座敷わらしと幸せうさぎ (中に座敷わらし)
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一羽目

もはや100%思い付きから生まれた作品です。
一話目は少し短めに。


 私の過ごした家が取り壊されていく。かつて私――『座敷わらし』は幸せを呼ぶ存在として人々に認知されていた。『座敷わらしのいる家には幸せがくる』と言うのは聞いたことがある人はもはやこの世界にはいない。唯一私の存在を信じていたお爺さんも先日天国に旅立ってしまった。そしてお爺さんが亡くなったのを皮切りに、私とお爺さんの過ごした家は取り壊されてしまった。

 科学の進歩とはとても恐ろしいものである。今では全てが科学で説明が出来てしまうほど人間は進んでしまった。そのせいで昔の人が語った事さえも真摯に受けることなく、私達と言う妖怪、怪異の類いは人々から忘れられていってしまった。

 そんなある日、家を失い途方に暮れていた私の目の前が歪んだと思うと気味の悪い空間の()()()が現れ、その空間から金髪の見るからに怪しそうな導師服を着た女性が姿を見せた。

 

「どうも。座敷わらし……でよかったかしら?」

「……そうですけど。ところで貴女は?」

 

 私の問いに目の前の怪しそうな女性は

 

「私は八雲(やくも)(ゆかり)。幻想郷の管理者よ」

 

 と、丁寧に名前と職業まで答えてくれた。ところで幻想郷とは何なのだろうか? そう考えていると彼女――八雲紫さんは続けて言う。

 

「貴女を幻想郷に招待するわ」

 

 だから幻想郷ってなんだよ。とりあえず説明が足りない。うーん……本当に彼女が管理者なのだろうか? なんと言うか物凄く不安になってきた。はたしてこんな言葉足らずの管理者が管理する場所に行ってよいのだろうか? ……心配なので一応訊いてみることにした。

 

「あの。幻想郷って一体?」

 

 私の問いに今まで真剣な表情だった八雲紫さんはハッとしたように慌て出した。つまり、説明してないことに気付いたのだろうか。額に汗をかくほど焦るだなんてよっぽどのことなんだろう、そう思いながら彼女が問いに答えるまで待つことにする。

 八雲紫さんから返答があったのはそれからそれから二分程経った頃だった。

 

「……コホン、幻想郷と言うのは忘れられたものが集まる場所よ。」

 

 随分と省略されているような気もするが、とりあえずは幻想郷と言うのは忘れ物が集められる場所と受け取っていいのだろうか? つまるところ私に新しい家を与える代わりに働いてくれ、と言うことなのだろう。八雲紫さんは優しい女性である。見た目こそ可笑(おか)しな服を着ているが手品師の類いであろう。そうすれば気味の悪い空間から出てきたことも納得する。いい人のようだし断るのは可哀想なので誘いを承けることにしよう。

 

「わかりました。幻想郷に行けばいいんですね」

「えっ……そんなに簡単に了承していいの?」

 

 私が快く了承したのが不思議だったのか八雲紫さんは目を丸くしていた。そんなに驚くとは思わなかった。たしかに知らない人の誘いをすぐ了承するのはおかしいものであるが、現に私は住む場所がなかったのだ。住む場所を提供してくれるのならきっとどんな条件でも着いていく自信はある。

 

「貴女はいい人そうですし住む場所を提供してくれるのなら私はどんな条件でも着いていきますよ。さ、幻想郷とやらに行きましょう」

「そ、そうね。幻想郷に行きましょうか」

 

 八雲紫さんはそう言うとあの気味の悪い空間の裂け目を作ると私にそこに入れと命じた。もちろん断る気はないので了承する。私がその空間の裂け目に足を入れようとしたとき、八雲紫さんが口を開いた。

 

「そう言えば貴女の名前聞いてなかったわね」

 

 そう言えば一度も自分の名前の事を訊かれなかったので答えてなかったがこれからお世話になるのだ。名前は教えておいて損はないだろう。

 

「私は(さち)っていいます。『幸せ』って書いて『さち』って読むんですよ。この名前は今はもういないお爺さんにつけて貰ったんですけどね」

 

