妖精の尻尾と酒天童子 番外編 (月詠朧)
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それなりに近く、限りなく遠い世界から
その1  萃香、東の秘境へ


本編から切り離しただけなので、内容は変化ありません。



「はぁ?評議院から依頼だってぇ?」

「うむ。萃香もS級魔道士になったじゃろ?他の奴らには任せられん難易度の、突発的な仕事をS級魔道士にと持ってこられてな~。それでな?お前さん以外のS級魔道士は全員出払っとるんで、行って欲しいってわけじゃ」

 

 S級魔道士になってからしばらく経った頃のこと。

 マカロフに呼びだされて、何事かと話を聞きに行ったら面倒事を押し付けやがった。

 

「えぇ……嫌だよ、面倒くさい。確実に厄介な仕事じゃぁないかい」

 

 確実に仕事達成に2週間とかかかる仕事だよ嫌だ絶対。働きたくないでござるぅ!

 

「まぁそう言うな。最近クエストを受けてなくて宴会用の資金もなくなってきておったろ。報酬金は3500万Jなんじゃが」

「やろう。さぁ、詳細の説明を」

 

 地獄の沙汰も金次第ってね。

 

「か、変り身はやいなおい。えーっと場所は、向日葵村。なんでも今まで影も形もなかった遺跡が突然現れ、その後、その場所から消えたり、同じ場所に現れたりするようになったそうじゃ」

「現れたり消えたりする遺跡ねぇ……その遺跡の調査しろと?」

「それがのぉ、調査のために派遣された魔道士が遺跡内部から戻ってこず、入ってから数時間ほどで遺跡が消えてしまうそうじゃ。現地の人々からは、現れたり消えたりする遺跡が(ゆめ)(まぼろし)なもののように見えることから、『夢幻(むげん)遺跡』なんて呼ばれておるらしい」

 

 夢幻遺跡?どっかで聞いたことがあるような無いような……?

 ともかくまぁ、厄介事なのは確定かぁ。未帰還者でてるみたいだし。まさかと思うが、魔道士を捕まえるための施設みたいなもんなんじゃないだろうねぇ。

 

「んで、期限とかはあるの?」

「いや、調査をして無事に戻ってきてもらえればいいらしい。出来れば現れないようにするか、消えないようにするかして欲しいらしいがの」

「ふぅん、了解了解。そんじゃま、たまには働きますかねぇっと」

 

 そんな訳で、宴会資金のために。ついでに、遺跡の名前の既視感?既聴感かな?が気になったので依頼を受け、東の果てにあるという向日葵村へと向かうこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 汽車に馬車に徒歩。山越え、谷越え、密林越えて、やって来ました向日葵村。

 早速情報収集をと村をあっちへふらふら、こっちへふらふら。霧散しても良かったけれど、これほど遠くに来たのも初めてだし、たまには歩いて見て回りたいと思ったので止めた。

 向日葵村から少し行った場所には、太陽の花畑と呼ばれる一面向日葵が咲き誇っている場所があるらしい。管理人もいるとか。

 

 …………まさかねぇ?

 

 

 村の活気はそこそこで、遺跡に関してはまたかと呆れはすれど、その他の恐怖やら興味やらは殆ど無いらしい。あえて挙げるなら鬱陶しいので出て来ないで欲しいな、程度の反応である。どうもそこに在るだけであり、周囲への影響は無いらしい。一応確認のため数日ほど様子を見ることにする。

 が、遺跡が出たと言われた場所へ行ってみたら、現在は消えているようである。とりあえず、情報収集を続ける。

 そして聞き出した言い伝えはというと。

 

「古くからの言い伝えによるとじゃな、この遺跡には来た者をしあわせにする何かが眠ってるという話じゃ」

 

 ……なんなのさ、その怪しげな宗教の勧誘みたいな言い伝えは

 さらにどうやら、一番最初に遺跡が現れた時にこの言い伝えが書かれた『()()()()()()()()』が村に大量に出回ったということだ。実物も見せてもらったが……

 

 ……流石にこれは無い。見終えた瞬間に粉々にした私は悪くないはずだ。絶対。

 更に詳しく聞くと、どうやら紙がばら撒かれるより以前にこの話は無かったようである。紙に古の遺跡だとか書かれていたので、それが原因であると思われるが……開店とかご来店とか書いてある時点で信じるなよ。

 そして粉々にしてしまった紙だが、書いてある内容が朧気ながら既視感があった。なんだったかなぁ?

