鈍感な提督と艦娘たち (東方の提督)
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提督と叢雲
後半キャラ崩壊注意です。
「司令官、寝てるの?」
音を立てないようそっと執務室の扉を開け、そう呟いてみた。しかし、返事はない。
それもそのはず、私の目の前で、司令官は机の上に突っ伏して寝ているのだから。
分かってはいたが、念のため声に出して確認してみた。
私は司令官の方へできるだけ静かに歩み寄りつつ、彼について考える。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
昨日も、仕事を手伝おうという私の提案を却下し、私を早くに仕事から解放した一方、彼は一人夜遅くまで執務室に残って―――
もう少し、こちらへ向ける気遣いを自分へ向けて欲しい。でないと、きっと、倒れてしまう。
彼が申し出を断ったのは一度や二度ではない。前回秘書艦を任された時も、そうだった。
きっと私以外が秘書艦をやっている時もそうなのだろう。いや、そうなのだ、と吹雪が言っていた。
そう、私は、
司令官が倒れてしまわないか、それに―――
私たちを頼ってくれないことが、まるで、彼が私たちを、私を、不要だと―――
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そこまで考え、私は、ナーバスになり過ぎた、と思った。
そんな考えの人間が、一駆逐艦でしかない私の練度を最大近くまで上げるだろうか。
他の駆逐艦の子の練度も。
彼は、皆に平等に優しい。だからこそ、心配になるのだ。口には出せないけれど。
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私が執務室へ朝早くから来たのは、そんな司令官の様子を確認すること。
決して、司令官の寝顔を拝みに来たわけではない。
以前一度だけ寝顔を見ていつもの凛々しい雰囲気とは打って変わって可愛らしいな、なんて感想を持ったことはないし昨日の様子からするとこうして寝落ちしてしまっているだろうとか考えたから来たわけでもないしあまつさえ寝ている司令官の頬や唇を指でつついたりなぞってみたりできるかもなんて思ってないしそれにそれに―――
閑話休題。私は一体誰に弁明していたのだろうか。
しかし、特に異常はなさそうなのでほっとした。
安心したので、つい司令官の顔を観察してしまった。
男性に会う機会が少ない立場であるが、それによる色眼鏡を差し引いてもここの司令官の顔は整っているのではないだろうか。世間一般の男性よりも。多分。
それ故に、彼と結ばれたい―――カッコカリ、ではなく―――そんな風に考える艦娘はこの鎮守府に多い。自分もその一人だが。
勿論、顔だけではない。私たちのことを考えて怒り、悲しみ、優しくしてくれるところも素晴らしいし、女性の関心を少なからず惹くであろうルックスでありながら女性耐性に欠けるところは母性をくすぐってやまないし、というかなんでこんなに寝顔がかわいらしく見えるのとかほっぺやわらかそうさわりたいさわっていいよねはあはあ―――
「っ!?」
そんなことを考えていたら気づかぬうちに私の顔は司令官の顔の近くまで寄ってきていた。
まずい、離れなければと思い、慌てた私は机に手をぶつけ、音を立ててしまった。
当然、そんなことをしたら司令官は起きてしまい―――
「ぅん…?誰か「いやあああああああっ!?」ぶふっ!?」
私は思わず彼の頬を思い切りひっぱたき、全速力で執務室から出てきてしまった。
走りながら、ごめんなさい、と心の中で彼に謝った。
今度は、口に出して言えるようにしよう。この謝罪も、私の抱えるこの気持ちも。
タイトル、サブタイともに提督(司令官)の文字が入っているのに一言しかしゃべらないとは一体…
ごめんなさい、あってないような提督のバックボーンを決めたいだけのお話でした。
そのためには黙っていてくれたほうが個人的にやりやすかったのです…
というか前半はあんなに暗い感じになるとは思いませんでした。
この鎮守府の提督はルックスはイケメン、多方面に万能な超有能(描写できてないけど)、しかし女性関係はてんでだめだめな男性です。そんな人いないよって?そうです…ほとんどいないです…
フィクションなのでやりたい放題です。許してくだち。
叢雲は大幅にキャラを崩壊させていないつもりなのですがどうでしょうか。
個人的な叢雲像は
「司令官大好き、駆逐艦の平均的な恋愛観よりは少し上をいくおませさんで、司令官の前だとツンツン、皆の前でもツンツン(ばれてる)、誰もいないところだと司令官への愛をひとり呟いてしまう」
です。要はこのお話の叢雲です。かわいい
イメージが少しでも伝わる文章が書けたらいいなあと思っております。
ちなみに叢雲を選んだのは私の初期艦だからです。
こんな感じで続けられたらなあ(不定期ですが)、と思っています。よろしくお願いします。
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提督の独り言
艦娘とのイチャイチャだけが読みたいの!という人は読まなくても構いません。
艦娘は誰も出てこないので。
「ふぅ…」
僕はほっと息をついた。今日も朝から目が回るような忙しさだ。
この鎮守府で提督として
今は落ち着いてコーヒーを飲んでいるが、まだ今日の仕事は終わっていない。
彼女たちは今この時間も頑張ってくれているのだから、僕がいつまでも休んでいる訳にはいかないな。
気合を入れ直し、残る書類を片付けるため、僕は机に向かった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
僕がこれほど忙しいと感じているのは、書類の山を片付けること以外にも原因があると思う。
艦娘というのは、しばしば兵器と人間の中間に位置付けられる。
深海棲艦という、突如海に現れた人類を脅かす生物へ、対抗する唯一の手段―――として数年前に存在が発表されたのだったか。
この国の全員に対し適性検査を行い、一般人、軍人を問わず艦娘になる素質のある者は片っ端から海軍に選ばれた。
そこで、駆逐艦―――として今生活している子供たち―――まで連れて来るのは非人道的ではないか、とよく言われる。
しかし、形振り構っていられないのが現状だ。
初期の段階では勿論深海棲艦側が圧倒的であったし、現在は人間側が優勢である。が、いつ巻き返されてもおかしくない状況なのだ。
酷い言い方をすれば、使えるものは使わなければならない。無論、心苦しいが。
そして、
「男性は艦娘には
という学者達の研究結果により、後に適性検査は女性のみに行われ、男性は海に出ることができなくなった。出たとしても戦闘時は足手まといになるだろうから。
つまるところ今現在、彼女たちの力に頼り切りな状態なのだ。だからこそ、僕は今できる限りの事をして、彼女たちを支えたい。
しかし、目下の懸念はそこではない。
前述の問題に対しての電話対応(非難であるとか、様々あるのだ)などがあるため、ゼロではないのだが。
「今できる限りの事」に、彼女たちの健康管理、精神面でのサポートがある。
勿論、彼女たちが苦労しないように、多くの戦果を上げ(てもらい)、僕の海軍内の地位も大分向上させた。
地位が上がれば、自由度も増すし、待遇も下っ端のそれより格段によくなる。
そうした事だけでなく、人類を守るためとはいえ
僕が男(しかも一応上司)なので、言いたくても言えない事もあるだろうと思うけれど。
彼女たちも人間なのだ。きっと、誰かに話すという事は大切な事だと思うから。
話は少し変わって。
これを実行する前までは、彼女たちの僕への印象は非常に悪いものだろう、と勝手に思っていた。
彼女たちからすれば、僕は自分の都合のいいように彼女たちを使い倒す悪魔のような人間に見えていたはずだと思っていたから。
しかし、これがなかなか悪くはない反応で、僕は非常に嬉しかった。心の奥底で、何を考えているかは分からないが。
というのも、僕の評価は
「イケメンで、優しくて、私たちを気遣ってくれるとてもいい人」(個人差あり)というものが多かったからで。
勿論、僕の事を思い切り罵倒してくれる子も居た(Mではない)。が、そういう子は例外なく顔を赤らめていたので、風邪をひいているのかと思い、部屋へ連れて行った。すぐ良くなったようだけど。
僕の事をイケメンだなんだ、なんて慣れないお世辞を言わせてしまったからだろうか。
そして、その頃から彼女たちからのスキンシップも増えた気がする。
そして最近、それが過剰になった気がする。
具体的にいつから、とは分からない。ケッコンカッコカリ用の指輪が届いた頃からだったかもしれないし、もっと前からだったような気もする。
見目麗しい彼女たちからハグをして貰ったり、手料理を振る舞って貰ったり。時間に余裕のある時や非番の時には、2人でどこか行かないか、なんて誘って貰ったり。
正直大変嬉しいのだが、僕は幼少期以来、女性と接する機会が殆どなかったし、女性の提督もなかなか居ない。
なので、女性と触れ合う経験が少なかった僕が彼女たちに気を遣わせていないか、どこかおかしいところはないか、など心配事が尽きない。あと単純にドキドキする。
彼女たちとの接し方。これが、今の僕の悩みだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
少しコミュニケーションについての勉強をしてみるべきか。
そんな事を考えて、ふと、時計を見た。そろそろ、他の提督の元へ演習に行った第一艦隊が帰ってくるはずだ。
と、思った時、執務室の扉が開いた。
確か、第一艦隊の旗艦であり、今日の秘書艦は―――
ね、誰も出てこなかったでしょう?
すいません、調子乗りました。
茶番はここまでにして。
今回は提督と提督(と艦娘)を取り巻く環境(あと少々の鈍感アピール)について書いてみたかっただけの回です。
またタイトル詐欺です。ごめんなさい。
こんな文章、書いてみたかったんです。我儘にお付き合いしてくださってありがとうございました。
設定に関しては穴や矛盾があるかもしれませんが、よほど違和感がなければ無視していただけると…
前回よりも調子よく書けてしまったのはここだけの秘密(しかも前回よりも文字数多いね。叢雲、ごめんね)。
調子が良すぎて1話でまとめようと思っていたのが増えてしまったのもここだけの秘密。
これを書き始めて分かったのは、文章を書くというのは難しいという事。なめていた訳ではありませんが、改めて実感しました。本を読むときは大切に読もうと思います。
次回は私の好きな艦娘の一人です。嫌いな艦娘いないですけど。
私はツンデレとか幼馴染系とかそういう非実在系な性格の子(私の勝手なイメージ)が特に好きなのかもしれません。これも書き始めて分かった気がします。金剛みたいな直球な子も好きですが。
ヒントにならないヒントも書いたので、これで失礼します。次もそんなにかからずに投稿できるのではないかと思っております。
P.S.
前回の評価が思った以上に高く、私びっくりしてます。設定したボーダー(見ていただけるだけで御の字。お気に入り登録なんて夢のまた夢だと思ってました)が低かった?のもありますが。これからも見ていただけたら嬉しいです。
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提督と瑞鶴と翔鶴
いつも通りですね、はい。
「第一艦隊が無事帰投しましたっ!てーとくさーん!」
執務室の扉を開き、元気よく部屋に入ってきたのは―――
「瑞鶴、お疲れ様。…おっ、翔鶴もお疲れ様」
「はい…提督もお疲れ様です」
「ねぇねぇ、てーとくさーん!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そう、今日の秘書艦は瑞鶴。姉の翔鶴もついて来たようだ。
彼女たちは、先程まで他の提督の元へ演習に行っていた。
秘書艦なのに
が、秘書艦というのは第一艦隊旗艦も兼任している。その為、有事の際は出撃することもある。
まあ、瑞鶴の場合は少し違って、単純に僕のやっているような事務処理が苦手で、体を動かす事の方が好きだ、と言うので演習に向かってもらったのだが。
と、いうように臨機応変にしているのだ。例えば秘書艦が
僕の仕事に影響しないのか、といったらゼロではある。が、彼女たちの笑顔に比べれば些細なものだ。
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彼女と一緒にされていると知れば、大層ご立腹になるだろう。そんな事を考えていたら。
不意に、僕の左腕が引っ張られた。顔を向けると、瑞鶴が抱きついていた。胸を押し付けないでほしい。罪悪感が湧くから。
「提督さん、私の話聞いてるー?」
「大丈夫、ちゃんと聞いてるよ。瑞鶴が演習でMVPとったんでしょ?」
「ふふん♪私、結構頑張ったのよ?だから…提督さん、褒めて褒めてー!」
「うんうん、偉い偉い」
「えへへ…さーんきゅっ!」
「瑞鶴…ぃいなぁ…」
いつもと変わらない様子で、しかし顔を赤らめながら頭を撫でられている瑞鶴と、それを何故か少し羨まし気にぼーっとしている翔鶴。
そう。最近、こういう事を僕に求めてくる子が増えてきた気がする。
僕に頭を撫でられても大して良い事はないだろうに。
「んんっ、そうじゃなくて…瑞鶴!ぅらやましぃ…でもなくて、いい加減提督から離れなさい!」
「えーっ?なんでー」
「あなたは少し提督に我儘を言い過ぎです!いいですか!大体、あなたはいつもいつも…」
「まぁまぁ、翔鶴、少し落ち着いて。瑞鶴も、ね?」
「提督は瑞鶴を甘やかせ過ぎです!」
お説教を始めてしまった翔鶴に、ぶーぶー、と口で言いながら渋々僕から離れる瑞鶴と、巻き添えを喰らった僕。そうだろうか。
しかし、なんだかんだ言って、瑞鶴は物分かりのいい子だと思う。
「今日だって、苦手だからといって秘書艦業務をほっぽり出して演習に…」
「だって苦手なものは苦手なんだもーん」
「瑞鶴!」
「ぶーっ…あっ、分かった!」
唐突に何か閃く瑞鶴。なんだなんだ。
「翔鶴姉ぇ、羨ましいんでしょー?私が提督さんに頭を撫でてもらってるのがー。さっきからのは八つ当たりだなー?」
「っ!?…ん、な、え、ち違うわよ瑞鶴!」
「ふぅーん?じゃあ、さっきなんて呟いてたか提督さんに言ってもだいじょぶだよねぇ?」
「えっちょなんで聞こえて」
「ねぇねぇ、提督さーん?さっきね、翔鶴姉がねぇー?」
「ずーいーかーくー!」
先程よりも大胆に、椅子に座る僕の太腿の上に座り、しなだれかかってくる瑞鶴(いい匂いがする)。しかし、見たことないほど姉が涙目で顔を真っ赤にしているのを見て、かぶりを振って大きくため息を一つ。
「はぁ…提督さん、ちょっと待っててね?」
「お、おう」
もう少し素直になればいいのに、などと呟きながら、部屋の隅で体育座りになって床を指でいじっている翔鶴の元へ。瑞鶴、君がやったんだぞ…
言われた通り、待つ事数分。
一体二人で何を話し合っていたのか。答えはすぐわかった。
「提督…わ、私にも…頭を撫でてはいただけませんか…?」
訂正しよう、全く分からない。解るけど、分からない。
「提督さん、いつも頑張ってる翔鶴姉へご褒美に頭を撫でてあげて?」
「うぅ…恥ずかしい…」
ご褒美になるのかそれは。しかし、翔鶴に涙目で懇願されては断れない。女性の涙にはめっぽう弱いのだ。
それに、頑張ってくれているのは事実。
「いつもありがとう、翔鶴」
「~~~~~~っ」
頭を撫でてあげた。そんなに照れられるとこっちも照れてしまう。
「ぐぬぬ…提督さん、私も撫でろー!」
「頭を撫でるくらいならいつでもやるよ?」
「ほんとっ!?」
いつかみんなにちゃんとしたプレゼントを贈らねば。それと瑞鶴に対しもっと厳しくいくべきかどうかも考えねば。
そんな事を考えながら、僕は暫く、可愛らしい姉妹を撫で続けた。
その後、「頭を撫でるくらいならいつでもやる」と僕が発言したのが、どこからか艦娘全員に伝わってしまったようで、彼女たちが定期的に執務室に頭を撫でられに来るようになってしまった。何故だ。
というわけで、今回は瑞鶴と翔鶴でした。
この二人も大好きです。特に瑞鶴。ずいずい。幼馴染感半端なくないですか?一緒にゲームしたい。あと抱きつかれてみたい。
翔鶴も、普段はしっかりしてるけど甘えだすと破壊力半端ないと思うんです。きっと。絶対。ぎゅってしてあげたい。
二人ともギャップがあるのがいいですよね。
私は女の子のギャップが好きなのかもしれません。ツンデレ然り。みんなそうかな?
こんな女の子たちに好かれてみたかっただけの人生でした。まる。
これから先、お話内の時間の流れは繋がりがなくなっていくと思います。多分。前話を読んでない方は既にないかもしれませんが、ここまでで一日のつもりです。
次回の予定は未定です。
誰がいいですかね…よろしければ提案していただいてもいいんですよ(チラッ
もしかしたらすぐ出せないかもしれませんが、気長にお待ちください。妄想力が足りないよ。うん。
書きたい事は全て書きましたので、これで失礼します。ここまで読んでいただいてありがとうございました。
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提督と第六駆逐隊(前編)
ある日のお昼。執務室にて。
「よし、取り敢えずここまでにしようか」
「ええ、そうね…っと言ってもほとんど司令官が一人でやってたんだけど」
「そうなったのは君が朝寝坊して遅刻したからじゃないか」
「うぅ…その話はもういいでしょ!もうっ!ぷんすかぷんすか!」
「冗談だよ。それに本当はちょっと心配してたんだからね?連絡もなかったし」
「あっ…ごめんなさい。それと、ありがと、司令官」
「偉い偉い。今度から気を付けてくれればいいよ」
「えっへん!暁は一人前のレディーなんだもの。お礼もちゃんと言えるし、
一人前のレディーは寝坊しないんじゃないかな、と口に出したらぽかぽか叩かれてしまいそうな事を考えつつ、今日の秘書艦である暁の頭を撫でた。(彼女もこれがお気に入りらしい。よく分からないが)
「それじゃ、お昼にするかな。暁も食べておいで」
今日の昼食は何にしよ「司令官!」うわあっ!?」
「きゃあっ!ごめんなさい、司令官!」
「ごめんごめん、ちょっと気を抜いてて………大丈夫だよ」
しまった。気を緩め過ぎだぞ、僕。
…では、改めて。
「どうしたの、何かあった?」
「あっ………あのねっ、………うぅ…恥ずかしいよぅ…でもでも…」
「大丈夫、焦らなくていいよ?」
何か言いたい事があるようだが、耳まで真っ赤にして頑なにこちらを向こうとはしない。本当にどうしたのか。
もしや、先程の扱いを意外と気にしていたのか。それとも、僕が自分で気付かないうちに、彼女に何かとんでもない事をしてしまっただろうか。
どんどん思考がネガティブな方向へ。
そしてそのまま、お互いに黙り込んでしまった…すると、扉をノックする音が。この気まずい雰囲気を壊すチャンスだ。そう思って。
「はっ、入っていいよー」
「Спасибо.司令官、暁は…居たね」
「あっ、響」
「暁、私たちもいるのよ?いつまで経っても来ないから、何かあったのかと思ったんだけど…」
「はわわっ…司令官さん、お疲れ様、なのです」
入ってきたのは響だった。後ろには雷と電の姿も見える。
大方、一向に食堂に来る気配の無い姉を気にしての行動なのだろう。改めて、姉思いのいい子たちだ。そう思った。
「はっはぁーん?なるほどなるほど…司令官、もう少しだけ待っててくれる?…ちょーっとこっちに来てくれるかしらー?」
「ふぇっ、なになにー!?」
「ええっ、ちょっと…ん?」
「さぁ、その間私の頭を撫でるんだ。さぁ、早く」
「ち、ちょっと雷ちゃん、響ちゃん…うぅ…ごめんなさいなのです、司令官さん…」
「いや、君が謝る事じゃないし、謝らなくていいんだけど…」
いきなり入ってきたと思ったら暁を一瞬で扉の向こうへ連れ去ってしまった雷に、止めようとした僕の動きを遮るように、すっと目の前に現れ頭を撫でるよう要求し始めた響に、非常に申し訳なさそうに僕に向かって謝る電。あまりに展開が早すぎる。どうしてこうなった。
-------------------------------
「ふふっ…やはり、いいものだ、司令官。хорошо」
「はわっ、はわわわっ………あっ、うぅ………ふしゅー」
仕方なく要求を飲み、響と、何故か顔を真っ赤にして頼んできた電の頭を撫で続けること十数分。電の顔は未だ真っ赤だ。寧ろさっきより酷くなっている気がする。少し熱も持っている気もするが大丈夫だろうか。
「撫でるのはやめないで!…なのです」
一旦撫でるのを止めたらそんな事を言われた。また撫で始めると顔を綻ばせていたのでまあいいだろうか。…いいのか?
