METAL GEAR SOLID MILLION MONKEYS (竜田揚げ丸)
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第一章 市街地・空中戦艦編
act0~ブリーフィング~


クロスオーバーです。もしもミリオンモンキーズまでMGSとリンクしていたら…という発想で思いついた作品です。

キャラ崩壊しているかもしれませんのでご注意を。キャラ崩壊がいやであればブラウザバックを推奨します。


シャドー・モセス島事件から数か月のある日。特殊なヘルメット(これをピークポイントヘルメット、通称ピポヘル)をかぶったサル、通称「ピポサル」たちがとある基地に立てこもり、メサルギアを強奪、全人類に対し、「72時間以内にバナナ百億本用意しろ。できなければ全人類に対しメサルギアによるナマケモノ砲を放つ。」と言い放つ。

しかし、この事件は伝説の傭兵、ソリッド・スネークにより解決した。―――表向きには。

 

 

 

時は経ち、シャドー・モセス島から1年。

 

「スネーク!起きてくれ、大変なことになってる。まるでアニメみたいなことが・・・いや、アニメよりひどいことが起こっている!」

 

オタコン――ハル・エメリッヒが俺を起こす。

 

「どうしたんだオタコン。普段はあまり俺を叩き起こさないくせに・・・」

「そんなことは言っている場合じゃないよ!世界が大変なんだ!」

 

またか。俺――ソリッド・スネークは心の中で舌打ちし応答した。

 

「またメタルギアか?勘弁してくれないか、今日は休暇だろう。俺もお前も」

「これを見てくれ」

「これは・・・」

 

オタコンが出した画面に映っていたものに俺は見覚えがある。

 

「ピポサルか?」

「やっぱり知ってるね・・・メサルギアの時に何回かあったんじゃないかな」

 

メサルギアの時と同じようにピポサルが全身に武装している。ただ今回違うのは人々を襲っている点だ。

 

「ああ、奴らにはひどい目にあわされた」

「そっか。普通のサルとは違うらしいし、やっぱり苦労したんだね。こいつらの通称は猿の兵士達(ピポソルジャー)だ。それでフィランソロピーは、いまメタルギアどころの騒ぎじゃなくなったんだ。えっと、そろそろ来るって・・・」

 

そのとき、ブザーのような音が鳴り、

 

『オタコン、スネーク!よかった、二人ともそこにいるのね!』

 

メイ・リンが画面に映された。

 

「ああ、メイ・リン。君が映ったってことは・・・」

『ええ、そうよオタコン。とうとうあなたたちにも出てもらうって話になったそうよ。準備は出来てる?』

 

疑問が起こった。

 

「待てメイ・リン。俺はそんなこと、一言も聞かされてないぞ」

『え?だってオタコンがあなたに説明しておくって・・・』

「あー・・・ごめん。説明し忘れたね。って言ってもさっきメイ・リンが言ったとおりだ。君にも出てほしいっていう話」

 

はぁ・・・とため息をつき

 

「どうせ拒否できないんだろう?」

「・・・・うん」

 

渋々了承すると、オタコンが情報をくれた。

 

「そうだスネーク。現地でピポソルジャーと戦っているピポサルがいるらしい。もしかしたら味方になってくれるかもしれないし、一度あってみたらどうかな」

 

「なに?ピポサルがピポサルと戦っているのか?」

 

「うん。どうもそういうことらしい。それから、これも持って行ったほうがいい」

 

渡されたのは、ネットだ。

 

「これは?」

「ゲットアミというらしい。知り合いの博士に転送してもらった。それでピポサルを「ゲッチュ」といいながら・・・」

「原理は知っている。前にキャンベル大佐から話を聞いた」

「そっか…まぁ、何はともあれサルを捕まえながら進んでいってくれ。あとこれとこれとこれも持って行ってくれ」

「ナイフと銃が一丁・・・ナイフは俺の趣味じゃないんだがな。これはローラーブーツか。ナイフと銃とゲットアミ以外は使い物にならなさそうだな」

「そのナイフ、といっても切れ味は皆無らしいけど。近接攻撃するときに使ってくれ。名前はメカボーだ。銃はレーザーガンといって普通の銃と同じ感覚で撃てるって話だ。ローラーブーツは高速で移動できるって話でダッシュブーツというらしい。あとこの携帯端末も渡しておく。地図なんかのデータが入っている」

「言うなら携帯型ソリトンレーダーといったところか。ところで、武器は今回現地調達ではないのか?」

 

という俺の疑問に対し、オタコンは

 

「ある意味現地調達だよ」

「どういう意味だ?」

 

まぁ、そのうちわかるよ、とオタコンは一言。

 

「なんか腑に落ちないが・・・」

「いいかい、スネーク。今回は潜入じゃないけど、極力敵に見つからないことを心がけてくれ」

「わかった。いつも通りだな」

「そうだね。まず市街地を抑えてほしい。港町から潜入し、ピポソルジャーと戦っているピポサルと協力して、ピポソルジャーをゲッチュしながら空中戦艦を制圧してほしい。それから、情報提供者が教えてくれたことなんだけど、戦艦内はメタルギア並びにメサルギアが格納されているらしいんだ」

「大方メタルギアにメサルギアを破壊しろということだろう?了解した。だがその情報提供者は信じていいのか?」

「うん、多分信じてもいいと思う。それを送ってくれた僕の友人の博士だったから」

「そうか」

「頼んだ、スネーク」

『いい?スネーク。この任務には人間の未来がかかっているわ。必ず成功させてね』

「了解した」

 

ソリッド・スネークの新たな任務が始まった。




こんなしょうもないクロスオーバーものを見ていただいた方、ありがとうございます。


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act1~合流~

二話です。うん、いつも通り微妙にキャラ崩壊しているというか、そんな気がします。


「こちらスネーク。港町に潜入した」

『スネーク、そこからピポサルは見えるかい?』

 

双眼鏡で確認する。ピポサルが三匹見える。

 

「ああ、オタコン。三匹見える。今すぐゲットアミで・・・」

 

ゲットアミの持ち手を握り、ピポサルに向かおうとする俺を、しかしオタコンは制止した。

 

 

『待ってくれスネーク!ピポソルジャーは鎧を着ているだろう?』

「ああ。そうだが・・・どうした?」

『その鎧はゲッチュの転送を阻害する。鎧を破壊するんだ!』

「了解した」

 

俺はレーザーガンとメカボーを同時に手に持ちピポサルに近づく。

レーザーガンで一匹を射撃し、弾が飛んでいる間に俺は物陰に隠れる。

 

「ウキ!?(何だ!?)」

 

誰に射撃されたか疑問に思った(と思われる)ピポサルがこちらが隠れた物陰に近づいたとたん――

 

「キキッ!(グアッ!)」

 

ピポサルを蹴り上げ、

 

「はあぁ!」

 

メカボーを振るった。そして、ピポサルの鎧は砕けた。それを追撃するようにゲットアミを振り下ろして例のあの暗号を言い放った――

 

「ゲッチュゥ!」

 

ピポサルは転送されていった。そして通信(CALL)が入ってきた。

 

『スネーク、うまいじゃないか!どこかで捕まえたことあるのかい?』

「ああ。少し前にツェリノヤルスクでやったことがある」

『そっか、それなら安心だよ!』

「ところでピポサル――人間の味方のほうだ、この先にいるのか?」

『うん。メイ・リンが衛星で確認してくれた』

「了解した。残りの2匹を捕まえた後、合流する」

 

残りを一匹ずつ確実に仕留める。だがその前に、オタコンに聞いてみた。

 

「オタコン」

『どうしたんだ、スネーク?もしかして記録(SAVE)かい?記録(SAVE)ならメイ・リンに…』

「いや、違う。何か遠距離からピポサルをゲッチュする方法はないか?」

『遠距離から…そうだ、ネットショットを使うんだ』

「ネットショット?どうするんだ」

『まずゲットアミを変形させてみてくれ。変形の仕方は端末に送っておく』

 

端末を確認すると、変形の仕方が書かれていた。丁寧なことに図まで書いてある。

書いてある通り変形させて、オタコンに再度話しかける。

 

「変形させたぞ。次は?」

『あとは持ち手のトリガーを引けば、ネットが発射されるはずだよ』

「そうか、試してみる」

 

そう言って通信を切り、レーザーガンを持ち直し、レーザーガンのトリガーを引いた。

 

「キキッ(がぁっ!)」

「ウキッ!?(なんだ!?)」

 

そして突然の敵襲に驚いているもう一匹のピポサルを

 

「はぁっ!」

 

メカボーで思いっきり殴った。

 

「ウキー・・・・(ぐ・・・・)」

 

気絶し、鎧も壊れたようなのでネットショットでゲッチュをしつつレーザーガンをもう一匹に向ける。

 

「ゲッチュ」

「キキッ!(侵入者発見!)」

 

もう一匹を見てみると、銃を持っている。おそらくレーザーガンの類だろう。

後退しつつレーザーガンで牽制する。

レーザーガンで早撃ちを行った。オセロットを思い出すので正直使いたくなかったのだが。

 

「ウキキッ!(甘いッ)」

「避けられた…!?」

「キィー!(食らえ!)」

 

レーザーガンで突っ込んできたところを零距離射撃し、突っ込んできたピポサルを返り討ちにする。鎧も壊れた。ゲットアミに素早く持ち替えると思いっきり振り抜いた。

 

「近接戦闘ではナイフよりハンドガンのほうがいい時もある。覚えておくんだな。ゲッチュ」

 

やはり、メサルギアの時の比じゃないな。思い、あたりを軽く見まわした後、先ほどピポサルがいたところに何か落ちている物がある。

 

「・・・?オタコン」

 

思いつつ、オタコンに通信(SEND)した。

 

「こちらスネーク。三匹ともゲッチュした。これよりピポサルと合流する。それから、何かチップを手に入れた」

『スネーク、気を付けてくれ』

「どうした?」

 

聞くとメイ・リンの声が聞こえてきた。

 

『スネーク、落ち着いて聞いて。メサルギアかメタルギアかわからないけど、二足歩行のロボットがいるの』

「なに?この装備で破壊できるのか?」

 

今度はオタコンの声が聞こえてきた。

 

『スネーク、さっきチップみたいなものが手に入ったって言ってたよね?』

「ああ。しかしこれを何に使うんだ?メタルギアにでも差し込めと?」

『それをこっちに転送してくれ』

「わかった、そっちに送る」

 

送って数分後。

 

『スネーク、新兵器ができた。そっちに転送するよ』

 

巨大なものが送られてきた。

 

「これは?」

『説明するね。それはB(ビーム)ランチャーといって、強力な攻撃ができる。その分エネルギー消費もすごいと思うけどね』

「そうか。これで新型…メタルギアか?と戦えばいいのか。それから、オタコン」

『どうしたんだい、スネーク』

「レーザーガンのエネルギーが減っている。どこでエネルギー補給ができる?」

 

エネルギー残量が少なくなっていた。恐らくエネルギーがなくなると撃てなくなるのだろう。

 

『ああ、エネルギー缶を回収して、それを使用して回復するんだ』

B(ビーム)ランチャーもか?」

『ああ。そうだよ』

「ある意味現地調達のは、こういうことか?」

『うん。つまり鎧が壊れたらもしかしたらチップがあるかもしれない。それは僕に送ってくれ。何か作ってほしいものがあったら言ってね』

「了解した。チップを回収次第転送する」

『気を付けてね、スネーク!』

 

メイ・リンの声が最後に聞こえ、通信を切った。

そして道を進んでいくと、確かにゴリラのようなロボットが街中で暴れていた。

そのでかいロボットはこちらを向き、ミサイルを放った。追尾型だ。

 

「クソッ!オタコンの奴め!せめてチャフグレネードくらいは用意してくれてもいいじゃないか…!」

 

使うことはないだろうと思っていたダッシュブーツで辛うじて回避する。

ダッシュブーツで素早く後ろに回り込み、B(ビーム)ランチャーを叩き込む。

しかし、見たところあまり効果はなさそうだ。

ダッシュブーツで遠い物陰に行き、オタコンに通信(SEND)をした。

 

「オタコン、どこかロボットの壊れそうなところはないか?」

『両手の甲、両膝、胸、両肩のはずだよ。そこを重点的に攻撃していくんだね?』

「そうだ。それからあいつは追尾型のミサイルを撃ってきていた。チャフグレネードを送ってくれないか?」

『わかったよスネーク。今から転送する』

 

送られてきた。

 

『奴の通称が決まった』

『ゴリアックよ、ゴリアック』

「ゴリアックか…仮にあれがメタルギアだとするとさしずめメタルギア・ゴリアックか」

『うん。けど核も積んでいないみたいだから二足歩行核搭載戦車(METAL GEAR)とは言い難いけどね』

「そうか。ではあれはメタルギアではなくメサルギア・ゴリアックか」

『うーん、どうなんだろうね、メイ・リン』

『わからないわよ、私に聞かれても。メサルギアなんて見たこともないし』

『メタルギアも、だろう?』

「まぁ、見た見てないはいいが、任務に戻る」

 

チャフのピンを抜き、ダッシュブーツで移動しつつチャフを投げる。

しかし、なぜがゴリアックの右膝が緑色の爆発に包まれ、破壊された。

 

「ウキッ(待たせたな)」

 

そう、緑色の爆発――通称パイナップルボムと言われるそれを投げたのは、もう一人のスネークと言えるピポサルだった。

 

「君は・・・!」

「ウーキキキ。ウキッ(まだ戦闘は終わっていない。武器を持て)」

「その通りだな。共に戦おう」

 

俺はBランチャーをゴリアックの左膝に連射した。

左膝が壊れた。

 

「キキッ(喰らえ)」

 

ガコン。

すぐに帰還せよ。すぐに帰還せよ。すぐに帰還・・・

しかし、その警告音を聞いても俺たちは攻撃をやめない。

 

「ブースターユニットを狙え!」

「ウキィ(わかっている)」

 

攻撃をかけ続け数分、ゴリアックは機能停止した。

 

「危なかった・・・」

「ウキキキッ。ウゥキ(ゴリアックを転送しろ。それを修復して空中戦艦に乗り込む)」

「わかっているさ。オタコン、任せたぞ」

『ああ、任せてくれ』

 

通信を切り、ゴリアックを転送する。

 

「自己紹介しておこうか。俺はスネーク。ソリッド・スネークだ。今回といいメサルギア事件の時といいすまない」

「ウーキキキ。キィッ。ウキー(俺はピポ・スネークだ。久しぶりだな)」

「しかし空中戦艦に乗り込むにはまだ地上のピポサルが全滅していないんじゃないか?」

「ウキーキキキッ。キキッ。キィーッ(大丈夫だ。地上のピポサルは俺が全滅させ、ゲッチュした。俺が遅くなったのはそれが理由だ)」

「そうか。頼りになるな」

 

蛇が二匹、珍しく意気投合する瞬間だった。




ありがとうございます。三話は空中戦艦突入です。

ピポが遅かった理由は上記の通りです。まあ、実際は待たせたなを言わせたかっただけなんですけど。


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act2~突入~

遅くなりましたが第3話です。MGS1ネタも多少盛り込んでいます。相変わらず駄文・地の文が少ないですが、大目に見ていただけると幸いです。


ゴリアックを転送して数分。

 

『スネーク、聞いてくれ!この機体、自動操縦プログラムがついている!コックピットがあるのにだよ!しかもコックピットは人ひとりとサル一匹入るんだ!乗ってくれと言わんばかりの機体だよ、これは!』

 

オタコンが熱く語っていた。

 

「その話は何度も聞いた。何回言えば気が済むんだ。それからあと何分掛かるんだ」

『後数分だよ!あと何回言えば気が済むかと聞いたね?何回でもさ!』

 

はあ・・・とため息を吐くと、隣でピポ・スネークが通信していた。

 

「誰と通信しているんだ?」

「ウキーキキキッ(俺の生みの親のような人だ。ところでお前の周波数を教えてくれないか)」

「141.80だ。君は?」

「ウキ・キ・キ(036.37だ。今俺が通信しているのは036.03)」

「そうか。これから近くに敵がいるときは無線で話そう」

 

そうだな、とピポは相槌を打つ。

 

『スネーク。修復が終わったよ。今から転送を・・・』

 

オタコンから通信が入る。

 

「ウーキキキッ。キキッ(その前に、通信で言われたことを言おう)」

「わかった。言ってくれ」

「ウキーキキキッ。キィッ(空中戦艦は対空性能が高い。ワープしたほうが早く安全に行けるそうだが・・・せっかくゴリアックも修復されていることだしゴリアックで行くか?)」

「そうか。しかし俺たちはサイキッカーでも何でもない。ワープなんてできないぞ。だからゴリアックで言った方が・・・」

 

そう俺が反論したところで俺自身が思い出したのはサイコ・マンティスだ。

オタコンから通信が入った。

 

『スネーク、実はピポサルが転送されてくる場所があるんだ。そこから逆に空中戦艦に突入しろということだと思うよ』

「ふむ。だが鹵獲したゴリアックはどうするんだ?そろそろ転送するんだろう?」

「ウキーキキキッ。キキッ。ウキィ(ワープした場合ゴリアックは空中戦艦を破壊するために使う)」

 

納得した。だが・・・

 

「そのワープ装置はどこにあるんだ?」

『えーっとね。スネーク・・・』

「わかるかメイ・リン」

『ビルの中かしら・・・ソリトンレーダーじゃよくわからないけど・・・』

『いや、メイ・リン。それはあってる。ビル内から高エネルギー反応がある』

 

ビルの中ということは・・・・

 

「ビルの中に潜入しろということか」

『うん。ちなみにそこ、敵が多いよ』

「ゲッチュしながら進め、ということだな」

「ウキィ(了解した)」

 

ということでビルの中に潜入することになった。

そこまでは障害もなかったのだが。

 

「キキッ!(警戒を強化しろ、いつ侵入者が来るかわからないぞ!)」

 

そこには、いかにも戦車というシルエットという物体が鎮座している。

 

「おい、なんだあの戦車は」

『ウキ(ライトタンクだな。小型ミサイルとマシンガンを積んでいる。しかしこの装備なら―――)』

 

構える。だがしかし、

 

「やめておけ。気付かれると袋叩きにされかねない」

 

俺が制止した。

 

『ウキィ(では、こうするか)』

「スイカボムじゃないか。そんなものをどうするんだ」

『ウーキキッ(まぁ見ていろ)』

 

言われたとおりに見ていると、突如としてスイカボムが動き出した。

 

「あれは?」

『ウキキ。キキッ(リモートボムだ。動かせば攪乱も足止めも可能だ)』

 

そしてスイカボム改めリモートスイカボムがライトタンクの近くに行くと―――

 

ドォン‼(!)

 

「・・・おい、これじゃ根本的には変わっていないんじゃないか?」

 

敵襲(ALERT)!敵襲(ALERT)!

 

『・・・ウキィ・・・(直接殴りに行った方が速かったな)』

「そんなことをいつまでも言っている場合じゃないだろう。敵が来るぞ!」

 

「キキッ(敵だ!)」

 

ライトタンクがこちらに向かってくる。

 

「構えろ!」

「ウキィ!(わかっている!)」

 

俺はビームランチャーを、ピポ・スネークは恐らくパイナップルボムを持っているのだろう。

 

「撃て!」

 

ビームランチャーの青い爆風と、パイナップルボムの緑色の爆風が重なる。

 

「ウゥッキ!?(やったか!?)」

「キィィィィ!(くそおおおお!)」

「まだだ!もう一発叩き込め!」

 

さらにもう一度、緑と青が重なる。タンクからピポサルが落ちる。

 

「ウキィ・・・(うぐ・・・)」

「ゲッチュゥ‼」

 

ゲットアミをかぶせ、転送する。

 

「まだ終わってないぞ、敵がどんどんくる」

「ウキ、ウキキ(わかっている、しかしまず隠れたほうがいいだろう。多数の敵と戦いたいのなら話は別だが)」

「だろうな」

 

俺はオタコンに連絡を送った。

 

『どうしたんだスネーク。何かあった?』

「ああ。ダンボールを送ってほしい」

『ああ、隠れるんだね?わかった、今から送るよ』

 

段ボールが送られてきた。

 

「キィ。キキキ(俺も入れてもらっていいか?)」

「当然だ。この任務、君の力は不可欠だからな」

「ウキ(感謝する)」

 

そして俺とピポ・スネークがダンボールに入る。

 

「キィ、キキキ(侵入者を見つけ次第、攻撃せよ!最悪殺せ!)」

 

何やら物騒なことを言っているが、連中にとっての敵は目の前のダンボール箱の中にいる。

しかし相手はアウターヘブンやザンジバーランド、シャドー・モセスのゲノム兵達に並ぶ。

いくらザル警備だといっても腕は相当立つだろう。嗅覚も人間より上だろうしな。

 

「そんな相手に対し戦えとは、どっかの誰かは知らないがなかなかひどい任務を押し付けてきたな。」

 

そうつぶやいたとき。

 

『おい、それはワシの事かの?』

「ウ、ウッキ・・・(ハカセ・・・・!)」

「ハカセ?ということはあんたがキャンベル大佐の同期の博士でピポ・スネークの生みの親、何より今回の事件の依頼者か?」

『そうじゃよ、ソリッド・スネーク』

 

そのじいさんはいかにも、という声をあげていた。

そして通信の方から、

 

『ゲッチュ!』

『これで最後かしら?』

『そうですね、ナツミさん。このエリアはすべてゲッチュできたようです』

 

という、少年ぐらいの男の声と、女二人が話している声が聞こえた。

 

「おい、そこに何人いるんだ。子供の声まで聞こえたが・・・」

『ん?そうじゃの、わしを入れて4人じゃよ?それに君が言っている子供とは、カケルくんの事じゃな』

「カケル?ということはサルを普段ゲッチュしている、サルゲッチャ―の・・・?」

『そうそう、そのカケルじゃ』

「メサルギア事件の時には林間学校に行っていたあの?」

『それはしょうがないじゃろう。一生に一度の林間学校なんじゃし、ゲットアミも故障しておったんじゃからの』

 

・・・・。そんなことで俺は駆り出されたのか?