 名前を告げ終えた私は再び空間の裂け目に足を踏み入れる。だが……

 

「へっ?」

 

 その空間の中は足場がなかった。と言うかその空間で体を支えることが真っ逆さまに落ちていく。空間内は目玉がギョロついており、かなり不気味である。が、今は落ちていく自分の体の心配の方が大切である。助かるのか……落ちる場所は柔らかい場所がいいなぁ……なんて思う私の体は落下を止めない。

 そして、諦めかけた私の頭に浮かんだのは『どうして八雲紫さんは私の姿が見えたのだろうか』と言うことであった。

 




タイトルにもある幸せうさぎの方はまだ出ません。
ほら、タイトル詐欺とか言わないの。
とりあえず誤字やここがおかしいぞ、と思うところがあれば教えて下さると助かります。
タグの通り投稿のペースは遅いかもしれませんが宜しくお願いします。


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小話・一.五羽目

前話(三羽)で言っていた小話になります。
短いですがどうぞよろしくお願いします。
時間軸としては一羽と同じころになります。


 

 外の世界では妖怪などは忘れ去られていっている。忘れ去られた妖怪たちはそのまま自らの存在すらも消滅(わすれ)てしまう。私――八雲紫はそんな妖怪たちを幻想郷に(いざな)っている。

 

 そして、今日の目的は存在すら危うい状態である座敷わらしを誘うことである。

 

 住んでいた家を失い、存在が薄れかけている彼女の前にスキマを開く。

 

「どうも。座敷わらし……でよかったかしら?」

「……そうですけど。ところで貴方は?」

 

 彼女は首を傾げる。当然であろう。なんせ突然現れた私の名前を知るはずはないのだから。ここは幻想郷に来てもらう以上自己紹介は必要である。

 

「私は八雲紫。幻想郷の管理者よ」

 

 そして、彼女に本題を告げる。

 

「貴女を幻想郷に招待するわ」

 

 と、説明したところで彼女が口を開いた。

 

「あの。幻想郷って一体?」

 

 …えっ? 私説明してなかった? ウソ…やっちゃった? ど、どうしよう…。い、今からでも説明しても遅くはないわよね? ああ、こんなことなら藍を連れてこればよかったわ…。はあ…早く家に帰って藍の尻尾に埋もれたい…。そして橙の頭を撫でてあげたい…。……いいえ、八雲紫。こんなところで落ち込んではいけないわ。

 

「……コホン、幻想郷と言うのは忘れられたものが集まる場所よ」

 

 とりあえず説明はしたわ。でもこれで彼女は幻想郷に来てくれるのかしら? と、心配していた私の期待を裏切るように

 

「わかりました。幻想郷に行けばいいんですね」

 

 即決した。

 

「えっ……そんなに簡単に了承していいの?」

 

 ちょっと彼女が心配になってつい訊いてしまった。

 

「貴女はいい人そうですし住む場所を提供してくれるのなら私はそんな条件でも付いていきますよ。さ、幻想郷とやらに行きましょう」

 

 なぜか彼女は物凄くワクワクしている。前言撤回。ちょっとじゃないわ。かなり心配よ…。

 

「そ、そうね。幻想郷に行きましょうか」

 

 とりあえず彼女の前にスキマをだして彼女に入るように伝える。あ、そういえば名前を聞いていなかったことを思い出した。

 

「そう言えば貴女の名前聞いてなかったわね」

 

 彼女は歩みを止めると、

 

「私は幸っていいます。『幸せ』って書いて『さち』って読むんですよ。この名前は今はもういないお爺さんにつけて貰ったんですけどね」

 

 ふぅん…、幸ね。いい名前ね。そう伝えようと思い幸のほうを向くとすでに幸の姿はなかった。

 

「あ、あれ?」

 

 

 

▽  △  ▽

 

 幸がスキマに落ちてから幻想郷に戻った私は、幸がどこにいるのか幻想郷中をスキマでのぞいて周った。そして、見つけた。どうやら永遠亭のいたずらうさぎと一緒にいる。悪いことを吹き込まれてなければいいのだが……、と心配だったがどうやら幸を永遠亭に連れて行くらしい。

 

「これは……」

 

 私は急ぐようにスキマを開くと、その先――永遠亭にお邪魔することを決めた。

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちは。永琳」

「あら、妖怪の賢者さんがどうしたのかしら?」

 

 これから幸のことをお願いする、って頼まないといけないし幸が来る前に終わらせたいわね。……うまく説明できるかしら?

