秋の日のヴィオロンの...もう一つの物語 (メトロポリスパパ)
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【Steep news 聖グロリアーナ】

大洗女子学園優勝記念エキシビションマッチを終え、帰路につく聖グロリアーナ学園艦。
そこに、アッサムから急な知らせが入る。


これが処女作になります。
まさか自分が小説をかくとは夢にも思いませんでした。



大洗エキシビジョンマッチが終了し、聖グロリアーナ女学園の学園艦は、水平線に陽が沈みかけた中を帰路に就いていた。
ダージリンとオレンジペコは隊長室にて茶を嗜んでいる。
そこへ扉をノックする音が。

「失礼します。アッサムです」

ダージリンはティーカップを持ちながら扉の方へ向き答える。

「どうぞ」

アッサムが扉を開けて中に入りオレンジペコを一瞬見つつ、ダージリンの傍らに近づき耳打ちをする。

ダージリンの持っていたティーカップが一瞬揺れたのをオレンジペコは見逃さなかった。

「あの・・・大事なお話しのようですので、わたくしは席を外しましょうか?」

オレンジペコは、只ならぬ何かを感じ、気を利かす。
ダージリンは、ゆっくりティーカップを置き答えた。

「いいえ、よろしくてよ。」

ダージリンは、ふぅと息を吐きゆっくりと話し出す。

「大洗女子学園が今月末をもって廃校になる事が決定したそうよ」

「へ・・・」

オレンジペコの持っていたティーカップが落ち中身をこぼしながら机に転がる。

「そんな・・・さっきまで一緒に試合をしていたんですよ!お風呂にも入って・・・でも・・・大洗は大会に勝って廃校は撤回されたはずでは?!」

オレンジペコは立ち上がり声を荒げる。
そこにアッサムが補足に入る。

「それはあくまで廃校撤回を再検討する、との話で確約ではなく、検討の結果、廃校は年度末では遅すぎるということになったそうです。」

ダージリンが聞く

「書類のやり取りは無かったのですか?」

「はい。恐らく口約束だったのではないでしょうか?」

まさかあの角谷杏生徒会長でも、一介の女子高生相手に国がセコイ真似をしてくるとは思わなかったのであろう。
オレンジペコは力無く座り、ギュッと目を閉じうつむき、両の手の拳を膝の上で握り締め、悔し涙を浮かべている。
ダージリンは立ち上がりオレンジペコの後ろへ回りペコの両肩に手を添え優しく語りかける

「あなたは・・・大洗の大ファンですものね・・・」

ダージリンはスッとアッサムに顔を向け

「アッサム。引き続き情報の収集をお願いできるかしら」

「わかりました」

「ペコ、あなたは部屋にお戻りなさい」

オレンジペコは少し落ち着きを取り戻し”はい”とうなずき、涙を拭きながら

「ダージリン様は・・・?」

「わたくしは・・・少し風に当たってから戻ります。」

ではワタクシも一緒に、とオレンジペコが言おうとした瞬間にアッサムがオレンジペコの肩に手を添えて軽く首を横に振る。
オレンジペコも気が付いたようだ。。

「あ・・・」

アッサムはダージリンとは長い付き合いである。
ダージリンの何かに気が付いたのだろう。


聖グロリアーナ女学院
学園艦の甲板


ダージリンは甲板の手摺りの側で風に当たりながら、眼光鋭く夜空と海の境界を見つめていた。

ピロロロロロロ!ピロロロロロロ!

そこへ艦内連絡用のPHSが鳴る
PHSの画面に目をやると無線室からの着信であった。

「はい」

「ダージリン様でございますか?」

「そうよ」

「サンダース大付属高校 戦車道 隊長のケイ様より通信が入っております。いかがなさいましょう?」

電話ではなく無線?
ダージリンは少し首を捻りつつ

「わかりました、向かいますので、暫くお待ち下さいと伝えておいていただけるかしら」

「かしこまりました」

PHSを切り、恐らく大洗の事であろうと思いつつ無線室へ向かうダージリンであった。



サンダース大学附属高校 戦車道 隊長のケイは、大洗女子学園 生徒会長 角谷杏からあるお願いをされる。
次回
「Steep news サンダース」
よろしくお願いいたします。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
後書き

皆さまこんにちは。
この【Steep news 聖グロリアーナ】が人生で初めての小説です。
仕事の休憩中にiPhoneのメモで書いてみたら、何となく書けてしまったのでハーメルンに載せてみた次第です。
さて。
劇場版ガールズ&パンツァー。
なんなんでしょうね?
特に捻った話しでも無く。ザ・王道な話しなのに、非常に胸熱で戦車の描写も最高でした!
学園十色の場面はスパロボ、或いはACECOMBAT5を思わせるような。
で、
何度か映画を見に行く内にまさしく、「もう一つの物語」が気になりまして。
その辺りを気にしながら映画を見る内になんとなーく話が見えてきました。
まず、初めに思ったのは、大洗の制服。
みんな着てますよね。
それと「鉄獅子22両事件」
あなたの所は6両とダーさんに注意されました。
ダージリンのあの「秋の日の・・・」は呼び掛けではなく
事前にある程度周到に準備していたのではないか?
事前に各校が集まり打ち合わせをしていたと。
あの秋の詩はDdayの時にも作戦開始の合図として使われました。
なるほどね〜と。
では、一番初めに大洗廃校を知ったのは誰か?
これは、間違いなくサンダースのケイ。
大洗は戦車を守りたい。角谷生徒会長はすかさずケイに連絡したでしょう。
そして、次は聖グロのダージリン。
カルパッチョかもしれないのですが、あえてダージリンにしました。
それが【Steep news 聖グロリアーナ】であります。
この小説を書くにあたり気を付けたのは
出来るだけシンプルにしたった。
自分のボキャブラリーが無いというのもありますがw
読んで頂いている方々に想像して欲しいな〜と。

アッサムですが、聖グロの諜報機関に所属しているという事らしいので直ぐに耳に入ってくるだろうと。
そして、ダージリンの耳に入り物語が始まるのであります。


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【Steep news サンダース】

サンダース大学付属高校 戦車道 隊長ケイに大洗女子学園生徒会長 角谷杏から急な知らせとお願いが入る。


陽が沈みかけた頃
サンダース大学付属高校 戦車道 隊長室
隊長のケイは背部から西日が差すなか、いかにもな椅子に腰かけ足を組み
両の手も後頭部で組み、前後にユラユラと揺れながら天井を見つめていた。
机の上には大洗の地図と赤、青、黄、白の戦車の駒が散らばっている。
ケイの席から向かって左側と右側、ちょっと離れた所に机と椅子があり、それは副隊長の席となっている。
右側の席で副隊長のナオミは難しい顔をしながら書類にペンを入れつつ左手で頭を掻いている。
ナオミの後ろには同じく副隊長のアリサが書類を覗き込み、指を差しながら何かアドバイスをしているようだ。

ポロンコロン♪ポロンコロン♪

ケイの携帯電話が鳴り画面に目をやる。

「アンジーから?」

アンジーこと大洗女子学園生徒会長「角谷杏」からであった。
アンジーと呼んでいるのはケイだけであるが・・・。
携帯電話に直接かかってくるという事は
まったくどうでもいい話か個人的な話のどちらかであろう。
なんとなくではあるが、ケイは席を立ち廊下に出た。

「ハァーイ!アンジー」

「やぁやぁ!おケイ」

「そうそう!エキシビジョンね、テレビで見てたわよ!エキサイティングな試合だったわ!
私たちもうちの大学との練習試合がなかったら絶対参加してたのに!」

「ははは・・・あんがと。ところでさぁ~お願いがあるんだけどいいかなぁ?」

ん?
なんかいつものアンジーと違うような・・・・直ぐに本題に入ろうとするし・・・。
ケイは片方の眉毛を下げながら聞く。

「なに?どうしたの?」

「実はさぁ~、うちの学校、今月末で廃校になっちゃうんだ・・・」

「・・・・・・・・・Whhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhy!!」

廊下中に、もちろん隊長室の中に居るアリサとナオミにも聞こえた。
二人はビクッとして顔を見合わせ扉の方に行き聞き耳を立てる。

「なんで?!どうして?!大会に優勝して廃校は免れたんじゃないの?!」

恐らく誰が聞いてもこの反応であろう。

「そのつもりだったんだけど・・・・」

杏は事の経緯を説明する・・・。

「Oh・・・Shit」

「それでさぁ~戦車もすべて文科省預かりになってしまうんだよね・・・それは避けたくて・・・戦車だけはどうしても守りたいんだぁ・・・移動先が決まるまでの間でいいから、戦車・・・預かってくれないかな・・・ケイ」

「・・・OK・・・わかったわ。うちで大洗の戦車、預かるわよ。で、何時行けばいい?」

「明日の朝には退艦しなくちゃいけなくて・・・だから、出来るだけ早くお願いしたいんだけどいいかな?それと・・・戦車は紛失したという事にして書類を作成したから・・・」

さっきまで試合をしておいて戦車を紛失したとはえらく強引な話ではあるが
それぐらい切羽詰まっているという事だろう。

「という事は今日中にか~・・・OK!任せといて!出来るだけ早く行くわ!輸送機で行く事になると思うから、着陸地点の確保、誘導灯の設置と管制役を用意しておいて。」

「わかった・・・ありがとね・・・ケイ」

「フフ・・・困った時はお互いさまでしょ。文科省に戦車は絶対渡さないわ!それじゃすぐ行くから!また近くまで来たら連絡するね」

「うん・・・わかった・・・」

お互い電話を切り、ケイはしばし沈黙の後・・・。

「ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

廊下中に放送禁止用語が響き渡る。

ドア越しに聞いていたナオミとアリサもビックリしてのけ反る。

「ハァハァ・・・・フゥ~」

落ち着いたようだ
ナオミとアリサが顔を見合わせている所にドアノブがガチャリと動く。
二人はビッと直立する。
ケイが隊長室に入り扉を閉めると・・・。

「聞いてたわよね・・・。」

「は・・・はい」

ケイはすまなそうな顔をして

「今から大洗に行くけど・・・付いて来てくれる?」

ナオミとアリサは一瞬お互いの顔を見て軽く微笑み

「Yes,ma'am!」

「ありがとう。よし!行くわよ!Here we go!・・・・と言いたい所だけど・・・」

いくらサンダースと言えどいきなり輸送機を飛ばすというのは普通は無理な相談である。
アリサが話す

「戦車8両を積むとなるとC‐5Mになる思うのですが、それでも恐らくペイロードギリギリです。出来るだけ搭載燃料を減らして戦車を積んで離陸の後、空中給油をする算段になるかと思われます。」

つまり空中給油機にも随伴してもらわないといけないであろうと・・。
ケイはしばし腕組みをして思案した後

「わたしは校長の所に行ってくるわ。アリサとナオミは燃料搭載量の算出と、今出来るだけの準備をしておいて」

「Yes,ma'am!」

サンダース大学付属高校学園艦 校長室前

ケイは校長室の前に居た
フゥ・・・と一呼吸入れてノックをする

コンコン

「高等部3年、戦車道隊長、ケイです」

中からダンディーな声が聞こえる

「入りなさい」

「失礼します」

ケイが扉を開けて中に入る。

校長席で書類を眺めていたその人は書類を置きケイの方を見て話しだす。

「どうしたんだい?」

何時ものケイじゃない事にすぐに気づく

「校長・・・お願いがあります!」

サンダース大学付属高校 校長 ハーリング
ケイの性格はよく知っている。
小さいころから納得いかないことがあると直ぐに行動に出る。
今でもちょくちょくと胃が痛くなる話も入って来るが、でもそれはいつも誰かの為であった。
だが、今回は少し事情が違うようだ。
子供的わがままみたいなお願い事はあるけれど
直接、切実なお願いをされる事は今回が初めてである。

「・・・・言ってごらん」

「何も言わずに貸して頂きたいのです。C-5MとKC-10を1機づつ、今すぐに」

「今からかい?・・・納得できるだけの理由はあるのかな?」

ケイは迷った
適当な”ウソ”をついて誤魔化すのか・・・すべて本当の事を話すのか。
ゴクッと生唾を飲み話し出す。

「大洗女子学園の戦車8両を預かりに行きます」

ん?となるハーリング

「なぜ、大洗から戦車を預かるんだい?」

「御存知だと思いますが、文科省は大洗と約束をしました。高校戦車道全国大会で優勝すれば廃校を撤回すると。しかし、文科省はその約束を反故にし、先程大洗に廃校を宣言したそうです。戦車も接収されるとの事・・・だから・・・友達を助けたいの!角谷生徒会長・・・アンジーから頼まれたの!戦車を預かってほしいって!戦車だけは守りたいって!彼女達は戦車で学園を救ったの!それを理不尽に廃校にされ、更に戦車まで没収される事にあの子たちも・・・私も耐えられない!お願い・・・パパ」

ふぅ・・・
ハーリングは机に肘をつき鼻の下で指を組み考え込む・・・・。

「・・・おやっさんには伝えておく」

ケイの顔がパッ明るくなる

「ありがとうございます!あと・・それと・・・」

え?まだなにかあるの?という顔をするハーリング。

「多分・・・文科省から問い合わせが来ると思うから」

はぁ~・・・ため息を付きつつ、目をギュッと瞑りうなだれるハーリング

「わかった・・・やってみるさ。まったく・・・困った娘だ。」

「仕方ないじゃない・・・パパの娘だもん」

またふぅ・・とため息をつきつつ軽く微笑むハーリング

「行ってきなさい」

「ありがとうパパ!愛してる!」

ケイがバタバタと出て行った後、ハーリングは電話をかける

トゥルルルルル・・・・ガチャ

「はい、サンダース空輸課です」

生徒であろうかわいらしい声での応答である。

「ハーリングです。おやっさんはおられますか?」

「少々お待ちください」

「はい、ビーグルだが、どうしたんだい?珍しい。」

渋い声である。
彼はピーター・N・ビーグル
空輸課の整備顧問である。
整備生や教師からは敬意を表し「おやっさん」と呼ばれている。

「今、娘がそっちに向かっていると思いますから、彼女にC-5MとKC-10を貸してやってもらえませんか?」

え?と驚くおやっさん

「今からかい?・・・・フフ・・・またケイがなんかしたのかい?」

「いや・・・今からするんですよ」

とハーリングは苦笑い。

「フフ・・・ははははは!わかった。まだ生徒も居るから準備してもらうとしよう。KC-10の方も乗員が居るから飛んでもらうよ」

「ご迷惑をおかけします」

「いいさ・・・また、飲みながらケイが何をやらかしたか詳しく話を聞かせてくれよ、君のおごりで」

「ははは、わかりました。では」

ハーリングは電話を切り受話器に手を乗せたまま、電話機を見つめている。
そして、どこか誇らしい顔をしていた。

バタバタと隊長室に戻ってきたケイ。

「ナオミ!アリサ!OKが出たわ。おじさんにも今会ってきて、空輸課で準備をしてくれるって。こっちの準備はどうなってる?」

ナオミが答える

「燃料の計算と必要であろうラッシング等のリストアップはした」

「わかったわ。空輸課にすぐに連絡して準備してもらって!」

「わかった」

「後は駐機場でやりましょう!行くわよ!Here we go!」

駐機場までの移動中に連絡を終え、彼女たちはC-5Mスーパーギャラクシーに乗り込み航路のセットアップ等各自が手順を実行している。

KC-10エクステンダーは指定空域で待機するために先に離陸していた。
しばらくしてC-5Mも給油とセットアップを終え誘導路をゆっくりと滑走路に向かって動き出す。
滑走路に入り、管制より離陸の許可をもらう副機長のケイ。

「ワイルドグース8492、離陸許可」

「こちらワイルドグース8492了解」

機長のナオミはスロットルを開け、ブレーキを解除すると機は一瞬揺れた後、前進を初め加速していく。
ケイは大気速度計を見ながらチェックする。

「V・・・1・・・ローテート」

ナオミが操縦桿を引くと少し間を置き機首が上がり、高度計の高度も上がっていく。

「V2・・・ポジティブ」

ナオミから指示が出る

「ギアアップ」

ギアアップの指示に答えるケイ

「ギアアップ!」

ランディングギアが格納され高度を上げていくC-5M。
格納庫の前に居るおやっさんに見届けられながら、彼女たちは空に上がって行った。




次回予告
大洗の戦車を預かるために空に上がったサンダースのケイは、聖グロリアーナのダージリンに無線連絡をする。
次回【Two of the huddle】

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
後書きでございます。
杏から知らせを聞き、お願いをされたケイ。
ケイなら断る筈がないですよねw
それと、オリキャラが2人ほど登場します。
校長のハーリングさんとビーグルさん。
こちらを見て頂ければ性格付けが分かりやすいと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=l1Ba2O-VKa8
そうです!エースコンバット5ですね。
おやっさんは23:14辺り、ハーリングさんは46:38辺りです。
ここから結構アイデアをもらったりしています。
2016/9/19に文回しの調整とセリフの調整、追加をしました。
V1ローテートはどうしても入れたかったんです!w


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【Two secret conferences】

大洗の戦車を預かるために空に上がったサンダースのケイ、ナオミ、アリサ。
アリサに無線をセッティングしてもらい、ケイはどこかに無線を飛ばした。


C-5Mは巡航高度に入り、自動操縦にて飛行していた。
しばしの間、ケイ、アリサ、ナオミが一息つける時間だ。
ケイとアリサがゴソゴソと操縦室後方に移動し無線機をいじり始めた。
ナオミは機長席からその様子を覗いている。
アリサがケイの方に振り返り心配そうに言う

「これで良い筈です・・・けど、いいのですか?」

「OK、ありがとう」

ケイはヘッドセットを付けてPTTボタンを押す

「あー、あー、ブレイク、こちらはサンダース大学付属高校戦車道隊長のケイと言います、応答願う」

その頃、聖グロリアーナ女学院 情報処理学部の無線室では大騒ぎになっていた。
秘匿回線に通信が入ってきたのだ、しかも堂々とサンダースから。
協定を無視した行為であり、これは前代未聞である。

※アッサムは、情報処理学部第6課 通称GI6に所属している。

通信手が困惑している。

「室長!どう致しますか?応答いたしますか?」

室長と思われる生徒も片目をギュッと瞑り”いやぁ~・・・”という顔をしている。
引き続き通信が入る。

「こちらはサンダース大学付属高校戦車道隊長のケイと言います、入感有りましたら聖グロリアーナ戦車道隊長のダージリンを呼んで頂きたく、応答願います」

室長が迷っている所で、後ろから肩を触れられ振り向くとアッサムであった。
アッサムは黙ったまま首を縦に振る。
室長は軽く頷くと。

「応答してさしあげろ」

通信手も、こくっと頷く

「こちら、聖グロリアーナ女学園です」

「応答感謝します。秘匿回線に割り込んで申し訳ない、戦車道隊長のダージリンに繋いで頂けないでしょうか?」

通信手がアッサムを見る
アッサムが頷く

「了解いたしました、しばらくお待ちください」

室長がPHSでダージリンに電話をかけると、程無くダージリンが無線室にやってきた。

通信手がPTTボタンを押す

「こちら、聖グロリアーナ、ケイ様、応答願います」

「こちらケイよ」

「ダージリン様がお見えになられましたのでお繋ぎいたします」

「了解」

通信手が、どうぞ、と席を譲る。
ありがとう、と言いダージリンが席に着く

「おまたせ、ダージリンよ」

「ハァーイ!ダージリン、元気してた?」

「ええ、お陰様で、それより・・・まるでチューリングね」

「そこはフリードマンって言って欲しいかな」

軽い挨拶と談笑の後、ダージリンが本題に入る

「で、わざわざこちらの秘匿回線に割り込んでまでの、無線通信の理由はなんなのかしら?」

「ん~~・・・実はね、今、輸送機で大洗に向けて移動中なのよ」

やはり大洗の・・・とダージリンは思いつつ

「なるほど、それで無線なのね、で、なぜそれをわたくしに?」

「ダージリンは、もう知っちゃってたりするんじゃないのぉ~?」

あれだけの部隊を指揮している隊長だけあって侮れない。
とぼけても仕様がないので知っている事を話すダージリン

「ええ、大洗が今月末で廃校になるという事は先ほど聞きましてよ。今の所、わたくしが知っているのはそれだけ・・・それで、ケイさんは何故、大洗まで輸送機を飛ばしていらっしゃるの?」

少し間が空きケイが答えた・・・。

「・・・アンジーに頼まれたの」

アンジー?
ダージリンはちょっと首をひねり、すぐに”あー”と頷く。
角谷杏生徒会長の事ね。
続けてケイが話す

「大洗の戦車も文科省に没収されちゃうらしくって、それで、うちに戦車を預かってくれないか?って。戦車だけは守りたいってお願いされたの」

なるほど、ケイなら断らないだろう。
フェアプレイを是とする隊長であるケイが、大洗廃校の話しを聞き、怒り狂っている様を思い出して、ニヤッとするダージリン。

「なるほど、それで輸送機で移動中ですのね」

ダージリンは、遠くの方にかすかな、小さい光が見えたような気がした。
聖グロリアーナやサンダース等の強豪校は資金の潤沢な私立校である。
対して大洗女子学園は公立校、文科省に抗議を入れたとしても門前払いか、資金をを出せとなるだろう。
当然、資金を出す理由は私立校には無い。生徒にそんな権限も無い・・・。
現状で出来る事と言えば、大洗の戦車道隊員を引き取る事ぐらいしかと思っていたが・・・。
角谷杏生徒会長が動いている。

《会長は諦めていない・・・》

ケイが話す

「でね、戦車は大洗の方で紛失したという書類を作ったらしいんだけど、正直、ちょっと無理があると思うんだよね~」

ダージリンも首を捻り

「流石に、ちょっと無理が有りますわね・・・汗 ついさっきまでわたくし達と試合をしていましたし」

「でしょ~?よほど切羽詰まってるんじゃないか?って、明日の朝までには退艦しないといけないって言ってたし、それに、私達が大洗まで飛んでるのも調べれば即バレる訳だし」

