Fate/魚強エクストラ (( ∴)〈名前を入れてください)
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邂逅は突然に byザビ子

閣下作品が少ないので書きました。更新速度?
知らんそんなのは俺の専門外だ


「ふむ…どうやら君も駄目のようだな」

 

冷たく機械的な声が耳に届く、まるでテストの採点をして不合格だと書かれている紙のようにこちらに対しての感情を何も抱いておらず、ただ事実をこちらに伝えて来る。

 

「そろそろ刻限だ。君を最後の候補としその落選をもって、今回の予選を終了しよう」

 

「さらばだ、安らかに消滅すると良い」

 

消滅…聞くだけで嫌な予感がするその言葉は決して冗談と呼べる者では無かった

倒れ伏す我が身を動かそうとしても激痛が走るだけで動く事が出来ず、自分の腹部から流れ落ちる血液を眺める事しか出来ないのだから

 

ーーあぁ私はここで死ぬのだろうか?

 

何時も通りの学園生活を送っていると感じた違和感、その違和感の感じるがまま進んだ先にあった謎の人形、それをひきつれて進んだ先にあった謎の空間。

 

例えるならば電子の中にでも入ったかのような世界。様々な色が点滅し、学校の背景等無くしたような場所を突き進んだ

 

まるでゴールの見えない道のりを謎の男の声の聞こえるがままに突き進み、道中で現れた謎の物体…男の声はそれを「エネミー」と呼んでいたがそれを人形に指示を出し打ち倒し先へ先へと進み、そしてこのザマである

 

ステンドグラスが貼られ、まるで聖堂のような厳かな雰囲気を出す場所にたどり着いた先にいた謎の人形、さっきまでのエネミーとの戦いでコツを掴んだから大丈夫だと思い人形に攻撃の指示を出した瞬間、謎の人形の攻撃により私の人形は砕けその隙を逃さぬように私の腹部目掛け謎の人形の腕が貫いた。

 

身体から流れ落ちる血液を見詰めながらも身体を動かそうとするも激痛が身体を走るだけで指1本も動かす事も出来ない

まさに絶体絶命、いっそこのまま身体の力を抜き死を待った方が楽なのだろう

 

だが…それをする気にはなれない

例え苦痛に苦しもうが生きなければならない。少女が痛みに耐えて立ち上がろうとすると身体中が悲鳴をあげてそれを阻止しようとする。

 

止めろ、もう十分に頑張った。もう良いじゃないか、もう無理だ動ける筈が無い

 

「それが…どうしたっ!まだ動ける、まだ立ち上がれるんだ!」

 

頭の中で思い浮かんだ弱音を跳ね除け身体を動かそうと藻掻く

もう無理だ、動けない…まだ動ける

ピクリ、指先が少し動く

駄目だ動かない…大丈夫まだいける

ピクリ、腕に力が入る

諦めよう、もう頑張った。後はゆっくり休もう…論外だ。まだいける、休むのは身体が動かなくなってからだ

ピクリ、立ち上がる為に上半身を地面から離す

 

…何やら声が聞こえたと思えば……どうやらもう死に体ではないか。安心しろお前が死んだらちゃんと1人前のプリニーとして育ててやる

 

だから安心して死ぬと良い

 

突如聞こえた謎の声を無視して身体を動かそうと足に力を入れる。腹部から鮮血が流れ落ちるのを無視し立ち上がる為に身体に力をいれる。

 

何故だ…お前は何故そこまで足掻く?大人しく楽になれば良いものを無駄に足掻こうとする?おまえの死は確定だ、目の前の人形にお前は殺されるのだぞ?

 

何故…?その言葉にふと言われた言葉を思い出す。

 

「…お別れを言うのは間違いだ。不思議と今の僕はまた貴女に会える気がしている。」

 

「だからここは『またこんどお会いしましょう』と言うべきですね。次は本戦でお会いしましょう」

 

顔はもう思い浮かばないが言われた言葉は決して忘れない。また会おう、約束した訳では無いがそれを破るのは何だか負けた気がして嫌だ。生きてまた会う事が一番良いに決まっている。

 

自分の記憶も家族の記憶も無い、そのまま死ぬなんて嫌だ。自分が何処の誰かも分からないまま死ぬなんて諦めを許せる筈が無い、それに

 

無意味に消えていくなんて考えるだけでも恐ろしい。

 

「私は…例えこの場で殺されるのが確定されていようとも決して諦めたりなんてしない!」

 

その言葉を放った瞬間謎の人形が少女目掛けて突進する。今度は確実に殺すと言わんばかりに手刀をその脳天目掛けて

 

未だに動かない身体に鞭を打ち早く動けと、早く立ち上がれと命令するも身体は言う事を聞かずこれ以上動く事が出来ない

 

「諦めるもんかっ!絶対に…生きる!」

 

…まぁ良い。今回はその心意気に免じて特別に助けてやろう

 

人形の手刀が少女を貫こうとした瞬間ステンドグラスは割れそこからあらんばかりの闇が人形を襲う。質量を持った闇が人形を砕き、貫き、粉砕していく

 

そして闇は異形の牙へと形を変えて人形だったものを噛み砕き、その全てを破片へと変えていった。

 

「えっ……?」

 

目の前の光景に呆気に取られていると目の前にある闇が蠢き始め姿を形作る。いや…良く見るとそれは闇では無い。その闇を構成しているのは数え切れない程の黒いコウモリ、そんなのが集まっているから闇に見えたのだ。

 

「何を惚けているのだ小娘、いい加減さっさと立ち上がれ」

 

無数のコウモリが集まり始め一人の人間を作り上げていく、あまり高くない背丈に死人のように白い肌。宝石のようなの赤い目。身体を貫いている複数の木杭、そして極めつけは口元から見える鋭い牙

 

その姿はまるで御伽噺に出てくる吸血鬼そのもののようであった。

 

「俺も暇では無い、これからプリニー共に教育を施さねばならぬ。故に俺を呼んだお前には早く俺を元の場所に戻してもらわないと少々困るのだ」

 

少女は溜息混じりのその言葉を聞いて混乱する。自分が誰かを呼んだ覚えは決して無く、寧ろ目の前の彼がイキナリ現れたとしか分からない状態でそのような事を言われても混乱するしか無い

 

「……どうやらお前が俺を呼んだ訳では無いようだな」

 

ゾクリ、その言葉に全身が警鐘をあげるこれは自分の運命を分ける場所だと本能的に思った彼女は残った力を全てを使い先程の言葉に返す為に言葉を出す

 

「私だ…私が貴方を呼んだんだ!」

 

「それならさっさと……!」

 

その言葉を放った瞬間少女の手の甲が光を放ち始め幾何学的な模様をそこに刻む

身体の至る所から走る激痛は既に彼女の精神を蝕んでおり、謎の人形の恐怖から開放された事とにより彼女の意識は限界に近付いていた。

 

「中々に面白いサーヴァントを引き当てたようだな。君の手に刻まれたのは令呪、つまりは君がマスターになった証とでも思って欲しい」

 

「…この声は一体何処から来ているのだ?おい小娘、意識はまだ捨てるな。俺がお前のサーヴァントとは一体どう言う事だ」

 

突如現れた少年が少女の肩を揺さぶるも少女は声をあげる事も出来ずただ聞こえてくる声に耳を傾ける。

 

「令呪は使い方によってはサーヴァントに力を与える事も出来れば命令を強制する事も出来る。使い方は君次第だと言っておこう」

 

「命令…だと?ますます意味が分からん。おい声だけ聞こえる貴様!取り敢えず今の状況を説明しろ!」

 

「但し、その令呪を全て失ったその時君の命は潰える。その令呪は聖杯戦争への参加権でもあると言う事を忘れない事だ」

 

死ぬ…謎の声が発する言葉を忘れないよう必死に頭に叩き込む。サーヴァント…令呪、聖杯戦争、そして令呪を失えば死ぬ

 

「ええい益々意味が分からん。俺は声に呼ばれ意識を此処に連れてこられたと言うのに説明も無しか!」

 

「…どうやら君のサーヴァントは中々直情的なようだな。まぁ君には期待しておこう」

 

声は少年の言葉を全て無視し少女に語り掛ける。そしてそんな態度に少年は機嫌がドンドン悪くなり三白眼のような目を虚空にキッと睨み付け盛大な舌打ちを放つ

 

