吸魂鬼に転生してしまいました。 (零崎妖識)
しおりを挟む

PrologueⅠ

他の人のハリポタ小説読んだらやりたくなった。後悔も反省も半分くらいしている、はず。


「はい、あなたは転生する事になりました」

 

……目を開けると真っ白な空間で、目の前の変人が変な事を言ってきた。

 

「変人とは酷い。いくら変な言動をしてたって変人は……いや、私は変人を自称してた時もあったなそう言えば」

 

何か言ってる変人は置いといて、状況を確認する。真っ白な空間に、自分と変人の二人だけ。何故自分は此処に居る?……わからない。自分は何をしていた?……思い出せない。なら、自分は誰だ?……思い出せない。

 

「あ、ごめんね?記憶にプロテクトがかかってたみたいだね。……はい、これで良し」

 

……良し、思い出せた。自分は酒を呑んで眠ってた筈だ。なんと言ったか……スピリタスだっけか?確かそんな名前の酒をラッパして……スピリタス?え、ちょっ、まさか……

 

「そのまさか。あなたは世界最強の蒸留酒をあろうことかラッパ呑みして、急性アルコール中毒で死にました。正直言って馬鹿だろ」

 

スピリタス一気って、自分でも馬鹿だと思うわー。え、て事は此処って死後の世界とか?

 

「惜しい!此処は私が作った空間ですよ。ただ、面白そうな人間の魂を呼び寄せて、暇潰しと共に第二の生を与えてるだけの空間です」

 

暇潰しってお前のだろ。……お前は何なんだ?あと、()()()()()()()()()

 

「ふふふ。私は神です!……何て事は言いません。ただ、理から外れてるだけの人外です。あと、あなたに自身に関する記憶は消去し、ついでに肉体も消去させて貰いました。安心して下さい。転生先での肉体はちゃんと用意してあります」

 

……もうやだよこの人。いや、人じゃ無いんだっけ。それで、何処に転生すんの?

 

「あなたには、【ハリー・ポッター】の世界に転生して貰います」

 

ハリポタかぁ。死亡フラグ多めそうだなぁ。

 

「ただし、吸魂鬼(ディメンター)としてですが」

 

ちょっと待てぇぇぇ!せめて人間に転生させろよ!

 

「大丈夫です。転生特典として、幾つか能力をあげましょう。まず、原作知識。ただし、あなたが知ってる事だけです。覚えてない部分は諦めて下さい」

 

うん。それは神様転生の常識。で、他のは?

 

「人間への変身。あとは、杖を使わずに魔法の使用も出来ます。どちらの姿でも、ね。杖は私が作った物を。あとは……」

 

これなら安心か?いや、吸魂鬼と言う種族なんだ。これでも足りないな。

 

「幸せな記憶を吸い取ると言う特性をオンオフ可能に、とか」

 

今ので十分になった気がする。

 

「ついでに、東方Projectの、心を読む程度の能力も。もちろんオンオフ可能です」

 

過剰だった。

 

「人間時の姿は銀髪ロングの美少女です。あと、ホグワーツに入学する事になりますからね?」

 

え?まさか原作かいny「では行ってらっしゃい♪」うわぁぁぁぁぁ!?

 

「良し、転生完了。楽しませて下さいね?」

 

 

 

 

うう……痛たた……。……此処は……監獄?

 

〔あ、目が覚めた?〕

 

うわっ、急に頭の中に!?

 

〔こいつ生まれたばっかだから脅かすなよ〕

 

〔悪い悪い〕

 

〔私が説明して来る〕

 

え?何これ、もしかしてテレパシーか何か?周りに吸魂鬼沢山いるし、一人(?)こっちに向かって来たし。

 

〔状況は整理出来てる?あ、テレパシーは使いたいと思えは使えるし、自由にオフに出来るからね?〕

 

あ、本当にテレパシーだったんだ。えーと、

 

〔こんな感じですか?〕

 

〔そんな感じ。……さて、ようこそ、アズカバンへ。私達吸魂鬼は君と言う仲間を歓迎しよう〕

 

……ところで、今は原作の何年前だ?




何で一作も完結して無いのに新しく三作目を投稿してるんだこの馬鹿は。

とりあえず、生暖かい目で見守って貰えると嬉しいです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

PrologueⅡ

色々なサイトで年表確認して思った事。「スクショ面倒だなこの量」


現在ーー1980年、7月30日、つまり原作開始の約十一年前、ハリーが産まれる前日である。

 

〔君の年齢は人間と認識される。でも、未成年への匂いは付いてないから〕

 

〔あ、どうも〕

 

魔法の練習とか出来るかなと思ってたら、先に聞きたい事の一つを答えてくれた。……え?何で私が魔法を使える事を?

 

〔ふふふっ、君にはまず色々教えなきゃだね。最初に、私達は君がある程度の知識を持っていることを知っている〕

 

何でだよ。

 

〔知識とかをインプットしようとしたら、先に変な知識があったからね。あ、手はつけて無いから安心しな〕

 

〔いや、インプットてどう言う事ですか〕

 

〔後々教える。あと、敬語は止めな。私達は家族なんだから〕

 

家族。まあ、同じ種族で仲間と言う以上家族なんだろうな。

 

〔なぜなら、君は私達が造ったんだから〕

 

〔ちょっと待て〕

 

造ったってなんだ。

 

〔私達は分裂的な感じでしか増えれないからね。体の一部を切り取って、形を整えて、行き場のない魂と交渉して、肉体に入ってもらう。ちゃんと再生するよ?〕

 

……吸魂鬼、真面目にチート、マジ凄い。

 

〔君の記憶との相違点は、吸魂鬼に意思がある事、かな。あと、一部のは人間に変身出来るし、魔法も使えるからね〕

 

〔……私が知ってるのと、色々違うのか〕

 

〔ああ、違う。それに、私達にはそれぞれ名前もある。全員ファミリーネームは一緒だ。……良し、決めた〕

 

 

〔君の名前は……リーナ、リーナ・ディメントだ!〕

 

 

 

 

その後、色々教えて貰った。曰く、吸魂鬼のマントは何でも収納出来て、更に透明マントと同じ効果を持っていると。曰く、グリムとは犬に変身した吸魂鬼の事だと。曰く、一般に広がっている死神とは吸魂鬼の事で、ビードルの物語に出てくる『死』も吸魂鬼だったと。

 

〔もしかして、ポッターが持っている透明マントって……〕

 

〔ああ、最古の吸魂鬼が悪戯半分で人に与えた物だ。無限収納は失ってるがね〕

 

誰だよそのバカ。

 

〔まだ生きてるぞ。世界を放浪している。名を、ジャックと言う〕

 

〔ジャック……?〕

 

〔そう。ジャック・ディメント・スケリントン。……ペテロを騙し、天国にも地獄にも行けなくなった悪党さ〕

 

〔え?それってまさか〕

 

〔そのまさか。ジャック・オー・ランタンのジャックだよ。唯一、消え去る事のない吸魂鬼さ。そして、全ての吸魂鬼の祖でもある。吸魂鬼が守護霊の呪文に弱いのはジャックの所為だ〕

 

まさかの人物が祖先だった。あと、吸魂鬼は何かしらの原因で消え去る事があるらしい。気をつけないと。

 

〔そうだ。これを〕

 

そう言って彼ーーエドワードと言うらしいーーは、一つの箱を差し出してきた。中には、一本の、黒灰色の杖。

 

〔ツクバネガシにバジリスクの鱗の欠片、21cm、柔軟性があり、何があろうと忠誠心を移さない。君の杖だ〕

 

持ってみると、手に良く馴染んだ。……あれ、今バジリスクって言ってなかった?

 

〔君用の箒も用意してある。リゼと言う奴の所だ。誰かに案内してもらえ〕

 

箒……要るのかな?持っておいて損は無いと思うけど。にしても……吸魂鬼がヤバすぎるね、これ。




名前は適当。後の二人の名前(エドワードとリゼ)はそれぞれハガレンと東京喰種からいただきました。作者はネーミングセンス皆無なのでね。ディメントはディメンターをもじって。

その他設定は、「吸魂鬼って死神っぽいな」「死神ならグリムもこいつらなんじゃ?」「守護霊に弱い……悪党ジャックって神にも悪魔にも嫌われてんだっけ」と言う思考があったとか無かったとか。

追記設定として、人間に変身している吸魂鬼は見分けがつきませんが、吸魂鬼同士なら判別可能です。杖は、魔法を使える吸魂鬼が生まれた場合、その近くにいつの間にか出現しています。あと、吸魂鬼は万能な奴と、一点集中特化の奴が居ます。エドワードは万能型、リゼは特化型です。他にも色々設定が。

ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

PrologueⅢ

「はい、これが貴女の箒。私のお手製よ」

 

黒髪の女性ーーーリゼは黒、と言うか闇と言った方がしっくり来るような箒を渡してきた。

 

「箒無しで空を飛ぶ人間は今の所死喰い人ぐらいだから、箒で飛ばなきゃ誤解されるの。あ……貴女、人間の姿に変身出来る?」

 

〔教えてください〕

 

「はぁ……エドの奴、教えずに、こっちに寄越したのか。んーと、感覚で頑張れ」

 

〔酷い!〕

 

「私は感覚派だ!」

 

 

 

 

数分後、ようやく人間体になれた。動物擬き(アニメーガス)って、こんな感じなのかな?

 

「へぇ、可愛いじゃない。見事なロリっ子」

 

「元々は日本人だったの?」

 

「うんにゃ。一度ウィルーー二番目に生まれた吸魂鬼に、日本に連れてかれた事があるの。以来、日本文化の虜なのよー」

 

「……日本ェ……」

 

あ、箒忘れてた。

 

「あー、箒?はいこれ。乗り方解る?」

 

「感覚で行けるかな、と」

 

「うん。頑張れ。私は教えるのは無理だ」

 

えーと、まずは箒を地面に置いて、

 

「上がれ!」

 

ヒュンッ

 

「おー、一発成功か。流石」

 

手に箒が収まった。次は、箒を跨いで、両足で地面を蹴る!

 

「お、おおお!浮いてるー!」

 

「……私達の移動方法って、基本浮いてるけどねー?」

 

これまた一発成功。てか、浮いてるのはわかるけど、箒に乗ってるって感覚が殆ど無い!

 

「その箒は私のオリジナル品でね。銘を《シャドウスネーク》と言う。他のどの箒よりも隠密性に優れてるよ。スニッチやブラッジャーにも気付かれることが無いほどに、ね」

 

なんと言うチート性能。クィディッチ出たら大活躍だね。

 

「……あれ?オリジナル品?」

 

「おう。私は箒作りに特化していてね、吸魂鬼が持ってる箒の殆どは私が作った!しかも、一つとして同じ性能の箒は無いのさ!」

 

吸魂鬼ってスゲー。

 

 

 

 

「戻ったよ」

 

〔おう、おかえり。……あ、人間体になる方法言うの忘れてたな〕

 

「リゼに言われて、感覚でなんとかしたよ。で、この後は?」

 

〔まずは勉強。同時並行で魔法の練習だな。アズカバンの案内はウィルがアズカバンに戻ってきてる筈だからそいつに案内してもらえ〕

 

「二番目に生まれた吸魂鬼だっけ?」

 

〔ああ。ウィル・ディメント・ウィスプ。ジャックと同じ様な事をした第二の馬鹿。まあ、物凄くしぶといってだけで消滅はするけどな〕

 

アズカバンの案内か。どんな施設があるんだろう。

 

 

 

 

数時間後。そこには色々学んでパンクしかけた私がいた。にしても、ディメント家って、魔法界のお目付役って呼ばれる純血一族と認識されているとは。しかも、吸魂鬼だと知っている者は少ないし。

 

あと、吸魂鬼が持つ能力についても教えて貰った。曰く、眼球は無くとも目は見えるし、だいたいの感情が色として見えるらしい。また、視覚に関係する能力を持っている者もいるとか。名前や誕生日や寿命が見える人とか、嘘を判別出来る人とか、物体の最も弱い場所が見える人とか、未来が見える人とか。私は、人の心を読み、記憶を観る事が出来る。完全に、原作の吸魂鬼とは違う存在になってるね。

 

魔法の方は、うん。スパルタだったよ。浮遊呪文に始まり、あとは幾つかの難しい闇の魔術ーー許されざる呪文とか悪霊の火とかーーと、守護霊の呪文とかの、聖属性を持っているであろう呪文がまだ使えない程度にまで練習させられた。人間体の吸魂鬼には守護霊の呪文は反応しないとの事。……聖属性の呪文使ったら即消滅とか無いよね?

 

さて、息抜きにアズカバンの探検でもしてみよう。もちろん、ウィルに頼んでね。




聖属性の呪文→守護霊の呪文、悪霊の火の反対呪文など、闇に対して効果を持つとされる呪文。因みに、悪霊の火の反対呪文は「聖者の大河」。オリジナルの魔法で、悪霊の火をそのまま大量の水に置き換えた様な呪文。熟練者なら意図的に動かせる事が出来る。

追記設定
吸魂鬼はセストラルが見える。元々魂だし。ウィル・D・ウィスプさんはウィル・オー・ウィスプが元ネタ。因みに、ウィル・オー・ウィスプの元ネタはジャックと同じ人。伝わった国が違ったため、人物も、成れの果ても、似て非なるものになった。

吸魂鬼は原作では闇の魔法生物となっている。この作品でも、大半の人間の認識は変わらない。実際には、限り無く闇に近い魔法生物。闇の魔法生物とは違う。ヴォルデモート側にも、騎士団側にも付く可能性はあるし、どっちつかずの可能性もある。どの可能性も、同様に確からしい確率で平等。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

PrologueⅣ

アズカバンは海に直接建っているのでは無く、孤島の上に建っている、小説版の設定です。

プロローグが終わらない。しかしそれも一興。


〔ふむ、君がリーナか。ワシがウィル・D・ウィスプじゃ〕

 

ウィルは年老いていて、不気味さが凄い。

 

〔……なんて言うと、Dの意思を受け継ぐ者の名に聞こえるのう。ホッホッホ〕

 

前言撤回。こいつ十分若々しいな。

 

「案内、よろしく」

 

〔敬意を持て、と言いたいが、ま、家族じゃしのう。簡単に説明すると、入り口付近はまだ軽い罪の者が収監されておる。上に向かうにつれて罪は重くなってゆく。また、海面下も同様。深海に向かう程、大きな罪の者がおる。最近じゃと、パーシバル・ダンブルドアが上層に、モーフィン・ゴーントとマールヴォロ・ゴーントが下層に収容された。……この場合、中層は海面付近、入り口あたりの事を指す〕

 

「……貴方は世界を巡っていると聞いていたが、何故詳しい?」

 

〔ま、アズカバン看守の全権所有者じゃし。ジャックの馬鹿がワシに押し付けおってのう。なーにが、『ボクは世界中で悪戯して来るから後ヨロシク』じゃ。次に会ったら痛い目に合わせてやろうかのう〕

 

……どんだけ嫌われてるのさ、ジャック。

 

〔……話が脱線したの。最上階には完全に封じ込めなければいけない大罪人が収容される。違う監獄に居るが、ゲラート・グリンデルバルトや、『例のあの人』……ヴォルデモートなどじゃ。最下層付近はワシら吸魂鬼が所有する研究所やその他施設じゃのう。ジャックが行ったしょうもない事の中で、唯一良く作ってくれたと言える場所じゃな〕

 

「そんな場所が……」

 

〔ホッホ。ま、後で案内してやろう。問題はその更に地下。そこには巨大な迷路が在るとされておる〕

 

「迷路?」

 

〔ああ。何種類もの闇の生物が解き放たれておる。アクロマンチュラやレシフォールド、コカトリス、ドラゴン、果てはマンティコアまで。昔入った者の情報じゃとバジリスクも居たとの事じゃ。しかし、今は何処に入り口が在るかわからん。もし、入り口を見つけたのならば、決して、入るでないぞ〕

 

「わかった」

 

……私の能力なら意思疎通出来るんじゃ?魔法生物学はトップになれるかもね。

 

〔吸魂鬼の社宅は島のとある場所に建ててある。最下層から直通じゃ。こう言うのを、省エネと言うのじゃろう?〕

 

「いや、違うと思う」

 

それはただ楽なだけだ。

 

〔ホッホッホ。では、案内するとしようかのう。名付けて、『ドキドキ☆アズカバン探検ツアー』の始まりじゃ!〕

 

この爺さん大丈夫か?

 

 

 

 

〔ホッホッホ。此処が社宅じゃよ。君の部屋は管理人に聞いておくれ。ワシは、監獄の見廻りをするとしよう〕

 

「ありがとう」

 

〔ホッホッホ。笑顔が何よりのお礼じゃよ。頑張りたまえ〕

 

そう言って、ウィルは監獄の方へ去っていった。

 

……あ、エドの所に戻らないと。此処まで来た意味は一体……。




この作品では、アズカバンとは島の名前で、監獄はただ単に監獄と呼ばれています。アルカトラズみたいな感じ?

ウィルは当初は若々しい青年みたいな感じにしようと思っていたのですが、ジャックのイメージとかぶってしまい、結果、好々爺となりました。全権所有者もこの時に決めたり。

アズカバン自体の元々は原作と一緒ですが、ジャックが魔改造した部分が幾つか。地下施設とか。迷路はアズカバン島で監獄塔を作った闇の魔法使いが作った物で、ジャックだけは踏破しました。魔法生物は闇の魔法使いが飼っていたペットですね。ちなみに、ジャックはその生物どもに見つかる事無く踏破したとの事。十中八九透明マントと吸魂鬼の寒気で近寄らせなかったに違いない。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

PrologueⅤ

もしかして、ハリポタで人外転生(それも吸魂鬼に)させたのって私だけ?

それはともかく、ある感想でウィルがダンブルドアっぽく見えてきた。


ホッホッホ。今回もリーナ視点から始まると思った?残念!ウィル爺じゃよ!

 

メタい話は置いといて、さっきまでリーナを案内していたんじゃが、リーナ、可愛いのう……。……はっ、ワッ、ワシは断じてロリコンでは無い!ただ、ワシに孫がいたらこんな感じなのかと思っていただけじゃ!

 

ホッホ。リーナは少なくとも十年はここにいるのじゃし、ホグワーツに行っても、夏には帰ってくる。……アズカバンでの楽しみが増えてしまったのう……。……決めたぞ。絶対に、リーナにおじいちゃんと呼んでもらおう!

 

 

〔なにあれ〕

 

〔色々暴走してるだけでしょ〕

 

 

 

一年後

 

私はあの時ウィルが宣言してたように、彼を祖父的な立場として好いていた。まあ、ウィル爺が面白くて落とされたんだけど。ウィル爺は爺馬鹿状態。

 

私は、あれから多くの事を学んだ。薬草学、魔法薬学、妖精の呪文。守護霊の呪文を除く、聖属性の魔法はまだ使えない。

 

そして、世間でも多くの事があった。いや、大きな事か。

 

1981年10月31日、ポッター夫妻の殺害。そして、『例のあの人』が消えた事実。少しずつ、物語は始まってゆく。

 

 

 

 

〔リーナ、少しいいかね?〕

 

〔なんだい?ウィル爺〕

 

私はアズカバン監獄の看守としての仕事も初めていた。色々な記憶や感情を吸い取れたよ。恋の記憶は甘酸っぱいし、トラウマの味もおつな物だ。

 

〔魔法使いによるマグルの大量殺人事件の犯人ーーーシリウス・ブラックの護送をしてほしいんじゃ〕

 

〔私じゃなくても平気だと思うけど?〕

 

〔ブラックは、自分は犯人では無く、ピーター・ペティグリューが犯人で、『例のあの人』をポッター家に連れて行ったのもペティグリューじゃと言っておってのう。リーナの能力なら、真偽が分かるじゃろう?〕

 

〔はいはい、行ってくるよ。愛しいおじいちゃんの頼みだしね。ブラックが無罪だったら、私の独断で色々決めていいかい?〕

 

〔もちろん!〕

 

〔じゃ、行ってくる〕

 

 

 

 

「私はやっていないし、秘密の守り人でも無かった!両方ピーターだ!」

 

「ふん。しらばっくれるな。貴様は裁判無しでアズカバン行きだと決まっている!さあ、もうすぐアズカバンだ。観念するんだな」

 

監獄塔近く。高そうな服を着た男数名と、少しやつれているが、顔立ちの良い男が言い争っていた。はあ、早く仕事しないと。

 

「む、来たか。さあ、この男ーーブラックを其方に引き渡す。くれぐれも、脱獄なんかさせてくれるなよ」

 

「くっ……」

 

ブラックの手をとり、監獄塔へ連れて行く。が、その前に、記憶を見させてもらおう。

 

 

……これだね。ブラックが、ポッター夫妻に秘密の守り人をピーターに変えた方が良いと進言してる記憶がある。ポッター夫妻も了承している。記憶を改竄されてたら、何かしらの違和感があるけど、この記憶には無いね。

 

 

次はこれか。ブラックがペティグリューを追い詰めている。あ、ペティグリューの杖から魔法がって、爆発魔法!?……たしかに、遺体が残らないのなら爆発魔法だよね。魔法省は考えなかったのかな。なぜ、即死のアバタケタブラじゃなく、爆発呪文を使ったのか。都合よく親指だけ残るものなのか。はぁ……。

 

 

ブラックの記憶だと、両方の件でブラックは無罪だね。さて、と。

 

「私をどうするつもりだ?まあ、決して貴様らに屈する事は無いがな!」

 

ブラックを引っ張って、ウィル爺のとこに連れて行く。

 

〔おう。どうじゃった?〕

 

〔無罪だね。約束通り、私の好きにするけど良いよね?〕

 

〔もちろん〕

 

「……私を牢屋に連れて行くんじゃ無いのか?」

 

ヒュルンッ

 

「!?な、吸魂鬼が人間に!?」

 

「よーし、君には吸魂鬼の事を後でみっちり教えるとして、だ。ブラック、君は無罪だ」

 

「……なぜ、そう思う」

 

「吸魂鬼ってさ、時々、視覚に関係する能力を持ってるんだよ。で、君の記憶を覗いたら、君の供述との差異も、違和感もなかったしね。証明完了」

 

「私をどうする気だ?」

 

「お父さんになって?」

 

「〔は?〕」

 

「いや、家族やおじいちゃんはいても、親となる人がいないからね。少し寂しいんだよ」

 

「ワッ、ワシでは不満じゃったか!?」

 

「ウィル爺に不満なんてないよ。他のみんなにも。ただ、お父さんがいたらどんな感じかなってね」

 

「……うん、もう驚かないはずだ。うん」

 

「まあ、リーナの好きにしていいと言ったのはワシじゃ。皆に伝えてこよう」

 

「お願い。さて、ブラック」

 

「なんだ」

 

「さ、お勉強の時間だよ?」

 

その夜、リーナの社宅には、机に突っ伏した男の姿があったとさ。




シリウスがアズカバンに収容されると同時に無罪で出所。しかし、世間からは隠されます。ピーター見つかってませんし。

主人公が持ってた原作の記憶?彼女がメモしなくても平気だろうとタカをくくった結果、見事に忘れ去りました。

次回はついにあの爺さんが!?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

PrologueⅥ

ハリポタって人気なんですねぇ。一時間でUA167って。

シリウスの口調が違うかもです。主に二人称とか。その際はご指摘ください。

追記
あるハリポタ小説を読んで、うちの主人公の能力が開心術の上位互換だと気付きほんの少し放心しました。やばい主人公が(その周りも)だいぶチートだ。


ブラックを匿った翌日、アズカバンに意外な来客があった。

 

「ふむ、ウィルはどこにおるのかのう?少し案内して貰えんかの?」

 

ヒュルンッ

 

「何の用だ」

 

「昨日収監された、シリウス・ブラックについてじゃよ。少し、話を聞きたいだけじゃ。それに、面会には、ディメント家当主、もしくは全権代理の許可が必要じゃろう?」

 

「まあ良い。こっちだ」

 

 

 

 

コンコン

 

「ウィル、あんたに来客だとよ」

 

〔む?誰かのう?〕

 

「わしじゃよ。久しぶりじゃのう。はよう人間体にならんか、ウィル」

 

ヒュルンッ

 

「お主じゃったか、アルバス。確かに、久しぶりじゃのう」

 

「「ホッホッホ」」

 

ヒュルンッ

 

「ウィル爺、この人は?」

 

私の頭の中は疑問でいっぱいだった。人間体を取れる吸魂鬼がいて、さらにウィル爺の事を知っている。

 

「ふむ、その子は?」

 

「ああ、この子はリーナと言ってのう、ワシの孫じゃよ。リーナ、こいつはアルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドアという、途轍もなく覚えるのが面倒な名前の、ワシの友人じゃ。イギリスでハロウィンの時に人間に紛れ込んで楽しんでたら見つかってのう、あとは茶飲み友達じゃよ」

 

「わしの説明酷くない?ゴホン。リーナ、よろしくじゃのう」

 

「よろしく、ダンブルドア」

 

あれ?この人、何しに来たの?

 

「ああ、用事を忘れるとこじゃった。ウィル、シリウスに面会させてくれんかの?」

 

「なんなら今呼んでくるが?」

 

「え?」

 

 

 

 

「お父さん、こっちだよ」

 

「お父さんと呼ばれるのは慣れないな……。って、ダッ、ダンブルドア!?」

 

「……収監されたと聞いておったが?」

 

「私から説明するよ」

 

〜少女説明中〜

 

「わかった?」

 

「ああ。しかし、にわかには信じられんのう。あのピーターが……いや、ピーターだからこそ、ヴォルデモートは目をつけたのか」

 

「ダンブルドア、私が無実である事は世間には隠しておいてもらいたい」

 

「何故じゃ?」

 

「死喰い人から余計な恨みは買いたくないし、魔法省が認めると思うか?」

 

……絶対認めないな、魔法省(あいつら)

 

「じゃったら、せめてもの償いじゃ。今、グリモールドプレイス12番地は誰も使っておらん。ついでに、プリペット通り4番地にある屋敷ーーハリーが今住んでおる家の隣が空いておるのじゃが、お主らが使うと良い。また、わしが信用している者にも、お主が無罪である事は伝えさせてもらおう」

 

……いきなり拠点を幾つかゲット。凄いね。

 

「ああ、ついでに、夜の闇(ノクターン)横丁にある、見えるようで見えない屋敷も使うと良い。あそこは、わしが個人的に所有している物件じゃからのう。ダイアゴン横丁にも近い。好立地じゃ」

 

「貰う」

 

「いや、リーナが答える事じゃないからな?」

 

「貰わないと損だよ。それに、ポッターに会えるチャンスだと思うよ?お父さん」

 

こうでもしないと、ペティグリューを見つけるまで、ここに缶詰めにしちゃいそうだしね。

 

「仲が良いのう」

 

「ワシがさっきから空気なんじゃが?」




色々と初めて尽くしな様な気がする。吸魂鬼に転生だとか、シリウスが収監されないだとか、拠点だとか。

プリペット通りの屋敷は、騎士団の拠点候補みたいな感じでした。また、ダーズリー家の監視並びに保護、警護のためでもあります。ハリーの血縁ですし、もしかしたら狙われるかも?と言う考えがあり、購入してました。

夜の闇横丁の屋敷は、若かりし頃のダンブルドアが買った屋敷です。使用された事は殆どありませんが。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

PrologueⅦ

一気に時間が飛ぶのでご注意を。


ダンブルドアが帰ったあと、プリペット通りの家に向かってみた。非正規の煙突飛行ネットワークを繋いでの移動。なんで非正規で繋げられるのか気になるね。

 

到着してすぐ、やっぱりと言うかなんと言うか、シリウスお父さんがダーズリー家に突撃しようとしてたよ。何警戒される様な事してんのさ。

 

ブラック邸の方は埃は少なかった。屋敷しもべ妖精が居るらしい。お父さんは嫌ってるみたいだけどね。クリーチャーと言う名のしもべ妖精は、少し偏屈だった。私達は嫌われてるみたいだけど、「ありがとう」と言ったら、少し頬が緩んでた。態度は変わらなかったけど。素直じゃ無いねぇ。

 

 

 

 

レストレンジ姓が三人と、クラウチ・ジュニアが収監された。心の中は、闇の帝王への忠誠と、魔法省への憎しみと、怒りでいっぱいだった。あぁ、とっても美味しそう……♪少し放っておいて、熟すのを待った方が良いかな?それとも、すぐに食べちゃった方が良いかな?あ、四人もいるんだから、二人は熟すのを待って、残りの二人の感情は食べちゃおう。クラウチJrとベラトリックス・レストレンジは残しておこう。

 

「うっ、ウワァァァァアアアアッ!」

 

「いっ、いやだ!やめてくれェェェ!」

 

うーん、少し辛めかな?でも、鮮度が良いし、恐怖を植え付けたりして、新しい味を作るのも良いかも。

 

 

 

1982年

 

 

あれ?クラウチJrの心境が変わってる?『あの子を脱獄させて良かったのかしら』?……愉しみが取られちゃったかー。この人ーークラウチJrのお母さんかな?ーーの命は短いっぽいし、魂、食べちゃおう。

 

 

ーーああ、こんなに美味しいなんて。曰く、業が深い魂ほど深い味わいになるらしい。そして、綺麗な魂にも負けず劣らず美味しいと。……ふふっ。ヴォルデモートやグリンデルバルトの魂って、どれほど美味しいんだろうね?

 

 

 

1990年

 

アズカバンで、黒猫を拾った。私に懐いてきたし、ペットにしても良いかウィル爺とお父さんに聞いたら、了承してもらえた。

 

「君、名前はあるの?」

 

(無いよ。あなたに拾われるまで一人ぼっちだったんだから)

 

……そういえば、私の能力って、動物の思考も読めるんだっけ。

 

「じゃあ、今日から君はヴェル、ヴェールヌイだ」

 

(ヴェールヌイ?何か意味が?)

 

「ヴェールヌイって言うのは、ロシア語で『信頼』って意味なんだ。私が好きな言葉の一つだよ」

 

(信頼……良いですねぇ。拾われたのも何かの縁。よろしくお願いしますよ?ご主人様)

 

 

 

そして、1991年7月30日

 

 

「リーナ、ちょっと良いか?」

 

「どうしたの?お父さん」

 

「お前に手紙だ。ホグワーツからの、な」

 

私の、11歳の誕生日。ホグワーツから入学許可証が届いた。




次回から原作突入。入学はまだ。

シリウスがハリーの叔父で後見人で名付け親だと言う事はハリーは知ってます。また、ハリーとシリウス、リーナ、ウィル爺の仲は良いです。三年の時どうしよう……。

また、リーナが少しぶっ壊れました。若干ヤンデレ風味?美味しいものには目がありません。人間の食事にも、感情や記憶にも、そして、魂にも。

黒猫のヴェールヌイ。リーナにペットを持たせようとは最初から考えました。リーナの容姿を決めた時に、ペットの名前はヴェールヌイにしようとも。迷ったのは白猫か黒猫かですね。元ネタは、某不死鳥の異名を持つ駆逐艦です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Lina Dement and the Philosopher's Stone
始まり


リーナ・ディメントのスペルです。

Lina・Dement


「リーナ、僕の所にホグワーツからの手紙が届いたよ!リーナの所には?」

 

「もちろん届いたよ」

 

玄関を開けて、家に入って来たのはハリーだった。私達はダンブルドアから許可を得て、ハリーに色々と教えたのだ。お父さんがハリーの名付け親である事、お父さんが冤罪で捕まっている事になっている事、ポッター夫妻の死の真相、ハリーが魔法使いである事、そして、私達が魔法界で最も恐れられている種族ーー吸魂鬼(ディメンター)である事。ハリーはまだ幼かったからか、素直に理解してくれた。ダーズリー一家はウィル爺がなんとかしたよ。いい取引相手を紹介したとか。

 

私達はハリーに魔法界の事を教えた。もちろん、魔法や魔法薬学の勉強も。その途中で、ハリーが蛇語使い(パーセルマウス)だとわかった日には驚いた。ハリーが蛇から聞いたと言う内容と、蛇が教えたと言っていた内容が同じだったからだ。

 

「この後は漏れ鍋からダイアゴン横丁に行って買い物だね。教科書にローブ、それにハリーの杖。ハリーのペットもかな?グリンゴッツに私用の金庫も作るって言ってたね」

 

「魔法界かぁ。色々聞いたけど、まだ一度も行ってないからね。楽しみだよ」

 

「アズカバンも、厳密には魔法界だよ」

 

ハリー、なんとアズカバンに来たことがあるのだ。お父さんが連れて来やがった。案の定気絶したけど、二回、三回と来る内に慣れていったらしく、今では普通に遊びに来れるほどになってしまった。

 

「ハリー、幾つか注意しておく。まず、お父さんーーシリウス・ブラックがアズカバンにいないと言う事はダンブルドアとマクゴナガル教授、スネイプ、ハグリッド、ルーピンぐらいしか知らない。だから、人前で話しちゃダメ。私達ディメント家が吸魂鬼である事も。良い?」

 

「もちろん。あと、どうやって漏れ鍋に向かうの?」

 

「煙突飛行で。向こうに着いたら大騒ぎだね。いきなり英雄が登場するんだし」

 

「英雄って言われてもね。僕は何もして無いし、僕が誇れる事じゃ無い」

 

「謙虚だね」

 

「クリーチャーは?」

 

「なんか準備してるみたいだけど教えてくれなかったよ」

 

クリーチャーともだいぶ打ち解けた。お父さんは相変わらず嫌ってたけど、ハリーの

 

『シリウスが嫌ってるのはクリーチャーじゃなくてクリーチャーの元主人でしょ?クリーチャーを嫌う必要ある?』

 

との声でぎこちないながらもクリーチャーへの接し方を変えていった。ほんと、最初と比べたら素直になったね。

 

「ホッホッホ。準備は出来てるかのう?」

 

「「大丈夫だよ、ウィル爺!」」

 

さあ、魔法界へ出発しよう。




原作のハリーが跡形もなくなった気がする。魔法はまだ使った事は無いですが、理論は頭の中にあるので、二、三回の練習で実用出来るレベルにはなります。

ハリーも箒持ち。ニンバス?それよりやばいです。
《ソニックホーク》と言う、リゼのオリジナル品。スピード重視。ファイアボルトに負けず劣らずの速さの逸品。

裏設定?として、リーナは許されざる呪文も使えます。しかし、アバタケタブラは好まない模様。曰く、つまらないだとか。服従の呪文は、味方に裏切られた者の感情が美味しいので使うことあり。呪文を終えて、自分が何をしたか知った方の心も食べれて一石二鳥。一番使うのはクルーシオ。死なない程度に痛みを与え続け、発生する負の感情などを食べるのが好きとの事。

「一度呪文を止めて、ようやく解放されると思ったらもう一回やられた人間の感情って、とっても美味しいんだよね」byリーナ

一様、リーナが許されざる呪文を使うのは、死喰い人や終身刑の罪人など、殺しても特に問題の無い相手に対してだけです。流石に無差別にやる程狂ってはいない。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

漏れ鍋とグリンゴッツ

原作フラグがだいぶ折られてる気がする。


「そう言えばさ?」

 

「ん?なんだい、ハリー」

 

「煙突飛行で行くなら直接ダイアゴン横丁に行った方が楽だと思うけど?」

 

「漏れ鍋から行った方が面白そうだよ?」

 

私達はたわいもない会話をしながら煙突飛行粉(フルーパウダー)を手に取る。

 

「私が先に行くよ。その次はハリー、最後にウィル爺だね」

 

「わかった」

 

私は粉を暖炉の火に入れ、エメラルド色の炎の中に身を投じた。

 

「漏れ鍋!」

 

引っ張られるような感覚のあと、別の暖炉に到着した。ここが漏れ鍋だろう。

 

「あー緊張した」

 

別の暖炉の中から出てくるハリー。彼が現れた途端、パブにいた全員が固まった。

 

「あれ?リーナ、なんでみんな固まってるの?」

 

「だから言っただろう?君が来たら、みんな大騒ぎするってさ」

 

『い、生き残った男の子だー!』

 

「うわっ」

 

「愛されてるね」

 

そう言いつつ、漏れ鍋の中を観察する。……あのターバンの男、なんか変な気がする。

 

「ハリー、あのターバンの男、もしホグワーツにいたら注意して」

 

「どうして?」

 

「嫌な気配がする」

 

能力を使って、思考を確認する。

 

 

(ハリー・ポッターか、忌々しい。が、()()()を手に入れるまでの辛抱だ。俺様がこんな惨めな姿でいるのも、今年までだ……)

 

 

あれ?もしかして、『例のあの人』?

 

「ハリー、訂正。最大限警戒しておいて」

 

「……わかった」

 

ハリーも男を睨む。

 

「……どうした?」

 

あ、ウィル爺忘れてた。さっさとダイアゴン横丁に行かなきゃ。

 

「何も。さ、行こうよ。ハリー、ウィル爺」

 

漏れ鍋の奥に行き、ウィル爺が杖でレンガを叩く。すると、レンガが移動してアーチになった。

 

「まずはグリンゴッツじゃな。ハリーの金庫の鍵はハグリッドから預かっておる。後で渡してやろう」

 

 

 

グリンゴッツ

 

「ポッター家の金庫に。それと、この子の金庫を作ってやってくれんかの?」

 

ウィル爺が小鬼(ゴブリン)と話している。しかし、気難しい顔が多いね。

 

「リーナ、ちょっと来てくれ。杖を登録せにゃならん」

 

「了解」

 

ハリーを連れてウィル爺のところへ向かう。杖を取り出して小鬼に渡したら、長さから重さまで、色々計測された。

 

「それではまず、ポッター家の金庫へ案内させていただきます。行き先は687番金庫でございます」

 

小鬼にトロッコへと案内される。……狭い。それに、速い。ジェットコースターみたいだ。

 

「687番金庫、ポッター様の金庫でございます」

 

到着。鍵を使って扉を開けると、中には大量の金貨があった。

 

「……凄いね」

 

「僕もちょっと信じられない」

 

「とりあえず、必要な分とお小遣いとして少々、持っていくとしよう。さ、行ってくるのじゃ、ハリー」

 

背中を押されたハリーは必要な分より少し多い金貨を持ってきた。

 

「それでは、続いてはリーナ・ディメント様の金庫となります」

 

 

 

 

「こちらが、代々ディメント家の皆様がお使いになられてる金庫群でございます。リーナ様の金庫は1999番金庫でございます」

 

到着したのは、地下深くの、とても暗い場所。円柱状の穴になっているその場所は、更に地下へと向かっていた。一番手前の金庫には1000番金庫と書かれている。

 

「歩いて降りるの?」

 

「そうじゃ。この穴の壁には1000番金庫から3000番金庫までが存在する。ディメント家専用の場所じゃ」

 

降りながら話してくれるウィル爺。っと、あった。

 

「さあ、リーナ。この扉に空いている穴、ここに杖をはめるんじゃ。それが、鍵となる」

 

私達吸魂鬼の杖は絶対に忠誠を移さない。それを利用した防犯システムか。よく出来ている。

 

「ま、中には何も無いだろうけどね」

 

「うん。何も無い」

 

「ウィル爺、今のちょっとうざい」

 

「ホッホッホ。後で1000番金庫ーーアズカバン全体の金庫から幾ばくか移しておこう。さ、次はローブ、そして杖じゃ」

 

私達は、ジェットコースターのようなトロッコで地上へ戻った。




ハグリッドの出番無し。そして、さらっと看破されるお辞儀さん。改めて、この主人公チートである。

1999番金庫の理由ーー特になし

吸魂鬼の杖は絶対に忠誠を移さない。生まれた時から一緒なんですから、何があっても忠誠心は変わりませんし、マスターが消滅した時は崩壊する。それ以外で壊れた場合、しばらくマントの中に入れておけばいつの間にか治っています。だいたい三日ぐらいで。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

杖と制服と教科書とペット

お気に入り100件突破……テスト前なのに、書かなきゃいけない使命感が出てしまうじゃないか!

5月21日追記
まさかの日間ランキング入り。マジか。


オリバンダー杖店に到着した。え?道中?何もなかったからスルー。

 

中に入ると、天井まで積み上がった箱だらけだった。崩れそう。

 

「いらっしゃい」

 

……いつの間に。最初はいなかった筈の老人がいた。この人がオリバンダーだろう。

 

「この子の杖を選びに来たんじゃが」

 

「ふむ……おお!ポッターさんですか!ああ、そう言えば今年でしたか。ようこそ、オリバンダー杖店へ。どこの杖よりも優秀な杖を取り扱っておりまする。最も、ディメント家の皆様が使う杖には丈夫さと言う観点で負けてしまうかもしれませんがね」

 

「早よ選んでやれ」

 

「ええ、ええ。杖腕はどちらで?」

 

「利き腕なら、右です」

 

「どれ」

 

オリバンダー老はメジャーを取り出し腕の長さを測っていく。それどころか、腕以外の場所も。メジャーが勝手に測ってるけど、どんな魔法だろう。

 

「ふむふむ。柊にドラゴンの琴線、26センチ、丈夫で頑固。……振ってみなされ」

 

「えっと……うわっ」

 

ランプが小爆発を起こした……。あ、オリバンダー老が杖を引ったくった。

 

次の杖。握った瞬間取られた。次、振ったら火が出た。次、箱から出してもハリーの手に渡る前に箱に戻された。中々決まらないみたいだ。

 

 

「ふむ、ここまで難しい客は久しぶりじゃのう。……珍しい組み合わせじゃが、柊に不死鳥の尾羽、28センチ、良質でしなやか」

 

ハリーの手に渡る。途端、金の火花が現れた。

 

「その杖に選ばれるとは……これも何かの因果かのう」

 

「?どう言うことだい?オリバンダー老」

 

「お嬢さん、わしは売った杖を全て覚えておる。誰にどんな杖を売ったかさえも。そして、店の杖の材料となっておる素材は、一つとして同じ個体からは提供されておらん。……その杖と、その杖の兄弟杖を除いて」

 

それがどうかしたのだろうか。

 

「その兄弟杖が、ポッターさんの傷を作ったのじゃ」

 

「…それって……」

 

「ああ、34センチのイチイの木じゃった。ポッターさん、あなたは『あの人』に並ぶ偉大な事をするのかもしれん。願わくば、闇へ向かう事の無いよう……」

 

「ハリーが闇へ向かったら私がとっちめるから大丈夫だよ」

 

「それは頼りになる。頼みましたぞ」

 

「頼まれた」

 

意外な、それでいて何か納得のできる事実を知り、私達はマダム・マルキンの洋服店に向かう。……ハリーが闇に堕ちるようなら、私が止めてみせるし、もし、止まらないようなら、

 

 

私が、ハリーを殺す。

 

 

 

 

 

「あら、お客さん?ホグワーツの新入生かしら。さあさあ、こっちへ。すぐに寸法してあげる」

 

私とハリーは店主の元へ行き、さっきも見たメジャーに身を委ねる。……くすぐったい。

 

 

少ししてメジャーが店主の元に戻る。寸法が終わったようだ。ハリーを測っていたメジャーも戻っていく。

 

「さあ、坊ちゃんにお嬢ちゃんの制服は少ししたら出来上がるからね。その間に教科書とかを買ってくるといいわ」

 

「期待してるよ、マダム」

 

「ふふ。何年、ホグワーツの制服を作ってると思ってるの。そんじょそこらの洋服には負けないわよ」

 

頼もしい。

 

 

 

 

その他教科書や鍋、天秤などを買って、最後に向かうのは魔法生物ペットショップ。さて、

 

「私が選ぶけど平気かい?」

 

「リーナなら安心出来るよ」

 

「それ、ワシが選ぶのは安心出来ないって言ってるのと同じじゃと思うんじゃよ」

 

何か言ってるウィル爺は置いてといて、私はペットショップの中に入る。ここはスタンダードにフクロウで良いかな。……お、この子可愛い。

 

「君は飛ぶのに自信は?」

 

(あるよ?もしかして買ってくれるの?)

 

「ああ。けど、主人は私じゃ無い」

 

(飛べるのなら別に良いわ。それにどんな人が主人でも、精一杯飛ぶだけだもの)

 

「名前は?」

 

(周りのフクロウ(みんな)はヘドウィグって呼んでくれてるわ)

 

「ふふっ、私はリーナ。君の主人とは仲が良いからよく関わることになると思う。よろしく」

 

 

「ハリー、買ってきたよ」

 

「ありがとう。どんなの?」

 

「この子。シロフクロウのヘドウィグ。名前は元から持ってたよ。因みに雌」

 

「へぇ、よろしくね、ヘドウィグ!」

 

(よろしく、ご主人!)

 

「ヘドウィグ、ハリーには聞こえないから」

 

 

ハリーのペットも買った私達は、マダムの店に戻り、彼女の言ったとおりの、素晴らしい出来の制服を受け取って、プリペット通りの家へと付き添い姿くらましした。

 

そして、9月1日。




少しの間、具体的には一週間くらい更新出来ません。

追記設定
リーナは基本的に闇は「やばいようなら断罪」「微妙なら能力で確認して決める」「まだ何もしていなければ様子見」です。が、強い者が闇に堕ちた場合、光に引っ張り上げようとして、無理なら無力化ーー殺します(親しい者に限る。吸魂鬼はどっちつかずなので何もしない。他の人は殺します)。

ハリーはリーナに対して友達以上恋愛未満の感情を持っています。が、なぜかリーナはこの感情を読み取れず。リーナからハリーは、幼馴染みとしての好き(若干依存の可能性あり?)と言った感じです。いやあ、なんとも甘酸っぱい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

キングズ・クロス駅の九と四分の三番線〜ホグワーツ特急〜

金曜ロードショー見た人、手をあげなさい。私もだから。

ハリーに「出て行け」と言った時のスネイプの心境、『やっちゃった……』ってなってそう。

サブタイトルやら本文にネタを入れる事有り。リーナはウィル爺のおかげで時々ネタをぶっ込みたくなる。


私達はキングズ・クロス駅に居る。もちろん、ホグワーツ特急に乗るためだ。

 

「ねぇ、リーナ。九と四分の三番線ってどこに在るの?」

 

「九番線と十番線の間。多分、四本の柱の、九番線から数えて三本目。けど、合ってるかどうかはわからない」

 

ちっ、ウィル爺め、ちゃんと教えてよ。大体の場所じゃなく、ちゃんと、どこに在ってどう入るのか。……ん?あれは……。

 

「マグルで混み合ってるわね。当然だけど……」

 

マグル。非魔法族の事。それを知ってるって事は……。

 

「失礼、マダム。ホグワーツへ行くのですか?」

 

「あら、もしかして貴女も?私はモリー・ウィーズリー。貴女は?」

 

「私はリーナ・ディメント。そこに居る彼はハリー・ポッター。二人とも今年の新入生です」

 

「へぇ!うちのロンも今年、ホグワーツに入学するの!……もしかして、九と四分の三番線を探しているのかしら?」

 

「ええ。教えていただけますか?」

 

「いいわよ。と言っても、すぐそこなのだけれど。さ、パーシー、行って」

 

Ms.ウィーズリーが示した方を見ると、何人かの赤毛の少年と少女が居た。そして、パーシーと呼ばれた一番年上らしき少年がプラットホームの「9」と「10」の間へ進んで行く。柱にぶつかるかと思ったが、そのまま消えてしまった。

 

「フレッド、次はあなたよ」

 

「僕はフレッドじゃなくてジョージだよ」

 

「そうそう。僕がフレッドさ」

 

「ふざけてないで早く行きなさい。後がつかえてるでしょ」

 

「はいはい」

 

見分けがつかなくなる程似ている二人、一卵性の双子であろう二人のうち片方が、パーシーと同じ場所へ向かって歩いていく。……また消えた。もう一人も。

 

「そうね、次は貴女が……って、え?ごめんなさい、さっきスルーしちゃったけれど、ディメントって、それにポッターって……まさか……?」

 

「そのまさか。私はディメント家の者ですし、彼は正真正銘のハリー・ポッターですよ」

 

「まぁ!英雄と、魔法界のお目付役がホグワーツに!うちの子を、よろしくお願いします」

 

「畏まられても困るのですが」

 

そう言いつつ、柱の方を向く。

 

(ぶつかりませんよね?ご主人様)

 

「心配性だね、ヴェル」

 

ヴェルーーヴェールヌイと話しながら柱へ歩く。ぶつかる瞬間、そのまま何かを通り過ぎる感覚があった。前には、紅色の機関車と、「ホグワーツ行き特急11時発」の看板。そして後ろの改札口には、「9 3/4」と書かれたアーチ。あ、ハリーも来た。

 

「うわぁ、ここが九と四分の三番線?魔法って凄いね」

 

「目くらまし術の派生かな?」

 

人が多い。二人が座れる席を探さなきゃ。

 

「ばあちゃん。またヒキガエルがいなくなっちゃった」

 

「まあ、ネビルったら」

 

「リー、見せて。さあ」

 

「おう」

 

パカッ

 

「うわっ、なにそれ!」

 

……賑やかだなぁ……。

 

「リーナ、最後尾の方のコンパートメントが空いてるよ」

 

「うん、今行くよ」

 

ヘドウィグやヴェルを先に中に入れ、トランクを車両の中に入れる。……持ち上がらない。やばい、重い。軽量化呪文ってあったような気がするけど、掛けてなかったか……。

 

「手伝おうか?」

 

双子か。どっちだろう。

 

「うん。お願い」

 

「おい、フレッド!こっち来て手伝えよ」

 

ジョージだったか。

 

おお、流石は先輩。力持ちだね。

 

「ありがとう」

 

「なぁ、一つだけいいかい?もしかして二人って……」

 

「思ってる通り、お目付役と英雄だよ」

 

「リーナ、英雄は止めてくれ」

 

「マジかよ。ロニーは同学年だろ?大変そうだな」

 

「ああ。それに、お目付役が入るって事は、僕らの悪戯がしにくくなるな」

 

悪戯か。お父さんも、ジェームズ・ポッターやルーピンとつるんで悪戯してたって言ってたな。さしずめ、

 

「二代目悪戯仕掛け人ってとこかな?」

 

「おお!僕らが二代目という事を知っているとは!」

 

 

「もしかして、初代悪戯仕掛け人を知っているのかい?」

 

「ああ、もちろん」

 

「「よし、一緒に悪戯しようぜ!」」

 

「だが断る」

 

「「あっははは!冗談だよ」」

 

ネタを入れつつ誘いを断る。

 

「フレッド?ジョージ?どこにいるの?」

 

窓の外からウィーズリー夫人の声が聞こえてくる。

 

「ママ、今行くよ」

 

窓から飛び降りる双子(ツインズ)。危ないから止めましょう。

 

窓の外では、夫人が双子を叱りつつ、末息子ーーロンと呼ばれていた少年の鼻の頭を拭いていた。その後、既にホグワーツの制服に着替えていたパーシーが合流し、少し話していた。パーシーは監督生だとか。指定席か。面倒くさそう。

 

夫人がツインズに注意してるけど、なんか悪巧みしてるね。

 

「トイレを吹き飛ばすだって?僕たちそんなことしたことないよ」

 

「すっげえアイデアだぜ。ママ、ありがとさん」

 

「ばかなこと言わないで」

 

双子(フレッジョ)を要注意人物に認定。巻き込まれたくない。

 

笛の音が鳴る。

 

「泣くなよ、ジニー。ふくろう便をどっさり送ってあげるよ」

 

「ホグワーツのトイレの便座を添えてな」

 

「ジョージ!」

 

「冗談だよ、ママ」

 

汽車が走り出す。母親が子供達に手を振っている。ジニーと呼ばれていた末っ子も。カーブを曲がり、二人の姿が見えなくなるまで、ハリーは彼女達を見ていた。




という訳でお久しぶり。「賢者の石」を買ってきた妖識です。お待たせして申し訳ありません。

追記設定、箒編
リーナの箒《シャドウスネーク》は、黒に近い、と言うよりも、闇に近い色をした箒。ボロボロに見える。色は天然。隠密性が高い理由は、杖の様に、箒の柄に芯材を入れていて、それが隠密性に優れた素材だから。

ハリーの箒《ソニックホーク》は銀色。芯材として、ハリオアマツバメ(最も水平飛行で速く飛べる鳥。時速350km出したらしいが疑問視されている)と、ハヤブサ(急降下の時に最速。最高記録は時速387km出した)の風切羽。ファイアボルト並みに速い。

次回は某鼠の初登場。リーナはどうするのか、鼠の心境は?乞うご期待!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ホグワーツ特急にて、邂逅

コンパートメントの扉が開く。入って来たのは赤毛の男の子ーーロンだった。

 

「ここ空いてる?」

 

ハリーの向かい側の席を指差して尋ねる。ちなみに私とハリーは隣同士に座っている。

 

「ほかはどこもいっぱいなんだ」

 

ハリーは頷いた。……お、ツインズが戻って来たね。

 

「おい、ロン」

 

「なあ、俺たち、真ん中の車両あたりまで行くぜ……リー・ジョーダンがでっかいタランチュラを持ってるんだ」

 

リー……ああ、箱を持ってたドレッドヘアの男子か。あの中、タランチュラだったんだ。

 

「わかった」

 

ロンはモゴモゴ言った。

 

「ハリー、リーナ」

 

「なんだい?」

 

「自己紹介したっけ?僕たち、フレッドとジョージ・ウィーズリーだ。こいつは弟のロン」

 

「さっきの会話でなんとなく名前は把握したよ。あと、一人称が僕ってなってるのがフレッドで、俺がジョージかな?」

 

「「それは秘密さ。じゃ、またあとでな」」

 

「バイバイ」

 

双子はコンパートメントの戸を閉めて出て行った。

 

「ねぇ、君、ほんとにハリー・ポッターなの?」

 

「うん」

 

「僕、フレッドとジョージがまたふざけてるんだと思った。てことは、リーナもやっぱり、本当に……」

 

「ディメントだよ」

 

「うわぁ、有名人二人と一緒の学年なんて、緊張するよ」

 

微笑ましいね。……ん?ヴェル?

 

(ご主人様、ネズミ食べちゃっても?)

 

ネズミ?

 

「ロン、君、ネズミ持ってるの?」

 

「うん、お下がりだけどね。僕の兄の。卒業したビルは主席だし、チャーリーはクィディッチのキャプテンだったし、今度はパーシーが監督生になるし……。フレッドとジョージは悪戯ばかりだけど成績が良いし。僕が何か期待されていて、それを成し遂げたとしても、みんなと同じことをしただけだから大したことじゃないってなっちまう。新しい物も貰えない。ローブはビルのお下がりだし、杖はチャーリーの、ペットのネズミだってパーシーのお下がりさ」

 

ロンは上着のポケットから太ったネズミを出した。ぐっすり眠っている。……あれ?少し怯えてる?悪夢でも見てるのかな?

 

「スキャバーズって名前だけど、役立たずなんだ。寝てばっかりいるし。パーシーは監督生になったからふくろうを買ってもらったけど、それ以上の余裕がなくて、僕はお下がりなんだ」

 

ロンは耳元を赤らめる。さて、私はスキャバーズの夢でも覗いてみますかね。

 

 

……スキャバーズはネズミの筈だ。だが、なんで『例のあの人』が出てくる!?

 

「ワームテールよ。ポッターの家はここか?」

 

「そうでございます、我が君」

 

「ご苦労だった。さぁ、待っていろポッター。俺様が直々に滅ぼしてやる……!」

 

 

……ワームテールって確か、ペティグリューだよね。お父さんが言ってた。親指も無いし、確定かな?

 

……お父さんの無罪は晴らしたいけど、こいつには今以上の恐怖を味わって貰わなきゃね。自分が殺した親友の息子と、吸魂鬼(ディメンター)に関わる魔法界のお目付役。それらと関わっていく事になるんだ。罪悪感、恐怖心、ああ、美味しそうだ!だけど、まだまだ。もっともっと熟成させて、濃縮させて、いっぱいになった時に摘み取らないと。ふふ、うふふふふ、あっはははははは!




なんか、リーナが第二の闇の帝王の素質を兼ね備えてる気がしてきた。なんでこんなキャラになったのか。……あ、吸魂鬼にしたからか。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

特急の中での一幕

「車内販売よ。何かいりませんか?」

 

おっと、ペティグリューの感情を食す事を考えてトリップしている間に車内販売が。

 

ロンは何も買わないようだね。ハリーは売ってる全ての種類を少しずつ買っていた。

 

私は、そうだね。

 

「蛙チョコレートとかぼちゃパイ、杖形甘草あめを一つずつ」

 

「百味ビーンズは?」

 

「いらない」

 

百味ビーンズ。あれはゲテモノ好きの私は好きだ。けど、量が多い。ハリーが買っていたから分けてもらおう。

 

ハリーはロンと分け合いながら色々食べてる。

 

「蛙チョコレートって、まさか、本物のカエルじゃないよね?」

 

「違うよ」

 

私も蛙チョコレートを食べる。カードはゴドリック・グリフィンドールだった。

 

「この人がダンブルドア?」

 

「あれ、ハリーってダンブルドアに会った事なかったっけ?」

 

「うん」

 

ダンブルドアのカードを見てみる。……趣味、ボウリングって。マグル社会に染まってるね。

 

ハリーはひとしきり蛙チョコレート(数匹、開いていた窓から飛ばされていた)を食べたあと、百味ビーンズの袋を開けた。

 

「気をつけて。ほんとに何でもありだから。普通のもあるけど、臓物味とか、レバー味とかね」

 

「慣れると美味しいけどね」

 

「え?百味ビーンズが美味しいだって!?おどろきだよ!」

 

「そう?レバーとか美味しいけど」

 

流石にダメな味はあるけどさ。石鹸とか。

 

 

 

 

「そういえば、クリーチャーが用意してくれてた物って?」

 

そう、ダイアゴン横丁に行った日にクリーチャーが準備していた物。家を出るときに渡してきて、「ホグワーツ特急の中で開けてくれ」って言われた。

 

「小包だね。ハリーのが青、私のが赤か」

 

箱の中身は何かな?……これって、

 

「マフラーだね」

 

「うん。あと、端っこの方に僕たちの名前が書いてある。クリーチャーの手編みだね」

 

「クリスマスにも何か贈ってくれるかもね」

 

「セーターとか?」

 

お父さんが上質な毛糸を買ってそうだ。

 

コンコン

 

コンパートメントの扉がノックされ、開かれる。ネビルと呼ばれていた子だ。

 

「ごめんね。僕のヒキガエルを見なかった?」

 

首を横に振る。ハリーはもちろん、ロンも見ていないようだ。

 

「いなくなっちゃった。僕から逃げてばっかりいるんだ!」

 

「きっと出てくるよ」

 

ハリーが言う。ネビルは少し、希望を取り戻したような顔で出て行った。

 

「僕がヒキガエルなんか持ってたら、なるべく早くなくしちゃいたいけどな」

 

「ロン。ヒキガエルでも、彼にとっては大切な存在なのさ」

 

「そうかな。もっとも、僕だってスキャバーズを持ってきたんだから人のことは言えないけどね」

 

ネズミはロンの膝の上で眠り続けている。今度はお父さんやブロングス……ジェームズ・ポッターやムーニー……ルーピンたちの夢を見ているみたいだ。穏やかな顔をしてる。

 

「昨日、少しは面白くしてやろうと思って、黄色に変えようとしたんだ。でも呪文が効かなかった。やって見せようかーー見てて……」

 

トランクを引っ掻き回し、杖を取り出すロン。ボロボロな杖だね。……ああ、お下がりの杖か。何年使ってるんだろう。

 

一角獣(ユニコーン)のたてがみがはみ出してるけど。まあ、いいか……」

 

杖を振り上げるロン。その瞬間、再びコンパートメントの扉が開いた。今度はなんだ?




蛙チョコレートのカードは、自分が引き当てたやつです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

お陽さま、雛菊、溶ろけたバター

変身術の呪文って、明確なのが一つも出てない気が。


「誰かヒキガエルを見なかった?ネビルのがいなくなったの」

 

なんとなく威張った話し方をする女の子が立っていた。ネビルを連れて。すでに新品のホグワーツのローブに着替えている。

 

「見なかったって、さっきそう言ったよ」

 

女の子は聞いてないね。杖に気を取られている。

 

「あら、魔法をかけるの?それじゃ、見せてもらうわ」

 

女の子が座り込む。名前ぐらい言おうよ。

 

「あー……いいよ」

 

咳払いするロン。緊張してるのかな?

 

「〈お陽さま、雛菊、溶ろけたバター。デブで間抜けなねずみを黄色に変えよ〉」

 

杖を振るロン。でも何も起こらない。

 

「その呪文、間違ってない?」

 

「色を変えるのは変身術の一部だね。変身術の呪文は定義されてないのが多いから、間違ってるわけじゃないよ。定義するとなると、どれほどの数定義しなくちゃいけないのやら。イメージが足りなかったんでしょ」

 

女の子が言い、私が言い返す。

 

「あら、言うじゃない。私も練習のつもりで簡単な呪文を幾つか試したけれど、全部成功したわ。あなた、やってみたら?」

 

「ああ、いいだろう。〈お陽さま、雛菊、溶ろけたバター。デブで間抜けなねずみを黄色に変えよ〉」

 

黄色に変わるスキャバーズ。どうせなら、このまま悪戯してやろうか。

 

「へぇ、さすがね。私はハーマイオニー・グレンジャー。あなた方は?」

 

「僕、ロン・ウィーズリー」

 

「ハリー・ポッター」

 

「リーナ・ディメントだよ」

 

「ほんとに?私、あなたのこと知ってるわ。『近代魔法史』『闇の魔術の興亡』『二十世紀の魔法大事件』なんかに出てるわ。それに、ほとんどにディメント家が出てくるの」

 

「僕が?」

 

呆然とするハリー。まあ、英雄だって言われても謙遜してたハリーらしいと言えばハリーらしいが。

 

「私があなただったらできるだけ全部調べるけど。三人とも、どの寮に入るかわかってる?」

 

「ネビルがショボーンってなってるからかまってあげなよ」

 

「あら。ならもう行くわ。三人とも着替えたほうがいいわよ。もうすぐ着くはずだから」

 

ネビルを引き連れて出て行くハーマイオニー。

 

「どの寮でもいいけど、あの子のいないところがいいな」

 

杖をトランクに投げ入れながら、ロンが言う。

 

「ヘボ呪文だと思ったんだけどな。まさか、ジョージが教えた呪文が成功するなんて」

 

「ジョージェ……」

 

ちょっとは信用してやれよ。

 

「君のお兄さんたちはどの寮なの?」

 

「ママとパパを含めて、全員グリフィンドール。レイブンクローならまだしも、もし、スリザリンに入ることになったらどうしよう!」

 

「そんなにスリザリンが嫌なの?」

 

スリザリンかぁ。ウィル爺の話だと、伝わる話がだいぶねじ曲がってるらしいけど。

 

「……あ、スキャバーズの色、戻さなくちゃ」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

マルフォイ共と到着

「そう言えばさ、ビルがグリンゴッツで仕事してるんだけどね。誰かが、特別警戒の金庫を荒らそうとしたって」

 

グリンゴッツに侵入者?

 

「それ、本当?」

 

「本当。『日刊予言者新聞』に出てるよ」

 

「グリンゴッツに侵入するって、凄いことなの?」

 

「忍びこむことも、生きて帰れるのも凄い」

 

「ま、なにも盗っていかなかったらしいけど」

 

『例のあの人』関連かな?彼らしき人が存在するのは漏れ鍋で確認したし、何かしらの武器を求めて、既に持ち出された後だった?

 

私が考えている間、ハリーとロンはクィディッチについて話していた。ロンって、クィディッチオタクなんだね。どんどん専門的な話にシフトしてる。

 

ガラッ

 

……またか。次は誰だ?

 

「このコンパートメントにハリー・ポッターがいるって、汽車の中で噂になってるけど。誰かな?」

 

金髪の、青白い男の子だ。あと、がっしりとした体型のボディーガードらしきオマケ。

 

「ああ、こいつはクラッブで、こっちがゴイルさ。そして、僕がマルフォイだ。ドラコ・マルフォイ」

 

「クラッブもゴイルもマルフォイも、死喰い人(デスイーター)関連で聞いた名前だね」

 

「……君は?」

 

「私はリーナ・ディメントさ。こっちの眼鏡がハリーだよ」

 

「ディメント?まさか、ディメント家の人間かい?」

 

もう説明するの面倒だよ。ロンを無視して、私とハリーに向けて話し出すマルフォイ。

 

「ポッター君、ディメント君。そのうち家柄のいい魔法族とそうでないのとがわかってくるよ。間違ったのとはつき合わないことだね。例えば、そこにいるウィーズリーとか。そのへんは僕が教えてあげよう」

 

手を差し出してくる。握手かな?

 

「一つ聞くけど、私達にどんなメリットが?」

 

「上流階級だよ。それに、危険も少ないし、魔法省へのツテもある」

 

「ふーん。だが断る」

 

ネタを使って拒否する。使い勝手良いよね、コレ。

 

「まちがったのかどうかを見分けるのは自分でもできると思うよ。どうもご親切さま」

 

おお。言うねえハリー。少し怒ってる?

 

「ポッター君、ディメント君。僕ならもう少し気をつけるがね。もう少し礼儀を心得ないと、君の両親と同じ道をたどることになるぞ。君の両親も、何が自分の身のためになるかを知らなかったようだ。ウィーズリー家みたいな下等な連中と一緒にいると、君たちも同類になるだろうよ」

 

……もう、失神呪文や石化呪文使って良いよね?ロンは立ち上がってファイティングポーズ取ろうとしてるし、ハリーはロンを抑えようとしてるけど、怒りを隠しきれてない。

 

「〈鳥よ(エイビス)〉、〈襲え(オパグノ)〉!」

 

と言う訳で、鳥さん突撃ー!

 

「う、うわっ。何する、やめろ!」

 

よし、撃退成功。あと、マルフォイ共以外に足音がする。ハーマイオニーかな?

 

「いったい何やってたの?鳥が男の子を襲ってたけど」

 

「私の呪文。ハリーの両親を侮辱されたから」

 

「はぁ……三人とも、急いだほうがいいわ。ローブを着て。もうまもなく着くそうだから」

 

「よろしければ、着替えるから出ていってくれないかな?」

 

「ロン、それは私が君とハリーに対して言う言葉だ。男子二人の前で女の子に脱げと?」

 

「「ごめんなさい」」

 

「よろしい」

 

ハリーとロンが出て行き、私とハーマイオニーだけになる。上着を脱ぎ、ローブを着て、整理整頓。

 

「ハリー、ロン。もう良いよ」

 

ハリーとロンが入ってくる。入れ違いに、私とハーマイオニーは外に出る。

 

「さっきの鳥の魔法って何なの?」

 

「〈鳥よ(エイビス)〉と〈襲え(オパグノ)〉。案外簡単で、メジャーな組み合わせだよ。本来なら防火して火を付けてから襲わせるけどね」

 

「ありがとう。それじゃあ、ホグワーツで」

 

聞きたい事を聞いたハーマイオニーは去っていった。……お、ハリー達も着替え終わったみたいだね。コンパートメントの中に入る。

 

「荷物はトランクに詰めた?杖は持ったのかい?」

 

「大丈夫」

 

「もちろん」

 

二人の準備も完了したみたいだ。少しして、車内アナウンスがかかる。

 

「あと五分でホグワーツに到着します。荷物は別に学校へ届けますので、車内に置いていってください」

 

私達は通路へ出る。人が多いね。ギリギリまで中にいた方が良かったか?

 

何はともあれ、もうすぐ終点、ホグワーツ。さあ、どんな事が待っているんだろう。




質問とかあったら気軽にどうぞ(感想乞食)。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ハグリッドとマクゴナガル教授、組分け帽子

汽車は速度をどんどん落とし、完全に停車した。人波に押されながら外に出ると、小さく、そして暗いプラットホームだった。街灯を付けないのかな?

 

「イッチ年生!イッチ年生はこっち!」

 

ゆらゆらとランプが近づいてくる。ハグリッドだ。

 

「おう、リーナにハリーか。元気か?え?」

 

とりあえず、手を振っておく。ハグリッドは、前にダンブルドアがブラック邸へ連れてきた。ダンブルドアが用事とやらで居ない間にハリーが来て知り合いになった。ハリーが居る間、ダンブルドア帰ってこなかったけど、なんでだろう。

 

「さあ、ついてこいよーーあとイッチ年生はいないかな?足元に気をつけろ。いいか!イッチ年生、ついてこい!」

 

ハグリッドの先導で歩き出す新入生。上級生とは別のルートのようだ。しかし、すべるし、つまずくし、狭いしで面倒な道だよ。真っ暗だし。

 

「みんな、ホグワーツがまもなく見えるぞ。この角を曲がったらだ」

 

『うぉーっ!』

 

一斉に声が上がる。開けた視界の先には大きな黒い湖があった。向こう岸には高い山。そして、山頂には壮大な城が建っていた。大小様々な塔が立ち並ぶ。ビルの様な印象を受けるアズカバンの監獄塔とは違って幻想的だ。

 

「四人ずつボートに乗って!」

 

ハグリッドが指指したのは岸辺に繋がれた小舟。私とハリー、ロン、ハーマイオニーが乗る。ハグリッドは大きさや体重の都合からか一人で乗ってる。

 

「みんな乗ったか?よーし、では、進めえ!」

 

ハグリッドの号令で動き出す船団。しかし、喫水線がボートの縁に近い。雨が降ったり強い風が吹いた時は大変そうだ。

 

岸が近づいてくる。改めて、城の大きさがわかるよ。

 

「頭、下げぇー!」

 

先頭の船が崖下に到着すると同時にハグリッドが号令をかける。よく見ると、蔦がカーテンみたいになっていて、その奥にトンネルがある。城の真下に続いているようだ。

 

全部の船がトンネルに入り、地下の船着き場へ到着した。全員が船を降り、ハグリッドがボートに置き忘れが無いか調べる。……あ、何か見つけた。

 

「ホイ、おまえさん!これ、おまえのヒキガエルかい?」

 

「トレバー!」

 

ネビルのヒキガエルか。

 

私達はハグリッドのランプのあとに続く。いつの間にか地上に出ていて、岩の道を登っていた。湿った草むらを歩く事数分。城影に辿り着いた。石段を登ると、巨大な樫の木の扉があった。

 

「みんな、いるか?おまえさん、ちゃんとヒキガエル持っとるな?」

 

……誰か迷った新入生が居たことあるんだ。

 

そう考えていると、ハグリッドが握りこぶしで、城の扉を三回たたいた。

 

扉がパッと開く。そこに立つのは背の高い、黒髪の魔女。厳格そうだ。

 

「マクゴナガル教授、イッチ年生のみなさんです」

 

「ご苦労様、ハグリッド。ここからは私が預かりましょう」

 

マクゴナガルと言うらしい先生に続いて、城の中へと入る。広い。

 

「ホグワーツ入学おめでとう。新入生の歓迎会がまもなく始まりますが、大広間の席に着く前に、みなさんが入る寮を決めなくてはなりません」

 

……ああ、寮ごとに座る場所が決まってるからか。じゃないと、グリフィンドールとスリザリンが喧嘩しそうだし。

 

「ホグワーツにいる間、寮生がみなさんの家族のようなものですから、寮の組分けはとても大事な儀式です。教室でも寮生と一緒に勉強し、寝るのも寮、自由時間は寮の談話室で過ごすことになります。

 

寮は四つ。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリン。それぞれに輝かしい歴史があり、偉大な魔女や魔法使いが卒業しました。ホグワーツにいる間、みなさんのよい行いは、自分の属する寮の得点になりますし、規則に違反したときは寮の減点となります。学年末には、最高得点の寮へと、大変名誉ある寮杯が与えられます。どの寮に入るとしても、みなさん一人一人が寮にとって誇りとなるよう望みます。

 

さて、まもなく全校生徒の前で組分けの儀式が始まります。待っている間、できるだけ身なりを整えておきなさい」

 

マクゴナガル先生が去ると、みんな、組分けの方法について話し始めた。試験だとか、とても痛いとか、実は既にダンブルドアが決めているとか。

 

ぼーっとしていると、後ろの方から悲鳴が聞こえた。見ると、ゴーストが二十人ほど現れただけのようだ。悲鳴には見向きもせず、議論しながら通り過ぎていく。

 

「もう許して、忘れなされ。彼にもう一度だけチャンスを与えましょうぞ」

 

「修道士さん、ピーブズには充分過ぎるくらいのチャンスをやったではないですか。我々の面汚しですよ。ーーおや、君たち、ここで何をしているのですかな?」

 

太っている修道士とひだえりの上着を着たゴーストが私達に気づいた。

 

「新入生じゃな。これから組分けされるところじゃろう」

 

何人か頷く。

 

「ハッフルパフで会えるとよいな。わしはそこの卒業生じゃからのう」

 

修道士はハッフルパフに居たゴーストらしい。と言うかホグワーツの生徒だったのか。

 

マクゴナガル先生が戻ってきた。

 

「さあ行きますよ。組分けの儀式がまもなく始まります」

 

ゴーストは全員前方の壁を通り抜けている。

 

「さあ、一列になって。私についてきてください」

 

ホールの二重扉を通り、大広間へ入る私達。

 

何千ものろうそくが空中に浮かび、四つある長テーブルを照らす。その上、天井があるはずの場所には星空が輝く。ホグワーツが作られた頃からある魔法らしい。何この城凄い。

 

一番前の長テーブルには先生方が座っている。その前には、四本足のスツールと、その上に置かれるとんがり帽子。つぎはぎのボロボロだが。さて、何をするのかな?帽子は動き出す。つばのへりの破れ目が口のように開き、歌い出す。

 

「私は綺麗じゃないけれど

人は見かけによらぬもの

私をしのぐ賢い帽子

あるなら私は身を引こう

山高帽は真っ黒で

シルクハットはすらりと高い

私は彼らの上をいく

ホグワーツ校の組分け帽子

君の頭に隠れたものを

組分け帽子はお見通し

かぶれば君に教えよう

君が行くべき寮の名を

 

グリフィンドールに行くならば

勇気ある者が(すま)う寮

勇猛果敢な騎士道で

ほかとはちがうグリフィンドール

 

ハッフルパフに行くならば

君は正しく忠実で

忍耐強く真実で

苦労を苦労と思わない

 

古き賢きレイブンクロー

君に意欲があるならば

機知と学びの友人を

ここで必ず得るだろう

 

スリザリンではもしかして

君はまことの友を得る

どんな手段を使っても

目的遂げる狡猾さ

 

かぶってごらん!恐れずに!

おろおろせずに、お任せを!

君を私の手にゆだね(私に手なんかないけれど)

だって私は考える帽子!」

 

帽子が歌い終わると、広間に居た全員が拍手した。毎年歌っているようだ。新入生からはホッとした雰囲気が伝わってくる。

 

しかし、私はどの寮に入るんだろうね?客観的に見ると、私はどの寮の素質もある。……レイブンクローは無いな。ハリーは多分グリフィンドールに行くだろう。なら、私はそれについて行くだけだ。絶対に、グリフィンドールに入ってやろう!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

組分けと歓迎会

決意を固めたところで、マクゴナガル先生が長い羊皮紙の巻き紙を持ってきた。

 

「ABC順に名前を呼ばれたら、帽子をかぶって椅子に座り、組分けを受けてください」

 

ファミリーネームで呼ばれるとしたら……私はDでハリーはP……だいぶ差があるね。ファーストネームもか。

 

「アボット、ハンナ!」

 

ファミリーネームか。帽子って案外大きいね。目元まで隠れるとは。

 

「ハッフルパフ!」

 

一瞬の沈黙の後、帽子が叫ぶ。一番右のテーブルで歓声が上がってるから、あそこがハッフルパフのテーブルか。

 

「ボーンズ、スーザン!」

「ハッフルパフ!」

「ブート、テリー!」

「レイブンクロー!」

 

左から二番目のテーブル。あとはグリフィンドールとスリザリンだね。

 

「ブロックルハースト、マンディ!」

 

苗字長っ!

 

「レイブンクロー!」

「ブラウン、ラベンダー!」

「グリフィンドール!」

 

おお、初のグリフィンドール。一番左のテーブルだ。てことは、右から二番目がスリザリン、と。

 

「ブルストロード、ミリセント!」

「スリザリン!」

 

 

 

 

「ディートリッヒ、クロス!」

「レイブンクロー!」

 

いつの間にかDまで呼ばれてる。次が私かな?