「確かにそうね」

サンダースが飛ばしているのは、当然であるが一般機である。
フライトプランを出し、トランスポンダーにより管制レーダーにも捉えられている。
もし、プランを出さずにトランスポンダーを切って飛べば、すぐさま空自のF-15J改イーグル+にインターセプトされるだろう。

「でね、お願いがあるの。残念だけど私達はもうこれ以上動けないのよ。これ以上動けば勘ぐられる、だから秘匿通信にしたの・・・私は大洗を助けたいと思ってる!もしダージリンにその気があるなら・・・ここからはダージリンに動いてもらいたいの」

ダージリンは目を閉じて俯き、軽く微笑んでいる。
そこから顔を上げ目を開けて話しだす。

「どこまで出来ますか分かりませんが・・・よろこんでお引き受けいたしますわ」

「ありがとう!ダージリン」

ケイの感謝の言葉の向こう側で”パン!”とハイタッチの音が聞こえた。

「フフ・・・もうすでにアッサムには動いてもらっているんだけどね」

「そうなんだ~流石ね~」

「後はこちらに任せて、ケイさんは大洗の戦車を助けてあげて。それと、この回線はこれからは、この件についての連絡用に開けておきますわ」

「わかったわ!何か分かったら連絡ちょうだい、それじゃあね。OUT」

「わかりました。FOR OUT」

ダージリンは立ち上がり、通信手に御礼を言って無線室を出る。
続いてアッサムも出てくる。

「アッサム、聞いての通りよ。会長さんは諦めずに動いているようです。ならば、何があるか分かりませんが、何かが起こるはずです。会長さんの動きを調べて頂けるかしら、ただし、役人さんには感付かれないようにお願いしますね、会長さんにもです。もし感付かれてしまえば会長さんの行動が水泡に帰してしまいますわよ」

「そうですね、わかりました。それと、後、二~三日もすれば大洗廃校の報は知れ渡ることになると思いますが・・・」

「それは、追い風になりますわ」

「そうですね・・・では」

アッサムは一礼し、また無線室に入っていく。
ダージリンは、半目で口を閉じてニヤッとする。
廊下の明かりで顔の右上辺りに真っ黒な影ができている。
たぶん、一番憤慨しているのはダージリンなのかもしれないのであった。



浮かない顔でいるカルパッチョにアンチョビが尋ねると・・・。
次回【Steep news アンツィオ】

2016/12/07
間違えて削除してしまった為、セリフ回しを少し変えて再掲載しました。


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【Steep news アンツィオ】

大洗廃校の知らせを聞いた、アンツィオのドゥーチェ アンチョビと愉快な仲間たち。


アンツィオ高校、戦車道部の更衣室。
今日は朝練の日である。
1人の女性が髪の毛のセットをしていた。
彼女は何時も一番乗りだ。
服を着替えて、メガネからコンタクトに、そして、髪の毛のセット。
後ろに太く編んだ三つ編みを解いて、左右に分けてリボンで結ぶ。
俗に言うツインテールである。
右側のリボンを結んで、左側を結ぼうかという所で誰かが入ってきた。

「おはようございます・・・ドゥーチェ」

ツインテールの女性は鏡越しに確認し、挨拶する。

「おはよう、カルパッチョ」

よし!と、左側のリボンを結び、ドゥーチェ アンチョビの完成である。
鏡からカルパッチョに、身体の向きを変えると、カルパッチョはロッカーの扉を開けたまま、うつむき加減で、はぁ・・・、とため息を付いている。
何処となく目が赤く、下瞼も腫れているように見えた。

「ん?どうした?カルパッチョ、元気無いじゃないか」

カルパッチョは、ハッとしてドゥーチの方に向き答える

「いえ、なんでもないんです・・・」

ん〜・・・そんな事は無いだろう?と思いながら、アンチョビは冗談のつもりで言う。

「なんだぁ?たかちゃんとケンカでもしたのか?」

その瞬間、カルパッチョの顔が益々どんよりとしていく。
ゔおおおおおおお!マジだったのかぁー!
慌てて謝る。

「すまんー!わざとじゃ無いんだ!冗談のつもりだったんだー!」

アンチョビはカルパッチョの前で、両手をわちゃわちゃしながら謝る。

フフ・・・、と軽くカルパッチョは笑い。

「すいませんドゥーチェ、心配させてしまって、違うんです」

ふぃ〜、と安心するアンチョビ。

アンチョビが聞き直す前にカルパッチョから話し出す。

「実は、たかちゃんから連絡があって、大洗が廃校になったと・・・」

「・・・はぁぁぁああああー?!」

驚きつつ疑うアンチョビ。

「それはマジなのか?」

「はい・・・エキシビションの後に、役人の人が来て廃校を宣言されたと」

「なに?!そんなことが許されるのか?!」

「廃校撤回は、再検討するとの約束で確約では無いと、再検討した結果、今月末で廃校になると」

「今月末って・・・あと一週間も無いじゃないか!」

「はい・・・たかちゃん達も抵抗しようとしたんですが、抵抗すれば職員や一般の方達の再就職は斡旋しない・・・と」

「ぐ・・・」

アンチョビはやり場の無い気持ちになる。

「で、大洗のやつらはどうなるんだ?」

「今日、退艦したそうで、身の振り方が決まるまでバスで大洗の各地に分散して待機するそうです」

どよーん・・・となるアンチョビ。

慌ててカルパッチョが言う。

「あ!でも戦車は没収されずに済んだそうです!サンダースの方達が移動先が決まるまで預かってくれるみたいで、昨日引き取りに来てくれたと」

「そうか・・・」

そこで、バン!とドアが開き。

「おはよーっす!あれ?どうしたんすか?」

ぬ!ペパロニ!
何故か二人は慌てる。

「なんすか?なんかあったんっすかぁ?」

「ん!あ!いや!なんでもないんだ」

「そうそう」

んー?と首を捻るペパロニ。

「さあ!練習の時間だ!行くぞ!」

「は、はいー!」

アンチョビとカルパッチョはそそくさと出て行く。
カルパッチョに至っては制服のままである。

「自分、今来たとこなんすけどー!ちょ待ってくださいよー!」

二人は逃げるように歩きながら思った。
なんか分からないが、とりあえず、ペパロニにはまだ黙っていようと。
それと、まずは練習だ、考えるのは後にしよう。




正午を半分回った頃

夏休み中であるが外は観光客で賑わっている。
街角には、部や委員会などが露店を出している。
練習も終わり、アンチョビとカルパッチョは、カフェテラスでジェラートを食べながら午後のひと時を過ごしていた。
そこに、生徒の一人が駆け寄ってきた。

「安斎先輩!」

「アンチョビと呼べと言ってるだろ!」

「あ、すいませーん」

「んで?どうしたんだ?」

ちょっと困ったような顔をして生徒が答える。

「なんかコロッセオで、戦車道の人達が騒いでるんですけどぉ」

んん〜?とアンチョビとカルパッチョは顔を見合わせる。
ま、とりあえず行ってみよう。
コロッセオの中に入ると、露店に居るはずのペパロニがフライパンを振り回しながら、CV33の上で何やらわめいている。
その周りでは隊員が、そうだそうだー!と騒いでいる。
慌てて駆け寄るアンチョビとカルパッチョ。

「なんだおまえら!なにをしている?!」

ペパロニがアンチョビに気付き答える。

「あ!姐さん!今呼びに行こうと思ってたんっすよー!これ見てくださいよー!」
スマホをポンと投げてアンチョビに渡す。
そこには戦車道ニュースの画像が出ている。
ん?これは?!
アンツィオのP40修理寄付呼びかけの小さい記事の下に、デカデカと大洗廃校の記事が載っていた。

ペパロニが息巻く。

「こんなんアリっすかー?!文科省のやつらマジ許せないっす!今からカチコミ行ってやろうって思ってんすよー!」

それに合わせて隊員も息巻く。

「おう!行ってやりましょうよー!」

「あいつら戦車道なめてますよー!」

ペパロニがCV33から飛び降り、アンチョビの隣に来て言う。

「姐さん!姐さんからもなんか言ってやってくださいよー!」

アンチョビとカルパッチョは二人で、はぁ〜、となる。
なーんか、そうなる気がしたんだよなぁ〜。
アンチョビはCV33の上に乗り話し出す。

「諸君!先ずはこの騒ぎをやめろ!」

隊員たちから反論が出る。

「姐さんはこんなん許せるんすかー!」
「大洗がこんなんなって、姐さん悔しくないんっすかー!」

ペパロニは腕組みをしムスッとしながら黙って聞いている。

「黙って聞け!確かに!大洗は廃校になってしまう!私も残念でならない。だが・・・大洗は戦車道まで取り上げられてはいない!噂によれば、戦車も没収されそうになったが、その戦車を守る事に成功したそうだ。つまり!彼女達の戦車道はまだ終わってはいない!我々、アンツィオの戦車道が復活したように!彼女達も必ず復活する!たとえ場所が変わっても、戦車がある限り彼女達の道は続くのだ!もし・・・彼女達が我が校に転校してきたならば、我々は暖かく迎え入れようではないか!そして!共に歩もうではないか!戦車の道を!」

アンチョビはビシィッと短鞭を掲げる。

ウオー!という歓声に
ドゥーチェ!ドゥーチェ!ドゥーチェ!ドゥーチェ!
鳴り止まぬドゥーチェコール。

「姐さん最高っすーー!」
ペパロニも謎の感動に包まれている。
続けてペパロニが隊員に向かって叫ぶ。

「オラー!お前ら聞いたかー?!大洗のやつらがいつ来てもいいように準備しとけー!おい!お前は、大洗にいつでも転校して来いって伝えろ!」

「わっかりましたー!」

隊員達とペパロニがダァーッとコロッセオから出て行く。
後に残ったアンチョビとカルパッチョ。
アンチョビは眉毛を八の字にして軽く笑いながら言う。

「ははは・・・なんか、変なベクトルに向いてしまったが、まあいい・・・」

カルパッチョが軽く頭をさげる。

「ドゥーチェ、ありがとうございます」

「ん?ああ、一時はどうなるかと思ったが、騒ぎが収まってよかった」

「いえ、それもありますが・・・」

カルパッチョは、ニコッと微笑みながら言う。

「わたしも、心のモヤモヤが晴れました」

「そうか、わたしは当たり前の事を言っただけだがな」

そう言うと、マントを翻しコロッセオの出口に歩き出すアンチョビ。
アンチョビのその背中を見ながら、たかちゃんが転校してきてくれたら嬉しいなーと思うカルパッチョであった。

「あのぉ〜なんか、戦車道の人達が 歓迎 大洗女子学園 て書いた、でっかい垂れ幕をぶら下げてるんですけど、なんとかして下さーい」



他校の廃校の反応をまとめて書こうと思った作者。しかし、思ったより長くなりそうな事に気付き、一校づつ書いていく事にした。
次回【Steep news プラウダ】
よろしくお願いします。】


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【Steep news プラウダ】

大洗廃校を知り、カチューシャの取った行動とは。


プラウダ高校学園艦
プラウダ高校戦車道隊長 カチューシャは隊長室で昼食を摂っていた。
少し離れた所で隊員のクラーラがバラライカを弾いている。
そこへ、背の高い女性が部屋に入ってきた。
その女性は食事中のカチューシャの傍らに来て、書類を一枚渡す。

「カチューシャ、これを」

カチューシャは食事を邪魔されたからか、若干不機嫌そうに書類を奪い取り、目を通す。
一通り目を通した後、書類を置き、何かを考えているようだ。
パッ、と顔を背の高い女性に向けて言う。

「ノンナ、我がプラウダ高校戦車道は、大洗女子学園戦車道の隊員を全員引き受ける用意があると、大洗に伝えなさい」

背の高い女性、ノンナは返す。

「委員会に話しは通さなくてもいいのですか?」

「委員会は必ずOKを出すわ・・・ノンナ、クラーラ、それにミホーシャが加わって、頂点にわたし。これでプラウダは無敵になるわよ!」

「素直にみほさんと戦車道がしたいって言えばいいのに」

「うるさいわね!ちがうわよ!」

「わかってます」

何時ものやり取りである。

「でも、その前に・・・クラーラ、食器をさげて、ノンナ、電話を取って」

「Да」

「はい」

クラーラが食器をさげて、ノンナが電話を持ってくる。
「ノンナ、グロリアーナに電話を掛けてダージリンを呼んでちょうだい」

「はい」

ノンナが電話を掛けて、ダージリンに繋いでもらう。

「ダージリンさんです」

ノンナは、受話器の通話口を手で塞ぎながら、カチューシャに渡す。

「もしもし、カチューシャよ」

「フフ・・・ごきげんよう、先日はありがとうねカチューシャ、それで、どうなさいましたの?」

「そうね、大洗の件は、もう知ってる?」

「廃校の事かしら?先程、戦車道ニュースで拝見致しましたわ」

「そう・・・大洗が廃校になるという事は、大洗戦車道の隊員はどうなるのかしら?」

カチューシャはどうやら、探りと牽制を入れているつもりのようだ。

「そうね・・・あの大洗女子学園戦車道ですから、他校から引く手数多の勧誘があるかも知れませんわね」

「ダージリンはどうするの?」

「そうね・・・もし、みほさん達がうちに来てくれたら楽しくなりそうね・・・でも、残念だけど、うちは全員を受け入れるのは出来ないわね」

カチューシャは勝ち誇った感じで言う。

「そうよねー!ま、うちは全員受け入れられる器があるけどね!」

「フフ・・・それは頼もしいですわね、でも、それを決めるのは、私達ではな無くて、彼女達ですわよ」

「うぐ・・・」

続けてダージリンが話す。

「ところで・・・こんな噂を知っている?大洗の戦車が、あの試合の終了後、全車両紛失したらしいの」

「え?」

「大洗は公立だから、廃校となれば戦車も没収されてしまうでしょうね、でもまあ、無い物は没収できませんわね、フフフ」

「へ・・・へぇー・・・そうなんだ・・・ふぅ〜ん」

「不思議な事も有るものね・・・そう思わない?カチューシャ」

ミイラ取りがミイラになったカチューシャ。

「ま、まあ、そんな事もあるかも知れないわね、あ、あ〜
わたし今から委員会に出なくちゃいけないんだった!それじゃ切るわね、またねー、ピロシキー」

ガチャ

「ノンナ!」

「はい」

「受け入れの件は保留よ!それと!ダージリンが何か企んでいるわ!何を企んでるか調べて!」

「素直に、何してるんですか?と聞けばいいのに」

「うるさいわね!とっとと調べなさい!それと!わたしは寝るわ!」

「はい」

カチューシャは寝床に横になりフテ寝をする。
クラーラは優しくバラライカを弾きだし
ノンナも優しく歌い出す・・・。



カチューシャが寝入った頃、ノンナは再び電話を掛ける。

「度々申し訳ありません、プラウダのノンナです。ダージリン様は居られますか?」

「はい、少々お待ちください」

「ダージリンよ」

「度々の電話、申し訳ありません、ノンナです」

「いえ、構いませんのよ」

ノンナが単刀直入に聞く。

「ダージリンさんは、大洗の件で何か動いていらっしゃるのですか?」

「あら、大胆ですわね、でも・・・そういうのは嫌いじゃ無くてよ」

「いえ・・・ただ、カチューシャからダージリンさんが何か企んでいるから調べろと」

「それを、企んでいる本人に直接聞くかしら?フフフ」

ダージリンが続けて話す。

「ただ、分かっているのは、大洗は諦めていないという事だけ
、だから、今は見守るしかないのよ」

「カチューシャもとても心配しています、大洗の人達が戦車道を続けられるように、全員を引き取ると言っています・・・」

「そうね・・・彼女はとても優しい人だから」

ダージリンが続けて話す

「多分・・・いえ、必ず何かが起こるわ、何が起こるかは、わたくしにも今は分かりませんが・・・今は待っていて欲しいの」

「分かりました、ダージリンさん・・・では、失礼します」

「ごきげんよう」

ノンナは電話を切り、カチューシャの元へ行き、優しく頭を撫でて言う。

「大丈夫ですよカチューシャ。大洗はまだ・・・負けていません」



大洗廃校を知った西隊長の心中やいかに?
次回
【Steep news 知波単】
よろしくお願いします。


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【Steep news 知波単】

知波単の悩める隊長、西絹代。
大洗廃校を知り、何を思う・・・。


知波単学園学園艦
知波単学園戦車道 隊長 西絹代
午後の昼下がり、彼女は、先日のエキシビジョンの残務を終え、戦車道隊舎の水場でオートバイを洗車していた。
陸王VLE1200、西はこれに「ウラヌス」と名付け、可愛がっていた。
純白のタンクを磨き上げ、西は言う。

「ウラヌスよ、綺麗になったな」

腕組みをし、ニッコリ微笑みながら、ウンウンと頷いていた。
そこへ・・・

「西隊長殿!こんにちはであります!」

西が振り向くと、薄い青味がかかった夏らしいワンピースに、麦わら帽子を小脇に抱えた女性、と言うよりは女の子が、ビシッと敬礼をして立っていた。
西は少しの間、彼女をじぃーっと見つめ。

「おお!福田か!髪を解いているから分からなかったぞ」

「すいません!隊長殿!」

西はニッコリ顔で言う。

「いや、謝る必要はないぞ福田、よく似合っている」

「ありがとう御座います!隊長殿!」

福田はまだ敬礼をしている。
西は、軽く息を吐き、諭すように言う。

「福田よ、貴様は今日は休みだろう、そんなに硬くなるな」

福田は、少し表情を柔らかくしながら、敬礼を止めて手を下す。

「は、はいであります」

知波単の戦車道は、月月火水木金金の精神で休み無く、朝から晩まで、とまでは言わないが、日々訓練をしていた。
しかし、西に代替わりし、交代で休みを取るようになった。
隊員には概ね好評である。

西が尋ねる。

「福田よ、何処かに出掛けていたのか?」

「はい、街の本屋さんまで出掛けておりました」

福田が本屋の袋を見せようと、リュックから取り出そうとした時、手を滑らせ袋が落ち、中の本が数冊飛び出した。

西は落ちた本に目をやる。

「おー!世界戦車戦入門かぁ、福田は勉強熱心だな!ん?」

その「戦車戦入門」の下に、厚さが薄目で、凛々しい男性と中性的な男性の二人が、上半身裸で互いに見つめ合っている絵の本が見えた。
下半身は戦車戦入門に隠れて見えない。
西が聞く。

「その下の本はなんだ?」

福田は、慌てて本を拾いリュックに詰め込む。

「こ、こ、これは!か、かか、格闘技の本であります!」

福田は、汗がダラダラ噴き出しているが、西は気に留める事無く。

「おぉ、格闘技かー!戦車の心は武道の心!だな」

と、一人で頷き納得している。

福田は、ふぅ、と噴き出す汗をハンカチで拭っている。

「所で福田よ」

「は、はいであります」

「少し時間はあるか?」

「は、特に、この後予定はありませんが・・・」

「なら、隊長室で茶でも飲んで行かんか?」

「い、良いのでありますか?!」

「ああ、もちろんだ」

「ありがとうございます!あ、その前に・・・西隊長殿!」

西が少し首を傾げて聞く。

「ん?どうした?」

「自分の荷物を自室に置いて来ても構いませんでしょうか?」

「ああ、構わんぞ、では私は、その間にウラヌスを仕舞うとしよう」

もし、隊長室で薄い本を見せろと言われたら・・・と思いながら、福田は駆け足で、隊舎の自室に荷物を置きに行った。
西も、水場の横に有る木造の小屋へウラヌスを仕舞う。
福田が駆け足で戻ってきた所で、二人は隊長室に向かった。

知波単学園戦車道 隊長室

西が扉を開けて言う。

「さあ、入れ」

「は!失礼します!」

福田が一礼をし、中に入る。
西も中に入って扉を閉め、優しく言う。

「まあ、座れ」

「はい!」

福田はソファーにちょこんと座り、歴代の隊長の肖像や表彰状、盾等を見上げて見回している。
何度か上級生と入った事はあるが、極短時間である。
西は、部屋の端に有る給湯室から顔を出し言う。

「今、美味い茶を淹れてやるからな」

「は!恐縮であります!」

暫くして、西がお盆で急須と湯飲みを持ってくる。
西は福田の対面に座り、お盆から湯飲みを差し出した。

「まあ、飲め」

「は!有り難く頂戴致します」

福田は湯飲みを手に取り、軽くズズズと口を付けた。

「!!」

福田はあまりの渋さに驚嘆したが表情には出さなかった。

「お?茶受けを忘れていたな」

西は給湯室に行く。

福田はその隙に、急須の蓋をそぉっと開ける。

「あ゛・・・あ゛あ゛・・・」

そこには、見た事の無い程の量の茶葉が入っていた。
西の気配を感じ、慌てて蓋を閉める。
西は小皿に載った桜餅を二つ持ってきて、一つを福田に差し出し座る。

「すまなかったな、これは私が懇意にしている店の桜餅だ、よかったら食べてくれ、美味いぞぉ」

「は!こちらも有り難く頂戴致します!」

手に取り、はむっと食べると甘味と塩味、それに桜の葉の香りが絶妙で、とても美味しい。

「どうだ?美味いか?」

「はい!とても美味しゅうございます!」

そうだろぉー!と言いながら、西は自分の湯飲みを手に取る。
福田はそれを凝視している。

ズズズ

「っはぁ〜やはり、茶は日本茶に限るな、福田も飲め」

「は・・・はいであります」

福田は、西の味覚に驚嘆しつつ、若干震えながら、手に取った湯飲みを見つめ、ぐっと飲んだ。
福田が、震えながら湯飲みを置いた所で、西の顔付きが変わり話し出す。

「なあ福田よ、先日の大洗の方々と組ませて頂いた試合、一緒に戦ってみてどう思った、忌憚の無い意見が聞きたい」

福田は驚いて、少しゲホゲホとむせながら。

「じ、自分でありますか?!」

「ああ、そうだ、どんな事でも良い、感じた事を聞かせてくれ」

福田は、両手を膝の上で握りしめ、俯き加減に話し出す。

「大洗の方々は・・・最初は・・・腰抜けだと思っておりました」

西は、ほお・・・、と聞いている。

「要所、要所で撤退を指示され、上級生殿や隊長殿は突撃を敢行しておられるのに、自分は突撃をさせてもらえず、なんと腰抜けな人達だと、本当に、この学校は優勝した学校なのでありますか?と思いました」

