エリアR~東方航空隊~ (玉莊亭翠嶽)
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巻一 プロローグ

 西暦2056年。人類は突然現れた謎の艦隊『霧』に制海権を奪われ、滅亡の危機に直面していた。そんな中、最新のAI兵器『メンタルモデル』を搭載した潜水艦『伊401』を開発した日本海軍は、紀伊半島沖の海戦で『霧』に勝利、さらにベーリング海峡でも勝利し、北西太平洋の制海権を独力で確立する。さらに勢力拡大を目指す日本海軍は、太平洋にA~Zの通し符号が振られた26の傭兵基地を設立し、『霧』の完全殲滅に立ち上がった。物語はその内の一つ、エリアRから始まる…。

 

 南太平洋、ニューブリテン島…

「敵襲ッーー!!」

「まわせ!!」

「3時の方向より敵6隻接近中!!」

「ホワイトハーデス、09番滑走路より出撃!オクタパープルも出撃準備!発進準備のできた機から発進せよ!」

「コンプレッサ始動!」

「エンジン点火!発進!」

「ギアアップ!高度5000ftまで上昇!」

物凄いアフターバーナーの音と共に、たちまち5機が基地の滑走路から離陸し、紺碧の空へ飛びあがっていった。

 

 「敵艦は6隻…1700t級5隻に2000t級1隻。全部駆逐艦よ。」

先頭のRS-24攻撃機が言った。

「幽々子よりコントロール。敵艦の陣形は?」

「こちらコントロール。単横陣と思われます。」

「了解。全機散開!これより攻撃に移る!妖夢、霖之助は右の2隻!てゐと椛は左の2隻をお願い。私は真ん中の2隻を潰すわ!」

「了解!幸運を祈る(グッドラック)!」

「1700t級か…瞬殺だな!」

「あんまり調子乗ってると対空砲喰らうわよ光霖堂!」

「うっせえ因幡兎!少し黙ってろ…目標視認(ターゲット・イン・サイト)!魚雷投下!」

投下されたPT80型魚雷が白い軌跡を描いて、敵艦に向かって疾走する。

「3…2…1…」

霖之助は心の中で数えた。瞬間、閃光と共に巨大な水柱が立ち上がった。

命中(ヒット)!離脱!」

 

 

 「ほら、今回の報酬よ。有意義に使いなさい。」

そう蓬莱山輝夜は言って、机の上に五枚の封筒を投げ出した。

「36万か…、まあ1700t級一隻じゃ、こんなもんか。」

と霖之助は言った。

「ようむ!見て!お金!」

「…幽々子様…はしゃぎすぎですよ…いくら貰ったんですか?」

「待って、今数えるわ…10…20…79万2千円!」

「…戦闘機に乗っている時はあんなに冷静なのに…」

「ん?妖夢、今何か言った?」

「い、いえ…でも、魚雷補充で20万…整備で10万…50万ぐらいしか残りませんね。」

「そうね…またこの間みたいに空母機動部隊とか通らないかしら?」

「そう都合よくは行きませんよ…。とりあえずにとりの所へ行って魚雷を買わないと。」

そういうと妖夢は作戦室を出て行った。

 



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第一の話

ホワイトボードによると、河城にとりは22号ハンガーで作業中とのことだった。22号ハンガーは居住棟から渡り廊下を隔ててすぐの所にある、最も近いハンガーだ。

「魚雷?PT80でいいかい?それとも最新のPT90が入荷したからそれにするか?」

河城にとりは、レンチを指先でクルクル回しながら妖夢に向かって言った。

「いくらですか?」

「…そうだな、PT80はいつも通り10万、PT90は20万取りたい所だが…この際17万でどうだ?」

「…分かりました。17万ですね。現ナマで。」

「現ナマかい…分かった。明日までに機体に着けておくよ。今機体は?」

「3号ハンガーです。」

「機種TZ-41だったな?」

「そうです。」

「分かった!」

 

 

 居住棟44号室…

「お姉ちゃーーん…」

「何?フラン。…たく昼間からゴロゴロして…」

「だって…暇…」

「確かに暇なのは否めないわ。」

「少しは私たちスカーレットデーモンズの出番もないものかしらね。」

部屋の隅で横になってテレビを見ていた霊夢が言った。

「さっきの警報は駆逐艦だったみたいだし…ねえ?咲夜?」

「そうですね…ホワイトハーデスの連中が片づけたみたいです。まあ、我々は誇り高き戦闘機乗り(ファイター)ですから…奴らは魚雷撒き散らしたらそれで仕事終わりのアタッカーですからね。我々とは仕事の質が違います。」

「そうよ…奴らが1700t級をいくら沈めたところで、私たちにはかなわないのよ。」

と霊夢も言った。

「こっちは敵のF-28やF-36と命のやり取りしてるのよ。あの因幡兎に偉そうな口をきかれる覚えはないわ。」

「…フラン、その辺にしておきなさい?…それにしても、最近暇ねえ…」

「ねえ?レミリア?」

しばしの沈黙の後、霊夢が言った。

「39号室、行ってみない?リークアローの連中も暇してる筈よ。」

リークアロー。「エリアR」の中でも最強の戦闘機乗り(ファイター)と恐れられている5人、すなわち東風谷早苗、八坂神奈子、洩矢諏訪子、霧雨魔理沙、鈴仙・優曇華院・イナバで構成される戦闘機部隊である。39号室は、いわばリークアローの「部室」なのである。

「あ、それ名案だわね霊夢!そうしましょう!」

 

 

39号室は、44号室と中庭を隔てて向かい側にあるので、庭を迂回するように廊下を回って行かなければならない。44号室を出た一行は、丁度22号ハンガーから戻ってきた妖夢と会った。

「あら?妖夢じゃない。どうしたの?」

「…魚雷を補充しにハンガーへ行っていました…皆さんこそ、徒党を組んで一体どうしたんですか?」

 

 



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