 

「ディメント、リーナ!」

 

騒がしかった広間が静まり返る。

 

「なあ、ディメントってあの……?」

 

「まじかよ、『生き残った男の子』も今年入るんだろ?」

 

「今年の一年どうなってんだ……」

 

色々言われてるね。ま、私には関係ない。ただ、グリフィンドールに入れてもらえるように組分け帽子とO☆HA☆NA☆SHIするだけだ。

 

帽子をかぶる。うん、やっぱり目元まで隠れるね。真っ暗だ。

 

「ふむ、ディメント家の子か。勇気もあるし、知識欲もそれなりにあるようだ。それに、友を闇に落とさぬためならその友を殺すことをも躊躇わず、相手を追い詰めるための狡猾さも持つ。何より、ディメント家故か、正義感もある。はてさて、どうしたものか。このままならスリザリンかハッフルパフだが……」

 

「帽子、少し聞いてくれる?私はハリーを気に入っていてね。多分、ハリーはグリフィンドールに入る事になる。私は、ハリーの行く末を見てみたい。だから、グリフィンドールに入れてくれる?」

 

「スリザリンに入れば偉大になれると言っても?」

 

「O☆HA☆NA☆SHIするかい?」

 

「グリフィンドールッッ!!」

 

勝った。

 

帽子を下ろしてグリフィンドールの席へ向かう。途中でハリーに手を振っておく。

 

「ディメントを取った!これでスリザリンからのちょっかいが減る!」

 

私は席に着いて、残りの組分けを眺める。しかし、人によってだいぶ所要時間が違うね。すぐに決まる子もいれば、一分以上かかる子もいる。

 

「グレンジャー、ハーマイオニー!」

 

お、あの子か。

 

「グリフィンドール!」

 

へぇ、彼女の性格だとレイブンクローに行きそうだったけど。おいロン。ウワァって顔するなよ。

 

「ロングボトム、ネビル!」

 

ヒキガエルの子だ。……あれ?もう二分ぐらい経ってるけど……。

 

「グリフィンドール!」

 

決まった。どの寮に入れるか悩む子って大変だね。逆に、

 

「マルf「スリザリン!」」

 

名前言い切る前に寮決まっちゃう子いるし。てか、苗字すら言い切ってない。マルフォイ乙。まあ、マルフォイ自身は満足してるみたいだね。マクゴナガル先生や、ダンブルドアですらポカーンとしてるけど。

 

さて、もう少し進んで、Pの段。ハリーの番だ。

 

「ポッター、ハリー!」

 

広間が静まり返る(三回目。二回目はマルフォイの時)。

 

「ポッターってあの?」

 

「本当に入るのか」

 

「今年の一年ヤバイな」

 

「ああ、マル何とかもな」

 

マルフォイェ……。

 

ハリーは帽子をかぶった。口元が動いてるね。何を言ってるのかな?読唇術(ウィル爺の趣味で習わされた)で覗く。

 

「グリフィンドールに入れろグリフィンドールに入れろグリフィンドールに入れろグリフィンドールグリフィンドールグリフィンドール」

 

「グリフィンドールッッ!!」

 

ハリー!?怖いよ!

 

「やったぞ!ポッターを取った!」

 

「ディメントに続いてポッターも取った!これで優勝杯がだいぶ近づいた!」

 

うるさっ!監督生(パーシー)も双子も浮かれ過ぎだよ!

 

「やったよリーナ!一緒の寮だ!」

 

「そうだねハリー。ついでにさ?組分けに何て言ってたの?」

 

「え?グリフィンドールに入れろって」

 

見間違いじゃなかったのか。

 

ロンはすぐにグリフィンドールに決まった。血筋も関係してるのかね。最後に残っていた「ザビニ、ブレーズ」はスリザリンに決まり、帽子と羊皮紙は片付けられた。

 

目の前には空っぽの金の皿。どんな料理が出てくるのかな?ワクワク。

 

ダンブルドアが立ち上がる。チッ、早く料理だせよ。

 

「おめでとう!ホグワーツの新入生、おめでとう!歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい。では、いきますぞ。そーれ!わっしょい!こらしょい!どっこらしょい!以上!」

 

「何がしたかったんだあの狸ジジイ」

 

周りの上級生からギョッとした顔で見られた。謎だ。いつの間にかテーブルの上の大皿にあった料理を食べて気を紛らわそう。

 

……?なぜ豆腐とハッカキャンディが?




クロス・ディートリッヒはオリキャラ(男)です。登場予定無し。

マルフォイは、原作では頭に触れるか触れないかのところで決まってましたが、名前を言い切る前に決まってしまいました。灰色のレディ曰く、「ホグワーツの歴史の中でも滅多に、いや、一切なかったことです」との事。

豆腐については、厨房に、昔日本人に仕えていて、豆の加工食品に興味を持ったしもべ妖精がいるということで一つ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

グリフィンドール寮と気がつかない想い

はぁ……満足。豆腐美味しかった。醤油がイギリスにあるとはね。最初は気づかなかったけど刺身もあるし、ホグワーツの料理は期待できそうだ。

 

空っぽになった皿にはデザートが並んだ。エクレアやらドーナツやら饅頭やら。モグモグモグモグ。……あ、杏仁豆腐だー♪イチゴパフェだー♪チョコケーキだー♪。ホグワーツは楽園だね。

 

……ん?あのターバンって漏れ鍋に居た、お辞儀(笑)だよね。全然お辞儀さんと姿違うけど。……ああ。取り付くか何かしてるのかな?魔法とカリスマに関しては一流みたいだね、あのお辞儀厨。

 

「ツインズ、あのターバンの先生は?」

 

「あの人はクィレル先生だよ。去年黒い森とかに行って吸血鬼に会ったらしいぜ」

 

「あと、鬼婆にいやーな目にあわされたとかな」

 

つまり、一年間誰も彼の詳しい行方を知らなかったと。

 

 

 

 

満足二回目♪美味しかった。厨房で作られてるんだろうけど、誰か厨房の場所知らないかな?

 

「エヘンーー全員よく食べ、よく飲んだことじゃろうから、また二言、三言。新学期を迎えるにあたり、いくつかお知らせがある。一年生に注意しておくが、構内にある禁じられた森には立ち入らぬよう。上級生も、何人かの生徒たちには、同じことを特に注意しておきますぞ。いいかね?ウィーズリーツインズ」

 

名指ししちゃったよ。

 

「管理人のフィルチさんから、授業の合間に廊下で魔法を使わぬようにという注意がありました。今学期は、二週目にクィディッチ選手の選抜があるので、寮のチームに参加したい人はマダム・フーチに連絡するよう。原則、一年生は参加できませんがな。最後にじゃが、とても痛い死に方をしたくない者は、今年いっぱい四階の右側の廊下には入らぬことじゃ」

 

いや、危険な場所を学校に作るなよ。しかし、今年いっぱい?今年だけ特別?……あ、クィレルか。彼、闇の魔術に対する防衛術の教師だし、あの科目って、一年で辞めてしまうってジンクスがあるらしいし。

 

「では、寝る前に校歌を歌いましょうぞ!」

 

……?他の先生の笑顔がこわばってる?

 

 

(ああ、せめてリズムを統一してくれ)

 

(音程は別にいい。問題はバラバラなリズムと歌詞だ)

 

(我輩の耳栓は何処だ?)

 

(貸しますよ、スネイプ教授)

 

(感謝する、スプラウト先生)

 

(いえ、私もあの歌詞はちょっと、ね)

 

(アルバス、その歌詞をどうにかしてください)

 

 

……ダンブルドア、後ろ後ろ。

 

「みんな自分の好きなメロディーで。では、さん、し、はい!」

 

せめてメロディーは統一しろよ!一番バラバラにしちゃいけないとこだよ!

 

『ホグワーツ ホグワーツ

ホグホグ ワツワツ ホグワーツ

教えて どうぞ 僕たちに

老いても ハゲても 青二才でも

頭にゃなんとか詰め込める

おもしろいものを詰め込める

今はからっぽ 空気詰め

死んだハエやら ガラクタ詰め

教えて 価値のあるものを

教えて 忘れてしまったものを

ベストをつくせば あとはお任せ

学べよ脳みそ 腐るまで』

 

おい歌詞。色々ディスってんな。

 

一番最後に歌い終えたのは葬送行進曲のリズムで歌っていた双子だった。やっぱりか。ダンブルドアも彼らに合わせて指揮してるし。仲良いよね双子とダンブルドア。

 

「ああ、音楽とは何にもまさる魔法じゃ!」

 

ええ。それには同意はします。歌詞さえ普通なら。

 

「さあ、諸君、就寝時間。かけ足!」

 

各テーブルから二人の生徒が立ち上がり、他の生徒を誘導する。

 

グリフィンドール寮への道筋は、広間を出た後に大理石の階段を上がるとこから始まった。様々な階段を通り、引き戸やら、なぜかタペストリーの裏にある隠しドアを通り、更に階段を上る。途中、浮かんだステッキが飛びかかってきた。

 

「やめろ、ピーブズ」

 

いまだ浮かび飛びかかるステッキ。

 

「ピーブズ、血みどろ男爵を呼ぶぞ」

 

「おお、それはこわいこわい。はーっはっはっ」

 

いきなりネビルの上に現れステッキを全て落としていく小男。これがピーブズか。

 

「ピーブズ、やるんならスリザリンのマルフォイにやってきなよ」

 

「いやいや。スリザリンに直接手を出したら、血みどろ男爵閣下に叱られてしまう。だから、バレないようにこっそり仕掛けてくる!」

 

「「さすがピーブズ!そこにシビれる憧れる!」」

 

なぜ双子がそのネタを知っているのかはほっといて、ピーブズはどこかへ消えた。スリザリン生の元だろう。

 

「まったく。ピーブズもフレッドとジョージも」

 

再び歩き出す。が、すぐに立ち止まる。そこには、太った婦人(レディ)とでも言うべき肖像画があった。

 

「彼女は『太った婦人(レディ)』。グリフィンドール寮の門番さ」

 

「合言葉は?」

 

「〈カプート ドラコニス〉」

 

肖像画が扉のように開く。ほんと、この城どうなってるの。

 

肖像画の奥には穴が開いていた。少し高い位置に。

 

穴の先はグリフィンドールの談話室。広い円形の部屋だ。男子と女子の部屋への道は別々で、男子は女子の部屋には入れないらしい。昔、窓をぶち破って侵入したバカがいて、窓も強化されているとのこと。ちなみにこの話をしてくれたのはお父さんだった。十中八九、やったのはジェームズだ。そうに違いない。リリーに突撃したのか。

 

一部のバカーーツインズが女子寮に真正面から入ろうとして、少し上がったところで滑り落ちてきた。何やってんの。

 

女子寮は基本、四人から五人が一部屋となっている、らしい。らしいと言うのは、手違いだかなんだかで、私が一人部屋になってしまっていたからだ。……さ、寂しくなんかないもんっ!私にはハリーやヴェルがいるし!……ハリー、女子寮に連れてこれないかなぁ。

 

(ご主人様、その気持ちって、まさか……)

 

「ん?なんのこと?ヴェル」

 

(いや、自分の恋心ぐらい気付きましょうや)

 

「恋?誰が?誰に?」

 

(ご主人様が、ハリーに)

 

「まっさかー。私はハリーが好きだけど、それは幼馴染み的な好きであって、異性としての好きとは違うよ」

 

(ハリー、前途は長そうだぜ)

 

「ヴェルー。早くベッドにおいでー」

 

(りょーかい、ご主人様)




まさかのリーナ→ハリーフラグ。しかし、リーナが若干暴走してる。これがキャラが勝手に動き出すと言う現象か……!

現在折られている原作フラグ
ニンバス2000
グリム騒動
ファイアボルト
吸魂鬼が闇陣営に(一部は闇につくかも)
最初の授業でのスネイプのハリーへの弄り(ハリー回答可能)
……まだありそうですが、思い浮かぶのはこのくらいですね。

ではまた次回。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

授業

一晩経ち、授業が始まった。しかし、ハリーや私への視線が多いね。

 

「……何か寒気がする」

 

「えーと、ディメントが何か恐い。怖いじゃなくて恐い」

 

……あれ?人が消えてる。どうしたんだろう。まあ、私のハリーへの視線が無くなったのは僥倖だ。

 

 

……階段とピーブズがうざい。それにフィルチも。ま、ピーブズはある程度誘導できるし、階段は覚えればいい。フィルチも、ピーブズを上手く使えば回避できる。おかげで遅刻は無い。

 

 

『天文学』は星が綺麗だし、『薬草学』は色々な面白い植物を見れる。『魔法史』は物語として覚えられるし、『妖精の呪文』も役に立つ。

 

「『変身術』はホグワーツで学ぶ魔法の中で最も複雑で危険なものの一つです。いいかげんな態度で私の授業を受ける生徒は出ていってもらいますし、二度とクラスには入れません。初めから警告しておきます」

 

教壇で言うのはマクゴナガル先生。先生は机を豚に変え、また元に戻した。みんなうずうずしてるね。難解で複雑な理論をノートに取り、先生が配るマッチ棒を受け取る。針に変えろと。

 

「先生」

 

「なんでしょう、ミス・ディメント」

 

「変身術を使えば空想上の生き物に変身させることも可能ですか?」

 

「理論上は可能ですが、大変危険です。もしその生物が術者を襲ったら?そもそも、そこまでの技量を持つ魔法使いは滅多にいません。もしもこの世には存在しない生物へと変身させ、それを完璧に制御できるなら、マーリン一等勲章は確実でしょう」

 

「ありがとうございます」

 

「よい質問でした。グリフィンドールに一点。さあ、そろそろ授業が終わります。マッチ棒を針に変えられた者は?」

 

結果は、私とハーマイオニーだけだった。ハリーはだいぶ惜しかったけどね。少し太い。

 

『闇の魔術に対する防衛術』は拍子抜けだった。ニンニクの匂いやら先生はおどおどしてるやら先生への質問に答えずに話をそらすやら。……ヴォルデモート、人選間違えたんじゃ?

 

『魔法薬学』はスリザリンと合同だ。場所は地下牢。なんでこんな所もあるんだ?スネイプはドアを蹴破って入ってくると出席を取った。ハリーで少し止まり、

 

「ハリー・ポッター。われらが新しい、スターだね」

 

とか言ってのけた。心の中では、「ハリーを辱めてやろう」と思ってる。先生、私達ディメント家が色々教えまくったハリーを知識で負かせる事ができるとでも?

 

「このクラスでは、魔法薬調剤の微妙な科学と、厳密な芸術を学ぶ。杖を振り回すようなバカげたことはやらん。そこで、これでも魔法かと思う諸君が多いかもしれん。ふつふつと沸く大釜、ゆらゆらと立ち昇る湯気、人の血管の中をはいめぐる液体の繊細な力、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力……諸君がこの見事さを真に理解するとは期待しておらん。我輩が教えるのは、名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえふたをする方法であるーーただし、我輩がこれまでに教えてきたウスノロたちよりも諸君がまだましであれば、の話だが」

 

大演説乙。ハーマイオニーがすっごく目をキラキラさせてるよ。

 

「ポッター!アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか?」

 

簡単じゃん。

 

「刻んだカノコソウの根や催眠豆の汁なども加えて、『生ける屍の水薬』と言われる、強力な眠り薬となります」

 

「ベゾアール石を見つけてこいと言われたら、どこを探すかね?」

 

「山羊の胃の中を。様々な毒に対する解毒剤になります」

 

「モンクスフードとウルフスベーンの違いは?」

 

「どちらもトリカブトのことで、別名をアコナイト。つまり違いは呼び方だけです」

 

「ふん。ちゃんと教科書を読んできたようだな。特別に、()()()、一点やろう。さて?諸君、我輩の質問とポッターの回答をなぜノートに取らない?」

 

スネイプとハリーの掛け合いに呆然としていた全員が一斉にノートを取り始める。ニヤニヤしていたマルフォイの口が開きっぱなしになったのは傑作だよ。

 

その後、二人一組でおできを治す薬の調合をすることになった。私はハリーと、ロンはネビルと組むことになった。

 

「ネビル、山嵐の針は大鍋を火から降ろした後だよ」

 

「あっ。ありがとう、ロン」

 

「どういたしまして」

 

「もっと早く、自分の力で気づけロングボトム。グリフィンドールから一点減点」

 

私とハリーはほぼ完璧に調合完了。出来て当たり前なのか、点数は入らなかった。プラマイゼロ。

 

「あ、そう言えば」

 

「ん?どうしたの?ハリー」

 

「この後ハグリッドに呼ばれてるんだ。一緒に行く?」

 

「もちろん。行かせてもらうよ」




後々、今回の変身術の授業がシリアス内でネタ要素として登場したりします。リーナはオタクがほんの少し混じってるので、ゲームモンスターを召喚してみたいのでしょう。某モンスターを狩るゲームの先生とか。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ハグリッドの小屋と飛行訓練

私とハリー、ロンは校庭を横切り、禁じられた森の横にある木の小屋ーーハグリッドの家に向かった。中からは戸を引っ掻く音と吠え声が聞こえてきた。

 

「退がれ、ファング、退がれ」

 

ハグリッドが飼ってる動物らしい。あ、ハグリッドが出てきた。

 

「待て、待て、退がれ、ファング」

 

大きな黒いボアハウンド犬の首輪を押さえながら。

 

 

(わ、悪い人じゃないよね?ガクガクブルブル)

 

 

怖がってるだけか。臆病なのかな。

 

中は一部屋だけでごちゃごちゃしていた。ハグリッドがファングを離すと、ファングは一直線にロンへ向かい、舐め始めた。

 

「うわっ。何するんだよ!」

 

(怖い人じゃないんだー!やったー!)

 

かわいい。

 

「ファングー。おいでー」

 

(わーい!)

 

「あははっ。くすぐったいよ。仕返しだー♪」

 

ムギュウ

 

「あー、モフモフー、気持ちいいー」

 

私がファングと戯れている間に色々話していたみたいだ。ロンのことやらミセス・ノリスやらスネイプやら。……ん?『日刊予言者新聞』?七月三十一日にグリンゴッツに侵入者?ああ、そんな馬鹿がいたらしいね。しかし、三十一日か。私やハリーがグリンゴッツに行った日。あのヴォっさんも漏れ鍋にいた。……怪しい。

 

「リーナ?帰るよー」

 

「わかった。名残惜しいけど、またね。ファング」

 

「キューン(また来てねー)」

 

さて、この後は夕食だ。今夜は何が出るんだろう。ーー激辛麻婆だった。口の中が痛い。

 

 

 

 

ーー飛行訓練は木曜日に始まります。グリフィンドールとスリザリンとの合同授業ですーー

 

飛行訓練かー。いつも使ってる箒とは違う箒だしなぁ。ハリーなら平気だろうけど。マルフォイは自慢話をしてくるけど、マグルの乗ったヘリコプターが魔法使いの家に近づけるかっての。

 

朝食の時、ネビルに荷物が届いた。『思い出し玉』だ。けど、忘れてることを教えられても、何を忘れてるのか思い出せなければ意味はないと思う。……あ、マルフォイが思い出し玉をひったくった。って、マクゴナガル先生登場。早いな。マルフォイは玉を戻したけど、こりゃ、また何かあるな。

 

 

校庭でスリザリン生と箒の横で待つ。

 

「なにをぼやぼやしてるんですか。みんな箒のそばに立って。ミス・ディメントはもう立ってますよ。さあ、早く」

 

マダム・フーチが言う。箒を確認すると、だいぶ昔のものだとわかった。

 

「右手を箒の上に突き出して。そして、『上がれ!』と言う」

 

『上がれ!』

 

みんな叫ぶ。私とハリーは一発成功。まあ、ホグワーツに来る前にアズカバン島で飛んでたしね。ハーマイオニーは転がるだけ、ネビルのは何も起こらなかった。気持ちが大事なのだよ、ネビル。

 

マダム・フーチは生徒の箒の握り方を直していく。私とハリー、ロン、ハーマイオニーは及第点らしい。マルフォイ?注意されてたよ。

 

「さあ、私が笛を吹いたら、地面を強くけってください。箒はぐらつかないように押さえ、二メートルぐらい浮上して、それから少し前かがみになってすぐに降りてきてください。笛を吹いたらですよーー一、二のーー」

 

あっ、ネビルが緊張したのかフライングした。

 

「こら、戻ってきなさい!」

 

どんどん離れていって……落ちた。多分骨が折れた。箒は禁じられた森の方へ飛んでいく。買い直せよ、ホグワーツ。

 

「手首が折れてるわ」

 

あ、やっぱり。

 

「さあさあ、ネビル、大丈夫。立って。ーー私がこの子を医務室に連れていきますから、その間、誰も動いてはいけません。箒もそのままにして置くように。さもないと、クィディッチの『ク』を言う前にホグワーツから出ていってもらいますよ。さあ、ネビル、行きましょう」

 

ネビルを支えながら校舎へ消えるマダム・フーチ。

 

「あいつの顔を見たか?あの大まぬけの。見ろよ!ロングボトムのばあさんが送ってきたバカ玉だ」

 

ネビル、落としてたのか。てか、ここまで持ってきてたのかよ。

 

「マルフォイ、こっちへ渡してもらおう」

 

ハリーが言う。冷たい声だね。怒ってる。

 

「それじゃ、ロングボトムがあとで取りにこられる所に置いておくよ。そうだな、木の上なんてどうだい?」

 

「こっちに渡せ!」

 

声を荒げるハリー。マルフォイは箒に乗り飛び上がった。案外上手だね。

 

「ここまで取りにこいよ、ポッター」

 

ハリーは箒を掴む。

 

「ダメ!フーチ先生がおっしゃったでしょう、動いちゃいけないって。私たちみんなが迷惑するのよ」

 

「いや、大丈夫でしょ。先にマルフォイが焚きつけたって言えば。それに、ハリーなら心配しないで平気だね」

 

ハリーはそのまま空へ飛び上がった。何人かキャーキャー言ってるけど、ハリーは渡さないよ?

 

「こっちへ渡せよ。でないと箒から突き落としてやる」

 

「へえ、そうかい?」

 

ハリーがマルフォイに突進する。マルフォイはギリギリで避けた。やっぱり本来のポテンシャルが発揮できてないね、ハリー。……ん?

 

「クラッブもゴイルもここまでは助けにこないぞ。ピンチだな、マルフォイ」

 

「そいつはどうかな?クラッブ!」

 

やっぱりね。

 

「行かせないよ」

 

誰にも気付かれないように飛んだ私がクラッブの行く手を阻む。クラッブは横を抜けようとするがその度に私に阻まれる。

 

「ちっ。取れるものなら取るがいい、ほら!」

 

マルフォイはガラス玉を放り投げ、稲妻のように地面に戻った。同時に戻ったクラッブ共々、ハリーが地面に衝突するのを今か今かと待ちわびている。甘いよ。

 

地面から一メートルぐらいの高さで難なくガラス玉をキャッチしたハリーは悠々と地面に降り立った。

 

「ハリー・ポッター、それにリーナ・ディメント……!」

 

マクゴナガル先生が走ってきた。見られてたみたいだ。

 

「まさかーーこんなことはホグワーツで一度も……」

 

?どうしたんだろう。

 

「ミスター・ポッター。首の骨を折るかもという懸念はなかったのですか?」

 

「大丈夫だと確信してました」

 

「ミス・ディメント。彼にタックルされたら箒から落ちていたかもしれないのですよ?」

 

「避けてまた妨害するだけですよ」

 

「はぁ……。ついてきなさい、二人とも。私が考える、あなたたちにふさわしい処罰を与えます」

 

マルフォイが勝ち誇った顔をしているが問題はない。なぜならーー

 

 

(ああ、こんなに才能あふれる者がグリフィンドールに!良いシーカーとチェイサーを見つけました。これで、今年の寮対抗杯を取れるかもしれません……!)

 

 

マクゴナガル先生の心の中がこんなんだからだ。

 

校舎の中に入り、『妖精の呪文』教室の前にたどり着く。

 

「フリットウィック先生、申し訳ありませんが、ちょっとウッドをお借りできませんか」

 

ハリーがガクブルしてるけど、そんなこと関係なしに、ウッドと呼ばれる五年生は出てきた。

 

「三人とも私についていらっしゃい」

 

廊下をどんどん歩き出す。次にたどり着いたのは人気のない教室。中にばピーブズがいたけどマクゴナガル先生が追っ払った。

 

「ポッター、ディメント、こちら、オリバー・ウッドです。ウッド、シーカーとチェイサーを見つけましたよ」

 

ウッドの表情が一瞬、驚きに変わり、そして満面の笑みに変わった。

 

「本当ですか?」

 

「まちがいありません。この子は生まれつきそうなんです。あんなものを私は初めて見ました。箒に乗ったのは?」

 

「初めてではないですけど、いつも使ってるのとは違うので飛びづらかったです」

 

ハリーが答える。補足しておこう。

 

「ハリーが初めて飛んだ箒、今でもハリーが使ってるやつなんですけど、使い手を選ぶようなやつなんです。それを初見で乗りこなしてました」

 

先生は驚いたような顔をしている。

 

「この子は、今手に持っている玉を十五メートル上空からダイビングしてつかみました。それも、地面から一メートルも上で。チャーリー・ウィーズリーだってそんなことはできませんでしたよ」

 

「彼女は?」

 

「ディメントは自分の何倍もあろうかという体格の者を足止めしていました。どんなにその子が抜こうとしても無理でしたよ」

 

ウッドの顔はこれ以上の幸せは無いと言っても過言ではない表情だった。

 

「ポッター、ディメント、クィディッチの試合を見たことがあるかい?」

 

「いいえ」

 

「ほんの少し」

 

ハリー、私の順に答える。しかし、クィディッチか。……まあ、ハリーと一緒ならいいや。

 

「体格もシーカーにぴったりだ。チェイサーは体格はほとんど関係しないしね」

 

ハリーと私を観察するウッド。グリフィンドール・チームのキャプテンらしいが、風の噂で重度のクィディッチ馬鹿と聞いている。

 

「身軽だし……すばしこいし……ふさわしい箒を持たせないといけませんね、先生ーーニンバス2000とか、クイーンスイープの7番なんかがいいですかね」

 

「あ、ハリーと私は自分の箒があるので、あとで届けてもらいます」

 

「へぇ!どこのメーカーだい?」

 

「私の知り合いが作ったオリジナル品。でも、性能は保証する」

 

「私からダンブルドア先生に話してみます。一年生の規則を曲げれるかどうか。是が非でも去年より強いチームにしなければ。あの最終試合でスリザリンにペシャンコにされて、私はそれから何週間もセブルス・スネイプの顔をまともに見れませんでしたよ……」

 

どこか哀愁が漂うマクゴナガル先生。よっぽど辛かったんだね……。

 

「ポッター、ディメント、あなた方が厳しい練習を積んでいるという報告を聞きたいものです。今回の処罰は、二人ともグリフィンドールのクィディッチ・チームに入ること。いいですね?」

 

それから、先生はハリーに笑いかけた。

 

「あなたのお父さまがどんなにお喜びになったことか。お父さまもすばらしい選手でした」




リーナをクィディッチチームに入れるつもりは最初はなかった。いつのまにかこうなっていた。一体何があったんだ……!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

決闘と三頭犬

「まさか」

 

夕食時、私とハリーは、ロンにあの後どうなったかを伝えていた。

 

「シーカーにチェイサーだって?だけど一年生は絶対ダメだと……なら、君たちは最年少の寮代表選手だよ。ここ何年来かな……」

 

「……百年ぶりだって。ウッドがそう言ってたよ」

 

パイをかき込むように食べるハリー。私もいつもより多く食べている。お腹がぺこぺこなのだ。

 

食べていると、ツインズかやってきた。

 

「すごいな。ウッドから聞いたよ。俺たちも選手なんだ。ビーターさ」

 

「今年のクィディッチ・カップはいただきだぜ。チャーリーがいなくなってから、一度も取ってないんだよ。だけど今年は抜群のチームになりそうだ。君らはよっぽどすごいんだな。ウッドが小躍りを通り越してブレイクダンスしようとしてたぜ」

 

そんなことを言って、双子は去っていった。リーが学校からの抜け道を見つけたらしい。双子はそれよりも前に見つけてたらしいが。

 

双子が消えて少しして、マルフォイと愉快な仲間たちが現れた。

 

「ポッターにディメント、最後の食事かい?マグルのところに帰る汽車にはいつ乗るんだい?」

 

「ハリー、関わらなくて平気だよ。前には先生達がいる。手出ししたらこいつらの方がおしまいだ」

 

「なら、先生のいない場所でやろう。今夜、魔法使いの決闘をしようじゃないか。僕の介添人はクラッブだ。場所はトロフィー室。そっちはどうする?」

 

「ハリー、受ける必要はないけど?」

 

「はっ。ディメントは僕のことが怖いらしいな。ポッター共々、腰抜けか?」

 

「事情が変わった。ハリー、介添人を頼む。こいつは私が叩き潰す」

 

「ほどほどにね、リーナ」

 

マルフォイ達は去り、ロンが慌て始めた。

 

「決闘って、大丈夫かい?」

 

心配してるのかな?

 

「私があいつ程度に倒されるとでも?」

 

「いや、マルフォイが死なないかどうか」

 

「保証はできない」

 

ロンの今の顔を表すなら、「どんな反応をすればいいのかわからないの」だろう。

 

「ちょっと失礼」

 

ハーマイオニーが乱入してきた。文句でも言いに来たのか?

 

「どんな理由でも、夜、校内をうろうろするのは絶対ダメ。もし捕まったらグリフィンドール寮が何点減点されるか考えてよ。絶対に捕まるに決まってる。なんて自分勝手なの?」

 

「私の参戦理由はハリーを侮辱されたからだけど?」

 

「同じでしょ。とにかく!絶対に出歩いちゃダメだからね!」

 

 

十一時半ごろ、私は談話室でハーマイオニーと向き合っていた。

 

「あなたがこんなことをするとは思わなかったわ。あの、秩序を重んじるディメント家が」

 

「ディメント家が秩序を重んじるなんて誰が言ったんだい?全員、ある意味自分勝手な集団だよ」

 

「それでも、ルールには忠実だわ」

 

「こっそり新種の魔法生物作ってるやついるけど?」

 

「許可があれば平気でしょう」

 

「ディメントはアズカバンの監獄に出入りする権利を持ってるけど、無罪だって信じるやつをこっそり逃がしたりしてる。これは許可なんてものないと思うけど?」

 

「それはそれ、これはこれよ」

 

「言い訳かい?」

 

睨み合う私たち。互いに口を開こうとした時、決着はついた。

 

「「二人とも、そこまで」」

 

私とハーマイオニーの頭にチョップする人物。ハリーとロンだ。喧嘩は両成敗されました。

 

「やあハリー。遅かったね」

 

「君たちの喧嘩にいつ割り込もうかとね。さ、行こう」

 

ハーマイオニーも付いてきて色々言ってたいたが、談話室に戻ろうと振り向いた所で固まった。太った婦人が居なかったのだ。閉め出された形だねぇ。

 

「ハーマイオニー」

 

「……何よ」

 

「諦めろ(最高の笑顔で)」

 

「うわぁぁぁぁんっ!」

 

そのまま、ハーマイオニーも連れて行くことに。合言葉を忘れて入れなかったネビルも引き連れてトロフィー室に向かう。

 

 

トロフィー室で待っていても、一向に来る気配がない。いや、誰か来る。

 

「ようやく来たの?」

 

「……違う。こっちから出るよ。フィルチだ」

 

全員が部屋から出て、静かに寮への道を進んだ。フィルチはどんどん近づいてくる。ネビルが恐怖で暴走しかけたけど、首根っこをひっつかんで止めた。が、ネビルの手が鎧にあたり、大きな音を立てて倒れてしまった。

 

「逃げろ!」

 

ハリーの叫びで回廊を疾走する。隠し通路やらを通り抜け、『妖精の呪文』教室まで逃げて来た。フィルチは追ってきていない。追いつけなかったみたいだ。もう歳なのかな?

 

「やっぱり、はめられたのよ。どうしてくれるの」

 

「チッ。頭に血が上ってたみたいだ。マルフォイごときの計画を見抜けないなんてね」

 

「リーナ?……聞いてないわね、この子」

 

ハーマイオニーが何か言っているが無視。どうマルフォイにこの借りを返すか、この後どうするかを考える。と、ピーブズがやってきた。

 

「やあ、ピーブズ。ちょっと頼みごとをしてもいいかい?」

 

「ん〜内容次第では考えるよ」

 

「今度、マルフォイに大きな悪戯をしてくれ。フレッジョと協力して」

 

「見返りは?」

 

「悪戯できるんだからいいだろ?」

 

「そうだねぇ。ついでに、太った婦人に戻るよう言っておくよ。でも、だ。このくらいはさせてもらおうーー生徒がベッドから抜け出した!『妖精の呪文』教室の廊下にいるぞ!ーーそれじゃ、明日を楽しみに!」

 

「いい悪戯ライフを」

 

ピーブズにそう言い、廊下を全速力で走る。扉にたどり着くが、鍵が掛かっている。

 

「もうダメだ!いっかんの終わりだ!」

 

「平気だよ。〈開け(アロホモラ)〉」

 

鍵開け呪文を使う。全員で中に入り込み、最後に入ったハーマイオニーが鍵を閉めた。

 

ピーブズとフィルチの声が聞こえる。ピーブズは上手く躱しているようだ。……何かいる。振り向くと、三頭犬がこっちを見つめていた。ハリー達は気づいていない。

 

(侵入しに来た?)

 

違うというジェスチャーをしておく。

 

(本当?)

 

本当。

 

(敵じゃないの?)

 

違うって。

 

(ハグリッドの友達?)

 

ファングはモフモフでした。

 

(モフモフしたいの?)

 

していいの!?

 

(いいよー)

 

ひゃっほい。

 

「リーナ、もう平気みたい……って、何コレ?」

 

「三頭犬よ!なんでこんなところに?いえ、それよりもーーなぜリーナは上に乗っているの?」

 

「モフモフするために」

 

唖然とするハーマイオニー。当然だろう。だから、少しネタバレを。

 

「私は動物の言葉がわかるからね。この子に許可をもらった」

 

嘘ではない。全部言ってないだけだ。動物の言葉がわかるのは、心を読む程度の能力の副産物だ。心を読むより、動物の言葉がわかる方が平和的だろう?

 

「動物の言葉がわかるなんて……なんで黙ってたの?」

 

「聞かれなかったから。そう言えば、君の名前は?」

 

(ハグリッドに、フラッフィーってつけてもらった)

 

「フラッフィーか。良い名前だね。また来ても?」

 

(もちろんだよ)

 

「あと、この子たちには手を出さないでね?」

 

(わかった〜)

 

モフモフモフモフモフモフモフモフ

 

「はぁ……満足。ありがと」

 

(どーいたしまして)

 

少し唖然としてるハーマイオニーと、愕然ときてるロンと、気絶しかけてるネビルと、私の行動に慣れているハリーと共に、グリフィンドール寮へ戻った。そう言えば、あそこって四階の右側の廊下だね。フラッフィーは侵入とも言っていた。何かを守ってる?フラッフィーの足元に何かあったようなーー。

 

「ハーマイオニー。ちょっといい?」

 

「何かしら。これ以上私を驚かせるつもり?」

 

「そうじゃなくて。フラッフィーの足元に何かあった?」

 

「仕掛け扉があったけれど?見ていなかったの?」

 

「フラッフィーの上にいたからね。見えなかった」

 

特別警戒金庫から盗み出そうとした何か。もし、取り出したのがダンブルドアで、それが、ヴォルデモートの手に渡るとまずい物だったら?……あそこに何かを隠している。面白くなってきたかな?




フラッフィー懐柔。笛を吹いたりする必要が無くなりました。最終的に、フラッフィーはリーナがもらってくかと。

追加設定
リーナは動物好き。特にモフモフ。あと、ゲテモノ料理も平気。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

練習

主人公は動物と仲良くなれる程度の能力も持ってるなコレ。

UA二万超えました。


次の日。マルフォイに出くわしたので、心を覗いてみた。

 

 

(なんで朝っぱらからピーブズの悪戯に悩まされるんだ?ぼくが何かしたか?ポッターたちを追い出しただけだぞ?そう、今あそこにいる……って、ええ!?なんで退学になってないの?……もうやだ)

 

 

心折れかけてない?

 

フラッフィーが守ってる物についてはなんの情報もなし。ダンブルドアのことだから、フラッフィー以外にも仕掛けがあるだろうし、多分、ヴォルデモートじゃ取れないようになってるはず。まあ、ハリーがやる気になってるみたいだし、私もクィレルとヴォルデモートを現行犯で捕まえたいから首を突っ込むけどね。

 

一週間後。朝食の時に、六羽のオオコノハズクが二組、細長い包みを持ってきた。私とハリーの前に落とされたそれは、一目で私たちの箒だとわかった。それに、もう一つ、私とハリーの間に封筒が落ちてきた。

 

『包みをここで開けないように

 

中身はあなた方の箒です。まったく、彼ーーパッドフットが自分で持っていくと言って聞きませんでしたよ。説得が大変でした。

 

あなた方が箒を持ってきたことがわかると、みんなが持ってきたがるので、気づかれないようにしなくてはなりません。

 

今夜七時、クィディッチ競技場でオリバー・ウッドが待っています。最初の練習です。

 

それと、マダム・フーチがあなた方の箒に興味があるとのことなので、練習を見学するそうです。それに、私も興味がありますので、私も見させてもらいます。多分、マダム・フーチは箒に乗りたがりますが、パッドフットの説得料だと思って諦めてください。

 

M・マクゴナガル教授』

 

手紙を読み終わり、ロンに渡す。ハリー?私と一緒に読んだよ。

 

「パッドフッド?誰だい?それに、君たちの箒だって?自分用の箒を持ってるだなんて、うらやましいよ」

 

……今度、ロン用に作ってもらおうかな。喜んでくれるだろう。リゼも、新しい箒が作れるって興奮するだろうし。

 

とりあえず、談話室にしまっておこうと大広間を出たところで、マルフォイと愉快な仲間たちが階段の前に立ちふさがってるのに気がついた。

 

マルフォイは私たちの手から包みを奪い取り、中身を確かめるように触った。

 

「箒だ」

 

マルフォイは苦々しげに、でも、どこかほっとした顔で私たちに箒を投げ返した。

 

「今度こそおしまいだな。一年生は箒を持っちゃいけないんだ」

 

「マルフォイ、規則ってさ?先生たちが捻じ曲げることがあるんだよね」

 

あ、轟沈した。

 

 

寮に戻るまでに、ハーマイオニーと一騒動あったが、とりあえずベッドの下に隠す。私、一人部屋だけど。

 

夕食後、私とハリーは箒を持って、クィディッチ競技場へ向かった。誰もいないし、久々の自分の箒だし、ちょっとぐらい飛んでも良いよね?ハリーも同じ考えみたいだしさ。

 

 

学校の箒とは比べ物にならない乗り心地だった。ああ、安定してるし、それに速い。ハリーのソニックホークの方が速いけど。

 

「おーい、ポッター、ディメント、降りてこい!」

 

ウッドとフーチ先生、マクゴナガル先生が来た。ウッドは木の箱を持っている。私たちはウッドの前に軟着陸した。

 

「おみごと。マクゴナガル先生が言ってた意味がわかったよ。ルールは知ってるかい?」

 

「リーナから聞いてます」

 

「ありがとう、ディメント。手間が省けた。よし、今夜の練習が終わったら、週三回のチーム練習に参加してもらう」

 

そう言って、ウッドは箱を開けた。中にはクアッフルにブラッジャー、スニッチが入っていた。学校のクィディッチ用備品らしい。

 

「さて、まずはディメントからだ。僕がキーパーをやるから、君はそれをシュートしてくれ」

 

「私たちがウッド側のチェイサーの役をやりましょう。正直、あなたの箒の性能が気になります」

 

「終わったら、乗せてもらいますよ?」

 

先生二人とウッドとの対戦。私はクアッフルを持って、シャドウスネークで飛び上がった。先生とウッドも飛び上がり、位置に着く。

 

「始めてくれ!」

 

私に向かって、マダム・フーチが突進してきた。ご老体ですよね、一応。彼女を避けて、ゴールへ向かう。しかし、マクゴナガル先生が立ちふさがり、後ろからフーチ先生が追いかけてくる。前門の虎、後門の狼。だけど、シャドウスネークはその程度じゃ止められないよ?

 

「なっ、一体どこへ?」

 

私を見失った先生たちは衝突寸前で止まった。私がしたことは、ただ、マクゴナガル先生のすぐそばーーあと一ミリ近ければぶつかるほど近くをすり抜けただけだ。その程度ならすぐに見つかってしまう。けど、シャドウスネークはそれを他の追随を許さないほど高い精度で行える。相手の目から外れるのが異様に上手いのだ。

 

「ゴール」

 

唖然としたウッドの隙をつき、私はゴールを決める。ふっふっふ。どうだった?

 

「すごいね!いきなり目の前に現れたように見えたよ。どうやったんだい?」

 

「この箒の性能さ。異様なほど、隠密性が高いんだ」

 

「ふむ、ちょっと乗らせてください」

 

「どうぞ」

 

マダム・フーチに箒を渡す。飛び始めたマダム・フーチは怪訝な顔をした。

 

「普通の箒ーーニンバス2000などと変わらないようですが?」

 

「人の視界から外れるのが上手いんです。あと、人に見つからないようにするのも。一人で飛んでも、実感が湧かないと思いますよ」

 

私がこの箒の詳しい性能を知った時、思い浮かんだのは、日本の漫画である『黒○のバスケ』だった。完全にミスディレクションじゃん。なんなの?影になれと?私が黒○だとしたら、ハリーは○神くんかな?もしくは青○くん。

 

「よし、次はハリーだ。スニッチをなくすといけないから、このボールを使おう」

 

ハリーの練習は、ウッドが投げたゴルフボール入りの袋をキャッチすることだった。ウッドがどんなところに投げても、ハリーは持ち前のポテンシャルとソニックホークの速さでキャッチする。マダム・フーチ曰く、ここまで速い箒は滅多にないとのこと。開発中らしいファイアボルトという箒がこのくらいの速さになるらしいが、なんでその開発中の箒をマダム・フーチが知っているんだろう。

 

「開発アドバイザーですので」

 

納得。

 

ハリーの練習も終わり、私たちは談話室に戻る。そういえば、来週はハロウィンか。どんな料理が出るんだろう。楽しみだ。




試合では、リーナとハリーが無双するでしょうね。お忘れの人が多いと思いますので、ちょっと紹介を。

リゼ・ディメント
箒作りに特化した、箒が好きな吸魂鬼。オリキャラで、ハリーのソニックホークとリーナのシャドウスネーク、さらに吸魂鬼の箒全てを作った。ロンの箒も、戻ったら作ってもらうつもり。

原作の練習時にはいなかった先生二名が参加。オリジナルの箒ですもん。そりゃ気になる。パッドフッドは、まあ、彼なら自分で持っていこうとするかな、と。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ハロウィンとトロール、ハーマイオニー

あー、早く三巻に入りたい(まだ一巻の後編入ったばっかだぞ?)


ハロウィンの朝、私はパンプキンパイの匂いで目を覚ました。談話室には双子がいるようだ。

 

「おはよう」

 

「「おはよう、リーナ」」

 

なんとなくだけど、この二人なら知ってるかな?

 

「厨房への行き方ってわかる?」

 

「地下廊下の果物の絵画」

 

「そこの梨をくすぐると厨房へ行けるぜ」

 

本当に知ってた。この二人、ホグワーツの通路とかについては一番詳しいんじゃ?

 

「「いやいや、この地図を作った初代悪戯仕掛け人には負けるさ」」

 

「地図?」

 

「『忍びの地図』って言ってな」

 

「フィルチの部屋から持ってきた」

 

「〈我、ここに誓う。我、よからぬことを企む者なり〉で地図が出て」

 

「どんな場所も、生徒のいる場所も名前もわかる」

 

「〈悪戯完了!〉で地図が消えて」

 

「ただの羊皮紙に早変わりってね」

 

「ちょっと見ても?」

 

双子から地図が投げ渡される。見ると、作:プロングズ、パッドフット、ムーニー、ワームテールとある。うん、お父さんたちが作ったやつだコレ。

 

「なんと言うか、うん、やっぱりかとしか言えない」

 

「作ったやつを知ってるの?」

 

「私たちの親に当たる世代だよ。詳しくは言わないけどね」

 

「ふーん。そうだ!僕たちはその地図を複製してみようぜ!」

 

「いいなそれ!期限はどうする?」

 

「長くて二年。できれば来年には終わらせるぞ!」

 

「おう!やるぞ兄弟!」

 

「了解だ、兄弟!」

 

「「じゃ、また今夜!」」

 

自室へと消えていく二人。騒がしかった。二人なら一年で完全再現しそうだね。あの地図のこと、後でお父さんに聞いてみよう。

 

 

『妖精の呪文』で、物を飛ばす呪文を習うことになった。先生がお手本に使ったのはネビルのヒキガエルだった。私はハリーと、ロンはハーマイオニーと組んだ。ネビルはシェーマス・フィネガンと組んだようだ。

 

フリットウィック先生の説明の後、実践に移る。

 

「〈ウィンガディアム・レヴィオーサ〉!」

 

ロンの呪文はどこか間違ってるね。ハーマイオニーが訂正している。

 

「私たちもやるよ。〈ウィンガーディアム・レヴィオーサ〉」

 

杖を振る。見事に、羽根が空へ浮かんだ。同時に、ハーマイオニーも成功したようだ。

 

「オーッ、よくできました!みなさん、見てください。グレンジャーさんとディメントさんがやりました!」

 

ちなみに、ハリーは三回目で成功させた。

 

 

「だから、誰だってあいつにはがまんできないって言うんだ。まったく、悪夢みたいなやつさ」

 

授業が終わり、ロンがぼやく。ロンは成功しなかったらしい。誰かが私の肩にぶつかり、追い越していく。ハーマイオニーだ。泣いている。

 

「ロン、言い過ぎ」

 

「別にいいだろ?」

 

「女の子は繊細なんだよ」

 

結局、夕食になってもハーマイオニーは戻ってこなかった。トイレで泣いているらしい。

 

大広間はハロウィン用の飾りとなり、ご馳走が並んでいる。私はテーブルから取ったパンプキンパイとカボチャジュース、カボチャのモンブランを持ち座って食べて、次のを取っている。この間五秒。

 

「食べるの早くない?」

 

「モグモグ当然モグモグ色々食べるには早く食べなきゃモグモグ」

 

あー美味し♪

 

幸せな気分もここまで。息を切らしてクィレル先生が大広間に入ってきた。

 

「トロールが……地下室に……お知らせしなくてはと思って」

 

ここまで言って、クィレル先生は気を失った。

 

大広間が騒がしくなる。

 

「静まれぇー!」

 

ダンブルドアの掛け声だ。すごいね、みんな静かになった。……そういえば、地下室って、ハーマイオニーが今いる場所……。

 

「ハリー、ロン」

 

「なに、リーナ」

 

「この後、寮に戻ることになるけど、抜け出してハーマイオニーを助けに行く。彼女はこのことを知らない」

 

「……わかった。行こう、ロン」

 

「パーシーに気づかれないようにしなくちゃ」

 

グリフィンドール寮の最後尾に並び、こっそりと移動する。途中で、別の場所へ向かうスネイプを見かけた。フラッフィーのところへ向かったのだろう。クィレル先生は実際には起きてるみたいだし。

 

地下廊下へたどり着く。見ると、曲がり角の先にトロールがいる。

 

「女子トイレへ向かってる」

 

「急ごう」

 

トイレに入るトロール。後を追いかけると、ハーマイオニーが個室の残骸から這い出てくるところだった。

 

「〈滑れ(グリセオ)〉!」

 

トロールの足元を滑りやすくする。ハリーが蛇口を投げつけて、大きな音を立ててトロールが転んだ。

 

「ロン!」

 

「うん!〈ウィンガーディアム・レヴィオーサ〉!」

 

トロールの棍棒が浮かび、仰向けのトロールの顔の上に。後は落下して、気絶させるだけ。……鼻も折れたね。

 

トロールが気絶してすぐ、トイレのドアが開いて先生たちが入ってきた。マクゴナガル先生、スネイプ、クィレルの順だ。クィレルは腰を抜かした。演技なのか、本心なのか。

 

「一体全体、あなた方はどういうつもりなのですか」

 

マクゴナガル先生が怖い。

 

「殺されなかっただけでも運がよかった。寮にいるべきあなた方がどうしてここにいるのですか?」

 

「マクゴナガル先生、聞いてください。三人とも私を探しに来たんです」

 

ハーマイオニーだ。どうしたのだろう。

 

「ミス・グレンジャー?」

 

「私がトロールを探しに来たんです。私……私一人でやっつけられると思いました。本を読んでトロールについてはいろんなことを知っていたので」

 

あ、あのハーマイオニーが……先生に嘘をついているだと!?トロールについて知っていると言うのは本当だろうが、彼女にはは元からここにいただけで、トロールが後から来たのに。

 

「三人が私を見つけてくれなかったら、私、死んでいました。リーナは床を滑りやすくして、ハリーが転ばせて、ロンがトロールの棍棒でノックアウトしてくれました。誰かを呼びに行く時間がなくて……」

 

三人とも、そのとおりです、という顔を装う。

 

「まったく。ミス・グレンジャー。グリフィンドールから五点減点です。寮に速くお戻りなさい。それと、そこの三人には五点ずつあげましょう。トロールと対決できる一年生はなかなかいませんからね」

 

 

寮に帰る途中、ハーマイオニーから謝罪された。三人とも、わがままに付き合わせてごめんなさい、と。そんなもの気にしないけどねぇ。

 

寮に入るとパーティーの続きをしていた。よーし、食べるぞ!

 

 

この日から私たちは三人ではなく四人になった。特別な経験って大切だよね。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

クィディッチの試合と箒への呪い

クィディッチの練習がだいぶ佳境に入ってきた。いやー、きついね。ロンの宿題はハーマイオニーが見てくれてるから、そっちに気を回さないで済む。

 

私とハリーは、今、中庭にいる。理由はない。

 

「ハリー、緊張してる?」

 

「全然。リーナは?」

 

「まったく。練習通りやるだけさ」

 

明日はクィディッチのデビュー戦。さて、相手チームはどこだったかな……。

 

「リーナ、スネイプだ。足を引きずってる」

 

「あ、本当だ。どうしたのかな」

 

スネイプは片足を引きずっていた。多分、フラッフィーに噛まれたのだろう。

 

「そろそろ戻ろうか」

 

「そうだね」

 

 

次の日、私は山盛りにしたソーセージを食べていた。美味しい。ハリーはあまり食べていないようだ。

 

「ハリー、食べないの?」

 

「あはは……今頃緊張してきちゃった」

 

「背中叩こうか?」

 

「叩かなくて平気だよ。相手はスリザリンだっけ?」

 

「ああ。ラフプレーが多いらしいからね。気をつけて」

 

「わかった」

 

 

十一時、私たちは更衣室にいた。真紅のローブに着替えて、ウッドが話している。

 

「いいか、野郎ども」

 

「あら、女性もいるのよ」

 

チェイサー仲間のアンジェリーナ・ジョンソンが言う。

 

「そして女性諸君」

 

ウッドが付け加えた。

 

「いよいよだ。大試合だぞ。今年は、ここ何年かぶりの最高のチームだ。この試合はまちがいなくいただきだ」

 

ウッドは全員を見回す。うん、やっぱりクィディッチバカだね。

 

「よーし。さあ時間だ。全員、がんばれよ」

 

みんなの後について更衣室を出る。ピッチまで行くと、マダム・フーチが真ん中に立っていた。彼女が審判だ。

 

「さあ、みなさん、正々堂々戦いましょう」

 

全員に言ってるように見えるけど、実際にはスリザリンキャプテンの、マーカス・フリントに言ってるようだ。体がでかいね。

 

「箒に乗って、よーい」

 

先生がクアッフルを手にして、ホイッスルを口に咥えた。高らかに鳴るホイッスルと、高く投げられたクアッフル。そして、それを追いかけるチェイサー(私たち)。試合が始まった。

 

「さあ、いよいよ試合が始まりました!実況はリー・ジョーダン、解説はマクゴナガル先生でお送りいたします!」

 

ーーここからしばらくはリーとマクゴナガル先生の実況&解説でお楽しみくださいーー

 

「さて、クアッフルはたちまちグリフィンドールのアンジェリーナ・ジョンソンが取りました。なんてすばらしいチェイサーでしょうその上、かなり魅力的であります」

 

「ジョーダン!」

 

「失礼しました、先生。ジョンソン選手、突っ走っております。パスを受け取ったのは、今年からチェイサーに加わったリーナ・ディメントです。すごい!どんどん抜いて行きます。ジョンソンにクアッフルが返る、そしてーーあ、ダメです。スリザリンがクアッフルを奪いました。キャプテンのマーカス・フリントにパスがーーディメントが奪いました。フリント、何が起こったのかわかっていないようです。頭の中には何が詰まっているのでしょうか」

 

「ジョーダン?」

 

「失礼しました。ディメント選手はゴール近くにまで飛んでいます。そしてジョンソンにパス。そしてそのままーーゴール!グリフィンドール、先制点!」

 

 

「よし」

 

先に点を取れた。ブラッジャーに狙われにくいから、楽に通れるんだよね。

 

クアッフルは今、スリザリンの選手が持っている。さて、どのタイミングなら奪えるかな……ん?あれは……。

 

スニッチだ。ハリーも見つけたようだ。スリザリンのシーカーも見つけたようだけど、ハリーに追いつけない。あっ!フリントがハリーの前に割り込んだ!あの野郎、後で締める。フーチ先生はフリントに厳重注意を与えて、グリフィンドールにペナルティ・スローをくれた。

 

スローはアンジェリーナが投げて、見事ゴールした。ゲーム再開。クアッフルは私が持っている。ケイティに投げ渡し、敵の視界から逃れる。上を見ると、ハリーの箒が、ハリーを振り落とすように動いていた。……は?ちょっと待て。リゼの箒は最高級品と同レベルの品だ。ちょっとやそっとじゃ壊れない。強力な闇の魔術でもかけない限りーーあ、犯人クィレルか。

 

客席を見ると、ハーマイオニーがいなくなっていた。スリザリン側の席にはスネイプとクィレル。クィレルは呪いを、スネイプは反対呪文を唱えているようだ。ーーとりあえず、フリントからクアッフルを奪ってゴールに叩き込む。

 

ハリーの箒が安定する。見ると、クィレルは前の席に頭から落ちていて、スネイプのローブには炎の跡があった。スネイプ、勘違いされたのか。ハリーは急降下する。が、いきなり口を手で押さえる。何かを吐こうとしている?ハリーは着地して、何か、金色の物を吐き出した。

 

「スニッチを取ったぞ!」

 

よし!私たちの勝ちだ!フリントは喚いていたが、飲み込んじゃいけないなんてルールないからね。百八十対五十での勝利だった。

 

「ちょっといいかな、リーナ」

 

「何かな?ロン」

 

「ハリーが箒に呪いをかけられたのは見たんだろ?犯人について話したいからハグリッドの小屋まで来てくれ。ハリーも連れてね」

 

その言葉を聞き、私はハリーとともに大騒ぎしているクィディッチ会場を抜け出した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ニコラス・フラメルとクリスマスプレゼント

ネタ要素が最後の方にあります。


「スネイプだったんだよ」

 

ロンが言う。

 

「ハーマイオニーも僕も見たんだ。君の箒にブツブツ呪いをかけていた。ずっと君から目を離さずにね」

 

「いや、犯人は別に居たよ。私が保証する」

 

紅茶を飲みながら反論する。

 

「私はハリーが呪いをかけられた時に、客席を観察してみたんだよ。そしたら、クィレルも何か言ってたんだ。とあるバカのせいで読唇術を覚えさせられたからね、呪いを唱えているってわかった」

 

「じゃあ、スネイプは何をしていたの?」

 

「反対呪文。あと、スネイプに火をつけたのはハーマイオニーかな?あの時、クィレルにぶつかった?」

 

「ええ。確かにスネイプに火をつけて、その前にクィレル先生にぶつかったけれど……それが?」

 

「クィレルがそれでつんのめっていたんだよ。それでハリーへの呪いが途切れた」

 

「でも、スネイプは足を怪我していたわ。あれはフラッフィーにつけられたものしゃないかしら?」

 

奥で紅茶を淹れていたハグリッドがいきなりこっちを向いた。

 

「なんでフラッフィーを知っとるんだ?」

 

「色々あってね。ハグリッド、彼は何を守っているの?」

 

「お前さんたちにも言うことはできねぇ」

 

じー。

 

「……」

 

じー。

 

「……うう」

 

じー。

 

「……すまんが絶対に言えねえんだ。あれのことは忘れるんだ。あれはダンブルドア先生とニコラス・フラメルの……」

 

「勝った」

 

「あ……言っちまったぁぁぁぁ!?」

 

ハグリッドには秘密を預けちゃいけないね。

 

 

 

クリスマス休暇前日。私は図書館に向かっていた。クリーチャーのマフラーがあったかい。

 

私は残ることに決めた。他にはハリーとウィーズリー四兄弟が残っている。あ、ロンがマルフォイと喧嘩してる。……スネイプ登場。ロンだけが減点された。そんなんだから疑われるんだよ、スネイプ。

 

 

ニコラス・フラメルについて、なかなか見つからない。うーん、有名どころの本は調べ尽くしたけど……フラメル?錬金術関係で聞いたことがあるような?

 

……錬金術?もし、フラメルが錬金術に関係する人間なら?ホグワーツに隠すレベルの物で、闇の帝王(笑)が求めるもの?錬金術で最も価値があり、最も重要な物……。

 

「……まさか」

 

錬金術の本を探し出し、読み始める。予想が正しければ……。

 

「いた。やっぱりか」

 

賢者の石。エリクサーとも呼ばれる錬金術の最高到達点の一つ。最高の錬金素材で、卑金属を貴金属に、特に金に錬成する。そして、最大の特徴は……

 

「命の水の生成。これだ。永遠の命!」

 

命の水による一時的な不老不死。賢者の石さえあれば永久に生きられる。けれど、不老不死って、寂しいんだよね。友も家族も先に死に、死にたいと願っても死ねない。まあ、命の水がなくなれば死ぬか。

 

「あいつは消滅し、去年、クィレルに取り憑いた。復活に、命の水が必要?ともかく、ニコラス・フラメルは見つけた。早速ハリーに知らせるか」

 

ルンルン気分でハリーの元へ行く。

 

「ハリー、見つけたよ。ロンとハーマイオニーも呼んできて」

 

「わかったよ。ちょっと待ってて」

 

数分後、四人全員が揃った。

 

「それで、ニコラス・フラメルを見つけたって本当なのかい?」

 

「本当さ。私の記憶に感謝しろ」

 

「記憶?」

 

「ああ。どこかで聞いたことがあったんだよ。ニコラス・フラメルを。錬金術関連でね」

 

ハーマイオニーが驚く。

 

「錬金術!考えもしなかったわ。まさか、そんなところに……」

 

「ハーマイオニー、静かにして。マダム・ピンスに追い出される。それで、錬金術関係の本を調べたんだ。ビンゴだったよ」

 

三人は感心した顔をしている。ふっふーん、どうだ!側から見たら、ドヤ顔になっているだろうね!

 

「錬金術の最高到達点の一つ、賢者の石。それが守られているものさ」

 

「賢者の石ですって?なんでそんなものを?」

 

「ハーマイオニー、これを見て。賢者の石からは、命の水が生成できるんだ。これがあいつの目的なんだろ?リーナ」

 

「ロン、正解。一時的な永遠の命。それを無限回繰り返せるんだ。復活に必要なんだろうね」

 

案外早くニコラス・フラメルを見つけられた私たちは、クリスマス休暇を楽しむことにした。

 

 

 

 

クリスマス当日。ベッドの足元にはプレゼントの山があった。ウィル爺からは蛙チョコレート一ダースが、お父さんからは箒の手入れセットが、クリーチャーからはセーターが送られてきた。ちなみに、アクロマンチュラの糸を加工したものらしい。

 

アズカバンからは、代表者数名が送ったようだ。ランスを持った青い女の子の人形(糸が付いていて、魔力を込めると飛ぶし自由に動かせる)や青いドレスのような甲冑の女の子の騎士の人形(強いマジックアイテムになっている金色の剣を持っている)などだ。一つ謎なのが、陶器のような物体だ。吸魂鬼一のマッドサイエンティストが作ったらしい。黄色とオレンジの二つで、ガラス製の目のような部分がある。

 

「……なんだコレ」

 

ひっくり返してみると、『SCP-131』の文字が。……とうとう作り上げやがったか。

 

これを作ったバカは、先ほども述べたようにマッドサイエンティストで、オカルトオタクでもある。最近、一部の有志がアズカバンに引いたネット回線を使って何か調べていたが、いきなり変な物体を作り始めたのだ。履歴には、『SCP-Foundation』とあり、調べてみると、なんとまあ、こいつの好きそうなものの宝庫だことで。

 

そして、試作に試作を重ね、完成した第一号がこの『SCP-131』、通称アイポッド。……こいつは害はないけど、帰ったらもっと面倒なものを作り上げてそうだ。SCP-173とか。

 

とりあえず、二体に魔力を流し、起動させる。あとは永久機関に近い構造のため、半永久的に稼働できるらしい。あとで、名前をつけてやろう。そう思いながら、ヴェルとともに談話室へと降りていった。……アイポッドもついてきた。




今回のネタ要素、SCPの登場。

すみませんいろんな小説とか読んでたら出したくなったんです。ちなみに、SCP-173は『彫刻オリジナル』と言う名前のSCPです。SCPを知らない?検索してみてください。はまるかもしれませんよ?

……あ、吸魂鬼勢のプレゼントは大体ネタだった。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

幕間:アズカバンにて

(′・ω・`)本編を期待していた人はごめんね?今回は幕間なんだ。しかもネタ要素満載の。それでも良い?なら、僕は止めないよ。


アズカバン地下研究所。そこには、一人の男がいた。前かがみになって震えている。泣いているのだろうか?

 

「……クックック」

 

いや、笑っている。

 

この吸魂鬼の名前はブラウン・ディメント。いや、今となっては違う名前だ。彼は少し前に改名している。今の名前は、ブライト・ディメント。吸魂鬼一のマッドサイエンティストであり、ディメント家一の問題児の一人でもある。ちなみに、他の問題児はジャックなどである。

 

彼の手元には陶器のような二つの何かがある。物体の底には文字が書かれていた。『SCP-131』と。

 

 

 

 

さて、勘のいい、もしくはどこかで知っている読者諸君は気付いただろう。彼が改名した後の名前の元ネタを。

 

彼は一年前、アズカバンに導入されたネットで面白い研究対象を探している最中に、とある記事に出会った。『SCP Foundation』と言うサイトだ。彼は歓喜した。「こんなにも面白いものがあったなんて!マグルも侮れない!」と。そして、そのサイトで一番有名かもしれない、ブライトと言う博士を知り、その名前に変えたのだ。

 

彼はずっと、SCPを再現しようと研究してきた。そして、ようやくめどが立ったのだ。第一号が、この『SCP-131(アイポッド)』である。

 

彼は他のSCPの再現もほぼ成功していた。動かせることができる、完成品は少ないし、人型オブジェクトは作っていないが。

 

しかし、彼はここで一つの失敗をしてしまう。クリスマスプレゼントとして、アイポッドをホグワーツにいる末っ子、リーナに送った後、慢心してしまい、うっかり、魔力を流してしまった。しかも、気付いていない。その結果、本家で言う所の収容違反が起きてしまったのだ。集団で。

 

「おい、そっちにクマが行ったぞ!」

 

「違う!こいつ金属じゃねえか!」

 

〔クマの名前何だっけ?〕

 

〔確か『SCP-1048』で、ビルダーベアだったはず〕

 

「番号覚えづらいしもうキチクマでよくね?」

 

「そうね。……痛いっ!ちょ、何よこれ?スーパーボール?」

 

「あー、それ、反射率二百%だから」

 

〔うっさい!お前も捕まえるの手伝えよ、ブライト〕

 

のそり……

 

「ん?何か動いた?」

 

〔気のせいじゃないか?オレは何も……あれ?こんな彫刻ってここにあったっけ?〕

 

「いや、ワタシの知る限りないわね」

 

「おいらも知らないが」

 

〔何にせよ邪魔じゃなければ平気だろう〕

 

「そうだな。……いってぇ!なんだ!……あ?彫刻?まさか、こいつもか!」

 

……とまあ、こんな感じに。なんとか脱走した分は回収したが、それでもアズカバンの監獄塔の地下には危険物が大量に存在する。曰く、不死身の何かがいるという噂もある。また、地下で大きなエリマキ?を持ったドラゴンっぽい何かを見たとの証言や、電気をまとった白いジャパニーズドラゴンみたいな何かが水の中を泳いでいたとの話もある。

 

何にせよ、リーナ・ディメントがホグワーツから戻ってきた時、また、ハリー・ポッターが遊びにきた時、アルバス・ダンブルドアがウィル・D・ウィスプに会いにきた時、ジャック・D・スケリントンがアズカバンに帰ってきた時などは、驚くことはあっても、退屈することはないだろう。心が休まるかどうかは別として。




登場SCP

SCP-131 アイポッド リーナにクリスマスプレゼントとして送られる。

SCP-1048 ビルダーベア 吸魂鬼数名で角に追い込んで捕獲。

SCP-018 スーパーボール 脳筋思考で筋肉モリモリマッチョマンの吸魂鬼が受け止める。

SCP-173 彫刻-オリジナル とりあえず地下に持って行って牢屋に封印。

SCP-682 不死身の爬虫類 いるかどうか不明。


その他

クック先生とラギア亜種。


ネタ回でした。
(′・ω・`)色々とごめんよ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ハリーへのプレゼントとクリスマスにあった事

ネタあり。もうシリアス無し回は確実にネタが入るな。


談話室では、ハリーとロンが銀ねず色の布を手にしていた。私もよく知る物、と言うか、ホグワーツに来る前には日常的に身につけていた物。透明マント。

 

「おはよう。透明マントなんてどうしたの?」

 

「おはよう。ハリーに送られてきたんだよ」

 

「手紙がついてた」

 

ハリーが差し出した手紙には、

 

『君のお父さんが、亡くなる前にこれを私に預けた。

君に返す時が来たようだ。

上手に使いなさい。

メリークリスマス』

 

とあった。十中八九、ダンブルドアだろう。

 

「ところでさ」

 

「なに?ロン」

 

「後ろにくっついてきてる、その置物っぽいのはなに?」

 

ロンが指差してるのはアイポッド。うーん、どう説明したものか。

 

「……もしかしてだけどさ」

 

「ハリー?」

 

「完成しちゃったの?」

 

「完成しちゃったっぽい」

 

ハリーはブライトのことも、SCPのことも知っている。……今考えたら、帰る頃にはアズカバンは人外魔境になっているかもしれない。

 

「こいつらは知り合いが作ったマジックアイテムでね。周りから少しずつ魔力を吸い取って動いてるんだ。名前は後で決めるよ」

 

「自立してるの?」

 

「してるんだよ、というよりも、意思を持ってるんだ。恐ろしいことに」

 

言うと、ロンは恐ろしいものを見たような顔になった。

 

「それ、魔法界にとって危ないものじゃないの?」

 

当然の疑問である。

 

「心配はないよ。こいつらに攻撃機能は付いていないし、危害を加えられるような部品もないからね。彼が作ったものにしては珍しく」

 

ブライトがこれまでに作った作品はやばいものばかりだ。炎で形作られた大剣、常温で気体のワライダケの毒エキス、(どこから手に入れてきたのかわからないけど)ドキドキノコの飲み薬など。SCPに取り掛かる前はバジリスクにドキドキノコを食べさせたらどうなるか調べようとしてたね。バジリスクが見つからなかったそうだけど。

 

「こいつらは部屋に戻してくる。そしたら、朝食に行こうか?」

 

 

 

 

七面鳥のローストに山盛りのポテト、ソーセージにトマトスープ、さらには様々な種類のケーキ!あぁ、ここが天国か……。

 

「リーナがなにか悟ったような顔をしてるけど、平気なの?」

 

「しばらくすれば治るよ」

 

さて、いただきます。

 

まずは七面鳥。手羽や軟骨のコリコリ感も良いし、お腹周りの肉も皮も美味しい。ポテトはフライドポテトからポテチまで。マスタードやケチャップも美味しいし、変わり種として醤油とか試してみよう。トマトスープには豚肉が入っていた。それも、最高クラスの豚が。なぜわかるって?この前親しくなったホグワーツのしもべ妖精が隣で解説してくれてるから。あ、ステーキだ。……ええ!?和牛肉だって!?最高じゃないか!

 

「どうしようハリー。リーナが壊れた」

 

「時々あるから平気さ」

 

「あ、ヴェル。食べるかい?」

 

(アムッ。……少し固いかな?)

 

「私はこのくらいが丁度いいんだけどね」

 

さて、いよいよケーキだ。まずは無難にイチゴのショートケーキを。幾つか種類があり、それぞれイチゴの品種が違うらしい。私が取ったのはとちおとめのだ。

 

「美味しいよ。イチゴの酸味がよりケーキを引き立てている」

 

「お褒めにあずかり光栄でございます」

 

さて、次はモンブランだね。栗とマロンクリームが美味しい。チョコケーキはベルギー産のチョコを使っているらしい。あー口の中で溶けるー。

 

「ハリー、リーナがあそこまで幸せそうな顔してるの久しぶりなんだけど」

 

「大丈夫さ。僕もだから」

 

あー美味しい♪

 

 

 

 

一度部屋に戻り、アイポッドの名前を決めることにした。

 

「うーん、どうしようか」

 

ヴェルの名前は直感だしなぁ……あ、確かヴェールヌイ関係で……

 

「あったあった。艦船事典」

 

なんでこんなものを持っているのかとか聞いちゃいけない。さて、ヴェールヌイ関連の名前は……暁、響、雷、電か。じゃあ、とあるゲームに則って……

 

「似てるし、オレンジ色が雷で、黄色が電で」

 

日本語でいいのかとか思っちゃいけない。この二体は、名前をつけられたことに対して喜んでいるようだ。調べたかいがある。

 

 

 

 

そのあとは、雪合戦をしたり、チェスをしたり、双子の悪戯に付き合わされたりして、夜まで過ごした。寝る前に、ハリーが透明マントで探検してくると言っていたことだけが気がかりだ。捕まってないといいけど……。

 

(ご主人様、あのハリーなんだから心配しなくても平気なんじゃないですかい?)

 

「ふふっ。確かにね。心配するだけ無駄か」

 

 

 

 

ちなみにその頃、ハリーは鏡を見つけてましたが、

 

「あ、これ逆さ読みか。だったら……『わたしは あなたの かお ではなく あなたの こころの のぞみ をうつす』か。面白い鏡だし、後でリーナにも教えてあげよう」

 

心が囚われることはなく、好奇心がとりこになっていた。

 

 

 

 

そしてアズカバンでは異変が起こっていた。リーナが生まれる三年ほど前に生まれた吸魂鬼二名が変な感じになったのだ。

 

「ふっふっふ。ひれ伏すがいい!我はブリュンヒルデ!お前たちを導こう!」

 

「何を言ってるんだい?まったく……にしても、月が綺麗だね。そう思わないかい?エド。……ああ、この言葉は男性が女性に言う言葉だったね。でも、女が言っても風情があると思わないか?」

 

先の言葉を言ったのはラン・ディメント。二人目はアス・ディメント。今の彼女たち(両方女の子)をウィル爺などの、日本のオタク文化にはまったことのある者が見ればこう称しただろう。

 

ーー「厨二病」、と。




反省?後悔?私がすると思うか?

はいすみませんでした調子に乗りました。
名前をもらったアイポッド。ヴェルが不死鳥なら、二体は色合い的に妹二人なので。

ラン・ディメントとアス・ディメント。ランが邪気眼系、アスがサブカル系。元ネタは……気づく人いますかね?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

みぞの鏡と気づいた想い

前回のランとアスの元ネタ

モバマスの神崎蘭子と二宮飛鳥(蘭子→ラン、飛鳥→アス)

あと、三つ前の話で送られてきていた人形の名前は、ランスを持っている方がシャン、剣を持ってる方がアルと名付けられました。元ネタは東方とfate。


「面白い鏡があったんだ。自分の望みを映す鏡だよ。今夜、見に行ってみない?」

 

ハリーは昨日、透明マントを使って校内を探検していた。その時に見つけたものを今、私に報告している。

 

「いいね。行ってみよう。私がどう見えるのか気になるし」

 

ベーコンと目玉焼きを食べながら、私は答えた。それを聞いたハリーは嬉しそうに、ハンバーガーを頬張った。

 

 

 

 

夜中、談話室で待ち合わせて、二人で寮の外に出る。

 

「うーんと、確かこのあたりだったはずなんだけど……」

 

「私が記憶を覗けばわかるかな?」

 

「それは最終手段だよ」

 

そのあと、かれこれ三十分は歩き回った。ある鎧が見えた時、ハリーが声をかけてきた。

 

「あれだ。あの鎧の近くの部屋だよ」

 

ハリーがドアを開け、二人で中に入る。そこには、大きな鏡があった。

 

「これ?」

 

「これ。僕は家族が……父さんと母さんが見えた。でも、戻ってくるわけじゃないからね。多分、ここに来ることはもうないよ」

 

私は、鏡の前に立った。映っていたのは……

 

「ほえ?」

 

……ウェディングドレスを着て、タキシードを着たハリーの横に立つ私だった。

 

え?なんで?うん、一回落ち着こう。私はハリーが好きだけどそれはlikeであってloveじゃない、家族としての、幼馴染みとしての好きのはずだ、うん。よし、さっきのは何かの間違いだ。絶対に!

 

しかし、俗に言うフラグだったのか、鏡が映し出したのは、先ほどと一寸違わぬ光景ーーいや、少し変わっている。ハリーと私が一緒に住んでいて一緒のベッドにーー

 

「わ……わぁぁぁぁぁっ!?」

 

「えっ?何が見えたの、リーナ?」

 

「ハッ、ハリーには全然関係がないことだよ、うん!いっぱい美味しいもの食べてるところだった!」

 

嘘をつきました。って、

 

「そこで何してるんですか?ダンブルドア先生」

 

「気づいておったか」

 

ハリーがダンブルドアの方を向く。気がついていなかったようだ。

 

「昨日、ハリーがここに居るのを見てのう。『みぞの鏡』のとりこにならんか心配じゃった」

 

『みぞの鏡』……安直な名前だね。人のこと言えないけど。

 

「この鏡は心の奥底にある一番強い『のぞみ』を見せる。ハリーは家族を、リーナは美味しいものを食べてる自分を見たんじゃろう?それが、君たちの一番の望みと言うわけじゃ。もっとも、自分にしか見えんから、嘘を言ってる可能性もあるがのう。」

 

一番強い望み……私が、ハリーと結婚したいって思ってる?私が?ハリーと?

 

「っ!」

 

顔が熱くなる。今この顔を、誰にも見られませんように。

 

「二人とも、この鏡は明日、よそに移す。まあ、君たちなら探そうとはしないじゃろうが」

 

そう言って、にっこり微笑むダンブルドア。うう……薄暗いけど、絶対バレてる……。

 

「先生、質問してもよろしいですか?」

 

「いいとも。今のもすでに質問だったがのう。でも、もう一つだけ、質問を許そう」

 

「先生ならこの鏡で何が見えるんですか?」

 

「わしかね?厚手のウールの靴下を一足、手に持っておるのが見える。靴下はいくつあってもいいものじゃ。なのに今年のクリスマスにも靴下は一足ももらえなかった。わしにプレゼントしてくれる人は本ばっかり贈りたがるんじゃ」

 

その言葉が、嘘か本当かはわからない。今、心を覗くのは負けのような気がした。

 

 

 

 

リーナと寮に戻る途中、リーナが言っていたことを思い出していた。僕には関係ないこと。リーナに信頼されてないのかな……?僕も嘘をついたけどさ……。

 

僕が見たのは、リーナと結婚式をあげている自分。それを見ても、特に驚くことはなかった。僕は、リーナが好きだって自覚していたから。でも、リーナが嫌がるかもと思って嘘をついた。リーナは僕の心を覗くことはほとんどない。信用されているからかな?だから、リーナが僕の見えたものを疑っても、本当に見たものを知ることはない。僕も、リーナが本当は何を見たのかわからない。

 

リーナに隠して、でも、リーナに届け、この気持ち。

 

 

 

 

女子寮に戻ってベッドに入る。すると、ヴェルが擦り寄ってきた。

 

(ご主人様……どうしたの……?)

 

「ヴェル……ちょっと聞いて?もしかしたら私、ハリーのこと好きなのかも……」

 

(……ようやくですか。半年近く自覚してなかったんですか。鈍感)

 

「うう……言い返せない……ん?半年近く?」

 

(入学して、女子寮に来た時のこと。ハリーを女子寮に連れてこれないかなって言ってましたよ?)

 

「えっ……うわぁぁぁぁぁ!何言ってるんだ私はぁぁ!恥ずかしい!」

 

(うるさいですよー。あ、雷、電。探検行くのはいいけど、見つからないようにね?)

 

(わかってるって!)

 

(了解したのです)

 

……あれ?いつのまにか雷と電がいない。ヴェルー?

 

(二体なら探検に行きましたよ。てか、聞こえてなかったんですか)

 

「恥ずかしさのあまり、ベッドの上でゴロゴロしてたからね。ううっ、明日からどんな顔してハリーに会えば……」

 

(普通の顔でいいと思うんですがねぇ)

 

うにゅう……鏡を見に行かなきゃよかったかも……。




とうとうリーナが自覚。しかし、ハリーの気持ちには気がつかず、ハリーもリーナの気持ちに気がつかない。さて、いつ告白させるべきなのやら(愉悦)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

スネイプが審判のクィディッチ

新学期が始まってから、クィディッチの練習はさらに厳しくなった。そして、練習しての最中に、ウッドがとあることをカミングアウトした。

 

「みんな、今度の試合では絶対にふざけるのはやめろ。次の試合の審判はスネイプだ。すきあらばグリフィンドールを減点しようとしてくるだろう」

 

みんなが驚く。スネイプがクィディッチの審判をやることはこれまでまったくなかったんだろう。……ハリーが心配なのかな?

