『頼むぞ』と強く念押ししているようにも見えるが、十一はニヤリと笑うだけ。
「(多分こいつは『俺は風紀委員じゃないですからね』とでも言うんだろうなぁ)」
などと、遠い目をしながら思考に耽る。
「まあ、今年は幸いなことに卒業生分の補充が2人間に合った。あとのもう1人は振興部活動『相互扶助部』の部長だ」
その言葉ともに、緊張で肩に力が入りガチガチな状態のなんたらこうたらと正反対に、ポケットに手を突っ込み欠伸をしている十一。2人のちょうど真ん中あたりの達也が立ち上がる。
「1-Aの森崎駿と1-Eの司波達也と一十一だ。前の2人は風紀委員だが、一は1週間だけの風紀委員だ」
少しのざわめきとともに質問した者がいた。
「誰と組ませるんですか?」
「前回も説明した通り、部員争奪週間は各自単独で巡回する。これは新入りであっても例外じゃない」
「役に立つんですか?」
「ああ、心配するな。3人とも使えるやつだ。森崎のデバイス操作もなかなかのものだったし司波も一腕は実際にこの目で見たからな。心配なら誰かに付くか?ん?」
反論することもなく、やめておく、と一言拒否の言葉を口にする。
その後は簡単な確認を終え、各自部屋を出ていく。
「えーっと、3人にはこれを渡しておこう。レコーダーは胸ポケットに入れておけ。ちょうどレンズ部分が外に出る大きさになっている。スイッチは右側のボタンだ」
その他諸々の説明を受ける。達也が旧式のCADを使用したいという旨を伝えると、備品の旧式のCADを二基使用する許可を貰う。
室外へ出ると、十一と達也の背後から敵意を向けた声を掛けられる。
十一は達也に『行こうぜ』と言いたげに顎で進行方向を指す。達也は苦笑を浮かべ首を横に振り向き直る。
「はったりが得意なみたいだな。会長や委員長に取り入ったのもはったりを利かせたのか?」
「・・・・・・ブフッ!あ、ごめんってそんな、睨むなよ達也」
達也は今の十一の言動で若干青筋を立てが今更だと思い直し、小馬鹿にした感じで答える。
「羨ましいのか?」
「なっ・・・・・・ふんっ、今回はやりすぎたな。複数のCADを同時に使うなんて、お前ら二科生如きにできるはずが無い」
得意気に説教じみた言葉を発し続ける森崎という人物に十一はそろそろ動きたかったため、口を開く。
「あー、分かった。そんな風に知識自慢しなくてもいいからさ、仕事チャチャッと終わらせてぇんだわ。そんなご高説は他所でやってくれ」
「なっ・・・・・・この期に及んでお前っ・・・・・・」
背中にそんな言葉を掛けられるが、正直に言えば十一も達也も複数のCADを使用したまま魔法の行使が可能なのだ。今更そんなことを言われようと知ったことではない。
「これだから足下掬われるんだっつの」
「まあ、仕方の無いことだろう。俺たちの全てを知っているわけでもないからな・・・・・・それじゃあ、また後でだな」
「りょーかい」
2人はそれぞれ足が赴くままに校内探索とでもいうような雰囲気で歩き始めた。
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「ハッハッハー!めちゃくちゃになってるのがちらほら見受けられるが・・・・・・なんか他に出店とか無いのかねぇ」
達也と別れた十一は何か面白いことは無いかと探していた。現在回ってるのは文化部のブースで料理部やら何やらを見て回って、食べて回って楽しんでいる。
「あ、これめっちゃうまい。すんません、これいくらっすか?え?500円割と安いな」
しかも値段、味ともに十一の納得いくところだったらしい。
十一は是非ともレシピが欲しいと思いながらも巡回という名の散歩を続けようと立ち上がると、後ろから肩に手を置かれた。
何となくだが誰か解ってしまいため息をついてしまう。
「おや、こんなところで何をしているのかな?君は」
「あいちゃー、楽しみすぎましたかね。ままま、一応働いてますよ?」
「どこがだ!お祭り気分で楽しんでいるじゃないか!それに、開き直るんじゃない!」