閑話休題。
それにしても、暁と雷、遅いなぁ…そんな事を考えていたら。
ぴくっ。響が動いて―――
「帰ってきたよ、司令官」
そう言い終えると、廊下を走る二人分ほどの足音が。そして、扉が開いた。
「たっだいまーっ!司令官!お待たせしたわねっ!」
「ふえぇ…早いよぅ、いかずちぃ…」
「暁がいつまでもごねるのがいけないのよ?」
そんな風に言い合いながら暁と雷が帰ってきた。響よ、どうして足音が聞こえる前に分かったんだ…?
また一つ、艦娘の謎?が増えたところで。
「結局、暁はさっき何を言おうとしてたんだ?」
「ふぇっ」
「さぁ、暁、今こそさっきの言葉を言うべき時よっ」
「わ、ちょ、ちょっと雷、押さないでっ」
嫌がる姉を無理矢理僕の前へ押し出す雷。そんな妹の態度に観念したのか、恥ずかしがりながら、暁は口を開いた。
「あのねっ、司令官!私と、私たちとっ、お昼を食べに行きましょうっ?」
投稿が大変遅れて申し訳ありませんでした。
僕の個人的な事情により、書いてる暇がなかったんです(春イベのせいでもあります)。心待ちにしてくれていた方、いらっしゃったらごめんなさい…
言い訳はここまでにして。
今回は第六駆逐隊です。前後編(予定)です。一話が短いとはこれいかに。まあ、ここに投稿されているものの中では割と短めなので許してくだち。あと暁に焦点を当て過ぎた感。気を付けます。
それでは、毎回恒例?妄想タイムです。
僕のイメージは、
暁:恥ずかしがりや、いじられ役、一人前のレディー()、かわいい
響:クール、でも構ってちゃん、超強力な第六感持ち、かわいい
雷:頼られたがり、思い込んだら一直線、お料理上手、かわいい
電:四人の中で一番のしっかり者、でもおっちょこちょい、怖がりさん、かわいいのです
で出来ています。みんなかわいい。かわいい。
こんなかわいい女の子たちに出会いたかった人生でした。前も言ったな。
このイメージが読者の皆様に伝わる文章でしたでしょうか。
全く進歩がないですが、こんなお話をこれからも読んでいただけると幸いです。次もできるだけ早く出します。頑張ります。
P.S.
基本、休日に更新する事を中心にすると思います。が、事情により来週から来月初めまでは投稿頻度は落ちると思います。ご了承ください。
あと、これからは予告無しに更新を停止、停滞させる事は避けます。
以上で、後書きを終わります。ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
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提督と第六駆逐隊(後編)
前回を読んでいない方はそちらから読むと話が分かりやすいと思います。
「ふふーん♪司令官とごはん♪司令官とごはんー♪」
「司令官さんとご一緒できて嬉しそうなのです、暁ちゃん」
「ええ。まぁ、この雷様の力なら司令官を誘う事ぐらい余裕よねっ!」
「というか、暁が大した事ないだけ」
暁の鼻歌が止まる。
「ぐぬぬ…響、言ってくれるわね…」
「本当の事だからね」
そんな軽口をお互いに言い合っている第六駆逐隊と一緒に、僕は食堂に向かっているのだった。
先程までの暁との一件で、割といい時間になってしまっていたため、今から外へ食事に行くには少し遅いのだ。
…暁は、本当は外食したかったようだったが。
「暁はヘタレ」
「な、なんですって!?」
「まぁ、そうね」
確かに。もっと深刻な話をされると思っていたので、実のところ僕も拍子抜けしたのは内緒だ。
しかし、響と雷の反応が不服そうな暁。質問の矛先を電へと向けて。
「むむむ…電はどう思う!?」
「はわっ!?…うぅ…確かに、あれだけの事に時間をかけすぎ、なのです」
「がーん!」
口で言うのか…
「はわわっ!?」
「えーん!しれーかーん!」
「おっと…よしよし、暁」
ショックを受け、僕に抱きつく暁と、言い過ぎてしまった、と顔に書いてある電。
いつもはそのような事を言わないような、電までもに言われてしまえば、暁の反応は当然と言える。
一方で、大多数(二人)の同意を得たおかげか、少し調子に乗った響が、さらに姉をおちょくり始めてしまった。はぁ…
「こら、響。お姉さんになんて事を」
僕はそう言い、彼女の頭に軽いチョップをいれた。すると。
「ぐふっ」
そう言い残し、床に倒れこんでしまった。えっ
「えっ、ちょっ、響?」
「ふふっ…この程度では…沈まん…さ…不死鳥の名は…伊達じゃ…ない…」
「えっ、えっ」
いきなりの事に動揺してしまった僕。すると。
「大丈夫よ、司令官」
「いつものおふざけ、なのです」
「………やはり、皆には効かないか」
「効く訳ないのです」
「見慣れた光景だし、大体司令官そんなに強く叩いてないもの」
ですよね。良かった。
「心臓に悪いから止めてくれ…」
「司令官には効く、と…なるほど」
「止めるのです、響ちゃん」
電が止めてくれた。優しい子だ。本当に止めてくれよ、響…?
そんなやりとりをしていると。
「もー!皆して暁を無視してー!ぷんすか!」
「だ、大丈夫だよ、暁。無視してないよ」
暁が復活した。ちょっと忘れたのは内緒だ。
「まぁ、今日の暁はとても気分が良いから特別に許してあげるわっ!」
「ああ、ありがとう」
「さぁ、行きましょう。電はお腹が減ったのです」
おっと、そうだった。
本来の目的地へ行くため、僕らは歩き始めた。
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漸く食堂に着いた。
「長い道のりだったわね、司令官」
「司令官、早く入ろう?」
「そうしよう、お腹も空いたしね」
扉を開け、食堂に入ると、出迎えてくれたのは―――
「いらっしゃいませー…あら、提督」
「いらっしゃいませ…えっ、提督さん!?」
この鎮守府の食堂を切り盛りする、間宮さんと伊良湖ちゃんである。
「お久しぶりです、提督」
「あはは…中々時間がとれず…」
間宮さんにも言った通り、僕は艦娘とよく食事をとるため、どうしても食堂に行く回数が減ってしまっているのだ。
とは言え、数日前に来たのだが…
「もう、私たちだって寂しいんですからね、提督。こまめに会いに来て下さらないと…ふふっ」
「は、はい、善処します」
来ないと何が起こるのか。
「それにしても…モテモテですねぇ、提督?」
そうなのか…?僕はどちらかというといじられているだけなのではないか。
「提督さんが一人で来る事の方が珍しいですよね。…ぃいなぁ…」
「あら。なあに、伊良湖ちゃん?もしかして…提督に何か言いたい事が?」
「ひゃいっ!?」
ニヤニヤした顔で、真っ赤な顔の伊良湖ちゃんをいじる間宮さん。なんだなんだ。
「何かあったの?」
「な、にゃんにもないでしゅ!…もう!間宮さんっ、やめてくださいよっ」
「うふふふふふ…」
深くは追及しまい。
「間宮さん、ぜーったい提督さんには内緒ですよっ!」
「はいはい…うふふっ…」
「もう…提督さん、ほんとになんにもないんですよ?私たちにも優しくしてもらって…ありがとうございます」
「そう言って貰えると嬉しいな。もうちょっと食堂にも来るようにするね?」
「いえ、こちらこそ…ふふっ、やったぁ…」
伊良湖ちゃんが何か小声で言っていた気がするが、大丈夫だろうか。
そう思っていると、何かが僕の腕を引っ張った。
「もう、いつまで話しているのかしらっ!?」
暁か。…しまった、彼女たちを忘れていた。
「司令官は私たちより彼女たちの方が好みかな?」
「司令官は天然ジゴロなのかしらっ」
「もう…皆言いたい放題なのです。…でもちょっと寂しかったり…」
矢継ぎ早にお叱りの言葉を頂いてしまった。善処しよう。
「あらあら、少し立ち話が長くなってしまいましたね。」
お腹も空いたし、ここを占領し続ける訳にはいかない。
「じゃあ、どれにしようかな―――」
「はいはーい!暁はね―――」
食事中も変わらず、賑やかに時が過ぎていった―――
誰かと一緒に食べるのは、やはり良いな。
以上、第六駆逐隊の皆さんでした。これにて完結です。尻切れとんぼですが一応。
ネタが思いつかなかったんです。ごめんなさい。
今回間宮さんと伊良湖ちゃんを出しちゃいました。彼女たちも艦娘なのでいつかメインで提督に絡ませます。
提督の呼び方は勝手に決めてしまいました。独断と偏見で。
どうでもいいですが、彼女たちはどうしても
「間宮さん」「伊良湖ちゃん」
と呼びたくなってしまいます。何故でしょうか。
こんな感じで今回は終わらせていただきます。次回は…未定です。
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*提督と時雨と夕立
このお話は著しいキャラ崩壊が起こっている可能性が高いです。
「この子はこんな事言わない」という強い信念をお持ちの方はすぐにブラウザバックを。
作者の趣味(ヤンデレ)全開です。◇にご注意ください。
「…っと、ここまでにしようか」
「そうだね、提督」
ある日のお昼過ぎ。今日の秘書艦は時雨だ。
もう今日は職務を果たしたし、残りはどう過ごそうか…
と、僕が考え始める前に、彼女に声をかけられた。
「ねぇ、提督。僕と散歩に行かない?」
「あ、あぁ。いいけど―――」
-------------------------------
「本当に良かったの?鎮守府内を回っているだけで」
「大丈夫さ、提督」
そう。僕が今、時雨と歩いているのは鎮守府内の廊下。
何故、外出しないのか。何故、先程少し誘いを渋っていたのか。
それは―――雨が降っているから。
業務が早く終わったのも雨のおかげだ。良い事かは分からないが。
基本、雨天では出撃などは行わないことにしている。コンディションの悪い時に態々戦闘しても、勝ち目は薄い。晴天時でも分からないのに。
それに、彼女たちは人間。風邪でもひいたら、大事な時に出撃できない、なんて事態になってしまう。
僕が彼女たちの体調を気にするのは、そういう面からでもある。
だから、今日はほぼ休日のようなものだ。…哨戒を行っている子たちもいる。
外にも出ずらいし、時雨も何かする事があるのだろう、と思っていたので、先程のような反応になってしまった。
「折角仕事が早く終わったんだし、他の子たちとも話したい、よね?…ごめん、気を遣い過ぎたかな?」
「そんな事ないよ、時雨。ありがとう」
そんなやりとりをしていると、彼女が口を閉じた。
「ふふっ…それに―――」
と、思えば微笑みだし、こんな事を言い出した。
なんだろう。目で先を促した。
「―――提督と、二人っきりで過ごせるだけで十分さ」
「あはは、そう言って貰えると嬉しいよ。…少し、恥ずかしいけど」
「っ…そう返されると、僕も、照れちゃうな…」
そう言ったきり、お互い黙ってしまった。だが、居心地は悪くない。
聞こえるのは、雨の降る音と、二人分の足音。
そこに、少しずつ混ざるのは、一人の笑い声。
この声は―――
「夕立…?どこに―――」
「あそこだね」
くすくす笑う時雨が指で示す方を見ると、窓がある。そこから眺めてみれば―――
楽しそうに笑う、夕立の姿が。雨の降りしきる中、外ではしゃいでいる。
うんうん、元気そうで何よりだ。子供は風の子―――えっ、外にいるの!?
「ゆーうーだーちー!早く中入ってよー!」
僕は窓を開け、そう叫んだ。
「ぽいっ?…あっ、てーとくさーん!提督さんもくるといいっぽーい!」
「分かってないっ!?…しょうがない、早く行こう」
そうひとりごち、僕は夕立の元へ急いだ。
―――その場に、時雨を一人残したままだという事を、忘れて。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ふふっ、提督ってば…」
あの人は、本当に優しい人だ。今だって、僕たちのために動いている。必死に。
ちょっと雨に当たったぐらいでは、
優しい優しい僕の提督。依存してしまいそうな程に優しい貴方は。少し、僕たちに厳しく接する事を覚えた方がいいかもしれない。でないと―――
僕はもう、自分の気持ちを抑えられなくなってしまう。
「しかし、折角の二人っきりを邪魔した夕立には、少しお灸を据えなきゃ、かな?」
別に酷い事をするつもりはない。彼女もまた、彼を愛しているから。女の勘だ。それを妨げるつもりはない。けれど、負けるつもりも、ない。
「それとも、僕もあんな風に構ってもらえばいいのかな…」
「風邪をひいて、提督に看病してもらう…そういうのもいいかも…♡」
考えられ得る彼へのアプローチを思い描きながら、僕は後を追った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
夕立を引っ張り、建物の中へ連れてきた。ふう、疲れた。
「まったく。風邪でもひいたらどうするんだ、夕立」
「ごめんなさーい。気を付けるっぽいっ」
「ほんとに分かってるのか?…このこのっ」
「きゃーっ♪」
僕に頭をタオルで乾かされている夕立。
その顔は、実に楽しげだ。
「…ん、よし」
「提督さん、ありがとっ」
「いいえ、どういたしまして。…ところで夕立?」
僕は、気になる事を聞いてみた。
「ぽいっ?」
「なんで外に出てたの?」
「んふっ♪それはね―――」
「雨が好きだから、さ。ねっ、夕立?」
後ろから声が聞こえた。時雨か。…しまった、彼女を置いてきてしまっていたか。
申し訳ない事をした。そう目で訴えかけると、問題ない、といった風に返してきた。
「………あっ、時雨!」
「ふふっ、くすぐったいよ、夕立」
時雨の姿を見るや、飛びついて頬ずりする夕立。微笑ましい光景だ。
暫くそれを眺めた後、質問を続けた。
「それは、どういう?」
「なんでかは分からないけど、好きっぽい!」
「やっぱり、僕たちの名前が雨に関係しているから、かな?僕も好きなんだ」
なるほど。分かるような、分からないような。
そう思っていると、時雨からこんな質問が。
「提督は好き?」
「そうだな…僕も好き、だな。どちらかというと」
「っ!?」
「て、提督さん…♡」
「なになに、どうしたの?」
「なんでもないよっ!?…んんっ、続けて!」
「なんでもないっぽい…♡」
反応がおかしい。雨の話ではなかったのか。
とりあえず、話を戻して。
「止んだ後の虹が特に楽しみでね、つい期待してしまうんだ」
「そうそう、それからね―――」
-------------------------------
そんなたわいもない話をし続けて、時は経ち。
「もうこんな時間…そろそろ、夕食だね」
「ご飯っぽい!楽しみっぽい!」
「そろそろお開きにしようか。…じゃ、またね、夕立、時雨」
「うん…じゃあね、提督」
今日も良い日だった。彼女たちの趣味や好きなものを知る事ができたのだから。
やはり、雨の日も悪いものではない。
そんな事を考えて。そういえば、雨は止んだだろうか、とふと思い、窓の外を見やった。
―――雨は、未だ止まずに、降り続いている。
寧ろ、先程よりもさらに強くなっている気がする。
今夜は嵐になるだろう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「さて、夕立。僕たちも―――」
「ごめんね、時雨」
「えっ?」
「先に行っててほしいっぽい」
「でも―――」
「大丈夫、ちょっと急用を思い出しただけっぽいっ!」
「ちょ、ちょっと―――」
あたしは、その場を駆け足で立ち去った。
「夕立…?」
-------------------------------
急用、なんて勿論嘘で。本当は―――
彼と彼女が目だけで通じ合えるほどに仲睦まじい様子を見て、彼女に嫉妬をしていた。
そして、二人の様子に動揺した自分を落ち着かせるために。彼女から一刻も早く離れるために。走って。走って。
誰もいない廊下で立ち止まり。
荒ぶる気持ちを整理するため、まじないをするように、呟く。
「大丈夫、きっと提督さんは―――」
「結局は、あたしの所に、戻ってくるよね?」
そう、きっと。
きっと?
いや、必ず。
絶対。
絶対に。
彼女には渡さない。例え、姉妹の関係であっても。この気持ちは、誰にも譲れない。
絶対に、彼はあたしの所に。
けれど。もし。もしも、戻ってくることがなければ。その時は―――
捕まえる。あたしに縛り付ける。
力づくで、彼をあたしから離れられないようにする。
その為なら、手段は選ばない。
「でもでも、提督さんが嫌な思いをするのはあたしも嫌っぽい…」
「どうすればいいかなぁ…?」
「…ま、いっか。とりあえず…」
「ごっはんー♪ごっはんー♪なに食べようかしらー♪」
考えても何も思いつかなかったので、ご飯を食べることにしよう。
腹が減っては戦はできぬ、と言うし。
あたしは来た道を走って戻り、食堂へ向かった。
いかがでしたか。今回は時雨と夕立です。病んでます。かなりやばいです。爆発寸前です。3000文字です。本気出しました。いつももですよっ!?
白露型はどうしても某所の絵に影響されてヤンデレチックになってしまうのです。
こういうのが好みでない方は本当に申し訳ありません。
私のイメージの話へ。
よく、時雨は忠犬、夕立は狂犬などと称されますが。きっと、どちらも忠犬であり狂犬である、と私は勝手に思っています。
一緒にいる事も多い(と思っている)ので知らず知らずとお互いに影響しあっている…といいなぁ。
ただ、若干違う病み方だと思うのです。二人とも独占したいところは同じですが。
時雨は、爆発したら激しくなるタイプ。誘ってるんだよねこっちから行っちゃうよ的な。
夕立は、常に激しい一方で実は不安を抱えているタイプ。我儘放題は寂しさの裏返し的な。
こんな感じです。はい。
私もこんな風に好かれてみたかった。いつも言ってますねこいつ。
あと、駆逐艦―――というか子供だからこそ、自分の愛の異常性がいまいち分かっていない感じなのも私的にはポイント高いです。何言ってんだこいつ。
さぁ、この提督の明日はどっちだ(すっとぼけ)
今回はここまで。次回は…どうしよう。お楽しみに。
失礼します。
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提督と潮
少々変態ですが。
全編ほのぼの、ちょっとシリアス?
(一応、時間軸的には前話の日の夜です。ですが勿論、読まなくても大丈夫なはずです。)
「雨も風も強くなってきたな…」
もう真っ暗になった外を窓越しに眺め、僕はそう呟いた。
朝からしとしとと降っていた雨は、いつしか強く叩きつけるようなものに変わって、雷まで鳴りだした。六駆の方ではなく。
こんな日は、彼女が来るかもしれないな―――そんな怖がりなあの子の事を考えていると。
弱弱しく扉を叩く音が、執務室に響く。
「いいよ、入って」
「すみません、提督。…今日も、お願いします…」
そっと扉を開けて入ってきたのは、潮。
彼女、雷が非常に嫌いらしい。
その事に気づいた…いや、気付いてしまったのはつい先日の事。彼女に秘書艦をお願いしていた時の事だった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
その日も、鎮守府は強い雷雨に見舞われていて。
空が光ったので、大きい音がするだろうなぁ、なんて暢気に考えていると。
雷の落ちた音とともに、同じくらい大きな悲鳴がすぐ隣から。
大丈夫、なんて声をかけつつ、隣を見れば―――
「…あっ、あ、て、提督…み、見ないで…見ないでくださぁい…」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「提督?…提督っ?…すみません。聞いておられますか…?」
「はっ、ごめんごめん。…少し惚けてしまった。」
彼女は―――彼女の尊厳もあるため、口が裂けても他人に言えない―――そんな状態になっていた。
その後、悲鳴を聞いた
「お疲れなのですか…?しっかりお休みしてくださいね?」
「いいや、心配いらないさ」
その罰として、何でも一つ言う事を聞く。
僕からではなく彼女の姉に言わされたのだが。その結果が、これ。
今日のような天気の夜は、潮に添い寝をする事、である。
態々曙を執務室から帰し、二人っきりになって頼んだ事が、何故そんなお願いなのか。
理由は分からないが、一対一の状態で、彼女に潤んだ目で、しかも上目遣いでお願いされてしまうと、どうにも断り切れず。
雷が鳴ると毎回、こうして添い寝しているのだ。
-------------------------------
時々思い出したかのように鳴る雷に怯える潮と話しながら仕事を片付け、ついに。
「よし、今日の仕事終わりっ。…じゃあ、潮」
「は、はい!」
仕事も終わったので、後は一緒に寝るだけだ。…他意はない。
先にベッドに入って、潮を呼ぶ。
「潮、おいで」
「…はい♡」
心なしか声がとろんとしている気がする。目尻も下がっているし、眠いのだろうか。
彼女は、毛布の中に入ってくると、僕に手を伸ばし。
「ふふっ、暖かいです…」
「なら良かった。でも潮、僕と寝て本当に安心できるの?」
「はい、勿論です。まるで―――」
「お父さんみたい?」
ちょっとショックだけど。
「違います」
そんな。バッサリ斬られてしまった。
「じゃあ、どんな感じ?」
「ふふっ、内緒です。…きゃあっ!」
突然鳴った雷に、吃驚して僕を思い切り抱きしめる潮。ちょっと痛い。あと当たってる当たってる。
「ふふふ、大丈夫大丈夫、怖くないよ」
「あっ…えへへ…♡」
そんな事を彼女に言って聞かせながら頭を撫でる。暗闇の中でも分かるほど、嬉しそうな反応をするので、こっちまで嬉しくなってしまうな。
潮はスタイルが良いから、抱きついてくると、こう…
そんな、口には絶対出せないような事を考えつつ、潮と話していると、眠くなってきてしまった。
「明日も朝早いし、もう寝ようか」
「はい。お休みなさい、提督」
あぁ、今日も疲れた。明日も頑張ろう。目を瞑る。意識は微睡み、段々と薄れていく。
だが、そのせいで。
「提督?………さっきはごめんなさい。でも、潮は―――」
潮が小声で僕に語りかけてきた事に反応できなかった。何の話?と聞こうとしたが、もう口は動かない。頭も働かなくなってきた。
明日の朝、覚えていたら聞こうかな―――そこまで考えて、僕の意識は途絶えてしまった。
「提督の娘じゃなくて、提督のお嫁さんになりたいんです…♡」
-------------------------------
翌朝。
二人で抱き合いながら寝ている所を、今日の秘書艦である曙に見られてしまった。
「あ、曙ちゃんっ、これはねっ!?」
「最近、潮が時々部屋に戻ってこない事があると思ったら…クソ提督?」
潮の声は、もう届かない。曙の背には、鬼が見える。
そんな彼女は、口答えするならば殺す、と言わんばかりの冷淡な瞳で、跪く僕を見て一言。
「最後に何か、言いたい事はあるかしら?」
潮よ。せめて、自分の姉ぐらいには話を伝えておいて欲しかった。
以上、潮回(少し曙もご登場)でした。いかがでしょうか。
まぁ、変態なのは私なんですけどね(笑)
と、言う訳で、潮にお漏らしさせました(直球
だって似合うんですもの。潮は恥ずかしい目に遭うのが似合いませんか?