 

『ま、そんなことは置いといてじゃが・・・そっちは今どうなっておる?』

「いまはダンボールの中だ。多数の敵がいてな」

「ウキッ。ウキキ(いや、もう敵はいないぞ)」

『ふむ、そっちの空中戦艦にはまだ乗れておらんのじゃな?』

「そうだ。今から乗り込むためにビルの中に潜入したらこのザマだ」

『そうか・・・。実は大変なことがあったんじゃ』

「どうした?」

『うむ・・・。どうにもメタルギアやらメサルギアが戦艦に配備されているらしいんじゃ。しかもそっちにはやたら多くじゃ』

「その情報はすでに受け取っている」

『ちょっとごめん。スネーク』

 

オタコンが介入してきた。なにか気になることでもあったのだろうか。

―――――ん?待て、初めて聞いたことのように驚いていたな。

 

『お久しぶりです、ハカセ』

『おお、オタコンか!ステルス迷彩はできたか?』

『はい、おかげさまで』

『そうか、よかったの』

『ところでハカセ』

『なんじゃオタコン。はっきり言わんか』

『その情報を提供したのはハカセではありませんか?』

『はぁ?なーにをいっとるんじゃ?』

 

つまりオタコンが言いたいことは、

 

「情報をくれたのはあんたではないのか?」

『そうですよ、ハカセ』

『そんなこと言われてもの。送っておらんものは送っておらんのじゃ』

 

では誰が・・・・?

考えているとオタコンが話しかけてきた。

 

『スネーク、任務内容は変更だ。情報提供をした奴を調べること、本当にメサルギアやメタルギアがあるのか確かめるということだよ』

『おーい、ゲッチュも忘れるなよー』

『っていうかハカセさっきから誰と通信してるのさ?』

『あ、渋いおじさんね。名前はなんていうの?』

「待て、お前達は子供だろう?おいハカセ、子供を戦場に巻き込むとはどういうことなんだ」

 

俺が質問するとこんな答えが返ってきた。

 

『彼らはサルゲッチャーじゃよ。それに、戦場に巻き込んだのは事故なんじゃ』

「事故?」

『まぁいろいろあっての。そっちを頼んだぞ』

『ハカセ、あのヘリ来るよ‼』

『破壊しないと戦艦内に潜入できませんね』

『・・・まぁそういうことじゃ』

 

無線が切れた。

 

「・・・君の親はいつもこうなのか?」

「ウキ。キキキ(正確には親代わりだ。しかもやつは飄々としててよくわからん)」

「そうか。オタコン、任務をつづける」

『うん。頑張ってね、スネーク』

 

こちらの繋がっていた無線も切る。

 

「よし、行こうか」

「ウキ(わかった、しかし…)」

「どうした?」

「ウキィ?(ザル警備過ぎないか?)」

「さぁな。俺に言われても困る」

 

と返したところでダンボールから出た。

 

「ついでだからライトタンクも奪っておこう。君が乗るか?」

「キキィ(いいのか?)」

「ああ。俺は別に構わない」

 

わかった、と返してピポ・スネークは乗り込んだ。

 

「ウゥキ。ウキキ(乗り心地は悪くない。メンテもしっかりされている)」

 

ピポ・スネークが色々やっている間に俺はオタコンに連絡を入れる。

 

「オタコン。ここからさらにどこに進めばいい?」

 

すぐに答えが返ってきた。

 

『うん、そこからまっすぐにいけばワープ装置があるはずだ。ただ・・・』

「どうした?」

『どうも敵が多いんだ。集まっているっていうか・・・』

「とにかく敵が多いんだな。わかった」

『うまくライトタンクを使って敵を殲滅、ゲッチュしてくれ。がんばってくれ』

 

 

通信を切りピポ・スネークに今のを伝達をしておく。

 

「ウキィキキキ(敵が多い?)」

「そのようだ。うまくそれを使って殲滅してくれ、だそうだ」

 

まっすぐ先に進むとカラスがたくさんいたが、なにより目を引いたのは

 

「・・・・おい、これは何だ?」

「ウ、ウキキ!?(ヘビータンク!?)」

 

とても巨大な戦車が道をふさいでいる。

 

『スネーク、後ろに大きなエネルギー反応がある!それを突破しなきゃ空中戦艦には乗り込めない!』

「わかっ…!」

『どうしたんだいスネーク!早く倒さないと!』

 

俺が途中で言葉を失ったのは動き出したからではない。コックピットが開いてピポサルがでてきたからだ。

しかもただのピポサルではない。こんなことを言い出した。

 

「ウーキキキッ(久しぶりだな、白人(カサック)。いや・・・もう一匹の蛇!)」

「まさか・・・お前は!」

「ウキーキキキッ!(そうだ。バルカン・モンキーだ!)」

「ウーキキキ!?(馬鹿な!?)」

 

そういう会話をしながら、オタコンと通信をとった。

 

「オタコン、レイブンだ。バルカン・レイブン・・・・いやバルカン・モンキーが再び俺たちの前に現れた」

『レイブンだって!?シャドー・モセスで君が倒したはずじゃ・・・・!?』

「わからない。だが、確かに奴だ。喋り方、俺の呼び方にデカいバルカン砲・・・完全にレイブンだ。ピポサルになっているが――――」

『ピポサルに・・・・?ピポ・スネークは君の戦闘データをピポヘルに移したものだ。きっと敵はそれを利用してかつてのFOXHOUND(フォックスハウンド)を復活させて、空中戦艦を守らせようとしているんだ!』

「つまり、またFOXHOUNDを倒さなくては空中戦艦に乗り込めないということだな。わかった」

 

通信を切り、ランチャーを取り出し、放つ。Bランチャーはエネルギー切れを起こし、途中からレーザーガンに持ち替えて撃った。

ピポ・スネークもまた、ライトタンクからミサイルを撃ち応戦する。

そして、そのうちヘビータンク自体は壊れたのだが―――――

 

「やったか!?」

「ウキーキキキッ!(甘いぞ、蛇!)」

「クソッ!」

 

あそこまで撃ったのに、鎧も砕けていない。ピンピンしている。

ピポサルになっても屈強だ。

そしてそのうち、緑色の閃光がライトタンクに連射された。

 

「ウキィ!(クソッ・・・・!)」

 

ライトタンクが破壊される。

どうやらバルカン砲からランチャーの弾が乱射されたらしい。

上手く物陰に隠れオタコンに通信(SEND)する。

 

「オタコン!なにか遠くから攻撃できる強力な武器はないか!」

(ホーミング)ランチャーが作れるかもしれない…!チップをこっちに!』

「おい俺は今チップなんて持っていないぞ!」

「ウキィキキキッ!(これを使え!)」

「白と緑のチップ・・・・!オタコン、今から送るぞ!」

『わかった!数分持ちこたえてくれ!』

 

通信が切れた。

 

「数分か・・・・行けるか?」

「ウキキキッ(問題ない。俺がリモートボムでうまく攻撃する、相手の気を引いてくれ)」

「了解した」

 

レーザーガンを構え、相手を挑発する。

 

「どうした!やはり知能は猿か!?レイブンの名が泣くぞ!」

「ウキィ、キキキ‼(今はバルカン・モンキーだ!レイブンなどではない!)」

 

バルカンランチャーが緑色の光弾を放つ――――前に、スイカボムが滑りこみ、爆発。緑色の爆発を見て、ピポ・スネークが叫ぶ。

 

「ウキッキ!?(やったか!?)」

 

しかし、そんなピポ・スネークの言葉とは裏腹に、バルカン・レイブン――――現在はバルカン・モンキーだそうだが―――が、ゆらりと立ち上がった。

 

「クソッ‼オタコン、まだか!」

『もう少し…あともうちょっとなんだ、持ちこたえてくれ!』

「オタコン!」

『よし…!ようやくできた!スネーク、今から転送する!』

 

俺が急いで障害物の後ろに隠れると、Hランチャーが転送されてきた。

この形状は…

 

「この形…まるでスティンガーだな。ホーミングということは、機能的にはスティンガーと同じか?」

『ああ、そうだよ。敵が曲がり角にいてもすごいカーブを描いて相手に当たるんだ。使い方はスティンガーと同じように、≪相手にロックをかけて撃つ≫。簡単操作だ』

「ついでにニキータのように自由に動かせると良かったんだがな」

『それはエネルギーがだんだん弱くなるから駄目だよ。大体ビームをどうやって操るっていうんだい?僕としてはこれでも頑張った方なんだけど…』

 

そんなことを聞かれると、答えは見つからず、黙っているとオタコンが再び喋りだした。

 

『スネーク。そんな深く考えないでくれ。今はレイブンを倒そう』

「ああ、そうだな。今はメタルギアを破壊するのが優先だったな」

『うん。早く先へ進もう』

 

通信を切ると、Hランチャーを構え、発射。

青色の閃光がレイブンに飛んでいく。

 

「ウキィ!?(なにぃ!?)」

「ウキ、ウキキキッ!(よし、効いているぞ!)」

 

そのまま連射していると、

 

「ウキ、ウキキ(お前の今の実力は分かった。だが、本番は次だ)」

「ウキ、ウキキィ(チッ、逃げられたか。だが、勝敗は決した。逃亡・・・それは死を懇願するよりも哀れな敗れ方だろう)」

 

バルカン・モンキーが逃走、ワープ装置が扱えるようになった。

ついでにエネルギー缶を回収、弾薬補給もしておいた。

オタコンに通信(SEND)をした。

 

「ふぅ・・・。オタコン、ワープ装置が使えるようになった。それにしてもまたFOXHOUND(あいつら)と戦うはめになるのか?正直言うとメタルギアの破壊もだが、アイツらと戦うのも面倒だぞ?」

『まあまあスネーク。敵の戦い方が分かっているだけマシじゃないか。奴らだって不死身なわけじゃない。そんなのいたらもうそれは人間じゃないよ』

「わからんぞ?弾丸が避けたり核爆弾を一人で作ったりするやつがいるかもしれん」

『うーん・・・それはもはや人間じゃなくて、化け物って言ってもいいかもしれないね』

『こんなところでそんなこと議論しててもしょうがないわ。もう・・・私たちの任務は化け物議論じゃなくて―――』

「メタルギアの破壊。わかっている。もっとも、その情報の確実性も揺らいできてはいるがな」

『そんな風に疑ってたらキリがないわよ。記録(SAVE)は?』

「いや、いい」

『そう。シャドー・モセスの時みたいに用もないのに呼ばないでね?』

 

あれは悪かったとは思っているが・・・まだ根に持っていたのか、メイ・リンのやつ。

いくらなんでも引きずりすぎじゃないか。

 

「ああ。あれは悪かった。ではそろそろ任務に戻る」

『そこから先は空中戦艦内になると思うから、気を付けてね』

「了解」

 

無線を切ると、ピポ・スネークが話しかけてきた。

 

「ウキ、ウキキキッ(話は済んだか?)」

「ああ、行こう」

 

そうして俺たちは空中戦艦内に突入した。




どうでしたでしょう、第3話。バルカンさん敵前逃亡。

オタコン「簡単にハカセさん達日本サイドの時系列をまとめてみるよ。見えないのにどうやってまとめてるんだとかいうツッコミはなしで」

PM 00:00 サルゲッチャー達がゴリアックを東京テレポートにて返り討ちに。
PM 02:16 スペクターと呼ばれるサル率いる第三勢力(しかし恐らくサルゲッチャー達の味方だろう、という話だ)が新宿を制圧。
PM 04:01 秋葉原で不審なトレーラー発見、スペクターたちがこれを破壊。
PM 06:32 地下街をサルゲッチャー達が制圧。
PM 11:58 危険メカをスペクターたちが破壊。(なおこれは闘いで激しく損傷、使い物にならなかったらしい)
AM 05:08 コンテナターミナルをサルゲッチャー達が制圧
AM 08:19 コンビナートから衛星レーザーが放たれるのをサルゲッチャー達が阻止(危険メカと同様、使い物にならなかったらしい)
PM 03:07 ヨットハーバーをスペクターたちが制圧
PM 07:49 スペクターたちがスタジアムで100匹のピポサルを捕まえ、空中戦艦に突入。
PM 11:18 警備が手薄かと思ったら、新たにメカが転送・サルゲッチャーたちはこれと対峙(本文ハカセとの通信記録)←今ここ。

未だに内部からの情報はないんだけど…まぁ、そこはスネークに期待しよう。



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act3~罠~

またまた遅くなりました4話です。駄文of駄文です。



ワープし、突入してからは見つからないようにゲッチュを繰り返した。そして戦艦内にいるFOXHOUNDや一部行っていない(行けないところもあるのだが)エリアのピポサル以外のこのフロアのピポサルはあらかたゲッチュし片付けた。

 

が、しかし。

 

「オタコン。ロックされている部屋以外を確認してもメタルギアはなし。それから…メサルギアもなしで、ゴリアックばかりだ。これからどうする?いっそのことゴリアックでドアをぶち破るか?」

『いや、とりあえずブリッジまで行って、この戦艦内のどこにメタルギアやメサルギアがあるか調べて、ロックされてる場所にあればロックを解除しよう』

「了解した」

 

ピポ・スネークに今の通信の内容を言うと、

 

「ウキ、ウキッキ(ああ、わかった)」

 

と返された。彼に一つ、俺は聞いてみた。

 

「わかったのは良いが、君はどこにメタルギアがあるのか知らないか?」

「ウーキ、ウキキッキ(わかっていたらこんなことはしていない)」

「そうか、悪かったな」

 

会話を切り上げ、搬入用エレベーターに乗って登っていくと、徐々に上の階層が見えてきた。

エレベーターが止まった後通路を進んでいき、ゲッチュしながら進んでいくと、唐突に上から狙撃された。

 

「狙撃…ウルフか!」

「ウキ、ウキッキ(また厄介なのが出てきたな…どうする?)」

「どうするも何もないだろう。倒さなければどうしようもないが…」

 

どうしようもないが、こちらは狙撃武器等はない。

しかたなく俺たちは遮蔽物に隠れた。

 

「ウキ、ウキッキ(狙撃武器などないようだな…まずいぞ)」

「ここはオタコンに任せて何か武器とかを待つしかないだろうな」

 

ゲッチュしたときに何枚かチップを手に入れていた。

やはり現地調達とはいっても、武器を直接携帯するよりもこっちのほうがはるかに軽い。

 

「オタコン、チップの組み合わせだが、何かないか?狙撃されてる。恐らくはヤツだ」

『そっか、ウルフ…ちょっと転送してみてくれないかい?』

「わかった」

 

言われた通り転送すると、オタコンはうーんとしばし考えていた。

もちろんこっちは遮蔽物に隠れっぱなしで、ウルフは時々移動までするので俺たちは文字通り死にかけている。

 

『よし…!これなら…!』

「何かできたのか!?」

『エアキャンサーだ。計画のみに終わった兵器、フライングプラットホームの設計図とかを元に、いろいろと改造をして最終的にチップで作った反重力装置にレーザー砲、マシンガンまでくっつけた代物だ。結構役に立つんじゃないかな?』

「なるほど、直接ウルフのところに行ってその硬い装甲で弾丸を防ぎつつレーザー砲で倒せと。しかしウルフが弾丸を変え徹甲弾を撃ってきたらどうするんだ?反重力装置が壊れたら俺たちはあの世行きだろう?」

『いやいや、チップでできた複合装甲だ。徹甲弾なんか目じゃない。これはもうオーバーテクノロジーだよ。チップは全部終わったら研究してみようかな?数枚持って帰ってきてくれるかい?』

「余っていたらな。それにしてもチップは万能だな」

『うん。大概の物ならできそうだ。あ、そうそうエアキャンサーは圧力には弱いから気を付けてね?それじゃ、送るよ』

 

通信が切れ、エアキャンサーが送られてきた。

切れる直前に涙声で、

 

『ウルフ・・・また、君なのか‥‥』

 

と呟いていた。

 

「ウキ、ウキキッ(いいのか?声をかけてやらなくても)」

 

ピポ・スネークが尋ねてきたが、俺はこう返した。

 

「ああ。あいつはああ見えて強い奴だ。俺の方が強いと思うかもしれないが、この任務だってアイツがいなければ成立していないんだ。俺が死ぬからな」

 

軽く冗談交じりに話をしていると、ピポ・スネークは、何かを呟いた。

 

「…ウーキ、ウキキッ…(…なるほど。それが貴様の強さか…)」

「何か言ったか?とにかく、ウルフを倒すぞ。うまくいけばゲッチュも狙える」

「ウキ、ウキキッ(確かにぐずぐずしている暇はないな。メタルギアも探さねばならない)」

 

二人(正確に言えば人間一人とサルが一匹だが)でエアキャンサーに乗り込み、ウルフに真正面から挑みに行った。

 

「ウキ、ウキキ(まさか、真正面から挑んでくるなんて…そのマシンは、彼の物かしら?けれど私はスナイパーよ。この近距離で、外すわけがない!)」

「それはどうだろうな。スナイパーに正面から挑むということは、何かあると思わないのか!?」

 

そう叫ぶと同時に、下部ハッチからピポ・スネークが飛び出していく。これでピポ・スネークが奴を倒してくれれば俺はこれを操作してこれについているゲットアミを使用し、ウルフをゲッチュするという算段だった。しかしその目論見は外れた。

 

《ウィィィィィィン…》

 

「オタコン!どうなっている、どんどん高度が下がっているぞ!」

『ええ!?そんな…僕は何もしていないよ!いや、待てよ、落ち着けハル・エメリッヒ。原因がわからないなら、調べるだけだ…』

 

オタコンが原因を調べ始めた。

しかし、高度が下がり切って再び上がるのは骨が折れる上、爆発して死ぬ可能性すらある。

だとしたら今の俺にできることは…

 

「うおおおおお!」

 

エアキャンサーから飛び降りる。ただそれだけだった。

ピポ・スネークがこちらに駆け込んでくる。それに対してニヤリと笑って見せると、彼も同じようにに笑った。

だが、それは仲間を想うそれではなく、むしろ宿敵が未だに生きていることを喜んでいるような笑みだった。

 

「ウーキ、ウキッキ(そうか。やはりまだ生きていたか。相変わらずしぶとい奴だな、貴様は)」

「なにを‥?」

 

その言葉に、貴様という呼び方に、その話し方に。このような話し方をするのは奴しかない。

最初からこの蛇は固体(ソリッド)ではなく、それに擬態(カモフラージュ)した液体(リキッド)

MONKEYHOUNDのリーダー、即ち元はFOXHOUNDで武装蜂起し、FOXDIEにより殺されたあの男。

リキッド・スネーク。

そのコピーが今、俺の前に立っていた。

 

「ウキ、ウキキッキ(久しぶりだな、兄弟。残念ながらお前と一緒にいたのは、お前のコピーではないのさ。ハカセとかいう奴の名を騙ってお前の相棒にメタルギアやメサルギアがあると知らせたのは…俺だよ、兄弟)」

「まさか、ここにメサルギアやメタルギアなんて…?」

 