「未熟ながらも勇気に溢れた行軍は見ていて見応えのあるものだった。おめでとう、ここがゴール地点だ。後はゆっくりと休み傷を癒したまえ、君が目が覚めた時には本線会場にいるだろう」

 

「貴様…一体何を言っている、この小娘は既に死に体。もう直ぐその命が尽きるのは見れば分かるだろう」

 

彼の言う通り少女は既に限界に近く、意識を失えばそのまま死んでしまうだろう

そんな彼の言葉を声は無視して少女に語り掛ける

 

「あぁそうだ。君達は私の正体を気にしているようだが別に私を気にしなくて良い。私はここでの案内人みたいな物だ…そうだ。君には何者かから祝辞が届いている」

 

「『光あれ』と」

 

その言葉を聞き届けた瞬間少女の意識は暗い闇の中へと落ちて行った。近くで呼び掛けてくる彼の声は少女の耳に届かない

 

これが彼等の出会い、何も知らぬ彼等が出会ったのは那由他の彼方にある奇跡を偶然掴んだようなものだ。

 

これより物語の幕を開けよう。勝者には栄光を、敗者には死のデスゲームを

 

電子の海より産まれ落ちた少女と人間の血を吸わない不思議な吸血鬼の物語

 

──では、これより聖杯戦争を始めよう。いかなる時代、いかなる歳月が流れようと、戦いをもって頂点を決するのは人の摂理。

 

 月に招かれた、電子の世界の魔術師ウィザードたちよ。汝、自らを以て最強を証明せよ──。

 




「突如現れた謎のサーヴァント。それは謎の吸血鬼!私は一体どうなるのか、私の名前はいつ出るのか!と言うか私血塗れなんだけど…大丈夫なの?」

「それはそれとしてイワシだ!イワシは栄養に優れ血液をサラサラにしてくれる優れもの!取り敢えず最初はこの程度にしておこう。次からはイワシについて更に詳しく教えてやるからな!」

「二人してまだ名前が出てないとかこんなの有り得なく無い?」

「「次回Fate/魚強エクストラ!『自己紹介はとっても大切』お楽しみに!」」

「しまった…そう言えば昼食のイワシを食べるのを忘れていた……」

「えぇ……」


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自己紹介はとっても大切。だけど私の話をちゃんと聞いてください by桜

やっぱりフェンリッヒがいないとなぁ…まぁそこはザビ子に頑張って貰いますか


夢を見た。誰よりも強く、誰よりも誇り高い吸血鬼の夢を。

 

「おのれ暴君!貴様がいなければ俺が魔界の頂点に立てる筈だった!」

 

「…貴様如き矮小な者が魔界の頂点に立つ?己惚れるな!魔界の覇者は誰よりも強く、誰よりも強大でなければならぬ!浅知恵だけしか脳の無い貴様がなれると思ったか!」

 

金銀財宝が散りばめられている荘厳な部屋の中で相対する2人の異形な存在、一人は長い髪を束ね鋭い眼光を目の前の存在に放つ

もう一人はその眼光に怯えながらも声を荒らげるオークのような見た目をした存在。オークはこの部屋の主なのかその醜悪な見た目に似合わない黄金の椅子に座りガタガタと身体を震わす

 

「恥をしれ!俗物以下の愚か者が!」

 

「ーーッ!ウオォォォッ!」

 

オークが手に大きな斧を持ち目の前の男目掛けて突進する。その身体は男よりもずっと大きくまるで大人と赤子程の身長差があった。

 

「馬鹿が…ならばその身に刻み付けてやろう。この暴君の力を!」

 

「死ねェェェッ!」

 

巨体から振り下ろされる斧が男の身体を両断し男が身体を分断されそのまま倒れ落ちる。分断された肉体は何も言わずただ倒れ伏すのみ。その光景をみてオークは絶頂に等しい高笑いをあげながら男の死体に近づいていく

 

「へっ…勝った?俺が……暴君に?……ヒヒヒヒヒヒ!ヒャーハッハッハッ!俺は暴君を倒した!やはり俺こそが魔界の頂点に相応しい存在だったんだ!」

 

そして男の身体の半身を持ち上げた瞬間オークの周りを闇が包み込んだ

 

「なっなんだこれ!何なんだよこれはァ!」

 

…さぁその身に刻むが良い。誇り高き悪魔の力を!

 

突然の暗闇に狂乱し男の半身を投げ捨て斧を両手に持ち辺りを警戒するオーク。何も見えない中斧を振り回し何かを警戒するもその攻撃は全て宙を切る

 

「クソッ!クソッ!何処だ!何処にいやがる。姿を見せやがれ!」

 

オークの斧が突然何かに当たったようにガツンと良い音を立てて弾かれる。その手応えにオークはニヤリと笑いながら先程の場所目掛けてなんども斧を打ち付ける。

 

「ここかぁ…くらえっ!」

 

斧がその場所を砕いた瞬間その場所から小さな光が漏れ始める。オークはその穴を打ち付け自分が出れる程の大きさまで広げ外に出ると其処は先程までいた自分の部屋とは全く別の場所にいた。

 

「◼◼◼◼◼◼◼◼!」

 

「あっ…あぁ……これは。まさか…遥か昔魔界を荒らした最強の魔物……」

 

自分の立つ場所がほとんど無い地面、そして目の前にいたのはオークが米粒にしか見えない程の大きさを持った怪物。その姿はまるでコウモリに似ていたがその凶悪な見た目からコウモリとは全く別の存在だという事が分かる。

怪物が巨大な羽を広げ呻き声をあげるとその声だけで世界が振動し悲鳴をあげる

 

貴様如きに俺が力を奮うなど烏滸がましい。故に我が僕の力を持って貴様のその全てを残さず消滅させてやろう…

 

「あっ…あぁ……」

 

やれフルークフーデ!目の前の愚か者の魂一片たりとも残さず消し飛ばせ!

 

「◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼ッ!」

 

怪物がその身を震わせ超音波を発する。羽を震わせ発生する超震動はオークとその周りにある物全てを震わせ存在を崩していく。

 

ーーそしてその衝撃が目の前に

 

「……夢?」

 

急に目が覚めるとまず感じたのは薬品のツンっとした臭い。そしてベットのフンワリとした感触、それらの感覚を感じながらボウッとした頭をゆっくりと覚醒しさせていく

 

「目が覚めましたか?」

 

「……君は?」

 

声が聞こえて来た方に見ると白衣を纏った一人の少女がこちらを見つめている。

 

「私はこの保健室のNPC間桐桜です。主にこの聖杯戦争での皆さんの身体、並びにメンタルのカウンセリングを任せられております」

 

「破損していた肉体は既に修復しましたが何処か不都合は起きていませんか?頭が痛いとか腹部に何か違和感があるとかがあれば直ぐに教えて下さい」

 

それを聞いてあの時の事が蘇る。身体を貫かれ死に掛けた自分、そして現れた謎の少年…謎の声が言っていた言葉の数々

 

「そうだ…彼は一体何処にいるの?」

 

「彼……ですか?」

 

その言葉にキョトンとした顔を見せると直ぐに納得したような顔をして頷く。

 

「あぁ!貴女のサーヴァントなら」

 

「俺はサーヴァントと呼ばれる物では無い!誇り高き悪魔ヴァルバトーゼだ!」

 

「……あそこにいます」

 

桜がそう言うと部屋の奥の椅子に座っていたあの時の少年が少女のいるベットに音を立てて近付き少女のベットの目の前に立つ

 

「起きたようだな小娘、では早速俺を元の場所に戻してもらおうか」

 

「……えーっと」

 

「どうした。まさか出来ないと言う訳では無いだろう?俺は早く戻りプリニー共に教育を施さねばならぬ。それに早く戻らねばフェンリッヒが錯乱してしまうやも知れん」

 

「さぁ早く俺を地獄へ戻してもらおうか!」

 

ヴァルバトーゼと名乗ったあの時の少年は少女へ早く俺を元いた場所へ戻せと捲し立てるように言うが少女は困り果てた顔をして黙るばかり。その態度に目つきを悪くして少女を睨む、一気に悪くなる空気に桜が困り果てたように言葉を出す

 