 

「ええ、貴女に頼みたいことがあるのよ」

「? 私に頼みたいこと?」

「ええ、たぶんここに幸って娘が来るのだけどその娘のことを頼めるかしら?」

「…貴女が頼むなんて少し怪しいけどわかったわ。その話引き受けたわ」

「ほ、本当!? 助かるわ!」

 

 それと私が頼んだことは幸には秘密にしておいて、と言おうとしたタイミングで部屋の襖が開かれた。

 

 

 

 

「お師匠さまー! ちょっと診てもらいたい娘がいるんだけど…? 誰かいましたかね?」

 

 

 

 

 間一髪スキマに潜り込むことでバレずに済んだけど大事なことを伝えられず仕舞いである。…永琳のことだ。きっと察してくれるであろう。

 

 やることを終えた私はスキマで藍の後ろに現れそのまま尻尾に向かって飛び込む。

 

「らぁぁん!」

「ちょ、紫様!? 尻尾はやめてください! 先ほど整えたばかりなんですから!」

 

 やめてと懇願する藍を無視して尻尾でもふもふし続ける。ああ、なんて幸せなのだろうか。だが、幸せの終わりは突然来るものである。藍が私がもふもふしていない尻尾を使って私を尻尾から引きはがし、面と向かいあう。

 

「…紫様」

「ら、藍? そのー…表情が怖いわよ? 乙女は笑顔が大事よ?」

 

 藍の口角を指で動かそうとする。だがピクリとも動かない。さらに藍の顔には青筋が浮かんでいる。

 

「藍…あ、あのね? それには深いわけがあって…ね?」

「紫様。今日のお夕飯抜きです」

「そ、そんなぁ……」




ちなみに最後のほうは勝手に指が動いたんだ。私の意思とは無関係なんだ。
きっと近くに古明地(妹)がいたんだ!
という言い訳は置いといてこの小話自体急に思いついたわけですから…。

…コホン。これからもよろしくお願いします。


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二羽目

と言うわけで、二羽目です。字が違う? いいえ、わざとです。今回も楽しんで読んでいただけたら幸いです。


 

「うーん……」

 

 八雲紫さんが出したあの気味の悪い空間内を真っ逆さまに落ちていたはずの私は、自分の顔に当たる日光で気が付く。ここは何処なのかと周りを見渡して見るとなぜか竹林の中にいた。しかも落とし穴に落ちている。はて、なぜなのか。

 とりあえずこの落とし穴から脱出してから考えればいいと思い、体を動かすが脱け出すことが出来ない。どうも体が引っ掛かって自由に動けないのだ。太ったかなぁ…、と思ったが今はそんなことを考えている場合ではない。このままでは夜になってしまい、風邪を引いてしまう。なんて考えていると誰かが近づいてくる気配を感じた。足音も近くから聞こえる。足音の主はかなり軽快な足どりである。良いことでもあったのだろうか? そんな事よりその誰かさんに助けを求めなければならない。私は気配を感じた方に向け助けを求める。

 

「あのー、落とし穴に落ちてしまったので助けて頂けませんかー?」

 

 すると、気配の主は軽快な足どりから一転、慌てるような足どりに変化しこちらに向かってくる。きっと私の状態を察して急いで助けに向かってきてくれているのだろう。

 そして竹の中をかき分けて現れて誰かさんが現れた。……のだが

 

「へ? うさみみ?」

 

 なぜか頭にうさみみが付いていた。

 

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 見回りに出ていたうさぎから、落とし穴に引っ掛かったと連絡があった。きっとまた鈴仙が引っ掛かったのだろう。

 私は落とし穴にはまった鈴仙をからかってやろうと心に決め、(くだん)の落とし穴がある場所にスキップしながら向かう事にした。

 

 

 

「~♪」

 

