インフィニット・ハンドレッド~武芸の果てに視る者 (カオスサイン)
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番外編&コラボ
番外編Ⅰ「奏でられしワンサマーフェスティバル」


番外編。
結構タイムリー?なネタで書いてみたよ。
*本編の春季に関するこの先のネタバレも含まれているから注意!




Sideイチカ

「早く行きましょうイチカさん!」

「そう引っ張るなってもう!」

カレンに手を惹かれ俺は少々戸惑う。

「はーくん…」

「あの…音六?あんまり人前ではくっつかないでくれないかな?…」

「や!…」

「…すみません私が悪うございました…」

「あ~…なんだか苦いコーヒーが飲みたくなってきたわね…」

「私もちょっと苦目の茶を所望したいな…」

「奇遇ですわね私もですわ…」

色々あって春が記憶を取り戻した一週間後、各地で夏祭りが開催されていた。

勿論愚兄は外出許可など出る訳がなく今も強制奉仕作業をさせられているが気にしてやる事ではない。

それからというものより一層激しくなったセラフィーノのスキンシップに春は困惑していたがまた新たな決意を固めているだろう。

二つの甘々なイチャつきを見ていた鈴達は砂糖を吐き出しそうになってげんなりとしていたが。

「じゃあ、花火が打ち上げられる十分前に此処に集合としよう!」

集合場所を確保し俺達は花火の時間までそれぞれ祭りを楽しむ事にした。

「ん?…」

それから十五分後、俺達はあるものを目にした。

それは…

「えーん!」

「そ、そんなに泣くなよ…当たりが出なかったんだからしょうがないだろ…」

「やだやだ!あのネコちゃんのぬいぐるみが欲しいよー!うえーん!」

「…」

大声で泣き叫ぶ少女とそれを必死になだめようとしている小学校低学年くらいの男の子の姿があった。

往来する周囲の人々は面倒事に巻き込まれたくないからか彼等に手を差し伸べる事はない。

「君達、一体どうしたんだい?」

「ふえ?…」

俺はそんな彼等を放ってはおけずに声をかけた。

「お兄さんに理由を話してごらん?」

「う、うん…妹の花南がクジ引きのお店に出ている景品を欲しがった僕もゲーム機とソフトが欲しかったから挑戦してみたんだけど…」

「お目当ての景品の当たりが全く出なかったという事だね?」

「うん…お母さんに貰った僕達の今月の御子遣いと貯金していたお年玉を全部使っちゃったんだけどね…それでも当たりが出なくて…花南はそれが諦め切れないみたいでさっきから泣き続けているんだ…」

「ちなみにいくらくらいはたいたんだい?」

「二人で二万円ちょっとです…」

ふむ…それだけ使っても当たらないとはその露店は怪しいな…。

流石に使った額が額だけに兄である彼も何処か諦めがついていない様子だった。

「話は分かった。カレン、春とセラフィーノに応援を頼んでおいてくれ」

「分かりました!」

「僕はそのクジ引き屋に俺達を案内してくれないか?」

「え?良いけど…」

男の子は少し困惑した様子ではあったが俺達を店のある場所まで案内した。

少し進んだ先で景品が縦列されたクジ引き屋の前に着く。

「君達は少し離れた所で待っていてくれ」

「う、うん…でもどうするのお兄ちゃん?…」

「まあ見てなって!」

予想外の事態が起きた時の為に男の子達を店から少し離れた所に待機させ、俺は件の店へ向かう。

「すみませーん!このクジって一回何円ですか?」

「二回で五百円、十回連続だったら三千円だぜ兄ちゃん」

「…じゃあやらせてもらおうかな」

「毎度あり!へっへ!…」

どこぞのチンピラの様な恰好をした店員が出てくる。

やはり!…この店、価格設定からして可笑しい事にすぐに気が付いた俺だが気が付かない振りをしてクジを引いていく。

だが一向に当たりに該当する番号のクジは見当たる事はなかった。

「お兄さん、此処のクジって本当に当たりはあるのか?」

「あ、あたぼうよ!…これを見てよ!馬鹿言っちゃいけないぜ兄ちゃん…」

俺が店員にそれとなく聞くと明らかに動揺を見せながら店に吊るしてある「安心して下さい。当たりは入っていますよ」的な信託状らしきものを見る様に促してきた。

がそんなものはただの紙切れにしか過ぎないのだ。

「お待たせ!」

「お?来たな!要件はカレンが伝えた通りだ」

「分かった!」

「じゃあ店員さん残っているクジを全て出して下さい!一緒に全部買いますから」

「何ィっ!?…」

流石に今日の俺の所持金では全ては買い切れないだろうと思い、春達に協力を仰いだ。

全てのクジを買い占めると言った俺達にチンピラ店員は信じられないといった表情で青冷めていた。

「どうした?」

「あ、アニキ!いやこの客の兄ちゃん達がウチにクレームをつけてきやがってですね…」

「ほう…」

「…」

親玉の店長らしきオッサンが出てきて店員に訳を尋ねて聞いた瞬間俺を睨みつけてきた。

「おうおう、あんちゃん達よぉしょうもないやり方すんなや!」

「はあ…」

続けてスキンヘッドのハゲたオッサンも出てきて此方を脅した口調でそう阿呆な言い分を言ってきた。

これはもう確定的だな。

 

Side春季

イチカ兄さんに呼ばれた俺は指定の露店に辿り着くと一目見て分かった。

このクジ引き屋は明らかな法律違反をしている露店だという事が。

そして景品の中にあるぬいぐるみは…俺と音六との記憶を繋いでくれたのと同じメーカーから出ているものだ。

それをあんな不届きな輩に利用されるなんて我慢ならない。

ん?あの店長らしきオッサンとスキンヘッドオッサンが着ている服のロゴは!…不味い!

「イチカ兄さん急いで展開を!」

「むっ!?…」

パーン!と銃声が辺りに鳴り響き周囲から悲鳴が聞こえてくる。

だが…

「なんだと!?…」

「危ないなおい!」

俺が急いでイチカ兄さんに武装を展開する様に促していた為に無事だった。

「おいおい…いくらなんでも祭りに拳銃を持ち込んでくるのは流石にどうかと思うぜ?なあ、「山夏至組」のヤクザさん達よ…」

見覚えのあるロゴのおかげで彼等の正体に気付いていた俺は暴露する。

「な、何者なんだ貴様等は!何故同じ男である貴様達がISを動かせている!?」

「おいおい勉強不足だぜオッサン」

「あ!?…こ、コイツ等確か世界初の男性IS操縦者の内の二人ですよ!」

「な、何ィッ!?」

チンピラ店員が俺達の正体に気が付き告げると親玉の組長達は驚く。

「やはりこの店のクジは外れしかないようだね…」

「な、何を根拠にそんな事を!…」

「アンタ等が意識をこっちに集中してくれていたおかげで残っていたクジ袋を全て調べてみたが一枚も当たりのクジは入っていなかったぜ?これは明らかな詐欺行為だろ?」

「!?い、いつの間に!?…」

チンピラ店員が握っていたクジの袋がいつの間にかイチカ兄さんの手にあり彼等は驚く。

「ああ、そうだ。

なけなしのお金を工面して楽しむ筈の幼い純粋な子供達から搾取して恥じはないのか?アンタ達は!」

「そ、そうだそうだ!」

俺の怒りに同調するかの様に周囲の客達も口々にオッサン達に向かって怒号を放っていた。

 

Sideイチカ

「…な、何がブリュンヒルデの弟だ…何が男性IS操縦者だ!

よくも山夏至組を舐めた真似をしおってえー!」

「むっ!?不味いぞ!…」

手口と身分を明らかにされてそれでもまだ懲りずに銃を手に取るオッサン。

ヤバイ!アイツ、もう感情の制御が効かなくなってやがる!

このままでは野次馬している他の客達に被害が及びかねない。

「大丈夫だ兄さん…もう応援はすぐそこまで来ている!」

「あ、そうか!」

「とう!○イダーキィィック!!」

「ぶべらあっ!?……」

「あ!?アニキィー!?」

春がもう助っ人を呼んでいたようだ。

オッサンに勢い良く本家並の○イダーキックを喰らわすタイセイさんが駆け付けてきてくれたのだ。

「へへん決まったぜ!…此処にも山夏至組の詐欺露店組が入り込んじまっていたようだな…日本のサツはこの辺しっかりしやがれってんだよったく…」

「お父さん…ちょっとやり過ぎ…」

「んあ?…」

いきなり現れたタイセイさんに他の者達は驚き、当人はやり過ぎだとセラフィーノにたしなめられていた。

「あ…アニキの敵ィー!」

「つくずく引き際ってモンを弁えない奴等だな…甘いんだよ!おらよお!」

「はあっ!」

「援護します!鳳流奥義、鳳凰烈突破!ひょおー!」

「ギャアアアー!?……」

「安心しろ…峰打ちだ」

ゾロゾロと敵を討とうと出てきたチンピラ達であったが相手が悪過ぎた。

見事にタイセイさんとレキナさん、そして春の援護により完膚無きまでに叩きのめされていた。

その後、通報を受け付近でパトロールをしていて駆け付けた私服の警官によってあえなく彼等は御用となった。

「それにしてもタイセイさん達も又日本に来ていたんですね」

「ああ、それなんだがな…」

「あ!おーい、イチカ君達大丈夫だったー?」

「何か物凄い音が聞こえてきたんだけど…」

向こうから先程の銃声を聞きつけて鈴達がやってくる。

刀奈会長だけ平気な顔でいる事からすぐに俺は察した。

「テヘペロ!・w・

でも助かったわタイセイさん。

あのヤクザ達はいつも入り込んで来てとても迷惑していたから」

「成程、この騒ぎは会長の仕業でもありましたか」

「二割ぐらいはイチカ君達のせいだと思うけどね…」

「はは…」

刀奈会長はここまで事を荒立てるとは予想外だったのかそう言った。

「イチカ坊、確かに最初にあの山夏至組の件の依頼は更識の嬢ちゃんだが他にも一緒にされちゃたまんねえといくつか親交のある真っ当な組にも依頼されてきたってワケよ!

ファミリーとしても世界規模で暗躍しつつあった山世夏至組の勢力は無視出来ねえ所まで拡大しつつあったんでな!そんじゃまだ依頼は完了してねえから引き続きいってくるぜ」

「皆様お騒がせしました」

そういってタイセイさん達は又旅立っていった。

「はい」

「え?あのコレは…」

「ゲーム類はちゃんとしたお店で買う方が良いから良く覚えておいてな」

「本当にイイの?お兄ちゃん…」

「その猫さんのぬいぐるみもあんな奴等の手元にあるよりも花南ちゃんの所にいた方が幸せだと思うよ」

「ありがとうお兄ちゃん!」

「あ、ありがとうございます!」

俺達はその直後あのヤクザ達から取り返したお金を俺が男の子に手渡し(せめてもの慈悲でぬいぐるみの一回分は払っておいた)、春がぬいぐるみを花南ちゃんに渡すと凄く喜んでくれた。

ドドーン!

「お!」

「いけない時間!」

花火が打ち上がる音がしたので俺達は慌てて集合場所に急ぎ楽しむのだった。

「「た~ま~や~あ~!」」

 

 

 

 

 

 




番外編は思いついたらやっていきます


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コラボEPⅠ「異・並行世界へ行ってみようPARTⅠ」

お待たせ致しましたよコラボ回!
第一世界はたけじんマンさんの「兜甲児のIS学園日記」です。



Sideイチカ

「旅行ですか?」

「うん!」

京都修学旅行から帰ってきてから二日後、束さんがそんな事を提案してきた。

「ですが…」

「イっくんの言いたい事は分かるよ?

結局は敵の予想外の襲撃で暮桜も奪われてしまった…絶対天敵の事だってある。

でも皆気を張り詰めているばかりじゃダメなんだよ!」

それ所ではないと言おうとした所にそう遮られる。

「それもそうですね…」

確かに皆、襲撃の対応ばかりで心も精神もすり減らしてしまっていることだろう。

ここらでリフレッシュも必要か。

「てな訳でタイくんと共同制作した世界渡航マシンでーす!」

「完全に束さんもタイセイさんも悪乗りで作りましたよねソレ!?」

「はははは!」

隣で春が頭を抱えていた。

「それじゃ早速、グループ分けしろよ。

皆が皆同じ様な世界に行ったって面白くないだろう?

安心しろもしもの事態の為に他のグループも緊急渡航出来るようシステム構築もしてあるからよ!」

「面白そうじゃない!」

で…

チームAが俺とカレン、エミリア、鈴、ミライさん、オルフレッド姉兄妹、フリッツ、レイティア、チームBが春、セラフィーノ、ラウラ、シャル、アヴリル、イツカ、クーリェ、アルフォンス、チームCが美月、箒、トウカ、リュート、アイラさん、ヨハネさん、ミドウ、コメット姉妹といった感じに別れた。

ハヤト達数名は迎撃の為に残るとのこと。

「それじゃあ、起動始めるよー!ポチっとなっと!」

束さんが装置を起動すると俺達の体は光に包まれていった。

「いってらっしゃい!」

「「いってきます!」」

束さん達に見送られ俺達はそれぞれ旅立った。

 

Side?

「毎度毎度とホントに懲りない連中だなお前等は!」

「知れた事を!我等ミケーネの野望果たされるその時迄!」

俺の名は兜 甲児。

訳あってISというパワードスーツのある異世界に転移した身である。

俺は宿敵のあしゅら男爵と一戦を交えていた。

「だったら何度でも潰してやるまでだ!

【ブレストファイヤー】!」

「甘いわ!そう何度も強化した機械獣にその様な攻撃は…」

俺は愛機のマジンガーZから超高熱の炎を打ち出す。

対するあしゅらの使役する機械獣は防御態勢を取ろうとする。

その時…

「むっ!?…」

「なっ!?…」

奴に届く筈だったブレストファイヤーは突如現れた何かに阻まれたのだ。

「何だ此奴!?…うわっ!?」

「むうっ!?」

その現れた正体不明の何かは俺達に攻撃を仕掛けてきた。

あしゅら達にも仕掛けている事から此奴は次元獣クラスの化物か!

「ブレストファイヤーが効いてねえ!?…なら【ルストハリケーン】!」

俺は酸の嵐を怪物に放つ。

だが…

「コレも効いてねえ!?…」

「グギャー!」

「しまっ!?…」

「ぐおっ!?…」

ルストハリケーンも効かず、隙を見せてしまった俺は怪物の砲撃を受けそうになる。

だがあしゅらの機械獣が俺を庇う様に立ち塞がったのだ。

「あしゅら!?お前…」

「か、勘違いするな兜甲児…貴様とマジンガーを倒すのはこの俺だ!…」

怪物の砲撃を受けて機械獣は爆発する。

きっとあしゅらは脱出し撤退している事だろう。

「予想外だったがピンチなのは変わらねえか…」

残る武器を使って怪物を倒そうとしたその時…

「奥義【片速円舞脚】!」

「!?」

どこからともなく攻撃が飛んできて怪物を倒したのだ。

アレはIS?だけどあの怪物に対抗出来るなんて!

くうううー!調べてみたいぜ。

「そこの人!大丈夫ですか?」

「あ、ああ、なんとかな」

この新たな出会いがもたらしたものとは…

 

その頃、Sideあしゅら

「フフフ…予想外の収穫であったがこれを使えば兜甲児らを圧倒できよう!」

あしゅら男爵は一体何を企んでいるのか?

 

 

 



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コラボEPⅡ「異・並行世界へ行ってみようPARTⅡ 打倒!ミケーネ軍団」

Side春季

「へえー…まさか並行世界の人がまた来るなんてな」

俺達Bチームが最初に足を踏み入れたのは異世界から来た人もいる世界だった。

最初に出会いこの世界に入り込んでしまったと思われる大蠅型サベージによる窮地から救った兜甲児さんはマジンガーZというISを使い、大昔に封印された悪神の復活と世界征服を企むミケーネという敵と日々戦い続けているらしい。

そのミケーネという組織…只では転ばない気がするな。

 

Side甲児

「サベージそれに絶対天敵…新たな人類の敵か…」

並行世界からやって来たという一夏の弟だという春季らの話を聞いた俺は新たな敵の存在に頭を抱えた。

あしゅらの奴、絶対あのサベージのデータをちゃっかり回収していやがるな。

今度会った時は苦戦は免れないかもしれないな…。

「そのIS…とても大切にされているね!…」

「そ、そうか」

えっと、音六ちゃんだっけか?この子はどうやらISコアの声を聴き取れるらしい。

雰囲気といいナデシコ組のルリちゃんを思い出すな。

ウー!

また来やがったのか!

「俺達も協力させて頂きますよ!」

「ああ、ありがとうな!」

 

Side春季

「来たか!兜甲児に異界の人間達よ!」

「俺達の事を知っているのか!…」

「やっぱりあの化物を解析していやがったのか!」

「左様!刮目して見るがいい!

新生機械獣のその強さをなあ!…」

「奥義【双速円舞脚】!」

「は?…」

「先手必勝!」

「え、ちょ!?…まてえ!?…」

「【ロケットパンチ】!」

「【白鳳千百撃】!ほおおおおー!」

俺達は有無を言わさず攻撃を繰り出し続ける。

「なななな!?…」

奴が何か言いたそうにしているが取り合わない。

「次で決めましょう!甲児さん!」

「ああ!その提案乗ったぜ!マジンパワー全開だ!【大車輪ロケットパンチ】!」

「音六合わせてくれ!【鳳凰打羽陣】!」

「うん!」

俺と音六、そして甲児さんの合体ハイパーロケットパンチが見事に決まり敵機は爆散した。

「な、なんだとおおー!?…くっ!?次は無いからな!」

「へんっ!一昨日来やがれってんだよ!」

俺達の無慈悲な攻撃にあしゅら男爵はそそくさと撤退していった。

その後…

「そうかもう次の世界に行くんだな…協力ありがとな!」

「ええ!」

俺達は甲児に別れを告げ、次なる世界に渡って行った。

「行っちまったか…まあこれも経験という事で!

いつかまた…再会出来る日が來るといいな!…

よし明日の準備だ!」

一人佇む甲児はそう呟き学園に戻っていくのだった。

 

 




あしゅらの敗因;春季達を舐めてかかってしまったこと
次回!春季達が次に向かった世界は元の世界よりも異常かつ混沌を極めた世界だった…。
次回は全て儚き名も無い遠き理想郷さん作の「ISx最弱無敗の神装機竜~家族を求める機竜使い」です。


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コラボEPⅢ「異・並行世界へ行ってみようPARTⅢ この世界は…」

Side春季

一度目に渡った並行世界で出会った兜甲児さん等と別れ、新たな世界に足を踏み入れたのだが…

「!?…」

「どうした音六!?」

この世界に足を踏み入れた途端に突然音六が震え出していたのだ。

「この世界のISコア達の苦しむ声が次々と聴こえてくるの!…それも尋常じゃない…!」

「何だと?…」

真逆…秋彦兄さんみたいな傍迷惑な存在でもいるのか?

「嫌、違うなコレは…アレを見てみろ」

「?…!!」

「はーくん?…」

イツカさんに言われ俺達は彼女が指指した方を見た。

それはあるニュース番組を映したモニターだった。

絶賛生放送中の様なのだが…

瞬間、俺は急いで音六の目と耳を塞いだ。

これは…とても音六に見せられる内容なんかじゃない!

「馬鹿な!?…あれはオルコットではないか!」

「なんであんな事を!?…」

ラウラとシャルも驚きを隠せなかった。

それもその筈だ…モニターに映っていたのは女性の尊厳を犯した罪だとして公開処刑をされそうになっている男子に笑いながらブルーティアーズのライフルの銃口を向けているオルコットさんの姿が映っていたのだから…。

この世界の彼女は女尊男卑に染まってしまっているままなのか!?…

恐らくは表向きはでっち上げの冤罪であろうが。

今は兎に角!…

「彼を助けに行こう!」

「だが…」

「目の前で理不尽に奪われそうになっている命を見捨てられるかよ!」

「!ああ、そう…だな!」

渋るラウラ達に俺は叫び急いで男子の救出に向かうのだった。

「ほう…我々の知らない勢力のお出ましか…ならば我々も協力しよう!

あの男を失うのは我々にとっても惜しいのでな!」

影で男が見ていたのに気が付かないまま。

 

Side?

「糞がっ!…」

「懺悔は出来ていまして?」

「だ、誰がすっかよ…」

「まあ!?」

俺は黒雪 月夜、任務の為にこの糞っタレな世界に一時帰ることになったが俺は元家族だった織斑の糞野郎が犯した罪の身代わりにされ女尊男卑のIS信奉至上主義者共に公開処刑という名の磯にされてしまった。

あの糞野郎の影響で更に毒された天才(自称笑)のイギリス御嬢様は相も変わらず俺にライフルの銃口を向け続けている。

糞…とてもじゃないが体が思うように動かねえ…主不甲斐無い奴ですみません…。

俺が目を閉じ死を覚悟したその時だった。

ザッ!

「!?」

「な、一体何事ですの!?…」

何かに俺の手足の枷が切り裂かれたのだ。

想定外の事態に信奉者共は慌てふためく。

『ワオーン!』

推奨戦闘BGM「Face of Fact RESOLUTIONVer♪」もしくは「Shuffle」

「い、犬!?…はっ!?真逆、今噂の「黒の騎士団」の手の者!?…」

「何をしている!早く追い出せ!」

「わ、分かっていますわ!…」

処刑場に乱入してきたのはアルフォンスの使役するシルバー・ブリッツだった。

イチカ達との鍛錬のおかげもあって動きがかなり洗練されたシルブリに翻弄され彼女達には全く捉える事が出来なかった。

そこへ更に

『ピヤー!』

「今度はコンドル!?こ、この!…キャア!?…」

「警備班は何をしてい…キャアア!?…」

今度はアヴリルのエアトスが何処からともなく飛来し、場を搔き乱す。

「なんだ一体?…」

「『黒雪 月夜だな?話がある。

聞く気があるのならば指定の場所まで来い』」

「…」

俺は訳が分からないまま茫然としていると、謎の通信が入ってくる。

少し考えこのまま黙っている訳にはいかないと俺は隙を突いて走り出した。

「あ!?…」

天才様(笑)の茫然とする声を耳にしながら…

 

Side少し前の頃の警備班

「「キャアアー!?」」

「弱過ぎる!」

「『そんなものでは私達には届きませんよ~だ!』」

「煽らないでね」

ラウラの神なる怒りの鉄拳が警備班を阿鼻叫喚に染めていた。

そんな様子にシャルが頭を抱えていたとか

 

Side春季

「此処か!?…っていない?…」

厳重(俺達にとっては軽過ぎる)な警備を突破し会場の最奥に辿り着くと張り付けにされていた筈の男子の姿がなかった。

間に合わなかったのか?…いや待て…彼方のオルコットさん達は未だシルブリとエアトスの対応に追われている。

そんな余裕は持てない筈だ。

ならば騒ぎに乗じて自力で逃げ出せたのかもしれないな。

「男が何の用ですの!?」

シルブリとエアトスが帰還命令を受けて姿を消すと、今度は突如として現れた俺に敵意を向けてきた。

話し合いの余地は無しか…仕方無い!…

「こういう者だよ」

「そんな!?それはIS!まだ動かせる男が居ただなんて!?…」

悪いんだけど雷牙は純粋なISではないんだよな。

ちなみに雷砲血神ではなく俺の付喪紅炎装を今は展開している。

音六、お前が感じた悲しみは俺が全身全霊を以てぶつけてやる!

 

 

 

 

 

 



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コラボEPⅣ「異・並行世界へ行ってみようPARTⅣ 世界の歪」

この世界は長くても5~6話の予定。
*一部改変もあり


Side春季

「どうだ、これでもまだやるっていう?…」

「嘘ですわ!?こ、こんな事が!?…」

会場に潜入してこの世界のオルコットさん、その他の女尊男卑主義者達との戦闘で数分後、彼女のブルーティアーズのBTは全て残らず俺の拳とドラグーンのコンボに叩き落とされていた。

周囲の女尊男卑主義者も沈黙させている。

師匠ならば十数秒もかからないと思うがな。

オルコットさんにとって驚愕の現実を目の当たりにして心が折れた彼女は戦意を完全に喪失しうなだれていた。

「少しばかりやり過ぎたかな…でもな…」

あんな事がまかり通るなどあってはいけない。

うなだれたままのオルコットさんを放置し皆の所に戻ろうとすると

「ほう…腐っても国家代表候補であるオルコットをこうもいとも簡単に戦意喪失に追い込めるとはな」

「誰だあんた?」

仮面を付けた謎のマント男が現れた。

「我が名はゼロ!この腐りきった世界を変革する為結成された「黒の騎士団」のリーダーだ」

「…」

「処刑されそうになっていたあの男は我々が保護した。

引いてはお前達にも詳しい話が聞きたい。

是非共ついてきてはくれないだろうか?」

「…俺の一存だけじゃ決められない…だけど此方もこの世界の情報が欲しい!

何処に向かえば良い?」

「そうか、ならば此方から迎えを寄越すとしようか。

詳細は後程話すとしよう」

ゼロと名乗った男はそう提案してきて、俺は皆に相談した後渋々受け入れる事にした。

それから数十分後、彼等の手の者であろう人から迎えを寄越された。

俺が代表で彼方の拠点へと向かった。

~黒の騎士団拠点~

「ようこそ我々の拠点へ」

「無駄話はいいから本題に映ってくれ」

「…了解した」

俺はゼロからこの世界の詳しい情勢を聞いた。

それと処刑されそうになっていたあの黒雪という人物の本当の出自の事も…。

「まさかこの世界の千冬姉がそんな犯罪に手を染めていたなんてな…」

俺は大分ショックを受けた。

世界が違うとはいえここまで人は変わってしまうものなのだという事に。

 

Sideゼロ

「ふむサベージに絶対天敵か…よもや此処とは完全に情勢の違う世界から来たとは驚きだな…」

ギアスを使って聞き出す迄も無く彼、織斑春季は包み隠さずに彼方の話をした。

月夜はバレていないつもりであろうが彼の例やイギリス嬢を完封したあの強さを目にした以上信じる他ない。

よもやこの様な形で世界を変えられるかもしれない切り札がもう一つ出てくるとはな。

だが俺はこの男が簡単にはいかない事を思い知る事になる。

 

Side春季

「なあゼロ、アンタはISをどの様に捉えてる?」

「…本来は宇宙進出の為に生み出された物…だが…」

「そうだよな。

もし無暗にISコア迄をも破壊しようというのなら俺は…俺達はアンタ等の敵になるからな!」

「…善処しよう」

俺がゼロにISの真意について問うと予想通りの返答があり、俺達とISコア人格の少女達の意思をはっきりと伝えた。

彼は半ば驚いた顔をしていたが少し思案した後、そう言った。

その後、俺達はゼロの手回しによってこの世界のIS学園に一時通う事となった。

 

Sideゼロ

「産み出されたモノに罪は無いか…あの男予想以上の末恐ろしさだ…」

 



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コラボEPⅤ「異・並行世界へ行ってみようPARTⅤ 渦巻く悪意」

注;今迄以上にドギツイ描写有



Sideセシリア(I弱)

「なんて事ですの…」

中国の代表候補生に強姦を働いたとして女性の尊厳を踏み躙った大罪で極刑に処される筈であった黒雪月夜(真犯人には今の彼女では未だ至らず)を想定外の急襲で取り逃がし、更にはその襲撃者に一方的に有無を言わさぬ程の完膚無き迄の敗北寸前を強いられてしまった。

驚愕すべき事はその襲撃者が未確認の男性IS操縦者であったからだ。

それも部分展開の片腕だけにあそこまで叩きのめされたのだ。

自分は何処で間違えてしまったのであろうか。

英国政府に報告しようにも馬鹿正直に事を言える訳が無くセシリアは一人自身に下されるであろう罰に震えていた。

『チカラガホシイカ?…』

「え?…」

『ナラバオデヲウケイレロ!』

「キャアァー!?…」

ふと何処からか不気味な声が聴こえたかと思うと黒い影がセシリアを襲った。

しばらくしてむくりと何事も無かったかのように彼女はふらりと外に出て行った。

その目は何処か虚ろだった。

 

Side春季

織斑を名乗る訳にはいかないので仕事で使っている偽名での自己紹介を終えた後、早々にこの世界の織斑一夏が話しかけてきた。

ゼロから得た事前情報だとどうやらこの一夏は逆らう奴がほぼいない事をいいことに女生徒を取っ替え引っ替え食い物にしているしくオマケに鈴を強姦しようとしたらしくその罪をあの黒雪という男子生徒に擦り付けたそうだ。

まるで果ての害兄を見ているようでとても不愉快極まりない。

もし師匠が耳にしたらすぐさま飛んできて鉄拳制裁所じゃない一撃を喰らわせるレベルの案件である。

案の定、音六にも言い寄ろうとしたが流石、そそくさと俺の後ろに隠れた。

何故か味方がほとんどいなかったが…ここまでとはな。

この世界でも変わらないのほほんさんと数名の生徒だけが救いだった。

で…音六の対応に逆切れを起こした馬鹿が俺達に模擬戦を持ち掛けてきた。

勿論、本来の力を使う迄もなく焔牙で打倒した。

弱過ぎるぜ。

周りが何故か卑怯だなんだのとうるさかったがすぐに黙る事になった。

何故なら…

「…」

「あれは…」

オルコットさんがようやく登校してきた。

そんなにすぐに変われるとは思っていないが…って何処か様子が可笑しくないか?

「はーくん!…」

「!この感覚は…」

音六が一早く察知し叫ぶ。

そんな馬鹿な!?奴はイチカ兄さん達に倒された筈だ!…なのに何故この世界のオルコットさんからあの嫌な感覚が!?…

「喰ワセロ…!」

オルコットさんの声で奴はそう言った…不味い!?

「え?……」

瞬間、彼女を心配して駆け寄ってきていた女生徒がオルコットさんの身体を使って変化させた刃で奴が貫いた。

「き…キャアァァー!?」

鮮血が辺りに飛び散り、人が殺される瞬間を目撃してしまった生徒達は叫び声を合図に一斉にパニックに陥ってしまい逃げ惑おうとする。

「モットオデニ!…」

狙った獲物を逃がさまいと触手を伸ばそうとする。

が…

ザンッ!ドシュ!

伸ばされた触手が斬り裂かれる。

「おい英国お嬢さまよ…アンタ一体何しでかしてやがんだ!」

「鉄華団案件のようだね…」

触手を斬ったのは黒雪月夜ともう一人の男性操縦者である三日月千春だった。

 

 



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コラボEPⅥ「異・並行世界へ行ってみようPARTⅥ 浄化と事後処理と」

Side春季

「『夏季斑 春季!今すぐにお前の扱っている機体を此方に引き渡せ!』」

「はああ!?」

「あンの駄教師!…」

何を言っているんだこの世界の駄姉は!?…恐らくあの害夏がやられたから言っているのだろうが今の状況を見て言っているのなら相当頭可笑しいぞ?!

第一、俺が使っていたのはISじゃなくて焔牙だ。

アレは俺の魂を昇華させたもので一瞬だって手放せる物じゃない。

まあ、例え雷牙でも易々と渡すつもりない。

あの害夏に渡すなんて事したら音六と六夢が絶対に嫌がるからな。

「『おい聞いているのか!?』」

未だ喚くことをやめない駄姉を完全無視し、どうしてかこの世界で復活しオルコットさんに憑り付いたホムンクルスへの対応だ。

カレンさん達の歌があればまだ対応が楽だったのだが、今から救援要請してもかなりの時間を要してしまう為俺達だけで状況を打開するしかない。

他にあるとすれば…あれしかないか…。

「黒雪君、三日月君少しの間だけで良い!…時間を稼いでくれ!

くれぐれも彼女に反撃はしないでくれ!」

「良くは分からないけれど任せて!」

「ちっ!…」

俺の提案に千春は快く了承、一方で月夜は相当不満そうな声を漏らす。

まあアレだったから進んで救おうとは思っていないのだろう。

だけど俺は信じる!

「行くぞ音六!」

「うん!…」

焔牙を仕舞い、千式雷牙を纏い音六と共に集中する。

 

Side月夜&千春

「なんでこんな面倒な奴の事を…」

「ぼやかない。

それにこれはきっとオルコットさんの意思じゃないね」

「そのぐらい分かっている!」

「はいはい」

実は春季とは違う代物であるがISではない「ヴィーヴル」という機体を駆る月夜、非人道的なシステム「阿頼耶識」と接続し運用する「雪桜」を駆る千春はホムンクルスに体を乗っ取られてしまったセシリアと相対していた。

対するセシリアは己の愛機であるブルーティアーズを纏う事無く尋常ではない動きでひたすら触手を伸ばして攻撃してきている。

明らかに普通の人間なら可能な動きではない事は明白である事は二人にも分かっていた。

「この触手だけは斬っても大丈夫みたいだね…」

「ああもう!うざってえな!…」

「二人共!此方の準備は整った!

下がってくれ!」

「「了解!」」

春季の合図を受けて丁度触手を捌き切った二人は後方へと下がった。

 

Side春季

「よし!いくぞ!」

「うん!…」

「「エナジーバースト!」

俺と音六はエナジーを開放、フィールドを展開した。

「『オルコットさん!』」

「『はっ!私は一体?…って貴方はあの時の!?…』」

「『はーくん!アイツが来る!…』」

「『マタモジャマヲスルカー!』」

「『ひっ!?…』」

空間内で囚われたオルコットさんを見つけ出し解放する。

それに気が付いたホムンクルスが襲い掛かってくるが彼女を解放出来た事で奴の力は弱まっている。

「『いい加減に此処からいなくなれえー!』」

俺は雷砲血神を構え弱体化したホムンクルスへ突き出す。

「『グ、グエエー!?……』」

ホムンクルスは断末魔を上げ今度こそ完全にその存在を消滅させた。

そして…

「理事長!即刻、夏季斑とセラフィーノ、いや彼等だけではない!

三日月や黒雪からも!」

オルコットさんの件で事後処理に呼ばれたはいいがまたも駄姉が空気の読めない発言をしたのだった。

 

 



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コラボEPⅦ「異・並行世界へいってみようPARTⅦ 偽りの最強と急襲 前編」

Side春季

「…」

一部を除いて沈黙が走る。

その一部とは先程から戯言を喚く駄姉と同調する信奉者達だ。

それよりもコイツ等は!…

「黙りなさい織斑教諭、それに他の教師諸君も!君らはまだそんな事を言っているのかね!

教師として最低限の事もまたもやしないでおいて!」

「!?」

俺が怒りを口にする前にこの世界の轡木理事長が怒号を上げた。

またもやって…前にもやらかした事あるのかよ…。

「で、ですが明らかに彼等は危険ですよ!?」

「はあー…」

まだ納得しないのか更に駄姉は喚き出す。

それに理事長は頭を抱え、胃の辺りも押さえていた。

「だったら1VS1の模擬戦で白黒つけろや!

異例だがな」

「ほう!という事ですが如何がですかな織斑教諭?」

同じような事を言われうんざり来たのか月夜がそう言ってくる。

理事長はそれだ!と言わんばかりに進言していた。

「それならば話が早いな!」

駄姉は何かを企んでいるような目でそれを受け入れる。

「分かりました。

また明日以降受けて立ちましょう!」

さてと備えるか。

 

~翌日の放課後~

「おい!どういうつもりだ夏季斑!何故セラフィーノが居る?

話が違うではないか!」

俺は音六と一緒にアリーナに踊り出る。

既にアリーナで待ち構えていた駄姉が叫ぶが全く説得力が皆無である。

「それは此方の台詞ですよ織斑教諭?

アリーナ周辺に取り巻きを待機させていますよね?

それぐらい分からないとでも思っていたんですかね?」

「何っ!?…」

俺が企みを看破すると駄姉は目に見えて狼狽していた。

「まあ彼女達をけしかけても別に構わないですよ?

だけどそれで俺達に勝てるだなんて思わない方が良いですよ?」

「ふざけるな!相手は二人だ、一斉にかかれ!」

駄姉は俺の挑発に見事に乗り一斉に俺達に攻撃を仕掛けてきた。

十分後、駄姉以外の俺達に仕掛けてきた取り巻き集団は全員ISを強制解除させられていた。

「なっ!?…」

その光景にありえないとばかりに驚愕する駄姉。

そしてその内の一人を叩き起こしてこう言った。

「貴様等、何故こうもたった二人相手になんて体たらくだ!」

「も、申し訳ありません!で、ですが何故か急に機体が不調をきたしてしまい…」

他の取り巻きも彼女の言った事に同意するかのように首を縦に振った。

「なんだと!?…おい貴様等、一体どんな卑怯な事をした?!」

「俺達は何も?…全ては慢心して相手を貶める事しか出来ない彼女達の自業自得の結果ですよ」

「そんな馬鹿な!?…」

ここで種明かししようか。

確かに駄姉の言う通りに間接的には一枚噛んでいる。

音六が戦闘中にエナジーを解放し、取り巻き達が扱っているISの人格コアと対話。

対話したその結果、普段から碌な扱い方しかされてこなくて不満を募らせていたコア人格達がこれを機に強制的に超最低限のシステムに引き落とし切り替えたのだ。

だからこそその引き落とされた超最低限システムに引っ張られた操縦者が本来の実力を発揮出来なくなり現在に至る。

まあ、実力も糞もコイツ等には全く以て皆無なんだけどな。

さてと後は駄姉一人だけ…そう思ったその時

ドゴン!

一向に現れる気配の無かった奴等がアリーナシールドを突き破って侵入してきた。

 

 

 



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コラボEPⅧ「異・並行世界へ行ってみようPARTⅧ 偽りの最強と急襲後編」

Side春季

ようやくお出ましって訳か、ノクターン級絶対天敵と大型サベージ!

「うおおおおー!」

「あ!?…」

「なっ!?…ぶべえ!?…」

恐らく禄でもない気持ちで飛び出してきたあの馬夏が零落百夜で絶対天敵に斬りかかっていく…がいとも簡単に返り討ちに遭い気絶した。

ISでも対抗出来る筈である絶対天敵にさえ負けるとかホントに天才(笑)だな。

「そこを退け!」

「おい馬鹿!?…待て!」

あの馬夏にしてこの駄姉ありか。

だがいくらこの世界の駄姉が実力(笑)があってもサベージには対抗出来ない。

「ふっ!…」

そうこう言っている内に駄姉が斬り裂いていく。

だが絶対天敵は沈黙してもサベージはそれだけで倒される程甘い相手などではないのだ。

「グアアー!」

「何っ!?…確実に急所を斬った筈だぞ!?…ぐはっ!?…」

驚愕する駄姉はサベージの反撃を喰らい壁に吹き飛ばされて無様に気絶した。

「仕方無い!

とっとと駆逐する!はああああー!」

俺は面倒過ぎる馬鹿姉弟達の行為に呆れ果てながらもエナジーを解放しサベージを一気に殲滅させた。

ン?事後処理?…もうこの世界にはこれ以上居られないと思った上、恐らく金輪際この世界には奴等は足を踏み入れないであろう。

そう思ったのはこの世界に奴等以上の何かを感じ取ったからだ。

処理は施しておいたし…だから説明した所で最早無意味の代物というものだ。

まあ、音六の対話のおかげでこれからIS人格コア達が頑張って世界を正常化…させてくれると良いな…。

「…良いのかな?…」

「ISコア達の願いが届かないならそれ迄。

まあ多少は変われる筈だよ。

だから気にしなくても良いさ…」

「そう?…」

音六としてもまだ納得いかない所みたいだがこれ以上は俺達が介入すべき件ではない。

俺は皆を呼び戻し転移ゲートを潜り抜けこの世界を後にした。

 

Side月夜

「消えた!?…」

俺と千春が救援に駆け付けた頃にはもう正体不明の化け物の姿も夏季斑の姿もどこにも見当たらなかった。

「真逆な…」

正体不明の化け物は恐らく奴等と同類…この出会いはこの世界に何をもたらしたのか?

どれだけ考えても全くといっていい程答えが出せる事はなかった。

 

Sideゼロ

「まさかISコアとの対話が可能だったとはな…織斑春季達がもたらしたものは予想以上の物だ!

もしも俺の予想している通りであれば女尊男卑主義者を叩くのがより確実な物となるかもしれぬな!」

ゼロはそう一人思案し呟くのだった。

この世界が変わっていくかは神のみぞ知る…。

 




予定より短め、これにて終わりです。
理想郷さんありがとうございます。
次は御褒美タイム!?


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コラボEPⅨ「異・並行世界へ行ってみようPARTⅨ 愛の世界でⅠ」

今回からは他ユーザー様とではなく既存の作品「恋愛至上都市の双騎士」とのコラボです!
さあ、御褒美タイムだ!
注:ここから先は苦い物絶必描写、ちょっぴり修羅場、後シャルロッ党の方はちょっと扱いがアレなので要注意!


Side春季

I弱の世界を後にした春季率いるBチームが次に足を踏み入れたのは…

「此処は!…」

「わあー!綺麗!」

其処は元の世界よりも海の広がる範囲が広い海上都市だった。

この様な覚えはないのできっとこの世界は恐らくISとは何ら関係の無い異世界かもしれない。

「皆!あそこを見ろ!」

「何?…」

ふとラウラが何かに気が付く。

その少し遠い地点には一部が煙を上げている城があった。

「大変だ!行ってみよう!」

俺達はすぐさまその城へと向かって行った。

 

Side?

「なんで毎度毎度こんな事になるんだよー!?」

「そんなの先輩が藍葉の話を最後まで聞かないで最大出力なんかで撃っちゃうからでしょうがー!」

「なんかほんとスマン…でもなんで「星霊輝装」が使えなかったんだ?…」

「さあ?…」

俺は黒峰 勇也 騎士だ。

後輩の蒼宮 藍葉と共に仕える国王にかなり無茶振りな任務をほぼ強制的に請け負わされ、予言にて復活の兆しがあるという魔王と魔族の討伐の未来の世界に送られたのだが…送られた先で最初に待っていたのが豪華客船の中で「二次元嫁の騎士団」とかいう訳の分からないテロリスト?集団に有無を言わさず襲われた。

過去の世界で使っていた武器が何故か使えず、代わりに蒼宮が何処かで拾ってきたのであろう「恋愛銃(ラブガン)」とかいうファンシーな武器で対抗した。

だけど撃ったソレがとんでもない威力で客船を貫通してその先の王城にも当たってしまったのだ。

ヤベエ、ヤベエよ…これでは俺達がテロリストみたいじゃないかよおおー!…

そして未来はとんでもない世界になっている事を思い知らされる。

うん…あンのクソ若竹ぇー!元の世界に帰ったら覚えておけよ!

俺は心の中で国王への不満を漏らしながら王城へ急行するのだった。

 

Side春季

「「…」」

何この世界?…俺達が城に辿り着いて思うのはこの一言に尽きた。

あ、ボヤ程度で怪我人はいなかったみたいだ。

「は、はわわ…」

「こ、こうも他人がやっているのを見せられるというのはなんだかとてもコーヒーが欲しくなる感じがするのは私の気のせいなのか?…」

「はーくん、皆見えないー…」

「ね、音六ちゃんは見ちゃダメ!」

この国…というより都市であるこの「水神島」の王を務める金剛 天音さんに案内され目にしたものは皆総出で音六の視界を塞ぐ、女性陣が酷く赤面する程の光景だった。

町の至る所に甘い空間を作り出しているカップルというカップルだらけの光景。

何?こういう世界なの此処って!?

「そこのお二方以外の皆様は異世界から来たとおっしゃいましたよね?

まずはこの世界に伝わる伝説についてお話致しましょうか」

「伝説って?」

「ええ、かつて世界は突然現れた魔族と魔王によって未曾有の危機に瀕しました。

頼みの綱であった星霊輝装の力の源である魔力が突然大気中から残らず消え去り、世界は終わる…そう誰もが諦めかけたその時でした。

一組の騎士が現れ、その者達は愛の力で魔族を打ち倒し見事世界を救ってくれたのです。

そんな騎士様達の御活躍を称え「双騎士(バカップル)伝説」として現在まで語り継がれています。

そして、双騎士様が示して下さった愛の力、通称『恋愛磁場(ラブパワー)』という常識を覆す画期的なエネルギーをとある研究機関が発見。

世界は恋愛至上となっていったのです!」

天音さんがそう鼻息を荒くして熱く語った。

音六を除く俺達は驚き、後から此処にやってきた一組の男女、男の方はげんなりしていて、蒼髪の少女の方は何故か凄く嬉しそうな表情をしていた。

もしかして!?…

「伝説の双騎士様、並びに異世界の皆様。

どうか再び復活せんとする魔王を打倒する為、どうかそのお力を借して頂けませんか!?」

 



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コラボEPⅩ「異・並行世界へ行ってみようPARTⅩ 愛の世界でⅡ」

Side春季

「「…」」

空気がなんだか凄く重い…その理由は

「なんかすまない…」

「ううんいいよ…分かってはいたことだし…」

俺達異世界組が発生させられる恋愛磁場生成数値の計測でのことだ。

恋愛のれの字も未だに理解出来ていない音六がそれを生み出せるのか不安があったが無事に磁場を発生させる事が出来た。

どうやら互いに想い合っているだけでも恋愛磁場の生成が可能みたいだ。

近衛部隊長である柊 華恋さんによるとそうらしい。

ちょっと曖昧な気もしなくもないが安心した。

そして…何故かシャルまでやってみたいと言い出した。

で全くの無反応…これには流石にシャルもションボリしてしまう。

お決まりの言葉しかかけてやれる事が出来ず俺は狼狽した。

そこに華恋さんが「ハーレム作っちゃえば良いじゃない!」とか言ってきた。

だけど正直シャルは只の女友達であり特別な異性としては意識して見ていないのだ。

箒や美月他の女性陣も同様だ。

だが更に華恋さんが「貴方、もしかして此処にいる子達以外に好きな異性いるでしょ?」とか聞いてきたのだ。

「ヴェッ!?」

「(;゚Д゚)!?!?」

つい俺は反応してしまい、シャルがビックリしていた。

「アララ~?その反応はアリなのねえ~!」

「(゚Д゚;)…」

「ちょちょちょ!?えええ!?ど、どういう事!?」

「シャル!?お、落ち着いて…」

「春季殿?…」

「え、えっと…」

ラウラにもジト目で見られてしまう。

勘の良いラウラの事だ…きっと俺が音六以外に好きな人に気付いているかもしれない。

本当に予想外だ…思わぬ暴露をされてしまい穴があったら入りたい気分に陥り頭を抱えた。

後日…俺のせいもあってシャルが心の隙間を突かれてしまい魔族の眷属にされかけたのだ。

伝説の双騎士の片割れである勇也さんの姉代わりで死んだとされていた神代 夕日さんが実は生きていて魔王の因子を埋められていた事も同時に判明し俺達は双騎士の二人と協力してなんとか撃退・浄化に成功した。

「苦しい戦いだったな…」

「ふにゃあー…」

「あーあれだ…凄く激苦いコーヒーでも口にしたい気分だ…」

「あー…」

「あ、私らにもくれ」

「なんだよう…」

「?」

魔王討伐戦後、音六はまだまだ恋が何なのか理解していなかったが、俺とイチャイチャ度は日に日に増してきていた。

ラウラにさりげなく茶々を入れられ俺は憤慨していた。

勇也さんにも同情される。

だが、俺はこの後更にとんでもない事態に巻き込まれる事になろうとはこの時は思いもよらなかった。

 

 




俺はシャルロッ党じゃない…


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コラボEPⅩⅠ「異・並行世界へ行ってみようPARTⅩⅠ 愛の世界でⅢ」

Side春季

「恋愛祭?」

「そう、今度ある年に一度、恋愛至上都市で大々的に行われるカップルによるカップルの為のイベントらしい。

各国選りすぐりのカップル対決など色々あるぞ。

だがここで一つ君達に警戒しておいてほしい事がある」

「何を?」

双騎士が仕えているという過去から自らもやって来た王、金剛 若竹さんが話す。

「世間で話題に挙がっているのだ…傍迷惑な「カップル殺し」というテロリストの存在がな…」

「カップル殺し…ですか?」

「此処数ヶ月でそのカップル殺しによって数十組のカップルが別れさせられているのだ…」

「おいおい!」

一瞬物騒な方かと思った俺と勇也さんだったが真逆の只のリア充潰しかよ!

「だがそれだけじゃない…カップル殺しに別れさせられたカップルは二度と恋愛磁場を生み出す事が出来なくなるという被害も報告されているのだ…」

「「!?」」

それは確かに警戒するな…。

まあ、俺と音六の仲はそう簡単に引き裂くなんて事は出来ない。

そう確信を持っていた俺だったが後々、この時ばかりは後悔することになる…。

事の始まりは恋愛祭二週間前に起きた。

とある客船が普通のテロリストに占拠され人質も獲られていた。

その対応に双騎士組も俺達も近衛兵として借り出され事に任る事になった。

テロリスト達を説得している途中、華恋さんが犯人の一人に男狩りの狼の目をして無茶苦茶な逆要求をし出した時は何事かと思ったが…テロリストが彼女のその奇怪な行動に気を取られていたおかげで無事に人質を解放。

いざ迎撃準備に出ようとした所に

「「あの、恋愛地場が必要なんですよね?だったら!…」」

「「ン?…ぐむむっ!?」」

「「!?!?」」

「…」

不意に人質の中にいた二人の黒髪美少女、勇也さんがストレートロングの、俺がツインテール爆乳の子に突然キスされたのだ。

当然俺達は驚き茫然とするしかない。

『恋愛磁場装填率:45(勇也)55%(春季)』

ピピッと恋愛磁場の生成率を示すシグナルが勇也さんの恋愛剣、俺が若竹さんに製作して貰っていた恋愛拳≪ラブガントレット≫に流れ出す。

ヤッベ…ついドキドキしていた。

六夢が「まーくん…節操無…」とか言ってきて、ラウラがジト目で俺を見てきて冷や汗が流れる。

「あの…私ら、貴方方に一目惚れしたみたいです!…」

「!?」

「「は、はああああああー!?」」

「おやおや~?」

ななな、なんですとお!?

突然、告白された俺達は茫然となり、音六と華恋さん(華恋さんに至ってはこの状況を完全に楽しんでいやがる)以外の女性陣も驚愕の声を上げたのであった。

 



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コラボEPⅩⅡ「異・並行世界へ行ってみようPARTⅩⅡ 愛の世界でⅣ」

Side春季

「白石 矢千夜です。

不束者ではございますがよろしくお願いしますね」

「「…(゚Д゚;)」」

何故こうなった?

無事に客船テロ事件は解決した。

だが俺と勇也さんの気が休まる事は無かった。

何故なら人質の中に居た美少女姉妹にいきなり交際を迫られたからである。

勇也さんが姉の白石 夜宵さんに、俺が妹の矢千夜にだ。

おかげで蒼宮さんも不機嫌になっている。

「…」

「春季君/殿…」

俺が矢千夜にキスされた所を思いっ切り音六達に目撃され音六は何処かいつもと様子が違うし、ラウラやシャルは俺をジト目で鋭い視線を向けてくる。

六夢に至っては全く反応が無い。

「ちょ、ちょっと矢千夜さん!?」

「矢千夜で良いですよ!

それにそんなに照れなくても良いんですよ~!」

焦る俺だったが矢千夜のグイグイくる強引っ振りにヤバイと思いつつも儚くも豆腐の様に崩れ去ってしまう。

だがそんな彼女の強引っ振りのおかげで音六との時間が取れる隙がどんどんと少なくなっていってしまっていた。

「「…」」

だがそんな俺と勇也さんを白石姉妹は冷たい眼差しで見ていた。

 

Side音六

「はーくん…」

はーくんが矢千夜ちゃんと一緒に居る事が多くなり(音六の勘違い)私はなんだか凄く寂しい気分に陥っていた。

「お姉ちゃん…」

「『彼も隅には置けないですねえ~』」

ウサちゃんに心配される。

リィの言っている事は良く分からないけど…。

「音六ちゃん…良い事教えてあげようか?」

「?」

シャルちゃんが私に耳打ちしてきてはーくんと出来る良い事を教えてくれた。

でもその時の彼女はどこか怒っていた様な気が…。

 

Side春季

「ああー…」

今も矢千夜強引さからは逃れられないでいたが、いい加減そろそろ音六成分が補給したくなってきた。

「…そんなにあの彼女さんの事の方が大事なんですかあー?」

矢千夜には悪気など微塵もないのかもしれないが絶対分かってやっている事ではあろう。

「そう思っているならいい加減にもう良いだろ…」

「あ、今度はあそこに行こう!」

「話聞けよ…」

それでも矢千夜は拘束を解いてはくれない。

ようやく解放された頃には既に陽は落ちていた。

~翌朝~

「!?」

目覚めると一瞬悪寒を感じた。

真逆、矢千夜がベッドにまで潜り込んできたのか!?

「…」

「…なんだ音六か…って!?」

朝目覚めると矢千夜ではなく音六が俺の腹の上に跨りながら覗き込んでいた。

とんでもない恰好で。

「その服は…」

「にゃ…」

音六が着ていたのは以前IS学園での学園祭で着ていたメイド服だ。

前回よりも更に胸の辺りの露出度が増した奴だった。

「…」

「にゃ…!」

俺は此処でようやく察した。

シャルのささやかな仕返しかこれええー!

「おはようです!春季さん…ってズルイ!私もー!」

「何やってやがりますか先輩ぃィ?…」

「「だああああー!」」

俺の絶叫とほぼ同時に隣の勇矢さんの部屋からも叫びが木霊した。

もしかしてあっちは逆のパターンかあああ!

 

 

 

 



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コラボEPⅩⅢ「異・並行世界へ行ってみようPARTⅩⅢ 愛の世界でⅤ」

ミラティヴでゲーム実況配信者デビューしたぞおおお!
更新怠るかもしれませんが…
詳しくはうちのTwiter→@chaosu1



Side春季

「悪いけどここらで死んで…?」

「…」

「やーちゃん…」

ある夜、俺は矢千夜に恋愛槍≪ラブ・ランス≫の切っ先を突き付けられていた。

俺…嫌、俺だけではなく矢千夜は音六にまで激しい憎しみをぶつけてきていた。

何故こうなったのかというと…。

~恋愛祭初日~

「みゅ…」

「ほらほら!春季さん向こうに行ってみましょ!」

「わわ!?…」

シャルのささやかな仕返しという名の入れ知恵によって更に大胆になった音六と対抗するように恋愛祭の色々な屋台デートに繰り出され振り回される俺。

「おお…」

「ちょっと!何処見ているのよ!」

周囲の他のカップルの男達も思わず振り向いて二度見してしまい相方に怒られてしまう程二人は可愛い。

「「…」」

更には何故か目立つバニーガールコスというとんでもない恰好をしている蒼宮さんとそれにたじろぐ勇也さん、負けじとアピールする夜宵さんのいちゃつく姿もあった。

そしてしばらくすると、他のハーレムカップリングを形成している国の代表さんにハーレム専用の恋愛祭競技に誘われたので出てみる事にした。

だけどその内容はある意味で嫌がらせみたいな内容だった。

第一競技は種問わずの恋愛模様採点会。

何故か音六とラウラは仲を拡大解釈されたのか一緒に出場させられていたがうん…これは誤解なんかじゃない!

なんだあの音六の嬉しそうな顔は!

ラウラが羨ましいぞ!

彼女達の仲睦まじさを見せられた審査員は皆「これちゅき!」とか「あ、仰げば尊死ィー!」など語幣力を失っていた。

というか後者は相川さんいないか!?

俺の気のせいだよな!?

そして

「…これ絶対アカン奴じゃねえか!」

「?…」

第2競技は思い切り恋人達のプライバシーを賭けたクイズ大会という名の暴露大会でした。

俺と勇也さんは頭を抱えていた。

競技開始前のアンケートはこれの為かあああー!

「『第二問!』」

「…ああもう!」

俺の叫び虚しくクイズという名の拷問は続く。

「『では、織斑君に問題です。

白石さん、セラフィーノさんのお二人がそれぞれ今穿いている下着の柄は何色でしょうか?!』」

「は?…」

ちょっと待てやああー!

思わずそう大絶叫したくなった俺はきっと悪くない。

だが俺も健全な男です…呆気無く儚くも前屈みの姿勢にならざるを得ないのだよ…!(迫真)

しかも今日に限って俺は音六の着替えを手伝えていない!

いつもならばアレかアレの筈だが…

お助けシステムの「確認」を行使した。

矢千夜が「ふえ!?」と素っ頓狂な声を上げていたが…二人にたくし上げをお願いし確認させて貰って見えたのは…本来なら見える筈の布生地ではなく丸見えな肌色でした…って…はい?…

「ぶっはああー!?」

「はーくん!?…」

「はうう!…」

俺は盛大に鼻血を吹いて倒れる。

羞恥心0の音六は兎も角としてなんで矢千夜までハイテナーイんでしょうか?…

「ご、誤解しないで!きょ、今日はたまたま男の子に見せられるような可愛い下着が無かっただけなんだから!」

そうだとしてもこれは刺激が強過ぎる!…あ、走馬燈が見えてきた…。

「先輩の馬鹿ー!」

「お、落ち着けってえええ!」

勇也さんの方も大変そうだな…。

かくしてなんともカオスな恋愛祭初日が終わった。

 

その夜、Side矢千夜

「…」

春季さん達と一旦別れて私は定時報告をするために適当にぶらつくフリをしていた。

「いつまで続けるつもりなのかしらね、こんな茶番を?」

「姉さんこそ…」

黒峰さんとのダブルデートから戻ってきた夜宵姉さんにそう言われる。

「!…」

私も思わず言い返すと姉さんは図星を突かれたかのような顔をする。

「…まあ、私達の計画に変更はありません」

「そうね…」

そう…私達の真の目的は只一つ…

 



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コラボEPⅩⅣ「異・並行世界へ行ってみようPARTⅩⅣ 愛の世界でⅥ」

ミラティヴ配信が楽しいぞおー!
それより読者総員、コーヒーと戦闘(背景)BGM用意ィー!
推奨BGM
・YOURTHEONE
・ISAYYES
・Trust In You
・Day To Story




Side春季

恋愛祭二日目の朝、昨日の事をうっかり思い出してしまった俺はあまりよく眠れていなかった。

「ン?…」

「すぅ…」

「ふみゅー…」

なんだ音六と矢千夜か。

「…」

俺は他に誰もいないことを確認し手をそっと伸ばそうとする。

「うう…行かないで…」

「!」

男の性で矢千夜のスカートを捲ろうとすると彼女は薄ら涙を流しそう呟いた。

どういう事だ?

そう思っている内にそしてゴロンと寝返りを打った彼女のスカートが反動で捲れ上がりまたもや見えてしまった。

言わずもがな綺麗な肌色が。

「…///~」

その後少しの罪悪感は感じ、疑問は置いてそっと離れて日課に精を出した。

~数時間後~

「装填率が下がってきている?」

「そうみたいね。

貴方達はまだ大丈夫なようだけど双騎士組は深刻みたいなのよ」

「…」

いやどっちも素直じゃないからじゃないかな?

「それもあるけど他にも原因があるかおもしれないわ」

「もしや…」

「ええ、白石姉妹には気を付けた方が良いわね」

「…」

矢千夜、君は…

その夜、俺と音六は矢千夜に牙を向けられていた。

「お前達が噂のカップル殺しなのか…どうしてなんだ?…」

「…」

恋愛槍を向け続ける矢千夜はその目に涙を浮かべながらも何も答えようとはしてくれない。

「涙浮かべながら震えた手で殺すなんて言われても怖くないぜ、矢千夜?

過去に何かあったんだろう?」

「…やっぱり分かっちゃうんだ…でも今更もう後戻りなんて出来ないの!」

俺の問いにようやくそう答えるも彼女は手を再び動かし槍を突き出してくる。

「その力!…」

矢千夜一人で使えている事を考えると若竹さんが言っていた違法改造された恋愛武装か!

「音六!」

「うん、やーちゃんを止めてみせる!…」

俺達はそれぞれの恋愛武装を取り出そうとする。

が…

『Eloer、権限が存在しません』

「なっ!?…」

「そこ!」

「だけど!」

何故か武装を展開出来ず、慌てて素手で矢千夜の槍を受け止める。

「どうやら姉さん達が水神島のシステムを掌握したようね…」

「何っ!?」

達…という事は白石姉妹だけではない魔族側に加担している何者かがこの世界全てを狙っているという事か!

その何者かにこの島そのものを支えるシステムを掌握され権限を書き換えられたという事になる。

どおりで展開不可能に陥った訳だ。

という事は彼女達は恐らく…

「矢千夜…いや君だけじゃない、君達は恋愛至上都市という世界のシステムそのものに憎悪を抱いているのか!」

「そうよ!悪い?私の最愛の人を奪ったこの世界を絶対に許さないわ!」

そう矢千夜は叫んで語り出す。

 

Side矢千夜(三年前)

私達姉妹には幼馴染の兄弟がいた。

姉さんは兄の方(名前は思い出したくない)、私は弟の方であった拓瑠を好きになり互いに惹かれ合った。

ようやく勇気を出して彼と結ばれこれからも幸せな日々がずっと続くと思っていたある日の事だった。

「何よコレ…」

「やっぱり矢千夜の方にも送ってきていやがったのか…」

私達はカップルとして恋愛磁場の相性があまり良くないらしく政府から代わりの相性の良い見合い相手を紹介するという手紙が届けられた。

「だけど安心してくれ矢千夜。

僕もお前以外の女性なんてお断りだ!」

「た、たっくん、あ、ありがとう///…」

当然、私達はそんな事を受け入れられず政府からの手紙を破り捨て抱き合った。

だけどそれから数日後、拓瑠は殺された…他でもない夜宵姉さんが愛していた彼の兄に…恋愛階級≪ラブランク≫だけに目が眩んで姉さんを簡単に裏切るような人物だったからだ。

だからきっと拓瑠の見合い相手をも寝取ろうとしていたのだろうとそう考えた私は彼を捕まえて聞き出したらあっさりと白状したからだ。

こんな奴に姉さんと拓瑠は…怒りを覚えた私はこの証言を近衛兵に言おうとした所を彼の親類の叔父に妨害された。

どうやらあの屑から話を聞いていてそれに乗っかり妨害してきたようだ。

挙句、未だ盲目的に屑を愛していた姉さんが後天的に覚醒した「魅了」の力を使ったせいで拓瑠の死の真実が闇に葬られてしまった。

「復讐したいか?この世界に」

「…」

姉さんの力を増幅したという組織の手を私も取ってしまった。

所持していた恋愛武装もシステムを弄ってもらった私と姉さんは彼等に言われるままにカップルを別れさせ何時の間にかカップル殺しなんて異名で呼ばれることになった。

 

Side春季

「そんな事が…」

「やーちゃん…」

矢千夜の語った事は重大だった。

それと同時にどっかで同じような事が…ああ、思い出した。

糞兄貴と箒の関係性だ。

まあ、それは今どうでも良い。

いくらなんでも階級の為に恋愛するのは間違っているだろ。

そんな裏切りをされたというのに夜宵さんは盲目の過去を断ち切れず、それで妹まで傷付けてしまっているのでは本末転倒でしかない。

「今にして思えば軽薄だったとは思っているわ…だから!…」

「おっと!」

俺はしばらく使っていなかったこの世界じゃ本来必要の無い機体を呼び出し矢千夜の攻撃を防ぐ。

「な、何!?…」

「だけれど俺にも退く訳にはいかない理由がある!」

「キャア!?」

雷砲血神で矢千夜の槍を弾き飛ばす。

だが彼女は隠し持っていたもう一つの恋愛槍を取り出し攻撃してくる。

「それってその子の為?」

「それもある。

だけれど矢千夜、それは君に対しても同じなんだ!」

「!?嘘…」

「嘘じゃない!俺が君のことを嫌いだと一度でも言ったか?

昔の男を完全に忘れろなんて事は言わない。

だけど約束する!俺が全力で愛してやるからよ!」

「!嘘よ嘘よ嘘よ…」

「音六!」

「大丈夫!…」

俺の大告白に大分動揺する矢千夜だったが、それでも攻撃の手を緩めずに今度は音六に狙いを変えてきた。

頼むぞ音六…お前もあの子に想いをぶつけてやれ!

 

Side音六

「アンタはそれで良いの?!

私が横から彼を独り占めして掻っ攫ってしまっても?!」

私に狙いを変えてきたやーちゃん。

付喪紅炎装で槍を掴み防ぎながら私も叫ぶ。

「確かにしばらく一緒にいれなくて寂しいと感じた事はあるけどはーくんは絶対に離れていかない!…

それにやーちゃんがそう思っているとういうことははーくんを信じられている筈だよね?…」

「!?…だからって貴方なんかに私の何が分かるっていうのよ!」

「分かるよ…はーくんは一度記憶を失った事があるの…」

「!?」

私はやーちゃんとの攻防を繰り広げながら福音事件の時にはーくんの身に起きた出来事を彼女に話した。

「そんな事って…」

話を聞いていたやーちゃんは攻撃の手を止め愕然とした表情になっていた。

これで大丈夫なのかな?…そう思った私も武装を引っ込めた。

 

Side矢千夜

「あははは…私一体何をやっていたんだろ…」

セラフィーノさんから驚くべき話をされ、聞いていて嫌応にも自分の行為との差を思い知らされた私は力無く槍を落とした。

普通ならば例え一時的であったとしても復讐に走っても可笑しくない私と類似する状況だ。

でも彼女はずっと信じる事を諦めなかった。

対して私はどうだ…復讐する事ばかりに頭がいって死んだ拓瑠の気持ちも考えずに只の八つ当たりでしかない行為に走ってしまっていた…。

「なんて馬鹿だったんだろ私…」

「そう思えているならまたこれから変えてゆけば良いさ」

「そうだよ…」

そう項垂れるばかりであった私の手を彼等は優しく掴んでくれた。

「!」

え?…た、拓瑠!?…ほんの一瞬だけ春季さんに彼の姿が重なって見えた気がした。

「うわあああーん!」

「わわっ!?」

そんな錯覚を感じた私は我慢の限界を迎え豪快に泣き出してしまっていた。

 

Side春季

「落ち着いた?」

「う、うん…」

泣き出してしまった矢千夜をなんとか落ち着かせた俺は王城を見据える。

後は早いとここの騒ぎを引き起こしている夜宵さんを説得し、裏で糸を引いている馬鹿達を止めに行かないとな!

 

 

 



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コラボEPⅩⅤ「異・並行世界へ行ってみようPARTⅩⅤ 愛の世界でⅦ」

読者総員、またまたコーヒーと戦闘BGM用意だぁアァー!



Side春季

「大丈夫ですか?!」

どうにか必死の攻防で矢千夜を説得した俺達は急いで王城へと向かい正規の近衛兵部隊と合流し現況を確認する。

近衛兵の数人が矢千夜を見て敵意を見せてきたが俺のフォローでなんとか場を取り保つ。

「な、なんとかな…今は柊隊長が敵を抑えてくれているおかげで此方の被害はあまり無いからな」

華恋さんってそんな武闘派だったかな?…

「ですが結局は早い所敵に掌握されてしまったシステムを取り戻さねばなりません…」

「王女様!御無事で!」

避難していた天音さんがそう言う。

「策があるんですね?」

「はい、現在お父様が急ピッチで逆ハッキングをしてシステムの奪還・復旧に取り掛かってはいます。

それまでの防衛が持つか…」

いくら華恋さんの腕っ節が強いといっても限界はあるよな。

「勇也さん達は?」

「お二人なら夜宵さんの説得にコントロールルームに」

やはり既に向かっていたか。

「なら俺達も向かいます。

防衛には残りのメンバーで対処出来る筈ですので」

「あ、ありがとうございます!此方です!」

シャル達に城の防衛を頼み、俺達は天最さんに最奥地下のシステムコントロールルームへと案内され、急行した。

そこで見たものは…

~王城最奥地下「巫顕機巧≪スレイヴシステム≫」コントロールルーム~

「くううっ!?…」

「勇也さん!?何やってんだよ!?」

なんと勇也さんが虚ろな目で夜宵さんの命令に従って蒼宮さんを攻撃していた。

俺は早急に蒼宮さんの援護に入ろうとするが…

「大丈夫…」

音六に止めらそう言われる。

彼女がこう言うなら何かあるな。

それはすぐに理解出来た。

「さっさとトドメを刺しなさい!」

夜宵さんが更なる命令を勇也さんに下そうと彼に近付いたその瞬間がその時だった。

「キャア!?」

勇也さんは夜宵さんに振り向き剣激を仕掛け彼女のその凶悪な胸元にかけてあった黒いペンダントを破壊した。

急な攻撃に慌てるが対応し切れなかった彼女は驚いていた。

「な、なんで!?…完璧にあんたを魅了出来た筈よ!?」

「先輩!」

「俺はな…体を弄り回されて対魔効力が常人より高いんだ。

だからその程度の魔力では効かないのさ!」

「だから敢えて従った振りをしていたというの!?…」

「ああ、その破壊したペンダントがお前の魔力の供給源なんだろ」

「くっ!?…だけどまだ手は!…」

勇也さんのネタ晴らしに焦る夜宵さんだったがまだ隠し持っている手があるのかスカートに手を伸ばす。

「夜宵姉さん!」

「矢千夜あんたも私を裏切ったのね!?」

「話を聞いて下さい!」

「五月蠅い!」

矢千夜の必死な説得虚しく夜宵さんは予備に所持していたであろう黒ペンダントを再度首にかけた。

「まだこんな所で私の復讐は!…」

そう叫びながら再び臨戦態勢に入ろうとする彼女。

「仕方無い…もう一度彼女を止めよう!」

最終手段に出るしかなくなり俺達も構えた瞬間だった。

PiPi!華恋さんからこんな通信が入る。

『「朗報よ皆!たった今、若竹王がシステムの奪還に成功したわ!』」

「!」

同じく通信を聞いた他の近衛兵達も一斉にコントロールルームに集結し夜宵さんを包囲する。

「犬が!五月蠅いのよ!」

「うわああー!?」

だが夜宵さんの放った魔力に吹き飛ばされてしまう。

「嘘!?今ので磁場の残量が!…」

「なら!此処の皆さん全員でイチャイチャしてちゃっちゃと世界を救っちゃいましょう!」

「ああ!そうだな!」

魔力との抵抗で減ってしまった恋愛地場だがシステムを奪還出来た今なら手段はある。

蒼宮さんの提案・合図を皮切りに皆一斉にそれぞれの恋人達とイチャイチャしだしていく。

「音六、矢千夜…」

「みなまで言わなくても良いですよ…春季さん、いえ…春君!」

「ふみゅ!…」

俺は音六と矢千夜と見つめ合いながらそっと彼女達と手を握り合う。

そして…

「俺はぁー!二人の事が大っ好きだあー!」

俺は二人に向かって盛大に愛を叫び響かせた。

推奨戦闘BGM(SideAll)「君の神話~アクエリオン第二章」

(Side音六&矢千夜)「Bright Way」

 

「ん…」

「ふみゅー…」

むちゅ…

俺は音六と矢千夜を抱き寄せて二人変わりばんこに唇を重ねた。

普通よりも長くより深く…いわゆるディープキスだ。

「私も春君の事が大好きです!」

「私も…!はーくんずっと一緒に居て欲しい!…」

「ふおおおおおー!」

「せ、先輩が惚れろって言ってくれたぁー!」

『恋愛磁場装填率:100%!LimitBreak!!』

二人の返白を受けて俺も奮い立つ。

一方の双騎士ペアも同時に限界突破を果たしていた。

 

Side音六

「暖かい…これが恋で愛!…はーくんを好きなんだって気持ちなんだ!…」

シャルちゃんに教えて貰った事だけどはーくんと二度目にしたキスはとっても心地良く気持ち良かった…。

なんかツクモが羨ましそうな顔をしながらハイパーセンサーにとある情報を提示してきた。

「コレって…あ!」

提示された情報を見て結構前にカレンちゃんに教えてもらった事とウサちゃんと一緒に観たあれを掛け合わせれば使えるかもしれないと思った私は付喪紅炎装を左手に展開し、胸から出した恋愛指輪≪ラブ・リング≫を右手の指に嵌めてラブリングと付喪紅炎装を近付け合わせて空へと掲げた。

「ちょ!?///…」

「?…」

神代さんと戦っていた時もそうだけどなんか可笑しい事したかな私?まあいいや

「愛の空よ、悪しき心を断ち切って!超恋愛発破、無限虹色天気雨!…」

七枚のカードビットがリングの力によって無数に増えて虹色に収束されたビームが夜宵さんの展開した何重物の魔力壁に振り注いで何枚か破壊した。

「今だよ!…」

 

Side矢千夜

「矢千夜、コレを!」

「!これは!…」

「今からはその方が良いだろ」

「うん!…」

音六さんの援護を受けて、駆け出そうとすると春君から正規品の恋愛槍、いや恋愛銃槍≪ラブガンランス≫を投げ渡される。

確かにこの島のシステムが奪還され、春君という新たに大切な人が出来た今、馬鹿姉の目を覚まさせるのには十分な筈だ。

「姉さん!」

「くっ!?…矢千夜ぉー!」

ラブガンランスの散弾をバラ巻きながら私は姉さんへと接近し説得する。

「アイツ…姉さんを振った後何をした思う?」

「何の事よ?!」

「アイツはね…実の弟で私が愛していた拓瑠の見合い相手にも目をつけてたのよ!」

「…それで一体何が言いたいのよ?」

「アイツは拓瑠の見合い予定だった相手をも狙う為に彼を殺したのよ!」

「嘘!?…彼がそんな事…」

「本当よ…心当たり無いなんて言えないでしょ?

なんならアイツにかけた魅了を解いて問いただしてみなさいよ」

「…そんな…」

私がアイツの本性と真実を告げると姉さんは動揺し、頭を抱えながら震えていた。

確かに事の切欠は政府の強要文だろう。

だけれど拓瑠や春君と違い、アイツが真に見ていたのは姉さんじゃなくてラブランクそのものでしかなかった。

「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁー!」

「やっぱりそんな簡単にはいかないみたいね…」

心当たりあるにも関わらず未だ盲目の恋心を抱いている姉さんは内に秘めていた残りの全魔力を暴走させてしまった。

急いで回避し下がると春君が私達に提案してくる。

「暴走してしまったようだな…」

「ええ…馬鹿姉が御迷惑を…」

「それよりだ、音六は俺と勇也さん達の攻撃に合わせてくれ!

矢千夜は俺と音六の攻撃と同時に恋愛銃槍を投擲。

彼女の暴走を止めよう!」

「ええ!」

「うん!…」

 

Side春季

俺は暴走し出した夜宵さんを止める為に音六達に指示を出す。

「「はああああああー!」」

そうこうしている内に双騎士ペアが攻撃を繰り出す。

「よし、いくぞ!恋愛拳最大稼働!」

俺は恋愛拳のリミッターを解放し技を繰り出す。

「【鳳亜流奥義 爆愛魂天翔拳】!!」

「無限虹色天気雨!…」

「今だ矢千夜!いけえー!」

「分かったわ!えいやっ!」

双騎士ペアの剣撃と自らこの世界で編み出す事が出来た俺の拳と音六の技、矢千夜の恋愛銃槍と重なり暴走している夜宵さんの胸のペンダントへ突き進んでいく。

そして見事に命中し、ペンダントは欠片一つ残らず消失した。

「夜宵!」

ペンダントで受け切れなかった恋愛磁場の余波で吹き飛ばされた夜宵さんを即座に飛び出した勇也さんがお姫様抱っこで受け止めた。

一気に魔力を暴走させていた事で彼女は気絶していたがしばらくすると目覚める。

「大丈夫ですか?」

「…私は間違っていたのかしら…愚かにもあの人の本性を見抜けずに妹まで知らず知らずの内に傷付けて…」

「…」

後は矢千夜と勇也さんに任せるしかないか。

後日、白石姉妹はカップル殺しの件で近衛兵に一時的拘束された。

だが彼女達を引き込んだ黒幕には既に逃げられてしまっていたのが惜しい。

無論俺と勇也さんも彼女達が早くに解放されるように協力を惜しまなかった。

夜宵さんの魅了にかけられていたカップル達は正気に戻り、彼女の元彼だった男は拓瑠さん殺しの件を夜宵さんに問い詰められ自白、逮捕された。

事件を隠蔽しようとしていた彼の叔父も近衛兵に拘束され、白石姉妹に強引なカップル解消を迫り、見合い相手方から献金を受け取っていた政府の人間も纏めて拘束・逮捕され裁かれた。

まあ、後者については俺の仕事でやった事だがな!

事件が終息して三週間後、俺達は奉仕事業から解放された矢千夜を連れて元の世界へ戻った。

あー、戻ったらあの子にも告白しよう!

 

 




真の御褒美タイムは別にやるべきか?…


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コラボEPⅩⅥ「異・並行世界へ行ってみようPARTⅩⅥ 逆遭遇」

今回はふぷっちょさんの「私と君とあの子の願い」とのコラボです。



Sideイチカ

「アレ?…」

「通れませんね…」

春やミドウ達を見送った後、遂に俺達も異世界や並行世界へ足を踏み入れようとしたその時だった。

装置が作り出したゲートをくぐろうとしたら何かに弾き出されたのだ。

「これは?…」

「いんや、装置の故障なんかじゃねえ…コイツは恐らく…」

「調べてみたけど転送ゲートを作り出す瞬間に何かの干渉を受けたみたい…」

「干渉?…」

タイセイさんと束さんの発言に俺は真逆と思い当たる。

他の世界にもセリヴィアの様な厄介な輩が存在していてもなんら可笑しくないか。

その何者かが此方に気付いてなんらかの干渉をしたに違いないな。

「詳しく解析にかけてみるからそれまで自由にしてていいよ」

「はあ…」

束さんにそう言われまたしばらく学園内で過ごす事となったのだがこの後に起きる出来事は予想だにしないものだった。

 

その頃、Side楯無

「ぐああ…」

「ちょっと!?君達大丈夫!?」

理事長から突然、アリーナ周辺にて重力異常が感知されたとの報告を受けた私がアリーナに行ってみると其処には酷く傷だらけの男女数人が倒れていた。

「え!?…」

そこに何人か見知った面子がいたからだ。

これはどういう事?…

私は疑問を抱きつつも急いで彼等を回収した。

 

Side?

「痛つつ…はっ!?…」

確か俺達はマーシエルの野郎に無茶苦茶ボロボロ派手にやられてそれで…って!

他の皆は無事なのか?

「一夏、皆無事か!?」

「ううーん…」

ほっ…大丈夫みたいだな。

「鈴も無事みたいだな…」

「まだ目覚めないみたいだけどね…」

鈴が一番酷く奴にやられちまっていたからな…それにしても一体誰が俺達の介抱を?…

 

数日後、Sideイチカ

「何?」

更識会長が傷だらけの人達を保護しその中に見知った面子がいるとの話を聞いた俺達は傷が回復するのを待ってその人達と面会する事になったのだが…

「…真逆並行世界の俺が女性でそんな厄介な輩がいるとはな…」

「俺も驚きだな…」

彼等、矢代 政弥率いる並行世界の女性の俺、鈴、束さん、箒には驚いた。

向こうも向こうで驚いていたが。

最も鈴はマーシエルという謎の人物に負わされ怪我の影響で未だに目覚めないらしいが…。

「とにかく、そのマーなんとかってヤベーイ奴がきたら非常に不味いことは分かった…もしもの時は早急にあいつ等を呼び戻すぜ」

「そうだね」

一緒に話を聞いていたこっちの束さんとタイセイさんの提案に乗るしか現状で出来る事は無いに等しかった。

 

「ほう…この世界はまあなんとも…」

学園の遥か上空で微笑を浮かべる男の姿があった。

 

 

 




後これは予定していたのですが此方の理解力不足により完全こちらの都合により「ストラトスギア」とのコラボは急遽取りやめにさせて頂きますのでご了承下さい。


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コラボEPⅩⅦ「異・並行世界へ行ってみようPARTⅩⅦ 異戦 前編」

Sideイチカ

「…」

どうしたものか…この世界に留まっている以上は絶対天敵やサベージとの戦いは避けられないし、並行世界からわざわざ此方の世界にやって来たであろうマーシエルという謎の男の存在もある。

十中八句、ソイツに装置が妨害されたのだろうか。

矢代達は奴の未知数の力に対抗策がない。

此方もそれは同じ、もしも同時に襲撃を喰らったら非常に不味いだろう。

そう思っていた矢先の事だった。

ビー!ビー!

「むっ!」

「俺達も協力させて貰うからな!」

「助かる!」

警報が鳴り響く。

俺達は現場へ急行した。

急襲してきたのは大蠅型が三体、その他多数、絶対天敵が多数だ。

「支援します!」

「気を付けろよ!」

「其方こそな!」

カレン達の歌の援護を受けて俺達は駆け出した。

「ハヤト、クロヴァン合わせてくれ!」

「おうよ!」

「ああ!」

「「残影斬・弐式」!!」

「おらよっと!」

俺とハヤトがダブル残影斬で雑魚を斬り捨て、クロヴァンが輪剣を投擲し大蠅型一体を貫いた。

 

 

Side政弥

「凄いな!…それにコイツ等が世界の敵か!相手に取って不足はないな!

フェンリル・ブレイブ!」

俺達はイチカ達の実力に関心し、この世界の敵と対面し即座にそれぞれの機体を展開、ドライブを発動する。

「エネルギーアーツ!其処だあー!」

「武神…はあっ!」

絶対天敵という敵はISと同じ様な適正を何故か持ち合わせているらしく案外楽に倒せた。

 

Side一夏

「私も負けてられない!…皆ライトメダルを!」

「お、サンキュー!」

並行世界の男の私の活躍を見て、自分にも負けていられないと奮い立ちドライブを発動する。

そして…粗方敵を討伐した所で事態は一変した。

「よお…」

「だ、誰!?…それに…黒い…白式!?…なんで!?…」

私達の前にドス黒いオーラと白式と酷似した機体を纏った男が現れたのだった。

 

Sideイチカ

「また性懲りも無くあのアホが!…その馬鹿に気を付けろ!あのブラックオーラに少しでも機体が触れられればISコアを奪われてしまうぞ!」

「なんだと!?」

「チッ!…」

糞彦がまたもや再び襲撃をかけやって来たのを見てうんざりすると同時に俺は矢代達に警告を促した。

馬鹿彦はネタ晴らしされて舌打ちしていたが。

俺は再び武装を構え直し馬鹿彦に斬りかかった。

 

Side政弥

「偉く厄介な奴だな!…」

この世界の男一夏からかつてこっちの世界に居た春也みたいな糞野郎のとんでもない特性を聞いて早目に片を付けるべきだろうとは考えていた。

だがそこで…

「私がやる!…」

「一夏?真逆!?…待つんだその力を…!」

「ううう!…」

ふと一夏があの糞野郎に激しい憎悪を覚えたのかあの禁断の力を使おうと俺の静止も聞かずに奴に向かって行ってしまった。

俺は慌てて一夏を援護しながら再度力を解放しない様に説得しようとしたが彼女の耳には入っていなかった。

 

Side一夏

「貴方はよくも!…うあああああー!」

男の私から目の前に現れた男の悪行を聞いた瞬間、私は怒りと悲しみに支配された。

ライトメダルの反存在となるダークメダルを取り出し、その力を解放する。

「カダソムB!」

「チイィッ!…」

私はメダルの力で手から【クリムゾンショット】を撃ち出し奴を追い詰める。

「これで逃がさない!カダソムA!」

即座にメダルを変更した私は奴を【ヴォイド・プリズナー】で完全包囲し迫った。

「コレでトドメを…!」

「はん!甘えんだよ!」

「なっ!?…キャアアア!?…」

「一夏!?…」

奴は私が張った包囲網を物ともせずに強引に突破し溜めていたブラックオーラを撃ち出そうとしていた。

私は慌てて機体を反らしたおかげでギリギリ機体には触れられずに済んだがそれでもその衝撃で吹き飛ばされてしまった。

それを見た政弥にキャッチされ事無きを得たが。

 

Sideイチカ

「チッ!…もうちょっとでアイツの言った通り並行世界の白式の力も手に入れられた筈なのによお…!」

「アイツ?…もしかしてマーシエルの事か!?」

「なんで教えなきゃなんないんだい?」

馬鹿彦はどうやらマーシエルに唆されたようだな…。

「いい加減にしろ!」

残影斬で奴に再び斬りかかるがブラックオーラに阻まれてしまう。

「そろそろ寄越せよ…!」

更にオーラを強め攻撃を放とうとしたその時、更に事態は動いた。

「手古摺っているようだね」

「あン?…」

「テメエ、マーシエルっ!…」

マーシエル…矢代達の最大の敵も姿を現したのだった。

 



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コラボEPⅩⅧ「異・並行世界へ行ってみようPARTⅩⅧ 異戦 中編」

Sideイチカ

「奴がマーシエル!…」

突如として空中にその姿を現らした大鎌を携えた謎の男…成程今迄に感じたことの無いとてつもないプレッシャーを感じるな…。

「折角教えてあげたというのに彼等如きにここまで手古摺るとはね」

「これから挽回すんだよ!」

ソイツに教えたのがそもそもの間違いなんですが…完全に此方を見下してきているな。

「一体何が目的だ?」

「知れた事よ。

愚かな人類共と世界をこの創造主たる我等が導く!」

「下らないな!此方から願い下げだ!」

俺は残影斬で奴に斬りかかる。

「フッ…全く野蛮だね。

【連閃斬】」

「何っ!…ぐああああー!?」

「イチカさん!?」

残影斬よりも素早い攻撃で思わぬ反撃を喰らってしまい俺は傷だらけになる。

「ははは!ざまあないぜ!

なら後はこれでも喰らいな!」

「チィッ!?…これは!?…」

馬鹿彦が自分の手柄みたいに高笑いしながら無数のビームを撃ち出してきた。

予想外の攻撃と先程受けた傷のせいで俺は反応が遅れNバリアを張って対応するが突き抜けてきやがった。

「があああ!?…」

「イチカー!

それに今のは銀の福音の【銀の鐘】!?アンタ真逆!?…」

此方の鈴が俺にかけより驚愕し叫ぶ。

「あァン?ああ、ナターシャさんならコアを奪った後丹念にこの俺が盛大に犯してヒイヒイ言わせて種付けしてやったぜえ!

ハッハー!流石俺が惚れた女だ、凄ぇイイ体してたなあ~!」

すると馬鹿彦は皆が予想していたものよりもとんでもない事を言い放った。

「秋彦…アンタって奴はー!

このお粗末で最低最悪男!」

「お前に用は無えんだよこの貧相が!」

「きゃあ!?」

激高した鈴が馬鹿彦に青龍刀で斬りかかるが暴言とと共に反撃を喰らい吹き飛ばされてしまう。

「ぐっ…糞っ!…」

「やはり奴には勝てないのか?!…」

それと同時に矢代達もマーシエルの攻撃を喰らい満身創痍になっていた。

「ギャオオオー!」

また出現したサベージがマーシエルに攻撃を仕掛ける。

「全く、無作為に仕掛けてくる輩は面倒だね。

それに…君達は気が付いているかな?」

「何の話だ?…」

マーシエルは物ともせずに反撃しサベージを吹き飛ばしながらそう言ってくる。

「一つ話をしようか。

確かサベージ…とかいったかな?

あれらは元々生物兵器として誕生たといっても過言ではない代物だという事に。

絶対天敵に関しては我等にも理解出来ぬが…」

「な、に!?…」

俺達は奴の言った事が一瞬理解出来なかった。

サベージは宇宙生命体で奴等を捕獲してヴィタりーやギリウスが人工的に作った筈…真逆!?…

「では、そろそろ終わらせるとしようか」

「イーヤッハアァー!」

「「クッ!?…」」

俺が思考する間もなく奴等は攻撃を仕掛けてこようとする。

その瞬間だった。

「【付喪光炎陣】!…」

「せやあっ!」

「【ドラゴネル・エアブレス】!」

「【カマイタチ】!」

「む!」

「何ィ!?…ぎゃあああ!?」

何処からともなく眩い閃光を纏う炎と桃色の槍、龍を具現化したかの様な斬撃、無数のカマイタチがマーシエル達を襲った。

槍はマーシエルによって叩き落とされるが、閃光炎と龍の斬撃、カマイタチには耐え切れないと判断したのか瞬間移動して回避される。

一方の慢心元愚兄は当然の如く対応出来ずに巻き込まれる。

「鈴!目が覚めたの?!」

「おかげ様でね…それはそうと私も他の人に話を聞いて偶然会った援軍も連れてきたわよ!」

どうやら向こうの世界の鈴がようやく目覚め此方の援護に駆けつけに来てくれたようだ。

という事は先程の攻撃は!

「苦戦しているようだな」

「やあ兄さん、助けに来たよ!」

異世界から戻って来た春達BチームとミドウCチームの姿だった。

 



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コラボEPⅩⅨ「異・並行世界へ行ってみようPARTⅩⅨ 異戦 後編」

ラストォー!



Sideイチカ

「仲間が駆けつけてきたか…」

「そのようだ…俺達をあまり舐めない方がいいぞ?」

異世界から帰還し駆けつけてきた春達を見捉えるマーシエル。

「ならば早々に退場してもらおうか!」

「させるか!…虚幻影幻斬!」

「む!?…」

攻撃を仕掛けようとしたマーシエルを俺は全霊を以て阻む。

だがそれはあまり余力が残っていなかったせいで防がれる。

「チィッ!?…」

「君の本来の全力で来られていたら不味かったかもしれんな…」

「…みたいだな…」

「イチカさん早くこっちに!」

緊急回避し脱力感に襲われた俺はカレンに抱えられ戦線を離脱した。

後は頼んだぞ皆!…

 

Side春季

「人間をほんの少しやめただけの小僧が相手か…これは随分舐められたものだな」

「そう思うなら勝手に思っていろ。

俺は…いや俺達は人である事を忘れた事は無い!

アンタこそ寝首をかけられても知らないぞ!」

確かマーシエルとかいったかな?

俺は若竹さんに此方の世界でもシステムが届くように改造してもらっておいた恋愛拳に重ねて雷砲血神をコールし拳を構える。

あ、音六達の攻撃に巻き添え喰らって気絶した元駄兄は早々に俺が空の彼方へとぶっ飛ばしておいた。

「本当に愚かだよね君達は…其方がその気ならもう容赦はしてあげないよ!」

「!」

「不味いっ!?…」

「【竜巻旋風斬】」

拳を構え突き出そうとすると奴は突然周囲に竜巻を発生させそれに引き寄せられた。

 

Side政弥

「春季!?…」

「あの野郎!…」

「ううん…はーくんなら大丈夫…!」

竜巻の中でこの世界の一夏の弟が斬りつけられたと思った面々は叫ぶが、一人落ち着いていた儚げな少女はそう呟き、その次の瞬間には俺達の心配は驚きに変わる事となる。

ドゴーン!

「なっ!?…」

竜巻の中から吹っ飛びながら出てきたのは技を発動したマーシエル本人であったからだ。

パージされた拳に押し出されており、なんとか弾き返した奴は顔色は変わっていないが驚愕に満ちていることだろう。

しかし、不味いな…奴はアレを発動しようとしているぞ…。

しかし彼はどうやって奴の技を防いだのだ?

その答えはしばらくして判明する。

 

Side春季

「…よもや世界の神である私の技を防いだ上でその様な玩具で反撃も加えてくるとはね…どういう絡繰りなのかは分からないが…先程の発言は少しだけ訂正しよう」

「神を自称する奴にロクな生き方した奴はいねえよ」

パージした雷砲血神を回収し、俺はそう言い放つ。

「ッ!だったらこれならどうだい?【転空斬】!」

「…」

予想外といった顔で奴は更に技を繰り出してくる。

だけど…今奴が言った通りならば奴の目には恐らくコレが見えていない!

俺は無言でソレの流れに合わせて奴の振るう大鎌を受け止めた。

「!?…」

「危なかったなー(棒」

「貴様!ここまで私を愚弄するとは!…」

わざとらしくそう俺がそう言うと奴は目に見えて怒りながらこれまでとは違うオーラを放ってくる。

「≪OVERDRIVEACTIVE!≫…フッ!」

奴がそう言った瞬間、空間に溶け込む。

成程、影となって攻撃してくる気だな。

「我等、神に歯向かう愚か者め!喰らえ、【地点烈華斬】!」

意気揚々と仕掛けてくるマーシエル。

だけどな…

「ソイツはどうかな?…」

「何?…ぐぬううううー!?…何なのだこれは!?…」

俺がほくそ笑むと影となっていたマーシエルは何かに阻まれたかの様にもがき苦しみ出した。

「あーあー、死角がないと思った全方位攻撃を仕掛けるつもりだったんだろうけど無駄なんだよね」

「き、貴様!…何をしたァー!?」

「視えていない以上教えても理解出来ないと思うぜ、自称神さん?

全く自分で言うのもなんだけど愛の力は偉大だな!」

「なんだと!?…愛…だと!?…」

これではっきりした。

マーシエル、奴には貯蓄してあったのを解放した磁場エネルギー状態の恋愛磁場が全く視えていないという事が。

奴には愛などない。

そもそもが物好きが見つけた異世界の未知の物質だ。

愛を知ろうとしない自称神になど到底理解出来る筈がない。

奴の能力が魔力絡みであったなら非常に不味かったがどうやらその線はないとみる。

いわば超能力みたいな物か。

なら奴は此方に攻撃を当てる事は叶わない。

「愛だと…そんなチンケな物に創造神たる私の力が負ける事などありえない!

【散華】!」

「無駄だって言ってるのに…な!」

奴が俺の周囲に色とりどり、だが微かにくすんだ色をした花を咲かせる。

設置爆発技か?…だけど無駄だ!

爆発する前に俺が恋愛磁場を操って潰す。

「なんっ!?…」

ドゴーン!

わざと一つだけ残し奴に打ち返してやり、真逆自分の技に巻き込まれるとは予想外だったのか奴は爆発に飲まれる。

全力緊急防御でダメージを殺してはいたが。

っとそろそろこっちはアレをやらないとな…俺は奴が再び向かってくる前に地上に降りて音六と矢千夜を傍に呼んだ。

そっちがオーバードライブなんて力を使うのなら、こっちもオーバードライブ(意味深)しないとな。

 

 

Side政弥

「わ、私達でもロクにダメージを与えられなかったマーシエルにマトモに攻撃を入れている!…あの人凄い!…」

「あ、ああ…」

一夏が言う通りにまともにマーシエルと相対出来る人など今迄いなかったので俺達は驚くしかない。

マーシエルの野郎の顔を見る限り相当怒りに震えているようだな。

会話の内容が良く聞こえないのが惜しい限りだな。

「む…そろそろといった所か…」

「あ、ラウラ僕にもくれない?」

「ああ」

「ん?…ってなんでそっちのラウラ達は何呑気にブレイクティータイムなんてし始めてんだ?!」

ふと周囲を見ると何故かこの世界のラウラやシャルロットを筆頭に何人かがこの激戦の最中ティータイムを決め込んでいた。

てかどっから出してきたんだよそのセット?

「む?今ラウえもんって呼ばれた気が…ん?其方も飲みたいのか?」

「いやそうじゃなくて…まあ頂くけど…ってうわ苦ぇっ!?…なんだこりゃ!?」

この世界のラウラが勘違いしたのか俺達にコーヒーの入ったカップを渡してくる。

てかラウえもんってなんだよ?!某青い奴にでもなったのかラウラ!?

コーヒーはブラック所じゃない超絶ブラックコーヒーだった。

「…いやー、そのぐらいの苦さじゃないとこれから起きる事にはとても…ね…」

「私はもう慣れてきたのがな!」

シャルロットが何処か遠い目をしながら、ラウラはえへんと胸を張りながらそう言ってくる。

なんだっていうんだ?

「あのピンク色のガントレット…ISの武装じゃないね。

さっきの金色のはISモドキみたいだけど…」

「え?」

拡大レンズで覗いていたこっちの束さんがそう言ってくる。

もしや…おっと、そうこうしている内に彼が地上に降りてくる。

そして彼は先程呟いていた少女ともう一人黒髪の少女を呼んだ。

すると…

「は?…」

「はわわ…///~」

「ちょ、ちょっと!…///~一体人前で何をやってんのよ!?」

俺達には目の前の光景が良く理解できなかった。

それはマーシエルの野郎も同じことだろう。

 

Side春季

「ぐっ!…≪EXCEEDACCEL≫!」

しばらくして復帰してきたマーシエルは全力に身を投じようとしていた。

「こっちも始めるぞ!準備は良いよな?音六…矢千夜…!」

「うん…!…」

「私も良いですよ!」

推奨戦闘BGM♪「iを解きなさい」

「んー…!…」

「春君の唇…とっても素敵な味がします!…」

俺達は互いに求め合う。

この無益な戦いに終止符を打ち、守るべきものの為に…。

「ええい!貴様等ァー、創造神たる私の前でなんたる侮辱をぉー!」

「創造神?悪逆神もしくは偽神の間違いだろうが!

いいか?神様っていうのはな…人を愛し正しき者に道を示すそんな存在なんだ!

愛を…人を好きな気持ちを無下に否定し、大切な人達を傷付けようとする残虐非道なアンタを誰も神様だなんて思わねえよ!」

「貴様ァー!後悔し懺悔してももう許さぬぞ!」

俺の言葉にマーシエルは逆上し怒りに任せて突っ込んでくる。

「懺悔なんかしない!…断言しよう!俺達の絆が偽神を打ち砕く!」

「死に晒せぇー!愚かな人間!【死の宣告<スマーケン・オブ・デス>】!」

「させませんよ!」

「ぐうっ!?…小賢しい事を…」

技を発動したマーシエルを矢千夜が補給した恋愛磁場で強化されたラブガンランスを投擲して足止めする。

「ナイス!音六、矢千夜、俺達の力を合わせよう!」

「うん!…」

「いいですよ!///~」

奴が投擲された強化ラブガンランスの対応に追われている間に決める!

俺は彼女達ともう一度愛を確かめ合う。

キス、ハグ、それに頭を撫でる。

更に高出力の恋愛磁場を発生させ備える。

『≪装填率:二百%OVERLIMITBREAKE!≫』

Sランクの恋愛磁場のエネルギーを恋愛拳に込める。

「音六、恋愛札を借りるよ」

「うん、分かった…はい!…」

音六から恋愛札を借りて権限解放しリミッター解除された恋愛拳の増設部位に挿入し更なる力を解放させる。

「鳳亜流恋愛奥義【鳳天七星愛流拳】!!そっこだあああー!!」

俺は拳の一撃を投擲されたラブガンランスに重ねて打ち付ける。

「ぐむうゥゥーっ!?…まだだ!?人間になど負けてたまるか!…!?」

「いいや終わりだ。≪多愛連装≫!」

「何っ!?私の美しき花達が!?…」

俺は奴の張っていた枯花の障壁を破ると同時に打ち付けたラブガンランスに恋愛拳を融合させる。

「「恋愛占札槍形拳<ラブハートフォーチュンパイルバンカー>」…!コイツでブッ飛べ!ホオォー!」

エネルギー変換した恋愛磁場を最大解放してマーシエルに叩き込んだ。

「ば、馬鹿なああー!?…こんな事がァー!?…」

「束さん!今です!」

「OK!ゲートオープンだよ!」

マーシエルは俺の一撃でブッ飛ばされ、その方向へと束さんがようやく直した世界移動装置の扉が一瞬だけ開き、そこに見事に放り込まれていった。

元居た世界に送り返してやったのだ。

ふう…これで一件落着だな。

 

Side政弥

「…」

俺達は目の前で繰り広げられていた光景に只々唖然とするばかりであった。

その規格外な力で世界への脅威を振るっていたマーシエルの野郎をいとも容易く観ていた俺達も理解の追い付かない力で圧倒したからだ。

「あ、アレは確かにむず痒くなってくるわね…///~」

「ま、全くもう!…なんてモノ見せつけてくれるのよ~…」

「きゅ、きゅうう~…」

「い、一夏ぁー!?しっかりしろォー!」

鈴は両世界とも彼等の行為で酷く赤面し、一夏に至っては俺との事を想像してまだまだ刺激が強かったのか気絶してしまっていた。

「お?終わったみたいだね~」

「うにゃー~」

「ン?…」

騒動が終息するとこの世界ののほほんさんがちっちゃな白猫を抱き抱えながらやって来る。

「あ、のほほんさん丁度よかった!話があるんだ」

「はるるん何~?」

マーシエルとの死闘を終えた彼ものほほんさんに気が付きそう言う。

ン?…オイオイ待てよこの流れはまさか…な…

「えーと…」

この世界のシャルロットが先程よりも死んだ魚の様な目をしていた。

物凄いデジャヴ感を感じた。

 

Side春季

「…」

元の世界に帰還してすぐの戦いを終えると、ピーノを抱き抱えてかけてくるのほほんさんの姿が目に入り声をかけた。

正直、普段音六と会えない通常授業中は彼女の事が気になって仕方無かったのだ。

彼女のほんわか笑顔も眩しいぜ!

「のほほんさん!いや、本音さん!貴方の事も大好きです!俺と付き合ってくれませんか!?」

「…」

俺は盛大な告白をしたが、のほほんさんは黙ったままだった。

あ、アレ?…

「はるるんの気持ちは嬉しいんだけどね~…今は恋愛するよりもピノピノと一緒に遊ぶ方が楽しいのだ~!」

「なん…だと!?…」

「だからゴメンねー」

「うわあああー!?…」

予想だにしていなかったのほほんさんの返答に俺は絶叫した。

「ぶははははは!

欲張るからだな!」

「ぷふっ!…」

「ふにゃにゃあ~!」

俺の盛大な告白を見ていた面子は笑い出し、一方のほほんさんの気を欲しいままにしたピーノはどんなもんだいと言いたげに欠伸をして彼女に撫でられていた。

う、羨ましい!真逆猫に負けるなんてえー…。

項垂れる俺を余所に後日しばらくして並行世界組の人達は元の世界へと帰っていった。

俺達もまた戦いの日々に戻った。

あ、この時の事を知ったイチカ兄さんにドン引きされました。

なんだよう…。

 

 

 

 




まだコラボ先は募集しています!
次回から本編にしばらく戻る予定。


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コラボEPⅡⅩ「異・並行世界へ行ってみようPARTⅡⅩ 愛を忘れた世界でⅠ」

これは「if」の話だ…

Side春季

「…はっ!?…此処は?…」

「よかった!目が覚めたんですね春君!」

「矢千夜?…そうだ…」

確か俺はイチカ兄さん達と共に己の誤った野望の為に二つの世界を犠牲にしようとする教皇という奴を止めに時空の亀裂に入った。

その途中で空間事故が起きてそれで…

「でもなんで矢千夜が?」

「ごめんなさい!どうしても我慢出来なくて…」

矢千夜が言うには彼女だけが俺達の後をついてきてしまったらしい。

「イチカ兄さんや音六、他の皆は?」

「私達以外の姿は見当たりません…」

「そうか…」

となると俺達だけが恐らくあの時空間で発生した事故によって異世界に飛ばされて来てしまったのだろうか。

「六夢?」

ふと待機状態の雷牙が僅かに光る。

六夢と語る為に意識を飛ばす。

「分かった」

しばらくして意識を戻す。

六夢が言うには事故の影響のせいか雷牙のシステム面が可笑しくなっているらしく修復にしばらくの時間を要するとの事だ。

「これからどうしますか?」

「そうだな…時期に束さんやタイセイさん達が異変に気が付いて連絡を取ってくる筈だ。

それまでこの世界で何事も無く過ごせれば良いのだがな…」

この世界がどういった世界なのかもまだ分からない。

二つ前に訪れた世界が酷いという言葉だけじゃ表し切れない程だったからな…後にこの世界が他の何処よりも酷いものだと俺達は思い知らされる事になる。

パァン!パァン!

「何!?」

「行ってみよう!」

何処からともなく鈍い銃声が聞こえてくる。

只事ではないと俺達は急いで現場に駆け付ける。

其処で見たものは…

「これは!?…」

「ひっ!…酷いっ!…」

一組の学生カップルが両手を握り合いながら血塗れで倒れていた。

急いで救命活動をしようと駆け寄ると

ズギュン!

「む、なんだ?まだルール違反者が居たのか…始末する」

カップルに対して凶弾を放ったであろう同じ制服を着込み、似使わぬ武装をした数人の男子生徒がそんな事を言いながら此方にも銃を突き付けきていた。

「矢千夜!」

「分かりました!」

傷つけられたカップルに流れ弾が当たってしまわない様に矢千夜に指示し、俺は恋愛磁場、矢千夜は恋愛銃槍を振るい銃弾を叩き落とした。

「何!?…コイツ等、真逆「RedHot」能力者!?」

「奴等のシンボルが見えないようだが『クルセダーズ』の一員に間違い無い!構わん、撃て!」

「無駄なんだよ!」

訳の分からない誤解を受けて更に彼等は撃ってくるが全て恋愛磁場で叩き落とす。

「ひ、ヒィッ!?コイツ等ば、バケモノ!…」

「に、逃げるんだよぉー!」

「あ、オイ!?逃げるな!…チッ!覚えていろ!」

武装男子がへっぴり腰になり逃げ出す。

リーダー格らしき男はようやく不利なのを悟ったのか捨て台詞を吐きながら逃げた彼等の後を追って姿を消した。

「ふう!…矢千夜、彼等の状態は?」

「傷が思っていたよりも深くはなくてなんとか消毒・止血だけは出来ましたが衰弱が酷くて!…」

先程の輩によって傷つけられたあのカップルの状態はあまり芳しくなかった。

「なら!…」

矢千夜からカップルの状態を聞いた俺は即座に恋愛棺を二つ呼び出す。

棺を開き、カップル達を回復させる為そっと中に入れる。

間に合うと良いのだが…俺達はそう祈るばかりであった。

 



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コラボEPⅡⅩⅠ「異・並行世界へ行ってみようPARTⅡⅩⅠ 愛を忘れた世界でⅡ」

前回素で忘れてました。
今回のコラボは天月みご先生の「翼の十字軍<クルセダーズ>」という作品です。


Side春季

「なんとか峠は越えてくれた様だな…」

「よかったですね!」

数十分後、負傷させられたカップルを収容したラブコフィンが二人の回復を終えたようで一人でに開くのを見て俺達は一安心する。

「一体あの男達は何が目的だったのでしょうか?」

「思い当たる節はある…だけど詳しい事はあの二人が目覚めたら話を聞いてみないとな…」

「そうですね…」

もしも俺の立てた推測通りだとしたらこの世界は…以前訪れた世界よりも厄介な事は確実だ。

そして数十分と経たずに件のカップルが目を覚ました。

「…アレ?…ハッ!?そうだあの子は!?香織は!?」

「ううん?…其処に居るのは智くん?…嘘!?…私達生きてるの?!…」

「そうみたいだ!…あれだけ撃たれた筈の傷もすっかり治っているみたいなんだ」

自分達が無事な事を確認し合った二人は抱き合って涙を流していた。

俺はタイミングを見計らって二人に声をかける。

「少し良いかな?」

「!…生徒会の連中じゃない…もしかしてあんた…いや君が助けてくれたのか?」

「えっと確か智君だったね。そうだ」

「正直もう駄目なのかなと思っていた…だけど…ありがとう!本当にありがとう!…」

「見かけたからには無視なんて出来なかったからね」

俺が命の恩人だと分かると智はまた涙を流しながら感謝を述べてきた。

「その代わりとはいってはなんだけどこの世界の情勢について知っている事を教えてくれないかな?」

「「え!?…」」

俺がそう言うと二人はとても驚いた表情をしながらどこか怯えていた。

ああ、そうか!