「先程から言ってましたけど、貴方はサーヴァントとして此処に呼ばれたんです。だから元の場所に戻せと言われても」

 

「だから俺は死人ではない!俺は悪魔。人間の幽霊では無い!」

 

「だから幽霊じゃなくてサーヴァントですってば!」

 

「俺からすればどれも変わらんわ!死んだ人間の魂はプリニーとなり生前の罪を贖罪するか、天使に認められ天使になるしか無い!」

 

「英霊の魂?死んだらどれも亡霊に過ぎん!」

 

「だーかーらー貴方はサーヴァントとして彼女に呼ばれたんです!」

 

「知るか!俺は英霊の座などにはいない俺の肉体があるのは魔界の地獄だ!」

 

ギャーギャーと桜とヴァルバトーゼがまるで口喧嘩をするように声を荒らげ話をする。

 

その声を聞き少女は喧嘩をしている2人に対して待って欲しいと呼び掛ける。

自分は聖杯戦争やサーヴァントの事を良く分かっていない。だから教えて欲しいと

 

「えっ…可笑しいですね。予選を通過した時点で記憶をお返ししているのですが本当に覚えてませんか?」

 

桜に自分の事は名前しか覚えていないと伝えると困り果てたような顔をしてこちらに頭を下げる。

 

「すみません…どうやらこちらに不都合があったらしく記憶の返却が出来てないみたいです。私の権限ではどうしようも……」

 

「記憶が無い、だと…ならばお前はどうやって俺を元の場所へ戻すのか分からないのではないだろうな!」

 

先程の言葉に食いついてくるヴァルバトーゼに少女は頭を下げて謝る。すみません、私にはその方法が分かりませんと

長い時間深々と頭を下げて謝るとヴァルバトーゼは労るように少女へ語り掛ける

 

「…どうやら嘘では無いみたいだな。いいすぎた、すまない。だが俺は早く地獄へ戻らねばならぬ。どうやって戻れば良いのか……」

 

二人して現状に困っていると二人の話を黙って聞いていた桜が名案だと言わんばかりに両手を叩き言葉を発する

 

「見つけました!お二人の現状を何とかする方法を!」

 

「聖杯戦争に勝ち抜いていけば良いんです。その過程で記憶が戻れば問題無いし、記憶が戻らなくても最期まで勝ち抜けば願いを叶える事が出来ます!」

 

二人して桜の話を静かに聞くとヴァルバトーゼが胡乱な目をして桜を見つめる

 

「願いを叶える?」

 

「はい!この聖杯戦争を勝ち抜けば願いを叶える事が出来るんです!」

 

「下らん。神にでも願いを叶えて貰うつもりか?神はちっぽけな俺達の願いを叶える程優しくは無いぞ」

 

「えーっと…何か色々と言いたいですが取り敢えず説明しておきますね。今回は運営側に不備があったみたいですしこれくらいは参加者も知っているので開示しても大丈夫でしょう。」

 

そこから桜からこの聖杯戦争について説明される。簡単に言うなら参加者がサーヴァントと共に戦い勝ち抜いていくバトルロワイヤルであり、優勝者には自分の願いを叶える権利を持つと言う事らしい

 

正直…信じられない

 

「あの〜…二人してそんな『そんな事信用出来るか』みたいな顔をされても……」

 

「当たり前だ。そんなホイホイと願いを叶える方法がある訳無いだろう。そんな簡単に願いが叶えばこの世は既に世紀末だ」

 

「でも本当の事なんですってば!何度言えば信じてくれるんですか!」

 

「第一俺がサーヴァントとやらでは無いと言ってるだろうが!俺は誇り高き悪魔。亡霊等では断じて無い!」

 

あーっもう話がまた戻った。

 

「第一、名前も知らぬ小娘の従者になるなど…」

 

名前…そういやまだ名前言ってなかったけ?

 

「私の名前は岸波白野。宜しくお願いしますヴァルバトーゼさん」

 

そう言いながら岸波は握手を求めるようにヴァルバトーゼに向かって手を出す

 

「いっ…いや、名前を伝えられても従者になると言ってないからな?」

 

「宜しく」

 

「いや…だからな?俺は」

 

「宜しく」

 

岸波の強引なゴリ押しに折れたのか、それとも諦めたのかヴァルバトーゼは岸波に向かって手を出す

 

「ーーッ分かった!今回はお前達の事を信じよう!どうせこれからの事も分からない身だ。聖杯戦争とやらもお前と共に戦ってやろう」

 

「だが俺はお前の下に着く気は毛頭無いそれだけは忘れるな。俺とお前は協力者と言う事だけだ!」

 

「お前が記憶を思い出し俺を元の場所へと戻せるようになるまで戦おう!」

 

そう言い二人は握手をする

 

「うん、約束する。私は貴方を元いた場所に戻してみせる」

 

「そうか…ならばそれまで俺はお前の剣であり盾であろう。約束だ」

 

握手したヴァルバトーゼの手はとても冷たく、まるで死人ように血が通っていないように感じた

 

「労働条件として三食イワシを貰うぞ」

 

「えぇ……」

 




「ついに自己紹介をした私達!私の名前は岸波白野皆宜しくね!」

「まさか俺が人間の小娘と共に戦う事になるとは…それはさておきイワシの話だ!今回は誰でも知ってるマイワシだ!マイワシは分類上顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱真鰭区ニシン・鰾下区ニシン上目ニシン目ニシン科マイワシ属とされている!
生命力に溢れ、こんなにカッコイイ分類なマイワシだが漢字に直すと『真鰯』…これは酷い!真に弱い魚等と言う名をつけられているが俺はこんな名前は認めない!マイワシは真に強い魚と書いて『真強魚』と書け!お前達もマイワシを漢字で書く時は『真強魚』と書くように!」

「うわぁ…隙あらばイワシ語りしてる……」

「「次回Fate/魚強エクストラ!『昨日の友は今日の敵!?』次回も楽しみにしてね!」」

「イワシィ!」


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昨日の友は今日の敵。残念これは嘘予告だ、とりあえず何か買っていくと良い by愉悦神父

恐らく皆つぎの話を予想しただろうが残念ハズレだ。とりあえずマーボーを食べてくるように


「あんまり学校内は変わってないみたいだね」

 

「俺は元の姿を知らんからどうとも言えんぞ」

 

保健室を出た二人は出る前に聞いた言峰と呼ばれるNPCに話をする為に2階へと足を進める

 

「そう言えばこの端末を使ってヴァルバトーゼのステータスを確認しろって言ってたっけ?」

 

「おのれ聖杯戦争…この俺を死人と同じ扱いをしようとは。必ずしやこの戦いを始めた愚か者に死よりも恐ろしい責め苦を味合わせてやる」

 

隣で誰かに怒っているヴァルバトーゼに苦笑しながら端末を起動しマトリクスという欄を選択する。このモードは自分のサーヴァントについての事が開示されている分表示される優れものでこれでヴァルバトーゼのステータスを確認する

 

nameヴァルバトーゼ clas Nothing

 

ステータス (吸血行為又は魔力供給によりステータス変動)

筋力 C+〜unknown

俊敏 B〜unknown

魔力 C++〜unknown

幸運 A〜A

耐久 C+〜unknown

宝具 Nothing

 

スキル

吸血鬼 Ex 現状唯一の特殊な吸血鬼の肉体を持つ

カリスマ C 誰かを引きつける才能を持つ

暴■ Ex ■■■■・■■■を己の眷属とし隷属させた証、あらゆる者達が彼を正確に認識した瞬間、混乱等のステータス異常を発生する

 

「何これ…」

 

まず見て思ったのはこの端末が壊れているんじゃないのかと言う疑問、そして

 

「unknownって何……?吸血行為って吸血鬼なの?」

 

「あぁ吸血鬼だが。言ってなかったか?」

 

「言ってないよ!?もしかして…私の血を吸うの!?」

 

ヴァルバトーゼの言葉に戦慄を隠せずにいるとヴァルバトーゼは呆れ果てたような顔をしてため息を吐く

 

「俺に人の血を吸う気は無い。だから安心しろ」

 

「えっ…ちょっと待って。置いて行かないで!」

 

端末をポケットに収め足を進めるヴァルバトーゼの背中を急いで追い掛ける。

 