 どんな風に鈴仙をからかってやろうかと想像しながら向かっていると、落とし穴のある方角から声が聞こえてきた。

 

「あのー、落とし穴に落ちてしまったので助けて頂けませんかー?」

 

 まずい。助けを求める声を聞いて、私は声のした方に急いで向かう。

 理由は単純である。聞こえた声は聞いたことのない声であったのだ。と言うことは、落とし穴に引っ掛かったのは鈴仙ではないことになってしまう。もしそれが人間であるのなら大変な事である。だが、人間だとしてもなぜこの迷いの竹林に来てしまったのだろうか? しかし、今はそんなことを考えている暇はない。急いで助けなければならない。

 脱兎のごとく走り、落とし穴の近くまで着くと声の主を見つけた。見た感じは童女のようである。しかしである。何をしたらこのような落ち方をするのだろうか……。体がV字に近い状態で落とし穴にはまっている。多分鈴仙より酷い落ち方なのだろう。そう思いながら目の前の竹をかき分けて現れると、私の姿を見た童女はいきなり

 

「へ? うさみみ?」

 

 と、目を丸くしながら言ってきた。内心イラッともしながら童女に手を伸ばし、落とし穴から引き上げる。落とし穴にはまっていてよく分からなかったが、この童女の背の高さは私と同じ位である。さらに、着ている黄色の着物は姫様程ではないが高そうな雰囲気である。金持ちの娘さんなのだろうか? とりあえず助けると言う目的は達成したので、永遠亭に帰ろうと(きびす)を返すと童女が話しかけてきた。

 

「あ、あの……すみません」

 

 きっとこの竹林の出る方法を知らないのだろう。それを聞きたいと思った私は、親切心から童女に道を教えようと言葉を返す。

 

「あぁ、それならこのてゐ様が案内してあげるよ。ささ、着いてき……」

「い、いえ! 違うんです! ここって何処ですか?」

「?」

 

 突然私の言葉を遮ったと思ったら、何を言っているのだろうか? ここは何処って……幻想郷に決まっているのだが。もしや落とし穴に落ちた際に頭を打って記憶でもなくしてしまったのだろうか? それは悪い事をしてしまったな、と思い童女の問いに答える。

 

「ここは幻想郷だけど? もしかして記憶をなくしたとかでもしたかい?」

 

 すると童女はいきなり声を張り上げてはしゃぎ始めた。記憶をなくしてはしゃぐだなんてよっぽどの変わり者だよ? 記憶をなくしたついでに頭までおかしくなったのかな? と、喉まで出掛けるが飲み込んで止める。童女に至っては

 

「やったぁ! ここなんだ! でも……」

 

 と、訳のわからない状態になっている。これはお師匠さまにでも見てもらった方がいいのではないのだろうか? ……うん。絶対にその方がいいだろう。とにかく永遠亭にこの童女を連れていこう。

 思い立ったが吉日、なんて言うし童女の手をとり、永遠亭まで連れていくことにした。

 

 それにしても……もう少し黙って貰えないだろうか?

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 薄いピンクのワンピースを着たうさみみの少女(と言っても私とそこまで身長はかわらない)に落とし穴から助けられた私は、うさみみの少女にお礼を言おうとしたが、うさみみの少女は颯爽(さっそう)と立ち去ろうとしていた。えっ、ちょっと待って下さいよ、私お礼言ってないですよ!? とりあえずうさみみの少女の歩みを止めるために声をかける。

 

「あ、あの……すみません」

 

 声をかけるとうさみみの少女は歩みを止めて振り向いてくれた。よかった……と安心しているとうさみみの少女が口を開いた。

 

「あぁ、それならこのてゐ様が案内してあげるよ。ささ、着いてき……」

 

 が、何やら案内してあげる、と言い出したので勘違いされても困るので、思い付く言葉を並べていく。

 

「い、いえ! 違うんです! ここって何処ですか?」

「?」

 

 う、うん。我ながら微妙な質問だと思う。うさみみの少女も悩んでるし……。とりあえずうさみみの少女の答えを聞いてから考えようかなぁ……。と思っていると

 

「ここは幻想郷だけど? もしかして……」

 

 えっ、幻想郷って……。と言うことはここは幻想郷なのだ! 

