この世界 (シャト6)
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1話

『何でお前は、あいつと違ってこんな事も出来ないんだ!!』

 

『我が一族の恥さらしだ!!』

 

『お止め下さい!!ーー様は一生懸命なさっています!!』

 

『うるさい!!出ていけ!!貴様もクビだ!!!』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

目が覚めると、知っている部屋だった。

 

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ。またあの夢か」

 

「大丈夫ですか?」

 

横から声を掛けられる。

 

「・・・大丈夫だ。少し夢見が悪かっただけだ。心配かけたな・・・リーラ」

 

リーラと呼ばれる女性。

 

拓哉(リーラ達だけが俺についてきてくれたんだよな)

 

リーラ「いえ・・・私共は、いつでも拓哉様の味方でございます。どんな事がありましても」

 

そう言いながら、二人はキスをする。そしてリーラは先に出ていく。拓哉もベッドから出て服に着替えリビングに向かった。

 

「おはようございます」

 

拓哉「おはよう森さん」

 

俺はキッチンにいる森さんに挨拶する。

 

森「本日の朝食です」

 

目の前には、これぞ日本人の朝食という和食が用意された。ご飯に味噌汁、焼き鮭、卵焼き、納豆である。

 

拓哉「それじゃあ、この世の全ての食材に感謝を込めて、いただきます」

 

食材に感謝を込めて食べる。いつもの事ながら、美味しい朝食であった。食べ終わると、森さんがお茶を出してくれる。

 

森園生「どうぞ拓哉さん」

 

拓哉「ありがとう森さん」

 

俺は森さんにお礼を言い、出されたお茶を飲み一息つく。

 

「拓哉様、そろそろお時間です」

 

拓哉「もうそんな時間か。なら、準備するか」

 

俺は部屋に戻り制服に着替える。上着の内側には拳銃を隠し、そして刀を3本横にさす。刀の名前は【霊剣荒鷹】【斬鉄剣】【三代鬼徹】である。準備が出来たので出発する。えっ?刀なんか持ってたら捕まるって?悪いがそれはない。俺の家・・・ま~、じいちゃんとばあちゃんは、日本の総理大臣や天皇陛下よりも上の存在なんだ。けど・・・噂に聞けば、あのアメリカの大頭領より上ってリーラが言ってた気が・・・ま~、そんな訳で、俺は堂々と持ち歩けるって訳だ。もし仮に警察などが来ても安心だ。すると、部屋の扉がノックされる。

 

「拓哉様、お車の準備が出来ました」

 

拓哉「すぐに行くよ」

 

そして俺は、ロベルタが用意してくれた車に乗って、学校に行くのであった。到着すると、ロベルタが話し掛けてきた。

 

ロベルタ「それでは、拓哉様の授業が終わり次第、お迎えに参りますので」

 

拓哉「分かった。いつも悪いな」

 

ロベルタ「いえ・・・私は拓哉様に命を救われました。しかも、私の事情を知ってまでここに置いていただく事を許されました。そのご恩は、一生をかけて償うつもりでございます」

 

深々と頭を下げながら言うロベルタに、俺はデコピンをする。

 

拓哉「それは気にするなっていつも言ってるだろ?俺が好きでお前を迎えたんだ。その事については、あいつらと一緒だ」

 

ロベルタ「拓哉様・・・」

 

拓哉「だから、いつまでもその事を気にするな♪」

 

笑顔でロベルタにそう伝える拓哉であった。教室に行くと、いつも通りの反応をするクラスの連中。俺があの家の出身である事を知ってる為である。

 

拓哉(相変わらず居心地が悪いったらありゃしない)

 

俺はそう思いながら、自分の席に座るのであった。しかし、そんな中でも俺に声をかけてくる奴がいた。

 

「よ~拓哉!」

 

拓哉「朝から元気だな。一誠」

 

彼の名は兵藤一誠。学校ではエロ三兄弟と言われている。けど、こんな俺にも話し掛けてくるいい奴である。

 

一誠「拓哉、今日元浜の家でAV観賞するけど、お前も来るか?」

 

拓哉「いや・・・遠慮しとくよ」

 

一誠「そっか。けど、見たくなったらいつでも言えよな♪」

 

そして一誠は行ってしまった。そして放課後、いつもの様にロベルタが迎えに来る。

 

ロベルタ「お待ちしておりました」

 

拓哉「ありがとうロベルタ」

 

車に乗り込み走っていると、後ろに二台ついてきてる車がいた。

 

ロベルタ「拓哉様・・・」

 

拓哉「あぁ。恐らく加藤家の連中だろう」

 

ロベルタ「撒きますか?」

 

拓哉「できるならそうするが・・・向こうは既に殺る気満々だぞ?」

 

指で後ろを指しながら言っていると、こちら目掛けて撃ってきた。

 

拓哉「さて、どうしたものか」

 

ロベルタ「私がお相手します。アンジェラ、ハンドルをお願いします」

 

アンジェラ「任された」

 

運転を交代すると、ロベルタは屋根に上がる。

 

ロベルタ「拓哉様の敵は、私にとっても敵です」

 

次の瞬間、メイド服の中からガトリングを取り出した。

 

拓哉「なぁ」

 

アンジェラ「はい?」

 

拓哉「あんなデカイの、何処に仕舞ってたと思う?」

 

アンジェラ「さすがの私も、そればかりは・・・」

 

俺達は二人して、そんな会話をするのであった。すると、後方で爆発音が聞こえロベルタが戻ってきた。

 

ロベルタ「終わりました拓哉様。アンジェラ、ありがとうございます」

 

アンジェラ「ああ」

 

運転も代わり、そのまま家に帰るのであった。因みに、俺が今住んでいる家は、じいちゃんとばあちゃんが俺の為に用意してくれた家である。




リーラ・シャルンホルスト(まぶらほ)


森園生(涼宮ハルヒの憂鬱)


ロベルタ(BLACK LAGOON)


アンジェラ・ジョンソン(聖剣使いの禁呪詠唱)


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2話

加藤家の連中に襲われてから1ヶ月後。俺はいつもの様にロベルタに送られて学校に行き、教室に行くと何やら騒がしい。

 

拓哉「何の騒ぎだ?」

 

「拓哉!聞いてくれよ!!」

 

「あいつに・・・あいつに彼女が出来たんだ!!」

 

拓哉「おい松田、元浜、あいつって誰だよ」

 

松田「イッセーだよ!!」

 

その言葉に、俺は心の底から驚いた。

 

拓哉(あのエロで生きてる奴に彼女!?一体何処の物好きだよ!!)

 

そんな事を思っていると、本人が教室にやって来た。イキイキとしながら。

 

一誠「おはよう諸君!!」

 

拓哉「よう一誠。お前彼女が出来たそうだな」

 

一誠「もう噂になってるのか。いや~♪照れるな♪紹介しよう!俺の彼女の夕麻ちゃんだ!!」

 

その女の子を写メを見せられて、松田と元浜は涙を流していた。しかし、俺だけはこの女を怪しいと睨んでいる。

 

拓哉(この女…)

 

写メを見た俺は、何か嫌な予感がしたのだった。

 

一誠「今度の日曜にデートするんだ!羨ましいだろ♪」

 

松田と元浜に、更に追い打ちをした一誠であった。家に向かう車の中で、俺はリーラに話す。

 

拓哉「リーラ、今度の日曜一誠を護衛しろ」

 

リーラ「一誠様をですか?」

 

拓哉「そうだ。今日一誠に彼女が出来たが・・・」

 

リーラ「その彼女が何か?」

 

拓哉「そいつの写メを見て、嫌な予感がするんだ」

 

リーラ「・・・そういう事ですか。分かりました」

 

俺の言葉に、リーラはすぐに理解した。

 

拓哉「一応帰ってから、()()()()に連絡はしてみるがな」

 

リーラ「了解致しました。日曜は、アンジェラに護衛をさせます」

 

拓哉「頼んだぞ」

 

取り合えず、一誠の護衛はこれでいいだろ。家に帰ると、とある人達に連絡をする。

 

『珍しいね。君から連絡をくれるなんて』

 

拓哉「そうだな」

 

『お前のじいさん達から聞かされた時は焦ったが、元気そうでなによりだ』

 

拓哉「ありがとな」

 

『気にするな』

 

『そうだね。それで、私達に何か用かな?』

 

拓哉「…この町で、あんた等の部下が何かしてないかと思ってな。アザゼル、神王、魔王に聞きたくてね」

 

アザゼル『んな訳ないだろ。お前や加藤家がいるのに、喧嘩吹っ掛けるはずないだろ!!』

 

『アザゼルの言う通りだよ』

 

『けど、拓哉君がそう言うって事は、何かありそうなんだね』

 

拓哉「俺の知り合いに彼女が出来たんだが…その彼女が少しな。アザゼルと似た雰囲気を感じてな」

 

アザゼル『何だと?けど、俺は何も知らねぇぞ』

 

拓哉「なら、そいつらの始末はこっちでするぞ?」

 

その言葉に、四人は渋い表情になる。

 

アザゼル『…分かったよ。ウチとしては痛いが、そもそもお前の知り合いに何かしようとしたそいつらが間違ってんだ』

 

『だな。ウチ(天界)の方でも、あんたらに手を出すバカはそうはいない』

 

『それはこっち(冥界)でも同じだよ神ちゃん』

 

拓哉「了解。そこまで言うなら信じるよ。じゃあな」

 

そして俺は、アザゼル達との通信を切った。そして日曜になり、アンジェラが一誠と女を尾行している。

 

アンジェラ「こちらアンジェラです。ターゲットは、映画館を出てファミレスに入り食事をしています」

 

拓哉『なら引き続き尾行を頼む。もし何かあれば、魔方陣で呼び出せ』

 

アンジェラ「了解です」

 

引き続き一誠達を尾行するアンジェラ。夕方になり、二人は人気のない公園にやって来た。

 

アンジェラ(わざわざ人気のない公園を選ぶとは。これは、拓哉様に来ていただきませんと)

 

アンジェラは、自分の近くに魔方陣を展開する。そこから、拓哉とリーラが出てきた。

 

拓哉「状況は?」

 

アンジェラ「はい。今現在二人は、人気のない公園に入りました」

 

拓哉「なるほど。どれどれ・・・」

 

俺は茂みから二人の様子を見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕麻「今日は楽しかったわ」

 

一誠「俺もだよ夕麻ちゃん」

 

夕麻「それでね、最後にお願いがあるの」

 

一誠「俺に出来る事なら、何でもするよ♪」

 

可愛い彼女の願いだからな!

 

夕麻「じゃあさ・・・死んでくれるかな?」

 

一誠「・・・えっ?」

 

俺は自分の耳を疑った。夕麻ちゃんが変なことを言った気が・・・

 

一誠「ごめん。俺の聞き間違いかな?もう一回言ってくれる?」

 

夕麻「だから・・・死んでくれるかな?」

 

やっぱり、さっき言ってた事は聞き間違いじゃなかったんだ!!

 

一誠「な・・・何で!?」

 

夕麻「あなたが持っている《神器》が、私達にとって邪魔なのよ。大丈夫よ、苦しいのは最初だけだから」

 

すると夕麻ちゃんの手に何かが握られていた。

 

一誠(ヤバイ!逃げないと!!)

 

頭ではそう思ってるが、体はいうことをきかない。

 

夕麻「それじゃあ、さようなら」

 

槍みたいなのが、俺に向かってくる。俺は恐怖で目を瞑った。しかし、いつまで経っても痛みがこないので、ゆっくりと目を開く。すると、俺の目の前には立っていた人物を見て驚いた。

 

「やれやれ。堕天使は随分と血の気が多いな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠に光の槍が当たるのをどうにか防いだ。

 

拓哉「やれやれ。堕天使は随分と血の気が多いな」

 

夕麻「そんな!?ただの人間に、私の攻撃を防ぐなんて!?」

 

一誠「拓哉!!」

 

拓哉「無事みたいだな一誠」

 

俺は一誠が無事なのを確認する。

 

拓哉「さて・・・俺のダチに何をしようとしたんだ?」

 

俺は堕天使を見ながら聞く。

 

夕麻「・・・いいわ。教えてあげる。そいつには神器が宿ってるのよ。私達にはそれが邪魔なのよ」

 

拓哉「それで殺そうとしたのか」

 

夕麻「そうよ。別に人間が堕天使の為に死ぬのよ。ありがたいでしょ?」

 

堕天使の女は、笑いながらそう言い放つ。

 

拓哉「・・・言いたいのはそれだけか?」

 

俺は堕天使に覇気をぶつける。

 

夕麻「!?う、嘘よ!!たかが人間が、あの方や魔王をも超える力を持ってるはずないわ!!」

 

拓哉(腐っても堕天使か。多少の覇気では気絶しないか)

 

俺はそう思いながら堕天使を見ていた。

 

夕麻「き、今日は諦めるわ。でも、後ろには気を付けるべきね」

 

そして堕天使は飛んでいってしまった。

 

一誠「・・・・・・」

 

拓哉「さて、俺達も帰るか」

 

リーラ「そうですね」

 

アンジェラ「はい」

 

拓哉「じゃあな兵藤。後ろで隠れてる先輩に捕まるなよ」

 

そして俺達は帰ったのであった。



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3話

兵藤が堕天使に襲われた翌日、俺はじいちゃんに呼び出されて加藤家(本家)に来ている。

 

「よく来たの拓哉」

 

拓哉「久々だね爺ちゃん。それで、俺に何か用なのか?」

 

俺を温かく出迎えてくれた爺ちゃんに呼び出した理由を聞く。

 

「そうじゃ。今まで言っておらんかったが、お主には花嫁候補がいるんじゃ」

 

拓哉「・・・はい?」

 

爺ちゃんの突然の言葉に、俺は思わず変な声を出してしまった。

 

「あなた、いきなりそんな事を言われても、拓哉が困るだけですよ」

 

奥から婆ちゃんもやって来た。

 

拓哉「婆ちゃん、どういうことなんだ?」

 

「キチンと説明してあげるよ。拓哉は加藤家は、世界でもトップの地位なのは知ってるよね?」

 

そう言われて、俺は頷く。

 

「当然、許嫁や数多くの花嫁候補がいるのよ。本当なら、あっちにも話がいくはずだったんだけどね」

 

「フン!自分の息子すら見捨てる奴等に、加藤家を名乗る資格などない!!」

 

爺ちゃんは俺の親の事で顔を真っ赤にする。向こうは勝手に名乗ってるけど…

 

「分かっているよ。それでね、その話が拓哉に全ていっちゃうのよ」

 

拓哉「なるほど」

 

理由を言われて、俺は納得した。

 

拓哉「どれくらいいるんだ?」

 

「そうね~・・・ドリトル家に月の聖母に近衛家に・・・」

 

簡単に聞いただけでも、かなりの数があった。しかも、その内の数人は昔会ったことがある。

 

爺「そこでお前には、これから花嫁候補達に会ってもらう」

 

拓哉「会ってもらうって言われても・・・」

 

婆「これから、その人達の所に行ってもらうわよ」

 

拓哉「・・・はい?」

 

本日二度目の変な声を出してしまったのであった。翌日から、俺は学園を休み花嫁候補達がいる場所に出掛けるのであった。

 

拓哉「まずは何処からなんだ?」

 

リーラ「はい。まずは新奥浜に向かいます」

 

拓哉「新奥浜って言えば、爺ちゃんの娘の加藤家がいたよな?」

 

リーラ「はい。ですが、向こうは此方と違い、武道などは受けていません。極々普通の家庭です」

 

拓哉「なるほど。取り合えず行くか」

 

リーラ「かしこまりました。ロベルタ、出して下さい」

 

ロベルタ「かしこまりました」

 

まずは車で、新奥浜に向かうのであった。車を走らせること二時間、俺達は新奥浜に到着した。

 

拓哉「ここが新奥浜か」

 

リーラ「はい。まずは分家の加藤家に挨拶にいきます。その後に、ドリトル家のお嬢さんが通っている学校に向かいます」

 

そのまま分家に向かった。少し人里離れた場所に建つ1軒の家を見つけた。

 

リーラ「こちらがそうです」

 

拓哉「ここが・・・」

 

生まれて初めて分家にやって来た。取り合えずチャイムを鳴らす。すると、中から女性が出てきた。

 

「は~い」

 

リーラ「初めまして。加藤家から来ましたリーラと申します。そしてこちらが・・・」

 

拓哉「加藤拓哉です」

 

「あんたが父さん達が言ってた子だね。私は加藤梨理香だよ。一応、あんたの父親の妹だよ」

 

拓哉「・・・そうですか」

 

親父の名前を出されて、顔をしかめる。

 

梨理香「父さん達から聞いてるよ。悪かったね」

 

拓哉「いえ・・・」

 

梨理香「立ち話もなんだし、中に入りな。娘も紹介するよ」

 

そう言われて、ロベルタとリーラと一緒に中に入っていく。入ると、別の女性がいた。

 

梨理香「紹介するよ。私の自慢の娘の茉莉香だよ」

 

茉莉香「加藤茉莉香です」

 

拓哉「加藤拓哉だ。よろしく」

 

リーラ「拓哉様のメイドで、リーラ・シャルンホルストと言います」

 

ロベルタ「ロベルタと申します」

 

茉莉香「すご~い!メイドって初めて見た」

 

拓哉「確かにそうだろうな」

 

初めて見るメイドに、茉莉香は目をキラキラさせていた。

 

梨理香「茉莉香、拓哉は親戚になるんだよ」

 

茉莉香「そっか。だから同じ名字なんですね」

 

拓哉「そういうことだ」

 

そして、俺達は暫く他愛ない会話をするのであった。

 

拓哉(いつ以来かな。リーラ達以外とこんなに楽しく話したのは)

 

そんな事を思っていると、リーラが俺に話しかけてくる。

 

リーラ「拓哉様、そろそろ・・・」

 

拓哉「分かった」

 

いけないいけない。次に予定があるのを忘れてた。

 

梨理香「おや?これから何処かに行くのかい?」

 

拓哉「爺ちゃんや婆ちゃんから、俺の花嫁候補達に会いに行けって言われてまして」

 

梨理香「相変わらず、父さんと母さんの考えは分からないね」

 

拓哉「その意見には同意しますよ。それでは」

 

そして俺達は、次の花嫁候補の場所に向かうのであった。すると、婆ちゃんから連絡が入る。

 

拓哉「もしもし?」

 

『拓哉かい?分家の加藤家に行ったそうだね』

 

拓哉「うん。今さっき会ってきた」

 

『向こうの茉莉香ちゃんはどうだい?』

 

拓哉「どうって言われても・・・元気があって可愛かったよ?」

 

『そうかい♪なら、あの子も候補に入れてもいいんだよ?』

 

拓哉「はっ?」

 

『加藤家当主は、複数の花嫁を持ってもいいんだよ。ウチの人はそうしなかったけどね』

 

拓哉「いやいや!?流石にそれは・・・」

 

『大丈夫だよ。あんたなら上手くいくよ。けど、無理矢理はダメだからね。それじゃあね』

 

そして連絡を終えるのであった。

 

拓哉「・・・・・・」

 

リーラ「拓哉様」

 

拓哉「いくらなんでもな・・・」

 

リーラ「拓哉様が選んだ事に、私共は従います」

 

リーラはそう言いながら、俺の頭を撫でてくれるのであった。




加藤梨理香(モーレツ宇宙海賊)


加藤茉莉香(モーレツ宇宙海賊)


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4話

仲良くなった茉莉香達と別れて、俺はドリトル家に向かっている。

 

拓哉「これからどれくらいかかるんだ?」

 

リーラ「車で約30分程度です。ドリトル家のお嬢様とお会いした後、新奥浜空港に向かって宇宙に出ます」

 

拓哉「宇宙に?」

 

リーラ「はい。中継ステーションで、白き月の関係者と会う予定です」

 

拓哉「白き月って、あの月の横にある白い月の事か?」

 

空を見上げながら、俺はリーラに聞く。

 

リーラ「その通りです。あれは、かなり昔からあり、かぐや様・・・拓哉様のお婆様も白き月の元聖母で御座います」

 

拓哉「・・・マジで」

 

リーラの言葉に、俺は心底驚いた。だって、婆ちゃんがあの月の聖母だったなんて。今まで、そんな話1度も聞いたことなかったからな。

 

アンジェラ「かぐや様は、拓哉様に自分をそんな目で見てほしくないため、その事を隠されていたのです」

 

途中で合流したアンジェラが説明する。

 

拓哉「確かに驚いたけどさ、婆ちゃんは婆ちゃんだろ?」

 

ロベルタ「そう言っていただけると、奥様もお喜びになられます」

 

拓哉「だといいけど」

 

そんな会話をしながら車を走らせる。そして、ようやくドリトル家に到着したのである。

 

リーラ「到着致しました」

 

車から出ると、執事服を着た老人が立っていた。

 

「ようこそ拓哉様、お出でくださいました」

 

拓哉「初めまして。加藤拓哉です」

 

「私は、こちらで執事をさせていただいております《バトラー》と申します。中で旦那様やお嬢様がお待ちになっております。どうぞこちらへ」

 

バトラーさんに言われて、俺達は屋敷の中に入っていくのであった。

 

バトラー「こちらで御座います」

 

そう言いながら、扉を開けてくれたバトラーさん。入ると、黒髪の男性と金髪の女の子?が待っていた。

 

「わざわざ遠いところをよくお出でくださいました」

 

拓哉「いえ、こちらこそ祖父達の我が儘ですみません」

 

「気にしないで下さい」

 

男性はそう言う。

 

「娘のジェニーです。ほら、挨拶なさい」

 

ジェニー「初めまして。ジェニー・ドリトルです」

 

拓哉「加藤拓哉です。本日は、突然来訪してすみません」

 

ジェニー「いえ、気にしないで下さい」

 

「さて、後は若い二人に任せて、私は退散しますかな」

 

そう言って、男性は部屋を出ていった。

 

ジェニー「ふ~っ」

 

男性が出ていったのを確認したら、ジェニーさんは大きくため息を吐いた。

 

拓哉「随分と気を張ってたみたいだな?」

 

ジェニー「そうですね。最初は、勝手に決められた花婿に反対したんです」

 

拓哉「それはよかった。けど、余り乗り気じゃなさそうだな?」

 

俺の言葉に、体をピクッ震わせる。

 

ジェニー「確かにそうね。・・・本当は、この話を断りたいんです。私には今恋人がいます」

 

拓哉「恋人が?」

 

ジェニー「はい。白鳳女学院の生徒で、1つ年下の女性です」

 

拓哉「・・・女性!?」

 

その言葉に、俺は驚いた。

 

ジェニー「変ですよね。女性が女性を好きになるなんて」

 

拓哉「いや、驚きはしたが人の価値観をどうこう言うつもりはないぞ?」

 

ジェニー「ありがとうございます。彼女はリン・ランブレッタと言います」

 

そう言いながら、写真を見せてくれた。すると、そこに茉莉香も写っていた。

 

拓哉「ん?茉莉香も写ってるな」

 

ジェニー「拓哉さんは、茉莉香さんをご存じで?」

 

拓哉「あぁ。分家の加藤家だからな。簡単に言えば親戚だ」

 

ジェニー「そうだったんですか」

 

拓哉「まっ、何にせよいきなり花嫁候補はないわな。別に俺は気にしないから、好きにしろよ」

 

ジェニー「・・・いいんですか?」

 

拓哉「あぁ。あんた程の美人を嫁にできないのは痛いが、無理矢理結婚させるつもりはない」

 

そう言われたジェニーは、顔を少し赤らめていた。

 

拓哉「・・・もし気が変わったなら連絡くれよ。それまでは、恋人さんと仲良くな♪リーラ、行くぞ」

 

リーラ「かしこまりました」

 

そう言い残して俺とリーラは、車に戻るのであった。

 

ジェニー「・・・加藤拓哉さん」

 

一人になったジェニーは、小さく拓哉の名前を呟くのであった。

 

拓哉「さて、次は白き月か」

 

リーラ「はい。今から新奥浜空港に向かいます。ロベルタ、出して下さい」

 

ロベルタ「分かりました」

 

そして新奥浜空港に向かった。そのままシャトルに乗り込み、中継ステーションに向かった。到着すると、軍服を着た女性が二人立っていた。

 

「加藤拓哉様ですね」

 

拓哉「そうです」

 

「私達は、シャトヤーン様の所で月の巫女をしています。私はアルモ・ブルーベリーです」

 

「ココ・ナッツミルクです」

 

拓哉「ご丁寧に。後ろにいるのはウチのメイド達で・・・」

 

リーラ「リーラ・シャルンホルストです」

 

ロベルタ「ロベルタと申します」

 

アンジェラ「アンジェラです」

 

ココ「よろしくお願いします。それではご案内致します」

 

一通り挨拶を済ませて、専用のシャトルで白き月に向かったのであった。中に入ると、ココさん達についていき、謁見の間にやって来た。

 

アルモ「ここで少しお待ちください」

 

二人は先に入ってしまった。

 

拓哉「初めて白き月の中に入ったけど、凄いな」

 

リーラ「私は、かぐや様の付き添いで昔来たことがあります」

 

ロベルタ「中の警備は手薄ですが、この白き月に入るのは簡単ではなさそうですね」

 

アンジェラ「ええ。見えないバリアに守られてるみたいです」

 

拓哉「見えないバリアね~」

 

謁見の間の前でそんな話をしていると、中からアルモさんが出てきた。服装はいかにも巫女ですって感じになったけど。

 

アルモ「お待たせしました。それでは中へお入り下さい」

 

そして俺達は中に入った。奥に進んでいくと、真っ白なドレス?に身を包んだ女性がいた。

 

「ようこそお出でくださいました。白き月で聖母をしております《シャトヤーン》と申します」

 

拓哉「加藤家次期当主の加藤拓哉です。突然の来訪失礼致しました」

 

シャトヤーン「いえ。先代のかぐや様のお孫様なのです。口調も元通りで構いません」

 

拓哉「では遠慮なく。初めて中に入ったけど、こんな作りになってるんだな」

 

シャトヤーン「はい」

 

シャトヤーンに言われ、いつも通りの口調に戻す。

 

拓哉「・・・正直言って、花嫁候補についてはどう思ってるんだ?あんたくらい美人なら、今までにも話があったはずだが?」

 

シャトヤーン「・・・はい」

 

俺がそう言うと、シャトヤーンは少しだが顔を暗くする。

 

拓哉「・・・リーラ、悪いが外で待っててくれないか?シャトヤーンと二人で話がしたい」

 

リーラ「かしこまりました」

 

シャトヤーン「ココ、アルモ、あなた達もお願いします」

 

ココ「分かりました」

 

俺とシャトヤーンの二人を残して、リーラ達は謁見の間を出ていった。

 

拓哉「さて・・・何か訳ありみたいだな?」

 

シャトヤーン「・・・そうですね。出来れば、今から話すことは他言無用でお願いします」

 

拓哉「分かった。約束しよう」

 

シャトヤーン「ありがとうございます。拓哉さんが言われた通り、私は1度結婚をしております。そして・・・子供もいます」

 

拓哉「子供も!?」

 

その言葉に、俺は驚いた。

 

シャトヤーン「その子供と言うのは・・・トランスバール皇国王子である《シヴァ・トランスバール》です」

 

拓哉「1度だがみたことある。あの子が・・・」

 

シャトヤーン「はい。ですので、それでもいいのでしたら、私は喜んで花嫁になります」

 

拓哉「子供がいるとか、誰の子供だとかは気にしない。あんたがそれでいいなら別にいいさ」

 

シャトヤーン「・・・ありがとうございます」

 

シャトヤーンは、声を震わせながらお礼を言うのであった。

 

拓哉「・・・これは俺の端末に直接繋がる番号だ。それと、俺が尤も信用しているメイドのリーラの番号だ。何かあれば、助けてやる」

 

俺は番号を渡すと、そのまま謁見の間を出て白き月を後にしたのであった。




ジェニー・ドリトル(モーレツ宇宙海賊)


ココ・ナッツミルク(ギャラクシーエンジェル)


アルモ・ブルーベリー(ギャラクシーエンジェル)


シャトヤーン(ギャラクシーエンジェル)


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5話

数名の花嫁候補と出会った拓哉は、久々の休みを満喫していた。

 

拓哉「ホレホレ~♪」

 

「ニャ~♪」

 

子供も時に拾った黒猫、名前は《黒歌》という。何でそんな名前にしたかと言うと、夢の中でその名前がいいと黒歌自信に言われたのである。何を馬鹿なことを言ってるんだと思ってるかも知れないが、事実である。

 

拓哉「あ~和むわ~♪」

 

黒歌「ニャ?」

 

拓哉がそう呟くと、黒歌が俺の膝の上で丸くなる。

 

拓哉「何でもないよ。今までこんな事なかったからな。黒歌が来てから、お前を撫でるのが楽しみなんだよ♪」

 

黒歌「ウニャ~」

 

黒歌は、拓哉のお腹に頬擦りをしてきた。和やかな空気が流れていたが、そんな空気は直ぐに去ってしまった。

 

 

 

 

 

ピンポーン

 

 

 

 

 

拓哉「誰か来たみたいだな。リーラ、出てくれるか?」

 

リーラ「分かりました」

 

リーラは玄関に行く。すると、直ぐに戻ってきた。

 

拓哉「誰だったんだ?」

 

リーラ「はい。実は・・・」

 

「拓哉~!!遊びに来たぞ~!!!」

 

「元気かい?タクちゃん♪」

 

やって来たのは、ガタイのいい黒髪の男と、スラッとした銀髪ロン毛の男だった。

 

拓哉「折角の休日に・・・何しに来たんですか?ユーストマさん、フォーベシィさん」

 

ユーストマ「おいおい拓哉、そんな他人行儀な言い方するなよ。義父と呼んでもいいんだぜ?」

 

フォーベシィ「僕もお義父さんと呼んでもいいんだよ♪」

 

拓哉「言いませんから!!(全く・・・せっかく黒歌やリーラとのんびりしてたのに・・・)。それで、神と魔王が何用で?ただ遊びに来た訳じゃないんでしょ?」

 

フォーベシィ「確かにそうだね」

 

ユーストマ「いや~な、豪昌の奴から拓哉が次期当主になるって聞いたからな♪」

 

拓哉「確かに言われましたよ。けど、爺ちゃんが生きてる間はないですよ」

 

フォーベシィ「でも、事実上は君が当主だよ?流石の豪昌が、彼らに引き継がせるつもりはないんだしね。僕らも、彼らには愛想が尽きてね」

 

二人が言う彼らとは、拓哉の両親と兄の事である。三人は、加藤家を永久追放になっている。拓哉は少し顔をしかめる。

 

ユーストマ「・・・すまねぇ。嫌なことを思い出させたな」

 

拓哉「気にしないで下さい」

 

フォーベシィ「そうか。・・・それでだけど、僕達は挨拶に来たんだよ。他の皆もいずれ来ると思うよ?」

 

ユーストマ「だろうな。後、シア達もお前に会いたがってたぞ」

 

拓哉「皆は元気にしてるんですか?」

 

フォーベシィ「皆元気だよ。君とは学校が違うからね。寂しがってるよ」

 

拓哉「流石にそればかりは・・・」

 

ユーストマ「ふむ・・・マー坊、サー坊に相談してあの計画を早めるか?」

 

フォーベシィ「そうだね神ちゃん。サーゼクスも乗り気だし、いい頃合いかもね」

 

二人で何かヒソヒソと話しているが、何を言ってるか聞こえなかった。

 

ユーストマ「取り合えず俺達は戻るな」

 

フォーベシィ「今日はあくまで挨拶に来ただけだからね」

 

そう言い残して、二人は帰っていったのであった。

 

拓哉「相変わらず、嵐が過ぎ去った感じがするよ。あの二人が来たら」

 

リーラ「フフッ、そうですね」

 

リーラは笑いながら答えるのであった。

 

拓哉「ところでさ、花嫁候補ってまだいるの?」

 

リーラ「まだまだおられます。川神鉄心さんの孫である川神百代、黛家の娘である黛由紀江、九鬼財閥の令嬢の九鬼揚羽、松永家の娘である松永燕、冥界では、フォーベシィ様の娘のネリネ様、サーゼクス様の妹のリアス・グレモリー様、そして奥様の妹のグレイフィア・ルキフグス様、レヴィアタン様の妹のソーナ・シトリー様、天界でユーストマ様の娘のリシアンシス様と、その他にも多くの花嫁候補がおられます」

 

拓哉「・・・全員に会いに行けって、無理すぎない?」

 

リーラ「・・・そうですね」

 

流石のリーラも、それには同意してくれたのであった。翌日、学園にやって来るとサーゼクスに呼び出された拓哉。

 

拓哉「サーゼクスさん?」

 

サーゼクス「開いてるから、入ってきてくれるかな」

 

拓哉「失礼します」

 

中に入ると、魔王であり、この駒王学園の理事長であるサーゼクス・ルシファーが座っている。横には、彼の奥さんでメイドであるフィーナがいた。

 

サーゼクス「久し振りだね拓哉君」

 

拓哉「そうですね。確かに久し振りですねサーゼクスさん」

 

サーゼクス「昔みたいに、お兄ちゃんとは言ってくれないのかい?」

 

拓哉「俺の年齢も考えて下さいよ。ただでさえ、19になったんだからさ」

 

拓哉の年齢は19歳。学校に通ったことがなかった俺に、豪昌やかぐやがここに通わせてくれた。

 

サーゼクス「それもそうだね。もう君も19歳か・・・早いものだね」

 

昔を懐かしむように話すサーゼクスである。

 

拓哉「それで、話とはなんですか?」

 

サーゼクス「うん。実は、近々リアスの婚約会見が行われるんだよ」

 

拓哉「リアスが?」

 

サーゼクス「父が勝手に話を進めてしまってね。僕としては、妹には自由に恋愛をしてほしいと思っているんだけど・・・」

 

拓哉「立場上、無闇に口出しは出来ないって訳か」

 

サーゼクス「その通りだよ」

 

魔王も色々と大変みたいである。

 

拓哉「それで、俺にどうしろと?」

 

仕事モードに入った為、いつもと口調が変わる。

 

フィーナ「それについては、私が説明致します」

 

横にいたフィーナが話始める。

 

フィーナ「私は放課後に、お嬢様の所に行くつもりです。その時に、婚約者であるライザー様も来られます」

 

拓哉「ライザーって、もしかして婚約者ってフェニックス家なのか?」

 

サーゼクス「そうなんだ。リアスは君の花嫁候補でもある。けれど、父はそれに反対でね。人間と結婚させるなら、純血の悪魔同士がと」

 

拓哉「爺ちゃん達から聞いたけど、確かに今の悪魔は種族の数が減少してるのは知ってる。けど、ウチは三つ巴の戦争を止めたんでしょ?ある意味喧嘩売ってるんですか?」

 

拓哉は少し睨みながら言う。

 

サーゼクス「私達悪魔や、天使に堕天使の幹部は、そんなつもりはない。けれど、父や別の御偉いさん達がね」

 

拓哉「・・・だから、悪魔とかはあまり好きになれないんだよ」

 

リーラ「拓哉様・・・」

 

拓哉の言葉に、リーラは悲しい顔をする。サーゼクス達とは普通に話している拓哉ではあるが、心の奥にはやはり悪魔なので警戒しているのである。

 

サーゼクス「そこで依頼内容だけど、リアスの手助けをしてあげてほしい」

 

拓哉「別にそれは構わないが、向こうは俺の事を覚えてるのか?」

 

サーゼクス「おそらく覚えていないだろうね。君達が会ったのは、お互い小さい時だったからね」

 

拓哉「だろうな」

 

サーゼクス「最悪の場合、レーティングゲームにも参加してくれて構わない」

 

拓哉「・・・なるほど。なら、そうさせてもらおうか」

 

サーゼクス「報酬は好きなのを言ってくれ」

 

拓哉「依頼が完了したらね」

 

フィーナ「では後程、私が魔方陣で呼び出しますので」

 

拓哉「了解。リーラも一緒でいいよな?」

 

サーゼクス「構わないよ」

 

拓哉「それじゃあ放課後に」

 

そして拓哉とリーラは、理事長室を出ていった。




フォーベシィ(SHUFFLE)


ユーストマ(SHUFFLE)


フィーナ(オリジナルキャラ)




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6話

拓哉「さていつ呼ばれるのやら」

 

リーラ「そうですね」

 

拓哉達は、屋上で日向ぼっこを楽しんでいる。未だに俺とリーラは呼ばれない。

 

拓哉「けど、リーラに膝枕してもらうのも久し振りだな」

 

リーラ「そうですね」

 

しかし、リーラは顔を少しだけ暗くする。

 

拓哉「・・・何かあったのか?」

 

拓哉は気になってリーラに聞く。

 

リーラ「・・・何でも御座いません」

 

拓哉「何でもないことはないだろ?何年一緒にいると思ってるんだ?」

 

リーラ「・・・・・・」

 

拓哉「・・・花嫁候補のことか?」

 

そう言うと、リーラは微かにだかピクッと震えた。

 

拓哉「・・・確かに多くの花嫁候補がいる。けどな、リーラ達も大切に思ってるんだぞ?」

 

リーラ「拓哉様」

 

拓哉「もしリーラやロベルタ達に何かあれば、何がなんでも助け出す。お前達は誰にも渡さない」

 

そう言いながら、リーラを抱き締める。

 

リーラ「絶対に・・・離さないで下さい」

 

拓哉「当たり前だ」

 

二人の空間は、甘い雰囲気が流れていた。すると、フィーナから念話が入る。

 

フィーナ『拓哉様、リーラ様、今から呼び出しますが宜しいですか?』

 

拓哉『了解』

 

フィーナ『それではいきます』

 

拓哉達の足下に、グレモリー家の魔方陣が現れた。そのまま俺達は、旧校舎にいるオカルト研究部に転送された。

 

フィーナ「お待ちしておりました」

 

拓哉「いえいえ」

 

「だ、誰よあなたは!?」

 

「何で人間がここにいるんだ」

 

フィーナ「彼らは、サーゼクス様から依頼されてこちらにおられます」

 

「お、お兄様が」

 

リアスは驚きを隠せなかった。

 

拓哉(何人かは知ってる顔がいるな)

 

部室にいる連中を見渡しながらそう思う。

 

フィーナ「拓哉様、リーラ様、サーゼクス様の妹のリアスお嬢様です。そして、フェニックス家のライザー様です」

 

フィーナさんが、二人の事を説明してくれる。すると、ライザーがリーラの前に立つ。

 

ライザー「ほう・・・いい女だな。気に入った!お前も俺の嫁にしてやる」

 

リーラ「お断り致します。私は、死ぬまで拓哉様の為に生きます」

 

あっさりと断られて、ライザーは怒りだす。

 

ライザー「たかが人間が!!この俺が嫁にしてやると言ってるんだ!!黙って来ればいいんだよ!!」

 

リーラを掴もうとするライザーの手を拓哉が掴む。

 

拓哉「ウチの大切なメイドに手を出すな」

 

ライザー「人間が悪魔に逆らうな」

 

すると、ブチッという音が部室に響き渡る。

 

一誠「ブチッ?」

 

拓哉「今何て言った?人間が悪魔に逆らうな?面白いこと言うな♪」

 

すると、部室の空気が重たくなる。

 

拓哉「あんまり舐めた事を言うなよ?殺すぞ?」

 

更に空気が重たくなり、部室に亀裂が入り窓ガラスが割れる。

 

フィーナ「拓哉様、落ち着いて下さい」

 

すると、フィーナが拓哉の前に立ちはだかる。

 

拓哉「どけフィーナ。いくらお前でも、手加減しないぞ」

 

フィーナ「・・・・・・」

 

拓哉の威圧に、フィーナも黙ってしまう。他の連中は、拓哉が発する気圧に脅えており、一誠に限っては既に気絶していた。すると、グレモリー家の魔方陣が現れる。

 

リアス「これは・・・グレモリー家の紋章!?一体誰が?」

 

その中から出てきたのは、フィーナそっくりの銀髪メイドだった。

 

「サーゼクス様の勘が当たりましたね。拓哉様、落ち着いて下さい」

 

フィーナ「グレイフィア!?」

 

リアス「どうして貴方が?」

 

グレイフィア「はい。サーゼクス様が、『嫌な予感がする』と仰られましたので、来てみれば拓哉様がお怒りになっています。どなたが原因ですか?」

 

すると、ライザーの眷属を含む全員がライザーを見る。

 

グレイフィア「ライザー様が原因ですか。今回は此方で落ち着かせますので、2度と拓哉様達を馬鹿にしないで下さい」

 

そして、グレイフィアとリーラが怒ってる拓哉を連れて部室を出ていったのであった。そのまま車に乗り込ませたが、拓哉は未だに機嫌が悪い。

 

拓哉「・・・何で邪魔をした」

 

リーラ「拓哉様、私の為に怒ってくださるのは嬉しいですが、リアス様達には辛すぎますよ」

 

グレイフィア「そうです。手加減したとはいえ、あの空間に耐えれるのは姉さんや私達しかいません」

 

拓哉「けどよ・・・」

 

グレイフィア「気持ちが分かりますが・・・」

 

リーラ「それと、先程フィーナ様から連絡があり、レーティングゲームは10日後に行うそうです」

 

拓哉「・・・分かった。今から使い魔を探しに行く」

 

グレイフィア「仕方ありませんね。私もお付き合い致します」

 

こうして、気晴らしに使い魔を探しに行く事になったのであった。グレイフィアのお陰で、簡単に使い魔を捕まえる森にやって来た。

 

拓哉「やって来ました!」

 

リーラ「拓哉様、どなたに説明をされてるのですか?」

 

拓哉「ん?これを読んでる読者の皆様に」

 

グレイフィア「メタ発言は止めてください」

 

拓哉「すみません。さて、気を取り直して何を捕まえようかな♪」

 

森の中を三人で歩きながら、捕まえる使い魔を考える。すると、奥から物凄い気配を感じる。

 

拓哉「すげ~気配だな」

 