 

談話室に帰っても、みんなのスネイプが審判をやることに対しての心配は収まらなかった。悪い人じゃないんだけどね。

 

その時、談話室にネビルが入ってきた。いや、倒れこんできたって方が正しいか。

 

「誰にやられたの?」

 

ネビルの両足はぴったりくっついていた。呪いだろう。

 

「マルフォイにやられたんだ。誰かに試してみたかったって……」

 

ハーマイオニーが呪いを解く。まったく。またマルフォイか。面倒事を持ってくるね。

 

「やられるのが嫌ならやり返しなよ。君なら出来るだろう?」

 

「僕はグリフィンドールにふさわしくないんだ。勇気がない。マルフォイがさっきそう言ってた」

 

ネビルがうなだれる。はぁ……。

 

「ネビル。マルフォイなんかの言うことを、私たちが言うことより信用するのかい?君なら、マルフォイに勝てるよ。絶対に、マルフォイには無い何かを持っている。絶対にね」

 

ネビルが顔をあげて、少しほほえんだ。

 

「ありがとう、リーナ。うん……次、マルフォイにあったら頑張ってみるよ」

 

そう言って、ネビルは男子寮に入っていった。これで、ウジウジしなくなるといいけど。

 

 

 

 

翌朝、校長室に変な物体が忍び込んでいたと知らされた。確認すると、雷と電だった。そう言えば校内探検に行ってから帰ってきてなかったね。フィルチの部屋に回収されるっぽいから、後で取りに行こう。いや、勝手に帰ってくるかもね。

 

ハリーは昨日からクィディッチに出るかどうか悩んでいたらしい。けど、出ることに決めたようだ。スネイプが苦手らしいけど、スリザリンに目にもの見せてやるって息巻いてた。ロンとハーマイオニーは、もしもの時のために、『足縛りの呪い』の練習をしている。もし、スネイプがハリーの箒に呪いをかけた犯人だったら、と考えているようだ。スネイプって誤解されやすいよね。

 

 

そんなこんなで試合当日。外を見てみると、ダンブルドアも観戦に来ていることがわかった。これなら、クィレルも何もできない。スネイプの頑張りは無駄だったようだね。

 

ピッチに出て、箒で飛び上がる。試合が始まった。少しだけ観客席を見てみると、ロンとハーマイオニー、ネビルがいるところにマルフォイたちが近づいて行くのが見えた。っと、危ない危ない。間一髪でブラッジャーを避けて、クアッフルを持っている、名も知らぬハッフルパフ選手の元へ向かう。ちっ。気づかれたか。別の選手にパスされた。相手がゴールにたどり着く方が早いね。追いつけない。

 

ロンたちの方を確認すると、ロンとネビルがマルフォイ、クラッブ、ゴイルと乱闘していた。ハーマイオニーはハリーを応援している。何があった。後で教えてもらおう。

 

ハリーをみると、スネイプの真横をかすめてスニッチを取っていた。まだどちらのチームもゴールしていない。試合が始まってから終了するまで五分も経っていない。さすがハリー。これまでで最高のシーカーなんじゃないかな?

 

箒置き場に箒を戻しに行くために更衣室から出たところで、ロンと出会った。

 

「ロン、取っ組み合いの喧嘩してたけど、何があったの?」

 

「マルフォイが君たちのことをバカにしたのさ。もっとも、リーナのことはなにも言えなかったみたいだけどね」

 

「ふうん。そっかー、マルフォイがねぇ……私をバカにしなくても、ハリーをバカにしたんでしょ?ふふふ……後で悪夢でも見せてやろうかなぁ?」

 

目の前でロンの顔が青ざめているけど気にしない。さて、どんな手を使って、マルフォイに後悔させてやろうか。

 

そんなことを考えていると、ハリーが戻ってきた。先に箒を戻しに行っていたのだ。でも、少し慌てている。

 

「ハリー、どうしたの?箒を戻しに行っただけでしょ?」

 

「スネイプがクィレルを脅してたんだよ。フラッフィーを出し抜く手段は見つかったのかって。まだ、クィレルは知らないみたいだけど、いつ、フラッフィーの弱点がバレることか……」

 

「ハリー、君、クィレルが犯人だって決めつけてるけどさ、スネイプが犯人のように思えるんだ」

 

ハリーの説明に対してロンが反論する。確かに、スネイプがクィレルを脅していると、スネイプが悪者に見える。

 

「スネイプだったら、クィレルに聞くよりは自分で見つけ出すんじゃない?『生ける屍の水薬』を飲ませるとかして」

 

そうなんだよね。ハリーの言った通り、スネイプなら魔法薬でなんとかするんだろう。ともかく、クィレルがまだ、フラッフィーをなんとかする方法を知らないのなら、賢者の石は安全だね。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ドラゴン

死の秘宝Part1の、三人の兄弟の物語。あのシーンが幻想的で好きです。

あ、第一話のUAが一万を超えました。


何週間経っても、クィレルがフラッフィーを突破する手立てを入手することはなかった。フラッフィーがまだ突破されてないか確認するためにフラッフィーのところに遊びに行ったけど、まだ来ていないとフラッフィーは言っていた。

 

ハーマイオニーはもう試験勉強を始めるようだ。まだ十週間ーー大体二ヶ月半は先なのに。結果、復活祭の休みは図書館で宿題の消化や復習などをすることになった。『薬草学』は苦手だし、よく復習しておかないと。……あ、ハグリッドだ。

 

「ハグリッド、何してるの?」

 

こっちに来るハグリッド。何かを背中に隠している。

 

「ちーっと見てるだけだ。お前さんたちは?」

 

ハグリッドは話をそらそうとしてるのかな?

 

「まさか、ニコラス・フラメルをまだ探しとるんじゃねえだろうな」

 

「そんなのもうとっくの昔にわかったさ」

 

ロンが意気揚々と言う。

 

「それだけじゃない。あの犬が何を守っているかもーー」

 

「ロン、そこまでだよ」

 

さすがに言い過ぎだと、ロンをたしなめる。

 

「それより、何を背中に隠しているのかな?私としては、それがすっごく気になるんだよ」

 

ハグリッドはバツの悪そうな顔をした。

 

「あー、ここじゃあ言えねえな。あとで小屋に来てくれや。誰にも言わんといてくれよ」

 

そう言って、ハグリッドな何かを隠したまま図書館を出て行った。

 

「ハグリッド、何を隠してたんだろう」

 

「『石』に関係あることかしら?」

 

「いや、『石』がすでに隠されている以上、それはないよ。ちょっと見てくる」

 

私はハグリッドがいた棚に近づく。ふむ、ドラゴンの本か。……いや、まさか。いくら三頭犬を飼っていたハグリッドだとしてもあり得ないはずだ。うん、違うと信じたい。ーードラゴンを飼おうとしてるなんて。

 

 

「ドラゴンの飼育だって?法律違反だよ!」

 

ハリーたちの元へ戻り、考えを話す。

 

「さすがのハグリッドでもそんなことはーーやりそうだね」

 

信用ないな、ハグリッド。

 

「もしハグリッドが本当にドラゴンを飼おうとしていたら、すこーしお話する必要があるね」

 

「ハリーどうしよう。リーナの目が笑ってない」

 

「リーナ、ほどほどにね?」

 

「わかってるさーー辞世の句ぐらいは詠ませてあげるよ」

 

「殺しちゃダメだからね!?」

 

「図書館ではお静かに!」

 

「アッハイ」

 

 

一時間後、ハグリッドの小屋を訪ねると、カーテンが全部閉まっていた。ハグリッドは私たちだと確かめてからドアを開け、すぐに閉めた。

 

小屋の中は凄く暑い。さっきの様子といいこの暑さといい、まさか。

 

「ハグリッド、本気で飼おうとしてるの?」

 

「……気づいとったか。こいつは確かにドラゴンの卵だ。きのうの晩、村まで行って、酒を飲んで、知らないやつと賭けをしてな。勝って手に入れた。ノルウェー・リッジバック種だ」

 

「はぁ……ハグリッド、辞世の句を詠め。介錯してやる」

 

有罪だ。

 

「なっ、何をする気だ、リーナ」

 

「ハグリッド。ドラゴンを飼うことは法律で禁止されている。このままだと君は犯罪者だ。最悪、アズカバンに私の手で放り込む事になるかもね」

 

「……せめて、こいつが孵るまでは育てさせてくれ。そのあとは引き渡す」

 

「ロン、確かチャーリーがドラゴンの研究をしていたよね。彼に預けよう。この子が孵ってからだけどね」

 

……私も、ドラゴンの赤ちゃんは見てみたいし。

 

「そう言えば、石の守りは平気なの?」

 

とりあえず、しんみりとした空気を入れ替える。

 

「誰が守っているのかと、誰にもフラッフィーをおとなしくさせる方法を教えてないか。ドラゴンのことを見逃す代金として、教えてもらおうか」

 

「……しかたねぇ。スプラウト先生、フリットウィック先生、マクゴナガル先生、それからクィレル先生にダンブルドア先生も。あとは、おお!スネイプ先生を忘れとった。まあ、この中の誰も盗もうとはしねぇだろう。守る側にいるんだから」

 

クィレルが盗もうとしてますよ?

 

「フラッフィーをおとなしくさせれるのは俺とダンブルドア先生以外はーーいや、お前さんはおとなしくさせれるんだったな。と言うか、懐かれとる」

 

まだ、クィレルはフラッフィーをおとなしくさせれないのか。安心だ。

 

 

数日後に、ハグリッドから手紙が届いた。『いよいよ孵るぞ』と。

 

ロンは『薬草学』をさぼって小屋に向かおうとしたけど、私とハーマイオニーで止めた。『薬草学』だけは絶対に受けたい。苦手科目だし。

 

そのあと、少し揉めてしまい、マルフォイに話を少し聞かれてしまった。とりあえず、午前中の休憩時間に向かうことに決まったけど、マルフォイが心配だ。

 

授業が終わり、私たちはすぐにハグリッドの小屋へ向かった。よかった、間に合った。

 

「もうすぐ出てくるぞ」

 

ハグリッドは興奮している。卵はすでにひび割れ、中に何かがいることが見て取れる。

 

中からコツンコツンと音がして、ひび割れがどんどん大きくなる。いよいよだ。

 

鳴き声がして、突然、卵が真っ二つに割れた。そして、赤ちゃんドラゴンが出てきた。うん。前にアズカバンで見たドラゴンほどは引き締まってないけれど、十分かわいいね。

 

「ハグリッド、やっぱりディメント家で引き取っていいかい?かわいい」

 

「ハリー、私、リーナの感性がわからないの」

 

「慣れてね、ハーマイオニー」

 

うう、さすがにダメか。っ!まずい、見られた!ハグリッドとともに窓際に駆け寄る。

 

「どうしたの?」

 

「ドラゴンが見られた。多分、マルフォイ」

 

早くこの子を引き渡さないと。もしマルフォイが言いふらしたら、まずいことになる。

 

 

チャーリーに連絡を取ってもらった。二週間は迎えに来れないようだ。マルフォイを見ると、薄笑いを浮かべているのがはっきりわかる。

 

ドラゴンがノーバートと名付けられ、そして私が女の子だと見抜いたのは、彼女が産まれてから一週間ほどの頃だった。もう三倍ほどに成長している。ノーベルタと名前を変えた彼女は好奇心旺盛で、なんでも咬みつこうとした。その度に私が落ち着かせることになった。ぎゅーって抱いたときはかわいかった。すりすりしてきてね、顔を舐めてきたりしてくれたよ。ハグリッドが羨ましがってた。

 

そんなこんなで、さらに一週間後。チャーリーから、土曜の夜中、一番高い塔に連れて来てくれと連絡があった。連れて行くのは、ハリーと私に決定した。

 

 

やばい、マルフォイに計画がバレたかも。ロンが手紙を落としてしまったらしい。ピーブズに聞いたけど、マルフォイが何か、紙を拾ったとのことだった。

 

ハグリッドの小屋へ行く。手紙のことを話すためだ。中へ入ると、ノーベルタが私にすり寄ってきた。すっかり懐かれてしまった。彼女は私のことをお姉ちゃんと呼んでいる。かわいい。

 

「土曜か。ノーベルタ……平気だよな?」

 

「ハグリッド、後悔しないよね?」

 

改めて、ハグリッドに確認する。

 

「ああ。約束したからな。ドラゴンの寿命は俺たちよりも長い。またいつか会えるだろうさ」

 

そう言ったハグリッドだったが、目には涙を浮かべていた。

 

 

土曜の夜、ノーベルタを引き渡す日だ。ピーブズをやり過ごし、ハグリッドの小屋へ向かう。すでに、ノーベルタの準備は完了しているようだ。

 

「長旅だからな。ネズミとブランデーをたくさん入れといた。元気でな、ノーベルタ」

 

ハグリッドからノーベルタを入れた箱を受け取り、透明マントに隠れて城へ持ち帰る。そして、塔への近道を通って行く。一番高い塔の下の階段に着いた時、二人の人間がもみ合っている姿が見えた。

 

「誰?」

 

「マクゴナガル先生と……マルフォイだね」

 

寝巻きのマクゴナガル先生は、マルフォイの耳を掴んでいた。

 

「罰則です!さらに、スリザリンから二十点減点!こんな真夜中にうろつくなんて、なんてことを……」

 

「先生、誤解です。ハリー・ポッターが来るんです……ドラゴンを連れてくるんです!」

 

「なんというくだらないことを!どうしてそんなうそをつくんですか!仮に本当だとしても、夜中にうろついていい理由にはなりません!まったく……あなたのことでスネイプ先生にお目にかからねば!」

 

先生とマルフォイが消える。そのあとの螺旋階段は気分が楽だった。あとごめんなさい先生、マルフォイが言ったの本当なんです。

 

塔のてっぺんに着き、透明マントを脱ぐ。ふふ、マルフォイが罰則を受けるとはね。

 

「ああそうだ。ノーベルタ、この後お別れだ」

 

(……どうして?お姉ちゃん)

 

「人間がドラゴンを育てるのはダメなんだ。でも、またいつか会えるさ。私にも、ハグリッドにも」

 

(ハグリッドは会いたいけど、お姉ちゃんにはもっと会いたい)

 

「ふふ、約束だ。いつか必ず会いに行こう。だから、なんでも咬みつこうとしちゃダメだよ?」

 

(わかった!)

 

少しして、四本の箒が空から舞い降りてきた。チャーリーの友人たちだ。みんなで、ノーベルタを牽引道具につなぎ止める。

 

「また会おう」

 

(うん、お姉ちゃん)

 

そして、ノーベルタは出発した。さて、私たちも寮に帰ろうか。

 

螺旋階段を下りる。いちおう、透明マントは回収したけど、慢心してたんだろう、マントはかぶっていなかった。

 

「さて、さて、さて」

 

つまり、フィルチに見つかってしまったのだ。

 

「これは困ったことになりましたねぇ」

 

ええ、本当に。




誰か、私に描写力と文章力をください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

処罰(前編)

不定期更新のタグがアップを始めました(あまり関係ない)

ネタ要素ありのタグが助走を始めました。


私たちはマクゴナガル先生の研究室へ連れていかれた。どこぞの金ピカ王じゃないのに慢心するんじゃなかったね。

 

フィルチは、謎の物体ーー雷と電を回収したいけど逃げられるしミセス・ノリスが二体と遊んでいるから回収しづらいと愚痴っていた。

 

あ、マクゴナガル先生だ。ネビルを連れている。……今のハリーの感情を表すなら『ガクガクブルブル』が適切だろう。美味しそうな感情だ。

 

「ハリー!探してたんだよ。注意しろって教えてあげようと思って。マルフォイが君を捕まえるって言ってたんだ。あいつ言ってたんだ、君がドラゴ……」

 

ハリーが首を振ってネビルを黙らせるが、マクゴナガル先生に見られてしまった。ど怒りだ。怒りの感情って辛いんだよなぁ。←現実逃避中

 

「まさか、みなさんがこんなことをするとは、まったく信じられません。特にディメント。ミスター・フィルチはあなたたちが天文台の塔にいたと言っています。明け方の一時にですよ。どういうことなんですか?」

 

選択肢は四つ。

 

一、正直に話す。……ハグリッドとの約束とかのために言えない。

 

二、嘘をつく。……一番マシかな。内容次第ではさらにヤバくなるけど。

 

三、逃げる。……論外。色々な意味で死ぬ。

 

四、黙ったままでいる。……さらなる雷が落とされそう。

 

さて、どれが良いかな?

 

「何があったか私にはよくわかっています」

 

決める前に先生が話し始めてしまった。

 

「別に天才でなくとも察しはつきます。ドラゴンなんてうそっぱちでマルフォイにいっぱいくわせてベッドから誘き出し、問題を起こさせようとしたんでしょう。マルフォイはもう捕まえました。たぶんあなた方は、ここにいるネビル・ロングボトムが、こんな作り話を本気にしたのが滑稽だと思っているのでしょう?」

 

先生ー、その理論だと私たちがここにいる理由がありません。

 

「理由ならあるでしょう。マルフォイが捕まるところを見て、後でバカにしようとしたんでしょう」

 

ピーブズが言いふらすと思いますけど?

 

「ええ。しかし、自分で確認するのと人が確認したのを知るのでは大きな差があります。あなたもよく知っているのでは?ミス・ディメント」

 

論破されました。

 

「一晩に四人もベッドを抜け出すなんて!ミス・ディメント、あなたがこんなことをするとは考えもーーいえ、あなたの祖父や養父の影響ですか?ウィルやパッドフットが聞いたら笑うでしょうが、私たちのことも考えてほしいものです。ミスター・ポッター、グリフィンドールはあなたにとって、もっと価値のあるものではないのですか。三人とも処罰です。……ええ、あなたもですよ、ミスター・ロングボトム。どんな事情があっても、夜に学校を歩き回る権利はいっさいありません。特にこのごろ危険なのですから……五十点、グリフィンドールから減点です」

 

多いね。けど、五十点ぐらいなら残りの期間で取り戻せるはず。

 

「一人五十点です」

 

神は死んだ。合計で百五十点の減点だ。寮に戻り、寄ってきたヴェルを抱きしめる。……あ、透明マントをハリーに返さないと。

 

 

次の日から、後ろ指を指されることになった。ハリーにやろうとした奴には殺気を向けて阻止したけどね。

 

いやー、ハブられるってのはこんな感じなのか。私からしてみれば、純度は微妙だけど、多い量の憎悪とかの感情を向けられるから、マイナスの感情食べ放題。……Mじゃないからね?

 

 

試験一週間前。ハリーがクィレルと誰かが話しているのを聞いたらしい。相手の声は聞こえなかったけど、たぶんヴォルデモートだと言っていた。ターバンを直してたらしいし。

 

気になるのは、クィレルが石を守るために仕掛けた罠。確かに優秀だけど、突出した何かはない。……いや、もしハロウィンのトロールがクィレルの手引きだったら?クィレルはトロールを誘導できる?一応、考慮しておくか。

 

よく朝、処罰組宛に手紙が届いた。マクゴナガル先生からだ。『今夜十一時に玄関ホールでフィルチと合流しろ。話はそれからだ』だと。意訳だけど、だいたいこんな感じ。

 

十一時になったので、ハリー、ネビルとともに玄関ホールへ向かった。フィルチはもう来ていた。……あ、フォイがいること忘れてた。

 

「誰がフォイだ。僕はマルフォイだ」

 

「へぇ。ところで、君はどんな処罰だと思うんだい?マーフォイ」

 

「僕の苗字はマルフォイだ。そうだね、書き取りとかじゃないか?」

 

「それなら直接フィルチの部屋に行くはずだよ。こんな夜中に玄関ホールに集まるってことは、外に行くことになる。それも、普段入っちゃいけない場所。他の生徒に見られると面倒だろうからこんな時間なんでしょ、マーフィ」

 

「普段入っちゃいけない場所だって?まさか、禁じられた森か?それと、僕の苗字はマルフォイだ。マーフィはあるあるネタを法則化したアメリカ人だろう」

 

「失礼、噛んだ」

 

「わざとだろう」

 

「噛みまみた」

 

「わざとじゃない!?」

 

「垣間見た」

 

「一体何をだ!」

 

言い争う私とマルフォイ。掛け合いが終わってから、マルフォイに手を差し出す。

 

「このノリについてくるとはね」

 

「ふん。マルフォイ家として当然だ」

 

そう言いつつ手を出してくるマルフォイ。私とマルフォイは握手した。

 

「君とは面白い付き合いになりそうだ」

 

「遠慮したいね」

 

そう言って笑うマルフォイ。案外良いやつみたいだね。

 

あ、フィルチのこと忘れてた。




今回のネタ要素。物語シリーズの阿良々木君と八九寺ちゃんの掛け合い。マルフォイって、弄りやすいですよね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

処罰(後編)

ちょっとリーナとマルフォイの距離を近づけてみる。


フィルチの愚痴と説教を聞きながら校庭を横切る。着いた先は、やはりハグリッドの小屋だった。

 

「まさか、本当に森に入るのか?」

 

「ああ、そのまさかだねぇ」

 

マルフォイの言葉にフィルチが答える。

 

ファングを引き連れて、ハグリッドがやってくる。石弓を持ち矢筒を背負ってる。

 

「もう森に入らにゃならん。お前さんの仕事は終わりだ、フィルチ」

 

「夜明けに戻ってくるよ。こいつらの体の残ってる部分だけ引き取りにくるさ」

 

フィルチが城に戻っていく。

 

「よーし、それじゃ、よーく聞いとくれ。なんせ、俺たちが今夜やろうとしていることは危険なんだ。みんな軽はずみなことはしちゃいかん。しばらくは俺について来てくれ」

 

ハグリッドの先導で、森に入っていく。進んでいくと、急にハグリッドが立ち止まった。何か、銀色の、水銀みたいな液体が落ちている。

 

「あそこを見ろ。地面に光った物が見えるか?銀色の物が見えるか?一角獣(ユニコーン)の血だ。何者かにひどく傷つけられたユニコーンが一頭、この森の中にいる。今週になって二回目だ。水曜日に最初の死骸を見つけた。みんなでかわいそうなやつを見つけだすんだ。助からないんなら、苦しまんようにしてやらねばならん」

 

「ユニコーンを襲ったやつが、先に僕たちを見つけたらどうするんだい?」

 

マルフォイが聞く。いつもより声が震えている。恐怖を感じているようだ。

 

「俺やファングと一緒におれば、この森にすむものは誰もお前たちを傷つけはせん。道をそれるなよ」

 

意訳すると、この森にいるはずのないものは傷つけてくる、もしくは、この森にいるものでも襲ってくる可能性はあるってことだよね。

 

そのあと、ファング班とハグリッド班に別れて探索することになった。ファング班はネビルとマルフォイ、ハグリッド班は私とハリーだ。ユニコーンを見つけた時は緑の光を、困ったことが起きたら赤の光を打ち上げる。

 

少し進み、道が分かれた所でファング班と別れた。そこら中に銀色の血が落ちている。

 

「その木の陰に隠れろ!」

 

「っ!」

 

ハリーを掴んで樫の巨木の陰に隠れる。ハグリッドは矢を弓につがえ、構えている。何者かが、するすると枯葉の上を通る音が聞こえる。……遠くに行った。

 

「思ったとおりだ。ここにいるべきではない何かだ」

 

これまでより慎重に進んでいく。突然、何かが動いた。

 

「そこにいるのは誰だ?姿を現せ……こっちには武器があるぞ!」

 

ハグリッドが叫ぶ。現れたのは赤毛の人間の体と、栗毛で赤味がかった長い尾を持つ馬の体。ケンタウルスだ。

 

「ああ、お前さんか、ロナン。元気かね?」

 

「こんばんは、ハグリッド。私を撃とうとしたんですか?」

 

「用心にこしたことはない」

 

ロナンと言うケンタウルスと話しているハグリッド。

 

「今夜は火星が明るい」

 

「なあ、ロナンよ。けがをしたユニコーンがいるはずなんだ。見かけんかったか?」

 

ロナンはすぐには返事をせず、空を見上げていた。

 

「いつでも罪のない者が真っ先に犠牲になる。大昔からずっとそうだった。そして今もなお……」

 

その時、ロナンの背後でまた、何かが動いた。現れたのは、ロナンより荒々しい印象のケンタウルスだ。

 

「やあ、ベイン。元気かね?」

 

「こんばんは。ハグリッド、あなたも元気ですか?」

 

「ああ、元気だ。なあ、ロナンにも聞いたんだが、傷つけられたユニコーンか、何かおかしなものを見んかったか?」

 

ベインはロナンのそばまで歩いていき、空を見上げた。

 

「今夜は火星が明るい」

 

またそれか。ハグリッドも諦めたのか、何かを見つけたら知らせるように言い、その場を離れた。

 

少しして、赤い火花を見つけた。何かあったようだ。

 

「二人ともここで待ってろ。この小道からそれるなよ。すぐ戻ってくるからな」

 

そう言って、ハグリッドは下草をなぎ倒しながら遠のいていった。

 

「ねぇ、リーナ」

 

「なんだい、ハリー」

 

「どう思う?」

 

「マルフォイがネビルを脅かしてパニックになって打ち上げたに五百ガリオン」

 

「奇遇だね。僕もだ」

 

しばらくして、ハグリッドが戻ってきた。マルフォイ、ネビル、ファングを引き連れている。話を聞くと、予想が当たっていたようだ。

 

「お前たち二人がばか騒ぎしてくれたおかげで、もう捕まるものも捕まらんかもしれん。よーし、組分けを変えよう……」

 

「じゃあ、私とマルフォイが一緒になるよ」

 

「おお、そうか。それじゃあ、俺と一緒に来い。ハリーとネビルはファングと一緒だ」

 

ハリーたちと別れる。

 

「ねぇ、マルフォイ」

 

「なんだ、ディメント」

 

「君、寂しいの?」

 

マルフォイが固まる。図星かな?

 

「何を根拠に言っているんだ?僕が寂しい?クラッブやゴイルがいるのに?」

 

「その二人とは、友達のような上下関係に見えたけどね。……ここから先は独り言だよ。聞き流してくれても構わない」

 

そう言って、私は考えていたことを話し始める。

 

「確かに、スリザリンは闇の魔法使いを多く出している。でも、本質は違うと思うんだ。組分け帽子も言っていたろ?『スリザリンではもしかして 君はまことの友を得る』って。グリフィンドールが勇敢、ハッフルパフが誠実、レイブンクローが知識なら、スリザリンの性質はーー友愛。君は、友達が欲しかったんじゃないの?」

 

「……ははっ。最後のは独り言じゃなくて質問になっているぞ。……ああ、そうだろうな。僕は、友達が欲しかったのかもしれない。でも、どうしてそう考えたんだい?」

 

「簡単だよ。それぞれの寮の気質を組分けが歌ったのなら、スリザリンは友愛か卑怯となる。卑怯はあり得ないだろうから、友愛だ。それに、君の行動。ロンやハーマイオニー、ハリーが嫌いなら、近づかなければいいはずだ。けど、君は関わってきた。どう考えてもツンデレの行動なんだよね」

 

「ツンデレだと?僕が?」

 

「君が。嫌いって言ってる相手に関わっていくのはツンデレの行動さ」

 

「……そうか。じゃあ、僕の話も聞いてくれるかい?」

 

そう言って、マルフォイは話し始める。

 

「僕の家は知っての通り、聖二十八家の一つだ。それゆえに、僕は小さい頃から純血主義だった。でも、父上は闇の帝王に仕えていたし、クラッブとゴイルも、父上の知り合いの息子として会った。僕もの周りには、純血主義しかいなかったんだ。けど、ホグワーツに来てから、グレンジャーを見て知ったんだ。マグル生まれでも、純血の上をいくことがあるって。最初はそれが信じられなかった。でも、認めざるを得なくなったんだ。そして僕は考えたんだ。本当に、純血主義は正しいのかってね。

 

それに、君たちの関係も見てたんだ。君たちはみんなが言い合い、みんなで進む。それに比べて僕たちは薄っぺらい。クラッブとゴイルは僕についてくるだけだし、グリーングラスは僕の見た目や家系だけで近づいてきた。……ああ、正直に言おう。僕は君たちに憧れたのさ。笑えるだろう?スリザリンが、敵対しているグリフィンドールに憧れるなんて!」

 

マルフォイは少し悲しそうな顔をしている。……憧れた、か。

 

「マルフォイ、ホグワーツ四強ーーホグワーツの創立者について知ってるかい?」

 

「うん?ゴドリック・グリフィンドール、サラザール・スリザリン、ヘルガ・ハッフルパフ、ロウェナ・レイブンクローだろ?それがどうかしたのか?」

 

「彼らは仲が良かった。特に、ハッフルパフとレイブンクローが。それに負けないくらい、グリフィンドールとスリザリンもね。聞いたことがあるんだよ。スリザリンが別れた原因は、純血主義者を黙らせるためだって」

 

「……そうなのか?それじゃあ、スリザリンの伝説は……」

 

「後の捏造か、もしくはスリザリンが三人に迷惑をかけないように流した噂だろうね。スリザリンが純血主義だとしても、『例のあの人』レベルなら別の学校を作ってるはずさ」

 

マルフォイは愕然としている。それはそうだろう。スリザリンの伝説の一部が、捏造だなんて。

 

「ねぇ、マルフォイ。確かに君は色々やった。でも、もう過ぎたことだ。だからさ?」

 

 

ーー私たちと友達にならない?

 

 

「……ははっ、僕はスリザリンで、君たちはグリフィンドールだぞ?」

 

「寮の違いなんて関係ないさ。ハリーのお母さんとスネイプは仲が良かったらしいし」

 

「僕は君たちを退学させようとしたんだぞ?」

 

「そのあとピーブズをけしかけたからどうでもいい」

 

「あれは君たちか!」

 

マルフォイが叫ぶ。その口元は笑っていた。

 

「……本当に、良いのか?」

 

「何度も言わせないで。ロンとハーマイオニーには言い聞かせとく。ハリーは平気でしょ、多分」

 

「そうか……

 

ありがとう、ディメント」

 

そう言ったマルフォイは泣いていた。けど、笑っていた。こうして、寮を超えた友情が生まれたのだった。

 

……あ、ハグリッド空気だ。

 

 

『うわあぁぁぁぁあ!』

 

突如響き渡る悲鳴。ネビルの声だ。

 

「ハグリッド!」

 

「ああ、なんかあったに違いねぇ。ここにお前さんたちを残しても危ないし、一緒に行くぞ!」

 

「ロングボトムにも謝りたいしな。無事でいるといいが……」

 

声のした方向に進む。そして、何かに怯えたネビルとファングを見つけた。

 

「ネビル!平気か!?」

 

「リーナ!ユ、ユニコーンが!」

 

「落ち着け、ネビル。リーナもだ。ほれ、何があったのか話してみろ」

 

ネビルは深呼吸をして話し始めた。

 

「ユ、ユニコーンの死骸があったんだ。ハリーと見つけた。そしたら、フードを被った何かが地面をはってきて……ユニコーンの血を飲みはじめたんだ」

 

「……吸魂鬼か?ディメント」

 

「いや、吸魂鬼は血肉を食べない。魂を吸い取ることはあっても、死骸は食べないよ」

 

となると、何がいるんだ?……ユニコーンの血?どこかで聞いたような……。

 

「そうだ!僕、ハリーを置いてきちゃった!も、戻らないと!」

 

「一人で行こうとするな、ロングボトム!せめて僕かディメントを連れていけ!」

 

「えっ、マルフォイ!?何が悪いものでも食べたの?」

 

「今はそんなボケは要らないだろう!」

 

そう言いつつ、ハグリッドを置き去りにしつつ、私たちはネビルが来た方向へ走り始める。すると、金髪のケンタウルスが現れた。

 

「そこを退いて。急いでるんだ」

 

「ふむ、この子を探しているのかな?お嬢さん」

 

ケンタウルスが横を向く。彼の背中にはハリーが乗っていた。

 

「僕は大丈夫だよ、リーナ」

 

みんな、ほっとする。ハリーが無事だったからだ。

 

ハグリッドはフィレンツェと名乗ったケンタウルスに言われて、森の奥へと入っていった。フィレンツェはハリーに何かを言うとそのまま去っていった。

 

「ふぅ……無事で良かった、ハリー」

 

「そうだな。無事で何よりだ、ポッター、ロングボトム」

 

「えっ。何か悪いものでも食べたのかい、マルフォイ」

 

「君もか!なんで僕は弄られるんだ!」

 

「マルフォイだからでしょ」

 

「ううっ……ゴホン。それはともかく、色々とすまなかった、ポッター、ロングボトム。ディメントに本音を見透かされてね。自分の心に素直になれた」

 

マルフォイが頭を下げる。ハリーはともかく、ネビルが驚いていた。

 

「えっ、ちょ、なんで頭下げるのさ!いや確かに謝ってほしかったけど、いきなりは心の準備があるから!」

 

「まあまあ、落ち着いて、ネビル。ここは君の魔法薬学を手伝ってもらうってことでいいんじゃない?」

 

オロオロするネビルと落ち着いて妥協点的なものを提案するハリー。

 

「とりあえず、マルフォイはともだちになったけど良いかい?」

 

「うーん、なんでこれまで悪戯とかしてきたの?」

 

「それはね……」

 

〜少女説明中〜

 

「アッハッハ!マッ、マルフォイがツンデレって!」

 

「笑うなよ、ポッター!」

 

「笑われても仕方ないと思うよ。普段は嫌味ったらしいし」

 

「ううっ」

 

カオスである。でも、マルフォイは無事受け入れられたようだ。さて、帰ったら何があったのか、ハリーに詳しく聞かないとね。

 

「明日、そっちのテーブルに行ってもいいかい?」

 

「別にいいよ。ハーマイオニーたちにも何があったのか説明したいし」




近づけると言ったが、一気に友達までランクアップ。マルフォイってツンデレのような気がするんですよね。

スリザリンの性質が友愛なのは間違ってないはず。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

期末試験と『石』の心配

寮に戻った時、ロンとハーマイオニーは談話室にいた。ロンは寝落ちしてたけど。

 

「ハリー、リーナ、ネビル。大丈夫だった?」

 

ハーマイオニーが聞いてくる。

 

「色々あったよ」

 

「何があったのかは後で聞くわ。今聞いてるのはあなたたちに怪我は無いかってことよ」

 

「それなら大丈夫だよ。走ったりときについたかすり傷ぐらいだ」

 

それを聞いたハーマイオニーはほっとしていた。

 

「そう。ならよかったわ。それで、何があったのかしら?」

 

今言っても良いんだけどね。

 

「明日の朝話すよ。そっちの方が手っ取り早い」

 

「……本当に、何があったのかしら?」

 

 

 

 

翌朝、大広間。私たちは朝ごはんを食べていた。

 

「それで?教えてくれるんでしょう?」

 

「いや、まだ到着してないゲストがいるからね」

 

「ゲスト?誰のことだい?ネビル、知ってる?」

 

「知ってるけど、見た方が早いと思うよ」

 

話している間に、待っていた人物がくる。

 

「待たせたね、ディメント、ポッター、ロングボトム」

 

「やあ、マルフォイ」

 

ハーマイオニーとロンは口を開けたまま、閉じることができなくなっている。そりゃ驚くよね。これまで幾度となく喧嘩してきた相手がフレンドリーに接してきたんだから。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。まさかゲストって……」

 

「そのまさかさ。説明すると……」

 

〜少女説明中〜

 

「おったまげー。まさかマルフォイがツンデレだったなんて」

 

「……もう僕は何も言わないぞ」

 

「本当に心を入れ替えたの?」

 

「いや、入れ替えたんじゃなくて素直になったんだよ。ツンデレっていうよりも捻デレって感じかな?」

 

某千葉県の目が腐った男子高校生みたいな。

 

「それじゃあ、ハリーの方も話してくれるかい?」

 

「うん。

 

ユニコーンの死骸をネビルと見つけたとき、フードを被ってマントを着たのがいい滑るようにしてユニコーンの死骸に近づいていったんだ。そして、傷口から血を飲んでいた。そのあと気づかれちゃったけど、フィレンツェっていうケンタウルスが助けてくれたんだ。でも、マントが近づいてきた時に傷痕が痛くなったんだ。警告するみたいに。

 

フィレンツェから聞いたんだけど、ユニコーンの血は死の淵にいるときでも命を長らえさせてくれるんだって。その代わりに呪われるらしいけど。それに、延命処置みたいな感じらしくて、完全な命は得られないんだって。

 

つまり、完全な命が手に入るまでの延命として使えるんだよ。完全な命!賢者の石を使えば手に入る!」

 

「賢者の石?もしかして、四階の廊下に隠されているのって……」

 

「賢者の石だよ。誰かが狙っているんだ。ヴォルデモートの信頼する誰かが」

 

「『闇の帝王』の信頼する誰か?誰なのかわかるのか?」

 

「おそらく、クィレル先生。彼はハリーの箒に呪いをかけてた」

 

「ふむ、あの時のポッターの箒の異常は呪いだったのか。しかし、ホグワーツの教員が狙っているだと?大丈夫なのか?」

 

「まだ、最初の試練を突破する方法を知らないはず。もし知っているなら……ダンブルドアがいなくなった時に決行するはずだ」

 

 

 

 

私たちはテストを受けていた。心配があるとすれば『薬草学』の筆記試験だろう。ネビルは『魔法薬学』がマズそうだが、マルフォイがみっちり教えていたので平気だろう。

 

最終試験の『魔法史』が終わったあと、みんなで集まって世間話をしていた。もう復習しなくてもいいんだ、あそこを間違えてしまったかも、だとか。

 

「そういえば気になってたんだが」

 

マルフォイが聞いてきた。

 

「ハグリッドがドラゴンを持っていただろう?どこで手に入れたんだ?規制されてるはずだ」

 

「ホグズミードのパブでって……あ、そうか!」

 

ハリーも気がついたようだ。

 

急いでハグリッドの元へ向かう。ロンとハーマイオニー、ネビルは必死についてくる。

 

「急にどうしたんだい?」

 

「なんで今まで気がつかなかったんだ?なぜ、ドラゴンの卵を持ってる奴が、ドラゴンを飼いたがってたハグリッドの元へ都合よく現れた?」

 

まだ疑問に思っている三人と気づいているハリーとマルフォイを連れて、ハグリッドの小屋へ到着する。

 

「よう。試験は終わったかい。お茶でも飲むか?」

 

「うん。ありがとう」

 

ロンが言いかけるが、ハリーがさえぎる。

 

「僕たち急いでるんだ。ハグリッド、ドラゴンの卵を持ってた人ってどんな人だった?」

 

「わからんよ。マントを着たままだったしな」

 

全員が絶句する。相手の顔ぐらい確認しろ。

 

「そんなにめずらしいこっちゃない。『ホッグズ・ヘッド』ってパブじゃあおかしなやつがうようよしちょるしな」

 

「ハグリッド、どんな話をしたんだい?」

 

「んー、何を飼ってるかとかだな。んで、ドラゴンの話になって、フラッフィーに比べたらドラゴンなんか楽なもんだって……」

 

あ、これ話してるわ。

 

「ハグリッド、フラッフィーについてどんなことを……?」

 

声が震えるのを抑えて聞く。

 

「めずらしいだとか、飼うのは楽かどうかだとかだな。いくら俺でも三頭犬なんか無理だろうとか言ってたんで、フラッフィーなんか、ちょいと音楽を聞かせればすぐねんねしちまうから楽だって……」

 

「バカー!なんで話してるんだよ!今現在の最高機密だろ!」

 

「しまった、お前たちに話しちゃいけなかったんだ!」

 

「私たちだけじゃなく、その卵を持ってた奴にもだよ!」

 

ハグリッドが後ろから何か言ってくるが無視してダンブルドアを探す。

 

玄関ホールにたどり着いてから気がついた。

 

「私たち、校長室の場所知らない……」

 

「「「「「あ……」」」」」

 

満場一致。全員知らない。闇雲に探すと時間の無駄だし……。

 

「そこの六人、こんなところで何をしているのですか?というよりも、スリザリンのミスター・マルフォイがなぜグリフィンドール生と一緒に?」

 

マクゴナガル先生だ。本をたくさん抱えてる。

 

「仲良くなりました。ところで、ダンブルドア先生にお目にかかりたいんですが」

 

私が代表して聞いてみる。

 

「理由は?」

 

あー、これ、本当のことを言わなければヤバいパターンだ。

 

「フラッフィーを手懐ける方法を怪しいやつが知ってしまったので」

 

本を取り落とす先生。

 

「なぜ、あなた方がそのことを……?」

 

「誰かが『石』を盗もうとしてるんです。……まさか、ダンブルドア先生がホグワーツにいないなんて言いませんよね?」

 

「そのまさかです。魔法省からの緊急のフクロウ便が来て、十分前にロンドンへと向かいました。明日にはお帰りになりますよ」

 

「その間に石が盗られそうな気が……」

 

「盤石の守りの中に『石』はあります。大丈夫でしょう」

 

「現行犯で捕まえられるのですが?」

 

「すでに犯人に目星はついているようです。さ、外へ行ったらどうです?いい天気ですよ?」

 

 

 

 

「今夜だ」

 

マクゴナガル先生から離れた位置で、ハリーが言う。

 

「クィレルが仕掛け扉を破るなら今夜だ。必要なことは全てわかったし、ダンブルドアも追い払った。クィレルが手紙を送ったんだ」

 

「でも、どうするの?」

 

「私としては現行犯逮捕したいけど」

 

「僕はダンブルドアが平気だって言ってるなら平気だと思う。もうこれ以上、グリフィンドールの点を減らしたくないんだ」

 

「なら、じゃんけんで決めよう。私が勝ったら、『石』を守りに行く。ネビルが勝ったら寮でおとなしくしてるよ」

 

みんなが見守る中、ネビルとじゃんけんする。心を読むから簡単に勝てるんだけどね。

 

「うう……でも、負けは負けだ。僕は寮で待ってる。必ず守ってね!」

 

「僕は寮が違うから何もできないな。いや、スネイプ先生を抑えておくぐらいはできるか。これなら、減点の心配がないだろう?」

 

「しっ!スネイプよ。行きましょう」

 

私たちは寮に戻った。決行は今夜。四人で透明マントに入って向かうことになった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三つの試練

夕食の後、談話室でみんなが寝静まるのを待ち、ハリーが透明マントを取ってきた。

 

「誰かマントに拡大呪文をかけれる?さすがに四人はきついかも」

 

「無理。魔法を全てレジストするみたい。でもギリギリ四人で入れると思うよ?」

 

「ほんとだ。四人で入っても足は出ないね。……リーナ、夏休みの間に、マントに入った人に合わせてマントの大きさが変わるようにできない?」

 

「……ブライト(あいつ)に頼むことになるのか。変な機能がつかないように見張っとこう」

 

「あー、そうだね。それでさ、リーナ。帰ってきたら、大事な話があるんだ。とっても、大事な」

 

「……奇遇だね、ハリー。私もだ。大丈夫、無事に帰ってこれるさ」

 

私は一つの決心をしている。賢者の石を守ると言う一つの節目を越えたのなら、ハリーにーー。

 

「時間だ。行こう」

 

肖像画を開き、外に出る。幸い、四階への階段の下まではフィルチにもピーブズにも会わなかった。

 

つまり、四階への階段でピーブズに出会ってしまったと言うことだ。

 

「そこにいるのはだーれだ?見えなくったって、そこにいるのはわかってるんだ。だーれだ。幽霊っ子、亡霊っ子、それとも生徒の悪戯っ子か?見えないものが忍び歩きしてる。フィルチを呼ーぼう。呼ばなくちゃ」

 

どうしよう……ん?あれは……

 

「ピーブズ、そこで何をしている」

 

「ち、血みどろ閣下!?い、いえ、生徒の悪戯っ子がそこにいるので……」

 

「そうか。私にはどこにいるのか見えんがな。さあ、さっさと行け。ここに今夜いっぱい近寄るでない」

 

「はい、閣下。仰せのとおりにいたします」

 

……行ったか。でも、何故血みどろ男爵が?

 

「そこの生徒たち。感謝するのだな。我が寮の、貴様らの友が私に頼んできたからこそ、私はここにいるのだから。何か目的があるのだろう?さっさと行くがいい。ああ、友からの伝言だ。成功を祈ってると言っていたぞ」

 

「ありがとう、男爵。お礼はまた今度」

 

「気にするな」

 

マルフォイが血みどろ男爵を送ってくれたみたいだ。

 

すぐに、私たちは四階の廊下にたどり着いた。扉はすでに少し開いている。

 

「やっぱりだ。もうフラッフィーは突破されてる」

 

「どうする?戻りたかったら戻ってもいいよ?」

 

私は改めて、ロンとハーマイオニーへ問う。

 

「バカ言うな」

 

「一緒に行くに決まってるでしょ」

 

即答。頼もしいね。

 

中へ入ると、フラッフィーは起きていた。

 

「フラッフィー。誰か来た?」

 

(ターバン巻いた人。たしか、クィレルって呼ばれてた人が)

 

「ありがとう。まずいかもしれないからね。通らせてもらうよ」

 

(……危ないよ?)

 

「大丈夫さ」

 

しぶしぶだが、フラッフィーは道を開けてくれた。

 

仕掛け扉を開け、中を覗き込む。何も見えない。

 

「私から行くよ」

 

「ダメだ。僕から行く」

 

そう言って、ハリーは私を押しのけて扉の向こうに消えていった。

 

少しして、

 

「オーケーだよ!」

 

と聞こえてきたので飛び込んだ。

 

どんどん下へ落ちていく。

 

ドシン。

 

「痛っ!」

 

ハリーの上に落ちちゃった。

 

「ごめん」

 

「うん」

 

すぐにロンとハーマイオニーも落ちてくる。途端、ハーマイオニーが慌て始める。

 

「まずいわ!これ、『悪魔の罠』よ!」

 

着地したのは床ではなく、植物だったのだ。

 

「『悪魔の罠』、『悪魔の罠』……暗闇と湿気を好む!誰か、火をつけて!」

 

ハリーが杖を出して、リンドウ色の火を植物に向けて発射する。すると、すぐに足に絡みついていた植物は解け、私たちは下に落ちた。

 

「ハーマイオニーが『薬草学』をちゃんと勉強してくれていて助かったよ」

 

「ハリーが冷静だったのもね」

 

横を見ると、奥へと続く一本道があった。

 

しばらく進んでいると、何か音が聞こえてきた。

 

「羽の音みたいだ」

 

「そろそろ出口だ。正体がわかるよ」

 

通路の終点は、天井が高いドームのような場所だった。上には鳥が飛んでいる。さっきの音はあの子たちの羽の音だったみたいだ。前には分厚い木の扉。

 

「とりあえず、扉まで進んでみましょう。鳥たちが襲ってくるかもしれないけど……」

 

ハーマイオニーの言葉で、走って扉まで向かう。扉には鍵がかかっており、アロホモラを使っても開けられなかった。

 

「鍵開け呪文でも無理……なんでここに鳥がいるのかしら?そうか、鳥よ!あの鳥をよく見て!鍵が鳥みたいに飛んでるのよ!」

 

部屋を見渡すと、箒が一本だけ浮いていた。本物の鍵をあれで捕まえろってことだろう。

 

「ここにクィレルがいないってことは先に進んだはず。なら、一度捕まってるから羽が傷ついてるかも」

 

「わかった」

 

ハリーが箒に乗り、鍵の群れに突っ込む。少しして、ハリーがひときわ大きな鍵を掴んだ。その途端、それ以外の鍵がハリーに襲いかかった!

 

「ハリー!」

 

「そこを……どいてぇぇぇ!」

 

ハリーが扉に突っ込んだ。

 

「〈守れ(プロテゴ)〉!」

 

盾の呪文を使い、鍵の突進を防ぐ。その間に、ハリーは鍵を開け、扉を開いていた。

 

ハリーが鍵を逃すと、そのあとは鍵は襲ってこなくなった。

 

次の部屋は真っ暗だった。けど、少し進んだところで明かりがついた。……目に映ったのは大きなチェス盤と、大きなチェスの駒だった。




追記 お気に入り400件行きました!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

チェスと論理パズル

私たちは黒の駒の方に立っていた。向こうには白い駒と扉が見える。

 

「チェスをしなくちゃいけないみたいだ」

 

ロンが言う。私たち四人の中で、ロンが一番チェスが上手い。ここはロンに任せるのがいいだろう。

 

「僕たち一人一人が黒の駒の役目をしなくちゃいけないんだ。ちょっと待って……よし。ハリー、君はビショップと、ハーマイオニーはその隣のルーク、リーナはクイーンとかわるんだ」

 

「ロンはどうするの?」

 

「僕はナイトとかわる。大丈夫、絶対に勝てるさ」

 

話を聞いていたのか、黒のナイト、ビショップ、ルーク、クイーンがチェス盤を下り、場所を譲ってくれた。

 

「白駒が先手なんだ」

 

ロンが言う。見ると、白のポーンが二つ前に進んだ。

 

そこからは、駒を取ったり取られたりの繰り返し。ロンの采配はすごかった。

 

「詰めが近い」

 

ロンが急につぶやく。白のクイーンがロンの方を向いた。

 

「やっぱり……これしか手はない……僕が取られるしか」

 

『だめ!』

 

ハリーとハーマイオニーが同時に叫んだ。

 

「これがチェスなんだ!」

 

ロンはきっぱりと言った。

 

「ハリー、ハーマイオニー。チェスは擬似戦争みたいなものなんだ。犠牲を払わずに戦争を止めることは、奇跡でも起きない限り無理なんだよ。戦争を止めるために、犠牲という対価を払う。等価交換なんだ」

 

私はロンに加勢した。

 

「ハリー、僕が取られたら君が動けるようになる。それで、キングにチェックメイトをかけるんだ!」

 

ハリーはまだ渋っているが、ロンの覚悟を悟ったのか、頷いた。

 

ロンが前に出た。白のクイーンが飛びかかり、ロンの頭を石の腕で殴りつける。ハーマイオニーは動きかけたがなんとか持ち場に踏みとどまった。白のクイーンはロンを片隅へと引きずっていく。気絶しているようだ。

 

ハリーは三つ、左へ進み、

 

「チェックメイト」

 

と言った。

 

白のキングは王冠をハリーの足元に投げ出し、残っていた全ての駒が二つに分かれ、前方の扉への道を作り、お辞儀した。

 

「少し待ってて」

 

私はロンの元へ向かう。

 

「〈癒えよ(エピスキー)〉」

 

応急手当てをして、扉へ向かう。さすがに起こすことはしない。今は休ませてあげなくちゃ。

 

「次は何だと思う?」

 

ハリーが聞く。

 

「スプラウトはすんだわ。『悪魔の罠』だった……鍵に魔法をかけたのはフリットウィックに違いない……チェスの駒を変身させて命を吹き込んだのはマクゴナガルだし……とすると、残るはクィレルの呪文とスネイプの魔法薬ね」

 

次の扉にたどり着く。

 

「いいかい?」

 

ハリーが扉を開ける。そこには、テーブルがあり、その上に七つの形の違う瓶が一列に並んでた。

 

「スネイプだ」

 

ハリーが言う。

 

「でも、何をすればいいんだろう」

 

そう言いつつ、三人とも中に入る。その途端、入り口に紫色の炎が燃え上がった。前方のドアには黒い炎。一瞬厨二病かと思った。漆黒の炎なんて、厨二病以外の何者でもない。

 

瓶の横には巻紙があった。

 

『前は危険 後ろは安全

君が見つけさえすれば 二つが君を救うだろう

七つのうちの一つだけ 君を前進させるだろう

一つの瓶で退却の 道が開ける その人に

二つの瓶は イラクサ酒

残る三つは殺人者 列にまぎれて隠れてる

長々居たくないならば どれかを選んでみるがいい

君が選ぶのに役に立つ 四つのヒントを差し上げよう

 

まず第一のヒントだが どんなにずるく隠れても

イラクサ酒の左は いつも毒

第二のヒントは両端の 二つの瓶は種類が違う

君が前進したいなら 二つのどちらも友ではない

第三のヒントは見たとおり 七つの瓶は大きさが違う

小人も巨人もどちらにも 死の毒薬は入ってない

第四のヒントは双子の薬 ちょっと見た目はちがっても

左端から二番目と 右の端から二番目の 瓶の中身は同じ味』

 

要約すると、一つが前進用、一つが後退用、二つが酒で残りが毒。酒の左には毒があり、両端は種類が違い、どちらも前進用ではない。一番大きい瓶と一番小さい瓶のどちらにも毒はなく、両端から二番目の瓶は毒か酒。

 

「すごいわ!」

 

ハーマイオニーが叫ぶ。

 

「これは魔法じゃなくて論理よ。パズルだわ。大魔法使いと言われるような人って、論理のかけらもない人がたくさんいるの。そういう人はここで永久に行き止まりだわ」

 

「ハーマイオニー、解けるんだね?」

 

「もっちろん!ちょっとだけ待ってて……」

 

そう言って、ハーマイオニーは紙を何回か読み直し、瓶の列に沿って行ったり来たりした。そしてついにパチンと手を打った。

 

「わかったわ。一番小さな瓶が、黒い炎を抜けて先へ進ませてくれるわ」

 

一番小さな瓶を見ると、ギリギリ二口分あった。

 

「ハーマイオニー、戻る薬もわかってるんだろう?戻ってロンと合流して、鍵の部屋で箒に乗る。それで仕掛け扉もフラッフィーも飛び越えられる。まっすぐにふくろう小屋へ行って、ヘドウィグをダンブルドアへ送ってくれ。頼む」

 

「でも、もし『例のあの人』がいたらどうするの?」

 

「私が守るさ。絶対に」

 

「リーナ……わかったわ。二人とも、頑張って!」

 

そう言って、ハーマイオニーはいきなり抱きついてきて、頬にキスをしてくれた。

 

「「行ってきます」」

 

まずハリーが、そして私が薬を飲む。次の試練はクィレルだろう。でも、大丈夫なはずだ。私たちは黒い炎の中を進む。

 

通路を進み、扉を開ける。……臭い。よく見ると、ハロウィンの時よりも大きなトロールが横たわっていた。頭から血を流して気絶している。

 

「よかった、戦わずにすんだね」

 

ハリー、それフラグ。

 

反対側の扉にたどり着いた時、物音がした。振り返ると、やはりトロールが起き上がっていた。




試練の順番の変更と、なぞなぞの問題文の訂正。

しばらく更新できないかも。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

トロールとクィレル

少なくとも、賢者の石編本篇は終わらせる。そのあとは少し更新できないですね。七月半ば頃まで。多分。


起き上がるトロール。十二メートルはありそうだ。

 

「ハリー、先に行って。クィレルを止めるんだ」

 

「でも、リーナは?」

 

「私は……ここでトロールを倒してるよ」

 

突進してくるトロール。

 

「〈守れ(プロテゴ)〉!」

 

盾の呪文を使って突進を食い止める。

 

「大丈夫。私は死なないさ。絶対に、君に追いついてみせる!〈爆発せよ(コンフリンゴ)〉!」

 

トロールの鼻面が爆発し、トロールが数歩ーーとはいえ、私の歩幅だと十歩はあるかな?ーー後退する。その隙に、ハリーはドアの中へ入っていった。さて、

 

「すぐに追いつかないとね。だから、本気で相手にさせてもらう」

 

トロールは怒りのこもったような目で見てきている。さあ、狩りの時間と行こう。

 

「試してみたかったんだよね。〈鳥よ(エイビス)〉、〈肥大せよ(エンゴージオ)〉」

 

鳥を呼び出し、大きくする。準備は整った。

 

「〈鳥よ、怪鳥となり相手を襲え〉!」

 

魔力を込めた言葉。東洋、特に日本の方では言霊というものがあり、言葉に魂が宿ると言う。なら、魔力を込めれば、似たような事象を引き起こせるのではないか?と言う考えから出来上がったオリジナルの呪文だ。

 

鳥の姿がどんどん変わっていく。二本の足は太くなり、翼からは羽根が消えて飛膜となり、嘴は大きく太く、毛はなくなり、顔の横には大きなパラボラアンテナのような耳がついている。

 

「行ってこい、イャンクック!」

 

『〈怪鳥〉イャンクック』。とあるゲームに出てくる登竜門的存在。先生と親しまれる彼は今、トロールへと向かっていった。

 

「ガァァァァアッ!」

 

突進からの連続の突っつき。一見地味だけど、体重があるからか結構重い一撃である。トロールは棍棒を盾のように持って対応しているが、少しずつ、ひびが入ってきている。

 

「ガァァッ!」

 

トロールの棍棒が折れた。けれど、その隙にトロールは後退。イャンクックの顔面を殴りつけた。しかし、粘着性の火炎液で反撃する。

 

「アアァアァァァッ!」

 

トロールの顔面が焼ける。それでも、トロールは止まらない。イャンクックへパンチを浴びせる。イャンクックは火炎液や突っつきで反撃する。それがしばしの間繰り返された。

 

「アアァアッ!」

 

トロールが後ろへよろける。今だ!

 

「〈滑れ(グリセオ)〉!」

 

トロールの足元を滑りやすくし、トロールを転ばせる。

 

「ガァァァァアッ!」

 

イャンクックは隙を逃さず、上へ飛び乗って、顔面へ全体重を乗せた突っつきをし始めた。

 

「〈水よ(アグアメンティ)〉、〈氷河となれ(グレイシアス)〉」

 

水をトロールの四肢へ呼び出し、凍りつかせる。これでトロールは身動きがとりづらくなった。

 

「最後の仕上げと行こう。〈万全の守り(プロテゴ・トタラム)〉、〈最大爆発せよ(コンフリンゴ・マキシマ)〉!」

 

爆発呪文をトロールにかける。そのままだと自分も余波を喰らうから、盾の呪文も一緒に使っておく。

 

ズドンッ!

 

トロールの全身が飛び散る。私は無事だけど、部屋はトロールの血と脳漿と骨の欠片と肉片と内臓でスプラッタになっている。時間が惜しいから掃除はしないけど。

 

「〈呪文よ終われ(フィニート・インカーターテム)〉」

 

大きな音を聞いて放心していたイャンクックを鳥に戻し、更に肥大化も解除する。あとは自然消滅するだろう。さて、ハリーの元へ向かおうか。

 

私は駆け足で通路を進んでいった。

 

 

 

 

「捕まえろ!」

 

声が聞こえる。聞き覚えのない、けど、嫌な声だ。

 

扉を開けると、円形の部屋の周りを炎が囲っていた。その中でクィレルがハリーの手首を掴んでいる。私の体は意識よりも早く動いていた。

 

「〈縛れ(インカーセラス)〉!」

 

「なにっ!」

 

何故かハリーの手を離したクィレルを縛り上げる。よく見ると、クィレルはターバンを取っていた。後頭部には蛇みたいな顔がついている。

 

「率直に言おう。キモい」

 

「うるさい!」

 

後ろの顔ーーおそらくヴォルデモートーーが叫ぶ。

 

「君たちは私のハリーに何をしようとした?何をした?まあいい。苦しみを味わってもらうだけだ。〈苦しめ(クルーシオ)〉!」

 

「グッ、グァァァァアアアアッ!」

 

磔の呪文をヴォルデモートinクィレルに使用する。人間に対して使ったらアズカバンで終身刑だけど、私たち吸魂鬼は例外的に使っても平気だしね。ダメでもバレなきゃ問題はない。

 

「許さん……許さんぞ!」

 

クィレルの体からヴォルデモートが抜け出る。幽霊、いや、それよりも不確かな霞みたいだ。って、おい!

 

「ハリーに何してるんだ!」

 

あろうことか、その霞はハリーの体を通り抜けていった。そして、ハリーは崩れ落ちた。

 

「ハリー!」

 

私はハリーに駆け寄る。ああ、ハリー。

 

「戻ったら私に言うことがあるんだろう?私もハリーに言いたいことがあるって言っただろう?死ぬな!目を開けてくれ、ハリー!」

 

いやだ。このままハリーが死ぬなんていやだ!

 

「すぐに、マダム・ポンフリーの元へ……」

 

私はハリーを抱えて立ち上がった。マダム・ポンフリーの元へ行けばなんとかなるはずだ。あの人なら!

 

「心配いらんよ、リーナ」

 

私の目の前に人影が現れる。その正体はーー

 

「ダンブルドア……先生……」

 

「ハリーは心配せんでも平気じゃ。ただ、気絶しておるだけじゃのう。マダム・ポンフリーの元へ連れて行けば、五日以内に目覚める。わしが聞きたいのは、『石』は無事か、クィレル先生はどうして苦しんでおるのか、ヴォルデモートはどうしたのか、そして、一つ前の部屋の惨状じゃ。話してくれるかのう」

 

「……ええ。でも、その前にハリーを」

 

「おお、そうじゃのう。もう少しでわしのペットのフォークスが来る。彼に捕まって帰るとしよう。ああ、後でウィルに手紙を送らないと。クィレル先生はアズカバン行きじゃろうし。そうじゃろう?」

 

「ええ。ヴォルデモートが彼に取り付いていました」

 

「やはりか。君はいつから気づいておったのじゃ?」

 

「漏れ鍋で見たときに、変な思考が彼からしていたので。今の時代に、ハリー関連で惨めな思いをしている人なんて、ヴォルデモートぐらいでしょう?」

 

「そうじゃのう。おっと、フォークスが来たようじゃ。わしはクィレル先生を掴もう。さあ、フォークスの足に捕まって」

 

ダンブルドア先生のペットであるらしい不死鳥の足を掴む。すると、その体からは考えられないほどの力強さで私たちを連れて飛び上がった。そしてそのまま、トロールのいた部屋も、薬の部屋も、チェスの部屋も、鍵の部屋も、植物の部屋も、フラッフィーのいる廊下も飛び越して、医務室の前に着地した。

 

「さあ、行っておいで。わしはウィルに手紙を送っておこう」

 

私は先生に頭を下げ、医務室の中へと入っていった。

 

 

そのあとは、ダンブルドア先生に話をした。『石』はハリーのポケットに入っていて無事だったこと、私がクィレルに磔の呪文をかけたこと、ヴォルデモートが霞のようになって逃げたこと、私がトロールと戦い、爆死させたこと。先生は黙って聞いてくれた。そして、私を抱きしめた。

 

「よう頑張ってくれた。ありがとう」

 

クィレルを引き取りに来たのは、アスと言う吸魂鬼と、ランと言う吸魂鬼だった。久々に会った二人はだいぶ個性的になっていた。

 

「あとはボクたちが引き継ぐよ。なに、心配しないでくれ。あの満月にかけて、アズカバンへ連行してみせよう」

 

「ふっふっふ。我が魔手にかかれば容易きことよ。この漆黒の堕天使が、かの悪魔に囚われし罪人を、贖罪をするための地へと誘おう!」

 

厨二病乙。

 

ただキザな言い回しをしただけのアスと、完全に厨二病だけどわりかし真面目なランによって、クィレルは連れて行かれた。クィレルの手は火脹れになっていた。ハリーの手を離したのは、これが原因だろう。

 

 

ハリーが目を覚ましたと聞いたのは、その三日後だった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一年の終わりと明かした思い

「ハリーに会わせてください」

 

「ダメです」

 

「五分だけでもいいですから」

 

「ダメです」

 

「ダンブルドア先生は入ってたじゃないですか」

 

「あの人は特別です。今、彼には休息が必要なんです」

 

私は今、マダム・ポンフリーと言い合いをしている。ハリーに会いたいと言ってもダメですとしか返ってこない。

 

「ロンとハーマイオニーも入ってたじゃないですか」

 

「それでもです」

 

「……ディメント家特製の薬で手を打ってくれませんか?」

 

「……どんな薬が?」

 

「多分、もう少ししたら、死以外のほぼ全ての傷や不調を治す薬が出来上がる可能性が」

 

「……はぁ……仕方がないですね。量産できたなら私のところに定期的に納品してください。いいですね?」

 

「わかりました。ありがとうございます」

 

さて、帰ったらブライトを急かして万能薬と言う名前のSCPの生産をしてもらわないと。

 

病室に入ると、ハリーのベッドの横には大量のお菓子が山のように積み上げられていた。

 

「リーナ」

 

「やあ、ハリー。座っても?」

 

「もちろん」

 

ベッドの横の椅子に座る。

 

「ハリー、ダンブルドアが何か言ってた?」

 

「『石』を壊したこと、クィレルが投獄されたこと。あと、透明マントを送ってくれたのが先生だったってこと。あとはスネイプが僕を助けた理由と、なんで鏡から『石』を取り出せたか」

 

「ああ、あそこには『みぞの鏡』があったね。……なるほど。『使いたい者』ではなく、『見つけたい者』だけが取り出せる、か。面白いことを考える」

 

ハリーと私は微笑みあった。

 

「リーナ、聞いてくれるかい?」

 

「ああ。私も伝えたいことがある」

 

「僕から言うね。ーー僕と、付き合ってください」

 

「……いいのかい?私、重いと思うけど」

 

「僕も重いさ」

 

「種族違うよ?」

 

「フリットウィック先生も、ゴブリンと人間のハーフだったと思うけど?」

 

「そう。……なら、私からも。ハリー・ジェームズ・ポッター、私と、付き合ってください」

 

「喜んで、リーナ……えっと、リーナのミドルネームなんだっけ?」

 

「んー、ウィルでいいよ」

 

「じゃ、改めて。喜んで、リーナ・ウィル・ディメント。これからもよろしく」

 

「ああ。よろしく」

 

お互いに顔を近づける。が、そのタイミングでマダム・ポンフリーが入ってきた。

 

「もう十分も経っていますよ。さあ、出なさい。明日のパーティの前にもう一度来なさいな。ダンブルドア先生が彼に行かせてあげるようにとのことでしたので」

 

 

 

 

次の日、病室に行くと、先にハグリッドが来ていた。何か本を渡している。ハリーがそれを開けると、目を見開いて驚いていた。……少し、そっとしておこう。

 

ハグリッドが出てから、病室に入る。

 

「やあ、どうだい?」

 

「平気さ。パーティまでは時間があるんだろう?それまで話そうか」

 

私たちは他愛のない話をした。そして、少しずつ、顔が近づいていき、そして、重なった。初めてのキスは、甘酸っぱかった。

 

少しして、マダム・ポンフリーが最終診察とやらをするので外で待っててくれと言ってきた。

 

外に出てハリーを待つ。出てきたハリーは普段着だった。

 

「さて、行こうか」

 

「そうだね」

 

私たちは手をつなぎ、一緒に大広間へ向かった。

 

大広間はもういっぱいで、グリーンとシルバーのスリザリン・カラーで飾られていた。七年連続でスリザリンが寮対抗杯の優勝を持っていったのだ。横断幕には、スリザリンのシンボルである蛇が描かれている。

 

私とハリーが入ると、突然シーンとなったあとに、一斉に大声で話始めた。私たちはグリフィンドールのテーブルの、ロンとハーマイオニーの隣に座った。もちろん隣同士だ。

 

ハリーを見ようとしてくる輩が居たけど睨んでおいた。

 

「ようやく付き合い始めたのかよ」

 

ちょっ、なんで知ってるのさロン!

 

「そりゃもちろん。この一年、いつ付き合い始めるか、フレッドとジョージが賭けをしてたぜ」

 

「……あいつら、後で締める」

 

「なんで付き合ってないのか、みんな不思議がってたわよ?」

 

ハーマイオニーもかー。

 

ダンブルドアが現れて、喧騒が静かになった。助かった。

 

「また一年が過ぎた!さて、ごちそうにかぶりつく前に、老いぼれのたわごとをお聞き願おう。なんという一年だったろう!君たちの頭も以前に比べて何かが詰まってるといいのじゃが……新学年を迎える前に、君たちの頭がきれいさっぱりからっぽになる夏休みがやってくる。

 

それではここで、寮対抗杯の表彰を行うことになっておる。点数は次のとおりじゃ。四位、グリフィンドール、二百六十ニ点。三位、ハッフルパフ、三百五十二点。レイブンクローは四百二十六点で二位。そしてスリザリン、四百七十二点」

 

スリザリンのテーブルから歓声が上がる。マルフォイはこっちに向けてドヤ顔をしていた。来年は勝ってやる。

 

「よし、よし、スリザリン。よくやった。しかし、つい最近の出来事も勘定に入れなくてはなるまいて」

 

ん?最近のこと?点数が変動する?

 

「エヘン。かけ込みの点数をいくつか与えよう。えーと、そうそう……まず最初は、ロナルド・ウィーズリー君」

 

ロンの顔が赤くなる。

 

「この何年か、ホグワーツで見ることができなかったような、最高のチェス・ゲームを見せてくれたことを称え、グリフィンドールに五十点を与える」

 

グリフィンドールから大きな歓声が上がる。パーシーは他の監督生や生徒に自分の弟がマクゴナガルの巨大チェスを破ったと自慢していた。

 

「次に……ハーマイオニー・グレンジャー嬢に……火に囲まれながら、冷静な論理を用いて対処したことを称え、グリフィンドールに五十点を与える」

 

ハーマイオニーが腕に顔を埋めた。喜んでるね。グリフィンドールの熱気が凄い。

 

「三番目はリーナ・ディメント嬢。自分よりも大きなトロールを、卓越した魔法で倒したことを称え、グリフィンドールに五十点を与える」

 

私もか。これで百五十点増えた。

 

「四番目にハリー・ポッター君」

 

広間が静まり返る。

 

「……その完璧な精神力と、並外れた勇気を称え、グリフィンドールに六十点を与える」

 

『ウオォォォォォッ!!』

 

うるさっ!どんだけ嬉しいんだよ!計算したら、スリザリンと同点になったけどさ?

 

ダンブルドアが手を挙げ、広間が少しずつ静かになる。

 

「勇気にもいろいろある」

 

微笑むダンブルドア。

 

「敵に立ち向かっていくには大いなる勇気がいる。しかし、味方の友人に立ち向かっていくのにも同じくらい勇気が必要じゃ。そこで、わしはネビル・ロングボトム君に十点を与えたい」

 

爆発。そうとしか表現できないぐらいの大きさの歓声が湧き上がった。ネビルはこれまで、グリフィンドールに少ししか加点できなかったからだ。……あれ?まだ話が続く?

 

「そして、これまで敵だと思っていた者と手を取り合い、助けるのにも、勇気がいるじゃろう。わしは、ドラコ・マルフォイ君にも十点を与えたい」

 

先ほどまで苦々しげだったスリザリンからも歓声が上がる。四百八十二点でグリフィンドールとスリザリンの同時優勝だ。

 

「したがって、飾りつけをちょいと変えなければならんのう」

 

ダンブルドアが手を叩くと、垂れ幕の半分が真紅と金のグリフィンドール・カラーに変わり、横断幕の半分がグリフィンドールのライオンに変わった。

 

スネイプとマクゴナガル教授は双方苦々しげな顔で握手している。やっぱ独占したかったのか。

 

その日の料理は世界各国の料理が出て、とても美味しかった。あと、ハリーにあーんってしたり、ハリーにあーんってしてもらったり。周りの人たちがブラックコーヒーを飲んでたみたいだけどなんでだろう?

 

 

 

 

試験の結果が発表された。トップはハーマイオニー。ハリーとロン、私は案外良い成績だった。ネビルは薬草学の成績がよく、魔法薬学が微妙だったようだ。マルフォイは私たちに近い成績だね。

 

寮の部屋で、洋服ダンスの中の荷物を旅行カバンに詰め込む。そして、全生徒に『休暇中、魔法を使わないように』と言う注意書きが渡された。

 

一年生全員が湖を渡る船に乗せられ、ホグワーツ急行へと向かった。

 

「元気でな、五人とも」

 

「また二ヶ月後にね」

 

「森番頑張って」

 

「ドラゴンを飼うなんて無茶はしないでよね」

 

「手紙、送るよ」

 

「ありえないとは思うがクビにならないようにしろよ」

 

最後のマルフォイの言葉でみんなが笑った。

 

「そうだ!確かフラッフィーを譲ってほしいって言ってたよな。後でウィルにでも迎えに来させてくれ」

 

「ありがとう、ハグリッド」

 

汽車の中で、私たちは百味ビーンズを食べたり、世間話をしていたりするうちに、マグルの町々が通り過ぎていった。みんな、魔法使いのローブやマントから普通の服に着替え、キングズ・クロスへの到着を待った。

 

九と四分の三番線に到着した後、みんなのところに泊まりに行ってもいいか聞いてみた。その時の答えは、

 

「だったらみんな僕の家にくる?」とロン。

 

「父上が許したら行こう。ダメな場合は、グリーングラスのところにでも泊まると言って出てくるさ」とマルフォイ。

 

私とハリーは了承。もちろんハーマイオニーもだ。

 

そして、私とハリーは迎えのウィル爺と合流して、プリベット通りの家に帰っていった。ーーウィル爺にからかわれながら。

 

Lina Dement and the Philosopher's Stone 本編 完




あとは後日談や番外編ですね。書けない状況にならない限り、七月中旬ごろに秘密の部屋編を投稿したいと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

賢者の石編までの設定集

ども。今回は設定集です。本編で明かしていない設定も出ますよ。


リーナ・ディメント

 

備考

・主人公

・転生者

・吸魂鬼

 

容姿

・銀髪ロリっ子

 

能力

・心を読む程度の能力

 

今作の主人公。転生させた者(作者)の思いつきで吸魂鬼に転生させられる。普通のハリポタ世界かと思っていたが、だいぶ吸魂鬼がぶっ飛んだ世界だった。ハリーとは意図的に幼馴染になったが、いつのまにか無意識的に惹かれていた。『みぞの鏡』で思いを知る。その後、学年末にハリーと付き合うことになった。

 

だいたいの魔法は使えるが、超高度なものーー『悪霊の火』などーーはまだ使えない。『禁じられた呪文』は使える。特に磔の呪文が好き。

 

 

ハリー・ポッター

 

備考

・原作主人公

・生き残った男の子

 

容姿

・原作と変わらず

 

言わずと知れた原作主人公。しかし、リーナと幼馴染になったことで魔改造されていく。吸魂鬼に耐性ができたり魔法が上手かったり。リーナに淡い恋心を抱いていたが、とうとう付き合うことになった。これからも魔改造は進んで行く予定。

 

 

ロン・ウィーズリー

 

特になし。強いて言うなら、原作よりもドラコに対するヘイトが少ない。むしろドラコと友達。

 

 

ハーマイオニー・グレンジャー

 

ロンと同じ。

 

 

ドラコ・マルフォイ

 

ツンデレ。リーナに論破されて説得された結果、ハリーたちと友達になる。ネビルに魔法薬学を教えている。

 

 

ネビル・ロングボトム

 

原作よりも勇気がある、かも。ドラコに魔法薬学を教わっている。

 

 

アルバス・ダンブルドア

 

腹黒狸。

 

 

クィリナス・クィレル

 

生存した。現在はアズカバンに投獄&ユニコーンの呪いの治療中。治療が間に合わず死んだ場合は吸魂鬼に仲間入りさせられる。治療が済んだ場合はSCP財団のDクラス職員並みの扱いかな?

 

 

ヴォルデモート

 

お辞儀厨。

 

 

シリウス・ブラック

 

おいたん。ハリーの叔父でリーナの義父。アズカバンに投獄直後にひっそりと出所。今はグリモールドプレイスに隠れ住んでいる。が、度々ハリーに会いに行っている。

 

 

ピーター・ペティグリュー

 

あっさりと正体がバレる。泳がされてる最中。

 

 

クリーチャー

 

ブラック家の屋敷しもべ妖精。今の趣味は編み物とお菓子作り。

 

 

オリキャラ

 

ウィル・D・ウィスプ

 

備考

・アズカバン全権代理

 

能力

・白黒はっきりさせる程度の能力

 

二番目の吸魂鬼。好々爺。リーナの祖父(仮)。能力はあるがあまり知られていない。『白と黒』がキーワードらしいが……?

 

 

エドワード・ディメント

 

吸魂鬼。リーナに吸魂鬼の歴史や魔法を教えた。

 

 

リゼ・ディメント

 

吸魂鬼。リーナとハリーに箒を与えた。オタク気味。箒を作っている。

 

 

ラン・ディメント

 

能力

・火の目

 

邪気眼系厨二病。ゴスロリ。『悪霊の火』を体から出せる。燃やす、燃やさないの制御が可能。視界内なら体ではないところからも出せる。よく背中に炎で翼をつけて飛んでいる。

 

 

アス・ディメント

 

能力

・起源解析

 

サブカル系厨二病。ウィッグをつけている。視界内の者の起源の解析が可能。オンオフ、強弱の切り替えが可能で、弱の時は主観的な性質しか見れない(ダンブルドア→腹黒狸、ヴォルデモート→お辞儀、など)。強の時は型月作品のような起源がわかるが、凄く疲れるため普段は使わない。

 

 

ブライト・ディメント

 

研究者(マッドサイエンティスト)。魔改造やマグルの考えるオカルトが好き。現在はSCPオブジェクトを製作中。今手がけているのはSCP-500。

 

 

施設

 

アズカバン

 

今作ではアズカバンとは島の名前で、監獄自体には名前は無い。暫定的にアズカバン監獄などと呼ばれている。原作とは違い、魔改造が施されているため、人外魔境と化している。

 

・囚人の監視

・拷問

・研究

・吸魂鬼の寝泊まり

・SCPオブジェクトの収容

・モンスターの製作、管理

 

などが現在行われている。

 

 

能力

 

吸魂鬼が持っている能力。そのほとんどが目を発動媒体とする。

 

・心を読む程度の能力

発現者 リーナ

 

東方Projectの能力。心の中を読み取る。

 

・白黒はっきりさせる程度の能力

発現者 ウィル

 

東方Projectの能力。

 

・火の目

発現者 ラン

 

体から悪霊の火を出せて、制御できる。視界内なら体以外からでも出せるため、この名前となった。

 

・起源解析

発現者 アス

 

型月作品のような起源を読み取れる。が、それを何に使えばいいのやら。

 

・死神の目

発現者 不明

 

デスノートの『死神の目』。人の名前、誕生日、年齢、寿命がわかる。曰く、『遊び呆けている奴』が持っているらしい。

 

・真偽判別

発現者 不明

 

人の嘘がわかる。が、どこが嘘なのか、本当はなんなのかはわからない。ワールドトリガーの空閑の能力。

 

・運命視

発現者 不明

 

ワールドトリガーの迅の能力と、東方Projectのレミリアの能力を掛け合わせたようなもの。運命がわかるが、流動的なため確定は出来ない。一部確定した未来も見える。

 

・直死の魔眼

発現者 不明

 

型月作品の魔眼。これを使えばクィレルのユニコーンの呪いも殺せるんじゃないかと思った。

 

・弱視

発現者 不明

 

東方Projectのフランドールの能力のうち、物体の目がわかると言うところだけを抜き出した能力。見えた『目』に爆発魔法など、攻撃魔法を使うとキュッとしてドカーンみたいになる。訓練次第ではフランドールの能力そのものになるかも。




次は番外編かな?