ふむぅ、と西は腕を組む。

「しかし、アヒル殿に付いて行くと・・・」

西が話を遮り聞く

「すまない福田、アヒル殿とは誰だ?」

「あ、申し訳ありません!大洗のアヒルさんチームの方々であります!」

「そうか、確かチイ車に搭乗しておられたな」

「はい、アヒル殿に付いて行くと、アヒル殿は撤退しながらも、常に策を練り、次の一手を考えておられました」

うん、と頷く西

「そして、自分は立体駐車場にて、アヒル殿と共に敏捷作戦第二号を敢行し、マチルダⅡを撃破致しました」

「福田は、確かそれが初撃破ではなかったか?」

福田は少し嬉しそうな顔で答える

「はい!・・・しかし、自分はアヒル殿の御指示に従っただけであります」

「撃破は撃破だぞ、福田」

「アヒル殿の方々にも、初撃破おめでとうと、言っていただけました」

福田の顔は綻び、西もニッコリ顔で頷く。

「ははは!確か試合の後、福田はアヒル殿とハ号の隊員に胴上げされていたな!」

「はい!アヒル殿の方々はとても背が高く、少々怖かったであります」

西は、ウンウンと頷きながら

「つまり、福田は、何か感じる物が有ったと言うわけだな!実は私も・・・」

コンコン

扉をノックする音が聞こえる。

「寺本です!西隊長は居られますでしょうか?」

西が答える。

「おう、寺本か、入ってくれ」

寺本は扉を開け敬礼をし、一歩中に入り扉を閉める。
福田も立ち上がり、寺本に敬礼する。
西が聞く。

「どうした?寺本」

寺本は、福田をチラ見してから下を向き、西に顔を向け話し出す。

「西隊長、大洗の件は既にお耳に入っておられますでしょうか?」

「ん?何の事だ?」

「は!戦車道ニュース発表によりますと、本年八月三十一日付けをもって大洗女子学園は廃校になるとの事であります」

西は、バッと立ち上がり聞く。

「なに!それは本当か?!」

「は!戦車道ニュース発表の記事ですので間違いありません」

「何という事だ・・・」

暫しの沈黙の後、西は福田を見る
福田は、敬礼をしたまま下唇を噛み締め、目を見開き、涙と鼻水を流していた。
西は視線を下に向けた。

「くっ・・・」

「寺本、また何か分かった事があれば報告してくれ」

寺本は敬礼し

「は!了解致しました!」

「退がっていいぞ・・・」

「では、失礼致しました。」

寺本は心配そうに福田を見てから、一礼をし部屋を出て行った。
福田はまだ敬礼をし、泣くのを堪えている。
西は福田の前に立ち

「福田よ・・・」

と言い、右手で福田の肩に触れると、プルプルと震えているのを感じた。
福田は嗚咽を堪えながら

「隊長殿・・・自分は・・・自分は・・・」

西は優しく言った

「福田よ、友の為に泣く事は・・・恥ずかしい事ではないぞ・・・」

福田は西に抱きつき、堰を切ったように泣き出した。

西は左手の拳を握り締めながら思う。

「私は・・・友の為に泣いている部下に、何もしてやる事は出来ないのか・・・」

西は、無力感に苛まれていた。

「こんな私が隊長で、本当に良いのだろうか・・・」

知波単の悩める隊長、西絹代なのであった。



ついにあの学校が!
次回
【Steep news 継続】
よろしくお願い致します。


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【Steep news 継続】

大洗廃校の知らせを知ったミカの言った言葉とは?


継続高校 戦車道隊長 ミカは、隊員のアキ、ミッコと共に先日の大洗エキシビションマッチからの帰りの道中であった。
河原にポルトルカを停め、昼食確保の為、アキとミッコは釣り糸を垂らしている。
ミカはゆっくりとカンテレを弾いていた。
アキがため息混じりに言う。

「・・・釣れないね・・・」

ミッコも咥えた葉っぱを上下させながらボーッとフライを見ている。

「ミッコ、今!」

「え?!いぃ!」

突然のミカの合図で驚きながらミッコは釣竿を上げ、見事良型なニジマスが釣りあがった。

「イェーイ!」

アキとミッコはハイタッチをして喜んでいた。
そこへ「ザ・・・ザザーッ」とポルトルカに積んである無線機に入感が入る。

アキはポルトルカに駆け寄り無線機に聞き耳を立てる。

「ザ・・・隊長きこえますか?ザーッ・・・」

アキはマイクを握り応答する。

「こちらアキ、ヨウコ?まだ電波が悪いけど聞こえるよ、どうぞ」

「ザーッ・・・アキ・・・分かった・・・アンテ・・・する」

送信主は継続高校戦車道 隊員のヨウコからであった。
アキはスピーカーから聞こえる音を聞き逃さない様に静かにしている。

「アキ、どう?良くなった?」

「良くなったよ、ヨウコ」

「了解、隊長は近くに居るかい?」

「居るけど、呼んでこようか?」

「んー、いや、いいよ、例のKV-1の件で連盟から呼び出しが来てるからさ」

アキは少し不機嫌そうに答える

「あんなのただの言い掛かりじゃん!ずーっと昔に勝手に置いて行ったのに」

「まあ、そうなんだけどな、あ〜それと、昨日大洗の試合見てたんだよね?」

「うん、面白い試合だったよ!」

「へー・・・いや、さっきネットを見てたらさ、大洗が今月末で廃校になるって書いてあったから、どうだったんだろうと思ってさ」

アキは驚く。
「えー?!何も無かったよ!普通に試合してたけど・・・」

「そうなんだ、今はその話で持ち切りだよ・・・まあいいや、KVの件、隊長に言っといて」

「了解」

アキはマイクを置いてミカの所に駆け寄り

「ミカ!大変だよ!大洗が廃校になっちゃうんだって!」

ミッコは、釣り糸を垂らしながらも視線をアキに向けている。

ミカはポロロンとカンテレを鳴らし言う。

「そう」

「・・・」

「えー!そんだけー?!あの大洗が廃校になっちゃうんだよー!」

ミカの反応の薄さに、アキはビックリしながら言った。
ミカはポロロンとカンテレを鳴らして言う。

「人は何かを得たら、何かを失うものさ」

「え〜、でも、結局廃校になったんじゃ、何してたか分かんないよ」

ミカは、ゆっくりとサッキヤルヴェン・ポルッカを弾き始めて言う。

「彼女達も奪われてしまったけど、もっと大事な物を得ているかもしれないよ」

アキは首を捻り

「え~?わっかんないよ~」

「そうだね、案外・・・気付かない物さ」

「もー!分かるように言ってよー!」

KVの事はすっかり忘れるアキなのであった。

「ミッコ!今!」



黒森峰に大洗廃校の知らせが入る!
エリカの心中は?そして、まほは・・・。

次回
【Steep news 黒森峰】


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【Steep news 黒森峰】

大洗廃校を知ったエリカの心中は?そして、まほは・・・。




黒森峰女学園学園艦

機甲科、戦車道チーム隊長の「西住まほ」は、丘の上から双眼鏡を覗いていた。
午後から行われている、攻守に分かれての紅白戦に措ける評価を行うためである。
その隣で、副隊長の「逸見エリカ」も双眼鏡を覗いていたが・・・目線はチラチラと隊長のまほに行っていた。

「隊長は既にご存じなのだろうか・・・もう・・・一体どういう事のなのよ・・・」

訓練開始前には「大洗廃校」の報は隊員に知れ渡っていた。
逸見もネットで確認してそれを知った。

「一体・・・何なのよ・・・」

前年度の高校戦車道全国大会、そこで黒森峰は決勝で、当時の副隊長「西住みほ」の、ある行動でプラウダ高校にフラッグ車を撃破され10連覇の夢が潰えた。
そして、西住みほは・・・黒森峰から去った。
本年度の全国大会、無名の高校が決勝戦で黒森峰に立ちはだかった。

《大洗女子学園》

そして黒森峰は、西住みほが隊長の大洗女子学園に敗退した。
大洗は、廃校を賭けた大会で優勝し廃校を免れた・・・筈であった。
10連覇を逃した事も、西住みほが抜けた事も、大洗に負けた事も、全部がまるで無かった事のように・・・。
今までの努力や、これからの努力、気持ちも、無かった事のように・・・。
でも、それ以上に隊長の、西住まほの負けた意味さえ奪われてしまった・・・。
居たたまれなさと悔しさ、虚無感が入り混じった複雑な心境のエリカ。

「エリカ、今私を見る必要はあるのか?」。

エリカは、まほに注意され、ハッとして「申し訳ありません」と言い双眼鏡を覗きなおした。
廃校の事は、もう知っているのだろうか?まだ知らないのだろうか?
訓練直前まで、まほは隊長室に居た為分からない。
今も特に変わった様子もない、何時もの隊長であった。

紅白戦が終わり、今から隊長室で、まほとエリカは評価の為の軽いディスカッションである。
まほは隊長室中央のソファーに座り、エリカも対面に座った。
エリカが書類や地図を机に準備している所でまほは言った。

「エリカ、何かあったのか?」

エリカはドキッとする。
聞くべきか、聞かざるべきか・・・。

「いえ、特に何もありませんが・・・」

「そうか・・・」

エリカは、聞かない方を選んだ・・・。
今は知らなくても、耳に入るのは時間の問題である。
が・・・今知らないなら、少しでも知らない時間が長い方がいい・・・。
エリカは本心を押し殺し、そう思うようにした。

夕方。
訓練も終わり、まほは隊長室で一人書類を眺めていた。

ジリリリリン♪ジリリリリン♪

電話のベルが鳴り、まほは電話の受話器を取った。

「はい」

「戦車道隊長室でしょうか?隊長の西住まほさんは居られますか?」

「わたしですが」

「聖グロリアーナのダージリンという方からお電話が入っておりますが」

「分かりました、ありがとうございます」

まほは電話のボタンを押した。

「西住まほです」

「ごきげんよう、ダージリンですわ、まだ学校に居られると聞きましたので、ご迷惑かと思いましたがこちらにお電話させて頂きました」

「いや、構わない、ただ、ダージリンから電話とは珍しいと思ったが」

「フフ、そうね・・・所でまほさん、大洗の件はもうご存知?」

「・・・知っている」

「・・・そう・・・」

しばしの沈黙の後、ダージリンが話し出す。

「一つだけ・・・お知らせしたかったの」

「・・・」

「大洗は・・・戦車だけは守る事が出来ましたわ」

「そう!・・・なのか・・・」

「ええ・・・だから、彼女達の道は、まだ続いているんじゃないかしら」

「なぜ・・・それを私に?」

「そうね・・・わたくしが知らせたかったから・・・じゃ駄目かしら?」

「・・・すまない」

「いえ・・・よろしくてよ、お知らせしたかったのはそれだけ・・・では、ごきげんよう」

「ああ」

まほは受話器を置き、椅子の背もたれにドッともたれ込んで天井を見つめ、ふぅ、と息を吐いた。


翌日

まほは家で自室の机に向かっていた。

ブオー、ブオー

と携帯電話のバイブレーションが動いた。
まほは携帯の画面を見る。

みほ・・・。

まほが携帯に出る。

「まほだ」

「お、お姉ちゃん?みほ・・・だけど・・・」

「ああ、久しぶりだな、元気だったか?」

「うん、私は・・・大丈夫」

「そうか、で、どうした?」

「あ、あの・・・実は・・・」

みほは言いにくそうにしていたのでまほが聞く。

「大洗・・・廃校になるそうだな」

「えっ?!・・・うん・・・それでね、お姉ちゃん・・・」

まほが優しく聞く。

「どうしたんだ?」

「あのね、他の学校に転校する事になるんだけど、保護者に承認を貰わないといけなくて・・・書類に印鑑を押してもらうのに・・・そっちに帰ろうかなと・・・思って・・・」

「そうか、帰って来るのか・・・何時くらいに到着するんだ?」

「えーっと、今日の晩に船で出るから・・・明後日の朝9時くらい・・・かな」

「そうか、わかった、気を付けて来るんだぞ」

「あ・・・あのね、お姉ちゃん」

「なんだ?」

「えと・・・ううん・・・なんでもない・・・それじゃあ、切るね」

「ああ」

ピ!と携帯を切り、しばらく携帯を見つめた後、まほはどこかに電話を掛ける。

トゥルルル、トゥルルル。

「はい!逸見です」

「エリカ、今は大丈夫か?」

「はい、大丈夫ですが、なにか?」

「すまないが、明後日の朝練に私は遅れて行く事になる、終わりまでには顔は出せると思うが」

「わかりました!」

「すまないが、よろしく頼む」

「はい」

「それと・・・すまないな、気を使わせてしまったみたいだな」

エリカは察したのか

「いえ、大丈夫です」

「そうか・・・ありがとう」

携帯を切り、まほは本棚に置いてある写真立てに目をやる
そこには、幼い頃のまほと、みほが一緒に写った写真が飾ってあった・・・。



次回
もう一つの物語が動き出す!
【Begins to move is another story】
よろしくお願い致します。


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【Begins to move is another story】

もう一つの物語が動き出す!
そして、意外な人物からの電話が・・・。


聖グロリアーナ女学院学園艦

ダージリンとオレンジペコはアフタヌーンティーをしていた。

リンリンリン♩リンリンリン♩

電話のベルが鳴り、オレンジペコが受話器を取り対応していた。

「はい、お待ちください。ダージリン様、アッサム様からお電話です」

オレンジペコがダージリンの居るテーブルに電話機を持って来て、受話器をダージリンに丁寧に差し出した。
ダージリンは受話器を受け取り話し出す。

「ダージリンよ」

「ティータイムに申し訳ありません、アッサムです」

「構いませんのよ、それで、何かお分かりになりましたの?」

「はい、やはり角谷生徒会長は動いておられます。午前中に文科省を訪れた後、蝶野亜美様と合流し戦車道連盟へ移動、その後、連盟を出まして蝶野様と別れ、ホテルにチェックイン致しました。恐らく今後も何かしらの行動をすると思われます」

「分かりました、引き続きお願いしますわね」

「分かりました」

ダージリンは両手で丁寧に受話器を電話機に置いて、目を瞑り、何かを考えている。

「ダージリン様・・・」

オレンジペコは話しの内容が気になる様子である。
ダージリンはそれに気付く。

「あら、ごめんなさい。会長さんは文科省と戦車道連盟を訪れたそうよ。今後も何かしら行動をすると思われますわ」

「そう・・・ですか」

オレンジペコは心配で落ち着かない様子である。
ダージリンは言う。

「ペコ、落ち着きなさい、今の私達は傍観者よ。今はただ、見守るのみ」

「はい・・・角谷様が動いておられるのなら、なんとかしてしまうかもしれませんね」

オレンジペコは心配ながらも笑顔を見せる。

「そうですわね、フフ・・・あら?お茶が冷めてしまいましたわ。ペコ、新しいのを頂けるかしら」

「はい」



翌々日 熊本県 西住邸

西住まほは、妹のみほをⅡ号戦車で駅まで送り届けた後、自宅に戻ると
自衛隊のヘリがアイドリング状態で庭に駐機されているのが見えた。
自宅の廊下を歩いていると、前から母の西住しほと連盟強化委員の蝶野亜美が連れ立ってこちらに歩いてきた。
まほは、すれ違い様に一礼する。
しほは立ち止まり、まほに向かって言う。

「まほ、お友達を送ってきたの?」

「はい」

「そう、私は今から蝶野と共に文科省に行ってきます、戻るのは明日の夕方になると思うから、後の事はよろしくお願いしますね」

「はい、お母さま」

しほはそう言うと、つかつかと歩いて行った。
蝶野もまほに一礼し、しほに付いて行った。

「一体何が・・・」

まほは、只ならぬ何かを感じていた。


翌日 聖グロリアーナ学園艦

ダージリンへアッサムからの報告が入る。

「昨晩、西住流家元と蝶野様は角谷様の宿泊されているホテルで合流され、一泊された後、本日、戦車道連盟理事長と連れ立ち4名で文科省へ行かれました。その後4名は文科省より出て来られ解散しました。」

ダージリンは、しばし考え言う。

「西住流家元を後ろ盾にしての、抗議・・・かしら?」

アッサムも困ったように答える。

「申し訳ありません、内容までは掴む事ができません」

「いえ、こればかりは仕方ありませんわ、しかし、何か進展は有ったのではないかしら」

「はい、角谷様は待機場所に戻られている所と情報が来ていますので、やはり何かの進展は有った物かと・・・」

「分かりましたわ、ありがとうアッサム」

「いえ。失礼いたしました」

チン♪

多分何かあった・・・。
いえ・・・確実に何かが進展した・・・。
廃校か・・・存続か・・・。
考え込むダージリンに、心配そうに見守るオレンジペコ。

リンリンリン♪リンリンリン♪

電話が鳴り、オレンジペコが対応する。


「は、はい・・・少々、お待ち下さい」

オレンジペコの様子を見て、ダージリンがペコを見る。
ペコは受話器をダージリンに丁寧に差し出す。

「西住・・・まほ様からです」

このタイミングでこの電話・・・ダージリンの顔つきが変わる。
ダージリンが受話器を受け取る。

「ダージリンよ・・・」

「・・・西住・・・まほだ・・・」



次回
【good informant acts with the best of intentions】
よろしくお願いいたします。


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【good informant acts with the best of intentions】

アッサムからの知らせに、大洗に何か進展があったと踏んだダージリン。しかしその内容は分からなかった。だが、意外な所から情報が舞い込んだ!

(前話の予告を変更致しました。ごめんなさい。)


熊本県 西住邸

夕方。
西住まほは自室で何をするでも無く、ただ机に向かっていた。
母の西住しほは、先日から蝶野亜美と連れ立ち東京の文科省へ行っている。
今、文科省と戦車道を結びつける物は・・・。

コンコン

そこへ扉をノックする音が。

「まほお嬢様、家元様からお電話が入っております」

家政婦の菊代であった。

「はい、分かりました」

まほは返事をして電話機の元へ向かった。
懐かしい感じのする黒電話の受話器を持ち、電話に出た。

「代わりました、まほです」

「しほです。特に変わった事は有りましたか?」

「いいえ、特にありません」

「そう・・・まほ」

しほの語気が少し変わったのを感じるまほ。

「はい、お母様」

「文科省にて大洗と大学強化選手の試合をする事が決定しました」

「・・・な!!」

余りにもサラッと言われた言葉にまほは驚く。
しかし、しほは淡々と話しを続ける。

「大洗が、この試合に勝てば廃校の件は撤回されます。文科省、並びに戦車道連盟、大洗女子学園のサイン入りの書類を作成し、確約を取り付けました」

まほは、色々な事が頭を駆け巡っていた。

「まほ」

「は、はい・・・」

「大学強化選手との試合という事は、大洗は30両の車両に対して8両で臨む事になります。私は先程、大学戦車道を束ねる島田流家元にお会いして来ました」

「はい・・・」

「そこで、残り22両の補填の了承を頂きました。しかし、これは大洗の試合。なので試合の参加者には大洗へ転校してもらいます。既に大洗女子学園学園長並びに戦車道連盟、島田流家元へ承諾を貰い、この試合に関する転校と戦車の持ち込みは無条件受理されます」

「はい」

「ただし、文科省と大洗の戦車道隊員には、この事は内密にしてあります」

まほは不思議に思い聞く?