「そんな細かいことを気にしてたら禿げちまいますよ?」
そう言うとため息を吐かれいいから他の見回りをしろと言われる。それに対して、残念そうに返事をするとまたため息。
そのへんをブース付近ブラついていると以前の1科生と2科生のトラブルの時に知り合った2人が遠くの方でもみくちゃにされていた。
「ん?あれは・・・・・・確か雫とほのかじゃねーか?大変なことになってんな。んじゃ、行くとしやすか・・・・・・ってあら?拉致られたぞ」
十一は楽しそうにその光景を見ながら追いかける。彼の独自の魔法を使いながら追いかけるが、少しずつしか距離が縮まらない。
結局、最速の魔法を使って追いつくことに。何も無い空間から小さめの青い剣を出現させる。そして、それをスケボーに刺してマーキングを行う。十一がそれを確認したと同時に十一はその場から消えていた。
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「あら、以外ね。摩利が追いかけてくると思ったのに」
「ん?あいつ笑っていやがるな。どうしたんだ?それに、さっきの向こうにいたはずの二科の男子はどこに行ったんだ?」
「いない・・・・・・わね」
え?二科の男子?達也さん?それとも十一さん?西条くんは・・・・・・無さそう。というか、ほのか大丈夫かな?目がものすご回って輪廻眼みたいにくるくる回ってる。
「まあ、今のうちに戻るか」
「「そうだな、急いで戻るとするか。でも、ちゃーんと、前は向いといた方がいいぜ?事故なんて起こったら大惨事だからな」」
「なっ・・・・・・!?」
「っ!?」
「えっ?」
いきなり前の方から声が二重に聞こえたために前方へ目を向けると、そこには
・・・・・・え?どういうこと?何を言ってるか解らないと思うけど私も解らない。なんで、十一さんが2人も?
そのまま、2人の十一さんはぶつかる直前に
「雫とほのかは大丈夫か?」
片方の十一さんは、私たちに声を掛けてくる。心配してくれているようだ。もう1人の十一さんは向こうで2人の先輩を逮捕。誰かと端末で話をしてこちらに来るように要請してる。
「えっ!?あれ?い、いいいいつの間に十一さんが2人!?」
「ん?ああ、そうだったな。こっちに来てくれ」
そう声を掛けると、もう1人の十一さんもこっちに来て十一さんの隣に十一さんが並ぶ。
・・・・・・何言ってるんだろう。
「えっと、そ、そそそそちらの方は!?」
「ふふん。本当はネタばらしは好きじゃないんだけどなぁ・・・・・・まあ、いいか。『ドッペルゲンガー』、戻れ」
「「え?」」
そう言うと、ドッペルゲンガーと言われた方は急に黒く塗りつぶされた影のようになり、十一さんの体の中へと戻っていく。
「えっと、ドッペルゲンガーって?」
私がそう聞くと、十一さんは悪戯が成功した時のように楽しそうにニヤリと笑って答える。
って、そうだった。こういうの聞くのはあまり良くなかった。
「俺が使える魔法、『召喚』のうちの1つ。基本的に、俺が使うのはこの魔法だな。他にも色々あるけどな」
そう言って私たち2人にキザに笑ってみせる。顔がかっこいいからか様になっている。ほのかが顔を赤くして手で覆っているんだけど・・・・・・それが揶揄われる原因となっていることに気づいてない。
「あのね、十一さん。お願いがあるんだけど・・・・・・」
「ああ、俺も聞きたいことがあるんだがそっちを先に」
「え?あ、うん。その、さっきの部活に行ってみたいなって・・・・・・」
「ええ!?ほ、ホントに!?」
「ハッハッハー!かわいらしい顔に似合わずなかなか剛毅だな。じゃあ、こっちの方にあるから向かうか」
「そう言えば、十一さんの聞きたい事って言うのは?」
「あー、そのなんだ?新しい部活を創ったからメンバー集めようと思ってな」
新しい部活か・・・・・・ちょっと気になるけど・・・・・・あれ?じゃあ、なんで風紀委員をしてるんだろう。
「あ、あの!何で十一さんは風紀委員になったんですか?風紀委員になったらそんな暇なくなると思うんですけど」
