仮面の騎士と笑顔と希望の少女たち (烏賊の毒)
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第一章 海藤みなみの場合
Sの依頼/人魚姫は何を思う 1/4


とある風の都 風都

 

そのタワーのてっぺんに白い永遠の悪魔がいた。

 

「これで…終わりだあああぁぁぁあああ!」

 

悪魔は二色のハンカチに巨大なエネルギー弾を放つ。

 

エネルギー弾は、ハンカチに命中し、重力に逆らわせず急降下させていく。

 

その時だった。

 

「………ら………!」

 

「…め………だー!」

 

「仮面ライダー!」

 

風都の市民の声がハンカチを金色に染め上げた。

 

「風が…風都の風が…力を!」

 

そして、風都の風が文字通り悪魔に対抗しうる羽根を授け、悪魔めがけて一直線にキックを放ち、足は彼を逃さなかった。

 

「そうか、これが…!」

 

悪魔は独り呟く。

 

「そうだ、それが死だ。

大道克己。」

 

「死ぬのは久しぶりだなぁ。

ハッハッハッハ!

うわあああああああああ!!!」

 

二色のハンカチは白い悪魔が流させた風都の涙を拭い去る事が出来た。

 

しかし、悪魔に刺さっていたガイアメモリが全て破壊できた訳では無かった。

 

これは、その後の事件の概要である。

 

 

 

『Sの依頼/人魚姫は何を思う』

 

 

 

その日、海藤みなみは海に来ていた。

 

彼女にとって、海とは家そのものだ。

 

潮風が心地よく、波の音が心を落ち着かせる。

 

彼女は、私立ノーブル学園の生徒会長でありながら、夢の守り人 プリンセスプリキュアでもあるため、疲労が溜まっていたのである。

 

今日、彼女はプリキュアとして戦った後、一人海を眺めていた。

 

海が全ての疲れを癒す。

 

だが、海は時として問題を運んで来る。

 

「…あれは?」

 

彼女がふと近づいてくる波を見ると、岸に黒い小箱が運ばれて来るのが見えた。

 

そして、それは海藤みなみのいる砂浜へとたどり着いた。

 

「これは、一体…。

 …メモリ?」

 

そう考えていると、後ろに誰かがいる気配を感じた。

 

みなみが後ろを見ると、そこには白いスーツに白いハットを被った男がいた。

 

「…お嬢ちゃん…。」

 

その男は、唐突に話始めた。

 

「どうか…それを…使ってくれ…。」

 

男は海藤みなみの持つメモリを指差しながら言った。

 

「あなたは、一体…きゃっ!」

 

突然、突風が吹き、みなみは目を瞑った。

 

目を開けた時には、その男はその場にはいなかった。

 

「一体、彼はどこへ…。」

 

(ディスダーク?

 でも、そこまで悪いようには…。

 それに、このメモリを使う?

 何のために?)

 

「みなみさ~ん!」

 

物思いにふけっていると、元気な声が聞こえた。

 

「はるか!

 どうしたの?」

 

彼女は春野はるか 彼女と同じプリキュアだ。

 

彼女の事は、また次の機会に話そう。

 

「ミス・シャムールがクッキーを焼いてくれたんだよ~!

 みなみさんも一緒に食べよ!」

 

彼女には敵わない。

 

みなみは思った。

 

はつらつとした笑顔に明るいオーラ。

彼女は、どんな暗闇でも照らせるだろうと確信した。

 

「分かったわ。

 今行くわ、はるか。」

 

彼女がいると、気が緩む自分がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノーブル学園校舎裏

 

そこには、青いメモリが地面に落ちていた。

 

そのメモリのイニシャルは

 

 

 

 

 

 

『K』



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Sの依頼/人魚姫は何を思う 2/4

その男は、背中から血を流しながら倒れていた。

 

男は、青年に抱き抱えられながら静かに息を引き取った。

 

「はっ………!」

 

海藤みなみは、眠りから覚めた。

 

(またあの夢…。

 ここの所ずっと。)

 

彼女の目線の先には、机に置かれた小箱が置いてあった。

 

あの時の男が夢に現れる。

 

(使う時が…来るの?)

 

夢では時々、その小箱で異形の姿に変化し、怪人たちを倒す男が出てきていた。

 

(また、後で考えましょうか。)

 

そのまま、身支度を整え、小箱をカバンにしまい、彼女の一日がスタートした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここにもいないわ。

 一体、何処に?」

 

放課後、彼女は、一年のクラスに寄りに来たのだが、春野はるかどころか一年全員が誰も居なかった。

 

探している途中に書類を持った二人の女子 東せいらと西峰あやかに出会った。

 

「あれ?みなみ、ここで何してるの?」

 

「一年生全員が居ないのだけれど、知らないかしら。」

 

「一年生でしたら、職業体験に行っておりますが?」

 

(もうそんな時期だったかしら。)

 

 最近のプリキュアでの活動のせいなのか、学校行事の把握ができていない状況が起きていた。

 そんなみなみを見たことがない東せいらと西峰あやかは目を丸くして驚いていた。

 

 そんな二人を落ち着かせようと平常心を装う。

 

「ありがとう。

 私も書類を運ぶの手伝うわ。」

 

その数十分後だった。

 

外で爆発音が鳴ったのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノーブル学園校舎裏

 

「はぁ…。」

 

特徴的な衣装に着飾った白いシルクハットの男が俯きながら歩いていた。

 

(ロックの奴め…。)

 

彼の仕事は絶望を集める事だが、同僚が上司になってしまった。

 

「あぁ~!

 悩んでも仕方がない!

 絶望を集めるのみ!」

 

たまたま近くにいた男子生徒の夢を覗く。

 

 操縦士になりたい!

 

「その夢、絶望の檻に閉ざすのみ!

 シャットヨアドリーム!」

 

すると、男子生徒は檻に入れられ、そこには、飛行機の怪獣 ゼツボーグがいた。

 

「さぁて、行け!

 ゼツボー

 

 『KEY!』

 

 ー…え?」

 

青いメモリがゼツボーグに刺さる。

 

すると、絶望の檻に閉じ込められていた生徒は解放され、突然の事に驚き、逃げていった。

 

その後ろで、ゼツボーグの機体部分は徐々に小さくなり、翼部分は、カラスのそれになった。

 

「お前は…!」

 

(そんなはずはない!

 そんな馬鹿な!

 しかし…!)

 

 彼がそこまで混乱するのも無理はない。

 こんなことが目の前で起こっているからではなく、起こりそしてなった『者』に驚いているのだ

 そこには、かつての同胞、そして、憎きプリキュアに倒された今は亡き仲間の姿があった。

 

「クローズ!」

 

黒き鴉は、ニヤリと笑った。



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Sの依頼/人魚姫は何を思う 3/4

「お前は、クローズ!」

 

彼の目の前には、禍々しい黒のオーラを放つ鴉の姿があった。

 

「よぉ、シャット。

 どうしたんだ?

 死んだ奴が現れたような顔して。」

 

そんな事は分かっている。

今の彼には、考える余裕は生まれない。

 

「一体…!

 どうやって…!」

 

鴉はニヤリと笑う。

 

「さぁ、どうやってだろうなぁ。

 まぁ、この体は使いやすい。

 世界は全部俺がお前らに代わって絶望させてやるよ!

 まずは…。」

 

ギロリと学園の校舎を見る。

 

「プリキュアだ。」

 

そう言って、空へと消えていった。

 

「ロックに報告しなければ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園の近くで爆発音がした。爆発音は、学園と町を繋ぐ橋の近くで鳴った。

 

この音は海藤みなみの耳にも届いたらしく、すぐさま橋に向かった。

 

すると、そこには鴉がいた。

 

「あなた…クローズ!」

 

クローズはみなみを見てニヤリと笑った。

 

「貴様がプリキュアか…。

 まずはお前からだ!」

 

みなみに向かって急降下する。みなみは間一髪のところで避け、クローズから距離をおく。

 

「避けたか…。

 まぁ良い。

 次は外さない。」

 

やばい。

 

彼女は直感し、すぐさまプリンセスパフュームを取りだし、姿を変える。

 

「プリキュアの姿か。

 妙にストレスが溜まるなぁ…!」

 

その一言がキッカケで二人はぶつかりあった。

 

最初は、両者譲らなかったが、徐々にキュアマーメイドの方が守りに入ってくる。そして、最初はいなしきれていた殴打の応酬も次第にいなしきれなくなり、遂には、腹部に当たってしまう。

 

「………っ!」

 

なんとか倒れなかったが、痛みは、すぐには引かず、マーメイドの体力をじわじわと削っていく。

 

「弱いなぁ、プリキュアって奴も。」

 

その言葉にマーメイドは反応する。

 

「…あなた、クローズじゃないわね…?」

 

またも微笑する鴉。

 

「なかなか鋭いねぇ。

 そう、この体はゼツボーグとか言う奴の地球の記憶から俺の能力で奪ったもんだ。

 しかし、オリジナルのものと同等、いや、それ以上の力を持っている。」

 

「あなたは…一体?」

 

「俺の名はない。

 しかし、俺のメモリの名前はある。」

 

そう言いながら、クローズの姿をした者は青いメモリを取りだし、そのボタンを押した。

 

『キー』

 

「これが、俺だ。」

 

(メモリ…まさか!)

 

「さて、おしゃべりはおしまいだ。

 じゃあ、…死にな。」

 

そう言うと、キーは青と黒の球体を作り出し、それをマーメイドに浴びせる。

 

(メモリを使う…?

 でも、どうやって…!)

 

球体がマーメイドに直撃するとき、風が、パフュームからは光が放たれた。

瞬間、球体は爆発し砂煙が起こる。

 

「すまなかったな、お嬢ちゃん。」

 

そこに響いたのは、男の声。

マーメイドが一度聞いたことのある声だ。

 

「あなたは…!」

 

「仮面ライダー!

 なぜここに!」

 

一番驚いたのはキーだった。

 

(仮面ライダー?)

 

「メモリを渡してくれないか。」

 

そっと差し出された手に最初は戸惑ったが、男の真っ直ぐな目に、マーメイドメモリを渡す。

 

「さてと…。

 じゃあ、お嬢ちゃん。

 一緒に戦おう。

 変身。」

 

男は、メモリを赤いドライバーに挿す。

すると、彼の体が骸骨の姿になる。

彼は、キーに対して右手の人差し指を向けて、死刑宣告をした。

 

「さぁ、お前の罪を…数えろ…!」



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Sの依頼/人魚姫は何を思う 4/4

「さぁ、お前の罪を数えろ…!」

 

黒い骸骨に白いハット、哀愁を感じさせるボロボロの白いマフラー、それはまるで死者のような装いだった。

 

「仮面ライダアアアァァァアアア!!!」

 

「…お嬢ちゃん。」

 

ふいに彼がマーメイドに話しかける。

 

「奴は、メモリとゼツボーグが合体して出来ている。

 協力してくれるな?」

 

「はい…!」

 

骸骨…スカルがキーに攻撃を仕掛けた。

 

離れたところからスカルトリガーで乱射し、キーに近づくに連れ、火花が増す。

 

「こんな攻撃、利かん!」

 

しかし、彼は仮面ライダーに気をとられすぎた。

 

後ろからの攻撃をかわしきれなかった。

 

「アイス!

 プリキュア!フローズン・リップル!」

 

カキンカキン!という音と共にキーが凍らされていく。

 

「グウ…!」

 

すかさず仮面ライダーがベルトのメモリを銃にセットする。

 

『スカル!マキシマムドライブ!』

 

「ふん…。」

 

キーは受けきれず吹き飛ばされる。

 

「グヴゥゥゥ!」

 

すぐ立ち上がるキー。

 

その顔には、まるでもう一人いるような形相になっている。

 

「負けない…!

 二度と…!

 俺の力を証明して見せる…!」

 

凄まじい速度で二人のもとに走り、吹き飛ばす。

 

マーメイドは、倒れてしまう。

 

「貴様らのような奴に俺を倒すことは出来ない!

 何も守れず、死ぬがいい!」

 

その言葉に立ち上がるマーメイドが反応する。

 

「守れるわ。

 どんなに力がなくても、どんなに迷っても、どんなに自分が傷ついても…守ってみせる!」

 

隣にいた仮面ライダーはベルトのメモリをマーメイドに渡す。

 

「お嬢ちゃんの決断力なら、このメモリを使いこなせるだろう。」

 

「…いいの?」

 

「俺には、もう必要ない。

 大切な者を守るのは、もう俺じゃなくなった…。」

 

「それって…!」

 

そう言い終わると、男は風と共にどこかに消えていった。

 

「…使わせていただきます。」

 

手に持っている『S』のメモリのボタンを押す。

 

『スカル!』

 

そのメモリが光に包まれると、形を変えていき、新たなドレスアップキーになった。

 

「これは…!」

 

上部のボタンを押すとカシャンという音と共に鍵に変わる。

 

その鍵をパフュームに差す。

 

「スカル!モードエレガント!」

 

黒い光と共に骸骨を右肩にあしらったいつもの青色ではなく灰色のドレスに変わる。

 

「姿が変わったところで、俺に敵うわけがない!」

 

キーがマーメイドに向かって拳を放つ。

 

しかし、その拳はあっさりと捕まれてしまう。

 

「んなっ!」

 

スカルの特徴…それは骨からの身体強化。

 

故に、固く

 

強い。

 

「ていや!」

 

マーメイドが回し蹴りをすると、キーが海の方へ吹き飛ばされる。

 

すかさず、スカルドレスアップキーをプリンセスロッドに差す。

 

「裁け!スカルよ!

 プリキュア!イモータル・リップル!」

 

右肩の頭蓋骨が紫に光り、上空で浮遊する。

そこに、マーメイドが飛び、頭蓋骨を蹴る。

頭蓋骨は一直線にキーへと向かい喰らいつく。

 

「必ず…戻って…!」

 

爆散するキーを後ろに、前を見定めたマーメイドは一言言う。

 

「ごきげんよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの戦いから数日後

 

校舎内の廊下を歩いていた海藤みなみはキーの言っていた『仮面ライダー』というキーワードが頭の中をまわっていた。

 

「……仮面……ライダー……。」

 

「寮母の白金です。」

 

「ひゃっ!」

 

『仮面ライダー』と呟く海藤みなみに、いきなり寮母の白金が近づいてきた。

 

「私は仮面ライダーを一人知っています。」

 

「本当ですか!」

 

その言葉にみなみは食い付く。

 

「探偵でいくつか事件を解決してもらってましたから。

 しかし、確か数年前に亡くなったと聞きましたが…。」

 

「あ…そ、そうでしたか…。」

 

「写真ならありますが。

 これです。」

 

白金の差し出した写真には、あの時会った男と似ていた。

 

いや、そのままの姿だった。

 

白いハットに白いスーツ、褐色の肌。

 

「これって!」

 

「どうやら何かあったみたいですね。

 今は、お弟子さん達が探偵業を引き継いでいるみたいです。

 教えて差し上げましょうか?」

 

「是非!」

 

そうして、違う場所で新たな物語が始まる。



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第二章 紅城トワの場合
希望を欲した魔法使い 1/4


浜辺で青年と男が倒れていた。

 

その近くには、一人の少女。

 

片方の倒れていた男が、傷ついているのかゆっくりと少女に歩み寄る。

 

しかし、突如として現れた緑色の怪人によって切りつけられる。

 

そのまま、男が巻いていたベルトを貫く。

 

男はよろめき倒れながらも少女に手を伸ばすが、その手は、少女には届かずに紫色の塵となって消え去ってしまった。

 

それがこの男の末路だった。

 

『希望を欲した魔法使い』

 

ノーブル学園の夏休みもあと少しで終わろうとしていた日だった。

 

赤毛の少女 紅城トワは一人で庭園を歩いていた。

 

夏休み中は、春野はるか 海藤みなみの二人の他にノーブル学園の生徒はほぼすべて家に帰ってしまっている。

 

天ノ川きららは撮影の為にいないのだが。

 

つまり、今学園にいるのは紅城トワだけという事だ。

 

その手には、ヴァイオリンが握られていた。

 

すると、庭園の奥の方の茂みからガサガサと音がする。

 

白金さんかと思い、茂みを覗くと、そこには季節外れの茶色いコートを羽織り、手形の指輪と橙色の指輪をした中年の男が寝そべっていた。

 

否、倒れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ぅ、ここは…?」

 

男はベッドの上で目を覚ました。

 

「まぁ、目が覚めましたのね。」

 

ベッドの隣の椅子には赤毛の娘が座っていた。

 

その後ろには白髪の婦人も一緒に。

 

「庭で倒れていたんですのよ。」

 

赤毛の娘 紅城トワが言う。

 

「一体、私は…。

 ぅう…!」

 

頭を押さえる男。

 

「大丈夫ですの?」

 

「あ、あぁ。」

 

「一体、何があったのですか?」

 

赤毛の娘は男に問う。

 

「私は…私は何をしていた…?

 私は…

 

 

 誰だ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「記憶喪失ですね。」

 

一旦、保健室からでた婦人 白金が同じく保健室からでた紅城トワに言う。

 

「記憶…喪失。」

 

「はい、一時的に記憶が無くなってしまう事です。

 時間が経てば思い出すやもしれませんが…。」

 

紅城トワはガクリと肩を落とす。

 

「私にはどうしようもないのですのね。」

 

その呟きに白金が首を横に振る。

 

「いえ、何かをする事で記憶を取り戻す可能性があります。

 例えば、お食事をしたり、お出かけをしてみたり…。」

 

そこでハッとした紅城トワ。

 

「ちょ、ちょっと待っていて下さい!」

 

そう言って、駆け出した先には紅城トワと天ノ川きららの部屋。

 

「これですの…!」

 

その手には、束になったチケットがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、天ノ川きららは仕事でとある街に行かねばならなかった。

 

「ごめんねトワっち。

 学園に一人にしちゃって。」

 

「いえ、頑張って来てください。」

 

天ノ川きららが束になったチケットを紅城トワに渡す。

 

「はい、これ。

 仕事でマーブルドーナツの無料券貰ったんだけど、使う暇無くって。

 もしよかったら使って。」

 

「まぁ、ありがとうございます。」

 

「んじゃ、行ってきま~す。」

 

「行ってらっしゃいですの~。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの!」

 

保健室の扉をドスンッ!と開くと、その音にびっくりした男に向かって開口一番に言う。

 

「ドーナツ食べに行きましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドーナツ屋に着き、二人ともシンプルなプレーンドーナツを食べる。

 

「美味しいですの~。」

 

ほっぺに手を押さえながら舌鼓を打ちながら、悶絶している紅城トワを見ながらドーナツを食べる。

 

(味が…しない…。)

 

そう思いながら、ドーナツを食べる男。

 

その目には、彼女の食べる姿。

 

懐かしい感じがした。

 

「名前は…?」

 

男が紅城トワに聴く。

 

「君の…名前は?」

 

「まぁ、まだおっしゃっていませんでした。

 私の名前は、紅城トワです。」

 

「紅城…トワ。」

 

なぜか、彼女に誰かもわからね少女の影が重なる。

 

「ドーナツは、嫌いですの?」

 

どうやらしかめっ面をしていたらしい。

 

その問いに対し男は微笑みながら答える。

 

「美味しいよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

内心、父親が出来たみたいで嬉しかった。

 

幼い頃に、ディスピアに誘拐されて以来会っていない父親。

 

それを彼に重ねているのかもしれない。

 

「まぁ…。」

 

色々な店が一同に集まって企画側が行っている代理店のショーウィンドウ越しにある骨董品の中に一際輝く指輪を見る。

 

その横にはチラシが。

 

「面影…堂?」

 

彼女が見たチラシには様々な店の名前が載っていたが、骨董品屋の主人であろう中年男性が写っていた。

 

その写真を横目で見た男は何か感じる。

 

行かなければと。

 

その直後であった。

 

浜辺で爆発音が鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤い二つの角がついた黒いフードを被った青年 ロックは今日も今日とて絶望を集めていた。

 

浜辺で見つけたのは少年。

 

『魔法使いになりたい!』

 

「その夢、絶望の檻に閉ざすんだね。

 ロック・ヨア・ドリーム!」

 

そこには、黒いローブに木の杖、トンガリハットを着飾ったゼツボーグがいた。

 

「ゼツボーグ!」

 

ゼツボーグは、火の球を作り出し、浜辺に射つ。

 

たちまち大きな爆発音が鳴り響き、辺りは騒然となる。

 

そのゼツボーグが、どこからか飛んできた蹴りによって、倒される。

 

「ロック!」

 

それは、既に変身を終えた紅城トワ キュアスカーレットだった。

 

その後ろからは、男がついてくる。

 

「紅城トワ。

 その姿は一体?」

 

「いいから、あなたは逃げてください。」

 

今までに見たことの無い眼差しに男は逃げる体勢に入る。

 

心では。

 

体は、なぜか右手にはめていた手形の指輪を腰にかざしていた。

 

『ドライバーオン』

 

そんな電子音と共に男の腰にベルトが浮かび上がる。

 

そのベルトの両端にあるレバーをスライドし、今度は左手の方の指輪の金具を下ろす。

 

「変身。」

 

男の口は、無意識にそう言い、左手の指輪をベルトにかざす。

 

『チェンジ ナウ』

 

オレンジ色の魔方陣が現れ、みるみるうちに男の姿を変えていく。

 

そこには、白いローブを被った魔法使いが立っていた。



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希望を欲した魔法使い 2/4

彼はゼツボーグと対峙していた。

 

その姿は、白いフードに身を包み、その顔は粗い原石を模す。

 

それは、まるで…

 

 

 

ワイズマン。

 

 

 

本人自身が一番驚いていたのかもしれない。

 

しかし、そんなことは気にしていなかった。

 

一番にしなければならない事。

 

それは、人間を守ることでも、目の前の敵を倒すことでもない。

 

彼女…スカーレットを守ることだ。

 

驚いているスカーレットを後目に戦闘を開始する。

 

『テレポート ナウ』

 

指輪をベルトにかざすと、ゼツボーグの背後に瞬間移動する。

 

その手には笛…ハーメルケインが握られていた。

 

その手を振りかざすと、バチバチッ!と、火花が散る。

 

それに耐えきれず、ゼツボーグは前に倒れ込む。

 

ゼツボーグは起き上がり、負けじと火の球を作り出し、彼に投げつける。

 

『エクスプロージョン ナウ』

 

彼が指輪をベルトにかざすと、ゼツボーグの足下から炎が吹き出し、火の球ごと打ち消す。

 

ゼツボーグはなんとか耐えながらも、ダメージが大きいのか、肘をつく。

 

その隙に、考えるのを止めたスカーレットが連続蹴りをゼツボーグに繰り出す。

 

ゼツボーグは満身創痍だ。

 

彼は、ベルトに金色に輝く指輪をかざす。

 

彼女は、紅のヴァイオリンを取り出す。

 

『ファイナルストライク アンダースタンド?』

 

「スカーレットヴァイオリン!」

 

彼の足下に巨大な魔方陣が出現し、即座にエネルギーを右足に溜める。

 

彼女の周りは、炎が舞う。

 

まるで踊るかの様に出現するとヴァイオリンにエネルギーが集中する。

 

そして、二人は各々の必殺技を放つ。

 

「ハナビ!

 プリキュア!フェニックス・ブレイズ!」

 

彼は自らの足を頼りに。

 

彼女は不死鳥を使役し。

 

ゼツボーグは二人の必殺技に耐えきれず浄化されていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつの間にかいなくなっていたロックには気にせずに、檻に閉じ込められた少年を解放する。

 

「ふぅ。」

 

スカーレットもとい紅城トワは、男に向かう。

 

「あなたは、一体…?」

 

しかし、彼には届いていないのか、何かを呟いている。

 

「…フェニックス…?」

 

「え?」

 

何かを思案していたが、ようやく気づいたのか、彼は紅城トワに話す。

 

「あぁ、すまない。

 実は、私にも分からないんだ。

 さっきのも体が勝手に動いたから。」

 

思い詰めた様子の男。

 

「ただ、一つ分かった事がある。」

 

彼は、紅城トワに左手にはめていた橙色の原石を模した指輪を、彼女に渡す。

 

「これは…?」

 

「これは持っていてくれ。

 私からのプレゼントだ。」

 

決意をした男は言う。

 

 「私は、面影堂に行こうと思う。」



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希望を欲した魔法使い 3/4

翌日

 

一度、男は学園に泊まってから去ることになった。

 

そして、別れの時刻は刻一刻と迫っていた。

 

「ありがとうございました。」

 

「いえいえ、私は何も…。」

 

謙遜する紅城トワに男は告げる。

 

「紅城トワ。

 君のおかげで私は目的を持つ事が出来た。

 改めて言う。

 ありがとう。」

 

男は紅城トワの頭を優しく撫でる。

 

少し照れる様に紅城トワが言う。

 

「久しぶりに、お父さんが出来たみたいでした…。」

 

何かを思い出したかの様に紅城トワがひらめく。

 

「あ!そうですわ!