「心配しなくて良いよ。

この周囲の目障りな監視カメラなら既に俺が一つ残らず破壊しておいたから大丈夫だ」

「「( ゚Д゚)…」」

俺がその旨を伝えるとカップルは唖然とした表情をしていた。

「あ、あの!口頭では上手く説明出来ないのでコレを見てもらえれば…」

香織さんが自身の生徒手帳らしき物を差し出してくる。

どうやらコレを見てみればこの世界の全容が分かるらしいな。

「借りるよ」

「私にも見せて下さい」

俺は香織さんから手帳を受け取り、矢千夜と一緒に一通り目を通してみる。

「…なんなんだよコレは!?…」

「そんな!?…こんなの酷過ぎますよ!…」

手帳に書かれていた事に目を通し終えた俺達は絶句した。

こんな事が平気で世の中に罷り通るだなんて…これが人間が考えた事なのかよ!?…予想以上に酷く穢れた世界に俺は怒りを露わにする。

「青少年健全育成法」…この法によって未成年の恋愛禁止、その上に全ての行動に制限・監視…少しでも破れば即刻刑が執行される…。

この悪法を可決したこの世界の政府は相当腐っているようだな。

法に則って政府に認められ刑を執行する権限を与えられたそれぞれの学校に設置されている「武装生徒会」…腐敗した実は好き勝手に根を生やしている。

着実に潰していく必要があるな。

俺達が遭遇したのは数有る武装生徒会の中の下っ端役員のグループだろう。

恋愛磁場をRedHotとかいう能力と勘違いしていたにも関わらず只の銃撃しかしてこなかったしな。

それに連中が言っていたクルセダーズというのも気になる。

Kuruseda−zu…直訳すると「十字軍」か…恐らくこれらは武装生徒会と政府、育成法に対しての反対勢力の総称だろうな。

其方についても調査が必要か。

「智君、香織さんこれからどうしたい?」

「え?…」

「それは…」

なんとか怒りを抑えた俺は二人に問い質す。

この悪法によって処された筈の彼等が生きている事が奴等に知られれば再び命を狙われる事になってしまう。

そうなってしまう前に二人の意思を聞き、対策を講じる必要性があった。

「この理不尽に塗れた世界を変える為に徹底的に戦う道を取るかこのまま普段通りの生活に戻るか…後者でもサポートはさせてもらうけどね」

「俺は…香織と…好きになった人ともっと一緒に生きたい!だから生徒会や政府と戦う道を選ぶ!」

「わ、私も!…好きな人と共に生きられない世界なんてもう嫌だから!」

「そうか!」

俺は二人の意思を聞き届ける。

pipi!

お?正に絶妙なタイミング!

束さん達が俺達の居る世界線を特定し連絡してきた。

さあ、革命の刻はすぐ其処だ!

 

 

 



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コラボEPⅡⅩⅡ「異・並行世界へ行ってみようPARTⅡⅩⅡ 愛を忘れた世界でⅢ」

Side?

ドン!

周囲が突然の事態に悲鳴を上げる。

「<青少年健全育成法第七条 18歳以下の恋愛を禁ず>。

帝国学園生徒会の権限を以て違反者は即座に処する。

そっちの女生徒、この男子生徒と逢引していたな?それとも<クルセダーズ>の一員か?」

「ち、違う!…私は彼の事なんて好きじゃ…」

「見え透いた嘘だな。育成法第十一条、法令を違反する行為に対する嘘により処罰する」

「ま、待ってくだ…あぐっ!?……」

女生徒が弁明するもののすぐに武装生徒会会長である男に嘘だと見抜かれ躊躇いも無く撃ち殺されてしまう。

「こうなりたくなければしっかりと法を順守する事だ」

「…」

俺は夏目 ツバサ。

俺を含む数人は育成法や政府に従って罰する生徒会に対し何処か違和感を感じていた。

何故人を好きになるのが罪だというのか?…こんなにも抑え切れない程の想いがあるというのに…。

「ツバサ君!」

「藤堂さん!…」

「どうしたのぼーっとして?」

「なんでもないよ…行こうか連中に見つかる前に…」

「う、うん…!」

俺は好きになってしまった藤堂 明日香さんと生徒会の目を掻い潜り密かな付き合いを続けていた。

あの日が訪れるそれ迄は…

「助けてくれてあんがとよ!」

「…」

最悪だ…偶然目の前に人が落ちてきて急いで助けたら育成法に異を唱えるテロリスト集団であるクルセダーズのメンバーであったことだ。

しかもソイツ、高杉 リュウに藤堂さんとの密会の内容を見られ尋問されている其処に運悪く生徒会一味が通りがかってきてしまった。

「藤堂さん、なんで!?」

「ごめん…なさい!…」

なんと想い合っていた筈の藤堂さんが生徒会のスパイであったことが発覚した。

だけど彼女は生徒会の拘束を振り切って本当の想いを打ち明けてくれた…だけど拘束を振り切る事は出来ずに会長に撃たれてしまった。

「ツバサ!今は離脱しろ!」

「でも、藤堂さんが!…」

「あの様子じゃもう助からない事ぐらい分かるだろ…」

「だけど!…」

「彼女の想いを無駄にする気か?」

「!…分かった…」

俺はリュウに諭され逃げ延び、彼等のアジトで戸惑いながらも異様な力を手にしたのだった。

 

Side?

「…して違反者を取り逃がしたと…それでおめおめと生徒会に帰ってこられたものだな」

「お、お言葉ですが生徒会長、RedHot能力者に只の銃しか与えられていない俺達が敵うワケが…」

「…支給品だ。次は無いと思え」

「は、ハイィ!」

「良かったのですか?あの様な輩にRedHotのアンプルを与えても…生徒会の名を行使して裏で何を行っているか分かりませんよ?」

「俺達に課せられたのは我が国の法に異を唱える反逆者を裁く事だ。

多少の事には目を瞑っていてやる」

「…」

私は羽美音 寧流。

帝国学園の生徒会副会長へとようやく昇り詰めてはや半年が経つ。

会長は何時もと変わらず法律違反者を顔色一つ変えず裁きを下し続けている。

会長達には未だバレていないのであるが私が生徒会入りしたのは自身が育成法に対し違和感を感じ内側から変えようと思ったからだった。

だけどそんな私の思惑はすぐさまに儚くも崩れ去ってしまった…己の弱さに否応にも気が付かされてしまったから…。

ねえ誰か教えてよ!…一体何時までこんな事を続ければ良いというの?…

「…いつものアレやっておこ…」

生徒会の職務の粗方を処理し終えた私は会長が部屋を出ていくのを見計らって学園の旧校舎へと足を運んだ。

「ごめんね待った?」

「うニャー」

「にゃにゃー!」

「ふふ♪」

私の密かな日課であり、癒しともなった何時頃からか旧校舎に住み着いていた野良猫親子の御世話である。

旧校舎には監視カメラが無いので普段出来ない事が自由に出来る場でもある。

それでうっかり気を抜いたのがいけなかった。

「えっと?…」

「ンン!?…」

それが私の運命を変える出会いとなるとはこの時は思いもしなかった。

 

 

 

 

 

 



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コラボEPⅡⅩⅢ「異・並行世界へ行ってみようⅡⅩⅢ 愛を忘れた世界でⅣ」

久々!


Side春季

「という訳さ…」

「そんな酷い!…」

「そんな世界は変革する必要が有るな!」

この糞ったれな世界に来て数日が経ち漸く他の皆と合流した。

この世界で出会ったカップルの二人や寧衣流からも話を聞いた皆と共に俺達は世界を変える為に動き出そうとしていた。

「イチカ兄達はクルセダーズや下っ端の者達を抑えておいてくれ…無論音六達は既にジャックしてあるドームで超大型ゲリラ生ライブの準備だ!」

「分かっているわ!」

「でもよクルセダーズってこの世界の反対組織なんだろ?協力しなくて良いのか?」

「実はこっちで調べたんだが中枢の連中は世界の覇権などという目先の下らないモノにしか目を向けていない…だから協力は極力考えない方が良い」

「本来守るべき弱き者達を守らずに世界の取り合いとは愚かだな!…ふざけているにも程があるな!」

「俺が武装生徒会の本部に乗り込んでこの世界を滅茶苦茶にした元凶を引きずり出してぶっ潰す!

皆、いくぞ!」

「「了解!」」

俺は皆にそれぞれの指示を出し単身で武装生徒会総本部へとカチコミをかけに乗り込むのだった。

 

Sideイチカ

「おうおうやってやがるなあ…下らねえ争いをよ…」

「カレン達のライブが始まったら即刻乱入するぞ!」

「はいよ!」

♪~「始まったか!」

「いくぜ!」

この世界は正しき形に戻されなければならない…春から聞かされた現状を聞いて俺達は醜い争いを止める為にこの世界の奴らが引き起こした戦いに飛び込むのだった。

 

十五分前、Side音六

「…」

「緊張しているのですか?音六ちゃんそれとも…」

「はーくん大丈夫かな?って…」

はーくんにこの世界の守られるべき人達を守る為に再び大型ライブを頼まれ行う手筈を整えていた。

一人息を整えながら黄昏ていた私にやーちゃんが話かけてくる。

「(あー…これは単純に寂しいだけですね、私もなんですがね♡)春季君なら大丈夫です!それは音六ちゃんが一番良く理解しているでしょう?」

「うん…」

「私達は彼等やこの世界の人達へ愛を届ける為に果たすべき事に動きましょう!」

「うん!…」

私は寂しさを振り払いながら設営が完了した会場入りした。

「皆集合!敵の規模から考慮してこのセトリでいきたいと思っているんだけど皆もこれで良いかしら?!」

「分かった!…」

「私も文句無いわ!」

サクラちゃんから集合をかけられた私達はセトリを聞かされる。

「良い返事ね!それじゃあ!」

「「おー!」」

私達は円陣を組んで意気込んだ。

「じゃあまず私からお先にいくわね!」

「頑張って!…」

一番手はやーちゃんだったので彼女は足早にステージへと向かっていったのだった。

 



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プロローグ&キャラ設定
プロローグ 説明把握と別れ


タイトル変更致しました。
え?∞なのか百なのかハッキリしろって?気にするな


「これで処置は万全です」

「ありがとうございます」

「…」

あの後二人の男性によって助けられた俺は病院で目を覚ました。

その後彼等の経営する道場へと招待された。

ここで重大な問題がようやく発覚した。

なんと俺の体が幼稚園時代の頃ぐらい迄に何故か縮んでしまっていたのだ。

恐らくあの穴の影響なのだろうが…。

「俺はこの道場の師範、剣崎ホクトだ」

「同じく第二師範の剣崎リュウセイだ。分かると思うがホクトとは兄弟だ」

「お、織斑一夏です…よろしくお願いしますホクトさんにリュウセイさん」

「おいおいそんなガチガチにならなくていいよ。

俺達の事は好きに呼んでくれて構わないぜ」

「で、ではホクト先生にリュウセイ先生で」

「「お?」」

俺がそう呼ぶと二人は顔を見合わせる。

「あー…もしかしてイチカおめえ「剣崎流」の剣技を請いたいのか?」

「ええ…信頼していた実の姉にも見捨てられてしまいましたし行く充てもないようだし…」

「そいつはどういうこった?」

「そういえばお前の事をまだ聞いてなかったな」

「はい…全てお話します」

俺は二人にこれまでの経緯…元は宇宙開発の為に開発されたISの事、その欠陥のせいで世の中に女尊男卑思想が浸透してしまった事、賢大過ぎた姉や出来の良い兄をもったが故に「出来損ない」と罵られ続け挙句の果てに姉を辞退させる為だけに誘拐され裏切られ殺されそうになった所に突然穴が空きそこに吸い込まれ気が付けばあの場所に居た事と自分が本当は中学生なのだが体が何故か若返っていた事と全て包み隠さず話した。

「これが全てです」

「はあ坊主、この世界にISなんて物は無い。

それに「日本」という国は半世紀前に「皇国ヤマト」に変わっているんだ。

宇宙開発はしてるっちゃしてるがな…という事はお前さんは恐らく異世界から飛ばされてきた事になるな

お前さんの体が若返ったのはその穴の弊害だと思うぜ」

「ええ!?…」

「俺達もにわかには信じ難いが…成程おめえさんの話を聞きゃ俺が助けようとしたあの女の言動にも納得がいくな…」

「あ…」

俺はその盲信故に無謀にも怪物に向かっていき消し飛ばされた女性を思い出す。

「っと今度はこっちの話を聞かせてやる」

今度は二人にこの世界の話を聞いた。

一年前に宇宙から地球に突如隕石と共に異種生命体サベージが襲来してきた「第一次遭遇」が起きた事、隕石に含まれていた鉱石「ヴァリアブルストーン」が奴等に対抗可能な唯一の手段の鍵である事が判明した事、それに反応出来るのが「第二次成長期」いわゆる「思春期」を迎える前の男女という限られた子供達である事、中には反応しきれずに奇病を発症してしまった人もいるらしいが…もしかして俺の体が若返ってしまったのには…

「まあこんな所だな。

さっきの話に戻すがいいんだな?」

「は、はい!是非!お願いします!」

「弱ったな~…」

「はは…」

俺がそう返答しながら頭を下げるとホクト先生は困り顔になり、リュウセイ先生は苦笑する。

「良いか?イチカ…剣崎流は編み出した本人である俺達でさえまともに技を放てるようになるまで結構な時間がかかったんだ」

「それは覚悟の上です!」

「それにな…剣崎流や他の流派にも言える事なのだが戦う為だけの力じゃないんだ」

「どういう事ですか?」

「そいつぁ坊主、自分自身で見つけてみろという事さ」

「は、はあ…」

「所で提案があるんだがイチカお前俺の義息子にならねえか?

ちなこれが弟子入りを許可する条件という事で」

「へ?…」

リュウセイ先生の提案に俺は呆ける。

「リュウセイお前な…」

「兄貴には可愛い娘が居るんだからこれぐらい良いじゃねえか!

どの道武芸者の数が揃えば俺達は引退するだけだしな」

「まあそれはそうなんだが…良い許可しよう」

「でどうなんだ?」

リュウセイ先生は笑いながらそう言うがホクト先生はどこか苦い顔をしながら提案許可を出してきた。

「はい!よろしくお願いします義父さん!」

この瞬間から俺は剣崎リュウセイの義息子、剣崎イチカとして生まれ変わる事を決意したのだった。

「本当に良かったのかリュウセイ?イチカは…」

「まあ、とんでもない量のウィルスを直接体に取り込んだが心配は無いってさ。

それにアイツの覚悟を無下にするなんてマネは出来ないさ。

なんてたって俺の義息子になったんだからな!」

 

数日後、俺に武芸者として才が備わった事が分かり、義父さん達に報告しようと道場に急ぎ足で帰るとホクト先生が腹部から大量の血を流して倒れており義父さんが涙を流しながら謝罪していた。

「ホクト先生!」

「兄貴!すまない…俺がもっとちゃんとしていれば!…」

「一体先生に何があったんだよ!?なあ、義父さん!」

義父さんに話を聞くと先生達が新米の武芸者達に戦闘訓練を施していた最中に突如サベージが出現。

これを迎撃に出たのだがロクに訓練を積んでいない武芸者の一人が出しゃばって前線に出てしまい、サベージの砲撃を喰らいそうになった所をホクト先生が庇ったのだという。

「ああ…イチカも帰ってきたか…スマンな…ちゃんと周囲に気を張れていなかった結果がこのザマだ…リュウセイおめえは悪くないさ…剣崎流の跡取りをしっかり頼んだぞ…それとイチカ強く生きていけよ……」

「ホクト先生そんな!?…」

「兄貴!…クソッ!母親のソウカさんや娘のトウカを残して逝っちまうなんてこの馬鹿野郎がっ!…」

この日ホクト先生は俺達に見守られながら静かにその息を引き取ってしまった。

 

 

 

 

 

 




ホクトの奥さんの名前については原作で明記されていなかった為オリジナルです。
次回はトウカとの出会い&如月兄妹との出会いです。


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プロローグⅡ 新たなる出会いそのⅠ

前回のホクトの死因誤り+不足があったので修正致しました


ホクト先生の葬儀から一週間後、俺ははじめて先生の娘さんであるトウカちゃんと対面した。

「お前がリュウセイの義理の息子になったっていうイチカか?」

「あ、ああそうだけど…」

若干彼女の雰囲気が元の世界の幼馴染であったいじめっ娘に似ていたので俺は思わず身構えてしまった。

「何をしてるんだ?」

「あ…いやなんでもない。

その…トウカちゃんは悲しくないのか?お父さんが亡くなってしまって…」

「トウカでいい。…悲しいさ…だけど悲しさより父上を奪ったサベージへの憎悪の方が少なからずに勝ってしまっているから怖いんだ…」

そう言ってトウカは震えていた。

「敵討ちしたいというのなら俺は止めない。

だけどこれだけは忘れないでくれ。

あんな体になると知っても君の父さんは…先生はあえてか弱き人達を守る為に戦ったんだという事を…」

「そ、そうだよな!リュウセイも「兄貴自身がそう望んで俺と共に戦ってくれたんだ。後悔なんてある訳無え」と言ってたからな

私がこんな所で立ち止まっていたら父さんに笑われてしまうからな」

「その意気だよトウカ!」

「ああ!イチカ一つお願いがあるんだが」

「何だ?」

「リュウセイに「剣崎流」への私の弟子入りの許可を是非とも貰いたいんだ!」

トウカは真剣な眼差しで俺にそうお願いしてきた。

「ん~でもどうだろうなあ…義父さんは義父さんでホクト先生が亡くなってから早々にサベージ退治から引退しちゃって…俺に剣技をあまり伝授してくれなくなったしな…」

そのおかげで周囲からは臆病者と呼ばれるようになってしまった義父さん。

なんでサベージと戦おうとすらしなかった他の大人達に義父さんだけが糾弾されなきゃいけないんだ!

俺はこの理不尽を思い出し怒りで我を忘れそうになる。

この時は俺の目が金色に輝いていた事に気が付く事はなかった。

「イチカ?」

「ああすまない…最近なんか我を失いそうになる事が多くてな…トウカの弟子入りなんとか頼んでみるよ」

「本当か?!」

「ああ約束する!」

「そうかそうか!持つべきものはお前のような兄君だなイチカ!」

「は?俺がトウカの兄?ってうわ!」

突然そんな事を言われポカンとする俺だったがああそうか義父さんはトウカにとってはもう一人の父さん的存在で俺は兄みたいな存在なのか。

世間一般でいったら従兄という事になるのか。

「というかトウカ…そろそろ俺からどいてくれないか?そのな…」

「へっ?…」

トウカが嬉しさで俺に飛びついてきたようで今は馬乗りの様な状態になっている。

彼女から凄く良い匂いがして別の意味でまた我を失いそうになる。

成程義父さんが言っていた「トウカは剣技以外は全て母親似」はこういう事か。

そういえば母親のソウカさんも凄く美人だったな…と思った所で限界がきて気絶してしまった。

「ワー!?す、スマン!私とした事が…あまりこういう事に意識を向けた事がなくてな…うう…」とかトウカが言っていた気がしてちょっと心配になった。

数時間後…「はっ!?」と目を覚ますと寝かされていたベッドの傍に義父さんからの書置きがあった。

「トウカなら既に家に帰ったぜ。あ、俺はちょいと合コン行ってくるわ。修行メニューきちんとこなせよ?byリュウセイ」と何やってんだあの義父は…ホクト先生が生きていた時でも時々修行をサボって女遊びをしに行っていたらしいから頭が痛くなる。

というか臆病者呼ばわりされている理由が少しだけ分かってしまった事に後悔した俺であった。

俺が頭を抱えているとそこに義父さんから買って貰った俺のPDAに着信が入る。

義父さんからだ。

「何ですか?合コンの結果報告?」

「『違ぇよ!合コンは中止になったというか…』」

「?」

義父さんは何やら慌てた様子で言葉を続ける。

「『ついさっき凶報が入った。…いいか良く聞け…ソウカさんが亡くなっちまったんだ!』」

「え?…ソウカさんが!?…」

嘘だろ?…なんでソウカさんまでが?…思わず俺はPDAを落としそうになる。

先生の葬儀で会った時は特別なんら変わった様子は無かったというのに…

「まさか耐えられなくなって後追い自殺とか?…」

「『違う…何せサベージのウィルスを大量に浴びまくっていた兄貴と生活していたんだ。

彼女も感染して奇病を発症しちまっていたようなんだ。

トウカにはそれを隠し続けていたらしくてな…ソウカさんが倒れているのを彼女が見つけた時にはもうなにもかもが手遅れだったそうだ…』」

「そんな!?…」

サベージのウィルスによる奇病の事についての詳細は未だに分からない事が多いらしいがそれによって死者が出たというケースはソウカさんが初めての事らしい。

「『とにかく俺はトウカの奴を迎えに行ってくるからお前は先に葬儀場に向かっててくれ』」

「はい…」

その後義父さんとトウカが到着してすぐにソウカさんの葬儀が執り行われた。

葬儀が執り行われた二日後、剣崎分家の他の流派の当主や親類等が集まりトウカの事を誰が引き取るかという話し合いが行われていた。

俺も義父さんに無理を言って参加させてもらっているのだが…

「私は絶対に嫌ですよ!あんなウィルス塗れの娘を引き取るなんてのは!」

「うちには子供が居ますしねぇ…」

「大体あの二人や娘にしても…それに臆病者の弟の方も…」

二番目の発言はまだ分かる。

だけどその他は皆ホクト先生やソウカさん、トウカそして義父さんの悪口ばかりを言い合うばかりで話が平行線になって進まない。

義父さんはぐっと我慢していたようだが俺には当然耐えられる筈が無く…

「どいつもこいつも言いたい放題言いやがって何様のつもりなんだよアンタ等は!」

「ちょ!?イチカおまっ…」

ダン!と机を叩き立ち上がった俺はそう言い放った。

義父さんが「あちゃー」といった表情で一瞬俺を止めそうになったがいい加減に我慢出来なくなったのかスルーしてくれた。

「何だね君は!何故君みたいな子供が家の大事な話し合いに参加しているのかね?!」

「私が勝手ながら許可しました。こいつは私の義息子のイチカです」

「フン!臆病者の若造が本当に勝手な事をしおってからに!この剣崎ハジローが勝手な発言は許さんぞ!」

四十代くらいのおっさんが偉そうにそう言ってくるが突如…

「いやあ~スマンのう!道が混み入っておったせいで遅刻してしまうとはのう…」

「け、剣崎本家御当主剣崎コウシロウ様!?これはこれはお待ちしておりました!」

「え!?」

かなりご高齢の御爺さんが入ってきた。

そうかもう一つ空席があったのはそういう事か。

彼が入ってきた事によって場の空気が一瞬にして変わりおっさんがごまをすっている。

「君がイチカ君だね?」

「あ、はいそうです!」

「ウム、何か言いたい事があるのじゃろ?良いこの者の発言を許す!」

「ありがとうございます!」

当主様は俺を一瞥した後そう他の皆に言ってくれたのだ。

「では言わせて頂きます!

はっきりいって貴方方はただ互いの汚点の擦り付け合いをしているだけでトウカの将来性なんてまるでこれっぽちも鑑みていない!

それにあろう事か彼女の御両親や義父さんの事まで悪く言い始める始末だ!

確かに武芸者の素質が無い人にはサベージのウィルスは未知の脅威なのかもしれない。

だけどこんな事態になる迄に貴方方の中で彼等以外に自ら進んでサベージに立ち向かおうとした人は一人でも居たんですか?!

居ないのなら貴方方には危険を承知でサベージと戦い続けた彼等の事を悪く言う権利なんて何処にも無い筈だ!」

「…」

そうソウカさんもまた先生を信じてそして娘を心配させない為に一人病気と戦っていたのだから。

俺がそう発言すると義父さんと当主様は聞き入り、他の人達は皆だんまりになる。

「き、綺麗事だそんなものは!」

沈黙した集団の中でたった一人納得をしない人がいた。

先程のおっさんだ。

「確かに綺麗事なのかもしれない…だけどそれが人が信じている心の力ってもんだろ!

陰口を叩く事しか能の無いおっさんに言われる筋合いなんて無いね!」

「グッ!?…」

痛い所を突かれたおっさんは遂には黙った。

「話は良く分かった!良かろう!剣崎トウカの身元引受人はこの儂、剣崎コウシロウ率いる本家に任せて貰おう!」

「!?」

突然の当主様の提案に皆驚きを隠せない。

「なあに…これは儂ら大人達の責任でもあるからのう!

聞けば武芸者の才はイチカ君の様な年頃の子供達に芽生えるそうじゃな…そんな子達だけにサベージと戦わせるというのも酷な話じゃと思わないか皆の衆?」

「…」

当主様のこの言葉には他の者皆黙って頷くしかなかった。

「こ…こんな馬鹿な事があってたまるか…」

たった一人だけそれでも納得しない者がいて先に退出していったが…。

解散直後、俺は当主様に話をしに近付いた。

「トウカの事…本当によろしかったんですか?」

恐る恐る問いただす。

「イチカ君心配しなさんな、故に男に二言は無い!まだこの件をつっぱねる者がおるというのならこの儂に任せたまえ!はっはっは!」

「あ、ありがとうございます!ご当主様!」

「おっとそうじゃった!もう一つ確かめたい事があったんじゃった!」

「確かめたい事ですか?」

「イチカ君、君が身に着けた剣先流の技を後日儂を含む者達の前で披露してくれぬかの?」

「はい喜んでさせて頂きたいと思います!」

この後、義父さんは本格的に俺に道場の主の座を譲り渡しサベージ退治からの引退を宣言した。

俺はというとこの件に関してトウカに凄く感謝された。

でも無自覚に俺に抱き着いてくるのだけは勘弁してほしい…。

当主様との約束を果たす日、俺の技の型は分家の方達に大層驚かれた。

 

 




原作の一文にトウカを親類等はタライ回しにしようとしていたとの文があったものでその為に剣先家をスケールアップしたら長くなった。
これでパパ聞きを思い出したのは俺だけではあるまい


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プロローグⅢ 新たなる出会いそのⅡ

「せいっ!やっ!はあ!」

「そらそらぁっ!腰にもっと力を入れろイチカ!」

義父さんとの鍛錬は日々俺に心技体共に進化を促していった。

トウカの一件が無事に終わって数日が経った。

ホクト先生の形見の品でもある試作型ハンドレッドの刀はトウカに受け継がれ、一方ソウカさんの形見である星型のペンダントはというと…

~剣崎家の会合が終了した後~

「イチカ従兄上!

お前が私の事で親戚の者達に意見したとリュウセイから聞いた時は流石に焦ったぞ…」

俺は事の詳細を義父さんから聞いたトウカに正座させられこっぴどく怒られていた。

「その…心配かけてすまないトウカ…でも大人達の勝手な都合でたった一人の大事な従妹が不幸な目に遭うかもしれないと思ったらいてもたってもいられなくてな…」

「い、イチカ従兄上!?…///~」

気付くと俺はトウカを思いっきり抱きしめていてしまっていたのでハッと我に返る。

「あー…そ、そのスマン!」

「あ…」

当のトウカはというと顔を赤らめたかと思うと即座に後ろを向いてしまった。

「どうした?」

「な、なんでもない!///そ、それよりもだ!是非とも従兄上に受け取って欲しい物があるんだ」

「トウカが俺にか?」

「何故そこで不思議そうな顔をしてるんだ従兄上は…これだ」

「コレって…」

トウカが俺に手渡してきたのはソウカさんがいつも首に下げていた紅い星型のペンダントだった。

「…ってこれはお前にとっても大事な母親の形見の品だろ!

俺なんかが受け取れないよ」

俺は慌てて突き返すが

「いやいいんだ…私には父上の刀があるし。

だから是非とも母上のこのペンダントは従兄上に持っていて欲しいんだ!」

トウカはそう言いながら自身の首からペンダントを取り外し俺の首へとかけてきた。

「そ、そうか…トウカがそこまで言うのならこのペンダント大事にさせてもらう事にするよ」

「うむ!それはやはり従兄上にも似合うな!」

「なんだか照れくさいな…」

「あ、従兄上それでもう一つ話をしたいのだが…」

「なんだなんだぁ~?こんな所でイイ雰囲気出してお前等秘密の話でもしてるのかぁ?」

「ワッ!?りゅ、リュウセイ!?」

「義父さん…突然割り込んでこないで下さいよもう…」

更にトウカが何か言おうとしてたようだが義父さんが割って入ってきたので止まってしまう。

「あちゃあ~…邪魔して悪かった!でも当主の爺様の側近がトウカの事探していたぞ早く行ってやれよ」

「わ、分かった!…」

「あ…」

トウカは義父さんにそう言われさっさと行ってしまった。

先程トウカは何を言いたかったんだろうか?

俺が考えていると義父さんはなんかくすり笑いをしていたのはなんでだ?

「{トウカの奴…さてはイチカに気をもったな。面白いから本人には黙っておこう}」

それから2年が経過したある日ソレは起こってしまった…そう<第二次遭遇>…セカンドアタックが。

「そっこだあ!」

義父さんの試作型ハンドレッドの刀「闇切」と「剣先流」の技を以て俺は飛来した初のサベージ退治に日々明け暮れていた。

「しまった!ぐあっ!?…」

でもやはりといった所かあくまでも試作品である闇切とまだまだ未熟な俺の腕ではあまり良いという戦果を得る事が出来なかった。

「イチカたまには休息も必要だ。

サベージを取り逃がしたのが悔しいのは分かるがそう気を切り詰めていたら守れるものも守れなくなるぞ。

だからリョウコさんの所でゆっくりしてこい」

「分かったよ義父さん…」

義父さんや武芸者仲間からしばしの休息を貰った俺は孤児院を経営しているリョウコ叔母さんの所へと足を久し振りに運ぶ事にした。

「あら剣崎さん所のイチカ君じゃない!久し振りねぇ~!」

「お久し振りです!リョウコ叔母さんしばらくぶりですがお世話になります」

「良いのよ良いのよ!イチカ君みたいな子ならいつだって大歓迎よぉ~!院内の子供達だって喜んでくれるしね」

「あ!イチカお兄ちゃん来てたんだー!」

「本当だ~!」

足を運んだ俺はすぐに孤児院の子供達に囲まれた。

皆俺を慕ってくれている良い子達ばかりだ。

来る度に剣道の稽古を教えたりもしているからな。

「そういえば新しい子が二人入っているけどまだ顔合わせはよした方がいいかしらね…」

「もしかしてで第二次遭遇でサベージに?…」

「ええ…なんでも家族旅行の最中に襲われたらしくてね…今日迄旅行先の孤児院に入居していたみたいなんだけどね…」

やはりか…少なからずサベージのせいで大事な家族を…それも肉親を亡くしてしまっているとは…

「任せて下さい!俺がなんとか打ち解けてみせますよ。今何処にいます?」

「イチカ君が?なら安心ね是非お願いするわ。お兄さんの方は今出掛けてるけど妹ちゃんなら裏庭にいる筈よ」

「ありがとうございます」

早速俺は会いに裏庭へ足を運んだ。

♪~

「む?…」

裏庭に近付くと綺麗な歌声が聞こえてきた。

「♪~」

「良い歌声だな…」

「だ、誰!?…」

口にだすつもりはなかったがつい出てしまい歌う邪魔をしてしまったようだ。

これが俺の運命の出会いだった。

振り向いた少女は俺を不思議そうな顔で覗き込んでくる。

「スマン!君が歌うのを邪魔するつもりはなかったんだが…叔母さんが心配しているみたいだったから様子を見に来たんだ」

「あ…」

俺が声をかけると少女は顔を赤くしながら俯いてしまう。

「悪かったな邪魔して」

俺は必死に少女に謝る。

「い、いえそうじゃないんです!ただ…カレンは恥ずかしくて…うぅー~///」

「良かったらお話しないか?俺は剣崎イチカだ」

「え…良いですよ。カレンは如月カレンといいます」

それから俺はカレンちゃんと色々話をした。

「それで兄さんはですね…」

彼女と彼女のお兄さんを残して両親が亡くなってしまった事や唯一の大切なお兄さんの事、お兄さんには黙っているが彼女の足が日に日に少しずつ動きが悪くなっていっている事等だ。

「でももう隠しきれない…カレンはどうすれば良いんでしょうか?…」

「カレンちゃんはお兄さんの事大好きなんだな。

心配無いだろう…お兄さんがもしそれで君を嫌うというのなら俺がブン殴って目を覚ませてやるから」

「それはやめて下さい!」

「あ…スマン!熱くなりすぎたみたいだ…」

俺がそう言うとカレンちゃんが泣きそうになったので慌ててなだめる。

「クス…そうですよね兄さんはそんな人じゃないってのはカレンが一番良く知っていますから」

途端にカレンちゃんは舌を出しながら笑う。

「う!…」

か、完全に騙されたぜ…でも彼女のそんな笑顔は俺をドキリとさせた。

「カレン!こんな所に居たのか…ン?」

「あ、兄さん!」

向こうから男の子が駆け足で向かってきた。

「君がカレンちゃんのお兄さんか?」

「あ、ああ…俺がカレンの兄の如月ハヤトだよろしく」

「俺は剣崎イチカだこちらこそよろしくな!」

俺とハヤトはがっしりと熱い友情を交わし合った。

その後ハヤトが剣崎道場に弟子入り志願をしてきたのは驚きだったが。

 

 

 

 

 




やっと長いプロローグが終わった。
次でIS本編入れるな!
誤字・脱字その他等御指摘ありましたら報告板へ


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一夏&ハンドレッドキャラ+オリキャラ設定集

ようやく設定集です随時更新。
*本作におきましてかなり無理矢理なオリジナル設定も加えていますのでご注意を。



剣崎イチカ(旧名織斑一夏)

本来であれば原作「インフィニット・ストラトス」においての主人公であるが、本作においてはブリュンヒルデの称号を持つ千冬との板挟み、オリジナルの実の兄である秋彦によって努力を散々無下にされ末弟である春季と共に周囲から『織斑家の出来損無」の烙印を押され苦汁の日々を過ごしてきた。

それでも姉の支えになろうと必死になっていたがある日幼馴染の妹分である篠ノ之美月と共に千冬のモンドグロッソ二連覇を妨害しようと企む対戦相手国の雇った亡国企業の一味によって彼女を誘き寄せる餌として誘拐・監禁されてしまう。

一夏と美月は千冬が救出しに来てくれる筈だと信じるが、女尊男卑の影響やその他諸々等によりすっかり腐敗しきっていた日本政府のかなり身勝手な思惑によって千冬には試合終了後になってようやく伝達されていた為に救出には来る事が出来ず絶望する。

計画が失敗し癇癪を起こした一味の一人に発砲されそうになった美月を庇い両肩に凶弾を受け大怪我を追ってしまう。

その直後に突然、空間に黒く大きな穴時空の亀裂が空き逃げ遅れた誘拐犯達を吸い込み、美月までもが吸い込まれそうになった所を痛みを堪え突き飛ばし彼を最後に吸い込み穴は何事も無かった様に閉じた。

目覚めた先で彼が目にしたものは宇宙から飛来し人類を脅かし襲い来る地球外生命体「サベージ」が蔓延るもう一つの地球、言い換えれば異世界だった。

自身の体はどういう訳か縮み五才程に迄若返っていた。

偶然サベージ退治を行っていた剣崎兄弟によって窮地を救われた後に彼等の編み出した剣術<剣崎流>への弟子入りを嘆願し弟である剣崎リュウセイの提案により彼の義理の息子となり名を変えた。

既に元の世界で受けた傷からサベージがばら撒いている<ヴァリアントウィルス>に直接感染し数える程しかいない<ヴァリアント>の<武芸者(スレイヤー)>として覚醒を果たし修行の日々を過ごす事となる。

師匠であったリュウセイの兄であるホクトの突然の死を切欠に更に精神も体も強くなろうと決意し、ホクトの娘で義理の従妹であるトウカとの出会い、後の親友や恋人同士となる如月兄妹との出会い、<武芸者育成機関海上学園都市艦リトルガーデン>の戦友達と過ごす日々の中で確実に成長していく。

とある計画により宇宙へと上がってすぐに襲来したサベージを駆逐した直後、ある事が原因で再び宇宙空間に時空の亀裂が生じ、そこに恋人である如月カレンと共に吸い込まれ元の世界への突然の帰還を果たす事となる。

帰還した後にサベージが出現しこれを駆逐した後、時空の亀裂を通って奴等がISの世界にも入り込んでいると知った彼はIS開発者である篠ノ之束と再会を果たしサベージを完全に駆逐する為に協力をとりつけた。

後に下手な第三者の介入を避ける為に自身等が扱うパワードスーツ「ハンドレッド」をISと誤魔化し世界初ISを動かした三人目の男性としてIS学園へと入学する事となる。

臨海学校・福音戦において急襲してきたギリウスに対し尋常ではない怒りを見せそれが切欠となりヴァリアント暴走状態となってしまい周囲を見境無く破壊しようとする。

が、秋彦の愚行により重症を負った事で被害は皮肉にも防がれた。

回復後、二度と大切なものを壊さない為に冷静さを保つようになった。

とある事件が切欠でハンドレッドの製作技術を身に着けている為ISにもそれを生かす。

若返っていた為に精神年齢はかなり高い。

 

使用ハンドレッド&技

・闇切・改弐式<やみきり・かいにしき>

元は義父であるリュウセイが所持していた試作型の刀型ハンドレッドを譲り受けた物である。

リトルガーデン入学以前のサベージとの戦いで一度自分の未熟さと耐久率が大分落ちていた事で折れてしまったが入学直後にハンドレッド研究をしているシャーロット・ディディマンディウス博士の手により二度の修復・改良された。

待機形態はその際に高純度のヴァリアブルストーンだと判明したトウカから譲り受けた彼女の母親の形見の品である紅い三角錐のペンダントである。

武装タイプは如月ハヤトの扱う「飛燕」と同じオールラウンダーである<シュヴァリエ型>に分類される。

全身武装時は紫色のアーマーを纏う。

尚武装名については記述が無かった為にオリジナルである。

・奇跡の聖銃<ディヴァイン・ブラスター>

ハンドレッド原作メインヒロインの一人であるエミリア・ハーミット&オリジナルの彼女の妹であるアリナ・ハーミットの婚約騒動に強引に巻き込まれた際に彼女達の許嫁であったウェンズ兄弟に策略によって贋作にすり替えられた際にシャーロット博士の協力により取り戻した後にイチカのカレンへの密かな想いを察していた博士の手により闇切・改弐式の<二重展開(デュアルアクト)>扱いで展開可能になったビームガン。

これはカレンのハンドレッドである<奇跡の聖符>で展開出来る銃と同型である。

タイプは短距離射撃型<スモールシューター>

「奇跡の聖符弾」<ディバインブラスト>

出力はかなり高いがその代わり集弾性が下がっており瞬発火力が劣るがそれでも高火力の射撃である。

 

・剣崎流奥義

『残影斬』(ざんえいざん)

剣崎兄弟がサベージに対抗する為に編み出した剣技の一つ。

一回の斬撃動作で二回連続の素早い斬撃を繰り出すという奥義。

『残影斬・弐式』(ざんえいざん・にしき)

残影斬の上位互換版。

主にサベージのコアへのトドメの一撃として使われるがイチカはISのバトルでも使用する。

『虚斬影幻斬』(きょざんえいげんざん)

イチカとリュウセイで新たに編み出した残影斬を一度キャンセルしすぐに再び振るうというフェイント技。

『残影一突斬』(ざんえいいっとつざん)

イチカが編み出した刀身にセンスエナジーを注ぎ込み協力な突きの一撃を放つ奥義。

この技はイチカが武芸者であるから扱う事が出来る奥義である。

『残影ラッシュ斬』イチカが秋彦を開始早々負かす為に使った連続斬りのラッシュ技。

恐らく彼以外の相手には使われる事は無い。

『残影黒刺斬』(ざんえいこくしざん) 暴走RSVTラウラ戦初使用。

イチカが暴走ラウラが放ったワイヤーブレードを逆に利用して誘導し刀と共に刺し斬る技。

尚彼女の様な武装でないとこの技は使えない。

『』

 

ハンドレッド側キャラ+設定(但し一部のみ他のキャラについては此方では記しません。詳しくは原作参照!)

・如月カレン

ハンドレッド原作主人公である如月ハヤトの実妹で後にイチカとも幼馴染の関係となる歌とタロット占いが大好きなちょっと腹黒い美少女。

「第一次遭遇<ファーストアタック>」時にヴァリアントウィルスに感染したが上手くウィルスに適応出来ず両足が不自由になる奇病を発症してしまうがヴァリアントの武芸者であった兄とイチカが常に傍に居た事で彼女の体内のウィルスへの耐性が変化した事とシャーロット博士の熱心な治療そしてLisaに分け与えられたエナジーにより病気を完治(イチカという+要因で原作よりも若干早い)させた後、武芸者として覚醒し遂には幼い頃からの憧れであった武芸者アイドルである霧島サクラと共にアイドルユニットを組む事が出来、見事デビューを果たし充実した日々を送る。

尚、サクラと同じくサベージを歌声で惹きつける特殊な能力もある。

一方で芽生え始めていたイチカへの想いとずっと抱えていた兄への好意の板挟みに悩んでいた所、イチカ達がウェンズ兄弟と戦っている最中にリトルガーデンに来襲してきた人工ヴァリアントのホムンクルスに偶然遭遇してしまい応戦する。

だが攻撃向きではなかった彼女のハンドレッドではあまり効果が無く窮地に追い込まれていた所に兄弟を倒してシャーロット博士からの報告を聞いて一足先に戻ってきたイチカに救われた事で完全に彼への想いが本物だと自覚し積極的にアプローチするようになる。

「ルナルティア計画」で宇宙へ上がる二週間前にイチカに告白されて正式な恋人同士となった。

その際にイチカ自らが「隠し事は無」という事から異世界人である事も告白した事でリュウセイ以外で唯一事情を知っている。

IS世界に流されてからは束の計らいで奇跡の聖符が改良されたおかげもあり代表候補生にも引けを取らない実力を持ち得た。

美月とはルームメイトなり仲良しになっている。

臨海学校・ホムンクルス戦において強化ホムンクルスに対し自身の歌が通じない事に一度は絶望しかけるが駆け付けたサクラの励ましのよって希望を取り戻した。

使用ハンドレッドはフォーチュン型である「奇跡の聖符」<ディヴァイン・カード>。

タロットカードをモチーフにされており、武装は「奇跡の聖銃」<ディヴァイン・ブラスター>、「奇跡の聖剣」<ディヴァイン・ブレイド>、カードを収束させてエナジービームを放つ<ディヴァイン・ノヴァ>がある。

尚束のアレンジ改良によってハンドレッド本来の姿である全身武装が使用可能になっている。

全身武装時はアイドルコスチュームがメカメカしくなっている状態になる。

「奇跡の聖符弾VerⅡ」<ディヴァイン・ブラストバージョンツー>

イチカのものと違い出力は若干低いが集弾性が向上しており一発の火力が向上している。

 

・如月ハヤト

「ハンドレッド」の原作主人公でイチカの一番の親友(戦友)となる。

カレンの兄でもある。

幼い頃にメインヒロインの一人エミリア・ハーミットと共にサベージ襲撃に巻き込まれその際に怪我を負った彼女の傷からヴァリアントウィルスを吸い出した事が原因でヴァリアント武芸者として覚醒する。

尚、本作では副作用でエミリアとの記憶はほとんど蘇らず、かわりに霧島サクラとの記憶が蘇りお互いに惹かれ合っていた為に早々に恋人同士となった。

尚、彼もリュウセイに弟子入りしていた為に「剣崎流」の奥義を扱える。

 

・剣崎リュウセイ

剣先流二代目師範でイチカの師匠兼義父。

第一次遭遇において兄であるホクトが制作した試作型ハンドレッドであった闇切を 使ってサベージ駆逐を行っていたがヴァリアントウィルスの浸食によって不調をきたし早々に戦線離脱を強いられた。

その後は道場でイチカの修練や他の道場生達の面倒を見ている。

一見好青年の印象があるが実はかなりの女好きで暇を見つけては道場にナンパした女性を連れ込む等をしていた為にイチカからは凄く呆れられている。

 

・剣崎ホクト

トウカの父親でありイチカのもう一人の剣崎流の師匠でもあったがある日、新人武芸者と共にサベージ駆逐を行っていた所、まだ未熟であったにも関わらずに飛び出した武芸者をサベージの砲撃から庇って重傷を負ってしまいその上に今迄蓄積されてきたヴァリアントウィルスの浸食影響もあってか亡くなってしまった。

彼が庇う事になったのがまだ武芸者として未熟だったベルグリット・レオンハルトである。

 

・剣崎ソウカ

ホクトの妻。名前についてはオリジナル。

ヴァリアントウィルスに浸食された彼の傍に常に寄り添っていた為に奇病を発してしまい、ホクトの死後、まるで後を追う様に病死してしまった。

 

・剣崎トウカ

ホクトとソウカの娘でイチカとリュウセイとは義従兄妹、叔父の関係となる剣豪少女。

最初イチカは秋彦の苛めに加わっていた箒の影響で若干のトラウマとなっていたがすぐに打ち解けた。

両親の死後、身勝手な親類等にタライ回しにされそうになっていた所をイチカの進言により阻止された事を切欠に彼に義従兄以上の好意を持つようになる。

リトルガーデンに押しかけてきた後、全世界武芸大会開催前にイチカにその好意を告げるが振られる。

実は体内に侵入したヴァリアントウィルスを完全駆逐・センスエナジーを介した攻撃の一切を完全無効化するという特異体質(原作六巻参照)を持っておりイチカも驚愕した。

尚、原作においては恋愛事にかなり疎く原作一夏並の鈍感で愛の告白を果し合いと受け取ってしまう程の脳筋な彼女だったが、本作ではそういう事は無くイチカへの想いをキッパリ諦めた後新入生の石動リュートに告白され付き合い始めた。

 

・ベルグリット・レオンハルト

ハンドレ原作において最年長の武芸者だったが第三次遭遇サベージ駆逐作戦後に急襲してきた反武芸者団体が起こしたテロの不意撃ちによってその命を散らせてしまった。

実はホクトが亡くなる切欠を作ってしまった人物でありイチカが彼の弟子だったと分かると死に際にその事を打ち明けて涙ながらに謝罪し永眠した。

 

・剣崎コウシロウ

オリキャラその1。

イチカ達の総祖父にあたり剣崎本家の大本を束ねている第五代目当主の御老公。

孫のトウカをかなり気にかけており、イチカの恐れ無き発言を聞き届け彼女を本家へと引き取った後イチカの事も全面的に支援すると約束する。

 

・剣崎ハジロー

オリキャラその2。

イチカの発言を聞いても尚トウカを毛嫌いし暴言を吐きまくっていた四十代のオッサン。

彼も剣崎分家の者でコウシロウには若干の忠誠を示していたが後に自身をコケにしたという明らかな逆恨みでイチカに復讐しようと計画を立て偶然彼と決闘する予定だったウェンズ兄弟に協力を持ちかけイチカの闇切・改を贋作にすり替えるがソウカの形見でもある品を一時奪われた事に激怒した彼に決闘後自分だけ逃げようとした所をあっさり捕まり半ば半殺しにされた後報告を聞いたコウシロウの怒りに触れる事となってあえなく剣崎家から追放され逮捕されたが…次元の狭間に飲まれIS世界に来てしまう。

同じく来ていたギリウス、ブラットと共に明らかな逆恨みの復讐を誓い人工ヴァリアントとなるが、箒のアンチエナジーにより武装解除に追い込まれ海に転落する。

その後の事は読者の想像に任せる。

 

・ブラット・フィッツロイ

ブリタニア連邦の首相であったが己の保身に走るようになり権力乱用。

ウェンズ兄弟からの賄賂やイチカ達の邪魔をしてきた。

が決闘後それも明るみになり逮捕されたがハジローと同じくイチカやハヤトに逆恨みし人工ヴァリアントになるが武の心得等持ち合わせておらずあっけなく敗北し海に転落した。

 

・ホムンクルス

最悪の破壊衝動を持った人工ヴァリアント。

産みの親であるヴィタリーでさえも彼をまともに制御出来ず封印を施していたがウェンズ兄弟の企みにより開放されリトルガーデンを襲ってきた。

が駆け付けたイチカ達におって倒された。

だが残留していたDNAデータを回収していたギリウスの手により復活・強化されIS世界に蘇ってしまう。

喰らったものをエネルギーに変換する能力を持ちカレンの歌声に対する耐性データが組み込まれており自身を倒したイチカに憎悪を向け一度は追い込むが駆け付けたハヤトとサクラ達リトルガーデンの協力によって完全に消滅させられた。

 

ハンドレッド用語設定

・サベージ

突如宇宙から隕石と共に飛来してきた宇宙外生物で本能のままに人類を脅かしている存在である。

体はとても固い甲殻で覆われており体の各所に「コア」部があり其処を破壊する事で活動を停止させる事が出来る。

だがセンスエナジーの障壁を常時展開している為通常の兵器では傷を付ける事が一切不可能であり、同じセンスエナジーの力を扱うハンドレッドによる攻撃か剣崎流奥義の様な特殊な攻撃でしか突破出来ない。

強いセンスエナジーに惹かれる習性がある。

中型、大型に分類される「弩級型」<ラージタイプ>、超大型の「超弩級型」<トレンタタイプ>、飛行種である「飛龍型」<ドラゴンタイプ>の他に人工で生み出されたコアが存在しない「人工・雀蜂型」<レプリカントタイプ・ホーネットタイプ>、広域結界を有しておりセンスエナジーを介したビーム兵器迄をも無効化してしまう「巨蠅型」<ビッグフライタイプ>が確認されている。

・ヴァリアブルストーン

サベージと共に落ちてきた隕石の中に含まれていた紅く輝く鉱石。

ハンドレッドの原材料であり、サベージのコアからも採取出来る。

尚加工前の状態では武芸者適正を計測する判断材料にも扱われている。

又地球上のどの鉱物よりも硬度が高く頑丈な為様々な用途にも転用可能であるが通常兵器にも転用可能な為イチカと束はIS世界に流さないように尽力しているが…

・武芸者<スレイヤー>

センスエナジーを持ちハンドレッドを展開しサベージと戦う事が出来る者達の総称。

「第二次成長期」を迎える以前にヴァリアントウィルスに感染するという絶対条件以外にISの様に性別の縛りは無い為男性でも普通に扱える。

イチカは若返っていた為条件をクリアしている。

但し適正が低いと展開出来なかったり適応出来ずに一般人の様に奇病を発症してしまった者も少なくない。

・センスエナジー

武芸者・人工ヴァリアントのヴァリアントウィルスによって体内に満ちたエネルギー。これを消費しながら戦い、切れると一切の展開が不可能に陥る。

時間が経てば回復するが粘膜接触等での回復も可能。

サベージもこれを有しており障壁に満たしている。

・ヴァリアント

空気感染ではなくヴァリアントウィルスが直接傷口等から体内に侵入感染する事で通常の武芸者よりも強いセンスエナジーの力を持ち得た武芸者の総称。

世界でも数えられる程しかいなくイチカもIS世界で受けた傷から感染した事で覚醒した。

感情の乱れや危機的状況に陥るとヴァリアントの自己防衛本能が自動的に発動・暴走してしまうリスクがあるが長い修練やヴァリアント同士でのキス等の粘膜接触で抑える又はカレンやサクラの発する歌声によって鎮静化出来る。

能力の使用時は目が黄金に光るのが特徴。

又通常の武芸者と粘膜接触するとその者のヴァリアントウィルスを一時的に活性化させる事が可能。

・人工ヴァリアント

ハンドレッドの適性が低かった者や一般人だった者(サクラが例)がサベージの体液を定期的摂取させられる事で人工的にヴァリアントとなった者達。

純粋なヴァリアントよりも暴走のリスクが極めて高く適応出来なければ最悪死に至る者も多数いた。

・百武装<ハンドレッド>

サベージに対抗する為主にワルスラーン社がヴァリアブルストーンを加工して造った武芸者・人工ヴァリアントのセンスエナジーによって唯一扱う事が可能なパワードスーツ。

様々な形となる事でこう名付けられる。

オールラウンダーである「シュバリエ型」、射撃主体の「シューター型」、格闘特化型の「マーシャルアーツ型」、浮遊砲台による砲撃特化型の「ドラグーン型」、特殊攻撃が可能な「イノセンス型・フォーチュン型」、センスエナジーで周囲を満たし結界を張る「フィールド型」、生物型の「テイマー型」がある。

未熟な武芸者は武装しか展開出来ないが修練を重ねれば装甲を展開する「全身武装」、他のハンドレッドを同時に扱う「二重展開」<デュアルアクト>を使う事が出来る。

・センスエナジーバースト状態

体内のセンスエナジーを全開放出させてその際に共振の余波で意識共有空間を作れる状態。

反応数値が高い武芸者や人工ヴァリアントでなければこの状態になる事は出来ず、又意識共有空間はエナジーの共振によって発生する為武芸者同士でないと開けないという事とエナジーをかなり消耗する為しばらく行動不能になるというデメリットがある。

人工ヴァリアントとなりSVTで暴走したラウラを救う為イチカが使った。

 

 

IS側キャラ+オリキャラ設定

・織斑千冬

イチカが一夏だった時の姉でISにおいて世界最強「ブリュンヒルデ」の称号獲得の偉業を成し遂げるがそれが平凡だった一夏や春季が周囲に差別される原因となってしまう。 

政府の思惑によって一夏の救出に向かう事が出来ずまた彼がハンドレッドの世界へ転移し行方不明・死亡扱いになった事で酷く後悔するが残された秋彦と春季を守ろうと決意する。

イチカが死んだ筈の一夏本人ではないかと薄々疑っていたが臨海学校にて偶然イチカの話を盗み聞きした事で彼と仲直りした。

また歪んでしまっていた秋彦に対しては冷たく当たるように接する様になった。

 

・織斑秋彦

オリキャラ3.イチカの元・兄で春季の兄だが天武の才、神童と周囲にもてはやされた事で「自分と姉に立ち並ぼうとする者はいらない」という思考と自分と千冬姉以外の他者を一括りにして見下すという歪んだ性格破綻者となり家族でありながらもイチカ達の努力を散々邪魔したり苛めぬいたりした事で一度春季の努力を挫折させた張本人で自称天才(笑)である。

一夏が死んだと聞いて唯一嘲笑っていたが、ISを動かした男性としてIS学園に入学しイチカとして再び現れた彼に一方的な敵対心を焼いているがイチカや良識なクラスメイトには一切相手にされていない。

尚イチカが一夏本人である事には自身が無価値だったと決めつけ見ようとしていなかった為全く気が付いていなかった。

臨海学校・福音戦において暴走福音を戦っていた暴走イチカ、春季毎滅多刺しにした事で周囲から批判を浴び、おまけに自身が過去に起こしたイチカ達に対する苛めや黒い噂について、情報を刀奈から受け取っていた千冬にもバレてこっぴどく叱られるがあまり効果はなくまたよからぬ事を企んでいる。

彼の本性を知る者達にはかなり毛嫌いされているがそれ等も自分に対する只の嫉妬だと果てしない勘違いをしている。

ISを動かせたのは単なる偶然の血筋のおかげだという事にも勿論気が付かない姉の権力に擦り寄っているだけの只の愚者である。

後かなりのギャルゲーの下種モブキャラ並の変態思考の持主である。

搭乗機体は本来一夏が乗る筈であった白式だが臨海学校で起こした事件により権利を剥奪された。

 

・織斑春季

オリキャラ4.イチカの元・弟で織斑家の末っ子。

兄の秋彦による苛めや努力を散々無にされた事で一度挫折してしまった事と自分を理解してくれた一夏が行方不明になってしまった事の二年間で自宅に帰る事がほとんど無くなり不良街道まっしぐらだったが半年後のある日幼少の頃に武の教えを短期間習っていた鳳亥曇先生に偶然再会し彼に再び武の神髄を叩き込まれた事でかつての己を取り戻した。

ISを動かし学園に入学した際の自己紹介ではぶっきらぼうな口調で話すがイチカが一夏本人だという事に気が付き再会を喜ぶが「千冬や秋彦が過ちを正さない限り(勿論イチカも秋彦には全く期待などしていないが)姉兄弟に戻る気は無い」と言われ教室や食堂では全くの別人として接する様になる。。

イチカや周囲の応援もあり、己が師から培った格闘技「鳳流奥義」を駆使し秋彦との初ISバトルで圧勝し、セシリアとは惜しくも少しの油断と偶然からドローに終わる。

それ以降は秋彦や彼を唯一譲護する箒に対し冷たく突き放す。

自身が助けた少女、音六に異様に懐かれた上に彼女の父親であるタイセイが現首領のセラフィーノファミリーに招かれ次期候補に推薦された事に酷く困惑していたが話を聞き彼女の笑顔を守ろうと決意する一方で自身が首領の座に就いていいものか思い悩んでいる。

だが幼い頃の記憶には…

師の影響か多少バトルジャンキー化している。

搭乗機体は束とイチカが共同制作した新たに造られた469個目のISコアとイチカがIS世界に帰還した直後のサベージ駆逐で回収したヴァリアブルストーンを混ぜ込んで製造された千式雷牙。

 

IS 千式雷牙<センシキライガ>

束とイチカが春季の為に共同制作したISとハンドレッドが融合したハイブリッド機体の試作一号機。

イチカが向こうの世界でシャーロット博士から学んだ技術・理論の一部を使い又向こうの戦友の一人であるレイティア・サンテミリオンの扱うマーシャルアーツ型ハンドレッド「獣王武神<ストライクザビースト>」を参考に束から春季の現状を聞いていたイチカが独自にアレンジを加え完成させた。

機体重量は鈍重に見えるがスラスターが各部位にある事により意外と機動性も高い。

機体カラーは錆色。

ISでいうと第三、五世代。

待機状態は金色のガントレット(ほぼベースは白式と同じ)。

武装

雷閃双爪<ライセンソウジン>

爪型のパンチンググローブで基本武装の一つ。

主に鳳流奥義の拳撃に使用されるが獣王武神のロケットナックルを参考に開発された為に拳から電撃エネルギーを打ち出せる「スパーキングナックル」が繰り出せる。

雷閃双武脚<ライセンソウブキャク>

脚型武装で主に鳳流奥義の脚蹴技に用いられる。

雷砲血神<ライホウケッシン>

ISとハンドレッドのハイブリッドで機体最大の特徴である大拳型の試作武装。

ロケットパンチの様に撃ち出しまるでビットの様な軌道を見せる。

尚、表向きはこれが単一仕様能力扱いである。

再接続で再び装着可能。

束がイチカから抽出した血からヴァリアントウィルスだけを抽出し彼女の持てる技術でこれに無害処理を施したVWC(ヴァリアントウィルスカートリッジ)を採用しこれを消費する事で簡易人工ヴァリアント並の力を発揮出来る為片目が黄金に光り徐々に両目もなる様になる。

又ドラグーン型ハンドレッドをベースに開発されている為にISのBT兵器とはかなり操作性に差があり飛ばしながら他の迎撃行動を行う事が可能となっている。

最大十個のカートリッジがあるが春季の使う奥義の強さにより一度の消費数が変動する。

待機状態による時間経過で補給されるが浮遊するヴァリアントウィルスを取り込む事でも回復する。

格闘技「鳳流奥義」

春季が己が師である鳳亥曇が編み出した格闘技の教えを伝授して培った奧義。

イチカも幼少の頃に習っていた事があるが覚えていないので彼は使えない。

・第壱の型「気脈流一鉄功<キミャクリュウイッテツコウ>」

相手の気の流れを読み取り対応する奥義。

初戦の相手に良く使用されるがVSセシリア戦では春が己が実力だけで何処までいけるか試した事で唯一使われていない。

・第弐の型「白鳳閃百撃<ハクホウセンビャクゲキ>」

百の高速拳撃ラッシュを叩き込む奥義。

・第参の型「鳳凰烈突破<ホウオウレットッパ>」

拳を突き出すと共に風を味方につけ相手の武装を風圧で吹き飛ばす技。

・第四の型「片速円舞脚<ヘンソクエンブキャク>」

片足を突き出して高速回し蹴りを叩き込む奥義。

・第五の型「鳳凰打羽陣<ホウオウウチバネジン>」

高く飛び上がり上空からの重い拳の一撃を叩き込む奥義、

主にISバトルでは急上昇からの雷砲血神再接続からの急降下の必殺の一撃として用いられる。

・第六の型「大回転鳳閃拳」<ダイカイテンホウセンケン>

手首を激しく回転させながらエネルギーを拳に集中させ放つ技。

尚、生身でやるとかなり消耗が激しい為対IS等にしか用いられない。

・第七の型「双速円舞脚」

片速円舞脚の上位互換版。

・第八の型「」

 

・篠ノ之美月

オリキャラその4.イチカや春季の幼馴染である箒の妹だが彼等同様に周囲によって出来損ないの扱いを受けておりストレス発散と称して箒の苛めも受けていた。(勿論篠ノ之家両親は気が付いていない)

時には秋彦も苛めに加わっていた為に苛められなくなった今でも恐怖を抱いており彼等には距離をおいている。

自身も一夏と一緒に誘拐され唯一一夏が死んだ訳ではないと知る彼女が千冬にこの事を話すがあまり彼女を快く思っていなかった千冬は死んだという鑑定結果の方を信じてしまい相手にしなかった。

唯一の味方である束やイチカ達を凄く信頼していていて再会したイチカに対して好意を持っていたがカレンと恋人同士になっている事を知ってすっぱりと諦め彼等を応援する。

中学から弓道に目覚め部にも入っていて高い実力を発揮している。

専用機は桜陽朱雀。

桜陽朱雀(おうようすざく)

桜色にカラーリングされた美月の専用機。

ヴァリアブルコアとの融合機でもあり束は第四世代と唱っているが実際は第五世代並の高性能を誇る。

武装

創聖弓剣【桜陽弓剣】実体剣とEN矢を放つ弓の切り替えが可能な武装。

参考モチーフは「勇者ライディーン」のゴーガンソード/ゴッドゴーガン。

【桜雪】桜色のビームを放つカートリッジ式ビームガン。

単一仕様能力は桜陽弓剣に桜雪を合体させ大出力の大型EN矢を撃ち放つ「」

 

・篠ノ之箒

本来は原作ヒロインの一人だが本作ではアンチ対象。

幼馴染である秋彦の歪みには全く気が付かず常に彼を擁護する発言と行動しかしない傍迷惑で哀れなモップである(イチカ命名)。

幼い頃に周囲に出来損無いの扱いを受けていた美月をストレス発散の道具にし苛めていた事がしばらくして束にバレ説教されるが「姉さんのせいで転校云々…」を楯にして自身は全く反省していなかった。

が福音戦にて秋彦の愚行を目の前にし自分が縋っていたものが過ちだと自覚し始め変わろうと決心する。

臨海学校延長戦にて彼女がトウカと同じアンチセンスエナジー体質持ちだという事が発覚した。

恐らくはサベージからのウィルスにより目覚めたのではないかとイチカは推測している。

専用機は原作通り紅椿だがヴァリアブルコア融合機となっており現在あまり使いこなせてはいない。

 

・篠ノ之束

本来ならば宇宙開発を目的としてISを作った天災科学者であるが、欠陥や世界各国の思惑、自身と千冬が行ったデモンストレーション「白騎士事件」が原因で女尊男卑思想を浸透させてしまった事を深く後悔している。

一夏達を溺愛していた事もあり末妹である美月の話を信じて一夏を探し続けていた。

イチカに再会した後は彼から聞いたハンドレッド技術の吸収やサベージ対策プランを練っている。

ちなみにイチカを「イッ(いっ)くん」、春季を「はっくん」、美月を「美月ちゃん」と呼んでいる。

尚箒や秋彦とは一夏や春季、美月達を苛めていた事も分かっており今の所箒に対しては縁を切る寸前で踏みとどまっており、秋彦に対しては一切相手にはしていない。

臨海学校後、箒との溝は埋められた。

 

・更識刀奈

皆さんご存知のシスコンマダオ生徒会長。

突如湧いて出てきた素性の知れないイチカやカレンに疑惑をもつがイチカに釘を刺されおとなしく護衛任務に入る。

ついでに簪との仲の事はイチカには見抜かれている。

臨海学校後、盛大な演説で秋彦を追い詰めた。

 

・鳳亥曇(ファン・イドゥン)

オリキャラその5.世界のありとあらゆる格闘技を習得しISが浸透した現在でも臆する事無く優勝をかっ浚い武芸者の名を轟かせ、春季に武の神髄を請い自らの奥義「鳳流奥義」を伝授した凄腕の武の達人である。

一夏達が幼い頃に偶然日本に来日していた亥曇が彼等を気に入り滞在している間教えていた。

そして数年後に再び日本にやってきていた亥曇は不良街道まっしぐらだった春季に偶然再会し彼の事情を聞き本格的に「鳳流奥義」を伝授させた。

ちなみに生身でISを相手にした上に打ち倒した事があり一部ではかなり有名となっている。

又原作ヒロインの一人鳳鈴音の叔父でもある。

 

・音六・フェッロン・セラフィーノ(イメCV:宮崎 羽衣)

春季のオリジナルヒロイン。

一年五組へと転入してきた太目の紫ツインテールを結んだイタリアと日本のハーフでイタリア代表候補生のミステリアス美少女。

実はイタリアンマフィアの一角であるセラフィーノファミリーの首領の娘である。

本人は普段は至ってかなり温厚で天使な母親似の性格である。

但し、マフィアの娘故の感性か人の悪意に物凄く敏感であり初対面で彼女に近付いてきた秋彦の歪みきった悪意に気付き彼を恐怖の対象として見る様になる。(同様に彼に唯一味方し自身が負い隠していた傷に対して散々罵詈雑言を吐いてきた箒や自身を貶めようとしたキナも同様}

動物に懐かれやすい体質らしく意外とかなりの大食漢であるがIS学園に向かう最中彼女に寄ってきた動物達に所持していた携帯食料を全部あげてしまう程の動物好きが災いし空腹で倒れていた所を偶然鈴に救われその食べっぷりで彼女やホテル職員を唖然とさせていた。

学園長の許可を取り寮でピーノと名付けた白猫を飼っており授業時以外はほぼ頭に乗せている(というか乗られている)。

幼い頃にイチカ達以前にこの世界に飛ばされてきていたヴィタリー・トゥイニャーノフの残党を名乗る者率いる研究機関に誘拐され人工ヴァリアントの被検体とされてしまうが慌てた父親達に救出され一命を取り留める。

この影響で左目が黄金のオッドアイとなっている。

またこの数々月後に起きた首領候補襲撃事件にて父親を庇いその時負ってしまった深い刺傷の痕を「忘れたくない」という理由で消す事を拒んでいたがEPⅡⅩⅡにおいて彼女の専用機付喪月神に搭載されていた百武装を展開した事で彼女の体内のヴァリアントウィルスが活性化した事により綺麗さっぱり消えたが後悔していないらしい。

一時暴走しかけるがカレンの歌によってコントロールに成功する。

一年半前に日本に家族旅行に来ていたがはぐれてしまいしつこい不良ナンパに絡まれていた所を春季に助けられて以降彼に異様に懐く様になるが…。

実はこれ以前にも彼と幼い頃出会っていたみたいだが…

性的知識は家庭環境故か皆無で羞恥心も無い為彼をドギマギさせてしまう事もしばしば。

実は彼女も理由は違えど春季と同様一度努力を諦めてしまった経験もあり春季の傍に居たいが為に強くなろうと決意する。

ISが出回り始めた当初は動かせない男の人にとって悪意の塊でしか無いと嫌っていたが、人工ヴァリアントにされた事が原因かまたは他に起因があるのかは不明だがISコア人格の声が聞こえたらしくIS本来の意図である宇宙開発へとちゃんと扱われる事を夢に抱き自身も日々努力している。

また誘拐事件の時に同じ人工ヴァリアントにされてしまったアドヴァンスドとしてまだ幼かったラウラとも会っており(彼女は覚えていたがラウラは実験の影響で記憶が混濁していた為忘れていた)、学園で再会し暴走したラウラをイチカと共にエナジーバーストで開いた意識共有空間で救った後彼女を「ウサちゃん」と呼んで可愛がっている。

ラウラもその事を思い出しその時の名残で彼女を「お姉ちゃん」と呼ぶ様になる。

又ISの一通り以上の整備を出来る才能も持ち、偶然居合わせた簪の打鉄弐式のセッティングを手伝ったり、ラウラの専用機であるシュヴァルツェアレーゲンのコアの意思を聴き取って機体の再設計にも協力した。

 

春季の事を「はーくん」、イチカの事を「イーくん」と愛称で呼んでいる。

「付喪月神」<ツクモゲッシン>

音六の父親であるタイセイが彼女の為にファミリーのIS顧問と総力を上げてイタリア政府から譲り受けていたISコアで共に作り上げた専用IS。

彼女は「ツクモ」の愛称で呼んでいる。

待機形態は三日月型の装飾が施された指輪。

装甲の強度は百武装の力未使用時においては一般機よりも少し厚目な程度。

機体カラーは黄色でまるで狐を思わせる様な見た目の装甲をしている。

実はタイセイが誘拐事件において研究所で回収した治療データと一緒に不思議な石(ヴァリアブルストーン)も回収していた彼がデータを照らし合わせた際(実は百武装に関する記述データが僅かに紛れておりそれをISの武装と勘違いした)にISとの親和性に気が付きコア部に搭載していた為正式な百武装との融合ハイブリッドISである為第三世代ISとはとてもかけ離れたかなりのハイスペックな機体となる。

ヴァリアブルコアについては音六の人工ヴァリアントの力が本格的に覚醒した際に百武装として変化、拡張領域に追加される形となり以降は傷のあった左手にはめる緑色の三日月型のヴァリアブルストーンブレスレットとなった。

武装(開発考案者であるタイセイの趣味も入りつつ絶妙な火力の数々がある)

月神双水光<ゲッシンソウスイコウ>

ISとしての装備である水の弾丸を放つ青い二対の小型照銃。

主に牽制等に用いられる他、二対を連結可能で単一仕様能力発動で扱われる。

炎月霊穿刀<エンゲツレイハクトウ>

大出力の炎を纏いその圧倒的な火力で斬り穿つ一振りの大きな刀。

サブウェポンとしてもう一振り搭載されている。

単一仕様能力は月神双水光を連結させた大出力レーザーの「付喪双月波弾」。

付喪紅炎装<ツクモコウエンソウ>

音六のセンスエナジーによって生み出され、展開される紅いガントレット型百武装。

指部に格納された六色の炎を纏う薄く小さ目な御札型<カード>ビームビットがある為主に型はドラグーンタイプよりに分類されるがガントレットの為武装の組み合わせ次第でフォーチュンやマーシャルアーツ、シュバリエタイプに引けを取らない戦い方が可能。

展開時には自動的に全身武装状態となり付喪紅炎装の炎を灯した九尾の狐の尾を模した装甲が追加される。

あくまでもこの尾はSENタンクではなく残量目安の為装甲を破壊されても問題無く百武装を使用出来る。

ドラグーンを飛ばし炎のバリアを展開させる事も可能でサベージの砲撃に対してもかなり有効な防御手段と成り得る。

一旦ドラグーンを呼び戻し両手をクロスさせ、炎の大出力収束ビームを撃ち放つ「付喪紅神炎」(使う属性によって名前は変わる)、炎月霊穿刀と組み合わせた「付喪炎月神刀斬」がある。

 

・タイセイ・フェッロン・セラフィーノ

どこぞの金髪ライダーの様な風貌のイタリアンマフィアの一角であるセラフィーノファミリー第十四代目現首領であり音六の父親である。

三十代前半であるが実年齢より老けて見られる事が多く本人は結構気にしている。

候補時代に幼い音六が誘拐され人工ヴァリアントの被検体とされてしまったり、候補敵として自身を襲撃してきた親友の弟の凶刃から彼女に庇われたりといった経験もある為彼女を物凄く溺愛している。

音六の専用ISを開発する際に誘拐事件の時に回収した被験者の治療データに偶然僅かにも百武装の記述があり(しかし百武装とは書いていなかった為ISの装備と勘違い)一緒に回収したヴァリアブルストーンとISとの親和性に一早く気が付き搭載した本当の第一人者でありこの話を聞いた束も驚いている。

愛娘が珍しく懐いた春季を偉く気に入り彼を次期第十五代目首領候補に推薦しようとしているが現在保留中。

実は春季の師である亥曇とも候補時代に出会って奥義を習っていた事があり彼もISを生身で相手出来たりする。

 

・繭音(まゆね)・フェッロン・セラフィーノ

日本人。タイセイの妻で音六の母親である。

「~なの」の喋りが特徴で娘よりもほんわかしている。

元は良家出身の御嬢様であったが古いしきたりにかなりの不満を抱えており遂に我慢出来なくなった彼女は高校時代に執事であったレキナと共に家出を決意した…所でまたこれ質の悪い不良に絡まれてしまっていた所を偶然日本で亥曇との奥義修行に励んでいたタイセイに助けられ彼に一目惚れし懸命なアプローチをかけ付き合う事になった。

彼と付き合った際彼女の苦しみを理解してくれなかった実家とは一切の縁を切った。

付き合った当初は彼がマフィアの一員だと知り驚くが現在ではセラフィーノファミリーボスの妻として彼を精一杯支えている。

娘とかなり似ている容姿の為初対面の人には母娘ではなく姉妹に間違われる事が多いのが彼女の唯一の悩み。

 

・レキナ・灰鉄(はいがね)

二十代後半の黒髪ストレートロングの女性。

元は繭音の女性専属執事だったが主である彼女の願いを聞き入れ共に家出。

女性だとばれてしまった事で主と共に不良にしつこく絡まれていた窮地をタイセイに救われて以降ファミリーの一員となり、彼の専属執事としても仕える様になる。

ファミリー内外では「刺剣のバトラー」とも呼ばれており恐れられている。

 

・ゴウシロウ・フォン・フィーノ

候補時代のタイセイとは次期首領の座を争った中で彼とは「ゴロちゃん」、「タイセイ」と呼び合う親友でもあった。

真正面からの正々堂々の勝負を望む熱い男だったが彼の弟であるヤタ等部下数名がタイセイを襲撃、その際に彼の娘である音六に重傷を負わせてしまった責任を取り隠居した。

ちなみにフィーノは候補に与えられる襲名で隠居した現在は元のアルイアーに戻っている。

 

・ヤタ・フォン・アルイアー

ゴウシロウの弟で凄腕の情報屋として名を知られていたがある日候補敵であったタイセイに対して部下数名を引き連れ襲撃をかけるも、父の危機を察知した音六が割って入った事により失敗。

その際怪我をさせるつもりのなかった彼女に重傷を負わしてしまいその責任を追及されるが被害者であるタイセイの気がすんでいた事と音六の傷の完治の見込みがあった事、そして彼に並ぶ情報を扱えている者はいないとの事で今後一切ファミリーの命令に逆らう事を禁じられる事で除名を逃れる事になる。

怪我をさせてしまった音六に対し負い目を感じておりまたタイセイの人望に酷く感銘を受けている。

次期首領候補に推薦されている春季の依頼には渋々ながらも彼を認め引き受けている。

 

・キナ・サヴェビッチ

名家の御嬢様だがかなりの我儘でISの登場によって女尊男卑に染まりよりそれを加速させてしまった典型的例であり自身の障害と成りかねない音六の登場に焦りを感じ代表候補試験の際音六の優しさにつけこんで卑劣な手を使い彼女を貶めた張本人。

だが再び音六が代表候補に挙がってきたと聞き、彼女を毛嫌いしていた秋彦に嘘を吹き込んで専用機を奪い取る計画を実行するが偶然通りがかった鈴と音六を探しに来た春季に目撃され阻止される。

それでも彼女は謝罪すらせず逃げたが…逃げる最中で遭遇した謎フードの男の甘い提案に乗ってしまい眠らされた上誘拐される。

尚この事を知ったイチカが彼女を調べようとするが友人などいる訳が無かった為行方知れずだったが、臨海学校戦にてギリウスのサベージ化の実験台にされてしまっていた。

音六のエナジーバーストにより浸食を取り除かれ助けられた事で改心した。

 

・謎フードの男、ギリウス

音六の専用機剥奪計画を潰され逃げていたキナの前に突然現れ、彼女を攫った謎の男。

どうやら百武装を所持し、サベージを操る術を身に着けておりイチカの事を知っているようだが…。

実はウェンズ皇国の元第二皇子であったがウェンズ王家全員の暗殺を目論みそれを素性を調べていたイチカによって看破された事で彼等との決闘の後に追放処分を受け、終身刑を言い渡されていた。

だがある日偶然発生したと思われる時空の亀裂を通ってIS世界に潜みイチカ達への復讐を誓っている。

以降は亡国企業を乗っ取り暗躍している。

使用ハンドレッドは「インビジブルダガー」センスエナジーを用いて姿を消す事が可能。

 

・イツカ・アランシュ(元名無し)

オリキャラ。イチカがローグ社長達の救出をする際に牢の見張りをしていた少女。

元は捨て子だった為に名前が与えられてなく闇市場で正に奴隷生活を強いられていた。

後に親友となる少女アヴリルの存在により強く生きてきたがある日彼女が目の前で強姦されていたのを最後に死んでしまったと聞かされ世界に復讐を誓い各地でテロ活動を行っていた。

イチカの圧倒的な戦術に追い詰められた末に男、ミドウに渡されたサベージの体液が大量に入ったアンプルに手を出してしまい変貌してしまうがイチカのエナジーフルバースト及び束の治療によって己を取り戻す。

名を与えてくれたイチカを兄の様に慕い、束を本当の母親の様に慕っている。

専用機は束自らが開発したエメラルライド・ナチュルス。

エメラルライド・ナチュルス

束が義理の娘となったイツカの為に自ら開発した緑色の新型機。

絶対防御とは別に扱われるシールドが搭載されており攻守共に非常にバランスに優れた機体。

ヴァリアブルコア融合機。

武装 【エメラルライドスピア】エメラルドの装飾が施され取り回しの良いビームスピア

【ライトハンター】ビームライフル

【エメラルライドシールド】亀の甲羅のような楯。

物凄い強度を誇る。

単一仕様能力はシールドを一気に展開させながら突撃しその余剰熱で相手をすり減らす「玄武緑楯(ゲンブリョクシール)」。

 

・ミドウ・オルガスト

イツカがテロリスト時代に出会った大鎌を持った青年。

一々勘に触る話し方で相手を挑発し一気に薙ぎ払う戦法を得意とする。

何処の機関にも所属せずクレイジーな無法者だと言われており又腐敗した国が嫌いという発言をほのめかす。

その為イチカは武芸者であると確信していた。

 

専用ハンドレッドはシュヴァリエ型の二対の大鎌「」。

 

・アヴリル・ロースコット

イツカが奴隷時代に出会い唯一の親友と呼べた少女。

元は貴族の家系だったがあまり裕福とはいえず度重なる借金に苦しんだ末に両親が彼女を売り渡す契約で奴隷となる。

その為かイツカも出会った当初は彼女を毛嫌いしていたが慈愛に満ちた優しさに触れた事で只の偏見だったと思い知る。

だがある日雇い人の男数人に囲まれ強姦された末に死亡とイツカには伝えられたが…実はこの後偶然通りがけた英国紳士に救われており新生活を始めていた。

がそれも束の間、武芸者としての素質を見抜いたギリウスに誘拐され目覚めさせられた上に操られ急襲してきた。

急遽救援に現れたハヤト達のおかげで彼女は救われ以後IS学園の生徒として生活するようになった。

使用ハンドレッドはテイマー型コンドルの「エアスト」。

彼女には動物形態から武装形態となれるレベルまでの腕がある。

 

 

それぞれの原作他キャラヒロインとの関係

ハンドレッド

エミリア ハヤトと並ぶ良き戦友。

アリナ オリキャラその6エミリアの妹.リトルガーデン入学式前にイチカに一目惚れしたと抱き着いてきて以降彼を半ばストーカーするようになる。

カレンと正式に付き合った今でも彼女だけは未だイチカを諦めていない。

クレア ハヤト同様に好意を抱くがどちらを婿に貰うべきか迷っている内に二人共恋人を作ってしまった為に一人後悔する。

リザ 耳年増でカレンにエスコートを伝授していた。

フリッツ 良き戦友。だけど原作では一人だけ力が覚醒していない為ほぼ空気。

レイティア 良き戦友。ほぼフリッツに弄られているか鍛錬しているかである。

アルフォンス 犬のテイマー型ハンドレッドであるシルバーブリッツを駆使するフリッツよりも若干出番の多い太っちょな男子生徒。

ちなみにイチカのリトルガーデン寮ルームメイトで彼とも結構仲が良い。

但しシルブリの暴走が巻き起こす事件に巻き込まれたりもしたが…

オルフレッド姉弟妹

ネサット ハヤト同様に気を許す存在。

クロヴァン 姉に姉弟以上の気持ちを抱いている為か彼女に他の男が近付くのを嫌がるが彼女に咎められ仕方無く協力を妥協している。

ナクリー 憎まれ口を叩くが本当は彼等を凄く信頼している。

IS側

セシリア イチカに対しては淡い恋心を抱く様になるがボッチ飯だった為食堂の会話を聞いておらず彼がカレンと恋人同士である事に気が付かなかった。

ようやく真実を知り一人絶望していたが…

春季に対しては良き戦友。

秋彦に対しては家族を大事に出来ない愚か者との印象を抱いている。

鈴 イチカが一夏だと見抜き幼い頃から淡い恋心を抱いていたがカレンとの関係を知り引き下がる。

春季の事は叔父の影響でバトルジャンキー化した事を多少心配している。

秋彦?あーアイツは腐ったゴミにたかる蠅以下だわ。

シャルロット イチカ 腕っぷしに憧れる。

春季 マフィアの首領候補に選ばれている彼に驚くが救われ惹かれ始めるが…

秋彦 姉の七光だよね…

ラウラ イチカ 力を振るおうとしない愚か者と最初は思うが彼に救われ兄上と慕う様になった。

春季 千冬の汚点と当初は思うが彼の再起する真の強さに惹かれる。

秋彦 千冬の汚点その2.後に唯一の汚点となる。

 

ISヒロインズ専用機の強化点

ブルー・ティアーズ 元々レーザーという割と高い火力を持っているので今の所は変更無。

甲龍・改 サベージに対抗出来る火力にイチカと束の手で改修。

龍砲の弾丸を拡散式に切り替えられる様になった事で従来よりも火力が上がった。

近接・中距離武装である双天牙月も性能が向上している。

ラファール・リヴァイヴシャルロット仕様 彼女の父親ローグがイチカから提供されたデータを元に開発したパーフェクトパックにより第三世代の中ではトップクラスの性能に。

シュヴァルツェア・レーゲン RSVTシステム<レプリカントサベージ&ヴァルキリートレース>の暴走の過剰負荷とラウラが無意識に発していたセンスエナジーに耐えきれず又イチカにトドメを刺された事で機体フレームは全壊してしまうが奇跡的にコアは無事だった為イチカと束、ラウラへの愛情を持つ音六の手で再設計・改修され、シュヴァルツェア・レーゲン デンスフォッグススプライターとして生まれ変わった。

・シュヴァルツェア・レーゲン デンスフォッグススプライター

シュヴァルツェアレーゲンが再設計・改修を施され生まれ変わったラウラの新たな専用機。

彼女の人工ヴァリアント、アドヴァンスドの力に耐えられる様に勿論ヴァリアブルコアとISコアを融合させたハイブリッド機体である。

その際音六の提案によりレーゲンのISコア人格を複製したサポートAIも搭載された。

ISとしての武装にはワイヤーブレードを脚部に一部増設以外の大きな変更点は無いがハイブリッド機となり、サポートAI搭載のおかげでAICの稼働性能が従来よりも飛躍的に上昇している。

尚、待機形態は紅い太棒状のヴァリアブルストーンで彼女のアドヴァンスドの証である左目に着けた眼帯に普段は嵌めている。

【黒霧雨の宣告神腕手】<シュヴァルツェア・ゴッドスマ―ケンハンド>

人工ヴァリアントとして完全に覚醒したラウラがレーゲンで扱うオリジナル百武装。

春季の機体である千式雷牙の百武装擬き、雷砲血神の運用データを元に開発された為酷似しているが性能はかなり上回っている。

カラーリングは黒と金のツートンカラーを交えた巨大な腕で両手に装備される。

ラウラは主に軍で培った技の数々で戦う。

エナジー弾を込めて撃ち放てるホーミングガトリングが腕手内部に内臓されており誘導性・集弾性に大変優れた武装でありタイプとしてはオールラウンダー型に分類されている。

又レーゲンのAICもしくはE、Nバリアと併用する事で攻撃力を持った不可視の壁弾を飛ばす事が可能。

融合機となった為第四世代機。

 

レーゲンのISコア人格

人格モデルは黒、ドイツ繋がりで「シュヴァルツェスマ―ケン」のリィズ・ホーエンシュタインである。

尚汚い性格では無い!(個人的推しキャラなので改変)

マスターであるラウラには今後「リィ」と呼ばれる様になる。

 

白式のコア人格 ハクナ

愚行を犯した秋彦に代わって謝罪する為現れイチカに名付けられた白髪の美少女。

臆病な性格で秋彦に対して不満を募らせていたが反論は出来ず雪羅へとセカンドシフトさせ傷を癒した事で事件が引き起こされた事を悔やんでいる。

現在彼女のコアを用いて新たな機体が造られる計画がある。

 

 

 

 



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帰還とIS学園入学偏
EPⅠ「帰還と再会の中でPARTⅠ」


うおお!?この話数で既にお気に入り数が六十件を突破しているだとお!?
ありがとうございます!大変気力になります!



「ええどうぞお好きなタイミングで」

この男ビル・ハーヴェイはある野望を糧にタイムマシンを遂に完成させ起動実験を行っていた。

隣で実験を鑑賞する教皇、セリヴィア・ノートルダムパウロ三世の黒き野望を見抜けずに…。

「おお!…タイムマシンの起動実験は成功だ!後は本格的な量のリザーブストーンを掻き集めて起動すれば私の望みが叶う!」

「残念ですがビル・ハーヴェイ貴方の希望は叶わないでしょう…」

「何?グッ!?…き、貴様一体どういうつもりだ!?…」

「私にはその装置が必要なのですよ」

なんとセリヴィアがビルをハンドレッドの銃で「くうっ!?一体何が…ハッそうだ!おーいカレン、そして皆大丈夫か!?」

俺は気が付き立ち上がる。

ってあれ?…今は感じる筈の無い感覚が体を廻る。

「此処は地上なのか?でも俺達は…」

確かにある計画の始動で宇宙へと上がっていた筈なんだ…だけど周りには青い海と砂浜が広がっているだけだった。

「!」

すぐ近くで俺の大切な恋人であるカレンが気を失って倒れていた。

「おいカレン大丈夫か!?…そうだ今すぐ会長達に連絡を!…繋がらないだと!?…」

PDAですぐさま他の皆の無事を確認しようとするが何故か繋がらない。

「うう…」

俺がこの事態に騒いでいるとカレンが目を覚ます。

「カレン!」

「イチカさん?…一体何が?…私達確か宇宙に居た筈ですよね?」

カレンも不思議そうに海を見つめている。

「ああ、それは確かな事なんだが…どうしてなのかPDAが誰にも繋がらないんだ…」

「ええ!?どういう事ですか?」

「うーん…」

俺はここに至る経緯を思い出そうと頭を振り絞った。

~約二時間前、ルナルティア基地~

「宇宙に上がってすぐにサベージが襲ってくるなんてツイてないぜ…」

「だけどあれ程までの強い力を感じたのは初めてだ…気を引き締めろハヤト」

「分かってる!」

あれからはや九年の月日が流れ武芸者育成機関「リトルガーデン」の武芸科二年生となったある日、ワルスラーン社が提唱する武芸者が中心となった宇宙進出計画【ルナルティア計画】が遂に始動し俺達は宇宙へ上がった。

「これがあの人の目指した宇宙か!…」

初めての宇宙は凄く感慨深いものだった。

「イチカさん!兄さんもお待たせしました」

「ハヤト君!イチカ君もしばらく振りね!」

俺の後に宇宙に登ってきたカレンと彼女のアイドルとしてのパートナーである霧島サクラさんが駆け寄ってくる。

「ハヤト君早く一緒に基地内を見て回ろうよ!」

「おうそうだな!という訳だから俺達は一足先に行ってくるぜ!」

ハヤト達はルナルティア基地内探索に一足先に出たようだ。

「イチカさん、カレン達も是非見て回りましょう!あの銀髪娘が来ない今の内に…」

「あー、ああ!…」

凄く良い笑顔を浮かべるカレンだが俺は少しだけ黒い何かを、恐怖を感じた。

宇宙に上がる数日前に俺は意を決して彼女に告白し晴れて恋人同士となった俺達だったがその事実が広まってもどうしても諦めてくれない子が一人いた。

ハヤトの幼馴染であるエミリアさんの妹アリナ・ハーミットその人だった。

早い話が俺に一目惚れしてかなりの頻度でストーカーしてくる子だ。

俺もカレンもこれには非常に困っていた。

「あの子は早くなんとかした方が良いんじゃないですかイチカさん!」

「俺も何度も注意しているんだが中々なあ…今度エミリアさんにも注意する様に言ってみるよ」

「そんなんだからいつまでもカレンは心配でたまらないんです…」

カレンはそっぽを向いて俯いてしまう。

「悪ィあまり強く言えなくてな…」

「…まあそれがイチカさんの良い所でもあるんですけどね」

「はは…」

「さ、早く行きましょう!」

俺はカレンに手を引かれていった。

「チッ!クラウディアがいつまでもお姉ちゃんにキマシ!してたせいでイチカ君が居ないじゃない!」

「あはは…クラウディアもだけどアリナもちょっとは落ち着こうね?」

「ムキッー!お姉ちゃんと違って私はどうしても彼を諦めきれないの!

行ってくる!」

「アリナ!…もう!…私だって諦めきれていないわよ…」

そうエミリアの幼馴染であるハヤトは彼のもう一人の幼馴染である霧島サクラと既に恋仲となってしまっていたのだ。

自身がとある理由で男装していたせいもあってか彼との時間が中々作れなかったせいもあっていつの間にかの事だ。

自分が振られてしまったと自覚して今迄彼に抱いていた想いが行き場を失ったと分かった時は凄く悲しくなった。

だけどいつまでも落ち込んではいられないと彼女は新たな決意をした。

なら大切な人を影から守ろうと…そう思い立ち早々に立ち直る事が出来たのだ。

「ハヤト…!?この感じは!…」

その頃、

「!コイツは不味いぞ!…」

「どうしたんですかイチカさん?」

俺の【ヴァリアント】武芸者としての才が危機を告げてくる。

「来る!…」

「もしかしてサベージが!?」

ウー~!

カレンも事態に気が付いた瞬間、緊急警報<エマージェンシー・コール>が響き渡る。

「司令部に急ごう!」

「はい!」

同じ頃、地上のとある一室ではある実験が行われていた。

「後はリザーブストーンをはめ込めば起動出来る筈なんだ。

今から【時空転移装置】<タイムマシン>の起動実験を開始するが良いかな?」

撃ったのだ。

「貴様も過去に用があるというのか?セリヴィア・ノートルダムパウロ三世!…」

「ええ、ですがもう一つあるのですよ私にはね…」

「何?…」

セリヴィアは笑みを絶やさず淡々と自身の目的をビルに告げる。

「なんだと…そんな馬鹿な事が…私達人類は貴様等の為に存在しているとでもいうのか!?…」

「ええその通りですよ」

「クッ!?…リニス……」

ビルはその言葉を最後にゆっくりと息を引き取った。

「あの世で愛しい人には会えたでしょう…さて、「収穫の時間」です」

セリヴィアはそう言いながらタイムマシンへと手を伸ばしていった。

……

「クッ!?なんて数のサベージだ…」

「これではタイムリミットに間に合わない!…」

俺達は突如ルナルティア基地に押し寄せて来たサベージの大群に手こずってしまっていた。

俺を含める数名は純粋なヴァリアントだからまだ良いのだが他のSE値が少ない一般武芸者や基地タワーの最上階でサベージを基地内に引き付け留めておく為に月面経由で地球上にも生中継されている突発ライブを開いて歌っている二人…カレンとサクラさんは共におよそ一時間という酸素カプセルの活動限界時間がある。

だから早くに決着を着けなければ二人の生命が危険に晒されてしまう。

PiPiッ!

「『ハヤト君にイチカ君聞こえるかな?

たった今しがた別の地点から時空の亀裂が発生したのを観測したんだ』」

シャーロット博士から通信が入りそう告げてきた。

「なんだって!?一体何処からなんです?」

「『ああそれなんだがどうやらタワー付近に開いたみたいでね』」

「それは不味い!カレン達が危ない!」

「でもどうするんだイチカ?あの大群を俺達だけで突破は…」

ハヤトがそう言ってくる。

ああクソッ!援護が欲しい所だが他の者達は皆それぞれ対応していて…

ドヒュウン!

そう思っていた矢先にビームがサベージの大群の一部を焼き払った。

「待たせたな!」

「こっちはあらかた片付いた。そしたらメイメイから通信が入って大急ぎで救援に来たぞ!」

「フリッツ!レイティア!」

「僕等もいるよ!そらっ!」

「そぉれ!」

更に二巴のビームがサベージを散らす。

「エミリア!それにアリナも…」

「か…勘違いしないでよね!私はまだ諦めてなんかいないんだから…」

アリナはぶっきらぼうにそう言ってくる。

「コイツ等は俺達に任せてお前等は早く行け!お姫様を助けに行くんだろ?」

「ああ!…ありがとう!イチカ」

「フリッツ達のおかげで道が開けた!ハヤト共に行こう!」

俺とハヤトは外部武装<アウター>のブースターを全開にし大群に空いた隙間からタワー付近へと急いだ。

その頃、タワー最上階

Sideカレン

「サクラさん…」

タワー付近に突如時空の亀裂が開きサベージがこちらに押し寄せてきているとの情報が入り、私はとても不安になり歌うのをやめそうになりました。

「大丈夫よカレンちゃん、きっと…いいえ絶対にハヤト君達が助けに来てくれるからそれまでの辛抱よ!

だから私達は私達にやれる事を精一杯やるのよ!

といってもあの胡散臭い社長にいいように動かされてる様な気がしてならないんだけどね…」

不安になった私をサクラさんは励ましてくれました。

「そうですよね…私とサクラさんの大切な人を含む皆さんが戦っているのに私だけが此処で諦める訳にはいきませんものね!」

「その調子よカレンちゃん!

私も限界を超えなくちゃいけないわね!」

「私だって負けません!」

ライブが再開されると同時に侵攻を再開したサベージの大群がこちらへ向かって押し寄せてきた。

「キャッ!?」

私とサクラさんのSEで形成されたフィールドにサベージが体当たりしてこようと迫ってきます。

体当たりが当たりフィールドが揺れ僅かに一部が欠けてしまいました。

「大丈夫よ落ち着いて私がすぐに再形成させるから!」

「ええ歌い続けましょう!」

イチカSide

「チィッ!?…フリッツ達が撃ち漏らしたサベージが何体かこっちに来やがってる!」

「けどあの程度の数なら俺達の連携で突破可能だ!ハヤト合わせろ!」

「OK!」

俺は闇切・改弐式の他にもう一つのハンドレッドである『奇跡の聖銃』<ディヴァイン・ブラスター>を<多重展開>デュアルアクトしハヤトに合図を送る。

「3、2、1…今だ!『奇跡描きし閃光弾』<ディヴァインド・シャイニングブラスト>!」

「『E閃光斬』!いっけええー!」

互いの技を合体させ追ってきていたサベージを散らした。

「『急ぎたまえ二人共!サクラ達のフィールドが不安定になってきている!』」

「分かった!あそこには俺達の守りたい大切な人達が居るんだ!」

「そうだ!サベージお前達の好き勝手になんか絶対にさせない!」

サベージの殲滅を確認すると博士からまた緊急通信が入り今度こそタワーへと全速し辿り着いた。

「「イチカさん/ハヤト君!」」

二人共俺達の姿を確認すると安堵していた。

「待たせて悪い!でももう大丈夫だ!」

「サベージは俺達が片付ける!だからお前達は歌い続けてくれ!」

「「分かったわ/分かりました!」」

彼女達の歌声が再び響き渡ってくる。

ああ…とても心地が良い!

この歌が俺達に強い力を与えてくれる。

「「この戦い絶対に負ける訳にはいかない!」」

そこからはもう俺とハヤトの無双という名のサベージ蹂躙が始まった。

「ふいー!」

「これでひとまずは終わった…のか?」

カレン達のライブが終了すると同時にサベージは跡形も無く散っていた。

「どうやらそのようだ…」

「『!?ハヤト君、イチカ君!今すぐに其処から離脱したまえ!

とても大きな時空振動が付近で観測された!』」

またまた緊急通信で博士がとんでもない事を告げてくる。

「何ッ!?だが近くにはまだカレン達が残っているのに!…糞!」

「イチカ!?…ええい俺もいくぞ!」

まだタワー内部に残っているカレン達を救い出す為に俺達は再び駆け出した。

「『しまった!?もう間に合わない!』」

「時空振動、亀裂の発生きます!」

メイメイが告げた通り今迄にない大きな時空の亀裂がタワー付近に発生した。

「う…二人共こっちに来るんだ!」

「キャア!?」

「ちょっと何なのよ!?」

俺達は互いになんとか寄り添い合い手を繋ぐが時空の嵐の凄まじさに今にも手を話しそうになる。

「ああ…ヤバイ!限界だ手を離してくれカレン…」

「嫌です!イチカさんがいなくなったら私…これからどう生きていけば良いのですか?!」

「か、カレン…」

戦いの疲労が重なっていた事で体力に限界がきて遂には手を離しそうになる。

そこに更に追い打ちをかけるように時空の嵐が強さを増してくる。

「う、うわあああー!?」

「イチカさん!キャアアアァー!?」

「「イチカ/カレンちゃん!?」」

時空の亀裂は手を離してしまった俺を追うようにサクラさんに繋いでいた手を離してしまったカレンを吸い込むと時空振動は止まり亀裂も閉じてしまった。

「『な!?…なんて事だ…』」

「『なんで!?なんでイチカが!…』」

「う、嘘だよね?…こんな事って…嫌ああああー!」

「そんな!?…カレン、イチカ…う、うああああー!」

そこには驚愕の表情を浮かべたシャーロット博士と一足先に基地に帰還し偶然この惨状を目にしてしまったアリナと目の前で自分のパートナー、親友を失ったハヤトとサクラの絶叫が響き渡るだけだった。

「…どうやら此方も予想外の事が起こってしまったようですがまあ良いとしましょうか」

一方地上ではセリヴィア・ノートルダムパウロ三世がビル・ハーヴェイから強奪したタイムマシンを再起動し不敵な笑みを浮かべていた。

 

 




予想以上に長くなってしまったので今回はここ迄。
セリヴィアの正体は大体予想出来ていますがこれから原作どうなるんだろう?…
次回こそ束との再会です。
誤字・その他御指摘等ありましたご報告を。


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EPⅡ「帰還と再会の中でPARTⅡ」

祝!遅くなりましたが「BLOODRED」&「EYESONME」発売しましたね!
おっと戦闘BGM用意はまだ早いですよ?
カラオケにも即日配信されたので当日歌ってみた動画撮影にも行ってきましたよ!
ニコにUPしているので是非聴いてみて下さい!
後3、4件の読者登録追加感謝です!




「…という事になるな…」

「そ、そんな事って…」

これまでの経緯を思い出しカレンに説明すると彼女は途端に暗い表情になってしまう。

「そう気を落とす事はないよカレン」

「で、ですが…此処は地上なのにリトルガーデンはおろかPDA自体が繋がらないとは一体どういう事なんでしょうか?…」

「それなんだがな…もしかしたら此処は…」

俺が立てた予想を言おうとした瞬間…ズーン!

突如爆音が響き渡る。

「キャッ!?」

「この感じは!…サベージなのか!?」

「ええ!?」

俺の『ヴァリアント』の感がそう告げてくる。

「急いで行ってくる!カレンは此処で待っててくれ」

「わ、私も一緒に…」

「カレン…いや駄目だ!お前はまだエナジーがあまり回復していない筈だ。

無理をしては欲しくないんだ」

カレンが一緒に来ようとしたので俺は必死に静止させようと説得する。

「そ、それもそうですよね…」

それを聞いたカレンはシュンとなってしまう。

「わ、悪い…後で必ず埋め合わせはするから、なっ!」

「約束ですよ?」

俺が埋め合わせを提案すると途端にカレンは明るさを取り戻し笑顔になってくれた。

「ああ約束だ!じゃあ今度こそ行ってくる!」

カレンと約束を交わし俺は胸のペンダントを外してハンドレッドを起動する為の言葉を紡ぐ。

「【百武装展開<ハンドレッド・オン>】!そしてアウター・オン!」

俺は闇切・改弐式と一緒に外部武装も展開しサベージを感じた地点へと飛んだ、

 

~イチカ達が目覚める数時間前~

Side束

「諦めない…きっと絶対に探し出してみせるよ!…」

溺愛する我が妹の美月ちゃんと親友の弟の内の一人であるいっくんが何者かに誘拐されてしまった事を知ったこの私、篠ノ之束は必死になって行方を探して遂に見つける事が出来た。

だがいっくんだけがどうしてかその存在自体が消失してしまっていたのだ。

救出した美月ちゃんから事情を聞いた私はありとあらゆる手段を駆使していっくんの行方を探す事を約束した。

だけどあの事件から約二年の月日が過ぎた現在も未だに彼を発見する事が出来ずにいた。

「一体何処にいっちゃったの?いっくん…」

私は自身の力量不足に涙した。

天才的な頭脳を以てしても人一人を見つける事すら出来ないでいたのだから。

ウー!

「亡国企業とその他からの追手!?束さん御自慢のガードセキュリティーを突破してラボへの侵入をこうも簡単に許してしまうなんて!…」

「束様!」

突如侵入者警報が鳴り響き、それに気が付いた私の助手であるクロエ・クロニクルが大慌てで駆けてくる。

「クーちゃん!」

「亡国企業と米国の構成員が何名か此方に向かってきています!

残りのセキュリティーが突破されてしまうのも時間の問題です。

私とゴーレム達でなんとか押さえますから早くお逃げ下さい!」

クーちゃんの言う通りモニターには此方へ迫ってくる数人の男達が映っていた。

「『ターゲット、篠ノ之束が居るであろうメインルームを確認!これより制圧に入る!』」

「ヤバッもう!?」

このルームを発見した構成員が今にも突入しようとすぐそこまで迫って来てしまっていた。

「ゴーレム!」

「ぐわ!?…」

即座に端末を操作し束さんお手製のゴーレム数十機を呼び防衛させる。

「早くお逃げ下さい束様!」

「無理はしないで危なくなったら逃げてねクーちゃん!」

「はい」

後をクーちゃんとゴーレム達にお任せして私は急いでラボからの脱出を図ろうとしたその時だった。

ドッガアン!突然別方向から轟音が響き渡る。

「な、何事だ!?」

「『た、隊長!分かりません、突然変な化物があ…ウワッギャアアァァー!?……』」

「ワ、What`s!?」

ズーン!

米国の隊員の悲鳴が通信機超しに響いたかと思うとまた轟音が響いて何かがルームの厚い壁をブチ破って現れる。

「なんだこの見た事の無い化物!?」

「何アレ?…」

「束様アレから何かとても危険なものを感じます!早くゴーレム達の後ろへお下がり下さい!」

突然現れた化物に構成員も私も驚く。

クーちゃんが私に早く下がるように警告してくる。

「ひ、怯むな!撃て、撃て!」

構成員達は化物に向かって火器を撃ちまくる。

「な、なんだと!?そんな馬鹿な!?…」

だが化物は一切動じずまた傷一つすら付いていなかったのだ。

キュオォ!

化物が攻撃してくる。

「ま、不味い!緊急退避、退け退けー!」

「うわああああー!?」

隊員の何人かが消し飛ばされる。

「応援を、IS部隊を早くこっちに寄越せ!」

命からがら退避した隊長は要請を入れるが

「『で、ですがこちらにも数十匹の化物が確認されていてとてもそちらには…!?』」

「ど、どうした?」

「『今…紫のISみたいなのが化物を一瞬で散らしてくれて其方へ向かっていきました…』」

「何?…」

 

Sideイチカ

「ったくどうも嫌な予感ってもんは当たるものだな…さっきの飛龍型<ドラゴンタイプ>に襲われていた人達は皆ISを纏っていたしな…屋内での戦闘はこれで二度目になるな」

自分が元の世界に戻ってこれた事にどこか安心しつつあった俺は気を引き締め直し強い反応がある最深部へと向かった。

「アイツだな!」

弩弓型サベージを遂に発見した。

だがここでも人が襲われていたようで辺りには先程よりも血生臭い匂いが漂っている。

不味い!奴めまたドデカイ一発を撃ち放とうとしていやがるな。

「弩弓型を一確認した!これより殲滅に突入する!」

「え?…」

なにやらとても懐かしい声が聞こえてきた気がしたが俺はそのまま戦闘に入った。

「剣崎流奥義『残影斬』!」

「!…」

俺は弩弓型に対し磨き上げた剣崎流奥義の一つである、一度の斬撃で一瞬にして二度の斬撃を繰り出す残影斬でサベージの各部位を斬り落としてからコア部に叩き込む。

そして奴の障壁が斬り剥がれコアが露わになる。

「トドメだ『残影斬・弐式』!はっ!」

コア目がけ更に切れ味と速度の増した残影斬・弐式を叩き込みコアを真っ二つにするとサベージは沈黙した。

「ふう…」

そして俺は気が抜けた様にハンドレッドを解除した。

Side束&クロエ

「凄い!…」

「…{何でしょう…何か私や妹に似た力をあの方から感じられます…}」

私は化物を退治した人に対してその一言が出て、クーちゃんはどうやら何か自分に近いものを感じていたようだった。

でもなんだろう?…あの紫のISの様な物を纏っている人から懐かしさを感じるんだけど…

そうこうしている内に解除された人の顔を見て私は驚いてしまった。

「い、いっくんなの?!…」

「ン?…も、もしかして束さんですか?」

私がそう言うと同時にその人もそう聞いてきたのだ。

「そうだよいっくん!」

Sideイチカ

「しかしまいったな…まさかすぐに束さんと再会するなんてな。

お久し振りです剣崎イチカです」

「ふぇっ?…」

俺の唯一の理解者の内の一人でISの開発者でもある篠ノ之束さんと再会した俺は新たに自己紹介すると束さんは首を傾げていた。

「ああ、そうかその事も含めて色々とお話しなければいけませんよね」

「うんお願い!あ…でも場所変えた方が良いよね」

「ええ、お願いします。俺も呼ばないといけない人が居るんで」

束さんには向こうの世界の事を言える限りの範囲で話さなければいけないと思った俺は急いで待ちくたびれてしまっているであろうカレンを迎えに行ってから束さんの新たなラボへと向かった。

その際にカレンに「もう、遅いじゃないですかイチカさん!」と怒られてしまったけどな。

「うん、こっちのセキュリティーは万全だよ!」

「そうですかなら…」

束さんが盗聴機器の類がラボに仕掛けられてしまっていないかを確認したので俺はカレンへの説明も含めて語り出した。

誘拐事件の時に向こうの世界へ転移し何故か体が縮んでしまった事、剣崎家の方に拾われ義父さんの義息子となり日々の修行に励んでいた事、サベージによる三つの事件や武芸者、ハンドレッドの事、そして自分が十数人しかいない<ヴァリアント>の内の一人の武芸者の覚醒を果たしていたという事、カレンとの関係、宇宙に上がった事その他諸々の事等を語った。

「へえ~いっくんにそんな事があったんだ…でもあれから美月ちゃんは自分も責任を感じて泣いていたんだよ…それに…」

束さんはそう言葉を途切らす。

そうか…美月の奴は俺の事を忘れないで想っていてくれていたのか…。

「元・糞兄貴はどうでもいいとして春と元・賢姉殿は今どうしています?」

記憶の隅所か抹消すらしたい元兄の事には目もくれず俺は元弟である織斑春季と元姉である織斑千冬の様子を聞いた。

「はっくんとちーちゃんはね…」

束さんの口篭り方を見て俺は大体事を察した。

「やっぱりそういう事でしたか…」

「イッくんの想像している通りだよ。

腐りきった日本政府の思惑に利用されてしまったちーちゃんはあの事件から後悔の念に悩まされているようで生活が堕落しきって、はっくんはあの屑の面倒なんか見たくないというばかりにほとんど家に帰らなくなったみたいなんだよ…まあそれでも美月ちゃんの相手はしてくれているからまだ良いんだけどね」

束さんはそう三人について語る。

「それを聞けただけでもよかったです」

「所で話は変わるけどイッくんとカレンちゃんはIS学園に入らない?」

「良いんですか?イチカさんはともかくカレンまでお世話になるというのは…」

カレンはそう束さんに聞き返す。

「勿ノ論だよ!イッくん達が言うハンドレッドはISとの共通点がいくつかあるようだしそれに束さんのラボに留まっているだけじゃ限界があるしいつまた束さんを追っている輩とかそのサベージ?がまた来るか分からないしね」

「「…」」

束さんの提案を聞いて俺達は顔を見合わせる。

「確かに束さんの言う通りだ。俺はありがたく通わせて貰いたいがカレンはどうしたい?」

「…カレンは大丈夫です!イチカさんの決めた事ならカレンも喜んでついていきますから!」

カレンにそう告げると不安そうな表情から一転してそう彼女は言ってくれた。

ニヤニヤー…

「「はっ!?」」

「いっや~アツアツだねぇー!FantsticなLoveだよ!」

束さんがにやけた顔をしながら此方へからかい混じりで祝福の言葉を言っていた。

これには慌ててお互い顔を背けてしまう。

「う~!…カレン凄く恥ずかしいです…」

カレンが赤くなりながら此方を睨んでくるが威厳が無いのでむしろ可愛いですはい。

「じゃあお話は決まったって事で束さんはちょっと出掛けてくるね!

