終戦後の世界 (綿あめ)
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カレーってなんだよ

カレーってなんだろう



それは実に呆気ないものだった。

私達が戦っていたのは抗えるはずもない存在。圧倒的な戦力の前に命を落とす人間さえもいた。沈んでいった同胞もいた。相手は目に見える敵だと決まった訳ではなかったから。

 

私達が戦っていたのは『海』そのものだったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海のすぐ近く、機械音が鳴り続けていた工廠があり、今は普通のお風呂として使われている入渠室があり、船を迎える母港を兼ねそろえている元鎮守府、彼はそこに住んでいる。

 

戦争を終え、多くの提督は運営からの援助金を得て隠居等する者が多かったがここの提督は鎮守府に残った。

『住み慣れていて、案外暮らしやすいものだからさ』と本人は言っているが本心はわからない。

 

艦娘の艤装を解けば人間になる事は証明された世界で、色々な人生を進んでいく艦娘達だったがここの艦娘が人間になっても残っているのは、この提督との絆故なのか。

まぁ私もその1人であることには変わりないが。

 

この提督は戦争に終止符を打った三人提督の1人、御国もこの提督には頭が上がらないみたいでね。ここで艦娘と暮らすと言った時は生涯の金銭面を保証するなんて言われてさ。正直驚いた。脅しなど使わずにあんな待遇をされるなんて。

 

まぁそのおかげもあって私達はここで楽しく過ごせているんだから感謝しないとね。ってこんな事言うのももう2桁後半を超えてるか。

 

ナレーション役なんて買わなきゃ良かったよー。私にはちょっと難しいや。何が言いたいかと言うと、とにかく終戦後も楽しく過ごせてるってこと!見るより観る方がわかりやすいよね。

 

1人の少女は微笑む。

周りを包む騒音にも聞こえる拍手。

物語は新しい幕を開ける。

『飛龍』は1度礼をした。

 

 

―提督が起床しました。

―これより幸せな1日が始まります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…何かがおかしい。」

 

元執務室。今では提督の私室。艦娘のたまり場。

特に予定のない艦娘数人と提督はそんな部屋でゴロゴロしている所だった。

 

「ん?どしたの提督ー。あ、おはよー。」

「おはよう。…なぁおかしいとは思わない?ここさ、一応俺の寝室な?なんで目を覚ましたらお前ら普通なノリで遊んでんの?」

「え?そんなの提督やってる時からじゃん。」

「言葉遊びありがとう鈴谷。でも納得はいってないからな?」

 

漫画を読んでる漣と曙。ゲームをしている鈴谷。ティータイムをする熊野と金剛。トランプをしている第六駆逐隊の子。

 

「good morningデース!提督ぅー!」

「あぁ、おはよう金剛。ついでに俺にも紅茶をいれてくれ。もう、なんか寝起きなのに疲れた。」

 

金剛が席を立ち紅茶の準備をする。…椅子が3つある事から提督が起きたら一緒に飲む予定だったんだろう。その予定通りか提督は特に不思議がる様子もなく、空いている席に腰を下ろす。

 

「あら、私には挨拶なし?」

「はいはい、おはよう熊野。」

「あらあら、おはようございます提督。」

「…陸奥かお前は。」

「ヘーイ!提督の紅茶デス!」

「ああ、ありがとな。」

 

金剛が席に着くのを待ってから紅茶をいただく。茶葉の香りの楽しみ方なんて知らない提督は普通に味わう。無論、おいしい。

 

「っと、ところで他の姉妹はどうしたんだ?」

「比叡達ですカー?榛名も霧島も比叡のカレー作りを手伝ってますヨー。みんないい子ネ!」

「お前はいいのか?」

「私は味見します!どんな味になりますかネー。もとい、毒見になりますかネー…。」

 

金剛さんまじお姉さん。1番危険な役を買ってでるとは…。そろそろ比叡も自分の殺人カレーがやばいことに気がついてまともなカレーを作ろうと努力してんだな。1番はもう作らないって決断に至るところなんだけど、まぁ嫁の貰い手を考えるなら上達しないとな。

 

「…さて、ご馳走様。」

「お粗末様デス。どこかにおでかけデスカー?」

「ん?あー、朝食を取るだけさ。」

「いってらっしゃい、あ・な・た・♡」

「奥さんならここでご飯を用意しとくものだ。」

 

金剛のおでこをツンっとつついてから提督は執務室を後にする。「ひどいデース!」なんて声も聞こえるが無視だ、無視。ひどいと思うなら大和撫子について勉強しろ。…いや、金剛なら案外嫁の貰い手なんて簡単に見つかりそうだけど。

 

窓から差し込む陽の光は快晴だと告げんばかりに暑苦しい。廊下に備え付けられている窓を開けると少し涼しい海風が髪を揺らしてくる。和気藹々と追いかけっこ等して遊んでいる駆逐艦を見ていると、こう、父性をくすぐられる…と考えたところで窓を閉めて食堂に足を運ぶ。駆逐艦に混じってる背丈の大きい戦艦が見えたのは幻覚だ、幻覚。戦時中に最前線で戦った勇ましき日本の誇りがあんな顔で駆逐艦と遊ぶはずがない…遊ぶはずが…。

 

 

 

 

 

 

「あら、提督。おはようございます。」

「ああ、おはよう間宮。なんか、適当にご飯をくれ。」

「お顔が疲れてますね?どうかしましたか?」

「聞かないでくれ…。廊下でいろんな奴に絡まれてここにたどり着くのに1時間かかったところなんだ…。」

「はぁーい。」

 

クスクスと笑いながら間宮は調理室に入っていく。ふと時計を見てみれば時刻はもう11時、もう時期昼時で艦娘達が溢れ返ってくるか。起きる時間が遅かったといえ、これは遅すぎる朝ごはんか。いや、早い昼ごはんか。

 

「あ、提督だー!一緒にご飯食べるっぽい!」

「間宮さん、ごめんね。提督と同じのを2つお願いします。」

「おぅ、しぐぽいコンビ。他の姉妹とは一緒じゃないのか?」

「白露姉さん達は街に買い物にね。僕は夕立の子守りかな。」

「夕立は子供じゃないっぽい!」

 

たまたま早めの昼食を取りに来た夕立&時雨の犬コンビが提督と同じ席につく。夕立はすんすんと調理室から漂う匂いをかいでるところを見ると本当に犬に見える。ちなみに犬と遊ぶ時に使うボールを投げると取ってくる。何が言いたいかと言うと犬だ。