リーラ「そうですね」

 

グレイフィア「この気配・・・」

 

すると、洞窟を発見する。

 

拓哉「気配はこの奥からだな」

 

すると、洞窟内から足音が聞こえてきた。

 

グレイフィア「まさか!?」

 

グレイフィアは、この気配の正体に気が付いたのか、かなり警戒している。洞窟から出てきたのは、ドラゴンだった。

 

拓哉「デケ~!!」

 

リーラ「物凄く大きいですね」

 

拓哉達はそんな反応をする。

 

グレイフィア「何をそんなに落ち着いてるんですか!!このドラゴンは《五大龍》の一匹の《ティアマット》ですよ!!」

 

ティアマット『私の眠りを邪魔するのは誰だ!!』

 

ティアマットがそう言い放つ。

 

拓哉「五大龍の一匹か~。いいな!こいつを仲間にしよう!!」

 

飛びっきりの笑顔で拓哉はそう答えた。

 

グレイフィア「ほ、本気で言ってるんですか!?」

 

拓哉「当たり前だろ」

 

ティアマット『クククッ。本気で私を使い魔にするつもりか?』

 

拓哉「使い魔っていうより、仲間だな」

 

ティアマット『仲間だと?・・・よかろう』

 

拓哉「なってくれるのか?」

 

ティアマット『ただし!!私より強ければだがな』

 

拓哉「ですよね~。危ないから、二人は離れてて」

 

リーラとグレイフィアは、その場から離れる。

 

拓哉「んじゃやりますか!」

 

ティアマット『いくぞ!!』

 

開始早々、ティアマットは炎を吐く。

 

拓哉「おわっ!?いきなり全力だな。なら・・・アイスBALL!!」

 

するとティアマットが吐いた炎が凍っていく。

 

ティアマット『なっ!?私の炎を凍らせるとは!!』

 

拓哉「どうだ?」

 

ティアマット『ハハハハッ!!面白い・・・面白いぞ!!お前、名は何という?』

 

拓哉「加藤拓哉だ」

 

ティアマット『そうか。なら拓哉!次の攻撃を防げばお前の勝ちだ!!』

 

するとティアマットは、空高く飛び上がり拓哉目掛けて急降下してきた。

 

拓哉「マジかよ!?風花・風障壁&鉄塊&音壁&フォークシールド!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴーン!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな音が辺りに響き渡った。

 

リーラ「拓哉様!!」

 

グレイフィア「砂埃で何も見えません!!」

 

二人は、拓哉の安否は気になっていた。徐々に砂埃が晴れていく。すると、ティアマットの攻撃に耐えた拓哉がいた。

 

ティアマット『・・・見事だ拓哉』

 

拓哉「ったく、少しは手加減しろ!!」

 

拓哉はどこからか取り出したハリセンで、ティアマットを叩く。

 

ティアマット『イタッ!何をする!!』

 

拓哉「加減を考えろ加減を!!どう考えても…」

 

そこから暫く、拓哉の説教は続いたのであった。因みにティアマットは、人間の姿になり正座をさせている。

 

リーラ「・・・拓哉様、そろそろ」

 

拓哉「ん?そうだな」

 

1時間の説教は、リーラのお陰で終わりを迎えた。

 

拓哉「じゃあティアマット」

 

ティアマット「約束だからな。拓哉の使い魔になる」

 

拓哉「なら契約だ。グレイフィア、頼む」

 

グレイフィア「それはいいのですが・・・お二人の後ろにいる方は?」

 

拓哉とティアマットは、後ろを振り向く。するとそこには、二人の女性が立っていた。

 

拓哉「えっと・・・どちら様?」

 

「私の名はセイバー。貴方のサーヴァントになりたいが為に、ここに来ました」

 

「私はライダーです。セイバーと同じく、貴方のサーヴァントになりに来ました」

 

拓哉「えっと・・・セイバーとライダーだね?」

 

セイバー「はい。真名も教えます。名はアルトリア・ペンドラゴンです」

 

ライダー「私の名はメデューサです」

 

『・・・ええええええええええええええええええっっっっっっっっっっ!!!!!!!!????????』

 

名前を聞いた拓哉達は、心の底から叫ぶのであった。

 

リーラ「あのアーサー王が貴方なのですか!?」

 

グレイフィア「それにメデューサと!?」

 

セイバー「はい」

 

ライダー「その通りです」

 

拓哉「もしかして、ライダーの目を見ると石になるから、目を隠してるのか?」

 

ライダー「その通りです」

 

ティアマット「これは驚いたな。けど、こいつらも一緒に仲間にしてやれ。後々役に立つぞ?」

 

拓哉「別にいいけどさ・・・」

 

セイバー「よろしくお願いします。我がマスター」

 

ライダー「此方もお願いします。マスター」

 

ティアマット「私もよろしく頼む」

 

こうして、新たに三人の家族が増えましたとさ。




アルトリア・ペンドラゴン(Fate)


メデューサ(Fate)




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7話

あっという間に10日が経った。今日は、リアスとライザーのレーティングゲームだ。俺は、サーゼクスに呼ばれて、俺とリーラは観覧席に来ていた。

 

フィーナ「それではただ今より、リアス・グレモリー様とライザー・フェニックス様とのレーティングゲームを開始致します」

 

そしてレーティングゲームが始まる。最初は俺も出る予定だったが、リアスが反対したのでここにいる。ゲームを見るとリアス達が順調に、ライザーの眷属を倒していく。しかし、兵藤の技を見て、俺は頭を抱えた。

 

拓哉「あいつは何処までも自分に真っ直ぐなんだよ」

 

リーラ「仕方ありません。兵藤様ですから」

 

リーラですら、兵藤の技に呆れていた。だって、女性を裸にするんだぞ?流石にそれはな・・・

 

サーゼクス「ハハハッ。中々面白いね、彼は」

 

そんな事を言ってるサーゼクスであった。ゲームも終盤になると、リアスの眷属が次々倒されていく。残ったのは、ライザーと女王、そして妹である。一方リアスは、兵藤とアーシアだけである。しかし、俺は少し違和感を覚えた。

 

拓哉「リーラ、リアス達にはフェニックスの涙は支給されてないのか?」

 

リーラ「どうやらそうみたいですね」

 

『タクヤ、フェニックスの涙とは何ですか?』

 

俺の中にいるセイバーが話しかける。

 

拓哉『フェニックスの涙・・・大抵の怪我などを一瞬で治療できる物だ。確かレーティングゲームは、互いに2つずつ支給されるはずだが・・・』

 

そして画面を見ると、かなり傷付いてる兵藤の姿があった。

 

拓哉(やっぱりおかしい。木場や他の連中は、あれだけ傷を負えば転送されていたはずだ)

 

俺の考えは、嫌な予感がした。

 

リアス『私の負けよライザー。投了するわ』

 

フィーナ「リアス・グレモリー様の投了を確認。よってライザー・フェニックス様の勝利です」

 

フィーナさんがそう宣言した瞬間、リーラの足下が光だした。

 

拓哉「リーラ!?」

 

そしてリーラは消えてしまった。

 

拓哉「サーゼクス!!どういうことだ!!!」

 

俺はサーゼクスの胸ぐらを掴む。

 

サーゼクス「おそらく、ライザーに加担してる悪魔の仕業だろうね」

 

拓哉「ふざけるなよ!!人の女に手を出すなんて・・・俺は1度戻る!!!」

 

俺は急いで自分の自宅に戻った。

 

ロベルタ「お帰りなさいませ。・・・いかがなさいました?」

 

拓哉「リーラが、アホ鳥がに無理矢理連れていかれた。サーゼクスから連絡があり次第、冥界に乗り込むぞ!!」

 

ロベルタ「かしこまりました」

 

ティアマット「拓哉、冥界には私が連れていこう」

 

拓哉「頼んだぞ。焼き鳥野郎・・・誰の女に手を出したか、キッチリと教えてやる」

 

その日の夜、グレイフィアがやって来た。

 

グレイフィア「拓哉様、この度は私共悪魔が申し訳御座いません」

 

拓哉「・・・さっさと行くぞ」

 

ティアマット「なら私に乗れ」

 

俺達はティアマットに乗り、冥界に向かうのであった。魔方陣を使って冥界に到着する。

~ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冥界では、ライザーがリアスとリーラを悪魔達に紹介していた。

 

サーゼクス(マズイ・・・非常にマズイな)

 

フォーベシィ(タクちゃんを怒らせると、豪昌達が黙っていない)

 

二人の魔王は、冷や汗が止まらなかった。サーゼクスの横にいるフィーナも同じである。

 

ライダー「それでは紹介しましょう!我が嫁のリアスとリーラです!!」

 

すると、外から物凄い叫び声が聞こえてきた。

 

「ガアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」

 

『!?』

 

「い、今のは!?」

 

「ド、ドラゴン!?」

 

「報告します!!上空にドラゴンが現れました!!」

 

「な、何だと!?」

 

「そ、そし・・・グアッ!!」

 

すると、扉が爆発する。

 

拓哉「ガタガタうるせ~な!!俺の女は無事なんだろうな?」

 

煙の中から出てきたのは拓哉であった。他にもメイド等を引き連れている。

 

一誠「拓哉!!」

 

小猫「・・・遅いです」

 

ライダー「貴様・・・ここがどこか分かってるのか!!」

 

拓哉「人の女に手を出す奴に言われたくね~な」

 

俺はライザーを無視して、リーラの所に行く。しかし、リーラの目には光がなかった。

 

拓哉「・・・つくづく糞だな。ロベルタ、アンジェラ、森さん、セイバー、ライダー、ティア!!やってしまえ!!」

 

俺がそう言うと、ティアとセイバーは、俺が殺したくない関係者を守り、それ以外は悪魔達を殺し始める。

 

サーゼクス「拓哉君!止めてくれ!!」

 

拓哉「サーゼクス・・・答えは否!!先に手を出したのはそっちだ。加藤家に…いや、俺の家族に喧嘩を売った事を後悔しろ!!」

 

他の悪魔は、皆に任せて俺はライザーの所に行く。

 

拓哉「さて・・・覚悟は出来てるんだろうな?焼き鳥」

 

俺は、今までにない位に殺気を放つ。

 

ライザー「た・・・たかが人間が!!」

 

ライザーは、炎を纏い襲い掛かってくる。

 

拓哉「やれやれ・・・謝ってリーラを元に戻せば許してやるつもりだったのによぉ…ふん!!!」

 

そう言うと、俺の周りにヒビが入る。

 

『はっ?』

 

そんな現象に、リーラ達メイドを除いた全員がそんな声を出す。

 

拓哉「グラララララ!!俺の家族に手ぇ出したんだ。どういうことか分かってんだろうな?」

 

ライザー「な、なんだと…ぐぅ!!」

 

俺はライザーを捕まえ、床に叩き付ける。それと同時に振動も一緒にプレゼントした。

 

ライザー「ぐあああああああっっっっっ!!!!!!!!!!」

 

その攻撃をモロに喰らったライザー。顔からは血が大量に流血する。

 

「き、貴様~!!!」

 

すると、ライザーの眷属の1人が俺に襲い掛かる。

 

拓哉「鬱陶しいな…おい」

 

そう言うと俺は、空間を掴む。するとその場所が大きく揺れ始める。

 

拓哉「むん!!天地鳴動!!!」

 

そう言うと、周囲が大きく揺れライザーの眷属は上空に落下する。そして元に戻ると、上空から落ちてきた。

 

サーゼクス「い、今のは…」

 

拓哉「やれやれ、手加減してもこれかよ」

 

フォーベシィ「こ、これで手加減!!?」

 

その言葉に2人は驚いた。

 

一誠「じょ、冗談だろ?」

 

拓哉「ほんとだぞ?」

 

木場「いくらなんでも…」

 

俺の言葉が信じられないみたいだな。なら、これで信じるか?

 

拓哉「グレイフィア、ティア、皆の周りに結界を張ってくれ」

 

グレイフィア「えっ?」

 

アンジェラ「ま、まさか拓哉様…」

 

拓哉「死にたくなきゃ早くしな。サーゼクス達もだ」

 

そう言われ、グレイフィア達は急いで自分達の周りに結界を張る。

 

拓哉「大分揺れるから、しっかりと踏ん張っとけよ」

 

そう言うよ、拳を地面に向ける。そして…

 

拓哉「ふん!!!」

 

すると会場は大きく揺れ始め、建物が崩壊し始めた。

 

「きゃあああああああ!!!!」

 

「に、逃げろおおおおおおおおお!!!!」

 

結界を張っていない悪魔たちは、我先にと逃げて行った。そしてようやく揺れが収まった。

 

拓哉「グララララ!震度10ってとこか?」

 

『死んでしまうわ!!!』

 

俺の本気を知った一同から怒られたのであった。

 

ライザー「・・・・・・」

 

ライザーは、あまりの出来事に腰を抜かして惚けていた。

 

拓哉「今回はこれで許してやる。けど・・・次はないと思え」

 

そして俺はリーラの所に戻る。

 

拓哉「リーラ!リーラ!!」

 

リーラ「・・・・・・」

 

拓哉「戻らないか。なら・・・」

 

リーラ「!!」

 

俺は、リーラにキスをする。周りは驚くが拓哉は気にしない。

 

リーラ「・・・拓哉・・・様?」

 

拓哉「気が付いたか」

 

リーラ「私は・・・」

 

拓哉「何も気にするな。悪い夢を見てたんだよ」

 

リーラ「夢・・・」

 

拓哉「そうだ。さて、帰るぞ皆!!」

 

俺はリーラをお姫様抱っこする。

 

リーラ「キャッ!?」

 

拓哉「少し我慢してくれ。それじゃあサーゼクス、フォーベシィ、俺達は戻るぞ」

 

サーゼクス「・・・私達からは何も言えないからね」

 

フォーベシィ「今回は、完全に此方が悪いからね。けど、あまり殺さないでくれて助かったよ」

 

拓哉「フェニックスの涙やそっちの治療技術なら、助けられるだろ」

 

そう言い残して、俺達は人間界に戻るのであった。その日の晩、リーラや他の連中に襲われたのは言うまでもない・・・



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8話

リーラを焼き鳥野郎から助けてから1ヶ月。俺は久々に家の地下にいた。

 

拓哉「最近体が鈍ってる気がするな」

 

セイバー「でしたら、私が稽古の相手をしましょうか?」

 

拓哉「そうだな・・・剣も使ってないし、久々に鍛練するか」

 

俺は、腰にさしてる3本の刀を抜く。セイバーも、エクスカリバーを構える。

 

拓哉「いくぞセイバー!!」

 

セイバー「お手柔らかに」

 

そして、セイバーとの剣の稽古が始まった。流石はアーサー王だ。今まで戦った奴等より、断然強い。

 

拓哉「さすがだな」

 

セイバー「タクヤも中々です」

 

お互い褒めながらも、攻撃の手は緩めない。

 

拓哉「けれど・・・」

 

俺は、セイバー攻撃を受け流す。

 

セイバー「なっ!?」

 

拓哉「甘いぞ!!刀狼流し!!」

 

セイバー「キャアアッ!」

 

思わずセイバーは、可愛らしい叫び声をあげた。

 

拓哉「俺の勝ちだな」

 

セイバー「・・・やられましたね。まさか、私の攻撃を受け流しながら攻撃をするなんて」

 

拓哉「今まで色々あったからな」

 

俺は刀を納めながら、遠い目をするのであった。すると、リーラがやって来た。

 

リーラ「拓哉様、少し宜しいでしょうか?」

 

拓哉「どうしたんだ?」

 

リーラ「はい。新奥浜に派遣している園生から連絡がありまして」

 

拓哉「森さんから?」

 

森さんには、少し前から新奥浜に派遣しており、茉莉香やシャトヤーンに何かあった時に連絡するように言ってある。

 

拓哉「その森さんが何て?」

 

リーラ「何でも、茉莉香様を襲おうとしている連中がおられるそうです」

 

拓哉「何で茉莉香を?」

 

リーラ「茉莉香様は、宇宙海賊の船長候補なのです」

 

拓哉「宇宙海賊~!?」

 

リーラの言葉に驚く。

 

セイバー「何ですか?宇宙海賊とは」

 

リーラ「宇宙海賊、それは人々から金品や金目の物を奪うのが目的です」

 

セイバー「なっ!?そんなのが許されるはずない!!」

 

その言葉にセイバーは怒り出す。

 

リーラ「ですが、今の宇宙海賊は、政府が発行している私掠船免状を持っていれば、その行為は認められます。謂わば、営業みたいものですね」

 

セイバー「営業?」

 

リーラ「奪われた金品等は、後程保険会社からその分の金額が支払われます」

 

セイバー「そうなのですか?」

 

その言葉に、セイバーは落ち着く。

 

拓哉「それで、その宇宙海賊と茉莉香が、何の関係があるんだ?」

 

リーラ「何でも、茉莉香様のお父様、ゴンザエモン加藤様が亡くなられて、ゴンザエモン様が所持している海賊船の船長候補が茉莉香様なのです」

 

拓哉「へ~」

 

リーラ「ですが、それをよく思わない連中がいるそうで」

 

拓哉「それで茉莉香を襲おうって訳か」

 

リーラ「その通りです」

 

拓哉「ん~・・・」

 

しかし俺は少し考える。

 

拓哉「助けに行きたいが、宇宙船なんてないしな。茉莉香は、新奥浜にいるのか?」

 

リーラ「いえ、今はヨット部の演習航海で、砂赤星に向かわれています」

 

拓哉「万事休すだな」

 

宇宙に出てるなら、助けようがない。それどころか、助けにすら行けない。すると、俺の端末に通信が入る。

 

拓哉「もしもし?」

 

『お久し振りです拓哉さん』

 

通信の相手はシャトヤーンだった。

 

拓哉「久し振りだな。どうしたんだ?」

 

シャトヤーン『いえ、暫く連絡をしませんでしたので。・・・御迷惑でしたか?』

 

拓哉「そんな事ないぞ?少し考え事をな」

 

シャトヤーン『考え事・・・ですか?』

 

俺はシャトヤーンに、事情を説明した。

 

シャトヤーン『そんな事が・・・』

 

拓哉「そうなんだ。俺は宇宙船何て持ってないから」

 

シャトヤーン『・・・・・・』

 

すると、シャトヤーンが黙る。

 

拓哉「シャトヤーン?」

 

シャトヤーン『宜しければ・・・お力になりますよ』

 

拓哉「??」

 

シャトヤーン『詳しい事は、こちらで説明致しますので。白き月まで来ていただけますか?』

 

拓哉「了解。なら、今から向かうわ」

 

そして通信を切る。

 

リーラ「拓哉様」

 

拓哉「リーラ、今から白き月に向かうぞ。セイバーは、俺の中に戻ってくれ」

 

セイバー「分かりました」

 

そう言うと、セイバーは俺の中に入っていった。

 

拓哉「さて、今回は急ぎだしあれを使うか」

 

すると拓哉は、呪文を唱え始めた。

 

拓哉「我、望郷を訴えたり 我、懐郷を訴えたり 遥か 彼方 千里 彼方 万里、万里、遠き、故郷よ この手に届かぬ、在りし場所よ 我、妄執を訴えたり 我、憎悪を訴えたり この想いを以って、隔つ距離を繋ぎ給え!移ろいの門(イレイティックポータ)!!」

 

足下に魔方陣が出現し、拓哉達はその場から消えたのであった。

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白き月side

 

 

「シャトヤーン様、急な呼び出しってなんだろうね?」

 

「何かあったのかしら?」

 

「そうですわね。けれど、巫女の人は慌ててはおられませんでしたわ」

 

「はい」

 

「まっ、シャトヤーン様が来れば分かるだろうに」

 

謁見の間で、5人の女性達が話していた。すると、シャトヤーンが現れた。

 

シャトヤーン「お待たせいたしました。急な呼び出しをしてしまい、申し訳ありません」

 

「いえ・・・ですが、私達に何か?」

 

シャトヤーン「はい。実は、ある人物の手助けをお願いしたいのです」

 

「ある人物?」

 

「どんな方なんですか?」

 

シャトヤーン「今こちらに向かわれております」

 

すると、謁見の間に魔方陣が出現する。

 

「こ、これは!?」

 

すると、そこから男とメイドが現れた。

 

拓哉「来たぞシャトヤーン。ん?この人達は?」

 

「ちょっとあんた!シャトヤーン様を呼び捨てにするんじゃないわよ!!」

 

「いい度胸だね」

 

すると、一人の女性が俺に銃口を向ける。

 

拓哉「その銃を下ろしな」

 

「まずは、シャトヤーン様に謝罪をしてもらおうか?」

 

拓哉「さっさと下ろしな。でないと・・・」

 

すると、リーラが俺に銃口を向けてる女性に銃口を突き付ける。

 

リーラ「拓哉様への無礼、許せません」

 

「・・・いいのかい?ここでアンタが撃てば、反射的にアタシも撃つよ?そしたら、コイツは死ぬよ?」

 

リーラ「拓哉様が、その程度では死にません」

 

「だったら・・・試してみるかい?」

 

拓哉「それは無理だな」

 

俺がそう言うと、女性が持ってた銃が斬れた。

 

「なっ!?」

 

拓哉「銃を突きつけたくらいで、勝ち誇るな。銃は撃たなきゃ意味がない」キン

 

刀を納めながら、俺は女性にそう言う。

 

シャトヤーン「も、申し訳御座いません!!」

 

シャトヤーンは、頭を深々下げながら俺に謝る。その光景を見た女性達は、驚きを隠せなかった。

 

「何でシャトヤーン様が謝るんですか!!」

 

シャトヤーン「皆さんも知っている筈です。歴代の白き月の聖母の事を」

 

「はい。確かに知っています。シャトヤーン様の前は、かぐや様でした」

 

シャトヤーン「彼は、そのかぐや様の孫で、私の婚約者です」

 

『・・・えええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!??????????』

 

その言葉に、謁見の間に女性達の声が響き渡ったのであった。

 

拓哉「なら改めて・・・次期加藤家当主の加藤拓哉だ。シャトヤーンの婚約者だが、それはまだ秘密にしてくれ。言えば・・・」

 

リーラが銃口を向けて、俺は軽く覇気を出しながら刀に手を添えた。すると、全員は壊れた人形みたいに首を縦に振った。

 

シャトヤーン「拓哉さん、紹介します。白き月の護衛をしてくれているムーンエンジェル隊です」

 

「先程の御無礼申し訳ありません。私は、一応ムーンエンジェル隊のリーダーをしています《フォルテ・シュトーレン》中尉です」

 

「は、初めまして。私は《ミルフィーユ・桜葉》少尉です!」

 

「同じく《蘭花・フランボワーズ》少尉です」

 

「《ミント・ブラマンシュ》少尉ですわ」

 

「・・・《ヴァニラ・H》少尉です」

 

各々が、自己紹介をしてくれた。

 

拓哉「よろしく。後、敬語じゃなくていいよ?」

 

ミント「で、ですが・・・」

 

拓哉「シャトヤーンの婚約者でも気にしないで」

 

フォルテ「・・・なら、そうさせてもらおうかね」

 

蘭花「分かったわ」

 

ミルフィーユ「分かりました~♪」

 

ヴァニラ「・・・了解です」

 

堅苦しいのが嫌な俺はそう言う。五人はそれを承諾する。

 

拓哉「それでシャトヤーン、あの話だけど・・・」

 

シャトヤーン「はい。拓哉さんの手助けをして頂くために、ムーンエンジェル隊を呼びました」

 

フォルテ「シャトヤーン様、それはいったい・・・」

 

シャトヤーン「実は・・・」

 

シャトヤーンは、俺の事情を説明してくれた。

 

ミント「なるほど・・・確かに、宇宙海賊の事は噂ではお聞きしますが・・・本当にいたのですね」

 

ヴァニラ「・・・驚きです」

 

驚いてる様には見えないが・・・

 

蘭花「けどいいんですか?そんな事情で紋章機を出して」

 

シャトヤーン「確かに、全員で行けば問題ですが、必要なのは一機です」

 

フォルテ「確かに」

 

拓哉「出来れば、力を貸してほしい」

 

俺とリーラは、フォルテ達に向かって頭を下げた。

 

ミルフィーユ「あ、頭をあげてください!」

 

フォルテ「分かったよ。シャトヤーン様の命令だしな」

 

拓哉「ありがとう」

 

ミント「けれど、どなたが行かれますか?」

 

ミルフィーユ「私が行きます♪」

 

手を挙げたのは、ピンク色の髪のミルフィーユである。

 

フォルテ「確かに、ミルフィーがベストかもね」

 

蘭花「けど大丈夫なの?」

 

ミルフィーユ「大丈夫だよランファ。バーンってやっちゃうから♪」

 

蘭花「バーンってやっちゃったらダメでしょうが!!」

 

そう言いながら、ミルフィーユ頬っぺた引っ張る。

 

ミルフィーユ「ふえ~!いふぁいよふぁんふぁ~(痛いよランファ~)!!」

 

拓哉「・・・仲いいな」

 

俺はそう思いながら、二人のやり取りを見ているのであった。




フォルテ。シュトーレン(ギャラクシーエンジェル)


ミルフィーユ・桜葉(ギャラクシーエンジェル)


蘭花・フランボワーズ(ギャラクシーエンジェル)


ミント・ブラマンシュ(ギャラクシーエンジェル)


ヴァニラ・H(ギャラクシーエンジェル)


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9話

シャトヤーンのお陰で、俺は茉莉香が向かってる砂赤星方面に向かっている。しかし、俺は今物凄く気まずい。何故かって?それはな、紋章機は一人乗りで今現在俺の上にミルフィーユが座ってる状態なのだ。

 

拓哉(・・・気まずい。さっきから何も話し掛けてこないし)

 

そう思ってると、ミルフィーユが話しかけてきた。

 

ミルフィーユ「あ、あの!」

 

拓哉「な、なんだ?」

 

急に話しかけられ少し言葉がどもる。

 

ミルフィーユ「わ、私・・・重くないですか」

 

拓哉「全然。寧ろ逆に軽すぎる。ちゃんと飯食ってるのか?」

 

ミルフィーユ「食べてますよ~!昨日だって、イチゴショートケーキ食べ過ぎたんですよ」

 

拓哉「全くそうは思えないぞ。だから安心して座ってくれ」

 

すると、さっきまで遠慮がちに座ってたが、体を俺にあずけてきた。

 

拓哉「しかし、何でミルフィーユはエンジェル隊に入隊したんだ?」

 

ミルフィーユ「ミルフィーでいいですよ拓哉さん。エンジェル隊に入隊した切っ掛けはランファなんです。ランファがエンジェル隊に入隊するって言ったんで、ついでに応募したんです♪」

 

拓哉「ついでにって。それで見事入隊したのには驚きだな」

 

ミルフィーユ「エヘヘ♪私運がいいんです。勿論、反対に物凄く悪い時もありますけどね」

 

自分が生まれつき持ってる運の話を始めた。

 

拓哉「運がいい?例えば?」

 

ミルフィーユ「そうですね~、この前宇宙福引きで、ケーキ食べ放題が当たったんです♪」

 

拓哉「凄いな。あれって確か、中々当たらないって噂だぞ」

 

ミルフィーユ「そうなんですよ~♪でも、反対に酷いときもありますよ」

 

拓哉「どんな?」

 

ミルフィーユ「この間、宇宙ぬか漬けを作ったんですけど、ナスがお皿の上で踊っちゃって」

 

拓哉「…はい?」

 

ミルフィーの言葉に、俺は変な声を出した。

 

ミルフィーユ「カブも飛び跳ねちゃって、玉ねぎは爆発しちゃうし」

 

拓哉「凄いな。けど、それはそれで面白そうだな」

 

ミルフィーユ「えっ」

 

拓哉「確かに、運が悪い時は大変だけど、それでも面白そうだと思うぞ?」

 

ミルフィーユ「で、でもそれで色んな人にも迷惑かけてますし…」

 

拓哉「けど、誰も怒ってないんだろ?」

 

ミルフィーユ「それは…そうですけど」

 

拓哉「ならいいじゃないか?誰も怒ってないならさ」

 

そう言いながら、ミルフィーの頭を撫でてあげた。

 

ミルフィーユ「ふぇ!?」

 

拓哉「そんな深く考えるな。そんな事があっても怒ってないのは、皆ミルフィーの事が好きなんだよ」

 

ミルフィーユ「///」

 

拓哉「だから心配するな。もし、一人になったりしたら、俺が助けてやるよ♪」

 

ミルフィーユ「拓哉さん」

 

拓哉「さて、話はここまでだ。急いで砂赤星に向かうぞ」

 

ミルフィーユ「はい♪」

 

ミルフィーは、嬉しそうに返事をしながら、俺の胸にもたれかあったのである。

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とある船

 

 

「どうするのよ!!この船にはシールドもビーム砲も無いのよ!!」

 

茉莉香「…そうだ!太陽の光をライトニングイレブンにぶつけましょう!!そうすれば、光学照準は見えなくなる筈です!!」

 

「そうか!!」

 

茉莉香「座標の計算お願い!!」

 

すると、黒髪で眼鏡を掛けた女の子が計算を始める。

 

「これでいい?」

 

茉莉香「ありがとう!」

 

そして、マストを動かして太陽の光を反射させる。

 

「…撃ってこないわね」

 

「当たった?」

 

茉莉香「溶けなくてもいいの。照準機さえ狂わせれれば」

 

そう願っていると、レーダーに反応がある。

 

「レーダー反応確認。数3隻」

 

茉莉香「えっ?」

 

「1隻は…海賊船弁天丸」

 

『おおっ♪』

 

「そして、海賊船バルバルーサと…ラッキースター?」

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拓哉「あれか!」

 

リーラからの情報が正しければ、あれが茉莉香が乗っている船だな。

 

拓哉「まずいな。あの船攻撃を受けてるな」

 

ミルフィーユ「任せて下さい!!ラッキースターで、バーンっとやっちゃいます!!」

 

拓哉「やっちゃ駄目でしょ!!威嚇射撃にしなさい」

 

俺は、ミルフィーのホッペをつねりながら言う。

 

ミルフィーユ「ふぁ~い」

 

ミルフィーも返事をする。

 

ミルフィーユ「それじゃあいきますよ!!ハイパーキャノン!!」

 

ラッキースターから、物凄いビームが発射された。

 

拓哉「すげ~」

 

ミルフィーユ「エヘヘ♪」

 

拓哉「さて、取り合えずあの船に乗り込むか」

 

ミルフィーユ「どうやって乗り込むんですか?宇宙服は持ってませんよ?」

 

拓哉「それについては心配ない。リーラがこれを持たせてくれた」

 

俺は、リーラから受け取った拳銃みたいな物をミルフィーに見せた。

 

ミルフィーユ「何ですかそれ?」

 

拓哉「リーラの話では《テキオー灯》って言うらしい。これを浴びれば、二十四時間どんな環境の場所でも、平気になれるそうだ」

 

ミルフィーユ「スゴいですね♪」

 

取り合えず、俺達はテキオー灯を浴びる。

 

拓哉「ラッキースターは、船に縛り付けておこう」

 

ミルフィーユ「分かりました」

 

拓哉「なら、通信をいれるか」

 

俺は船に通信をいれる。すると、茉莉香が出た。

 

茉莉香『拓哉さん!?』

 

拓哉「どうやら無事みたいだな」

 

茉莉香『何でここにいるんですか!!』

 

拓哉「詳しい事は中で話す。出来れば、ドッキングポートを開けてくれ」

 

茉莉香『えっと・・・部長いいですか?』

 

『構わないわよ。私も詳しいお話を聞きたいしね』

 

そして、俺とミルフィーユは茉莉香がいる船の中に入ったのであった。そのままブリッジに向かう。

 

拓哉「無事か茉莉香」

 

茉莉香「はい。けど、何で拓哉さんが?」

 

拓哉「新奥浜にいる俺のメイドが、茉莉香が変な連中に襲われていると聞いてな。ミルフィーの力を借りて助けに来たってわけ」

 

茉莉香「そうだったんですか。後ろの人がミルフィーさん?」

 

ミルフィーユ「はい♪ムーンエンジェル隊所属のミルフィーユ・桜葉です♪」

 

「ムーンエンジェル隊って、あの白き月の護衛をしている」

 

ミルフィーユ「そうですよ」

 

拓哉「そんな簡単に話していいのかよ」

 

そんな事を言ってると、後ろから声をかけられた。

 

「お久し振りです拓哉さん」

 

振り替えると、そこにいたのは・・・

 

拓哉「ジェニー!?」

 

ジェニー「はい」

 

そこにいた人物に驚く。

 

拓哉「そう言えば、ヨット部だったって言ってたな」

 

ジェニー「今回は、ヨット部の練習航海なんです」

 

拓哉「なるほど。そして、横にいるのが彼女って訳か」

 

ジェニー「そうです」

 

すると、横にいた女性が俺に話しかけてきた。

 

「あ、あの!この前はありがとうございました!!」

 

拓哉「この前?」

 

「はい。駅前で絡まれてるのを助けてもらいました!!」

 

拓哉「・・・ああっ!!あの時の!!まさか、ジェニーの彼女だったとは」

 

ジェニー「拓哉さん、リンと知り合いだったんですか?」

 

拓哉「いや、この前駅前を歩いてたら、ヤンキーに絡まれててな」

 

リン「その時に助けてもらったんだよ」

 

ジェニー「へ~そうだったの」

 

そんな話をしてると、通路から男性と女性がやって来た。

 

「貴方ですね。危ないところを助けて下さったのは」

 

「生徒に怪我がなくて安心しました」

 

拓哉「いえいえ。俺は加藤拓哉です」

 

「顧問の《ケイン・マクドゥガル》です」

 

「医師の《ミーサ・グランドウッド》よ。ところで、1つ聞きたいんだけど」

 

拓哉「はい?」

 

ミーサ「名字が加藤って言ってたけど」

 

拓哉「ええ。そこにいる加藤茉莉香とは、親戚ですよ」

 

ミーサ「やっぱり。梨理香から聞いたことあったけど。貴方がね」

 

拓哉「では改めて・・・加藤家次期当主の加藤拓哉です」

 

ミーサ「まさか、世界の3分の2を締める加藤家の次期当主とお会いするとはね」

 

拓哉「あはは・・・」

 

ジェニー「拓哉さんは、一応私の婚約者です」

 

『ええええええええええええええええええええ!!!!!!!!????????』

 

その言葉に、全員が驚いた。特に驚いてたのがリンであった。

 

リン「どういう事だよ!!」

 

ジェニー「落ち着いてリン。確かに婚約者だけど、拓哉さん自身は嫌なら無理に結婚しなくていいと言ってくれてるの」

 

リン「そうなのか?」

 

拓哉「ああ。婆ちゃんにも『無理矢理は駄目』って言われてるしな。それに、ジェニー本人から、『今は恋人がいる』って聞いてるし」

 

リン「ジェニー」

 

ジェニー「もし、リンOKなら二人とも婚約者なるのもありなのよ」

 

拓哉「ありっちゃありだが・・・加藤家は、一夫多妻もOKだけどさ」

 

茉莉香「そう言えば・・・」

 

「どしたの茉莉香?」

 

茉莉香「私も、婚約者候補に入るって、お婆ちゃんから聞いた」

 

拓哉「マジかよ!?婆ちゃん、マジで話してるじゃん」

 

俺は思わず頭を抱えて、椅子に座り込んでしまった。

 

ミルフィーユ「いいな~」ボソッ

 

小さくミルフィーが呟いた。その言葉は、誰にも聞こえなかったのであった。




リン・ランブレッタ(モーレツ宇宙海賊)


ケイン・マクドゥガル(モーレツ宇宙海賊)


ミーサ・グランドウッド(モーレツ宇宙海賊)




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10話

ミルフィーのお陰で、何とか茉莉香達を助ける事が出来た。しかし、驚いた事に茉莉香達が乗っていた船は、昔は海賊船だったらしく、オリジナルセブンの生き残りだそうだ。

 

拓哉「まさか、あの船が元海賊船だったとはな」

 

ミルフィーユ「驚きですよね~」

 

俺とミルフィーは、あの後茉莉香達と別れた。帰り際に、弁天丸の船医と操舵主の二人に、後日改めて船に招待すると言われた。そのまま俺達は白き月に帰ってきた。

 

ミルフィーユ「ただいま戻りました~♪」

 

拓哉「ただいまリーラ」

 

蘭花「お帰りミルフィー。拓哉さんに迷惑掛けなかったでしょうね?」

 

リーラ「お帰りなさいませ」

 

ミルフィーユ「大丈夫だよランファ」

 

拓哉「あぁ。キチンと俺を運んでくれたぞ♪」

 

俺はミルフィーの頭を撫でながら言う。

 

ミルフィーユ「エヘヘ♪」

 

拓哉「さて、俺達も帰るか」

 

リーラ「そうですね」

 

拓哉「シャトヤーン、色々と助かった。困ったことがあれば、また連絡してくれ」

 

シャトヤーン「はい。分かりました。道中お気をつけて」

 

拓哉「ムーンエンジェル隊の皆もありがとうな。また会おうぜ」

 

別れを言って、俺達は家に帰っていった。翌日、学校に行くと昇降口前に人だかりができていた。

 

拓哉「何かあったのかな?」

 

リーラ「そうですね」

 

俺とリーラは、人混みを掻き分けて進んでいく。すると、張り紙が張ってあった。

 

拓哉「何々?【GW明けに、他校と合併することになりました。生徒達は、少し早いですがGWを楽しんで下さい。新しい校舎の場所は地図に記載していますので。理事長】はぁ!?」

 

思わず叫んでしまう俺であった。すると、兵藤達がやって来た。

 

一誠「オッス拓哉」

 

裕斗「お早う拓哉君」

 

朱乃「お早うございます。拓哉君」

 

アーシア「お、おはようございます!!」

 

小猫「どうもです」

 

リアス「おはよう拓哉」

 

オカルト連中が勢ぞろいだ。オカルト研究部の連中とは、焼き鳥との一件で俺やリーラ達をあいつらと違うと思ったらしく、あれ以来以前より話すようになった。

 

拓哉「オカルト部員がお揃いで。ところで、これはどういう事ですか?リアス先輩」

 

リアス「私も突然お兄様から聞かされたのよ。何でも、複数の学校と合併するそうよ」

 

拓哉「何でまた?」

 

リアス「それは分からないわ。それと、今日からグレイフィアが、貴方の家に住むそうよ」

 

拓哉「・・・聞いてないぞリーラ」

 

突然の事に俺はリーラを見る。

 

リーラ「申し訳御座いません。夕食の時にご説明する予定でしたので」

 

深々と頭を下げながら謝るリーラ。

 

拓哉「別にそこまで怒ってないさ。とはいえ、かなり大型連休になったな」

 

小猫「そうですね。10日間の休みになりました」

 

リアス「突然の事だから、予定を考えてないわ」

 

拓哉「誰もがそうだろ。取り合えず帰るか。じゃあな」

 

そして、リーラと一緒に家に帰るのであった。家に戻り、リビングでソファーに座ってテレビを見てると、チャイムが鳴る。ロベルタが出ると、どうやらグレイフィア来たみたいだ。

 

グレイフィア「今日から、此方でお世話になる《グレイフィア・ルキフグス》です。宜しくお願いします」

 

拓哉「宜しくグレイフィア。けど、流石に部屋の数が足りなくなってきたな」

 

今家には結構な人数が住んでいる。俺、リーラ、ロベルタ、森さん、アンジェラ、セイバー、ライダー、グレイフィアだ。

 

グレイフィア「それについては、心配ありません」

 

拓哉「??どういうことだ?」

 

グレイフィア「サーゼクス様とフォーベシィ様、そしてユーストマ様とアザゼル様が、明日この家を建て直すそうです」

 

拓哉「いいのか?」

 

グレイフィア「はい。既に、かぐや様と豪昌様の許可は頂いております」

 

拓哉「なら、明日から家を空けないとな」

 

グレイフィア「夕方には、全て完了しておりますので」

 

拓哉「・・・ホント魔法って便利だな」

 

そんな事を思いながら、今日はグレイフィアの歓迎会を行うのであった。そして翌朝、俺は皆に暇を出し、それぞれ自由に過ごす様に言った。俺も俺で、町に繰り出していた。すると、女性三人が不良に絡まれていた。

 

「や、やめて下さい」

 

「別にいいだろ?丁度3対3なんだしよ」

 

「しつこいな~。私達は用があるって言ってるでしょ!」

 

「それに俺達も付き合うって」

 

「はうぅぅぅ」

 

見過ごすのも癪なので、俺は声をかける。

 

拓哉「・・・やれやれ。あんまりしつこいと嫌われるぞ?」

 

「あん?誰だテメェ」

 

「俺達が誰か分かってんのか?」

 

「俺達は、加藤家のもんだ。俺達に楯突くって事は、当主の雷堂様に楯突くって事だぞ」

 

その名前を聞いた瞬間、俺の中で何かが弾けた。

 

拓哉「・・・あいつが当主?笑わせるな」

 

「なっ!?何だと!!」

 

拓哉「あいつが当主な訳ないだろ。そもそも、破門された身分だぞ?」

 

「う、嘘を言うな!!」

 

拓哉「なら、当主としての物は持ってたのか?加藤家当主には、ある物が渡される筈だが?」

 

そう言いながら俺は、持ってる刀と指輪見せつける。

 

拓哉「当主は、この《荒鷹》と加藤家の家紋が刻まれた指輪を持ってるはずだが?」

 

俺は持ってる荒鷹を見せる。

 

「ま、まさかお前は!!」

 

拓哉「お前らに名乗る名前などない…死にたくなきゃさっさと消えろ!」

 

『ヒエエエエエエエエッッッッッッ!!!!!!』

 

覇気を軽く出すと、すると男達は蜘蛛の子を散らすよう逃げていった。

 

拓哉「・・・大丈夫か?」

 

「は、はい」

 

「た、助かりました」

 

「えっと・・・あ、ありがとうございます」

 

