魔法少女リリカルなのは~管理局員の奮闘~ (愛川蓮)
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プロローグ
「こんなくそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
『ストライクランス』
「甘い!」
『プロテクション』
俺『アヤト・ミズサキ』はデバイスである槍に魔力を纏わせ更に足から魔力をジェット噴射のように吹かせて突撃する……が、相手はあっさりと防ぎ反撃を……
「撃ち抜け! 『スナイプシューター』!」
する前に、俺の仲間が昔から使っている特殊な魔法で追撃を防いでくれた。
「助かったぜ、ユウヤ!」
「礼を言う暇があったら手を動かせ! あいつらの相手は気を一切抜けないんだからな!」
「どうでも良いけど口を動かす前に手を動かしてよ! そろそろ抑えきれなくなってきたんだけど!?」
俺が危うい所を救ってくれた仲間……『ユウヤ・アカツキ』に礼を言うと、もう一人の仲間である『ヤマト・ハギノ』が悲鳴をあげた。
「死ねモブがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「っ!? しまった!?」
「させないよ! 響き渡り奏で渦巻け宵闇の歌……『ディアボリカル・エミッショナー』!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
ヤマトの一瞬の隙をついて襲い掛かった敵を『闇の書事件』の時に仲間になり、今や俺がリーダーをやってる小隊の中で最強の魔導師である『八神ナハト』が吹っ飛ばした。
「ナハト! ありがとう、助かった!」
「お礼は良いから早く下がって! ヤマトは後方支援が本職なんだから!」
「わかったよ! 置き土産だ、『トラップバインド』!」
ナハトに救われたヤマトは、お礼を言いながら『ユーノ』と協力して作成した引っ掛かるまで見えないヤマトオリジナルのバインドをそこら中にばら蒔き後方に下がる。
「逃がすか!」
「そこは大当たり!」
敵の一人がヤマトを逃すまいと追撃したが……運の悪い(俺達にとっては運の良い)ことにトラップバインドのど真ん中に突撃した為、多数のバインドに雁字搦めにされる。
「念のために……食らえ!」
『スレイプニールエッジ』
俺は墜落する敵に追撃の攻撃を放ち、完全に沈黙させる。
「これで漸く2人目……か」
「ああ、こいつらの相手は本当に疲れるぜ……」
「というか……なんで僕らはこいつらに生命を狙われてるんだろうね?」
「そう言えばそうだね」
ヤマトの言葉に俺とユウヤ、ナハトがう〜んと唸っていると、答えは意外にも敵から出てきた。
「当たり前だ! 貴様達がいなければ我はイレギュラーであるオリキャラどもを全員モブにしてなのは達をハーレム要員にすることが出来たんだ!」
「それにお前達がいなければなのは達は悪逆非道の管理局に入らなかったんだ! 死んで償え、このゴミ管理局員が!」
…………清々しいが付くほど自分勝手な理由だなこの野郎どもは。
「はあ……彼らが現われなくても主達は誰一人として君になびかなかったと思うよ?
それに管理局は君が思ってるほど悪逆非道じゃあないよ? ……僕の様な巨悪を受け入れてくれたしね」
まあ、そりゃそうだが分離する前と後では大違いだろお前は。
「黙れゴミがぁ……! 今まではやて達を苦しめてきた償いをしろ!」
「償いは管理局に入った時点で少しずつ果たしてるしはやてもとっくの昔に許してるんだよ! 今更蒸し返すような事を言うんじゃねえよこの犯罪者野郎が!」
俺はデバイスを構えて敵に突撃をかます。
「黙れ! 最初から犯罪者の鎌瀬達は兎も角、俺が犯罪者になったのは俺の故郷の出身の人間の才能を妬んだお前達管理局が俺の故郷を滅ぼしたからだろうが!」
「いや、君が余計な事をしなけりゃ極めて安全にあの世界の『ロストロギア』は封印できたし滅びもしなかった筈だってクロノは言ってたよ? それを管理局の所為にするってとんでもない責任転嫁だね」
「被害妄想も大概にしろ。それからお前の故郷出身の魔導師達は故郷の本当の仇であるお前を捕まえる為に全力でお前を捜索中だ」
2人の敵の内の1人の言葉に、ヤマトとユウヤは呆れた顔でそいつの言葉を容赦なく否定する。
「ああ、私があんた達の生命を狙う理由を教えてあげようか? それは……君達が私となのはちゃん達との『百合百合計画』を邪魔したことよ!」
「うぉ!?」
俺が声に気が付き後ろに下がると、そこにはさっきまで俺が立っていた場所を鎌が通過した。
「『百合百合計画』って……主達と女の子同士であんなことやそんなことをしようって事?」
「当たり前でしょ? なのはちゃん達はあんた達みたいな穢れた欲望の塊みたいな男達とじゃなくて私みたいな心が綺麗な女の子といた方が幸せなのよ」
「……俺はお前の方が欲望の塊だと思うがな」
ナハトの疑問に答えた女は鎌を構えながら陶酔と欲望と妄想の混じった表情で言うが……そんな表情で言われても説得力ねえよ。
「おい、アヤト。更に3人程増えるぞ」
「……マジで?」
「本気と書いてマジだよ。ついでに更に5人程南東から接近中」
「待って、北東からもう4、5人程来るよ」
……多過ぎだろうが、あれか? 1人見たら30人程はいるってか?
「それじゃあゴキブリみたいだよ、アヤト」
「ナハトの言うとおりだ。だが、アヤトが思っているとおりゴキブリ並の生命力を持つからなこいつら」
ナハトのツッコミに、ユウヤが溜め息を吐きながらそう言った。
「……ユーノ! なのは! みんな! 死ぬ気はねーけど早く告白して救援に来てくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
俺は敵と戦いながら(多分)青春真っ盛りな仲間達に悲鳴をあげた。
「何!? 淫獣やモブどもが我の嫁達であるなのは達に告白だと!? おのれぇぇぇぇぇ! モブキャラどもごときがなのは達の恋人になろうなどとは百万年はやいわ!」
「ユーノ達となのは達が恋人になるとますますなのは達を悪の管理局から解放することが出来ない……絶対に阻止する!」
「あんな汚れた男達がなのはちゃん達に告白ですって!? ふざけないで、なのはちゃん達は私の物よ! 告白なんて絶対にさせないんだから!」
そして敵はそれを聴いて奮起した。
「馬鹿野郎! 敵を元気にさせてどうする!?」
「その前に馬鹿な事を言うあいつらをぶっ飛ばそう! でないと主達は2度と恋人になれない!」
「あはは……全力で頑張らないとね!」
「す、すまん……こうなりゃ俺達であいつらを全員捕まえるぞ!」
「「「了解!」」」
俺の号令の下俺達は敵に向かって突進した。
……何故こんな展開になっているのか、それは6年前の『PT事件』にまで遡る。
如何でしたか? 次回からPT事件編です
次回も読んでくれたら嬉しいです。
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P.T事件編
第1話
6年前……
「なあ、ユウヤ……」
「なんだ、アヤト」
俺の溜め息混じりの言葉に、ユウヤが答える。
「首都航空隊ってよ、陸の中では精鋭なんだよな?」
「精鋭だよ、給料も他の部隊よりは高いしデバイスも陸では最高級の物を使用してるしね」
俺の言葉に、ヤマトが苦笑いをしながら言う。
だったらよぉ……!
「なんで俺達は隊舎の屋根を直さなきゃいけねえんだ!」
俺は怒号と共に、手に持っていたトンカチを釘に降り下ろした。
「しょうがないでしょ? 予算の半分以上が海に持っていかれていて業者に頼むだけのお金がないんだから」
「それから力一杯降り下ろすな。下の人間に響くぞ」
俺の言葉に、ヤマトは苦笑いをユウヤは呆れ顔で突っ込んだ。
俺達は、先日とうとう雨漏りが発生した首都航空隊『第3084隊』の隊舎の屋根の補修作業に入っていた。
なお、俺達が選ばれた理由は隊長曰く隊の中で一番若いからだそうだ。
「でもよお……俺が知ってる首都航空隊ってよ、クラナガンで暴れる犯罪者を格好良く逮捕する部隊なんだよ……」
とほほと言いながら、俺は屋根に板を打ち付ける為の釘にトンカチを降り下ろし続けた。
「まあまあ、僕らの出番が無いってことはそれだけ平和って事だからね? 出来るだけ首都航空隊が出番がないほうが良いんだよ」
「ああ、大体首都航空隊が出張るような事件がそう簡単に起こってたまるか」
俺の不満混じりの言葉に、ヤマトとユウヤが落ち着くように言い……
「3人とも一時作業を中断しろ! 警備隊から応援要請があった!」
それがフラグであったかのように、隊長が下から出動を要請した。
「事件ですか!? 犯人はどんな凶悪犯……」
「事件だが犯人は違う。下着泥棒だ」
ブリーフィングルームにやって来た俺達は、隊長の言葉に揃ってずっこけた。
「し、下着泥棒って……」
「首都航空隊が出張るような事件ではないような気がするのですが……」
「と言うか、下着泥棒に逃げられたのかよ警備隊は!?」
ヤマト、ユウヤ、俺の順で隊長にツッコミをいれる。俺達以外にもツッコミはいれなかったが不満はあるような表情をした先輩達は何人もいた。
「確かに下着泥棒は下着泥棒なんだが……使う魔法が『古代ベルカ式』のうえに身体能力も恐ろしく高いのでランクが低いあるいは魔導師ではないのが多い警備隊では捕縛する事が出来なかったらしい。そこで我が首都航空隊に要請が来たのだ。総員、心してかかるように!」
俺達は下着泥棒の使う魔法に驚きながらも敬礼をして出撃したのだった。
…………
「にしても凄い才能の無駄遣いだよな、その下着泥棒」
「確かにな。古代ベルカ式なんてレアな魔法を使ってるのにやることが下着泥棒とは……」
「確かにそうだけど、任務は任務なんだからちゃんとしないと」
小隊事に別れて探す事になったため、俺達はヤマトのエリアサーチの情報を下に空を飛びながら下着泥棒を探していた。
それにしても……
「ヤマト、本当にここら辺にいるんだろうな?」
「その筈だよ? 僕のエリアサーチの精度は知ってるでしょ?」
「知ってるけどよぉ……ここらはクラナガンの中でもトップクラスの豪邸が建ち並ぶ地区だぜ? 幾ら古代ベルカ式だからってこんなところで下着泥棒を……」
ユウヤの疑問に答えたヤマトに、俺は更なる疑問を言おうとして……
「ふわ~はははははwwwwww! 俺、参上wwwwww!」
「「……下着泥棒がいたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」
頭に女性用の下着を被り、手にはパンツとどう考えても被ってるのより小さい女性用の下着が大量に入った鞄を持った変態が豪邸から出てきた。
「ね? いたでしょ?」
「言ってる場合か! さっさと捕まえるぞ!」
「捕まえた後は補修の続きだ! 行くぜ!」
ヤマトのドヤ顔を無視して、俺とユウヤは戦闘態勢に入って変態を取っ捕まえるべく突撃を開始した。
…………
「待てこら、変態野郎!」
「ふははははは! 私は変態野郎ではないwwwwww! 私は……変態と言う名の紳士だwwwwww!」
「結局変態じゃねえかこの野郎!」
あれから30分、俺と女性用の下着を被った変態との追いかけっこが繰り広げられていた。
「くそ! 変態のくせに速い……!」
「ふはははははwwwwww! 何故君が私に追い付けないのか知りたいかいwwwwww? それは……教えてあーげない!」
「結局教えないんかい! それからキモいわ!」
俺は変態野郎の言葉にイライラしながら追いかけ……
「(アヤト! 配置に着いたぞ!)」
「(アヤトの姿は捉えてあるから射程もバッチリ!)」
「(わかった! タイミングは任せろ!)」
念話でユウヤとヤマトの言葉が聴こえたので、俺は更に加速する。
「むむwwwwww!? は、速い!? だがしかし! この俺には到底……」
変態野郎が加速しようとして……
「今だ!」
「(スナイプサーチャーの出力、オールグリーン。仰角、魔力圧縮は全て良し! スナイプシューター……シュート!)」
「へ……wwwwww? あ、あべし!?」
変態野郎の周りを、飛んでいたユウヤ特製のサーチャーである『スナイプサーチャー』を利用した特殊な魔法『スナイプシューター』が全弾炸裂し、変態野郎は変な悲鳴と共に墜落する。
「ヤマト!」
「了解! バインド!」
「ぬふぉ!? こ、この俺が縛りプレイに……」
「寝てろ、変態野郎! ストライクスピア!」
「ひでぶ!?」
墜落する変態野郎をヤマトがバインドで捕らえると、変態野郎が変なことを言おうとするが俺は容赦なく変態野郎に槍型のデバイスである『T4W』による刺突を叩き込み黙らせた。
「たく……変態野郎に時間掛かっちまったぜ」
「アヤトー! 隊長があと10分位で来るからそれまで見張ってろだって!」
「あいよ!」
俺はヤマトのバインドの上に更にバインドを重ねながら後ろにあるものを見る。
「お、これって……」
「管理局が初めて封印に成功したロストロギア……確か『
「ああ、暴走すれば次元世界を丸ごとどっかに吹っ飛ばすから管理局が封印したんだそうだ」
俺達は背後にある門型のデカイロストロギアの前で話す。
にしてもこれだけデカイ物を作るって古代ベルカってのはどんだけ凄かったんだ……ん?
「なあ、2人とも。これ……起動してないか?」
「アヤト、そんなわけないでしょ? 封印処理はきちんとしてあるんだから」
「いや、この前ニュースで『封印が徐々に解けているから再封印が済むまで近寄らないように』と言っていたような気が……」
俺とヤマトは、ユウヤの言葉に空気が凍ったかのような状態になった。
えっと……つまり、その……
「今……これが起動してるってことだよな?」
「……多分、いや絶対に起動してるね」
「……ああ、そういうことになるな。しかも暴走寸前だ」
俺達は顔を見合わせると……
「ヤマト、お前一応封印魔法残してあるよな?」
「そう言うアヤトやユウヤもでしょ?」
「お前らなあ……そんな何時使うのかわからない魔法よりももっと実用的な魔法を……って、俺が言えた義理じゃないか。それよりも俺ら程度のランクがロストロギアを封印なんて馬鹿な真似をしたことで怒られそうだな」
「やって怒られるか、やらなくて後悔するかの違いだからなぁ……お前ら一緒に隊長に怒られろよ?」
「わかってるよ」
「当たり前だ。お前1人だけの責任にするかよ」
俺達は頷きあいながらデバイスを構える。
そんじゃまあ……やりますか!
「行くぞ! タイミング合わせろよ!?」
「それは此方の台詞だ!」
「2人とも! これは訓練校でやってないコンビネーションだからね!?」
俺達はそんなことを言いながら天国の扉の核に向けて飛び、そのまま核が中心になるように位置を合わせる。
そして……
「角度及びフォーメーション、良し。プロテクション、展開完了! 一斉に行くよ?」
「何時でもOK!」
「こっちもだ」
「それじゃあ、1、2の……」
俺達は3の掛け声と共に核に全力で封印魔法を放ち……そこで俺達の意識は途絶えた。
…………
「……い、お……ヤト。おい! アヤト!」
「……んが?」
俺はユウヤの呼び掛けに目を開ける。
「良かった、生きていたか」
「ああ、ユウヤ……ここは何処だ?」
「それはこっちも同じだ。少なくともミッドチルダの何処かではないというのは確かだ」
つまりまるでわからないって事か……
「確か天国の扉を封印してそれから……」
「いきなり正常起動した天国の扉に下着泥棒もろとも引き摺りこまれてこの様だ」
「因みにあの下着泥棒はいなかったよ。天国の扉でどっかに飛ばされたか、もしくは逃げ出したかのどっちかだね」
……大手柄どころか大目玉だな。
「アヤト、つまんないよその洒落」
「うるせえ!」
俺はヤマトのツッコミに不貞腐れながらユウヤに聞く。
「ところでデバイスは大丈夫か?」
「ああ、なんとかな。全力は無理だが戦闘はこなせそうだ」
「僕も大丈夫だよ。アヤトのもね」
こんな時に数年前の品は頑丈で助かる……
「封印機能は完全に壊れてるけどな」
ですよね~……
「救難信号は出してるから後はサバイバルをしながら……」
ヤマトの言葉を遮り、轟音と共に何かが暴れまわる音がした。
「おいおいおい! 魔力が駄々漏れじゃねえか!?」
「近くに……ロストロギアの反応!? しかも近くに人が2人もいる!」
「冗談じゃない! 此所にあるロストロギアが何であれ下手をすればえらい事態になるぞ!」
「わかってるさ! 行くぜ、市民の救出だ!」
「市民とは限らないけどね!」
俺達はヤマトの先導の下、慌てて魔力源に向けて突っ走った……
この時の俺達はまだ知らなかった。これが『ジュエルシード事件』又は『PT事件』と言われる事件の始まりだと。
そして、これから長い付き合いになる奴等とのファーストコンタクトになるとは思いもしなかったのだ。
如何でしたか?
次回はなのは、ユーノとのファーストコンタクトです。
次回もお楽しみに!
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第2話
「見つけた! 2人ともまだ無事だ!」
数分後、俺達は魔力源に急行すると、デバイスと思われる物と契約しようとしている俺達と同い年の茶髪の女と、魔力源と思わしき怪物の突撃を防ぎながら詠唱を教えている同じく俺達と同い年の金髪の男がいた。
「データベースからの照合完了。男の方は『ユーノ・スクライア』。スクライア一族の1人だ!」
「女の子の方は不明! でも此処の現地民の可能性大!」
ユウヤの言葉で男の方の名前は分かったが、ヤマトの言葉で頭を抱えたくなった。
これが終わったらなんて説明すれば良いんだ?
「ま、良いか! 俺が突撃して怪物の気を逸らす! ヤマトはその隙にユーノ・スクライアと女の保護を、ユウヤは俺の援護だ!」
「わかった!」
「了解!」
俺は指示を終えると、足の下に魔力を蓄えるとそのまま魔力を爆発させて怪物に突撃をかまし吹っ飛ばす。
「え……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!? 誰なの!?」
「こちらは時空管理局です! 何がどうなっているかわかりませんが事態を打開する為に速く詠唱を!」
「時空管理局!? 来てくれたんだ!」
俺が怪物を吹っ飛ばすと女は驚き、スクライアはほっとした顔になる。まあ、驚くのは無理もないけどな。
「って、言ってる場合じゃないか」
俺は吹っ飛ばした怪物から手応えが無かった事に違和感を感じ……
『ギャアァァァァァァァァァァ!!』
「やっぱ倒れてないか! 『ラウンドシールド』!」
俺は全く無傷の怪物が突進してきたのを見ると即座に防御魔法を張り、怪物を防ぐ様に見せ掛けて……
「『サーチャーチェンジ』……モードマシンガン! マシンガンシューター! ランダムシュート!」
別の方向からスナイプサーチャーを別のモードに切り換えたユウヤの乱射が怪物の足下に何発も炸裂し、怪物は形は崩れ速度は落ちたものの突進は止まらなかった。
これではっきりした。あいつは魔力の塊だから普通の攻撃じゃ無傷で再生しちまうのか。
「す、凄い……彼はサーチャーにシューターと同じような働きを持たせた上に両方の機能を損なわない様に……」
「ユーノ君! 感心してる暇があったら早く詠唱を教えて!」
「そうだよ! 僕らのデバイスは揃って封印機能がぶっ壊れたんだから、この子のデバイスだけが頼りなんだよ!」
「ああ!? ご、ごめん、なのは! 僕に続いて!」
「う、うん!」
『ゴアァァァァァァァァァァ!』
「ああ、もう! ラウンドシールド!」
「そっちを見るんじゃねえよ化け物が!」
スクライアと女に突撃した怪物をヤマトがラウンドシールドでなんとか防ぎ、俺が突進することで気を再び反らす。
そして……
「「風は空に、星は天に、そして不屈の心はこの胸に。この手に魔法を。『レイジングハート』、セットアップ!」」
詠唱を終えると女の身体がデバイスと共に光、光が消えると……青い袖以外は全て白いバリアジャケットを着た女がそこにいた。
「……え? えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!? なんなのこれ!? 何がどうなってるの!?」
「「「…………ですよね~」」」
いきなり魔導士になった奴にバリアジャケットを解れと言う方が困難……ってやべぇ!
「すまん! 抜かれた!」
「ええ!? バインド! ……って、不発!? どうして!?」
俺は女の方に再び突撃を開始した怪物に振り切られ、それを知ったヤマトが慌ててバインドで怪物を止めようとするが何故かバインドが出なかった。
「これは……まさか、魔力切れ!? しまった! 完全に回復していなかったのか!」
自身のバインドが出なかった最悪の理由にヤマトが行き着くと、俺とユウヤは思わず舌打ちをしたくなってしまった。
俺達の中で一番魔力ランクが低い(つっても俺とユウヤもドングリの背比べだが)ヤマトが魔力切れって事は……
「すまん、アヤト。どうやら俺もこれ以上の戦闘は無理らしい」
ユウヤが歯痒い顔で俺に言う。
「くそったれ! これじゃあ間に合わねえ!」
俺が慌てて追いかけるが怪物は既に3人の側にいた。そして怪物の突撃は女、スクライア、ヤマトを……
『プロテクション』
吹っ飛ばす前に張られたプロテクションに弾き飛ばされた。
「い、インテリジェントデバイス!? 最高級品のデバイスじゃねえか!」
「それどころか張られた魔法はプロテクションだぞ!? 一体どんな魔力してんだあの女は!?」
「す、凄い……」
「!? 気を緩めちゃだめだ!」
俺とユウヤが女のデバイスと魔力に驚いていると、別の意味で女も驚いたらしく気を抜いてしまう。
それはつまりプロテクションも弱まるということで……
『ギャォォォォォォォォォォォォォォォン!』
「っ!? あ……」
「なのは!」
プロテクションが怪物に破られ女に突撃が届く……寸前でスクライアが女を庇い吹っ飛ばされる。
……って、あっち電柱があるじゃねえか!?
「……バリアジャケットも消滅寸前だけど仕方ない!」
スクライアが電柱に当たる寸前で、ヤマトがスクライアに追い付きクッションになる。
「ぐぅ!?」
「……う」
2人とも打ち所が悪かったのかそのまま気絶してしまう。
しかも怪物はもう一度突進の準備をしてやがる!
「させるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺はT4Wの使える魔法の中で最大の威力を持つ魔法を発動させ、そのまま怪物に突っ込む。
「スパイラル……バンカー!」
螺旋状になった魔力が怪物を削り、核となっていると思わしき宝石を露出させる。
「後は、頼んだ……ぜ」
そのまま俺は重度の魔力切れで意識を喪失した。
……意識を2回も失うなんて厄日だな今日は。
…………
「……ん」
俺が目を覚ますと、そこには怪物は影も形もなく、地面が所々抉れている以外は平和な公園だった。
「起きたか、アヤト」
「ああ、ユウヤか。怪物はどうなったんだ? いないって事はあの核になっていると思われるロストロギアを封印したんだろうが……」
「ああ、あの女が1人で封印したよ。誰の手も借りずにな」
「マジかよ!?」
「本気と書いてマジだよ。凄かったらしいよ?」
俺がユウヤの話で驚いていると、濡らしたタオルを持ったヤマトが現れた。
「で? あいつは何処だ?」
「ユーノ・スクライアを看病中だ」
「僕は頭にのせる為のタオルを持ってきたわけ」
俺はユウヤとヤマトの言葉を聞いて、成る程と頷きながらヤマトに着いてく事にした。
…………
「う、う~~ん……」
「あ、ユーノ君、気が付いたんだ」
「あ、なのは……って何で膝枕なの!?」
俺達がつくとスクライアは起きていたんだが……何故か女に膝枕されていた。
「何でだ?」
「知らん」
「僕にも……でも初対面じゃないってことは確かだよ? 名前呼びしてたし」
そう言えばそうだったな。スクライアは遺跡の発掘及び探索を主軸とする一族だ。過去に此処を訪れた際に現地の人間と仲良くなってても可笑しくないな。
「あ〜〜……お取り込み中所悪いんだが少し良いか?」
「ひゃっ!?」
「にゃ!?」
俺が話し掛けると2人は顔を真っ赤にして離れた。
「あ、か、管理局の人でしたか! お陰で助かりました!」
「ちげえよ、助かったのはこっちだ。俺達は絶賛迷子になっているんだからな」
「……え?」
俺の言葉にスクライアは若干顔が引きつったような気がした。
…………
「そうですか、天国の門が再起動を……あれはスクライア一族でもそろそろ封印が弱まるだろうと言われてて封印魔法が得意なメンバーが一時的に出向する手筈でした。それをたった3人で、しかもランクとしては平均でB-で封印をするなんて……」
「いやいや、俺達も中々とんでもない博打をしたと思ったがお前も同じくらい危険な事をしたからな? 事故があってロストロギアの『ジュエルシード』が此処第97管理外世界……通称『地球』に流れ着いたのを見て船から飛び降りた挙げ句の果てに自力で全部集めようなんて自殺行為にも等しい暴挙だからな?」
「それはそうかもしれないけど……」
「あの、さっきからユーノ君達が言っている事が理解出来ないんだけど……?」
俺達が情報を交換していると女……さっき自己紹介されたが『高町なのは』と言うらしいが俺達の話に着いていけずに話し掛けてきた。
「ああ、時空管理局ってのは平たく言えば地球や様々な異世界を守るでかい警察みたいな組織だな。俺達はその中でも下っぱ……こっちの警察に当てはめるなら巡査って所だな」
「因みにこっちでの刑事にあたる『執務官』と呼ばれる役職もあるが……今は関係ないな」
「ロストロギアは簡単に言えば普通の人間が下手に弄れば確実に暴走してその世界が壊滅、下手をすれば世界がまるごと消滅しちゃうような代物かな?」
「僕達スクライア一族はそんなロストロギアを発掘、封印しては管理局に行ってそのロストロギアを悪用されないように守ってもらっていたんだ」
「え、え〜と……あ、あんまり理解出来なかったけど……取り敢えずユーノ君達が好い人だってのは理解したの!」
つまり要約するなら殆どわかってないって事だな。
「(アヤト、高町さんどうする? 正直巻き込むのはこれっきりにしたいんだけど……)」
「(無理だ。考えてもみろ俺達のデバイスは封印機能がぶっ壊れてるから封印はどうしても高町にやってもらう必要がある。それに魔力だって回復しきってないしな)」
「(そうだな。いっそのこと現地協力者としてジュエルシードの回収と封印に協力してもらった方が幾分か気が楽だ)」
「(……それもそうだね)」
俺達は念話で高町の事について話すとそのまま高町に向き直る。
「高町、情けない話だが俺達はまだ魔力が回復しきってねえ。それにデバイスの封印機能もぶっ壊れて使い物にならねえ。そこで物は相談なんだが……」
「現地協力者として僕達に協力していただけませんでしょうか?」
「え……? う、うん! いいよ! 私、ユーノ君達と一緒にジュエルシードっていうのを集めるよ!」
「ええ!? 良いんですか!? なのははまだ魔法について素人ですよ!? それにどんな危険があるかわからないし……」
「そん時はどんな手を使ってでも高町からデバイスを取り上げてこの戦いから外す。それが俺達からの条件だ」
「……わかったよ」
「うし、交渉成立だな」
「良かった! ……ところでみんな住む場所は決まってるの?」
「「「「…………あ」」」」
俺達四人は高町の言葉に同時に硬直した。
如何でしたか?
次回は転生者Sideの話です。
次回もお楽しみに!
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第3話
よう、初めましてか?