 とりあえず、遺跡が出てくるまでしばらく観光と洒落込もうかねぇ。

 しっかし、どうもこの村は既視感塗れである。

 

 

 

 はてさて。

 

 

 

 

 番外2へ続く。

 



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その2  結局、酒、酒、酒。時々宴会。

本編からの切り離しです。内容変化なし。



 

 さてさて、向日葵村に滞在して早いもので、すでに1週間ほど経過している。

 遺跡が現れる場所だと案内された神社の裏手には、依然遺跡なんぞ現れる気配もなく。いい加減このまま待ち続けるのもいかがなものかと思い始めている所。

 

 ちなみに1週間の間、何をやっていたかというと、この辺の探索をしていた。

 太陽の花畑に行ってきて、花畑の世話をしていたチェック柄の少女と一緒に、綺麗な景色を見ながらちょっとだけ季節外れな花見酒をしたり。

 神社の裏手にある池にいた言葉を話空も飛べる不思議な亀さんと一緒に月を見ながら酒を飲んだり。

 きのこがたくさん生えている森で出会って仲良くなった悪霊さんと意味もないことを喋りながら森の中を案内してもらったり、彼女の弟子と彼女が作ったというキノコ酒を頂いたり。

 魔界から人間界旅行に来たという糸目の少女と仲良くなって、今度魔界に遊びに行くと約束を交わしたりと、それなりに充実した日々を送っていたけどね。

 

 

 

 

「遺跡は出ない、観光も終わった。どうしたもんかね~」

「なぁに、もうすぐ出ますよ御客人様」

「そうさね、きっと近いうちに出てくるさ」

「だといいんだがね」

 

 私のボヤきを返してくれる亀さんと悪霊さん。

 現在、神社の縁側で亀さんと悪霊さんと神社の神主様と満月を見ながらお月見宴会中です。

 神主様に神社で酒を飲みたいから場所貸してとお願いしたら「私も混ぜてくれるなら構いませんよ、んふふ……」と許可をくれた。

 ならばと、こちらで仲良くなった4人を一緒に呑もうと誘ってみた。で、来てくれたのが亀と悪霊さんの2人である。

 

 ちなみにみんなが飲んでいる酒は、私の持っていたひょうたんからの提供と神主様が貯蔵していた麦酒を頂いている。それをものすごい勢いで飲み干していく1人とチビチビと飲み進める2人。亀さんはアルコールを分解する仙術を使っているらしいし、悪霊さんの方は曰く「霊体は酔いにくいのよ(うそ」らしいからまだ納得できるのだが。

 

 神主様。なぜあなたは平気な顔して私の酒を次から次へと飲み干していくのですか?私より飲んでるとかちょっとドン引きなんですけど。

 

「しっかしまぁ、私の酒をそんなにドバドバ飲んで大丈夫なのかい?神主さんよ。この酒、相当度数が高いんだけど」

「んふふ、だってこんなに美味しいじゃないですか。まだまだ()けますよ」

「そ、そうかい」

 

 体は大丈夫なのかと聞いたら、いい笑顔でまだまだいけますと帰って来た。種族的には唯一の人間だというのに、この中で一番の飲酒量。しかも私が場所使わせてと言いに行った時にはすでに彼の周りには麦酒の空樽が4個ほど転がっていたのだが。

 

「こりゃザルどころかワクだね。ここにゃ始めてきたけど、(うそ こんなに呑める奴がココの神主だとは知らなかったよ」

「私も長いこと神社の池に住んでいますが、ここまで飲める方だとは知りませんでした」

「別に隠していたわけではありませんよ。日頃から飲んでますし。今日もココに来る前に麦酒の樽を6個ほど空けてきましたしね」

「うひゃぁ、あたしがお願いしに行ってから更に2つ開けてたのか!?しかもあれから1時間ほどしか時間がなかったってのに」

「貴女の持ちだというお酒が呑めると聞いて、楽しみで楽しみで……つい、ね。んふふ」

「「「酒を呑むのが楽しみでその前に酒を飲むってなにさ(なんですか)」」」

 

 すさまじいの一言である。

 周辺に住んでいる酒飲みであることを知っている人々から、『酒の精霊』とか『酒妖怪』とかなんて呼ばれているだけはある。

 

「しっかし、このまま遺跡が出なかったらどうしようかねぇ……。魔界に遊びに行く約束した事だし、そっちに行こうかね」

「そういえば先程も言ってましたけど、貴女は神社(うち)の裏手に出てくる遺跡の調査に来たんでしたっけ」

「調査して、出来れば出たままにするか、出ないようにするかしてこいって言われたのさ。村の人たちの反応見てきたけど、誰も彼も困ってなさそうだし、別に放置しててもいいんじゃないかって思えるけどね」