まんまと乗せられた。その悔しさを認めたくないから、俺はいまあんな質問をしたのだろう。

こいつの真の狙いはやはり俺なのだろう。

 

「ウキ、ウキッキ(ああ。すべて貴様をここにおびき出すためだけのえさに過ぎない。1年近く前に俺にFOXDIEを感染させ、俺を殺した貴様をな)」

「…そうか。だが、ここでお前をゲッチュしてしまえば、無事ここから脱出できるだろうな」

「ウーキ、ウキッキ(いや、やめておけ。ここで仮に一歩でも動いてみろ。ウルフもいるからな、間違いなく撃ち殺されるだろう。さて、知りたいことがあるからな。オセロット)」

 

その後ろの通路から、例の拷問マニア―――シャラシャーシカ、リボルバー・オセロットが歩いてくる。

勿論、かつて失った右手ではなく左手で器用にガンスピンをしながら、だ。

 

「フン、まんまとかかったようだな。貴様にはこちらに来てもらうぞ、スネーク?」

「…残念ながら、俺は何も知らないぞ?」

「それはどうかな。実はオクトパスの姿が見えない。考えられるのはお前がゲッチュしたということだけだ」

 

なんのことだかは、本当にわからない。だがオセロットは絶対に俺がゲッチュしたと思っているらしい。

オセロット、リキッド(本人曰くウキッドらしい)、ウルフを目の前に捉えたまま退路を探す―――しかし背後のエレベーターからレイブンとその部下たちであろうピポサル達が上がってきた。

そしてリキッドの後ろに浮遊するピポサル―――マンティスが現れた。

 

「これで逃げ場はなくなったな?」

「クソっ‥!」

「ウキ(連れていけ。拷問にかけろ、シャドー・モセスの時のようにな。DARPA局長と同じようにはするなよ)」

「また拷問か?芸がないことだな」

「ウーキ、ウキキ(残念ながら、今回は電気回転ベッドだけではないぞ。電気は変わらんがな。期待しているといい。連れていけ)」

 

そうして俺はピポサルに連れていかれる。

足を固定され、半ば引きずられる形になる。

そのまま、リキッドが勝ち誇ったかのように言った。

 

「ウキィ、ウッウッキィ(今度こそ終わりにするか、スネーク!)」

 

オセロットもまた、愉快そうに口を歪める。

 

「楽しみだ、スネーク。また貴様を拷問できようとはな」

 

数が多すぎる。俺はここで抵抗すればここで殺されるということを直感的に悟った。

あの男(BIGBOSS)に習ったCQCでもここを突破はできない。数が多すぎる。

何よりも使いたくないのだ。裏切り者に教わった技など。

オタコンに連絡しようとも思ったが、今から拷問されるというのに通信したところで意味はない。

俺は引きずられながら拷問室に放り込まれ…そこから先は、全身に痛みの広がる時間だった。

 

 




割と間が開きました。ごめんなさい。
ぶっちゃけこれ待ってくれてる人いるのかな…(小声)
それはともかくリキッド・オセロット・ウルフ登場。
次の話はメタルギア恒例・拷問イベントからです。
次の話も読んでいただき、楽しんでいただけると幸いです。


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act4~再会~

拷問が一旦終わり独房に放り込まれた俺は、通信機も取り上げられ装備も奪われていた。

だが諦めるわけにはいかない。メタルギアやメサルギアがなかったといっても、この空中戦艦には何をしでかすのかわからないやつ(リキッド)がいる。

そいつを止めるためにはまずはこの独房から脱出しなければならない。

独房の外のドアが開く音がする。

脱獄も予期している可能性もある。しかしこの機を逃せば黙って死ぬしか道がなくなる。

 

「ウキ。ウキキキッ(時間だ。出ろ)」

 

体が思うように動かない。入口から入ってきたピポサルを蹴り飛ばし、外に出る。

走ろうと思い、姿勢を作る。

が、しかし。

 

「自分から出て来るとは殊勝な心掛けだな、スネーク」

 

オセロットが兵を連れそこにはいた。

 

「オセロット・・なぜここに」

「シャドー・モセスの反省点の1つだ。―――囲め」

 

ピポサルたちが俺を囲む。まさかオセロット自身が現れるとは思ってはいなかった。

オセロットの声に合わせ銃口がすべてこちらを向く。

しかし、オセロット自身はリボルバーをこちらに向けていなかった。

 

「まさかまだ脱獄を予期していないと思っていたのか?」

「クソッ…」

 

今下手に動けば死ぬ。だからと言ってこの状況を脱する方法がない。

相手は数十のピポサルに一人の人間だ。

拷問の影響、装備がとられたこともあり戦おうにも戦えない。

 

「まさかBIGBOSSに習ったやり方でこの状況を脱せるとでも?だとしたらやめておけ」

「俺は奴の技は使わん」

「そうか、だが一応言っておく。俺のほうが上だ」

 

実際拷問の影響でやりあえば負ける。

思考を巡らせる俺とは違い、オセロットは余裕の笑みを浮かべる。

そのとき。

 

「ウキ、ウキキ(おいおい、だいぶ鈍ったんじゃないかスネーク?)」

 

誰かの声が聞こえた。この場にはピポサルが大量にいる。

その中の一匹かと最初は思った。

だが、それとは違うことに気づかされた。

ゴトッという鈍い音をたて、一瞬なにかの青い軌跡が見えたと思った刹那。

 

「キキィィィィィッ!」

 

俺のちょうど目の前のピポサルの一陣が吹き飛んだ。

オセロットが珍しく狼狽する。

 

「い、いったい何が…!?」

 

その間も青い軌跡は踊り、ピポサルたちをなぎ倒してゆく。

 

「ウキ、ウキキキッ(さあ、俺をもっと楽しませてくれ!)」

 

その一言と同時に、ピポサル部隊の壊滅はさらに加速してゆく。

青い軌跡をよく見ると、奴らの装備を一瞬にして破壊し、そこからゲッチュを行っているようだった。

 

「ウキ、ウキキッ(スネークッ!突っ立って見ている場合か!?)」

 

その言い方はまるで俺を知っているようだった。

俺もこいつの正体はほぼわかっているが、あえて聞いておくことがある。

奴の体は今も透明で、どこにいるかは目視ではわからない。

だが青い軌跡と兵士たちがどこを舞っているかでおおよその位置はわかり、その位置に質問を投げかける。

 

「お前は何者だ」

 

そうすると、奴は突如として機械のような、ノイズが少し走った懐かしい声でこう言ってきた。

 

「『ファンの一人だよ』」

 

流暢な人語に思わず笑みがこぼれる。

やはりこいつは…。

 

「くそっ…引き上げるぞ!」

 

オセロットが退却指令を出す。

それを聞いて一気にピポサルたちが扉へ向かう。

しかし、ピポサルたちが一斉に扉へ向かったため扉のあたりは詰まっていた。

それを見て、〈忍者〉が再び動き出した気配がした。

 

「ちいっ!しつこい奴だ!」

 

オセロットがそう叫ぶ間も忍者による青い軌跡のゲッチュは続く。

今やオセロットの連れてきたピポサルの半分以上がゲッチュされていて、形勢は逆転した。

その間に奴が落とした鈍い音がしたケースを開くと、そこには奪われた俺の装備が入っていた。

それを確認すると同時にドアが開いた。オセロットがドアにたどり着いたらしい。

また、入れ替わりにレイブンが通路に入ってきた。

 

「ウキ、ウキキっ(背中は任せろ、旧ソ連(イワン)の大将。このことをボスに伝えるんだ)」

「レイブン…すまないな」

「ウキ、ウキキ(なに、俺も今では自然にできたものではなくなった。だからこそ自然にできたお前に任せるんだ)」

「・・・」

 

オセロットは黙って扉を抜けていった。

後には大量の鎧の破片とチップと、レイブンに忍者、そして俺が残っていた。

 

「ウキ、ウキキッ(さぁ、来い白人(カサック)達よ!この誇り高き(レイブン)を、今度こそ自然に還してみろ!)」

「ウキ、ウキキキっ(やれるな、スネーク?)」

「…もちろんだ」

 

奴は連射式Bランチャーを構え、忍者はカタナのようなメカボーを構える。

 

「ウキ、キキィィッ(さあ、行くぞ!)」

 

奴が叫び、Bランチャーが火を噴く。

ここには障害物がほぼない。

奴にとって拷問の影響で動きが少し鈍い俺はさぞ狙いやすい的だろう。

相手が()()()()()()()()()、の話だが。

 

「ウキッ、キィイイ!」

 

忍者が俺の前に現れたのを気配で感じ取る。

放たれた砲弾を忍者がカタナで切り裂く。

砲弾を切り裂きながら俺たちは少しずつ前進する。

 

「『今だ、撃ち込め!』」

 

合成音声の指示を受け、Hランチャーを構え、レイブンをロックして砲弾を放った。

砲弾を浴び、一瞬砲弾の連射が止まる。

 

「キィ…キキィィィィ!(まだまだ、これからだ!)」

 

しかし、忍者はその瞬間を逃さずに切りかかった。

切りかかったのを確認し、二発ほどレーザーガンによる追撃を行った。

 

「ウ・・キキィ…(グッ…これしきで膝をつくと思っていたのかぁ!)」

 

まだ奴には起き上がる気力はあったようだ。

しかし、その間に俺もダッシュブーツにより奴のすぐ近くに体を滑らせ、メカボーを振りぬいた。

 

「ウ、ウキキ(フ、フフフ…さすがだな、蛇よ…)」

 

奴の砲台はところどころへこみ、もはや使い物にならないのは明確だった。

俺はゲットアミを構える。

 

「ウキぃ…キキキ…(すまないが…一つだけ、最後にいいか?)」

「…なんだ?」

「ウキ・・・・ウキキっ・・・ウキキキキッ(俺の…頭に乗っているこのヘルメットを…破壊してくれないか)」

「ウキィ(なぜだ?それを壊せばお前は…)」

 

沈黙が広がった。

やがてレイブンが話し出した。

しかし、それは奴が健在だったころと何も変わらぬ声だった。

 

「うき、ウキキ(俺は…自然に還り損ねた。死した魂も鴉たちとともにあるはずだった。ここにいるのは俺の本意ではない)」

 

かつてシャドー・モセスでレイブンはこういった。

 

『俺の骸は自然に還る』

『お前もボスも、自然に創られた存在ではない』

 

ピポヘルはデータを入力しただけでその人物の思考・能力を再現できる。

ならば、今ここにピポサルとして、死者をここに呼び寄せるこれは自然が創りだすものではない。

機械(ピポヘル)に人の「精神(SENSE)」を載せた、時代(SCENE)遺伝子(GENE)文化(MEME)も、本人の遺志(SENSE)をも無視した幽霊。

まさに機械の中の幽霊(The Ghost in the Machine)。もっともギルバート・ライルがこれをいった理由は批判のためだったわけだが。

それは、傍らに立つこの〈忍者〉にも同じことが言えるはずだ。

 

「人に創られた俺だからこそ…お前を今度こそ殺せというのか?」

「ウキ…ウキキっ(人工的に創られたものの最期ならば…自然に還るのはおかしな話だとは思わないか?)」

 

人工的に創られた俺には、否定はできなかった。

黙っている〈忍者〉。俺の判断に任せる、ということだろうか。

かと思えば、忍者が口を開く。

 

「『…わかった。だが、お前の今の肉体は殺さない。お前の精神(SENSE)だけを解放する』」

「そんなことが…できるのか?」

 

すると通信機が振動し、オタコンが話に入ってきた。

 

『前にピポ・スネークは君の戦闘データをピポヘルにインプットしたものだといったよね?』

「…ああ。結果的にあれはリキッドだったわけだが…」

 

そこで俺は気づく。

まさか、オタコンが言いたいのは…

 

「ピポヘルに入っているレイブンのデータを消せば…こいつはレイブンではなくなるということか?」

『うん。多少データは残るかもしれないけど、それだって仕草が微妙にそれっぽい程度になるはずだよ。いつもと変わらずゲッチュして、こっちに送ってきてくれ。僕が元のピポサルに戻してみせるよ』

 

俺はオタコンが説明したことを丸々レイブン(と〈忍者〉)に説明した。

するとレイブンはこう言った。

 

「ウキ、ウキキっ(任せてもいいか…?俺にはもう戦う力も意志もなくなってしまったしな。死者は大人しく去るのみ、だ)」

「…わかった。そろそろ転送するぞ」

「ウキぃ(ああ。構わん)」

 

そこで転送しようとして、レイブンはこう言った。

 

「ウキ…ウキキキっ‼(リキッドとFOXHOUNDを止めてくれ。死者は干渉してはいけない。それは自然の摂理に逆らうことだ)」

「わかった。必ず止める。―――ゲッチュ」

 

俺がそういうと、レイブンは満足そうに微笑み、転送されていった。

レイブンは倒したとはいえ、まだ任務は終わっていない。

が、その前に確認することがある。

 

「お前は、本当に忍者…グレイ・フォックスなのか?」

「『ああ。お前をサポートするためにあの世から帰ってきた』」

 

忍者――フォックスは冗談めかして笑うと、急に真顔になり、俺に質問してきた。

 

「『ナオミに…本当のことは伝えてくれたか?』」

「…それは」

 

忘れもしない。シャドー・モセスでフォックスが言ったことを。

フォックスの死に様も。

 

『お前から伝えてくれ…本当の仇は、この俺だと』

『追いつめられた狐はジャッカルよりも凶暴だ!』

『お前の前で…これで本当に死ねる…。ザンジバーランドの後俺は戦いを取り上げられた…。生きる実感のない…ただ死んでいないだけの無意味な生。長かった…それが今、ようやく終わる』

『スネーク…俺たちは、政府や誰かの道具じゃない…。戦うことでしか…自分を表現できなかったが…いつも自分の意志で戦ってきた』

『スネーク…さらばだ』

 

俺はそのあとREXを破壊し、リキッドとの激戦を制し、メリルとともに脱出した。

リキッドはFOXDIEにより死亡したが…今、奴の亡霊が再び世界を脅かしている。

 

「『スネーク。…すまないな、お前に気を遣わせてしまって』」

「…あれで本当によかったのか、俺は今でも悩むことがある」

「『…お前が信じなければ、だれがその選択を信じるんだ?俺は…俺も死者の仲間入りをした。お前の選択が正しいか正しくないかなんて、結局はデータの塊の今の俺が判断できるものじゃない』」

「…それもそうだな」

「『フン…ところで今は、ナオミは何を?』」

「ナオミは今、刑務所だ」

「『・・・そうか』」

 

フォックスはどこか悲しげな笑みを一瞬天井に向けて浮かべたかと思うと、俺に向き直ってきた。

 

「『今はナオミのことだけじゃないな。言っておくことが何個かある。一つは…リキッドがアメリカに向けた声明を出したらしい』」

「何…?」

 

話を聞いていたらしいオタコンが声を上げてきた。

少し慌てたような、余裕のない声を。

 

『あ、ああそうだスネーク。確かにリキッドがアメリカに向けてメッセージを向けてきたらしい』

「リキッドは何を?」

 

今度はメイ・リンだ。焦りを感じとれる声だった。

 

『それがねスネーク。リキッドは自分の…シャドーモセスでFOXDIEによって死亡した自分の遺体を渡せっていうの‼』

「自分の死体を…?」

 

今更リキッドが自分の身体を要求するとは…。

なにをしでかすつもりだ…。

 

「『スネーク。ここで話し合っていても始まらない。早くリキッドを止めよう』」

 

ここで悪いニュースが入ってきた。

よりにもよってこのタイミングで。

 

『それが…もうリキッドの遺体を運んでるどころか、もう空中戦艦に積まれたらしいんだよ…』

「なんだと!?抗うそぶりも見せずにか!?」

「『どうも迷っている暇はないな』」

「まだFOXHOUNDもオセロットを含めて5人も残っている。早めに行かなければ…」

 

ここで再び驚かされることとなった。

ステルス迷彩の効力の良さも。

 

「『いや…4人だ』」

「なぜだ…レイブンはたった今倒して、あとはマンティス、ウルフ、オクトパス、オセロット、そして…リキッド5人じゃ…」

「『俺が既にオクトパスはゲッチュしておいた』」

「相手は仮にもFOXHOUNDだぞ?どうやって…」

「『汚い手だが…周りに敵がいないことを確認して、不意打ちで…な』」

 

オタコンがため息をつく。

 

『スネークの話とモセスでのグレイ・フォックス本人の発言を聞いてたらもっと高潔そうな人に感じたんだけど、意外と狡いんだね、グレイ・フォックスって…。とにかくFOXHOUND一人減っているんだったら、空中戦艦を多少は早く移動できるね』

「だがなぜだ?オクトパスをゲッチュしたならほかのFOXHOUNDもゲッチュすればよかったじゃないか?」

「『ああ、だが勘のいいリキッドに、人間のオセロット、こちらの思考を読んでくるマンティスは一人で倒すのは難しいだろう?ウルフも大概勘がいいし、レイブンは狭い部屋にばかりいたから、狭い場所でランチャーを撃たれたらお前のサポートもできないし…な』」

 

もう一つの疑問をフォックスにたたきつける。

否、たたきつけようとした。

 

「お前は何故…再び俺のサポートに徹し、戦おうと思ったんだ?」

「『…そんなことはどうでもいい。長話をしすぎた。早くいかなければならないだろう』」

 

確かにその通りだ。ここで長話をしている余裕はない。

かと言ってその質問の答えも気になる。

 

「『フ…釈然としない、という顔をしているな。互いに生きてリキッドを倒したら教えてやろう』」

「・・・・わかった」

 

俺たちは床に散らばったチップを回収した。

するとオタコンが話しだした。

 

『よし…装備も取り返したみたいだし、FOXHOUNDを退けつつブリッジに向かってリキッドの遺体を見つけてくれ。それから本物のピポ・スネークも生きていたら回収してくれ』

「わかった。任務を再開する」

 

メイ・リンが話に割り込んできた。

 

『スネーク、浅い川も深く渡れってことわざ、知ってる?』

「いや、知らないな。どういう意味だ?」

『ニッポンのことわざの一つらしいわ。浅く見える川でも気を付けて渡れ、って教えね。スネークも勘が戻ってきたっていっても油断しちゃダメよ』

 

オタコンが半笑いでつぶやいた。

 

『なんか、いよいよそれらしくなってきたね』

「まぁ、そうだな。―――そろそろ任務に戻る」

 

そう言って俺とフォックスは通路を歩き始めた。

リキッドとの決着もつけなければいけない。止める義務が、俺にはある。




相変わらず遅筆です、申し訳ない。
…細やかなネタが、キレた…かもしんない。ネタ考えなきゃ。

レイブンさん早く退場しすぎたな&キャラ崩壊している奴が何人かいるなコレ…申し訳ない(二度目)

オクトパスさんも活躍させずに退場させてしまった…申し訳ない(三度目)

さて謝罪会はここまでにして、実は話のおおまかの流れは構想してありますので次回以降もまた読んでいただけると幸いです。


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act5~信頼~

独房から通路を突き進む俺たちはリキッドの思惑を阻止するために走っていた。

 

「フォックス、次はどっちだ?」

「『ここは左、その先まっすぐだ。だがそこにはエレベーターがあり、周りからはほぼ丸見えだ。…何が言いたいかは、わかるな?』」

「狙撃手が配置しやすいな…ウルフか」

 

するとオタコンが連絡を入れてくる。

先ほどのリキッドも死体の話とは違い、悪いニュースではなかった。

むしろこの任務においては良いニュースだ。

 

『それなんだけど…さっきスネークが大量に送ってくれたチップで、パワーアップパーツが作れるみたいだ』

「パワーアップパーツ?銃のカスタムと同じようなものか?」

『うん。いろんなカスタムパーツがあって、それらを状況によって使い分けることによって、劇的な変化をもたらせる…らしい』

「例えば何ができるんだ。まさかいつでも煙草を吸える、なんてくだらないものじゃないだろうな。それはそれで俺は嬉しいがな。…待て、らしいだと?そんなものを俺に試験的に使えというのか?」

 

ところがまた意外な奴から連絡がきた。

俺を拉致して極寒のアラスカに送り込んだ友の声だ。

 

『スネーク、試験なら私がした。パワーアップパーツの考案者は私のハイスクール時代の友人でな。私がFOXHOUNDで総司令官になったとき、一度よこしてきたんだ。威力の向上も射程の向上も問題なしだ。ただし何分音が大きすぎたのと威力が高くなりすぎて建物が吹っ飛んだりでな。諜報には向いていなかったので正式採用は見送らせてもらった。以来奴はへそを曲げてしまったようで、送ってこなくなった』