 マーブルドーナツを餞別として持っていって下さい!

 バス停でお待ちを!

 今すぐ買ってきますわ!」

 

そう言って、男よりも先に出ていってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良い子だったな。」

 

男はバス停に向かいながらそう呟いた。

 

自分が何者か。

 

自分は何をしていたか。

 

自分を待つ者はいるのか。

 

そんなことを思いながらバス停に近づく。

 

そこからは、海辺が見えた。

 

「いたんだね…。」

 

ニヤリとそう言ったのは、黒いフードを被った青年…ロックだった。

 

「君は…。」

 

「あんたの夢、見せるんだね!」

 

『………に会いたい。』

 

男と少女が笑っている。

 

「その夢、絶望の檻に閉ざすんだね!

 ロック・ヨア・ドリーム!」

 

男の夢が絶望の檻に閉ざされていく。

 

会いたい

 

あ  い た   い

 

         イ

 

 

 

        タ

 

 

 

 

 

                イ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドオオオォォォ………ンンン!!!

 

 

 

突然、地響きが鳴る。

 

男の体は、殻を脱ぎ捨て、人間の形をわずかに保っただけの異形の怪人の姿に変わる。

 

「なんなんだね…っ!」

 

ロックが言い終わる前にその怪人…カーバンクルの電撃が襲いかかる。

 

「ぐあああぁぁぁあああ!!!」

 

怪人の放った電撃で遠くまで弾き飛ばされてしまう。

 

「こ、ここは一旦退くんだね…!」

 

ロックの姿が消える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マーブルドーナツは買えた。

 

あとは、これを彼に渡す。

 

少しでも喜んでもらうために。

 

少しでも父親の雰囲気を味わう為に。

 

彼女の顔は笑みを浮かべていた。

 

少しずつ駆け足になる。

 

少しずつ心踊る。

 

少しずつ彼に近づいていく。

 

しかし、そこには彼の姿は無く、一体の怪人が立っていた。

 

「…!

 あなた、何者ですの…!

 まさかディスダークの新手?」

 

その怪人はゆっくりと彼女の方を見る。

 

「やぁ、紅城トワ。」

 

聞き覚えがあった。

 

「君のおかげで、」

 

否定したい。

 

「目的を持つ事が出来た。」

 

目の前が真っ暗になる。

 

「ありがとう。」

 

彼女の手から、ドーナツの入った袋が落ちる。

 

「会わなければ、暦に。

 また暦と、やり直さなければ。

 その為にはまず、」

 

怪人の口は、にやけたようだった。

 

「絶望させなければ。」



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希望を欲した魔法使い 4/4

怪人が紅城トワに近づく。

 

「人間を絶望させて、そのエネルギーで私の目的を果たす。」

 

紅城トワに指をさす。

 

「その為には、人柱が必要だ。

 君の力は興味深い。

 指輪の魔法使いと同等の力を持っている。

 使ってあげよう。」

 

怪人の手が彼女に伸びる。

 

しかし、その手から逃れるように後退る。

 

「…絶望なんてさせませんわ…。」

 

「なに…?」

 

彼だった者に対面する。

 

「絶望なんてさせません…。

 私に居場所をくれた人を…。

 私を信じてくれる人を…。

 私の大好きな人達を…。

 

 

 絶望なんてさせません!」

 

ドレスアップキーをプリンセスパフュームにセットすると、紅城トワの姿が変わっていく。

 

「私に歯向かうつもりか。」

 

「ハアァア!」

 

紅城トワの拳、蹴りが炸裂するが、全て何事もなかったかの様な反応だ。

 

「それで私を止めるつもりかな?」

 

怪人の電撃が放たれる。

 

「キャアアアァァァアアア!!!」

 

スカーレットは弾かれる。

 

「諦めて私の夢の礎となれ、紅城トワ。

 どうせ、そんな力では何も守れまい。」

 

「絶対に止めて見せますわ…。」

 

彼女は立ち上がる。

 

「私の愛する人達を…、」

 

彼に言い放つ。

 

「絶望させるわけにいきません!」

 

彼女のポケットから一つの指輪が輝きだす。

 

「これは…!」

 

それは、彼がくれた指輪だった。

 

彼女が指輪を握るとそれは新たなドレスアップキーへと変換される。

 

「…使って、という事ですのね。」

 

怪人に立ち向かう。

 

そのドレスアップキーをプリンセスパフュームにセットする。

 

『ワイズ!』

 

「ワイズ!モードエレガント!」

 

スカーレットの姿が変わる。

 

全身のドレスは白に染まり、紅い髪は白いフードで隠され、左手には彼からの指輪、右手にはハーメルン。

 

その姿は修道女の様だった。

 

「さぁ、いきますわよ!」

 

怪人はスカーレットに襲いかかるが、彼女のハーメルンで防ぐ。

 

右、左、上、下。

 

その姿は、まるで踊っているようだった。

 

「スカーレットヴァイオリン!」

 

ヴァイオリンを取り出す。

 

「ハナビ!

 プリキュア!フェニックス・ブレイズ!」

 

すると、いつものフェニックスが出るのではなく、不死鳥を模した怪人が現れる。

 

「あなたは?」

 

「今は俺のことなんてどうでもいい!

 ワイズマンか!

 腕がなるぜぇ!」

 

その怪人は、彼に向かって大剣…カタストロフを振りかざす。

 

「ぐう゛ぅ!」

 

彼の体から火花が散る。

 

「うおりゃあ!」

 

数回振り回すと満足したのか、斬りつけるのを止める。

 

「後はてめえに譲ってやるよ。」

 

そして、怪人は消え去っていく。

 

ザッ!

 

スカーレットが彼の前に立つ。

 

その表情は、決心していた。

 

「祈れ!ワイズよ!

 プリキュア!スカーレット・エクリプス!」

 

彼女の足元には巨大な金色の魔方陣が産み出され、彼女の右足はその魔方陣から力が供給された。

 

彼女は跳ぶ。

 

その右足を彼に向けて。

 

「はあああぁぁぁあああ!!!」

 

右足は、彼を貫いた。

 

「ごきげんよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男は、紅城トワに抱えられていた。

 

「すまなかった…。」

 

彼は、今にも止まりそうな声を振り絞って言う。

 

「私は、大切な人を守りきれなかった。

 しかし、君にはまだ大切な人がいる。

 しっかり、守れ…。」

 

彼の頬に雫が落ちる。

 

「…はい…。」

 

彼女の頭を撫でる。

 

「涙は似合わないよ…。」

 

手で涙を拭う。

 

「はい………!」

 

笑う。

 

涙を堪えながら。

 

「やっぱり、笑顔が似ている……な………。」

 

彼はゆっくりと目を閉じ、その身体は紫の塵へと消えた。

 

 

 

涙の止まらない彼女を残して…。

 

 

 

 

 

 

 

バス停の前で、袋に入ったドーナツを見る。

 

本来、彼に渡せていた物。

 

彼女は、思った。

 

まだ彼の事を何も知らないのだと。 

 

そして、数日後、彼女はある場所へと向かった。

 

彼という人に辿り着くただ一つのヒント。

 

その店の看板には、『面影堂』と書かれていた…。



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第三章 天ノ川きららの場合
紅の騎士と星空の姫 1/4


金属音が鳴り響く。

 

異形の者が戦っている。

 

一人は、銀の鎧に身を包んだ鎧武者。

 

一人は、紅きステンドグラスの怪人。

 

怪人が鎧武者に剣を降り下ろす。

 

しかし、その剣は腕を確かに斬るが、鎧武者は逆に剣を折る。

 

そして、鎧武者は折った刃で怪人を突き刺す。

 

戦いは終結し、そこには涙を流している青年が血だらけの青年を抱えていた。

 

「なぜ泣く?」

 

「泣いていいんだ…それが俺の弱さだとしても…拒まない。

 俺は泣きながら進む。」

 

すると、血だらけの青年は、彼の胸を拳で叩く。

 

彼は少し笑っていた。

 

「お前は…本当に…強い…。」

 

そうして、彼の人生は終わりを告げた。

 

『紅の騎士と星空の姫』

 

とある市内のビルの屋上。

 

そこには、黒いコートを着た青年が白いローブの少女といた。

 

「俺の役目は終わった筈だが?」

 

青年は鋭い目付きで、少女に問う。

 

「この町は、幾度となく危機に瀕してきた。

 ヘルヘイムの侵食、バダンの陰謀、魔蛇の暴走、メガヘクスの侵略、そして、黒の菩提樹の救済。」

 

少女は続ける。

 

「問題は、最後の危機のとき、狗道供界のベルトは本当に破壊されたのか、という事。」

 

青年の目付きはより一層きつくなる。

 

「あの世界で彼は幾度となく怪人を甦らせた。

 その中で、ある男が復活されていたら…。

 そして、始まりの男が開けたクラックに紛れていたら…。」

 

「世界はまた危機を迎える…か。」

 

青年が悟る。

 

「そういう事。

 僕はこの世界の住人じゃないけど、天空寺タケルが守っている世界だからね。

 それに、君は僕の信頼に値する。」

 

そう言って、青年から背を向ける。

 

「行くのか?」

 

「うん、フレイも待ってるだろうし。」

 

少女が遠ざかりながらも青年に伝える。

 

「力は渡しておくよ…。」

 

そして、少女は光となって消え去った。

 

残った青年のコートには、バックルと錠前が入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沢芽市

 

ここでは何度も危機に陥った。

 

しかし、その都度、守ってきた。

 

「やっと着いた~!」

 

トランクケースを引きながら背伸びする一人の少女。

 

夏真っ盛りの沢芽市に来た少女の名前は、天ノ川きらら。

 

彼女の職業はモデルだ。

 

今回、沢芽市のPRモデルとして訪れている。

 

「でも、一日目はホテルで過ごさなきゃなぁ…。」

 

天ノ川きららは、駅近くのホテルでチェックインするべく歩き出した。

 

その時、彼女は彼とぶつかる。

 

「おととっ…、ごめんなさい。」

 

青年は、悪びれもせず、彼女に言う。

 

「お前は何のために力を使う?」

 

青年の言葉に、天ノ川きららは呆れる。

 

「は?

 新手のナンパ?

 言っとくけど、私そういうの受けないから。」

 

そう言って、天ノ川きららは彼を無視し、すれ違う。

 

黒いコートに身を包んだ、彼を知っている者なら誰もが驚く彼を…。



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紅の騎士と星空の姫 2/4

パシャ!パシャパシャ!

 

「い~ね~!

 いいよ!

 はい!

 OK!」

 

カメラマンの男がモデルの少女…天ノ川きららにカメラを向ける。

 

「はい、じゃあ今日はここまで~!」

 

カメラマンは、終了の合図をする。

 

「あ、すいません。」

 

天ノ川きららは近くにいた黒髪のスーツをピシッ!と着こなした男に話しかける。

 

「ん?

 どうした?」

 

黒髪の男はキリッとした目付きで天ノ川きららを見る。

 

「今回は呼んで頂いてありがとうございます。」

 

「あぁ。

 それを言うのはこっちの台詞だ。」

 

男は少し微笑みながら言う。

 

「最近、この町で色々と事件が起こってな。

 誰もやってくれなかった事を君がやってくれた。

 礼を言うのはこっちの方だ。」

 

男は続ける。

 

「俺も昔、この町に多大な迷惑をかけてしまった。

 その罪を背負う責任が俺にはある。」

 

男はハッとする。

 

「すまないな。

 すっかり話しこんでしまった。」

 

「いえいえ。

 あ、そうだ。

 この町で見た方が良い所ってどこですか。」

 

「ん…。

 そうだな、仕事終わりにダンスを見るのは疲れるだろうしな…。」

 

男は思い出したように言う。

 

「落ち着ける良い所がある。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感覚がない。

 

何も感じられない。

 

ここはどこだ。

 

目の前には、赤い世界が広がっている。

 

私が目覚めたという事は、バックアップをとっておいて正解だったという事だな…。

 

彼は、黒い果実を模した錠前だった。

 

私の身体は相変わらず黒いままか…。

 

彼は自身の体を嘆くが、状況がそれを阻んだ。

 

目の前には、見覚えのあるアーマードライダーが見覚えのない深紅のアーマードライダーと戦っている。

 

何度も何度も倒される深紅のアーマードライダーから、ベルトの部品が外れる。

 

何かと思い、見る。

 

それを回収する。

 

その後、その世界をさまよう。

 

永遠に続くかもしれない赤い空を見ながら、どこかもわからずに進んだ。

 

すると、金に輝く黄金の騎士が佇んでいた。

 

私の身体だ…。

 

その姿に、覇気も感情も感じられない。

 

その中に入る。

 

身体は金の球体になる。

 

また、深紅のアーマードライダーの所に戻る。

 

すると、そこには憎きアーマードライダーが骸骨を模した巨大な恐竜と対峙していた。

 

深紅のアーマードライダーの姿が見当たらない…。

 

しかし、今は相手をしている場合ではない…。

 

再度、自分の身体を見る。

 

身体は、まだ黒いままだ…。

 

力を溜めなければ…。

 

憎きアーマードライダーはクラックを開け、仲間をそこに入らせる。

 

今だ…!

 

彼もクラックの中に入っていく。

 

その球体は、金と黒が混ざり合い、鈍く光っていた…。



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紅の騎士と星空の姫 3/4

「ここかぁ…。」

 

そこは、緑に包まれた森の中だった。

 

彼曰く、仲間と再開した場所らしい。

 

空気は澄み渡り、心なしか気持ちも晴れる。

 

ふと今までを振り返る。

 

色んな事があった。

 

春野はるかと出会い、海藤みなみとも出会った。

 

そのときにプリキュアになる資格を得た、一度は手放したが、再度なった。

 

戦いの最中、母の気持ちを知ったり、紅城トワとも出会った。

 

どんなに辛くても、どんなに苦しくても、皆がいたから乗りきれた。

 

きっと手放す時が来るだろう。

 

その時は、後悔なく手放したい。

 

後悔なくその時を迎えたい。

 

その時まで、この力を使おう。

 

グランプリンセスになる為に…。

 

私の…。

 

その時だった。

 

「お前は何のために力を使う?」

 

聞き覚えのある声がした。

 

「あ、昨日の…!

 何でここに!」

 

天ノ川きららは聞くが、青年は聞く耳をもたない。

 

「答えろ。

 お前は………っ!」

 

「へ…?」

 

突然、青年は大木を睨み付ける。

 

木の影から一人の男がでてくる。

 

「貴様がフレイヤの言っていた奴か。」

 

男は邪悪な笑みを浮かべながら答える。

 

「さぁ、復讐の時だ…。」

 

男はバックルを腰につける。

 

そして、二つの錠前を持ち出す。

 

『…ダークネス…!』

 

『…ゴールデン…!』

 

バックルに二つの錠前を取り付ける。

 

「変…身。」

 

男はバックルの刀を下ろす。

 

『ダークネスアームズ…オゥゴンの果実…』

 

『金…ゴールデンアームズ…黄金の果実…』

 

頭上から黒と金が混ざりあったリンゴが、彼の頭上に落ちる。

 

そして、展開。

 

舞い降りしは、邪悪なる新世界の神。

 

仮面ライダー邪武 ゴールデンアームズ。

 

「今こそ、復讐の時…。」

 

只ならぬ雰囲気を感じたのか、天ノ川きららは懐からプリンセスパフュームを取りだし、変身する。

 

「ほう…、私と戦うというのか。」

 

トゥインクルが邪武に向かい、拳を放つ。

 

しかし、その拳は捕まれ、逆に蹴りを受ける。

 

その衝撃で青年の所へと吹き飛ばされる。

 

こいつは、ヤバい…。

 

そう本能が伝える。

 

「早く逃げて!」

 

トゥインクルが青年に向かって叫ぶ。

 

しかし、青年はまだ問い続ける。

 

「お前は何のために力を使う。」

 

「そんなこと今は…!」

 

何を言っているんだ。

 

そう思ったが、青年は顔を緩めない。

 

「力の使い方を見誤るな。」

 

そう言うと、彼はジャケットからバックルを取りだし、腰につける。

 

そして、黄色い錠前を手に取る。

 

『バナナ!』

 

「変身。」

 

錠前をバックルにセットする。

 

戦士が現れる祝福をするかの如く、ファンファーレが鳴り響く。

 

彼の頭上には、バナナのオブジェクト。

 

バックルの刀を下ろす。

 

『カモン!

 バナナアームズ!

 ナイト・オブ・ス~ピア~!』

 

オブジェクトは、彼に落ち、展開。

 

そこに佇むは、力を求めた騎士…アーマードライダーバロン。

 

騎士と姫は、黄金の神に立ち向かう。



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紅の騎士と星空の姫 4/4

「バナナの…騎士?」

 

天ノ川きららは呟く。

 

「バロンだ。」

 

青年…もとい騎士が名乗る。

 

「貴様…あの時にもいたな…。」

 

邪武はバロンを睨み付ける。

 

「知らんな、貴様など。」

 

その一言で、邪武は憤怒する。

 

「貴様も私を忘れたのか…!」

 

邪武は橙々丸をバロンに振りかざす。

 

しかし、バロンは持っていた槍…バナスピアーでかわす。

 

橙々丸はかわされるが、腰にあった無双セイバーでバロンを斬りつける。

 

「グゥ…!」

 

邪武は斬るのをやめない。

 

「キラキラ!

 流れ星よ!

 プリキュア・ミーティア・ハミング!」

 

「ガァ!」

 

星型のエネルギー弾が邪武を襲う。

 

「私がいるのも忘れないでよね!」

 

邪武が振り向くとそこにはトゥインクルがいた。

 

「貴様ァ!」

 

「俺もな…!」

 

バロンがすかさずバックルの刀を一回下ろす。

 

『バナナ・スカッシュ!』

 

「ハッ!」

 

エネルギーを溜めたバナスピアーはバナナを模し、そのまま邪武を突き飛ばす。

 

「ガァァァ!」

 

邪武は、倒れるも直ぐに立ち上がる。

 

「貴様らぁ!」

 

邪武は、バックルの刀を一回かざす。

 

『ダークネス・スカッシュ…!』

 

『ゴールデン・スカッシュ…!』

 

橙々丸に混沌に満ちた黒と金のエネルギーが溜まる。

 

「ハァ!」

 

邪武の声と共に、エネルギー波がトゥインクルとバロンに襲いかかる。

 

「キャアアァァアア!」

 

「グアアァァアア!」

 

二人は倒れ込み、周りの木々は炎に包まれる。

 

「ハッハッハッハ!」

 

邪武が高らかに笑う。

 

「無様だなぁ!

 貴様ら全て終わりだ!」

 

邪武の言葉に、トゥインクルが立ち上がる。

 

「終わらせ…ないし。」

 

「ん?」

 

「終わらせない!

 あんたなんかに絶対にさせない!

  私の夢は、まだ途中なの!

 だから、私のこの力で、目の前のあんたをぶっ潰してやるんだから!」

 

バロンが立ち上がり、変身を解く。

 

「…力はお前の夢のために使え。」

 

青年は黄色い錠前を渡す。

 

「後悔はするなよ。」

 

そうして、青年は森の中へと去っていった。

 

その後ろ姿に呆けながらも、その心はどことなくリラックスしていた。

 

「…わかってるし。」

 

彼女が錠前を開ける。

 

『バナナ!』

 

錠前は形を変え、悪を倒す鍵となった。

 

プリンセスパフュームを取りだし、キーをセットする。

 

『バロン!』

 

「バロン!モードエレガント!」

 

彼女の姿が変わっていく。

 

その姿は西洋の騎士。

 

両肩にはバロンのアーマーが。

 

右手にはバナスピアーが。

 

「姿が変わろうと、同じこと!」

 

「それはどうだか。」

 

トゥインクルは邪武に猛攻を受ける。

 

しかし、バナスピアーで払いのけながら、邪武にカウンターの拳を叩きつける。

 

「グァァ!」

 

よろけた邪武にバナスピアーを突き出す。

 

「これで終わり…!」

 

トゥインクルはバナスピアーを構える。

 

「プリキュア!

 スパーキング・」

 

バナスピアーにエネルギーが集中する。

 

「させん!」

 

邪武は刀を三回かざす。

 

『ダークネス・スパーキング…!』

 

『ゴールデン・スパーキング…!』

 

邪武の橙々丸に、エネルギーが集中し、巨大な邪武の化身が現れ、彼女に向かって手に持つ橙々丸でトゥインクルを斬り落とす。

 

しかし、トゥインクルは勢い良くバナスピアーを前に突き出すと、そのエネルギーはバナナを模し、彼女は凄い速さで邪武に突進する。

 

その速さは、辺りの火でさえ一瞬で消した。

 

刹那、彼女は巨大な化身ごと邪武を貫いた。

 

「何故だ…!

 何故私が負ける!

 黄金の果実を持つこの私が!

 小娘なんぞに!

 グアアアァァァアアア!」

 

爆散する邪武。

 

彼女は言う。

 

「ごきげんよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仕事が早く終わり、一日だけ余裕が出来た天ノ川きららはチェックアウトを済ませ、疲れを癒すべく、外に出ていた。

 

大通りを進んでいくと、フルーツパーラーと書かれた店があった。

 

ドアを開けると、

 

「いらっしゃい!」

 

と、元気の良い男の声がする。

 

席に案内され、メニューを渡される。

 

『バナナとリンゴのパフェ』

 

目を引かれて頼む。

 

(トワっち、大丈夫かな。)

 

そんなことを思いながら窓の外を眺めていた。

 

数分後、すぐに女性スタッフによって運ばれてくる。

 

「デカッ…。」

 

そう呟く。

 

小さな戦いの幕が開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、お腹いっぱい。」

 

勝負は天ノ川きららの勝利で幕を閉じた。

 

支払いを済ませるべくレジへと向かう。

 

「良い食べっぷりだったね。」

 

男が言う。

 

「あはは…。」

 

「はい、レシート。

 お嬢ちゃん、ここに来るのは初めて?」

 

「あ…はい。」

 

男は笑いながら言う。

 

「通りで見ない顔だと思った。

 うんうん、なら近くにある公園に行ってみなよ。

 ストリートダンスをやってるんだ。」

 

男がチラシを差し出す。

 

そのチラシには、ダンスグループが数多く載っていた。

 

その中で、あの青年と同じコートを着たチームがあった。

 

その名は、チーム『BARON』。

 

そう、あの仮面の騎士と名前が同じであった。

 

「…!

 これってどこにあるんですか!」

 

身をのりだす天ノ川きららに、男は驚きつつも答える。

 

「大通りを真っ直ぐ行った所だけど…。

 チラシの裏に書いてあるよ。」

 

「ありがとうございます!」

 

天ノ川きららは勢い良く店を飛び出した。

 

そして、新たな物語が始まるファンファーレが鳴り響いた。



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第四章 トワイライトの場合
分離した未来 1/4


とある城

 

暗闇に閉ざされ、月光が闇を艶やかに包み込むその城のテラスで、気高く、尊く、麗しく、まるで世界を凍らすような音色が漂っていた。

 

「美しい…。」

 

近くにいたシャットは、小さく呟き、ロックは何かを考えるように眺めていた。

 

テラスでは、黒きプリンセス トワイライトがヴァイオリンを弾いていた。

 

月光が照らすトワイライトの姿は何者をも近づかせない気品が溢れ出ていた。

 

そんな中、トワイライトはいきなりヴァイオリンを弾くのを止め。

 

「…?トワイライト様?」

 

シャットは唐突に止まった演奏に戸惑いつつ、尋ねた。

 

しかし、トワイライトの視線はシャットのその先を見ていた。

 

「隠れてないで、出てきては?」

 

シャットとロックが振り向くと、そこにはジャケットにジーパン、スニーカーとその場に似つかわしくない格好の青年が立っていた。

 

「流石はお姫さま。

 まさか気づいているとはねぇ。」

 

「誰なんだね?」

 

「君には用はない。

 用があるのはそこのお姫さま♪」

 

ロックの問いには応じず、右手で指鉄砲を作りトワイライトに向ける。

 

「君の持っているプリンセスパフュームを僕にくれないかな?