 

「やったぁ! ここなんだ! でも八雲紫さんはいないしなぁ……。でもここが幻想郷ならきっと八雲紫さんともすぐ会えるよね! ふふっ、これから楽しみだなぁ…」

 

 と、ブツブツ一人言のように喋っていた私はお礼を言おうとうさみみの少女を見ると、なぜか私が手を引かれ竹林の中を進んでいた。あれ? 私なんでこんな状況なんだろう……と、また考え始めるとうさみみの少女が睨んできた。

 

「もう少し静かに出来ないかな?」

「う、五月蝿(うるさ)かったですか? ごめんなさい……」

 

 どうやら手を引かれている間の私は、ずっとブツブツと喋っていたらしいです。それはそれは、うさみみの少女に迷惑をかけてしまったようですね……。それと、ずっとうさみみの少女って言うのはあれですよね。ちょうどいいタイミングですし名前を聞いておきましょうか。

 

「あのー、突然ですが名前聞いてもいいですか?」

「……ほんと突然だね。別に名乗っても減るもんじゃないしね。私は因幡(いなば)てゐだよ。そっちは?」

「も、申し遅れました! 座敷わらしの(さち)です」

 

 へぇ……因幡てゐさんって名前なんだ。友達になれるといいなぁ。

 

「ふぅん……。幸っていうんだ。宜しくね。……っと着いたか」

 

 ふと、てゐさんが足を止める。着いた、とも言ってましたし何処かに着いたのかな? と、視線をてゐさんの見ている方に向けると……

 

「わぁぁ…」

 

 立派な屋敷が建っていた。日本では見たこともない位、立派な和風建築である。建物に見とれていると、てゐさんが口を開いた。

 

「えーっと、とりあえず永遠亭にようこそ。お師匠さま呼んでくるからここで待っててくれるかな」

 

 てゐさんはそう言うと屋敷――永遠亭と言うらしい――の玄関扉を開けて廊下を走っていった。

 

「ここは律儀に待たせてもらいましょうか」

 

 私は玄関扉の前に座り込むと、てゐさんの帰りを待つ事にした。




てゐの口調……唯一持っている原作の花映塚基準でやっているので「おかしい」や「語尾ウサじゃないの!?」と思われるかもしれませんがこのままでやらして頂きます。
話の終わりが納得出来ていません……ですがこれ以上書くと次回の話に影響してしまうし……と悩んだ結果このザマです。
さて、今回も読んでくださりありがとうございます。次回もお楽しみにしてくださると幸いです。


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三羽目

遅くなりました。申し訳ないです。まあ、そのためのタグなんですけどね。
実は小話を一羽と二羽の間に投稿しようかと思っています。プロットにもない思いつきなので短いかもしれませんが…。ただ、それだけです。
勢いで書いた部分もありますがそこは温かい目で読んでくれれば…
さ、本文へどうぞ。


「えーっと…。貴女がてゐの言っていた幸さんね」

 

 てゐさんを待つこと数分。永遠亭の玄関から、赤と青を基調とした服を着た女性が現れました。後ろにはてゐさんの姿も見られます。ということはこの方がてゐさんの言っていたお師匠さまなのだろう。

 

「はい。幸と申します。えっと…お師匠さまでよろしいですか?」

「ええ。私は八意永琳よ。とりあえず幸さんは私に着いて来てもらえるかしら?」

 

 はて、急にどうしたのだろうか? 別に断る理由もないのでここは永琳さんに従っておこう。

 

「わかりました。失礼します」

 

 永遠亭の玄関に入り、履いている草履を脱ぐ。とりあえず永琳さんの後を追うように永遠亭の廊下を歩いていく。一緒にてゐさんも来てくれるらしい。そういえば助けてもらった時のお礼をまだしていなかったような気がするなぁ。とりあえずお礼を言うために歩いていた足を止める。

 