「大佐…なんであんたがこの回線を知っているんだ」

 

ロイ・キャンベル、通称大佐…既に退役しているので階級もあったものじゃないが、俺が呼びやすいから便宜上こう呼んでいる。

 

『私にも伝手というものがあってな。彼が依頼し私が送り込んだピポ・スネークからの連絡が途絶えたのを心配した奴―――例のハイスクール時代の友人だ。奴が君も動いているから君にコンタクトを取ってくれ、という旨の通信がきたんだ。君の無線周波数がわからなかったから、私も動けなかったんだ。…しかし奴はなぜ君の無線周波数を知っていたんだ?』

『キャンベルさん。ひょっとしてそのご友人ってハカセのこと…ですか?』

『その通りだ、エメリッヒ博士。そのことは君には言っていなかった筈だが…。むっ、まさか奴め、もう既に君たちにコンタクトをとっていたのか!?私にスネークの無線周波数を送ったのは確かにあの男だ。何故知っているかと思ったら…そういうことか…。何が「ま~だあの小僧の周波数はわからんのか~キャンベル~遅いのう~」だ、あの煽りにしか聞こえない通信は自分がもう既に答えを知っていたからか…やつめ、FOXHOUNDに自分の開発品を売り込みに行って私にあっさり却下された憂さ晴らしか…今度会ったら…』

 

このままだと大佐の愚痴で時間を使うことになる。

時間もないのでそれは後で聞くことにして、大佐に各パワーアップパーツについての説明をするように求めた。

 

「大佐、その長い愚痴は勘弁してくれないか。時間がない。リキッドが何をしでかすのかわかったもんじゃない。ウルフが待ち換えているであろう場所には遮蔽物がない。狙撃にはもってこいの空間だ。なんか役に立つパワーアップパーツはないのか」

『あ、ああそうだな…あるにはある。だが素材はあるのか』

『あ、はい。未知の素材、僕らは通称として「チップ」と呼んでいるものが』

 

うーむ。と唸った大佐は紙をめくる音ともに、口を開く。

 

『ハカセによるとその「チップ」というのは何個かの元素に似た配列の、別の物で扱いようによっては危険なものらしい。よってこの任務が終わればチップ・そこから制作した武器もすべてハカセのもとに送れというように伝言をもらった。それで装備の話だが…「ガチャメカ」というものに属性を組み込むことができるらしいぞ』

「例えば?」

『ふむ…これなんかどうだろう。「リフレク」というもので、相手のエネルギー弾を弾くことができる…「メカボー」系列及び「アタックブーツ」にセットが一番安全性が高い・・・君の「メカボー」ならマグネシウム似の配列の「チップ」とテルル似の配列の「チップ」から製作可とあるな』

「エネルギー弾を弾く…確かに最適だ、レイブンとの決着の前に言ってほしかったものだな」

「『俺が使っているこのカタナのような「メカボー」には、エネルギー切れの心配のないように常にリフレクがついている設計のようだ』」

 

レイブンのランチャーの弾丸を切っていたのはリフレクによるものか…。

シャドー・モセスでは普通に切っていたからあまり違和感はなかったが、よく考えると確かにおかしい。

 

『あとはこれは…性能アップパーツ?…なるほど、これは武器に属性ではなく付与効果を与えられるわけか…銃のカスタマイズのようなものか』

 

紙がめくる音が聞こえたのち、得意げに話し出す。

紙はおそらくハカセが検証して大佐に送ったものだろう。

 

『「ロングレンジ」…弾薬の飛距離を伸ばすが、そのかわりエネルギーの消費が激しくなる。ランチャー系統、ガン系統、あとはリモコン系統で使用可。…これはどれとどれを組み合わせるとに制作できるんだ?』

「ロングレンジか…どれだけ飛距離が伸びるかだな。ところで大佐」

『どうしたスネーク…私は製作素材について探すのに忙しい…あった‼スネーク、カドミニウム似の配列の「チップ」、ネオジム似の配列のチップから作れるそうだ。…で、どうしたスネーク』

「さっき系統、といったな」

『ああ、言ったとも。…なるほど、どのようなものがつくれるか、だな?』

「それについてだが、その紙に書いてあるのか?」

『探してみなければ何とも言えんが…』

 

と、そこで今度はオタコンが話しかけてくる。

こちらはこちらで紙をめくっている。

 

『それはさっきハカセからFAXで送られてきたから、武器制作に必要な「チップ」については僕から言えるよ』

「何があるんだ?ほかのFOXHOUNDの連中にも転用できるかもしれないから後で聞かせてくれ」

『わかった』

 

オタコンとの話に区切りをつけ、大佐に話を戻す。

 

『話を戻そう。ウルフと戦おうというんだったらには「ロングレンジ」で遠距離化したH(ホーミング)ランチャーに「リミッター」、それから「レーダー」をつけてみたらどうだろう』

「「リミッター」に「レーダー」?それはどんな効果で、どんな「チップ」を使えばできるんだ?」

『その前に、H(ホーミング)ランチャーはあるんだろうな?』

「ああ。レイブンに使ったものがあったはずだ」

『よし。まず「リミッター」だな。これはエネルギーの消費を抑える効果がある。ランチャーに組み込んだらまさに鬼に金棒だな。「レーダー」はH(ホーミング)ランチャーの追尾性能を高めるパーツだそうだ』

「なるほどな。エネルギーの消費を抑えたうえで相手を捉え確実に相手をたたく、ということか」

『その通りだスネーク』

 

フォックスに対してこの方法を話すと、フォックスはなるほど、と頷いた。

だが、とフォックスは言葉を繋げる。

 

「『それだけではウルフの位置は割り出せない。だから俺が奴の弾道から奴の位置のおおむねの場所を割り出す。お前はその位置に向けてH(ホーミング)ランチャーを撃て』」

「できるのか、そんなことが」

「『任せろ』」

 

戦友の力強い言葉に頼もしさを感じる。

だが、彼女も通信からまけじといった。

 

『そんなことしなくても、私がソリトンレーダーを使えばおおよその位置はわかるのよ?割り出すのに数は多いほうがいいはずでしょ、私も手伝うわ』

「メイ・リン…確かに、ソリトンレーダーはモセスでも敵の位置も割り出していたな」

 

オタコンから通信が入ってくる。

 

『作戦は決まったね、それじゃランチャーをこっちに』

「ああ。パワーアップパーツの取り付けは任せる」

『それもだけど、元のランチャーの飛距離を強引に引き上げてそのうえで「ロングレンジ」「リミッター」「レーダー」を取り付けるから、貸してくれるかい』

「わかった。それからオタコン」

『どうしたスネーク』

「レーザーガンにも「ロングレンジ」をつけてくれるか」

『わかったよ、スネーク。ついでだ、メカボーにリフレクもつけちゃおう』

「そうか・・・無理はするなよ」

『…ありがとう、スネーク。取り付けるから、少し待ってて』

 

そうして数分後。あるいは数十分後だったかもしれない。

 

『できたよスネーク。キャンベルさんとも相談して、レーザーガンには「チャージ」のパワーアップパーツをつけといた』

「「チャージ」?」

『うん。自然とエネルギーが回復するらしい』

「なるほど、そいつは便利だ…そろそろ切るぞ」

『頑張って。あ、最後に』

「どうした?」

『ウルフを…彼女をゲッチュしてやってくれ…話したいことがあるんだ』

「…それでお前の気は済むのか?」

 

オタコンは黙ってしまった。俺は奴にウルフは会わせないほうがいいと考えている。

だが心のどこかでこれでオタコンがウルフへの感情に区切りが付くのならと思っているのも事実だ。

 

「…わかった。お前を信じよう」

『ありがとう…スネーク。本当にありがとう』

 

黙っていたフォックスが口を開く。

 

「『…どこか危ういな。本当に信じて大丈夫か?』」

「ああ。奴は俺の相棒だ。奴ならば大丈夫だ」

「『…ふ、お前も信じられるものを見つけたようだな』」

「ああ」

「『だが、その信じられるものを次の世代に伝えられるのか』」

「俺は子孫を残せない。だから無理だろう」

「『ふん…それはどうかな。次の世代に伝える方法ならあるかもしれないぞ。…装備が帰ってきたようだからな、先を急ぐぞ』」

 

信じるものを次の世代に託す。…子孫を残せない俺にはやはり無理なのだろう。

そう考えて、カスタマイズされた武装を確認する。

 

「何も問題はない。行こう」

「『ああ』」

 

そうしてエレベーターへと俺たちは躍り出た。

と、同時に射撃音がする―――互いに何も言わず、戦闘が始まった。

撃たれた弾丸はフォックスによって反射される。

フォックスのおおよその着地した位置を確認してウルフはどの位置から狙撃して来たのかを推測する―――。

 

「『スネーク、お前の右後ろの方角だ!』」

 

言われた通り俺は右後ろを向く。

 

「これから構える…フォックス、飛んでくる弾は任せた」

「『しくじるなよ、スネーク‼』」

 

そうしてHランチャーを構え、ウルフを探す―――。

メイ・リンの声が響く。

 

『少しずれているわ、左に十五度程度修正して。―――そのあたりの上下の位置にいるはずよ、探してみて』

「わかった」

 

おおよその位置を割り出す。ウルフを見つければHランチャーが熱源として捕捉するはずだ。

そのとき、ランチャーは音を出した。

 

ピ―――――――――ッ‼

 

見るとターゲットを捕捉していた。

構えているため、あとは引き金を引く。

鮮やかな光とともに、その光弾はある一部分を目指して飛んでいく。

ゴシャァッという何かが壊れた音が鳴る。

当たったかどうかは光弾のせいと距離が遠いのもあってわからない。

 

「やったか…?」

「『いや…奴はピンピンしているな。物陰に隠れたか・・・』」

 

狙撃音が再びする。先にフォックスが狙われるが、フォックスは飛びのいて回避を行った。

さらにもう一発。俺を狙っているに違いないのでメカボーを引き抜いておく。

 

『スネーク、タイミングを合わせるんだ、君ならばあの光弾は弾けるはずだ』

 

大佐の声とともに光弾は飛んでくる。速度が早かったからメカボーを振りぬくことはできなかったが、刀身を斜めにして弾くこと自体には成功した。

 

「『さすがだな、スネーク。いい判断だ』」

 

フォックスの声に反応せず、ランチャーを構える。

熱源が二つあった。片方がウルフだとしてもう片方は何かとは思った。

しかし、それを考えたところでウルフに弾は届かない。

メイ・リンに通信を入れて聞く。

 

「今度はどのあたりだ?熱源が二つある。そう遠くは離れていないはずだが…」

『少し右側かしら…少し角度を、スネークから見て右側に変えてみて』

 

メイ・リンの助言に従って角度を少しいじっていると、オタコンが通信を割り込ませてきた。

 

『ロックができないのか。だったらもう目視でやったほうがいいかもしれないね』

「目視?ここから奴の居場所は見えない」

『そうなるかなぁと思って、レーザーガンにロングレンジを搭載するときに銃に改造を施してみたんだ。さ、ロングレンジの機能を起動してみてくれ』

 

言われるがままにレーザーガンに持ち替えて「ロングレンジ」の機能を起動させる。

するとレーザーガン上部からスコープが飛び出てくる。

さながらスナイパーライフルだ。

 

「…オタコン、お前が機転が利くのは認める」

『どうしたんだい?まさか故障でもしたのか!?』

「違う。改造するのはいいが、使う奴()に説明しろ」

『あ、あれ?説明してなかったかな?』

 

オタコンがそうすっとぼけた瞬間、3つの回線に乱入された。

一つ目はメイ・リンから。

 

『そうね…通信記録とか確認してみたけど、ひとっ言も説明してなかったわね』

 

二つ目は大佐から。

 

『いや、私も通信を傍受していたがそんな話はしていなかったはずだ』

 

三つめは、ハカセからだ。

しかし割り込んできた瞬間に大佐は食い気味に割り込んだ。

 

『よくわからんが、ワシもそう思う』

『ハカセ!よくも周波数を知っていたのに私に知らないふりをして私を虚仮にしたな!』

『おおぅキャンベル。連絡がとれたなら何よりじゃ』

 

大佐はふぅーっと息を吐き、待て待て落ち着けロイと呟くと、冷静に聞き直した。

 

『…それで、何の用だ』

『いやぁ。進捗を聞きに来たんじゃ。それで、今はどういう状況かの?』

 

俺が冷静に説明すると、ハカセはふーむと考え込みやがてこう結論を下したのだ。

 

『いやわざわざ狙撃戦をやらんでも、フォックスがステルス迷彩を使って透明化して、直接たたきに行けばよいじゃろう』

 

現在狙撃戦をしているがその狙撃戦を提案したフォックスを見ると、さっとウルフがいるであろうほうを見て目をそらした。

俺はため息を吐き、こういった。

 

「…そうでなくても、エアキャンサーを使って最初みたいに行けばよかったな」

『…いまからエアキャンサー作るね』

 

そう言ってオタコンがえーとだのうーんだの言いながら探し始めた。

その後、ごそごそと音がしてからオタコンが一言。

 

『…スネーク、怒らないで聞いてくれるかい』

「おおむね分かったが、とりあえず言ってみろ」

『…もらったチップ…ほとんど使っちゃった…』

「だろうな。銃弾とエネルギー弾に耐えれる盾を作ってこっちによこしてくれ」

『…わかった』

 

そう言ってオタコンは力なく通信を切った。

フォックスはこっちを見て言い訳を始めた。

 

「『俺は一応ピポサルだからな。しょうがない』」

「・・・」

 

盾が届くと、俺はレーザーガンをしまって盾を持って走り出した。

直接叩きに行ったほうが早いようだ。

 

「『どうするんだ』」

「盾を使って弾丸を防ぎつつエレベーターで同じ階まで行く。フォックスはステルス迷彩を使って直接たたきに行け。後ろから狙撃して援護はする」

「『なるほどな。だから銃弾を防ぐ盾なのか』」

 

そうこうしている間にエレベーターに着いて、盾を構える。

撃たれた時の弾道から考えて高低差は恐らく二階だろう。

エレベーターが上昇する。

 

「『右からくるぞ‼』」

 

言われると、メカボーを引き抜き弾丸をはじく。

やはり弾丸をはじけると便利だ。

 

「フォックス‼銃弾が来るぞ!」

「『了解だ』」

 

その言葉をいうと同時にフォックスが走ってエレベーターの恐らく落下防止であろう低い壁にたどり着き、そこで伏せてステルス迷彩を起動させる。

これでフォックスの位置は少なくともウルフの目視ではわからなくなっただろう。

奴のスコープに温度感知機能がついていれば一発でばれてしまうのが弱点だが。

フォックスの姿が消え、奴の銃口がこちらを向いているのを感じる。

奴は…モセスの時にやったあの罠を、今度は俺を餌に行うのだろう。

あの時の俺は何と言ったか。

そうだ。他人のためには闘わないと、本能に従うといったはずだ。

なら俺は本能に従い、生き残る。

そして、俺は今何の為に闘っているのか。

答えは簡単だった。俺は未来のために闘っている。

フォックスから通信が来る。

 

『お前から見て左前だ!防げ!』

 

言われた通り盾を左前に出し、弾丸を防ぐ。

エレベーターはなかなかのスピードだが、しばらく止まりそうにない。

俺はエレベーターが止まるまでの間、弾丸をはじき、防ぎ、反射して身を守り切った。

 

「フォックス、行けぇ!」

 

これはフォックスの身体能力に任せたハッタリだ。

通常の人間の身体能力などたかが知れている。

しかし、強化外骨格を纏ったグレイ・フォックス(のデータを使ったピポサル)の身体能力ではどうか。

シャドー・モセスで奴はメタルギアREXの攻撃を避け、目となるレドームを破壊した。

加えて先ほどオセロットがフォックスと遭遇したので、フォックスのことを報告していないはずがない。

その話からリキッドが先ほどのモセスの話に発展させたとしてもおかしくはない。

敵のデータは一つでも多いほうがいいからだ。

そしてそのフォックスがここのエレベーターからその身体能力で直接奴にいる通路に直行できるかもしれないから、近場を警戒するだろう。

通信を切っていなかったため、意図を汲んだ上で通信に割り込んできたメイ・リンによるサポートがありがたかった。

 

『射線を32度ほど変えて。大丈夫よ、私と私が作ったソリトンレーダーがついているもの』

 

俺はHランチャーを構えた。

移動している間に奴が位置を変えてくれたのが幸いだった。

二つの熱源の反応しか捉えなくなっていた。片方は止まることなく動いていたが、もう片方は止まっていた。

メイ・リンの通信から考えても止まっているほうがウルフだ。

仲間を信じ、トリガーを引く。迷いはなかった。

 

『よく当てたな、スネーク。あとは俺がやる』

 

爆発音がしたが、どうやらうまく当たったらしい。

フォックスがそう通信を入れたと同時に、さらに追撃の音がした。

傍から聞いても痛そうな音だった。

 

『敵を無力化した。…長かったな』

「誰かが妙な作戦を立てなければこんなことにはならなかったがな」

『いいからさっさとこっちに来てゲッチュしろ』

「了解だ」

 

俺は熱源が二つあるところに移動した。

移動しているとき気づいたが、この戦艦はやたら通路が狭い上に足場と足場の間に溝がある。

高低差があるため落ちたらただでは済まないだろう。人間だったころのリキッドなら案外何とかなるかもしれないが。

俺はそう思いながらもウルフの元にたどり着いた。

 

「ウキ…ウキキ(また、私は待たされた)」

『スネーク…』

「わかってる」

 

オタコンと短いやり取りをすると、ウルフの纏う雰囲気は幾ばか柔らかくなった。

 

「ウキ、キキィ…?(彼…?)」

「…ああ。何と言っていたかは、あとで本人から聞け」

「…ウキ、キィ…(そう…。私は、少し前まではスコープなしに世界を見ていた。けれど)」

 

そういった後、ウルフはこう言った。

 

「ウキ…キキィ(急に、またこのスコープ越しに世界を見る日々が始まった)」

 

つぶやいた後に、こちらにウルフは首だけを向きなおした。

どこかやりきった、すがすがしい顔でこう言った。

 

「ウキぃ、キキィ(しかし…それももう終わりだ。また私を…今度こそ解放してほしい)」

「…それをやるのは今回は俺じゃない。奴も俺も英雄(ヒーロー)なんかじゃない」

 

そうして俺は相棒に通信を入れる。

 

「…オタコン。いいな?」

 

オタコンは息を吐き、わかったと返事をした。

 

「お前を解放する役はきっと、あいつが一番いいはずだ。―――ゲッチュ」

 

ウルフは、転送されていった。

昔俺が聞いた狼の遠吠えが聞こえたような気がした。




遅くなりましたact5です。
すみませんできるだけ早くとかほざいていた割にめっちゃ遅くなりました。
内容は相変わらずペラッペラですが、楽しんでいただけたならば幸いです。
オタコンとウルフの会話についてとか、この作品の「裏」、つまりスネーク以外の視点もそのうち書く予定ですのでそこまでご期待しないで気長に待っていていただけると嬉しいです。

では次回でまたお会いしましょう。


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act6~読心~DATA A

またまた遅れました。
読みづらい・待ってた割にしょぼいなどの感想は厳粛に受け止めると同時に善処していきたいと思っています。
では、お楽しみください。


俺たちはウルフをゲッチュしてそのチップを回収したのち、再び走り出した。

ウルフは弾薬補給やその他もろもろを作るためにほかのピポサルたちよりも多く(といっても2~3枚程度だが)チップを多く所持していたらしい。

そしてブリッジに突入するため格納庫に入ろうとしたら、音楽が聞こえた。

この音楽は…‼

 

「フォックス‼」

「『ああ、間違いない…マンティスだな』」

 

と、その時格納庫のシャッターが突如として開いた。

その中から大量のマシンが動き出し、俺たちに襲い掛かってきた。

すべて無人で動いていた(ように見えた)が、マンティスのことだから超能力で動かしているのだろうと見当がついた。

まさかピポヘルが超能力さえも再現しているとは驚いたが。

 

「すごい数だな…」

「『確かにな…しかしこれはどうやって操作しているんだ…?見たところ無人機のようだが…』」

 

 

大佐がその疑問について通信を入れてきた。

 

『おそらく、奴は乗っているピポサルたちを操って操作しているんだろう。しかし一度に数体程度のピポサルしか操るのできないのだろうな』

 