学校内の様子は予選の時と殆ど変わっておらず特に迷わずに足を進めると予選を勝ち抜いたマスター達が和気あいあいと話をしており報酬、願い、山分け等の言葉を話の中に散りばめていた。

 

「ふーん…ねぇヴァルバトーゼ。私達も誰かと協力して戦っていった方が良いのかな?」

 

「駄目だ」

 

誰かと一緒に協力して戦ったら一人で戦うよりも勝ち抜ける可能性が上がるだろうと思い言った言葉はノータイムで切り捨てられる

 

「良いか?これはバトルロワイヤル、つまりは殺し合いだ。当然協力する者もでるだろう、だがそれは途中で裏切られても何とか出来る自信の表れでもある」

 

「記憶も何も無いお前が途中で裏切られてもどうにか出来るのならば話は別だがな」

 

「つまり…対処出来ない事を自分から背負うなって事?」

 

そう聞くとヴァルバトーゼはその通りだと頷き話を続ける

 

「その通り人間は策謀、計略に置いては悪魔よりも辛辣で悪質だ。記憶も無い小娘には荷が重すぎる」

 

「そこでイヤらしい笑みを浮かべている男がそれだ。気をつけろよ小娘」

 

ヴァルバトーゼの言葉に一人の神父服の男が意外そうに言葉を発する

 

「私はNPC故にそのような事はしないのだがね。やれやれ、私はそこまで悪逆を尽くしていた顔に見えるのか?」

 

「ふん。お前のような善人がいるか、善も悪も分からない顔をしおってどうせ己の欲望を満たす為に」

 

「ストーップ!すみませんヴァルバトーゼが酷い事を言っちゃって」

 

岸波がヴァルバトーゼの口を塞ぎながら急いで謝ると神父服の男は楽しそうに口を開く

 

「だが私の元となった者はそのような半生を送っていたみたいだがな。己の愉悦を追い求め罪なき子羊達に手を掛けた血塗れた求道者」

 

「だが彼の中にある神への信仰心は本物でありそこが彼の異常性を引き立たせる。生前の彼も君のような男に出会えればまた運命も変わったのかもしれないな」

 

クツクツと楽しそうに笑う神父服の男に岸波は少し引き気味になりながらも話し掛ける

 

「あっ…あのー……」

 

「それで。この聖杯戦争の運営、管理を任されている言峰綺礼のNPCたる私に何か用かね?落第寸前だった未熟なマスターとそのサーヴァントよ」

 

その言葉に岸波は既視感を感じる。あの時導いてくれた謎の声が目の前の変な神父服の男とダブるも頭からあの時の事を振り払い今尋ねなければならない事を話す

 

「私の記憶が戻って来てなくて…それでその事を桜に話したら貴方の元に行けと」

 

「何…?記憶は参加者全員に返した筈だが……ふむ、もしかすると何やら異常が発生し記憶が蘇ってないのかも知れん」

 

「いっ…異常!?私は大丈夫なんでしょうか!?」

 

「問題無い。人格面に支障があれば既に対処されている」

 

異常と言う言葉にあの時の惨状が原因では無いのかと思い聞くもそこは問題無いとしれっと流される

 

「済まないがその事は私の方ではもうどうしようも無いので君の方で対処を願おう。何、直ぐに記憶も蘇るだろう。問題無い」

 

「そんなぁ……」

 

そう言い捨てられて思わず肩を落とす。自分で何とかしろと言う有難いお言葉に世知辛さを感じているとヴァルバトーゼが何か思い付いたように話し掛ける

 

「つまりは…後は小娘が記憶を思い出すだけでお前達は手出しが出来ないと言う事だな?」

 

「そう思ってくれて構わない」

 

その言葉に岸波は不安感を感じる。自分はちゃんと記憶を思い出す事が出来るのか、それとも

 

「(本当に…思い出せるのかな?)」

 

そんな事が頭の中をよぎる。記憶が蘇らなかったら私は一体どうなるのだろうかもしも記憶が戻らなかったら…

 

「(私…この人に見捨てられるの?)」

 

「ならば問題無い。行くぞ小娘、ここ以外を探索するのだ」

 

「えっ…待ってよヴァルバトーゼ!」

 

そのままマントを翻しツカツカと歩いて行くヴァルバトーゼの背中を急いで追いながら綺礼に頭を下げてその場を後にする岸波。その姿を見えなくなるまで見た後ボソリと呟く

 

「しまった…彼等に言わなければならない事があったのだが、後で良いだろう」

 

しかしこの愉悦神父。そんな事を言うも笑みがデフォでドス黒いから正直ろくな事を考えてないようにみえる

 

「ねぇ待ってよ!……ちょっと待って!」

 

「ん?どうした小娘。変な顔をして何かあったのか?」

 

先程までの場所を離れヴァルバトーゼが何も言わず歩いていくと後ろから岸波が声をあげて着いてくる。

後ろにいる岸波の声に気付いたのか足を緩め後ろを振り向く

 

「ねぇ、どうしてあんな事を言ったの?」

 

「何の事だ?」

 

「問題ないって言ってたけど何でヴァルバトーゼが言い切れるの?」

 

「お前は俺と約束した。必ず思い出し俺を元の場所に戻すと」

 

「その言葉を俺が信じているからだ」

 

その言葉を聞いてなんだか心が温かく感じる。自分が自分を信じられずにどうやって約束を守れるんだ。会って間もない私の事を信じてくれている人が目の前にいるのに私が私を信じられなくてどうする

 

「(そうだ。自分を信じなきゃ始まらない、諦めたらそこで終わりだ)」

 

「他には何かあるか?」

 

「ううん、何でもない!」

 

そう言い岸波はヴァルバトーゼの手を握り前へと早足で駆け出していく。

 

「待て!……おいっ腕を引っ張るな!」

 

「確か…屋上が凄く見晴らしが良かったんだ。一緒に見に行こ!」

 

「(これから一緒に戦うんだ。先ずはこの人の事を知らなきゃ始まらない!)」

 

駆け出していく2人を周りのマスター達は驚いたような顔をして見詰める。どう見てもマスターがサーヴァントの手を握り目の前を通り過ぎていくのだ。驚きもするだろう

 

「ねぇヴァルバトーゼ」

 

屋上へ駆け上がっている中、岸波はヴァルバトーゼに話し掛ける

 

「どうした?」

 

「私の名前は岸波白野。まだ自分の名前しか分からないけど記憶を思い出したらちゃんと自己紹介をするから!」

 

「フッ…フフフ。オレはただの協力者だと言った筈だが?」

 

「だからだよ。私と貴方はこの聖杯戦争で一緒に戦うパートナー、仲良くしなきゃ勝てるものも勝てなくなる」

 

軽快に階段を登っていく音と二人の声が階段に木霊していく。

 

「パートナー…か。暴君と呼ばれ恐れられた俺に対等な存在。宿敵であり戦友たるハゴス以外に……面白い。長生きはしてみるものだな」

 

「宜しくね!」

 

「確かに俺とお前は協力者、だがお前は俺と対等でいるとでも?」

 

「それは…これからガンバリマス」

 

「精精精進する事だな」

 

へにゃリと力が抜けたような顔をして言う岸波とそれを見てニヤリと笑うヴァルバトーゼ、そして二人は屋上の扉を開き

 

「砲撃よぉぉい!藻屑に消えなぁ!」

 

「我が骨子は捻れ狂う!」

 

溢れんばかりの光の中に包み込まれた

 




「初めまして!私、アサギ!ここに入ればこの物語の主人公となれると聞いて飛んできました!」

「ちょっとー?マスタータオルは何処かしら?」

「待って待って!そのまま出たら床が濡れるでしょ!」

「まぁ時々私達…もう一人はまだ秘密だけど。そんな私達がここで話すからよろしくね!」

「次回魔法少女デスカル☆アサギ『初めての魔法少女』宜しくね!」

「ちょっとぉ!私の名前が入ってないわよ!」

「だからアナタはまだ内緒だってば!」


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魔法少女始めました?阿呆な事言ってんじゃないよ寝ぼけてるのかいアンタは? by.帽子を被った女性

Q.ディスガイアと言えば俺達プリニーが必要不可欠だと思うんスけどそこら辺はどうなんスか?