「それは、どういう事なのでしょうか?」

「文科省が知れば、試合開始前にルールが変更されるかもしれません。本来は大洗が8両という前提での了承です。ただし、試合自体は対戦相手、つまり島田流が了承すれば試合は成立します。大洗へは、情報漏洩の防止と、単に知らせる必要が無い。それだけです」

「そう・・・ですか」

まほは薄々感じ始めていた。

《これは・・・代理戦争・・・》

「書類や日程、場所は既にまほのパソコンにメールで送りましたから確認なさい。編成はまほに一任します。島田流を粉砕しなさい、そして来年、黒森峰が大洗を叩き潰します」

「お、お母様!」

「なに?まほ」

「い、いえ・・・なんでもありません。分かりました、書類を確認し部隊を編成します」

「ええ、私は試合の準備の為帰らずこちらに残り、直接会場に行きます」

「分かりました」

まほは電話を切り、俯いたまま何かを考えていた。
暫くして、何かを決意したのか、顔を上げ部屋へ駆け戻る。
パソコンを立ち上げメールを確認すると、携帯電話を手に取ったが、握り締めたまま、まほの動きが止まる。

「く・・・なにを迷っている!」

まほはアドレスを呼び出し発信ボタンを押す。

トゥルルルル、トゥルルルル

「はい、聖グロリアーナ女学院 戦車道隊長室です」

「黒森峰女学園 戦車道隊長 西住まほです。隊長のダージリンに繋いでいただきたい」

「は、はい・・・少々お待ちください」

「・・・ダージリンよ」

まほは深呼吸して名前を名乗る。

「・・・西住・・・まほだ」

聖グロリアーナ女学院学園艦

戦車道隊長室では、ダージリンが西住まほからの電話に出ていた。

ダージリンが話しを聞く。

「ごきげんよう、どうなさいましたの?」

少しの間を置き、まほが答えた。

「・・・大洗の試合が決定した」

「!!」

ダージリンの瞳がカッと見開き問い質す。

「それは、どういう事ですの?」

まほが説明する。

「大洗は、文科省で試合を取り付けた。この試合に勝てば、大洗の廃校は撤回される。対戦相手は・・・大学選抜」

会長さん、西住流家元、蝶野、連盟理事が文科省を訪れた理由をダージリンは理解した。
オレンジペコも、これは只ならぬ話しと感じダージリンを凝視している。
ダージリンが聞く。

「なぜ・・・それをわたくしに?」

暫く沈黙の後、まほはフフ、と笑い言った。

「知らせたかったから・・・じゃ、だめか?」

ダージリンは、肩の力が抜けたのを感じた。

「フフフ・・・お互い様ですわね」

ダージリンが続けて話す。

「しかし、大学選抜との試合という事は、30両での試合という事になるのではないかしら?それは余りにも大洗が不利ですわ」

まほは、今の状況を全て説明した。
説明を聞いたダージリンは眉を若干ひそめながら聞く。

「つまり・・・まほさんが部隊編成をし、黒森峰から22両増援を出す、という事かしら?」

まほは、間を置き答える。

「いや・・・ちがう」

ん?と思うダージリン。
まほが続けて話す。

「私は・・・戦争ではなく、この”試合”に勝ちたい。そして、みほの戦車道、大洗の戦車道を奪還する!」

「!!」

ダージリンは、まほの初めて聞く気迫に驚いた後、優しく微笑み話し出す。

「まほさん・・・つまり、みほさんの・・・大洗の戦車道でこの試合に勝つおつもりですのね・・・」

まほは答える。

「ああ・・・そうでなければ・・・意味が無い」

ダージリンの眼光が鋭くなる。

「覚悟を決めましたのね」

「ああ」

ダージリンも大きく息を吸い、吐き出し答える。

「わたくしも覚悟を決めました。この試合、聖グロリアーナも参戦致します。そして、まほさんは知ってまして?みほさんは友達が沢山居りますのよ」

まほは優しい口調で答える。

「ああ・・・知っている」

ダージリンもフフと微笑み言う。

「では、わたくしはお友達に連絡致しますわね。任せて頂いてもよろしいかしら?」

少し間を置き、まほが言った。

「よろしく・・・お願いします」

それは、黒森峰の隊長「西住まほ」ではなく、西住みほの「姉」西住まほのお願いであった。

ダージリンは受話器を優しく電話機に置いた。
オレンジペコは、一体何事が起きたのかと心配そうにダージリンを見つめる。
それを見てダージリンは言う。

「ペコ、こんな言葉を知っている?人は敵意ではなく、善意ゆえに通報者になる」

オレンジペコは聞く。
「それは誰のお言葉なんですか?」

「さあ?誰だったかしら?」

オレンジペコは、もお!という顔をして聞く。

「一体なんの話だったのですか?大洗が試合をするのですか?大学選抜とは一体?」

「落ち着きなさいペコ」

ダージリンは経緯をオレンジペコに説明した。

「・・・う・・・うえ・・・」

オレンジペコは今にも泣き出しそうである。
ダージリンは暫し何かを考え、紙に何かを書いて言う。

「ペコ、泣いている暇はありませんのよ。至急アッサムを呼び戻してちょうだい。それと」

ダージリンは何かを書いた紙をオレンジペコに手渡す。

「それを電信で戦車道履修校に送って頂戴。お友達なら必ず反応がある筈よ。よろしくて?」

オレンジペコは涙を拭き、大きな声で

「はい!」

と言い部屋を出て行った。

ダージリンはゆっくりと椅子に腰かけ呟いた。

「ありがとう・・・まほさん」



次回
【サンダース・ウォー】
よろしくお願いします。


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【サンダース・ウォー】

サンダース副隊長のアリサは聖グロからの電信を受信する。



聖グロリアーナ女学院学園艦

オレンジペコは無線室に居た。
電信機に向かいカタカタと電鍵を叩いている
そこへ、アッサムが帰還し無線室に入ってきた。

「ペコ、ご苦労様です。先程ダージリン様より話しはお聞きしました。今の状況を教えて頂けますか?」

オレンジペコが振り返り答える。

「アッサム様、今送信している所ですが、ただ、日も落ちていますので気付いて頂けるのかどうかといった所です」

「分かりました。大洗は明後日の晩に、サンフラワーにて苫小牧に向けて出航すると情報が入っています」

オレンジペコは少し難しい顔をして言う。

「時間との勝負ですね。しかし・・・普通に電話とかメールでは駄目なのでしょうか?」

アッサムはゆっくりと目をそらし、何も言わなかった。
オレンジペコは、あー・・・、と理解しそれ以上は聞かないでおくことにした。


サンダース大学付属高校学園艦

アリサは自室でパソコンに向かっていた。
机の左側に棚があり、無線機が幾つか置かれている。
アリサは何気なく棚を見ると自作の電信機のランプがチカチカと光っているのが確認出来た。
アリサは直ぐにイヤホンをジャックに刺し、メモを取りながら傍受に入る。

「この乱数・・・聖グロ」

アリサは電卓をパチパチ打つ。

「ヒガシノカゼアメオオアライノテンキセイロウナレドモナミタカシ」

これは・・・。
アリサは携帯電話でケイに電話を掛けた。

「ケイよ、アリサどうしたの?」

「聖グロからの電信を傍受したのですが・・・恐らく大洗に関わる事かと」

「わかったわ、部屋にいるの?直ぐ行くわ」

「はい」

程なくアリサの自室の扉をノックする音が聞こえた。

コンコン

「アリサ、入るわよ」

「どうぞ」

アリサはケイを部屋に招き入れ、メモを見せた。

「大洗に関してなのは間違いないわね。多分、何かが決まったけど困難という事かな?」

頷きながらアリサが聞く。

「東の風、雨は、アメリカと開戦した時の日本の短波ラジオでの暗号ではなかったですか?」

「私たちの事、ではないわよね。東・・・東京?・・・大洗・・・」

アリサがボソッと言う。

「文科省・・・」

ケイとアリサは目を合わせる。

「それだ!」

ケイが指示を出す。

「アリサ、ここから無線は飛ばせる?」

「はい!例の周波数回線でいいですか?」

「OK」

アリサが無線機とスタンドマイクを用意する。

「どうぞ」

ケイは呼吸を整え、マイクを握りPTTボタンを押した。

「ブレイク、こちらサンダース大学付属高校 戦車道隊長のケイ 応答願います」

「ブレイク了解、こちら聖グロリアーナ女学院無線室です。ケイ様ですね、オレンジペコ様に代わりますので少々お待ちください」

「了解」

「代わりました、オレンジペコです。応答願います」

「ハァーイ!ペッキー、電信見たわ、大洗の件よね?」

「ぺ・・・は、はい、大洗の試合が決定致しました!この試合に勝てば、廃校は撤回されます!」

ケイはアリサとハイタッチをした。
直ぐにアリサは携帯で何処かに電話を掛ける。

「ペッキーそれホント?!やったわね!それで?何処とやるの?」

少し間を置きオレンジペコは答える。

「大学選抜です。車両数は・・・30両」

「!!・・・shit!」

ケイは一気に不機嫌になり、アリサも眉間にしわを寄せ爪を噛む。
ケイがオレンジペコに尋ねる。

「大洗は大学選抜30両に8両で挑めっていうの?!」

そこへナオミも部屋に来たのでアリサから説明を受ける。
説明を聞いたナオミは露骨に舌打ちをする。
オレンジペコは答える。

「はい、ですので我々高校側からも増援を出す事に致しました。既に黒森峰と聖グロリアーナは参戦を決定しています」

ケイは間髪入れずに言った。

「OK!もちろん私達も参戦するわ!それで呼び掛けたんでしょ?」

「ありがとうございます!・・・ただ・・・」

濁すオレンジペコにケイが尋ねる。

「何?ペッキー」

「ダージリン様からの伝言なのですが、負ければ大洗は廃校になってしまいます。それを背負う覚悟はありますか?と・・・」

ケイはアリサとナオミを見る。
二人がこくっと頷いたのを見て、ケイもニヤッとして頷く。

「覚悟を決めたわ!背負ってやろうじゃない。絶対勝つわよ!」

「あ、ありがとうございます!絶対勝ちま・・・うぅ・・・うぇ・・・」

オレンジペコは泣き出しそうになるが、堪えて続ける。

「す、すいません。必要な書類等はメールで送らせて頂きます。それと明日の正午よりブリーフィングを行いますので、この周波数でお待ちください。それと、お願いがあるのですが宜しいですか?」

ケイが答える。

「なに?何でも言って」

「この参戦は極秘作戦なので他言無用でお願いしたいのと、この無線の周波数と秘匿コードを各校戦車道部にこっそりとお知らせ願えないでしょうか?出来ればこの回線を使いたいなと思いまして」

ケイはアリサをチラッと見て。

「いいわよ、わかったわ、ペッキーも大変ね〜」

「ははは・・・では、よろしくお願い致します。out」

「了解、for out」

ケイは椅子から立ち上がりアリサを見て言う。

「聞いての通りよ、じゃ、アリサよろしくね」

え!という顔をするアリサ。
ナオミもアリサの肩を軽く叩き、ケイと共にアリサの部屋から退室した。
はあ、と肩を落とし、ブツクサ言いながらアリサはパソコンの前に座る。
「聖グロはいつも外連味盛り過ぎなのよ、今時モールスなんか誰も使わないわよ。私だから分かったようなもんよ。ホント面倒くさいわね」

パソコンをカタカタ打ちエンターキーをターン!と決める。
アリサは各校隊長宛に電信文と周波数と秘匿コードだけを書いたメールを送った。



次回
【プラウダ・ウォー】
よろしくお願いします。


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【プラウダ・ウォー】

プラウダではクラーラとノンナが聖グロからのメッセージに気付いた。


プラウダ高校学園艦

夜の張が下りた中、副隊長のノンナは一人執務室でパソコンに向かっていた。
そこへ扉をノックする音が。

コンコン

「失礼します。同志ノンナ、クラーラです」

「どうぞ」

クラーラは扉を開け中に入り、メモを一枚ポケットから出して報告する。

「※KBPが聖グロリアーナからの電信を受信、解読致しました」

※プラウダ高校保安委員会 Комитет по безопасности Правда средняя школа

ノンナはクラーラの瞳を見ながら淡々と答える。

「それは・・・ヒガシノカゼ・・・から始まる文ではなかったですか?」

クラーラは少し驚いた表情をしながら尋ねる。

「なぜ、ご存知なのですか?」

ノンナは軽く微笑み答える。

「今、パソコンで見ていますから」

ノンナは執務室のパソコンにも隊長宛にサンダースからメールが届いている事を説明した。
そして隊長宛のメールを、何故ノンナが開けているのか。
それを指摘する者はこの学校には居なかった。
ノンナが話し出す。

「恐らく、大洗の件で何か進展したのでしょう」

クラーラも頷き答える。

「はい、でも、良い方向に進んだ訳では無さそうです」

ノンナは何かを考えた後

「カチューシャは今はお休みになっていますか?」

「はい、既に自室でお休みになっておられます」

「そうですか・・・」

ノンナは椅子から立ち上がりクラーラに言う。

「急を要する事態ですので、今から私がお知らせに行ってきます」

退室しようとするノンナ。
だが、クラーラはノンナを引き止める。

「お待ちください。同志ノンナが行かずともわたくしが」

ノンナはクラーラの顔を見た後、視線を逸らし言う。

「いえ、これは副隊長である私の役目。ここは私が・・・」

クラーラは食いさがる。

「同志ノンナ。どうかわたくしにお任せ下さい。副隊長に雑務をして頂くわけにはまいりません」

二人は視線を合わせたまま沈黙する。

「・・・」

ノンナが根負し

「・・・二人で行きましょう」

二人は高級生徒の居る寮に向かった。
カチューシャの部屋の前に到着すると、クラーラは呼び鈴を一回押す。
応答は無い。
ノンナは携帯電話でカチューシャに電話を掛けてワンコールで切る。
勿論応答は無い。
ノンナは真剣な顔で。

「応答が有りませんね。特別な事態なのでこれを使用します」

ポケットからカードを取り出すと躊躇無くカードを扉のカードキー入れに差し込んだ。

カチャン。

扉のキーが空き、二人は玄関に入る。
靴を脱ぎ、音を立てずに、まるで自宅かのように一直線に寝室に向かった。
ノンナが寝室の扉をそっと開ける。
寝室ではカチューシャが黄色い熊の顔が付いたパーカーのパジャマを着て掛布団を抱いてスヤスヤと眠っていた。
カーテンの隙間から月明かりが差し込む中、二人はベッドの左右に陣取り、ただカチューシャを眺めていた。
なにをするでもなく・・・ただ眺めていた。
15分か・・・20分か眺めていたであろうか。
クラーラがそろそろ・・・とノンナに目配せする。
ノンナは頷くと、カチューシャの肩を軽くさすり。

「カチューシャ、起きてください」

カチューシャは、う~ん・・・と呻きながら目を擦る。

「カチューシャ、起きてください。大洗の件で報告したいことがあります。」

カチューシャは薄っすらと目を開けて見回す。
目が慣れていなくぼんやりとしているが左右に人影が見えた。

「うぎゃーーーーー!」

悲鳴を上げて飛び起きるカチューシャにノンナは人差し指を口元に持っていき、しー・・・、とする。
カチューシャは動悸と呼吸が荒くなっていたが、二人を認識したのか落ち着いたようだ。
だが・・・。

「な、な、なんであんた達がここに居るのよ!どういう事なのよ!説明しなさい!」

ノンナとクラーラは顔を見合わせ、まずはクラーラが初めに説明する。

「KBPが聖グロリアーナからの電信を傍受、解析しました。大洗に進展が有った物と思われます」

「日本語で話しなさいよ!」

カチューシャは両腕をバタバタさせて怒っている。
ノンナが補足に入る。

「KBPが聖グロリアーナからの電信を傍受、解析しました。同時にサンダースからもカチューシャ宛に同じ内容のメールが届いております。こちらには、周波数と多分秘匿コードと思われる数字が記載されております」

カチューシャはワナワナしながら喚き散らす。

「そうじゃなくて!なんであんた達が私の部屋の寝室に居るのよ!どうやって入ったのよー!」

ノンナは淡々と答える。

「はい、報告する為に何度も連絡していたのですが、カチューシャに気付いてもらえず、特別な事態でしたので苦渋の選択でマスターキーを使わせていただきました」

カチューシャはぐぬぬ・・・という顔をし、納得していない様子であるがノンナは意に介さず話を続ける。

「ですので、今から一緒に無線室に行って頂きたいのですが・・・」

「いやよ!あんた達で処理しときなさい。私は寝るんだから」

カチューシャは掛布団を被って丸まりながら横になる。
ノンナは言う。

「仕方ありませんね。クラーラ、持って来てくれませんか?」

「はい」

クラーラは部屋を出ていく。
しばらくすると、クラーラは箱状の何かに配線等が巻いてある物を抱えて戻ってきた。
ノンナとクラーラは配線を繋ぎ、机にマイクを置きベランダにアンテナを立てる。
無線機のようである。

ノンナは無線機のスイッチを入れ、少し待ってから周波数を合わせ話し出す。

「こちらプラウダ高校です。応答願います」

「こちら、聖グロリアーナ女学院無線室です、どうぞ」

「了解、こちらプラウダ高校戦車道 副隊長ノンナです。電信を受信いたしました」

「了解、ノンナ様ですね。オレンジペコ様にお繋ぎ致します」

「了解しました」

暫くするとかわいらしい声が聞こえてきた。

「こちら、オレンジペコです。夜分のご連絡ありがとうございます」

「いえ、大洗の件だと思いましたので、早急にご連絡させて頂きました。何か進展があったのですか?」

オレンジペコは経緯を説明する。

すると、ノンナの後ろでカチューシャが飛び起きて無線機のマイクを奪い取り話し出す。

「ペコ!それは本当なの?!」

オレンジペコは突然のカチューシャの声にビックリしながら話し出す。

「か、カチューシャ様、はい本当です」

「ふ~ん、そうなんだ。ま、別に私は大洗が廃校になっても構わないんだけどね。そしたらうちが隊員を引き取るつもりでいたから・・・でも・・・」

「・・・でも?」

「大洗が無くなったらシベリアが食べられなくなっちゃうもんね!マコーシャとも約束したし。いいわ!行ってあげる」

ノンナが突っこむ。

「本当は助けたいって言えばいいのに、後、シベリアは無くなりません」

「うるさいわね!私達が大学選抜なんかギッタンギッタンにしてやるんだから!」

オレンジペコがお礼を言う。

「ありがとうございます!絶対勝ちましょう!」

カチューシャも言う。

「当ったり前じゃない!それで?どうしたらいい?」

「はい、明日の正午にダージリン様から詳細に関するブリーフィングを実施しますので、この周波数で待機願います」

カチューシャは聞く。

「わかったわ。で、そのダージリンは今何をしているの?」

「はい、アッサム様と作戦計画の打合せをしています。北海道上陸のタイミングや車両の編成だと思うのですが・・・」

カチューシャは少し不満そうに答える。

「ふ~ん、そうなんだ・・・まあいいわ。明日のブリーフィングでどんな作戦か聞かせてもらうわ」

「はい、ではよろしくお願いいたします」

「了解」

カチューシャはマイクから手を放し、ノンナ、クラーラに向かって言う。

「ノンナ!クラーラ!大学選抜をギッタンギッタンにするわよ!」

「はい」

「да」

「それと・・・」

カチューシャはモジモジしながら言う。

「呼び出し・・・気付かなくて悪かったわね・・・」

二人は・・・優しく微笑んだ・・・。



次回
【知破単・ウォー】
よろしくお願いします。


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【知波単・ウォー】

寺本から電信の知らせを聞いた西隊長。
大洗の試合が決定したことを知り何を思う。


知波単学園学園艦

戦車道隊長の西絹代は日が昇る少し前、愛機のウラヌスに乗って早朝ツーリングをしていた。
バーナーとクッカー、水、袋ラーメンを持って艦首まで行き、朝日が昇るのを見ながらラーメンをススるのが良い気分転換になるのである。
ツーリングから帰ってきた西は、隊舎横の小屋にウラヌスを仕舞おうとしている時、寺本に声をかけられた。

「西隊長、おはようございます!」

西は振り返り片手を軽く上げて挨拶をする。

「おお寺本か、おはよう。早いじゃないか、どうした?」

寺本はビシッと敬礼し答える。

「は!お知らせしたい事があります!」

西の顔つきが変わる。

「もしや・・・大洗の事か?」

「はい、おそらく」

「おそらく?・・・わかった、隊長室に行こう」

二人は隊長室に向かった。
隊長室中央のソファーに西が座り、寺本にも対面に座ってもらう。
寺本は紙切れを一枚出して西に報告をする。

「昨晩、東校舎第33学科の得た情報によりますと。聖グロから戦車道のある高校へ電信を用いた文が送られているとの事です。聖グロがよく使う乱数を用いた発信で、33学科が解読した結果がこれです」

寺本は紙切れを机の上に置いた。
西はそれを手に取り読む。

「ヒガシノカゼアメオオアライノテンキセイロウナレドモナミタカシ」

西は、ふむう・・・と腕組みをして寺本に聞く。

「大洗の事なのは間違いないな、大洗は何処かと戦争でもするのだろうか?寺本、どう思う?」

「そうですね、でも恐らく何かが決まったのだと思われます。それと・・・もう一つ情報が」

「なんだ?教えてくれ」

「同じく33学科からの情報なのですが、サ校とプ校からとある周波数で無線交信が行われていたと。しかしデジタル通信の秘匿コードの為内容は分からないとの事であります」

西は腕組みをしながら首をひねる。

「つまり・・・どういう事なんだ?」

寺本は右手を顎の下に置き、机に置いてあるメモを見ながら答える。

「多分ではありますが、電信での呼びかけでサ校とプ校が答えたという事でしょう。しかしあまり公にはできない事なのではないでしょか?」

寺本は続ける。

「恐らく、秘匿コードも何かしらで伝わっているのではないでしょうか?・・・しかし、秘匿コードを公にするのはまずいので他の方法で・・・あ・・・」

「あ?」

西は首をひねる。
寺本は何かひらめいたようだ。

「電子メールではないでしょうか?」

西も、なるほど、と相槌を打つ。
西は隊長席の机のパソコンを立ち上げる。
しかし、西は普段パソコンを使わない、いや、使おうとした形跡はあるのだが・・・。
西がパソコンをこねくり回したせいでとても使いにくい状態になっていた。

「て、寺本、ちょっと見てくれないか?」

恥ずかしそうにに西は寺本に助けを求めた。
寺本はなんとかメールを開くが、何百件とメールの受信が始まる・・・。

「隊長・・・・」

「いやぁ~・・・ははは!すまん・・・」

やっと受信が終わると、最後のほうでサンダースからのメールが有るのを発見した。
そこには電信文と数字が書かれていた。
寺本が言う。

「これですね!数字は周波数と秘匿コードと思われます。どう致しますか隊長、連絡いたしますか?」

西は、しばし何かを考えた後、寺本に言う。

「寺本、福田を呼んで来てくれないか?私は先に無線室に行っている。頼めるか?」

寺本は敬礼をし

「かしこまりました!隊長!」

「頼んだぞ」

寺本は駆け足で福田を呼びに行く。
西は無線室に向かった。


無線室で西が待っていると、寺本と福田がやってきた。
二人は敬礼をし無線室に入った。
西は福田に向かって話し出す。

「福田、突然呼び出して申し訳ない。話は寺本から聞いたか?」

福田はビシッと敬礼しながら

「は!大洗の事について聖グロより連絡があったとお聞きしました」

西は頷き

「ふむ、そうなのだが、詳しい事は今から無線通信をして聞くことになる。福田も知りたいだろうと思い呼んだのだが、一緒に聞くか?」

福田は更に背筋を伸ばし

「は!是非、聞かせて頂きたく思います!」

「わかった。寺本、無線の準備をしてくれ」

「かしこまりました」

寺本が準備を済ませ、西は交信を始めた。

「あー、あー、こちら知波単学園戦車道 隊長の西絹代でございます。御聞こえでしたら応答願います」

「こちら聖グロリアーナ無線室、西様ですね。オレンジペコ様にお繋ぎ致しますので少々お待ちください」

「了解でございます」

西は寺本に向かって言う。

「オレンジペコ殿とは誰だ?」

「は!確か、隊長車の装填手の方だと思われます」

「そ、そうか・・・」

なぜか西は緊張している様子である。

「お待たせいたしました、オレンジペコです。知波単学園戦車道 隊長の西様ですね。先日の試合、お疲れさまでした。この無線で通信されているという事は電信を見ていただけたのですね」