「新しい部室とか色々の準備に1週間掛かるのと、早速依頼を受けて風紀委員の手伝いって感じか」
「依頼?何かの手伝いをする部活、ですか?」
「ま、簡単に言ったらそうだな。相互扶助部の活動は依頼を受けて仕事をこなす。ただ、相互という部分がついているからこっちの仕事にもあとから付き合ってもらうことになるけどな」
むぅ・・・・・・これは困った。以外に面白そうな部活動。兼部はできないのかな・・・・・・ってレオくんたちに聞いてると思うけどメンバーが気になる。
「・・・・・・悩む。正直に言うと面白そう。そう言えばエリカたちは?」
「レオと美月が兼部が可能ならやりたいって言ってエリカはなんと入部決定」
「・・・・・・以外ですね」
ほのかの感想通り、私もそう思う。十一さんも苦笑を浮かべているあたり、放課後遊んで帰りたいのが見え見えだったのかもしれない。
「まぁ、さっきの部活のブースのところに行ってから兼部が可能か聞いてみりゃあいいじゃねーか」
「うん」
「あ、私もそうしますね」
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「SSボード・バイアスロン部?」
「そうなの。春夏秋はスケートボード、冬はスノーボードを使って移動しながらコースに設置された的を魔法で撃ち抜く競技なの」
「魔法で
現在、3人は先ほどの部活のブースに来ており、競技の説明を受けていた。
説明を聞いていると、ほのかの興味を引いたのか、引っかかる部分を聞き返すと部長の五十嵐が目を輝かせる。
競技の説明を詳しく纏めると、次のようになる。
『200mごとに10mずつ設置された射撃ゾーンで、自分の色の的だけを破壊しながら、コースを走破する競技。破壊した的の数とゴールまでのタイムを競い、ペナルティとして自分の色以外の的を破壊すると減点』
とのことだ。
これは俺向きの競技ではなかろうか、そう考えていたが今は取り敢えず、雫とほのかのために来ているため余計なことを口にしないようにしている。
「ほのか・・・・・・私これやってみたい」
雫は普段とは違い、目が輝いている。本当に意外だ。それだけ肝が座っているのだろうが、驚く事である。
ほのかもそんな雫が珍しいのか、結局折れることになる。
「あの、すいません。入部すると言った手前、失礼ですけど兼部って可能ですか?」
「大丈夫だけど、どうして?」
「あぁ、その話は俺からするが構わないか?」
「えっと・・・・・・うん。お願いしていいかな?」
部活の説明を受ける前に、ここに来るまでの話を説明したところ、苦笑いを浮かべながら謝罪を受けた。今までに何度か、問題を起こしていたのかもしれない。
「実は俺、新しい部活を創部したんだ。名前は相互扶助部ってので、誘ってみて興味を持たれたけど、取り敢えず見てみたいってことで、お守りも兼ねてここに来たんだ」
この先輩は珍しく、2科生だからなどと差別的思考は持っていないらしい。
「なるほどね。うん、大丈夫だよ。流石に人の考えることを変えるなんて事は無理だからね。あ、そうだ。なら君もやってみない?お試しということで」
「すんませんね、今日から1週間は風紀委員長から依頼が来てるんでそっちを優先させてるんだ。そのお誘いには今度乗ってみる。先輩が以来に来た時には1回分オマケっすね」
そう言って十一は五十嵐に向かってウインクをする。顔と雰囲気とマッチするところが、イケメンとしての特権なのだろう。
一部の人間からはとてつもなく恨まれそうではあるが、逆に他の一部の人間にはかなりウケる。確かに、世の中は非常である。
ISを見てくれている人には大変申し訳ありませんが、現在スランプに陥っています。それでも、質を今以上に落とさないように頑張るだけで一生懸命ですが、気長に待っていただけたらなと思っております。この度は、誠にすいません。
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