クーちゃんは二人にラボの案内をしてあげてね」

「かしこまりました。いってらっしゃいませ」

束さんを見送ってからクロエさんにラボを案内して貰いいくつもの研究室を目にしこれで偶然にもこの世界でいくつか回収出来たコアでハンドレッドの研究が出来ると目を輝かせていた俺はカレンに「もうイチカさんってば…」と呆れられた。

 

 

 

 

 

 



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EPⅢ「入学と再会と決闘とPARTⅠ」

「【世界初の男性IS操縦者現る!織斑秋彦、織斑春季

全国で一斉調査に突入!】ねえ…」

束さんが言った通り春とあの糞兄貴がISを動かした事が連日ニュースとなっていた。

ハンドレッドを扱う俺とカレンにとってはあまり関係無い事なのだがどうも憂鬱だ。

「すみません束さん…今から入学取り消しってのは…」

「ん~?駄~目☆」

束さんがイイ笑顔でそう言ってきたので俺はおとなしくする。

「大丈夫だってあの屑はともかくはっくんのISについてはこの束さんが面倒見るから!」

「そういう事を言いたかった訳ではないんですが…」

まあ、あの元・糞兄貴の事だろうから俺の事なんて一ミリも記憶していない事だろう。

「イッくんの提供してくれた技術のおかげで凄い物が作れそうだよ!

これなら束さんの本当の夢に近付ける日もそう遠くないかも!」

俺の提供した技術と情報は束さんに夢を思い出させ女尊男卑がなんとか無くなる様に奮闘させていた。

そして織斑兄弟の発覚からすぐに束さんは俺の事を三人目のIS男性操縦者だという事を公に公表した。

偏入試験当日

急な編入という事もありなんとか元糞兄貴と顔を合わせたくなかったので期日を無理言って変更してもらった事もあり試験内容が厳しくなってしまった。

元代表候補生だった先生との対戦だ。

後絶対防御についてだが俺とカレンはEバリア常時展開で大丈夫そうだ。

時にはNバリアも使い分けなければならない状況も出てくるかもしれないが。

「今日の試験監督を担当する山田真耶といいます。

よろしくお願いしますね剣崎イチカ君!」

「ご無理を言ってしまい申し訳ありませんでした山田教諭。

お詫びに私の全力でいかせて頂きますよ!」

「ええ!」

山田教諭がラファール・リヴァイブを展開、ライフルを構えながらこちらに迫ってくる。

対する俺は闇切・改弐式を構え回避・応戦する。

「は、速い!…なら!」

ライフルでは手数が足りないと思われたのか同時にサブマシンガンをコールさせ撃ってくる。

「おっと!」

回避しては刀で防ぎを繰り返す。

「はあはあ…こうも簡単に避けられた上に防がれるなんて!…イチカ君は凄いですよ!」

「いえいえ其方こそ!流石は元代表候補性なだけあって先生の精密射撃は光るものを感じられますよ!」

互いに褒め合う。

山田教諭の精密射撃っぷりは級友のフリッツの狙撃を思い出す。

「ありがとうございます!では時間も押しているみたいなので…」

「そのようですね。では次の一撃で決着を付けましょうか!」

既にコールしていたアウターブースターを思いっ切り吹かしISでいう『瞬時加速<イグニッション・ブースト>』で一気に間合いを詰めた。

「はっ!」

「ええい!」

俺の刀と山田教諭のブレードがぶつかり合う。

「せえいっ!」

「キャア!?」

ブレードを押し上げ一撃を叩き込む。

すると山田教諭のラファールのSEが遂には0となった。

「たはは…負けちゃいました~」

「すみません!これでも15%未満の本気度に抑えたつもりだったんですがね…」

「ええ!?アレで15%なんですかぁ!?」

山田教諭がそれを聞いて唖然とした表情をする。

「まあそれでも山田教諭のブレードの防御には驚かされましたよ」

実際防御で構えられたブレードを押し上げるのに予想外に時間がかかったのは事実だった。

勿論編入試験は文句無しの合格所か非常に高い適正値だと言われ、リトルガーデンへの入学式前にハヤトと共にハンドレッドの反応数値史上最高値を更新した事で皆に囲まれかなり波乱な日々の始まりを俺は思い出し振り返っていた。

 

 

 




次回!
IS学園へ無事入学を果たしたイチカ達だったが再会した兄貴を除く元家族等はそれぞれどう思うのか?
そして半ば強引に推し進められる代表決定戦の行方は一体どうなるのか?
「入学と再会と決闘とPARTⅡ」をお楽しみに!


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EPⅣ「入学と再会と決闘とPARTⅡ」

「くう!…これはハーレム系主人公の気持ちが分かってくるぜ…」

「{完全無視}」

気持ち悪い思考をしている織斑秋彦と彼の弟であるが彼を完全に無視している織斑春季は女性しか動かせない筈であるISを動かせる事が判明しIS学園へ強制入学させられた彼等に周囲の女子達は視線を集中させていた。

「……///」

一方両名の幼馴染である篠ノ之箒は秋彦の気持ち悪い思考に気が付かずに熱い視線を送っていた。

「はあ…」

彼女の妹である美月は春季同様に彼等を無視していた。

「私は副担任の山田真耶です。今日から一年間ISの事を一緒に勉強していきましょう!」

HRが始まり各々自己紹介していく。

「織斑君?次自己紹介してくれるかな?」

山田先生が秋彦の番が来たと知らせてきたので彼は立ち上がる。

「お、織斑秋彦です。なんかISを動かせたみたいで此処に入学させられました。

趣味は剣道ですよろしくお願いします」

「…」

「あ、あり?…」

秋彦が自己紹介を終えると一瞬にして皆沈黙したと思われた次の瞬間…

「「キャー!」」

一斉にクラスメイト女子が騒ぎ出す。

「イケメンよ!」

「お父さんお母さん!私をこの時代に生まれさせてくれてありがとう!」

「これは濡れるわねッ!」

それぞれ反応を示す。

若干可笑しな思考をしている者がいるが。

続いて春季の番が回ってくる。

「織斑春季…そこの兄と同じくどうしてかISを動かせた…が僕は人付き合いというものが苦手なんだ…あんまり話しかけないでほしい…」

「…」

また沈黙して…

「今度はちょっと不良っぽいけどなんかイイ!…」

「え、アンタああいうのが好みのタイプなの?守備範囲広っ!」

「秋彦x春季?いや春季x秋彦かしら!?」

またもや色んな反応やら危ない思考やらがあちこちであった。

「何かと思ったら騒ぎの原因はお前達だったか…」

「あ、千冬ね…」

「此処では織斑先生と呼べ」

「あでっ!?呂布奉先!?」

「誰が三国志の英雄だ馬鹿者!」

「ゴップ元帥!?」

「○ン○ムの司令官でもない!」

「あぎゃらぴぽよ!?」

秋彦の頭を出席簿で叩いたのは彼等の姉で学園の一教師をしている織斑千冬だ。

「それと春季はもう少し真面な自己紹介は出来んのか?…」

「…」

千冬の問いに春季は答えず明後日の方向へ顔を向けていた。

「あ、織斑先生会議終わられたんですね」

「ああ、山田先生に任せてしまってすまない。

私がクラス担任の織斑千冬だ!私の言う事にははいかYESだ!いいな?」

「キャー!本物の千冬様よおー!」

「私貴方に会いに北九州からはるばる来ました!」

「そういえば秋彦君と春季君って織斑先生と同じ苗字…ISを動かせたのも血筋なのかしら?」

「はあ…毎年私の担当クラスに馬鹿者共が集中している気がするのは気のせいか?…それより早く続きに戻れ」

「「すみません!遅れました」」

俺達は色々と手続きがあってそれに戸惑ってしまい遅刻してしまった。

教室に入るとシーンと静まり帰っていた。

「あ、編入生がやっと来ましたね!」

「何?私は聞いていないぞ?どういう事だ山田先生」

「なにせ急な編入でしたもので伝えるのが遅くなってしまったんですよすみません~!と、とにかく自己紹介お願いします」

「ゴホンでは…俺は剣崎イチカだ。

嫌いなものは女尊男卑思想に染まった者、曲がった事だ。

好きなものは鍛錬に料理だ。よろしく」

「さ、三人目の男?…」

「そういう事になる」

「「「キャー!」」」

秋彦や春季の時よりも三倍増しの黄色い声が響き渡る。

「クールで頼りがいがありそうなお方!」

「ムムッ!これは予想外っ!」

「こ、これは夏コミのネタ選びに別の意味で困っちゃうわね…{鼻血タラー}」

「おおう…」

俺は女子達の反応にたじろいだ。

カレンがジト目で何か言いたそうにしていたので俺は急いで席に座る。

「は、はじめまして皆さん!カレンは如月カレンといいます。

タロット占いが趣味ですどうかよ、よろしくお願いしますね!」

「か、可愛いわね…悔しいけど」

「占いかー今度私の事占ってよ!」

「あ、私もお願い!」

「わわ!?皆さん落ち着いて下さい…」

流石はリトルガーデンの『小さき魔女<リトル・リトル・ウィッチ>』だ…クラスメイトにすんなり受け入れられた。

ただ二名を除いて…

「フン!占いなどという非科学的で根拠の無い所業などに群れたがるのは愚民共にはいいのですわね…」

「秋彦の奴…デレデレ鼻を伸ばしおって…それに編入生の名前は…」

イギリス代表候補生であるセシリア・オルコットと箒だ。

セシリアはカレンの占いを馬鹿にし、箒はイチカの名前を聞いて以前の事を思い出し黒い企みを忍ばせていた。

そして…一方

「{イチカだと?…チッ!折角イイ気分に浸っていたっていうのに嫌な奴の事を思い出させる名前だぜ…}」

秋彦は目の前のイチカが自分が苛め抜いていた自身のもう一人の弟である織斑一夏本人だという事には全く気が付かず名前だけで気分を害していた。

「{ま、同じ名前な手前が悪いんだぜ?近い内に神童と云われた俺の手で引導をくれてやるぜ!…}」

幼馴染とはまた違ったドス黒い笑みを秋彦は静かに浮かべていた。

 

「い、イチカって言ったよね?…」

「う、うん…」

春季と美月の二人もまたイチカの名前を聞き逃さなかった。

「偶然名前が一緒なだけの他人って可能性はあるけど…」

「どうも他人の空似って気がしない…」

二人は考えを確かめ合う。

目の前でイチカと名乗ったのが自身の大切な幼馴染&もう一人の兄本人なのかという事を。

「「千冬さん/姉さんは気が付いているのか/な?…」」

 

「織斑先生どうされました?」

「あ、いや…どうもしないが?…」

「…」

やはり俺の名前に思い当たった事があるのか元姉は苦悶の表情をしていたがすぐに気を取り直した。

そして春と美月は既に気が付いていると思うが糞兄貴ともう一人の糞幼馴染は名前を聞いただけでかなりイライラしているのが目に見えて分かった。

「あの二人には後で事情を話すしかないな…」

どの道向こうからこっちに話をしに来るであろう事から俺はそう決意した。

そんなこんなでHRが終わった直後の事

「はあー…とても緊張しました…」

カレンと俺は質問責めに合うだろうと身構えていたが先に半数が糞兄貴の方に行ったようなのでひとまずホッとした。

「ちょっと良いかな?」

「…」

「なんだ?」

予想より早く二人が此方に来た。

「剣崎イチカさん…担当直入に聞きたいんだ。もしかして織斑一夏という名について聞いた覚えは無い?…」

「…」

美月の質問に対して俺は沈黙を貫く。

「…その沈黙はあると思っていいのか?…」

今度は春が俺の沈黙に対する質問をしてくる。

「…そう考えるかどうかはお前達次第だ…」

「…という事は…」

俺がそう促すと春達は思案する。

「本当に…一夏君なの?…」

「…」

美月に看破されたので沈黙する。

「ほ、本当に一夏兄さんなのか…」

「…ああ、分かられてしまったからにはもう隠し通す訳にはいかないな」

「「一兄/一夏君」」

「シッ!」

俺の正体が分かって一安心した二人は思いっ切り声を上げそうになったので静止させる。

「今の所あの糞兄貴と美月の愚姉は同性同名の別人だと思っているみたいだが俺が一夏本人だと分かれば一体何をしでかしてくるか分からないし…それに千冬姉やあの愚兄が過ちに気が付かない限りは元に戻る気は無い。

春、お前ともだ」

「あ…」

「ご、ゴメン一夏兄さん…」

俺の注意にシュンとする二人。

「むー~…」

一方カレンが俺が美月と親しく話しているのを見てどこか羨ましそうにみていた。

「カレン、以前話していた俺の幼馴染の一人の篠ノ之美月と元・弟の織斑春季だ」

「あ、どうもはじめまして!」

カレンがまだ緊張の残る声で再度二人に挨拶する。

「「ねえ…/なあ一夏君/一兄はもしかして…/僕が元・弟ってどういう…」」

「やあ、ちょっと良いかい?」

「チイッ…」

二人が何かを言いかけようとした所に女子達からの質問攻めから解放された糞兄貴が此方に向かって話しかけてきたので奴に聞こえないように舌打ちする。

「なんだ?俺は今この二人と話していた所なんだが」

「同じ男として是非君と仲良くしてやろうと思ってね{本当は仲良くする義理なんて無いが…まあせいぜい女子達の好感度上げに利用させて貰うとするさ春季同様にな!…}」

「仲良くしてやるねえ…そういう上から目線だと何かに利用する気だと思われるだけだぞ。

俺からの忠告だ」

「なんだと?…」

「貴様!秋彦の誘いを断るのか!?」

そして何故かもう一人の糞五月蠅い幼馴染が割って会話に入ってくる。

「なんだ篠ノ之?俺は話をしていた所にコイツが割ってきたんだ。

第一最初からちゃんとした断りもなく話に割って入ってくる様な奴と仲良くなる気は無い」

「貴様!…」

それでもこのモップは納得いかないとの表情をしている。

「まあまあ箒その辺で抑えてな。

初めからこんな奴等と仲良くしてやろうなんて考えを持ったのが間違いなんだよ」

「そ、そうか…」

愚兄がそう言って箒は納得し席に戻っていく。

「其方のお話は終わりまして?ちょっとよろしくて?」

「なんだい?」

「う?…」

「ああ、イギリス代表候補生のセシリア・オルコット嬢か。

まだ話の途中だったんだがいいぞ」

「まあ!なんですのそのお返事は!?…

まあ其方の方はわきまえていらっしゃるようですが…」

愚兄と春の対応に憤怒するオルコット嬢…すまん愚兄に関しては俺も謝罪するが春については許してやってくれ…。

「まあ入学試験で試験管を唯一倒したこの私がISについてお教えして差し上げましてよ!」

「あああの雑魚なら俺も倒したぞ」

「え!?私だけと聞きましたが?…」

愚兄がそう言うとオルコット嬢は驚いたといった表情で詰め寄ってくる。

「女子だけというオチだなコリャ…はっは!」

愚兄が馬鹿にした物言いで返す。

「そそそそ、其方の貴方方はどうなんです?」

「僕は引き分け…」

「俺は山田教諭とバトルして勝利したが?」

「なななななっ!?…」

「とりあえず落ち着け!」

「こ、これが落ち着いていられ…」

キーンコーン!

「ま、また来ますわ!」

オルコット嬢が更に何か言いたそうにしていたがそこで無慈悲なチャイムが鳴り席に急いで戻っていった。

「何だったんだ?」

「さあ?」

~一限目中~

「ではこのクラスの代表を決めたいと思います!

自他推薦問いませんよ」

山田教諭がそう話してくる。

「はい!秋彦君が良いと思います!」

「あ、じゃあ私は春季君に!」

「剣崎君に一票!」

口々に女子達が俺達に票を入れてくる。

勘弁してくれよ…。

「あの俺は辞退を」

「他薦された者に拒否権があると思ってるのか?」

賢姉殿にそんな横暴な事を言われ俺は頭を抱えた。

「お待ち下さい!」

そんな時俺にとっての救世主が現れる。

そうオルコット嬢だ。

「ただISを扱える男が珍しいからといってこんな島国で屈辱的な一年間を過ごせというんですか?

そもそも実力から言ったらこの私が…」

あれ?…なんか不穏な方向に向かっていってないか?

「はんっ!イギリスだって大した御国自慢無いだろ?不味い飯NO.1で一体何年覇者だい?」

愚兄のアホがそう反論する。

あんの馬鹿野郎が何をしでかしていやがりますか…

山田教諭や春達はこの状況にオロオロしていて便りにならない。

仕方ないな…

「いい加減に其処までにしておけ二人共」

「なんですの!?」

「外野が邪魔をしてくれないかな?」

「俺も一応推薦されている身なんだが…という事はおいといてそれ以上互いの国を馬鹿にする様な不用意な発言をしたらどうなるかぐらい分かるだろ?」

「そ、それは…」

「はん!コイツは向こうから売られた喧嘩だぜ?

買うか買わないかはこっちの自由だろ」

オルコット嬢はどういう意味なのか分かったのか口篭っているがこの愚兄ときたら言いたい放題の始末である。

「ああそうだった、まだ男の日本の代表候補生は決まっていなかったんだったな。

もし織斑秋彦、貴様に決まっていたのなら先程の発言は日本の発言と取られるんだぜ?

それでどういう結果になるか分かる筈だ」

「グッ!?…」

俺は愚兄に向かってそう言い放つ。

ま天と地がひっくり帰っても愚兄にリーダーシップの器があるなんて到底思わないがな。

彼の周囲も腰巾着だらけだったようだし昔の俺はなんでこんな奴に追い付こうと思っていたんだろう…。

愚兄もようやく己の失態に気が付いたようだったが…

「ならばさっきの失言取り消しの為にそこの御嬢様と決闘してやるよ!

どうだい良い考えだろ?」

「ふぁあ!?」

コイツの頭の中一体どうなってるんだ?

何処の世界に己の失言取り消しの為に決闘吹っかける奴がいるんだあ?

あ、そういやあの世界にもいたな…凄く思い出したくないけどあの野郎の事も…愚兄の逆ギレともとれる発言で俺は黒記憶を思い出してしまい震える。

「良いですわよ…完膚無き迄に叩きのめして差し上げますわ!」

「ああ四の五いうより分かりやすい!そっちこそ後で吠え面かかせてやるぜ!」

オルコット嬢が愚兄の挑発に乗ってしまう。

「話は決まったようだな。

ではオルコット、織斑兄弟、剣崎は来週月曜日迄に各自用意しておけ!」

おろ?…俺まで巻き込まれてるんですがと反論しようと思ったがやめた。

 

 

 

 



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EPⅤ「入学と再会と決闘とPARTⅢ」

はやええええ!?この話数にして早くもUA一万&読者録がハンドレッド件を突破しとるうー~!
超ありがとうございます!これからもよろしく精進していきます!




「もうなんなんですかあの金髪ドリルとイチカさんの元お兄さんは!」

カレンは二人に対して憤慨していた。

金髪ドリルって言いきっちゃったよこの娘…此処にリトルガーデンの艦長であり生徒会長でもあるクレア・ハーヴェイ先輩がいなくてよかった…。

~その頃の「ハンドレッド世界」~

「クシュン!?」

【『風邪ひいたのかしらクレア?』】

「ちょっと寒気がしただけですわよ…。

それよりも一刻も早く剣崎イチカと如月カレンの行方を掴まなくては!…」

【『それは重々分かっているわ。

けどそんなに急いでも良い結果は得られないわ』】

「…全くお父様も余計な事をしでかし残してくれましたわね…」

自分達の父であるビル・ハーヴェイが何者かに殺害され彼が開発した時空転移装置<タイムマシン>の起動実験の弊害で発生した時空の亀裂による月面基地へのサベージ大量来襲…それにタイムマシンが暴走を引き起こしたのか真実はまだ調査中だが更なる弊害で剣崎イチカと如月カレン両名がまた新たに発生した巨大な時空の亀裂によって発生した次元の穴に引き込まれその姿を消失させてしまってからはや一ヶ月…私は基地の動力兼演算装置と化再びなっているリザにも協力を要請し地上のリディ達と選抜隊・シャーロット博士というフルメンバーを総動員し二人の行方を追っていた。

【『大丈夫よクレア。彼等のエナジーは今も感じ取れているわ…きっと何処か別の世界に飛ばされたようね』】

「別の世界…ですかブレインコンピューティングしているリザがそう言うのならそうなのかもしれませんわね…」

【『ただ…詳しい座標はまだ私のヴァリアントの力を総動員してフル演算しているけど掴めていないわこれには大分骨が折れるわね…それに時空転移装置も何者かに奪われたまま…』】

「それもまず間違い無くお父様を殺害した犯人と同一とみていいでしょう」

だけど一体何者?

父の時空間装置開発を知っているのは限られた極僅かな人物だけ…そう私達家族やシャロット博士、そして一部の要人…

【『教皇セリヴィア・ノートルダムパウロ三世…』】

「!…」

リザも同じ結論に至ったようで呟いていた。

「やあクレアにリザ、剣崎イチカ君と如月カレンくんの行方調査は進んでいるかい?」

「お兄様…」

自分達の兄であるジュダルが入ってくる。

【『あいにくあらゆる論だけは確立出来ているけど難航しているわジュダル兄様。

それより基地や地上の要人等への説得は済んで?』】

「いや~大変だったよもう…貴重なヴァリアントのイチカ君に今や大勢のファンが付いているカレンくんの消失…相方である霧島サクラくんには今は活動を自粛して貰っているけどいつまで彼女達の唄を楽しみにしている方達に知られてしまうか分からないからね…なるべく早期に頼むよはは!

武芸者でない僕には上層部の馬鹿な事をしようとする者達をなんとか抑えるという仕事しか出来ないからね…」

ジュダルはそう言い笑いながら出ていく。

「どちらが馬鹿な事を…」

かなり強引な方法でこのルナルティア月面基地を軸に月の大統領となったジュダルだが先日のサベージ襲撃で宇宙開発反対派の者達の動きが活発化してきてしまっている状況を説得だけでどうにか出来るものなのか?

例えいくら亡くなった恋人との約束で不治の病を患い寿命が残り少ない事で焦っていたとしても人の上に立つというのなら後の世に残された者達の事も考えて欲しいものだ。

【『クレア…あのジュダル兄様にいくら言ってもキリがないわ』】

「それもそうですわね…」

ジュダルのあの性格ややりようは彼の恋人が亡くなってから豹変、むしろ母リニスやビルに冷たくあしらわれていた事もある事は私達姉妹にも分かりきっている事だ。

もう間に合わないと思うけれど肉親の一人だ。

どこかでもしかすれば変わってくれるかもしれないという希望は捨てきれなかった。

「希望は捨てない!…よし調査を再開致しますわよ!」

【『ええ!』】

 

「あ!織斑君達よかった間に合いましたねコレ寮の部屋の鍵です」

放課後、他クラスからも女子達が押し寄せてきたので逃げ回っていたら運の悪い事に愚兄とも鉢合わせしてしまった。

そこに救世主、山田教諭がそう言って鍵を渡してくる。

「ありがとう山田教諭!」

「あれ?俺達はしばらくの間自宅通学の筈じゃ?…」

「どうして剣崎君に感謝されたのかは分かりませんけど。

本当はそうなる筈だったんですが急に政府の方針が変わってですね」

「ああそういう事でしたか」

世にも貴重な男性IS操縦者である俺達だ。

政府としては護衛でも付けておきたいのだろう。

ああ…でもまだ束さんのラボに帰ってハンドレッドの開発をするつもりだったんだがこれは仕方無いな。

愚兄と部屋が一緒じゃない事にひとまず安堵した。

一方春も別になったようだよかったな。

そして後で聞いたがカレンは美月と同じ部屋らしい。

俺達の事を話すのは代表決定戦後でもいいか。

俺はカレン達と別れ寮の部屋へと向かった。

「今日から同室になった者ですよろしく」

挨拶しながら入室した迄はよかったのだが…

「お帰りなさいませ!私にします?それともわ・た・し?」

「…」

バタン!今のなんだろうか?部屋に裸エプロンの痴女が居た様な気が…もう一度開けて確認。

「御飯にします?それとも私?私?」

「選択肢は増えているけど結局一択に誘導しようとしているじゃねえか!」

そういえば今日のカレンの占いの俺の運勢は女難の相が出ていると言われた気が…。

「あら?…私じゃ不満なのかしら?」

「とりあえず服を着て下さい」

「イ・ヤ♡」

「着・ろ!この痴女が!」

「痴女じゃないわよ!?」

「反論する余地があるならとっとと着ろ!」

とにかく早く着替えさせ本題に入る。

「貴方は確か二年の更識刀奈生徒会長ですよね?」

「ええそうよ。後学園最強を名乗らせて貰っているわ!」

「自分で言っちゃうんですか…それでどうして一年の俺に同室の人が二年なんですか?

どう考えても可笑しいと思うんですが」

「それはね…」

更識会長が「謎」と書かれた扇子を取り出す。

ああ、そういう魂胆ね。

「俺とカレンの事を調べましたね?」

「ええその通りよ。君と如月カレンちゃんには謎が多過ぎるもの」

そこから更識会長は俺達を調べ上げた詳細を話してくる。

流石は裏世界暗部の一員といった所か…束さんが俺達の情報を偽造してくれたようだがこんなに早く疑いの目がかかるとはどこかツメが甘かったようだな…。

「それで護衛の名目で監視といった所か」

「聞こえは悪いけどそうなるわね」

「まあ、俺はまだいいがな。

だけどもしカレンに可笑しな手を出すというのなら…」

俺はそう更識会長に脅しをかけるようにIS{という名のハンドレッド}に手を伸ばす素振りをする。

「わわっ!?そんな事しないわよもう!」

慌てて更識会長はそう弁解してくる。

「信用して良いんですよね?」

「勿論よ神に誓って!」

「はいはい…」

更識会長がそう誓ってくれたのでひとまず安心した。

「それで剣崎君とカレンちゃんの関係って?」

「…」

うわ…ソコを聞いちゃうのかよ…。

「恋人同士ですよ勿論両想いのね」

「やっぱりね!カレンちゃんに対しての物言いからして怪しいとは思っていたけど」

「はいはいお話はもう終わりでしょ?

ただでさえ今日はツイてない事が多かったんですから…」

俺がこれ以上事を根堀り葉堀り聞き出される前に強引に話を切ろうとすると

「それってもしかしてカレンちゃんの趣味のタロット占い?

私も今度彼女に占ってもらおうかしら?…」

「ええ、彼女の占いは本当に的中率が高いんですよ。

何かお悩みでもおありで?」

「それは…」

更識会長は口篭る。

俺は彼女の悩み事に対して心当たりがあったがあえて言わない。

「まあ、他人に頼るだけの解決じゃ駄目って事ですよ。

一度己自身の心と向き合ってみて下さい。

答えはおのずと見えてくる筈ですから」

「…それは君からのありがたいアドバイスと受け取っておくわね」

「どういたしまして」

俺は余計な御節介だとは思ったが折角なので後でカレンに更識会長の事も頼んでみようと思った。

…勿論痴女の部分は抜いて…

 

 



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EPⅥ「入学と再会と決闘とPARTⅣ」

タイムマシンの漢字表記に誤りがありましたので
時空移動装置→正しくは時空転移装置でした。


寮入りが決まってからの翌日の昼休み時間に学内食堂で俺の今迄の出で立ちを可能な範囲までを春達に話した。

勿論愚兄や愚幼馴染が会話に聞き耳や入ってこれないような位置の席で。

そして彼等には言っていなかったカレンと恋人同士という関係という事も洗いざらい暴露した。

「そ、そんな!?…」

「ええ!?今夜はヤケコーラじゃあ~!…」

「イッチー男だねー」

案の定俺の事を密かに好いてくれていた美月には泣かれてしまい、会話を聞いていた俺をイッチーと呼ぶクラスメイトののほほんさんや他クラスの女子達には驚かれ彼方此方で悲鳴が聞こえてきた。

あ、女子の叫びは愚兄には聞こえていないよ?

何故なら授業中に完全に爆睡をしていた所終わる寸前にコッソリ耳栓を投入しておいたから。

その後彼は賢姉殿に出席簿アタックを喰らっていたのはいうまでもない。

「本当にすまない…」

「…イチ兄さんちょっと一発だけ軽く殴っても良い?…」

「ああ…」

「じゃあいくよ…」

春は少しばかり俺に対しての不満と怒りを感じていたようで軽く俺の頬を殴ってきたので素直に受け止めた。

「!?」

その光景を見ていた美月や他の者達は驚く。

「ちょ!?…」

「良いんだよコイツは俺の罪だからな…」

春の奴…殴る際に少しだけ笑みをこぼしていたな。

そういう事か。

「…ねえイチ兄、俺は変われるかな?」

俺が彼に対して言おうとすると向こうから聞いてくる。

「ああ、己の心が変わろうと思えているならいつだって変われる筈だ!」

「そう…」

春も今迄と違う自分へと変わろうとしている。

俺は影ながら彼を応援したいと心から思った。

「いつ迄話をしているつもりだ?昼休みはもうすぐ終わるぞ」

「それはどうもすみませんね織斑教諭」

「分かっているのなら早く次の授業準備をしろ」

空気の読めない賢姉殿がやってきたので俺達は「はあ…」と思いながらも次の授業準備へと取り掛かるのだった。

~そして代表決定戦当日~

俺達三人は山田教諭と賢姉殿に呼び出された。

「学園には今使える予備機が無い。

なので政府からお前達に専用機が与えられる事になった」

「マジで!?千冬姉さん」

「織斑先生と呼べ」

出席簿アタック以下略。

そうかどうやら春の専用機については表向きは政府からとなっているようだ。

開発は天災、束さん製だけど。

まあ俺もハンドレッド技術を少しばかり組み込んでやって関わってはいるが。

愚兄の専用機?山田教諭から聞いた所機体名は『白式』、武装は賢姉殿が現役時代に運用していた刀『雪片・弐式』みたいだ。

おい俺のと若干被っているじゃねえか!という聞き入れられる事の無い個人的文句は置いといて…

「すまないが政府や企業の思惑に付き合うつもりは更々無い」

「テメ!ちふ…織斑先生の好意を無下にするのか!?」

案の定愚兄が意味不明な俺に噛みついてきた。

「お生憎様だが俺は既に専用機を所持しているんだよ。

スペックカタログも学園長に提出済だが?」

「なんだと?」

「ああそういえばそうでしたね」

俺がそう言うと賢姉殿は目を丸くし山田教諭は思い出すように言った。

まあ、流石に新たに作成して所持しているハンドレッド全てのカタログ提出が出来ている訳ではないが。

「まそういう訳だから。

そこの二人は初期化と最適化の時間が必要だろう?」

「あ、ああ…ならば初戦は剣崎、お前とオルコットの勝負になるな」

「それなら俺はもう行ってくる」

ようやく解放されアリーナに向かう途中、偶然カレンと美月に会った。

「イチカ君頑張ってね!」

「イチカさんなら負けないと思いますけれどくれぐれも油断禁物ですよ?」

「分かってるって!そんじゃ行きますか!」

二人の応援を背に受け俺は走りながらハンドレッドを展開しいざ戦場へと向かった。

「あら?逃げずに来ましたのね…ってふ、フルスキンのISですって!?」

俺のハンドレッドを見たオルコット嬢は驚く。

「ああ他の二人はセッティングがまだだから俺から先にアンタと戦う事になった。

ではいこうか!」

[『これより剣崎イチカVSセシリア・オルコットによるISバトルの開始を宣言する!

両者始め!』]

「ではお別れですわねっ!」

「おっと!」

オルコットが自身のIS、『ブルーティアーズ』の主武装『スターライトMK-Ⅱ』を俺に向け発射してきたが俺は難無く回避した。

「避けたですって!?」

「初動前から銃口を向けられてたらアホでも分かるわ!

よもや手を抜いているんじゃないだろうな?ん?」

俺はオルコット嬢を挑発気味に誘う。

「い、今のはきっとマグレですわ!

踊りなさい私のブルーティアーズが奏でる円舞曲で!」

彼女のIS最大の特徴といえる機体名と同じ名のBT[ビット]兵器が俺の周囲を囲み浮遊しながらレーザーを撃ち放ってくる。

「受けて立つ!…と思ったがコイツは不味いな!…」

レーザーの火力はEバリアでは防ぎ切れない上にNバリアを展開したとしても多方向からの追撃まではカバーし切れない。

なので時には回避しながらチャンスを探る事に専念する。

「ムッ?…」

そういやオルコット嬢はBT兵器を操っている時には他には何も追撃してこないな…もしかして!

「温いステップだな!…」

「ッ!…」

俺は向こうの世界の記憶の一つ、ハヤトと共にリトルガーデン入学式で俺達がやらかしてしまったせいである後のクラスメイト達が危うく退学させられそうになった為にクレア会長とリディ・スタインバーグ副会長生徒会組に申し込まれた決闘を受け戦った事を思い出した。

クレア会長のハンドレッド『気高き戦姫<アリステリオン>』はオルコット嬢と同じような武装…すなわち『ドラグーン型』に分類されるあまりまともに扱える武芸者が少ない種類だ。

だけどクレア会長はオルコット嬢みたいに決して一つの動作しか出来ない訳じゃなく『絶対無敗の女王<パーフェクト・クイーン>』の二つ名に、そして『力を持つ者の責務』ノブレス・オブリージュを体現し恥じないかなりの強さを誇っていた。

一方のオルコット嬢は己の最大の弱点を俺に見抜かれたと気が付きBT兵器での攻撃を激しくしてくる。

「なんでこうも当たらないのですの!?」

「冷静さを失った乱雑な攻撃に当たってたまるかよ!

オルコット嬢、貴方はそれでも代表候補生なのかよ?

貴方が本当の気持ちで守り通したいものは一体何だ?!」

「!ッ…」

俺の言葉を聞いて彼女ははっとし何か思いに浸っているようだった。

 

Sideセシリア

今私とISバトルで相対している男性操縦者の内の一人である剣崎さんが私にかけた言葉で真剣勝負の最中だというのにふと私は数年前に両親が突然列車事故によって亡くなりその日から残されたオルコット財閥の莫大な遺産や次期当主である私の身を狙う輩の手から守る為に日々血眼になりながらISを勉強し自国の代表候補生の一人となった。

そして両親の事、母は社長令嬢でいつも強い誇りを持ち得ていた。

一方の養婿として母と結婚した父はいつも母にペコペコ低姿勢を保っていた。

物心付いた時は何も思わなかったが心と体が成長していくにつれていつの日か段々と父のその態度が嫌いになってしまっていた。

だけど気が付いたのだ。

母も父もお互いをとても信頼しそして愛し合っていた事を。

訪れてしまった事故の日も二人仲良く寄り添っていた事をお付きのメイドのチェルシーから聞いた。

「ぐすっ…」

「お、おい?」

「御見苦しい所をお見せしてしまい申し訳ありませんわ。

それでは再び参りましょう!」

それらの事を思い出し少々涙ぐんでしまうがすぐに気を取り直して再び武装を構えた。

 

Sideイチカ

オルコット嬢の現在の様子を見てどうやら彼女の中で色々とあったのだなと察した。

なら俺はその全力に応えるまで!

「いくぞ!『残影斬』!」

イグニッションブーストで一気に彼女との距離を詰め残影斬で畳み掛けようと仕掛けると…

「かかりましたわね!ブルーティアーズは後二基ありましてよ!」

オルコット嬢がフェイントで隠していた二基のビットを放ってくる。

「ムッ!?なら『虚残影幻斬』!」

「!?一体何が…」

俺もすぐにフェイントで対抗。

俺と義父さんで新たに編み出した残影斬を一度キャンセルし再び振るうという虚残影幻斬でビットを斬り裂いた。

「これで幕引きとさせて貰おう!『残影一突斬』!」

「い、インターセプター!」

刀身にセンスエナジーを流し込んだ俺の必殺の一撃に対しオルコット嬢は唯一の近接武装のダガーをコールし防ごうとするがリーチの差もあり叩き込まれた。

そしてブルーティアーズのシールドエネルギーが0となったと同時にアナウンスが鳴る。

「『こ、この勝負ブルーティアーズのシールドエネルギーエンプティーにより剣崎イチカの勝利!』」

「ワー!」

歓声が響き渡ると同時にオルコット嬢はペタンと座り込んでいた。

「ま、負けてしまいましたわ…」

「大丈夫か?」

「え、ええ…剣崎さんいえイチカさん…貴方のおかげで色々と私の心の中でモヤモヤしていたものを晴らす事が出来ましたわ」

「それはどういたしましてだな」

互いに握手を交わしクラス代表候補決定戦第一試合が終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 



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EPⅦ「入学と再会と決闘とPARTⅤ」

アニメが終わってしまったよハルトォー!
絶対二期の告知あると思ったのに無かったし…そうだ皆も円盤買えー!
せめて死なないバルゼリット卿ことダグラス戦&ホムンクルス戦まではいってほしかったんだがなあ…




「勝てましたね!イチカさん

まあカレンはイチカさんがあんな金髪ドリルに負けちゃうなんて思っていませんでしたし!」

「黒いよカレンちゃん…でも仮にも代表候補生の人に勝っちゃうなんて凄いよイチカ君!」

オルコット嬢とのバトルが終わった直後に二人が激励の言葉をかけてきた。

「それを本人の前で言わないようになカレン」

「は、はい分かりました…」

こうもはっきりと言いきっちゃうとは…我が恋人ながら恐ろしい奴だ。

まあそれ程に愚兄は別として女尊男卑思想に染まりかけていたとはいえ、男性をああも悪く言ったオルコット嬢の発言がカレンにも許せる事ではなかったのだろう。

「次の対戦マッチングはオルコット嬢と愚兄のカードか…あまり観る気はしないが一応観てみるか」

思ったより春のISのセッティングが遅くまだ完了していなかったらしい。

そしてあまり観戦する気の起きないカードだったがあの愚兄がオルコット嬢にどこまで迫れるか一応確認しておこうと思った事と愚兄に対して自分が本格的に兄弟の縁を切る踏ん切りを付ける為に結局観る事にした。

「オルコットさんと駄兄{笑}かあ…イチカ君はどう思う?」

「オルコット嬢が慢心してさえいなければ勝機は十分にあるな。

ただし…相手があの愚兄だ。

きっと一筋縄ではいかないかもしれない」

「そっか…」

なにせ血の繋がった弟である俺と春の努力を散々邪魔し、俺達の全てを嘲笑い無駄に終わらせてきたような奴だ。

試合でも一体何をやらかすか分かったものではない。

「ではそろそろ始まるので参りますわね」

「そんじゃあ頑張ってこい」

「ありがたく受け取らせて頂きますわね」

俺からの激励の言葉を受けたオルコット嬢は決戦に向かった。

 

Sideセシリア

「俺はブリュンヒルデという世界最強の千冬姉の隣に居続ける為にここで退くなんて訳にはいかないんだよ!」

「…」

織斑秋彦の言葉を聞いた私は思った。

彼は世界最強「ブリュンヒルデ」の称号を欲しいままにした織斑先生の影響力そのものにしか興味が無いのだという事に。

「そう上手くはいかせませんわよ!」

「他の奴に負けた奴に負けると思ってるのかよ?」

「!」

「それにアイツの名前は凄く嫌な奴を思い出すんだよ!

まあ最後は行方不明、最悪死んだと聞いた時は心の底から清々したよ」

「あ、貴方っていう方は…弟さんを一体何だと思っていますの!?」

彼からの驚愕の事実を聞き私は今にも吐きそうになる。

だがそんな私の様子に気が付かないのか彼は言葉を続ける。

「アイツと春季はな千冬姉と『神童』、『天武の才の持主』と呼ばれた俺に並び立ちたいだなんて戯言をつきやがったんだよ!

まあ幸い春季の野郎はきっぱりと諦めてくれたんだがな…でもアイツだけは何度蹴落としても這い上がろうとしてきて凄くうざったかったんだよ!

凡人の癖によお!

アイツも後で俺がボコボコにしてやるぜ!」

彼は悪びれる事もなくそう言い放つ。

「もうそれ以上貴方の弟さんやイチカさんの悪口を言うのはおやめ下さい!

イチカさんは貴方の言う天武の才などとは違う努力の形を感じられます!」

「チッ!お前も努力努力とピーピー五月蠅いな…これでも喰らえ!」

「しまっ!?イン…」

織斑秋彦に対する怒りで私は恰好の隙を生じてしまいインターセプターで防御する間もなく彼のISの単一仕様能力『零落白夜』をまともに受けてしまいブルーティアーズのシールドエネルギーが0にされてしまい私の敗北が決してしまいました…。

 

「あんな暴言など気にしなければ良い事でしたのに…」

「気にするなという方が酷というものだあれはな…」

織斑秋彦にも敗北してしまった私をイチカさんは優しく励ましてくれました。

ああ…ますます惚れてしまいそうですわ私ったら…。

 

Sideイチカ

「愚兄の真意は良ぉく分かった。

次のカードは奴と俺か…他人の努力を散々馬鹿にし自身は天武の才と担ぎ上げられ胡座をかいていたようだがそれも今日迄の夢になる!」

俺は静かに愚兄への怒りを滾らせながらアリーナへと向かうのだった。

 

 

 

 




セッシーボッチ飯でイチカとカレンが付き合っている事を未だ知らず…ご愁傷様です。



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EPⅧ「入学と再会と決闘とPARTⅥ」

おっと「BLOODRED」を用意するのはまだまだ先だぜ?


「来たか!もう一人の男性操縦者ぁ!」

「とっとと始めようか」

俺は愚兄の言葉を完全無視し戦闘態勢に入る。

「『残影斬』はっ!」

未だ戦闘態勢を取らずにいた愚兄に一撃入れる。

「んなっ!?テメ…よくもやってくれたな!

もういい俺がテメエをボコボコにしてやる!」

「やってみろよ」

「オラァ!」

逆ギレを起こした愚兄が馬鹿正直な剣道の型で俺に斬り込みを入れてくるが難無く回避する。

だけど奴の単一仕様能力は少しばかり厄介だな…エネルギーの塊である俺のハンドレッドは下手すれば一撃受けただけでも不味い状況に陥りかねない。

奴に能力を使用される前に短期決戦で片を付けなければならないなこれは。

「そういえばお前にはもう一人弟が居たんだってな。

こんな性格の悪い兄貴をもったのが唯一の不幸だな…」

俺は挑発気味に言う。

「フン!凡人は凡人らしくしていればいいのさ!

天武の才と張り合おうだなんて馬鹿な事を考えなければアイツも今頃生きていられたのによ」

愚兄はそう言いながら『零落白夜』の発動準備に入る。

チッ!予測がちょっと間違っていたか。

怒りで我を忘れて単一仕様能力を使うのを忘れてくれてればよかったんだがな…。

「そうか…これでもうアンタとの関係を完全に断ち切れる!…」

俺はそう呟き即座にディヴァイン・ブラスターをデュアルアクトし愚兄に向けて撃った。

「なっ!?…テメエ射撃武装があったのかよ!?…」

「本来なら貴様如きに使うだけでも有り難く思いな。

他人や血の繋がった家族の努力を散々馬鹿にし自身は天武の才に胡座をかいていた貴様の夢も今日迄と思っておくんだな!

『残影一突斬』!」

「ガッ!?…て、テメこの!…」

ディヴァインブラスターを半分の出力で撃ち放ち、イグニッションブーストで接近した俺は残影一突斬で迫るのに対し愚兄は乱雑に雪片・弐型を振り回してくるがそんな見え見え過ぎる攻撃に当たる俺ではない。

残影一突斬が物の見事にヒットし百式のシールドエネルギーを0にした。

「終わりだな自称天才(笑)」

「こ、これは油断しただけだ!」

愚兄は捨て台詞を吐いてアリーナを出て行った。

「凄いよイチカ君!代表候補生のオルコットさんだけでなく秋彦にも勝っちゃうなんて!」

「イチカさんの実力なら当然の事です!」

「はは…」

なんだろうか?凄くデジャヴを感じたんだが…美月とカレンが俺を賞賛していると

「おい貴様!」

愚兄の敗北に納得がいかないのかモップが俺に突っかかってきた。

「なんでしょうか篠ノ之さん?」

俺は目を明後日の方向に泳がせながら対応する。

「イカサマをしただろう!貴様が卑怯な事をしなければ神童といわれた秋彦が負ける筈が無いんだ!」

「「ハア(゜Д゜)?」」

なんでそういう結論になるんだと思いながらも対応する。

「射撃武装に関してはちゃんとISの標準装備だよ。

オルコット嬢の時にはあえて使わなかっただけだ。

俺は元々刀で戦う方が向いているんでね」

「それにイチカさんは代表候補生の金髪ドリ…オルコットさんにも勝ってるんですよ?

天才(笑)の人の攻撃にも全く当たってなんかいませんしね」

「録画されたビデオも観た限り姉さんが言う卑怯な手なんて使ってないけど…」

「グッ!?…その卑怯者の味方をするのか美月!」

「はああの人は…」

一瞬黒くなったカレンと美月の反論にモップはそれでも納得がいかないといったご様子で退散していった。

次は春と愚兄のカードか…。

 

 



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EPⅨ「入学と再会と決闘とPARTⅦ」

更新遅れて申し訳ありませんスクフェスの消化にここ数日張っていたものでついですね…おかげで配布されたラブ石でヨハネたんSSR、UR梨子ちゃん狙って十一連回しましたが見事にドブライブでSRはスマイルのマリー一枚だけ…まあそれ以前に単発回ししたのでSSRの千歌ちゃんとルビィちゃん来てくれたからいっか!
てか覚醒後のSSRルビィちゃんこれどういう状況なんだよ?w
…まさか再来週でURヨハネたん実装きたりしないよな?…石貯めさせて下さいよ~





「…」

「お?春こんな所で何しているんだ?もうすぐお前の初試合が始まるぞ」

俺は未だISの整備室で春が俺と束さんが彼の為に共同で製造したハンドレッドとISのハイブリッド機である『千式雷牙』を眺めている春を見つけた。

「あ、イチカ兄さん…」

「やっぱり不安なのか?」

「う、うん…俺なんかが兄貴や代表候補生に勝てるのかな?って…やっぱり凄く不安なんだよ…」

「フム成程な…」

やはり彼の中で渦巻く不安は拭えないようだった。

「愚兄はともかくとしてオルコット嬢は確かに強敵だ。

だが春、お前の中にも確かといえる何かがある筈だ」

「お、俺の中の何か…」

束さんから聞いた話によると俺がいなくなっていた空白の二年間の内の半年間の春はほんとに不良の道一歩手前な所に入りかける生活を送っていた。

でもその後は家に帰ってくる日が多くなってきたらしい。

その一因となったのが俺も此方での小学校時代少しの間だけお世話になった事のある人物に再会したからだった。

その人はあらゆる格闘技に精通しておりISが世に出てきてからも臆する事無く様々な大会で優勝を勝ち取っている凄い人である。

「だから春、時には他人だけでなく己を信じる事も大事だ。

その信念こそが力を引き出す基本的なトリガーになるのだからな」

「…」

その人物に再会し武の神髄とは何たるかを請うてもらい、おかげで春は己自身の才能を開花させているのだ。

少なくとも剣道一本だけを馬鹿正直にやり、姉の持つ権力に縋り付いて他人を見下し突き落とす事でしか周囲の評価を上げられず尚己を見誤り過信している愚兄に負ける要素はほぼ無いといっても過言ではないだろう。

「ま、そういう事だから後は頑張っていけばいいぜ!」

「ありがとうイチカ兄さん!俺いってくるよ」

「ああ!」

俺の言葉を聞いて安心したのか春はほっと一息ついてから千式雷牙を纏ってアリーナへと向かって行った。

「さて俺も観に行きますか!」

俺も観戦に向かうのだった。

 

Side春季

「やっと来たか春季」

「…」

仁王立ちで待ち構えていた秋彦兄さんは雪片を既に構え斬りかかる準備をしていた。

俺は只この兄さんとは話したくなくて無言を貫いていた。

「オイ…何とか言ったらどうなんだよ春季?!」

「…」

しつこく責め立ててくる兄さんだが取り繕わない。

「もう良い…春季お前じゃ俺の剣道にもISでも勝てないって事を教えてやる!

見た所その鈍重そうなISじゃ尚更なあ!」

「はあ…いこう千式雷牙!」

勝手に切れて突っ込んでくる秋彦兄さんに対して俺は拳の構えを取る。

「何だあ?まあいい『零落白夜』!」

「鳳流奥義第壱の型、『気脈流一鉄功』!」

秋彦兄さんは俺の構えが何なのか分からずとりあえず零落白夜を発動した雪片で斬りかかってくる。

「そう来る事は分かっていたよ!」

「何ッ!?…」

俺は千式雷牙の武装の一つ『雷閃双爪』をコール、俺自身が身に着けた技の一つで兄さんの気の流れを読み取ってから瞬時加速をし一気に間合いを詰めた。

「第弐の型、『白鳳閃百撃』!ヒョオ!」

「んなあっ!?…がっ!?ぐっ!?ぽぉっ!?」

そのまま間髪入れずに兄さんに百の拳撃ラッシュを叩き込んだ。

みるみる兄さんの白式のシールドエネルギーが削られていく。

「て、テメ…いつの間にそんな技を!?そ、それになんで俺の剣が見切れるんだよ!?」

「一体何年兄弟やっていると思っているんです?

それに己と他人を一括りにして知ろうとしなかったのは兄さん、アンタの方だからな」

本来ならこの馬鹿正直な剣筋は第壱の型を使わなくても簡単に読めたのだが今迄を振り返り再スタートをする決意と覚悟を決める為あえて使ったのだ。

「ン?コレは…」

兄さんに打撃ラッシュを加えた直後、千式雷牙の拡張領域<バススロット>がいつの間にか増えておりそこには『雷砲血神』という新たな武装が追加されていた。

「使ってみるか…来い!『雷砲血神』!」

 

Sideイチカ

「イチカさんあれって…」

「ああ、春の奴もうアレを解放させたのか!」

予想していたよりも早いハンドレッド擬き武装の覚醒の早さに俺は少しだけ驚いた。

成程な…それが春、お前の覚悟という事か!

俺と束さんとで造りあげた試作第壱号であるハンドレッド、それが千式雷牙に搭載された『雷砲血神』である。

その他詳細等についてはバトルを観ながら説明していこう。

 

Side春季

コールした大型の腕型武装である雷砲血神が右腕に装備される。

「なんだあその馬鹿デカイ武装は!?」

兄さんが驚くがとりあわない。

「まずはこうやって使うんだ。いっけえー!」

俺は雷砲血神をロケットパンチの要領で射出した。

「いっ!?…危ね、危ねえ!」

驚いた拍子のおかげか偶然か兄さんは回避に成功する。

でもね…この武装の真価はこんなものじゃない。

「そっこだあ!」

外したと思われた雷砲血神は宙返りをしまた兄さんに向かって飛んできたのだから。

カシュン!と何かが雷砲血神から落ちた様な音がしたがこの際気にしない。

 

「何ィッ!?…この武装もしかしてあの高飛車お嬢と同じ!?…」

まさか回避した攻撃がまた間髪入れずに飛んでくるとは思いも寄らず油断しきっていた秋彦は見事に当たってしまい憤慨しながら考察していた。

あの武装はセシリアの扱うBT兵器と同じ類の物ではないかと。

「{…という事は恐らくアレを飛ばしてる間は春季の奴は動けないも同然って事だよな…見た所あの腕も突っ込むしか能の無い武装みたいだしな。

はん!俺に勝とうなんざ百年早いんだよ!}喰らええ!」

自身の天才(笑)的頭脳で導き出した結論を信じて零落白夜を発動した雪片を構えて突っ込む秋彦。

それに対し春季はほくそ笑む。

「…かかったね!」

俺は兄さんが突っ込んできたのを確認し即座に脚型武装である『雷千双武脚』をコールし技を繰り出す。

「鳳流奥義第四の型、『片速円舞脚』!」

「んなあっ!?がっ!?ぷぅっ!?…」

片足を突き出して回転蹴りを喰らわす。

そこに先程放っていた雷砲血神の一撃も入った。

「うぐ!?…て、テメエ春季なんで動けるんだよ!?…」

「自分で考えてみたらどうなんです?俺と違ってアンタは天才なんだからさ兄さん。

それに俺は言ったよな?他人を一括りにするんじゃないとね!」

「減らず口が!今すぐその大口を叩けなくしてやるぜ!」

敵に簡単に情報を渡す訳にはいかないし第一最初からコイツに教えるなんて気はさらさらない。

 

Sideイチカ

「フム…あの技の数々結構物にしているじゃないか春は。

でもこの消費量はちょいと予想外だな…」

雷砲血神の特性それは向こうの世界でシャーロット博士が言っていた「武芸者適正の無い常人にも極僅かながらの量ではあるがセンスエナジーが流れている」という理論を元に採取した俺の中に流れている血から力の根源であるヴァリアントウィルスを抜き出し凝縮させ詰め込んだエネルギーカートリッジ『VWC』による操作性向上とその上昇した一撃一撃の火力だ。

簡単にいってしまうと簡易型人工ヴァリアントとなれる代物であるが、束さんがVWの研究にも尽力してくれたおかげでVWの浸食による暴走を引き起こす事も無い上、武芸者適正の無い者にも無害となっている。

そしてドラグーン型のハンドレッドを参考に制作した物なので通常のISのBT兵器とはかなりの差があり、あの通り雷砲血神を射出している間も春は他の操作にも集中する事が可能となっているのだ。

でも流石に十あるカートリッジの内の四つもこのバトルで消費するとは俺も思わなかったので思わず苦笑した。

 

Side春季

「これ以上長引かせると他の生徒達の時間を奪っちゃうからもう次の一撃で終わらせてあげるよ兄さん」

「は!やれるものならやってみやがれ!」

兄さんは剣道の居合いの構えでこちらを狙ってくる。

「再接続(リコネクト)!第五の型、『鳳凰打羽陣』!」

対する俺は浮遊させていた雷砲血神を呼び戻して再接続しイグニッション・ブーストで上空へと急上昇し其処から渾身の拳の一撃を入れた。

「がぁっ!?…」

急上昇から急降下の重い一撃に秋彦の馬鹿正直な剣道の居合いの構えは全く以て役には立たず白式のシールドエネルギーは枯渇した。

「『しょ、勝者織斑 春季!』」

春季の勝利を告げるブザーが鳴り、彼はすっかり気絶している秋彦に告げる。

「秋彦兄さんアンタがその態度を改められないならもう二度と俺やイチカ兄さん、退いては他の代表候補生にも勝利するなんて事は出来なくなるだろう…それはアンタの自業自得なんだからな!」

届く筈が無いと分かっていながらも春季はそう言い放ちアリーナを後にした。

 

 




結構難産でした…千冬の考察は次回でそして決闘回最終ラウンド!


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EPⅩ「入学と再会と決闘とPARTⅧ」

スパロボVの為にPSVITA中古で確保!
繋ぎでヴァルドラビクニしようと思ったら中古でも二百円ぐらいしか下がってなくて仕方なく電撃CFXやってます。
主に錬太郎か刹那しか使ってないけどw
そして…スクフェスのG需要がマッハで全然足りねええええ!…



千冬Side

「なんだと!?…」

今、私は信じられない光景を目の当たりにしていた。

私が最愛してやまない男でありながらISを動かした二人の弟である秋彦と春季。

秋彦は私に最も近しい天武の才を持ち周囲に神童と呼ばれ期待感が大きい人物だ。

だが突如現れISを動かしたもう一人の男子生徒、剣崎イチカが…私のもう一人の弟だった人物、一夏にとても良く似ていたのだ。

だが彼は二年前にドイツで行われたモンドグロッソで私の優勝をさせまいと企んだ不貞な輩によって誘拐されそして死んだ筈…現場に垂れていた血がそう判断したのだから…。

その時一緒に誘拐されていた束の末妹がおかしな現象が起きたとか何やら意味不明な事を言っていた気がするが…

秋彦は彼に負け、そして何の取り柄も無く平凡だと思っていた春季にまで敗北したのだ。

私にはそれがとても信じる事が出来なかった。

それに私には剣崎と春季のISはとても純粋なISとは思えなかった。

「…一度彼等のISを回収し調べてみる必要性があるな…」

私はそう思い彼等の居る所へ向かった

 

Side春季

「お疲れ様だな春、愚兄が相手だったとはいえお前があそこまで戦えるなんて正直俺も予想外だったぜ!」

「凄かったよ春君!」

「カッコ良かったよー!」

「イチカ兄さん!それに美月やクラスの子達までありがとう!…」

「ちょ!?そこまで愚兄に耐えられなかったのかよ…」

俺が秋彦兄さんとのISバトルを終えた直後、イチカ兄さんとそして極一部を除くクラスメイト達が賛辞に来てくれた。

正直秋彦兄さんに散々努力を邪魔されて自ら一度諦めてしまってから他人に褒められる事が無かった俺は物凄く心の底から素直な感謝の意と嬉しさが込み上げてきて思いっ切り涙を流していた。

 

Sideイチカ

「春季君が泣く訳も分かるわ!

なんかさ…秋彦君って最初に感じていた印象よりも駄目な風に感じたわ」

「それにさぁ、オルコットさんとの時に偉そうな事言っていた割には自分はなんかかなり小さいしねぇ」

良識なクラスメイト達の愚兄に対する印象や評価は只確実にだだ下がっていた。

ま、これも奴自身が招いた自業自得な事態でしかないからフォローのしようが無いというか最早最初からする気は全く以て俺やこの子達には無い。

「剣崎、春季ちょっとお前達に話があるから今すぐに職員室まで来い」

「…」

「?もうすぐオルコットさんとの試合が始まるんだけど…」

「すぐに済む」

賢姉殿がやって来て俺と春に話だと?

まあ俺のハンドレッドや春の機体についてはいずれ怪しまれると思っていたから慌てる必要は無い。

俺も春も素直に従い向かった。

 

Side千冬

私は二人のISを回収し解析する為に呼び出し話をした。

「話って一体何ですか?千冬姉さん」

「織斑先生だ。春季お前の機体は剣崎とオルコットの試合中に初期化と最適化を完了させていた筈だ。

それなのにあの機体は第二次移行<セカンドシフト>を起こした訳でも無いのに拡張領域が突然増え武装も増えた。

あれは一体どういう事だ?

それに剣崎、お前の専用機ははっきりいって異質だ」

「どういう事といわれてもな…」

「…」

春季のIS千式雷牙といったか…全身装甲に突如のBT兵器に類するであろう武装の増加、それにBT兵器と他の動作を同時に行うにはかなりの鍛錬が必要になる筈なのだ。

もっぱらの初心者である春季がそれを扱えるなど機体に秘密があるとしか思えなかった。

一方の剣崎の機体は春季と同じく全身装甲だが此方は違ったベクトルでかなり異質な機体だった。

未だ発展途上である筈のビーム兵器が完成しており、尚且つ彼の戦闘センスも異常な迄の圧倒的な強さを誇っている様だった。

彼がもし死んだ筈だと言われていた一夏だとしたら…一体何がお前を其処まで変えたんだ?…

もしや束お前が関わっているのか?

疑問は尽きない。

 

Sideイチカ

「悪いが織斑先生、今の貴方に俺や春の機体情報は渡せないね」

結論から言わせて貰おうか…勿論の如く俺は賢姉殿の要求を蹴った。

もうちょっと彼女の言いようが良ければまだ譲歩したかもしれないがな。

「何故だ?お前はともかくとして春季の迄というのは…ってちょっと待て。

お前は春季の機体の事を知っているというのか!?」

賢姉殿は驚いた顔をする。

「ああ、言い忘れていたが俺と春のISの開発元は全く同じ所だ。

だから例えいくら俺の許可を得ようと守秘義務が高い社からの許可が得られなければ俺達の機体には指一本触れる事はいくら貴方でも許されないぜ?」

「クッ…」

実際には多少違っているがこうでも言っておけば企業からの賠償金という壁を前に賢姉殿も下手な手出しはしてこないであろう事からそう伝えた。

まあ…例え彼女が権限を乱用し強引に解析しようとした所で無駄なのであるが…俺と束さんが下手にハンドレッド関連技術を漏らさない為にと何重にも重ねたプロテクトが仕込んであるからな。

それにそんな事を行えば後は俺や束さんは心底失望し、最悪の場合は春にまでも絶縁を迫られる事になるだけだ。

それは決して彼女も望まない事の筈だ。

「む…そういう事ならば仕方あるまいか…」

「話はこれで終わりだな。

俺は一足先に観客席へ行っておくぜ。

春、次も頑張れよ!」

「あ、うん!…」

俺はそう伝え一足先に向かった。

 

Side春季

話は半ばイチカ兄さんが強引に折って終わり、千冬姉さんは何処か腐に落ちない顔で唸っていた。

秋彦兄さんなんかとは違い、恐らくは千冬姉さんも薄々イチカ兄さんが一夏兄さん本人なのではないかと直感しているのだろう。

だけど姉さんの胸中の後悔が未だに渦巻き続け恐怖と迷いが生じ、率直に問いただしてみるという後一歩が踏み出せないでいるのだろう。

かという俺もイチカ兄さんがこの空白の二年間に一体何をやっていたのか詳しくは未だ知らないしなあ…。

「なあ…春季、彼奴は一夏なのだろうか?…」

「…そういう事は直接本人の口から聞くのが一番だと俺は思うけど…でもこれだけは言えるよ。

一夏兄さんは強さも弱さも捨ててなんかいない。

只生まれ変われたんだと!…」

「では彼奴は!…」

「あ、オルコットさんや観客の皆を待たせる訳にはいかないからもう行ってくるね」

「あ…ああ…」

俺は姉さんの言葉をあえて最後までは聞かずアリーナへと向かった。

「私は本当に一体どうしたいというのだろう?…」

春季が退出した後の職員室で一人涙を流しながら自問する千冬であった。

 

 

 




今回で入学決闘編終わらすつもりが意外と長くなってしまったので次回で終わり。
書きたいオリ回迄後もう少し!


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EPⅩⅠ「入学と再会と決闘とPARTⅨ」

今頃だけど春季の技を一つミスっていた事に今打ってる最中に気が付いた。
拳撃なのになんで脚技になってたし…誤字報告はこれだったかwありです。




Sideイチカ

「春の奴先程よりも表情が軽くなっているな。

賢姉殿との話で俺の事でも持ち上がったのか?

ま、それはオルコット嬢にも同じ事が言えるのだがな。

このバトルの行方は神のみぞ知るか…」

ブルー・ティアーズというBT兵器とベクトルの違ったドラグーン型ハンドレッド擬きである雷砲血神。

オルコット嬢は春の初試合を観戦した後も尚このまま彼と戦ってみたいと言っていた。

自身の弱点が公になっている今の状態で春を相手に何処までやれるのかを試してみたいという気持ちと代表候補生としてのプライドが再燃しているのであろうか。

 

Side春季

「お待たせしてすまないオルコットさん。

では、最初から全力でかからせて貰うよ!」

「ようやく来ましたわね。

私も今の本気を全開させて頂きますわよ!」

バトル開始のブザーが鳴った瞬間、二人はそれぞれ構えていた。

「鳳流奥義第弐の型『白鳳閃百撃』!ホォッ!」

雷閃双爪を既にコールしていた俺はイグニッションブーストで間合いを詰め連撃ラッシュを叩き込もうとした。

「インターセプター!」

「ムッ!?」

対するオルコットさんも既に唯一の格闘武装インターセプターをコールしていて俺の連撃ラッシュを防いできたのだ。

これは非常に不味いなと思った俺は機体を急後退させた。

 

Sideセシリア

「くうっ!?…」

迫りくる春季さんの拳のラッシュを私はインターセプターでなんとか受け止めて防いでいた。

だけどやはり彼の拳はとんでもなく早く続けて防ぐのは四撃ぐらいがやっとだった。

「はあ…はあ…」

「どうしたんだいもう息が上がったのか?」

どうやらあちらも不味いと感じたのか後退していた。

「まだまだですわ!

それに貴方のお兄さんとのバトルで最初に使っていた技はお使いになられないのですか?」

「気脈流一鉄功は相手の気を読み取って対応する技だ。

今回に限ってはそれは無しで貴方に対して何処まで俺がこの一年半で培った他の技が通じるのかを俺は試してみたいんだ」

彼はそう言って

「成程考えている事はほぼ同じという事ですか…ならば貴方に敬意を表して私の磨き上げた技で応えましょう!」

私はスターライトMKーⅡをコールし狙撃した。

 

Side春季

「これは!?…」

俺はオルコットさんの繰り出してくる狙撃に段々と掠り、時には直撃を受けるようになっていた。

間違い無い!

どうやら彼女はイチカ兄さんの助言を受けこの限られた時間の中で偏向射撃<フレシキブル>を身に着けたのだろう。

へへ…やっぱりこうじゃないと面白く無いね。

シールドエネルギーもお互い僅かの筈だ。

まだENカートリッジも一本しか回復していないけれども…ここは一気に賭けに出るしかなさそうだ。

向こうもやはり同じ様な事を考えていたようで既にブルー・ティアーズを浮遊させ此方をロックオンしていた。

「『雷砲血神』!」

「お行きなさい『ブルー・ティアーズ』!」

俺は雷砲血神を飛ばし、対するオルコットさんは勿論ビットを飛ばしてくる。

後はブルー・ティアーズを一基ずつ雷砲血神と他の武装を駆使して破壊していくかしてなんとか隙を作らせなくては!

「でやあ!」

「ッ!…」

オルコットさんの動作反応に遅れたビット一基を見事叩き壊す事に成功する。

「そして其処!」

続け様にもう二基も叩き落とす。

後は残りビット一基と弾道型の二基だけだ。

だがそこらはあえて残して参る!

「鳳流奥義第四の型『片速円舞脚』!」

イグニッションブーストで再度間合いを詰めた俺はキックを繰り出した。

「甘いですわね!お忘れですか?ブルー・ティアーズは後一基のビットを含めてもう二基ありましてよ!」

かかった!

「なっ!?…消えた!?…いえ、これはまさか!?…」

片速円舞脚をフェイントで繰り出したという意図にすぐには気が付かなかったオルコットさんは急上昇した俺を急いで狙撃で狙ってくる。

だがもう遅い!

「鳳流奥義第五の型『鳳凰打羽陣』!」

既に上昇中に再接続を完了させていた雷砲血神を構え必殺の一撃を叩き込んだ…筈だったのだが…

「『勝者、セシリア・オルコット!』」

「ヘッ!?…」

「あ…」

なんとも言えない両者の間抜けな声が響いていた。

 

Sideイチカ

「あっちゃあー…」

結論から言おうか…春は急上昇からの拳の一撃を加えようとした。

対するオルコット嬢は狙撃から急いでビットでの迎撃に切り替えて対応した。

そして焦っていたオルコット嬢は恐らく無意識の内にビットとこの迎撃で扱うつもりのなかった弾道型の両方を扱って物の見事に春の一撃がヒットする寸前に弾をヒットさせたのだ。

結果なんという事でしょう!春のシールドエネルギーが削れ切ってしまい、オルコット嬢が勝利した。

これは流石に予想外な事であったろう。

二人はボーッと立ったままであり他の観客も皆茫然としていた。

あ、後でフォローしといてやるか…

 

Sideセシリア

「「…」」

焦っていた私はビットだけで迎撃するつもりが無意識の内に弾道型のブルー・ティアーズも射出していたようで結果何とも府に落ちない結果での勝利となりお互い茫然としていた。

「はっは、こいつぁまだまだ修行が足りないな…」

春季さんは表情には出さないがとても悔しそうな物言いでいらっしゃいました。

「あ、あの…」

「よ!お二人さんお疲れ様。

そのなんだ…今回はお互いあまり納得のいかない結果に終わってしまったけどまた次の機会に生かせば良いのだからな!」

「そ、そうですわよね!…」

「ああ…」

私がかけようとした言葉をイチカさんに先に言われてしまいました…。

イチカさんのフォローで気を取り直した私達は握手を交わしたのであった。

 

Side?+?

「ようやく帰って来れたわ…待っていなさい…一夏、春季」

イチカと春季の二番目の幼馴染である少女は今日本に再び舞い降りた。

「お腹空いた…でも我慢我慢…」

一方、道行く男性を振り向かせる鮮やかな紫の髪と蒼と金の瞳というオッドアイを持つ少女は一人襲い来る空腹に耐えながらIS学園を目指していた。

 

 

 

 

 



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第二部 クラス対抗戦偏
EPⅩⅡ「再会の中国娘と春季の憂鬱PARTⅠ」


UAもうすぐ三万!そして読者登録数も二百を突破!
嬉しい限りです!



Sideイチカ

「という訳でクラス代表は織斑秋彦君に決定致しました!」

山田教諭がそう全員に告げる。

「ヘッ?待って下さい山田先生俺はイギリスお嬢との一勝だけなんですがどうして?…」

「それは俺達が辞退したからだな」

俺は最初からやる気等は無く、サベージ駆逐の事もある。

賢姉殿のせいで巻き込まれただけなので勿論即刻辞退、春に至っては修行不足を理由に辞退した。

「ならここはイギリスお嬢にでも譲り…」

「私も今回は辞退させて頂きましたわ」

愚兄がオルコット嬢にそう言うが跳ね除ける。

彼女に至ってもほぼ春と同じ様な理由で辞退していた。

「異論は無いな?」

「せ、精一杯やらせて頂きます…」

「頑張ってね秋彦君!デザートフリーパスがかかっているんだからね!」

欲望丸出しの一部クラスメイトさんよ…今の愚兄でクラス対抗戦を勝ち抜けると本当に思っているのか…。

良識なクラスメイト達は彼と欲望丸出しな生徒を冷ややかな目で見ていた。

まあ愚兄はそんな事には気が付かず彼の頭の中では今頃果てしない勘違いをしている事であろう。

 

「転入生?」

「うんそうだよイッチー~。どうやら明日から正式に隣の2組それと5組に入るらしいよ~」

休み時間になって再びクラス対抗戦の事と別のクラスに転入生が入った噂の話題で持ちきりになっていた。

それで俺をイッチーと呼ぶうちのクラスマスコット的存在であるのほほんさん(本名 布仏本音さん)がそう言ってきた。

「何処からの転入生か他に情報はあったりしないか?のほほんさん」

「確かね~…中国とイタリアからだったかな~?」

「ほう…」

中国と聞いて俺は思い出す。

此方の世界で唯一信頼を寄せられた人物の内の一人を…イタリアの方は勿論全く身に覚えが皆無なので後で調べておくか。

「専用機を所持しているのはウチらのクラスと確か4組だけだし余裕だよ!」

フリーパス狙いのクラスメイトがそう言う。

4組の専用機持ちは確か更識会長の妹さんだったな…後で春に聞いた事だが愚兄の専用機が最優先にされた事で彼女の機体開発が見送られてしまったそうだ。

なので自身で機体を組み上げている最中なんだそうだ。

あの愚兄は一体どこまで他人に迷惑をかけるんだよ…。

「だが少し待ってほしい。

確かIS学園の編入試験はかなりの高難易度の筈だ。

それを突破してきたって事はその転入生達は専用機持ちの代表候補生である可能性が高いぞ」

「あ…ああ!?」

「そういえばそうだよねえ…」

実際に編入試験で山田教諭と模擬戦をやり合った俺は思い出しそう言うとフリーパス狙いの子は絶望した様な表情をし同時に思い出した子達が頷いてきた。

「あーその…」

なんだ…フリーパスはもう諦めてもらうしかないなこれは…。

なにせ相手は努力と言う文字が辞書に無いあの愚兄なのだから…これは早計だったかもしれないな。

その後、愚兄のクラス代表就任パーティーが開かれそこに来た新聞部部長の黛薫子先輩にそれぞれ取材された。

そして俺はというとカレンと恋人同士だという事がどうやら先輩達にも伝わっていたようで根掘り歯掘り密着取材という名の拷問を受けそうになったのでカレンと共に教室からさっさと退散するしかなかった。

あー怖かったぜ…でもその時オルコット嬢の表情がなんか青ざめていた気が…それとなんか春が上の空だったような…。

「と…例のもう一人の転入生の情報を調べるか」

件のイタリア代表候補生であろう転入生の情報を調べていた。

が…随時更新される筈の学園のデーターベースになんでか他に情報が無かったのだ。なんでだ?もしや…

 

その頃、IS学園付近にあるホテルでは…

「…」

少女、鳳鈴音は…いや彼女だけではないホテルの他の客やボーイ達も彼女の目の前に座っているもう一人の少女の食いっぷりに皆唖然としていた。

「IS学園に着く迄ほぼなんにも口にしていなかったって…」

だからといってこの食いっぷりは異常で少女からは想像もつかないのである。

紫の綺麗なロングヘアー+ミニツインテール、青と金色のオッドアイという正に神が与えたであろうなんたる可愛らしい美貌。

同性でノンケである鈴音も思わず見惚れる程のスタイルの持主なのだ。

そして鈴音が思わず「ぐぬぬ…」と言いたい程のそう!巨乳であった。

「なんなの?その完璧過ぎるスタイルは!…やはり養分が頭に回っていないんじゃないの?」

「にゅ?…家から持ち込んできた携帯食料は全部この子達にあげちゃったから」

「ニャー」

「ワン!」

鈴音に半ば嫉妬を交えて若干馬鹿にされた事に気付かなくそう言う少女の傍らには数匹の犬や猫がいた。

皆野良の動物達だ。

「アンタ動物に懐かれやすいタイプなのね…でもその野良の子達が呼びかけてくれなかったら私もアンタが行き倒れになっているのに気が付けなかったわ」

「うん、本当に感謝…勿論私を此処までおぶってきてくれた鈴ちゃんにも感謝!」

そう彼女は動物達のおかげで偶然同じIS学園という場所に向かう最中だった鈴音に発見される迄の間空港を大分過ぎた所で襲い来る空腹に遂には耐えかね生き倒れていたのだ。

鈴音が少女の首にぶら下がっていた生徒手帳を見た事で同じ学園の生徒だという事が分かり予定外にタクシーで向かう事になってしまったのは別の話。

「そういえばアンタの名前ってどう読むのか良く分からなかったんだけど教えてくれる?」

「うん。私は音六・フェッロン・セラフィーノだよ。音に六と書いてねむ」

「音六ね、へーアンタハーフだったのね。

そのスタイルもそれなら納得がいくわね…ある部分以外は…」

「?」

鈴音は音六の容姿のパーフェクトさに納得がいくがそれでもある部分にはいっていないようだ。

何処の部分とはもうあえて言わないけど。

「ま、同じ代表候補生同士のよしみだし音六、アンタも友達よ!」

「うん!」

鈴音と音六は互いに握手を交わし合った。

その夜

「はー…予定が大幅に狂って編入が明日に持ち越されるなんて予想外だったわよ…ン?そういえば音六のファミリーネームってどっかで聞き覚えがあるようなないような…まそれより明日からの学園生活に備えて寝る!待っていなさいよ一夏、春季!」

鈴音はベッドの中で一人高らかに宣言していた。

一方…

「みゅ…はーく…zzz~…」

隣で寝ている音六が寝言で誰かの名前を呟いてる事に鈴音は気が付く事はなかった。

 

 

 

 

 

 



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EPⅩⅢ「再会の中国娘と春季の憂鬱PARTⅡ」

夏祭遠征等で更新が怠るうー…後今年こそはアスタロトでガンプラワールドカップに応募しよう!{使命感}


Sideイチカ

「むむう...」

昨日から例のイタリアの転入生について調べてみていたがどうしてか情報がなかったのだ。

どうやら入ってきたデータに対して更新のスピードが追いついていないらしかったので考えていても仕方無いと思い教室に戻ってくると何やら騒がしかった。

「ああ...そういう事か」

俺の予想通り転入生の一人は俺達のもう一人の幼馴染である鳳 鈴音だった。

彼女は転入早々うちのクラスに宣戦布告にでもやって来たのであろう。

それで早計にクラス代表にしてしまった愚兄と目が合うと大喧嘩を始めてしまったらしい。

まあ十中八苦先に仕掛けたのは愚兄の俺や春、鈴に対する悪口であろうが...全く勘弁して欲しいものだ。

「おい何をやっている馬鹿共。授業はとっくに始まっているぞ」

「ち、千冬さん...」

「織斑先生だ鳳、お前もさっさと戻れ」

「は、はい...」

賢姉殿が半ば強引に喧嘩を仲裁(実際にはなっていないが)し騒ぎは収められた。

教室を出て行く際鈴は俺と目が合うと何処か懐かしそうな目をしていた。

これは...彼女にもきっと見抜かれているな...どの道愚兄のせいでうやむやになったであろう事を聞いてくるに違いないな。

ここはまた素直に話すしかないか...昼休みになると俺は鈴に名指しで呼ばれた。

カレンや事情を知った美月を交えて話をした。

春は何やら用があるらしくいないが...アイツ昨日から様子が可笑しい様な気がするんだが....まあ今は鈴への話だ。

「剣崎イチカ...ううんアンタもしかしなくても織斑一夏なんでしょう?」

鈴は度直球に問いただしてくる。

「...ああ確かに俺は元は織斑一夏だ」

観念して俺は認めた。

「!今の今迄一体何処に行っていたのよ?このバカ一夏!凄く心配したんだからね!」

俺が本当に織斑一夏本人だと分かると鈴は途端に泣きだしそう言いながら俺に抱きついてきた。

「すまなかったな今迄散々心配かけちまって...だけど俺は今の所織斑一夏としての俺に戻る気はないんだ...」

「それって...」

鈴も少しは察したのだろう。

「ねえ...二人きりでちょっと話さない?」

「あ?ああ…」

唐突に鈴がそう言ってきたので俺は共に廊下に出た。

「あのね…昔私がアンタに言った事覚えてるかな?…」

「ああ、料理が上達したら酢豚を毎日作ってくれるって奴だろ?覚えているよ」

「じゃあ!…」

俺がそう言うと鈴はぱあっと顔を上げた。

だけど…彼女にも言わなければならない。

「鈴、あの時の言葉が遠回しのプロポーズだという事は分かってる。

だけどごめんな…俺にはもう大切な人が出来たんだよ」

「え?…それってどういう?…」

俺がそう告げると鈴は途端に暗い表情になる。

「さっき俺の隣に紫がかった長い髪の子がいたろ」

「名前は確か如月カレンちゃんだったけ?それじゃあ一夏の大切な人ってもしかして…」

「ああその通りだ。だからお前の告白を受ける事は出来ないんだ…」

俺が丁寧に断ると鈴は更に顔をうつむかせてしまった。

 

Side鈴

私はようやく聞けた…でも聞きたくなかった一夏の返事を聞いて顔をうつむかせ涙ぐむのを我慢せずにはいられなかった。

でも彼に再会した時から薄々気が付いていたのかもしれない。

現に彼と彼から恋人であると告げられたカレンちゃんはとても仲良さそうにしていたわね…。

「アンタが行方不明になった時から運命は決まっていたのかもね…」

「鈴…大丈夫か?」

ボソッと呟いた一言に彼は反応し気遣ってくれる。

「ええ…もう大丈夫よおかげでスッキリする事が出来たわ…ねえ一…じゃなかったイチカ…また私と友達になってくれるわよね?」

「ああ、勿論だとも!」

すっぱりと諦めがついた私はイチカとまた友達から始めようと思い立ち彼も快く握手を交わしてくれたのだった。

 

~その頃、IS学園寮春季の部屋 Side春季~

「…」

例の転入生の噂から内一人がイタリアの代表候補生かもしれないと聞いた俺はイチカ兄さんにも言っていないちょっとした心当たりがあり逃げる様に昼休みは寮で一人過ごしていた。

「…なんで俺こんな所に一人いるんだろう?…まだアイツだと決まった訳じゃないのにさ…」

イチカ兄さんが行方不明になっている間、自暴自棄になっていた二年間の半年の不良生活、亥曇先生に偶然再会し彼の下で修行した一年半の生活を始める前に起こったたった四日間の出来事が俺の胸の中に酷く焼き付いていた。

「あーもう!このまま此処で考えているだけじゃ埒が明かないな…」

予鈴が鳴ったので俺は嫌な予感を抑えながら教室へと戻っていった。

 

 

 

 



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EPⅩⅣ「再会の中国娘と春季の憂鬱PARTⅢ」

Sideイチカ

「ファッー!?(ノ゜⊿゜)」

「これはこれは…」

「んなぁっ!?!?」

鈴と再会してから翌日の一限目授業が終わった直後に俺はいや、俺達は衝撃的な光景を目の当たりにしていた。

愚兄は別の意味で仰天している様だが。

「…(^^;;」

「ん~!はーくんの一年半振りの匂いだ~!」

春が突然うちのクラスにやってきた美少女に抱き着かれていたのだ。

頭に恐らく野良であろう白い子猫を乗せながら…此処ってペット可だったけ?

もしや彼女が件のイタリア代表候補の転入生なのか?

まさか春が彼女と顔見知りだとは思いもよらなかったが…彼の様子が可笑しかったのはこれだったのか。

…よし!

「ちょっと良いかな?」

「ちょ!?剣崎君!?」

思い切って春と転入生であろう少女に問いかけようと俺は断りを入れた。

醸し出されていた甘い空間(スウィート・スペース)に赤面していたクラスメイトにビックリされるがかまわない。

「誰ー?…」

転入生の少女は俺にまるで興味が無い様なぼんやりとした物言いで聞いてくる。

あれ?…このパターンは物凄くアレな予感がするぞ!?

「ああ、俺の兄…じゃなかった親友の一人だよ音六」

「剣崎イチカだよろしくな」

「うにゅ…そうなんだよろしくーイーくん」

「い、イーくん?そうかそうか!」

「にゅ?…気持ち良い…」

春が音六と呼んだ少女は俺もあだ名呼びしてきた。

俺は辛抱堪らずいつの間にか手が勝手に動いて彼女を撫でていた。

「イ~チ~カ~さん?」

「ハッ(||゜Д゜)!?か、カレンゴメン!」

「…後で私の事も撫でてくれたら許してあげます」

「分かった!分かったから!」

「むー~!約束ですよ!」

隣でカレンがダークオーラを出しながら物凄く良い笑顔でだが微かに笑ってない表情で俺を見てきたので即座に必死に謝罪した。

「だって衝動的に撫でたくなったんだつい!」なんて言えなかったが。

「イチカ君ごめん。

彼女の代わりに俺が紹介するよ。

名前は音六・フェッロン・セラフィーノなんだ」

ン?…セラフィーノだと?彼女はもしや…後で一応更識会長にも聞いてみるか。

そう思っていた矢先に

「へー、春季の癖にこんなカワイイ娘とお知り合いだなんてな。

俺は織斑秋彦、春季の兄貴だよろしくしようか!」

愚兄が茶化す様に、尚も春を見下しセラフィーノを値踏みする様な視線で取り入ろうとしてきた。

が…

「…この人なんか嫌だ…怖い!…」

「ね、音六?…」

「ほう?…」

愚兄がセラフィーノの視界に入ってきた瞬間、彼女は愚兄に向かってそう言い放ちながら春の背後に隠れてしまった。

ついでに彼女の頭に乗っていた子猫も降りてきて愚兄を「フシャー!」と威嚇していた。

初対面なのにも関わらず恐らく愚兄の歪んだ性根に感憑いたのだろう。

俺は一人関心していた。

「んなっ!?俺はソイツの兄貴なんだぜ?なんで怖がられなきゃいけないんだよ!?{春季の野郎…彼女に俺の事を悪く吹き込みやがったんだな!}」

そんな事も分かろうとしない愚兄は明らかな思い違いをして春とセラフィーノに吠え叫んでいた。

 

Side春季

「そうは言われてもな…{秋彦兄さん…どうしてアンタは気付けないんだ?…あれだけ完膚無きまでの焦燥を刻み付けたというのに!…音六にまで迷惑をかける気かよ!…}」

予感は当たってしまった。

二年前の不良生活を送っていた中で出会った少女、音六が恐らくは俺が修行していた一年半の間に彼女も帰国しイタリア代表候補生になる努力をしていたのだろう。

つい最近なったようだったから確信が持てていなかったのだが…俺の傍に居たいが為に…でも俺はそんな彼女の好意を煙たがってしまっていた。

どうしても後一歩が踏み出せない理由があるからだ…。

でも今はこの状況をなんとかしないと!…

秋彦兄さんの言い寄りに音六は知らない他人から見たら過剰ともいえる拒否反応を示した。

「秋彦兄さんす・ま・な・い」

「おい春季お前謝る気無いだろ?」

俺は音六を秋彦兄さんから距離を取らせて、兄さんに代わりに空謝罪をすると彼はそれでも収まりがつかない様子で空謝罪がバレたがこの光景を見ているクラスメイト達も誰一人として取り合わない。

それ所か「秋彦君ってあんな大人しくて天使の様な子にも些細な事で怒り出すなんて流石に大人気無くない?」とか聞こえてくる。

「ぐっ!?…」

どうやらこの言葉が兄さんにも聞こえていたようでしばらくして流石に押し黙った。

だが彼は全然納得していないだろうが…千冬姉さんに相談…いや出来るならとっくにしているわな…

「秋彦!お前の事を良く知らないこんな女に構ってやる必要はないぞ!

おい今すぐ彼に謝れ!」

突如先程まで購買に行っていて教室に居なかった盲信掃除用具という名の箒がいつの間にか戻ってきていたようで兄さんと俺達の間に割って入りそう戯言を抜かしながら音六の右手を掴む。

しまった!不味い!彼女の右手は!…

「いたっ!?…離して!…」

「む?…貴様はどうやら容姿だけでもてはやされていたようだがこの様な傷があるのではまるで台無しだな!」

俺が気付いた時は既に遅く箒は音六に暴言を吐いていた。

「…この傷は…」

音六はそんな箒の暴言に深く傷付けられ反論しようとするが今にも泣き出しそうになっていた。

「箒姉…」

美月も箒の暴言にほとほと呆れ果てている。

流石にこれ以上はこのままなんて事にはしておけずに俺は箒に向かって怒号を浴びせた。

「箒姉さん…いくらアンタでもこれ以上音六を馬鹿にする事は許しておけない!」

「な、なんだとそれではまるで私と秋彦が悪いみたいな言いがかりではないか!」

「そうだ不当な言いがかりだぞ春季!」

「…」

駄目か!…家族すらも大事に出来ない今の二人に彼女の傷の本当の意味を言っても理解しようとしないだろう。

俺が頭を抱えていると

「何をそんなに騒いでいる馬鹿者共とっくに授業は始まっているぞ?」

千冬姉さんが割って入ってきて強引に止められた。

 

Side千冬

「ム?…秋彦に箒が春季に何か言い合っているな。

それに春季の後ろにいる生徒は確か五組の転入生でつい最近イタリア代表候補生になったって奴だったか?…」

二時限目は私の担当だった為教室に入ろうとすると彼等が何やら言い合っていたようだった。

「ーこれ以上音六の事を馬鹿にするなら俺は例えアンタ達でも許さない!」

音六…それが転入生の名前か。

それに春季は彼女の事を知っているようだが一体何処で知り合ったというのだ?…

いや今はそれより春季が此処まで秋彦達にここまで怒りを露わにするとは思わなかった。

昔は大人くて良い子だった筈なのだが…何がお前をそこまで変えた?

そして、秋彦も礼儀正しい自慢の弟と言える存在だった。

だけどそんな彼も代表決定戦の時から何かが可笑しいと思う様になった。

「そろそろ止めねばな」

そんな彼女の考えは多少の間違いはあるが未だ「家族」の繋がりという名の鎖しか見れていない今にしては上出来であろう。

 

Sideイチカ

「全くアイツ等にも呆れたものだよな…」

賢姉殿はどういった理由で春達が言い争いを始めたのかあまり理解出来ていないだろうが…元・姉の強引さにも呆れていた俺は授業そっちのけで思考していた。

セラフィーノの手の傷に関して春が見せたあの尋常じゃない怒り様…どうやらまた一波乱起こりそうだ…。

 

 

 

 




思ったよりモップの屑度が大きく…まこれも彼女が自ら招いた自業自得って事で。
次回!
喧嘩騒動から翌日、イチカはもう一人の転入生、音六のファミリーネームに疑問を抱き、本人や春季に聞く前に暗部である更識会長を訪ねる事にする。
果たして刀奈の口から語られる音六の抱える複雑な事情とは?
そして現状春季しか知らない彼女の手の傷の意味とは?
一方でやはりわざわざ音六に対し言いがかりをつけてくる秋彦や箒に対して春季達そして偶然聞いていた鈴は遂にその怒りを限界突破しようとするが…
「再会の中国娘と春季の憂鬱PARTⅣ」





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EPⅩⅤ「再会の中国娘と春季の憂鬱PARTⅣ」

FGOの水着イベガチャ…イベ礼装すら出ないんですが…アンちゃんときよひー欲しいよおお…モーさん?すまない…好みじゃないんだ…



Sideイチカ

「もう!今朝はビックリしたじゃない!

なんで教えてくれなかったのよ音六ちゃんも春季も!」

衝撃的な転入生との出会いと春達が起こした喧嘩騒動から翌日、鈴が驚いたと言いたげな表情でそう言ってきた。

「あの二人がどうかしたのか?というかお前もセラフィーノと顔見知りだったんだな」

俺は鈴に質問する。

「ああそういえばまだ話していなかったわね。

音六ちゃんとは空港を出て大分経った後に偶然会ったのよ。

彼女IS学園に向かう道中で生き倒れになっちゃててね…」

俺の質問に鈴もそう答える。

というか生き倒れになってたって…鈴も少し苦い顔で笑ってた。

「それで今朝は春とセラフィーノがどうしたって?」

「あ、そうそう!ホントにビックリしたわよ…今朝春季を起こしてあげに彼の寮室に行ったら音六ちゃんが彼の布団に潜り込んでいたんだもの!」

「あー…そういう事だったか…」

恐らく彼女が転校してくる前迄一人だった春のルームメイトに偶然にもなっていたのだろう。

セラフィーノは春に対して物凄く異常に懐いていたからな。

今朝方春の顔がちょっと魂抜けていた様な感じになっていたのはその為だったという事に今更気が付いた俺であった。

 

そしてその日の放課後,俺は事前情報がほとんどといっていい程取集出来なかったセラフィーノの事について暗部である更識会長ならば何か知っている筈だと思い生徒会室を訪れていた。

かくいう俺もある程度のセラフィーノに対する仮説は立てられていたが。

「そろそろ来てくれる頃だと思っていたわ…剣崎イチカ君…いいえ、織斑一夏君と今は呼んだ方がいいかしらね…」

「!…どうやら調べられたようですね「織斑家の出来損ない」といわれていた俺とそして春についても…」

まさか会長に問いただす前にそこまで調べあげられていたとは…

「織斑春季君に対するその呼び方…君が本当は行方不明になっていたブリュンヒルデ、織斑先生の弟の内の一人である一夏君だという事を認めたと受け取っていいのね?」

「…もう昔の事ですよ…」

俺はそう言うしか出来なかった。

 

Side刀奈

目の前の人物に問いただすと本当は剣崎イチカなどという名ではなく、二年前のモンドグロッソで誘拐・行方不明になっていた織斑兄弟の一人であった織斑一夏本人であると彼は素直に認めた。

彼や弟君である春季君の過去について調べていたらそれはもう吐き気を催す程の酷いものばかりであった。

ISが登場する以前からも神童といわれた織斑秋彦君と比較され彼等への酷過ぎる虐めが行われていたのだ。

ISが登場してから織斑先生が第一回モンドグロッソで優勝してブリュンヒルデと呼ばれ彼等がISを動かせると判明する迄はより一層扱いが悪化していった事もこれまでの調査で分かっている。

ちなみに虐めの主犯者についてはまだ調査中である。

「…もう昔の事ですよ…」

正体を看破された彼はそう言って何処か遠い目をしていた…かと思うと

「更識会長…貴方の妹である簪さんについてですが…」

「⁉︎…」

彼は私の抱えている最大の問題について問いただしてきたのだ。

 

Sideイチカ

更識会長に思いの他早く正体を看破された俺は一瞬たじろいだがすぐに調子を戻し彼女の抱えている問題について問いただしてみた。

「まさかこっちの事ももうそこまで調べられていたとはね…ええそうよ今の私は簪ちゃんと仲違いしてしまっているわ…でも…」

「「無能のままでいなさい」」

「はぐっ!?」

俺が会長と簪さんが仲違いしてしまった原因について言及すると会長は図星を突かれてうなだれてしまう。

「例え身内でもそんな事を言われれば誰だって怒りますよ…」

「そんな事言われてもー〜私は大切な妹の事を考えて…」

「いやいや、だからって彼女の努力を無下にする様な言い方したら駄目でしょうが!」

「はうわっ!?うう〜だってさー〜…」

「そ、それより…」

涙ぐむ会長に俺は更なるからかいという名の悪戯心が湧きそうになるが本題を聞く為に強引に話題を戻そうとすると

「ねえ、少し聞くけど織斑先生や秋彦君は貴方の事に気が付いているのかしら?

春季君は気が付いた様だけど」

「…賢姉殿は恐らく薄々気が付いてる筈です…この間春と一緒に呼び出しを食らいましたからね。

愚兄についてはまあ…俺や春の事をまた調べていく内にいずれは分かる事でしょう…」

ふいにそんな事を会長は聞いてきたので俺はそう返答すると彼女は驚いた様な表情で目を大きく見開いていた。

 

Side刀奈

「…」

私は彼が何故自分のお兄さんをそう呼んでいるのかこの時は分からなかった。

だけど彼等の事を引き続き調べていく内に私は更なる深くドス暗い闇を知る事となる。

Sideイチカ

「所でいい加減に本日の本題をお聞きしたいのですが…」

「あ…ええそうだったわね。

えと転校生のセラフィーノさんの事についてだったわね

まさか彼の娘が学園に入学してくるなんて考えられなかったけどね…」

やはり彼女の事情についておおよそは知っていたようだったので俺は話を聞いて自分の立てていた仮説が当たっていた事に少し驚いていた。

「これが彼女の情報の一部よ」

「…通りで何処かで聞き覚えのあるファミリーネームだと思いましたよ」

そう彼女はほとんどの人が聞いた事があるだろうあの有名なイタリアンマフィアの一角であるセラフィーノファミリーの首領(ボス)の娘だったのだ。

「ああ、イチカ君勘違いしないでほしいんだけど彼等は約三代前からかなり真っ当な手段で運営している組織よ」

「まあそれはセラフィーノを見ていれば分かりますよ」

通りでセラフィーノは初対面で愚兄の歪みに気が付けた訳か。

マフィアの娘故の感性という訳だ。

それが彼女の長所であり短所ともなっているといえる。

「お話ありがとうございます」

「ええ、こっちも有益な情報をありがとうね」

会長に礼を述べ俺は部屋に戻ってすぐに今度は春達に話を聞きに行ったのだが彼等は部屋にいなかった。

恐らくは二人で何処か邪魔の無い場所で話をしているのだろうと邪魔をしては悪いと思った俺はそのまま自室に戻る事にした。

翌日、再び事件が起きるのは誰もが予想しえた事だろう…。

 

 

 

 

 

 

 

 




思わぬ長さになってしまいましたので音六の傷の意味や春季との関係、愚兄等とのもつれについてはまた次回で。


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EPⅩⅥ「再会の中国娘と春季の憂鬱PARTⅤ」

お久しな更新です。
中々時間が取れず申し訳ありませんでした!


Sideイチカ

鈴とセラフィーノが転入してきてからはや四日が過ぎていた。

春の方はというと案の定、休み時間になるとほぼ毎回セラフィーノが教室にやって来て表情が色んな意味でぎこちなくなっていた。

でもクラスメイト達と仲良く話しているセラフィーノを見ていて何処かとてつもない揺るぎない思いを秘めた表情をしていた。

でもそんな彼を嘲笑うかのように自重という事を一切しない馬鹿共が少なからずいる訳で…事件は起きる。

それは昼休み、食堂での事である。

「♪」

「チッ!…」

皆が仲良く昼食をしながら談笑する最中、あからさまな不機嫌オーラを出している者がいた。

言わずも知れずセラフィーノに初対面でその歪みきった悪意を見抜かれ恐怖を抱かれた秋彦と彼を怖がられた事に一人憤怒する箒である。

「離れているからいいがその手の傷を視界に入れてくるんじゃねえ」

「そうだ!理由も無く秋彦を嫌悪した上にその不衛生な手を此方に向けられてはたまらんからな」

嫌々、嫌悪の理由は明確にあるのだがもしそれを言えばコイツ等は更に逆上するであろうから言うに言えない。

そしてセラフィーノの手の傷について未だに言いたい放題叩いてくる始末である。

当然ながらこんな阿呆共のせいで春はセラフィーノの為にわざわざ距離を取って食事している。

「はあーったく、アイツ等ときたらそれしか能が無いのかよ…」

「…」

俺は呆れ、一方の春はそんな愚兄達に対していい加減に堪忍袋の緒が切れそうなのか体を震わせている。

「春、今は堪えろ…抑えるんだ」

「で、でも!…」

俺は春をなだめるが彼はそうは言ってられないといった様な表情で愚兄達を見ている。

「でもじゃない。

今此処でお前が暴れてもただのデメリットにしかならない。

セラフィーノの為を思うなら尚更だ」

「それは!…分かったよ…」

俺の指摘に春は渋々怒りを抑える。

彼のセラフィーノに対する想いの自覚はまだまだ薄いようだがそれでこそ強くなれる。本当の強さを培えるという素質を持ち得ているといえる。

「春良かったらそろそろセラフィーノとの関係とお前が知る限りでいいから彼女の事を聞かせてくれないか?

ついでに鈴の叔父さんの事もな」

「…ああうん分かったよ」

春はセラフィーノとの過去、そして鈴の叔父さんとの関係を語り出す。

Side春季

俺はイチカ兄さんに音六との事について聞かれた。

音六との出会いは正直な所師匠と再会し鳳流奥義への弟子入りを果たす以前のあまり良いとはいえない色々と荒れた生活という俺の中の黒歴史の最中の出来事なので少々恥ずかしいという事もあり少しの間考えて結局話す事にした。

その前に鳳師匠との再会の事から。

「あれは…」

~二年前~

「ふう…なんとか今日のも稼げたな…」

第二回モンドグロッソの最中で一夏兄さんが何者かに誘拐されてしまい生死不明認定っとなった一週間後の俺の生活は一変した。

一夏兄さんは行方知れずの状態、千冬姉さんは仕事の都合であまり家には帰ってこない。

そんな状態だと俺は秋彦兄さんにどんな仕打ちを受けさせられるか分かったものじゃなかったので自身もあまり帰らずにいた。

ああ、勿論学校の方はちゃんと登校していたよ。

その荒れ果てた生活ではまだ俺が織斑の出来損無いだという事が知られていない裏地域に赴き其処でのギャンブルや怪しいバイトに手を出し日銭を稼ぎネカフェ篭りのアウトローな日々を過ごしていた。

「おらぁ!何とか言えよこの出来損ないの糞餓鬼が!今迄ビビッて損した分お返しじゃあ!」

「ぐふぅっ!?…ガッ!?…」

でも半年後のある日とうとう俺の素性が他の不良達にバレてしまい目をつけられ制裁という名の集団リンチを受ける事になってしまった。

「アニキ、コイツどうしましょうかねえ~?」

「そうだな…一応織斑の家系の者らしいしいっその事どっかの研究機関にでも売り渡しちまうかな!」

「流ッ石アニキ!」

「…」

この地区の不良ボスと取り巻きがそんな会話をしていた。

ああ…結局俺も姉の権力を振り翳す事しか出来なかった愚か者だったという訳か…このまま死んでしまっても構わないと思えていた俺にまさか救いの手が差し伸べられるとは思いもしなかったけど…。

「やれやれ悲鳴が聞こえたかと思い来てみれば…日本もこういう所は相変わらず変わらないというものか…」

「だ、誰だテメエは!?」

「!…」

路地の向こう側から声が響き不良達が驚き問いかける。

俺は何故かその声に懐かしさを感じていた。

「私か?私は貴様等がそんな集団がかりで苛め抜いてしまっている昔の教え子の関係者さ」

「という事はこの出来損無い野郎の教師か?ハッ!先公如きが口割って入ってくるんじゃねえよ!皆やっちまえ!」

「おおう!」

「ああ…」

不良達がその人物に唾を吐きながら殴りかかっていく。

中にはサバイバルナイフを取り出した者も居た。

だけど俺にはその人物が負ける気がしなかったのだ。

何故なら…その人物がある型の構えをとっていたからだ。

「やれやれ会話すら成立しないか…ならば!鳳流奥義第参の型、『鳳凰烈突破』!

ほおっ!」

「うぎゃああー!?…」

「な、ナニィッー!?」

突き出した拳とその際に起こされた風圧によって不良等は持っていた筈のナイフを弾き飛ばされた上に見事なストレートが入り気絶していく。

「こ、この野郎!」

「ムッ!?」

「あ!?…危ない!」

その様子を信じられないといった表情で見ていた不良ボスは何をとち狂ったのか拳銃を取り出し発砲する。

「もう一度、『鳳凰烈突破』!」

「!?ウギャアアァー!?…」

俺の警告よりも一早く気が付いた人物は再度同じ技を繰り出しなんと風圧で銃弾を反転させた後跳ね返したのだ。

その弾はボスの左肩を撃ち抜いた。

「ヒッ、ヒイッ!?ば、化物だあコイツ!に、逃げろぉ!」

手をまだ出してこなかった残りの不良達は気絶したボス等を抱え退散していった。

「よっと!ちょいとやり過ぎた感が拭えないが…大丈夫だったか?」

「す…凄かったです…鳳 亥曇先生!……」

「お、おい!?傷が思ったより深かったみたいだな…早い所病院に連れて行かねえと」

それが俺の恩師であり格闘技界の王である鳳 亥曇先生との再会。

変わらぬ技のキレを見た俺は意識が限界を迎え運ばれるのだった。

 

 

 

 




ちょっと長くなったので春季と音夢との出会いについては次回で。


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EPⅩⅦ「再会の中国娘と春季の憂鬱PARTⅥ」

アプモンがなんだかんだで面白い!
だけど最早デジモンの名を騙った別モノとして扱われている事が解せぬ…。
カードダスでスコープモン+ガッチモン(アプリンク体)とタロットモン引き当てたのでデッキ作ったけど付近に他にプレイしてる人いねえええー!…
というかアプモン二次も凄く書きたくなったぜ!



Side春季

「う…確か俺は…」

不良集団にリンチを受けその最中においてかつての己が恩師と再会を果たした俺は病室で目を覚ました。

「お!やっと目を覚ましたんだな。心配したんだぞ」

「先生…本当にお久し振りです。

一体何時日本に来ていたんですか?」

「一週間前にだな」

傍には亥曇先生がいてくれたので俺は会釈する。

 

「けどよ春季お前俺が偶然あそこを通らなかったらヤバイ事になっていたぜほんと」

「その件は本当にすみません…助けてくれてありがとうございます!」

「何があったのかは大体検討はついているが聞かせてはくれないか?」

「はい…」

俺は先生にこれ迄の生活の事を打ち明けた。

一夏兄さんが行方不明になった事は先生の姪で俺の幼馴染の一人である鈴が伝えていたようで知られていた。

「そいつはまた災難だったな…なあ春季」

「はい?」

「もう一度俺の拳法『鳳流奥義』を習ってみないか?」

「へ?…」

先生にそう言われ俺はポカンとなる。

「俺が…先生の奥義を?…」

「ああ!力の扱い方を誤らないのならば俺の弟子第弐号にしてやってもいいぞ」

俺は考える。

確かに今の女尊男卑の世の中先生の様な強さが欲しいとも思っていた。

だけど俺にそんな強さを持つ資格があるのか?

「迷っているみたいだな…春季一つ問うぞ。

今迄お前が信じてきたものとは何だ?」

「それは…」

先生の問いに俺はハッとなる。

そうだった俺が唯一信じきれる信念とは…

「一夏兄さんが教えてくれた諦めない強さです!…」

一度挫折をし諦めてしまったけど今度こそ頑張ってみようと思い立ちそう俺は答えた。

「よくぞ言った!よし!退院したらこの付近のホテルへと来い。

待っているぞ」

先生はそう言って出て行った。

 

「春季ー!」

「はは…」

その後見舞いに来た千冬姉さんが物凄い形相で俺を思いっきり抱きしめてきた。

渋々ついてきていた秋彦兄さんは不機嫌だったが。

退院後ホテルの広場で奥義の鍛錬に明け暮れる日々を送る様になって気が付くとまた年が明けて半年が経っていたある日のこと。

 

「10、11…」

「春季鍛錬中のとこ悪いんだがちょいと頼まれてくれないか?」

「良いですよ何でしょう?」

鍛錬の最中に先生がそう言ってきたので中断し特に断る理由も無かったので話を聞く事にした。

「いやな俺が一年前にノした不良共にあの時はやり過ぎてしまったと変わりに謝って来てくれないかなと思ってな」

「分かりました師匠!そういう事でしたら」

師匠本人が行けば怖がられてしまうだけなのであえて被害者であるが師匠の弟子である俺が行く事となった。

そして不良達に謝罪をした後俺は気になる光景を目にした。

 

「よーお嬢ちゃんこんな所でそんなにボーッとしていちゃ危ないよー?

お兄さん達がイイ所へ連れて行ってあげよっか?なあ?!なあ?!」

「へへへ…」

「うっへへへ!…」

「…」

「…」

俺が目にしたのは所割性質の悪い不良等三人がどこか不思議な感じがするボーッとした少女を取り囲んでナンパしている所だった。

当の少女は恐らくこの先彼等に何をされるのか分かっていないのだろうか沈黙したままである。

でも俺にはそんな少女が怯えてる様には見えた。

「オイアンタ達そんな事しているんじゃない!