拓哉「気にするな。気を付けて帰れよ」

 

俺はそのまま帰ろうとしたが、3人の女の子に呼び止められる。

 

「あの!どうかお礼をさせて下さい!!」

 

「わ、私からもお願いします!!」

 

拓哉「お礼って言われても」

 

断ろうとしたが、金髪の女の子にしがみつかれる。

 

「別にいいでしょ?」

 

拓哉「・・・分かった」

 

結局俺が折れて、女の子達と近くのファミレスに行くのであった。

 

「そう言えば、自己紹介してませんでしたね。私の名前は西野つかさです」

 

「えっと・・・東城綾です」

 

「わ、私は・・・その・・・む、向井こずえです」 

 

拓哉「加藤拓哉だ」

 

綾「えっと・・・拓哉さん」

 

拓哉「なんだ?」

 

こずえ「そ、その刀は・・・」

 

拓哉「ああ、本物だ」

 

つかさ「本物なの!?普通に銃刀法違反じゃん!!」

 

まぁ当然そう言うよな。

 

拓哉「本来ならそうだが、俺は加藤家の人間だ。普通に許可されてる」

 

こずえ「で、でも、それで人を・・・」

 

拓哉「向井さんの言いたい事は分かる。もしそんな事が起きれば、当主剥奪のうえに破門、そして直ぐに刑務所行きだ。加藤家は、余程の事がない限り刀や銃は使わない。もっとも、犯罪者とかさっきみたいな連中は例外だがな」

 

そう言うと、少し気まずい雰囲気になった。

 

拓哉「あくまで最悪の場合だ。普段は、威嚇目的だよ」

 

綾「そ、そうなんですか」

 

つかさ「びっくりした~!」

 

俺の言葉を聞いて、3人は息を吐いた。

 

つかさ「拓哉さんって、随分大人に見えますけど?」

 

拓哉「年齢は二十歳だ。だが、学生だぞ?」

 

こずえ「大学生ですか?」

 

拓哉「いや。高校2年だ」

 

その言葉に、3人は驚いていた。

 

拓哉「昔色々あってな。この年齢になって、学校に通えだしたんだよ」

 

つかさ「色々って?」

 

拓哉「・・・簡単に言えば、キチンと小・中通えなかったな」

 

つかさ「!?ご、ごめんなさい」

 

何かを感じたのか、西野はすぐに謝った。

 

拓哉「気にする事はない。西野が考えてる事より少し違うと思うがな。今は、学校が合併する事になったから、少し早いGWだ」

 

こずえ「そ、そうなんですか?」

 

綾「けど、私達の学校も合併する事になったよね?」

 

つかさ「案外、拓哉さんとの学校だったりして♪」

 

拓哉「いくらなんでも、それないだろ?」

 

つかさ「フフッ♪確かにそうですね」

 

そして俺達は、楽しく話をした。夕方になったので、俺達はファミレス前で別れた。その時に、3人とアドレスを交換した。

 

拓哉「今日は久々に楽しかったよ」

 

つかさ「私もです♪」

 

綾「またよかったら、ご一緒しませんか?」

 

こずえ「さ、賛成です!」

 

拓哉「ハハッ、またいつかな」

 

『それじゃあ、失礼します』

 

拓哉「気を付けて帰れよ」

 

そして俺達は別れた。俺も空を見上げながら家路を急ぐのであった。因みに家に帰ると、かなり桁外れな豪邸が建っていたのであった。




西野つかさ(いちご100%)


東城綾(いちご100%)


向井こずえ(いちご100%)


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11話

GW大型連休3日目、特に予定もないので散歩に出ている拓哉であった。

 

拓哉「いい天気だな。まさしく散歩日和だ」

 

そんな事を呟きながらブラブラ歩いてる。すると、いきなり女性が話しかけてきた。

 

「ちょっとそこのあなた。これ買ってきて」

 

拓哉「はっ?」

 

いきなりそんな事を言われて、思わずそんな言葉を出してしまった。

 

拓哉「なんで俺がそんな事しなきゃならないんだ?」

 

「あんたが男だからよ。男は私達女に貢しか能がないじゃないのよ」

 

拓哉「はぁ…(やれやれ、IS国の女尊男卑がここまで来たか)。悪いが断る」

 

そう言うと、女は更に態度をデカくする。

 

「あんたに拒否する権利なんてないのよ。分かったらさっさと行きなさい」

 

拓哉(だんだんイライラしてきたな。ISなんて変なの作らなきゃこんな世界にはならなかったのにな)

 

IS、通称インフィニット・ストラトス。これを発明した人物篠ノ之束にムカついてきた。

 

拓哉「たかが女1人に、加藤家の当主が舐められたものだな」

 

殺気を出しながらそう言うと、女は少しビビっている。

 

「な、なによ…」

 

拓哉「言いたくなかったが、たかが女が随分と舐めた真似してくれるな?この町で赤の他人がそんな事言っても、変な目で見られるだけだぞ?ここには女が偉いって思ってる奴は誰一人いないんだからな」

 

「!!」

 

そう言われ、周りを確認するとほとんどの人が女を軽蔑の目で見ていた。

 

「くっ!覚えてらっしゃい!!」

 

そう言い残して、女は逃げて行った。

 

拓哉「ったく、IS作った奴一発くらい殴ってやりたい気分だ」

 

そして散歩の続きを始めた。堪能して家に戻ると、リーラとグレイフィアが出迎える。

 

「「お帰りなさいませ拓哉様」」

 

拓哉「ただいま。何か変わった事はなかったか?」

 

リーラ「えっと…」

 

すると、2人とも気まずそうな表情になる。

 

拓哉「何かあったのか?」

 

グレイフィア「実は…」

 

話を聞くと、ロベルタが買い物に行った時倒れている女性を見つけ、家に連れてきたそうだ。それだけならよかったのだが、連れてきた人物が問題だったのだ。それは…

 

拓哉「まさか、ロベルタが連れてきた人物がISの生みの親の篠ノ之束だとはな」

 

ベットで寝てる人物を見ながらそう言う。

 

リーラ「如何なさいますか?」

 

拓哉「普段なら放っておくけど、今日は少しな」

 

グレイフィア「何かございましたか?」

 

聞かれたので、拓哉は町で起きた事を説明した。すると…

 

リーラ「すみません拓哉様。少し用意を思い出しましたので…」

 

ロベルタ「リーラさん、お付き合いいたします」

 

そんな話をする2人だが、その手には拳銃などが握られていた。

 

拓哉「落ち着け2人とも。もうその女の事は気にするな」

 

「「ですが!!」」

 

拓哉「いいから!」

 

少しキツ目に言う。すると2人は落ち着いた。

 

拓哉「取り敢えず、こいつ(篠ノ之束)が目を覚ますまで見張っててくれ。起きて暴れそうになったら任せる」

 

「「「かしこまりました」」」

 

そして拓哉は部屋を出て行った。そして夜になり、リビングでお茶を飲んでると見張っていたロベルタが束を連れてやって来た。

 

拓哉「目を覚ましたか」

 

束「誰だよお前」

 

そんな言葉を発した瞬間、束はロベルタに地面に叩き付けられ、リーラ達に拳銃を突きつけられた。

 

束「何するんだよ!!」

 

リーラ「それはこちらのセリフです」

 

束「ただの一般人が天才束さんに手を出すなんて馬鹿なの?」

 

拓哉「天才ねぇ」

 

すると拓哉が倒れてる束の側に行き、しゃがみ込む。

 

拓哉「あんたが天才かどうかは知らないが、全世界の三分の二を占めてる加藤家に喧嘩を売るって事でいいんだな?」

 

束「か、加藤家!?」

 

その言葉を聞いて、流石の束も驚いていた。

 

拓哉「悪いけど、あんたの事は色々と調べさせてもらったよ。リーラ」

 

リーラ「はい。彼女の名前は篠ノ之束22歳、ご家族は父親、母親、妹が1人おられます」

 

拓哉「妹がいたのか」

 

リーラ「はい。妹の名前は篠ノ之箒、年齢は現在14歳です」

 

束「箒ちゃんに手を出すな!!」

 

妹の名前を聞いた瞬間暴れだす束。

 

ロベルタ「暴れるな!!」

 

ロベルタが束を床に叩き付ける。

 

束「ぐっ!!」

 

拓哉「リーラ、続きを頼む」

 

リーラ「篠ノ之束には、織斑千冬と織斑一夏という友人がおられます」

 

拓哉「織斑千冬…第一回モンド・グロッソ優勝者だったよな?確かあだ名はブリュンヒルデだったな」

 

リーラ「その通りです。そして…」

 

続いてリーラはこう言い放った。

 

リーラ「過去にあった『白騎士事件』の主犯者でもあります。そこにいる篠ノ之束と」

 

その言葉を聞いた瞬間、束は言葉を失った。

 

束「なんで…お前らが…」

 

グレイフィア「加藤家の力を舐めないで下さい。今現在、織斑千冬はドイツにいるのも把握済みです」

 

束「そんな…」

 

束は、この世の終わりの様な顔をしていた。

 

拓哉「本来ならここまでしないが、あんたがISを作ったおかげで、世界の半分は女尊男卑が激しくなってるんだよ」

 

束「そんな…それは束さんのせいじゃ」

 

拓哉「確かにそうかもしれないが、ISを作らなければこんな事にはならなかったんじゃないのか?」

 

束「……」

 

とうとう束は黙ってしまった。

 

拓哉「ふ~…」

 

立ち上がり椅子に座ろうとした瞬間、拓哉が叫ぶ。

 

拓哉「伏せろ!!」

 

そう叫んだ瞬間、リビングの窓が爆発した。

 

リーラ「これは!?」

 

ロベルタ「一体何事ですか!!?」

 

グレイフィア「拓哉様!!ご無事ですか!!!」

 

拓哉「無事だ!!リーラ、篠ノ之は?」

 

リーラ「ご無事です!」

 

すると、爆発した窓から誰かが入って来た。

 

「見つけたわ。まさか、ここに篠ノ之博士がいるとは驚きだけどね」

 

拓哉「お前は!?」

 

「覚えてるかしら?今日貴方に馬鹿にされた顔を」

 

そこにいたのは、昼間拓哉に絡んできた女であった。

 

拓哉「どうやってここを調べたかはいいが、何か用か?」

 

「ええ、貴方に死を届けに来たのよ!!」

 

その瞬間、女は拓哉に襲い掛かる。

 

拓哉「うおっ!?」

 

リーラ「拓哉様!!貴様!」

 

拳銃を女に向けて撃つが、纏っている機械に塞がれる。

 

リーラ「なっ!?」

 

「たかが拳銃でISに傷を付けれる訳ないでしょう」

 

グレイフィア「あれがIS…初めて見ました」

 

拓哉「だろうな。この町では見ないだろうな」

 

「何をブツブツ言ってるの!貴方は私を馬鹿にしたのだから、死んで償いなさい!!!」

 

拓哉「面倒だな…」

 

そんな事を呟きながら相手の攻撃を避けていく。

 

「この!当たりなさいよ!!」

 

拓哉「何でわざわざアンタの攻撃を当たってやる義理はないぞ」

 

「ふざけるな!!」

 

更に攻撃の速度を早める。

 

拓哉「やれやれ…」

 

そのまま外に出る拓哉。当然女もそれを追いかける。

 

拓哉「これでいいか」

 

すると横にあった電柱を引っこ抜く。

 

「はっ?」

 

拓哉「拳銃が効かないISに、こんな攻撃が効くかは分からないが…な!!」

 

すると、持っていた電柱を女目掛けて投げる。

 

「くっ!!」

 

素早く避ける。しかし目の前に拓哉の姿があった。

 

拓哉「オラッ!!」

 

「きゃあ!!」

 

蹴りを一発いれて女は吹き飛んだ。

 

束「ウソ…普通の人間がISを押してるなんて」

 

リーラ「流石は拓哉様です」

 

グレイフィア「あの女、拓哉様を舐めすぎです」

 

女性陣はそんな話をしながら、拓哉と女の戦いを見ていた。

 

拓哉「どうした?俺は傷1つついてないぞ?」

 

「はぁ…はぁ…ば、馬鹿にして!!」

 

拓哉「お前、女尊男卑の連中だろ」

 

「それがどうしたのよ!男は女に尽くして生きていけばいいのよ!!」

 

拓哉「そうかよ。スゥ~…」

 

そう聞いた瞬間、拓哉は大きく息を吸い込んだ。

 

リーラ「いけません!皆さん耳を塞いで下さい!!」

 

束「ど、どういうこと?」

 

リーラ「いいですから早く!!」

 

そう言われて、グレイフィア達は耳を塞ぐ。

 

「死ねえええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

女は動かない拓哉に突っ込んで来る。しかし次の瞬間、拓哉はニヤリと笑った。

 

拓哉「サウンドバズーカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」

 

叫んだ瞬間、拓哉の周りに物凄い衝撃波が生まれた。

 

「な、なんな…きゃああああああああああああ!!!!!!!!!」

 

束「なにこれ~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!?」

 

アンジェラ「み、耳が痛い~!!!!」

 

拓哉「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!」

 

リーラ以外の連中は、あまりの大きな声に悶えていた。そして、女が纏っているISから軋む音が聞こえISは壊れたのであった。

 

束「うそ…ISが壊されるなんて」

 

リーラ「IS等、拓哉様の前では鉄くずも同然です」

 

「ば、馬鹿な!!?」

 

女は未だ混乱しているが、拓哉は容赦なく女を殴り飛ばす。

 

拓哉「ふぅ……チョーシにのった罰だ」

 

そして女はかなりの距離を転がっていき、ようやく停止したのであった。

 

拓哉「おいリーラ、あの女を女尊男卑の連中の所に送り返しておけ。手紙付きでな」

 

リーラ「かしこまりました」

 

拓哉「さて…」

 

拓哉はリーラにそう言うと、束の側にやって来た。

 

束「ひっ!」

 

先程とは打って変わって、拓哉にビビっている束である。

 

拓哉「そんなにビビるな。最初はISを作ったお前を一発殴ってやろうと思ったけど、あいつを殴ってチャラだ」

 

束「そ、そうなの?」

 

拓哉「ああ。でだ、あんたはこれからどうするんだ?」

 

束「どうするって…」

 

拓哉の言葉に、束はどうするか考える。

 

リーラ「拓哉様」

 

するとリーラが戻って来た。

 

拓哉「ん?」

 

リーラ「篠ノ之様の事もそうですが…この状態をどうなされるのですか?」

 

そう言われながら、リーラが手で刺した方を見ると、見事に崩壊した我が家の姿があった。

 

拓哉「……」

 

それを見て、さすがの拓哉も言葉を失うのであった。




篠ノ之束(インフィニット・ストラトス)


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12話

自分の家が崩壊して、拓哉達はこれからどうするか屋根のない部屋で話し合っていた。

 

拓哉「さて、マジでどうするかな。折角サーゼクス達が建ててくれたけど…」

 

グレイフィア「そうですね…」

 

リーラ「拓哉様、この際丁度いい機会と思われますので、新しく建設されては如何かと」

 

拓哉「新しく建設するって言っても、この土地だとそこまで大きな家は建てれないぞ?地下も二階までが限度だし」

 

そうなのだ。今現在拓哉達が住んでいる場所は、普通の一軒家が建てるくらいのスペースだ。

 

リーラ「それに関してはお任せください。既に豪昌様にご連絡をいれております」

 

拓哉「流石だなリーラ。ついさっきの出来事にもう対応してるんだな」

 

ロベルタ「流石ですリーラ様」

 

グレイフィア「はい、私も見習いたいと思います」

 

メイド達は、リーラの仕事の素早さに感動していた。そしてリーラは、懐から紙を取り出した。

 

リーラ「そして先程豪昌様からの使いの方が持って来られた手紙です。ここに、拓哉様の新しい住まいの場所が載っています」

 

拓哉「なら、さっさと引っ越しの準備をするか。各自無事な荷物を集めて無事な車に積み込め」

 

『かしこまりました』

 

中にいたセイバー達も出てき、手伝いの準備を始めた。

 

ライダー「ところで拓哉、この女はどうします?」

 

ライダーに言われ振り向くと、そこには篠ノ之束がいた。

 

拓哉「すっかり忘れてた」

 

束「ヒドッ!!束さんの事忘れてたの!!?」

 

拓哉「悪い。さて、あんた自身はどうするんだ?」

 

束「どうするって…」

 

拓哉の言葉に束は戸惑う。

 

拓哉「俺は別にもうどうでもいいが、あんた自身は今まで逃げてたんだろ?」

 

束「うん…世界各国の連中が、ISコアを寄越せとか、もっといい機能のやつを作れとか言ってくるんだよ。正直言って毎回しんどいんだよ」

 

拓哉「なるほどな…ってか、さっきと喋り方違くないか?」

 

先程と違い、強い口調から弱めの口調になっていた。

 

束「本来はこれが素なんだよ。ああでもしないと、馬鹿な連中とまともに付き合えないよ」

 

拓哉「なるほどな…」

 

すると拓哉は何かを考え始める。

 

拓哉「リーラ!」

 

リーラ「はい」

 

拓哉「…こいつに地下でもいいから、ラボを用意してやってくれ。ウチで匿う」

 

束「!?」

 

リーラ「かしこまりました」

 

拓哉の言葉にリーラは頷き、束は驚いていた。

 

束「えっ!!?」

 

拓哉「悪いが、これからアンタにはウチに住んでもらう。ウチに色々と貢献してもらう代わりに、あんたの研究費や安全はこちらが保証しよう。どうだ?」

 

束「本当に…いいの?」

 

拓哉「ああ。あんたがいいならな」

 

そう言うと、拓哉は束に手を差し出す。

 

束「うぅ…グスッ…」

 

そして束は拓哉が差し出してた手を握り、泣き出したのであった。

 

拓哉「今は泣けばいい。辛かったんだな」

 

束「うわああああああああああああああん!!!!!!!!!!!!!」

 

そして暫く束は泣き叫ぶのであった。

 

拓哉「落ち着いたか?」

 

束「うん…ありがとう」

 

拓哉「気にするな。さて、荷物は纏め終わったみたいだし、そろそろ出発するか。黒歌!」

 

黒歌「にゃん♪」

 

呼ぶと拓哉の肩に飛び乗る黒猫。

 

束「随分懐いてるね」

 

拓哉「ああ。黒歌も拾ったけど、それ以来すっかり懐かれてな」

 

黒歌「にゃあ♥」

 

首元を撫でると、ゴロゴロと音を鳴らし嬉しそうにする黒歌。

 

リーラ「拓哉様、準備が整いました」

 

拓哉「それじゃあ出発するか。無事な車も二台だけだったか」

 

グレイフィア「残念ですが…あの襲撃で、残りの二台は破壊されておりました」

 

拓哉「別にいいさ。この人数と荷物が乗ればな」

 

そして、無事だった荷物と拓哉達は車に乗り込み、新しい住まいに向けて出発したのであった。新しい住まいの場所に向かっている拓哉達。

 

拓哉「随分と走るんだな」

 

リーラ「はい。GWが終わってから新しく通うことになる学校からは遠くなりますが」

 

拓哉「そう言えばそうだったな。まさか、3校と一緒になるなんてな」

 

GW前に発表された事を思い出していた。

 

束「ところで、本当に何処に向かっているの?たしかこのままいけば海に出るはずだけど」

 

リーラ「ご心配ありません」

 

拓哉「取り敢えず、リーラ達は行き先を知ってるんだ。任せていい…」

 

そこまで言うと、拓哉は何かの気配を感じた。

 

グレイフィア「拓哉様?」

 

拓哉「リーラ、ロベルタ達の後ろにいるトラックに気を付けろと伝えてくれ」

 

リーラ「…何か気づいたのですか?」

 

拓哉「ああ、あのトラック、ウチを出て高速に乗る前からずっとついて来てる。そして、さっきから物凄い殺気を感じるんだよ」

 

リーラ「まさか!?」

 

その言葉に、リーラは嫌な予感がした。

 

拓哉「リーラが思ってる通りだ。俺の糞オヤジ達の加藤家と、悪魔の気配を感じる」

 

グレイフィア「悪魔までですか!!?」

 

今度はその言葉にグレイフィアが驚く。

 

拓哉「ま、後ろの車には、ロベルタやティア、セイバー達が乗ってるから安心だけどな」

 

そんな話をしてると、トラックがスピードを上げてきた。

 

拓哉「来たか」

 

そう呟いたと同時に、後ろに控えていたロベルタ達が応戦する。

 

拓哉「やってるな」

 

束「ってかやり過ぎでしょ!?」

 

拓哉「あれくらいしないと、あのバカ達は懲りないのさ」

 

束「いや、だからって…」

 

見ると、窓からロベルタが何処から取り出したか分からないが、ガトリングガンでトラックの横を撃つ。セイバーは車の屋根に上って、撃ってくる銃弾を斬りおとしていた。

 

束「ねぇ」

 

拓哉「なんだ?」

 

束「あの人たち人間なの?」

 

拓哉「今応戦してるロベルタ達は人間だぞ?グレイフィアは悪魔だけどな」

 

グレイフィア「はい」

 

束「おかしいでしょ君達!!」

 

束からそんなツッコミをされる拓哉達であった。そんな話をしている間に、ロベルタ達がトラックを始末し終わっていたのであった。



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13話

少しトラブルがあったが、大きな被害はなく拓哉達を乗せた車は走っていた。

 

リーラ「皆様、もうすぐ新しい新居に到着いたします」

 

拓哉「もうすぐか」

 

束「随分走ったね」

 

グレイフィア「ですが、見渡す限り住めそうな建物は見当たりませんが?」

 

グレイフィアの言葉通り、周りは山と海が見えるが、住めそうな建物はなく民宿などがチラホラある程度だ。するとリーラは、車を海に向けて走らせる。そして見えてきたのは、何もない海に面した場所だった。

 

拓哉「リーラ、こんな所で止まってどうするんだ?」

 

リーラ「少々お待ちください」

 

するとリーラは車から降り、周りに人などがいないことを確認する。すると地面から機械が出てきた。

 

リーラ「拓哉様、申し訳ありませんがこちらに来ていただいてよろしいですか」

 

リーラに言われるまま、拓哉も車から降り出てきた機械の前に立つ。

 

リーラ「この機械で、拓哉様の指紋、声紋、眼球を登録いたします。既に私のは登録されておりますが、次回から拓哉様か私がいなければ反応しないようになりますので」

 

拓哉「なるほど」

 

そして言われるまま、声紋、指紋、眼球を登録していく。

 

『登録を完了いたしました。登録者本人加藤拓哉様、ようこそいらっしゃいました。これからよろしくお願いします』

 

そう言い終わると、機械は地面に引っ込み代わりに地面が大きく開く。

 

拓哉「これは…」

 

リーラ「このまま下に下がりますので、私達も車に戻りましょう」

 

そして、車2台は地面に消えていった。地面を暫く進んでいくと、車を固定してる土台が停止した。

 

拓哉「着いたのか?」

 

リーラ「はい。トンネルの移動はここで終わりです。もう少し走りますがもうじき到着致します」

 

そして、トンネルから出ると周りは大きな街中だった。

 

拓哉「おいおい、街中に出て大丈夫なのか?」

 

リーラ「はい、よく見ていただければ分かると思いますが、この街は随分前から人は住まれておられません」

 

束「みたいだね。建物も朽ち果ててるし道路もひび割れてる場所もあるね」

 

外を見ると、確かに建物は人が住める状態ではなかった。

 

リーラ「その通りです。豪昌様は、数年前にこの島を購入なされました。そして今回、拓哉様のご自宅が半壊した為、この島をお譲りする事にしたのです」

 

拓哉「なるほど。けど、街がこの状態じゃこれから住む家は大丈夫なのか?」

 

拓哉が言う事は尤もだ。話を聞けば島には、この様な場所がいくつもあるそうだ。

 

リーラ「それに関しては心配ございません。拓哉様達が住まわれるご自宅は、豪昌様やその使用人達が綺麗に改装して管理しておりますので、いつでもすぐに住めるように」

 

グレイフィア「そうなのですか?私達はその様な事はしておりませんが?」

 

リーラ「それは当然です。その管理をしているのは、豪昌様直属の使用人達ですので」

 

拓哉「結構な人数が管理してるのか?」

 

拓哉の質問に、リーラは首を横に振る。

 

リーラ「いえ、その屋敷を管理しているのは1人です。そして、本日からその使用人は拓哉様直属になります」

 

拓哉「新しい家族が増えるのか。それは楽しみだな」

 

嬉しそうな表情をしながら、目的の屋敷に向かうのであった。そしてようやくこれから住む屋敷に到着すると、玄関にメイド服を着た女性が立っていた。

 

「お待ちしておりました拓哉様」

 

女性は拓哉達を出迎える。

 

拓哉「あんたがここを管理し、爺ちゃんの使用人だった人か?」

 

「はい、その通りです。私は、ここを管理しており本日から拓哉様に仕える事になりました大和と申します」

 

拓哉「知ってるとは思うけど、加藤豪昌爺ちゃんの孫の加藤拓哉だ。今日からここに住むことになってる」

 

リーラ「拓哉様直属のメイドで、メイド長をしているリーラ・シャルンホルストです」

 

グレイフィア「同じく拓哉様直属のメイドの、グレイフィア・ルキフグスです」

 

ロベルタ「同じくロベルタです」

 

それぞれが、大和に挨拶する。

 

リーラ「他にもいますが、全員が今こちらに向かってますので、残りの紹介は後程行いますので」

 

大和「分かりました。では、屋敷をご案内いたします」

 

そして拓哉達は屋敷に入っていったのであった。




大和(艦隊これくしょん)


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14話

大和「それでは、屋敷の中をご案内いたします」

 

拓哉「よろしく頼むよ」

 

中に入り、これから住む屋敷に入っていく。

 

大和「まずは一階です。一階は皆さんが食事をする食堂、厨房、お客様をお通しする応接室、食料貯蔵庫等があります。二階は大浴場、娯楽施設、お客様の部屋、サロン、図書室等です」

 

拓哉「三階は?この建物は三階建てだろ?」

 

大和「三階は、拓哉様のお部屋や私達使用人の部屋があります」

 

束「あの~…」

 

そんな話をしてると、束が話しかけてきた。

 

拓哉「どうした?」

 

束「私のラボとかはどこになるの?」

 

拓哉「忘れてた」

 

束「酷い!?」

 

拓哉「悪いな。けど、見た感じラボを作れる場所はなさそうだな」

 

リーラ「それについては心配御座いません」

 

するとリーラがそう言う。

 

拓哉「どういうことだ?」

 

リーラ「はい、この屋敷には地下がございます」

 

束「地下があるの?」

 

大和「はい。建物は三階建てですが、地下は五階までございます」

 

拓哉「五階まであるのか!?」

 

流石の拓哉も驚いていた。

 

リーラ「それでは、エレベーターでご案内いたします」

 

全員で屋敷にあるエレベーターに乗り込む。

 

拓哉「リーラ、ボタンは上に行く階しかないぞ?」

 

リーラ「地下に行くには…」

 

するとリーラは、ボタンの下にある場所を押す。すると、そこから何かが出てきた。

 

リーラ「拓哉様、こちらに来て当主の証の指輪をこちらに翳してください」

 

そう言われ指輪を翳す。すると、先程までなかった場所に地下の階のボタンが出てきた。

 

拓哉「なるほど。俺じゃなきゃ地下に行けないって訳か」

 

大和「その通りです」

 

そして地下に向かう。

 

大和「地下一階は、船や車等乗り物を保管しておく場所です。地下二階は、空き部屋があるだけです。ですので、こちらの部屋を束さんのラボにお使いください」

 

束「そうさせてもらうよ」

 

リーラ「地下三階は警備室等がございます。それ以降の階は特に何もございません。ですので、今後次第でお使いになられては如何かと」

 

拓哉「つまり、実質使ってるのは地下三階までってことか」

 

リーラ「その通りです」

 

拓哉「ま、残りはおいおい考えていくさ」

 

取り敢えず、これで屋敷は大体把握した拓哉であった。

 

拓哉「ん?」

 

何かに気づいたのか、窓の外を見る拓哉。

 

リーラ「どうかされましたか?」

 

拓哉「……」

 

リーラに話しかけられるが、そのまま外を眺める拓哉。

 

拓哉「…ま、大丈夫だろ」

 

『??』

 

その言葉に、リーラ達は首を傾げたのであった。そして、前の家から持ってきた荷物をそれぞれこれから住む自分の部屋に持っていき、眠りにつくのであった。翌日、起きて初めて利用する食堂で朝食を食べ、のんびりしてると、リーラがやって来た。

 

リーラ「拓哉様」

 

拓哉「どうした?」

 

リーラ「はい、豪昌様からご連絡があり悪魔や堕天使達が近々集まって、会談を行うようなので豪昌様に代わって、次期当主の拓哉様に出席してほしいそうです」

 

拓哉「会談?」

 

リーラの言葉に、拓哉は首を傾げる。

 

リーラ「はい。豪昌様やかぐや様は、拓哉様に『いい経験になる』と仰られましたので」

 

拓哉「いい経験ね~」

 

そう呟く拓哉だが、何故か乗り気ではなかった。

 

リーラ「拓哉様?」

 

拓哉「…ま、出るだけ出てみるか」

 

リーラ「では、豪昌様や会談に出席される方達にお伝えしておきます」

 

そしてリーラは部屋を出て行った。

 

拓哉「会談か…」

 

どんな事が起きるか、そんな事を考えながら部屋を出て行ったのであった。それから時は流れて、いよいよ合併した学園に登校する。

 

拓哉「今日から新しい学園生活か」

 

リーラ「そうですね」

 

そんな事を話しながら登校してると、いつものメンバーが集まりだす。

 

一誠「よう拓哉」

 

木場「おはよう加藤君」

 

小猫「おはようございます先輩…」

 

拓哉「よう」

 

前の学校で一緒だった一誠達だ。すると…

 

亜紗「おっはよ~たっちゃん!!」

 

ネリネ「おはようございます拓哉様」

 

シア「おはようッス!」

 

拓哉「ネリネ!?シア!!?それに亜紗先輩!!!?」

 

いつもはいないはずのメンバーを見て、驚く拓哉。すると、更に拓哉を驚かせる出来事が…

 

「あれ?拓哉さん!?」

 

「本当だ!!」

 

拓哉「ん?」

 

振り返ると、そこにはGWに会った西野達だった。

 

拓哉「ええっ!!?な、何で西野達が!!!?」

 

つかさ「それはこっちの台詞ですよ!」

 

綾「まさか、本当に拓哉さんの学校と合併したなんて」

 

こずえ「お、驚き…です」

 

四人はそんな会話をしてると…

 

一誠「拓哉~!!誰だこの可愛い女子達は~!!!」

 

一誠が物凄い剣幕で拓哉に詰め寄る。いつの間にか、松田と元浜までいた。

 

拓哉「少し黙れ」

 

取り敢えず、三人を殴っておく。

 

拓哉「こいつらは、GWに絡まれてたのを助けただけだ。後、この三人は変態三人組だから、むやみに近づくなよ?病気がうつるぞ」

 

一誠「人を病原菌みたいに言うな!!」

 

拓哉「復活早いな。こいつらはまだ気絶してるぞ?」

 

一誠「嫌でもそうなるわ!!」

 

拓哉の言葉に突っかかる一誠であった。

 

拓哉「とにかくさっさと行くぞ。今日は合併したから、午後から授業参観するんだからよ」

 

シア「うぅ…憂鬱だよ」

 

拓哉「だろうな。あの父親たちじゃな」

 

そんな話をしながら、学園に向かうのであった。クラス分けは何の因果か、一誠やネリネ達とは一緒のクラスだった。

 

拓哉(恐らく、サーゼクスやユーストマ達がそうさせたんだろうな)

 

そんな事を思っていた。因みに拓哉達のクラスの担任は紅薔薇撫子だ。そして昼休み、いつものメンツで昼食を食べてると、外が騒がしかった。

 

拓哉「なんだ?」

 

一誠「さぁな」

 

すると、クラスに入って来た男子生徒が話す。

 

「おい!外で魔女っ子の撮影会が行われてるぞ!!」

 

「マジかよ!」

 

そんな話をして、それを聞いた男子達は教室から出て行った。

 

拓哉「魔女っ子…」

 

一誠「ん?どうかしたのか?」

 

拓哉「いや、知り合いにそんな恰好をする奴がいてな。そいつを思い出したんだ」

 

一誠「ふ~ん。なぁ、俺達も見に行こうぜ」

 

一誠に言われ、渋々だが拓哉もついて行くのであった。既に外は、その魔女っ子の恰好をした女性を中心に、多くの野次馬がいた。

 

拓哉「随分と多いな」

 

一誠「くそ~!どんな人か見えね~!!」

 

そう叫ぶ一誠。すると、1人の男子生徒が叫ぶ。

 

「おい!ここで撮影するな!!」

 

一誠「匙じゃねぇか」

 

匙「兵藤か」

 

どうやら、一誠の知り合いのようだ。

 

一誠「お前なにしてんだ?」

 

匙「生徒会の仕事だよ」

 

拓哉「今日からなのに、もう生徒会になったのか?」

 

匙「そうなんだよ。三校合併だから、その中で一番学園に貢献してたのがウチの会長なんだよ。だから、引き続き俺達が生徒会をしてるんだよ。ってお前は!?加藤!!おい兵藤!なんでお前は加藤家の連中といるんだよ!!」

 

一誠「慌てるなよ。こいつは加藤家でも、前にいた連中達とは違うぜ」

 

拓哉「それに、俺と俺の関係者以外の加藤家の連中は、この新しい学園には入れないんだぞ?」

 

そうなのだ。以前まで学園にいた加藤家を名乗る連中は、この新しい学園には編入できていない。サーゼクスや豪昌達がその様に施したのだ。

 

匙「それは…そうだがよ」

 

それでも、バツの悪そうな表情になる匙。

 

拓哉「俺達の事は後にしろ。お前は騒ぎの原因の奴を見に来たんだろ?」

 

匙「お、おお!そうだった!!ちょっとあんた」

 

本来の目的を思い出し、騒ぎの原因の女性に話しかける。

 

「ん?なにかな?」

 

匙「こんな所で撮影会は遠慮して下さい。それに、保護者の人ですよね?」

 

「でも~、これが私の正装なんだよ~☆」

 

拓哉「この喋り方…まさか」

 

リーラ「拓哉様、そのまさかのようです」

 

そう言われ見た人物に、拓哉は頭をかかえるのであった。

 

「あっ!たーちゃんだ~!!☆」

 

すると、拓哉に気が付いた女性は、拓哉目掛けて突っ込んできた。

 

拓哉「ぐほ~!!?」

 

思いっきり衝突したのであった。

 

拓哉「セ、セラフォルー!!毎回突っ込んでくるなって言ってるだろ!!」

 

セラフォルー「えへへ、ごめんね☆でも、たーちゃんが悪いんだよ?全然会いに来てくれないんだもん」

 

拓哉「だからって…」

 

「何をしてるんですか?」

 

すると、これまた生徒会長のソーナ先輩がやって来た。

 

ソーナ「匙、どうかしたのですか?」

 

匙「か、会長。実はこの人が…」

 

セラフォルーを見た瞬間、ソーナの顔は驚きの表情になる。

 

セラフォルー「あっ!ソーナちゃんだ~!!」

 

ソーナ「な、何をしてるんですかお姉様!!」

 

「「お、お姉様~~~~~~!!!!!!!!?」」

 

その言葉に、一誠と匙は驚きの声を出す。

 

拓哉「イッセー、驚いてるとこ悪いがそれだけじゃないぞ」

 

一誠「ど、どういうことだよ?」

 

拓哉「彼女は、確かにウチの生徒会長の姉だが…彼女の名前はセラフォルー・レヴィアタンだ」

 

匙「レ、レヴィアタン!?も、もしかして…」

 

匙の言葉に拓哉は答える。

 

拓哉「ああ、お前らが思ってる通りだ。セラフォルーは五人いる魔王の一人だ」

 

「「はあああああああああ!!!!!!!!!!??」」

 

2人の叫び声が木霊したのであった。




リシアンサス(SHUFFLE)


ネリネ(SHUFFLE)


時雨亜紗(SHUFFLE)




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15話

セラフォルーが魔王と紹介し終わり、授業参観も無事に終了した。次はいよいよ会談だ。

 

拓哉「いよいよ今日が会談か」

 

リーラ「はい。本日の夜9時からですので、もう間もなくです」

 

拓哉「なら、そろそろ行くか」

 

部屋から出て出発の準備する。

 

拓哉「一緒に来るのは、リーラ、グレイフィア、セイバー、ティアだ。残りは屋敷を護ってくれ」

 

『かしこまりました』

 

拓哉「もし襲ってくる連中がいたら、手加減するな」

 

ロベルタ「了解いたしました」

 

森「拓哉様もお気を付けくださいね」

 

拓哉「ああ。じゃあ行ってくる」

 

そして会談が行われる学園に出発するのであった。学園に到着すると、既に悪魔や天使達が集まっていた。

 

拓哉「一発触発の雰囲気だな」

 

リーラ「そうですね」

 

グレイフィア「ですが、それは仕方ないかと思います」

 

拓哉「まぁな」

 

そして中に入り、会議室に行くと既にサーゼクスやユーストマ達が来ていた。

 

サーゼクス「よく来たね拓哉君」

 

フォーベシィ「それじゃあ、全員揃ったし始めようか」

 

そして会談は始まった。

 

サーゼクス「まず始めに、私の妹とその眷属だ。先日のコカビエル襲撃で彼女達が活躍してくれた」

 

アザゼル「悪かったな。コカビエルが迷惑かけた」

 

拓哉「あの時感じた気配はそれだったのか」

 

そこから会議は進んでいく。

 

アザゼル「先日の事件は、我が堕天使中枢組織『神の子を見張る者(グリゴリ)』の幹部、コカビエルが単独で起こしたものだ。奴の処理は『白龍皇』が行った。その後、組織の決定で『地獄の最下層(コキュートス)』で、永久冷凍の刑に処しもう出てくることはない。その辺りの説明は、提出した資料に全て書いてあっただろ?それが全部だ」

 

ミカエル「説明としては最低な部類ですが、あなた個人が我々と事を起こしたくないという話に関しては?」

 

アザゼル「ああ、俺は戦争に興味なんて無いからな」

 

そんな話をしてると、老人が会話に混ざる。

 

「では聞こうかのアザゼル殿」

 

アザゼル「なんだ近右衛門?」

 

話しかけてきたのは、魔法人代表の近衛近右衛門だ。

 

近右衛門「何故お主はここ数十年…神器(セイクリット・ギア)の所有者をかき集めておるのじゃ?」

 

その言葉に、場の空気が張り詰める。

 

アザゼル「神器研究のためさ。なんなら、一部研究資料もお前達に送ろうか?俺は今の世界に十分満足している。部下に『人間界の政治に手を出すな』と強く言い渡してるぐらいだぜ?宗教にも介入するつもりもねぇし、悪魔の業界にも影響を及ぼすつもりもねぇ。ったく、俺の信用はこの中でも最低かよ」

 

サーゼクス「それはそうだ」

 

フォーベシィ「その通りだね」

 

セラフォルー「その通りね」

 

ミカエル「そうですね」

 

ユーストマ「そうだな」

 

近右衛門「そうじゃの」

 

拓哉「当然だ」

 

そんな言葉を投げつけられるアザゼルであった。

 

アザゼル「チッ!神や先代ルシファーよりもマシかと思ったが、お前らもお前らで面倒くさい奴らだ。これ以上こそこそ研究するのも性に合わねぇか。分かったよ…和平を結ぼうぜ。お前らも元々そのつもりなんだろ?」

 

拓哉「……」

 

アザゼルの言葉を聞いて、拓哉は黙ったままである。

 

ミカエル「私も悪魔側とグリゴリに和平を持ち掛ける予定でした。これ以上、今までの関係を続けていても世界の害となる天使の長である私が言うのも何ですが…戦争の大本である神と魔王は消滅したのですから」

 

アザゼル「ハッ!あの堅物ミカエルが言うようになったな」

 

そんな話をしてると、ついに拓哉が口を開く。

 

拓哉「少しいいか?」

 

拓哉の発言に、全員が拓哉を見る。

 

拓哉「話の流れ的に、全員が和平を結ぶと思ってるみたいだけど」

 

サーゼクス「君は違うのかい?」

 

拓哉「その通りだ。悪いが、俺はあんたらと和平を結ぶつもりはない」

 

『!?』

 

その言葉に、リーラ達拓哉側の連中以外は全員が驚いていた。

 

フォーベシィ「な、何故だねたっちゃん!?」

 

拓哉「まず悪魔側だが、以前リアス・グレモリーとライザー・フェニックスとの結構騒動で、ウチのリーラが無理矢理花嫁にされて、挙句の果てに催眠術か魔法をかけて話せないようにしてたしな」

 

サーゼクス「そ、それは…」

 

その言葉に、サーゼクス達悪魔側は言葉を詰まらせる。

 

拓哉「それについての謝罪の無さ。そして、ここ最近あいつ等と一緒に悪魔の連中が俺達を襲って来た」

 

フォーベシィ「何だって!?」

 

その言葉にフォーベシィが立ち上がる。

 

拓哉「事実だ。悪魔側は、部下の事を把握できてない。堕天使に色々言うのはお門違いだ」

 

『……』

 

遂に悪魔側は何も言えなくなってしまった。

 

拓哉「次に堕天使だが、今回の件あれだけの言葉で終わらせるつもりか?」

 

アザゼル「あっ?」

 

拓哉「あんたの監督不届きで、一歩間違えればこの町の住人は死んでた。それを『悪かったな』で済ませるのか?」

 

アザゼル「……」

 

アザゼルも図星を言われ黙ってしまう。

 

拓哉「そして天使側。あんたらがしっかりと聖剣を管理してれば、そもそもこんな事にはならなかったはずだ。そして、一誠が言うと思うが何故アーシア・アルジェントを追放した?神が死んだ?知らせれば混乱する?人1人の人生を滅茶苦茶にした挙げ句、その事について謝る気配もなし。あんたらは、そこらの人間より腐った性格だ!」