「むしろ困っているというよりは、面白がっているように見受けれられますが」

「あたしゃあんまり興味ないけど(うそ」

「ふーむ…………ンフフ、萃香さん。今日のお礼にこの神社の神様にお願いしてみましょうか」

「神様に頼む?どーいうことさ」

「いえ、ただ単に神頼みって奴です。一般人がやるより効果あるんですよ……ンフフ」

「うーん……そうだねぇ。ただ待ってるだけってのもアレだし、やってくれるってんならお願いしようかね」

「では明日の朝、此処に来てください」

 

 そんな会話をして、この日はお開き。

 神様に供えるお神酒として、酒樽1個分ほど神主様に渡してから、この村での宿泊先として使わせてもらっている寺子屋の先生の家へ。家主はどうやら、徹夜で歴史書の修正をするつもりの様であるので、声だけかけて先に眠らせてもう事にする。

 神主様が神頼みをしてくれるというが、あまり期待はしていない。

 最初に見せてもらった紙に書いてあった、開店時間とやらは10時となっていたのでテキトーに時間を見て現地に行くとしよう。

 

 

 流石に神頼みでポロッと出てきたりはしないだろうと、高をくくっていた事を後悔することになるとはこの時の私は知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、午前10時半、神社裏手。

 そこには、昨日は影も形もなかったはずのかなり大きな遺跡が、その場所にその存在を主張するかの如く建っていた。

 

「……ファ!?」

 

 

 

 

 その3へ続く。続くったら続く。

 




次回投稿6月中を予定。
本編の方に掲載したら、こんなのいいから本編よこせオラーっと言われたので切り離しさせて頂きました。

なお、チラ裏の為、これ以降本編よりはっちゃけることになると思います。


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何度目かの夢時空

表に本編も投稿されているので、興味やちょっとだけ見てやんよって人は見てくれるとうれしいです。

本編に引き続き番外編も投稿。
ただしこちら、この後の話でやらかします。たぶん。

それではどうぞ~


 

 この世界に何度目かの到着。

 例のごとく、神社の裏手に可能性空間移動船を止める。毎度の如くチラシをバラ撒き、船の入り口に看板を立てるウチのバカ助手。まぁお陰で何もしなくても観察対象(魔道士)がやってきてくれるので何も言っていないけれど。

 私こと岡崎夢美は、現地に到着と同時に周辺にいる人々の観察をするために、村をあっちへふらふら、こっちへふらふらと回っている所である。

 

 この世界は当然ながら、科学を信じてる人などほとんどいない。魔道士が幅を利かせているのを見て分かるように魔法が主である。

 私が居た世界では、重力・電磁気力・原子間力等の全ての力は統一できるなんて証明されていて、それに当てはまらないモノはないとされている。

 私は、この統一原理に当てはまらない力である魔力が存在する『非統一魔法世界論』を発表したところ、思い切り笑われ相手にされなかった。学会に魔力、魔法の存在を認めさせるために私は、可能性空間移動船を使ってこの世界へと何度も足を運んでいる。あまり成果はよろしくないが。

 

 しかし、何度来てもこの世界はとっても素敵である。一般人ですら魔法を使う事のできる世界。

 正直なぜ私は、この世界に生まれなかったのかと、生まれ育ちたかったと望んてしまうほどに素敵な世界であった。

 

「うーん、やっぱりこの世界は、私にとって夢の様な世界ね。まるで楽園。あぁ幸せだわ。魔法がこんなにいっぱいあるなんて。しかしまぁ、今回で終わりに出来ればいいのだけれど……」

 

 何時もの開館?時間までまだまだ余裕があったので、ふらふらと村を見て回っていると、バカ助手のバラ撒いたビラの噂を聞いたのか、この前には居なかった魔道士たちの姿がチラホラと確認することができた。

 

「あら、雨女の魔道士さん?素敵ね」

 

 道端の落ち葉を女の魔道士が彼女の周りにだけ降っている雨を操り集めている。魔法で。素敵。

 

「ポリゴンみたいにカクカクした顔の人も素敵ねぇ」

 

 顔がカクカクしている人は畑を耕すのを手伝っている。魔法で。素敵。

 

「ナマハゲっぽい仮面の人も素敵。あぁ、素敵だわ!」

 