そんな事を言ったら、きっと曙だけでなく、潮にも殺されます。あと社会的にも。
私は好きな子をいじりたくなってしまう小学生男子みたいな奴だと思ってください。
ダメですね。許されません。
今週投稿するのは難しい、なんて言ったのにどんどん更新してます。どんどん思いついてしまうのでね。
あまり私の言葉は気にしすぎないようにしてくださいね。
次回は、今回の続きかもしれないし、全く別のお話かもしれません。
続きを書くなら七駆の子ですね。曙が最有力です。多分。
思いの丈は綴ったので、ここで失礼します。
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提督と曙
嘘です。ぼのぼの…じゃなかった、ほのぼのです。
一応、潮のお話の直後、という設定です。
「全く、クソ提督ったら…」
「待ってよー、曙ちゃーん!」
執務室を飛び出して、あたしと連れ戻した潮は寮へと向かっている。
今はその途中の廊下だ。秘書艦業務を任されているけど、時間にはまだ余裕もある。
…あいつと一緒の空間にいるのは嫌だけど、遅れたことをだしに詰られるのも癪だ。
時間までには戻るつもりだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
それにしても、やっぱりクソ提督はクソ提督だ。
潮が他人に強く出られない事を知っていて、しかも上司であることを利用して、
考えるだけでイライラする。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
潮に話してもらえていなかった事にも、もやもやする所はあるけど。
それよりも、あいつの事の方がむかつく。
なんであたしを選ばないのよ確かに潮のスタイルは良いわよおっぱ…胸だって大きいしあたしより顔も可愛いし性格だって優しいし頼んだら何だってやっちゃいそうだしああいう控えめな子の方が男に受けがいいってよく言うものねええそうよあたしは自分で言うのもなんだけど性格きついし可愛くないし胸ないしないないづくしってうるさいわねまだ分からないじゃないこれから急成長を遂げて高雄さんや愛宕さんみたいなボンキュッボンで高身長のナイスバディな女になるかもしれないじゃないのああもうなんでこんな事考えてるのよあたしっ!?」
「曙ちゃん…声に出てるよ…」
「いやあああああああっ!?」
はぁ…ほんとになんでこんな事に…全部クソ提督のせいよ…もう許さないんだから…
一人、クソ提督への復讐を心に決めたあたし。やっぱり、今すぐ戻ってあいつに追い打ちを…
かけに行こうとした時、潮が声をかけてきた。
「曙ちゃん、落ち着いて!勘違いしてるの!」
「何がよ!」
「
-------------------------------
「そ、そういう事だったのね…」
「曙ちゃん、私の話を聞いてくれないんだもん…」
「ご、ごめんっ、潮…」
事の顛末を聞いたあたし。やばい…とんでもない事やっちゃった…
今のあたしの顔は、きっと青ざめて、寧ろ白くなっている事だろう。
「どうしよう、あたしっ…」
「………曙ちゃんっ!行くよ!」
「ひゃっ!?」
潮はいつになく大きな声を出してそう言って、あたしの手をひき、元来た道を走って戻り始めた。
-------------------------------
「提督!」
執務室に着いた。
「な、なんだっ!?」
「…ほら、曙ちゃん?」
「で、でもっ…」
「大丈夫。ちゃんとお話すれば、ねっ?」
「うぅ…」
「ごめんなさい、提督…曙ちゃんと、お話ししてくれますか?」
「う、うん」
そう言い残し、潮は外に出て行った。
暫く、居心地の悪い沈黙が続き。
先に破ったのは、提督から。
「ごめんな、曙」
「っ…」
あぁ、なんでこの人は、こんなにも優しいのだろう。
「あたしも…ごめんなさい。話は本人から聞いたわ。…あの、」
「いいって、気にしないで。僕が、曙の立場だったら、きっとああしていただろうからね」
苦笑いしながら、あたしに向かって手を差し伸べてくる。
「仲直りしようか、曙」
「…えぇ、クソ提督♪」
-------------------------------
「やっぱり、曙はそのぐらいツンツンしてないとな?」
「っ…何よ、罵られたいの?…まさかあんた―――」
今日も執務室は騒がしくなりそうだ。
以上、曙編でした。駆け足気味になってしまった感。
曙と言えばクソ提督呼び。普段はあんな態度ですが、きっと毎回自分の態度を後悔している事でしょう。…そうであってほしい。
あと真面目なイメージです。下の子たちを守りたい義務感みたいなのを持っていそうです。
ツンデレ可愛い。
あの長台詞が書きたかっただけなのは秘密、ですよ?
それでは、短めですがこれにて失礼します。
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提督と呑兵衛な艦娘たち
突然だが、今日の僕はいつもより気分が良い。
本日も無事に業務を終了する事ができたので。
今、僕は軽い足取りで鎮守府のある場所へ向かっている。
「こんばんは、鳳翔さん」
「…あっ、提督…♡」
雰囲気のある和風な引き戸を開け、挨拶をした。
―――そう。ここは鎮守府の一角にある、鳳翔さんの切り盛りする小料理屋だ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
着任して暫くして。
彼女から、お店を開かせてほしい、と頼み込まれたのだ。
しかし、僕自身としては最初はあまり乗り気ではなかった。
何故なら、彼女は間宮さん、伊良湖ちゃんと違い、軽空母である。
前線に立つ可能性があるため、仮に店を開けば、負担が二人以上のものになる事は容易に想像できる。
彼女の事を考え、断ろうとしたのだが…
考えても見て欲しい。
彼女のような見目麗しい女性に、上目遣いで(しかも涙目で)、さらに庇護欲をそそる可愛らしい声で懇願されて、その願いを断る事のできる男は存在するだろうか。いや、いない。
そんなこんなで、僕は彼女の願いを叶える事になった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「提督、今日もお疲れ様でした。…軍服、こちらに掛けておきますね」
「ああ、すみません。それと、お久しぶりです」
「ええ。…私も、提督が来て下さるか、毎日楽しみにしているんですから…ね?」
怒られてしまった。気を付けよう。
「ところで…提督…?」
こほんっ、と一つ、可愛らしい咳払いをして、
「お帰りなさいませ。…お風呂にしますか?ご飯にしますか?…それとも…うふふっ…♡」
そんな風にからかってきた。案外お茶目な人だ。顔が熱くなってしまう。
「………冗談です。…最近の新婚さんはこんな事をする、なんて聞いていたのですが」
情報源は誰だ。というか、少し古い気も…ん?
「新婚…?」
「…あっ」
みるみるうちに顔を真っ赤にする鳳翔さん。大丈夫だろうか。
「…あらやだ…忘れてくださいね、提督…?」
ぱたぱた、と手で赤い顔を軽く扇ぎながらそう言った。可愛い…じゃなくて。
「…そろそろ、頼んでも?」
「あらあら、失礼しました…それでは」
「今日は何になさいますか、提督?」
可愛らしい彼女とのやりとり。それと、美味しい料理。
今日のような夜の、僕の楽しみなのだ。
-------------------------------
「ああ、美味しかった。…ありがとう、鳳翔さん」
「いいえ。…おいしそうに食べて頂いて、ありがとうございます」
事実、美味しいからね。
食後、また鳳翔さんとそんな他愛のない会話をしていると。
戸の開く音がした。
どうやら、お客さんが来たようだ。首を向ければそこには―――
「ひゃっはー!鳳翔さん、こんばんはー!」
「うるさいぞ、隼鷹。貴様、まだ飲んでいないだろうに…」
「まあまあ、二人とも…あらっ、提督?」
「ふう~ん…ここがそうなのねぇ~。なんだかぁ~、いかにもGiapponeってかんじ~」
「ポーラ、今日こそはあまり飲み過ぎないようにね………?」
入って来たのは、隼鷹、那智、千歳、Zara、Polaの五人だ。
「あらあら、賑やかになりましたね、提督?」
とは鳳翔さんの言。
その発言で、みんな僕の存在に気付いたようだ。隼鷹が話しかけて来る。
「おっ、提督じゃん!飲んでるかい?」
「いや、今日はこれで…」
もう自室に戻るつもりだ、と言おうとして―――
「えぇ~、提督ぅ、そんな事言わないでくださいよぅ~」
片腕にポーラが抱きついてしまった。引き留めるつもりらしい。
「ちょ、ちょっとポーラっ!?何やってるの!」
「何って…抱きついているだけじゃないですかぁ~、ザラ姉様ぁ~?」
「離れなさいよっ!提督だって嫌がってるでしょ!」
嫌じゃないです。でも恥ずかしいよね。鼻の下が伸びていないか心配だ。
「えぇ~?提督ぅ、そんな事ないですよねぇ~?…すんすん…あっ、いい匂いです~」
「羨ましぃ…じゃなくてっ!いい加減にしなさい!」
ポーラの自由奔放な行動に大層ご立腹の様子のザラ。
実力行使と無理矢理僕の腕からポーラを引きはがそうとする。ちょ、痛い痛い。
ポーラと一緒に引っ張られていると、今度は反対側の腕にも。
「あまり一緒に飲む機会もないですし…いいじゃないですか、ザラさん、提督?」
「そうそう、提督はノリ悪いからなぁ~、たまにはいいだろ?」
「そうだな。貴様も一杯付き合って行くといい」
千歳が腕に絡みつくように抱きつき、そう呼びかければ、
隼鷹と那智が同調する。
艦娘とのコミュニケーションを悩みの種としている僕にとって、少し耳の痛い話だ。
この間、大規模な作戦を終了したことで、少し業務は落ち着いているし。
たまには、いいか。
「分かった、一緒に飲もう」
-------------------------------
数時間前、そう言ってしまった自分に少し後悔し始めている。
「ひゃっはー!みんな飲んでるかぁー!いやっほーい!」
「いいか、提督?貴様はどうしてそんなに鈍感なんだ?大体…」
「うふっ、うふふっ、提督ぅ?飲んでますかぁ?」
「あぁもぉ、暑いぃ~。服が邪魔ぁ~」
「んん~んぐんぐ、ぷはぁ…あれぇ、提督が二人にぃ~?」
…どうして、こうなった…
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
さて、ここは努めて冷静に、今の状況をよく確認してみよう。
まず僕。僕自身は割と酒には強いつもりだ。意識は確かだし、まだいける。
しかし、彼女たちというと…
「ごくごくごく…ぷはぁー!…あっはっはっは!」
隼鷹。よく笑い、賑やかさが増している。あと擬音語が多くなっているようだ。
彼女も酒に強いらしく、酔っぱらったのはつい先程のはず。明日に響かなければいいが。
「我らが妙高型姉妹があれだけアプローチしているというのに、一向に襲い掛かって来ないというのはどういう事だ?…全く…」
那智。一見、(話している内容は穏やかではないが)口ぶりはしっかりとしている為、一番ましに見える。
…が、話し相手は彼女が飲み干した酒瓶だ。そして、一番最初に酔っぱらったのは彼女。
度数が高いものをあれだけ凄い勢いで飲んでいれば当然なのだが。
「うふふっ、あぁ、楽しい…♡」
千歳。やたらと僕に酒を勧めてくる。意識を保っているのか、いないのかは分からない。
もしかしたらこの中で一番強いのかもしれない。
それと、大胆に服を肌蹴させている為目のやり場に困ってしまう。
「暑ぅいぃ…そぉだぁ、脱いじゃおうっと…ごそごそ、もぞもぞ…」
ポーラ。この中で最も注意しなければならない。彼女は、酔うと服を脱ぎ始めてしまうからだ。千歳以上に危険である。
いつから酒を飲んでいたのだろうか。もしかして、最初から…?
「提督ぅ~?ひっく、ザラぁ、酔ってないですよう?」
ザラ。姉として、良い妹のストッパーとして頑張ってくれていたのだが…
途中でポーラに無理矢理酒を呷らされ、一瞬でノックアウト。…彼女からは、酒を遠ざけるべきだ。
次があるならばそうしよう、と一人心に誓った。
どうでもいいが、姉妹で酔い方も似ているようだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
もう僕だけでは収拾がつかない。
そう思った僕は勿論、鳳翔さんに助けを求めたのだが…
彼女は頬を膨らませ、ぷんぷんっ、と不機嫌そうに裏へ引っ込んでしまった。
…何が彼女の逆鱗に触れたのだろうか。やはり、女性の心は難しい。
この惨状から目を背けようと現実逃避しながら、僕は酒を呷った。
-------------------------------
翌日、みんなで二日酔いに悩まされたのは言うまでもない。
私は帰ってきた!
どうもご無沙汰しております。
かなり投稿が開いてしまいました。待っていてくださった方には申し訳ない限りです。
今回はどうでしたか?楽しんでいただけたなら幸いです。
酔っ払った艦娘、というのもいいと思います。はい。
こんな人いる訳無いだろ、なんて思う方もいるかもしれませんが許してくだち。
ポーラはいいキャラしてますね。ダウナー系の子は好きですよ。
そろそろ嫁艦(仮)で書いてみたいなぁ、なんて考えてます。
次回がそうかもしれません。違うかもしれません(
私の嫁艦(仮)。ヒントは…CV東山さん。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。次の投稿も気長に待っていただけたらなぁ、と思います。
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提督と扶桑と時々山城
山城提督の方、ご気分を害されたらすみません。
ギャグっぽいものに傾いています。途中でシリアスっぽくなりますが…
私にシリアスは無理ですね。はい。
ある日の昼下がり。
昼食もとったし、午後の仕事を始めよう、と気合を入れようとしたら。
「ふわぁ…」
欠伸が出てしまった。
お腹が一杯になったら眠くなるよね。うん。
しかし、そうも言っていられない。艦娘たちに示しが付かないし、仕事を溜める訳にもいかない。
さて、眠気覚ましにコーヒーを―――
「わっ…提督?どちらへ行かれるのですか?」
淹れるために執務室から出ようとしたら、入って来た扶桑にぶつかりそうになってしまった。
「ああ、済まない…コーヒーを淹れようと思ってね。…今眠くて…ふわ…」
「では、休憩なさっては…?」
「…みんな働いてるのに今寝ちゃうのは、なんだか悪い気がして…ね」
すると、思案顔でこちらを見て。
「…提督、こちらへ」
「えっ、わっ、ちょ」
いきなり僕の手を取り、執務室へと連れ戻す扶桑。どうしたのだろう。
そして、僕をソファーの前に立たせ、彼女はおもむろに座り―――
「さあ、どうぞ…?」
ぽんぽんっ、と自らの太腿を触っている。
しかし、彼女が何をしようとしているのか、皆目見当もつかない。
どういう事だろうか、と首をかしげると。
「もう…私と、お昼寝致しましょう、提督?」
心なしか顔を赤らめて、扶桑はそう言った。
-------------------------------
「提督、ご気分はいかがですか?」
「あ、あぁ。も、問題ない…が、一ついいでしょうか?」
「はい?いきなり畏まって、どうしたんですか?」
この状況の非日常感に思わずテンパってしまった。…では、改めて。
「…どうして、こんな事を?」
「…お気に召しませんでしたか…?」
「いや、そうじゃなくて…」
横を向けば、いつもの執務室…傾いているけど。
「もう…くすぐったいですよ、提督…♡」
扶桑は僕の頭をそっと掴んで、前へと向かせる。
前を見れば、扶桑のたわわに実った二つの…じゃなくて、端正な顔と…
後頭部からは、太すぎず、細すぎない彼女の膝の感触と、すべすべした人肌の与える安心感が…
「なんで、僕は今、膝枕をされているのかな…?」
-------------------------------
僕の顔を覗き込むように眺めている扶桑。
その顔は、嬉しそうだったり、時々恥ずかしそうに赤くなったりして。
…それは、良いのだが。
ぽよぽよ。
どこか自分の体勢に納得がいかないのだろう、身じろぎをする際に。
ふよふよ。
当たっている事に気付いているのか、いないのか…
後、どうして女の子はみんな甘い匂いがするんだろうか。
同じ人間とは思えない。
未だ、自分の置かれた状況が信じられず、そんな現実逃避をしてしまう。
「提督が仰ったのではないですか、今眠いのだと」
「そうだけど…」
違う、そうじゃない。
「自室にベッドはあるし…態々こうする必要は…」
他にいくらでもやりようはあるんだけどな…
あと罪悪感ががががが。
そんな風に、暗に止めるよう仕向けていると。
「…提督は、嫌ですか…?」
「うっ…」
「やはり、不幸型戦艦では、提督のお役には立てないと…」
「…」
「あぁ…空はあんなに青いのに………私の心は、提督に…」
段々涙目になる扶桑。
そこまで言ったつもりはないのだが、罪悪感で身が押し潰されそうになる。
このままではまずい。
「嘘です冗談です!嫌じゃないし、寧ろご褒美だよっ!」
フォローしようとして―――しまった、口が滑った!?
引かれたかな…?と思ったけど、そこには。
「提督…♡そこまで言って下さるなんて…♡」
今まで見たこともない程に口元が緩み、頬を赤く染める扶桑の姿が。
ええっ、何その反応!?想定外だよ!
「ふ、扶桑…?」
「うふふ…♡て・い・と・く…♡」
-------------------------------
あぁ…疲れた。
…あの後特に何もなかったけど。ほんとだよ?
あのやりとりで疲れがどっと出た気がする。
おかげで…眠く…なって…
「ふふ、提督?お休みになってもいいですよ?」
扶桑はそう言うと、子守歌を歌い始めた。
あぁ…心地良いなぁ…
力が抜けて…もう…
ぁ………
……
…
×××××××××××××××××××××××××××××××××××××××
×××××××××××××××××××××××××××××××××××××××
「ふふっ…提督、漸く眠っていただけましたか…」
私はそう呟きながら、自らの膝の上に乗る彼の頭を撫でる。
提督、最近毎日深夜までお仕事なさっていたみたいだし…
これぐらい、良いですよね。
頑張りすぎて、体を壊してしまったら、元も子もないのに…
貴方がいるから、みんなは頑張ることが出来るんです。
貴方を守りたいから、みんなは頑張っているんです。
貴方はそれを、見守ってくれるだけでいい。
褒めるだけでいい。
それだけで、百人力なんですよ?