 

『……』

 

悪魔に天使、そして堕天使のトップは誰1人として喋らなかった。

 

近右衛門「じゃが、豪昌の意見はよいのかの?御主だけで決めてしまって?」

 

リーラ「その事については心配ございません」

 

するとリーラが会話に割って入る。

 

近右衛門「何故じゃ?」

 

リーラ「拓哉様は、加藤家の次期当主です。そして、今回の会談は拓哉様が決めた事に従うと、予め了解を経ております」

 

近右衛門「そうか…ならば、わしからは何も言うことはないわい」

 

拓哉「ありがとうございます。ってな訳で、個人的な付き合いはいいが、和平を結ぶつもりはないからな」

 

すると、アザゼルがこう言う。

 

アザゼル「なら、お前の所にいる悪魔のメイドはどうするんだよ」

 

拓哉「本人の意思で、俺達といるそうだ」

 

サーゼクス「!?本当かねグレイフィア!!」

 

グレイフィア「はい。私は拓哉様に一生を捧げます。ですので、サーゼクス様達がこちらに手を出されるなら…命懸けで拓哉様をお守りいたします。例え姉さんや悪魔と敵になろうとも」

 

『……』

 

グレイフィアの言葉に、魔王3人は言葉を失った。まさか、悪魔である彼女が自分達側ではなく、人間である拓哉につくとは思ってなかったからだ。

 

拓哉「ま、和平は結ばなくても今までの付き合いは続けるさ。但し悪魔、堕天使、天使とは余程の事がない限り手は貸さない。もし俺の家族に手を出せば…」

 

拓哉は殺気を部屋全体に放つ。徐々に大きくなり、ガラスにはヒビが入り壁に亀裂が入る。

 

リーラ「拓哉様、落ち着いて下さい」

 

すると、リーラが拓哉の前に立つ。

 

拓哉「リーラ…」

 

リーラ「もう私はあの時の事は気にしておりません。拓哉様が助けて下さいました」

 

拓哉「…分かった」

 

そして拓哉は、殺気を引込めた。それと同時に、周りの空気が一変する。

 

サーゼクス「これは!?」

 

ミカエル「何が起きたのですか!?」

 

近右衛門「どうやら、時間が止まったみたいじゃの」

 

辺りを確認すると、小猫や朱乃、近右衛門が連れてきた護衛が停止している。

 

拓哉「お前らは無事みたいだな」

 

ティア「当然です」

 

セイバー「当たり前です」

 

リーラ「私は、グレイフィアが隣にいたので」

 

グレイフィア「はい」

 

拓哉「なら安心だ。で、これはどういうことだ?」

 

拓哉は、サーゼクス達に問い掛ける。

 

サーゼクス「恐らく、リアスの眷属の神器を使われたのだろう」

 

拓哉「どんな神器なんだ?」

 

拓哉はリアスに説明を求める。

 

リアス「彼の神器は『停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)』よ」

 

アザゼル「恐らくテロの連中が、強制的に禁手(バランス・ブレイカー)状態にしたんだろうな」

 

拓哉「なるほど」

 

それを聞き、これからどうするか考える。

 

アザゼル「ヴァーリ、お前は外で敵の目を引け。白龍皇が前に出てくれば、このテロの首謀者が動くかもしれない」

 

ヴァーリ「…分かったよ」

 

そしてヴァーリは外に出て、禁手化する。

 

拓哉「……」

 

リーラ「拓哉様?」

 

拓哉「セイバー、それとティア。ヴァーリを見張ってくれ」

 

セイバー「彼をですか?」

 

リーラ「何故ですか拓哉様?」

 

リーラが代表して質問する。

 

拓哉「一瞬だが、アザゼルと話した時に鼓動や呼吸音が一瞬鈍っていた」

 

グレイフィア「呼吸音…ですか?」

 

ティア「それは確かなの?」

 

拓哉「ああ。俺はゼブラさん直々にお墨付きを貰ってるんだ。間違うはずがない」

 

リーラ「そうでしたね。拓哉様は、様々な方達の技を取得しておられました。では、本当なのですね」

 

拓哉「そうだ。とにかく、あいつから目を離すな」

 

「「了解です/だ」」

 

そう言われ2人は、他の連中にバレない様に外に出て行った。すると今度は、部屋に魔法陣が出現する。

 

サーゼクス「この紋様…そうか!今回のテロの黒幕は…!」

 

フォーベシィ「フィーナ君!急いで2人を飛ばすんだ!!」

 

フィーナ「はっ!」

 

急いでフィーナは、リアスと一誠を飛ばす準備に入る。

 

リアス「ちょ、ちょっとフィーナ!?お兄様!」

 

フィーナ「お嬢様…ご武運を」

 

そして2人は転送されていった。それと入れ替わりに、2人の人物があらわれた。

 

「ごきげんよう。現魔王のサーゼクス、フォーベシィ殿」

 

フォーベシィ「君は!?」

 

サーゼクス「先代レヴィアタンの血を引く者、カテレア・レヴィアタン…」

 

ゼノヴィア「旧魔王一族か?」

 

木場「その通りだよ。長きに渡る戦いで悪魔達は疲弊しきっていた。このまま戦争を続ければ種の存続も危うい程に…」

 

木場がゼノヴィアに説明する。

 

カテレア「旧魔王派の者達は、ほとんどがオーフィスと共に『禍の団(カオス・ブリゲード)』に協力する事を決めました。そして…」

 

カテレアは、一緒にきてた人物に目を向ける。

 

カテレア「加藤家の当主が協力しています」

 

ユーストマ「なんだと!?」

 

その言葉に、全員が驚く。

 

拓哉「……」

 

拓哉だけは、違う意味で驚いている。すると、一緒に来てた男が話し出す。

 

「久し振りだな落ちこぼれ。まさか生きてたとは驚きだ」

 

拓哉「…なんでお前がここに!!」

 

「なんでって…加藤家は、旧魔王派の連中と協力して、今人間界にいる現魔王はの連中や加藤家に逆らう奴を殺すことにしたんだよ。で、偶々意見が合ったから協力してるだけだ」

 

拓哉「お前が加藤家を語るな!!!」

 

拓哉は今までにない位の大声で叫ぶ。

 

「黙れ出来そこないが。後、お前は今後邪魔になるからな。一緒に消しに来たんだよ!!ええ、元弟よ~!!!」

 

そう言った瞬間、男は拓哉に襲い掛かる。咄嗟に側にいたリーラを突き飛ばし、そのまま攻撃をすぐさま防ぐ。

 

アザゼル「おいおい、なんであいつまでいるんだよ!」

 

ユーストマ「全くだな」

 

そんな話をしてると、木場が話しかける。

 

木場「あの…彼は一体?」

 

フォーベシィ「彼は拓哉君の実の兄さ」

 

『!!?』

 

その言葉に、理由を知らない連中は驚くのであった。




近衛近右衛門(魔法先生ネギま!)




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16話

そして、理由を知ってるサーゼクスが話し出す。

 

サーゼクス「だが彼と彼の両親は、拓哉君を殺そうとして加藤家を破門になった」

 

リーラ「その通りです。しかし、元々豪昌様と拓哉様のクソ父との間で対立があり、その件を境に加藤家は事実上二つに分裂したのです」

 

ゼノヴィア「だ、だが未だに世界の三分の二は加藤家が占めてるではないか?」

 

グレイフィア「世間ではその様に認識されていますが、実際のところ豪昌様が三分の二の内75%で、残り25%が拓哉様の元父親である加藤昌也と息子の修也が占めています」

 

フィーナ「その様な事が…」

 

ユーストマ「ってか、リーラ嬢ちゃん口調変わってねぇか?」

 

リーラ「そんな事はございません」

 

きっぱりと違うと言うリーラであった。

 

リーラ「それに、何故拓哉様を殺そうとしたクソ共に丁寧に話さないといけないのですか?」

 

フォーベシィ「ま、ま~確かにね」

 

リーラ「分かって頂いて感謝いたします」

 

笑顔でそう答えるリーラを見て、ここにいる全員が思った事。それは…

 

(絶対にリーラさん/嬢ちゃんを怒らせてはいけない)

 

そんな事を思われていたリーラであった。そして、グラウンドに出た拓哉と修也は…

 

修也「へ~、さっきの攻撃に耐えるか。昔より少しは強くなったみたいだな」

 

拓哉「……」

 

その言葉に拓哉は黙っている。しかし、心の中では…

 

拓哉(さっきのが攻撃?確かに油断して吹き飛んだが、全然ダメージないんだけど…)

 

服は少し破けてはいるが、拓哉自身には全くダメージがなかったのである。何故なのか?それは、拓哉は昌也達に捨てられて豪昌に引き取られてから、自分を守ってくれたリーラや豪昌を守りたいと思い、幼少期から厳しい修行に耐えていたのである。冥界、天界、全世界、そして別の惑星にまで修行に行っていた。一方修也は、幼少期から他の大人達に負けない才ある人物だった。それのせいか、拓哉と違い修行も何も行っていなかった。一般的な人達と比べると強いが、壁を超えた者達にはまるで歯が立たない。なので、拓哉にしては修也の攻撃は虫に刺された程度なのである。

 

修也「どうした?余りの痛さに声も出ないか?」

 

拓哉(いや、余りの弱さに逆に声が出ねぇよ)

 

そんな事を思いながら、修也を睨みつける拓哉。

 

修也「さてと、すぐに殺してもいいんだが…赤龍帝も戻って来たし、少し見物するか」

 

拓哉「見物だと?」

 

修也「そうだ。赤龍帝と白龍皇の戦いをな」

 

拓哉「なんだと!?」

 

その言葉を聞いて、拓哉は驚く。

 

拓哉(まずい…一誠はまだヴァーリと戦うには実力不足だ!どうにかしてあいつの所に…)

 

そんな事を考えながら、ほんの少しだけ足を動かす。するとその瞬間拓哉の足数センチの所が撃ち抜かれる。

 

修也「おっと動くなよ?一歩でも動けば額を撃ち抜かれるぞ?ま、俺が直々に殺すからそんな事はないがな」

 

笑いながら、スナイパーの事を離す修也。

 

拓哉「……」

 

しかし当の拓哉は呆れていた。

 

拓哉(相変わらず、自分が有利になった時に話す癖は昔のまんまだな)

 

自分に勝ち目があると思うと、そんな話をしてしまう癖がある修也であった。

 

拓哉「随分と凄腕のスナイパーがお前らのところにいるんだな」

 

修也「ま~な。偶々拾ってな。俺の命令に逆らえないようにしてるがな」

 

拓哉「……」

 

修也の言葉に拓哉は黙る。すると、叫び声が聞こえた。

 

「ふざけんなああああああああああああああ!!!!!!!」

 

見ると、一誠がキレていた。

 

一誠「許さない!絶対テメェだけは許さないっ!!ヴァーリィィィィ!!!部長達に手を出してみろ!!二度と転生できないくらい徹底的に破壊してやらぁ!!!」

 

アザゼル「あっはっはっは!!女の胸が小さくなるって理由で力が跳ね上がりやがった!」

 

『……』

 

アザゼルの言葉に全員が言葉を失った。それは、少し離れた場所にいる修也や拓哉も例外ではなかった。

 

修也「マジかよ…」

 

流石の修也も、胸で力が跳ね上がった一誠を見て呆れていた。

 

拓哉「一誠…」

 

拓哉も呆れていた。が、修也の隙を見逃してはいなかった。

 

拓哉「隙見せたな!!」

 

修也「しまっ…」

 

そこまで言うと、修也は殴り飛ばされる。

 

修也「ゲホッ…ゴホッ…」

 

口から血を吐き出す修也。

 

修也「て、てめぇ…」

 

拓哉「昔はお前の方が確かに強かった。だが、それをいい事に鍛錬も何もしなかったお前と違って、こっちは死に物狂いで修行したんだ。はっきり言って、さっきからお前の攻撃は効いてないんだよ!!」

 

起き上がる前にアッパーを入れる。

 

修也「がはっ!!」

 

一方的な戦いになる。

 

拓哉「さっき殺すとか言ってたな。なら、俺が逆に殺してやろうか」

 

そう言いながら気を高める。すると拓哉の背後に鎌を持った巨大な生物が見えた。

 

修也「なっ!?」

 

それを見た修也は驚いて腰を抜かしている。見ると魔王や神王達は普通だが、リアス達は修也同様腰を抜かしてた。すると、修也とヴァーリの横に魔王人が出現する。

 

「迎えに来た」

 

修也「お前は…」

 

現れたのは灰色の髪の色をした少年?だった。

 

修也「フェイト…何でお前が」

 

フェイト「北の田舎(アース)神族と一戦交えるから撤退命令が出てる」

 

修也「…分かった」

 

そう言うと、2人の足元に魔法陣が出る。

 

修也「この借りは絶対に返すからな!!」

 

そんな負け惜しみの台詞を言って、修也達は消えて行った。

 

拓哉「やれやれ…何とか終わったか」

 

リーラ「お疲れ様です拓哉様」

 

戦いを終えたリーラ達も戻って来た。

 

拓哉「お疲れリーラ」

 

フォーベシィ「たっちゃん」

 

すると、フォーベシィがやって来る。

 

フォーベシィ「今回の和平の件…本当に結ばないのかい?」

 

拓哉「ええ。今回はあいつが絡んでたけど、俺はライザーがやった事を許せそうにないんでね」

 

サーゼクス「どうすれば許してくれるのかな?」

 

拓哉「…それはあんたらで考えな」

 

そして拓哉はリーラ達のところに行く。すると、セイバーとティアが1人の女性を抱えて戻って来た。

 

拓哉「誰だその女?」

 

ティア「銃であんたを狙ってた奴よ」

 

拓哉「あいつが言ってたスナイパーか。まさか女とはな」

 

セイバー「どうしますタクヤ?」

 

拓哉「家に連れて帰る。あいつは言う事を聞かせていると言ってたが、何か仕掛けられてるかもしれない。束のラボで治療を兼ねて検査してもらう」

 

グレイフィア「かしこまりました」

 

そう言うと、グレイフィアはティアと一緒に車を取りに行った。

 

拓哉「それじゃあ、俺達は帰らせてもらう」

 

ミカエル「で、ですが和平が…」

 

そこまで言うと、アザゼルが止める。

 

アザゼル「止めとけミカエル。それ以上言っても、こいつは今のところ和平を結ぶつもりはないぜ」

 

拓哉「その通りだ。だが、今後の事は分からない。ま、サーゼクス達がどの様な回答をするか楽しみにしてるよ」

 

そう言い残して行こうとすると、近右衛門が呼び止める。

 

近右衛門「拓哉殿、いずれ麻帆良にも遊びに来て下され。孫の見合いの事もありますのでな」

 

拓哉「そう言えば、貴方のお孫さんも候補にいましたね」

 

すっかり忘れていた拓哉。それを聞いた一誠は…

 

一誠「拓哉!テメェ部長達だけじゃ飽き足らず、他にもいるのか!!!チキショー!!!!!!!」

 

血の涙を流しながら、拓哉の事を羨む一誠であった。




フェイト・アーウェルンクス(魔法先生ネギま)


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17話

会談が終わり、修也が連れてた女スナイパーと一緒に屋敷に戻った。

 

ロベルタ「お帰りなさいませ拓哉様」

 

拓哉「ただいまロベルタ。こっちは何もなかったか?」

 

そう聞くと、森が答える。

 

森園生「加藤家と名乗る連中と、英雄と名乗る連中が来ましたが追い払いましたので」

 

拓哉「やっぱりこっちにも来てたか」

 

その事を聞いて、頭を抱える拓哉。

 

拓哉「ま~いい。悪いけどこいつを束のラボに連れてってくれ」

 

ロベルタ「かしこまりました」

 

女をロベルタに預けて、一緒にラボに向かった。ラボに到着すると、束が出迎えてくれる。

 

束「お帰りたっくん!!」

 

拓哉「ただいま。いきなりで悪いけど、こいつを治療兼検査してくれ」

 

束「ん~誰この女」

 

連れてきた女を見せると、少し不機嫌になる。

 

拓哉「ああ、それは追々リーラから聞いてくれ。治療は当然だが、検査しておいて損はないからな」

 

束「…分かったよ」

 

そして女は、束作の治療器兼検査機に入れられる。

 

束「それじゃあ、早速始めるよ」

 

機械をカタカタと打ち、機械を起動させる。女の身体をスキャンしていくと、モニターに女の身体が映し出される。

 

束「へ~…」

 

それを見て、束は興味津々な顔になる。

 

拓哉「どうしたんだ?」

 

束「こいつの身体凄いよ!!」

 

リーラ「凄い…とは?」

 

束「だって、ある筈の消化器官とかが無いよ。それに、首に虫みたいなのを埋め込まれてるし、皮膚が一般じゃ考えられない動きをしてるよ。まるで植物みたいにね」

 

拓哉「なんだと!?」

 

束の言葉に、拓哉は驚き検査してる女を見る。

 

拓哉「その虫みたいなのは排除できるのか?」

 

束「もっちろん♪束さんにできないことはないよ。けど、気を付けないと私達も感染する恐れもあるよ」

 

リーラ「では、治療が終わるまでは完全に隔離するしかありませんね」

 

拓哉「だな。他の失ってる消化器官とかはどうだ?」

 

虫の排除は出来るが、他の部分はどうなのか。

 

束「それも出来るよ。けど、虫と違ってそっちの方は時間がかかるよ。体を束さん特性のナノマシンに馴染ませないといけないからね」

 

拓哉「ならそっちも頼む。普通の治療じゃ治せないからな。頼りにしてるぞ」

 

束「お任せ~♪」

 

そして再び画面を見る束。

 

束「けど、この虫変わってるね」

 

拓哉「変わってるとは?」

 

束「調べてみたけど、別に何もしなければ普通に残ってても問題ないんだよ。でも、これは音に反応するみたいなんだ」

 

拓哉「音?」

 

その言葉に疑問を抱く拓哉。

 

束「うん。でもただの音じゃないって事は分かったんだけど…」

 

拓哉「それ以上は今のところは分かってないって訳か」

 

束「そうなんだ。ま~、この虫駆除しちゃうから問題ないと思うけどね」

 

拓哉「俺達に被害が出ないなら、調べてみてくれ」

 

束「りょ~かい♪」

 

そう言うと、後は束を残して部屋に戻った。そして翌日、昨日会談があった為拓哉やオカルト部、委員会の連中はサーゼクス達の計らいで休みにしてくれた。

 

拓哉「サーゼクス達も、随分と気前のいい事してくれるな」

 

グレイフィア「恐らく、昨日の事のお詫びでしょう」

 

拓哉「なら、そのお詫びを受けときますかね。偶にはグレイフィアとのんびり過ごすのもいいもんだしな」

 

笑顔で言うと、グレイフィアは頬を染めていた。

 

拓哉「せっかくの休みだ。この島を探索してみるか」

 

グレイフィア「そうですね。まだこの島の全てを把握していませんし」

 

拓哉「なら、ヘリでも出して島を見て回る」

 

グレイフィア「かしこまりました」

 

グレイフィアは一旦下がり、ヘリの準備に向かった。拓哉も地下に向かった。向かう途中でリーラと出会う。

 

リーラ「おはようございます拓哉様」

 

拓哉「おはようリーラ」

 

リーラ「どちらかにお出かけですか?」

 

拓哉「ああ。グレイフィアとヘリでこの島を見て回ってくる」

 

リーラ「でしたら私も」

 

そこまで言うと、拓哉は手を前に出して言葉を止める。

 

拓哉「今回はこの島だ。それに、リーラは最近よく働いてくれている。偶には休んでくれよ」

 

リーラ「ですが…」

 

その言葉にリーラは寂しそうな表情をする。

 

拓哉「別にクビにする訳じゃないんだ。今日くらいはのんびり屋敷で寛いでくれって言ってるんだよ」

 

リーラ「…かしこまりました」

 

拓哉「心配するな。ロベルタと大和にもついて来てもらうからさ」

 

リーラ「…はい」

 

そして拓哉は地下に向かった。地下では既にグレイフィアとロベルタが待っていた。

 

グレイフィア「お待ちしてました拓哉様」

 

拓哉「遅れて悪いな…それじゃあ行くか。ロベルタ、操縦は任せたぞ」

 

ロベルタ「かしこまりました」

 

そして三人はヘリに乗り込む。そのまま床が動き出し地上に上がっていく。そして天井が開き外に出る。ヘリのエンジンが始動し飛び立つ。

 

ロベルタ「拓哉様、どちらに向かいますか?」

 

拓哉「まずは、海岸沿いに島を一周してくれ」

 

ロベルタ「かしこまりました」

 

拓哉の命令を聞き、ロベルタは操縦する。ヘリから島を眺めてると、港が見えてきた。

 

拓哉「へ~、随分と立派な港だな」

 

グレイフィア「そうですね」

 

拓哉「ロベルタ!悪いけど、あの港の所に着陸してくれるか?」

 

ロベルタ「かしこまりました」

 

そう言われロベルタは、ゆっくりとヘリを港の広い場所に着陸させた。ヘリから降りて建物の前に行く。

 

拓哉「やっぱりここもかなり朽ち果ててるな」

 

建物を見ると、街で見たビル等と同じで老朽化が進んでいた。

 

大和「……」

 

そして、この港に来てから大和が何も話さなくなっていた。

 

拓哉「大和」

 

大和「は、はい!」

 

拓哉「何かあったのか?」

 

大和「いえ、なにもありません」

 

すぐに否定するが、拓哉は溜息を吐く。

 

拓哉「嘘を言っても駄目だぞ。ここに来た瞬間嫌な顔をしただろ」

 

大和「……」

 

その言葉に、大和は黙ってしまう。

 

拓哉「何があったんだ?」

 

大和「…ここは昔、工廠だった場所です」

 

拓哉「工廠?」

 

ロベルタ「軍隊直属の軍需工場のことで、武器・弾薬をはじめとする軍需品を開発・製造・修理・貯蔵・支給するための施設です。造兵廠とも呼ばれます」

 

ロベルタが代わりに答えてくれた。

 

大和「その通りです。豪昌様がこの島を購入されるまでは、別の人物が持ち主でした。ですが…」

 

そこまで言うと、言葉を止める。

 

拓哉「……」

 

拓哉は、大和が話すまで黙っている。

 

大和「しかし、その前の人物が私以外の艦娘を解体してしまったんです!!」

 

今までにない声でその事を叫ぶ大和。

 

拓哉「なるほど…艦娘か」

 

すると拓哉は、廃墟になってる建物に入っていく。

 

グレイフィア「拓哉様?」

 

慌てて三人も拓哉を追いかける。

 

拓哉「外壁はかなり老朽化してたが、中は意外とマシだな」

 

グレイフィア「そうですね」

 

そして、工廠の場所に到着する。

 

拓哉「ここが工廠か」

 

大和「はい…ここで私達艦娘や武器が製造されていました」

 

拓哉「なるほど…ん?」

 

すると、拓哉の足元に小さな人?がいた。

 

拓哉「なんだこれ?」

 

手のほらにその人を乗せる。そしてグレイフィア達に見せたが

 

グレイフィア「拓哉様、先程から何を?」

 

拓哉「何って、こいつだよ」

 

ロベルタ「これと言われましても…私達には何も見えませんが?」

 

拓哉「えっ?」

 

そう言われて、拓哉は驚く。どうやら2人には見えていないようだ。

 

大和「拓哉様、それは妖精で私達艦娘をフォローしてくれるんです。本来は私達艦娘しか見えないんですが…」

 

拓哉「じゃあ何で俺には見えるんだ?」

 

不思議そうに大和に質問する。

 

大和「極稀に、そういう人はいます。ですが、それは私達艦娘を兵器と思わないのが前提です」

 

拓哉「…それだけ?」

 

その言葉に、拓哉は間抜けな表情になる。

 

グレイフィア「拓哉様、本来大和は戦艦です。普通の人間達は彼女達を兵器としてしか見ないのよ」

 

拓哉「何処が兵器だよ。どこからどう見ても俺達と同じだろ?笑うし、泣くし、ちゃんと喜怒哀楽があるじゃねぇか。それが無いのが兵器だろ?」

 

そう言うと、大和は泣き出してしまった。

 

拓哉「えっ!?ちょっ!!?」

 

泣き出した大和を見て、慌ててしまう拓哉。

 

グレイフィア「拓哉様、今まで大和は豪昌様や拓哉様と出会うまで、その様に言われた事はないのですよ」

 

拓哉「そうか…」

 

そう聞いて、拓哉はある事を決断する。

 

拓哉「グレイフィア、帰ったらすぐにリーラと一緒に艦娘達の事を調べてくれ。そして、信頼できる業者を呼んで、この建物を使えるようにしてくれ」

 

グレイフィア「かしこまりました」

 

大和「えっ?」

 

その言葉に、大和は顔を上げる。

 

拓哉「修理をして工廠を稼働させれば、大和の仲間だった連中をまた作れるかもしれない」

 

大和「でも…」

 

拓哉「分かっている。新たに制作しても、それが大和の知ってる連中じゃないことはな。けど、いつまでも大和を1人にさせるのはな…」

 

大和「……」

 

その言葉に、大和は嬉しさのあまり声を失っていた。

 

拓哉「さて、島を探索するのはまた今度だ。急いでその事に取り掛かるぞ」

 

「「「はい!!」」」

 

そして拓哉達は屋敷に戻ったのであった。




妖精たち(艦隊これくしょん)


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18話

セイバー「タクヤ!早く行きましょう!!」

 

拓哉「少し落ち着けセイバー」

 

今日拓哉とセイバー、そしてライダーの3人は横浜に来ていた。何故横浜に来ているかというと、セイバーがはぐれ悪魔を討伐しサーゼクスから賞金が出たので、普段から世話になってる拓哉とライダーに昼食をご馳走すると言ってきたからである。

 

ライダー「何でも、雑誌に載ってる『宝華飯店』に行くそうです」

 

セイバー「その通りです!値段も手頃で、物凄く美味しいそうです!!」

 

涎が出そうなセイバーを見て、拓哉とライダーは苦笑いしていた。そして目的の店に到着すると、物凄い行列が出来ていた。

 

拓哉「行列だな」

 

ライダー「雑誌に載ってるだけあって、物凄い人気ですね」

 

セイバー「とにかく並びましょう!!」

 

そして列に並ぶ。1時間後、ようやく拓哉達の順番がやって来た。

 

「奥の席ね」

 

席に案内され、注文をして料理が出てくるまで話してると、別の席からこんな声が聞こえた。

 

「ちょっと」

 

「なに?」

 

「この豚バラ煮込みは出来そこないだ。食べられないよ」

 

「なんだっテ?」

 

「や、山岡さん!」

 

黒いスーツを着た男性が、店員の女性にそう言う。その事に横に座ってる女性は慌てる。

 

「ちょ、ちょっと止めてよ。また食べさせない気」

 

「どうして貴方はいつもそうなの」

 

山岡「まずい物はまずい。俺は本当の事を言ってるだけだ」

 

拓哉「へ~」

 

すると厨房から、物凄い形相で店の店主が出てきた。

 

「出来そこない!何言うカ!!味も分からないクセシテ!!」

 

しかも包丁を持ちながら。一緒に来てた女性2人は脅えていた。

 

「ウチの店、新聞も雑誌もいつも褒めてるヨ!有名人のお客さん、沢山来てくれるヨ!!」

 

山岡「ここに来る有名人は、皆味の分からん連中ばかりのようだな」

 

「ななな、なに~!!」

 

そう言いながら、店主は持ってた包丁を振りかぶる。すると、2人の男性が割り込む。

 

「止めんカ」

 

拓哉「いくら頭にきても、それはやり過ぎだ」

 

「周大人…」

 

そしてふくよかな男が話し始める。

 

周「私は周・懐徳です。さっきからずっと見ていました。ここは私に免じて事を納めて下さい」

 

そう言われ、山岡は店主を見る。

 

「へっ!日本人に中国料理の味分かってたまるカ!」

 

山岡「客に酷い料理を出しといて威張るとは呆れたものだ。少なくとも、お前よりは遥かに美味い豚バラ肉煮込みを作れるぜ」

 

「なにを~!日本人の癖に、中国人より美味い物作れるだト!じゃあ作ってみろ!!私の作るのより美味い東坡肉(トンポーロウ)作ってミロ!!!」

 

山岡「よぅし、作ってみせようじゃないか」

 

2人の間で話がヒートアップしていく。

 

周懐徳「まあまあ…これはこのままでは、とても収まりがつきそうにありませんね。本当に東坡肉が作れるのですか?でしたら、私が審判役を務めましょう。貴方も如何ですか?」

 

すると周懐徳は、拓哉達にも話しかける。

 

周懐徳「ここで会ったのも何かの縁。ご一緒に如何です?」

 

拓哉「なら、お邪魔いたします」

 

周懐徳「それでは決まりですな。これから、私の家にきて作って下さい」

 

山岡「いいでしょう」

 

こうして、周懐徳の家で東坡肉勝負が行われるのであった。車で周懐徳の家に向かう。到着すると、大きな家に到着する。玄関では女性が立っていた。

 

周懐徳「紹介します。家内です」

 

「ようこそ、いらっしゃいませ」

 

『お邪魔します』

 

周懐徳「家内はこれで中々の名コックなんですよ。今日は私と一緒に、審判役をさせようと思います」

 

そして中に案内され厨房に向かう。厨房に入ると、立派な調理器具などが並べられていた。

 

拓哉「随分立派な厨房ですね」

 

「個人の所有物とは思えないわ」

 

周懐徳「ハハハ。一度に200人のお客さんを招く事もありますからね。これでも小さい位ですよ」

 

山岡「では、3時間後に」

 

周懐徳「かしこまりました」

 

そして周懐徳は厨房を出て行った。そこには拓哉達もいた。

 

拓哉「どんな風に作るか興味がありましてね。調理工程を見せてもらっていいですか?」

 

山岡「別に構わないよ」

 

そして山岡は、買って来た豚バラ肉を取り出す。

 

「私手伝います」

 

山岡「ん?」

 

「仕方がない。私もなんかするわ」

 

山岡「手伝ってもらう事の程じゃないけど…じゃあ、湯を沸かして中華鍋と蒸し器を用意してもらおうか」

 

一緒にきてた女性3人が準備する。すると山岡は、剃刀を取り出し豚バラの皮の部分を剃り始めた。

 

山岡「まず、皮の表面の毛を取り除くために剃刀で剃り、剃り残した毛が無いよう火で炙る。その肉を軽く茹で…表面に醤油と酒を染み込ませる」

 

拓哉(その通りだ。けどこの人、かなりの料理の知識を持ってるな)

 

調理工程を見て、自身も料理をするので感心してる拓哉だった。

 

山岡「次に油で揚げて、色と香りを付ける。その肉を皮を下にして深皿に移し、ショウガ、酒、醤油、スープを入れる。この時、八角を入れるのを忘れずに」

 

「八角って?」

 

拓哉「ウイキョウの実を乾燥させた物でスパイスの一種ですよ。如何にも中華料理といった香りを出してくれます」

 

山岡「その通り。料理の他には薬用にも使われる。そしてその皿ごと蒸し器に入れて、後はこのまま2時間ちょっと待てばいい」

 

「ええっ!?2時間も!!?」

 

あまりに長い蒸し時間に、声を出す女性。

 

「随分手間がかかるんですね」

 

「でも特に難しい技術はいらないみたいね」

 

すると、使用人らしき人物がやって来た。

 

「皆さん、お茶の準備が出来ていますので、よろしければ」

 

「はぁ…」

 

山岡「いってきたら?ここは俺一人でいいから」

 

拓哉「2人もいってこいよ。俺は、山岡さんと話したいから」

 

ライダー「分かりました」

 

そして女性陣は、厨房を出て行き山岡と拓哉の2人だけとなった。

 

山岡「ところで君」

 

拓哉「なにか?」

 

山岡「先程の八角の知識…君も料理をするのか?」

 

拓哉「ええ、趣味の1つですね。ま、ウチの連中は滅多に料理させてくれませんからね」

 

山岡「へ~」

 

そんな他愛ない話をして、あっという間に2時間が経過して料理が完成した。

 

拓哉「それじゃあ、俺は先に行ってますね」

 

厨房を出て、皆が待ってる部屋に行きテーブルに着席する。

 

周懐徳「さぁこちらへ。公平を期するために、宝華飯店からはいつも店で客に出すままの物を持って来させました」

 

セイバー「美味しそうですね」

 

ライダー「セイバー、涎を拭いてください」

 

呆れながらライダーが注意する。そして2つの東坡肉が置かれる。

 

周懐徳「さぁ、味比べです」

 

そして全員は、まず宝華飯店の東坡肉を食べる。次に山岡が作った東坡肉を食べる。そして…

 

拓哉「結論は出たみたいですね」

 

周懐徳「ええ」

 

「山岡さんの作った物は、本物の東坡肉です。それに比べると、宝華飯店のはただの豚バラ肉煮込み」

 

「!!?」

 

その言葉に、店主は驚きを隠せない。

 

周懐徳「それに煮込みが足らない。ゴリゴリした歯触りだ」

 

拓哉「それに、宝華飯店の東坡肉は皮もついていない」

 

ライダー「そうですね。以前拓哉が言ってましたが、東坡肉は皮つきの肉を使うものだと」

 

セイバー「私も覚えてます。皮があってこその東坡肉です」

 

それぞれの言葉に、更に店主はショックを受ける。

 

拓哉「その通りだ。皮の部分がゼラチン状にネットリとした舌触りを与え、その下の脂身がトロリと溶けそして、赤身の部分がシットリとほぐれる。だから、3つの味が見事な和音を奏でるんだ」

 

「残念だわ。中国人が中華料理で、日本人に負けるなんて」

 

「山岡さんが、出来そこないと言った理由が分かりました」

 

周懐徳「誠に残念だ…」

 

周懐徳と奥さんは、非常に残念そうな表情になる。

 

ライダー「それに、宝華飯店という店の物はまだ作りかけという感じがします」

 

山岡「この東坡肉は、この皮付きの豚バラ肉を丁寧に処理して、根気よく蒸しにするだけです。宝華飯店も昔は、ちゃんとした東坡肉を作っていたはずです」

 

「!!」

 

山岡の言葉に店主は昔の事を思い出す。

 

山岡「しかし、マスコミに取り上げられ有名になり客が沢山詰めかける様になると、ついついその手間を惜しむようになった。とても2時間、蒸し器にかけられないということです」

 

周懐徳「ですが、日本人も悪いんです」

 

「どういうことですか?」

 

その言葉に、山岡が説明をする。

 

山岡「そうだ…誰かが本か何かで褒めるとドッと詰めかける。一度有名になると、自分の舌で判断する事もなく有名店だと言うだけでありがたがる。これじゃ店の人間も、堕落するのは当たり前だ」

 

拓哉「その通りだ。そんな事を回避するために、ウチの全系列店は取材を断ってるんだよ。自分の舌で判断してもらう為にね」

 

そして、店主は悔しそうな表情で帰っていったのであった。

 

周懐徳「お見事です山岡さん」

 

山岡「どうも」

 

「ところで…えっと…」

 

拓哉「そう言えば、まだ名乗ってませんでしたね。私は加藤拓哉といいます。連れのライダーとセイバーです」

 

名前が分からなかったので自己紹介する。

 

「私は東西新聞社の栗田ゆう子です」

 

「同僚の山岡士郎だ」

 

「田畑絹江です」

 

「花村典子です」

 

周懐徳「では、食事をしながら話を続きをしましょう」

 

すると、次々と料理が運ばれてくる。

 

栗田「山岡さん、周懐徳さん達に究極のメニューを協力してもらったらどうでしょうか?」

 

花村「それはいいわ」

 

田畑「そうね。周懐徳さん達みたいな食通に協力してもらえれば、これ以上にない協力者だわ」

 

周懐徳「究極のメニューとは?」

 

山岡「それについてお話ししましょう」

 

栗田「その前に少しいいですか?」

 

その話をしようとする前に、栗田は先程拓哉が言った言葉の事が聞きたかった。

 

栗田「加藤さん、先程の言葉の意味教えてもらってもいいですか?」

 

拓哉「先程の言葉?」

 

栗田「はい。『ウチの全系列店には、取材を断らせてる』と言ってましたが」

 

拓哉「ああ、その事ね。聞けば栗田さん達は東西新聞の記者みたいですね。だったら、今まで噂で聞いた店で取材したくても断られた店があったはずですが?」

 

山岡「そう言えば、取材となれば行った店はほとんど断られたな」

 

拓哉「その断られた店はウチの系列店なはずです」

 

栗田「系列店…」

 

そして拓哉は、自分の正体を教えた。

 

拓哉「俺は、加藤家次期当主なんです」

 

『!!?』

 

その言葉を聞いて、全員が驚きの表情をする。

 

栗田「加藤…本当にあの加藤家の」

 

ライダー「ええ、拓哉は世界の三分の二を占めている加藤家、加藤豪昌の孫であり次期当主です」

 

周懐徳「な、なんですと!?」

 

ライダーの言葉に、周懐徳も言葉を失う。

 

拓哉「ウチの爺ちゃんから、周懐徳さんの事は聞いてますよ。周懐徳のお爺様の代からの付き合いだそうです」

 

周懐徳「いやはや、まさか加藤家のお孫さんだったとは」

 

栗田「驚きました。けれど、何故系列店に取材を拒否なさってるのですか?」

 

拓哉「先程の理由ですよ。取材で取り上げられれば味を落とす。自分の舌で、足で確認してほしいから取材を拒否してるんですよ」

 

山岡「なるほど…」

 

その言葉に山岡は感心した。

 

拓哉「それに、俺の爺ちゃんの時からそうなのをおいそれと方針を変えるつもりもないし、俺自身美味い物を食いたいですからね♪」

 

栗田「まぁ、加藤さんたら」

 

拓哉「あ、俺の事は気軽に名前で呼んでください」

 

栗田「分かりました」

 

そして楽しい食事会を始めるのであった。



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19話

とある日、拓哉は屋敷の庭にいた。

 

拓哉「これなら、あいつ等全員連れて来ても十分だな。こんだけ広ければ養えるだろ。後は、博士用の研究施設とかも作ったしな」

 

そして屋敷に戻り、出発の準備をする。すると、部屋の扉がノックされる。

 

拓哉「開いてるぞ」

 

『失礼いたします』

 

入って来たのは、リーラと束、そして女スナイパーだ。

 

拓哉「どうしたんだ?そいつを連れて来て」

 

束「うん!ようやく感知して虫も取れたから連れてきたんだ」

 

リーラ「何でも、彼女から拓哉様にお話があるそうで」

 

そう言うと、後ろにいた女が前に出てくる。

 

拓哉「どうやら無事に完治したみたいだな」

 

「ええ、貴方のおかげよ」

 

拓哉「そういえば、まさキチンと自己紹介してなかったな。さっき聞いたと思うが、俺はこの家の主の加藤拓哉だ。一応加藤家次期当主に決まってる」

 

「私の名前はクワイエットよ」

 

拓哉「クワイエット…ね。確かにあの時のお前にはピッタリだが、本名じゃないだろ?」

 

クワイエット「私の本名は、昔に捨てたわ。だから、クワイエットが今の名前よ」

 

そう聞いて、拓哉はやれやれといった表情になる。

 

拓哉「分かった。それじゃあクワイエット、お前はこれからどうしたい?」

 

クワイエット「…できれば、貴方の側に置いてほしいわ」

 

「「!!?」」

 

その言葉に、リーラと束は驚く。

 

拓哉「何故だ?」

 

しかし、拓哉だけはクワイエットから目を離さず話す。

 

クワイエット「いきなりこんな事言われて警戒するのは当然ね。でも、あいつから私を助けてくれた。そして治療までしてくれて声帯虫も取ってくれた。ここまでしてくれたのに、恩を返せない程私は落ちぶれていない」

 

拓哉「……」

 

そう聞いて、拓哉は暫くの間考える。そして…

 

拓哉「いいだろう。ならウチ…いや、俺の為に働いてもらう。今日からお前も俺達の家族だ」

 

クワイエット「ええ、貴方の為に」

 

2人は、握手をする。こうして拓哉の家に新しい家族が増えたのであった。

 

拓哉「おっと忘れてた。そろそろ行かないと」

 

リーラ「そう言えば、拓哉様どちらへお出かけですか?」

 

拓哉「ああ。ようやく家に広い庭と研究所が出来たから、あいつ等を迎えようと思ってな」

 

束「あいつ等?」

 

リーラ「なるほど」

 

束は首を傾げるが、リーラだけは理解したようだ。

 

拓哉「って訳だから、家の事は頼むな」

 

リーラ「かしこまりました。お気をつけて」

 

そして拓哉は、新奥浜の宇宙ステーションに向かったのであった。新奥浜空港に到着し、待ち合わせ人と会う。

 

「拓哉さ~ん!こっちこっち!!」

 

拓哉「よう茉莉香。少し遅れたか?」

 

そこにいたのは、爺ちゃんの娘の子供の加藤茉莉香。拓哉の従妹だ。

 

拓哉「無理言って悪いな」

 

茉莉香「気にしないで下さい。それに、きちんと料金を貰ってますし」

 

拓哉「それは当然だ。保険組合に依頼してるんだしな。じゃあ行くか」

 

茉莉香「はい」

 

2人は宇宙船に乗り、茉莉香所有の弁天丸に向かった。弁天丸に乗り込むとブリッジに向かう。

 

茉莉香「ただいま~」

 

拓哉「お邪魔します」

 

「お帰り船長。そして、今回の依頼者ね」

 

話しかけてきたのは、クリーム色の髪に毛先が緑の女性だ。

 

「初めまして。私はこの船で船医をしてるミーサよ」

 

拓哉「よろしく」

 

茉莉香「そして左から航海士のルカ、操舵手のケイン、レーダーセンサー担当の百眼」

 