「オレンジペコ殿、こちらこそお相手頂きありがとうございました。電信を受信致しまして、大洗の事と理解しご連絡差し上げた次第であります」

「はい、実は、大洗の試合が先日決定致しました。この試合に勝てば大洗の廃校は今度こそ撤回されます!」

西はガタッと立ち上がり、福田と寺本も顔を合わせて笑顔になった。

「それは本当でありますかオレンジペコ殿?!・・・して、対戦相手は如何?」

「はい・・・対戦相手は大学選抜で・・・車両数は30両です」

「な!!」

西は愕然とした。
寺本も西に駆け寄り言う。

「大学選抜と言えば社会人をも打ち負かす実力の部隊です!それに大洗の車両は8両。これは余りにも・・・鬼畜文科省め・・・」

福田もうつむき両手を握りしめていた。
西はPTTボタンを押して話し出す。

「オレンジペコ殿、それは余りにも大洗不利というもの。しかし大洗はこの試合を受けたのですね?」

しばし間を置き答える。

「はい、大洗は無理を承知で受けました。ですがこれは大洗には不利すぎます。そこで我々高校側も大洗に増援を出すことにいたしました。現在、聖グロリアーナ、黒森峰、サンダース、プラウダの4校が参戦を表明しています」

西は福田を見た。
福田も西の方を凝視している。
寺本も傍らで西の目を見ていた。
西は、福田が友の為に泣いていたのを思い出し、その時何も出来なかった自分を思い出していた。
そして、何かを決心したのかPTTボタンを押して話し出す。

「オレンジペコ殿、その試合、我々も参戦する事は可能でございますか?」

「ありがとうございます!もちろんです!しかし・・・負ければ大洗は廃校になります・・・」

西の顔が引き締まる。

「昨日の敵は今日の盟友、友の危機に駆けつけるのに理由などありましょうか、オレンジペコ殿」

「そうですね・・・ありがとうございます!絶対勝ちましょう!それと、これは極秘作戦なので内密にお願いいたします」

「かしこまりでございます!」

「では、本日午後よりダージリン様より作戦の内容に関するブリーフィングを行いますので、この周波数でお待ちください。書類などはすぐにメールで送らせて頂きますのでご確認ください」

西は首をかしげる。

「オレンジペコ殿、少しよろしいか?」

「は、はい、なんでしょう?」

「ぶりーふ?とはなんでしょう?」

「あ・・・えと・・・ブリー・・・フィングでしょうか?作戦会議みたいな・・・」

「あー作戦会議ですね!かしこまりました!本日一二〇〇時、作戦会議の為、この周波数で待機いたします!」

「あ・・・はい、よろしくお願い致します」

「了解いたしました!では失礼いたします!」

西はマイクを置き椅子から立ち上がり福田の方を向いた。

「隊長殿ー!」

福田は西に走り寄り抱き着いた。
寺本はそれを見て。

「こら!福田!隊長に失礼だぞ!」

西は寺本に手を向けて言う。

「いや、いいんだ」

続けて西は福田に言う。

「福田よ、喜ぶのは今ではないぞ、この試合に必ず勝って友と皆で喜ぼうじゃないか」

福田は西から離れ、ビシッと敬礼し

「は!了解であります!西隊長殿!」

西は腕組みをし、ニッコリ顔でうんうんとした。
寺本もジャケットの腕を捲り

「こうしちゃおられませんな!号外を打たねば!」

とバタバタと駆けて行った。

しかし、西はまたも不安に駆られていた。
我々の戦車道が大学選抜に通用するとは思えない。
だが、この試合・・・大洗の命運を分けた試合になる、絶対に負けるわけにはいかない。
西は福田を見る。
福田は敬礼をしたまま決意を決めた目で西を見ている。
もしかしたら・・・この試合で知波単は変わるかもしれない・・・。
福田を見てそう思う西なのであった。



次回
【アンツィオ・ウォー】
よろしくお願いします。


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【アンツィオ・ウォー】

アンツィオ高校、ドゥーチェアンチョビにカルパッチョから電話が来る。
大洗の試合を知り何を思う。


アンツィオ高校学園艦

寮の自室で机に向かい自習をしている戦車道隊長のアンチョビ。
そこへ携帯電話に着信が入り、画面を見る。
電話の主はカルパッチョであった。

「アンチョビだ。どうした?カルパッチョ」

「ドゥーチェ・・・お知らせしたい事が」

また様子がおかしいな・・・。
アンチョビはそう思いながら聞く。

「どうした?言ってみろ」

「はい・・・大洗の試合が決定したと、先程たかちゃんから・・・」

「なに!試合だと?!どういうことだ?」

「はい・・・この試合に勝てば、今度は間違いなく廃校は撤回されるそうです・・・」

「マジか!!やったじゃないか!」

しかし・・・どうもカルパッチョに元気が無い。

「どうした?カルパッチョ。何かまだあるのか?」

「はい・・・実は、その試合の対戦相手なのですが・・・大学選抜だそうで、車両数は30両だと・・・」

「な!!・・・30両だと?!両軍合わせてではなく、30両づつか?!」

「・・・はい」

大洗の戦車は8両・・・30対8・・・いくらフラッグ戦と言えど30対8は無謀すぎる。
しかも相手は大学選抜・・・。

「カルパッチョ、それは誰が決めたんだ?」

「はい、角谷生徒会長さんが文科省と取り決めてきたそうで、文科省の提示したのがこの試合だそうです・・・」

大きく息を吐き、間を置きアンチョビが話し出す。

「大洗としては、どんな無茶な提示でも飲まなければいけないだろう、廃校が懸かっているからな・・・」

「しかし!これはあんまりです!役人の人たちはそこまでして大洗を潰したいのですか?!」

珍しく声を荒げるカルパッチョであるが、無理も無い、親友が大洗に居るのだから・・・。
だが、それを優しくアンチョビが諭す。

「落ち着けカルパッチョ、この提示を文科省から引き出した杏は流石としか言いようがない。これが無ければとっくに大洗は廃校だ」

「そう・・・ですが・・・」

アンチョビはしばし考えた後、カルパッチョに言う。

「カルパッチョ、明日8時に隊長室に来い。ぺパロ二にも来るように伝えろ」

「は、はい・・・しかし、なぜ・・・」

「いいから来い、分かったな」

「はい・・・」

電話を切ったアンチョビはすぐに別の誰かに電話を掛けた。

トゥルルル、トゥルルル

「よぉ~チョビ子ぉ。おひさ~」

「チョビ子と呼ぶなと言ってるだろ!アンチョビだ!」

電話の相手は大洗女子学園生徒会長 角谷杏であった。
アンチョビから話を切り出す。

「カルパッチョから聞いた。杏、大洗の試合が決定したそうだな」

杏は間を置き答える。

「ああ、決まった」

「どうなんだ、勝てる見込みはあるのか?」

「・・・どうだろうねぇ・・・でも、このまま黙って廃校になる訳にはいかない・・・。無理な戦いという事は分かっている。だが、必ず勝って、みんなで大洗に帰ろうって誓ったんだ」

「そうか・・・でも今、一番きついのは、西住なんじゃないのか?」

「・・・・・・・・すまないと思ってる。西住ちゃんが居なかったらとっくの昔に大洗は廃校だもんね。そしてまた・・・」

アンチョビは優しく言う。

「ああ、西住はそんな事微塵も思っていないだろうがな、でも負担になっているのは事実だと思うぞ。フォローは忘れないでやってくれ」

「うん・・・わかった」

しばしの沈黙の後・・・アンチョビが切り出した。

「・・・我々もこの試合に参戦する事は出来ないのか?他の高校に援軍を頼むとかあるんじゃないのか?」

「・・・ありがとうチョビ子・・・でもこれは大洗の試合だから・・・他に迷惑を掛ける訳にはいかない。試合自体が無効になってしまうかもしれないし・・・」

アンチョビは大きく息を吐き言った。

「そうか・・・往年の杏チョビコンビ復活だと思ったんだがな・・・」

「ははは・・・懐かしい話だな~チョビ子ぉ」

「チョビ子と呼ぶな!」

「ありがとね・・・チョビ子」

「お、おう。必ず応援に行くからな!絶対に勝てよ!」

「ああ」

アンチョビは電話を切り、俯き、何かを考えていた・・・。

翌日

隊長室に集まったアンチョビ、カルパッチョ、ぺパロ二。

ぺパロ二は今にも飛び出していきそうな勢いでアンチョビに言う。

「姐さん!カチこんでやりましょうよ!参戦出来るか出来ないかは行けば分かるじゃないっすか!」

カルパッチョも珍しくぺパロ二に同意する。

「そうです!私達も行きましょう!」

アンチョビは二人を制止する。

「待て!落ち着け!何か方法が有る筈だ。それを考えようと集まったんじゃないか!」

アンチョビはパソコンを立ち上げる。
そこへサンダースからメールが来ているのに気づきメールを開くアンチョビ。

「・・・おい・・・これ・・・」

カルパッチョ、ぺパロ二も、モニターをのぞき込む。

「ヒガシノカゼアメオオアライノテンキセイロウナレドモナミタカシ・・・・なんすかこれ?」

首をひねるぺパロ二、そして手を顎に置き考え込むカルパッチョ。
アンチョビも腕を組み考え込む。
カルパッチョが何か気付いたようだ。

「ドゥーチェ・・・この下の数字は無線の周波数と秘匿コードです。上の暗号文は大洗に関する事、もしかしてサンダースも同じ事を考えているのでは?」

ぺパロ二はポカーンとしている。
アンチョビは頷き言う。

「そうだな!あいつらなら情報を持っているかもしれないな!カルパッチョ、無線部の奴らに連絡しろ」

アンツィオ高校無線部 部室

無線部の生徒がブツクサ言いながら無線の準備をしていた。
ぺパロ二が無線部員をたたき起こしに行き、部室を開けさせたのだ。

「千代美さ~ん、準備出来ましたよ~」

「アンチョビと呼べと言ってるだろ!早朝からすまなかったな。これ、うちの鉄板ナポリタンのタダ券だ。とっといてくれ」

「え?マジで?いいの?ありがとね~。終わったらまた呼んでね~」

無線部員は券を受け取り退室した。
アンチョビは席に座り、PTTボタンを押した。

「こちら、アンツィオ高校戦車道隊長 ドゥーチェアンチョビだ。応答願う」

「了解、こちら聖グロリアーナ女学院無線室、アンチョビ様ですね?オレンジペコ様にお繋ぎ致します」

「??・・・待て!サンダースじゃないのか?!」

「はい、聖グロリアーナですが・・・」

アンチョビ、カルパッチョ、ぺパロ二は顔を合わせて首をひねるが・・・。

「ん、まあいい。オレンジペコを呼んでくれ」

「了解いたしました」

「お待たせいたしました、オレンジペコです。ご連絡ありがとうございます。この無線を使っているという事は、電信を見て頂けたのですね?」

アンチョビは左右に居るカルパッチョとぺパロ二を見るが、二人は視線を逸らした・・・。

「え、え~と~。サンダースからメールが来ていたからサンダースだと思っていたのだが・・・電信の事は知らん。だが、大洗の事に付いて情報が有るんじゃないのか?」

「そうですか~・・・そうですよね~・・・いえ、良いんです。はい、実は大洗の試合が決定いたしました!」

「それは知っている!」

「えーーーーー!」

驚くオレンジペコ。

「なぜ知っているんですか?まだ広報もされていない筈なのですが・・・」

勝ち誇ったようにアンチョビは言う。

「我がアンツィオの情報収集力を侮るなよ!こんなのはパスタを茹でるより簡単だ!」

カルパッチョは、ワタシワタシと自分を指差すが無視するアンチョビ。
オレンジペコは、それならばと話し出す。

「流石です!では、この試合、大洗に不利なのもご存じなのでしょうか?」

「ああ、もちろんだ。もしかしてお前ら、援軍を出そうとしているのでは無いのか?」

「そうです!すごい!そこまでご存じなのですね!では話が早いですね。この試合、黒森峰、聖グロリアーナ、サンダース、知波単、プラウダが参戦を決定しています」

今度はアンチョビが驚く。
カルパッチョとぺパロ二は抱き着いて喜んでいる。

「なんだと!そんなにも・・・しかし、簡単に参戦出来るものなのか?下手したら門前払いか試合自体が無効になってしまうのではないか?」

「はい、それについて後ほど正午よりダージリン様からの説明と、作戦のブリーフィングを行います。アンチョビ様・・・」

アンチョビはニヤッとしながら言った。

「すでに覚悟は出来ている!我々アンツィオも参戦するぞ!」

「了解いたしました!ありがとうございます!絶対勝ちましょう!ちなみに・・・この作戦は極秘でお願いいたします、大洗にもです」

「ああ、わかった」

「では、失礼いたします」

「了解」

アンチョビは、ふう、と息を吐き立ち上がり後ろを振り向く。
カルパッチョがスマホで何かしようとしていた。

「うわーーー!」

アンチョビはカルパッチョからスマホを取り上げる。

「カルパッチョ!今、たかちゃんにLINEしようとしただろ!大洗にも内緒だと言っていただろう?!」

カルパッチョはハッとして頭を下げる。

「すいませんドゥーチェ・・・嬉しくてつい」

「分かればいい・・・おい・・・ぺパロ二は・・・?」

「さっき、走って出て行きましたけど・・・」

「なぁーーーーにぃーーーー?!今すぐあいつを止めるんだ!」

「は、はいー!」

二人はぺパロ二を止める為、駆け足で部屋を飛び出していった。



次回
【継続・ウォー】
よろしくお願いします。


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【継続・ウォー】

電信の事を知ったアキはある行動にでる。


継続高校学園艦

アキとミッコは甲板の柵にもたれ掛かりながら海を見ていた。
遠くには佐渡ヶ島が見える。

「アキー!」

アキが振り向くと戦車道隊員のヨウコであった。
酷く疲れた表情でアキの元にやって来たヨウコ。

「はぁー、疲れた〜。アキ、隊長はどこに行ったか知らない?」

アキが答える。

「え?いつもの橋の上には居ないの?」

「居なかったよ。戦車倉庫やテントも見に行ったんだけど居なくてさ」

アキはミッコを見るが、ミッコは首を横に振る。
アキはすまなそうに答える。

「ごめんヨウコ、私達も分からないよ」

ヨウコは溜め息を吐き、肩をすくめながら言う。

「まあ、いつもの事なんだけどさ、携帯電話位持ってほしいよな〜。まあ船はあるから外には行ってないだろうから、その内ヒョコッと現れるさ」

アキは苦笑いをしながらヨウコに聞いた。

「ははは・・・ところでヨウコ、ミカに何の用なの?」

「ああ、聖グロが電信で暗号文を送ってきたんだけど、サンダースからも隊長宛にメールで同じ文が送られて来たんだよね〜。サンダースのは多分無線の周波数と秘匿コードらしい数字も書いてあるんだけど、意味がわかんなくてさ。どうしようかと思ってね」

「そうなんだ、暗号文はなんて書いてあったの?」

「これなんだけどさ」

ヨウコは紙切れをポケットから取り出してアキに渡した。
ミッコもアキの後ろから紙切れを覗き込む。

「ヒガシノカゼアメオオアライノテンキセイロウナレドモナミタカシ・・・なにこれ?」

「だろ?訳わかんなくてさ。もし隊長に会ったらさ聞いといてくんない?その紙は持ってていいから」

「うん、わかった」

そう言うとヨウコはもと来た道を戻って行った。
アキとミッコは紙切れを見ながら首をひねり考える。

「ねえミッコ、何かわかる?」

「いや〜・・・大洗としか・・・」

アキはハッとする。

「大洗って、あの大洗の事じゃないかな?大洗女子学園の」

ミッコも、お〜、と頷く。
アキが続けて話す。

「無線の周波数とコードも書いてあるから連絡してこいって事じゃないかな?・・・ねえミッコ、今から無線室に行かない?」

ミッコは驚きながら

「え!でもミカに聞かなくていいの?」

「連絡がつかないミカが悪いんだよ。いこ!」

アキはミッコの手を引っ張り無線室に向かった。

継続高校学園艦無線室

アキは無線機の周波数を合わせコードを入力している。
ミッコは心配そうに言った。

「アキ、ヤバイって。ミカに聞いた方がいいんじゃない?」

「大丈夫だよ。どんな話か聞いてみるだけだから」

アキはそう言うとPTTボタンを押して話し出した。

「こちら継続高校戦車道 隊員のアキです。応答願います」

「了解、こちら聖グロリアーナ無線室。アキ様ですね、オレンジぺコ様にお繋ぎいたしますのでしばらくお待ちください」

ミッコはハラハラしながらアキを見るが、アキはワクワクしているように見えた。

「お待たせ致しました。初めまして、オレンジペコです。継続高校のアキ様ですね?お噂はかねがね聞いております」

「こちらこそ初めまして、オレンジペコさん。あの、電信を見て連絡したんですけど・・・大洗に何かあったんですか?」

「はい・・・先日、大洗女子学園の試合が決定しました。この試合に勝てば今度こそ大洗の廃校は撤回されます」

アキとミッコは顔を見合わせる。

「オレンジペコさん、対戦相手は何処ですか?」

「対戦相手は、大学選抜です・・・車両数は30両」

え?!と驚くミッコとアキ。
アキは恐る恐る聞いてみる。

「あの、オレンジペコさん。大洗は確か8両しか無かったと思うんだけど・・・」

「はい、大洗は文科省より30対8の試合を取り付け、これを受けました。しかしこれは大洗には余りにも不利です。私達は文科省の理不尽な廃校宣言と、この試合に納得する事はできません。ですので高校側からも有志を呼び掛け大洗に増援を出す事に致しました。既に黒森峰、聖グロリアーナ、サンダース、プラウダ、知波単、アンツィオが参戦を表明しています」

ミッコはあたふたしながらアキに言う。

「アキ、やばいって!これ受けなきゃいけない感じになってるよ!」

アキはしばし間を置きPTTボタンを握る。

「オレンジペコさん、実はこの事はうちの隊長にはまだ話してなくて、私が勝手に連絡したの。隊長が今行方不明で・・・でも、探し出して聞いてみるから少し、待ってもらえませんか?」

少し間が空きペコが答える。

「そうですか・・・はい、構いません。強制ではありませんので。ご連絡いただけただけでも、私は嬉しいです。本日正午よりダージリン様より今回の作戦に関してのブリーフィングを行います。傍受していただけるだけでも構いませんのでお待ちしております。それと、参戦に必要な書類はもしもの為にメールで送らせていただきますね。後最後に、この事は出来るだけ内密にお願い致します」

「うん、わかったよ!行けるかどうかは分からないけど・・・・ミカに必ず伝えるから!オレンジペコさん」

「はい、ありがとうございます。そちらの隊長のミカ様は以前、黒森峰の頃のみほさんと死闘と言えるような試合を演じたと聞いております。私個人としては是非参加していただきたいのですが・・・・いえ、これは私の我が儘ですね・・・申し訳ありません。ではアキさん、お待ちしておりますね」

「了解」

アキはマイクを置き、時計を見る・・・9時50分

アキはミッコに言う。

「もう二時間しかない・・・ミッコ!ミカを探すよ!二手に分かれよう!」

「え!探すって、どこ探すのさ?!」

「そんなの自分で考えて!」

そう言うと無線室の出口で二人は左右に分かれて駆け出して行った。


継続高校学園艦 艦橋展望台

チューリップハットを被り、その上からヘッドセットを付けた女性が手すりに座りカンテレを奏でている。
足元には小さなアンテナの付いた箱が有り、そこから線が出ていてヘッドセットにつながっている。
その女性は、晴れ渡った空を見上げポツリと言った。

「風の・・・流れが変わった・・・アキ、大げさに考えすぎないよう、気をつけることだよ」

チューリップハットを被った女性、継続高校戦車道隊長 ミカはそう言うと手すりを降り、箱を抱えて展望台を降りて行った。

アキとミッコは他の戦車道隊員にも声を掛け、ほうぼうを探し回っているがミカは見つからないでいた。

「ふ~・・・アキ、見つかった?」

「だめ、見つからないよ・・・もう11時だよ。どうしよう・・・」

「おーーーい!」

大きな声で呼ばれたので振り向くとヨウコであった。

「今、BT-42が左舷側のクレーンの方に向かって行ったのを見たって人が居たぞ!多分ユルモに載せるんじゃないか?」

「ヨウコそれ本当?!近いね!ありがとう!行ってみる!」

アキとミッコは二人で駆けて行った。
左舷側クレーンに到着する二人。
クレーンの先にはBTを乗せたユルモが吊るされていた。
アキはクレーンの操作室に目をやると、そこにはミカが居た。
ミカはニッコリ微笑みアキを見つめる。

「あー!居たー!」

二人は階段を駆け上がり操作室に入ると、アキは半分怒ったように言った。

「ミカ!探したんだよ!」

ミカは微笑みながら言う。

「どうしたんだいアキ?」

アキは今までの出来事を説明した。
ミカはそれを聞いてゆっくりとカンテレを奏でながら話し出した。

「それで、アキはどうしたいんだい?」

アキはハッとする。

「あれ?わたし、どうしたいんだろう?」

「大切なのは、自分のしたいことを自分で知ってるってことだよ」

アキは自問自答するようにミカに言った。

「わたしは、興味本位で無線連絡して大洗の事を知ったけど・・・その時、一緒に戦いたいと思って・・・でも・・・なんて言うのかな?もっと大事な・・・守りたいって言うか・・・もう!わかんないよ!」