俺の名前は『
俺は自転車で学校に向かう途中、トラックに撥ねられ死んだ。
で、死んだ先で出会った神様(俺と同い年位の男だった)と最近のアニメの事で話し込んだら気に入られてしまい(因みに俺が死んだのはよくある手違いではなく、あらかじめ神様達に決められていた寿命がなくなったかららしい)、『魔法少女リリカルなのは』の世界で第二の人生を特典付きで過ごす事になったんだ。
あ、特典はよくある『
千里眼は原作の名シーンを原作に介入せずに視るための能力、2つはいざというときの自衛の為だ。
最後の2つは……まあ、俺をひいた為に罪に問われるトラックの運転手に対する罪滅ぼしと俺に出来る最後の親孝行だからだ。
偽善だがやらないよりはましだ。
と、まあ、俺の自己紹介は置いといて。
俺はただいま小学校に来ていた。
何故かって? 俺が小学生だからであり……今日原作第一期が始まるからだ。
ユーノからの念話も受信したしな。
でも……俺や他の転生者がいる所為か、原作とはなのはの友人関係が違ってるんだよなあ……
あ、そうそう。俺以外にも転生者がたくさんいるが……原作が始まる数日前から激しく争っている。
何故かって? それは……大半の転生者が原作に介入してハーレムやらを楽しみたいからだ。俺がリリカルなのはに求めているのは『萌』えではなく『燃』えだから争ってないけどな。
あ、俺が警戒しているのは2人いる。
1人は『
黒髪黒目の爽やかイケメンなのだが……所謂オレ主タイプの転生者で、自分以外の転生者はなのは達でハーレムしようとする下衆野郎ばかりだと思い込んでいるらしく、手当たり次第に他の転生者をぶっ倒しているヤバイ奴だ。
もう1人は『
銀髪に赤と緑のオッドアイの小学生じゃ考えられないイケメンという典型的な踏み台であり、なのは達に対して嫁と言い寄っているが断っても照れていると勘違いする色んな意味で恐ろしい奴だ。
こいつは結構前になのはと楽しそうに話していたというだけで、隣の席の男子(こいつの命の為に言っておくが転生者ではない)を特典を使って半殺しにしようとした為ヤバイ奴と認識している。
まあ、どっちもなのは達と仲良く出来てないんだけどな。
何でかって……すずかとアリサには原作ではいなかった『同い年の執事』がいるからだ。
アリサの執事は『
燃え上がるような深紅の髪に野性味のあるイケメンに育ちそうな顔つきで戦闘力が高く、不深山を軽く投げ飛ばしてアリサに近付くのを阻止する。勘も良いらしく織主もアリサに全く近付けようとしない。
すずかの執事は『
氷を思わせる薄い水色の髪に少女のように可憐な顔つきに育ちそうな容貌をしている。こっちも戦闘力が高く、不深山がすずかに触れようとすると竹刀が見えない速度でその手を払うし、織主が近付こうとすると竹刀を出して威嚇するんだから勘も良いらしい。
勿論2人の親友であるなのはにも2人を全く近づけさせない。まさに鉄壁のディフェンスだ。
ちなみにこれは俺の勘だが……多分二人はお互いの執事に惚れてるな。
だってアリサは雪村に対して『顔を赤くしながら』ツンデレ台詞を言いまくるし、すずかは焔に対して話し掛ける際に顔を真っ赤にするしな……あ、俺はなのははユーノとのカップリングが正義だと思っている。異論は認める。
「よう、嫁達よ! 一緒に……」
「焔!」
「は、春人! お願い!」
「あいよ!」
「わかりました、すずかお嬢様」
何時も通りに嫁発言をしようとした不深山の足を雪村は竹刀で払うと、そのまま黒埼が不深山の無防備な腹に正拳突きを叩き込んだ。
「ぐえ!?」
潰されたカエルみたいな悲鳴をあげて不深山はKOされた。
「アリサ、すずか、なのは! 大丈……ぶふ!?」
織主が3人に声をかけようとすると、黒埼が足払いで織主を転ばせ、雪村が鳩尾を竹刀で突いた。
「「アリサ(様)とすずか(お嬢様)になのは(様)を呼び捨てで呼ぶな(呼ぶんじゃない)」」
そう言って、2人はのたうち回る織主をほっといて自分達の主人達に合流した。
「あ、相変わらずあの2人に容赦ないのねあなた達……」
「まあ、あいつらは鎌瀬よか始末が悪いからな」
「ええ、あいつはわかりやすい分あの2人よりは1000000倍増しです」
あ、2人の言った鎌瀬っていうのはもう1人の踏み台転生者の『
さてと……千里眼による観察を開始しますか。
…………
「マジかよ……」
甘かった、俺達が転生した影響は物凄くデカかった。
まず、なのはがユーノからの念話を聴いて草むらで倒れていたユーノを発見したのだが……ユーノがフェレットになっていなかったんだ。しかもなのはと知り合いぽかったし。
当たり前だが運び込まれたのは動物病院ではなく……なのはの家である翠屋だった。
「何で!?」
俺は思わずそう叫んでしまったが、なのはは家族に事情を説明してユーノを看病させてもらえる事になり喜んでいた。
因みに、鎌瀬と不深山の踏み台コンビはユーノを殺そうとしてたのか、さっきなのは達がユーノを助け起こした地点を「何処だ淫獣!」とか言いながら探していた。
織主は家で魔法の訓練をしながら、原作に巻き込まれない様にするにはどうするべきか考えていた。
いや、じゃあ何で魔法の訓練してんのよ、ついでに何でなのは達と関わろうとすんのよ、お前。
俺は織主の考えの足りなさに呆れながら次のシーンに向けて早めに寝るのであった。
…………
「すっげー人数……」
俺は離れた場所から千里眼で、なのはが魔法少女になる公園の付近にいる凄まじい数の転生者に呆れながら観察をしていた。
「お、来た」
俺は、なのはの家から抜け出してきたと思わしきユーノと、それを追い掛けてきたと思われるなのはが言い争ってるのを確認した。
「ユーノ君! 凄い怪我なのにどうして抜け出したの!」
「あのままあそこにいたら、なのはやなのはの家族に迷惑がかかるからだよ! 僕は君や君の大切な人達が傷付くのを見たくないんだ!」
おいおいユーノよ……それは女の子に対する殺し文句だろうよ。
案の定、茹でタコの様になったなのはと言った言葉の意味を考えて慌てるユーノの背後にジュエルシードの思念体が現れた。
「なのは!」
咄嗟にユーノがなのはを庇って障壁を作るがパンチを2、3発放たれるとすぐに壊れてしまった。
「……っ! 魔力が殆ど回復してない……!」
「ユーノ君!」
苦虫を噛み潰した様な顔になったユーノになのはが慌てて近寄る。因みに転生者達は互いが互いを牽制しあっているために出るに出れない状況だ。
「なのは、此処は僕が抑えるから逃げて!」
「やだ! ユーノ君を置いて逃げたくない! やっと再会出来たのにユーノ君と離れたくない!」
「な、なのは……仕方ないか。なのは! これを使って!」
そう言って、ユーノが首にかけていたネックレス……即ちなのはの最強にして最高の相棒になる『レイジングハート』を差し出す。
「これは……?」
「僕があれを食い止めるから僕が言った事をそのまま言って!」
「う、うん!」
そう言って、ユーノは思念体の前に立ちはだかり、詠唱を言い始めなのはもそれに続く。
思念体はそれをBGMにしながら突撃を……
「うおらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
開始する前に、槍を構えて横から突撃してきた管理局員と思われる奴にぶっ飛ばされた。
「こちらは時空管理局です! 何がどうなっているかはわかりませんが事態の打開の為に速く詠唱の続きを!」
しかもマジで管理局員だったし!?
マジか〜。俺達が転生してきたバタフライエフェクトってやつか? まさか管理局員がもうやってくるとは……
俺はこの展開に苦笑いをしながら、なのはが変身し最初のジュエルシードを封印する光景を見たのだった。
…………
「あいつらまさかの住み込みかよ」
俺は、ユーノと管理局員3人組に対するなのはの言葉に思わず頭を抱えた。
救援が来るまでの間、ユーノと3人組は翠屋に住む事になったんだ。最初は4人とも遠慮してたんだが、何処に住むにせよ泊まるにせよ、お金も身分を証明するものもない状態で小学3年生の年齢の4人が出歩いているのは不味いとなのはに論破された事で、4人はなのはの家に転がりこむ事になった。
尚、他の転生者は俺が原作に介入出来なかったのはお前のせいだと言わんばかりに責任を押し付けあっているうちに、警察が来て全員が補導され親と警官両方からお説教されていた。
「まあ、いいか。……今回のタイトルは第1話のタイトルのまんまかね?」
話の展開はかなり変わってはいるが、なのはは魔法の事は何にも知らなかったわけだし。
俺はそんな事を考えながら家路についたのであった。
…………
「水崎綾人だ! 宜しく頼むぜ!」
「暁裕也だ。短い付き合いになるかもしれんが宜しく頼む」
「萩野大和です! これから宜しくお願いします!」
「ゆ、ユーノ・スクライアです! 今日から宜しくお願いします!」
「え……? えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「(な、なんじゃそりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?)」
翌日。俺は転校生としてやってきた4人の姿に、なのはの驚愕の声をバックに椅子ごとずっこけたのだった。
如何でしたか?
次回は何故転校にまで至ったのかについて書きます。
次回もお楽しみに!
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第4話
「た、ただいま〜……」
「なのは、こんな時間に何処に……随分とお客が増えたな」
「お、おじゃましま〜す……」
「失礼します」
「おじゃまします」
「夜分遅くに申し訳ありません」
あれから俺達は、高町の提案(他に良い案がなかったのもあるが)で高町の家に向かっていた。
で、俺達は高町の家に入ると高町の家族と思われる男(雰囲気から見てかなりの使い手だな)が厳しい顔で高町を睨んでいたが、俺達が入ってくるとちょっとばかり驚いた顔になった。
「あ〜えっと、ちょっと話したい事があるんでその……高町さんのお父さんかお母さん……出来ればその両方を呼んできてほしいのですが……」
俺は普段の口調を取り繕いながら、高町の家族と話がしたいと言う。
「ん? 父さん達と何か話したい事があるのか? それならちょうど良かったな。もしもなのはが戻らなかったら付近一帯を捜すつもりで父さんも母さんも起きているんだ」
……ある意味では好都合か? つってもこれから話す事になると胃が痛くなるんだけどな……
…………
「えっと、まず何処から話せば良いんでしょうか?」
俺達はあれからリビングで高町の親父さんの『高町士郎』さん、お袋さんの『高町桃子』さんと対峙していた。
……正直、士郎さんからは猛スピードで逃げ出したいくらいの迫力があるのだが、そういうわけにもいかないんで、俺は正座している足をガタガタと振るわせながら話す。
「そうだね、まずは自己紹介からかな?」
「そ、そうですか。俺は時空管理局首都航空隊第3084隊所属、アヤト・ミズサキ空曹です」
「同じく時空管理局首都航空隊第3084隊所属、ユウヤ・アカツキ空曹です」
「お、同じく時空管理局首都航空隊第3084隊所属、ヤマト・ハギノ空曹です」
「ぼ、僕はゆ、ユーノ・スクライアです。昔なのはと遊んでいました」
「そう、貴方がなのはが言ったユーノ君だったのね? 私達がなのはに寂しい想いさせていた時に助けてくれてありがとう」
「い、いえ! 別にお礼を言われることでは……」
「うふふ……なのはも謙虚で良いお婿さんを見つけたのね」
「お、お婿さんって……!?」
「お母さん! ユーノ君をからかわないで!」
「あら? 私は本気なんだけど……」
桃子さんのお礼にユーノが顔を真っ赤にしながら言うと、続けて言われた事で耳まで真っ赤になり、高町が桃子さんにユーノと同じくらい顔を真っ赤にしながらツッコんだ。
……高町とユーノが知り合いなのはわかってたが家族も知っていたか……まあ、話が脱線しているから引き戻すとするか。
「こほん、話を戻しても良い……ですか?」
「あら、ごめんなさい」
「ご、ごめんアヤト君……お母さんのバカ」
俺が脱線した話を戻すために息を吐くと、桃子さんはお茶目に笑い、高町は顔を赤くしたまま桃子さんに毒づいた。
「え〜と……あの、聞きたい事はなんでしょうか?」
「まずは君達が何者かを聞こうかな。君達は一体何者だい?」
「えっと、俺達は時空管理局に所属している魔導師でして……」
俺がT4Wを起動させバリアジャケットを身に纏うと、士郎さんと桃子さんは驚いた顔になる。
「これは魔導師の杖であり相棒であるデバイスです」
「魔法使いの杖って意外と機械的なのね。もっとメルヘンな物かと思ってたわ」
「あはは……まあ、普通はそう思いますよね……」
「古いデバイスではそういう物もあります。まあ、たいていは博物館か骨董品として古い家系の家に保管されていますけど」
俺のデバイスに桃子さんが珍しいという風に頬に手を当てて言うと、ヤマトが苦笑いをしてユウヤが古いデバイスについて説明をする。
「それから、時空管理局というのは地球でいう警察と裁判所が一緒になった組織の事で、主に様々な世界で起こる犯罪の解決や管理世界の治安の維持です。また、その世界では手に負えないロストロギアの回収もしています」
「ロストロギアとはなんだい?」
「ロストロギアというのは古代ベルカ……僕らの世界の古い時代に作られた道具の事なんです。世界の中ではとても危険なロストロギアが神器として祭られていたり時には発掘されたりするので時空管理局が封印をしているんです。まあ、さっきアヤトが言ったとおり、その世界では手に負えない物に限りですけど……」
「それから、ユーノはそれらの発掘と封印を専門として旅をするスクライアの一族の出身なんです」
俺の管理局に対する説明でロストロギアについて士郎さんが聞いてきて、ユーノがロストロギアについて説明し、ヤマトがスクライアについて補足する。
「で、お話って言うのがこの世界のこの街に降り注いでしまったロストロギアのことなんです」
「……それはユーノ君がぼろぼろの姿でなのはに運び込まれてきたのと、なのはがこんな夜更けに外出した事と関係があるんだね?」
「……はい」
俺の言葉に士郎さんが確認すると、ユーノが意を決した様に話しだした。
「まず、今回の事件のきっかけは僕らスクライアが宝石型のロストロギアである『ジュエルシード』を発掘した事なんです。このジュエルシードは普段は無害な物なのですが……持ち主の願いを叶える事が出来るんです」
「……それの何が問題なの?」
ユーノの言葉に高町が首を傾げるが本題は此処からだ。
「その願いの叶え方が問題なんだ。ジュエルシードに願いを言うとそれを曲解して叶えようとするんだ。試しに『不老不死になりたい』って大人の1人が願ったら周りの人から寿命を吸い上げる事でその吸収した寿命の分だけ不老不死にしようとしたんだ。慌てて封印したから大事には至らなかったんだけどね……これで『強くなりたい』とかの願いだったらどんな事になっていたやら……」
「……大惨事になることは間違いないな」
ユーノがそのヤバい部分を言うと、高町の顔は急速に青ざめ、ユウヤは次に言った事に顔をひくつかせた。
「それでジュエルシードは危険だって結論が出て、管理局に引き渡すために僕が運んでいたんです。
そしたら、いきなり船が襲撃されて……襲った相手は『死ね! なのはを悪しき管理局に引き込む淫獣!』とか言いながら襲い掛かってきて……襲撃時に開いた穴からジュエルシードがばらまかれてしまって」
「おいおい、結果的にそいつが原因で事件が起きたのか……」
「うん、僕はレイジングハートを持って慌ててジュエルシードを封印しようとしたんだけど……」
「返り討ちにあったと……」
俺の言葉にユーノが「うん……」と頷く。
因みに高町は「ユーノ君は『いんじゅう』じゃないもん!」と言ってむくれていた。
「それから僕は状況を打開してくれる『誰かを』求めて通信魔法である『念話』をして……」
「それをうちのなのはが聴いたわけだね?」
「はい、最初はなのはが来て驚きました。何せ慌ててたものでまさか地球とは考えませんでしたから……」
「私も驚いたんだよ? だって、ユーノ君が血塗れで倒れてたんだから」
ユーノが若干苦虫を噛み潰した様な顔をしながら呟くと、高町も同意した。
「で、なのはの家に運び込まれたんですけど……なのはに迷惑をかけるわけにはいかないって思って出ていこうとしたら……」
「私が気付いてユーノ君を追っていったの」
「そこでジュエルシードに遭遇したんだね?」
士郎さんの言葉にユーノと高町は同時に頷いた。
「それでジュエルシードの思念体に襲われていたところをたまたま時空の迷子になった俺達が見付けて……」
「なんやかんやあって、高町さんにジュエルシードを封印させて此処に来たんです。
高町さんに此処を宿にしてはどうかと聞かれたのもあるんですけど、危険な事に参加させるかもしれない以上は家族の意見も聞かなきゃいけないと思って……」
俺の言葉に続いてヤマトが言葉を繋ぐ。
……士郎さん、さっきから黙ってるけど俺達殺されないよな?
「……なのは、なのははユーノ君達を手伝いたいんだよね?」
「うん。ユーノ君に助けられた時の恩返しもしたい。
……それに此処にはアリサちゃん、すずかちゃん、焔君、春人君がいる、お父さん、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃんもいる。この街には私が守りたいものが一杯あるんだ。だから……ユーノ君達と一緒に戦いたい!」
「……危険かもしれないよ?」
「……それでも!」
高町の強い意見に士郎さんは黙りになる。桃子さんは「なのは……強い子になったのね」と涙ぐんでいた。
「……ユーノ君、アヤト君、ユウヤ君、ヤマト君」
俺達は士郎さんからの声かけに同時に返事をする。
「娘を、なのはを任せても良いかい?」
「……はい!」
「高町さんは傷一つ付けずにお返しします」
「俺達も全力でサポートします」
「それに管理局の船も見回りをしていてすぐに来るはずですから」
俺達の返事に士郎さんはうんと頷くと……
「恭也、美由紀。彼らは信用出来るようだよ」
「俺も聴いててわかったよ」
「私もね」
士郎さんの言葉とともに、隣の襖を開けて2本の小振りな刀(後で高町に聞いたら小太刀と言うらしい)を持ったこの家に来て最初に会った高町の兄と、外から窓を開けて(……後ろ手に鉄で出来た扇と糸を隠しているが)高町の姉と思わしき人物が入ってきた。
……つまり娘(妹)に危害を加えそうな人物だったら容赦なく殺されてたわけか、恐ろしい。
「じゃあ、お父さん……!」
「うん、彼らは今日から此処に住むよ」
「やった!」
高町が俺達(主にユーノ)が此処に住める事に喜んだ。
……そして、此処で俺の記憶は緊張の糸が切れたのと我慢していた眠気で途切れる事になる。
…………
朝、目覚めて朝食を食べた俺達は士郎さんに言われてリビングに来ると(高町は学校に行った)、そこには俺達四人分のバッグがあった。
「あの、士郎さん。これは一体……?」
「ああ、君達はなのはと同い年なんだろう? だったら学校に行かないと色々まずいと思ってね。
戸籍の作成となのはと同じ学校への転入の手続きをしたんだ」
「「「「…………はい!?」」」」
俺達は同時に驚いた。
…………
「えへへへ……」
「なのは、顔が幸せそうに緩んでるわよ」
私『高町なのは』は、アリサちゃんに言われた事で、漸くユーノ君に恩返しが出来るのと一緒に住むことが決まった事で顔が緩んでる事に気が付きました。
「そんなにユーノ君が家に来たのが嬉しいの?」
「うん!」
「ユーノは幸せ者だな!
こんなにも自分を思ってくれる奴がいるんだからなぁ……俺なんてそんな相手はいないぜ?」
「……それは、ツッコミ待ちですか? すずかお嬢様に好意を抱かれている焔が言っても説得力がないのですが……」
すずかちゃんの質問に私が答えると、アリサちゃんの執事の焔君が羨ましそうに呟き、すずかちゃんの執事の春人君がツッコミました。
……それは、アリサちゃんに好意を抱かれているのに気付いていない春人君も説得力無いよ?
「あ、先生が来た」
私が言うとみんなは慌てて自分の席に戻った。
……あれ? 席が4つ多いような……?
「はーい! 皆さんおはようございます! 今日は皆に転入生を紹介しますね!」
そう言って私達の担任である『
「水崎綾人だ! 宜しく頼むぜ!」
「暁裕也だ。短い付き合いになるかもしれんが宜しく頼む」
「萩野大和です! これからよろしいお願いします!」
「ゆ、ユーノ・スクライアです! 今日から宜しくお願いします!」
私の学校の制服を纏ったユーノ君達だった。
「え……? えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
私の声が響くと同時に、後ろの席に座っていた橋出君がひっくり返って大きな音をたてた。
何!? 何がどうなってるの~~~~!?
如何でしたか? リアルが忙しくて長引いてしまいました。
次回もお楽しみに!
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第5話
「じゃあ、水崎君は橋出君の隣、暁君はバニングスさんの隣、萩野君は雪村君の隣、スクライア君は高町さんの隣の席よ」
あれから士郎さんによって学校まで連れてこられた俺達は、なのは(何時までも名字呼びは他人行儀すぎるとのこと)のクラスの担任の先生に案内され、なのはのクラスに来て自己紹介をしていた。
……戸籍を作って即学校に転校できるとか、士郎さんはどんなコネがあるんだ?
あらゆる意味で敵に回したくはねえな。
そして、俺がこの教室に入って気付いた事は魔力を持つ人間がなのはを含めて7人もいた。(内2人は全く気付いていないみたいだけどな)
他の3人もわかったのか渋い顔をしている。
魔導師だからってなのはみたいに無条件で味方みたいな奴は少ないだろう。俺は他の6人については警戒をするよう他の3人に念話で伝えた。
「あ〜〜……水崎で良いのか? 俺は橋出観男、よろしくな」
「ああ、今日から隣になる水崎綾人だ。よろしくな! 橋出!」
「お、おう……(しっかし、なんで管理局員であるこいつらがこの学校に転校してきたんだ? テンプレの如く士郎さんが何かしたのか……?)」
俺は何やら考え事をしている橋出を訝しみながら席に座り、先生の方を向くヤマトとユウヤも隣に挨拶をしている所だった。
で、ユーノは顔を真っ赤にして挨拶をしながらなのはの隣の席に座り、なのはも顔を真っ赤にしてユーノに話し掛けていた。
……!? 殺気……!? 何処から……?
「じゃあ、転校生の皆は今日は隣の人に教科書を見せて貰ってね? じゃあ38ページを開いて……」
俺が殺気の出所を探るためにユウヤにサーチャーを放つ様に念話を出すと、橋出が机をくっつけてその真ん中に教科書を置いたので顔をくっつけて教科書を読んだ。
……ユーノとなのははそれで完璧にラブコメってたけどな。
…………
「ねえねえ? 水崎君、何処から来たのかな? お父さんとお母さんはお仕事は何をやってるの?」
「暁君、特技は何? 」
「萩野君! 好きな食べ物は何!?」
「スクライア君、高町さんと親しそうな会話をしてたけどどんな関係なの!?」
俺達は休み時間になると、あっという間に好奇心旺盛なクラスメイト達に包囲されて、質問と言う名の弾幕に曝されていた。
「あー、えーと、あの……」
「はいはい、転校生達が困ってるからそんなにいっぺんに質問しないの。質問するなら一人一回ずつよ」
そう言って俺達を助けてくれたのは金髪の女……確かユウヤの隣の席の『アリサ・バニングス』だった筈だ。
「ありがとな、バニングス。助けてくれて」
「どういたしまして、クラスの纏め役として当然の事をしたまでよ」
俺が礼を言うとバニングスはさも当然のような事を言った。
「あ、そうそうこのクラスで日常茶飯事の事があるから……」
「我が嫁達よ! そいつらから……」
「焔」
「あいよ」
「離れ……べばあ!?」
バニングスが何やら言おうとしたところに、左右の目の色が違う銀髪の男が近付いてきたのをバニングスは隣にいた赤髪の男に命じてぶっ飛ばさせた。
「気にしないようにね?」
「その前にあれがこのクラスで日常茶飯事の事なのか!? つーかあいつは大丈夫か!?」
「ええ、あ、あいつは気にしなくていいわ。クラスの皆を『モブ』と言うわ、私とすずかとなのはを『我が嫁』だのと言うわで傍迷惑な存在だからああいう扱いで良いのよ」
俺がバニングスに吹っ飛んでいった男の事を聞くと、バニングスは汚物でも見るような目で男を盛大にディスった。
「あ、紹介が遅れたわね。こいつは黒崎焔、あたしの執事よ」
「黒崎焔だ、よろしくな水崎」
「おう、よろしくな」
俺と黒崎が握手をするとチャイムがなり、先生が入ってきたので俺達はそれぞれの席に座った。
……気絶していた銀髪の男は憎々しげに黒崎を睨むとそのまま荒々しく座った。
……確かにありゃかかわり合いになりたくないタイプだな。
………………
「少し良いかな?」
「……ん? え~と……誰だ?」
昼休み、俺が昼飯を食った後教科書を読んでいると、黒髪の爽やかな雰囲気を纏った男が話しかけて来た。
ただし、爽やかな雰囲気に混じって殺気と闘志が入り雑じった気配を感じてもいるが……
「ああ、俺は織主晴夢。よろしくな水崎」
織主は名乗ると、此処ではなんだからと屋上にまで俺を連れ出した。
「で? 何の用だ?」
「ああ、用事は質問と提案だよ。
質問の方は……水崎君、君は、いや君達3人は『転生者』なのか?」
……あん? 転生者? なんだそりゃ?
「転生者? なんだそりゃ? 俺達はそんなのじゃねえぞ?」
「……そうか、それなら良いんだ(しらばっくれてるのか? それとも……いや、今は良いか)。提案の方はクラスの嫌われ者の鎌瀬と不深山を一緒に潰さないか?」
……いきなり何を言いやがるこいつは!?
「いきなり潰すなんて言われて首を縦に振れるわけがねえだろ!? つか、鎌瀬と不深山って誰だよ!?」
「ああ、ちょっと性急すぎたね。不深山はアリサの執事の黒崎君に殴り飛ばされた奴、鎌瀬は昼休みが始まって早々にすずかによっていってすずかの執事の雪村君に吹っ飛ばされた奴だよ」
……ああ、あいつらか。
「……誰かはわかった。でもよ、いくら嫌われ者だからっていきなり潰すはないと思うぜ?」
「……クラスの皆はあいつらに迷惑してるんだ、それになのは達だってあいつらに嫁と言われ続けて困っている筈だ。それを見捨てるのか?」
「見捨てるって……俺は今日此処に転校してきたばかりだぜ?」
「……君達は友人が救える力が、魔法があるのにそれを使わないのか!? あいつらはいつか魔法と特典を使って何かをしでかす筈だ! 管理局員である君達にはそれがわからないのか! その前にあいつらを再起不能にしてからの方が君達がジュエルシードを探すのも楽になるはずだ!」
……それが本音か。
「悪いが、管理局は事件を起こす前に犯人を捕まえるなんて健康体に薬をぶちこむ様な真似はしねえんだよ。
それに再起不能なんて犯人が満足に生きられない様な事もな。ついでに言わせてもらうが、将来お前の様な『危険人物』が管理局に入ろうとしたら弾かれるだろうぜ」
「な!? 俺の何処が危険人物なんだ!?」
「……事件を起こす前に犯人を『再起不能』にしようなんて奴が、犯人を出来るだけ『無傷』で捕まえようとする組織に入れるわけがねえだろうが」
俺は話は終わりだとばかりに屋上を出たが、織主はぶつぶつと「なんでだ……? 俺が読んでた二次創作の主人公は確かに『踏み台』を再起不能にしても皆に褒められていて……」とか宣っていた。
……織主、鎌瀬、不深山の3人は協力者としてはペケだな。
俺は溜め息を吐きながら念話で他の4人に織主、鎌瀬、不深山の3人に注意するように言った。
…………
「てなことがあった」
「春人君と焔君が織主君を『あいつは危険人物だから近付いたら(近付いては)ダメだ(ダメです)』なんて言ってたのはそういう事だったんだ……」
俺が4人に屋上での事を話すと、なのはは納得した顔で呟いた。
……バニングスと月村の執事は勘が良いな。
普通なら、多分あの爽やかなルックスで騙されると思うぜ?