 それは僕が持つのに相応しい。」

 

「誰かと思えば只のコソ泥。

 シャット、ロック、相手をして差し上げなさい。」

 

「了解あるのみ。」

 

「了解なんだね。」

 

その行動に呆れたのか、青年はやれやれといった表情をする。

 

「あまり手荒な真似はしたくなかったんだけど。」

 

右手にはいつの間にか銃のような物が、左手にはカードが握られている。

 

「変身。」

 

『KAMEN RIDE DIEND』

 

カードを銃に装填して、天に向かって撃った銃弾は、瞬く間にカード状になり青年に降り注ぐ。

 

そして、その場に居たのは、青い戦士だった。

 

「貴様、何者だ!」

 

シャットが問いただす。

 

「仮面ライダー…と言っても分からないよね。」

 

青い戦士の左手には、既に四枚のカードが握られていた。

 

「騎士には騎士を…。」

 

『KAMEN RIDE KNIGHT』

 

『KAMEN RIDE DRAKE』

 

『KAMEN RIDE DEN-O』

 

黒い影が重なりあって、三人の男が召喚される。

 

「俺、参…

 

「お姫さまには、皇子さまってね。」

 

 じょ…!」

 

『FORM RIDE DEN-O WING』

 

赤いメッシュを入れた男に青年が銃口を入れると、白いメッシュに変わった。

 

「…さて、家来共、存分に戦えぇえ!」

 

「お前がライダー?

 笑わせる。」

 

「確かに。」

 

「ふむ。

 たまには、力を出さなければな。

 では、家来共、いくぞぉ!」

 

三人はそれぞれのツールを出す。

 

一人はカードデッキを。

 

一人はパスを。

 

一人は銃を。

 

『変身!』

 

「降臨、満を満して…!」

 

一人は、コウモリを模した黒き騎士に。

 

一人は、金と白に青い羽がマスクに模してある騎士に。

 

一人は、青にメカメカしい鎧を纏った騎士に。

 

「んじゃ、行ってらっしゃい。」

 

青年がそう言うと、三人の騎士はそれぞれの敵へと場所を移しながら、向かっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の相手はお前か?」

 

シャットの目の前には、メカメカしい騎士がいた。

 

「さっきの少女、美しい。

 あのナチュラルに施されたメイク。

 だが、しっかりと自己主張されている…!

 まるで…!」

 

言葉に詰まるドレイクにシャットが答える。

 

「月のよう…?」

 

「そうそう、それそれ。」

 

「貴様にも分かるのか?!

 トワイライト様の美しさが!」

 

「あぁ。

 しかし、貴様のメイクは気に入らない!

 あまりにも冒険をしなさすぎている!」

 

その一言で、シャットの顔色が険しくなる。

 

「なんだと…!」

 

勢いよく攻撃を仕掛けてきたシャットの爪に最初は対応しきれていたドレイクもあまりの速さにいなしきれなくなる。

 

「口程にもないなぁ!」

 

「そろそろ本領発揮ですね。」

 

ドレイクは、銃のグリッブを引く。

 

すると、メカメカしい鎧から音がなる。

 

「キャストオフ。」

 

『CAST OFF

 CHANGE DRAGONFLY』

 

鎧は弾け飛び、中からトンボを模した戦士が現れる。

 

「姿が変わった所で、同じこと!」

 

「クロップアップ。」

 

『CLOCK UP』

 

刹那、シャットの体が中に浮かぶ。

 

「殺しはしません。」

 

流れる時が止まった中、ドレイクは羽を畳んだ銃口をシャットに向けていた。

 

「ライダーシューティング。」

 

『RIDER SHOOTING』

 

銃口から放たれた青い球体がシャットの目の前で爆散し砂ぼこりを起こす。

 

「メイクアップ。」

 

砂ぼこりの中で、そのような声が聞こえた。

 

砂ぼこりが晴れるとドレイクはシャットから背を向けていた。

 

「貴様、何故手を抜いた…!」

 

シャットがドレイクを睨み付ける。

 

「鏡を見なさい。」

 

シャットは懐から鏡を取りだし、自分に向ける。

 

「はう…!」

 

そこには、目の辺りがまるで蝶のように、唇はまるで金魚のように紅く染まっていた。

 

美しいと、シャットは思ってしまっていた。

 

「な、何故?!」

 

「気に入らないのは、その冒険心の無さです。

 素材は凄く良い。

 これからも、精進して下さい。」

 

ドレイクがシャットを見る。

 

「礼を…言う。」

 

「いえいえ。

 原石を一つ見つけたと思えば。

 それでは、またいつか会いましょう。」

 

ドレイクは後ろを向き歩きながら、そのまま虚空の彼方へと消えていった。

 

(冒険心…か。)

 

残されたシャットの表情は、少し晴れやかだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕の相手は、君なんだね。」

 

ロックの前に蝙蝠を模した騎士 ナイトが立っていた。

 

「子供相手でも容赦はしない。」

 

「子供ね…。

 ここなら見られる心配もないし、本気…見せてあげるんだね。」

 

ロックの体が大きくなり、さらに三人に増える。

 

「三対一じゃ、勝ち目は無いに等しいんだね。」

 

「悪いが、俺も似たようなのを持っている。」

 

ナイトは、一枚のカードをロックの方に見せると持っていた剣に挿入する。

 

『TRICK VENT』

 

音声が響くと、ナイトが瞬く間に三人に増える。

 

「これで三対三だ。」

 

「…良い退屈しのぎにはなるんだ…ねっ!」

 

『『『SWORD VENT』』』

 

それぞれの分身が一斉に戦いを仕掛ける。

 

『NASTY VENT』

一人のナイトは青いロックに向かい、カードを挿入する。

 

すると、空から大きいコウモリが来る。

 

「ぐぅ…!」

 

金切り声と共にロックの元に来る。

 

しかし、それを払いきりロックの蹴りがナイトに炸裂する。

 

それを見切ったかの様に、ナイトの振るった拳がロックにカウンター気味に炸裂し、両者が消える。

 

緑のロックがナイトと対峙する。

 

『ADD VENT』

 

黒いコウモリが飛翔するが、いちはやく動いたロックの拳にナイトが吹き飛ばされ、消滅する。

 

『FINAL VENT』

 

「でやぁ!」

 

しかし、アドベントしたのは次の攻撃の時間の短縮の為で、後ろから本体のロックとの戦闘を切り上げてきた本物のナイトの飛翔斬によってロックは消え去る。

 

「一対一になったんだね。

 ちょっと本気を見せるんだね…!」

 

ロックの影が禍々しいオーラと共にカエルの様に変わる。

 

「俺も本気を出そう。」

 

ナイトもデッキから青い突風の中に翼が描かれたカードを取り出す。

 

しかし、カードを取り出したナイトの右手が消滅しかけていた。

 

「…時間切れか。

 決着は、次にとっておこう。」

 

そのまま、ナイトは消え去っていった。

 

「今度会うときは、僕は玉座に座っているんだね…。」

 

ロックは闇に紛れてニヤリと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の相手は貴方かしら?」

 

トワイライトの前には電王がいた。

 

「貴方は満足させてくれるのかしら?」

 

「姫の願いとあらば…!」

 

すぐさまデンガッシャーをブーメランと手斧にする。

 

「はあ!」

 

電王はブーメランを投げるが持っていた白いロッドで簡単に地面に落とされてしまう。

 

即座に持っていた手斧を振りかざすが、またもロッドで払われる。

 

「終わりね。」

 

『FULL CHARGE』

 

ロッドを振りかざす瞬間、電王はパスをベルトにかざし、落ちていたブーメランを拾い上げ、その刃先をトワイライトに向ける。

 

「………。」

 

「………。」

 

両者の刃と杖が両者の首筋に触りかける。

 

沈黙を破ったのは電車の音だった。

 

プシュー…。

 

そんな音が二人の前でなりながら、電車の扉から一人の少女が降りてくる。

 

「こら!ジーク!

 何一人で勝手に降りてんのよ、このバカ!」

 

電王は慌てた様子でトワイライトから刃を下ろすと少女に叩かれる。

 

「ひひひ姫!

 今、こちらの姫とお手合わせしている最中

「そんなことしてる暇無いの!」

 痛い、あ痛たたた!」

 

「お騒がせしました~。」

 

少女は電王を掴みながら電車に戻っていく。

 

「やっぱり、彼らに会うと呆けるもんなんだねぇ。」

 

突然、あの青年の声がした。

 

その手には、プリンセスパフュームが握られていた。

 

「文献にはプリンセスプリキュアによって世界を守る希望で輝いていると書かれていたが、とんだ偽物だったようだね。

 これは返すよ。」

 

プリンセスパフュームをトワイライトに投げる。

 

「せいぜい輝きを取り戻すといい。

 んじゃ。」

 

『ATTACK RIDE INVISIBLE』

 

青年は、赤いカードを銃に挿入すると、まるで雲の様に消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その風景を少し離れた場所で見ている者がいた。

 

「世界を守る…プリンセスパフューム…プリンセスプリキュア…か。」

 

小さく呟いたそれは、コウモリを模した一台のミニカーだった。



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分離した未来 2/4

「ここは何の世界だ?」

 

『光写真館』と書かれた看板の店から出てきたのは、黒いシルクハットに紳士服を身を包み、首には黒い錠前がぶら下げてある青年だった。

 

「また変な格好だなぁ、士!」

 

「周りは人の気配すら無さそうですね。

 それに、海東さんも居なくなっちゃったし。」

 

士と呼ばれた青年…門矢士は、後ろから出てきた青年…小野寺ユウスケと女性…光夏海に言う。

 

「やはり俺は何着ても似合うな。」

 

そんな彼を無視しつつ、光夏海は続ける。

 

「絵には舞踏会の仮面と小さなドレス…。

 何の世界なんでしょうか?

 ねぇ、士くん?」

 

少しばかりため息をつきつつも、カメラで風景を撮っていた士は答える。

 

「まぁ、何にしても情報収集が先だな。」

 

夏海とユウスケ、士の二組に別れて歩きだした。

 

 

 

『分離した未来』

 

 

 

 

 

街は静かだった。

 

人がいない訳ではなく、人はいるが全員が紫の檻の中に入れられていた。

 

「なんだ…これは…。」

 

士は辺りを見渡すが、何処まで見ても人は檻の中だった。

 

その時、爆発音がした。

 

駆けつけてみると、黒いドレスを着た銀髪の少女が鍵穴の付いた紫の巨人と戦っていた。

 

「ハアァア!」

 

少女が巨人を蹴り落とすと、その巨人は消滅する。

 

「ふぅ…。」

 

ドレスの少女は士に気付き、構えをとる。

 

「あなた…!

 ディスダークの仲間ね!」

 

「やれやれ、またこれか…。」

 

腰にベルトを着ける。

 

「沸騰した頭を落ち着かせるのは、これが手っ取り早い。」

 

士は少女に一枚のカードを見せる。

 

「変身!」

 

カードをベルトの中に入れ、ベルトの両側に付いたボタンを押す。

 

『KAMEN RIDE DECADE』

 

灰色の虚像が数多に出現し、彼に重なる。

 

そして、彼はマゼンダの破壊者…ディケイドになった。

 

「あなたは一体…?」

 

「通りすがりの仮面ライダーだ。

 覚えておけ。」

 

その一言で、戦いは始まった。

 

少女のロッドとディケイドの剣…ライドブッカーが火花を散らす。

 

「ハァ!」

 

「…!」

 

素早い少女に次第にたじたじになるディケイド。

 

「速いな…。

 ならコイツだ。」

 

ディケイドは新たにカードをベルトに差し込む。

 

『KAMEN RIDE FAIZ』

 

姿が変わるディケイド。

 

更に、カードを一枚差し込む。

 

『FORM RIDE FAIZ ACCEL』

 

姿が銀色に変わる。

 

「付き合ってやる。

 10秒間だけな…!」

 

腕に付いた時計のボタンを押す。

 

『START UP』

 

少女が見えない物体に弾かれている様に、あちこちに飛ばされる。

 

『three…two…one…TIME OUT』

 

ディケイドは、元の姿に戻る。

 

「ま、こんなもんか。」

 

倒れた少女を捕まえようと、近づく。

 

その時、倒された筈の紫の巨人が現れた。

 

しかも、複数体。

 

「なんだこいつら。

 こいつが倒したんじゃないのか?」

 

倒れた少女が立ち上がるが、ディケイドの攻撃で思うように体が動かない。

 

「クッ…。」

 

少女は万事休すだと思ったが、敵だと思っていた仮面の騎士から思いもよらない答えが帰ってきた。

 

「ちっ、しょうがない。

 ちょっと待ってろ。」

 

再度、カードをベルトに入れる。

 

『KAMEN RIDE RYUKI』

 

ディケイドの姿が龍の騎士に変わる。

 

「こいつだな。」

 

カードを入れる。

 

『ATTACK RIDE ADVENT』

 

鏡の中から出てきた赤い龍が紫の巨人を薙ぎ倒しながら、ディケイドの前で止まる。

 

「乗るぞ、捕まってろ。」

 

少女を龍に乗せ、ディケイドはその場から離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぜ、私を…。」

 

写真館の前で下ろされた少女が変身を解いた士に聞く。

 

「聞かせて貰うぞ。

 この世界の事をな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャ…。

 

二人が戻ってくる。

 

「何にも見つかりませんでしたよ。

 士く…。」

 

「どうしたの?

 夏海ちゃ…。」

 

二人は唖然とする。

 

「士、お前まさか!」

 

「女の子を誘拐…!」

 

「んな訳ないだろ。」

 

こんないざこざをしているなか、白髪の老人…光栄次郎は少女にコーヒーを渡す。

 

「はいどうぞ、コーヒー。」

 

ニコッ!と微笑む栄次郎。

 

「ありがとうございます。」

 

コーヒーに口を付ける。

 

「ん、美味しい。」

 

少し頬が緩む少女。

 

「マスター、僕もコーヒー。」

 

そこには、ラフな格好の青年…海東大樹の姿があった。

 

「海東さん!

 どこいってたんですか?」

 

ちょっとにやけた顔の大樹。

 

「ちょっと、探し物をね。。」

 

そう言って、イスに座る。

 

「だからね、いつも言ってるけど私はね、マスターじゃないの。」

 

そう言いつつも、コーヒーを持ってくる栄次郎。

 

「もう良いだろ。

 で、何がこの世界で起きたんだ?」

 

士は彼女に迫る。

 

「…私は、トワ。

 この世界の人ではありません。

 こことは違う世界からやって来たんです。

 あの巨人は、ゼツボーグといって、巨人を操っているのはディスピアという絶望そのものです。」

 

「俺を襲った理由はなんだ?」

 

「あなたが首にかけている錠前が、ディスピアの側近の着けているのと同じで、つい…。」

 

ユウスケが割り込む。

 

「でも、トワちゃんってさ、ずいぶん敵に詳しいんだな。」

 

その言葉に、トワは少し言葉に詰まる。

 

「それは…。

 敵に操られていたので…。」

 

「え…。」

 

「以前は、この世界もこんなふうではなく、ちゃんと人も動物も花も全てが輝いていました。

 それに、希望を守る伝説の戦士…プリキュアも。」

 

その言葉に、夏海が反応する。

 

「この世界?

 じゃあ、他の世界も?」

 

俯きながら、トワは答える。

 

「はい…。

 私の世界も…。」

 

尚も、トワは続ける。

 

「私は操られ、プリキュアを封印してしまったんです。

 その後、私はディスピアに洗脳を解かれて、全てを教えられ、絶望しかけました。

 この世界の事、プリキュアの事…、私の事。

 でも、絶望せずに戦う事を選びました。

 罪を償うために…。」

 

「そうか、大体わかった。」

 

立ち上がる士。

 

「ようは、そのディスピアとやらを倒せばいいんだな?」

 

目を丸くするトワ。

 

「待ってください!

 確かにあなたは強いですけど、巻き込む訳には…!」

 

「まぁまぁ、それが俺たちのやることらしいから。

 ね?」

 

なだめるユウスケにトワが問う。

 

「あなたたちは…一体…?」

 

それに士が答える。

 

「簡単に言うと、お前と同じ異世界から来た。

 もちろんお前とは違う…な。」

 

その言葉にトワは驚愕する。

 

「色々な世界を巡っている通りすがりだ。」

 

士は椅子から立ち上がる。

 

「まぁ、相手が絶望そのものなんて大した敵でもないだろ。」

 

士がトワを向き、言う。

 

「なんたって、俺は…世界の破壊者だしな。」

 

その言葉に、トワは疑問を持つ。

 

(世界の…破壊者?)

 

トワが考えている中、声が聞こえた。

 

 

「さて、行きますか。」

 

「そうだね夏海ちゃん。

 海東さんも行きますよね?」

 

「今回は、僕も行くよ。

 ちょっと、気になっていてね。」

 

士は、ドアを開ける前に、夏海、ユウスケ、大樹の三人は外に出る。

 

士は、トワに言う。

 

「行こうぜ、トワ。

 ディスピアを倒しにな。」



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分離した未来 3/4

「ここがディスピアのこの世界での城です。」

 

一行は、城と言うより学園に近い外見の場所に来ていた。

 

「やっぱりこの場所だったか。」

 

大樹が学園の上を見上げるのを、ユウスケが問う。

 

「やっぱり…?」

 

「あぁ、この世界のお宝はここに眠っている。」

 

「ついてきたのはお宝目当てってところか。」

 

士がそんなことをぼやいていると、地響きが鳴り、大地が裂ける。

 

そこには、巨大なカエルが佇んでいた。

 

「…もうばれてるみたいだねぇ。」

 

大樹が前に出る。

 

「ここは僕に任せてくれたまえ。」

 

「良いんですか?」

 

夏海の問いに、大樹が答える。

 

「なぁに、お宝の為さ。」

 

「…頼んだぞ。」

 

士が答えると、四人は城の中に入る。

 

「さてと、さっさと終わらせるよ。」

 

大樹は銃を出し、そこにカードを挿入する。

 

そして、それを掲げる。

 

「変身!」

 

『KAMEN RIDE DIEND』

 

引き金を引くと、幾重にも出現する影が大樹に合わさっていき、そこに仮面ライダーディエンドが現れる。

 

「オマエ…ダレダ…?」

 

カエルがディエンドに問う。

 

「通りすがりの仮面ライダーさ。

 覚えておきたまえ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奥へと進んでいくと、大きな庭園があった。

 

しかし、全てが黒ずんでいた。

 

その中心。

 

そこには、巨大な猫が鎮座していた。

 

「ここは任せて!

 俺が行く!」

 

前に出たのはユウスケだった。

 

「士と夏海ちゃんはトワちゃんを頼む!」

 

「任せておけ。」

 

士達が奥に進むのを背中で感じながら、巨大な猫に視線を合わせる。

 

腰に手を出すとそのままベルト…アークルが出てくる。

 

左手をベルトをなぞりながら腰に。

 

右手を左に突きだし、スライドしながら左に。

 

そして、叫ぶ。

 

「変身!」

 

キュインキュインキュインキュイーーーン!

 

その音と共に、ユウスケの体を鎧が包み込む。

 

「よし!

 クウガの力、見せてやる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に、奥へと進むと、大きな広場に来た。

 

「一体どこまで続いてるんだ。」

 

士が悪態をついていると、突風が吹き荒れる。

 

「キシャアアアァァァアアア!」

 

空か黒い巨大なカラスがこちらを狙っている。

 

「キバーラ!」

 

夏海がその名を呼ぶと、白いコウモリが飛来する。

 

「は~い?」

 

そのコウモリ…キバーラを手に取る夏海。

 

「士君とトワちゃんは先に行ってください。」

 

「夏みかん…!」

 

「私だって、もう守られる立場じゃないんです。」

 

夏海がニコリと笑う。

 

「それに、まだまだ旅は続けたいので。」

 

「ったく…、しょうがない。

 さっさと終わらせて来い!」

 

「わかりました!」

 

士が先に進んだのを確認すると、キバーラが夏海を甘噛みする。

 

「かぁぷ。」

 

キバーラを前に突きだし、戦士に変わる合図を贈る。

 

「変身!」

 

鎖に巻き付かれたと思うと弾け飛び、そこには、仮面キバーラが立っていた。

 

「何人たりとも、ここから先へは通しません!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが最上階か。」

 

周りは、淀んだ空気に包まれていた。

 

「出てきなさい!

 ディスピア!」

 

トワが言い放つと、淀んだ空気が集まり、一つの集合体に変わる。

 

「絶望しに来たのか?

 それとも、死にに来たか。」

 

集合体は、黒き女王に変貌した。

 

「そこの人間は…何用だ?」

 

「トワと一緒だ。」

 

士はベルトを腰に付け、カードを前に掲げる。

 

「変身。」

 

『KAMEN RIDE DECADE』

 

ディスピアは、ディケイドを見る。

 

「貴様が、ディケイドか。

 話しには聞いているぞ。

 

 世界の破壊者…この世界も破壊しに来たのか?」

 

「あぁ。

 だが、壊すのは世界じゃない。

 お前だ…!」

 

ディケイドはライドブッカーを銃に変形させ、ディスピアに放つ。

 

しかし、ディスピアは銃弾を黒い蔦で払い、それをディケイドとトワに突き出す。

 

トワはロッドで、ディケイドはライドブッカーを剣にして避ける。

 

「なら、こいつだ。」

 

『KAMEN RIDE KIVA』

 

ディケイドの姿が、ある種族の王…キバに変わる。

 

迫り来る蔦を華麗な動きで避けるディケイド。

 

蔦は地面に突き刺さる。

 

「ちょこまかと…。」

 

捌き続けるトワは、次第に押されはじめ、ディケイドの元へ飛ばされる。

 

「トワ!」

 

ディケイドが気をとられる隙に、蔦がディケイドを突き弾く。

 

「グアッ…!」

 

ディケイドは転がり、変身が解かれ、地に伏してしまう。

 

「トワ…、可哀想なトワ…。

 また犠牲にする。

 自分の力の無さが仇になって…。

 プリキュアや王国の民、家族、そして、カナタ。

 お前は負け続ける。

 世界の破壊者を使ったとしてもな…。」

 

「う…うぅ…。」

 

トワの目から涙がこぼれる。

 

「さぁ、絶望して、全てから逃げるがいい。

 さすれば、全てが楽になる…。」

 

「くだらないな。」

 

ディスピアの言葉に、士が立ち上がる。

 

「確かに、全てが楽になるかもしれない。

 だがな、こいつは罪を償うために戦ってる。

 逃げる事で、こいつ自信が楽にはならない。

 背負った罪は、立ち向かわなければ無くならないんだ。

 だから、こいつはこんなところで負けるわけにはいかない。

 それにな…。」

 

士がトワを見て、ディスピアに向き直る。

 

「世界の破壊者がついてるんだ。

 負けるわけないだろ。」

 

「貴様、一体何者だ…。」

 

ディスピアが問う。

 

「通りすがりの仮面ライダーだ!

 覚えておけ!」

 

『KAMEN RIDE DECADE』

 

士は再度、変身する。

 

絶望の淵に立たされた、少女を救う為に。



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分離した未来 4/4

ディスピアとディケイドが対峙する。

 

ディケイドは、剣で蔦を凪ぎ払いながらも真っ直ぐディスピアの元へ近づいていく。

 

「貴様が置いてきた仲間達は今頃どうなったかな?」

 

ディスピアがディケイドに囁きかける。

 

「悪いが、あいつらが負ける筈がない。

 あいつらは、強いからな。」

 

実際、その通りだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ATTACK RIDE BLAST』

 

巨大なカエルはディエンドに翻弄されながら、彼が放つ光弾でダメージを負っていた。

 

「ま、待つんだね!」

 

カエルがディエンドに待ったをかける。

 

「何?」

 

「ぼぼぼ、ぼくを見逃したら、世界の半分…いや、4分の3をあげるんだね!

 だから…!」

 

「…ふーん。

 実に魅力的だねぇ。

 でも、君は4分の1を支配するんだろう。

 その世界には、自由というお宝がない。」

 

カエルの顔がひきつる。

 

「つまり、さっさと決めちゃおうか。」

 

ディエンドは懐から青いタブレット…ケータッチを取り出し、液晶をなぞり始める。

 

『G4・RYUGA・ORGA・GLAVE・KABUKI・CAUCASAS・ARC・SKULL』

 

そして、ケータッチを腰に装着する。

 

『FINAL FORM RIDE DIEND』

 

 

ディエンドの姿が変わっていき、額には自分自身、胸には八つの世界の仮面ライダーのカードが出現した。

 

「大サービス。」

 

『ATTACK RIDE GEKIJOBAN』

 

ディエンドが引き金を引くと、八人の仮面ライダーが現れる。

 

使用者の命を奪う最悪の軍事マシン。

 

自らを現実のものにしようとした漆黒の龍。

 

人ではなく怪人に変わり果てた青年。

 

ヒトを滅ぼすアルビノの切り札。

 

守るべき者達に裏切られ続け堕ちた鬼。

 

金色に輝く最速の戦士。

 

封印されしある種族の王。

 

哀愁漂う骸骨の探偵。

 

その八人と、世界を渡るトレジャーハンターの合計九人がカエルを標的に捕らえる。

 

『FINAL ATTACK RIDE DI・DI・DI・DIEND』

 

『FINAL VENT』

 

『EXEED CHARGE』

 

『MIGHTY』

 

『RIDER KICK』

 

『ウェ~イクアップ!』

 

『スカル!