ミカはサッキヤルヴェン・ポルッカを弾きながら諭すように言った。

「もし、大洗がこの試合に勝ったら、他の学校が廃校になるだけじゃないのかな?そして、もし大洗が負けたら、アキはどうするんだい?」

「う・・・なんでそんな事いうの?ミ、ミカはどうするの?参戦するの?」

ミカはふふふと笑い言った。

「さあ、行こうか。風は北に吹いているよ」

「えー!どうするの?!参戦するの?しないの?」

「運命のドアも玄関のドアも開ける鍵穴は小さいものだよ」

アキはプンスカしながら言った。

「もう!わかんないよ!メールだけ印刷してくるからすこし待ってて!」

アキはメールを印刷して戻って来た。
ミカ、アキ、ミッコはユルモに乗り込み、ヨウコに海原に降ろしてもらい北に向けて旅立った。



次回
【Seven Stars】
よろしくお願いします。


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【Seven Stars】

聖グロリアーナの呼び掛けに呼応した6校+1が揃った。
ダージリンより試合への参加と上陸作戦のブリーフィングが始まる。


聖グロリアーナ女学院学園艦

時間は正午前。
ダージリン、アッサム、オレンジペコは隊長室に居た。

「ペコ、今からあなたは大洗の曲松商店街にある『やまと』さんに行って頂けるかしら?」

「え?大洗にですか?」

正午からのブリーフィングの準備が終わってからのダージリンの指示に困惑するオレンジペコ。

「そうよ。お店の近くまで来ましたら連絡していただけるかしら。そこからの指示は追って致しますのでそこで待機して頂戴」

「ダージリン様、それはどのようなご用件なのでしょうか?」

「従者を数人付けますので、ある荷物を受け取ってきて頂きたいの」

「それは一体・・・・?」

フフフ・・・と不敵な微笑みをするダージリン。

「それは・・・行けば分かりますわ」

「・・・はい、かしこまりました」

また、何か企んでいるなと思いつつ返事をするオレンジペコ。
ふう、と息を吐きダージリンの顔つきが変わる。

「そろそろ時間ですわね、アッサム、行きましょうか」

「はい」

三人は隊長室を出て、オレンジペコは大洗へ、ダージリンとアッサムは無線室に向かった。

聖グロリアーナ女学院学園艦無線室

ダージリンは席に座り、その傍らでアッサムは懐中時計を見ていた。
時計の針が正午を指す。

「ダージリン、時間です」

ダージリンがPTTボタンを押して話し出す。

「皆さま、ごきげんよう。聖グロリアーナ女学院戦車道隊長 ダージリンですわ。本来ならばお茶でも頂きながら皆さまとゆっくりお話し致したい所なのですが・・・残念ながらその時間はございませんの。ではこれより、大洗本隊へ合流する為の北海道上陸作戦のブリーフィングを行います。ではまず・・・今回、わたくし達の呼びかけに賛同してくださり、ご連絡いただいた方々の確認を致します。御呼び致しますのでお返事をお願いできるかしら。では・・・黒森峰、西住まほさん」

「ああ、聞いている」

「サンダース、ケイさん」

「ハァーイ、ダージリン聞いてるわよ」

「プラウダ、カチューシャ」

「なんで私だけ呼び捨てなのよ!」

「知波単、西さん」

「はい!聞いております!」

「アンツィオ、安西さん」

「アンチョビと呼べ(ry」

「継続、ミカさん」

「あ、あの・・・継続高校のアキと言います。まだ参加するかは分かりませんが聞いています」

ダージリンはアッサムに目をやり、アッサムは頷く。

「了解致しましたわ。ではアッサム。書類①と②に付いて説明していただけるかしら」

ダージリンが席を立ち、アッサムが席に着く。

「代わりました、アッサムです。では始めさせていただきます。まずPDFファイルの書類①と②をご覧ください。これは試合に参加する為に必要な書類です。①は大洗への短期転校手続き。②は連盟への手続きになっています。今回の試合に関しての大洗への短期転校、戦車の持ち込みは当日、試合会場に来られた方のみ無条件受理されます。すでに簡易ではありますが大洗女子学園学園長、戦車道連盟理事長の捺印済なっています。連名で構いませんので参加者全員のサインをお願い致します。書類は当日に提出していただきます。ただし、この件は文科省と大洗戦車道隊員には伏せてありますのでくれぐれも内密にお願い致します。ここまでで質問は御座いますか?」

「・・・」

「ではダージリンより上陸作戦の説明をさせて頂きます」

再びアッサムとダージリンが席を入れ替わる。

「ダージリンですわ。ではまず、各校の編成についての提案なのですが、黒森峰、プラウダは4両。グロリアーナ、サンダースは3両、アンツィオは2両、残りを知波単さんで計22両。継続さんは未確定なので保留と致します。各校ごとの車両の編成はお任せ致しますわ。この編成について質問は御座いまして?」

「まほだ。バランスの取れた編成だと思う。走攻守のバランスが取れていた方がみほの戦い方に合っているだろう」

「アンチョビだ。バランスは大事だからな・・・パスタ・・・ん?なんだ?・・・・なに?!・・・・」

何やらアンチョビの後ろから誰かが忠告をしているようだ。

「どうかなさいまして?」

「あの・・・うちは、予算の都合で1両、CV33しか出せない・・・す・・・すまん・・・」

「あら?P40はどうなさいましたの?」

「それは、あんたが!・・・いや・・・先日その・・・修理費を振り込んだばかりでな・・・すまないがうちからは1両だ・・・」

「まほだ。CV33なら偵察にもってこいなのではないか?タンケッテなら見つかりにくい。今回の戦いは情報が鍵になる気がする」

「すまん西住~!ありがとう!こんど私特製の生パスタを御馳走しよう!」

「フフ・・・それは楽しみだ」

「ゴホ、ゴホン・・・ごめんなさいねアンチョビさん。構いませんわよ、では、代わりと言っては何ですがグロリアーナからもう1両出しますわ。皆さんよろしくて?」

「かしこまりでございます!22両になれば良いのでございますね!」

「はい、よろしくお願いしますわね、他に質問は無くて?」

「・・・」

「では次に、上陸作戦の説明を致します。書類③を見て頂けるかしら。大洗は明日、18時30分発のフェリーに乗り、翌13時30分に北海道に上陸致します。そこから貨車にて試合会場に移動。18時00着予定となっています。ここからなのですが、今回の作戦の特殊性を鑑み、我々は夜に紛れて移動いたします。大洗が試合会場に到着した日の午後九時に、わたくしより参加の各校に、とある詩の一節を電信にてお送りしますので用意しておいてください、それが上陸作戦開始の合図になりますわ。上陸開始後、午前6時までにYB地点にて各校分散待機してください。上陸手段に関しては各校にお任せ致します。無線連絡はこの周波数をお使いください。何か質問は御座いまして?」

「カチューシャよ。特に質問は無いけど、うちはあの辺りは庭みたいなもんだからどうにでもなるわ。それと、陸路で来る学校は有る?」

「西です!当方は汽車での移動になります!」

「アンチョビだ。うちもトラックで移動になるな」

「汽車は青函トンネルは通れないわよ!知らないの?!・・・仕方ないわね、私の学園艦を青森駅で待機させてあげるからそれに汽車とトラックを載せなさい。函館まで運んであげるわ。感謝しなさい」

カチューシャは生粋の道産子であった。

「カチューシャ殿!恐縮至極に存じます!」

「すまんな、カチューシャ」

「ケイよ、まるでDdayね。うちは距離が有るから輸送機になるわね。でも降りられる場所があるかな?」

「グロリアーナは不測の事態に備えて学園艦で移動し、沖合から揚陸艇で上陸致します。ケイさんは、うちの艦に着艦されてはいかが?」

「ありがとうダージリン。そうさせてもらうわ」

「黒森峰は飛行船での移動になるな。北海道ならば降りる場所に困る事はないだろう」

「あの、アキです。一応、今は北の方に向いて揚陸艇で航行中ですけど、ミカが言うには風向き次第だそうです」

「決まりましたわね。それと・・・もう一つ重要な件があるのだけれど・・・皆さん、大洗の制服は御入用?」

「!!」

暫し沈黙の後・・・。

「まほだ・・・ぜ、ぜひ頼む。隊員の士気も上がるだろう」

「カチューシャも・・・着てみたい気がする・・・」

「Wow!あの制服Cuteよね!着たい着たい!」

「アンチョビだ、うちのやつらが着たいとうるさいからうちのも頼む」

「やはり女子の制服と言えばセーラー服で御座いますね!我が隊も是非着用したいであります!」

「あ、あの・・・ミカが参戦するかは風次第だけど、制服は着たいと言ってます」

「フフフ、ではご用意致しますわね・・・サイズは今から2時間以内にお知らせ下さい。」

ダージリンは閉めに入る。

「さて、ブリーフィングはこれで終了ですが。皆さん、こんな諺をご存知?『Every cloud has a silver lining』どの雲でも銀の裏地がついている。どんな絶望の中にも必ず希望はあると言う意味ですわ。大洗の方達も今、絶望の淵から希望の扉をこじ開け、その先の僅かな光を掴もうとしています。私達大洗連合は、自分の持てる道具を持って、そのお手伝いをさせて頂きましょう」

「ああ、ダージリン・・・ありがとう」

「そうね!絶対勝つわよ!」

「大学選抜なんかギッタンギッタンにしてボルシチの具にしてやるわ!」

「大洗連合は弱くない!いや、強い!というのを見せつけてやろう!」

「粉骨砕身の覚悟でがんばります!」

「ポロロロン」

「以上解散」

ダージリンは席から立ち上がり振り向きアッサムに指示を出す。

「アッサム・・・ローズヒップとバニラ、ルクリリを隊長室まで呼んで頂けるかしら。それと、貴女は一足先に北に飛んでくださいな」

「かしこまりましたわ」

アッサムはそう言うと一礼し、無線室から退室した。
一人になったダージリンはポツリと言った。

「『同じ羽の鳥は群をなす』なのかしらね?・・・フフフ」



次回
【Sigh of Violon of autumn day】
よろしくお願い致します。


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【Sigh of Violon of autumn day】

北に向けて大洗連合各校は出発する!
予定通り電信を送るダージリンであったが・・・。

(出発シーンはGlory Storyを聞きながら読んでもらうと良いかもしれません)
(取り急ぎ上げましたので誤字脱字が多いかもしれませんがもしよろしければ報告してくださいませ)


聖グロリアーナ女学院学園艦隊長室。
北へ向けて、後数時間で出港であった。
ティーセットが置かれたテーブルが幾つか置かれている。
ローズヒップ、バニラ、ルクリリと各隊員は席に付いていた。
ダージリンの傍らにはオレンジペコが居る。
ダージリンは席を立ち隊員達に向かって話をしている。
話が終わった所で隊員全員が立ち上がり敬礼をして隊長室を退室していく。
ダージリンは紅茶を一口飲み、軽く上を向き微笑んだ。


アンツィオ高校コロッセオ

アンチョビがトラックに載せたCV33の上に乗り演説をしている。
ぺパロ二とカルパッチョもトラックの横に居る。
その周りを囲むように隊員達が『大洗連合FORZA!』と書かれた横断幕を広げたり大洗とアンツィオの小旗を振ったり、拳を掲げてコールをしたりしている。
アンチョビがビシッと単鞭を掲げた所でぺパロ二とカルパッチョはトラックに乗り込みゆっくりとトラックを出した。
トラックを追いかけながら手を振る隊員達。
トラックは艦から降りて北に向かい走っていく。甲板の手摺から乗り出し見送る隊員達であった。


知波単学園学園艦操車場

操車場からK2型蒸気機関車がゆっくりと出てくる。
機関車が止まり平貨車に載せた戦車から隊員が続々と降りてくる。
隊員達は玉田の号令で西の前に整列、敬礼する。
西も敬礼し、隊員達を見まわし檄を飛ばす。
再び隊員達は敬礼し客車に乗りむ。
西も客車の搭乗口に足を掛ける。
左を向くと福田が窓から乗り出し西に向かって手を振っている。
西は口を閉じたまま軽く微笑み、うんと頷くと客車に乗り込んだ。


黒森峰女学園学園艦飛行船駐機場

ライトに照らされた巨大な飛行船が甲板に駐機されている。
搭乗口の前には後ろ手を組んだ西住まほとその傍らにエリカが居る。
まほの前には赤星と直下とその乗員達が居る。
エリカが話をした後、視線をまほに向ける。
まほは隊員に檄を飛ばす。
赤星と直下は顔が真剣になる。
まほが話し終えた所で、隊員が軍靴をカッと鳴らして敬礼した。


サンダース大学付属高校学園艦飛行場

格納庫から輸送機C5-Mに向かいケイ、アリサ、ナオミがゆっくりと歩いてくる。
その後ろには隊員達が横に広がり付いてくる。
格納庫から輸送機まで沢山の人だかりが出来、隊員達に手を振っている。
ケイはジャケットを肩に掛け、颯爽と歩いている。
アリサ、ナオミ、隊員達も軽く手を振りながらケイに付いて行く。
輸送機の搭乗口に着いた所で隊員達は振り向き横一列に並び、ケイが搭乗階段を上がり切った所で振り返りオーディエンス達に手を振る。
ケイが乗り込んだ所で隊員達も輸送機に乗り込んだ。

プラウダ高校学園艦格納庫

ポルニク型揚陸艦の傍らでノンナに肩車されたカチューシャが戦車の積み込みを見ている。
KV-2がスロープを上るのに手間取っているのを見て両腕をバタバタさせて怒っている。
ニーナがハッチから顔を出して謝っている。


継続高校ユルモ型揚陸艇

月明かりに照らされながら川をゆっくりと遡るユルモ。
アキは毛布にくるまり寝ている。
ミッコは操縦席で操縦している。
ミカはBTの砲塔の上でカンテレを奏でながらゆっくりと月の方を向いた。


上陸作戦当日

聖グロリアーナ女学院無線室

時間は21時になろうとしていた。
ダージリンは紅茶を一口飲み、詩の一節を読み上げる・・・。

「秋の日の、ヴィオロンのため息の、ひたぶるに身に染みて・・・うらがなし・・・北の地にて、飲み交わすべし・・・」

オレンジペコは電信機にてカタカタと送信している。

サンダース C5-M
アリサが電信を聞きながらメモを取っていた。
その後ろでナオミとケイはそのメモを見ている。
メモの文を見て軽く微笑むケイ。

プラウダ ポルニク
ノンナは机に向かい電信を聞きながらメモを取り、カチューシャはそれを見ながら夜食を取っていた。


黒森峰飛行船
操縦をしているエリカにまほが内容を伝える。
エリカは言う・・・。

「熱い紅茶ですね・・・」

知波単 K2機関車
西はメモを見ながら言った。

「紅茶って飲んだ事無いんだよなぁ・・・」

継続 何処かの森
アキは言う

「お茶会・・・楽しそうだよ」

「刹那主義には賛同できないね・・・」

ポロローン♪

「でも・・・つまらない意地を張って、優しい仲間を失うことは、美しい宝石をなくすよりも悲しいことだよ」

アキとミッコは顔を見合わせて笑顔になった。

アンツィオ プラウダ学園艦 青森駅

寝ていた。


聖グロリアーナ隊長室

電信での作戦開始の連絡も終わり、これから上陸の準備を始めようとした頃。
電話が入り、オレンジペコが対応する。

「はい、お待ちください」

オレンジペコは受話器をダージリンに渡しながら言う。

「ダージリン様、アッサム様からです」

ダージリンはありがとうと言い受話器を受け取り話し出す。

「ご苦労様、ダージリンです。そちらの様子はいかがかしら?」

アッサムは困ったように話し出す。

「ダージリン、それが・・・ルールに変更が有った模様で・・・殲滅戦になったと・・・」

眉間に皺を寄せるダージリン。
書類等の記載や今までの話を思い出すが、よく考えれば一言も『フラッグ戦』とは書いても聞いてもいない事に気付く。

「そう、一杯食わされましたわね。しかし、増援を出す事が出来たのが救いですわ、作戦はこのまま続行致します。アッサム、貴方はお休みになって明日に備えてください」

「かしこまりました」

「こきげんよう」

ダージリンは優しく電話を切り、オレンジペコに説明する。

「ペコ、今回の試合・・・殲滅戦になりましたわ」

「え!・・・そんな・・・ダージリン様・・・」

オレンジペコは拳を握りしめて言う。

「もう・・・私は怒りました!文科省はどこまで大洗をバカにすれば気が済むのですか?!・・・大洗の人達の今の心境を考えると・・・」

オレンジペコは俯き泣きそうになっている。

ダージリンは優しく諭す。

「ペコ、こんな言葉を知っている?『面白いから軍備を続ける者はいない。恐ろしいから軍備を続けるのだ』あちらは大洗を恐れていますわ。なら・・・付け入る隙は有る筈です。高校戦車道を敵に回した事、後悔していただきましょう」

オレンジペコは涙を拭きながら言う。

「チャーチルですね。はい!イギリス・・・いえ、私達は『恋愛と戦争に手段は選びません』絶対勝ちます!」

「いい覚悟ですわ、ペコ・・・それと各校にこの事を緊急通達していただけるかしら」

「はい!」

ダージリンは紅茶を一口飲み、月明かりが後ろから照らす中、どす黒く微笑んだ。

ペコは無線室にて通達を送る。

「CQ、CQ、緊急通達です。大洗と大学選抜との試合は殲滅戦になりした!各校参戦の可否を問う」

「・・・・了解、黒森峰はこのまま作戦を続行する」

「ピーーーー!(放送禁止用語)ガシャン!」
「あ、あの副隊長のアリサです!当方もこのまま続行します。そちらの学園艦は視認できていますのでこれより着艦体制に入ります」

「ふん!フラッグ戦だろうが殲滅戦だろうが結果一緒よ!ピロシキの具にして食べてやるだけよ!」

「なんですと!そのような事が許されるのでありますか?!・・・かしこまりであります!このまま進軍致します!」

「アキです。オレンジペコさん、隊長は参戦するみたいだよ!」

「えと・・・あれ?もしかして寝過ごしたっすか?え?電信?寝てたんで分からないっす・・・は?!殲滅戦って・・・マジっすか!しゃらくせえ!ぶっ潰してやるっす!」

オレンジペコは結果をダージリンに報告した。

「全校作戦続行だそうです!」

「でしょうね。女子高生を怒らせたら怖いのよ・・・フフフ」

C5-Mがゴオーーー!と着艦するのを眺めながら紅茶を飲むダージリンであった・・・。




次回最終回?
題名未定
頑張りまーす


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【To the land of promise】①

函館から上陸した知波単とアンツィオは陸路でYB地点に向かっていた。
アンツィオのトラックが国道を走っていると・・・。


午前二時・・・。

聖グロリアーナとサンダース、黒森峰、プラウダ、継続は上陸を果たし、YB地点にて分散待機していた。

聖グロリアーナは野営の準備を終えた所である。
ローズヒップはクルセイダー隊隊員を集めて指示を出していた。

「集まりましたでございますわね。ダージリン様からの指示でございますが。バニラ、申し訳ありませんが継続が参戦するそうなので、貴女達もサポートへまわっていただきますわ。クランベリー、ラベンダー、そしてバニラは各校の待機場所へ荷物を届けてきて頂戴でございますのよ」

「かしこまりました」

車長三人は乗員と共に三台のトラックに乗り込み各校の待機場所へ向かって行った。

知波単学園K2機関車

知波単学園も上陸を果たし降車地点に向けて全速力で移動中であった。
うつらうつらしている西に誰かが呼びかける。

「西隊長!」

西はビクッとして顔を上げる。

「おお・・・玉田か、すまない。どうした?」

「は!現在の我々の進軍状況でありますが、1時間程遅れている状況であります。聖グロより進軍状況の確認の連絡がありましたので、そうお伝え致しました」

「そうか・・・ギリギリだな・・・玉田、機関士に出来るだけ急いでくれと伝えてもらえるか?頑張ってもらっているのだろうが、よろしく頼む」

「は!かしこまりました!」

K2機関車機関室

機関車道の機関士、長野原が受話器に向かって怒鳴るように応答している。
長野原が受話器を置き機関助手に指示を出す。

「相生!もっと蒸気を上げんか!」

「うおー!知波単魂ーーーー!」

機関助手の相生は気合の声を上げながら窯に石炭を放り込んでいた。


アンツィオ高校 フィアット Spa38

街灯も無い真っ暗な国道をトコトコと走っていた。
月は雲に隠れて辺りは漆黒の闇が覆っている。

「ドゥーチェ・・・真っ暗ですね・・・」

「そ・・・そうだな・・・・」

余りの暗さにアンチョビとカルパッチョは不安な気持ちになっていた。

「ちょっと、ライト消してみましょうか?」

ぺパロ二がヘッドライトを消すと、まるで目を瞑ったような真っ黒い暗闇である。

「ひやー!」

「うお!ライトをつけろ!」

ペパロ二はヘラヘラ笑いながらライトを点ける。

「いや~すんげー暗かったっすね~姐さん。背筋がゾクゾクしますね」

アンチョビはぺパロ二の肩をガシッっと掴み言う。

「おい!そういうのはやめろ・・・」

アンチョビの目がマジである。

「ドゥーチェ、後ろから車が付いて来てますよ。地元の車じゃないでしょうか」

カルパッチョがすこし安心したように言った。

「よし、心強い。先行させて付いて行こう」

ハザードを点滅させて左に寄り後方車に道を譲ると、その車はバビューンと右側を追い抜きあっという間に視界から消えそうになる。

「速えー!」

「おい~!置いて行くなよー!」

「あっという間に置いて行かれましたね・・・」

「ぺパロ二!追いかけろ!」

「いや無理っすー!もう全開っすよ姐さん!燃料もあんま無いですし・・・」

「これだったら後ろに付いていてもらったほうが良かったですね・・・」

また辺りは漆黒に包まれる。
不安な気持ちになりながら走行していると遠くのほうで誰かがカンテラをグルグルと回しているのが見えた。

「あれ、何でしょうね姐さん。なんか自分達に向けてるみたいっすけど・・・」

非常に不安を掻き立てられるシチュエーションである。

「ぺパロ二、止まらずに確認するようにゆっくり近づけ・・・」

「了解っす」

トラックを徐行させ、ゆっくり確認しながら近づくと女性が数人、手を振りながらカンテラを回している。
サンダースと似たようなタンクジャケットを着ているが少し違う感じである。
人である事を確認してホッとしたアンチョビはトラックを止めさせる。
ぺパロ二が首を捻りながら言う。

「なんでしょうね?あいつら」

その女性の内の一人が、道路を横断しこちらに向かって走ってくる。

ぺパロ二がウインドウを開けると。

「突然御停めして申し訳ありません。とりあえずあの広場へ」

誘導に従いトラックを広場に停めると、その横に整列するように彼女達が並ぶ。
アンツィオの三人はトラックから降りると、その内の二人が一歩前に出て話し出す。

「突然御停めして申し訳ない、アンツィオ高校のドゥーチェアンチョビと副隊長のぺパロ二さんとカルパッチョさんですね?我々はメイプル高校戦車道の者です。私は隊長のルーニー、そして隣に居るのが副隊長のトゥーニーです」