 

「にしても二人とも昼食早いな。これからでかけるのか?」

「散歩に行くからね。」

 

お前もか、時雨。

 

「もちろん夕立のね。」

 

それはひどいな。

 

「楽しみっぽい!」

 

いい加減自重しろよ。

 

「まぁ、お前達が楽しいならいいんだ、楽しいなら…。」

「もちろん楽しいさ。戦時中はこんなにのんびりできなかったからね。今の時代が平和だって痛感できるよ。」

「まぁ、そうだな。」

 

…お前ら戦時中も非番の時に散歩してたろ。知ってるぞ、しっかりと夕立にリードまで付けてたの。

 

「はーい、今日のお昼ご飯はカレーよ。」

 

犬コンビと談笑していると間宮がご飯を持ってきた。やけに早いなと思うとまぁカレーならそうなるかと理解した。

 

「と、提督さんはこちらのカレーね。とある艦娘さんから食べて欲しい!って言われちゃったの。」

「ん、そうか。頂くよ。」

 

ふむ、とある艦娘か。まぁうちの艦娘達のほとんどがカレー作りが得意だから誰かまではわからないか。その大半がおいしいカレーを作るし、犬コンビには悪いけど、絶品カレーを頂くぜ。いや、別に間宮のが絶品じゃない訳じゃないけどな。

 

「もぐ…もがっ!?ぐぉぉぉぉ…!!!」

「て、提督!?どうしたっぽい!?」

「み、水水水!!!」

「はい!水だよ!」

「ありがと…っ!」

 

な、なんだこのカレー…は…!?

いや、カレーかこれ!?

カレーじゃねぇよ!

カレーってなんだよ!

カレーってなんだよ(哲学)

カレーってなんだよ…(白目)

 

「ま、間宮…誰のカレーだ?」

「比叡さんのですよ?」

「金剛ぉ!!!」

 

提督の叫び声は鎮守府中に響き渡った。

 

 

 

「おっと…提督に見つかる前にでかけるとするネ。」

 

今日も鎮守府は平和だ。





カレーってなんだよ


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日常って何が定められたら日常なんだ


どうも、クソ提督です。
イベントE-2のニートメガネをラストダンスで割れなくて自分のメガネが割れそうです。




 

『海』と戦う。

 

聞けば何を言っているんだ?と思うだろうが私たちが戦ってきたのは確かに『海』だった。

深海棲艦がどこから生まれて、なぜ人間を襲うのか。終戦後の今でもわかってはいないことだらけだが、わかってしまったことはあった。

深海棲艦の正体、それは70年前の私たちそのものだった。姿は違えど、当時海に沈んでいった私たちの鉄が命を宿し、人間を襲ったことは最後の作戦でわかった。

 

いくら深海棲艦を撃滅しようと、その鉄は再び命を吹き込まれて蘇る。沈んでいった艦娘たちの鉄からも無論、深海棲艦は作られていった。

 

つまり私たちは無意味な争いを続けた。いくら深海棲艦と戦おうが数が減ることはない。沈めば深海棲艦の数が増える。その原理に気づいた3人の提督によって終戦を迎えることはできたが、沈んだ艦への想いは拭いきれない。

 

今はもう人間という新たな人生を手に入れた私たちだが、艦娘だったころの想いは忘れてはいけない。同胞たちの為にも私たちは幸せにならなければならない。

 

私はそう思っている。戦艦『長門』と呼ばれた私はそう思っている。

 

 

長門は一度礼をする。

 

再び頭を上げてみれば皆が真面目な顔でこちらを見ている。

 

艦娘だった彼女達も同じ考えをしているのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カチッカチッ

ジュッ

フーッ

 

執務室にはタバコ独特な臭いが立ち込めていく。提督にとってタバコは戦時中から吸っているもので、今では日課のような吸い方をしていた。

戦時中はもちろん何もかもが上手くいくわけではなく、イライラが募る事は度々とあった。その時に吸っていたタバコ『モーロボロ』は戦争が終わった今では愛着が湧くように吸っている。

 

「提督ー、タバコやめないの?」

「…ふーっ。そうだな、戦争を忘れたくない誠意って感じだな。」

「んー、かっこつけてる感じはわかるんだけど、提督に似合わなさ過ぎて鈴谷吹き出しそう。ごめん、無理、吹き出す。ブフォwwww」

「お前覚えてろよコノヤロー。」

 

鈴谷が床を転がる程大爆笑した事に呆れて、まだ3口しか吸ってないタバコの火を消す。別に物凄く吸いたいって程ニコチン中毒な訳でもないから、やめようと思えばいつでもやめれるノリで吸ってるものだった。残り香を名残惜しむ事もなく、タバコは机の引き出しにしまい、まだ笑いこけてる鈴谷の頭を足でつつく。

 

「や、ひどーい!私これでも乙女だよ?乙女の頭を足でつつくなんて信じらんない!」

「安心しろ、そもそも乙女は床を転がらん。つまりお前は乙女ではない。」

「え、今日ほど提督をクソだと思ったことないわ。」

「乙女はクソなんて言わないぞ。」

「今日日程、提督が人間の底辺に属する蛮族だと認識した日はございませんどす。」

「日本語がおかしい。」

 

ここの鎮守府にいる艦娘の数は3桁にいってるから、もちろん顔を毎日合わせない娘たちもいるのだが、鈴谷とは毎日会ってる気がする。気がするんじゃなくて会ってるんだな。こいつ、朝起きたら必ず執務室にいやがる。

 

執務室に備えられている窓を開けて朝の日差しを浴びる。んっと軽く伸びをして太陽を薄目になりながらも見てみる。うん、今日もいい天気だ。久しぶりに出掛けるとかも良さそうかもしれないな。…まぁもちろん誰かに邪魔されなければの話なんだけどな。

 

「んじゃ俺ちょっと外行ってくるわ。」

「おっ、ニートやってる提督が外に行くなんて珍しい。どこまで行くの?」

「ちょっと散歩するだけさ。」

 

どうせこいつは1日中ここにいるのはわかってるから、特に何も言わずに執務室を後にする。俺にニートとは言うくせに、1日中執務室でゴロゴロしているお前の方がニートじゃねぇか。まぁそんな事言ったらマシンガントークで文句言われんのはわかってるから、面と向かっては言わないんだけどな。