彼女が怯えているじゃないか!」

「なんだあお前はあ?」

「邪魔スンじゃねえよ!」

「はあ…仕方無いかな…」

なので俺は彼等の間に割って入りなんとか対話しようと試みるが案の定不良達が睨んで

きて成立しなかったのでちょいと荒っぽい手段に出る事にした。

「イデデデェッ!?」

「コレが最終通告だ。

おとなしく彼女を解放してやってはくれないかな」

ボスっぽい不良の腕を掴み捻らせてやる。

「ナニしやがる!」

「…警告はしてやったからな ハッ!」

「ゲッ!?」

「うひィッ!?」

すると残りの不良達が逆上して俺に殴りかかろうとしてきたので此方も殴り飛ばしやった。

「畜生が!覚えていろよ!」

捨て台詞を吐いて彼等はようやくそそくさと逃げていった。

「…抑えるつもりだったのに結局荒っぽくなっちゃたな…っと…大丈夫だったか?」

後で師匠に怒られるのを覚悟した後、少女に向き直る。

「…」

彼女は相変わらず黙ったまま不思議そうな顔をしながら首を傾げていた。

「(な、なんだか凄くや、やりにくい…)あの…なんか言ってくれないかな?」

「…助けてくれたんだよね?ありがとう…」

「ああうん」                    

やっとお礼を言われ改めて少女をよく見るとかなりの良いスタイルを持ち得た美少女であった。

アレ?…なんだか物凄く彼女から懐かしい感じがしたような気が…気のせいか?…

「なあ…一体何をしていらっしゃるんでしょうか?」

「にゅ?…」

いつの間にか俺に接近していた少女は俺にいきなり抱き着いてきていた。

そしてじっくり俺を観察しながら途端に笑みを浮かべていた。

か、可愛い…って嫌々そうじゃなくってなんで俺は初対面の筈の彼女にこんな凄く恥ずかしい事されているんだ!?

当の本人は何故俺が困り果てた顔をしているのか分からないらしく更に匂いを嗅いでくる始末である。

「良い匂いがする…」

「ちょっとぉー!?」

アレまたデジャヴ?…以前にもこういう事があった様な気が…思い出せないな…。

「俺は…織斑春季 君は?」

「音六・フェッロン・セラフィーノ…」

ン?彼女のファミリーネームになんだか物凄く聞き覚えがあるんだが…

「なあそのファミリーネームって…」

「…あ、ちょっと待ってて」

俺がそう思い問いただそうとしたその時丁度彼女、音六のスマホが鳴ったのでしばらく待っている事になる。

「…うん分かった伝えてみる…」

彼女がそう言って切ると俺にこう言ってきたのだ。

「…私のお父さんが急いで迎えに来てくれる…それではーくんに是非共会ってみたいって…」

「へー…ってはああああああー!?」

なんだ?一体どうなっているんだ…突拍子にそこまでいつの間にか飛躍した話に俺は凄く混乱していた。

そしていつの間にか彼女に可笑しなアダ名で呼ばれているし…。

しばらくして明らかな高級車が来る。

「一緒に来て…早く…」

「Whats?…」

俺は半ば強引に彼女に手を惹かれて(力強っ!?)半強制的にその車に乗せられた。

「!…」

その時ある事に気が付いた。

彼女の左手の甲に深い刺傷がある事に…。

         

 



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EPⅩⅧ「再会の中国娘と春季の憂鬱PARTⅦ」

Side春季

不良達による羽交い絞めの昔ながらなナンパの餌食にされそうだった少女、音六を通りすがりの成り行きで助けた俺は何故か彼女の父親に呼び出される形で半ば半強制的に赴く事になってしまったのだが…。

予想していた所とは大分違う場所に目隠しで連れてこられていた。

「よう…あんちゃんがウチの愛娘を危ねえ輩達から助けてくれたそうだな…」

「ええっと(^^;)はあはは…まあそういう事になりますね」

ナニコレェー…なんか凄く怖くて若干どこぞの金ピカなライダーの様なファンキーな風貌のおっちゃんが此方に睨み顔を近付けていた。

「…てーい」

「あでるぅっー!?」

そうこうしていると音六がどっからかハリセンを取り出しておっちゃんをはたくとおっちゃんは奇声を発する。

○ン○ムかな?

「もう…お父さんあんまりはーくんを困らせないで…」

「スマン!だから機嫌直してくれよ音六」

ぷくーと頬を膨らませた音六を必死な顔でなだめるおっちゃん…ってお父さん!?

こんなファンキーな見た目なおっちゃんが!?

 

「ちょいとイタリアンジョークが過ぎちまってたなスマン!

俺はタイセイ・フェッロン・セラフィーノだ。

紹介する前に言われちまったが音六は俺の娘だ。

そしてイタリアンマフィアグループの、セラフィーノファミリーの第十三代目現首領でもある!

まあタイセイでもお兄さんとでも呼んでくれ」

満面の笑みで自己紹介してくる。

「織斑春季です…やはりそうでしたか…」

「あんま驚かないんだな」

「彼女のファミリーネームを聞いた時からもしやとは思いましたからね…」

セラフィーノファミリー、最大規模イタリアンマフィアの内の一角のボスがこんな身近に居るなんて思いもよらなかった。

俺は先程の睨み付けの事もあり条件反射で奥義の構えを取る。

「ああ、坊主勘違いしないでくれよ?

俺達のファミリーは約三代前から他のグループよりは真っ当な組織なんだ。

社会貢献だってした事もあるんだぜ」

「そうですか…ン?じゃあおっちゃん此処はもしや?…」

物凄く嫌な予感がしておっちゃんに聞く。

「おっちゃん…俺って結構老けて見えるのか?…

此処は俺等セラフィーノファミリーの家だ」

やっぱり…俺イタリアに連れてこられていた様です。

おっちゃんは項垂れていたがすぐに調子を取り戻す。

「そういや坊主お前のファミリーネームはあのブリュンヒルデの…」

「ええ…末の弟です」

「何か事情がありそうだな聞いてもいいか?」

「はい…」

おっちゃんに問われ俺はまた自身の抱える事情を話した。

「大分苦労してきたんだな…」

「…」

話を聞いてくれたおっちゃんはしみじみとそう言ってくれ、音六は何処か思う所があるのか無言で俺の事を見てくる。

「良い子良い子…」

「おわっ!?…誰?」

横から突然ハグされた俺は驚きその人物を見る。

音六とかなりそっくりな容姿をした女性だった。

特に何処とはあえて言わないけど。

「もしかして音六の姉か妹さん?」

「いんや、俺の妻だ」

「なんだと?…」

「…タイセイの妻、繭音・フェッロン・セラフィーノなの…音六ちゃんを助けてくれてありがとうなの…」

「ど、どういたしまして…」

マジかよ…どうみても音六と並んだらますます姉妹にしか見えないぐらい若々しい人ではないか繭音さんは。

「タイセイお仕事の依頼があるなの…」

「そういやまたお上から解決して欲しいといわれた案件があったな。

ちょっくら片付けてくるか!」

どうやら繭音さんはおっちゃんを呼びに来たらしくついでに俺を見かけてハグしてきたみたいだ…自由奔放な人だな。

おっちゃんは急いで部屋を出て行った。

「…お母さんだけずるい…私もはーくんとハグしたい!…」

「ちょ!?…」

その晩俺は己の理性と戦いながらセラフィーノ邸で眠れぬ夜を過ごす羽目になった。

 

 

 




バトルに中々いけない…もう少し彼の憂鬱に付き合ってあげて下さいw


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EPⅩⅨ「再会の中国娘と春季の憂鬱PARTⅧ」

Side春季

音六の両親に引き会わされてから翌日。

「おい、まさかもう手を出したりしてはいないだろうな?」

「はは、そんなまさか…」

「なら良いんだ…俺も他人の事言えないしな…」

「?」

「いやいや、コッチの話だ…」

セラフィーノ母娘に囲まれて己の理性と戦いながら眠れぬ夜を過ごした俺に仕事を終えてきたのであろうタイセイさんがそんな事を言ってきた。

何か気になる事を言っていたが聞いて欲しくなさそうだったので疑問を隅においやる。

「冗談はひとまずおいといて…坊主ちょいと入り組んだ話がしたいんだが良いか?」

「ええ何でしょう?」

タイセイさんは一際険しいマフィアボスの顔になる。

特に断る理由も無かったので話を聞く事にしたのだが…。

「なら坊主よお前は俺の後を継ぐ気は無いか?」

「は?…」

突然そんな事を言われ俺は困惑するしかない。

俺にマフィアの首領になれと?

「俺の後継者にふさわしいといえる奴が他にいなくてよ~…あンだけいつも俺にベッタリだった音六がようやく初めて他の男、坊主に興味持ったんだ。

俺としては寂しいが是非共安心して娘を任せられる奴にファミリーを継いで欲しいと考えている」

「嫌々、待って下さいよ!?」

タイセイさんはそんな事を言ってくるが俺としてはそう簡単に決められる事ではない。

他よりは真っ当な組織とはいっても結局は今の所お上の慈悲で見逃されているだけに過ぎない筈だ。

第一彼女が他の男性に興味が持てなかったのは此処の環境のせいなのでは?という突っ込みをするが彼は「音六の感性は繭音譲りだしな~」と言って其処は譲らないようだ。

「…じゃあ一つ教えて下さい。

何故彼女の左手にあんな酷い傷があるのかを」

そこで俺は最大の疑問をタイセイさんにぶつけた。

「…見ちまったのか…良いだろう話してやるよ…アイツが何故傷痕を消さないのかを含めてな」

「な!?…」

傷痕を消さない?

ああ、そうか現代の医学だったらあの程度の傷は綺麗さっぱりとはいかずとも跡が分からなくなるぐらいには治せた筈だ。

「そいつは約九年前、俺が第十四代目首領の座を認められる前のゴタゴタの中で起きちまった事だ…」

可笑しいと思った俺の疑問を解消する様にタイセイさんは話を続けていった。

 

「そうだったんですか…」

彼の話はこうだ。

セラフィーノファミリー首領への有力候補はタイセイさんの他に一人居たそうだ。

その人はタイセイさんとは強敵とも親友ともいえる存在であったがある事件をその人の右腕といえた人物が起こしてしまった。

 

~九年前 Sideタイセイ~

「ゴロちゃん、もうじき決まるな」

「ああ…正々堂々と首領の座を射止めてやるさ」

タイセイと彼の親友であるゴウシロウ・フォン・フィーノは二人してセラフィーノファミリー第十四代目首領としての有力候補に挙がっていた。

そして、首領が正式に決定される四日前の事だった。

その事件、ゴウシロウ一派であり彼の右腕であった舎弟を含む数人が候補敵であるタイセイの首を狙い襲撃するという事件が…勿論コレはゴウシロウの指示でやった事ではなく彼の認知していない所で起きてしまった予想外の事件であった。

「タイセイ、アニキの為に覚悟!」

ゴウシロウとファミリーの集会所で別れた直後にそれは起きその際タイセイはまさか寝首をかかれるとは思わなかったのだろう。

何故なら命を狙ってきた右腕の彼もまた親友と同じく信頼をよせ彼の実弟でもあった凄腕の情報屋と呼ばれた人物、ヤタ・フォン・アルイアーだったからだ。

だから油断しきっていたのかそれとも勘が鈍っていたのか定かではないが回避する間も無く己に向けられた凶刃が到達するのを見ているしか出来なかった。

だがそこに…

「おとーさんあぶないっ!」

「音六!?」

「何ッ!?」

何故か家に居る筈の愛娘が現れて自身に向けられていた凶刃を庇い逸らしてくれたのだ。

「あああああ!?…」

その逸らされた凶刃は音六の左手の甲に突き刺さってしまい彼女は悲痛な声を上げながら地面に倒れそうになる。

急いで倒れそうになる音六を支え起こそうとするが彼女の様子が可笑しい事に気が付く。

音六の左目は以前とある事件のせいでオッドアイとなっており何故かこの時は両目共に灯りその金色の輝きは一層強くなっていた。

「音六?…おいどうした!?」

「うああああー!…」

一目散に叫び声を上げながら音六がヤタへと向かっていき彼に馬乗りになって首を絞めようとしていた。

「音六やめろ!お前がそこまでやる必要性は無いんだ!」

「うううう…」

「あがが…」

すぐにやめさせようとするが今度は音六は呻き声を上げながらヤタから飛び退き今度は此方に向かってきてタイセイを押し倒す。

「…はっ!?おとーさん?…」

だがすぐに正気に戻ったのかいつもの音六になっていた。

「音六!お前どうしてこんな所に?…」

「お…おとーさんがとてもあぶないめにあっちゃう気がしたから…」

息を荒くしながら音六はそう言う。

愛する娘が唯一自分に似た所といえば勘が常人よりも鋭い、人間の悪意に対して者凄く敏感な所である。

恐らくはその勘が働いて危険に晒されていた自分を危険を顧みずに此処まで助けに来てくれたのであろう。

「馬ッ鹿野郎!…本当に心配させやがって…無事で本当に良かった!…」

「それはおとーさんもおあいこだよ…

ごめんねどうしてもおとーさんのやくにたちたくて…」

「はは…そうだったな…」

思えば娘だけはマフィアの仕事に関わらせまいと努力してきたがそれが裏目に出てしまったのが今回の事件という事だったと痛感した彼は改めて思い直した。

今迄自分が与えたと思っていた愛情は娘に届いてはいなかったのではなかったのだろうかと…。

「ううん…おとーさんもおかーさんもわたしはだいすきだよ!…」

襲い来る激痛に耐え涙を流しながら音六はそう言ってくれたのを最後に痛みに耐えられなくなった様で気を失ってしまった。

「音六!…もうじき他の奴等が救援に来る筈だ。

だがその前に俺の大事な娘を傷付けた手前ェを一発、嫌三発ぐらいは殴らせてくれや!…」

「ヒ、ヒイッ!?ゴホォッ!?……」

タイセイはその場から首を抑えながら逃げ出そうとするヤタを追い彼の顔を思いっ切り殴りつけた。

その直後、音六経由で警告を聞いた繭音が召集をかけたファミリーメンバーがようやく救援に到着し残りの取り巻きの男達を取り押さえていた。

件の彼等が事件を起こした切欠は組織に属する者なら誰もが持つであろう崇拝意識からくるものであった。

だが被害者であったタイセイの気が済んだ事、娘の音六の傷が完治出来る見込みがあった事を含め情報屋としての腕を買われていたヤタ等は以降ファミリーの命令に逆らう事の一切を許さないという条件付で追放を逃れる事となった。

 

事件解決から翌日

「本当に良いのかよ?…」

「ああ、私の知らぬ所だったとはいえ今回の事はウチのメンバーと私の弟が起こした事に変わりはない…しかも予想外だったとはいえお前の娘迄も傷付けてしまった。

だから責任を取って私は首領候補から降りる」

「そうか…」

彼にも首領を継いだ後成し遂げたい事の一つや二つあったのであろう。

それが自分の弟やその他の者達の陰謀により台無しにされてしまったというのに彼は何処か清々しいといった表情をしていた。

「これでも私はタイセイ、君の事を高く買っているのだよ。

君はその早い歳で家庭を持った。

一方の私は家庭を持たない独身者だ

守りたいものに差があるのは当然さ。

だからこそ私は君に首領の座に就いて欲しいと心から願っているぞ!」

「…悪いなゴロちゃん…今迄ありがとうな!…」

「私は隠居する事にするよ」

彼はその宣言通りイタリア政府の監視プログラムの保護下に置かれ隠居生活をする事になる。

そして正式にタイセイが第十四代目首領の座に就く事になって数週間後、遂に音六の傷に縫合された糸を抜かれた。

それでも傷痕が完全に治った訳ではないのでこれからそれを消す為の手術が行われようとしていた。

だがそれを行おうとしていた直前の事だった。

ふと音六がタイセイにあるお願いをしてきたのだ。

「おとーさん、わたしのおねがいをきいてほしいの!…」

「何だ?なんでも叶えてあげるぞ」

「うんあのね…わたしこのきずあとなおしたくないの…」

「へっ?…」

彼女の予想外のお願いにタイセイはポカンとなるしかない。

「このきずあとはおとーさんをまもれたあかしだから…」

「音六、お前って奴ぁ…」

あの事を忘れたくはない…心の底からそう思っている音六に対してタイセイは頷いてやる事しか出来ずなんとか先生を説得して手術をとりやめさせた。

だがこれからが大変である。

もしこの先傷を広げる様な事態があれば今度こそ感染症を引き起こす確率がグンと上昇してしまう。

あくまでも確率の話でしかないが。

それでなくても彼女の傷跡の意味を知らない他人からすればただの不衛生な傷跡でしかないのだ。

まあ、イタリア国内では音六がマフィアの娘だという事はほとんど知られていたし彼女の天使な性格によって幸いしたのでそこは心配する必要は無かった。

 

そして月日が経ち、篠ノ之束が開発したパワードスーツISが世界に出回る様になった頃だった。

「何ISのパイロットになりたい?」

「うん…駄目かな?…」

すっかり中学生に成長していた音六はそんな事を言ってくる。

「そりゃあまたなんでだ?ISは動かせない男にとっちゃ悪意の塊でしかないものだから好きになれないってお前は言っていたじゃねえか」

「うんそうなんだけどね…この子達から声が聞こえてきたの…」

「この子達って…」

音六はタイセイが御守り代わりに渡していた、イタリア政府から譲り受けていたISコアの一つを握り締めてそう言う。

恐らく彼女にはコアの本当の意思が聞こえているのだろう。

「もう誤った使い方をされたくないって…」

本来の扱い方とは違うベクトルで使い始めた腐った世界政府の連中には心底呆れる。

その言葉にタイセイは少し考え返答する。

「ああ良いぜ。ただし!あまり危険な事には余程の事が無い限りしないでくれよ?

それと機体の方はファミリーの面子に最高の物を作らせるからな!楽しみにしといてな!」

「うん分かった!お父さんもありがとう!…この子の事お願いね!…」

音六はタイセイにISコアを返し彼女の専用機が完成する時を待つ。

そして専用機が完成しまずは代表候補生になる為の練習の日々、そしていつかIS本来の扱い方である宇宙開発へと軌道修正させるというISコア達の願いを叶える為に彼女は奮闘する様になった。

だけど一度目の代表候補生を決めるISバトル試験においてそれは起きてしまった。

対戦相手が音六の優しさにつけこんでかなり悪質な嫌がらせをしてきたのだ。

「うああああ!…」

それは本番でも終わる事は無くあろう事かラファールを纏う相手は彼女の手の傷を隠し覆っている装甲ばかりを狙い撃ちしてくるという酷い戦い方をしてきたのだ。

ISの絶対防御は体に響く痛覚までは抑える事が出来ない。

それを知っていて尚相手は攻撃の手を緩めようとはしない。

結局そのまま音六は理不尽に襲い来る痛みに耐える事が出来ずにSE切れとなり結果は不合格となってしまった。

この事を知ったタイセイは激怒し合否に異を唱えたがルール上は問題無しとのIS委員会イタリア支部の阿呆過ぎる回答に頭を抱えるしかなかった。

「糞!奴等め!」

いっその事イタリア支部と対戦相手をファミリー総出で社会的に潰してやろうかとも一瞬考えたがそれをやってしまえば音六に余計な心配をかけてしまう。

現に彼女は

「もういいの…私の事でこれ以上お父さん達の手を煩わせたくなんてないから…」

「お前…」

それから音六は専用機を封印、ISに関わらなくなる様になり塞ぎ込む様になってしまった。

 

「ってワケなんだが…ちょいと話を変えるが良いか?」

「ええ…」

「今度は音六の目についてだ」

やはりか!…繭音さんはオッドアイでも無いのに何故彼女はそうなっているのかまた一つの疑問を解消する為タイセイさんは話を続ける。

 

~ファミリー首領候補襲撃事件より更に数ヶ月前~

タイセイがファミリーの集会後、家に帰宅すると繭音が床に倒れているではないか。

「おい、しっかりしろ繭音!」

「う…うーん…此処は?…」

「家ン中だよ」

どうやら気を失っていただけの様だったのでひとまずは安心したがもう一人いる筈の姿が周囲には見当たらない。

「一体何があった?音六はどうしたんだ!?」

愛妻の繭音が気絶していた事と言い、愛娘の姿が何処にも見当たらない事に只事では無いと確信したタイセイはなんとか冷静になり繭音に問う。

「はっ!?…そうだったなの!

お昼前に一緒にお買物してたら音六ちゃんが誰かに誘拐されちゃったなの!…」

「なんだって!?犯人の顔は覚えているか?」

「うー~ん…ごめんなさい私も咄嗟に抵抗したんだけど気絶させられちゃってそこから先の事は何も見てないなの…」

「そうか…だが任しとけ!大体の事は俺は分かっているからな」

犯人像はおおよその見当がついていた。

恐らくは最近巷で噂になってきている詳しい理由は分からないが幼い子供達だけを狙った誘拐魔の仕業に間違いない。

政府も未だ事態を収拾出来ずに頭を抱えていて早急の解決を望んでいる。

今日の集会もそれが議題に挙がっていた程だ。

それだけデカイ組織に違いない。

「だが…それはもう終わりにしてやる!」

相手が悪かった。

流石にこれは敵も予想していなかったのだろう。

誘拐した子供達の中に決して敵に回してはいけないイタリアンマフィアファミリーの愛娘がいたのだから。

ファミリーの総力を挙げて収集された誘拐魔組織の情報を見たタイセイは一人怒りの声を上げる。

「臓器売買だけに手を染めてるのかと思いきや非合法研究の被検体としての人身売買も行ってやがるだと!?

これは不味い!」

恐らく臓器売買は他の犯罪グループに紛れる為のスケープゴートでしかなく誘拐魔組織の本命は非合法研究への被検体提供にあると考えたタイセイは警察に居る唯一信頼する友人からタレこまれた非合法研究を行っているであろうと目星を付けられている研究所を重点的に組織を壊滅し子供達を救う為の計画を実行に移した。

~実行の日~

「ヒ、ヒィッ!?…イタリアにあんな化物がいるだなんて俺は聞いてないぞ!?」

「ひ、怯むな!相手はたかだが数人じゃない…」

「おらよおっ!」

「ブベェーッ!?……」

そう言った誘拐魔組織の構成員達は裏√産の拳銃を撃つ間もなくタイセイとその仲間達によって殴りかかられ、蹴り飛ばされていく。

「か、かかれ!いくらなんでも多人数でかかれば…」

「そうはさせると思うかよ!トゥー!」

「な、何!?ウギャアアァ-!?……」

タイセイは先程よりも多い人数の構成員に囲まれるが彼は物怖じする事無く物凄いスピードで翻弄しまるでどこぞの改造人間が如く空高く宙返りをしそれに驚いた構成員の隙を突き飛び蹴りを喰らわしていき彼等は付近の壁へと打ちつけられて泡を吹きながら気絶した。

そして残っていた構成員は一人を取り残し一目散に逃げていった。

「て、テメエ等は一体何者だ!?」

「おいおい、こんだけデカイ悪事働いてて勉強不足だぜ?

俺達はなイタリアンマフィア、セラフィーノファミリーの一員だ!

お上に代わってお前達に天誅を下しにやってきた!」

「そしてこのお方は第十四代目首領次期候補でもあらせられます」

「なっ!?…テメエ等は同業なのか!?…」

一人取り残された男はタイセイと刀を持った彼の専属女性執事であるレキナ・灰鉄の言葉を聞いて絶句した。

何故同業でありイタリアンマフィアの一角である彼等がこの組織に出張ってきたのかが分からない。

だけど男は忘れていた彼等が正義のマフィアであるという噂を。

「はあ…ド汚い悪事を働いたお前等とウチを一緒にされちゃ困るぜ…それに言ったろ?お上に代わって天誅だとよ!オラァッ!」

「ぶべん!?…」

タイセイは男を殴り飛ばし掴む。

「おい、お前に聞きてえ事がある。

お前等が誘拐した子供達は一体何処にいる?」

「ヒッ!?…が、ガキ共なら此処の研究スペース区へと隔離させてある…だが研究員の決められたパスコード以外で入室しようとすれば区内外に毒ガスが流れるようになっている…」

「チッ!用意周到なこったな…案内してくれるよなあ?」

「あ、あひい!」

男を脅しパスコードを所持しているであろう研究員達の下へと案内させる。

 

「なんだ?侵入者は排除出来たのか…!?…」

ゴタゴタが済んだと思い込んだのであろう研究員のリーダー的存在の男が振り向くと刀を自身に突き付けている見知らぬ女性と手を鳴らしながら此方を睨んでいる男の姿があった。

そう、レキナとタイセイだ。

他の研究員達は全員彼等によって気絶させられている。

「き、貴様等ッ!…」

「おっと我々の指示以外で動こうものなら首が飛びますよ?」

咄嗟に銃を取ろうとした瞬間に今度は首下へと刀を突き付けられている為出来ない。

「な、何が望みだ!?」

「アンタが持っている筈のこの区内全域のパスコードを全ておとなしく渡しな」

「なんだと!?…もしや我々の研究成果を奪いに来たのか!?」

何処からか情報が洩れ別の組織が自分達の研究成果の強奪に来たと考えるが検討違いである。

「あン?俺等はアンタ等とは違ってそこまで外道な事に手を出しちゃいねえよ!」

余程ファミリーを馬鹿にされた気分になった上に中々ブツを出さない彼にタイセイは手を再び鳴らす。

「ヒッ!?わ、分かった!」

男は解放された瞬間机に向かいパスコードを差し出してくるかと思いきや…

「死ねえー!」

「!」

銃を取り出しタイセイに向かって発砲するが、一早く察知したレキナが銃弾を叩き斬り落とした。

「なっ!?…」

「行動が丸分かりなんだよ!」

驚愕する男の隙を突きタイセイは銃を持っている左手を思い切り蹴り上げた。

「アギャアー!?う、手が俺の腕が!…」

蹴り上げられた手は銃を持っていた為に指はあらぬ方向に折れ曲がり悲鳴を上げていた。

「タイセイ様、発見しました!」

その間にレキナが周辺を漁りパスコードを見つけ出し報告する。

「おう!とっとといかせてもらうぜ!っとその前に…」

「な、何をする…ゴフッ!?…」

タイセイは激痛に未だ襲われている男に再び近付き腹パンした。

「俺は全てと言った筈だぜ?

いくつかは生体認証セキュリティーもある事はちゃんと把握しているんだよ」

気絶させた男を抱えながら何重ものセキュリティーロックを解除させ音六と他の子供達が監禁されているであろう区へと急ぐ。

「音六!それに他の子供達は無事か!?」

最後のセキュリティーを突破し男を放り投げたタイセイは扉に勢い良く突入した。

すると

「ううう…」

「いたい、いたい!…」

音六や他の子供達が苦しみの声を上げながらのたうち回っていた。

恐らく彼女達に行われた実験によってもたらされた悪影響だろう。

「レキナ、他の子供達は頼んだ!」

「分かりました!」

他の子供達をレキナに任せタイセイは遂に救出出来た愛娘へと歩みより抱きしめた。

「音六!俺だ父さんだ!しっかりしてくれ!」

「うああ…うあああー!…」

「音六!?」

音六は呻き声を上げながら両目を金色に輝かせタイセイの首を掴もうとした。

が…突如更に苦しみ出ししばらくすると目を覚ました。

「うう…お、おとーさん?…」

「ああ、そうだ!…大丈夫だよな?」

「うん…まだちょっとあたまがいたいけどだいじょうぶだよ…ほかのこは?…」

「レキナが今頃全員助け出せている筈だ」

「そうレキナお姉ちゃんが…よかった…」

フッと瞳に光を取り戻した音六はそう言って自身の心配ではなく他の被害者達の心配をしていた。

「タイセイ様、無事に子供達全員を保護しました!

ですが…三人程はもう手遅れだったらしく…」

「そうか…クソッ!…他に容態が悪そうな子は何人いる?」

レキナの報告を聞きタイセイは悔しさのあまり手を地面に打ち付けたがすぐに調子を戻し引き続き報告を聞く。

「はい、今すぐにでもしかるべく治療を受けるべき人数はかなりのものかと…」

「聞くまでもなかったな…レキナは先に子供達を此処から連れ出してといてくれ。

俺はもう一仕事片してくる」

「了解しました!」

「……」

未だに助け出された安心感から泣きじゃくる子供達と一人眼帯を付けられ虚ろな目をした銀髪の少女を見たタイセイはレキナにそう言って先程気絶させていた研究員リーダーを叩き起こす。

「おらよ!」

「…ハッ!?…な、まだ何かあるのか?!」

叩き起こされた男は与えられた恐怖で震えながら言う。

「この期に及んで恍けてるんじゃねえよなあ?

あの子達に施す治療プログラムデータも何処かにある筈だ。

まさか無いなんて事は言わせねえぞ!」

「ち、治療のデータなら私の部屋のパスで開けれる金庫に…」

更なる怒気を含ませた睨みに遂に観念したのか男は答えた。

「待った!」

それを聞いたタイセイは自室のパスコードを持って走り出そうとした男に待ったをかけ壁に向かって蹴り飛ばす。

「おっと自分で取りにいかせてもらうぞ?」

「ぶへへえ…」

案の定パスを持ったまま逃げ出そうと画策していた男のその場限りの計画は失敗に終わった。

「だから行動が丸分かりだっての!…そして案外タフな野郎だな」

「き、キシャマは一体!?…」

なんとか気を失わずに済んだ男はタイセイに疑問を投げかけてくる。

「俺か?良いだろう教えてやるぜ

セラフィーノファミリーの次期首領候補のタイセイ様とはこの俺の事よ!」

「ま、マフィアだと!?」

タイセイの正体を聞いた男は驚愕を隠せない。

「何故ウチがアンタ等みたいなチンケな犯罪グループを潰す為にやってきたかって?

そんなもんアンタ達が俺を怒らせるのに十分過ぎるくらいの事をしたからに決まっているじゃないか!

それは三つ!

一つは俺の愛妻を傷付けた事、二つ目は俺の愛娘を誘拐した挙句にこんな怪しい実験で可笑しくさせてしまった事、三つ目は幼い子供達をあんな目に遭わせた事だあー!」

「!?…」

男はこの時悟る事になった。

知らず知らずの内に敵に回してしまった目の前の存在に…正に因果応報!

男はショックのあまりか再び気絶した。

「俺達ファミリーの総意はな…少なくともアンタ等みたいな存在よりは真っ当に存続してきてんだよ…さてとデータ回収して早い所おいとまして音六と子供達の世話に専念しなきゃな!…」

気絶した男から急いでパスを取りデータ回収後速やかに撤退したタイセイは友人の名でタレ込む。

その情報により誘拐魔組織は壊滅の一途を辿る事になる。

 

Side春季

「…というワケだ」

「…その実験って一体どういった代物だったんですか?」

話を聞いた俺は新たに湧いて出た疑問を投げかけてみた。

「ああ、あの事件で回収出来たデータは治療プログラムのみで他の詳細なデータは俺達が研究所に突入した際にほとんどが抹消されちまったみたいで良く分からなかったんだ…」

タイセイさんはそう返答する。

治療データが残ってたのが不幸中の幸いだ。

もしもそれまでもが抹消されていたらと考えると恐ろしくなる。

…まあ、余程の外道でもない限りやらないと思いたい。

「ただな、実験の大元の首謀者の名はどこかの馬鹿が塗り潰して分からないんだが、ファミリーネームは分かっているんだ。

ソイツはトゥイニャーノフ」

「明らかに外人ですね…」

「そんでソイツが当てはまる人物に探りを入れたんだがどうもこれがさっぱりでな…まるで今迄この世界には居なかった人物の仕業の様に網にかからねえんだよ…」

「はは、そんなまさか…」

嘘みたいな話に俺は苦笑いをこぼすしかない。

「まあ、連中の残党が隠れ蓑にしている活動拠点がまだあるのかもしれないからもうちょっと探りを入れてみる予定ではある…坊主日本に帰ったら先生によろしくな!」

「ええ…ってン?タイセイさん今なんて言いました?…」

「ン?ああそいや言ってなかったけ?

俺も昔オヤジにどやされた時に一度亥曇先生に会って弟子入りした経験があんだよ。

お前さんの奥義の型を音六から聞いた時もしやと思っていたがどうやらその様だな!」

「なんですと!?…」

タイセイさんの発言を聞いて驚きを通り越して卒倒しそうになった俺はその後彼から色々な裏事情を色々と身に付けさせられた。

そしてそれから数週間後、修行と高校受験の為日本に帰国した俺は師匠と共にまた励む。

タイセイさんの事を聞いた師匠はというと

「あの弟子第一号、そこまで強さを会得し得ていたか…

うむ!素晴らしい成長振りの様だな!」

と感慨深い表情になっていた。

その後、通う予定だった愛越学園試験会場で迷いISを起動させてしまうという大事件を起こす事になってしまった俺と秋彦兄さんは偶然にも職員さんと鉢合わせしてしまいIS学園へと強制入学を強いられる事になった。

それを聞いた師匠は「わっはっは!まさかそこまでやるとは流石の私も思わなかったぞ!この一年半で奥義の全てを体得し得たお主なら例えISでも存分に戦えるであろう!」と言って笑顔で送り出してくれた。

入学直前に俺の知らせを聞いたのであろう音六から『再び代表候補生になってIS達の願いを叶えてみせる』と手紙が来たのは。

 

「という訳なんだ」

「ほう…思ったより壮大だったみたいだな」

「はは…」

俺の話を聞いていたイチカ兄さんは何処か考える素振りをしながらそう言ってくれた。

此方も話した介があったというものだ。

 

Sideイチカ

春の話を聞き終わった俺はセラフィーノのひたむきな一生懸命さに感銘を受けていた。

一度諦めてしまった者達の戦いがこれから始まるのだと…

「…それにしても不味いな…」

春の話の中でマフィアの情報網ですらファミリーネームしか分からなかった実験の首謀者である本名、ヴィタリー・トゥイニャーノフ。

かつて己の実験成果である人工ヴァリアントにされた、だけど今では肩を並べられる戦友であるオルフレッド兄妹を操った上での自身ももう一つの実験成果である人工型サベージと共に乗り込んできたリトルガーデン襲撃計画【ガーデンズ・クライシス】を仕掛けてきた女性科学者。

でも彼女は確かジュダルさんに拘束・射殺され亡くなったとクレア会長から聞かされていたが…。

恐らく何らかの理由で俺達よりも以前にこの世界に飛ばされてきたであろう彼女を未だに崇拝している者達の残党が人工ヴァリアントの研究を引き継ぎ行っていた事に違いない事を確信する。

あの時セラフィーノに眠る力をヴァリアントの本能で感じ取っていた俺は急いで彼女の専用機について調べた。

通常のISではもしも彼女の人工ヴァリアントとしての力が本格的に覚醒すればついていけなくなるからだ。

そうなれば暴走を引き起こすリスクが高まってしまう。

そうならない為にも一刻も早くISを調整する必要性がある。

そう思っていた俺の心配は杞憂に終わる事になったが…

「これは!…ヴァリアブル・ストーンが組み込まれている!?…」

俺は彼女の機体データを見て驚愕する。

もう既にもう一つの核となるべきヴァリアブルストーンが機体に組み込まれていたのだ。

そこで俺は思案する。

そういえば春がもう一つ言っていたな…研究所で彼女の父親が不思議な石を拾い解析した治療データにその石の事が載っていたと。

恐らく彼等が取れた治療法とは投薬治療とヴァリアブルストーンを用いて適度に被験者達の体内に流れるセンスエナジーを放出させ安定させる方法だろうか。

その際にまたセラフィーノの感性が働いて彼女のISとヴァリアブルストーンを引き合わせたに違いない。

まあ、これは俺の立てた推測に過ぎないが…一応束さんにも見て貰おうと彼女に連絡を取る事にしてその日は何事も無く過ぎたが…。

騒ぎを否応無しに起こす馬鹿者達がいるもので…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




駆足気味に久々にこんなに長くなりましたがこれにて春季の憂鬱は終わりを告げます。
後治療初々については作者独自の見解ですのでご了承を。

次回、春季から音六の傷の意味と彼女の感性について聞いたイチカは彼等の為に行動を起こす。
音六を無意味に嫌悪し春季とイチカをどうにかしたい秋彦はある一人の上級生にある事を持ちかけられ、影で音六に罵詈雑言を浴びせ追い詰めようとする。
そしてあろう事か
現場に偶然居合わせた鈴と春季はそれに激怒し件はクラス対抗戦へと持ち越されるが…当日其処に現れるは…
「クラス対抗戦前編 企みと憤怒と挑戦」


 


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EPⅡⅩ「クラス対抗戦前編 企みと憤怒と挑戦と」

Sideイチカ

「『成程ね~…大体分かったよ!

恐らくイッくんの立てた推測でほぼ間違い無い筈だと束さんも思うよ。

そのヴィタリーとかいう奴の悪魔の研究を同じ科学者としても人間としても野放しにはしておけないよ!

束さんなりにも出来る限りイッくん達の世界技術の漏洩を防いでみせるよ!』」

「お願いします」

俺は寮の部屋で春季の口から語られたセラフィーノの壮絶な過去についてその中でかなり気になった点、それと彼女の専用機に既に組み込まれていたヴァリアブルストーンについて束さんに定期連絡を入れ議論した。

束さんは驚きを交えた声でどこか使命感に燃えているようだ。

「『それにしてもこの束さんよりも一早く治療データだけを照らし合わせただけでヴァリアブルストーンとISの親和性にも気付くなんてね~。

凄いよそのマフィアのボスさんは!

それだけでも凄いのにその上マフィアのボスさんの娘である不思議美少女がはっくんに懐いているなんてね~!』」

「はは…」

「『それにしてもネットワークで繋がったISコア達の意思が聞こえるなんてね…これも人工ヴァリアントの力がもたらしてくれたものと見てまず間違いなさそうだね!

百武装のヴァリアブルコアとは似て非なる物だしね』」

「それもそうですね。

それとサベージの出現情報は?」

「『今の所は大丈夫!発生確認されていないみたいだよ』」

「そうですかなら引き続き頼みますよ」

「『は~い!』」

「束さんへの定期連絡ですか?」

束さんとの通信を終えた直後、カレンが女子の合同身体検査を終えて部屋に戻ってきていた。

「ああ、春から聞いたセラフィーノの事で気になる事があったからな」

「ふあ~それにしても私疲れちゃいましたよー…」

「何かあったのか?」

「ええ…更衣室で着替えていたら何故か突然皆さんの体型の話題に発展しまして…もう大変でしたよー…」

「ああそういう事ね…」

どうやら鈴や極一部の生徒あたりが何処とはあえて言わないがその部分で暴走したんだろう。

「その上何故か音六さんが本音さんと一緒になって箒さん以外にそ、その…スキンシップを…」

「…」

のほほんさん…あんさん何やっているんスか!?でも…ナイス!とだけ言っておこうか。

「…そ、想像しないで下さい~!う~!…た、確かにイチカさんと付き合いだしてからなんだか大分…って何言わせるんですか!…」

「…」

危うく自爆しかけたカレンの発言でちょっとだけ妄想しそうになった俺は彼女にそう言われ目を逸らす。

だって俺も健全な男だもの…。

「そ、そういえばもうすぐクラス対抗戦が始まるみたいだが…」

「誤魔化したつもりですか?」

俺は強引に話題を逸らそうとするがカレンがすぐに見破りながらジト目で見られる。

なんか凄くゾクゾクしないでもない。

「はあー…そういうイチカさんはどうするんですか?」

「俺はちょっとまたセラフィーノについて調べる事があるから…それを終えてからだな」

「それってもしかして…」

「ああ、この件にはあのヴィタリーの残党が関わっている可能性が大みたいだ」

「大丈夫なんですか?…」

「大丈夫さ!カレンも皆も俺が守り抜いてみせる!」

カレンは不安そうに声をかけてきたので俺はそう決意を表明する。

「イチカさん…ええ私もまだまだですけどイチカさんの事や皆さんを守ってみせます!」

「ああ頼んだぞ」

するとカレンもそう決意表明してきて俺も嬉しくなった。

だが何やら嫌な予感がするのは…

 

Side?

「なんで、なんで…あんな小娘ばかりが注目されているのよ!?

とろい癖に!」

彼女の名はキナ・ヴェビッチ。

名家の御嬢様でIS学園二年のイタリア代表候補生である。

だが進級した後は彼女が代表となる事は未だになかった。

実は彼女は以前に良識人から見たら明らかな悪どい手法を用いて代表候補生になったからである。

その被害者こそが音六なのである。

ISが登場し女尊男卑という一部の者にとって素晴らしい世界となってからというもの己の願い(我儘)が叶わない事などは無かった。

代表候補決定試験の模擬戦で音六という真の実力者と相まみえる事になるまでは。

「あなたがとろいのが悪いのよ」

これは不味いと思ったキナは敵情視察をし音六の優しさにつけこみ彼女の傷という弱点を見て其処を集中攻撃し敗北に追い込むという非常に音六にとって厄介な方法で候補試験を通過した。

そんな戦い方で長く栄光に輝き続けられる訳が無く、しかも心を完全に折った筈の音六が再び同じ代表候補生として入学してきた事でキナは良識な上層部からは代表候補生の座を降ろされそうになっていた。

しかも同時期に三人の男性操縦者の登場である。

これに焦らない訳にもいかずキナはどうにかまた音六の心を折る方法を模索していた。

全く以てどこぞの愚者と同じ様な考え方である。

「はっくしゅん!…うーあの野郎共め…」

「あれは…」

キナが見かけたのは己と同じ様に項垂れた様子の男性操縦者の一人である織斑秋彦である。

気になった彼女は彼に声をかける。

「どうしたのかしら?」

「貴方は?」

「貴方の先輩よ。

何かお悩みでもおありかしら?」

「そ、そうです!」

秋彦から他の二人だけが賞賛されて自分はほとんど眼中に入れられていない事への不満(欲望)を語られる。

「そう…なら良い方法があるわよ!とってもね…」

これは使える!そう思ったキナは秋彦にそれぞれの邪魔者を排除出来る筈というある提案をしてきた。

現状で最悪ともいえる二人が手を組んだ瞬間だった。

だけどそれが長く続かない事に彼等は気が付く由もない。

 

その日の放課後

Side春季

「ふう…音六-ちょっと話がしたいんだが…いないのか…嫌!この感じは!…」

俺は寮に戻り音六を呼ぶが彼女の姿はなかった。

なんだか凄い胸騒ぎがして収まらない。

そんな気がして俺は寮を飛び出した。

 

Side鈴

「アンタ!こんな所で一体音六ちゃんに何しようとしてたのよ!?」

私は寮に帰る途中で秋彦が何故か自身の親友の一人となった音六を呼び出してよからぬ事をしようとしている現場に偶然遭遇し彼につっかかっていた。

「何をってそりゃあ彼女のISに違法な装備が積まれているって話を聞いて織斑先生に解析して貰う為にこうやって僕が回収してるだけさ」

「返して…『ツクモ』を…」

彼は悪びれる様子も無くそう言い放ち手には音六ちゃんのIS待機状態である三日月の装飾が施されている指輪を握っていた。

音六ちゃんは虚ろな目で泣きながら機体を返してもらう様に必死になって言っているが秋彦は全く聞く耳をもたない。

恐らく彼女を何らかの適当な理由で呼び出し無理矢理奪い取ったのだろう。

「何よソレ!そんな根も葉も無い出鱈目な話、一体誰から聞いたのよ?!」

私はそんな秋彦の行動と発言にかなり憤怒し、叫ぶ。

「私よ」

「アンタは確か!…」

キナの事は鈴にもほんの少しだけ見覚えがあった。

代表候補試験勉強の際に観せられた先輩方のISバトルビデオに映っていた一人である。

はっきりいって鈴の中ではキナに対する評価は最悪である。

なにしろほとんどがキナの対戦相手が不調に陥ったのを見て彼女が歪んだ笑みを浮かばせながら攻撃している全く以て参考になどならない場面ばかりであったからだ。

こんな奴が代表候補だなんてイタリア上層部は余程の馬鹿なんじゃないかと思いたいくらいである。

「アンタがその馬鹿にある事無い事吹き込んだって訳ね!…

音六ちゃんに何か恨みでもあるの?!」

「ええあるわよ。

あんなコネで専用機を与えられただけのとろい小娘がこの私より客光を浴びられるなんて我慢ならないのよ!」

「たったそれだけの理由であんなに優しくて良い子を傷付けようというの!?

そんなのアンタの単なる我儘じゃない!」

「先輩に対する口の聞き方がなっていないわね!」

「誰が!」

一方的な理由を聞かされた私は更に彼女達に対して激怒し正に一触即発の緊迫状態が敷かれる。

其処に

 

Side春季

「秋彦兄さん、アンタ一体…」

「チッ!…」

音六を探しに来た俺は階段付近で秋彦兄さん達が何かやっているのを見つけた。

俺は泣いている音六の姿を見つけ驚き自分の胸騒ぎが気のせいではなかったと悟る。

俺の姿が目に入るやいなや秋彦はその場から離脱しようとする。

「春季!その馬鹿を逃がさないで!」

「分かってる!」

「うげえっ!?」

鈴に言われすぐに俺は駆け出した秋彦の足を引っ掛けて転ばせる。

「さてと…これは一体どういう事か説明してくれる?鈴」

怒りを込めながら春季は未だに逃げようと試みていた秋彦を睨みつけ音六の機体を回収する。

「ええ!その馬鹿がそこの先輩に色々と吹き込まれて音六ちゃんの機体を無理矢理奪い取ろうとしようとしてたのよ!

その先輩は音六ちゃんと同じイタリア代表候補よ!」

「なんだって!?」

鈴から事の次第を聞いた俺は更に怒りのゲージを上昇させる。

「オイアンタ!…」

「な、何よ?この私に文句でもおありですの?!(しまった!織斑秋彦を焚きつけて彼女の専用機を取り上げさせる計画が…)」

「こんなにも優しい彼女を傷付けられてしまった…音六の傷の本当の意味を知ろうともしないアンタみたいな奴をこのままにしておいたら俺はタイセイさんや繭音さんに顔向け出来ない!」

「女の私を殴る気!?」

「春季駄目!」

「ッ!…」

キナに殴りかかろうとする春季だがすぐに鈴の静止でなんとか思い留まる。

「…先輩、今回だけは音六の優しさに免じて見逃す。

だけど次は無いと思うんだ!」

俺はそう叫びながら先輩を睨みつける。

睨まれた彼女はそそくさと逃げて行った。

 

Sideキナ

「クッ!?…なんでこうなるのよ!」

鈴の怒りに構っていたせいで奪い取れた筈の音六の専用機は駆けつけた織斑春季によって取り返された。

第三者である鈴に見られてしまった。

あの状況で教師が駆けつけてきていたらいくらなんでも非常に自分にとって不味かったであろう。

こんなにも早く計画が頓挫するとは思いもよらなかった。

まあそれは穴だらけの計画で彼女の自業自得でしかないのだが。

「ほう、これはこれは…此処にはとても良い人材がおらっしゃれる様ですね」

「!?」

逃げる最中不意に声をかけられる。

その声の主はいかにも怪しい恰好、黒いローブを纏った男性であった。

「アンタ誰よ!?此処はIS学園の敷地内よ!部外者は…」

「まあそう固い事をおっしゃらずに…一つ貴方にとってもとてもよろしい提案があるのでうがどうでしょう?」

「私にとって良い提案?それって…ウッ!?……」

怪しみながらも目の前の男からぶら下げられた甘い蜜にすぐに飛びついてしまった直後、彼女は何かを男に撃ち込まれ眠ってしまった。

「まずは馬鹿な下等人類共の小手調べといきましょうか…この小娘は後で素晴らしい人材と成り得るでしょうから最高のおもてなしをしなくてはね…」

男はそう呟き紅い輝きを放つ加工されたヴァリアブルストーン、ハンドレッドの能力で透明化し眠らせたキナを抱え何処かに姿を消した。

 

 

 




次回!
鈴と春季から事の次第を聞かされたイチカはキナを調査しようとするが…彼女の姿は何故か学園に無く…不穏な影をちらつかせながら始まったクラス対抗戦。
初戦、鈴は音六を傷付けた秋彦と当たり勝負を仕掛ける。
その頃、傷を癒した音六は一人決意する。
「もう二度と挫けたりはしない」と…
そして現れ出でるは…
「クラス対抗戦中編 揺るぎない信念の果て」




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EPⅡⅩⅠ「クラス対抗戦中編 揺るぎない信念の果て」

Sideイチカ

「なんだって!?それは本当か!?」

「ええ、まさかあの天才(笑)と同じ様な考えを持った先輩が彼の味方をしているなんて流石に思わなかったわよ!」

「あンの阿呆タレが…」

朝っぱらから鈴がとても不機嫌だったので昼食時に理由を問うとあの愚兄が女尊男卑に染まりきったイタリア代表候補(笑)な先輩と結託して適当な因縁をつけてセラフィーノの機体を取り上げようとしていたらしい。

どうせあの野郎の事だから後に同じ様に俺達の百武装や春の機体をも取り上げようと画策していたに違いない。

「分かった、その先輩は俺がマークしておくから何も心配しなくていいぞ!」

「イチカ…うんお願い!

山田先生には私が話しておくから」

「すまないな」

「いいってことよ!音六ちゃんの為だもの!」

今織斑千冬にこの件を告げるのは色々と不味いと感じたのか鈴はそう言ってきたので俺は安心する。

さて、解決するべき件が増えたのは予想外だったが俺は昼食を終えすぐに件の先輩の悪事を洗いざらい調べ彼女の話を聞こうとしたのだが…

 

「何?姿が見当たらない?」

「ええ、サヴェビッチさんは昨日から寮にも帰ってきていないみたいなのよね」

彼女のクラスメイトに所在を聞くが誰も見ていないらしく監視を付けようにもこれでは不可能だ。

「第一ウチらは彼女の事なんて全く知らないしねえ…」

「…そうかありがとう話を聞かせてくれて」

「ええ」

知らないというより最早一切を知りたくないのだろう。

まあ、あれだけ自分勝手な我儘振り回してたらそりゃあ嫌われて当然の事か。

あの愚兄とんでもない類友を…。

ピリりッ!

「はい、何かあったんですか?束さん」

「『やっと出てくれた!

大変なんだよイッくん!』」

「少々厄介事が増えてしまってそちらに手間取っていたんですよ…」

そんな事を考えながら教室を出た途端束さんからの通信が入り急いで寮に戻りやっと出ると束さんは物凄く慌てた様子だ。

「『厄介事?』」

「ええ、愚兄と同じ様な考えを持った馬鹿が増えましてね…ですがその者を調べようと思ったんですがどうやら昨日から行方不明らしく手詰まりになりまして…」

束さんに此方も事の経緯を伝える。

「『へえ…もしかしたらこっちで感知したIS学園内で一瞬だけ起こったノイズが関係しているかも!…』」

「ノイズ?…」

「『うん、ほんの一瞬だけだったんだけど今そのとっても可笑しなノイズをまだ解析中だから結果が出たら教えるね!って今はそれ所じゃなかった!

イッくん【SR】発令だよ!』」

「!」

束さんから告げられた言葉に俺は息を飲んだ。

【Saveage React】

どうやら此処数ヶ月姿を見なかった奴等の出現が久し振りに確認されたようだ。

「『日本海路を往回移動しているみたいだから正確な数と進路はまだ確認出来ていないけど恐らく今の状況だと学園へ向かってくる筈だよ!』」

「分かりました!カレンにもすぐ伝えておきますね」

「『うん、お願いね!』」

通信を切ってすぐにカレンを呼びサベージが近郊に現れた事が確認された件を伝えた。

「分かりました!もし現れたなら私も一緒に戦います!」

「背中は任せたぞ!」

俺達は来たる時に備え準備を密かに進める。

 

その頃、Side音六

「…」

はーくんと鈴ちゃんがあの怖いお兄さんと中学の時に代表候補生試験で戦った先輩から無理矢理奪われそうになった私の専用IS「付喪月神」通称【ツクモ】を取り返してくれて一安心した私は整備室でツクモを整備しながらISコアに語りかけていた。

「ゴメンねツクモ…私がこんなにも弱くて…でも私もう諦めたりなんてしない!…絶対に貴方達の願いを実現させてみせる!…」

「え、えっと…」

私がそうツクモに語りかけていると不意に後ろから声をかけられる。

「はう!?あ…お邪魔しちゃってごめんなさい!」

「?なんで謝るの?…」

「へ?いやなんか凄く一生懸命にしてそうだったから…」

私はどうしてか謝ってきた女生徒に対して疑問を浮かべたがその子はどこかとてもあたふたしているようだった。

「…そのISは貴方の?…」

「へ?うんそうだけど…」

あまりそういう事を気にしない私はツクモのすぐ傍に鎮座してあるISについて聞く。

「私の専用機「打鉄弐式」っていうんだけど織斑秋彦君の機体が優先されたせいで開発が急遽凍結されてしまったから自分で引き取って造ってみているんだけどどうも上手くセッティングが出来てなくて…」

あの怖いお兄さんの名前が出て私は一瞬不快な気分になるがすぐに振り払い、開発途中だという彼女のISに触れてみる。

「…手伝ってあげようか?…」

「貴方、出来るの!?」

「うん、大体の知識や技術はお父さんやファミリーの開発主任さんに教えて貰ってたから私も粗方は出来るよ…」

「ふぁ、ファミリー…?はおいといて貴方のお父さん凄いんだね!」

「うん、私にとって最高のお父さん…」

私の発言に疑問を持ったのか首を捻っていたがすぐにお父さんの事を賞賛してくれたので良い気分になる。

「あ!…今更だけど私は一年四組の更識簪…よ、よろしくね!」

「五組の音六・フェッロン・セラフィーノだよよろしく!…」

唐突に彼女、簪ちゃんが自己紹介してきたので私も自己紹介し合った後、簪ちゃんの機体のセッティングをほんの少しだけど手伝ってあげた。

「この機体(子)の事これからも大事にしてあげてね…」

「うんありがとう音六さん…色々と手伝ってくれて!」

「うにゅ…良きにはからえー…」

「なんで時代劇語?…」

簪ちゃんの手伝いを終えた後私はツクモを待機状態に戻し整備室を後にした。

その直後

「!?な、何この感覚!?…」

今迄感じた事のなかった悪意がすぐ近くに迫って来ていると感じた私の足は恐怖に震えながらも寮へと戻る。

「はあはあ…一体何だったんだろ?…ねえツク…モ?…」

やっと先程までの感じていた悪寒は止まりふとツクモを見やるとISコアとお父さんが搭載していた紅い不思議な石が一際輝きを放っていた。

「…そう…それがツクモの本来の力?なの…」

輝きが止むと今迄ほんの僅かだけ理解出来ていなかったツクモの全てをようやく知り得た気がしたのだ。

 

Side簪

「不思議な子だった…まさかこんなにも早く弐式が完成を迎えられるなんて夢にも思わなかったな…」

音六さんと友達になった私は彼女のとんでもない技量に仰天するばかりであった。

でも彼女なんで左手にあんなグローブしているんだろう?

「…帰ろうかな今日はなんだか疲れちゃったし…」

また後日聞いてみようと思い私も整備室を後にした。

 

「ウゥッ!…簪ちゃん本当によかったわね…」

「あ、あのいつも不真面目な筈の御嬢様が今真面目に仕事している!?…」

その後、しばらくの間感激の涙を流しながら仕事に奮闘する生徒会長の姿があったという話が更識家で噂されたらしい。

 

Side鈴

一週間後、クラス対抗戦が遂に始まった。

私は音六ちゃんを酷い目に遭わせようとしたあの馬鹿にお仕置きするチャンスを今か今かと待ち構えていた。

そして遂に第一戦目のマッチングが決定され彼と当たる。

「来たわ!アンタをこの手でシメテヤレル時が!」

「フン!…あんな不衛生極まりない奴をどうこうしようたって別に鈴には関係無いだろうが…」

「全然関係無くない!このアホタレ!」

「なんだと!?」

全くといっていい程反省の色すら無い彼に私は少々挑発する。

「まあいい。この僕が勝たせて貰うんだから!」

「アンタなんかに敗北したらきっと末代までの恥になっちゃうわよ!

だから最初っから手加減無の全力でいかせて貰うわよ!」

試合開始のゴングが鳴りすぐに私は自身のIS「甲龍」の武装の一つである龍砲を撃ち放った。

 

Sideイチカ

「ほう…アレが鈴の機体の武装の一つか」

「龍砲…ですわね。

空間自体に圧力をかけて砲撃を放つ武装ですわね」

オルコット嬢が武装の説明をしてくれる。

「という事はつまりは不可視の砲弾という訳か…」

まああの愚兄じゃそれを攻略出来る糸口を見つけられる可能性は限り無く0に等しいがな。

鈴も全開で戦っているし。

「ムッ!?…」

「この感じは!…」

「如何致しましたんですの?お二人共」

「悪い、俺達ちょっと席を外すから」

俺達武芸者が感じ取った違和感により俺とカレンは観戦席を離れた

「ああ!?ちょっとイチカさん、カレンさん!?…もう何々ですの?!」

一人取り残されたセシリアは憤慨していた。

だけどしばらくして彼等が席を外した理由を知る事になる。

 

「束さん!」

「『サベージ達の侵行速度が急に早まってもうすぐ近くに現れちゃう!

予測データではまだの筈だったのに…』」

「やはり!…数は?」

「『弩級型が二、通常型が四だよ!』」

「了解!」

違和感を感じた俺達は席を離れすぐに束さんに通信を入れ彼女の予測データを聞いてすぐに戦闘準備に取り掛かる。

「カレン、春を今すぐ呼んで来てくれ!」

「分かりました!」

被害を最小限に抑える為に早目にカレンに春を応援に呼ぶように言った。

千式雷牙のおかげで彼は簡易とはいえ人工ヴァリアントとなっているのですぐにヴァリアントウィルスが無害化される。

だけど心配なのはあの愚兄だ。

彼自体がどうなろうともう知った事ではないがウィルスに感染されれば他の生徒達にも被害が及んでしまう。

早くあの馬鹿がサベージに突っ込んでいく前に戻って無理矢理にでも止めなければ!

「セラフィーノ?一体何を…まさか!?…待って!」

「鈴ちゃん、はーくん達が危ない…!…」

その途中、何処か様子が可笑しなセラフィーノの姿を見てまさか彼女の中の人工ヴァリアントの力がサベージと引き合わせ合っているのではないかと推測した俺はより一層足を速める。

自身のISの中に秘められたハンドレッドの存在を知らない今の彼女をサベージと戦わせる訳にはいかないからだ。

だが俺の予想が大きく外れる事になろうとはこの時思いもよらなかった。

 

SIde鈴

「ええい!いい加減に敗北を認めたらどうなの?!」

「誰が!まだSEは切れちゃいねえ!」

「ほらほら避けているだけじゃ甘いわよ!」

私の放った龍砲に物の見事に直撃してくれる馬鹿に内心ガッツポーズを決めるが彼は次第に慣れてきてしまったせいか当たり辛くなっていた。

「雪片弐型!」

「ようやくね!…双天牙月!」

ようやく接近戦を仕掛けてきた彼に私も青龍刀、双天牙月で応戦する。

「グッ!?…」

「踏み込みが甘いわ!これでも喰らいなさい!」

対する彼が牙月の重圧に耐えるのがやっとだと確信した私は一旦距離を取り、もう一本の牙月を連結させて投擲した。

「何ッ!?…」

「よっしゃあー!これで終わりなさい!」

私の牙月の投擲が彼の雪片に命中しトドメを刺そうとした瞬間…

ドッガアァーン!

「な、何!?…」

轟音が響き渡りアリーナの防壁が突如破壊され、この世の者とは到底思えない異形が数体現れたのだった。

 

 

 




次回!
突如アリーナに襲い来る数体の異形、サベージに対し生徒達は恐怖し大混乱に陥ってしまう。
教師部隊が到着する迄の間鈴と秋彦は応戦しようとするが己の攻撃が全く以て通じず秋彦は容易く吹き飛ばされ、鈴はその存在に恐怖し立ち尽くしてしまう。
その時、彼女達を救うは果ての想い人とその恋人、そして親友と呼んだ二人の男女だった。
「クラス対抗戦後編 救世主と成り得るは黄金の瞳と大空を飛翔する剣と拳、そして平和を祈り乗せた声」





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EPⅡⅩⅡ「クラス対抗戦後編 救世主と成り得るは大空を飛翔する剣と拳、そして平和を祈り乗せし声」

ハンドレ新刊ⅩⅡ巻ようやく購入。
とうとうセリヴィアの本性が露わに。
しかし…クレアとエミリアさんよ…この作品では負け組ですまない…。
代わりにアリナが暴走する方向でいくか…。
私話はこのくらいにして読者総員、「BLOODRED」他BGM用意ィー!




Side鈴

「この!なんて硬さの装甲を持っている化物なの!竜砲すらも全く効いていない!?…」

私は秋彦との対抗戦でトドメをかけようとしていた時に突然、正体不明の化物が現れアリーナの周囲はたちまちその化物に対して大パニックを引き起こし酷く混乱してしまっていた。

「嫌あー!死にたくないィー!…」

「早く扉を開けなさいよ!」

「それが何故かロックされているみたいで開けられないのよ!…」

この通り観戦していた生徒達は我先にと出入口に殺到してしまい避難誘導すらままならない状態であった。

良識な生徒達には悪いけど普段はISの力を振り翳して踏ん反り返っている連中には良い薬だわね…。

そんな若干黒い思考をしながら私は自身の攻撃が全く通らない事に焦りを感じていた。

さっきからなんだか体の調子が可笑しい様な気がするし…何かに侵されている?…

「『鳳、織斑!状況はどうなっている!?報告を!』」

管制室から慌てた声で織斑先生の通信が入ってくる。

「織斑先生、変な生物が突然やってきてて…救援部隊はまだなんですか!?」

「『アリーナへの扉がどうしてなのかロックされていてな…今解除を急がせているのだが最短でも救援部隊の到着は後十分はかかる!』」

「クッ!?…」

織斑先生の報告を聞いて私は歯噛みするしかない。

「救援なんて待っている必要は無い!

見てろ!この俺が倒してやるよ!」

「あ!?あの馬鹿!

ソイツ等は私達の攻撃が通じてないのよ!」

「『零落白夜』!喰らええええー!」

秋彦は私の静止を聞こうとはせずに化物に対して単一仕様能力を発動し攻撃を仕掛けた。

が…

パリ…キン!

「な、何ッ!?そんな馬鹿な!?まともに入った筈の零落白夜の一撃が全く効いていないだと!?…」

若干何かが弾けた様な音はしたものの化物には傷一つすら付いていなかった。

秋彦は驚愕するしかない。

それもその筈。

確かに化物、サベージの張る障壁はセンスエナジーというエネルギーで出来ているので白式の零落白夜でならば突破は可能だ。

だが仮に障壁を突破出来たとしてもその先のとても硬い殻を突破する事は同じセンスエナジーの力を持たないISの火力では到底不可能だという事を彼等は知る由も無い。

只もしも白式を扱うのが仮に剣道という名の技術型に囚われているだけの秋彦ではなく、彼よりも実力のある鈴だったならば可能だったかもしれないが…。

そんなifをここで言っても仕方無い。

「ギャオー!」

「うわごおっ!?……」

愕然としていた秋彦の隙をサベージが見逃す筈も無くその鋭い凶爪でいとも容易く吹き飛ばされた。

ギリギリSEが残っていたらしく機体の解除は回避された様だが絶対防御を貫いた攻撃を受けた為彼は気絶してしまっていた。

「ドギャーン!」

秋彦を吹き飛ばした通常型サベージは今度は私にその凶牙を向けようと迫って来ていた。

「しまっ!?…」

私は目を閉じる。

だが痛みは一向に襲ってこない。

「あれ?…」

可笑しいと思い目を開けた私の視線の先には化物を貫く紅い輝きを纏った拳が横切っていた。

 

秋彦が気絶する数分前、Sideイチカ

「セラフィーノを見失ったか…だが今はそれより急がねば!…」

様子が可笑しくなっていたセラフィーノを追っていた俺だったが彼女を途中で見失う。

そこで奴等の力が強く感じられた俺はカレンと合流する。

「カレン!春は?」

「春季さんなら既に管制室へと向かっています!早く私達も!」

「ああ!」

アリーナへと急ぐ。。

「山田先生!状況はどうなっています?」

「貴様等!?」

「け、剣崎君!?それに如月さんもまだ避難していなかったんですか!?」

俺達の姿に驚く山田教諭と織斑教諭。

「先程扉のロックを解除して教師部隊を向かわせた所だが…」

「今すぐその人達を下がらせて下さい!

今アリーナにいる化物はとても危険で普通のISでは到底太刀打ち出来ないんです!」

「何ッ!?だがなんでそんな事…」

「それに今奴と交戦している筈の鈴達やまだ避難出来ていない他の生徒達が長時間奴等と接触していたら彼女達の命が危なくなるんだよ!

けど詳しい説明をしている余裕はもう無い!だから一刻も早く教師部隊を下がらせて道を開けさせろ!

死人を出す気か!」

「ッ!…」

カレンがサベージの危険性について話すが織斑教諭は渋る。

こんな事している間にも鈴達がサベージとヴァリアントウィルスの脅威に晒され続けていると本気で彼女達の命すら危うくなりかねないので俺は叫んだ。

「山田先生、織斑先生ここはイチ…おとなしく剣崎君達の言う事を聞いた方が良いと思うよ」

「春季!?お前まで何故?…」

「俺はそれを伝えに来ただけだらから…じゃ先に行くね!」

そう言って春は一足先に戦場へと向かった。

「春季!…お前等…」

「そんなに怖い顔をしなくても大丈夫ですよ賢姉殿。

彼や俺達の機体は特別性ですから」

「ッ!…」

春をそのまま行かせた事に不安を感じ俺達に怒りを向けてきた元姉だったがこれ以上付き合っていられる余裕では無いのでアリーナへと急行しながら本来の起動シークエンスの言葉を紡ぐ。

「「『百武装/聖符展開』<ハンドレッドオン>!」」

俺達はスラスターを全開にしアリーナへと駆けていく。

「…救援部隊を即刻下がらせろ!…」

「織斑先生!?でも!…」

「今は奴の言葉を信じてみるしかあるまい…」

イチカの警告通り教師部隊を下がらせる事を命令してきた千冬に山田先生は驚く。

千冬は苦虫を噛みながらじっと画面を見つめているしかなかった。

 

その頃、Side春季

「間に合った!…」

「春季!アンタどうして…」

俺の姿に安心したのか鈴はペタリと座り込んだ。

「大切な仲間のピンチに駆けつけないと思ったかい?酷いな」

「いや…そんなんじゃないけど…」

「ンン!私も居ますわよ!」

「セシリア!」

どうやらセシリアさんもこの事態に駆け付けてくれていたらしく遠距離射撃で援護してくれている。

イチカ兄さんが俺の機体ならば化物と対等に戦えるとか言っていたけど本当だ…。

実際、俺の一撃が化物に通じた。

「ン?これは…雷砲血神のENカートリッジが全く減っていない?…」

あの化物に一発撃ち込んでやったから本来ならば一個減っている筈なのだが…

「春季、後ろ!」

「ああ!?…」

「しまった!?…」

そんな事を考えていたら鈴から警告が入るが既に化物は俺のすぐ後ろまで迫って来ていた。

セシリアさんの援護射撃も俺と化物スレスレらしく撃てなかったみたいだった。

不味い!…そう思って目を閉じようとした。

だがその時…

「…はーくんと皆は私とツクモが守る!…」

「「「音六/ちゃん/さん!?」」」

いつの間にそこに現れていたのか俺やイチカ兄さん達と同じ様な全身装甲という特徴を持つ専用機を纏った音六が俺と化物の間に立ち見えない壁を発生させ化物を弾き飛ばしたのだ。

他の二人もこれには驚いている。

「音六?…」

見ると彼女の瞳は両方共に黄金の輝きを放っているではないか。

 

春季へサベージ接敵一分前 Side音六

「ツクモ?…これって…」

とてつもない悪意を感じた私はそれに耐えふらつきながら私の専用機である付喪月神を起動させた。

だけどいつの間にか今迄無かった筈の武装が一つ拡張領域に追加されていた。

私は当然疑問に感じツクモに問いかける。

するとツクモがこの武装の本来の扱い方について教えてくれた。

「そう…それがツクモと私の本来の力なんだ… !?…」

私の大切な人達に危険が迫っている事を感じた私は浮かんできた言葉を発しながらツクモを飛翔させた。

「『百武装展開』!…」

ドクン!

その言葉を叫ぶと幼い頃私があえて残していた傷痕が小さくなりそこから力が流れ出てくるの感じ紅い輝きがツクモから放たれ同時に私の両手には紅い炎の灯る御札<カード>型のビットが付いたガントレット『付喪紅炎装』があった。

「これなら!…お願いツクモ!…」

アリーナへと辿り着いた私が見たのははーくんの背後にこの悪意の元凶である化物が近付いている所だった。

見ると援護射撃をしようとしていたセシリアさんや鈴ちゃんもあたふたしていた。

どうやら彼等の距離が近過ぎるせいで下手に撃てないようだ。

私は咄嗟に化物に向かってドラグーンを射出した。

「ギャー!?…」

射出したドラグーンから放たれた紅い炎のビームにより化物が呻き声を上げる。

「よし!…はーくんも鈴ちゃん達も大丈夫?…」

「ああ…助かったよ音六、ありがとうな!」

「ええ…大丈夫よ」

「どういたしまして…」

ひとまずははーくん達から化物を引き離す事に成功し私は安堵する。

「この野郎が!」

「!?駄目っ!…」

いつの間にか復活していたであろうもう一人の存在に気が付いた私は叫ぶが彼は聞く耳を持ってはくれず化物へと無謀にも向かっていく。

そして更に事態は思わぬ方向へと向かっていった。

キィィーン!

「何事ですの!?」

「『秋彦ぉー!男なら…男ならそのぐらいの敵に勝てなくてどうする?!』」

「篠ノ之さん!?」

「あンの馬鹿ッ!一体あんな所で何やっているのよ!?」

怖いお兄さんにいつも味方する女生徒、篠ノ之さんがどういう訳か放送室を占拠してそう叫んできたのだ。

「!」

当然その声に反応を示した化物が其方へ向く。

キュオォ!…

「野郎!」

怖いお兄さんが反応して放送室に向かって砲撃を放とうとする化物の前に出てしまった。

「駄目ッ!…ツクモ!…」

このままではもっと大変な事態になる。

そう思った私はすぐにドラグーンを彼の下へと飛ばしバリアを張った。

「なんだコレ!?…うげえっ!?……」

彼は目の前に炎が見えあたふたしている。

その隙を狙って化物に吹き飛ばされた彼だったが私の張ったバリアのおかげで機体共に無事、放送室に居た彼女達も無事でホッとなっていたのだが…。

「くうっ!?…」

「音六どうしたんだ!?」

「一体何が?…」

咄嗟の判断だった為に体に秘められた力を予想以上に使い過ぎたのか私は頭痛に襲われ、はーくん達に心配される。

「うっ、くっ!?…」

私は襲い来る頭痛に耐えながらはーくんを見る。

彼の瞳は左目だけ黄金に輝いていた。

私と違って彼は不完全みたい…。

「そう…私…」

「おい!?…」

私はそう確信しながら意識を手放しそうになったが…

「Laー♪~」

どこからともなく歌声が響いてきて失いそうになった私の意識は再び覚醒し先程までの頭痛は嘘のように治まっていた。

「どうやら俺達も無事に間に合った様だな」

「ここから反撃開始です!♪」

「イチカ!それにカレンちゃんも!…」

鈴ちゃんが更に救援に現れた人達の名を叫ぶ。

あ…カレンちゃんの歌は…なんだか凄く暖かくて力がどんどん湧き出してくる!…

ツクモも同じ様に感じている様でコアがうっすらと輝いていた。

 

Sideイチカ

「鈴!お前はもうSE残量が芳しくないだろ?だから其処の馬鹿を回収して避難するんだ!」

「分かったわ!」

通常型サベージの内一匹からはエナジーを感じないな…どうやら愚兄が零落白夜で障壁を削って春が攻撃を当てたか…偶然出来た今回ばかりの連携攻撃だが上出来だ!

それにセラフィーノがハンドレッドの力を理解しそれを上手く扱えている事、彼女の武装がドラグーン型だという事に驚いた俺だがすぐに戦う姿勢になる。

鈴に愚兄の回収と撤退を促し俺は残る皆に問う。

「粗方の避難は完了出来ているみたいだ。

セラフィーノ、春、オルコット嬢まだ戦えるか?」

「うん!…」

「当然ですわ!」

「なんだか良く分からないけれども俺もまだまだやれるよ!」

「おし!なら、オルコット嬢は引き続き遠距離からの援護射撃、セラフィーノはカレンの聖符と一緒にそのドラグーンで援護、春は俺と一緒にデカイ奴に格闘を仕掛けるぞ!」

「分かった!…」

「分かりましたわ!」

「OK!」

「全員、いくぞ!」

俺達は一斉にサベージへと駆け出す。

 

推奨戦闘BGM イチカ&カレンSide「BLOODRED InstVer」

春季&音六Side「COLORS」

セシリアSide「STRAIGHT JET」

 

Sideセシリア

「其処貰いですわ!」

私は変則射撃で牽制、ライフルのレーザー弾で普通の体格の化物を撃ち抜く。

だけど大して効果が無いのか怯むだけだが…

「ですがこれなら如何でしょう?」

私はすぐにBTに残りのエネルギーを集中、全弾を一斉掃射した。

「おいきなさい!ブルー・ティアーズ!」

レーザーの雨が化物へと降り注ぎ先程よりも足止めに成功したようだった。

「今ですわ!」

後は頼みましたわよ…。

エネルギーを使い果たした事でISが解除された私は後を皆さんに託し合図した後即刻避難する事にした。

 

Sideカレン

「お願いしますカードさん!♪」

セシリアさんの援護で怯んだ隙を合図された私はセンスエナジーを聖符に集中、エネルギーフィールドを展開し通常型サベージの動きを完全に封じ込める。

「当たって下さい!【奇跡の聖符弾 VerⅡ】<ディヴァイン・ブラストバージョンツー>!」

すぐに聖符銃をコールしセシリアさんの攻撃で甲殻が割れ露わになっていたサベージのコア目がけて正確に撃ち抜いた。

「やった!♪~」

コアは砕け、サベージを一体倒す事に成功した事を確認した私は引き続き皆さんを援護し、歌い続ける為再びマイクを手にした。

 

Side音六

不思議!…とっても体が軽い!…

カレンちゃんの歌が!はーくん達を守りたいと願う私とツクモの想いが一つになって私にその為の力が溢れてくる!

どうしてなのか本来なら消したくなかった筈の傷痕が完全に治ってしまったけどもう後悔はしない!

したりするもんか!

私はもう逃げたりなんかしない!

「ツクモ!…」

私は体に宿っていた力を再び解放しドラグーンを射出、残りの化物を取り囲む。

「いけえー!…」

すぐさま二丁照銃、【月神双水光】をコールし一斉に撃ち放つ。

この一撃で化物の覆っていた甲殻が剥がれ落ち溶け核らしき物が露わになっている。

カレンちゃんも此処を狙っていた ならば!

「見えた!チャージ!…」

ドラグーンを呼び戻し付喪紅炎装を纏った両手をクロス、エネルギーを集中充填する。

「【付喪紅神炎】!…これで終わって!…」

私が放った紅き炎のチャージビームは核を貫き化物を倒れさせた。

「やった!…けどお腹空いてきちゃったな…」

撃墜を確認したと同時に気が抜けてしまい一気に空腹感に襲われるが今は我慢。

「はーくんもイーくんもきっと大丈夫だよね…」

私は残る大型の化物と未だ戦っている二人を信頼し勝利を願いながらピットへと一足先に引き返した。

 

Sideイチカ&春

「春、いくぞ!」

「OK!『雷砲血神』!鳳流奥義第六の型…【大回転凰閃拳】!」

俺と春は残りの弩級型サベージを相手取る。

春の激しい回転ロケットパンチの要領で射出された雷砲血神が弩級型を貫く。

「よし其処だな!『残影斬』!はあああー!」

俺はヴァリアントの力を極力抑えながら集中する。

春の攻撃によって体に亀裂が走った弩級型に超高速のセンスエナジーが加わった連撃を加え沈黙させる。

「『第弐の型 白鳳閃百撃』!ヒョオ!」

センスエナジーが加わった春季の拳の連撃が弩級型サベージの障壁を甲殻毎叩き壊す。

「イチカ兄さん!」

「ふむ!コイツでトドメといこうか!『残影斬・弐式Ver弐』!」

続け様に合図を受け弩級型へとクイックブーストし飛翔した俺は神速制御で斬撃を加え完全に駆逐した。

「ふう…」

「お疲れ様!」

「ン…悪意感じなくなった…」

「ふえー…ちょっとですけど久し振りにスッキリしました!♪」

向こうもこちらとほぼ同時に{というより先に}終わった様で労いの言葉をかけてきた。

 

Side鈴

「す、凄いわ!…」

気絶した秋彦を回収し避難していた私は化物との戦いを引き受けてくれた彼等の戦い方に驚愕する。

イチカ達のクラスメイトで私とも友達になったイギリス代表候補生であるセシリアは変則射撃で牽制の上にBT兵器と同時に他攻撃の動作を行えていたし、カレンちゃんは何やら歌を歌いながら周囲に浮かせた非固定武装を巧みに扱い化物を見事打ち倒した。

まるでアイドルの様…あれ?…そういえば私もさっきまで不調を感じていた体がなんだか軽くなっている?…

そしてなんだか様子が可笑しかった音六ちゃんはいつもの調子に戻り私も初めて見るタイプの武装を上手に扱って化物を圧倒していた。

でも気絶していた馬鹿がいつの間にか復活して突っ込んでいってその上、放送室で彼の腰巾着がやらかした時は流石に焦ったわよ…寿命縮んじゃったかしら?…

でもそれに一早く動いた音六ちゃんが馬鹿の周りにBTバリアを張ってくれて窮地は逃れた…あの馬鹿達のせいで死んじゃう人達が出なくて本当に良かったわ!

そして残る大型の化物に対峙した春季とイチカ。

春季の技を見た時は私も流石に驚いたわ。

だって私の叔父が使っていた格闘技の技を使っているんだもの。

後で問いただすしかないわねこれは。

そしてイチカの戦闘センスには目を見張ったわ…何やら体が紅く輝いていた気がするけどこれも後で問いただすとして…春季が撃ち放った拳の一撃で貫かれた化物に斬撃の嵐、それも物凄く早く捉え切れない程のスピードで斬り伏せ、残る二体に瞬時加速で懐に潜り込み飛翔、先程よりももっと素早い斬撃で化物は真っ二つにされた。

まるでそう、彼等が救世主に見えた気がした。

 

Sideイチカ&カレン

「ひとまずは終わりましたね」

「そうだな…サベージの遺体とコア回収手伝ってくれるかカレン?」

「はい!」

例え遺体であろうとサベージの情報をこの世界の研究機関に渡す訳にはいかない。

ヴィタリー・トゥイニャーノフの残党までがこの世界に潜んでいるならば尚更だ。

俺とカレンはアリーナから他に誰もいなくなったのを見計らい(勿論束さんに頼んでロックをかけた)回収作業に明け暮れた。

そうだ、後で鈴達の精密検査も行わないとな。

 

その頃、Side?

「この世界に他の武芸者がいるなんて聞いてねえぞ!クソがッ!…」

俺…いや私はこの世界で部下共に作らせたワームホール発生装置からわざわざ呼び出し多少の制御に成功したサベージをIS学園へと送りつけ放った後、監視衛星から様子を見ると驚愕する。

だがすぐに落ち着きニヤリと顔を綻ばせる。

「まあ良いでしょう…最ッ高のディナータイムは後のお楽しみにとっておくべき…そうは思わないかね?私の最高傑作ちゃん」

「グ…ウウ!…」

私は貼り付けにした少女を見いやる。

「最ッ高の表情じゃないか!」

この男こそ貼り付けにされているキナを攫ったフードの男である。

彼女の様子は可笑しい所の話では無く最早人間らしい表情が出来なくなっていた。

「精々馬鹿な底辺の人類共と一緒に足掻くんだな…剣崎イチカァー!」

男は一種の顔芸をしながらイチカの名を叫んでいた。

 

 




甲龍→竜砲、双天牙月共に深刻な火力不足で通らず…すまぬISの定めだ…。
蒼雫→レーザーという割と高火力で障壁は突破可能なものの怯ませられる程度だったが健闘。
白式→零落白夜のおかげで障壁を難無く突破。だが乗り手がアレなのでサベージの甲殻は突破出来ず涙目
モップ→やはり性格改変無の彼女は要らん事しかやらかさない。
うー~んやはり戦闘シーンはかなり難産でしたね…セシリアや鈴をもっと活躍させてみたかったけどゴメン敵が強いんや!
そしてイチカ達とオリキャラ勢{勿論愚兄や女尊男卑組除く}が強過ぎるんや!(笑)
次回!学園サベージ襲撃事件鎮静から翌日、事情聴取という名の尋問を受ける事になったイチカ達は一体どこまで話すのか?
それはそうとまた転入生の噂が経ちクラスは持ちきりになっていた。
「第弐部 来訪せしフランスの貴公子と傷を抱えしドイツ少女 事情聴取と転入生は四人目の男子と!?」をお楽しみに!
誤・脱字ありましたらご報告を。
 



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第三部 フランスの貴公子とドイツの銀髪少女
EPⅡⅩⅢ「事情聴取、そして転入生は四人目の男子と!?」


ガンオンでZZ銀図だけど当てたよおー!{一方ジオンはサイサリス金図ゲットならず…核撃たせろおー!…}ハイメガで拠点削ったらアホみたいな点数になってびっくらこいたw
それそうとキャラ集の更新もしましたので是非。



Sideイチカ

「(面倒だな…)」

「私がIS学園理事長の轡木十蔵だ。

君達に集まってもらったのは他でもない昨日の謎の怪生物襲撃事件について話を聞きたいと思ってね」

クラス対抗戦中に起きたサベージ襲撃事件の終息から翌日、鈴と愚兄を除く(愚兄に限っては昨日の気絶がまだ響いていた為だ。

ほぼサベージにふっ飛ばされてただけなのでヴァリアントウィルスにはほとんど侵されていなかったみたいだが…チッ!…まあいても面倒な事にしか発展させかねないのでこれはよかった。

鈴もカレンの歌でウィルスが沈静化したとはいえ愚兄と戦っていたという疲労の事もあり大事を取って今日の午前中は一時休みを取っている。)事態を収拾に導いた俺達に対して学園長から呼び出しがかかり事情聴取という名の尋問会が行われようとしていた。

この女尊男卑の世界でいつもは用務員の仕事で世を忍んでいるらしく理事長の顔をしている目の前の男性には俺も恐れ入っていた。

「さて、報告を頼むよ山田君」

「はい、昨日アリーナにてクラス対抗戦の最中に謎の生物が侵入し暴れるという事件が発生しました。

その際、何者かにセキュリティーをクラッキングされアリーナの扉がロックされてしまい大半の生徒が避難不能に陥りましたが十分後解除し避難誘導出来ました。

後は…」

「山田先生、そこから先は俺が説明しますよ」

「ム?…あの生物の事を何か知っているのかね?」

「ええ、ほんの僅かですけどね…」

俺はどうせ話さねばならない(勿論全てではなく極一部だけに限られるが)と思いサベージの事を話した。

「フム…未知のウィルスをバラ撒き行動するサベージですか…」

「ええ、そのウィルスは思春期を過ぎた者が感染すれば高確率で奇病を発症する事になります。

ですがこれに関してはあまり話せる事はありません。

それに俺達の様な特殊な力を備えた物でなければ例え専用機だとしても通常のISでは全く歯が立たないと思われます」

「それはどうしてですか?」

「それは奴等がある強固なエネルギーフィールドを常時張っているからです。

とてもそんじゃそこらの競技用のISでは突破出来ませんから」

「成程…まだまだ色々と気になる事がありますがここら辺で良しとしましょうか…」

理事長は俺がこれ以上の事を話さないと踏んだのかそう言う。

「では…独断専行の罰として剣崎君、如月さん、織斑君、セラフィーノさんには五十枚の反省文を、篠ノ之箒さんには四百枚の反省文提出を課します、良いですね?」

「「はい」」

まあ、春がアリーナの扉とかもぶっ壊しちまったしこれは形容範囲内だな。

「ま、待って下さい!なんで私までそんな事を!?私はただ…」

一人この処分に納得しない者がいた。

愚兄の腰巾着ことモップだ。

「喝を入れてやっただけか?

あのなあ…」

「はあー…篠ノ之さん貴方はあれだけ放送室に居た他生徒の皆さんを命の危険に晒してしまうという一番危険な行為をして処分を問われないと思ったんですか?

殺人未遂と捉えられても可笑しくはありませんよ

音六さんが気が付いてバリアを張ってくれたから最悪の事態は避けられましたけど」

「ぐっ!?…そ、それは…だが…」

俺とカレンに諭され彼女は苦い表情をする。

愚兄しか見えていないモップにとって他の人は小石程度なんだろうが実際現実問題として定義されるのはやはり痛いらしい。

「とにかくこの件はここで終わりという事で。

学園の防犯関連の事は強化していくという事で…」

これ以上モップの戯言に付き合う理由はない理事長が話を終わらせこの場は解散となった。

 

Side千冬

「…」

理事長の事情聴取が終わった後私は一人考えていた。

「どうしたんですか?織斑先生」

「いやな、昨日の怪生物、確かサベージだったか?

彼奴等への、特に剣崎と如月の対応が出来過ぎていると感じてな…」

「そういえばそうですよね…化物達の遺体もいつの間にか消えてましたし…」

剣崎イチカ、もしお前が本当は私のもう一人の弟の一夏であるなら…一体何がそこまでお前を変えたんだ?…

 

Sideイチカ

「(もっと面倒な事が待っていた…)鈴、体の調子は大丈夫なのか?」

「ええ、もうバッチリよ!で、アンタ何か知っているんでしょう?教えてくれない?」

同日、俺は昼休みにようやく回復し登校してきた鈴に問い詰められた。

「ああ、何を聞きたい?」

「全部!…とまではいかないみたいだからあの化物の事とイチカ達の力の事、音六ちゃんの体の事、それにカレンちゃんの歌の事」

「Ohー…」

全てとは言わずもながら結構な核心を付いた質問に俺はどう話すべきか一瞬迷ったが結局話す事にした。

「分かった、だけど俺やカレンの力、セラフィーノの体の件に関してはあまり此処じゃ詳しい事は話せないがいいか?」

「むー~…良いわよ」

セラフィーノの件に限ってはヴィタリーの残党が関わる話でもあるので完全に無関係な鈴を巻き込む訳にはいかないので組織の事は伏せながら話した。

「何よソレ!?…酷い!」

鈴は俺のぼかした話を聞くと激昂していた。

「あまり此処で騒ぐな」

「あ、ゴメン!…」

周囲の迷惑もあるがあまり騒いで愚兄やモップの耳にでも入ったりしたらそれこそセラフィーノが何を言われるか分かったものではない。

それに先日束さんがサベージ襲来予告で言った学園内でサヴェビッチ先輩が行方不明になる直前に一瞬起きたノイズの件についての事もあった。

束さんの調査結果によるとノイズの中に微かに百武装の展開反応があったらしい。

他の武芸者がこの世界に紛れ込んでいるとは予想出来てはいたがノイズを発生させる程の力の持主…俺には一人しか心当たりが無い。

だが奴は現在確かある罪に問われ獄中の筈…何らかの要因で抜け出しやがったのか?

今の所は奴の気配は感じられないので安心出来るがもしまた潜まれていたりしたらとても厄介な事になりかねない。

他の百武装の開発を急がせる必要があるなこれは。

「そうだ!鈴、お前のISの調整手伝ってやろうか?」

「本当?!なら是非共お願いするわ!」

俺は鈴の甲龍の衝撃砲を中心に調整を施せばサベージとも少しはマシに戦える様になると考え申し入れ、彼女は快く了承してくれる。

「なら、二日待てば対サベージの火力調整が出来る」

「そんなに早く!?良いの?」

「ああ…」

といってもやはり最終的な微調整は束さんにお願いする形になるから最短とはいかないがそれでも十分過ぎる早さに鈴は驚き俺に甲龍を預けた。

さてお仕事だ。

 

翌日

「今日は二人の転入生を紹介します」

「なぬ?」

甲龍の調整に専念してて失念していたな…そこまでの情報は得られていなかった。

「フランスから転入してきました。

シャルル・デュノアといいます」

「お、男?…」

「はい。此方に僕と同じ境遇の方達が居ると耳にしまして」

そう言った一人目の転入生は男だったようで俺とカレン以外皆固まる。

「キャー!よ、四人目の男子は守ってあげたくなる系!」

「ぐふふ…これで夏コミのネタがまた増えたわ…」

あちら此方で黄色い声が飛び交う。

ハウリングがうるさいぞ。

そして最後の人!相変わらず俺達を勝手にネタ要員にしようとしないでくれ!?

「はうー~…」

あ、カレンがヤバイ雰囲気を醸し出している。

「春季さんxシャルルさんかな?それともイチカさんxシャルルさん?

うー~ん…悩みますー」

え?カレンもそういう趣味持ってたの!?

「はい、向こうでノア先輩に作品を見せてもらった事があって結構ハマってしまいました♪」

笑顔でそう答えるカレン。

ノアさん…俺の彼女になんてものを見せてるんすか…向こうの友人に対し俺は溜息をつくしかなかった。

「た、頼むからカレンさん?

俺で可笑しなカップリング立てようとしないでくれよ。なっ、なっ?」

「男前過ぎるからいけないんですよ~♪」

俺はこの時カレンに対して尚逆らえなくなった気がした。

「五月蠅いぞ馬鹿共、もう一人の紹介をするぞ」

「…」

もう一人は眼帯をした銀髪少女だった。

だがさっきから黙ったままである。

「自己紹介するんだボーデヴィッヒ」

「はい教官!」

銀髪の少女は賢姉殿を教官と呼んでいた。

ああ、そういえば俺が行方不明扱いになった後ドイツ軍の教官になっていたとか束さんが言っていたな。

「…もう私は教官ではなく一教師だ。

此処では織斑先生と呼んでくれ。

時間が押しているさっさとしろ」

「は、はい…私はラウラ・ボーデヴィッヒだ」

「そ、それだけですか?…」

「ああ…」

簡潔に名前だけを述べ何かが目についたのかボーデヴィッヒはつかつかと愚兄と春の席へ向かう。

「お前達が教官の弟だな?」

「うんそうだけど…」

「ああそうだが…」

「私は貴様達を認めない!教官の面汚しである貴様等を!…」

「なんだと!?」

「…」

ボーデヴィッヒの突然の暴言に愚兄は当然の様に激怒し殴りかかろうとし、春は何処か可哀そうな目で彼女を見ていた。

「やめろ秋彦!ボーデヴィッヒ貴様も何をしている?」

「興が冷めた…命拾いしたようだな」

「けっ!そっちがな!」

賢姉殿に仲裁されただけなのに何処にそんな自信があるのか疑問に感じる愚兄とそそくさと席に座るボーデヴィッヒは彼等を睨み続けていた。

「何だったんだ?…ム!?…」

この感じ!…最初ボーデヴィッヒを見た時は気のせいだと思っていたが彼女は…

それに…

「何かな?」

「あ、いや…何でもない」

「?…」

四人目の男子だというシャルルは何処か男っぽくないな…これは後で調べてみる必要がありそうだ。

その後授業に向かう途中シャルルや俺達目当ての女生徒達がわんさかと血気盛んに押し寄せてきたので「喰らえ!織斑秋彦の写真集!」とかやって撒いたのは我ながら良い作戦であった。

…良識な生徒達には踏まれてたけどまあ良い気味という事で。

 

 




新刊ブックレットにてカレンの腐女子発覚…。
確かに正体がバレる前のエミールxハヤトでなりそうな予感あったけどさ…うん…
そして勿論春季とイチカは完全予約制で売り切れ続出。
そして甲龍強化フラグ!今のままではサベージに対応出来ませんからね。
どの様に強化されるかは次回をお楽しみに!
次回!シャルルに対し不審を感じたイチカは彼を調べる事にする。
一方、ラウラの事を気にかけていた春季は音六に何気無く話をする。
すると彼女は何かを思い出した様にアリーナに飛び出すとラウラがセシリアを蹂躙している場面に遭遇し…
「シャルルの正体と黒い雨の涙 前編」



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EPⅡⅩⅣ「貴公子の正体と黒い雨の涙 前編」

Sideイチカ

転入生騒動から二日後

「『イッくんが気になった事調べてみたけどドンピシャだったよ!』」

「そうですか…」

俺は束さんにシャルルの件やボーデヴィッヒの事を調べてもらっていた。

「ーとするとデュノア社に息子は存在しない。

存在するのは社長のローグ・デュノアと彼と愛人関係にあったが病死により亡くなったマリナ・ソルファニーとの娘であるシャルロット・デュノアだけか…」

「『恐らくは男装した彼女を学園に送り込んであの屑の白式やイッくん達の機体データを狙っている可能性が大いにあるね…』」

ボーデヴィッヒの事よりこちらが最優先事項であるといえる。

「束さんもそう思いますか…まあ、自ら進んで会社の命令を遂行する気なら容赦はしませんけど…只ですね…」

「『只?』」

「セラフィーノが彼、いや彼女を見て言った一言が気になりまして…ああそれとボーデヴィッヒに関しても」

「『音六ちゃんが?』」

「ええ…」

 

昨日、昼食時にシャルルを紹介していた時だ。

 

ボーデヴィッヒは慣れ合う気がないみたいに席が離れてたので後回しになったが。

「…」

「ええっと…僕はシャルル・デュノア。

五組のセラフィーノさんだっけ?よ、よろしくね」

「よろしく…」

口数が少ないセラフィーノにシャルルはどう接すれば良いのか分からずしていたが…

「ん…」

「ひゃっ!?な、何?…」

当然の様にセラフィーノはシャルルをハグしていた。

「なんかとても辛そうな顔をしていたから…」

「え?僕は至って元気だよこの通り!…」

「…」

「あー…スマンなシャルル。

これが音六の愛情表現みたいなものだから…」

「そ、そうなんだ!…」

春にセラフィーノの行動に関する根底を説明されシャルルは納得したかの様に昼食を続けていた。

その隣でくいっ、くいっと春と俺の制服の裾を掴みながらセラフィーノが何かを言いたそうに見ていた。

「な、何だ?」

「…あの子の背後から悪意を感じた…それもとても凶悪な…」

「何だって?!…」

「それは本当か?」

「うん…」

セラフィーノの発言に俺と春は顔を見合わせる。

背後からという事はデュノア自身ではない他の誰かの悪意という事になる。

「後、あの兎みたいな子なんだけど私昔あの子とそっくりな子と会った事ある…」

「!…」

そういえば春の話に出てきたな…それが本当だとしたらボーデヴィッヒも間違い無く…。

「ありがとうな!セラフィーノ、おかげで調べ事が捗りそうだ」

「みゅ?…どういたしまして」

俺はセラフィーノに礼を述べ席を離れた。

 

Side春季

「俺の方も調べてみた方が良いのかな?これは…音六ちょっと良いかい?」

「みゅ?何はーくん…」

「タイセイさん伝でヤタさんに依頼したい事があるから放課後協力してくれるか?」

「うん良いよ…」

音六がああ言ったのだからデュノア社やシャルル自身に何かがあると思った俺は音六と一緒にデュノア社についてイチカ兄さんとは違う方向から調べてみる事にしたのだが…。

思ったよりその闇は深かったみたいだ…。

 

Sideイチカ

「『ふーん…やっぱこの事があったかもって分かっているみたい…』」

「デュノア社の実態について何か既に掴んでいるんですか?」

まあ、彼女にかかれば一企業の悪企み等調べるのは容易い事だろう。

「『まあ、そこはその道のプロに任せるとして…私達は彼等の背後に潜んでいる輩を調べないとね』」

「ああ…それもそうですね」

「『んじゃクーちゃんと一緒…いや人工ヴァリアントの可能性があり、アドヴァンスドでもあるラウラ・ボーデヴィッヒの事は調べておくね~!』」

「頼みます」

俺達の目的は百武装技術の漏洩を出来る限り防ぐ事であって一企業を救う事では決して無い。

それはその道のプロに任せるべきだと踏んだ束さんの意見に賛同し俺は通信を切った。

「さてと…」

シャルルは部屋の交換があり愚兄とルームメイトになっている。

もし現状で愚兄にシャルルが女性だとバレれば彼が下手に騒ぎ出して彼女に無益な害が被る可能性が否定出来ないので早目に手を打つ事にした。

 

翌日早朝、Sideシャルル

「ごめんね…コレが無いと父さんの命が…」

男装スパイとしてIS学園に入学し、織斑秋彦他二名の機体データを奪取する事を命じられた私はPCを操作していた。

「これで最後かな…ってえ?剣崎君は専用機一体いくつ持ってるの!?…」

「そこまでだシャルル。いや、此処はシャルロットと呼んだ方が良いか?」

「け、剣崎君なんで!?…」

私がビックリしているとふいに背後から声をかけられ驚いた。

剣崎君だ。

「一応未完成品のデータも入れといてよかったよ。

おかげで見事に餌にかかってくれたようだしな」

「け、剣崎君…」

私は絶望していた。

こんな早い段階で女性だと身バレしその目的まで完全に感付かれていたのだから。

 

Sideイチカ

見事に俺の張った罠にかかりシャルロットがデータの吸出しをしている現場を抑えた。

「あー…別にシャルロット、君自身をどうこうするつもりは初めから無いんだ。

だから安心してくれ」

「え?…」

俺のフォローに彼女は目を丸くし驚いていた。

「話してくれないか?一体どうしてこんな事をやっていたのかをさ」

「うん…」

俺の言葉に安心したのかシャルロットは泣きだしそうな声を押し殺し事情を説明してくれた。

なんだか向こうの戦友のエミール、嫌今はエミリアだったな。

王女という地位を捨ててまでもハヤトという想い人と自らの自由を求め決して挫ける事の無かった彼女の姿を思い出した。

最も彼女のハヤトへの想いは遂げられる事は叶わなかったが…。

母親の死からしばらくしてデュノア社へ引き取られIS適正が元々高かった事から専属扱いのテストパイロットとなった。

社長夫人、シャルロットにとっては義母ではあるが彼女との間には一切の愛情等無かったらしい。

そして俺達の事が報道されて社の再建チャンスと見た夫人は彼女に男装スパイ+機体データ奪取を命じてきたらしい。

「その…親父さんはその事に対して何も言わなかったのか?」

「お父さんは…ううん…あんなの私の父なんて呼びたくないよ!…」

「シャルロット…」

彼女の表情を見てこれは彼女の内に秘めた想いと今の発言が真逆だなと思った俺だったが口には出せずにいた。

「しかしデュノア社は確か世界シェア第三位のIS企業だったんだろ?

政府援助が打ち切られて開発が滞ったぐらいでそこまでの急な経営難に陥るなんて普通は考えにくいが…」

「そ、そういえば確かに!…」

シャルロットにも何か思い当たる節があるようで真剣な表情をしていた所に俺は問いかける。

「まあとにかく俺や春はどうこうするつもりは無いから。

シャルロット、お前はどうしたいんだ?」

「わ、私は…」

「ああ、心配しなくていい。

IS学園特記事項第21項だ」

「ええ!?剣崎君あの生徒手帳の内容覚えてるんだ…」

「ああ、だからこの項目が適用されこの件がもし表沙汰になったとしても少なくとも三年間は誰も手出しが出来ず、お前は自由の身だ。

それからどうしたいのかはお前次第という事になるが…変わろうという勇気はあるか?」

「私…」

「昔ある少年は諦めずに周囲の障害に耐え抜きました。

けれどそれでも変わる事はありませんでした。

ですがある日、本当の強さというものに気が付いた少年はそれまでの生活を捨て生まれ変わる事を決意しました」

それでもまだ手をこまねいているシャルロットに俺は過去を話した。

「それって剣崎君の事?…私も本当に変われるのかな?…」

「ああ、変われるさ。それが人の真理というものなのだから!」

「じゃあお願い!私と私のお父さんを助けて!」

「ああ、了解した!俺の事はイチカでいい」

「じゃあ、私の事はシャルと呼んで欲しいかな」

「了解シャル」

「うん!ありがとうイチカ!」

シャルの願いを聞き届けた俺は行動に出た。

 

休み時間、Side春季

「ねえちょっとアレってドイツの第三世代機じゃない?!」

「本国ではまだトライアル段階って私聞いたんだけど…」

IS実習の帰り道、突如ボーデヴィッヒさんが自らのIS【シュヴァルツェア・レーゲン】を纏い待ち構えていた。

「丁度良いな…おい織斑秋彦と織斑春季。貴様等両名私と勝負しろ!」

「なんだ藪から棒に…ドイツは教育がなっていねえんじゃねえのか?」

「…」

秋彦兄さん…アンタがそれを言うな。

このままでは秋彦兄さんがボーデヴィッヒさんの喧嘩を買ってしまいそうな一触即発の雰囲気だったが…

「ちょっと礼儀というものがなっておりませんでしてよ?」

「秋彦は正直どうでもいいけど春季と戦いたいんならまずは私達と戦いなさい!」

「おい俺がどうでもいいってどういう事だ!?」

「イギリスと中国の代表候補か…フン!恐るるには足りんな!」

秋彦兄さんの異議を無視し話は進む。

「そっちがね!」

鈴とセシリアさんがボーデヴィッヒさんに仕掛けていってしまう。

「温いわ!」

「嘘!?…」

「これは!AICですか…厄介ですわね!…」

二人の攻撃が障壁に阻まれ止められてしまう。

「なら連携でいくしかないわ!セシリア!」

「分かっていますわ!」

バラバラに攻撃しては駄目だと踏んだ鈴はセシリアに合図し再び仕掛ける。

が…

「貴様等の狙い等分かりきっている!」

「何コレ!?…」

「何ですの!?…これは!鈴さん早く散開を…」

「遅い!」

「キャッ!?…」

「がふっ!?…」

セシリアが鈴に指示した時既に遅かった。

彼女達の周囲にワイヤーブレードの蔦が張り巡らされ逃げ場を失っていたのだ。

その蔦が一気に解放され鈴達にダメージを与える。

「こんなものか…力を力として利用しない者の力量というのは…」

ボーデヴィッヒさんは飽きた様に後ろを向いたが…

 

Side鈴

「な、何…勝手な事抜かしてるのよ!…これでもっ!…喰らいなさいな!…」

「な、何ッ!?…ぐうっ!?…」

私はワイヤーの猛攻に耐えなんとか立ち上がりその隙を狙って龍砲を撃ち放っていた。

撃たれた事に気付いたボーデヴィッヒはAICを発動して止めようとしたが着弾の方が一歩早くそれを受け大きく吹き飛ばされた。

「衝撃砲か!…だが私が見たデータではこれ程の力は…」

「悪いわね…つい先日イチカに特別調整を施して貰っていたのよ!…」

イチカが機体を調整してくれていたおかげで従来の甲龍よりも比べ物にならないぐらいに全体のスペックが上がっていた。

その一つが龍砲から撃ち出された圧縮砲弾を拡散式に切り替える事によって一発、一発の命中精度、火力共に向上させて貰ったのだから。

「そしてこれはダメ押しの一刀!…」

全身の力を振り絞り強化された牙月を連結、投擲する。

「チッ!…」

だがそれはAICによって阻まれた。

「今よイチカ…」

私は痛みによる限界が来てしまい意識が朦朧とする中彼の名を呟くと…

「『残影斬』!」

「何ッ!?…」

いつの間にかボーデヴィッヒさんの背後に現れていたイチカが一撃を加えていた。

「大丈夫か?鈴、オルコット嬢」

「ええなんとか…」

「結構キツイけどね…」

「春、二人を頼んだぞ」

「うん任されたよ」

私とセシリアは春に抱えられ保険室に運ばれた。

 

Sideイチカ

「ようボーデヴィッヒ、どんな理由で戦おうがそれは手前の勝手だが少しは場をわきまえろよ」

「貴様は…もう一人の男性操縦者か!」

春経由でボーデヴィッヒが愚兄達に勝負を挑んできた事を知った俺は急行し彼女に一撃加え見据えていた。

「一応手前が今行っていた戦いの理由だけは聞いてやるよ」

「…この学園に在籍しているほとんどの者は世界最強の兵器であるISをファッションか何かだと思っている奴が大勢居る…だからこそ私はそんな奴等に力を刻み込んでやったまでだ!」

「力…ね…」

「貴様は良く理解しているようだがそれ程の力を持ち得ながら何故その力を世界に掲げようとしない?」

「…はっ!俺はそんな事には全く以て興味など無いんでね!

力は所詮は力でしかない…ボーデヴィッヒ手前が振り翳しているのは力じゃなくて単なる只の暴力に過ぎない!

本当の力というものはな…守るべきものの為に楯となり、それを誇れる強さなんだよ!」

「なんだと?」

ボーデヴィッヒの戯言という名の理由を聞いて俺は向こうの世界の出来事の一件を思い出す。

武芸者至上主義を掲げか弱き者達に目も向けず権力に酔いしれ自分達を世界の支配者と自惚れ疑っていなかった兄弟との決闘にハヤトと共に挑んだ一件を…

あまり自分的には思い出したくない一件ではあるが今のボーデヴィッヒの思考は兄弟の一人である兄のダグラス・クラウス・ウェンズを思い出させた。

力を力だと信じて疑わず己自身の信念は空虚な物で空回りでしかないそれに本当の強さなどありはしないのだから。

「ほざけ!」

俺の話に納得がいかないといった様な表情でボーデヴィッヒはレールカノンの砲撃を放ってくるが俺は即座に容易く回避してみせる。

「クッ!?…」

焦りの表情を見せるボーデヴィッヒは更に砲撃を撃ち放とうとしたが…

「そこの生徒!此処で一体何をしている?!学年とクラスを言え!」

定期の見回りをしていた教師に止められる。

「どうやら時間切れみたいだな」

「チッ!…興が冷めた。

だが貴様ともいずれは決着は付けてやるぞ!」

教師に止められた事でボーデヴィッヒは機体を解除しその場から去っていった。

「さて…其処でずっとこの場を傍観していたブリュンヒルデ殿?