それに、貴方が倒れてしまったら、きっと悲しむ子は沢山…いえ、みんな悲しみますよ、提督。
ですから。どうか、ご自愛を。
「なんて…ね?」
面と向かって言えたなら、どんなに良い事だろうか。
…あぁ…提督、私は―――
「狡い女なんです…」
今日だって、彼がどういう人であるか分かっていながら、あのような意地の悪い事をして。
それに、本当の事は自分が一番分かっている。
「みんなは頑張っている」?
「みんなが悲しむ」?
「みんな」なんて言ったけど。結局は。
「私を、見て欲しい…」
「みんな」じゃなくて、「私」。
私を見て。
私を褒めて。
私を見捨てないで、提督…
…そして今、私はまた、狡い女になって。
これぐらい、良いですよね…?
誰に尋ねる訳でもなく。自分に言い聞かせて。
少し可愛らしくも感じる寝顔を、無防備にも曝す彼に。
未だ、眠り続ける彼の、顔に、唇に、私の顔を近づけて。
こんな私を、どうか、許して、ね…?
心の中で、懇願しながら。
彼の顔はどんどん近づいて。
互いの唇が、
重なりそうな程に、
近づいて。
そして。
唇が、完全に、重なる―――
寸前で。
「扶桑姉様っ!?私のいない間、提督に何か酷い事をされてはいやああああああ扶桑姉様ああああああ!?」
唐突に、それは阻まれた。
×××××××××××××××××××××××××××××××××××××××
×××××××××××××××××××××××××××××××××××××××
「………!」
「………」
大きな声が聞こえてきて、僕は目が覚めた。
何か言い争っているのだろうか、二人の女性の声が聞こえる…
「ね……っ!こ…………ど………………か!………っ…」
「こ……や……ろ?じ……………そ……………………き……………」
というか、この声は…
「…大体、提督がそんな事をさせる人ではない事、貴女もよく分かっているでしょう?」
「ぐっ…ならば何故っ、このような………ちっ、起きたか…」
「山城、いい加減に………あら、提督。おはようございます」
やはり、扶桑と山城の声だった。しまった、すっかり寝てしまった。
現在時刻を確認すると、小一時間寝ていたことが分かる。
「提督?起き抜けに申し訳ございませんが、第二艦隊帰投につき、資料に目を通して頂けると…」
「うっ、済まない…それと、ありがとう。足は痛くない?」
「はい、大丈夫ですよ。お気遣い、ありがとうございます」
「いやいや、長時間拘束してしまったし…当然だよ。…さて、午後の仕事を―――」
始めようか、と言葉を続けようとしたが。
「待ちなさいよ、提督。何さらっと無かった事にしようとしているの」
扶桑に合わせ、流そうとしたのだが…ばれてしまった。
山城には今日、第二艦隊の旗艦を任せていた。
扶桑も、妹が居ないと知っているからこそ、あんな大胆な事をしたのだろう。
…不幸にも、その様子をバッチリ見られてしまったようだが。
顔を合わせたくない。が、放っておく訳にもいかない。
ちらりと様子を伺うことにして―――すぐ逸らす。
うわぁ…すっごい怒ってらっしゃる…背後に龍が見えた気がする。
「山城。少し落ち着いて、私の話を聞いて?…提督を膝枕していたのは、私から願い出た事なのっ」
「そんな事、あるはずありません。…大方、この男が大義名分を振りかざして、姉様を無理矢理従わせて…っ…」
話がどんどん変な方向へと拗れていく。このままではまずい事になるので、弁解しようとするが―――
「あまつさえ、姉様の唇まで奪おうとするなんて…これ以上、女の敵を生かしておく訳にはいけません!」
「ま、待ってくれ!山城!」
「問答無用です!砲戦、用意して!」
ダメだ、全く聞いてない!?
こういう時は…
「主砲、よく狙って!」
逃げるしかない!
「てぇーっ!」
声と同時に跳んで避ける。
背後から、爆音と、熱風が。
着弾したのは、数瞬前まで、僕が立っていた場所。
…明日の朝日を、拝むことは出来るだろうか。
×××××××××××××××××××××××××××××××××××××××
×××××××××××××××××××××××××××××××××××××××
「今日こそあの不届き者を倒し、姉様と…ふふ、ふふふ…」
上官に対し、酷い評価を付ける山城。
こんな事を言ってはいるけれど、彼の事も大好きなのだ。
…同じくらい、いや、それ以上に、私の事が好きなようだけど。
このままではいけないので、最終手段に出る。
「山城。…私、貴女の事、嫌いだわ…っ…」
勿論、嘘だ。
…彼女には申し訳ないが、私への愛を利用させてもらう。
こうにでも言わないと、もう止まらない。
「姉様っ!?何故そのような事を仰るのです!?」
「…だって、私の話は聞かないし………ぃところで、邪魔するし…」
でも。
邪魔してくれたから、これ以上罪が増えなかったのだけれど。
「…?…姉様、今なんと?」
そんな事を言っても、彼女には伝わらないし。
よく分からないが褒められた、なんて調子に乗っても困る。
「…なんでもないわ。兎に角、暫く口は利きませんからっ」
それに。
「がーんっ!姉様っ!後生ですからぁ!」
「つーんっ」
「ね、姉様ぁああああああ!?」
私は狡い女だもの。こんな意地悪くらい、良いわよね?
改めて言います。山城提督の方、ごめんなさい。
あと理不尽暴力系ツンデレが苦手な方もごめんなさい。
別に悪意を持っている訳ではありません。
不器用過ぎて手が出てしまう子というイメージなんです。
提督も好き、姉も好き、その間で葛藤しているのが故の行動なのです。
…いつか山城メインを…
話は変わりますが。
これは、扶桑お姉様の絶対領域に指を這わせ、すべすべしたい煩悩からできたお話です。だから一話が長いんですね。はい。
それと、お姉様から溢れ出る人妻感はなんでしょうか。存在がえっちいです(
真っ先に山城に撃たれるべきは私。やはり許されません。
書きたい事は書いたので、これで失礼します。
もし間隔が空いてしまっても、気長に待っていただけると嬉しいです。
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*提督と鳥海と摩耶
あとちょっと長めです(当社比)。
前回のあれよりはましです…多分。
ある日の執務中の事。
雨は止むことなく、しとしとと降り続いている。
透き通るような青い空を、ここ数日、見ていないような気がする。
梅雨の季節に入ってからというもの、我が鎮守府は開店休業状態である。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
いつかの通り、基本的な方針として、雨天時は出撃しない、としている為だ。
それに。
そういう日には、深海棲艦の活動も落ち着くのだ。何故かは分からない。
深海棲艦も、雨に濡れたくないのだろうか―――
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―――いや、深海に棲む彼女ら?が、そんな事を厭うはずもないか。
そんな、少し頓珍漢な事を考えていると。
「司令官さん、お疲れ様です」
秘書艦の鳥海がコーヒーを持って来てくれた。
「ありがとう、鳥海」
「いえ……今日も、雨ですね」
「そうだね……仕事が少ないのは、良いんだけど…」
それはそれで手持ち無沙汰で、なんだかそわそわしてしまう。仕事に毒されているのだろうか。
「梅雨の季節は、少し落ち着きます。……司令官さんは、どうですか?」
「こうしてゆったりと過ごせるのは良いよね。…仕事柄、あまり大っぴらには言えないけど」
「ふふ。たまには、良いのではないでしょうか」
「…鳥海に言われると、なんだかおかしいな」
「むっ。それ、どういう意味ですか、司令官さん?」
「ち、違っ……いつも真面目な鳥海に、そう言われると、ね」
あまり気を抜いたところを見せないから、鬱憤が溜まっていないかと心配してしまう。
「…たまには、羽目を外しても良いんだよ?君も」
「うふふ。司令官さんは、私をそんな風に見ているのですね…」
「ごめんごめん。心配し過ぎだよね」
艦隊や艦娘のデータの収集や管理を得意とする彼女。それならば、自己管理もお手の物、なのかもしれない。
…どうやら、僕の杞憂だったようだ―――
-------------------------------
―――で終わるはずだったんだけど。
「でも、司令官さんを心配させるのは忍びないので…」
「えっ、大丈夫だよ?別に―――」
「時間もそんなに掛からないですし、今ここで証明しますね…♡」
先程までの様子とは遠くかけ離れた、妖しげな雰囲気を漂わせ、蠱惑的な笑みを浮かべる鳥海。
…一瞬で変わり過ぎじゃない?―――などと、まるで明後日の方向に思考を飛ばしてみたり。
というか、最近の彼女たちの様子からすると、この流れはなんだかまずい気が―――
一人混乱している僕を尻目に、彼女はそのまま距離を縮めて来る。
「な、なんで近づいて来るのかな…?」
「ふふ…司令官さぁん…♡」
聞いているのか、いないのか。混乱から怯え始めた僕の質問を意にも介さず、どんどん寄ってくる。
「ひっ」
ついに僕の座る椅子の肘掛けに手をつき、こちらへずいっと顔を近づける鳥海。
表情をぴくりとも変えない彼女に、情けない事ながら恐怖した僕は、思わず背中を反らせ、顔を背けてしまった。
「司令官さぁん…?なんで逃げようとするんですか…?」
「だ、だって…」
君が寄ってくるからだよっ!?…と強気に言う事が出来ないのが、僕の悪い癖なんだろうなぁ…
異常事態過ぎていきなり自己分析を始め、勝手に反省する僕。謎行動である。
落ち着け、僕。どうすれば、この状況から抜け出せる…?
と、考える間もなく。
「もう……こうなったら…えいっ♡」
「うわっ!?」
肩を掴まれ、無理矢理椅子に座り直すことになってしまった。
顔は背けたままにする。今見る訳にはいかないっ…
「むぅ…それでも私を見てくれないんですね…」
悲しげな声で言われると決意が揺らぐ…
だが…それでも!顔を前に向ける訳にはいかない…絶対にっ!
しかし。
「強情なんですから…でもっ」
ぐいっ。
「ぎゃあっ、痛い痛いいっ!?」
現実は非情である。
決意空しく、頭を掴まれ、無理矢理前を向くことに。良い子は真似しちゃだめなやつ。たぶん。
「ふふ。漸く私を見てくれましたね。…尤も、こうすれば良い事は既に調査済みでしたが。私の計算通りだったわ♡」
全然計算してないじゃん…力づくだったじゃん……ていうか今漸くっていったよねっ!まったく計算通りじゃないよそれっ!
-------------------------------
閑話休題。…しかし、これはまずい…
「…どこを見ているんですか?司令官さん♡」
「っ…ごめん」
先程まで僕が頑なにこうしたくなかったのは、これが理由。
目のやり場に困るのだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
僕の股の間に膝をつき、上から見下ろされる形になっているため、
目線を上げれば、彼女の端整な顔が間近に見える。
特徴的な赤っぽい黒目を持つ瞳に、思わず吸い込まれそうな感じがして。
眼鏡越しにも、彼女の強い意志のようなものが伝わってくる気がした。
じっと見つめられる事に気が付き、気恥ずかしくなって目線を下げれば、彼女の発育の良い体が嫌でも目に入る。
彼女の制服は露出度が多い。
胸元は大きく開いていて、谷間が強調されている。
だというのに、腕や足は細く引き締まっていて。
彼女の滑らかな、白い肌がむき出しになっているのは目に毒だし―――
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「大丈夫ですよ…?司令官さんなら、どこを見てもらっても…♡」
「っ…僕をからかわないでよ、鳥海っ」
「あら…♡司令官さん、拗ねちゃいましたか…」
そんな声で言われてももう騙されないぞ…
今度こそ、ここから抜け出す方法を―――
「司令官さん…♡食べちゃいたいくらい可愛いです…♡」
「ひいっ!」
耳元で囁かれたため、考えることは出来なかった。
が、すぐに顔を離してくれたので、安堵した……のも束の間。
「顔を真っ赤にして恥ずかしがっているのも、とっても可愛い…♡」
がしっ。
「わっ!鳥海、肩を掴まないでよ!」
「大丈夫です…♡痛い事はしませんから…♡」
ほんとに何する気なのっ!?力強すぎっ、逃げられないし…
そして。
「……少しだけ、私の我儘にお付き合いください、司令官さん……」
そんな言葉が、小さく聞こえた気がしたが。
そのまま、鳥海は顔を僕に近づけて―――
「よっ!提督、邪魔するぜええぇぇっ!?鳥海、何やってんだよっ!?」
-------------------------------
少女説教中…
-------------------------------
結果、突然来訪した摩耶によって、この場は収まった…多分。
鳥海は摩耶に散々怒られていた。
…ちなみに。その間、僕は正座させられていた。…何故だ。
「はぁ…ほんとに何やってんだよ、鳥海…」
「私の計算では…こんな事あり得ない…!」
「反省しろよお前っ!?」
鳥海って、意外とポンコツなのか……?
「まぁまぁ、摩耶、そこまでに―――」
「提督!お前もだよ!」
「ひっ!」
「お前はあたし達に甘すぎんだよっ!分かってんのか!?」
そんな事もない…つもりなんだけど…なぁ……
「……つーか、びしっと断ってくれよ…寂しいじゃんかよぅ……」
「……?なんか言った、摩耶?」
小さな声で、何か呟いたようだったが。
「な、なんでもねぇよっ!」
「……?」
どうやら気のせいのようだった。
-------------------------------
ひとしきり怒られたので、ずっと気になっていた質問をしてみた。
「ところで摩耶、なんで執務室に?」
「おっと、そうだ!忘れるとこだったぜ…」
まぁ、扉を開けてすぐあんなのを見たら、ねぇ……
「鳥海、飯食いに行こうぜ!」
あぁ、もうそんな時間になっていたのか。濃い数時間だった……
「分かったわ、摩耶。…それでは、本日の執務はここまでという事に―――」
「……ああ、勿論なるさ。行ってきていいよ、鳥海」
言いたい事は色々あったが、大体摩耶が言ってくれたのでまあいいか、という気分だ。
あと、凄い疲れたので正直休みたい気持ちの方が強い。
「お心遣い、ありがとうございます」
「おっし、じゃあ行くか!」
そう言って楽しそうに執務室を出ていく摩耶。姉妹仲が良いようで何よりだ。
「あっ、待ってよ摩耶……そうだ…!司令官さん」
何かを思い出したのか、不意に立ち止まり、こちらに振り向く鳥海。
「ん、何かあった?」
「先程は本当に失礼しました」
そう言ってお辞儀を一つ。うん。それは摩耶に怒られている時に既に聞いたけど……?
「……それと―――」
彼女は僕の耳元に顔を寄せて一言―――
「―――今度は、もっと積極的に来てくださいね?司令官さん…♡」
と、言って離れて行き。
「それでは、今度こそ失礼します。…また明日、です」
そして、何事もなかったかのように執務室を後にした。
今のは、どう捉えれば良いんだ、鳥海…?
-------------------------------
「はぁ……疲れた……」
本当に疲れた。色々あり過ぎて整理が追い付かない。
どうでもいいけど、皆切り替えが早くないか?
あんな事して平気でご飯食べに行けるのか……
まぁ、僕も若干影響され始めている節はあるが。
「体、持つかなぁ……」
窓の外、どんよりと空を覆う雨雲をぼんやりと眺めながら、これから彼女とどう接すれば良いのか、考える事にした―――
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ふふ…司令官さん、可愛かったなぁ…」
そう呟いて、思わずにやけてしまう。
きっと今、鏡を見たなら、自分の顔はさぞ気持ち悪い事になっているだろう。
青葉に頼んで写真を撮ってもらいたかったな、あの照れ顔。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
しかし、事は予想以上に私の思い通りになった。
それもこれも、彼を
青葉を買収―――もとい、彼女に頼み込み、この鎮守府の至る所―――勿論、彼の自室にも―――にカメラを設置し、
時間があれば、逐一映像を確認し続け、彼の好みや行動、及び反応を研究し尽くし、計算に計算を重ねた。
それに彼は以前、兵学校の出身と言っていた―――
それらから得られた情報を基に導き出されたのは。
―――女性慣れしていない彼への誘惑は、積極的に接触していくのが最も効果的である―――
という結果。
こんな事をしているなんて、自分でも呆れてしまう。
正直、誰かからこんな話を聞かされたら笑ってしまうだろう。
だが、そんな思いよりも、彼への恋慕の情の方が強いのだ。
誰に何と言われようとも、この気持ちは、誰にも止められない―――
―――はずだったのだが。
彼を愛する
もしも、私の気持ちが知られてしまったのなら―――そんな事は万に一つもあり得ないが―――必ず、私を阻むであろう者だらけだ、とその時思った。
この間なんて、彼が眠っているのを良い事に、接吻までしようとする輩を確認した。
―――未遂であったが。
私の姉―――尤も、双子の姉のようなものだが―――摩耶の事も頭を過る。
彼女も、彼の事を愛していて。分かりづらいし、彼もそんな事とは露程も思っていないようだが。
このままではまずい、と柄にもなく焦り、計画の実行を早めてしまったのが今回の敗因の一つだ。
まあ、印象付けには成功したようだが。
しかし、このままでは何も変わらない。
どうすれば、彼を手に入れられるのか。
―――こうなったらあいつらを消すしか―――
「っ……」
そこまで考え、恐ろしい事を考えている自分に激しく憎悪した。
仲間を手に掛けてしまえば、後には戻れない。彼の元へも、戻れないというのに。
何より、そこに自らの姉を巻き込んだ事に。
焦り過ぎだ。落ち着け、私。
幸い、まだ直接的な行動に出た者は少ない。
私にも、チャンスはまだまだある―――
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「おーい!鳥海、置いてっちまうぞ、早くしろー!」
その時、私を呼ぶ摩耶の声が聞こえ、私は我に返った。
走って、彼女の元まで向かう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「…ごめんね、摩耶。ちょっと考え事してて……」
「…今日のお前、なんからしくないぞ?…どうかしたのか?」
「ううん、なんでもないわ」
「…そっか」
「さっ、行きましょう?」
「そうだな!今日は何にすっかなぁ~」
どうもお久しぶりです。
忘れ去られてはいないでしょうか。
久々の更新がこんなにもどぎつい内容で、しかも長大作(当社比)ですみません。
私の趣味です(
(あと何度か大幅に内容を変更したため矛盾などが存在するかもしれません。気になった場合はご一報を)
ですが、人選には理由があります。
私の嫁艦(候補)
というのもありますが(嫁に候補がいる時点で大分私は屑)、もう一つあります。
それは。
鳥海の二次創作があまりにも少なすぎる、という事っ…!
立ち絵の時点であんなにえっちいのになーんでこんなに少ないんですかね。特にss。
私的にはもっと人気が出ても良いと思うのです。
鳥海ちゃんに計算尽くで誘惑されたい。美人局的なあれ。
と言う訳で、何が言いたいかと申しますと。
これを読んでくださった皆様に、鳥海メインのssを書いてもらいたいんです。
本当にお願いします。私が自分で書かなくても良いようなのをお待ちしています。はい。
話は変わって。
私の作品では伝わりにくいかもしれませんが、鳥海ちゃんの良さは、
計算通り見つけた→突撃→即中大破→私の計算ではこんなのあり得ない
のドジっ娘要素にあるはずです。可愛い。一発大破でも許される可愛さ。
あと眼鏡。改装前だと分かってもらいづらい事が多いのは非常に残念。
それとおへそ…っていうかお腹。触ってみたいだけの人生だった。
黒髪ロングなのもポイント高いですよね。梳いてあげたいだけの(ry
摩耶様ですか?
……書きたい事は沢山ありますが、彼女メインのお話までとっておきます。
ただ、一つ言えるのは。
ヤン(キー)デレ可愛い。
以上、後書きはここまでになります。ここまで読んでくださった方、お付き合いありがとうございました。
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提督と大井と北上
安心して読んでくださいね?