 マキシマムドライブ!』

 

己の足で、剣で、枹で、そして、銃で。

 

「グワアアアァァァアアア!」

 

それぞれの必殺技を受けたカエルが爆散する。

 

「さてと…。」

 

変身を解いた大樹は、足を学園の方へと向ける。

 

「お宝を手に入れますか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クッ…!」

 

クウガは苦戦していた。

 

ネコがあまりにも速すぎる。

 

「超変身!」

 

クウガの体が青く変化する。

 

近くにあった木の棒を持ち、ロッド…ドラゴンロッドに変える。

 

爪とロッドの攻防の後、クウガは吹き飛ばされる。

 

この姿は、速いが力が弱い。

 

「超変身!」

 

今度は、緑に姿が変わる。

 

花壇の上に置いてあったじょうろを弓矢…ブラストペガサスに変える。

 

「てや…!」

 

命中はするが、攻撃をもろともせずに接近し再度吹き飛ばされる。

 

「今度こそ…!」

 

またも姿が変わる。

 

紫色になったクウガが、ショベルを持つと、剣…タイタンソードに変わる。

 

「でやぁ!」

 

ネコに突き刺さる。

 

大ダメージと思ったが、猫からどす黒いオーラが剣を通して流れ込んでいく。

 

「うっ…!」

 

クウガの姿が変わっていく。

 

「ゼツ…ボウ…ニ…。」

 

ネコが言う。

 

クウガの体は金に変わっていく。

 

その目は、黒い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全部が真っ暗だった。

 

歩く事さえままならない。

 

力が出ない。

 

もうこのままがいい。

 

ユウスケは虚ろな目をして佇んでいた。

 

すると、後ろからバシンッ!とはたかれる気がした。

 

後ろを振り向くと、そこには見知った顔があった。

 

その人物は、微笑みを浮かべ、ユウスケから離れていく。

 

離れていくにつれて、光がユウスケを包んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「コレデ…ヒトリ…。」

 

ネコがその場から離れようとした時、黒い目のクウガから光が溢れる。

 

「そうだよな…姐さん…。」

 

黒い目が赤く変わる。

 

「俺は…俺は…!」

 

ユウスケは、拳を握る。

 

「この世界を!

 姐さんから託された想いを!

 皆の笑顔を守ってみせる!」

 

仮面ライダークウガ ライジングアルティメット レッドアイ…それが今の彼の名前。

 

「バカナ…!

 ゼツボウニソメタハズナノニ!

 ナゼ!」

 

クウガがネコの問いに答える。

 

「大事な人が怒ってくれたからかな。

 だから…。」

 

クウガが構えをとる。

 

「あんたを倒させてもらう。」

 

ネコが鋭い爪でクウガに攻撃をする。

 

しかし、クウガは臆することなくネコに稲妻を纏ったパンチを繰り出す。

 

「ガアッ!」

 

飛ばされるネコに、再び構えをとるクウガ。

 

「ハアアアァァァアアア!」

 

金色の力を足に溜める。

 

「ハァ!」

 

猫が最後に見たものは、飛翔した凄まじき戦士の姿だった。

 

「オリャアアア!」

 

クウガの蹴りがネコを貫いた。

 

「ふぅ…。」

 

変身を解く。

 

「士…大丈夫かな。

 まぁ、平気だよな。

 なんたって、士だしな。」

 

そう言って、彼は地面に突っ伏した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てやぁ!」

 

一方のキバーラは紫の翼で飛翔し、カラスと空中戦を繰り広げていた。

 

「やぁ!」

 

サーベルとくちばしが火花を散らす。

 

「きゃあ!」

 

キバーラがカラスの攻撃により地面に落とされる。

 

それを見下ろすカラスが人間の格好に変わる。

 

「中々だが、やっぱり弱いんだぜ。」

 

カラスだったものは続ける。

 

「お前はそんなんで何を守るんだ?

 仲間か?自分か?この世界か?」

 

キバーラは答える。

 

「…全部です。」

 

その言葉にカラスは笑う。

 

「ハッハッハッハ!

 そんな力で何が出来る?」

 

笑い声にお構い無しにキバーラは続ける。

 

「出来る出来ないの問題じゃありません。

 やるんです。

 士くんに任せてって言っちゃいましたから。

 負けたらどやされますしね。」

 

「そーれーに、トワって娘。

 何か通じる物があるしね~。」

 

腰にぶら下がるキバーラも言う。

 

キバーラは剣を下に向け、再度、紫の翼が広がる。

 

「決めさせてもらいます。

 覚悟、よろしいですか?」

 

その言葉は、カラスの思考を鈍らせるのに十分だった。

 

「…いいぜ!

 やってやるんだぜ!」

 

カラスの姿に戻り、そのままキバーラに向かって急降下。

 

キバーラはズザザッ!と押され、彼女を貫く…筈だった。

 

「ぐ…?!」

 

彼女の腹部でくちばしは止まっていた。

 

その原因は。

 

「じゃんねんでした!」

 

もう一人のキバーラだった。

 

「たぁ!」

 

その隙に、キバーラは溜めた剣の力をカラスに向かって突き刺し、そのまま、貫く。

 

「グアァ!」

 

そのまま、カラスは爆散した。

 

「さてと、ユウスケは大丈夫ですかね。」

 

一人と一匹は、もときた道を引き返していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良いのか…トワ…。

 この者は、世界の破壊者…。

 この世界もろとも滅び行くぞ…。」

 

ディスピアはトワに囁きかける。

 

「良いですわ。」

 

トワが立ち上がる。

 

「絶望に支配された世界など、滅ぼしてみせますわ!

 希望の未来へと進むために!」

 

士のライドブッカーが光り輝き、中から三枚のカードが士の手に飛ぶ。

 

「これは…!」

 

ディケイドはカードを入れながら、勝利宣言をする。

 

「どうやら俺たちが勝つらしいぜ。」

 

『FINAL FORM RIDE T・T・T・TWIRIGHT』

 

そう言い、トワの後ろに立つ。

 

「ちょっとくすぐったいぞ。」

 

「え?」

 

トワの体を、文字通り開ける。

 

トワは光に包まれ、そこにはプリキュアを倒した格好の姿があり、所々にマゼンタがある。

 

ただし、頭の部分はいつものトワだが。

 

「これは…!」

 

「どうやらこれが俺たちの力のようだ。」

 

ディスピアの蔦が二人を襲う。

 

しかし、トワの持っているロッドが叩き斬る。

 

「なに…!」

 

ディスピアは次第に追い込まれていく。

 

「さて、決めるぞ!

 トワ!」

 

「はい!」

 

ディケイドはカード二枚を挿入する。

 

トワは力を杖に集中する。

 

『FINAL ATTACK RIDE T・T・T・TWIRIGHT』

 

『FINAL ATTACK RIDE DE・DE・DE・DECADE』

 

「いきます!」

 

トワはディケイドの後ろで青い炎のエネルギーを放つ。

 

そのエネルギーの力で加速したディケイドがディスピアに向かう。

 

 

「オリャアアア!」

 

「クッ!」

 

ディスピアが蔦でバリアを張るが、お構いなしにそれを破る。

 

そして、ディケイドがディスピアを貫く。

 

「また…甦る…私は…私は…!」

 

「たとえ、何度甦ろうと、何度でも倒して見せます。」

 

トワの言い放った言葉に、ディスピアは顔をしかめながら、断末魔を響かせる。

 

「グワアアアァァァアアア!」

 

ディスピアは爆発四散した。

 

「ごきげんよう。」

 

それは、トワの勝利だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「士さん!」

 

トワがディケイドに駆け寄る。

 

「終わったな。」

 

城がみるみる学園に変わっていく。

 

「さてと、俺の役目はここまでか………っ!」

 

変身を解こうとした矢先、灰色のオーロラが二人を包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは…一体…。」

 

その世界は、全て真っ赤だった。

 

そして、八人の戦士がそこにはいた。

 

新たなる戦いが、幕を開けた。



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第五章 春野はるかの場合
なぜ彼はそれを盗んだのか 1/4


その者は、消え去るのを待つのみだった。

 

そう遠くない過去に、彼は過ちを犯した。

 

彼は暴走していた。

 

己の夢が原因で。

 

だが、それを止めてくれたのが、ある男だった。

 

彼は、全力で全身全霊をかけて、私が盗んだものを奪い取った。

 

だからこそ、私の落とし前は自分でつけたい。

 

だから、残すことにした。

 

彼の手には、ひっそりとだが、しっかりとミニカーが握られていた。

 

消え行く彼の顔は、どことなく決意に満ちていた。

 

 

 

 

『なぜ彼はそれを盗んだのか』

 

 

 

 

 

彼女…春野はるかは追われていた。

 

課題に。

 

「うわぁぁぁん!

 終わらないよ~!」

 

わちゃわちゃしながら、彼女は机の上でペンを握る。

 

「あはは…。

 がんばってね。」

 

青髪の少女…七瀬ゆいは、頬を引きづりながらはるかを応援する。

 

彼女が悩んでいたもの…それは、現代文だった。

 

課題の提出日は4日後だが、焦りに焦っていた。

 

この評論文がとにかく難しく、著者…西城究という人を呪いそうになる程であった。

 

「はあぁ…。」

 

はるかは机に突っ伏す。

 

この評論文…『英雄とは』が中々に抽象的なイメージ…例を挙げたもので、怪盗が永遠の命を手に入れたら…と具体的なリアル…警察が結果を出さなければならない理由…を書き交えている。

 

これが彼女を苦しめるのではない。

 

一つ一つの問題が難しく、特に最後の問い…題名にもある通り『英雄とは』という問いに筆が走らない。

 

「はぁ…。

 今日は止~めよ~う。」

 

はるかがペンを置く。

 

「難しいよね、その論評。

 私も丸二日かかっちゃったよ。」

 

「えぇ~!

 ゆいちゃんが!」

 

はるかが大袈裟に驚く。

 

「大袈裟だよ~。

 あっ、もうこんな時間。

 明日日曜日だけど、そろそろ寝ないと明日起きれなくなっちゃうよ。」

 

「はぁ~い。」

 

彼女たちは、寝る支度をして、寝床についた。

 

その様子を見ていた者がいた。

 

「見つけた…。」

 

それは、そう呟き、ゆいの机の上に手紙を置いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。

 

「ない!

 ない!

 なーい!」

 

はるかが朝6時から大声を荒げていた。

 

「ふぁ~。

 どうしたの?」

 

ゆいが眼鏡を掛けながらきく。

 

「プリンセスパフュームが無いの!」

 

「え、え~!」

 

ゆいが驚く。

 

「寝る前に閉めた筈の窓から、吹いた風で目が覚めたときにはもう無くて~!」

 

はるかが一生懸命探しているのを見て、ゆいも探そうとして自分の机を見る。

 

すると、一枚の手紙があるのに気付いた。

 

「これ…。」

 

ゆいがはるかに見せる。

 

「え?」

 

手紙には、『伝説のプリンセスへ』と書かれていた。

 

「まさか…ディスピア…!」

 

はるかが手紙を読むと、ディスピアではなかった。

 

『プリンセスパフュームは頂いた。

 返して貰いたければ、地図にある所へ来い。

 もちろん、他のプリンセスを連れてきては駄目だ。

 アルティメット・ルパンより』

 

「アルティメット…ルパン?

 あの大怪盗?」

 

ゆいが呟く。

 

「ゆいちゃん

 誰か知ってるの?」

 

「うん。

 数十年前に世界を騒がせた大怪盗だけど、もう何十年も前だからおじいちゃんの筈…。」

 

「でも、行くしかないよね!」

 

はるかは微笑む。

 

「私の夢への鍵が盗まれたんだもん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某所

 

赤の英雄、銀の鎧武者、黄色の騎士、黄緑の弓取り、紫の龍が地球外生命体の作り出した機械と抗戦中だった。

 

英雄と鎧武者は、地球外生命体を追い、新たに赤・緑・紫の三体の異形の怪人が戦士たちに加勢した。

 

一方、あるタブレット端末は、ほくそ笑んでいた。

 

「機械仕掛けのエイリアンか。

 面白い。」

 

それに気付いたかの様に、二体のエイリアンが迫る。

 

「サイバロイドZZZのデータ確認。

 蛮野天十郎と認識した。」

 

「素晴らしい!

 君達は実によく出来た機械だ。

 だから、ここで一つ提案なんだが。」

 

「話せ。」

 

エイリアンが簡潔に命令する。

 

「君達は地球上の物全てを機械化し、掌握したい。

 私は人類をデータ化し、統制したい。

 目的はほぼ同じ。

 利害は一致しているだろう?」

 

タブレットはニヤリと笑みを浮かべる。

 

「だから、協力したいんだ。

 君達はロイミュードの素体を使っているから、私が改善してあげよう。

 その為には、君達の端末をいくつか渡してもらいたい。

 いいかな?」

 

その問いに、エイリアンは頷く。

 

「いいだろう。」

 

そして、十数体のエイリアンが浮遊するタブレットの前に並ぶ。

 

「さて…。」

 

タブレットはプラグをエイリアンに差し込み、分子化、吸収する。

 

「…クックック。

 フゥーハッハッハッハッハ!

 待っていろクリム…!

 アーハッハッハッハッハ!」

 

タブレットの笑い声とほぼ同時間、某所では、エイリアンが作り出した大量のコピー体は全て動作を停止した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある者が、そのコピー体を一体拝借していったのだが。



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なぜ彼はそれを盗んだのか 2/4

「たしか、ここのはずなんだけど…。」

 

はるかが地図を見ながら周りを見渡す。

 

そこは、ノーブル学園に程近い森の中だった。

 

「よく来たね~。

 春野はるか。」

 

キザな声と共に現れたのは白いシルクハットに白いタキシード、白のマントをたなびかせた男だった。

 

「あなたが…アルティメット・ルパン?」

 

「いかにも。」

 

はるかの問いに潔くお辞儀するルパン。

 

「だ、だったら早くプリンセスパフュームを返して下さい!

 あれは、私の大切な夢なんです!」

 

それを聞いたルパンがプリンセスパフュームをはるかに投げ渡す。

 

「え?」

 

「欲しいのはそれではなく、君の力なんだよ。」

 

ルパンは怪しげな銃…ルパンガンナーを取り出す。

 

「まずは、小手調べといこうか。」

 

ルパンガンナーの銃口を手のひらに押し当てる。

 

「変身。」

 

ルパンガンナーを周りに向けると宝石が飛び散り、はるかは思わず目を閉じる。

 

そのまま、ルパンガンナーをZの形に伸ばす。

 

『ルパ~ン!』

 

はるかが目を開けると、そこには大怪盗の姿はなく、派手な格好の戦士がいた。

 

「あなたは…。」

 

「仮面ラ…ッ!

 フッ…。」

 

間違えたのか、ルパンは少し笑う。

 

「アルティメット・ルパン、ここに誕生!」

 

ルパンは銃をはるかに突きつける。

 

「小手調べをしようか。」

 

マスク越しだが、本気と分かったのか、はるかは姿を変え、キュアフローラになる。

 

「それがプリキュアの姿か。

 君の実力…確めさせて貰うぞ!」

 

ルパンが走り、フローラにパンチを喰らわせるが、フローラは腕をクロスさせてなんとか防ぐ。

 

「たぁ!」

 

フローラが蹴りを繰り出すが、右手に持ったルパンガンナーで防ぎ、その足を左手でつかむ。

 

「きゃあ!」

 

そのまま投げ飛ばされるが、着地は失敗しない。

 

「はあああ!」

 

フローラがタタタタッ!と走り、距離を詰める。

 

「はあ!」

 

打撃を仕掛けるが、ルパンが払い返しフローラにデコピンをする。

 

「あ痛っ!」

 

おでこを痛がるフローラ。

 

「まだまだだねぇ、春野はるか。」

 

痛がるフローラにルパンが言う。

 

「…貴方の目的は…何?」

その問いに、答えるルパン。

 

「…世界を救う。」

 

「え…?」

 

その言葉に驚くフローラ。

 

「なんて、大層な物じゃない。

 ただ、自分の落とし前はちゃんと着けたいだけだよ。」

 

ルパンがフローラを見る。

 

「身構えろ。

 私ではなく、本当の敵にね。」

 

そう言われたフローラは、咄嗟に身構える。

 

すると、何かが上空から着陸する音が聞こえた。

 

「あれは…。」

 

「以前、地球に来たエイリアン共さ。」

 

エイリアンの数は五体。

 

その五体は、二人の前に着陸する。

 

「サイバロイドZZZの記憶データ確認。

 ルパンを発見。」

 

「我々、メガヘクスの作成したロイミュードのコピー体を使用。」

 

「排除する。」

 

「未知のエネルギーを感知。」

 

「同様に排除する。」

 

五体はそれぞれ腕で二人を指す。

 

「もしかして…!」

 

フローラがルパンを見る。

 

「そういうことだ。

 君を呼んだのはね。」

 

ルパンがはるかに顔を向ける。

 

「ご一緒にダンスはいかがかな?」

 

フローラは答える。

 

「喜んで。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのミニカーは、地球外生命体がタブレットに吸収されるのを見ていた。

 

(私の盗んだものが…。)

 

彼はひどく冒涜された気分になった。

 

(利用されるくらいなら、破壊しよう。)

 

彼は直ぐ様実行に移した。

 

彼らが作り出したコピー体を一体拝借して、元々盗んだものが保管されてあった古城に隠し、彼らの反応があった時に備えた。

 

そして、自分自身も万が一の時の為にルパンガンナーの機能によりコピー。

 

ロイミュードたちから盗んでおいたバイラルコアを使い、コアを封印。

 

そして、万が一が訪れた。

 

消え入る前に、コアを作動。

 

新たな自分が動き出す。

 

しかし、動き出した時期が遅すぎた。

 

既に仮面ライダーとロイミュードの戦いは決着していた。

 

特状課は無くなり、泊進ノ介や詩島霧子、クリム・スタインベルトの姿がない。

 

但し、地下の最深部に行くとルパンガンナーが置いてあった。

 

それを少しばかり拝借しておく。

 

それから、フラフラと久留間市をさまよっていると、教会で結婚式が行われていた。

 

見ると、そこには白いスーツを着た泊進ノ介が純白のウェディングドレスを着た詩島霧子を連れていた。

 

(いつの間に…。)

 

そう思い、彼らの前に現れようとする。

 

しかし、それは茶髪の青年が前に出たことで止まる。

 

そして、彼は驚いた。

 

泊進ノ介が仮面ライダーを止める。

 

そう言ったのだ。

 

そこで彼は思った。

 

(彼らを巻き込んではならない。)

 

元々は自分の不甲斐なさが原因だ。

 

彼はその場を後にした。

 

古城へと向かう道中、ピンク・青・黄色の三人の少女が白いシルクハットを被った男と対峙していた。

 

ピンクの少女に見覚えがあったが、男が鍵穴に入るのが見えた。

 

それを追うように入ると、真っ暗な城に出た。

 

そこでは、仮面の騎士と妖しいプリンセスが戦っていた。

 

青年がプリンセスに語りかけていた。

 

その言葉を小さな声で繰り返す。

 

「世界を守る…プリンセスパフューム…プリンセスプリキュア…か。」

 

隙を見て、同じ手法で元の世界に戻る。

 

そして、彼は古城へと赴き、ロイミュードに入る。

 

「プリキュア…。

 手伝って貰うぞ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ある者がこそこそと動き回っている。

 排除しろ。」

 

タブレットが地球外生命体に命令する。

 

「了解した。」

 

地球外生命体は動き出す。

 

タブレットは不敵に笑う。

 

「邪魔な虫は排除しなければな…。」



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なぜ彼はそれを盗んだのか 3/4

ルパンの得物とエイリアンの得物が火花を散らす。

 

両者一切譲らない。

 

「…!」

 

ルパンブレードバイラルコアをルパンガンナーに装填。

 

 

もう一体のメガヘクスに背中を斬られる。

 

「くっ…!」

 

よろけながら、素早く銃口を押す。

 

『ア~ルティメット!

 ルパ~ン!

 ストラ~シュ!』

 

倒れ様に後ろ二体にエネルギー波を打ち放つ。

 

「グガッ!」

 

「グギッ!」

 

二体は爆発。

 

直後、木々の揺れ、鳥たちの羽ばたき、爆煙、全ての動きが遅くなる。

 

その中に、娘の悲鳴。

 

「しまった!」

 

怪盗は、駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初は、優勢だった。

 

息も彼が合わせてくれたのか完璧で退けられていたが、離されてしまった。

 

今、向こうに二体。

 

こちらには三体。

 

「フッ…!」

 

なんとか避けるが、後ろから蹴りをいれられ、前に突き飛ばされ、前にいた三体目に弾かれ木にぶつかる。

 

「カハッ…!」

 

ディスダークより強かった。

 

更に、自分の動きが遅くなる。

 

体は動かない。

 

疲労は溜まる。

 

敵は目の前。

 

絶望的な状況だった。

 

「エネルギー体の憔悴、確認。」

 

「行動不能。」

 

「排除する。」

 

三体が両手を前に突きだし、恐らくビームを発射するつもりだ。

 

思わず目をつぶる。

 

突きつけられた死。

 

まだ夢の途中、諦めたくない。

 

まだ

 

 

 

 

死にたくない。

 

 

 

 

しかし、痛みが来ない。

 

死とはこう言うことなのか。

 

だが、外で苦痛の声が聞こえる。

 

恐る恐る目を開けると、そこには、ビームを全身で受け、必死に守るルパンの姿があった。

 

「グ…!ウ…!」

 

やがて、ビームは終わり、ルパンは倒れる。

 

「ルパンさん!」

 

倒れたルパンを膝の上に乗せる。

 

「あ…!あぁ…!」

 

慌てるフローラにルパンは力無く口を開く。

 

「すまない…、春野はるか…。

 それを…盗んで…しまって…。」

 

「いいん…です…!

 いいから…!」

 

「最後に…不躾ながら…頼みたい…。」

 

ルパンがルパンガンナーをフローラに渡す。

 

「これを…持って…いてくれないか…。」

 

フローラはルパンガンナーを握る。

 

「わか…り…ました…!」

 

ルパンが太陽を見上げる。

 

「泊進ノ介…。」

 

見知らぬ名前が出る。

 

「私は…英雄に…仮面ライダーに…なれた…だろう…か…。」

 

ルパンガンナーを差し出した腕が彼の胸からたらりと落ちた。

 

彼は死を迎えた。

 

「うっ…!くっ…!」

 

涙するフローラにエイリアンは言う。

 

「馬鹿げた奴だ。」

 

「他者を救うために自らを犠牲にするなどエラーが発生している。」

 

「感情というエラーは不要。

 やはりメガヘクスが完璧な存在。」

 

「エラーなんかじゃ、エラーなんかじゃない!」

 

フローラが叫ぶ。

 

「人を助ける事がエラーだなんて、言わせない!

 エラーだって言い張るんなら、あなたたちが完璧な筈がない!

 笑ったり、悲しんだり、人を守ったりするエラーがあってこその命だもん。

 その命をかけたルパンさんを笑うあなたたちを、私は絶対に許さない!」

 

頬をつたう涙がルパンの体に落ちる。

 

「…なに…?」

 

ルパンの体が光の粒子に変わり、一つのキーになる。

 

「これは…!」

 

「新たなエネルギー反応、確認。

 排除する。」

 

エイリアンの一体がビームを放つ。

 

そして、辺りは砂煙に包まれる。

 

『ルパン!』

 

「ルパン!

 モードエレガント!」

 

砂煙から出てきた彼女は姿が変わっていた。

 

肩やベルトはルパンの物に。

 

服は紅のレザーの物に、靴は黒いブーツに。

 

頭にはルパンが身に付けていた黒いシルクハット。

 

そして、右手にはルパンガンナー。

 

左手でお決まりのポーズを決め、エイリアンに問う。

 

「お覚悟は、よろしくて?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数年前。

 

それは、まだ彼が『仮面ライダー』も『ロイミュード』も知らなかった時。

 

既に、盗みを引退し、車椅子の生活になってしまった彼は、とある花畑に来ていた。

 

気晴らしのつもりだったが、中々いい気分だ。

 

そんな花畑の中で、一人の女の子がクレヨンで絵を描いていた。

 

描き終わったのか、その絵を空に掲げる女の子。

 

「あっ!」

 

その絵が風に飛ばされ、こちらに飛んでくる。

 

その絵を掴み、見る。

 

そこには、ピンク色のドレスを着て、銀色のティアラ、花の髪飾りを着けたお姫様がいた。

 

「まって~!」

 

少女が駆け寄ってくる。

 

「これは、君が書いたのかな?」

 

少女に紙を手渡す。

 

「うん!