A.この物語にプリニーの出番と言うか閣下以外の出番は殆ど無いです。大人しく爆発してて下さい


 

「危ないッ伏せろ小娘!」

 

扉を開き屋上に入ろうとした瞬間襲い掛かる熱風と光に襲われそうになった瞬間ヴァルバトーゼの怒号が後ろから響きそのまま押し倒される感覚に襲われる。

ヴァルバトーゼに上から庇われるような体制になり襲い掛かる熱風と光を一身に受けヴァルバトーゼが苦悶の声をあげる

 

「グッ…ガァァァッ!」

 

「ヴァルバトーゼ!」

 

岸波は光と轟音から逃れる為に目と耳を塞ぐが庇われているのにチリチリと熱気を感じ、その熱さから逃れるように身を縮める

 

「大丈夫だ…俺はこの程度では死なん」

 

その言葉と同時にヴァルバトーゼの身体は小さなコウモリとなり開いた扉に張り付いていく。開いた扉にコウモリが張り付き屋上と階段を遮断する頃にはヴァルバトーゼの身体は半分程無くなり目と耳を塞ぎながら身体を縮める岸波と身体が半分程の大きさになったヴァルバトーゼが階段に残った

 

「…大丈夫か?」

 

「ありがとう。…って何て言うか小さくない?」

 

「熱風と光と轟音を遮る為にはこうするしか無かった」

 

身体の一部をコウモリに変えて岸波の顔の周りで飛ばしながら話を続ける

 

「うわー…何か可愛いね」

 

「そうか?因みにそのコウモリは俺だと教えておくがその辺りはどう思う?」

 

「…可愛いと思うよ?」

 

「そうか。お前にとって俺は可愛いのか」

 

「うん。何だかプニプニしてて気持ち良いし」

 

身体全てが黒く目だけが赤色のディフォルメされたコウモリを触りながら楽しそうにしている岸波と子どものように小さくなったヴァルバトーゼが先程の事が無かったかのように振舞っていると屋上の方から怪訝な声が聞こえて来る

 

「何だいこりゃぁ…?黒い……壁かい?」

 

「うわっ何かプニプニしてるんだけど……気持ち悪い!」

 

「この男みたいにこれに触るなよマスター。何が起きるのか分からん」

 

「分かってるわよ。だけど…なんかこの壁動いてない?」

 

壁の向こうから聞こえて来る男女の声にヴァルバトーゼが近づき壁にしていたコウモリ達を自分に呼び寄せて身体を再構成していく。

 

「まぁ撃ってみればって…お?壁が消えていく」

 

コウモリで作られていた壁が消えて岸波とヴァルバトーゼの視界に先程までの殺人的な光では無く。電脳的な色をしている空と優しい光、そして男女二人が二人の視界に映り込む。コウモリを抱えたまま立ち上がる岸波とその前に立ち庇うようにヴァルバトーゼが前に出る。

 

「何だい壁が無くなったと思ったらお次はサーヴァントと来た。アンタらもこれに参加する口かい?」

 

「せんわ!屋上に来たと思えばいきなりと熱風と閃光、そして轟音!お前達は一体何をしている!」

 

「いやぁ、こちら側もするつもりは無かったんだけどねぇ…」

 

大きな帽子を被り顔に傷を持った女性が笑いながら話すと隣の男が被せるように言葉を続ける

 

「それに関しては彼女のマスターに言ってくれ」

 

そうしれっと言うとそのまま姿を消す謎の褐色肌に白髪の男。その言葉に嫌そうな顔する天然パーマの男とそれを見てフフンと笑う少女

 

そんな光景を見ていた岸波がハッとした顔で嫌そうな顔をしている天然パーマの男に近づいて行く

 

「シンジ!」

 

「はー…全く何でもかんでも。全部コチラのせいって訳かい?」

 

「全部事実でしょうが、アンタが原因の癖に大口を叩くな。アンタのおかけで私は手札を晒しちゃったんだから」

 

「…聞いてるのシンジ!」

 

無視されてイラッとしたのか岸波が天然パーマの男の耳元に近づき大きな声で名前を呼ぶ

 

「あーっもう!聞いてるよッだから岸波は黙って……って岸波じゃないか!どうしてここにいるんだ!?」

 

「どうしてって…それは屋上に行こうと思って扉を開けたら……」

 

シンジと呼ばれた男が岸波の存在を認識し、驚いたように岸波に驚いたように話し掛け、その姿を見ていたツインテールの少女が疲れた顔をして二人に話し掛ける

 

「あー…もう大体の流れが分かったわ。屋上の扉を開いた瞬間私達の一撃の余波がそっちに流れ弾しちゃって、それをガードする為にあの黒い壁を貴方のサーヴァントが出したって所かしら?」

 

「多分…そんな所かな?」

 

「…オーケイどう考えても迷惑を掛けたわね。御免なさい…ええっと」

 

額に指を置き困った顔をしているツインテールの少女に岸波は笑顔を向ける

 

「岸波白野。宜しくね学園のアイドルの遠坂凛さん」

 

「あー…そう言えばそんな役だったわね。本当に御免なさい岸波さん。お詫びにそこのワカメを好きなだけ殴って良いから」

 

「何でだよ!僕なんか殴られる事したか!?」

 

「しないからね!?」

 

そんなワイワイと話す少年少女達を遠巻きに眺めながら残った二人は話し始める

 

「何だいアンタのお嬢さんはうちのシンジの友達か何かかい?仲良さそうに話しちゃって」

 

「いや…あの小娘には名前以外の記憶が無いと言っていた筈だが……」

 

ヴァルバトーゼの言葉に驚いたような顔をして話し始める

 

「そりゃ予選での事は覚えてるだろさ、本戦に参加する際にこの戦争に参加するまでの記憶を返されるんだから」

 

「…というか、アンタそういうのは秘密にしておくもんだろ。何をペラペラと話してるんだい?」

 

「その程度の事で戦の勝敗が決まる事でも無い。気にしなくても良かろう」

 

「はぁ…両者揃ってなーんにも分かってないのかい。全く無知は罪だと言うけれどその通りだね」

 

呆れた顔をしてヴァルバトーゼに言う女性、この聖杯戦争において相手のマスターの情報は金にも勝る大切なもの。それをこの男は勝手にホイホイと話すのだ、これに呆れないサーヴァントはいないだろう。

 

だが、ヴァルバトーゼはこの事実に気付いていない。本来のサーヴァントと呼ばれる存在ならば今彼のマスターがどれだけ不利なのか理解出来るのだろう。だが彼には「記憶を失った小娘が殺し合いの大会に参加している」程度にしか感じておらず、別にその程度の事を隠し立てする必要は無いとすら考えている

 

自分がいるから大丈夫だと思っているのか、それとも嘘をついて油断させようと考えているのか。目の前の男の言葉を聞いて考える

 

「(うーん…嘘をついているようには見えないし、楽天家って感じでも無い。『本当にその程度で勝敗が決まるわけが無い』って感じだねこりゃ)」

 

「(これは最後まで勝ち抜ける器じゃあ無い。何処か大切な所でヘマをやらかす)」

 

生前から磨かれていた彼女のカンが目の前の男を脅威では無いと判断する。むしろやりやすい相手…即ちカモであると

 

「小娘の覚えている数少ない物がその予選とやらの記憶という事か」

 

「…そういう事。シンジが気に入ってた友人役がいるって言ってたけどもしかしなくても見る限りアンタのマスターだろうね」

 

「俺と小娘は協力者だ!断じて主従の関係ではない!」

 

「へぇ…じゃあアンタらは何が目的で協力してるんだい?願いを叶える為?それとも…金の為かい?」

 

「それはだな…」

 

取り敢えず話を続け出せる情報は全部絞りだしてやろうと考え話を続けるとまた何か情報を出そうとしてくる。

そしてヴァルバトーゼがその事を話そうとした瞬間バチンと良い音が屋上に響き渡る

 

二人が何事だと思いそちらを見ると

 

「えっ…なんで……?」

 

「大切な友達だと思ってたのに…シンジなんて大ッ嫌い!」

 

呆然とそう呟くシンジと涙声でそう言い放つ岸波が目の前にいた。

 

唖然とした凛とシンジを放置しこの場を走り屋上から出て行く岸波、放りだされたコウモリがパタパタと後ろを着いていき屋上の扉がバタンッと大きな音を立てて閉められる

 