今のアンタの心境は如何なものかな?」

「剣崎、お前はやはり…」

「…」

俺は元賢姉殿に見向き彼女を見据えていた。

 

 




次回、ようやく千冬に自身が果てのもう一人の弟であると悟られたイチカはラウラの事について彼女の話を聞く事にする。
その中で彼等の仲は…
一方で開幕が迫るタッグマッチ戦、それぞれの思惑が交錯し戦いの火蓋は切って落とされたが…
「貴公子の正体と黒い雨の涙 後編」
誤・脱字等ありましたらご報告を。



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EPⅡⅩⅤ「貴公子の正体と黒い雨の涙 中編」

Side千冬

私はボーデヴィッヒがアリーナで私闘騒ぎを起こしてると聞きつけ駆けつけたのだが彼女は剣崎の巧みな技に翻弄されていた。

途中で他の教師が止めに入り事無きを得たが…私は剣崎に言われた一言に目を見開き驚いた。

「賢姉殿今の心境は如何なものかな?」

「剣崎、やはりお前は…」

春季に聞いてみてもはぐらかされたが私はようやく目の前に居る剣崎イチカこそが私の大切な弟の一人である生死不明扱いになっていた一夏だと確信が持てたのだったが彼は何処か遠い目をしていた。

「一夏!なあ、お前なのだろう?!」

私は堪らずその名を叫ぶ。

だが彼は遠い目をしたまま言ってきた。

「賢姉殿、ボーデヴィッヒに一体何を教えてきたんだよ?…」

「一夏?…」

彼は怒りを込めた表情で私を睨みそう言ってきた。

「…それは私の指導がボーデヴィッヒにはあまり届いていなかったようだ…」

「本当にそれだけか?…」

「嫌…」

それだけではない事を悟った私はボーデヴィッヒの事について語った。

 

Sideイチカ

「はあ…」

元姉は自分ではなく俺がボーデヴィッヒの事を変えてくれるのではないかともしかしたらという僅かな希望に期待していたようだ。

「非常におこがましいが…今回はアンタの望み通りにやってやるよ」

まあ、元は些細な誤解から生じた事とはいえ未だに断ち切れていない家族たっての心からの願いを俺は引き受ける事にした。

「そ、そうか。

…一夏教えてくれ!何が其処までお前を変えたんだ?…」

賢姉殿は一応納得しもう一つ問いを投げかけてきた。

「別にアンタ自身を恨んでいる訳じゃない。

最初は二年前のあの日唯一信じていた者に裏切られ見捨てられたと思って世の中に絶望した事もあったが…義父さんやホクト先生、戦友と呼べる仲間達、そして大切だと想える様になった愛する人と出会って過ごした日々の中で俺は真の強さというものを学び悟った。

ただそれだけだ」

正確には若返っていた為に十二年という歳月だが向こうの世界でサベージという脅威に晒され続ける中で俺達は例え疲れ果てたとしても足を止める訳にはいかなかった。

止まる事が意味しているのは己の命だけでなく大切な者達や世界自体の死を招く恐れというものがあったから。

義父さんが教えてくれた「真の強さ」というものを完全に理解出来たのはつい最近ではあるが。

 

Side千冬

「…私達の元には戻って来てはくれないのか?」

私は彼の話を聞いて何かを悟り始め、聞いた。

「春にも言った事だけど家族だから当たり前に元の関係に戻れると思ったらそれは大きな間違いだ。

最も俺が戻らない大きな要因には別の理由があるがな…。

だがな…その家族という関係の鎖の先にあるべきものそれに気が付けた時、その時は…」

「そ、それは…」

彼はそれ以上の言葉を紡ぐ事なくアリーナを後にしていった。

「…私も変わり本質を理解するべき時が来たという事か…」

思えば私と肩を並べていた筈の秋彦の様子が何処か可笑しい点や守るべき存在と誓っていた春季の本来の素質に気が付けなかった愚かな私に対して一夏、嫌イチカの言葉には響くものがあった。

希望はある…それを無駄にしない為にも私はまたブリュンヒルデの名と罪を被ろうではないか。

そう決意を胸にし私もアリーナを後にした。

 

Sideイチカ

「~それで春にも正体が割れた…というよりこれは俺のミスだな…」

「俺もビックリしましたよ流石に…」

「あはは…ゴメンね…」

シャルルがシャルロットだという事を今現在知らない教師達が大浴場を解放してた事をすっかり失念していた。

まあ愚兄はあんまり風呂に入らない(汚ねえ…)のでアイツに身バレしなかったのが不幸中の幸いであった。

「ははは…でもシャルが話してくれてスッキリしたよ」

「春…」

春はというと当然最初こそ驚き、彼女が命令された事を聞いたがあまり気にしていない様だった。

今ではシャルと愛称で呼び合う仲になっている。

ちなみに俺も彼女にお願いされ当人同士で呼ばせてもらっている。

「それはともかく今度のタッグマッチバトルトーナメントは俺はセラフィーノと組む事にするがお前はどうするんだ?」

「俺はシャルと組む事にするよ」

「え、本当に良いの?」

シャルは驚いた顔をする。

「良いよ、シャルの事情を知らない他の人と組ませる訳にはいかないし」

「あ、ありがとう…」

シャルは照れ臭そうに春に礼を言っていた。

一方の俺はボーデヴィッヒの事を知っているかもしれないセラフィーノと組もうと考えていた。

後で彼女にも詳しい話を聞いて打ち合わせしておくべきか。

 

保健室

「ゴメンね折角アンタにチューニングして貰った甲龍をあんな状態にしちゃって…」

「体の方は回復しましたが機体がアレでは仕方ありませんわね…悔しいですが…」

俺は鈴とオルコット嬢の見舞いに来ていた。

彼女達の機体はダメージレベル度合が通常起動でも負担をかける程高かったらしく修復に時間がかかる為今回のタッグマッチバトルへの出場は許されていない。

「まあ、アンタや春季達があのラウラって子にお灸を据えてやれる筈だから楽しみだわ」

「はは、お任せ頂くとしようか」

そんな会話を交わしながら迎えたタッグマッチバトル当日

「結構な人だかりだな」

「各国政府の方やIS関連企業の来賓の方が生徒の実力を見測る一大イベントですからね」

美月がいうような人物達が開幕を今か今かと待ち構えていた。

「お偉いさん達がこんなに俺達を観に来ているとみると緊張するよ。

ま、いつも通り俺の天才振りを発揮するまでだけどね!」

愚兄よ、アンタの(笑)な天才では到底無理な話だがな。

「さてとトーナメントの組み合わせが発表された様だ。

これは…」

Aー1ブロック初戦 剣崎イチカ&音六・フェッロン・セラフィーノチームVS織斑秋彦&更識簪チーム

Bー1ブロック 織斑春季&シャルル・デュノアVS篠ノ之美月&乃仏本音チーム

Bー2ブロック 如月カレン&夜竹さゆかチームVS名も無きモブチーム

A-1ブロック第二戦 ラウラ・ボーデヴィッヒ&篠ノ之箒VS相川静香&名も無きモブチーム

以下他

Oh…一番当たりたくない奴と初っ端から当たっちゃったよ…ちゃっちゃと終わらせたいのが山々だがなんで愚兄のパートナーが更識会長の妹である簪なんだよ?

ああ、白式と打鉄・弐式が元は同じ倉持研究だから企業命令で組まされてしまったか。

なら愚兄をとっとと倒して簪の実力を調べてみるか。

「喰らええー!」

「よっと『残影ラッシュ斬』!とっととブッ飛んどけ!」

「ゲッ!?うぼあー!?……」

開幕愚兄はいきなりの零落白夜をブッ放してきたがそんな攻撃に当たる俺達ではなく遠慮無く全力の残影斬のラッシュで吹っ飛ばしておいた。

「…」

吹っ飛ばされた愚兄を見て簪は一瞬呆けていたがすぐに真剣な表情になっていた。

まあ少しの同情はしてやるけど。

「簪、何も企業命令に従う理由は無かっただろ?」

「組める人が他に見つからなかった…」

「Oh…それはそれは…」

そういえばのほほんさんは美月と組んでいるしな。

「…その子の調子万全そうだね…」

「あ、うん!…だけど二人を相手には出来ないかな…だけど音六ちゃんと勝負してみたいかな!」

流石に分が悪過ぎると見て簪はセラフィーノを指名してきた。

「なら俺は援護に回りますかね」

 

Side音六

簪ちゃんに指名された私は大太刀【炎月霊穿刀】をコールし構える。

「いくよツクモ!簪ちゃん!…」

「望む所!…」

「やあっ!…」

「そいやっ!」

私は思いっ切り刀を真っ直ぐに振るう。

対する簪ちゃんは近接ブレード【葵】を振るいぶつけ受け止めた。

「凄いね!…簪ちゃん、ツクモの炎月霊穿刀の初撃を受け切ってみせるなんて!…」

「ふふ…葵じゃなんとか受け止めるのが精一杯だけどね」

「それでも凄いよ!…その子も喜んでいるよ!…」

「打鉄弐式が?なら私も全力を以て答えてあげなきゃね!そこぉっ!」

「!…ツクモ!」

すぐに距離を取った簪ちゃんはアサルトライフルの牽制射撃を撃ち放ってくる。

私も即座に回避し【月神双水光】をコール、撃ち放つ。

「!ならこれはどうかな?」

「!?…」

私は驚いた。

簪ちゃんは私が撃ち放った水色のレーザーを葵で受け止めたのだ。

そして葵にレーザーが当たった途端にジュッ!という音は鳴ったが掻き消された。

「まさか!…そのブレードはレーザーコーティングを施してあるの!?…」

「良く分かったね!もう一撃!そいやぁっ!」

「!…いくよツクモ!」

簪ちゃんが再び葵を振るうと同時に私は瞬時加速で懐に潜り込みながら二丁の月神双水光を連結させる。

「え!?…」

「これは受け切れるかな?…ツクモ出力最大!」

驚く簪ちゃんを尻目に私は連結させた月神双水光から先程よりも強力な大出力レーザーを撃ち放った。

「くうっ!?…まさかそれが貴方の!…」

「そう、コレがツクモの単一仕様能力、<付喪双月波弾>!…」

「うっ!?…くううっ!?…」

いくらレーザーコーティングを施してあるブレードといえどこの火力差のある弾丸の嵐には耐え切れず受け止めていた葵は耐久限界を迎え粒子となって飛散した。

「あはは…もうライフルの残弾も少ないしこれまでだね…」

「…また今度もやろうよ!…約束!…」

「うん!」

私はリザインした簪ちゃんとそう約束した。

 

Sideイチカ

それぞれの初戦は終わった。

「あー…負けちゃったね…」

「おしかったね~美月ちゃん~」

春季チームは美月チームに無事勝利出来たようだ。

「え、ちょ!?…」

「そんなあぁー~!?…」

「ば、馬鹿な!?この私のISが!?…ええい!動けIS!何故動かん!?…あ、やっぱり無理ですか…」

カレンのチームもボーデヴィッヒのチームも順調に勝ち進んでいるみたいだ。

相手チームの断末魔が聞こえてくるが。

後、誰だ!?○ン○ム風に台詞言った人は!

なんだ相川さんか…。

そんなこんなで迎えたボーデヴィッヒチームとのバトル。

「貴様はおとなしく下がれ、奴は私の手で倒す!」

「何ッ!?私も奴にはこの手で引導を渡したいのだが!」

全くといっていい程連携のとれていないボーデヴィッヒとモップの譲れないプライドのつばぜり合いが勃発する。

「フン!どうしてもというのなら勝手にするがいい…」

「貴様等に言われなくても!」

そう言って突撃してくるモップを確認した俺はセラフィーノに告げる。

「セラフィーノ!まずは打ち合わせ通り俺が敵の相方の篠ノ之を片付けてくる!

その間君がボーデヴィッヒを抑えてくれ!」

「うん分かった!…」

俺の合図を聞きセラフィーノはボーデヴィッヒの方へと向かう。

「貴様一人だと?舐めてくれるなあー!てえい!」

「遅い!いくら秋彦より剣速が早かろうと奴に依存しているだけのお前の攻撃を喰らう程俺は弱くないんでね!」

真っ直ぐに葵を振り降ろしてくるモップに対し俺はカウンターを仕掛ける。

「『残影斬』!」

「何ッ!?」

「呆けている暇は無いぞ!『残影斬・弐式』!」

残影斬で刀を受け止め弾き返し彼女が驚いた隙に残影斬・弐式の斬撃を浴びせ彼女のSEをゼロに追い込んだ。

 

一方、Side音六

「やっぱり!…思い出して!…ウサちゃん!…」

「貴様等私は知らん!…一体貴様は何者だ!?」

私はイーくんに頼まれて対峙していたラウラさんが幼い頃誘拐された時に一緒にいた他の子の内の一人、ウサちゃんだという事を確信して応戦し必死に呼びかけを続けるが彼女は頭を抑えながら攻撃の手をより一層激しくしていた。

ラウラの両目は黄金に輝きを放っている。

「駄目!…ウサちゃんその力を使っちゃ!…今のその子じゃ耐えられない!

泣いているよ!…」

「何を訳の分からん事を!墜ちろ!」

「いけない!…」

聞く耳持たずのウサちゃんは構わず力を使おうとする。

私は炎月霊穿刀を横凪に振るうが彼女の機体のAICに止められてしまう。

なら…

「ム?…勝負を捨てたか?…舐めてくれる!…」

「違うよウサちゃん…そこだよ!…」

私がAICによって止められた炎月霊穿刀を一旦手放したのを見たウサちゃんが油断してAICの使用を停止したのを見計らってもう一本の刀をコールし思い切り振るった。

「何ッ!?…もう一振りあるだと!クッ!?…」

すかさず再び刀をAICで止めようとしてくるがそれよりも早く振るって斬った。

彼女が怯んだ隙を狙って手放していた刀を拾った。

「ッ!…」

一本の重量がとんでもない重さである刀なので普段はやらないがぶっつけ本番の二刀流を続け様に彼女に叩き込んだ。

やはり火力が落ちていたのかあまり彼女のSEは削れてはいない。

「セラフィーノ!大丈夫か?」

イーくんが篠ノ之さんを倒し此方に援護に来た。

「なんとか…だけど手が痺れる…」

「分かった、今は下がっておくんだ」

「うん…」

イーくんの指示通り私は後衛に下がった。

だけどイーくんがウサちゃんと交戦してしばらくすると私は途轍も無い悪寒を感じた。

お願い!…ウサちゃんとシュヴァルツェアレーゲンを助けてあげて!…

 

Sideラウラ

「クッ!?…」

何だというのだ?…私と彼等の間に一体どういう差があるというのだ!?…

生まれ持った力は脆弱で落ちこぼれだった私は織斑教官に教えを請われ、理想とする力を手に入れた筈だ。

それなのに目の前で対峙していた少女にAICの弱点を早々に見破られ押し切られた挙句に男性操縦者の一人である剣崎イチカにはAICでも通常攻撃でも止める隙すら無い程の斬撃を浴びせられ続けていた。

このまま私は無様に敗北してしまうのか?…嫌だ!

「『汝、強大なチカラを欲するか?』」

ふと私にはそんな声が聞こえた気がした。

「ああ、そうだくれ!…もっと力を寄越せぇー!」

その声に私は一瞬も躊躇う事無く答えてしまった。

『<【複写展開<トレース・オン>】開始致シマス。

ProstheticSaveage&Valkiyre・TrancesystemAwaken>』

「ガッ!?…嗚呼ああああアアァッー!……」

突如私は全身が激痛に襲われ意識を闇の中へと落とした。

 

Sideイチカ

「ムッ!?…」

セラフィーノに後ろを任せ、俺は対峙していたボーデヴィッヒの様子が可笑しい事に気が付く。

これは!…俺の中のヴァリアントとしての感が告げている。

このままではボーデヴィッヒが危険だという事が。

「アレは!…賢姉殿の影…束さんの言っていた【ヴァルキリー・トレースシステム】か!

それに…サベージ!それも人工型<レプリカント>が融合しているだと!?…」

ボーデヴィッヒの異変を切欠にアリーナ内は大パニックになり外賓等が逃げ出す中、俺は人工型サベージと融合したであろう賢姉殿の影を纏った彼女を捉えていた。

 

 

 




ちょっと予想以上に長くなってしまった為にまたもや前中後編構成になってしまいした。
相川さんはネタキャラ扱いですw
次回!歪んだ力を願い、シュヴァルツェアレーゲンに秘匿搭載されていたヴァルキリーサベージ・トレースシステムを起動させてしまったラウラは人工型サベージと融合した紛い物の影に飲み込まれてしまう。
そんな彼女を救うべく差し伸べられた手は…
「貴公子の正体と黒い雨の涙 後編」



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EPⅡⅩⅥ「貴公子の正体と黒い雨の涙 後編」

総員!推奨戦闘BGM用意イィー!!



Sideイチカ

「暮桜!…因縁という名の縁があるな…」

賢姉殿が白騎士事件で搭乗していた原初の第一世代IS「暮桜」の影の上にヴァリアブルコアが存在しない人工型サベージと融合したボーデヴィッヒの顔が浮かび上がる。

やはり人工ヴァリアントにされていた為かアドヴァンスドともなっている彼女の「超界の瞳<ヴォ―ダン・オージェ>」だけでなく残る右目も黄金に輝きを放っている。

「何アレ!?私らが知っているVTシステムではないじゃない!…」

「野郎!勝手に千冬姉の真似事なんかしやがって!俺がブッ倒してやる!」

「ちょっと!?待ちなさい!秋彦君」

「うおおおおー!」

ボーデヴィッヒの機体に積まれていた違法システム「VTシステム」がどうしてか起動しアリーナ周辺は大パニックになる。

VTシステムが何たるかを知っている更識会長すらも異変に気が付き、賢姉殿の技を使われている事に激怒した愚兄は会長の静止を聞く訳が無く零落白夜を発動しながら突撃していく。

「ウルアアァー!」

「ぐわっふ!?……」

シュヴァルツェアレーゲンRSVT暮桜に当然の如く回避されカウンターを喰らわされ愚兄は吹っ飛んでいく。

「この力は…とんでもなく計りしれないわね…」

「此奴は俺も予想外だな…」

目の前の事態を把握した俺はすぐに束さんに秘匿回線を繋ぎ聞いた。

「『むうー!…只でさえ不細工なシステムの癖にとんでもない代物まで積まれているなんて!…「ProstheticSaveage&ValkyrieTranceSystem」といった所かな』」

束さんはいつもの調子ででも怒気を含ませた物言いで説明する。

「…」

いよいよこの世界でヴィタリーの残党が動き出してきているとみて間違い無いな。

だが今は目の前の力に溺れた馬鹿を救い出さなくてはいけない。

「カレンは後方援護しながら歌ってくれ!

春とセラフィーノは俺の援護に回ってくれ!

他に動ける者はそこで転がっている阿呆を回収して避難誘導を頼む!」

「分かりました!♬」

「OK!」

「分かった!…私もウサちゃんを救いたい!…」

三人は快く了承する。

「ちょっと待って!VTシステムが積まれているのなら私も黙って見ている訳にはいかないわ!」

「僕も黙って見ているだけなんて出来ないよ…」

更識会長とシャルが異議を唱えてくる。

「なら会長もシャルルも俺の援護に回って貰います!

良いですね?」

「了解したわ!簪ちゃんは美月ちゃんと一緒に秋彦君と他の人達の避難誘導は任せるわよ」

「う、うん!お姉ちゃんも頑張って!…」

「うおおおっしゃー!」

簪の応援で喝が入った更識会長が突撃するのを合図に俺達も行動を開始する。

 

推奨戦闘BGM Side刀奈&シャル「STRAIGHT JET」

Side春季&音六「PLASMIC FIRE」

Sideイチカ「White Force」

 

Side刀奈&シャルル

「はあっ!」

イチカ君に援護を頼まれた私はVTシュヴァルツェアレーゲンにランス【蒼流旋】を振るい着実にダメージを与えていく。

「そこね!『清き熱情<クリア・パッション>』!」

私が纏うミステリアス・レイデイの<アクア・クリスタル>というナノマシン武装から散布された水分を瞬間気化させ水蒸気爆発を発生させる。

「とんでもないわね本当に…腐ってもブリュンヒルデの模倣だものね…」

爆発をあまり物ともせずに動いている敵機の性能を見て私は驚きを通り越して呆れるしかない。

「これで!」

一方のデュノア君は盾殺し、シールドピアスを構え突撃していく。

「シールドピアスでもあんまり傷が付いていない!?」

第二世代の中でも最強といえる武装があまり通じていない事に驚くデュノア君。

「春季君!音六ちゃん!後は頼むわ!

ここは退くわよデュノア君」

「は、はい!」

後の援護を二人に任せ私達は下がる事にした。

 

Side春季

「ウサちゃん、目を覚ましてお願い!…」

「ウルアアアー!…」

音六が必死にボーデヴィッヒさんに呼びかけるが彼女はシステムに完全に飲み込まれてしまっているせいか唸るだけである。

「音六、呼びかけ続けながら下がってくれ! 第壱の型【気脈流一鉄功】!」

「うん!…」

音六を下がらせ俺は奥義を使い気の流れを感じ取る。

ボーデヴィッヒさんは既に八割近く機械化している為微弱にしか感じ取れないが。

模倣されただけの千冬姉さんの剣技なら今の俺にだって見切れる筈だ!

「第参の型【鳳凰烈突破】!」

ボーデヴィッヒさんの振るう雪片をなんとか見切り叩き落とす。

「ウガラアー!」

雪片を落とされた彼女はすぐに砲撃を放ってくる。

「わっと!?…まだだ!雷砲血神!第弐の型【白鳳閃百撃】!」

対する俺もすぐに瞬時加速して回避しながら雷砲血神をコール、拳撃ラッシュを浴びせる。

「グハァッ!?…ウルオオー!」

ラッシュを浴びせられた彼女は一瞬だけ怯みまた咆哮し砲撃チャージを開始していた。

俺は下がろうとするが少し遅く…

「しまっ!?…」

「はーくん!ツクモお願い!…」

「音六すまない!」

砲撃されるが音六がバリアを張ってくれたおかげで直撃を回避出来た。

「雷砲血神のカートリッジ残数は…これじゃあまり持たないな…音六いってくれ!」

俺はカートリッジ残数を確認し音六に合図しながら下がった。

 

Side音六

「お願いウサちゃん!私の事を思い出して!…」

はーくんが下がると同時に砲撃が発射されるが私は付喪紅炎装を展開しドラグーンバリアを張る。

呼びかけを続けるが明確な返事は聞けない。

「ツクモお願い!あの子を…ウサちゃんとレーゲンの事を助けてあげたいの!…力を貸して!…」

私はツクモに強く願う。

するとコアが眩いまでの輝きを放つ。

「ツクモ?…それでウサちゃんを助ける事が出来るんだね?…よしいこう!…」

ツクモがまた教えてくれた事を実行する。

私の体に眠る力を存分に引き出す為集中する。

「はああああー!…」

紅き炎がツクモの尾から付喪紅炎装に宿る。

「ツクモ!<付喪紅神月炎装>!

ウサちゃんそれ以上その子を…レーゲンを泣かせないで!…」

「!?」

付喪紅神炎の上位互換版である紅き炎のサークルがウサちゃんを囲んだ。

 

Sideイチカ

「ほう!…動きを強制停止させて閉じ込め攻撃する結界か!

AICなんか目じゃないな。

本当の黒という名の宣告をその身に刻み付けろ!」

セラフィーノが攻撃結界を展開しボーデヴィッヒを拘束したのを確認した俺は俺の剣を振るう。

「『残影黒刺斬』!」

ボーデヴィッヒの放ったワイヤーブレードを逆に利用して誘導させ、レーゲンのレールカノン部位、今は人口型サベージの砲撃ビームの発射口になっている部分をワイヤーブレードの回避制御が間に合わない位置になってから刺し斬った。

「お前がそこまでの力を求める理由は分からないでもないが…それでもそれは真の強さじゃないんだ!」

「グッ!?…ウゥゥ…」

果て向こうの世界でヴィタリーがリトルガーデンに送り込んできた人口ヴァリアントの三人組であったが今では戦友として肩を並べられている、オルフレッド姉弟妹の一人であるネサット・オルフレッドの事を俺は思い出す。

彼女はリトルガーデンに開発に成功していた人工型サベージと共に直接襲撃してきたヴィタリーに裏切られ、弟のクロヴァンと妹であるナクリーを傷付けられ彼女自身は力を求め付近で暴れていた人口型サベージを人工ヴァリアントの力で複製してしまい暴走に陥ってしまった。

その際俺達はヴィタリーの仕掛けていた罠に嵌まりハンドレッドが使えないでいたがカレン達の歌で罠から解放されたおかげで応戦可能になった。

復活したハヤトが一足先にリザさん、そして彼の恋人であるサクラさんの力を借りてヴァリアントの力を解放、センスエナジーの衝突による共振で発生した意識共有空間を開き対話出来た事でネサットを含む弟妹達をヴィタリーの呪縛から解放したのだ。

その時の事を思い出し、俺はセンスエナジーを全力で解放するバースト状態となる。

俺の両目が黄金に光り紅きエナジーの輝きが体から溢れ出す。

「ラウラ・ボーデヴィッヒ!今俺がお前とレーゲンを歪んだ呪縛から救い出してやる!」

彼女を救うべくセンスエナジーの共振を起こし意識共有空間を開いた。

 

「ここは…ボーデヴィッヒの記憶の空間か!ひとまずは成功だな」

俺の前には意識共有空間を開く事に成功した事で先程までの殺伐とした風景はガラリと変わって別の景色が映し出されていた。

『遺伝子強化試験体、C-0037。君の新たな識別記号は『ラウラ・ボーデヴィッヒ』としようか』

白衣の研究員が産み出されたばかりのボーデヴィッヒにそう告げる。

やはり彼女もクロエと同じ戦闘特化強化人間アドヴァンスドの被験者であったか。

時は少し進み…

『大変だ!我々の研究成果が何者かに誘拐された!』

『なんだと!?すぐに探し出せ!』

やはりセラフィーノが巻き込まれた誘拐事件の被害者の中に彼女もいたのか!

『ウサちゃんしっかりして!…』

幼い頃のセラフィーノが繰り返される実験の中で日々ボロボロになっていくボーデヴィッヒを心配し強く抱き締めていた。

しばらくして他の被害者と共に救出されるが人工ヴァリアントにされた影響が甚大だった彼女の目は虚ろのままだった。

それからしばらく経ちISが登場。

『うわああああー!?…』

人工ヴァリアントにされた事を知らないとはいえ適合率に問題があったボーデヴィッヒの左目にナノマシン、疑似ハイパーセンサーである超界の瞳を研究員は移植を施した。

だが無論ISでは人工ヴァリアントとされ、その上アドヴァンスドでもあるボーデヴィッヒの動きについてこれる訳が無く何度も暴走事故を引き起こしてしまった。

絶望していた彼女の前に現れ指南したのが賢姉殿だったという訳か…。

一通り彼女の記憶を見た俺は未だこの歪んだ力に囚われているままの彼女を探す。

少し空間を進んでいくとノイズが発生。

ノイズはすぐに収まりそこに生まれたままの姿で蹲るボーデヴィッヒの姿があった。

今度は俺の番か…。

「全てを理解しろとは俺も言わない…だがこれを知ればきっと理解出来る筈だ!」

 

Sideラウラ

「私は…なんだこれは?…」

力を求め願った私は突然の激痛に耐えられず意識を闇に落とした筈…。

目の前には不思議な空間と風景が映し出されていた。

『この出来損無いが!』

『お前のその馬鹿さ加減が移っちまうからはやくどっかにいっちまえ!』

『なんでこんな事も出来ないのかしら?お姉さんやお兄さんは出来るのにねえ…』

『弟さん達ダメダメね』

そこには他の者達に罵詈雑言を浴びせられている恐らく幼少の頃の剣崎イチカと織斑春季の姿があった。

ン?待てよ、何故名が違う剣崎イチカと織斑春季が兄弟扱いをされているんだ?

私の疑問は隅におかれ場面は進む。

『どうせカンニングでもしたんだろ?』

『『…』』

成果を出しても先入観念で不正したと疑われ苛め抜かれる毎日、それでもこのイチカと

いう男は諦めなかった。

だけど運命の日、織斑教官がモンドグロッソに出場した日彼は何者かに誘拐され絶望する。

そして場面は更に変わっていく。

『イチカ、お前が本当に望んでいたものとはなんだ?』

『えっと…家族の絆です』

今度は赤い髪の男性とイチカが映し出される。

『そうだな。

だけど絆だけじゃ守れるものも守れねえ…その先にあるものが見えていなくては意味が無い。

力も同じだ。

振るおうとする力の先にあるものを理解出来ていなきゃそれは真なる力、本当の強さとして振るわれないからな』

『そうなんだ…』

「そうか…そういう事だったのだな。

貴様が言いたかった事というのは…」

イチカが男性の言葉に頷くと同時に私も理解した。

落ちこぼれだった私に光を与えてくれた織斑教官の教えは足りない所があった…いつも目先の戦績だけに目を奪われるばかりで他のものは何一つ見えてやいなかった。

私を支えてくれていたシュヴァルツェアハーゼ隊のメンバーの心使いを思い出し涙していた。

そして春季という男の事も理解した。

一度は努力する事を諦めたがある人物に再会出来た事で見事真なる強さを掴み取ってみせたのだ。

そして、また場面が変わる。

私がまだアドヴァンスドとして産み出された間もない頃の記憶みたいだ…ほとんど何らかの影響で思い出せていなかったが。

「これは…」

『ウサちゃん!…』

つい先程まで相対していた少女が私をそう呼んで抱きしめて涙を流していた。

そうだ…私はある日突然誘拐されてそれで…アドヴァンスドとは違う可笑しな実験を施されて心や体が侵されていたんだ。

その時に一緒にいて同じ実験の被害者でもあって励ましてくれていたのが彼女だったという訳か…なんでこんなにも大事な事を私は忘れてしまっていたんだろうな…。

「ウサちゃん、手を伸ばして!…」

「セラフィーノ!?お前も力を解放してこの空間を開いたのか!」

「うん!…これもツクモが教えてくれたから!…」

「!」

感慨に浸っていた私に向けられた声に私は驚く。

剣崎イチカと

「どうやら理解はしてくれたようだな」

「後はウサちゃん!貴方が私達を受け入れてくれるのを待つだけ!…」

「そうだ!」

「…」

そう言われた私は彼等へ恐る恐る手を伸ばすのだった。

 

Sideイチカ

「ふうー…なんとか無事に終わったか…」

「ウサちゃん!」

「大丈夫だ!気を失っているだけだ。

レーゲンも本体フレームは損壊してしまったがコアは無事だ」

「良かった!…」

俺とセラフィーノはバースト状態を解除し元の景色に戻ってすぐに心が陰りから晴れた事でVTサベージ化していたシュヴァルツェアレーゲンが解除されたボーデヴィッヒに駆け寄る。

気絶していて多少の傷はあるが無事なようだ。

だがこのままにしていたらまたいつ今回みたいに人工ヴァリアントとしての力を暴走させるかが分からないので早目に対策をしなくては。

「終わったんですねイチカさん!」

「イチカ兄さんお疲れ様!」

「はあー私も疲れたわ…」

「凄いよ剣崎君!それにセラフィーノさんも!」

「ああ、ありがとうな!だが…」

「?」

支援していたカレン達が駆け寄ってきて労いの言葉をかけてきた。

「すまん、カレンのブーストがあったとはいえ何せ初めてバーストモードを使ったから俺も疲れたな…」

「イ、イチカさん!?」

「私はお腹空いた…きゅー…」

「ちょ!?音六おい!?…」

ハヤトもバーストモードを使ってからの翌日は一日中眠っていたな…そんな事を思い出しながら俺はエナジー切れ寸前の警告を一見して身体を倒れ伏した。

セラフィーノは疲労感の代わりに空腹感に襲われ目を回して倒れてしまった。

「キャー!?剣崎君とセラフィーノさん、そしてボーデヴィッヒさんが倒れているー!?」

救援教師部隊に緊急召集された山田教諭がようやく到着し倒れてしまった俺達に驚きの声を上げるのであった。

 

 

 




いや~難産が重なる回でしたね…。
アドヴァンスドの研究員にタイセイは治療データを渡す訳にはいかなかったのでちゃんとラウラの治療を済ましてから帰してますのでそこはご安心を。
それでもハイリターンを優先してラウラを歪ませた馬鹿共がいますが…これは束に消されるな!(確信という名のネタバレ)
次回、歪んだ呪縛から解放されたラウラは自身の過去の過ちを正し新たに一歩を踏み出す決意をする。
その決意を耳にしたイチカと束、そしてラウラを想う音六の協力を得、彼女の愛機であるシュヴァルツェアレーゲンも新たな力を得て生まれ変わる事になる。
一方、デュノア社に潜む問題も山積みで…
「生まれ変わる兎と黒い雨、救いを待つ貴公子」



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EPⅡⅩⅦ「生まれ変わる黒兎と黒い雨、救いを待つ貴公子 前編」

遂に四日前に地元でもラブライブ!アケフェスが稼働解禁!
ああー!?どんどん財布が軽くなっていくー…。
HRスクユニ衣装の海未ちゃんが出てくれません…(泣
今月からハンドレのモバゲー版のソシャゲも出たし更にカツカツだー…




Sideラウラ

「…ハッ!?…私は確か…」

剣崎イチカに負けそうになって声が聞こえて…それで力を求めた瞬間に意識を失って…

「結局私は彼奴等に負けたのか…」

「ようやく目が覚めた様だなラウラ」

「教官…」

「お前の機体にVTシステムが積まれていた事が分かった」

「違法である筈のVTシステムがですか…」

「巧妙に隠されていたようだがな。今ドイツに問い合わせをしている所だ…ラウラ・ボーデヴィッヒお前は誰だ?」

「?…」

教官の質問の意味が分からずに私は首を傾げる。

「…分からないのなら今はそれでいい…これからはラウラ・ボーデヴィッヒとなるんだ!」

「は、はい!」

そう言って教官は保健室から出る。

「よ、ボーデヴィッヒ体の具合はどうだ?」

「ウサちゃん大丈夫?…」

「お、お姉ちゃん…それに貴様は…」

入れ替わりに剣崎と音六お姉ちゃんが入ってきた。

 

Sideイチカ

「大丈夫そうだな…」

「ン…本当によかった!…」

俺はセラフィーノと一緒にボーデヴィッヒの見舞いに来ていた。

既に目覚めていた彼女はセラフィーノを姉と呼び出し、俺にはちょっとの睨みを効かせてきたが…。

「教えてくれ剣崎イチカ…貴様は何故そんなにまでも強さを持ち得ているのだ?」

ふとボーデヴィッヒがそう問いかけてくる。

「…あの空間で俺の記憶も見たなら薄々気が付いている筈だぜ?」

「…友を思い、力を振るえたからか…」

「ああ、俺は今迄心の底から信頼し合える友を思って戦ってきた。

共に背中を預け合える戦友という存在、そして自分が守りたいと思う者達の為にな!」

「…それが兄上の強さか…」

ボーデヴィッヒはそう感慨深い表情をしながら言った。

ン?兄上?…

「これから貴様の事を兄上と呼ばせて貰う!い、異論は認めん!…」

「ファッ!?」

そんな事を顔を赤らめながら言ってきた。

 

その頃、Sideカレン

「はっ!…イチカさんが誰かにフラグを立てている気が…気のせいですかね?…」

 

Sideイチカ

「!?ブル…」

ちょっとした悪寒(恐らくカレンの嫉妬だろう…)を感じた俺は思わず身震いする。

「それで…レーゲンはどうなったのだ?」

「シュヴァルツェアレーゲンならば大丈夫だ。

フレームはあの時全壊してしまったがコアは奇跡的に無事だったからな」

「そうか…」

俺からレーゲンの事を聞いたボーデヴィッヒは安心した様に続けて言う。

「お姉ちゃんが言っていたレーゲンの悲しみの意思が私にも聞こえた…もう二度とあんな無茶な事はしない!…」

「ウサちゃん…」

ボーデヴィッヒはセラフィーノが持っていたレーゲンのコアを見つめながらそう呟いていた。

「ボーデヴィッヒ、レーゲンの事も含めてお前に隠されていたもう一つの力について語る必要があるんだ」

「私に隠されていたもう一つの力だと?…」

「ああ…」

俺はサベージの事やボーデヴィッヒに彼女がアドヴァンスドという力以外に持ったウィルスを介した人工ヴァリアントの力がある事、復元するにしても元のシュヴァルツェアレーゲンのままではその力に機体がついていけない、その為に相応の再設計・改修を施さなくてはいけない事を話した。

「話は分かった。それではレーゲンの事をよろしく頼む!…」

「了解した」

「私もレーゲンの改修に協力するから!…」

「お姉ちゃん…ありがとう!…」

俺は生まれ変わったボーデヴィッヒの瞳を見て快く了承した。

セラフィーノも協力してくれるそうだからコイツは良い開発データが得られそうだ。

 

その頃、Side春季

「突然お呼び立てしてすいません」

俺は外出届を出し付近のカフェで待ち合わせしていたセラフィーノファミリー一の凄腕情報屋であるヤタさんと話していた。

「別に良い…ウチの次期首領候補に挙がっているアンタの頼みというファミリーの命令だからな…」

ヤタさんは今でも音六に対する罪悪感のせいで顔を合わせられないらしい。

まあそれも彼が一方的に引きずっているだけに過ぎないのだが。

「それで俺に調べて欲しい案件っていうのはフランスIS企業のデュノア社だったか?」

「ええ、可能ですか?」

「俺を誰だと思っている?…

その気になれば政治家の今日の晩飯のメニューまで調べられる男だ俺は。

一企業の裏事を調べる事など容易い…」

ヤタさんはむっとした表情でそう言ってくる。

「ははは…では是非調査をお願いします!」

「承った、調査結果は近日中に現首領の娘宛に送っておいてやるからな」

「分かりました」

それを聞いてヤタさんと別れ俺はすぐに学園に戻った。

 

翌日、Sideイチカ

「『フームフムフム…うんOK!この設計ならレーゲンのAICもちゃんと問題無く稼働出来るね!』」

「そうですか!」

俺は昨日セラフィーノと考えたレーゲンの再設計・改修案を束さんに見せていた。

唯一の問題点はEバリアやNバリアをAICとは同時に使えないという点だった。

AIC自体にもかなりのデメリットがあるしな。

そんな弱点を補うべく俺はAICのシステムにレーゲンのISコア人格AIを設計し移植する事でデメリットを減らすというセラフィーノが提案した画期的な独自改修を施す設計をした。

レーゲンと融合させるヴァリアブルコアは先日の襲撃で手に入った物を使う事にした。

これによりボーデヴィッヒのアドヴァンスド、人工ヴァリアントの力を存分に発揮する事が可能な生まれ変わったシュヴァルツェアレーゲンが完成するという訳だ。

「フー…」

「『お疲れの様だねー…』」

「少し大変でしたからね。

でもとても有意義だともいえる時間でした」

「『…イッくんってそんなキャラだっけ?』」

「え?」

キラキラ恍惚の表情を浮かべた俺だが何故か束さんに心配される俺…そんなに変か?

「『とにかく機体は最終調整含めて四日かかると思ってて』

「了解しました」

さーて、後はシャルの問題だけか…。

春の奴進んでいるかな?

 

それから二日後の放課後、Side春季

「はーくん、コレ届いてたよ…」

「ありがとう音六!」

もう少し日数がかかるものばかりだと思っていたがもう届いたとは流石だ。

確かに凄腕情報屋として呼ばれているだけの事はあるな。

俺は寮の自室で早速開封して見てみる事にした。

「コレは!…酷いな…」

俺はデュノア社の調査結果を見て驚くばかりであった。

 

その頃、Sideシャル

「剣崎君がくれた情報を本社に送ってもう日が経つけどまだ連絡が来ないよ…お父さんは本当に大丈夫なのかな?…

誰か助けてよ…」

私は今現在も義母の陰謀により本社の地下室に捕らえられてしまった自身の父親の身を案じていた。

 

 




またもや予告詐欺してしまった…ラウラとレーゲンの事があるので前後編構成からのシャル救済編に入ります。
シャルについてはイチカより春季の方が出番多いかも?(露骨なネタバレ)
次回、無事生まれ変わったシュヴァルツェアレーゲンと共に新たな決意をするラウラは皆と必死に打ち解けようと努力し始める。
一方、シャルルやデュノア社について調べていたイチカ、春季は彼(彼女)を救うべく準備を始める。
「生まれ変わる黒兎と黒い雨、救いを待つ貴公子 後編」



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EPⅡⅩⅧ「生まれ変わる黒兎と黒い雨、救いを待つ貴公子 後編」

更に翌日、Sideイチカ

「何やっているんだアイツは?」

俺は休み時間、教室でコソコソとクラスメイト達の様子をうかがっているボーデヴィッヒを目にした。

「~…」

ああそうか、あの一件があったから俺やセラフィーノ以外の奴と打ち解けられていないのか。

「そんなに怖がらなくてもいいんだぞボーデヴィッヒ」

「あ、兄上、でもそのだな…」

モジモジと恥ずかしそうに顔を背けるボーデヴィッヒを見た俺は彼女をフォローする事にした。

「そ、そうか。あ、あの…」

俺に促されたボーデヴィッヒはクラスの輪の中に入っていく。

「あ、ボーデヴィッヒさん!あの時は災難だったねえー…」

「え、許してくれるのか?私は盲信に狂っていたとはいえお前達をも巻き込もうとしていたのだぞ?」

「そんなの過ぎた事じゃない!分からない事でもないしね…今が良いなら私達もボーデヴィッヒさんの事を受け入れるわよ」

「あ、ありがとう…」

良識なクラスメイト達に言われボーデヴィッヒは安心した表情をする。

「フン…全く良いご身分だな手前はよ」

そこに愚兄が余計な茶々を入れてくる。

クラスメイト達も凄ーく嫌な顔をしていた。

「何が言いたいのだ貴様は?…」

それに対しつい売り言葉に買い言葉をしてしまうボーデヴィッヒ。

「あんだけの事をしておいてよくもまあ平然としていられるねって言ったんだ」

「あの件は私もすまなかったと何度も謝罪しているのだがな…」

「チッ!…」

愚兄、真っ先に賢姉殿の技を使われてキレて暴走していたボーデヴィッヒを殺ろうとしたお前が言うな!

クラスメイト達もそう思っていたのだろうか苦い顔をしていた。

「やはり貴様だけは教官の汚点の様だな」

「なんだと?…もう一度言ってみろ」

「ああ、何度でも言ってやるさ。

貴様だけは最早教官の抱える唯一の汚点だとな!」

「ちょ!?…ボーデヴィッヒさんも秋彦君も喧嘩はやめて!…」

不毛な喧嘩をクラスメイト達が慌てて止めようとするがお互いヒートアップしていて止まらない。

「秋彦下がれ!その馬鹿者なぞ私が叩き直す!」

「ムッ!?」

「あの馬鹿共…」

そこに空気を更に読まないモップがどこから取り出したのか竹刀を構えてボーデヴィッヒに面打ちを仕掛けようとする。

「危ないボーデヴィッヒさん!」

不味い!…今ボーデヴィッヒの手元には自衛の手段が…

「甘いぞ小娘!」

「なっ!?…」

あ、そういえば彼女は軍人でもあったな。

モップは物の見事に見切られボーデヴィッヒに背負い投げを喰らわされていた。

「ならこれならどうだ!」

「ムッ!?しまっ!?…」

痛みを堪えながらモップは油断したボーデヴィッヒの隙を狙って先程よりも早い突きを放ってくる。

あれでは防御は間に合わず直撃は免れない。

誰もがそう思って目を閉じた時だった。

「アレ?…」

「お?…」

「なっ!?貴様は…」

痛みが襲ってこない事にポカンとした声を上げたボーデヴィッヒとモップの間にはクラスに遊びに来ていたセラフィーノが機体を展開し絶対防御でボーデヴィッヒを守っていた。

「大丈夫ウサちゃん?…」

「お、お姉ちゃん!…だ、大丈夫だありがとう!」

「これ以上ウサちゃんを苛めるというのなら私は決して貴方達を許さない!…」

今迄愚兄の愚行を見ていない筈のセラフィーノは愚兄とモップに怒りの目を向けていた。

僅かに向けられていたボーデヴィッヒへの彼の悪意にも気付いたか。

「チッ!…」

「あ、秋彦?…ま、待て!」

セラフィーノのボーデヴィッヒを思う気持ちに感化されたクラスメイト達も愚兄達を睨み付け、彼等はそそくさと席へ戻っていった。

全く懲りないなあの馬鹿共は。

 

その日の昼休み、予定よりも僅かに早いペースで遂に完成したボーデヴィッヒの機体が束さんから届けられていたので俺はセラフィーノと一緒になってボーデヴィッヒを呼び手渡した後、初回起動実験に付き合っていた。

 

Sideラウラ

「コレが生まれ変わったシュヴァルツェアレーゲンか!」

「ああ、新たなる名は『シュヴァルツェア・レーゲン デンスフォッグススプライター』だ。

新たに初期設定と最適化が必要だからそれも手伝ってやるよ」

「そうか。何から何まで本当にすまない。兄上もお姉ちゃんもありがとう!…」

私は素直に彼等に礼を述べた。

「どういたましてだ」

「良いよ。これは私達がウサちゃんとレーゲンを救いたくてやった事だから…」

兄上と音六お姉ちゃんはそう言ってくれて私は心の底から嬉しく思えた。

思いに浸ってすぐ私は生まれ変わったシュヴァルツェアレーゲンを起動して初期・最適化を開始、その間一部性能を閲覧した。

「これは…凄いものだな!」

「『マイマスター!良かった通じた!』」

「ム?…その声はまさかレーゲンのコア人格か?!」

強化された機体情報の数々に驚愕しているとふと声が何処からともなく聞こえてくる。

元々追加データはそんなに多くは無かった為予想より早く完了したようだ。

「『それはYesです。厳密にはそのコア人格を複製して開発されたシュヴァルツェアレーゲンデンスフォッグススプライターのサポートAIなんですがね。

…マスターには散々今迄危ない目に遭わされてきましたが…もう大丈夫だと思います!』」

「そ、それは本当にすまないと思っているぞ…」

私はレーゲンに謝罪する。

「『まあ、過ちを正せた今のマスターなら大丈夫でしょう!

私も安心出来ます!』」

音六お姉ちゃんや兄上があの時止めてくれなければ私とレーゲンは今も此処に存在していなかったのかもしれないのだから…。

もう過ちは二度と犯さない!そう決意した私はレーゲンのAIに助言して貰いながら機動試験を続けた。

 

Sideイチカ

「レーゲンのサポAIの起動を無事確認と。

この分ならボーデヴィッヒはもう大丈夫そうだな」

「うん!…」

レーゲンの完全起動を見届けた俺はそうセラフィーノに言うと彼女も頷いた。

そろそろ時間か。

 

放課後、俺はシャルと一緒に春に呼ばれ彼の部屋へと足を運んでいた。

春にはシャルが女性だという事を彼女の口から明かさせた。

当然彼もそれに驚いていたが

「では春、お前がセラフィーノファミリー経由で手に入れたデュノア社の裏情報を教えてくれ」

「ああ、分かったよイチカ兄さんもシャルルも。

コレを見てくれ」

「ふむこいつは…」

「ええ!?こんなの一体どうやって手に入れたの!?」

「音六の実家があのセラフィーノファミリーなんだよ…それでね」

「え?それってあの!?…」

「ああ」

俺は春に手渡されたセラフィーノファミリーの者が調べたデュノア社の裏事業の調査結果の数々を見て呆れた声しか出ず、一方のシャルはマフィアのボスを父に持つセラフィーノの素性とそのツテを扱える春季、そしてその情報収集能力に驚いていた。

「女尊男卑の世ならではだな…」

それというのもデュノア社の社長夫人がこの世界では本来の意味で活動してなどいない女性権利団体に多額の金の寄付、夫の会社が窮地に立たされているというのに自身を含む女性幹部は皆かなりの贅沢三昧な生活を送っているようだ。

その他には一部の政治家との癒着にその上、ごく最近から行われ始めらしいがもう既にいくつかの企業や団体が社長夫人達が仕掛けたのであろう様々な詐欺被害に遭ってしまっていたらしく泣き寝入りさせられた者も居れば被害金を穴埋めする為にした借金を苦に夜逃げ、自殺を図った者も居るみたいだ。

「じゃあ私のお父さんは!?…」

「この調子じゃシャルと交わした約束が守られるとは到底思えないな…」

「そんな!?…」

俺の推論を聞いたシャルは泣きだしそうになる。

「大丈夫だよシャル。

詐欺を仕掛けその上君のお父さんを監禁している夫人達や癒着している女利権や政治家共には俺とセラフィーノファミリーのメンバーさんの手で必ずお仕置きしてやるから!…」

「俺も手伝おう!」

「は、春季君、イチカ君!どうか父の事をよろしくお願いします…」

「承った!」

「分かったよ!」

 

「本当にもう決意したんだな?」

俺は春がセラフィーノファミリーの次期ボスになる決意をしたのだと思い問いかけた。

「うん…千冬姉さんにはまだ話せないけど…やっぱりシャルみたいに理不尽な目に遭わされて泣き寝入りする人達を救いたいんだ!

だから!…」

「世の中には綺麗事だけじゃ片が付かない事もあるからな…」

春の決意を聞いて俺はかつて向こうの世界で敵対する事になってしまった反武芸者団体の人達の事を思い出す。

救援を渋っていた者達が居た為にサベージに友や家族を目の前で殺された者達の憎悪の中で感じ、政治の裏の汚事を知っていた俺に春を止める理由は無い。

「とにかくこの件は俺を中心に任せてくれ!」

「ああ!…」

春と別れ、俺も不測の事態に備える為準備に入った。

 

 




反武芸者団体→政治的意図又は力への嫉妬で入った馬鹿者も少なからずはいるが大半はビル・ハーヴェイ=マダ男の仕事のやる気の無さのせいで親類を失ってしまった人達で構成された組織である。
又イチカや戦友であるフリッツやレイティアは先輩でもあったベルグリット・レオンハルトを彼等の不意な襲撃テロによって失っている。
彼とイチカの関係と強化されたラウラや黒雨については後日更新のキャラ集で。
まだ息子のジュダルの方がよろしかった…早目に世代交代しなかったのが運のつきだ…。
え?宇宙開発反対団体は…マジで発足された意味が未だに分からないですハイ。
恐らくほとんどが政治的意図野郎だろけど。
そして、悲報…ハンドレ原作Ⅵ巻だけどっか失くしたー!…しかも丁度件のレオンハルト登場の巻なんだ覚えてて良かった…だけどまた買い直さなくては…
次回、シャルを救う事を決意したイチカと春はそれぞれの戦い方で準備を着々と進めていく。
「それぞれの救済 PARTⅠ」





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EPⅡⅩⅨ「それぞれの救済PARTⅠ」

キャラ集も更新!詳しくは見てね


Sideイチカ

「これで準備完了と!…」

「本当に行かれるんですか?」

「ああ、そんなに時間猶予が無いようなんでな」

あれから一週間後の五月前、GWを利用して春と一緒にシャルの父親を救う為にフランスへと向かう準備を進めてきた俺はカレンに理由を話した。

勿論シャルの正体が女性である事も。

「必ず帰ってきて下さいね?…」

「約束するさ!」

「いってらっしゃいです」

カレンに見送られ俺は学園を後にした。

 

Side春季

「それとあれと…そしてこれも必要だな…本当に上手くやれるんだよな?…織斑春季」

俺は今迄セラフィーノファミリーで培わされた持てる力を駆使してデュノア社、いや社長夫人を含む女利権団体や癒着している政治家の悪事の数々を公の目前に曝け出させる為に下準備を進めてきた。

「大丈夫…私ははーくんとイーくんならデュノアさんと彼女のお父さんの事を救えると信じてるから…だから安心していってきていいよ!…」

音六がいうには向こうで後からレキナさんも合流するとの事だ。

確かに俺とイチカ兄さんだけでは不測の事態を収拾しきれない可能性が出てきても可笑しくはないな。

「音六…それじゃあしばらくの間頼むぜ」

「うん!…」

音六に激励された俺はイチカ兄さん達との待ち合わせ場所へと急いだ。

 

そしてイチカ達がフランスに到着していたその頃、Side?

「何やってるのよこの無能が!」

「かなり随分と荒れているようだね」

「あら貴方!来てたの」

そう彼女こそデュノア社社長夫人のイネス・デュノアなのである。

彼女の前には謎のフードの男がいた。

「いくら今の夫と夫の愛人の娘を始末して計画倒産させる予定の会社の金だからと勢い余って株やら不動産投資なんかやるんじゃなかったわー…不慣れな事はやるものじゃないわね…」

「…そうだね…」

イネスは目の前の男と現在愛人関係にあった。

まあ…いずれは彼も利用し潰して始末する計画を立てているようだが…。

それが既に男にバレていて彼の手の平で踊らされているとはイネスは微塵も思っていない様だ。

「ン?ようやくあの馬鹿な義娘が必要な情報を送ってきたようね

これでもっとバンバン儲けるわよ!」

「…」

イネスが高笑いしながら席を離れたのを見計らって男はシャルが送ってきたデータをコッソリとコピーし盗み見る。

「(間違い無い!…以前にあそこに侵入した時は何者かにバレて其処までの余裕は無かったが…これはISだけのデータではない!

百武装も混ざっている!となるとこれらを開発した人間は…奴でもう間違い無い!

精々利用させて貰うぞ…この会社も亡国企業もな!)」

男はそう呟きながら姿を消した。

 

その頃、デュノア社より少し遠目のホテルに到着したイチカ達一行は

Sideイチカ

「良いかい兄さん?もう此処ではお互い偽名かコードネームで呼び合おう」

「了解したSH」

「此処からは俺に任せてくれて良いから。

じゃあ後ろは頼んだよA」

「い、いってきます」

春…じゃなかったSHは着いて早々にシャルと一緒にデュノア社へと訪問に赴いていった。

さてと俺は戦いのその時までデュノア社の背後に潜む影の奴等を調べますか。

 

Sideイネス

「どれもこれも似た様な額ばかりね。

もっとこうドドーンとドデカく大儲けが出来る口はないかしら…ン?これは…」

新たな儲け口を探していた私の目に飛び込んできたのは紛れも無いかなりな大口の儲け話の情報だった。

『最先端IS特許技術設計取得権確保!貴方にローリスクハイリターンを約束します』

いわゆる特許を取った最先端ISの技術設計の権利を売るという話だ。

これは…例えばこの権利を買い取った後、量産し特許技術である事を隠した上で他の企業に売り飛ばしてからその売りつけた企業に特許を侵害されたとの訴えを出せば私には何の痛手も無く慰謝料がガッポガッポ入るという訳だ。

どうせ今は女尊男卑の世だしロクな捜査はされない筈。

たとえこの会社を計画倒産させた後でも十分過ぎる金が手元に残るわね。

だが待て、これだけ美味過ぎる話にはよく注意して下調べしないとね。

早急に部下に調べさせたが心配は無用の本物の話だったようで一安心する。

「まずはこの話を聞かなくてはいけないわね…」

私がそう思っていると社の呼び鈴が鳴る。

「馬鹿義娘?

それに男を連れてきているわね…いいわ入れなさい」

私は何故義理の娘が社に帰ってきたのかは分からなかったが故に社内に入れる事にした。

「義母さん、僕が送った情報は見てくれました?」

「ええ、本当ならまだまだ欲しい所だけどもガードが堅いなら仕方無いわね…」

「それともう一つとっておきの情報があるんだよ。

それは彼が説明してくれますよ」

「どうも初めまして。

私は夏季斑 冬貴と申します。

最先端IS事業部の者です」

「なんですって?…」

私は目を見開いて驚いた。

義理の娘が丁度私が乗ろうとしていた件の最先端IS特許技術取得権売買の担当という男を連れてきたのだから。

 

 

 




どれだけの長編になるか分かりませんがそれぞれの道での救済と戦いが始まります。
次回、セラフィーノファミリーで培わされた裏の技をシャルと彼女の父親を救う為に発揮すると決意する春季は偽名を名乗りシャルの紹介を通して技術特許権を餌にデュノア社に乗り込み社長夫人であるイネスに接近し仕掛けを施す。
一方、イチカは単身デュノア社の背後に潜む影を調べる事にするがそこで驚愕の事実を目の当たりにする。
「それぞれの救済PARTⅡ」



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EPⅢⅩ「それぞれの救済PARTⅡ」

Side春季(冬貴)

「…」

事前にヤタさんがツテのある人に頼んで今の世では第三位のシェアに落ちたデュノア社に対しての恰好の餌を撒いてもらい俺はシャルに紹介して貰うという形で夏季斑 冬貴という偽名を名乗り社長夫人に接近していた。

正直初めてのグレーゾーン…いやブラックゾーンに足を踏み入れてかなりの冷汗を感じている。

「如何です我が社のIS技術の結晶は?

かなり画期的な代物であると我々は自負していますが」

「…」

俺はイチカにい…じゃなかったAが考案していた新機体の中には…おっとこれ以上は後に判明する事だ、ここでは伏せておこう。

イネス夫人に詳しいデータベースを見せて彼女の反応を見る。

 

Sideイネス

「これは確かにかなりの魅力的な代物の数々ばかりですわね…だけどなんでウチみたいな企業にこの権利の売り込みに来たのかしら?」

私は少しばかりこの話が怪しく思えてくる。

部下に下調べさせて大丈夫との事だったから彼を招き入れたものの何故こんなに簡単に敵である筈の別のIS企業なんぞに売り込みに来たのかしら?…

私ならこんなにおいし過ぎる代物にそんな愚かな事は絶対にしないで独占するわよ。

「はは…誠にお恥ずかしい限りな話でなんですがその…ねぇ…材料面においては不自由していないんですがね…」

「…ああ、そういう事ね」

IS技権の男、夏季斑が髪をわしゃわしゃしながら話してきた内容は私にも納得せざるを得ないものだった。

彼が言うには材料面は潤沢しているがとにかく資金面が未だに苦しいとの事。

なんならもういっその事だから信頼の寄せられる他企業へ権利にして売っ払ってしまおうという事か。

「それでご契約の方なんですが」

「どれ…ほ、保証金!?」

私は驚く。

私からたかろうとでもいうの?!

「それだけは上司がどうしてもと譲らないのでして…でもご安心下さい!

あくまでもそちらのキャンセル料を含む形の先行保障金という事になるので生産体制が整ったら返金致しますので」

「…」

そういう事か。

恐らく資金面が乏しい企業上層部が少しの間だけでも現金を傍に置いておきたいのであろう。

この契約によって支払う事になる金は保証金を含めると合計で一億二千五百万か…出せない訳では無いのだが現在、会社にプールしている持ち金の四割程の額…。

「少しお時間を下さい。

考えさせて頂きますわ…」

「そうですか。

なら今日の所はここで失礼させて頂きますね。

なるべく良いお返事を期待していますよ」

私はたとえ四割だろうともし不慮の事態に陥った時の事を考え契約を保留させて貰う事にした。

 

Side春季(冬貴) 

「ど、どうだったのかなアレは?…」

シャルがオドオドしく聞いてくる。

「デュノア社再建という今後の事があるから少しばかりの慈悲で四割程の金額に収めてやったていうのに…寄生虫の真似事をやっているだけの癖に不慮の事態に備えているねアレは…」

第一段階はまあそれなりという成果という所だった。

「そ、それでどうするのこれから?」

「奥の手を使うしかないようだね」

第二段階の仕掛けに入ろうとしよう。

 

その頃、Sideイチカ

俺はデュノア社の背後に潜む影についてフランスの図書館で調査を進めていた。

「春の奴は今頃上手くやっている頃か…ム!?」

殺気を感じ後ろを振り向く。

気のせいだったか…付近で誰かに見られているような気がしたのだが…

俺はすぐに気を取り直し進める。

「コイツは!…」

最新のフランス一帯を含むこの世界各国の研究所一覧をPCで検索し閲覧しているとある六つの研究所について気になる点を発見する。

「この六つの研究所の頭文字を合わせると…O、R、V、W、E、Sとなる。

俺はこの頭文字が全て名前にある奴を唯一一人だけ知っているぞ!

この六つの地点の研究所を重点的に他もしらみつぶしに調べてみる他ないか…」

俺は一企業に潜む影が予想外に残していた法則性に気が付き調べを急いだ。

 

 




次回、デュノア社の背後に潜む影が残した法則性に気が付いたイチカは調べを急ぐ。
一方、イネス夫人を件の契約に対して焦らせる為に春季は仕掛けの第二段階へと移行する。
「それぞれの救済PARTⅢ」



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EPⅢⅩⅠ「それぞれの救済PARTⅢ」

Sideイネス

「はい?売渡し先が決まりそうですって?…」

「ええ、そちらよりも良いお返事が早目に貰えそうなんですよ」

夏季斑がまた翌日会社を訪ねてきたと思ったらそんな事を言ってきた。

しかもその相手はうちよりもシェアが低いモルゲンレーテ社ですって!?

ふざけるんじゃないわよ!

なんでうちよりもランクが低い奴等にこんなにも美味しい話を横取りされなきゃいけないのよ!

逃す訳にはいかない。

そう思った私は夏季斑に言った。

 

Side春季(冬貴)

「だ、大丈夫ですか?」

「え、ええ…夏季斑さんその件なんですがうちはもっと出しますのでお受けしたいのですがよろしいですか?」

息を荒げながら社長夫人はそう言ってきた。

仕掛けの第三段階を施してすぐにこの反応。

しめた!そう思った俺は最終段階の準備に入る。

「は、はい!

御社がその気なのでしたら勿論喜んで!

ではご契約金は二割増しという事でよろしいですか?」

「ええ、良いわ!…」

契約を終えた後の夫人の顔は恍惚の表情を浮かべていた。

そんな表情でいられる余裕ももうすぐなくなるというのにね。

 

「毎度ありがとうございやしたぁ~!」

「…」

夫人から契約金という名目で振り込まれた金を確認した後俺達はレキナさんとヤタさんと待ち合わせていたカフェに向かった。

「思っていたより取れたので情報料上乗せさせて頂いときますね」

「確かに受け取った…そいつは確かデュノア社の…」

シャルの存在についてヤタさんが問いかけてきたので彼女は途端に不安に思ったのか顔を伏せていた。

「大丈夫だよシャル。

この人達は事情全部を知っているから」

「そ、そうなの?…

で、でもこの人達って堅気の人じゃないよね?」

俺がそうフォローするとシャルは顔を上げたがまだ不審に思っているのか聞いてきた。

「あン?…なんだ次期候補、このお嬢ちゃんにまだ説明していなかったのかよ…」

「あはは…」

ヤタさんの指摘に俺は苦笑いで誤魔化した。

「まあ良い…俺はヤタ・フォン・アルイアーだ」

「私はレキナ・灰鉄。

現首領の命により参上つかまりました」

「え?え?どういう事なの?…」

ヤタさん達の紹介にシャルは混乱しているようだ。

「そこのあんちゃんはウチの次期首領候補に推薦されているってだけの話だ」

「しゅ、首領候補?…」

「セラフィーノファミリー…名前ぐらいは聞いた事ある筈だ」

「え?それってもしかしてあの!?…」

「ああ…」

ようやく理解しえたシャルは驚きを隠せないようだ。

まあ、そりゃそうだよな普通。

男性操縦者の内の一人が実はマフィアの首領候補に推薦されている一人だなんて事は思いもしないか。

「そういえばセラフィーノって確か…」

「ああ、音六は現首領の娘なんだよ」

「そ、そうだったの…」

シャルは音六の事を思い出したのか問いかけてきたので素直に答えた。

「皆良い人達ばかりだよ… 

音六の母親はまるで音六と姉妹みたいだし(本人気にしているけど)現首領である父親も相当に良い人だしな!」

「…この件が終わったらいつかお礼言いに行ってもいいかな?」

「ああ良いよ!」

シャルも俺の話を聞いて警戒を解いたらしくそう笑顔を浮かばせていた。

「それでレキナさん仕事の話に戻りますが俺が最終段階の仕掛けを発動したらAと共にシャルのお父さん、デュノア社社長は社の地下室に捕らえられているそうなので彼の救出に向かって下さい」

「了解しました」

さあ、ここが正念場だ。

 

 



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EPⅢⅩⅡ「それぞれの救済PARTⅣ」

推奨BGM用意イィー!


Sideイネス

「遂に!…遂にやったわ!これでこの会社ももうしばらくは安泰ね!」

開発権を譲渡された契約を結んだ直後、私は早速夏季斑から送られてきた設計図を用いて量産体制に入らせた。

量産が完了し売り出すと飛ぶ様に売れて私は狂喜乱舞していた。

後はこの譲渡権利を誤魔化して他の企業に売りつけて特許侵害で訴えを起こせばたちまち賠償金がガッポガッポよ~!

「とりあえずは第二位と第一位にのさばっている奴等に売りつけてやったし後はそうね~…ウチみたいに検討していたモルゲンレーテ社にも売りつけなきゃね~!」

ウキウキ顔と浮き足でモルゲンレーテ社に購入交渉をしにいったのだが…そこで私はとんでもない事を聞かされる事になる。

~モルゲンレーテ社~

「デュノア社社長夫人、イネスさんでしたっけ?…貴方このISの設計図一体何処で入手したのですか?」

「ええ、それは契約ででもそれは…」

私が持ってきた設計図を見てモルゲンの担当者が難しい顔をして聞いてきたので返答する。

なんだというの?

「デュノアさん、はっきり言わせて頂きますよ?

これは我がモルゲンレーテ社が開発予定である新型ISの設計図なんですが…」

「は?…」

今この担当者何て言った?

我が社が開発予定の?…

「それに残りのものも調べてみましたが全て我が社を含む他企業のものもあるみたいですね…これは一体どういう事ですかね?…」

「んなっ!?…」

他の企業のものも含まれているですって!?…

PiPiPI!

私が驚愕しているとスマホが鳴った。

デュノア社の方で何かあったらしく気が付かない内に部下から何件も着信が入っていた。

私は席を一旦離れ電話に出る。

「はいもしもし…」

「『夫人さんやっと出た。

今、サツが令状持って社宅捜索するとかきたんですよ!』」

「なんですって!?…一体どういう事なの!?」

「『なんかウチが先日売りに出した新型ISが実は他社の盗作なのではないかという疑惑がかかりまして…』」

「!…後でまたかけ直すわ」

「『あ、夫人!?…』」

やられた!…そう思った時には既に遅かった…。

急いでアイツに…夏季斑に真意を問いたださなくては!…

 

Side春季

「『はい、もしもし?』」

「あ、夏季斑さんこれは一体どういう事なんですか!?」

俺が電話に出るとイネス夫人が鬼気迫る声で怒鳴ってくるが意に介さない。

「『どういう事って?ああ、仕掛けが発動したって事かな?』」

「『お義母様さよなら!…』」

「し、仕掛け?…それにシャルロットアンタ何を!?…」

一瞬だけシャルに変わり一言言わせた。

 

推奨BGM「抱いてセニョリータ」

「『そうそう、アレ我が社が考案した新型ISの設計図なんて唱っていたけどその中身というのは実はハッキングという裏√で入手した他社の開発予定の新型IS設計図だったワケ。

そんなものをアンタ達が使って売りに出したら…後は分かるよね?』」

俺は壮大なネタバレを披露する。

「そんな!?…だってちゃんと調査したのよ!?」

「『イネスさん、アンタ馬鹿なんですか?』」

「なんですって!?…」

俺はイネス夫人をおちょくるように引き続きネタ晴らしをする。

「『アンタ、こんな世の中なくらいだしいくら自分の派閥の人間だからって同じ人間を長期間信用しない方が良いよ?』」

「!…夏季斑、アンタまさか!?…」

「『ご想像の通りですよ。

俺はあるツテを使ってイネスさん、アンタの派閥にいる人間の弱味を握ってあたかもちゃんと調査したかの様に仕向けさせたんだよ…まあソイツも俺が警察に流した情報でアンタと一緒に法に裁かれる運命は変わんないだけどね。

ああそうだった、モルゲンレーテ社に売り込みに行ったっていうのはアレ嘘だから。

プライドが無駄に高いアンタの事だ。

一度は断ったとしても自分らよりシェアが下の連中に取られるぐらいなら自分が…と考えるだろうと思ったからね。

おかげで予想していたよりも多目に巻き上げ…じゃなかった騙し取り返せたよ』」

俺のネタ晴らしに電話の向こうの夫人は唖然としている事だろう。

「夏季斑…あ、アンタ一体何者!?何が目的!?

もしかしなくてもあの娘とグルになってた訳ね!」

「『シャルはあまり関係無い。あくまであの広告を見た後アンタが食いつきそうだと思って俺を紹介させただけに過ぎない。

そしてアンタはついさっき彼の事をシャルロットと言ったな?』」

「あ…」

イネスはしまったとばかりに顔を引き攣らせているに違いない。

「『まあアンタ等を調査させてた途中で分かった事だけどな。

その事も含めて俺が今回アンタ等に仕掛けたんだ。

それと俺の事だっけか?うー~んあえて分っかりやすい偽名にした筈なんだけどな…所詮は俺や他の二人自身ではなく機体にだけ目がいってただけの単なる寄生虫だよイネス夫人、アンタは!…』」

「だ、誰がたかが寄生虫ですって!?…」

「『夫を…そして例え夫の愛人の義理の娘といえど一切愛する事はせずに只会社とその金目当てで略奪結婚し巣食っているだけのアンタの何処をどう見たら寄生虫じゃないと言えるんだ?』」

シャルの父親への本当の想いを無理矢理封じ込め、そしてローグさんの必死な努力で積み重ねてきた汗と涙の結晶をコイツは一瞬にして蔑ろにしようとした。

両親がいない俺だからこそ分かる。

父親という片方だけでも信じられる家族がいる彼女には幸せになってほしいと。

だからコイツを含む加害者は法で裁かれなければいけない。

「ま、まさかアンタは男性操縦者の一人の織斑春季!?…」

「『ようやくご名答。

今頃ローグさんや良識派の社員は皆、アンタの牢獄から解放されている頃だろうな』」

「私にこんな事しでかしていくらなんでも只で済むと思っているの!?」

「『どの口が言うんだか…最初に言ったろいくらアンタがわめいた所で何の意味も無い…いくらこんな世の中でも庇い切れる事には限度があるんだからな。

俺が買収していた社員も含めてアンタらの派閥の者は皆、法で裁かれる運命だってな。』」

「そんな!?何故私が!?…」

まだ被害者面するイネスに俺はトドメをかける。

「『まだ自分の置かれている立場が理解出来ていないようだから言ってやる。

アンタ、以前に他の企業に詐欺を働いたろ。

それに政治家との癒着も。

その証拠なら俺のツテがバッチリと掴んで俺が二度目に出向いた時に社の机の下に丁寧に置いておきましたよっと。

今頃警察が社宅捜索で発見してアンタ等の逮捕に動こうとしている筈だぜ?』」

「!?」

 

Sideイネス

「そんな…嘘よ…」

彼自身から彼の正体がIS利権部門の社員、夏季斑 冬貴などではなく男性操縦者の一人、織斑春季だと暴露され何故彼が私に対してこんな大それた事をしてきたのかと理解が追い付かなかった。

だが私はようやく自分がどれだけ追い込まれているか只それだけを理解し落胆するしかない。

「『ああ、それと言い忘れていたな。

アンタが頼みの命綱にしている今迄の女利権団体はもう機能していないんでそこの所ご理解下さいな!

アンタの我儘もここまでだ』」

「んなっ!?…」

更に織斑 春季が告げてきた事に私は驚愕する。

まるで行動を読まれているかの様に私の逃げ道は完全に閉ざされていた。

「『という訳で毎度ありぃ~!』」

最後にそれだけ言って一方的に通話を切った。

「ははは…何もかも終わり…」

「イネス・デュノアそしてその他のデュノア社幹部数名!数件の詐欺容疑及び収賄容疑そしてローグ・デュノア氏を含む社員への監禁・暴行容疑その他諸々の容疑で逮捕状が出ている!おとなしくするんだ!」

落胆しながら社に戻ると既に警察が逮捕状を発行し終えて待ち構えていた。

「畜生が!…」

証拠を掴まれて言い逃れが出来ない以上観念するしかなくあえなく私と協力していた幹部達はお縄とされてしまった。

 

Side春季

「っと種明かしはこんな所さ。ふいー初仕事は上出来かな?」

「す、凄い…あの義母をいとも容易く簡単に…だけど…」

「ああ、デュノア社自体に傷が付くような真似はしていないぜ?

あの夫人が働いていた詐欺も奴等が個人レベルでやった事に過ぎないからね」

「そ、そうなの?」

「ああ、だから安心してもいいよ」

「あ、ありがとう!…」

「別に俺がやりたくてやった事だし友人たっての願いだぜ?

他に理由なんかいらないよ」

「それでもありがとう!」

シャルに礼を言われ俺はちょっと木っ恥ずかしい気持ちになっていた。

「後は頼んだよイチカ兄さん!…」

イネス夫人…いや今はもう元かを特許権詐欺に見事に嵌める事に成功し一息ついた俺はシャルと一緒にローグさん達の救出に向かったイチカ兄さん達を信じて吉報を待つのだった。

 

 




次回、見事セラフィーノ・ファミリーで培った知識を巧みに扱いイネス、癒着政治家、女利権団体等を嵌める事に成功した春季そして一つの救済を果たされたシャルロットはローグ・デュノア、良識派社員達の救出に向かったイチカ達の無事を願う。
一方、当のイチカ達がローグ達が監禁されていた場所で見たものは…
「それぞれの救済PARTⅤ」



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EPⅢⅩⅢ「それぞれの救済PARTⅤ」

Sideイチカ

「突入する!」

「了解!」

春から夫人を嵌める事に成功したとの連絡が入り、俺はセラフィーノファミリーからの助っ人である灰鉄さんと共にデュノア社地下に監禁されている社長と良識派の社員を救出する為突入した。

「侵入者だと!?」

「チッ!?まだ見張りが配置されていたのか!…」

突入すると見張りに気付かれISを展開されたのですぐさま臨戦態勢に入る。

「邪魔を!するなー!」

俺は闇斬改弐式を構え見張りに斬りかかる。

「男のIS操縦者だと!?何故こんなとこ…ぐふっ!?…」

見張りが俺に驚いた隙を狙い一気にSEを削り強制解除に追い込んで気絶させた。

「大丈夫ですか?!」

「き、君は?…」

「ご安心下さい、俺の名は剣崎イチカ。貴方の息子…いえ娘さんにお願いされて助けにきたのです。

こりゃあ酷い傷だ…」

「しゃ、シャルロットが!?…それに君は…」

助け出したローグさん達の体のあちこちにはかなりの酷い傷がいくつも付けられていた。

恐らく長期間夫人の暴行に耐え忍んできたのだろう。

「だけどきっとシャルロットはマリナの死に目に遭えなかった私の事を相当に恨んでいる筈だ…」

「そんな事は無いですよ。

貴方は自分の娘であるシャルだけはあの強欲な夫人に傷付けさせまいと必死に耐え忍んできたんでしょう?

恐らく貴方についてきた社員の方々も一緒になってまで…それをシャルは分かっていましたよ」

「社長!…」

「そ、そうなのか?…君達も!…」

「ええ」

ローグさんの不安を取り払うかのように良識派の社員は全員頷いていた。

「…イネスはどうなったのだ?」

ほんの少しだけ情が残っていたのかローグさんは夫人の事を聞いてくる。

「イネス・デュノアは俺の友人が彼女の犯罪の数々を暴いた上で特大の地獄に突き落としてやりましたよ。

彼女の協力者達も含めて今頃は警察のお世話になっているでしょうね。

イネスが犯した犯罪も皆彼女が個人レベルでやった事になっています。

デュノア社自体には何の傷も付けられてはいませんよ」

「そうか!…」

イネス・デュノアの呪縛から解き放たれたローグさんの表情はとても希望に満ちていた。

「ならばその希望を抱いたまま果てろローグ・デュノア!」

「何、しまった!?…」

気絶させていたさっきの見張りがいつの間にか復活して新たにISを展開しローグさんにその凶刃を向けていた。

こんな事なら一切の手加減せずに残影一突斬を叩き込んでおくべきだった。

完全に俺のミスだ…。

だがその刃はローグさんに到達する事はなかった。

別方向から投擲された剣がその凶刃を弾いたからだ。

「貴様!?…」

「そこでストップさせて頂きましょう。

貴方達一部の横暴などでこの方達の希望を奪わせる訳には参りませんので」

ISを展開した灰鉄さんがそう言って凶刃を向けた女を睨みつけていた。

 

Sideレキナ

「イチカ殿!ローグ殿に危険が!…やはり気が付いていない…ならば!」

見張りの女性が復活している事に一早く気付いた私は専用機「エアクセルヴレイヴァー」を展開しローグ殿に向けられていた凶刃をコールした刺剣「エアクセルロンドレイピア」で弾き返した。

「き、貴様のその機体にその武装…やはりテメエは「刺剣のバトラー」!?」

「ほう、私の襲名を御存じとは…貴様はどこの者だ?」

私の存在を知っているとなるとかなり限られてくる…敵対するファミリーの者かあるいは裏に通ずる者か…どちらにしても油断は一瞬たりとも許されない。

「はん!誰が素直に「はい○○の者です」なんて言うかよ馬鹿が!」

「…埒が明かないようですね」

女には交渉の余地など持ち合わせていない様子は全く無く突撃してきたのでヴレイヴァーをディフェンスモードの装甲へと変換し防御する。

女の繰り出してきたロングダガーは絶対防御に到達する事も無くヴレイヴァーの装甲に当たり刃先が欠けた。

「んなぁっ!?なんつー固ってえ装甲だよ!?」

刃が欠けた事に驚いた女は飛び退き後退ブーストを吹かす。

不味い!奴が後退した先にはまだ逃げる最中であるデュノア社員が!

「行かせる訳にはいくかよ!」

「ぐあっ!?」

「イチカ殿!」

危機を察したイチカ殿が奴に斬撃を加えていた。

 

Sideイチカ

灰鉄さんの機体にもやはりヴァリアブルストーンが組み込まれていたか!

だが彼女は武芸者でも人工ヴァリアントでもないので装甲フレームにのみのようだがそのおかげでかなりの防御力を誇っているようだ。

それより今は目の前の敵に集中しなくてはいけないな。

「テメエ等!…散々邪魔しやがって!」

「ちょっとアンタには聞きたい事があるのでな…此処で無力化させて貰うぞ!」

「やってみろよ!」

激昂した女が先程よりも素早い攻撃を繰り出してくる。

がやはり俺には遅く感じる。

「甘いぞ!<残影一突斬>!」

「ぐあっ!?…」

渾身の残影一突斬の一撃を女に加え無力化させた…筈だったが…。

「かっは!?…散々アタシをここまでコケにしたのはテメエ等が初めてだよ!…」

「なっ!?あの一撃でまだ立てるだと!?…」

俺が女の悪意の執念に驚いていると彼女は懐からナニかを取り出した。

アレは不味い!

「灰鉄さん彼女を止めて下さい!」

「了解!」

灰鉄さんが自慢の刺剣の連撃で阻止しようと試みた瞬間。

「かかったなあ!」

「なっ!?まだそんな隠し弾を!?…」

「吹き飛べぇー!」

「ガッ!?…」

女がフルの弾倉を急に展開してきてそれに気が付いた灰鉄さんは再度解いていたディフェンスモードに切り替え直撃を免れるが大きく吹き飛ばされてしまう。

「コレでアタシは最強の存在へと成り変われる!…」

「やめろ!ソレが何なのか分かっているのか!?」

俺は忠告するが女は聞く耳持たず先程取り出したナニかを自らの腕に突き刺した。

「ウッ!?…ウオアラアァー!」

すると彼女は途端に苦しみ出したかと思うとその姿を怪物、サベージへと変えてしまった。

 

その頃、Side春季

「!なんだこの嫌な感じは!…まさかイチカ兄さん達が!…」

「どうしたの!?春季君」

「悪いシャル!君は此処で待っていてくれ!」

「あ!…いってらっしゃい…」

イチカ兄さん達の危機を察知した俺はデュノア社へと再び足を運ぶ事にした。

 

更に同じ頃、日本では Side音六&ラウラ

「!…この嫌な感じは…はーくん達に何が!?…」

「お姉ちゃんも感じたのか…私も兄上達が心配だ」

「はーくん達大丈夫だよね?…」

人工ヴァリアントの勘で危機を察した音六とラウラは二人イチカ達を心配するのだった。

 

 




次回、歪んだ悪意を燃え上がらせてしまったが故にサベージへと変貌してしまった女。
対するイチカ達は危機に駆け付けた春季と共に立ち向かう。
「それぞれの救済PARTⅥ」


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EPⅢⅩⅣ「それぞれの救済PARTⅥ」

ハンドレのゲームモバゲー版ランキング百位以内に中々入れねえ…Pレイドボス固過ぎやろ…フレが微課金でもう総力五十万超えてる猛者がおるし!作者はやっと半分の二十五万超えた所だというのに…SSRが出ねえ!…(手持ちSSR初期限突済ハヤト、招待リディ、限突一回のエミリアのみ…サクラちゃん下さい…。そしてサポがほぼSRクレア様とSRネサットで埋まっている件wそしてフリッツが全く登場してなくて草wどこいった!?)グリー版は招待可能なフレがいなくて招待リディが無いせいでデッキが…それはそれとして読者総員!又々推奨戦闘BGM用意イィー!



Sideイチカ

「不味い事になったな…」

やはりあの女が使ったのはサベージの体液、それもかなり大容量に配合されたアンプルか!

そんな代物を武芸者でも人工ヴァリアントでもない普通の人間が一度に大量摂取すればどうなってしまうかは火を見るよりも明らかだ。

「うわあああー!?」

皆、サベージに変貌した彼女を見て驚く。

「灰鉄さんすぐにローグ氏達を安全な所まで下がらせて下さい!」

「承知!」

俺はすぐに灰鉄さんに指示を出し彼女を含め撤退させた。

いくらヴァリアブルストーンとの融合機といえどもハンドレッドを扱えない彼女では逆に足手まといになってしまうからだ。

「イチカ兄さん!」

「春!?来てくれたのか!」

よもや春の救援が来るとは思いもよらなかった俺は驚いた。

「ああ、なんだか物凄く嫌な予感がしてね…ってアレはクラス対抗の時やボーデヴィッヒさんの時のと同じ怪物じゃないか!

確かサベージだっけ?」

「そうだ。だがラウラの時よりも遥かに性質が悪いぞ…」

今も尚サベージに変貌した彼女はその力を無作為に暴走させ周囲に被害を与え続けている。

このままではデュノア社が完全に崩落してしまうのも時間の問題だ。

それよりも早い所打ち倒さねば彼女は体液に汚染されもう二度と人間には戻れなくなってしまう。

そうなる前に早急な対策を講じねば。

推奨戦闘BGMSide春季「そして僕は」

Sideイチカ「共鳴のTrue Force」

 

Side春季

「春、少しの間だけでいい。時間を稼いでくれ!」

「OK!」

イチカ兄さんに援護を任され雷砲血神をコール、技をサベージに叩き込ませる。

「鳳流奥義第弐の型<白鳳閃百撃>!ほわあっ!」

拳の連撃を叩き込み怯ませる。

続けざまに雷閃双武脚をコールし技を叩き込む。

「第七の型<双速円舞脚>!ほああったあ!」

両足を振り上げ片速円舞脚の上位互換版である双速円舞脚の回し蹴りを叩き込んで沈ませる。

「イチカ兄さん!」

「良し、準備完了だ!」

イチカ兄さんの合図を受け俺は後退した。

 

Sideイチカ

「センスエナジー…フルバースト!!」

奴がサベージに変貌しセンスエナジーが周囲に撒き散らされている現状なら意識共有空間を生成可能だ。

今回は体液による急速な汚染も阻止しなければいけない為俺の体に満ちたエナジーをフルにぶつけてやるしかない。

「いくぞ!俺の力はちょっとばっかし響くんでな…我慢してくれよ?」

エナジーで満たされた全身を奴にぶつける。

すると俺の目の前には彼女の記憶が映し出された。

 

Side名無し

「『かっは!?…ウゲッ!?…』」

「『おら!とっとと働けや!』」

アタシは生まれてすぐに親に捨てられてしまいフランスの闇市場へと売られた。

そこでは捨て子には名乗るべき名も与えられず過酷な重労働を強いられボロボロの日々を送るばかりであった。

「『うう!?…』」

一人、また一人と死に絶えて逝くアタシの友達。

そして遂には…

「『嫌ああああー!?』」

「『ヘッヘッヘ!…』」

「『オイやめろよ!』」

「『うるせえ糞餓鬼が!引っ込んでろ!』」

アタシの親友ともいえた娘アブリル、元は貴族の生まれだったらしいが没落し借金を抱え破産してしまい苦汁の決断の末に売られてしまったそうだ。

最初はアタシもアブリルの事をお高い奴だと思い込んで蔑視していたけど彼女の慈愛に満ちた優しさに触れ、過酷な環境の中でも強く生きてこられた。

その彼女がある日目をつけられ雇い人の男達に囲まれ犯されそうになっていたのだ。

勿論放っておける訳もなく必死に止めようと試みたが非力なアタシじゃ大人の男の力に敵う筈がなく突き飛ばされてしまう。

「『嫌!嫌ああああー!?…』」

「『ああ!?…アブリルゥー!うあああああー!…』」

無残にも大切な初めての純潔を汚い男共に奪われ、犯され泣き叫ぶアブリルを助けられなかったアタシは無力な己を、そしてこの世界を呪った。

その後、アブリルが死んだと淡々と告げられたアタシは今迄溜まっていた何かが解放され復讐する事を心に誓い悪い雇い人を全員残らず殺害して回った。

だけどアブリルを犯し汚して殺した男共だけはもう既に国外逃亡していて行方が掴めなかった。

雇い人達を殺害した罪でアタシや闇市場の奴隷だった解放した友達も一緒に指名手配された。

数ヵ月後に世にISが出回ったがアタシ達にそんな装備を整える余裕などある訳もなく遂には真実を知ろうともしない腐った警官隊やIS部隊に追い込まれてしまい重傷を負ってしまった。

「『ぐう!?…』」

「『大丈夫ですか!?リーダー!』」

「『あ…アタシに構わずさっさと逃げてくれ!…』」

「『で、ですがリーダー!』」

「『良いから!…』」

「『は、はい!』」

仲間を逃がしアタシは倒れ込む。

このままアブリルの無念とアタシの復讐は果たされないまま終わってしまうのか?

修羅の道を選択した時からその覚悟は出来ていたがやはり無力感に襲われる。

そう思っていたその時だった。

「『おやおや~?全く何時の世も何処の国家機関は腐敗していますねえ~最高の御馳走ですよこれは!

じゃあいっちょ殺っちゃいますか!

ヒャッホー!』」

「『なっ!?何故男がISを!?…キャア!?……』」

突然、仮面をした男が現れ大鎌をどこからか取り出し警官隊やIS部隊を一人残らず殲滅したのだ。

「『アンタは?…』」

「『私ですか~?通りすがりの凶紳士とでも言っておきますかね~?』」

「『…』」

アタシは目の前の不審者に警戒心を露わにする。

喋り方がいちいち勘に触る奴だ。

「『おやおや~?もしかして私の事を警戒しているんですか~?

そんなに心配しなくても君をどうこうするつもりは全くありませんよ~強いて言えば…力が欲しいかい~?』」

「『!』」

男は今の無力なアタシにとって最も魅力的な事を聞いてきた。

「『…本当にアンタの様な強さが手に入るのか?』」

「『Thatlight!

どうだい?我々と共に来るかね~?』」

「『ああ、良いだろう!アタシは名無しだ』」

「『僕はね~ミドウ・オルガスト。よっろしくね~!』」

アタシはこの男ミドウについていきISとある物を与えられ世界各地でテロ活動を行う日々を送る事になった。

いつかアブリルを殺した男共を探し出してこの手で殺してやるまで…。

 

Sideイチカ

「コイツは酷いな…」

彼女との意識共有空間を開き彼女の過去を覗くと吐き気を催す程の凄惨な過去だった。

そして彼女に力を与えたこのミドウ・オルガストという男の事は聞いた事がある。

向こうの世界で機関に所属せず各地でテロ活動を行っているとてもクレイジーな無法者が居ると聞いていたが…彼がそうみたいだ。

恐らく彼女が見た大鎌は十中八苦百武装で間違い無いであろう。

よもやそんなクレイジーな輩が此方の世界に流れ着いているとは予想外であった。

サベージの体液アンプルを彼女に渡したのは間違いなく彼であろうがやはりこの件には…。

しかし待てよ?…彼女に関連するアブリルという娘は確か…。

ひとまずは彼女を助けるのが先決だ。

「もし復讐を果たしたとしてお前はその先どう生きていくつもりなんだ?」

「『え?…それはどういう…』」

「世界の理不尽を呪うのは俺もとやかくは言わない。

だからといって殺し尽くし殺し尽くして一体お前には何が残ると思っている?」

「『そ、それは…』」

彼女、名無しは俺がした質問に答えられないようだ。

それは明確な末路が待っているだけだからだ。

復讐を果たしても結局は牢獄の中か逃亡テロをし続けるかのどちらかの選択肢しか待っていない。

「『アタシは…一体どうすれば良かったんだよ!?…』」

彼女は叫ぶ。

「俺達の所に来い!」

「『え?…』」

「名が無いのなら俺が付けてやる!

お前が犯した罪は俺の仲間達が隠し通してくれるから!

だから俺達の所に…IS学園に来い!」

「『本当に…良いのか?…こんなアタシなんかを…』」

「ああ!…お前の名は今日からイツカ・アランシュだ!」

「『イツカ・アランシュ…良い!…初めて貰ったアタシの名前!』」

「ようこそ!IS学園へ!」

俺はアランシュの手を取り彼女を闇から解放した。

「イチカ兄さん!どうだったの?」

意識共有空間から現実世界へと戻り春が駆け寄ってくる。

「悪ィ…春、セラフィーノファミリーのボスさんに連絡を取ってくれ。

俺とそこの奴を運んでくれ…頼んだぞ…」

「に、兄さん!?わ、分かったよ!」

エナジーを全出力で解放したから俺はもう立っていられるのが精一杯だったが遂に限界が来て倒れかけた所を春に支えられる。

イツカの事については普通のホテルで宿泊させるのは今は不味いと判断したので春に頼み込んでセラフィーノファミリー家へと運んでもらう手筈を整えておいた。

後で束さんにも連絡しないといけないな。

一方でシャルとローグ氏は感動の再会を果たしお互いに涙で語り合っていたのだった。

これにて俺達には長く感じたGW期間は過ぎ、それぞれの救済が果たされた。

まあ、俺はフルバーストを使った弊害でそれから二日間休む事になってしまったのは別の話。

 

Side?

「まさかイネス・デュノアらが潰されるとは此方も予想外だった…次の手を考えなくてはな…待っていろ剣崎イチカァー!」

 

 




次回、GW期間が終わり幾日が過ぎた頃シャルロットは自身の正体を明かす事にする。
当然クラスメイトの皆が大騒ぎする中、一人の転入生が入ってくる。
彼女イツカが皆と打ち解ける中迎える林間学校。
そこでは幾多もの陰謀が渦巻いているのであった。
「林間学校と陰謀PARTⅠ」



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第四部 臨海学校編
EPⅢⅩⅤ「臨海学校準備 前編」


少し遅れてしまいましたが明けましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします!



Sideイチカ

「という事です」

「『成程ね~イッくんが提示したその六つの違法研究をしているであろう研究所を重点的に調べればいいんだよね?』」

俺は束さんにフランスで調査した結果を報告し彼女に詳しく調べて貰える様に依頼していた。

「はいお願いします。

それとアイツの容態は?」

「『セラフィーノファミリーのボスさん経由でラボに運ばれてきた娘、イツカちゃんの事?それならもう大丈夫だよ!

彼女の身体に残っていたサベージの体液は一滴残らず私が取り除いたから。

只、まだちょっとしばらくは安静が必要だけどね』」

「そうですか!」

俺のエナジーフルバーストでイツカの身体へのサベージ体液汚染を阻止したとはいえ彼女の体内に残留していた体液までは取り除く事は出来ない為束さんに除染術式を施してもらったのだ。

結果は成功したみたいで一安心した。

数日したらウチのクラスへの編入が確定しているみたいだ。

後はイツカが死んだと思っている彼女の親友、アヴリル・ロースコットの事についてだが彼女は強姦事件後に偶然通りがかった英国紳士に窮地を救われ拾われたらしい。

だけど新生活を始めて一ヶ月後、彼女は突然行方不明になってしまったらしいのだ。

これももしや奴等が関係しているのか?…

今はとにかく束さんの調査結果を待つしかないか。

通信を切って学食に向かうとまだ騒ぎは収まっていなかった。

「そんなあー…」

「夏コミのネタが…」

シャルロットが今朝自身の正体を明かしたからだ。

男だと思って色々な狙っていたクラスメイトはこの世の終わりみたいな表情で各々声を上げていた。

「そういえば女性権利団体ってさ、なんか不祥事が次々に発覚して代表者が変わったって話だよね」

「それ私も聞いた!中にはかなり悪どい犯罪を犯してた人もいたらしいよ」

「おー怖い~!」

お、女利権団体は正常な形を取り戻した様だ。

これでこの世の中が良くなっていけばいいのだが…奴等が蔓延っているとなるとまだ安心は出来ないな。

「イチカさん今度の臨海学校の事なんですが…」

「どうしたカレン?」

カレンがモジモジしながら俺に話しかけてきた。

「その…水着が無くて…」

「あ…」

カレンの水着は向こうの世界に置いてきてしまっているので新たに買わないといけないな。

まあどの道若干サイズが合わないよなって言おうとしたら…。

「イチカさん…エッチです…///」

「す、スマン!

なら今度の日曜に水着買いに行くついでに久し振りにデートするか?」

「はい!」

俺はカレンとのデートの約束をとりつけた。

 

その頃、Side春季

「音六、お前そんな水着しか持ってないのか?…」

「うにゅ?…」

俺は寮で頭を抱えていた。

音六が所持している水着は全てかなりキワドイであろうラインのビキニ水着しか持っていなかったのだ。

というかコレ絶対にタイセイさんの趣味だよな?

なんという趣味を…

 

同じ頃、セラフィーノファミリーでは

「ぶえっくしょん!?誰か噂してやがるな…」

「…」

クシャミをしたタイセイにレキナは無言の威圧をぶつけていた。

どうやら頭を抱えているのは此方も同じだった様です。

 

「と、とにかく今度の日曜に新しい水着買ってやるから一緒に行くぞ。いいな!///~」

「みゅ?…分かった…じゃあ私はツクモの整備するから…」

「ああ…さてと…」

俺は音六と約束を交わし、彼女が退出してから俺は一人ばらけていた水着を回収しながらついついじっくり観察してしまう。

し、仕方無いだろ!俺だって健全な男である。

「こ、これはこれは…」

「春季、アンタ何やってるの?…」

いつの間にか部屋に来ていた鈴が目の前にいた。

彼女はとても冷ややかで何処か遠い目をしていた。

「鈴!?こ、これは違うんだ!…ストライクしないと言えば嘘になるけどさ…ってあ…」

「…どうせ私はまな板ですよーだ…」

うっかり失言をしてしまい鈴がへそを曲げてしまい彼女の御機嫌を取るのに三十分を要した。

又もや失言しそうになったのはいうまでもない。

 

日曜日デート当日、Sideカレン

「♪~」

私は待ちに待っていた久し振りのイチカさんとのデートに心躍らせていました。

いつものお洋服でも良いのですがやはり此処は勝負服にするべきなんです!

先日、通販で買ったこのワンピース姿をイチカさんはどう思ってくれるのでしょうか?

でもイチカさんは約束の待ち合わせ時間には来ていませんでした。

ですが数分後

「悪ィカレン!ちょっとゴタついていた事があって遅刻しちまったんだ。許してくれ!」

「もう!今度からはちゃんと対策しておいて下さいね!」

「分かった分かった。カレンのその水色のワンピースもとても似合っているぞ」

「…///」

遅刻した理由は分かっているので私はすぐに機嫌を直しました。

服装も褒められたし言う事無しですね!

「ささ///早く行きましょうイチカさん!」

「ああ!」

私はイチカさんの手を引いて歩き出しました。

 

Sideイチカ

「ふいーちょっとの遅刻で助かったぜ…」

もしも愚兄が着いてきたらカレンとのデートが台無しにされてしまうので彼を撒く事にしたのだが時間が思いの外かかってしまい遅刻してしまった訳だ。

しつけえ…

「まあその代わりに他の視線を感じる訳なのだが…」

後ろを見るとばっと何かが隠れた。

絶対鈴達だなこれは。

俺は気を取り直しデートを続行した。

 

Side鈴&セシリア

「はあー…」

「これって…デートですわよね…」

私はイチカがカレンちゃんとデートをするという噂を聞き、セシリアと共に彼等を尾行していた。

諦めがついていた私だけどやっぱり心の何処かでイチカのことを求めてしまっていた。

一方、彼に好意を寄せていたセシリアも同様で心の整理がついていないようだった。

「セシリア…今日は私の知り合いの所で食べるわよ!」

「え?それってヤケ食い…」

「良いから来なさい!…」

私は気を紛らわす為にセシリアが言う通り友達の五反田食堂に赴きヤケ食いするのであった。

 

一方、Sideシャルロット&ラウラ

「あれ今鈴とセシリアが居た様な…」

「アイツ等も林間学校の水着を買いに来たのだろう?

リィやクラリッサに教えてもらったのだがスクール水着ではいかんらしいからな。

シャルロットお前は春季に見せなくても良いのか?」

「ふぇ!?と、突然何を言い出すの!?」

「違ったのか?」

「『(バレバレの照れ隠しですね。

でも件の彼はもう…これは言っちゃ駄目なのかな?…)』」

ラウラは狼狽するシャルロットの様子に対し頭に?を浮かべこの様子を面白がっているリィは必死に笑いを堪えてた。

「(も、もう…ラウラってば~…)」

自身と父親に救いの手を差し伸べてくれた春季やイチカに対して物凄く感謝している。

最も傍で親身になってくれていた春季君に対して私は好意を持ち始めていた。

でも彼は異性としての私は映していない事を知る事になる。

 

Side春季

「はあはあ…」

ショッピングモールに向かう道中で音六がやたらナンパされまくって阻止するのに苦労した。

それでもしつこく絡んできた輩については奥義で黙らせてやったけど。

そしたらその輩の彼女らしき人達が来て彼氏以外の男性なぞ知らんというばかりに慰謝料請求してきた。

最早女尊男卑関係ないぞ…。

音六が彼女達の暴論を完全論破してくれたおかげで助かったが。

「はーくんこんなの見つけた…」

そうこうしている内に水着の試着を終えた音六が俺に見せてきた。

「…音六!?おま、ちょその恰好は…」

「可愛い!…」

彼女が試着してきたのはどこからどう見ても猫の模様みたいな水着だった。

それも三毛猫っぽい奴。

そして何故か水着なのに猫耳までついている始末である。

ってその猫耳はゴーグルが付いてるのかよ!

うん…彼女の完璧過ぎるスタイルに色々とこの格好はコンボ率がヤバ過ぎる!…主に俺の理性が。

「にゃ…」

「うっ!…」

着用している当人は相当気に入ったのか猫のポーズを取りながら此方を見ていた。

い、いかん…このままでは彼女のペースに乗せられてしまう。

俺は咄嗟に別の水着を取って着せたのだが…。

「これも可愛い!…」

「(し、しまった!つい本音の方の水着を取ってしまった…)」

先程の猫水着よりも更にキワドイラインのビキニ水着を着させてしまった。

俺の脳内で激しく(四秒)格闘した結果、結局無邪気な天使の誘惑に負け二着とも購入する事に。

何の為に新調させたのか意味はどこかに消え去ったが音六が喜んでくれているからまあいいか!

「あ、ピーノ用の水着も買わなきゃ!…」

「連れて行く気ですか~い!」

「うみゅ!…」

音六はそう答える。

「あ、あのそこのお二方ちょっとお願いしてもよろしいですか?」

「え?」

「みゅ?…」

水着ショップを後にした直後にコスプレショップの女性店員に声をかけられある事をお願いされるのだった。

 

Sideイチカ

「ム?ダンスとヴォーカルイベントをやっているのか!」

「楽しそうです!というかイチカさんてダンス出来たんですね!」

「ああ、以前我流で少しかじっただけだが今でも自信はあるぜ!」

「なら一緒に行きましょう!」

「ああ!」

ショッピングモールの人だかりが出来た烈の中へと並ぶ俺達。

「ではこちらにお着替え下さい!」

「へっ?…」

「こ、コレって!…」

係員さんに案内され俺達が目にしたのは黒のタキシードと純白のウェディングドレスだった。

 

 

 

 

 

 

 




若干の予告詐欺になってしまった。



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EPⅢⅩⅥ「臨海学校準備 後編」

Sideイチカ

「こいつは…」

「うー~!///」

これは予想外だった。

只のダンス&ヴォーカルコンテストイベントかと思って参加したら実はカップル限定という名の罠があったでござる。

いや俺達は実際そうだから問題は無いんだが恥ずかし過ぎるぞこれは!…

カレンも先程から唸りながら顔を真っ赤にしている。

かといって今更参加を取り消す訳にもいかなかったので意を決して俺達は着替えてコンテストに臨んだ。

「さあ!遂に始まりましたカップル限定ダンス&ヴォーカルオーディション!」

「あ、相川さん!?」

何故か司会進行役にクラスメイトの相川さんの姿があった。

ってお前かああああー!このイベントの立案者はぁー!

俺達の姿を見つけた彼女はグッとサムズアップしてきた。

完全に面白がっていやがるなこの野郎…後でどうしてもらおうかなあ?

相川さんへのお仕置きを考えながら俺達は待っていた。

「ン?あれはシャルとラウラか?どうしてこのイベントに?…まさか…」

何故か参加者の中にシャルとラウラがペアで出場していた。

どうやらシャルが未だに男装ルックだった為男と間違えられて参加させられた様だ。

「ン?おお!兄上にカレンではないか!」

「え?イチカ達も参加していたんだね」

「ああ、見事に相川さんが仕掛けた罠に嵌まってしまった…」

向こうも此方に気が付き声をかけてきたので苦笑し返す。

「エントリーナンバー二番どうぞ!」

「あ、僕らの番だいってくるね」

「頑張れ!」

「ありがとう!」

「兄上も健闘を祈るぞ」

シャル&ラウラペアは紳士的な動きと軍人張りの動きでツインダンスを披露し喝采を浴びていた。

「エントリーナンバー四番!

期待の優勝候補カップルの剣崎イチカ、如月カレンペアアァー!」

「おおー!」

相川さん!?ハードル上げやがったよあの野郎…。

観客もわっと湧いている。

「と、とにかくやりきるぞカレン!」

「は、はい! ♪~」

緊張を振りほどき、カレンは歌い俺はそれに合わせて円舞する。

先程よりも観客の喝采が湧き始める。

だが…そこでハプニングが発生した。

「ねえあれって…」

一部の観客がざわつくと同時にカタカタと物音が鳴る。

この音は!…

「不味い!…カレン今すぐそこから離れろ!」

「え?…」

ステージセットの照明が取り付けが甘かったせいなのかグラグラと揺れて今にも落ちそうになっていたのである。

俺はカレンにすぐに警告するが歌う事に集中していた彼女には良く伝わっていないようで突っ立てしまっている。

照明が限界を迎え落下を始めてしまいカレンに迫ってくる。

「キャア!?」

「クッ!?間に合えぇー!剣崎流奥義<残影一刺斬>!」

咄嗟に短刀型ハンドレッドを展開し照明を斬り裂いた。

「カレン大丈夫だよな?!」

「は、はい!…あ、あの…そろそろ降ろしてもらえますか?

流石に人前でこれは恥ずかしいですよ…///」

「キャアァー!お姫様抱っこよー!」

助けた拍子にどうやら俺は自然に体が動いてカレンをお姫様抱っこしていたようだ。

周囲からは黄色い歓声が上がっている。

「はっ!?す、スマン!…」

「う、ううー~!…///」

多少のハプニングはあったが見事に俺達が最優秀賞を受賞し賞品の十五万円分のギフト券と高級ホテルの宿泊券を貰った。

そしてカレンはコンテストが終わってすぐにあちこちからスカウトされていた。

彼女自身はソロでアイドル活動をするつもりは今の所はなく全て断っていた。

 

Side春季

「…なんでこうなったんだ?…」

「この服も可愛い!…」

俺と音六はコスプレショップで週刊誌の表紙やモデル関連記事の撮影を予定していた筈の担当者が急に来れなくなり滞って勧められなくなっていた困っていた店員さんに代役をお願いされ受ける事にした。

「色んなコスがあるな」

店頭に並んでいる物を好きにコーディネートしても良いと言われたので見ていく。

○ate等の最近の作品や往年の神作品やら色々なコスが所狭しとある。

「こ、これは!…」

俺はあるコスが目に入った。

それはら○ドルという作品の中の第三期生ユニットのステージ衣装の一つだった、

そういえば音六の容姿ってかなり似ているよな…

「音六、お願いがある。

ちょっとコレを着てみてくれ!」

「良いよ!…」

昔の趣味が全開になって暴走気味になった俺は音六に着る事を進めてみる。

「どうかな?…」

「…」

着替え終わった彼女を見た瞬間俺は思わず鼻血を出しそうになった。

やべえ…再現度が高過ぎる…。

「ああ、凄く良いぞ!」

「そうかな?…」

音六も気に入っているようでそのまま撮影に臨む気満々だった。

俺も急いで○ateコスに着替えた。

その際、岩窟王にするか○ミヤ(アサシン)にするかで迷ったのはまた別の話だ。

…千冬姉さん俺はもう少しで大人の階段を上りそうです。

翌日撮影された記事が学園中の話題にのぼった事はいうまでもない。

 

 

 

 




次回、ようやく治療を終え学園に編入してきたイツカ。
彼女はクラスメイトとの触れ合いで何を見出すのか。
一方、臨海学校初日、緊急事態が発生する。
「臨海学校そして陰謀PARTⅠ」


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EPⅢⅩⅦ「臨海学校と陰謀PARTⅠ」

Sideイチカ

「ギリギリ間に合ったようだな」

今日は治療を終えたイツカがクラスに編入してくる日だ。

でもまさか流石に臨海学校に行く前日になるとは思いもよらなかったが。

 

Sideイツカ

「い、イツカ・アランシュだ。

よ、よろしく頼む!…」

「…」

今迄学校に通った事などなくアタシは自己紹介するが緊張で硬直気味になっていた。

「よろしくね~!」

とてものんびりとした女生徒が沈黙を破った。

「「ようこそIS学園へ!」」

先程の子に感化されたのか一部の奴を除いた者達がそう歓迎の言葉を言ってきた。

「よ、よろしく」

私は改めて人の温もりというものに触れれた気がした。

そして、昼食の時間になって私は剣崎の所に行き問いただした。

「本当に…アヴリルは生きているのだな?」

「すまない…今もちゃんと彼女が生きているのかは未だ調査中なんだ…」

剣崎は申し訳なさそうにそう言った。

「そうか…」

あの時、アタシの無力のせいで彼女が死ぬ事になるのだけは回避された。

ただそれだけでもアタシの中に僅かでも希望が湧いてきたのだから。

 

翌日

Sideイチカ

「海だあー!」

皆臨海学校で羽目を外し始めている。

でも俺はそうはいかない。

なんだか凄く嫌な予感がしてならないのだ。

その上、何時ヴィタリーの残党にいる武芸者達が襲撃してきても可笑しくないからというのもある。

気が余り抜けぬ現状に俺は溜息をつく。

「イチカさんそんなに溜息ばかりついていたら幸せが逃げちゃいますよ?

確かにヴィタリー博士の事とかありますけど楽しめる時に楽しまなきゃ損ですよ」

「そうみたいだな…」

カレンにそう諭され俺は肩の力を抜く事にした。

この後に起こる事態に対し息を潜める数々の陰謀が動き出そうとしていた事に知る由もなかった。

そういえばなんか愚兄が良からぬ事を企んでいた様な気がする。

 

Side春季

「案の定かよ…」

「もうしつこいですわ!」

「なあなあ良いじゃんかよ~」

海に着いた途端に他の観光客のチャラい男性達が音六達を取り囲みしつこくナンパしていた。

「あ、あの私達は臨海学校で来ているので…」

「別に良いじゃん~ほら俺達が楽しませてやるからよ~!」

「フンッ!」

「あでっ!?…」

それにいい加減キレそうだったのか先日入ってきた編入生のアランシュさんが男の足元を蹴り上げた。

「この餓鬼、こっちが下手に出ていれば調子に乗りやがって!…」

「どっちがだよ!」

男の言葉にアランシュさんはすぐさま反論する。

奇遇だな俺もその言葉バット…いや拳で返してやるぜ。

「アンタ等もうその辺にしてもらおうか…」

「んあなんだ手前ぇ…ごふっ!?…」

俺もいい加減堪忍袋の緒が限界を迎えたので一発拳を入れてやった。

「手前ぇ何しやがる!」

「やれやれ正当防衛成立と…音六も他の皆もちょっと待っててね。

この人達とO・H・A・N・A・S・H・Iしてくるから」

「アタシもいくぞ!」

「いやアランシュさんも下がっててくれ。

「そ、そうか」

「はーくん…」

「大丈夫だ音六、すぐに終わらしてくる」

男達がナイフを取り出してきたので俺は音六達を逃がす。

「一人でカッコつけちゃって愚かだねこの餓鬼は~」

「彼女達に早く終わらせると約束したんでね。

鳳流奥義第参の型<鳳凰烈突破>!」

「んなあっー!?」

「第四の型<片速円舞脚>!」

「ぼげえ!?……」

奥義で男達が持っていたナイフを吹き飛ばし間髪入れずにキックを叩き込んで気絶に追い込んだ。

「!そこ!」

付近の草ムラから気配を感じたのでそこに拳を突き出す。

「ヴぇ!?」

今の声は…

 

Side秋彦

「(ああ!?アイツ等何やってんだよ!?