 

 

 

適当にぶらぶらしてみるのもたまにはいいかもしれない。外で遊んでるのと言えばやっぱり駆逐艦が多いな。追いかけっこしたり、かくれんぼしたり、元気に遊ぶのはいい事だな。だがやはり妙なんだよなぁ。明らかに背丈が駆逐艦じゃない奴が1人だけ混じっているんだよなぁ。あれはどうみても戦艦だよなぁ。噂をすればなんとやら、その元戦艦の彼女がこちらに気づいて近づいてきた。

 

「む、提督ではないか。何をしているんだここで?」

「そっくりそのまま返してやるよ長門。…お前、どうした?」

「それはどういう意味でだ?」

「お前が駆逐艦っ子たちを追いかけている顔は犯罪者まさにそのものだったぞ。」

「ダァニィィ!?」

 

いや、そんな驚かれ方をされても知らんよ。てか自覚なかったんかい…。涎垂らしながら駆逐艦を追いかけ回すそれは誘拐犯か何かと思ったよ。戦時中は駆逐艦相手に厳しくも愛ある指導をしていた戦艦長門はどこにいったのやら…(^q^)

 

「ま、まぁ、いいんじゃないか?みんなで仲良くやれてるなら気にすることもないんじゃね?いや、知らんけど。」

「…お前な、私だって華の女の子だぞ?」

「悪かったってー。今度どっか飯屋連れてくるからさ。」

「ふむ、まぁいいだろう。では私は戻るぞ。……島風〜!島風ぇぇ〜!!(^q^)」

 

ほんと自重しない奴だな。

 

 

 

鎮守府の庭、端の方の少し日陰になっているところでシートを広げてピクニックしているのは空母組。まぁ鎮守府敷地内でやってるからピクニックと言えるかはわからないけど、本人達が楽しいならいいんじゃないかな?

一航戦の赤城と加賀、二航戦の飛龍と蒼龍、五航戦の翔鶴と瑞鶴で南雲機動部隊の完成だな。そこに雲龍たちまで混じってまぁこれは本当に空母会だな。

昼間から酒を飲むなんて、羨ましい奴らめ。てか瑞鶴、そろそろ加賀さんを煽るのやめときなよ。加賀さんの目のハイライトが消えてるぞ?おいこら、ずいずいするんじゃない。ずいずいするんじゃ…あ、言わんこっちゃない。加賀さんにラリアットくらってんじゃないか。

 

全く、仕方ないな。

…だがまぁ、何か瑞鶴の気持ちもわからなくもないな。楽しそうだし。どうせ加賀には見られてないんだから俺もやっておくか。

 

ズイ (ง˘ω˘)วズイ

ズイ (ง˘ω˘)วズイ

ズイ (((ง˘ω˘)ว))ズイ

 

「て い と く ?」

 

「え、あ、加賀さん…?」

 

あ、ありのまま今起こった事を話すぜ!

俺は今加賀から15m程離れていると思ったら、いつの間にか加賀は俺の目の前にいた。

何を言っているかわからねぇと思うが俺も何があったのかわからなかった…。

頭がどうにかなりそうだった…。催眠術とか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…。(ポ〇ナレフ状態)

 

「加賀さんちょっとm…プゲラっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ただいま。」

「おかえりー。ってどうしたの?目が死んでるのはいつもの事だけど、なんかこう、どうしたの?」

「おぅ、いろいろあってだな…。」

 

…全く酷い目にあったぞ。加賀め、元上司の俺にも容赦なくラリアットをかましてくるとか、お前本当に人間かよ…。いや、確かに煽った俺にも批はあるけど、あの距離を一気に詰めてきたのか?馬鹿な…超スピードとかじゃあないぜありゃ…。

 

…何はともあれ疲れた。まだ時間的には三時頃。みんな大体間宮のところで甘味を楽しんでるところかな?俺もいつもは間宮の甘味を頂いてるけど、今日は気分のらないしな。丁度ここには鈴谷という玩具もあるし、鈴谷で遊ぶか。

 

「なぁすずy…?」

「ドーモ、テイトク=サン。テイトク=スレイヤーデス。」

「アイエエエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?マダヒルダヨ!?」

「おー!提督乗ってくれるねー!」

「…まぁ、そうだろな。お前が昼から顔出すあたりが珍しいしな。」

 

かわうちめ、いつもは夜しか行動しないくせに今日は昼間から行動開始していたのか。いや、これを機に夜型生活をやめてくれれば健康的にもいいし、人間らしくできるとは思うんだけどな。多分無理だな。こいつ気まぐれだから、明日にはまた夜型生活に戻ってるだろうし。

 

「にしてもなんでまた今日は昼間からいるんだ?」

「いやそれがねぇ、あと1時間もしたら那珂のライブだからね。」

「お、川内はお姉さんだな。それじゃあ俺も見に行くとするか。」

「是非とも来てよー!じゃ、私はそれまで仮眠をとるよー。」

「あぁ、おやすみな。」

 

…うん、川内はこれで那珂のライブにはこないな。この時間に寝て仮眠とるっていっても、目覚ましかけたとしても起きないだろ。夜中に目を覚ましてライブの事はすっかり忘れては暴れまくりそうだなぁ…。そろそろあの夜戦バカについてしっかりと考えなきゃダメな時だな。

 

「なぁ鈴谷。」

「ん?なになに?」

「…そろそろ平和な日常を過ごしたいと思うのだが、どうすればいいと思う?」

「不可能な事を考えてはダメだねー。」

「可能な事だから考えてるんだよ。」

「未来に想いを馳せる事は良い事だけど、地に足のついた考え方をしないとそれは夢物語でしかない。」

「…どこで覚えた。」

「エルシャ〇イ」

「はぁ…こんな人生で大丈夫なのか俺よ。」

 

大丈夫だ、問題ない。

これが1番いい日常です。

 

まじで?え?俺の中の天使と悪魔は口論する訳でもなく意気投合すんの?喧嘩するのがテンプレートってか、喧嘩しなきゃいけない仲だろお前ら。…まったく、心の中まで平和ボケした人間だな、俺は。

 

提督の1日は過ぎていく。

 

 

 

「なんでライブ来てくれなかったの!提督!」

「すまん、寝てた。」

 

無論、昼寝してライブには行けなかった。

 

「今からここでライブやる!川内お姉ちゃんも起きてきたことだし!」

「やめろぉ!!!」

 

今日も鎮守府は平和だ。

 






あれよね、日常日常とはよく言うけど日常ってなんだろう。日常ってなんだよ(白目)
主はぼのたん☆愛してるからぼのたん☆prprするのが日常かな?