 はなのプリンセス!

 わたしの夢なんだ~。」

 

「夢…ね。」

 

彼はため息をつく。

 

「夢は…見ない方が良いよ。」

 

「なんで~?」

 

少女が不思議そうに彼を見る。

 

「生き続ける…それが私の夢だが、今ではこんなに年をとってしまった。」

 

彼は、下を向く。

 

「だったら!」

 

少女の声に顔を上げる。

 

「だったら、またいつかあいにきて!

 わたし、りっぱなはなのプリンセスになるから!」

 

少女が絵を渡す。

 

「このえ、あげる!」

 

次に、彼女は小さな右手の小指を出す。

 

「やくそく!

 またいつかあえるよね?」

 

彼はしわくちゃになった右手の小指を女の子の小指と結び合わせる。

 

「あぁ…。」

 

彼が聞く。

 

「そういえば…名前は?」

 

彼女が満面の笑みで答える。

 

「はるのはるか!」



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なぜ彼はそれを盗んだのか 4/4

「エネルギーの複合体、確認。

 排除する。」

 

エイリアンが彼女に迫りくる。

 

その得物が振り下ろされるが難なく避け、逆に腹部にカウンターの拳をおみまいする。

 

「…!

 身体能力の向上確認!」

 

素早くルパンブレードバイラルコアを装填。

 

銃口を押す。

 

『ア~ルティメット!

 ルパ~ン!

 ストラ~シュ!』

 

「ハァ!」

 

エネルギー波をカウンターをおみまいした一体に放つ。

 

「ググゥ…!?」

 

そのまま爆発。

 

違う一体が重加速を起こす。

 

木々の揺れは遅くなるが、彼女には通用しない。

 

「重加速の対応、確認。」

 

一体が今度は上空からフローラを翻弄する。

 

彼女は飛び回るエイリアンに弾を当てる。

 

すると、その動きはまるでコマ撮りのようになる。

 

「か…体が…!」

 

フローラが飛翔する。

 

「ハァ!」

 

「グゲッ…!」

 

空中でエイリアンを一閃し、爆散。

 

着地するフローラにエイリアンが動揺しながら問う。

 

「何故だ!

 既存のエネルギー同士の融合体風情が!

 我々に勝てるはずは!?」

 

フローラは前に進みながら、銃口を押す。

 

『ア~ルティメット!

 ルパ~ン!

 ストラ~シュ!』

 

「あなた達だけには、負けない!」

 

エイリアンはビームを放つ。

 

はるかはエネルギー波を放つ。

 

互いの力はぶつかり合い、爆風を起こす。

 

爆風が終わる。

 

「何処へ消えた?!」

 

その瞬間、太陽の光が遮られる。

 

「プリキュア!

 アルティメット・トルビヨン!」

 

遥か上空にいるフローラがエイリアンに向かって、急降下する。

 

「ハアアアァァァアアア!!!」

 

ルパンガンナーのブレードをエイリアンに突き立て、斬り裂く。

 

「グゴァァァアアア!」

 

エイリアンは爆発する。

 

そして、彼女は背を向ける。

 

「ごきげんよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はるかちゃん、宿題終わった?」

 

ゆいが聞く。

 

「うん!」

 

はるかが満面の笑みを浮かべた。

 

「先に教室で待ってて。」

 

はるかがゆいに言う。

 

「了解。」

 

ゆいが部屋から出る。

 

はるかが机の下からルパンガンナーを取り出す。

 

「夢じゃ…無かったんだよな~。」

 

すると、ルパンガンナーから一枚の絵が鮮明に映し出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆいが教室で待っていると、はるかが来た。

 

「はるかちゃん、遅い…どうしたの?」

 

ゆいがはるかに聞く。

 

「ふぇ?

 なんでもないよ~。」

 

はるかの目には、大粒の涙が溜まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたんだ?

 ベルトさん。」

 

とある地下ガレージで、一人の男ど一つのベルトが話していた。

 

「すまないね。

 仮面ライダーを辞めた君に申し訳ないが、もう一度だけなってくれないか?」

 

「そりゃどうして?」

 

男はベルトに問う。

 

「あるところで、重加速反応があった。」

 

「本当か?」

 

「あぁ。

 さらに、ルパンガンナー一式を誰かに盗まれたみたいだ。」

 

「本当かよ。」

 

「すまない。」

 

ベルトがしょんぼりする。

 

「いや、起きたことはしかたない。」

 

男はベルトを巻く。

 

「やってくれるのかい?」

 

「あぁ、バディ復活だ!」

 

男がベルトに問う。

 

「ところで、重加速反応があった場所ってどこなんだ?」

 

ベルトが答える。

 

「私立ノーブル学園付近だよ。

 進ノ介。」



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第六章 仮面の騎士の場合
Wとの出会い/涙を拭う二色のハンカチ


黒い森の中、彼女はピンク色のUSBを持っていた。

 

ボタンを押す。

 

『QUEEN!』

 

徐々に、USBの色が黒く変わっていく。

 

『QUEEN!

 QUE…!QUE…!QUE…!

 

 

 

 

 DESPAIR!』

 

 

 

 

「面白い…。」

 

彼女はニヤリと笑みを浮かべる、

 

「行け…。」

 

彼女から放たれたUSBは、鍵穴を通り抜けた。

 

 

 

 

『Wとの出会い/涙を拭う二色のハンカチ』

 

 

 

 

その少女はある探偵事務所に来ていた。

 

何かを決意したのか息を飲み、扉を開ける。

 

カランカラン…。

 

扉を開けた先には、関西弁で話す女が黒いハットを被った男ともめていた。

 

「依頼が全然来ない~!

 来ないとこの探偵事務所も無くなる~!」

 

「分かってるよ!

 だからこんなに張り紙作ってるだろ!」

 

二人の喧嘩にたじたじの少女。

 

「あのぉ~…。」

 

「やる気あんの!?」

 

「やる気あるから作ってんだろ!」

 

そこに、違う部屋から出てきた青年が二人に声をかける。

 

「二人とも落ち着いて。

 お客さんが来てるよ。」

 

「ちょっと黙っててフィリップ君!

 …え?」

 

「…あ?」

 

二人が少女に目を向ける。

 

途端に、愛想良くなる二人。

 

「ようこそ~鳴海探偵事務所に~。

 私は鳴海探偵事務所の所長、照井亜希子です。」

 

「そして俺はハーフボイルド探偵、左翔太郎ッ…いって!」

 

亜希子が『ハーフボイルド』と書かれたスリッパで叩く。

 

「何すんだ亜希子ォ!」

 

そんな彼を無視して亜希子は言う。

 

「依頼は何ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鳴海荘吉…おやっさんにの事を知りたい?」

 

鳴海荘吉という名前を聞いて、三人は顔を見合わせる。

 

「本当に鳴海荘吉だったのか?」

 

「はい。

 寮母の白金さんから聞きました。」

 

「白金さんか…。」

 

「知ってるのかい、翔太郎?」

 

フィリップと言われた青年が翔太郎に聞く。

 

「あぁ、昔何度かおやっさんと依頼で会った事があってな…。」

 

再度みなみに向き直る。

 

「で、鳴海荘吉は…おやっさんはどんな感じだったんだ?」

 

「…そうですね…まるで…幽霊…?」

 

「幽霊…。

 この前のダミーの時の…!」

 

亜希子が思い出したかのように言う。

 

以前、デス・ドーパントによって死者が蘇る事件があり、その中には鳴海荘吉がいたが、それはダミー・ドーパントによって引き起こされた事件だった。

 

「でも、幽霊というには…なんていうか…概念?」

 

「概念…か…。」

 

翔太郎には覚えがあった。

 

「なぁ、それはいつからだ?」

 

翔太郎が問う。

 

「確か、USBメモリを拾ってから…。」

 

「やっぱり…!」

 

翔太郎は懐から黒いUSBを取り出し、みなみに見せる。

 

「これと似ていたかい?」

 

「はい。

 ですが、文字がSだったのと挿入部分が青…。」

 

青と言った瞬間、フィリップが気付く。

 

「まさか…!」

 

「フィリップ!

 すぐ検索だ!」

 

「分かってる!」

 

フィリップがすぐさま部屋に向かう。

 

「何々!」

 

亜希子が錯乱し、みなみが少し怪訝な顔をしていた。

 

翔太郎が言う。

 

「T2ガイアメモリがまだ残ってるって事だ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「検索を始めよう。」

 

フィリップは白い空間にいた。

 

「T2ガイアメモリ…残存…事件後…」

 

本棚が動く。

 

フィリップの前に四冊の本が置かれる。

 

「四冊?

 多いねぇ。」

 

彼は、本を手に取り、読み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、みなみちゃんはどうしてここに?」

 

亜希子がみなみに聞く。

 

「実は、これを…。」

 

彼女は一つのドレスアップキーを取り出した。

 

「これって…?」

 

「それは、鳴海荘吉さんに渡されたガイアメモリという物が変わったものです。」

 

「使い方は知ってるの?」

 

「はい。」

 

その時、サンタの格好をした男…サンタちゃんとモジャモジャヘアーの男…ウォッチマンがどたばたと入ってくる。

 

「しょ…翔太郎ちゃん!」

 

「どうしたんだ?

 そんなに慌てて?」

 

息を切らしながら二人は言う。

 

「変な…怪人が…町を…!」

 

そこまで言ったところで、翔太郎は走り出す。

 

「あっ!」

 

みなみも後を追う。

 

翔太郎はバイクに乗ろうとしていた。

 

「待って下さい!」

 

「ん?

 お嬢ちゃんは待ってろ。」

 

「嫌です。

 それに、私だって役に立てます。」

 

凛とした彼女の姿に翔太郎の探偵の感が反応した。

 

「んあああ!

 わーたよ!

 ほら、乗れ!」

 

翔太郎はもう一つのヘルメットをみなみに渡す。

 

「いいか?

 危ないと思ったら、すぐに逃げるんだぞ。」

 

「わかってます。」

 

二人を乗せたバイクは、風都の中心へと走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

町の中心部では、ある怪人が破壊活動を行っていた。

 

その場に一台のバイクが到着し、翔太郎とみなみがその場に立つ。

 

「おい待て、ドーパント!」

 

ドーパントと呼ばれた怪人が彼らを見る。

 

「私はドーパントではない。

 メガヘクスだ。」

 

メガヘクスは一本のT2ガイアメモリを出す。

 

「そして、これがドーパントなのだろう?」

 

『OCEAN!』

 

首の付け根にメモリが融合していき、荒波を模した姿に変わる。

 

「力、増幅。

 破壊を開始する。」

 

メガヘクスもといオーシャン・ドーパントが動き出す。

 

「メガだがギガだが知らねぇが、この町を泣かせる奴は許せねぇ。」

 

彼がベルトを着ける。

 

『悪い翔太郎。

 いま検索中なんだ。』

 

「しょうがねぇ。

 じゃあ、こっちだ。」

 

ベルトを変える。

 

懐からガイアメモリを取り出す。

 

『JOKER!』

 

ガイアメモリをドライバーに差し込み、展開。

 

「変身。」

 

『JOKER!』

 

彼の姿が変わる。

 

風都の黒き切り札。

 

「仮面ライダー…ジョーカー…!」

 

手をスナップさせて、敵に向かおうとしたら、みなみも前に出る。

 

「私も!」

 

「え?」

 

ジョーカーがみなみを見ると、何か不思議な物体を持っていた。

 

「プリキュア!

  プリンセスエンゲージ!」

 

それを合図にみなみの姿が変わる。

 

「澄みわたる海のプリンセス!キュアマーメイド!」

 

「えぇぇぇえ!」

 

驚くジョーカー。

 

「すいません黙ってて。

 でも、今はそんなことより…。」

 

マーメイドがオーシャンに向く。

 

「敵を倒しましょう!

 左さん!」

 

「だな。

 いくぜ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「興味深いねぇ。

 キーの能力で強引に絶望の記憶をこじ開けるなんて。

 しかも、メモリ自身が…。」

 

フィリップが本を閉じる。

 

「しかし、破壊された。

 さらに、スカルのメモリが新たな物に再構築されている…。

 

フィリップが推測する。

 

「海藤みなみ…。

 それに…。」

 

彼の視線の先には、ある一冊の本。

 

それは、ピンクを黒が包みこもうとしている柄だった。

 

「クイーンのメモリは何があったんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おらぁ!」

 

ジョーカーの拳が敵を抉るが、オーシャンは液状化する。

 

「なに?!」

 

オーシャンが噴射した水で飛ばされる。

 

「プリキュア!

 フローズン・」

 

マーメイドが凍らせようとするが、水の盾で防がれる。

 

困惑する彼女にオーシャンは蹴りをいれ、ジョーカーの元へ飛ばされる。

 

「おっと。」

 

しかし、ジョーカーがマーメイドを受け止める。

 

「どうしましょう。」

 

マーメイドの呟きにジョーカーは答える。

 

「こういう相手には相棒が必要なんだがな…。」

 

彼は携帯を取り出し、フィリップにかける。

 

『もしもし?』

 

「フィリップ!

 検索はまだおわらねぇのか!?」

 

『もう終わってるよ?』

 

「じゃあ変身するぞ!」

 

『その必要は無い。』

 

「あぁ?」

 

翔太郎は疑った。

 

こいつは何を言ってるんだと。

 

そのせいで、爆音は意識の内に入らなかった。

 

『来ちゃった…と、この場合は言うのだろう?』

 

突如、律儀に待っていたオーシャンの体が黒い塊…リボルギャリーにぶつかり宙を舞う。

 

「…!?」

 

この中で理解していたのは翔太郎くらいだろう。

 

リボルギャリーが開き、中からフィリップが出てくる。

 

「やぁ、翔太郎。」

 

へらっと笑いながら歩む。

 

「おせーぞ、フィリップ。」

 

変身を解く翔太郎。

 

「な!?

 何やってるんですか!

 左さん!」

 

翔太郎はニヤリと笑う。

 

「あいつを倒すのさ。

 いくぜ、フィリップ。」

 

「あぁ、翔太郎。」

 

翔太郎が違うベルトを取り出し身に付けると、フィリップにもベルトが現れる。

 

さらに、二人はメモリを取り出す。

 

『CYCLONE!』

 

『JOKER!』

 

「変身!」

 

フィリップはメモリスロットにメモリを挿入。

 

メモリは翔太郎のベルトに転送される。

 

すかさず翔太郎もメモリを挿入。

 

ベルトを展開する。

 

『CYCLONE!

 JOKER!』

 

軽快な音楽と共に翔太郎の姿が変わり、フィリップが倒れるがマーメイドによって受け止められる。

 

「みなみちゃん、僕の体をリボルギャリーに乗せといてくれないか?」

 

「はい…て、えぇぇぇえ!」

 

不意に翔太郎の体からフィリップの声がしたのだ。

 

「ふむ、プリキュアと言えどもやはり女の子…。

 驚くに決まってるよね。」

 

そう言われながらも、マーメイドは呼吸を整えてフィリップを運ぶ。

 

「わかったから、フィリップ。

 奴さんもやる気みたいだぜ。」

 

起き上がるオーシャン。

 

「排除、開始する。」

 

横一列に並ぶダブルとマーメイド。

 

両者は指をオーシャンに向け、死刑宣告。

 

「さぁ、お前の罪を数えろ!」

 

「お覚悟はよろしくて?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、ある部屋では。

 

「あぶあぶあぶ~!

 今日も可愛いでちゅね~!」

 

赤いジャケットを来た男が赤ん坊をあやしていた。

 

「パパ!

 パパ!」

 

至福の時を過ごしている彼に外の様子など知るはずもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「海藤みなみ、君に力を貸して欲しい。」

 

「え?」

 

「敵については既に検索済みだ。

 彼にはコアが存在し、オーシャンのメモリはそのコアと融合している。

 僕たちでメモリをコアごと壊すから、海藤みなみはあるタイミングになったら…。」

 

フィリップが小さめに言う。

 

「分かりましたわ。」

 

「話しは終わったか?」

 

翔太郎が二人に聞く。

 

「じゃ、いくぜ。」

 

話している間に分身したオーシャンに駆け出すダブル。

 

メモリを変える。

 

『LUNA!』

 

『TRIGGER!』

 

『LUNA!

 TRIGGER!』

 

オーシャンを狙い撃つ。

 

当たるが水に変わる。

 

繰り返しの作業。

 

しかし、一体だけダブルに巻き付く。

 

読めていたダブルは既にメモリを変えていた。

 

『HEAT!』

 

『METAL!』

 

『HEAT!

 METAL!』

 

ダブルの色が赤と銀に変わる。

 

その瞬間、熱がオーシャンを襲い、身体が蒸発。

 

たまらず実体化するオーシャン。

 

その隙に、棍棒…メタルシャフトを持ち攻撃。

 

すると、ある一点…胸の辺りだけを死守するオーシャン。

 

「翔太郎、あそこが敵の本体だ!」

 

「了解!」

 

翔太郎は胸の周りだけを取り出す様にメタルシャフトにありったけの熱を生み、そのまま抉る。

 

「いまだ!

 海藤みなみ!」

 

マーメイドが飛び出た瞬間、ダブルはメモリを変える。

 

『CYCLONE!』

 

『JOKER!』

 

『CYCLONE!

 JOKER!』

 

「モードエレガント!

  高鳴れ、海よ!

  プリキュア!

 マーメイド・リップル!」

 

フィリップの合図で切り離されるオーシャンの身体と中心核。

 

『JOKER!

 MAXIMAM DRIVE!』

 

ダブルの身体が浮き上がり、左右に割け、水柱へと切り離されたオーシャンのコアへと一直線に蹴りを叩き込む。

 

「ジョーカーエクストリーム!」

 

「ガアアアァァァアアア!」

 

オーシャンは爆発し、オーシャンのメモリはコアと共に破壊された。

 

「ふぅ、これで安心…っ!」

 

ダブルが上空を見上げるとメガヘクスと名乗った怪人が空を飛んでいた。

 

「なんじゃありゃ?」

 

「どうやら、何かを見つけたらしいねぇ。」

 

「私達も行ってみましょう!」

 

マーメイドの言葉に賛同するダブル。

 

「あぁ、そうだな。

  これ以上、あいつらの好きにはさせねぇ。」

 

 「同感だよ、翔太郎。」

 

二色のハンカチと人魚は、怪人を追った。



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希望の指輪と紅の合奏

「やっぱりだ。」

 

茶髪にチャラチャラした服装の彼が似つかわしくない廃墟の中で呟いた。

 

「一体…二体はどこに消えたんだ?」

 

彼は踵を返した。

 

「ま、とりあえずおっちゃんの所に戻るか。」

 

 

 

 

『希望の指輪と紅の奏で』

 

 

 

 

「着いた…。」

 

赤毛の娘…紅城トワはある店の前にいた。

 

ノーブル学園からこの店まで来るのにバスに揺られて三時間。

 

途中、乗り換えに手間取ったがなんとか来れた。

 

この面影堂に。

 

「ゴクッ…!」

 

決意は出来ていたが、いざ来ると彼の事を聞けるかどうかが不安だった。

 

ガチャ…。

 

意を決して扉を開くと、アンティークの雰囲気を漂わせた内装が出迎えた。

 

「ん?

 いらっしゃい。」

 

店主の部屋から男が出てきた。

 

「珍しいねぇ、子供が来店するなんて。

 あぁ、座って座って。」

 

店主…輪島はトワを座らせると笑顔で尋ねる。

 

「今日は、何で来たのかな?」

 

「それは…ある男の人を調べてるんです。」

 

「ほぉ…。」

 

「指輪…をしているんですけど。」

 

輪島は思い当たるのか頬が緩む。

 

「それは…。」

 

ガチャ…。

 

ドアが開くと青年が入ってきた。

 

「おかえり晴人。」

 

「ただいまおっちゃん…って、その子は?」

 

青年…操真晴人はトワを見る。

 

「あぁ、何でも指輪をしている男を探しているらしいぞ。」

 

晴人は右手の赤い指輪を見せる。

 

「それって、俺の事?」

 

「いえ…。」

 

トワは首を振る。

 

「もっとお年を召した方で、指輪の色は橙色でしたわ。」

 

「それって…!」

 

輪島と晴人は目を合わせる。

 

「なぁ、その男は何か言ってたか?」

 

晴人が険しい表情をしながら問う。

 

「たしか…、ある人の名前を呟いていました。

 名前は、そう…

 

 

 

 

 コヨミ…と。」

 

 

 

 

二人の顔が凍りつく。

 

やがて、晴人が呟いた。

 

「笛木…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白い異形の怪人はある場所を目指していた。

 

「チカラ…カンジル…魔力…コヨミ…。」

 

怪人は歩き続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「笛木奏、娘の為に大勢を犠牲にした男だ。」

 

ソファで神妙な面持ちで話し出す晴人。

 

「そして、多くの怪人を産み出した。

 自身も異形に変えて…。

 ところで…。」

 

晴人は続ける。

 

「何で笛木と出会ったの?」

 

暖人はソファに座り、トワに向かいあう。

 

「笛木…ですか。」

 

トワは反芻するように呟く。

 

「私の通っているノーブル学園で倒れていたのを助けたんです。

 でも、彼は記憶がなくって…。

 彼、近くの町に行ったときにここの写真を見て行かなきゃって言ってたんです。」

 

暖人は黙って神妙に話を聞いていたが、次の一言で表情が一層険しくなる。

 

「それに彼、怪物になったんです。」

 

「怪物…それは笛木が作った人造ファントムだ。

 …まさか、トワちゃんが倒したのか?」

 

「…はい。

 実は私、プリキュアなんです。」

 

「プリキュア…、それは一体?」

 

その所で、ドアから赤い鳥…レッドガルーダがやってきた。

 

「見つかったのか?」

 

その言葉にレッドガルーダは頷く。

 

「トワちゃんは来るかい?」

 

「え?」

 

トワが首を傾げる。

 

「ワイズマンの…いや、笛木の所に。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バイクを走らせ向かう場所は、以前コヨミと戦った広場だった。

 

そこには、白い怪人…ワイズマンが悶えながら暴れていた。

 

「チカラ…!

 ヨコセ…!」

 

怪人は二人に気付く。

 

「お断りだね。」

 

晴人は腰に指輪をかざす。

 

『ドライバーオン!

 シャバドゥビタッチヘーンシーン!

 シャバドゥビタッチヘーンシーン!

 シャバドゥビタッチヘーンシーン!

 シャバドゥビタッチヘーンシーン!』

 

「変身。」

 

彼がベルトに赤い宝石の指輪をかざすと魔方陣が現れ、彼を包み込む。

 

『フレイム!

 ヒー!ヒー!ヒー!ヒー!ヒー!』

 

「わ、わたしも!」

 

トワがプリンセスパフュームを取り出す。

 

「プリキュア!」

 

トワの服がドレスに変わる。

 

「それがプリキュアか。」

 

「あなたは?」

 

彼は指輪を見せながら名乗る。

 

「指輪の魔法使いさ…。

 さて、あいつも待っちゃくれないな。」

 

二人は怪人に向き直る。

 

ワイズマンは石をまき、怪人を産み出していた。

 

それを眼前に捕らえる二人。

 

「さぁ、ショータイムだ!」

 

「お覚悟、決めなさい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グルアァア!」

 

二人の息の合った華麗な動きで敵を蹴り倒す。

 

「次はこいつだ。」

 

『ウォーター!

 スイー…スイー…スイースイースイー…!』

 

指輪の色が青に変わる。

 

『リキッド!

 プリーズ!』

 

彼の身体が液状になり、スカーレットを中心に敵を囲む。

 

彼女の舞台が出来上がった。

 

ウィザードが液状化を止めた時には中にいた敵は消えていた。

 

しかし、まだ数は多い。

 

「お次はこれだ。」

 

『ハリケーン!

 フゥッフゥッフゥッフゥッ…!』

 

今度は緑に変わる。

 

『コネクト!

 プリーズ!』

 

ウィザードは魔方陣からウィザーソードガンを二本取り出す。

 

『コピー!