ケイン「初めまして」

 

百眼「よろしくな」

 

茉莉香「後は、通信やハッキング担当のクーリエと、戦闘系担当のシュニッツァー。彼はサイボーグなんです。これが主なメンバーです」

 

拓哉「なるほど」

 

クルー達の紹介をし、茉莉香達は席に座る。

 

茉莉香「それじゃあ、超高速跳躍準備!!」

 

百眼「了解」

 

ルカ「目標、ポケモン惑星」

 

三代目「エンジン共に問題なし!」

 

茉莉香「それじゃあ…跳ぶよ!!」

 

そして弁天丸は、宇宙空間から亜空間に跳んだ。

 

拓哉「へ~、初めて見たな」

 

茉莉香「目的地は結構遠いんですけど、超高速跳躍を使えば早く着きますよ」

 

ミーサ「この調子なら、翌日には到着するわ。船長も定時の時間だし、もうあがっていいわよ」

 

茉莉香「分かった。それじゃあ皆、お疲れ」

 

『お疲れ様~(です)』

 

茉莉香「取り敢えず、ご飯にしましょう」

 

そう言われ、茉莉香は拓哉を連れて食堂に行く。

 

拓哉「ここが弁天丸の食堂なのか」

 

茉莉香「はい。もっとも、ウチには料理が得意な人がいないんで、基本宇宙食か冷凍食品になっちゃいますけど」

 

頬をかきながらそう答える茉莉香。すると、拓哉はキッチンを見る。

 

拓哉「材料とかは積んでないのか?」

 

茉莉香「一応、簡単な物なら作るんで積んではいますけど」

 

拓哉「少し冷蔵庫の中を見せてもらうぞ」

 

厨房に入り、備え付けられている冷蔵庫を開ける。中には結構な食材があった。

 

拓哉「なんだ、結構色んな食材があるじゃないか。これなら…」

 

すると拓哉は、冷蔵庫から周種類の食材をキッチンに置く。

 

茉莉香「拓哉さん?」

 

拓哉「あまり時間もかけれないし、あれにするか」

 

メニューを決めると、拓哉は早速調理に取り掛かった。茉莉香は、拓哉の調理を黙って見ていた。暫くすると二つの料理が完成した。

 

拓哉「出来たぞ。簡単だが親子丼と味噌汁だ。食ってくれ」

 

茉莉香「うわ~!美味しそう!いただきま~す!!」

 

早速出来た料理を食べる茉莉香。果たしてお味は…

 

茉莉香「美味しい!今まで食べた中で一番おいしいです!!」

 

拓哉「それはよかった」

 

笑顔になりながら、拓哉も自分で作った親子丼を食べる。

 

拓哉「うん、美味いな。久々に作ったから少し不安だったが」

 

そう言うと、2人はそのまま親子丼を間食し、食器を洗って部屋に戻ることにした。

 

茉莉香「すみません拓哉さん。ソファーでなんて」

 

拓哉「気にするな。茉莉香こそ、隣の部屋とはいえ悪いな。俺がいて」

 

茉莉香「そんな事ないです!」

 

茉莉香は力強くそう言う。流石の拓哉も少したじろぐ。

 

拓哉「そ、そうか。ならとっとと寝るか。明日もあるし」

 

茉莉香「はい。おやすみなさい」

 

そして茉莉香も隣の部屋に戻り眠りについた。翌日、船長室に連絡が入る。

 

拓哉「ん…電話か?」

 

寝起きの頭を働かせながら、電話を取る。

 

拓哉「はい…もしもし」

 

『もしもし?拓哉君かしら』

 

声の主はミーサだった。

 

拓哉「あ、ミーサさん。おはようございます」

 

ミーサ『おはよう。そろそろ目的地に到着するから、悪いけどウチの船長を起こしてブリッジに来てくれるかしら』

 

拓哉「分かりました」

 

ミーサ『宜しくね♪』

 

そして電話は切れる。

 

拓哉「もうそんな時間か。取り敢えず茉莉香を起こさないとな」

 

受話器を置いて、拓哉は隣で寝てる茉莉香を起こすため、扉をノックした。

 

拓哉「茉莉香、起きてくれ。そろそろ到着するってよ」

 

しかし、中から返事は返ってこない。もう一度ノックするが変わらない。

 

拓哉「入るぞ」

 

そう言い、中に入るとベットで寝てる茉莉香を見る。

 

拓哉「まだ寝てるか」

 

そう呟き、拓哉は茉莉香を起こす。

 

拓哉「茉莉香、起きてくれ。茉莉香」

 

茉莉香「うぅ~ん…」

 

拓哉「起きないか」

 

どうしようか考えていると、突然拓哉の腕が引っ張られた。

 

拓哉「うおっ!?」

 

突然の事で、拓哉はそのままベットに倒れこむ。

 

拓哉「とっとと!!」

 

慌てて手を茉莉香の横につき、倒れこむのを防ぐ。

 

茉莉香「ん~…はれ?」

 

そして、タイミングよく?茉莉香は目を覚ます。

 

拓哉「お、おはよう」

 

茉莉香「…え?なんで拓哉さんが??」

 

拓哉「さっきミーサさんから連絡があってな。それで茉莉香を起こそうとしたらお前に腕を引っ張られて現在に至るって訳だ」

 

茉莉香「え…ええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!???????????」

 

船長室で、そんな叫び声が響き渡るのであった。



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20話

あの後、お互い気まずい雰囲気の中ブリッジにやって来た。男性クルー達は何故かニヤニヤしていたが…

 

茉莉香「と、取り敢えず目的地には到着したけど」

 

拓哉「ああ、そうだな」

 

顔を赤くしながら言う茉莉香に、普段以上にクールに話す拓哉であった。

 

拓哉「さて、後は地上に降りるだけだが」

 

茉莉香「拓哉さん、私も一緒に行ってもいいですか?」

 

拓哉「別にいいけど、船はいいのか?」

 

そう思ってると、ミーサが話しかける。

 

ミーサ「問題ないわ。この辺じゃ特に危険はないし、大事なお客を1人にさせる訳にはいかないわ」

 

拓哉「別に1人でも問題ないけど…」

 

ミーサ「一応よ。この惑星は重火器は持ち込めないしね」

 

そうなのだ。この惑星はポケモンを傷つけない為に、入る時は重火器は持ち込み厳禁なのである。悪い事をするにもポケモンを使うからである。

 

拓哉「じゃあ、来るのは茉莉香とミーサさんだけかな?」

 

茉莉香「ケインも来ますよ。まぁ、送り迎えだけですけど」

 

拓哉「分かった」

 

こうして、拓哉を含めた四人は地上に降り立ったのである。一度空港に行き、入国手続きなどを行ってから目的地に向かう。

 

拓哉「ここで手続きを済ませれば、そのまま目的地に飛んでいける」

 

ミーサ「それじゃあ、さっさと済ませちゃいましょ」

 

空港で重火器の持ち込みがないか検査をし、四人とも無事に通過した。

 

拓哉「検査も済んだし、目的地に向かうか。ケインさん、まずはここに行ってもらえますか?」

 

ケインに地図を見せ、場所を教える。それを見たケインがナビに打ち込む。因みにナビは、空港で購入した。

 

拓哉「目指すは、マサラタウンのオーキド研究所だ」

 

ケイン「了解です」

 

目的地に向けて出発した。暫く飛んでると、建物が見えてきた。

 

拓哉「あれがオーキド研究所だ」

 

少し離れた広い場所に着陸する。そこから歩いて建物に入っていく。

 

拓哉「こんにちは~!!」

 

すると奥から、白衣を着た老人が出てきた。

 

「君は…もしや拓哉君かの?」

 

拓哉「ええ、久し振りですオーキド博士」

 

オーキド「拓哉君がここに来たということは」

 

拓哉「はい。ようやく準備が整ったんであいつらを迎えに来ました」

 

オーキド「そうか。皆君が来るのを楽しみにしてたからの~」

 

そんな話をしてると、茉莉香が話しかける。

 

茉莉香「拓哉さん、こちらの方は…」

 

拓哉「おっと、紹介がまだだったな。こちらはオーキド・ユキナリ博士で、ポケモン研究者なんだ。ポケモンについては、ほとんど博士に教えてもらったんだ」

 

オーキド「いやいや、拓哉君はわしが教えた事をことごとく吸収していったからの。自慢の教え子じゃわい」

 

拓哉「取り敢えず、今ここにいる連中を引き取ります」

 

そう言って、拓哉達は庭に出て行った。庭に出ると、沢山のポケモンがいた。

 

茉莉香「うわ~!!」

 

ミーサ「凄いわね」

 

拓哉「だろ」

 

オーキド「ここでは、マサラタウン出身のトレーナーから預けられたポケモンの他にも、柵の向こうには野生のポケモン達もおるからの。結構な数じゃよ」

 

そんな話をしてると、数体のポケモンが拓哉達の方に走って来る。

 

オーキド「来たようじゃの」

 

拓哉「やれやれ」

 

そのまま拓哉の所に着いた瞬間、そのまま飛びついてきた。

 

茉莉香「た、拓哉さん!?」

 

ミーサ「ちょっと!!?」

 

一緒に来た2人は焦っていた。が、拓哉は笑っている。

 

拓哉「おいおいお前ら♪くすぐったいって♪」

 

「コ~ン♪」

 

「ピッカ~♪」

 

「フィ~♪」

 

拓哉「分かった。分かったから落ち着けって」

 

そう言われ、三匹は拓哉から離れる。

 

拓哉「全く。茉莉香、これがポケモンだ。そして、俺の大切な相棒達だ。ほら、挨拶しろ」

 

「コン!」

 

「チャ~」

 

「フィ!」

 

拓哉「左からキュウコン、ピカチュウ、エーフィだ」

 

茉莉香「可愛い~♪」

 

そう言いながら茉莉香は、ピカチュウに抱き着こうとする。しかし、ピカチュウは拓哉以外は嫌なので茉莉香の電気ショックを放った。

 

茉莉香「ひゃああああああああ!!」

 

ミーサ「ま、茉莉香!!?」

 

拓哉「こらピカチュウ!」

 

ピカチュウ「ピカ~…」

 

拓哉に怒られて、しょげるピカチュウ。そのピカチュウを抱きかかえ、茉莉香の側に行く。

 

拓哉「大丈夫か茉莉香?」

 

茉莉香「だ、だいじょうびゅ…れす」

 

オーキド「茉莉香君も見事にやられたの~」

 

拓哉「確かに。博士も初めてピカチュウを抱こうとした時こうなりましたね」

 

ピカチュウ「ピカ~」

 

頭の上で未だに拗ねてるピカチュウ。

 

拓哉「ほらピカチュウ。茉莉香に謝れ」

 

ピカチュウ「ピカピカチャ~」

 

茉莉香「気にしなくていいよ」

 

笑って茉莉香は許してくれた。すると今度はヘドロの固まりがオーキドに向かて走って来る。

 

オーキド「ぬおぉ!?サ、サトシのベトベトン!!」

 

そのままオーキドに抱き着く。

 

拓哉「ず、随分と好かれてますね…博士」

 

オーキド「そうなんじゃ。随分と人懐っこいベトベトンでのぅ」

 

ミーサ「も、物凄い臭いね…」

 

茉莉香「た、確かに…」

 

2人は鼻を摘まみながらそう言う。

 

拓哉「確かに、この臭いは初めての奴にはキツイかな」

 

オーキド「ハハハハ、確かにの~」

 

拓哉「博士、俺は次にウチキド博士の所に向かいます」

 

オーキド「ウチキド君の所か。向こうには水ポケモンを何匹か預けてるんじゃったな」

 

拓哉「ええ。そして場所が出来たので、ウチキドさんにウチに来てもらう約束なんです」

 

オーキド「なるほどのぅ。ウチキド君が最近嬉しそうなのはそれが理由じゃったか」

 

こうして、連れていくポケモンを決めてオレンジ諸島に向かった。オレンジ諸島にはそのままでは入れないので、街から離れた場所に宇宙船を止めて、港まで歩いて行く。そして船に乗ってある島に向かった。

 

拓哉「もうじき研究所に到着するはずだ」

 

研究所に向けて歩いてると、草村から何かが飛び出してきた。

 

茉莉香「きゃあ!!」

 

ミーサ「な、なんなの!?」

 

出てきたのは野生のオニドリルだった。

 

拓哉「オニドリルか。なら…」

 

拓哉は4つあるウチの1つのモンスターボールを投げる。

 

拓哉「出て来いイワーク!!」

 

イワーク「グオオオオオオ~!!」

 

出てきたのは、蛇みたいに長いが岩の胴体をしてかなりデカいポケモンだった。

 

茉莉香「お、大きい…」

 

ミーサ「これって、大きいってレベルじゃないわよ…」

 

イワークを見て、そう述べる2人であった。

 

拓哉「イワーク、体当たりだ!!」

 

イワーク「グオオオオオオッ!!」

 

オニドリル目掛けて体当たりする。オニドリルに命中しそのまま飛んで行ってしまった。

 

拓哉「ご苦労さん。戻れイワーク」

 

そしてボールに戻した。

 

拓哉「2人とも大丈夫か?」

 

茉莉香「はい」

 

ミーサ「しかし、あれがポケモンバトルなのね。テレビでリーグ戦は見た事はあったけど、生で見るのは初めてだわ」

 

拓哉「だろうと思って、基本的だが戦ったんですよ。最も、俺はその必要はあまりありませんがね」

 

「「??」」

 

拓哉の言葉に2人は首を傾げた。そしてようやく目的地のウチキド研究所に到着した。

 

拓哉「こんにちは~。ウチキドさん!」

 

すると奥から女性が出てきた。

 

ウチキド「あら、待ってたわよ拓哉君」

 

拓哉「お待たせしましてすみません。ですが、ようやく完成しましたので」

 

ウチキド「連絡を貰ってから、もう準備は出来てるわ。彼女達に研究所の引継ぎも済んであるし、安心して拓哉君が所有する研究施設に行けるわ♪」

 

そんな話をしてると、後ろで涙を流してる男子がいた。

 

「うぅっ…うううっ…」

 

茉莉香「あの~」

 

ウチキド「どうかしたかしら?」

 

ミーサ「後ろで泣いてる彼は…」

 

ウチキド「彼はタケシ君でね、4か月前からここで手伝ってくれてたの。だけど、私が今日でいなくなるから、彼にもご両親の所に戻るように言ってたのよ」

 

茉莉香「えっと…」

 

その言葉に、茉莉香は苦笑いしミーサは呆れていた。

 

拓哉「後、ソフィーさんやカンナさんが来てくれます」

 

ウチキド「あらそうなの?私だけでもよかったのに」

 

最後の方は聞こえない声で言うウチキドであった。そして研究所に預けてたポケモンを貰い、残りの2人も回収して拓哉達はポケモン惑星から飛び立ったのであった。そして屋敷に戻るとリーラ達が出迎える。

 

リーラ「お帰りなさいませ拓哉様」

 

拓哉「ただいまリーラ。今日から一緒に住むウチキド博士、ソフィーさん、カンナさんだ」

 

ウチキド「よろしく」

 

ソフィー「宜しくお願いします」

 

カンナ「よろしく」

 

リーラ「…よろしくお願いいたします」

 

少しだけ不機嫌になるリーラ。しかし、そんな表情は心の中だけに留めいつものように接する。

 

拓哉「それじゃあ、早速ポケモン達を庭に放そう」

 

5人は協力して、今まで拓哉が捕まえたポケモンが入ったボールを運ぶ。庭に出ると1つづつ投げていき、そしてようやく全部放ち終わったのであった。

 

拓哉「疲れた~」

 

思わずその場に座り込む拓哉。

 

ソフィー「お疲れ様拓哉君」

 

カンナ「だけど、思ってた以上に広い庭ね」

 

ウチキド「研究所もかなり広いし、設備も充実してたわ。これなら、向こうにいた時以上に研究や管理が出来るわ」

 

拓哉「それはよかった。一応この島には、ポケモンが出て行かないように細工してますので安心してください」

 

ソフィー「けれど凄いわ。島丸ごと拓哉君の所有物だなんて」

 

3人は、島丸ごとが所有物と聞いた時は驚いていた。

 

拓哉「ま、爺ちゃんの力も借りてですけどね」

 

すると、エーフィやワタッコにシェイミがやって来た。

 

拓哉「どうだ?ここは気に入ったか?」

 

エーフィ「フィ♪」

 

ワタッコ「ワタ♪」

 

シェイミ「シェミ♪」

 

3匹は嬉しそうに頷いていた。

 

拓哉「ならよかった。これからはずっと一緒だからな」

 

そう言うと、シェイミは頭の上、エーフィは懐、ワタッコは肩の上に乗って来た。

 

拓哉「ったく、相変わらず甘えん坊だな」

 

ウチキド「本当に、拓哉くんにはよく懐くわね」

 

ソフィー「そうですね」

 

カンナ「そればかりは羨ましいと思うわ」

 

3人も、仲良さそうにポケモン達と話す拓哉を見てそう思うのあった。



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21話

一誠「ん~!今日も授業乗り切ったぜ!!」

 

稟「だな」

 

緑葉「だらしないぞ2人とも」

 

授業が終わり、放課後になって稟達が話している。

 

一誠「だってよ緑葉、あの先生の授業には睡眠効果があるぞ」

 

拓哉「確かにな」

 

すると、拓哉も会話に混ざる。

 

拓哉「ってか一誠、部活に行かなくていいのか?」

 

一誠「おっとそうだった」

 

そう言われ、一誠は鞄を持って部室に向かった。

 

拓哉「さて、俺もそろそろ帰るか」

 

稟「なぁ拓哉、俺達今から葛飾に行くんだが一緒に行かないか?」

 

拓哉「葛飾に?何しに行くんだ??」

 

稟「俺は買い物。で、樹はいつものナンパだ」

 

緑葉に指をさしてそう答える稟。

 

拓哉「緑葉はいつも通りなんだな」

 

緑葉「まぁな。稟には、俺の知ってる店で安く買い物できるようにしてやる代わりに、ナンパに付き合ってもらうんだよ」

 

拓哉「…ま、暇だしいいか。今日は特に仕事もないしな」

 

こうして、三人は荷物を持って葛飾に遊びに行くのであった。稟の買い物を済ませ、緑葉と稟、拓哉も無理矢理ナンパに付き合わされるが、口説いた女性が担任の紅女史だったので、そのまま連行されてしまった。その時に、ドナドナの曲が聞こえたのは気のせいと思いたい。

 

稟「…どうする?」

 

拓哉「そうだな…少し知り合いに挨拶したいから俺はそこに向かう」

 

稟「そうか。俺は楓やプリムラが待ってるし帰るわ」

 

拓哉「そうしろそうしろ。2人の嫁さんを大切にな」

 

稟「だから嫁じゃないって!!」

 

からかいながら、拓哉はある場所に向かった。向かったのはいいが、そこにある筈の建物が見当たらない。見ると、その建物は崩れておりその前には複数の警官がいた。

 

拓哉「これは一体…」

 

「拓哉君」

 

拓哉「ん?」

 

振り返ると、そこにいたのは知り合いだった。

 

拓哉「麗子さんに圭一さん、これはいったい何があったんです?」

 

圭一「実は、先輩が派出所を壊して修繕したんですけど…」

 

麗子「それがペーパークラフトだったのよ」

 

拓哉「それで、両津さんが今大原さんに怒られてるって事ですね」

 

「「その通り」」

 

その言葉に、拓哉は溜息を吐く。

 

拓哉「で、どうするんですか?この派出所」

 

麗子「そうね~」

 

圭一「流石に、中川グループの力を使っても完成するのに一週間はかかります」

 

拓哉「やれやれ」

 

そう言うと、拓哉は何処かに電話をする。

 

拓哉「もしもし爺ちゃん?」

 

豪昌『おぉ拓哉か。どうかしたのか?』

 

拓哉「うん。実はセバスチャンを借りたいんだけど…」

 

その様子を見て、麗子と中川は話す。

 

麗子「今拓哉君、お爺ちゃんって言ったわよね」

 

圭一「おそらく、加藤家現当主の加藤豪昌だと思います」

 

麗子「その人に電話して、どうするつもりなのかしら」

 

圭一「さあ?」

 

そんな話をしてる間に、電話は終わっていた。

 

拓哉「今からセバスチャンがここに来ます」

 

麗子「セバスチャン?」

 

「お久し振りでございます。拓哉坊ちゃま」

 

いつの間にか、麗子と中川の背後にいたセバスチャン。

 

「「うわっ(きゃあ)!!」」

 

拓哉「久し振りセバスチャン。悪いな、こんな事の為に呼び出して」

 

セバスチャン「いえ、旦那様や坊ちゃまの願いを叶えるのが執事である私の務めですので」

 

拓哉「で、この派出所を明日の朝九時までに直せるか?」

 

拓哉の言葉を聞いて、麗子や中川に先程まで説教していた大原達までやって来た。

 

大原「加藤君!それは流石に無理だろう。この馬鹿(両津)みたいな事を言っていかん!!」

 

圭一「そうだよ拓哉君。いくらなんでも、ほぼ何もない状態から明日の九時に完成は…」

 

寺井「無理だよね~」

 

両津「わしでも無理だぞ」

 

麗子「そうよ」

 

5人はそう言うが、セバスチャンがそれを否定する。

 

セバスチャン「御心配には及びません。それくらいお安いご用です」

 

大原「ほ、本当なんですか?」

 

セバスチャン「はい。加藤家の執事たる者、これくらいの事が出来なくてどうします!!」

 

拓哉「ってな訳で、任せて下さい。明日俺も来ますので」

 

そして拓哉は、セバスチャンを残して帰っていったのだった。そして翌日、セバスチャンが早くに屋敷にやって来た。

 

セバスチャン「おはようございます坊ちゃま」

 

拓哉「セバスチャンか。ここにいるって事は…」

 

セバスチャン「はい。ご要望通り派出所は完成いたしました」

 

拓哉「そうか。無理を言って悪かったな」

 

セバスチャン「いえ。では向かいましょう」

 

そしてリーラ達を連れて派出所にヘリで向かった。到着すると、既に麗子達が来ていた。

 

拓哉「おはようございます」

 

麗子「おはよう拓哉君」

 

圭一「おはようございます拓哉君」

 

大原「無理を言ってすまなかったね。あの馬鹿のせいで」

 

上司の大原が謝る。

 

拓哉「いえいえ。それじゃあセバスチャン頼む」

 

セバスチャン「はい」

 

掛けてあった布を剥ぎ取ると、見事に元通りの派出所があった。

 

圭一「ほ、本当に完成してる…」

 

両津「ワシみたいに、ペーパークラフトじゃないだろな?」

 

そう言いながら壁を押す。しかし、ビクともしない。

 

両津「ほ、本物だ!」

 

セバスチャン「当然です」

 

拓哉「無理行って悪かったなセバスチャン」

 

セバスチャン「いえ、坊ちゃまのお願いですので。それでは、私は豪昌様の元に戻りますので」

 

そしてセバスチャンは消えて行った。

 

麗子「けど、本当に凄いわね」

 

圭一「流石加藤家ですね」

 

セバスチャンの行動を見てそう思わずにはいられない2人だった。



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22話

とある休日、拓哉は屋敷でポケモン達の世話をしながらのんびりしていた。

 

拓哉「んん~…いい天気だなぁ」

 

ピカチュウ「ピカ~」

 

ロコン「コ~ン」

 

カビゴン「Zzz…Zzz…」

 

寝ているカビゴンの上で、拓哉とピカチュウとロコンは、日向ぼっこをしている。すると…

 

大和「拓哉様~!」

 

屋敷から大和とリーラが此方にむかって走ってきた。えらく慌てている。

 

拓哉「どうしたんだ2人とも。そんなに慌てて」

 

リーラ「も、申し訳ありません。実は、こんな手紙が届けられまして」

 

渡された手紙を受け取り、中身を確認する。すると、手紙にはこう書かれていた。

 

拓哉「何々…『翌日の午後9時に、加藤家が所有している500カラットのダイヤをイタダキに参上。ルパン三世』ルパン三世って言えば確か…」

 

リーラ「はい。あの有名な“アルセーヌ・ルパン”の孫にあたり、世界的に有名な泥棒です」

 

拓哉「アルセーヌ・ルパンの孫ねぇ…」

 

見た手紙をヒラヒラさせながら、拓哉はリーラ達を見る。

 

拓哉「で、ルパン三世はウチにある500カラットのダイヤを奪いに来るというわけか?」

 

大和「はい」

 

拓哉「で、じいちゃんはどうするって?」

 

リーラ「豪昌様は、『拓哉の好きにしたらいい。別に500カラットのダイヤくらいくれてやってもいいんじゃぞ』と仰りまして」

 

拓哉「好きにね。ってか、500カラットのダイヤくらいって」

 

相変わらず豪昌は豪快である。名前的にも

 

拓哉「まぁでも、別に盗まれて困りはしないが、ウチの島に来るんだ。それなりに歓迎してやらないとな♪

 

リーラ「畏まりました。それでは明日に備え屋敷の警備を強化します」

 

拓哉「よろしく」

 

そしてリーラ達は戻っていた。

 

ピカチュウ「ピカ?」

 

拓哉「明日、もしかしたらお前達にも出番があるかもな」

 

ピカチュウ「チャ~♪」

 

拓哉はそう言いながら、ピカチュウの頭を撫でるのであった。翌日、今夜9時にルパンが来ると聞き付け、ルパン逮捕に全力を注いでいるICPOの警部がやって来た。

 

「失礼します。私ICPOの銭形と申します。ルパンからの予告状が送られたと聞きお尋ねしました」

 

拓哉「どうも。加藤家次期当主の加藤拓哉です。ですが銭形警部、申し訳ないですが警備は我々だけで充分ですのでお引き取り下さい」

 

拓哉の言葉に銭形は反論する。

 

銭形「ルパンを舐めちゃいけませんぞ!奴はどんな手を使っても必ずや来ます。ですので、我々に警備を…」

 

拓哉「いえ、それは間に合ってます」

 

銭形「しかし…」

 

そろそろ鬱陶しいくなってきた拓哉。はっきり言って、拓哉は自分の家族以外屋敷に入れたくないのである。無論この島にも。

 

拓哉「…はっきりと言っておきます。邪魔なんだよあんた達は」

 

銭形「!?」

 

拓哉「アルセーヌ・ルパンの孫だか、世界一の大泥棒だか知らないが、ウチの島に侵入してくるんだ。それ相応の覚悟をしてもらわないとな」

 

拓哉は腰につけてる荒鷹を少しだけ抜き、刃を見せる。すると、銭形以外の連中はビビっている。

 

拓哉「…この程度でビビってんじゃ、ウチの連中の邪魔だ。それでも警備がしたいなら、屋敷の外でしてくれ」

 

そう言い残し、拓哉は部屋に戻っていった。そして、予告時刻迄後2分。銭形達は、屋敷の外で警備をいている。

 

拓哉「さてさて、どう退治してやるか♪」

 

すると、突然屋敷の明かりが消える。

 

拓哉「随分と古臭い手だな」

 

だが、拓哉の屋敷は束の力も加わっており、復旧まで1秒とかからない。

 

拓哉「さて、それじゃあ狩を始めるか」

 

因みにダイヤは拓哉の部屋にあり、そこは一番上で奥の部屋になる。で、拓哉以外の皆は各階で待機中。

 

拓哉「状況はどうだ束?」

 

拓哉は通信で、地下にいる束に連絡する。

 

束『バッチリ映ってるよ。敵は4人だね』

 

拓哉「4人でよく侵入する気になるな」

 

束『だね~。けど、1人驚いたよ。たっちゃんと同じ刀持ってるもん』

 

拓哉(俺と同じ刀?あ~、そう言えば昔じいちゃんに聞いた事あるな)

 

昔豪昌に言われたことを思い出す拓哉。

 

拓哉「多分それは、二代目斬鉄剣だろう。初代より劣るが、切れ味はお墨付きだ」

 

束『へ~、斬鉄剣が2本もあるなんてね』

 

拓哉「世界に存在するのは、その2本だけだ。まさか、こんな場所で拝めるとはな」

 

拓哉は、今自分が持っている初代斬鉄剣を撫でながら、嬉しそうに呟いたのだった。暫くすると、1人の気配が近付いてきた。

 

拓哉(どうやら、やって来たのは1人みたいだな)

 

拓哉は椅子から立ち上がり、扉が開くのを待つ。扉が開くと、赤いジャケットを来た男がいた。

 

「おいおい、次元達を足止めしてるのはカワイ子ちゃんなのに、俺は男かよ」

 

拓哉「それは失礼したね。ようこそルパン三世。俺は加藤家次期当主の加藤拓哉だ」

 

ルパン「あ~らら。俺ってばやっぱり有名人?」

 

拓哉「いや、銭形警部がしつこくあんたの事を話してたから」

 

ルパン「とっつぁん…」

 

流石のルパンも呆れていた。

 

拓哉「本来なら、4人ともここに招待するつもりだったけど、ウチの連中がどうしても警備すると言い張ってね。仕方ないから、各階1人ずつ配置した訳って事さ」

 

ルパン「なるほど。だからあのカワイ子ちゃん達以外、屋敷に人がいなかったってことか」

 

拓哉「その通り。けど、迷わず来れただろ?前日ウチのメイドに変装して屋敷の道順を覚えただけあるな」

 

ルパン「!?」

 

拓哉の言葉に動揺するルパン。

 

拓哉「何故バレたって顔だな。生憎俺は耳がよくてね。あんたはロベルタに変装してたけど、普段のロベルタの呼吸音や心音と違ってたからね」

 

ルパン「……」

 

拓哉「それに、前もって全員に襲われても反撃せずにワザと変装させてやれって指示したからね。楽にロベルタに変装できただろ?」

 

ルパン「なるほどな。つまり俺達は、最初っからお前さんの掌の上って訳か」

 

拓哉「そういうことだ」

 

拓哉はそう言いながら、指を鳴らす。すると天井からモニターが下りてくる。画面が映ると、ルパンの仲間がリーラ達によって捕まえられていた。

 

ルパン「次元!五右衛門!不二子!」

 

拓哉「こういうことだ」

 

拓哉はそう言うと、持ってた刀を抜く。

 

ルパン「その刀!?」

 

拓哉「ああ、これか?これは初代斬鉄剣だ」

 

ルパン「何だって!?」

 

拓哉「君の仲間…石川五右衛門が持ってるのは、この世にある2本の1つだ。謂わば、二代目斬鉄剣だ。だが、初代と比べれば劣るが、それでも切れ味はお墨付きだよ。さて、どうする?ルパン三世」

 

拓哉は斬鉄剣の剣先をルパンに向けた。



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23話

拓哉は、剣先をルパンに突き付けながら問う。

 

ルパン「……わったよ」

 

ルパンは、持っていた拳銃を地面に置き、足で壁の方に蹴る。

 

拓哉「…天下の大泥棒であるルパン三世が、随分とあっさり諦めるんだな」

 

ルパン「そりゃ俺様だって諦めたかねぇよ。けどな、次元に五右衛門、不二子があっさり負けちまったんだ。で、負けたカワイ子ちゃん達のトップであるお前さんが、あの子達より弱い訳がないって思ったのよ」

 

拓哉「…流石だ。鋭い洞察力と観察力だ」

 

拓哉は突き付けてた斬鉄剣をしまう。そして持ってたダイヤをルパンに投げた。

 

ルパン「とっとと!?」

 

拓哉「貴方は実に面白いですね、ルパン三世」

 

ルパン「いいのか?このダイヤ俺に渡してよ」

 

拓哉「ええ、構いません。ウチのじいちゃんもそれくらいのダイヤくれてやって構わないって言ってますし」

 

ルパン「それくらいって…お前のじいさんどえらいな」

 

拓哉「そうですね」

 

2人は笑いながら話していると、リーラ達が次元達を連れてやって来た。

 

リーラ「拓哉様、残りの皆様をお連れしました」

 

拓哉「御苦労様リーラ」

 

次元「おいルパン、説明してくれ」

 

ルパン「??」

 

次元の言葉に、ルパンは首を傾げる。

 

五右衛門「先程まで、拙者達を拘束していたが、急に解放されここに案内されたのだ」

 

不二子「一体全体どうなってるのよ!」

 

拓哉「ええ、私が指示し皆さんの拘束を解かせました」

 

ルパンに変わって、拓哉が次元達に事情を説明する。

 

次元「お前さんは?」

 

ルパン「世界的に有名な、加藤家の次期当主様だとよ」

 

『!?』

 

ルパンの説明に、3人は驚いていた。すると、五右衛門が拓哉の持ってる斬鉄剣に気付く。

 

五右衛門「それはもしや!?」

 

拓哉「ええ、貴方がお持ちの斬鉄剣と同じものです。最も、此方は初代斬鉄剣ですがね」

 

五右衛門「なんと!?是非とも見せていただけぬか」

 

拓哉「構いませんよ。ただし、触れないで下さいね」

 

五右衛門「もちろんだ」

 

そう言うと、再び斬鉄剣を抜く。抜いた斬鉄剣をマジマジと見つめる五右衛門。

 

五右衛門「流石は初代斬鉄剣。素晴らしい輝きだ」

 

拓哉「もういいかな?」

 

五右衛門「かたじけない」

 

そして拓哉は、斬鉄剣をしまいルパンに話す。

 

拓哉「ルパンさん、貴方にはそのダイヤを差し上げる代わりに、あることに協力してほしい」

 

ルパン「あること?」

 

拓哉「ルパンさん…いや、ルパン。あんたは艦娘って知ってるか?」

 

ルパン「艦娘…」

 

不二子「聞いた事があるわ。大昔に活躍した戦艦が、女性の姿になって甦るって」

 

次元「俺も噂程度だが聞いた事はある。だが、実際この世で見た奴はいないんだろ?」

 

拓哉「ええ、世間ではその様な認識です。ですが…大和」

 

大和「はい」

 

拓哉が呼ぶと、横に立つ大和。そして腕から武装を展開する。

 

ルパン「!?」

 

五右衛門「まさかお主が」

 

大和「はい。私は戦艦大和と申します。今は拓哉さんの元で働いています」

 

ルパン「こいつは驚いた」

 

次元「だな。まさか生きてる内に本物の艦娘に会うなんてな」

 

拓哉「で、話なんだがこの島には、昔大和達が住んでいた鎮守府が存在する。そこの調査を協力してほしい」

 

ルパン「何で俺達に?」

 

ルパンが言うのは最もだ。彼等は泥棒だ。

 

拓哉「まだキチンと探索してないので、それの手伝いと、万が一隠し通路等があれば、そういうのは得意でしょう?」

 

ルパン「なるほどね。いいだろう」

 

拓哉「交渉成立ですね」

 

交渉が成立し、2人は握手をする。

 

次元「しかし、外にいるとっつぁん達はどうするんだ?」

 

拓哉「心配無用です」

 

すると今度は、森が銭形を連れてやって来た。

 

銭形「ル、ルパン!?逮捕だぁ!」

 

拓哉「残念ですが銭形警部、この島にいる限り、私の許可なく逮捕するのは許しませんよ。例えそれが、世界的有名な大泥棒でもね」

 

銭形「な、何だと!?」

 

リーラ「警視庁に送った書類にも書かせていただいています。加藤家が所有する領土で、『当主の許可なく逮捕は禁ずる』と。きちんと銭形様と警視総監のサインもいただいております」

 

銭形「!?」

 

リーラは、警視庁に送った書類を見せる。銭形はそれを奪い書類を確認する。

 

銭形「そ、そんなバカな…」

 

拓哉「ですので、貴方の部下には既にお引き取りしていただきました。ですが、その書類が有効なのは、ウチが所有している領土です。領土を出れば、後はご自由に」

 

銭形「くそ~!」

 

悔しそうに座り込む銭形であった。

 

拓哉「そして銭形警部、貴方に残っていただいたのは、大和の仲間を探していただくからです」

 

銭形「??」

 

拓哉は全員に説明する。つい最近、解体されたと思った仲間が、実はまだこの島で生きている可能性があることを。その為に、これからルパン達と一緒に元鎮守府の場所に向かうと。

 

銭形「艦娘…話には聞いていたが、実際にそれが本当なら許してはおけん!分かった。わしも協力しよう」

 

拓哉「ありがとうございます。もちろん、きちんと報酬はお支払いたします。既に上の許可は取ってますので」

 

ロベルタ「それでは皆様、ヘリをご用意いたしましたので」

 

そして拓哉達は、ヘリに乗り鎮守府へ向かった。



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24話

ヘリで鎮守府に向かっていると、次元が話し出す。

 

次元「しかし、加藤家ってのは恐ろしいな。個人で軍用ヘリまで持ってやがるとは」

 

リーラ「この島の警備に対してです。他にも色々と御座いますが?」

 

ルパン「お~お~、おっそろしいこって」

 

拓哉「皆さん、目的地に到着しましたよ」

 

ヘリを着陸させ降りる。目の前には、既にボロボロになってる鎮守府がある。

 

五右衛門「かなりの年月が経っているようだな」

 

銭形「それに、ココ以外にも建物がある。これは時間がかかりそうだな」

 

拓哉「ですので、ここから二手に分かれます。俺とリーラ、ルパン、銭形警部、不二子さん。残りの大和、ロベルタ、次元、五右衛門は彼方の建物をお願いします」

 

次元「しゃ~ね~な」

 

五右衛門「承知した」

 

大和「分かりました」

 

ロベルタ「了解いたしました」

 

4人は別の建物に入っていった。

 

拓哉「では、俺達も行きましょうか」

 

拓哉は全員に懐中電灯を渡す。中に入ると、かなりの年月が経っているため、ボロボロであった。

 

ルパン「すんげ~」

 

不二子「何か出そうだわ」

 

銭形「ほ~」

 

拓哉「床が腐ってるので、気を付けて下さい」

 

注意しながら奥に進むと、ある部屋を見つけた。表札にはこう書かれていた。

 

拓哉「『提督室』…」

 

リーラ「ここが、当時使われていた提督のお部屋ですか」

 

拓哉「とにかく入るか」

 

中に入ると、ボロボロとはいえ、当時ではかなり豪華な部屋であったことは間違いない内装だった。

 

ルパン「こりゃまた、随分と悪趣味な部屋で」

 

不二子「この部屋のデザインを考えた男に会ってみたいわ」

 

銭形「わしには分からんな?」

 

銭形だけは、通常でしたね。そして各々部屋の中を調べ始めた。暫く部屋の中を探していると、銭形が何かを見つけた。

 

銭形「なんだこりゃ?」

 

ルパン「とっつぁん、何か見つけたのか?」

 

銭形が調べてたのは本棚だ。本を見て棚に戻さず下に置いていったらしく、そこにはなにやらパズルらしきものがあった。

 

拓哉「これは…」

 

リーラ「パズル…でしょうか?」

 

ルパン「……」

 

ルパンはそれを見ると、素早く数字の書かれたパズルを順番通りに動かした。すると、提督室の机が動きだし、地下に続く階段を見つけた。

 

ルパン「ビンゴ♪」

 

拓哉「流石」

 

不二子「地下に続いてるわね」

 

降りる前に、別の建物を調べてた大和達と合流する。向こうは特にこれといって収穫は無かったそうだ。全員で見つけた階段を下りていく。すると、1枚の扉を見つけた。

 

拓哉「扉…だな」

 

ルパン「ああ。しかもご丁寧に鍵まで付いてら。だが…」

 

ルパンは、鍵がかかった扉を開け始める。

 

ルパン「カチャカチャ…カチャっとな♪」

 

あっという間に、扉にかかっていた鍵が外された。

 

ルパン「開いたぜ」

 

拓哉「では、中に入りましょう」

 

次元「何が出るやら」

 

慎重に扉を開け、中に入る。すると中には、複数の女性が縛られており、目は塞がれ口にはチューブが取り付けられていた。そして、全員が服を着ていなかった。だが、拓哉達はそれどころではなかった。

 

拓哉「これは!?」

 

ルパン「悪趣味だな」

 

銭形「なんということを…」

 

リーラ「……」

 

その光景を見た一同は、思わずそう呟いた。

 

拓哉「リーラ!急いで屋敷にいる全員を出動させろ!そして、束に治療させるんだ!!」

 

リーラ「かしこまりました!」

 

拓哉「手が足りなければ、セバスチャンを頼れ!全員生きてるんだ!!絶対に死なせるな!!」

 

そしてリーラとロベルタ、グレイフィアは直ぐに行動した。だが、大和だけはある場所に向かっていた。

 

大和「武蔵…武蔵!」

 

褐色の女性を抱きしめ、そう叫んでいた。恐らく武蔵とは、その女性の名前なのであろう。

 

拓哉「悪いけど、皆も手伝ってくれ!」

 

『分かった!』

 

そしてルパン達も協力してくれたおかげで、思ったより早く全員を屋敷に移動させ治療させる事ができたのだった。

 

拓哉「束、全員の様子は?」

 

束「ん~…大半は大丈夫だと思うよ。けど、危ない奴もいるけどね」

 

拓哉「そうか…」

 

地下室に緊急で作った部屋に、ベッドをいれそこに助けた全員を寝かせている。だが、束言う通り何人かは危険な状態だ。その連中に関しては、別の部屋で治療している。

 

束「けどさ、何でた~ちゃんはこいつら全員を助けるの?」

 

拓哉「何故って」

 

束「私からすればだけど、大和ちゃんは大切な家族だよ。だから、その姉か妹かは分からないけど、武蔵って子を助けるのは分かるよ。けど、それ以外は他人じゃん」

 

束が言いたいのことも分かる。だが、いくら他人でも助けれるなら助けるのが俺だ。あいつらとは違うからな。

 

拓哉「束が、俺達や妹や織斑姉弟以外に興味がないのは分かる。だがな、助けられるなら助けてやりたいんだよ。じゃないと、俺もあのクズと一緒になっちまうんだよ」

 

束「…そっか」

 