「提督ぅ~、暑いんだけど~」
「ごめんな、北上」
「……まぁ、提督が悪い訳じゃないからいいんだけどさぁ~……」
彼女はソファに寝そべり、気だるげにそう言った。その頭は、同じく座る僕の膝の上。
「いいえっ、北上さん。すべてこの男が悪いのですわ!……というか提督?さっきから北上さんに触り過ぎなので―――」
そして、光の消えた瞳でこう言った。
「―――魚雷20発、撃っていいですか?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
どうしてこんな事になってしまったのか。
全ての原因はエアコンの故障にある。
窓の外を眺めれば、青い空。白い雲。
そして、眩しく輝く太陽。
もう梅雨明けしたのではないかというほどの暑さである。
そんな職場の環境に耐えかねた本日の秘書艦、北上が僕に嘆願してくるものだから―――と言いつつ、自分が一番使いたかったのだが―――エアコンの電源を入れたのだった。
が、その直後、執務室に響き渡る異音。
と言う訳で、故障していることが判明し、現在は修理中である。
ちなみに。修理は工廠に居る二人、夕張と明石にお願いした。
あの二人には、甘味か何かを奢ろうか。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
自らの死を悟ったからか、思わず過去を振り返ってしまった。走馬燈的なあれだろうか。
「止めなよ大井っち~、提督びびってるじゃーん」
「……そう言っても、僕の膝から頭をどかしてはくれないんだね……」
他人事だから、と言わんばかりだ。大井の脅迫をまったく意に介していない。
「減るもんじゃないし、いいじゃんいいじゃん?それに、提督から触ってる訳でもないし~」
しかし、至極全うな事を言ってくれた。いいぞいいぞ。
「さぁ、北上さん!その男から早く離れてください!」
肝心の大井に聞き入れてもらえなかったが。
……本当に、北上が関わると性格変わるよなぁ……
「私の魚雷が光って唸る!北上さんからの愛を掴めと轟き叫ぶ!」
どこかで聞いたような……けどちょっと違うような……?
「まーた大井っち、何かに影響されてるよ……大方、
そういえば、夕張はアニメや映画をよく見ると言っていたっけ。
……じゃなくて!
「僕は全然良くないんだけどっ!?」
命がかかっているのに、そんな簡単に流されるなんてっ……
「だいじょぶだいじょぶ。大井っち、本気で提督を攻撃するつもりなんてないもん」
と、ここで北上から意外な一言。
「……なんで?」
気になったので聞いてみた。
「だって大井っち、普段はあんな事ばっか言ってるけど、本当は提督の事―――」
「ちょっと北上さああああぁぁぁんっ!?」
肝心の部分はまるで聞こえなかったけど。
-------------------------------
「んもぅ……大井っちうるさいよー」
ぷんぷんっ、と声に出して怒る北上。
「はっ……北上さん、すみません……」
本当に申し訳なさそうに謝る大井。
僕にやるときにもそうして欲しい。
「……ほーんと、素直じゃないんだから……」
「北上さん、何か言いました?」
「何でもないよぅ、大井っちぃ……ふぅ、それにしても暑いね~」
結局何だったんだろうか。気になるが話を逸らされてしまった。
こうなると中々聞きづらいんだよね……
「僕と密着するのを止めたら、少しは涼しくなるんじゃない?」
ここで今更なツッコミを入れてみる。が。
「それは出来ない相談だねぇ……ここ、居心地良いんだよね~」
そんな訳ないと思うんだけどなぁ……?
自分の膝で寝た事ないけども。
「ぐうっ、やはり羨ましいっ……!…提督!貴方、そこ代わりなさいよっ!」
と、やっぱり大井の怒りの矛先が僕に向いてしまった。
「ぐええ……ちょ、大井やめて……っ」
肩を掴んで首を揺らさないでええぇぇぇ……
「大井っち?」
「はいごめんなさい」
-------------------------------
なにこれデジャヴ?
「もー、大井っちのせいで益々暑くなってきたじゃんか~」
「わ、私のせいですかっ!?」
「そうだよぅー」
そう言って、益々だらける北上。
しかし、北上に言われたのだ。少しは落ち着くだろう。
そう思ったのだけど。
「むむむ……あっ、そうだ」
苦々しげな表情の大井が近づいて来て、耳打ちしてくる。
「……このままでは私が北上さんに嫌われてしまいます。なので提督っ、貴方、何か私の株が上がりそうな事を考えなさいっ」
えぇ……
「なんで僕が……そうだなぁ……」
頼まれてしまっては断れない。一応考えてみる。
……
…あっ。
「間宮さんの所に、甘味を食べに行こう、とか?」
確か今の季節、かき氷を出してくれるって言ってたような……
うん。甘いものも食べられて、涼む事もできる。我ながら良い案だ。
と思ったんだけど。
「よくやりました提督、魚雷の数は5本に減らします」
あっ、撃つのは変わらないんですね……
「んんっ……きーたかーみさんっ?」
そして大井は、未だソファでごろごろする北上に提案した。
「なぁに~」
「間宮さんの所に、甘味を食べに行きましょう?……この男の奢りで」
「ちょ」
それはおかしい。……というか大井の株を上げるのに僕が奢るのはなんか違うよねっ!?
と言いたいのが顔に出ていたようで。
「何ですか提督?……何か文句でも?」
よーし、がつんと言ってやるぞー!
「文句っていうか…大井が奢ればいいたいいたいちからつよいからつねんないでえぇ」
「奢ってくれますよねっ、提督♡」
「はいぃ……」
ダメでした。
「さ、この男から言質も頂いたことですし、行きましょ?北上さん!」
「あはは……提督、大変だねぇ……」
やっぱり他人事の北上。まぁ、彼女からすれば他人事なのだけど。
「まったくだよ……さぁ、置いて行かれないうちに早く―――」
「と、言う訳でそんな疲れ切った提督に北上さんからプレゼントだー、えいっ」
ちゅっ。
「……は?」
「何さ提督ぅ、恥ずかしがれよ~……あたしが恥ずかしくなっちゃうじゃん……」
「……え?」
「ありゃ、固まってらっしゃる……ま、いいや」
「提督、いつもありがとね♪」
-------------------------------
……どうやら、北上は執務室から出て行ったようだ。
いきなりの事でフリーズしてしまった。
頬に残るのは、柔らかな唇の感触。
「何だったんだ今の……ん?」
突如、背後から尋常ならざる殺気を感じ、振り返る。
「ほう……!私の北上さんに……なんという事をっ……!」
ですよねー。
殺気の主は大井であった。
北上がこんな男にキスをしたのだ。それはそれは大層ご立腹であろう。
「待って落ち着いて大井。今のは僕も想定外―――」
「魚雷の数を減らすと言ったな……」
というか一つツッコミを入れたいのは。
「あれは嘘だ」
普通の人間には魚雷が5本だろうと20本だろうと大した差はな―――
×××××××××××××××××××××××××××××××××××××××
×××××××××××××××××××××××××××××××××××××××
「……ごめんねぇ、提督。あと大井っちぃ……」
執務室の中にいる二人に、呟くように声をかける。当然、届いていない。
心配だったから、様子を見に戻って来たけど……やっぱり、そうなっちゃうよねぇ……
本当に手のかかる妹だ。
いつだったか。あの娘は私に恋していると言っていた。
同時に、彼の事も。
が、彼女はまだ気づいていないのだろう。
私に抱く感情は、提督へのそれとは全く別物である、という事に。
「いつか気付くといいんだけどなぁ……」
ま、いいや。取り敢えず今は……
「代金は提督持ちだし、高いのたーのもっと」
最近暑いですよね。皆様いかがお過ごしですか?
この間エアコンが壊れた私にとって非常にタイムリーな話題で書きました。
どうでしたかね?
さて。
北上さんのゆるーい感じ、いいですよね。なんだか気が合いそうな気がします。気だけ。
大井っちについてですが、この鎮守府では北上さんも、提督の事も好きです。
北上さんと大井っちと提督の三角関係。個々人、色々思い描くものはあるとは思うのですが……
時報とか聞いていても、そこまで提督の事が嫌いって訳でもなさそうだったので。
……どうなんでしょうね?
という訳で、今回はここまでです。お付き合いくださり、ありがとうございました。
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提督と長門と陸奥
でも、いつも通りだと思います。
「……うん、これでよし、っと」
先程帰投した艦隊から受け取った書類を一通り確認し終えた様子の彼。
小さな声でそう呟くと、確認したことを証明する判を押した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
出撃後には、こうして書類を提出する必要がある。
書類の内容は、戦果だとか、こちらの被害状況、或いはMVPは誰か―――
等々、といったところである。
ちなみに。
今提出された書類は、最終的に大本営の元へと届くこととなる。
そうして、各鎮守府から集まった書類を基に、提督毎の戦果等の公表が月単位で行われるのだそうだ。
順位付けされ、上位入賞者には褒賞もあるらしい……がそれはまた別のお話。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
話は戻って。
今回の出撃はほぼ無傷であったため、彼も一安心したようだ。
コーヒーを一口啜り、ほっ、と息を吐いて、一言。
「長門と陸奥には頼りっぱなしだね。……無理しなくていいんだよ?」
申し訳なさそうに言うものだから。
「いやいや。気にするな、提督」
「そうよ、提督。私たちが好きでやっているのだから、ね?」
ぱちっとウィンクをして見せた。
彼が心配しているのは、
……きっと、『疲れているだろうに、ここまでしなくても……』などと思っている顔だ、あれは。
私たちが好きでやっているのだ、心配する必要もないのに……
-------------------------------
一言では信用できない、とそんな提督に、
「それに、この長門。昔はこれ以上の大役を任されていた事もあるのだからなっ!」
この程度で音を上げる訳がなかろうよ、と我が姉。
彼女が言わんとするのは、きっとあの頃の記憶―――私と共にビッグ7と称されていた事か、或いは連合艦隊旗艦を務めた事か―――。
酒の席で、彼女が悪酔いする時は、決まって私にくだを巻く。
そんな時、よく出す話題だ。……私もビッグ7って言われてたんだけどな、長門姉。
勿論、彼には伝わっていたようで。
「ふふ、よく知ってるよ。……職業上、ある程度そういった知識は頭に入れておく必要があると思ったんだ」
まだまだ勉強中だけどね、とは彼の弁。
まったく、こういうところには気が回るんだから。
「む、そうなのか……少し、恥ずかしい気もするな」
「あら、あらあら?……でも、悪い気はしないわ」
それに。ある程度、私たちについて調べてくれていると、やりやすい事もあるのだろう。
例えば、トラウマがぶり返して来た時とか。
打算的な面―――その結果、艦娘として機能しなくなったら―――もあるだろうが、私たちの事をよく考えてくれている。
尤も。彼に言わせれば、それも仕事の内、なのだろうが。
-------------------------------
そんな話を聞いたからだろうか。
「寧ろ、我々の方が礼を言うべきなのだろうな」
と、姉が言う。
「……気にする必要はないよ、長門。僕は、僕がやるべきだと思う事をやっているだけさ」
と、苦笑する彼。……本気でこんな事を言えてしまう男なのだ、この人は。
しかし、そこで引き下がらない我が姉。神妙な面持ちで、こう言った。
「それでも、言わせてくれ……いつも、ありがとう、提督」
「こっちこそ……いつもありがとう、長門。それに、陸奥」
珍しい、姉のしおらしい態度。思いがけず、会話に入れなかった。
「なんだか湿っぽくなってしまったな。……さて。戻るとするか、陸奥」
「ええ。そうしましょうか」
先程までのやり取りが恥ずかしくなったのだろうか、逃げるように執務室を後にしようとする長門姉。
……これでは締まらないではないか。思わず吹き出しそうになってしまった。
そんな、どこか頼りない姉を先頭に、部屋を出ようとしたところで。
「あれっ。長門、何か落としたみたいだよ?……これは」
彼が何かを拾い上げた。……あれは―――
「んっ、なっ!み、見るな提督!」
「うわっ!?」
その手には、私たちの部屋の鍵。……可愛らしい熊のキーホルダーの付いた。
「……驚いただろう?提督……」
恥ずかしそうに、それでいてどこか悲し気な顔をする姉。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
……というか、これでは『私が選んだものです』と言っているようなものではないか。
妹のセンスだ、という事にすれば良いものを。……生真面目な姉らしいといえば、らしいか。
さらに言えば、恥ずかしがる事もないというのに。
自分のキャラじゃない、なんて思っているのだろう。
まったく、我が姉ながら、可愛いというか、面白いというか……
だから時々、からかってみたくなっちゃうのよね。
……まさか妹がこんな事を考えているとは思いもしないのだろうな。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
意識を戻し、長門姉の様子を伺う。
何か話そうと、しかし言いよどみ……ついには涙目になってしまった。
「すまない、提督。私の柄では―――」
見かねた彼が声をかける。
「いいじゃないか、長門」
「なっ!」
「あらあら?」
さてさて、どう慰めるのかな?
「確かに意外だったけど、長門だって女の子じゃないか。可愛いものが好きだって、何もおかしくないよ?」
「うぁ、て、提督!?」
たじろぐ姉。真っ赤な顔の提督。……ふぅん?そこからどうするのかしら。
そんな風に、少し楽しみ始めていたのだけど……
「寧ろ、僕としては―――」
あらあら、雲行きが怪しくなってきたわね。
……お姉さん、知らないぞ?
「―――長門の意外な一面が見れて、嬉しかったな」
「~~~~~っ!?」
耐えきれなくなった長門姉。顔から本当に火が出そうなくらい照れている。
その場から全速力で走って逃げだした。
「提督のばか~~~っ!」
そんな捨て台詞を残して。
-------------------------------
うふふ、姉さんらしいわね。可愛いわ。
……さて。
「どこ行くの長門っ!?ていうか今、さらっと酷い事言わなかったっ!?」
「そうよ。酷いわ、提督」
本当に、酷い人……
「む、陸奥まで……」
自意識過剰なのも問題だけれど、ここまで鈍いのも……
もはや罪ね。大罪よ?
しかし、彼の態度。ちょっと怪しいのよね。はぐらかしているんじゃないの?
「ふふっ。……女の子にあんな事ばっかり言ってると、勘違いされるわよ?」
軽くジャブをいれて、探ってみる。
「?……どういう事、陸奥?」
が、当の本人はさらに困惑。
本当に気付いてないのね……?
……ならば。
私の可愛い姉を泣かせた事だし、少し意地悪―――お灸を据える事にしよう。
「……そうだ、提督。一つ、忠告して―――いえ、これは警告」
「えっ、何、それ―――」
「いいから」
「は、はいっ」
「貴方、これからもこのまま進むつもりなら―――」
「それほど遠くない未来に、貴方はきっと後悔する事になるわ」
-------------------------------
-------------------------------
時が、止まったような気がした。
いつになく、冷たい―――恐怖さえ、覚えるような―――瞳で。
今まで見たことがないような、どこか苛立ちを感じる―――
そんな顔で近づいて来るものだから、息が詰まった。
理解が追い付かない。
部屋が、緊張感のある静寂に包まれたように感じた―――
「ふふっ、なんて、ね?」
が、それを壊したのは、他でもない陸奥であった。
「うふふ、お姉さん、少しからかってみたくなっちゃったのっ」
この間見た映画のワンシーンの真似をしてみたの、と陸奥が言う。
「……びっくりさせないでよ、陸奥……怖かったじゃないか」
「あら。怖いだなんて……酷いわ、提督」
あっ、また言葉を選び間違えた。
「ち、違っ」
中々難儀なものである。
「あらあら……さて、私もそろそろお暇しようかしら」
なんだかどっと疲れた気がする。
「あっ、ごめんなさい。もう一つあったわ」
思い出したように、部屋を出て行こうとしていた陸奥が振り返った。
「ヒントをあげる。……一つ目。長門は、貴方の事が好き」
「はっ?それ、どういう―――」
「それと、二つ目。……私は、貴方の事が好き」
ちゅっ。
「―――えっ?」
「うふふっ。やっぱり、恥ずかしいわね。……私らしくなかったかしら」
心なしか、朱の差した頬をこちらへ向ける。
「とぉっても鈍い、貴方に宿題をあげるわ―――」
「―――いつか、答を出してみて?」
ご無沙汰しております。
律儀に待って下さっている方、いらっしゃったら本当に申し訳ないです。
いきなりですが。
補足のようなものを―――と見せかけていつもの。
まずむっちゃんについて。
彼女の振る舞いは(個人的に)計算されたもの、であると思っています。
本当のところが分からないミステリアスな感じが表現したかった。
この鎮守府の陸奥。決して提督の事が嫌いな訳ではありません。嫉妬はしてるけど。
それ以上に長門の事が好きすぎるのです。
なので、長門を傷つける者には容赦しないのです。海の上でも、陸の上でも。
可愛い姉を守ってあげたい。そんな、少し捩じれた愛を持っています。
やっぱりちょっと病んでるのもご愛嬌。
ながもん。駆逐艦スキー。でも変態じゃないよ!
可愛いもの大好き。だったらいいなぁという願望。
隠している事に気づいたら、顔を真っ赤にするまでいじってあげたい。
お前の方が可愛いよ!
ちょっと天然気味。割と抜けているので、よく陸奥にいじられています。
だったらいいな(二度目)。そんなところも可愛いよ。
という訳でそんな二人でした。いかがでしたでしょうか。
次も気長にお待ちくださいな。
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提督と朧
夏のある日のお話です。
「暑いなぁ……」
―――澄み渡るような青い空。まさに、快晴という単語がぴったりの空である。
日光を遮る煩わしい雲は、一つも浮かんでおらず―――
暑すぎる。
僕は今、鎮守府近くのとある海岸へとやって来ている。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
職務上、普段あまり外出する事のない僕が、何故そんなところにいるのか。
ご存知の通り、現在我々は深海棲艦と日々死闘を繰り広げている。
一時はその戦力に押されていたが、最近は深海棲艦の根城を壊滅させる事に成功した。
それが功を奏しているのか、いないのか。
彼女たちが近海まで接近する事は、滅多に無くなって。
その数も、ある程度減っている。
そんな訳で、一般市民が日常生活を送るのに、差し支えはなくなりつつあるのだった。
(勿論、貿易面等完全に回復したとは言い切れないところもあるが)
そして、そんな市民たちは、段々と娯楽を求め始め―――
長々と話してしまったが、要するに。
深海棲艦の出現後、暫くの間閉鎖されていた海水浴場が、ここ最近解禁されたのだった。
勿論数は限られているし、『周辺の鎮守府が海水浴場周辺の海の索敵を行う事』等条件がある。
が、市民が知る由もないため、ここでは詳細な説明を割愛する。
……そんなこんなで、夏の暑いこの時期。その暑さを乗り切るためだろうか、この海岸も多くの人で賑わっている。
そして、僕は今。
上からは、焼き付くような強烈な日光。
下からは、白い砂浜から照り返される日光。
この炎天下で、海岸周辺―――主に陸地―――の警備に当たっているのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
日よけの一つでも持ってくるべきだったな。
判断を誤った事を少し後悔しつつ、問題がなさそうか確認して回る事にした。
暑いからといって、職務の手を抜くわけにはいかないしな。
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「ありがとうございましたー」
にこやかに手を振り、去っていく親子連れに、会釈した。
……何故、僕が声をかける人は必ず女性なのか。そして、何故いつも一悶着あるのか……
先程のお子さん(勿論女の子)には、溺れかけていたところを助けたお礼に、と頬にキスをされてしまった。
その前には確か、怪我をしたという女性を医務室へ連れて行ったところ、お礼に遊びに行こうと誘われたのだったか。
仕舞いには、何故か僕に絡んでくるグループもいただろうか。やたらとべったり近寄ってくるため、身の危険を感じていた。
(曰く、見た目と反応のギャップが可愛いとか)
……何か裏があるような気がしたし、第一仕事中なのでお断りしたのだが。
どっと疲れたため、どこかで休憩しようかと思案していたところ―――
ふと。
「あっ、提督!」
どこかからそんな声が聞こえたので、その主を探す事にした。
辺りを見回して―――おや、あそこで手を振っている娘が。
あれは―――
-------------------------------
海岸の端の方。人も少なく、少し開けたところで、無邪気に手を振っていたのは朧。
そうそう。彼女たち第七駆逐隊は今日、休暇だったはず。
「楽しそうで何よりだよ」
「はい!来てよかったです、提督!」
そう言って、はにかむ彼女の傍らには砂の城。
自信作ですよっ、とは彼女の弁。その顔は、どこか満足気だ。
「朧、この季節大好きなんです!それに―――」
ちょっと待っててくださいね、と砂の城をがさごそ。
そして。
「ほら!カニさんも嬉しそうでしょ?」
朧がこちらに手を差し出してきた。その上には、カニさん。
元気さをアピールするように、右手(彼ら?の場合は脚か)を上げて爪を動かす。
しゃきんしゃきん。
そんな音が聞こえてきそうでした。ちょっと怖い。
-------------------------------
二人で他愛のないお喋りをしていると。
「……ところで、提督?」
いきなり、もじもじとし始めた朧。
暫くして、意を決したかのように一言。
「あのっ!……朧の水着、似合っていますか……?」
休日、という事もあってか、いつものセーラー服ではない。
淡い緑のビキニ―――と呼ぶのだろうか、あまり詳しくないけれど―――を身に着けている。
……彼女は緑が好きなのか。覚えておこう。
「ああ、似合ってるよ。朧らしくていいと思う」
「……可愛い、ですか……?」
「うん、可愛いよ?」
僕がそう素直に感想を述べてみる。
すると。
「~~~~~っ!?」
急激に耳まで赤くなってしまった。
「顔赤いけど、大丈夫?……まさか、熱中症とか―――」
この暑さなので、やはり心配だ。
……と思ったのだけど。
「……はぁ……」
呆れた、と言わんばかりにため息を一つ。
顔の赤みもなくなっている。どうやら杞憂だったようだ。
「いえ、朧は大丈夫ですっ。心配いりませんっ」
なんだかご機嫌斜めなご様子。
また何か間違った事を言ってしまったのか、僕は……
-------------------------------
不甲斐なさに自己嫌悪しながら、ふと気が付いた事を口にする。
「あっ、そうだ……朧、七駆の他の子たちはどうしたの?」
僕が見かける時はいつも一緒に行動している第七駆逐隊。
が、今日、朧は一人でいるから、先程から違和感があったのだ。
「そういえば……帰ってくるの遅いですね」
聞けば、昼食を買いに海の家へと向かったそうな。
大分前に出かけたようだが、連絡はないという。
……彼女たちが戻ってきていない事に今まで気づかなかったとは、朧は意外とマイペースなのか……?