「ユウヤ、結局殺気を放った奴の正体は誰だったんだ?」
「……隣のクラスの黒髪のツインテールの女だ。
……俺達やなのは達にサーチャーを放ってたし、織主と同様にジュエルシードを知っていたうえにユーノを『いんじゅう』と呼んでいたぞ。
因みにサーチャーは全部破壊したから話を聴かれる心配はない」
「僕の方も歩き回ってたら、『原作』がどうたらって言う奴がちらほらいたよ」
「……女の子の方は『百合島レズ』さんだね」
俺達4人は女の子につけるにはあんまりな名前に揃ってずっこけた。
「なんだその無茶苦茶な名前は!?」
「名字の百合島は兎も角……レズなんて名前をよく付けられたねご両親は!?」
「……何でも2人とも同性愛者だったらしいの。因みに男の子だったらホモって名前にする予定だったんだって」
「知りたくなかったよそんな情報! てか、何でそんな2人が結婚できたの!? そして結婚したの!?」
「2人とも大会社の跡取りで政略結婚なんだって」
「激しく納得! そして嫌な顔をしたのってもしかして……」
「うん、百合島さんもお父さんとお母さん同様に同性愛者なんだ……私やアリサちゃん、すずかちゃんに何度言い寄ってきたかわからないよ。それに焔君や春人君の事を『薄汚くて欲望まみれの男子』なんて言って悪評を振りまいて2人から引き離そうとしたし」
……また清々しいくらいの自分本位な奴だな。
俺は溜め息を吐きながら話すなのはを見て、百合島も協力者にしない事を決定した。
……それに疑問もあるしな。
「どうしてあいつらはジュエルシードの事を知っていたんだ……?」
「……そういえばそうだね。
織主君も百合島さんもどうして知ってたんだろう……?」
あの場にいたのは俺達3人となのはとユーノの5人だけで、会話を聴かれる可能性は限りなく低い筈だ。
なのに知っていたということは……?
「未来視のレアスキル……もしくはそれに準ずる能力……?」
「もしくは織主の言う転生者って奴らの世界では、この世界を元に物語が放送されていてそれを観てたからとかな」
「それはないと思うよ……?」
後に俺の推測は大当たりだった事を知るのだが、それはまた別の話である。
「そうだよ、マイトガインとかじゃないんだから」
「なんでユーノ君がマイトガインを知ってるの……?」
「次元世界……特に管理世界では地球のサブカルチャーは大人気なんだ」
俺も親父が録画したガンダム系列やスーパー戦隊系列の作品を見てるしな。
因みにユウヤは牙狼、ヤマトはワンピース、ユーノは勇者シリーズ(特にガオガイガー)やグレンラガン、マクロスシリーズがお気に入りらしい。
俺達が他愛ない話をしていると……
「……!」
「アヤト、お前も気が付いたか」
「ああ、こいつは……!」
「魔力波形のパターン一致、間違いない、ジュエルシードだ!」
「ユーノ君! ジュエルシードの発動した場所は!?」
「え〜と……! 近くの神社の境内……不味い! 近くに人と動物がいる!」
「どっちかが取り込まれたら不味いね……急ごう!」
「うん! 僕が案内するよ! 着いてきて!」
俺達はユーノの先導の下にジュエルシードを抑えるべく行動を開始した。
……そして、これが長きに渡る『転生者』達との戦いの狼煙にもなるのを俺は知らなかった。
如何でしたか?
次回は転生者との初戦闘です
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第6話
「現場は此処か!」
俺が神社の石段を二段飛ばしで境内まで駆け上がると、そこには三つ首の凶悪な面構えのケルベロスになった犬(に憑依したジュエルシードの思念体)と、愛犬のあまりの変貌にショックを受けたのか白目をむいて仰向けに気絶した飼い主と思われる女性がいた。
「速いよアヤト……うわあ!? 犬が凄いことになってる!?」
「……あの犬の『強くなりたい』や『大きくなりたい』という願望が変質されて、あんな風に変貌したのか?」
「推察は後にして早くワンちゃんとあの人を助けないと! でないとあの人がジュエルシードに食べられちゃう!」
「そうだね! なのは! 昨日と同じように詠唱を……」
猛スピードで走った俺に漸く追い付いた4人が口々にそれぞれの意見を述べた後、それぞれのデバイスを起動させようとして……!?
「伏せろ!」
「ユーノ君、危ない!」
俺がヤマトとユウヤを、なのはがユーノを地面に押し倒すと、その頭上を無数の剣、槍、矢その他諸々の武器が通過し……
『『『ギャガワオォォォォン!?』』』
それら全てがケルベロスに命中した。しかも……
「っ!? 何の冗談だ!? 今の攻撃全部俺達どころかジュエルシードに憑依されてる犬ごと殺す気で放ってたぞ!?」
ケルベロスの傷口から漏れる魔力の煙に混じって流れる赤い液体……つまりケルベロスの元になっている犬が傷付いた事で血を流しているを示す物だった。
「う、ああ……あ? う、うそ、だよね……? あれじゃ、ワンちゃんが……ワンちゃんが……死んじゃ、う……」
「なのは、しっかり! あの程度の量の出血ならまだ軽症の段階だ! 急いで治療すれば間に合う筈だ!」
流れる犬の血に気が付いたなのはが青ざめた顔でふらつき、ユーノが慌てて支えて犬がまだ大丈夫だとなのはを諭す。
「ちくしょう! 何て真似をしやがる! 何処の誰だ、こんなことをしやがるのは!」
「……アヤト、ヤマト。俺は今、無性に腹がたっている……!」
「僕も同じだよ。管理局員として、同時に1人の人間としてね……!」
「ふん、図体だけの大きなデカブツの癖に存外しぶといな。我の嫁たるなのはに我の実力を示すデモンストレーションには丁度良い……何?」
俺達があまりの暴挙に怒りながら後ろを振り向くと、そこには黄金の鎧を身に付けた赤目に金髪の同い年の男がいた。
「てめえか! こんなひでえ真似をしやがったのは!」
「何故だ? 何故淫獣のユーノがフェレットになっておらんのだ? しかも嫁であるなのはの周りに何故モブキャラが3人も……? まさか、我以外の転生者の仕業か……? いや、我の学校の転生者は全て半殺しにしたはず。ならば何故……?」
俺が男にキレながら問いかけると、男はぶつぶつと訳のわからないことを呟いていた。
……呟いてる事に管理局員として許せねえ言葉があるな。
「まあ、良い。そこの淫獣にモブキャラども、そこから退け。我がそいつを打ち倒しなのはの好感度を上げねばならんからな」
「……嫌だね」
男がふざけた事を言いながらよってくるが、そんな男にヤマトがポツリと呟いた。
「何……?」
「ああ、聴こえなかった? じゃあ君のその愚鈍で愚劣で若いのに呆けたお爺さんみたいに遠くなって頭部に着けてる意味がない耳にもよーく聴こえるように言ってあげようか? ……嫌だねって言ったんだよ、この動物虐待が趣味で見た目の最悪な金ぴか鎧を着込んだキ○○○野郎!」
「な、な、な……」
男が問いかけると、ヤマトは俺達が訓練校でチームを組む事になった『事件』並の怒りの表情で容赦なくピー音が入るレベルの罵倒を言い放った。
その罵倒に男となのは、ユーノが凍り付く。
「……え? や、ヤマト……君?」
「え、ええ~?」
「ああ、なのはとユーノは初めてだったな? ヤマトは普段は温厚で俺達の中では一番理知的なんだが……キレるとあの通り凄まじい罵倒が相手に叩き付けられる。そもそも俺やアヤトがヤマトとチームを組む切っ掛けになったのは、あいつがアヤトや俺をバカにした同級生を苛烈に罵倒して模擬戦をするはめになったからだ。それ以来俺とアヤト、ヤマトの3人はつるむようになったんだ」
「で、キレるとあんな罵倒が飛び出すものだから耐性も出来たし、罵倒を事前に止めるタイミングもわかってきたんだが……流石に今回は止めれなかったみてえだ」
「でも2人とも止める気全くなかったよね?」
俺とユウヤの説明にユーノが突っ込みを決める。ち、ばれたか。
「も、モブキャラごときがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! この至高のオリ主たる我を! 『フミーダイ・ヒモテ』を罵倒するとは良い度胸をしているな!」
「至高? 歯垢……歯についてる汚れの間違いじゃないの?」
そのヤマトの一言で男……フミーダイは完全にキレたらしい。
「……もういい! モブキャラには身の程というのを思い知らせてやる……!」
「……アヤト、ユウヤ。こいつ幾つ法律を犯してる?」
「ん? え~と……まず傷害と殺人未遂だろ? それから管理外世界での魔法の使用に殺傷設定での魔法の使用、それを人間と動物に向けて放ったこと、それで人間や動物を傷付けたこと、そんでもって無許可の魔導師であることも法律違反だな。管理外世界だから最後のは意味ねえけど」
「ついでに言うならデバイスの違法所持に違法改造だな。あのデバイス、元々は『ギルガメッシュ』というインテリジェントデバイスらしいが言語機能と非殺傷設定に関する機能が改造されていて機能を失っている。カードリッジシステムも装備されているから気を付けろ」
「な、なんでそんなことを……! 貴様らのようなモブが何故管理局の法律を……」
「管理局員だからだよ。T4W、セットアップ」
「同じく。SD9、セットアップ」
「俺もだ。J5S、セットアップ」
俺達がデバイスを起動させると、フミーダイは愕然とした表情で俺達を見た。
「ば、バカな!? 何故管理局員がこの時点でいるんだ!? 『原作』と違いすぎる……そうか、貴様ら転生者だな! なのはを悪の管理局に引き込もうとするつもりだろうがそうはさせん! 我が貴様らの野望を砕いてくれる!」
……こいつは何を言ってるんだ?
「……ヤマト、ユウヤ。こいつ何を言ってんだ? 悪の管理局って……何をどう考えたらそんな結論になるんだ?」
「黙れ! 三脳に支配されている組織なぞ悪そのもの! 我が……」
「うるさい、バインド」
「滅ぼ……モゴモゴ」
ヤマトがフミーダイの言い分に頭にきたのか、即座にフミーダイをバインドで雁字搦めに縛る。
「……なのは、彼の相手はアヤト達に任せて僕らはジュエルシードを回収しよう」
「う、うん! レイジングハート、セットアップ!」
ヤマトがフミーダイをバインドで雁字搦めにしていると、なのはとユーノはケルベロスに向かって走っていった。
……スルーしてたけど今、祈祷型のインテリジェントデバイスを無詠唱でセットアップしなかったかアイツ!?
「奇襲とは卑怯な! やはり管理局員は悪! 悪に裁きを与える我の正義の鉄槌を喰らえ! 『王の財宝』!」
バインドから脱出したフミーダイがそう言うと、フミーダイの背後の空間に無数の剣や槍等の武器が現れた。
あれがケルベロスを滅多刺しにした魔法か……!
「……公務執行妨害も追加! 今更謝っても許さねえぞ!」
「黙れ! 泣いて謝るのは貴様らの方だ!」
フミーダイが手を振り下ろすとそのまま武器が発射されるが……
「『マシンガンバレット』、ランダムシュート!」
ユウヤが放った射撃魔法が、発射された武器を全てケルベロスにも俺達にも(勿論気絶してる飼い主にも)当たらないように軌道を変えさせた。
「ば、バカな!? 何故我の宝具が貴様のようなモブキャラに……!」
「……どんなに勢いがあっても、角度を変えるように撃てば当たらないようには出来るさ」
さらっと言ったけど、それは結構高等技術だからな?
「余所見をしてる暇はないよ? バインド!」
「ぬぐ!? ええいバインドごときが我を縛れ……」
「『ソニックランス』!」
ヤマトがバインドで再びフミーダイを縛ると、フミーダイがそれを解く前に俺は加速魔法を組み込んだ刺突をフミーダイに叩き込んだ。
「ぶげあ!? き、貴様ら……! このオリ主である我を虚仮に……」
「サーチャーチェンジ、『フラッシュボマーシューター』……シュート!」
「こざかしいわ!」
ユウヤが放ったシューターをフミーダイは撃ち落とし……直後シューターが激しく光ながら爆発しフミーダイは光に目をやられたのかひっくり返った。
「!? ぐがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「フラッシュボマー……俗に言う閃光弾だ。撃ち落とすのは悪手以外の何物でもないぞ」
「お、おのれおのれおのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 天の……」
「大技は撃たせないよ! バインド!」
「こいつで終わりだ! スパイラルバンカー!」
「同じく、『スタンガンショット』!」
「ば、バカな……我がモブキャラごときにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
大技を放とうとしたフミーダイをヤマトのバインドが縛り、俺のスパイラルバンカーがフミーダイのバリアジャケットを大幅に破損させ、最後にユウヤの対象を麻痺させるスタンガンショットが炸裂しフミーダイは「あばばばばばばばばばば!?」と言いながら気絶した。
「……ユウヤ、お前これ最大出力で撃ったろ?」
「……後遺症は残らん」
「……それもそうだな」
「馬鹿言ってないでさっさとデバイスを回収してなのはの援護に向かおう」
そう言って俺達はフミーダイからデバイスを取り上げると、なのはの援護に向かおうとして……
「ちょっと痛いけど絶対に助けるから! ディバイン……バスター!」
『『『ギャオォォォォォォォォォォン……』』』
ケルベロスが桃色の光に飲み込まれ、ジュエルシードがケルベロスから分離される場面に出くわした。
「「「……え?」」」
砲撃……魔法? 嘘だろ、本当にアイツド素人かよ。砲撃魔法なんて一朝一夕に取得できる魔法じゃないぞ……
「プロテクションが破れなかったからもしやと思ったが……なのはは俺達3人全員の魔力よりも高い魔力量を持ってるんじゃないか?」
……奇遇だなユウヤ、俺も同じことを思ってたよ。
「あ、あははははは……凄いやら怖いやらだね……」
俺達3人ははははと笑いながら、なのはの力に戦慄を覚えた……
…………
「なのは、お前はこの戦いから降りろ」
「どうして!?」
フミーダイと気絶していた飼い主、ユーノが治癒魔法で治した犬を交番に届けた後、俺は帰り道でなのはに戦いから降りるように言った。
「当たり前だよなのは。非殺傷設定を切るような敵がジュエルシードを狙ってるんだよ!? なのはが大怪我を負ったり死んだりしたらどうするのさ! そんなことになったら士郎さん達に申し訳がたたないし何より……僕は自分を許せなくなるんだ……」
「ユーノ君までそんな……」
「ユーノの言う通りだ。お前が傷ついたら悲しむ人がいるのを忘れるな」
「私が抜けたら皆はどうするの!?」
「まあ、なんとかやるよ。ジュエルシードの封印はなのはに任せるしその時は呼ぶけどな」
「レイジングハートは護身用に持ってて。でもジュエルシードを探したり戦うのはダメだよ」
「……っ! う、うん……」
なのはは俺達が折れないと知ると、項垂れた後力なく頷いた。
「(……これで良いんだよな?)」
「(……多分な)」
「(ユーノ、フォローは任せたよ)」
「(……うん、わかったよ)」
俺は力なく歩いているなのはを見ながら念話で会話した……
…………
「ふぇ、『フェイト・テスタロッサ』です! 今日から宜しくお願いします!」
翌日、PT事件におけるなのはの道標となる人物が転校して来るのを俺達はまだ知らなかった……
如何でしたか?
次回は橋出視点でのお話です。
次回もお楽しみに!
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第7話
よう、読者の皆さん。傍観系転生者の橋出観男ですよっと。
今回、俺は転校してきた管理局員3人組を千里眼で観察していたんだが……どうやらあいつらは、3人とも転生者ではないらしいというのがこの1日観察をしていてわかった。
まず、転生者特有の大量の魔力がなく、良くてB+、低いとCというランクだった。次に3人とも転生者のように原作キャラに妙な仕草をしないことだ。
これは踏み台の鎌瀬や不深山のように、ニコポ・ナデポを持っている転生者が撫でるために手を近付けたり気持ちの悪い笑顔をしながら近付く事を指す。オレ主の織主は、そんな他の転生者達を必要以上に痛め付けて周りを怖がらせる様な行動を言う。
で、織主が昼休みにアヤト・ミズサキに踏み台達を倒そうと言ったんだが……アヤトはあっさりとその提案を蹴った。曰く、健康体に薬をぶちこむ様な真似はしないんだと。そういやパトレイバーでも言ってたなそんなこと。
それから、管理局は二次創作では魔力が凄いからとオリ主を入れようとするんだが……アヤトは織主にはっきりと管理局には入れないと言った。なんでも犯罪者だからと言って、事件を起こしてないのに半殺しにしようと言うような危険な奴が、どんな犯人でも出来る限り無傷で捕らえようとする管理局に入れるわけがないということらしい。
まあ、当たり前だよな〜〜。二次創作ではスルーされてたけど、普通なら踏み台転生者とはいえ、再起不能にするというのは軽くて傷害罪、重いと殺人未遂だからな。
二次創作のオリ主が踏み台にやってる事って、読者からすると犯罪なんだよな〜〜……あ、織主の奴が二次創作の事をぶつぶつと呟いた後で「とにかく、なのは達が踏み台達の餌食にならないように注意しないと」と言って屋上から出ていった。
だから、何でお前は原作に関わりあいたく無いのにそんな事をするんだ……
俺は織主の関わりあいたくない詐欺に溜め息を吐きながら、教室に向かって走った。
…………
放課後、俺は千里眼で3人組+なのはとユーノを見張っていると、昼休みに織主が危険人物だと認識した切っ掛けをアヤトが話していた。
まあ、情報を共有するのは当然だな。俺も他の傍観系転生者とは連絡を取り合ってるし。
で、隣の組にいるTS転生者百合島レズの名前の話になると男子が4人とも引っ繰り返った。
当然だよなあ……俺も名前を知ったらずっこけたし。
てか、何で俺を含めた転生者の名前はやたらと変な名前ばかりなんだろうな? 本当に不思議だ……
あ、なのは達がジュエルシードの発動に気が付いた。
これは第2話のジュエルシードだから、犬が変化した奴が相手になって、なのはが砲撃魔法を初めて使う展開になる……筈だ。
なんせ、俺みたいな傍観系を除いた他の転生者達は、第1話から原作に接触出来なかったせいで凄まじく殺気立ってるから、正直何が起こるかわからねえんだよなぁ……
まあ、俺がやる事はたった一つ。傍観に徹する事だけだ、焦る事ねえか。
…………
なのは達がジュエルシードが発動した現場に到達すると、そこにはケルベロスに変貌した犬と仰向けになって気絶した飼い主がいた。
……愛犬が宝石みたいなのをくわえたと思ったら、怪物に変貌したらそりゃ驚いて気絶するか。
で、なのは達がやって来てデバイスを展開しようとしたら……後ろに現れた隣街の踏み台転生者であるフミーダイ・ヒモテが王の財宝を放ちケルベロスをズタボロにした。
確か、あいつは転生者とみるやハーレムの邪魔と言わんばかりに特典で叩きのめしてた筈だから、王の財宝を
ま、オリキャラ3人のお手並み拝見と行くか。
…………
「まさか鎧袖一触とは……」
管理局員3人組は、見事な連携でフミーダイの王の財宝をものともせずに俊殺した。
フミーダイもそれなりに強い筈なんだが……特典に胡座をかきすぎてまともに魔法を訓練しなかった事が裏目にでたな。魔法をそれなりに訓練してたらまだ抵抗を出来た筈だ。
で、なのはの方は……ケルベロスの機動力に苦戦していたが、ディバインシューターでケルベロスの行動範囲を狭め、そこにユーノがバインドで雁字搦めにした後で、後になのはの代名詞になる『ディバインバスター』でケルベロスを消し飛ばし、そのままジュエルシードを封印した。
「……なんという馬鹿威力」
俺は、なのはの砲撃魔法のトンでも威力に冷や汗をかいた。
…………
「あ~あ、まさかユーノを含む4人がなのはを離脱させるとは……」
フミーダイの馬鹿が……自分の行動したらどうなるかを確りと確認してから行動しろっての……あいつも自分のやったことで、なのはが戦線離脱するなんて予測もつかなかったんだろうな。
で、フミーダイはというと……目を覚ました後交番の警官達に暴言を吐いて交番を飛び出して家路についたら、漆黒の刀のデバイスを手に持ち、同じく漆黒のバリアジャケットとマントを羽織った中二病の塊のような男に殺されていた。
確かあいつの名は……『
……そういや転生者殺しって、どうして同じ転生者なのに神様に転生者を倒す様に頼まれるうえに、人殺しをするのにあっさりと人殺しに慣れるし……しかもそれを『俺可哀想~~』に利用するしな。
そんでもって神様も神様だ。幾ら転生者で失敗したからって、何で転生者に頼むんだろうな……そいつがしくじった転生者と同じような転生者でない保証ってないのに……まあ、ご都合主義って言えばそれまでか。
「……ん? あれは……」
俺が溜め息を吐きながら千里眼を起動させると、そこには前に言ったなのはの隣にいて話しただけで不深山に殺されかけた『
因みに鮎川は不深山に殺されかけたせいで軽い対人恐怖症になり登校を拒否し危うく引きこもりになりそうになったらしいがなのは達や先生、両親の説得でなんとか踏み留まったらしい。
「……って、ん? ジュエルシードの反応!?」
俺がサーチャーを鮎川の周辺に張り巡らせると、鮎川の近くで3人程の転生者がジュエルシードの思念体(面倒だから以降はジュエルシードと呼称する)と戦闘をしていた。
……ジュエルシードにボッコボコにされてたけど。
「畜生!? 何でたかだかジュエルシードの思念体がこんなに強いんだよ!? 話が違うぞ!?」
「うるせえ! それから射線に入るんじゃねえよ! 撃てねえだろうが!」
「くそ! このままじゃ俺達は
あ~……昨日の展開を見てなかった奴等か。既に原作はずれ始めているにも関わらず、原作に入るためにジュエルシードを……? って不味い!? あいつら結界の張り方が甘過ぎだ! あれじゃ中の音が外に漏れて……
「? なんだろこの音……?」
ぎゃーす!? 予想通りに鮎川が音に気付いて結界の隙間から中に入っちゃったよこん畜生!
「『
『手伝いたいのはやまやまだが、俺は今織主に追われていて助けにいけないんだ! すまない! それから織主は転生者狩りを再開するつもりらしい!』
そう言って、俺の傍観者仲間である『
……織主の奴、一時期は鳴りを潜めていた転生者狩りを再開したのかよ。懲りねえ奴だなホントに……って言ってる場合じゃねえ!?
「……え? 何、あれ……?」
「ん? おい! 丁度良い囮がいるぜ!」
「ち! 仕方ねえ、あいつに思念体を押し付けて逃げるぞ!」
「くそ! くそ! くそ! 何が最高の第2の人生だよあの糞神め! 『最悪の』の間違いじゃねえのか!?」
そう言って転生者達は悪態を吐きながら逃げ出した。
当然、そこにはジュエルシードと鮎川が残るわけで……
「あ……あ……」
鮎川が目の前に現れた
俺は全速力で現場に駆け付けようとするが、千里眼と最低限の魔法しか覚えてなかったうえに、焦っている為か飛行魔法が普段より遅い!
「くそったれが! 間に合わねえ!」
『ガアァァァァァァァァァァ!』
「う……あ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
そしてジュエルシードは悲鳴をあげた鮎川を……
「危ない! 『サンダースマッシャー』!」
撥ね飛ばして肉塊に変える前に金色の砲撃に吹き飛ばされた。
まて、サンダースマッシャーって事は……
「大丈夫!?」
俺の予想通り金髪をツインテールにしていて赤目の少女……なのはの最高にして最大の友になる『フェイト・テスタロッサ』が鮎川のすぐ側に舞い降りた。
「う、うん……」
「良かった……だけど、ここは危険だから早く逃げた方が良い」
「そ、そうしたいのはやまやまだけど……腰が抜けて立てない……」
鮎川は必死に立ち上がろうとしているみたいだが、足が子鹿みたいにガクガク震えているうえに、恐怖で腰が抜けたせいで立てないみたいだな。
「そう……『アルフ』、この子を安全な場所まで連れてって」
「あいよ、運び終えたらすぐに援護に向かうからね」
「お、お犬さんが喋った!?」
「犬じゃない! あたしは狼だ!」
「……! 来る!」
ジュエルシードが突っ込んでくると、言われたフェイトの使い魔であるアルフは鮎川の首根っこを噛んで自分の背中に掬い上げると買い物袋を首にかけてそのまま走り出した。
……念の為に鮎川をつけるか。
フェイトが圧倒しているジュエルシードの方はサーチャー(録画機能付き)を向かわせ、俺は鮎川とアルフを千里眼で追跡する事にした。
…………
「ここらで良いかい?」
「う、うん……マンションも近いし……ありがとう、狼さん」
「アルフで良いよ、そんな畏まって言われると耳の裏が痒くなる」
俺の千里眼が2人を見付けると、鮎川がアルフにお礼を言うところだった。
「はいこれ、あんたのだろ?」
「あ、ありがとうアルフさん!」
「じゃあ、あたしはあの子の所に行くから」
「あ、あの!」
そう言って鮎川に買い物袋を渡してフェイトの所に行こうとするアルフを鮎川は呼び止める。
「なんだい?」
「あ、あの子にも僕が『ありがとう』って言ってたって伝えて下さい……お願いします」
「そんぐらいならお安いご用だよ。じゃあね、もう寄り道するんじゃないよ!」
そう言ってアルフはフェイトの所に走って行った。
「……あの子、綺麗だったな」
そう言って鮎川は家路についた。
で、フェイトの方は……げ!? 織主!?
俺がフェイトの方を千里眼で見ると、そこでは織主とフェイトが対峙していた。
因みに、近くには恐らく今の今まで追い回されていたであろう狙撃が息を潜めていた。
「……ジュエルシードを渡して下さい」
「君の物である証拠はないだろう? それにこの街には危険な奴等がいるんだ。そこで提案なんだけど……俺の家で住まないか? 部屋が余ってるしそれにご飯だって……」
……おいおい、原作に関わらない決意は何処に行った。
俺と同じ気持ちなのか、狙撃も呆れた表情で織主を陰から見ていた。
「……嫌だ。貴方はさっきの子が襲われた時に陰から覗くだけだった」
「う!? そ、それは……」
「何!?」
俺はフェイトの言葉を聞いて慌ててサーチャーの録画画像を覗くと、魔法で巧妙に隠れてはいるが確かに織主が鮎川の側にいた。
こ、この野郎……! クラスメイトの危機に何をのんびりしてやがった……!
「そ、それは鮎川なら大丈夫だと思って……」
「嘘、あの子にリンカーコアはなかったしデバイスも持っていなかった。何の力もないただの子供だったんだ。それを見捨てた貴方を私は信用出来ない」
「……っ! で、でも危険な奴等が……」
「話にならない。アルフ!」
「あいよ! くらいな!」
「え? な、がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
フェイトが命令すると、アルフが織主を後ろから殴り飛ばしノックアウトさせた。
「アルフ、ジュエルシードを回収して帰るよ」
「あいよ、昨日もそうだけどどうしてこんな奴みたいな奴らがたくさん言い寄ってくるんだろうねぇ……?」
「知らないし興味ないよ。私はただ母さんの願いを叶えるためにジュエルシードを集めるだけだよ」
「……ま、それもそうか」
そう言ってフェイトとアルフは何処かに行った。
ついでに狙撃も一発織主に蹴りをいれた後、すたこらさっさと逃げていった。
「……俺も帰るか」
俺は頭を掻きながら家路についた。
もう少し探索系統以外の魔法も練習しようかなぁ……?
…………
数日後……
「ふぇ、フェイト・テスタロッサです! 今日から宜しくお願いします!」
「(……何がどうしてそうなった!?)」
俺はクラスに転校してきて、顔を真っ赤にして自己紹介するフェイトを見て、またしても椅子ごとずっこけた。(そして鮎川もずっこけた)
如何でしたか? 次回はフェイトが何故転校する事になったかです。
次回もお楽しみに!
それにしても転生者殺し系の転生者ってどうして他の転生者と似たり寄ったりな行動をするんでしょうか……?