そう言い残すと、束は治療の為自分の研究所に戻っていった。俺は上に行き、応接室で待ってるルパン達と合流する。

 

ルパン「よぅ」

 

拓哉「皆お疲れ様。ホントに助かったよ」

 

次元「それはいいが…」

 

次元が言いたいことも分かる。今ここには大和もいる。本来なら、武蔵の所にいさせてやりたいが、余りにも状態が酷いから、暫くは俺と束以外は面会謝絶だ。

 

銭形「それで、助けた彼女達は助かるのか?」

 

拓哉「今現在、束がナノマシン等を使って懸命に治療してる。翌日に到着する加藤家の医療班が来れば、大半の連中は助かる」

 

五右衛門「大半…ということは」

 

拓哉「ええ、何人かは危険な状態だ。そして、大和の家族であろう武蔵も、その内の1人だ」

 

大和「そう…ですか」

 

俺の言葉を聞いて、大和は落ち込む。

 

拓哉「大和」

 

俺は側に行き、大和の手を握る。

 

拓哉「絶対とは言えないが、加藤家が総力を上げてる。そして、俺の師匠達…一龍さんや節婆、トリコさん達の惑星からも、医療関係の人や食材などを取り寄せた。明日には来るから、お前は信じてやれ。武蔵達が回復することを」

 

大和「…はい!」

 

そしてその日は解散となった。ルパン達も、今夜はここに泊まるよう進めると、二つ返事で泊まることになった。勿論銭形警部もだ。この島にいる限り逮捕はできないから諦めたのか、ルパン達と一緒になって酒を楽しんでいた。



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25話

艦娘を助けた翌日、俺達は食堂で食事をとっていた。

 

ルパン「相変わらずリーラちゃんの食事は美味しいね♥俺様毎日食べたい気分♪」

 

リーラ「ありがとうございます。拓哉様、如何でしょうか?」

 

ルパン「あらら…」

 

ルパンの言葉をスルーに回避するリーラ。その事にルパンは落ち込んでいた。

 

拓哉「ああ、塩加減や焼き加減もいい。また腕をあげたな」

 

リーラ「いえ、まだ拓哉様には敵いません」

 

拓哉「当たり前だ。俺はお前の師匠でもあるんだ。弟子に易々と負けるか。ご馳走さま」

 

そう言いながら拓哉はコーヒーを飲みながら新聞を見る。

 

拓哉「さて、今朝の情報はっと。ん~何々、『特車二課・第二小隊、暴走レイバーを捕らえるが、周りの被害甚大』か」

 

銭形「特車二課か」

 

ムシャムシャと食べてた銭形が、食事の手を止める。

 

ルパン「とっつぁん、何か知ってんの?」

 

銭形「本来ならお前達に話す事ではないが、まぁ有名だし構わんだろ。東京湾が地球温暖化の海面上昇に備え、大堤防を建設している事は知ってるな」

 

次元「ああ。確か“バビロンプロジェクト”って名前だったな」

 

ルパン「ああ。その建設をスムーズに行う為に、作業レイバーを作った。そのお陰で作業はスムーズに進み、後数年で工事は終わる」

 

銭形「だが同様に、レイバー関連の事故や事件が多くなり、更にはその“バビロンプロジェクト”に反対する“エコテロリスト”が社会問題になっている。その対抗策の為に作られたのが『特科車両二課中隊』通称『特車二課』だ。そして舞台は第一小隊と第二小隊とあるんだが…」

 

そこで銭形の言葉が止まる。

 

ルパン「とっつぁん?」

 

銭形「第一小隊はいいんだが、第二小隊の連中が特殊でな。警視庁の連中からは、寄せ集め、破壊者、税金の無駄遣い連中と言われている。特車二課に行くことは、わしらからすれば左遷扱いだからな。いい様に使われてるそうだ」

 

そう言い、銭形はコーヒーを飲む。

 

拓哉「なるほど。先程のバビロンプロジェクトだが、俺のじいちゃん…加藤豪昌はそのプロジェクトに参加して指揮してほしいと日本政府から通達があったけど断ってる」

 

不二子「ちょっと待って」

 

拓哉の言葉に不二子が待ったをかける。

 

ルパン「どしたの不二子ちゃん?」

 

不二子「さっきの話よ。加藤家は断ったって言ってたけど、現にそのプロジェクトを先頭で引っ張り支援してるのは加藤家の筈よ?」

 

五右衛門「そう言われれば」

 

拓哉「ああ、それはクズ共が勝手に行ってるだけですよ」

 

次元「クズ?」

 

リーラ「はい。彼方が名乗ってる加藤家は、当の昔に勘当されその資格は剥奪されております。ですが、どうしても加藤家の名は絶大です。既にかなり進んでいる建設に、本家も待ったをかけれません」

 

拓哉「ですので、嫌々ですがウチがそのまま引き継いだんですよ。クズを始末してね」

 

コーヒーを口に含み、そう答えた拓哉であった。

 

ルパン「なるほど。世界的に頂点に立つ加藤家も、そう言った秘密があったわけね」

 

拓哉「ええ。ですが、特に不便はありませんがね。本家を出ていった、もしくは勘当された連中にウチは容赦しませんから」

 

冷たく言われたその言葉に、ルパン達は黙ってしまった。そして、ルパン達は拓哉の島を後にした。

 

拓哉「……」

 

拓哉は書斎で先程の新聞の記事を見ていた。

 

グレイフィア「如何なさいましたか?」

 

拓哉「ん?いや、日本の警察とか、色々と面白い部署があるんだ~と改めて思ってね」

 

リーラ「確かにそうですね」

 

拓哉「そして、特車二課は別だけど、その一課や内務省直属の公安警察『公安9課』とか知り合いも多いけどね」

 

すると拓哉は、何かを考え始めた。

 

リーラ「拓哉様、何をお考えで」

 

拓哉「ん?リーラはもう検討ついてるだろ♪」

 

リーラ「…またですか」

 

拓哉の言葉に呆れるリーラ。

 

拓哉「リーラ、暫くの間空けるから、その間の事は頼んだぞ」

 

リーラ「かしこまりました。ですが、いつものようにさせていただきますので」

 

拓哉「分かってるよ。それじゃ頼んだぞ」

 

そして拓哉は出ていった。

 

リーラ「全く、拓哉様は良くも悪くも豪昌様に似てしまって」

 

グレイフィア「えっと…拓哉様どちらに」

 

リーラ「恐らく、先程話した特車二課に警察官として潜り込み、ご自分で体験されるつもりよ」

 

グレイフィア「ええっ!!で、ですが学校の方は」

 

リーラ「2~3ヶ月は休学扱いね。まぁ、拓哉様は成績優秀で出席日数も十分。なので、3ヶ月程休んでも問題ないわ」

 

グレイフィア「ご、豪昌様やかぐや様にご報告は…」

 

リーラ「その必要もないわ。正直言って、今回の様な事はこれが初めてじゃないわ。それに、あのお二人は拓哉様に甘いのよ。拓哉様が行う事は、『犯罪や加藤家に問題を起こさない限り好きにさせなさい』って言われているのよ。ま、それを容認する私も拓哉様には甘いのかもね」

 

そしてリーラも部屋を出ていき、グレイフィアだけが取り残されたのであった。それから、その話を聞いた豪昌とかぐやは、日本の総理や天皇陛下、そして警視庁の連中にその事を伝えた。当然、この事を知るのはトップ及び数人しか知らない。そして、特車二課に拓哉以外に、拓哉の護衛としてロベルタが事務員、加藤家の男が数人整備士として先に配属された。当然、特車二課の上司及び部下には一切その情報は報告されないのだ。



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26話

あれから数日後、拓哉は地下に向かい治療してる艦娘達の所に向かった。

 

拓哉「邪魔するよ」

 

束「た~ちゃん、お帰り」

 

ナノマシンで治療してるため、ここにいた束がそう言う。

 

拓哉「で、艦娘達の様子は?」

 

束「ん~、危険な数人は除いて他はもう起きても大丈夫だよ」

 

拓哉「なら少し話してみるか」

 

奥の部屋に行き中に入ると、入院患者が着る服を着てる艦娘達の姿だった。そして拓哉の姿を見て全員が黙る。

 

拓哉「なんだ、ここにいる連中は随分と元気そうでなによりだ」

 

「…貴方は」

 

短髪のブラウンの髪の女性が話しかける。

 

拓哉「加藤家次期当主の加藤拓哉だ」

 

「加藤家…」

 

どうやら、この女性は加藤家の事を知ってるそうだ。

 

「あの…何人かの姿が見えないんですけど」

 

拓哉「数人はまだ治療中だ。加藤家が総力を上げて治す事を約束する」

 

「…そう」

 

拓哉「お前達は栄養失調だったから、後2、3日すれば外にも出れる。食事は用意させるから、何か用があればあのスピーカーに話し掛ければ俺かウチのメイドが来る。じゃあな」

 

そう言い残し部屋を出て行こうとする。すると今度は、茶髪の女性が話しかける。

 

「Hye待つデース!私達が治ったら、貴方はどうするつもりデスカ?」

 

拓哉「行く宛があるなら、そこまで送ってやる。もしなければ…」

 

「なければ?」

 

拓哉「ウチで働くか?」

 

笑いながらそう答える拓哉。

 

「働く…デスカ」

 

拓哉「ああ。現に大和はウチでメイドトシテ働いてるぞ。もしくは、お前達が艦娘なら、ウチの島周辺の海上警備を任せたい」

 

『……』

 

拓哉「ま、今すぐ決めろとは言わないさ。暫くはゆっくり治療に専念しろ」

 

そう言い残し、拓哉は地下から出ていった。地上に上がり、食堂でリーラ達が用意したご飯を食べていた。

 

拓哉「リーラ、艦娘達が捕まってた場所はどうなってる?」

 

リーラ「はい。既に埋め立て作業が行われています。建物も1度全て取り壊し、新たに建設を始めています」

 

拓哉「そうか。ウチに作業用のレイバーってあったか?」

 

グレイフィア「いえ、その様なものはございません。ですが、束が開発した作業用ロボットが既に工事を始めています」

 

拓哉「なるほど。全ての工事はどれくらいで終わる?」

 

すると今度は、現場担当のロベルタと大和が話す。

 

ロベルタ「はい。解体から建設までの時間は約1ヶ月です」

 

拓哉「随分と早いな」

 

大和「束さんが作業用のロボットを沢山用意してくれましたので」

 

拓哉「そうか」

 

拓哉は大和を見る。

 

拓哉「大和、他の艦娘達がウチで働くかは分からんが、暫くはウチで面倒を見るんだ。外装や他に要望があるか聞いてやってくれ。あいつらも外装が変われば、囚われた記憶を甦らさないだろうさ」

 

大和「は、はい!ありがとうございます!では、早速皆に聞いてきます!!」

 

嬉しそうな表情で、大和は艦娘の所に向かった。

 

リーラ「嬉しそうでしたね」

 

拓哉「そらそうだろ。今まで死んだと思ってた仲間や姉妹が、数人以外は元気になったんだからな」

 

グレイフィア「そうですね」

 

拓哉「それと、そろそろウチの島周辺の警備も強化しないとな」

 

リーラ「でしたら、プレアデスと剣コノエ達を召集致しましょうか?」

 

拓哉「う~ん…」

 

リーラの提案に悩む拓哉。

 

拓哉「確かにあいつらを呼べば、島の強化にはなるけどその分爺ちゃん達の守りが薄くなっちゃ意味ないからな」

 

グレイフィア「そうですね。いくら向こうにセバスチャン様とセバス様がおられましても、人数が減ればその分お2人の危険が上がります」

 

リーラ「でしたら、どちらか片方に致しましょう」

 

拓哉「そうだな。ならプレアデスだけを呼ぼう。プレアデスを指揮してるセバスは、そのまま向こうに残りセバスチャンと引き続き爺ちゃんと婆ちゃんの護衛をお願いする。リーラ、グレイフィア、2人が今後のプレアデスを指揮する隊長と副隊長だ」

 

「「了解致しました」」

 

こうして、島の警備を強化するため、新たにプレアデスという戦闘メイド達がこの島に来ることとなった。因みに豪昌にこの事を話すと、プレアデスだけでなく加藤家全戦力を島に集結させろと言って、かぐやに怒られ拓哉に呆れられたのは、また別の話であった。



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27話

屋敷は朝から忙しかった。何故ならば、いよいよ今日特車二課に拓哉が配属するのだ。

 

束『けどた~ちゃんも物好きだね。レイバーなんて、束さんから言わせれば、動く化石だけどね』

 

拓哉「そう言うな束。確かにISを開発した束からすれば、レイバーは化石同然かも知れん。けど、ISは女性しか動かせん。警察…他の場所もそうだが、女性だけじゃなく当然男性もいる。で、男性も動かせる機体としてレイバーが開発された」

 

束『確かに、ISは女性しか動かせないよ。でもさ~』

 

拓哉「文句を言うな。レイバーの殆どは東京に集まってる。他の場所で事件は滅多に起きてないんだ。それに、ISがレイバーより上なのは、世界中が認めている。ただ、女性しか動かせんって理由で、各場所でしか需要がないのも確かだがな」

 

束『そう言われても、何で女性しか動かせないか束さんにも分からないんだよね~』

 

通信でそんな話をしている2人。するとロベルタが話しかける。

 

ロベルタ「拓哉様、もうじき特車二課に到着します」

 

拓哉「分かった。それじゃあ束、そろそろ切るぞ」

 

束『分かったよ。衛星で見てるから、何かあればすぐ気がつくからね』

 

拓哉「頼んだぞ」

 

束との通信を切る。

 

拓哉「ロベルタ、これから暫くは加藤じゃなく、婆ちゃんの旧姓の佐藤を名乗る」

 

ロベルタ「分かりました。それでは佐藤さん、今日からよろしくお願いします」

 

拓哉「ええ、こちらこそ」

 

そして特車二課の部署に到着し、早速隊長に挨拶に行く。

 

ロベルタ「後藤さん、佐藤さんをお連れしました」

 

後藤「開いてるから入っていいよ~」

 

ロベルタ「失礼します」

 

中に入ると、右足の指の間に塗り薬を塗ってる男が座っていた。

 

後藤「え~っと、君が佐藤だね」

 

拓哉「はい。本日より特車二課に配属になった佐藤拓哉巡査です!」

 

敬礼をしながら挨拶する拓哉。

 

後藤「よろしくね。ところで君、警視庁とかから刀の所持を許可されてるけど…なんで?」

 

拓哉「ま~、拳銃も使えますけど刀の方が使いやすいんですよ」

 

後藤「なるほどね。けど1本ならまだしも3本って」

 

報告書に書かれてる事を見ながら、拓哉が腰にかけてる刀を見る。

 

後藤「後さ、お偉い方達がレイバー相手に勝ったって書いてるけど…ホントなの?」

 

拓哉「…さぁ、どうでしょう」

 

拓哉は笑いながらそう答えた。

 

後藤「まぃいいか。警視庁や総理、その上天皇陛下や加藤家当主、川神総代に黛氏のサインがあったら断れないしね。ロベルタさん、佐藤を皆に紹介してもらっていいかな?俺はこれから本庁に行かなきゃなんないんだよね」

 

ロベルタ「分かりました」

 

後藤「なら、後よろしくね」

 

そして後藤は部屋から出ていった。

 

ロベルタ「それでは、他の隊員達が普段待機してる場所に案内しますね」

 

拓哉「よろしくお願いします」

 

そしてロベルタに案内され、他の隊員達がいる場所に向かった。

 

ロベルタ「ここよ」

 

中に入ると、女性が2人男性が4人がいた。

 

「あれ?ロベルタさん、そっちの人は?」

 

ロベルタ「隊長が出掛けたので、代わりに紹介するわ。本日付で特車二課に配属になった佐藤拓哉巡査よ」

 

拓哉「佐藤拓哉です。よろしくお願いします」

 

敬礼しながら挨拶する。すると、1人の女性が驚きの表情をしていた。

 

「は~い!私から。私は泉野明!よろしくね」

 

「俺は篠原遊馬だ。好きな方で呼んでくれ」

 

「俺は太田功だ!新人だからって、甘く見ないからな!!」

 

拓哉「あはは…」

 

太田の熱さに、弱冠引いてる拓哉だった。

 

「ど、どうも。僕は進士幹泰です」

 

「ぼぼ、僕は山崎ひろみって言います」

 

野明「皆からひろみちゃんって言われてるんだよ♪」

 

拓哉「よろしくお願いしますね」

 

山崎「こ、こちらこそ」

 

拓哉は山崎と握手する。

 

野明「あれ?どうしたの香貫花」

 

野明は香貫花と呼ばれた女性に話しかける。

 

香貫花「……」

 

野明「香貫花!香貫花ってば!!」

 

香貫花「な、なに?」

 

野明「何って、後自己紹介してないの香貫花だけだよ」

 

香貫花「そ、そうね。ごめんなさい。香貫花・クランシーよ」

 

拓哉「よろしくお願いします。香貫花さん」

 

そして拓哉と香貫花は握手する。そして整備班との挨拶もすませ今日は解散となった。後日歓迎会をしてくれることになった。

 

拓哉「さて、俺達もそろそろ帰るか」

 

ロベルタ「そうですね。既に作業員は加藤家と関わりのある人ばかりですから、今夜は裏側にヘリを手配しています」

 

拓哉「ならそれで帰…」

 

「待って!」

 

帰ろうとすると、後ろから声をかけられた。振り返るとそこにいたのは香貫花・クランシーだった。

 

拓哉「香貫花さん、どうしたんですか?」

 

香貫花「どうしたって…」

 

すると香貫花は涙を流し始めた。

 

香貫花「今まで何で会いに来てくれなかったの!!」

 

拓哉「……」

 

香貫花「助けてくれて、お礼も出来ずそのまま会えず…グランマもお礼がしたいと言ってたのに」

 

拓哉の胸で涙を流しながらそう言う。

 

香貫花「だけど、あなた方何故あの様なヘリを持っているのか聞きたいわ」

 

拓哉「……」

 

ロベルタ「拓哉様」

 

拓哉「…分かった。だが、この事は絶対に誰にも話さないと約束してほし

 

香貫花「分かったわ」

 

そして拓哉とロベルタ、香貫花はヘリに乗り島の屋敷に飛んだ。屋敷に到着し中に入るとリーラ達が出迎えてくれた。

 

『お帰りなさいませ拓哉様』

 

拓哉「ただいま」

 

香貫花「……」

 

その光景を見た香貫花は、驚きを隠せなかった。

 

リーラ「あら?そちらの方はもしかして」

 

拓哉「ああ。2年前にアメリカで会った香貫花さんだ」

 

リーラ「そうでしたか。ようこそお出でくださいました香貫花様」

 

香貫花「い、いえ…」

 

リーラ「取り合えず応接室に案内して。それと紅茶かコーヒーを聞いて出してあげて」

 

リーラ「かしこまりました」

 

そして拓哉とロベルタは、1度自分の部屋に戻り着替えに行った。

 

リーラ「では香貫花様、ご案内致します」

 

香貫花はリーラの案内で先に応接室に案内された。

 

拓哉「…ふぅ。まさか初日にバレるとはな」

 

「油断しすぎ」

 

すると背後からクワイエットが出てきた。

 

拓哉「お前も悪かったな」

 

クワイエット「気にしないで。それが私の仕事であり私の生き甲斐なのよ」

 

拓哉「フフッ、生き甲斐か。取り合えずクワイエットも今日は休んでくれ」

 

クワイエット「分かったわ」

 

そしてクワイエットは消え、着替え終わった拓哉は香貫花の待つ応接室に向かったのだった。



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28話

拓哉「お待たせしました」

 

応接室で待ってた香貫花に話しかける。

 

香貫花「い、いえ…ロベルタさん、その格好は」

 

ロベルタ「私も拓哉様のメイドですので」

 

香貫花「そうですか。佐藤さん、貴方は一体…」

 

拓哉「そうですね、私の正体を教えましょう。ですが、他の皆さんには秘密でお願いしますよ。勿論隊長にも」

 

香貫花「分かりました」

 

秘密にすることを了承する。

 

拓哉「では…佐藤というのは偽名です」

 

香貫花「そうなんですか」

 

リーラ「此方の方は、加藤家の次期当主であられる加藤拓哉様です」

 

香貫花「か、加藤…家!?じ、次期当主…ですか」

 

流石の香貫花も、予想以上の答えが返ってきた事に何時もの冷静な判断が出来ていなかった。

 

拓哉「けど、まだ当主は爺ちゃん…加藤豪昌ですよ」

 

香貫花「あ、あはは…」

 

もう笑うしかなかった香貫花だった。

 

香貫花「で、ですが、何故加藤家次期当主の貴方が、まして特車2課に配属だなんて」

 

拓哉「ああ、それは…」

 

リーラ「拓哉様の気紛れです」

 

拓哉が答えようとする前に、リーラが先に答える。

 

香貫花「気紛れ…ですか」

 

リーラ「はい。拓哉様は数多く方達と交流があります。それで、興味本意で香貫花様が所属している特車二課に潜入して中の事を知りたいと。そして、当然豪昌様とかぐや様は、日本の総理に天皇陛下達にその話をし、経歴を偽って特車2課に配属させたのです」

 

拓哉「いや~♪それほどでも~」

 

『褒めてません!』

 

リーラ達にそう言われる拓哉であった。

 

拓哉「ま、リーラ達が言った通りの理由なんだけどね。警視庁のお荷物と言われてる特車2課。だが、それは現場での事しか見ていない連中が言うことだ。で、爺ちゃんと婆ちゃんに無理言って入隊させてもらったんだよ。場合によっては、特車2課に俺個人的に支援したいと思ってる」

 

香貫花「支援ですか」

 

拓哉「そうだ。まだ1日だが、見た感じかなり改善しなきゃいけない所がある。ってか、まずあんな場所に作った奴を疑うわ」

 

香貫花「はぁ」

 

拓哉「だから悪いけど、俺の正体は黙っててくれないかな?勿論隊長にも」

 

隊長にも黙っててほしいと言われ、香貫花はため息をつきながら頷くのだった。それから特車2課で拓哉の正体を知っているのは香貫花だけであるが、色々と協力してもらっている。数日後、拓哉がいる第2小隊は今日は非番なので、島を探索している。

 

拓哉「今日はこんなもんかな?」

 

リーラ「お疲れ様です拓哉様」

 

するとリーラが、素早く飲み物を渡してくる。

 

拓哉「ありがとな」

 

そして飲み物を受け取り、一口飲むと、拓哉が話し出す。

 

拓哉「けどこの島だが、あちこちに線路が敷かれているな」

 

そう、ヘリで島を一周している拓哉達だが、降りる場所降りる場所、何処にでも線路が敷かれていた。

 

リーラ「そうですね。まるで、島全体に電車が通っていたみたいですね」

 

拓哉「だろうな。山は勿論鎮守府がある海や市街地だった場所。道路の割合の方が少ないくらいだ」

 

大和「私達の鎮守府が出来る前からあったみたいですよ。鎮守府周辺の線路は修理して、トロッコとかを私達は使ってましたが」

 

拓哉「なるほど。もしかすると、この島の何処かに残ってるかもな。時代的に蒸気機関車だろうよ」

 

リーラ「かもしれませんね」

 

拓哉「さて、そんじゃ戻るとするか」

 

拓哉達はヘリに乗り込もうとする。その時だった…

 

『助けて…』

 

拓哉「ん?」

 

リーラ「いかがなさいましたか?拓哉様」

 

拓哉「いや、今声が聞こえた気がしたんだけど」

 

大和「声ですか?」

 

大和達は静かにするが、そんな声は聞こえなかった。

 

リーラ「何も聞こえませんね」

 

拓哉「空耳か?」

 

再びヘリに乗り込もうとすると、また先程の声が聞こえた。

 

『…助けて』

 

拓哉「まただ!」

 

拓哉は、声が聞こえた方向に走り出していった。

 

リーラ「拓哉様!?」

 

大和「どうしたんですか!」

 

拓哉「空耳じゃねぇ!確かに此方から声が聞こえたんだ!!」

 

拓哉はどんどん奥へと進んでいく。暫く進んでいると、1軒の小屋が見つかった。

 

大和「小屋…ですね」

 

リーラ「こんな場所に」

 

拓哉「この中か?」

 

拓哉は小屋に近づき、ゆっくりと扉を開ける。中は真っ暗で何も見えない。拓哉は、ペンライトを取り出して点けた。するとそこには、1台の機関車が置いてあった。

 

拓哉「機関車…だな」

 

リーラ「そうですね」

 

大和「おそらく、この島で使われていた物でしょうね」

 

「…僕の声が聞こえたんだ」

 

「「「!!?」」」

 

突然声がして、3人は驚いた。

 

拓哉「だ、誰だ!!」

 

「ああ、驚かせちゃったね。ごめんなさい」

 

見ると、なんと喋っていたのは見つけた機関車だった。

 

拓哉「おいおい…こいつは驚いたな」

 

リーラ「はい?まさか喋る機関車に会えるとは思いませんでした」

 

拓哉「ま、まぁな」

 

流石の拓哉も、同様を隠せなかった。

 

拓哉「ところで、お前名前とかあんのか?前はなんて呼ばれてたんだ?」

 

「僕の名前はトーマス。前はこの島で働いてた機関車です」

 

拓哉「トーマスか。次の質問だが、何でこんな場所にいたんだ?」

 

トーマス「この島で働いていた時に、トップハムハット卿が鉄道を管理していたんですが、トップハムハット卿が亡くなって、トップハムハット卿の子供が引き継いだんだけど、上手くいかなくて」

 

しょんぼりした顔で、トーマスは話している。

 

トーマス「それで、僕を含めた機関車達は、各々色んな場所に仕舞われたんです」

 

拓哉「って事は、トーマス以外にも機関車がこの島の何処かにいるって訳か」

 

リーラ「ですが、どれ程の数かは不明ですね」

 

大和「それに、仮に見つかったとしても、線路は老朽化してますし、今現在機関車が使える仕事はありません。ここはまだ人もいませんし」

 

拓哉「そうだな。最悪1、2台なら今修理を行ってる港でなんとかなるが、トーマス以外にも機関車がいるとなると、島全体の線路を修理しないといけないからな」

 

他の機関車を探すには、ヘリだけでは難しすぎる。地上からも探さないと効率が悪い。

 

拓哉「とにかく、まずはトーマスを運んで修理してやらないとな。確か以前大和達が修理に使ってた場所は工事終わってたよな?」

 

大和「はい。確かに工廠なら修理できると思いますが、部品やまして機関車なんて修理したことありませんし」

 

拓哉「部品か。そっちはどうにかなると思うが、修理に関しては1度束に頼んでみるか」

 

そうして、ヘリでトーマスを吊り上げ、鎮守府の工廠まで運んでいったのだった。果たして、トーマスは無事修理されるのだろうか。



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29話

トーマスを運んできた拓哉は、早速束を呼び修理できるか見てもらう。

 

拓哉「どうだ束。直せそうか?」

 

束「う~ん…流石の束さんも、こんな機関車は見たことないね。いくらなんでも、これだけ古いと設計図とかがない限り難しいかな」

 

拓哉「流石の束でも無理か」

 

束「ごめんね。設計図か1度でも修理の仕方を見れたら、それ以降は束さんでも出来るけどね」

 

拓哉「となると、修理に長けていて尚且つ蒸気機関車に詳しい人間が必要か」

 

リーラ「しかし、そんな方直ぐに見つかるかどうか」

 

拓哉「だよなぁ」

 

リーラの言葉に頭を悩ます拓哉。すると、ロベルタがある提案をする。

 

ロベルタ「拓哉様、出来るかどうか分かりませんが、可能性がありそうな方に心当たりが」

 

拓哉「誰だ?」

 

ロベルタ「特車2課の整備班長の榊様です」

 

拓哉「榊さんかぁ。確かに榊さんなら、トーマスの事を直せる可能性はあるな」

 

ロベルタの提案は、今現在拓哉と所属している特車2課の整備班長である榊に修理を依頼するということだ。

 

拓哉「しかしなぁ」

 

大和「何か問題でも?」

 

拓哉「いや、俺の正体を知ってるのは香貫花さんだけなんだよ。第2小隊の連中は勿論、榊さんやシゲさん、南雲隊長に後藤隊長は俺の正体の事黙ってるんだよ」

 

ロベルタ「確かにそうですが、(トーマス)を直すにはそれしかないかと」

 

拓哉「……」

 

拓哉は悩みながらトーマスを見る。拓哉自身も出来るだけ早くトーマスを直してやりたいと思っている。

 

拓哉「…仕方ない。明日榊さんに話してみるか。リーラ、明日中に出来るだけトーマスの修理に必要な部品を集めておいてくれ」

 

リーラ「かしこまりました」

 

拓哉「ロベルタは、明日終わったら榊さんを連れてきてくれ」

 

ロベルタ「お任せください」

 

こうして、拓哉は榊にトーマスを修理してもらうように頼むことにしたのであった。翌日、特に大きな事件もなく、無事に定時の時間にあがることができた。

 

拓哉「すみません、今日はお先に失礼します」

 

遊馬「佐藤、今日は随分と早いな」

 

拓哉「はい。少し用事がありまして」

 

野明「そうなんだ」

 

拓哉「はい。それでは皆さん、お疲れ様です」

 

山崎「お疲れ様です」

 

進士「お疲れ様です」

 

第2小隊のメンバーに挨拶し、拓哉はロベルタとの待ち合わせ場所に合流する。すると既にロベルタと榊がいた。

 

榊「なんでぇ、俺に用があるのが佐藤か」

 

拓哉「すみません榊さん。ロベルタさんもありがとうございます」

 

ロベルタ「いえ、気にしないで下さい」

 

榊「で、俺に用ってのは一体なんだ?」

 

拓哉「はい。榊さん、つかぬことを聞きますが、機関車って修理したことありますか?」

 

榊「なに、機関車だと?」

 

拓哉の言葉に、榊は少し驚く。

 

拓哉「はい。蒸気機関車です」

 

榊「若ぇ頃に数回だが修理はしたことはあるが、それがどうしたんだ?」

 

拓哉「実は、昨日古い機関車を見つけまして、出来れば修理してあげたいんですが、残念ながら俺にはそんな技術もありませんし。ここで機関車を修理したことあるのは、榊さんくらいかなと思って声をかけさせてもらったんです」

 

榊「なるほど」

 

拓哉の言葉に榊は納得する。

 

榊「…よしいいだろう。1度その機関車を見せてみろ。俺で直せれば直してやる」

 

拓哉「ありがとうございます!勿論報酬は払いますので」

 

榊「報酬って、お前さんがか?」

 

拓哉「はい!」

 

榊「んな無理しなくてもいいっての」

 

ロベルタ「拓哉様、報酬の件は後程にして、取り合えず見えてからにいたしませんか?」ヒソヒソ

 

榊に聞こえない声で拓哉にそう提案するロベルタ。

 

拓哉「…確かにそうだな。そうするか。で、迎えのヘリは?」

 

ロベルタ「離れた場所で待機中です」

 

拓哉「なら取り合えず帰るか」

 

話が終わり、榊に話しかける。

 

拓哉「では榊さん、取り合えずその機関車がある場所にご案内しますので」

 

ロベルタ「車は此方で用意してますので」

 

榊「分かった」

 

そして拓哉達は、ヘリが待機してる場所に向かった。その様子を上から野明と遊馬が見ていた。

 

遊馬「佐藤の奴、おやじさんとロベルタさんを連れてどこ行ったんだ?」

 

野明「さぁ?」

 

遊馬「…後つけてみようぜ♪」

 

野明「ええ!いいのかなぁ」

 

遊馬「いいのいいの!」

 

こうして、野明と遊馬は拓哉達の後を追い掛けていった。目的地に向かって進み、途中で車を降り歩いてる拓哉達だが、後ろで野明達が尾行しているのにはすぐ気が付いた。

 

ロベルタ「…拓哉様」

 

拓哉「ああ、つけられてるな。ヘリまでの距離は後どれくらいだ?」

 

ロベルタ「直線距離で、約500mです」

 

拓哉「なら、どうせバレるし榊さんを背負ってくれ。バカ連中じゃないみたいだし、おそらく俺達を見て興味本意で尾けてきたウチの連中(第2小隊)だろうよ」

 

ロベルタ「おそらくは」

 

拓哉「なら撒くのも簡単だ」

 

そしてロベルタは、榊さんを背負いだす。

 

榊「い、一体何事だ!?」

 

拓哉「すみません榊さん。他の人にバレると後々面倒なので、少しだけ我慢して下さい」

 

そして拓哉達は、素早く路地裏に入ると、ビルとビルの壁を蹴り上に上っていく。

 

榊「お前さんら…一体何者だ?」

 

拓哉「それは、機関車を見てからキチンと説明しますよ」

 

そして拓哉達は、ヘリが待機してる場所に到着し、島に戻るのであった。一方、見事に撒かれた2人は…

 

野明「い、いない…」

 

遊馬「どこいった?確かにこの路地に入るのは見たんだぞ!」

 

野明「もしかして…空でも飛んだんじゃ」

 

遊馬「んなバカな話があるか!」

 

いきなり消えた3人の行方を探していたのだった。そして拓哉達はヘリに乗り、島に戻りそのままトーマスがいる工廠にやって来た。

 

拓哉「ここです榊さん」

 

拓哉は扉を開けると、中には既に修理するのに必要な部品とトーマスがいる。

 

榊「こいつか」

 

榊はトーマスをマジマジと見る。

 

トーマス「お願いします。もう一度走れる様にしてください」

 

トーマスにそう言われ、榊は少しだけ驚く顔をする。事前に拓哉に言われていたとはいえ、やはり機関車が喋ることに驚きは隠せない。

 

拓哉「榊さん、直せそうですか?」

 

榊「やってみねぇ事には分からねぇが、多分直る筈だ」

 

拓哉「そうですか」

 

その言葉を聞いて、拓哉達は安堵の表情になる。

 

拓哉「なら榊さん。すみませんが、束に直し方の方もお願いします」

 

束「よろしくね~♪」

 

榊「ハハッ。まさか、ISを作った本人に機関車の修理の仕方を教えることになるとはな。人生ってのは分からねぇな」

 

束を見ながらそう言う榊。

 

榊「ま、お前さんがアイツの孫で、次期当主と聞いたときは流石に驚いたがな」

 

拓哉「それは此方の台詞ですよ。まさか榊さんが、婆ちゃんと知り合いだったなんて」

 

そう。実は榊は拓哉の祖母であるかぐやと知り合いなのである。

 

榊「昔は色々とヤンチャしたもんだ」

 

拓哉「婆ちゃんがヤンチャ…」

 

リーラ「想像できませんね」

 

今のかぐやしか知らない拓哉達は驚きを隠せないのであった。

 

榊「さて、なら修理を始めるか」

 

束「お~!」

 

拓哉「それでは宜しくお願いします。トーマス、早く直ればいいな」

 

トーマス「はい!」

 

そして拓哉とリーラ、ロベルタは工廠を後にしたのであった。

 

拓哉「さて、トーマスの修理は榊さんと束に任せるとして…リーラ、鎮守府の工事は何処まで進んでるんだ?」

 

リーラ「はい。既に榊様達がおられる工廠は終わっており、今は艦娘達の宿舎を建築しております」

 

ロベルタ「束様のゴーレム等により、工事のスピードはとても順調です。後半月もあれば宿舎の建設は終了するかと」

 

拓哉「相変わらず束の作る物はオーバーテクノロジーだな。バビロンプロジェクトの連中達が泣くぞ」

 

ロベルタの言葉を聞いて、やはり束は天才であり天災だと、改めて認識させられた拓哉であった。

 

拓哉「もしまだ機械が増やせるなら、鎮守府の工事と同時進行で線路も直していきたいな」

 

リーラ「では後程、束に伝えておきます」

 

拓哉「ああ、頼むよ」

 

こうして、トーマスの修理も始まり一安心する拓哉であった。



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30話

何故か急にこの事が気になり書いてみました。別にこの事を否定するつもりはありません。けれど、胸に溜まっていた気持ちを書いてみました。

この話は私自身も余り読むことをお勧めしません。ですので、読んでも感想などは書かないでください。それでも良い方はお読みください。無理だと思う方は読まないこと、ブラウザバックする事をお勧めします。思いっきり勧めます。


トーマスの修理に取り掛かって三日が経った。だが、ほかの機関車とは違いかなり特別な作りになっている為、思いのほか時間がかかるようだ。その間、拓哉は久々の休みを利用して、リーラとロベルタの三人で買い物に来ていた。

 

拓哉「たまには、こんな風にのんびりと買い物をするのもいいね」

 

リーラ「そうですね」

 

そんな話をしながら歩いていると、1人の男とぶつかった。

 

拓哉「すみません。大丈夫ですか?」

 

「あ…はい、大丈夫です」

 

見るとその男性は、かなり顔が蒼かった。

 

拓哉「本当に大丈夫ですか?失礼ですが、かなり顔色が悪く見えますが」

 

「いえ、大丈夫…だいじょ」

 

すると男性は泣き出した。流石にこの様子に拓哉達も驚きを隠せなかった。そして、取り合えず男性を加藤家が経営している店に入り、特別個室を用意させた。

 

「すみません」

 

拓哉「いえ。それより、何かあったんですか?」

 

拓哉の言葉に、男性は言葉を詰まらせる。

 

拓哉「いきなり見ず知らずの他人に話すのは難しいかもしれませんが、誰かに話すだけでも楽になりますよ」

 

「……」

 

その言葉に、男性は決心して拓哉に話し始める事にした。

 

「あの…実は」

 

拓哉「おっと、その前にお互い自己紹介をしましょう」

 

「そ、そうですね。僕は悟っていいます」

 

拓哉「悟さんですね。俺は拓哉っていいます」

 

悟「よろしくお願いします拓哉さん。それで…実は僕には彼女がいるんですが、その彼女が…」

 

そこで再び悟は言葉を止めてしまった。だが、拓哉はその言葉を聞いてピンと来ていた。

 

拓哉「悟さん…あくまで俺の勘ですが、もしかして彼女さん浮気されていますか?」

 

悟「浮気というか…僕が知らない間に別の男と」

 

拓哉「ああ、なるほど(これってまさか、彼女を寝取られたって事か?)」

 

全てを理解した拓哉は、悟の事だが自分の事のように怒りを露わにしていく。

 

リーラ(まずいですね。拓哉様はこの手の話は大嫌い。特に人の彼女を寝取るなどもってのほかです。それの法律を出そうと、自ら総理や天皇陛下に直談判されているくらいですからね)

 

拓哉「…悟さん。貴方はどうしたいんですか?」

 

悟「えっ?」

 

拓哉「はっきりと言いますけど、私はそういった行動をする人間が大嫌いです。それをしたら重罪になるように総理や天皇陛下に、私自ら直談判しに行っているくらいなんです」

 

悟「そ、総理!?天皇陛下直談判!!?」

 

その言葉に、悟は拓哉が只者ではないと思った。

 

拓哉「貴方が彼女やその相手に復讐をしたいと言うなら、私が力を貸します」

 

悟「そ、そんなの悪いですよ」

 

拓哉「いえ!ダメです!!貴方がそんなんでは、相手は図に乗る一方ですよ!!」

 

悟「……」

 

拓哉の言葉に、黙っていた悟は決心した。

 

悟「拓哉さん、お願いします!!」

 

拓哉「わかりました!!」

 

こうして拓哉は、悟の彼女とその相手の復讐をする手伝いをすることにしたのであった。それから1週間後、再び拓哉と悟は以前出会った店で話している。今回はリーラとロベルタではなく、束、大和、香貫花が一緒に来ている。

 

悟「えっと…こちらの方達は?」

 

拓哉「紹介します。篠ノ乃束、大和、香貫花・クランシー巡査部長です」

 

束「ヤッホー」

 

大和「初めまして」

 

香貫花「香貫花・クランシーよ」

 

悟「拓哉さんは、随分いろんな方とお知り合いなんですね」

 

拓哉「いえ、たまたまですよ。それで、例の物は手に入れれましたか?」

 

悟「はい」

 

そう言うと悟は音声を録音するボイスレコーダーとビデオカメラを渡してきた。

 

拓哉「ありがとうございます。束、一応解析や編集を頼むよ」

 

束「お任せ♪」

 

そして束は部屋を出て行った。

 

拓哉「それで、今彼女さんは?」

 

悟「今日は楓さんは家にいるんじゃないかと。僕は仕事があるって言って出てきましたので」

 

拓哉「となると、出かけていなければ家にいるはずだが」

 

すると、拓哉の携帯に連絡が入る。

 

拓哉「もしもし。うん…うん…わかった。今すぐ向かう」

 

悟「どうしました?」

 

拓哉「いえ、以前悟さんに教えてもらった部屋ですが、そこに男が入って行ったそうです」

 

その言葉を聞いて、悟はショックを受けていた。

 

拓哉「これは確定ですね。今すぐ向かいましょう」

 

そして拓哉達は、車に乗り悟と彼女の楓が住んでる家に向かった。到着すると1人の女性が立っていた。

 

「お待ちしていました拓哉様」

 

拓哉「ありがとうロベルタ。で、出てきた?」

 

ロベルタ「いいえ。入ったまま出てきておりません」

 

拓哉「そうか…悟さん、今から突撃しますが大丈夫ですか?」

 

悟「は、はい。覚悟はできてます」

 

拓哉「そうですか。では行きましょう!」

 

そして拓哉達は部屋の中に入って行く。すると部屋の奥から声が聞こえた。

 

悟「楓さん…」

 

拓哉「これで確定か。胸糞悪い」

 

悟の彼女の声を聞いて拓哉の表情は更に険しくなる。

 

拓哉「行くぞ」

 

そして2人がいるであろう寝室に入って行く。すると案の定2人は生まれたままの姿で抱き合っていた。

 

楓「きゃああ!!」

 

「な、なんだよお前ら!」

 

拓哉「それは悟さんのセリフだ」

 

楓「えっ…嘘…なんで」

 