なるほど大佐の言葉通り、メカ達は一度に五機ほどしか動かなかった。

無人機のように見えたのはコックピットから少しはみ出てレバーをガチャガチャやっているピポサルが見えないからか。

しかしヘビータンクやヘビーメックなど高火力の機体が一気に動いてきて弾丸やミサイル、レーザーを吐き出すさまはもはや悪夢だ。

 

「『チッ…これじゃまともに動けなさそうだな…』」

「ここは一旦外に出て、俺がかなり壁際のところからランチャーを撃ち込んだほうがいいか…?」

「『そうだな…後ろは俺に任せて、お前はいったんこの格納庫から出て外からロックしてランチャーで撃ち込んで一機ずつ破壊、もしくは機能停止に追い込んでくれ。俺は俺でメカを破壊する』」

 

作戦を練ったところで、俺たちは後ろに向かって駆け出す。

ミサイルやレーザーが格納庫のコンテナや格納しているハッチに当たり、コンテナは壊れハッチも歪んでいた。

フォックスが後ろでミサイルやレーザーを反射してくれているが、それでも入口付近に戻るのはかなり危なかった。

爆発音が後ろからも前からも、絶え間なく鳴る。

レーザーやミサイルによる攻撃でできた瓦礫で道が塞がれていたりするのをマシンガンで破壊しつつ、何とか入口付近まで戻る。

俺が元に戻ったのを確認したのち、フォックスは再びステルス迷彩を使用したうえで再び部屋の中に入っていく。

が、相手が読心しているためか、確かにステルス状態で入っていったのに弾丸がフォックスを狙いに行った。

その間に俺はランチャーを構え、発射する。

向こうにいるフォックスの猛攻もあり、メカたちは次々と機能を停止する。

ネットショットを使い、出てきたピポサルたちをゲッチュしていく。

そうして―—―。

 

「フォックス、そっちはどうだ?」

『問題はない。メカたちも完全に機能を停止したようだ』

 

オタコンも話に参加してくる。

どうも奴はウルフとの話は終わったらしい。

 

『こっちから見ても、熱源はあまりないね…うわっ』

「どうした?」

 

よく聞くと無線にノイズが走っているのがわかった。

電波障害が起こっているのだろうかと思っていると、音楽が聞こえてきた。

あの音楽…サイコ・マンティスの洗脳ソングだ。

 

『…ネー…。…ソ…、…まで…つ…筈…に…』

「オタコン?オタコン‼…通信環境がおかしいのか…?…まさか!」

「『ああ、この音楽とマンティスの超能力で電波がおかしくなっているんだろう。相変わらず、すさまじい能力だな…』」

 

また無線が通信を拾う。

今度はメイ・リンからだ。

 

『ス…ク…。…えて…。…答…て…。…ネェ…ェク…!』

「やはり間違いない。マンティスだ」

「『やはりどこの無線も狂っているようだな…俺たちが離れたとしても連絡は取れないだろう』」

「ああ。近くにいたほうがよさそうだ」

 

俺たちは互いに警戒しながら進んでいく。

俺は歩きながらシャドー・モセスの時はどうやってマンティスに勝ったんだったかを思い出す。

あの時は…たしか…。

そうだ。思考を読まれない(コントローラー差し替え)ようにした。

つまり今回も思考を読まれなければ俺たちには勝機はあるかもしれない。

そうして歩きながら思考を巡らせていると、ふとフォックスが立ち止まった。

 

「どうした?」

「『…スネーク…』」

 

フォックスが深刻そうに話しを進める。

そういえば、シャドー・モセスで奴はメリルを操って俺と戦わせていた。

待て、操る?

奴は他人を意のままに操れる。ピポヘルがそれ再現していたとしたら?

 

「まさか…‼」

「『ああ。どうもそのまさからしい。体が言うことを聞かん』」

 

その予感は的中した。フォックスは突如として俺にとびかかってきた。

 

「まずい…!」

「『避けろ…!』」

 

辛うじてカタナ型リフレクボーを避ける。

しかし確実に後ろに下がっていなかったら首が持っていかれていた。

誰かが操られるともはや実力行使で気絶させるしか解除できない。

しかたなく、俺はメカボーを引き抜いた。

 

「『フ…さすがだな』」

「お前…まさか楽しんでいるのか?」

 

その答えを聞かずに、フォックスは再び飛び掛かってくる。

それをよけながら、メカボ―の一撃を叩き込んだ。

しかしさすがにしぶといのがフォックスだ。

 

「『もっとだ…!俺に生きている実感をくれ!』」

「…ッ…!」

 

今度はもっと素早い。

身体をそらし、避ける。

髪が少し切り裂かれていた。殴打が基本のメカボーで髪を切り裂いてきた。

相変わらずの技量だ。

しかし黙って避けているだけの俺ではない。

隙を見て攻撃をするが、フェイントを入れたり殴る位置を直前に変えたりして攻撃を進めていった。

挙句、ランチャーでフォックスを殴ろうとする暴挙に走りかけたが、素早いフォックスにはそれは無謀だということに気が付いた。

というか重火器で敵を殴る兵士など前代未聞だ。

これを十分以上繰り返して、ようやくフォックスが膝をついた。

しかし、言い方は悪いがまた操られる可能性がある。

 

「『…ふん。このまま操られるのは癪だ…。俺を気絶させろ』」

「ああ。そうさせてもらう」

 

前代未聞の重火器による殴打でフォックスの意識を刈り取る。

強化外骨格がなかなかに防御性が高く、意識を刈り取るのに三回ほど殴ることになってしまった。

マンティスとの戦いを控えているのに軽く息切れを整えつつ、ようやく周りを気にする余裕が出てきた。

すると、先ほどまでそこにはいなかったはずのガスマスクをつけたピポサルが鎮座していた。

そいつは最初にこう言ったのだった。

 

「ブラックアウト!!」

 

 



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act6~読心~DATA B

フフフ…ここは俺、サイコ・マンティスの作り出した超能力空間だ。

ここならば誰の邪魔もされない。

そうだ、貴様の趣味を当ててやろう。

 

・・・・。

 

ほう・・・。

ふむ・・・。

 

メタルギアシリーズが好きなようだな。

だからこんなしょうもない二次創作を読んでくれているのか。

なぜか俺も感謝したくなってきたぞ。

 

そこからさらに…。

ふむふむ…。

なにッ…。ここから先は心が読めないだと!?

まさかパーソナル・コンピューターか!?

それともスマートフォンか!?

技術の進化は素晴らしいな。

 

ふむ…まぁいい。

スネークの負けを見せて、ここからメタルギアマンティスのスタートをさせてもらうぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだ、今のイメージは。

俺が負けるだのなんだの聞こえたが…。

恐らく奴の念力の仕業だろう。

レーザーガンを取り出し、奴を射撃する。

しかし、避けられた。

 

「またこのパターンか…」

 

先読みされてすべての弾丸が回避される。

モセスの時はどうやって倒したんだったかというのも思い出す。

無線で連絡を取ってみることにした。

 

「ウキィ!ウキキキィ!(わかるぞ!スネーク!貴様は無線で連絡をとろうとしているなぁ!)」

 

相変わらず俺の思考は完全に読まれているらしい。

はた迷惑な奴だ。嫌がらせに性欲を持て余した思考を送り付けてやろうかと思ってしまった。

と、そこまで思考がいったところで思い出した。無線機が例の音楽によって妨害されているのだ。

俺は通信機にかけた手をレーザーガンに戻した。

ここでエネルギーを無駄に使うわけにはいかない。

俺はマンティスと戦った時、どうやったのかを思い出すことにした。

 

『無心の境地だ。頭を空にするんだ。わかるな。いいか、頭を空にするんだ』

 

大佐の発言を思い出す。あの時は確かに思考を空に(コントローラー差し替え)した。

もう一回頭を空にするしかないようだ。

ついでだからここにいるフォックスが操られた時の対処も思い出しておくとしよう。

まぁもう一回気絶させれば大丈夫だろう。

 

―――バァン!

 

 

 

 

「ウキィィ…!?(思考が読めん…!?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音が鳴る。

 

 

 

 

 

「『その程度か?』」

 

 

 

―――ガッ。

 

 

 

―――バァン!

 

 

 

 

 

 

 

「ウキァ…!?(なぜだ!?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『もっと…もっとだ・・・!』」

 

 

 

 

 

―――ガッ。

 

 

 

音が鳴る。

 

 

 

 

 

 

 

―――バァン!

 

 

 

 

 

「『もっとだ・・もっと俺に生を感じさせてくれっ!』」

 

 

―――ゴッ。

 

 

 

―――バァン!

 

 

最後にもう一度、音が鳴った。

 

「ウキィ…キィ…(ぐっ…なんということだ…。なぜ思考が読めない!?)」

「ふん…同じ手は二度も食わん」

 

マンティスは倒れていたが、俺は立っていた。

ついでに言うとフォックスも倒れている。

二、三回ほど操られたからその都度殴り倒したからだ。

戦闘の終盤に至っては殴られて頭の打ちどころが悪かったのか、妙なことを口走っていた。

もしナオミが見ていたらそれはもう烈火の如く怒られたことだろう。

ちなみにだが、俺の勝機はやはり思考を読ませない(地の分を書かない)、ということだった。

 

「ウキィ…キッ…。(そうか…お前も、あの時とは違う、か…)」

「ふん。俺自身どこが変わっているか知らないがな」

「キッ…。キキィィッ…。(そうか…ところで一つ、お前に忠告しておくことがある)」

 

忠告…とりあえず聞いておくことにしておこう。

しかし鵜呑みにするほど俺は愚かではない。嘘をつく可能性があるからだ。

 

「キィ…キキッ(オセロットのことだ…ヤツは…何か別のことを企んでいる…)」

「…何?」

「キキッ…キィッ(それがなにかは俺もわからない。だが…気をつけろ)」

 

マンティスをしても、オセロットの目的は分からず…か。

マンティスを信じるわけではないが、奴の動向は十分に注意しておくことにしよう。

 

「キィッ…キキッ(しかし、お前は戦友に対しても容赦がないな…)」

「亡霊のようなものとレイブンが言っていたものだからな。さぁ、転送するぞ」

 

そうしてマンティスをゲッチュしたのち、俺はオタコンに無線を入れる。

 

『スネーク!よかった、無事だったんだね』

「ああ、なんとかな。フォックスはどうか知らんが。それよりマンティスが興味深いことを言っていた」

『マンティスが?』

 

先ほどのマンティスの話を聞いたオタコンは、うーんと唸る。

そこへ思ったよりも早く目を覚ましたフォックスが頭をさすりながらこちらに近づいてきた。

 

「『スネーク…操られたのを助けてくれたのはいいが…やり方を考えろ』」

「すまないな。モセスの時もあんな感じだったからな」

「『…スネーク、後で覚えていろよ…』」

 

その一言をフッっと鼻で笑って一蹴すると、オタコンから通信が再び入ってきた。

 

『スネーク、そのままブリッジに向かってくれ。捕えれるようならオセロットを捕まえよう。あとは…リキッドか』

「…ああ。だがすることは簡単だ。いつも通り戦って、いつも通りゲッチュするだけだ」

『そうか?とりあえず頑張ってね、スネーク』

 

通信を切ると、俺たちはブリッジに向けて歩き出した。




すみません調子こいて前後編にしたら結構薄っぺらい内容になりました。
待っていただいた方には本当に申し訳なく思っております。

さて、次回はリキッドと闘うこととなります。
見苦しくかつ不定期更新ながら、まだまだ続きますので応援していただけると作者の励みになります。

多分更新スピードは上がらないと思いますが、よろしくお願いいたします。


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act7~決闘~

お待たせしました。
今回で第一章は終了となります。
また、今回は駄文で長文のため見苦しいところも多々あると思いますが、ご容赦ください。


マンティスを撃破した俺たちは、ブリッジに向かっていた。

その道中のことだった。

前後から緑の光が現れたかと思うと、大量のピポサルたちに囲まれていた。

 

「囲まれたようだぞ。いけるな、フォックス」

「『わかっている。ここを突破するぞ』」

 

レーザーガンとメカボー、ダッシュブーツを装備して強行突破にでた。

高速で動き続けながら、レーザーガンで牽制を行いつつメカボーで一気にたたく。

そうして鎧が壊れるとゲットアミに持ち替えゲッチュを行う。

それを繰り返していると気づけば大量にいたピポサルたちの数も、今はもはやほんの二十匹、多くても三十匹へと減っていた。

その二、三十匹も一気に片づける。

 

「…増援の気配はないな。どうやら、これで終わりのようだ」

「『あぁ。さっさとブリッジに行かなければな』」

 

警備しているピポサルたちを排除しながら、俺たちはブリッジへと進む。

そして、おそらくブリッジへとつながるであろう扉の前に、俺たちは着いた。

そして俺は無線機をつける。

 

「オタコン、着いたぞ」

『思ったよりもだいぶ早かったね、スネーク』

「そうか?今から扉を…」

 

と、言いかけると、扉を調べていたフォックスが待ったをかけてきた。

 

「『待ってくれ…この扉、パスワードでロックされている。また駆けずり回ってパスワードを見つけなければこの扉は開かないぞ』」

「だ、そうだ。俺たちはこれからそのパスワードを見つけるためにまた艦内を…」

『いや、待ってくれ』

「どうした?」

 

オタコンがなにか嬉しそうな声で言ってくる。

 

『スネーク、君に渡したソリトンレーダーとかが入っている携帯端末を持っているかい?』

「ああ。持っていないと任務にならないからな」

『だったらその携帯端末を接続できるところはないか?』

 

ちらり、とフォックスに目線を送る。

フォックスは頷き、周辺を調べ始めた。

その間にオタコンに話しかける。

 

「この端末を接続してどうする気だ?…というか接続できるのか?」

『ああ、それなら問題ないよ。端末コネクターがあって、コネクターに接続されたものはこっちから多少操作ができるんだ。それから…まぁ、僕にできることなんて限られているよね。たとえば…ハッキングとかね』

「…そういうことか」

 

調査が終わったらしいフォックスが話しかけてくる。

すっと指をさし、そこに視線を送るとちょうど接続できそうな箇所があった。

 

「わかった、お前に任せる」

 

端末コネクターを使い、携帯端末を接続する。

そうすると、オタコンの独り言ととんでもないスピードのキーボードのカタカタという音が始まった。

 

『…じゃあこれをこうして…なるほど、これがこうなっているのか…あ、このっ…!!だったらこれをこうしてやれ…っ!ついでだ、これも…』

 

とまぁこんな感じの独り言が45分以上続いたのち、オタコンがこう言った。

 

『…これだったら、ようやく…。よし、スネーク。携帯端末にこの戦艦に載っているデータを全部転送したし、この戦艦のいけなかった区画にも全部入れるようになったよ』

「…ここの扉のアンロックだけでよかったぞ?」

『そこのパスワードを探すためにこの戦艦の端末という端末からデータを取り出したんだよ。まったく、端末内にパスワードなんか残しちゃだめだなぁ。…そうだスネーク、気になるデータを見つけたんだ。リキッドと戦う前に目を通しておいてくれ』

 

オタコンの言うとおりに端末に転送されたデータに目を通す。

そこには生体兵器研究、と書かれていた。

 

「…生体兵器、だと?」

『そうみたいだね…。スネーク、ハイテクオリンピアの事件を知っているかい?』

「ハイテクオリンピア?なんだそれは?」

『えっと…VRのテストの一環で何回か行われた競技大会なんだけど、前回の開催で強力なウイルスで一時的にVR世界が乗っ取られた、っていう事件なんだけど。その参加者の中に黒いピポサルがいたらしいんだ』

 

そのデータに目を通すとピポトロン、と書かれた黒いピポサル…赤色・青色・黄色の三匹の写真や戦闘データが書かれていた。

 

「なるほどな、艦内にこんなデータがあるということはそのハイテクオリンピアの事件と今回の事件は…」

『多分…繋がっている。それと、新種開発のピポトロンのデータスペック表がそこに書いてあるんだ』

 

確かに言われた通り読み進めていくと、「新たな用途のピポトロン達」とかかれたデータがあり、そこにはピポトロンJ(特記事項:戦闘力がすさまじいとある)、ピポトロンG(特記事項:怪力と書いてある)と、ピポトロンクラック(特記事項:ハッキング能力を備えるとある)、ピポトロンメタ(特記事項:変身能力を持つと書かれている)の写真があった。

 

「なるほどな…もしかしたらリキッドがこいつらをけしかけてくるという可能性もあるから今すぐ見ろなんて言ったのか」

「『なるほどな…対策を練る前に現れたら困るからな』」

 

大佐も通信に割り込んできた。

 

『情報は多いに越したことはないからな。一応覚えているといいだろう。…それにしてもピポトロンとはな…ハカセから聞いたことがあったが…ふむ、まさかこんなところでその名前を聞くことになるとはな。チップはあるだろう、強化をしていったほうがいいんじゃないか』

「ああ…そうだな、頼む」

 

その場でいろいろと戦力増強を図った結果、マシンガンとショットガンが作られた。

マシンガンにはエネルギーを自然に回復する「チャージ」とエネルギー消費を抑える「リミッター」と弾の飛距離が伸びる「ロングレンジ」が。

ショットガンには一度に出る弾の数が増える「ラピッド」、相手に高温の弾を浴びせる「ファイア」そしてやはり「リミッター」がつけられた。

 

「そろそろ先に進むぞ。いつまでもここで立ち話はしていられない」

『そっか…がんばってね、スネーク』

『健闘を祈ることしか私にはできないが…頼むぞ』

「ああ」

 

無線を切ると、俺たちは扉を開けて中へと侵入した。

ブリッジ…なのだが、誰もいない。

警戒しながら先に進む。

 

「フォックス」

「『ああ』」

 

すると、ガァンという機械音とともに入ってきた扉が閉まった。

まさか罠か…そう思った瞬間。

ブリッジの中心の床が開いて、人型のマシン―――ゴリアックがせりあがってきた。

 

「キィ…キキィッ(待っていたぞ…兄弟‼)」

「リキッド…お前は自分の死体を使って何をするつもりだ!」

 

沈黙が続く。

 

「答えろ!」

 

すると、愉快そうにリキッドは笑い出した。

笑うだけ笑って、リキッドはこう続けた。

 

「キィ…キキッキキ(復讐だよ…)」

「『復讐だと…?』」

「キィ…キキッ(俺は自分の体のFOXDIEを利用して、俺をコケにした「奴ら」に復讐をするんだよ!)」

 

リキッドはここで言葉を切り、ゴリアックに乗り込む。

そして正直予想できた言葉を発する。

 

「『だが…まずは貴様からだ!スネェェェェクッ!』」

 

そういうが早いか、ゴリアックについたマシンガンで俺たちを攻撃しだす。

俺たちの反応は早かった。

俺はウルフとの戦いで使った盾を障害物にして、物陰に隠れた。

フォックスはというと弾丸を回避、壁を蹴って接近してマシンガンを破壊しようとした。

あくまでも打撃武器なので、マシンガンの銃身を切り裂くということはできなかったが射線をそらすことはできたらしい。

 

「『チィッ…』」

 

その間に俺はHランチャーを構え、そして撃った。

確かに当たった。が、傷一つ付いていない。

 

「『無駄だぞッ、スネーク!』」

 

その言葉を聞いた瞬間、これはせっかく作ってもらったマシンガンもショットガンも効きそうにないということを悟った。

どうするか、と考えつつもとりあえずランチャーを乱射する。

が、やはり効いていない。

 

「オタコン、ランチャーではキズ一つつかないぞ!」

『そういう装甲でできているのか…?とにかく物理的な攻撃じゃないと傷すらつかないみたいだ…』

「仕方がないな…オタコン、ゴリアックをこっちに転送してくれ」

『確かに…ここで君がやられたらどうしようもないね…。わかった、そっちに転送する。少し時間を稼いでくれ!』

 

そういわれるや否や、目の前に転送のために使われる光の粒子が一か所に集まっていく。

ゴリアックが狙われる前にとにかくリキッドの気を引くためダッシュブーツを使い高速で動きつつ、ショットガンはエネルギーが切れるまで撃ち続け、マシンガンは弾切れすれすれの所まで撃ちまくった。

なお、高速で動くためにやたらと重量がある盾とランチャーはその場にて放り捨てた。

 

「『聞いていなかったか、スネーク!そんな玩具は俺には効かん!』」

 

その間にもゴリアックは頭以外はすべて転送されている。

 

「『なるほどな、そっちが目的か…』」

 

どうやら気づかれたようだ。

しかし、フォックスの渾身の殴打がゴリアックの膝裏に入ってゴリアックは態勢を崩した。

 

「『クソッ!』」

 

しかしながらリキッドはあきらめない。

ミサイルを発射して、あくまでもゴリアックを破壊しようとする。

 

『スネーク、ミサイルだ!君なら墜とせる!マシンガンを使うんだ!』

 

大佐の言葉通り、マシンガンの残弾すべてで俺はその連射力によってミサイルを撃ち落とした。

ダッシュブーツでマシンガンのトリガーから指を離さずに完全に転送された床に膝をつくゴリアックに近づく。

 

「『スネーク、俺がミサイルやマシンガンをどうにかしておく。お前はそれを動かせ!』」

 

フォックスのいう通り、俺はゴリアックに飛び移りコックピットを開けた。

コックピット内には携帯端末をセットできる場所があり、携帯端末をそこにセットした。

すると、オタコンから通信が入ってきた。

 

『スネーク、僕がここからサポートする。大丈夫さ、いける!』

「頼りにしている」

 

任せて、と力強く言ったあと、ぶつぶつとつぶやき始める。

 

『姿勢制御AI再起動完了…センサー起動…ブースター、ミサイルハッチともにエラーはなし…!