追記
なんだよ極死の魔眼って。直死の魔眼じゃねえか。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編もしくは後日談

短いです。


プリベット通りからアズカバン島へ移動する。クィレルの様子を見るためだ。が、私は驚くことになった。

 

「なんで海に白ラギアがいるのさ?」

 

ラギアクルス亜種 in the アズカバン島近海。

 

「……研究室に行ってみるか」

 

犯人はあいつだろう。

 

 

 

 

「ああ、俺が作ったよ」

 

ブライト・ディメント。吸魂鬼きってのマッドサイエンティスト。最近はSCPオブジェクトを生成してたはずなんだけど。

 

「なんでモンスター作ってるの?」

 

「かっこいいだろう?それに、防衛に役に立つ。攻撃されることもあるが」

 

研究室の中にはリオレウスの幼体やギィギなどもいた。何作ってんだこいつ。

 

「メインはSCPオブジェクトだよ。研究の一環さ。『アベル』とか『不死身の爬虫類』とか作れないかなって。あ、そういえばフラッフィーだっけ?リーナが引き取った三頭犬。炎を吐けるようにしておいたよ。いわゆるケルベロスだ」

 

誰かこいつを止めてくれ。

 

 

 

 

「リゼー、いるー?」

 

〔おー、いるよー〕

 

「箒作って欲しいんだけどー」

 

〔んー?リーナかハリー、箒壊したの?〕

 

「いや。友達の箒を作ってもらおうとね」

 

ヒュルンッ

 

「よしきた。何人分だい?」

 

「ロン、ハーマイオニー、ネビル、ドラコの四人分」

 

「わかった。新学期までに完成出来るよう努力する」

 

「頼んだよ」

 

「任せなって」

 

そのうち、フーチ先生用にも箒作ってもらわなきゃかな?

 

 

 

 

クィレルが入っている独房。クィレルはだいぶ苦しそうだった。

 

「調子はどうかな?」

 

「答える義理があると思うか?」

 

「ないね。ま、安心しなよ。もうしばらくでユニコーンの呪いを治せる薬が出来るらしい」

 

これを聞いて、クィレルが驚く。

 

「ユニコーンの呪いを解く薬?そんなものが!?」

 

「ま、超技術みたいなものさ。治っても君は終身刑だけどね」

 

「そうか……覚悟はしていたさ。『闇の帝王』に味方したんだしな」

 

「そう。潔いね」

 

「『闇の帝王』に味方した時点で諦めたよ。そうだ、ハリー・ポッターと付き合い始めたんだって?おめでとう」

 

「ありがとう」

 

 

 

 

帰り掛けに、ドラゴンボールのスカウターみたいなサングラスを首にかけた吸魂鬼と出会った。まだ挨拶したことのない人だ。

 

「ちょっといいかい?」

 

「なんです?」

 

「来年度、また何かに巻き込まれるみたいだよ」

 

彼は、手に持ったぼんち揚げを食べながら告げ、去っていった。

 

「……二年もか。あ、あの人の名前を聞くのを忘れてた」

 

振り向き、さっきの人を捜す。しかし、見つけることはできなかった。

 

 

 

「しかし、面白い運命だ。少なくとも六年間は面倒ごとに巻き込まれるなんてね。だが、どんなルートを通っても『あの人』は復活するみたいだな。この実力派エリートも、そろそろ暗躍を始めますか!」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編:アイポッドは見た!

番外編。主役はSCP-131『アイポッド』の二人、雷と電です。

テレビ番組みたいな感じになってます。

主役って言うかMCか。


「初めまして!SCP-131『アイポッド』個体識別名『雷』よ!今日は妹の電と一緒に、これまで見てきたホグワーツでの日常の一コマをお届けするわ!」

 

「よろしくなのです!」

 

「さ、それじゃあ一つ目ね。電、よろしく!」

 

「はいなのです!一つ目は……『ミセス・ノリスを可愛がるフィルチ』なのです!」

 

「うーん、一つ目にしては普通な気がするわね。最初にインパクトを与えたほうが良かったんじゃないの?」

 

「逆に、最初にインパクトを与えてしまうと、あとが目立たなくなってしまうかもなのです。なので、最初の方は無難なものから始めるのです」

 

「じゃあ、VTR、どうぞ!」

 

 

 

 

「よし、よし、おいで。ノリス」

 

「ニャーォン」

 

「いい子だねぇ。ほら。鯖缶だよ?」

 

「ニャーォ!」

 

ガツガツ

 

「ああ。いつも可愛いねぇ。これからも一緒だよ?」

 

「ニャーォン!」

 

ガタッ

 

「そこにいるのは誰だ!」

 

 

 

 

「うーん、フィルチがデレデレしているのは違和感があるわね。最後、急に映像が途切れたけど、何があったの?」

 

「フィルチに見つかっちゃったのです。次の映像は雷ちゃんの番なのです」

 

「わかったわ。二つ目は……『女性の写真を見続けるスネイプ』!」

 

「スネイプなのですか?」

 

「スネイプなのよ。どんな女性かはVTRで確認してね!」

 

「どうぞなのです!」

 

 

 

 

地下牢、スネイプの研究室。

 

「ああ、…リー、な……まったのだ」

 

雷:よく聞き取れないから、もうちょっと近づいてみるわ。

 

「いつ見ても美しい……何故、君が死なねばならなかったのだ……」

 

雷:うーん、写真の女性は故人みたいね。

 

電:どなたなのですか?

 

雷:ちょっと聞いてればわかるわよ。

 

「あやつと結婚したが故に……我輩が『闇の帝王』に従ってしまったために、あやつが信用する者を間違えたが故に!」

 

雷:すごい剣幕ね。

 

電:それほど大切な人だったみたいなのです。

 

「君の息子は、我輩が見届けよう……リリー……」

 

 

 

 

「リリー?」

 

「リリー・エバンズ。ハリー・ポッターのお母さんね。スネイプとは同級生だったみたいよ?」

 

「そうなのですか。では、ハリーのお父さんとも知り合いなのですか?」

 

「ええ。同級生よ。校長室に歴代の生徒名簿があったわ」

 

「私は他の綺麗なものしか見てなかったのです」

 

「ふっふーん!」

 

「次は……『猫に囲まれて幸せそうなマクゴナガル先生』なのです!」

 

「マクゴナガル先生ね。確か、猫の動物擬き(アニメーガス)だっけ?」

 

「そうなのです。猫好きなのかもなのです」

 

 

 

 

ニャーニャーニャーニャーニャー

 

「さあ、おとなしくしてなさいな。別に、何も怖いことはしませんから。ああ、あなたもですよ?おや、ミセス・ノリス。何をしているのです?来るなら来なさいな」

 

ニャーニャーニャー

 

「こらこら。爪を立てない。……そう、よくできました。そこは喧嘩しないで……ノリス、仲裁ありがとう。ああ、肉球が気持ちいいですねぇ。おっと、そこはくすぐったいので止めていただけませんか?えっ、ちょっ、あっはははははっ!くっ、くすぐったいですって!」

 

 

 

 

「周りに猫缶や猫じゃらしがいっぱい落ちてたのが見えたのです」

 

「ええ。マクゴナガル先生の意外な一面ね。今度リーナに頼んで、猫のアップリケか何かでも差し入れてあげましょうか。それで、次は?」

 

「次は『厨房のダンブルドア』なのです」

 

「ダンブルドアも撮れたのよねぇ」

 

「今さらなのですが、これらの映像は私たちが撮影、記録した映像なのです」

 

「本当に今さらね」

 

 

 

 

「ふむ、今日もお願いしたいのじゃが」

 

「ええ、わかりましたとも、校長先生」

 

「ではまず……そうじゃのう、エクレアをお願いしたい」

 

「わかりましたとも!」

 

電:えっと……この映像はなんなのです?

 

雷:ダンブルドアが厨房にお菓子をたかりにきた時の映像よ。しかも、この一回以外にもやってるのよ。

 

電:ダンブルドア先生、何をやってるのですか……。

 

「お待たせしました!」

 

「おお、ありがとう。どれ、アムッ、モグモグ……ふむ、いつも通り、いい腕をしておる。さすがはわしの見込んだ屋敷しもべ妖精(パティシエ)じゃ」

 

「ありがたきお言葉!では、続いてのリクエストは!?」

 

「では、ポ○キーを」

 

「わかりました!よし、やるぞ!」

 

『おおっ!』

 

カチャカチャ、サクサク

 

「できました!」

 

「ひょいっとな。モグモグ……おお、この食感と味じゃ。昔、日本で食べた時にハマってしまってのう。おお、そうじゃ!日本と言えば、生八つ橋を頼む!」

 

「すでにここに」

 

「さすがじゃ!やはり、屋敷しもべ妖精とは、尊敬に値する種族じゃ。いや、人間以外の種族全てじゃのう」

 

「もったいないお言葉でございます。我々は主人に使え、仕事をすることが生きがいであり使命なのですから」

 

「君たちはそういう種族じゃったな。どれ……ああ、美味しいのう」

 

「ありがとうございます」

 

「どれ、そこに隠れていないでこっちに来ないかね?確か、雷と呼ばれておったのう」

 

 

 

 

「ばれちゃったのです?」

 

「確認したら最初っから。他の妖精は気づいてなかったのに……」

 

「あの人はチートなのですから、気にしないでも平気なのです」

 

「そうね……よし!次行くわよ!」

 

「時間的に、これがラストなのです」

 

「ええ。最後は『ドラコ・マルフォイ』よ!」

 

「何をした、とかが題名に入ってないのです?」

 

「まあ、ラストだしね。それじゃあどうぞ」

 

 

 

 

電:マルフォイが映っているのです。

 

雷:視線の先をよーく見て?

 

電:あれは……ハリーなのです!

 

「ポッター……僕にはどうしたら……」

 

「ドラコ、何してんだ?」

 

「やあ、ザビニ。なに、物思いにふけっていただけさ」

 

「そう。おすすめの本とかある?」

 

「ああ、案内しよう」

 

 

 

 

「短かったのです」

 

「でも、マルフォイが何を言っていたかぐらいは聞けたでしょ?」

 

「はいなのです。多分、なんでハリーには心を許せる友達がいるのか気になってたみたいなのです!」

 

「そうみたいなのよね。この後の処罰でリーナに論破されたみたいだけど」

 

 

「今回はここまでなのです!」

 

「ほかにも紹介できてない面白そうなもの、いっぱいあるのよね」

 

「地下にあった大量の蛇の頭の彫像とサラザール・スリザリンの巨大な胸像、フリットウィック先生の靴やピーブズなどもあったのです!」

 

「まさか、校庭にあった柳が動いたり、その柳の下が変な屋敷に繋がってるなんてねぇ」

 

「次は一年後なのです?」

 

「そうね。ではまた次回!」

 

「なのです!」




ふざけ要素しかないな。

ちなみに、この二人はホグワーツに置き去り状態です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Lina Dement and the Chanber of Secrets
始まりは外の国から


よっしゃー復活(仮)だー。あ、無言で去ることはしません、多分。

てな訳で新章、『リーナ・ディメントと秘密の部屋』の始まり始まり。


さて、私ことリーナ・ディメントは今、仕事で外国にいます。と言うわけで、私は今、どの国にいるでしょ『石焼ーき芋ー』ーか…………空気読めよ焼き芋屋ァァッ!

 

……ゴホン。気を取り直して。私は今、日本にいます。ひゃっほう。あ、仕事って言ったけど、仕事が完了したから関東圏の某県某市、通称『小江戸』でぶらぶらしてます。メタいことを言うと、作者が書けるのかそこぐらいしか(この先の文章は検閲されました。

 

ちなみに、世界中の国に、吸魂鬼はいる。ただ、人間の姿を取れない吸魂鬼は全てイギリスにいるから、吸魂鬼はアズカバンにしかいないと言われているわけだ。あと、世界中の国に私たちディメント家の支部がある。アズカバン島が牢獄なら、支部は留置所みたいな感じかな?私の仕事は、日本支部(恐山の地下と青木ヶ原樹海、瀬戸内海の鬼ヶ島にあった)から、違反物と報告書を回収することだった。

 

よし、説明終わり。それじゃあ菓子屋横丁の方にでも……あれ?足に何かくくりつけた……鳩?あ、寄ってきた。

 

「くるっぽー(受け取ってー)」

 

ああ、鳩だ。伝書鳩だ。でも、私に?

 

「くるっぽー(受け取ってー)」

 

「はいはい。ありがとうね」

 

「くるっぽー(いえいえー)」

 

さて、文面は……

 

 

『今晩十二時、時を告げる場所で

 

J・D』

 

 

J・D?誰だろう。でも、一緒に押されているスタンプ……中に格子を持つDはディメント家の印だ。てことは、吸魂鬼の誰かか。まあ、まだ時間はあるし、菓子屋横丁に行って麩菓子でも買って食べてよう。

 

 

 

夜十二時、時の鐘

 

 

てな訳で、小江戸川越で時を告げる場所と言ったらここだろうと、時の鐘にやってきました。うん、川越を知らない人はゴメンね?

 

塔の下には誰もいない。なら、鐘がある部分だろう。私は飛んで、鐘へ向かった。……いた。

 

「やあ、待ちくたびれたよ。この前ぶりかな?」

 

そこにいたのは、私に不吉な予言をして去っていった男だった。

 

「そうだね、この前ぶりだよ。さて、何の用だい?それと、あなたの名前は?」

 

「俺はジン、ジン・ディメントだ。もっとも、日本(こっち)じゃ迅悠一って名乗ってるけどな。俺としては、君の名前と偽名ーーああ、もちろん日本での名前だーーを教えて欲しいんだが」

 

「リーナ・ディメント。日本名は黒江理名だよ」

 

私たちディメント家は、基本プライベートや普通の仕事ーー会社とか魔法省とかーーの時はディメント姓を名乗ってるけど、匿名にしたい時は、その時用の名前を幾つか持っている。自分で自分の名前をもじってつけてるだけだけど。

 

「それで、何の用かだったな。俺は運命視って能力を持ってる。それでお前とハリー・ポッターが今年、何かに巻き込まれることと、お前が今日、この町に来ることが見えたんだ。それで、一つだけ言っといてやろうと思ってな。ーーもう、面倒ごとは始まってるよ」

 

「……本当に?」

 

「ああ。帰ったらハリーのところに行ってみなよ。多分、ハリーいないから」

 

「……どういうことだい?内容によっては容赦しないけど」

 

「おお、怖い怖い。ーー安心しなよ。ただ、ウィーズリーの家に行ってるだけだ。ダーズリー一家はカンカンだろうけど。ああ、もう一つだけ。ぼんち揚げ、いる?」

 

「ありがとう。そしてぼんち揚げは一枚だけもらっておく。……じゃあね、またどこかで」

 

「おう。末長く爆発してろ」

 

「やだ」

 

 

 

 

イギリス

 

「ウィル爺、ウィーズリー家ってどこだっけ?」

 

「確か、アーサーが迎えに来ると言っておったよ。ダーズリーたちの記憶はワシが消しておいたから、心配はせんでよい」

 

「ありがとう」

 

ウィル爺にお礼を言って、ブラック家を出ようとする。

 

「お待ちください」

 

「ん?……ああ、クリーチャーか。どうしたの?」

 

「こちらを。貴女様とハリー様への贈り物でございます」

 

「ありがとう。あ、そういえばマフラーとセーターのお礼、まだだったね」

 

「滅相もございません。私たちしもべ妖精は、好きで屋敷しもべをしているのです。趣味を持ち、そして主人に贈り物など、本来なら怒られても仕方がないことなのです」

 

「ふふ。私たち魔法使いの中にも、君たちに優しい人はいっぱいいるよ。だから、趣味を持って、人に何かを贈れることを誇りに思いな」

 

「クリーチャーにはもったいなきお言葉でございます」

 

……そういえば、お父さんを見てないけど、まさかダーズリー家に殴り込みとかしてないよなぁ……。

 

 

 

「おいこらダーズリィィィッ!貴様なにハリーのことを監禁なんてしたァァァァッ!」

 

「黙れブラック!わしの大切な商談が台無しにされたんだ!正当な行為だ!」

 

「うるさい!子供を監禁した時点で正当な行為の訳がないだろう!」

 

「あやつはわしの子ではない!魔法使い?仮にそんなモノが存在したとしてもわしらは関わりあうつもりはない!」

 

「ほう?もしそのドリル技術を魔法で強化できるとしても?」

 

「なっ!?」

 

「魔法界の技術や素材を使えばお前のドリルはさらに進化するぞ?それでも関わりあわないつもりか?」

 

「う、うう……た、例えば?」

 

「例えば……そうだな、決して錆びたりしない、自分にとって有益な性質を吸収するような銀の製法とか、オリハルコンやヒヒイロカネなどの超硬素材とか?」

 

「うう……い、いくらだ。いくら欲しいんだ!?」

 

「教えるつもりはない。ハリーを監禁した貴様らにはな」

 

「うわァァァァ!」




新設定

ディメント家はみんな偽名を持っている。
これは最初から考えていた設定です。リーナの名前の元は『理名』という名前の主人公を考えたからですし。

ジンの日本名である迅悠一は、まあそのままワートリの迅さんですねね。アスは二宮飛鳥、ランは神崎蘭子と、日本名の元ネタがある人はそれを使用させています。黒江はシリウス・ブラックの、『ブラック』から。

ちなみにウィル爺は『鬼灯(ほおずき) (かぶら)』という名前を持っています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

隠れ穴と夜の闇横丁

真夜中、ブラック邸の前で待っていると何かが破裂するような音とともに、ロンに似ている人(ただし頭が寂しくなっている)が現れた。

 

「君がリーナ・ディメントかい?私はアーサー・ウィーズリー。ロンの父親だ」

 

「初めまして、Mr.ウィーズリー。私がリーナ・ディメントです。ロン君にはお世話になっています」

 

「礼儀正しいね。さ、掴まって。〈付き添い姿くらまし〉を使って、私たちの家、『隠れ穴』へ向かおう」

 

私はウィーズリーさんの腕を掴んだ。すると、引っ張られるような感覚とともに視界が回転し、次の瞬間には歪な形の家の前にいた。

 

「さあ、ここが隠れ穴だ。ハリー・ポッター君は昨日到着した。さ、中へ入ろう。母さんが起こってるかもしれないからね」

 

中へ入ると、誰もいなかった。壁に掛かっている時計には多くの針があり、その先にはウィーズリー家の人々の写真が貼ってあった。あれで、今どんな状態か見ているのだろう。針は、ウィーズリーさん以外は『就寝中』になっていた。

 

「寝てるみたいだ」

 

ウィーズリーさんは肩をすくめた。

 

 

 

ハリーが寝ている部屋、そこはロンの部屋でもあった。私はその部屋へ忍び込み、ハリーのベッドへ潜り込んだ。寂しかったし、何よりハリーが近くに感じられる。すりすり。……お休みなさい……ZZZ……。

 

 

 

「うわっ!?え、なんで!?」

 

……何か聞こえる。

 

「ちょっ、起きて、リーナ」

 

うん?私の名前?

 

「起きて!リーナ!」

 

「うわっ!?」

 

いきなり大声を聞かされて飛び起きる。目の前にはハリーの顔があった。

 

「あ、ハリーだ。おはよう」

 

「うん、おはよう。……じゃなくて、なんで僕のベッドに?」

 

「そこに君が寝てたから(キリッ」

 

「真面目に」

 

「夜中に到着してみんな寝てたので、ハリーのベッドに潜り込みました」

 

「そう……久しぶり、リーナ」

 

「久しぶり、ハリー」

 

 

朝食のテーブルで、ハリーに何があったのか聞いた。曰く、「誰からも手紙が来ない」→「色々あってダドリーにインチキ呪文を聞かせる」→「ダーズリーにとっての大事な商談のため部屋にこもる」→「ドビーと名乗る屋敷しもべ妖精に会う」→「ドビーが手紙を止めていたことが発覚」→「ドビーが魔法を使って商談を台無しに」→「魔法省がハリーが浮遊術を使ったと勘違いする」→「ダーズリー怒ってハリーを監禁」→「ロンと双子が空飛ぶ車を使って救出」→「ウィーズリー夫人に怒られる」といった感じらしい。

 

「よしダーズリー一発どついてくる」

 

「やめて」

 

チッ、合法的にダーズリーに今までのハリーの扱いの恨みを晴らすチャンスだったのに。

 

「でも、ドビーってどこのしもべ妖精なんだろうね。ホグワーツに戻ってはいけない、か。……やっぱり何か起こるのかぁ」

 

「どういうこと?」

 

私は、ハリーに、ジンから聞いたことを話した。

 

「何かに巻き込まれるってさ」

 

あ、ハリーの心が暗くなった。まあ、前回はお辞儀厨の亡霊っぽいのと戦って、今回も何かに巻き込まれる。一年おきにとかならともかく、二年連続はきついか。

 

「……そういえば、リーナ。新しい教科書のリストもらった?」

 

「もらったよ。正直、どうかと思うけど」

 

新しい教科書のうち、七冊がギルデロイ・ロックハートの本だった。一回読んで、面白いとは思ったけど、正直現実味がない。というよりも、一人でこんなに出来るか?

 

「あと、水曜日にハーマイオニーとダイアゴン横丁で会うことになってるよ。マルフォイも来るらしい。ウィーズリーおじさんとマルフォイの父親の仲が悪いからできる限り会わないようにするらしいけど」

 

 

 

水曜日、ウィーズリー夫人は朝早くにみんなを起こして、全員で昼食を食べた。夫人は暖炉の上から植木鉢を取り、中を覗き込んだ。

 

「アーサー、だいぶ少なくなってるわ。今日、買い足しておかないとね……さぁて、お客様からどうぞ!ハリー、お先にどうぞ!」

 

ハリーとともに植木鉢を覗き込む。そこには緑色の粉があった。煙突飛行粉(フルーパウダー)だ。

 

「ハリー、使い方は知ってるの?」

 

ロンが聞く。

 

「もちろん」

 

ハリーは粉を暖炉の火に振りかけて、エメラルドグリーンに変わった炎の中へ入っていった。

 

「ダイアゴン横丁」

 

ハリーが消える。私も粉を使ってダイアゴン横丁へ向かった。が、うっかり、()()()()夜の闇(ノクターン)横丁へ出てしまった。『ボージン・アンド・バークス』と言う店のようだ。このまま、ダンブルドアにもらった屋敷に寄ってもいいけど、少し隠れる必要がある。外にマルフォイ親子が見えたからだ。ドラコには会ってもいいけど、ルシウス・マルフォイがこんなところに何をしに来たのか調査したい。私は、横にあった黒いキャビネット棚に隠れた。……これ、『姿くらますキャビネット棚』じゃん。なんでこんなところにあるんだろう。

 

「ドラコ、一切さわるんじゃないぞ」

 

カウンターのベルを押したマルフォイ氏が言う。ドラコ(マルフォイ氏と区別が面倒なのでこう呼ぶことにする)は周りの商品に興味があるようだったが、それを聞いて手を引っ込めた。

 

「やぁ、ボージン君」

 

「マルフォイ様、また、おいでいただきましてうれしゅうございます。恭悦至極でございます。そして若様まで。光栄でございます。手前どもに何かご用で?本日入荷したばかりの品をお目にかけなければ。お値段のほうは、勉強させていただき……」

 

「ボージン君、今日は買いにきたのではなく、売りにきたのだよ」

 

明らかに媚を売って何か買わせようとしているボージンを黙らせ、マルフォイ氏は言う。その後も二人の話は続いていくが、ドラコは『輝きの手』に興味を持っていた。もしかしたら『栄光の手』かもしれない。『猿の手』かも。あ、ボージンが『輝きの手』ってバラした。あれがあれば、透明マントを使ってる時に役に立つんだろうな。……そろそろブライトに預けた透明マントの回収に行かないと。魔改造されちゃたまらないし。

 

「ドラコ、行くぞ!ボージン君、おじゃましたな。明日、館のほうに物を取りに来てくれるだろうね」

 

マルフォイ氏とドラコが店の外に出た途端、ボージンの態度がガラリと変わった。

 

「ごきげんよう、マルフォイ閣下さまさま。うわさが本当なら、あなた様がお売りになったのは、そのお館とやらにお隠しになっている物の半分にもなりませんわ……」

 

そのまま、ボージンは店の奥に引っ込もうとした。

 

「ちょっといいかい?」

 

しかし、私が呼び止める。

 

「おや、何の用でございましょうか、お嬢さん」

 

「この『輝きの手』を売ってくれる?」

 

「ええ、ええ、いいですとも。お値段は百ガリオンとなります」

 

「二十五」

 

さて、値切るか。

 

「それは無理ですな。九十」

 

「さっき仕入れてた物を売ればいけるんじゃない?四十」

 

「いえいえ、こんなご時世ですから、繁盛はしないものですわ。八十五」

 

「そうなのかい?案外大きい店のような気がするけど。四十五」

 

「古くから続いている店でして。七十五」

 

「そう、高価な品物も多そうだけどね。五十」

 

「そうですな。六十でどうでしょう」

 

「五十五」

 

「仕方ありませんな。わかりました。五十五ガリオンとなります」

 

「はい、これ」

 

私は本来の半分ほどの値段で『輝きの手』を手に入れた。

 

「またお越しくださいませ」

 

「気が向いたらね」

 

さて、ダイアゴン横丁へ向かうとしよう。




『輝きの手』蝋燭を差し込むと、持っている者だけに見える灯りがともる。

『栄光の手』蝋燭を差し込むと持っている者を眠らせる。

『猿の手』三回だけ願いを叶える。ただし、持ち主の意に沿わない形で(例、レースで優勝したい→レースの出場者全員が怪我をして参加できなくなり、参加者が自分だけになる)。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

グリンゴッツとロックハート

文才が欲しい……


夜の闇(ノクターン)横丁から出て、グリンゴッツへ向かう。あと、ハリーに手紙を出しておく。この手紙はブライトが作ったもので、日本の式神を参考にしているらしい。簡単に言うと、ヒトガタにメッセージを書いて、ヒトガタの頭の部分に血を垂らして、相手を思い浮かべる。すると、ヒトガタが相手のところへ飛んでいくと言うもの。知らない人が見ると、何かの呪いかと思うだろうね。

 

 

 

 

どうしよう、リーナとはぐれた。……まあ、リーナだし、心配はいらないだろうけど。

 

「うん?どうしたんだい、って、リーナはどこへ行ったんだい!?まさか、別の火格子へ?」

 

「あー、多分そうですね。うっかり間違えたのかと」

 

「早く探さないと!もし夜の闇(ノクターン)横丁へ入っていたら!」

 

「心配はいらないと思います。もしリーナに手を出す奴がいたら、ダンブルドア並みに恐ろしい人が報復に行くと思うので」

 

もちろん、ウィル爺のことだ。あの人、前、ダンブルドアと引き分けたって言ってたんだよなぁ。吸魂鬼としてではなく、魔法使いとして。吸魂鬼状態でも引き分けるかな?だとしたらダンブルドアは化け物か。

 

「それでも捜したほうが良いだろう?……なんだあれは。何かの呪いか?」

 

ウィーズリーおじさんの視線の先には、人のカタチをした紙がふよふよと浮かんでいた。こっちへ向かっている。リーナの式神かな?

 

「多分、リーナからのメッセージです。確かあれは、魔法ではなく東洋の呪術の類なので、匂いに引っかかることはないかと」

 

「そ、そうか。それで?メッセージにはなんと?」

 

「えーと、グリンゴッツで待っているそうです。それじゃあ、行きましょう」

 

「そうだな」

 

 

 

 

グリンゴッツにはハーマイオニーがいた。私が式神を飛ばすところも見ていたらしく、あれについて根掘り葉掘り聞かれた。ちなみにブライトは最近、SCPのアベルやカインを作ろうと、東洋の呪術を研究しているらしい。式神やら付喪神やら。最近、人工的に付喪神を作る方法を編み出したとか言ってた。あ、万能薬は完成させたそうです。

 

「あ、ハリー!ロン!こっちよ!」

 

あ、ハリーが来たみたい。見回すと、やっぱりという感情と、ホッとした感情が入り混じったような顔をしたハリーが歩いていた。

 

「リーナ、良かった、無事だったか。モリーは半狂乱だったよ。どこから出たんだい?」

 

話しかけてきたのはウィーズリーさんだ。

 

夜の闇(ノクターン)横丁だったよ。『ボージン・アンド・バークス』っていう店。ルシウス・マルフォイが物を売っていたよ。毒薬やら闇の物品やら。あとでうちの家にも教えておく。あ、これ戦利品」

 

常時持っている吸魂鬼のマントの中に収納していた『輝きの手』を出しながら言った。

 

「ルシウス・マルフォイが?まあ、君の家に任せれば平気か。ああ、私があいつのしっぽを掴みたかったが……」

 

グリンゴッツの中では、ハーマイオニーの両親が不安気に佇んでいた。それを見つけたウィーズリーさんはそっちに気をとられた。

 

「なんと、マグルのお二人がここに!」

 

おお、なんとも楽しそうな声。少し感情の味見を。……うーん、日本で食べたわたパチみたいな感じだ。なんというか、飛び跳ねてる。

 

「一緒に一杯いかがですか!そこに持っていらっしゃるのは何ですか?ああ、マグルのお金を換えていらっしゃるのですか。モリー、見てごらん!」

 

ウィーズリーさん、はしゃぎ過ぎ。

 

「あとで、ここで会おう」

 

ロンがハーマイオニーに言い、私たちは地下の金庫へと向かった。

 

 

ウィーズリー家の金庫を見たとき、なんというか、悲壮感が漂った。シックル銀貨一握りと、ガリオン金貨一枚。……『輝きの手』を買ったとき、値切る前は百ガリオンだったはずだ。少し申し訳ない。

 

ハリーの金庫へ来た時、ハリーはなるべく外から見えないようにお金を袋に入れた。さて、あとは私の金庫か。

 

 

「ここは本当にグリンゴッツなのかい?こんなところ、見たこともない」

 

「ディメント家専用の金庫群だよ。私は1999番金庫だ」

 

ディメント家の金庫群にたどり着いた私たちは、坂を下っていた。魔法で中を拡張しているので、扉は一センチごとにあるが、だいぶ降ることになる。せめて、エレベーターを付けたい。

 

「っと、ここだここだ」

 

目当ての、1999番金庫の前に立つ。興味しんしんなウィーズリー家の視線を受けながら、私は杖を取り出して、扉の穴にはめた。すると、扉は横に逸れて、中が見えるようになった。……ハリーの金庫並みにお金があるかも。だとすると、1000番金庫ーーアズカバン全体の金庫はどのくらいの金額が入っているんだろう?そう思いながら、私は金を袋に詰め、外に出た。

 

 

グリンゴッツの入り口まで来ると、みんなは別行動を取り始めた。パーシーは新しい羽根ペンを買いに、双子はリー・ジョーダンとどこかへ、ウィーズリー夫人は末っ子のジニーとともに中古の制服を買いに行き、ウィーズリーさんはグレンジャー夫妻とともに漏れ鍋へ向かった。

 

「一時間後にみんなフローリッシュ・アンド・ブロッツ書店で会いましょう。教科書を買わなくちゃ」

 

ウィーズリー夫人はそう言うと、双子に夜の闇(ノクターン)横丁に行くなと忠告した。

 

私たちはダイアゴン横丁を散策した。途中でアイスクリームを買って食べたりとか。味はイチゴとチョコバナナ。ロンはクィディッチ店でチャドリー・キャノンズのユニフォームや箒を食い入るように見つめていた。あともう少しで君用の箒が完成するから我慢しなって。

 

一時間後、フローリッシュ・アンド・ブロッツ書店へ向かうと、黒山の人だかりができていた。人がゴミのようだ。……あ、上の窓に何か横断幕が。なになに?

 

『サイン会

 

ギルデロイ・ロックハート著

自伝『私はマジックだ』

本日午後十二時三十分〜十六時三十分』

 

現在時刻、十三時ほど。ちょうどサイン会にぶち当たったか。……まさかウィーズリー夫人、これを狙ったんじゃ?

 

「本物の彼に会えるわ!だって、彼って、リストにある教科書をほとんど全部書いてるじゃない!」

 

ハーマイオニーが黄色い声を上げる。彼女もファンだったかー。中に無理やり入って、『泣き妖怪バンシーとのナウな休日』を手に取り、ウィーズリー・グレンジャー両一家の並んでいるところに割り込む。

 

「まあ、よかった。来たのね。もう少しで彼に会えるわ……」

 

誰かこいつら何とかして。さすがにこの感情は不味い。なんというか、ドリンクバーの飲み物全種類を混ぜたような感じだ。もちろんコーヒーも。あ、ロンが日刊予言者新聞の記者に足を踏まれた。

 

「それがどうしたってんだ」

 

記者にどけと言われたロンが文句を言う。それを聞いたのか、ロックハートが顔を上げた。ロンを見て、ハリーをジーっと見つめる。それから勢いよく立ち上がり、叫んだ。

 

「もしや、ハリー・ポッターでは?」

 

人垣が割れて、道が出来る。ロックハート(もう次から岩心でいいや)が列に飛び込み、ハリーの腕を掴んだ。同時に、私も岩心の腕を掴む。

 

「何です?離していただけますか?」

 

「それは貴方にも言えることでは?先に人の腕を掴んだのはそちらでしょう?」

 

「ええ。ですが彼は私と一緒に写る権利があります。貴女にはそれがありますか?」

 

「なら、貴方にはハリーを勝手に連れて行く権利があるんですか?勝手に連れて行くのは私が許しませんが」

 

「君は彼の何なのです?」

 

「彼氏彼女の関係ですが何か?」

 

周りがどよめく。なんでだろう。

 

「ふむ、お名前を」

 

「ディメントとだけ。今後このような行為を見かけたら家の者に知らせて補導させていただきます♪」

 

ディメントと聞いた岩心は笑顔を引きつらせ、少し後退した。

 

「なら、ここで言いましょうーーみなさん!なんと記念すべき瞬間でしょう!私がここしばらく伏せていたことを発表するのに、これほどふさわしい瞬間はまたとありますまい!ハリー君が、フローリッシュ・アンド・ブロッツ書店に本日足を踏み入れたとき、この若者は私の自伝を買うことだけを欲していたわけであります。それを今、喜んで彼にプレゼントいたします。無料でーー」

 

それからも、岩心の演説は続いた。うん、正直ぶん殴りたい。私のハリーにそんな手で触れやがって。

 

「まもなく彼は、私の本『私はマジックだ』ばかりでなく、もっともっとよいものをもらえることでしょう。彼もそのクラスメートも、実は、『私はマジックだ』の実物を手にすることになるのです。みなさん、ここに、大いなる喜びと、誇りを持って発表いたします。この九月から、私はホグワーツ魔法魔術学校にて、『闇の魔術に対する防衛術』の担当教授職をお引き受けすることになりました!」

 

周りは大きな拍手と歓声を上げる。私とハリーは一つ悟った。今年のホグワーツは面倒なことになりそうだ、と。




ロックハート→ロック=岩、ハート=心→岩心

なんか語呂がいいんですよね、岩心。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ウィーズリーさんとマルフォイ氏

今回は短いです。


「これ、あげる」

 

ハリーは岩心(ロックハート)が離れたあと、プレゼントされたあいつの全著書をジニーに渡した。

 

「僕のは自分で買うからーー」

 

「災難だったな、ポッター」

 

声のした方を見ると、ドラコが呆れたような表情で立っていた。

 

「あいつは僕も苦手でね。あれがホグワーツの教師になるとは、ダンブルドアもボケてきたか?」

 

「……何か考えがあると信じたいね」

 

そう言ったとき、ロンとハーマイオニーが人混みの中から本の山を持って出てきた。

 

「あれ、マルフォイ?君も教科書を買いに?」

 

「ああ。ところで、君の両親もいるんだろう?とっとと離れた方がいい。父上もすぐにこちらに来るそうだ」

 

あ、ウィーズリーさん。フレッドとジョージを連れてきてる。

 

「ああ、ここはひどく混んでいる。さ、早く出ようーーおや?君はルシウスの?」

 

「ええ。ドラコ・マルフォイです、アーサー・ウィーズリーさん」

 

「ふむ、あのルシウスからこんなに礼儀正しい子が生まれるとはな。それにひきかえあいつはーー」

 

「おや、私がどうしたと?アーサー・ウィーズリー」

 

次はルシウス・マルフォイ。面倒なのが揃っていく。幸い、岩心には見えてないみたいだから、あいつが首を突っ込んでくることはない。

 

「お役所はお忙しいらしいですな。あれだけ何回も抜き打ち調査を……残業代は当然払ってもらっているのでしょうな?」

 

あ、この人嫌いなタイプだ。人の欠点を見つけてぐちぐち言ってくる。

 

とりあえずドラコと話す。何をしていただとか、ドラコ用の箒がもうすぐ出来上がるから待っていろだとか。

 

ドサドサッ!

 

大きな音がしたので振り返ると、ウィーズリーさんとマルフォイ氏が殴り合ってた。店員が止めに行くもノックアウト。……マルフォイ氏、案外子供っぽい?

 

「やめんかい、おっさんたち、やめんかいーー」

 

誰かがウィーズリーさんとマルフォイ氏を引き離す。ハグリッドだ。……ハグリッドの方がウィーズリーさんやマルフォイ氏より年上な気がするんだけど、おっさんでいいのか?

 

マルフォイ氏はいつの間にか持っていたジニーの古い『変身術』の教科書を彼女に突き返し、ドラコに目配せをして帰っていった。でも、彼からは悔しいといった感情ではなく、喜色の感情が立ち上っている。……嫌な予感がする。

 

「ごめん、行かなくちゃ。それじゃあ、またホグワーツで」

 

ドラコがマルフォイ氏についていき、私たちも店を出て漏れ鍋へ向かう。岩心は喧嘩のことを見つけて、日刊予言者新聞に記事に出来ないか聞いていたらしい。いつか〈失神呪文〉でも喰らわせてやろう。

 

私たちは煙突飛行粉(フルーパウダー)を使って隠れ穴へ帰った。私だけアズカバンへ向かってロン用の箒と透明マント改を取りに行ったけど。あ、クィレルは立派に雑用してました。




ロン用箒

パンツァーボア

安定性が高く、どんな体勢でも使用者を落とすことがほとんどない。ハリーのソニックホークがシーカー向きなら、これはゴールキーパー向きの箒。


現在のオリジナル箒の日本語訳
ソニックホーク→音速の鷹

シャドウスネーク→影の蛇

パンツァーボア→装甲(戦車)の猪

箒の特性を表す単語+その特性に合った動物という組み合わせ。

追記
サブタイトルを追加


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

閉じた入り口と新入生歓迎会

色々あって夏休みももう終わり。ロンに箒を渡したり、透明マント改の効果を試したり、クリーチャーのプレゼントを確認したり(手袋だった)。

 

最後の夜には、ウィーズリー夫人が豪華な夕食を作ってくれた。もう一度食べたい。

 

翌朝、出かけるまでに色々あった。夫人は色々と探してご機嫌斜めだし、ウィーズリーさんは鶏につまずいて首の骨を折るかもだったし。

 

大量の荷物はウィーズリーさんが〈拡大呪文〉をかけたので全部入った。そして私はこの一年間、ペティグリューの存在を忘れていたことを思い出した。テヘペロ♪

 

 

 

さて、無事にキングズ・クロス駅についたけど、何回隠れ穴に戻ったんだろうね。花火の箱を忘れたり箒を忘れたり日記を忘れたり。急がないと乗り遅れるかも。

 

パーシーが最初にホームに入り、その後にウィーズリーさん、フレッジョ、ジニーと夫人が続いた。つぎはハリーだ。

 

ガッシャーン!

 

……あれ?カートが柱にぶつかったみたいだ。こっそりと透明マントを使って私たちを覆い隠す。

 

「どうしたの?」

 

「ホームに入れなかったんだ。入り口が閉じちゃったのかな」

 

「今は透明マントを使ってるから平気だと思うけど?ちょっと行ってみる」

 

私はカートを柱へ押し込んでみる。しかし、柱を通り抜けることはなかった。

 

「……ええいじれったい!このまま吹き飛ばしてもいいよね!?」

 

「リーナ、落ち着いて。……まさか、ドビー?」

 

「ドビーって、確かハリーへの手紙を止めてたしもべ妖精だよね」

 

「うん。たしか、僕はホグワーツに戻らないほうが安全だって。妖精なら、入り口を閉ざすこともできるはずだ」

 

……ドビーか。まだ会ったことはないけど、もし会えたなら一言言わせてもらおう。私のハリーは自宅謹慎が必要なほどヤワじゃないって。

 

「行っちゃったよ」

 

ロンが言う。時計を見ると、既に汽車の出発時刻になってきた。

 

「どうしよう。パパもママもこっちへ戻ってこれなかったら!それに、僕たちはどうやってホグワーツへ行けばいいの?」

 

そうなんだよね。汽車が行ってしまった以上、ホグワーツへ行く手段は限られている。徒歩で行くか、諦めるか。

 

「あ、そうだ!車だよ!パパの車は飛べるし透明になれる!」

 

「この中で車の運転をしたことのある人はいないよ?」

 

沈黙。……飛ぶ?そうだ!

 

「ハリー、ヘドウィグを借りていい?」

 

「いいけど、どうするの?」

 

「フクロウ便をお忘れかい?」

 

私はなぜか九と四分の三番線に入れなくて取り残されたと手紙を書き、ヘドウィグの足にくくりつけた。

 

「ホグワーツまで頼んだよ」

 

(任せて!)

 

ヘドウィグを放す。これで、少なくとも明日には迎えが来るはず。

 

「迎えが来るまではどうしてようか?」

 

「うーん、リーナの家で平気かな?」

 

「ここからどれだけかかると思ってるんだい?」

 

「隠れ穴も車を運転しないとたどり着けないし……」

 

「「「……暇だ」」」

 

 

 

数時間後

 

「ミス・ディメント?どこです?迎えに来ましたよ?」

 

マクゴナガル先生の声がする。無事、手紙は届いたようだ。

 

「先生、こっちです」

 

「ああ、そこでしたか。ーーなんと、ミスター・ポッターにミスター・ウィーズリーまで。さあ、三人とも。私にお掴まりなさい。ホグズミードまで〈付き添い姿くらまし〉をしますから。詳しい事情は後で聞かせていただきます」

 

私たちはマクゴナガル先生の手や服に掴まり、何かを通る感覚とともに、どこかの村ーーホグワーツが見える村ーーへ到着した。

 

「ここがホグズミード村です。三年生になれば来ることもあるでしょう。さ、早くホグワーツへ向かいますよ」

 

 

ホグワーツに入ると、私たちはマクゴナガル先生の研究室へと連れて行かれて、説明をすることになった。但し、説明をしたのは全部ハリーだった。

 

「ーーというわけで、手紙を送って迎えを待つことにしました」

 

「なるほど、良い判断です。さて、歓迎会までまだ少し時間があります。早く大広間へ向かいなさい。みんな、あなた方のことをお待ちですよ」

 

「ありがとうございます」

 

そう言って私たちは大広間へ行った。扉を開くときに目立つのは嫌なので、透明マントを使ってこっそりと席へ座った。てか、使わなかったら岩心に目をつけられただろうし。

 

「ハリー、リーナ、ロン。いったいどこへ行っていたの?みんなが騒いでたわよ?私も、ネビルも、マルフォイも、心配してたんだから」

 

「ごめん。説明はハリーから」

 

丸投げ。ハリーの説明中に、新一年生が入ってきた。帽子の歌は去年と内容は同じだったが、少し前文が変わっていた。

 

「クリービー、コリン!」

 

写真機を持った男の子だ。彼はグリフィンドールへ入った。

 

「ラブグッド、ルーナ!」

 

どこかふわふわとした感じの女の子。彼女はレイブンクローだった。終始、レイブンクロー寮に関しての歌を歌っていた。

 

「ウィーズリー、ジネブラ!」

 

ジニーの番だ。彼女は去年のロンと同じように、すぐにグリフィンドール寮へ決まった。

 

「やったわ!」

 

「よーし、これで俺たちウィーズリー家は全員グリフィンドールだな!」

 

「やっぱ家系によって寮って決まるんじゃないのか?」

 

「いや、確か昔、スリザリン寮の家系の中から一人だけ獅子寮が出てるはずだ。何かで読んだ」

 

「本当か?それだったら僕らは奇跡の家系ということか?」

 

「その一人が特別なんだろ」

 

以上、一番上以外フレッジョの会話でした。あとジニー、ハリーに抱きつこうとしない。それをしていいのは私だけだ。

 

「ケチ」

 

「嫉妬かい?」

 

私とジニーの間で火花が飛び散る。まあ、負けるつもりはないけど。

 

そのあとはダンブルドアの話と注意事項の説明、あのよくわからない校歌を歌って、寮へ戻ることになった。

 

階段を上り、「二年生」と書かれた部屋の一つーー私の部屋の扉を開ける。相変わらず寂しいが、すっかり野生化した様子の雷と電が出迎えてくれた。さらに、去年のクリスマスにもらったけど使う機会がなくて放置していた二体の人形がなぜか自立稼働していた。ブライトがホグワーツにやってきて何か仕込んでいたのか?ともかく、去年よりかは寂しくはなさそうだ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二年生初授業

翌朝、私たちはグリフィンドールのテーブルに集まっていた。ドラコのことを見たグリフィンドール生は驚いてたけど、去年和解したことは有名だったので特に騒ぎにはならなかった。

 

「それで、話は聞いたけど、原因はわかっているのか?」

 

「うん。僕をホグワーツに戻したくなくて、入り口を閉ざしたんだと思う」

 

「大変だったね……ロンとリーナは巻き込まれただけでしょ?」

 

「ハリーの悩みは私の悩みだ」

 

「ねぇ、リーナ。二人の友達であるこのロン・ウィーズリーの視点から言わせてもらう。重いと思う」

 

「ロン、僕はリーナのことはいつでもウェルカムだよ?」

 

「それで?犯人はわかっているのかしら?」

 

「多分、ドビーっていう屋敷しもべ妖精だと思う」

 

ガタッ

 

ドビーの名前が出た途端、ドラコが急に立ち上がった。

 

「ドビーだって?あいつがそんなことをしたのか?」

 

「知ってるの?ドラコ」

 

「ああ。ドビーはマルフォイ家の屋敷しもべ妖精だ。うちの妖精が迷惑をかけたな、ポッ……ハリー」

 

「まだハリーって呼ぶのに慣れないか」

 

とりあえず、衝撃の事実が明らかに。てことは、ルシウス・マルフォイの仕業か?いや、彼がそんなことをしてもメリットがないし……。

 

そんなことを考えていたとき、何匹かの梟が数本の箒を運んできた。リゼから送られてきたものだろう。

 

「僕らへ?なんだろう、この箒」

 

「私からのプレゼントみたいな感じかな?お礼は私じゃなくてディメント家へお願い。ちなみに、私やハリーのと同じ人が作ったよ。ロンのも」

 

届いた箒は三本。ロンにはすでに渡しているので、ハーマイオニー、ネビル、ドラコの分だ。ドラコは、「クィディッチチームに入ってハリーを負かせてやる!」と息巻いていた。うん、仲良きことは美しきかな。

 

 

最初の授業は、ハッフルパフと合同で薬草学の授業だった。温室の近くでスプラウト先生を待っていると、先生が校庭を大股で横切ってくるのが見えた。……岩心(面倒なやつ)も一緒だけど。

 

「やぁ、みなさん!スプラウト先生に『暴れ柳』の正しい育て方を伝授していましてね。でも、私のほうが先生より薬草学の知識があるなんて、誤解されては困りますよ。たまたま私、旅の途中、『暴れ柳』というエキゾチックな植物に出あったことがあるだけですから……」

 

「みんな、今日は三号温室へ!」

 

不機嫌さ満載のスプラウト先生。でも、みんなそのことよりも先生が言ったことの方に注目している。これまでの授業で使ったのは一号温室だけだからだ。三号温室にはもっと不思議で危険な植物が植わっている。

 

スプラウト先生が温室の鍵を開けて中へ入った途端、私はハリーを掴んで一気に温室の中へ入り込んだ。こうでもしないと、ロックハートはハリーを連れて行っただろうからね。ハリーを自分の引き立て役として見ていた。それに、記憶を除く限りだと、あいつは本物の冒険を一切していない。誰かが行ったことを、あたかも自分が行ったかのように書き記し、真実を知る者に〈忘却呪文〉をかけていた。うん、ゲスだ。ちなみに今の岩心の表情はあっけにとられてるようだ。ハリーを呼び止めようとして、呼び止められなかったからだろう。いい気味だ。

 

授業はマンドレイクの植え替えだった。幼生体だから悲鳴を聞いても死ぬことはないけど、数時間は気絶することになるらしい。……そういえば、マンドレイクの悲鳴は吸魂鬼にも効くのかな。死にたくないから試さないけど。

 

植え替え作業は思った以上に大変だった。抜くまで暴れるし、抜いたら抜いたで土に戻ろうとしない。プロの凄さを思い知った。

 

 

あー、疲れた。えーと、次は変身術か。遅れると恐いので、すぐに教室へ向かう。先生が今日出した課題は、コガネムシをボタンに変えることだった。もちろん成功。ハリーとハーマイオニーも成功していた。ロンは微妙だったけど。

 

昼休みに、中庭でコリン・クリービーに会った。話を聞く限り、相当の写真オタクらしい。ハリーオタクでもあるようなのだが、途中からどのカメラがどんな性能でどこが特徴だとか、あるシチュエーションに合ったカメラはどんなものだとか話しまくってた。将来は清く正しいフリーランスの新聞記者になるのが夢だとか。「あややや」という幻聴が聞こえた気がする。

 

午後の授業。これが一番退屈かもしれない。いや、本来は楽しい教科なんだよ。アレが担当するから嫌なんだよ。色々考えつつ、闇の魔術に対する防衛術の教室に向かう。教科書が重い。

 

教室に着いて席に座ると、そのまま教科書七冊を全て目の前に積み上げた。これで注目されないで済む。ハリーも同じように教科書を積み上げていた。

 

ロックハートは全員が座ったことを確認すると、ネビルの持っていた『トロールとのとろい旅』を取り上げ、ウィンクをしている自分の写真のついた表紙を高々と掲げた。ナルシストとしか思えない。

 

「私です」

 

本人もウィンク。

 

「ギルデロイ・ロックハート。勲三等マーリン勲章、闇の力に対する防衛術連盟名誉会員、そして、〈週間魔女〉五回連続『チャーミング・スマイル賞』受賞ーーもっとも、私はそんな話をするつもりではありませんよ。バンドンの泣き妖怪バンシーをスマイルで追い払ったわけじゃありませんしね!」

 

訂正。完全無欠にナルシストだこいつ。

 

「全員が私の本を全巻そろえたようだね。たいへんよろしい。今日は最初にちょっとミニテストをやろうと思います。心配無用ーー君たちがどのくらい私の本を読んでいるか、どのくらい覚えているかをチェックするだけですからね」

 

テストを配り終わった岩心は、前の席に戻り合図をした。

 

「三十分です。よーい、はじめ!」

 

テストペーパーを見下ろす。さて、どんな問題か……

 

 

1 ギルデロイ・ロックハートの好きな色は何?

 

2 ギルデロイ・ロックハートのひそかな大望は何?

 

3 現時点までのギルデロイ・ロックハートの業績の中で、あなたは何が一番偉大だと思うか?

 

 

などなど。正直、興味なかったからその辺は覚えてません。こんな問題が裏まで続いて、しかも最後の問題は、

 

 

54 ギルデロイ・ロックハートの誕生日はいつで、理想的な贈り物は何?

 

 

とか言ってきやがった。……もう白紙でいいや。




ハーマイオニー用箒
ドーシェルドッグ(素直な犬)
とても素直。本人が動かすよりも先に、本人が動きたい方向へ動く。それなりに速い。

ネビル用箒
グローリーレオン(栄光のライオン)
使い手の思いの丈によって性能が上下する。力強い。

ドラコ用箒
ウィズダムクロウ(英知の烏)
曲芸飛行と群体飛行に特化。また、向かってくる呪文や障害物を自動で避ける。


コリンは若干清く正しい幻想ブン屋みたいな感じになっています。ちなみにルーナは無意識妖怪。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ロックハートの授業

お気に入り五百件突破。自分でも信じられない。


「チッチッチーー私の好きな色はライラック色だということを、ほとんど誰も覚えていないようだね。『雪男とのゆっくり一年』の中でそう言っているのに。『狼男との大いなる山歩き』をもう少ししっかり読まなければならない子も何人かいるようだーー第十二章ではっきり書いているように、私の誕生日の理想的な贈り物は、魔法界と、非魔法界のハーモニーですね。もっとも、オグデンのオールド・ファイア・ウィスキーの大瓶でもお断りはいたしませんよ!」

 

誰か、こいつを止められないか?さっさとこいつがペテン師だって証拠を出して、監獄へ放り込みたいんだけど。

 

「……ところが、ミス・ハーマイオニー・グレンジャーは、私のひそかな大望を知っていましたね。この世界から悪を追い払い、ロックハート・ブランドの整髪剤を売り出すことだとねーーよくできました!それにーー」

 

答案用紙を裏返す岩心(ナルシスト)

 

「満点です!ミス・ハーマイオニー・グレンジャーはどこにいますか?」

 

ハーマイオニーが手を挙げる。

 

「すばらしい!まったくすばらしい!グリフィンドールに十点あげましょう!では、授業ですが……」

 

机の後ろにかがみ込んで、覆いのかかった大きな籠を持ち上げる岩心。

 

「さあーー気をつけて!魔法界の中で最も汚れた生き物と戦う術を授けるのが、私の役目なのです!この教室で君たちは、これまでにない恐ろしい目にあうことになるでしょう。ただし、私がここにいるかぎり、何ものも君たちに危害を加えることはないと思いたまえ。落ち着いているよう、それだけをお願いしておきましょう」

 

えーと、魔法界で最も汚れた生き物?その籠の中には吸魂鬼(私の家族)か、レシフォールド、マンティコアとかあたりでもいるの?籠の中からは『こっからだせー!』と三十匹ぐらいの感情が。うーん…………あ、妖精か。しかも、野生の妖精。しもべ妖精とかは高度な知性を持ってるけど、それ以外の野良妖精は単純思考の悪戯馬鹿だからね。こんなのを『魔法界で最も汚れた生き物』とか言ってる時点で器が知れる。

 

「どうか、叫ばないようお願いしたい。連中を挑発してしまうかもしれないのでね」

 

覆いを取り払うロックハート。

 

「さあ、どうだ。捕らえたばかりのコーンウォール地方のピクシー小妖精」

 

予想大当たり。みんな呆れてポカーンとしているし、フィネガンは笑いをこらえきれなかった。

 

「どうかしたかね?」

 

「あの、こいつらがーーあの、そんなにーー危険、なんですか?」

 

案外。悪戯の度合いによっては死人が出るからね。岩を頭の上に落っことされるとか、崖の上に持って行かれてぽいっとされるとか。まあ、ホグワーツを卒業できるぐらいの実力があるなら対処は簡単だけど。近づけなければどうということはない。

 

「さあ、それでは!」

 

声を張り上げる岩心。まさか……?

 

「君たちがピクシーをどうあつかうかやってみましょう!」

 

籠の戸を開けた。つまるところ、ピクシーを教室中にばらまいた。

 

もちろん大混乱。うん、さすがに幻想郷の妖精でもここまではしないかな。幻想郷行ったことないけど。日本のどこかに本当に在ったりするのだろうか。あ、ネビルがシャンデリアにぶら下がってる。ご愁傷様。

 

「さあ、さあ、捕まえなさい。捕まえなさいよ。たかがピクシーでしょう……」

 

私とハリーは近づいてくるピクシーを叩き落としてるけど?教科書を一冊持って、近づいてくるピクシーに振り下ろす。ね?簡単でしょ?上からのやつには〈盾の呪文〉で対応。後ろからは壁際なので被害なし。遠くから何か投げつけようとしてくるやつは教科書もしくは気絶したピクシー妖精などを投擲して対処する。杖の出番はありません。

 

「〈ピクシー虫よ去れ(ペスキピクシペステルノミ)!〉」

 

ロックハートが杖を構えて呪文を唱える。が、効果なし。しかも、杖を取り上げられて外に放り投げられた。ロックハートが机の下に潜る。そのタイミングで、シャンデリアとともにネビルが落っこちてきた。ちょうど、岩心の居た位置に。もう少し逃げるのが遅ければ清々したのに。

 

終業のベルが鳴ると、みんなが出口へ押しかけ、あっという間に消えていった。さて、私たちもーー

 

「さあ、そこの四人にお願いしよう。その辺に残っているピクシーをつまんで、かごに戻しておきなさい」

 

おい岩心(馬鹿教師)。しかも言い終わった途端逃げやがった。

 

「耳を疑うぜ」

 

耳を噛まれているロン。取り敢えず、ロンに当たらないように〈失神呪文〉を放つ。

 

「私たちに体験学習をさせたかっただけなのよ」

 

「体験だって?ハーマイオニー、ロックハートなんて、自分のやっていることが自分で全然わかっていなかったんだよ」

 

「ちがうわ。彼の本、読んだでしょーー」

 

以下、不毛な言い合いなのでカット。あと、フクロウ便で、ウィル爺にロックハートの経歴の調査を依頼しておいた。遅くとも一年以内に結果を出してくれるだろう。返事として、なぜかホグワーツでも使えるように改造されたボイスレコーダーが三つきたけど。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新しい練習方法と一悶着

数日後、私は朝早くにアンジェリーナに揺り起こされた。

 

「なに……するのさ……」

 

眠いんだよ。

 

「オリバーからの指示。新しい練習計画の一つだってさ。私も面倒なのよ」

 

ウッドは何がしたいんだか。仕方なく起き上がって、クィディッチ用のローブを引っ張り出す。

 

「ん……行こうか、アンジェリーナ」

 

 

談話室まで降りて、私たちは人影を見つけた。ハリーと……ああ、コリン・クリービーか。

 

「なにしてるの?」

 

「ハリーに、クィディッチの練習の取材をしていいか交渉してたんだ。僕、クィディッチって見たことないから」

 

ふぅん。まあ、ハリーは迷惑をかけないなら平気らしいし、連れて行っても平気かな。

 

 

競技場に着くまで、コリンにクィディッチについての説明をした。手帳にメモしてるね。そのうち校内新聞でも出すかもしれない。

 

更衣室では、ウッド以外全員眠たげな様子で座っていた。

 

「遅いぞ二人とも。さて、ピッチに出る前に諸君に手短かに説明しておこう。ひと夏かけて、まったく新しい練習方法を編み出したんだ。これなら絶対、今までとはできがちがう……」

 

ウッドの説明は長かった。図式なのはいいが、一枚に二十分ほどかかり、それが三枚分。多い。

 

「諸君、わかったか?質問は?」

 

「質問、オリバー」

 

ジョージだ。

 

「どうして昨日のうちに、俺たちが起きているうちに説明してくれなかったんだ?」

 

「去年は我々の力ではどうにもならない事態が起きて、大敗北に泣くことになった。あれは仕方のないことだったが、今までよりも、より厳しく練習するためだ。よし、もう質問はないな?行くぞ!」

 

そう言うなり、ウッドは箒を持って更衣室から出て行った。あー、お腹空いた。

 

スタンドには、ロンとハーマイオニー、ネビルが居た。

 

「まだ終わってないの?」

 

「始まってすらない」

 

ロンが聞いてきたので、ハリーが返す。ロンは、開いた口がふさがらないようだ。

 

箒にまたがり、地面を蹴る。うん、久しぶりに箒で飛んだ。夏休みの間は吸魂鬼の力で飛ぶか、マグルの飛行機を使っていたからね。

 

新しい練習方法を実践してみる。と、コリンを見つけた。選手一人一人に注目して撮ったり、全体を俯瞰するように撮ったりしている。

 

「いったいなんだ?あれは」

 

あ、ウッドだ。コリンをスリザリンのスパイだと間違えてるみたい。

 

「彼はグリフィンドール生だよ。あと、スパイよりも面倒なのが下にいるけど?」

 

下を指差す。そこには、グリーンのユニフォームを身につけた、スリザリン・チームがいた。

 

「そんなはずはない。ピッチを今日予約しているのは僕だ。話をつけてくる!」

 

一直線に地面へ向かうウッド。私とハリーはスリザリン・チームの中に見知った顔を見つけたので、ウッドについて行った。

 

「フリント!我々の練習時間だ。そのために特別に早起きしたんだ!今すぐ立ち去ってもらおう!」

 

「ウッド、俺たち全部が使えるぐらい広いだろ」

 

ニヤニヤしているフリント。

 

「ついでに、俺たちにはスネイプ先生が、特別にサインしてくれたメモがある。『私、セブルス・スネイプ教授は、本日クィディッチ・ピッチにおいて、新人シーカーを教育する必要があるため、スリザリン・チームが練習することを許可する』」

 

「新しいシーカーだって?どこに?」

 

……本当に、ハリーと戦うつもりだったのか。まあ、もともとはこんな関係だったしね。繋がりが良好になったけど。

 

「やあ、ハリー、リーナ」

 

現れたのは、ドラコだった。

 

「僕は君に勝つ。スリザリンらしく、狡猾に、君に挑む。全力でかかってくるといい」

 

「へぇ。試合で会うことを楽しみにしているよ、ドラコ。ところで、去年見たスリザリンの箒とは違う箒をチームが持っていないかい?」

 

「ああ。父上がチーム全員に新型の箒、《ニンバス2001》を贈ったのさ。最も、ハリーの箒に敵うかは微妙だと思うけど」

 

それを聞いたスリザリン選手が全員しかめっ面をする。ドラコ、お前、さらっと自分のチームをけなしてないか?

 

「でも、僕の箒なら君に勝てるかもしれない。君のと同じ人物の作品なんだから」

 

彼の箒は《ウィズダムクロウ》。黒い箒だけど、私のシャドウスネークが影色なら、ウィズダムクロウは烏の濡羽色といったところか。全ての邪魔を躱し、曲芸と連携を持って獲物を仕留める。ハリーの箒がスピード特化ーー力によるゴリ押しなら、彼の箒は技で攻めるタイプ。世紀の対決になるだろう。

 

「ま、実際に戦ってみるまではわからないか。あと、ロンとハーマイオニー、ネビルがこっちに向かってきてるぞ」

 

ドラコに言われて、ロンたちの方を見てみる。と、本当にこっちに向かってきていた。

 

「どうしたんだい?なんで練習しないんだ?あと、なんでスリザリン・チームがここにいるんだい?ドラコがチームに入ったことは祝福はするけど」

 

「色々あったんだよ。それで、僕らも練習したいんだ。できれば、他の寮には見られずに。だから、なんとかならない?」

 

「すまないが、僕もこの箒を試したいんだ。だから、僕らに譲ってもらおう」

 

バチバチと、ハリーとドラコの間で火花が飛び散る。話し合った末、キャプテン同士のジャンケンでどちらが練習出来るか決めることになった。

 

「「最初はグー!ジャンケン、ポイ!」」

 

ウッドがグーで、フリントがパー。今日、ピッチを使えるのはスリザリン・チームとなった。

 

「ま、代わりに明日はお前らに譲ってやる。そうでもしないと、ドラコにニンバス2001を取り上げられそうだしな」

 

明日の練習が、口約束とはいえ確約されたので、私たちはいちおう納得して、城に戻った。




とある批評感想にて、『吸魂鬼を使役する魔法使い』と言うアイデアをいただきました。うーん、更新が遅くなるかもだけど、書いてみようかな……?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

謎の声とフィルチの事務室

「ッ!」

 

土曜日の夜の談話室。何かに驚いたかのように、ハリーが急に飛び上がった。

 

「どうしたんだい?」

 

「何か聞こえたんだ。みんなは?」

 

私は聞こえなかったし、ロン、ハーマイオニー、ネビルも首を横に振る。

 

「みんなには聞こえなかったの?あんなに、骨の髄まで凍るような声だったのに?」

 

「ハリー、疲れてるんじゃないか?ここ最近、ロックハートに追い回されたりしてたろう?」

 

「ロン、彼はただハリーが心配なだけよ。有名人の大変さを理解しているから、ハリーにその大変さを乗りきる方法を教えてあげようとしているんだわ」

 

「ロックハートのことはどっちでもいいけどね。ハリー。僕らにも、どんな声だったのか教えてくれるかい?」

 

「私からもお願い。もしかしたらがあるし」

 

「わかった。確か……殺してやるとか言ってたね。引き裂いてやるとか、八つ裂きにしてやるとか。幻聴ならいいけど、もし本当なら……」

 

殺してやる、ね。ハリーも気づいているだろう。おそらく、これがドビーの言っていたことで、今年、私たちが巻き込まれる面倒ごとだということを。

 

状況整理。ハリーだけに聞こえる声。ハリー以外には聞こえない。骨の髄まで凍るような声。殺してやるとの言葉。……ここでピックアップするのは、ハリーにしか言葉が聞こえなかったと言う事かな。私は一つ、知ってる限りではハリーにしか聞こえない声を知っている。蛇語。もしかしたら、ハリーももう思い当たってるかもしれない。

 

蛇による殺人。

 

……よくわからないね。ホグワーツで蛇と言えばスリザリンだけど、ホグワーツの生徒を殺すような真似はしないはず。

 

「悩んでても仕方がないしね。もう寝よう」

 

ハリーの言葉で、みんなはそれぞれの部屋へ向かう。私とハリーはまだ残ってるけど。

 

「リーナ。まさか、蛇?」

 

「やっぱりその結論になるか。私もそう思ってるよ。でも、何か蛇で思い浮かぶことある?」

 

ハリーは少し考える素振りを見せたあと、こう言ってのけた。

 

「蛇と言ったら……バジリスクとか?」

 

あ……蛇の王、だと?

 

「いやいや、ハリー。まさかホグワーツでも、さすがに蛇の王(バジリスク)なんてモノはいないでしょ、多分」

 

「いや、森にケンタウルスとか、ユニコーンとかいるじゃん」

 

うん。いないとは思いたいけど、いないと言い切れないのがホグワーツ。M.O.M.分類XXXXXの生物はいないと信じたい。そう思いながら、私はハリーに挨拶し、部屋に戻っていった。

 

 

 

十月、寒気がやってきて、雨が多くなってきた。が、ウッドによるクィディッチ練習は少しも休みになることはなかった。

 

ハロウィン数日前にも、嵐の中を飛ぶことになり、濡れて凄く寒い。それに、泥だらけだ。それに、ニンバス2001はやっぱり速いらしい。フレッドとジョージからの情報だ。ハリーの箒よりは遅かったとその後に続いたが。

 

濡れたまま廊下を歩く。ハリーも一緒だ。あの声はあの時の一回しか聞こえてないらしい。

 

「あれ?」

 

ハリーが声を上げる。廊下の先には、『ほとんど首無しニック』が何やらブツブツ言いつつ立っていた。

 

「……要件を満たさない……たったの一センチ、それ以下なのに……」

 

……?どうしたんだろう。

 

「やあ、ニック」

 

「やあ、こんにちは」

 

ニックはよほど物思いにふけっていたのか、私たちが近づいていたことにも気がつかなかったようだ。振り向いたニックの手には、彼と同じように、透き通った手紙があった。

 

「おや、ポッター君にディメント君。こんなところでどうしたのですか?」

 

「寮に帰る途中。何か悩んでいたようだけど、どうしたの?」

 

「いえ、たいしたことではありませんよ。とあるゴーストによるクラブに入会できないかとね。しかし、どうやら私は『要件を満たさない』」

 

なるほど、さっきの手紙はニックが入会のために送った手紙の返事か。それで、何かしらの要件を満たさないから断られたと。

 

「クラブ?」

 

「ええ。首無し狩クラブです。私は四十五回ほど、切れない斧で首を切りつけられました。しかし、それでも首は落ちませんでした。ああ、スッパリ落ちてくれた方が、どれだけ良かったか!その方が、痛い目をみずに、はずかしめを受けずにすんだのに!」

 

手紙を見せてくれるニック。内容を要約すると、ニックは首と胴体が分かれていないから、要件を満たしていないとの事だった。

 

切れない斧で首を切りつけるかぁ。拷問として使えるかな?」

 

「リーナ、言葉にしちゃってるから」

 

あれ?声に出てた?あ、ニックが引いてる。うーん、これよりもやばい拷問とかあるのに。地面から首の上だけだして、竹製の鋸で引くとか、心臓から遠いところから縄で縛って細ーい糸でゆっくり切り落として行くとか。大切な人にこれをやって、それを見せるのを拷問にするのもいいね。もしくは、大切な人を操って拷問させるか。あ、爪を全部剥がして、指先から鑢で削っていくのもいいかも。感覚強化の呪文があったら、痛覚を強化してさらに痛みを与えられそう。

 

「リーナ、ミセス・ノリスが見てるけど」

 

ハリーの言葉で現実へ引き戻される。ミセス・ノリスがいるということは、フィルチがもうすぐやってくるということだ。

 

「二人とも。フィルチは今機嫌が悪い。特に、汚れには敏感だろう。三年生の誰かが地下牢の天井いっぱいにカエルの脳みそをくっつかせたらしい」

 

それ、赤い毛の双子じゃない?さて、ここから急いで離れよう。と、歩き出したとき、

 

ドンッ

 

「痛っ」

 

何かにぶつかった。……フィルチだった。

 

「汚い!ああ、くそっ!もうたくさんだ!ポッター、ディメント、ついてこい!」

 

ため息をついて、フィルチについていく。ついたところは、フィルチの事務室だった。窓がなく、壁に沿って並ぶファイル・キャビネットには処罰した生徒一人一人の細かい記録。しかも、ウィーズリーの双子は引き出し一つを占領している。机の後ろの壁には、ピカピカに磨き上げられた鎖や手枷があった。

 

「足枷と枷につける重りがない」

 

「うむ……申請しておくか」

 

なんとなくの呟きに、フィルチがまともに反応した。

 

「いい部屋だね。元々があるなら懲罰房かな?」

 

「ああ。あとは校長が体罰を認めてくれれば完璧なのに」

 

「いや。体罰じゃ足りない。精神的にも追い詰めないと」

 

「ほう。規則に逆らえないように?」

 

「うん。単純な子なら、ちょっとの洗脳で狙ったように動かせるよ?」

 

見つめ合う私とフィルチ。手を差し伸べて、握手をした。

 

「意気投合しちゃったよ……」

 

何やらハリーが呆れているが気にしない。さて、どんな処罰が下されるかな?軽いのだといいけど。

 

バーン!

 

天井の上から大きな音がした。ピーブズの仕業らしい。フィルチはすっ飛んでいった。

 

「……何これ」

 

フィルチの机の上を見ていたハリーが、何かを見つけたようだ。

 

「クイックスペル?」

 

……見ないでおこう。フィルチにも、色々あるんだろう。ハリーも見るのを止めたようだ。

 

少しして、勝ち誇った様子のフィルチが戻ってきた。

 

「あの『姿をくらます飾り棚』は非常に値打ちのあるものだった!」

 

ホグワーツにも『姿くらますキャビネット棚』があったのか。ボージン・アンド・バークスにもあったけど、ここのとつながっているのかな?フィルチの言葉だと、壊れちゃったみたいだけど。

 

「なぁ、おまえ、今度こそピーブズめを追い出せるなぁ」

 

フィルチはミセス・ノリスを抱き上げている。そして、私たちに向かって言った。

 

「ピーブズを追い出せるかもしれない祝いだ。それに、趣味が合うようだしな。今回は無罪にしてやる。私はピーブズの報告書を書かねばならん。早く行け」

 

ピーブズ感謝。私たちはさっさとフィルチの事務室を出て、先ほど下りてきた階段を上った。




久々の黒いリーナ。

リーナが吸魂鬼であることは、三巻時点でバラそうかなと考えています。無理だったら、五巻ですかね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ハロウィン・パーティの日に

「ハリー!リーナ!うまくいったかい?」

 

ニックが教室から現れる。彼の後ろには、壊れた飾り棚があった。

 

「ピーブズをたきつけて、フィルチの事務所の真上に墜落させたんですよ。そうすれば気をそらすことができるのではと……」

 

ニックがフィルチの気を引いてくれたのか。ほんと、いい霊魂(ひと)だよ。

 

「そういえば、あー、もし、あつかましくなければ、ですが、今度のハロウィーンが、私の五百回目の絶命日に当たるのですが……私は地下牢を一つ使って、パーティを開こうと思っています。よろしければ、出席していただけませんか?」

 

絶命日パーティか。聞いたことがあるような無いような。バレンタイン・デイ頃のいろいろなお祭りも、絶命日パーティに入るのかな?イースターは……復活祭か。

 

しかし、死ぬと人の価値観は変わるのかねぇ。生と死の境界。此の世と彼の世。此岸と彼岸。一つの冒険の終わりと新たな冒険の始まり。彼も死ぬまでは生きたいと思っていただろうに。死んだら死んだで、その日にパーティを開く。前に読んだ日本のマンガで、墓場で亡者が合コン?して、享年聞いたり死因を聞いたりしてたけど、私も死んだらこんな感じなのかな。それとも、ニンゲンとは違ってそのまま消え去るのかな。

 

「で、リーナはどうするの?」

 

「うん?なんのこと?」

 

「だから、絶命日パーティに出席するかしないか」

 

「うーん。去年は満足に食べられなかったしね。それに、絶命日パーティって基本的に参加者はゴーストでしょ?人が食べられる物出るの?」

 

「……あれで満足に食べられてない?食べたものどこに消えてるの?」

 

乙女の秘密だ。

 

「えっと、リーナは出席しないってことでいいんだね?ごめん、ニック。僕も出席しない」

 

「そうですか。それは残念です。しかし、青春しているようで。今この瞬間を大切になさってください」

 

 

 

「絶命日パーティですって?生きているうちに招かれた人ってそんなに多くないのよ?なんで行かなかったの?」

 

「理由は言ったよ?」

 

談話室に戻り、いつものメンバーにさっきあったことを話した。そしたら、ハーマイオニーが絶命日パーティにすごく興味を持って、さっきのセリフを言った。

 

「ロックハート先生も誘われたことがあるのかしら。いえ、あるはずだわ。本に書いていないだけで!」

 

ちょっと誰か、『万能薬』取ってきてー。これもう病気だー。

 

「自分の死んだ日を祝うなんて、想像できないよ。それより、誰かこれ教えてくれない?」

 

ロンは魔法薬の宿題が終わっていないようだ。ネビルも一緒にやっている。

 

ふと、談話室の中を見回してみた。暖炉では暖かな炎が燃え、椅子を照らしている。生徒たちはそれぞれ好き勝手に動き、赤毛の双子は、火蜥蜴(サラマンダー)に花火を食べさせようとしている。……破裂。まさにそうとしか言いようがないようすで、火蜥蜴が吹っ飛んだ。イメージとしては、限界まで空気を入れて、口を開けて手を離した風船か。部屋を縦横無尽に飛び回り、最終的に暖炉の中へ消えていった。パーシーはフレッドとジョージに怒り、他はいつもの事だと笑っている。ああ、こんな日常が続けばいいのに。ハリーと。

 

 

どんどんハロウィンが近づいてくる。広間の飾りつけは変わり、ダンブルドアがパーティの余興として『がいこつ舞踏団』を予約したとの噂も流れ始めた。寮の中でも、仮装する生徒が増えていく。最初は双子。その次にリーが。そしてどんどん広がっていく。うん。去年のような恐怖じゃなく、こんな楽しいのがハロウィンだ。ディス・イズ・ハロウィン。今度ダンブルドアを見かけたら、『トリック・オア・トリート』とでも言ってみようかな?