春季如きにのばされるなんて想定外だ…この俺が恰好良く助け出す手筈だったのに!)」

男達を差し向けたのは織斑秋彦であった。

よくあるパターンで中学時代ツルんでいた友人(腰巾着)に頼んで女生徒達の興味を自分へと向けようと画策していたが見事に潰されてしま落胆していた彼の顔スレスレに拳を突き突けられる。

「ヴぇ!?」

逃げるしかない!今はそう思う秋彦であった。

 

Side春季

「…」

今の声って間違い無く秋彦兄さんか…何か良からぬ企んでいたらしいが潰せてよかった。

だがまだ警戒しとかなくてはいけないな。

この先に待っている悲劇を知る由も無く…。

 

 




次回、米国の新型IS「銀の福音」が日本海上を暴走しているという緊急事態に緊迫する中イチカ達専用機組はこれの迎撃任務へと駆り出される事となる。
其処にヴィタリーの残党を名乗る者達の急襲が開始される。
そこでイチカは使命感に揺さぶられ冷静でいられなくなりヴァリアントの力を暴走させてしまう。
「臨海学校そして陰謀PARTⅡ」



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EPⅢⅩⅧ「臨海学校と陰謀PARTⅡ」

Side箒

「力が必要だ…秋彦を守り彼が一番だと示す私だけの力が!…」

剣崎や出来損無いの春季などよりも秋彦が一番だと思っている。

それを守る為の力が私も欲しい!…

そう思い立った私は電話をかけた。

 

Side束

デデン♪~「この着信音は…」

あんまり今では見たくない着歴だけど仕方無く出てやる事にした。

「もすもすひねもす~!皆のアイドル束さんだよ~!」

『「斬りますよ?」』

「字が違うよ!?

それより何の用なのかな箒ちゃんは?」

『「私に…専用機を下さい!」』

「それはどうしてかな?…」

『「秋彦を貶める者に対抗出来る力が欲しいからです!」』

「…」

理由を聞いた私が馬鹿だった。

箒ちゃんはちっとも変わってくれてなんかいないみたいだ。

「そ…考えておくね。

確か箒ちゃんと美月ちゃんの誕生日は明日だったからね…」

『「お願いします」』

私は彼女に対し物凄く曖昧な返事をし通話を切った。

そして私の娘達を見やる。

「白式の稼働率は十九%か…予想よりもやはり遥かに下回っちゃったか…やっぱりあっくんなんかには荷が重過ぎたようだね。

それに今の箒ちゃんにはこの子を任せるにはまだ未熟だよ…」

私は新たに設計した紅き機体と、桜色の機体、それに緑色の機体その三機を見据えた。

 

翌日、Sideイチカ

「なんだありゃ?」

「…」

臨海学校二日目の早朝から旅館から出て早々に運悪く愚兄と遭遇し俺は不機嫌になるが彼はすぐ外に突き刺さった人参の様なモノを見て声をあげる。

御丁寧に「引っこ抜いてみてね☆」と書かれてある小さい看板も刺さっている。

アレは束さんのシャトルロケット!

ああ、そうかそういえば今日が彼女達の誕生日だったけな…片方祝いたくないけど。

恐らく束さんが直々に誕プレを渡しに来たのだろう。

「あの人も実にマメなものだ」

という事は俺が依頼した案件も全て調査済の筈だ。

俺は来たる時に備え用心していた。

そして昼食を終えるとすぐに外でISの整備実習に入った。

「ではこれより専用機組には各自パッケージ等のアップデート・換装を施した後模擬戦をしてもらう。

それ等が無い者はそれまで各自で手伝え」

「あの、ちふ…織斑先生なんで専用機を所持していない筈の箒と美月、それにアランシュさんがこっち側にいるんですか?」

愚兄がようやく気付いたのか賢姉殿に訊ねる。

「ああ、それはだな…「ちーちゃああーん!」全くあの馬鹿者…」

賢姉殿が事情を説明しようとすると突如それを遮る声が遥か上空から聞こえてきた。

今朝の人参型シャトルロケットを使って文字通り飛んで来た束さんである。

「フー!ちーちゃん会いたかったよぉ~!さあさあさあ!束さんと久方振りの熱いハグハグしよーよ!」

「フンヌ!」

「おぺぴぴぴィ~!?」

地上に着地して一息ついた後すぐに束さんは賢姉殿に抱きつこうとしたがすぐに賢姉殿特製のアイアンクローを喰らわされ素っ頓狂な叫び声を上げながら頭を抑えるがすぐに復活する。

「相変わらずの容赦無い凄いアイアンクロー振りだねちーちゃん」

「五月蠅いぞ束。それに僅かでも耐えれるお前も十二分に凄いけどな…」

「それに箒ちゃんも美月ちゃんも順調におっぱいが大っきくなってきているね~うん!」

ゴツン!

「殴りますよ?…」

「箒ちゃん殴ってから言ったぁー…」

「あはは…」

束さんがモップや美月にスキンシップを交わすとモップは彼女に鉄拳を喰らわし一方の美月は苦笑いを浮かべていた。

「あ、あの織斑先生?今この方の事を束ってもしかして…」

オルコット嬢が恐る恐る賢姉殿に訊ねる。

「ああ、コイツは正真正銘のIS開発者であり箒や美月の姉でもある本物の篠ノ之束だ」

「はろはろ~!私が束さんだよー!」

「「ええー!?」」

今迄束さんの姿をISの発表当時の事しか知らない者達は驚きを隠せないようだ。

「でも何故今になって此処に篠ノ之博士が現れたのですの?」

オルコット嬢が続けて疑問を口にする。

「それはねー美月ちゃんを含むそこのお三方に束さんからのお手製ISのプレゼントを持ってきてあげたからなんだよ~!」

「「はい?…」」

束さんの発した言葉に事情を知らない者達は固まる。

というか美月の名前が先に出てきた事から本当に溺愛しているようだ。

「ま…待って下さい束さん!箒や美月ならまだ分かるのですがどうしてアランシュさんの分まで用意する必要があったんですか?!」

愚兄が納得いかないのか異議を申し立ててくる。

普段馬鹿にしている美月の事に関しては束さんの前でもし言ってしまえば地獄を見る事になるので今は我慢しているようだが。

「アレ言ってあげていなかったかな?

イツカちゃんはね私の義理の娘なんだよ…愛する娘に専用機を作ってあげてあっくんに何か都合の悪い事でもあるのかな?」

「「えっ!?」」

「ぐぬっ!?…」

束さんの素っ気無い返答に愚兄は押し黙るがやはり納得はしていない様子だ。

他の皆も驚いている。

「お、御義母さん…」

そうイツカの辛い過去を知った束さんは彼女を養子扱いとして迎え入れていたのだ。

正に実の娘の様に可愛がっている。

当の本人は少し恥ずかしがっているようだが。

「まあそういうワケだから今から御開帳するよ~!」

「コレが貴方方の機体です」

束さんが指をパッチンと鳴らすと後から来ていたクロエさんが専用シャトルからレッド、ピンク、グリーンの大きなボックスを各一個ずつ運んできて開封した。

「こ、コレが!…」

「…」

一機目は真紅に染め上げられた機体、二機目は桃色というよりは桜の花弁に近い様なカラーリングの機体、そして最後の一機は緑一色に彩られられている機体だった。

「此方の紅の機体名称は「紅椿」可変装甲である展開装甲を備え主にはレーザーブレード【雨月】とエネルギーブレード【空裂】の二振りの刀剣を扱う近接戦闘がメインの機体にございます。

更にあちらの桜色の機体は「桜陽雀朱」主に弓と剣モードの切り替えが可能な創聖弓剣【桜陽弓剣】とカートリッジ式ビームガン【桜雪】を扱った中距離戦闘がメインの機体です。

そしてこの緑色の機体は「エメラルライド・ナチュルス」主にビームスピア【エメラルライドススピア】、ビームライフル【ライトハンター】、ビームと実体の切り替えが可能な【エメラルライドシールダー】等の攻守共に非常にバランスの良い武装を兼ね備えたオールラウンダーな機体です」

クロエさんが淡々と説明をしていく。

「ちなみにこれ等の機体は第四世代の性能を兼ね備えているのだよはっは~!」

「だ、第四世代!?」

「各国でようやく第三世代の生産体制に入れてそんなに経っていないというのですのに…」

束さんの爆弾発言に他の皆は頭では分かっていながらも唖然としていた。

ちなみに既に改修を施されている鈴やラウラは勿論、セラフィーノは全く驚かないが。

「紅椿は箒ちゃん、桜陽朱雀は美月ちゃん、エメラルライドナチュルスはイツカちゃんにだよ!」

「ありがとう束姉さん!」

「あ、ありがとう御義母さん!…」

美月は本当に束さんの事を信頼しすぐに機体を受け取る。

イツカも照れ臭そうにしながらも受け取った。

「ありがとうございます…」

「…」

一方の箒はというと簡潔に礼を述べ何処かうっすら笑みを浮かべていた。

これは危ないな…。

「束もう良いだろう?時間がおしているのだが…」

「ん?良いよ!」

「という訳で先程告げた通りに作業を始めろ!」

「「分かりました!」」

賢姉殿の言葉でようやく各々動き始める。

とはいっても俺やカレンはISでは無い純粋なハンドレッドである以上もしもの事態の時の為にエナジーを極力温存しておかねばならない。

なのでカレンは一般機組の、俺はシャルがローグさんから送られてきたという新型パッケージ【パーフェクトパック】のインスト作業の手伝いをする事にした。

それからしばらくして山田教諭が慌ててやってきてこう言った。

「織斑先生緊急事態です!」

「何!?…」

 

 

 




ワイファイの通信制限がかかったせいで重いィ…しかも三日経ったというのに全然回復しないってどういう事なの?…
そんな中での更新なのでいつもよりもミスが多いかもしれないです。
次回、米国の新型機である銀の福音が制御を離れ暴走し日本海を往回しているとの緊急事態宣言を告げられた千冬にイチカ達専用機持ちにこれの討伐を命じる。
一方、力を手に入れた箒はそれに浮かれ、秋彦はまた何かを企んでいた…。
「臨海学校と陰謀PARTⅢ」
又予告詐欺になってたw


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EPⅢⅩⅨ「臨海学校と陰謀PARTⅢ」

UA十万まで後二万ちょっと!
これからも応援よろしく!


Sideイチカ

「厄介な事になったな…」

山田教諭から非常事態特例との報告が来て俺達は賢姉殿に呼ばれた。

「ここからの事は極秘事項なので一切の他言無用だ。

破った者には重罰を科す事になっているからな。

今朝方、ハワイ沖にて試験稼働を行っていた米国とイスラエル共同開発の新型軍用ISである「銀の福音(シルベリオ・ゴスペル)」が突然搭乗者の制御を離れ、暴走を引き起こし領海を脱出し現在も尚日本近海を周回しているそうだ。

そして約一時間以内には東京上空に辿り着いてしまう恐れがある」

「それで何故俺達が?」

愚兄が賢姉殿に訊ねる。

「言いたい事は分かる。

だが政府の方も色々と対応に追われていて自衛隊を派遣するのにも時間を要するようなのだ」

「だから手の空いている我々に福音の足止めをしろ…という訳ですね教官」

「ああその通りだラウラ。

それで肝心の標的である福音の詳細スペックだが…」

「…」

日本政府にはアホ共がまだ蔓延っているらしく全く頼りに出来る様な状況ではないらしい。

賢姉殿が件のカタログデータをプロジェクターに表示する。

「この高機動力の上にフルスキンタイプ、そして多方向からの波状オールレンジ攻撃…私のブルーティアーズやセラフィーノさんの付喪月神にも勝るとも劣らない同規格の機体らしいですわね…」

データを見たオルコット嬢がそう言う。

だが少し不正解だな…オルコット嬢のブルーティアーズのビットはともかくとして、セラフィーノのあれはドラグーン型のハンドレッドである訳であの程度の数に遅れを取るとは思えない。

だが問題は奴の機動性だ。

「速度スペックが高い者を先行させるべきか…」

俺の外部武装と闇切改弐式の全身武装状態の機動力では全開で行っても後一速は及ばないか…。

エナジーの無駄な消費を省く為にも偵察は別の者に任せた方が良いか。

だとすると…

「はいはーい!」

俺が考えを巡らせていると束さんがどこからともなく現れた。

「束、許可無く…」

「そんな固い事言わずにさ~折角良い作戦案を伝えに来てあげたのにな~?

こういう時こそ箒ちゃんの紅椿の出番なんだよねー!」

「何?」

「…」

そう言った束さんを引き寄せ俺は小声で話す。

「(本気ですか束さん!?今の箒に紅椿の性能を引き出せるとは到底思えないのですが…)」

現にモップは力を手に入れた事で酷く浮かれていた。

「(大丈夫だよイッくん…私はまだあそこの屑とは違って箒ちゃんはまだ生まれ変われる筈だと信じているから…)」

「ぶえっくしょん!?」

俺が心配を口にすると束さんが愚兄を指差してそう言う。

指を差された愚兄はくしゃみをしていた。

「(だからイッくんにお願いがあるの…もしまた箒ちゃんが道を誤りそうになったらその時は…)」

「(…そこまで思えるものなんですね…分かりました。

アイツが道を誤りそうになったら俺が叩き斬ってでも止めてやりますよ!)」

「(ほ、程々にお願いね(^^;))」

束さんの熱意に負け俺は箒の監視を了承した。

「話に戻るけど速度なら紅椿が一番なんだよ。

それで彼女を目標まで運ぶ担当なんだけど…」

「俺がやりますよ!」

「…」

愚兄が箒を福音まで運ぶ担当に立候補するが束さんは彼を冷ややかな目で見ていたがそれに気が付く事はなく言葉を続ける。

「箒の機体に俺の白式を合わせれば最も早く目標に辿り着ける!だから!…」

「ああ、その先は言わなくていいよもう。

紅椿の機動性で敵機を攪乱してその隙にあっくんが零落百夜を当てるという寸法でしょ?」

「え、ええそうですが何か問題でも?…」

確かにスピードならばトップクラスといっても過言ではない白式なら問題無く福音の下へと一早く辿り着けるだろう。

だが問題はそこではない。

勿論問題点の分かっている束さんは黒い表情を浮かべていた。

 

Side束

「…稼働率十九%如きで技量も無いド素人が…」

私は心底この男、織斑秋彦に対して物凄く腹が立って仕方無かった。

箒ちゃんが歪んでしまった原因の一因は彼によるものの影響の方が大きいのだから。

なんでこんな他人を利用する事でしか己を証明出来ない屑がちーちゃんと肩を並べるとかいう戯言をほざけるのだろうか怒りを通り越して呆れるばかりだ。

「あっくん…分からないなら説明するね?

確かに零落百夜は今回の作戦においては有効な切り札の一つ…だけど福音が暴走を引き起こしている以上そんな状態で技を当てれば搭乗者がどうなってしまうかは想像が付く筈でしょう?」

「…大丈夫ですよそのくらい、貴方の作った物なんだからさ!」

「ッ!…」

私の指摘に彼は一瞬考えるがやはりISを過信しているのか馬鹿なのか…あるいは両方なのかそんな事を言う。

こんな奴に私の娘の一機が使われているのかと思うと余計に腸が煮えくり返ってくる。

「…確かセシリアちゃんだっけ?

貴方には確か高機動パッケージが送られてきていたよね?」

私はあの屑との会話を強引に終わらせ本来の作戦案の要の子に声をかける。

「は、はい!ですがまだあまり完了出来ていなくて…」

「心配には及ばないよ私が手伝うから!

後十五分でアップデートを完了させてあげよう!」

「本当ですか!?」

「OK~!」

高機動パッケージであるストライクガンナーをインストし白式に次ぐ機動力を持ち得たセシリアちゃんのブルーティアーズならば安心して任せられる。

そう思った私は彼女を手伝う事にした。

あ、それと後であの子、音六ちゃんにも話を聞かなきゃね。

 

Side秋彦

「束さんまであんな態度を取ってくるなんてどうなってるんだよ!?」

俺は自身の立てた作戦案を一蹴りにされ心底イラ立って部屋で一人壁に八つ当たりしていた。

「あ、秋彦…」

そこに俺を心配した箒が来て俺はふと考えが浮かんだ。

「箒、丁度良い所に!」

「え?…」

俺はコッソリと箒を外に連れ出し機体を装備させた。

「良いのか?先生達の許可は…」

「そんなもの後でもらえばいいんだよ!ほらとっとといくぞ!」

「…」

手柄を他の奴等に取られまいと俺は箒を連れて一足先に出撃した。

 

Sideイチカ

「大変です!秋彦君と箒さんが部屋にいません!」

「何ッ!?」

「あんの馬鹿共…」

「あちゃ~…」

恐らく自分の案を一蹴りにされた事が気に入らずに彼は箒をかどわかして無断出撃したんだろう。

予想しとくべき事だったのにぬかりがあったか…。

「あれそういえば美月ちゃんは?」

「さ、先程急いで出ていかれましたよ…」

「あらま…」

美月は美月で彼等を追っていったらしいな。

俺は頭を抱えるしかない。

「大丈夫ですよイチカさん、既に彼等も向かっているそうですから!…」

カレンが俺を物陰に呼んできてそう言う。

「!それってもしかして…」

俺はカレンの一言が気になり彼女のPDAを覗くと驚愕した。

「『よっ!やぁっと繋がったな!』」

映像の向こう側には俺達の誇るべき戦友達が映し出されていたのだから。

 

 




次回、無断出撃の末福音とエンカウントした秋彦と箒だが案の定に翻弄される。
その中で密漁船と封鎖情報を聞き逃し取り残された船を発見するが彼等は…
一方、秋彦達を一足先に追って出撃した美月が道中で遭遇したのは…
「臨海学校と陰謀PARTⅣ」



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EPⅣⅩ「臨海学校と陰謀PARTⅣ」

Side秋彦

「補足した、このまま仕掛けるぞ箒!」

「ああ!」

目標である銀の福音をようやく補足し俺と箒は福音に攻撃を仕掛ける。

「糞がっ!なんで当たらないんだよ!?」

「くうっ!?…」

だが連携という概念を持ち合わせていない二人では福音に未だ一mmも攻撃が届いていない。

秋彦は次第に苛立ちを露わにしていた。

「!秋彦、大変だ!取り残されている船が下で航行しているぞ!?」

「なんだって!?

チッ…こんな時に!…」

箒の言う通り、俺達が戦っている遥か海上には船が三隻航行していた。

でも俺はどうせ海域封鎖の警告を聞かなかった密漁船だと思いそのまま引き続き福音に仕掛けていった。

「秋彦、あの船はどうする?」

「そんなものほっとけ!どうせ密漁船だろうが?

ほっといたってどうもしやしないさ」

「…」

確かに一隻は海域封鎖を聞かずに漁業をしていた密漁船であった。

だが残りの二隻は内一隻が封鎖勧告を聞き逃してしまい取り残された正規の漁業船だったのだ。

そして残る一隻は…

 

Sideリディ

「取り残された民間人がいるのに救助もせずに上で戦闘行為をし続けている者達は何を考えている!?」

そう、ハンドレッド世界の空上都市艦リトルガーデンであった。

何故リトルガーデンがこの世界にあるのか?それは…。

教皇セリヴィア・ノートルダムパウロ三世が突如、人類に対して反旗を翻し企んだ陰謀と彼女が時空移動装置で引き起こした時空の亀裂に巻き込まれ飲み込まれこの世界へと図らずも転移してしまったのだ。

「索敵班から入電!この海域周辺に多数の弩級型、飛竜型、巨蠅型サベージの出現が確認されました!」

「何だと!?」

オペレーターからの報告が入り私は焦る。

未だ取り残されてしまっている民間人がいる上、上空で戦闘行為をしている未確認達の存在、その上にサベージの出現。

ならば今此処でやるべき事は一つだ!

「手の空いている者は民間人の救助にあたれ!

迎撃班は出撃を急げ!

エリカ、私達は主砲の準備を急ぐぞ!」

「分かりましたわ!」

私達はこの事態を収拾させる為各々動き出した。

 

同時刻、宇宙では Sideクレア

「私達だけではなく地上のリトルガーデンまでもが亀裂に巻き込まれるなんて!…」

そう、宇宙には宇宙製リトルガーデンであるルナベースが浮かんでいた。

「『…!クレア!』」

「どうしましたのリザ?」

やっとの思いで教皇から取り戻した大切な妹、現状把握をしてもらっていたリザが慌てた様子で話しかけてくる。

『地上で剣崎イチカと如月カレンのエナジーを観測出来たわ!』

「なんですって!?という事は…」

思いがけない朗報を聞いて驚いた私だったが何故今になって二人が見つかったのか疑問に思い、ある推測を立てていた。

『ええ…此処は別の世界…異世界である可能性が高いわ!』

「やはり!…」

リザも私と同じ推測を立てていたようだった。

『それとこっちは悪い知らせなんだけど地上の方で多数のサベージ出現反応が確認されたそうよ』

「!それは不味いですわね…」

此処が異世界である以上下手な行動には打って出る訳にはいかない。。

だがこの世界の人間がサベージに対抗可能な技術を持ち得ているとは確信も出来ない。

『決断するのはあなたよクレア』

「私は…ええ…そうですわよねリザ。

何を迷う必要があるものですか!」

一瞬迷いを生じてしまっていた私はリザに諭され全体放送を入れる。

「『選抜隊の皆さん並びにその他武芸者に告げます。

逃亡したセリヴィア・ノートルダムパウロ元三世教皇の行方は未だ掴めてはおりません。

ですが地上のリトルガーデンは多数のサベージ出現を確認し現在交戦中との事です!

ですので急遽地球への救援部隊を編制。

此処ルナベースの皆さんには久方振りの地上になりますがご協力頂ける事を感謝致します!

それと如月ハヤト、霧島サクラ両名に対しお知らせしたい事があります。

至急私の部屋に来る様に!』」

 

Sideハヤト

「クレア会長、一体俺達に何の用なんだろ?」

「さあ?…」

会長に呼ばれた俺と恋人のサクラは会長の部屋へ向かう。

しかし、未だサクラの表情は優れていなかった。

アイドル活動のパートナーを組んでいた俺の妹であるカレンが戦友のイチカと一緒に時空の亀裂に巻き込まれて行方不明になってしまってからずっとこの調子だ。

「来ましたわね」

「会長、俺達に話があるって…」

「ええ、そうですわ。

お二人には一刻も早く伝えるべきと思いましたので。

リザがこの世界の地上から剣崎イチカと如月カレン両名のエナジー反応があったと観測したのですわ!」

「!…」

「そ、それは本当ですか!?」

「ええ、間違い無い筈ですわ」

会長からの吉報を聞いた俺は驚き、サクラは途端に明るくなっていた。

「ですが今はサベージ駆逐の方が最優先です!」

「分かっています!行こうサクラ!」

「ええ!」

俺達は出撃準備に向かいにいった。

 

その頃、Side美月

「もうあの二人は!…」

無断出撃してしまった箒姉さんと秋彦君を一足先に追っていた私はぼやく。

そして二人と交戦状態に入っている件の銀の福音と接敵する後少しの所である物体が目に入った。

「あれは!…確かサベージとかいう化物!?なんでこんな所に…それにあれは船が三隻も!?…」

海上にクラス対抗戦の時に乱入してきた化物と取り残されている漁業船の姿が目に入り私は驚く。

「このままじゃ無関係の人達が危ない!」

私は桜陽朱雀のブースターを全開で吹かして福音二人へと接近し警告した。

「箒姉さん、秋彦君そこから離れて!」

「私に指図するな!美月」

「そうだ!俺達で福音を倒してやるんだよ!」

すぐそこまで化物の砲撃が迫っているというのに二人は全く耳を借してはくれず福音を墜とすのに躍起になってしまっているばかりであった。

「いけない!」

私は矢を放とうと弓を構えようとした。

すると砲撃を放とうとしていた化物が突如、ブーメランの様に飛来してきた大きな剣によって数匹斬られていた。

「!?」

「間に合ったんじゃねえの?」

私の前には先程の剣を投擲したのであろう黒いISスーツの様な物を着た黒短髪褐色ツインテールの少女がいた。

「オイそこのお前!」

「な、何かな?」

「上で戦っている馬鹿達を止めに来たんだろ?なら下の化物共と民間人の救助はアタシらに任せて連中を早く止めろ!」

「う、うん!…」

少女にそう言われた私は訳が分からないまま二人を止める為福音との間に矢を放った。

「何しやがる美月!」

「それはこっちの台詞よ!

秋彦君達こそ何してんの!?下にはまだ取り残されている民間人がいるのよ!」

「それがどうしたってんだよ?どうせ犯罪者の密漁船だろうからほっといたって別に良いだろうがよ!」

「貴方ねえ!」

私は秋彦の言葉に心底怒りを感じる。

いくら犯罪者の漁船だといえ人命を疎かにして良いなんて筈がないのだ。

「ああもう!仕方無い!…」

私は二人を止める為強行作戦に出る。

再び福音と秋彦の間に矢を放ち彼がそれを防ぐが…。

「テメ…また何しやがる!?」

「秋彦!前だ!」

『RuruLa!…』

「んなっ!?…」

私にはもうこれしか無謀な二人を止めて撤退可能にさせられる方法が思いつかなかった。

私の放った矢のエネルギーの余波で煙幕が出来、その隙に福音が秋彦に距離を詰め必殺の一撃を放っていた。

そう、福音に彼を攻撃させ彼等の戦意を削ぐしかなかった。

「かっ!?……」

今迄零落白夜を無駄撃ちしていたせいか今の福音の一撃を喰らってSEがエンプティーとなり秋彦の白式は強制解除され海に落ちていった。

「秋彦ー!美月、貴様一体何を!?…」

バシュ!

私は落ちていった秋彦を見て思いっ切り狼狽していた箒姉さんの足下スレスレに矢を放ってやった。

「まだ状況が分かってないの?!

下を見てみなさいな!」

「下?下には確か密漁船が…!?…」

ようやく箒姉さんにも今の状況が把握出来たらしく驚愕していた。

あの褐色少女が化物を抑えに駆け付けてくれていなければ民間人は愚か私達もどうなっていたかは想像がつかない。

「無断出撃の挙句に人命を疎かにして尚の戦闘行為…この件はキッチリと織斑先生に報告させて貰うから」

「…」

茫然と立ち尽くす箒姉さんと海に落ちた秋彦を回収し私は撤退した。

 

Sideナクリー

「上の奴等は未確認含め撤退していったな…じゃあやらせてもらうよ!」

一足先に地上へと降下しサベージの鎮圧に乗り出したアタシは足手まといの撤退を確認したので引き続き奴等を抑えながら民間人の救助にも乗り出していた。

「ナクリー大丈夫か?!」

「おまたせ…でもあんまり無茶はしないで…」

「ああ、なんとかな。

ネサ姉もごめんな」

ようやくクロ兄とネサ姉も救援に駆け付けてきたようだ。

「しっかし此奴等の動き…なんだかおかしくねえか?」

サベージの動きに違和感を感じていた私は疑問を口にする。

「ああ、まるで何かに操られている様な動きをしているな…」

「同感…」

かつてアタシ達、オルフレッド姉弟妹を言葉巧みに誘い自らの復讐の道具にしようとしたヴィタリーの事を思い出してしまった。

だがアイツがやっていたのは自身が開発した人工型サベージだけの筈…他の天然のサベージの操りに成功したとかは聞いた事がない。

「この世界の何処かでアイツの名を騙った誰かがいるっていうのか!?…」

「もしそうだとしたなら放ってはおけないな!」

「うん…」

最終的には裏切られたとはいえ唯一のアタシ達の育ての親だった彼女が望んではいない筈のこの状況を野放しにしておく訳にはいかない。

「『オルフレッド姉弟妹、聞こえているな?民間人の収容がたった今完了した!

これよりリトルガーデンのエナジー主砲を奴等に撃ち込む!

早急に射程域から離脱してくれ!』」

「「「分かった!…/OKだ!」」」

副会長殿の伝達を聞いてアタシ達はリトルガーデンへと帰還した。

「最大出力、撃ー!」

ナクリー達が帰還して数秒後に主砲が撃ち放たれサベージを約半数を飲み込んでいった。

「入電!主砲、サベージ半数を消滅を確認!

残存しているサベージは撤退を始めたとの事です」

「ならまずは早急にこの海域を離脱し収容した民間人を送り届ける!

その後は残りのルナベース組との合流を待ちながら各員、体制を立て直せ!以上!」

「はっ!」

サベージの消滅・撤退を確認したリトルガーデンは民間人を送り届ける為航行を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 




美月達のピンチに駆け付けたのは地上リトルガーデン組と一早く宇宙から降下してきたオルフレッド姉弟妹でした。
まだ新刊が出ていないのでセリヴィアが逃げたのはオリジナル展開ということで。
次回、自らの愚かさが引き寄せた傷のおかげで昏睡状態に陥った秋彦を欠いたままIS組は福音へ挑まんとする。
だが福音は突如のセカンドシフトを果たしその乱戦の中へ介入する謎の勢力とサベージ。
一方、IS世界への思わぬ来訪を果たしたハヤト達一向はそれぞれの戦いへと歩を進める。
「臨海学校と陰謀PARTⅤ」


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EPⅣⅩⅠ「臨海学校と陰謀PARTⅤ」

Sideイチカ

誰も来ない事を確認しかつての戦友達と俺とカレンは話していた。

「まさかリトルガーデンまでもが此方の世界に来ているなんてな」

「『今迄圏外だったお前達のPDAからの反応があったからもしやと思ってな。

連絡入れてみて良かったぜ!』」

「はは…」

フリッツの話に俺は苦笑していた。

「そういえば兄さんとサクラさんは何処ですか?」

「『ン?ああハヤトと霧島なら会長に呼ばれていったぜ。

恐らくお前達の事だろうな』」

「そうみたいですね」

カレンの疑問にフリッツはそう答えた。

「アリナは?」

俺の姿を見つけたら真っ先にこっちに来るであろう少女の姿が見当たらない。

「『アリナはね…ヴァリアントの力を使い過ぎて未だ眠ったままなんだ…』」

「なんだって!?一体何があったんです?」

エミリアさんが重い口調でそう話した。

俺は驚きが隠せない。

「『アリナはあの元教皇に利用されてしまったんだよ…イチカ、貴方への想いをね…』」

「!…」

以前グーテンブルグで会ったあのセリヴィアとかいう教皇が人類に反旗を翻し、そして俺への想いを持ち続けていたアリナを誘惑しヴァリアントの力を暴走させ皆を襲わせたらしい。

彼女の暴走はエミリアさんが必死の思いで止めたそうだがその弊害でアリナはヴァリアントの力を使い過ぎてしまい眠りについてしまったらしい。

「『あの子は私以上にグーテンブルグ王家に不信感を抱いていた。

でも他人を信頼していなかったあの子がイチカ、貴方という存在に出会って変わったんだよ』」

「…」

だけど不器用な俺にはどこぞの無責任な愚兄と違ってカレンと同等の愛を他の女性に与えるなんて真似は出来っこない。

「アイツの目が覚めたら一発はたいてやらないとな…」

大元の原因はアリナの想いを己の逆恨みでしかない私怨の為に利用した元教皇にあるが俺も原因の一端である事を自覚しいつの間にか流していた涙を拭いていた。

 

Sideカレン

「イチカさん…」

かつての恋敵であったアリナさんの現在の様子をエミリアさんから聞いて私とイチカさんは驚きを隠せませんでした。

イチカさんはアリナさんが暴走した原因の一端は自分のせいだと自覚して涙を流していました。

「イチカさん本当に私を選んでくれた事に後悔していませんか?…」

「カレン?…」

私は途端に不安になりイチカさんに問いかけました。

「…俺はなカレン、お前にあの日出会ってからずっと惹かれていたんだ。

今更その想いを消すなんて事は出来やしないさ…」

私の問いにイチカさんはそう答えてくれました。

なら私も覚悟を見せなくてはいけませんね。

「…なら私もアリナさんを傷付けてしまった罪を背負いますよ」

「カレンお前…」

イチカさんは私の決意に驚いた表情をしていました。

これが彼に選ばれた私に出来る最大限のアリナさんへの贖罪なのですから…。

「『ひゅーひゅー!よっ!お熱いお二人さん!』」

「「はっ!…///~」」

フリッツさん達に見られている事を忘れていた私達は抱き合い、気が付くと彼等にからかわれ恥ずかしさで一気にショートしてしまいました。

「あーちょっとこっちの友人が呼んでいるようだからまた後でな!」

「『あちょ!?イチカ…』」

イチカさんも恥ずかしさのあまり強引に通信を切った直後でした。

「此処にいたんだイチカ兄さんとカレンさん。

織斑先生が呼んでいるよ」

「今行く」

春季さんある意味グッドタイミングです。

 

Sideイチカ

「…以上が今回彼等が無断出撃した結果です」

「報告どうも。

全くあの馬鹿者共は…」

美月が無断出撃した馬鹿二人を回収した後報告会が開かれた。

戦闘域内に迷い込んだ密漁船と正規の漁船の救助をしないで尚の戦闘行為、途中で多数のサベージ出現。

美月が言った短髪少女とは恐らくナクリーだろう。

彼女が人命救助とサベージを引き受けてくれていなければ今より無残な事態になっていたかもしれない。

愚兄は福音の攻撃をモロに受け重傷を負い現在昏睡状態に陥いっており、モップは無断出撃及び人命を疎かにしようとしたという事で再び出撃するまでの間、謹慎処分を受け部屋にいる。

正に良い気味である。

「福音だけでもかなりの脅威なのにあの化物までがいるなんて…」

少なくともヴァリアブルコアの無いシャルのリヴァイブやオルコット嬢のブルーティアーズは足手まといでしかない。

まずは早急に福音を堕とすのが最優先事項か…。

そして本来の出撃予定日

「コイツ等一体何処から湧いてきてんのよ!?」

再び何処からともなく出現したサベージの砲撃と福音のオールレンジ攻撃に皆苦戦を強いられていた。

「福音を堕としてからというのも無理がありましたわね…」

「仕方無い!福音はシャル、オルコット嬢、鈴、春、美月で抑えてくれ!

サベージは残りの俺達がやる!」

「「了解!」」

それぞれ動き出す。

「わ、私はどうすればいいのだ?…」

「…」

少しでも戦力が欲しいとの事で箒も謹慎が解かれ出撃していたがはっきりいって今の彼女ではシャル達以上に只の足手まといにしかならない。

「お前は美月の後方援護をしてくれ」

「わ、分かった」

俺は箒にそう指示を出すしかなかった。

「いくぞサベージ共!」

俺はまず厄介な飛竜型を叩き斬っていく。

「ラウラ!カレン!」

「任せて下さい!」

「承知!我々も百武装展開だリィ!」

「『分かりました!』」

ラウラのハンドレッド、『黒の宣告神手腕<シュヴァルツェア・ゴッドスマ―ケンハンド>』とカレンのビームが弩級型を叩き潰していく。

「ツクモお願い!…」

「やるな!コイツで堕としてやる!」

セラフィーノのドラグーンが飛竜型の障壁を削っていき、その隙に距離を詰めたイツカのスピアが貫いていく。

「後は巨蠅型だけか!…」

射撃系の攻撃を全部無効化してしまう程の強固な障壁を持つ巨蠅型を捉え斬りかかった。

「<残影斬>!そして<残影斬・弐式>!」

「グギャオー!?…」

「セラフィーノ頼む!」

「うん!…<付喪蒼炎神>!…」

一気に障壁を削りセラフィーノの蒼い炎の斬撃で巨蠅型を殲滅したかに見えたのだが…。

「!?まだ湧いてきやがるのか!?…」

また海中から多数のサベージが出現してきて劣勢に追い込まれてしまった。

キュイーン!

上空でそんな音が聞こえ俺は思わず空を見上げて絶句した。

「なっ!?…この土壇場で福音のセカンドシフトだと!?…」

只でさえエンカウントしてくるサベージの対応に追われているというのに!…

「隙ありぃー!」

「!貴様は!…」

空を見上げ驚いていた俺に対し短剣を突き付けてきた輩がいた。

俺はすんでの所で回避する。

だが目の前に現れたのは…

「あっひゃひゃ!本当に久し振りだな剣崎イチカアァー!」

「ギリウス・クラウス・ウェンズ!貴様!…」

俺の因縁ともいえる相手だったのだ。

 

 




次回、イチカの因縁の相手ギリウスが彼の目の前に現れたのを尻目にイチカはかつてギリウスが行おうとした暴挙を思い出し彼に対し激しい憎悪を向けヴァリアントの力を暴走させてしまう。
一方、セカンドシフトしてしまった福音に苦戦を強いられていた春季が目にしたのは…。
「臨海学校と陰謀PARTⅥ」


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EPⅣⅩⅡ「臨海学校と陰謀PARTⅥ」

Side春季

「速過ぎる!…」

「私もブルーティアーズをなんとか掠めさせるのが精一杯ですわ…」

福音の事を任された俺達だったが今も尚劣勢を強いられていた。

『RuLiLaー!』

「なっ!?これは!…」

「ここにきて第二次移行!?」

突如福音が咆哮を上げ、セカンドシフトしたのだ。

強化された銀の鐘のオールレンジ攻撃が俺達に向かって降り注いでくる。

「くあっ!?…」

「今ならば隙がある!うおおおー!」

「箒姉さん!?駄目!」

銀の鐘を撃った直後の硬直をチャンスと見たのか後方支援していた箒が福音に突撃していってしまう。

『ULiLa!』

「な、なんだと!?こはっ!?…」

それさえも読まれていたのか箒は福音の手刀を二度受けてしまい仰け反った上で吹きとばされてしまう。

どうする?…鳳凰裂突破でも銀の鐘どころか奴のアームも吹き飛ばせはしない。

その上に雷砲血神のカートリッジの残数も心許ない状況だ。

そんな思案を巡らせていた時だった、

「うららああー!!」

「イチカ兄さん!?…」

今迄聞いた事の無いイチカ兄さんの叫びが聞こえたのは…。

 

Sideカレン

「イチカさん!?」

サベージの駆逐を行っていた途中恐らく私達と同じ武芸者の男性が突然乱入してきたのです。

その男性の姿をイチカさんが視界に入れた瞬間、彼は物凄い形相で乱入者へと襲いかかっていったのです。

「ギリウス・クラウス・ウェンズ!

よくもその薄汚い顔を俺の前に出せたな!」

「え!?それってもしかして…」

「ああ、コイツはダグラス卿の元弟だった奴だ!」

イチカさんが言った男性の名前を聞いて以前似た名前をした方の事を私は思い出しました。

そう元の世界で全世界武芸大会が開催される前日に私に言い寄ってきたダグラスさんの事を。

でも元?…まさか!

「カレンの思っている通りだ…。

コイツは…ダグラス卿を含むウェンズ王家の暗殺を目論んでいたんだからな!

そしてリトルガーデンを陥れようとした張本人でもある!」

「ハッ!何が武芸者至上主義だよ。

ダグラス兄さんも所詮馬鹿な人類の一人に過ぎない奴だったよ。

この俺にとって邪魔な存在でしかなかったのだからよ!

次元の穴に飲まれて辿り着いたのはこんな住みやすい世界!

だけど剣崎イチカ、貴様がまた性懲りも無く俺の前に現れやがった!

長話が過ぎたな…今度こそお前も終わりにしてやる!」

「黙れぇー!」

いつものイチカさんではない動きで男、ギリウスに斬りかかっていくが容易く回避されてしまい…。

「おっと!」

「き、消えた!?」

「ひゃっはあー!グサリとなっと!」

「がはっ!?…」

ギリウスは回避を終えた直後、姿を消しイチカさんをEバリアを展開する間も取らせないかのようにを斬りつけていた。

「イチカさん!?…駄目ぇー!」

「ウッ!…ウルガアァー!!…」

私の悲痛な叫びも虚しくイチカさんはヴァリアントの力を暴走させてしまうのでした…。

 

Side春季

「どうしてイチカさん達以外の男性がISに乗っているのですの!?…」

イチカ兄さんの先程の叫びといい、乱入者といい事態の把握が困難だった。

「!?ハイパーセンサーでも感知出来ない不可視からの攻撃!?」

鈴がそう叫ぶ。

乱入者の男が突然姿を消したかと思うと凄まじいスピードでイチカ兄さんを斬りつけてしまっていた。

「ウッ!?…ウルオォー!!…」

絶対防御を突き抜けた攻撃で斬りつけられ大量の血を流したイチカ兄さんの様子が更におかしくなった。

「一体兄上に何が!?…」

「はーくん!

イーくんとカレンちゃんが!…」

一早くイチカ兄さんの異変を察知していた音夢がボーデヴィッヒさんと一緒に此方に退避してきていた。

「アレは!…ボーデヴィッヒさんの時以上に非常に不味い!

早く止めないと!…」

「え、ええ!…キャア!?」

そう思い動き出そうするものの福音に阻まれてしまう。

「ガアァァー!!」

案の定、間に合わずにイチカ兄さんはまるで暴走した獣の様な咆哮を上げていた。

「はーくん!…」

「音六…分かっている!

今からでも間に合う筈だ!

だから一緒に…!?」

そう告げようとした瞬間、福音のAIが優先的に危険を判断したのかイチカ兄さんに向かっていっていたのだ。

「不味いぞ!リィ、福音の動きを!…」

「『この距離じゃAICのバリア波弾も射程不足で届きません~!』」

「クッ!?…」

ボーデヴィッヒさんが対応しようとするも既に距離を離されていて攻撃が届かない。

「なら俺がいく!」

俺は千式雷牙のブースターを全開にして福音を追っていく。

だがこの時俺や他の皆が予想し得なかった事態が起ころうとしていたとは夢にも思わなかった…。

 

 

 

 




次回、ギリウスへの敵意を燃やし冷静でいられなくなったイチカはヴァリアントの力を暴走させてしまう。
カレンは彼を止める為に必死に歌おうとするが…。
一方、暴走状態のイチカに迫ろうとする福音を止める為春季は単身で乗り出すが…その先には誰もが予想し得ない事態が迫ろうとしていた。
「臨海学校と陰謀PARTⅦ」



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EPⅣⅩⅢ「臨海学校と陰謀PARTⅦ」

一応推奨BGM用意!


推奨BGM「DAYS」

Side春季

「イチカ兄さん!俺だ、春季だ!正気に戻ってくれ!」

「ウグル!…」

乱入者に対してどうしてか正気を失い今も尚人とは思えない叫び声を上げながら暴れるイチカ兄さんを止める為に俺は単身踏み込んでいった。

「あひゃひゃ!面白くなってきたじゃないか!」

「お前が!…」

この状況を一人楽しんでいる乱入者の男に対して俺は叫ぶ。

「おー怖い怖い。

ほいバイなら!」

「クッ!?…」

男に対する怒りのせいで判断が鈍り彼が次々に繰り出してくる不可視の攻撃に対して反応が遅れてしまう。

その上…

「グルルー!!」

「ガッ!?…」

背後から暴走状態のイチカ兄さんの攻撃も喰らってしまう。

落ち着け!…まずは!

「第一の型<気脈流一鉄鋼>!」

奥義で不可視の攻撃の流れを読み取り対応を試みる。

「!…そこだ!第四の型<片速円舞脚>!」

「ぐぼほっ!?」

気配を感じ取る事に成功した俺は既にコールさせていた雷閃双武脚の回転キックを乱入者に叩き込んだ。

見事に男の腹にヒットし吹っ飛んでいく。

「や、やりやがりますねえー!俺の不可視の連撃<ハイパージャミングカッティング>を見破ったのはテメエが三人目かあ!」

があまり効いていないようで男はすぐに態勢を立て直して再び此方へと向かってくる。

「第参の!…!?…」

「甘ェーイ!」

すぐに鳳凰裂突破で対応を試みるも奥義を発動する前に男のダガーの動きが急に早まり喰らってしまう。

「ゴフゥッ!?…」

非常に不味い!…雷砲血神のカートリッジも残り後一個だ…これでは鳳凰打羽陣は撃てずに白鳳閃百撃が後一回撃てるだけだ。

こうなったら後は一つの可能性に賭けてみる他無い!…

 

Sideカレン

「あ…」

その強大なヴァリアントの力を暴走させてしまったイチカさんをなんとか止めようと必死に歌おうとするものの何故か声が出ない…それに奇跡の聖符も答えてくれない。

一体どうして?…。

「わ、私は…」

私は彼の知らなかった一面に何処か心の奥で恐怖しているの?…

まるでそうだとしか言いようがない。

今は春季さんが必死にイチカさんを止めようと頑張ってくれているけれど、乱入者のギリウスと福音の相手もしていて今にもジリ貧だと私にも分かり、いつまで彼等を抑えていられるか分からない。

だけど…

「ボーッとしている『リトルガーデンの小さな魔女』見っけ!

歌われると凄ッーく面倒だから今すぐバイなら!」

「キャッ!?…」

私の危険性を把握しているギリウスが春季さんを吹き飛ばし此方に向かってきてダガーを投擲してきた。

歌えない失意に囚われてしまっていた私はそれを喰らってしまう。

「させないよギリウス!」

更に投擲されたダガーが向かってくる。

だがこれを弾いた者がいた。

「これはこれは…裏切り者の名無しちゃんじゃあっりませんかあ~!」

そうイツカさんだった。

 

Sideイツカ

「今のアタシは名無しなんかじゃねえ!

イツカ・アランシュだ!」

アタシは元上司であったギリウスの突如の乱入に驚きはしたもののすぐに構える。

「アイツ等の事はアタシに任せてアンタは早く下がりな!」

「で、でも私は!…」

「でもじゃない!

大体さ、今の状態のアンタ見てたら危なっかしくてとてもじゃないけど戦わせられねえよ!」

「わ、分かりました…」

アタシの話に如月さんは反論してくるもすぐに論破する。

これで聞かなかったら一発ドついてやろうかとも考えていたが彼女はすぐに素直に下がってくれた。

「お友達ごっこは終わりかい?

いやまだ終わっていないよねーじゃじゃん!」

「んなっ!?…お前は!?…」

ギリウスの奴が意味深な言葉を言ったかと思うと彼の背後からある人物が現れていた。

「そんなどうして!?…なんでそこにお前がいるんだよ!?…」

「…」

それはアタシの親友であの日からずっと行方不明になっていたアヴリル・ロースコットその人だった。

だが当の彼女の瞳には光が無く、無言のまま此方を見ていた。

「ギリウス、テメエ!アヴリルに何しやがった!?」

「何、簡単な事さっ!

彼女には才覚が眠っていた。

だから俺が里親の下から彼女を誘拐し俺の実験台になって目覚めてもらったっての事だけよ!」

「なんだと?…」

ギリウスが驚愕の事実を告げアタシは思わず怒りに飲まれそうになる。

だがそれでは暴走しちまっているイチカの二の舞になっちまう。

「『百武装展開』…」

「あ、アヴリル…」

「行動開始…」

一方のアヴリルは生気を抜かれた様な声で妙な武装を纏いアタシに襲いかかってくる。

反応がギリギリだったアタシはなんとか防ごうとするが掠ってしまう。

「くぅっ!?…やりやがったなアヴリル!

今お前の目を覚まさせてやる!」

冷静に対応を試みるが…

「…エアスト…」

「んなっ!?」

アヴリルが武装を突然解いたかと思うと大きなコンドルが現れアタシに向かってきたのだ。

「なんだコイツ!?…」

「クピィー!」

「ウッ!?…」

アタシがコンドルの出現に驚いているとソイツはその大きな鉄の翼を羽ばたかせ強風を発生させてくる。

そして羽根の弾丸を飛ばしてきた。

「かっ!?…」

羽根の弾丸を飛ばし終えたコンドルはアヴリルの下へと戻っていったかと思うと姿を消し彼女は再び武装を纏っていた。

「成程な…生物型も兼ね備えている訳ってか…」

こいつぁ…流石に万事休すって所か…。

 

Side鈴

「春季さん、アランシュさんもほぼボロボロの状態…それにもう一人の乱入者!?」

「イチカもあんな状態だしそれにセカンドシフトしてしまった福音も未だ健在…

撤退を考えた方が良いかもしれないわね…」

私は今迄の戦況を分析して冷静な判断をする。

「そんな!?彼等を置いて撤退だなんて!…」

「私だってしたくないわよ!

でも機体のSEも皆ジリ貧だしこのままじゃ!…」

異を唱えるシャルロットの叫びに私は声を振り絞って言う。

「鈴の言う通りだ…このままでは兄上達は愚か、全滅も免れん!…

幸いあの化物共の姿は現在確認されていない。

撤退するならば今の内しかないだろう」

「でも!…」

ラウラが賛同した事でそれぞれ撤退準備に入る中、一人音六ちゃんだけがどこか様子がおかしかった。

「音六ちゃん?…」

「行かなきゃ!…」

「ちょっと!?…」

音六ちゃんはどうしてか静止を呼びかける間も無くそのまま春季達が戦っている領域へ向かって飛び出して行ってしまったのだ。

だが彼女がどうしてその様な行動を取ったのかほんの数十秒後に判明する事になる。

 

Side春季

「やるしかないか!…」

俺は残る力でイチカ兄さんと福音になんとかダメージを与える為に決心する。

「イチカ兄さん!我慢してくれよ…第参の型<白鳳閃百撃>!そっこだあー!」

丁度福音とイチカ兄さんの位置が重なった所を狙い拳の連撃を叩き込んだ。

「グッ!?…」

「LaLa!?」

イチカ兄さんの動きは大分鈍るが福音にはやはりダメージ不足が祟り一瞬怯んだだけだった。

だがその様子を確認した直後だった。

グサリッ!

「え?…」

「グ?…」

「La!?……」

そんな鈍い音が響いてきた直後、福音のハイパーセンサーの輝きが突然失われたかと思うと俺とイチカ兄さんの腹部から大量の血が流れていた。

 

 

 

 




次回、福音毎滅多刺しにされてしまった春季達は海へと沈んでいってしまう。
その惨劇を目の当たりにした鈴達は急いで彼等を助けようと試みる。
一方、彼等を刺した犯人は…。
「臨海学校と陰謀PARTⅧ」


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EPⅣⅩⅣ「臨海学校と陰謀PARTⅧ」

良し!イベキープガチャで特攻バレンタインクレア様確保おー!



Side鈴

それは音六ちゃんが突然飛び出して行ってしまった直後だった。

「『!この海域、いえ春季さん達が戦っている区域に超高速で向かっている機体があります!

この反応は…白式!?』」

信じられない事をラウラの機体AIであるリィズちゃんがそう告げてきた。

「なっ!?それは本当なのか!?リィ!」

「ええ!?だってアイツは重傷を負って今も昏睡状態で眠っている筈でしょう!?なんで!?…」

「『ええ…ですがこの反応は間違い無く織斑秋彦と白式のものと一致しています』」

例え昏睡から目覚めたとしてもとても体を満足に動かせられる状態ではない筈の秋彦が何故此方に向かってきているのか訳が分からなかった。

「うおおおおー!」

グサリッ!

秋彦の叫びとそんな鈍い音が聞こえてくるまでは…

「「なっ!?…」」

この光景を見ていた全員の声が重なった。

それもそうだろう。

何故か新たな姿となった白式を纏った秋彦が突然現れ春季達毎福音を零落百夜を発動した二振りに増えた雪片弐型で滅多刺しにしていたのだから。

当然絶対防御は貫かれ二人は腹部からの大量出血をしている。

一番背後にいた福音は重装甲が幸いしたのか気絶したパイロットが投げ出された。

「い、イチカ?…」

「そんな…こんな事って!?…」

秋彦の零落百夜によってSEを全損させられ強制解除された三人は力無く海へと真っ逆さかさまに落ちていってしまった。

「い…嫌あああああああー!?」

私の悲痛な叫びが海域中に木霊した。

 

約一時間前、Side秋彦

「…此処は一体?…そうか美月の馬鹿が邪魔しやがったから俺は福音に堕とされちまって…」

昏睡状態だった秋彦は白い空間で目覚め、すぐに愚痴を溢す。

まあ、例え美月が止めなくとも彼が福音を止めれた確率は0に等しいのだが知る由はない。

「『…』」

「あ?なんだお前?…」

秋彦の目の前には白髪の少女が佇んでいた。

「『貴方は何の為に力を求めるの?…』」

少女が秋彦にそう問いかけてくる。

「ハンッ!そんなの決まってるだろう!

この俺が先導するべき立場だと分からせてやる為にだ!」

「『…』」

「なんだその目は?…」

「『…』」

秋彦の返答に対し少女は凄く悲しそうな表情をしそして彼を睨みつけていた。

だが秋彦の問いには無言のまま突然姿を消した。

「はっ!?…なんだったんだ今のは?…」

秋彦は現実でようやく目を覚ましていた。

だが驚くべきことに彼が負っていた筈の傷は綺麗に治っていたのだ。

「コイツは!…」

ふと秋彦が白式の待機形態であるガントレットが何処か違う事に気が付いた。

「あるじゃねえかよ力が!…」

秋彦は新たな姿となった白式・雪羅を纏い再び医者の目を盗んで無断出撃した。

そして彼が暴走イチカ、福音、ギリウス勢力と四つ巴になっている戦場へ現れたのが悲劇への引き金だった。

「(アイツ等が手をこまねくとはな…だが上手い具合に二重の壁がある!…これなら外す事はないな!)」

イチカ達が未だ苦戦している事に少々胸が躍っていた。

そう秋彦の脳裏には黒い歪んだ考えが浮かんでしまっていたのだ。

「(悪いな春季、剣崎イチカこれも勝利する為の俺の方程式なんでね!)」

丁度春季が連撃を叩き終えた直後、未だ彼等の位置が重なっていたのを好機と見てそれを実行に移したのだ。

「うおおおおおー!」

零落百夜を発動した二振りになった雪片を構え勢い任せに突撃し何の躊躇いもなく彼等毎福音を滅多刺しにしたのだ。

 

Sideギリウス

「フン…まさかこんな幕引きとは俺も予想外だったな。

まあいい、伏兵も忍ばせて今頃は面白い一興の一つになっている筈だ。

引き揚げるぞアヴリル」

「はい…」

繰り広げられた惨劇にギリウスはさも興味無さそうにアヴリルに撤退を指示し自身も撤退していった。

 

秋彦接近約四十秒前、Side音六

「行かなきゃ!…」

白式のコアの「助けて」という声が聴こえた私ははーくん達の下へ咄嗟に動き出していた。

なんだか他にも物凄く嫌な予感がするのだ。

「ツクモお願い!急いで!…」

私はツクモに語りかけ全開で迫るが一時退避していたせいでとても間に合いそうにはない。

仕方無くドラグーンのバリアを飛ばそうと思ったその直後…

グサリッ!

そんな音が聞こえ感じていた予感が確信へと変わってしまった。

「はあはあ!…やったぞ!遂に福音を堕としたぞ!」

あの怖いお兄さんがはーくん達を巻き込んで福音を滅多刺しにしている所を私は目にしてしまった。

「はーくん、イーくん?…い…嫌あああああああああー!?…」

海に力無く落ちていった二人を見てしまった私の胸の中にはとてもドス黒い感情が溢れ出してきていた。

殺す!殺す!殺す殺す殺す!…コイツだけは絶対に許さない!…

そんな感情が生まれて初めて…いや二度目だったかな。

湧き出してきてとても抑えるなんて出来ず人工ヴァリアントの力を暴走させてしまった私はツクモの静止を聞かず怖いお兄さんに攻撃を仕掛けてしまった。

「んなっ!?」

勝利の余韻に酔いしれていた彼は反応出来ずに私のドラグーンの一斉掃射を喰らいボロボロになっていた。

まだ!…これぐらいで彼を許すものか!…ドス黒い感情に支配されたまま再びドラグーンのチャージを開始するが…

「おやめ下さい音六さん!」

「邪魔を…するなあ!…」

セシリアちゃんがレーザーで威嚇射撃をしてきたので私は思わず銃口を彼女に向けそうになる。

「貴方の気持ちは痛い程良く分かりますわ!

だけど今は海に落ちたお三方をお助けするのが最優先ですわ!」

「!…ごめんなさい…」

セシリアちゃんの言葉で私ははっと正気を取り戻した。

そうだ、早くはーくん達を助けなきゃ!

ツクモにも後で謝らなきゃ…。

 

その頃、旅館では…Side本音

「ニャー、ニャー!」

「こぉ~らぁ~!ピノピノ、そんな所ひっかいちゃ駄目だよ~…」

音六ちゃんから預かっていた猫さんがなんだかソワソワしているのを見ていた私はふとなんだか嫌な予感が胸の中をよぎっていた。

「もしかしてイッチー達に何か大変な事が?…」 

 

Side千冬

「おい!篠ノ之、春季、剣崎…誰でもいい応答しろ!…糞っ!通信が遮断されているだと!?」

福音討伐任務に出撃した彼等との通信がしばらくして突然途絶え私は焦っていた。

「大変です織斑先生!この旅館に多数の未確認生物が向かっているとの事です!」

「何っ!?…すぐに教師部隊を迎撃に向かわせろ!」

「駄目です!とても間に合いません!」

「くっ!?…」

確か…サベージだったか?

それが何十体ものこの旅館に迫りつつあったのだ。

まさか福音の暴走はほんの一興に過ぎないとでも言いたいのか?

救援部隊を要請しようにも到底間に合わず私がある決断をしようとしたその時、異様な光景が私達の目に飛び込んできたのだった。

 

 

 




はい、遂に馬鹿がやらかしてくれやがりましたよ。
一体イチカ達の運命はどうなってしまうのか!?
次回、突如として旅館を襲撃してきたサベージに成す術が見つからず茫然とする千冬達。
だがそんな彼女達の目に飛び込んできたのは?…
一方、イチカ、春季、福音の操縦者を救助を終えた一行の胸中には深い傷が刻み付けられてしまっていた。
「臨海学校と陰謀PARTⅨ」



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EPⅣⅩⅤ「臨海学校と陰謀PARTⅨ」

Side千冬

「ン?山田先生他に何か聞こえてこなかったか?」

「え?…」

「クオーン」

「これは…犬の鳴き声?…」

怪物サベージの咆哮に混ざってふとその様な可笑しな声が聞こえてきた気がして耳を傾けていると驚くべき光景が私達の目に飛び込んできたのだ。

「なっ!?…」

「い、犬ぅー!?

犬が怪物と戦っているぅー!?」

麻耶の言う通り銀色の犬が怪物共と戦っていたのだ。

そしてその光景に私達が呆けていると何処からともなくビームの粒子が飛んできて怪物を一瞬にして溶かした。

 

Side?

「いっけえー!シルブリ!」

「ワオーン!」

「よしよしよくやったぞ!」

「我々の任務はここら一帯に現れたサベージの駆逐だ。

総員、心してかかれ!」

「「はっ!」」

そう、旅館に急襲してきたサベージ討伐に動いたのは生物型ハンドレッドである銀の鋼鉄犬『シルバーブリッツ』を巧みに操るアルフォンス・ブリュスタットとリディ率いるリトルガーデン第二生徒会選抜部隊であった。

「剣崎イチカが予測していた事が当たったという事か…」

そう実はイチカがフリッツに頼んで彼経由でもしもの事態の時の為の救援を要請していたのだ。

「…このサベージ達もやっぱり誰かに操られているよ…」

「何?それは本当かオルフレッド姉?」

「うん…ヴィタリーの時とは段違いの精度で制御されているみたいだよ…」

ネサットの返答にリディは少し思案する。

「そうか…ならばアレが使えるな!

総員に通達!最低一体の雀蜂型を残し捕獲を試みる!」

「「了解!」」

リディの考えはこうだ。

人工型ではないサベージを操る術を探る為には一番捕獲しやすい雀蜂型を確保するのが重要、それにはシャーロット博士が開発に成功した対サベージ用エナジーバリアネットを使用すれば可能であると。

「オルフレッド姉、このバリアネットの複写は可能か?」

「それにセンスエナジーが込められているというのなら私に複写出来ない物は無いよ…」

「そうか!なら頼むぞ!」

「うん…<複写展開(トレース・オン)>!」

ネサットが己の<真実の目(トゥルース・アイ)>の力でバリアネットを複写する。

「よし!オルフレッド弟と妹!私とオルフレッド姉がバリアネットの展開準備をしている間なんとか敵の数を減らしてくれ!」

「了解した!いくぞナクリー!」

「へいへい~!」

リディにそう頼まれたクロヴァンとナクリーは己のハンドレッド<叛逆の双刃(オルトロス・リべリオ)>と<双剋の武輪(デュオ・ヴァルガ)>を構えサベージの群れへと突撃していく。

「そらそらそらあー!」

「いっちゃえぇー!」

「す、凄い!…あれがルナルティアベース選抜隊の要の武陣なのか!」

クロヴァン達が繰り出す猛攻と実力に新入りの武芸者生徒達は皆驚きを隠せないでいた。

「此方リディ。たった今バリアネットの全展開が完了した!

総員、早急に射程区域から離脱しろ!」

「了解!こっちも粗方片付けてやったぜ!」

「バリアネット放てー!」

残存していたサベージへ向けてバリアネットを放つ。

サベージはもがき苦しみだしやがて力尽きて倒れ伏した。

「…成功したか!」

「それも良いけどよ~とっとと此処からトンズラしないと面倒な事になるぜ?」

「そのようだな。総員撤退準備に入れ!」

捕獲に成功したのも束の間クロヴァンにこれ以上此処にいれば無用な面倒事が起きると言われたリディは全員に通達し撤退していった。

 

Side鈴

「そんな!?…」

私達の目の前で突如引き起こされてしまった悲劇に対し私は酷く後悔していた。

「私のせいだ…私が撤退しようだなんて言ったから…」

「いいえ…鈴さんのせいではありません。

私がいけなかったんです!…

イチカさんを止めようとしたのに歌えなかった私が!…」

「カレンちゃん貴方!…」

私は思わずカレンちゃんに掴みかかりそうになる。

「おやめ下さい!鈴さんもカレンさんも今は喧嘩している場合じゃないですわよ!

早くお三方をお助けしなくてはいけないのですから!」

セシリアの言葉で現実に引き戻される。

「分かっているわ…」

本当は分かっている。

これはカレンちゃんや私達のせいではない。

ましてやイチカ達のせいでもない。

悪いのは乱入者の男と…

「痛いなオイ!」

「秋彦…アンタねえ!…」

「ぐふっ!?…」

未だに反省の色すら見せてこずボロボロの状態のまま佇んでいる秋彦に対し私は腸が煮え繰り返る思いで彼の急所を狙って双天牙月を投擲し機体を解除させた上に気絶させた。

と今は早くイチカ達を助けなきゃ!…

しばらくしてようやく三人の救助が終わり帰還準備に入っていた。

そこに PiPi!

「『ムッ!やっと回復したか!

そちらの状況はどうなっている?』」

織斑先生からの通信が入ってくる。

「福音は撃墜に成功しました」

「『そうか!なら…』」

ラウラが報告すると織斑先生はそのまま帰還する様に言おうとするが

「…その…非常に申し上げ難い事なのですが…春季殿と兄上が…」

「『?二人に何かあったのか!?』」

「はい…織斑秋彦が春季殿と兄上を巻き込んで福音を撃墜したのです…」

「『なっ!?…』」

 

Side千冬

「そんな馬鹿なっ!?…」

予期せぬ援軍が嵐の様に過ぎ去った後、ようやく通信が回復。

そこでラウラからとんでもない事実を聞かされた私は落胆してしまう。

秋彦は今現在も昏睡状態で眠っている筈!…それなのに何故アイツがあそこにいてしかも春季と一夏を滅多刺しにしただと!?

確かに秋彦達は学園では何処か険悪だったのは私にも分かっていた。

だけどなにも殺そうとするまでに発展するなんて…

「織斑先生大変です!

秋彦君が病室から抜け出してしまったそうです!」

「今その事を彼女達から聞いた…」

「ええ!?戦闘区域にいるんですか!?」

麻耶が遅れて報告してきて驚く。

「『ええいますよ?

これ以上何をやらかすか知れたものじゃなかったんで私が気絶させましたが』」

鳳の片腕にはボロボロの状態の秋彦が抱えられていた。

だが以前に負っていた筈の傷は見当たらない。

「総員、帰還を命ずる…」

私は帰還を命じる事しか出来なかった。

 

 




次回、秋彦に刺され重傷を負わされてしまったイチカと春季は生死の狭間を彷徨っていた。
一方、事件を引き起こした秋彦の弾劾裁判の行方は…。
「臨海学校と陰謀PARTⅩ」


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EPⅣⅩⅥ「臨海学校と陰謀PARTⅩ」

Side鈴

いくつもの傷痕を残した戦いから帰還した私達は織斑先生に報告する為皆旅館の大広間に集合していた。

「ラウラ、今回の作戦状況の報告を頼む」

「はい、我々が銀の福音への接敵をした直後、怪物サベージが出現。

兄上、アランシュ、カレンがこれの対応に、残りのメンバーで福音の対応にあたっていました。

ですがそこにどうしてかISを纏えるギリウスと名乗る男と一人の少女アヴリルと名乗る者が乱入。

兄上がそのギリウスという男を見た瞬間様子が可笑しくなり機体を暴走。

又その者もとても強く我々は劣勢を強いられました。

その後は帰還前にお話した事と同じです…」

ラウラはハンドレッドの存在を知っているがあえて伏せておいて話す。

「…(゜_゜i)な、なんだよ?」

「アンタね…自分が何をしでかしたのかよおーく胸に手を当てて考えてみなさいな!」

「やはり貴様だけは教官の唯一の汚点でしかないな!」

「なんだと!?」

今回の最大の戦犯である秋彦は皆に物凄い形相で睨まれていたが一向に反省の色を見せてこない。

「秋彦…」

只唯一今迄は彼の味方をしていた箒は何処か思う所があるのかそれ以上何も言い出せずにいるようだ。

「秋彦、どうしてあんな事をした?…」

「そ、それはアイツ等が手をこまねいていたようだから俺が…」

織斑先生に睨まれこの秋彦(馬鹿)はまるで自分は一切悪くないと言いたいかの様に慌てて見苦しい弁解をしようとする。

「だからといって味方を刺して良いなんて理由になる訳がないでしょうが!」

私はいい加減に我慢の限界を迎え叫びながら秋彦に殴りかかろうとした。

「待て鳳!お前達の気持ちは痛い程良く分かるが今は抑えてくれ!」

「…なんで止めるの千冬さん?…この馬鹿がイチカと春季を殺そうとしたのよ?…」

「俺は何も殺そうだなんてことは…」

「アンタは黙っててこの人殺し!」

「ぐっ!?…」

それは絶対防御を貫く攻撃を平気な顔して振るったお前が言える台詞なんかじゃない!

「オルコット、デュノア!鳳を抑えてくれ」

「わ、分かりましたわ」

「今は抑えて鈴!」

「わ、分かったわよ…」

千冬さんに指示されたセシリアとシャルロットが私を取り抑えにかかったので仕方無く抑える事にした。

「通信?…IS学園の理事長室からです!」

「何?繋げてくれ」

「は、はい!」

どうやら学園理事長先生からの通信が入ってきたようだ。

「『どうやら大変な事をしでかしてくれたようですね織斑先生、貴方の弟さんは』」

「は、本当に申し訳ありません轡木理事長。私の監督不行届きだったばかりに…」

理事長先生の耳にも入っていたようで怒気を含ませた表情で言う。

「『織斑秋彦君には先日の無断出撃及び戦闘海域に入り込んでいた漁船の方々の救助をせずに悪戯に被害を拡大させようとした件もありますからね…』」

「は、はあ…それで秋彦の処遇はどの様に?」

「『そうですね。

本来ならば即刻退学を言い渡す所なんですがね…なんせ秋彦君はブリュンヒルデである貴方の弟でしかもあの天災篠ノ之束の関係者です。

ですからそこを考慮して秋彦君の処分は夏休み中の奉仕活動への強制参加と反省文五百五十枚とします。

ですが庇い切れるのは流石に今回限りですよ。

私が言いたい事はこれだけです。』」

「…」

理事長先生はそう告げ通信を切った。

確かに千冬さんと束さんの関係者である以上仮に彼を退学処分にしたとして放り出せば世界にどんな影響を起こすか計り知れない。

いくら女利権団体が正常な形に戻った現在でもまだまだ世界中の研究機関が彼を狙っているのだから。

だけどそれっぽっちの理由でそんな軽い処分で済むんだなんて私達には当然納得がいく筈がなく散々猛抗議を申し入れたけど結局は受け入れられはしなかった。

だけどその願いは後日意外な形で叶う事となる。

 

その頃、IS学園理事長室では Side刀奈

「これで本当に良かったのかね?刀奈くん」

「ええ…彼にはある理由でまだこの学園に居てもらわなきゃいけないんです。

ご無理を言ってしまい申し訳ありません」

「いいよいいよ。

私も無用な面倒事は避けるべきとは思ってはいたからね」

私はあれからイチカ君と春季君の過去の裏付けを調べていた。

それには織斑家長男で一番目のIS男性操縦者である織斑秋彦が関わっていた事が分かった。

それも二人を追い詰める程の苛めの参謀役として決して自身の手は汚さないって事ね。

虫唾が走る程の悪魔だわコイツは…。

私が本音ちゃんから織斑秋彦の起こした事件を聞いて理事長に頼み織斑秋彦の在学を許可させたのには理由があったからだ。

この悪魔の所業をこのままにはしておけない。

ならばいっその事盛大にいってやりましょうと思いついたからである。

「まずは彼等にも連絡しないとね」

私はセラフィーノファミリーに連絡を入れるのだった。

 

Sideイチカ

「……はっ!?俺は一体…そうだ…」

確か福音と湧き出てきたサベージを堕とす作戦中にギリウスが乱入してきて、それで俺は彼に対する怒りに飲まれてそれでヴァリアントの力を大暴走させてしまったからそれで…でもなんで俺はこんな不思議な空間にいるんだ?

「…」

「君は?…」

俺の目の前には白髪の少女がいた。

「すみません…すみません…」

「?どうして謝っているんだ?」

少女はひっきりなしに俺に謝罪してくるばかりだ。

「私があのようなマスターに力を借してしまったばかりに貴方を傷付けてしまいました…本当にごめんなさい!…」

「マスター?…もしかして君は!」

「はい…白式のコア人格です。

そして此処は私達ISコアのネットワーク空間です」

「そうか…」

少女の正体が判明し彼女が俺の手の平に乗せてくる。

すると一つの映像が俺の頭の中に流れ込んできた。

「こいつは!…」

暴走した俺と福音、そして俺を止めようとしてくれていた春季が新たな姿となった白式を纏った愚兄に滅多刺しにされた光景だった。

「…」

白式のコア少女は凄く悲しそうな表情をしながら震えていた。

「大丈夫だ怒っていないさ…どうせあの馬鹿がハクナの事を脅しでもしたんだろうからな」

「ハクナ?…」

「そうお前の名前だ…」

「!…」

ハクナは途端に嬉しそうな顔をしたかと思うと俺の目の前は真っ白になっていった。

「はっ!?…」

ネットワーク空間から現実に戻されたか。

「グッ!?…」

いくら俺がヴァリアントといえどやはりこの傷は体に響くか…。

「春…」

やはりといった所か春季が俺の隣で眠っていた。

千式雷牙の百武装擬きである雷砲血神の力で簡易人工型ヴァリアントにはなっているものの所詮は簡易に過ぎず回復力は普通の人間より少し高い程度である。

加えて春は愚兄の滅多刺しによるダメージが一番大きかった。

これではいつ彼が目覚めるか分からない。

「イチカさん目が覚めてたんですね!…」

「よかった!…」

「カレンそれにセラフィーノか…だけど春はまだ…」

「はーくん…」

病室を訪れたカレンとセラフィーノが目覚めた俺に気が付き駆け寄ってくる。

だけどセラフィーノは春が未だ目を覚まさない事を知ると途端に暗い表情になってしまう。

「それで…今、あの馬鹿と鈴達はどうしている?」

「…あの怖いお兄さんなら理事長先生に処分を言い渡されていたよ…」

「でもやはり他の皆さんもその処分に納得していないようです…」

「はは、そうか…」

賢姉殿の弟という事で退学処分は免れたか…予想出来ていた事だがなんだか腐におちないな。

俺は未だよくは回復していない体を推して皆の待つ場所へと向かった。

 

 

 




次回、未だ昏睡状態から目覚めぬ春季。
だがそんな彼等を嘲笑うかの様に取り巻く陰謀は着々と進みつつあった。
「臨海学校と陰謀PARTⅩⅠ」
もうしばらく臨海学校編はオリジナル展開で続きます。



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EPⅣⅩⅦ「臨海学校と陰謀PARTⅩⅠ」

ここからは完全オリジナルな展開でもうしばらく臨海学校編は続きます。
サイレント・ゼフィルスを出し忘れたとかそういう訳ではありません。



Sideイチカ

「い、イチカ!?」

「兄上!目が覚めていたのか!?」

「ああ、心配かけてしまってすまなかったな…」

「そんな事ないよ!」

完全には回復しきっていない己の体を推して俺は皆のいる大広間へと来た。

何故か賢姉殿はいなかったが。

「イッくん!体の具合はどう?」

「まだ傷が痛みはしますがなんとか体を少し動かせる分くらいは大丈夫です」

「この天才の束さんがメスを入れたからそうだとは思ったけどね!」

「そっか…」

当然皆に心配されるが俺がそう言うと束さんがそう付け加えて皆納得する。

「ですが…」

「「…」」

皆既にカレンやセラフィーノから春の容態を聞いていたのか暗い表情になってしまっている。

「春季の方はまだ目が覚めていないのよね…」

「束さんも最善を尽くしたけど…はっくんはあっくんの零落百夜で受けた傷がとにかく酷かったんだよ…後はもうはっくんの生の力が死の誘いに勝る事を祈る事しか私達には出来ない…」

「そう…ですね…」

白式の人格コアであるハクナも咄嗟に内側から零落百夜の出力を抑えようとしたそうだが間に合わなかったらしく彼女も涙ながらに謝罪していた。

「あっくんめ…歪んでいるとは思っていたけど最早あそこまでとは束さんも予想外だったよ!…」

「た、束姉さん?…」

現在は旅館から学園へと帰る日時までの間、教師との同室での謹慎・監視処分を受けさせられている為に此処にはいない愚兄に向けて並々ならぬ怒りの表情を浮かべる束さんに対し未だ何処か迷いを生じていた箒は驚く。

「…昔箒ちゃんが美月ちゃんにやっていた所業の事、束さんは今も許してはいないよ?」

「!?…」

「え!?…」

「ちょっと束お姉ちゃん!?」

束さんが箒に対し昔彼女が愚兄にほだされ美月をサンドバッグ代わりにしていた事を皆の前で暴露し箒はたじろぎ他の皆は驚いていた。

「わ、私は只…」

「何も依存するのが悪いっていう訳じゃないの…だけどちゃんと自分でも考えて箒ちゃん!

あっくんが貴方に与えてくれたモノなんてちっぽけですらないモノだった筈でしょう?!」

ナイスですよ束さん!

愚兄に依存する事しか思考になかった箒に対しその言葉はクリティカルヒット物です!

愚兄のそれは自らが他人に幸福を与えているつもりでもそれは自らの存在を際立たせる為にやっているだけの自分勝手な只の押し付けと同義でしかないのだから。

「わ、私は!…」

「あ、箒ちゃん待って!…」

箒には今の空気に耐える事が出来なかったのか彼女は束さんの静止を聞かずに部屋を飛び出していってしまった。

「もう!…」

「はは、まあ後は時間が解決してくれる筈でしょう…」

「そうだね…」

「とそうだ皆、俺が暴走しちまっていた間の事を教えてくれないか?」

「う、うん!」

箒の問題は彼女自身が解決するべき事であるので俺は福音戦の詳細を皆に聞いた。

「…そうかやはり彼女はギリウスの奴に誘拐され無理矢理力を目覚めさせられていたのか…」

「ああ、アタシの事も覚えていなかった…」

イツカから彼女の親友で行方不明扱いになっていたアヴリル・ロースコットがギリウスの配下として現れ、恐らくは向こうの戦友であるアルフォンスが操るシルバーブリッツと似て非なる生物・鎧型ハンドレッドを扱ってきた事を聞き俺は早急に対策を講じる。

「あ、あのイチカさん?

先程から力がどうとかおっしゃっておられますけど一体どういう事ですか?」

「あ!…」

失念していたな…ここはオルコット嬢達に真実を語るべきか否か…。

「実はイッくんの闇切改・弐式はISじゃないからなんだよ…」

「ちょ、ちょっと束さん!?」

「「ええ!?」」

そんな思考を巡らせていた俺をよそに束さんが爆弾発言を投下する。

早速何やっちゃてくれてんのこの人はあー!?

「ど、どういう事なんですかイチカさんの機体がISではないって!?」

「ああそれはな…」

束さんがトンデモナイ爆弾を投下してくれたおかげで俺に後戻りなんていう選択肢は最早存在しなかった。

「ああもう!話すよ…だけどその前に誰か簪も此処に呼んで来てくれないか?

後あの馬鹿と一般生徒達が聞き耳を立てていないかチェックしてくれ

それから話すから」

「「分かった!」」

観念した俺は専用機の微調整が間に合わず今回の福音討伐には参加出来なかった簪も呼んで皆に洗いざらい真実を語る事にした。

無用な混乱を招かぬように一般生徒やあの馬鹿が監視の目を欺いて此方に来ようとしている可能性も考慮し皆に外の様子を見させて安全を確認させてからだ。

勿論カレンの歌の力、簡易型人工ヴァリアントの春の体の事、セラフィーノとラウラの人工ヴァリアントの力の事も含めてだ。

只向こうのかつての戦友達が此方の世界に来訪している事だけはまだ伏せておくべきと思ったので語らなかったが。

…そんで返答良いな皆さんよお!?

イチカ語り中…しばらくお待ち下さい

 

 

「という訳なんだ」

「宇宙外生命体サベージに未知のウィルス…どおりであの時私達の体の調子が可笑しかったのね」

「ああ、鈴達は幸い浮遊していたヴァリアントウィルスに触れた時間が短かったから影響はほぼ皆無かったんだ」

「そしてそのサベージに対抗する術を持ち得た人達が武芸者でその手段が特殊な鉱石で造られた百武装ですか…」

「イッくんはその上位に位置するヴァリアントの武芸者なんだよ!」

「「…」」

俺が自らの真実を語り終えた直後、束さんの補足で純粋なIS組の皆は騒然としていた。

「それじゃあ春季の体は…」

「ああ鈴の想像している通りだ。

春の専用機の千式雷牙は俺がこの世界で最初に遭遇したサベージから採取したヴァリアントウィルスを束さんが持ち得ていた知識をフル活用して無害化処理を施し機体の百武装擬き及びENカートリッジとして搭載したハンドレッドとISのハイブリッド試作機なんだ」

「それじゃあ…」

「だけどそれは所詮簡易にしか過ぎなくて純粋なヴァリアント、人工型ヴァリアントである俺やセラフィーノ達とは違って春の体は常人より少し上程度の回復力しかないんだ」

「へ?なんで其処で音六ちゃんの事が?…」

春の体の説明を終え今度はセラフィーノ達の事について語ると鈴は二度驚く。

「ああ、セラフィーノとラウラは昔ある組織の実験・研究の為だけに誘拐され人工型ヴァリアントとなったんだ…彼女達はちゃんとした純粋なハンドレッドを持っているぞ。

後、鈴の甲龍には俺が搭載したヴァリアブルコアがあるぞ」

セラフィーノが付喪紅炎装を、ラウラが黒の宣告神手腕をヴァリアブルストーン状態で皆に見せると驚愕する。

「そんな事が…ってマジ?!今気が付いたわ…」

「あはは…」

ヴァリアブルコアが専用機に搭載されていた事を知った鈴は驚愕する。

「そのある組織って一体何者なのよ?大体の検討はついているんでしょ?」

「ああ、先日の福音討伐に乱入してきたギリウス・クラウス・ウェンズ元第四皇子が一時期世界を混乱に陥れようとしたヴィタリー・トゥイニャーノフという科学者の残党を名乗りこの世界各地で騒動を引き起こしてしまっているみたいなんだ…」

これはクレア会長から聞かされた事だが俺とカレンがこの世界に来た直後、彼女の兄であるジュダルさんがラスィーヤ連邦の元代表選抜であった女性人工型ヴァリアント、エレーナ・スカルコニアの手によって暗殺されてしまったらしい。

その直後、セリヴィア元教皇と彼女に付き従っていた四人の武芸者によって起こされたクーデターの際ワルスラーン社の者の手によって脳だけ残されていたヴィタリーは愛していたジュダルさんが死んだ事で最後に己の持てる思考の力をルナルティアベースを全システムを維持する為に活用してくれたらしかった。

彼女にも人としての尊厳が残っていたようだ。

どうやらギリウスは自身の元兄であったダグラス卿の掲げていた武芸者至上主義すらも否定しその上ヴィタリーの名を利用して己だけが頂点に君臨せんとする世界を創造しようという野望を未だに持っているみたいでどこぞの馬鹿と同じく厄介極まりこの上ない存在である。

「!誰だ!?」

話を終えるとふと扉の向こうから気配を感じた俺は勢い良くドアを開けた。

「し、諸君に緊急の話があって来たのだが…」

「…」

気配の正体は賢姉殿であった。

 

イチカが真実を語り始める直前、Side千冬

「?…一夏!目が覚めて…一体何の話をしているのだ?…」

学園から緊急の通達が入り私はその事を専用機組達に伝えようと大広間に再び来ていた。

だが中から秋彦に刺され重傷で眠っていた筈の一夏の声が聞こえてきて私は彼に悪いと思いながらも聞き耳を立てていた。

「なっ!?…」

彼の話していた内容はとても私にも信じられる様な類のものではなかった。

だが今迄のアイツの異常なまでの機体の性能や何処かよそよそしい物腰を思い出せば納得せざるを得なかったのだ。

「…」

ドアノブに手をかけて開こうとするも私は秋彦の尋問後、束に言われた一言が脳裏を離れない。

 

秋彦の尋問裁判直後

「なあ…一体どうしてこんな事になってしまったのだろうな?…」

「ちーちゃんはさ…過去を振り返ってみる事はした?」

「過去?…」

「私はあるよ…」

「お前がか?!」

「そう…私にも一つ、いや二つの過ちがある。

人は過去を積み重ねるからこそその先の未来をより良く作っていけるんだ…だからこそ愚直に前だけ見ているのは論外なんだよ」

「…」

 

束がどうして突然あんな事を言ってきたのか私には訳が分からなかった。

過去…私は一体何を積み重ねてきたのだ?…

そういえば両親が私達姉弟を残して行方不明になってしまってからというもの弟達の為に一生懸命我武者羅になって働いていたが果たしてそれは充実といえた日々であったろうか?

仕事に勤しみ過ぎていた私はロクに一夏達の他愛の無い話も無下にしてしまっていたような気がする…。

それで本当に幸福な家族の形と云えるのだろうか?

いや、答えは否が大半を占めるであろう。

もしかしたら秋彦達の不仲の原因も其処に…

「誰だ!?」

「い、一夏…」

突然ドアを開けられ私は驚いてしまう。

「何処まで聞いていたんだ?」

「お、恐らく最初から最後までだと思う…」

「はあー…」

話を私に盗み聞きされた本人は怒りの表情を見せていたがどこか満足気な顔も見せていたような気がする。

 

Sideイチカ

まさか賢姉殿に聞き耳を立てられるとは俺も予想外であった。

だが束さんも何やら助言したようだしこれで分からなければ完全に姉弟の縁を切ってやるだけだ。

「それで織斑先生、俺達に何か話があって来たのでは?」

「ああそうだったな。

実は福音の討伐に動いていた自衛隊が帰路で未確認の生物に襲われ増援を要請したらしいが今現在も尚被害を拡大しているとの学園から緊急報告があがってきたんだ」

「何ッ!?…」

どうやら運命は俺達を嘲笑うか…。

 

 

 




次回、サベージに襲われた自衛隊員達を救出するべくイチカ達は今も尚昏睡から目覚めない春季を欠いたまま出撃に臨む事になる。
そこで彼等が目にしたものは驚愕に塗り固められてしまった存在だった。
「臨海学校と陰謀PARTⅩⅡ」


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EPⅣⅩⅧ「臨海学校と陰謀PARTⅩⅡ」

Sideイチカ

「…なんでアンタも出撃してんのよ!?」

「…」

俺と春を傷付けた張本人である愚兄も出撃していた。

その事に対し鈴だけでなく箒以外の皆も不満を漏らしていた。

「こればかりは仕方無いだろう。

織斑先生が戦力を遊ばしておくのは忍びないと言うのではな…」

勿論、鈴達が愚兄の動きをしっかり監視するという条件付きの上でだ。

「コイツが頼りになるなんて全く思えないんだけど?…」

「なんだと!?」

「何よ?その通りでしょう!

味方を犠牲にしようとした卑怯な手しか使えないアンタの自業自得でしょうが!

それでよくもまあ自分は天才だなんて言えるわね!」

「ぐっ!?…チッ!…」

「鈴、その天才(笑}に何を言っても時間の無駄だ。

もうすぐ目標地点に着くぞ?」

「ご、ごめん…」

鈴の物言いに愚兄が逆切レしてくるが彼女も反論し返す。

目標にもうすぐそこまで迫っていたので俺が仲裁してその場はなんとか治まった。

「まずは事前の手筈通りにいくぞいいな?!

後は各自の判断で行動してくれ」

「「OK!」」

まずはオルコット嬢がレーザーライフルの援護射撃で道を切り開く。

「あ、貴方達は?…」

「IS学園から貴方方の救援に駆け付けた次第です。

此処は危険ですから怪物の事は俺達に任せて貴方方は早くお下がり下さい」

「嫌よ!

男性操縦者だかなんだか知らないけれど貴方達なんかに任せられるものか!

私はまだやれるわよ!」

「貴方ねえ!…」

見るからに深手を負ったであろうに自衛隊員の一人がそう言ってくる。

オイオイこんな時にまで女尊男卑思想を持ち込まないでくれ…。

「アンタの勝手な一人よがりのくだらないプライドなんかを保とうとするんじゃない!

アンタだけでなく他の隊員まで無駄死にさせるつもりか!?」

「ぐっ!?…わ、分かったわよ!…

全隊員帰投するわよ」

俺が一喝入れてやって自衛隊員を撤退させた。

「さてと…」

「ぐわっ!?……」

「秋彦!?」

「なんだ!?」

「よもや再び貴様に邪魔されるとはな剣崎イチカアァー!」

「くっくっく!…今度こそ私はこの世界で成り上がるのです!」

「なっ!?…お前達は!?…」

自衛隊の撤退を確認した後サベージの出現地点へと目を向ける。

すると愚兄が背後から何者かに不意打ちを喰らい早々に気絶させられたのを見た俺達は急いで回避した。

愚兄は箒に抱えられている。

すると二度と会いたくないと思っていた奴等が武装を纏いこれみよがしにいた。

「イチカさんこの方達は?…」

「剣崎ハジロー、それに己の地位を保つ為にギリウスと共謀し国に謀反を働こうとしたブラット元首相…俺が二度と会いたくないと思っていた奴等の内の二人だ…」

「剣崎!?それじゃあアイツはイチカの…」

「嫌、此奴は分家の人間だった奴だ。

ある一件が原因で追放されたんだがまさか此処に現れるとはな…」

疑問を感じた鈴達に説明し向き直る。

「貴様に受けたこれまでの屈辱今こそ返させて貰うぞ!」

「我等の力思い知るが良い!」

ハジローとブラットの片目は黄金にだが霞がかった暗い闇を放っていた。

「またギリウスに同調し奴の誘惑に乗って人工ヴァリアントの力を得たか…だがな!」

彼等は攻撃を仕掛けてくるが俺は容易に回避する。

「何ッ!?…」

「ギャアッ!?…」

「アンタの汚れた技などこの身に受けてやるつもりはない!

<残影斬>!」

残影斬のカウンターを二人に喰らわせる。

元々権力に擦り寄ってるだけで武を持ち得ていなかったブラットは気絶し、ハジローも大きく吹き飛ばされる。

「馬鹿な!?…我等は力を得た筈だ!なのに何故!?…」

「その力は所詮は紛い物に過ぎないんだよ!

戦場で傷付き散っていった武芸者、そして義父さんやトウカの痛みと苦しみを理解しようとしなかったアンタ達にその力を扱う資格は無い!」

力が通用しない事に狼狽するハジローに俺はトドメをかけようと再び構えの態勢を取ろうとした…だがその時…

「ぐうっ!?…ならば!…」

ハジローが俺から距離を取ったかと思うと急上昇していく。

「一体何を?…まさか!?…」

俺はすぐに嫌な予感を感じ急いで奴を追いながら叫んだ。

「不味い!篠ノ之箒!今すぐそこから離れるんだ!」

「え?…な、何!?…」

「まずは不慣れそうなそこの女を先に狙ってやる!」

「させるか!」

やはり奴は未だ紅椿の運用に不慣れな箒に狙いを絞って攻撃を加えようとしていた。

彼女は俺の警告を聞いてはいたが体は動いていなかった。

あの馬鹿野郎!

「喰らえぇー!」

「し、しまった!?…」

箒は回避する間も無くハジローの刀撃の直撃を受けてしまうのだった。

が…そこで俺達にも予想外の事が起こるのだった。

 

Side箒

「秋彦、お前は…」

敵の不意打ちを喰らい気絶させられてしまった秋彦を背負いながら思案していた。

彼はとんでもない事件を引き起こしてしまった…今迄私が縋っていたものは一体何だったのだ?

彼の尋問の後、束姉さんに言われた一言が頭の中をぐるぐる廻っていた。

秋彦は集団を率いる才を持っていると彼女は思っていた。

だが彼の腹の裏には自分の手を汚さず邪魔な人間を排除し、尚且つ自身の存在を際立たせようと他人を利用するだけの卑劣極まりない薄汚い男であったのだ。

仮にもし自分があの時あの場で戦っていたとしたら彼は自分を壁扱いしようとしたという事になる。

自身が縋ろうとしていたものが盲信的な間違いだという事に今更気が付かされて箒はどうすれば良いのか分からずに迷いを生じていた。

「私は…」

「篠ノ之箒!今すぐそこから離れろ!」

「え?…」

イチカの声が聞こえ箒は自身に刃を向く敵の存在に気が付くが己に迷いが渦巻いていたせいで体が反応してくれなかったのだ。

「しまった!?…」

だが彼女に届く筈の凶刃は…

 

Sideイチカ

「ば、馬鹿な!?私の一刀がこんな素人同然の小娘如きに掻き消されただと!?…」

「?な…なんともない?…」

箒へと向けられたハジローのセンスエナジーの刀撃は彼女に触れた瞬間武装毎砕けたのだ。

攻撃を加え、加えさせられた当人達はこの事態に戸惑っていた。

「篠ノ之箒、もしやお前は!…」

俺はその現象に唯一一つの心当たりがあった。

どうやら彼女はトウカと同じヴァリアントウィルス無効化体質らしかった。

よもやこんな形で判明するとはな。

だけど待てよ?…俺が彼女を攻撃した時は効いていたな…もしやサベージからのウィルスで目覚めたのか?

「クッ!?…こんな馬鹿な事があって堪るかああー!」

咄嗟にアウターや装甲への被害を防ぐ為に後退していたハジローだが性懲りもなく再び刀を生成し箒にまた刀撃を加えようとする。

「無駄な足掻きだな…」

「ば、馬鹿なああああああこの私がああああー!?」

箒の特異体質のおかげでセンスエナジーを介したものは全部無効化された事でハジローはハンドレッドを強制解除させられ海に真っ逆さまに落ちていった。

「い、一体何だったのだ?…」

「今は気にする事じゃない。

どうやら本命がおでましのようだ」

ポカンとする箒に俺はそう言い構えていた。

「ウウ!…」

「!?なんだこの感じは!…まさか!?皆あのサベージには攻撃するな!」

出現した超弩級型サベージに違和感を感じた俺はこの事をすぐに皆に通達する。

この違和感を感じさせたであろう奴の方へと向く。

「ギリウスお前は!…もしやキナ・サヴェビッチを!…」

「え?…」

「皆!…アレ元は人間だよ!…」

「なんですって!?…」

彼女の名前が出た瞬間唯一知る鈴は驚き、セラフィーノが他の皆に説明すると皆驚く。

「流っ石ご名答!

あの超弩級型は俺が誘拐し実験台となってもらった愚かな少女なのだよ!」

「貴様!…」

平然とそう答えるギリウスを俺は激しく睨みつけた。

「あ~後ついでにもう一つ説明するとね!

君達が相手をしてもらっていた俺が操っていたサベージの正体は何だと思う?」

「なっ!?…」

ギリウスの言葉に俺は驚愕を隠し得なかった。

もし俺の仮説が正しければ奴はとんでもない手段を用いた事になる!…

「そういう事だったのか…」

「ど、どういう事?」

「奴が言いたいのは正確にはサベージを操るシステムの正体だ…」

「そ、それってまさか!?…」

「ああ、恐らくカレンが思っている通りで間違いないだろう」

俺がギリウスの問いかけの謎の答えに辿り着くとカレンも思い当たったのか鈴達に説明する。

「もしかしたら私達が相手にしていたサベージには幼い子供達の脳波が搭載られていたのかもしれません!…」

「「ええ!?…」」

カレンの立てた推測に皆驚きを隠せない。

「ThatsLight!

俺は誘拐し実験に使っていたはいいが人工ヴァリアントの力に適応出来ずに死んだ子供の処分に困っていた。

だがある時閃いたのさ!

その子供達の脳波を使えば人工型ではないサベージをも操れるシステムが構築出来るのではないかと!

そしてその実験は成功し確立に至ったのだよ!」

「な、なんて事を!…そんな死者への冒涜の様な真似を…」

「酷い!…」

「貴様!何処まで外道に堕ちれば!…」

またも平然とそう答えるギリウスに俺達は吐き気を催す。

あのヴィタリーでさえそこまで外道で非人道的な手段は使わなかったというのにこの男は!…

「…」

「心配するなカレン。

もう怒りに身を委ねはしないさ」

「は、はいそうですよね!」

心配そうな顔をするカレンに俺はそう言いギリウスへと突撃しようとする。

「おっと!?剣崎イチカ

今のお前の相手は俺じゃないぜ?」

「何?…」

「コイツとかどうかな?」

ギリウスの背後からまたも何者かが現れた。

「お前は!…何故此処にいる!?…」

「喰イタイ…モット力ヲ喰ワセロ!…」

またも因縁の深い相手でリトルガーデンの皆の協力を得ながら俺とハヤトが最終的に殲滅した筈の人工型ヴァリアントのホムンクルスが現れたのだった。

 

 




次回、ギリウスに操られた親友を救うべく戦うイツカ、そして傷付けられた過去があるもののサベージ化を施されてしまったキナを救いたいと願う音六、己の掲げる信念を貫き通そうとする者達の戦いの火蓋がきって落とされる。
一方、ギリウスの手によって復活・強化された人工型ヴァリアント、ホムンクルスの猛攻にイチカとカレンは追い詰められてしまいそうになる。
「臨海学校と陰謀PARTⅩⅢ」




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EPⅣⅩⅨ「臨海学校と陰謀PARTⅩⅢ」

Sideイチカ

「何故…お前がいるんだ!?ホムンクルス!答えろ!」

「…」

俺達の目の前に向こうの世界で打ち倒した筈の存在であるホムンクルスが現れ驚く。

当の本人は此方の問いには一切返答せず無言のままだ。

「一体何なのよアイツ!?…なんだか物凄いプレッシャーを感じたんだけど…」

「これはまるで…」

奴の出現に鈴達も驚きを隠せず、一方のラウラは別に感じた事があったようだ。

恐らくアドヴァンスドとして、そして人工型ヴァリアントとしての己のもしも…IFの未来を感じ取ったのであろうか。

「奴の名はホムンクルスだ」

「ホムンクルス?確か錬金術とかでよく出てくるような奴よね?」

「ああ、鈴の言う通りではある。

だが奴の本質は極めて異質でありかなり恐ろしい化物…ギリウス貴様か!…」

奴が此処にいる理由を唯一知っているであろうギリウスに疑いの目を向ける。

「知りたいかいそんなに?!

かつてヴィタリー・トゥイニャーノフが0から生み出した人工型ヴァリアントであるホムンクルス。

だがその凶暴性故に産みの親である彼女さえもマトモには彼を制御出来なかった所に目をつけた俺は封印を施されていた彼を解放しあの襲撃作戦を決行させた。

まあそれはお前等のおかげで失敗に終わってしまったがな…だがなこういう時の為に俺はリトルガーデンにスパイを忍び込ませホムンクルスの残骸DNAを回収、ヴィタリー・トゥイニャーノフが残していた研究データのコピーを用いて復活・強化を施してやったまでさ!」

「なっ!?…」

奴の言葉に俺は絶句する。

「さあ長話はここまでにして楽しくそして我が野望の為の前菜として狂乱の宴(パーティー)を始めようじゃないか!

いけホムンクルス!」

「…」

「全機!散開して可能な限り奴等との距離を取るんだ!

特にホムンクルスの奴に接近されたら非常に不味い!」

ギリウスの号令でホムンクルスが此方へ攻撃してくる。

対する俺は急いで全員に指示し対応させる。

「グッ!?…」

「…」

俺が先頭に出てホムンクルスの猛攻を凌ごうと試みる。

「…喰ワセロ!…」

「な、何ッ!?ぐあっ!?…」

だが奴の猛攻は以前にも増して凄まじく捌き切れず俺は盛大に吹き飛ばされてしまう。

強化されたというのもあながち嘘ではないようだな。

だが流石にこれは不味いな…以前の奴の状態だったならばまだしもこれでは!…

それにギリウスの魔の手によってサベージ化を施されてしまったキナ・サヴェビッチも早く汚染の進行を食い止めねば二度と人間には戻れなくなってしまう。

「私がいく!…このまま黙っているなんて出来ないから!…」

「セラフィーノ!?…分かった彼女の事は任せたぞ!」

セラフィーノがサヴェビッチの救出に立候補してくる。

確かに人工ヴァリアントである彼女ならばサヴェビッチを救えるな。

俺は少し考え了承した。

「うん!…ウサちゃんは私の援護をして!…」

「分かったぞ!」

セラフィーノはラウラを連れサヴェビッチの所へと向かって行った。

 

Side音六

私とウサちゃんはサベージ化してしまったキナ先輩を見据えていた。

「ムッ!?これは!…リィ何か分かったか?」

「『どうやらあちら様は音六ちゃんを視界に入れた瞬間に暴れ始めましたね…それ程嫌っておられるのでしょう…ですがその憎しみの感情のせいで大分汚染の進行が早まってしまっています…早くなんとかしないと彼女は!…』」

「キナ先輩…」

弱らせようと試みてみたまではいいが当の本人は私を視界に入れた瞬間、急にその牙を向け始めてきたのだ。

ウサちゃんがリィに分析させていた結果を聞いて私は非常に焦ってしまっていた。

「はあはあ…」

「お姉ちゃん…」

イーくんに先輩を助け出すなんて約束しちゃったけれどもツクモのSEも私のエナジーもあまり多く残っているとは言えずなんとかギリギリ、エナジーバースト出来るかどうかという状態であった。

「私ならばまだSEもエナジーも余裕はある…だから此処は…」

「それじゃ駄目なの!…」

「お姉ちゃん!?何故だ!?」

「それは…」

ウサちゃんが代わりにエナジーバーストをしようとしたが私は止めてしまった。

キナ先輩は私に対して尋常じゃない激しい憎しみをぶつけてきている。

そんな彼女に当事者ではないウサちゃん一人の声が届くとは到底思えなかったからだ。

「お姉ちゃんの馬鹿者!」

「!…」

そう言おうとした私は突然ウサちゃんに思いっ切り頬を引っぱ叩かれた。

「兄上も以前言っておったぞ。

なんでも一人で抱え込もうとするんじゃないってな!」

「…」

ウサちゃんの一言で私ははっとなり目が覚める。

私なんで一人で抱え込もうとしたんだろう…ウサちゃんやイーくん達、そして今はこの場にはいないはーくんという信じられる仲間がすぐ傍にいたというのに…。

「ウサちゃん引き続き援護してくれる?…」

「…ああ!任せてもらおう!」

ウサちゃんの同意を聞き私は再び立ち上がる。

「ツクモもまだやれるよね?…」

ツクモにも問いかけるとコアが僅かに輝きを発する。

まだもう一踏ん張りいけるみたいだ。

「いくよ!…」

私達は再び彼女を見捉えていた。

 

Sideイチカ

「がっ!?…」

「あひゃひゃあ!そらそらそらあ!どうした剣崎イチカァー!」

「モットダ!…モットモットソノチカラヲヨコセ!喰ワセロ!」

セラフィーノ達を見送った後、俺達は強化ホムンクルスとギリウスのコンビネーションに対して劣勢を強いられてしまっていた。

「ウオワアー!」

「不味い!?」

ホムンクルスが咆哮を上げ、俺をすり抜けていき他の皆の所へ向かおうとしていた。

「皆!回避しろ!」

俺は急いで回避指示を出すが奴のスピードの翻弄されてしまい各々思う様に動けない様子だった。

「うわっ!?…」

「オマエイマイマシイチカラ!…ナラバ!」

「え?ちょ、ちょっとなんでこっちに来んのよ!?」

「チカラ!チカラダ!」

ホムンクルスは愚兄を背負っていたせいで未だ満足には動けない箒に狙いを定めようとしたようだが咄嗟に彼女のアンチセンスエナジーの力を感じ取り、狙いを変えた。

鈴や美月に仕掛けていった。

「何故鈴さん達だけが執拗に狙われて私やシャルロットさん、そして箒さんの事は狙ってこないんですの?…」

「なんか変だよね?…」

一方、ホムンクルスが唯一未だ襲ってこないオルコット嬢とシャルは彼の行為を不思議に思っていた。

「もしかすると!…」

俺は唯一思い当たる一つの推測を導き出していたが…

「こ、このぉっ!」

「フン!…」

「なっ!?…私の双天牙月をへし折った上に喰った!?」

襲いかかってきたホムンクルスに対して鈴は咄嗟に双天牙月で対応・防御するが容易く掴まれた挙句に牙月は彼のとんでもないパワーで握り折られてしまい、ムシャムシャと喰われたのだ。

「キャッ!?…」

「美月!…」

牙月を跡形も残さずに喰らい終わったホムンクルスは次に美月へと狙いを変え、襲いかかった。

「くうっ!?…」

「ムダダ!」

美月も矢を当てようと必死になるが奴には一本も掠る事すら無い。

「なら!…」

「ム?」

接近された美月は咄嗟に桜陽弓剣を剣モードに切り替えて応戦しようとする。

「美月、それは駄目だ!」

「え?…キャア!?…」

俺は咄嗟に警告するが時既に遅く、美月は大きく吹き飛ばされた挙句、剣は奴に奪われまたもや鈴の牙月と同じ様に喰われてしまった。

「こ、これは…」

「イチカさん、一体あれはどういう事なんですの!?…」

「あれは奴が力を溜めている証拠だ!…

奴は0から生み出された人工ヴァリアント、センスエナジーの塊が服を着て歩いている様なものなんだ…ヴァリアブルコアの事は説明したよな?」

「確かイチカさん達の扱う百武装…でしたっけ?それや鈴さん達の機体に搭載されている…ってまさか!?…」

「恐らくオルコット嬢の考えている通りだ。

奴はそういう存在だからこそ常に己の力の源となるものを欲している…だからこそ鈴達の機体に搭載されたヴァリアブルコアの存在に気が付きそれを自身の糧にしようとしているんだ!…」

「それじゃあ箒さんが襲われない理由は一体?…」

「それは先程奴等が現れる前の戦いで見た筈だ。

箒は俺達武芸者の力の源であるセンスエナジーを無効、そして体内に侵入したヴァリアントウィルスを完全に打ち消す特異体質を持ち得ている。

そのおかげで紅椿のヴァリアブルコアは狙われずに済んでいる。

最も俺も気が付いたのはお前達と同じだが…」

「そ、そうなんだ…」

未だ状況を理解出来ずにいたオルコット嬢とシャルに俺がそう説明するとやはり驚愕は俺以上のようだ。

ヴァリアブルコアを搭載した弊害がこんな形でくるとは…。

「え?え?」

一方、話題に挙がっている箒本人は話についていけていないようだったが。

「それではイツカさんや音六さん達も危険ではないのでして!?」

「ああ分かっている!」

イツカは未だアヴリル嬢の笑顔を取り戻す為に彼女と対峙し、セラフィーノとラウラはサヴェビッチを救出する為に奮闘してくれている。

そんな三人の邪魔は絶対にさせねえ!

「おっと待ちなあ!」

「ギリウス其処をどけ!今は貴様の相手をやっていられる余裕は無いんだ!」

「こっちはそうもいかないんだよ!」

空気も読まない狂乱者が当然の様に邪魔してくる。

「イチカ/さん!」

「オルコット嬢、シャル!?…」

「此奴は僕らがなんとか抑えるからイチカとカレンちゃんはホムンクルスを追って!」

「お二人共、早く!お行きなさって下さい!」

「…二人共、すまない!いくぞカレン!」

「は、はい!」

二人が射撃でギリウスの足止めを買って出てくれ俺とカレンは急いでホムンクルスの痕を追う事にしたのだった。

 

Sideセシリア達

「一人はアンチセンスエナジー体質持ちのようだが足手纏いの奴を背負っていて結局は足手纏いの二乗、二人はホムンクルスに武装を喰われたか。

それで残る君達たった三人如きでこの俺を足止め出来るなんて思っているのかい?」

「足止め如き…」

「そうですか…ですが私達をたかが足止め如きなどと舐めて下さっては困りますわ!」

ギリウス…この方が行ってきた事は到底許せるものであってはなりません!

正直私達三人だけでは厳しいかもしれない。

だが彼の暴虐による死者への冒涜、そしてまた再び新たな犠牲者を生まない為にもなんとかして此処で彼を討ち倒さねばならない。

「そう…ならあひゃあ!」

「いきますわよ!」

「OK!」

仕掛けてきたギリウスに対して私達は構える。

「其処ですわね!」

「そらっ!」

「いっけえー!」

シャルロットさんと簪さんとの連携で的確に射撃を当ててギリウスの張っている防御障壁を削る。

「チッ!…確かにやるようだな…だが!」

己が徐々に追い込まれている事を悟ったギリウスは姿を消す。

「その対策はもう出来ていましてよ!」

「なんだと!?…」

奇襲を防がれた事に驚いた彼は咄嗟に遠のく。

「たとえハイパーセンサーに掛からない特性を持ち得ていようと貴方から発せられている殺気までは誤魔化せませんわよ!」

「!?」

「貴方は以前の私の様に己の力に酔い痴れて慢心している。

ですからイチカさんの持つ本当の強さには勝てなかったのですわ!」

「はっ!何を言うかと思えば…君ら如きに俺の何が分かる?!」

「まあ理解したくもありませんわね…貴方はこの世に生まれた時から既に歪んでいるようですし己を世界の支配者と自惚れている身には一生分からないでしょうね!」

「言わせておけば!…」

彼は私の言葉に逆上し攻撃の手の激しさを一層強めてくる。

だがそんな曇りだらけの攻撃に当たる程私達は弱くはありませんわ!

「シャルロットさん、簪さん!」

「OK!僕ももうチャージは完了しているよ!」

「私も!…」

本当の強さというものを私に教えて下さったイチカさん、そして分かち合った仲間の皆の思いが私達を奮い立たせる。

「お行きなさい!ブルー・ティアーズ!」

「全銃火器フルバースト!」

「全弾発射!」

「しまった!?ぬうわあああー!?…」

私のブルーティアーズとシャルロットさん、簪さんの全武装一斉射撃集中砲撃をギリウスに浴びせた。

「はあはあ…よくもまあこの俺にここまでの傷を付けてやってくれたね!…」

「そんな!?あの直撃を受けてまだ平静の状態を保っていられるなんて!…」

「クッ!?…」

煙幕が晴れた先には未だギリウスが武装を保ったまま立ち尽くしていた。

やはり私達の機体では後一歩及びませんでしたか…。

「なら!もう一撃いって!…」

「そ、そいつはどうかな?…」

シャルロットさんが駄目推しの一撃を決めようと再びチャージを開始しようとする。

だがそれを読んでいたかのようにギリウスは懐からある物を取り出してくる。

「いけません!シャルロットさん、簪さんも今すぐにチャージを中断して下さい!」

「へ?」

「早く!」

「う、うん!…」

それが何であるのかすぐに気が付いた私は慌ててシャルロットさん達に攻撃を中断するように言う。

一瞬呆けた彼女達だがすぐにチャージを中断する。

「はっ!…どうやら君にはコレが何なのか分かったようだね…」

「貴方まさか!…」

私の推測が正しければこの男が取り出してきた物は…

「君の推測通りだよ…アヴリルとキナとかいったかな?