「シンジ…あんた何であんな事を言ったのよ」

 

「だって…こんな事になるなんて分からなかったし……」

 

呆れた顔で言う凛とブツブツとボヤくシンジ、くっきりと手の形が頬についている姿から頬を叩かれたのが分かる

 

「…世話のかかる小娘だ」

 

「お嬢さん走り去っていったけど、どうするつも…ッ!?」

 

ヴァルバトーゼがそう呟き身体を小さなコウモリ達へと姿を変えていく。姿を隣で見ていた彼女は伝承に伝わる吸血鬼のような姿を見て驚くもコウモリ達はそのまま屋上から下へと飛び立って行く

 

瞬きする程の一瞬の事でその姿を見れたのは彼女だけで向こうにいる二人はそれに気付かずまだ何やら話をしている

 

「さて。これからどうするか…先ずはシンジのご機嫌取りでもしますかね」

 

顔を真っ赤にして怒り始めたシンジを見て面白そうに口を歪ませ彼等に近づいて行く。

 

「まぁ、死ぬまでに仲直り出来れば上等さ。最も、この聖杯戦争でそれが出来るとは思わないがね」

 




「…話したくないので今日はお休みします」

「では俺が話そう!今日はカタクチイワシについてだが!」

「お願い。黙ってて」

「……仕方無い。これはまた別の機会にでも話すとしよう。次回Fate/魚強エクストラ!『喧嘩だってするさ。だって友達なんだもん!』次回も見るが良い!」

「私は友達だと思ってたのに……シンジの馬鹿」


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何で僕は叩かれたのか理解出来ないんだけど!?By.ワカメ どう考えてもアンタが悪い…By.赤い○魔

Q.なんで更新遅かったん?

A.リアルが忙し過ぎて禿げそうでした(分かりやすい答え)


保健室に人影が二人。1人は保健室のNPCである間桐桜、彼女は今中々に込み合った状況に置かれていた。

 

「あのー。どうしたんですか?」

 

「…何でもない」

 

「顔を真っ赤に泣き腫らして何でもないは通じませんよ…」

 

目の前にはさっきまで部屋にいた少女。その子が桜の前にいる。彼女の名前は岸波白野、記憶を失っている極々普通のサーヴァントだ。

 

「だって…シンジが友達じゃないって……」

 

「話を聞く限りはそうは思えませんが…」

 

さて。何故このような状況になっているのか、その為に少し時間を戻すとしよう

 

それは屋上で三人が話していた時の事だ

 

「しっかし…天才な僕だから何とかなったけど、岸波みたいな特に取り柄も思いつかない奴が突破出来るとは思わなかったよ」

 

「まぁ…見るからに平凡よねぇ」

 

「私もこの状況を理解し切れて無いから一体何が何やらで……」

 

そんな岸波の言葉を聞いて2人が怪訝な表情をする。まるで「こいつは一体何を言っているのだ?頭が可哀想な人なのかな」と言わんばかりである

 

「状況って…そりゃ聖杯戦争だろ?しっかりしなよ岸波、そんな調子じゃ1回戦も勝てないぜ」

 

「そうよ。全く…こんなのが予選を勝ち抜いた猛者の1人だなんて……」

 

「まぁ。この僕が優勝するからその辺りは当たり前なんだけどな!」

 

予選の時と変わらずニヒルな笑みを浮かべながらそう宣言するシンジ

 

「あらあら、間桐慎二さんはさっきの戦闘を覚えて無いみたいね」

 

その言葉にウッと呻くように言葉を小さくしていくシンジ。そしてその姿をみて笑う凛。

 

「そう言えば…岸波はこの戦争になんで参加したんだ?平凡オブ平凡の称号を貰っても不思議じゃないのに、何か叶えたい夢でもあるの?」

 

「確かに。なんて言うか貴女…今の状況を理解しきれてない…いや、自分のおかれている現状を分かってないって感じよね」

 

「いや…まだ自分の願いが思い出せないと言うか……自分の名前以外分からないですハイ」

 

その瞬間、シンジと凛の二人が時が止まったように身体を硬直させる。そうして

 

「「ハァァァァァッ!?」」

 

二人の驚きの声が岸波の鼓膜を穿った。

 

「えーっと…つまり岸波は何か良く分からない状況で予選を突き進んで、それで訳の分からないサーヴァントを引き当てたって事か?」

 

「えーっと…サーヴァントじゃ無くて吸血鬼って言ってたんだけど」

 

「…訳が分からない。かと言って嘘を言っているようには見えないし、でも吸血鬼ヴァルバトーゼって…そんな英霊聞いた事も無いわよ」

 

「いや、先ず吸血鬼とかいる訳ないじゃん。吸血鬼の伝承の大元がヴラド三世な訳だしそのヴラド三世は人間なんだから吸血鬼はこの世に存在しないよ」

 

シンジと凛の正論が岸波の訳の分からない状況にツッコミのメスを入れる。冷静に考えて記憶喪失のマスターの時点で可笑しいのに、それに加えてサーヴァントが身元不明の吸血鬼と言われても納得出来ないだろう。

寧ろこのが現状を受け入れている張本人である岸波がヤバイと言える

 

「魔界の地獄って場所がヴァルバトーゼのいた所らしいからこの世では無いんじゃないかな?」

 

「魔界の地獄って…魔界なのか地獄なのかハッキリしろ!」

 

「だってヴァルバトーゼ自身がそう言ってたし」

 

「と言うかサーヴァントは英霊の座って場所から呼ばれて来るんだから、そんな場所から呼ばれて来る筈が無いだろ!」

 

「そんな事言われても…」

 

シンジと岸波の会話に凛が疲れたような顔をして話し始める

 

「あー…記憶喪失なら分かる訳が無いわね」

 

「しょうがないか…さっきの借りも返すついで聖杯戦争について教えてあげる」

 

まずここは何処だか分かるかしら?

えっ…学校?まぁ間違っては無いんだけど、そうじゃないの。ここはセラフと呼ばれる『電子虚構世界』つまりはプログラムから成り立ってる世界なの。

セラフは万能の力を持つ『聖杯』と呼ばれるものから作られててその『聖杯』は月にあるとされてるわ。

 

えっ…そんな事よりも聖杯戦争について教えてやれ?うっさいわよ馬鹿は黙ってなさい

 

聖杯戦争は分かりやすく言えば優勝者が願いを叶える権利を手に入れれるって言えば良いかしら。願いを叶える為に皆この世界に来たのだがら当然と言えばそうなのだけどね。

聖杯戦争では参加者である『マスター』と『サーヴァント』つまりは主従で共に戦うって訳ね

戦って戦って戦って…最終的に残った1組が聖杯の元までたどり着ける。

ようは勝てば良いって事。シンプルで良いでしょ?

 

貴女のサーヴァント…違う?ヴァルバトーゼ?……そこはどうでも良いから話を続けるわよ。貴女はそのヴァルバトーゼと共に勝ち抜けば良いのよ。その事を分かっていれば…あっ大切な事を言うのを忘れてたわ

 

サーヴァントは過去の英雄達なの。例えば龍殺しの大英雄『ジークフリード』やアーサー王伝説の『アーサー王』神話群の中でも圧倒的な知名度を持つ『ヘラクレス』等が分かりやすい英雄って感じかしらね

 

そして彼等は『宝具』と呼ばれる彼等の人生の結晶が力となった物を持っているわ。ここは特に重要だからこれ以上忘れないようにしなさい。

『宝具』はサーヴァントによって多種多様、例えば『アーサー王』ならば、かの聖剣『エクスカリバー』があるわ。良くゲームとかで見るでしょ何かビーム出してそうなアレよアレ

って流石に分からないわよね…まぁ宝具はサーヴァントの正体と弱点を晒すのと同意義だから軽々しく出したら駄目よ。

どうせアンタの…ヴァルバトーゼだっけ?そんな奴の宝具見せられても訳が分からないだけだろうから気にする事も無いのだろうけど

 

要するに過去の英雄たるサーヴァントと共にこの聖杯戦争を勝ち抜く。その為には貴女と彼の協力が必須って事、分かった?