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第8話
「ただいま〜〜」
僕『鮎川春雄』は、アルフさんにマンションの近くまで送り届けられた後、マンションの僕の家まで帰った。
本当は、マンションから普段僕ら家族が使ってるスーパーの行き帰りの時間より早いから時間を潰したかったんだけど……買ってきた物の中にはアイスや冷凍食品があったから溶ける前に帰らなきゃいけなかったんだ。
「あら春雄、何時もより早かったわね。近道でも見つけたの?」
「う、うん。そうなんだ。でも途中で買い物袋を落っことしそうになったし危ない道だったからもう使わないよ」
「あらそう。じゃあ買ってきた物を冷蔵庫と冷凍庫にいれてね」
「うん。……あ、卵が幾つか割れちゃってる」
……多分あの光景を見て、不深山君を思い出して落とした時に割れちゃったんだ。
「あらあら……じゃあ今夜は割れた卵も使って一品追加しなきゃ」
「ごめんね。手間をかけて」
「良いのよ、それに割れたお陰で一品お夕飯が増えるんだし貴方にとっては結果オーライよ」
「そ、そうかな……?」
……ダメだ。さっきの光景を見たせいで、未だに不深山君とその背後にある『何か』が頭に浮かんでくる。
「ご、ごめん……ちょっと横になってくるね」
「……そう、わかったわ」
僕が少しふらつきながら部屋に向かうと、母さんは少し苦しそうな顔をしながらそう言った。
僕は部屋に入ると、そのままベッドに潜り込んで眼を閉じる。
眼を閉じると、さっきの変な杖を持った男の子達が逃げていくのと吼えながら突撃してくる怪物、そして……
「あの子……綺麗だったな」
僕を助けてくれた金髪に赤目の女の子が浮かんできた。吸い込まれそうな白い肌、夕日に反射して煌めく金髪、そして宝石の様な赤い眼……ダメだ。頬が熱くなってきた。
「誰だったんだろう……あの子? アルフさん、ちゃんとお礼言ってくれたかな……」
そのまま僕は未だに見る
…………
「……ふう」
私『フェイト・テスタロッサ』は、使い魔である『アルフ』と住んでいるマンションに帰るとお風呂に入っていた。
理由は簡単。ジュエルシードの探索に疲れたのと、あの後遭遇した様々な人間達を忘れたかったからだ。
織主と言っていた男を倒してジュエルシードを奪った後、私達がジュエルシードを探そうとしていたら、金髪赤目のやたら偉そうな男や銀髪に左右の眼の色が違う気持ちの悪い笑みを浮かべた男、私の名前を知っていて馴れ馴れしく私に触ろうとした黒髪の女の子等の様々な人物が言い寄って来て、ジュエルシードを探すどころではなくなってしまった。
因みに、彼らは全員私とアルフが打ち倒した。全員が全員魔法や強力なレアスキルを使っていたが、私とアルフ、そして私のデバイスである『バルディッシュ』の連携の前に敗れさった。
「初日からこれじゃ先が思いやられるな……」
それでも……それでも母さんの為にジュエルシードを集めなきゃいけないんだ……!
私はお風呂から出て、部屋着に着替えながらそう決意した。
「あ、フェイト。あがったのかい?」
「うん。アルフもお風呂入ってきなよ」
「そうさせてもらうよ……あ、そうそう言い忘れてた事があったよ」
私がお風呂から出ると、人間形態になっていたアルフが振り返りながらこう言った。
「あいつらに出会ったから忘れてたけど……夕方に助けた奴が『ありがとう』って言ってたよ」
「……そう、伝言ありがとう」
「別に良いよ。じゃあお風呂に入らせてもらうね」
そう言ってアルフはお風呂場に向かって行った。
「……『ありがとう』か」
私は夕方に助けた男の子について考えた。
母さんに言われて、ジュエルシードを探す為にこの街へ来た私は、来て早々に感じた魔力を頼りにあそこに行ったらジュエルシードとあの子がいたんだ。
あの子は、リンカーコアも母さんに『横暴な虐待毒婦め! フェイトを解放してもらおう!』とか言って襲い掛かって瞬殺された奴等みたいに特殊な能力も持っていなかった。そして側にいて魔導師であるにも関わらず、ジュエルシードに襲われるあの子を見ていただけの織主に対する当て付けも含めて助けたんだ。
……そんな身勝手な理由で助けた私にありがとう、か。
「……あの子にとっては危ないところを助けてくれた私がヒーローに思えたのかな?」
私が考えていると玄関の呼び鈴の音が鳴った。
「? 誰か来たのかな?」
私は玄関まで来て開けると。
「はい、どちら様で……え?」
「あ、隣の鮎川なんですけど、夕食のお裾分けに来たので良ければ……え?」
……さっき助けた男の子がタッパーの入った袋を持って立っていた。
…………
「う~……」
何時も通り、巨大な不深山君に追いかけ回されるという悪夢を見た僕は、のそりと起き上がると同時に扉が開く音が聴こえた。
「あ、お父さんお帰り」
「只今。良い子にしてたか?」
「うん」
お父さんは僕の頭を撫でながら言い僕はそれに応えた。
「あらあなた、お帰りなさい。ちょうどお夕飯が出来たところよ」
「ああ、只今。そりゃ二重の意味でタイミングが良かったな」
「? 二重の意味でってどういう事?」
「ああ、隣の部屋に誰かが引っ越してきたみたいでな。近所付き合いも兼ねておかずを一品分けたいと思ってな」
「あら、気が付かなかったわ。そういうことなら春雄、煮物をお隣に持っていってくれないかしら?」
「うん、わかったよ」
僕は着替えると、煮物の入ったタッパーの入った袋を持ってお隣に行く。
何故かうちのお隣さんって、人が入る度に変なことが起きて出ていくんだよね……例えば住人が幽霊を見たとかそういうの。
今では心霊スポットなんて言われてるんだよなぁ……
僕がそんなことを考えながら呼び鈴を鳴らすと、すぐに女の子が出てきた。
「はい、どちら様で……え?」
「あ、隣の鮎川なんですけど、夕食のお裾分け来たのでよろしければ……え?」
そこにはさっきあった金髪の女の子がいた。
「え、え~と……どのようなご用件でしょうか?」
「あ、え~と……夕食のお裾分け来たのでよろしければそちらの夕食に加えていただければと……」
「あ、そ、それはご丁寧にどうも……」
そうして僕は女の子に袋を手渡すと、そのままぎこちなく家に入った。
「あら春雄。ちゃんと渡して……顔を赤くしてどうしたの?」
「あ、うん……お隣に僕と同い年の女の子がいたから……」
「あらあら一目惚れしちゃったのかしら?」
「ち、違うよ! そ、そんなんじゃ……」
そうは言っても、急に沸いてきたこの胸の高鳴りをうまく説明できない僕だった……
…………
「……学校へ?」
『ええ。あなたくらいの年齢の子は全員が学校へ行くそうよ。お隣の子と会った以上そうでもしないと怪しまれるでしょ?』
私は母さん…『プレシア・テスタロッサ』に報告をしていると、母さんはそんなことを事も無げに言った。
「でもジュエルシードは……」
『ジュエルシードは学校が休みの日や夜にでも捜索出来るでしょ? 今は近所に怪しまれないようにするのが先決よ。それとも私に逆らうの?』
「……いえ」
『そう。通う学校は私が決めて授業費も払っておいたから安心しなさい。因みに転入は明日からよそれじゃ』
そう言って、母さんは通信を切った。
「……あの鬼ババが何のつもりだい? フェイトにわざわざ学校に通わせてさ」
「……さあ? でも彼に姿を見せた以上、母さんの言うとおり怪しまれないようにするのも大事だよ。私は母さんの言うとおりに動くだけ」
「フェイト……」
アルフが不満そうに顔を歪めるけど、諦めたのか溜息を吐く。
「わかったよ、明日に備えて寝ようか。おやすみフェイト」
「おやすみ、アルフ」
私はアルフと言葉を交わすと、そのまま夢の世界に旅立った。
…………
「……それで? 本当にフェイトはその学校に行ったら支えてくれる子に会うの?」
「そ、そうだ! だ、だから命だけは……!」
通信を終えた後黒髪の女性……プレシア・テスタロッサがボロボロの男に振り向いて確認すると、男は息も絶え絶えにプレシアに命乞いをする。
「あら? 『死ね毒婦!』とか言いながら襲いかかってきたのに自分が死にそうになると命乞いをするの? 私がしたら絶対に許してくれないのにそれはフェアじゃないわよね?」
「ひ……!?」
そう言ったプレシアは、震えている男の頭を鷲掴み……
「さようなら」
「た、助け……ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
プレシアが凄まじい量の電撃を流すと、男の体はたちまちのうちに炭になり灰となって崩れ落ちた。
「ふん、他愛ないわね」
そう言ってプレシアは部屋の一角にあるカプセルを見ると、自嘲気味笑いながら言う。
「『アリシア』、大丈夫よ。
そう言ってプレシアは部屋を出て寝室へと向かった……そしてその場には『フェイトと瓜二つ』の少女が入ったカプセルが残された……
…………
「おはよう。橋出君」
「オッス鮎川。聴いたか? またこのクラスに転入生が来るんだってよ」
「え、また?」
「ああ、その証拠にお前の隣に誰もいない席があるだろ?」
「あ、ほんとだ」
僕がお隣である橋出君と話していると、昨日転入してきた水崎君達と高町さんが駆け込んで来た。
……高町さんは席に座るや否や、溜息を吐き始めたけどどうしたのかな?
「心配する必要はねえよ。2、3日すりゃ治るさ」
「そうなの?」
「そうだよ(言いたかねえけど『あれ』をなのは抜きで倒せるとは思えねえしな)」
橋出君がまるでわかっているような事を言ったのに首を傾げますが、先生が来たので席に座ります。
「皆さん、嬉しいニュースです。昨日に続いてまた転入生がこのクラスにやって来ました。それでは自己紹介をどうぞ」
「ふぇ、『フェイト・テスタロッサ』です! 今日から宜しくお願いします!」
僕は女の子……テスタロッサさんが入ってきたのに驚いて、橋出君と一緒に椅子ごと転けてしまいました。
そして僕は知りませんでした。これがテスタロッサさん……『フェイト』との運命の出会いだったとは……
如何でしたか? リアルでのゴタゴタがあったので遅れに遅れましたがなんとか投稿できました。
次回もお楽しみに!
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第9話
「春人頑張りなさい! ゴールはもう少しよ!」
「ほ、焔君も頑張って!」
あれから数日後。俺達は士郎さんがコーチをしておりさらに雪村、黒埼のコンビと橋出が所属しているサッカーチームの試合を観戦に来ていた。
「へぇ……すげえじゃねえか、雪村はよ」
「うん、まるで闘牛士みたいに相手のディフェンスをかわしてるね」
「黒埼は……体術を活かして強引に相手のディフェンスを突破しているな。……まあ、相手が織主と不深山がいるチームだというのもあるだろうが」
そう、3人が所属しているサッカーチームの今日の対戦相手は織主と不深山の所属しているチームなんだ。
で、普段から超が付くほど仲が悪い4人はサッカーでも変わらないらしい。
「ボールをよこせモブキャラ!」
「っ!? しま……!」
あ、ヤバい!?
「ヤバい! ボールが不深山に取られた!」
「やべぇ! 点差は拮抗してるからここで点を奪われると……」
不味いと俺が言おうとしたら、何時の間にか不深山の前にいた橋出がそのボールを奪い取った。
「……な!?」
「悪いね、ここでお前に格好つけられる訳にゃいかねえんだ(ついでにこいつが昨日封印したジュエルシードもスリ盗ってと……)」
「このモブが……!」
「黒埼、パス!」
「すまねえ、橋出! 春人!」
「わかってる!」
橋出からボールをパスされた黒埼が雪村に向かってそう言うと、二人でゴール前に行き互いの利き脚でボールを……蹴ると見せ掛けて黒埼がボールから離れると雪村が渾身の力でボールを蹴った。
「っ!? くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
ボールはゴールキーパーの織主が触れない高さに飛び、ゴールに叩き込まれた。
そして、そこで終了のホイッスルが鳴り、試合が終了する。
「よっしゃ! 雪村達が勝った!」
「かなりギリギリだったけど良かったね」
「ああ、白熱した試合だったな」
……なんて俺達が無理矢理盛り上がるのには理由がある。
それは……
「「…………」」
「……なのは、最近ユーノと口を聞かないけどどうしたのよ?」
なのはとユーノがフミーダイとの一件以来、話をしていないうえにそれが原因で非常に気まずくなるからだ。
因みにフミーダイと戦闘したことは士郎さんに話したし、殺傷設定で魔法を使う危険な奴等がこの街にいることも話したうえでなのはを戦線離脱させると言っておいた。(でないとなのはが家族を説得して、また戦線に出かねないからだ)
まあ、なのはの方はやっとこさ再会して恩を返せると思った矢先に、それを無下にされるような事を言われればそりゃ落ち込むし、ユーノの方はなのはが大事だけどその思いも知っているからこそ、気後れして話せないんだろうが……だからってここまで口を聞かねえと此方の気がまいっちまう。
「(ユウヤ、ヤマトどうするよ?)」
「(どうするもこうするも……本人達が解決するのを待つしかあるまい)」
「(そうだね、どのみち僕らじゃどうしようもないよ……)」
「(だよなあ……)」
俺達は、結局ユーノとなのはが自分達で解決するしかないという結論に達して揃ってため息を吐いた。
「……無い!? 何故だ! 何故無いのだ!? 我が原作に介入しハーレムを築くうえで重要な物が何故無い……!?」
「(……悪いね、お前も織主も目立たせはしないよ。後はこいつの封印を少し解除して……ほいっと。
……念の為に俺も現場に出向いておくか。『あれ』に対してユーノが結界を張り損ねた場合に備えてな)」
何やら不深山が地面に這いつくばって意味不明な事を言いながら何かを探していたが、俺達は気にせず祝勝会の会場である翠屋へと向かった。
…………
「うめ~! 運動した後の甘いものとコーラは格別だぜ! 試合で勝ったときは特にな!」
「それについては焔に全面的に同意せざる得ませんね。これは本当に美味しい」
「………何で俺がお前ら二人に挟まれてるんだ? そして、黒埼! ケーキを口に……モゴモゴ……」
「そりゃあん時の橋出のカバーがなけりゃ負けたかもしれないからな! 労いだよ! 労い!」
「焔、口に突っ込みすぎです! 橋出君が苦しんでますよ!?」
「モガモガモガ!!(死ぬ死ぬ死ぬ!!)」
「あ……悪い、橋出!」
「橋出君、水です!」
「(ゴクゴクゴク)げほげほ……黒埼! お前は俺を殺す気かバカ!」
「すまねえ、流石にやり過ぎた!」
「「「(モグモグモグモグ)」」」
そんな漫才をやっている橋出達3人を横目に見ながら、俺達は無言でケーキを口に運んでいた。
何故なら……
「(ユーノ君のわからず屋! 気を付けるって言ってるのにどうして一緒に戦わせてくれないの!?)」
「(前にも言っただろ! フミーダイみたいな奴がまだいるかもしれない……そんな危険な戦場になのはを行かせたくないんだ!)」
「(それはそうだけど……!)」
こんな感じでなのはとユーノが念話で大喧嘩をしてるのがダイレクトに入ってくる為、それを聴くことに専念する為だ。
因みに俺達は最初は喧嘩を止めさせようとしたが「「(引っ込んでて!)(引っ込んでてよ!)」」と一喝されたから大人しくしている。
「……っ! ユーノ君の馬鹿!」
念話も使わずそう言ったなのはは、立ち上がると涙を流しながら翠屋から飛び出して行った。
「なのは!? ちょっと待ちなさいよ!」
「なのはちゃん!?」
「な、なんだなんだ?」
「(あっちゃ~……ユーノの頑固さが裏目に出たか……)」
「……なのは様、泣いてましたね」
雪村の言葉にユーノは苦しそうな顔をした。が……
「(……おい、今ジュエルシードの反応があったぞ)」
「(今はまだ発動してないけど……時間の問題だね)」
……タイミングが最悪とかそんなもんじゃねえぞ!?
「……すまねえ! なのはを探してくる!」
「ぼ、僕も!」
「俺もだ」
「……泣かせたのは、僕だから……僕も、行くよ」
俺達はジュエルシードとなのはを探す為に慌てて翠屋を飛び出した。
…………
「……っ! ユーノ君の馬鹿!」
そう言って私は翠屋を飛び出した。
私の眼には涙が溜まって溢れてそして視界がぼやける。
……ああ、私……泣いてるんだ。
そうして訳もわからずに走って着いたのは……
「此所は……」
ユーノ君と初めて会った公園だった。
「そういえば……初めてユーノ君と会った時も泣いてたっけ」
あれは確か4年前位かな? お父さんが事故にあって大変な時で、お母さん達が大変なんだから私は良い子にしてなきゃって思ってて、でもそれでも寂しくて泣いてて……
「……このブランコ、まだあったんだ」
若干塗装が落ちて錆びてる部分があるけど、まだまだ現役っていう風にブランコは置いてあった。
……ユーノ君と初めて会った時はこれをこぎながら泣いてたんだっけ。
1人で泣いてた私を心配したユーノ君が話し掛けてきて、それで……
「なのに……漸くユーノ君にまた会えたのに……こんなのってないよ……!」
私はブランコの側で膝を抱えながら座り込む。確かにフミーダイ君がやった事は怖くてユーノ君達が私が怪我をしないようにジュエルシードから遠ざけたいって気持ちは痛いほどわかるけど……私は……
「高町さん……? こんなところでどうしたの?」
私が声に振り向くと、そこには数日前に転校してきたテスタロッサさんがいた。
…………
「そっか、そんな事が……」
私とテスタロッサさんは、ブランコに腰掛けてどうして私が泣いていたのかについて(魔法やジュエルシードの事ははぐらかしながら)話していた。
「私はスクライア君の気持ちはわかるかな。私も母さんがそんな危険な事をしてるってわかったら絶対に止めるもの」
でもね……とテスタロッサさんは一呼吸おいて私に言った。
「高町さんはさ……どうして行動で示さないの?」
「あ……」
私はテスタロッサさんの言葉で頭に衝撃が入った。そうだ……言葉でダメなら……
「行動で……示す!」
「……スクライア君にとっては余計な事かもしれないけど、私はそうした方が良いと思うな。時には行動で示した方がわかる人もいるから」
そう言って、テスタロッサさんはブランコから立ち上がった私を見て微笑んだ。
「答えは決まったんだね、高町さん」
「『なのは』で良いよ、テスタロッサさん」
「え?」
「私に進むべき道を示してくれたから。それに……なんだかそうした方が良い気がして」
「……じゃあ、私だけ名前呼びもあれだから、なのはもこれからは私の事を『フェイト』って呼んで」
私の言葉にテスタロッサさん……フェイトちゃんは苦笑いをしながら言った。
「うん、ありがとう。フェイトちゃん。私……行くね」
「うん」
そう言って私は公園から飛び出した。
フェイトちゃんと話してた時に向こうの方からジュエルシードが発動してた……つまりユーノ君達はあそこにいるんだ。だから……!
「私の思いを告げるために……力を貸してレイジングハート! セートアップ!」
『イエス、マスター。セットアップ!』
そうしてバリアジャケットを纏った私は、ユーノ君達に会いに行く為に空を飛んだ……
…………
「こんなくそー! 図体ばかりでかくなりやがって!」
「くそ! コアの位置はわかってるのに攻撃が出来ない!」
「そもそも結界が間に合ったのは良いけど、手数が足りないしね!」
俺達はジュエルシードの思念体と戦闘とはとてもよべない戦いを繰り広げていた。なんでかって? それは……ジュエルシードが憑りついたのは、よりにもよって街路樹だったからだ。それも1本じゃなくて数十本もだ。
お陰で攻撃しようとすれば無数の枝が槍のように飛んでくるわ、蛇のようにくねってきた根が地面から奇襲してくるわで俺達は回避するのに精一杯になっていた。
「おまけにユーノには変な奴が襲い掛かってきて連絡がとれねえし! どうしたら良いんだよ!?」
ユーノはユーノで「死ね! 淫獣! 俺のハーレムのために!」とか言いながら襲い掛かってきた奴の対処と結界の維持で精一杯らしく、俺達に連絡すら出来ていない。
「っ!? 悪いことは重なるもんだね! 結界内に人が6人! 内4人は僕らを追ってきたと思われるバニングスさん達!」
「嘘だろおい!?」
俺はヤマトの言葉に慌てて周囲を見渡すと、そこには確かに壊れた車椅子から茶髪の女と気絶していると思われる黒髪の男を助け起こして此処から逃げ出そうとするバニングス達がいた。
……げ!? しかもジュエルシードがそっちを見やがったし!?
「あぶねえ! ラウンドシールド!」
俺は慌ててバニングス達に殺到する枝をラウンドシールドで防ぐ。
「え、え? 何? 何がどうなってんのよ!?」
「喋んな! 気が散る!」
俺はパニックになりかけてるバニングスを一喝するとシールドに全魔力を込める。
……くそ! 俺のシールドじゃあたいしてもたねえか!?
「俺が抑えてるうちに速く逃げろ!」
「馬鹿! 水崎はどうするつもりだ!?」
「俺はこいつを……くそ!? もうもたねえのかよ!?」
俺はひび割れたシールドを見て悪態をつく。
ここまでか……!?
「ディバイン……バスター!!!」
次の瞬間、俺の前にあった枝が桃色の砲撃を受けて纏めて消滅した。
「……は?」
「アヤト君、大丈夫!?」
俺の前に、此処にはいないはずのなのはが降り立った。
……タイミングが良すぎる援軍だけど、なんでいるんだよ!?
「なのは! 何で来やがった!? お前は関わるなと言ったはずだぞ!?」
「ユーノ君達に、行動で示したいから! 私は……ユーノ君達と一緒に戦いたいって! 絶対に止めないって意思を伝えたいから!」
「そういう訳じゃ……ええい! 話は後だ! こいつは頼んだぞ!」
「うん! ユーノ君とアリサちゃん達の事をお願い!」
そう言ってなのははヤマトとユウヤがいる場所まで舞い上がると、そのままジュエルシードに攻撃を開始した。
「(アヤト! どういう事だ! なんでなのはが此処にいる!?)」
「(俺が知るかよ!? ユウヤはユーノの援護! ヤマトは俺と一緒にバニングス達を安全な場所まで誘導するぞ! 終わったら合流して速攻で終わらせるぞ!)」
「(り、了解!)」
「(……了解!)」
俺は念話を切ると、そのままバニングス達に向き直る。
「ヤマトが来たら此処から離れるぞ!」
「な、何がどうなってるの? なのはちゃんは何で……」
「話は後だ!」
俺は月村にそう言うと、降りてきたヤマトと一緒にバニングス達の避難を開始した。
てな感じで前後編ぽくなった今回の話です。
正直1話で終わらせたかったのですがこれ以上はぐだぐだになりそうだったので一旦切らせていただきました。
次回もお楽しみに!
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第10話
「よし、ここまで来れば充分だろ」
あれから十数分後、俺とヤマトはバニングス達を連れて結界から出ていた。
……最も、バニングス達から発せられる質問は全部無視してだが。
「さあ、話してもらうわよ! 何がどうなってんのよ、何でなのはがあんな化け物に立ち向かわなきゃいけないわけ!? あんた達一体何者なのよ! 答えによってはただじゃすまないわよ! 焔、構えなさい!」
「……春人、お願い」
「……あいよ」
「わかりました」
バニングスと月村がそう言うと、黒埼が拳を、雪村が竹刀を構え自分達の主人の前に立つ。
……確かにただじゃすまなそうだな。
「わかった、わかった! 後で話す! 後で話すから今は全員家に帰ってくれ! でなきゃ車椅子が壊れたそいつが大変だろうが!」
俺が、雪村が背中から降ろしてさっきまで気絶してた黒髪の男に背負われている茶髪の女を指差すと、茶髪の女は「あ、気にしてくれてありがとな」と言い、黒髪の男は「気にしてくれたのは良いけど人に……特にはやてに指差すなよ」と言った。
……うん、まあ自分でも指差して悪いと思ってる。
「……そう、わかったわ。『今は』大人しく退いてあげる。でも絶対に後で1から10まで話してもらうわよ! もしも気にくわない話だったら……あんた達絶対に許さないから!」
「あ、アリサちゃん落ち着いて!」
「近所迷惑だろ!」
「落ち着いてください!」
「怒るのもわかるけど話聞くまで我慢や、我慢」
「落ち着け、そして五月蝿い」
バニングスが怒りの表情で俺達を振り返りながら怒鳴り、そんなバニングスを残りの5人が宥めながら6人はそれぞれの帰路についた……のを確認した俺とヤマトは回れ右をして、そのまま結界の中に突入した。
「ユーノとユウヤ、それになのはは大丈夫かな!? それからジュエルシードの事とか全部話す気!?」
「大丈夫だろ! フミーダイの事を考えてみろ。あんな慢心した構えの奴ほど俺達みたいなのに油断すんだよ! それにアニメでもあいつみたいなのはド派手に噛ませ犬にされるしな! なのはもきっと大丈夫だろ! あんだけ自信ありげに来たんだからな!
それから話すのはしょうがないだろ! 魔法も使っちまったし、それになのはも関わってんだ。話さないと俺達は本当にボコボコにされかねん!」
ヤマトが結界に残してきた3人を心配するが、俺は何故だか全く心配していなかった。
ユウヤの場合は一緒に訓練したり仕事したりしたからってのもあるが、何よりあいつは俺やヤマトのように目標とする人間がいる。
その人に追い付くまで誰にも負けないし、死なないという誓いを俺達は立てたんだ。あいつがそう簡単に負けるわけがねえ。
魔法やら何やらを話すことは……まあ、なのはを協力者にしている以上、何時かはバニングス達にもバレる事だ。それが今日だっただけ……だと思いたい。
俺達はそんなことを言いながら、ユウヤ達の元へと急行するのだった……
…………
アヤト達が立ち去ってから数分後、塀から2匹の猫が舞い降りると猫は2人の人間になり、何処かに連絡するとまた猫へと戻り何処かへ去って行った……
…………
「なのは!? どうして……なんで……」
「ふん、なのはが来るのが遅かったが……まあ良い、俺の強さをなのはに知らしめるために死ね! 淫獣!」
「お前には悪いが、ユーノは死なずにお前のデバイスを取り上げさせてもらおうか」
俺『ユウヤ・アカツキ』は、ユーノに向けて止めの一撃を放とうとした男に向けて『マシンガンバレット』を放ち牽制すると同時に、ユーノと男の間に体を滑り込ませた。
「ちぃ! 管理局員のモブキャラ風情が俺の邪魔をしてんじゃねえ!」
「……悪いが邪魔をさせてもらう。それにお前のハーレムとやらはどうにも胡散臭いものでな、絶対に阻止させてもらうぞ」
「ふん、そうかよ……じゃあ淫獣もろとも死ね!」
そうして男はデバイスの剣を俺に向かって振るってくるが……
「遅い! お前の剣はハエでも止まってるのか!」
「な!? げふお!?」
「次いでだ食らえ! 『ショットガンバレット』!」
「うぎゃあ!?」
俺はJ5Sの銃床で受け止めると、そのまま男の腹に蹴りを叩き込むとそのまま至近距離から近距離用の射撃魔法であるショットガンバレットを顔面に撃ち込み吹き飛ばす。
「き、きさ……」
「喋っている暇は無いぞ、ユーノ!」
「わ、わかった! 『ストラグルバインド』!」
男が何か言おうとするが、俺が言うとユーノが即座にバインドの中でも最上級の魔法を使い男を束縛する。
「っ!? 淫獣ごときのバインドで……『ジャキ』『ブオン』縛れ……る?」
男がバインドを解こうともがくが、俺はそれを待たずにガトリング砲の銃身に変化させたJ5Sを顔面に突き付け、男の周囲に『ガトリングシューター』出現させた。
「チェックメイトだ」
「ま、待て……」
「待つか。『ガトリングバレット』、『ガトリングシューター』……フルバースト!」
男が命乞いをしようとするのを聴かずに、俺は容赦なくガトリングバレットとガトリングシューターの一斉射撃を叩き込み男を沈黙させた。
「よ、容赦ないね……」
「……こういう手合いは沈黙させないと五月蝿いからな。俺のやり方で黙らせただけだ」
アヤトなら槍で、ヤマトなら拳で俺と同じような事をしただろうな。
「そ、そうなんだ……じゃなくて! なんでなのはが此処にいるのさ!?」
「知らん。誰かに唆されたか……それとも自分の意思で来たのかのどちらかだな」
「そんな!? 僕はなのはに怪我をしてほしくなくて無理矢理やめさせたのに……」
「ああいうタイプにはそういうのは余計なお節介だったんだろうな」
「!? アヤト! どうしてなのはが戦うのを止めなかったのさ!」
俺がユーノと話していると、バニングス達の避難を終えたアヤトとヤマトが合流しており、ユーノは即座にアヤトを非難した。
「まあ、俺も反対しようとしたんだがな。それをするとバニングス達が危ないうえにジュエルシードをほっとくてのもあれだったんで、戦闘を許可しなきゃいけなかったてのもある」
「でも!?」
「はいはい、積もる話は後にして今はジュエルシードに集中しよ」
アヤトの言葉にユーノは更なる反論をしようとしたが、ヤマトがそれを止めてジュエルシードの方に向き直る。
「そんじゃま……行くか」
俺達はアヤトの言葉と共にジュエルシードへ向けて突っ込んだ。
…………
「こんのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
『ディバインバスター』
私がディバインバスターで枝を数十本纏めて消し飛ばすと、ジュエルシードは怯むけどすぐに消えた枝が生えて襲い掛かってくる。
「……いい加減しつこい!」
私にはユーノ君と話さなきゃいけない理由があるのに……! こんなところで躓くわけにはいかないの!