コレはあの小娘達に仕掛けてある爆弾の起爆スイッチさ!…」

「貴方って人はどこまで!…」

「酷い!…」

私達がこれ以上攻撃を加えようとすればこの男はそれよりも早く起爆スイッチを押して彼が操っている二人を爆発させようとしてしまうだろう。

それだけでは収まらず下で必死に二人を止める為に戦っているイチカさん達までもが巻き込まれてしまう事にもなる。

「ははははー!大人しくなりな!…」

「「…」」

これ以上動く訳にはいかず私達は只その場でじっと事態が悪化しない事を祈るばかりでした。

 

Sideイツカ

「な、なんだって!?…」

ギリウスの野郎!アヴリルになんて事しやがる!

「…目標を駆逐…」

「アヴリル正気に戻ってくれ!じゃないとお前が…うあっ!?チッ!…」

此方の攻撃はアヴリルがハンドレッドの分離を繰り返し防御され一向に届かず、未だ正気には戻らない彼女の攻撃を防ぎ続けるしかない。

アヴリル…どうしたらお前は…アタシは心の何処かで諦めかけていた。

 

Sideラウラ&音六

「なんだと!?…」

「…あの人の話、本当だよ…」

「確かに違和感を感じるな…」

ギリウスの突如の告白を聞き私とお姉ちゃんはサベージへの攻撃の手を緩めてしまった。

このまま彼女に仕掛けられた爆弾の居所が分からないまま攻撃を加えればいつ爆発を引き起こしてしまうか分からない。

「リィ!彼女に仕掛けられている爆弾は何処だ?!」

「『先程から分析をかけているのですが未だ判明出来ていません!…』」

「クッ!?なんて面倒な事を!…」

「…」

リィの分析結果を待つしか出来ず私達はその場に立ち尽くしてしまっていた。

 

Sideイチカ

「キャア!?」

「チィッ!?…カレン大丈夫か!?」

「な、なんとか…」

強化ホムンクルスにエナジーを喰われてしまいなんとか武装を保つのに必死になるばかりの防戦一方であった。

「クッ!?…」

「モットチカラヲヨコセェー!」

奴がこの世の者とは思えぬ形相で闇切り改・弐式に掴みかかり残りのエナジーを喰らおうとする。

「この!離れろっ!」

俺はなんとかホムンクルスを突き飛ばす。

「はあはあ!…」

エナジー残量が非常に不味い!…

だが、奴にはギリウスが恐らくカレンの歌に対して策を施している筈だ。

このままでは!…

 

Sideカレン

「イチカさん!…」

イチカさんの剣技も私のビームもホムンクルスに喰われ届かず一方的な防戦を強いられてしまっていました。

「♪~」

「か、カレン今すぐ歌を止めろ!」

「え?…」

ホムンクルスの力を抑えようと歌い出した私ですがどうしてかイチカさんがやめるように言ってきて訳が分からないまま茫然としていると…

「キミノウタナドモウボクニハ効カナイヨ!」

「そ、そんな!?…キャアアァァー!?」

「カレン!?」

以前なら私の歌だけでも抑えられたのに今のホムンクルスには全く以て効力がなく、私は彼の攻撃を受け、咄嗟にNバリアを展開させましたが難無く突破されて大きく吹き飛ばされてしまいました。

「うぐっ!?…」

「サア、アノトキハクエズジマイダッタケド…キミノアジハドンナモノナノカナァ?!」

「ひっ!?…」

ギリギリ!…

「うああ!?…」

ホムンクルスは距離を詰め私を掴み上げ、首を絞め上げようとしてきてその口を大きく開こうとしてきました。

私は恐怖に襲われて悲痛な声を上げる事しか出来ませんでした。

「ホムンクルス貴様!カレンを離せえぇー!」

「イ…イチカ…さん…来ちゃ…駄目…」

「フン!…」

「がはっ!?…」

私を助けようとイチカさんがホムンクルスに攻撃を加えようとしますがとても強固なNバリアを張られそれを突破出来ず彼の打ち払いをモロに受けてしまい吐血してしまう。

「はあはあ…」

イチカさんが攻撃を加えてくれたおかげで私は解放され急いで距離を取りますが首を絞められてしまっていたせいか声が中々出せぬまま立ち尽くしてしまっていた。

「『諦めないでカレンちゃん!』」

「!」

今の声は!…

 

Sideセシリア達

「不味いですわね!…」

「このままじゃイチカ達が危ないよ!…」

「ですが…」

爆弾を握ったままのギリウス、なんとか起爆スイッチ目掛けて狙撃出来ないかと隙を探し出そうとしますが一向に隙は見当たらず彼を睨みつける事しか出来ずに事態が好転しないまま私達は立ち尽くすしかなかった。

ですがその時…

ドシュン!

ボガン!

「何ッ!?」

「「!?」」

何処からともなく弾丸が起爆スイッチ目掛けて飛来してきて破壊したのだ。

これには私達もスイッチを握っていたギリウスも驚きを隠せないでいた。

「今のは一体何処から?…あら?…」

♪~

「これは…」

「歌が聴こえるな…」

直後、カレンさんの歌とは違う歌声が聴こえてきた。

「なっ!?…そんな馬鹿な!?何故奴等が、奴等までもが此処にいる!?」

ギリウスの先程よりも驚愕に満ちた表情に私達は困惑していた。

 

Sideイチカ

「!この歌声は!…それに今の狙撃は…」

俺も聴こえてくる歌声と先程の狙撃に驚きを隠せないでいた。

「『…』」

「そしてあれは!…」

「ムッ!?…キ、キサマハ!…」

俺の驚きと同時にホムンクルスの奴も突如この場に現れた者達に驚愕していた。

 

 




次回、突如として戦場に現れた者達リトルガーデンの面々、そして武芸者最強のダブルタッグが今此処に復活を遂げる!
「臨海学校と陰謀PARTⅩⅣ」




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EPⅤⅩ「臨海学校と陰謀PARTⅩⅣ」

やっとスパロボV発売日キタ━━━d(゚∀゚)b━━━!!プサエディは予約出来なかったけど…
それより読者総員!推奨戦闘BGM超用意ィー!!!


Sideイチカ

「あ、あれは!…」

「に、兄さん!?そ、それにサクラさんまでどうして此処に?!」

俺とカレンは突如戦場に現れた者達に驚きを隠せないでいた。

「『よお、久方振りだなイチカ!』」

「『はぁい!カレンちゃんもお久し振り!』」

「ああ!…」

ハンドレッドのプライベートチャンネルで通信してきたのは俺の一番の戦友でありカレンの実兄である如月ハヤトとカレンのアイドルの先輩であり人工型ヴァリアントである霧島サクラさんだったのだ。

「『リザさんからイチカ達のエナジーが乱れ始めていると聞いて急いで降下して駆け付けて来たんだ!』」

「そうだったのかすまない…」

「『お前が謝る事じゃないさ』」

心配をかけてしまった戦友に申し訳無く思っているとハヤトはそう言ってくれる。

やはり良き戦友である。

「あの、サクラさんも此処にいるって事はもしかして…」

「『ああ、此処に来ているのは俺達だけじゃない。

リトルガーデン、ルナルティアベース基地の選抜隊メンバー全員だ!』」

カレンの疑問にハヤトが答える。

やはり!…ならば先程の狙撃は恐らくフリッツの【不動要塞】<ストロング・ホールド>によるものか!

「キサマライツマデハナシコンデイルツモリダ?!」

「『やれやれ、あちらさんは待ち呆けしているようだな。

イチカまだやれるか?』」

「ああ!…」

先程のサクラさんの歌によってエナジーが大分回復していた。

無論じっとしている事など出来ないので俺はハヤトと共にホムンクルスを見捉えた。

「キサマラマトメテクラッテヤル!」

「『出来るものならな!』」

「いくぞ!ホムンクルス!」

俺達はこの因縁に終止符を打つ為一気に奴の下へと迫っていった。

 

Sideカレン達

「『準備は出来てる?カレンちゃん』」

「は、はい!」

「『そっか!

なら新しいメンバーとも一緒にやれるわね!』」

「『こんにちは!』」

「えっと貴方は?」

私はサクラさんが連れてきた見知らぬ少女に疑問を感じる。

「『私はミリスよ。よろしく』」

「『彼女は私達の新たな仲間よ!』」

「そうなんですか!よろしくお願いします」

ミリスと名乗った少女に驚くが今はこうしている場合ではない。

「歌いましょう!イチカさん達の力となる様に!」

「「『ええ!』」」

サクラさんが【妖精の紡ぐ物語】<フェアリー・フェアリーテイル>、ミリスさんは洋琴型ハンドレッド【天使の堅琴】<ヨハネス・ハープ>を展開する。

私も奇跡の聖符の全身装甲を展開しサクラさん達と共に一斉に歌い出した。

「「『♪~♪ー~』」」

推奨戦闘BGM Sideイチカ&ハヤトらD-セレクションメンバーズ「BLOODRED」Or「TABOOLESS」

Sideカレン&サクラ&ミリス「EYESONME」(カレン&サクラVer)Or「Jewelsoflove」

Sideフリッツ&レイティア「HardyBuddy」

Sideセシリア達原作IS組「STRAIGHTJET」

Side音六&イツカ「escape」

 

Sideイチカ&ハヤト他

「グワアァ!?…ア、アタマガスゴクイタイゾ!…コノミミザワリナフキョウワオンヲイマスグヤメロー!」

「誰が止めさせてやるかよ!」

「『ああ、全くその通りだイチカ!一気に奴に畳み掛けるぞ!』」

「OK!」

カレン達の歌の効力を受け強化ホムンクルスはもがき苦しみ出し奴の力が段々と落ちていくのを感じた俺は闇切り改・弐式を、ハヤトは飛燕・改をそれぞれ構える。

「『はっ!』」

「せいやあっ!」

俺達はそれぞれエナジー波をホムンクルスに向けて飛ばす。

「グギャア!?」

「ハヤト!タイミングを合わせてくれ!」

「『了解!久し振りの俺達の技、見せてやろうぜ!』」

「1、2の今だ!」

エナジー波を喰らい怯んだ隙を狙って一気に距離を詰める。

「「『<双刀残影斬>!!』」」

「ギイィシャャア!?」

「『イチカ!』」

「分かっている!<残影斬>!」

「『<残影斬・弐式>!』」

駄目押しとばかりにそれぞれの技をホムンクルスに喰らわせてやった。

「グッ!?キサマラ…オボエテイロヨオレハマタイツカカナラズフッカツシテヤル!…ソシテチカラヲ…グワアアアー!?……」

「何度でも相手になってやるさ!…」

ホムンクルスは断末魔の悲鳴を残し今度こそこの世から完全に消滅した。

「ハヤト、悪いけどまだ要請は生きているよな?」

「『ああ、早い所彼女達を助けにいこう!』」

 

Sideセシリア達

「そんな馬鹿な馬鹿な馬鹿な!?…何故だ!?何故リトルガーデンの奴等が此処に現れるんだ!?…」

「リトルガーデン…」

ギリウスが狂った様な声を出しながらそう言う。

もしかして彼が恐れているものは!

「ねえ、皆アレを見て!」

美月さんの声に私達は差された方へと向けた。

「「!?」」

遥か海上にはとても巨大な戦艦が航行していたのだ。

「もしかしてアレがリトルガーデン?」

「その様ですわね…」

その戦艦をよく見てみると各所に居住区らしきものが見えた。

其処からなにやら人影らしきものが出撃していくようだった。

「救援ですの?…」

希望の光が差し掛かってきたのだ。

「『「♪~♪~♪~」』」

「わあ!…」

「なんて力強い歌と声なんですの…」

「力が溢れ出してくるわ!」

「これならいけるかも!」

私達に再びの希望の光が差し込みギリウスを見捉えた。

 

Sideギリウス

「やめろ!やめろ!やめろー!(不味い、不味い!…ホムンクルスには如月カレンの歌の耐性データしかインプットされてない。

霧島サクラ、それにノートルダム教皇の四使徒の一人が協力しているだと!?

予想外にも程があり過ぎる!…)」

予想だにしないリトルガーデンの奇襲にギリウスは内心穏やかではいられなかった。

ホムンクルスは彼がいくら強化の手を加えたといえど所詮は不完全な存在でその生態はサベージに最も近いのだ。

だからこそ耐性データを入れた。

だが救援に現れた霧島サクラ、ミリス両名のデータは乏しく耐性データはカレン一人だけに留まっていたのだ。

「糞っ!糞があっ!」

カレン達の歌の恩恵を受けて彼もエナジーはほぼ全開に近い形になっていた。

だがたった一人でリトルガーデンとイチカ達の攻撃を掻い潜るなど不可能に等しかった。

こうなれば彼に残された手段は一つしかない。

「サベージ共!奴等を蹴散らせぇー!」

「なっ!?まだ湧いてくるのですの!?」

「そんじゃここはばいなら!」

「に、逃がしませんわよ!ってああ!?…」

セシリア達が新たなサベージの出現に驚いた隙を狙ってギリウスは透明能力を駆使してその場から逃亡を許してしまった。

 

Sideクレア達

「戦況は?」

「如月ハヤト、剣崎イチカがホムンクルスと交戦!これを見事に撃破!

ですが戦闘海域周辺に新たにサベージの出現を確認しました!」

「新たにですの…それで手配犯の身柄は?」

「駄目です!既に索敵範囲外に!…」

「くっ!…逃げられてしまいましたか…ならこれより新たに出現したサベージの駆逐へと移行します!

選抜隊は出撃を急ぎなさい!」

「「了解!」」

ようやくルナルティアベースからリトルガーデンへと帰還したクレアは非合法研究・実験及び脱獄の罪によりS級指名手配犯となったギリウスを取り逃がしてしまった事に歯がゆむ。

だがいつまでも過ぎ去った事を後悔している暇はない。

クレアもまた己のハンドレッド、アリステリオンを展開し出撃していった。

「結構な数ですわね!…」

「敵さんも余程余裕が無くなってきて躍起になっているって事ですよ副会長」

「無駄話をしてる暇があるんなら狙撃してよフリッツ~」

「悪ぃ悪ィレイティア、さっき一発結構小さい獲物に撃ち込んでやったばかりだからちょっとエナジーチャージ中なんだわ」

「もう!…」

「貴方達今はさっさと手を動かしなさいな!」

「へーい/はーい」

ギリウスが苦し紛れに新たに呼び出したサベージ駆逐には【獣王武神】全身武装を展開したレイティアはそして先程ギリウスの握っていた起爆スイッチを見事にピンポイント狙撃した不動要塞・全身武装を構えるフリッツと喧嘩に発展しそうになりそこにエヴァー・ラスティングを構えたエリカが仲裁する。

「おっし!チャージ完了!ドデカイ一撃いけるぞ!レイティア、副会長!」

「よっし!」

「分かりましたわ!」

フリッツの砲撃を合図にエリカはサベージを纏めて拘束し、レイティアは獣王爪を構え攻撃を加える。

 

「此奴等!…」

「うん…とても深い悲しみを感じる…」

「そういえばシャロのねーちゃんが言ってたっけ?

ここら一帯にいるサベージには人工ヴァリアントの力に適応出来ずに死んじまった子供の脳が乗せられているって…」

「許せねえ!…」

自分達の育ての親であったヴィタリーもここまで外道ではなかったと怒りに震えるクロヴァン達。

そう全ては彼女の名を己が私利私欲の為に利用したギリウスの支配によって引き起こされたものだ。

彼等の怒りは相当なものである。

「来る!…」

「おっと!」

ネサットの警告を受け、クロヴァンはサベージの攻撃を回避しオルトロスリべリオを投擲する。

「そっこだあ!」

すかさずナクリーがデュオヴァルガでサベージを斬り裂く。

「姉ちゃん!」

「あの子のを使わせて貰おうかな…複写展開!

やあっ!」

クロヴァン達の合図を機にネサットは付近で戦っていたラウラのシュヴァルツェアゴッドスマ―ケンハンドを左目の「真理の瞳<トゥルース・アイ>」で複写・展開し叩き込んだ。

 

「皆さんに告げます!一斉砲撃いきますわよ!

射線上から離脱しなさい!」

既に後ろで砲撃態勢を整えさせていたクレアもバスターキャノンを召喚していた。

「1、2の!」

「「撃てー!」」

バスターキャノンを筆頭に数々の砲撃が飛び交いサベージを半数殲滅させた。

「後は頼みましたわよ如月ハヤト、剣崎イチカ」

 

Sideイツカ

「力が湧き出してくる!だけど…」

「うう!?…」

歌が聴こえ、アタシには力が溢れ一方のアヴリルは苦しんでいた。

その証拠を裏付けるかの様に彼女の生物型ハンドレッドも動きが鈍くなっている。

恐らくギリウスの奴が彼女にまだ細工を施していやがったのだろう。

「『イツカさん、起爆スイッチは何処からかの狙撃のおかげで機能致しませんわ!』」

「そうか!アヴリル…今助け出すぞ!」

戦友の報告を聞いてアタシは一安心する。

彼女を縛る最も厄介な鎖が外れた今なら!

「はああー!」

アタシはエメラルライドスピアにパワーを込め一気に解放する。

「うっ!?…」

「アヴリル!」

仰け反ったアヴリルを助ける為、アタシはすかさずエメラルライドシールドを構えながら加速する。

「<玄武緑楯>!」

ワンオフアビリティーを発動し、彼女の残りの障壁を削っていく。

「うあああー!?…」

障壁を削り切りアヴリルの腹にシールドを当て気絶させる事に成功した。

「はあはあ…やったぞ!…」

アタシは急いで気絶したアヴリルを背負い後方へと下がった。

 

Side音六&ラウラ

「『やっと発見しました!

足下に爆弾があります!』」

「そうか!お姉ちゃん!」

「うん!ウサちゃん、彼女を惹きつけてくれる?…」

「了解した!」

サクラ達の歌の恩恵かリィの分析能力が飛躍的に上昇しギリウスのかけていたジャミングを突破、遂に爆弾がある箇所を見つける事が出来た。

「ツクモお願い!…」

私は付喪紅炎装を再度展開し、ドラグーンで足下を正確にかつ慎重に焼き切って爆弾を取り除く手段を用いる事にした。

「ウガアァー!?」

「我慢して下さい先輩!…」

苦痛に満ちる先輩サベージに私は優しく語りかける。

「よし!…」

足下をようやく焼き切り終わり爆弾を取り出す。

「ウサちゃんお願い!…」

「任された!はあ!」

取り出した爆弾をウサちゃんのハンドレッドで遥か上空に吹き飛ばしそこで爆発させた。

後は!…

「いくよ!…」

私はエナジーバーストを解放し先輩との意識共有空間を開いた。

 

「『先輩!…』」

「『あたしには何も無かった…』」

空間の中で蹲っているキナ先輩がいた。

「『コレが先輩の記憶なんだ…』」

「『パパもママもちっとも構って…あたし自身の事なんて見てくれない!…』」

「『…』」

そうか…だから家族に少しでも振り向いてもらおうと…やり方は間違っているんだけども…。

「『大丈夫だよ…』」

「『あ、アンタは!な、なんで!?…』」

私が優しく抱きしめると彼女は驚いた表情をする。

「『キナ先輩、貴方は決して独りぼっちなんかじゃない!…ただやり方を間違えていただけの事…だから…』」

「『アンタ、許すというの?…あれだけ酷い事をしたあたしを?!…』」

「『変わろうという思いがあるなら少なくとも私は貴方を否定はしないよ…』」

「『アンタ…』」

先輩は手を伸ばしてくる。

「『ごめんなさい!ごめんなさい!…』」

「『ん!…』」

謝罪の涙を流しながら変わろうとする先輩の手を私は優しく掴んだ。

 

「…」

「やったのだなお姉ちゃん!」

「ん!…」

意識共有空間を後にし私は元に戻り気絶した先輩を抱えながらウサちゃんと共に皆の所へと戻った。

 

Sideイチカ

「はあはあ…」

「『やったなイチカ!』」

強化ホムンクルスを見事撃破しハヤトが労いの言葉をかけてくる。

どうやら皆それぞれの戦いを終えたようだ。

「ハヤトお前達は…」

「この不審者が!止まりやがれ!」

「『!』」

「チッ!あンの馬鹿が!…」

ハヤト達にこの後どうするのか聞こうとした瞬間、何時の間にか復活していた愚兄がハヤトに斬りかかろうとする。

「『!』」

「グッ!?……」

斬りかかろうとした愚兄をハヤトは当たる寸前に彼を突き飛ばした。

その合間にレーザーが横切っていった。

俺はこれ以上茶々を入れられないように愚兄を思い切り気絶させておいた。

「「!?」」

「ギリウス…あれだけの偉そうな大口をほざいておきながら撤退へと追い込まれるとはな…」

「まあ、多勢に無勢って事でしょうがないんじゃないかな~?」

「フン…」

「「なっ!?…アレは!…」」

突如又現れた乱入者達の機体を見てオルコット嬢とラウラが驚いていた。

「何故私のブルーティアーズの姉妹機であるBT二号機の【鋭い風】<サイレント・ゼフィルス>が!?」

「それにアレはドイツの新型である【白き茨】<ヴァイス・ローゼ>だと!?何故今此処にあるのだ!?」

「そうか…此奴は貴様等の兄弟機であったか…何簡単な事だ我等亡国企業<ファントムタスク>が奪取したまでのことだ」

「…」

「亡国企業ですって!?」

遂に本格的に動き出してきていたか亡国企業は…

「一体何が目的なんですの?!」

「フン…本来ならば三下になぞに話す事ではないが教えてやろう!

それは世界を壊す事だ!」

「世界を壊すですって!?」

束さんとはえらい違いだ。

彼女達亡国企業が目論み望むのは世界の破滅でしかない。

「ああ、あわよくばそこの織斑秋彦と織斑春季を此方側に連れていければと思っていたのだがな…」

「何?…」

何故そこで愚兄と春の名前が?…すぐに驚愕の恐るべき結論に至った俺だがあえてこの場では口にはせずにいた。

「此奴等全員纏めて潰さないの~?Mのアレなら容易い事でしょ~?」

「ロン、今回の我々の任務は織斑秋彦と春季両名の誘拐だ。

それが失敗したのならば撤退するしかあるまい。

それにまだアレは満足には使えないのでな…」

「そっか~!ツマンないなぁ~!…」

のんびりとしてはいるが尖った口調のロンとMという少女はそう言いながら撤退していった。

アレとは間違いなくハンドレッドの事であろう。

ならば彼女達も恐らくは…今は思案していても仕方無いか。

「総員、帰還するか」

「「ええ…」」

ハヤト達の姿も何時の間にか見当たらずリトルガーデンの艦も戦線から離脱していた為俺達もそのまま帰還した。

多くの謎は残ったままだが。

 

 




次回、多くの謎を残したまま帰還を果たしたイチカ達。
だが春季は未だ昏睡から目覚める事無くそのまま学園へと戻る事になる一行。
秋彦の処遇、元姉との仲は改善されるのか?
一方、ハヤト達リトルガーデンはIS世界の詳しい情勢を探る為IS学園へと足を運ぼうと計画する。
「帰還、そしてそれぞれの想いと記憶PARTⅠ」



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EPⅤⅩⅠ「帰還、そしてそれぞれの想いと記憶PARTⅠ」

スパロボV、ブリヲの暗躍早いですねえ~まさかジブリールが生きているとは…。
ちなみに既にヴィルキスとヤマトはMAX改造済じゃあい!・w・
でも特典コードが…中古で買ったPSVita前の持主がPSストアの認証外してなくて使えなかった…。




Sideイチカ

「そうか、イギリスとドイツの最新型が…」

「ええ…報告は以上です」

自衛隊への緊急救援は多くの謎を残したまま終息し、俺達は旅館へと帰還し報告会が開かれていた。

亡国企業の連中に新型ISが奪取されていた事をオルコット嬢が報告すると賢姉殿は難しい顔をしていた。

「思わぬ非常事態でこの旅館への宿泊が予定していたよりも長くなってしまったからかな?」

「それもあると思うが…」

シャルがその様子に疑問を持ちそう言う。

賢姉殿…そういやあのMと名乗った少女は顔立ちが凄く良く似ていた気がしたが…。

それはともかく思いがけぬ救援のおかげでギリウスの魔の手から救出したアヴリル嬢は洗脳が完全に解け、イツカの説得もあり晴れて明日からIS学園に正式な生徒として通う事が可能となった。

一方のサヴェビッチ先輩はというと

「本当にごめんなさい!…」

「いいよ…ただし後で他の人達にも謝ること…」

「わ、分かったわ…」

必死な表情でセラフィーノに再度謝罪をしていた。

「賢姉殿、貴方に話があります残ってもらえますか?」

「ああ…私も丁度お前と話がしたかったのだ。いいぞ」

俺は他の皆が退出した後、賢姉殿を呼び止め話をしていた。

「向こうの世界の話は聞いていただろう?」

「…何を言いたいのだ?」

「賢姉殿…いや千冬姉!」

「!」

俺の言葉に織斑先生は一瞬驚く。

「俺は今迄向こうの世界が唯一の居場所だと思っていた。

義父さんとホクト先生の想い、いやそれだけじゃない…かけがえのない戦友達との絆があったからこそ強く生き戦い抜いてこれたんだ。

だけどこの世界にもまたかけがえのない友が出来た」

「イチカお前…」

「そのおかげで心の奥底でまだ千冬姉との姉弟の絆は生きていると感じられたんだ」

「イチカ!お前の口からそれを聞けただけでも安心だ!」

俺と千冬姉は久方振りのハグをし合った。

「それで…春の容態は?」

「束からの報告ではまだ目覚めていないと…」

「…俺は春の見舞いに行ってくる」

「私も行かせてくれ。

秋彦の監視は山田先生に既に任せてあるのでな」

「分かった」

後は愚兄の腹の奥底をどうにかしなければ…

 

翌日

「荷物早く纏めて詰め込めよ」

「手伝いますよ先生」

「助かる!」

結局、春が目覚める事がないまま旅館から帰る事になった俺達。

「…」

愚兄は千冬姉の隣で監視され、物凄く居心地の悪そうな表情をしていたが奴の自業自得でしかないのでクラスメイト達も全員無視を決め込んでいる。

「ハッロー!このバスに剣崎イチカ君って子と織斑秋彦君はいるかしら?」

「はい俺です」

「は、はい!」

金髪の少女が発車直前のバスに突如乗り込んできて俺と愚兄を指名してくる。

「ありがとう私とあの子を助けてくれてね!」

「?…ああ貴方は銀の福音の…」

「ええ、ナターシャ・ファイルスよ。

剣崎君は何やら大変な事になったらしいとは聞いていたけど無事でよかったわね

後秋彦君は…」

「は、はい!俺は人…」

「あの子を止める為とはいえ他の人も巻き添えにしただなんて私は全然嬉しくないわよ」

「ウッ!?…」

愚兄が空回りな返礼をしようとするとファイルス嬢がそう冷ややかな目で告げ、クリティカルヒットする。

「後、春季君だっけ?

彼のお見舞いには私達米軍も後で行かせて頂くわね」

「ああ、ありがとうございます!」

それだけ言ってファイルス嬢はバスから降車していった。

 

学園へと帰還した翌日

「…」

「はーくん…」

「春季…」

未だ目を覚まさない春は学園内の医務室へと移されていた。

セラフィーノが凄く心配そうな表情でベッドに眠る春の傍に寄り添っている。

「だ~か~らぁ~!俺達は見舞いに来たんだっての!

許可証だってほら!」

「嘘おっしゃい!」

「?」

医務室の外でなにやら騒がしい声が聞こえてきたので俺達は気になり外に出て訪ねる。

「どうかされたんですか?」

「この不届きな不審者が学園内に侵入していたからとっちめてやろうと思ったまでよ!」

「あ、お父さん!」

「音六!此奴なんとかしてくれ…」

「うん、先生この人は私のお父さんなんです…」

「チッ!…」

どうやら春の見舞いの為にと学園へと訪れていたセラフィーノファミリーのボスさんが未だ女尊男卑思想を持ったままの教諭に絡まれていたようだ。

「あの女は後でみっちりとお仕置きをしておきますので」

セラフィーノが助け舟を出すと教諭は舌打ちをし去っていく。

合流してきたレキナさんが物騒な事を言う。

「程々になレキナ…。

音六、それで春坊の容態は?」

「ううん…はーくんはまだ…」

「そうか…」

「お?タイセイ、お前も来ていたのか!」

「先生!」

「師匠!」

あ、不味った…。

「…行方不明になっていたとは聞いていたが生きておったのだな一夏!」

「あ…」

つい久方振りに亥曇先生に再会出来た事に思わずやってしまった。

まあ、この人に隠し事は出来ないからまあいいか。

「む?貴方方は?」

織斑教諭が入室してきて見知った顔ではない面子がいる事に疑問を感じ問う。

「ああ、アンタはブリュンヒルデの…」

「春季と一夏の姉である織斑千冬だな?」

「あ、ああそうだが?…」

「これは申し遅れました。

俺はタイセイ・フェッロン・セラフィーノ。

音六の父親です」

「私は専属執事をやらせて頂いておりますレキナ・灰鉄」

「そういえば以前に一度貴方とは顔を合わせた事はあったがその時はまだ自己紹介はしていなかったな」

「思い出したぞ!貴方はあの時の!」

そういえば春が以前にも怪我で入院した時にこの千冬姉と亥曇先生は顔を合わせていたんだったな。

「私は鳳 亥曇だ。よろしくお願いする」

「鳳?という事は貴方は…」

「ええ、この学園に通っている鈴音は私の姪なんですよ」

「そうでしたか!」

ようやく鳳家と繋がったな。

「お、叔父さん!?なんで此処に!?」

「お、鈴元気にしていたか?」

「ええ…」

「よろしい!」

「叔父さんはもしかして…」

「ああ、私は愛弟子の見舞いに来たんだ」

「そうよね…」

「鈴も久々に鳳流奥義の鍛錬してみないか?」

「え、遠慮しておくわ!そうだわ、イチカならどう?」

「すいません俺は今は剣崎流の技しか使う気は起きないので…」

「そうか残念だな…」

鈴が俺に飛び火させてきたので華麗に回避する。

「それで亥曇さんは分かりましたが何故セラフィーノさんの御家族が此処に?」

「おいおい…春坊の奴まだ踏み切れていなかったのか?…」

「織斑先生は本気?…音六ちゃんの様子を見てたら一発で分かるようなものじゃない」

「すいません(^^;)この人なんせ異性経験0なものですから…」

千冬姉の発言に俺以外の男性陣、そして鈴は呆れていた。

「まあいい…とにかく娘の将来の花婿、そして我がセラフィーノファミリーの跡継ぎになるかもしれない奴だ。

心配しないという理由がない」

「なっ!?…その様な事を突然言われても私は…それに跡継ぎとはどういう事なんです?」

「そういえばまだだったな」

「私から説明させて頂きます。

この方はかのイタリアンマフィアの一角であるセラフィーノファミリー現十四代目首領であらせられるのです」

「なっ!?マフィアだと!?…」

「まあ、当然の反応だな…だけど勘違いはしないで頂きたい。

我々は他のマフィアやヤクザ共とは違って最も真っ当な手段を用いて運営しているのでな。

詳しい事は此処の生徒会長である更識の嬢ちゃんが知っているぜ?

それにあくまで春坊が跡継ぎっていうのは俺が彼を候補推薦に出しているに過ぎないから後は彼の意思次第だな」

「そ、そうか…」

マフィアと聞いて内心焦った千冬姉だったがタイセイさんの話を聞いてほっとしたようだ。

「まあ、とにかく見舞いの品だ。

春坊が早く回復するように祈っているぜ」

「私も弟子達に任せっきりで飛び出してきたのでなそろそろおいとまさせてもらうとしよう」

「そうですか」

タイセイさん達はそれだけ言って学園を後にした。

 

その頃、リトルガーデンでは Sideクレア

「この世界にセリヴィア元教皇が逃げ込んだのはまず間違い無い筈ですわよねリザ?」

「『ええ、このまま彼女を放置していたらこの世界もいずれ大変な事になるわね…それにはまずはこの世界の情勢だけども…』」

「剣崎イチカと如月カレンの通うIS学園ですか…彼等にコンタクトを取ってみるしかありませんわね」

私は一刻も早くセリヴィア元教皇、それに未だ逃亡し続けているS級指名手配犯、ギリウス元皇太子その他の行方を掴む為に一度IS学園の者達と接触を試みる計画を立てていた。

「クレア、君は当然赴くつもりなのだろう?」

「シャーロット博士…ええ勿論そのつもりですわ」

「その時は僕も同行させて貰うけどいいかい?」

「それはどうしてですの?」

「聞けば向こうには新しい武芸者がいると聞く。

イチカ君だけじゃまだ心許無いからね」

「分かりましたわ。では改めて日程とメンバーを伝えますのでそれでよろしいかしら?」

「OK!」

 

戻って、Sideイチカ

「…」

「「…」」

教室では箒と俺、アヴリル嬢を除いたクラスメイト全員が奉仕作業処分を言い渡されていた愚兄を睨みつけていた。

「な、なんだよ?…剣崎テメエだって可笑しな事になっていたらしいじゃねえか」

「あの時は俺も正気じゃなかっただけだ。

お前と比べられるのは心外だな」

「なんだと!…てっ!?なんだいコレは?…」

愚兄に向かって物を投げ付け始める事態になっていた。

「なんだよですって?噂、全部聞いちゃったんだから!

剣崎君も大変な事になっていたらしいけどアンタのやらかした事は大違いだわ!

敵を撃墜する為に背後から味方毎刺すなんてサイテー!」

「それに刺された春季君は未だに目を覚まさないっていうじゃない!

秋彦君、自分の弟を巻き添えにするなんて…」

「もし死んじゃったりしてたらアンタどう責任取るつもりだったの?一体どういう神経してんのよ!?」

「あれじゃあ音六ちゃんも可哀そうじゃない!」

「そうよ、そうよ!」

「グッ!?…」

あの事件は物が物だった為にあえて箝口令が敷かれていたがやはり教諭達の噂を耳にした生徒が大勢いたようだ。

反論の余地が無い愚兄は押し黙るしかない。

「まあまあ、皆抑えてくれ。

でないと同レベルに見られちまうぞ?」

「「そ、それは嫌だな…」」

「オイ!?…」

俺が仲裁してやると愚兄と同レベルに見られてしまうのが余程嫌なのか皆抑えてくれた。

愚兄は只一人それに納得していなかったが取り合うだけ時間の無駄でしかない。

そして昼休み

「『ぴんぽんピンポーン!全校生徒の皆さん、それに先生方も今日は食堂に集合!

この私更識刀奈生徒会長から皆さんに是非共とても大事なお話したい事があります!☆』」

「!?」

更識会長からの突然の放送に皆なんだなんだ?と疑問を感じていた。

とてつもなく嫌な予感しかしないんだが…。

 

 




次回、刀奈の突然の号令に不安を感じるイチカ。
果たして刀奈の考えた策とは?
そして、春季は…。
「帰還、そしてそれぞれの想いと記憶PARTⅡ」


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EPⅤⅩⅡ「帰還、そしてそれぞれの想いと記憶PARTⅡ」

体がいくつあっても足りんものなのだだな創作意欲というものはー!



Sideイチカ

刀奈会長の急な全校放送によって食堂へと召集をかけられた俺達。

だが強制奉仕作業でいない筈の愚兄もいる。

物凄く嫌な予感しかしないんだが…

「皆集まってくれたわね!どうして全校生徒に召集をかけたのか疑問に思うでしょうがそれは他でもないわ!

当事者である剣崎君達はもう分かっているだろうし、そうでない他の組の生徒諸君は先生方の噂を各々聞いている筈!」

「ええ!?あの噂って本当だったの!?」

「い!?…」

刀奈会長の演説を聞き事情を知らないアヴリル嬢以外驚く皆、そしてまさか既に全校生徒に広まっているとは思わなかったのか青ざめた表情で固まる愚兄。

「そこの織斑秋彦君に対する理事長が下した処罰に皆さんは納得されていない事でしょう」

「!そうよ可笑しいわ!」

「いくら貴重な男性IS操縦者だからって…」

続け様の演説に皆口々に言い合う。

「あ~…皆落ち着きなさいな。

でもこれには一つの理由があったのよ」

「「一つの理由?」」

会長の言葉に皆は疑問を感じる。

「勿論事件の事もあるけどそれに加えてこれだけはどうしても私は許せないって思える事案が判明したからなの」

「!?」

「!…」

やはり会長は俺達姉兄弟の真実に辿り着いたようだ。

「待ちなさい!逃がさないで!」

「何ッ!うわ!?…」

「逃がさないよ~!」

不味いと本能が感じたのかその場からそろー…と逃げ出そうとする愚兄だったが会長の指示を受けたのほほんさんが彼を即座に捕まえて拘束した。

「んん!話を続けるわね。

そこの秋彦君は弟である春季君、そしてもう一人の弟に対して酷い苛めを先導していたのよ!

それも十三年にも渡るね…」

「あの、会長さん春季君は勿論だけど、それは織斑先生にもう一人弟がいたって本当ですか?」

「ええ本当よ…それは本人の口から聞いた方が良いかもね」

「…更識会長、それは本当です…」

「箒!?」

「私も幼い頃、秋彦と一緒になって美月の事を苛めていましたから…」

「姉さん…」

生徒の疑問に答えるかの様に箒がそう告げ、箒の裏切りに唖然とした表情で見上げる愚兄。

彼の中では箒が自分の身可愛さに自身を売ったと思っているであろうがそれは大きな間違いである。

彼女は愚兄が持つ真実にようやく気が付かされたのだから…これから変わろうとする者を否定する気は無い。

「詳しい事は直接本人に聞いてみた方が良いかもね」

「…」

そう言いながら会長は俺へと視線を向ける。

「「は!?…」」

皆は何故この話で会長が俺へ視線を向けたのか疑問に思いポカンとなる。

勿論俺の正体を知るカレンや鈴、美月、ラウラを除いて。

「あはは…皆には隠していたけど俺の本当の名は織斑一夏。

本来は織斑家の次男だ。まあ二年前に俺の存在はなかった事にされたがな…」

「「ええ!?」」

俺が自身の正体を明かすと皆驚く。

「イチカあんた…」

「イーくんはいーくんだったて事?…」

「そうみたい…」

心配そうな反応を見せる鈴と天然ぶりを発揮し疑問を感じるセラフィーノ、彼女の疑問に頷くシャル達。

「なっ!?…テメエがあの一夏だと!?馬鹿な!?…」

「ああそうだ…」

「これは紛れも無い事実よ」

ようやく俺だという事が分かり驚愕する愚兄。

「嘘だ!テメエ如きが俺に迫る奴などと…」

「はあー…春にも言われたのに貴様はまだ理解していないようだな」

「なんだと?」

「「他人を一括りにするんじゃない」まあ過ちも正そうとせずに己の事しか未だ顧みない貴様では一生理解しろという方が無理なようだがな」

コイツの思考はもう分かりきっているから言葉をぶつけた。

「俺は二年前のあの日から新たな家族とも呼べ、師とも呼べ、又はかげかえのない大切な戦友達に出会って強く成長出来たんだ。

だからこそ貴様は俺の正体に今迄気が付けなかった…これで本当に終われる…織斑秋彦いや愚兄、貴様はこれからおとなしく法の裁きを受けるんだな!」

「なっ!?どういう事だそれは!?…」

「そのままの意味だ」

「秋彦君、貴方がかつて先導し春季君、美月ちゃん、一夏君に行っていた苛めはとても卑怯で到底許せるものではないわ!

確たる証拠や裏付けも確実に揃えてそのコピーを既に織斑先生に渡しておいたから言い逃れなんかもさせないわよ!」

「なっ!?…」

まさか姉も既に自身の味方ではなくなっていた事に絶望の表情を浮かべる愚兄。

「秋彦ちょっとこっちに来るんだ…」

「ち、ちふ…じゃなかった織斑先生これにはだな…」

「早く来い!」

「は、はいいい!…」

織斑先生に睨まれながらも未だ見苦しい言い訳をしようとした愚兄だったが彼女の一喝に怯み連れていかれた。

「えっと剣崎君?それとも織斑君?」

「ああ、それなら今迄通り剣崎名で呼んで欲しいかな」

「分かった!ゴメンなさい私達噂に振り回されていたようで…」

「いいよ…」

あの馬鹿がバラまいていた俺と春に対する黒い噂は今では何の効力もなくなった。

 

「何から何までありがとうございました刀奈会長」

「良いって事よ!これは私が勝手にやっただけの事だからね」

「ですが大変でしたでしょう?」

「それもそうね。

一応二年前の誘拐事件の対応に対する汚点を政府の馬鹿共に突き付けておいて正解だったわね」

「おおう…」

女利権が未だ本来の姿に戻っていなければそれも織斑千冬の弟という事でまだ庇おうとする馬鹿がいたら難しかったであろう。

俺達の為に方々を駆けずり回ったであろう刀奈会長に礼を言った。

「それに秋彦君には私も個人的に怒りをぶつけたかったからねえ!」

「ああ、簪の機体の事やタッグマッチのペア分けの時の事ですか…」

「まあ、秋彦君はこれからずっとIS学園の処分と同時に二十四時間監視・今迄の罪に対する処分が加わった上織斑先生にも知られたのだからもう表の世界を堂々と歩けなくなる事は確実よね」

「あはは…そういえば白式はどうなるんです?」

愚兄は専用機剥奪・代表候補生からの除名処分も受けたようで肝心の残された白式の処遇は一体どうなるのか疑問を感じていた。

「それならセカンドシフトのデータだけ取って新たな機体に生まれ変わらせる計画が始動されたらしいわ」

「そうか」

「それはよかった…」

白式がもしもこのまま解体・凍結処分なんて受けていたらどうしようかと思った。

白式…ハクナ自身に罪は全く以て無いのだから。

セラフィーノもハクナが感謝していたと告げた。

「それで…春季君の容態は?…」

「…傷はいくらか治っていますが未だ意識が戻らないそうです…」

「そう…後は彼の回復を祈るだけね…」

「ええ…」

俺が正直に告げると彼女達は春の回復を祈っていた。

 

その頃、Side千冬

「さて、何か申し聞きはあるか秋彦?…」

「ち、織斑先生俺はその…だな…」

更識から突然渡された情報の中で今迄一夏や春季、篠ノ之の末妹に秋彦が行わせ、又自らも苛めに加わっていたという重い事実を受け止めた私は秋彦に対し対話していた。

一方の秋彦はまだ言い逃れしようと思っているのか定かではないがかなり狼狽していた。

「…これも私のせいであるという訳か!…」

今の今迄家族という名の繋がりだけしか見てこなかったという私自身が犯してしまった過ちが秋彦をここまで歪ませ、又一夏が一時私の元から離別し、関係をバラバラにしてしまうという事態を引き起こしてしまった事を改めて自覚した。

「とにかくだ。秋彦、お前をもうISに触れさせる事もまともな人生を歩ませる事も出来んぞ」

「そんな馬鹿な!?…」

秋彦は千冬にそう諭され絶望するばかりか理不尽な不満を募らせていた。

確かに千冬は常に強くあろうとした。

だがそれは両親が蒸発し残された大切な家族を守る為に必死になったからだ。

対する秋彦はそれが強者の務めといわんばかりに自己中心的な価値観を他者に押し付け屈服させた上で己の存在を際立たせる事しか考えていないだけに過ぎない。

そう、全てが彼自身の愚行が招いたという結果になっただけだ。

まあそんな彼では千冬の本意に気が付く事は一生ないだろう。

「俺は…俺はー!(剣崎イチカ!いや、織斑一夏、そして春季!俺をよくもここまでコケにしたテメエ等を決して許さない!…)」

「秋彦!すまない!…」

「ゴフッ!?…」

秋彦はわざと罪に対する狂乱を思わせ、裏ではまた静かによからぬ事を思案していた。

勿論今の千冬には演技だと見破られる可能性もあったがやはり血の繋がった家族だからか一発顔を殴られただけであった。

「話はもう終わりだ…奉仕作業に戻れ!私がついていくからな」

「は、はいいいー!(後はこの面倒臭い作業や監視の目からどう逃げるかだな…)」

 

Sideハクナ

「……」

「『…』」

私は私の元マスターが傷付けてしまった残る一人を回復させる為にコアネットワークを駆使して、ママと共に彼の治癒を試みていた。

「?…」

「『あ…』」

それが功を成しようやく彼の意識を目覚めさせる事に成功した。

だが私はその時気が付けなかった。

彼にとっても重大な欠陥が発現していた事に…

 

翌々日、Sideイチカ

「なんだって?春の意識が戻った?」

「え、本当ですか!?篠ノ之博士」

「『本当だよー!回復にはまだまだ時間がかかると予想していたんだけど昨日の夕方はっくんの意識が回復していたんだよ!』」

「よかった!…」

セラフィーノも吉報を聞いて嬉しそうになっていた。

「なら今すぐ春の見舞いに行かせて頂きますね!」

「『あ!ちょ…ちょっと皆そんなに慌てなくても…』」

俺は束さんの一瞬の間が気になったがその時は特に気にする事無く春の見舞いに向かった。

それがあんな事になっていようとは…。

「春!大丈夫だったか!?」

「え?…一夏兄さん僕は大丈夫だよ?」

「ん!?…」

病棟を訪れた俺達の労いに春は返答する。

だが俺は春が俺を呼ぶニュアンスと一人称に違和感を感じた。

「はーくん本当によかった!…」

「…」

「「春?/はーくん?」」

俺とセラフィーノは春の様子が可笑しい事にに首を傾げる。

「えっと…君は誰?…」

「え?…」

「まあ!?」

「あの春季?一体何の冗談?

面白くないわよ?」

「は!?…」

春が発した一言に皆驚くが更に彼の次の一言に戦慄する。

「えっと…本当に貴方達は誰なんですか?」

なんて事だ…。

 

 




次回、怪我の後遺症で小学二年生以降の記憶、旧友である鈴、そしてIS学園のクラスメイト達との思い出、己が師との特訓の日々、そして一番大切である筈の音六らセラフィーノファミリーとの記憶迄をも失ってしまった春季。
そんな彼の記憶をなんとか取り戻そうと各々奮闘するが…。
一方、未だ反省の色を見せず理不尽な悪意を蓄積しまたよからぬ事を秋彦は企んでいた。
「帰還、そしてそれぞれの想いと記憶PARTⅢ」



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EPⅤⅩⅢ「帰還、そしてそれぞれの想いと記憶PARTⅢ」

Sideイチカ

「「…」」

「?」

よもや予想し得なかった非常に困った事態が起こってしまい俺達は混乱するしかなかった。

愚兄に負わされた怪我からようやく回復し、目覚めた春は俺を呼ぶニュアンスと一人称がおかしく、そしてセラフィーノの事は愚か鈴の事まで知らないと言ってきたのだ。

もっと詳しく問いただした所彼の記憶はどうしてか小学二年生くらいの時までしかなかったのだ。

「ねえ一夏兄さん、お母さんとお父さんは?それに千冬お姉ちゃんと秋彦兄さんは?」

「俺達の両親はもう今はいないんだ…千冬姉は今仕事中だ。

後あの馬鹿の事はもうお前が気にする必要は無いんだ」

「?」

キョロキョロしながら質問してきた春は俺の返答に対して?を浮かべている。

医者や束さんが言うには恐らくは刺されたショックによって一時的な記憶の混濁が引き起こされたのではないかという事だが…。

「春、聞くがお前の守りたいものはなんだ?」

「守りたいもの?分かんないよそんなむずかしいこと…」

「…」

やはり…俺は顔をしかめるしかなかった。

今までの春であったならばすぐに答えられた筈の質問だ。

やはり俺達の両親がいなくなってしばらくし愚兄の苛めによる影響が強くなり始めた頃だからか春の表情はとても暗いものだった。

「…はーくん…」

「春季…どうしてこんな!?…」

セラフィーノは茫然と春を見つめ、鈴はこの事態に憤慨していた。

信頼する一友人という鈴はとにかく、まだ本当の意味では踏み出せてはいないが春の事を大切に想っているセラフィーノにとってもこの事態は到底受け入れ難い現実だろう。

「ねえ…悪いんだけど私と音六ちゃんと三人で春季と少し話したい事があるの。

良いわよね?」

「ああ、分かった」

鈴がそう言ってきたので俺は快く了承し退室し報告に向かった。

 

鈴Side

「いい加減に目を覚ましなさいよこのバカ春季!」

私は無駄だと分かりながらも心のどこかではまだ希望はある筈だと思い春季に一喝してやった。

「目なら覚めているんだけど?…」

だけど当の本人は理解出来てはいなかった。

「そ、そういう事を言ってるんじゃないわ!…私の事は思い出せなくても構わないわ…だけどせめて音六ちゃんの事だけでも!…早く思い出してよ春季!…」

「鈴ちゃん…」

只信頼されている一友人だけという私はとにかく、誰が見ても一番に春季の事をこんなにも想ってくれている音六ちゃんの事を思うと心が締めつけられてくるのだ。

私の大切な親友でもある音六ちゃんがこれ以上傷付くのなんかは見たくないという私の我儘でもあった。

「鈴ちゃん…もういいの…」

「音六ちゃん!?だけど!…」

「…」

これ以上此処でこんな事をしていても仕方無いと悟ったのか音六ちゃんは首を振り病室から出て行こうとしたので私は慌てて追いかけていった。

「音六ちゃん!良いの?…もしもこのまま春季の記憶が戻らなかったとしたら?…」

「…」

「あんた…」

最悪の事態を想定し音六ちゃんを説得しようとするも私はやっと気が付く。

彼女の眼差しはまだ希望を失っていない強い色を持っている事に…。

「まだ希望はあるのね?…」

「うん…もしもはーくんがまだアレを持っていてくれているなら…」

「その何かを探し出せれば良いのね!教えて音六ちゃん!私、皆にも頼んでくるから!」

「分かった…」

春季の記憶を呼び戻す手段があるかもしれないと聞いた私は事の詳細を聞き皆の所へ応援を頼みにいくのだった。

 

その頃、Side秋彦

「畜生が!なんでこの俺がこんなくだらない作業なんかやらなきゃいけないんだよ!…これというのも全部アイツ等のせいなんだ!」

ぶつぶつと明らかな逆恨み言を言いながら秋彦は強制無償奉仕作業をさせられていた最中であった。

元々生来彼の中には良心なんてものは微粒子レベルですら存在していなかったのだから。

「!…」

秋彦は現在の状況を見て口元を綻ばせていた。

事もあろうに監視の人員が臨時の集会があるとして全員場を離れてしまっていたのだ。

それというのも秋彦が作業など真面目にやる筈もなく彼の迫真の演技を見てすっかり騙され油断してしまったせいでもあるだろう。

秋彦はこのチャンスを逃す手はないと見てその場から逃走してしまったのだった。

 

 




次回、音六の提案する春季の記憶を取り戻す方法とは?
一方、監視員を撒き逃走を図った秋彦は更なる企みを目論んでいた。
「帰還、そしてそれぞれの想いと記憶PARTⅣ」



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EPⅤⅩⅣ「帰還、そしてそれぞれの想いと記憶PARTⅣ」

アイエエーー!?しばらくの間に偉い増えているぅー!
大感謝!



Sideイチカ

「ある…たった一つだけ…」

「何?…」

そうセラフィーノが口を開く。

愚兄が引き起こした惨劇の影響によって春が失ってしまった記憶を取り戻せる方法があると…。

「もしも…今でもはーくんもアレを持っていてくれているのなら…きっと…」

「アレ?」

「ちょっと待ってて…取ってくるから…」

セラフィーノが一旦病室から出て寮に戻って行ってから十分後…

「お待たせ…これ…」

「これは?…」

セラフィーノが持ってきたのは大分あちこちがほつれてはいたが可愛らしい白い猫のぬいぐるみだった。

「それが春季の記憶を取り戻せるかもしれない方法?」

「うん…はーくんもすっかり忘れているのだと思うけどあの時の事私は凄く覚えているから…」

「え?…」

「そういえば春に聞いた話以前にも彼と会った事があると言っていたな」

「ええ!?」

「ん…鈴ちゃんといーくんにも話すね…」

鈴も疑問を持つが俺は以前セラフィーノがそう言っていたことを思い出し言うと鈴は凄く驚いていた。

そして、セラフィーノは語り出そうとするが…。

「秋彦君は此方に来ていませんか!?」

山田教諭が慌てた様子で駆け込んでくる。

「あの馬鹿?…いや見ていないですけど…まさか!?…」

「その…秋彦君の姿が学園内に見当たらないんですよ!…」

鈴の予想通りに山田教諭が告げる。

「あンの糞元兄貴が!…」

事もあろうにあの馬鹿は教師達の監視の目を掻い潜り学園内から姿を消したみたいだ。

「!あの野郎まさか!?…」

「え、ちょっと!?…ああもう!音六ちゃんは急いで織斑先生を呼んできて!」

「う、うん!…」

俺は物凄く嫌な予感を感じ急いで病室を後にした。

鈴もセラフィーノに千冬姉を呼ぶ事を頼み急いで後を追っていった。

 

その頃、Side秋彦

「アイツ等が悪いんだ、この俺を散々コケにしやがって!…」

監視の目を掻い潜り学園からの脱走を図った秋彦は逆恨みをより一層募らせていた。

彼が向かった先は織斑家だった。

何故わざわざ学園を脱走してまで彼が実家に戻ってきたのかそれは…

「へへへ!…」

この時、千冬のものぐささが祟るとは思いも寄らなかっただろう。

そう、秋彦は実家の春季の部屋にまだある彼の私物を物色し滅茶苦茶にしてやろうと画策していたのだ。

もし白式がまだ彼の手元にあったのならハクナもこの正気の沙汰と思えぬ事態の片棒を担がされていたかもしれない。

「ははははは!…どうだあ?!コレで少なくとも春季は俺に逆らえなくなる筈だー!」

春季が努力の影の末に勝ち取った色んなコンクールの賞状やその他の物は努力など無駄だと考える秋彦にとってはゴミ同然の物でしかなかったのだ。

秋彦は一体何処に隠し持っていたのか懐からライターを取り出し部屋中にガソリンを撒き散らし火を付け始めた。

 

Sideイチカ

「なっ!?…」

「織斑家が燃えている!?…」

千冬姉が必死に守ろうとしていた物が、俺達の帰る家が火事に見舞われていたのだ。

俺は嫌な予感が当たってしまった事に苦虫を噛む。

追い付いてきた鈴もこの様子に絶句するしかない。

「俺があの馬鹿野郎をとっちめてくるから鈴は119を!」

「分かったわ!」

鈴に通報を頼み俺は百武装を展開し燃え盛る家に急ぎ突入した。

あの糞愚兄、そこまで外道に堕ちたというのか!…

「さてと今の内に脱出…」

「うおおおー!」

「なっ!?て、テメエ…なんで俺の居場所が分かった!?」

「…」

間一髪脱出を図ろうとしていた愚兄をなんとか取り押さえる事に成功する。

愚兄は俺が此処にいる事に驚きを隠せないといった表情を浮かべていた。

やはり目先の己だけの幸福しか考えていないな…。

「そもそも一夏、テメエや春季なんかがいなきゃ俺はこんな事にはならなかったんだよお!」

「下らんな!…」

「なんだと!?…」

「責任転嫁もふてぶてしいと言っている!

春にも散々言われていた筈だ!

他人を一括りにし、努力を嘲笑い己の才能に胡座をかくだけのお前は決して天才なんかではない…どんな凡人よりも愚か者にしか過ぎないてな…挙句の果てにここまで外道に堕ちるとはな…」

「て、テメエ!…何処まで俺の邪魔をしやがれば!…」

パチパチッと不意に燃えていた春の本棚が近くにいた愚兄に倒れかかっていた。

「チッ!…」

「ウグッ!?……」

俺は仕方無く装甲腕を振るって愚兄に腹パンを繰り出し気絶させ脱出しようとした。

「ン、コレは!…」

脱出の最中俺はある物に目がいき、どうしてもそれが必要だと判断し、それも持ち出して今度こそ愚兄を抱えながら脱出した。

消防隊の素早い尽力で愚兄が放った火は約一時間後には鎮火されていた。

だが家は無残にも見る影がなくなってしまっていた。

「こ、これは一体どういう事なんだ!?…」

ようやく駆け付けてきた千冬姉も家の惨状に茫然としていた。

俺は気絶させていた愚兄を千冬姉の前に降ろす。

「もしや秋彦が家を!?…」

「…」

俺は無言で頷く。

まさか愚兄が殺人未遂だけでなく放火事件まで起こすとは彼女には到底予想出来なかったであろう。

「…これが秋彦を止められなかった私の罪なのだという事なのか…」

「千冬さん…」

鈴も千冬姉を強く責める様な事は出来なかった。

大体、元より愚兄は千冬姉の名誉を利用していただけの虎の威を借りていただけの愚者に過ぎない。

流石の彼女でも愚兄の内面までもは制する事は不可能だった。

流石にこれ以上愚兄の擁護など出来る訳もなく彼は千冬姉からも正式に絶縁され、また束さんも完全に見捨てた事でようやく逮捕され一生を棒に振る事となった。

だがまだ何か嫌な予感が拭えないんだよなぁ…。

 

 




織斑家の再建と春季の記憶については次回。


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EPⅤⅩⅤ「帰還、そしてそれぞれの想いと記憶PARTⅤ」

Sideイチカ

「いーくん、それは!…ちょっとの間借して!…」

「やはりか!…勿論だ!」

学園から脱走を図り挙句に織斑の家に放火した愚兄を取り押さえた後、俺は急いで病室に戻った。

セラフィーノが俺が春の部屋から持ってきた物に気が付き手に取って春の傍へ駆け寄っていった。

それは彼女が持っていた猫のぬいぐるみとカラーバリエーションが違うぬいぐるみだった。

ちなみに茶猫だ。

少し火事の影響ですすけてはいるが…疑問は何故春がこのぬいぐるみを持っていたかだ。

まあ、すぐに判明する事か。

 

Side春季

「はーくん、コレ!…」

「?…」

えっと…せ、せ…セラフィーノさんだっけ?

どうして彼女はこんなにも僕に対して親しそうに接してきてくれているのだろうか?

訳が分からなかった。

そんな彼女は僕にとても可愛らしい茶猫のぬいぐるみを差し出してきた。

もう一体の色違いのぬいぐるみを抱えながら微笑んでいる。

あ、あれ?…少し前にも似た様な事があったような気が…

「ウッ!?…」

僕は一瞬頭痛に襲われ頭を抑える。

「はーくん!?…」

セラフィーノさんに物凄く心配される。

「ううっ!…」

そ、そうだ!…ようやく思い出した!…

それは…

~十年前~

「はあー…」

秋彦兄さんと箒姉さん、彼等に纏わりつくしか能の無い腰巾着達に散々邪魔をされ僕は休日は家にいるのが凄く嫌で明確な目的等もなく只街中をぶらついていた。

「ン?…」

そんな僕の目にとある光景が入ってくる。

「ニャニャー♪」

「ニャ!♪」

「ふーにゃー~ん~…」

「…」

女の子が二匹の野良であろう仔猫と道隅で戯れていた。

「ウニャ!」

「あ…」

だけど遊び疲れたのかどうなのかは知らないけれど内一匹が何処かへ行ってしまう。

だがそこで…

「不味い!…」

その仔猫がすぐ近くの歩道に飛び出してしまったのだ。

「フギャッ!?…」

キキーッ!と大型トラックがブレーキをかけるが結局仔猫を轢いてしまった。

「あ!?…」

だが事もあろうにそのトラック運転手は仔猫の心配など全くせずにそのまま走り去って行ってしまったのだ。

「ああ!?…」

女の子もこの悲劇に悲鳴を上げていた。

あの運転手!…だがその前に轢かれてしまった仔猫を早く助けないと!…

「ぼ、僕に任せてくれないか?!」

「え?…あ、うんお願い!…」

「分かった!君は此処で待っていてくれ!」

女の子は一瞬ポカンとなり僕を見るがすぐに気を持ち直し頼んできた。

僕は急いで仔猫を抱えて動物病院に向かい獣医の先生に預けた。

そしてすぐに待たせていた女の子の所に戻った。

「あ!…あの子は助かるの?!…」

女の子は仔猫の容態を凄く心配して聞いてくる。

「分からないけど…」

正直あの速度で轢かれてしまったしな。

処置も早いとは言い難いし後は獣医さんの腕次第という事になるな。

「きっと大丈夫な筈だよ」

「そう…」

それを聞いて安心した表情に女の子。

後は…あの明らかに法定速度違反の運転手を通報しなきゃな。

「おう?千冬さんとこの弟君じゃないか!

おやその子は?…ははーん!」

「?…」

「そんなんじゃないですって!…って今はそれ所じゃないんです!」

偶然、八百屋のおじさんに遭遇し女の子と居た事を茶化される。

女の子は意味が良く分からないらしく頭に?を浮かべていたが僕は思わず気恥しくなる。

がすぐに気を取り直して説明する。

「はは、悪い悪い。

それで何かあったのか坊主?」

「先程大型トラックに仔猫が轢かれました。

ですがその運転手は助ける事もせずにそのまま走り去って行ってしまいました。

無論猫は偶然付近にいた僕が病院に連れていきましたので…しかしあれは明らかなスピード違反でしたよ…」

「むう、それは酷いな…ここの所、女尊男卑のせいでお先真っ暗って所もあるが…」

おじさんの言う通りだ。

いくらそうだとしても無関係の者を巻き込んで自暴自棄になられては更にお先が真っ暗になるだけだ。

「とりあえず車番は撮ってありますけど…」

「どれ…む!この車番は…」

僕が控えていた車番をおじさんに見せると険しい表情になる。

「この番号はうちの弟の息子の奴のだ…本当にすまない…」

「ええ!?…」

まさかおじさんの知り合いに犯人がいたとは予想外であった。

僕とおじさんの証言のおかげでスピード違反の上仔猫を轢いた犯人は捕まった。

スピード違反についてはやはり女尊男卑の影響で仕事が減ってしまった事による暴走だった。

猫については余裕が持てなかったみたいだな。

あの女の子とは翌日も会う約束をした。

そして翌日、入院させていた子猫の状態を知る為に彼女を連れて病院を訪れた。

「傷が酷い状態でしたのでもう少しだけでも処置が遅ければ危険でしたがもう大丈夫ですよ!

ですが安静にはさせておいて下さいね」

「そうですか!」

「!♪…」

獣医さんから無事を聞いて僕と女の子は安心していた。

彼女は仔猫を頭に乗せてとても上機嫌だった。

「…」

「ン?…」

そして彼女が僕に眩しい笑顔を向けてくる。

「!///~…」

僕は恥ずかしさが我慢出来なくなり目を背けてしまう。

「?…」

女の子は不思議そうな顔をして覗き込んでくる。

そうだ!

「ちょっと待ってて!」

「??…」

僕は良い事を思い付き付近のゲーセンへと足を運んだ。

そして取った景品を彼女にプレゼントした。

大きめの猫のぬいぐるみだ。

「これ!…」

「これしか思いつかなくてさ…君にもあげるよ!」

「ありがとう…!」

女の子は一瞬ポカンとした表情をするがすぐに嬉しそうな表情になり礼を言ってきた。

僕ももう一体のぬいぐるみを抱え家に帰った。

だが秋彦兄さんに見つかれば何を言われるか分かったものではない。

僕はそのぬいぐるみをずっと分からないようにテープで机の下に固定したままにしてしまっていたままだった。

それから自己紹介もしなかった事もあったしその女の子と出会う事はなかった。

あの時、再び巡り逢えた日が来るまでは…

 

「そうだ、だから…」

「は、はーくん!?…」

すっかり忘れ去ってしまっていた記憶が呼び起こされ俺は泣き出しそうになる。

それを見た音六が驚く。

そんな彼女は名前を知らなかった俺の事を…ずっと覚えていてくれたんだ!…

「全部思い出せたよ!…ありがとう音六!」

「はーくん!…」

俺はその場の勢いと嬉しさのあまり彼女を抱き締めていた。

恥ずかしさなどとうに吹き飛んでしまっている。

後は…

「イチカ兄さん、鈴心配かけちゃってゴメン!…」

「そうか、お前本当に記憶が戻ったんだな!…」

「ホントによかったよ~!…」

イチカ兄さんと鈴に記憶が戻った事を伝えると二人とも安心した表情を見せていた。

俺はイチカ兄さんに記憶が戻っていない間の事を聞いた。

「そんな事が…」

俺は秋彦兄さんが学園を逃げ出し家に放火し逮捕された事を聞いた。

結局アイツは俺の言葉を理解せずに変わる所か悪化の一途を辿っていっただけか…まあ完全な犯罪者になったのならば尚更金輪際関わる事はないだろうが…。

「ああ、だが一番大切な物は守れただろう?」

「ああ!…」

イチカ兄さんが偶然見つけてくれたこのぬいぐるみがなければ俺は音六との本当の初めての出会いもこれまでの記憶も取り戻せなかったかもしれない。

織斑の家はこの事件の事を聞いたタイセイさんが援助してくれたおかげで再建させる事が出来た。

 

その頃、?Side

「くっそー!…なんで俺がこんな所に入れられなきゃならないんだよー!」

警察署の留置場で騒いでいたのは織斑家に放火した罪で逮捕・投獄された秋彦だった。

彼は一向に反省の色など見せなかった。

いや己の行いが罪だと全く認めていないのだ。

神は正に天武の才を与えた者を誤ったのであろうか。

尚、束が流した彼の一夏や春季、美月に行っていた過去の虐めの数々の証拠、その他ブリュンヒルデの名を利用して腰巾着と一緒に万引きや恐喝紛いの事を行っていた等の余罪等も含めて更に重い刑が執行されるのを只黙って待つしかなかった。

だが…

「ふふふ…」

そんな彼を利用し易いと目を付けた者がいた。

 

 



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EPⅤⅩⅥ「友との再会」

Sideイチカ

「『もうホントに心底怒りが湧いてきたよ!

まさかアイツが脱走してまで織斑家を燃やしに行ってただなんて…』」

春が記憶を無事に取り戻しこれ迄の日常が戻ってきた翌日、あの元愚兄が織斑家を白昼堂々放火した事は瞬く間に他の目撃者から拡散されてニュースでも取り上げられた。

流石に轡木理事長もこれ以上あの愚か者を学園に在籍させる訳にはいかないとIS委員会に強く進言した事であの馬鹿を庇う者は学園内には誰一人としていなくなりようやく退学処分の上で逮捕され連行されていった。

まあアイツの性格上、一切の反省もしていないだろうがな…。

ハッキングで様子を見ていた束さんも怒りを爆発させていた。

「奴の処分はどうなると思います?」

「『ん~?い・ち・お・う腐ってもアイツもIS男性操縦者ではあるし良くて研究所送り、悪ければISを強制的に使わせた上で紛争地域送りとかかな?』」

「妥当な所ですね…ですが後者の方は…」

「『大丈夫、大丈夫!娘達にそんな事させようものなら束さんが直々にオ・ハ・ナ・シするだけだから!』」

「それもそうですね」

少々気になる事はあったがその心配はなさそうだ。

だがまだ何か嫌な予感はするんだよなあ…。

そういえば、随分会っていないけどアイツ等元気かな?

 

その頃、Side春季

「…」

忘れかけていた記憶をも取り戻し無事に退院出来た俺は少しのリハビリがてら音六を連れて久し振りにある場所を訪れていた。

それは…

「よお!誰かと思えば久し振りじゃねえか春坊!元気にしてたか?」

「ええ、そういう厳さんもまだまだ現役でいけてるようですね。

弾達はいますか?

それと五反田スペシャル二つお願いします!」

「ヘイ!ってン?…そうかそうか春坊にも遂に春が…ってギャグじゃないぞ?」

「はは…」

「?…」

そう、俺やイチカ兄さんにとって数少ない友達といえる人達が経営する食堂「五反田食堂」だ。

俺達が店に入るなり店長である五反田 厳さんが声をかけてきた。

音六にも御馳走しようと思い店のメニューを頼みながら他の人達はいるかと聞くと、厳さんが俺と音六を見て茶化してきたので俺は苦笑いを浮かべ、音六の方はよく理解出来ていないのか首を傾げていた。

「ほい!五反田スペシャルお待ち!

弾と蘭なら二人で買い出しに行って貰っている。

もうすぐ帰ってくると思うからそれまでそのお嬢ちゃんと食っておきな!」

「はい」

「にゅ…いただきます!…」

件の友人達が帰ってくるまでの間、俺達は二人食べながら今後の事を話していた。

「そういえばもうすぐ学園祭だって聞いたけど音六のクラスは一体何をやる予定なんだ?」

「コスプレカフェ…」

「なんだ、こっちのクラスとほぼ被っているな…という事は合同でやる事になるよな…」

クラスメイト皆、メイド・執事喫茶をやりたいとか言ってたな。

しかし…ね、音六の色んなコスプレ姿はなんというか…い、いかん!まだこういうのは早い!早いですぞ!

思い切りアレな水着にノックアウトした自分がいうのもアレだけど…。

「?どうしたのはーくん…」

「い、いやなんでもないよ…」

「そう?…」

彼女は自然体だから良いけどこっちは理性との戦いをなんとか制していかねば…危ない危ない…。

「春季?…お前久し振りだな!」

ようやく帰ってきた友人の一人が俺に気が付いて話しかけてきた。

五反田 弾。彼が数少ない俺やイチカ兄さんを苦しめていた嫌がらせに対応してくれた親友だ。

「うん、弾の方は相変わらずのようだね」

「そうだ…ってそっちのお方は?…」

「ああ、彼女は…」

「はーくんは私の大事な人…」

弾に紹介しようとした矢先、音六が嬉しそうな表情で腕を組んできた。

「は…はああああー!?」

弾の絶叫が木霊する。

「お兄、ちょっとうるさいんだけど!ってえ?春君だよね久し振り!」

「うん、蘭さんもお久し振り」

弾の絶叫に驚いた彼の妹である蘭も俺に気が付き二度驚く。

「悪ィ悪ィ…にしても驚いたぜ…こんな可愛らしい美少女が!…」

「ま、まあ一応はそんな所かな…」

「一応ってまさかお前…」

「…」

俺の様子を察した弾は呆れ果てていた。

奥手で悪かったな!

「そういえば聞いたぜ?お前ん家があの馬鹿に燃やされたって…」

「え?…それ本当なの?」

「ああ、残念ながら本当の事だよ…」

「…」

元兄貴が放火した件を弾は既に耳にしていたようで怒りを見せていた。

一方の蘭は知らなかったのか顔を伏せながら驚いていた。

「ったくアイツめ!どこまで他人を見下せば…そのせいで一夏は!…」

「…」

「…」

弾は悔しそうにテーブルをだんと打ちつける。

蘭も悲しそうな表情になっていた。

俺は正直迷っていた。

一夏兄さんが名を変えて生きているという事を彼等に話して良いのかを。

「いーくんならいるよ?…」

「え!?…」

「ちょ!?音六!」

「?…」

俺が迷っている間に音六が呟いた。

その呟きに今も一夏兄さんに好意を持っている蘭が持ち運んでいた買物袋を落としてしまい驚く。

「ほ、本当なのかそれは?!」

「うん!IS学園にいるよ…」

「…」

弾も驚き詰め寄る。

なんともいえない空気になる。

「そうかそうか、アイツ生きていたんだな…」

「だ、弾?…」

ゴゴゴと効果音が付きそうな勢いで弾はそう呟く。

「今此処に呼び出せるよな?」

「え?い、一応聞いてみないと…」

「頼む!」

「私からもお願いします!」

「わ、分かったよ…」

彼等に懇願されたので俺は諦めてイチカ兄さんに連絡を入れる。

だがな…弾はともかく蘭の方は…なんとか悪化しないように俺達がなんとかするしかないか。

 

Sideイチカ

「「…」」

春から連絡が入ったので足を運んだまでは良いが…本来ならば久方振りの涙の再会といきたい所なのだが…そういう空気ではなさそうだ。

「それで?ほうほう…」

「一夏さんそんなあー…」

「蘭を泣かせて俺を心配させた罰だ!一発殴らせろ!」

「おおう…いいぜ…」

これまでの話せる出来事を話したら弾は少し怒り、俺に好意を持っていた蘭は俺とカレンとの関係を知ると途端に泣き出してしまった。

こればかりは仕方無いとばかりに彼等の一喝を受け入れたのだった。



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第五部 学園祭編
EPⅤⅩⅦ「再び波乱の幕開」


Sideイチカ

先日夏休みが終わり波乱の二学期が幕を開けて数日がたったある日の夜…

「そこにいるのは千冬姉?それともハクナか?」

『…』

俺の目の前には水面が広がっている。

其処には一人の女性がいた、

俺は一瞬千冬姉かと思ったのだがすぐに彼女が元愚兄の専用機であった白式のコア人格であるハクナだという事に気が付く。

けど彼女がどうして此処に?

『は、ハヤク…』

「!…どうした!?…」

ハクナの様子が可笑しい事に気が付き俺はかけよる。

『私達が…正気でいられなくなる前に…は、ハヤク!…』

「オイ!?…」

彼女の体が段々と黒くなっていきそう呟いたかと思うと辺り一面も黒く塗り潰されていった。

「はっ!?…はあはあ、い、今のは一体何だったんだ?…」

飛び起きて夢だと確かめる。

だがそれにしては…何か不穏な事が起ころうとしているのか?…

思案を振り払い夢のせいで早くに起きた俺は二学期の準備をしていた。

教室

「おはよう~!イッチー~」

のほほんさんが一番に挨拶してくる。

「おはようさん。

…誰かいないようだが?」

「あ、箒姉さんなら今日迄は休むって」

「ああ、そういう事か」

美月がそう言ってくる。

元愚兄がまた起こした事件のおかげで山篭り期間を延長したのか。

「セラフィーノ、ちょっと良いか?」

「何いーくん?…」

今朝方の夢の事…話す必要性がありそうだ。

俺はそう思い文化祭の設営準備がてらの間に五組の教室を訪れセラフィーノに話した。

「ハクナの?…私も同じ様な夢見たよ。

でもよくは分からなかった…」

「そうか…」

セラフィーノにも理解出来ていないのならば今は最悪の事態に備えるしかないか。

「イチカさんこっちを手伝って下さーい!」

「今戻る」

カレン達に呼ばれたので急いで準備に戻る。

おっとそうだ!丁度良い機会だしリトルガーデンの皆にも招待状を送っておこう。

 

その頃、Side箒

「秋彦お前は…」

己を見つめ直そうと山篭り修行を始めていた私に美月から秋彦が再びとんでもない事件を起こした事を聞かされ青冷めた。

まさか彼が学園を脱走した挙句に織斑家に放火したとは…。

秋彦の腹の内がようやく分かって私は激しく後悔と己の未熟さに悩まされていた。

「ええい!…」

持ってきた模造刀で周辺の竹を斬っていく。

「はあはあ!…」

駄目だ!…全く以て集中出来んぞくそぉっ!…

「おろ?…丁度良い練習場所を見つけたと思っていたら先客がいたか!

む?お主も刀使いか!」

「え、ええまあ…」

赤い髪の同い年くらいの女性に声をかけられ返答する。

「従兄上とはまだ会えておらぬし、ハヤトやリュートは選抜隊の任務で今は不在故に相手がいなかったのだ。

丁度良い!どうだここは私と一緒に模擬戦でもやってはくれぬか?」

「え?…」

その女性がそう提案してくる。

「あ、はいお願いします…」

「そうこなくてはな!

あ、私は剣崎トウカだ」

「あ、私は篠ノ之箒…です…」

「ホウキだな!よろしく頼む!」

「はい…ってむ?…」

このまま一人でやっていても仕方無いと感じたので彼女、トウカの提案を受け入れる事にした。

だが今…

「どうしたのだ?」

「いえ、聞き覚えのある苗字だと思いまして…」

「まさかお主は…いや今はいいな…早く始めようか!」

一瞬驚愕の表情を浮かべてきた彼女だったがすぐに構えの態勢を取った。

私も慌てて構える。

「せやあっ!」

「はあっ!」

互いの刀がぶつかり合う。

私の攻撃が少しばかり押し負けていた。

「くう!?…」

「中々の太刀筋ではあるな。

でもそれだけじゃあ!」

「なっ!?…」

トウカが繰り出す凄まじいまでの面打ちを私は防ぐのがやっとの思いで精一杯だったのだ。

「お?こればっかりは流石に防がれるか…ならば奥の手!」

「しまっ!?…」

息が上がっていた私に彼女の一撃、いや二撃が入る。

しかも今の技は!?…

「ふう…これで決まりだな!」

「…」

見間違いではない…あれは確かにあの出来損無いが使っていた…って駄目だ!

これでは今迄の二の舞ではないか!…

「迷いで曇っている…何を悩んでいるのかは分からないが…」

「ッ!…」

「自分一人だけで乗り越えようなんて思うな…ホウキも決して独りではない筈だ」

「…」

去り際のトウカに図星を突かれ私は苦虫を噛む。

だが私の中で何かが変わっていく気がした。

 

 



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EPⅤⅩⅧ「文化祭!そして襲撃と…PARTⅠ」

Sideイチカ

不穏な予兆はあったものの遂に学園祭一日目を迎えた。

ハヤト達リトルガーデン組はまだ来訪していないようだった。

「御嬢様方お帰りなさいませ、では此方へ!」

「「キャアアァー!」」

俺と春の執事姿を見て女生徒達が黄色い声をそこら中で上げていた。

「む~!…」

「(^^;)」

アリス風のメイド服に着替えたカレンが嫉妬の念を向けていた。

後で埋め合わせしないとな。

 

Side春季

「春季君、二番テーブルへの配膳お願い!」

「あ、はい!」

結局五組との合同催しとなったおかげかお客さんが予想より多くごった返していた。

「ピーノはい!…」

「ニャニャニャー!♪~」

「おお~!」

「…」

音六は猫耳ゴスロリメイドコスに身を包んでせっせと接客しているかと思いきやいつの間にか仕込まれていたピーノの芸を披露させてお客さんを楽しませていた。

来てくれた弾と蘭も驚きながらも拍手していた。

「本音ちゃんのおかげ!…」

「どういたしましてえ~!」

まあいっか、改めて音六を見る。

うん!物凄く可愛いなあ!…おっといけない鼻血が…だがしかし…非常に頂けない事がある。

男性客の半数が明らかないやらしい視線で彼女達を見ていた。

それだけならばまだしもよかったのだが…

「へっへへ!イイじゃんかよ俺達と一緒にどっかに行こうぜほらあ!」

「は、離してよ!…」

「ン?ちょっと行ってくる!」

「気を付けてね!…」

性質の悪いナンパ目的の十人程の不良達が五組の子達をナンパしていた。

「ちょっと!人の恋人に手を出さないで下さい!」

「なんだあ~このガキ?」

「「ひぃっ!?…」」

五組の子達は皆天使な子ばかりなので既に彼氏持ちも多かった。

勇敢に立ち向かおうとした彼氏君だったがすぐにひるまされてしまう。

情けないとは思うが此奴等よりは遥かにマシだ。

さっさと対応しないと今後に支障をきたすな。

「あのお客様?そういった行為をされますとこちらとしては相応の対応を致しかねますので…」

「ああン?関係無い奴は引っ込んでいろよ!

野郎共やっちまえ!」

マニュアル対応では無論聞く耳持たずか…ならとっとと平和的な退場してもらいますかね。

不良達は一斉に俺に殴りかかろうとしてくる。

「はっ!」

落ち着いて一人、一人手刀で気絶させていく。

「なななっ!?…」

残った三人が驚愕の声を上げていた。

だが…

「こ、この野郎!…」

「チッ!?…」

「はーくん!?…」

諦めたのかと思われた一人が突然懐からナイフを取り出し俺に向けて投擲してきたのだ。

間一髪ギリギリで回避するが少しだけ掠ってしまい頬に傷が出来てしまう。

周囲から悲鳴が上がる。

「ん?…何処かで見覚えのある顔だと思ったら出来損無い君の一人か」

!此奴…元糞兄貴の腰巾着共か。

あんな事件を起こしたというのに腰巾着共の屑はまだアイツを擁護しているようだった。

「本当に救えない連中だな」

「なんだとテメエ!?こっちを見やがれ!」

「キャア!?」

「何ッ!?…」

「は、春季すまん!…」

しまった!退場させる事に気を取られ過ぎていたせいで音六達が奴等の人質に取られてしまったのだ。

彼女達は接客しているせいで現在機体を所持しておらず反撃も出来ない。

弾も持前の体術で対応してくれていたが蘭を人質に取られ動けないでいた。

「良いか、お前等動くんじゃねえぞ!少しでも可笑しな動きを見せたら…」

「くっ!?…」

奥義の使用を封じられ万事休すな事態をどうにも出来ずにいたその時だった。

 

1-5立て籠もり事件発生五分前、Sideイチカ

「イチカ君、春季君がまだ五組から帰ってきていないみたいなの。

ちょっと呼んで来てくれない?」

「分かった」

春が中々五組への手助けから戻ってこないとクラスメイトに呼んでくるように頼まれた。

仕方のない弟だ。

だがあんな事になっていようとは予想が付かなかった。

「!?…」

五組の教室に着くとふと違和感を感じ中の様子を覗いた。

すると見えたのは明らかな不良の男数人が他の客と生徒を人質にして立て籠っていた。

そのせいで春と客として来ていた弾は完全に動けなくさせられてしまっている。

しかしどうする?…このまま俺が突入した所で立て籠もり犯の逆上を煽るだけだ。

平和的解決を春が望んでいた為に警察の対応も遅れてしまっている筈だ。

ならば方法は一つ!…

「何処に行く気だ?イチカ」

「千冬姉…」

動き出そうと教室前から離れると織斑教諭に遭遇する。

俺は事情を説明しながら彼女を説得する。

「これも秋彦の犯した罪か…」

「時間が無い…千冬姉協力してくれ!」

「ああ、しかしどうする気なのだ?」

「あっちが手荒い事をしてくるならこっちも相応の対応をしてやるまでだ!

防災用のロープを持ってきてくれ」

「分かった!」

俺は千冬姉に必要な物を持ってこさせ急いで屋上へと向かい五組の教室までロープを垂らし二人駆け降りた。

 

Side春季

クソッ!…一体どうすれば良い!?…大切な人達が危険な目に遭っているというのに今は何も出来ない俺自身にも苛立ちと諦めを感じ始めていた。

だがその時…

「諦めるな春!」

「そうだぞ!」

「!イチカ兄さんに千冬姉さん!?」

パリィン!という音と共に声が聞こえてきて俺は思わず顔を上げた。

「な、なんだあ!?」

「遅い!」

「うべえっ!?……」

窓を割って強行突入してきたのか!

突然の事態に不良達はたじろいでいた。

「く、糞!こうなったら人質達を増やして…」

「させるか!」

「んなっ!?…ブリュンヒルデだと!?」

「これ以上悪足掻きはよせ!」

「ヒイッ!?…」

悪足掻きをしようとした不良だったが千冬姉さんの現役の殺気のオーラを受けて怯んだ。

「ふん!」

「ゲッ!?……」

千冬姉が何処からか取り出した出席簿の一撃で不良を沈ませる。

だが…

「な、何がブリュンヒルデだ…ISがなきゃ怖くねえ!」

「!」

逆上した最後の一人が千冬姉さんを背後から襲おうとした。

「鳳凰烈突破!」

「んなっ!?…」

それを目にした俺がすかさず奥義で奴のナイフを弾き飛ばした。

「兄さん!」

「ああ、よくやったぞ春!残影斬!」

「うわああああー!?」

イチカ兄さんに合図し、彼は奴の衣服だけを斬り裂き行動不能にした。

ようやく警察が到着し事件は収束した。

「皆ごめん!」

「…」

文化祭初日が終わった直後、俺は皆に謝罪していた。

ナンパ目的だったアイツ等は俺への嫌がらせへと変えてきたせいで事件が起きてしまい催しが台無しにされてしまったのだ。

このまま二日目を継続してやっても御客はグンと減ってしまうだろう。

「嫌々、春は悪くないぞ?」

「え?…」

「そうだよ…はーくんはあの怖いお兄さんに立ち向かってくれていた…」

「兄さん、音六…」

「そうだよ!春季君があの馬鹿な人達を抑えてくれていたからこそ皆助かったんじゃない!

店は滅茶苦茶で大変だけどさ…」

「そういう事だ。

お前ももう少しぐらいは自信をつけるんだ春季」

「姉さん、皆…あ、ありがとう!」

「さ、再設営に取り掛かろう!」

皆の気遣いに俺は涙した。

かくして成功とは言い難いが文化祭初日は慌ただしく終わった。

 

 



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EPⅤⅩⅨ「文化祭!そして襲撃と…PARTⅡ」

Sideイチカ

「一時はどうなる事かと思ったよ~」

「ホントねーあ、オーダー入ったよ!」

「今行くよ」

多少とは言い難いトラブルに見舞われてしまったものの皆の尽力によりなんとか無事に文化祭二日目を迎えた。

しばらくして業務が粗方完了する。

さてとそろそろハヤト達が来ている筈だ。

「…あ、ウッカリしてたな…待ち合わせ場所決めておくの忘れてた!…」

さ、探しにいかなくては!

そう思ったその時、ドーン!

突如、食堂の方で轟音が響き、只事ではないと感じた俺は急いで其方に向かった。

 

一時間前、Side春季

「ですから是非共我が社の装備品をですね…」

「他の企業の方にも言いましたけどお断りさせて頂きます。

これ以上余計な物は俺の機体に必要ありませんので。

それに…」

「?」

「一応聞くけどアンタ、企業の人間じゃないでしょ?

何者なんですかね?」

「!?」

文化祭は普段よりも必然的に外部の者が多くなる。

IS専門社員がやたらと勧誘してくるのは仕方無い事だがその中には碌な事を考えていない連中が少なからずいた。

俺の目の前に客として来ている女性もそうだ。

教室で一度勧誘を断った上にクラスメイトが注意したのだが、食堂に行った所を狙って又勧誘してきたのだ。

こっそりとヤタさんに素性調査を依頼し、巻髪礼子なんて社員は少なくとも国内のIS関連企業には存在していない事が判明した。

恐らくは俺とイチカ兄さんの機体とデータを狙った詐欺師かもしくはそれ以上の何者か…

その事を看破された巻髪礼子は驚愕に満ちた表情を浮かべていた。

が…

「チッ!?…バレていちゃあしょうがねえ!…」

「!?皆今すぐ此処から避難するんだ!」

「キャア!?/ウワッ!?」

あろう事か開き直り機体を展開してきたのだ。

俺は急いで周囲の人達に避難指示をする

「このアタシ、オータム様とアラクネの力の前に平伏しなあ!」

「アンタの好き勝手には絶対にさせない!

来い、相手をしてやる!」

被害を最小限に食い止める為、オータムと名乗る彼女を外に誘い出した。

「来い、千式雷牙!」

外に誘い出せたのを確認し応戦体勢に入ろうと機体を展開した。

だが…

「ハッ!その時を待っていたんだよおー!」

「なっ、コレは!?…」

「アハハハ!アタシがわざわざ只、誘い込まれただけだとでも思ったかあー!」

展開が完了した途端にいつの間にか仕込まれていたウィルスプログラムによって千式雷牙にノイズが生じ、動きが可笑しくなったのだ。

その様子に彼女は高笑いするが数十秒して動きが正常化した。

「と、止まった?…」

「て、テメエ!何故剥離剤のプログラムを受けて機体が解除されない!?」

「へえ…」

そういう事か!仕込まれていたウィルスプログラムは機体を強制解除させる為だけの物だったようだ。

只ウィルスプログラムの副作用か雷砲血神以外の武装が使用不能になっていたが…まあ一時的な現象であろうか。

「こうなればテメエを倒して機体を奪い取ってやる!

アイツを絡め取ってやれアラクネぇ!」

「クッ!?…」

無数に放たれる蜘蛛の糸の様な攻撃を回避するのがやっとだ。

流石にこの猛攻を突破するには雷砲血神しか使えない現況ではジリ貧であることは明確だった。

 

事件発生十五分前、Sideハヤト

「や、ヤベェ完全に迷っちまった…どうしようー!?」

どんだけ広いんだよこの学園はあー?!

ウッカリとイチカとの待ち合わせ場所を決めておくのを忘れていて彼を探しに行くのを買って出た俺だったが予想外の大きさのおかげで完全に迷子となってしまっていた。

トホホ…なんてこったい。

「ちょっとそこの男!」

「ン?…」

ふと後ろから声をかけられたので振り向いたは良いが…

「ほらアンタ、此処の会計を早く支払いなさいな!」

「は?…」

そんな馬鹿らしい要求をしてきたのだ。

突然声をかけてきたと思ったら一体この女性は何を言っているんだと思ったがすぐにイチカが言っていた事を思い出す。

確かISだっけ?例外はあれど何故か女性にしか反応しないパワードスーツだったか…その欠陥としかいえない代物のせいでこの世界には女尊男卑思想が浸透してしまったんだとか。

これでも幾分かはマシになったらしいのだが…

「聞いているの?!」

「…」

痺れを切らした女性に怒鳴られるがそんな見当違いな事を素直に利く訳にはいかない。

いっその事なので武芸者としての殺気でも放って追い払おうとでも考えていたが

「あのー、ちょっとお客さん?」

「な、何よ!?」

売店の生徒が見かねたのか女性にひと声かけてくる。

当然の様に女性は癇癪を起こしていた。

「昨日から面白可笑しく皆で楽しむその為の文化祭なんです。

そんな日にまで下らない思想を持ち込んで他のお客さん達に迷惑を被ろうとするなら金輪際出禁にしますよ?

あ、ちゃんと御代は利用したお客さんが払って下さいね?」

「ヒッ!?…」

女生徒に完全論破され女尊男卑思考の女性は金を払ってそそくさと退散していった。

「あの、大丈夫でしたか?」

「あ、ハイなんとか…ありがとうございます」

助けられた俺は女生徒に感謝する。

「ふう、まだまだ難しいものね…以前まであんな調子だった私が言えた事ではないんだけど…」

どこか遠い目をしながらぞう言う女生徒。

「それで…貴方は何か探し物でも?」

「えっと…実は来る事は伝えてあったのですが待ち合わせ場所を決めるのを忘れていまして…」

「それで迷っていたという訳ね…良いわウチのクラスは一段落ついているようだし私も探すの手伝ってあげるわよ。

それで誰を?」

「剣崎イチカを」

「!分かったわ」

彼の名を言うと女生徒は驚いた様な表情をした。

彼女のおかげでどうにかなりそうだ。

「!?」

なんだ今の嫌な感じは!?…

俺のヴァリアントとしての力が不穏な物を感じ取った瞬間、大勢の人達が一斉に雪崩こんできた。

「え、ちょ!?…」

雪崩こんでくる集団から女生徒を守る為急いで彼女を引き寄せる。

「あ、ありがとう…」

「いえいえ、しかしこの状況は一体何が…」

「分からないわ…けれど…」

「オヤオヤ~?其処に居るのは元ビッチと憎き如月ハヤトではあ~りませんか!」

「ヒッ!?…あ、アンタは…」

「ギリウス!何故お前が此処に!?」

全武芸者育成機関によってS級指名手配犯となったギリウスが現れたのだ。

「亡国企業の二大トップの御命令でね!

なんでもある計画の遂行の為にこの学園の地下に封印されてあるらしい機体が必要なんだとさよ!」

「何!?一体誰だ!?…」

「言う訳ねえだろうがあ!」

「危ない!くうっ!?…」

襲いくるギリウスの凶刃から急いで女生徒を引き離し、即座に飛燕・改を展開し防ぐ。

「あ、アンタ一体?…」

「いいから早く離れるんだ!」

「え、ええ…」

女生徒が俺の飛燕に驚くが指示に従って避難する。

「ギリウス、黒幕の事絶対に吐かせてやるぞ!」

「やってみろやあー!ン?…ああン!?失敗しただあ!?チッ!…」

再び臨戦態勢を取ったもののギリウスは急に動きを止め何かを呟いている。

「バイナラ!」

「ま、待て!…逃げたか?…」

会話の内容から察するに想定外の事態が起きて撤退を余儀無くされたのか?

それより今はこの事をクレア会長に報告しないとな…。

「えっと…案内頼めるよな?」

「え、ええ…」

そのついででイチカを引き続き探す事にした。

 

更に一分前、Sideクレア

「遅いですわ!如月ハヤトは剣崎イチカを探しに行ったきり一向に戻ってこないではありませんの!」

「まあまあ、案外何処かで迷っているんじゃないかな?

ならば彼等が此方に戻ってくる迄の間、我々は一足先にこの学園の責任者と面会する必要性がある。

そうだろ」

「そ、そうですわね!…」

二つの世界の脅威に対して早急の対策を立てる為、私達はISなるパワードスーツ専門の学園を来訪していた。

だが私もウッカリと剣崎イチカとの待ち合わせ場所を決めるのを忘れていて立ち往生していた。

このまま此処でこうしていては埒が明かないとこの学園の責任者が居る所へと足を運ぼうとしたその時だった。

ドゴーン!突如として轟音が響き渡ってきたのだ。

「一体何事なんですの!?」

「て、テロだー!

なんとか対抗出来る人が外に連れ出してくれたおかげで大丈夫だけど…」

避難してきた一人がそう叫ぶ。

リトルガーデン襲撃事件を思い出す。

あんな事態はもう繰り返させない。

「クレア、くれぐれも気を付けてくれよ?」

「承知していますわ。

博士は早く避難を!」

シャロや他の人達が避難したのを確認し、私はアリステリオンを展開し戦闘区域へと向かった。

「これは…」

向かった先には趣味の悪い色合いの機体が出した無数の蜘蛛の糸のような鉄子が張り巡らされていた。

テロリストはアレで間違いない、応戦している機体は近接型なのか一向に手が出せない状況であることが分かった。

まずはこの鉄子を排除しなければならない。

「はあっ!」

バスターキャノンを一点式弾モードに切り替え、鉄子を焼き斬っていく。

これで此方から手を出せる。

幸い、目の前の機体を倒す事に集中していたおかげで気付かれていない。

「全弾お行きなさい!」

ドラグーンを射出しテロリストの機体を攻撃した。

「何ッ!?…一体何処から…」

「!今だ、鳳凰打羽陣!」

「しまった!?グアァァー!?」

好機と見た機体がその手に纏った一撃を繰り出す。

テロリストは機体エネルギーを削られ吹き飛んだ。

「はあはあ!…」

「糞がっ!?…」

だがテロリストは健在だ。

対応していた機体は今のでエネルギーを使った為か動きが鈍くなっている。

「咄嗟に鉄子で威力を半減しましたか…ですがこれで終幕で…」

私がトドメを刺そうとしたその時

シュン!

「ドラグーン!?上!?」

私の攻撃を妨害するかの様に上空からドラグーンが飛来し仕掛けてきたのでEバリアを展開し防ぐ。

「もう一機のアンノウン、テロリストのお仲間でございますか…」

「…」

新たに現れたもう一人のテロリストは無言のまま更に攻撃してくる。

「だんまりですか…そちらがその気ならば手加減致しませんわよ!

アリステリオン!」

此方もアリステリオンのブースターを吹かし上昇、ドラグーンを射出し対抗を試みる。

「ほう…中々やるではないか」

「其方も私のドラグーンを同数破壊するとはおみそれ致しますわ…」

ドラグーンの鍔迫り合いはしばらく続いたが、気が付いた時には互いに同じだけ破壊されていた。

エナジー残量にもあまり余裕は無い。

次で決めなくては…そう思い再度バスターキャノンを構えるが…。

「ム?…そうか…今回は此処までで退かせて頂くとする」

テロリストが通信相手と話ていたかと思うとそう言ってくる。

「どういう風の吹き回しですの?」

「単にこの学園を攻め落とすには戦力が足りないと上層部が悟っただけだ」

「…そういう事ですか…」

「おーい!春季大丈夫!?」

「はーくん!…」

「皆、来てくれたか!」

成程、今回の襲撃は小手調べの始まりに過ぎないと…。

下を見るとこの学園の増援が駆け付けてきていた。

その中には剣崎イチカの姿もあった。

 

Sideイチカ

「春、大丈夫か?!」

「俺は大丈夫です!だけどテロリストに仕込まれた剥離剤プログラムの副作用のせいで一部の武装が一時的な使用不可能に陥ってもうエネルギー残量も芳しくないんだ」

「そうか、よくやったぞ。

後は俺達に任せろ!」

「分かった!」

学園内に正体不明のテロリストの襲撃があったと緊急迎撃招集を受けた俺達がアリーナに急ぐともう既に春がテロリストの一人を追い詰めていた。

だが彼が言うにはテロリストの罠のせいで動きが良くないみたいだ。

彼を下がらせテロリストに向き直り睨む。

「さあ、どうする?」

「チッ!…多勢に無勢という事かよ!

ああ、今回の所は上からも御達しが来ちまったからおとなしく退いてやるよお!

だがオータム様は執念深い!次は必ずお前達の機体を頂きに来るぞ!

あばよ!」

捨て台詞を吐きながらオータムと名乗ったテロリストは機体から降りながらISコアを抜き出し空っぽになった機体を此方に向かわせてくる。

不味い!機体を自爆させる気だ!?

「いーくん下がって!私が!…」

「頼むセラフィーノ!」

セラフィーノが自爆特攻しようとしてくる機体にドラグーンを飛ばしバリアでこれ以上の進行を妨害しながらフィールドを形成。

その中で大爆発が起こりアリーナには少々大きな穴が空いただけで済んだ。

ふと上を見た俺は気が付く。

上空には紅いハンドレッドであるアリステリオンを纏ったクレア会長が此方を見下ろしていた。

成程、偶然今回の事態に遭遇した彼女が春の手助けをしてくれたのか。

後で礼を言わないとな。

あちらも此方に気が付き降りてきた。

「ようやく会えましたわね剣崎イチカ、それに如月カレン」

「お久し振りですね会長さん!」

「ええ、そうですね」

「会長?あのー、イチカさんこの方は?」

会長の事を知らないオルコット嬢が俺に訊ねてくる。

「その事もまとめて理事長達に報告するつもりだ」

「そうですか」

俺の一言に納得し早速報告に向かう事にした。

理事長室に向かうとハヤトとシャーロット博士も来ていた。

「それでは今回のテロリスト襲撃についての緊急報告会をここに。

さて外部からの援護もあり、テロリストは撤退したとのお話を聞いていますが貴方方は一体何者なんでしょうか?」

轡木理事長もクレア会長達に疑問を抱いたのか問う。

「はじめまして皆様方、私は武芸者育成機関海上学園都市艦「リトルガーデン」生徒会長兼ワルスラーン社代表、クレア・ハーヴェイと申しますわ」

かくして二つの世界が邂逅を果たした瞬間だった。

 

 



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EPⅥⅩ「文化祭!そして襲撃と…PARTⅢ」

仮面ライダーシティウォーズとアズールレーンにハマってしまい予想より更新が遅れてしまいました。
エグゼイドゲキトツBCのタコ殴りとフォーゼファイヤーステイツBCのヒャッハー!汚物は消毒だー!による無双ゲー。
コレなんて幹部イジメゲー?
アズレンはそう…ハミパイ最高おー!(^v^)




Sideイチカ

「ふむ、海上学園都市艦リトルガーデンですか…それに武芸者育成機関というのも初耳ですね…」

「ワルスラーンなんて会社も聞いた事がないよ」

クレア会長の紹介に皆驚く。

「それもそうですわね…それにその若さで社長を兼任しているとは驚きですわね…」

「とはいっても引き継いだばかりなのですけどね…私よりも規格外な方がいますし…」

クレア会長よりも規格外…間違い無くあの人達の事だろうな。

それより今は俺が皆に話さなかった事を伝える時だ。

「クレア会長、此処は俺が」

「分かりました」

「剣崎君は随分と彼女達と親しいみたいですが?」

「ええ、かくいう俺もリトルガーデンに通っていましたから」

「ほう?!…」

未だ俺についての真相を知らなかった理事長達が興味深そうに驚いていた。

「彼女達はこの世界とは違ういわゆる異世界から来た者ですから…」

「異世界ですと!?…」

「ええ、詳しい事はお見せした方が早いでしょうね」

「そうですわね、如月ハヤト」

「了解しました。百武装展開!」

「「なっ!?…」」

クレア会長に指示されたハヤトが飛燕・改を全身武装状態で展開させると教師陣は驚愕の表情をしていた。

「一体その機体は!?…」

「それについては僕から説明させてもらうとしよう」

「貴方は?」

飴を食べ終えたシャーロット博士が出てくると俺はノートPCを取り出す。

「『おっと!もしや貴方が百武装開発専門者のシャーロット・ディマンディウス博士だね?!』」

「!?」

モニター向こうの束さんに皆驚く。

「そういう君はイチカ君が言っていた篠ノ之束だね?」

「『そだよ』」

「其方のISには非常に興味がある…後で話は聞かせて貰うとして…今は彼等の機体…いや武装について話そうか」

「その言い方だとまるで剣崎君や如月さんの機体が厳密にはISではないみたいな言い方ですが…」

「その通りさ。

彼等のアレはヴァリアブルストーンという特殊な鉱石を加工して作られた武器さ。

それぞれ扱う者によって形状が異なる事から百武装と呼ばれている」

「ハンドレッド…成程それでそこの如月さんのお兄さんも武装を纏えるのですね」

シャーロット博士が百武装の事を説明すると教師陣は信じられないといった表情をしていた。

「ただし、コレを扱うにはある特殊な条件があるんです」

「特殊な条件?性別ではない何か他の条件という事ですね?」

「ええ、これらは幼少にあるウィルスに感染し適応する必要性があるからです」

「あるウィルス…もしや!?」

俺が補足説明すると轡木理事長は予想がついたようだ。

「ええ、以前学園を襲撃してきた化物、宇宙外生命体サベージのバラ撒くヴァリアントウィルスです。

そしてヴァリアントウィルスに適応出来た者は武芸者と呼ばれサベージに唯一対抗出来る百武装を扱えるようになります」

「成程…サベージに対抗し得る人材を育成する異世界の機関の一つなのですね」

「ええ、御理解が早くて助かりますわ」

話は一旦そこで終わると思われたが…

「ソレを寄越しなさい!」

バッとISを展開した者がいた。

未だに女尊男卑思想を持つ教師だった。

「学園の機体と先程言っていた異世界の百武装とかいう奴を全部此方に渡せ!

でないとお前達の命は保障しない」

「これは一体何のつもりですかな?!」

「これだから男は…決まっているじゃない亡国企業の幹部になる為の一歩なのよ!」

「『チッ!…』」

呆れた野望を掲げていつの間にか寝返っていた教師が戯言を言う。

「まずは手初めにそこの男の奴を頂こうかしらね!

武装を解除しなさいな!」

「…」

ハヤトに狙いを付けそう言うとハヤトは無言のまま飛燕・改を解除し彼女に渡そうとした。

「ちょ、ちょっと何やってるの!?…」

「…」

シャルがハヤトの行動に慌てるが俺を含む武芸者勢は涼しい顔で見ていた。

彼女達は知らない…ハンドレッドの持つ特性を。

「イイ子ね…」

「…二重展開」

待機状態の飛燕・改をハヤトの手から奪い取りニヤリと表情を崩した隙を狙ってハヤトは予備のハンドレッドを素早くデュアルアクトし攻撃した。

「なんですって!?…」

「動くな」

「この状態でまだ無駄な足掻きを致しますか?」

突然の事に回避出来ずにいた愚者が驚く。

取り返した飛燕・改を再展開したハヤトとアリステリオンのドラグーンを突き付けたクレア会長の姿がある。

「クッ!?…このおー!」

「はあ、致し方ありませんわね…はっ!」

「嫌あああああー!?…」

逆上した愚者は無情にもアリステリオンのドラグーンの零距離攻撃を受け機体を強制解除させられた後に地下牢に連行されていった。

「それでお話は戻します。

我々の世界は今ある者の陰謀により危険に瀕しています。

しかもその者の魔の手は此方の世界にも伸ばされつつあります」

「陰謀ですと!?…」

「ええ、首謀者の名はセリヴィア・ノートルダムパウロ元三世教皇。

彼女が其方の亡国企業を乗っ取り自らの復讐を成し遂げようと画策している可能性があります」

「それに俺とハヤトの因縁の敵であるギリウスも加担しています…束さん一体学園の地下には何があるのですか?」

「ああ、ギリウスの奴もこの学園の地下に眠る機体が計画に必要だと言っていた」

「『…ちーちゃんの専用機「暮桜」の人格ISコアだよ…』」

「本当ですか織斑先生?」

「え、ええ…ある戦闘で機体自体が動きにくくなり止む無く封印していました…今迄黙っていてごめんなさい理事長」

俺とハヤトがそう問うと束さんは少々口篭りながら衝撃の発言をした。

千冬姉は慌てた様子だったがすぐにそう謝罪した。

成程、まだ元教皇は潤沢なエネルギーを狙っているようだ。

色々とあったがこれにて報告会は無事に終わりを告げた。

 

その頃、Side春季

「コレ…本当なんですか?!」

「ああ、俺も最初は目を疑ったんだがどうやら本当の事の様だ。

まず間違いなく極めて異例の事態だ。

世界中の混乱を招きかねないぞ」

「そんな!…」

1-5立て籠もり事件の聴取後、俺はヤタさんに呼ばれカフェを訪れていた。

そこで聞かされたのは衝撃的な事だった。

 

 



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EPⅥⅩⅠ「文化祭!そして襲撃と…PARTⅣ」

Side春季

「次期候補、お前も早く学園に戻るんだ。

いざという時の為に我々も準備をしておこう」

「…ああ…」

ヤタさんからもたらされた情報はとんでもない前代未聞の代物だった。

早急にこの事をイチカ兄さんや千冬姉さん、音六に伝えなければ…だが兄さんや音六にはともかく本当にこの事を千冬姉さんに伝えて良いのか?

きっと知ってしまえば既に絶縁しているといえども彼女には…嫌それだけじゃない…下手をすれば残りの文化祭を皆が謳歌する所ではなくなってしまう!

それ程迄にも重大な案件なのだ。

「!?今のは…まさか!?…」

どっと押し寄せる何かに俺は震える。

学園の方で何か良からぬ事が起きている気がし急いで店を出た。

 

その頃、Sideイチカ

「…」

「どうしたんですかイチカさん?」

多少のトラブルがあったもののリトルガーデンとIS学園の初の会談が終わり俺は一人考え事をしていた。

それをカレンに心配される。

「ああ、嫌な予感が拭えないんだ…」

「…何が起きても私がイチカさん達を全力でサポートしますから!」

「ありがとうなカレン!」

「はい!」

だがこの時は予想以上にとんでもない事態が起きようとは思ってもみなかった。

それは学園祭最終日に起きた。

「キャノンボールファウストか…」

「イチカ君は参加しなくて良いのかい?」

「あれはISの競技ですからね。

ムッ!?…」

「どうしたんだい?まさか!?…」

「ええ…」

シャーロット博士と会話していると突然俺のヴァリアントの本能が危機を告げてきたのだ。

博士に一般生徒の避難誘導を任せ俺は外に出た。

そこで見たものは…オイオイオイ嘘だろ!?…

「なんなんだ此奴等は!?…」

大方亡国企業の構成員であろうが…いかんせん侵入してきた人数があまりにも多過ぎる!…

それにこの感じは!…約半数がよりにもよって人工ヴァリアントになってやがる!?