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早起きは三文の損だ


あぶぅを改二にして集積地のメガネをパリーンすることに成功したクソ提督です。
自分のメガネも新調したので、モチベも何もかも高揚してます。

あ、言うのもタグにいれるのも忘れてましたが、何を隠そうこの小説実は不定期更新なのです。まぁ週1で更新はします。


平和になった今だからこそ、戦時中を昔話のように語れる。戦争が終わったからこそ戦争を語れる。戦争を知らないのに戦争は語ることができる。

 

多くの艦娘のみならず、多くの提督の命も落とした最後の作戦はそれはまさに最後、エンディングを飾るには十分すぎるハッピーエンドにして、バッドエンドだったのかもしれない。

 

終戦後、艦娘達の社会復帰は絶望的なものだった。戦争しか知らない、むしろ戦争する為に生まれた艦娘達に人間と同様の暮らしを行うのには無理があった。終戦後すぐに起きた問題がそれだった。

 

人間に戻れば無論お腹は空く。満たすのは燃料でも弾薬でもない、人間と同じ食料を定期的に、人間と同様に取らねば艦娘達も息を絶えてしまう。お金の稼ぎ方を知らない艦娘にっとては絶望的な未来だった。

 

終戦後にお金を手に入れるために非行に走る艦娘だって数多くいた。提督に嫁いだ艦娘もいれば、提督の側を離れる艦娘だってもちろんいた。その数は4桁後半はいたんじゃないかな。そしてその大半が犯罪を犯して刑務所へと入っていった。

 

実は終戦から2年経った今でもこの問題は解決されてはいなかった。御国の為に戦って英雄扱いされた艦娘も、今では犯罪者扱い。例え犯罪を犯していない艦娘ですら、まるでゴミを見るような目で見られる。結局人間なんて、艦娘を都合のいい道具としか考えてないみたいだね。提督達を除けば。

 

プリンツ・オイゲンは深々と礼をする。

 

ドイツの艦だった彼女も今では流暢な日本語で語る。それはまるで人間を貶すように、尚も人間らしい顔で彼女は周りを見渡す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「4時…だと…!?」

 

目が覚めて辺りを見渡すとそこには誰もいなかった。いや、いないのが本当は当たり前なのだが。ついに奴らが執務室で遊ぶのをやめたのか、と思い時計を見るとこれだ。早起きしたから誰もいなかったのだろう。つまり、これから鈴谷達が来るということだ。

 

このまま奴らが来て、早起きした俺を見たらどうなるか。わかりきってるな、珍しがって変に絡まれるのが見えている。今からもう1度寝ようとも思ったが、4時に起きた事に驚きが隠せず眠気が飛んでしまった。…まぁ健康にもいいし、少し散歩でもするか。

 

提督時代に着てた事から愛着が湧いて、今でも着ている提督服を羽織る。白を基準とした下地に左胸の所で煌めく勲章は元帥の称号を示すもの。元帥の勲章の下には甲勲章と呼ばれる物が6つ輝く。今の世の中ではなんら驚くものでもないが、戦時中ではこれだけでも驚く提督たちが多くいた。…まぁ元帥になる為に毎月頑張ったからな、あの時が懐かしいや。

 

階級は月毎に集計された。その中でも元帥に選ばれた人物はこれからの活躍が期待され、開発では作れない装備品等が本営から支給されていた。多くの提督はその報酬に目がくらみ、月毎に戦果稼ぎを務めていた。

今となればよく出来ていたやり方だ。報酬に目がくらみ積極的に出撃させることで深海棲艦を撃滅しようとしていたんだな。それがある意味、深海棲艦の輪廻を回す事になっていたんだけどな。

 

下準備も終わらせ、一つ息を吐くと執務室を後にする。窓からは朝日が登っていくのが見える。

 

きっと今日も快晴だ。

 

それでもって、今日は平和だ。

 

 

 

 

 

 

「終わった、俺の平和が。」

「鈴谷の顔を見て第一声がそれとかひどくない?遠まわしに、いやストレートに喧嘩売ってるでしょ。」

 

ルンルン気分で廊下を歩いているとこれだ。鈴谷と鉢合わせた。なぜだ、どういうことなんだ…。今の時刻は4時。4時だぜ?社畜も眠る時間だと言うのになぜこいつは起きているんだよ。何してんだよ。

 

「なんで朝っぱらからお前が居るんだ…。てか、いつもこの時間から執務室にいるのか?」

「そだよー。熊野が夜更かしするとうるさいからさ、いつも早寝して早起きしてんの。んで暇だから提督の部屋にいるわけ。どぅーゆーあんだーすたん?」

「NOだよ、NO。早寝早起きはいいことだが、俺の部屋に朝っぱらから居座るんじゃねぇよ。」

 

まぁ、お嬢様気質な熊野と同室なら鈴谷も早寝になるのもわかるな。そこはわかっても、朝から俺の寝室に来るのはわからない。ゲームやるなり漫画読むのも自室でしろよ…。

ここの艦娘は女としての自覚が少し、いやかなり足りてない。仮にも男である俺の部屋に平気で居座るこいつらを本当に理解出来ない。

 

「ま、それはいいとして提督今日は早起きかー。何してるの?」

「時間が経てばお前らが来るのがわかってたから散歩をしようと思っていた。」

「なんで過去形?」

「お前に出会ったおかげでその思いも消え去ってしまった。」

「ひどい言われよう…。ま!提督の考えを最優先して、その散歩に鈴谷も同伴するわ!」

「あぁ、やっぱりそうなるのね。」

 

ここで大人しく執務室に戻っても鈴谷がいる、散歩を続けてもこいつはついてくる。どの道を通ろうが鈴谷は近くにいる。…ねぇ、これってどんな拷問なの?一般人が聞けば羨ましいぜこの野郎、とか言いそうだが勘違いしないでほしい。こいつが近くにいると絶対に何か良くない事が起きる。

 

…はぁ、平和が欲しい、切実に。

 

 

 

 

 

 

 