 プリーズ!』

 

ウィザーソードガンを更に二本コピーする。

 

「はいこれ。」

 

「私に?」

 

手渡す彼がこう言った。

 

「派手にやっちゃおう。」

 

彼女は二本を手に取り、いつの間にか囲んでいた怪人達に対して二人は背中合わせになる。

 

怪人が剣の範囲に入れば斬り、蹴り、受け流す。

 

『キャモナスラッシュ!

 シェイクハーンド!

 キャモナスラッシュ!

 シェイクハーンド!

 スラッシュストライク!

 フゥッ!フゥッ!フゥッ!』

 

二人の両剣が緑に輝く。

 

「ハアッ!」

 

エネルギーが巨大な刃に変わり怪人を斬り伏せる。

 

ワイズマンが何かを感じたのか去ろうとする。

 

その際に怪人達を壁にする様に生み出す。

 

「待て!」

 

『ランド!

 ドッ・ドッドッ・ドッドッドン!

 ドッ・ドッドッドン!』

 

彼の姿が黄色に変わる。

 

『ドリル!

 プリーズ!』

 

「捕まって!」

 

スカーレットがウィザードの問いに応じると彼に捕まり、彼の身体が高速スピンし、生み出された怪人達を貫き、一直線にワイズマンに迫る。

 

怪人がこちらを見る。

 

「魔力…!

 コヨミィィイイ!」

 

腕で彼らを捕らえ、脚で蹴り飛ばす。

 

「グハッ…!」

 

「きゃっ!」

 

なおも暴れる怪人。

 

「もう…もうコヨミは居ないんだ!

 笛木…!」

 

晴人が叫ぶ。

 

「ワタシハ…マダ…イル…!」

 

「そうか…。」

 

ウィザードが再び赤い姿に変わる。

 

「じゃあ、ここで止める!」

 

ワイズマンへと駆け寄り、いつのまにか持っていたウィザーソードガンで斬り伏せるが、弾き飛ばされる。

 

「グッ…!」

 

彼の意識が少しとんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そ…ま…る…!

 そう…はる…!

 操真晴人!』

 

彼は真っ暗な闇の中にいた。

 

そして、目の前のドラゴンが彼を目覚めさせた。

 

「…なんだ?」

 

「面白い事になってるな…。」

 

「なんだよ、笑いに来たのか?」

 

冗談混じりに言う。

 

「いや、あのファントムの事じゃあない。

 あの小娘、プリキュアというのは素晴らしく魔力を多く持っている。

 もしも、あの魔力を空間として維持できたら…。」

 

「…アンダーワールドと同じになるのか…!?

 でも、何でお前がそんなことを。」

 

ドラゴンがニヤリと笑う。

 

「お前が殺されると、面白いものが見れなくなるからな…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛ばされるウィザード。

 

しかし、間一髪の所でスカーレットが受け止める。

 

「…ありがとう。

 助かった。」

 

スカーレットがウィザードを見る。

 

「あなた一人で戦っているわけではありませんわ。

 その事をお忘れなきように。」

 

「…だな。

 んじゃ、コンビネーションといきますか!」

 

ウィザードはスカーレットに耳打ちに、彼女はニコリと笑みを浮かべる。

 

「スカーレットヴァイオリン!」

 

『コピー!

 プリーズ!』

 

ウィザードが二人に。

 

「もういっちょ!」

 

『コピー!

 プリーズ!』

 

更に二人増える。

 

「おまけだ!」

 

『コピープリーズ!』

 

計八人になる。

 

『チョーイイネ!

 キックストライク!

 サイコー!』

 

八人が一斉にキックを放つ。

 

「グウゥ…!」

 

白い怪人が怯んだ所でスカーレットがヴァイオリンを弾く。

 

「モードエレガント!

  ヒバナ!」

 

「俺も!」

 

『ドラゴライズ!

 プリーズ!』

 

ウィザードの隣に魔方陣が出現し、そこからドラゴンが飛び出してくる。

 

「グルルァァァ…!」

 

「魔法っていうのは何でもアリなんですわね。」

 

スカーレットが少し呟く。

 

「行くよ、トワちゃん!」

 

「はい!」

 

スカーレットはヴァイオリンを奏で、ウィザードはドラゴンと共に上空へと舞う。

 

「羽ばたけ、炎の翼!

 プリキュア!

  フェニックス・ブレイズ!」

 

『チョーイイネ!

 キックストライク!

 サイコー!』

 

ドラゴンが変形し、ウィザードの足に。

 

更に、スカーレットの放った不死鳥が重なる。

 

「ハアアアァァァアアア!」

 

ワイズマンは手から紫色の光線を放つ。

 

「グッ…!

 グアアアァァァアアア!」

 

ワイズマンの体をウィザードは貫いた。

 

「ふぃ~。」

 

消え行くドラゴンを傍目にトワイライトはウィザードに駆け寄ってくる。

 

「やりましたね!」

 

「あぁ…っ!」

 

しかし、安堵したのも束の間、ボロボロのワイズマンが何処かへと駆け出す。

 

「チカラァァァアアア!」

 

「おい!

 待て!」

 

ウィザードは直ぐにベルトに指輪をかざす。

 

『コネクト!

 プリーズ!』

 

現れた魔方陣からバイクを取り出す。

 

「乗って!」

 

「はい!」

 

ヘルメットを受け取ったスカーレットがバイクに乗り、ワイズマンの行方に向かう。

 

その先に待つものとは。



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奇跡のハミングステージ

美しい星。

 

それが欲しかった。

 

いつまでも傍観者なのは耐え難い苦痛と感じていた。

 

だから、それがあれば退屈な現状から抜け出せる。

 

そう思ったのだが、その欲は力ある者に阻まれた。

 

私は確かに手に出来た筈だった。

 

しかし、この手は空を切った。

 

ならば、脅威が去るまでこの身を隠し、然るべき平穏の時に事を進めよう。

 

そして、彼は自分自身を誰からも分からぬよう隠した。

 

 

 

 

『奇跡のハミングステージ』

 

 

 

 

「ここね…。」

 

茶髪の少女…天ノ川きららがいる場所はあるステージ会場だった。

 

そこには大勢の人が集まりざわざわと何かを待っていた。

 

すると、突然ノリの良い音楽が鳴り響く。

 

ウワァァァアアア………!

 

観客は熱狂的に叫ぶ。

 

その声を待ってたように青い服の男女のグループが踊り出す。

 

そこからは怒濤のパフォーマンスだった。

 

グループが入れ替わりに踊り出し、その度に観客は燃え上がる。

 

彼女もすっかり魅了されていた。

 

こんな大勢を白熱させる彼らに圧倒されたと言うよりは輝いて見えた。

 

自分のステージとは別の場所だが、彼らのステージは明らかに観客に魅せていた。

 

まだ自分が到達出来ない所に彼らは立っているように見えた。

 

そう思っていると、あの赤いコートの集団が踊り出していた。

 

クールにきめながらも情熱を秘めた踊りに会場のボルテージも自然と上がっていた。

 

彼女も例外ではなく、目を輝かせていた。

 

その時だった。

 

「どうだ?

 こいつらの踊りは。」

 

後ろから声をかけられた。

 

「…え?」

 

そこにはステージで踊っているグループのコートを羽織った青年がいた。

 

「いや、ここらで見かけない顔だったんでな。

 初めてだろ?」

 

真っ直ぐな眼差しを受けて、きららは答える。

 

「…きらきら輝いてます。」

 

「そうかそうか!」

 

青年は嬉しそうに笑う。

 

それを見て、用件を思い出した。

 

「あの…!」

 

「ん?」

 

「赤いコートの男の人を見ませんでしたか?」

 

「赤いコートっつっても俺もあいつらも着てるぞ?」

 

きららは悩んだ末あの事を思い出した。

 

「バナナ!」

 

その一言に青年が顔を変えた。

 

「信じないかもだけど…

 

「バナナか!」

 

 え?」

 

きららは青年の表情に圧倒される。

 

「それは戒斗だ!

 なぁ、どこで会ったか覚えてるか?!」

 

肩を揺さぶられ、あうあうしているきららは指を指して答える。

 

「あっちの森で…。」

 

「そうか!」

 

男は一目散に走り去っていった。

 

それから数分後、ステージは破壊された。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり残っていたか…。」

 

あの森で謎の人物がベルトと金の錠前を掴んでいた。

 

「もはや始まりの男もいない。」

 

手を上げ、空間に巨大なファスナーが開く。

 

「ステージで行う物だろう?

 パーティーという物はねぇ。」

 

その足は、ゆっくりと進んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如として、現れた火球がステージに降り注いだ。

 

「一体なんなの?!」

 

ファスナーが地上に現れ、開いた空間からあばら骨のような顔に民族衣装を身に纏った異形の者が歩いていた。

 

「ん?

 君は見たことがあるな。

 そうだ思い出した。

 コウガネを倒した者じゃないか。」

 

それは歩みを止めない。

 

「ちょうど良い。

 君に見せてあげよう。

 地球を我が物にする様をね。」

 

「だれが…!」

 

きららはパフュームを取り出す。

 

「させるか!

 プリキュア!」

 

きららの姿が変わる。

 

「愚かな…。」

 

ベルトを取り出し、腰に着ける。

 

右手には、紫の骨の錠前を。

 

左手には、あの時の金の錠前を。

 

『魔蛇…。』

 

『ゴールデン…。』

 

「変身。」

 

『魔蛇アームズ…!

 邪ノ道は蛇…!』

 

『金…ゴールデンアームズ…!

 黄金の果実…。』

 

骨が彼の体を包み、体の四肢が金色になり、金のマントを翻す。

 

仮面ライダー魔蛇 ゴールデンアームズ。

 

「来い…。」

 

「てぃや!」

 

トゥインクルが蹴りを魔蛇の顔に浴びせようとするが左手で防ぎ、右足で弾き飛ばす。

 

「くっ…!」

 

しかし、トゥインクルも負けじと走り出す。

 

「うりゃあああ!

 ルナ!」

 

トゥインクルはプリンセスロッドを取り出し、キーを差す。

 

「キラキラ、月よ!

 プリキュア!

 フルムーン・ハミング!」

 

満月型のエネルギー波を魔蛇にぶつける。

 

しかし、いつのまにか持っていた大剣…黄泉丸で凪ぎ払う。

 

そして、持っていた大剣で斬り伏せようとしたがトゥインクルはロッドでなんとか防ぐ。

 

「中々やるが…まだまだだなぁ。」

 

魔蛇が弾き飛ばし、トゥインクルは倒れる。

 

「やはり始まりの男がいなければ何も出来やしない。

 蛇も既に別の星に向かい帰ってくる事もない。

 ハハハハハ!」

 

「まだ、負けてない…。」

 

「ん?」

 

トゥインクルは立ち上がる。

 

「私が負けてないと思えば、負けてないんだぁあ!」

 

トゥインクルが走り出す。

 

「死に損ないがぁ!」

 

黄泉丸を振り下ろす。

 

しかし、それを弾く金色の球体が飛来した。

 

「なにっ?!」

 

トゥインクル以上に驚いていたのは魔蛇の方だった。

 

「まさか!」

 

球体は彼女の前で止まり、それは一人の鎧を着た青年に変わった。

 

「葛葉紘太ァア!」

 

叫ぶ魔蛇を後目に葛葉紘太と呼ばれた青年はトゥインクルに言う。

 

「良く頑張ったな。」

 

「あなたは?」

 

「うーん、今はあいつを倒す神様ってところかな?」

 

「か、かみさま?」

 

「葛葉紘太ァ…、貴様なぜ私の事が!」

 

痺れを切らした魔蛇が紘太に問う。

 

「あぁ、フレイっていうやつから教えてもらったんだよ。

 んじゃ、始めるか。」

 

腰に手を当てベルトを出現させ、錠前を握る。

 

『オレンジ!』

 

ベルトにセットし、刀を下ろす。

 

『オレンジアームズ!

 花道!オン・ステージ!』

 

「いくぞ!

 …えーと、名前は?」

 

オレンジの騎士…仮面ライダー鎧武 オレンジアームズが問う。

 

「天ノ川きらら。

 今はキュアトゥインクルだけどね。」

 

「そうか、じゃあトゥインクル!

 ここからは、俺達のステージだ!」

 

「お覚悟は、よろしくて?」

 

それは、魔蛇に対する宣戦布告。

 

「邪魔を…するなあああぁぁぁあああ!」

 

黄泉丸の刃を鎧武の出した刀…大橙丸で防ぎ、魔蛇の横腹をトゥインクルの蹴りが襲う。

 

「グゥッ!」

 

直ぐ様、魔蛇は後ろに退くが追撃は止まらない。

 

「ハァッ!」

 

鎧武の無双セイバーが火花を散らし、トゥインクルの拳が炸裂する。

 

「ガァ…!」

 

魔蛇が二人を睨み付ける。

 

「何故私が貴様らに押される?!

 何故だぁ!」

 

息も絶え絶えの魔蛇にトゥインクルが言う。

 

「私たちは皆、自分の夢の為に戦っているわ!」

 

「それなら…この私も!」

 

「それに…!」

 

魔蛇の叫びにトゥインクルはピシャリと言い放つ。

 

「周りの大切な人を守りたいと思って戦っている…!

 あんたみたいに自分だけを考えて戦ってるような奴に負ける気はしないのよ!」

 

魔蛇の激昂に触れる。

 

「キィィィサァァァマァァァ!!!」

 

『魔蛇・オーレ…!』

 

『ゴールデン・オーレ…!』

 

黄泉丸を地面に叩きつけ、割れた地面から黄金に輝く骨の大群が襲いかかる。

 

それを迎え撃つ両者。

 

「行こう!」

 

「はい!」

 

『オレンジ・スカッシュ!』

 

「モードエレガント!

  キラキラ、星よ!

 プリキュア!

 トゥインクル・ハミング!」

 

鎧武とトゥインクルは空に飛び、鎧武は蹴りの体勢になり、トゥインクルは腰から巨大な星型のエネルギーを出し、鎧武の足の先端で回る。

 

「ハアアアァァァアアア!」

 

星のエネルギー波が襲いかかる骨を粉々に変え、魔蛇に放つ。

 

「グ、ググ、グアアアァァァアアア!!!」

 

爆発する中、鎧武がトゥインクルの横に立つ。

 

「やったな。」

 

「そうね。

 でも、ホントに神様なの?」

 

「ホントだって。」

 

そんな中、立ち上がる者がいた。

 

「まだだ、まだ終わらんぞ…!」

 

「魔蛇…!」

 

魔蛇が立ち上がる。

 

「お前たちは絶対に…!」

 

その背後に迫る白い怪人。

 

「チカラ…モラウ…!」

 

「何だ貴様…グアァア!」

 

魔蛇が光の結晶となり、白い怪人に吸収される。

 

「チカラ…ガ…ミナギル…!」

 

突如として現れた白い怪人。

 

彼らのステージは、まだ開幕したばかりだった。



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なぜ彼等と彼女は出会ったのか

某高速道路

 

「ベルトさん、今行くノーブル学園ってどんな所なんだ?」

 

車内に置かれているベルトに話しかける。

 

「規律正しい学園で生徒の自主性を重んじているようだね。

 しかも、全寮制で学業もレベルが高い。

 君の息子にピッタリの高校じゃないかな?」

 

ベルトさんの顔がにっこりする。

 

「産まれる前だけどな。

 まぁ、それは追々、英志に決めさせるよ。」

 

「ふむ、そうだね。

 しかし、ここ数ヵ月ある噂が広まってるようだね…。」

 

「噂って?」

 

「妙な怪物が出現し、颯爽と現れるプリンセスがいるらしい。」

 

「プ、プリンセス?!

 まじかよ…。」

 

「まぁ、君も刑事で仮面ライダーだからね。」

 

「言えてるな。

 でもま、そのプリキュアがルパンガンナーについて知ってそうだ。

 まずはプリキュアを探してみるか。」

 

二人を乗せた車は着々と目的地に向かっていた。

 

 

 

 

『なぜ彼等と彼女は出会ったのか』

 

 

 

 

私立ノーブル学園、その日曜日。

 

四人の戦士…プリキュアがいるこの学園に今は一人しかいなかった。

 

その事が、春野はるかを悩ませていた。

 

モデルである天ノ川きららは仕事で居ないのはまだ分かるが、海藤みなみと紅城トワの二人も外出届けを出していたのだ。

 

因みにゆいは先生に勉強を教えて貰っている。

 

(何かあったら言ってくれても良いのに…。)

 

久しぶりの一人に思わず気が滅入る。

 

その時、前方で生徒と話していた特徴的なスーツに異様なベルトとプレスレットを身につけた若い男性が駆け寄って来るのが見えた。

 

「あっ、ちょっといいかな?」

 

「は、はい。」

 

「ここら辺でさ、こういう人を見かけなかったかな?」

 

男が四枚の写真を見せてくる。

 

そこには、ピンク・水色・黄色・赤のドレスを身に纏った少女…プリキュアが写っていた。

 

慌てるはるか。

 

「ししし、知らないですよ~!

 見たこともないかな~?

 用があるので失礼しま~す!」

 

走り去っていく彼女を見て、男…進ノ介がベルトさんに話し出す。

 

「…彼女、絶っっっ対何か知ってるな。」

 

「そうだね。

 そういう意味ではチェイスと真反対のようだ。

 しばらくは、彼女を尾行してみようか。」

 

二人は、走り去っていった少女を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…何でプリキュアの写真を…もしかして、バレちゃった?!

 でも、聞いてきた様子だとバレてなさそうだし…。

 もしかして、警察とか…?」

 

校庭に逃げてきたはるかは息を切らしながら座ってしまう。

 

そして、上を向いた時にそれが現れた。

 

その場に飛来する機械生命体が。

 

「あなたたちは…!」

 

「プリンセスプリキュア…春野はるかを確認。

 対象を抹殺する。」

 

「プリキュア!

 プリンセスエンゲージ!」

 

はるかの姿が変わり、花のプリンセス…キュアフローラになる。

 

「またあなたたちなの!?」

 

「メガヘクスは個であり多である。

 よって、君が倒した私は複数存在しているのだ。」

 

空から続々とメガヘクスが降ってくる。

 

「それでは、死ね。」

 

メガヘクスが光線を発射する。

 

構えるフローラ。

 

しかし、その光線は小さな赤い車によって弾かれた。

 

「何?!」

 

フローラとメガヘクスの目線の先にはフローラが見た先ほどの男がいた。

 

その男は赤いミニカーを手に取る。

 

「やっぱり君がプリキュアか。

 って、そんな事言ってる場合じゃ無さそうだ。

 ベルトさん。」

 

「あぁ、そうだね。」

 

「ベ、ベルトが喋った~?!」

 

「ベルトは失礼だね。

 せめて、さん付けで呼びたまえ。」

 

「あ、すみません…。

 って、逃げてください!」

 

フローラの声に耳を貸さず、進ノ介は歩むのを止めない。

 

「いいや、逃げないね。」

 

「泊…進ノ介ェェエ!」

 

初めて感情的になるメガヘクス。

 

「…泊進ノ介?」

 

「いくぞ!

 エイリアン共!

 変身!」

 

『DRIVE!

 TYPE:SPEED!』

 

ブレスレットに赤いミニカーを装着すると、赤い円が上下に彼を包み、タイヤがたすき掛けのように彼に突撃する。

 

仮面ライダードライブ タイプスピード。

 

「あなたが泊進ノ介さん!」

 

フローラが駆け寄って来る。

 

「ん?

 俺を知ってるのか?」

 

「はい!

 ルパンさんが言っていました…から。」

 

落ち込むフローラ。

 

「まぁ、何があったかは後にして、えぇと名前は?」

 

「春野はるかで、今はキュアフローラです。」

 

「そうか。

 じゃあ、フローラ!

 ひとっ走り付き合えよ!」

 

「はい!

 お覚悟は、よろしくて?」

 

激情を露にするメガヘクス。

 

「貴様等…!」

 

メガヘクスが右手を彼等に突き出すと控えていた他の機体が動き出す。

 

「ハンドル剣!」

 

ドライブが呼ぶと剣が彼の手に収まる。

 

ハンドルを回すと彼自信が回り敵を切り払う。

 

遠くではフローラが苦戦していた。

 

「遅い!」

 

「きゃあっ!」

 

「まずい!

 ドア銃!」

 

すると、ドアの形をした銃が飛んで掴み、それをフローラの前のメガヘクスにお見舞いする。

 

「大丈夫か?」

 

駆け寄るドライブ。

 

「はい、なんとか。」

 

「おし、じゃあ今度はバッションだ。」

 

『DRIVE!

 TYPE:WILD!』

 

ドライブの姿が黒に変わる。

 

『タイヤコウカーン!

 ランブルダンプ!』

 

黄色いタイヤが彼の右肩にはまる。

 

「はあっ!」

 

力任せにメガヘクスにドリルを当て、火花を散らす。

 

「すごい…。」

 

ルパンが言い残していた名前の彼はすごく強かった。

 

『ヒッサーツ!

 フルスロットール!

 ダンプ!』

 

「おりゃあああ!」

 

ドリルで三体を同時に貫いた。

 

「おし!

 って、囲まれてるな。

 じゃあ、クールに決めようか。」

 

『DRIVE!

 TYPE:TECNIC!』

 

緑に変わる。

 

『タイヤコウカーン!

 ロードウィンター!』

 

水色のタイヤがはまる。

 

「フローラ!

 高くジャンプ出来るか?」

 

「わかりました!」

 

フローラは目一杯高く跳ぶ。

 

「おし。

 お前らの相手は俺だ!」

 

ドライブは回転しながら冷気を放出。

 

囲んでいたメガヘクス達を凍らせる。

 

「フローラ!

 これに掴まってキックだ!」

 

『タイヤコウカーン!

 ファイヤブレイバー!』

赤いタイヤがはまり、はしごがそこから空に向けて伸ばされる。

 

「ハアアァァアア!」

 

それを掴んだフローラをドライブは回転し、フローラはキックを円を描くように凍ったメガヘクスに命中。

 

辺りのメガヘクスは粉々に砕ける。

 

残るは数体。

 

『DRIVE!

 TYPE:SPEED!』

 

「おし!

 そろそろ決めるぞ!」

 

「はい!」

 

『タイヤコウカーン!

 マックスフレア!』

 

炎を模したタイヤがはまる。

 

ドライブはシフトブレスのボタンを押し、シフトカーを三回上下させる。

 

『フ・フ・フ・フレア!』

 

すると、一台の車…トライドロンが飛び出して、メガヘクス達を囲むように回り出す。

 

ドライブはその車を蹴り、メガヘクスに炎を纏った強烈なキックを無数に放つ。

 

「モードエレガント!」

 

フローラのドレスも豪華になり、そのまま上昇する。

 

「ハアアアァァァアアア!」

 

「舞え、花よ!

  プリキュア!

 フローラル・トルビヨン!」

 

ドライブの蹴りでメガヘクスが空に飛ばされ、フローラの花吹雪が襲う。

 

「グギャアアァァアア!」

 

メガヘクスは爆発四散。

 

「ごきげんよう。」

 

「NICE DRIVE。」

 

一息つく二人。

 

モードエレガントは解除され、タイヤも元に戻り、一件落着。

 

しかし、そうは言ってられなかった。

 

「メガヘクスは不死身である。」

 

空からはまだ数十の機体。

 

「おいおい、幾らなんでも多すぎだろ!」

 

ドライブはメガヘクスを指で指しながら言う。

 

しかし、メガヘクスからの返答は意外なものだった。

 

「…黄金の果実の反応、確認。

 優先順位の変更。」

 

「え?」

 

メガヘクスは一斉にある方向へと行ってしまう。

 

「あ!

 ちょ待て!」

 

ドライブの呼び掛けにも応じずにメガヘクスは飛び去ってしまう。

 

「どうする?

 ベルトさん。」

 

「追いかけた方が良いね。

 何をするかが想像出来ないからね。」

 

「だ、そうだ。

 君は来るかい?」

 

フローラに聞く。

 

(ルパンさんが言っていた泊さん…。

 一体どういう人なんだろうか…。)

 

フローラの眼はしっかりとドライブに向けられていた。

 

「行きます!」

 

「オーケイ!

 乗りたまえ、キュアフローラ!」

 

「フローラ、もうひとっ走り付き合ってもらうぜ。」

 

「お手柔らかに。」

 

一台の車と夢の守り人は終結へと走り出した。



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最終章 希望の場合
邂逅と融合と最終決戦


白い怪人が魔蛇を喰らい尽くし、口を拭う。

 

「チカラ…ガ…ガァ…!」

 

「お前は…一体?」

 

鎧武はトゥインクルを庇うように身を乗り出す。

 

「オマエ…モ…チカラ…ヨコセッ…!」

 

欲望のままに襲いかかる怪人…ワイズマンに鎧武は大橙丸を構えるが、どこからともなく放たれた銀の弾丸がワイズマンを弾き飛ばす。

 

「グウゥッ…!」

 

鎧武とトゥインクルがきょとんとしているとバイクに乗った二人が降りてくる。

 

「大丈夫か?