「落ち着けよなのは、カッカしたら負けだぜ?」
そう言って私の頭をアヤト君がポンと叩く。
……うん、そうだね。怒ったら冷静な判断ができなくなるって確かにお兄ちゃんが言ってた。
「ごめん……」
「それじゃあ、なのはが冷静になったところで作戦会議をしようか」
私がアヤト君達に謝ると、ヤマト君が両手を叩いて私達の注目を集める。
ユーノ君は私に背中をみせて私達をジュエルシードの攻撃から守っていた。
「それじゃあ作戦を決めようか。って言っても即興の作戦になるだろうけどね」
「それはしょうがねえだろ」
「ああ、実際3人で半人前の小隊と民間協力者のチームだ。即興になるのは仕方あるまい」
ヤマト君が苦笑いをしながらそう言うと、アヤト君とユウヤ君も頷く。うん、まあ仕方ないか。
「じゃあ、作戦を言うね」
そう言ってヤマト君が提案した作戦は凄くシンプルな作戦だった。
要約すると私が最大出力のディバインバスターを撃って枝と根を一時的に一掃した後で、アヤト君が突っ込んでスパイラルバンカーでジュエルシードを抉りだして私が封印する。って作戦で、ヤマト君とユウヤ君、ユーノ君はアヤト君の援護と私の護衛って役割になった。
「それじゃあ……行くよ!」
『カウントダウンスタート。10、9……』
レイジングハートがカウントダウンを開始すると、レイジングハートの先端に魔力の塊が出現してどんどん大きくなる。
『3、2、1……GO!』
「ディバイン……バスターぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
私がディバインバスターを撃つと、ディバインバスターは一瞬でジュエルシードが防御の為に張り巡らした枝と根を吹き飛ばす。
「アヤト君、行って!」
「おっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
私の掛け声と共に、アヤト君は弾丸みたいに飛び出す。
そして、ジュエルシードが自分を守る為に枝と根を慌てて張り巡らそうとするけど……
「「バインド!!」」
「マシンガンバレット、マシンガンシューター……ランダムシュート!」
ユーノ君とヤマト君がバインドで根を縛ると同時に、ユウヤ君の射撃が枝を吹き飛ばす。
「往生際が悪いんだよ……これで終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! スパイラル……バンカー!」
スパイラルバンカーでジュエルシードが抉り出された……いける!
「ジュエルシードナンバー20……封印!」
私がジュエルシードを封印すると、怪物は街路樹に戻って地面に叩き付けられた。
「あ~……大惨事だな」
……仕方ないよ。ジュエルシードが暴れてたらもっと大惨事だったはずだし。
「……さてと」
「なのは! どうして……」
私がユーノ君に向き直ると、ユーノ君はすぐに何かを言おうとしたけど……
「やめないよ」
私はすぐに私の意思をユーノ君に伝えた。ユーノ君は面食らった表情になったけどすぐに気を取り直して何か言おうとしてるけど……そうさせない。
「私は絶対にジュエルシードを集めるのはやめないよ。だって、最初にジュエルシードを集めるって決めた時に言ったはずだよ。この街には守りたいものが一杯あるって、例えユーノ君がレイジングハートを取り上げたって私はやめるつもりはないよ」
「っ! なのは、僕は君に危険な目にあってほしくなくて……」
「私は、ユーノ君に守られてばかりのお姫様になりたくない。ユーノ君と一緒に歩めるお姫様になりたいの!」
これは私の偽りのない気持ち。ユーノ君と一緒に歩んでジュエルシードを集めたいっていう私の本音なんだ!
「……ユーノ、やめとけ。こりゃ何を言っても時間の無駄だ」
「アヤト、でも!」
「なのはほど強固な意思を持ってる奴を言葉で屈伏させるのは無理だ。つーかマジでレイジングハートがなくても俺達を追って来かねんぞ。それならまだ一緒に戦わせた方が面倒くさいことにならずに済む」
アヤト君がユーノ君に苦笑いをしながら、私がまた一緒に戦うのを許可してくれた。
「……賛成だ。目の届かない所でとんでもないことをされるより、目の届くところで無茶をされた方がマシだ」
「同じく」
「ユウヤにヤマトまで……はぁ、仕方ないなぁ!」
ユウヤ君とヤマト君がアヤト君に同調すると、ユーノ君がため息を吐きながらこう言った。
「……これからよろしく、なのは」
「うん、よろしく。ユーノ君」
こうして、私は再びユーノ君達とジュエルシードとの戦いに身を投じることになったのです。
「あ、バニングス達に説明するの手伝ってくれ」
「あ……」
そういえば、明日はジュエルシードとは違う意味で手強い敵が登場するのを忘れていたのでした……
ズドン!
「「「「ユウヤ(君)!?」」」」
「いや、なんか視線を感じたんだが……気のせいか?」
帰り道につく前に銃を撃ったユウヤ君に、私達は慌ててツッコミました。
…………
なのは達がユウヤを怒りながら去った後……
「くぅ~~あの管理局の男……絶対に許さないんだからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
着弾した額を擦りながら、黒髪をツインテールにした女がふらふらと飛んでいったのを誰も知らない……
如何でしたか? 前後編後編部分になりました今話です。
そして次回は橋出視点になります。
次回もお楽しみに!
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第11話
「しまった、完全にやり過ぎた……」
はい、読者のみなさんこんばんわ。傍観系転生者橋出観男ですよ。
現在、俺は猛烈に後悔をしていた。
俺はサッカーの試合で不深山からジュエルシードをスリ盗った……のは良いんだが、調子に乗ってジュエルシードの封印を少しだけ解いたんだ。
そしたらジュエルシードはとんでもない大暴走を起こし、原作のあいつよりも凄まじい化け物になってしまったんだ。
お陰で、俺は枝には追い回され、根には絞め殺されかけと傍観系としては散々な目にあった後で、千里眼でジュエルシードの周囲を確認して……罪悪感で押し潰されそうになった。
何故なら、ジュエルシードの発生の際に巻き込まれたのか、壊れた車椅子の傍にいる茶髪の女の子……つまり『八神はやて』が気絶していると思われる黒髪の男に必死に呼び掛けていたからだ。
「優斗! 優斗! しっかりしてえな!」
「……」
俺は慌てて2人を避難させようとしたが、何故か結界内にいたアリサ達が慌ててはやて達に近寄ったので隠れざるおえなかった。
「はやてちゃん!? どうしたの!?」
「す、すずかちゃん、優斗が優斗が……」
「……幸い命に別状はなさそうです。頭は……打ってる様子はなさそうですね。気絶してるだけです。じきに目覚めるでしょうが……」
「悠長に待ってる暇はないな! 急いで避難だ!」
そう言って、黒埼は優斗と呼ばれた男をおんぶすると、アリサがはやてをお姫様だっこする。
……する事逆じゃね?
「こういうことは優斗にされたかったわ……」
「文句言うとる場合か!」
はやてもそう思ったのかよよよと泣くが、アリサに一喝された。
で、逃げ出そうとして……何故か枝が黒埼達男子をロックオンしてるのは気のせいかな?
「……げ!? 百合島!?」
俺が周囲を見回すと、そこには百合島が神様転生で得た特典でジュエルシードの枝を操り、黒埼と雪村に向けて放とうとしていた。
「っく! やらせるか!」
「きゃあ!? ……橋出! やっぱりあんた転生者だったのね! 『私の』なのは達の清らかな体をあの下劣で汚物にも劣る男たちから守るためにも死んでもらうわ!」
俺は百合島に突撃し撥ね飛ばすが、百合島も俺が転生者だと気付いたらしく、ジュエルシードを操って俺に襲いかからせて来やがった!?
「くそ、冗談じゃねえぞ! ついでになのは達はお前のじゃないぞ!?」
「五月蝿いわね! あんたみたいな『ハーレムハーレムぅ』言いまくってるであろう豚野郎がなのはを名前で呼ぶんじゃないわよ!」
俺が聞き捨てならないことを言った百合島にツッコムが、百合島は凄まじく極端な事を言って俺を容赦なく攻撃する。
……くそ! 反撃できやしねえ!
「……ふふふ、間一髪割り込んだ管理局員のモブキャラのシールドももたないみたいだし、私のアリサにまとわりつくあの野蛮人と私のすずかにまとわりつくなよ男ももうお仕舞いね」
「くそったれが……!」
「うふふ、後はあの男達を失ったアリサ達を私が……」
「ディバイン……バスター!」
「慰め……て?」
俺が歯噛みをし百合島が皮算用をしていると、突如として上から桃色の砲撃が黒埼達の方面に発射され、放たれた枝を全て凪ぎ払った。
「……え?」
「……まさか!?」
俺が黒埼達の方を向くと、急降下でミズサキの前に降り立つなのはがいた。
「なのはが……なんで!? どうしてあんな下劣な男達を助けるのよ!?」
「これはフェイトがA'sで言う台詞を改編したものなんだが、今の状況に合うから言わせてもらおう……『友達』だからだ」
俺がこう言うと同時になのはが急上昇してジュエルシード向けて突撃するのと、百合島が驚愕の表情で俺の方を向くのがほぼ同時だった。
「友達……? 友達ですって!? なのはとなよ男や野蛮人が友達ですって!? バカも休み休み言いなさいよ!」
「むしろ本気だっつの。……だからこそなのはは強いんだよ」
俺や百合島のような打算のない優しさと勇気。それこそが高町なのはという主人公の最強の武器なのかもしれない。
「認めない……認めないわ! なのはがあいつらの友達なんてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「……元男なのに良くもまあそんなことを言えるね全く」
俺は百合島に呆れつつも突撃を敢行する。
「っ!? 舐めないで……」
「『傍観』! 『フューチャーショット』!」
『イエス、フューチャーショット……シュート!』
「……あべぎ!?」
俺は、デバイスである傍観にどういうわけか組み込まれていた『少し先の未来を千里眼で見れる』能力と『そこに前からあったように魔法を仕掛けられる』能力を応用した魔法を百合島の顔面に叩き込みノックアウトした。
……まだまだ改良が必要だなこの魔法。何せ射程距離が半径1メートル、持続時間が30秒しかないからな。
さてとミズサキ達は……ミズサキはハギノと行動を共にしてアリサ達を無事に結界の外に脱出させたようだ。
……その後で話す約束をさせられてたけど。
で……リーゼロッテにリーゼアリア!? いたならなんではやて達を助けなかったんだ!?
「……ごめんお父様、管理局員がいたから『闇の書』の主と『光の書』の主の護衛を出来なかったよ」
……光の書ってなに!?
「ええ、2人はその管理局員達が無事に脱出させました。はい、行方不明になっていた首都航空隊の3名です。早めに次元航行艦による迎えを」
俺がリーゼアリアの言葉に混乱していると、リーゼロッテが次元航行艦……多分『アースラ』による増援と迎えを越させるように通信している相手『ギル・グレアム』に要請していた。
……あれ? アースラが早めに地球に来たらどうなるんだ?
「っと、考えるのは後回しだな」
俺がジュエルシードの方を視ると……5人の見事な連携でジュエルシードを封印するところだった。
……よし、これからはジュエルシードを踏み台達や織主から奪い取ったら『たまたま』落ちていたふりをしてなのは達に渡そう。
俺は今回の失敗からそう決意をして……ん? アカツキのデバイスが此方に向いているような……?
「ヤバイ!? レズバリアー!」
「う、ううん……? あ、あんた何を……『ズガン』ふぎゃ!?」
俺は慌ててアカツキの射撃魔法から百合島を盾にする。……百合島が完全に気絶したから記憶を書き換えとこう。
俺は百合島が気絶したのはアカツキの魔法弾に撃たれたからだという記憶に差し替え、そのまま転移で家に帰ったのだった。
…………
翌日の放課後、俺は屋上を千里眼で視ていた。
何故かって? それはなのは達がアリサ達に何がどうなっているかを説明するからだ。
「……来たわね」
そう言って仁王立ちのアリサが待っていたのを見て、ミズサキ達は微妙そうな顔になる。
まあ、女の子がする態勢じゃ、あんまりないからな。
「アリサちゃん、すずかちゃん遅れてごめん!」
「け、結構重いんだね車椅子って……」
「えへへへ……」
「……こうする必要はあったのか?」
なのはとユーノが、転移魔法で車椅子と優斗にお姫様だっこされてご満悦のはやてを連れて来た。
「……先ずは自己紹介からだな。俺は『石田優斗』、母さんがはやての主治医なんではやてとは一応幼馴染みだ。よろしく頼む」
「うちは八神はやてや。足がこの通り悪いんで学校には来れないからこういうのは新鮮やな……あ、将来の夢は優斗のお嫁さんなることで……」
「こいつの言うことは忘れろ」
「も~……優斗のイケず~」
「……うるさい」
……なんというかまあ、はやてのお相手さんだな。うん、互いに顔を赤らめてるしな!
で、他のメンバーの自己紹介は以下略!
「……自己紹介もすんだところで本題に入るわよ。あれはなんだったの? なのはのあれは何? あんた達は何者なの!?」
本題に入ると、アリサはまるでマシンガンのように早口でミズサキ達に説明を求める。
ま、アリサ達としては親友が化け物と戦ってるのを見せられて気が気じゃないのは当然だよな……
「……アヤト君」
「わかってるよ。1から10まで全部話すよ」
そっから先は、ミズサキによる今までのあらすじみたいな話だった。
自分達が時空管理局という組織に属する人間だということ、ユーノをスクライア一族という次元を旅する一族の人間だということ、そして魔法や次元世界のこと、ロストロギアのこと、ジュエルシードのこと、ジュエルシードが落ちた原因やなのはとミズサキ達が出会うことになった経緯、なのはを民間協力者にしたことやフミーダイのこと、そして昨日の喧嘩の原因までだ。
「……つまり水崎達は公務員で」
「スクライア君は……考古学専門の遊牧民族のような感じでしょうか?」
「そんでもってすごく危険な物がこの街に降ってきて……」
「水崎君達はたまたま迷いこんできて……」
「そして、高町と再会したスクライアがたまたま魔法の杖を持ってたんで共闘を開始ししたと?」
「なんか魔法少女もののアニメみたいな展開やな~」
……実際魔法少女もののアニメが元の世界なんですがね。
「……あんた達が魔法使いだって証拠は?」
「でると思ったT4W、セットアップ。ついでにバインド」
「……うお!? 腕が動かねえ!?」
ミズサキがそう言うと、バリアジャケットが展開されると同時にバインドが発動されて黒埼の腕が拘束されるとアリサ達がちょっと驚く。
「次、あんた達が公務員だって証拠は!」
「これ。因みに偽造は出来ないよ、管理局員だってデータを偽造したらすぐに『本物の』管理局員がすっとんで来るからね」
そう言ってハギノがデバイスを撫でると、ハギノの階級や所属部隊が書かれたデータが浮かび上がった。
そして反論しようとしたアリサの言葉を先んじて潰した。
「その危険な物……は昨日の怪獣を視たから信用はできるわ」
まあ、ジュエルシードについてはすぐに信用するわな。目の前で見たんだしな。
「……アリサちゃん、黙っててごめんね?」
「……別に。ただなのはが戦線を離脱させられた際に私やすずかに相談してくれなかったのは正直ムカついたわね」
「……うん」
「でも……強制されたなら兎も角、自分の意思で戦うことを選んだんなら、あたしに止める事は出来ないわね」
「アリサちゃん……」
「愚痴ぐらいは聞いてあげるから何時でも家に来なさい!」
「うん!」
「そのジュエルシードってのは発動されなきゃ暴れないんだろ? だったら発動される前に探さなきゃな」
「放課後に皆で手分けして探しませんか?」
「二人一組の方が良いんじゃないかな?」
「待て待て待て! お前らも手伝う気かよ!?」
「ああ、自分が育った街に危険な物があるんだ。探すのが筋ってもんだろ?」
「優斗、臭いで」
「……うるさいな」
それからはあっという間にアリサ達も手伝うことが決定し、ミズサキ達は呆然としつつ頭を抱えていた。
…………
「黙れ! フェイトを洗脳してなのはの友達にした後で戦わせるとは……許せん! 悪の権化管理局の手先め! 覚悟しろ!」
「だからそんな真似はしてねえよ! 本当になんなんだよお前はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そして、俺はPT事件がとんでもない方向にネジ曲がったのをこの数日後知ることになる。
如何でしたか?
次回はいよいよ物語が加速します。
それではよいお年を!
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第12話
「21、13、20、10、8、11……やっとこさ6個か。先は長いなぁ……」
俺はメモ帳に書いたジュエルシードの番号の中で、今日まで集めたジュエルシードの番号の上に線を引きながらぼやいた。
「うん、でもバニングスさん……アリサ達が協力してくれたおかげで発見しやすくなってるからもう少しで全部集まる……筈だよ」
ユーノも苦笑いをしながら俺を諭すが……
「ユーノ君もアヤト君もジュエルシードの事は考えるのをやめて! 今日はすずかちゃんの家で遊ぶんだから今日だけはジュエルシードの事は忘れてよ!」
「うお!?」
「な、ななな、なのは!? なんで腕に抱きつくの!?」
不満そうな顔をしたなのはが、俺からメモ帳を取り上げながらユーノの腕に抱きついた。
そう。俺達は一緒にジュエルシードを探すとアリサ達(すずかや焔、春人にはやて、優斗にも一緒にジュエルシードを探すんだから名字呼びは変と名前で呼ぶように言われた)が協力を申し出た際に、すずかから家に遊びに来るように言われたんだ。
……すずかの家が猫屋敷と聴いた瞬間に、ヤマトは即座に逃げ出したが。
「どうしてヤマト君逃げちゃったんだろ?」
「猫アレルギーなんだよあいつ。基本的に動物好きなんだが猫だけはダメなんだ」
「ああ。ついでに言うならどんな動物にでも好かれやすいんで猫も積極的に近付くんだが、アレルギー体質のあいつには地獄のような時間になるだろうな」
俺とユウヤはヤマトが逃げ出した原因を言うと、なのはは「にゃはは……それじゃあ仕方ないね」と苦笑いをしながらユーノの肩に頭をのせた。
……ユーノの顔がトマトのように真っ赤になり、なのはの顔も同じくらい真っ赤になった。
「なのはちゃん、みんな。いらっしゃい」
俺達がすずかの家に着くと、すずかが門の前に立っていて俺達を待っていた。
「すずかちゃん、今日は誰が他に来たの?」
「え~と……アリサちゃん、焔君にはやてちゃんと石田君それから鮎川君とテスタロッサさんも来てくれたんだ」
「フェイトちゃんも来たの!?」
「うん。鮎川君が強引に誘ったんだって。テスタロッサさん、なのはと鮎川君以外のクラスから少し孤立してたから……」
因みに、俺達はなのはを焚き付けたのがテスタロッサと知っているので渋い顔をしていた。
……リンカーコアの反応があったから魔導士だってわかってるしな(テスタロッサもわかってるだろうけど)。
「(にしてもテスタロッサの奴は何者なんだろうな?)」
「(さあな、魔導士って事はわかるが目的が全くわからん。管理局に連絡さえできればテスタロッサ姓でフェイトという少女がいるかどうか調べる事が出来るんだが……)」
「(僕としてはなのはをジュエルシードとの戦いに駆り出したから怒りたいんだけど……なのはが友達になっちゃったからなぁ……)」
そう。街路樹のジュエルシードを倒した翌日に、なのはがテスタロッサを名前呼びした事で教室中のクラスメイトがよってたかって質問したが、翠屋でユーノと喧嘩したときにユーノと始めて出会った公園で泣いていたのをテスタロッサが見て話して……といった具合で名前呼びになったらしい。
……たぶん、その時に行動で俺達を納得させろとか言われたんだろうなぁ。
「(余計な事をしてくれたよホントに……)」
「(アヤト君……? 聴こえてるよ?)」
俺が念話でぼやくと、なのはが念話で割り込みながら物凄く怖い笑顔を向けてきた。
「(スイマセンデシタ)」
「(わかれば良いの)」
「(弱いな)」
「(弱いね)」
俺は片言になりながらなのはに謝ると、なのはは満足したように歩き、ユウヤとユーノが呆れたような表情を向けてきた。
「あ、なのは……こんにちは」
「フェイトちゃん!」
テスタロッサがなのはを見て挨拶すると、なのはは花を咲かせたような笑顔を向けながら駆け寄って楽しそうに話始めた。
「……」
「ユーノ、『不満です』って顔に書いてあるぞ」
「うるさいな」
どうやら、なのはがテスタロッサと仲良く話しているのが気に食わないらしいユーノが不満そうな顔をしているのをユウヤがちゃかしたらプイッとそっぽを向いた。
…………
「……あら?」
俺達が席についてお茶を飲みながら猫と遊んでいたら、すずかが眉を潜めながら呟いた。
「すずか、どうした?」
「うん、最近産まれた子猫がいないの。さっきまでいたのに……」
「あ、それならさっき森に行ったから鮎川が探しているぞ」
「戻ってこないって事は……迷ったか?」
「あ~じゃあ、ヤマトに空から探してもらうか」
俺はすずか、焔、ユウヤの言葉に苦笑しながらこの家の上空からエリアサーチでジュエルシードを探しているヤマトに念話をする。
「(ヤマト、エリアサーチで子猫と鮎川を探して……)」
「(アヤト、ごめん! 今ちょっと、手が放せない! 鮎川君も危ないってのにこいつは……)」
俺の念話から返ってきたのはヤマトの息も絶え絶えな念話だった。
と、同時に爆発的な魔力がすずかの家の森から漂ってきた。
魔力ランク……AAA+!? 化け物クラスの魔導士がヤマトに襲いかかってきたのかよ!?
「(アヤト、ジュエルシードだ!)」
しかもジュエルシード付きかよ!?
「悪い、ちょっとトイレに行ってくる!(なのは、ユーノ! 緊急事態だ! ヤマトと鮎川があぶねえ!)」
俺は慌てて椅子から飛び降りると、3人に念話をするとそのままヤマト達の救援へと走り始めた……
この時俺は気付いていなかった。テスタロッサが何時の間にかいなかった事に……
…………
「あーあ……すずかの家が猫屋敷でなければ僕も遊べたのになぁ……」
僕『ヤマト・ハギノ』は、空中で頭をかきながら広域のエリアサーチでジュエルシードを探していた。
とほほ……昔から父さん達が管理局の仕事で犬とか
「……あ、ジュエルシードの反応がある」
僕がエリアサーチで示された方向を振り向くと、そこにはジュエルシードを嘴にくわえたカラスがいた。
「あっちゃあ……どうりでユウヤのサーチャーや僕のエリアサーチで引っ掛からないわけだよ。
発動されずに動物に運ばれてるんだから……まあ、最近はサーチャーが壊されまくってるのもあるけど」
にしてもサーチャーを壊してるのは何処のどいつかな……
僕がジュエルシードをカラスから奪いながら考え事をしていると……
「俺の世界だけじゃ飽きたらず地球まで滅ぼそうとする悪の管理局員め……死ね!」
後ろからの殺気と声に振り向きながらSD9の杖で声の主の攻撃を受け止めようとして……
「貧弱な管理局の手先ごときに俺の剣が受け止められるものか!」
そのまますずかの家の森の地面に叩きつけられた。
……くそ!? カラスがまっ二つになってるって事は非殺傷設定を切ったデバイスを使ったって事か!
「ぐぅぅぅ……くそ! 誰……ぶえっくしょん!」
僕が上を向きながら相手を確認しようとするとくしゃみがでる。これってつまり……
「くしゅん! 近くにぶえっくしょん! 猫がはくしゅん!」
「は、萩野君大丈夫!?」
僕が猫を探そうと立ち上がると、声がしたので振り向くとそこには子猫を抱えた鮎川君がいた。
「ああ、はくしょん! 大丈……くしゅん! 大丈夫だから……ぶえっくしょん! 猫を遠ざけて!」
僕がくしゃみをしながら鮎川君にそう言うと、鮎川君は慌てて遠ざかり、僕は猫のフケみたいな細かい物も防ぐ特殊な結界を身体の周囲に張り巡らせた。
……ふう、だいぶ楽になった。
「あの……いったいどうして空から降ってきたの? どうしてテスタロッサさんみたいな格好を……」
「っ!? 危ない!」
僕は鮎川君の質問に答える暇すらなく、慌てて鮎川君を押し退けてSD9で振るわれた剣を防ぐ。
「ぐ、うう……! き、君はいったい……何者なんだ!」
「俺か? 俺の名は当初の目的を忘れ特権に溺れる悪しき管理局からすべての次元世界を救う救世主……『カンリ・ヒテイ』だ! この名を地獄の閻魔の土産にして……死ね! 管理局員! 『セイヴァー』! カードリッジロード!」
カンリは訳のわからない事を言いながら遠ざかると、デバイスから薬莢を排出して……って『カードリッジシステム』!? もしかしてあいつ……『ベルカ式』!?
「散れ、管理局員! 『救済一閃』!」
『セイヴァースラッシュ』
そのままカンリは巨大な光の刃を形成して切りかかってくる。僕は後ろに鮎川君がいる関係上逃げるわけにもいかないのでラウンドシールドを展開するとそのまま光の刃を受け止める。
「っ……! 長くはもたないか……鮎川君! 早く逃げて! このままじゃ僕ごと君も斬られる!」
「ご、ごめん、猫が……」
「猫がどうし……げ!?」
僕が鮎川君の言葉に振り向くと、周りに繁った木々と同じくらいの大きさになった子猫がそこにいた。
よりにもよって、今ジュエルシードが発動したの!?
「くっそぉ……! 子猫のままだったら抱えて逃げれたんだけどなぁ……!」
徐々に押し込められて罅の入っていくシールドを必死に堪えさせながら僕はうめく。
すると……
「(ヤマト、エリアサーチで鮎川と子猫を探して……)」
……アヤト……ナイスすぎる!
「(アヤト、ごめん! 今ちょっと手が、放せない! 鮎川君も危ないってのにこいつは……!)」
僕はアヤトに念話を送りながら力を込めて……っ!? 罅が……!