楓は、仕事で出て行った筈の悟が一緒にいたことに動揺していた。

 

悟「楓さん…僕とはしないくせに、全然知らない男の人とはできるんですね」

 

楓「ち、違うの悟君!!」

 

拓哉「何が違うんですか?現に貴方は悟さんを裏切ってるじゃないですか」

 

楓「違う…愛してるのは悟君だけなの!」

 

悟「……」

 

楓の言葉も、今の悟には信じられない。

 

「なんなんだよお前ら!!警察呼ぶぞ!!」

 

香貫花「私がその警察よ」

 

香貫花はそう言いながら警察手帳を男に見せる。

 

「う、嘘だろ。なんで警察がここにいるんだよ」

 

拓哉「それは別にいいとして…まず貴方の名前は誠也(まさや)ですね」

 

誠也「なんで俺の名前を知ってんだよ!!?」

 

拓哉「こっちで色々と調べたんだよ。お前、大学のサークルで彼女を襲ったよな?」

 

誠也「そ、それは…」

 

拓哉の言葉に誠也は言葉を詰まらせる。

 

香貫花「言い訳は結構よ。後は塀の中で聞かせてもらうわ。貴方の大学のお友達も一緒にね」

 

誠也「なっ!!」

 

香貫花の言葉に驚く誠也。

 

拓哉「お前のサークルの連中が洗いざらい話してくれたよ。ま、俺から言わせれば襲われたのにそのまま関係を続けてるのもふざけてるがな」

 

「「……」」

 

拓哉の言葉に2人は黙る。

 

拓哉「さて悟さん、今現在彼女である楓さんに言いたいことがあるんですよね」

 

悟「…………」

 

拓哉にそう言われた悟は、楓と誠也の前に立つ。

 

楓「悟君」

 

悟「楓さん、嘘を言った僕にも原因はあると思います。だけど、僕より彼を選んだ楓さんとはもうお付き合いを続けることはできません」

 

楓「そんな…やだ…やだよ悟君…」

 

拓哉「これを聞いてもこんなことがまだ言えるのか?」

 

拓哉は悟から受け取ったボイスレコーダーを再生する。

 

楓『別にいいよ。こんなのいらないから』

 

誠也『悟さ~ん!楓さんサイコーです!』

 

拓哉「で、言い訳は?」

 

「「……」」

 

拓哉「だんまりか。ま、取り合えず誠也さんには悟さんに慰謝料として200万。楓さんは一応襲われたことを考慮して、悟さんに80万払って下さい。お前らは悟さんにそれだけの事をしたんだからよ」

 

誠也「ふ、ふざけんな!!俺は絶対払わないからな!!」

 

誠也がそう言った瞬間、拓哉は誠也を思いっきり蹴り飛ばした。

 

誠也「がはっ!!」

 

拓哉「おい、これ以上ふざけた事ぬかすと、この世に生きてることを後悔させるぞテメェ」

 

拓哉は蹴られて蹲ってる誠也の髪を掴んで、今までにないくらいな表情で言う。

 

『!!?』

 

その光景を見た香貫花達全員が背筋が凍る思いだった。

 

拓哉「さて香貫花さん。逮捕する前にこいつの財産を全て没収させて貰います」

 

香貫花「分かったわ」

 

誠也「全財産って…お前に何の権利があって」

 

拓哉「権利…ですか」

 

すると拓哉は誠也を見る。

 

拓哉「改めて自己紹介をしておきましょう。私の名前は加藤拓哉といいます」

 

楓「加藤って」

 

誠也「嘘…だろ」

 

悟「もしかして」

 

大和「はい。拓哉様は現当主である加藤豪正様のお孫様であり、次期加藤家当主になられるお方です」

 

「「「!!?」」」

 

その言葉を聞いた3人は驚きが隠せなかった。

 

拓哉「本当は加藤家の力を使いたくなかったが、お前が権利と言うからな。加藤家は警察以上の権利があるんだよ。それに、俺はお前の様な人の彼女を寝取る奴が死ぬほど嫌いなんだよ!!」

 

誠也「……」

 

拓哉「お前の財産を悟さんの慰謝料に充てる。そして…」

 

拓哉は体を布団で包んでる楓を見る。

 

拓哉「悪いがあんたは今日限りで会社はクビだ」

 

楓「な、なんで…」

 

拓哉「あんたが働いている会社は、俺の企業なんだよ。だから、浮気する奴なんかは置いておけないんだよ」

 

楓「そんな…」

 

拓哉「これから2度と悟さんに関わるな。んで、悟さんは例の話進めていいですか?」

 

悟「お願いします」

 

拓哉と悟は、何かの話を始める。

 

楓「悟君、どういうこと」

 

悟「この家を出て、拓哉さんが直々に経営してる会社で働くことになったんだよ」

 

拓哉「そういうことだ。お前は実家に帰って、悟さんに慰謝料支払う方法でも探すんだな」

 

悟「……」

 

すると悟は拓哉に話しかけた。

 

悟「拓哉さん、せめて仕事のクビは回避してもらえませんか?」

 

拓哉「…いいんですか?」

 

悟「はい。元々僕も嘘をつきましたし」

 

拓哉「…わかりました。一応同じ部署には戻せないんで、ウチのスタッフの監視のもととなりますが」

 

悟「お願いします」

 

楓「悟君」

 

悟「楓さん。これが僕にできる最後の事です。これからはお互い他人になりますが、体を壊さないように気を付けて」

 

そう言い残して、悟は部屋から出て行った。

 

香貫花「それじゃあ、私もこいつを連れて行くわ」

 

拓哉「ありがとうございます香貫花さん。後日お礼をさせてください」

 

香貫花「…楽しみにしてるわ」

 

そして香貫花も、誠也を連れて出て行った。

 

拓哉「じゃあロベルタ。悪いけど後は頼んでいいか?」

 

ロベルタ「かしこまりました。すぐに引っ越しの手続きをいたします」

 

拓哉「頼んだよ。既に社員寮には空きがあるから、そこに荷物を運んでおいてくれ」

 

そして拓哉も部屋を出て行こうとした時、楓が話しかけてきた。

 

楓「あの…」

 

拓哉「……」

 

楓「本当にすみませんでした。私、どうにかしていたみたいで」

 

拓哉「ホントだよな。悟さんも最後はお人よしだったけど、普通襲われた相手に堕ちて、挙句の果てに『肉体的浮気なのでセーフ』って。はっきり言って頭イカれてるとしか思えなかったな」

 

楓「はい…」

 

拓哉「ま、自分で蒔いた種だ。責任もって刈り取るんだな。お前のような都合よく自分の考えを通す奴は嫌いだ。相手の事をどれだけ愛してても、肉体関係になったらお前が悪い。それに、避妊もしていないみたいだし、子供ができた場合どうするつもりだったんだ?」

 

楓「それは…」

 

拓哉に言われ、楓は言葉を詰まらせる。

 

拓哉「はぁ…考えてすらなかったか。つくづくクソだな。悟さんに強引に別れる事を進めて正解だな。考えてないし、子供ができた場合言い訳でもするつもりだったんだろう」

 

楓「……」

 

拓哉「ダンマリか。つくづく救いようのない奴だったみたいだな。じゃあロベルタ、後は任せた」

 

ロベルタ「かしこまりました。大和、束様、拓哉様のお送りお願いしますね」

 

大和「任せてください」

 

束「大丈夫大丈夫!この束さんに任せなさいって」

 

そしてロベルタと未だに黙ってる楓を残して、拓哉達は出て行った。あれから3か月、悟は拓哉が初めて立ち上げた会社の秘書になり、職場の仲間にも恵まれ今ではすっかり元気を取り戻していた。そして、誠也は楓を一緒に襲ったサークルの連中と一緒に逮捕され、今は塀の中で罪を償っている。楓はというと、実家に戻りそこから拓哉のスタッフが監視しながら仕事をこなしており、月に5万ずつ返済すると言ったので、毎月給料の手取りは5万引かれた状態で入金されている。楓自身は、悟本人に償いをしたいそうだが、拓哉が悟に会うのはまだ早すぎると言われたため会うことはなかったそうだ。だが、スタッフが中身や内容を確認した上で手紙のやりとりが行われているらしい。

 

拓哉「ホント、世の中にはどうしてあんな事をする連中がいるんだろうな」

 

リーラ「そうですね」

 

拓哉「悟さんは、これからいい事が起こるといいな。俺みたいに一度どん底を味わわない方がいいんだよ」

 

リーラ「拓哉様…」

 

拓哉「さて!今日も出勤してくるよ」

 

リーラ「お気をつけて行ってらっしゃいませ」



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31話

拓哉はいつものように特車二課に出勤する。とはいえ、毎日毎日緊急出動があるわけではない。出動がなく1日が終わることもある。

 

拓哉「(とはいえ、太田と篠原は毎日毎日喧嘩してるがな。ホント毎日飽きないねお二人さん)それでは皆さん、定時になりましたので、お先に失礼しますね」

 

『お疲れ様』

 

拓哉は野明達に先に上がる事を挨拶して、特車二課寮から帰る途中だった島に到着し屋敷に入ると、いつも通りリーラ達が出迎えてくれる。

 

リーラ「お帰りなさいませ拓哉様」

 

『お帰りなさいませ拓哉様』

 

拓哉「ただいま。いつも出迎えてくれてありがとな」

 

リーラ「いえ。メイドとして当然の事です。皆拓哉様をお出迎えできるのが嬉しいのです」

 

拓哉「そうか。俺は恵まれてるな」

 

そう言いリーラに荷物を預ける。

 

「拓哉様」

 

するとメイドの1人、プレアデスのユリ・アルファが話し掛けてきた。

 

拓哉「どうしたユリ?」

 

ユリ「はい。本日拓哉様宛にお手紙が届きましたので、お渡ししておこうかと思いまして」

 

拓哉「手紙?」

 

拓哉はユリから手紙を受け取り差出人を見る。すると拓哉は差出人の名前を見て微笑んだ。

 

拓哉「懐かしいな」

 

リーラ「拓哉様?」

 

拓哉「見てみろよリーラ」

 

拓哉はリーラに手紙を見せる。すると拓哉と同じ様に微笑む。

 

リーラ「懐かしい方からのお手紙ですね」

 

拓哉「だな」

 

そう言うと拓哉は手紙の中身を読む。

 

拓哉「…なるほど」

 

リーラ「手紙にはなんと?」

 

拓哉「今この付近を航行中だから、折角なんで嘗ての連中と集まってみないかだと」

 

リーラ「まあ」

 

そう聞くと、リーラは嬉しそうな顔をする。

 

拓哉「ご丁寧に今あの船で使ってる通信信号の波数まで書いてるよ」

 

リーラ「でしたら、折角ですし我が島に来ていただいてはいかがでしょうか?」

 

拓哉「そうだな」

 

リーラの提案に拓哉は賛同する。

 

拓哉「皆、悪いが俺とリーラの昔の知り合いがこの島に訪れると思うから、最高のもてなしを頼む。日にちが決まり次第また連絡する」

 

『かしこまりました』

 

拓哉「じゃあリーラ。察即手紙に書かれてる周波数に通信してみるか」

 

リーラ「かしこまりました」

 

俺とリーラは、通信機器等が揃ってる地下に向かい、書かれた周波数に通信を入れる。

 

拓哉「あ〜、あ〜。こちらの通信聞こえてるか?」

 

『こちらペペロンチーノ号。よく聞こえてるぜ』

 

拓哉「その声はアルだな。久し振りだな♪」

 

アルと呼ばれる男の声を聞いて嬉しそうな顔をする拓哉。男の名前は【アルフォンゾ・アンドレッティ】。ペペロンチーノ号という船の整備士だ。

 

『アル、誰と話してるの?』

 

すると女子の声が聞こえた。

 

アル『あぁ、懐かしい連中だよ。ナナミも話してみろよ』

 

ナナミ『?もしもし』

 

拓哉「久し振りだなナナミ」

 

ナナミ『!?もしかして拓哉さん!』

 

拓哉「ああ俺だ。リーラもいるぞ」

 

リーラ「お久しぶりでございますナナミ様」

 

リーラの声を聞くと、ナナミは嬉しそうな声が聞こえる。

 

ナナミ『うわ〜!リーラさんだ!元気にしてた?』

 

拓哉「ああ。ナナミも声を聞く限り元気そうだな?」

 

ナナミ『私はいつも元気だよ!』

 

拓哉「それは良かった。ティコはどうだ?」

 

ナナミ『うん。ティコも元気にしてるよ』

 

拓哉「そうか。悪いけどスコットさんに代わってもらえるか?」

 

ナナミ『分かった。父さ〜ん!』

 

ナナミの元気な声が通信機器越しに聞こえて、拓哉とリーラは笑っていた。

 

スコット『こちらペペロンチーノ号船長のスコット・シンプソンだ』

 

拓哉「お久しぶりですスコットさん」

 

スコット『拓哉君か。ナナミに聞いたが、リーラ君もいるみたいだね』

 

リーラ「はい。お久しぶりで御座いますスコット様」

 

スコット『やあリーラ君。君も元気そうだね』

 

拓哉「スコットさん。ナナミからの手紙で、今日本に向かっているそうですね」

 

スコット『ああ。他の皆も今日本に来ているみたいでな。ナナミが、折角なら会おうと提案してな』

 

拓哉「ええ。そこでなんですが、日本に到着したら是非ともウチに招待したいんですよ」

 

スコット『君の自宅にかね?』

 

拓哉「ま〜、自宅といえば自宅ですね。折角皆久々に会うんですし、スコットさん達もすぐに出発しなきゃいけないって訳ではないでしょう?」

 

スコット『そうだな』

 

すると、通信の向こうからアルナナミの声が聞こえる。

 

アル『いいじゃねぇかスコット。折角拓哉からの誘いなんだしよ』

 

ナナミ『そうだよ父さん!』

 

スコット『やれやれ。分かった。拓哉君、お世話になるよ』

 

拓哉「もちろんですよ。それで、いつ日本に到着するんですか?」

 

スコット『そうだな…順調に行けば明後日には東京湾に到着するだろう』

 

拓哉「東京湾…と言うことは、以前に到着した港ですね」

 

スコット『そうだ』

 

拓哉「分かりました。では明後日の昼にその場所で」

 

スコット『了解した』

 

拓哉「アル、ナナミ、明後日に会おうな」

 

アル『おう!』

 

ナナミ『うん!』

 

そして通信は切られた。

 

拓哉「ははっ。3人とも元気そうだったな」

 

リーラ「そうですね」

 

拓哉「リーラ。早速全員にこの事を伝えてくれ」

 

リーラ「かしこまりました」

 

拓哉「それと、港の工廠にペペロンチーノ号で使えそうな部品とかを集めといてくれ。アルにやる」

 

リーラ「お任せください」

 

そしてリーラは出ていった。それと同時に、束から通信が入り拓哉は出る。

 

拓哉「束か。どうした?」

 

束『た〜ちゃん。トーマスの修理が終わったよ』

 

拓哉「ホントか!?」

 

束『うん!線路の方も半分は復旧できてるよ』

 

拓哉「随分と早いなおい!」

 

さすがの拓哉も、トーマスの修理だけではなく線路も半分も復旧したのは驚きを隠せなかった。

 

拓哉「なら取り敢えずトーマスの所で合流だ」

 

束『りょーかーい!』

 

そして拓哉は屋敷から港に向かう。その道中屋敷から港までの線路が見事に修理されていた。そして工廠に到着すると、中には見事に修理されたトーマスがいた。

 

束「た〜ちゃん!こっちこっち!!」

 

拓哉「お〜トーマス。やっと修理が終わったみたいだな」

 

トーマス「はい!」

 

トーマスも嬉しそうに話す。

 

拓哉「しかし、トーマスの修理もそうだけど、線路の方の修理もよく半分も終わらせたな」

 

束「そんなの、束さんにお任せ!残り半分もあっという間に終わらせるよ!」

 

拓哉「ああ。頼むぞ束」

 

拓哉はそう言うと、束の頭を優しく撫でる。

 

束「うおおおおおお!!た〜ちゃんに撫でられて束さんパワーアップだぜい!!」

 

そして誰もいなくなった束は物凄い勢いで走り去っていった。

 

拓哉「さてトーマス。悪いがすぐにでも走りたいと思うけど、それはもう少し待ってくれ。丁度明後日に俺の知り合いが訪ねてくれるんだ。その時にお前を紹介して、ついでに試運転をと思ってるんだ」

 

トーマス「ホントですか!」

 

拓哉「ああ」

 

トーマス「うわ〜!楽しみだな!!」

 

拓哉「それまでは悪いがこのままここにいてくれ」

 

トーマス「分かりました」

 

そう言うと拓哉も工廠を後にする。そして2日後、拓哉とリーラは東京湾の港に来ている。

 

拓哉「やっと会えるな」

 

リーラ「はい。随分と久し振りですね」

 

そんな話をしてると、後ろから声をかけられる。

 

「久しぶりね。タクヤ、リーラ」

 

振り返ると、1人の女性と執事の老人が立っていた。

 

リーラ「お久しぶりで御座います。シェリル様、ジェームスさん」

 

ジェームス「はい。タクヤさんもリーラさんもお久しぶりです」

 

拓哉「二人とも久しぶり。ってかシェリルさん、化粧濃くないですか?そんな歳でもないでしょう」

 

シェリル「うるさいわね!…ホント相変わらずね」

 

そう言うと笑いながら拓哉と握手する。

 

「お〜い!!」

 

すると今度は少年とその少年の夫婦がやって来た。

 

拓哉「トーマス!」

 

トーマス「皆久しぶり!」

 

シェリル「トーマスも久しぶりね。随分と格好良くなっちゃって♪」

 

拓哉「だな」

 

すると、トーマスの後ろの夫婦が話し掛けてきた。

 

拓哉「ルコントさんも久し振りですね」

 

ルコント「ああ。タクヤ君も久し振りだね。ところでスコットは何処だ?」

 

リーラ「まだ来ておられません」

 

すると、海から汽笛が聞こえてきた。全員がそっちを見ると懐かしい船が見えた勿論

 

トーマス「皆見て!ペペロンチーノ号だ!」

 

シェリル「フフッ。相変わらずのボロ船ね♪」

 

拓哉「コラコラ。またアル喧嘩する気か」

 

『ハハハハハハ!』

 

そしてペペロンチーノは、拓哉達が待ってる港に到着した。すると、ペペロンチーノ号から女の子が拓哉に飛び付いた。

 

「タクヤさん!」

 

拓哉「おっと!大きく…綺麗になったなナナミ」

 

ナナミ「えへへ♪」

 

ナナミは嬉しそうにする。

 

拓哉「アルとスコットさんも久し振りですね」

 

アル「久し振りだな!」

 

スコット「ああ。皆元気そうでなによりだ」

 

全員久々の再開で会話が盛り上がる。

 

拓哉「さて、今回は日本に来てもらったし、聞けば全員数日は滞在できるって聞いたし。今回はこちらが全ての費用を負担するから、観光も予定してるつもりです」

 

アル「観光か!前来た時は、どっかの誰かさんが財布を忘れて碌に回れなかったからな♪」

 

シェリル「なによ!アルも内緒で買い物してたくせに!!」

 

アルとシェリルは、昔の様に喧嘩をする。

 

拓哉「はいはい。ったく、二人とも昔とちっと模変わってないな」

 

ナナミ「それを止めるタクヤさんもね♪」

 

トーマス「そうだね」

 

ナナミとトーマスは笑っていた。

 

拓哉「ったく…スコットさん、取り敢えず今からペペロンチーノ号でこの場所に向かいたいんです」

 

拓哉はスコットに自分の島までの地図を見せる。

 

スコット「ここか。別に構わないが、ここはなんの島なんだい?」

 

拓哉「実は…」

 

拓哉はスコットだけに、このシマが自分の島だと説明する。

 

スコット「なるほど。分かった。アル!出航するぞ!」

 

アル「オーキードーキー!」

 

そして全員ペペロンチーノ号に乗り込む。出向して拓哉の島に向かう。

 

「キュイイイイ」

 

するとシャチが飛び出てきた。

 

拓哉「ティコの奴も、相変わらずだな」

 

リーラ「そうですね」

 

ティコが楽しそうに泳いでるのを見て、全員が笑顔になる。それから暫くして、拓哉が所有する島に到着した。

 

拓哉「おいおいリーラ。いつトーマスと客車を用意したんだ?」

 

リーラ「はい。2日前にトーマスからお聞きし、嘗て使っていた客車の場所をお聞きして、大急ぎで修理いたしました。折角皆様が来ていただいていますので、試運転も兼ねようかと思いまして」

 

拓哉「なるほど」

 

リーラの言葉に納得する拓哉。

 

拓哉「運転は?」

 

リーラ「お任せ下さい」

 

リーラが運転するらしい。

 

ナナミ「うわ〜!機関車だ!!」

 

トーマス「こんにちは」

 

トーマス「うわ!しゃ、しゃべった!?」

 

トーマスはびっくりしてひっくり返る。

 

拓哉「驚かせて悪かったな。この機関車はこの島で発見された物なんだ。名前はトーマスだ」

 

トーマス「ぼ、僕と同じ名前なの!?」

 

トーマス『こんにちは!ぼくトーマス!!』

 

ルコント「ほう。息子と同じ名前の機関車があるとは驚きだ」

 

リーラ「取り敢えずお乗り下さい」

 

リーラに言われ、スコット達は客車に乗り込む。

 

拓哉「ナナミ、トーマス」

 

ナナミ「どうしたのタクヤさん」

 

拓哉「いや、お前ら機関室に乗ってみないか?」

 

トーマス「いいの!」

 

拓哉「ああ。運転はリーラがするから、邪魔にならないようにしてくれればな」

 

ナナミ「乗る!乗りたい!」

 

拓哉「よし!乗り込め!」

 

こうして拓哉とリーラ、ナナミ、トーマスは運転席に乗り込んだ。

 

拓哉「じゃあ出発だ!」

 

トーマス『しゅっぱ〜つ!』

 

汽笛を鳴らして、トーマスは屋敷に向けて出発した。

 

ナナミ「うわ〜!凄い凄い!!」

 

トーマス『はや〜い!』

 

拓哉「なるほど。そんな感じに運転するのか」

 

リーラ「はい。ですがやはり最低でも二人運転には必要ですね」

 

拓哉「そうだな。こうして石炭を入れなきゃなんないしな(ん〜、束に頼んで自動石炭投入機備え付けてもらうか)」

 

そこから暫くは楽しい汽車の旅を楽しむナナミ達であった。そして屋敷に到着すると、全員が驚きの顔をする。

 

拓哉「ってか、屋敷の前まで線路を轢いたのか」

 

リーラ「はい。お客様をご案内するならこうした方がいいかと思いまして」

 

拓哉「なるほど。じゃあ中に入ってくれ」

 

拓哉はそう言うと屋敷の中に入る。それをナナミ達は慌てて追い掛ける。

 

『お帰りなさいませ拓哉様』

 

拓哉「ただいま。後ろの人達は俺の大切な客人だ。丁重にもてなしてくれ」

 

『かしこまりました』

 

メイド達は、スコット達から荷物を受け取るとそれぞれの部屋に案内し、全員を食堂に案内した。

 

シェリル「だけど驚いたわ。まさかタクヤがこんな屋敷を持っているなんて」

 

ロベルタ「当然です」

 

ナーベラル「拓也様は加藤家次期当主様です」

 

『か、加藤家次期当主!!?』

 

ナーベラルにそう説明されると、ナナミ達は驚く。あのスコットすら驚きの表情をしていた。

 

ルコント「まさか君が、あの有名な加藤家の次期当主とは驚いたよ」

 

スコット「全くだ」

 

拓哉「すみませんね、あの時Last nameは言ってませんでしたからね」

 

ナナミ「でも驚いたな。タクヤさんが加藤家の人だったなんて」

 

ジェームス「ということは、もしかしてこの島は…」

 

リーラ「はい。この島とこの近海は加藤家…拓哉様の所有物でございます」

 

『……』

 

リーラの言葉に更に驚く。

 

アル「おいおい…まさか島全体とはなぁ」

 

拓哉「ま、取り敢えずこの島はウチの所有の島なので、好きに過ごして下さい。リーラ、後でスコットさんとアルと一緒に、ペペロンチーノ号を港の工廠に案内してあげてくれ」

 

リーラ「かしこまりました」

 

アル「タクヤ、工廠ってのはなんだ?」

 

拓哉「簡単に言えばドッグみたいな場所ですよ。ペペロンチーノ号やスコットさん達には、あの時大変お世話になりました。ですので、少なからずお礼をと思いまして」

 

スコット「お礼?」

 

拓哉「それは工廠に行ってからのお楽しみです。リーラ、二人を案内してくれ」

 

リーラ「かしこまりました」

 

リーラは、スコットとアルを工廠に案内した。

 

拓哉「シェリルはどうする?シャワーでも浴びるか?」

 

シェリル「お願いしようかしら」

 

ジェームス「でしたら、私は皆さんのお食事の用意を致しましょう」

 

ユリ「お手伝いいたします」

 

ジェームスは、ユリ達と一緒に食事の準備をする。ルコント夫妻は近くを散歩する。拓哉とナナミ、トーマスはどうするか話し合う。

 

拓哉「どうする?」

 

ナナミ「そうね〜」

 

トーマス「僕はトーマスで島を見て回りたいな」

 

拓哉「ならそうするか」

 

拓哉達は、トーマスで復旧してる線路を使ってシマヲ見て回る事にする。

 

拓哉「それじゃあロベルタ、他の人の事は頼んだぞ」

 

ロベルタ「かしこまりました」

 

ナナミ「出発!」

 

拓哉達はトーマスに乗って出発する。3人だけなので客車も離しトーマスだけで走っている。

 

拓哉「悪いなナナミ、トーマス。石炭を入れる作業を手伝わせて」

 

ナナミ「ううん。大丈夫」

 

トーマス「そうだよ。僕もこんな体験できて楽しいよ」

 

二人は嬉しそうにそう言う。暫く走ってると港に到着した。

 

拓哉「まずはこの島の港だ」

 

「「うわ〜」」

 

束のおかげでだいぶ復興した港を見る拓哉。

 

拓哉「へ〜。だいぶ復興したなこの港も。ナナミ!トーマス!アル達がいる工廠に行ってみるか?」

 

「「うん!」」

 

拓哉「って訳だトーマス。少しの間待っててくれ」

 

トーマス「分かりました」

 

拓哉達はトーマスを残して、スコット達がいる工廠に入っていった。



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32話

工廠に入ると、そこにはリーラとスコットがペペロンチーノ号の前で話している。アルは拓哉が用意した部品等を嬉しそうに見ている。

 

ナナミ「アル〜!父さ〜ん!」

 

トーマス「アル〜!」

 

アル「お〜トーマス!ナナミ!それにタクヤ!」

 

拓哉「相変わらず嬉しそうに機械とかを見るな。で、どうだ?俺からのプレゼントは。気に入ったか?」

 

アル「気に入ったもなにも、ホントにこんなに貰ってもいいのか?」

 

拓哉「ああ。いつかペペロンチーノ号にも恩返ししたくてな。それでスコットさん。もし許可を頂ければ、ペペロンチーノ号を此方で修繕や強化したいんですが」

 

スコット「ペペロンチーノ号をかい?」

 

拓哉「はい。勿論スコットさんとアルが立ち会ってもらう事を条件にします」

 

スコット「なるほど。確かにここ最近ペペロンチーノ号をまともにオーバーホールもできていなかったが」

 

拓哉「なら是非とも。勿論費用等は加藤家が負担しますので」

 

スコット「流石にそれは…」

 

拓哉「いえ、そこは譲れません。いくらかかってもウチが出します。ですので、ペペロンチーノ号をパワーアップしてやってください」

 

拓哉は真剣な顔でスコットに言う。

 

アル「スコット、ここはタクヤの顔を立ててやったらどうだ?」

 

ナナミ「父さん…」

 

スコット「…分かった。なら暫くの間はここにお世話になろう」

 

ナナミ「へへっ!やったぁ!!」

 

こうして、ペペロンチーノ号はパワーアップする事になったのだった。その夜、ジェームス達が作った夕食を食べ大広間でのんびりする一同。

 

ナナミ「美味しかった〜」

 

トーマス「そうだね。ジェームスさんのご飯美味しかった」

 

ジェームス「ありがとうございます」

 

スコット「リーラさんの手料理も久々だったな」

 

リーラ「恐縮です」

 

皆それぞれ雑談を楽しむ。

 

ルプスレギナ「拓哉様」

 

拓哉「ん?どうした」

 

ルプスレギナ「拓哉様やリーちゃんは、どうやって皆様と出会ったんですか?」

 

ルプスレギナが、拓哉とナナミ達との出会いを聞く。

 

拓哉「そうだなぁ。折角だしその時の話をするか」

 

そして拓哉は語りだす。

 

拓哉「あれは俺が14の時だ。まだ修行中で世界中を旅してた時だった…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拓哉「ん〜!この島は気候が穏やかだな」

 

拓哉は修行の為世界中を旅している。加藤家に伝わる霊剣・荒鷹と途中で手に入れた初代斬鉄剣。そして、加藤家で生まれた時に作られる1本、三代鬼徹。その3本を使いこなす修行も兼ねている。

 

拓哉「さて、次の場所は何処にするかな」

 

地図を広げ次の目的地を決める。

 

「きゃああああ!!父さん!父さあああん!!」

 

拓哉「なんだ?」

 

拓哉は声が聞こえた方に走る。到着すると、1人の男性が倒れていた。

 

拓哉「おい!おい!!しっかりしろ!!」

 

「う…うぅ…っ」

 

拓哉「とにかく場所を移動しないと…」

 

拓哉は倒れてる男を担いで、場所を移動する。移動中に男は目を覚ます。

 

「…ここは?」

 

拓哉「気がついたみたいだな」

 

拓哉は目が覚めた男をおろし話しかける。

 

「君が助けてくれたのか?」

 

拓哉「助けたっていうより、あの場所から移動させただけだがな」

 

「そうだったのか。ありがとう」

 

拓哉「気にしなさんな。で、一体何があったんだ?」

 

拓哉は男から話を聞く。男は船で海の生き物の生体などを調べており、その道中遭難者を助け薬を買いにこの島に来た。そして、その遭難者を追っている組織に娘を拐われたと説明される。

 

拓哉「なるほど…で、あんたはこれからどうするつもりだ?」

 

「当然ナナミを助けに行く!」

 

拓哉「なら話は早い。俺も連れてってくれ」

 

「なんだと!?」

 

拓哉の言葉に男は驚く。

 

拓哉「確かに、お宅からしたら見ず知らずの俺が手助けする理由が分からないのは当然だ。だがな、親が生きてるなら…絶対に一緒にいなきゃいけない!それを他人の手で引裂き、誘拐までする連中に腹が立っただけだ。勿論報酬もいらない。頼む…俺も連れてってくれ」

 

「…分かった」

 

こうして拓哉は、男と一緒に男の娘の救出に加わった。

 

拓哉「そういえばお互いまだ名乗ってなかったな。俺は拓哉だ」

 

「私はスコット・シンプソンだ。海洋生物の調査の為旅をしている」

 

拓哉「よろしく、スコットさん」

 

スコット「こちらこそ、タクヤ」

 

お互い握手をする。そしてスコットの船にゴムボートで戻る。戻るとスコットは皆にナナミが拐われた事を説明した。

 

「クソッ…ナナミの奴が」

 

「ナナミの事も大変だけど、一緒に連れてきたこの子は誰なの?」

 

スコット「彼の名はタクヤ。ナナミの救助手助けしてくれる」

 

「この子が?」

 

「大丈夫かよ。腰に付けてるのは、日本のソードって事は分かるけどよ」

 

拓哉「ま、確かにそう思われても仕方ないがな」

 

拓哉はそう言うと、女性を睨み付けて威嚇する。すると女性は気を失った。

 

「お、お嬢様!!」

 

「お、おい!?」

 

拓哉「すみません。少しだけ威嚇しました。意力は弱めたつもりなんですが」

 

「威嚇だと!」

 

「お、お嬢様は大丈夫なんでしょうか」

 

拓哉「大丈夫です。気を失ってるだけですから」

 

その言葉に、女性の執事は安心するが、太っちょの男は終始驚きっぱなしだった。そして、ナナミを探して船は進む。しかし、どこにいるか手がかりがない。

 

拓哉「しかし、手がかりがないのも困ったもんだな」

 

そんな事を言ってると、シャチが突然暴れだす。

 

拓哉「な、なんだ!?」

 

スコット「…アル!後を頼む!」

 

アル「オーキードーキー!」

 

シェリル「どうしたの?」

 

スコット「ティコはナナミの場所を知ってるんだ!」

 

スルトスコットは、海に飛び込みティコに掴まって行ってしまった。

 

拓哉「へ〜。あのシャチ…ティコって言ったか?凄い賢いな」

 

アル「ああ。ティコとナナミは、小さい時から一緒だったからな」

 

拓哉「なるほど。最早家族だな」

 

アル「ああ」

 

そんな話をしてると、スコットが戻ってき船の進路を変えた。そして今ナナミが囚われている場所が分かったと聞かされた。

 

アル「それじゃあ、ナナミはその岩場に?」

 

スコット「ああ。いるのは間違いない」

 

シェリル「だったら、早く助けに行きましょうよ!」

 

拓哉「行ったところでどうする?相手は武器を持っているんだ」

 

ジェームス「そうでございます。ここはじっくり考えませんと」

 

シェリル「そ、それは…」

 

拓哉の言葉にシェリルは黙る。

 

拓哉(さて…どうするかな。相手は武器ありで、こっちは俺以外は武器なし。俺単体で乗り込めればなんとかできるが、それはスコットさんが許しちゃくれない)

 

『ペペロンチーノ号、聞こえるか?ペペロンチーノ号』

 

するとペペロンチーノ号に通信が入る。

 

スコット「こちらペペロンチーノ号。船長のスコットだ」

 

『俺の名はメタル・クロー。色々と楽しませてくれてありがとよ。スコット…』

 

シェリル「恥ずかしくないの!女の子を攫ったりして!」

 

クロー『明日午前9時、リオデジャネイロ沖8マイルの地点で待っている』

 

スコット「…承知した」

 

スコットはクローの案を承諾する。

 

クロー『では明日の朝、お会いしよう』

 

そしてクローからの通信は切れた。そしてスコット達は、ペペロンチーノ号の後ろにある部屋に入り、助けた男リチャードから話を聞く。拓哉は入り口前で壁にもたれる。話が終わり、スコットは拓哉達を集め、地図を広げ話し合う。

 

スコット「ここが、約束のリオデジャネイロ湾の沖、8マイルの地点だ。私は夜明け前に岩場の裏側から上陸して、陸路で奴らのアジトに接近する」

 

アル「1人でか!?」

 

シェリル「無茶よ!」

 

スコット「ナナミとデートの約束をしたんでね。邪魔をしないでくれ」

 

拓哉「……」

 

スコット「ペペロンチーノ号は、約束通り合流地点へ向かってくれ」

 

アル「おとりって訳だな」

 

スコット「うん。その間に私がナナミを助け出す」

 

その言葉にアルは黙る。

 

シェリル「フィルムを渡せばナナミを助けてくれる約束でしょう?ナナミを連れて来るんじゃないの?」

 

拓哉「それはないな」

 

拓哉の言葉に、全員が拓哉を見る。

 

シェリル「ど、どうしてよ」

 

拓哉「言っちゃ悪いが、そのナナミって子は向こうのアジトにいるんだろ?んで、おそらくその場所は写真に写ってた場所。なら、それを見たナナミが無事に帰ってくる保証は0だ。勿論写真を見た俺達全員もな」

 

スコット「ああ。タクヤの言う通りだろう。アジトを知ったナナミを奴等が簡単に返すとは思わない。アジトに残してくる筈だ」

 

ジェームス「なるほど。それが悪党のやり方というわけですな」

 

拓哉「ああ。俺は世界を回って、そんな連中を嫌というほど見てきたが、悪党連中に共通するのは、自分達の邪魔になるのは全て排除するって事だ」

 

シェリル「そんな…」

 

拓哉とスコット、ジェームスの言葉を聞いて、シェリルは唖然とする。

 

スコット「ジェームスさんから貴方に頼みたい事がある。とても大切な仕事だ」

 

こうして、スコットは作戦を立て朝日が登る前に決行される。

 

スコット「それじゃあ、後は作戦通りに」

 

スコットはそう言い残し、ゴムボートで岩場に向かった。

 

アル「さて、俺達も行くぞ」

 

ペペロンチーノ号は目的地に向けて出発する。指定場所のリオデジャネイロ湾沖8マイルの場所で待っていると、クローが乗る高速艇もやって来た。

 

クロー「フィルムはどこだ」

 

アル「ここにあるぜ」

 

クロー「おっと、ナナミを先に返せ」

 

クロー「フィルムが先だ!」

 

シェリル「いいえ、ナナミが先よ!ナナミ返しなさい!」

 

クロー「あの小娘がどうなってもいいのか?」

 

拓哉「……」

 

クロー「さ〜フィルムを渡せ。さもないと人質もお前達も殺すぞ!」

 

アル「ま、待て!今渡すよ」

 

アルはフィルムを渡そうとする。しかし拓哉が手で静止させる。

 

クロー「…なんの真似だ小僧」

 

拓哉「なんの真似もなにも、どの道フィルムを渡した瞬間、俺達を殺すつもろだろ?」

 

クロー「なに?」

 

拓哉「ナナミがあんたらのアジトを知ったんだ。フィルムを回収しても、それを見てる可能性がありアジトの場所を知ってる俺達をあんたらは見逃すはずが無いからな」

 

クロー「…フフフ…ハハハハハハッ!!」

 

するとクローは盛大に笑い出す。

 

クロー「その通りだ。アジトの場所や秘密を知られたお前達を生かして返す理由はないからな」

 

拓哉「だと思った」

 

それと同時に、空の方に照明弾が打ち上がる。

 

アル「合図だ!」

 

拓哉「ペペロンチーノ号を走らせろ!」

 

拓哉はそれと同時に、相手の船に乗り移る。

 

クロー「貴様等!なんの真似だ!!」

 

拓哉「こういう事だよ!てやあああああああ!!!」

 

拓哉は船を刀で斬り、そのままペペロンチーノ号に乗り込んだ。

 

クロー「くそ!追え!追うんだ!!」

 

シェリル「ちょっと来るわよ!!」

 

拓哉「安心しろ」

 

拓哉はそう言うと、刀を鞘の中に完全にしまう。それと同時に高速艇は真っ二つに切れた。

 

拓哉「はぁ…つまらん物を斬ったな」

 

『……』

 

高速艇が真っ二つに斬れた瞬間を見たアル達は、全員が言葉を失った。

 

アル「ホント…驚いたぜ」

 

シェリル「貴方からの提案だったけど、本当に船が斬れるなんて」

 

ジェームス「はい…本当に驚きですお嬢様」

 

それぞれの感想であった。そしてスコットとナナミがティコに乗って戻ってきた。

 

ナナミ「アル…」

 

アル「良かった…本当に良かった」

 

ナナミ「ありがとうアル…」

 

アル「やったな!スコット」

 

スコット「ああ」

 

シェリル「うふふ」

 

するとスコットは、シェリルと拓哉に手を出す。

 

スコット「ありがとう。君達にも随分と心配をかけた」

 

シェリル「うふふ」

 

拓哉「別にいいさ」

 

ナナミ「あたし、リチャードさんに知らせてくる!」

 

ナナミがリチャードの所に向かう。すると海からクローがペペロンチーノ号に乗り込んだ。

 

クロー「さぁ、フィルムを寄越せ」

 

スコット「貴様等に渡さん!」

 

クロー「ならば力づくででも貰うぜ!」

 

するとクローは、義手の右手の先を尖らせる。それをスコットに向けて振り下ろす。が…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガキン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロー「なに!?」

 

拓哉「ま、船をしずめた程度じゃ駄目だったか」

 

クロー「なんだと!?」

 

拓哉「悪いが、次は手加減なしだ!」

 

拓哉は素早く刀を抜き、クローの右手を斬り落とす。

 

クロー「くっ!!」

 

拓哉「ここにはシェリルや女の子が乗ってるから、斬るのは勘弁してやる」

 

すると拓哉は、思いっきり腕を振りかぶる。

 

拓哉「オールマイト直伝…」

 

そして腕を前に突き出した。

 

拓哉TEXAS SMASH(テキサススマッシュ)!!!」

 

そう言い振りかぶると、物凄い風圧が生まれた。

 

クロー「くっ…!うおおおおおおおおおっ!!」

 

そしてクローは風圧で何処かに吹き飛んでいった。

 

『……』

 

拓哉「…ぐっ!やはり加減してもまだまだ修行が足りないか」

 

痛めた腕を抱えながらそう言う。

 

シェリル「大丈夫!」

 

シェリルが倒れそうな拓哉を支える。

 

拓哉「わ、悪いな」

 

シェリル「気にしないで。…助けてくれてありがとう」

 

拓哉「気にするな。ああでもしないと、シェリル人質になってたかも知れないからな」

 

シェリル「そう…」

 

そして拓哉は気絶した。

 

拓哉「…あれ?ここは?」

 

気絶していた拓哉は、目を覚まし立ち上がる。外を見ると海の上。

 

拓哉「進んでるって事は、ここはペペロンチーノ号なのか…」

 

すると部屋にナナミが入ってきた。

 

ナナミ「良かった!目が覚めたんですね。父さん!アル!シェリルさん!ジェームスさん!タクヤさんが目を覚ましたよ!!」

 

ナナミがそう言うと、操縦中のアルを残して全員がやって来た。

 

スコット「目を覚ましたか」

 

拓哉「ええ。今はどこに?」

 

スコット「リオデジャネイロから今はアフリカのザイール川経由でエーゲ海を目指している。君を残すか迷ったが、まだきちんとお礼も出来ていないからね」

 

拓哉「いえ、助かります。どの道船を降りてもまだ旅を続けるだけなんで」

 

スコット「そうか」

 

拓哉「もし迷惑じゃなければ、暫くの間世話になりたいんですが」

 

スコット「もちろんいいとも」

 

スコットからそう言われ、拓哉はスコットと握手を交わした。

 

ナナミ「あの…」

 

するとナナミが拓哉に話しかける。

 

拓哉「君は?」

 

スコット「紹介しよう。この子が私の娘のナナミだ。ナナミ、彼はタクヤだ」

 

拓哉「よろしくナナミ」

 

ナナミ「はい!よろしくお願いしますタクヤさん!」

 

ナナミとも握手をする拓哉であった。

 

スコット「さて、これから君が寝る場所を確保しないとな。しかしアルが寝ている場所は流石にこれ以上は寝れないな。とはいえ、私の部屋も二人は無理だ。どうするか…」

 

スコットが拓哉の寝場所について考えると、ナナミが手を上げる。

 

ナナミ「はい!私の部屋なら大丈夫」

 

シェリル「ナナミの部屋!?」

 

ナナミの提案に驚くシェリル。

 

拓哉「いや、流石に女の子と一緒だと…」

 

ナナミ「大丈夫!私のベッドは上だし、下の方なら寝れるわ」

 

スコット「ん〜…」

 

ナナミの提案にスコットは悩む。いくら拓哉に恩があるとはいえ、年頃の…しかも自分の娘と同じ部屋にする事を悩む。

 

ナナミ「駄目かな…父さん」

 

スコット「…いいだろう。タクヤ、すまないが君はナナミの部屋で寝てくれるか?」

 

シェリル「スコット!!」

 

拓哉「いいんですか!?」

 

拓哉とシェリルは驚く。

 

スコット「確かに自分の娘だが、ナナミ本人が言っているのを尊重してやりたい」

 

拓哉「……」

 

シェリル「だったら私の部屋で寝ればいいじゃない!」

 

ジェームス「いけませんお嬢様!いくらお嬢様頼みとはいえ、そんな事をすればわたくしは旦那様になんと言えばいいか」

 

拓哉「そりゃそうだ。けど、ナナミは本当に俺と一緒でもいいのか?」

 

ナナミ「はい!拓哉さんは、見ず知らずの私を助けようとしてくれた。それに父さんも助けてくれた。だから、せめてこれくらいはしたいんです!」

 

拓哉「……」

 

すると拓哉は立ち上がり、ナナミの頭を撫でる。

 

拓哉「ありがとう。それじゃあお世話になるよ」

 

ナナミ「…はい!」

 

そして拓哉は、今度はスコットの方を見る。

 

拓哉「スコットさん。貴方にこれを預けておきます」

 

そう言うと拓哉は、スコットに指輪を渡す。

 

スコット「これは?」

 

拓哉「その指輪は、ウチに代々受け継がれてる指輪です。それを持っていると、我が一族のトップに立つ人間とその妻が持つことを許されています。今回はそれは俺の旅を心配して祖母が持たしてくれた物です。その指輪に誓って、ナナミに迷惑をかけない事を約束します」

 

スコットは指輪を見ると、その家紋に見覚えがあった。

 

スコット「この家紋…」

 

拓哉「……」

 

拓哉は黙ったままスコットを見る。それを察したスコットはこれ以上何も言わなかった!