「ちょっと心配だな。探しに行ってくる」
みんな可愛い娘たちだし、変な奴らに絡まれてなければいいんだけど。
よし、そうと決まれば早速行動しよう―――と立ち上がると、朧も腰を浮かせた。
「あ、朧も―――」
七駆の中でも真面目な彼女だ。僕と探しに行くつもりなのだろうが―――
「いや、君は残っていて。もし何事もなく帰ってきた時、誰もいないと困るだろうからね」
「……そうですね。では、朧はここでお待ちしております!」
物分かりが良くて助かった。……さて、ぐずぐずしていても仕方がない。
「すぐ戻るから!」
彼女にそう言い残し、僕は喧騒の中へと戻るのだった。
珍しく季節ネタでした。いかがでしたかね。
個人的な目標として、『夏イベ開始前までに投稿する』というものがあったのですが、
思い切り遅刻しました。ダメダメですね。
今回は七駆の朧さんです。
ボイス可愛いですよね。人気がそれほど高くないのが疑問です。
私のよく見るサイトやSNSが偏っているせいなのか。
ちなみに前後編であります。こちらが前編という事になっています。
後編は七駆のあの娘メインの予定です。あと一人なので分かるとは思うのですが。
イベント期間に必ず投稿します。本当ですよ?
どうでもいい予定としてもう一つ。
私の大好きな艦娘に水着グラが実装された事が嬉しすぎた為、記念に書きます。
こちらもイベ期間には。多分。
今回は以上です。お付き合いありがとうございました。
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提督と漣
ちなみにこちら、後編となっております。
前編(朧回)から読むとお話が分かりやすいかもしれません。
仕事で鎮守府近くの海水浴場に来ていた僕。
そこで偶然、朧に出会ったのだけど……
彼女の妹達―――曙、漣、潮―――が行方不明になってしまった。
以上、三文で分かる状況説明でした。
……などとふざけている場合ではない。
彼女たち駆逐艦はまだ子供。暴漢に襲われていないとも限らない。……あの子たち、可愛いし。
……と考えて、ふと、自分がいささか過保護すぎるのではないか、と思った。
が、常に最悪の事態を想定するのは悪い事ではない……よね?
はぁ……何もないと良いんだけどなぁ……
そんな訳で、朧に聞いた通り、海の家のある辺りまで来たのだけど。
見つからない。
店員さんや周囲のお客さんに聞いて回ってみた。
しかし、皆一様に首を横に振る。
結局、小一時間粘ってみたが、めぼしい収穫はなかった。
ごく普通の水着の小学生(実際には違うけど)について聞いているのだから、記憶になくて当然ではあるが。
弱ったな……早くも足取りが途絶えてしまった。これではお手上げだ―――
そう思った時だった。
-------------------------------
―――時は少し遡り―――
「ご飯キタコレ!しかも中々おいしそうじゃないですかぁ~!」
「漣、うるさいわよ」
諸君、私は帰ってきた!……えっ、ここでは初めてだろうって?まぁまぁ、そうつれない事を言わないで。
と言う訳で、ここからは稀代の美少女、この漣が―――って、こうでもない?
とと、話が脱線しちゃいましたねっ。
今、漣たちはお昼ご飯を無事ゲットしたところ、なんですよ。
熱心に砂の城を作っていたおぼろんを一人残し、七駆の3人で買い出しですっ!
「これがほんとの
ダジャレウマー!ふひひ、これは会心の一撃でしょ!
って思ったんだけど。
「やかましいわ!しかもあんまり
ぐぬぬ……ぼのぼのは厳しいなぁ……ん?
「……あぁ!ぼのぼの、今のダジャレ?」
「あ~っもう!私が何言ってるのか分かんないみたいな反応やめてよ漣っ!ていうかダジャレじゃないわよっ!」
いやぁ~、ぼのぼのは面白いですなぁ。
って、めっちゃおこですやん!逃げるんだよぉ~!
「ちょ、ちょっと落ち着いて二人とも~っ!?」
えへへ……結局、うっしーに仲裁してもらって事なきを得たんですけどね。
なお、ぼのぼのにはこってり絞られた模様。
-------------------------------
「まったく、あんな恥ずかしい目に遭うなんて……っ」
口では文句ばっかり言ってるけど、ぼのぼのは何だかんだで律儀なんだよねぇ……
……そこが、いいとこなんですけどね。
……ふふ、時折真面目で心優しい美少女感をアピールするっ……!これは漣的にポイント高い。
「ねぇねぇ、早く食べよっ!はよ!はよ!」
「あんたは少し反省しなさいよっ!?」
ちっちっちっ。甘い、甘すぎますよ曙さぁん……
この切り替えの早さが漣様の真骨頂なのです!
アッハイ、反省します。
「ふふふ。まだ食べちゃだめだよ、漣ちゃん?ちゃんと朧ちゃんのところに戻ってから―――」
「ガーン!漣はそんな食いしん坊じゃないよっ!?」
ショーック!ぼのぼのじゃなくてうっしーに言われたのがまた一段とショックっ!
「どっちかって言うと、漣の日頃の行いが悪いせいじゃないの?」
むむむ、その印象は心外ですなぁ。
「ははは、そんな事ある訳ないじゃないですかぁ~。やだなぁ、もう!ね、うっしー?」
まったく、ぼのぼのってば……鎮守府内で最も品行方正(自称)である漣の日頃の行いが、悪いはずなど……
「あはは……」
応答せよっ、応答せよ潮ー!
「あとそのあだ名、センスないからやめた方が良いわよ」
「ぐふっ」
そこに特に理由の無い(言葉の)暴力が瀕死の漣を襲う―――!!
「あ、曙ちゃん!……違っ、違うんだよ漣ちゃんっ!?決してちょっとうざいとか思った事なんてないんだよ!?……あっ」
「潮……あんた……」
ついげきの潮の(フォローにならない)フォローでさらにダメージは加速した
やめて!漣のライフはとっくにゼロよ!もう勝負ついてるから!
「ふふふ…たとえここで私が倒れようとも、いずれ第2第3の漣が―――」
しかーし、そんな事でへこたれる漣ではないわっ!
い、いつか私の存在の偉大さがっ……
「置いてくわよ」
「ごめんなさい待ってください」
-------------------------------
なんやかんやありまして、おぼろんを残してきたところまで戻ろうとしたんですけどね。
「痛ってぇ!」
「ひゃっ!……ご、ごめんなさい。大丈夫ですか?」
うっしーが男の人にぶつかっちゃったんです。
……金髪にサングラス。あとめちゃくちゃアクセサリーをじゃらじゃらを付けてる。
よくいるアゲアゲな感じの。言っちゃ悪いけど、面倒そうな人ネ。
「ったく、どこ見て歩いて―――おっ」
この間改二になってから、ちょっと自分に自信を持ち始めたうっしーだけど、まだ男の人(あ、ご主人様以外ね?)は苦手そうだしなぁ……ああいう人なら尚更。
とか考えてたら、あの男の人、こけたうっしーに手を差し伸べて―――
「こーんな可愛い子に出会えるなんて、お兄さんラッキー♪」
「きゃっ―――」
「ぶつかっちゃってごめんね。痛くない?」
「ひっ、ひゃい、大丈夫でしゅ」
「そ、そう?……あ、そうだ」
返事に何故か戸惑った男の人。
多分、絵に描いたような(喋ってるんだけどね)噛み噛みの返事だったからかな。
おーい、そこの人。別に狙ってやってる訳じゃないと思うよ。素だよ、素。
気を取り直して、男の人も絵に描いたように、何か閃いたような素振り―――漫画によくあるでしょ?頭の上に電球が描かれてそうなポーズ―――をして。
「お茶しに行かない?お詫びってことでさ、代金は俺が払うから、ね?」
「ふ、ふぇっ!?あ、あの―――」
「ちょ、ちょっと!何勝手に話進めてんのよ!潮から離れなさいよ!」
ハッ!
流れるようにナンパする、その手法―――漣でなきゃ見逃しちゃうね(一敗)
いや~、惚れ惚れするね~。痺れるね~。全然会話に入り込めなかったよ。
この人を見て思った。
……ご主人様もこのくらい積極的になれば、もっと女ウケすると思うのに―――
……いや、やっぱダメ。漣たちの手から離れちゃうかもしれないしね。
それに、ご主人様が積極的に女の子に話しかけに行くのとか、あんまり想像できないよね。
っと、いけないいけない。話を戻すよ。
まぁ、ぼのぼのがつっかかってるし、暫く眺めてましょうかねぇ。
「何だよ、邪魔しないで―――おっ」
ふっふっふ。やっぱり面食いは惹かれるよね。
綾波型、ひいては特型駆逐艦、さらに言えば艦娘になる子は、みんな可愛い子ばっかだもんねぇ。
勿論、ぼのぼのだってそうだしね。なお、性格は痛いいたいごめんなさいゆるして
「ふふ、君も可愛いねぇ……でも」
おおーっと!ここで顔から目線が少し下がりましたね~。
これは……あっ
「……?……なっ」
おっと、気付いたようですね。
さすがのぼのぼのも、これにはお冠ですわぁ。
えっ、チョイスが古い?何のことやら。
「どこ見てんのよ変態!」
「やっぱおにーさん、こっちの子の方が良いや♪」
「は、離してくださぃぃ……」
……まぁ、正直同性から見てもムラm―――んんっ、羨ましいよね。
お姉ちゃんがある程度大きいのはまぁ、受け入れられるんだけどね?
……
くやしいのうwwwくやしいのう……
「もうあったまきた!いい加減に―――」
って、そんな事考えてる場合じゃねぇ!
さっきの反応が気に食わなかったのか、ぼのぼのが掴みかかろうとしてる。
待って待って、流石に手を出されたら勝てっこないし、ちょとsYレならんしょこれは・・?
ああっ、誰かこの場を収めてくれる人は―――
その時だった。
-------------------------------
「曙!」
って、この状況は何なんだ。
ちょっと人だかりが出来てたから、パトロールってことで見に来たら、曙たちだった。
ここまでは良いんだけど。
潮は見知らぬ男に抱っこされてるし、その男に曙が殴りかかろうとしてるし……
取り敢えず、三人を引き離して、ちょっとお話しようと思ったんだけど。
「ご主人様っ!」
横から誰かにタックルされた。……ん?ご主人様って―――
ぶつかられた方に顔を向ける。
「さ、漣っ?その呼び方は、外ではやめ―――」
「えへへっ。漣たち、ご主人様の事をずぅっと、お待ちしてたんですよ?」
聞いてもらえてないっ!?外でその呼び方は―――ああっ、周囲の方々の目が徐々に冷たくなってきてる!
と、ここで。
「!―――あ、ありがとう」
どうやら、彼女には何か考えがあることがわかった。
いつもよりわざとらしく―――いつも狙ってやってるんだろうけど―――話しかけて来るし。
その距離も、いつもより近いから、何となく察することが出来た。
取り敢えず、その策に乗っかるとしよう。
「……ほら、ぼのぼのもうっしーも!……」
「……はぁ!?なんでそんな事……」
「ふぇっ!?……恥ずかしいからやめようよぅ……」
……何か小声で言い争っているが、本当に大丈夫だろうか。
「ううっ……でもでもっ……よしっ!」
と、いきなり潮が気合を入れたかと思えば。
こちらへとてとて、と近寄って来て。
「あ、あの!ご、ご主人様!」
深呼吸を一つして。
「潮、怖かったです~っ!」
「ちょ」
頬を真っ赤に染めて、半泣きで思い切り抱きついて来る潮。
……その後ろで、男性が項垂れている。
「ご、ごめんね潮。あ、あのさ、ちょっと離れてくれると嬉しいな。あと、声が大きい―――」
冷ややかな目線が背中に突き刺さっているような気がするから!
「ね、ねぇ!」
さらに、そこに追い打ちをかけるように。
「……寂しかったんだからね。―――ご、ご主人様っ……」
曙が、いつになく顔を真っ赤にして、そっと腕に抱きついてきた。
「んっふっふ~」
そして、何故か満足げな漣。ここまでする必要はなかったよねっ!?
「ん、んんっ!……兎に角、そういう事ですのでっ!失礼します!」
真夏だというのに何故か冷汗が止まらない。
いたたまれなくなった僕は、最初の目的をすっかり忘れて、その場を後にした。
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「まったくもう、漣ってば……」
「はっはっは、済まんな」
反省の色なし。別に良いんだけどさ。
結局、この子たちに話を聞いて、何となく内容を察した訳だけども。
「まぁ、間に合ってよかったよ」
その一言に尽きる。何かしたり、されたりした後では遅いからね。
……間に合ったかどうかは内緒にしておこう。無事みたいだしね。
「あ、ところでご主人様?」
と、唐突に漣が。
「結局、誰の『ご主人様』が一番グッと来たんですかねっ?」
爆弾を投下した。
せっかく忘れてもらえそうだった話題を、蒸し返された……っ
「ああ、それ気になるわね。……散々恥ずかしい思いしたんだし、クソ提督も―――」
しかも、普段止めてくれる側の曙もノリノリだし!
頼みの綱の潮も―――
「うぅ……やめようよ二人ともぉ……」
口ではそう言っているが、実は気になる、と言わんばかりに目がこちらにチラチラ。
「ふへへへへ……さぁ!さぁ!」
ねぇ、その笑い方怖いよ!ちょっと待って!にじり寄って来ないで―――!
-------------------------------
-------------------------------
「提督と曙たち、遅いなぁ……あっ」
よそ見をしていたら城が少し崩れてしまった。
「……作りなおそ」
はぁ……お腹空いたなぁ……
今回はいかがでしたでしょうか。ちゃんと間に合ってよかったです。
曙のツンデレばかりあげられるイメージですが、漣も中々ツンデレ―――というか、素直じゃない子、だと思うのです。
ムードメーカーとして振る舞おう、と明確に考えて行動していそうで。
一歩引いたところから傍観していたいのかもしれない―――そんな勝手なイメージを抱きつつ、書いてみました。
……ぶっちゃけ、そこまで考えているのかもよく分からないですけどね(
ご主人様呼びも他の子にない特徴ですよね。
可愛い子にご主人様呼びしてもらいたかっただけの人生だった。
メイド喫茶に行く度胸はないんですけどね。
スラングもいくつか鏤めてみました。貴方はいくつ分かるかな?
次のお話は多分短め……だと思います。
夏イベが終了するまでには投稿するつもりでいます。ご期待ください。
それでは、これにて失礼します。
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提督と榛名
大していつもと変わりませんが。
4/18追記
こっそりと続きを付け加えました。
「提督っ!」
始まりはいつも突然。
「おっ―――榛名か?どうしたの、そんなに慌てて?」
この日も、それは例外ではなかった。
珍しく慌てている様子の榛名が、執務室に飛び込むように入ってきて。
普段、落ち着いていて真面目な榛名。
それだけに、何か急を要する事態があったのか、と身構えたのだけど―――
「えっと、そのぉ……」
これまた珍しく、歯切れが悪い。
落ち着かないのだろうか。
手は忙しなく彼方此方と彷徨い、目も泳いでいる。
「……榛名?大丈夫?」
「は、はいっ!榛名は大丈夫です!」
「そ、そう?……いつも頑張ってくれてるから、心配でね」
そんなに気張らずにやってくれて良いんだけど。
そう伝えたところ―――
「……!……お心遣い、ありがとうございます。……って、そうではなく!」
が、どうやら、期待していた言葉では無かったようだ。
首をかしげてみせると。
「あっ、いえっ!本当に、榛名には勿体ないお言葉なのですがっ、その……っ」
「……大丈夫。落ち着いてから、話してくれて良いんだよ?」
「……!……では、少しだけっ」
束の間の静けさ。
暫くして。
意を決したのか、息を深く吸い込んで、こう言った。
「は、榛名と、海に行きませんかっ!?」
僕の頭上には、燦々と輝く太陽。
その光を反射して、煌めく青い海。白い砂浜。
「……来てしまった」
あまりに衝撃的だったのか、どうしてこうなったのか覚えていない。
いつの間にか、僕は海パン一丁に着替えていた。
そこに。
「提督っ、お待たせ致しました!」
榛名がやってきた。
上は白いパーカーを羽織っており、下はパレオというのか、同じく白い腰布が巻かれている。
「いや、大して待ってないから。大丈夫」
「そうですかっ。……ところで―――」
そう言うと、たたたっ、と僕の数歩前へと回り込み。
「この水着、榛名に似合っているでしょうか?」
パーカーのチャックを下ろし、少し恥ずかし気に見せてきた。
先程までは見えなかった、やはり同じ白色のビキニが姿を現す。
胸の間には大きなリボンがあしらわれており、とても可愛らしいと思う。
「ああ、似合ってると思う。可愛いよ?」
「……っ、その言葉は反則です、提督っ……♡」
色も榛名らしい、白。純粋無垢な彼女にとても似合っていると思う。
……しかし、リボンに目が行くと、それ以外のところにも目が移ってしまう訳で―――
「……?提督、どうかしましたか?」
「……っ!何でもないよ。……さ、ビーチまで行くんだろう?着直して、ね?」
その白い肌が日に焼けてしまうのは、少し勿体ない気がして。
それに、このままでは目に毒だし。前を閉めてもらう。
「むぅ……榛名は、別にどこを見てもらっても……」
小声で何か言っているが、それでもこんな些細な事であっても、僕の言う事に従ってくれて―――
素直で、優しい子だ。
くれぐれも頼り過ぎないようにしなければ。
そう、固く心に誓った。
「えいっ。……うふふ、今日は楽しみましょうね、提督♪」
そんな事を考えている間に、着直してきてくれたのであろう、榛名が僕の腕に抱きついた。
うっ……やっぱり、パーカーを着ていても―――
「―――うん、これで、よしっと」
良い感じに準備できたね、うん。
「ふふ、お疲れ様でした。……榛名にも、お手伝いさせて下さっても―――」
「いやいや。いつもお世話になってるんだし、これぐらいの事は任せてよ」
作業自体も、パラソル刺して、椅子置いてぐらいだし……大したことは無かったからね。
「そんな……榛名には―――」
「待った。それだと終わらなくなっちゃうから、お互い様って事にしない?」
「―――!……ありがとうございます、提督♡」
ううっ、本当に健気で良い子だ。つくづく、僕には勿体ないと思うよ。うん。
……僕が頑張る事で、少しは恩返し出来ていればいいんだけど。
「それじゃあ榛名、何しようか?」
「はい!そうですね……」
うんうん、と口元に手を当て、可愛らしく唸る榛名。
何とも微笑ましい光景だなぁ……
悩む事十数秒。
「やっぱり、せっかく海に来たんですから、取り敢えず海に入ってみましょう!」
そんな『取り敢えずビール!』みたいなノリで良いのだろうか。良いか。
「そうと決まればっ、いざ―――あっ!」
「―――もしかして、日焼け止め?」
「そうですっ!」
すっかり忘れてました、と榛名。
「私の考えている事が見抜けるなんてっ……榛名、感激です!」
「あ、あはは……」
そんな大層なもんじゃないんです……
なんだか騙しているようで申し訳なくなる。いや、騙してるようなものか。
ごめんね、榛名。
そんな事を考えているとは露とも思っていないんだろう。
榛名は変わらぬ笑顔で―――
「それでは提督、いつものように塗っていただけますか?」
「へっ?」
予想外の言葉に、思わず変な声が出てしまった。恥ずかしい。
「……て、提督?」
しかし、当の本人はどこもおかしなところに気付いていないようで。
寧ろ、『その反応は何?』と言わんばかりに首をかしげている。
……あ、あれ?もしかして、おかしいのは僕だったのか―――
「……はっ!」
あっ、気付いたみたい。
「ぁぁあのですねっ!今のは違うと言いますかっ、えっと、その―――」
だ、だよね!あー良かった。……いや待て、全然良くない。
「お、落ち着いて榛名!ちょっとびっくりしただけだから―――!」
これなんてデジャヴ?