 

金の皿には、かぼちゃパフェやらパンプキンパイやらが載っていた。プリンもある。去年はトロールのせいで全種類は食べきれなかったからね。今年は全て食い尽くす。いただきます。

 

「やあ、ハリー。リーナはどうしたんだい?」

 

「やあ、ドラコ。リーナは去年の悔いをはらしてるところだよ」

 

「そうか……すごい食いっぷりだな。そういえば、ドビーが言っていたことはわかったのか?」

 

「多分、蛇に関係する何かだと思うんだけど……」

 

「蛇と言ったら我がスリザリン寮だな。……ああ、そういえば。なあ、『秘密の部屋』って知ってるかい?」

 

「いや、知らないけど。それがどうかしたの?」

 

「ハリー。秘密の部屋って言うのは、ホグワーツ創始者の一人、サラザール・スリザリンが秘密裏にこの城に遺した部屋って言われているの。なんでも、怪物が入っているんだとか。その部屋を開けられる者は、『スリザリンの継承者』だけらしいのよ」

 

「ハーマイオニー。説明をありがとう。その秘密の部屋なんだけど、何十年も前に、一度開かれているらしいんだ」

 

「どうしてそんなことを知っているんだい?」

 

「父上から聞いた。なんで教えてくれたのかは知らないし、中に何が居るのかも知らない。父上よりも前の世代の話だ。ただ、マグル生まれが一人、死んだとだけ」

 

……秘密の部屋、か。何も起きなければいいけど。

 

そう思っていた時期が私にもあった。すぐに裏切られたけどね。

 

 

 

それは、ハロウィン・パーティがひと段落して、寮に戻ろうとしている時だった。急に、ハリーが辺りを見回し、走り始めたのだ。

 

「なあ、ハリーはどうしたんだ?」

 

ドラコが聞いてくるが無視。私たちはハリーを追いかける。

 

「まただ。また、『声』が聞こえた!」

 

自分でも、私が緊張して筋肉がこわばったのがわかった。だとすると、もしかしたら、この先にはーー

 

 

『秘密の部屋は開かれたり

継承者の敵よ 気をつけよ』

 

 

誰もいない、水浸しの廊下と、壁に書かれた警告文。その下では、松明の腕木にぶら下がったミセス・ノリスが、死んでいるかのように目を見開いて硬直していた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

幕間:とある雑用係のお話

ごめんなさいマイクラで某ボカロ小説に出てきたお屋敷(まだ完成していない)を作ってたら遅れました。しかも本編が思い浮かばない(泣)


ここで雑用をすることになってから初めて日記を書いた。だから、これまでのことを書こうと思う。誰かがこれを読んだなら、つまらないと捨ててしまうのだろうな。しかし、これは私なりの心の整理なのだ。……自分の日記なのに何を書いているんだろうか。

 

 

 

この場所に来てから一ヶ月ほど経ったとき、私は与えられていた部屋から出ることになった。ようやく死ぬのかと思ったが、どうやらそうではないようだった。死刑なら、あいつらが直接来るはずだ。だが、私を連れ出しに来たのは人間だった。

 

地下へと連れて行かれた私は、何かの赤い錠剤を飲まされた。もしや、毒薬の実験か?呪いに犯された私の身体では意味がないと思うがな。まあ、その予想も外れたのだが。

 

錠剤を飲んだあと、身体の不調がどんどん消えていった。まるで、呪いが抜けていくかのように。おおよそ二時間後には、私の身体はあの方を受け入れる前、私の全盛期と言える頃にまで回復した。錠剤の瓶が置いてあったので見てみると、ラベルには『SCP-500』と記載されていた。この時はまだ何のことかわからなかったが、今思えばこれが彼女の言っていた超技術によって作られた薬なのだろう。そして、私を表舞台から裏の世界へ引きずり込んだキッカケでもある。いや、マグルから見れば私たち自身が裏の存在だろうし、かの帝王に味方した時点で魔法界の闇へ踏み込んでしまっていたのだろうな。

 

回復して余裕が出てきた私は、部屋を見回してみた。……はて、ここはあのアズカバン牢獄のはずだ。なぜ、非合法であろう生物がいるのだろう。少なくとも、私はこれまでの人生で、恐竜を思わせる青い大きなトカゲなど見たことがないのだが。……あ、猫が二足歩行で歩いてる。

 

数分後、白衣を着た無精髭の男が私の前に現れた。以下は、彼が私に話した内容だ。うろ覚えだから、少し違うかもしれないが。

 

 

「やあ、調子はどうだい?

 

「俺か?俺はブライト・ディメント。

 

「発明家で研究者だ。

 

「何を隠そう、さっきお前が飲んだ薬は俺が作った。

 

「再現したが正しいがね。

 

「……俺のことを疑ってるみたいだね。

 

「え?あの子との関係は家族だぜ?

 

「いや、どっちかって言うと親戚か。

 

「まあ、そんなことはどうでもいい。

 

「少しお願いしたいことがあってね。

 

「なに、断ってもただ再収監されるだけだ。

 

「俺の、いや、ディメント家の助手をしてほしいって話なんだがな?

 

「ある意味、魔法界の裏に迫るような内容だ。

 

「さっきも言ったが断ってもいいんだぜ?

 

「逃すつもりは毛頭ないがね。

 

「……いや、アレの実験台にするのもいいな。

 

「よし、なら断ったら実験台で、受け入れたら助手(雑用係)だ。

 

「さあ、どうするんだい?

 

「俺としては実験台の方が嬉しいけど、

 

「お前にとっては奴れ……助手の方が楽だぞ?

 

「さ、選びな」

 

 

もちろん助手だった。実態は雑用係、いや、奴隷みたいな感じだったが。奴隷よりはマシか。

 

私に任された仕事は、ブライト・ディメントが作ったモノーーSCPオブジェクトとやらの管理、観察、並びにモンスターとやらの世話だ。また、書類仕事を手伝うこともあったり、なぜかマグルのテレビゲームの手伝いもさせられる。

 

私はもっとまともな仕事が欲しいと考えている。SCPオブジェクトは安全で可愛らしいモノもあるが、大半は何かしらの危険性を持っているし、モンスターは一部が放逐されているから探しにくいし攻撃されるし、ゲームにいたってはなぜやらねばいけないのだろう。書類仕事はまだマシだが、そのくらい自分でやれと常々思う。

 

しかし、逆らえない理由がある。なぜ、彼らディメント家がアズカバンの管理を任されているのか。それがわかった時に、私は逆らう気をなくした。彼女が私のトロールを爆死させ、〈磔の呪文〉を使ってきた理由も理解できた。確かにこれは、魔法界の裏に迫るものだろう。帝王も知らないであろう、とある純血一族の裏の顔。いや、こちらが表の顔だろう。

 

だが、彼らは気のいい人ばかりのようだ。なぜ、元囚人の私を信用しているのか。それが気にかかる。

 

……おっと、呼ばれてしまった。やれやれ、また仕事か。この続きはまた今度書くとこにしよう。時間が取れればだがね。最後に、誰の物かわかるように、名前でも入れておくか。様式美と言うやつだ。

 

 

ーークィリナス・クィレル



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

石化

最近感想が来なくて寂しい零崎です。

それはそうと、なぜか「TOKIOをSAOに入れてみた」というのと「TOKIOをボーダーに入れてみた」というのが思い浮かびました。誰か書いてくれませんかねぇ。自分じゃTOKIO五人の良さを書き表せないので。


秘密の部屋が再び開かれた。そのことを理解した直後、大量の生徒が廊下に現れた。みんな、ミセス・ノリスを見て押し黙っている。

 

「これは一体どういうことだ?なぜお前らはここに残っているんだ?」

 

誰かの声が近づいてくる。フィルチの声だ。その声は、すぐ後ろで止まり、息をのむ音が聞こえてきた。

 

「私の猫だ!私の猫だ!!ミセス・ノリスに何が起こったというんだ?」

 

フィルチは猫の前に進み出て、あたりを見回す。誰が犯人か探ろうとしているのだろう。

 

「誰が!誰がミセス・ノリスを殺した!出てこい!私が殺してやる!さあ、おとなしく名乗り出ろ。今ならまだ苦しませずに殺してやろう。さっさと名乗り出ろ!俺が犯人を殺してやる!俺がミセス・ノリスの仇を……」

 

「アーガス!」

 

フィルチの叫びを、ダンブルドアが止める。何人かの先生を連れてきてるようだ。ロックハート(使えない奴)も居るみたいだけど。

 

彼は猫に近寄ると、松明の腕木から外して抱き抱えた。

 

「アーガス、一緒に来なさい。それから最初にこの子を見つけたのは……おお、君たちか。ミスター・ポッター、ミスター・ウィーズリー、ミスター・ロングボトム、ミスター・マルフォイ、ミス・ディメント、ミス・グレンジャー、君たちも一緒においで」

 

「校長先生、私の部屋が一番近いです。すぐ上です。どうぞご自由に」

 

言ったのはロックハートだ。こんな時は役に立つ。うるさいだろうけど。

 

 

彼の部屋に着いた時、壁の写真が動いていた。何やら髪にカーラーを巻いた岩心が写真に映らないように隠れたようだ。

 

ダンブルドアはミセス・ノリスを机に置き、丁寧に調べ始めた。私たちはマクゴナガル先生が用意してくれた椅子に座って待っている。

 

「猫を殺したのは、呪いに違いありませんーー多分、〈異形変身拷問〉の呪いでしょう。何度も見たことがありますよ。私がその場に居合わせなかったのは、まことに残念。猫を救う、ぴったりの反対呪文を知っていましたのに……」

 

岩心、うるさい。まだ猫は死んでいないはずだ。恐怖の感情が、彼女の身体にこびりついている。死んだのなら、そんなモノは残らない。全て霊魂の方に持っていかれる。

 

「ーーそう、非常によく似た事件がウグドゥグで起こったことがありました。次々と襲われる事件でしたね。私の自伝に「ギルデロイ、校長先生の邪魔となりますので黙っているように」わかりましたよ、マクゴナガル先生」

 

ダンブルドアが調べ終わったようだ。彼は、優しい声でフィルチに話しかけた。

 

「猫は死んでおらんよ、アーガス」

 

唖然とする岩心と、希望と歓喜と疑問が混ぜこぜになったような表情のフィルチ。まあ、死んだと思っていた猫がまだ生きているなんて聞いたらそんな顔にもなるか。

 

ダンブルドア曰く、ミセス・ノリスは石になっているだけだとか。しかし、彼でも原因はわからないらしい。……試してみるか。

 

 

……正直、見れるとは思っていなかった。ミセス・ノリスの記憶を、私は探っている。記憶を見れば、何が原因なのかわかるかもしれない。

 

……ある時点から先の記憶がない。ここが、石にされたポイントだろう。石になったら、生きていると言う事実以外はほぼ全ての身体、精神的機能が停止するらしい。記憶にあるのは、水たまりに映った大きな黄色い目。鏡写しの目を、さらに記憶を通して見ているにもかかわらず、原始的な恐怖が浮かび上がってくる。しかし、ソレが何の目玉なのかは、わからずじまいだった。

 

 

「確か、もうしばらくしたら、スプラウト先生がマンドレイクを収穫できるようになるはずじゃ。そうすれば、ミセス・ノリスを蘇生させる薬を作ることができるじゃろうて」

 

「では、私がお作りしましょう!何百回も作りましたからね!目をつぶっていても作れますよ!」

 

「魔法薬の教授は我輩のはずだが?専門家である我輩以上のマンドレイク・ジュースを作れると?なら、あなたはすぐにでも魔法薬の教授になるべきですな。さぞかし素晴らしいものをお作りになるだろう。例えば、『完全脱狼薬』などを」

 

「ええ、いいでしょう!材料をいただけますかな?そうすれば、すぐにでも作って差し上げましょう!」

 

「ほう、あなたは今まで誰も作れなかった『完全脱狼薬』をお作りになれると!さあ、ならさっさと作って学会に発表しないのですかね?もし作れたのなら表彰もの、いや、それ以上ですなぁ?」

 

なんか、記憶の海から上がってきた途端、痴話喧嘩みたいなのが聞こえてきた。『完全脱狼薬』かぁ。『万能薬』で代用できるかな?

 

ロックハートはスネイプの言葉で押し黙ってしまった。いい気味だ。

 

「そういえば、ディメント家より魔法薬を受け取っておったのう。確か、『万能薬』じゃったか。それを使えば、これを治せるかの?」

 

「無理ですね。あれは錠剤なので、石になってしまったら飲み込ませることが困難です。それに、なぜか粉薬として使用したら効果がなくなってしまうようなのですよ」

 

聴かれたので答えておく。あれはSCPだからか、錠剤として使用しないと効果がないのだ。不思議物質である。

 

「そうか。では帰ってよろしい」

 

その言葉で、私たちは早足で寮に帰った。明日、原因を調べようと約束して。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

考察と試合開始

次の日、私たちは図書館に集まった。犯人についての考察のためだ。

 

「〈防音呪文〉をかけたから、マダム・ピンスに追い出される心配はないはずだわ」

 

「ありがとう、ハーマイオニー。それで、昨日の事件についての考えを話そう」

 

「その前にだ、ハリー。なぜ君だけが謎の声を聞けた?そして、なぜ君とリーナは蛇が関係していると思ったんだ?」

 

ドラコが聞いてくる。当然の質問だ。

 

「えーと、うん。君たちになら話してもいいかな。僕は蛇の言葉が使える、『蛇語使い(パーセルマウス)』なんだ」

 

口を開いて驚くドラコ。他のみんなも似たような反応だ。

 

「私は幼馴染みだからね。ハリーが蛇語使いだってわかったから、言わないように忠告したんだよ」

 

「そ、そうなんだ。リーナは蛇語使いじゃないの?」

 

「残念ながら。動物の言葉はわかるけど、任意発動だからね。聞こえないこともある」

 

話がひと段落し、新たな話題に移る。

 

「『秘密の部屋』が再び開かれたんだよね?前回のことを詳しく知ってる人っているの?」

 

「いないんじゃないか?少なくとも、五十年ほど前の話だ。それに、その時の犯人は捕まったらしい」

 

「捕まってたの?」

 

「ああ。まだアズカバンにいるだろうと、父上は言っていた」

 

アズカバンに秘密の部屋を開けた犯人が?そんな記憶を持つ者はいないはず……全員確認した訳じゃないからなぁ。確証がない。

 

「マクゴナガル先生は知らないの?」

 

「あの人は最初の時はまだいなかったはずだよ」

 

「『ホグワーツの歴史』には……」

 

「伝説しか残ってないだろうな」

 

結局何もわからずじまいで、私たちは解散した。

 

 

 

夜、グリフィンドール寮の私の部屋。

 

私の前には雷と電がいる。この子たちは去年からホグワーツで自由に行動してたから、何か見ているかもしれない。

 

 

流れてきた記憶の中から、関係のありそうな物を抜き出していく。サラザール・スリザリンのものと思われる像や、蛇の像。パイプの中を通り、ホグワーツのどこかへ出る。その先では、フリットウィック先生が厚底靴をーーって、最後のは関係ないね。にしても、あの人、厚底靴だったのかぁ。

 

 

とりあえず、秘密の部屋と思われる場所の様子と、下手人の移動方法はわかった。パイプを移動しているみたいだ。でも、正体と、秘密の部屋の入り口がどこなのかわからない。

 

ふと、違和感を感じ、窓を見る。そこでは、三十匹ほどの蜘蛛が一列になって逃げていた。ネズミや蜘蛛とかの小動物が逃げる時は、何かしらの災害が起こる前兆と言われている。この蜘蛛たちも、何かを感じ取ったのだろう。一列で逃げるその姿には、狂気的な何かが見て取れた。

 

 

 

魔法史の授業で、珍しく全員が起きている時間があった。ハーマイオニーがビンズ先生に『秘密の部屋』のことを質問したのだ。最後の方に怒鳴って、検証できる事実であるところの歴史に戻るとか言ってたけど、案外歴史って曖昧なところが多いんだよね。例えば、あなたが記憶している生徒の名前が全て間違っているように。

 

 

今日もロックハートがハリーに絡んでいた。あの能無しが。

 

 

土曜日、クィディッチの試合の日だ。対戦カードは、グリフィンドール対スリザリン。

 

「さあ、スリザリンに目に物見せてやるぞ!ハリー、絶対にマルフォイよりも先にスニッチをつかめ。しからずんば死あるのみだ。何がなんでも勝たなければいけない!」

 

その言葉と共にピッチに出る。スリザリンからのブーイングと、それ以外からの声援。そして、試合が始まった。

 

 

 

 

「ハリー・ポッターはホグワーツにいてはなりません。ですから、ドビーはこうするしかないのでございます!」

 

パチンッ

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

試合終了とBadApple

bad apple
意味:ロクデナシ

東方アレンジの曲名としての使用じゃありませんからね?原義としての使用ですからね?


試合開始直後、ブラッジャーの一つがハリーへ突進していった。……え?何で?ありえない!

 

ブラッジャーは一番近くにいる選手を叩き落そうとする。あの時一番近くにいたのはスリザリンのマーカス・フリントだ。つまり、本来ならフリントに向かうはずのブラッジャーがハリーへ向かった。

 

なんとかジョージが弾き飛ばしたけど、ソレは再び、ハリーを狙いに行った。ああ、今魔法を使ってもいいのなら良かったのに!あのブラッジャーを粉々にしてコンクリにでも詰めてマリアナ海溝にでも沈めに行ったのに!

 

……ふぅ、落ち着いた。私の箒は狙われにくいからともかく、他の人の箒が狙われないのはありえない。つまり、何かしらの魔法がかかっている?それに、競技場の外に大量の何かが見えるんだけど?

 

「ポッター選手、どうしたのでしょうか!ブラッジャーに追いかけ回されております!ーーあれ?あれはなんだ?……鳥か?ーーああ!鳥が競技場へ乱入ーーポッター選手へ突撃していきます!」

 

リー、説明どうも。今リーが言った通り、鳥がハリーへ突撃している。が、ブラッジャーが蹴散らしてしまった。

 

フレッジョがハリーに付きっ切りなので、もう一つのブラッジャーがフリーになってしまい、ろくに得点を決められなかった。現在、十点対六十点で私たちが負けている。ウッドはタイムアウトを取ることにしたようだ。同時に、雨が降り始めた。

 

「誰かがブラッジャーにいたずらしたんだ。それに、鳥もくちばしで突っついてきた。誰かが邪魔をしているんだ」

 

「でも、どうやって?」

 

「わからないけど、今没収試合になったら僕らが負ける。だからフレッドとジョージは他のみんなをお願い」

 

「「いいのか?お前が危険だぞ?」」

 

「かまわない。ーーリーナ、ごめん。ちょっと無茶する」

 

「仕方ないね。無事に帰ってくること。怪我なんかしたら、そうだね、何をしてもらおうかな〜♪」

 

「絶対にケガしません!」

 

ハリーにお願いをして、試合が再開する。

 

ビッシャーン!

 

おいちょっとまて!雷が降るような雨じゃないぞ!?ハリーは?ハリーは無事なのか!?

 

「ーーみんな!僕は大丈夫だから!試合に集中して!」

 

良かった無事だった!

 

しかしその後も、ハリーにだけ何かしらの、ひどい時は直撃したら死ぬレベルの何かが起こり、私のイライラは溜まっていった。そして、最後。

 

ハリーとドラコが二人でスニッチを追いかけ、ハリーが取った。ただし、右腕と引き換えに。

 

 

 

「勝った!勝ったよリーナ!だからごめんブラッジャー何とかして!」

 

「色々と言いたいことはあるけど、〈爆発せよ(コンフリンゴ)〉!」

 

試合が終わったにも関わらず、ハリーの頭を砕こうとするブラッジャーを粉々に爆破する。

 

「ハリー?私言ったよね?無事に帰ってきてって。だからぁ、今夜抱き枕になってね♪」

 

「はい、わかりました。今度からはできるだけ無茶はしないようにするよ」

 

「一切してほしくないんだけどね。どうせ聞かないでしょ」

 

「うん」

 

などと言いつつ、ハリーの腕を触診する。詳しくはわからないけど、複雑骨折はしてないみたいだ。

 

「どれ!私が治して差し上げましょう!」

 

何しに来たロックハート(ポンコツ)。お前の出番ないだろ。

 

「ミス・ディメント、下がって。この私が何回も使用した魔法です。なあに、心配は要りませんよ」

 

「先生、下手に魔法で治すよりも、医務室で治した方が堅実です」

 

あんた(ロクデナシ)がやっても酷くなるだけだし、今ならSCP-500(万能薬)があるし。

 

「いえいえ、全然大丈夫です!〈骨よ、治れ(ブラキアム・エンメンドー)〉!……あっ」

 

ハリーの腕の厚みがなくなる。正確には、ハリーの腕を立体として支えていた支柱ーー骨がなくなったのだ。

 

「えー、まあ、時にはこんなこともありますよ。でも、もう骨は折れてないでしょう?それじゃ、ハリー、医務室まで気をつけて行きなさい。あっ、ミス・ディメント、彼に付き添ってあげなさい」

 

もうこいつぶっ飛ばしたい。

 

 

 

医務室に着き、説明をすると、マダム・ポンフリーは怒りに怒った。

 

「まっすぐ私のところに来るべきでした!」

 

「骨折ならまだしも、骨を生やすとなるとーーアレがありましたね。ミス・ディメント、『万能薬』は骨を生やすことも可能ですか?」

 

「可能性としては」

 

二時間経ってもほねが生えなかったら無理で、生えたら怪我にも使えることが証明される。

 

「わかりました。それではこれをお飲みなさい。二時間後に確認します」

 

そう言って、マダム・ポンフリーは医務室の奥へ消えた。

 

数分後に、グリフィンドール選手とハーマイオニーやロン、ネビル、ドラコに、さすがに同情したのかスリザリン選手も見舞いに来た。

 

「すごかったぜ、ハリー。あのキャッチ!感動したよ!」

 

「でも、何でブラッジャーは暴走したのかしら?」

 

「言っておくが、スリザリンは何もしてないぞ」

 

「わかってるよ」

 

「具合は?」

 

「だんだん不調が治ってる感じがする」

 

「「しっかし、何してくれてるんだろうな、あのダメ教師は」」

 

「彼にも不調とかはあるのよ」

 

「ハーマイオニー、もう援護しようがないと思うよ」

 

「ネビル、よく言った」

 

そんなこんなで、二時間後。まさか本当に治るとは。

 

「ふむ、完璧に治っているみたいですね。少し検査をしますが、今夜は寮に帰れますよ」

 

検査が終わり、寮に戻る。もう就寝時間なので、ハリーを私の部屋にお持ち帰りした。

 

(とうとう犯罪に手を染めたのですかい、ご主人様?)

 

「正当な理由があって攫ってきたからね?」

 

「攫ったって言っちゃったよ」

 

ハリーに背を向けて、パジャマに着替える。背後ではハリーも着替えているようだ。

 

ベッドにハリーを押し倒し、ハリーに抱きつく。

 

「あんな無茶したんだから、今夜はとことん甘えさせてもらうよ?」

 

「えーと……ほどほどにね?」

 

「善処する」

 

チュッ

 

キスをして思いっきり抱きしめる。ハリーも抱き返してくる。むぎゅーっと。

 

後で知ったけど、この様子を雷と電に見られていたらしい。そして、自動アップデートだかなんだかで記憶を写真や動画として現像する機能がついたらしく、数ヶ月間、この動画がホグワーツ内で出回り、写真が取引されることになった。一部の人はブラックコーヒーをがぶ飲みしたそうな。まだこの時は知らなかったんだよねぇ。

 

 

ーーいつのまにか寝ていたようだ。何かの気配を感じた。異物の気配を。目の前にはハリー。一応明記しておくけど着衣だ。さすがにナニをしていたわけではない。部屋を見渡す。と、クリーチャーに似たような人影ーー屋敷しもべ妖精を見つけた。同時に、ハリーも起きて見つけたようだ。

 

「ドビー?」

 

あれがドビーか。さて、OHANASHIしなくちゃね。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ドビー

前回のラストの説明
男子は基本的に女子寮には入れませんが、入りたい部屋の女子全員の承諾があれば部屋に入れます。リーナは一人部屋なので、リーナが入れたいと思えば入れられるわけなのです。

書こうと思ってたら書いていたデータが消えて精神的に大破してました。


ドビーを見つめる。ドビーもこちらを見つめる。一体何をしに来たんだろう。

 

「う……ん……あれ、リー、ナ?どうしたの……って、ドビー?」

 

ハリーが起きた。同時に、ドビーも口を開く。

 

「ハリー・ポッターはホグワーツに戻ってきてしまった」

 

ドビーは言う。

 

「ドビーめが、ハリー・ポッターになんべんもなんべんも警告したのに。あぁ、なぜあなた様はドビーの申し上げたことをお聞き入れにならなかったのですか?汽車に乗り遅れたとき、なぜにお戻りにならなかったのですか?」

 

「やっぱり、ホームの入り口を閉ざしたのは君だったんだね」

 

「その通りでございます」

 

「……まさか、クィディッチでブラッジャーに僕を狙わせたのも?」

 

「その通りでございます。それに、鳥や雷もドビーめがけしかけたのでございます。そのため、ドビーは一ヶ月ほどは姿現ししかできません」

 

「なんで、ブラッジャーを操ったりしてハリーを襲った?」

 

「ハリー・ポッターは今、ホグワーツにいてはいけないのでございます。ドビーめは、ハリー・ポッターを危険から救おうと……」

 

「危険から救おうとして危険にさらすとはね。一歩間違えばハリーは死んでいたかもしれない」

 

「ホグワーツには脅威が迫っております。『闇の帝王』とは違う脅威が。ハリー・ポッターがホグワーツにいたら狙われてしまいます。またしても『秘密の部屋』が開かれたのですからーー」

 

そこまで言ったドビーは、しまったというような顔をして、自分の頭をテーブルにぶつけた。

 

「ドビーは悪い子、とっても悪い子……」

 

一種の脅迫観念かな?命令に背いたらおしおきをしなくてはならないって感じの。恐怖での支配は最終的に反乱を起こすと思うんだけどね。

 

「ドビーは言ってはいけないのでございます。ハリー・ポッターに教えてはいけないのでございます。けれど警告はしなくてはならないのです。ハリー・ポッター、家に帰って!」

 

「帰らない。僕はホグワーツにいる」

 

「今、ホグワーツには強大な闇の罠が迫っております。必ずや、ハリー・ポッターは狙われる!」

 

「でも、ここで帰ったら誰が僕の友達を助けるんだ?僕の友達の一人はマグル生まれだ。継承者は、マグル生まれを殺すと言っているんだ!このままだと、ハーマイオニーが危ないんだ!」

 

……ハリーとドビーの言い合いは続く。闇の帝王とは違う脅威か。内容はわかっている。『秘密の部屋』だ。でも、手段と犯人がわからない。ヴォルデモート並みの闇の魔法使いは少ない。把握できる限りだと、監獄『ヌルメンガード』に収監されているゲラート・グリンデルバルドぐらいか。でも、彼は終身刑だし、脱獄したという話も聞かない。まさか、ロックハートが闇の魔法使いだったのか?……うん、絶対にない。

 

さて、と。

 

「二人ともうるさい。ドビーはさっさと帰って」

 

「しかし!」

 

「ハリーは自宅謹慎が必要なほどヤワじゃないよ。君はハリーのことをなめすぎだ」

 

「……そうでございますか。もう時間がありません。ドビーめはここで消えさせていただきます」

 

パチッと音を立てて、ドビーは消えた。ドビーは良かれと思ったんだろうけど、ありがた迷惑だ。もう面倒ごとは持ってこないでほしい。

 

 

数日後、ロックハート(馬鹿)が『決闘クラブ』を始めるとか言い出しやがった。




〈消失呪文〉で時間や動作を消して、結果だけを残せないかなとか思ってみる。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

決闘クラブ

主人公に〈消失呪文〉を使わせて、「キング・クリムゾン!過程は消し飛び、ここには結果だけが残る!」とか言わせてみたくなった。


決闘クラブ。簡単に言えば魔法使いの決闘の作法を学ぼうという、お辞儀さんが喜びそうなクラブだ。聞いた話だと、礼儀作法に厳しいらしいからね。

 

「でも、スリザリンの怪物に決闘作法は意味がないと思うな」

 

「同感。一応行ってみる?」

 

「そうだね。ハーマイオニーが行く気満々だし」

 

 

その晩八時、大広間。テーブルが取り除かれて、金色の舞台が出現していた。見渡してみると、かなりの数の生徒がいる。全校生徒の半分以上はいるんじゃないかな?

 

「ポスターだと、ロックハート先生が教えるってなってたわね。楽しみだわ」

 

この子は放っておこう。

 

少しして、歓声といくばくかのうめき声が聞こえた。ロックハートが舞台へ躍り出たのだ。うめき声をあげるぐらいなら来るなよ。私たちが言えたことじゃないけど。ロックハートの後ろにはスネイプがいる。イライラしているようだね。そりゃそうだ。

 

「静粛に!みなさん、集まって。さあ、集まって。みなさん、私がよく見えますか?私の声が聞こえますか?結構、結構!ダンブルドア校長先生から、私がこの小さな決闘クラブを始めるお許しをいただきました。私自身が、数えきれないほど経験してきたーー(中略)ーーでは、助手のスネイプ先生をご紹介しましょう」

 

面倒だったので聞き飛ばしていたら、いつのまにかスネイプが紹介されていた。

 

「スネイプ先生がおっしゃるには、決闘についてごくわずかご存知らしい。訓練を始めるにあたり、短い模範演技をするのに、勇敢にも、手伝ってくださるというご了承をいただきました。さてさて、お若いみなさんにご心配をおかけしたくはありません。私と彼が手合わせしたあとでも、みなさんの魔法薬の先生は、ちゃんと存在します。ご心配なさるな!」

 

私はスネイプよりも、ロックハートが消し飛ばないか心配してる。スネイプが「ようやくこいつを合法的に叩きのめせる」とか考えてるもん。

 

ロックハートとスネイプは、互いに向き合い、一礼する。そして、杖を向けあった。

 

「ご覧のように、私たちは作法に従って杖を構えています」

 

説明するロックハート。

 

「三つ数えて、最初の術をかけます。もちろん、どちらも相手を殺すつもりはありません」

 

あ、やっぱりこいつ実戦をしたことがないな。説明のためとは言え、普通敵と向き合ったら、死ぬことも覚悟しなくちゃ。不意打ちで死の呪文を使われたらどうするのさ。

 

「一、二、三」

 

二人が同時に杖を振り上げる。スネイプの方が少し早い。

 

「〈武器よ去れ(エクスペリアームス)〉!」

 

紅の閃光が、スネイプの杖から放たれる。ロックハートに光が当たると、彼は思いっきり吹き飛んだ。いい気味だ。

 

ロックハートはなんとか立ち上がったが、まだフラフラしている。

 

「さあ、みんなわかったでしょうね!あれが、〈武装解除の術〉です。ご覧の通り、私は杖を失ったわけです。あぁ、ミス・ブラウン、ありがとう。スネイプ先生、確かに、生徒にあの術を見せようとしたのは、すばらしいお考えです。しかし、遠慮なく一言申し上げれば、先生が何をなさろうとしたかが、あまりにも見え透いていましたね」

 

なら対策しなよ。防ごうぜ。

 

「それを止めようと思えば、いとも簡単だったでしょう。しかし、生徒に見せた方が、教育的によいと思いましてね……」

 

殺気立つスネイプ。ロックハートの言ったことは、ただの負け惜しみみたいな感じだしね。

 

「模範演技はこれで十分!これからみなさんのところへ下りていって、二人ずつ組にします。スネイプ先生、お手伝い願えますか……」

 

二人は生徒の群れの中へ入り、二人組を作っていく。ネビルはジャスティン・フィンチ-フレッチリーと組まされたようだ。

 

「では、ウィーズリー、君はフィネガンと組みたまえ。ポッターはマルフォイ君とだ。ミス・グレンジャー、君はミス・ブルストロードと、ミス・ディメントはミス・ラブグッドとだ」

 

組分けで見たあの子だ。彼女を探し出し、会釈する。向こうも、会釈を返してくる。

 

「あたしはルーナ。ルーナ・ラブグッド。よろしく」

 

「私はリーナ・ディメントだ。よろしくね」

 

自己紹介したが、彼女はじーっと私を見続けている。

 

「名前、似てるね」

 

「似てる?」

 

「うん。ルーナとリーナ。一文字違い。二文字目が「i」か「u」か。面白いね」

 

「ふふっ。そうだね。さて、そろそろ始まるみたいだよ?」

 

「みたいだね。楽しみなんだモン」

 

ルーナと向き合い、礼をする。そして、杖を向け合う。さて、始まりだ。




やばいルーナの口調がわからない。誰か詳しく知ってる人はおられませんか?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

パーセルマウス

「「〈武器よ去れ(エクスペリアームス)〉!」」

 

合図と同時に、武装解除術を放つ。それはルーナも同じで、二つの呪文は私とルーナの間で衝突し、私の呪文が競り勝った。

 

さすがに吹っ飛びはしなかったが、ルーナは少しよろめいて、彼女の杖は私が持っていた。

 

「強いね。あたしが負けた理由って、なんだろう?」

 

「魔法に込めた気持ちの量じゃない?もう一回やる?」

 

「ううん。平気。あたしは寮に帰るね」

 

「もういいの?」

 

「うん。面白い人に会えたから。パパにフクロウ便を送って、記事にしてもらうんだモン」

 

「記事?」

 

「『ザ・クィブラー』だよ。あたしのパパが編集長なんだ」

 

「そうなんだ。今度読んでみるよ」

 

「よろしくね。また今度」

 

ルーナは大広間を出て行った。うん。色々と不思議な子だね。何かやらかしそうな気がするけど。

 

周りを見てみると、ずいぶんと悲惨な様子になっていた。鼻血を出している者や踊っている者、ハーマイオニーがブルストロードにヘッドロックをかけられていたり、何の呪文をくらったのか、うつ伏せで寝ている者もいた。

 

「これは、非友好的な術の防ぎ方をお教えするほうがいいようですね」

 

スネイプがロックハートに向けて言う。ほんと、その通りだ。盾の呪文は役に立つ。

 

「さて、誰か進んでモデルになってくれる組はありますか?ーーおや、ミス・ディメント。お相手はどうしましたか?」

 

「帰りました。あと、あなたと組になるつもりはないと言っておきます」

 

こいつと組んだら面倒なことになる。主に周りのロックハートファン共からの視線とか。嫉妬の感情も刺激的で美味しいけどね。

 

「ではーーマルフォイ君とポッター君、お願いいたしますよ?真ん中へ来てください」

 

ハリーとドラコのペアだ。この二人なら、心配はいらないね。

 

「さあ、ハリー。ドラコが君に杖を向けたら「結構です。さっさと合図をお願いします」ーーわかりました」

 

ハリーがロックハートの指導を無視した。ドラコはスネイプに耳打ちされている。何か秘策でもあるのかな?

 

「それでは、一、二、三ーーそれ!」

 

号令。同時に、ドラコが呪文を放った。

 

「〈石になれ(ペトリフィカス・トタルス)〉!」

 

武装解除どこいった。ハリーは盾の呪文で術を防ぐ。

 

「〈縛れ(インカーセラス)〉!」

 

「〈裂けよ(ディフィンド)〉、〈燃えよ(インセンディオ)〉!」

 

「〈防火せよ(インパービアス)〉!」

 

攻撃を防御して、反撃するを繰り返している。さて、どこで終わるかな?

 

「〈蛇出よ(サーペンソーティア)〉!」

 

あ、ドラコが蛇を出した。毒蛇ではないようだけど、大きい。噛まれたら大怪我を負うかも。

 

ハリーはどうしようって顔をして、ドラコはやってしまったって顔をしている。

 

「私にお任せあれ!」

 

しゃしゃり出るロックハート。嫌な予感が。

 

「〈蛇よ、去れ(ヴォラーリ・アセンデリ)〉!」

 

やっぱり。ロックハートの呪文は蛇を吹き飛ばしただけで、蛇を怒らせる結果となってしまった。それを見たハリーは、無意識だろうか、蛇の方へ進み、言った。

 

「■■■■■。■■!」

 

何を言ったのかはわからない。けど、蛇語だってことだけはわかった。蛇はハリーの足元でおとなしく丸くなっている。私はハリーの元へ向かった。

 

「ハリー、何してんの!人前で蛇語を使うなって何度注意したと思ってるのかな?」

 

「ご、ごめん。けど、今使ってなかったら誰かが襲われてた」

 

「そうだけどさ?パーセルマウスは闇の魔法使いの証とされてるんだよ?継承者と間違えられるでしょ」

 

「あ、スリザリンもパーセルマウスだったんだっけ?」

 

「そうだよ。あーもう!〈響け(ソノーラス)〉、『みんな、このことは気にしないこと!ハリーが継承者じゃないのは私が保証するから!』〈静まれ(クワイエタス)〉」

 

とりあえずここにいた全員に聞かせたけど、何人が信じたことか。

 

「〈蛇よ、消えよ(ヴィペラ・イヴァネスカ)〉。ポッター、付いて来い。他の者は寮へ帰るように!ふむ、君はどうするかね?ミス・ディメント」

 

スネイプは蛇を燃やすような形で消し去った。彼はハリーがなぜパーセルタングを使えるか、なぜ私がそれを知っていたかを聞きたいのだろう。

 

「ついていきますよ」

 

「そうか。なら来い」

 

私とハリーはスネイプについていく。行き先は地下。スネイプの研究室のようだ。

 

スネイプの部屋に入り、椅子に座る。

 

「さて、我輩が聞きたいことはわかっているのだろう?リーナ・ディメント」

 

「ええ。ハリーが蛇語を使えた理由と、なぜ私がそれを知っていたかですよね?」

 

「その通りだ。しかし、君が知っている理由はわかるのだよ。おおかた、昔ポッターが使ったところを見たのだろう?問題は、なぜそれがパーセルタングだとわかったかだ。君が人ではないという事はダンブルドア校長よりうかがっておる。だが、詳しいことは聞いていないのでね、教えていただけるとありがたいのだが?」

 

スネイプが目を合わせてくる。開心術を使おうとしているのだろう。いや、使っている。心の中に入られた感触がある。

 

「ふむ、吸魂鬼か。なるほど、今まであの者どもは忌まわしき存在だと思っておったが、実に面白い連中らしい。君は能力で、ポッターが蛇と話せることを知ったのか」

 

「ええ。でも、生徒に開心術をかけても良かったんですか?」

 

「非常事態なのだよ。生徒がパーセルタングを使ったというね。しかし、ミス・ディメントでも、なぜポッターがパーセルマウスなのかを知らないらしい。ポッター、君はわかるかね?」

 

「わかりません、先生」

 

「本当に?」

 

「ええ。でも、僕がスリザリンの子孫ではないと言う確証もありません。隔世遺伝の可能性もあります」

 

「……なぜ、パーセルマウスが闇の魔法使いの印なのか、わかるかね?スリザリンも蛇語が使え、そして、かの闇の帝王も蛇と話せたからだ。ミス・ディメント、君なら、ポッターの心の奥底に入れるだろう?見てくるがよい」

 

「なぜ?」

 

「おそらくだが、そこに答えがある。さあ、とっとと見るんだ」

 

しぶしぶ、ハリーと向き合う。そして、ハリーの心の奥底へと沈んでいった。

 

 

 

今までの記憶。ハリーがダーズリー家に預けられ、私たちと出会い、ホグワーツに入学した記憶。それよりも奥。

 

自分でも覚えていない記憶。ハグリッドの乗るオートバイ、ダンブルドアとマクゴナガル先生、それにシリウス・ブラック(お父さん)。そして、ハリーの両親と、リリー・ポッターを貫く緑の光線。霧散する闇の帝王と、リリーの亡骸を抱きしめるスネイプ。

 

その奥ーー

 

 

「っ!?」

 

 

異物。本来ここにはないモノ。私が幾度も見てきたモノ。ハリーのモノとは違う、誰かの魂。そのカケラ。

 

 

 

意識を浮上させる。あれがハリーが蛇語を話せる原因だろう。

 

「見えたかね?」

 

「ええ。ハリー、よく聞いて。君の中には、君以外に誰かの魂のカケラが入っている。私はとある禁術を聞いたことがある。おそらくそれの効果だ」

 

「誰かの……魂のカケラ?一体誰の?」

 

「予想を出ないけど、ヴォルデーー」

 

「そこまでだ。二人とも、もう寮へ帰れ。このことは、我輩からダンブルドア校長に伝えておこう」

 

話をスネイプに遮られる。彼に追い立てられ、私たちは寮へ帰った。

 

「……それで?さっきの続きは?」

 

「ああ。君の中のもう一つの魂の持ち主は、おそらく、

 

 

ヴォルデモートだ」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

犠牲者

「ヴォルデモートが……僕の中に……?どういう事?」

 

「ハリーの意識の奥底にへばりついてたんだ。何かの拍子に……多分、君があいつを打ち破った時に千切れて君の中に入り込んだんだろうね」

 

「僕の体は平気なの?」

 

「異常ある?」

 

「ない」

 

「なら平気でしょ。本当にわずかなカケラだからね」

 

明日に備えてそれぞれの部屋に帰る。ハリーの事をみんながどう思うか……。降り出した雪を見ながら私は眠りについた。

 

 

翌朝、窓の外を見ると大雪だった。むしろ大吹雪か。寮の張り紙には、薬草学の授業が中止になると書かれていた。マンドレイクに靴下とマフラーをつけるらしい。みんなは談話室でチェスをしたり、図書館に行ったりしているようだ。

 

「おはよう」

 

「おはよう、リーナ。昨日は平気だったの?」

 

「平気だったよ。ハリーは?」

 

「あそこでハーマイオニーとチェスをしてる。それよりも、ハリーが蛇語使いだってバレちゃったけどよかったの?」

 

「仕方がないよ。ハリーが決めたことだからね。私が口を出せることじゃないさ」

 

「ふぅん……ねぇ、君も何か隠していることがあるのかい?」

 

「……鋭いね、ネビル。確かに私には隠し事がある。ま、いつか言える日が来るだろうさ。それに、こうも言うだろう?『女は秘密を着飾って美しくなる(A secret makes a woman woman)』ってさ」

 

質問をはぐらかして、ハリーの元へ向かう。チェスの勝負はハリーがギリギリで勝てたようだ。

 

「おはよう、ハリー、ハーマイオニー」

 

「おはよう、リーナ」

 

「おはよう。あー、そのー、昨日は大変だったわね」

 

みんなから心配されるね。さて、と。

 

「ねぇ、ハリー。気分転換に散歩にでも行こうと思ってるんだけど、一緒に来る?」

 

「うん。行くよ」

 

別のソファーにいたロンがハリーがいた椅子に座る。もう一度チェスをするようだ。私とハリーは肖像画の穴から外に出た。

 

 

二人で適当な方向に歩く。行き先は決めていない。しばらく進むと、図書館にたどり着いた。

 

「入る?」

 

「『ホグワーツの歴史』を見てみたいしね」

 

図書館の奥には、ハッフルパフ生が固まって座っていた。ちょうど、『ホグワーツの歴史』がある本棚のあたりだ。

 

近づくと、話が耳に入ってきた。その途端、ハリーは私を近くの本棚の陰に引っ張り入れた。

 

「やっぱり、ポッターが継承者なんだよ」

 

……なに?

 

「アーニー、ディメントが違うって言ってるのよ?」

 

「そんなの、ディメントもグルだったってことだろ」

 

「でも、二人ともいい人に見えるのよ。それに、『例のあの人』を消したのも彼だわ」

 

「ハンナ、ポッターがどうして『例のあの人』に襲われても生き残ったのか、どうやって消したのか誰も知らないんだ。事が起こった時、ポッターはまだ赤ん坊だった。本来ならこっぱみじんに吹き飛ばされてる。それほどの呪いを受けて生き残れるのは、ほんとうに強力な闇の魔法使いだけだ。だからこそ、『例のあの人』はポッターを殺そうとしたんだ。魔法界に君臨する闇の帝王が二人にならないように」

 

あー、あそこに爆発呪文撃ち込みたい。そう思いながら、ハリーに手を引かれるまま図書館を出た。

 

 

「なにあいつらムカつく!」

 

「リーナ、落ち着いて。彼らも自分の事が心配なんだよ」

 

「でも、私が昨日説明したのにさ」

 

「みんな疑心暗鬼になってるんだよ。次は自分が襲われるかもって」

 

今のところ、ミセス・ノリスしか襲われてないけど、次は人間かもしれない。誰が継承者でもおかしくない。なら、蛇語が使えるハリーが一番怪しい。そんなところなんだろう。

 

ドンッ

 

痛っ。何か固い物にぶつかった。見上げると、ハグリッドの顔があった。

 

「あ、やあ、ハグリッド」

 

ハグリッドは防寒具で体を覆っていた。片手には鶏の死骸をぶら下げていた。

 

「よう。お前さんら、なんで授業に行かんのだ?」

 

「休講になったのさ。ところで、その死骸どうしたの?」

 

「ああ、これか。何かに殺られちまったのさ。今学期になって二羽目だ。狐の仕業か、『吸血お化け』か。そんで、校長先生に鶏小屋の周りに魔法をかけるお許しをもらおうとな。それと、もうそろそろ次の授業なんじゃないのか?ほれ、急いだ急いだ」

 

ハリーと私はハグリッドから離れて、寮へ戻ろうとした。しかし、階段を上り、廊下の角を曲がったところでハリーが何かにつまづいてしまった。廊下は松明の灯りが消えていた。

 

ハリーが何につまづいたのか。

 

ジャスティン・フィンチ-フレッチリーだった。冷たく、恐怖が顔に残っている。その隣には、ほとんど首無しニックが浮かんでいた。透明な真珠色だった体は黒く煤けて、顔はやはり恐怖で引きつっていた。

 

とうとう、人間に被害が出てしまった。

 

「おやおや、お二人さん、ここで一体何をしている?悪戯大好きピーブズちゃんが、おっもしろい悪戯を仕掛けちゃうよ?」

 

チッ、ピーブズが来た。このままだと、大声で先生を呼ばれてしまう。そうなると、私たちが犯人という疑いがさらに強まる。

 

「あれ?これはこれは……石になってる?ーー襲われた!襲われた!またまた襲われた!生きてても死んでても、みんな危ないぞ!命からがら逃げろ!おーそーわーれーたー!」

 

叫ばれてしまった。

 

それから数分間は大混乱だった。ジャスティンは踏み潰されかけるし、ニックの体の中で立ちすくむ子はいるし、ピーブズが上から茶化してくるし。

 

マクゴナガル先生が全員を黙らせた。正直怖かった。ピーブズも震え上がってさっさと逃げてたし。

 

「ポッター、ディメント、おいでなさい」

 

「先生、僕たちはやってません」

 

「私の手には負えないことです」

 

ハリーの弁解はマクゴナガル先生には通じなかった。

 

先生が立ち止まったのは、大きな怪物(ガーゴイル)の石像の前だった。

 

「〈レモン・キャンディ〉!」

 

合言葉だったのだろう。石像は本物となり、横に飛び退いた。彼?の背後にあった壁は左右に割れ、エスカレーターのように上へと動く螺旋階段が現れた。

 

階段の一番上には樫の扉があり、グリフィンをかたどったノッカーが付いている。

 

ここは、校長室だ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

校長室

春と秋と感想が恋しい今日この頃


扉を叩くマクゴナガル先生。扉は音もなく開いて、私たちは中へ入った。

 

マクゴナガル先生は待っていなさいと言って何処かへ行った。ダンブルドアを呼びに行ったのだろう。

 

部屋は広い円形だった。多くの道具や、何か銀のモヤが入っている小瓶、水盆や歴代校長の写真……あ、あれアズカバン(うち)にいたな。校長やってたことあるのか。

 

ハリーを見ると、なぜか組分け帽子を被っていた。すぐに脱いでいたけど、怒ったような、悲しいような顔をしていた。帽子は何を言ったのだろうね。

 

扉の方を見てみた。そこには金の止まり木があり、七面鳥のようなヨボヨボの鳥が止まっていた。ハリーも気づいたようだ。見ていると、いきなり燃え上がった。ハリーは驚いているし、私も違う意味で驚いている。まさか、不死鳥がこんなところにいるなんて。

 

「リーナ、どうしよう。いきなりダンブルドアのペットが……」

 

「心配しないで。この鳥は不死鳥だよ。確かに燃えて死んだけど、残った灰の中から再誕するんだ。ほら、見て……」

 

床に落ちていた灰の中から、小さな雛が顔を出していた。

 

「よく、これが不死鳥だと気づいたのう」

 

突然、声が聞こえた。振り向くとすぐ目の前にダンブルドアが立っていた。振り向いた勢いで殴ろうとしたけど、私は悪くない。驚かせたダンブルドアが悪い。

 

「手厳しいのう」

 

「もう一回やったらセクハラで訴えますよ?」

 

「酷いと思うんじゃが」

 

「先生、さすがに擁護できません」

 

「ハリーも酷くないかのう?」

 

「それより、なんで先生が不死鳥を?」

 

「話せば長くなるのう。フォークスと言うんじゃが、わしとはとても運命的な出会いをしたんじゃよ。この子を助けて以来、忠実に従ってくれておる。驚くほど重い荷物を運び、涙にはいやしの力がある。そして、この上なく美しい」

 

不死鳥なら、半月もあれば成鳥になるだろう。

 

ダンブルドアが椅子に座り、何かを言おうとした時、大きな音を立て扉が開いた。ハグリッドだ。

 

「ハリーとリーナじゃねえです。ダンブルドア先生。俺はこの二人と話してたです。あの子が発見されるほんの数秒前にです」

 

「ハグリッド、君が何を思っているのかは知らんが、わしは二人が襲ったとは考えとらんよ」

 

「そ、そうなんですかい?」

 

「そうじゃ。外で待っていてくれるかのう、ハグリッド」

 

「へい。わかりました」

 

ハグリッドが外へ出て行くと、ダンブルドアは改めて私たちの方へ向き直った。

 

「まず、一つ聞きたいんじゃが、スネイプ先生に君たちのことを知られてしまったのじゃろう?そのことについては先生には誰にも言わんように言ってある。安心せい。じゃから、あの夜に何があったのか、教えてくれるかのう」

 

「わかりました。ロックハート先生が決闘クラブを開いて、色々あって、ハリーとドラコが中央でモデルになりました」

 

「最初の方は普通だったんですけど、途中から僕もドラコもムキになっちゃって。それで、ドラコが蛇を呼び出したんです。ロックハート先生が蛇を吹き飛ばして怒らせて、誰かが襲われるかもしれなかったので止めました」

 

「なるほど、じゃから先生はハリーがパーセルマウスじゃと知っておったのか。では、リーナの秘密は?」

 

「開心術で覗かれました」

 

「ふむ、そうか……二人とも、何か聞きたいことはあるかのう?わしに言いたいことは」

 

一つだけある。ヴォルデモートはあの禁術を使ったのかと。でも、今は聞くべき時じゃない。私もハリーも、先生に何も聞かなかった。

 

 

ジャスティンとニックが襲われたことで、生徒の大半はパニックに陥った。平気だったのは、私とハリー、ロン、ハーマイオニー、ネビル、ドラコといったいつものメンバーと、筋金入りのクィディッチ馬鹿であるウッド、不思議ちゃんのルーナぐらいだった。

 

「みんながみんな、クリスマス休暇にゃ帰宅しようとしてるぜ。この調子じゃ、残るのは僕らぐらいになりそうだ」

 

「あと、レイブンクローの子も一人だけ残るみたいね。ハッフルパフも一人残るみたいだし」

 

レイブンクローの子はルーナが、ハッフルパフはセドリック・ディゴリーってのが残るらしい。グリフィンドールで残るのは、ウィーズリー一家と私、ハリー、ネビル、ハーマイオニー。スリザリンはドラコと、最近見てないけどクラッブとゴイルも残るらしい。ドラコとの仲はいいらしいけどね。使えるものは親でも使うとかドラコは言っていた。

 

さて、明日からホグワーツは休暇だ。何かやらかす奴がいなければいいけどね。




低評価も別に良いけど、メンタルにダメージが……。

好きで書いてるから何言われようと止めるつもりはないけど。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編:ホグワーツ在学中にジェームズ・ポッター及び彼の仲間三名がしでかしたこと

なんとなく作ってみた。基本オリジナルの物のみ。追加するかも。


グリフィンドール寮にて

 

・女子寮への侵入

1、窓を突き破る(後に女子寮の窓に割れない呪文をかけることになった)

2、呼び寄せ呪文(アクシオ)、移動呪文(ロコモーター)での侵入(後に寮内で人間への呼び寄せ、移動両呪文の使用が不可能に)

3、上記の呪文をアニメーガスの状態(牡鹿)で使用しての侵入(両呪文を生物にも使用不可能に)

4、変身術で非生物に変身しての侵入(入る部屋の女子全員の許可を得ていない男子は談話室行きの落とし穴を作動させること)

 

・ダンブルドアへの悪戯

1、ダンブルドアが皿に取っていたお菓子を激辛麻婆に変身させる(後で同じことをやり返された)

2、透明マントでダンブルドアのヒゲを切る(しばらくの間ジェームズとシリウスがスキンヘッドで目撃された。ちゃんと毛根は残っていた)

3、ダンブルドアに女物の服をプレゼント(効果なし)

 

・セブルス・スネイプへの悪戯

1、優しくする(スネイプはものすごく戸惑っていた)

2、激辛麻婆をプレゼント(アレを超える辛さのものを作って無理やりにでも食わせてやるとスネイプは発言していた)

3、スネイプに二日間何もしなかった(なぜかスネイプはその二日間全く落ち着いていなかった。悪戯されることに慣れて身構えていたかららしい)

 

・レイブンクローへの悪戯

1、無断侵入(レイブンクローの合言葉は特殊なので仕方がない)

2、器物破損(レイブンクロー全員から一発ずつ、追加でマクゴナガル教授より拳骨を)

3、勉強の邪魔(喧嘩に発展。図書館だったためマダム・ピンスが両成敗)

 

・ハッフルパフへの悪戯

1、喧嘩(なぜか最後はじゃんけんに)

2、当時の監督生へクモ(無毒無害。有益なハエトリグモ)をプレゼント(監督生は一時発狂。クモが大嫌いだったそうだ)

 

・スリザリンへの悪戯

1、セブルス・スネイプへの悪戯(上記記載)

2、罵倒(スリザリンからグリフィンドールへも罵倒はあったので無罪)

3、スリザリン生の夕食を奪う(大広間が一時戦場になった)

4、本気の殴り合い(マダム・ポンフリーが雷を落としてくれました)

 

・アーガス・フィルチへの悪戯

1、ミセス・ノリスの誘拐(後でキャットフードとともに返還された)

2、没収物の盗難(今に至るまでフィルチは気づいていない。これからも気がつくことはほとんどない)

 

・ルビウス・ハグリッドへの悪戯

1、禁じられた森への侵入(ケンタウロスが追い返そうと忠告したが無駄だった)

2、ファングとパッドフッドを交換する(ハグリッドはすぐに見抜いた)

 

・その他

1、 許可が下りていない日にホグズミードへ行く(マクゴナガル教授がおかんむりだった)

2、三本の箒で誰かのバタービールをラム酒に変えた(弁償することに)

3、ホッグズ・ヘッドにダンブルドアの写真を掲げて入店。更に山羊を馬鹿にする(追い出された)



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

クリスマスと嘆きのマートル

合宿で投稿できませんでした。


休暇は、クリスマスまではフレッジョが悪戯するだけで済んでいた。あとは、トランプをしたり、チェスをしたり、決闘の練習をしたり、『スリザリンの怪物』の予想をしたり、雷と電に秘密の部屋がどこか調べてもらったり(結局わからなかった)。

 

 

クリスマスの朝。真っ白な朝だった。談話室にはすでにみんながいた。今年のクリーチャーからのプレゼントはニット帽だった。

 

ウィル爺から、調査の途中報告が来ていた。やっぱり嘘っぱちの経歴らしい。少なくとも、七冊のうち四冊分の調査の結果、全く別の人物が行ったことだとの証言を得たとのことだ。

 

ハグリッドからは大きな缶いっぱいの糖蜜ヌガーが、ディメント家からは『SCP-999』とラベルがついた瓶(ジェル入り)が、お父さんからは色々なマグルのお菓子が送られてきた。

 

クリスマス・ディナーは去年と同じくすごかった。例えるなら、森の中。天井からは暖かく乾いた雪が降りしきり、クリスマスツリーが立ち並んでいた。ダンブルドアはクリスマス・キャロルを指揮し、フレッドはパーシーの『監督生』のバッジを『劣等生』に変えていた。ロックハートは何やら喚いていたが、ダンブルドアにやんわりと追い出されていた。バタービールと言う飲み物も出てきていた。この近くのホグズミード村にある『三本の箒』から取り寄せたらしい。飲んだみんなは泡で髭を作っていて、面白かった。私も笑われたけど。

 

ハリーといちゃいちゃしていると、どこからか嫉妬の感情が向けられていた。だいぶ近い。視線を辿ると、そこにはジニーがいた。なるほど、ジニーはハリーに一目惚れでもしたのかな?でも、ハリーを渡す気は無いよ。ハリーが私を捨てなければだけど。

 

 

夜、フレッジョから、「クリスマスプレゼントだ」と、一枚の羊皮紙を渡された。

 

「それは『忍びの地図』の劣化コピーだ」

 

「まだ、ただの地図としての機能しか持っていない」

 

「俺たちは来年には完全なコピーを作るつもりだが」

 

「その前に途中報告として渡しておこうってな」

 

「「じゃ、有効活用してくれよ」」

 

双子の背中を見ながら、地図を見てみる。確かに、人の居場所は載っていない。すごく精巧な地図といった具合だ。でも、『秘密の部屋』の場所はわからなかった。残念。

 

 

クリスマス休暇が終わる。また、学校に生徒がやってくる。そして、宿題が大量に出る。魔法薬学とか。

 

「なんだよこの量。スネイプ、僕らに恨みでもあるのか?」

 

「ロン、スネイプにも考えがあるのよ。私たちに勉強させたいだけなんだから」

 

「ねぇ、ドラコ。この薬って、ネズミのヒゲを何本入れればいいの?」

 

「答えたいところだがな、ネビル。前提として、『髪を逆立てる薬』にはネズミのヒゲは要らない。要るのはネズミのしっぽだ」

 

みんなで宿題を終わらせる。その時、フィルチの怒鳴り声が聞こえてきた。確かめに行くと、最初に、ミセス・ノリスが襲われた廊下がまた水浸しになっていた。原因は、近くのトイレらしい。

 

「マートルが何かしたのかしら?」

 

「マートル?」

 

「『嘆きのマートル』よ。あの女子トイレに住んでるゴースト。いっつも泣いてるの」

 

「……確認する?」

 

「僕らは入らないよ?」

 

「誰も使わないわよ。さ、確認するんでしょう?行くわよ!」

 

ハリー、ロン、ネビル、ドラコの男性陣も強制連行。女子トイレだなんて関係ない。

 

 

一番奥の個室からすすり泣く声が聞こえてくる。嘆きと悲しみ、そして怒りの感情がだだ漏れになっている。話を聞くと、何かを投げつけられたらしい。ーー小さな黒い本だ。微弱だけど、意識を感じる。嫌な予感がする。それに、『秘密の部屋』への手がかりであるとの確信も。

 

「……Diary(日記)か。日付は五十年前だ」

 

「それって……前に秘密の部屋が開かれた……!」

 

「名前が載ってる。ーーT・M・Riddle(リドル)?誰?」

 

「『ホグワーツ特別功労賞』をもらった生徒よ。ちょうど、五十年前に。トロフィー室に盾が置いてあったわ」

 

「じゃあ、この人が秘密の部屋を閉じたのかな?」

 

「リドルか……ファーストネームとミドルネームはわからないのか?」

 

「あら、彼の名前を知りたいの?トム・マールヴォロ・リドルよ。スリザリンの優等生だったわ」

 

「「「「「「……え?」」」」」」

 

「あたしが死んだのは五十年前よ?彼とは同級生だったわ。みんなから慕われてて……妬ましかったわね」

 

まさか、マートルが五十年前のゴーストだったとは。それに、こんなところでマールヴォロの名を聞くとはね。トム・リドルはゴーント家の出身なのかな?……あれ?

 

「ねぇ、ドラコ。五十年前の死者って……」

 

「マグル生まれが一人だけ……まさかだが、こいつか?」

 

「聞いてみるよ。マートル、君はどうして死んだの?」

 

「あら、知りたいのぉ?怖かったわ。まさにここ。この小部屋よ。泣いてたの。あたしのめがねをからかわれてね。鍵をかけていたのだけれど、誰かがトイレに入ってきて、何か変なことを言っていたわ。外国語だったと思うの。知らない言葉。もしかしたら、あたしの悪口を言っていたのかもね。でも、それ以上に、男子だったってことがいやだった。男子トイレを使えって、言うつもりだったの。鍵を開けて、扉を開けて……そして……そして……

 

死んだのよ……!」

 

まるで、誰かに言いたかったかのようにキラキラした顔で話すマートル。印象としては怪談を話す語り手。

 

「覚えているのは、大きな黄色い目玉二つ。体は金縛りにあったみたいだったわ。そしてね?ふーって浮いて、いつの間にか、戻ってきてた。まだ未練があったのかしらね?もしかしたら、日本の地縛霊みたいにここに縛り付けられているのかも。そういえばね?秘密の部屋を開けたとされる人は、ホグワーツから追放されたの。でも、また戻ってきたわ。ーー森番としてね」

 

私たちは走り出した。ハリーのポケットの中には、念のための透明マント(改)が入っている。それを使い、全員で隠れる。今、フィルチや先生に見つかるのはマズい。一刻を争う事態なんだ。話を聞かなくちゃ。ーーハグリッドに。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ロックハート・バレンタイン

夜。私はハグリッドに聞いたことを思い出していた。確かに、ハグリッドは五十年前の事件で犯人として杖を折られ追放され、ダンブルドアによって森番になったらしい。しかし、それは冤罪だと言うのだ。

 

五十年前のホグワーツで、ハグリッドはとある魔法生物を飼っていた。そして、そのことがトム・リドルにバレて、追放された。でも、その生物(ハグリッドは頑なに正体を教えてくれなかった)は人を襲うような奴じゃない、飼っていた箱から出したこともないと言っていた。そして、それらはハグリッドの記憶で確認している。ま、プライバシーを考慮して生物の種類は見ないようにしたけど。

 

……あれ?なんで、ハグリッドを追放したことで事件が収まった?なんで、人を襲わない怪物を逃したことで、人が襲われなくなった?なんで、トム・マールヴォロ・リドルはハグリッドが犯人だと思った?……これらから考え出される結論は一つだけ。どこぞの死神みたいな名探偵ならすぐに思い浮かぶ結論だろう。

 

『トム・マールヴォロ・リドルが継承者で、何かの事情(おそらくマートルの殺害)で犯人を仕立て上げなくてはならなくなって、ちょうど怪物を飼っていたハグリッドに濡れ衣を着せた』

 

それなら、あの日記に残留思念的な何かがあるのも頷ける。アレは少なくとも一回だけなら、姿には影響はないはずだから。

 

TOM(トム) MARVOLO(マールヴォロ) RIDDLE(リドル)

 

I AM LORD VOLDEMORT(私はヴォルデモート卿だ)

 

単純なアナグラムだ。リドルはヴォルデモートで、彼なら秘密の部屋を開けることができる。少しヒントがあれば、聡明な人なら気がつくだろう。ダンブルドアもわかっているだろうし。

 

日記が危険であることはわかっている。でも、一日やそこらで支配できるほど強力ではない。あの中にあるのは、ただの切れ端、残留思念。

 

「ハリーなら、そんなものに負けるはずがないのさ」

 

絶対に、ね。

 

 

 

「日記、どうだった?」

 

「五十年前の出来事を見せられた。その中でもハグリッドが犯人ってなってたよ」

 

「僕は見てないんだよなぁ。でも、ハグリッドがマグル生まれをこっそり襲えると思うかい?隠し事が下手なのに」

 

「無理ね」

 

「ねぇ、その日記ってやっぱり危険なの?」

 

「多分危険。だって……いや、これは時が来たら話そうか」

 

「教えてくれてもいいんじゃないか、リーナ」

 

「うーん、精神衛生上今聞くのはまずいかも」

 

大広間でみんなと話す。今はまだ、リドルがあのお辞儀だと言わないほうが得策だろう。

 

「そういえば、ダンブルドアって五十年前も先生をしてたんだね」

 

「そうなの?」

 

「うん。校長ではなかったけど、姿は今みたいだったよ」

 

「……あの人何歳?」

 

ダンブルドアって、命の水を使ってるのかな?

 

そう考えていると、ギルデロイ・ロックハート(自信過剰ヤロー)の声が聞こえてきた。

 

「ミネルバ、もうやっかいなことはないと思いますよ。今度こそ、部屋は永久に閉ざされましたよ。犯人は、私に捕まるのは時間の問題だと観念的したのでしょう。私にコテンパンにやられる前にやめたとは、なかなか利口ですな。そう、今、学校に必要なのは、気分を盛り上げることですよ。先学期のいやな思い出を一掃しましょう!今はこれ以上申し上げませんけどね、まさにこれだ、という考えがあるのですよ……」

 

嫌な予感しかしない。ロックハートの考えは、二月十四日(バレンタイン・デイ)の朝に明らかになった。

 

大広間がピンクに染まっていた。

 

一番前には、ピンク色のローブを着たロックハート。その周りに並ぶ先生たちは石のような無表情。基本的に笑顔を絶やすことのないダンブルドアでさえ能面みたいで、マクゴナガル先生はほおを痙攣させ、スネイプは『許可が下りたら手足を捥いでやる』とか思っていた。

 

「バレンタインおめでとう!今までのところ四十六人のみなさんが私にカードをくださいました。ありがとう!そうです、みなさんをちょっと驚かせようと、私がこのようにさせていただきました。しかも、これが全てではありませんよ!」

 

ロックハートが手を叩く。すると、玄関ホールにつながるドアから、無愛想な顔の小人が十二人入ってきた。金色の翼をつけ、ハープを持っている。ロックハート、かっこよさを出したいなら指ぱっちんのほうがよかったと思う。

 

「私の愛すべき配達キューピッドです!今日は学校中を巡回して、みなさんのバレンタイン・カードを配達します。そしてお楽しみはまだまだこれからですよ!先生方も(長いので省略)」

 

ロックハートは『愛の妙薬』がどうとか、『魅惑の呪文』がどうとか言ってたけど、惚れ魔法なんて一時的なものだから意味がないと思う。既成事実を作ることにしか使えないんじゃないかな。

 

 

午後になったけど、ロックハートが言ったことのウザさがはっきりとわかった。小人は一日中教室に乱入してくる。ハリーに歌のメッセージを届けようとした小人もいたけど、後ろから持ち上げて湖に落としておいた。水中人(マーピープル)やオオイカに捕まらなければ助かるだろう。その時に、リドルの日記を落としてしまった。すぐに拾ったけど、何人かに見られてしまった。ジニーが目を見開いていたけど、どうしたんだろう。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む



復活祭の休暇中に、来年度からの選択科目を決めることになった。とったのは『占い学』と『魔法生物飼育学』など、ハリーと同じ科目だ。ロンも同じ科目をとり、ネビルは親戚中からの手紙で頭を抱えていた。ハーマイオニーは全科目を選んでいたが、物理的に無理な気がする。何か秘策でもあるのだろうか。ドラコは『魔法生物飼育学』をとっていた。他は教えてもらえなかった。なんでだろう。

 

とある金曜日。翌日にハッフルパフとの試合のため練習していた。箒を置きに談話室に戻ると、ネビルが慌てた様子で立っていた。

 

「どうしたの?」

 

「ええと、ハリーたちの部屋が荒らされたんだ。ーーハリーの荷物だけ」

 

ネビルに案内されて、ハリーの部屋に入る。確かに、ハリーの荷物が散乱している。ハリーが散らかすとは思えないし、誰か物盗りでも入ったのかな?

 

「そうかもね。多分、継承者だ。リドルの日記が見当たらない」

 

私たちはドラコにも、グリフィンドールの合言葉を伝えていない。スリザリンの合言葉も知らない。つまり、盗んだのはグリフィンドール生とだいうことになる。一番、純血主義に興味がないグリフィンドール。誰が実行犯なのか。私たちは疑心暗鬼になりかけていた。

 

 

翌日、談話室には一枚のメモが残されていた。ハーマイオニーからだ。

 

『もしかしたら、わかったかもしれない。みんな、鏡を常に持って行って、角を曲がるときは必ず鏡で先を覗いて。私は図書館へ行ってくる。ハリー、リーナ、今日のクィディッチ頑張って!』

 

鏡、か。そういえば、ミセス・ノリスが石になったとき、床には自らが溢れ、光を反射していた。鏡とは何かを写すもの。つまり、光か、視覚に関係する能力か?

 

 

クィディッチ競技場では、生徒たちが今か今かと待ち構えていた。これで勝てば、クィディッチの優勝杯はグリフィンドールの物だ。……けど、現実は非情だね。

 

「この試合は中止です」

 

マクゴナガル先生がメガホンで叫んでいる。ウッドは抗議してるけど、再開はされないようだ。

 

「ポッター、ディメント、私と一緒にいらっしゃい。ああ、ウィーズリーとロングボトム、マルフォイも一緒に来たほうがよいでしょう」

 

私とハリーは地面に降り、ロンたちは観客席から下りてきて、マクゴナガル先生と共に校舎に入っていった。どうやら、医務室に向かっているようだ。

 

「少しショックを受けるかもしれませんが、また、襲われました……今度も二人一緒にです」

 

医務室の中に入る。ベッドの一つには、レイブンクローの女子生徒が、もう一つには、

 

「ーーハーマイオニー!」

 

ハーマイオニーが、倒れ込んでいた。

 

これまでの犠牲者と同じように、石になっている。

 

「二人は図書館の近くで発見されました。みなさん、これがなんだか、説明できないでしょうね?二人のそばの床に落ちていたのですが……」

 

先生が持っているのは小さな手鏡。なぜ、そんな物が落ちていたのかは知らないけど、ハーマイオニーが何かに気づいていたことはわかる。

 

「ハーマイオニーが今朝残したメモに、『角を曲がるときは必ず鏡で先を覗け』とありました。多分、ハーマイオニーは犯人の正体がわかって、対抗策として持っていたんだと思います」

 

「……そうですか。みなさん、グリフィンドール寮まで送ります。ああ、マルフォイは少し待っていなさい。セブルスを呼びますので、彼に送ってもらいなさい」

 

私たちは寮に戻った。これからが、今年の地獄だと悟りながら。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

寮にて

「全校生徒は夕方六時までに、各寮の談話室に戻るように。それ以後は決して寮を出てはなりません。授業に行くときは必ず先生が一人引率します。トイレに行くときも必ず先生に付き添ってもらうこと。クィディッチの練習も試合も、すべて延期です。夕方はいっさい、クラブ活動をしてはなりません」

 

グリフィンドール生全員の前で、マクゴナガル先生が言う。もう、誰が襲われてもおかしくはない。

 

マクゴナガル先生がぎこちなく、談話室から出て行ったところで、ハリーが話しかけてきた。

 

「このままだとハグリッドが疑われる。一度、ハグリッドに会って話さなくちゃ」

 

「でも、授業のとき以外か寮から……ああ、ハリー、マントを使う気かい?」

 

「うん。リーナは一人部屋でしょ?だから、誰にも気付かれずに談話室に出てこれる。僕らはディーンとシェーマスが寝静まったら行くよ。ドラコに手紙出してくれる?」

 

「わかった。十二時ぐらいかな?」

 

「そのくらいだと思う。お願い」

 

どうやって手紙を出すか。簡単な方法がある。去年のクリスマスプレゼントの一つ、魔法人形を使う。シャンーーランスを持ってる人形ーーに、『今夜十二時に、寮の前に出てきて。ハグリッドのところに行く』と書いた手紙を持たせる。魔力を込めて、動かす。感覚の一部共有もできるみたいだ。彼女には、スネイプを捜してもらう。

 

 

うん、ちゃんと機能してるね。視覚共有が上手くいくか心配だったけど、ちゃんと廊下が見える。少し探索すると、スネイプを見つけた。……あれ、これ発声できるの?

 

「……む、なんだ、貴様。誰が操っている?」

 

「……ジジッ……あっ、声出せた。スネイプ先生、リーナです」

 

「ディメントか。して、人形なぞ使って、我輩になんのようだ?」

 

「ドラコにこの手紙を渡してほしいんです。できれば人形ごと」

 

「なせだ?お前が直接渡せばいいだろう」

 

「ドラコと一緒になる機会が少ないので、この人形を渡しておけば、こちらからだけでも、いつでもコンタクトが取れるので」

 

「……ふん。渡しておこう。しかし、だ。グリフィンドール一点減点」

 

その言葉を聞いて、シャンから魔力を抜く。でも、いつでも起動できるようになった。一度魔力を入れれば、その後はどこにあっても起動できるみたいだ。

 

 

 

「よし、スネイプを通して渡した。これで平気でしょ?」

 

「うん。でも、嫌な予感がするから、この後は慎重に行こう」

 

私たちは、それぞれの部屋に戻っていった。そして、ハリーの予感が大当たりすることになるとは、まだ思ってもいなかった。




新連載→知識の悪魔の高校生活(ダンタリアンを魔法科高校に投入)
新短編→継物語-つぎものがたり-(西尾維新×東方の一話完結式)

ONE PIECE Film GOLDの小説書きたいけど、咲夜さんとかカリーナの仲間として投入してみたいけど、文才が無い……!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

コーネリウス・ファッジ

夜中、私は談話室に出てきていた。ハリーたちを待っている。

 

深夜十一時五十分ごろ、ハリーたちが透明マントで下りてきた。

 

「リーナ、行くよ」

 

 

夜の校舎の中は混み合っていた。先生や監督生、ゴーストが二人一組で見張りに当たっていたのだ。

 

「……ドラコ拾える?」

 

「たぶん平気じゃない?」

 

 

なんやかんやあってドラコと合流し、ハグリッドの小屋へ向かった。

 

「ハグリッド、居る?」

 

戸を叩くと、すぐにハグリッドが出てきた。石弓を持って。

 

「なんじゃ、お前さんたちか。こんなところで何しとる?」

 

「なんで石弓を持ってるんだい?」

 

「なんでもねぇ。茶、淹れるわい」

 

石弓について、ドラコが聞いたが、何も答えてくれなかった。でも、何かに怯えているようだ。ヤカンからお湯をこぼしたり、ポットを粉々に割ったりしてる。

 

「ハーマイオニーのこと、聞いた?」

 

「あぁ、聞いた。たしかに」

 

……ハグリッドが気にしてるのは窓の外のようだ。何か、嫌なものでも来るのかな?

 

「ハグリッド、お茶は要らないから、何に怯えてるのか、教えてくれるかい?」

 

「……ああ。リーナ、お前さんにも関係があるだろうしな……」

 

ドンドン

 

扉を叩く大きな音がした。

 

「隠れるよ」

 

ハリーの声で、私たちは部屋の隅に隠れた。もちろん、透明マントをかぶっている。

 

ハグリッドはもう一度伊集院を掴み、扉を開けた。

 

「こんばんは、ハグリッド」

 

そこにいたのはダンブルドアだった。深刻そうな顔をしている。もう一人後ろにいる。背の低い恰幅のいい体で白髪頭……何処かで見たような……あっ、お父さん(シリウス)をアズカバン島に連行してきた一人か。

 

「パパのボスだ!コーネリウス・ファッジ、魔法大臣だ!」

 

ロンが囁く。ドラコも頷いてるし、本当みたいだ。あの時の一人が、こんなにも力をつけてるなんてね。冤罪を起こしてるのに。

 

「状況はよくない。ハグリッド。すこぶるよくない。来ざるをえなかった。マグル出身が三人もやられた。もう始末に負えん。本省が何かしなくては」

 

「俺は、けっして」

 

ファッジに対して、ハグリッドが抗議し、ダンブルドアにすがる。

 

「ダンブルドア先生さま、知ってなさるでしょう。俺は、けっして……」

 

「コーネリウス、これだけはわかってほしい。わしはハグリッドに全幅の信頼を置いておる」

 

「しかし、アルバス、ハグリッドには不利な前科がある。魔法省としても、何かしなければならんーー学校の理事たちがうるさい」

 

「主に父上だな。ダンブルドアを嫌ってる」

 

ドラコが囁いた。私は、ファッジに対して怒りが浮かんだ。状況証拠だけで考え、それ以外の証拠を見ない。口を開けば体面のことばかり。心の中も自己保身だらけだ。なんでこんな奴が魔法大臣やってるんだ?