 

「はい!ここまでで質問がある岸波さんはいますか!?」

 

「…分かりました(白目)」

 

「いや白目向いてるじゃん。何も分かってないだろお前」

 

白目を向く岸波にそれを突っ込むシンジ。まるで岸波がオバカさんに思える状況だが、少し待って欲しい。いきなりベラベラと言われて全部理解出来る人がいるだろうか?

少なくとも私には出来ない(記憶力ZERO)

 

「ファルシでルシがコクーンでパージって事でしょ。これでも学園生活中の筆記試験ではそこそこ点が良かったんだから!」

 

それを前提においてもその回答は無い。どうしてそうなった。お前の思考回路が非常に気になる

 

「隣に同じクラスで友人役だった男がいるのによくもそんなホラを吹けるね。数学が分からなくてで泣き付いて来た奴の台詞とは『わー!わー!わー!』…五月蝿い!」

 

顔を真っ赤にして言葉を書き消そうとする岸波とツッコミを入れるシンジ。どう見ても漫才芸人である

 

「…アンタら仲良過ぎでしょ。どんな学園生活を送ってたのか分かるわ」

 

「私達は友人同士だし。ねシンジ?」

 

笑顔で岸波は語り掛けるがシンジはそれに対して呆れたように話し始める

 

「…オイオイ岸波、僕とお前は友人役であっただけでお手手を繋ぎ合ってピクニックに行くような間柄じゃないぜ?」

 

「…またまたー」

 

少し驚いた顔をするも直ぐに笑顔に戻りながらそう言葉を続ける岸波

 

「いや、そうだろ?所詮は仮初の記憶に植え付けられた関係言わばロールプレイをしてただけだしね。そんな僕達が友達だなんて」

 

だがそれをバッサリと切り捨てるシンジ。その言葉が出れば出るほど岸波の顔が下へと俯いていく

 

「……」

 

「大体天才の僕と君が吊りあってるとでも?」

 

「まっ、まぁ……岸波がどーしても僕と友達になって欲しいと言うなら今回だけは特別にロールプレイだけじゃない。ちゃんとし」

 

「……もういい」

 

「へっ…?今なんて言ったんだ?」

 

「もういい!シンジ何て知らない!このワカメ頭!オタンコナス!キザ野郎!」

 

「何だよいきなり…何で怒ってるんだ?」

 

突如激昂する岸波に驚いたような顔をして話すシンジ、その姿を見た岸波が大声をあげながら手を振りかぶる

 

「ーーーッ!?シンジなんて大ッ嫌いッッ!!」

 

屋上にパチンッと心地良い音が響いた

 

「シンジの馬鹿…なんであんな事を言うの?酷いよ……大切な友達だと思ってたのに」

 

「(やっぱり…話を聞く限りはそう言っていませんね。シンジさんも友達になって欲しいのなら恥ずかしがらずに言えば良かったものを)」

 

「(本当にどうしましょう。参加者の心身のカウンセリング担当ですがここまで子どもな喧嘩をされるとどうカウンセリングすれば良いのやら)」

 

落ち込んでる生徒に何といえば良いのか分からずオロオロとする新人教師のような状態が暫く続くと保健室の扉を勢い良く開けられる

 

「何をウジウジとしている。さっさと立ち上がれ」

 

「だって…」

 

「(辛辣!ヴァルバトーゼさんちょっと言葉掛けがきついです!もっと相手を思いやってですね!?)」

 

入って来たのはスパルタな御両親…いや何方かと言えば辛辣な先輩といった所だろうか、そんなヴァルバトーゼが保健室に入りズカズカと音を立てて岸波が座ってる椅子の前に立つ

 

「………」

 

「愚か者が!その程度で折れる奴に俺は呼ばれた訳では無いぞ!」

 

「友だと思っていた者が友では無かった!?結構、それで良い。ならば己の全てを持ってして奴と友となれば良いだけの話だ!」

 

「己の…全て?」

 

ヴァルバトーゼの言葉にピクリと反応する。それを逃さぬと言葉を畳み掛けていく

 

「勝ち進めば必ず小僧との戦場を用意される。あの小僧と死力を尽くし殴り合え!そうすればお前の望む物が得られる筈だ!」

 

「(それは…良いんでしょうか?)」

 

「本当に…シンジと友達になれる?」

 

「(食いついたッ!?)」

 

「当然だ。誇り高き悪魔である俺は嘘などつかん!」

 

「本当に?約束してくれる?」

 

「約束しよう。必ずやお前と小僧は良き友となれる…いやお前の生涯において親友と呼べる存在になるだろう」

 

「私…頑張る。頑張ってシンジと親友になってみせる!」

 

「その意気だ。精精気張れ!」

 

「(…もうどうにでもなーれ)」

 

そして、そのまま桜に礼を言って保健室から岸波を連れ出す辛辣な先輩改め、熱血教師ヴァルバトーゼ。そんな彼等の姿を煤けたような姿で見送る桜

 

「もしかして…参加者ってこんな人ばっかりなの?」

 

いや、これは例外です。色んな意味で

 

「取り敢えず…腹が減ってるからそんなネガティブな考えに支配されるのだ。イワシを食べろ!イワシを食べれば血液サラサラ頭も良くなり、その美味しさから嫌な事は全て吹き飛ぶスグレモノだ!」

 

「ヴァルバトーゼはイワシが好きなの?」

 

「当然だ。俺の身体はイワシで出来ていると言っても過言ではない。血潮はカタクチイワシで心は真魚強だ」

 

「吸血鬼要素の無さにビックリ。イワシ100%って何それ凄い」

 

「お前もイワシの奥の深さをしれば俺の言っている言葉の意味が理解出来るかもしれないな。イワシは生でもいけるし焼いても上手い、イワシを食べた事のある者ならば分かるであろうあの食感、風味、素晴らしい味!素朴ながらこの世の全てを体現したと言っても過言では無いあの肉体の黄金比率!見ればかぶりつきたくなるプリプリの身!イワシこそが魚の、いや食べ物の頂点だ!」

 

「うわぁ…(絶句)」

 

そんなイワシな話をしながら廊下を進む二人、彼等の言葉を聞いて思わずイワシが食べたくなった日本人マスターとサーヴァント達が食堂へ向かっている中二人も食堂へ向かって足を進める

 

目指すは勿論

 

「さて。ここでもイワシが食べられるのならば良いのだが……先ずは食堂に行き新鮮なイワシがあるかを調べなければ!」

 

「何だかイワシが食べたくなってきた…」

 

食堂である

 

 




「ふん!面白い俺達マグロ組に勝てるわきゃあ無いだろうが!」

「鰯はすっこんでな!この雑魚野郎!」

「うっ…うぅ……」

彼は願った…誰よりも強い魚になりたいと

「おら鰯。さっさとその貧相な尾ビレを使ってジャンプしてみな!」

「うっ…うぅ……」チャリンチャリン

彼は願った……コイツらを倒せる程の強くなりたいと!

「俺のトレーニングはキツイぞ?鰯がついてこれるか?」

「僕は鰯のままじゃ嫌なんです!強魚、イワシになりたいんです!その為ならばどんな辛いトレーニングも耐えます!」

魚強ーイワシー 来週夜8時から放送開始!

閣下「…名作確定。Blu-ray100万枚予約した」

ザビ「やめて!!」



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僕がサブタイトルをですか?そうですね…ガウェイン任せましたよby.理想の聖王

別のも更新しなきゃ……(白目)


 

悪魔とは闇の中に住み、人々を畏れによって戒める存在である。By.閣下

 

「馬鹿な…こんな事があってたまるものか……」

 

足がすくみ身体中から冷や汗が吹き出す。目の前の現実から必死に目を逸らそうとしても現実は残酷な現状をただ視界の中に映し出す。

 

いっそ目を閉じれば良いのだろうか?いや、それだけでは鼻から感じるこの刺激臭から逃れる事は出来ない。

 

「美味しいよ?」

 

「あっ…あぁ……俺はイワシがあれば良い。だからコレは遠慮させて」

 

小娘が進めてくるのは、職場で良く見る地獄の釜の中を更に煮詰めたような…赤くグツグツと煮え滾るマグマのような色をしている食べ物、これを食べれば口の中は煉獄の炎に包まれて焼き尽くされるさっき体験したのだから間違いない。

 

これは俺が食した物のどれよりも凶悪で最悪な食べ物だ。

 

「食べないの?」

 

おどろおどろしい赤色の中に白骨化した骨の様な色のした物が浮き出ているこの物体を一体誰が好き好んで食べたいと思うのだろうか。これを食べたいと思うものは魔界でもそうはいない筈だ。寧ろ下級悪魔共に食べされば鍛錬の一つにでもなるのではないか?