「あ、てゐさん」

「ん? どうしたんだい?」

「あの時はありがとうございました。てゐさんが助けてくれなかったら私多分風邪ひいてたと思います。本当にありがとうございました!」

「ああ、別に気にしなくていいよ。それと…感謝されることはしてないよ」

「で、でもてゐさんは私を助けてくれたじゃないですか?」

 

 どういうことだろう? てゐさんは私を助けてくれたのに…、と思っているとてゐさんが口を開いた。

 

「あの落とし穴はね、私が掘ったんだよ。ごめんね…」

 

 そう言って、てゐさんは顔を俯かせる。

 なんと…。てゐさんが口にした言葉はまさかのものだった。あの落とし穴を掘ったのはてゐさんだったなんて…。しかし、それはてゐさんが謝ることではない。なんていったって気が付いたら落とし穴にはまっていたのだ。それをてゐさんに伝えなければ。

 

「てゐさん」

「なんだい? 私を責める気にでもなったかい?」

「いえ、違いますよ。私は、八雲紫さんの気味の悪い空間から気が付いたらあの落とし穴にはまっていただけなんです。だからてゐさんはちっとも悪くないんですよ」

 

 ふう…。しっかりと伝えられた。我ながらうまく説明できたと思う。伝えたいことを伝え終えスッキリした私がてゐさんの表情をうと、てゐさんは驚いたような表情をしていた。…なんだかものすごいデジャブを感じますが気にしないでおこう。

 

「え? …ってことは、幸は外界から来たのかい?」

 

 てゐさんの言う外界がここに来るまで住んでいた場所ならそのとおりである。

 

「ええ、そうなりますね」

「なーんだ、幸は記憶喪失になってた訳じゃないんだね。どうやら私は勘違いしてたみたいだね」

 

 てゐさんはそう言うと「あはは」と笑みを浮かべた。その笑みにつられて私も自然と笑いがこぼれる。そう二人で笑いあっていると、

 

「あなたたち、楽しそうなのところ失礼だけど先にこちらの用事を終わらせてからでいいかしら?」

 

 と、永琳さんが口を開いた。

 そういえば永琳さんについてきてって言われてたんだっけ…。

 

「あ、え…ごめんなさい…」

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 永琳さんに案内されたのは、どうも診察室のようにも見られる部屋だった。ということは診察でもされるのだろうか? うーむ…。ちょっと怖いなぁ…、なんて身構えていると永琳さんに

 

「ふふっ、そんなに身構えなくてもいいわよ? 私はただあなたとお話がしたいだけなんだから」

 

なんて言われてしまった。だが、その言葉のおかげで緊張していた私はホッと安心できた。

私は永琳さんに「お話がしたい」と言われふと昔を思い返す。お爺さんがまだ生きていたころは、よくお爺さんの昔話を聞かせてもらいましたっけ。私はそのお返しに、お爺さんが生まれる前にあの家であったことを話してたっけ。あの頃はたのしかったなぁ…。なんて思っていたら廊下の時みたいに永琳さんに注意されてしまった。

 

 全く…私はいったい何をやっているんだ。せっかく永琳さんがお話をしようと誘ってくれたのに一人で過去を振り返っていたら駄目じゃないか。

 私は自分の頬を軽くたたいて気持ちを切り替える。

 

「…さ! 永琳さん、お話ししましょう!」

「ええ、まずは互いの自己紹介からね。先ほども名乗ったけど、私の名前は八意永琳よ。ここ、永遠亭では私とてゐ、あとは姫様、それと優曇華が生活しているわ。…それくらいかしら? さ、次は幸さんの番ね」

「はい! 私は幸と申します。えーっとここに来る前…外界? でしたっけ、外界では座敷わらしとして生活してました。好きなものは甘いお菓子とお茶です! こんなかんじですかね」

 

 やっぱり人と話すのは楽しいですね。心が和みますよね。

 

「そういえば…、幸さんって八雲紫にこの幻想郷に連れてこられたのよね?」

「ええ、そうですよ。でも気味の悪い空間を真っ逆さまに落ちて気が付いたら落とし穴に…って感じですね。八雲紫さんが心配して私を探してなければいいんですが…」

「あ、そのことなら心配いらないわよ。てゐが幸さんを連れてくる前に彼女が来ててね。あなたのこと頼むってお願いされたのよ。急すぎたし、断ろうと思ってたけどあなたを見て安心したわ。これなら大丈夫ねって」