パッキィィィン……
「シールドが……!」
「彼や子猫は可愛そうだけど管理局を殲滅するためだ。必要な犠牲だと目を瞑ろう」
あまりに身勝手なことを言いながら剣を振るおうとするカンリを睨み付けながら、僕はカンリの振るう光の刃に……
「サンダー……スマッシャー!」
斬られる前に雷の砲撃がカンリを吹き飛ばした。
「……え?」
「……今のって、テスタロッサさん!」
僕が呆けていると、鮎川君が頬を赤く染めながら振り向き、僕も釣られて振り向くと黒いマントと黒いバリアジャケットを身に纏い金色の鎌を手に持ったテスタロッサさんがそこにいた。
「鮎川君、どうしてここに……?」
「子猫を探して捕まえたら迷っちゃって、それで……」
「……そっか。それなら良かった(彼を……傷付けずにすむ)」
鮎川君がテスタロッサさんに説明すると、テスタロッサさんはほっとしたような顔になりながらジュエルシードを封印した。
話す片手間で封印できるなんて……
「また、助けてくれたんだね……」
「あ~……う、うん」
頬を赤く染めながら言う鮎川君にテスタロッサさんも顔を赤く染めながらそっぽを向く。
……普通そこは男女逆じゃない?
「ヤマト! 無事……か?」
「え……? フェイト……ちゃん?」
「……あいつは!?」
「……ユーノの船を襲ったやつか?」
「うん! その通りだよ!」
僕はアヤト達が来たのを見て余計にややこしい事態になりそうだと思いながら、頭を振りながら立ち上がるカンリに向けてSD9を構えた……
明けましておめでとうございます!
再び前後編のていとなりましたがどうか首を長くして更新をお待ちください。
それでは本年度もこの作品をよろしくお願いします!
次回もお楽しみに!
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第13話
「……なのは」
「フェイトちゃん……どうして、なんで……」
「……なのはには関係のないことだよ」
俺達が男に向けてデバイスを構えていると向き合っているなのはとテスタロッサがそんな会話をしていた。
「……テスタロッサが魔導師だってこと話さなかったのが裏目にでたな」
俺が舌打ちをするとテスタロッサは完全に事情を理解したようにこう言った。
「そっか、なのはがスクライア君と喧嘩する原因になったのはジュエルシードについてだったんだね?」
「っ……! う、うん……」
「テスタロッサさん! それを渡して欲しいんだ! それはとても危険な……」
「フェイトをたぶらかすな淫獣!」
「ユーノを殺らせるかよ!」
テスタロッサの説得をしようとしたユーノに斬りかかった男のデバイスである剣を受け流しがら空きの胴体(騎士甲冑纏ってるけど)に蹴りをいれるが……
「いってぇ!?」
逆に蹴りをした足が痛みしかも相手は吹き飛ばないという俺が考えていたのとあべこべな結果になった。
「馬鹿め! 権力に眼が眩み訓練を怠っている管理局員ごときの攻撃で俺の騎士甲冑がダメージを受けるものか! 死ね! 『龍炎剛斬』!」
『ドラゴニックフレア』
俺が足の痛みに怯むと男が訳のわからん事を言いながら炎を纏ったデバイスで斬りかかってくる……けど!
「そこはユウヤの射程範囲だ!」
「マシンガンバレット、マシンガンシューター、ランダムシュート!」
「バインド!」
「な……!?」
ヤマトのバインドで縛られた男が驚く隙も与えずにユウヤのマシンガンバレットとマシンガンシューターによる魔力弾の豪雨が降り注ぎカンリを滅多撃ちにする。
やったか……!?
「それはやってないフラグだよ!?」
ユーノのそんな言葉に俺はあっと思う。
「俺が管理局が作った非殺傷設定などというおもちゃにやられると思うか……傲慢な管理局員風情がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 『龍光豪砲』!」
『ドラゴニックブラスター』
そして土煙の向こうか凄まじい熱量をもった砲撃が来やがった!?
てかベルカミッドの複合式かよ!? 確実に管理世界のどっかにいやがったな!
「てめぇ! いったいなにもんだ!」
「そうか、自己紹介はそこの管理局員にしかしていなかったな。俺の名は傲慢な管理局から全ての次元世界を救う救世主、カンリ・ヒテイだ。その名を刻み死んでいけ!」
……自分から救世主を名乗るってなんか違わなくねぇか?
「俺は管理局のアヤト・ミズサキだ! 今すぐ武装を捨てて投降しろ!」
「っ!? 管理局員!? アルフ!」
「あいよ!」
「うわぁ!?」
俺がT4Wをカンリに向けて構えるとテスタロッサが驚いた顔で何かの名前を呼ぶと赤毛の狼が現れてユーノに襲いかかりやがった!?
「ユーノ君!? お願いフェイトちゃん、止めて!」
「ごめん、なのは。私は……止まるわけにはいかないんだ!」
「テスタロッサさん……どうして、高町さんと友達なのに……なんで……」
狼がユーノに襲いかかってるのをみてなのはが止めようとするがテスタロッサは悲壮な顔でなのはに襲いかかる。
それを見てさっきまでテスタロッサのそばにいた鮎川が涙目になりながら呟く。
「フェイトがなのはと既に友達だと……!? そうか……お前達がフェイトを洗脳してなのはと友達にしたんだな!? なのはを管理局に繋ぎ止める為に!」
……何を言ってんだこいつは!?
「誰がそんな真似をするか! テスタロッサとなのはは自分達から進んで友達になったんだよ! お前こそ洗脳されて変な考えに染まってんじゃねえのか!?」
「黙れ! フェイトを洗脳してなのはと友達にした後で戦わせるとは……許せん! 悪の権化管理局の手先め! 覚悟しろ!」
「そんな真似はしてねえよ! 本当になんなんだよお前はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
訳のわからないことを言いながら斬りかかってきたカンリの剣を受け止めて鍔迫り合いになると途端に俺は不利になった。
「……くっそ! なんなんだよこの馬鹿力は!?」
「これが俺の力だ! 貴様等が滅ぼした俺の世界の神器の力だ!」
神器……まさかロストロギアか!?
「ロストロギアによるドーピングかよ! きったねぇな!」
「ふん! 俺の世界に与えられた力だ! それをフル活用して何が悪い!」
俺は鍔迫り合いを止めてカンリとデバイスをぶつけ合いながら所定の位置に飛び退く。
「バインド!」
「ふん、バカの一つ覚え……」
「『バインドバレット』、『バインドボマー』シュート!」
「なにぃ!?」
ヤマトがバインドでカンリを縛るとカンリはせせら笑いながらバインド解こうとしてユウヤが放ったバインドバレットとバインドボマーでさらにがんじがらめになる。
「寝てろ! 『アクセルバンカー』!」
俺はカンリのがら空きの顔面に加速魔法を組み込んだ刺突を叩き込むとすぐになのは達の方を向く。
「フェイトちゃん、お願い止めて! 私……フェイトちゃんと戦いたくない!」
「なのはに無くても私には戦う理由がある! サンダースマッシャー!」
「っ!?」
『ワイドエリアプロテクション』
なのはが泣きながらテスタロッサに懸命に呼び掛けるもテスタロッサは容赦なく雷の砲撃を撃ち込むけどレイジングハートがすぐさまバリアを張り防ぐ……
「良いデバイスだね……でも!」
『ソニックムーブ』
テスタロッサは防がれると同時に加速魔法でなのはの後ろ回り込もうとしているのを見て俺達はそれを阻むべく動こうとして……
「「「!? 散開!」」」
悪寒を感じた俺達は慌てて散開した。すると俺達がさっきまでいた場所に光を纏った剣が振り下ろされた。
……冗談だろ?
「連携、判断力、個々の技量全てが平均以上だ。税金泥棒の管理局員にしてはだがな……だが魔力が軽かった。……お前達は未熟だ、引導を渡してやる! セイヴァー、カードリッジロード」
カンリがそう言うとデバイスから薬莢が排出される。カードリッジシステム……! ベルカ式の切り札か!
「『ランチャーバレット』、ファイア!」
ユウヤが4連装のランチャーに変化させたJ5Sからユウヤの持つ最大級の魔法弾を放つがカンリにあっさりと全弾撃墜された。
「まだ非殺傷設定などというおもちゃに頼るか……! そんな管理局の傲慢の結晶などさっさと捨ててしまえ! 手を汚す覚悟がないなら戦いにでるな!」
「うるさい! 何が傲慢の結晶だ! 僕らは犯人を出来るだけ無傷で捕まえるのが仕事だ! そんな人間がホイホイと人を殺したら誰もその組織を信じられなくなる! 僕は、僕らは誇りにかけても非殺傷設定を保ったままお前を捕まえてやる!」
「同感だ。大体お前はさっきから管理局の事を悪だの傲慢だの言っているが具体的に管理局のどこが悪で何が傲慢なのかを言ってもらいたいな!」
「誰かを殺す覚悟なんてしてたまるかよ! 俺達が覚悟をするのは罪もない奴等が傷付かないようにするための守る覚悟だ! つか仮にも次元世界をまたにかける組織が誰かを殺す覚悟なんいるかよ! 公務執行妨害、殺傷設定魔法使用及び様々な余罪で逮捕するぜ!」
「俺が下手に出てれば付け上がりやがって……! その傲慢を正してやる!」
カンリが言った言葉に俺達はそれぞれのデバイスを突き付けながら吠えるとカンリはこめかみをひくひくさせながらそう言った。
何処が下手に出てたんだっつの……!
「貴様ら3人とも!」
「っ!? はや……がは!?」
カンリは猛スピードでヤマトに接近するとそのまま剣の腹で殴り飛ばした。
「ヤマト!」
「その傲慢な管理局が植え付けた理想を抱いて!」
「ぐぅ!?」
ユウヤがヤマトを心配するとカンリは剣を地面に刺して剣を軸にユウヤに回転蹴りを叩き込みヤマト同様に吹き飛ばす。
「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! スパイラルバンカーぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「溺死しろ! 救済一閃!」
『セイヴァースラッシュ』
俺がスパイラルバンカーを放つとカンリは光の刃を作り出し斬りかかってくる。
激突した魔法は少しの間拮抗したがやがてスパイラルバンカーが光の剣に押し負け俺はそのまま吹き飛ばされた。
「がは!?」
「ふん、止めだ。せめて苦しまずに眠らせてやろう」
俺は木に叩き付けられた衝撃で動けずゆっくりと近付いてくるカンリを睨み付けるしか出来なかった。
「何か言い残すことはあるか? 管理局員」
「……地獄に堕ちろ!」
俺はカンリの顔に唾を吐くとカンリは顔をひくつかせながら剣を振り上げた。
「減らず口だけは達者だな……死ね!」
そのまま剣が俺に……
ガキン!
「……それ以上やるなら私が相手になるよ」
振り下ろされたがなのはを倒したと思われるテスタロッサがデバイスで受け止めながらカンリを睨み付けた。
「フェイト、君は管理局と敵対しているんだろう? だったら局員がいない方が……」
「悪いけど君に名前を呼んでほしくない。それに局員を殺したら管理局が本腰を入れて介入してくる可能性があるから殺させない」
馴れ馴れしく話しかけてきたカンリをたんたんと論破するとテスタロッサは気絶しているなのはとユーノ、涙目の鮎川を見て「……なのは、鮎川君……ごめん」と言って何処かに飛んでいった。
「……ち、命拾いしたな。フェイトに感謝しろよ管理局員。そして命を奪う覚悟がないなら出てくるな」
そう言ってカンリもーはテスタロッサとは別の方向に飛んでいった。
それを見届けた俺はアリサ達の俺達を探す声を聞きながらそのまま気絶した……
…………
「「「「「……」」」」」
すずかの家からの帰り道。俺達は全員無言だった。
あの後傷だらけの俺達と気絶しているなのはとユーノ、涙目の鮎川を見つけたアリサ達に何があったのかを伝えた俺達はすずかに全力で謝った。
そして鮎川には俺達の正体や魔法の事、ジュエルシードの事などを話して何がどうなってるのかを説明した。
それから鮎川が保護していた子猫は鮎川になついたため鮎川の住んでいるマンションで飼われる事になった。
「……なのは」
「ユーノ君。私、決めたよ。私はフェイトちゃんと戦う。戦ってどうしてフェイトちゃんがジュエルシードを集めるのかを知りたい。フェイトちゃんは戦う理由がないって言ったけど今出来た」
ユーノがなのはに話しかけようとしたらなのはは俯きながらユーノの言葉を遮って話す。
「……なのはらしいね」
「にゃはは……」
ユーノが苦笑いをするとなのはもまた苦笑いをして誤魔化した。
……2人がこんなにポジティブなら俺達も前を向かないとな。
「俺達はあのカンリとかいうくそやろうをぶっ飛ばす。そんでもってテスタロッサにジュエルシード集めを止めさせる。それが俺達の今回の事件での目標だ」
「……ああ!」
「……うん!」
俺の言葉にユウヤとヤマトが力強くうなずいた。
うし、そのためには……
「特訓だな。今の今までサボってたが訓練をもう1回やるか!」
「私もやるよ、フェイトちゃんより強くなるために!」
「僕も出来る限りの事はするよ。元々は僕の問題だったんだから」
そう言って俺達は前を向きながら家路についたのだった……
如何でしたか? 次回は橋出君視点で温泉に行きます。
次回もお楽しみに!
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第14話
「いや~、まさか観男が商店街の福引きで1等賞を出すとはな~」
俺は今、父さんの車の運転でフェイトとなのはが2回目の戦闘をする温泉旅館(戦ったのは近くの川だけど……)に向かっていた。
何故かって? 俺がたまたま商店街の福引きで1等賞の2泊3日の温泉旅行が当たったからだ。
因みにご都合主義ではなくガチの運だというのは、夢で時々会う俺を転生させた神と話して確認済みだ。
因みに、カンリ・ヒテイとかいう分かり易過ぎるアンチ管理局転生者をぶちのめして、なのは達に取り入ろうとした転生者達は全て返り討ちにされた。
何故かって? それはカンリに2人と3匹(仲間2人の使い魔)の仲間がいたからだ。
千里眼で確認したんだが、1人は翡翠色の髪をした砲撃魔法を得意とする少年で使い魔は真っ白な毛並みの雄の狼だった。もう1人は群青色の髪をした刀を利用した魔法を使う少女で使い魔は漆黒の毛並みの雌の狼と藍色の毛並みの雌の猫だった。
で、2人はカンリの同郷の人物(ついでに言うが2人とも転生者ではない)のようだが、カンリに極端な管理局、転生者に対する価値観を刷り込まれたらしく、命乞いをしている転生者も容赦なく殺していたものの、そんな転生者の様子に違和感も抱いているらしく複雑そうな顔をしていた。
にしても……少女は刀に色んな色の炎を纏わせて少年は炎を砲撃にして多彩な技を使ってたんだけど、纏わせてたり発射した炎がどう考えても『死ぬ気の炎』っぽかったんだよなぁ……
そういやミッドにいる傍観派転生者から聞いたんだが、古代ベルカの歴史も結構変わっているらしい。
なんでも『覇王』と『聖王』が結婚して夫婦になってたんだと。そしてSTSにおける最終決戦の舞台となる『聖王の揺りかご』は粉砕されているらしい。
ただ……覇王と共に聖王を救出して揺りかごを破壊する手伝いをしたのが、『仮面を被った4人の戦士達』と『14の異なる力を持つ炎を使う戦士達』と『黒き弓を扱う男と7つの神器を扱う乙女達』、『天使を纏う乙女達』と『光の巨人』、『風、炎、氷の力を振るう黒い鎧をつけた戦士』って存在らしいんだが、これってもしかして……
「観男、どうしたの? 何か考え事?」
「あ……いや、どんな料理がでるか考えてただけだよ。この旅館美味い料理が多いって評判だったからさ」
母さんは俺が無言で考え事をしていた事に疑問の声をあげるが、俺はそんな質問をされた時の為に用意していた言葉を言う。
「あらそうなの? 温泉といい楽しみね」
母さんは俺の答えになんの疑問も持たずに楽しみそうな顔になる。
父さんもこんな無邪気な笑顔が綺麗で素敵な女性だから結婚したんだろうなぁ……
俺は母さんの笑顔に苦笑いをしながら、暇潰しの為に持ってきたラノベを広げた。
…………
「「「ん~着いた!」」」
俺は温泉旅館前の駐車場に降りて背伸びをして……ん? 今声が被ったような……
「あれ? 橋出君に水崎君?」
「あれ、橋出に鮎川? 何で此処にいるんだ?」
……俺が横を振り向くと、そこにはミズサキと鮎川が不思議そうな顔でそこにいた。
ついでにいうなら、その後ろには車酔いしたのか気分が悪そうな(つか目の前で排水溝にゲロを吐いてる)アカツキとその背中をさする黒崎、何か勝負をして負けたのか全員の荷物を分担して持ってるハギノ、ユーノ、雪村、石田の4人、楽しそうに温泉の事を話すなのは、すずか、アリサ、はやての4人がいた。
……タイミング良すぎだろ、おい。
「ああ、福引きで1等賞当ててな。鮎川と水崎は?」
「僕は家族旅行かな? 父さんが会社のゴルフ大会でこの旅館の割引券を手に入れてそれで有給休暇をとって行こうって話になってね。……本当はテスタロッサさんも誘おうとしたんだけど捕まらなくて」
「俺達はなのは達が恒例行事になってるこの旅行に同行することになってな。最初は断ったんだが家に住んでるなら家族だってごり押しされてな……」
俺が旅館にいる理由を言うと、ミズサキは苦笑をしながら、鮎川はちょっと寂しそうな顔で答えた。
……鮎川の奴、本格的にフェイトに惚れてるな。他の転生者(特に不深山や鎌瀬、カンリの3人)に襲われないように戦闘能力の高い傍観派の転生者に護衛を頼むのも視野に入れとくか?
因みに、すずか邸でカンリとフェイトに完膚なきまで叩きのめされた5人は特訓に取り組んでいるらしい。
内容は共通しているのは体力作りで、なのはは足りない実践経験を3人+ユーノと模擬戦を行う事で補い(因みに今のところはなのはの全敗)、3人はユーノと共同で新しい魔法を作る事で足りない威力を補おうとしているようだ。
鮎川は鮎川で、友達であるなのはと苦悩しながら戦おうとしているフェイトを止めるべく、毎日フェイトに話しかけようとしたり(その度にかわされているが)、ジュエルシードを探しだそうと四苦八苦しているらしい。(ジュエルシード探しは正直止めてほしい)
因みに、カンリはあれからフェイトと協力しようとしつこく探しているようだが、全然接触出来ていないらしい。
「にしても奇遇だなぁ~。全員が同じ日程で同じ旅館に泊るとは」
「シンクロニシティってやつか?」
「橋出君、それってテレビの受け売り?」
「おう、世にも奇妙な物語で出たから調べた」
「またマニアックな番組を……」
俺達は話をしながら旅館に入り……
「……あれ、なんではやてもいるんだ?」
「おお、我が嫁達よ!」
「あれ、みんな……どうして此処に?」
入った直後に、居た面子に顔をひきつかせることになった。
なんで織主や鎌瀬、何故か最近雰囲気が変わってる不深山もいるんだ?
俺はまさかの展開に、心の中で頭を抱えるのであった。
…………
「さてと、取り合えず温泉に……」
行くかと言おうとしたら、肩にすずかから譲って貰った子猫を乗せた鮎川が猛ダッシュで何処かに行くのと、それを慌てて追いかけるフェイトと人間形態のアルフとリニスが旅館の窓から見えた。
……状況から察するに、鮎川がフェイトorアルフに遭遇、理由を聴いたらこの辺にジュエルシードがあることがわかって鮎川が何かを言って旅館を出て、その行動をやられちゃかなわんorやったら鮎川が危ないと思ったフェイトとアルフがそれを追ってる……って感じか? リニスがなんで生きてるのかはわからないけど。
まあ、友人の危機を見過ごすのはもうごめんなので……
「テレテッテ~『変装用お面』~」
俺は旅行用の荷物に紛れ込ませたお面(ただし魔法で圧縮して切られても後から後から別のお面が出てくる特殊仕様)を取り出すと、バリアジャケットを纏い更に認識障害も発動して空から3人を追いかけるのだった……
…………
「鮎川君、待って! 考え直して!」
「坊や、止まりな! 止まらないと噛むよ!」
「止まってください! ミャオさんの飼い主を傷付けるわけにはいかないので!」
俺はあっさりと4人に追い付き空から追跡をしていた。
……本来なら鮎川を止めるべきなんだろうが、それをやると俺は実力がかけ離れているフェイトと戦うはめになるし、それが原因で鎌瀬や織主、最近音沙汰がない転生狩人やカンリに襲われるきっかけにもなりかねないという恐怖があるので迂闊に鮎川を止められないという俺のチキンな心がそれを堪えさせていた。
……これが逃げだっていうのはわかってるんだけどな。
てかリニス、鮎川の飼ってる子猫に惚れたのかよ。因みにミャオは鮎川が子猫に付けた名前だ。
「……っ、見えた! ジュエルシードはあの川の周辺にあるってテスタロッサさんは言ってたから……!」
鮎川はフェイトとの2戦目が行われる川辺に着くと、石を1個1個丁寧に見ては戻すという行為を始めた。
……そう簡単に見つかるもんじゃないと思うけどね。
「追い付いた! アルフ、リニスも出来る限り手荒じゃない方法で鮎川君を止めて! 私はジュエルシードを探す!」
「あいよ!」
「承知しましたお嬢様」
フェイトの命令に、2人は即座に鮎川を拘束する為に接近し……
「うらぁぁぁぁぁ!」
「は!」
「させないにゃん!」
突如として現れた3人の少年少女に食い止められた。
「必死に何かを探そうとする奴を捕まえようとするなんて酷い奴だな! 俺がぶっ飛ばしてやる!」
「シロの防衛目標を護衛します」
「ふふん♪ マスター達の側にいる気に喰わない奴の所為で最悪な温泉になるかと思ったけど……こんな素敵な雄に出会えるなんてついてるにゃん♪」
そう言って、白髪の短髪に犬耳を生やした少年はアルフに攻撃を開始し、黒髪のロングヘアーに犬耳を生やした少女は鮎川の背中を守り、藍色のポニーテールに猫耳を生やした少女はリニスに襲い掛かる。
……ん? もしかしてあいつらカンリの仲間の使い魔の人間形態かよ!? まじで大集合だな今回の温泉!
「あんた達使い魔だね!? そいつが何を探してるのかわかってるのかい!?」
「ミャオさんは渡しません!」
アルフはシロと呼ばれた少年の攻撃を捌きながら説得を開始し、リニスは藍色の髪の少女に飛びかかりながら恋する乙女丸出しな台詞を言った。
……関係なくねこの状況に?
「え、えっと君達、誰!?」
「私達にお構い無く捜索を。ここは私達が抑えますので」
「う、うん。お願い!」
鮎川は突然現れて自分を助けてくれた3人組に驚くが、黒髪の少女に言われて慌ててジュエルシードの捜索に戻った。
……所で鮎川。お前何で川に入り始めているのかね?
「だぁ、もう! フェイト、早く探してずらかるよ! こいつら鬱陶しいったらありゃしない!」
「鬱陶しいについては激しく同感です!」
「わかってるよ! もう少しで場所が……うそ!? 鮎川君の足下!?」
アルフがシロの攻撃を捌きながらフェイトに向かってそう叫び、フェイトはエリアサーチでジュエルシードを探しあてそれが鮎川の足下にあるのがわかり愕然とする。
……うん、まじで鮎川の足下にありやがる。
「あったー!」
鮎川が川からまだ発動していないジュエルシードを天に掲げると、全員の顔が一斉に鮎川に向く。
「……へ?」
シロはポカンと口を開け……
「じゅ、ジュエルシード……」
黒髪は目を見開き……
「何でよりによってそれを探してたんだにゃ……」
藍色は頭を抱え……
「鮎川君、それを早く此方へ!」
「悪いことは言わないからそれをフェイトへ寄越しな! それはあんたが持ってて良いもんじゃないよ!」
「取り返しのつかない事になる前にそれをお嬢様へ!」
フェイト達は口々に鮎川の説得を開始し……
「見つけた! ジュエルシード……って鮎川君にフェイトちゃん!?」
「テスタロッサは兎も角……何で鮎川がいるんだよ!? そしてあの使い魔達は誰だ!?」
「猫が3匹もいるよ……とほほ」
「諦めろ。アレルギーはどうにもならん」
「今はそんなことを言ってる場合じゃないよ!?」
なのは達は驚き……
「な、なんで原作とこんなに違う展開に……!?」
「くくく……我が嫁達に力を見せるチャンスだ! 踏み台にさせてもらうぞ、淫獣にモブども……!」
「……原作とまるで違うな、おい」
「今度こそ事故に見せかけて男達を……!」
「……転生者が大量にいる。豊作だな」
転生者達はそれぞれの欲望の為に集い……
「管理局に転生者どもめ……その欲望でなんの罪もないの少年を傷付ける気か!」
「……やるよ、ユウト」
「……わかってるよ、義姉さん」
管理局と転生者に悪意を持つもの達は降り立った。
……うん、カオスだね!(やけくそ)
如何でしたか? 次回は鮎川君&フェイト視点です!
鮎川君はどうなるのやら……
次回もお楽しみに!
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第15話
僕は多分人生の岐路に立たされているのかもしれない。
僕の手にはテスタロッサさん達と高町さん達が集めているジュエルシード。
僕の周りにはテスタロッサさん達と高町さん達の他には織主君、鎌瀬君、ヒテイ君達がいるしその周りからも気配がする。
……問題は川の水が結構冷たいって事なんだよね。
「鮎川君! 早くそれを此方に……」
「今は近付かないで、テスタロッサさん! ぼ、僕の要求を聞かずに近付いたら……ち、近付いたら……」
僕は人生で初めて『脅迫』っていう犯罪をしようとしていることに怯えながら近くの石を拾いあげる。
「じゅ、ジュエルシードを壊すよ!」
僕の発言に鎌瀬君以外の全員の顔が一斉に青ざめた。
「ば、馬鹿な真似は止めろ鮎川! それがどんだけ危険な物かは教えたよな!?」
「そんな真似をしたら君どころか地球が消し飛ぶかもしれないんだよ!? 急いでそれを僕達かテスタロッサに渡すんだ!」
「両親や友達が泣いても良いのか!」
水崎君達が刑事ドラマに出てきそうな台詞を言いながら迫ろうとして石を振り上げると悔しそうに止まる。
……目配せをしてるって事は突進するタイミングを計ってるって事だね。
「鮎川君待って! 危険な真似は止めて!」
「テスタロッサさんは魔導師だからまだ大丈夫だけど君は封印することすら出来ないんだ! 早くそれを捨てるんだ!」
高町さんとスクライア君が必死に呼び掛けて来るけど僕にだって譲れないものがある!
「ぼ、僕の要求を言うよ! ひ、1つ! 高町さん達とテスタロッサさん達は喧嘩を止めて仲良くして!」
「……鮎川君の目線ではそういう風に写ってるんですね」
「喧嘩してるんじゃなくて争奪戦をしてるんだが……傍目見たらから喧嘩にしか見えんか」
リニスさんと水崎君が何故だか複雑そうな顔をするけど僕はそれを無視して次の要求を言う。
「ふ、2つ! 高町さん達とテスタロッサさん達は協力してジュエルシードを集めて!」
「無理だね! 管理局の魔導師がいるんだよ、協力しようとしても監視されるのがオチさ!」
「無理だな。どっちにしても戦うことになる」
「い、今は文句を言わないで!」
アルフさんと暁君が僕の要求に文句をいれる。でもまだあるんだ……!
「み、3つ! その、えっと……て、テスタロッサさん。その名前で……呼んでも……良いかな?」
「……え?」
僕が3つ目の要求を言うと緊張していた場が急に白けるのがわかった。水崎君はずっこけたし、暁君は頭に手をあてたし、萩野君と高町さんは苦笑いだし、スクライア君は何だか悟ったような顔だし、テスタロッサさんは何が何だかわからないような顔だし、リニスさん、アルフさんは「「ほうほう」」と言ってニヤニヤしてるし、鎌瀬君は物凄く怒ってるし織主君は「それは……今言うべき台詞じゃないだろ」って呟いてるし……
「……なんとまあ純粋な願いだな」
そう言って場に緊張感を戻したのは意外にもヒテイ君だった。
「少年。君は勢いに任せてこんな作戦を取ったようだな。……足下ががら空きだ!」
「クロ!」
「了解、確保」
ヒテイ君の仲間が名前を言うと物凄い勢いで黒い毛並みの狼が突進してきて僕を押し倒した。
その時にジュエルシードが川底に叩き付けられて、光が視界に溢れかえって、そして……僕の意識は途絶えた。
…………
変化が訪れたのは唐突だった。鮎川君が持っていたジュエルシードが光ったかと思うと川の水が鮎川君と狼に集まり始めそのまま鮎川君と狼を飲み込むとそのまま天へと登ってある程度の大きさになると私達に敵意を剥き出しにして襲いかかってきた。
……ジュエルシードのいる場所から先の川に水がない!?