ゴリアック、再起動だ!』

 

レバーに手をかけると、ギギ、という金属の軋む音ともにゴリアックは立ち上がる。

リキッドの乗ったゴリアックは態勢を立て直している最中だ。

 

「リィキッドォォォ!」

 

ブースターをふかして、ゴリアックは超スピードを出す。

こちらのゴリアックのスピードの乗った拳が、相手のゴリアックを襲う。

 

「『クソ…やるな、スネェェク!』」

 

相手のゴリアックが倒れ、こちらがマウントを取る形となる。倒れた相手にそのまま追撃を行おうとした俺の乗るゴリアックに対しリキッドは倒れた状態からマシンガンを撃ち込んでくる。

ガガガッ、とこちらのゴリアックの装甲を削る弾丸の音が聞こえてくる。

しかし、やられっぱなしというわけではない。

ゴリアックの腕を動かし、マシンガンをもぎ取る。そのうえでさらに一発ゴリアックの頭に向けて思いっきり拳を叩き込む。

 

『スネーク!横になにかある!』

 

オタコンの通信によりセンサーを見る。すると、そこには熱量が四つほど。

軽く目視して確認したところ、エネルギーの球体がそこにはあった。

嫌な予感がした俺の乗ったゴリアックはすぐにリキッドの乗るゴリアックから離れた。

その瞬間。

こちらのゴリアックが先ほどまでいた場所に熱線が撃ち込まれ、ついでにゴリアックに搭載されているマシンガンの銃口は溶けた鉄によって塞がれてしまった。

もう少し判断が遅かったら、今頃マシンガンの先端部分だけでなく、ゴリアックの腕程度や下手をすると俺の命すら持っていかれていたかもしれない。

そんなことを考えていると、ブースターでかなりの加速を行ってきたリキッドのゴリアックにより超スピードのタックルによる衝撃が俺を襲った。

 

『スネーク!』

「…大丈夫だ、オタコン」

 

今度は先ほどとは違い、リキッドのゴリアックがマウントを取っている。

そしてエネルギー球体もふわふわと近づいてくる。

なんとか動かそうとするも、ブースターで勢いをつけているため立ち上がることは難しい。

 

『フン…ようやく貴様との因縁に決着がつけられそうだ…』

 

ここで死ぬわけにはいかないが、どう打開したものか。

そう考えていると、エネルギーの球体が突如としてすべて破裂した。フォックスが俺の捨てたランチャーで球体を破裂させたのだ。

それにより一瞬動揺したリキッドのゴリアックの顔面を右腕で思いっきり殴りつけ、馬乗りになっているゴリアックに対してミサイルを叩き込みつつ殴り続けマウントを取っているゴリアックをようやくこちらから引きはがす。

 

『チッ…やはりしぶといな、スネーク…だがいつまで持つだろうな?』

 

リキッドがそこまで呟くとフォックスのほうを向いた…と思った瞬間。

 

『やはり貴様から始末しておいたほうがよかったようだな!』

 

ブースターが点火しフォックスの方へと突っ込んでいく。

こちらもブースターを点火しリキッドのゴリアックに向かって突進をする。

互いに高速で突っ込んでいき―――リキッドが俺の機体を掴んでいたため互いにすさまじい勢いで壁に突っ込んでいった。

このときフォックスはすでに退避、少し遠くの場所まで跳躍していた。

ガァァァァァンととんでもない音が響き、ゴリアックは二機とも戦艦の壁に突き刺さる。

そして俺はというと、気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…ネー…ス…-ク…!スネー…スネーク!』

「『…いつまで寝ているつもりだ』」

 

オタコンとフォックスに叩き起こされ、俺はようやく目を覚ます。

はっきり言ってあのスピードで壁に突っ込んでいって死ななかったのが奇跡だが、俺は生きていた。

あのスピードならばもう二機とも動くことはできないだろう。

 

「…リキッドは?」

「『さぁな。あのスピードで壁に突っ込んでいったんだ、ただでは済まないとは思うが…』」

 

そこでフォックスは言葉を切った。

フォックスにもわからない、ということだ。

 

「『それより、向こうの部屋に『人間のほうの』リキッドの死体があったぞ』」

「本当か」

「『ああ。すでにお前の仲間に転送しておいた』」

『確かに転送はされたんだけど…何故かこの死体、右腕がないんだよね』

 

転送に失敗したのか、と疑問に思うオタコン。

だが、俺にはただ失敗しただけだとは思えなかった。

 

『うーむ…疑問は尽きないが、早くリキッドをゲッチュして離れ―――』

 

大佐がそこまで言った瞬間だった。

ガチャリと音がして…ピポサルのほうのリキッドが姿を現した。

 

「ウキィィィィ…‼(スネェェェェェク…‼)」

「リキッド…ッ!」

 

リキッドがこちらに向けて銃を構える。

フォックスはすでにメカボーを持っている―――が、先ほどの一戦で折れたらしく、元の半分しかメカボーはなかった。

俺はというと、ランチャーは置いてきた、ブーツは今は履いていない、銃は現在弾切れ(ただし時間がたてばまた残弾は戻る)でどうしようもなかった。

 

「ウキィ、ウキキッ―――(まだだ、まだ終わって―――)」

「いいや、()()()()()()

 

リキッドがそう言い切る前に、オセロットが奴のピポヘルをつかんでいた。

そのままピポヘルを無理やりサルからはがすと、先ほどまでリキッドだった者を俺たちの目の前に放り捨てた。

 

「残念ながら「私のボス」はお前ではないんだよ、リキッド」

「…オセロット?どういう意味だ」

「言葉通りだ、スネーク。そいつはもうゲッチュしていいぞ。こんなことを長々と話をしている場合じゃないからな。この戦艦は崩壊する」

 

そのオセロットの言葉を裏付けするように、天井からがれきが大量に降ってくる。

そのどさくさにまぎれ、オセロットはどこかへと歩き出す。

「また会おう」と、奴はそう言い残した気がした。

 

「『時間がないな…そいつをゲッチュして走るぞ!』」

 

フォックスはそう言いながらも、俺のランチャーと端末を回収して、返してくれた。

リキッドだった哀れなサルをゲッチュして、俺はダッシュブーツを履いて走り出した。

 

『スネーク!脱出用の飛行機のドックがその近くにあるから、急いで!』

「メイ・リン、道案内を頼む!」

『言われなくてもわかっているわよ、さぁはやく!』

 

メイ・リンの道案内に従いながら、俺たちはまっすぐドックへと向かう。

途中で何回か死にかけたが、なんとか俺たちは飛行機に飛び乗った。

俺たちが発進したあと、空中戦艦はバラバラに崩れていた。

 

「…危なかったな」

「『あぁ…一歩間違えれば俺たちもあの中で死んでいただろう…』」

 

そこで無線が入る。ハカセのものだった。

 

『スネーク、元気しとるかー?』

「…たった今、死にかけたところを命からがら脱出したところだ」

『フーム、それはよかったわい』

 

何が良かったんだとも思いつつ、嫌な予感に苛まれる。

 

『ところで物は相談なんじゃが』

「断る」

『話を聞かんか。―――ハルカという少女を知っているかね?』

「ハルカ?そいつは誰だ?」

 

そこでオタコンが通信に割り込んできた。

そういえばとでも言いたげな声だ。

 

『あー…ひょっとしてハイテクオリンピア初代チャンプの?』

『そのハルカじゃよ。実は今日本の上空の空中戦艦におっての』

「待て…まさか、今からニッポンへ行けとでもいうつもりか」

『よくわかったの。本人から通信があったんじゃ。ワシらよりも先に進んでおるらしくての』

『ひょっとして…そのハルカを守れ、とか…』

『勘が良くて何よりじゃ。頼んだぞ』

 

そこで通信は途切れた。最後の方で銃声がしたことを考えるに、多分戦闘が始まったのだろう。

俺はげんなりしながら窓の外を眺めた。

 

『スネーク…気を悪くしないでくれ。奴には私から言っておくから、そのー…なんだ、悪かった』

『うーん…これも任務の一環だと思って、助けてあげたらどうだい?』

『スネーク、頑張ってね。私も全力でサポートするわ』

 

そんなに俺を戦場に放り込みたいのかとは思ったが、よくよく考えてみると気が付けばいつも戦場に放り込まれている気がした。

今更いうのも野暮というものだろう。

 

「『フッ…頑張るんだな、スネーク。パラシュートは借りていくぞ』」

「…それを使ってどこに降下するんだ?」

「『…少し、な』」

「なるほどな…そういうことか。だとすれば俺に止める権利はないな」

 

つまりフォックスは己の大事な妹…ナオミを助けに行くつもりのようだった。

俺が今、未来のために銃を握っているのと同じように、フォックスは彼女の未来のために闘うらしい。

 

「…また会おう、フォックス」

「『ああ。お互い生きていればそのうち会えるかもな。…さらばだ』」

 

そうして、フォックスは機体から降りて行った。

 

「ふん…まさか俺があの男が言ったことをそのまま言うことになるとはな」

 

俺はそう呟くと、メイ・リンに通信を入れどの方向に行けばニッポンかを聞きながら機体を動かしていく。

覚悟を決め、俺はニッポンへと向かっていった。



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第二章 日本国上空・空中戦艦編
act8~協力~


フォックスと別れ、ハカセからの通信を拾った俺はニッポン上空の空中戦艦めがけて飛行機を飛ばしていた。

遡ること数時間前。ニッポンの空中戦艦はただで乗せてくれる訳がないため、どういう手筈で着艦するかを通信で話し合っていた。

 

「オタコン、戦艦に隙は無いのか?」

『えーと…』

 

通信の向こう側でカタカタとキーボードをたたく音がする。

恐らくは空中戦艦の隙を探しているのだろう。

 

『うーん…ちょっとキツイかなぁ…』

『確かに。私も映像などを確認したが近づくものには容赦がない。…ニッポンの報道陣はよくもまぁ奴らをテレビに収めようと思ったな。これがプロ根性というやつか』

 

大佐がニッポンの報道陣に対し感心していると、突如としてメイ・リンが大声を上げた。

おかげで俺も大佐もオタコンも、思わず無線機を耳元から離すことになった。

 

『あぁーっ!』

「…メイ・リン。頼むからもう少し音量を下げろ。耳が痛くてかなわん」

『全くだよ…。一体どうしたっていうんだい?』

『それはごめんなさい。でもちょっとこれ、見てみて!』

 

メイ・リンから映像ファイルが送られてきた。

そのファイルを開くと、そこには―――。

 

『スネーク、これ!』

「ああ。新種のピポトロンとかいう連中だ」

『それに、スペクターっていうピポサルまで…』

「だが…ピポトロンメタは居ないな…」

 

そこで、大佐は口を開いた。

 

『ひょっとすると、そのスペクターはピポトロンメタが化けた偽物かもしれんな』

『偽物…?確かにメタは変身能力を持っているようですけど…』

 

さらに、フォックスからも通信が割り込んでくる。

どうやら無事のようだ。

 

『俺も少しその話は聞いたが、スペクターはどこぞの島国でも目撃されている。

…そんな奴がなぜ空中戦艦にいるんだろうな』

「その話が本当ならばそちらが偽物の可能性もあるが…。

ん、待て。聞いたというのはどこからだ?」

 

そこで再び、通信の割り込みが発生する。

俺のよく知った声だった。

 

『私―――正確に言うと、私が一緒にいるサルゲッチャー達が捕らえたピポサルたちだな』

『ナスターシャ!無事でよかった!』

 

オタコンが叫ぶ。

彼女の名はナスターシャ・ロマネンコ。

シャドー・モセス事件のときにも俺のサポートをしてくれた、フリーの軍事評論家だ。

現在はフィランソロピーの一員となり、「シャドー・モセスの真実」という本を執筆・出版し、

組織の資金源としても活躍してくれている。

今日は休暇で彼女はタバコが切れたと外に出て行ったらしい。

 

「…さらりと聞き流したが、サルゲッチャー達といるのか?まさか、お前今…」

『ん?一応言っておくが、ニッポンじゃないぞ?』

『どういうこと?』

 

メイ・リンが聞きなおすと同時に、大佐はなにか納得したらしくそういうことかと呟いた。

ナスターシャはカチンと言う音を鳴らしライターで火をつけてタバコを吸っているらしく、ふぅーと息を吐き出した。

 

『ナスターシャ。君が共にいるサルゲッチャーたちというのは、サトルくんとサヤカちゃん、そしてヒカルくんだな?』

『あぁ。やはり知っていたか。今は彼らと―――!?』

「ナスターシャ!?」

ザッツライッ(そのとおりッ!)!』

 

謎の男の声が近くなり、逆にナスターシャの声が遠のく。

そのまま男は続ける。

 

『おっと、自己紹介がまだだったな。私はDr.トモウキ…かつて人間にして人類の脅威と名乗ったただの科学者!28歳独身、身長190センチ(頭髪込み)、体重65キロ(頭髪込み)、好きな言葉は『パーフェクト!』、そして知能指数は驚異の1300なのだ!通信傍受を利用した諜報活動(S I G I N T)などお手の物さ!もちろん好きな銃はリベレーター!あのフォルム…実にカッコいいとは―――』

 

その男―――トモウキは早口でここまで一気にしゃべると、トモウキの声がどんどん遠のき、今度はナスターシャではない女性の声が近くなってきた。

 

『ごめんね、うちのトモウキ君が』

「…ちなみにお前は…」

『あ、私はアキエというわ。よろしく頼むわねぇ』

『二人とも…元気なのは何よりだが、もう少し自重をしたまえ。私はともかく、真面目に作戦会議をしていたスネークやエメリッヒ博士、それからメイ・リンが驚いているだろう。…すまないな、私の友人たちが』

『スネーク、彼らもハカセの知り合いさ。彼らの力を借りれば、さらに戦況は良くなるかもしれない』

 

この怒涛の通信を受け若干呆れてしまっていた。

俺は気を取り直して、ナスターシャに聞く。

 

「今回のピポソルジャー達や俺の装備はどう考えても普通の軍隊が使うものではないな。

これはどこかの特殊部隊が開発したものなのか?」

『お答えし―――』

 

通信の奥の方から「いいから退け!」というナスターシャの軽く怒った声がだんだん近くなっていった。どうもずっとトモウキとアキエに通信機を取られていたらしい。

 

『いや…このレベルの装備を作れる国は現在考えられない。それこそハカセやトモウキ、アキエのような連中でもない限りな』

 

ナスターシャがそう言った瞬間、通信機の奥の方で「カツラのおじさんもアキエおばさんも悪いことなんてしてない!」という少年の声が飛んできた。

そのあとに「いや、ハカセも擁護してやりなさいよ…」という少女の声と、「でもハカセなら開発しかねないよね。悪用するかは別として」という別の少年の声も聞こえた。

 

『…だ、そうだ』

「…随分慕われているな。アキエとかいうのはともかく、トモウキの方は昔ピポサルと組んでいたならもう少し警戒すべきじゃないのか」

『そう言うな、スネーク。少なくとも昔はいい奴だったのだぞ、昔は』

 

そういう大佐に対して、俺は思わず笑ってしまった。

サルゲッチャーというのは子供とはいえあまりにも素直だとつい思ってしまったのだ。

 

「まぁいい。それよりも、ニッポンの空中戦艦にどうやって乗り込むかだ」

『問題はそこよね。いくらスネークが潜入のプロとはいえ、あの戦艦には流石にセンサーぐらいはついているでしょうから、正面から突っ込むのは難しいんじゃないかしら』

『確かにね。むしろ拠点にセンサーもつけずに侵略行為をするのは考えづらいな。…ハッキングでも仕掛けてみようか?』

「やめておけオタコン。相手には情報処理のエキスパート(ピポトロンクラック)までいる。下手になにかやったらすぐにバレるぞ」

『スネークのいうとおりだな。エメリッヒ博士の案は私は賛同しかねる。むしろ端末内部から逆に情報やらを抜き取られる可能性もある』

『ふうむ…ではスネーク君の機体を絶対に戦艦に届かせるために囮を使ってみるのはどうだろう』

(デコイ)か…」

『けど、そのデコイはどうやって調達するの?』

『安心したまえ、お嬢さん』

 

トモウキが自信満々な様子で割り込んでくる。

奴はどうもこれならば侵入できると確信しているようだ。

 

『実は私はロボットを作成するのが趣味にして特技なんだが、ロボットを四機製造した。そのうち一号機―――まぁ機体名は「トモウキングセカンド」というんだが、私が乗り残りの三機に関しては完全に自動操縦させる。つまりは熱源を多くし、撹乱するということになる。さらに残りの三機についてはアキエ君と私で共同でAIを組み、あるコマンドで自壊させるようにした』

『なるほど…でもそれじゃスネークの機体がレーダーに引っかかるんじゃ?』

『それ以前に…一応一般人のトモウキ君がその「トモウキングセカンド」とやらに乗り込んでスネークのサポートをするのもおかしな話だろう』

 

大佐がそこについて危惧すると、トモウキは笑いつつもこう続ける。

 

『いえ、これも私の罪滅ぼしの一つですから。それにいざとなればゲットアミの転送装置を応用した脱出装置で脱出させてもらう。私が考えたプランとしては何かの方法で戦艦そのものに穴を開けてそこから突入するか、パワーアップパーツのパワーAを二基、もしくは三基その飛行機にセットして超高速で空中戦艦に突っ込むだろう。早い話が、スネークくんの乗っている機体を特攻させずに外部から穴をあけ機体をそのまま破棄するか、機体を特攻させて戦艦に機体を差し込み、そこから突入させるかの違いだ』

『もし後者の作戦を選択するんだったら、ステルス迷彩も飛行機に積んでいこう。レーダーに映っても多少はなんとかなるんじゃないかな』

 

オタコンがそこまで続けると、ナスターシャも口をはさんでくる。

作戦について、彼女なりに考察していたらしい。

 

『確かにいい案かもしれないが、加速して突っ込むというのはスネークに死ねと言っているものだぞ』

「では外部から穴をあける、という方法を用いるんだな?しかし、外部から穴を開けるというのはどうやって行うつもりだ?戦艦というからには、外部の装甲は堅いはずだ。そう簡単には穴は開けられないだろう。そのあたりは策が何かあるのか?」

『トモウキングセカンドにランチャーを搭載しているんだが、それを使ってある一定部分を攻撃する。所謂力業だ』

「フン、隠密行動もあったものじゃないな」

 

とりあえず皮肉を口にしておくが、先ほど空中戦艦を落としてきたのでよく考えれば隠密行動もクソもあったものではなかった。

というか薄々考えていたがわざわざこの機体で空中戦艦に体当たりをする必要ないのではないかと俺は思い始める。

そもそもハルカとやらとハカセ達がすでに空中戦艦に乗り込んでいる。

どうやって乗り込んだかは知らないが、侵入者がいる時点で程度はわからないがあの戦艦の内部はもう既に混乱が起き始めているはずだ。

ならば、彼らの身の安全を考えてもやはり戦艦に穴をあけるとか、特攻とかは避けたほうがいいだろう。

その旨を話すと、全員がある程度の納得をしてくれた。

 

『そうだったね…どうやって突入するかだけを考えすぎてた』

『ん?ハカセ達は今その空中戦艦にいるのかい?』

『そういえばトモウキ君やナスターシャには状況説明がまだだったな』

『ああ。私たちからすれば「如何にニッポンの空中戦艦に突入するか」という話で終わっている。その前後の情報を聞き忘れていたな』

 