「んー、朝もいいもんだねぇ。」

「そうだな、別に昼がうるさいって訳じゃないけど、朝には朝の静けさがいいってもんだ。まだみんな寝静まってるこの時間は、俺にとってここまでの安らぎを与えるとはな。お前が居なきゃなお良かったわ。」

「ねぇ、鈴谷のこと嫌いなの?」

「嫌いじゃないけど、お前が近くにいると良くない事が起きる。」

「そんなわけな「パシャ!」…くもなさそうだったね。」

 

「あ…あ…青葉見ちゃいました!」

 

「一番良くない奴に見つかった。」

 

プライバシー、盗撮なんて知った事かって面で俺と鈴谷を激写した人物が目の前にいる。戦時中は古株として大変活躍してくれた青葉。今ではうちの鎮守府のパパラッチだ。

…あー、良くない気がしてならない。

 

「あー…その写真をどうするつもりだ?」

「無論、記事にします!提督と鈴谷さんが朝からデートしてるのを証拠として捉えたからにはネタにするしかありませんね!しないって判断を下すことなんてできませんね!むしろしなきゃいけない使命感に駆け巡らされますね!」

 

駄目だこいつ…早くなんとかしないと…。今も「見出しはどうしましょう?提督、ついに女に手を出す!とかどうですか!?」なんて事言ってやがる。マジでもう…なんなん…。

 

「青葉…やめろよ?」

「無理ですね!」

「仕方ない、今月のお小遣いは8割カットになるな。うん、仕方ない事だ。」

「わ!わ!困ります!記事にはしませんからぁ!」

「わかればよろしい。」

 

こんなの記事にされたらたまったもんじゃない。金剛あたりが凸ってくるに決まってる。ヘーイヘーイーヘーイって扉をノックされるか、はたや榛名も共に来られたら手のつけようがなくなる。あいつらが俺のことを好きでいてくれるのは正直嬉しいけど、愛情表現にも限度というのがあることをそろそほ覚えて欲しい。

 

「はぁ…で?お前はなんでこんな朝早くに起きているんだ?」

「ブーメランって知ってますか?」

「解体するぞてめー」

「冗談ですって!青葉は基本的にこの時間は起きてますよ。朝方というのは先程みたいにスクープ盛り沢山!起きてないと損ですよ。」

「あぁ、そうなのね。」

 

正直、興味の欠片もなかった。てか、こいつどこでこんな煽り方を覚えたんだよ。冗談とはいえ、流石に血管が切れる気がした。ただでさえ、平和を(隣にいるアホ)に奪われて萎えてたのに、盗撮紛いの事をされて尚機嫌が悪い。

 

「じゃ!そゆことでー!」

「おー、あの写真は消せよー。」

「明日の朝刊をお楽しみにー!!」

 

「…。」

「て、提督?」

「あー…良かったな。今月少しお小遣い増えるぞ、あいつにやるお小遣いはたった今なくなった。」

「あはは…あまりイジメないであげなよー。」

 

いじめるも何もあるか、いじめられてるのはこっちだよ。早起きは三文の得とは言うけど、早起きしたあかつきには三文は損しかけてる。いや、これからもっと損になりそうな気がしてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまーっと。」

「なんで執務室なのにただいまなんて言ってんの?」

「なんか、自分の家に帰った気がするんだよ。まったく…お前と会ったらやっぱり不運に見舞われるな。」

「なにそれ!提督やっぱり鈴谷のこと嫌いでしょ!」

 

ギャーギャーと文句を垂れる鈴谷にデコピン1つかましてから、執務室に備えられた長椅子に腰を下ろす。自然とふぅーっと息が漏れると同時にドッと疲れが襲う。…やっぱ慣れないものはしないもんだな、早起きの散歩がまさかこんな感じでSAN値を削ってくるとは思ってもいなかったよ。…まぁ、でもなんだかんだ悪くはなかったな。

 

「失礼するネー。…ワッツ!?提督がもう起きてるんですカー!?」

「あー、おはよう金剛。今日は早くに目が覚めたんだよ。」

「そうなんですカー。少し待っててくださいネ!今紅茶を入れるネー。」

「おぅ、さんきゅー。」

 

朝一番から金剛の紅茶を飲めるのはやっぱ嬉しいものだ。割と紅茶は好きだし、金剛がいれる紅茶は美味しいからな。金剛の紅茶を飲んでやっと俺の1日が始まるって感じでもあるし、やっぱ金剛はお姉さんみたいな感じだな。

 

「ノーノー、私は提督のお嫁さんネ!」

「…いやまてよ、何平然と俺の心を読んでいるんだよ!」

「読んでないヨー?口に出してたネ!」

「なん…だと…!?いや、まぁそうだな。俺から見たら金剛はお姉さんだけど、身近な世話をしてくれる点から見れば、奥さんに近い感じだな。」

「ウンウン!嬉しいヨー!」

「あ!ちょ!それなら鈴谷の方が提督といる時間長いから、鈴谷が奥さんじゃないの!?」

「お前は手のかかる幼馴染みって感じだ。」

「どこら辺がさ!?提督の奥さんみたいに接してるのに!どこら辺が手のかかるなのさ!?」

 

そこら辺だよ、めんどくさいノリとか。

 

「意味がわかんないよ!」

「だから心を読むなよ!」

「口に出してた!」

「そうか…って、口に出してないだろ!やっぱりお前ら心読んでるだろ!?どういう仕組みだ!」

「明石が提督の心を読む装置を作ってくれたネ。少しお値段高めだけど、買って良かったと思ってるヨー。」

「また明石かよ!あいつ何作ってんだよ!」

 

あ、明石の発明品で俺に迷惑が被るのはこれで何回目だよ…。てか、なにちゃっかり販売してんだよあいつ!えぇい、やってられっか!あいつのところに直接乗り込んで販売中止させてやる!