「初めまして。副隊長のトゥーニーです」

小声でぺパロ二が言う。

「こいつら、私達になんの用なんですかね?」

「さあな、ま、取って食われる訳ではないだろう」

アンチョビはそう言い、一歩前に出て話し出す。

「そうだ、私がアンツィオ高校戦車道隊長ドゥーチェアンチョビだ。メイプル高校のルーニーとやら、一体如何様な用事で我々を引き留めたのだ?」

ルーニーはアンチョビの目を見ながら話し出す。

「あの無線・・・我々も聞いていました。恐らく、他の高校もみんな聞いていたと思います」

「あの無線?聖グロの秘匿無線の事か?」

「はい、同盟校のサンダースよりメールが送られて来たのを確認し傍受していました。今回の大洗の一件で、私はプライドを文科省に踏みにじられたような、そんな気になりました。私達のやっている戦車道はそんな軽い物なのか?と・・・。そんな中、無線で各校が参戦を表明していくのを聞き、私は歓喜しました。そうだ!私達の戦車道は役人達が思っているようなそんな軽い物ではないと!」

思いのたけをぶつけるルーニーの話を聞き、腕組みをしてニヤリとするアンチョビ。
ぺパロ二、カルパッチョも互いを見てニヤッとする。
ルーニーが話を続ける。

「しかし・・・我々メイプル高校は、今年の大会にも出られないような弱小校・・・それに参戦を表明した高校は機材、人、それぞれを鑑みて現在最強の高校選抜だと思います。我々はそんな最強の布陣に参戦を表明する勇気も無く・・・それでも何かお役に立ちたいと、せめて補給だけでもと思い、YB地点に隊員を派遣しお手伝いをさせて頂いております。アンツィオと知波単は現在移動中との事で、ここで待たせていただきました」

話を聞いたアンチョビは表情が柔らかくなる。

「そうだったのか・・・ルーニー、その気持ちしかと受け止めた。補給も有り難く頂くぞ」

「分かりました、ありがとうございますアンチョビさん。トラックの燃料はガソリンでよろしいですか?CV33も
ガソリンでしょうか?」

「ああ、両方ガソリンだ」

「トゥーニー、トラックにガソリンの補給だ。後、トラックに載せられるだけガソリンを載せて差し上げろ」

「了解しました」

トゥーニーは隊員達と共に作業に取り掛かる。
ルーニーはアンチョビに質問をする。

「アンチョビさん、お聞きしたい事が有るのですがよろしいですか?」

「なんだ?言ってみてくれ」

「大洗の隊長、西住みほさんとは一体どんな方なんですか?たしかに今回の大洗の件で我々は戦車道をバカにされた気になりました。しかし、それだけでこれだけの高校が集まるものなのか・・・。西住みほさんの、あの戦い・・・車両も我々と大差ないような無名の大洗女子学園が、サンダース、アンツィオ、プラウダ、黒森峰とぶつかり勝ち、優勝まで導いた。まさに軍神と呼べるような・・・少し畏怖も感じる、そんな人に見えるのですが・・・」

「フフフ・・・はははは!それは違うなルーニー」

笑い出したアンチョビにきょとんとするルーニー。

「そ、そうなんですか?」

「ああ、あいつらは、良い奴らだ。西住みほも仲間思いな良い奴だぞ。一度戦えば分かる。我々も大洗との試合で僅差で負けてしまったが、とてもいい試合だった。だから・・・我々はここに居る」

ぺパロ二、カルパッチョも頷く。
肩の力が抜けたのか表情が柔らかくなるルーニー。

「そうなんですね・・・あなた達三人を見ていると、西住みほさんがどんな方なのか分かった気がします」

「そうか?機会が有れば一度、大洗と試合をしてみるといい。すぐに分かる筈だ、あいつらとの試合は楽しいとな。本気で熱くなれる。そして、うちともな」

「是非、大洗と試合をしてみたいです!もちろんアンツィオとも・・・しかし・・・」

「ああ、分かっている。ルーニー、見ていてくれ。この大洗対大学選抜の試合、絶対に負けない、いや、勝つ!」

「はい、この試合、この目に焼け付けさせていただきます!」

補給が終わり、トラックの横に並ぶメイプル高校の隊員とアンツィオの三人。

「ルーニー、ありがとう。おかげで助かった。実を言うと、我々も予算がカツカツでな、燃料もギリギリだったんだ、これで目一杯戦える」

「こちらこそ、お役に立てて光栄です。御武運を」

隊長の二人は握手を交わしアンツィオ流の抱擁をする。

「必ず応援に行きますのでがんばってください!」

「大学選抜なんかぶっ潰してやるっす!」

「ありがとうございました。大洗に私の友達が居るので必ず伝えます」

副隊長のトゥーニーもぺパロ二、カルパッチョと握手と抱擁をした。

「あ、そうだ!忘れていました。聖グロより預かり物が有ります」

トゥーニーが紙袋を持って来てアンチョビに手渡した。
アンチョビが袋を開けると、そこには大洗の制服が入っていた。

「お?大洗の制服だな。どれどれ?」

上着をあてがってみるアンチョビ。

「どうだ?似合うか?」

「あひゃひゃひゃ!なんかやらっしいっす!」

「なんだとぺパロ二!おまえも合わせてみろ!」

「どうっすか?」

「ぷっふ!」

「ぷっふ!ってなんなんすか?!」

「はははは」

その様子をみて笑うカルパッチョとメイプルの面々であった。
アンツィオの三人はトラックに乗り込み、メイプル高校の隊員が見送る中、YB地点の待機場所へ向かい出発した。
ぺパロ二が話し出す。

「いい奴らでしたね、あいつら」

「ああ、そうだな」

「メイプルシロップも沢山頂きました」

「そうか、クアトロフォルマッジにかけると美味いんだこれが」

「食わしてやりたいっすね、あいつらに・・・」

「ああ、大洗のやつらにも、メイプルのやつらにもな・・・急ぐぞぺパロ二」

「了解っす!」

雲がはれ、月明かりが照らし出した国道をひた走るフィアットであった。



次回
【To the land of promise】②
お楽しみに。
ペースをあげます!


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【To the land of promise】②

知波単とアンツィオはYB地点に向けて移動中であった。
そして夜が明け、各校が見たものとは?

(最終話です。ワタクシの感想はまた後日・・・)


午前3時前・・・。

黒森峰、プラウダ、継続は聖グロからの荷物を受領した。
サンダースは上陸前に受領している。

西住まほは大洗女子学園の制服の上着をあてがってエリカに感想を聞く。

「どうだ?似合っているか?」

「は・・・はい、とても・・・お似合いです」

若干興奮を覚えるエリカ。
エリカの横に居た赤星も言う。

「かわいいですよ、隊長。これで、私達も大洗の生徒ですね」

「そ、そうか・・・そうだな」

まほも頬を赤らめながら言った。

プラウダでも、カチューシャが就寝している中、制服を受領していた。
ノンナはカチューシャの制服を代わりに受け取り、首元のタグを確認した。

「フフ・・・・」

クラーラも不思議に思いタグを見る・・・。

「これは・・・フフ・・・」

それを遠巻きに見ていたニーナとアリーナは・・・。

「ノンナ副隊長、チビッコ隊長の制服さ見で、笑ったべや・・・」

「んだっきゃな、クラーラさんと二人でしゃがみ込んで、カズーシャ隊長の制服さ見て笑ってら・・・」

ノンナが視線を感じて振り返る。

「なにか?」

「いんえ!なんでもありまっせん!」

継続高校では・・・。

「うわー!セーラー服かわいいー!」

アキがすでに着用し小躍りしていた。

「なんでも着れば良いって物じゃ、ないんじゃないかな?」

ポロローン♪

「一番初めに着てたのミカじゃん!」

「なんか、お腹の辺りがスースーするな~・・・」

おもむろにジャージを履くミッコ。

全員既に着用済であった。



午前4時30分

知波単学園は降車地点に到着。
平貨車より車両をプラットホームに降ろしている所である。
メイプル高校の隊員達も降車の手伝いをしている。
最後の車両、福田が車長を務める九五式軽戦車がプラットフォームから降りて隊に加わる。
駅前広場には西の隊長車を先頭に、玉田、細見、名倉、池田の中隊長車が後ろに横一列に並び。
そして中隊長車の後ろには隊員の車両が列を作り並んでいた。
玉田が西に駆け寄り報告する。

「西隊長!降車作業完了いたしました!」

「わかった。御苦労だったな玉田、それと、メイプル高校の方々、お陰様で間に合いそうです。感謝いたします!」

西は降車を手伝ってくれたメイプルの隊員に深々と頭を下げる。
西の腰の低い態度にメイプルの隊員もたじろぎながら

「い、いえ、こちらこそお役に立てて光栄です。それと、聖グロより大洗の制服を預かっていますのでお渡ししたいのですが・・・」

「おお!そうでありますか、了解いたしました!玉田、各隊員に通達!メイプルの方々より大洗の制服を受け取るように!」

「かしこまりました!」

メイプルのトラックの後ろに知波単の隊員が並びテキパキと制服を受け取っていく。
その横で、制服を受け取った福田は上着を広げ、目をキラキラさせている。
制服を渡し終えた所で、メイプルの隊員同士が不思議そうに話しをしていた。

「なあ・・・さっきから気になってたんだけどよ、なまら車両多くないかい?22両も居るべ・・・」

「多分予備車両っしょ?作戦に支障をきたさないように22両準備したんっしょ」

「聖グロと言い、知波単と言い・・・さすが・・・お嬢様学校だな・・・」

この後、ダージリンをキレさせた「鉄獅子22両事件」が発生する事は・・・まだ誰も知らない・・・。

「夜明けが近いぞ、時間が無い!全員乗車!」

玉田の号令で隊員が各車両に搭乗し、エンジンを始動、待機している。
西も搭乗しキューポラから顔を出している。玉田が西に無線で報告する。

「出立の準備整いました!西隊長、御命令を!」

「わかった。これよりYB地点へ進軍する!戦車前進!!」

各中隊長も復唱する。

「戦車前進!!」

メイプルの隊員に見送られ、勇敢なる鉄獅子22両が咆哮上げて走り出す。
まだ暗い中であるが、戦車22両の移動は迫力が有り、カブに乗った新聞配達の人も呆気にとられていた。
まったく闇に紛れてはいないが・・・。


午前6時前・・・。
YB地点の各校待機場所は小高い山の上である、試合会場のスタート地点からは稜線の奥側で丁度死角になって見えない。

聖グロではモーニングティーを嗜んでいた。
各戦車の横にテーブルが置かれ、その上にはティーセット。
大洗の制服を着た隊員達がテーブルに着き各々が朝食をとっている。
チャーチルの横でもダージリンを含め乗員が紅茶を飲んでいる。
オレンジペコは無線機が置いてあるテーブルに座り交信を始めた。

「CQ、CQ、おはようございます。こちら聖グロリアーナ、オレンジペコです。午前6時になりました。各校の状況をお知らせください」

「こちら黒森峰、予定どおり待機している。報告すべき問題も今の所無し」

「グーーーーッドモーニーーーーング北海道!こちらサンダース。うちも問題無しよ」

「おはようございます。プラウダですが当方も問題無く待機しています」

「継続のアキです。オレンジペコさんおはようございます。今から朝ごはんを取りにいってきます」

「おはよぉーございます!お待たせいたしました!知波単学園は只今YB地点に到着いたしました!これより補給等準備を致しまして指示が有るまで待機致します!」

アンツィオからの報告が無い・・・。
再びオレンジペコは通信する。

「こちら聖グロリアーナ。アンツィオ高校応答願います」

「こちらドゥーチェ、応答願う」

「あ、よかった・・・オレンジペコです。そちらはどうなっていますか?」

「すまない!今全開で移動中だ!試合開始は8時だったな?どうだぺパロ二?・・・そうか、なんとしても間に合わせる!」

「了解いたしました!どうか御移動後安全に、お待ちしております。それと、各校の皆さん。これよりこの無線は閉鎖致します。合流開始時より戦車無線での運用になりますのでご注意ください。以上」

各校「了解」

午前7時30分・・・。

黒森峰の西住まほ、逸見エリカは稜線に隠れ双眼鏡を覗いていた。
視線の先には試合会場が見える。
大きなスクリーンに観客席、物見櫓・・・そして・・・二人は絶句していた・・・。
大洗と大学選抜の陣営・・・大学側は隊員百数十人と27両のパーシングとチャーフィー、1両のセンチュリオン。
大洗は8両の戦車と32人の隊員・・・。
双眼鏡を持つエリカの手が震えている・・・。

「隊長・・・」

まほがゆっくりと双眼鏡を降ろす。そこには試合の時に見せる、いや、それ以上の眼光鋭い隊長が居た。

「戻るぞエリカ・・・」

「・・・はい」

聖グロリアーナ、サンダース、プラウダ、知波単、も偵察を行っている。

ダージリンはその圧倒的な戦力差を目の当たりにして言った。

「あなた達は・・・これに立ち向かおうとしているの・・・?」

オレンジペコ、アッサム、ローズヒップ、ルクリリも言葉が出ないでいた。

サンダースのケイは双眼鏡を降ろしポツリと言う。

「WTF・・・OMG・・・」

アリサもこの異常な状況に驚きを隠せない。

「これは・・・あまりにも・・・」

ナオミは大洗の制服の上に羽織ったジャケットのポケットに手を突っ込みガムを噛みながら眼光鋭く黙って見ている。

プラウダのノンナとクラーラ、ニーナ、アリーナ。
ノンナが双眼鏡を覗いていた。

「・・・」

「同志ノンナ・・・」

「ひぇー・・・こっただ試合になるんだべか・・・?」

ノンナが双眼鏡を降ろしてクラーラに言う。

「カチューシャは、まだお休みになっていますか?」

「Да・・起こして差し上げますか?」

「・・・いえ・・・合流開始まで起こさないでください・・・」

「・・・Да」

知波単、西、玉田、寺本、福田。

30対8のの現実を目の当たりにした西が言う。

「なんという戦力差だ・・・」

「大洗はこんな戦力差の試合をしようとしていたのですね・・・なんという覚悟!あと少し、あと少し待っていて下され大洗の方々・・・」

寺本はカメラのシャッターが切れないでいる・・・。

福田は下唇を噛み締めている。
そして、朝日に反射した眼鏡の下からは涙が零れている。

「・・・アヒル殿!・・・」

継続のミカはBTの砲塔の上で心地よい風に吹かれながらカンテレを奏でている。
そこへ走ってくるアキとミッコ。

「ふぅ~・・・ミカ!なんかすごい事になってるよ!」

「なにが・・・すごいんだい?」

「大学選抜の数が多すぎ!そして大洗の数が少なすぎ!こんなんじゃ試合になんないよ!」

ミカはフフ・・と微笑み言った。

「嵐の中にボートを出すばかりが・・・勇気じゃないんだよ」

ポロローン♪

「そりゃあ・・・そうだけど・・・」

「本当の勇気とは自分の弱い心に打ち勝つことだよ。包み隠さず本当のことを正々堂々と言える者こそ本当の勇気のある強い者なんだ」

「そう・・だね!でも・・あれを見ちゃうと、ちょっと怖いかも・・・」

「怖いかどうかは、やはりアキ自身が経験しなけりゃならないんじゃないかな」

ポロローン♪

アキとミッコは顔を見合わせて言う。

「じゃあやっぱり助けてあげるんだね!」

「違う、助けたりはしないよ、勝手に助かるだけ。風が流れた方に・・・行くだけさ・・・」

ポロローン♪

「もう!この天邪鬼!」

プンスカするアキであった。


アンツィオは全力で待機地点に向かっていた。

「あと何分だ?!」

「ドゥーチェ!後30分です!」

「間に合うか?!ぺパロ二!」

「任せてくださいドゥーチェ!絶対に間に合わせます!」



7時50分過ぎ・・・。

アンツィオを除く各校は戦車に搭乗し指示を待っている。
アッサムが懐中時計を見ながらダージリンに言う。

「ダージリン・・・そろそろ・・・」

「わかったわアッサム・・・」

ダージリンはマイクを持ち、PTTボタンを押して話し出した。

「皆さん、ごきげんよう。そろそろ時間ですわ。準備はよろしいかしら?」

アンツィオはCV33をトラックより降ろし終えた所である。
CV33の無線機からダージリンの声が聞こえてきた。

「ドゥーチェ!そろそろ時間だそうです!」

「マジか!急いで着替えて搭乗だ!」

プラウダではノンナがカチューシャを起こす。

「カチューシャ起きて着替えてください。そろそろ時間です」

「う、う~ん、もうそんな時間なの?」

「早くしないと一番乗りできませんよ」

「ほあ~~い」

続けてダージリンが話す。

「では・・・まほさん、指示を」

「ダージリン?・・・」

まほは若干困惑する・・・が。

「・・・・・・了解した」

まほが深呼吸して咽頭マイクのPTTボタンを握りなおす。


「我々はこれより、大洗対大学選抜の試合に参戦する為、大洗本隊と合流する!」

まほはもう一度息を吸い・・・。

『大洗連合全車Panzer vor!』


ティーガーⅠ、Ⅱ、パンターが唸りを上げて加速し稜線を超える。

サンダース、ケイが言う。

「フフ・・・やるじゃないダージリン!じゃ、私達も行くわよ!Panzer vor!!」

M4、M4A1、M4ファイヤフライが稜線を超える。

「ダージリン様・・・」

オレンジペコは少し笑顔になった。
アッサムも目を瞑り微笑んでいる。

「では・・・わたくし達も行きましょうか。せ・・・Panzer vor」

「パンツァーフォーでございますのよー!」

チャーチル、クルセイダー、マチルダⅡが稜線を超える。

知波単、西が呼応する。

「指示が出た!我々も行くぞ!戦車パンツアホー!」

「お?大洗流ですな!パンツアホー!」

「中隊長殿!パンツアホーとはなんでありますか?!」

「戦車前進という意味だ!パンツアホー!」

「了解であります!パンツアホー!」

鉄獅子22両が森を抜けて前進する。

継続、ミカが言う。

「行こうか・・・風の集まる場所へ・・・」

ポロローン♪

プラウダではカチューシャがブー垂れていた。

「なんでもっと早く起こさないのよ!それで、なんで私の制服だけブカブカなのよ!スカートはピッタリなのに!」

「指示が出る前に起こしましたよ、後、制服は多分発注ミスでしょうカチューシャ」

「もう!後で粛清してやるんだから!とにかく一番乗りするのよ!行くわよ!Panzer vor!」

「Ураааааааа!!」

T-34/85が稜線をジャンプしながら超える。
その後ろをJS-2 KV-2が付いて行く。


「あいてて!姐さん足踏んでます!」

「うるさい!狭いんだから我慢しろ!我々も行くぞ!Panzer vor!」

「よっしゃー!」

「たかちゃん・・・待っててね」

CV33が小さな丘をジャンプし、ドリフトながら走り抜けていく・・・。

まほはキューポラから顔を出している。
ティーガーⅠが小さい丘を越えると大洗、大学選抜が向かい合い対峙している。
中央には審判団と蝶野亜美。
すかさず双眼鏡で確認するまほ。
そこには、俯き加減で居る西住みほが見える。

「みほ・・・通信手!マイクを外部スピーカーへ!」

「了解!」

すぅ・・・・。



「待ったーーーーー!」
              fin

































D「という映画を作ろうと思っているのだけれども・・・どうかしら?これが20億越えのヒットをすればブラックプリンス、いや、スーパーチャーチルが買えますわよ。マチルダ会、クルセイダー会のお偉い方々も黙らせられますわ!おほほほ」

OP「・・・怒られますよ」

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【After math】①

大洗女子学園の存続を賭けた戦いの後・・・まほは西住流家元の元へ向かう。
その後ろ姿を見て、エリカは思い出す・・・。

(おまけの補完話です)


「大洗女子学園の勝利!!」

蝶野亜美のアナウンスにより大洗の勝利が確定した。

「よっしゃー!お嬢ー!」

「え?なに?勝ったの?」

「ハラショー!ピロシキー!」

「バンザーイ!」

「イエーイ!」

履帯が無くなり補助転輪も吹っ飛び、満身創痍のあんこうチームⅣ号戦車を西住まほのティーガーⅠが牽引し待機場所に戻ってきた。
それを大洗連合の隊員達が出迎える。
まほは降車し、ティーガーの側面を軽く撫でエリカの方に振り返る。

「隊長、お疲れ様でした」

「うん・・・」

Ⅳ号の横では、あんこうチームのメンバーを各校の隊員が囲み祝福の言葉をかけている。

「おめでとう!」

「いい試合だった!」

大洗女子学園戦車道隊長 西住みほが深々と頭を下げる。

「皆さん、本当にありがとうございました!」

大洗の隊員も頭を下げる。

「ありがとうございました!」

知波単学園の西は返礼する。

「こちらこそ!お礼を言わせていただきたいです!」

そうしていると、ヴォイテクをモチーフにした熊の乗り物に乗った少女が西住みほの前にやってきた。
熊の乗り物を降りた少女。
大学選抜戦車道隊長 島田流 島田愛里寿がみほの前に立ち、ポケットからボコのぬいぐるみを出してみほに差し出した。

「私からの勲章よ・・・」

みほは一瞬驚くが、すぐに笑顔になる。

「ありがとう、大切にするね!」

恥ずかしそうにしている愛里寿からボコを受け取り抱きしめるみほ。

「フフ・・・」

その様子を見届け、まほは振り返りエリカに言う。

「エリカ、私は今からお母様の所に行ってくる。すまないがその間の事は任せてもいいか?」

「はい・・・了解しました」

「よろしく頼む」

まほはそう言い、観覧席の方へ歩いて行った。

「隊長・・・」

エリカはまほの背中を見ながら、あの時の事を思い出す・・・。

夕方・・・。
座椅子に座り、ポッキーを咥えながら卓袱台の上に置いたノートパソコンに向かいぼぉ~っとネットサーフィンを
していたエリカ・・・そこへスマホの呼び出し音が鳴り画面を確認する。
隊長の西住まほからの電話であった。
すぐさま応答するエリカ。