「あのジュエルシード……川の水を全部吸ってる!? アルフ、リニス! 気をつけて! 多分あれ際限なく大きくなるし回復能力も半端じゃないと思うよ!」
「わかってるよ! 早く坊やを助けないとね!」
「それからミャオさんもです!」
私はアルフとリニスと共に、ジュエルシードに攻撃を開始すると同時に鮎川君を助ける為、ジュエルシードの頭部(?)に飛び込もうとして……まるでスライムのようになったジュエルシードに弾き飛ばされた。
「こいつ……水の性質を自由に変えられる!?」
「フェイトちゃん!」
私がジュエルシードの能力に気付くと、なのはが心配そうに此方に走ってくるのが見えた。
「なのは、君と私は敵どうしだから。だから……心配しないで」
私は立ち上がりながらもう一度突撃をしようとして……
「食らえジュエルシード! 王の財宝!」
鮎川君が中にいるのを知っていて鎌瀬の放った一撃に愕然とすることになった。
あれは確か広範囲の攻撃だったはず……あれじゃあ中にいる鮎川君が!
私は慌てて放たれた財宝を撃ち落とそうとして……迎撃の為にジュエルシードから飛んできた無数の氷で出来た矢を回避することになった。
「ば、馬鹿な……なぜ我が財宝がジュエルシードの攻撃ごときで……」
「てめぇ! 中にいる鮎川を殺す気で放っただろ今の攻撃!」
鎌瀬が自分の自慢の攻撃があっさりと破られた事に愕然としていると、ミズサキ君が鎌瀬のバリアジャケットの襟首を掴み激昂する。
「鮎川? ……ああ、あのジュエルシードに飲まれているモブか。安心しろモブが1人や2人死んだところで何も変わりは……」
「寝てろ」
ふざけた事を言う鎌瀬を、ミズサキ君は容赦なく顔面を殴って気絶させた。
「秘剣……『
「『
私が声に振り向くと、そこにはカンリの仲間が赤と青の二種類の炎を灯したデバイスでジュエルシードを切り刻み撃ち抜いていた。
けど……
「……っ! 青の炎で一時的に治りを遅くしても赤の炎で分解しても水がひっきりなしに補充されるからキリがない……!」
「くそ! どうすれば良いんだ!?」
そう。相手は上流から流れてくる水を吸収していくらでも補充できるから、少しのダメージじゃああっさりと回復してしまう。
かといって一気に大ダメージを与えようとすると……
「ディバイン……」
「避けてなのは! 氷の矢が来る!」
「またぁ!?」
こうやってジュエルシードが氷の矢を放って行動を阻害するんだ。
これじゃあ鮎川君が……!
「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! せめて鮎川だけでも助けなきゃいけねぇのに……!」
「お困りのようだね少年少女の諸君」
突然の声に私たちが振り向くと、そこには顔に戦隊物のレッドのお面をつけた怪しい人が立っていた。
「……誰だ?」
ミズサキ君が思わず手を止めて訪ねると怪人物はポンと手を叩いてこう言った。
「そうか自己紹介がまだだったな。私の名は……あ~、そう! 『
……凄く偽名臭い名前だ
「……そうかい。で? その多重緒面は何のようだ?」
「ん? ああ、あの少年を助けつつジュエルシードも封印できる画期的な策があるんだがねぇ……聴く?」
「聞かせて」
私が即答で多重緒面の言葉に頷くと、なのは、リニスとアルフそして多重緒面自身も驚いていた。
「理由を聴いても良いかね? 私はこの通り怪しい見た目なのだが……」
「……鮎川君は元々私が巻き込んだようなものだから。だから……鮎川君を助けるためなら死神だろうと悪魔だろうとすがってみせる!」
私がそう言うと多重は「なんとまあヒーローっぽいこって」とぼやいた。
……私なにか変なことを言ったかな?
「……わかった。しかしそのためにはそこにいる管理局員達に、(狩人と百合島は……駄目だ見てるだけだ。出てこようともしない)そこで隠れている奴に織主君、そしてカンリ君とその仲間の支援が必要なんだ……協力してくれないかね?」
多重緒面の言葉にミズサキ君達が嫌な顔をする。
……多分私も同じ顔になっているんだろう。鮎川君を見捨てようとした織主と共闘するなんて……
…………
「それで? 俺達は何をすれば良いんだ?」
カンリを仲間の2人が説得して協力させた後私達はスクライア君が張り巡らせた結界の中にいた。
「ああ。私がたてた作戦はこうだ。先ず高町君と織主、それから死ぬ気の炎を使う少年とカンリが全力の砲撃を一斉に撃ち込んで回復に専念させることで迎撃を少なくする。
そして接近戦を得意とする君と死ぬ気の炎を使う少女、ミズサキ、不深山が一気に突っ込んでジュエルシードと鮎川君と狼の入っている頭部を切断し露出したジュエルシードを封印する……というものだ。何か意見はあるかね?」
「他のメンバーは?」
「他のメンバーは砲撃班の護衛と突入班の援護だ。例え砲撃で大ダメージを与えたとしても水を吸ってすぐに回復するからな」
「鮎川君の救出は?」
「頭部を切断後近くにいたものが救出してくれ。封印する者はジュエルシードの近くにいる人物だ。他に質問はあるかね?」
アカツキ君と不深山君の質問を捌いた緒面が周囲を見渡すと、全員が緒面の正体を気にしつつも作戦自体に不満はないようだった。
「……ないな? それでは作戦を開始する」
そう言われて私とミズサキ君、それからカンリの仲間の『アヤ・ミツルギ』が上空に待機すると、なのはとミツルギさんの義弟の『ユウト・ミツルギ』、カンリがデバイスを水平(織主は居合いの構え。……西洋の剣で居合いの構えは結構シュールだ)に構え、他のメンバーはジュエルシードから放たれる無数の氷の矢をシールドや弾幕で防ぐ。
そして……
「いまだ、撃て!」
「ディバインバスター!」
「『
「エクスカリバー!」
「龍炎絶砲!」
緒面の言葉と共に一斉に4つの砲撃が放たれ、ジュエルシードに大穴が空いてジュエルシードは慌てて体の修復を開始する。
……させるか!
「突入班、突入開始!」
「バルディッシュ!」
『ソニックムーブ』
緒面の指示と同時に、私が加速魔法で突っ込むと他の2人も遅れて突進を開始する。
ジュエルシードから迎撃が放たれるけど……
「マシンガンシューター、ランダムシュート!」
「「「バインド!」」」
「フェイトの邪魔はさせないよ!」
サポート班のみんなが全て迎撃する。……! 届いた!
「秘剣『
「ぶっ飛べジュエルシード! スパイラルバンカー!」
「『ロード』、ジュエルシードを封印しろ」
『……承知しました』
ミツルギさんが雷のような炎でジュエルシードの頭部を切り離すと、ジュエルシードをミズサキ君が抉り出し不深山君が封印する。
そして、私は空中に放り出された鮎川君を受け止める。
「鮎川君! しっかりして!」
「……げほげほ!? こ、ここは……?」
良かった……生きてる。
「ぬおおおおおおおお!?」
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
私は、塞き止められていた水が一気に解放されて激流になった川に流される鎌瀬君と女の子の悲鳴を無視しながらほっと息を吐いた。
…………
「たく、幸い下流に人がいなかったから良かったもののいたら大惨事になってたんだぞ! 少しは考えて行動しろ!」
「……はい」
「……ナチュラルに流された鎌瀬達の事は無視するんだな」
「まあ、故意に鮎川を殺そうとしたんだから当然でしょ。しかも助けられたにも関わらず礼を言わなかったしね」
僕は水崎君達と一緒に温泉に入りながらお説教をされていました。
あの後、僕はヒテイ君の仲間に服を乾かしてもらって旅館に帰り、水崎君の提案で暖まるために温泉に入ることになったんだけど……その後で怒りが爆発したのか、水崎君が物凄い表情で温泉に浸かりながら怒り始めたのです。
「大体ジュエルシードを壊すだとか言って脅迫をするのが……聴いてんのか!」
「……はい。聞いてます」
それからヒテイ君は騒ぎが終わると仲間達と一緒に去って行きました。
……猫のランさんがミャオを名残惜しそうに見て、白い狼のシロ君がアルフさんに「次は負けねーからな!」と言ってましたがなんだったのでしょうか?
それからお父さんとお母さんには外に出たのはテスタロッサさん達と遊んでいたからと水崎君が説明しました。
……流石にジュエルシードの事は話せなかったようです。
「それから……」
「べ、別の温泉に入ってくる!」
「あ、まだ説教は終わってねえぞ!」
終わりが見えない水崎君のお説教に、僕は慌てて別の温泉に向かい水崎君も追ってきましたが……
「うわわわ!?」
何かを見て顔を真っ赤にするとそのまま元の場所に戻って行きました。
「……相変わらず
「うるせえ!」
アカツキ君の言葉で我に帰った僕が前を見ると、そこにはタオルで体を覆ったテスタロッサさんがいました。
「うわわわわ!?」
「待って!」
僕も水崎君の様に戻ろうとすると、テスタロッサさんが僕を呼び止めました。
……ひょっとしてテスタロッサさんもお説教かな?
「答えて。何であんな真似をしたの?」
「……悲しそうな顔だったから」
「え……?」
僕がテスタロッサさんの質問に答えると、テスタロッサさんは意外そうな顔になりました。
「月村さんの家での戦いで、テスタロッサさんが僕と高町さんを見て悲しそうな顔をしてたからだよ。だってテスタロッサさんは友達思いで、優しいから。だから悲しそうな顔をしたんでしょ? だからジュエルシードを一緒に集めればそんな顔をしなくても良くなるって思って……」
「……そっか、そうだよね。鮎川君はそういう人だもんね」
僕が理由を言うとテスタロッサさんは何かを悟ったような顔になりました。
「テスタロッサさん……」
「『フェイト』で良いよ、鮎川君」
「え……?」
「名前呼びで良いよ。1つ目と2つ目は無理だけど3つ目なら大丈夫だから」
僕はテスタロッサさんの言葉に動揺するとテスタロッサさんは笑顔でそう言いました。
「えっと、あの、ふぇ、フェイト……」
「うん。ありがとう鮎川君」
「ぼ、僕も『春雄』で良いよ! その、僕だけ名前呼びなのも不公平だから……」
「なのはも同じことを言ってた。宜しくね春雄」
「う、うん!」
こうして僕はテスタロッサさん……フェイトと名前で呼び会う事になりました。
「……説教はまだ終わってねえぞ?」
……その後で水崎君に説教の続きをされ、2人揃って逆上せました。
如何でしたか?
次回もお楽しみに!
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第16話
「なんで、なんで誰も転生者殺しである俺を信用してくれないんだよ!? 俺は……俺はただ薄汚い転生者達からなのは達を守りたいだけなんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「逆ギレかよ!? てめえの言ってることもやってることも無茶苦茶なんだよ! なのは達を守りたいんなら……てめえがやってる事を省みてから言いやがれぇぇぇぇぇ!」
俺はそう言いながら黒衣の男に向けて突進した……
何故こうなったか、それは結構前に遡る。
…………
鮎川がとんでもない無茶をした温泉旅行から3日が経ち、少しばかり変わったことが幾つもあった。
先ず、鮎川とテスタロッサが名前で呼び合う様になったことだ。鮎川は最初の頃は顔を赤くしながらのつっかえつっかえだったが、だんだんとテスタロッサの名前呼びに馴れてきたのか最近では笑顔も見せるようになってきた。(最も、初めて名前を呼んだ日には鎌瀬が鮎川に突っかかって焔に殴り倒され、クラスメイト全員が鮎川を質問攻めにしてアリサが怒るという事態になった)
次に、鮎川が何故か執拗に狙われるようになったことだ。
鮎川がテスタロッサと歩いていたら上から鉢植えが落とされたり(これは鮎川が怪我をする前にテスタロッサが魔法で吹っ飛ばした)、鮎川の机から先生の机から盗まれた小テストの答えが見つかってカンニングだのなんだのと鎌瀬が騒いだり(これは直前に鎌瀬が鮎川の机に何かを入れていたと橋出が言ったことで鎌瀬がボロを出し、そのお陰で先生に鎌瀬が怒られるという結果に終わった)、靴箱に時限爆弾が仕掛けられていたり(これは俺が咄嗟にシールドを張って鮎川を守った)、果てはジュエルシードが鮎川に襲いかかってきたり(これはテスタロッサとその使い魔達が容易く撃破して封印した)と色々あったため、鮎川は精神的に参ってきてるらしい。
最後に、この街のあっちこっちで正体不明の死者が見つかっていることだ。
年齢は全員二十代後半~三十代前半で、デップりと太った肥満体型で何故か全員『全裸』に破れた衣服と何らかの道具の破片が周りに散らばっていたらしい……が本題はここからであり、そいつらの周りにあった衣服が最近行方不明になっている小学生達が最後に着ていた服と一致していたので調べてみたら……これが大当り。そいつらの着ていた服だったのだが……何故これが周りに散らばっていたのかは不明らしい。
なので、行方不明の小学生達の生存は絶望的だとニュースでは告げられていた。
……因みに、被害者達は全員が全員、死体の損壊が激しく身元が特定できないらしい。
……管理局員としては痛ましい限りだな。
つーことで、ジュエルシードの探索の他にもこの殺人鬼の捜索も平行してやってるわけなんだが……
「(アヤト、何か見つかった?)」
「(ユーノか? なーんにも、ジュエルシードも殺人鬼も影も形もありゃしねえ)」
俺はユーノからの念話に肩を竦めながら言った。
何せ、これまでテスタロッサ側に俺達は4個奪われて俺達は更に2個取得したからな。
テスタロッサ側の4個に俺達の8個の計12個…残り9個だから発動しなきゃ見つからないのは無理もない。(しかも毎回ヒテイ達がやって来てちょっかいを出すので余計にめんどくさい)
因みに不深山が得たジュエルシードはどっかに飛ばされた。
不深山曰く、『ここにはないはずのジュエルシードだから』らしいが、俺はなんとなく不深山の言葉に違和感を抱いていた。
なんか不深山らしくないというかなんというか……
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁwwwww!? た、助けてクレヨンwwwww!」
「…………」
俺は考え事をしていると、何処からか聴こえてくる聞き覚えのある声に溜め息を吐きながら突っ込んだ。
「あの野郎も此処に飛ばされてたのかよ!?」
俺はヤマトとユウヤに場所を教えると、そのまま悲鳴の聞こえた方向に向けて突っ走った。
…………
「ひぃぃぃぃぃ!? ヘルプ! 誰かヘルプミー! 出来ればなのはたんかフェイトたんかヴィータたんを希望!」
「残念だったな。お前がその3人に会うことは永遠にない! 潔く消えろ、この欲望まみれの薄汚い変態転生者!」
俺が現場の廃工場に辿り着くと、そこにはあの時の変態野郎がバリアジャケットだけじゃなくデバイスまで黒く染めた男に刀を向けられていた。
「……そこまでだ!」
俺は黒衣の男と変態野郎の間に滑り込むと、T4Wを黒衣の男に突きつける。
「……おおう!? 君はあの時のハリキリボーイ! 助けに来て……」
「お前は後で捕まえるから逃げるなよ!」
「あうち!? やっぱりそうなのかYO!?」
「……管理局員、何故その変態転生者を庇うんだ? 君はその変態のせいでここに飛ばされたんだろう?」
「(……また『転生者』、か)変態ってのには激しく同意するが、俺は管理局員なもんでね、事件の容疑者だろうがなんだろうが殺されそうな人間は守らなきゃならないんだよ。おとなしくデバイスを納めて投降してくれるんなら嬉しいんだが……」
「それは出来ないな。俺はこの地球に蔓延る欲望まみれの転生者からなのは達を守らなきゃならないんだ。だからそいつを殺すんだ。これまで殺してきた転生者達のようにね」
……ん?『これまでのように』?
「……もしかして、最近発見されてる身元不明の惨殺死体はお前が殺した転生者って奴らの死体なのか?」
「ああ、そうだよ。奴等はなのは達を物の様に扱ってハーレムなんていう連中なんだ。そんな奴等が普通の小学生の様に過ごす……そんなことは絶対にあってはいけないんだよ」
「ああ、そうかい……連続殺人および殺傷魔法使用、その他諸々の疑いでお前のリンカーコアを封印処理した後で拘束させてもらうぜ! アクセルバンカー!」
「……え、ぶげら!?」
俺が黒衣の男にT4Wを向けアクセルバンカーを放つと、男はポカンと呆けたような顔でアクセルバンカーを顔面に受け吹き飛んだ。
「い、いきなり何をするんだ!? 俺は転生者達からなのは達を……」
「うるせえ! 転生者だかなんだか知らねえけどお前が殺してきた連中の親が自分の子供を失ってどんだけ悲しんでいるのか知ってるのか!? そして今度は自分達の子供が被害に会うかもしれないって恐怖している親の気持ちがわかるか!? それなのに……独りよがりに守ってるだのなんだの言ってるんじゃねぇぇぇぇぇ!」
俺は黒衣の男の身勝手な言い分にぶちギレながら襲い掛かった。
「ぐう!? 転生者達を産んだ両親が転生者達を失った時の気持ち……? そんなもの考えた事もない! 転生者達は世界の癌みたいなものだ! それを駆除して何が悪い!」
「そうかよ! じゃあ牢屋と裁判所の被告人席でじっくりと知る事だな!」
俺は信じられない事を言った黒衣の男に愕然としながら槍を叩きつける。
「……っ!? つ、強い!? 今まで転生者に負けなかった俺が何でこんなに押されて……」
「スパイラルバンカー!」
「がはあ!?」
訳のわからない事を言う男に、俺はスパイラルバンカーを食らわせて吹き飛ばす。
男はごろごろと転がり工場の壁に叩き付けられる。
「くそ! くそ! くそ! 俺は転生者殺しだぞ! 薄汚い転生者達からなのは達を守ってるんだぞ!? その俺が何でなのはの仲間である管理局員に攻撃されなきゃ……」
「それは貴方が犯罪者だからだよ!」
「なぁ!?」
男がその言葉と共に舞い降りたなのはの言葉に愕然とした表情になる。
「な、なんで……どうして俺が犯罪者になるんだ!? 俺はただなのは達を『特典』で操ろうとする転生者達を殺していただけで……」
「特典や転生者って言葉はわからないけどこれだけはわかるよ! なんで殺す必要があったの!?」
「……え?」
男はまたわけのわからない事をなのはにまくしたてたが、なのはの言った事にまるで考えてなかったというような表情になった。
「その転生者って人達が特典っていうので私達にひどい事をしようとしていたならその特典を取り上げれば良いだけなのに……なんでその人達を殺したの!? この前のヒテイ君の言葉もそうだけど、どうして人を簡単に殺したり殺そうとしたり出来るの!?」
「そ、それは……だって、だって二次創作の転生者殺し達はみんな転生者を殺してもなのは達からは感謝されて管理局からも褒められて……」
「そんなのなのはでも管理局でもないよ! そんな事をして感謝したり褒めたりするような人間や組織がいたりあって良いはずがないんだ!」
「むしろそいつを止める為に全力でそいつの行動を阻む筈だ。それがちゃんとした人間や組織の行動だ」
「……お前みたいな妄想ばかりの殺人鬼の言い分は誰にも理解されないし感謝もされないし褒めたりもされないんだよ! 妄想だったらお家に帰ってママのお○○いでも飲みながらにしろ!」
なのはの問いにしどろもどろになりながら答えた男だったが、なのはと一緒に来ていたユーノやユウヤ、ヤマトに徹底的にその答えを論破された。
つーか、ヤマトの奴盛大に怒ってるな……此処最近のフラストレーションがとうとう爆発したのか?
「……んで」
「……?」
「なんで、なんで誰も転生者殺しである俺を信用してくれないんだよ!? 俺はただ薄汚い転生者達からなのは達を守りたいだけなんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「逆ギレかよ!? てめえの言ってることもやってることも無茶苦茶なんだよ! なのは達を守りたいんなら……てめえがやってる事を省みてから言いやがれぇぇぇぇぇ!」
俺は逆ギレして襲い掛かってきた黒衣の男の言葉を男の攻撃を捌きながら突っ込んだ。
そもそも俺達の誰にも信用されないのは人を殺していたからだ。
つまり……自業自得って事だ。
「援護するよ、アヤト! 『トラップバインド』!」
俺は男と切り結びながらヤマトの使った魔法を確認すると、男を『予定の位置』まで吹き飛ばす。
「ぐぅぅぅ!? ま、まだ……」
「……大当たり!」
「な!? さ、さっきまで何も無かったのに……!?」
これがヤマトがユーノと共に作った特殊なバインド……引っ掛かるまで見えないバインド『トラップバインド』だ。
因みに原理はあらかじめデバイスに登録した座標に圧縮してボール状にしたバインドを配置し、それにぶつかったり触れたりした敵を拘束する……らしい。
らしいというのはユーノの言うことが専門的すぎてわからなかったからだ。(尚、なのはやユウヤもわからなかった事を追記しておく)
「吹き飛べ! 『ブラスターバレット』……バースト!」
「う、うあああああああ!?」
そしてバインドでぐるぐる巻きになった黒衣の男に、今度はユウヤがユーノと共に作った魔法であるなのはのディバインバスターをモデルにした魔法……『ブラスターバレット』が男を吹き飛ばした。
これはあらかじめ弾状に圧縮した魔力を発射する際に一気に解放することで、その威力を120%まで上昇させる砲撃魔法……なんだが度重なる戦闘でガタが来てるのかデバイスの調子が極端に悪いために現状では30%での砲撃が精一杯だった。(それでも威力は他の魔法とは段違いだけどな)
で、俺の新魔法は……魔法を覚えたときにT4Wにガタがきた為、これまで以上に酷使する新魔法は管理局が迎えに来たときに修復ついでに登録するということでお預け状態になっている。トホホ……
「……アヤト、嘆いてないでさっさとあの男を簀巻きにして警察署に捨てていくぞ」
「ご丁寧にもこいつが持っていた殺した人間のリストと一緒にね」
俺が新魔法のお預けに嘆いているとユウヤとヤマトがリンカーコアを封印し魔力の使用を妨げる『封魔魔法』を男にかけデバイスを取り上げているところだった。
つーか、ヤマト。お前笑顔が黒いぞ?
「黒くて結構……こいつに殺された子供達の親の痛みに比べれば安いもんさ」
ヤマトがゴミを見るような目で男にそう吐き捨てる。
ま、こいつのやってきた事を考えれば当然か。
「さて、警察に……行く前に下着泥棒は何処に行く気だ?」
「え、え~と……よ、妖精の国?」
「そうかそうか……捕まえろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「自由への逃走!」
「逃がさない! トラップバインド!」
「ぬふぉあ!? またもや拘束プレ……」
「黙れ、ランチャーバレット……シュート!」
「くたばれ変態野郎! スパイラルバンカー!」
「アー!?」
「……3人ともよっぽど取り逃がしたこと怒ってたみたいだね」
「てか、アヤト。管理局員が『くたばれ』はないんじゃないかな……?」
ユウヤが変態をランチャーバレットで大空に打ち上げると、俺は飛行魔法で先回りをしてスパイラルバンカーで変態を地面に叩きつけるのだった……
で、気絶した変態にも殺人鬼と同じ封魔魔法をかけると、俺達は殺人鬼を警察署の玄関前に放置し変態を引き摺りながら意気揚々と翠屋に帰還するのだった。
……変態が魔法を封じられているにも関わらず、どうやってか熊のぬいぐるみと入れ替わって逃げたのに気付いて俺達3人が『orz』になるのは俺達が翠屋に帰ってすぐの事である。
そんなわけでいきなりですが転生者殺しは此処で退場となります。
何故此処で退場するのかというとなのはが転生者(特にヒテイ)達から言われる『殺す覚悟』に対する回答を得るためのキャラだからです。
にしても何で転生者殺しってチートを奪うだけに留めずに殺すんですかねえ……?
次回もお楽しみに!
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第17話
はーい、皆さんお待たせ傍観転生者の橋出観夫ですよ~。
今現在、俺は何をしているのかというと……
「『ディバイン・シューター
「……くっ!? なのはのシューターがまるでアカツキ君の魔法の様に……!」
「なんだよこの魔法は!? こんな魔法は原作にない……「邪魔。秘剣『
「くそが! あのモブキャラどもの入れ知恵……「隙ありだ! スパイラルバンカー!」がばら!?」
「確保! バインドシューター!」
最近激化してきたなのはVSフェイト、ミズサキ達管理局員3人組VSカンリ達反管理局3人組VS最近動きが活発になっている踏み台転生者達のジュエルシードを巡る戦いを観戦してる。(転生者達はミズサキ達+カンリ達に挟まれて一方的にぶちのめされてる形だが……)
てか、ユーノがアカツキの魔法を参考になのはの為に作り出した新魔法が本気でやばい。
アカツキの魔法はサーチャーとシューターを両立させてるから、その分単純な動きしか出来なかったのに対してなのはの新魔法『ディバイン・シューターR』はシューター単体だからその分複雑な動きもできる。
つまり『シューターに追いたてられていたら何時の間にかディバインバスターの射程範囲内でした』なんて事が起こりうるわけだ。
で、前回無茶な事をやらかした鮎川はというと……
「あの~アルフさん……おろしてくれませんか? 小脇に抱えられたままだと凄く恥ずかしいんですけど……」
「だめだ。あんたは1人にしとくとまた前回みたいな無茶をするってフェイトに言われたからね。フェイトがジュエルシードを封印するまでずっとこのまんまだよ」
「そうだぜ。あんな無茶は2度とごめんだからな!」
「シロ及びアルフの言葉を肯定。今は大人しくしていてください」
「あう……」
アルフに小脇に抱えられてカンリの仲間の使い魔の狼コンビに見張られていた。
……まあ、当然の処置ではあるんだが。
リニスと猫の使い魔はミャオと何やら話していて2人とも一喜一憂していた。
因みに、フェイトと名前呼びになったことで鮎川に嫉妬して襲い掛かっていた転生者達は、なのは達が叩きのめした転生狩人を見て『このまま攻撃してなのは達にばれるとまずい!』って判断したのか、鮎川に対する攻撃は嘘のようになくなった。
あ、転生狩人は警察に逮捕されて取り調べ中らしいが……多分、精神病院に放り込まれるなこのままだと。
何故かっていうと、転生者視点での話を延々としてるもんだから頭のおかしい人物だと思われたらしい。
まあ、転生者の話をまともな人間が理解できるかっていうと……理解できないよなぁ……
「って、ん?」
俺は声を聞くのに特化したサーチャーを小声が聴こえた方向に向かわせる。
すると……
『おい、本当にあのモブキャラを殺すのか?』
『ああ! フェイトを気安く名前で呼びやがって……! もう許せん! 殺してやる!』
……あ~まだいたのか。フェイトと名前呼びの間柄だからって鮎川を殺そうとする奴。
「やれやれ、傍観。フューチャーショット」
『フューチャーショット、シュート』
『がは!?』
『ひぎゃ!?』
俺がフューチャーショットを放つとその転生者達は揃ってノックアウトされた。
やれやれ、本当にしつこ……
「そこまでだ!」
「時空管理局だ! ここでの戦闘行為は危険すぎる、ただちに戦闘行為を停止しデバイスを解除しろ! ついでに迎えに来たぞ、馬鹿弟子」
「し、師匠!? なんで師匠が……」
「……漸くご到着か」
「海の人達か!」
「だ、誰!?」
「か、管理局の本隊! 来てくれたんだ!」
……どうやら『アースラ』が原作より早く地球に到着したらしい。
まあ、グレアムから急かされたんなら当然なんだが……てか、クロノと一緒に来た人はミズサキの師匠だったのか。
『な、何故
「え……!?」
「っ!? しま……」
げえ!? まだいたのかよ鮎川を殺そうとする転生者!?