 

「と、ところで何人の艦娘がその装置を持っているんだ…?」

「ん?もちろん全員だよー。ほら、鈴谷が首にかけてるこのペンダントがそれ。」

 

「明石ぃ!!!」

 

今日もまた提督の元気な声が鎮守府に響き渡る。その声で艦娘が目が覚めて、いつも通りの朝が迎えられていく。

 

今日も鎮守府は平和だ。





あ、ちなみに鈴谷は主の嫁艦じゃありません。鈴谷を多用している理由はキャラ的に使いやすいからです。
主の嫁艦は時雨です。あとぼのたん☆
ぼのたん☆かわいいよね…?
クソ提督と言われた時に頭の中で音楽が流れましたよ。

目と目があーうー♪って←


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ぼのたん☆許すまじ

更新遅れた(´・ω・`)
テスト週間なのです(ただし勉強をしているとは限らない)
まぁ亀更新は…仕方ないのです(ぷらずま)


 

 

これはあたしの憶測にしかならないけど、深海棲艦っていうのはもしかしたら神様なのかもしれない。地球は誰のものでもない、母なる海によって生命は生まれたけど、地球はその生命体のものではない。

 

それなのに人間は我が物顔で地球に居座る。他の種を飼い、或いは殺し、人間が生きやすい環境に地球を作り替えていった。だから神様は人間を滅ぼそうとしたんじゃないかな。生命の母である海より生まれた生命体深海棲艦は、そんな人間を滅ぼして新たな世界を作ろうとしたんじゃないかな。

 

破壊と創造は誰にでも出来ることだけど、破壊で創造をすることは誰にでも出来ることじゃあない。破壊することで何かを創造できるのは神様だけなのかもしれないね。だからこそ地球の汚染物となった人間を破壊、あるいは破滅させることで、海からまた新たな生命体を創造して、地球に元からいた人間以外の種と共に新しい地球の創造を行おうとしたんじゃないかな。

 

まぁどうなんだろうね、あたしにはわかんないや。だってただのあたしの妄想でしかないんだから。でももしそうだとしたら、人間は神様を殺したことになるのかなぁ。艦娘は神様を殺したことになるのかなぁ。

 

阿武隈は遥か彼方まで続く水平線を見つめる。

この憶測がもし正しいのであれば、神様はまた新たな神様を作り出して人間を滅ぼしにくるのかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソ提督いるかしら?」

「イケメンな提督ならいるぜ。」

「鏡見てきなさい、3流以下の顔面兵器をイケメンとは言わないわよ。」

「んだコラー!!」

 

昼下がり、昼食を取り終わり執務室でコーヒーを嗜んでいると扉が開かれた。入ってきたのは曙、相変わらずの減らず口で提督を罵る姿は誰もが知っている曙そのものだった。

 

「そんで、何しにきたんだ?」

「んー、大本営の判が押された手紙が届いたわ。でも今は大本営ないよね?怪しいけど、まぁ提督に渡せばなんとかなるかって。」

「ほう?貸してくれ。」

「ん」

 

曙から手紙を手渡しされ、封筒を見る。住所等の情報は一切書かれてはいないが、曙の言う通りに大本営の判が押されている。大本営の判が押されているなら、少なくとも海軍だった自分に無関係とは言えないものか。テープで固定された入口を丁寧に開き、中身を取り出す。そこから出てきたのは1枚の手紙、封筒と同じくそこにも大本営の判が押されていた。

 

「…手紙にしては随分と重要な感じをさらけ出してるなぁ。…ねぇ、これ読まなきゃダメ?」

「逆に読まない選択肢が存在していた事に驚きだわ。」

「やかましーわ。はぁ…もう俺は海軍じゃないんだから、こんな面倒くさそうな手紙読みたくねぇなぁ…。」

 

文句を垂れつつも丁寧に折りたたまれた手紙を開く。開くとそこにも大本営の判、もううんざりしながらも、達筆に書かれた手紙を読み進める。読み進めるにつれて提督の顔は真面目なものに変わってきた。

曙はそんな提督を不思議がるように見つめる。あの提督が真面目な顔で手紙を読む?明日は猛吹雪かしら、など失礼な事を考えていることは提督には聞こえていないが。

 

「…そっか、もうそんだけ経つんだもんな。」

「んん?何が書かれてたのよ?」

「ぼのたん☆には内緒だ。いや、ここにいる艦娘全員に内緒にしようか。てなわけでー、明日、俺出かけてくるわ。」

「あらそう…で済ませると思うかー!」

「あっ!このやろっ!」

 

曙は提督に襲いかかるように飛びかかり、手紙を奪い取る。すぐに提督が「返せ!」と取り返しに手を伸ばすが、その手を叩いてついでに脛を強く蹴飛ばす。「ぐぉ……っ!」と変な声を出して提督がしゃがみこんだ時に、曙は手紙を読め始める。

 

「ぐぉぉぉぉ…!!鎮まれ…!なにゆえこの様に痛むか…!脛の神よ…っ!」

「えぇと、なになに……。ふーん…。これ別に内緒にする必要なくない?」

「じゃあかしい!…ぐっ!?鎮まるのだ脛の神よ!汝の痛みは我の痛み!ぐぉぉぉ!!」

「うっさい!」

 

未だに悲痛な叫びを発する提督の脛を曙はもう一度蹴飛ばし、そのまま提督ようの椅子に腰を下ろす。その後にまた手紙を軽く読む粗振りを見せて、大きなため息を吐く。

ため息吐きたいのはこっちの方じゃ、なにしてくれてんねん。いくら今は人間だからって脛蹴られたら復活できないわ。ちくしょうめ。

 

「で?もう時期8月15日、終戦記念日だから戦争を終わらせた提督3人が集まる招待状だって?別に皆に言ってもいいじゃない。」

「ダメだな。一部の艦娘と付いてくるとうるさくなる。そんなのごめんだぞ。」

「でも秘書艦らしく誰かは連れてくべきじゃないの?」

「じゃあぼのたん☆来る?」

「木の根元に埋めるわよ。」

「なにそれこわい。」

 

まぁ別にね、連れてってもいいんだけどさ。一部の艦娘がうるさくなるのは本当なんだよ。金剛とか榛名とか、金剛型とか、金剛型1番艦とか。主に金剛だな。金剛が来るとなれば必然的に比叡もくる、ついでに榛名も。そうなったら霧島だって便乗して付いてくる。なんて負の連鎖だ。

 

「まぁいい、どうせ行かないし。」

「え?行かないの?なんで?」

「あー…。戦争を終わらせた三人の提督とは言われてるけど、別に俺はあいつらと仲良くねぇよ。あいつらは捨て艦戦法を平気と採用してきたんだ、艦娘だって命を持ってるし許せねぇよ。」

「ふーん、まっ、あんたらしいわね。」

 