 …って、お前…鎧武か?」

 

「そっちこそ!

 ウィザードじゃんか!」

 

「きららさん!

 どうしてここに?!」

 

「トワっちこそ!

 なんで~?!」

 

驚く二組。

 

「なになに?

 そっちも知り合い?」

 

「はい、同じ学園でプリキュアです。」

 

「プリキュアって割りとたくさんいるんだな。」

 

「仮面ライダーもそんなとこだろ。

 おっと、奴さんは待っちゃくれないようだぜ。」

 

ウィザードが鎧武達に呼び掛ける。

 

ワイズマンが立ち上がり雄叫びを上げて走り出す。

 

「こっからは、俺たちの…!」

 

「ショータイムだ!」

 

「「お覚悟はよろしくて?」」

 

 

 

 

『邂逅と融合と最終決戦』

 

 

 

 

「沢芽市か…、久しぶりだな。」

 

運転するドライブが呟く。

 

「行ったことあるんですか?」

 

助手席に乗るフローラが質問する。

 

「あぁ、前にメガヘクスを追った時にな。

 その時に、神様に会ったりしてな。」

 

「かか、神様ですか!」

 

「あぁ。

 …ん?」

 

ふと、後ろを見ると黒い巨大なビークルが新たなメガヘクスを追って迫ってきていた。

 

そして、メガヘクスはエネルギー弾を放つ。

 

「うわぁぁああ~!」

 

「もっとスピード出せないんですか~!?」

 

「出してるって!」

 

メガヘクスはトライドロンを追い越し、地上に降りる。

 

トライドロンと黒いビーグルは急ブレーキをかける。

 

黒いビーグルが開き、中から緑と黒の戦士と青い姫が現れる。

 

それを見た二人は直ぐ様車から降りる。

 

「みなみさん?!」

 

「は、はるか?

 どうしてここに?」

 

「彼らを追いかけてきたんですよ!

 みなみさんこそ!」

 

「彼らに協力をね。」

 

「君は確か…泊進ノ介だね?」

 

「どうして俺の名前を?」

 

「照井竜からかねがねきいているよ。」

 

「マ、マジですか!」

 

「ま、聞いただけだけどな。」

 

ドライブは回りを見渡す。

 

「今、誰か喋ったような…?」

 

「あぁ、俺たちは二人で一人の仮面ライダーだ。」

 

お決まりのポーズをドライブに向ける。

 

『二人で一人…私たちと同じのようだねぇ。』

 

「え!

 ベルトが喋った!?」

 

『せめてさん付けで呼びたまえ。』

 

「あ、すいません…。

 ってぇ、早くあいつら倒さねぇと!」

 

「そうだね、海藤みなみ。

 それに、君もプリキュアかい?」

 

「はい!

 春野はるか…キュアフローラです!」

 

「協力してくれるかな?」

 

「よ、喜んで!」

 

すると、ドライブに向かってひとつのシフトカーが飛んでくる。

 

「…!

 デッドヒート、なぜここに?」

 

『フォーミュラになれない場合に備えていたが杞憂だったみたいだ。

 奴らは戦闘データを蓄積し今までの対策を練っている筈だ。

 我々も手法を変えよう。』

 

「わかった!」

 

『DRIVE!

 TYPE:DEAD HEAT!』

 

ドライブの体が赤から白になり、熱を放射する。

 

「翔太郎、僕たちもファングでいこう。」

 

「わかった。」

 

メモリを外し、変身を解く。

 

リボルギャリーからフィリップが現れ、翔太郎は引っ込む。

 

彼の手には恐竜を模した機械。

 

それを変形させ、メモリにする。

 

『FANG!』

 

リボルギャリー内では翔太郎がメモリを押す。

 

『JOKER!』

 

「変身。」

 

『FANG!

 JOKER!』

 

白と黒の獣が雄叫びをあげる。

 

それを合図にメガヘクスは攻撃を仕掛ける。

 

それをダブルは野獣の如く飛びかかり、ドライブは力を込めた拳を放つ。

 

『ARM FANG』

 

「グルアァア!」

 

「ハッ!」

 

ダブルの腕の牙で火花が飛び散り、ドライブのパンチの熱で焦がす。

 

負けず劣らず二人の姫もプリンセスロッドを振りかざす。

 

「アイス!」

 

「ローズ!」

 

メガヘクスに花びらと氷の礫を放つ。

 

それらを見ていた他のメガヘクスは直ぐ様目的地に向かって飛び始めた。

 

『FANG!

 MAXIMUM DRIVE!』

 

『ヒッサーツ!

 フルスロットール!

 デッドヒート!』

 

ダブルは足を払いながら足に生えた牙でメガヘクス達を切り払う。

 

ドライブは空中で回転しそのまま飛び蹴りを放ちメガヘクスを引き摺りながら数を削る。

 

そして、道が出来る。

 

『今だ!

 皆、乗りたまえ!』

 

それぞれのビークルに乗り、発進させる。

 

目指すは、沢芽市。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『レモンエナジー!』

 

『オレンジアームズ!

 花道・オンステージ!

 ジンバーレモン!ハハァ!』

 

『フレイム・ドラゴ~ン! ボーボー!

 ボーボーボー!』

 

二人の姿が変わり、ワイズマンに剣を向ける。

 

すかさずワイズマンも体を捻りながら避ける

 

しかし、動きを読んでいたトゥインクルとスカーレットは避けたワイズマンに飛び蹴りを喰らわせる。

 

ダメージを負ったワイズマンは体を分身させる。

 

「そんなのアリ!?」

 

「数が多すぎますわ!」

 

「だったら増えれば良いんでしょ?」

 

『コネクト・プリ~ズ!』

 

ウィザードは左手に装着されたタイマーを動かす。

 

『ドラゴタイム!

 セットアップ…スタ~ト!』

 

『フレイムドラゴ~ン!』

 

敵の攻撃を避けながら適度にボタンを押していく。

 

『ウォータードラゴ~ン!』

 

青い魔方陣からウィザードが現れ、スカーレットに加勢する。

 

「二人に増えましたわ!」

「まだまだ!」

 

『ハリケーンドラゴ~ン!』

 

緑の魔方陣からウィザードが現れて、今度はトゥインクルを助ける。

 

「嘘!

 もう一人増えた?!」

 

「もういっちょ!」

 

『ランドドラゴ~ン!』

 

黄色の魔方陣から再度ウィザードが現れ、鎧武に協力する。

 

「魔法ってすげぇな!」

 

それぞれが正面のワイズマンを蹴散らしていく。

 

『ファイナルタ~イム!』

『ドラゴンフォ~メ~ション!』

 

再びボタンを押すと各ウィザードにドラゴンの頭・翼・尾・爪が付与され分身体を倒していく。

 

最後に残ったのは本物のワイズマン。

 

「お覚悟、よろしくて?」

 

「さぁ、フィナーレだ。」

 

四人が構えに入る。

 

「プリキュア!

 ミーティア・ハミング!」

 

「プリキュア!

 フェニックス・ブレイズ!」

 

星と不死鳥がワイズマンに襲いかかる。

 

『オレンジ・スカッシュ!』

 

『レモンエナジー・スカッシュ!』

 

『オールドラゴ~ン!』

 

鎧武は上空へと跳び、ウィザードはドラゴンの意匠を身に纏い羽ばたく。

 

「ハアアアァァァアアア!!!」

 

「セイッハアアアァァァアアア!!!」

 

鎧武はスライスされたフルーツのエネルギーを潜り抜け、ウィザードは回転しながら貫く。

 

「グアアアァァァアアア!!!」

 

ワイズマンは爆発する。

 

「やりましたね!」

 

オレンジアームズとフレイムスタイルに戻った両名にスカーレットとトゥインクルが駆け寄ってくる。

 

「あぁ、これで笛木は…っ!」

 

爆発の中から多数の機械の怪人とワイズマンが現れる。

 

「お前は、メガヘクス!」

 

鎧武が声を荒らげるが、気に留めずワイズマンに向く。

 

「知恵の実を確認…融合を開始する。」

 

メガヘクスがワイズマンを取り囲み巨大な機械…ビッグマシンに変わっていく。

 

「今度はでかくなった?!」

 

トゥインクルが再度不条理を叫ぶ。

 

『…う…うぐっ…この感情は…憎しみ…!?』

 

ビッグマシンは彼らにミサイルを放つ。

 

「こっちに撃ってきましたわ!」

 

スカーレットが言うと同時にビークル二台がミサイルを弾き返す。

 

「あ、あれってもしかしてドライブか?!」

 

鎧武が言うと同時にビークルからドライブ・キュアフローラ・ダブル・キュアマーメイドが降りてくる。

 

「あっ!

 神様!」

 

「えっ!

 神様!?

 って、トワちゃん!?」

 

「きららまで!」

 

「マジで神様か…?」

 

四人は駆け寄り、それぞれ喋り出す。

 

「あのぉ~、相手さん待ってくれないんですけど。」

 

ウィザードの言葉にそれぞれが向き直る。

 

「わりぃわりぃ、忘れてたわ。」

 

「まぁ、前に助けてもらったから良いけどさ。」

 

「ん?

 どっかで会ったか?」

 

ダブルはウィザードの顔をまじまじと見る。

 

直後、八人の背後にオーロラが現れ、ディケイドとトワイライトが現れた。

 

「なんだここは?」

 

「今日は知り合いによく会うな~。」

 

「お前達はウィザードにダブル、鎧武、それにドライブか。」

 

「俺も知ってるのか?」

 

ドライブが尋ねる。

 

「あぁ。

 つっても、歴史が改変されたから赤の他人だ。

 いずれまた会うさ。」

 

「そ、そうか。」

 

別の四人は警戒していた。

 

「トワイライト…何故!?」

 

スカーレットが強く警戒する。

 

しかし、トワイライトは優しく彼女を見る。

 

「貴女が…違う私。」

 

その言葉に四人は疑問を持つ。

 

「大丈夫だよ。

 彼女はディケイドと共に現れた。

 少なくとも仲間さ。」

 

ダブルがそう言うと四人は警戒心を緩める。

 

「この世界の希望…守らなくては…ね?」

 

トワイライトが四人に語りかける。

 

それに四人は頷き、フローラが手を引く。

 

「一緒に戦おう!」

 

「…えぇ!」

 

十人は並び、最終決戦に挑む。



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乱・入・共・闘

十人に対峙するビッグマシンのすぐそばで鍵状の裂け目が現れ、黒い小箱が突き刺さる。

 

『QUE…DESPAIR!』

 

「あれは…クイーンのメモリ!」

 

フィリップが驚きの声を上げる中、ビッグマシンの体は黒く変わっていく。

 

『ゼツ…ボウ…ワガナ…ハ…ディスダーク!』

 

「やれやれ…またか。」

 

プリキュア・トワイライトは驚き、ディケイドはため息をつくのを他所に、ビッグマシンが両手から黒い霧を放出する。

 

「ゼツボウ…二…シズメ…。」

 

 

 

 

『乱・入・共・闘』

 

 

 

 

「どこだここは?」

 

「わかりません…。

 皆ともはぐれてしまったみたいですし…。」

 

――――――――――――――

 

『ライト・プリーズ!』

 

「どうする?」

 

「進むしか無いですわ。」

 

――――――――――――――

 

「皆とはぐれちゃったな~。」

 

「ちょっとは焦ったら?」

 

――――――――――――――

 

「ここで待っていた方が…。」

 

「とりあえず進みましょう!」

 

――――――――――――――

 

「…行くか。」

 

「…えぇ。

 ディスダーク…絶対にあなたの好きなようにさせない…!」

 

――――――――――――――

 

ダブルとマーメイドは

 

――――――――――――――

 

ウィザードとスカーレットは

 

――――――――――――――

 

鎧武とトゥインクルは

 

――――――――――――――

 

ドライブとフローラは

 

――――――――――――――

 

ディケイドとトワイライトは

 

――――――――――――――

 

暗い霧を進む。

 

すると、うすぼんやりと明るくなった。

 

――――――――――――――

 

「…!

 あいつらは!」

 

彼らが見た景色の先には多数の怪人がいた。

 

――――――――――――――

 

「ナスカにウェザー、タブー。

 数えてたらキリねぇぞ!」

 

「翔太郎、ここはエクストリームを使おう!」

 

「あぁ!」

 

どこからともなくエクストリーム鳥が飛んできて、ダブルの手におさまり直ぐ様スロットに入れる。

 

『EXTREAM!』

 

緑と黒が左右に割け、白く輝く。

 

仮面ライダーW サイクロンジョーカーエクストリーム。

 

『スカル!』

 

「スカル!

 モードエレガント!」

 

マーメイドの姿も変わる。

 

「スカル…。

 いくぜ…みなみちゃん!」

 

「はい!

 あなた達の罪を、数えなさい!」

 

――――――――――――――

 

「フェニックスにメデューサ、グレムリンにその他大勢…。

 いくらなんでもパーティーには多すぎないか?」

 

「そのようですわね。」

 

 

ウィザードが水色の指輪を装着する。

 

「とっておきの魔法、見せてやるよ。」

 

『インフィニティー・プリーズ!』

 

ベルトにかざした瞬間にダイヤのドラゴンが現れる。

 

『ヒースイフードー!

 ボージャバビュードゴーン!』

 

ウィザードの体が銀色に輝く。

 

まるでダイヤの如く。

 

『ワイズ!』

 

「ワイズ!

 モードエレガント!」

 

スカーレットは白い修道女に変わる。

 

「行くか!」

 

「えぇ。

 さぁ、ショータイムですわ!」

 

――――――――――――――

 

「デェムシュにレデュエ。

 それに…戒斗。」

 

「戒斗…それってどういうこと?!」

 

トゥインクルが鎧武に迫る。

 

「戒斗の事を知ってるのか。

 じゃあ…この戦いが終わったらにしようか…。」

 

『カチドキ!』

 

『カチドキアームズ!

 いざ、出陣!

 エイエイオー!』

 

仮面ライダー鎧武 カチドキアームズ。

 

「分かったわよ…!」

 

『バロン!』

 

「バロン!

 モードエレガント!」

 

甲冑が彼女を包む。

 

「ここからは、私達のステージよ!」

 

――――――――――――――

 

『001に007、065か…。』

 

「前に倒したロイミュードが甦ったってことか。」

 

「とにかく、倒して皆に合流しましょう!」

 

『進ノ介、フォーミュラで行こう!』

 

「分かった!」

 

青いシフトカーを装着する。

 

『DRIVE!

 TYPE:FORMULA!』

 

ドライブの姿がF-1カーを模す。

 

『ルパン!』

 

「ルパン!

 モードエレガント!」

 

フローラの体が大怪盗の姿を模す。

 

「あれって…!」

 

『ルパンのコアがあの鍵に変わったようだねぇ。』

 

「ま、今は細かいことはいいか。」

 

フローラが腰を低くする。

 

「あなた達、ひとっ走り付き合いなさい!」

 

――――――――――――――

 

『XTREME!

 MAXIMUM DRIVE!』

 

ダブルのキックが炸裂するが、ドーパントは一向に減らない。

 

「キリがねぇ…!」

 

「そうですね…!」

 

――――――――――――――

 

『ハイタッチ!

 シャイニングストライク!』

 

巨大な斧がファントムが襲う。

 

「ハァ…ハァ…ちょっと…キツいかな…

 でも…。」

 

 

「まだ、負けられません…!」

 

 

――――――――――――――

 

 

「ハァ…!」

 

火縄大橙DJ銃の火球がインベス達を一掃するが、数は減らない。

 

(今、黄金の果実を使うか…?

 でも、下手に使ってオーバーロードに奪われると…。)

 

「ちょっと…ヤバいかも…。」

 

トゥインクルの呟きに鎧武が意を決する。

 

(考えてる暇はねぇ!)

 

「こうなったら…!」

 

――――――――――――――

 

『フルフル!

 フォーミュラ!

 大砲!』

 

「ハァッ!」

 

大砲を放つが敵は減らない。

 

ドライブはシフトカーを出す。

 

『進ノ介!

 ここでトライドロンを使えば敵の思うツボだ!』

 

「でも、ベルトさん!

 今負けたら、はるかちゃんも危ないだろ!」

 

――――――――――――――

 

その時、

 

斬撃が

 

爆発が

 

光矢が

 

銃弾が

 

彼らを守るかのように敵に当たる。

 

――――――――――――――

 

「相変わらずだなぁ…。

 仮面…ライダー…!」

 

――――――――――――――

 

「ひさしぶり、晴人。」

 

――――――――――――――

 

「葛葉紘太…。」

 

――――――――――――――

 

「やっと会えた、父さん。」

 

――――――――――――――

 

「お前、大道克己…!」

 

「何故ここに…!」

 

驚くダブルにマーメイドが質問する。

 

「えぇっと、彼は?」

 

「大道克己…以前、風都を震撼させたテロリストだ。」

 

「その時に死んだ筈なんだ。

 なのにどうして…?」

 

「テ、テロリストの人がどうして?」

 

克己は敵を見る。

 

「アイズにテラーにユートピア…地獄はまだまだ楽しませてくれる。」

 

今度はダブルとマーメイドを見て、メモリを鳴らす。

『ETERNAL!』

 

「喜べ、俺も手伝おう。」

 

――――――――――――――

 

「コ、コヨミ…!」

 

「コヨミって…あの人の娘?」

 

コヨミは二人を見る。

 

「晴人は負けないわ。

 だって、私と彼女の『希望』だもの。」

 

コヨミは指輪を取り出す。

 

「私の希望は、絶対に守る…!」

 

――――――――――――――

 

「お前、狗道供界…!」

 

供界は鎧武を見る。

 

「私を殺した礼を返しに来た。」

 

(殺した…礼?

 殺した人に何で礼を言うの?)

 

トゥインクルは意味がわからなかった。

 

それを見透かしたように供界が言う。

 

「君には分からない。

 葛葉紘太を責める事もまた愚かな事だ。」

 

彼は二つの錠前を開ける。

 

『ザァクゥロォ!!!』

 

『ブラッドオレンジ…!!!』

 

「自分で答えを見つけ出せ。」

 

――――――――――――――

 

「お前、エイジか?!」

 

ドライブは驚く。

 

「エイジって?」

 

フローラが聞く。

 

「泊進ノ介は、僕の父さんだよ。」

 

「エェエ!

 泊さんってお父さんだったんですか?!」

 

「ん~、まぁ、未来の話…かな?」

 

「ん?」

 

フローラはちんぷんかんぷんといった顔をする。

 

「僕はあり得ない未来から来た。

 108と同じ未来からね。」

 

「おい、それって…!」

 

エイジはシフトカーを取り出す。

 

「親孝行って事だよ、父さん。」

 

――――――――――――――

 

「変身!」

 

――――――――――――――

 

『ETERNAL!』

 

『チェンジ・ナウ!』

 

『ブラッドザクロアームズ!

 狂い咲き!

 サクリファイス!

 ブラッドオレンジアームズ!

 邪ノ道!

 オン・ステージ!』

 

『DRIVE!

 TYPE:NEXT!』

 

――――――――――――――

 

「俺は仮面ライダーエターナル。

 さぁ、地獄を楽しみな!」

 

エターナルがナイフで敵を切り裂く。

 

「大道克己…どういう風の吹きまわしだ?」

 

加勢しながらダブルは問う。

 

「なぁに、パーティーに招かれただけだ。」

 

『ACCEL!

 MAXIMUM DRIVE!』

 

『BIRD!

 MAXIMUM DRIVE!』

 

『NASCA!

 MAXIMUM DRIVE!』

 

飛行・加速、更にその能力を倍増、ナイフを鋭くして敵をなぎ倒す。

 

「こいつを使え。」

 

エターナルは四本のメモリをダブルに渡す。

 

「こいつは…!」

 

「なかなか興味深い。」

 

メモリを挿入していく。

 

『DUMMY!

 MAXIMUM DRIVE!』

 

『PUPETIER!

 MAXIMUM DRIVE!』

 

『ROCKET!

 MAXIMUM DRIVE!』

 

『YESTERDAY!

 MAXIMUM DRIVE!』

 

最後にメモリを一本挿入する。

 

『PRISM!

 MAXIMUM DRIVE!』

 

「ビッカーチャージブレイク!」

 

ダブルが剣から放った光線は一つのロケットになり、無数に複製され、怪人の前に操作され爆発。

 

爆煙が晴れると過去に各怪人を倒した仮面ライダーが現れ、必殺技を繰り出す。

 

「左さんとフィリップさんがいっぱい…。」

 

マーメイドは思わず目を丸くする。

 

ダブルとエターナルは背中合わせになる。

 

「ここは任せろ。」

 

あるメモリを見せる。

 

「でも、大道克己…お前はどうするんだ?」

 

「俺は地獄を楽しむだけだ。

 生きてる奴に居られたく無いんでね。」

 

『ZONE!

 MAXIMUM DRIVE!』

 

「さらばだ、仮面ライダーと伝説の少女よ。」

 

二人の姿が消え、白い悪魔が舞い踊る。

 

「さぁ、死神のパーティータイムだ!」

 

――――――――――――――

 

「どうして彼を慕っているのですか?」

 

背中合わせになったスカーレットが聞く。

 

「ずっと一緒にいたもの…。」

 

ハーメルケインを振るいながら答える。

 

「それなのに何故…。」

 

スカーレットは続けない。

 

察したコヨミは口を開く。

 

「…死んだのか?

 元々死んでたのを晴人の魔力で生き長らえてただけ。

 しょうがなかった。」

 

スカーレットが敵に蹴りを喰らわせる。

 

「でも、無理言っちゃった。

 死んだ今でも、彼に辛いことお願いしちゃったのが一番の心残りだった。」

 

コヨミは続ける。

 

「でも…もう一度会ってちょっと嬉しかったかな。

 変わらない彼を見て…。

 だから、絶対彼を死なせないで…!

 私の希望を守って…!」

 

『バインド・ナウ』

 

コヨミはいきなりウィザードとスカーレットを鎖で結び付ける。

 

「あっ…おい…何するんだコヨミ!」

 

「なにを…!」

 

『エクスプロージョン・ナウ』

 

周りの敵を爆撃で怯ませ、ウィザードのベルトを操作する。

 

「さよなら、晴人。」

 

涙声で指輪をウィザードのドライバーにかざす。

 

『テレポート・プリーズ!』

 

二人は魔方陣へと消えていった。

 

「ごめんなさい、晴人。」

 

彼女は再び戦うのであった。

 

――――――――――――――

 

深紅の救世主…仮面ライダーセイヴァー。

 

彼は呪詛のような音と共に変身した。

 

襲いかかる敵を次々に薙ぎ倒し射っていく。

 

「あんた、どうしてアイツに殺されたの?」

 

トゥインクルはセイヴァーに聞く。

 

「救済する筈が救済された。」

 

「救済?」

 

「人間を一段階上の存在に強制的に『変身』させる。」

 

「そんな事…!」

 

「わかっている。

 しかし、自分一人が周りとは違う存在になってみれば分かる。

 君はその疎外感に耐えられるのか?」

 

「…。」

 

「ただ、一人だけ。

 そんな私を救済しようとした男がいた。

 だから、葛葉紘太の事は悪く言わないでくれ。」

 

「…悪かったわね。」

 

その時、怪人…ロードバロンがトゥインクルに斬りかかる。

 

「グァッ!」

 

しかし、セイヴァーがトゥインクルを庇う。

 

「供界!」

 

「…!」

 

鎧武が駆け寄ってくる。

 

「…ハァ…ハァ…ここは…任せろ…!」

 

セイヴァーの体から花弁と茎のような物が生えてくる。

 

「何これ?!」

 

偽神座セイヴァー。

 

次々とクラックからコオロギやウツボカズラの怪人が現れる。

 

そして、鎧武とトゥインクルの後ろにクラックが開く。

 

「さっさと行け…!」

 

「供界…!」

 

「世界を…救ってくれ…!」

 

鎧武は拳を握り締めながら頷く。

 

そして、トゥインクルの手を引き、クラックへと入っていった。

 

「世界を…頼んだぞ…!」

 

今、幕が上がった。

 

――――――――――――――

 

ドライブが敵の攻撃で押され始める。

 

そこにダークドライブとフローラが駆け寄り敵を殴り飛ばす。

 

「大丈夫、父さん?」

 

「大丈夫ですか、泊さん?!」

 

「あぁ。

 しかし、ヤバイな。」

 

「そうだ父さん。

 僕と同じシフトカー使うと良いんじゃないかな?」

 

『中々、粋なことを言うねぇ。』

 

「わかった!」

 

ドライブが黒と黄色のシフトカーを入れる。

 

『DRIVE!