「へえ…八雲紫さん来てたんですか。あれ? でもなんでここに来るまでに出会わなかったんだろう?」

 

 この部屋に来るまで廊下はまっすぐであった。それならすれ違うことぐらいあると思っていたのだが…。

 悩んでいると、永琳さんが

 

「彼女なら()()()で帰ったわよ? そうね、幸さんにもわかりやすく言うと気味の悪い空間のことよ」

 

 と教えてくれた。

 えっ…、確かに出会った時も急にあのスキマとやらで現れてきたし、移動にも使えるのか…。便利だなぁスキマ。あ、そうだ。なんで八雲紫さんには私の姿が見えたのだろうか。永琳さんも見えているみたいだし訊いてみる価値はありそうである。

 

「永琳さん、一ついいですか?」

「ええ、私が答えられる範囲なら大丈夫よ」

「なんで八雲紫さんは私の姿が見えたんですか? それに永琳さんも私が見えてる見たいですし…」

「んー…、なんて説明すればいいのかしら? 私はともかく彼女は妖怪よ? だから種族の近い貴女を見ることができた、じゃないかしら?」

「へ? 妖怪?」

「そうね。あ、てゐも種族的には妖怪兎よ」

「あ、あはは…」

 

 ……乾いた笑いがこぼれる。話が急すぎてついていけない。

 だけど、と私は一つのことを考えた。もしかしてだが幻想郷とは妖怪たちが住んでいる場所なのではないだろうか? てっきり忘れ物が集まる場所、なんて考えていたが今思えば私という座敷わらしも人々に忘れられた存在ではないか。科学を妄信する今の人類は妖怪などの存在を否定し、その存在を忘れてしまったのだ。

 

「たぶん彼女が貴女を招待したのは、外界で生き残っていた貴女の存在が消える前に助けたかったのよ」

「…きっとそうですよね。あの優しい八雲紫さんですからね」

 

 なんだか心がスッキリした気がします。やっぱり八雲紫さんの誘いを受けてよかったと思います。

 

「あ、永琳さん。そういえばこの永遠亭にはほかにも誰かが住んでいるんですよね? その方たちに挨拶とかしたほうが…」

「んー…、姫様はいるのだけれど優曇華は人里にいるのよね。そうね、夕方あたりには帰ってくるしその時にでも私から貴女のことを紹介させてもらうわ」

 

 ということで挨拶は夕方あたりになりそうである。今が昼過ぎだから…、あと三時間くらいなのかな? しかし、三時間も何をすればよいのか…。そう考えていると部屋の(ふすま)が開けられそこから豪華な着物を着た女性が入ってきた。

 

「あら、楽しそうなことをしてるわね。私も混ぜてもらってもいいかしら?」

 

 と、女性は言うなり永琳さんの隣に腰を下ろした。

 

「姫様、一体どうしてここに?」

「んー、暇だったからかしら? 部屋にいても何もすることないじゃない」

 

 姫様…ということはこの方が永遠亭に住んでいる姫様なのだろう。姫様って言われてるぐらいだしかなり位の高い方かもしれないしここは挨拶でも…。

 

「あ、あの私は座敷わらしの幸と申します! よろしくお願いします」

「へえ、座敷わらしの幸…ね。私は蓬莱山輝夜よ。こちらこそよろしく」

 

 蓬莱山輝夜さんか…。ん? 輝夜…姫様…もしかしてかぐや姫? ま、まさかそんなことあるわけがないですよね。……一応聞いてみよう。

 

「輝夜さんってもしかしてかぐや姫だったりします?」

「ん? …ええ、そのかぐや姫よ」

 

 

 

「ええぇぇぇぇ!?」

 

 

 

 …私が驚いた声が永遠亭内に響き渡ったことは言うまでもない。




プロット通りなので大丈夫(多分
勢いで書いたところはいつか修正するかも。
次も遅くなるかもしれませんがお楽しみに…。では



2016年5月23日追記:一羽と二羽の間に小話を投稿しました。


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