捨て艦戦法。

戦時中の一部の提督が採用していた戦法。艦娘には轟沈判定が存在しており、大破状態の進軍以外は轟沈しない事は判明されていた。

だが、あと一歩で敵を沈められる時に一部の提督は、沈んででも沈めるという選択肢を選んだ。つまり、大破進撃して艦娘が沈められても、深海棲艦を沈める事で事実上の制海権を確保するということ。

確かに制海権の確保で深海棲艦を追い詰める事ができるが、沈んだ艦娘が戻ることはない。これについては世間的にも賛否両論が存在した。

まぁ詳しくは省くが、俺以外のその三提督の2人はその戦法を採用していた。無論、俺との間でその討論は度々と起きたわけで、俺自身があの2人に苦手意識を持っているのかも知れない。何はともあれ、進んで会おうと思える人物ではない。

 

「はぁ…ぼの、その手紙は捨てといてくれ。全く、良くないものを見たよ。終戦記念日はどのみちこの鎮守府で過ごすと決めてたしな。」

「なんかする気?」

「…うちの鎮守府で沈んだ者はいないけど、この海で沈んだ艦娘も深海棲艦も未知数。その全ての娘に終戦を伝えるような内容さ。」

「まぁあんたに全て任せるわ。」

「あぁ、そうしてくれ。」

 

それだけ言うと、曙ももう用事がなくなったのか、トテトテと扉の方に歩いていき、ほのまま執務室を後にする。

珍しく鈴谷もいなく、1人になった提督は曙が出ていってしばらく経つと大きなため息を吐き出す。そのまま後ろを向き、備え付けられた窓を覗く。映る景色は太陽光を反射し、キラキラと煌めく美しき海。

 

「…終戦から2年、皮肉にも深海棲艦との戦争が終わったのも8月15日。あいつらは何をする気だ。」

 

戦が終わり二年経つ。

争いは2度と起きてはならない。

お前もわかっているだろう?

おれ達で当時を語ってみないか?

こちらに出てこい。

すてきな食事会にしよう。

 

「ベタなんだよ。ベタ。今どき縦書きなんて流行らねぇよ。しかもなんだよあの文法は。初見で縦読みだってわかっちまうだろうに…。」

 

それは先程の手紙に書かれていた文章。普通に読めば、当時を語りながらの食事会を行おうという招待状になる。だが、縦に読むとそれは全く別な意味に変わる。

 

「戦争を起こす…。させるかよ。」

 

 

 

執務室の扉の前。曙は壁に背を付けながら提督の言葉に耳を傾ける。あの語り方からすれば、提督は自身の存在には気づいていないだろう。と言うのも、あの手紙を読んだ曙だからこそ、自分が出てけば提督が独り言を言うと読んだからだ。外に出て、その場で足踏みをして遠くに行ったと見せかける。足音をだんだんと小さくする。子供騙しだが、手紙の内容で頭がいっぱいの提督を欺くのには充分だった。

 

何にせよ、提督が出かけようとした理由、他の艦娘に知らせないようにした理由は明白。このことを知るのは提督と自分のみ。これからどうするかはまだわかっていないが、提督も残りの2人の提督もまだ行動を起こさないのは確か。

 

曙は足音を立てずに廊下を進んでいった。




突然に始めるシリアスパート!
それでもギャグを混ぜるスタイルは破らぬい!
落ち度などないのだよ!ふはははは!

え、ちょ、不知火さん?え、無言で近づくのやめて…やめ…やめt…アーッ!

あ、次回からまたギャグパートですね(笑)


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安定しない記憶


ども、クソ提督です。
更新が週1じゃなかったことについて。

結論述べます。忘れてました。。

学校祭の準備も始まりまして、空いた時間で執筆はしてたのですが、完成させるのに時間がかかりすぎました…。申し訳ないです(´・ω・`)


 

 

時々、悪夢を見るんだ。手に馴染んだ装備を手に、深海棲艦を沈めてきた感覚。大破になりながらも母港に帰還できた喜び。うちの鎮守府ではないけど、同じ僕として現し世に呼ばれて沈んでいった苦しみ。

 

戦争は終わった。僕にとって、艦娘にとっては二度目となる戦争。ただ、兵器としてではなく、『艦娘』として、思考を持って戦った戦争。忘れるわけがないんだね。

 

何度も何度も夢に魘された。真っ暗な海に立たされて、いつ撃たれるかわからない恐怖。仲間がいない孤独を味わう夢を。

 

戦争は終わっても、艦娘だった僕達は戦争の為に作られた命。どの道を進もうと、戦争への執着心を魂に刻まれているんだ。

 

平和が怖い。

 

幸せが怖い。

 

…なんて、僕らしくもないか。戦争は終わったんだ。そう何度も言い聞かせてきたんだ。忘れたくはないけど、少しは記憶から消したいな。

 

だって、提督と過ごす毎日に怯えたくなんてないから。

 

独り呟く時雨。

 

仲間を何度も失った時雨には、他の艦娘よりも戦争への想いは強かったのか。

 

この想いを誰かに知られることは、これから先もないのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ネタに尽きた。」

「ヘーイ、提督ぅー。メタ発言はやめるネ。1回、記憶飛ばすヨー。」

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

「はっ!?知ってる天井だ…。」

「それは…提督の部屋だからね。」

「おぅ、鈴谷。相変わらず人の部屋でくつろいでるな。」

 

まぁ朝からコイツの顔を見るのにももう慣れた。と言うよりも、毎度毎度のやり取りするのに疲れた、の方が正しいか。

…うーむ、何やら良からぬ夢を見た気がするけど思い出せないな。いや、アレは夢か?やけに現実味と痛みを感じたんだけどな…。現に今も頭が痛いし。

昨日、いつ寝たのかすら覚えてないけど…。まぁいい、どうせ思い出したところで忘れたくなるようなものだろう。

 

うむ、今日も今日とて清々しい程に最悪な1日の始まり方だ。

 

「とと…そいえば金剛は?」

「ん?金剛さんがどうかした?」

「なんかあいつにすごく嫌な思いをした気がした。いや、なんだろう…記憶が定まらないな。」

「うん、忘れた方がいいと思うよ。あれは提督が悪いし。」

 

…俺が悪い?つまり俺が何かしたとでもいうのか。いや、そうだとしても、記憶が定まらない事には繋がらない…。いや、もう忘れよう。考えてもわからんって事は、さほど重要なことでもないだろう。

…さて、今日は何するかな。

 