 緑色の髪の毛のナマハゲっぽい仮面をつけたおじいちゃん……おばあちゃんかしら?も屋根の上をピョンピョン跳ねながら進んでいっている。機械の補助なしなので魔法の補助をうけているのだろう。あぁ、素敵ね。

 そんな魔道士たちの行使する魔法を見ながらウットリしている内に、いつの間にか神社の裏手……船の入り口まで戻ってきてしまっていた。

 

「あら?私ったらなんで戻って来ちゃったのかしら。まだまだ見て回りたいと思っていたのだけど」

「そりゃアンタ、アタシがこの遺跡の主殿に出てきてほしかったから、魔法でこっちに来てもらったからさね」

「あら、素敵ね。そんなことも出来るなんて」

 

 そう言いながら振り返ると、神社の縁側でお酒を飲む小さな女の子がいた。

 

「いや、悪いねぇ。ちぃっと話がしたかったもんだからさ」

「いいえ、とっても素敵な体験をありがとうお嬢さん。お名前は?」

 

 朝っぱらからお酒を飲んでいる小さな子という、私の世界だったらちょっとアレな娘に名前を尋ねてみる。もしかしなくても成人しているのかしら?

 

「それはどういたしまして。始めまして、伊吹萃香だ。むず痒いからお嬢さんなんて呼ばないで、萃香って呼んどくれ」

「えぇ、分かったわ萃香。私は岡崎夢美。そうねぇ、岡崎でも、夢美でも好きな様に呼んで頂戴。私は、平行世界……って分からないか「分かるよ」そう。平行世界から魔力の研究に来たの」

「りょーかい、夢美。しっかし、魔力の研究ねぇ……」

「魔力の研究というか。魔力、ひいては魔法が存在するって証明がしたいのよ。私の住んでるところでは、全ての力が統一原理によって~……私の専門は比較物理学で~……統一原理では証明できない力があると~……見返してやるためにこの世界へやって来たのよ」

「なるほどねぇ」

 

 話を聞いてくれそうな雰囲気を感じて、つい長々と私の世界について説明をしてしまった。

 彼女……萃香は、嫌そうな顔をせずにしっかりと聞いてくれた。とても聞き上手な子だと思う。

 

「ふぅん、なら適当にこっちの世界で魔道士をとっ捕まえるなり、魔法を覚えて帰るなりすればいいんじゃないの?」

「もちろん、魔道士を連れて行くのは、研究が行き詰まればやむ無しね。魔法を覚える方は……ダメだったのよ」

「まぁ、とっ捕まえるのはやり過ぎだとアタシは思うけどね」

「当たり前よ。ちゃんと交渉してお願いするつもりだわ」

「そうかいそうかい、なら別にかまわないんだ。それでなんだが、夢美さんや。あたしがあんたをわざわざ呼び出した理由ってのは、その船に入った魔道士が行方不明になってるってんで調査しに来たんだ。そのへん……どうなんだい?」

「あらあら?船に入ってきた彼らなら、ちゃんとお願いして協力してもらって、その後彼らのお願いを聞いて叶えてあげてから帰ってもらってのだけれども?」

 

 ちゃんと私は(・・)お帰り願ったはずなんだけれど。どうなっているのかしら?

 詳しい話を聞いた所、どうやら彼女は突然現れる私の船の調査を依頼されてここに来ているらしい。とりあえず、今回も馬鹿助手がばら撒いているであろうチラシと、船の入り口に立てられた看板を見せる。

 チラシのほうは前回までのやつを見たからイイといわれたので、船の入り口へと案内をする。

 

 

             ----------------

            |       @@       |

            |  夢幻遺跡内 定員 1名まで |

            |                |

            | それ以上は、認められません |

            | 規定人数以上、入場された場合 |

            | この時空での遺跡の存在は保証 |

            |     出来ません      |

            |                |

             ----------------

 

 

「あー……もしかして。もしかしなくても、か。二人以上……入れてない?」

「私は入れてないハズよ。多分うちの馬鹿助手が入れてるかも……」

 

 あの馬鹿、やっちゃったかも……

 

 

 

 

次回へ続く。





はい、ご閲覧ありがとうございました。ここまで表で掲載されていた(予定だった)話です。
これ以降の話は裏に移した影響でボーソーする……ハズ。たぶん。きっと。メイビー。

誤字脱字等ありましたらドウゾご報告ください。
感想も、ウェルカムでぇす!多分時が加速します。

それではまた今度とか!


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