そうナスターシャが言うと大佐は状況説明をなるべく簡潔に説明した。

説明が終わった後、後から通信に割り込んできた二人はなぜこうなったかについて納得をしたらしい。

 

『なるほどな…それでスネークがトモウキの作戦を却下したのか』

『ふうむ…つまり彼らはすでに戦艦内部に侵入しているというわけだ』

『うむ。その通りだ』

『けど、どうするの?穴をあけるっていうのは没になっちゃったんでしょ?』

『うん。けど、さっきからちょっと考えてみたんだ』

「何か思いついたのか?」

『その前に、これを見てほしい』

 

そう言って端末に送られてきたのは映像。

新種のピポトロン達と、スペクターと呼ばれる存在が映っている映像と空中戦艦が動く映像だった。

 

『ふむ…これがどうしたんだい、オタコン君』

『よく見てください。空中戦艦がこのスピードで動いているにも関わらず、このデッキみたいなところでもピポトロンやスペクターの毛はあまりにも動いていないんです』

「なるほどな。その位置にはあまり風が来ていない。そしてデッキかどうかはわからんが、そこにそいつらがいるということはそこから内部に入れる通路があるということだな?」

『その通りさ、スネーク!』

『だがその位置までどうやって移動するんだ、という話にもなってくるぞ。相手は全力で妨害してくるはずだ』

『なるほど…そこで私というラグジュアリィな囮の出番というわけだね、オタコン君』

『…ラグジュアリィかどうかは誰もわかんないわよ?』

 

メイ・リンがそう言うと通信から「それトモウキさんの口癖みたいなものだから…」と声が飛んできた。

恐らく向こうのサルゲッチャーの声だろう。口癖についてはよくわからん口癖だが彼らが言うならまぁそうなんだろう。

 

「…それで、どうやってそのデッキのようなところに行くんだ?それからそのデッキは艦尾側か艦首側かどっちだ?」

『デッキは艦首側にあるんだけど…スネーク、そっちにパラシュートとチップはあるかい?』

「ん?ああ、パラシュートはある。チップは…三枚だ」

『よし。よく聞いてくれ、スネーク。作戦としてはこれでどうだろう』

 

オタコンが言うにはこういうことらしい。

チップ三枚でジェットデッキ―――フライングデッキの改造品だそうだ―――を作成、それに乗り移る。

そのジェットデッキにはパワーAを何基かとステルス迷彩を搭載してある。

そしてトモウキがなるべく艦首側に注意がいかないように陽動を行い、こちらはステルス迷彩を起動したジェットデッキでなるべく迅速にデッキまで移動を行い、さらにそこからジェットデッキ下部のハッチで乗り捨て戦艦内部に突入、という手段になった。

この通信のあと、映像にあったデッキがどのあたりかが記されたデータが送られてきた。

ちなみにこのデータは俺たちが脱出した空中戦艦から見つけたものらしい。

 

そして現在。空中戦艦のその巨体がどんどん見えてくる。

既にジェットデッキは制作され、機体内部に置かれている。

俺は機体を自動操縦にし、すでにジェットデッキに乗り込んでいる。仰向けの体制だ。

 

『そろそろ時間だが、準備はいいかね?』

「ああ、もちろんだ。だがこの作戦、改めて考えるとかなり危ないな。誰かに裏切られたりでもしたらこの作戦はおしまいだからな」

『…まさかここまで信用がないとは思わなかったよ。だが安心したまえ!サトル君やサヤカ君、ヒカル君の前で彼らの信用を裏切る行為はしないさ!』

「だといいがな…」

『スネーク、いい加減彼を信用してやったらどうだ?私もいくらなんでもピポサルに協力したのはどうかと思うが、それで敗北したのにまさかこの期に及んでピポサルたちに協力はしないだろう』

『…一応ピポサルたちに協力したのには事情があるし、愚かな行為だと思っているのだがね…』

「なにか言ったか?」

『まさか、なにも言っていないとも―――そろそろ時間だ、私は発進しよう。ラグジュアリィな囮役は任せたまえ!いざ!トモウキングセカンドwithサーヴァントモウキーズ、テイクオフ・アンド・トランスファー!!』

 

トモウキがそういうとともに、空中戦艦の前に派手なカラーリングの機体が四機登場した。

そのカラーリングはとても目立つ。普段の潜入任務ならば絶対にお引き取り願いたいカラーだが、こと今回のような陽動においては非常に歓迎するカラーだ。

 

『さあ、私に注目してもらおう!ミッサーイル!ミッサーイル!』

 

ミサイルミサイル言いながらミサイルを撃ちまくるトモウキングとサーヴァントモウキだが、その動きはふざけているとしか思えないトモウキの発言とは違いとんでもなく速い。

もちろん空中戦艦もただ黙って攻撃を受けているわけではない。

機銃を連射したり、ミサイルを撃ったり、さらにはゴリアックまで出撃させていた。

しかし不意に、サーヴァントモウキーズが高速で動き始め、そしてある位置で止まった。

そして――――。

 

『行くぞサーヴァントモウキーズ!ラグジュアリィ・ビーム!フォーメーションスクエア!』

 

いきなりレーザーを放った。

そのレーザーはミサイルはおろか、ゴリアックまでもあっさり破壊し砲門を溶かしてゆく。

しかもご丁寧に一つづつ砲門を潰していく。

その光景に思わず唖然とし、さすがにIQ1300は伊達ではないのかと感心していると、

 

『ふむ…スネーク君!』

「…どうした?」

『すまないが、エネルギー出力を抑えてラグジュアリィ・ビームを撃っていたんだが、砲門が多く潰しきれなかった。そしてここからが本題だがもうエネルギーが切れそうだ。これでトモウキングセカンドwithサーヴァントモウキーズは空中を高速で漂うことしかできなくなってしまった。ミサイルも撃ちすぎたし私にはもうどうしようもないのであとは君に任せよう。グッドラック!』

 

この言葉だ。正直言って先ほど少し感心していたのを後悔したくなった。

とはいえ砲門をかなり潰してくれたのはありがたい。

 

『スネーク、いまがチャンスだ。多分今を逃したらどうしようもない。ジェットデッキで突入させる』

 

その言葉に同意し、改めて覚悟を決めた。

パラシュートで降下するタイミングはオタコンが通信により口頭で指示する手はずだ。

 

「準備完了だ。いつでも行ける」

『それじゃあ、発進させるよ!』

 

ゴォォォという音を鳴らし、とんでもない加速を行いジェットデッキが先ほどまで俺が乗っていた機体をぶち割って飛んでいく。

すさまじいGだが、これくらいには耐えきれる。

 

『スネーク、ハッチ開放ポイントまで20秒だ!』

 

オタコンが叫ぶ。

更にカウントダウンが始まった。

 

『開放ポイントまであと10…9…8…7…6…5…4…3…2…1、ハッチ開放だ!』

 

突如としてハッチが開く。それからほんの数秒待って俺はパラシュートを開く。

わずかに空中を舞い、そしてぎりぎりデッキまでたどり着く。

パラシュートを外し、デッキの上をゴロリと転がる。

俺は仲間たちに連絡を取った。

 

「こちらスネーク…デッキまで到着。これより新たなる任務を開始する」

 

俺はそう通信を入れ、そして手近にあった扉を開いた。




遅くなりました最新話にして新章第一話です。
突入のアレは小難しく書いてありますが、MGS3のスネークイーター作戦のドローンの奴をイメージしていただけるとわかりやすいかと。

なおこの突入、大分迷った末に書き上げた展開なので悪い点などがあっても、
「あれ、ここおかしいぞHAHAHA」ぐらいの感覚で見ていただけると嬉しいです。

さて、最後に。

遅くなって申し訳ありませんでした。


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act9~共闘~

久々の投稿です。
今回も駄文のくせやたら長いです。
ご了承ください。


トモウキの協力を得て、俺はデッキから戦艦内部へと潜入を果たした訳だが―――。

 

「オタコン。少々妙なことになっている」

『どうしたんだい、スネーク』

「あぁ。トモウキの陽動で、派手に侵入してきたんだ。侵入は悟られているだろう」

『それはそうだろうね。絶対にレーダーに映らなかったとは言えないし、ジェットデッキを戦艦の壁面に近づけるだけ近づけたんだ。気づかないほうがどうかしてる』

「確かにな。だが、隔壁一つ下りてない。まさか気づいていない、なんてことはないだろうが…」

 

俺もオタコンも、恐らくこの無線を傍受している者全員が薄々こう思っている。

―――何かしらの罠がある、と。

 

『気を付けるんだ、スネーク。どこから敵が出てくるかわからないぞ。常に警戒を怠ってはいけない』

「当たり前だ。警備が薄いように見える場所ほど何があるかわかったもんじゃない」

『長年の潜入任務をこなしてきただけはあるな、スネーク』

「おかげさまでな」

 

そうは言いつつも俺はマシンガンを下ろさず警戒をし続け、監視カメラに映らないように進んでいく。

時にはカバーアクションをしながら、周りを索敵する。

が、それでもピポサル一匹見つからない。もっとも基本的にはピポサルたちはワープを行ってくるので見つからないのも無理はないともいえるが。

しかし、進入が順調だったのもそこまでで、最初に墜とした戦艦内部で見つけた内面図ではブリッジにつながる通路が隔壁で塞がれている。

 

「こちらスネーク。ブリッジにつながる通路が隔壁に塞がれている。破壊は無理そうだ」

『だったら迂回するしかない。けど…』

「どうした?」

『やっぱりこの状況は妙だと思わないかい?最重要区画を隔壁だけで侵入を防ぐなんて…』

 

ここでナスターシャが通信に割り込んでくる。

 

『案外、ニッポンのサルゲッチャー達への対応に追われているだけなんじゃないのか?』

「確かに、考えられなくもないが…」

 

メイ・リンと大佐もさらに通信に入ってくる。

 

『スネーク、気をつけろ。誘導されている可能性がある。今まで以上に警戒をして進むんだ』

「了解だ」

 

そうしてブリッジへの通路から離れ、別のルートを探し始める。

すると進んでいくうちにどんどんピポソルジャー達による警備の光景が見えてきた…のだが、忙しなくピポソルジャー達が動いているのを目撃、その様子はさながら何かを警戒しているようだった。

そのうち一匹をネットショットやレーザーガンで誘導を行い、メカボーで殴って武装解除したうえでピポサルにレーザーガンを突き付けると、今の戦艦内部の状況をしゃべり始めた。

仮にオセロットが拷問を行ったらこいつは一分どころか三十秒持たないだろう、という考えがふと頭をよぎっていった。

 

「キ、キキィ!ウキキッ!(き、貴様どこから!?侵入者は二チームと一人じゃなかったのか!?)」

「生憎だが、俺はさっき入ってきたばかりだ。ところで…一人で行動している侵入者、そいつはこいつのことか?もしもこいつなら最後に目撃された場所も教えろ」

 

俺はハカセからオタコン経由で送られてきた「ハルカ」の映像をこの哀れなピポサルにみせてやった。

 

「キィ、キキッ!キィー!(た、多分、こいつだ…!さ、最後に報告が上がったのは…第二重機格納庫だ…っ!)」

 

それだけわかれば十分だ。破壊した装備からチップを回収し、ピポサルはゲッチュする。

重機格納庫…となれば、いくらサルゲッチャーでも一人では突破は難しいだろう。

 

「こちらスネーク…オタコン、ハルカに関する情報を手に入れた」

『よし。一体どんな情報を手に入れたんだ?』

「最後に目撃された場所だ。第二重機格納庫だと、先ほどのピポサルから聞き出した」

『第二重機格納庫だって!?あんな危ない場所にいたのか!?』

「そうだな。あんなところまで一人で行くとはいい腕前だ」

 

俺は再びレーザーガンを握りなおす。

他にもいる警備のピポサルたちを撃ち装備を破壊し、手早くゲッチュしていく。

そうやってエレベーターまでたどり着き、エレベーターに乗り込む。

敵の本拠地だけあって、何事もなく先を通してくれるわけもなく、ピポサルたちがワープを行い襲いかかってきた。

俺はやや離れているピポサル達に対してはランチャーを、中距離まで近づいたピポサル連中にはマシンガンやレーザーガン、ショットガンなどを使用し撃破とゲッチュを行っていく。

たまに至近距離に近づいたピポサルには容赦なくメカボーを叩き込む等、ありとあらゆる手段を使っていくと最初は数で優勢だったピポサル軍団は徐々に姿を消していき、最終的には俺一人に制圧された。

そうしてエレベーターでの戦闘を終え、更に先に進んでいくと、戦闘音が先から聞こえてきた。

何が起こっているかを確認しようとすると、

 

「スピンショット!」

 

という声が聞こえたので物陰に隠れると、凄まじい音とピポサルたちの悲鳴が響いた。

何が起こったのかはわからないが、物陰に隠れた俺の横を数本の矢が飛んで行ったのは確認できた。

音が落ち着いたのを確認して物陰から出ると、そこには恐らく鎧であっただろう数々の金属片、倒れたピポサルたちと部屋の中心に立っている弓を携えている少女。

しかし、もっとも気にかかるのはおびただしい数の矢が横一列に部屋を一周しているしていること。

一体なにをどうやったらこうなるのか、俺にはよくわからなかった。

ここまでやったであろう少女に見覚えがあり、俺は声をかける。

 

「お前がハルカか?」

「ッ!?あなたは…何者ですか?」

 

俺のことを不審に思っている、ということをまるで隠そうともしない。それどころか少しでも怪しい行動をとればその手に持っている弓を引いて俺を射抜こうとしている。

なるほど肝は据わっていると思わず妙な納得をしたのだが、今の俺の任務は対象に不信感を抱かせることではではない。

 

『スネーク…いくらなんでも不審すぎるよ…そんな声のかけ方したら誰だって警戒するさ。今からでも遅くない、彼女の警戒を解くんだ』

「わかっているさ。対象に怪しさを抱かせたままだとこの任務は成功しないからな」

 

通信を入れてくるオタコンに対して俺はそう呟き、通信をそのままに改めてハルカに向き直る。

 

「自己紹介がまだだったな。俺はスネーク。一応お前を守ることが俺の任務だ」

「…任務…?ということは…軍人さん…?でもどうして私を…?」

「言っておくが、俺は軍人じゃない。そうだな…元軍人、という表現が一番しっくりくるな。

それで何故お前を俺が守らなければいけないのか、だったな。お前はハカセという男と知り合いだな?」

「そう…ですね…。ハイテクオリンピアで知り合いました。お父さんの大学の先輩だと」

「そのハカセからの依頼でな」

 

そんな話をするとある程度は俺を信用してくれたらしく、弓の弦から手を離した。

こちら側からもハルカに対し一応何個か言っておくこと、聞いておくことがある。

 

「…あまり効果がないと思うが、一応言っておくぞ。早くこんな物騒なところから離れて親父さん、あるいは母親と一緒に居たほうがいいだろう。なんでこんな危ないところに首を突っ込んできた?」

「お母さん、私が今より小さいころに死んじゃって。

今はたまたまお父さんと二人で暮らしてて、今日お父さんにお弁当を届けに行ったんです。そうしたらお父さんは居なくて…。

しばらくしたら空中戦艦の騒ぎと同時に、色々あって…。ひょっとしたらここにお父さんの行方に関わる「何か」があると思ったの。オリンピアの時みたいに…」

「オリンピアの時?あれは強力なウイルスによって一時的にVR空間が乗っ取られた、という話だったはずだが…」

「それは表向きの話。本当は何者かが手始めにVR空間を完全に乗っ取り、そこからさらに現実世界をも手中に収めようとしたという話なの」

「…オタコン。どう思う?」

 

話を聞いていたオタコンはうーんとうなってたが、やがてこう言い放つ。

 

『いきなり信じろっていうのもちょっと難しいけど…ただ、一概に否定するのも難しいかな。

っていうのも実際ハイテクオリンピアが行われた時間、実際にVR空間に居た人たちは何もしていないのにVR空間からはじき出されたとか空間の色が反転したとか、色んな「異常」を訴えていたみたいだから本当にただのウイルスかもしれないし、ハルカちゃんが言った通り管理者権限が掌握されたのかもしれない。同じようにオリンピアに参加したハカセに聞けばなにかわかるかも』

 

そこで沈黙を保っていたうちの一人、大佐が口を開いた。

 

『あまり口外してはならないと言われていたので黙っていたが…。オリンピア暴走の際、私はオリンピア会場に居たしハカセにも後々詳細を聞かせてもらった。

エメリッヒ博士の言う通り、オリンピアの世界は色が反転し不気味なモンスターまででる始末だった。

ハカセから聞いた話だとハルカ君やサルゲッチャー達、そしてピポサルたちと共に乗っ取られかけたオリンピアの管理者権限のあるコアを停止させ、コアのあるエリアから命からがら脱出したと聞いた。そうだろう、ハルカ君』

「はい。あの時聞いた声は、確かに男のものです。あの声は忘れたくても忘れられません」

『ということだ。オリンピアの事件は実際にあったことだ。私が保証しよう』

「…わかった。大佐がそこまで言うんだったら、俺はその話を信用しよう」

『スネーク…。ありがとう』

『いいのかい?』

「ああ。大佐が意味や理由なく嘘をつく人間じゃない。それにこの場において大佐が嘘をつく必要がない」

『わかった。スネークが言うなら信じるよ』

 

大佐のお墨付きもあり、俺たちはハイテクオリンピアの事件は確かに何者かが起こした壮大な事件であるということについて納得をした。

それにしても、父親が行方不明、か…。

 

「ふん。父親を探しにこんなところまで来るとはな。仲が良くて何よりだ」

 

皮肉混じりにこんなことを吐き捨てた。

と、同時に今の一連の流れで気になったことがあった。

 

「色々あったと言っていたな。一体何があった?」

「あ…。それは…」

 

ハルカが何かを言おうとした瞬間、彼女の顔が険しくなる。

俺の後ろを見ているようなので振り返ると、黒を基調に一部の体色が違うピポサル———―向こうの空中戦艦の資料で見たピポトロンと呼ばれる三匹のピポサルが立っていたのだった。

 

「ピポトロン…‼」

『ピポトロンだと!?スネーク、気を付けろ!奴らは戦闘になると容赦がないうえ、戦闘能力も凄まじいぞ!』

「わかっているが…まだ向こうには戦闘の意思はなさそうだ。少し様子を見させてもらう」

 

とは言いつつも、いつでも銃やメカボーを抜けるようにしておく。

奴らは俺の存在を認めると、なにやら話し合いを始めた。

聞き耳を立てると、どうにも奴らの俺に対する対処のようだ。

意訳すると、青い体色のピポトロンが、

 

「オイ、なんかもう一人人間がいるぞ、どうするレッド」

 

と言うと、すぐさま黄色が、

 

「どうする?消すか?」

 

とさらに聞き、赤色は腕を組みながら少し考え、

 

「やるぞ」

 

と言うと、こちらに向けて青色が突っ込んできた。

向こうの戦艦のデータに書かれていたので辛うじてメカボーを抜いて対応できたものの、想像以上に早く少し体制を崩してしまった。

当然ながらその隙を奴らは見逃さずに、黄色のピポトロンが黄色と黒の混じったエネルギー弾を打ち出してくる。

メカボーにつけたリフレク機能に賭けるしかない。そう思った瞬間だった。

 

「サンシャイン・アロー!」

 

ピンク色の矢が奴らの撃ったエネルギー弾を迎撃、互いのエネルギーが形を保てず霧散する。

青色にとっては予想外の出来事だったのか、少し動きが鈍ったように見えた。

この距離ならばと俺はショットガンを抜き青色に向けて連射する。

二、三発は当たったのだが、残りは避けられてしまった。

追撃しようとしたが、今度は赤色に接近してきたのを確認し今度はマシンガンを引き抜き弾丸をばらまいて一時的に距離を取り、Hランチャーで狙いをつけておく。

距離を取った先で、ハルカは先ほどの話をつづけた。

 

「…あいつらに誘導される形で…ここに来ました」

『なるほど。奴らもオリンピアの参加者、しかも黒幕に近い立場だったから何かあると感じたんだな?』

「…リスクの高い道を選んできたな。毎度この流れだったのか?」

「…どちらかというと…私が仕掛けたときの方が多かったような…」

「好戦的な奴だ」

 

とそんな話をしていると、赤色が接近してくる。

しかし、そんな中でも俺とハルカは冷静に作戦を固める。

 