「鈴谷。」

「んー?どったの、てーとく?」

「暇だー。」

「ミートゥーだよ。なーんかここの生活もマンネリ化してきたしねー。起きて提督の部屋でくつろいで、部屋に戻って寝るだけっていう生活スタイルが確立したし。」

「そもそも俺の部屋でくつろぐ理由が未だに理解ができない。…まぁそれはこの際置いとくとして、本当にやる事ないもんだなー。」

 

時間は午後3時。間宮におやつでも食べに行くかーっと思ったけど、この時間は他の艦娘達で溢れかえってるか。なら駆逐艦と遊ぶのは…いや、やめておこう。長門の特権だ。うん、きっとそうだ。そんな気がする。

他にやる事なー。ぼのたん☆を弄るのは楽しくていいけど、今日は確か出かけてるんだっけか。金剛とティータイムっても、今はなんとなく会わない方がいいだろうし。

 

「…やべぇぞ、マジでやべぇ。」

「なしたの?」

「このままじゃマジでネタ切れだぞ!!連載5話目にしてネタ切れとか洒落になんねぇぞ!なんか、こう、アイデアはないか!?」

「あ、提督。うしろ、うしろ。」

 

うしろ?何をこんな時に言うか。

鈴谷が指す提督のうしろ、つまり窓の方を見るとあら不思議。ずっと嫌な予感がしていた金剛さんが窓からニコニコしながら覗いてるじゃーあないか!うっわー、いい笑顔〜。

 

「…アイエエエエエ!?コンゴウ=サン!?」

「メタ発言ダメって言ってるネー。」

「おまっ!?ちょ、まて!偽装はあかん!それはあかん!それだけはあか…「バーニングラーブ。」アーッ!♂」

 

 

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

 

 

 

「は!?知らない天井だ…。」

「なわけないでしょー。提督の部屋じゃん。」

「いや、言ってみたいジャン。」

「んー、で?なんで気絶したか覚えてる?」

「あーあーあー…覚えてないな。」

 

くそ…どういうことだ?なんとなく金剛っていう単語は思いつくがそれ以外はまるっきし覚えてないだと…!?

 

「まぁいい、いいだろう、忘れよう。」

「そうだね、そうしなよ。」

 

と、似たようなことを2度繰り返した執務室にノックが響く。鈴谷と提督は扉の方を向き、提督の「いいぞー」の声のもと、「失礼するねー」の一言と同時に扉は開かれる。入ってきたのは元正規空母の飛龍だった。

 

「お、どうしたひりゅー。」

「いやぁ提督どうせ暇でしょ?」

「言い方腹立つが…まぁ暇だな。」

「なら丁度いいや!今さー、蒼龍と一航戦の先輩方とで弓道やってるんだよね。提督も確か心得あったでしょ?一緒にどうかなーってね。」

 

ほぅ、弓道か。確かに俺は学生時代を弓道と麻雀で過ごした寂しい学生時代があるが…。いや、いい、これ以上精神に傷を負わせる訳にはいかん。まぁとりあえず弓道部でもあったし、久しぶりに弓を握ってみるのもいいかもしれない。

提督は飛龍に「じゃあ俺もやるかな。」と一言返し、飛龍と弓道場へと向かう。

 

戦時中は空母達が己の技術に磨きをかけるために使用してきた弓道場。戦争が終わって取り壊しをしようかと思ったが、ここは空母達にとって、辛いながらも仲間と多くの時間を共有した場所。

今でもしっかりと整備されていて、ほぼ毎日誰かしら利用している。

 

工廠だってそうだった。戦争が終わった今では使わないけど、この工廠で多くの艦娘達に出会った。今では家族みたいに思っている艦娘達が生まれた場所。当の本人らは気にしてはいないが、俺にとっては思い出の場所だ。

 

入渠場、今は普通の温泉。まぁこれだって思い出の場所だ。壊さずに浴場として利用している。

 

なんだかんだ、こう考えてみればこの鎮守府自体に思い出が詰まっている。戦時中は特に気にも留めなかったが、終戦してみれば見える世界も変わってくる。ここにいる家族達を包む暖かい家がここにあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉーし!それじゃ提督1発かましてよー!」

 

弓道でかませってなんだよ。

飛龍の言ったとおりで、弓道場には一航戦と二航戦の4人だけがいた。テンション高めの二航戦に急かされるように俺は弓を握る。

 

「ていとくのー、ちょっといいとこ見てみたい!」

 

「オッサンか!」

 

「ふふーん、的の真ん中外したら間宮さんのところ奢ってね!」

 

「一方的すぎるだろ…。」

 

「真ん中に当たったらぁ…私を好きにしても…いいよ?」

 

「忘れんなよそのセリフぅ!」

 

やべぇどっちがオッサンかわからなくなってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ…たかが数年のブランクで俺が的の中心を外すとは…!」

 

現在は間宮の甘味処に来ている。言わなくてもわかるはずだ、そう、見事に的の真ん中を外しました。結果、まぁ見ての通りだな。間宮にて一航戦と二航戦にパフェを奢ることになった。

 

「食べすぎたら太るぞー。」

「運動もしたし大丈夫だもーん。」

 

なけなしの言葉も見事に返される。弓道、あれ以外と見た目によらず体力使うんだよね。弓引くだけじゃんいい加減にしろ、って思うやつはやってみるといいかもね。

(作者:あ、俺そういえば弓道なんてやったことないな(^q^ ))

 

「まぁ、たまにはこういうのも悪くないな…。」

 

間宮に顔出すのも大体週に1回程度。その大半も1人で来る為、大勢で甘味を食べるのは随分と久しかった。楽しくないと言えば嘘になる、だからと言ってまた大勢で来たいとも思わない。きっと大勢で来た場合は全額俺が出すはめに…。間宮のところ、結構お値段高めなんだよなぁ…。

 

それでも今度は鈴谷達でも誘ってみるか。なんだかんだで毎日顔合わせてるし、甘味を食べる時間を共有しあうのもいいかもしれない。

 

赤城が3個目のパフェを頼んだあたりで、提督の顔も絶望の色を濃くしていく。ただ、口元がにやっと上がってるあたり、提督自身もそんなに悪く思ってはなさそうかもね。

 

 

今日も鎮守府は平和だ。

 

 

 

「甘味代…20000円超えだと…!?」





間宮さんの甘味食べたいぬ。。


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