 

イワシ…あぁイワシ。幾らお前の力だろうとも、このこの世の全ての地獄を詰め込んだコレには対処のしようが無い

 

「美味しいのに…」

 

そう言いながらその物体を食べる岸波。見るだけで目を悪くしそうな赤い物体を口に入れ食べる姿は本人の普通過ぎる雰囲気と比べて余りにも異常であった。

 

「…まぁ俺にはイワシがあるから別に良いが」

 

「だったらイワシに付けて食べたら良いんじゃないかな!」

 

そう言うとヴァルバトーゼの手に握られているイワシにその物体を掛けようとするがヴァルバトーゼがそれを全力で拒否するかの如く身体を捩らせる

 

「やめろ!それはイワシ…いや食べ物への冒涜だぞ!」

 

「麻婆豆腐だってれっきとした食べ物だよ!」

 

そう、麻婆豆腐。麻婆豆腐なのだ。だがこの麻婆豆腐はただの麻婆豆腐では無い。風の噂ではかの英雄王ですらこれを食べるのを拒んだと何処かで噂される曰く付きの食べ物なのだ。

その辛さは聖杯の泥すらも凌駕する苦痛を食べてるものに与えるのだが(作者の適当な考察)

岸波白野、これを全く辛くなさそうに食す。寧ろ美味しそうに食べており食堂にいる他の人達をドン引きさせている。

 

エッアレタベテルノ…?ヤバクネナンカアカイヲリョウガシテルンダケドアレ…アノマスターガタベテルンダカラクエルモンナンダロオレモタベルゾ!!

グワーッ!メガッシタガハナガァァァッ!ダレダタベタバカハ!ホケンシツ!ホケンシツ!ニツレテイケ!

 

「それは食べ物では無い!拷問用の道具だ!」と言いたくなるが周りにいるマスターと呼ばれる者達がコッチを見てくるのでグッと堪える。と言うか周りの者達もお前のその物体を食べてる姿に驚愕してるではないか。

と言うか誰だこれを食べた命知らずは

 

「美味しー!」

 

「お前が良いのならば良いのではないか?だから俺にそれを食わせようとするな!近付けられるだけで目に染みる!」

 

グイグイとよそった麻婆豆腐をヴァルバトーゼに近付けられる岸波、そしてそれから逃れようと横に傾くヴァルバトーゼ今2人は正面に向き合って食事を取っている。正面から感じる麻婆豆腐の刺激臭にヴァルバトーゼはダメージを負う

 

「皆さん、ごきげんよう」

 

そんな彼等の姿を他の人達は見つめていたが急にその人の群れはざわめきと共にまるでモーゼの奇跡のように二つに分かれていく。

 

「レオナルドビスタリオハーウェイ…ッ!」

 

「嘘だろ…アイツもこの戦争に参加していたのか」

 

「まさかあのハーウェイ自らこの戦争に参加してくるとは……」

 

「優勝候補その一って所か……」

 

「まぁ最後に勝つんわこの俺や。誰がいようとなんら問題は無い」

 

「支配者自らこの戦争に参加してくるとは…西欧財団は本気みたいだな」

 

そんな彼等のざわめきと共に二人の元にサーヴァントと思われる白き騎士と共に1人の少年が現れる。白き騎士は少年の後ろに従者の如く付き従っており、純白の鎧とその付き従う姿だけで生前高名な騎士なのだったのだろうと分かる。

 

「あの時ぶりですね、予選を無事突破出来たようで何よりです…って何を食べてるんですか?」

 

「あー…食べる?」

 

「いりませんよ……そんな刺激臭だけで目が痛くなるシロモノ」

 

「美味しいんだけどなー」

 

そう言いながら麻婆豆腐を口に入れる姿に少し苦笑いを見せ、ハーウェイと呼ばれた少年は岸波に話し掛ける。

 

「ちゃんとした自己紹介がまだでしたね。僕の名前はレオナルドビスタリオハーウェイ。気軽にレオとでも呼んでください」

 

「えーっと…私の名前は岸波白野デス。友好の証に1口」

 

「それを友好の証に渡されたら全面戦争不可避ですね」

 

ニコリと良い笑顔でそう言い切るレオに岸波は差し出していた物を残念そうな顔をして手元に戻す。レオが岸波の前に座っているヴァルバトーゼに目を向けると驚いたように話し掛ける

 

「…貴方は彼女のサーヴァントですか?」

 

「…小僧。その言葉は俺に対して言っているのか?」

 

サーヴァントの言葉にピクリと反応したヴァルバトーゼがレオをじっと見詰める。まるで何かを見定めるように

 

「我が主を小僧呼ばわりするのは止めて貰おうか」

 

「ふん、小僧に小僧と言って何が悪い」

 

白き騎士がヴァルバトーゼに言葉を投げかけるもその言葉は一蹴され、お互いの空気が悪くなっていく

 

「止めなさいガウェイン。いきなり聞いた僕が悪いのです、下がりなさい」

 

レオの言葉にスッと下がるガウェインと呼ばれた白き騎士、その姿に興味を失ったようにヴァルバトーゼは先程食堂で入手したイワシを食べる事に専念し始める

 

「ごめん、ヴァルバトーゼが」

 

「…いえ、気にしていませんよ。ガウェイン紹介を」

 

「従者のガウェインと申します。以後お見知りおきを。どうか貴女が我が主の良き好敵手であらんことを」

 

「あっ…はい。頑張ります」

 

白き騎士がガウェインと名乗った瞬間周りの者達がざわめく。円卓の騎士。太陽の騎士の言葉が岸波の耳に届いてくる

 

「…………」

 

「どうしました?ガウェインの顔に何か」

 

「小僧。一つだけ言っておいてやる」

 

いつの間にか食べるのを止めてガウェインをじっと見つめるヴァルバトーゼにレオが不思議そうに尋ねる

 

「お前は間違いなく生き残る事は出来ん。『お前達』がそのままでいるならばお前は最後の最後で敗北するだろう」

 

「…御忠告、有り難く受取らせて頂きます。ではまたお会いしましょう」

 

ヴァルバトーゼの言葉にそう返事をするとレオはガウェインを引連れてまた戻っていく。そうして彼等の姿が見えなくなった後食堂に先程までの和やかな雰囲気が戻る

 

「柄にも無く言ってしまったか」

 

「ねぇ何でレオ達が最後に負けるだなんて言ったの?」

 

「お前はアイツを見てどう思った?」

 

ヴァルバトーゼの言葉に先程までの二人の姿を思い出す。まるで何処かの王子様のように優れた容姿に余裕のある立ち振る舞い、そしてそれに付き従う従者と言うのが頭の中でよぎる

 

「えーっと…王子様とその従者かな?」

 

「クックックッ…確かにそんな感じだったな」

 

「むー。教えてよー!」

 

「(フェンリッヒ。やはりお前は素晴らしい従者だ、主に苦言を呈する事の出来るお前は従者の鏡と呼べるだろう)」

 

地獄でアタフタしているであろう従者を思い出す。すまんがそっちに戻るのはまだまだ先になりそうだ。俺がいない間のプリニー達の教育は任せるぞ

 

「そろそろ食べ終わっただろう?動き始めるとするか」

 

「待って!ちょっとオカワリしたいんだけど…良い?」

 

「アレをもう一杯食べるだと……ッ!?」

 

俺はこの小娘と共にこの戦いを生き残こらなければならんからな。

 




今日の地獄

「あぁぁぁぁぁぁ!閣下!閣下ァァァッ!」

「まーた始まったッス」

「これで今日何回目ッスかね。まぁヴァルバトーゼ閣下がいないのは俺達も寂しいッスけど」

「ずっとご寝室でお眠りになられてるらしいッスからね…心配ッス」

「喧しい!無駄口を叩く前にとっとと今日の分のノルマを終わらせろ!俺は閣下の容態を見に行かねばならんのだ!」

「「了解しましたッス!」」


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