 

「コーネリウス、もう一度言う。ハグリッドを連れていったところで、何の役にも立たんじゃろう」

 

ダンブルドアの瞳にも、怒りが浮かんでいた。

 

「私の身にもなってくれ。プレッシャーをかけられている。何か手を打ったという印象を与えないと。ハグリッドではないとわかれば、かれはここに戻り、何のとがめもない。ハグリッドは連行せねば、どうしても。私にも立場というものがある」

 

ハリーが私の肩を抑える。それで気がついたが、私は前に飛び出そうとしていた。ファッジに襲いかかろうと。正直、殺したいとか思ってる。いや、ただ殺すだけじゃなく、操ることで彼への信頼をゼロにして、拷問して、最大限の苦しみを味わってもらってから、できる限りの痛みを伴う方法で死んで欲しい。

 

「リーナ、今手を出しちゃダメ。もし手を出したら、ハグリッドが余計不利になる」

 

「うん……わかってる」

 

ハグリッドは、アズカバン島の一時留置所に送られることになった。そして、それが告げられたタイミングで、また戸を叩く音がした。

 

ダンブルドアが開くと、そこにはルシウス・マルフォイがいた。

 

「父上……?一体何をしに……?」

 

全員が警戒する。ファングも唸っている。

 

「もう来ていたのか。ファッジ」

 

「何の用があるんだ?」

 

「君には関係ないさ。ただ学校に立ち寄っただけなのだが、校長がここだと聞いたものでね」

 

「では、わしに何の用があるというのかね?ルシウス?」

 

「ああ、実にひどいことだがね、ダンブルドア。理事たちは、あなたが退くときが来たと感じたようだ。ここに『停職命令』があるーー十二人の理事が全員署名している。残念ながら、私ども理事は、あなたが現状を掌握できていないと感じておりましてな。これまでいったい何回襲われたというのかね?今日の午後にはまた二人。この調子では、ホグワーツにはマグル出身者は一人もいなくなりますぞ?」

 

「父上が他の理事を脅したんだ。父上は他の理事よりも権力を持っている」

 

「ルシウスよ、理事たちが真にわしの退陣を求めるなら、わしはもちろん退こう。しかし、覚えておくがよい。わしが本当にこの学校を離れるのは、わしに忠実な者が、ここに一人もいなくなったときだけじゃ。覚えておくがよい。ホグワーツでは助けを求める者には、かならずそれが与えられる」

 

最後の一文は、私たちに向けて言ったものだろう。こちらの方を、一瞬だけとはいえ、何かの核心を持った目で見た。

 

「あっぱれなご心境で」

 

マルフォイ氏は扉に向けて歩きだし、ダンブルドアと共に外に出た。ファッジはハグリッドを先に出そうとしたが、ハグリッドは足を踏ん張った。

 

「誰か何かを見つけたかったら、クモの跡を追っかけて行けばええ。そうすりゃちゃんと糸口がわかる。俺が言いてえのはそれだけだ。それから、誰か、俺のいねえ間、ファングに餌をやってくれ」

 

ハグリッドはそう言うと、外に出て行った。まあ、私の家族のことだ。ハグリッドに乱暴をするやつはいないだろう。実験台とにしそうなやつはいるけど。

 

戸が閉まる。ファングが扉に駆け寄り、悲しげな声で鳴き始めた。

 

「大変だ。ダンブルドアはいない。今夜にも学校を閉鎖したほうがいい。ダンブルドアがいなけりゃ、一日一人は襲われるぜ」

 

ロンが言って、みんなが頷いた。




アンケート
東方キャラを出すか否か。また、出すとしたらどのキャラが良いか。秘密の部屋編終了までにお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

蜘蛛

どーも、お久しぶりです。零崎です。試合やら旅行やらで更新が遅れました。では、投稿です。

……あ、あと、しばらくしたら来るであろうバジリスク戦ですが、おそらくネタに走るかと。そのための伏線も張っちゃいましたし。どこぞの粘液とか。


夏である。正確に言うなら夏直前である。ホグワーツの校内は、ダンブルドアが居なくなったことで恐怖感が学校中に蔓延している。恐怖は美味しいけど、さすがにこの量はくどくなってくる。

 

ダンブルドアの代理はマクゴナガル先生がやっている。できる限り、平常通りに運営していくようだ。

 

薬草学の授業で、アーニー・マクミランがハリーのところへ来た。

 

「ハリー、僕は君を一度でも疑ったことを、申し訳なく思っています。君はハーマイオニー・グレンジャーをけっして襲ったりしない。大雪の日、図書館で、君たちが僕らの話を聞いていたことを、マダム・ピンスから聞きました。僕が今まで君に言ってきたことをおわびします。僕たちは今、みんなおんなじ運命にあるんだ。だからーー」

 

アーニーは手を出してくる。ハリーはそれに応え、二人は握手した。謝っている時のアーニーの心の中は罪悪感と謝罪でいっぱいだった。

 

そのあと、アーニーとハンナが私たちの作業を手伝ってくれたけど、その時に、ハリーがとあるものを見つけた。

 

「……ねぇ、あれって……」

 

「……蜘蛛だね。今は無理だ。この子たちは『禁じられた森』に向かってるみたいだ」

 

夜にこっそり抜け出して、森へ向かうことになったけど、森は正直言って危険だ。ケンタウルスやユニコーンは良いけど、ヤバいのが居そうな気がする。具体的には、M.O.M.分類XXXXXのやつとか。だから、少数精鋭で行く。ハリーと私だ。さすがの私でも、みんなを守りつつ逃げるなんて事は出来ない。正体をバラすしかなくなってしまうから。

 

「みなさん、危険は去りました!」

 

あれ?ロックハート……?あ、そういえば『闇の魔術に対する防衛術』の授業だったね。

 

ロックハートの話は、私たちを苛立たせるのに十分だった。何かきっかけがあれば、理性のリミッターが外れるほど。あー、岩に心って書いて爆発させたい。

 

 

出発出来たのは、十二時を回った頃だった。行動制限のため、談話室で何かする以外にないのだ。

 

「私で良かったの?ハリー」

 

「どう言うこと?」

 

「いや、ロンは判断力は良いし、ネビルは勇気がある。ドラコは悪知恵がきくし、私じゃなくても良かったんじゃ?」

 

「えーとね?ロンは蜘蛛が大の苦手なんだってさ。ネビルは勇気があるけど、リーナほど魔法を覚えていないし、ドラコはそもそも他の寮だから合流し辛い。つまり、リーナが一番適任なんだよ。それに、リーナとなら、上手く連携できる気がするしね」

 

「嬉しいことを言ってくれるね」

 

おっと、ハグリッドの小屋だ。ファングを連れて行かないと、森の中で迷ってしまう。

 

「ウォン、ウォン!」

 

「ファング、寂しいのはわかるけど、今だけは静かにしてくれるかい?私たちは今この場にいちゃいけないんだ。だから、ね?」

 

「バウッ(わかったー)」

 

「後、森の中に入るから、出口までの案内のためについてきてくれる?」

 

(……それでハグリッドは帰ってくる?)

 

「ああ。遅くても、夏休みまでには帰ってくるよ」

 

(……わかった!行く!)

 

ファングはトテトテと森の入り口まで行き、マーキングをした。

 

(準備オッケー!)

 

「ファングはなんて?」

 

「準備出来たってさ。……行こう。この先は私でもやられるかもしれないから、ハリーも注意してて。〈光よ(ルーモス)〉」

 

「うん。わかったよ。〈光よ(ルーモス)〉」

 

私たちは森の中に入っていく。私とハリーは手をつなぎ、私は杖を持った手で、ポケットの中の小瓶の場所を確認した。




アラゴグからどうやって逃げるのか?ウィーズリー氏の車も無いのに?……ふっふっふ。秘策があるのですよ。すでに出ているとある物で撃退(?)します。

あと、アカウントある人は、アンケートの回答を活動報告に書いてください。それと、アンケート内容に追加です。選択肢を一つ増やします。『東方キャラを出すか出さないか』に加え、『東方キャラは出さないけど、東方のアイテムを出す』と言う選択肢を出します。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

王蜘蛛

森の中をさまよって二十分ほど。ようやく、蜘蛛を見つけた。森の小道からそれて、さらに奥へと進んでいく。

 

「クモたちはどこへ向かってるんだろう?」

 

「さあ、ね。でも、この子たちは何かを恐れ、何かを頼ろうとしている。こんな時に頼れるのは、親玉だろう」

 

「クモの親玉?」

 

三十分追いかけて、蜘蛛の列を見失ってしまった。

 

「クモは?」

 

「わからない。……何か聞こえた!」

 

カシャッカシャッと大きな音。次の瞬間、私は毛むくじゃらの何かに捕まれ、逆さまの状態で運ばれた。ーー蜘蛛だ。大きな蜘蛛。ハリーも捕まり、ファングも捕まった。

 

しばらく運ばれ、蜘蛛は唐突に、私たちを解放した。周りを見ると、蜘蛛だらけ。先ほど私たちを運んだ蜘蛛と同種のようだ。

 

「こいつら、アクロマンチュラか?」

 

「何それ」

 

「魔法生物だよ。大蜘蛛だ。強力な毒を持ち、人語を解する。ほら、ハサミをガチャガチャ言わせてるでしょ?よく聞いてみて。言葉が聞こえる」

 

耳を澄ませると、蜘蛛たちは「アラゴグ!」と叫んでいる。目の前にある蜘蛛の巣のドームから、一際大きな蜘蛛が顔を出した。八つの目は全て白濁している。

 

「何の用だ?」

 

「人間です」

 

「ハグリッドか?」

 

「知らない人間です」

 

「殺せ」

 

「……一つ聞いても良いかい?アクロマンチュラーーアラゴグと呼んでも良いかな?君たちはハグリッドとどんな関係なんだい?私たちは友達だけど」

 

「友達だと?ハグリッドはこのくぼ地に人をよこしたことはない。わしとハグリッドは、親友だ。いいやつだ。わしが女の子を殺した罪を着せられた時に、ハグリッドは守ってくれた。いや、それよりも前にも。まだ卵だったわしの面倒を見てくれた。この森に住まわせてくれ、妻も探してくれた。ハグリッドには恩がある」

 

「君は、『秘密の部屋』のことを知ってるの?」

 

「その中に居る物は、わしら蜘蛛の仲間が何よりも恐れる、太古の生き物だ。これ以上は聞いてくれるな。わしらはその生き物の話をしない」

 

……蜘蛛が恐れる生き物。情報を整理しよう。生き物はパイプの中を通り、あらゆる場所に顔を出す。蜘蛛が恐れる生き物。そういえば、雄鶏が殺されていた。殺す必要があった?

 

「あ、あの……僕たち、もう帰ります」

 

「帰る?それはさせない。ハグリッドを襲うことはないが、新鮮な肉をおあずけにはできんよ。さらばだ、ハグリッドの友人よ」

 

周りの蜘蛛が詰め寄ってくる。

 

「リーナ、何か無いの?」

 

ハリーに聞かれた私は、ポケットの中から小瓶を取り出し、アラゴグの方へ投げつけた。

 

「〈粉々(レダクト)〉!」

 

小瓶は壊れ、中からジェルが出てくる。それをもろに被ったアラゴグはーー

 

「な、なんだこれはあひゃひゃひゃひゃっ!」

 

ーー身悶えて大笑いしている。周りの蜘蛛は突然変な行動をとったアラゴグに驚き、停滞した。

 

「今だ!」

 

その隙に、アクロマンチュラの群れから逃げ出す。ーー上手く逃げ切れた。

 

「はぁ……はぁ……リーナ、何、あれ……」

 

「……ブライトからの、クリスマスプレゼント。あらゆる生物をくすぐり、笑わせてしまう、平和だけど、恐ろしい、物」

 

SCP-999『くすぐりお化け』

敵に回すと厄介なSCPオブジェクトの一つだ(こいつは絶対に敵対しないけど。あらゆる生物に対して平等だ)。

 

透明マントを回収し、こっそりとグリフィンドール談話室に戻る。それぞれの部屋に戻って、謎の生き物について考えていた。

 

……多分だけど、あの王者だろう。アクロマンチュラが蜘蛛の王だとしたら、アレは蛇の王。あの王蛇なら、全ての証言に納得がいく。……まだ残りあるし、案外簡単に攻略できるかも?



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

鬼の目にも?

ある人の言葉により、ハリーを殺すことなく分霊箱をなんとかする方法が発覚。いや、ハリー以外の分霊箱の対処も可能かも。

今回のサブタイトルがふざけすぎてる気がする。内容シリアス気味なのに。


なんとなく、秘密の部屋の怪物の正体はわかった。ハリーにも伝えてはあるけど、確証が無い。ほぼ確信してるけど、もし、違う生物なら大惨事だ。

 

だが、変身術の授業で、秘密の部屋に関する全てのことが、一瞬頭の中から吹き飛んだ。

 

「一週間後の六月一日より、期末試験を行います。皆さん、復習を怠らないように」

 

こんな時に試験を行うなんて。学校をできる限りいつも通りに、と言うけれど、ハーマイオニーが悔しがるね。……私も十分的外れなことを言っている。

 

 

テストの三日前、朝食の席で、マクゴナガル先生が嬉しいことを言ってくれた。マンドレイク薬が完成するらしい。ちなみにウッドは「クィディッチの試合が再開されるんだ!」と思っていた。否、叫んでいた。ハリーはそれを聞いてちょっと反応してたから、ハリーもクィディッチ馬鹿の道を歩み始めたらしい。私?私はやる時はやるけどのめり込みすぎないようにしてるよ。あくまでも部活だ。

 

「あれ?ジニー、どうしたの?」

 

見ると、ハリーの隣ーー私とは反対側ーーにジニーが座って、何かを言いたそうにしていた。……怯えた色をしてるから、告白ではないと思うんだけど、なんだろう。向こう側からパーシーが疲れた顔で歩いて来てるし、手っ取り早く、覗いてしまおう。

 

 

 

『あたしがリドルの日記を捨てて、盗んだ』

 

『あたしが秘密の部屋を開いてしまった……かも』

 

『あたしが……みんなを襲ったみたい』

 

 

 

……わぉ、まさかの。継承者、見っけ。ジニーが継承者だとはね。でも、彼女は意図して開いた訳では無いみたいだね。『かも』や『みたい』なんて思ってるから、自分がやったと自覚はしてるけど、その間の記憶が抜けている。

 

ちょうど、ジニーが話そうとしたところで、パーシーが来て、ジニーは去ってしまった。ロンはパーシーに怒り、パーシーは何やらオロオロしている。……私、気になります!

 

 

 

『言えない、僕がペネロピーと付き合ってるなんて。ジニーには「言わないで」って言っておいたのに』

 

 

 

……マジですか。パーシーはジニーに、レイブンクロー監督生のペネロピー・クリアウォーターとの逢引を見られて、誰にも言わないでくれと言ったのか。

 

 

 

ロックハートの引率で、魔法史の教室に向かう。この無能はイライラすることを言ってくるが、ハリーはそれを利用するようだ。うまく口車に乗せられたロックハートは、引率の途中でさっさと教室に戻ってしまった。

 

「よし、今だ」

 

ハリー、ロン、ネビルと、列を抜け出し、マートルのトイレへ向かう。恐らく、あそこが入り口のはずだ。夜、アイポッド達の記憶を見たときに、トイレの洗面台の蛇口の一つに、蛇の紋様があるのが見えた。ん?あれは……

 

「ポッター!ディメント!ウィーズリー!ロングボトム!何をしているのですか?」

 

マクゴナガル先生だ。凄く怒ってる。怒りの真紅を通り越して、深紅を通り越して、真っ黒だ。

 

「あの、僕たちーーええとーー」

 

「ハーマイオニーの様子を見に来たんです」

 

「ぼ、僕たち、長い間、ハーマイオニーに会ってません」

 

「マンドレイク薬が完成すると聞いて、ハーマイオニーにそれを報告してあげようと、私たちは考えたんです」

 

見事な連携プレーである。どうだ。感情の色は、黒からオレンジへと変わっていく。感動の色だ。目元を見ると、涙がキラリと光っている。

 

「そうでしょうとも。ええ、そうでしょうとも。襲われた人たちの友達が、一番辛い思いをしてきたでしょう……よくわかりました。四人とも、もちろん、いいですとも。ミス・グレンジャーのお見舞いを許可します。ビンズ先生には、私からあなた方の欠席のことをお伝えしておきます。マダム・ポンフリーには、私から許可が出たと言いなさい。それと、ミスター・マルフォイも呼んでおきます。五人で、彼女のお見舞いに行ってあげてください」

 

マクゴナガル先生に頭を下げ、医務室方面へ向かう。ーー背後から鼻をかむ音が聞こえてきた。

 

 

ドラコと合流し、医務室へと向かう。正直、石になってる人に話しかけてもなんともならない気はするが、マクゴナガル先生に言ってしまった以上、行かなければならない。

 

だが、良い結果となった。ハーマイオニーは紙切れを握りしめており、そこには、『毒蛇の王』、バジリスクの情報が載っており、怪物の正体がはっきりした。コカトリスも似てるから、どっちかわかりにくかったんだよね。ーーコカトリスよりもバジリスクの方がおっかないけど。

 

「……どうする?私たちだけじゃどうしようもないかもしれないけど、先生に報告する?」

 

みんな頷いた。

 

が、

 

《生徒は全員、それぞれの寮にすぐに戻りなさい。教師は全員、職員室に大至急お集まりください》

 

マクゴナガル先生の声が響いた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

職員会議

「……ハリー、透明マント、持ってるよね?ハンカチ大にしたやつ」

 

「うん。使うんでしょ?職員室に忍び込むのに」

 

ハリーはポケットから、銀鼠色の、シルクのようなハンカチーー最小サイズの透明マント改を取り出した。

 

「……戻ったほうが良いんじゃないのか?」

 

「嫌な予感がするんだ。多分、私たちにも関係がある」

 

ドラコを納得させて、大きくした透明マントをかぶる。よし、行こう。

 

 

先生たちに紛れ込んで、職員室の中に入った。唯一、停職になったダンブルドアだけがいないーーあ、ロックハートもいないや。

 

少しして、マクゴナガル先生が話し始めた。

 

「とうとう起こってしまいました」

 

悲しみ、そして二方向への怒り。それは、継承者と、自分自身へ向けられていた。

 

「生徒が一人、怪物に連れ去られました。『秘密の部屋』そのものの中へです」

 

生徒を連れ去った怪物ーーひいては継承者へ怒りを向け、防げなかった自分へ怒りを向けるマクゴナガル先生。

 

「なぜ、そんなにもはっきりと言えるのか、教えてもらえますかな?」

 

「『スリザリンの継承者』がまた伝言を書き残したのですよ、セブルス。最初に残された文字のすぐ下にです。彼女の白骨は永遠に『秘密の部屋』に横たわるであろう、と」

 

「誰ですか?いったい、どの子がさらわれたんですか?」

 

「……ジニー・ウィーズリーです」

 

ロンが飛び出そうとした。慌てて、ハリーとネビルがロンを抑える。抑えなかったら彼は、マクゴナガル先生の胸ぐらをつかんで問い詰めていただろう。それほどまでに、今のロンの心は複雑だった。

 

「全校生徒を明日、帰宅させなければ。ホグワーツはおしまいです。ダンブルドアはいつもおっしゃっていた……」

 

バタン、と扉が開いた。もしや、ダンブルドアが帰ってきたのかと、みんながそっちを向いた。

 

「大変失礼しました。ついうとうととしていましてね。何か、聞き逃してしまいましたか?」

 

ここで杖を抜いて呪いをかけなかった私を誰か褒めて欲しい。遅れた挙句、ダンブルドアかと期待させておいて「何か聞き逃してしまいましたか?」だと?ふざけるな。ロンの妹が攫われたんだぞ?

 

次の瞬間、一斉に先生方が、ロックハートにとある意味の言葉を浴びせかけた。「お前は常々「自分はスリザリンの継承者のことをわかっていた」とか言ってたから秘密の部屋行って女子生徒救ってこい」、と。意味は、「お前は邪魔だからどっか行ってろ」。マクゴナガル先生も厄介払いができたと言っていたし。

 

 

寮には戻らず、これからどうするか考えた。第一目標としては、『秘密の部屋』に乗り込んでジニーを救い出す。けど、バジリスクが厄介だ。……でも、行くしかない。

 

「ロックハートを連れて行こう。一応教師だし」

 

「盾になってもらおうか」

 

そんなこんなで、まずはロックハートの部屋へ。

 

部屋の扉を開けると、部屋の中は片付けられ、なんと言うか、夜逃げみたいな雰囲気だった。

 

「……先生、夜逃げですか?」

 

「な、なんのことだね?」

 

「逃げるんですか?」

 

「しょ、職務内容にはなかったことだ」

 

「僕の妹はどうなるんですか!」

 

とうとうロンが怒った。ついでに、こんなことも言っておこう。

 

「先生、現在ディメント家の一部があなたの本の真偽について調べています。少なくとも、ノンフィクションと謳われた七冊のうち、四冊が先生以外の者が行ったことだと判明しています。おそらく、〈忘却術〉でしょうね。他人の偉業を自分のものと偽る、盗作、詐欺、他にもいくつか罪状が付くでしょうね。さて、それを踏まえてですが、先生、これから『秘密の部屋』に乗り込むんですけど、ついてきてくれませんかね?」

 

暗に、断ったら「魔法界のアイドル・ロックハート」の真実をバラすと言い、従わせてみた。ちなみに、断っても断らなくてもバラすつもりです。

 

「あ、その前に杖は没収しておきましょう。ドラコ、お願い」

 

「ああ。……いや、リーナが〈呼び寄せ呪文〉を使ったほうが早いんじゃないかい?」

 

そう言いつつも、ドラコはロックハートの杖を見つけ出し、自分のポケットにしまった。

 

「さて、行きましょうか先生」

 

間違えた。先生は「逝きましょう」だったね。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

入り口

マートルのトイレ。ここに、『秘密の部屋』の入り口がある。

 

「リーナ、場所はわかってるの?」

 

「洗面台。どれか一つに蛇のマークがあるはず」

 

みんなで手分けして探す。ロックハートはドラコに監視してもらってる。

 

「……あった!でも、どうやって開くんだい?」

 

ロンが見つけてくれた。見ると、確かに蛇のマークが付いている。

 

「蛇語でしょ?だって、バジリスクを操るんなら、蛇と話せることが第一条件だろうし」

 

と、ネビル。この中で蛇語を話せるのはハリーのみ。ハリーは手洗い台の前に立った。

 

「開け」

 

「ハリー、普通の言葉だよ」

 

「……■■」

 

シューシューとハリーの口から聞こえ、手洗い台が変形し始めた。なんでこんなところをこだわったんだろうね、創設者四人は。

 

「……で、誰から行くんだい?僕としては、ロックハートを先に入れて安全確認したいんだけど」

 

「ドラコ、ナイスアイデア」

 

ロックハートの背中をドラコが杖で小突く。

 

「ね、ねぇ、こんなことしても意味がないだろう?」

 

小突く。

 

「も、もうやめるんだ。他の先生に協力してもらったほうが確実だろう?」

 

小突く。パイプの手前まで来た。

 

「わ、私は関係ないでしょう?ほ、ほら、杖もないし、戦力にならないですよ!?」

 

「先生が許可して同行したと言う事実と、安全確認のためです♪」

 

ドラコの前に立ち、思いっきり蹴っ飛ばす。体制を崩してお腹から落ちていったけど、まあ、無事でしょ。

 

「次は、私が行くね。あいつが変なことしてないか見張りたいし」

 

誰かが何か言う前に飛び込む。滑り台みたいな感じだ。所々で枝分かれしてる。っと、到着かな?地下牢よりも深い場所だね。

 

「スタッと。着地成功」

 

ロックハートは私が着地したところより遠い位置でうつ伏せで転がっていた。手が滑って立ち上がりにくいようだ。

 

他のみんなも降りて(落ちて)くる。

 

光よ(ルーモス)

 

ロンとハリーが光を灯す。私はだいぶ前に買っていた『輝きの手』を持っているからつけなくても平気だ。

 

 

しばらく進む。隊列は、ハリー、私、ロックハート、ドラコ、ネビル、ロンの順。足元には小動物の骨が転がっている。ーー何かが見えた。

 

「……抜け殻だ。巨大な、蛇の抜け殻」

 

緑の皮を持つ抜け殻。

 

「……ハリー、ここからは私たちだけで行ったほうが良い。みんながいたら、逆に足手まといになるかも」

 

「酷いことを言ってくれるね。でも、その通りだろうな」

 

「僕たちはここで待つ。ハリー、リーナ、ジニーを、僕の妹を頼んだよ」

 

「ロックハートは任せといて」

 

言うなり、ロックハートは取り囲まれ、動けなくなった。

 

「よし、行こう!」

 

 

何度も何度も曲がる。もう何度目かわからない曲がり角の先に、二匹の蛇が絡み合った彫刻が見えた。目にはエメラルドが施してある。欲しい。

 

「行くよ……■■」

 

壁が分かれていく。私たちは、『秘密の部屋』の中に一歩を踏み出した。




「おう、ブライト。完成したのか?」

「ああ、完成したぜ。しっかしよう?俺に他のやつの制作を中断させてまで、なんでこれを作らせたんだ?元から作る気ではあったが」

「俺の能力は知ってるだろ?まあ、言うなら、五年以内に、まだ、魔法界に必要な奴が死ぬ。そのための保険だな」

「へぇ……詳しくは聞かないでおこう。ほら、持ってけよ実力派エリート」

「サンキュ。この首飾りのお礼はまた今度な」

「楽しみにまってるぜ」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

閑話と言うかお茶濁しと言うか口直しと言うかよくわからない番外編:ディメント家の日常。つまりネタをぶっ込むだけの回

トム・リドルと邂逅と思ったか?ああ、その方が君たちはよかっただろう。僕も楽しいし君たちも楽しい。僕が本編を書けば、UAは増えるだろう。

『だが断る』


そんなこんなのディメント家。
いろいろとネタが出てきます。


魔法界のお目付け役、ディメント家。アズカバンの吸魂鬼を自在に操り犯罪者を捉えていく、絶対正義にして必要悪……なんてことはなく、ディメント家が一方的に恐れられているだけであり、ディメントの者たちは絶対正義でもなんでも無く、自由気ままに生きている。

今回は、そんなディメント家の一部ーーまだ紹介されていない者たちのお話。

 

 

その男はアメリカにいた。その土地は、彼にとっては非常にありがたい場所だろう。男はカルロ・キリングと言う名前であり、犯罪者だった。まだ警察は彼の足取りをつかめていない。否、彼が犯罪者だとすら気付いていない。なぜなら、魔法を使って犯罪を犯したーー人を殺したからだ。

 

ただ、〈爆発呪文〉で頭を吹っ飛ばして、周りのマグルに〈忘却呪文〉をかけただけ。それだけで、マグルにとっては完全犯罪が成立する。杖を持っていても、ローブを着ていても、アメリカなら「コスプレだろう」で済まされる。カルロはそう考えていた。ーー彼らが来るまでは。

 

(なんで、なんであいつらが来るんだよ!イギリスでしか仕事しねぇんじゃなかったのか!?)

 

カルロは逃げていた。裏路地で、マグルの格好をして。カルロは純血主義であり、マグルの服を着るのはごめんだったが、逃げるためには必要なことだった。

 

(んだよ、なんでアメリカ(こっち)にいんだよ!くそっ!俺はアズカバンには放り込まれたくねぇんだ!)

 

まだ、見つかってはいない。しかし、カルロを追っている男は着々と、彼に近づいていた。

 

(あー、くそったれ。捕まるにしても綺麗なねーちゃんに捕まりてぇんだ。何が好きであんなのに捕まらなきゃならねえんだ!あんな、

 

 

筋肉モリモリマッチョマンの変態に!)

 

「さあ、覚悟は良いか?殺すのは後回しにしてやろう」

 

カルロはその後すぐに、身長190cmの筋肉モリモリマッチョマンの変態に捕まることになる。半殺しの状態で。彼の名はジョン。ジョン・ディメント。言うまでも無くディメント家の一員であり、去年のクリスマスに『SCP-018(スーパーボール)』を止めた者であり、

 

過去、アメリカ軍にてコマンドー部隊に『ジョン・メイトリックス』と言う名で潜入していた男である。

 

 

 

 

南米、チリの、ナスカの地上。そこでは、見ただけでSAN値(精神)が直葬されそうな怪物どもが跋扈していた。派遣されたディメントが調査したところ、魔法使いが地上絵に干渉した結果、呼び出すための魔法陣となってしまったようだ。

 

「立ち入れないように魔法使いを何人か配置しているとはいえ、こんな大きなもの、すぐにマグルに見つかってしまうぞ。さっさとスケッチして、消してしまうとしよう」

 

彼はスケッチブックを取り出し、怪物どもをスケッチし始めた。一つの怪物につき三十秒ほど、計三分ほどでスケッチは完了した。

 

「さあ、今消してやろう。安心しろ、君たちはこの露伴が漫画として使おう。静かに眠るといい」

 

男は立ち上がり、改竄された地上絵の前に立つ。そのすぐ近くには、地上絵に似た怪物がおり、彼を喰らおうとしていた。

 

「その程度のスピードで僕を食べられると思うな。『天国への扉(ヘブンズ・ドアー)』!」

 

男の目が見開く。怪物は止まり、地上絵はまるで本のようにめくれ上がった。否、本当に本になっている。彼は本に書かれていた一文、「書き加えられた」を消しゴムで消し、本を閉じた。途端、怪物は消え去り、地上絵は本来の姿に戻った。

 

「さあて、他のもか」

 

彼は他の地上絵にも同じことをした。そして、ナスカの地上絵は完全に、本来の姿に戻った。

 

彼の名前はロハン・ディメント。日本で「岸辺露伴」として漫画を描いている吸魂鬼。彼の能力、『天国への扉(ヘブンズ・ドアー)』は、見て触れたものの記憶・記録を本とし、改竄できる能力。

 

そんな彼は、すぐにスケッチを漫画とするために、日本へと戻っていった。




て訳でネタ回でした。登場人物紹介でもどうぞ。

ジョン・ディメント
元ネタ、『コマンドー』のジョン・メイトリックス。
身長190cm、茶色の短髪の筋肉モリモリマッチョマンの変態。趣味は格闘技とボディビル。SCP-504(批判的なトマト)の突進にも耐えられる。

ロハン・ディメント
元ネタ、『ジョジョの奇妙な冒険』の岸辺露伴。
日本で漫画家をしており、ディメントとして活動することは少ない。しかし、ほかに類を見ないような事件の場合はすぐに現場に飛ぶ。
能力持ちだが、彼の能力は「見て触れて能力名を言う」のが発動条件のため、視界内以外のものは対象外だし、体の一部が触れていないと発動できない。強いのに。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

バジリスク

新作案が幾つかあるけど、ストーリーを忘れてるやら原作持ってないやらで書けない。


部屋の中は細長く、薄明かりが付いていた。壁際には、左右一対の蛇が絡み合った彫刻の柱。趣味が悪い。

 

奥へ進むと、年老いた男の石像が目に入った。これがサラザール・スリザリンだろう。石像の手前にはーー

 

「ジニー!」

 

ジニーがいた。まだ息はある。でも、非常に希薄だ。彼女の近くに落ちている日記。もしかして、魂を奪い取って、ジニーを操っていたのか?

 

「その子はもう目を覚ましはしない」

 

声が聞こえる。振り向くと、背の高い、黒髪の少年が立っていた。

 

「トム・リドル……!」

 

「……感情が凄く薄い。今のジニーよりもはるかに。今の君は、思念体といったところかな?」

 

「よくわかったね。なら、僕が誰なのかもわかってるんだろう?」

 

「ああ。スリザリンの継承者で、五十年前にも、この部屋を開いた。そして、今は日記に宿り、あの日記に心を許した者の魂を奪う」

 

「大正解。でも、それだけじゃーー」

 

「ハリーには教えてなかったけどね、私は君の本体を知っている。大方、あの禁呪を使って遺したんだろう?

 

 

ヴォルデモート」

 

私がその名を告げると、リドルは笑い、ハリーは顔が険しくなった。

 

「はははっ!本当に面白いよ!そこまで見透かされてるなんてね!ああ。確かに禁呪だよ。今、コレと同じ存在は六つある。中でも、僕が一番力を持っている!」

 

「だろうね。魂を引き裂くのは、ほぼ必ず半分ずつだ。ホグワーツ在学中に作ったんなら、君が一番、内包されている魂が大きい」

 

「……ごめん、よくわからないから教えて」

 

「うん。簡単に言うと、大きな罪を犯すことで、魂を引き裂き、箱の中に入れる禁呪ーーホークラックス、『分霊箱』を、こいつは作ったんだよ。まあ、箱って言うのは定義だけで、実際には関係の深い物ならなんでもいいんだけどね。それで、あの日記の中には、誰かを、いや、マートルを殺した時のヴォルデモートの魂が宿っているんだ」

 

「ああ、そうさ。僕は単なる記憶みたいなものだ。でも、ダンブルドアは追放された!僕を止めることはできやしない!」

 

踏ん反り返るリドル。しかし、笑顔が凍りつく。歌うような、美しい鳴き声が聞こえてきた。ーー不死鳥だ。彼(彼女?)は、ハリーの頭にボロボロの帽子を落とし、私の肩に止まった。大きさの割に軽い。流石、伝説の生き物。

 

「ありがとう、フォークス」

 

落とした帽子は、古い組分け帽子だった。

 

「はっ。そんなもので僕に勝てるとでも?歌い鳥と古帽子で?やれると思うか?」

 

今気付いたけど、リドルの輪郭が少しずつはっきりしていっている。どんどん実体に近づいていってる。早くしないと。

 

「さて、御託はここまでだ。始めようか。『■■■■■■。■■■■■■■■■■■■■■■。■■■■■■■』」

 

私には何を言っているのかわからない。でも、おそらく合言葉みたいなものだというのはわかった。スリザリン像の口が開き始めてるからだ。あの中から、バジリスクが出てくるのだろう。私は、蜘蛛の王に投げた小瓶と同じものを、スリザリン像の口の中に放り込んだ。

 

「はっ、そんな小瓶で何ができる。■■■■■■ーーおい、どうした。なぜのたうちまわっている!いや、そのピーナッツバター色の粘液は一体なんなんだ!」

 

「あははっ!」

 

流石、流石だよブライト!本当に、アレと全く同じようにしてくれるとは!

 

「おい、バジリスクに何をした!」

 

「とある物体を引っ付けただけだよ。君にはバジリスクが笑っているのがわからないのかい?そこで黙って見ているがいい、亡霊」

 

私はリドルに言い捨て、バジリスクに向き直る。笑い転げているから、今の彼は眼を閉じている。さあ、大博打だ。

 

 

 

バジリスクの心の中に入り込む。バジリスクを形作るモノ、内なる自分とでも言うものを探すために。

 

「……誰?」

 

暗い部屋の奥にいたのは、小さな男の子だった。あれが、バジリスクのメンタルイメージだろう。

 

「私は君と話をしに来たんだ。君について、教えてくれるかい?」

 

「……うん。ボクはバジリスクって呼ばれてる。父さんからは、ヨーンって呼ばれてた」

 

「父さん?」

 

「みんなは父さんのことを、サラザールとか、サラとか、スリザリンって呼んでた」

 

「へぇ。なんで、部屋がこんなに暗いの?」

 

「人を殺したくない。ボクはホグワーツを守れって、父さんに言われたのに、命令されて、逆らえなくて……!」

 

バジリスクもただの被害者だったんだろう。おそらく、何かしらの契約で、強い蛇語使いには逆らえなくなっている。

 

「契約書か何かあるの?」

 

「ある。でも、ボクだと破けないんだ。……お姉さんなら、破くことができるの……?」

 

「やってみせよう」

 

ヨーンから契約書を受け取る。本来、この手のものは関係者ーーこの場合はバジリスクと使役者にしか破けない。けど、

 

吸魂鬼(ディメンター)を、なめるな……!」

 

()()()()()。吸魂鬼のキスを応用して、魂の契約を無効化する。

 

「はぁ……はぁ……これで、君は自由だ。君を縛るものはない。君のしたいようにするといい」

 

「うん。ありがとう、お姉さん!」

 

部屋に光が射し、ヨーンが笑顔になる。私は、そのままバジリスクの心から出て行った。

 

 

 

「ーーおい、なぜ動かない!なぜあいつらを殺さない!早く、早くしろ!」

 

「無駄だよ。もう、バジリスクは君に縛られてはいない」

 

「何だと!?」

 

「リーナ、上手くいったの?」

 

「ああ、もちろん。バジリスクは自由、もうリドルに従うことはない。……ところで、その剣は何?」

 

「何か武器を探してたら、組分け帽子から引き抜けた」

 

(それ、父さんの友達が持ってた剣!)

 

「「うわっ?!」」

 

急にヨーンが話しかけてきた。驚いた。

 

(ゴブリンの銀で出来てるって)

 

「ゴブリンの銀……ああ、なるほど。ヨーン、この剣を咬んでみて」

 

「おい、なぜそいつらの言うことを聞くんだ、バジリスク!」

 

ヨーンが剣を咬む。毒が流れ出し、剣に染み込んでいく。

 

「ゴブリンの銀……確か、有益なものを吸収して強くなるんだっけ?」

 

「当たり。さて、やることはわかるよね?」

 

「もちろん!」

 

ハリーは日記に近づく。そして、剣を逆手に持ち、振り被る。

 

「止めろ……止めろ、止めろ止めろ止めろ止めろ止めろーーっ!」

 

「嫌だ!」

 

そのまま、剣を日記に突き刺す。リドルは悲鳴を上げ、消えていき、ジニーの顔には赤みが戻っていった。

 

一件落着。




なぜシリアスが崩壊したのか。SCP-999ってやつのせいなんだ。
ヨーン→どこぞの巨大蛇の名前。とある感想で見て。

新作→魔法科高校の電脳少女(カゲプロのエネを達也くんのところに)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

説教?

みなさんお久しぶりです。電脳少女の方を書いてて+FGOでメディアリリィ当てて+pixivでかげちゃんにはまってて+秘密の部屋の今後どうしようで書いてませんでした。


フォークスをジニーのお腹の上に乗せる。人肌より少し高めの体温だから、布団の中にいるみたいでとても気持ちがいいだろう。

 

「バジリスク……ヨーンはこれからどうなるの?」

 

「自発的に襲っていたのなら有罪。良くて薬殺、悪くて研究所行きだろうね。

でも、魔法契約で縛られていたのなら話は別だ。強制的に従わせる物だったから、魔力が残ってれば無罪だね」

 

契約自体は、既に効力を失っている。でも、契約の魔力はまだ残留してるから、あの頭が硬い魔法大臣(ファッジ)でも、認めざるを得ないだろう。ああ、お父さんの無罪の証拠ーーあの鼠(ペティグリュー)を早く刈り取りたい。アレをファッジの目の前で鼠から人間に変身させて、NDK(ねえどんな気持ち)?ってやりたい。そして高笑いして罵りたい。

 

「……いや、いっそ血祭りにあげても良いかもね」

 

「リーナ、怖いから落ち着いて」

 

おっと。

 

「う、ううん……」

 

ジニーが動いた。気が付いたのかな?

 

「ヨーン、目を瞑ってて。そのうち、魔眼の無効化用のコンタクトレンズでも作ってもらうから」

 

「……あ、ああ、ああああ!ごめんなさい!ごめんなさいハリー!あたしが、あたしがやったの!朝食の時に打ち明けようと思ったわ。でも、パーシーの前では言えなかった。リーナも、ごめんなさい!

……ところで、ここって、秘密の部屋の中よね?リドルはどうしたの?リドルが日記帳から出てきたところで気を失っちゃって……それに、バジリスクは?」

 

「ジニー、後ろ向いて見て」

 

「えっ?……き、キャァァァアアアアッ!?バ、バジリスク!?に、逃げなきゃ!」

 

「落ち着いて。彼はもう敵対してないよ。リドルに操られてただけなんだ。彼は、本当はとっても優しいんだよ」

 

スー、ハーと深呼吸して、ジニーは落ち着いた。

 

「……うん。驚いたけど、襲ってこないものね、手懐けたの?バジリスクを手懐けた人なんてそうそういないんじゃないかしら?

……ねぇ、ハリー、リーナ、あたし、このまま退学かしら?不用意に日記帳を使ったのはあたしだし、あれを信用したのもあたし。それに、秘密の部屋を開けて、みんなを襲ったのもあたし。きっと、退学に間違いないわ」

 

「そのあたりは、ダンブルドアが決めるだろうね。だから、今は気にしないで早く戻ろう?」

 

私たちはジニーとともに、部屋を出た。ヨーンは寂しそうにしていたが、すぐに戻ってくると言うと途端に元気になっていた。

 

 

ロックハートのところに戻る。みんなはロックハートを監視しながら、暇潰しに言葉遊びをしていたみたいだ。私たちが、特に私が行ったことで、心配なんてモノは吹き飛んだとか言ってた。解せぬ。

 

「ジニーは無事だよね?バジリスクはどうなったの?」

 

「バジリスクは大人しくなったよ。リドルが操ってただけだし。それに、元凶もなんとかした」

 

ハリーが日記帳を掲げる。ロンはあからさまにホッとしていた。

 

「兄妹の感動の再会のところ悪いんだが、どうやって帰るんだ?七人もいるんだ。なぜ不死鳥がいるかは知らないけど、不死鳥でも七人は無理だろう?」

 

「二回に分ければいいでしょ」

 

「あ、そうか」

 

ドラコ、案外抜けてるところあったんだね。ロックハートは戦意喪失してへたり込んでる。orzって感じに。

 

「ロックハートは二回目。絶対に。ジニーは一回目。あとは……その場のノリだね」

 

そう言って、みんなを見渡す。一組目を見送り、フォークスが戻ってくるのを待つ。

 

「……ふふ、これから私はどうなるんでしょうね?」

 

「良くてクビ。いや、ほぼ確実に監獄行きだろうね、ロックハート」

 

「私は、間違っていたのですか?何がいけなかったんですか?……君なら、答えられるんだろう?教えてくれるかい?」

 

「活躍しようと、目立とうと思ったのが間違い。別に、表で活躍する人だけがヒーローってわけじゃないんだから。表に出てこない、縁の下の力持ちってのもかっこいいじゃん。みんなを、ヒーローを支える仕事。自分がいなければヒーローが成り立たない仕事。魔法事件をマグルの目から隠す役職あったよね?あれなら天職だったんじゃないかい?彼らのおかげで、魔法使いはマグルの目から逃れられてるんだしさ」

 

「そうか……ありがとう。ねぇ、こんな私でも、やり直せますか?」

 

「あなた次第さ」

 

戻ってきたフォークスを撫で、ロックハートの腕を掴む。その後ろに、日記を見ていたハリーが続く。

フォークスの尻尾を掴んだ。すると、いきなり体が浮き上がり、とてつもなく早く飛んでいた。そして、三十秒ほどで、マートルのトイレに戻ってきていた。

 

「……生きてるの?ああ、残念。もしあんたが死んだら、わたしのトイレに一緒に住んでもらおうって思ってたのに」

 

「ハリーは私のだよ」

 

何やらマートルがハリーのことを狙っていたので言っておく。ジニーへの牽制も含めて。

 

「ギシギシしてないで、早くマクゴナガル先生のところへ向かおう。あの人が、一番信用できる」

 

フォークスの先導で、マクゴナガル先生の部屋に向かう。廊下は誰もおらず、重苦しい空気が漂っている。これも、明日には一変しているとこだろう。

先生の部屋の前に出る。ハリーがノックをして、ドアを押し開いた。




ロックハートが若干綺麗になったかな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

説明

お久しぶり。


ハリーと、私、ジニーが先頭に立って部屋に入ると、一瞬、沈黙が流れ、叫び声が上がった。

 

「ジニー!」

 

ウィーズリー夫人だ。ウィーズリーさんもいる。二人は勢いよく立ち上がり、ジニーに抱きついた。親子の感動の再会だね。

でも、私たちの視線はその向こう側ーーマクゴナガル先生と並んで立っている、ダンブルドアに向いていた。ダンブルドアはにっこりと笑い、いつのまにか肩に留まっていたフォークスを静かに撫でた。

 

「ダンブルドア先生、いーーわふっ!?」

 

先生に質問しようとしたら、夫人に抱きしめられた。ちょ、胸が、胸が当たってますから!一向に大きくなる気配のない私への当てつけですか!?

 

「ありがとう!あなたたちがあの子を助けてくれた!あの子の命を!……でも、どうやって助けたの?」

 

「私たち全員が、それを知りたがっていますよ。話していただけますか?」

 

「……わかりました。ですから、夫人、離してください」

 

夫人の抱擁から解放されたハリーは、組分け帽子とゴブリンの銀製の剣、リドルの日記の残骸を机に置き、一部始終を話し始めた。ただし、みんなが期待しているようなバトルはなく、私の正体が悟られないように話した結果、みんな口を開いてポカーンとしていた。

 

「ねぇ、リーナ。シリアスってどこに行ったんだろうね」

 

「旅行じゃない?」

 

「……ええ、本当に。緊張感は何処へ消えたのですか?それも、黒幕との決戦の時に。

ええ、傷一つなく、危険地帯から帰ってきたのです、入り口を見つけるまでに約百もの校則を粉々に破ったことは不問としましょう」

 

あれ、そんなに校則を破ってた?ーーまあ、教師を脅したり、騙したり、放送を無視したりしてたしね。

 

「一つ、いいかのう?」

 

ダンブルドアが口を開いた。

 

「わしが一番興味があるのは、ヴォルデモート卿が、どうやって禁呪を知ったか、ということじゃ。あれのことを詳しく知っている者はそうおらん。マートルが死んだのは、ヴォルデモート卿がまだトム・リドルだった頃。つまり、当時のホグワーツの教師が教えたのかのう?」

 

「『例のあの人』が関わってるだなんて……その禁呪はそんなに強力なのですか?」

 

「ああ、強力じゃとも。詳しいことは話せんがの。この魔法は、存在自体が忌むべきものじゃ。リーナが知っていたのは、まあ、あやつが教えたのかのう。

さて、ミス・ウィーズリーはすぐに医務室に行きなさい。かこくな試練じゃったろう。処罰はなしじゃ。もっと年上の、もっと賢い魔法使いでさえ、ヴォルデモート卿にたぶらかされてきたのじゃ」

 

ダンブルドアは話を打ち切ると、ドアを開けた。

 

「安静にして、それに、熱い湯気の出るようなココアをマグカップ一杯飲むがよい。わしはいつもそれで元気が出る。もちろん、火傷はせんように気をつけるんじゃぞ?」

 

ジニーを見下ろすダンブルドアの目は優しい。……でも、案外腹黒なんだよなぁ、この人。

 

「マダム・ポンフリーはまだ起きておる。先ほど、マンドレイクのジュースをみんなに飲ませたところじゃ。犠牲者たちは、今にも目を覚ますじゃろうーーああ、安心しなさい、ミスター・ウィーズリー。回復不能の障害は一切なかった。もちろん、ミス・グレンジャーにも」

 

よかった。みんな無事なようだ。ウィーズリー夫人はジニーを連れて出て行き、ウィーズリーさんもそれに続いた。

 

「……ふむ。のう、ミネルバ。これは一つ、盛大に祝宴を催す価値があると思うのじゃが。キッチンにそのことを知らせてくれるかのう?もちろん、甘いお菓子もいっぱい作ってくれと」

 

「わかりました」

 

マクゴナガル先生はキビキビと答え(でも、目が潤んでいる)、ドアの方へ向かった。

 

「ここにいる者たちーーポッター、ディメント、ウィーズリー、ロングボトム、マルフォイの処置は先生にお任せしてもよろしいですね?」

 

「もちろんじゃ」

 

マクゴナガル先生は部屋を出て行った。

処置と言っていたが、酷いことにはならないだろう。

 

「君たちはよくやってくれた。実際に、ヴォルデモート卿やバジリスクと対峙したのがハリーとリーナだけでも、みな、その場所までついて行った。推理し、思案し、勇気を振り絞ったーーよって、五人には『ホグワーツ特別功労賞』が授与される。それにーーそうじゃなーーグリフィンドールとスリザリンに四百点、与えよう」

 

おお、四百点も。これはまたスリザリンと引き分けかな?

 

「しかし、一人だけ、この危険な冒険の自分の役割について、恐ろしく物静かな人がいるようじゃ。

ギルデロイ、君にしては随分と控え目じゃが、どうしたのかね?」

 

「……私には、この冒険譚を語る資格はないのですよ、校長先生。私はこれから、ディメント家へ出頭します。私は一からやり直します。ですから、もう、教師はできません。先生も、私のしでかしたことをわかっていて、迎え入れてくれたんでしょう?今、グリンゴッツにある私のが稼いだお金は、全てホグワーツに寄付します。一年間、ありがとうございました」

 

「……なんと、つい一ヶ月前に会ったきりじゃったが、随分と変わったのう。誰に諭されたんじゃ?」

 

「ミス・ディメントです」

 

「おお、あのディメント家で暮らしていて、人を諭せる子になったとは。リーナ、君に十点あげよう」

 

「……ディメント家の日常って?」

 

「暴走してる。マッドサイエンティストもいれば筋肉モリモリマッチョマンもいるし、訳がわからない」

 

「……カオスだってことは理解したよ」

 

ドラコが苦笑いで頷く。どうせなら一日、研修でもしてみる?満身創痍確定するけど。

 

「さて、さて。ギルデロイ、みんなを医務室へ連れて行ってくれるかね?パーティーが終わるまでは、まだ教師をしてもらうつもりじゃ。ああ、ハリーとリーナは残ってくれるかのう?話したいことがあるんじゃ」

 

ロックハートは頭を下げ、みんなを連れて出て行った。

私たちは、ダンブルドアに促され、暖炉の側の椅子に座った。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ダンブルドアとの対話

お久しぶりです。ようやく三巻を手に入れたので続きを投下。



いえ、決してPixivで2ちゃん風小説投降したり新作を投降して遅れた訳じゃありませんよ?違うったら違う。

あ、新作はハガレン×Fate/GOで、「Fate/GrandOrder 円環支配国家アメストリス」です。ぜひご一読を。最終的にはイベントクエストらしく、グダグダに終わる可能性が高いですが。


「わしは、二人に礼を言わねばならん。『秘密の部屋』の中で、君たちはわしに真の信頼を示してくれたに違いない。それでなければ、フォークスは君たちのところに呼び寄せられなかったはずじゃ」

ダンブルドアは、膝の上で寝ている不死鳥を撫でた。フォークスは彼の手に頭を擦り付けている。凄い信頼関係があるようだ。

「それで、君たちはトム・リドルに会ったわけだ。

リーナ、君は日記から出てきた彼に対して、どう思った?」

ダンブルドアが私を見る。嘘をついてもバレる。そう思った私は正直に答えた。

「とても、とても薄い存在。そこに姿を現わすのが精一杯な、残留思念」

「……正解じゃ。君が分霊箱を知っていたのは、ウィルが教えたのかね?」

「はい。一通りの魔法や、魔法で作られた物品も見させられましたが、分霊箱は話だけ。実物を見たのはその日記が初めてです」

「そうか……スネイプ先生から話は聞いておる。ハリーの中にも、ヴォルデモートの魂のカケラが入っているそうじゃな……もしや、いや、まさか……」

ダンブルドアが悩み出す。おそらく、彼の懸念は当たっている。ハリーは何が何だかわからないようだが、いずれ、気付くだろう。

「……今は言わんでおこう。さて、ハリー、君はトム・リドルとは違う、それはわかっておるな?」

「はい、先生。僕の中にヴォルデモートの魂が入ってることには驚きましたけど、僕とあいつは違う。でも……」

ハリーが言い淀む。そこから先を口にしたく無いかのように。もしかして、あの時のことかな?

「ハリー、言いたくないのなら言わなくてもいい。これだけ答えてくれればいい。君は、校長室に行った時に、組分け帽子に何か言われたの?」

「……うん。『私が言った言葉は今も変わらない。君はスリザリンでうまくやれる可能性がある』って」

だから、ハリーは悲しそうな顔をしていたのか。でも、組分けはハリーをスリザリンに入れずにグリフィンドールに入れた。

「ハリー、よくお聞き。組分け帽子は確かに、君がスリザリンでうまくやれる可能性があると言った。君のスリザリンとしての素質を見抜いた。しかしじゃ、その上で君をグリフィンドールの入れたのじゃ。君は自分の意思で、自分の選択でグリフィンドールに入った。ハリー、この剣をよおく見るといい」

ダンブルドアは手を伸ばし、銀の剣を手に取った。

ルビーが暖炉の灯りにきらめき、吸い込まれそうなほどだ。つばのすぐ下には、誰かの名前が刻まれている。

「この剣が誰の物だったのか、わかるじゃろう?」

「……ゴドリック・グリフィンドール、サラザール・スリザリンの友の剣、ですね?」

「そうじゃ。そして、この剣は真のグリフィンドール生だけが、帽子から取り出してみせる事ができる」

ダンブルドアは少し黙り、マクゴナガル先生の机の中から羽根ペンとインク壺を取り出した。

「君たちはゆっくりと休みなさい。お祝いの宴に行って、美味しい料理を食べるとよい。わしはウィルに手紙を出して、ハグリッドを返してもらわねばならんのでな。それに、『日刊予言者新聞』に出す広告も書かねば。

『闇の魔術に対する防衛術』の新しい先生が必要じゃのう。なんとまあ、またまたこの学科の先生がいなくなってしもうた。しかも、二人ともハリーとリーナが捕まえたようなものじゃ。……ところで、クィリナスは元気にしとるのかの?」

「情報収集やら雑用やらをしていますよ、元気に悲鳴をあげながら」

ハリーと共に立ち上がり、ドアへと向かった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二年目の終わり

バタン、と大きな音を立てて乱暴にドアが開かれる。その向こうには、ルシウス・マルフォイがいた。腕の下には、包帯でぐるぐる巻きにされたドビーが縮こまっている。

「こんばんは、ルシウス」

ダンブルドアが機嫌よく挨拶した。マルフォイ氏は怒りの表情を浮かべ、ダンブルドアに歩み寄った。

「それで、お帰りになったわけだ。理事たちが停職処分にしたのに、まだ自分がホグワーツ校に戻るのがふさわしいとお考えのようで!」

「はて、さて、ルシウスよ」

強い語調のマルフォイ氏に対して、ダンブルドアは微笑みを浮かべ、落ち着いた声で言葉を返した。

「今日、君以外の十一人の理事がわしに連絡をくれた。正直なところ、まるでふくろうの土砂降りにあったかのようじゃったよ。アーサー・ウィーズリーの娘が攫われたと聞いて、理事たちがわしに、すぐ戻って欲しいと頼んできた。結局、この仕事に一番向いているのはこのわしだと思ったらしいのう。奇妙な話をみんなが聞かせてくれての。もともとわしを停職処分にしたくはなかったが、それに同意しなければ、家族を呪ってやるとあなたに脅された、と考えておる理事が何人かいるのじゃ」

いきなり、ハリーに服を引っ張られた。ハリーが指差す方を見ると、ドビーが日記を指差し、マルフォイ氏を指差し、自分の頭を殴りつけた。

「ねぇ、リーナ。マルフォイさんって、本屋でジニーの教科書拾ってたよね?」

「そうだね。……まさか?」

「多分。カマをかけてみるよ」

いつのまにか無表情になっているマルフォイ氏にハリーが話しかけた。

「マルフォイさん、ジニーがどうやって日記を手に入れたのか、知りたいと思われませんか?」

マルフォイ氏はハリーの方を向き、食ってかかった。

「バカな小娘がどうやって日記を手に入れたか、私がなんで知らなきゃならんのだ?」

「あなたが日記をジニーに与えたからです。フローリッシュ・アンド・ブロッツ書店で。ジニーの古い『変身術』の教科書をあなたは拾っていた。そして、その中に日記を滑り込ませた。そうでしょう?」

「何を証拠にそんなことを言っている。誰も証明できんだろう。ああ、確かに私は小娘の教科書を拾った。しかし、その中に日記を滑り込ませたところを見た者はいるのかね?」

「ああ、誰も証明はできんのう。リドルが日記から消え去ってしまった今となっては。しかし、ここにはディメント家の者がおる。この子が願えば、彼らはその日記の出所を探し当てるじゃろう。今回ばかりはわしに免じて不問としてもらうつもりじゃが、次はそうはいかん。わかっておるな?」

マルフォイ氏の右手が震えた。図星なのか、それとも。

「ドビー、帰るぞ!」

マルフォイ氏はドアを押し開ける。しかしーー

「帰らせるわけにはいかないんですよねー」

奇妙な形のサングラスを首にかけた男。ジン・ディメントだ。

「申し遅れました、ジン・ディメントです。少し、お話がありましてね。ああ、校長、この部屋で話しても?」

「ふむ、よいとも。わしにも用があるのじゃろう?」

「ええ。

ーーさて、と。ルシウス・マルフォイ氏、あなたには違法とされている魔術物品の所持が疑われています。事情聴取、並びに家宅捜査をさせていただきたいのですが?」

「何を証拠に言っている。私はホグワーツの理事だ。そんな物を持っているわけがないだろう」

「いやー、そう信じたいんですがね?あなたがボージン・アンド・バークス店にて毒物その他を売っていたとのタレコミが。で、このままだと証拠不十分でお咎めなしなんですがーー誰かさんが『日刊予言者新聞』にその情報をリークしちゃいましてね。明日の一面が大騒ぎになるかもなんですよねー。

……では、ご同行を」

ジンが開けたドアの先には、他にもディメントの者がいた。彼らに囲まれて、マルフォイ氏が歩いていく。

「待ってください、マルフォイさん」

ハリーが日記を投げつけた。少し膨らんでいる。ハリーを見ると、靴下を片方履いていなかった。

「なんだ?こんな嫌がらせしかできないようでは、君もそのうち親と同じように不幸な目にあうぞ、ハリー・ポッター」

マルフォイ氏は靴下を投げ捨てる。それを、ドビーがキャッチした。そのことにマルフォイ氏はまだ気付いていない。

「ご主人様が……」

「ドビー、どうした。ドビー!」

「ご主人様がドビーめにソックスを片方くださった。ご主人様が、これをドビーにくださった」

「……なんだと?」

「ドビーがソックスの片方をいただいた。ご主人様が投げてよこした。ドビーが受け取った。だからドビーはーードビーは自由だ!」

マルフォイ氏は凍りついたように立ちすくみ、杖を取り出してハリーに向けた。

「小僧、よくも私の召使いを!〈アバターー」

「ハリー・ポッターに手を出すな!」

バーンと大きな音がして、マルフォイ氏が吹っ飛んだ。やっていいのなら私がやりたかった。

「今の、〈死の呪い〉でしょ?未遂だけど、現行犯だからね、少なくとも罰金か、一カ月間刑務所行き。今ならアズカバンにでも招待しますよ?」

ジンが嫌な笑顔を浮かべている。

ドビーはハリーと話したあと、姿くらましで去っていった。

 

マルフォイ氏が完全に見えなくなったあと、ジンが口を開いた。

「ふいー、お仕事終りょー。あとはダンブルドアへの用事だけだな」

ジンはポケットから何かを出す。真ん中に宝石のような物がはめ込まれた、楕円形の首飾りだ。

「中央には卵型にカットしたルビー、その周りにゃ十三個のブリリアントカットのダイヤモンド。ダイヤモンドは魔法の媒介にもなる宝石だし、十三ってのは魔術的にも因縁のある数字だ。ユダとかな。持っておいて損はないと思うよ。

ーー忠告だ、ダンブルドア。その首飾りを常に身につけていろ。そうすりゃ、運命から逃れられる。俺の能力がそう言ってる」

それだけ言うと、ジンは去っていった。

「……のう、リーナ。これは何じゃ?」

「あー、多分うちのマッドサイエンティストの作品かと……害はないと思いますよ、多分。害があるのは人には渡さず、アズカバンに放すと思うので」

「それもどうかと思うんじゃがのう……」

ダンブルドアは首飾りをつけ、服の内側へとしまった。

 

 

 

宴会は夜通し続いた。ハーマイオニーには抱きつかれ、ジャスティンには謝られ、ハグリッドが肩を叩いてきたのでセルフパイ投げ状態になったり。

寮対抗杯はギリギリでグリフィンドールが優勝した。ドラコは「来年は僕らスリザリンが優勝してみせる」と息巻いていた。

期末試験はキャンセルされたらしい。ハーマイオニーが嘆いていた。

ロックハートについては、諸事情により辞めることになったと告げられた。一週間もすれば新聞に事情が掲載されるだろうが、今だけは秘密になっていたーー大半の生徒、先生が喜んでいたけど。

 

闇の魔術に対する防衛術の授業はそのあとはキャンセルになった。先生がいないからね。マルフォイ氏は理事を辞めさせられたそうだ。ドラコが、記者が多そうだからどこかに避難しようかと言っていた。

 

あっという間に時は過ぎ、ホグワーツ特急に乗っている。私たちは一つのコンパートメントを独占し、ゲームや魔法の練習で楽しんでいた。あと、パーシーがペネロピーと付き合ってることがばれたけど、絶対にフレッドとジョージがいじり倒すんだろうなぁ。

 

汽車が速度を落とし、停車する。

私たちは汽車を降り、マグルの世界へ戻っていった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

日刊予言者新聞■■月■■日号

完全捏造。


『ギルデロイ・ロックハート氏、まさかの辞任』

 

先日、自伝「私はマジックだ」などで知られる、ギルデロイ・ロックハート氏が魔法省に自首しました。容疑は魔法の使用による詐欺、誇張とのこと。ロックハート氏はホグワーツ魔法魔術学校の教師も務めており、女性ファンの多さで有名でした。

ホグワーツ魔法魔術学校は今年、『秘密の部屋』と呼ばれる、故サラザール・スリザリンの遺した部屋を利用したとされる、生徒襲撃事件が発生しており、容疑者としてホグワーツ校森番のルビウス・ハグリッド氏が検挙され、理事会によって校長のアルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドア氏が停職処分を受けていました。しかし、ウィーズリー家長女ジネブラ・ウィーズリーさんが攫われたことにより理事会は停職処分を撤回、ダンブルドア氏が校長に復職しました。

ロックハート氏について校長は、「非常に残念じゃが、彼が自らの過ちに気付いてくれてよかった。このままだと戻れないところまで行ってしまっていたじゃろう」と発言しています。『秘密の部屋』事件については、「原因は取り除かれた。もう生徒が襲撃されることはないじゃろう」とこのこと。この発言についてディメント家が調査、肯定したので、これ以降襲撃はないと思われます。また、ロックハート氏の取り調べについてもディメント家が担当するとのこと。ディメント家はロックハート氏が教員職に就いた時から氏のことを調査していたと発言しています。判決は、少なくとも来月中には出ると思われます。

 

 

『ルシウス・マルフォイ氏、理事会脱退』

 

昨日、ホグワーツ校理事会のルシウス・マルフォイ氏が理事会の脱退処分を受けました。処分の理由として、違法な魔法物品の所持、他の理事への脅迫、ホグワーツ校生徒への〈死の呪い〉による殺人未遂が挙げられています。

理事への脅迫は、「ダンブルドア氏の停職処分に賛成しなかったら家族を呪う」というもの。マルフォイ氏は容疑を否認。

違法な魔術物品の所持について、記者の調べによると、同氏は夜の闇(ノクターン)横丁ボージン・アンド・バークス店にて、毒薬などの物品を売ったとのこと。また、ディメント家の家宅捜査では、それ以外にも大量の闇の魔術に関わるマジックアイテムが発見されました。マルフォイ氏は、この容疑についても否認しています。

続いて、ホグワーツ校生徒に対する〈死の呪い〉による殺人未遂ですが、マルフォイ氏は容疑を認めています。同氏によると、「嵌められて召使いを解雇することになってしまい、頭に血が上っていた」とのこと。マルフォイ氏は魔術物品の所持容疑によりディメント家より同行を求められている最中に反抗に及び、その場で取り押さえられました。同氏は『名前を呼んではいけないあの人』の部下だったとの噂もあり、関係者の事情聴取を進めていくとのことです。

 

 

『現代の切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)?』

 

先日、四件目となる解体事件が発生しました。被害者はロンドン在住のイーナ・ツワイスさん(27)。現場には『こいつも違う』と血文字が書かれていました。

ロンドンでは、今月に入って四件、同様の殺害方法による殺人事件が起こっています。被害者は全員、解体(バラバラに)されて殺されています。被害者は全員が成人した女性で、霧の深い夜に殺されています。

魔法省はこの事件を、同一犯による連続殺人事件として調査することに。古参の魔法省役員は、「まるで切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)の再来のようだ」と発言しています。




日刊予言者新聞を捏造。切り裂きジャックについては次の章の導入に使うだけだから気にしないでください。





うちのカルデアにもジャックちゃん来てくれないかなぁ(書けば出るんでしょう?)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Lina Dement and the Prisoner of Azkaban
始まり始まり


れっつごーアズカバン編!


注意!
この章はホグワーツの様子=ハリーやロン、ハーマイオニー、ネビル、ドラコなどの様子の描写が少なくなります。理由は、魔法省からの吸魂鬼出動命令に吸魂鬼orディメント家として参加するからです。あと原作乖離が他の章よりも酷くなるかと。それでもよろしいと言う方はどうぞ。

あ、この章から東方のマジックアイテムが登場しますよ。


八月某日、ロンドン。霧の深い夜のこと。一人の女性が路地を歩いていた。黒のパンツスーツを着た、一見すると会社員の女性。しかし、彼女の懐には杖があった。普通の人間(マグル)ではない、魔法族。なぜこんな時間に歩いているのかはわからない。しかし、彼女が急いでいることだけはわかる。

 

切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)の噂。

 

ここ最近、ロンドンで被害が相次ぐバラバラ殺人事件。その犯人とされているのが切り裂きジャック。こんなところにいては襲われてしまう、と、彼女はさらに早足になる。

と、彼女のバッグの中が光り出す。取り出されたのは、ガラスのミニチュアごまのようなもの。かくれん防止器(スニーコスコープ)と魔法使いの間で呼ばれているそれは、周りに怪しげな何かがいることを示していた。

何かの気配を感じる。女性が後ろに振り向くと、輪郭のぼやけた人影が立っていた。

「……貴女かなぁ?」

人影はニィ、と笑うと、一目で呪いがかけられているとわかるナイフを取り出し、女性を切り付けようとーー

「そこまでだよ。〈麻痺せよ(ステューピファイ)〉」

したところで真後ろから失神呪文が浴びせられた。

「いやー、安全ってわかってても怖いよ。もっと早く出てきてくれても良かったんじゃない?ねぇ、リーナ」

「だいぶ余裕そうだったじゃん。それに、わたしが協力しなくても返り討ちにできたでしょ、リゼ」

人影の後ろから出てきた少女ーーリーナと女性ーーリゼが談笑する。彼女たちは影に近づき、覆ってる何かを剥ぎ取った。

「へぇ、透明マントか。使用期限がだいぶ切れてるやつ。なるほど、恐怖演出かな?」

「バックパックの中にもう一つ、新品の透明マントがあるねぇ。これで逃走してた、と。いやぁ、透明マント二枚とか、よく手に入ったね、この男。珍しい素材でしか作れないって聞いたけど?」

「標準装備が透明マントな私たちが言う?」

二人は男を拘束すると、建物の陰からするりと出てきた男に犯人を放り投げた。

「おっと、もうちょっと丁寧に渡して欲しかったんだが?」

「いいじゃん、別に」

「わかってるでしょ?クィレル」

ちっ、と舌打ちをして、クィレルが男を脇に抱える。そして、二人に新聞を二つ投げた。

「君たちが仕事をしている間に大変なことになった。リーナ、監督不届きではないかね?」

「なんのこと?……って、ええ!?」

受け取った新聞は別々の号で、新しい方には、『シリウス・ブラック脱獄か!?』と、一面に載っていた。

「お父さん、なんでロンドンに出てきてるの!?クィレル、どういうこと?」

「もう一つの方を読んでみればわかる」

もう一つの新聞には、ウィーズリー一家が新聞のくじで七百ガリオンを当て、エジフトに旅行しているとの記事が。写真にはウィーズリー一家、そして、ペットのスキャバーズ――ピーター・ペティグリューも写っていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

指令

グリモールドプレイスの屋敷でシリウスを正座させる。うん、久々に彼をお父さんじゃなくてシリウスって呼んだね。これで私が怒っていることも伝わるだろう。

「さて、弁解はあるかい、シリウス・ブラック?」

「久々に名前で呼んだね、リー「御託はいい、さっさと答えてくれるかい?」反省はしているが後悔はしていない」

彼の言葉を聞き、クリーチャーを呼びつける。命じるのは、一週間の食事制限。普段食べてるのが十だとしたら、しばらくの間は三以下しか食べられないようにしておいた。

「リーナ、君はピーター・ペティグリューのことがわかっているんだろう?けど、なぜあいつを捕まえない?なぜ、なぜ、なぜ!」

「捕まえられる証拠がない」

私の言葉を聞いたお父さんはそれでも食い下がろうとする。だから、こう言ってやろう。

「それに」

罪悪感を熟成させておいたほうが美味しいでしょ?

 

 

「……ああ、君は、君たちは、吸魂鬼はそういう種族だったね。わかった。君たちの決定には従う。

しかし、ハリーを近くで見守らせてくれないか?あわよくばピーターを捕まえたいし」

「……仕方がないね。行っていいのはホグズミードまでだよ。あと、ハリーの許可証にサインを」

「そのくらいならいくらでも」

差し出したハリーの許可証に、お父さんがサインする。プリベット通りで何が起こっていたのかも感じることなく、私はそのまま寝てしまった。この時の自分にクルーシオかけたい。

 

 

「ハリー、大丈夫!?」

翌朝、私は漏れ鍋の一室に突撃していた。ハリーがおばさんを風船にしてしまったとファッジから連絡があったのだ。

「大丈夫だよ。それに、罪に問われないってさ」

本来、ハリーがやったことは罪に問われること。しかし、罪に問われないということは、

「お父さん、一週間から六日間に減らしてあげるよ」

「何をだい?」

お父さんナイス。大臣がブラック逃亡のことを恐れて、ハリーを不問にしたらしい。

「それじゃあ、出かけようーーアイスクリームとか食べる?」

一息ついていた私をハリーは連れ出し、ダイアゴン横丁へと歩き出した。

 

 

ダイアゴン横丁はいつも通り賑わっていた。互いに買い物を見せ合う魔法使いたちや、シリウス逃亡について話し合う魔女たち。それに、クィディッチ用具店には、『炎の雷・ファイアボルト』が展示されていた。一年の時にマダム・フーチから存在は聞いていたけど、とうとう完成したらしい。

あとは、ホグワーツで必要なものを買ったり。『怪物的な怪物の本』は、多分ハグリッドが何かやろうとしてるんだろうと思う。彼が教師に選ばれたりして。……無いよね?

買い物がひと段落し、アイスクリームを食べていると、上から手紙が落ちてきた。見ると、ウィル爺から命令が入っている。

 

『今年はホグワーツには行けん。シリウス・ブラックを捕まえろと魔法省からの指令じゃ。全く、意味がないことなのに。

色々と今年は苦労をかけるじゃろうて。吸魂鬼も少し、ホグワーツへ派遣される。その中に紛れ込ませておこう。もしくは、吸魂鬼を統率するポジションにのう。ホグズミードならハリーとイチャつけるじゃろ。シリウスの無罪を晴らせるかもしれんから、そんぐらい我慢せい。

 

ウィルより

 

追伸

ミントアイス、買っておいてくれるかのう?』

 

破り捨てた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

信用と信頼は別

闇の陣営側に、バランスブレイカーを投入します。この章のラスト辺りからすこーしずつ出てきますけど、本格的に力を見せるのは大戦の時かと。本気出したらヴォルさんですら敵わないヤバ目の狂人になっちゃったし。実力あるペテルギウスとかなんだよ本当彼は。今の所、倒す手段が全く思い浮かばないんですよ。人間LOVEすぎて(ころ)したいほど愛してて、体表には死の呪文が這いずり回り長身針金のような体躯で直死の魔眼装備。前口上言ってる間にホグワーツが倒壊する未来が見えたし。SCP-682でも死ぬ。死ねる。一突きされて終わる。
誰かこんなチート狂人を倒す手段教えてください(´;ω;`)


「いや本当にすまんの。儂もできればお前にはホグワーツに通っていて欲しかったが、ファッジが全吸魂鬼とディメント家を駆り出すよう命令してきおった。よっぽど、シリウスを捕まえたいんじゃろう。皆、シリウスを家族だと思っておる。思ってくれておる。魔法省の頭でっかち共以外は捕まえる気はあらん。

ふむ、ハーマイオニー・グレンジャーと言ったかのう?ほれ、お前と同じ寮の天才少女。あの子に教えて貰えば良かろうて。

え?取っている科目が違う?ならハリーに教えて貰え。どうせ同じのを取ってるんじゃろ?お、図星かのう?ホッホッホ……アイタッ!ちょ、これ、叩かないでくれ!暴力反対!」

ひとしきりウィル爺をしばいて、部屋を後にする。大丈夫、あのくらいじゃウィル爺には一切ダメージは無い。自分がどこの担当が聞いたが、ホグワーツ内とその周辺、具体的にはホグズミード村までが、私が見回る範囲らしい。

周りの吸魂鬼の話を聴いているが、誰も彼もがやる気がない。そりゃそうだ。お父さん(シリウス)は十年以上、ここにいる皆んなと付き合いがあったんだから、魔法省よりも信用がある。と言うか、現大臣のファッジとその部下のアンブリッジに対して、誰も信用も信頼もしていないんだよね。アンブリッジは見たことないけど、見た人曰く、「吐き気を催す」「人の形をしたナニカ」「あれを人間だと思いたくない」「あれ人間だったの?突然変異のガマガエルかと」「ニャル様の化身の膨れ女かもしくは深き者どもと思えばなんとか」「新種のSCPじゃねぇの?少なくとも、俺はあいつにゃ関与してねぇし、関与したくもない」「いや、正直直視したくない。悲惨な末路が待ってるってことはわかるからそれだけが救いだな」「クトゥルフ共直視するよりもSAN値直葬されそう」と大人気だ。質問した人全員が、「あれにはもう会いたくない」というような答えを返してくれた。

新学期が始まったら、まずは行きのホグワーツ特急の護衛だね。その後は、ハリーが校内に居る時はそっちの見回りを、村に行ってる時はそっちの見回りをしよう。

 

 

九月一日。ホグワーツ特急に乗っているハリーはふと、寒気を感じた。彼の隣ではロンとハーマイオニーが、彼について心配してくれている。彼らはまだ、シリウス・ブラックが脱獄囚ではなく、ハリーを守ろうとしている一人だと気付いていないのだ。そのロンたちも同様に、寒気を感じて窓の外を覗く。空は暗く、バケツをひっくり返したどころか、ナイアガラの中に突っ込んだんじゃないかと思うくらいの大雨が降っていた。

窓ガラスは凍りつき、吐く息はことごとく白くなる。突然汽車が止まり、中の灯りが全て消える。周りが慌てふためく中、ハリーは一人、微笑んでいた。

彼らが、僕のもう一つの家族が、僕の愛しい彼女が、悪戯しに来た、と。














『死神の目』は『直死の魔眼』に進化しました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

列車内

「あっはっは、君も難儀なことだね。みんなへの愛を説きながら、愛の前に敗れるだなんてさ?
「ああ、君の愛が足りなかった訳じゃないよ。彼女の愛が強すぎただけだ。麗しく美しく羨ましいほどの家族愛。ああ、なんて甘美なんだろう。
「ああ、ああ、君を愛していない訳じゃないよ。君は僕の性格を、起源を知っているだろう?
「『全愛』。
「『全てを愛する』のが僕なのさ。
「だから君も、君を打ち破った彼女も、彼女の夫も、彼女の息子も、君が導いてきた彼らも、君に反発した彼らも、僕の後輩のみんなも、
「僕は分け隔てなく愛そう。
「君たちの顔を、目を、鼻を、口を、耳を、体を、腕を、手を、足を、腿を、指を、歯を、髪を、骨を、心臓を、胃を、腸を、膀胱を、子宮を、肝臓を、脳を、声を、性格を、人格を、起源を、感情を、誕生を、死滅を、生を、死後を、財産を、思いを、想いを、意志を、意思を、意味を、運命を、種族を、家族を、仲間を、君自身を、
(ころ)したいほどに、愛してる」


列車の中を、ナニカが蠢く。彼らの周りは空気が凍りつき、極寒地獄(コキュートス)かと思えるほどに冷え付いている。

一体が一つの車両を担当し、探す気のない何かを探す。

とある車両を担当した者は、金髪の男の子に遭遇した。行きあってしまった男の子は、なす術もなく気絶し、恐怖の感情を美味しく頂かれてそのまま放置された。

とある車両では、カブのイヤリングを身につけた少女が、ナニカをジーっと見ていた。彼女もまた、心の中にいつのまにか浮かび上がっていた恐怖と、もともと抱いていた好奇心を、ほんの少し、ナニカに食われていた。

そして、とある車両では。

「……ウィル爺かな?」

老人の吸魂鬼が、生き残った男の子と対面していた。

 

 

(ふむ、どうするかのう。リーナと合わせてやるつもりじゃったが、まさか儂が引き当ててしまうとは。ハリーもがっかりしているし、今からでも交代できないかのう?)