「それで、なんであんな事を……?」
「ええっと、ですね……」
「私、お姉様方や霧島と海水浴に来る時、日焼け止めはお互いに塗りあっているので……」
その時の勢いで、つい言ってしまったというところか。
……その状況に、出くわしてみたいような、そうでもないような。
「うぅぅ……でもでも……」
僕としてはよく分かったんだけど―――
榛名はまだ、何か思うところがあるのか、小声で何か呟いている。
暫くして。
「やっぱり、お願いしてもいいですか……?」
「はっ!?」
また変な声が出てしまった。
「ど、どうして、かな……?」
「えっと……自分ですると、塗り残しができちゃいそうですし……」
「……」
「あ、あとっ!背中とか、ちょっと届かないところとかありそうですし……」
「う……」
「うぅ……そんなに、榛名に触れるのは、嫌ですか……?」
「!……分かった、やるよ……別に、触るのは嫌じゃないし、ね」
傷つけてしまわないか、とか色々思うところがあるだけで。
そう伝えると。
「やったっ!提督、ありがとうございます!」
とても嬉しそうにそう言うものだから。
そこまで深く悩む事もないのかも、と思った。
「えへへっ。それじゃあ、お願いしますねっ」
ビーチチェアにうつ伏せで横たわる榛名。
なんとも、絵になるというか……
気を取り直して。
「じゃ、じゃあ……いくよ?」
「ふふ。……優しく、してくださいね?」
手に日焼け止めを乗せ、そっと背中に触れる。
「ひゃっ」
「!……ごめん、冷たかったかな?」
「い、いえっ!榛名は、大丈夫ですっ」
「そ、そう……?」
「―――あっ…………あんっ……」
「…………んんっ………ふぅっ…………」
「………ひぁっ…………ふぁぁぁっ……♡」
……日焼け止めを塗っているだけなのに、何故そんな艶めかしい声を上げるのか。
……なんだか、変な気分になってしまう。
「……ねぇ、榛名っ?大丈夫?」
「ひんっ!?……あっ♡……提督ぅ……?」
「ほんとに大丈夫なのっ!?」
「あんっ♡……はるなはぁ……だいじょぶれすよぉ……?」
「えへへぇ……提督ぅ、とってもお上手でしたぁ……♡」
「お、おう」
「お上手なのれぇ……このままぁ……前もお願いしてもい―――」
「流石に前は自分でやって欲しいなっ!?」
そこまで僕がやるのは、ちょっとまずい気がする。
「ちょ、ちょっとトイレ行ってくるから!」
身の危険を感じ、この場から離れることにした。
「あっ……♡……提督の、いくじなしぃ……」
気を取り直して、小休止から戻った僕は、榛名と束の間の夏休みを満喫する事にした。
例えば、ビーチバレー(っぽいもの?)。
二人でやるには無理がないか、と言ってはみたのだが。
「やっぱり、浜辺でやるものと言えば、ビーチバレーではないでしょうか!」
キラキラした目で訴えかけられたので、無碍にも出来ず。
……まぁ、断る理由もないし。
彼女が楽しめるのなら、それもいいか、と思った。
そんな彼女が、どこからか取り出したのは、ビニール製の小さ目なボール。
「提督、行きますよ!……それっ!」
元気な声と共に、高々と投げ上げて―――
ばんっ。
「……榛名は強いなぁ……」
「あっ、えとっ…………榛名、張り切り過ぎました……」
耳まで真っ赤に染めて、縮こまる彼女の傍らには、すっかりしぼんでしまったボールが。
……なんと声をかけようか。
例えば、泳ぎの練習。
「―――泳げない?」
「はい……お恥ずかしながら……」
普段、海で活動しているのだから―――と言いかけて。
そう言えば、彼女たちが海上を移動する時は、水面を滑るように―――艤装によるものなのだが―――して行くのを思い出し、泳ぎの上手下手は関係ない、という当然のことに気が付いた。
潜水艦の子たちのように潜ることもないため、尚更度外視されるものだろう。
実際、僕は考えた事もなかった。
彼女曰く。
万が一、艤装が外れてしまった時、パニックにならないようにするため―――だそうだ。
という訳で。
「うぅっ、やっぱり、ちょっと怖いですっ……」
ゴーグルを装備した榛名。
ちょっと珍しい姿だ。
「手を握ってあげるから、取り敢えず水に顔をつけてみようか?」
どのくらい泳げないのか、まずは様子を見てみる事に。
流石に、泳ぎもしなければ大丈夫だろう。
寧ろ怒られるかな、と思ったのだが。
「……榛名、参りますっ」
そんな大袈裟な。
彼女は思い切り息を吸い込むと、
ばちゃんっ。
豪快に顔を水面に打ち付ける。
ぶくぶく。
大丈夫なのだろうか……
そう思った数秒後。
ざばんっ。
「ぷはっ!」
むにゅっ。
「や、やっぱり榛名には無理ですぅっ!?」
……やはりか。ちょっと予想はしていた。
涙目で僕に必死にしがみつく榛名を、その柔らかい感触に悩まされながら、慰めるのだった。
例えば、買い食い。
泳ぎの練習はまた後程。プールでやろう、という結論で落ち着いた。あちらの方が波も比較的穏やかだし。
激しい運動をしたせいか―――と言っても榛名だけなのだが―――
「次は何をしましょうか、提督っ?」
「うーん、そうだな……」
くぅぅぅ……
「っ?!…………」
腹の虫が可愛らしく鳴いた。
僕ではないし、きっと(というか絶対)彼女から、なのだろうけど……
耳まで赤くなっているあたり、とても恥ずかしいと思っているはずだ。
それもそうか。上司に、それも異性に聞かれるのは誰でも恥ずかしい。
……よし、ここはひとつ―――
「あーお腹が空いたなー」
「?……どうなさったのですか?」
我ながら酷い棒読みである。
榛名が困惑するのも納得だな。……はぁ。
「んんっ。という訳でだ、榛名くん。お昼にしないか?」
「え、えぇ。榛名もお供しますっ!」
おかしなテンションで押し切ってしまったが、無事に昼食へ誘うことに成功。
……珍しく察しが良いからお気づきの方もいるだろう。
一連のやり取り、大体熊野女史の教えに因るものである。
本当に、熊野様々だ……彼女には頭が上がらない。
という話も決して口外してはならない、と口を酸っぱくして言い付けられているため、榛名には内緒だ。
しかし、慣れないことはしない方が良いなあ……まだ、顔が熱い。
彼女にバレていなければいいのだが
「あっちに海の家が並んでいるのが見えたんだ、行こう!」
そう言って、私の手を引いてくださる提督。
その顔は、珍しく紅潮していて。
先程も、いつもはなさらないような言動でしたし……
まさか体調を崩されて―――とも考えましたが。
……いつからおかしくなったか、省みればすぐに分かりました。
「……ありがとうございます、提督っ♡」
「ん、賑やかだから聞き取れなかったけど……何か言ったかい?」
「いいえ、なんでもありません!……さ、行きましょう?売り切れてしまうかもしれません!」
「そうだね、急ごうか!」
「はい!」
榛名はとっても、果報者ですっ!
「いやー、遊び倒したね……」
もう陽が暮れる。
こんな時間まで遊んでいたなんて……
正直、現役軍人でなければ倒れていたかもしれない。
「はい、榛名もヘトヘトです……」
「ふふ、まだここから帰り道が残ってるんだけどな?」
「ううっ、提督は意地悪ですぅ……」
あとで帰りに誰かを呼ぼう。流石に疲れた。
「……楽しかったかい?」
「……はいっ」
「……またいつか、必ず来よう―――」
「……はいっ!」
「
「……むぅ」
「あ、あれ?何か間違った?」
「いーえっ。……冗談でも、
「えっ、なんだって?」
「なんでもありませんっ!意地悪な提督には教えませんからっ!」
「そんなー!?」
結局この問答は、陽が落ちかけ、迎えが来るまで続いたのだった。
何を言ったか教えてもらえるのは、もう少し先のこと―――
という訳で、今回は榛名でした。めちゃめちゃ可愛い。
艦これを始めた理由も、この子を広告で見かけたからなんです。
よく腹黒属性を付けられがちですが、榛名はガチであんな性格してて欲しい。
まぁ、腹黒でも別に問題はありませんが。可愛いは正義です。
待望の水着ですよ、水着!とっても嬉しかったです。
榛名っぽくて良くないですか、白。
贅沢は言わないから、榛名と付き合いたかった……
とかいう贅沢。
4/18追記
ラノベやss(学園モノ)によくあるイメージの海水浴。
ラストは夕陽をバックに語り合う……そんな印象が私にはあるのですが、
昼前からそんな時間までいたら体力が持たないよ?
とか考えながら書いていました。ちなみに私は途中で干からびます。
ラノベ主人公には人並み以上の体力が必要。あとコミュ力も。
そう考えると、案外主人公やるのは大変そうです。
やれやれ系が多いのも、実は本当に疲れているからなのかも。
というよく分からない後書きでごめんなさい。
時間空いたのに付け足しただけでごめんなさい。
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提督と熊野と鈴谷
「提督、紅茶を淹れましたわ。ご一緒にいかがかしら?」
「ありがとう、熊野。いただくよ」
ティーカップを受け取り、一口飲んでみる。
うん、やっぱり熊野の淹れてくれる紅茶はおいしいなぁ。
やっぱりコーヒーも良いけど、紅茶もいいよなぁ……最近飲んでいなかったせいか、余計にそう感じる。
深夜まで仕事が残ってしまった時とかは、よくコーヒーのお世話になってしまうのだ。
今度、また金剛型のお茶会に参加させてもらおうかな。
……以前参加した時は、しきりにお菓子を勧めてもらったり、みんなやたらと近くて(いろんな意味で)、寧ろ困惑したっけ。
まぁ、嫌ではなかったけど。
……でも、何故かみんなちょっと怖くて―――
そんな僕の様子を見てか、熊野が。
「……提督?今は私たちだけしか居ないのですから―――」
言いかけて、彼女は間合いを詰めてくる。
そして。
「―――他の女の事を考えるのは、いささか無粋、というものですわよ?」
耳元で、そう囁いた。
「ごめん。この間、熊野に教わったばかりなのに……」
艦娘―――というか女性との接し方に自信がなかった僕。
どうにかしようと悩んだ挙句、「割と好意的に接してくれて、他の艦娘ともつながりの多い子」を探す事にした。
―――できる限りハードルの低そうな子と接点を作り、あわよくば女性について教えてもらいながら、輪を広げてゆく―――
我ながら酷い話だ。
勿論、自分でも、そんな都合のいい子がいる訳ないと思っていたのだが……
何はともあれ。それが、今の熊野との繋がりの始まりだ。
今でも、暇を見つけては色々教わっているのだった。
「まったく…ほんっとうに乙女心の分からない方、ですわね」
ぐさっ。
「しかも、一度ならず二度までも……いえ、それ以上にお話しましたわよね?」
ぐさぐさっ。
「…まあ、提督はそういう機微に疎い方だ、というのは私もよく承知しているけれど―――」
「…もう、この辺で許してください…」
「…ふふっ、あははははっ」
何が面白かったというのか、いきなり笑い出す熊野。思わず惚けてしまった。
箸が転げてもおかしい年頃、とはよく言うが―――
彼女たちの事は、まだまだ分からない事だらけだ。
「…ふふ、失礼致しました、私としたことが……」
「……いや、面白かったならいいさ」
熊野さんが楽しそうで何よりです。
「……けれど。こうして、頼って下さる事。私は嬉しいんですのよ?……」
「……?熊野、何か言った?」
何か聞こえたような気がしたので、尋ねてみたものの。
「ひゃあっ!?提督っ、驚かさないでくださいましっ!」
理不尽だ。
-------------------------------
すると、そこに。
「ちょちょちょーい!何二人で楽しそうに遊んでんのっ!」
突然大きな横槍が入った。ん―――
「あら鈴谷、いらしたのね」
…しまった、彼女の存在をすっかり失念していた。
見れば、少し書類も片付けてくれていたようで。…後で、何かお礼を考えるべきだろうか。
「むかっ!知ってたでしょ!」
「勿論。私、貴女の事を忘れるはずなどありませんもの」
本当にごめんなさい。
「っ……まーたそうやって!……さっきだって、まるで二人っきりみたいに―――」
「あら、
「む、むぅ……」
「ふふ。……お戯れが過ぎましたわね。貴女の分のお茶も淹れましたから、こちらへいらっしゃいな」
「わーい!休憩だー!」
「貴女をいじるのが楽しくて……失礼しましたわ」
「あはっ!熊野も素直じゃないねぇ?」
二人の間だからこその軽口なのだろう、とても楽しげだ。
仲が良さそうで何より。
-------------------------------
……そんなこんなで、流れで休憩することにした、のだが……
「んっ……うーん!やっぱり熊野の淹れる紅茶は美味しいねぇ、提督?」
鈴谷がいきなり、お茶請けを片手に、僕に擦り寄って来て―――
「うわっ……鈴谷、抱きつくのは…」
僕の左腕に絡みつくように抱きついてきた。
「鈴谷!そのようなはしたない事は止めなさいといつも言っているでしょう!」
「ふっふーん!まあいいじゃーん?減るもんじゃないんだしー」
あまつさえ頬擦りまで始めた。僕の匂いも嗅いでいるようだ。…臭く、ないだろうか。
恥ずかしさで、変な事を気にしてしまう。
「だからと言ってやって良い訳ないでしょう!……それに、羨ましいですわっ……」
熊野の叱責をも華麗にスルーする鈴谷。ギャグではない。
しかし、このままでは僕にもいろいろ問題が…
というのも―――
ふよん。
「その、ね?……当たってる、からさ…」
「ほほぅ…提督、照れてますなー?」
ニヤニヤ、と意地悪く笑う鈴谷。
先程よりも、より近く。
ぽよぽよ。
「うっ、ち、違っ……」
「あっはっはー、当ててんのよー?」
ぽよんぽよん。ふよふよ。
「鈴谷、いい加減に提督から離れなさいな!」
話を聞いてあげて鈴谷!
熊野の顔がすごい事になってるから!
心の中で叫ぶも、当然聞こえるはずもなく。自らに度胸がないのが恨めしい。
しかし、このままでは色々と大変な事になってしまうので、熊野の援護を行う。
「けど、こういう事をする相手は見極めなきゃダメだぞ、鈴谷?」
一度、男の怖さを教える必要がある。例え、彼女に嫌われようとも―――
「だいじょぶだよー提督、鈴谷、その辺はちゃんと―――」
「じゃないと―――」
「ふぇっ!?ちょ、提督!?」
鈴谷の話を遮り、無理矢理彼女を抱え上げ―――所謂、お姫様だっこというやつだ―――仮眠用のベッドへ向かう。
「こうやって―――」
「あっ……♡」
少々乱雑ではあるが、ベッドの上に彼女を横たわらせ、身動き出来ないようにその上に跨る。
そして、顔を寄せて―――
「襲われちゃうかもしれないんだから―――」
そっと、耳打ちした。
「……えへっ、いーよぉ?提督…♡……鈴谷とぉ、ナニ、するぅ……?」
「気を付けないと―――って鈴谷っ!?」
―――のは逆効果だったようだ。
……どうやら、何かスイッチを入れてしまったようだ。
口はだらしなく緩み、目も心なしか垂れている。
「ご、ごめん、すぐ離れるね―――」
やりすぎてしまった。そう思って、すぐに離れて彼女に謝罪しようと―――
むにゅ。
「きゃっ!?」
慌てていたのが災いしたか、彼女の胸を思い切り掴んでしまった。
その事に気づき、益々パニックに陥る僕。
ぎゅむっぎゅむっ。
「あんっ…♡」
何故かそのまま胸を揉みしだく大失態。なにやってんだ僕!?