という事はあの元教皇が本格的に動き出した事になる。

「あははは!凄い力だわ!今迄ISに縋っていたのが馬鹿みたい!」

「これで世界を相手取れるわ!」

「ほらそこー!」

「男風情に味方する者なんて纏めて始末してやる!」

「うわあああー!?逃げろー!」

「奴等ッ!…」

テロリスト共は手当たり次第に鬱憤を晴らすかの様に破壊行動をしていた。

不味いぞ…いくら慢心している女尊男卑といえど流石にこの数を捌き切るのは困難を極める。 

「覚悟しろ汚らわしい男性操縦者!」

「!残影黑刺斬!」

「なんですって!?…」

「私達の力が!?…」

「だけどまだISが残って…」

「無駄だ!残影斬!」

「キャア!?」

俺が扱う武装もハンドレッドだという事を知らない奴等が突っ込んでくる。

そして上手く誘導出来た数人を残影黑刺斬で刺し斬る。

百武装が砕け散るが、奴等は即座にISを展開。

だが俺にそれは無意味だ。

残影斬で斬り伏せる。

「チイッ!?…」

「剣崎君!」

「山田先生!下がって下さい!

此奴等は先日お話したハンドレッドを所持しています!」

「ええ!?ど、どうすれば良いんですか?!」

「セラフィーノ、鈴、それとクレア会長達に救援要請をして下さい!

後は他の場所の確認と負傷者の救護を!

それまで俺がなんとか被害を抑えますので!」

「は、はい!お願いしますね!」

ようやく山田教諭率いる学園の救援部隊が駆け付けてくるがヴァリアブルコアの無いISでははっきりいって足手纏いだ。

それを聞いた山田教諭達は急行していく。

「間に合ってくれよ!…」

俺は闇切・改弐式とディヴァインブラスターを構え突撃していった。

 

 

 



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EPⅥⅩⅡ「文化祭!そして襲撃と…PARTⅤ」

Sideイチカ

「はあはあ…」

「あははははー!」

不味いな…流石に技量が伴っていないとはいえど敵の数があまりにも多過ぎる!…思考の無いサベージと思考する人間ではいくら単調な攻撃でも捌き切るのにも差があるからだ。

勿論ある程度力をセーブしながら戦ってはいるが何時エナジー切れを起こしても可笑しくない状況だ。

だが少し待て…いくら亡国企業とはいえどこんなに構成員が所属していたのか?…まさかな…嫌な予感を感じつつも俺は襲撃者達をのしていく。

「クソッ!…」

山田教諭に救援を要請はしたが…きっとあまり望めないな。

これだけの大人数だ、きっと別の場所にも襲撃者が現れている筈だ。

 

同じ頃、Sideイツカ

「皆早く逃げろ!クソッ!此奴等は一体何がしたいんだ!?」

イチカの予想通り、学生寮付近にも襲撃者が侵入してきていた。

敵が来ている事に一早く気が付いたアタシは一般生徒を避難誘導しながら応戦していた。

「見つけたわよ裏切者!」

「テメエは!…」

襲撃者部隊のリーダー格らしき人物にアタシは見覚えがあった。

ソイツはテロリスト時代の同僚だったのだ。

「裏切りね…勘違いしてもらっては困るな。

アタシは只終わる筈のなかった復讐の為にいただけだ!

お前達の掲げる下らない思想なんかと一緒にするな!」

「そう…ならさよならね!」

「おとなしくやられると思っているのかあ!」

ビームライフルを撃ち元同僚の機体を撃ち抜く。

「クッ!?…やるじゃない…だけどね!…」

「フッ!…」

「何が可笑しい?!」

SEを削り切れずに奴はすかさず反撃体勢を取ろうとする。

対する私はシールドを構えたまま静かに笑う。

「エアトスお願い!」

「ピー!」

「そこだ!」

「なンだ此奴!?ぐわ!?…」

「ようやく来てくれたか!」

駆け付けてきたアヴリルとラウラの一撃で奴を削り切る。

「リーダー!?この!…」

「させるかよ!【玄武緑楯】!!」

「「キャアアァー!?」」

単一仕様能力を発動させたシールドで取り巻き達を吹き飛ばした。

「ふう…他の皆の状況は?!」

「デュノアさんとセラフィーノさん、鳳さんが校舎付近の敵の対応にあたってる。

恐らく他の人達も別の場所の対応に追われている筈だわ」

「これ以上戦力を分散されたままではかなり不味いぞ!」

「ええ、早く皆と合流しましょう!」

「ああ!」

残存敵影がいない事を確認したアタシがアヴリル達に問うと予想通りの答えが返ってきたので他の者達の所へ急行した。

 

Side音六

「此奴等どっからこんな湧いてくるのよ!?」

「鈴下がって!シールドピアス!」

「くうっ!?…」

「大丈夫、音六ちゃん!?」

「な、なんとか…」

嫌でも感じてしまうあまりにも多い理不尽な悪意に加え、私の中の人工ヴァリアントの力が限界点を超えかけていた事も相まって酷い頭痛に襲われ鈴ちゃんに心配されながらもなんとか対応していた。

はーくんはヤタさんに呼ばれたまま未だ学園に戻ってこれていない。

いーくんや他の皆は別の地点で対応中の筈だ。

なんとしても持ちこたえる!…ISを身勝手な思想の上でしか扱わない人達に密かに怒りを感じながら見据える。

だがそこで予想外の最悪な出来事が起こってしまった。

パアン!

「グッ!?…」

「「え!?…」」

「お父さん!?なんで此処に!?…い、嫌あああああー!?」

対応出来なかった方向から銃声が鳴り響いたと思えば避難させていた筈のデュノアさんのお父さんが左肩から血を流し倒れていた。

その光景を目の当たりした私や鈴ちゃんは勿論、デュノアさんの悲痛な声が響き渡るだけだった。

 

 




次回、突如避難していた筈のローグが何者かに撃たれシャルロットは戦意を喪失しそうになってしまう。
彼を撃った人物はその光景を見て嘲笑っていた…。
その人物に対し更なる怒りを燃やす音六と鈴だったが疲労が祟り追い詰められてしまう。
だが彼女達は諦めてなどいなかった。
不屈の想いが奇跡を起こすと信じて!
「文化祭!そして襲撃と…PARTⅥ」



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EPⅥⅩⅢ「文化祭!そして襲撃と…PARTⅥ」

Side音六

「ぐふっ!?…」

「お父さんなんで此処に!?…それに…」

「…」

避難していた筈のデュノアさんのお父さんが現れたかと思うと何者かに撃たれてしまい、デュノアさんは大慌てで駆け寄る。

傷は深く離話す事もままならないようだ。

「ん?!…いってくる!…」

「ね、音六ちゃん?」

ふと私はデュノアさんのお父さんが倒れた所から少し離れた地点にあるトランクに目がついた。

もしかしたらデュノアさんのお父さんが此処に現れた理由は…

私は急いでそのトランクを取りにいこうとする。

だが…ドン!

また何処からか銃撃が飛んできたので私はバリアを展開し防ぐ。

がもう一発の弾丸で肝心のトランクがまた遠くに弾き飛ばされてしまう。

「ッ!…」

「そのブツをおとなしくこっちに渡しなぁ!」

「そんな!?…なんでお前まで此処に!?…イネス・デュノアー!なんでお父さんを撃ったー!?」

デュノアさんが涙を流し悲痛な叫びを上げる。

かつてはーくんの仕事によってその罪を暴露され投獄されていた筈のデュノア元夫人が灰色の機体を纏う姿があった。

「フン、私を裏切った男風情にかけてやる情けなど無いし私の人生が転落した一因でもあるのよ。

ならこうするに決まっているじゃない。

そして私は私をあの地獄から救ってくれたあの御方に頂いたこの力でもう一度表舞台に這い上がり栄光を手にするのよ!

あははははー!」

「「我等女性権利団体に栄光あれ!」」

「!?アンタ達という奴は!…」

「そんな…」

酷い!…そんな身勝手でしかない理由でデュノアさんのお父さんを!…

今考えてみればこの襲撃人数の多さからして脱獄したのは彼女だけじゃなかったんだ…。

ヤタさんがはーくんを呼び出した理由ってもしかして…。

「シャルロット、父親を助けたいのならそこに落ちてるトランクのブツをこっちに寄越しなさい。

そうすればアンタや他の奴等は今だけは見逃してあげるわよ?」

「!…」

「シャルロット駄目よ!」

「おっと動くんじゃないよ!」

「汚い手を!…」

下夫人の妄言を聞いてデュノアさんが揺らぎそうになるが鈴ちゃんが慌てて止めようと叫ぶ。

そこが癪に障ったのか元夫人は又その凶弾をデュノアさん達に向けていた。

そのせいで私達の動きが封じられてしまう…かに見えた。

「【鳳凰打羽陣】!」

「何ッ!?…」

「!…」

「遅いじゃない春季!」

「悪ぃ、大分遅くなってしまったな…」

元夫人を上空から攻撃を仕掛けたのはやっと戻ってきたはーくんだった。

 

Side春季

ヤタさんの情報と感じた予感により急いで学園に戻ってきた俺は惨状に絶句するしかない。

「やっと出てきたわね…夏季斑…いえ織斑春季!」

「一つ聞く。

この惨状はアンタ達の仕業だな?」

「ええそうよ、お前への憂さ晴らしもかねてね!」

なんて奴だ!…己が罪を認め恥じず挙句にローグさんを撃ち殺そうとしたとは…。

「イネス元夫人並びに女性利権団体!アンタ等にはもう法の裁きだけでは足らない事がよく理解出来た。

此処からは俺のやり方でいかせてもらう!」

「よく言うわね、こっちには人質がいるしまだこれ以上の人数がいるのよ?

どう足掻いたって無駄なのよ!」

「無駄?何を勘違いしているんだ?」

「なんですって!?」

確かに戦力の差は今は向こうが有利だ。

だが俺は冷静に言葉を紡ぐ。

「俺は…俺達は決して一人の力だけで戦っている訳じゃないんだ!」

「何を世迷言を!もういいわ!」

元夫人は再びローグさんへ銃口を向け撃とうとした。

「ッ!」

それにシャルや鈴は身を伏せる。

だが放たれた弾丸はローグさんを貫く事はなかった。

「何ッ!?…」

この場にいた襲撃者は全員唖然とする。

何処からともなく一振りの刀が降って来て弾丸を斬り裂いたのだ。

「うちの可愛い生徒に手を出した愚か者はお前等か?」

鬼神といっても過言ではないオーラと打鉄を纏った千冬姉さんが某勇者立ちで姿を現した。

 

Side千冬

「ぶ、ブリュンヒルデ…織斑千冬ですって!?」

襲撃者共の数があまりにも多いとの報告を聞いた私は打鉄を纏い彼女達の前に出た。

私が出てくる事が予想外だったのか怯んでいる。

「貴様等は一つ勘違いしているようだが私はモンドグロッソ選手として引退したのであってIS操縦者をやめた訳ではないぞ!」

「クッ!?…だけどいくらブリュンヒルデの貴方でもこっちには人質がいる上この人数なのよ?」

「フッ!所詮は愚か者の極みだな…周りをよく見てみろ」

「なん…!?」

「「ひいいい!?」」

「あ!?お前達逃げるな!…」

私が出撃してきたのが予想外だったのか一目散にほとんどの襲撃者が逃げ出していた。

残ったのは元々私ではなくISを信奉してた者達か。

「さあ、この場で残ったのは貴様達だけのようだがどうする?」

「ならばこの力でブリュンヒルデ、お前さえも消せばいいだけのこと!

まずは!」

「!させん!」

そう言って確かイネス・元デュノア夫人だったか?が人質のデュノア氏を再び撃とうとしたので私は瞬時加速で間に入り刀を振るいその凶弾を斬り裂いた。

「何ッ!?…」

「所詮は少しの力を得ただけでいきがるだけの俗物だな。

春季!他の者達も!」

「しまった!?」

「うおおおー!」

「てやあっ!」

「「きゃあああー!?」」

私の合図で春季達が元夫人達に集中砲火をかけた。

「デュノア氏の事は此方で引き受ける!

そしてコレを!」

「織斑先生ありがとうございます!…」

デュノア氏を救い、回収したトランクを一番近くにいたセラフィーノへと投げ渡した。

後の事態の収拾はお前達に任せたぞ!

デュノア氏を抱え私は作戦指揮を練り直す為一度作戦本部に戻った。

 

Side春季

「サンキュー、千冬姉さん」

姉さんのおかげで此方の劣勢はようやく覆された。

「コレは!…」

「音六ちゃん、ソレって結局何が入っていたの?」

「恐らく束博士とあのシャーロットって人が開発した新しい私達の力だと思う…はーくんコレ!…」

「よっと!コレは…」

「ソレらはきっとはーくんが扱うのが良いと思う…」

鈴が聞くとトランクの中身を見た音六はそう答えたながら一部取り出した物を俺へと渡してきた。

それはイチカ兄さん達や元夫人達が扱っている物と同じ様な紅い鉱石と星の紋様が入った何か、アンプルだった。

「クソッ!」

集中砲火のおかげで機体共にボロボロで立ち尽くす元夫人を見据える。

「よし…使ってみるか!」

音六に言われ決意した俺はそのアンプルを右腕に差す。

「クッ!?…」

キイィン!

その瞬間、俺の中に膨大な量の情報が流れ込んできて気が付くと不思議な空間にいた。

そこには音六に良く似た女性がいた。

「『…』」

「君は?…」

「『私は六夢…まーくん、貴方が私の力を求める理由は何?…』」

音六似の女性、六夢、恐らく千式雷牙のISコア人格だ。

それにしても言動から何までそっくりだ。

彼女にそう問われすぐに答えた。

「それは!…」

「『ん…やっぱりまーくんはまーくんだね!…』」

六夢は俺の返答に満足したかのように微笑んだ。

 

「春季!?」

「大丈夫だよ…」

「本当に?…」

「うん!…」

「ああ、大丈夫だ!」

少しの頭を抱えていたので、鈴に心配されるが俺はすぐにそう告げる。

音六の方は確信めいたようで俺を信じてくれていたようだ。

そして俺は確信する。

音六や皆と共に守る新たな力を得た事を。

「俺の声に答えてくれ!千式雷牙!六夢!」

「ツクモお願い!二重展開!」

「そして来い!『焔牙<ブレイズ>』!」

俺は機体を展開しながら鉱石を左手に、そして空いた右手を掲げそう叫ぶ。

音六も機体に呼びかけながらそう叫んだ。

<千式雷牙、第二次移行ヲ開始シマス>

それと同時に機体の進化を告げるウィンドウが現れ眩い閃光に包まれた。

音六の付喪月神も同時にだ。

「春季と音六ちゃんの機体が!…」

「セカンドシフトを果たしたんだ!この土壇場で!?」

鈴達が驚きの表情に満ちている。

俺の新たな力、千式雷牙・轟星!

一際輝きを放つ増設された雷色の背部ブースターと強化された装甲、右手には強化された雷砲血神と鳳凰、フェニックスが彫られた一振りの白金の銃剣、左手には付喪紅炎装が装備されていた。

そして今迄片目だけだった金色の瞳の輝きを両目から放っていた。

そう、彼はある者の考案で造られた特別な血清〔聡明の星紋<ルキフル>〕によって魂が昇華され完全なそしてオリジナルの純粋なヴァリアントにもひけをとらない人工型ヴァリアントとして遂に覚醒を果たしたのだ。

魂と結び付いた事で生まれた武装である焔牙『銃剣 フェネクスヴレイガンソード』を構えた。

 

Side音六

「感じるよツクモ!…」

はーくんと同時に覚醒を果たした付喪月神・陽雷。

まるで月と太陽が重なり合ったかの様な激しい輝きを放つはーくんと同じ雷砲血神が左手に装備されていた。

 

 

 




Side?
「ほう!…よもやアレがこの世界で生かされるとはな!
持て余した暇で造って一応渡しておいたのが役に立ってよかったぜ!
一時は不測の事態でどうなる事か肝を冷やしたが…」



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EPⅥⅩⅣ「文化祭!そして襲撃と…PARTⅦ」

Side春季

「いくぞイネス・クライム!」

「私はデュノア夫人よ!」

「元で今は只の犯罪者だろうが!」

「減らず口を!…セカンドシフト出来たからって調子に乗らない事ね!」

ボロボロになりながらもその悪意と何処からか湧いてくるのか知れない執念でISを展開し向かってくる元夫人。

「あはははは!死になさい!織斑春季!」

奴が武装を全て展開し撃ち込んでくる。

「音六、お前の力、借りるぜ…!」

推奨戦闘BGM「Absolute Soul」他

 

俺は力を込める。

「無駄だぜ!」

「嘘!?あれだけの弾幕を!?…」

俺は付喪紅炎装のシールドを展開し全てを防いでみせた。

それに彼女は驚愕していた。

「音六!」

「うん!…」

「な、なんですって!?…」

元夫人が気が付いた頃には残っていた敵残存勢力全てが音六によって無力化されていた。

 

Side音六

「いくよツクモ!…」

進化したツクモの力で周りの敵を無力化しはーくんの合図を受けて私も元夫人へ仕掛ける。

凄く体が軽い!

これなら今迄強引だった炎月霊穿刀の二刀流が難無く繰り出せる!

「【月神霊陽双斬】!…」

「キャアアアァー!?」

強化された連続斬撃を繰り出し元夫人は吹っ飛んでいく。

「はーくん!…」

「OK!」

私ははーくんに合図し下がる。

 

Side春季

「嘘よ嘘よ嘘よ!?何故あの御方に与えて貰った力さえもがお前達なんかに負けるのよ!?…」

「力を与えられただけでそれに浮かれて溺れ、他人を傷付ける事しか出来ないアンタ達に俺達は負けない!

利害の一致でしか行動しないような力では仲間を信頼し強い絆で結ばれた真の力の前にはな!」

世迷言をほざく元夫人の俺はそう叫ぶ。

『超えし武芸者<イクシード・スレイヤー>』として覚醒した彼は決意を胸に拳を構える。

「今度こそ終わりだ!…【鳳流奥義第八の型 鳳陣星爆砕拳】!アッタァー!」

「!?」

雷砲血神の半分のカートリッジを消費し俺は一撃の拳を何撃もの拳の威力に変換し打ち出す技を元夫人へ繰り出した。

「あ、ぐ、ぱ、ぽ、ぴ!?…や、やめ…」

七撃分の攻撃が入った所で見苦しくその無様さを晒す元夫人。

「安心しろ。

最終的なアンタの生殺与奪はやはり法が決めるさ!」

「かっ!?……」

俺は焔牙を取り出し震えながら命乞いをする元夫人の精神だけを斬り裂いた事で彼女は倒れた。

「やったの?…」

「ああ、だがまだ終わっていない…奴がいるんだ!」

「奴って…まさか!?」

「ああ…鈴の思っている通りだと思う」

「それなら早く皆と合流しましょう!」

「ああ!」

早い所、イチカ兄さん達と合流してこの事を伝えなければ!

俺達は他の襲撃地点へと急ぐのだった。

 

 

 

 



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EPⅥⅩⅤ「文化祭!そして襲撃と…PARTⅧ」

春季達がイネス元夫人・元女性利権団体兼亡国企業構成員を倒した頃、Sideイチカ

「チィッ!?…」

「あの男は息が上がっているわよ!

このまま我等の栄光の磯へと!」

「フン、男風情になんかあんな美しい少女達は勿体無いわね…そうだわ!

彼女達は私の御人形さんにしてあげましょうか」

「ッ!?…」

イマコノクズタチハナンテイッタ?…

カレンや学園の仲間達を手籠めにだと…。

救援が未だ来ず非常にもう残りエナジーが心許ない俺に人工ヴァリアントの女はそんな事を言ってくる。

その言葉に俺はふと一つの考えが思い浮かんでしまう。

それはわざとヴァリアントの力を暴走させて敵残存勢力を一気に殲滅するか…だが非常に危険極まりない賭けである。

元に戻れたとしても果てのリザさんや今も眠りについてしまっているアリナのような植物人間状態になりかねない。

その決断に当然迷いが生じる。

「隙だらけよ!」

「!」

その隙を狙われなんとか剣で防ぐ。

もう迷っている暇もないか!…

「チッ!まだ抵抗する力が残っているというの!?」

「アア…サキニテヲダシテキタノハオマエタチダカラナ!…」

「な、なに!?…」

「ガアアァー!」

俺は意識を闇に委ねてしまった。

 

Side春季

「皆!無事だったか!」

俺達はラウラチーム、更識姉妹とオルコットさんチームと合流した。

だがイチカ兄さんと美月、それに未だ戻って来ていない箒、後は確かリトルガーデンだっけ?その人達がいないようだ。

「ああ!此方も敵の掃討が完了した。

だがまだメイン特設・露店の地点の敵が…ム!?…」

「これはッ!?…」

「くうっ!?…」

「どうし…ウッ!?…」

「「!?」」

情報交換の最中にラウラと音六、アヴリルさんが頭を抑えていた。

心配した俺も頭痛に襲われる。

なんだこの感じ!?まるで臨海学校の時と同じ…

鈴達にも酷く心配される。

「すまない、だが今の感じは間違い無い!」

「いーくんだ!…」

「え!?尚更急がないと!」

「ああ…」

音六達の言葉に皆驚きながらも急いだ。

だがその場で見た者は…

「なっ!?これは!…」

「イチカ?!…」

「ガアァァー!!」

「ヒィィー!?…」

あの時と同じ様に力を暴走させ襲撃者を蹂躙していくイチカ兄さんの姿だった。

「何故このような事態に!?」

「『恐らく襲撃者の愚かな人達が彼の神経を逆撫でする様な事を言ったんでしょうね…』」

「厄介な事を!…」

ラウラがリィの見解を聞いてはがゆむ。

「兎に角此処は兄さんをなんとかして抑えるしかなさそうだ…音六危ない!」

「ッ!」

この状況の打破の方法を考えていると剣撃が音六に向かって飛んできた。

ギリギリの所で回避するが俺はその新たな襲撃者の姿にやはりかと表情を歪ませるのだった。

 

 

 




次回でアーキタイプのあのキャラが遂に出ます!{壮大なネタバレ


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EPⅥⅩⅥ「文化祭!そして襲撃と…PARTⅨ」

Side春季

「よお…」

「な、なんでアンタが此処にいるのよ!?…」

「それに白式は強制的に倉持に返還させられた筈だ!

何故所持している!?」

イチカ兄さんの二度目の暴走に加え、そこにつけいるかのように牢獄にいる筈の秋彦が所持権を強制的に剥奪された筈の白式を纏って現れたのだ。

それに当然、他の人達は驚愕している。

「はん!まずはテメエ等からだ!おらよお!」

鈴達の質問に答えず雪片を振るってくる秋彦。

俺が前に出て雷砲血神を盾にし防ぐ。

「今はアンタの相手をしていられる場合じゃない!…」

「んな事、この俺が知るかよ!」

こうしている間にもイチカ兄さんの暴走が進行し見境無く破壊を繰り返してしまう!

だがそんな事はお構い無しとばかりに秋彦は見当違いの憎悪をぶつけてくる。

「クッ!?…」

「何!?この力は…」

「あひゃはっはは!凄い力だぜこりゃあよぉ!」

以前と全く変わっていない馬鹿正直な剣道の型ではあったが、それを上書きする程の力を得た事で押し通されてしまう。

「ひゃははあー!」

「!?…」

「音六!?」

「一体どうしたのよ!?」

暴れる秋彦を止めようと動き出そうとした途端急に音六が頭を抱えながら苦しみだしたのだ。

 

Side音六

「うああっ!?…」

「ひゃはははー!」

投獄されていた筈のはーくん達の怖い元お兄さんが女尊男卑の襲撃者達と一緒に襲いかかってきた。

その時彼が纏っている白式のISコアであるハクナから助けを求める声が聞こえていた。

「くうぅっ!?…そんな事を白式に、ハクナにさせないで!…」

「何?まさか白式は!?…」

私はハクナの苦しみを代弁するように叫んだ。

あの時見た夢はこの事を暗示していたんだ…

そしてはーくんが一早く理由を察してくれる。

「ハクナに何をしたの!?…」

「あ?俺の言う事を全然ききやがらねえから俺を脱獄させてくれた奴に細工してもらったんだよ!」

「「!?…」」

元お兄さんは全く悪びれもしないでそう言った。

PiPi!

そんな私達の驚きをよそに通信が入る。

束博士だ。

「『皆、大変なんだよ!』」

「白式の事ですか?それなら今しがた奴の口から聞きましたが…」

はーくんが言い当てるが話はそれだけではないようだ。

「『それもなんだけど…それより全員早く機体を解除して!』」

「え?…」

「『良いから早く!説明している暇は…』」

「ひゃははあー!」

「「!?」」

束博士の慌てぶりをよそに元お兄さんが機体からドス黒いオーラを放ちながらこちらへと向かってきた。

「此処は私が!」

「オルコットさん駄目!…」

「おっとそれはいけないなあ~!」

「キャア!?」

不味い!

オルコットさんがビットで牽制しようとするがアレはそれだけで防げる代物ではないことを感じた私は慌てて止めようとしたがその前に元お兄さんが彼女を掴んでいた。

「おらよお!」

「キャアアァー!?……」

掴まれたオルコットさんは悲鳴を上げドス黒いオーラが彼女の体に入っていってしまう。

機体も強制解除されてしまい地に落とされる。

「セシリア!」

「うう!…」

「ん?皆コレ見て!」

「こ、コレは!?…」

デュノアさんが慌てて駆け寄る。

なんとか意識は保っているようだった。

ふとデュノアさんが何かに気が付き叫んだ。

彼女の手に握られていた綺麗な蒼である筈のブルー・ティアーズの待機状態であるイヤリングが黒く染まっていたのだ。

「…」

駄目!…イヤリングからはブルー・ティアーズのコア人格の声が聴こえてこない!…

代わりに何故か白式の方からブルー・ティアーズの苦しむ声が聴こえてきた。

「まさか白式と同じ様にブルー・ティアーズも!?…」

「そらそらあー!」

「!ツクモ!…」

私はすぐに心当たりに行き着く。

元お兄さんは意に介さず白式が出せない筈のビットを繰り出してきた。

私はすかさずバリアを展開し防ぐ。

「あれはセシリアのビット!?…まさかISコアがアイツに乗っ取られたとでもいうの!?」

「「ええ!?」」

「『これは…確かに白式の拡張領域が強制的に拡張されています!』」

「なんて事だ!?…」

繰り出されたビットに鈴ちゃんが気が付き、リィがそう分析結果を出し皆驚愕するしかない。

束博士が伝えたかったのはこの事だったのか…。

「ガアアァァ!」

「ウゼえんだよこのゴミが!」

「ガ!?」

未だ暴走状態にあるいーくんが元お兄さんに向かって行くがビットで近付けない。

「ひゃはっははは!」

「ガアァー!?…」

吹きとばされてしまういーくん。

皮肉にも暴走は止められた。

だがこのままではあの元お兄さんにいーくんが殺されてしまう。

「アバよぉ!死ねぇ!」

元お兄さんが雪片をいーくんに振り翳そうとしたその時…

「秋彦!」

「何ッ!?…」

突然現れた箒さんによって雪片が弾き飛ばされ防がれた。

「箒姉さん…」

「此処は彼女に任せてみよう…」

「え?…音六ちゃんそれ本気?」

「うん…」

「音六がそう言うなら俺だけ残って皆は下がっていてくれ」

「わ、分かったわ!」

ISコアを乗っ取ったのが百武装の能力によるものだとしたら恐らく箒さんには効かない筈だ。

はーくんに後を頼み私達は下がった。

 

Side箒

「秋彦…」

「へえ…俺の邪魔をするんだ?」

山籠もりからようやく学園に戻って事態を察した私だったが彼がまたも凶刃を振るうのを見て介入した。

「ああ…今迄が間違っていたんだ!

もうこんな事はやめてくれ秋彦!」

「俺に意見するなよ裏切り者が!」

「あ、秋彦…」

私の言葉は最早彼に届きはしなかった。

ならばもう迷いなどない。

「私の篠ノ之流でお前を修正する!」

「やってみろよ!」

私の空烈をいとも簡単に防ぎ掴む秋彦。

「!?なんで効きやがらねえ!?

話が違うじゃねえか!」

「?」

私はその発言に訝しむ。

音六の予想通りだった。

秋彦のISコアを乗っ取る能力は彼が人工ヴァリアントとして発現させたフィールド型の百武装【クライムネスオーラ】によるものだった。

セシリアのブルー・ティアーズだけでは飽き足らず箒の紅椿までもを奪おうとした秋彦だったが彼はあの時無常にも気絶させられていた為、箒がアンチセンスエナジー体質だという事を知らなかったのだ。

おかげでオーラは打ち消され何も問題は無い。

「箒姉さん無事か!?」

「あ、ああ…SEの残量は?」

「心許ないな…回復を頼むよ」

「ああ【絢爛舞踏】!」

駆け付けた春季も箒に回復して貰い安堵する。

「誰も彼も俺をコケにしやがってぇー!」

更に逆上した秋彦はオーラを更に強めながら突っ込んでくる。

「…はっ!」

一呼吸置き私は雨月を振るった。

「何ッ!?…」

「そ、その技は!?…」

驚くのも無理はないか…。

「な、なんでお前があのゴミの技を使ってやがるんだ!?…」

「言った筈だ…私の篠ノ之流の技でお前を修正すると…何時までも下らない拘りに縋っていては駄目だと教えられたからな」

「やっぱり残影斬か!」

最もトウカとの模擬戦の一件がなければ永久に私は悩んだままであっただろう…。

「く、糞がっ!…!?」

「着いたようだな」

援軍が到着した合図が聴こえてくる。

 

Sideイチカ

「グッ?…」

歌声が聴こえてくる…でもカレンやサクラさんじゃない?

だけどとても心地良いな…はっ!?

「剣崎イチカ!それでもヴァリアントか!武芸者としての貴様の誇りはそんなものか!」

男の怒号が聞こえてくる。

俺は確かワザと力を暴走させて…そうだ俺は!

「俺は…戻るんだあああー!」

俺は手放していた意識を取り戻した。

「はあああああー!」

「チッ!?…今日の所はここまでにしといてやるぜ!

あばよ!」

まさかコイツまでいたとはな。

秋彦は苦しみながらも俺の姿を目にすると少しは学習したのか撤退していった。

一体何がどうなったのだろうか?

 

 

 



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EPⅥⅩⅦ「文化祭!そして襲撃と…PARTⅩ」

少し遅いあけおめになりましたがことよろす。
リアルのクジ運が何故だかマッハw





Sideイチカ

「ようやく目が覚めたようだな剣崎イチカ」

「あ、アンタは!?…」

目覚めた俺の前には大鎌を携えた男がいた。

此奴まで此処にいるとはな!…

ミドウ・オルガスト…ギリウスとは別のテロを起こした実行犯といわれて指名手配されている男がいた。

俺に怒号を飛ばしてきたのは奴なのか?

だとしたら

「俺達に何故味方してきた?

アンタは亡国企業に入っていたんじゃないのか?」

その意図が分からなかず質問するが…

「その話は後にしてもらおういたい。

それより今は敵が来るぞ!」

「何?…」

ドーン!

彼がそう告げた瞬間、轟音が鳴り渡る。

「一体何が!?…」

煙が晴れた先に姿を現したのは…

「アレは!…サベージじゃない!?…」

明らかにサベージとは違うと直感した得体のしれない怪物だった。

「クッ!?…」

襲いかかってくる未確認怪物に対応する。

「む!コイツは!…」

怪物から感じた手応えはISを攻撃する時と同じ様な感覚であった為難無く倒す事が出来た。

しかし先程心に響いてきたカレン達以外の歌声、それに一体この怪物達は?…考えていても仕方無いか。

 

Sideミドウ

「通常級を六、ノクターン級の絶対天敵を二確認!

サベージまでもが襲撃してきていないだけでもまだマシか…そっちはどうだ?ファニール、オニール!」

俺はある者達の護衛を兼ねて日本に来ていたがまさか既に奴等がここまでのテロ活動の魔の手を伸ばしてきているとは思わなかった。

やはり元の世界で反旗を翻しやがったノートルダムの影響でもあるか…。

ヴァリアントの力を暴走させ溺れかけていた剣崎イチカを一喝し来る敵を見据え、ハンドレッドを振るった。

「こっちはノクターン級が一機確認されたよ!」

「既に私達で駆逐したわよ!」

「そうか」

完全に駆逐し終え、俺がこの世界に流れ着いて出会い信頼関係を築いたコメット姉妹の報告を受けて俺は武装を解除した。

後はこの学園とリトルガーデンの者達に事情を説明しなければいけないか…。

 

その頃、Sideクレア

「『!これは!?…』」

「どうしましたのリザ?」

「何かあったんですか?」

IS学園来訪直後にセリヴィア元教皇が再び動き出し襲撃してきたのを機にある人のおかげでリザはカレンの歌と自身のブレインコンピューティング演算能力とヴァリアントの力を駆使し捕縛した襲撃者を普通の人間に戻す作業をしていた途中何かに気が付いたらしい。

「『サベージとは違う反応が確認されたわ!…』」

「サベージとは違う反応ですって!?」

「『ええ、どうやらこの世界のISと酷似している感じがするわね…それに一時は剣崎イチカのエナジーの乱れがあったようだけど治まったようね…それにもう一つの反応は…』」

「一時の乱れ…まああんな人数の襲撃ですものね。

これは流石に致し方ありませんわね…」

「イチカさん…」

「ごめんなさいね…」

愛しい人が一時ピンチに陥っていたというのに助けに行けなかったカレンは俯く。

私は想われ信頼し合う彼女達の関係に少しばかり嫉妬してしまっていた。

こんな事になるのなら彼女ではなく手の空いている霧島サクラを呼ぶべきだったと気付かぬ内に意地悪してしまった事を後悔した。

PiPi!

サベージとは違う新たな敵という問題を抱えた私にエリカから定時連絡が入る。

「何か分かりました?」

「『ええ、セリヴィア元教皇やギリウス元皇太子等についてまた新たな事実が判明致しましたわ!』」

「これは!…」

エリカから送られたデータに目を通すと私は驚愕した。

 

 

 



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EPⅥⅩⅧ「偽りを纏う弱さを捨てて 前編」

Sideイチカ

「そうか…」

「すみません…イチカさんが苦しんでいたのに助けに行けなくて…」

「気に病む必要なんかねえよカレン。

その気持ちだけでも俺は十分嬉しいぜ?!」

「イチカさん…」

亡国企業の連日に渡る襲撃後、俺がヴァリアントの力を暴走させていた間の事を聞き、申し訳なさそうにしていたカレンを抱き締めていた。

「さてと…問題はサベージや元教皇達だけではないときたか…」

「ああ、その通りだ剣崎、皆先日の度重なる襲撃と正体不明の怪物の対応の為に各国から編入されてきた者達だ」

俺は突如現れたサベージとは違うあの正体不明の怪物を討伐したミドウ・オルガストと二人の少女を含む何時の間にか増えた数人の代表候補生であろう彼女達に視線を向けた。

「まあ、本題に入る前に軽く自己紹介とでもいこうか。

私はオランダ代表候補生のロランツィーネ・ローランディフィルネイだ、今後共よろしく頼む!

可愛らしき乙女達と勇者よ!」

以前のシャルの様な風貌をした銀髪の女性、ロランを皮切りにそれぞれの自己紹介が始まる。

勇者って俺達の事か?…

「次は私か。

ギリシャ代表候補ベルベット・ヘルだ以上」

赤ロングの女性は面倒くさそうにしながらそれ以上何も話さない。

「タイ代表候補ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシー…」

褐色肌の少女は先程の彼女と同じ様に必要以上に話すような人物ではないらしい。

「私は鳳 乱音。

一応鈴とは従姉妹の台湾代表候補よ!」

鈴が凄くビックリしていた。

又叔父の拳法を継ぐ予定の春に興味を持っているみたいだ。

ン?…後もう一人ぐらいいたような…

「…」

カーテンの影にオドオドしながら隠れていた。

「クーちゃん怖くないよ?…」

「ふあっ!?…ほ、ほんと?…」

「うん!…」

セラフィーノが隠れている彼女を猫のように招きよせていた。

というか知り合いだったのね。

「ろ、ロシア予備代表候補生く、クーリェ・ルククシェフカです!

よ、よろしくお願い致しまふっ!?…」

「だ、大丈夫!?」

盛大に噛んだクーリェさんを皆心配する。

予備という事は刀奈会長の補欠という訳か。

「だ、大丈夫れふ…」

なんとか回復したクーリェさん。

ちょっと不安ではあるが頼りには出来そうだ。

「最後は私達ね。

カナダ代表候補のファニール・コメットよ」

「同じくカナダ代表候補のオニール・コメットだよ~皆よろしくね!」

「ちなみに私達はアイドルを兼業しているの!」

成程…俺が暴走状態から元に戻れたのも彼女達の歌があったからか。

という事は…

「彼女達にヴァリアブルコアを提供したのはアンタなんだな?

ミドウ・オルガスト、アンタには聞きたい事が山程ある」

「わ、私達もミドウお兄ちゃんの事は話しますから!包み隠さずに!」

ミドウを心配してかオニールが立ち塞がる様にそう言ってきた。

「オニール…いや俺自らが全て話す」

「ミドウお兄ちゃん…」

オニールをなだめながらミドウは語り出した。

「あれは…」

 

Sideミドウ

五年前

「ミーくんお疲れ様!」

「先走ってほんとしょうがないわねミドウは」

「はは…」

俺はセカンドアタックに巻き込まれた直後、世界有数のヴァリアント武芸者として覚醒を果たし武芸者として目覚めた実の姉であるネール姉さんと幼馴染兼許嫁でもあったシャルティーや他の仲間達と国をサベージの侵攻から平穏を護る為日々戦い続けていた。

だがそれまでの平穏が崩壊の一途を辿る引鉄が着実に引かれ始めている事に気付けずにいた。

とある日

「グッ!?…」

「敵が多過ぎるわ!…」

サベージの襲来数が予測されていたよりも遥かに多過ぎて捌き切れない状況が続いていた。

「一旦撤退して体勢を…」

「どうしたんだ姉さん!?」

「いいから早く皆伏せて!」

姉さんが何かに気が付き俺達に伏せるように促した。

その瞬間、ドォーン!

そこからしばらく俺達の意識は暗転した。

「グッ…一体何が?…!?」

目が覚めるとそこにはとても受け入れ難い光景が目に飛び込んできた。

「うう!?…」

「…ね、姉さん?…シャルティー、皆!?」

俺以外の皆が傷付き何かに苦しんでいたのだ。

姉さんが守ってくれたのか…。

周囲を取り囲んでいた筈のサベージもコアが焼け爛れ活動を停止していた。

これはまさかヴァリアントウィルスの浸食!?

一体何故…今は考えている場合じゃない!

普通の武芸者でしかない彼女達ではこの量のウィルスの浸食を処理しきれない。

ならばと急いで吸い出す事にするがいかんせん俺一人では到底間に合う筈もなかった。

「糞ッ!糞ッ!なんでだよ!姉さん…シャルティーイィー!!」

虚しく俺の絶叫が響き渡る。

俺はそのままショックで意識を失ってしまった。

 

 



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EPⅥⅩⅨ「偽りを纏う弱さを捨てて 中編」

Sideミドウ

「糞ッ!…」

大切な仲間達を一挙に失ってしまった俺は何故彼女達があんな死に方をしなければならなかったのか原因を探っていた。

ガタッ!

「爺!戻ったか!…爺!?…」

調査を頼んだ姉さんの専属執事が戻ってきたのが分かり俺は駆け寄った。

だが彼の様子が可笑しかった。

「ぼ、坊っちゃま!…」

「一体何が!?」

歴戦の戦士でもあった爺が傷だらけになって帰ってきたのだ。

「は、早くこの国からお逃げ下さい!…でないと!…」

「で、出来ない!…母さん達が愛したガルフストアを捨てて逃げるなど!…」

「で、ですが!…」

「爺、しっかりしてくれ!」

「坊っちゃま、よくお聞き下さい!…ガルフストア国皇陛下と女皇陛下両名が何者かに暗殺…ぐふっ!?…」

「なっ!?…おい爺!爺ィー!」

爺から衝撃的な最後の言葉が紡がれ俺は悲しみに暮れながら驚愕した。

母さん達が暗殺されただって!?

まさか姉さん達を殺したのも!…

「絶対に許さん!…」

俺は復讐の大火に燃えた。

爺が死守してくれていた調査報告書を手に俺は国中にいる不敬な輩を始末する為駆け回った。

そして遂に俺はこの国の闇を本格的に知る事となった。

「フフフ…これで儂等は安泰じゃな!」

「アンタだったのか!…」

「む?おお!愛する甥よ!何用かな?」

「恍けるな!」

白々しく愛するとかほざく叔父、ゲラン・ガルフストア。

「…何の事かな?」

「戯言は時間の無駄だ!

お前の所業の全ては分かっている!

逃げようだなんて思うな!」

「…貴重なヴァリアントだからと生かしておいたがこうも早く発覚されるとはな」

「ゲラン!…一体何をしたか分かっているのか?!」

開き直った叔父に俺は怒りをぶつけた。

此奴はあのヴィタリー・トゥイニャーノフの一派を語る腐った科学者共と結託し武芸者の人件費削減とサベージ殲滅を図ろうとある物を開発させていた。

それは何処からか購入し隠し持っていた戦略核に濃縮したセンスエナジーを配合させた爆弾だった。

我が国は元々戦争国家などではなく核がもたらされていただけでも問題なのにそれに配合されたセンスエナジーにも問題があった。

ヴァリアントウィルスを一切処理せずに配合していたのだ。

人件費削減…最初から金のかかる一般武芸者をも一緒に処理する目的でこの男は開発させていたのだ。

核物質と混合したヴァリアントウィルスが爆発的にその質量を増やした爆弾は開発に成功してしまい撃ち放たれあの悲劇をもたらしたのだ。

そして、その混乱に乗じて母さん達も暗殺されてしまった。

王位はまだ若い俺ではなく継承権が過去に起こした事件で既に剥奪されていた筈の汚い叔父の手に見事に渡ってしまった。

只それだけの為に大切な人達が殺されたのだ。

言ってしまえば俺はヴァリアントだったから生き長らえただけに過ぎなかった。

「ふむ、だがたとえそこまで分かっていても果たして儂を殺せるかな?」

「俺は貴様を一度も叔父だなんて思った事など無い!

そして貴様などに皇国を渡す訳にはいかない!」

既に展開した死神の鎌を構え奴の首を狙おうとしたが

「儂一人だけでいる事に疑問は持たなかったのかね?」

「何ッ!?こ、これは!?…」

ゲランが何かのボタンを押した途端、俺の体は痺れを感じた。

センスエナジーに反応し阻害する超音波だと!?…此奴こんな物まで!…

ま、不味い!…

「安心しろお前はとても貴重なサンプル体なのだからな。

後で研究所に送り届けてやるとしよう」

「ふざけるな!この糞がぁっ!?……」

俺はあまりの苦痛に意識が暗転してしまった。

「ようやく気絶したか…これで…」

「ゲラン覚悟!」

「何ッ!?……」

一安心したゲランだったが突然姿を現した謎の人物に首を撥ねられ絶命した。

ゲランは武芸者の襲撃ばかりを気にしていた為それ以外が疎かになっていた為か簡単に討ち取られたのだった。

 

 

 

 



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EPⅦⅩ「偽りを纏う弱さを捨てて 後編」

Sideミドウ

「…ハッ!?俺は…」

「おお!お目覚めですか皇子!」

「お前達は…」

俺が目を覚ますと皇族直属精鋭騎士団の人達がいた。

「俺は確かゲランの奴を…」

「御安心下さい皇子!奴は我等の手で討ち取りました!」

「!そうか…」

そうかこの国もまだ完全に腐りきってはいなかったようだ。

俺の復讐は終わった…と思われたが次の一言で驚愕する。

「どうか気を落としにならないで話を聞いて下さい。

敵はゲランやヴィタリー一派だけではございません!

国を汚す輩はまだいます!」

「なんだと!?」

「ええ、アルフィード大佐だけでは調査しきれなかった部分がいくつかありまして…」

爺が調べきれなかった事だと?…

俺は騎士団の一人が差し出した報告書を読んだ。

「これは…本当なのか?」

「は、はい!間違いありません!

大佐の報告書と照らし合わせればお分かり頂ける筈です!」

「…」

一通り目を通した後、俺は再び怒りが湧いてきた。

これが事実であるなら前代未聞だ。

民を導くべき皇族の者でありながら全世界へ向けて戦争準備を始めているなどとは!

此奴が大元の姉さん達が死ぬ事にもなってしまった原因の張本人!

「ギリウス・クラウス・ウェンズ!…」

俺は奴を探しウェンズ皇国へと足を運んだ。

だが奴は既にリトルガーデン所属の二人のヴァリアント武芸者が奴の罪を看破しロウゴクに入れられていた事を知った。

今度こそ俺の復讐は終わりを告げたかと思われたその頃、皇派、武芸者と息を潜めていた反皇派、反武芸者団体による全面戦争が始められてしまっており俺が国へ帰還した時には既に騎士団達すらもが敗北し本当の意味でガルフストア皇国は壊滅してしまった…。

「---ッ!」

声にならない悲痛な叫びを上げて俺は突如発生した時空の亀裂に巻き込まれこの世界に迷い込んだ。

世界すらも失い、最早生きる希望を只ひたすら腐った国家を潰すという事に執念を燃やし国際的テロリストを名乗る亡国企業に内部スパイとして入り込んだ。

そこで初めて奴の姿を目にしたのだ。

そう、元の世界で投獄されている筈のギリウスがテロリストのトップにいた事だ。

奴は勿論反省の色など無く挙句最初は俺の正体がバレていなかった為か悠々と武勇伝の様に話しているのを見て憎悪に燃えた。

だが、ある時奴の闇討ちしようとした所、奴までもが俺の前に立ち塞がった。

そうあのノートルダムの教皇だった。

奴の不思議な力で俺の正体が遂にバレてしまい逆に追い詰められてしまった。

「糞がッ!?…」

命からがら奴等が保持していたヴァリアブルストーンやその他の物資をいくらか持ち出し逃亡生活に突入した。

世界を放浪している間、俺は異国へと流れ着いていた。

持ち出していた物資もとうに底を尽いてしまい俺は今にも倒れそうな状態になっていた。

「くっ!?…」

ついに俺は力尽きてしまい意識を失ってしまった。

「ちょっと!?アンタ大丈夫!?」

「大変!早く手当しなきゃ!」

失いかけたその時声が聞こえてきた。

なぜだかどこか懐かしさを感じる様な声だった。

~それからしばらく~

「…はっ!?此処は?…」

「ああ!?まだ起きちゃダメだよ!

体の状態が良くないってお医者さんが言ってたんだから!」

「!?…」

俺は目覚めてすぐとても驚いた。

「ね、ネール姉さん!?…」

「え?…」

「あ…」

死んでしまった筈の姉さんの姿が目に入ってきて思わず抱きよせそうになり踏み止まった。

少女の反応から察するに他人の空似のようだったから。

だがあまりにも似ている…。

「お前が助けてくれたのか?」

「ううん、私のお姉ちゃんと一緒にだよ」

「そ、そうかありがとう」

「あら、目が覚めたのねよかったわ!」

「!…」

件の姉であろう少女を見て俺はまた驚いた。

シャルティー…他人の空似と分かっていても思わず抱きしめそうになる。

「アンタ…何してるのよ?!」

ドン引きされていた。

「あ、いやすまん!…」

「もう!…そんなに元気あるんならもう大丈夫そうね」

「あ、ああ…」

治療とヴァリアントの自己治癒能力でほぼ体調が戻り問題は無かった。

「でもなんであんな所で倒れていたのよ?

あそこはつい先日絶対天敵<イマージス・オリージス>が襲撃してきた地点よ?」

「イマージス・オリジス?」

「知らないの?」

「あ、ああ…」

サベージのこの世界での呼び名か?

だが対抗出来る術は俺や奴等以外は持ち合わせていない筈だ。

それにエナジーの残留も感じられなかった。

これから察するにサベージとは違う異種生命体の可能性か。

絶対天敵の事を教えて貰い、俺は彼女達コメット姉妹の家でしばらく居候させてもらう事にした。

それから数日が経ち

ビー!

「!絶対天敵の襲撃警報!いくわよオニール!」

「うん!

ミドウお兄ちゃんは此処にいてね」

「ああ…」

嫌違う!…この感じはそれだけじゃない!

「百武装展開!」

俺は彼女達が出撃ったのを見計らい飛び出した。

 

少し経った頃、Sideコメット姉妹

「クッ!?何よ此奴!ショットガンが全然効かない!」

「だったらブレードでいこう!」

「ええ!」

「せやあ!」

襲撃してきた絶対天敵を討伐し終えた瞬間、何処かに潜んでいたもう一体の未確認の個体が襲ってきた。

「あう!?…」

「そ、そんな!?…」

今迄なら私達が一心同体で動かす専用IS「グローバル・メテオダウン」の武装が余裕で通じていたのに目の前の個体には通じていなかった。

「ならこれならどう?【ソング…」

「うくっ!?…」

「オニール!?な、体が急に!?…」

最大の武装を使おうとした瞬間、機体が不調をきたした。

それとほぼ同時にオニールと私の体の様子も可笑しくなった。

ISの機能が落ちているの?…

不味い!…このままじゃ!…

連続戦闘でSEの残量も祟り一時撤退に動く事すら出来ずにいた。

「くっ!…」

敵の一撃が私達に迫っており、目を閉じそうになったその時だった。

ザシュ!

「サベージ!もうお前達などに奪わせなどしない!」

「み、ミドウお兄ちゃん!?」

「アンタなんで!?…」

助けた青年、ミドウが敵の体を大鎌でいとも簡単に斬り裂きながらそう呟いていた。

 

Sideミドウ 推奨戦闘BGM「追憶のスカーレット」

「ふっ!」

現れたサベージは珍しい女王大型のサベージだった。

斬り裂いた体の中から大量の通常型が這い出てくる。

だがその程度今の俺には屁でもない!

「うおおおおー!」

俺は不思議と体の軽さを感じていた。

「はあっ!」

新たに見つけた復讐以外の希望を胸に俺は強くなったのだ。

「これで終わりだ!」

サベージのコアを的確に砕き討伐を終えた。

「あ、アンタって一体?…」

「分かっているさ…話すよ」

その後、俺は彼女達に自身の素性全てを明かした。

事を語り終えるとオニールが姉さんの様に優しく抱きしめてくれたのだ。

それにファニールは驚きながらもまた手を差し伸べてくれたのだった。

 

Sideイチカ

「そういう訳があったのか…」

「そうだ」

「そんな酷い!…」

彼の話を聞き、エリカ副会長の調査にも間違いが無い事を確認した俺達は知らなかったギリウスの所業に怒りを燃やしていた。

それと同時にオルコットのブルー・ティアーズの人格コアが元教皇の手で脱獄し人工ヴァリアントの力を得た元愚兄の力によって奪われた事を春から聞き又怒りを燃やした。

 



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EPⅦⅩⅠ「修学旅行にて」

Sideイチカ

ハンドレッド世界で反旗を翻したセリヴィア元教皇がこのISの世界の国際的テロリストである亡國企業を取り込みIS学園に連日の奇襲を仕掛けてきてから翌週

「本気ですか理事長?」

「以前から決まっていた事ですしおいそれと今更取り止めなど出来ませんよ…

幸い心強い方達もいる事ですし」

「それはまあ…仕方ありませんね」

その傷もあまり癒えないまま学園は京都への修学旅行が迫っていた。

理事長が言うには例年通り決行する方針だとの事。

刀奈会長は急ぎクレア会長らとこの件で打ち合わせを行い、学園の警護にはリュートとトウカ率いる新一年生選抜隊チームが担当。

恐らく学園のスケジュールの大半が敵に漏洩してしまっている可能性もあるがぐだぐだ言っていられる余裕などない。

そして…

「だからといってこの事態は流石に予想出来なかったぞ!…」

「イチカさん早く!」

途中の新幹線内に爆発物が仕掛けられパニックになっている。

これは恐らく亡国企業自体の思惑か…皆のISを奪う算段だな。

だけどそんな事はさせない。

「シャーロット博士、束さん!」

「もうすぐ終わる!」

幸い仕掛けられた爆発物はすぐに発見され解除作業に入っていた。

後はまだ付近に居る筈の構成員を追う。

それもすぐに見つかる。

監査役でついてきていた刀奈会長とクレア会長が金色のISを纏った女性と対峙していた。

蜘蛛型のISを纏っていた奴、オータムは既にクレア会長によって解除に追い込まれている。

「もうこれ以上は無駄ですわよ」

「抵抗しないのなら悪いようにはしないわよ?」

「クッ!?…」

女性は悔しそうにしていた。

そもそも本来の亡國企業はテロを起こして一体何がやりたかったんだ?

「それは…この世界の歪みの象徴である全てのISの破壊よ…」

「貴方達ね…ISがある今でも世界は正しい方向に修正されていってるわ。

貴方達がしていたことは只世界の混沌を悪化させるだけの行為に等しいわ。

道具は使う人間の心次第なのだから」

「…」

それでも女性は何か言いたそうにしていた。

そこに

「痛っ!…何を…」

「ISの…あの子達の本当の願いも理解していないのにそんな簡単に壊すなんて言わないで!…」

話を聞いていたのかセラフィーノがそう言いながら女性に平手打ちを繰り出す。

余程効いたのか遂には黙る。

爆破強奪事件を企てた構成員達は全員しかるべき場所へと送られた。

だが…

 

~同じ頃、IS学園地下~

「ハッハー!」

「きゃああああー!?…」

地下では防衛に回されていた教師部隊は蹂躙の限りを尽くされてしまっていた。

「千冬姉の邪魔は入らねえ!今の内にコイツも頂いていくぜ」

「ふふふふ!…遂に手に入れたわ!膨大なエネルギーの塊を!…」

「『やめて!…お姉様まで傷付けるのは!…』」

俺達は気が付けていなかった…奴等がもう既に本格的に動き出していた事に…。

 

 

 




急ですが一旦本編中断してコラボ募集致します!
やりたい方はメールもしくは報告版へ!


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EPⅦⅩⅡ「奪われし者達の悲しみの中で」

コラボ申請が現在一件だけしかきてないのでもう一話だけ投稿


Sideイチカ

「なんだと!?暮桜が敵に奪われただと!?…一体何をやっていた?!」

「『そ、それが…』」

京都修学旅行からの帰路で、織斑先生にそんな緊急連絡が入ってきたのだ。

「詰めが甘かったという事ですか…」

話を聞いてクレア会長が歯がゆむ。

どうやら絶対天敵をダシ、陽動に利用されたようだ。

絶対天敵はISだけでも対応出来る…サベージが出現しなかったからこそ学園に残っていたトウカ達が動ける理由がなかったのだ。

だが、学園地下でその隙を狙われ対応に当たっていた教師部隊は急襲してきたセリヴィアらの圧倒的力の前に全滅、気が付いたその時にはもう既に封印を施されていた暮桜がクラッキングされ奪われてしまったのだ。

「!?…」

「音六、どうした!?…」

ふとセラフィーノが震えていた。

春が駆け寄って確かめるがそれでも震えが止まらない。

「…コアの…皆の苦しみと悲しむ声が聴こえてくるの!…

ハクナ(白式)、ブルー・ティアーズ、暮桜、ラファール、打鉄、テンペスタ、後これは…レーゲン(リィ)の姉妹?の「助けて」って声が!…」

「なっ!?…」

「それは恐らくシュヴァルツェア・ツヴァイクだ!

まさか黒兎隊の皆までもが奴に!?…こうしてはおれん!」

セラフィーノの発言に皆驚く。

特にラウラはドイツの仲間が狙われていた事に驚きを隠せずすぐに連絡を取りに行った。

これはセリヴィア元教皇の思惑じゃない…恐らくあの元糞愚兄とギリウスが利害の一致で手を組んで世界各地で好き勝手に暴れているのだろう。

兎に角一刻も早く学園に戻り、奴等を止めなければサベージ、絶対天敵の対処所ではなくなってしまう。

「ギリウスは俺がやる!…」

「おっとそれなら俺も協力させてもらうぞ!

ダグラス卿への貸しもあるしな」

ミドウがそう言う。

それにハヤトが彼の監査役の名目も兼ねて一緒にギリウスの奴と戦う算段の様だ。

「「…」」

ふと見ると春と千冬姉がじっとお互い向き合いながら決意を固めていた。

「いざとなれば秋彦は私の手で…」

「姉さん…」

「それはいくらなんでも無茶だぜ?

いくら慢心しきっているとはいえいくつものISの力をアイツは取り込んだんだ。

そう簡単に事が運ぶとは思わない方がいいな。

大体、アイツなんかの為に千冬姉が手を汚す必要性なんかないのだからな…」

「一夏…」

「そういう事だから奴の事は俺達に任せてくれないか?」

「…ああ!任せたぞ!」

 

その頃、崩壊寸前の亡国企業では

「どういう事だ貴様!約束を違える気か!?」

秋彦は拾われた(利用されているだけ)亡国企業で出会った自分達の生き別れの妹だというM、織斑マドカに強奪した暮桜を渡す算段の筈だった。

セリヴィアが暮桜が長い封印の中で蓄積していたタイムマシンの再起動に必要なエネルギーだけを取り出し、彼に渡した。

その瞬間、彼はマドカに暮桜を渡すのが惜しくなったのだ。

「コイツ(暮桜)は元々千冬姉の力だぜ?

なら俺が使うに相応しいに決まっているじゃないか!

千冬姉のコピーだか生き別れの妹だかなんだか知らないけれど失敗作なんだろ?

だからコイツは俺の物さ!」

「き、貴様ァー!」

「おっと」

「しまった!?…あああああー!?…」

約束を違えられ怒りに身を任せたマドカだったがいくら生き別れていた妹といえどクローン元の千冬の失敗作だなどとといわれ、なんら一欠片も思い入れなど持ち合わせてなどいない秋彦が彼女への反撃に躊躇などある筈も無い。

マドカは秋彦のハンドレッドオーラの直撃を受け苦しみの叫びを上げながら気絶してしまった。

「テメエのISも俺が貰っておくぜ。

精々有効活用してやるからよお、はははー!」

気絶したマドカを放置したまま、彼女からサイレント・ゼフィルスの人格コアを奪った秋彦は高笑いしながら後にしたのだった。

「『これ以上はもう耐え切れない…』」

そんな人格コア達の悲痛な叫びが秋彦に届く訳も無く、虚しく響き渡るだけだった。

 




コラボ引き続き大募集!


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第六部 ハーヴェストストラトスタイム編
EPⅦⅩⅢ「蠢き出す陰謀を止める為にPARTⅠ」


ガンプラ一番くじ…見事11回でMGガンダムソリッドクリアリバース獲ったどおおおー!!!




Sideイチカ

異世界旅行を一旦終了してから数日後、遂に奴等が本格的に動き出してきた。

「あひゃはあー!」

「おい馬鹿彦!今はアンタの相手をしている暇はないんだ!

さっさとナターシャさんを監禁している場所を吐け!」

「誰が教えてやるもんかよ。

あんなにイイ女手放す訳ねえだろ」

「…」

またもや急襲してきた秋彦に俺は対応する。

だが奴に構っている余裕は無い…一刻も早く馬鹿彦をなんとか問い詰めて彼によって今現在も尚犯されて監禁されているナターシャさんを救出しなくては…

「イチカさん今援護を…!」

「そのウザってぇ耳障りな歌を聴かせるんじゃねえ!」

「キャア!?」

「カレン!?野郎!…」

馬鹿彦は最早ISコア達を取り込み過ぎた影響によるものなのか定かではないが全く痛みなど度外視しているように思える。

とにかく時間がない!…

「残影一突斬!」

「ぶべげっ!?…」

早々に技を叩き込んで気絶させ、また逃げ出さないように厳重に捕縛した。

そして束さんが開発した記憶読み取り抽出装置で馬鹿彦からナターシャさんの監禁場所を吐き出させた。

それを頼りに辿ると

「此処は…束さんが以前使っていて完全に放棄したラボだ…」

以前亡国企業の襲撃によって放棄せざるを得なかったラボを奴等が発見し使用しているみたいだった。

兎も角早くナターシャさんを救出せねばならない。

放棄されたラボには恐らくギリウスの奴もいる筈だ。

「俺も行く…とても女性陣には見せられる様な光景じゃないだろう。

それに…」

「ああ、分かっているさ」

ミドウも立候補してくる。

ギリウスもいるのなら好都合という訳だ。

早速、俺とミドウは放棄ラボに向かった。

「!ナターシャさん!」

「うう!?…」

俺はラボの隅で吊り下げられて全裸にされ胸や秘所を無残に犯されて涙を流すナターシャさんの姿があった。

俺は極力見ないようにすぐに彼女を解放し、ちゃんと毛布を被せて束さんに預けた。

アレ?…誰かいないような気が…真逆!?…

俺は嫌な予感を感じた。

 

Sideミドウ

「…そこか!」

イチカを見送った直後に、付近の壁に奴の気配を察知し攻撃を仕掛けた。

だが手応えはない…すんでの所で回避されたようだ。

「あぎゃは!ようこそ裏切り者君!

今の攻撃はほんとに危なかったなー」

「白々し…!?お前等なんで!?…」

「ご、ごめん…!」

「どうしても心配になって…そしたら…」

なんと俺の後を尾けてきたファニールとオニールが奴に捕まり人質にされてしまっていた。

「これで裏切り者君は手も足も出ないでっしょー!

まあ、それは剣埼イチカ達も同じ事だけどなァ!」

「「!?」」

奴がダガーを指揮棒のように振った瞬間だった。

それと同時に突然、俺の体に流れるセンスエナジーが異常をきたした。

「これは!?…体が…凍る!?…」

「ミドウ!?」

「お兄ちゃん!?」

「あはははっははははーァー!」

俺は奴の張り巡らした策略によって全身を凍らされてしまったのだった。

 

 



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EPⅦⅩⅣ「蠢き出す陰謀を止める為にPARTⅡ」

フフフ!…(ラスワン賞のMGガンダムドサァ!…
昨日の夕方また行ったらラス9という一桁台を切っていたので急いでラストワンアタッカーと化しました。
Wチャンスの方は流石に全部外れましたが…高望みし過ぎたw
おかげでジクウドライバー買う資金も吹き飛びました…
しかし、一般販売品の方もちゃっかり値上がりしてて苦笑いw



Sideイチカ

「「!?」」

「イチカ、カレン!今のは…」

何だ!?…今の物凄く嫌な感じは!…武芸者組全員が感じた。

「ミドウに何かあったのかもしれない…それにコメット姉妹もいないようだ…」

「ええ!?という事は…」

「ああ…十中八句ギリウスの奴に捕まって人質にされてしまったのかもしれない…」

「俺もイチカと同じだ。

けどあいつのエナジーの感じは…」

「急いで救援に行くべきだな。

ハヤト、いけるな?

春もセラフィーノ達と一緒に援護してくれ!」

「了解だ!」

「ああ、分かったよ!」

俺達が廃棄ラボに急いで戻るとミドウはまるで鉄格子といわんばかりに紅い氷の中に閉じ込められていた。

案の定、人質にされていたコメット姉妹を油断していたギリウスから奪い返し奴を見据えた。

「チィッ!?…」

「皆気を付けて!ソイツ、ミドウを!…」

「成程…ギリウス貴様…他人のセンスエナジーに干渉したな?!」

腐ってもギリウスは科学者の端くれだ。

どうやらハンドレッドを改造して新たな力を手にしたのか。

あの紅い氷はミドウ自身のセンスエナジーが奴の干渉を受け強引に引き出され凝固してしまったようだ。

「御っ名答ー!お前等ももれなく残らず氷漬けにしてやるよおー!

剣埼イチカァー!そしてリトルガァーデェン!」

「…甘いのは貴様だ!…ギリウス!…」

「ミドウ!…」

「何だとォー!?…」

攻撃を仕掛けようとしたギリウスの背後には先程まで氷漬けにされていた筈の大鎌を構えたミドウが立っておりギリウスは驚愕していた。

 

Side春季

「ファニールさん、オニールさん二人共準備は良いかな?」

「う、うん!…」

「ほ、本当にコレ大丈夫なの?」

「ああ、この力は愛ある者を傷付ける為の力じゃないからな!」

「そ、そう…」

俺は氷の檻に閉じ込めれてしまったミドウさんを助け出す為の算段をすぐさま思いつき矢千夜から恋愛銃槍を受け取り、ファニールさん達に渡した。

不安そうにするファニールさんだったが、俺の言葉に安心したのかオニールさんと共に氷漬けにされたミドウさんに向かって恋愛銃槍を構えた。

俺は音六達とイチャイチャしブーストした力をファニールさん達が構える恋愛銃槍に譲渡する。

後はファニールさん達二人がミドウさんへの愛を恋愛銃槍に上乗せすればこの氷の檻を溶かす事が出来る筈だ。

「お願い!…戻ってきてよミドウ!ッ…」

「ミドウお兄ちゃん!…」

「はっ!」

恋愛磁場のエネルギーが段々と氷を溶かしていった。

「良し!…」

 

推奨戦闘BGM♪「DeCIDE」

Sideミドウ

「今度こそ決着を着けてやるぞギリウス!」

「お、お前何故!?…あの氷の檻からどうやって脱出したぁー!?」

「俺達だけに執着していたのが貴様の敗因の一つさ…」

「何が…!?」

「あの可笑しな氷なら俺達力を借してコメット姉妹がミドウさんを想う愛の力で溶かしたよ!」

「な!?…お、お前は有象無象の人工ヴァリアント…ぶべえっ!?」

「その汚い口を閉じろ!」

ギリウスの真正面にイグニッションブーストで加速し現れた春季が奴の顔を思い切り殴る。

俺は彼等が新たに得たという力(コラボEP参照)を借りたオニール達の想いの力によってセンスエナジーの氷の檻を打ち砕けたのだ。

「なんだよその意味不明な力はあー!?」

「二度も同じ手は食わないぞ!…この一撃で貴様に終わりを刻む!」

「しゃらくせえー!」

俺は鎌を奴に向けて振るう。

対して奴はダガーで防御を取る。

だが

「!?」

「終わりだ…!」

俺の決意の一撃を受け止め切れずに奴のダガーは砕け散る。

そして…

「こ、こんな所で俺の野望が!……」

同時にギリウスの体に亀裂が入り、奴は血飛沫を噴出し仰向けに倒れ伏した。

やっとこれで…

「ネール姉さん、シャルティー…皆!…敵は取ったよ…」

「ミドウ…」

遂にギリウスを討ち取った俺はラボに空けられた穴から空を見て仰いだ。

 



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EPⅦⅩⅤ「蠢き出す陰謀を止める為にPARTⅢ」

Sideイチカ

「もうやめろ!そんな事は!」

「あっひゃあー!」

「皆から奪ったISコア人格の娘達を早く返して!…」

「アレも全部俺のモノなんだよ!」

捕縛していた筈の馬鹿彦がまたもや逃げ出し、急いで追うと戦闘に入った。

此処であの馬鹿を取り逃がす事になれば何時まで経っても人格コア達を奪還出来ない。

「余所見しててイイのかぁー?!」

「チィッ!?…下がるんだセラフィーノ!」

「う、うん…」

痛みを度外視している戦いを際限無く仕掛けてくる為に何度倒してもキリが無く、奴からコアを取り戻す為にはセラフィーノがコア達に呼びかけてシステムの穴を突くしかない。

だからこそ奴に架け橋である付喪月神のコア人格だけは奪われる訳にはいかないのだ。

「まだ手間取っているのですか?…」

「ああン?!」

「…」

最悪のタイミングだな!…ここで奴が…セリヴィア元教皇までもがお出ましとはな!…

「今から挽回すんだよ!」

「いい加減に聞き飽きました…と言いたい所ですが」

「?」

セリヴィアは馬鹿彦の背後に立ち彼の背に触れると…バチバチ!っと赤黒い奔流が入り込んだ。

かと思うと馬鹿彦の背から白い何かを取り出した。

「ぐっふ!?…て、テメェ…一体何しやがる!?」

「貴方の枷を取り外してあげたに過ぎませんよ。

コレは返して差し上げましょうか」

「!」

セリヴィアはその白い何かを俺達に手渡してくる。

「これ…ISコア人格の子達!…」

「何!?…何のつもりだ?セリヴィア元教皇」

セラフィーノがそう言い、驚くと同時に俺はセリヴィアに問いかける。

「私の目的は「時空移動装置」を再び動かす為のエネルギーの収集。

個々の人格意識があるだけのコアにもう用はありません」

彼女はそう淡々と返答する。

「アンタはもう…」

「…許せない!…」

セリヴィアの返答に対し、俺がキレる前に流石のセラフィーノも人格コア達を馬鹿にされた事が許す事が出来なかったのだろう。

「待つんだセラフィーノ!

今は冷静になって人格コア達を早く元の居場所へと帰す方が最優先だ!」

「!…ごめんなさいイーくん…皆戻ろう!…」

今にも攻撃を仕掛けそうな雰囲気を纏っているが俺が慌てて抑える。

セラフィーノは謝罪し、コア達と話をして彼女達を元の持主の下へと帰してあげた。

「これで私の目的は達成されたも同然!

後は任せましょうか」

「ま、待て!」

俺の静止も虚しく、セリヴィアは姿を消した。

非常に不味い!…今の言葉が真実だとすればセリヴィアはもうタイムマシンを動かせるだけのエネルギーを手に入れた事になる。

早く彼女を止めなければ二つの世界に俺達だけでは恐らく捌き切れないであろう多数のサベージが降り注いでくる事になる。

むっ!

「ヨソミシテイテイイノカァ!」

「なっ!?…」

「イチカさん!?」

先程までとはまた違う様子の馬鹿彦が再び襲いかかってきた。

慌ててEバリアを張るがそれは容易く突破されてしまう。

「一体何が!?…」

「恐らくコア達が元の居場所へ帰って行ったからだと思う…」

「真逆!?…」

「武装のリミッターがカットされているのか!」

セラフィーノの推測通りだとすれば奴が今扱っている武装は全て「零落百夜」の様な人を殺しかねない武器と化しているという事になる。

通りでEバリアを…恐らくNバリアでも防ぎ切れないだろう。

面倒な…だがそれでも奴自身が強化された訳ではない。

人格コアを奪還出来た今、奴に遠慮する必要性は皆無。

ここから反撃だ!

「その通りですわ!」

「助太刀に来たわよ!イチカ!」

「!!?」

コアが戻った事で再び起動する事が出来たオルコット嬢のブルー・ティアーズを筆頭に救援が現れた。

その中には俺のせいもあって今迄意識を失っていたアリナの姿もあったのだった。

 

 

 

 

 

 



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EPⅦⅩⅥ「蠢き出す陰謀を止める為にPARTⅣ」

Sideイチカ

「クッ!?…」

「オォラァァー!」

「キャア!?」

突如として現れたセリヴィア元教皇の思惑によって図らずもIS人格コア達は解放されたが、それによって馬鹿彦の扱う複製された武装のリミッターがカットされてしまった。

が所詮はそれだけの事である。

奴の扱うハンドレッドの効果も意味を成さなくなった今こそ引導を渡す時である。

「よくもやってくださいましたわね!お行きなさい!」

奴の操る偽のBTとオルコット嬢のBTが激しくぶつかり合う。

「貴方の様な誇りの一欠片も持たない偽物が本物に勝てるとは思わないことですわ!」

「ソイツハドウカナァー?!」

「不味い!セラフィーノ!」

「分かった!…お願いツクモ!…」

偽・銀の鐘と重ねて同時に撃つつもりだろうがそんな馬鹿彦の思惑などお見通しだ。

俺はセラフィーノに指示し、了承した彼女がカードビットを飛ばし妨害する。

「チッ!?…」

「其処だよ!」

そこにアリナからの援護が入り、奴の体はアリナのハンドレッドが生成したテープによって拘束される。

「コンナモノォー!ウオー!」

「嘘ォっ!?…」

だが奴はものともせずに強引に引き千切る。

「オマエラゼンインココデシネェー!」

「!」

奴は偽・雪片・改を抜刀し≪偽・零落百夜≫を発動し斬りかかってくる。

だが…

「やらせない!」

「やあー!」

「はっ!」

「ググッ!?…」

美月、ラウラ、シャルの援護により中断される。

「秋彦!もうやめてくれ!…」

「ホウキィー!」

「駄目なのか…ならば!…」

奴は懲りもせずに再び零落百夜で仕掛けてこようとする。

対する箒は未だ戸惑いつつも我流の構えで馬鹿彦にカウンターを仕掛けた。

「ソ、ソンナバカナ!?…」

「追加よ!」

「シ、シマッタ!?」

箒が片方の雪片を柄から叩き折り、その隙を突いた鈴がもう一本を龍砲と青龍刀の同時攻撃で粉々に砕け散らせた。

「マ、マダダァー!オレニハマダクレザクラノユキヒラガァー!」

未だに悪足掻きを続けようとする馬鹿彦だったが…

「いいや、アンタはもう終わりだよ、只の秋彦よぉ」

「!?ナンダコレハァー!?…」

突然苦しみ始め膝をつく。

どうやら春がなんらかの策を張り巡らせていたようだ。

 

Side春季

「見事な迄の道化っぷり御苦労さん。

行き当たりばったりなアンタを逃がさずにトドメをかける方法がこれしかなかったからな!」

「ナ、ナニヲスルキダハルキ!?…」

「もうこれ以上アンタに名前を呼ばれる筋合いなんかないし、皆を傷付けられるのはごめんなんだよ!

コイツの中で穢れまくったアンタの業を浄化してきな!」

皆には知らせていなかったがそのおかげでようやく元馬鹿兄を罠に誘い込み恋愛磁場の結界で捕縛し、俺は若竹王や華恋さんから教えを請うた技術で新たに製作していた恋愛

武装を投入する事にした。

「束姉さん!」

「『はいはーい!』」

それを束姉さんに馬鹿の頭上目掛けて投下してもらい、俺の合図で開くと奴を閉じ込めた。

「ナンダコレハ!?…」

「「恋愛棺【ラブ・コフィン】」愛ある深き者には貯蓄されている磁場による一時の安らぎを与え、愛無き者には地獄の様な苦痛を与える…攻撃転用の場合は完全に使い捨ての武装だけど有効だろ。

アンタ自身からもう其処から出る事は叶わない。

皆!」

「ああ!」

「終わらせるよ!」

俺の合図を受けて皆、閉じ込めた馬鹿に向けて攻撃を放つ。

「恋愛拳!奥義≪超速円舞脚≫!ホーオー!!」

皆の攻撃に合わせて脚部Verの恋愛拳をコールした雷閃双舞脚に重ねて装備、奥義を遥か上空に舞い上がり全力を以て叩き込む。

「グガギャアァァー!?…」

シュー…と貯蓄されていた恋愛磁場が空になった事でラブコフィンがひとりでに開き、拘束していた馬鹿を吐き出す。

総攻撃を受けた馬鹿は悲鳴を上げてすぐに完全に沈黙していた。

これでひとまずは終わったか…。

 

Sideイチカ

「アリナ…」

俺は恐る恐るアリナに話しかける。

「皆が世界の為に戦っているのに私だけ呑気に寝ている訳にはいかないと思ったからね…あまり役には立たなかったようだけどさ…でも私はイチカのこと絶対に諦めないから!」

「むぐっ!?…」

「ああー!?」

「ふフン♪」

「~(;^ω^)…」

彼女はそれだけ言うといきなり俺を引き寄せて強引にキスをしてきたのだ。

当然、カレンにも見られている訳で後の事を想像すると恐ろしい…。

当の本人はイタズラに成功した表情で此方を見つめてきていた。

だがこの後には更にとんでもない事が起きようとしていた…。

 

 



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EPⅦⅩⅦ「蠢き出す陰謀を止める為にPARTⅤ」

テレサ姫ぇー!…


Sideイチカ

「なんだ!?…」

人格コアを奪還し一息着いた俺達だったがしばらくして地面の激しい揺れを感じた。

「これは!…」

「ああ…」

どうやらセリヴィア元教皇が奪ったエネルギーを使用して時空移動装置の再起動してしまったと見て間違い無い。

此処に迄これ程迄の起動の際の余波が来るとは流石に予想外であった。

「イチカ、皆!アレ見て!」

「「!?」」

アリナが何かに気が付き、俺達はその方へ向くと驚愕した。

「アレは…時空の亀裂!…」

「このままじゃ!…」

『恐らくこの亀裂はセリヴィアがタイムマシンによって作り出したものでしょう』

「うお!?」

「リザ!」

不意に人力コンピューターと化しているクレア会長の妹であるリザさんに一部は驚き、彼女はそう考察を述べてくる。

『セリヴィアはこうしている間にも幾分もしない内に己の野望を果たそうとタイムマシンの力で過去に向かうでしょう』

「…」

「『時空の亀裂の中に行き彼女を止める役目を引き受ける勇士はいるかしら?

ちなみに私もついていきます』」

「リザ!?」

『大丈夫よ姉さん…それに彼女を打倒するには原初のヴァリアントである私の力が必要不可欠だもの。

それにほら、勇士だっているわ』

「俺達一人一人には守りたい人がいますのでね!」

「リザ…皆さん!…」

妹を心配する会長だったが彼女にそう言われ、立候補した俺やハヤト、春、ミドウを見て観念したかのように言葉を紡いだ。

「分かりました…全員生きて帰ってくる事!

これだけ言えば十分ですわよね!」

「はい!」

クレア会長の激励を受け俺達は

「イチカさん…必ず戻ってきてくれますよね?」

「ああ、約束する!」

「ハヤト…」

「はーくん…」

「春君…」

「ミドウ…」

「お兄ちゃん達…」

それぞれの大切な人達に決意を伝えた俺達はリザさんへと向き直る。

「『では、そろそろ行きましょうか』」

「「はい!」」

俺達はリザさんの後を着いて行き時空の亀裂へと入っていった。

 

Sideシャル

「行っちゃった…」

突然出てきた亀裂にイチカ達が入っていき、遂には姿が見えなくなってしまった。

だがその後の私達にも予想外の事が起きた。

「ジャマダァー!」

「キャア!?」

「んなっ!?なんでアイツ動けるのよ!?…」

私達は驚愕した。

さっきまで彼等にかなりボコボコにされていた筈の秋彦が目覚めて狂気の叫び声を上げながら亀裂の中へと入っていってしまったのだ。

その直後、亀裂は完全に閉じてしまっていた。

きっと大丈夫だよね?…

 

Sideイチカ

『近いわね…!?…」

「リザさん?」

『いえ…(今の嫌な感じは真逆…)それより皆さん、戦いの前にといってはなんですが私にそれぞれのハンドレッドを食べさせて下さい』

「え?…」

リザさんのナビゲートで亀裂を進んでいると不意に彼女はそんな事を言ってくる。

『安心して下さい。

私のヴァリアントの力を以て体内で皆さんのハンドレッドの増幅調整を施すのです』

「そういう事なのでしたら」

俺達はそれぞれのハンドレッドをリザさんに差し出す。

彼女はすぅーっと深呼吸しながら粒子化したハンドレッドを吸収していく。

『ん…増幅には少しばかりの時間を要しますので…その間にセリヴィアを見つけ出す事を優先事項に』

「分かりました」

俺達は再び歩みを進め、しばらくするとようやく見つけた。

「セリヴィア元教皇!」

「此処まで追って来るなんてお馬鹿さんがいたみたいですね…神となったこの私を止められるものならかかってらっしゃい!」

不気味な笑みを浮かべた元教皇を見据え、俺達は臨戦態勢に入るのだった。

 

 

 

 



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EPⅦⅩⅧ「決戦!叡智の戦い!前編」

ハンドレ最終巻が出たので本編に戻り。それはそうとスパロボにソシャゲだけどマヴラヴAN参戦おめえええ!
急いでリセマラしたけど…しかし、今イベのOGガチャでクリスタルががが…おのれー…!
ならばBETA共をクリスタルに変えてやるぜえええ!
そして読者総員、推奨BGM用意ィー!



Sideイチカ

「やはり貴方方が追ってきましたか…」

「『セリヴィア!…その無用な牙を降ろす気は無いのですね?…』」

異空間の最奥でセリヴィア元教皇は俺達を待ち構えていた。

「今更私の中にあるこの想いは誰にも否定させない!うあああああー!…」

「これは!?…」

「『!…』」

リザさんの最後の説得も虚しくセリヴィアは叫びを上げ、彼女の体は突如発生したエネルギーの奔流に包まれた。

「あはははは!これです!この力があれば私の復讐は成し遂げる事が出来る!」

奔流が止むとセリヴィアの体は最早人間とは呼び難い黒緑の異形へと成っていた。

「『恐らく装置の余剰エネルギーを彼女が自らの体に取り込んだ影響でしょう…ですが…セリヴィア、貴方は神にでもなる気なのですか!?…』」

「そう!私は今度こそ復讐を果たし、新たなる世界の創造神となるのです!」

「そんな事は絶対にさせない!リザさん俺達の武装を!」

「『分かりました。勝手ながら貴方方に二つの世界の未来を…希望を託します!』」

「「了解!」」

 

推奨戦闘BGM♪「futue gazer」or「斬撃よ唸れ咆哮の如く」♪

俺達はリザさんから彼女のエナジーで強化を施された百武装を受け取り臨戦態勢に入った。

うん、以前よりもしっくりくるな!

「原初のヴァリアントの力でハンドレッドを強化したようですが…神たる私の相手としてはまだまだです!」

「残影斬!」

「残影斬弐式!」

まずは俺とハヤトのコンビネーションで仕掛ける。

「甘いですね!」

対するセリヴィアは体から極太の触手を伸ばし、俺達の武装に巻き付かせてくる。

「くっ!?…」

「ならば…残影黒刺斬!」

巻き着いた触手によって弾き落とされそうになるが逆にそれを利用し体を捻らせ奥義を発動する。

「そう来ることは分かっています!」

「こっちもなあ!うらああー!」

更に触手を伸ばして追撃の妨害をしてこようとするセリヴィアだったが、ミドウの援護によって斬り裂かれる。

「そんなものかあ?神聖教会の元教皇の力ってのはぁ!」

「愚かな地球人類共め、舐めた真似をぉ!…」

「そっちこそ愚かだよ…アンタ、愛憎なんかじゃ自身すらも苦しめる事にしかならない事に気付けよ!

鳳凰打羽陣!」

「くっ!?…」

ミドウの挑発にセリヴィアは激昂するが、彼女の頭上に控えていた春が論破し仕掛ける。

言ってくれるなぁ。

春の攻撃によってセリヴィアの張っている防壁はミシミシと音を立てている。

「今だよイチカ兄さん!」

「了解だ!行くぞセリヴィア!」

春の合図を受け、俺はディヴァインブラスターをデュアルアクト、全速力でセリヴィアへと接近する。

「しまっ!?…」

「残影一突斬!」

俺の一撃によりセリヴィアは防壁の崩壊と共に大きく吹き飛ばされる。

「わ、私は神である筈なのに!?…」

「愛憎で何もかも見失っているアンタが神になんかなれるかよ!」

「俺達には守りたいものがある!それをお前に壊されてたまるかぁぁー!」

「そうだ。そんなお前に大切な人達との絆で繋がれている俺達は負けない!

次で決める、合わせてくれハヤト!」

「ああ!」

「私がこんな所でええええー!…」

尚も抵抗しようとするセリヴィアに対し、俺とハヤトは再び接近する。

それと同時にハヤトはアウターを仕舞い、サクラさんのフェアリーテイルと酷似している【妖精の紡ぎし双翼<フェアリー・フェアリーツヴァイウィング】をデュアルアクトしていた。

「壱…」

俺がディヴァインブラスターを零距離で迫るセリヴィアの触手を撃ち払い

「弐の」

ハヤトがウィングの能力で残りの触手の動きを阻害し、斬り裂く。

「「参!≪残影双円斬≫!」」

「ああああああー!?…」

トドメに呼吸を合わせた俺達の持てる一撃をセリヴィアへと加えた。

セリヴィアの体は俺達の一撃を受け急速に彼女自身が取り込んでいたエネルギーのほとんどを吐き出してズタボロの状態だった。

「終わった…のか?」

「『ええ…その様ですね…!?皆さん今すぐに回避を!…』」

「「え?…」」

セリヴィアの暴挙を止め、倒したと思い一息ついた瞬間、リザさんが警告を告げてきたのだが…

「がっ!?…」

「いいっ!?…」

不意に何かの影が横切り、回避が間に合わなかったミドウとハヤトが吹き飛ばされる。

「一体何が!?…」

見ると強化されていたミドウの大鎌の切っ先は三割方欠け、ハヤトのウィングの片翼も欠けてしまっていたのだ。

「糞っ!?…今ので残りのエナジーの四割が持っていかれた!?…」

「これじゃ武装の修復が出来ねえ!…」

「なんだと!?…」

俺は二人の状態に驚愕する。

こんな芸当が可能なのは…

「ああああああああー!?……」

「『セリヴィア!?…』」

無残に倒れていたセリヴィアが悲鳴を上げる。

彼女は突如現れたドス黒い影に取り込まれたのだ。

「あ、アイツは!…」

セリヴィアの姿が消え、代わりに出現したのはこの世の者とは思えない異形であった…。

 



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EPⅦⅩⅨ「決戦!叡智の戦い!後編」

これが因縁の完全決着だ!読者総員、推奨BGM用意ィィー!!!



推奨戦闘BGM♪「Believe in my exstence」 Sideイチカ

「ホムンクルス!…いや、秋彦ぉー!」

『ハハハハハァー!スゲェチカラダコイツハァー!』

突如として現れた異形の正体はホムンクルスの力を取り込んだ秋彦だった。

否、取り込んだとは言い難いな…恐らくは福音・襲撃事件の時に討伐した筈の強化ホムンクルスの一部が奴の体に取り憑いたとみて間違い無い。

あの時の春が繰り出した一撃を喰らったその反動で再び目覚めてしまったのだろうか。

だがあの馬鹿はそんなホムンクルスの力を抑えて己のモノにしてやがる…それにセリヴィアまでもが奴に取り込まれてしまったのだ。

いずれにせよ今此処で今度こそ奴との完全決着を着けなければならない。

『モットチカラヲヨコセ!ソシテシニサラセヤァー!』

「ッ!…」

「イチカ兄さん!」

とはいったもののうかつに手は出せない。

やはりホムンクルスの力と取り込まれたセリヴィアの力は侮れないからだ。

問答無用といわんばかりに襲い掛かってくる馬鹿に俺と春は応戦する。

『アヒャヒャアァー!ドウシタァグテイドモォー!』

「まるで成長していないな…」

『ナンダト?…』

「ならばコイツにどう対応する?(春、準備だ!)」

「(OK兄さん!)」

俺は春にアイコンタクトを送りながら激昂する馬鹿に向かって自らの武装を投擲した。

『ソンナモノニオレガアタルカー!』

対する馬鹿は慢心したのかホムンクルスの力を使わずに、触手で移動し回避する。

だがな!

「今だ春!」

「良し!射出!」

俺の合図を受けて春が雷砲血神を射出しその上に乗りながら馬鹿に対して更なる追撃を仕掛けようとする。

『バカメ!ソノママテメエゴトクッテオレノモノ二シテヤル!』

馬鹿は予想通りにホムンクルスの力を使って春を今にも飲み込もうとしている。

かかったな!ド阿保がっ!

「馬鹿なのは其方だ!」

『ナニ!?…モゴゴ!?…コ、コレハァ!?…クソガッ!ハルノヤツドコニイキヤガッタ!?…』

突然、春の姿が武装毎消える。

代わりに馬鹿の口に収まっていたのは奴の力では吸収する事が出来ない恋愛棺があった。

馬鹿はすぐに吐き出す。

「此処さ!」

『ナニッ!?…』

春は消えた訳ではなく馬鹿には捉えられないスピードで急上昇し、奴の頭上を捉えていた。

まるで成長していない馬鹿には先程のフェイク攻撃は見破れずに見事に俺達の連携に嵌った訳だ。

「その穢(汚)れきった口にありったけ喰わせてやるよ!但し、ゲテモノだけどな!」

そして春は急降下しながら本当の追撃に乗り出す。

「≪双脚迅雷翔≫!はっ!」

『バカメ!…コンドコソネコソギ…!?…』

再び喰らおうと奴は大口を開けるがどうしてかそれ以上の言葉を紡ぐことが出来ずにいた。

「またまたフェイクさ!」

見ると奴の口の周りにはこれまたファンシーな形状をした鎖が何重にも巻き付いていた。

どうやら春が脚部武装に仕込んでいたらしい。

ふと奴の体は何かに圧し潰されたかの様に無様に地についていた。

『!?!?…(な、なんで体が重く!?何をしたあ!?)』

「その鎖は【愛の重鎖<ラブ・グラビティングチェーン>】…重い愛情、それを具現化させた新しい恋愛武装さ。

未だに邪な気持ちしか持ち合わせず、愛や絆の力を知ろうとさえしないアンタにのしかかったその重力には耐え切れない筈だ!…」

成程…それは凄い武装だな。

『ギイィ!?…(なんでこの俺がここまで!?…)」

そしてしばらくして鎖と一緒に先程投擲した闇切りも回収される。

「何度も言った筈だぞ元愚兄…いつまでも他人を一切顧みず己の欲望と強引に奪った力に飲まれ成長しないお前に大切なものを持ち得た俺達は負けないと!」

『ナニヲォ!テメエラハダマッテオレノテノヒラノウエニイレバイインダヨ!』

「はあ…アンタの様な身勝手なエセ先導者に未来は担えない!

〔真の先導者の名と責務〕において今此処でアンタとの因縁を完全に断ち切る!

行こうイチカ兄さん!」

「ああ!」

相も変わらず己の欲求のみを満たそうとする秋彦に俺達は呆れ、それぞれの一撃にありったけを込めて構えた!

「残影…一突斬!!」

「鳳亜流恋愛奥義、≪重愛天輪拳≫!!」

『ヤ、ヤメロ、ヤメ…ギャ、ギャアァァァー!?……』

再び春の鎖によって奴は動きを完全に拘束され、俺の一撃が心臓部にあったコアに突き刺さる。

そして最後に春の放った拳の強力な一撃によって奴のコアは砕け散り断末魔の叫びを上げ触手毎崩壊していった。

「ン?…」

「『セリヴィア!…』」

ホムンクルスと秋彦の姿が完全にこの世から消え去り、力の大半を失い気を失ったセリヴィアらしき少女の姿が出てきたのだった。

「一件落着…といきたい所ではあるが…」

「『…』」

「悪ィ…奴のせいでとてもじゃないが時空間に穴を空けられる様な余力は残っちゃいねえ…」

「俺もだ…」

「そうか…春は?」

「すまん…あの天才(笑)のせいで恋愛磁場は空っ切しだし、他は戦闘が長引いたおかげで出力不足のようなんだ…」

この時空間からどうやって俺達が脱出し元の世界に帰還するかを話し合うがどうやら皆自身の武装を保つのに精一杯のようだ。

リザさんも俺達のハンドレッドの強化にほとんどを注ぎ込んでいた為に同様であった。

 

 

 



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EPⅧⅩ「全世界を繋げし戦い!そして愛と希望の唄を!PARTⅠ」

現実世界側の戦い!
ようやく書きたい回が来た!


~イチカ達がセリヴィア+強化馬鹿を打倒する直前後、現実世界では~

時空移動装置が作動させられてしまったその影響によって急速にヴィタリー、ギリウスの残した人工型サベージは勿論の事、二つの世界の地球を襲い来る野生サベージが活性化してしまう<第四次襲来(フォース・アタック)>が引き起こされ、各地で対応し切れずに少なからず被害を出してしまっていた。

その上、未だサベージ以上に正体や目的の一切が謎に包まれている絶対天敵という人類の第2の敵の存在もある以上、人類にとって予断を許さない状況が続いていた。

 

Side鈴

「ああ、もう!なんて数なのよ!」

「もうしばらくの辛抱だよ鈴!」

「そうですわ!イチカさん達が無事に戻ってくる事を信じて今は私達が成すべき事を!」

「シャルロット、セシリア…ええ…そうね!…なんとか私達でイチカ達の帰る場所を守らないと!…」

私達は互いに励まし合いながら襲い来るサベージや絶対天敵を倒して被害を食い止めていた。

「でももう機体の調子も体力も…!」

連戦続きで流石に皆、機体や体調に支障をきたしてしまっている。

これではいずれ戦線維持も難しくなってしまう。

「鈴、危ない!」

「へっ!?…」

疲弊していた私にサベージが襲いかかってくる。

不味い!?…今攻撃を喰らえばENが…訪れてしまう瞬間に私は目を閉じそうになる。

が…

「無事か?…」

「…箒?!」

私の窮地を救ったのは箒だった。

「あ、ありがとう…でもアンタ…」

「このぐらいしか役に立てる方法が思いつかなかったからな…」

彼女にだけは奴等の砲撃の一撃すらも効かないみたいだけどやはり危険な事なのには変わりはない。

「もう本当に仕方が無いですね箒姉さんは…」

「一人で悩むくらいなら私達を頼れ!

お前も仲間なのだからな!」

「そうだよ!」

「美月…皆…」

美月ちゃんや他の皆の言葉で箒は涙を流していた。

「『!また奴等が来ます!』」

リィの警告で私達は体勢を立て直そうとした。

「グ!?…」

「「?…!」」

急に奴等が呻き声を上げ、動きが鈍くなっていくのを見て私達は一つの結論に行き着いた。

イチカ達がやってくれたんだわ!

恐らく装置を作動させた黒幕の張本人を倒したのだと判断した私達。

「でもまだ油断は出来ませんよ!」

「分かっているわ!」

残存サベージを皆で一気に掃討する。

その直後の事だった。

「はろはろー!皆大丈夫かな?それと鈴ちゃんに伝言とお届け物だよ!」

「私に?」

戦線の隙を見つけて専用ロケットで此方に補給にやって来てくれた束博士が私にそう言いながらコンテナを降下させてきた。

急いでその中を開けてみると入っていたのは…

「コレは!?…」

付喪月神!?なんでコレが!?…

兎に角伝言があるって言っていたわね。

私は機体を操作して拡張領域にあった録画データを再生した。

「『鈴ちゃん、皆!…』」

「音六ちゃん!」

「『このデータが再生されているという事は今の所、君達は無事な様だね』」

「「!」」

音六ちゃん、そして向こうの世界の天才であるシャーロット博士の姿が映し出され私達は事の次第を知る事になる。

「そんな!?…」

どうやら博士の話によるとイチカ達は今も尚あの時空間から戻れなくなってしまっている事を聞かされた。

「『落ち着きたまえ諸君。現在もモニタリングしているイチカ君達のバイタル数値は一定以下を示してはいるがこれ以上の減少は見られない。

恐らく予定外に力を使い過ぎてしまった弊害だろう。

ならば彼等の力を取り戻させる方法はいくらでもあるのさ!』」

「それって!…」

まるで今も此方を覗いているかのように博士は語る。

予定外…明らかにあの時、しつこく追っていったあの馬鹿のせいね…。

「カレンちゃん達の歌声ね!」

「『そう!…だけどあの二人の歌だけではまだ足りない…だからこそもっと彼等を想う人の力が必要だ』」

「という事はひょっとして音六ちゃんや矢千夜ちゃんも!?」

「『うん!…私もやーちゃんも歌いたいの!…イーくん達へ、そしてはーくんにもこの溢れ出す想いを届けたいから!…』」

「…」

「お姉ちゃん…!」

音六ちゃんの決意の言葉に他の皆は驚いていた。

私やラウラは薄々そう感じていた為にあまり驚きはしなかったけど…。

「『という訳で此方は約四時間後を予定に全世界生中継の月面超大型ライブを開催する!』」

「『だから鈴ちゃんにはツクモの事をしばらくの間だけ託すね!…他の皆もどうか頑張って!…』」

その言葉を最後に動画は終わった。

四時間後を目途に世界生ライブかぁ!…向こうの世界でも大人気アイドルやってるカレンちゃんやサクラさん、それにサプライズ出演のモデル・アイドル級に可愛い音六ちゃんに矢千夜ちゃん、そしてこの世界の世界的アイドルであるコメット姉妹による合同ライブ。

確実に数分も経たない内にチケットは即完売なんて事がザラになる筈だ。

「…」

「シャルロット、アンタが今考えている事は私にも分かるわ…だけどそれで良いの?!

こんな私達でも想いを届ける事は出来るわ!

それは戦って居場所を守る事よ!」

「鈴!…そ、そうだよね…!…僕も頑張るよ!」

シャルが何処か暗い表情をしていたので私は一声かける。

想い人に振られた者同士、思う所がありそれをぶつけ合った。

「『第…ええい忘れましたよっ!…敵の接近を確認!』」

「皆行こう!ツクモちゃん…音六ちゃんの代わりだけどよろしくね!」

リィが再び敵の接近を告げ、皆それぞれ補給を終え、一方の私は損傷が酷かった甲龍・改のデータ一式を一時的に音六ちゃんから託された付喪月神に移行させ起動し再び出撃したのだった。

 



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EPⅧⅩⅠ「全世界を繋げし戦い!そして愛と希望の唄を!PARTⅡ」

鈴達が再び戦場に赴いている頃、Side音六

「という訳…」

「分かった!他ならぬ友の彼女の頼みだしな!

数馬や他の奴にも声かけて俺達も出来うる限り協力するぜ!」

「そそそそれに!…あの世界的アイドルのコメット姉妹の歌も生で聴けるなんて感激!」

「おい蘭、本音がダダ漏れじゃねえか」

「あ、あはは…」

「ありがとう…」

私ははーくん達が次元空間に未だ取り残されている事、そんな彼等を取り戻す為に私達自身や出来るだけ世界中の皆の力が必要でそれを集める為に超大型ドームを借しきってゲリラライブを数時間後に行う旨をシャロ博士と共に五反田食堂を訪れ説明した。

勿論チケットはタダでだーくん達に渡した。

話を聞いて最初は驚いていた彼等だったがすぐに理解を示してくれて了承してくれた。

後は…不安の種を取り除くだけ…皆…。

 

Side簪

「はあはあ…」

「ほらほらぁ!どうしたのぉ弱弱しい子猫ちゃあん?

そんな馬鹿馬鹿しくて下らない事をしている暇とかあるんなら崇高な私達の目的を手伝ってはくれないかしら?」

「お断りします!…それに貴方達の方が下らないです!…貴方達如きが彼女達の想いを馬鹿にしないで下さい!…」

「なんですって?…」

私は本音達と一緒に剣埼君達の話を聞き協力する為に街で数量限定の無料ライブチケットを配布して回っていた。

だがそこで突然息を潜めていた女尊団卑の過激派テロリストの残党の襲撃に遭ってしまったのだ。

亡国企業が解体された影響か無駄に人数がおり此方は追い詰められていた。

「愚かな男なんかに味方をする小娘共が!っ…」

「かんちゃん下がって~!」

「ちっ!?…」

私の挑発とも取れる言葉に激昂するテロリストがレーザーブレイドを構えて仕掛けてくるが間一髪本音の専用機「九尾ノ魂」が放った絶妙にズレてる射撃でなんとか難を逃れる。

以前迄のフレンドリーファイアは向こうの世界の人の指導のおかげで改善されていっている。

「簪ちゃん達大丈夫!?」

「お姉ちゃん!」

本音が救援要請をしてくれていたのだろう。

お姉ちゃんがヘリで上空から駆けつけてきてくれたようだ。

「ちっ!?…アンタ達が手間取っているからロシアの犬まで!…」

「味方割れしているなんて余裕あるわね?

何も此処に駆けつけてきたのは私だけじゃないわよ?」

「何っ?…」

「…」

「げっ!?貴様はIS殺しのジジィ!…くっ!?…」

「ヘイへーイ!おとなしく逃がすとでもお思いかな?」

「ヒイッ!?…」

逃げようとした襲撃者のリーダーだったが救援に駆け付けてきてくれた親バカの顔となった音六ちゃんのお父さんと春季君の拳法の御師匠さんのコンビネーションの前に退路を断たれて敢え無くお縄となった。

 

Side鈴

「うらあああー!」

私は音六ちゃんから託された付喪月神もとい付喪月神龍を駆り、まだまだ湧き出して遅い来るサベージらを殲滅していた。

「はあ…やっぱりコレ重いわね…でも音六ちゃんはちゃんと使いこなしていた。

なら私だって使いこなしてみせるんだから!」

私は青龍刀と炎月霊剝刀の二刀流を構えサベージを斬り裂いていく。

「!」

戦いの最中、奴等の動きが途端に鈍くなっていった。

「これは…」

「きっとライブの準備が着々と進んでいるんだわ!

皆もう少し頑張るわよ!」

「「ええ!」」

≪全世界生中継月面ライブ開催迄後一時間≫

 

 




活報にて重要なお知らせが御座います。


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EPⅧⅩⅡ「全世界を繋げし戦い!そして愛と希望の唄を!PARTⅢ」

心の整理がつきましたので再開致します。


ルナベース大型ドーム内にて Side音六

「…」

私達は束博士がシャーロット博士との協力を得て造られたロケットで月面にある基地へと上がっていた。

ツクモのことは一時的に鈴ちゃんに託したからまだISの願いは叶っていないけど…また絶対…。

もうすぐそこまで私達のそれぞれが大好きで大切な人を取り戻す為のライブの開幕が差し迫ってきていた。

「何か不安なのかい?」

「ううん?…私もやーちゃんも信じて続けて全力でやる!…カレンちゃん達だってそう…」

「そうですよ!」

「私達も真逆、月でライブが出来るなんて思いもしなかったから緊張するけど全力でやるわよ!」

「どうやら先輩であるこの私からの直々のありがた~いアドバイスは要らないようね…」

「アンタも来てくれてたのねキャロ!…ってかあの子達はアンタのじゃなくて私の後輩なんですけどぉ?!」

「はいはい其処!喧嘩仕掛けない」

「あはは…」

「兎に角、皆で円陣組んでせーので展開するわよ!準備は良いかしら?

じゃあ、せぇーの…」

「「歌姫降臨/聖符/(疑似)百武装&恋愛武装展開!!」」

事前準備を既に済ましていたコメット姉妹以外、カレンちゃんとサクラちゃんは何時もの様に綺麗な桃色の翼とドレスアーマーを展開、武芸者ではないキャロちゃんはあらかじめシャーロット博士から渡されていた疑似百武装を展開しカレンちゃん達と同じタイプの派手な黄金色のドレスを纏った。

やーちゃんと私は束博士が恋愛武装のデータを利用して作り出し、恋愛指輪に収納してあった恋愛儀装〈ラブ・ドレス〉、やーちゃんが白、私は付喪紅炎装を展開後に水色のを纏った。

「皆それぞれの段取りとかはちゃんと把握出来ているわよね?それじゃあもうじき開演行くわよ!」

「「うん!!」」

ライブの開始時刻が遂に訪れサクラちゃんを先頭に私達は会場へと足を運んで行った。

 

Sideカレン

「はうう~…まだ緊張がぁ…」

「大丈夫よカレンちゃん。

此処で怖気付いていられない事は分かっているでしょう?カレンちゃんはカレンちゃんの想いを貫けば良い!…」

「は、はい!頑張らせて頂きます!」

サクラさん達と励まし合い会場に向かいながら再度段取り等を確認し合う。

まずライブ開始は私とサクラさん、キャロさんの一通りのライブ(この時はこの世界ではイチカさんのお友達限定で生配信が届けられてる)、次にファニールさんらコメット姉妹のライブ、そして生配信は二つの世界に一気に切り替えられ音六ちゃん達を紹介し加えた合同SPライブといった感じで行われる。

その最中でイチカさん達や地上で今も尚戦っている皆さんの事を告げて人々の想いを繋ぎ届けなければならない。

そうこうしている内に会場に着いた。

会場に足を踏み入れると中は事前抽選に当選する事が出来た超満員のファンの皆さん達で埋め尽くされていた。

「おっ待たせぇ皆ぁー!ライブ開始いくわよ!」

「よ、よろしくお願いしますね!」

ステージに上がった私達の挨拶を受けて一斉に歓声が上がってくる。

「まずは一曲目、「MyPlayer」いっくよー!♪~」

ライブがスタートし私とサクラさんは私達の唄を紡いで行く。

そしてサクラさんのソロ、私のソロ、次にキャロさんのソロが終わり、コメット姉妹がステージへと踊り出る。

尚更熱の篭っていくファン達の歓声も楽屋にまで響いてきていた。

「私達の声、届いていますよね?イチカさん…」

それと地上で今も尚戦い続けている皆さんもどうか!…私はその様な事を思いながら自分の中でもう一度リハーサルをするのだった。

 

Side音六

「…」

「分かってはいたけどやっぱり凄いね!…」

私とやーちゃんはライブを観に来てくれている大勢の観客の人達を見て今迄感じた事の無い高鳴るキラキラした気持ちが沸き出てきていた。

「『次はこの合同生ライブの特別ゲストの登場だよー!

皆大歓声で迎えてあげてねー!』」

「やーちゃん行こう…!」

「そうですね!」

オニールちゃんからの合図と電波が切り替えられ今度こそ二つの世界への中継が始まったはやる気持ちを胸に私達はステージへと上がっていった。

すると観客達は物凄い歓声を上げて出迎えてくれる。

「皆!実はこの生中継ライブを急遽開催したのには理由があるの…」

初めにファニールちゃんが話始めていく。

「ふぁ、ファンのみ、皆さんには未だに公表していないんですけど私達にはそれぞれ大切な人が居るんです!」

戦いの映像を出した後、意を決したかのようにカレンちゃんが告げると「え…」とか小声でちらほら聞こえてきた。

「その大切な人や一部の人達は今も尚地上で地球を守る為の戦いを繰り広げているの!だから皆の声も彼等に届けて欲しいの!」

サクラちゃんが必死な声で観客達に告げる。

「「私達からもお願いします…!…」」

私達も頭を下げて叫んだ。

しばらくすると大多数が納得してくれたのか再び歓声を上げてくれた。

「よっし!それじゃあ、ライブを続行していくわよ!音六ちゃん、矢千夜ちゃん!」

「OK!」

「うん!…歌おう!…♪~~」

気を取り直して私達は全力で希望と愛を繋ぐ歌を紡いだ。

 

その頃、時空間に囚われ続けていた者達 Sideイチカ

「『!…』」

「リザさん?…むっ!」

「こ、これは!…」

「ああ…!」

「間違い無ぇ!…」

ふとリザさんが何かに気が付き訝しんでいると俺も、否皆もそれに気が付いていた。

「確かに彼女の歌声が、音色が聴こえてきている…!サクラぁぁー!」

「ファニール!オニールーー!」

「うおおおおー!音六ぅぅー!矢千夜ぉぉー!」

それぞれの愛しい人の声が、いやそれだけじゃない…地球のたくさんの人達の想いも確かに聴こえ俺達を再び奮い立たせる源となる。

「カレン…皆!今戻るからな!…よしやるぞ!」

「「おう!」」

俺達は空間に向けてそれぞれの技を放ち巨大な風穴を作り其処に飛び込み空間を脱出した。

 

Side鈴

「!?あれって!…」

奴等を僅かまでようやく減らす事が出来、流れてくる音六ちゃん達の歌を聴きながら一息ついていると残っていた残存勢力は突如発生した空間の亀裂から降り注いできた無数の閃光によって一掃された。

「イチカ!…それに春季達も!…」

その空間から出てきたのはこの事件の黒幕を打倒し帰ってきたイチカ達だった。

「ただいま!…」

「ようやく…ね!…」

私にはその笑顔が堪らなく嬉しかった。

 

Side音六

「「!…」」

歌っている最中であったが私達は確かに愛しい人の温もりを確かに再び感じ取った。

外の映像を見てみるとサベージ達が一層されそこにはーくん達の姿があった。

「それじゃあ…次でラストミュージックいくわよ!「Lovewithyoyu」♪~」

正に地球の危機を救った英雄の帰還で会場の皆も大いに盛り上がり、サクラちゃんの号令でラストスパートの歌が紡がれた。

こうして約二日と数時間に渡る私達の戦いは歴史的大成功を記録をも告げたのだった。

 

 

 

 

 



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