慌てふためくコンパートメントの乗客と、彼らからは見えない位置であからさまにがっかりしているハリー。そして何もせずにただ佇む吸魂鬼。

(まあいい。せっかくじゃし、新鮮な恐怖と恐慌でも味わっていくかのう)

吸魂鬼は息を吸う。彼らの感情ごと。その途端、

「生徒に手を出すな!〈守護霊よ、来たれ(エクスペクト・パトローナム)〉!」

もう一人いた、くたびれた様子の男が出した銀色の狼ーー守護霊(パトローナス)が、ウィルを追い払った。

 

 

ーー数分後、ホグワーツ特急内を探索していた吸魂鬼全てが、ホグワーツ校内禁じられた森へと集まっていた。この先のーー具体的には、シリウス・ブラックの無罪の証拠をつかめるまでのーーそれぞれの担当、分担、シフトの調整をするために。

「リーナ、少しいいかのう?」

「どうしたの?ウィル爺……まさか、ウィル爺の所に?」

「ああ。すまんのう、いや本当に。しかし、あそこに行かんでよかったかもしれんぞ?守護霊の呪文を使える者がおったからの」

「あー、近づかれると痛いんだっけ?私はまだ喰らったことないからわからないけど」

「痛い、と言うよりもものすごい不快感じゃな。なんというか、こう……変な例えになるんじゃが、大量のバカップルの中に独り身でいて、居心地が悪くなるとか、そんな感じじゃ」

「うん、わかんないや」

そうこうしているうちに、担当が決まったようだ。リーナの担当は、主にホグワーツ校内のようだ。

彼ら吸魂鬼の目的は、信頼できる誰かーーできればダンブルドアやマクゴナガル、発言力の問題でファッジやアンブリッジーーの前で、ピーター・ペティグリューを捕獲し、シリウス・ブラックの無罪を確定させること。末っ子の義父、そして彼女の恋人の名付け親でもあるシリウスのために、ひいては末っ子(リーナ)恋人(ハリー)のために。彼らは秘密裏(?)に、面白おかしく行動する。




「ふふ、誰かのために行動できるなんて、なんて素敵な愛なんだろう。
「ああ、諸君、彼らのような崇高な愛を持たない、ただ全てを愛する事しかできない僕を許してくれ!
「贖罪を、僕に贖罪を!
「ああ、世界全てに分け隔てない愛を!
「愛を愛を愛を愛を愛を愛を愛を愛を愛を愛を愛を愛を愛を愛を愛を愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛をっ!!
「……すまない、怖がらせてしまったね。
「怒らせてしまったね。
「でも、僕はその恐怖と怒りも愛そう。
「嫉妬も、憤怒も、怠惰も、強欲も、傲慢も、暴食も、色欲も、
「その罪ですら、僕は愛する。
「……ああ、あれはどこにある。
「あの鏡はどこにある。
「僕を導いてくれる、僕を愛してくれる、僕に全てを与えてくれるあの鏡は!
「……どこにあるんだい?
「……『みぞの鏡』よ」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

心配

その日のグリフィンドール寮は、歓喜と悲壮に満ちていた。

まずは歓喜。彼らグリフィンドールが大好きな、ハグリッドが魔法生物飼育学の担当教師になったのだ。怪物好きでトラブルメイカーの感じもするが、それでも、生徒思いで面白い生物を連れて来てくれるだろう。

悲壮。これまで、ハリーやハーマイオニーとともに点数を稼いでくれて、クィディッチでチェイサーを務めてくれているリーナ・ディメントが一年間、休学するという報告だ。理由は、シリウス・ブラックの捕獲のためにディメント家の仕事を手伝うから。事情を知っているハリーは苦笑いで済ませているが、他の面々、特にウッドが嘆きすぎて放心していた。

「ねぇ、ハリー」

本を読み始めていたハリーに話しかけてきたのはロンだった。

「シリウス・ブラックって極悪人なんだろ?いっくらリーナとはいえ、さすがに危ないんじゃ……」

「大丈夫だよ。保証する」

「でもハリー、ロンの言う通りよ。もし彼女がブラックと会ってしまったら?ブラックに殺されてしまったら?あなたはきっと、一生後悔することになるわ」

「ハーマイオニー、大丈夫なんだ。色々と事情があって、詳しくは話せないんだけど、シリウスに殺される危険はないよ」

ハリーの言葉に眉をひそめる二人。彼は、大量殺人犯の捜索に駆り出されている恋人のことを、一切心配していないと言うのだ。

「もういいわ。ハリー、あなたがそんな薄っぺらい人だとは思っていなかった。いくら吸魂鬼に守られているとはいえ、いくらディメント家とはいえ、彼女一人でブラックに会ったら。断言するわ、絶対に死んじゃう」

「ハリー、考え直してよ。リーナがディメント家で教育を受けていて、僕らよりもとっても強くても、ブラックとは年季が違うんだぜ。彼女のことを信頼してるのはわかってるよ。それでも、信頼と実力は別なんだ!」

ハリーに冷たい視線を浴びせるハーマイオニーと、必死にハリーに言い聞かせるロン。

二人に挟まれたハリーは一言、

「じゃ、ホグズミードに行くときに会ってみようか」

と、軽く言ってのけた。

「……ホグズミードに行くのって、ハロウィンよりも後よ?」

「それまで待て、か。ハリー、なんで心配せずに居られるのか、理由だけでも話してくれないかい?じゃないと、僕たちは君の精神を疑ってしまうよ」

「そうだね……じゃあ、僕はシリウスと知り合いで、彼が僕の名付け親で、彼がリーナの義父だからってことで」

「「ちゃんと説明して!」」

いい笑顔で説明したハリーを二人は思いっきり揺さぶった。

「いや、そうとしか説明できないんだ。これ以上話すとリーナに小言言われるかもだし……」

「尻にしかれてるなぁ……じゃなくて、ブラックが君の名付け親で、リーナの義父ってどういうこと?」

「そうよ!リーナはディメント家でしょう?それに、ブラックは最近までアズカバンに投獄されていたのよ?なんで、彼がリーナの義父になるの?」

「そのあたりの説明も、リーナにしてもらおうか。明日手紙を出すから、そのうち会えるよ」

ハリーは二人の手を解くと、自室に戻っていった。

残された二人の間に漂うのは、困惑ばかりだった。




そろそろリーナについて、他のメンバーにネタばらしかな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ヒッポグリフ

バランスブレイカーさんで、狂人好きが何名か釣られクマーされたもようで。正体は、わかってますよね?


占い学。未来を見抜き、運命を固定させる学問。しかし、そこまでの芸当ができるのは選ばれた者のみ。普通の者なら、おおよその予測を立てることしかできない。それも、ほんの少しのズレで揺らいでしまうような、そんな不確定なものしか。

「つまりハリー、気にするなって」

「そうよ。死神犬(グリム)がとりついてるなんて嘘っぱちよ。あなたも、リーナも、絶対に死なないわ。リーナに関しては、昨日、あなたが絶対に安心だって言ってたじゃない」

「そうだね。……て言うか、あれ、死神犬じゃなくて、ただの黒犬に見えたんだよなぁ……多分、シリウスのことだろうし」

三人はそんなことを話しながら校庭に向かう。今日は、ハグリッドの初授業があるのだ。

 

 

「やあ、ハリー。しばらくぶりだね。えーと、リーナは大丈夫なのかい?」

「大丈夫だよ。しばらくしたら会えるだろうし」

小屋の前で、ドラコが合流した。ネビルはハリーたちの後ろからヒィヒィ言いながらついてきた。

「……納得いかないけど、大丈夫だってことにしておこう。必ず、説明してくれよ。

ところで、この教科書どうやって開くんだい?僕にはさっぱりだ」

ドラコが取り出したのは、『怪物的な怪物の本』だ。ハグリッドが指定した、魔法生物飼育学の教科書。ハリーはロンを見る。ロンはネビルを見る。ネビルはハーマイオニーを見る。ハーマイオニーは首を横に振った。

「つまり、誰もわからないってことだ」

ハグリッドが、みんなを連れて森の縁を歩く。数分後、放牧場のようなところへ到着した。

「ハグリッド、僕たち、教科書の開け方がわかりません」

「ええ?あー、そうか、こいつは気難しいからな。ほれ、背表紙だ。ここをなぜりゃーいいのさ」

ハグリッドはドラコの本を取り上げると、封印を解き、背表紙をひとなでした。その途端、本は震えて開き、おとなしくなった。

「……ハグリッド、せめて、教科書の開き方ぐらいは連絡しても良かったと思うんだ」

「……次からはそうさせてもらう。さて、と。全員本は開けたな?よし、百六十ページを見といてくれ。俺は魔法生物を連れてくる」

ハグリッドは森の中へ入っていく。

取り残された生徒たちは、指定されたページを開いた。そこには、「ヒッポグリフ」と載っていた。

「ヒッポグリフ?」

「グリフォンの親戚よ。グリフォンが半鳥半獅子なら、ヒッポグリフは半鳥半馬なの」

ハーマイオニーが説明していると、放牧場の向こう側から、先ほど言ったような半鳥半馬の生き物がこちらへ向かって、駆けてきた。その後ろでは、ハグリッドが手綱を握っている。

「ほうれ、ヒッポグリフだ。美しかろう、え?」

ハグリッドが言う通り、ヒッポグリフは綺麗な生き物だった。

「この後、こいつらとスキンシップを取ってもらうんだが、こいつだけは絶対に守ってくれ。絶対に、侮辱するな。ヒッポグリフは誇り高い。そして、すぐに怒る。必ず、ヒッポグリフの方から動くのを待ってくれ。で、こいつのそばまで歩いて行って、お辞儀する。礼儀ってのは大切だからな。こいつがお辞儀してくれたら、触ってもいいっちゅうこった。お辞儀を返さなかったらすぐに離れろ。こいつらの鉤爪は痛いからな。

よし、事前知識はこんなもんだ。で、誰かやりたい奴はおらんか?一人やればそのあとは楽チンだろうがな」

誰も手を上げない。もし、失敗したら、と考えている。そんな中、二つの手が上がった。ハリーとネビルだった。




ネビルも強化。原作よりも勇気があります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

空の上で

ファンタスティック・ビースト見たいけど色々あって見れないジレンマ。今日の金曜ロードショー「猫の恩返し」で公開された映像には、〈砕けよ(フェネストラ)〉と言う新しい魔法が出てきました。砕けよであってたかどうかは覚えてませんが、フェネストラと言う読みはあっています。窓ガラス粉砕してました。
一部の予想では、ファンタスティック・ビーストの日本語版書籍は2018年に発売されるかもしれないとのこと。いやあ、待ちきれないですね。


「ようし、ハリーとネビルだな。そんじゃ、ハリーはバックビークとやってみよう。ネビルは、そうだな、クラーフィルとだ」

ハグリッドは群れの中から、灰色のヒッポグリフと焦げ茶色のヒッポグリフを連れてきた。

ハリーが灰色のヒッポグリフの前に立ち、ネビルが焦げ茶色の前に立つ。

「さあ、落ち着けよ、二人とも。目をそらすな。なるべく瞬きもするな。こいつらは目をショボショボさせるやつを信用せんからな」

二人は瞬きせずに、それぞれのヒッポグリフをじーっと見つめた。二匹はそれに応えるかのように彼らの方を向き、じーっと見返した。

「そうだ。それでええ。それ、お辞儀をするんだ。お前さんたちなら、必ずあいつらは返してくれるはずだ……」

二人はお辞儀する。一呼吸おき、顔を上げる。しかし、ヒッポグリフたちはお辞儀を返していない。

「あー、下がっといた方がいいかもしれん……ほれ、ゆっくりと……」

ハグリッドが二人を下がらせようとする。その時、二匹が前足を折り、お辞儀をした。

「やったぞ、二人とも!」

心配そうに見ていた周りの生徒たちも、ハグリッドも、嬉しそうに拍手していた。

「よーし、触っても平気だ!ほれ、くちばしを撫でてやれ。こいつはくちばしを撫でられるのが好きなんだ」

ハリーが、バックビークのくちばしをゆっくりと撫でる。ネビルも、少し迷った後にクラーフィルのくちばしを撫で始めた。二匹はそれを楽しむかのように、目を細めている。……良いなぁ。

「ふむ、二人とも、ちょーっちいいか?こいつらはお前さんらを背中に乗せてくれるはずだ。なあに、心配はいらん。心を許した相手には優しいんだ」

ハリーたちは恐る恐るヒッポグリフの横へ回り、ハグリッドの指示に従って背中へ登った。

「そーれ、行ってこい!」

ハリーたちが慌てて首筋にしがみつくのと同時に、ヒッポグリフたちは翼を広げ、大空へと飛び上がった。

二人とも初めは怖そうにしていたが、時間が経つにつれて、歓喜の気持ちが強くなっていた。

二頭はホグワーツの敷地内をぐるりと回っていたが、その内の一頭ーーバックビークが、上空からハリーたちのことを見ていた私の元に近づいてきた。

「見つけたよ、リーナ」

「見つけちゃったか、ハリー」

「そりゃあ、上からじーっと見られてたらね。

そうだ!今度、昼休みに会えないかな?みんながリーナの事心配してて」

「知ってる。見てたからね。私の正体を伝えたいって訳だ」

「正解。大丈夫、心配はいらないよ。みんななら、受け入れてくれる」

「そうだね。私もそう信じてるよ。それじゃあ、明々後日でどう?」

「木曜日ね。それじゃ、僕は戻るよ」

そう言って、ハリーとバックビークは放牧場へ戻っていった。

その後も見ていたけど、特に問題は起きなかった。一部のスリザリン生がヒッポグリフを怒らせていたけど、怪我はしていない。ドラコや、彼の考えが変わっても彼についていくつもりらしいクラッブとゴイル、グリーングラス、パーキンソンが下がらせていたから。彼は、結構カリスマらしい。

そういえば、さっきから複数人のハーマイオニーが見えてるけど、どうしたんだろう?




前話にリーナが出ていない?残念!ずっと語り部してました。ホグワーツ上空を旋回しつつ、ハリーのことをじーっと見ています。
あと、ドラコにカリスマを付与しました。クラッブ、ゴイル、グリーングラス、パーキンソンはドラコの味方です。それ以外はその時次第の日和見多数。
クラーフィルと言う名のヒッポグリフはオリキャラ(?)です。ネビルの分どうしようかと。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

シリウス・ブラック

徐々に原作から乖離していっている第3巻……今更か。
今回はハリー視点です。


バックビークから降りた後、ロンたちに、木曜日の昼にリーナと会うことを伝えた。その日なら、昼休みの直前にスリザリンと合同で魔法薬学があるから、ドラコとすぐに合流できる。

 

 

魔法薬学の授業で、シリウスがここからそう遠くない場所で目撃されたって話が出てきた。スネイプ先生は私語は慎めと言っていたが、意地の悪い笑みを浮かべていた。リーナの記憶を覗いたんだし、僕とシリウスとの関係はわかってるはずだ。それでも何か企んでそうなのは……スネイプがシリウスに、何か恨みでも持ってるから?

 

 

授業が終わり、あとは昼を挟んで防衛術の授業のみ。すぐに僕たちは、ハグリッドの小屋へ向かった。

「ハグリッド、リーナに呼ばれたんだけど」

ドアをノックして言う。

小屋から出てきたハグリッドは、ファングともう一頭、黒い犬を連れていたーーシリウスだ。

「おう、待っとったぞ。ほれ、パッドフッド、行ってこい。リーナなら放牧場にいるからな」

パッドフッド(シリウス)をこちらによこし、放牧場の方を指差すハグリッド。彼は手を振るとそのまま中に戻っていった。……何やら変な生物が見えたような気がするけど気にしないでおこう。うん、ハグリッドが新種の魔法生物を作り出したなんて事実はない。

「ねぇ、ハリー。パッドフッドって、一年生の時に君の箒を届けようとしていた人の名前だよね?なんでその犬がそう呼ばれてるの?」

「この後わかるよ。ほら、もうすぐそこだ……」

放牧場の柵には、リーナが座って空を眺めていた。近づいていくと、僕らの感情でも感じたのか、視線をこっちに向けてきた。

「やあ、ハリー。それにみんな。久しぶり」

リーナが微笑む。うん、可愛い。あ、少し赤くなった。

「リーナ、久しぶり。ええと……元気?」

「うん、元気だよ。それで、ハリーから聞いてるけど、なんで私がシリウスの義娘になってるのかって話をだよね?」

「それ以外にも色々と聴かせて欲しいの」

「うん。わかってるよ。その前に……みんな、心の準備はいい?」

みんなが頷く。

「ならよし。それじゃあ、この話を語る上で最も重要な一人に来てもらおうか。

 

パッドフッド、元に戻ろうか」

リーナの声で、黒犬の姿が徐々に変わり、人間へと変貌していく。数秒後には、完全に人間となっていた。

「彼は……シリウス・ブラック!?」

「そう。ご紹介しよう。私の養父でハリーの名付け親、パッドフッドことシリウス・ブラックだ」

「君たちがハリーとリーナの友達かい?よろしく」

シリウスが笑みを浮かべるが、みんなは後ずさりしている。そりゃそうだ。世間一般から見れば、シリウスは犯罪者だ。

「まずは、お父さんのことだね。彼は無罪だよ。下手人は他にいる」

「無罪って……十年ぐらい前のあの事件だろう?ブラックがピーター・ペティグリューを吹っ飛ばしたっていう。生き残りはブラックのみで、状況証拠からブラックが犯人と断定されたはずだ」

「その説明もしよう。まず、今見た通りに、お父さんは黒犬の動物もどき(アニメーガス)だ。ハーマイオニーなら、魔法省に登録されてる動物もどきの名簿、覚えてるんじゃない?」

「ええ……前に気になって調べてみたの。マクゴナガル先生の名前もあったわ。でも、シリウス・ブラックの名前はなかった。今世紀にはたった七人しか動物もどきはいないはずよ。でも、今まさに、シリウス・ブラックは黒犬から変身して見せた……まさか、非登録の動物もどき?」

「正解さ。私は非登録の動物もどきだ。今、少なくとも二人の非登録者がいる。少し前までは三人目がいたーージェームズ・ポッター。ハリーの父親だ。彼は牡鹿の動物もどきだった。私は今見たように黒犬だ。もう一人、そいつがジェームズとリリーの家を『あの人』に教え、私を殺人犯に仕立て上げた。

正直驚いたよ。あいつがそんな知恵を持っていたなんてね。そいつは私と戦ったとき、爆発呪文で目くらましすると同時に、自らの指を切り離して囮とし、まんまと逃げ果せた。そいつの名はーーピーター・ペティグリューと言う。ネズミの動物もどきさ」

ピーター・ペティグリューが生きていると言う話は僕も聞いていた。でも、彼がどうしているのかはつかめていなかったはずだ。そんなシリウスがここに出てきたってことは……

「あいつは今、スキャバーズと言う名前で、ロン・ウィーズリー、君に飼われているはずだ」

ロンの顔が驚愕に染まった。




リーナの正体については次回かその次かな?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

スキャバーズ

この章では色々と試そうかなとか考えてる。てことで今回はロン視点だー!



不安しかないけどね、私に対する。


ブラックの言葉に、僕は何も言えなくなった。スキャバーズがピーター・ペティグリューだって?

「ありえないよ。だって、スキャバーズはずっと僕らと暮らしてきたんだぜ?もしスキャバーズがピーター・ペティグリューだったとして、十年も暮らしてきて、一度も人間に戻ったことがないなんてあり得るのか?」

「あり得る。あいつは結構忍耐強い。それこそ、私たち悪戯仕掛け人に加われるほどな。ホグズミード休暇の時に、スキャバーズを持ってきてくれ。証拠を見せてやろう。口先だけでいいのなら、一つ言えるがな」

「……証拠?」

「ああ、証拠だ。ワームテール……ピーターは逃げる前に指を一本、切り離したと言っただろう?その指の位置と、スキャバーズの欠けた指の位置は、ぴったり重なるんだ。私はそれで、スキャバーズがワームテールだと気付いた」

確かに、スキャバーズの指は一本欠けてる。でも、偶然かもしれない。ネズミ同士の喧嘩で欠けただけかもしれない。でも、リーナやハリーがブラックのことを信用している。僕は、何を信じればいいのかわからなくなってきた。

「自分が信じたいことを信じるのがいいんだよ」

声をかけたのは、リーナだった。

「何を信じればいいのかわからないのなら、信じたいことを信じればいい。自分の道を進むのがいいんだよ」

それを聞いて、僕は心の中が晴れていくのを感じた。もやもやが次第に消え失せていく。後に残ったのは、ハリーとリーナへの信頼だった。

「僕はまだ、ブラックのことを疑ってる。でも、ハリーやリーナのことも信頼してる。だから、ホグズミード休暇にスキャバーズを連れて行く」

リーナは笑っていた。

……あれ?

「……ところでリーナ、僕、もしかして声に出してた?」

「いや?無言だったよ?」

……あれぇ?

「僕の心の声にリーナが応えてくれたように思えるんだけど?」

「その通りだけど?」

……わっつ?

「……マーリンの髭!」

「思考を放棄するなよ、ロン。リーナ、さっさと答え合わせ」

「わかってるよ。

去年、私は動物の声が聞こえる能力があるって言ったよね?」

僕らは頷く。ハリーが蛇語使いだってことがわかった時、ネビルが質問していたから。

「訂正しよう。私のはそんな優しい能力じゃない。

『心を読む程度の能力』って言うのが一番近い。心の声を聞き、思考を感じ取り、過去を読み取る。それが私の能力。もちろん、任意発動だから普段は聞こえないけどね」

……そういえば、心当たりが何度かある。飲み物が欲しかった時にタイミング良く持ってきてくれたり、チェスの時に、未来でも見てるんじゃないかと思えるぐらい、僕の次の次の手を封じてきたり。

「あと私は吸魂鬼です」

……拝啓、パパ。僕は何が何だかわかりません。マーリンの髭。




ハニー・ポッターも面白いですよね。マーリンの髭はどこかで出そうかと思っていました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

リーナ・ディメント

とあるハリポタ二次小説を見て、うちの作品の絵が欲しくなる。しかし私は絵が絶望的に下手だ。漫画の表紙絵を模写しようとして失敗するぐらい下手だ。結論を言おう。誰かファンアート描いて下さいお願いします。できればでもいいのでお願いいたします。

あ、今回はハーマイオニー視点です。


「あと私は吸魂鬼です」

頭が真っ白になった。ロンなんて現実逃避してるわね、情けない。

でも、言っている意味が私でもわからない。人間が吸魂鬼って、どういうこと?

「そのままの意味さ。うちの最高責任者……ウィル爺の許可は取ったからね。君たちには伝えるよ。決して、他の人には言わないように。

ディメント家が魔法界のお目付役ってことは知ってるよね?それと、吸魂鬼を使役できるって話も。私が吸魂鬼っていうのは、その話と深く関係してるんだ。

私たちディメント家は古い魔法族の家系だと思われてる。でも、実際には違う。より正確に言うなら、吸魂鬼の家系。ディメント家とはディメンター、吸魂鬼のことなんだ」

どういうこと?アズカバンを管理しているディメント家が、実は全員ディメンター?じゃあ、なんで人間の姿をしているの?なんでハリーはそんなに普通でいられるの?

「ディメント家が魔法界のお目付役の理由は、最初期の魔法省との契約らしい。吸魂鬼が人間に混じって生活しているのを黙っている代わりに、監獄の管理と手に負えない犯罪者の取り締まり。もっとも、その契約は現在は忘れ去られて、『魔法界のお目付役』が完成したらしいけど。

私たちが人間の姿をしているのは、一番最初の吸魂鬼が、吸魂鬼になる時に自分の身体ごと持っていったかららしい。本来なら魂だけが吸魂鬼になる予定だったのに、騙くらかして自分の身体を持っていった。それ故に、その後の吸魂鬼も人間の姿を取れるようになった。

あ、二人目までは元人間だけど、それ以降は吸魂鬼の一部と人間の魂が素材だから、純粋な吸魂鬼って言えるのはその二人目ーーウィル爺までだね」

……ロン、情けないだなんて思ってごめんなさい。私も現実逃避したくなってきたわ。心を読まれるせいで口を挟む余地がないし。

「僕はダーズリー家に預けられてすぐにリーナやシリウス、ウィル爺にあったからね。最初は怖かったし、驚いたよ。でも、みんないい人ばかりだし、アズカバンも殺風景だけど案外面白いよ?なぜかゲームセンターあったし」

ああ、ハリー、あなたまで私たちの思考力を奪っていくの?なんでアズカバンにゲームセンターがあるのよ。ハリー、あなた疲れてるのよ。

「……とりあえず、君たちはそろそろ戻ったほうがいい。もうすぐ昼休みが終わるからね」

ブラックの言葉で我にかえる。いけない、もうこんな時間。

「わかったわ。もう戻らないと。

……リーナ、たとえあなたが吸魂鬼だったとしても、私たちはあなたのことを信じてる。ありがとう、本当のことを言ってくれて」

「私もお礼を言わせてもらうよ。本当のことを聞いてくれて、ありがとう。次は防衛術かな?」

「うん。ルーピン先生だよ」

「ルーピン?リーマス・ルーピンか?」

ブラックさんが反応する。……もしかして。

「ルーピン先生と知り合いなの?」

「ああ。同級生だ。もう一人の悪戯仕掛け人。そうか、ムーニーが今ここにいるのか……私がピーターを追っていることを彼に伝えてくれ。彼がスキャバーズだということもね。大丈夫。彼は私たちのことを知っているから」

彼はそう言うと、黒犬に戻ってハグリッドの小屋へ駆けて行った。

私たちが城に戻る時、リーナはずっと、柵に腰掛けていた。




アズカバンはカオス。良いね?
あと、ルーピンがディメント家の真実やシリウスについて知っているという描写は、賢者の石編第一話に書いてあります。え?スネイプがディメント家の真実を知らなかった?……ダ、ダンブルドアがうっかり伝え忘れたんだよ!(汗)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

まね妖怪

今回はネビル視点。


リーナの話の後、僕たちは防衛術の教室に向かっていた。彼女が、リーナが吸魂鬼だってことが、僕の頭の中で響いていた。これまでにも、リーナは時々、とても恐ろしいことを言うことがあった。だいたいハリーに何かあった時だったけど。今なら、あの過激な発言にも納得がいく。感性が人間と違えば、発想も人間と違うんだろう。あと、リーナはサディストだと思う。

 

 

防衛術は、なぜか職員室だった。ルーピン先生曰く、タンスの中に『まね妖怪』ボガートがいるらしい。それの対策を教えてくれるそうだ。

形態模写妖怪のボガートは、僕らが一番恐ろしいナニカに変身する。つまり、複数人で囲んじゃえば問題はないけど、今回は一人ずつ。

「よーし、ネビル。君が世界一怖いものはなんだい?」

ルーピン先生に質問される。一番恐ろしいもの……スネイプ先生か、激怒しているリーナかな?

「怖いものが二つ以上あるときはどうなるんでしょう?」

「……それはわからないな。片方だけが選ばれる可能性もあるし、両方が混ざったものが出るかもしれない。ちなみに?」

「スネイプ先生と、激怒しているリーナ」

「リーナ……リーナ・ディメントかな?前に、彼女についての話を、彼女のお爺さんから聞いたけど、怒ったときはそれはそれは恐ろしいらしいね。でも、その姿を面白可笑しく変えられたら、凄いと思わないか?」

……ボガート・スネイプ先生の方はともかく、ボガート・リーナの対策は思い浮かんだ。ハリーは恥ずかしがるかもだけど。

「さて、平気かな?それでは行ってみよう。

では!いーち、にの、さん!」

先生の杖から火花が出て、タンスの取っ手に当たる。タンスの扉が勢いよく開いて、中から出てきたのはーー

「さて、ネビル。正座しなよ?」

凄く綺麗な、だけど凄く怖い笑顔のリーナだった。やっぱりか。

「ほら、早く正座しなよ。今ならまだ石にするだけで許してあげるよ?さあ、早く早く!」

「〈ばかばかしい(リディクラス)〉!」

杖をボガート・リーナに向け、呪文を唱える。パチンと音がして、ボガート・リーナは少し後ろに下がった。呪文が成功した証拠だ。リーナが後ろを見ると、僕が想像したハリーがリーナに笑いかけている。リーナは顔を赤くしていた。

「ちょ、何してるのネビル!」

ハリー(本物)が僕の後ろで叫んでいるけど気にしない。他の生徒や先生は生暖かい目をハリー(本物)に向けていた。

「こうなるとは思わなかったが、よし、パーバティ、前へ!」

パーバティが前へ出ると、今度はミイラに変わった。で、呪文と同時に解けた包帯を踏んでつんのめった。

そのまま授業は続き、ロンの時には大蜘蛛に変わった。ロンはそれを肢なしグモに変えたけど、そっちの方が怖い人もいると思うんだ。

ハリーの前に転がった蜘蛛に、先生が近づこうとする。何をしようとしていたのかはわからないけれど、その前にハリーの怖いものに変わった。それはーー

「ハァーリィー?言ったよねぇ?無茶するなってさ?お仕置き、何がいい?」

激おこリーナだった。ハリー、君が変身させるのは『例のあの人』かなと思ってたよ。でも、やっぱりかとも思うよ。周りのみんな、納得しちゃってるし。

「〈ばかばかしい(リディクラス)〉」

ハリーの呪文で、リーナが煙に包まれる。煙が晴れたところにいたのは、リーナの服を着た見知らぬお爺さんだった。

「……やらなきゃよかった」

なんで後悔してるんだいハリー?

ハーマイオニーは満点をギリギリで取れなかったテストに変わった。結果は空飛ぶ折り鶴だった。

「よし、次で最後だろう。見ているように」

ルーピン先生が前に出る。すると、折り鶴は銀白色の球体に変わった。

「〈ばかばかしい(リディクラス)〉!」

球体は真っ赤な風船に変わり、職員室の中を飛び回る。それを見て僕たちは笑ったけど、ボガートはそのままポンッと音を立てて消えてしまった。退治が完了したらしい。

 

 

みんなでボガートについて話しながら寮に戻る。ハリーはからかわれていた。そして、悲劇みたいなことが発生した。

「どうしよう!スキャバーズがいない!」

ピーター・ペティグリューの可能性があるという、ロンのネズミが消えちゃった。




ネビルの怖いものをスネイプ先生から激怒リーナに。ハリーも吸魂鬼から激怒リーナに。ハリーの方は結果的に見れば変わってないかな?ハリーが変身させたのは、ウィル爺です。女子の服を着る好々爺……変態だ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編:アーガス・フィルチへの贈り物

スクイブに関するオリジナル設定と、フィルチさん強化回。

ドラコ視点。


ロンのネズミがいなくなってから数日が経った。あのネズミが本当にピーター・ペティグリューなら、どこかに逃げて潜んでいる、という可能性もあるな。

だが、今の僕にとっての一番の問題は、この物体をどうするかなんだよなぁ……。

 

 

昨日、校庭を歩いていたら、突然リーナが降ってきたんだ。上からヒューンって、落ちてきた。魔法でも使ったのか、その後普通に動いてたけど。で、今持ってるこの物体を渡された。

正八角柱で、それぞれの辺には少しずつ形の違う三本の線、中央には東洋のオンミョウジュツだったか?黒白のマークが入っていた。

一緒に渡された説明書には、『ミニ八卦炉』と書いてあったけど、一体どんなマジックアイテムなんだ?

リーナはこれをフィルチに渡してくれって言ってたけど、最近ピリピリしてて渡しづらいし。どうしたらいいんだろう。

そんなことを考えていると、前からハリーが歩いてきた。よし、巻き込もう。

「やあハリー。ちょっと付き合ってほしいことがあるんだが」

「嫌な予感がするんだけど?」

そりゃそうだ。今まで僕から頼みごとをしたことは数少ない。人の良いハリーでも不審がる。

「リーナからのお願いでね。この『ミニ八卦炉』とやらをフィルチに渡したいんだけど、渡しづらい。だから協力してもらおうとね」

「……少し見せて」

言われたので、アイテムをハリーに渡す。少し触って何か納得したのか、

「よし、手伝う」

と言ってきた。

 

 

フィルチは事務所にいた。扉を開けると、隈のできた顔でこちらを見てくる。

「なんだ?罰則を受けに来たのか?さあどんな罰則がいい。今ならフルコースをお見舞いしてやる」

「落ち着いてください、フィルチさん。リーナから贈り物があるので届けに来たんです」

ハリーが臆さずに言う。こういうところは真似できない。

「贈り物?あの娘からか」

八卦炉を渡す。説明書も一緒に。

説明書には、

『このミニ八卦炉は魔法が扱えないスクイブでも、魔法が扱えるようにできる物です。

スクイブは魔法使いのようにうまく魔力を扱えず、結果として魔法が使えないので、このマジックアイテムには魔力の自動吸引機能をつけてみました。

マークを魔法を撃ちたい方に向けて、一定の起句を唱えると、その魔法が発動します。

なお、これは試作品で、何かと気苦労の絶えないフィルチさんにテスターの役割も兼ねてプレゼントしようかと。

起句は裏面に書いてあります。

リーナ・ディメント

 

作成者

ブライト・ディメント』

「ふむ、起句と言うのはこれか?〈スターダストレヴァリエ〉」

横の壁に向けて起句を唱えるフィルチ。すると、八卦炉からは星型の魔力の塊が勢いよくばらまかれた。

「ほう、これは凄いな。これがあれば、私も少しとはいえ魔法が使えるのか……感謝するとしよう」

フィルチに頭を下げられて、事務所を出る。ハリーはホッとした顔をしてるが、何か心配でもあったのか?




フィルチがミニ八卦炉を装備。フィルチが少し丸くなった。フィルチの攻撃力が上昇した。

はい、安定のブライト製品です。
スクイブのオリジナル設定は、他と同じように魔力は持ってるけど、それをうまく扱えず、杖から魔法として放てないというもの。ならば、勝手に魔力を吸引して使っちゃえば、魔法が使えるんじゃね?とブライトが考えて制作。欠点は一部の魔法(正確には東方の魔理沙の魔法)しか使えないこと。フィルチは実験台。でも失敗はない。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

屋敷で

「なんだって?ピーターが消えた?」

お父さんが驚きを隠せずに言う。

今日はハロウィン、ホグズミード週末だ。私たちは今、『叫びの屋敷』の中にいる。どうやって入り込んだのかは企業秘密だけど。

私とお父さんは、ピーターが消えたことに驚いたが、納得もしていた。ずる賢いから、どこかで私たちの会話を聞いて、隠れたんだろう。……あ。

「……忍びの地図があるじゃん」

「え?あれがまだ残ってるのか?」

お父さんは先ほどとは別の意味で驚いて、事情を知らない他のメンバーはキョトンとしていた。

「私たちーーパッドフット、プロングズ、ムーニー、ワームテールで作ったホグワーツの地図だ。それも、校長室の中やホグズミードへの行き方、どこに誰がいるかまで網羅した、完全な地図さ。普段は見えないようにしてあるし、地図の内容はその時点でのホグワーツに遵守する。知らない者が無理矢理開けようとすれば、その者に応じて私たちの文句が現れる」

「ウィーズリーズが持ってるんだけど、私たちが一年生の時に、二年以内に複製するって言ってたんだ。多分、そろそろ完成してる。去年、地図機能だけの劣化コピープレゼントしてくれたしね」

「は?あれをコピーする?そんなことができてたまるか。あれは私たちの傑作だぞ?」

「あー、あの二人、二代目悪戯仕掛け人を名乗ってますから」

私はお父さんに、去年もらった劣化コピーを渡す。お父さん曰く、人が写らないこと以外、出来栄えはオリジナルに匹敵するとのこと。

「後で、二人に確認をとってみる。ピーター・ペティグリューの名前が見えたら、確定でいいんだよね?」

「うん。よろしく頼むよ」

叫びの屋敷から五人が出て行く。ちゃんと透明マント改をかぶって。

「まさか、揃うとは思ってもみなかった。ジェームズの透明マントは君がアズカバンに持ってきたものだし、ピーターがホグワーツにいることは八月にわかったことだが、リーマスがいるとは、考えてもいなかった」

「おおかた、ダンブルドアの独断でしょ。ルーピンは職に就きづらいし、何よりお父さんと同年代、ヴォルデモート全盛期に死喰い人と戦ってた組だから、闇の魔術に対する防衛術にはもってこいなんじゃない?」

「あの狸爺なら考えそうなことだ。今年は驚くことが多すぎる。君がジェームズの透明マントを持ってきて、ブライトに改造させたことも驚きだったがね」

「私も驚いたよ。ハグリッドが教師になるなんてね」

「私らが在学中も森番一筋だったがな。ハグリッドもまた、歩み出すんだろう」

静かになった屋敷で、お父さんと話す。もう少しで、お父さんの容疑を晴らせる。あのいけ好かない魔法省大臣に目にもの見せてやれる。私は、自然と微笑んでいた。

 

「あ、ヴェルも捜索してきて?」

(やっと出番ですか。雷と電にも声かけてきます)



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ピーター・ペティグリュー

一気に時間が飛びます。


何ヶ月もの間、ピーターは見つからなかった。秘密の部屋にいるヨーンにも協力してもらって捜索したが、どこにもいなかった。少なくとも、ホグワーツ城内には。

 

 

再びスキャバーズが姿を見せたのは四月も中旬になり、ダンブルドアとハグリッドが協力して植えた桜も満開を通り越した頃。

その間にはウィーズリーツインズとフィルチが弾幕ごっこやってたらそれをダンブルドアが面白がって見てたりコリンが写真撮ってたりマグゴナガル先生が呆れてたりしたけど、特に何もなかった。

ピーターが忍びの地図に映らなかったのは、どうやら禁じられた森にいたからのようだ。クルックシャンクス──ハーマイオニーの猫だ──がヴェルと一緒に禁じられた森へ飛び込んで行って、数日後に咥えて帰ってきた。聞けば、クルックシャンクスはニーズルとのハーフらしい。なるほど、賢いわけだ。

「……さて、今ここにスキャバーズを捕らえた。この場で元に戻してもいいが、出来るだけ証人の多い方がいいな」

「でも、あなたは指名手配されてるでしょう?いくら吸魂鬼が味方だからって、ホグワーツの先生に見つかったら終わりよ?」

「いや、少し待てハーマイオニー。ハグリッドはシリウスのことを知っていた。ルーピンもだ。おそらく、ダンブルドアも。一体何人の教師がシリウスのことを知っているんだい?」

「ハグリッドにルーピン、ダンブルドア、マグゴナガル先生にスネイプも。あとはダンブルドア先生次第」

『割れない呪文』をかけた瓶にスキャバーズを放り込み、みんなで話す。出来ることならダンブルドアとファッジ(あと会いたくないけどアンブリッジって人)の前でこのネズミを元に戻したい。

「誰か、ダンブルドアのところに行けない?あの人なら魔法省大臣にも手紙送れると思うけど」

「でも、合言葉あるんじゃなかったっけ?」

「……あ、そういえば」

ダンブルドアにどうやって知らせるか考えてたら、ダンブルドアが時々厨房に現れることを思い出した。雷が見てたからね。

「でも、厨房にはどうやって行くんだい?僕はその方法を知らないけど」

「厨房か?あそこは地下に果物の絵があって、その絵の中の梨を擽れば入れるぞ」

一番信用されてそうなハリーが行くことにして、私たちはその間待機。

 

 

「『タケ○コの里』」

日本の人気お菓子の名前が今回の合言葉だったようで、ガーゴイルが跳びのき、私たちは校長室に入室した。

「いらっしゃい、皆の者」

「ふん、何の用かは知らないが、私だって忙しいんだ。さっさとしてくれ」

中にはダンブルドアとファッジ、ウィル爺がいた。

私たち側は、いつものメンバーに黒犬状態のお父さん、それにルーピン先生だ。

「こんにちは、ファッジ大臣。実は、シリウス・ブラックが無罪である証拠を見つけまして」

「……ブラックが無罪?どういうことだ?」

「如何にもこうにも、ルーピン先生が手に持っているその瓶じゃろう?」

ルーピン先生が瓶の蓋を開けて、ネズミを手に取る。そのままネズミを放り投げ、

「〈化けの皮、剥がれよ(スペシアリス・レベリオ)〉!」

と唱えた。

すると、虫のような尻尾を持つそのネズミはどんどん大きくなり、しまいには人間に変わった。

「な、なんだと!?」

ファッジ、うるさい。

「これが、私が無罪という証拠だよ。大臣殿」

いつのまにか人間に戻っていたお父さんが言う。

「さて、これまでのこと──正確には、私が収監されるまでと、された後のことを話そう。

私は、確かにポッター一家の『秘密の守人』をしていた。だが、ジェームズとピーターに許可を取り、守人をピーターに代わってもらったんだ。何しろ、ジェームズが一番信用していたのが私だったからね。あいつを狙うなら私から聞き出そうとすることだろう。それを逆手に取ろうとしたのだ。

だが、ピーターは裏切った!私はハグリッドにオートバイを貸した後、ピーターを殺しに行ったよ。リーマスには止められたがね。

そして、私はピーターを追い詰めた。だがこいつは、自らの指を切り落とし!爆発を起こして逃げた!私が爆発を起こしたように見せかけてな!

その後は下水道か何かで暮らしてきたのだろう。そして、ウィーズリー家に保護されたわけだ。弁解はあるか?ワームテール」

「わ、わたしは……」

ピーターはオドオドしながら周りを見渡した。誰かに頼ろうとしたようだけど、全員が訝しげな視線をピーターに向けている。いい気味だ。

「収監された後、リーナに助けてもらったよ。リーナは、あー、そうだな、開心術と言う例えが一番うまいか」

「まて、リーナ・ディメントはその時まだ一歳だろう?なぜそこで出てくる」

ウィル爺が苦笑いしながら、ファッジにディメント家のことを教えて行く。その時のファッジの顔は、驚きと困惑に満ちていた。

「で、リーナの義父になった後は、ピーターを捜索しながら生活していたと言うわけだ。なんなら、真実薬(ベリタセラム)を飲んでもいい」

ファッジはまだ信じきれていないようだが、ピーター・ペティグリューを逮捕することに決めたようだ。同時に、お父さんの無罪放免も。

 

 

次の日、日刊予言者新聞にお父さんの無罪とピーターが真犯人だったという記事が載せられた。吸魂鬼もお役ごめんとなり、アズカバンへ引き上げることになった。私は残留したけど。

 

 

次の日、ピーターを逃してしまったと報道された。何してんだあの魔法大臣は。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三年目の終わりには

ルーピンが解雇されることになった。お父さんが無実だと知ってイライラして居たスネイプがスリザリン生に、ルーピンが狼人間だとバラしたのだ。

「より正確に言うなら、解雇ではなく辞任だよ。私は自分で教職を辞めた。ダンブルドアに迷惑はかけられないし、生徒の親から見れば、狼人間が教えてるだなんて不安の種でしかないだろう?」

忍びの地図を見ながら、ルーピンはそう言った。今この場には、私とルーピン、ハリーしかいない。

「まだ入学して三年ですけど、これまでで一番いい先生でした」

「そうかい。そう言って貰えると嬉しいよ。さて、と。そろそろ校長が来るようだ。この地図は私にはもう必要ないからね。借りっぱなしにするのは勿体無いし、君たちなら有効活用してくれるだろう?」

数ヶ月前に、ピーターを捜す目的でルーピンに貸してたその羊皮紙は、ハリーの手に返された。その数秒後に、ダンブルドアが部屋に現れた。

「リーマスよ、門のところに馬車が来ておる」

「校長、ありがとうございます。見送りは結構です。またいつか会えるでしょう?」

ルーピンはダンブルドアと握手し、ハリーにウインクすると部屋を出て行った。

「……まさか、ピーターが動物もどき(アニメーガス)になっていたとは、とても驚くべきことじゃ。それも、一つの代に三人も。シリウスにジェームズも、それにピーターも。わしはそのことを知らんかった。まことにあっぱれじゃ。もしかすると、数年後にはウィーズリーツインズも、あの者たちのようになってるかもしれんのう」

 

 

ルーピンが辞めたことで、グリフィンドールの生徒たちは落ち込んでいた。まあ、これまでの先生が、一人はすごくオドオドしたニンニク臭いターバンのクィレル、一人はすごく役ただずだったロックハートだったしね。

 

 

ハリー、ロン、ハーマイオニーは試験を全科目合格していた。私はマクゴナガル先生と共に、別の日に受けていたのだが、ちゃんと合格していた。

また、グリフィンドールは三年連続で寮杯を獲得した──かと思いきや、僅差でスリザリンが掻っ攫って行った。クィディッチ杯は獲得したらしいが。

 

 

私もホグワーツ特急に乗って帰ることになった。飛んで帰っても良かったんだけど、ハリーにどうしてもと言われてしまって、つい。

「そう言えば、ハーマイオニーが何人もいるように見えたけど、あれはなんだったの?」

「ああそれ。『逆転時計(タイムターナー)』よ。マクゴナガル先生に条件付きで貸してもらっていたの。もう返したわ。気が狂いそうだったし」

そのまま他愛のない話を続け、途中でネビルやドラコが乱入してくる。今年の夏はクィディッチのワールドカップがあるらしい。アーサーさんとマルフォイ氏は、役所から切符が貰えるそうだ。

と、窓の外に小さなフクロウが見えた。ハリーに教えて、キャッチしてもらう。お父さんからの手紙を持っていた。

迷惑を掛けたこと、無罪が決まり仕事にも就けるようになったこと、しばらくの間は魔法省で緊急時の傭兵として働くことなど、色々なことが書かれていた。それと、私たち六人分、それにウィーズリー家分のクィディッチワールドカップのチケット。ウィル爺とお父さんから、迷惑料としてのプレゼントだそうだ。

それに、小さなフクロウはロンに譲ると書かれていた。ロンは嬉しそうだった。

もう直ぐでキングズ・クロスに着く。さて、ブライトが監獄に残っていたからまた何かしらの改造改善改悪があったはずだ。今年はどうなったのだろう──。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

【番外編】IF 心を読む二人が出会ったら

番外編IFルート。もしも古明地さとりとリーナ・ディメントが出会ったら。
本編にはさとりたちは登場しません。


私が彼女と出会ったのは偶然だった。吸魂鬼の仕事で日本に来てそのまま観光していたら、いつのまにか地下空間にたどり着いていたのだ。

ウィル爺もこの空間のことは教えてくれなかった。その後にわかったことだけど、ここは幻想郷──忘れられたモノの行き着く場所、神隠しの終着点──の地下空間。ウィル爺でも幻想郷の管理者に会ったことがあるだけで、この場所のことは全く知らなかったらしい。

ともかく私は歩き出した。少し遠くに見えていた館に向かって。

 

 

 

「話はわかりました。明日、八雲紫に連絡しましょう。そうすればすぐに帰れるはずですし。明日の理由ですか?」

 

「今日はもう連絡するなと言われたから、かな?」

 

「あら、なぜわかったんですか?……ああ、貴女もですか。初めまして吸魂鬼。わたしは古明地さとり、『心を読む程度の能力』を持ってるわ」

 

「初めましてさとり妖怪。私はリーナ・ディメント。同じく『心を読む程度の能力』を持ってる。オンオフ可能だけれどね」

 

「切り替え可能とは羨ましいわね。能力を使っていない時は無意識には?」

 

「ならないよ。貴女の妹みたいなことにはね。と言うよりも、マイナスの感情を向けられたとしても、私は吸魂鬼、感情や魂を食べる化け物だ」

 

「自らに向けられる負の感情もただの食材と。ああ、わたしもペットを飼っていますよ。一部は人間の姿を取っていますけどね。貴女みたいに」

 

(へぇ、そうなんだ。あと、能力で会話した方が楽じゃない?)

 

(奇遇ね。わたしもそう思っていたところよ)

 

(私のペットは黒猫なんだけどね、とても賢くて可愛いんだよね)

 

(ほう。ここにも黒猫はいますが、火車と言う妖怪ですね。死体を集めるのが趣味だそうです)

 

(死体よりは生きてる方がいいかな。苦しめて恐怖やら絶望やらを吸い取れるし)

 

(わたしよりも悪質ですね。あと、時々心の中に出ているハリーと言う人物は?)

 

(私の恋人)

 

(ふむふむ、記憶を見させてもらいましたが、甘酸っぱいですね。なんで半年も恋心に気づかなかったんですか)

 

(さとりだって、自分の心は読めないでしょ?)

 

(……そうですね。それに、妹の心も読めないですし。わたしって使えませんね)

 

(私よりは能力の使い方が上手いと思うけど?)

 

(慰め……ではありませんね。

さて、貴女が迷い込んで来ただけとはいえ、今日はありがとうございました。外のことが知れて良かったですよ。ヴォルデモートだとか)

 

(こっちもね。幻想郷のことが知れて良かったよ)

 

(この後勇儀さんが酒を持ってくるそうですが、どうしますか?)

 

(酒は飲まないけど参戦させてもらうよ)

 

私とさとりは同時に立ち上がり、握手をして広間へと向かった。そのすぐ後に一角の鬼──星熊童子こと、星熊勇儀が酒樽を持ってやってきたのだが、匂いを嗅いだ途端私の意識はブラックアウトしてしまった。後でさとりに聞いたら、勇儀さんが持ってきた酒は外の世界ではスピリタスと呼ばれる度数の強い酒だったそうだ。いつも呑んでるのより本の少しだけ度数が強いらしい。

 

「貴女にもトラウマがあったみたいですね、ええ」

 

なぜ私が気絶したのかはわからないが、何かのトラウマが刺激されたようだ。一体、どんなトラウマが私にあるのだろう。覚えていないのに。




もう一、二話続きます。
前に出した、『東方キャラを出すかどうかのアンケート』で、『さとりと無言会話してほしい』と言う意見があったので、出して見ました。なお、このIFルートは本編には全く影響しません。完全に平行世界での話なのです。
ちなみに、トラウマの原因は前世での死因。忘れている人はPrologueⅠをもう一度読んで見てください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

【番外編】IF 心を読む二人が出会ったらⅡ

翌朝、さとりから

 

「八雲紫が来るのは夜になるそうです。全く、さっさとすれば良いのに」

 

と伝えられた。多分、その紫さんはさとりから嫌がらせを受けることになるだろう。南無。

 

 

 

暇になった私はこの館──地霊殿を散策していた。することが無いし、さとりのペットにも会ってみたいし、外に行くと妖怪ども(主に勇儀さん)の手で喧嘩か酒宴に巻き込まれるらしいし、

昨日の酒宴にいつのまにか参加していたさとりに似た女の子のことも知りたいし。足元には変わった黒猫がいる。尻尾が二股だ。

 

「にしても……広いね」

 

「紅魔館ほどじゃ無いけどね」

 

何処からか声が帰って来る。見渡しても誰もいない。と思ったら黒猫が消えて女の子がいた。

 

「どうも、あたいは火焔猫燐。お燐って呼ばれてる。いやー、さっきから足元にいたのに、まったく気が付かないとは、ほんとにさとり様と同じ能力持ってるの?」

 

「ああ、あの黒猫が。私はリーナ・ディメント。能力はオンオフできるから、気が付かなかったんだよ」

 

なるほど、と納得したお燐は黒猫に戻るとどこかへ走って行った。数分して、今度は人の姿で戻ってきた。右腕になんか棒を装着した胸に目の模様の宝石をつけた女の子を連れて。

 

「おう、いたいた。紹介するよ、霊烏路空だ。空って書いて『うつほ』って読む。お空って呼んでやって。お空、こいつはリーナ・ディメント。さとり様のお客さんだよ」

 

「へぇ、さとり様の?よろしくね!」

 

「よろしく。ところでその棒は……はぁ!?核融合!?」

 

能力をオンにしてお空の心を覗いてみたら、なんか核融合とか出てきた。危険すぎる。

 

「うにゅ?なんであたしの能力知ってるの?」

 

「さとり様と同じ能力持ってるんだってさ。で、リーナさんや、一つ聞きたいんだけど」

 

「……なに?私にはお空が怖いんだけど」

 

「大丈夫。こいつ馬鹿だけど頭良いから。そうそう制御ミスったりはしないよ。それで、こいし様がどこにいるか知らないかい?」

 

「こいし?」

 

あれ?こいしってどこかで……ああ!

 

「思い出した、あの子さとりの妹か!」

 

酒宴で見かけた女の子。今の今まで忘れてたけど、さとりの妹だったのか。

 

「あちゃあ、こいし様の能力のせいかねぇ。無意識に記憶の外側へ押しやってたんだろうさ。で、どこで見たんだい?」

 

「昨日だから今どこにいるかまではわからないよ」

 

「残念。さとり様にこいし様を見つけたら来るように言っておいてくれって言われたんだけどね」

 

「で、私を見かけたから挨拶ついでにお空を紹介して、こいしを見ていたら聞き出そうと」

 

「そゆこと」

 

「こいし様なら背中にいるけど?」

 

「「え?」」

 

私とお燐の声が重なる。お空の背中には誰も乗っていない。

 

「あたしじゃなくてリーナの。ほら、そこにいるけど?」

 

そーっと首だけ振り向いてみる。すると、ニコニコした顔が目の前に。

 

「うわっ!」

 

「あははっ、見つかっちゃった!」

 

私の背中から飛び降りるこいし。いつのまに。

 

「部屋から出てきてすぐのとこからくっついてたけど?」

 

この子凄い。それに、一切心が読めない。これが無意識か。

 

「じゃあお姉ちゃんのところに行こっか!一緒に来る?」

 

返事をする前に手を引っ張られる。お燐に助けを求めてみようとしたが、諦めろという目線を送ってきていた。なんでさ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Lina Dement and the Goblet of Fire
とある日の一幕


青薔薇の吸血鬼さん、何かと大変そうですが、頑張ってください。あなたが描き終わるまでは決してエタらないと約束しましょう。なので、自分のペースで描いていってくださいな。


ぎゅう、と、ハリーに抱きしめられた。

今は七月のある土曜日の早朝。まだ日も昇ってないような真夜中。

 

「どうしたんだい、ハリー」

 

「……夢を見たんだ。ヴォルデモートが、誰かを殺した夢を。ワームテールも居た」

 

「……見せてもらうよ?」

 

「……うん」

 

ハリーの中にはヴォルデモートの一部がある。なら、こんな夢の時、夢の中で起きた出来事が本当のこともあるかも知れない。

私が覗いたハリーの夢は、年老いた男を殺す夢だった。それに、バーサ・ジョーキンズと言う魔法省の女性も殺されていると。そして、ハリーを殺すと。

あの家がどこにあるのかはわからない。でも、バーサ・ジョーキンズについてなら調べられるかも知れない。

 

「ありがとう、ハリー。辛くなったならいつでも言ってくれ。私はいつでも、ハリー、君を受け入れよう」

 

「……うん」

 

プリベット通りの朝は更けていく。今年起こる出来事など、まるで予感もさせないほどの清々しい天気で。

 

 

 

今、ハリーと私はダーズリー家の隣の家で宿泊している。ダンブルドア曰く、ハリーにはリリー・ポッター──ハリーのお母さんの護りが付いていて、その護りは、リリーの血縁に近ければ近いほど効力を増すとのこと。ダドリー・ダーズリーが太り過ぎて、バーノンさんもペチュニアさんもダドリーも、見事に冷戦状態になってるから、次点でこの家に居る、と言うわけだ。最も、普段からハリーはこの家に入り浸ってるけど。二日にいっぺんは泊まりに来てるし。

そういえば、明日からロンたちの家に泊まりに行くことになって居る。クィディッチ・ワールドカップの観戦のためだ。お父さんとウィル爺が送って来たチケットは、月曜日朝早くの『移動(ポート)キー』での便だった。試合は月曜日の夜に、アイルランド対ブルガリア。私もハリーも、グリフィンドールのクィディッチ・チームの一員だし、ドラコもスリザリン・チームの一員だ。見に行かない訳がない。

 

「ドラコの方は許可取れたって?」

 

「うん。マルフォイ氏と喧嘩までして許可をもぎ取ったってさ。最終的に、母親の一声で許可を得たらしいけどね」

 

ナルシッサ・マルフォイさんだったか。あの人も親バカみたいだ。マルフォイ氏も親バカだけど、ドラコと喧嘩した理由は、愛する息子が、自分が毛嫌いしてるウィーズリー家に泊まると言ったからだろう。

 

「用意は出来たの?」

 

「もちろん。教科書も着替えも詰めた。あとは明日、ヴェルを抱えるだけだよ。そっちは?」

 

「終わってる。ヘドウィグも元気だし、ピッグも送り返したからね」

 

あの豆ふくろうはピッグと言う名前を貰い、今日も元気にロンからの手紙を、もしくはロンへの返事を運んでる。なんと言うか、元気一杯ななつき度マックスの後輩系って感じかな?

 

「それで、宿題終わった?」

 

「あっ……うん、すぐやるよ」

 

ワールドカップの前々日は、ハリーは宿題に追われる羽目になったとさ。




始まりました、第四章『炎のゴブレット』!……ただ、今章はこれまでで一番、構築し難い章なんです。何故なら、リーナをどうするか、クラウチJr.をどうするか、など、様々な(作者にとっての)困難が待ち受けてるからです。どうするかなぁ……。

何やら感想で、「同じ部屋の同じベッドで一緒に寝てると思った私はゲスいのだろうか」(一部要約)と言うような感想が有ったので。
同じ部屋の同じベッドで一緒に寝てますが?
ちゃんとピュアなお付き合いです。一線は七年生になるまでは確実に超えさせない。まだディープキスが精一杯なのですよ。


三章の間にブライトが作っていた発明群
SCP-261『異次元自販機』
お金を入れると、入れた金額によって色々な物を排出する自販機。ブライト・ディメント製のSCP-261は不完全で、商品の元(リンゴの種)の補充が必要。排出口付近で自動で変身術が掛けられるようになっている。何に変身するかはランダム。ただし、一部の吸魂鬼にはリンゴの種しか排出しない。

SCP-914『ぜんまい仕掛け』
ぜんまいで動く機械。『入力』、『出力』の二つのブースがあり、銅のチューブでオブジェクト本体と繋がっている。間にはRough、Coarse、1:1、Fine、VeryFineのラベルが貼られた銅のパネルとノブがある。
『入力』にいれた物を『出力』から、改造した状態で排出する。
Fine→普通に改造されるが、それでもオーバーテクノロジーに至ることも。複雑化。
Rough→分解。と言うか細切れになる模様。
Coarse→単純化。構成物質ごとに分解される模様。
1:1→似たような物に変換される。100ドルは75ユーロに変換された。また、このモードで初期配置のチェス盤を改造すると、このオブジェクトとチェスが出来る模様。
Very Fine→Fineの上位互換。しかし、Fine二回の方が圧倒的にヤバい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

前日の隠れ穴

日曜日、私たちはお昼ご飯を食べて、『隠れ穴』まで煙突飛行ネットワークを使って移動した。

 

「お、到着したみたいだな!」

 

「よう、リーナ。このヌガーを食ってみてくれないか?」

 

ウィーズリー家のキッチンに到着し、フレッジョから歓迎を受ける。フレッドからヌガーを差し出されたけど、遠慮しておいた。嫌な予感しかしない。

テーブルには、ロンと二人の知らない人が座っていた。多分、ビルとチャーリーだろう。

 

「こんにちは。あなたがチャーリーでいいのかな?」

 

「ああ。君がリーナかい?こんにちは。あのリッジバック──ノーベルタは元気にしてるよ。君に会ったら、まずはそのことを伝えようと思っていたんだ」

 

チャーリーと握手する。よかった、ノーベルタは元気なんだ。

ハリーが到着して、ウィーズリー夫人にも挨拶しに行く。その時、ハーマイオニーとジニーも夫人と一緒に現れた。

夫人は挨拶もそこそこに、フレッドが持っているヌガーを見て、何やら怒り出した。ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ?

 

 

 

ロンの先導で部屋に向かう。途中でパーシーと一悶着あったけど、特に問題はなかった。

ロンの寝室のドアを開けると、中にはドラコがいた。

 

「やあ、久しぶり」

 

「久しぶりだね、ドラコ」

 

「久しぶり。よく許可取れたね」

 

「……母上には感謝するしかないよ」

 

ドラコは苦笑いしている。ナルシッサさんに大きな借りが出来たようだ。

 

「ピッグは……元気にしてるね。でも、全然(ピッグ)に見えないのに、なんでこの名前?」

 

「あー、本来はピッグウィジョンって名前なんだけど……こいつ、僕が名前変えようとしたら、他の名前だと反応しなくて。ジニーがつけた名前なんだけどね」

 

あらら、それはそれは……。

 

 

 

夕食は庭で食べることになった。十三人も居るから、部屋に入りきらない。パーシーはウィーズリー氏と色々話してる。クラウチさんクラウチさんうるさい。それに、例の極秘だかなんだか。あと──バーサ・ジョーキンズ?アルバニアに行った……ウィル爺に調べてもらおう。

チャーリーとフレッジョはワールドカップの話をしていた。この様子だと当日、勝敗で賭けでもするんだろうな。

ウィーズリー夫人が学用品を買って来てくれると言っていたけど、私とハリーは辞退した。すでに買っちゃったし。

 

 

 

こうして、夜は更けて行く。明日に待って居る事件のことなど微塵も感じさせずに。

 

 

 

 

「──ああ、来たのか、『死』よ。まさか、俺様の命を取りに来たとでも?」

 

「いやいや、そんなことはしないさ。それに、そこで震えてる男の命も取りはしないよ。前も言っただろう?僕は全てを愛するって。君が世界に受け入れられない存在だろうと、僕だけは君を愛そう。君の存在を愛そう。君の全てを愛そう。君の思想を愛そう。

──さあ、君が今年何をするのか、期待しているよ。僕の愛するヴォルデモート卿」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

移動キー

12/10 三章の終わりに番外編を投稿しました。


私たちは朝早くに起こされた。まずは私がウィーズリー夫人に揺り起こされて、その揺れで私の抱き枕になって居たジニーも起きる。流石にウィーズリー家でハリーを抱き枕にするのは無理だった。

下に下りると、ウィーズリー氏がマグルのような格好に見えているか気にして居た。まあ、普段がアレだし、今回行くところは本来はマグルの場所だからね。仕方がない。

 

「うーん、マグルらしく見えるかね?」

 

「だいぶ」

 

ハリーたちも下りてきた。そのあとに、二度寝しようとして居たハーマイオニーが下りてくる。

みんなで朝ごはんを食べ、リュックサックなどを背負って外に出る。

まだ夜明けには少し早く、地平線が明るくなり始めたばかりだ。

 

「目的地って、どこだっけ?」

 

「ストーツヘッド・ヒルだ、ロン」

 

後ろからロンとドラコの言葉が聞こえてくる。目の前にある村──オッタリー・セント・キャッチポールを通り抜けた先に、ストーツヘッド・ヒルはある。

 

 

 

……だいぶ登ったけど、これはきつい。あと十分と言うところでようやく登りきった。

 

「全員、疲れているだろうけどもう一仕事だ。『移動キー』を探さなければ。そんなに大きい物じゃないからね」

 

みんなが重い足を引きずるように探し始めたところで、少し遠くから大きな声が上がった。

 

「ここだ、アーサー!ほら、こっちにあったぞ!」

 

もう少し上の方、頂の辺りに長身の人影が二つ見えた。

ウィーズリー氏は片方に近付いて行き、堅い握手をした。

 

「みんな、エイモス・ディゴリーさんだ。『魔法生物規制管理部』にお勤めだ。みんな、息子のセドリックは知ってるね?ハリーとリーナは去年の六月辺りにエイモスに会っただろう?ほら、バジリスクのことで」

 

そう、私とハリーはエイモスさんと会っている。バジリスクの処分についてだ。まあ、魔法契約のせいだってことになって、ホグワーツの護り手になることで有罪を免れたんだけど。

 

「やあ、一年ぶりかね、ハリーにリーナ?あのバジリスクは元気かね?それと、去年──と言っても、私がバジリスクに無罪を言い渡したより後、つい一ヶ月前までのことだがね。それと、セドが詳しく話してくれたよ。僅差だったとはいえ、押し負けたとね」

 

エイモスさんが悔しそうに話してくる。よっぽど、息子がクィディッチで負けたことが悔しいんだろう。

そろそろ時間だと、みんなで『移動キー』──古いブーツに触れる。他の家は来ないらしい。ラブグッド家は一週間前に行き、フォーセットと言う家はチケットが手に入らなかったそうだ。

ウィーズリー氏が懐中時計を見ながらカウントダウンをして行く。一と言ったすぐ後、急に、へその裏側が引っ張られるような感覚が会った。そして、そのまま浮かび上がり、渦の中を通っていくような感じがして、

 

 

 

急に、足が地面に着いた。バランスが取れずに転んでしまい、ハリーの上に折り重なってしまう。そしてロンが降ってきてサンドされた。痛い。

 

『五時七ふーん。ストーツヘッド・ヒルからとうちゃーく』

 

どこからかアナウンスが聞こえた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

テント

私たちはなんとか立ち上がり、周りを見渡した。霧が深い荒地のような場所だ。

近くには不機嫌な顔の魔法使いが二人。どっちも、徹夜で仕事をしているようだ。

 

「やあ、アーサー。非番のようだな羨ましい。ウィーズリー御一行……まあ、アーサーの子供たちに追加四名は四百メートルほど向こうのキャンプ場だ。歩いて最初に出くわす場所。ロバーツさんと言う人が管理人だ。ディゴリーは……二番目のキャンプ場。ペインさんだ。すまんが急いでくれ。五時十五分に黒い森から大集団が到着するんだ。こっちは夜通しで仕事なんだから少しは休みたいんだ。だから私らにこれ以上時間を使わせないでくれ」

 

「ええと……すまん、バージル。君たちの分まで楽しんでこよう」

 

「「私らもちゃんと観戦するさ!」」

 

バージルさんに礼を言い、私たちは歩き出す。霧で何も見えないが、二十分も歩いていると小さな小屋が見えてきた。どうやらあの向こうが私たちが泊まるキャンプ場のようだ。

ディゴリー親子と別れて小屋に近づく。男性が一人立っているけど、訝しげにテントを見ているし、どうやらマグルのようだ。

 

「あんたらも宿泊客かい。名前は?」

 

「ウィーズリーです。テントを二張り、予約しました」

 

「あいよ。ウィーズリーさんはあそこの森のそばだな。一泊だけかね?」

 

「そうです」

 

「そうか。なら使用料は今すぐ払ってくれるかね?」

 

「わかりました。ええと──」

 

「これで足ります?」

 

ポケットからマグルの札束を引っ張りだして少し焦ってるアーサーさんから札束を奪い、金を払う。

 

「確かに。嬢ちゃん、しっかりもんだな」

 

「どうも」

 

ロバーツさんに頭を撫でられて、ついでに飴を貰った。ハリーが少しむくれてたけど。

 

「ふむ、おめえさんらも外国人かね?」

 

「外国人?」

 

アーサーさんがキョトンとした顔をする。……なるほど、魔法使いとマグルの貨幣は違うから、マグル社会で買い物やら何やらをしたことがない魔法使いたちは色々やらかすと。

 

「今までこんなに混んだことはねえし、だいたいの客が金勘定ができねえし、それにふらっと現れる。おめえさんたち、何もんだ?」

 

ロバーツさんの顔が険しくなる。その時、どこからか一人の魔法使いが現れて、ロバーツさんに杖を向けた。

 

「〈忘れよ(オブリビエイト)〉!」

 

呪文がかかると同時に、ロバーツさんの顔はとろんとして、目はうつろになった。なるほど、これが忘却術か。

ロバーツさんから地図を受け取り、テントを張る場所へと向かう。少しの間同行してくれた魔法使いによると、ルード・バグマンと言う人物がそこらじゅうでクィディッチについて話してしまって、それが管理人のマグルたちにも届いてしまうらしい。スタッフ側の苦労が絶えないとも。

 

 

 

キャンプ場の一番奥に私たちの場所はあった。森の際の空き地に『うーいづり』と書かれた小さな立て札がある。

 

「最高の立地じゃないか!競技場はこの森のすぐ裏だ。こんなに近いとはね」

 

アーサーさんはリュックを下ろしてテントを取り出した。人力で建てるらしい。もちろん、ウィーズリー家並びにドラコはやり方を知らなかった。ハリーと私で場所を指示して、ハーマイオニーも含めた三人でテントを設営していく。

さほど時間はかからずにテントが完成した。二人用の小さなテントが二つ。

 

「これ、全員入るの?残りのメンバーも到着したら十二人だよ?」

 

「おや、心配はいらないさハリー。見ててごらんなさい」

 

アーサーさんがテントに入っていく。ハリーとハーマイオニー、私がそれに続いていくと、中は古風なアパートのようだった。寝室にバスルーム、キッチン付き。

 

「同僚のパーキンズから借りたんだ。やっこさんはもうキャンプはやらないと言っていたがね。腰痛だそうだ」

 

その後はアーサーさんの指示で水を汲んできたり薪を集めてきたりした。周りのテントは個性豊かで、もはや私たちのマグル風のテントだけが異常と見られてしまいそうだった。

アフリカやアメリカ、それにブルガリアも。ブルガリアのテントには国旗とクィディッチ選手のポスターが貼ってあった。ビクトール・クラムと言う、世界最高峰のシーカーの一人だそうだ。

ホグワーツの生徒にも会ったし、他の魔法学校の生徒も見かけた。マグルの格好をしている人も居れば、可笑しい格好の人も居る。その国の民族衣装を着て居る人も。遊んでる人も居たし、何かの修行をしている人も居る。

なぜか柔道の試合をしている一団と剣道の試合をしている一団と空手の試合をしている一団が居た。少し見てたら、それぞれの団から代表者と思われる一名ずつが出て着て、何やら話し合ったかと思ったらいきなり喧嘩を始めた。柔道家は投げようとして剣道は竹刀を振り下ろして空手がそれを弾き飛ばす。周りは賭けをしている。なんだこれ。

 

「魔法使いたちが集まるといつもこうなるんだよ。おかげで、役所は大忙しさ」

 

アーサーさんが愚痴を漏らす。周りには折れたマッチが大量に転がっていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ルード・バグマンとバーティ・クラウチ

火を付ける役目をハーマイオニーが奪い数分後、火が灯ったもののまだ調理を開始してなかった。このテントに魔法省の役人が通りがかるたびに役人がアーサーさんに挨拶していくからだ。魔法省内ではアーサーさんは有名人のようだ。

小鬼連絡室室長やら実験呪文委員会メンバー、忘却術士に無言者──神秘部のメンバー。アーサーさんは神秘部が何をやっているのかよくわからないと言っていたけど、通りかかった二人は「このキャンプ場で見た女の子の中で誰が一番可愛いか」について考えていた。

火の準備が整い、調理をし始めた途端にパーシーたちが現れた。

 

「パパ、ただ今『姿現し』ました!」

 

「ああ、ちょうどいいところに来た。昼食だ!」

 

卵を焼いたり炒めたりスクランブルエッグにしたり、ソーセージは切り目を入れてこんがりと。調味料は胡椒とマヨネーズ、ケチャップをお好みで。

半分くらい食べたところでクィディッチローブを着た人が近づいてきた。胸のところにはスズメバチが描かれている。

 

「これはこれは!時の人、ルードじゃないか!」

 

「よう、我が友アーサー!どうだいこの天気は!最高のクィディッチ日和じゃないか。それに準備は万端だ。俺の出る幕はほとんどない」

 

バグマンさんの背後ではやつれた役人数名が走り回っていた。ついでにバグマンさんはそのことに気づいてるし、アーサーさんも気がついている。悪い大人だよ、本当。

私たちの説明をしたアーサーさんに、バグマンさんは賭ける気はないかと聞いてきた。

 

「ロディ・ポントナーはブルガリアが先取点を上げると賭けた。いい掛け率にしてやったよ。アガサ・ティムズ嬢は試合が一週間続くと自分の鰻養殖場の半分を張った。日本のとある御仁は試合中に自分が上司を吹っ飛ばすとか賭けてたよ。ハグリッドみたいなお方が上司だったがね、背は高いがあんなひょろひょろな体でハグリッド体型を吹っ飛ばせるとは思わんが」

 

「わかった、わかった。賭けさせてもらうよ。アイルランドが勝つ方に一ガリオン」

 

「一ガリオンか……他に賭ける者は?」

 

「この子たちにギャンブルは早すぎるさ。モリーが嫌がる」

 

アーサーさんが言った途端、フレッジョが動き出した。

 

「賭けさせてもらうよ。三十七ガリオン、十五シックル、三クヌート」

 

「ビクトール・クラムがスニッチを捕るのは確実だな。でも、アイルランドが勝つだろうね」

 

「そうだ、『騙し杖』も賭け金に上乗せするよ」

 

フレッジョが自分たちの貯金全てをバグマンさんに渡し、本物そっくりな杖も渡す。パーシーはつまらない物を見せるなとか言ってたけど、バグマンさんは少なくとも五ガリオンの価値があると判断した。

 

「君たちには素晴らしい倍率をやろう。このおかしな杖は五ガリオンだ。合計で四十二ガリオン十五シックル三クヌートだ。さて、アーサー。バーティ・クラウチを見なかったか?ブルガリア側の責任者がゴネてるんだが、俺には一言もわからん。バーティならわかるはずなんだがね、奴はどこに行ったのやら」

 

「私は見ていないな。ところで、バーサ・ジョーキンズの消息はわかったのかね?」

 

「なしのつぶてだ。だが、ディメント家が動くと言い出した。これなら直ぐに見つかるだろう」

 

「ディメント?もしかして、リーナが知らせたのかい?」

 

アーサーさんに話を振られる。私は頷いておいた。

 

「そうか、息子はいい友人を持ったようだ。バーティは何と言ってるんだ?」

 

「そろそろ捜索人を出した方がいいんじゃないか、とね。しかし、今は一人も無駄には出来んよ。おっ──噂をすれば、だな。捜したぞ、バーティ」

 

焚き火の側に一人、『姿現し』してきた。バグマンさんとは対照的にシャキッとしたこの人がバーティ・クラウチなんだろう。クラウチか……ジュニアはどうしてるのかな?前に食べ損ねたんだけど。

クラウチとバグマンさん、アーサーさんはその後も色々話してたけど(『極秘』の何かだとかパーシーのことをクラウチがウェーザビー君と呼んだりだとか)、二人は挨拶した後に『姿くらまし』で消えていった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

開始直前

夕暮れが近づくにつれて、キャンプ場の興奮度合いはさらに高まってきた。あちこちで魔法火やら何やらが発生し、魔法省のスタッフは対応を諦め放り投げた。

行商人たちも登場し、様々な珍しいグッズを売り始めた。ファイアボルトのミニ模型とか光るロゼットとか。ロンは色々と買っていた。ドラコもこっそりとだけどビクトール・クラムの人形を買っていた。

一番気に入ったのは万眼鏡(オムニオキュラー)と言うアイテム。多分、ワールドカップが終わった後でも有効活用できる。ロンはお金が足りなくなってしまったようだけど、私とハリー、ドラコでお金を出し合って五人分買った。今度何かを奢ってもらう約束をしてね。

テントに戻ると、全員が緑色のロゼット──アイルランドの物だ──を付けていた。

少し雑談をしていたら、森の向こうから鐘の音が聞こえてきて、木々の間に赤と緑のランタンが灯り、競技場への道を照らした。

 

「いよいよだ!さあ、行こう!」

 

アーサーさんの掛け声で道を歩き出す。ランタンは赤と緑が交互についていて、綺麗だった。緑がアイルランドで、赤がブルガリアだったかな?

二十分ほど歩いて、森を抜ける。そこは巨大なスタジアムの足元だった。周りには何千人もの魔法使いがいる。凄い熱気だ。

 

「このスタジアムには十万人が入れる。魔法省の特務隊五百人が一年がかりで準備したんだ。〈マグル避け呪文〉で一分の隙もない」

 

アーサーさんについて行って入り口に向かう。私たちが座るのは最上階の貴賓席だそうだ。よくこんなチケットを手に入れられたね、お父さんとウィル爺は。

階段を上り続けて、なんとか階段のてっぺんにたどり着く。そこは小さなボックス席で、両サイドのゴールポストの中間にあった。

ウィーズリー家と共に最前列に座ると向かい側に黒板が見えた。内容は……広告か。

このボックス席には後でマルフォイ家も来るそうだが、今は私たちの他には誰も居な──いや、一人居た。女の子の屋敷しもべ妖精が一体と、バーテミウス・クラウチ・ジュニア。かつてアズカバンからこっそりと脱走した死喰い人。なんでこんなところにいるのかはわからないけど、観戦の邪魔をしないのなら放っておこう。透明マントを被ってるみたいだから、他の人にはわからないだろうし。

三十分ほどの間に貴賓席はどんどん埋まっていった。アーサーさんは続けざまに握手をして、パーシーは誰か来るたびにピンと直立不動になるので座らないで居たらどうだろうと助言しておいた。

ファッジもこの席に座るようだ。隣には金の縁取りをした黒ビロードのローブを着た魔法使いが立っている。ブルガリアの大臣のようだ。

ルシウス・マルフォイ氏と奥さんのナルシッサさんも到着した。マルフォイ氏はアーサーさんに何か嫌味を言おうとして居たけど、ナルシッサさんが睨んで止めた。ドラコの一件で尻に敷かれ始めたようだ。当のナルシッサさんはこちらに手を振ってくれている。ドラコと仲良くしてやってくれ、と。

少ししてバグマンさんが走ってきた。そろそろ開始らしい。

 

「さあ皆々様、心の準備はよろしいですかな?大臣、ご準備は?」

 

「君さえよければ平気だろう、ルード。いつでも始めてくれ」

 

バグマンさんは杖を取り出して〈拡声呪文〉を使う。そして、大きく息を吸った。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

試合、開始

前話で百話を迎えていたことに感想を貰うまで気がつかなかった。


「『レディース・アーンド・ジェントルメーン!第四百二十二回、クィディッチ・ワールドカップ決勝戦へようこそ!』」

 

バグマンさんの言葉と共に黒板の広告が消えてブルガリアとアイルランドの国旗、そして得点が書かれた。今は両方とも0だ。

 

「『さあ、前置きはこれぐらいにして早速ご紹介しましょう……ブルガリア・ナショナルチームのマスコット!』」

 

真紅一色のスタンドの上手から歓声が上がる。現れたのは、百人ほどのヴィーラだった。

ハリーがヴィーラに見とれているようなのでほっぺたをつねって私の方に意識を向かせる。

 

「何?リー……」

 

「んっ……」

 

そのままキスをする。ヴィーラなんかにハリーをあげるつもりはない。いや、誰にも渡すつもりはない。ハリーは私の隣にいてほしい。

 

「……ぷはっ。急にどうしたの、リーナ?」

 

「……ヴィーラに取られるかと思った」

 

「あはは。僕はリーナから離れないよ。絶対に」

 

ハリーに抱きしめられる。ハーマイオニーやロンが真っ赤になって、ナルシッサさんは生暖かい視線を向けてきていた。

ヴィーラはピッチの片側に整列した。次はアイルランドの番だ。

 

「『続いてはアイルランド・ナショナルチームのマスコットの登場です!』」

 

次の瞬間、大きな緑と金色の彗星のような何かが音を立てて飛び込んできた。競技場をぐるぐる回ったり、虹の橋をかけたり、最後は輝く巨大な三つ葉(シャムロック)のクローバーを形作った。その光から、金色の雨が降り始める。

金貨だ。こんなにたくさん。……でもこれ、レプラコーンの金貨だ。一時間もすれば消える偽物。周りのみんなは拾っていたけど、私とドラコは拾わなかった。ハリーにも教えようかなと思ったけど、あとでからかえるように言わないでおこう。

レプラコーンはヴィーラとは反対の方に降りてきて、あぐらをかいて座った。

 

「『さあ、選手たちの登場です!ブルガリア・ナショナルチームのご紹介!ディミトロフ!イワノバ!ゾグラフ!レブスキー!ボルチャノフ!ボルコフ!』」

 

真っ赤なローブが下方の入場口から飛び出し、あまりの速さに見えなくなった。箒の性能と選手の才能が合わさるとここまで速くなるんだ。

 

「『そしてぇぇぇぇぇ──ビクトール・クラムだぁぁぁぁぁあ!』」

 

ひときわ速い選手が入ってきた。猛禽類のようだ。顔もそんな感じだし。

 

「『さあまだここからですよ──アイルランド・ナショナルチーム!コノリー!ライアン!トロイ!マレット!モラン!クィグリー!そしてぇぇぇぇぇ──リンチの入場だぁぁぁぁぁあ!』」

 

緑の影がピッチへと飛び入る。クラムよりは遅いけど、それでも速い。

 

「『最後に入場するのは、はるばるエジプトからおいでの我らが審判、国際クィディッチ連盟の名チェア魔ン、ハッサン・モスタファー!