 TYPE:SPECIAL!』

 

ドライブの体が黒に黄色の姿に変わる。

 

「おし!

 なんか…親子みたいだな。」

 

「みたいじゃなくて、そうなんだよ。」

 

「来ますよ!」

 

怪人が迫って来るのを払いながら一発一発を決めていく。

 

『NEXT!』

 

『ヒッサーツ!

 フルスロットル!

 スペシャル!』

 

「ハアアァァアア!!!」

 

三人の蹴りが数多の敵を打ち払う。

 

「そろそろ良いかな?」

 

ダークドライブがネクストライドロンを呼び出す。

 

「父さん達乗って!」

 

「え?おいちょっと!」

 

ダークドライブはドライブとフローラを押し込み、扉を閉める。

 

「後はこれが連れてってくれるから。」

 

「エイジ、お前はどうするんだよ!」

 

「僕はここで足止めする。

 父さん。」

 

ダークドライブは言う。

 

「また未来で会おう。」

 

「…あぁ。

 任せろ…!」

 

車が発進し、異次元への扉が現れ、吸い込まれるように突入した。

 

「父さん、またね。」

 

――――――――――――――

 

「ファンガイアに魔迦魍、ミラーモンスターに…。」

 

真ん中を見てディケイドは一人ごちる。

 

「黒い俺か…。」

 

黒き破壊者…ダークディケイド。

 

「敵が何であれ関係ありませんわ。」

 

敵が眼前に迫ってくるとディケイドはカードをベルトの中に入れる。

 

『ATTACK RIDE SLASH』

 

ディケイドは剣で、トワイライトは杖で敵を倒していると、後ろから銃弾が飛んでくる。

 

「クっ…!

 やっぱり鬼門になるか…!」

 

ダークディケイドが歩くと怪人達も復活する。

 

「面倒だ…!」

 

「でも、やるしかありませんわ!」

 

二人と軍団がかち合うと思われたその時、上空に灰色のオーロラが現れ、奇っ怪な音楽が流れる。

 

『レベルア~ップ!』

 

それは落ちてきた。

 

『マイティジャンプ!

 マイティキック!

 マイティマイティアクション!

 エ~ックス!』

 

ピンク色の奇抜な戦士が地面に着地するとプロックが多数出てきた。

 

「ピンク…だな。」

 

「貴方も同じじゃなくて?」

 

「俺はピンクじゃないマゼンタだ。」

 

謎の戦士は二人を見る。

 

「あれ?

 ヴァーチャルオペレーションを受けてた筈なんだけどな?」

 

「お前は誰だ?」

 

「俺?

 俺は仮面ライダーエグゼイド!」

 

謎の戦士…エグゼイドは左手を腰に当て、右手を上に上げる。

 

「あんたも仮面ライダー?」

 

「あぁ、ディケイドだ。」

 

「成る程、じゃああいつらが敵って事だな?」

 

エグゼイドは敵を見据える。

 

「いくぜ!」

 

手に持っていたハンマーで殴りつけていく。

 

『ATTACK RIDE CLOCK UP』

 

ダークディケイドが超高速で三人を攻撃する。

 

「あの黒いのを倒さねぇと復活するぞ!」

 

「了解!」

 

ディケイドの言葉にエグゼイドはサムズアップし、ブロックを壊す。

 

ブロックからは黄色いメダルが現れ、取得する。

 

すると、速くなり黒いディケイドと同等の速度を持つ。

 

刹那、ダークディケイドが怯んだ隙を見てエグゼイドはガシャットをスロットに入れてボタンを押す。

 

『キメワザ!

 クリティカルストライク!』

 

上空に跳びそのまま多段キックをダークディケイドに浴びせる。

 

『会心の一撃!

 GAME CLEAR!』

 

「やったぜ!」

 

ダークディケイドが倒された影響で怪人が消滅する。

 

オーロラがエグゼイドの前で止まる。

 

「…これで戻れんの?」

 

「多分な。

 また会おうぜ、エグゼイド。」

 

「おう!」

 

エグゼイドが居なくなった後、二人の前にもオーロラが現れる。

 

「行くか。」

 

「えぇ。」

 

そして、向かう。

 

絶望の先へ。



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終結!伝説の戦士達!

いきなり現れるダブルとマーメイドの二人。

 

「ここは…って!

 あのロボの前じゃねぇか!?」

 

「…大きいですね。

 でも…。」

 

「負けられない。

 だろう?海藤みなみ。」

「はい!」

 

 

 

テレポートされるウィザードとスカーレット。

 

「晴人さん…。」

 

「…。」

 

何もない手のひらを見る。

 

「…行きましょう。

 コヨミさんの為にも。」

 

「あぁ、なんたって俺は…。」

 

前を向くウィザード。

 

かすれた、しかし優しい口調で言う。

 

「最後の希望だからな。」

 

 

 

「行くか…。」

 

クラックを潜り抜けた先にはあのビッグマシンが。

 

「やるしかわね。

 供界さんに、世界を任されちゃったしね。」

 

 

 

ネクストライドロンが現れ、二人がおりる。

 

車は消え、二人だけが残る。

 

「…おっし!

 やるか!」

 

「エイジさんは…。」

 

「わかってる。

 多分、もう…。」

 

『進ノ介…。』

 

「でもさ、世界を守らないとエイジに会えなくなる。

 2035年の未来で俺の息子を戦わせない為にも…!」

 

「…だったら!

 私も守ります!

 進ノ介さんだけには戦わせません!」

 

『OK!

 進ノ介、はるか!

 行こう!』

 

「あぁ、ひとっ走り付き合えよ!」

 

「はい!

 ひとっ走り付き合います!」

 

 

 

 

『終結!伝説の戦士達!』

 

 

 

 

十人がビッグマシンの前に立つ。

 

「何故だ!何故貴様らは絶望しない!?」

 

ビッグマシンが怒り狂う。

 

「絶望?

 そんなもんで俺が…いや、俺達が挫けると思うか?」

 

「浅はかだねぇ。」

 

「なんたって俺は最後の希望だからな。」

 

「ここで負けたら、戦った皆に合わす顔が無いからな。」

 

「もとより、お前に負けるつもりは無い。」

 

「お前に勝つのが俺の役目らしいしな。」

 

そう言われたビッグマシンの周りにはワープホールを出現させ、体の中心から怪人達が現れ次々とその中へ入っていく。

 

「怪人達を全て場所、全ての時間、全ての世界に送った!

 絶望しろ!

 私の絶望を味わえ!

 絶望二染マレ!

 アーハッハッハッハァァァアアア!」

 

「お前、仮面ライダーは俺達だけだと思ってるのか?」

 

ディケイドが苛立った口調で言う。

 

「闇ある所に光あり。

 それが仮面ライダーなんだぜ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園近くでゆいが怪人から逃げていた。

 

しかし、何かにつまずき、こけてしまう。

 

「キャアアア!」

 

怪人の魔の手が迫ったとき、ある男が怪人に蹴りを入れる。

 

「ほら!

 さっさと逃げんさい!」

 

「でも、貴方も逃げなきゃ!」

 

「こういう時は、黙って大人に任せんしゃい。」

 

ゆいは戸惑いながらも言葉を残す。

 

「絶対、死なないで下さいね!」

 

「おう!」

 

男はゆいの後ろ姿を眺め、意を決したかの様に呟く。

 

「ちゅーか、俺勝てるか分からんけど…。」

 

男の姿が変わり、蛇を模した姿に変わる。

 

怪人は空を見上げる。

 

「木場、長田、…乾。

 見てろよ~!」

 

怪人が敵に向かって駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆逃げるんだ!」

 

荒野の地で、白いライダースーツを身に纏った男が人間をその場から逃がしていた。

 

「貴様たちの好きにはさせん!

 変身!」

 

男の姿は黒く変わる。

 

「俺は太陽の子!

 仮面ライダーブラック!

 アールエックス!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パンツの旗を持った男は砂漠を歩いていた。

 

その男の前に、怪人が現れる。

 

男は少し驚くが、パンツの旗を地面に刺し、直ぐ様ベルトを着け、メダルを入れる。

 

「行くよ…アンク。

 変身!」

 

男がメダルをスキャンすると、軽快な歌が流れる。

 

『タカ!トラ!バッタ!

 タ・ト・バ!

 タトバ!

 タ・ト・バ!』

 

「やっぱり、楽して助かる命が無いのは、どこも一緒だな…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある高校で怪人たちが出現していた。

 

その時、怪人達に荒いパンチをお見舞いするリーゼント青年がいた。

 

「天高は俺が守るぜ!」

 

ベルトを取り出し、スイッチを四つ押す。

 

『3…2…1…』

 

「変身!」

 

青年はレバーを押し、手を高く上げる。

 

刹那、彼は白い戦士となった。

 

「宇宙キターーーーーーーーー!」

 

天高く叫ぶと、頭をキュッ!とリーゼントを直すかの様に撫で、敵に向かって手を突き出す。

 

「仮面ライダーフォーゼ!

 タイマン張らせて貰うぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「変なのキター!」

 

少女や青年、リーゼントの教師の男が叫ぶ。

 

「先生!

 ここは俺に任せて!」

 

「応!」

 

教師がにこやかに言う。

 

「超力招来!」

 

彼の姿が変わり、青い異形の姿に変わる。

 

「自由の戦士!

 イナズマン!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「所長、危ないから下がっていろ。」

 

「う、うん。」

 

赤いジャケットの男はベルトを着け、メモリを押す。

 

『ACCELL!』

 

「変…身!」

 

グリップを回し、姿を変える。

 

「さぁ、振り切るぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「会長が言っていたが…。」

 

彼の目の前には、怪人が数十体。

 

「変身。」

 

彼は、既に巻いていたベルトに灰色のメダルを入れ、ハンドルを回す。

 

『カポーン!』

 

「伊達さんがいないんだから、俺がやらなきゃな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「こいつらが、報告にあった奴らか。」

 

一体、また一体と己の拳だけで怪人を薙ぎ倒し、ベルトを着ける。

 

『READY?』

 

「変身!」

 

青い球体に包まれ、球体は弾ける。

 

そこに立っていたのは、若き隕石。

 

「お前達の運命は、俺が決める。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

密林を歩いていた男が怪人に襲われていた。

 

「おわっ!

 何だよ!?」

 

男が指輪を腰に当てると、ベルトが出現する。

 

「まぁ、腹も減ったし。」

 

大きくしゃがむ。

 

「変~身!」

 

指輪をベルトの窪みにはめる。

 

『L・I・O・N!

 LION!』

 

彼の姿が、金色のライオンの戦士に変わる。

 

「さぁ、食事の時間だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

荒野を歩く一人の青年は怪人と対峙していた。

 

「ったく、俺は超短期決戦タイプなんでね。

 パパっと終わらせるよ。」

 

小さいバイクをベルトに入れる。

 

『シグナルバイク!』

 

「レッツ!変身!」

 

『ライダー!マッハ!』

 

軽快な音楽と共に白いアーマーに包まれる。

 

「追跡!撲滅!いずれも~…マッハーーー!

 仮面ライダー~…マッハーーー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どこかの場所。

 

青いジャケットの青年が、怪人達と対峙していた。

 

「変身!」

 

青年の姿が変わる。

 

「守ってみせるよ、映司さん!」

 

彼は地面を蹴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白いスーツを着た男に怪人が迫る。

 

男はワインボトルをベルトに装填する。

 

「変身。」

 

男は姿を変える。

 

壁にはでかでかと『G』と書かれていた。

 

「食前酒は、何がいい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

五人の男達の前に怪人達が飛翔する。

 

「おいおい!

 なんだあいつら!」

 

「まずいって~!」

 

「しっかりしなさい、坊や達!」

 

「そうですよ、紘太さんに任されてるんですから。」

 

「そうだな…。

 いくぞ!」

 

五人それぞれが錠前を取り出す。

 

『クルミ!』

『マロンエナジー!』

 

『ドングリ!』

 

『ドリアン!』

 

『ブドウ!』

『ドラゴンフルーツエナジー!』

 

『メロン!』

『メロンエナジー!』

 

それぞれの頭上にフルーツを模した物体が出てくる。

 

「変身!」

 

その全てが落下。

 

『ミックス!

 クルミアームズ!

 ミスター…ナックルマーン!

 ジンバーマロン!ハハァ!』

 

『ドングリアームズ!

 ネバ~ギ~ブア~プ!』

 

『ドリアンアームズ!

 ミスター…デンジャラ~ス!』

 

『ミックス!

 ブドウアームズ!

 龍!砲!ハッハッハ!

 ジンバードラゴンフルーツ!ハハァ!』

 

『ミックス!

 メロンアームズ!

 天・下・御・免!

 ジンバーメロン!ハハァ!』

 

五人の武者は、再び敵に立ち向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

可能性のあった世界。

 

白髪の青年が怪人達を見つけ、錠前を取り出した。

 

『オレンジ!』

 

錠前をベルトにセット。

 

頭上にはオレンジを模した物体。

 

「変身!」

 

刀を下ろし、落下するオレンジ。

 

『オレンジアームズ!

 花道!オンステージ!』

 

「フルーツジュースにしてやるぜ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タケル殿!

 眼魔ですぞ!」

 

「眼魔にしては普通に見えてるけど…?」

 

五人の男女が怪人に向かう。

 

「違ったとしても、やるしかない!」

 

「そうだな。」

 

「あぁ…!」

 

二人の青年がベルトを出し、小さい目の形をした物…眼魂を入れる。

 

一人はメカメカしい眼魂を腕に巻いた装置に。

 

『アーイ!

 バッチリミナー!バッチリミナー!バッチリミナー!バッチリミナー!』

 

『アーイ!

 バッチリミロー!バッチリミロー!バッチリミロー!バッチリミロー!』

 

『ネクロム!

 スタンバイ!』

 

「変身!」

 

『開眼!オレ!

 レディゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!』

 

『開眼!スペクター!

 レディゴー!覚悟!ド・キ・ド・キ・ゴースト!』

 

『テンガン!

ネクロム!

メガウルオウド!

 クラッシュ・ザ・インベーダー!』

 

 

「命、燃やすぜ!」

 

「俺の生き様、見せてやる!」

 

「心の叫びを、聞け!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東南アジアのある場所。

 

男が怪人達に囲まれていた。

 

「この俺が相手だ!」

 

彼の周りに風が集まる。

 

「ライダー…変身!」

 

段々と姿を変え、そこに居たのは…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは『疾風』の『切り札』…。

 

「サイクロンメモリとジョーカーメモリが光っている!?」

 

エクストリームメモリが二つのメモリから出た風の力を受け、ダブルはサイクロンジョーカーゴールドエクストリームへと昇華する。

 

「俺も…!」

 

『チョーイイネ!

 フィニッシュストライク・サイコー!』

 

金色のドラゴンがウィザードの周りを飛翔し融合、インフィニティドラゴンゴールドとなる。

 

「おっしゃあ!

 いくぜ!」

 

『極!

 フルーツバスケット!

ロック・オープン!

 極アームズ!

 大大大大・大将軍!』

 

上空から無数の果実が装甲を弾け跳ばし、銀の鎧が現れる。

 

仮面ライダー鎧武 極アームズ。

 

「俺達も行こう!」

 

『OK!

 START!

 YOUR ENGINE!』

 

ドライブはシフトカーをブレスに入れる。

 

『DRIVE!

 TYPE:TRIDERON!』

 

どこからともなく現れたトライドロンと合体し、タイプトライドロンに。

 

二人の魂にトップギアが入る。

 

「行くか…。」

 

ケータッチを取り出し、操作する。

 

『KUUGA・AGITO・RYUUKI・FAIZ・BLADE・HIBIKI・KABUTO・DENーO・KIVA

 FINAL KAMEN RIDE DECADE』

 

カードが九枚、胸に展開し、額には自分自身のカードが現れる。

コンプリートフォームの姿は正に歩くライダー図鑑。

 

すると、ディケイドのライドブッカーから一枚のカードが出現する。

 

「こいつは…!」

 

ディケイドが少女四人に伝える。

 

「ちょっとくすぐったいぞ!」

 

『FINAL FORM RIDE PRECURE

 GRAND PRINCESS』

 

四人が光で包まれ、伝説のプリンセスに変わる。

 

「これって…!」

 

「体が軽いですわ!」

 

「これなら行ける!」

 

「おし!

 みんな、行こう!」

 

四人は並ぶ。

 

「強く!」

 

「優しく!」

 

「美しく!」

 

「GO!」

 

『プリンセスプリキュア!』

 

光が舞う。

 

「トワイライトもな。」

 

『FINAL FORM RIDE T・T・T・TWIRIGHT』

 

紫の光が彼女を包み込む。

 

十人は並び立ち、フローラが声を上げる。

 

「冷たい檻に閉ざされた夢、返していただきますわ!

 お覚悟はよろしくて?」

 

「キィィィィサァァァァマァァァァラァァァァ!」

 

両腕からミサイルを繰り出す。

 

それを各々が避けながら八人が飛翔する。

 

『ディケイド!

 これを使いたまえ!』

 

空から二台のライドブースターが飛んできて、赤をドライブが、青をディケイドが乗る。

 

「ありがたく使わせて貰うぜ!」

 

ビッグマシンから巨大ドーパントや巨大ファントム、巨大インベス、Zメガバットが無数に現れる。

 

「いくら出ようが!」

 

「負けられないよ!」

 

「翔太郎さん!フィリップさん!

 援護します!」

 

光弾を放ち、周りの敵を蹴散らしていく。

 

「サンキュー!」

 

 

 

ウィザードが敵を爪で切り裂くが横から怪人の光線が繰り出される。

 

が、スカーレットのバリアがそれを防ぐ。

 

「トワちゃん、ありがとう!」

 

「コヨミさんに約束しましたから。

 晴人さんを御守りすると!」

 

「だったら、絶対負けられないな…!」

 

 

 

『大橙丸!』

 

『キウイ撃輪!』

 

「ハアァア!」

 

周りにいる敵を弧を描く様に切り裂く。

 

『ブドウ龍砲!』

 

『メロンディフェンダー!』

 

敵の攻撃を防ぎながら銃を撃っていく。

 

「ったく、数多すぎ!」

 

トゥインクルがぼやく。

 

「しょうがねぇ…!」

 

鎧武が何回か鍵を回すと無数の武器が現れ、敵を退かす。

 

「すごい!」

 

「だろ?」

 

 

 

「いくぜ!

 はるかちゃん!」

 

「はい!」

 

敵をパンチで退けながら進む。

 

『FIRE!

 ALL ENGINE!』

 

全てのタイヤが射出され、二人を守るかの如く旋回する。

 

「本気でいくぞ!」

 

「私も負けてられません!」

 

 

 

「やるか。」

 

『KAMEN RIDE KUUGA

 ULTIMATE』

 

ケータッチを操作するとマシンブースター上に黒き戦士が現れる。

 

二人は手をビッグマシンに向けると爆発が内側から起こる。

 

「凄いですわね。」

 

「そろそろ終わらせるぞ。」

 

 

 

『極スパーキング!』

 

『ヒッサーツ!

 トライドロン!

 フルスロットル!』

 

『FINAL ATTACK RIDE DE・DE・DE・DEDADE』

 

ダブルの飛翔し、ウィザードは錐揉み、鎧武は右足にエネルギーを溜め、ドライブはタイヤと共に、ディケイドはカードの幻影を潜る。

 

少女五人が集まり、持っていた杖を五人でティアラを描く。

 

『プリキュア!

 グラン・リベラシオン!』

 

ダブルは右手、

ウィザードは左手、

鎧武は右足、

ドライブは左足、

ディケイドは頭部、

そして五人の放った光線はビッグマシンの腹部に穴を開ける。

 

「ガガガ…!

 理解不能!理解不能!

 リカイ…フノウ…!

 ………コ……ヨ……ミ……!

 グアアアァァァアアア!!!」

 

そのまま爆発四散するビッグマシンを背後にフローラは言い放つ。

 

「ごきげんよう。」

 

と。



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結果All Light!

「イーディス長官、ありがとうございました。」

 

三人の少女が礼を言う。

 

「いえいえ、先代のプリンセスプリキュアに言われたら。」

 

彼の持っていた『戦士』だった四つの眼魂が光の粒子に変わる。

 

「それでは、私はこれで。」

 

イーディスの後ろに眼の紋章が浮かび上がり、そこに彼は消えていった。

 

 

 

 

『結果All Light!』

 

 

 

 

「鳴海荘吉さんって、どんな人だったんですか?」

 

海辺で翔太郎に聞く。

 

「そうだな、ハードボイルド…かな?」

 

照れながら帽子を触る。

 

「…帽子が似合う男になれ。

 おやっさんが俺にくれた最後の試練だ。」

 

「いつまで経ってもハーフボイルドだけどね。」

 

フィリップが茶化す。

 

「でも、『Nobody’s Perfect』だよ。」

 

「誰も…完璧じゃない…。」

 

「そういうこと。

 足りない部分は仲間に補ってもらえばいい。」

 

「…はい!」

 

「おし!

 じゃあ、俺達も帰るか!」

 

ダブルボイルダーを呼ぶ翔太郎。

 

(なんだか、心が軽くなったような…。

 荘吉さん、会えて良かったです。)

 

みなみは海を見て、そう思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「晴人さんはこれからどうしますの?」

 

面影堂には二人。

 

「うーん、取り敢えず旅を続けるかな。

 今回は木崎に呼び出されただけだし。」

 

「また、会えますか?」

 

「会えるよ、きっとまた何処かで。」

 

少し嬉しそうにトワは微笑む。

 

「忘れませんわ。

 晴人さんのことも、コヨミさんのことも。」

 

それに。と続ける。

 

「笛木さんのことも…。」

 

それを聞いて晴人も微笑む。

 

「乗る?

 送るよ。」

 

ヘルメットを渡す晴人。

 

「よろこんで。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、戒斗の事だが…。」

 

「あぁ、それ言わなくてもいいよ。」

 

「え?」

 

紘太は疑問といった表情をする。

 

「あんた、悪いやつじゃないし。

 それに、答えは自分で探し出すから。」

 

「そうか…。」

 

手をかざし、別の惑星へのクラックを開く。

 

「じゃあ、また会おう。

 また会いたくなったらいつでも呼んでくれ。」

 

そう言ってクラックに入り、閉じる。

 

「本当に神様だったんだ…。」

 

伸びをして歩き出す。

 

「さてと、探しますか…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだかごちゃごちゃになっちまったな。」

 

二人は、ノーブル学園へとはるかを送った。

 

「そうだ、はるかちゃん。」

 

「はい?」

 

「ルパンの物さ…。」

 

返して。と言われると思ったはるかだったが、その予想は裏切られた。

 

「そのまま持っていてくれ。」

 

「えぇ!?

 良いんですか?!」

 

『あぁ、二人で話したんだが。』

 

「あいつが自分の物を渡すなんてよっぽど信頼してるって事だ。

 その思いは、なくしちゃならないからな。

 それに、あいつの事、忘れないでくれ。」

 

「はい!

 ずっと大切にします!」

 

彼女の宝物がまた一つ増えたのだった。

 

 

 

 

 

 

「着いたぞ。」

 

マシンディケイダーを走らせてオーロラをくぐり、トワイライトの世界へと戻る。

 

「ありがとうございました。」

 

トワイライトは降りて、礼を言う。

 

「これからどうするんだ?」

 

「彼女たちのような世界にしたいです。

 その前にまず謝る人が居ますので、謝りたいと思います。」

 

「そうか…。

 何かあったら手伝ってやるよ。

 通りすがったらな。」

 

「はい!」

 

彼女は満面の笑みでそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

士は、店に戻りドアを開ける。

 

「私も彼女たちの様な世界にしたい…か。」

 

すたすたとソファに座る士。

 

「どこ行ってたんだよ、士!」

 

「すっごく探したんですよ!」

 

「まぁ、僕はお宝を手に出来て良かったんだけどね。」

 

手には『花のプリンセス』と書かれた絵本があった。

 

「士くん、写真出来たよ。」

 

士が写真を手にする。

 

写真には、トワイライトに手を差し伸べている四人の少女達の姿があった。

 

「いやぁ、上手くなったねぇ。」

 

「まぁた、歪んでる~。」

 

「そうかい?

 キバーラちゃん。

 私はそうは思わないけどねぇ。

 …おととっ!」

 

栄次郎はこけかけて手が何かを引っ張る。

 

すると、背景ロールが変わる。

 

「次は、何の世界だ…?」



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