きっと怒られるだろう。
ビンタの一発はもらう事を覚悟したのだが……
「……もぉ…♡どこ触ってんのよぅ……提督のえっち…♡」
囁くような声で、そう言った。その顔は、恥ずかしがりながらも、どこか嬉しそうだ。
どうしてこうなった。
「あ、あはっ、あはははは…」
予想外の反応に、戸惑いと違和感を覚えた僕は、鈴谷と距離を取ろうとした。
しかし。
「えーっと、鈴谷?……鈴谷さーん…?」
一歩後ろに下がる度、彼女は四つん這いでにじり寄ってくる。こわい。
「なんで鈴谷から離れようとすんのよぅ……やっと提督から襲ってくれたのにー」
不本意だ。そんなつもりは全くなかったというのに。……それに―――
「なんでちょっと嬉しそうなのっ!?…ちょ、誰か―――」
助けを求めよう。しかし、そうは思っても、ここは執務室。
都合良く、近くに人は居ない―――
「そうだ、熊野は―――」
何故忘れていたのか。僕には最後の希望、救世主熊野がいるではないか。
この状況を見れば、きっと彼女は止めてくれるはずっ……
期待をこめて、熊野の方を振り向いた。
「あわわわわわわていとくとすずやがががががぶがぶくぶくぶく」
しかし、現実は非情であった。
「熊野ーっ!?」
あっ、泡吹いて倒れた。
ずっと同じ空間にいたのだ、もっと早くから動くに決まっている。……しかしそれは、動けるならば、の話だ。
それに、割と最初から話に入ってこなくなっていた事を考えれば、何かあったと考えるのは当然……
冷静に考えるのが遅すぎた。後悔しても意味などないが。
そこに。
「ひっ!?」
しまった、悠長に考えている暇などなかった。不意に足を引っ張られる感覚が。
そのまま尻を打つ。
「ふふっ、てーとく、つーかまえたぁ…♡」
どうやら、鈴谷が僕を引きずり倒したようだ。
気付かなかったが、いつの間にか壁際に追いやられていた。
鈴谷の顔が近づいて来る。
「す、鈴谷!からかった事は謝るから―――」
「怯えた顔も可愛いなぁ……♡
「ぜぇーたいっ、逃がさないんだからねぇ?」
-------------------------------
-------------------------------
「危なかったですわね、提督……」
「ああ……助かったよ、熊野……」
「えーんっ、いったーいっ!」
結局、鈴谷のなすがままになり、最後の一線を超えよう―――
としたところで、タイミング良く復活した熊野が割って入った。
……おかげで無事に収まった。
「ですが、提督も提督ですのよ?」
あれこれ思案していると、件の彼女に咎められた。
「うっ、反省してます……」
言い訳が許されるならば、あんな事になるとは思わなかった。
軽率な行動は慎むべきだと。
「……ここに居る艦娘に、あんな事なさったらどなただって―――」
…何故かこのまま熊野の話を聞くのはまずいと思ったので、鈴谷に話しかける。
「……鈴谷も、ごめんな?」
その後はどうであれ、きっかけは僕だった訳だし…
「……気にしなくていいよー、提督……こっちこそ、ごめんなさい」
いつになく、しおらしくしている鈴谷。
らしくないが、余程熊野のお説教がこたえたのだろうか。
「…まあ、今度から控えめにしてくれればいいよ」
…好かれているというのは伝わってきたから、止めはしない。
どういう形であれ、嬉しいものだから。
「……ありがと」
「さっ、もういい時間だし、気分転換に食事にでも行こう?」
「……ええ!」
「……うんっ」
「まったく、提督は優しすぎますわ!……そこが、好かれるところなのでしょうけれど……」
「……別に、相手を選んでない訳じゃ、ないんだよ…?提督……」
「どうしたの、二人ともー!早く行こうよー!」
「焦らせないでくださいな!今参りますわっ!」
「あっ、提督!熊野!待ってよー!」
-------------------------------
「えいっ!えっへへー、提督の左は鈴谷がいただいたっ!」
「ちょ、鈴谷っ!?さっき言ったばっかでしょ―――」
「では、わ、私も……とおおおおうっ!」
「えっ、熊野もっ!?…二人とも待って!あっ歩きづら」
「だ、誰か!誰か助けてぇぇぇっ!?」
どうも皆様、初めまして。または、お久しぶりです。
私のことは見覚えのない方が大多数だと思いますが、実は以前から書いていました。
こんな感じで軽い雰囲気なアレなので(?)、どうぞ頭を空っぽにして読んでください。
以下、個人的な彼女たちのイメージ。
くまのんとすずやんは、お互いに皮肉の効いた軽口を言い合っていそうな感があります。
この作品でそれが伝わっているかは甚だ疑問ではありますが。
あとすずやんは男に対して普段挑発的な態度なのに、ほんとは耐性皆無なイメージも。
顔真っ赤にして照れてくれると最高です(
くまのんは態度と中身が一致していそうです。心を許すととたんにデレデレしてくれたらいいなあ(という願望)。
そんな煩悩まみれの通常運行です。
これからも生暖かい目で読んで下さると嬉しいです。
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*提督と阿賀野
苦手な方はご注意を。
ある日の夜。
「―――よし、僕も戻ろうかな……あれ」
今日の業務も無事に終わったし、あとは寝るだけか。
部屋に戻ることにしよう。……まずはこれを片付けて―――
さて。忘れ物は無いだろうか―――と、執務室を眺める。
「―――ん?」
ここで、部屋の一か所に、少し違和感を覚えた。
僕の執務机よりも一回り程小さめな、秘書艦用の机。
終業後の今、何も置かれていないはずのそこに、一冊のノートが。
「『ていとくにっし』…?…あっ、もしかして阿賀野かな」
それを手に取り、思い出すのは、今日の夕方の事―――
「―――失礼します。……阿賀野姉ぇ、お仕事ちゃんとやってた?」
「入って来ていきなりぃ!?ほんとに失礼ねっ!」
ほんとかな、と姉に向かってジト目を向けているのは能代。
そんな妹の言葉に、心底驚いた顔をしているのは阿賀野。本日、秘書艦を任せている。
彼女は大きなショックを受け、放心しかかっていたが、持ち直して一言。
「これでも阿賀野、提督さんのお手伝いはしっかりやったんだから!ね、提督さん?」
きらり~んっ!と能代にVサインを見せつけつつ、僕に同意を求めた。
……実は、かなり余裕だったりするのか。
そんな姉をスルーしている能代も、どうなんですか、と言わんばかりにこちらを見てくる。
取り敢えず、ありのままに答える事にしようか。
「能代、心配しなくても大丈夫だよ?」
変わらず、訝しげにこちらを見る能代を尻目に、僕は言葉を続けようとする。
……ところで。この反応は、僕も信用されていなかったりするのだろうか。
「今日は仕事量が多かったけど、手伝ってもらって、僕としても助かったんだ」
決して阿賀野に助け舟を出した訳ではない。……意地悪したい訳でもないけれど。
事実、今日の阿賀野はよく頑張ってくれていたと思うから。
「ふふーん!」
そんな事とは露知らず。
僕の答えに満足したのか、阿賀野は胸を張ってドヤ顔を決める。
一方能代はというと。
「まったく……大して誇れることじゃないよ、阿賀野姉。みんな当然やってる事です!」
呆れかえったように、そう言った。
……是非、夜戦が大好きなあの軽巡や、昼寝が大好きなあの重巡に言って聞かせてやってほしい。
「ぐぬぬ……えーんっ、提督さーん!能代がいじめてくるよー!」
能代の厳しい返しに、とうとう答えに窮した阿賀野。
何故か、僕に抱きついてきた。
「ぐえっ…阿賀野、ちょっと離れて……」
「ちょっ、阿賀野姉!」
僕は座っている状態だから、阿賀野に立って抱きつかれると、その……
く、苦しい……主にその大きな―――
「きゃー!」
能代の手により、無事に引きはがされました。
「ほんとにもう……」
うるさいわよ、と姉を叱りつける妹。……姉の威厳、形無しである。
どちらが姉か、分かったものではない―――
そんなちょっと失礼な事を考えていると。
「―――っと、こほんっ」
能代が一つ、咳払いをした。
どうやら、ここへ来た本来の目的を思い出したようだ。
「それでは提督、阿賀野姉を連れて行ってもよろしいでしょうか」
連れていくというのはおそらく、食堂に、だろう。
仲の良い艦娘や同型の娘同士で
もう、世間一般では夕食の時間だし、こういった事は他の艦娘と居る時もよくあるからだ。
「うん、問題ないよ」
「提督さんはまだお仕事なのー?」
「あとちょっとで終わるし、気にしなくていいよ?行っておいで」
ちょっと、って程じゃないのは、内緒。
ほんの少しの、僕の見栄である。
「ふふ。……いつもありがと、提督さんっ」
そんな僕の思考を知ってか知らずか―――阿賀野は僕に、そっと耳打ちをした。
……いつもは少し抜けているようだけど、やはりお姉ちゃん。
どこか鋭く、聡いところがあるように感じるのは、僕にやましいところがあるから?
「じゃあ、一足先に失礼します!」
「ああっ、阿賀野姉ぇ……」
いつも通り、明るく部屋を出ていく阿賀野と、彼女にまだ言いたい事がありそうな様子の能代。
はぁ、とため息をひとつ吐き、
「……提督。お疲れのところ、お騒がせしてすみません……」
本当に申し訳なさそうに謝る能代。
「楽しくていいじゃないか。……あまり気にしすぎちゃダメだよ?」
どんな事でも、やり過ぎは良くないと思う。そう伝えると。
「ですがっ……いえ。……それでは、提督もご無理をなさらないでくださいね?」
「……そんなに信用ない?」
内心察してはいたが、ちょっとショック。阿賀野の気持ちも、少し分かった気がする。
……もうちょっと、優しくしてあげなければ。
しかし。
「いえっ、違います!……提督がもし倒れてしまったら、心配する艦娘はたくさんいるんですっ」
彼女は顔を少し赤らめて。
「それでっ……私も、きっと心配するので……そのっ、お体を大切になさってください!」
言葉に詰まりながら、そう伝えてくれたので。
「―――ありがとう、能代」
思わず涙が出そうになった。
……僕の頑張りも、無駄ではないという事なのか。
「っ……それでは、私もお先に失礼します…………あっ、阿賀野姉ぇ!待ってよー!」
しかし。恥ずかしくなって、その場に居られなくなったのだろうか。
逃げるように、執務室を出て行った。
そんなやりとりと一緒に、このノートについて、本人に直接聞いた時の事も思い出した。
「ああ…これ、ですか?……んっふっふ……これはねぇ、『ていとくにっし』です!」
「何が書いてあるの、って?………ふふ、秘密でーす。―――えぇー、どうしてもって言われても―――」
「ふふっ……」
結局、あの時は答えてもらえなかったが。
……少しは仲良くなった―――と勝手に思っているだけだが―――今なら、教えてもらえるのかな。
「さて、届けに行こう―――」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「阿賀野ー、居るー?」
彼女たちの部屋の扉をノックをして、暫し待つ。
「んっ…あれ、提督さん?」
程なくして、阿賀野が出てきた。
「いや、ちょっと忘れ物を届けに。……ところで阿賀野」
「?……なあに、提督さん」
「能代は居ないの?」
「っ……ああ、えっとね、能代は今お風呂に入ってるよ。……なんで?」
「あははっ、特に意味はないんだけどね、気になったから。……おっと、忘れるところだった―――」
「―――はい。これ、阿賀野のだよね?執務室の机の上に置いてあったんだ」
「あー!ありがとう、提督さん!今探してたんだけど、見つからなかったんだよねぇ~…………っ!」
「なら良かった。…じゃ、僕はこれで―――」
「ちょっと待って」
「……ねぇ、提督さん」
「?……どうしたの、阿賀野」
「正直に答えてね?」
「な、何?いきなりどう―――」
「いいから」
「っ!?」
「提督さん。これ、読んだ?」
「……いや、読んでないよ」
「ほんとに?」
「そんなところで嘘ついてどうするのさ……」
「……」
「どうしたの、阿賀野。…何か、様子が変だよ?」
「……ふふっ」
「…………あははっ」
「あはははははははははっ!」
「っ!?」
「……あはっ、冗談です、提督さん。……もぉ、そんなに怖がらなくてもいいじゃない」
「!……まったく、脅かさないでくれよ……いつもの様子と違うから、何かあったのかと思ったよ」
「ふふっ。……阿賀野、もしかして演技派かしら?」
「そうかもね。…じゃあ、今度こそ。お休み、阿賀野」
「提督さんも、夜遅くまでお疲れ様。お休みなさーいっ」
「ふぅ……」
今の反応は、ほんとに読んでなさそうね。良かった良かった。
「……」
これをあの人に読まれたら恥ずかしいものね。
「さて、今日の日誌をつけましょうっと♪」
かきかき。
「……ふんふんふふ~ん♪……」
ごしごし。
……
「いよーっし!できたぁ!」
「にへへへへ……はっ」
思わず声まで出してにやけてしまった。いけないいけない。
……そうだっ。能代も居ない事だし、せっかくだから―――
「えへへっ、提督さぁん……♡」
彼と私の愛の結晶を、読み直す事にしましょうか。
「……ん、帰って来たみたいね」
「おかえり、能代。……ん、どうしたの?」
「へえ……提督さんにねぇ……」
「良かったじゃない、能代」
「ふふっ。……能代、提督さんの事大好きだもんねー?」
「違うって?……もー、素直じゃないんだから……一体誰に似たのやら……」
「まったく……そんなに否定するなら―――」
「―――提督さん、盗っちゃうよ?いいの?」
「……でしょ?」
「……大丈夫よ、能代には魅力がたっぷりあるもの。お姉ちゃんが保証しますっ」
「……」
「……あ、そうだ。ねぇ、能代―――」
それから数日後。
「てーとくさんっ、こーんにちはっ!」
「ん?……阿賀野か。こんにちは」
「提督さんに会いたくて来ちゃった~」
「あはは……ありがとね。でも、あんまり頻繁にやっちゃダメだよ?僕が遊んでいると示しがつかないし―――」
「えぇ~っ!たまには提督さんもお休みしないと~」
「なにより、君が来るとお休みできないから言ってるのさ」
「んもー、提督さんってばひどーい」
「あははっ……ところで。今日は能代と一緒じゃないんだね」
「提督さん、忘れちゃったの?―――
―――今日は能代、朝から遠征に出てるでしょ?」
「あれ……そうだったっけ」
「提督さん、もしかしてお疲れ?」
「かもしれないね……きちんと艦隊を把握できてないのはまずい。しかも自分で指揮しておいて……」
「いつも働きっぱなしだからだよっ?しっかり休まないと!」
「そうだね……暫く大きな作戦もないだろうし、皆でまとまった休みを取ろうか」
「やったー!……でも提督さん、お休みしてない訳じゃないんだよね?」
「うん……ちゃんと寝てるし、食事も摂ってる」
「何か心配事とかあるのかな?だから休んだ気にならないんじゃない?」
「……心当たりはあるんだよね」
「なになに、聞かせて?」
「う……でもなぁ……」
「こういう時こそ、お姉ちゃんの出番ですっ!……話してみたら、きっと軽くなるはずだよ?」
「……ありがとう。それでね、その心当たりっていうのは―――
―――最近、一人でいる時、常に誰かに見られている気がするんだ」
「!……それって」
「ストーカー、なのかな。僕なんか監視したって、良い事ないのに。……まぁ、多分気のせい―――」
「そんな事ない!提督さんは優しいし、かっこいいし、良いとこたっくさんあるんだよっ?」
「……」
「それに、みんなで頑張って戦果もいっぱい上げてるから、他の誰かが良く思ってなくてもおかしくない―――」
「ありがとう、阿賀野。そこまで言ってくれて、嬉しいよ」
「っ……」
「自分と同じ考えの人たちだけじゃないから、僕の事を良く思っていない人だってきっといる。……それでも、身内だけは、疑いたくないな」
「!……ごめんなさい」
「ううん、気にする事ないよ。……それに」
「?」
「阿賀野に聞いてもらったら、本当に心が軽くなった気がするよ」
「……!……うふふっ!」
「話に付き合ってもらってありがとう、阿賀野」
「いえいえっ!……ところで提督さん、
「あはは、ばれたか」
「もー、提督さんってばー!」
というお話。今回は阿賀野ちゃんでした。
普通の阿賀野ちゃんを期待してたの!という方には申し訳ない。
でも「提督日誌」なんて……ねぇ?(責任転嫁)
絶対提督さん見張られてるじゃないですかやだー!
いやほんとに好きなんですよ?
長女だからしっかりしてそう……と見せかけて実はそうでもない!みたいなとことか庇護欲(?)そそられていいです!
何言ってんだこいつ。
最後に彼が言っていた、「ストーカー」の正体とは。
途中でフェードアウトしてしまった能代の行方は。
とか色々投げっぱなしですが多分拾いません。
皆様のご想像にお任せしますというやつですね。
後者はともかく前者は……
鳥海ちゃんじゃないですかね?(すっとぼけ)
ほら、ポンコツ入ってるからー。
能代ちゃんの扱いも不遇な感じなので絶対書くと思います。
あと前々から上がっている天龍田コンビも。
思い出したのでひとつ。
数日前に、書きかけのままだった榛名回の更新(追記)をしております。
気になる方は是非。
いつもと同じくまとまらない後書きも、以上で終わらせたいと思います。
お付き合い感謝です。
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提督と大和
叢雲回より、前のお話。
ある日の夜、執務室にて。
秘書艦にはもう戻ってもらった。
いつまでも束縛する訳にはいかないし、ちょっと頑張れば、一人でも日付が変わらない内に終わるはずだ。……多分。
筆が紙の上を走る音だけが、執務室に響く。
そんな折。
突然、扉を叩く音がした。
こんな時間に、一体誰が―――あぁ。……心当たりが、一人ほど。
求められるがままに、入室を許可する。
一呼吸あって、開いた扉の先には。
女性にしては大柄で、それでいてスタイルの良い彼女―――大和の姿が。
……その瞳には大粒の涙が浮かんでいる。
そのまま、開け放たれた扉の横で、暫く立ち尽くしていたかと思えば、飛びつくようにこちらへ走って来た。
「ふえぇ~ん、やまとは!や~ま~と~はぁ~~~っ!」
そして僕に抱きつくと、その涙は堰を切ったように流れ出した。
この間のある出来事があってから、彼女は時々こうなってしまうのだ。
理由を考えれば仕方がないし、完全に僕の落ち度なんだけど……
大本営での報告会へ参加していた時のこと。
「――それでは、本日はこれにて終了とする」
進行役のその言葉で、部屋の中を満たしていた緊張感はどこへやら。
やっと終わったー、という誰かのぼやきを皮切りに、場内は提督たちの疲労感の滲む声で包まれていく。
流石に声に出さなかったが、僕もそれは例外ではなくて。
そっと、籠っていた肩の力を抜いた。
帰り支度も済んだし、あとはついて来てもらっていた彼女を探すだけ。
会の始まる直前に伝えておいた、待ち合わせ場所に向かう。
辿り着いた。
……ええと、大和は――ああ、もう。
似たようなことを考える者は多いようで、先程まで見ていた顔ぶれの他にも、大勢の人が誰かを待っているようだった。
人混みの中で、長い間待たせるのは良くない。手短に探し出さねば――
――ん、あの背の高い女の子かな。
念のため、手を振ってみる。
やはりそうだった。大和はこちらを認めると、駆け寄って来てくれた。
そして僕の手を取り――
「ごめんなさい……っ!」
「えっ――」
引き摺るように、僕をどこかへと強引に連れて行くのだった。
「ちょっ、ちょっと大和っ!どこへ行くの?」
「っ……」
求めても、答えを返してくれない大和。
手を振りほどくのは、どうにも難しい。
軍人として情けない話だが、僕より彼女の方が筋力もあり、背も高い。
下手に抵抗しようものなら、バランスを崩して転倒、なんてことになりかねない。
だから――
心の中で、誰に聞かせる訳でもない言い訳を並べながら、走る大和の為すがままになっている。
べ、別に本気で手が振りほどけない訳じゃないんだからねっ!
……か、勘違い……しないでぇ……。
「―—ぶふっ」
情けないことを言っていたら、いつの間にか前を走っていた彼女は止まっていた。
上は、それに気付かず追突してしまった時に出た、これまた情けない声である。
そして気付けば、全く知らないどこかの路地裏にやってきていた。
「……こんなところまで連れて来て、どうしたの?」
「……」
彼女は、依然として黙っている。
言葉に気を付けて、できるだけそれとなく聞き出すことを心掛ける。
「教えてほしいな。何か伝えたい事がある……違うかな?」
暫くの空白の後、彼女は意を決したように僕に問い掛けた。
「……提督は、大和のことを、どう思っていますか」
「……?」
「ごめんなさい、いきなりで。……でも大和、聞いてしまったんです――」
聞こうとしたわけではなかったが、耳に入ってしまった――という前置きのあと。
『燃費は悪いし、修理費用も重すぎる』
『しかもあの程度の能力ではなあ……』
『正直なところ、割りに合いませんね』
震える声を必死に抑えるように、話してくれた。
「……今まで、そんなこと、言われたことなくて……っ」
「……」
かける言葉が、見つからない。
「て、提督も、そういう目で、大和を見てたのかなって、思っちゃって……っ!」
「……大和」
でも、肩を震わせて、今にも泣き出しそうな彼女の姿は見てられなくて。
「……ずっと、むりをさせていたのかとおもうと、なみだがとまらなくて……!」
「大和っ!」
「も、もうやめ……ひゃうっ!?」
そう思った次の瞬間には、彼女を抱き締めていた。
「うまく伝えられなかったら、ごめん。でも、言わせてほしい」
「……はい」
「……君がいなかったら、勝利を手にすることができなかった戦いは、何回もあった」
「……」
「感謝こそすれ、消費に見合わない働きだと思ったことなんて、一度もない!」
「っ……はいっ」
「だから!……君が、許してくれるなら。これからも、その力を僕たちに貸してくれないか?」
「……やっぱり、途中で投げ出すのは、良くないですよね。それに、あの子にも会えなくなっちゃうもの、ね……」
「……ダメ、かな?」
「いいえっ!……提督にそう言ってもらえて、ちょっと自信が戻りました。ありがとうございますっ」
「……こちらこそ、ありがとう。改めて……よろしくな」
「はい!」
その後も、あの一件を思い出すのだろう、時々僕のもとへ来ては、こうして泣きじゃくるようになって。
そのままズルズルと来てしまい、今に至るのだった。
……正直、彼女は未だあれを克服できていないのだろう。
そうでなければ――
「……ふぅーっ、ふぅーっ、……ぐしゅ、ううっ……」
涙で目を腫らすことなんて、ないはずだから。
思えば、彼女らをまともに褒めたことなんてなかった。
良くて、労いの言葉を1つか2つ、かけるだけ。
感謝の意を伝えたのは、あれが初めてだった。
あれは引き金になっただけにすぎない。
以前から、きっと疑心は持っていたはずだ。
そしてそうなってしまったのは、僕のせい。
どうすればいいのか。
答えは、もう決まっていた。
変えるしかない。今からでは遅いかもしれないけれど。
彼女への償いは、行動で示すしかない。
もう二度と、あんな思いをさせないように。
またもお久しぶりになってしまいました。申し訳ございません。
まだ、彼がペーペーの頃ですね。
この一件で、出世欲のなかった彼は一変。
艦娘に色んな勘違いをされながら、位を上げていった――
という(脳内)設定です。
態度で示そうよ、にも限度がありますよね、というお話。
泣き止まない大柄な女性を慰めたかった、という煩悩からスタートしたはずだったのに、どうしてこうなってしまったのか。
しかもその部分少ないし!どうなってるの!?
あと大和ちゃんに心無い暴言をぶつけてごめんなさい。
最終兵器として、うちでも戦っていただいて……
感謝です。来てくれて良かった。
迷走しておりますが、何卒生暖かい目で……
個人的に大和ちゃんはルックスよりも幼いイメージなのですが、皆さまはどうでしょうか。
なぜそんな風に思ってしまうのだろうか。声ですかね?
新生活が始まり、やりたいこと、やらなければいけないことがいっぱいです。
おかげで更新ペースが酷いことになってしまいました。
時間を探しているのはいるのですが……
忘れられない程度に頑張ります。
感想戴けるともっと頑張れます。現金なやつですね。
指摘なども大歓迎でございますよ。
今回もここまでとさせていただきます。失礼します。
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