さあさあ準備はよろしいか!?モスタファーが木箱を開け、クアッフルを──投げたぁぁ!試あぁぁぁぁぁい、開始ぃぃぃぃぃ!』」

 

そして、赤と緑が交錯した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

騒動

さあ、今夜もBad∞End∞Night(魔神柱たちとソロモンにとって)
今日は何百体の魔神柱がへし折られるんでしょうね?


「『最初にクアッフルを取ったのはマレットだトロイにパスしていやディミトロフがカットしてマレットが取り返したああもう実況が追いつかない!アイルランドチームはトロイを中心にホークスヘッド攻撃フォーメーションだ!そのままポルスコフの計略ああっとレブスキーがクアッフルを奪ったがまた奪われてトロイが先取点!十対ゼロ、アイルランドが一歩リード!』」

 

凄い、全く見えない。プロの本気ってここまで速いんだ。ワクワクする。

そのままアイルランドは合計三十点獲得、ブルガリアは十点取った。クラムはリンチをフェイントで引っ掛け、地面に激突させていた。

 

 

 

そのまま試合は過激になって行き、加速し、最後に、クラムがスニッチを捕り試合は終わった。でも、ブルガリアは百六十点、アイルランドは百七十点で、アイルランドが勝利した。アイルランド側としては試合に勝って勝負に負けたって感じだろう。

 

「まあ、ヴぁれヴぁれは、勇敢に戦った」

 

ブルガリアの魔法大臣がそんな言葉を発した。なんだ、訛りはあるけど英語使えるんじゃん。ファッジが怒り狂ってるけど。そしてブルガリア大臣笑ってるけど。

ボックス席にそれぞれのチームが入場し、アイルランドチームに優勝杯が手渡された。

 

「さてと、ミスター・バグマン?」

 

「俺たちの賭けの予測、覚えてるよな?」

 

「「きっちりと支払って貰うぜ」」

 

「〈静まれ(クワイエタス)〉!あー、うん。あとでちゃんと支払うさ、双子くん」

 

フレッドとジョージがバグマンさんに取り立てていた。この二人、賭けを見事に当てたんだ。

 

 

 

キャンプ場に戻りながら、ハリー、ドラコと一緒に今日の試合についての考察をする。参考にするには要求技量が高いけど、それでも真似するぐらいはできる。途中でチャーリーも参加してきた。どうしたら相手を引き離せるか、引っ掛けられるかのアドバイスをくれた。ありがたい。

テントに着いたあと、そのまま寝てしまった。とても興奮して、疲れてたからね。ベッドに倒れこんでそのまま眠りに落ちた。

 

 

 

──きて、起きてリーナ!」

 

「……?どうしたの、ハーマイオニー?」

 

「逃げないと!『例のあの人』の部下──死喰い人たちがキャンプ場を襲ってるの!」

 

ハーマイオニーの言葉にすぐさま飛び起きる。上着と杖を持ってテントを飛び出し、ハリーと合流する。この場で一番危険なのはハリーだろう。死喰い人たちにとっては主人の仇だから。

死喰い人たちはフードと仮面をつけ、マグルの一家を浮遊させていた。

 

「私とビル、チャーリー、パーシーは魔法省を助太刀する。君たちは森へ逃げてくれ。いいかい?絶対にバラバラにならないように。それと、あいつらを倒そうなんて思わないように。リーナはみんなを守れるかい?頼んだよ!」

 

アーサーさんたちは死喰い人に向かっていく。私たちはすぐに森に駆け込んだ。

 

「多分だけど、あの中の一人は僕の父上だ。マグルを狙うはずだから、ハーマイオニーも危険だろう」

 

ドラコの忠告が聞こえる。マグル生まれだからか。

そのまま森の中を縦横無尽に駆けていく。途中でフレッジョとジニー、ドラコとはぐれてしまった。

 

「もう!あの人たちはどこに行ったのかしら?」

 

「僕たちがはぐれたって可能性もあるだろ!それに、あそこに誰かいるんだから話を聞けばいいんじゃない?」

 

ロンの言う通り、目の前には人影があった。何人かの女子生徒だけど、話しているのは……フランス語?

 

「【マクシーム先生はどこへ行ったのかしら?私たちだけじゃこの森から動けなさそうなのに!】」

 

「ああ……関わらない方がいいかも」

 

フランス人の少女たち──おそらくボーバトン魔法アカデミーの生徒たち─の横を通り過ぎて、さらに奥へ。

 

「え?あれ?……どうしよう、杖がない」

 

「え……本当に?」

 

ハリーが杖をなくしてしまったようだ。近くを探してみても見つからない。どこに行ってしまったのだろう。

途中で、ウィンキー──クラウチJr.とともに座っていたしもべ妖精──が通り過ぎた。Jr.はウィンキーを引き止めようとしているようだけどなぜかウィンキーの方が勝っている。できれば捕まえたいけど、今は緊急事態だ。無視しよう。

小鬼の一団を追い越し、ヴィーラを囲む魔法使いたちを通り過ぎ、途中で出会ったバグマンさんにキャンプ場の惨劇を教える。

 

「この辺りならもう平気かな」

 

「そこに空き地があるわ。あそこなら座れるんじゃないかしら?」

 

乾いた草むらに座り、アーサーさんが迎えに来るのを待つ。しばらくの間静寂が続き、突然、こちらに近づいて来る足音が聞こえた。

 

「……誰か来る!」

 

私たちは身構える。死喰い人だった時のために。

だけど、木の陰からその誰かは出てこなかった。けれど、一つの呪文を残していった。みんなが震え上がるであろう一つの呪文を。

 

「〈闇の印を(モースモードル)〉!」

 

緑の靄が木々の梢を突き抜け、空に髑髏とその口から這い出る蛇を描いた。そして、周囲から悲鳴が上がる。

 

「──まずい!逃げるよ!」

 

ハリーたちを引っ張り逃げようとする。しかし、数歩も行かないうちに二十人ほどの魔法使いたちに囲まれてしまった。魔法省の人たちだけど。……?杖を構えてる?

 

「伏せろ!」

 

ハリーの声が聞こえた。その言葉に従って伏せると、頭の真上を失神呪文が通り過ぎていった。

 

「やめろ!やめてくれ!私の息子だ!」

 

森の中からアーサーさんが出て来る。ひとまずは安心できると思い顔を上げると、少し先にクラウチの顔が見えた。

 

「少し黙っていろ、アーサー。誰が、お前たちの誰が『闇の印』を打ち上げた?」

 

「誰もやってない!僕たちが打ち上げたんじゃない!」

 

「そもそもやる理由がない。マグル生まれにマグル寄りのウィーズリー家、それにディメント。ハリーは言わなくても平気でしょ?」

 

「マグル寄りの魔法使いでも闇の陣営だったことがある。さあ、さっさと吐け。誰がアレを打ち上げた!」

 

クラウチはまだ私たちを疑っているようだったが、正直に、木の陰にいた誰かが打ち上げたと話した。

 

「私の呪文があそこの木立を突き抜けた。確認してこよう」

 

エイモス・ディゴリーがそう言い、木立に向かっていった。少しして、誰かを捕まえたとエイモスさんが叫んで飛び出してきた。その手には、杖を握りしめたウィンキーが掴まれていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

直前呪文

「こいつはあなたのところのしもべ妖精でしたね、クラウチさん?」

 

エイモスさんはクラウチの足元にウィンキーを置き、クラウチに呼びかけた。

 

「──他に誰か、いなかったのか?」

 

「いなかったと言わせていただこう」

 

「そんなはずはない。絶対に、ありえない!」

 

クラウチはウィンキーが見つかったあたりに早足で向かい、荒々しく誰かを捜し始めた。

 

「まったく、なんてことだ。まさか屋敷しもべが『闇の印』を創り出すだなんて」

 

「エイモス、君はそう思っているのか?印を上げるのには杖がいるだろう?」

 

「そうだとも。この屋敷しもべは杖を持っていたのさ。ほら、この杖だ」

 

エイモスさんはウィンキーの胸元から杖を取り出し、アーサーさんに見せた。ちょうど、私たちからだと見えない位置だ。

 

「『ヒトにあらざる生物は、杖を携帯し、またはこれを使用することを禁ず』。『杖の使用規則』第三条だ」

 

そこまでエイモスさんが話した時、ポンと音がしてバグマンさんが姿を現した。空の印を見て目を見開いている。

 

「どうしたんだ、これは?『闇の印』を上げた犯人は捕まえたのか?それと……足元に転がっているバーティの屋敷しもべはどうしたんだ?結局、試合の最中にバーティは来なかったしな」

 

「ルード、私は忙しかったのだよ。それと、私のしもべ妖精は失神術にかかっている」

 

クラウチが森から出てきて、バグマンさんに答える。誰も見つけられなかったようで、こめかみが痙攣している。

 

「なんだって?なんでそんなことに──いや、まさか。ウィンキーがあの印を創ったとでも?」

 

「そのまさかかもしれないな。〈蘇生せよ(リナベイト)〉!」

 

エイモスさんが杖を取り出し、ウィンキーに呪文をかけた。目を覚ましたウィンキーは少しの間寝ぼけていたけど、状況がわかってくると途端に怯え始めた。

 

「しもべ!私は『魔法生物規制管理部』の者だ!率直に聞かせてもらおう。『闇の印』を打ち上げたのはお前か?」

 

ウィンキーは怯えつつも、自分はやっていないと答えるりやり方を知らないと。

 

「では、この杖はなんなのだ?お前が発見された時に手に持っていた」

 

エイモスさんがウィンキーから取り上げた杖を目の前に差し出した。月と髑髏の明かりに照らされ見えるようになったその杖は──

 

「その杖、僕のだ……」

 

──ハリーの物だった。

 

「なんだと?では、お前が印を創り出したということか?──いや、すまん。忘れてくれ。君に限ってそんなことはないだろう」

 

エイモスさんがウィンキーに再び向き合い尋問を再開しようとした時、ハーマイオニーから声があがった。

 

「ウィンキーじゃないわ!彼女の声はかん高いけれど、私たちが聞いた呪文は、ずっと太い声だったもの!」

 

ハーマイオニーが振り返って同意を求めてくる。私は頷いて!ハリーとロンも肯定した。

 

「では、こうしよう。杖が最後にどんな呪文を使ったのか知る術があるのでね。〈直前呪文(ブライオア・インカンタート)〉!」

 

エイモスさんは二つの杖の先を合わせ、呪文を唱えた。その途端、杖の合わせ目から『闇の印』が湧き出てきた。けれど、エメラルド色ではなく濃い灰色。まるで、空に浮かぶ印のゴーストのようだ。

 

「〈消えよ(デリトリウス)〉!──さて、申し開きはあるのかね、しもべよ」

 

「あたしはなさっていません!」

 

ウィンキーは反論する。だけど、クラウチは──

 

「ウィンキー、私は指示に従わないしもべ妖精はいらない。私はお前にテントで待っていろと言ったのだ。これは『洋服』にあたいする。反論は許さん」

 

一方的に解雇通知を叩きつけ、その場を離れていった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

騒動の後始末

空き地から離れた後で、ハーマイオニーがウィンキーの処遇について怒り狂った。うん、かわいそうって気持ちはわかるけどね、ハーマイオニー。あれは当人たちの問題で、私たちが口を挟めることじゃないんだ。

森の外れまで歩いた時、大勢の人がアーサーさんに詰め寄ってきた。向こうで何があったのか、印を創り出したのは誰なのか、『あの人』が帰ってきたのか。

 

「『あの人』は帰ってきていない。それだけは断言しておくよ」

 

アーサーさんは魔法使いたちの間を掻き分け、私たちはその後ろを歩いて行った。

テントまでたどり着いて、フレッド、ジョージ、ジニー、ドラコの無事とビルたちの怪我を確認する。ビルは腕からかなり血を出していて、パーシーは鼻血を流していた。チャーリーは傷一つついていないけど、シャツが大きく裂けている。

 

死喰い人(デス・イーター)たちはどうしたんだ?」

 

「あの印を見た途端逃げて行ったよ。そういえば一人、僕らばかり狙ってきたのがいたな」

 

「まったく、連中は本気で同窓会気分でこの事件を起こしたのかもしれないな。さ、早く寝て早朝の移動キーでここを離れよう」

 

 

 

数時間後、私たちはアーサーさんに叩き起こされた。急いで片付けをして、キャンプ場を離れる。救い出されたロバーツさんは記憶修正の影響でまだとぼけているようだ。

移動キーが置いてある広場に行くと、移動キーを管理しているバージルさんに何人もの魔法使いたちが詰め寄っていた。アーサーさんは魔法使いたちを掻き分けてバージルさんと話をつけ、みんなで列に並んだ。行きは古い長靴だったけど、帰りは古タイヤだ。

ストーツヘッド・ヒルに戻り、オッタリー・セント・キャッチポールを通り抜けてしばらく進むと、隠れ穴が見えてきた。まだ三日四日ぐらいしか離れてないのに、随分と久々に見たような気がする。

 

「アーサー!ああ良かった、本当に良かったわ!」

 

隠れ穴から勢い良く誰かが走ってきてアーサーさんに抱きつく。ウィーズリー夫人だ。抱きついた拍子に手から取り落とされた新聞には昨夜のことが書かれている。

 

「えーと……魔法省のへま……犯人を取り逃がす……警備の甘さ……なぜディメント家は犯人を捜そうとしないのか……著者、リータ・スキーター」

 

「リータ・スキーターだって!?」

 

新聞を読んでいると、私が口にした名前にパーシーが反応した。確かスキーターって、何でもかんでもこき下ろす嫌われ新聞記者だったはず。ただ、魔法界では情報を得る手段が日刊予言者新聞ぐらいだから、みんな信じてしまうんだよね。

 

「リーナ、ちょっと新聞を見せてくれるかい?……やれやれ、モリー、すまない。これから役所に行って善後策を講じてくる。暖かい紅茶を用意していてくれ」

 

「父さん、僕も行きます」

 

アーサーさんとパーシーが〈姿くらまし〉を使いこの場から消える。

 

「ハリー、果樹園でクィディッチでもしようよ。いい気分転換になるはずだ」

 

「だめよ、ロン。ハリーはクィディッチをする元気もないはずよ」

 

「私は賛成だけどね。ハリーってクィディッチ狂の気があるから」

 

「リーナまで!あなたがそう言っちゃったらハリーは無理してでもクィディッチしちゃうじゃない!」

 

「ハーマイオニー、君はハリー自身の意見を聞くべきだと思うんだが?」

 

「ドラコまで……ええ、説得はもう諦めるわ」

 

ハーマイオニーの努力むなしく、私たちは果樹園でクィディッチをした。箒に乗ってる時のハリーはとても生き生きしていた。どんどん新しい技を試して、成功するたびに笑顔になっていく。うん、いい笑顔だ。

 

 

 

一週間後、次の日にはホグワーツへ向かうという日曜の夜に、ようやくパーシーが戻ってきた。より正確に言うなら、これまでより長い時間の休みを取れたと言うべきか。帰ってきても二時間いれば長い方で、ひどい時は三十分もしないでもう一度魔法省まで向かうなんてことにもなってた。もちろん、アーサーさんも。

スキーターは相変わらず魔法省をこき下ろしてるらしい。一番最近の彼女の記事はこうだったね。『なぜディメント家は『闇の印』を打ち上げた犯人を捜索せずに、バーサ・ジョーキンズを捜しているのか』。表立って捜すと勘付かれて国外逃亡されるかもしれないから気づかれないように捜してるんだけどね、ジョンとかが。

 

「そういえば、このドレスローブって何に使うのかしら?」

 

ハーマイオニーが唐突に声を出す。今年のホグワーツの必需品には正装用のドレスローブを用意することって書いてあった。私のは真っ黒なドレスで、ハリーのは深緑色の、制服に似たローブだった。

 

「ドレスローブなんだから、うーん……パーティとか?」

 

「パーティならハロウィンとかでやってるじゃない。ドレスは社交パーティとか、ダンスパーティの時に着る物よ」

 

その後もしばらく悩んでいたけど、結局答えは出なかった。……コリンにハリーのドレスローブ姿の写真撮ってもらわなきゃ。




ジョン
ジョン・ディメント。71話で登場。ジョン・メイトリックスといえばわかるだろうか。そう、筋肉モリモリマッチョマンの変態である。彼に隠密行動などできるのだろうか。いや、できるできないじゃない、やるんだ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

謎の答えはホグワーツで

最近漫画版「空の境界」買いました。いやー面白い。ああ、型月だって思う。
本作の狂人さんの「直死の魔眼」は死の点も見ることが可能。色は血よりも濃い紅。


翌朝、激しい雨の音で目が覚めた。夫人──モリーさんの次、二番目に目が覚めたみたいだ。

荷物をまとめてキッチンで待っていると、エイモスさんの首がいきなり暖炉に現れた。

 

「──ああ、君か。おはよう。モリー、すまないがアーサーを呼んでくれ。緊急なんだ」

 

「わかったわ」

 

モリーさんが階段の方に走っていく。数十秒後、アーサーさんが階段を勢いよく駆け下りてきて暖炉の前に陣取った。モリーさんは羊皮紙とインク壺を持ち引き出しをかき回し始めた。羽根ペンを探しているようだ。

横から聞いていたけど、マッド-アイ・ムーディがやらかしたらしい。マッド-アイ……ああ、変人か。つい最近まで──と言ってもお父さんが一度捕まるぐらいの頃までだけど──凄腕の『闇祓い(オーラー)』として働いていたんだっけ。

少ししてアーサーさんは上に戻り、エイモスさんはモリーさんから差し出されたバター付きトーストを食べながら消えた。五分も経たないうちにアーサーさんはもう一度下にきて、〈姿くらまし〉の準備を始めた。

 

「行ってらっしゃい、アーサー」

 

「子供達を頼んだよ、母さん」

 

アーサーさんはモリーさんとキスをして、マッド-アイが騒動を起こした現場へと向かった。

 

「ところで、ハリーは階段で何してるの?」

 

「話についていけなくて……マッド-アイって誰?」

 

「凄腕の闇祓い。もう引退してるけどね。有能だけど変人で有名」

 

「……ダンブルドア、もしくはブライトみたいな感じ?」

 

「そんな感じ」

 

天才肌だけど変人なんだよね。

 

 

 

ロンドンに行くのにはマグルのタクシーを使った。魔法省から車を借りようとしてたらしいけど無理だったそうだ。まあ、クルックシャンクスが暴れたりとか騒動があったけど。

九と四分の三番線のホームに到着し、空いたコンパートメントを手早く見つけて荷物を入れる。

一度降りてモリーさん、ビル、チャーリーに別れの挨拶をしたけど、何やら意味深なことをチャーリーが言ってきた。

 

「僕、みんなが考えているより早く、また会えるかもしれないよ。詳細は話せないけどね」

 

……凄く気になる。そんなわけで心を読むと、『三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)』とやらがホグワーツで開催されるらしい。それって確か、二、三百前に中止されたっていう親善試合じゃないっけ。確か、ヌンドゥだかキメラだかを持ち込んでホグワーツ、ボーバトン、ダームストラングの三校全ての魔法学校関係者におびただしい数の死者を出したやつ。そんなものにハリーを関わらせたくないんだけど……あ、未成年者(十七歳未満)は参加資格ないのね。よかっ……たって言えない。だって、競技によっては観客にも被害出すじゃん。まぁ、ダンブルドアがそんな危険を犯すとは思えないけどね。

ふむ、チャーリーが関わるとなると……ドラゴンかな?安全なら良いんだけど──

そこまで考えた時に、汽笛が鳴った。私は思考を中断してコンパートメントに戻り、席に座る。

 

「クリスマスにもみんなをお招きしたいけど、みんなホグワーツに残りたいって言うでしょうね」

 

「ママ!何があるのさ!」

 

「今晩わかるはずよ。それに、とっても面白くなるわ──きっと、ね」

 

みんなが聞き返そうとした時、汽車が走り始めて、みんなが大声を出そうとしたけど、モリーさんたちはにこやかに手を振って、すぐに〈姿くらまし〉してしまった。

 

「ところでさ、ドラコ。何も聞こうとしなかったけど知ってるのかな?」

 

「そう言うリーナこそ。誰から聞いたんだい?──ああ、読み取ったのか」

 

「正解。どうせならルシウスさんが君をどの学校に入れたかったのかも言うけど」

 

「よしてくれ。僕はこっちの学校に来て正解だったんだ。ダームストラングなんて、今じゃ考えられないさ。『闇の魔術』を実戦で使えるレベルで習得できるのは良いと思うけど」

 

「今度アズカバン(うち)に来なよ。スパルタ教育してくれるはずだから」

 

「よしてくれ、本当に」

 

「リーナとドラコは何があるか知ってるの?」

 

ドラコと話していると、ハリーが質問をして来た。うーん、知ってはいるけど、教えないでいた方が面白そうだ。

 

「知ってるけど教えない」

 

「教えてよ!」

 

「教えない方が面白そうだと判断したからね」

 

「ケチ!」

 

ハリーからの怒りの言葉を軽く受け流す。まだ本気で怒ってるわけじゃないみたいだしね。

外を見ると、雨はさらに強く降って来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ようやく、俺様は復活できるのか」

 

「は、はい!もちろんでございます!先日、あの者が成り替わりに成功し潜り込めたと──」

 

「ならば良い。俺様はただ待つのみだ。──しかし、『死』よ。貴様はいつまでその肉塊をバラバラにしている」

 

「だって、まだ『生きてる』しね。僕が殺したようなものだし、ちゃんと愛した責任を持ってドロドロになるまで殺さなきゃ。──ところでヴォルデモート卿、君は死をどう定義してる?」

 

「死の定義だと?『死』そのものとも言えるお前が聞くか。──簡単なことだ。この魂の消滅、それが俺様にとっての『死』だろうな。そして、逆に聞かせてもらおう。貴様が考える『死』とはなんだ」

 

「僕が考える死か──ヒトの死は生命活動が終われば死なんだろうね。モノの死は動かなくなればなんだろうし。でも、僕にとっての死は違うんだよね。この『眼』で線と点が確認できなければ、対象は死んでいるんだろう。宗教論的に言えば、その誰かを覚えてる人がいなくなれば死ぬとか色々あるけど、僕は、僕の『眼』で確認できないものを『死んでいる』と定義するんだろう」

 

「──貴様の『眼』には『死』が映るのだったな。確か、その眼の名は──」

 

「──『直死の魔眼』さ、ヴォルデモート卿。生きているのならば、例えそれが世界であろうと()せるのが僕なのさ」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新入生たちの組分け

そろそろ到着するだろうと思い、男の子たちを一度コンパートメントから追い出して制服に着替える。交代して男の子たちが着替え終わったあたりでホグワーツ特急は速度を落とし始めた。

雨はさらに強く降り、みんなは「早く温かいものが食べたい」と思い始めていた。そういえば、一年生ってハグリッドの引率でボートに乗って湖を渡るんだっけ。お気の毒に。一人ぐらいは湖に落ちるんじゃないかな。

駅の外で待っていたセストラルの馬車にハリーたちと乗り込み、城へ向かう。あ、塔に雷が落ちた。……あの塔って占い学の塔じゃ……見なかったことにしよう。

馬車が正面玄関に続く石段の前で止まり、私たちは馬車を降りて急いで階段を上った。ピーブズが赤い風船をいくつか持ってふわふわ浮かんでいる。あ、ロンに風船が当てられた。破裂した風船の中からは水が飛び出る。なるほど、水風船か。

大広間へ入ると、勇者見事な飾り付けがされていた。それこそ、ハロウィンやクリスマスよりも盛大に。……一昨年、一昨々年よりも豪華な気がするのはなんでだろう。

教職員席は三つ空いていた。一つはハグリッド、もう一つはピーブズが汚した玄関ホールの清掃を指揮しているマクゴナガル先生。もう一つは、今年の防衛術の先生かな?

空を映す天井に稲妻が走った時、大広間の扉が開いた。一年生たちだ。ただし、泳いで来たみたいにびしょ濡れで、早く暖まらなければ風邪をひいてしまうんじゃないかって思う。一番小さい子──コリン・クリービーに似てる──はハグリッドがいつも着てるモールスキンのオーバーコートを羽織っていたけど。湖に落ちたのかな?

マクゴナガル先生が丸椅子を置き、その上に継ぎはぎだらけの三角帽子──組分け帽子を置く。みんなが帽子に注目した途端、帽子は歌い始めた。

 

「今を去ること一千年、そのまた昔その昔

私は縫われたばっかりで、糸も新し、真新し

そのころ生きた四天王

今なおその名を轟かす

 

荒野から来たグリフィンドール

勇猛果敢なグリフィンドール

 

谷川から来たレイブンクロー

賢明公正レイブンクロー

 

谷間から来たハッフルパフ

温厚柔和なハッフルパフ

 

湿原から来たスリザリン

俊敏狡猾スリザリン

 

ともに語らう夢、希望

ともに計らう大事業

魔法使いの卵をば、教え育てん学び舎で

かくしてできたホグワーツ

 

四天王のそれぞれが

四つの寮を創立し

各自異なる徳目を

各自の寮で教え込む

 

グリフィンドールは勇気をば

何よりもよき得とせり

 

レイブンクローは賢きを

誰よりも高く評価せり

 

ハッフルパフは勤勉を

資格あるものとして選びとる

 

力に飢えしスリザリン

野望を何より好みけり

 

四天王の生きしとき

自ら選んだ寮生を

四天王の亡きその後は

いかに選ばんその資質?

 

グリフィンドールその人が

素早く脱いだその帽子

四天王たちそれぞれが

帽子に知能を吹き込んだ

かわりに帽子が選ぶよう!

 

かぶってごらん、すっぽりと!

私が間違えたことはない

私が見よう。みなの頭

そして教えん、寮の名を!」

 

みんなが帽子に拍手する。なんと言うか、スリザリンだけ酷いこと言われてるような気がする。

そして、組分けが始まった。




なお、組分けは全カットされます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ハーマイオニーの癇癪

最後の生徒の組分けが終わり、マクゴナガル先生が帽子と丸椅子を片付ける。ロンはすでにナイフとフォークを持ち、金の皿をじーっと見つめていた。もちろん、私もだ。

ダンブルドアが立ち上がる。さて、何を言うのか──

 

「さて、組分けも無事に終わったし、わしから今、君たちに言う言葉は二言だけじゃ。──思いっきり、かっ込め!」

 

「「さすがダンブルドア!!」」

 

私とロンがダンブルドアに応えて、皿に現れたばかりの食べ物をどんどん小皿に取り分けていく。ハリーやハーマイオニー、ネビルもだ。あ、このマッシュポテト美味しそう。

 

「今晩はご馳走が出ただけでも運が良かった」

 

真上から声がした。見上げると、ほとんど首無しニックが漂っていた。

 

「先ほど、厨房でピーブズが暴れましてね。祝宴に参加したいと言っていたのですが、『ゴースト評議会』──ホグワーツのピーブズを除くゴーストによる評議会です──で議論したのですよ。『太った修道士』はチャンスを与えようとしましたが、『血みどろ男爵』は参加させるべきではないとテコでも動かない。私は男爵に賛成ですがね。

結果、ピーブズは厨房でいつもの通りに。何もかもひっくり返し、鍋や釜を投げては床をスープの海にして。屋敷しもべ妖精たちがどれほど怖がったと──」

 

ガチャン、と何かが落ちる音がした。ハーマイオニーがかぼちゃジュースの入ったゴブレットをひっくり返したようだ。

 

「ニック、屋敷しもべ妖精が、ホグワーツにもいるって言うの?」

 

「もちろん。イギリス中のどの屋敷よりも多く、そして洗練されてるでしょう。百人以上はいるかと」

 

「私、一人も見たことないわ!」

 

「彼らは日中は滅多に厨房を離れません。夜になると出てきて掃除をしたり、火の始末をしたり。存在を気付かれないのはいい屋敷しもべ妖精の証拠です」

 

「……お給料は、お給料はもらってるのよね?お休みももらってるわよね?それに、病欠とか、年金とかも!」

 

ハーマイオニーの言葉を聞いて、ニックが高笑いする。

 

「病欠に年金ですって?屋敷しもべは病欠や年金、給料も何も、仕事で得られる報酬を望んでないのです!彼らの栄誉とは魔法使いに仕え、魔法使いを支えること。彼らにとっては報酬は侮辱に等しい。最高の報酬は、主人からのお褒めの言葉なのです」

 

ハーマイオニーはそれを聞くと、すぐに食器をテーブルに置き、皿を遠くに押しやった。絶食するのかな?

 

「ハーマイオニー、絶食したって意味ないよ。ニックの言葉の方が正しいんだ」

 

「奴隷労働でしょう。休みはない、病気でも休めない、お給料ももらえない!奴隷労働以外の何だって言うのかしら?」

 

「……今度、厨房に聞きに言ってみれば?自分たちの境遇をどう思ってるのかって」

 

私はそれだけ言うと、再び食べる作業に戻った。時々、ハリーと食べさせあいしたりしたけど。

中身がほとんど無くなった皿が一度綺麗になり、デザートが出てくる。ロンが糖蜜パイの匂いをハーマイオニーに嗅がせてたけど、ハーマイオニーの絶食の決心は強いようだ。あ、ロンをひと睨みで黙らせた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

開催宣言

デザートも皿から消え去り、食器類が元のようにピカピカになると、もう一度ダンブルドアが立ち上がり広間が静かになった。

 

「さて、みんなよく食べ、よく飲んだことじゃろう。いくつかお知らせがある。もう一度、しっかりと耳を傾けてくだされ。

管理人のフィルチさんから、城内持ち込み禁止の物の追加のお知らせじゃ。『叫びヨーヨー』、『噛みつきフリスビー』、『殴り続けのブーメラン』。禁止品は全部で四百三十七項目あるが、知りたい者はフィルチさんの事務所に行くがよい。

いつもの通り、校庭内にある森には許可証を持つ者以外は立ち入り禁止。ホグズミードも三年生までは禁止じゃ。

次のお知らせなんじゃが……一部の生徒にとっては、大きすぎるショックじゃろう。しかし、わしはこの辛さを乗り越えてこれを伝えなければならない。すまぬのう、今年のクィディッチ対抗杯は取りやめなんじゃ」

 

……え。うそ、なんで?……ああ、三大魔法学校対抗試合があるからか。今年の最上級生はクィディッチできないのね。代わりに対抗試合に出られるかもだけれど。

ハリーやフレッジョ、ロンは口をパクパクさせて、ウッドの次にグリフィンドールチームのキャプテンになったアンジェリーナは抗議しようと何やらブツブツ言い始めていた。

 

「これは、十月から今学年いっぱいまでの期間行われるとあるイベントのためじゃ。先生方もほとんどの時間とエネルギーをこのイベントに費やすことになる。しかしじゃ、わしは、こと行事がみなにとって大いに楽しめるものになると確信しておる。なので、ここに大いなる喜びをもって発表しよう。今年、ホグワーツで──」

 

ダンブルドアがそこまで言った時、全ての音をかき消すかのような雷鳴とともに大広間の扉が開き、誰かが入ってきた。長いステッキを持ち、旅行マントとフードを身につけている。

フードを脱いだ男はみんなに注目される中、教員席に向かって歩き始めた。そこで気がついたけど、片方の足が義足のようだ。踏み出すと硬いもの同士がぶつかる音がする。

雷で照らし出された男の顔は、恐ろしいものだった。そして、ギョロギョロと蠢く左目の義眼。もしかして、彼は──

 

「では、先に紹介するとしよう。今年から闇の魔術に対する防衛術を担当してくださる、アラスター・ムーディ先生じゃ。マッド-アイ・ムーディと言えば分かりやすいかのう」

 

──やっぱり。アラスター・マッド-アイ・ムーディ。最高クラスの闇祓いだ。用心深いのか、かぼちゃジュースには手をつけないで自前の酒瓶で飲み物を飲んでる。

 

「えー、オホン。みな、落ち着いたかのう。先ほど言いかけたことの続きを言わせてもらいますぞ。

これから数ヶ月に渡り、我が校は、まことに心踊るイベントを主催することになっておる。この催しはここ百年以上行われず、厳正なる審議を経て、ようやく開催が決定した。この開催を発表するのは、わしとしても大いに嬉しい出来事じゃ。ホグワーツ魔法魔術学校校長、アルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドアは、今年、ホグワーツで、三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)を行うことを発表しよう」

 

「ご冗談でしょう、校長!」

 

「耄碌しましたか、校長!」

 

双子がダンブルドアに声をかける。張り詰めた空気が一気に霧散した。

 

「残念ながら、冗談ではないしわしはまだ耄碌しとらんよ、ミスター・ウィーズリーズ。

三大魔法学校対抗試合についての歴史は、まあ、各自で調べてみるがよい。図書室を探し回るのもいい経験になるじゃろう。マダム・ピンスに怒られないようにならのう。

さて、百年以上前におびただしい量の死者を出したことで中止となったこの競技じゃが、今回、様々な規則や安全策を設けることで選手に死の危険が及ばぬようにし、ようやく再開されることとなった。

十月にボーバトンとダームストラングの校長が、代表選手の最終候補生を連れて来校する。ハロウィンの日に、三校から一人ずつ選手が選ばれるのじゃ。公平で正大な審査員によってのう。そして、優勝杯、学校の栄誉、そして選手個人に与えられる賞金一千ガリオンを賭けて戦うこととなる」

 

「俺は立候補するぞ!お前は座って見てろよ、フレッド!」

 

「お前こそ!選手になるのは僕に決まってるさ、ジョージ!」

 

フレッドとジョージは立候補すると言っている。他のテーブルでも、立候補すると言っている人が大勢いる。ハリーはどうするんだろう。あ、出られないんだった。

 

「話は最後まで聞いて欲しいんじゃがのう。諸君らがホグワーツに優勝杯をもたらそうという熱意に満ちていることは非常によく伝わったが、残念ながら、代表候補として名乗りを上げられるのは十七歳以上のみじゃ。これは最終決定で変更されることはない。年少の者はくれぐれも時間を無駄にしないように。わし自ら、不正なきように魔法をかけるのじゃから。

一ヶ月後にはボーバトンとダームストラングの生徒たちが到着し、今年度のほぼ全てをこの学校で諸君らとともに過ごすことになる。みな、礼儀と厚情を尽くしてくれると信じておるし、たとえ誰がホグワーツの代表選手として選ばれようと、心から応援すると信じておる。

では、早速で悪いのじゃが、すぐに就寝するがよい。明日の授業に寝坊しても知りませんぞ?」

 

ダンブルドアが席に座ると、みんなが入れ替わりで立ち上がり、玄関ホールへと向かい始めた。フレッジョは是が非でもエントリーしてやると言っているけど、多分無理だろう。あの狸じじ……ダンブルドアが信用する審査員なんだ。老け薬でも騙しきれないだろうし、もしかしたら一度騙しきれたと思わせた後に反撃するぐらいのことはするんじゃないかな?騙しきるのなら強力な錯乱呪文か、それこそ服従の呪文を使うしかないだろう。そして、双子にそこまでの能力はないはずだ。

 

 

広間から出るときに見たムーディは不気味な笑いを浮かべてるような気がした。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

スクリュート

翌朝、朝食の席で時間割が配られた。午後には占い学が二時限続きである。トレローニー先生がイラッとすることを言わなければいいんだけど。

ハーマイオニーはハンガーストライキを辞めて、ちゃんとご飯を食べるようになった。しもべ妖精の権利を主張するのにはもっといい方法があると思ったそうだ。

 

 

 

最初の授業は薬草学だ。指定された温室の中に入ると、スプラウト先生が醜い植物を用意して待っていた。真っ黒な太いナメクジが直立しているようで、一本一本に大きな腫れ物がブツブツとついている。その中には何かの液体が。

 

「ブボチューバー、腫れ草です。中にある膿をしぼって集めなくてはなりません。とても貴重なものですので、無駄にしないよう。一班に一つ瓶を与えますから、この中に集めるように。ドラゴン革の手袋を必ず着用してください。原液のままだと、皮膚に変な害を与えることがありますから」

 

ブボチューバーの膿は魔法薬学とかの材料になったはずだ。黄緑色で、強烈な石油臭がする。

授業が終わったときには合計で数リットルも、膿は溜まっていた。

 

 

 

次はハグリッドの魔法生物飼育学だ。今年もスリザリンと合同で授業が行われる。

小屋まで行くと、ハグリッドの足元に木箱が数個おいてあった。中からはガラガラという音と、時折小さな爆発音が聞こえる。

 

「おう、来たか。今年はこいつら──『尻尾爆発スクリュート』の世話をしてもらう」

 

ラベンダーが好奇心で木箱の中を覗き、悲鳴をあげて飛び退いた。

スクリュートの姿は確かに、女の子が見ると悲鳴をあげたくなるだろう。殻をむかれた奇形のロブスターのようで、勝手気ままな場所に肢が突き出し、頭らしい頭がどこにあるのかわからない。腐った魚のような臭いがして、尻尾と思われる場所から時々火花が飛んでその度に十センチほど前進してる。

 

「今孵ったばっかしだ」

 

得意げに言うことじゃないよ、ハグリッド。

スクリュートの全長はだいたい十五、六センチほどだ。多分もっと大きくなるんだろう。……これを少しでも可愛いと思えてしまう私は異常なのかな。

 

「やあハグリッド、今年はどんな生き物を──うわ何これ」

 

ドラコの声がする。見ると、スリザリン生が到着して、そして引いていた。

 

「……この怪生物は一体なんなんだい?もしかしてハグリッドはこれを飼育しろって言ってるんじゃないだろうな」

 

「こいつらは『尻尾爆発スクリュート』。そしてそのもしかしてが正解」

 

数匹持ち上げて見ると、針を持つ個体とお腹に吸盤のような物がある個体がいる。これが雄と雌の差かな?

今日の授業はスクリュートに餌を与えて、どれを食べるのか試してみるということだった。

……どう考えても、スクリュートって新種の生物だよね。違反なんだけど……どうするんだろう。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

占い

「スクリュートをどうする気なんだろう、ハグリッド」

 

昼食の席で、ロンがそう漏らした。スクリュートは多分、とても危険だろう。数十秒に一回は尻尾を爆発させ、食欲は旺盛で攻撃的。危険でない要素が見つからない。どうするかなぁ……。

ハーマイオニーに目をやると、猛スピードでご飯を食べてた。ハンガーストライキの次は暴食でストライキでも起こそうとしてるの?

 

「ごめんなさい。すぐに図書館に行きたいの。それじゃあ、夕食の時にね!」

 

ハーマイオニーは芽キャベツを頬張ると、サッと立ち上がって広間を出て行った。

 

「……ハーマイオニー、何をする気なんだろう?」

 

「しもべ妖精はそっとしておくのが一番だと思うけどね」

 

「ハーマイオニーはそれを言っても聞かないと思うよ」

 

三人でため息を吐く。ろくでもないことになりそうだ。

 

 

 

午後の始業のベルが鳴ったので、北塔の一番上の教室に向かう。もう梯子の前には誰もいないし、私たちが一番最後なんだろう。

パンツを見せないようにロンとハリーを先に上らせてから梯子を上る。途端に、甘ったるい匂いが鼻を突いた。

予想通り、他のみんなはすでに座っていて、残りのテーブルは一つだけだった。みんなが座るテーブルの間を縫って歩き、ハリー、ロンと一緒に座る。さて、トレローニー先生はどこだろう。

 

「こんにちは」

 

驚き、立ち上がりかける。後ろを向くと、甲虫みたいな先生──トレローニー先生が立っていた。

 

「坊や、何か心配しているわね。あたくしの心眼は、あなたの平気を装った顔の奥にある、悩める魂を見通していますのよ。お気の毒に、あなたの悩み事は根拠のないものではないのです。あたくしには、あなたの行く手に困難が見えますわ。ああ……本当に大変な……あなたの恐れていることは、かわいそうに、必ず起こるでしょう……しかも、おそらく、あなたの思っているよりも早く……」

 

まずい。今すぐこの先生を殴りたい。本当に力のある予言者は滅多に占いをしないし、それに自信たっぷりに言ったりはしない。未来は不確定で、どんな要素で未来が変わるのかがわからないから。私がここで立ち上がるだけでも未来は大きく変わるし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。……ん?私は今何を考えていたんだろう。まあ、それは傍に置いて。

なんで過去に行ける逆転時計(タイムターナー)があるのに、未来へ行ける魔法具がないのか。それは未来を確定させてはいけないからだ。それと同時に、過去の改変もしてはいけない。全てが破綻するから。……ああ、思考がごちゃごちゃになって来た。一旦落ち着こう。寮に戻ったらハリーに抱きつこう。抱きしめて貰おう。

 

「坊や、あなたは間違いなく土星(サターン)の不吉な支配の下で生まれたのです!あなたの黒い髪も、貧弱な体つきも、幼くして悲劇的な喪失も……ええ、あなた、真冬に生まれたでしょう?」

 

「いいえ。僕は七月生まれです」

 

……やっぱりトレローニー先生は殴りたい。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

嵐の前の静けさ?

私の作品のうち、この作品だけを読んでる方はお久しぶり。更新が遅れて申し訳有りませんなぁ。


その後も、トレローニー先生を殴りたい衝動を抑えて授業を受け続けた。ほとんどデタラメみたいだしね、先生の占い。

 

「これから一ヶ月間の惑星の動きが、皆さんにどういう影響を与えるか、ご自分の星座表に照らして、詳しく分析しなさい。来週の月曜日に提出です。言い訳は聞きません!」

 

いきなり、トレローニー先生がいつもの霞みがかった口調をかなぐり捨てて、マクゴナガル先生のようなきっぱりとした言い方で、多めの宿題を出した。

 

「ハリー、何があったの?」

 

「ロンがラベンダー・ブラウンにセクハラ発言をして、それを先生が聞いちゃったみたい」

 

ロン、自重しなよ……。

 

 

 

夕食を食べに大広間へ向かってる最中、ロンはトレローニー先生への悪態をついていた。

 

「あいつめ、週末いっぱいかかるぞ……」

 

「ロン、あなたの自業自得よ。あなたはまず巻き込まれたハリーとリーナに謝るべきだと思うわ」

 

ハーマイオニーが明るい声で言う。数占いでは宿題が出なかったそうだ。全く、羨ましい。数占いに変更する気は無いけどね。

玄関ホールまで行くと、片手に日刊予言者新聞を持ったドラコが近付いて来た。

 

「ロン、またこいつだ。リータ・スキーターが書いた記事だ。どうやらスキーターは人の名前をちゃんと覚えることすら出来ないようだな」

 

ドラコはロンに新聞を投げ渡す。覗き込んで見ると、魔法省を貶す記事が書かれていた。アーサーさんの名前はアーノルドと書かれている。

 

「そろそろ訴えられてもおかしくないと思うんだがね。どうしてこれまでこんな記事を書いて裁判沙汰にならなかったのかが不思議だよ」

 

「魔法界にはテレビやラジオが無いし、情報を得る手段が日刊予言者新聞だけだからね。どうしても、世論は新聞に左右されるんだよ」

 

聞いたところによると、リータは中々強引な取材を行うそうだけど、取材対象から訴えられることが無かったってことは、何かしらの弱みでも握ったのかな?関わりたくないな。

大広間でそれぞれのテーブルに着き、料理を食べ始める。近くの床の上をSCP-131(アイポッド)の雷と電が這っているけど、久しぶりに彼女たちを見た気がする。今までどこに居たんだろう。少し泡がついてるけど……。

ハーマイオニーが席を立つ。まだ食事を初めて十分も経っていない。

 

「また図書室?」

 

「ええ。やることがたくさんあるの」

 

ハーマイオニーは大広間をスタコラと出ていく。変なことをしないように祈るしかないかな。

周りの声を聞く限り、ムーディ先生の評判は良いようだ。少なくとも、一昨年や一昨々年よりかはマシらしい。クィレルはともかく、ロックハートはねぇ……。

 

「ハリー、最初のムーディの授業は木曜だ。それまで待ちきれないよ!」

 

「残念だけどロン、僕には専属の防衛術の先生がいるからね。リーナはプロに教わったんだし。貸す気はダンブルドアの髭の一本ほどもないけど」

 

「ハリー、僕に喧嘩を売ってるのかい?これ以上惚気話を聴かせるなら一シックルでその喧嘩買おうかい?」

 

ハリーとロンが口喧嘩(?)を終えるのを待ってから寮に戻る。ハーマイオニーはまだ戻ってこないようだ。ハリーに抱きついた後、椅子に座ったハリーの膝の上に座らされて、お腹に手を回されている状態なんだけど、どうしよう。周りの目線が生暖かいのとリア充爆発しろって思いが聞こえてくる。

 

「ただい……リーナ、ハリー。惚気もほどほどにね?グリフィンドールのみんながブラックコーヒーを常飲するようになっちゃうから」

 

図書館から帰って来たハーマイオニーにそう言われる。失礼な。これのどこが惚気なんだい?……惚気だった。盛大な惚気だった。過剰なスキンシップだったかも。

顔を紅く染めた私は慌てて自室に走り帰った。うう……夏休み中には良く座ってたから慣れてたんだけどね。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ムーディの授業

まず始めに

更新遅れて申し訳ありませんでした!

更新が遅れた理由としては、
1.勉強
2.続きがなかなか思い浮かばなかった
3.新作書いちゃった
などがあげられます。
新作「ホグワーツでカンテレをかき鳴らしながら」も是非読んでみてください。


グリフィンドール生からの生暖かい視線から二日後、木曜日。ネビルが大鍋を溶かしかけたこと以外は特に何も無かった。

昼食を終えたグリフィンドールの四年生は早々と教室の前に集まって、列を作っていた。まぁ、気持ちはわかる。一年目がおどおどとしたクィレル、二年目がロックハート、三年目でようやくまともな先生であるルーピンで、防衛術の先生にはろくな人があまり居なかった。ムーディ先生はどんな授業をするのやら。

始業のベルギリギリで到着したハーマイオニーとともに前の方の席に座る。

少しして、硬いもの同士がぶつかる音が廊下から聞こえてくる。ムーディ先生の足音だろう。そして、彼は教室に入ってきた。

 

「そんな物、しまってしまえ」

 

ムーディ先生は近くの生徒の教科書を指差して言った。

 

「教科書だ。そんな物は必要ない」

 

ロンが顔を輝かせて、みんなは教科書をバッグにしまう。なるほど……ルーピンと近いタイプの授業かな?

ムーディ先生が出席簿を読み上げ、呼ばれた生徒を義眼がじっと見つめる。ネビルとハリー、私に対しては見つめられてた時間が少し長かった気がする。

 

「よし、それでは授業を始める。このクラスについては、ルーピン先生から手紙を貰っている。闇の怪物と対決するための基本をかなりまんべんなく学んだようだな──真似妖怪(ボガート)赤帽鬼(レッドキャップ)おいでおいで妖怪(ヒンキーパンク)水魔(グリンデロー)、河童、人狼など。そうだな?」

 

みんなが同意する。特にハーマイオニーとロンが。

 

「しかし、わしから見ればお前たちは非常に遅れている──呪いの扱い方についてな。わしが教えることは、魔法使い同士が互いにどこまで呪い合えるものなのか、だ。その最低線まで引き上げる。わしの持ち時間は一年だ。その間に、どうすれば闇の──」

 

「え?ずっと居るんじゃないの?」

 

ロンが口走る。そうか、今年も一年しか防衛術の先生は居ないのか。

ムーディ先生の義眼がロンを見据える。そして、私たちが知る限りでは初めて笑った。

 

「お前はアーサー・ウィーズリーの息子だな?お前の父親のおかげで数日前、窮地を脱した……ああ、一年だけだ。その後は静かな隠遁生活に戻るさ。今ここに居るのはダンブルドアのためだ」

 

ムーディ先生が両手をパンと叩き、注目を集めた。

 

「では──すぐに取り掛かろう。呪いについての話だ。呪いには様々な形があり、マグルにも知られているもので言うなら、ブゥードゥーやヴィジャ盤、日本の丑の刻まいりやら藁人形、犬神などがそれにあたる。ポルターガイストも呪いの一種かもしれん。不安定な感情の発露と言う者も居るがな。最も、今挙げたのは儀式的な呪いであって、魔法使いが通常使う呪いとは全く違う。

魔法省によれば、わしが教えるべきは呪いへの反対呪文であり、そこまでで終わりだ。違法とされる闇の呪文がどんなものなのかは、六年生になるまでは見せてはいかんことになっている。しかし、ダンブルドアはお前たちのことを高く評価している。そもそも、六年生になるまで見せてはいけないと言うのが甘すぎる。敵は早く知る方が良いし、親獅子は小獅子を谷に突き落として鍛えると言う。面と向かって礼儀正しく闇の呪文をかける者などおるまい。常在戦場、常に緊張し、警戒しなければならんのだ。いいか、ミス・ブラウン、わしが話している時は、そんな物はしまっておかねばならんのだ。よく出来ているとは思うがな」

 

ラベンダーは机の下で、パーバティに天宮図(ホロスコープ)を見せていたようだ。あの義眼はどうなっているんだろう。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

服従の呪文と磔の呪文

青薔薇の魔女さんによるリーナ・ディメントの絵(三種類)が出来上がり、あらすじにUPさせていただきました。是非ご覧になってください。


「闇の魔術には三つ、最も厳しく罰せられる呪文がある。知っている者はいるか?」

 

何人かが手を挙げる。もちろん、その中には私も入っている。その三つの呪文なら知っているし、使えるからね。

 

「では、ミスター・ウィーズリー。答えてみろ」

 

「えーと、パパが一つ話してくれたんですけど……〈服従の呪文〉とか何とか?」

 

「ああ、その通りだ。お前の父親なら、確かにそいつを知っているだろう。一時期、魔法省を手こずらせたからな」

 

ムーディ先生は机の引き出しを開けて、三匹の大蜘蛛が入ったガラス瓶を取り出した。その中から一匹を掴み出したムーディ先生は、その蜘蛛を手のひらに乗せて、杖を向けた。

 

「〈服従せよ(インペリオ)〉!」

 

一瞬だけピクリと身震いした蜘蛛の意識は、幸福感に包まれた。そして、自分の意思とは関係なく踊り狂い始めた。

みんなはそれを見て笑った──ムーディ先生と、私以外は。

 

「この呪文は完全な支配だ。わしはこいつを、思いのままにできる。窓から飛び降りさせることも、水に溺れさせることも、誰かの喉に飛び込ませることも……この呪文で動かされている人間を見分けるのは難しい。普通の闇祓いには一仕事だった……ディメント家を除いてな。

三つの呪文のうち、唯一〈服従の呪文〉への対抗策のようなものはある。これからそのやり方を教えていこう。しかし、これには個人の持つ強い意志の力が必要だ。誰にもできるわけではない。できれば、呪文をかけられぬようにするのがよい。油断大敵!」

 

彼は蜘蛛をガラス瓶の中に飛び込ませたところで呪文を止め、再び、同じ質問を聞いてきた。

 

「他の呪文を知っている者は?ミス・ディメントは知っているだろうから、手を挙げても指名せんぞ」

 

残念、釘を刺されてしまった。

周りを見渡すと、先ほどと同じ顔ぶれが手を挙げていた──ただし、ロンの手が下がってネビルの手が代わりに挙がっていたけど。

 

「何かね?」

 

ムーディ先生の目がネビルを見据える。物怖じしながらも、ネビルはその呪文の名前をきちんと答えた──自らにとって、嫌悪の対象であろうその呪文の名前を。

 

「一つだけ──〈磔の呪文〉」

 

ムーディ先生が目を見開き、出席簿に視線を走らせた。

 

「お前は……そうか、ロングボトムか」

 

マッド-アイ・ムーディなら確かに知っているだろう。ロングボトム夫妻にその呪文をかけた四人を捕まえたのは彼なのだから。

 

「〈磔の呪文〉。それがどんなものかわかるように、少しばかり蜘蛛を大きくする必要がある。〈肥大せよ(エンゴージオ)〉」

 

蜘蛛が膨れ上がり、引き気味だったロンはとうとう恥も外聞もかなぐり捨て、椅子を引いてムーディ先生から遠ざかった。

 

「少々、気分が悪くなるかもしれんから気をつけろ……〈苦しめ(クルーシオ)〉!」

 

途端に、蜘蛛は苦しみ始め、ネビルの感情は恐怖に染まった。杖を向けられている間、どんどん蜘蛛にかかる苦痛は大きくなっていく。

 

「もうやめて!」

 

ハーマイオニーが金切声を上げる。ネビルが心配になったんだろう。

呪文の支配から解かれた蜘蛛は、未だに痙攣を続けている。縮小呪文を蜘蛛にかけて、瓶に戻したムーディ先生は再び話し出す。

 

「苦痛。この呪文は死の方がマシだと思えるほどの苦痛を与える。何時間もかけられ続けていれば、いずれは精神が壊れてしまうかもしれん。そして何よりも厄介なのが、必要なのが杖と気持ちだけだということだ」

 

精神が壊れてしまうと言った時の彼の目は、ネビルに向けられていた。つまり、その話のモデルはロングボトム夫妻だということだ。ムーディがそんなことを話すかな?そもそも、ムーディはこんな授業を……しそうだね、うん。

でも、九月始めにムーディの家で騒動が起きたんだし、少し気になる……よし、覗いてみるか。

 

 

 

これは……アズカバンでの記憶?それに、目の前の吸魂鬼は私?横の檻にいるのは……あの時、私が喰べたレストレンジ二人とベラトリックス・レストレンジかな?だとすると……この男は、バーテミウス・クラウチJr.なのかな?

もう少し思考を読み進めると、「ハリーをポートキーでホグワーツから連れ出して例のあの人を復活させる」という考えが見つかった。その詳細な計画も。

この授業の間は見逃すとしても……終わり次第、捕まえにかかるとしよう。




Jr.身バレ。アズカバンでの記憶云々のところはPrologueⅦに書いてあります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

クラウチJr.、バレる

「さあ、最後の一つを答えられる者はいるか?」

 

ムーディ──いや、クラウチJr.が周りを見渡す。三度目の挙手をしたのはハーマイオニーと私だけだった。他の生徒はみんな、「次は何が起こるのだろう」と期待するような、不安そうな顔をしている。

 

「よろしい。お前は──ミス・グレンジャーか。ミス・ディメントも同じ答えだろう?同時に言ってみたまえ」

 

私とハーマイオニーは目を合わせると、同時に、口を開いた。

 

「「〈アバタ・ケダブラ〉」」

 

「……そうだ。その通りだ。魔法界で最も悲惨な呪文だ。最後にして最悪の呪文──死の呪いだ」

 

最後の蜘蛛は必死に逃げ回り、恐怖におののいていた。しかし、クラウチJr.はその蜘蛛を掴み取ると、机の上に置き杖を向けた。

 

「三秒間だけ待とう。見たくない者は見なくてもよい──この呪文は恐ろしい。しかし、この呪文を見て、それを乗り越えなければ、その先に待つのは──わかっているな?」

 

机の端に逃げた蜘蛛を睨みながら彼は三秒数える。目を閉じたりそらしたりした者は誰もいなかった。

 

「よろしい。見ていたまえ。〈アバタ・ケダブラ〉!」

 

杖先から緑の閃光が走り、蜘蛛に襲いかかる。そして、光線が当たった瞬間、蜘蛛は仰向けでひっくり返った。なんの外傷も、異変も蜘蛛の身体には起こっていない──ただ一つ、死んでいるということを除けば。

 

「ああ、気持ちのよいものではない。しかも、反対呪文は存在していない。石像や壁などで防ぐしか防御法はない。盾の呪文も効かないからな。しかしながら、たった一人だけこの呪文を受けて生き残った者がいる──わしの目の前にな」

 

ムーディが両目でハリーを見つめる。けど、ハリーの心の中は先ほどのことでいっぱいだった。

 

「この呪いには強力な魔力が必要になる。お前たち全員が一斉にわしに杖を向けて〈アバタ・ケダブラ〉を唱えたところで、鼻血さえ出せるものか──ディメントを除いてな。しかし、そんなことはどうでもよい。わしは、最悪の事態がどういうものか見せに来たのだから。

今見せた三つの呪文──『許されざる呪文』は、同類であるヒトに対して、どれか一つでも使用した時点でアズカバンで終身刑を受けることに値する。お前たちは、そういうものに立ち向かうことになるのだ。備えが、武装が必要だ。しかし何よりも、常に、絶えず、警戒することの訓練が必要だろう……ほれ、さっさと書き取れ」

 

それからの授業は、『許されざる呪文』についてノートに書きとることに終始した。

そして、就業のベルが鳴る。

 

「今回の授業は、これで終わりだ。油断大敵!わかっているな?」

 

「──それは、あなたにも言えることだけどね。〈化けの皮、剥がれよ(スペシアリス・レベリオ)〉!」

 

私は立ち上がり、杖をムーディに向けて、変身術などを解く呪文を唱える。案の定周りからは「何をやってるんだ!?」との視線を向けられるが、呪文が当たったムーディを見て、みんなが息を飲んだ。

ムーディの姿がどんどん変わっていってるからね。

顔の傷跡は消えて、肌は滑らかになる。鼻もまともになって、髪の毛は白髪から薄茶に変わった。木製の義足は落ちて義眼は眼孔から飛び出す。うわ、人が『ポリジュース薬』で変わるとこって気持ち悪いね。

あ、クラウチJr.が酒瓶に手を伸ばした。あの中に薬が入ってるのかな?

 

「〈来い(アクシオ)、酒瓶〉」

 

呼び寄せ呪文で、Jr.が手に取る前に回収。中身はやっぱりポリジュース薬だ。

 

「くそっ!こんなところで!」

 

「一度は見逃してあげたのにね。連行させてもらうよ、バーテミウス・クラウチJr.!あ、ハーマイオニーとネビルはマクゴナガル先生とダンブルドアを呼んできてくれる?」

 

一瞬、二人は惚けてたけど、すぐに立ち上がって教室を走り出た。さてと……失神させるのがいいか、縛り上げるのがいいか……両方だね。

 

「……俺はさっき言ったはずだぞ?油断大敵!〈強き光よ(ルーモス・マキシマ)〉!」

 

「うわっ!?〈麻痺せよ(ステューピファイ)〉!」

 

強い光で視界を奪われる。その隙に逃げようとしていたから、感情の位置であたりをつけて失神呪文を放ったけど、外れてしまったようだ。くそう……目が痛い。

 

「何が起こったのですか!?ミス・ディメント、説明を」

 

目の痛みが治まってきたところで、マクゴナガル先生が到着した。落ちている携帯用酒瓶と義足、『魔法の目』で大体のことは察したようだけど。

 

「マッド-アイ・ムーディは偽者で、正体はバーテミウス・クラウチJr.でした。あとのことは、人払いをした後でダンブルドア先生、それにお父さんと一緒にお願いしたいのですが。あ、あとムーディの部屋を調べないと。ポリジュース薬を使ってるのなら、ムーディがそこに閉じ込められてるかも」

 

マクゴナガル先生の顔色が変わる。テキパキと指示を出して、彼女はどこかに歩いて行った。指示の内容は、「夕食は寮に届けさせるので、この後は寮から出ないように」とのこと。

クラウチJr.を取り逃がしたことは痛いなぁ……けど、どこに連れて行く気だったかはわかった。リトル・ハングルトン……アルバニアの方だったかな。確か、ジョンがそっちの方に向かってるし、頼んでおくかな。……それよりも早くジンが動いてそうだなー。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

クラウチJr.の部屋

クラウチJr.が使っていた部屋の捜索は、私も手伝うことになった。

部屋には敵鏡やかくれん防止器などがごちゃごちゃと散らばっていて、一つ、大きなトランクがあった。七つの錠前のついたトランクだ。幸いなことに、クラウチJr.はこのトランクのものらしき鍵を落としていってくれた。やって来たダンブルドアがトランクの鍵を開けていく。

一つ目の錠前の中に入っていたのは呪文の本だった。二つ目には壊れたかくれん防止器や羊皮紙、羽根ペン、デミガイズ皮製の透明マント。三つ目、四つ目、五つ目、六つ目と開けていき、最後の八つ目に本物のムーディはいた。縦穴のようになっていて、三メートルほどの深さがある。髪の毛は一部がなくなっていた。多分、ポリジュース薬を作るのに使ったんだろうね。

 

「ミネルバ、マダム・ポンフリーを呼んできてくれるかのう。場合によっては、今年の闇の魔術に対する防衛術の先生はいなくなってしまうかもしれん」

 

「アルバス、それは……」

 

「一見すると、〈失神術〉、そして〈服従の呪文〉がかけられておるように見えるが……もしかすると、何かしらの毒が使われたかもしれんからのう。念のために、少なくとも一ヶ月ほどは聖マンゴに入院してもらわねばならん。グリフィンドール四年生の防衛術はミス・ディメントに担当してもらうのもいいかもしれんが、彼女は仮にも生徒じゃ」

 

「仮にもってすごく問い詰めたいんだけど」

 

「おお、これは悪かったのう。というわけで、早急に新しい先生を探す必要がある。一人、当てはあるんじゃが」

 

マダム・ポンフリーがやってきて、担架でムーディを連れていった。ダンブルドアは家探しを続けているけど、これといった証拠になりそうな物はなかったようだ。

 

「リーナ、君はあのペテン師が何を計画していたのか、知ってるな?教えてくれると嬉しいのじゃが」

 

「三大魔法学校対抗試合で罠を仕掛けて、ハリーをリトル・ハングルトンに連れていく予定だった。そこに、トム・リドルがいる。それに、ピーター・ペティグリューも、殺されたバーサ・ジョーキンズもね。もう一人誰かいるみたいだったけど……そこにはノイズがかかっていた。よく覚えてなかったみたい」

 

「それは重畳。逃してしまった以上、もしかするとあやつはまた仕掛けてくるかもしれん。否、仕掛けてくるじゃろう。できうることなら三大魔法学校対抗試合自体を中止したいが、他の校長たちがそれを許さんじゃろうから、このまま開催するしかあるまい。リーナ、君にとっては辛いことかもしれんし、怒るかもしれない。しかし、この作戦が一番いいかもしれん。ハリーを囮に使う」

 

最後の言葉を聞いた時、私の中の黒い感情が湧き上がってきた。ハリーを囮に使う?誰がそんなことをさせるか。そんなことをする必要があるぐらいなら、今すぐリトル・ハングルトンに向かってヴォルデモートを殺してくる。

そんな私の心を悟ったのか、ダンブルドアは顔を青くしながらも弁明してきた。

 

「アルバニアの方にはディメント家の者が向かっていたはずじゃろう?もしハリーが攫われたのなら、その者がきっと救い出してくれるはずじゃ。それに、こちらでは君が守っていれば良い。ハリーは競技に参加できる歳ではあらんから、隣で観戦していれば安全じゃろう」

 

「……そうかもね。でも、一つだけ約束してくれるかい?もしもハリーに何かあったら、思いっきり殴らせてもらう」

 

「……死なぬ程度に手加減してくれるなら」

 

ならばよし、と私は頷いて、あとはダンブルドアに任せて談話室に戻ることにした。ああ、でも、どうせハリーはまた何かに巻き込まれるんだろうね。はぁ……ハリーに何も起こりませんように。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新しい先生

寮に戻ると、偽ムーディのことが噂されていた。あれが誰なのかだとか、なんで私が見破ったのかだとか。

私を見つけたハリーが近寄ってきた。

 

「ハリー、心配させないでよね?」

 

「……まさか、また何か事件が起こるの?」

 

顔を青ざめさせながら聞くハリーに、私はただ、首を縦に振った。

次にやってきたのは、双子のウィーズリーだ。手には書きかけの手紙が握られている。

 

「リーナ、ちょーっと聞いてくれるかい?」

 

「ルード・バグマンのことを覚えてるか?」

 

「うん、覚えてるよ」

 

この二人は彼が提示した賭けに大勝したんだったね。でも、彼がどうかしたのかな?

 

「やっこさんは確かに俺たちに金貨を支払った」

 

「だが、それは全てレプラコーンの金貨だった」

 

「「おかげで翌日の朝には一文無しさ!」」

 

「だから、俺たちは手紙を書くことにした」

 

「リーナが味方してくれるなら心強いんだ」

 

なるほど、ディメント家の者が味方することで、バグマンさんを脅すということか。もちろん、私は後で署名することを約束した。

 

 

 

翌日、掲示板にはとあるお知らせが張り出されていた。新しい闇の魔術に対する防衛術の教師の話だ。えーと、新任教師……シリウス・ブラック……お父さん!?

 

「リーナ、これ、新しい先生がシリウスおじさんって……」

 

「なってるね。お父さんが教師か……似合わない」

 

ロンとハーマイオニー、ネビルも驚きで口が開きっぱなしになっている。スリザリンの寮ではドラコも似たような感じになってるはずだ。

次の闇の魔術に対する防衛術は明日だ。楽しみにしていよう。

 

 

 

「なぜシリウスが防衛術の教師に抜擢されたんだ?」

 

「多分、ダンブルドアだと思うよ」

 

「あの人ならシリウスをキープしていてもおかしくないわね」

 

魔法生物飼育学でスクリュートの世話をしながら、ドラコと話す。内容はもちろんお父さんのことだ。

 

「ところで、偽ムーディは一体誰だったんだ?リーナ、君はわかってるんだろう?」

 

「うん。あの人はバーテミウス・クラウチJr.。十年以上前にアズカバンに収監された死喰い人(デス・イーター)。病気の母親と入れ替わって脱獄してたけど、まさか、例のあの人の下に戻ってるだなんてね。多分、クラウチシニアが匿ってたんだと思うよ。ワールドカップにウィンキー同伴で来てたから」

 

私の言葉にドラコは目を丸くする。あの場に死喰い人が居ただなんて、確かに恐ろしいだろう。

 

「目的はなんだったんだ?」

 

「ハリーの誘拐とヴォルデモートの復活。逃げられたから、この後もハリーを攫おうと何か仕掛けてくるはず。ホグワーツに居る限りは私が守って、もし攫われたら、ジョンに任せる」

 

「ジョンって、あのボディビルダーみたいな人?」

 

「その人。彼が居る場所が、ハリーを連れて行こうとしていた場所に近いところだからね」

 

ゴイルが爆発を使ったスクリュートの突進を腹で受け止めてるのを見ながら、私たちは明日の防衛術の授業を楽しみにしていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

シリウス・ブラック先生

「やあ、みんな。初めまして。私はシリウス・ブラックと言うんだが……冤罪とは言え、去年まで殺人犯として扱われてた人間なんだが、なんでみんな怖がらないんだい?」

 

先生が変わって一番最初の授業。お父さんはみんなに怖がられないかとビクビクしてたみたいだけど、グリフィンドールのみんなはお父さんのことをキラキラした目で見ていた。

 

「えーと……ランダムに……シェーマス・フィネガン、それにラベンダー・ブラウン。なんで君たちはそんなキラキラした目で私を見つめるんだい?」

 

「ロンとハリーから聞きましたからね。あなたがリーナの養父になったって」

 

「彼女なら安心できますし、先生が暴走しても確実に止めてくれるでしょうから」

 

「……つまり、私が信頼されてるんじゃなくてリーナが信頼されてるのか。少しショックだな」

 

わかりやすく落ち込むお父さん。でも、すぐに立ち直って話し始めた。

 

「さて、去年の話はムーニー……リーマス・ルーピンから聞いた。それに、愛する娘からつい先日まで教師を演じていた男が何を教えていたかも聞いた。不本意ではあるが、彼の教えようとしていたことは正しい。君たちは最も恐ろしい闇の魔術を、そして、それらを確実に防ぐための技術を学ぶべきだ。〈死の呪い〉、〈磔の呪い〉、〈服従の呪い〉。それぞれがどんな効果を持っているかはわかっているね?まずは、服従の呪いの防ぎ方から教えよう」

 

お父さんは黒板に人の絵を描いた。頭の中には円があり、その中に自己と書かれている。

 

「服従の呪い……〈服従せよ(インペリオ)〉とは、相手を服従させる呪文だ。これは、自己を確立していない者や心の防壁が弱い者ほどかかりやすくなる。常に心を落ち着かせて、自分の意識をはっきりと保つ。これが、この呪文から身を守る方法だ。幸福感を感じると思うが、それに身を任せてはいけない。そうだな……例えば、みんなで驚かしあうのはどうだろう。いつ誰に驚かされてもびっくりすることがなくなれば、防げる確立は格段に上がる」

 

自己の下に線を引き、お父さんは振り向いた。

 

「しかし、どうしても心が弱くなることがある。例えば悲しみ。例えば怒り……は、場合によってはさらに強くするかもしれないけど。そして、苦痛も、心を弱らせる。〈磔の呪い〉は、情報を引き出す他に、服従の呪いをかけやすくするためにも使われることがある。

この呪文は盾の呪文や遮蔽物で防げる。服従の呪いもね。あとは、何者にも屈しないという心。有り体に言えば精神論だ。心を折らなければ、抜け出すチャンスが来る。……昔、こんな対処法をしたやつが居たけどね。マゾになって苦痛を快楽に変えた変態が」

 

最後の話にみんなが笑った。なるほど、そんな対処法が……誰も真似できないだろうけど。

お父さんの話は三つ目、死の呪いに入った。

 

「〈アバタ・ケダブラ〉は防ぎようがない。遮蔽物を用意するしかないんだ。服や布じゃ駄目で、それこそ石像や壁とかしかね。盾の呪文もきくかどうかわからない。でも、直線にしか進まないから、運動神経がよければ避けることができる。運動を欠かさないように。地道な努力がいつか、君たちを救うかもしれないんだから」

 

お父さんが話し終わると、ちょうどベルが鳴った。お父さんはみんなに手を振って奥の部屋に消えていった。

お昼は、お父さんがどれだけいい先生かをグリフィンドールのみんなが他の寮の生徒に言って回ってた。これは、ルーピン以来の人気者になるかな?




磔の呪文はドMなら喜んで受けるような気がするのは私だけだろうか。


次回は14日頃に投稿予定。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二校の到着

一周年ですの。


十月三十日、金曜日。

今日、ボーバトンとダームストラングの生徒がやってくる。そのために授業が三十分早く終わる。金曜の最後の授業は魔法薬学だか、みんな(主にグリフィンドール生)が喜んだ。

お父さんは最初は怖がられてたみたいだけど、徐々に信頼を獲得していった。

 

 

 

授業が三十分早く終わり、急いで寮に鞄と教科書を置きに戻る。魔法薬学の教室は地下で、グリフィンドール寮は城で最も高い場所の一つだから、時間がかかる。

マクゴナガル先生が私たちを整列させ、城の前に並ばせる。

 

「もうすぐ六時だけど、どうやって来るんだろうね?」

 

「私にはわからないけど、どうするんだろう」

 

ハリーと話しながら夜空を見上げる。さっき後ろを振り向いた時に、ダンブルドアが空を見ているのを見たからだ。そして、やはり夜空からそれはやってきた。

 

「ほっほー!わしの目に狂いがなければ、ボーバトンの代表団が近づいて来るぞ!」

 

森の上空から、何かが飛んで来る。それは、十二頭の天馬だった。その後ろには巨大な馬車。それが、衝撃とともに着陸した。

馬車の扉には、交差した杖の紋章。それぞれの杖からは三個の星が飛んでいる。これがボーバトンの校章だろう。

馬車の中からは、ハグリッドぐらい大きな女性が現れた。

 

「マダム・マクシーム。ようこそ、ホグワーツへ」

 

「こーうえいです、ダンブリー-ドール。フランスに比べて、こーちらは寒いです。生徒たちをあたたかいとこーろへ連れていってもーらえませんか?」

 

「いいじゃろう。馬はこちらの魔法生物飼育学の先生に任せなされ。もうすぐ、ダームストラングも到着するじゃろう」

 

馬車から降りてきた水色の服の男女生徒たちが喜んで、城の中へと入っていく。ダームストラングはいつ来るのかな。

少しして、湖の中から異音が聞こえてきた。そして、映画のフライング・ダッチマン号のように、水中から不気味な船がゆっくりと、堂々と浮上した。

乗組員が降りてきたけど、一人だけ違う男──校長のカルカロフは、嫌な感じがした。ウィル爺から聞かされた元死喰い人の一人。何も起こさなければいいんだけど……。

カルカロフの横に立った生徒を見て、ロンとハリー、それに私も驚いてしまった。そこにいたのは、ビクトール・クラムだったから。世界最高のシーカーの一人。まだ学生だったなんてね。

ダームストラングの学生の後に続いて、城に戻る。女子生徒の多くは、なぜ羽根ペンを持ってこなかったのかと後悔していた。それはロンも同じだった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

宴の始まり

まずは一言。


遅れてすんませんっしたぁ!


では、本編どうぞ。


大広間に戻ると、ロンが悔しそうな顔をしていた。ダームストラングの生徒たちがスリザリンのテーブルに着いていたから、クラムと話せる機会がなくなったのを嘆いているんだろう。あ、ドラコがサイン貰ってる。

 

「あれ?」

 

「どうしたの、ハリー」

 

教職員テーブルを見て、ハリーが首を傾げた。

 

「追加された椅子が四つなんだ。増えるのはそれぞれの校長だけだろう?」

 

「いや、他にも関係者はいるでしょ。多分その人たち用だよ」

 

全員がテーブルに座ると、教職員が一列になって入場した。一番最後に、三人の校長が入ってきた。カルカロフとマダム・マクシームが席に着き、立ったままのダンブルドアが話始めた。

 

「こんばんは。紳士、淑女、そしてゴーストの皆さん。そしてまた──今夜は特に──客人の皆様方。ホグワーツへのおいでを、心から歓迎いたしますぞ。本校での滞在が、快適で楽しいものになると、わしは予想し、確信しておる」

 

とあるボーバトンの女子学生が、間違いなく嘲笑であろう笑い声をあげた。それを聞いたハーマイオニーは、すごく忌々しげに舌打ちしていた。

 

「三校対抗試合は、この宴が終わると正式に開始される。このイベントが無事に終わるよう──もちろん、わしたちは全力を尽くすし、君たちも全力を尽くしてくれると確信しておるが──前祝いとして、ご馳走を食べるとしましょうかの。こういう場での約束事がいくつかある。みんなで楽しみ、くつろぐこと。そして、宴は乾杯から始まると言うことじゃ」

 

ダンブルドアがゴブレットを掲げ、それに習い広間の全員がゴブレットを掲げた。

すぐに皿に料理が満たされ、その内容はいつもより豪華だった。中には説明が付いているものもあったりする。

教職員テーブルの方を見ると、カルカロフがダンブルドアと親しげに話していて、そのカルカロフをお父さんがジーっと睨みつけている。そして、そろお父さんを更にスネイプが睨んでいる。

 

「やっぱりスネイプは、シリウスが防衛術の教師になったことが気に入らないみたいだね」

 

「シリウスは確か、『例のあの人』が最も強かった時に戦ってた人だろう?実力はわかるんだから、諦めればいいのに」

 

「あら、スネイプだって同じぐらいの年齢のはずよ?シリウスが老けてるからわかりづらいけど」

 

ハリーと美味しいものを交換しながら、広間の様子を見渡す。案の定一部の他校生が雷と電に驚いてたけど、それ以外は問題ない……かな?

少しして、ハグリッドが教職員テーブルの後ろのドアから入ってきた。その手は包帯でぐるぐる巻きになっている。

 

「ねえ、あの手、スクリュートにやられたんじゃないかな」

 

「だろうね」

 

動物が好きなのはわかるけど、危険な生物に手を出すのは、ちゃんと自分の安全が確保できる時だけにしてほしい。




ホグワーツに鬼灯様を入れる話を思いついてしまった。書きたいけどうまく鬼灯様を再現できる気がしない。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。