 

スコット「ありがとう。君の決意は感じた。けど、わざわざこの様なタイセツナ指輪を預けなくてもいい。ナナミと同じ、君を信じているからね」

 

そう言いながら、スコットは拓哉に指輪を返す。

 

拓哉「…ありがとうございます」

 

こうして拓哉も、ペペロンチーノ号の乗組員となり、スコット達の旅に同行するのであった。



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33話

拓哉「これが、俺とナナミ達との出会いだよ」

 

ユリ「そうだったのですか」

 

シェリル「ホント懐かしいわね。けど、いきなり気絶はやめてほしかったわ」

 

拓哉「まぁそう言うなよ。ああでもしないと、シェリルやアルは信用しないだろ?」

 

アル「ガハハハ!ちげぇねぇ」

 

拓哉の言葉に、シェリルは呆れながらも笑い、アルは豪快に笑い出した。

 

リーラ「皆様、そろそろお休みになられてはいかがでしょうか?」

 

拓哉「そうだな。んじゃ、今日はこの辺にして明日は観光にでも行くか」

 

「「賛成!!」」

 

拓哉がそう言うと、ナナミとトーマスは楽しそうにして部屋に入って行ったのであった。そして翌日…

 

拓哉「朝か」

 

拓哉は目を覚ます。すると、リーラが部屋に入って来る。見ると何やら慌てていた。

 

拓哉「どうしたんだリーラ?」

 

リーラ「拓哉様、昨日東京銀座にておかしな門が出現したそうです」

 

拓哉「門だと?」

 

リーラ「はい。そして、銀座にいた多くの人が門から出てきた人…ドラゴン等にやられました」

 

拓哉「なんだと!?」

 

リーラの言葉を聞いて驚く拓哉。

 

拓哉「ドラゴンってまた…しかし、本来ドラゴンは人間界にはいないはず」

 

リーラ「はい。先程ティアマットに聞きましたが、どうもこの世界には存在しないドラゴンや竜だそうです」

 

拓哉「なるほど。となると、特車二課の俺達もかり出される可能性がありそうだな」

 

今現在所属している特車二課の事を考える拓哉。

 

リーラ「お察しの通りです。少し前にロベルタが先に特車二課に向かいました」

 

拓哉「となると、第二小隊の連中も向かってるか」

 

そう考えた拓哉は、出勤用の服に着替える。

 

拓哉「リーラ。悪いがナナミ達には今日の観光は中止と言っておいてくれ。そして、島の警戒態勢を最大限に引き上げてくれ」

 

リーラ「かしこまりました」

 

拓哉「ティコも海から島内の巨大な湖に移動させてくれ」

 

リーラ「はっ!」

 

そしてリーラは部屋を出ていく。拓哉はそのまま特車二課に出勤する。出勤すると、格納庫は既に出撃準備に慌てている。

 

太田「佐藤!遅いぞ!!」

 

拓哉「すみません太田さん」

 

香貫花「あら拓哉、来たのね」

 

拓哉「はい。朝から慌ただしいですね」

 

香貫花「ええ。貴方も知っているとは思うけど、銀座に突如現れた謎の門。そこから出てきたまるで中世時代の兵士達に多くの人が犠牲になった事件。今回は特車二課、陸上自衛隊と協力して門の向こうに行くことになるそうよ」

 

拓哉「なるほど」

 

香貫花から説明を聞き、拓哉も準備する。

 

後藤「おぉ佐藤、来たか。悪いが隊長室まで来てちょうだいな」

 

拓哉「分かりました」

 

後藤隊長に呼ばれた拓哉は隊長室に向かった。

 

拓哉「佐藤巡査、入ります」

 

後藤「はいよ~」

 

中に入ると、第一小隊の南雲隊長、第二小隊の後藤隊長、そして自衛隊の人に何故か拓哉の祖父の加藤豪昌とリーラもいる。

 

拓哉「…物凄い方達がいますね。まさか加藤家当主である加藤豪昌さんがおられるとは」

 

豪昌「ハハハハハッ!拓哉よ、もう普段通りで構わないぞ」

 

拓哉「あ~…話したのね南雲さんや後藤さんに」

 

リーラ「はい拓哉様」

 

後藤「しっかりと聞いちゃった」

 

南雲「しかし驚きました。まさか貴方が次期加藤家当主でしたとは」

 

拓哉「南雲さん、話し方普段通りでいいですよ」

 

南雲「…分かったわ」

 

拓哉がそう言うと、少し困り気味に南雲は話す。

 

後藤「けど、なんでまた加藤家次期当主が特車二課(ウチ)に来たの?しかも身分まで隠して」

 

拓哉「いや、以前ICPOの銭形警部から特車二課の話を聞きましてね。それで少し興味がわきまして」

 

後藤「は~、興味ねえ」

 

拓哉「ええ」

 

拓哉は笑顔でそう答える。後藤は頭をポリポリかく。

 

「えっと…そろそろしてもよろしでしょうか?」

 

南雲「ああ、すみません」

 

そして話を始める。

 

「自分は外務官僚の菅原浩治と申します。隣にいるのは、特地派遣方面隊指揮官の狭間浩一郎です」

 

狭間「自分は狭間浩一郎陸将です!」

 

拓哉「外務官まで出てくるとは、まさか日本はあっちの資源とか目当てとかか?」

 

「「……」」

 

拓哉の言葉に狭間と菅原は黙る。

 

拓哉「はぁ…ま、それに関しては爺ちゃんに任せるとして、なんでわざわざ爺ちゃんがいるの?」

 

豪昌「それなんじゃが、わしは政府の連中と色々と話をつけなきゃならん。それに、日本にできた門…ゲートを狙ってくるバカな連中もおる可能性も潰さにゃならんからのう。そこで拓哉や、お前がわしの代わりに自衛隊達と向こうに行って欲しいんじゃ。バカなことを考えてる連中の監視も含めての」

 

拓哉「なるほど」

 

豪昌「もちろん、加藤家の権限も復帰するから、お前さんの自由にすればよい。それを条件にウチの連中を何人か派遣する事になったからな」

 

後藤「ってな訳だ。一応佐藤…いや、拓哉は第二小隊と一緒にゲートの向こうに行くが、基本は自由にしてくれていいから」

 

拓哉「了解。あ、ならできれば香貫花・クランシー巡査部長を俺の側近にお願いしたいんですが」

 

後藤「香貫花を?」

 

拓哉「ええ。実は最初に出勤した時にバレまして。それに、昔香貫花さんとお婆さんを助けた事がありまして」

 

後藤「なるほどねぇ。ま、お前さん一人で行かせると他の連中が色々とうるさそうだしね」

 

後藤の言葉に、拓哉と南雲は苦笑いするしかなかった。そしてゲート突入日、拓哉達特車二課も集まっている。

 

拓哉(やれやれ…せっかくナナミ達が来てるのに、これじゃ日本を案内できないな)

 

そんな事を考えていた。チラッと隣を見ると、今にも駆けだしそうな太田がいる。そして自衛隊と特車二課はゲートをくぐり特地と呼ばれる場所に行くのだった。



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34話

ゲートを潜り抜けると、壮大な台地が広がっていた。

 

野明「うわ~!」

 

遊馬「へ~!」

 

進士「凄いですね」

 

第二小隊の連中は相変わらず呑気である。

 

狭間「これより野営の準備を始める!並びに、周辺の警戒を怠るな!!」

 

『了解!!』

 

狭間がそう指示を出すと、自衛隊達は野営の準備に取り掛かる。

 

後藤「さてと、取り合えず俺達も周辺の警戒をしましょうか。一号機二号機デッキアップ」

 

「「了解!」」

 

そして、第二小隊のレイバーも警戒する準備をする。

 

拓哉「しかし、まさか警察と自衛隊が共同活動するとは思わなかったけどなぁ」

 

香貫花「確かにねぇ」

 

拓哉と香貫花が、デッキアップされるレイバーを見ながら言う。

 

拓哉「ああそれと、後藤隊長から伝わってると思うけど、落ち着いたらこの地域の人との民間交流の為に、俺も行くことになってるから、その時は特車二課代表として俺と香貫花が行くことになってるから」

 

香貫花「あら、私も一緒なの?」

 

拓哉「ああ。俺の事を知ってるのは後藤隊長と南雲隊長、そして香貫花さん以外は知らないからな」

 

香貫花「なるほどね」

 

そんな話をしてると、野営の設営や周辺警備の準備が終わった。

 

後藤「あ~拓哉。悪いが香貫花と一緒に一度日本の方に戻ってくれるか?なんでも加藤家当主様が、お前に伝えたいことがあるみたいでな」

 

拓哉「爺ちゃんが?分かりました」

 

そして拓哉と香貫花は日本の方に戻って行った。戻るとリーラがヘリで迎えに来ていた。

 

リーラ「お待ちしておりました拓哉様、香貫花様」

 

拓哉「ただいまリーラ。んで爺ちゃんは?」

 

するとヘリから別の人が降りてきた。

 

「お久し振りでございます拓哉様」

 

拓哉「久し振りだねセバス。セバスがいるって事は、本家に行けばいいのか」

 

セバス「はい。本家で豪昌様とかぐや様がお待ちです」

 

拓哉「分かった」

 

セバスにそう言い、ヘリに乗り込んで加藤家本家に向かった。

 

拓哉『リーラ、ナナミや大和達は?』

 

リーラ『はい、島での生活を楽しんでおります』

 

拓哉『ならよかった』

 

リーラ『時折シェリル様が、日本を観光したいと申しておりますが』

 

拓哉『ん~…まだ完全に安全が保障されたわけじゃないからな。もう少しだけ待ってもらって、その後プレアデス達を連れてって形になるかな』

 

リーラ『かしこまりました。その様にお伝えしておきます』

 

セバス『皆様、まもなく到着したします』

 

セバスが操縦するヘリで加藤家本家に到着した。

 

香貫花「……」

 

初めて本家を見た香貫花は、言葉を失っていた。

 

拓哉「それにしても、久し振りだな。前に帰ったのは正月以来だったっけ?」

 

リーラ「はい」

 

香貫花「なんなの…この広さは」

 

拓哉「ま~広いよな。移動するのに車やヘリを使わなきゃなんないしさ」

 

リーラ「拓哉様。それは私達の島でも同じかと」

 

拓哉「確かに。移動にトーマスやヘリを使わなきゃなんないしな」

 

リーラにそう言われ笑いながらそう言う拓哉であった。

 

セバス「豪昌様、拓哉様をお連れいたしました」

 

豪昌「入れ」

 

中に入ると、豪昌が中央に座っていた。

 

香貫花(あの人が、加藤家現当主の加藤豪昌…そして、拓哉のお爺さん)

 

そんな事を思ってると、豪昌は拓哉に抱き着く。

 

豪昌「拓哉よ~!ようやく抱きしめる事ができたわい!」

 

『……』

 

香貫花「…はい?」

 

突然の行動に、リーラ達は呆れており香貫花に限っては驚きの余り変な声を出す。

 

拓哉「祖父ちゃん!今は他の人もいるんだから少しは落ち着いて!!」

 

豪昌「そんな冷たい事を言うではない。久々の孫なんじゃ…ごへっ!!」

 

かぐや「いい加減にしないか!」

 

拓哉「祖母ちゃん、久し振りだね」

 

かぐや「そうだね。また少し大きくなったんじゃないかい?」

 

拓哉「また少し身長が伸びたかな。祖父ちゃんも祖母ちゃんも元気そうで安心した」

 

拓哉も年相応の反応をする。それを見た香貫花は微笑む。

 

香貫花「拓哉、あんな顔もできるのね」

 

リーラ「はい。あのような顔をされる拓哉様を久々に見ました」

 

セバス「ええ。拓哉様は豪昌様の負担を和らげるため、勉学や加藤家の当主になる為日夜努力しております。ですが、いくら拓哉様とはいえまだ成人なされていません。豪昌様やかぐや様と話すことが安らぎになるのです」

 

リーラ「……」

 

セバスがそう話すと、リーラは悲しそうな顔をする。

 

「リーラさん、貴方がその様な顔をされてはいけませんよ」

 

リーラ「セバスチャン…」

 

やって来たのはセバスチャン・ミカエリス。加藤家の執事だ。

 

セバス「セバスチャン、来ていたのですか」

 

セバスチャン「ええセバス。坊ちゃんがご帰宅されているのにお出迎えをしないわけにはいきません。後リーラさん、貴方がその様な顔をされると拓哉坊ちゃんが心配します」

 

リーラ「…はい!」

 

執事とメイドでそんな話がされていると、いつの間にか復活した豪昌が再び拓哉に抱き着いていた。しかし、流石の拓哉もいい加減うっとしくなってきたのか、豪昌と言い合いになっていた。

 

拓哉「だ~!いい加減にしろ!!」

 

豪昌「なんじゃと!久々のじいちゃんだぞ!!久々の孫なんじゃぞ!もっと甘えんか!甘やかせんか!!」

 

拓哉「久々なのは分かるが、いい加減しつこいんだよ!!」

 

豪昌「久々だからじゃ!!」

 

そして喧嘩が始まる。しかも屋敷が崩壊するくらいの…

 

香貫花「なっ…なぁ…」

 

リーラ「あぁ…始まってしまいました」

 

セバスチャン「これは、後の修理が大変ですね」

 

セバス「その様ですね」

 

二人の執事だけは、喧嘩後の屋敷の修理が大変だと嘆いているが、リーラは恐れていたことが起き、香貫花に限っては、拓哉と豪昌の喧嘩を見て驚いていた。

 

かぐや「いい加減に…しないかい!!

 

「「へぶっ!!」」

 

セバスチャン「と、決着がついたみたいですね」

 

セバス「その様ですな」

 

かくして、二人の喧嘩はかぐやの拳骨によって終息したのであった。

 

拓哉「…で、わざわざゲートからこっちに戻るように行って、本家に呼び出すなんてさ」

 

豪昌「あ、あぁ…実はな、向こうに行くのに心もとないと思ってな」

 

拓哉「って事は、完全装備で向こうに行けって事?」

 

豪昌「そうだ。そして、向こうにこの子達も連れて行ってくれ」

 

すると横の部屋から出てきた人物達を見て、拓哉は驚く。

 

拓哉「なっ!?お、お前ら…」

 

出てきたのは、拓哉が助けた艦娘数人だ。

 

拓哉「なんでここに?」

 

「…私達はあれから色々考えた」

 

「貴方が私達にしてくれた事」

 

大和「未だに治療をしてくれてる武蔵達を見捨てずにいてくれている」

 

「この恩を返さない程、私達は愚かじゃないネ」

 

拓哉「…そうか。なら、これからよろしく頼む」

 

「もちろんネ!私は金剛型一番艦の金剛ヨー」

 

「私は長門型一番艦の長門だ」

 

大和「私の紹介はいいですよね」

 

「私は正規空母の加賀です」

 

「同じく正規空母の赤城です」

 

「く、駆逐艦の吹雪です」

 

「工作艦の明石です」

 

「給糧艦の間宮です」

 

拓哉「知ってるかは分からないが、加藤家次期当主の加藤拓哉だ。よろしくな」

 

金剛「よろしくネ!てーとく」

 

拓哉「て、提督?」

 

吹雪「はい。私達を指揮する人を提督と呼んでいます」

 

明石「それに、提督は妖精も見えるみたいだし、信頼できるみたいだしね。夕張なんか、新しく出来た工廠に満足してるからね。もちろん私もね」

 

拓哉「ああ、工廠か。あれはリーラや束が頑張ってくれただけだ。俺は指示しただけだよ」

 

金剛達と仲良く話す拓哉。その様子を見た豪昌やリーラは安心した表情をする。

 

拓哉「さて、それじゃあ俺達は門に戻るか」

 

豪昌「拓哉…気を付けるんじゃぞ」

 

拓哉「ああ。祖父ちゃんも祖母ちゃんも元気で。また来るよ」

 

そして拓哉は、ヘリで門の前に行き中に入る。すると、出た先にあったのは戦闘の後だ。

 

拓哉「これは…」

 

後藤「おぉ、戻ったか」

 

戻った拓哉を見て後藤が話しかける。

 

拓哉「ただいま戻りました。それで…これは?」

 

後藤「ん?見ての通り戦闘の後。今自衛隊の皆さんが状況を確認中」

 

香貫花「結構な戦闘後ですね」

 

後藤「まぁねぇ。何せ向こうさんはパッと見でも数千人はいたからね。それを迫撃砲や戦車、機関銃で対処したんだからね」

 

煙草を吸いながらこたえる後藤。

 

拓哉「隊長は随分と慣れてるみたいですね」

 

後藤「まぁね。色々とあるのよこっちもね」

 

拓哉「色々…ね。で、他の人たちは?」

 

後藤「ああ。太田以外は今はテントで休んでるよ。まぁ、目の前でこれを見たらね」

 

拓哉「大丈夫なんですか?野明さん達は」

 

後藤「さぁ。けど、慣れてもらうしかないからね。警察でも現場で仏さんを見ることもあるんだからさ」

 

拓哉「いや、こればかりは仏さん以上の問題かと」

 

確かにその通りである。警察官は現場で発見したりするのは、多くても平均2~3人ほど。しかしこれは戦争だ。一度に多くの人が亡くなるのも事実。野明達には慣れるまで時間がかかるであろう。

 

後藤「んで、後ろにいるお嬢さん方はどちら様?」

 

拓哉の後ろにいる金剛達を見る。

 

拓哉「ああ、紹介します。彼女達は加藤家に所属する者です。今回この特地に行くので…祖父ちゃんが連れて行けって。皆、自己紹介を」

 

金剛「金剛デース!」

 

吹雪「ふ、吹雪です」

 

長門「な…んんっ!長門だ」

 

加賀「…加賀です」

 

赤城「赤城と言います」

 

明石「明石だよ」

 

間宮「間宮といいます。給仕などはお任せ下さい」

 

後藤「どうも御親切に。第二小隊の後藤です。一応拓哉と香貫花の上司かな?」

 

拓哉「かな?じゃなくて上司でしょうに」

 

後藤「いやほら、一応そうなるけど殆ど指示する必要ないじゃない?」

 

後藤の言葉に呆れる拓哉と香貫花であった。

 

後藤「ま~取り合えず、今日はもう休んでちょうだいよ。他の連中は向こうのテントで休んでるからさ。あ、言っとくけど男女一緒だからね。テントの数限りあるし」

 

拓哉「けど、流石に彼女達は入らないでしょう?」

 

後藤「それは大丈夫。ウチのテントの隣が彼女達のテントだからさ」

 

そう言って後藤は行ってしまった。

 

拓哉「相変わらず抜け目ないだ」

 

香貫花「ホントね」

 

拓哉「それじゃあ今日はもう休もうか。金剛達は隣のテントだ」

 

『はい!』

 

拓哉「リーラ、後は頼んだ」

 

リーラ「お任せ下さい」

 

そして拓哉と香貫花第二小隊のテントへ入って行ったのであった。果たして、これから一体何が起こるのであろうか。そんな事を思う拓哉であった。



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35話

特地に来て1週間。今ではすっかり攻めてくる兵士達はいなくなり、自衛隊は門の近くに仮の軍用施設等を建てている。

 

拓哉「取り敢えず、なんとかウチの連中も慣れてきたみたいだな」

 

リーラ「そうですね」

 

特車二課の第二小隊も、最初は人が大勢死ぬ本物の戦争を見て気分が悪くなっていた。だが、徐々にではあるが普段通りに戻りつつある。まだ進士や山崎といった人はまだ立ち直れてはいない。

 

後藤「お〜い。今日の業務説明するぞ〜」

 

後藤が拓哉達に割り振られてるテントにやって来た。

 

遊馬「隊長、ひろみちゃんや進士さんはまだ無理だと思いますよ」

 

後藤「それは分かってる。取り敢えず今日は、自衛隊の人達と一緒に現住民と接触してきて頂戴な」

 

野明「現住民ですか?」

 

後藤「そっ。やっぱ政府の人達もさ、日本が略奪に来たって思われたくないのよ。んで、この地に住む人と接触して、あわよくば交流なんかもしたいわけよ。日本政府にしちゃ」

 

拓哉(爺ちゃんも頑張ってくれてるみたいだな)

 

後藤「んじゃ班分けだけど、篠原と泉は第2班で、香貫花と佐藤は第3班の人達と行動する。今回は現地住民との接触なのでレイバーは使わん。だが、何かあったらまずいので2号機パイロットの太田と、未だに気分が優れない進士と山崎は待機」

 

『了解!』

 

そして拓哉と香貫花、後リーラと加賀と長門がついてくる事となり、残りの金剛達は残って周囲の警戒をする。その間の指揮を拓哉は後藤に託したのだった。第3班に到着すると、既に自衛隊の人達は集まっていた。

 

「あ〜、特車二課の人ですね」

 

拓哉「はい」

 

「自分は、この班の隊長を務める事になった【伊丹耀司】二等陸尉です」

 

拓哉「ご挨拶ありがとうございます。特車二課、第二小隊所属の佐藤拓哉巡査です」

 

香貫花「同じく特車二課第二小隊の香貫花・クランシー巡査部長よ」

 

伊丹「よろしくお願いします。佐藤さん、香貫花さん」

 

拓哉「伊丹さん、拓哉で結構です。それに敬語もいいですよ」

 

香貫花「私も香貫花で構わないわ」

 

伊丹「あはは…じゃあよろしくね拓哉、香貫花」

 

再び挨拶する拓哉と伊丹。

 

伊丹「それで、後ろの人達は?」

 

リーラ「申し遅れました。私加藤家のメイドの【リーラ・シャルンホルスト】と申します」

 

長門「私は長門だ」

 

大和「大和といいます」

 

加賀「加賀です」

 

金剛「ワタシは金剛ネ〜!」

 

伊丹「マジか…本物の艦娘だ!」

 

伊丹と後にいる男1人が、長門達を見て涙を流していた。

 

拓哉「と、取り敢えず出発しましょうか」

 

「…そうですね」

 

「そうしましょう」

 

拓哉がそう言うと、隊の中にいる2人の女性隊員が賛同した。車を走らせながら、拓哉達は目的地の場所を確認している。自衛隊の車で目的の村に走っている。拓哉の車両には、拓哉、リーラ、長門、大和、金剛、加賀、香貫花、自衛隊の栗林、黒川がいた。運転は何故かリーラがしている。

 

黒川「すみません。本来なら私か栗林さんのどちらかが運転しなきゃいけないんですけど」

 

リーラ「いいえ、気にしないで下さい」

 

栗林「本当にごめんなさいね。黒川さんは看護師資格を持ってるから、万が一に備えて動ける様に。私は上から周囲を確認しなきゃいけないから」

 

拓哉「仕方ありませんよ。流石に自分達が周囲の確認をする訳にもいかないですし」

 

拓哉なら、助手席でも分かるがな。けど、一応自衛隊連中に任せないといけない。すると先頭を走る伊丹達の車両の会話が無線で聞こえる。

 

倉田『けど伊丹隊長!俺マジで感激ッス!』

 

伊丹『同志倉田よ。分かる…分かるぞその気持ち!俺も非常〜に感激している!』

 

倉田『ですよね!まさか本物の艦娘に出会えるなって…夢のようっす!』

 

伊丹『ああ!ああ!!その通りだ!!』

 

(盛り上がってるな〜。確かに、まさかゲームのキャラが実際に存在してたらテンション上がるわな)

 

しかし、長門を含めた女性陣達からは、凄い冷たい視線が無線に向かて放たれている。

 

栗林「うわ〜…ないわ〜」

 

黒川「まぁまぁ。いいじゃないですか。唯一の趣味なんですし」

 

言葉に棘があるぞ。黒川さんや。

 

長門「ふむ。私達に感動してくれるのは嬉しい事だが」

 

加賀「視線が嫌ですね」

 

金剛「テートク以外に見られるのは嫌ネ!」

 

大和「あらあら、金剛さん。そんな事言っては駄目ですよ。私達は拓哉さんのモノなんですから」

 

リーラ「その通りです」

 

(いやいや皆さん!?そんな言い方するとヤバイから!ほら!栗林と黒川の視線が冷たい!)

 

長門「その通りだ。提督がいなければ、今頃私達は死んでいたからな」

 

黒川「えっ!それは一体」

 

栗林「どういうことなの?」

 

『……』

 

すると全員が暗い表情になる。

 

黒川「す、すみません!」

 

栗林「何か、聞いちゃいけない感じだったね」

 

大和「いいえ、気にしないで下さい。実は…」

 

大和は金剛達の代わりに、あの時の事を話した。当然無線は繋がったままなので、伊丹達にも聞こえている。

 

栗林「…そっか」

 

黒川「そんな事が…」

 

金剛「で、でも!テートクのお陰で今はHappyネ!」

 

長門「そうだな。提督のお陰で、我々は今を生きている」

 

加賀「その通りね」

 

栗林「そっか…」

 

すると、栗林と黒川が拓哉を見る。

 

栗林「すみません拓哉さん。私…勘違いをして」

 

拓哉「気にしないで下さい。元々は金剛やリーラの言い方に問題があったんですから」

 

黒川「ですが…」

 

拓哉「私が気にしないでと言っているので気にしないで下さい。この話はお終いです!ね?」

 

そしてこの話を強引に終わらせた。そしてようやく目的地の村に到着した。伊丹が代表して、村長と話をしている。それにしても、空気が美味いな…

 

伊丹「皆!村長さんによれば、来た道の森にエルフが住んでいるそうだ。念の為そっちにも行く事になった」

 

『了解』

 

再び車に乗り、森に向けて出発した。辺りも暗くなってきており、森に入るのは明日にという話をしていたら、森に向かってドラゴンが火を吐いていた。

 

伊丹「おいおい…これは…」

 

拓哉「ドラゴンが森を焼いていますね」

 

倉田「あり得ないッスよ…」

 

「……」



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番外?


ある作品を見て、ムカムカしちゃったのでまた書いちゃいました。


何故世の中にはこんな事が起きるのか。
そんな事を思いつつ、見ている自分に呆れてしまう自分がおる…

ままならない…


美紀男「……」

 

美紀男は、ちとせと健三の行為を見てその場を離れた。

 

美紀男「……」

 

何も言わない美紀男。しかし、ある男がそれをフォローする。

 

「あれ?美紀男さんじゃないですか」

 

美紀男「拓哉さん…」

 

それは、世界の3分の2を支配している加藤家の次期当主の加藤拓哉だ。彼とは偶々電車で乗り合わせ、意気投合したのだ。

 

美紀男「拓哉さん…俺…俺…」

 

拓哉「み、美紀男さん!?」

 

拓哉は泣き崩れる美紀男に駆け寄った。

 

美紀男「うっ…ううっ…」

 

リーラ「拓哉様、ここではなんですので、私達の部屋へ」

 

拓哉「そうだな」

 

リーラの提案で、美紀男を自分達が泊まってる部屋に連れて行った。

 

拓哉「…落ち着きましたか?」

 

美紀男「…はい」

 

拓哉「それで、一体何があったんですか?電車の中で、あれ程婚約者に会うことを楽しみにしていたはずじゃ?」

 

美紀男「はい…実は…」

 

美紀男から話を聞く。何でも、自分が大学の為上京した数日後に、雑誌取材があり、そのカメラマンに卑猥な行為をされ、挙句の果てにそれを風呂場で目撃したそうだ。

 

拓哉「なるほど…」

 

拓哉は腕を組みそう言う。

 

拓哉「リーラ、これは駄目だな」

 

リーラ「そうですね」

 

雑誌を見ながらそう答えるリーラ。写真のところには丁寧に撮った健三の名前が載っている。

 

拓哉「美紀男さん。こちらで弁護士を用意します。相手から慰謝料を取りましょう。それくらいしないと駄目です」

 

美紀男「で、でも…」

 

拓哉「そのちとせさん…若女将ですか?婚約者の美紀男さんがいるにも関わらず、迫られたとはいえ相手と関係を持っている。リーラ、この健三って男の事を調べろ。早急にだ」

 

リーラ「かしこまりました」

 

そう言うとリーラは出ていった。

 

拓哉「美紀男さん。私はリーラと温泉旅行に来たって言ったの覚えてますか?」

 

美紀男「…はい」

 

拓哉「それもあるんですが、本当はこの旅館の経営を確認しに来たんです」

 

美紀男「えっ!?」

 

拓哉「この旅館は違いますが、ここの土地は加藤家が所有してるんです」

 

美紀男「つまり…」

 

拓哉「ウチが土地の貸し出しを打ち切れば、この旅館は存続できなくなります」

 

美紀男「そ、それは…」

 

拓哉「流石に美紀男さん個人の関係で廃業にはしたくない…と思ってますか?」

 

美紀男「はい」

 

拓哉「確かにそれもあるでしょう。ですが、私は迫られたとはいえ婚約者がいるにも関わらず関係を持った人間に、これから先まともに経営できるとは思ってないんです。寧ろ、そんな相手は大嫌いなんですよ」

 

美紀男「!?」

 

そう言う拓哉の顔を見て、美紀男は生唾を呑み込んだ。

 

リーラ「失礼します」

 

拓哉「ああ。それで?」

 

リーラ「はい。あの男はここの若女将ちとせ様以外にも、妹である舞桜様とも関係をもち、過去には訴訟を起こされています」

 

拓哉「そうか…」

 

美紀男「そんな…舞桜ちゃんまで…」

 

拓哉「美紀男さん…それでもまだ迷いますか?」

 

拓哉がそう言うと、美紀男は顔を上げ真っ直ぐ拓哉を見る。

 

美紀男「…お願いします」

 

拓哉「承った。リーラ!早速頼む」

 

リーラ「お任せください」

 

拓哉は浴衣からスーツに着替えて、若女将のちとせに会いに行く。美紀男から貰った証拠を持って…リーラは健三を拘束する為動いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちとせ「ようこそおいで下さいました」

 

拓哉「いえ」

 

ちとせ「それで如何でしたでしょうか?当旅館は?」

 

拓哉「ええとても素晴らしいです」

 

ちとせ「それはそれは」

 

嬉しそうに話すちとせ。これで旅館は存続できると思っているのだろう。だが…

 

拓哉「ですが、申し訳ないですがこれ以上貴方達にこの土地をお貸しする事は出来ません」

 

ちとせ「…えっ?」

 

拓哉「ですので、契約解除とさせて頂きます」

 

ちとせ「な、何故ですか!」

 

拓哉「ちとせさん。確かにこの旅館は素晴らしい。従業員の方達も」

 

ちとせ「で、でしたら…」

 

拓哉「ですが!上に立つ貴方がねぇ」

 

ちとせ「わ、私…?」

 

拓哉「ええ」

 

拓哉は、美紀男から受け取った証拠の動画を見せた。

 

ちとせ「こ、これって…」

 

拓哉「貴方の婚約者…いえ、元婚約者の美紀男さんから預かりました。聞きましたよ。あれだけ好きなのに、よくあんな男と…」

 

ちとせ「……」

 

拓哉「私はねちとせさん。迫られたからと言って、婚約者がいるにも関わらず、別の男と関係を持つ人間に、大事な土地をお貸しする事は出来ません」

 

ちとせ「違う…違います…」

 

拓哉「何が違うんですか?まぁ、姉が姉なら妹も妹ですね」

 

ちとせ「えっ?」

 

拓哉「姉妹揃って、あんなチャラそうな男に…」

 

ちとせ「……」

 

拓哉「ああ。それとあの男、貴方達以外にも関係を持つ人間がいますし、過去には訴訟も起こされてます。ま、慰謝料を払う貴方に言っても一緒ですがね。と言うわけで、今月でこの土地は返してもらいますので、従業員の方達の説明、お願いしますね。嘘偽りなく…」

 

ちとせ「あ…ああ…」

 

拓哉「さて美紀男さん。最後に元婚約者言う事は?」

 

ちとせ「!?」

 

拓哉がそう言うと、美紀男と縛られボコボコにされてる健三が入って来た。

 

拓哉「おいおいリーラ。随分とやったな」

 

リーラ「はい。あろう事かこの男は私にも迫ってきましたので」

 

拓哉「ああ…」

 

拓哉はそう聞いて納得した。

 

美紀男「……」

 

ちとせ「美紀男…さん…」

 

美紀男「ちとせ…本当にショックだったよ。婚約の約束をして、指輪も贈ったのに」

 

ちとせ「違う…違うんです…」

 

拓哉「何が違うんです?美紀男さんを見送って数日でこの男と関係を持ったくせに…」

 

ちとせ「そ、それは…」

 

美紀男「拓哉さんの紹介で、弁護士を雇うから、今後は弁護士を通して下さい」

 

ちとせ「……」

 

拓哉「んで、お前もお前で美紀男さんにキチンと慰謝料を払えよ?」

 

健三「……」

 

拓哉「あらら。気絶してるよ。では美紀男さん。行きましょうか」

 

美紀男「はい」

 

ちとせ「待って美紀男さん!」

 

美紀男「さようなら…ちとせさん」

 

ちとせ「あ…ああ…うわあああああああああ!!!

 

そして、この噂はあっという間に広がり、ちとせは高校にもおれず自主退学。町からも白い目で見られている。健三は、美紀男に慰謝料を払うため、何処かの地下で強制労働しているそうだ。旅館も潰れ、ちとせは従業員に給料も払えない為、何処か遠い場所で風俗等をして、従業員の給料と美紀男慰謝料を払っている。妹は妹で塞ぎ込み、引き篭もりになったそうだ。美紀男は、拓哉の紹介で就職し、そこで出会った女性と幸せに暮らしているそうだ。

 

拓哉「美紀男さん、立ち直ってよかったな」

 

リーラ「そうですね」

 

拓哉「…早くあの案を通さないと、また美紀男さんや悟さんみたいな、不幸になる人を減らさないと…こうしてる間にも、似たような事は起きているんだからな」

 

リーラ「……」

 

拓哉「リーラ。言っておくが、仮にお前等がそんな事をした場合でも、俺は問答無用で制裁を行う。身内だろうがなんだろうがな」

 

リーラ「当然です。その覚悟は、一同できております」

 

拓哉「そうか…」

 

そう言いながら、拓哉は書類に目を戻した。

 

リーラ(拓哉様…拓哉様を慕っている、私を含めた者は、誰の拓哉様を裏切りません。もし…その様な輩がいた場合は…私が必ず…)



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番外2

拓哉「ふ〜…やっと今日の仕事終わったな」

 

リーラ「お疲れ様です拓哉様」

 

今日の仕事を終え、俺はリーラと帰宅している。珍しく車ではなく歩きだ。すると…

 

拓哉「ん?」

 

目の前をフラフラと歩く男がいた。

 

拓哉(酔っ払いか?)

 

すると男は突然倒れた。慌てて俺とリーラは近寄る。

 

拓哉「大丈夫ですか!?」

 

「うぅ…ミユキ…ちゃん…」

 

男は泣きながら拳を握っていた。

 

拓哉「……」

 

リーラ「拓哉様…」

 

俺はもしやと思い、リーラに水を買って来るように伝えた。買ってきた水を男に渡し、ようやく落ち着いた。

 

「すみません。ご迷惑をかけまして」

 

拓哉「いえ、それはいいんですが…何かありましたか?」

 

「ええ…まぁ」

 

拓哉「よかったら話してみませんか?誰かに話すだけでも楽になれますよ?」

 

「そう…ですね。実は…」

 

彼は話し始めた。彼の名前は中西ダイスケ。何でも彼には、婚約した彼女がいるそうだ。名前は小森ミユキ。その彼女が、付き合う前に大木という男に持ち帰られていたらしい。それは付き合う前だからいいとして、婚約しても何度も大木と会っていて、挙句の果てに動画も撮っているそうだ。なのに、彼女は未だに婚約者のダイスケより大木の方を優先しているそうだ。因みに大木は、二人が婚約して付き合っている事を知らないそうだ。

 

拓哉(あ〜…これは大木の方は慰謝料は難しいな)

 

ダイスケ「俺…情けなくて…」

 

拓哉「それでやけ酒したと」

 

ダイスケ「はい…」

 

拓哉「ダイスケさん。厳しい様ですが、大木って方は慰謝料は難しいでしょう。二人が婚約して付き合っている事を知らないんですから」

 

ダイスケ「そう…ですか」

 

拓哉「ですが、婚約者の小森ミユキさんからは取れると思います。どうしますか?ここで会ったのもなにかの縁。こちらで弁護しますが?」

 

俺はついこの間、弁護士試験を合格したのだ。あの法案を通すなら、自分も詳しくないとな。

 

ダイスケ「えっと…」

 

拓哉「大丈夫です。俺に任せてください」

 

ダイスケ「…分かりました。拓哉さん、お願いします」

 

拓哉「ええ」

 

そして翌日、ダイスケが小森ミユキを呼び出した。

 

ミユキ「えっと…ダイスケ君、この人は?」

 

拓哉「失礼しました。私は弁護士の者です」

 

ミユキ「何で弁護士の人が?」

 

拓哉「小森ミユキさん。貴方、ダイスケさんと婚約しても、大木という男と繋がってますね?」

 

ミユキ「!?」

 

俺はダイスケから受け取ったDVDを再生した。そこには、大木との行為中の動画が流れる。

 

ミユキ「……」

 

拓哉「婚約前の事ならあれですが、婚約してからもこの様な行為。貴方に慰謝料を請求いたします」

 

ミユキ「……」

 

ダイスケ「ミユキちゃん。俺は凄くショックだったよ。あの日も、俺の誘いを断って大木を優先した。大木の奴は、俺達が婚約して付き合ってる事は知らないから何も言えないけど、ミユキちゃんの事が分かったよ」

 

ミユキ「違う…違うの…」

 

拓哉「何が違うのか。現に貴方は、この動画でもおっしゃってるではないですか。大木の●●●が好きと」

 

ミユキ「!!」

 

拓哉「あ、このDVDは既に貴方の実家に送らせて頂いています」

 

ミユキ「何で…」

 

拓哉「それは貴方が1番理解しているはずでは?」

 

ミユキ「……」

 

ダイスケ「もう金輪際会わないから。後は弁護士の拓哉さんを通してね」

 

そしてダイスケは部屋を出ていった。その後、ダイスケはミユキから慰謝料300万を受け取った。ミユキ実家から今回の件で、外出禁止を言い渡され、親に立替えてもらったお金を返すべく、親戚のツテで遠くに行った。大木の方は、ダイスケから話を聞き、笑ってはいたが、申し訳なく思い、気持ちだが50万と、自分も手を出していない女を紹介した。趣味はあれだが、根はなんだかんだです真面目みたいだな。ダイスケは、大木から紹介された女と、なんだかんだで上手く行き、もうじき結婚予定だそうだ。大木本人は、基本狙ってた奴は持ち帰りとかをするが、恋人がいたり婚約、既婚者には絶対手を出さないそうだ。おそらく過去に痛い目見たんだろうな。



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