「突っ込んでくる赤と追撃してくるだろう青は俺が何とかするが、お前には遠くにいる黄色を頼んでいいか。狙撃によさそうなものを持っていることだしな」

「わかりました。思いっきり行きます」

 

という会話が終わった瞬間、赤色は俺に向けて鎖を使いリーチを伸ばした斬撃武器で襲い掛かってくる。

それを二人そろってダッシュブーツで回避しその勢いのまま狙いをつけたランチャーをぶち込み、ランチャー本体を赤色に向けて投げる。

更に青色が突っ込んでくるのを確認しすれ違いざまにメカボーで殴る。

その間に、ハルカはダッシュブーツの勢いのまま数本矢をつがえて叫ぶ。

 

「ホーミング・アロー!」

 

矢が黄色を追っていき、ハルカ自身も追撃に向かっていった。

俺は青と赤、両方の相手を行うことになった。

赤色が妙なポーズをしたかと思うと床から紫色の棘が生えてきた。

ただ、よく見ると生えてくる場所の床は分かりやすいので回避は容易く、これを避けたあとには赤、青ともに逃げていったのだった。

赤、青、黄色が揃い、俺のことを利用させてもらうと言い残し、去っていった。

 

「逃げられたか。…怪我はなかったか?」

「はい…なんとか。それよりスネークさんは大丈夫ですか」

「俺なら大丈夫だ。お前の援護もあったことだしな」

 

そういうと、ハルカは俺にこう言ってきたのだった。

 

「疑ってすいませんでした。スネークさんのこと今なら信じられそうです」

「身体を張った価値はあったということか。だがな」

 

この先に進めばこういう危険はたくさんあるだろうし、家にでも戻っていろ。

そう言おうとしていた俺に「でも」とハルカは続けた。

 

「私は、お父さんに関する情報を知りたいから。

…やっぱりまだ、家には戻れません」

「…強情な奴め。怪我しても知らんぞ」

『うーん、やっばりスネークが守ってやるしかないよ。

ハカセには守れとしか言われてないんだし、本人にその気がないならやっぱり保護させるっていうのは難しいと思うよ』

『私からもお願いする。彼女を守って先に進めば、この件やオリンピアの件の両方に繋がる何かが見つかっていくような気がしてならん。君の負担を多くする羽目にはなってしまうが…』

 

俺ははぁとため息を漏らし渋々と言った。

 

「わかった。だがあまり前には出るな」

 

そういう風に釘をさし、最大の譲歩の言葉を口にしたのだった。




毎度の如く遅れて申し訳ないです。
一年に一度くらいのペースで駄文ですが、応援していただけると作者は泣いて喜びます。

さて。新年あけましておめでとうございます。
今年の豊富はなるべく早く最新話を投稿し一年に2話くらいを書き上げることです。
最後までお付き合いのほどよろしくお願いします。


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act10~邂逅~

お久しぶりです。
今回ですが、「サルゲッチュ ミリオンモンキーズ」からキャラクターの設定の改変の要素があります。
数年越しの投稿となりますが、お楽しみいただければ幸いです。


ピポトロンを撃退してから、俺はハルカとコミニュケーションを取っていた。

 

「ここからどうする気だったんだ?父親の居場所に関する手掛かりはあるのか?」

「…ここに来ればわかるって…」

「…何でそう思った?」

「…今回はピポサルが現れると同時にお父さんがいなくなって、街でこの戦艦のニュース映像を見たらスペクターというボスザルが居て。

だから、スペクターを捕まえてお父さんの居場所を聞こうと思ったんですけど…」

 

ハルカがはぁと大きくため息をつき、一方の俺は三色の黒ザルが消えたこの部屋の出口を見やった。

ディスクが落ちていたのを見つけ、側に歩み寄る。

状況的に考えて黒サル三匹が落としていったと考えられるものだ。

普通に考えれば手がかりなのだが、連中が落としていったであろうものだということを考えると手にするのは少し躊躇してしまう。

ただ、ハルカの父親に関する手掛かりもないので気は進まないがとりあえずオタコンに送る。

 

「オタコン、そのディスクはおそらく例の三匹が落としていったものだ。慎重に解析してくれ」

 

わかったとオタコンは言い、そこからすぐに解析を始めたようだ。

しかし、その後すぐに無線が飛んできた。

 

『スネーク。このディスクはプロテクトがかかってて時間がかかりそうだ。しばらく待っていてくれ』

「なるべく速く頼む。貴重な手掛かりだ」

 

しかし突如として、足音…それも靴のようなカツカツという音がが聞こえてきた。

 

「隠れるぞ」

 

こくりと頷いたハルカと共に、矢が刺さっている障害物の裏に隠れた。

靴の音は一人分。それに対してハルカは、

 

「ハカセさん達…ではないですよね」

「あぁ…奴らならもっと人数が多いだろう」

 

と言ってる間にも足音は近づいて来る。

物陰に隠れながら相手の顔を見ようとするも、帽子で顔が隠れていて誰かもわからない。

それでも俺たちは冷静に次の動きを決める。

 

「俺は奴に対しホールドアップを仕掛ける。お前には退路を断ってもらう。こいつを貸してやる」

「これって…」

「独自に改造したレーザーガンだ。奴が何か妙な動きをしたら牽制として足元付近を撃ってくれ」

「…わかりました」

 

とりあえずは了承してくれたようだ。

物陰から様子を見ると奴は真後ろを見ているようで、それを確認すると指を使ってハルカも分かりやすくカウントダウンを行う。

3、2、1…。

人差し指を倒し、0になった瞬間に俺は物陰から飛び出し相手にマシンガンを突きつける。

 

「動くな。…身に付けている物や装備をすべて外し、そこの格納庫のシャッターの前に投げろ」

「…」

 

言われた通り、相手は身に付けている装備を滑らせてシャッターの前に置いた。が、帽子は外さなかった。

俺はもう一度呼びかけた。

 

「帽子も含めてだ…捨てろ」

 

そう言った瞬間、相手は口を開いた。

その声は嫌でも忘れることのできない声だった。

 

「フッ…強気だな、お前は」

「…まさか!?何故貴様が此処にいる…!?」

 

俺が動揺した一瞬の隙を付き俺に接近してきたため、CQC(近接戦闘術)を仕掛けにくると直感する。

このままでは奴の一撃をもらうと思った瞬間、レーザーガンの狙撃により奴が距離をとった。

 

「やはり仲間がいたな…そこか!」

 

奴は凄まじいスピードで装備を拾い上げ、ハルカの隠れている物陰に向けランチャーを放つ。

しかしハルカは着弾する前に物陰から転がり出て、レーザーガンを俺に投げ渡してから慣れた得物である弓を引き、放った。

それが直撃した奴は煙から何も無かったかのように歩いてくる。

その間にハルカは俺の近くに走って合流してきた。

 

「やるな…小娘風情が」

 

帽子が吹っ飛び、完全に顔が露わになった男の顔はやはり俺の想像通りの顔をしていた。

…右目には眼帯をつけ、鬼のような形相をしたその男。

そいつの名は…。

 

「BIGBOSS…!」

 

元FOXHOUND総司令官にして、俺の宿敵。アウターヘブン(METAL GEAR)ザンジバーランド(METAL GEAR 2 SOLID SNAKE)という二度に渡り俺と戦い、そして最終的には俺の作った即席の火炎放射器により命を落としたはずの男が、今に確かに立っていた。

 

「なぜ貴様がここに…。貴様は確かにこの手で…!」

「ふん…そのような問答、意味も無いだろう。俺は此処に立っている。それがすべてだ」

 

どうなっているのか、理解を超えていた。

しかし奴はそこにいる。それは揺るがない現実だった。

俺が未だ動揺を隠せないでいると、奴はランチャーを発砲してきた。辛うじてそれを避け、その爆風を利用し俺たちは障害物へと身を隠すことにした。

 

「…聞こえていたな?」

『…うむ、聞こえていたとも…』

「あの…ビッグボスっていうのはあの人のことですよね?何か因縁がありそうな感じでしたけど…」

『あぁ、そうか…それはハルカちゃんは知らないよね…BIGBOSSっていうのは…』

「…俺の血縁上の父親だ」

「え…」

『だけど、とある地域で核まで用意して武装蜂起した。それを止めたのがスネークよ』

「メイ・リン、喋り過ぎだ。それよりもだ」

『先に進むならば絶対に倒さなければならんな…。しかしBIGBOSSか…遺体は確かにアメリカ政府が持っていたはずだ…一体何故…?』

 

大佐のその言葉を受け、俺はアウターヘブンやザンジバーランドでの戦いが頭をよぎる。

この手で奴を確かに討ち、その死体はシャドーモセスにてリキッド達が要求したはずだ。

 

「その人がどれだけ強いかはわかりませんけど…こちらのほうが人数は多いですから、多少は有利なんじゃ…?」

『どうだろうな…奴の場合人数差を実力でひっくり返してきかねん』

「だがとれる戦術が多いのは確かだ」

 

そう言った直後、奴が叫ぶ。

 

「どこに隠れた!!」

 

それと同時にこちらに向かってランチャーを発砲し、こちらの障害物を破壊してきたため、俺とハルカは別方向に転がり出た。

戦術を組み立てる前に戦闘行動を行うのは避けたかったが、しかし待っていたところで良い案は思いつかないだろうと判断し爆風が出ている間にダッシュブーツを履きメカボーを構えて突撃する。

 

「フン…居たな…!」

 

眼帯をしているため俺から見て死角となる左側から奇襲を仕掛けたが、奴の()により殴られはしなかったが体制を崩してしまった。

そのまま奴の横をすり抜けダッシュブーツを外しながら体制を立て直し、メカボーとマシンガンを両手に奴と相対する。

 

「…時間がないというのに、とことんまで邪魔になる奴らだ…」

「俺がやり過ぎるというのは10年前(アウターヘブン)から貴様が一番身に染みてわかっていると思っていたがな!」

 

俺がそう言うと、BIGBOSSは怪訝そうな顔をしてこう言い放った。

 

「…10年?」

「何…?」

 

俺がその言葉に疑問を浮かべると同時に奴はランチャーを捨てて銃を取り出し、発砲してくる。

着弾寸前、ギリギリの所でメカボーで奴の弾を弾いたその瞬間、奴はこちらに駆け寄りCQCの構えを取り俺の腕を取ってくる。

それに対してあまり使いたくはなかったが腕を取られており被害を避けるためやむを得ずCQCを使用すると、BIGBOSSはあっさり投げ飛ばされていった。

そんなBIGBOSSの姿を見て、俺の中に一つ疑惑が浮かぶ。

 

「…大佐」

『どうした、スネーク!?』

「奴は…()()()B()I()G()B()O()S()S()()()()?」

『どういうことだ…?』

「俺からの質問に対し具体的な理由や答えはすべてはぐらかしているし、奴はCQCの技術が異常に低くなっている。その上アウターヘブンやザンジバーランドのことを覚えていないようだった。…どうも奴らしくない」

『記憶を失っているという可能性はないのか?』

「だとしても、兵士としての技術は体に染み込んでいるはずだ。そして染み込んだそれはそうそう抜け落ちはしない」

 

そこでオタコンははっとした様子でキーボードを叩き始めたらしく、タイピングの音が響く。

そうしてオタコンは呟く。

 

『ピポトロンメタ…』

「あれがピポトロン…!?そんな、あれはどう見たって…」

 

ハルカが驚愕の声を上げる。

無理もない。ハルカにとっての「ピポトロン」とは赤、青、黄のどれかと黒色の体色をしたピポサルだ。

まさか人の形をとっているなど思いもしなかっただろう。

俺も先にデータで確認していなければ奴は大幅に技術が低くなってこそいるBIGBOSS本人、もしくはその顔だけを真似した素人としか考えられず、誰かが姿を変えているなどとは露程思わない筈だ。

 

『けど、ちょっとおかしくないかい?だってピポトロンメタは戦闘技術もコピーできるはずだ。なのにBIGBOSSのCQCをコピーしていないなんて…』

『していないのではなくできなかった、もしくはそれを行うには時間が足りなかったのかもしれん。

とにかく今ではBIGBOSSの技術や経歴は奴がアウターヘブン、ザンジバーランドと国家反逆を立て続けに行った結果、秘匿されているんだ。奴の遺志と技術を持った危険因子を増やさないためにな。それに技術は要らなかったのかもしれん。知る人ぞ知るBIGBOSSという兵士達の中での絶対的な象徴(イコン)さえ手に入りさえすれば…』

「BIGBOSSが持っていたカリスマ性に惹かれた兵士達を利用できるというわけか…」

 

もしそうなれば事態は更に厄介なこととなる。

ただでさえ数で勝り、その技術力で各都市を制圧してきたピポソルジャー達に十分な作戦立案のできる人間が混じれば奴らは更に柔軟な動きができることになる。

各国の正規軍は更なる苦戦を強いられるだろう。

それこそ最終的に「猿の惑星」となってしまう可能性が出てきてしまうのだ。

 

「とにかく今こいつに表舞台に出られるにはいかない、ということか…」

『その通りだスネーク。何としてもそいつをここで止めるんだ!』

 

大佐の指示と同時にマシンガンを抜き、BIGBOSS…ピポトロンメタへと向け、発砲した。

奴は人間離れした動きでそれを回避し、ランチャーを素早く回収し俺に向け砲弾を放とうとしていた。

その瞬間、死角から飛び出したハルカが狙いすましたかのように弓を引き、エネルギーを放つ。

 

「何…っ!」

 

それに気づいた瞬間、奴は俺たちが先程やったように物陰に隠れて防ごうと動き始める。

しかしそれを予期していたのかハルカは4本の矢を番え、叫ぶ。

 

「ホーミングアロー!」

 

先程黄色のピポトロンに向けて使用した、相手を追尾する矢がピポトロンメタに向け飛んでいく。

 

「くっ…」

 

退避が間に合わないと判断したのか、ピポトロンメタは最初のエネルギー弾を自身の持つランチャーを放って相殺しつつ、マシンガンを使い追尾する矢を的確に落としていく。

その一連の行動を奴がしている間に俺はダッシュブーツを使い、体制を低くしながら奴に忍び寄る。

そうして奴が全ての矢を落とした頃には俺は奴の真後ろに立ち、メカボーをBIGBOSSの姿をとった敵の脳天に振り下ろす。

 

「ぐぅ…っ!」

 

呻き、体制を崩した瞬間に正面に回り込み、顎をメカボーで殴りつけた上で腹に拳を入れ最後に奴の腕と胸ぐらを取りCQCの要領で床に叩きつける。

 

「がっ…はぁ…ッ!」

 

一連の攻撃で取り落とした武器を足で奴の手に届かない所に退かしつつ、俺は銃口をピポトロンメタに突き付けた。

 

「どうした。BIGBOSSはこの程度では倒れなかったぞ?」

「貴…様…ァ…!」

「ふん、所詮その程度という訳だな。…まぁいい、お前には知っていることをすべて吐いてもらう。この騒動の黒幕は誰だ?ハルカの親父さんは何処に居る?」

「……」

「答えろ!」

 

そう言ってマシンガンを頭部の真横に向けて撃ち込む。

しかしながらそんな圧倒的に不利のはずの状況の中でBIGBOSS…ピポトロンメタはその口をグニャリと曲げ、嗤う。

 

「フフ…その様子では伝説の傭兵とやらも、我等の真の目的を全く知らないようだな…」

「何…?」

 

その時頭に直接声が響く。

 

『喋り過ぎだ。お前にはまだ使命があるのだ、私に処罰をさせるな』

 

これは超能力…それもテレパシーのようだ。

それを聞くと同時に突如何かが壊れるような轟音がすると同時に、大きな煙幕をたてて俺の視界を遮った。

スモークの類ではなく、土煙。

 

『初めまして、だな。ソリッド・スネーク…』

 

その言葉と同時に先程までは何の気配もなかった筈の俺の真後に気配を感じた。

振り向くと金色の瞳を持つ「そいつ」が鋭い目つきで俺を見ている。

俺が「そいつ」をそう認識した瞬間、俺の身体はハルカの近くに吹き飛ばされていた。

 

「スネークさんっ!」

「…大丈夫だ。それよりも…」

 

一体何が起こったのか確認するために煙幕を見やると、そこには2つの影があった。

再び轟音がしたと思うと今度は煙幕が晴れ、そこには白い体毛が体を覆う人間のような身体に狼を思わせる頭をもつ一体に加え、白いゴリラのような生物がピポトロンメタを肩に抱えていた。

そいつらの名は。

 

「ピポトロンJにピポトロンG…。まさか豪華三本仕立てとはな」

 

ハルカが弓を構えるものの、ピポトロンJが手で制する。

 

『今は君たちと戦うつもりはない。もっとも、望むならば相手になってやろう。…私ではなくこちらのGが、だが』

「…あなた達の目的は何?お父さんは何処!?」

 

ハルカがそう問うと、ピポトロンJはかぶりを振って答える。

俺はその間にちらりと武器のエネルギー量を確認する。

…マシンガンやレーザーガン、ショットガンはともかくランチャー系統のエネルギー量が少なくなっていた。

 

『君たちがこの先に進めばそれもわかるだろう。そうするならば勿論妨害させてもらうがね』

「今すぐあなた達から情報を…!」

 

弓から手を離してエネルギー矢を放とうとするハルカをしかし俺は制し、ブーツと牽制用にショットガンとマシンガンの準備をしておき、逃走の用意をする。

ここでこいつらと戦闘することとなれば確実にただでは済まず、そもそもピポトロンJの態度は攻撃を誘うためにこちらを挑発しているように見えたからだ。

 

「止せ。ここで乗ると奴らの思うつぼだ」

「でも…!」

「…それに、俺たちはさっきまでの戦闘で武器のエネルギーを使いすぎた。補給が必要だろう」

 

その忠告にハルカは納得していない様子であったが、一方のピポトロンJは俺の言葉を聞いて小さく拍手をしていた。

 

『流石は伝説の傭兵、といったところだな。状況をよく理解している。君のことだ、Gと君たち自身の力量差についても既に理解しているのだろう?』

 

俺は返答こそしなかったが、実際問題補給無しで奴らを全員撃破するのは不可能に近いと考えていた。

マシンガンやレーザーガンはチャージのパワーアップパーツの影響で弾薬は自動で補給されるものの、ランチャー系統の武器への補給はエネルギー缶が必要なのだ。

あのゴリラのような生物兵器相手ににランチャーの弾薬が心許ない状態で本格的な戦闘を行うのは避けたかった。

 

『安心したまえ。我々は今君達にどうこうするつもりはない。…私としても君達にはしてもらうことがあるのでね』

「…どういうこと?」

『何、こちらの話さ。…さて、我々はメタを早急に回復させる必要がある。申し訳ないが今は君達に時間は割けない』

「私達よりもそちらを優先するの?」

『その通りだ。始末するにも捕らえるにも時間がかかる上我々も君達も無傷というわけにもいかないからな』

「なら俺達はお前達が撤退したあとにゆっくり進ませてもらう」

『構わない。我々は君達をもてる力すべてで歓迎させてもらうだけだからな。…代わりに、というのもおかしな話だが。一つ教えておいてやろう』

 

そう言ってJは腕を組んで、静かに俺達が求めるものについて零した。

 

『そこの少女…ハルカといっただろうか?この船には君の父親の動向をまとめたデータがある』

「…!?それは本当…!?」

「待て。それが本当だとして何故俺達に伝える?お前にとって俺達は敵の筈だ」

『信じないのであればそれでも良い。が、仮にここで私の話を信じなかったとして君達には他に情報があるのかね?』

 

そういって口角を僅かにあげるピポトロンJ。

奴の言う通り、俺達には他に行くあてもない。

俺が歯噛みしていると、奴はふっと息を吐きながら笑い話を続ける。

 

『この船にはさまざまな場所に端末がある。が、データは何処の端末からアップロードされたかあいにく忘れてしまってね。すまないが君達の方で勝手に探してくれたまえ。健闘を祈るよ』

 

そう言ってJとG、及びGに抱えられたメタは転送装置で去っていく。

敵である筈の俺達に情報を与え、困惑する様子を見届けながら。




act10を読んでいただきありがとうございます。

ピポトロンJの設定や性格はミリオンモンキーズよりもサルゲッチュオンエアーのものに近くなっています。
理由はかなりメタい話になりますが、ミリオンモンキーズの描写からだと何ができてどういう性格でどうやって戦うのかがさっぱり解らないからです。
なので、これから登場する彼の口調や性格、戦い方は基本的にオンエアーの設定に準じたものとなりますのでご了承ください。

最後に、更新がだいぶ遅くなってしまったことをお詫び申し上げます。


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