「はい隊長!逸見です!」

「エリカ、今は大丈夫か?」

「はい、大丈夫です」

「そうか・・・私は今、艦に戻っている所だ。後1時間程で寮に戻れると思うのだが・・・よかったら一緒に外で食事でもどうだ?話したい事が有るのだが・・・」

「は?・・・はい!よろこんで!」

「では、世界時計の所で待ち合わせとしよう。時間は今から1時間後。私は直接向かう」

「わかりました!」

「うん・・・」

電話を切り小さくよし!とガッツポーズをするエリカ。
しかし・・・話とはなんだろう・・・?
そう思いながらシャワーを浴びる準備をするエリカであった・・・。

1時間後・・・。
日が落ちて間もない頃、世界時計の下で待っていたエリカの元へまほがやってくる。

「エリカ、待たせたな」

「いえ、私も今来た所です」

「そうか・・・休みの所に呼び出して申し訳ないな」

「いえ・・・喜んで御供致します」

「すまないな・・・さて、何処で食事をしようか?エリカ、おすすめはあるか?」

エリカは目を上に向けて考える。

「そうですね~・・・では、最近できたハンバーグの美味しいお店があるのですが如何でしょう?ここからも近いです」

「そうか、うん、そこにしよう」

「わかりました。では行きましょう。あちらです」

方向を示し、そちらに歩き出す二人。
日の落ちた町中をウインドウショッピングしながら歩いて行くと・・・。

「隊長、あの看板のお店です」

エリカが指を差し、まほはその方向を見た。

「『炭焼き すこやか』・・・変わった名前の店だな」

「フフフ・・・そうですね。静岡県では有名なお店だそうです。げんこつハンバーグというのが名物で、一度行かなくてはと思っていたんですよ」

「ははは、そうか・・・丁度よかったな、よし、入ろう」

二人は店内に入り、ウエイトレスさんに席を案内され着席する。
メニューを見て、ウエイトレスさんを呼び注文をする。

「隊長は決まりましたか?」

「ああ」

「では隊長から・・・」

「わかった、私は・・・ハンバーグと焼き野菜カレー、それをAセットで、セットはライスとノンアルコールビールを」

「かしこまりました、そちらの方は」

「私は・・・げんこつハンバーグを、それとAセットでライスと、私もノンアルコールビールを」

「かしこまりました。ご注文は以上でよろしいですか?」

「はい」

「承りました」

ウエイトレスさんが下がり、エリカがハンバーグのうんちくを語っている所でジョッキに入ったノンアルコールビールがやってきた。
二人はジョッキを手に取り掲げ。

「Prost!」

ゴキュ!ゴキュ!といい音をさせて喉へ流し込む。
プハー!と二人がジョッキを置いたところで、まほの顔つきが変わり話し出す。

「エリカ、この間も話したが・・・大洗の件で気を使わせてすまなかった」

「いえ、隊長・・・私こそ訓練中に気を逸らしてしまい申し訳ありません」

苦笑いをするする二人・・・そして、エリカは、まほの目が若干泳いでいることに気付く。
まほは小さく深呼吸して話し出した・・・。

「エリカ・・・聞いてくれ。大洗女子学園の試合が決定した。対戦相手は大学選抜。大洗はこの試合に勝てば廃校は撤回される・・・」

「え?・・・」

「夕方、実家に居る時にお母さまから電話が有った・・・」

まほは西住流家元 西住しほから聞いた話をそのままエリカに話した。
エリカは頭の中で情報を整理してまほに聞く。

「隊長・・・つまり、うちから22両の増援を出して島田流と対峙するという事でしょうか?」

まほは少し間を置き答える。

「いや・・・私はお母様からの電話の後、聖グロリアーナのダージリンに電話を掛け、今の事をすべて話した」

「それは・・・何故ですか?隊長・・・」

まほは少しうつむき加減に答える。

「島田流と戦争をするつもりは無い。私は・・・戦車道でこの試合に勝ち、大洗を奪還したい。ダージリンには・・・そう話した」

「隊長・・・それで・・・ダージリン隊長はなんと・・・?」

「私達も参戦すると・・・各校にも増援を呼び掛けてくれるそうだ」

そこでまほは頭を下げる。

「エリカ、すまない。副隊長であるエリカの・・・そして隊員達の意見も聞かず身勝手な行動だと思っている、そしてみんなを巻き込もうとしている・・・私はあの時・・・みほを助けることが出来なかった・・・家の重圧に押し潰されていくみほを・・・」

「隊長・・・」

エリカが言う。

「・・・頭を上げてください。わかっています。あの時、隊長は副隊長・・・みほ・・・さんの事を心配していた事。先輩や後援会からのバッシングを受けても隊長の所にすべて行くようにしていた事も・・・なのにみほ・・・さんはうちから去ってしまった。その事に憤りを感じた事もありましたが・・・今は違います。みほさんは自分の戦車道を見つけました。そして、みほさんの居る大洗は黒森峰、私達の戦車道で叩き潰す相手!今廃校になってしまってはそれが出来ません!ならそれは阻止しなければならないのではないでしょうか?」

「エリカ・・・すまない・・・すべての責任は私が取る」

「こうなったら一蓮托生ですよ隊長。私たちの戦車道は隊長と共にあります」

そうしている間にウエイトレスさんが料理を運んでくる。

「お待たせいたしました。こちらがげんこつハンバーグとライスです。こちらがハンバーグと焼き野菜カレーとライスになります」

「さあ、食べましょう隊長!おいしそうですよ」

「ああ、そうだな・・・」

エリカは明るく振る舞うが・・・・。
この事を家元が知った時にどうなるのだろうか・・・勝っても隊長は何かしら処断されるのではないか?
負けてしまえば破門もあり得る。
だが・・・そんなのは私には関係ない。
隊長の判断は間違っていない!なら一緒に進むのみ!それが私の西住流・・・。
そう思いながら、焼けた鉄板に乗ったげんこつハンバーグを眺めるエリカであった。

「エリカ・・・肉汁が白いワンピースに跳ねまくっているがいいのか?汗」

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【After math】②

翌日・・・。

無線室にて北海道上陸と大洗対大学選抜の試合に参戦するにあたってのブリーフィングに参加する西住まほ。
その後ろで、メモを取りながら聞いている逸見エリカ。
試合に参戦する為のギミックは昨日に聖グロへメールで送信済である。
エリカは、この試合に参戦する各校の面子に驚いていた・・・。

「プラウダや・・・それに継続も参戦を検討しているなんて・・しかし、知波単・・・大丈夫だろうか?・・・」

ブリーフィングが終わり、まほはエリカに指示を出す。

「エリカ、聞いた通りうちからは4両だ。14時より編成会議を行う」

「了解しました」

14時頃・・・。

隊長室にて、まほとエリカは編成を練っている。

「この試合・・・我々に求められているのは火力だ。だがこの広いフィールドでの足の遅さはネックになる・・・。ならティーガーⅠ212号車とエリカのティーガーⅡ222号車で火力を。そして汎用性を考慮しつつ、火力、防御、スピードを考えるなら残りはパンター・・・になるか・・・」

「私もそう思います」

エリカも同意する。

「後は人員だな・・・私は直下を推薦したいのだが、もう一人、エリカが決めてくれ」

「私は・・・」

エリカは高校戦車道決勝戦での両校挨拶の時の事を思い出した・・・。

「私は・・・赤星を推薦します」

まほの表情が少し柔らかくなる。

「赤星か・・・そうだな・・・わかった。ではエリカ、エリカ車の隊員と直下車、赤星車の隊員を隊長室に呼んで来くれ。私の隊員は、私が呼ぶ」

「了解しました」

エリカは一礼し隊長室を出ていく。
まほは携帯電話を取り出し電話を掛けた。

一時して・・・。

直下と赤星と、その隊員達が隊長室の前に到着する。
直下は八の字眉毛を更に八の字にして赤星に言う。

「なんだろうね?話があるからとしか聞いてないんだけど・・・私達何かしたかな?」

赤星も首をひねる。

「多分叱られる・・・何てことは無いと思うんですけど・・・心当たりがないね」

不安を覚えながら直下が扉をノックする。

コンコン。

「直下、赤星、以下8名到着しました」

まほが答える。

「入ってくれ」

直下が扉を開ける。

「失礼します」

中に入り扉を閉めて整列する直下と赤星、隊員達。

隊長席にはまほが座り、向かってその左側に隊長車の隊員が横に整列し、こちらを見ている。
全員3年生の黒森峰の頂点の人達である。
まほから向かって右側の傍らに副隊長のエリカ。
そして、右側の壁際にはエリカの乗員が整列している。
まほは立ち上がり、直下と赤星の前に歩いて来る。

「直下、赤星、突然呼び出してすまない。聞いてほしい話がある・・・」

まほはすべての事を話し、二人とその隊員に向かって頭を下げる。

「すまない。責任はすべて私が取る。隊に加わってもらえないだろうか・・・」

まほの隊員、エリカとエリカの隊員も頭を下げる・・・。
直下は困惑し自分の隊員達を見るが隊員達も左右を見ながら困惑していた。
だが、赤星と赤星の隊員は真っすぐにまほを見ている・・・そして・・・。

Ob's stürmt oder schneit, Ob die Sonne uns lacht,Der Tag glühend heißOder eiskalt die Nacht.|:Bestaubt sind die Gesichter,Doch froh ist unser Sinn,Ist unser Sinn;Es braust unser PanzerIm Sturmwind dahin.

赤星は突然、パンツァーリートを歌いだした。
赤星の隊員、まほの隊員も靴を踏み鳴らし歌いだした。
直下とその隊員も初めは困惑していたが、頷き合い歌いだし、エリカとエリカの隊員も歌いだす。

「お前達・・・」

赤星が言う。

「隊長も歌ってください!」

まほは隊員をゆっくり、ぐるりと見まわし歌いだした。

♪嵐でも、雪でも、日の光さすときも、
   うだるような昼、凍えるような夜、
   顔がほこりにまみれようと、我らが心はほがらかに
   我らが戦車、風を切り、突き進まん♪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「エリカさん・・・エリカさん!」

エリカは呼ばれたことに気付き、声の主の方へ振り返る。

「ああ、赤星さん・・・ごめんなさい、ちょっと考え事をしてて」

「いえ・・・隊長はどちらに行かれました?」

エリカは少し難しい顔をして答える。

「家元の所へ行ったわ・・・」

赤星は俯き・・・。

「そう・・・ですか・・・きっと大丈夫ですよ!だって私達は勝ったんですから」

「そうね・・・」

この試合に参加すると決めた時点で腹を括ったつもりでいたが・・・。
不安を拭えないエリカであった・・・。

観覧VIP席

西住流家元 西住しほの元へやってきたまほ。
しほの傍らに立ち、覚悟を決めたように話し出す。

「お母さま・・・お話が有ります」

しほは立ち上がり、まほの方へ向き、まほが話をする前に話し出した。

「まほ・・・この度の試合、見事でした」

「え?・・・」

叱責を受ける事を覚悟していたまほは困惑している。

「しかしお母さま・・・私は、言いつけに従わず・・・」

「まほ!」

しほは、まほの話を遮る。

「私は言ったはずです、編成はまほに一任すると・・・そして、見事この厳しい戦局を乗り切り勝利しました。戦車道にまぐれ無し!いつも言っているでしょう?」

「お母さま・・・」

しほは一瞬微笑み・・・。

「私はこれから連盟との会議や、やらなければならない事があります・・・・。まほは・・・《お友達》の所に行ってあげなさい」

しほは踵を返し、つかつかと歩いて行った・・・。

呆然と立ち尽くすまほ・・・そこへ・・・。

「ごきげんよう、まほさん」

まほは、はっとして振り向くと、日傘を差したモダンな姿の女性が立っていた。

「お久しぶりですわね・・・」

島田流家元 島田千代であった。

「家元・・・」

まほは一礼する。

「昔みたいに千代さんでいいのよ、まほさん」

「は、はい・・・」

まほは島田千代が苦手なようである。
千代は会場の方を向き、撤収作業や各校同士が談笑する姿を眺めながら話し出す。

「まほさん、私からも言わせてください。この度の試合、お見事でした。少し、お聞きしたいのですが・・・よろしいかしら?」

「はい」

「彼女たちは・・・貴女が招集したの?」

まほは、首を横に振る。

「いえ、彼女達は・・・自分達の意志でここへ来ました・・・」

千代は少し微笑み・・・。

「そう・・・私は黒森峰から22両の増援を出すと聞いていました・・・。貴女達は私や、色々な大人の思惑に、毅然と『NO』と答えた訳ですね・・・」

「・・・申し訳ありません」

千代は首を横に振り。

「いえ、違うの。貴女達を見ていると、これが本来の戦車道の姿なのではないかと改めて思い知らされました。多分しほさんも・・・次は、蟠りのない試合をしましょう。そして、来年はよろしくお願いしますね。大学戦車道の未来は明るいですわ。・・・では、私も行きますわね、まほさん。みほさんにも、愛里寿をよろしくとお伝えください。それでは・・・」

千代は軽く手を振り歩いて行った・・・。
どうやらお咎めは無いようだ。
ふぅ・・・。
まほは息を吐き、肩に乗った荷物がいっぺんに降りたような・・・そんな気持ちになった。

黒森峰の待機場所に戻ってきたまほは隊員達に囲まれる。
エリカは心配そうに聞く。

「隊長・・・その・・・大丈夫でしたか?」

まほは答える。

「みんな聞いてくれ。家元は仰っていた。この度の試合、見事でしたと・・・」

隊員達は顔を見合わせ笑顔になる。
まほが続けて話す。

「直下、赤星、すまなかった。早々に二人を失ってしまった事は私のミスだ・・・すまない」

直下は首を横に振り、赤星が言う。

「いえ、隊長。まさかワイルドカードがカールだなんて誰も思いませんよ。それに・・・私達を試合のメンバーに選んで頂きありがとうございました!うれしかったです」

「・・・そうか」

エリカも労いの言葉を掛ける。

「隊長・・・本当にお疲れ様でした」

「ああ・・・ありがとう」

エリカが手を叩き言う。

「さあ!撤収作業の続きをするわよ!」

「はい!」

隊員達が持ち場に戻って行く。
まほは健やかな気持ちになっていた。
すべてがクリアになっていく、そんな気持ちであった。
ただ・・・。
あと一つだけ・・・みほに言いたい事があった・・・。

それは・・・・・・・・。



これで、もう一つの物語は完結になります。
あとがき等、ボチボチと書いていきますのでたまーに覗いてあげてください。
後、表紙や挿絵など募集いたしております。1枚からでも構いませんのでお待ちしております。
ありがとうございました。


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【END GAME】

アリサの指揮の元、撤収作業をしているサンダースの面々。
それを神妙な面持ちで見ているケイであったが。
ケイは辺りをチラチラッと見回した後、その場を離れようとした。

「隊長?何処かに行かれるんですか?」

その場から離れようとしたケイに気がついたアリサが声を掛けた。

「え?あ、うん・・・ちょっとトイレ。後・・・よろしくね」

「あ、はい・・・わかりました・・・」

ケイは上着のポケットに手を突っ込み歩いて行き、その後ろ姿を見送るアリサであった。


同じ頃、聖グロリアーナでも椅子に座り紅茶を嗜みつつ撤収作業を見つめるダージリンと、その傍らにオレンジペコとアッサムが居た。
ダージリンは、突然立ち上がった。

「ダージリン様?」

「ペコ、わたくしお花を摘みに行ってまいりますわ」

「え?あ、はい。かしこまりました」

その時、ひょこっとアッサムの後ろから顔を出したツナギ姿のローズヒップが

「ダージリン様、お花を摘みに行かれるのでございますか?案外お子ちゃま趣味なのでございますわね」

慌ててアッサムがローズヒップの耳元で小声で助言する。

「違いますわローズヒップ!お花を摘むと言うのは、お手洗いに行かれるという意味です」

「あ・・・あー!おしっこに行かれるのでございますわね。ではわたくしも一緒に連れシ!モゴモゴ・・・」

ローズヒップは鬼の形相をしたアッサムに羽交い締めにされつつ口を塞がれ、何処かに連れて行かれてしまった。

「ぷっ・・・ぷふっ。クスクス・・・」

「は・・・ははは・・・」

「ふう・・・ではペコ、行ってまいりますわね」

「はい、かしこまりました。いってらっしゃいませ」

オレンジペコはダージリンの後ろ姿を見送り、紅茶を淹れ直そうとテーブルを見るとダージリンのティーカップが無いのに気付いた。

「・・・あれ?」

その頃ケイは・・・
キョロキョロと辺りを見回しながら歩いていると、運営本部のプレハブの前に黒塗りの高級車が一台停まっているのに気付いた。
運転手らしき男が高級車の傍らに立ち、誰かが出てくるのを待っているようである。

まだ・・・あの中に居る・・・。

ケイの顔付きが変わり、歩くスピードが速くなる。
運営本部へ向かってケイがドシドシと速歩きをしていると、プレハブの影から誰かが飛び出してきて腰元にしがみついてきた。

「隊長!いけません!やめてください!」

「!!・・・アリサ?!離して!」

「いいえ!離しません!」

「あのメガネに一発入れてやらないと気が済まないわ!お願い離して!」

「絶対離しません!」

アリサを引きずりながら歩いて行くケイ。
アリサも必死で引き留めようとするが全く歯が立たない。
そこへ・・・すっと人影が出てきてケイの前に立ち塞がった。

「んあ?ダージリン?!」

「あら?・・・奇遇ですわね。フフフ」

手に持ったソーサーからティーカップを上げて紅茶を一口飲み、ケイを見つめるダージリン。
アリサは救世主でも現れたような顔をして涙を流しダージリンを見ている。

「ダージリン・・・そこどいて」

「いいえ・・・どきませんわ」

その時、運営本部から文科省学園艦教育局局長 辻 蓮太 が出てきた。
それを見たケイがダージリンの横をすり抜けようとした時・・・

「こんなアメリカの諺をご存知?”Too many cooks spoil the broth.”」

「・・・コックが多いとスープが台無しになる」

「ええ、そうですわ。貴女が動かずとも、すでにわたくし達からの”一発”は充分に届いているのではないかしら?ほら、あの蒼ざめた顔をご覧なさいな・・・フフフ」

辻は蒼ざめた顔でハンカチで汗を拭いながら、すごすごと逃げるように高級車に向かい歩いている。

「ふう・・・アリサ・・・離して・・・」

アリサは無言で力を入れなおした。

「アリサ・・・もう、大丈夫だから・・・」

アリサが見上げてケイの顔を見ると、そこには何時もの、ちょっぴりすまなそうにしている隊長の笑顔が戻っていた。
一気に安心して腰が抜けたようにアリサはへたり込んでしまった。

「sorryアリサ、立てる?」

「は、はい・・・大丈夫です」

ケイから差し出された手を掴み、アリサは立ち上がった。
辻は車に乗り込み行ってしまった・・・。

「ダージリンも・・・私、せっかく美味しく出来たスープを台無しにしてしまう所だったかもしれないわ・・・ありがとう」

ダージリンはケイの後ろの方を一瞬チラッと見てから・・・

「いえ・・・わたくしは何もしていませんわ・・・フフフ、役人さんの顔も見られたことだし、わたくしは行きますわね・・・。あ、それと、カチューシャからなのですが、どうせ戦車にバスタブみたいなの付けて上陸したんでしょ?仕方ないからうちのズーブルでグロリアーナ艦まで送ってあげるわ。感謝しなさい!だって」

「ははは!それは助かるわね!なら、今からカチューシャの所に寄って行くわ・・・ダージリン・・・またね!」

「ええ・・・また後程・・・」

ケイは踵を返し、手をヒラヒラと振りながらもと来た道を戻っていく。
アリサもダージリンに頭を下げた後、ケイを追いかけて走って行った。

「もう!いい加減にしてくださいよ隊長!」

「ごめんごめん!」

ダージリンもくるっと後ろを向いて歩きだす・・・すると・・・

「おーい!ダージリン!」

淡い緑色のツインテールの女性が手を振りながらダージリンの方へ走って来た。

「ふう・・・なあダージリン!ここいらでぺパロニを見なかったか?」

「アンチョビさん・・・多分その方なら・・・先ほど運営本部前でケイさんと立ち話をしている時にお見かけいたしましたわ。少し離れた場所で、しばらくわたくし達の立ち話を聞いた後、何処かに行ってしまいましたわ」

「そうか・・・ならまだ近くに居そうだな。あいつ今回の件でかなり怒っていたからなぁ~バカだし何しでかすか
分かったもんじゃない。まったく・・・」

「フフフ、いえ・・・アンチョビさん、あの方はお利口な方ですわよ」

「んん~そうかな?ま、でも、話せばわかってくれる良い奴だ。おーい!カルパッチョ!運営本部前に居たってさー!ありがとう、すまなかったなダージリン」

「いえ・・・ごきげんよう」

ダージリンはアンチョビと別れ、歩いているとまたしても声を掛けられた・・・。

「ダージリン・・・ありがとう」

プレハブとプレハブの間に隠れる感じで壁にもたれ掛かり、腕を組みながらガムを噛んでいるベリーショートな髪形の女性が目線だけダージリンに向けている。
ダージリンは目を合わさず真っすぐ前を向いたまま・・・

「いえ・・・よろしくてよ・・・」

紅茶を一口飲み・・・

「・・・セイロン・・・」

プレハブにもたれ掛かってる女性はフフ・・・と軽く微笑みながら下を向き・・・

「私は・・・サンダースの砲手・・・ナオミさ・・・」

ダージリンはティーカップをソーサーに置きそのまま歩いて行ってしまった。

「さて・・・戻るか」

ナオミは走っていきケイ達に追いつくとアリサの肩に腕を回し、手で頭をわちゃわちゃと撫でた後

「よ!アリサ!何かあったの?」

「ちょっとナオミ聞いてよ!隊長ったら・・・」

「あ!こらアリサ!言ったらナオミに怒られるじゃない!言わないでよ!」

「え?何々?気になるだろう?言えよアリサ」

「それがね!かくかくしかじかで・・・・」

「そんなやつぶっ飛ばしてやればよかったのに!ははは!」

「ははははは!」



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