アルフもリニスも狼達も猫も咄嗟の事に反応出来ず、俺もフューチャーショットを撃つ暇がない。
そのまま転生者の攻撃が鮎川を……
「『リボルバーナックル』!」
『え、な……ごばは!?』
貫く前に青髪の女性がその攻撃を転生者に殴り返し、転生者は自分の一撃でノックアウトされた。
……って、え? 青髪に徒手空拳で戦う魔導師って言えば……
「く、『クイント』さん!? 師匠、まさか……」
「ん? ああ、今回は複数の世界にまたがる大事件になる予感がしてな。『レジアス』に無理を言って『ゼスト隊』は全員でついて来た。ありがたく思えよ、馬鹿弟子」
「本当にありがてえよ畜生!」
まさかのミズサキの師匠はゼスト隊の隊員である。ついでに馬鹿弟子だのなんだの言っているがその顔は安堵と喜びに満ち溢れているし、ミズサキも喜びの表情をしていることから馬鹿弟子だのなんだのはただのじゃれあいみたいなものなんだな。
「ちぃ……! 今回は退くぞ!」
「……了解。クロ、ユカリ」
「シロ、退くよ!」
「……ちぇ、わかったよ! アルフ! 次こそ戦うぞ!」
「了承。撤退」
「ミャオさ~ん、またにゃ~」
そう言ってカンリ達が撤退を開始するのを見て、使い魔達も逃走を開始する。
「……アルフ、リニス! 逃げるよ!」
「あ、フェイトちゃん!」
「わかったよ! 坊や、ちょっと我慢しなよ!」
「は、はい!」
「ミャオさんも此方へ!」
クロノ達が現れるや否やフェイトも撤退を決意したらしくなのはの手からジュエルシードを強奪するとそのまま鮎川を連れて逃走を開始する。
「……逃がすか!」
クロノはどっちを追うかを迷っていたが、カンリの方をクイントさん達が追いかけたのを見てフェイトを追うことを決めたらしく、飛行魔法も使って一気に追いすがる。
「……しょうがないか。坊や、あの管理局員なら受け止めてくれると思うからちょっと我慢しな!」
「え……?」
アルフはそう言うと人間形態になり鮎川の首根っこを掴む。
「おい、ちょっと待て。まさか……」
俺がアルフの言葉と行動に嫌な予感がしたと同時に……
「よいしょっとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「ひ、ひゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「な、危な……ぶへ!?」
「や、やりやがったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
俺の悪い予感が的中した。アルフは鮎川を投げ飛ばしてクロノにぶつける事で追撃を(無理矢理)終わらせたのだ。
「……アルフ、今日のあなたのご飯はドッグフードだけ」
「いい!? フェイト! それだけは勘弁しておくれ〜!」
「自業自得です」
フェイトはそんなアルフに容赦なく罰を告げ、リニスは冷たい視線をアルフに向けながら呟いた。
「師匠、ゼストさんとメガーヌさんは何処にいるんだよ?」
「ああ、お前達を監視している魔法があったからその魔法の持ち主を捕まえに行っている。『死ねぇぇぇぇぇ! KY……あべし!?』……で? ハラオウン執務官に襲い掛かる馬鹿共はなんなんだ?」
「俺達の方が知りてえよ。『くたばれモブキャ……ぎゃふあ!?』たく、こいつらがいなかったらテスタロッサとの話し合いの場を何回確保できたか……」
ぶつぶつと転生者達に対する文句を呟きながら、ミズサキとその師匠は鮎川を受け止めた際に気絶したクロノに襲いかかる転生者を次々と撃退していく。
「……なんで、あの子達初対面の人にあんな喧嘩腰に攻撃できるんだろ?」
「さあ……?」
なのはとユーノは転生者達の行動に首を捻っているが……まあ、転生者の行動をわかれって言う方が無理……って、さっきから誰だよ俺の肩を叩くのは……あ。
俺は振り向きながらさっきミズサキの師匠が言っていた事を思い出した。
『ああ、お前達を監視している魔法があったからその魔法を使っている魔導師を捕まえに行っている』
つまり、俺の後ろにいるのは……
「君がさっきから彼らを監視している魔導師か? 次元航行艦まで同行を願いたいのだが」
「逃げようとしても無駄よ?」
俺の予想通り、俺の後ろにはゼスト隊の隊長である『ゼスト・グランガイツ』とその隊員である『メガーヌ・アルピーノ』がいたのであった。
……俺の傍観ライフも此処で終わりか。トホホ……
……………………
「にしても……お前もやっぱり魔導師だったのかよ」
「たはは……」
はい、現在俺は次元航行艦『アースラ』の中をミズサキ監視の下、艦長がいるという部屋まで歩いていた。
……なのはや鮎川、ユーノや管理局のメンバーや捕まった転生者達も一緒だが。
なお、転生者達が何かしら喚くので、今はハギノのバインドで大人しくさせられている。
「すごい……管理局って船も持ってるのアヤト君!」
「船って言うよりも『戦艦』だよ。……最も、次元航行艦に割く予算が多すぎて陸は物凄く貧乏なんだけどな」
「それは……本当に申し訳ない」
「良いよ、海には海の陸には陸の言い分があるけど……どっちも次元世界の平和の為に頑張ってるんだ。恨みは無いさ」
……ミズサキ、隣でユーノが恨めしそうな目で見てるぞ。
「萩野君! あれは何?」
「ああ、あれはデバイスルーム。僕らの持ってるデバイスを調整したりするところだよ」
鮎川、お前さっきから質問しすぎ。ハギノも苦笑いしてるぞ。
「……相変わらず海は贅沢な装備を使ってるな。クロ兄」
「そういうユウヤも相変わらずだな」
……あれ? もしかして、アカツキとクロノは知り合い?
そんなこんなで、ようやく艦長がいる部屋に入ったんだが……普通の部屋だな。
てか、アースラの艦長である『リンディ・ハラオウン』の前にいるクロノ似の男ってまさか……!?
「ようこそ、次元航行艦アースラへ。俺はアースラの艦長の『クライド・ハラオウン』だ。よろしく頼む」
「私は副艦長のリンディ・ハラオウンよ。夫も言ったけどようこそ、アースラへ歓迎するわ」
……マジですか!? A'sにおける展開が予想出来んぞ!?
俺と
そんなこんなで橋出君の傍観ライフの終幕です……が、橋出君視点の話はまだまだ出ます。
アヤトの師匠の名前などはまた次回に……
次回もお楽しみに!
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第18話
「それじゃあ皆さようなら」
「「「さようなら〜!」」」
「……さようなら」
僕は南先生に(多分)暗い顔をしながらお別れの挨拶を言い、ノロノロと鞄に教科書を詰めながら、隣の席にいるフェイトを見る。
フェイトは高町さんに昨日の決定を『念話』で言われたのか、僕を見るとホッとしたような、寂しそうな表情を浮かべていました。
「……フェイト、また明日」
「う、うん……また明日」
僕はフェイトに別れを告げると久方ぶりに1人での帰り道を歩き始めます。(昨日まではフェイトと一緒でした)
僕はとぼとぼと歩いていると、急に寂しさと無力感が沸き上がってきた。
「欲しいよ、フェイト達を止める力が……ジュエルシードなんて平気な力が、水崎君達みたいな力が……欲しいよぉ……」
「なんじゃお主、何で泣きながらとぼとぼ歩いとるんじゃ?」
僕は無力感から泣きながら歩いていると声が聞こえたので上を向くと、そこには桃饅をかじりながら喋っているみたこともない服を着ているお兄さんがいました。
「……お兄さんには関係ないよ、ほっといてよ」
「だあほめ、そんな顔をして泣いとるガキをほっとく奴がおるか。良いから話してみよ。力になれるかもしれんぞ?」
「……」
僕はそんな事を言いながら桃饅を頬張っているお兄さんに冷たい視線を向けながら、ポツリポツリと昨日の夜の事を話始めました……
……………………
「さて、と。お客さんに何も出さないっていうのは失礼だな。リンディ、お茶を出してくれ」
「クライドさん、リンディさん。俺達が捕まえた奴らにはお茶ではなく水道水で充分です」
そう暁君が言うと、後ろでぐるぐる巻きにされている子達が何やらもごもごと言っていますが、暁君はそれをスルーします。
リンディさんはそんな暁君に苦笑いをしながら立ち上がると、予め用意してあったのかポットの中にあるお茶を僕らに、水道水を水崎君達が捕まえた子達に差し出しました。
僕はそのお茶を飲んで……あまりの甘さにむせました。
「な、なんだこりゃあ!?」
「甘い、甘すぎる! 甘すぎて舌が変になりそうだ!」
「……ケーキより甘いお茶なんて初めて飲んだの」
「疲れた頭には良さそうだけどなぁ……」
「……やっぱりか」
水崎君達があまりのお茶の甘さにそれぞれの感想を言うと、暁君が溜め息を吐きました。
「リンディ……あれほど君特製のお茶は出すなと言ったのに……」
「え~? ……美味しいのに」
「重度の甘党の貴方の味覚と普通の人の味覚を一緒にしないでください」
「ユウヤの言うとおりだよ、母さん」
クライドさんが眉間を揉みながら言った言葉にリンディさんは首を傾げ、暁君が再び溜め息を吐きながら発言し、クロノさんがそれに同意しました。
……え? 『母さん』!?
「「「「「「わ、若い!?」」」」」」
「「「……言うと思った」」」
僕達の驚愕の言葉に暁君、クライドさん、クロノさんの3人が同時に溜め息を吐きました。
…………
「さてと……口直しも済んだ事だし、自己紹介に移ろう。私は『クレア・リーズベルト』。
そこの馬鹿弟子の師匠で隣にいる私の隊の隊長であるゼストの婚約者だ」
僕達がリンディさんが持ってきたお煎餅と普通のお茶で口直しをすると、水崎君と仲が良かった女の人が自己紹介をしました。
「師匠、漸く婚約まで漕ぎ着けたのかよ」
「お前が犯罪者と一緒に時空転移しなければ一気に結婚までいけたんだぞ全く……この馬鹿弟子め!」
水崎君がクレアさんを茶化すと、クレアさんは呆れ気味な声で水崎君のおでこにデコピンをしました。
「いってぇ!? 師匠! 今のデコピン、魔力を込めただろ!?」
「無茶をした罰だ。甘んじて受けろ」
「くそぅ……」
そう言って水崎君が不貞腐れた顔で座り直します。
「続けるわね? 私は『クイント・ナカジマ』。クレアさんと同じくゼスト隊長の隊にいるわ」
「因みに1男1女の子持ちの人妻だぞ」
あれ? 1男1女の部分で橋出君や他の子達が驚きで目を見開いているけど……どうしたんだろう?
「次は私ね。私は『メガーヌ・アルピーノ』。他の2人と同じくゼスト隊長の隊に所属しているわ」
「因みに凄腕の召喚師で、今年娘が産まれた」
水崎君……どうしてそうプライベートな事を言っちゃうんでしょうか?
現にクイントさんとメガーヌさんが「「余計な事は言わないの!」」って言って、両側から頬っぺたを引っ張られて「ふぉ、ふぉへんなはい……」って謝らさせてるし……
「『ゼスト・グランガイツ』だ。よろしく頼む」
ゼストさんは一言挨拶するとそのまま口を閉じました。
無口でクールな人なんでしょうか?
「僕は『クロノ・ハラオウン』。この艦所属の執務管で艦長と副艦長の息子でもある」
「俺とは家族ぐるみで幼馴染みだ」
「(……マジかよ)」
暁君の言った事に橋出君が変な汗を流しながら頭を抱えていました。
「さて、自己紹介も済んだところで……今までの経緯を説明してくれないか?」
「は、はい! 実は……」
クロノさんに促されて、スクライア君が話したのは月村さんの家でヒテイ君に襲われた後で言われた事と同じことでした。
魔法の事、ジュエルシードの事、水崎君達と合流した事、妨害してくる人達の事、フェイトの事も全部話しました。
「……自分が発掘した危険なものを回収するために戦う、立派な事だ」
「だけど、同時に危険すぎるわ。せめて管理局に連絡するとか考えなかったの?」
「カンリ・ヒテイがしつこく攻撃してたのと、それが原因で通信機が壊れてしまったので……」
「……そうか。だが、そんな状況にも関わらずよく頑張ったな」
「……あ、は、はい」
クライドさんとリンディさんに注意されてスクライア君が落ち込むけど、クライドさんは微笑みながらスクライア君を誉めてスクライア君は嬉しそうな顔になりました。
「(カンリの事について話すのは後で良いか……)さて、ミズサキ『三等空尉』、アカツキ『三等空尉』、ハギノ『三等空尉』の三人はアースラに合流して活動してもらうよ」
……ん? 三等空尉? 水崎君達は『空曹』って階級だったのんじゃ……?
「「「……階級が上がってる!?」」」
「暴走しかけた天国の門を封印したのが評価されたのよ。……行方不明だったから、死んでいた時の保険もあったんでしょうけど」
水崎君達もそう思ったのか驚いているとリンディさんがその理由を言いました。……ぼそりと小声で呟いた事はなんだったんでしょうか?
「高町とスクライアはジュエルシードの事を管理局に任せてそのまま元の生活に戻れるが……」
「嫌です。ここまで来たからには僕にも参加させてください!」
「私も、フェイトちゃんを止めるって決めたから。それに中途半端なままでは終われないもの!」
「……だろうな」
クレアさんが高町さんとスクライア君に確認をすると、高町さんとスクライア君は即座に参加することを表明しました。
「あ、あの僕は……」
「言われなくても鮎川はダメだ。てか、ジュエルシードやテスタロッサの事はこっちに任せて日常に戻れ」
「君はダメだ。それからフェイト・テスタロッサには事件が終わるまで近づかない方が良い」
「参加……え?」
僕がフェイトの事を理由に参加できないことを言おうとしたら、水崎君とグランガイツさんが即座に否定の言葉を言いました。
「で、でも僕は……」
「……鮎川。お前、今回の事件で何回命の危機に陥った?」
「あう……」
僕が反論しようとすると、水崎君は即座に僕が今回の事件で何回危機に陥ったのかを言い始めました。
「先ずカンリの攻撃だよな? 次に温泉でのジュエルシードに学校での危険な嫌がらせ、そんでもって今夜のお前に対する過剰なこいつらの攻撃……魔力の無い一般人のお前が生き残ってこれたのが奇跡なんだぜ?」
「で、でも!」
「『でも』もくそも無いんだよ。鮎川が死んだら鮎川の家族が悲しむし、鮎川の好きなテスタロッサも泣くんだぜ?」
「ぼ、僕は別にフェイトの事を好きだなんて……」
「(顔を真っ赤にして言っても説得力ねえよ)」
僕が水崎君の言葉を否定すると、水崎君は残念そうな顔で僕を見ていました。
「そ、それでも僕は……」
「……それ以上、文句を言うなら私たちは君を管理局の監視下に置かなければいけなくなるわ」
「そうなれば本当に二度とテスタロッサさんと話せなくなるわよ?」
僕が更に反論しようとすると、クイントさんとメガーヌさんが怖い顔と声で脅してきました。
……僕は、僕は、
「わ、わかりました。ジュエルシードの事には今後、関わりません」
「……ごめんね」
「すぐに終わらせて、テスタロッサと話し合いできる時間を作るさ」
僕の言葉に萩野君が寂しそうな顔で、暁君が力強い表情でそう言いましたが、僕には余り入ってきませんでした。
「あ、お前らはデバイスは取り上げ、リンカーコアを封印した後で管理局の監視下に置くから悪しからずな?」
「橋出君はその目を活かしてジュエルシードの探索を行ってもらうわ。良いわね?」
「……へーい(……なんで傍観系転生者ってすぐに原作に巻き込まれるんだ?)」
水崎君の言葉で雁字搦めになっていた子達がわめき、橋出君は不満そうな顔をしていましたが、僕には関係のない話でした。
………………
「それでも、それでも僕は、僕はフェイトの側にいたくて、フェイトを止めたくて。でも、その力がなくて……」
「(これは、随分と大事になっておるな……)」
僕がベンチに踞っていると、お兄さんは何やら思案顔でした。
「あ、あの! 僕にリンカーコアって言うのは……」
「ない!(ついでに言うなら『仙人骨』もないが……これは言わなくてもいいの)」
僕が言ったことは、即座にお兄さんに否定されてがっくりと肩が落ちるのを感じました。
「僕は……どうすれば良いんだろう……」
「(……諦めて日常に戻れと言うことは簡単じゃが、それだと本気で傷付く可能性があるし……かといって懐にある『これ』を渡すのはこやつを戦いから遠ざけた連中の気持ちを踏みにじることになるし……ううむ、悩むのう)」
僕が膝を抱えて座ると、お兄さんは凄く悩んでいて……え?
「魔法……陣?」
「……む? いかん!」
僕が足元に現れた魔方陣に戸惑っていると、お兄さんが魔方陣から僕を引き離そうとして……僕の意識はそこで途絶えました。
…………
「鮎川、お前なら変えられる。プレシア・テスタロッサに定められた……「不深山、てめぇ!」ぶげら!?」
鮎川春雄と謎の青年を魔方陣で何処かに飛ばした不深山は、戦闘をしていた狙撃からの攻撃を受けて台詞の途中でノックアウトされた。
如何でしたか?
色々あって遅れましたが何とか投稿できました。
次回もお楽しみに!
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第19話
「……鮎川が不深山に転移でどっかに飛ばされて行方不明だとぉ!?」
「ああ、不深山……に憑依した転生者は俺がぶちのめして本部に転がしてある。……尋問をするから、一緒にこれるか?」
俺が声を荒げて狙撃に確認すると、狙撃が頷きつつ俺に俺達の組織『傍観転生者の会』の本部にこれるかどうか確認してきた。
「悪い、アースラの事で今は手一杯なんだ……尋問の結果は後で教えてくれ」
「了解……傍観転生者の中で、一番原作に介入することを嫌っていたお前が原作に介入することになるなんてな」
俺が狙撃に謝ると、狙撃が苦笑いしながらそう言った。
「本当になんなんだろうな、まったく……(鮎川……大丈夫だよな?)」
俺は溜め息を吐くと共に、鮎川の無事を祈らざるを得なかった……
………………
あれから数日後、俺達は……
「なのは達の善意を利用する悪の管理局め! この俺が……「うるせえ!」ぶげえ!?」
「くたばれ、KY……「『
「子供を戦わせ……「君もなのはや僕達と同じ子供でしょ。バインド」むぐー!?」
「おーい、鮎川! 何処だー!」
「いたら返事をしてー!」
「本当になんなんだこいつらは……」
訳の判らんことを言いながら俺達に襲いかかる変な奴らを撃退しながら、ジュエルシードと行方不明になった鮎川を探して走り回っていた。
つーか、善意を利用するって……リンカーコアを封印する前にそんなことを言っていた連中もいたけど、俺達はなのはの善意を利用していない。
なのはが協力しているのは全部なのはの意思だし……最も、協力を頼んだのはなのはに勝手をされて余計な被害(なのはが大怪我したり、死亡したりするような事態も含む)が出ないようにするためだ。本来は師匠達やクロノを中心としたアースラの乗員達で戦力的な面は事足りるしな。
……つっても、なのはレベルの魔導師は貴重だからっていう理由もあるにはあるけどな。
因みにアリサや焔達もアースラに招待して、今までの礼と全員が日常に戻るように言ったんだが……全員が全員一致で協力し続ける事を宣言したんで場が紛糾しかけたんだけど、師匠が折衷案としてリンカーコアがあった焔と春人の魔力適正にあったデバイスを貸し与えて協力させるって事で妥協した。
にしても……
「焔が魔力変換資質の『氷』で、春人が魔力変換資質の『炎熱』……しかもそれに応じたデバイスに適正があったのは何かの皮肉か?」
「しかも二人の戦闘スタイルに思いっきり噛み合うしな」
焔は変換資質が氷だったからアースラで保管されていた(クロノも変換資質が氷だったんだが相性が悪かったらしい)グローブ型のデバイスである『スノーホワイト』を、春人は変換資質が炎熱だったから同じくアースラで保管されていた刀剣型のデバイス『フレイムアイズ』をそれぞれ受領した。
そんで、慣らし運転も兼ねてジュエルシードと鮎川の捜索に出撃したんだが……剣術を学んでいた春人には刀剣型のフレイムアイズはそれを応用して戦闘に使うことで魔法に頼らなくても十分に戦えるし、焔は執事になる過程で学んでいたボクシングでスノーホワイトを的確に相手の急所に叩き込み、そこに魔方陣を打ち込むことで時間差で相手を凍らせるという戦法であっさりと捕縛に成功しているしで……俺達、護衛として来る必要があったのか?
「……それは言わない約束だよ」
「だよなぁ……」
俺が頭を掻いていると……
『みんな、緊急事態よ! すぐにアースラに戻ってきて!』
アースラのオペレーターである『エイミィ・リミエッタ』さんに言われて、俺達は捕縛した連中を連れて、慌てて転移でアースラに帰還した。
………………
「どうしたんですか!?」
「これをみて!」
俺達が(捕縛した連中を引きずりながら)慌てて司令室に飛び込むと、エイミィさんがモニターに映像を呼び出す。
そこには……
「な……テスタロッサ!?」
海に大規模な魔法を撃ち込むテスタロッサと、そこから現れるシードモンスター……しかも今まで見たことがないほどの巨大なものが写っていた。
「フェイトちゃん……今すぐ助けにいかないと!」
「同感だ!」
「僕も賛成です! 行きましょう!」
「ぼ、僕も行くよ!」
慌ててなのは、焔、春人、ユーノの四人が出ようとして……
「駄目だ。許可できない」
司令室から先頭で出たなのはが司令室に入ってきたクライドさんにぶつかり、残りの三人はそのまま自分の前の人物(なのは、焔、春人)の背中にぶつかった。
「は、鼻が痛い……」
「す、すまない、用があったから司令室から出ていたんだが……」
「……じゃなくて、なんで出撃出来ねえんだよ!? 向こうでテスタロッサが危ない事になってるのに……!」
焔の言うとおり、テスタロッサは大技を使ったことで魔力が低下したのと一度に海の中にあったジュエルシード(反応は六個だ)を一辺に起動させた所為で凄まじい戦闘能力になったシードモンスターに圧倒されていて、正直撃墜されてもおかしくないくらい動きが鈍かった。
だけどよ……
「だからと言って、無条件で犯罪者を助けるわけにはいかない。それに……彼女は最早死に体だ、見捨てるしか……」
「は! 自分の保身のためかよ! 可哀想だよなあリンディさんも……「ちょっと黙ってて」モガモガ……」
クライドさんの言葉にぐるぐる巻きにされている奴の一人がクライドさんを罵倒して……怒りの四つ角を額に浮かべたリンディさんにバインドで鼻以外の全部を塞がれた。
……正直、今のリンディさんは、かなり怖い。
「このチキン野郎が! そんなに自分の身が可愛いのかよ!」
「こんな女の子が命懸けで戦ってるのにそれを見捨てるだと!? このゴミ虫野郎が!」
「お前らなんてさっさと臆病風を吹かせて帰っちまえ!」
「そして二度と地球に干渉するな!」
「やはり管理局は糞な組織だな! いずれ俺達が潰してやる!」
「……俺だって彼女を助けたいんだ!」
そんなことを身勝手に喚く連中にいい加減苛立った俺達が実力行使に出ようとすると、クライドさんが怒鳴った。
「俺だって、本当はあそこで苦しんでいる彼女を助けたい……だけど、俺はアースラの乗組員達やゼスト隊、高町さん達の命を預かっているんだ! 俺の正義感だけで彼らや彼女達を危険な任務に行かせるわけにはいかないんだ……!」
クライドさんは握り拳を震わせながら悔しそうな顔でそう言った。
……そうだよな、クライドさんは艦長という立場だからこそ非情とも言える判断を下したんだ。こいつらの言うように臆病風に吹かれたわけじゃないんだ。
だから……
「ところで馬鹿弟子……お前の小隊の仲間はどこに行った?」
やべ、師匠にばれたか……
『ユウヤ、ヤマト! まだか!』
『今終わったところだ!』
『ユーノに転移装置の座標を転送!』
「……まさか!? メガーヌ、クイント! スクライアを取り押さえろ!」
「クロノ!」
「師匠にクライドさん、もう遅いぜ! なのは、焔、春人、橋出! ユーノに掴まれ!」
「「「???」」」
「なんで俺まで……」
「ユーノ!」
「転移魔法……発動!」
俺がヤマトとユウヤから連絡を受けると、師匠とクライドさんは俺が何をしようとしたのか気付いたらしく、慌ててユーノの近くにいたクイントさんとメガーヌさん、クロノにユーノを押さえ込ませようとしたが……俺がユーノに掴まりながら叫ぶと他の三人は頭に疑問符を浮かべながら(橋出は戸惑いながら)ユーノに掴まり、俺達はユーノの転移魔法によりメガーヌさんとクイントさんの手とクロノのバインドが届く一歩手前で転移装置の前に転移した。
「遅せえぞ、二人とも!」
「これでも急いだ方だよ!」
「最新の艦だからセキュリティが堅かったんだ! 多少の遅れは我慢しろ! さっさと行くぞ!」
「え? え? どういうことなの!?」
「説明は後だ! とっととテスタロッサの所に行くぞ!」
「え? う、うん!」
『馬鹿弟子……いや、アヤト・ミズサキ!』
俺が転移装置のロックの解除に手間取った二人に怒鳴ると、二人も転移装置に乗り込みながら怒鳴りテスタロッサの下に転移する。
そして疑問符を浮かべているなのは達(ユーノと橋出除く)と共に転移装置に飛び込もうとすると、師匠から通信が入る。
『お前は自分が何をしようとしているのかわかっているのか!』
「……命令違反に犯罪者の補助、だろ? そりゃさ、クライド艦長の判断は間違っちゃいないさ。俺だってテスタロッサが『ただの』犯罪者なら見捨ててたさ」
俺は一拍置いて師匠に「だけど……」と言うと、俺の正直な気持ちを言った。
「テスタロッサは俺の、俺達のクラスメイトなんだ。クラスメイトが目の前で死にかけてるってのに見捨てるほど俺も、なのは達も大人じゃねえんだよ。それに……師匠だって薄々は予想してたんだろ? 俺達がテスタロッサを見捨てずに助けに行くって」
『……まあな、仮に今の状況でフェイト・テスタロッサを助けに行こうとしなかったら私はお前をぶん殴っていた筈だ』
「ひっでえ、理不尽だ」
俺が師匠のため息混じりの言葉に突っ込むと、師匠は『だがな……』と言うと俺に真顔でこう言った。
『命令違反は命令違反だ。罰則はなくとも説教は覚悟しておけ』
「それは織り込み済みだっての!」
俺は師匠の言葉にそう言うとそのまま転移装置に飛び込んだ。
…………
「フェイトちゃん!」
「なのは!? それに黒埼君達もどうして……」
「助けに来たの! フェイトちゃんに傷付いてほしくないから!」
「僕もなのはと同じだよ! なのはの友達が傷付くのを黙って見ていられないんだ!」
「クライドさん達には止められたけどな……」
「それでもなのは様やすずかお嬢様のご友人が傷付きそうな姿を黙ってみられるほど大人ではありませんので」
俺が海に到着するとなのは達がテスタロッサを説得していた。(ユウヤとヤマトはシードモンスターの迎撃をしていた)
「なのは……私は」
「半分こ!」
「え……?」
「ジュエルシードをきっちり半分こ! これで手を取り合えるよね!」
「なの、は……でも、私は……」
テスタロッサが戸惑っていると、なのはは今回のジュエルシードの半分をテスタロッサに譲渡することで共闘しようと言う。テスタロッサは今までのなのはとの友情を放り捨てたすずかの家での戦闘が未だに尾を引いているのか、俯いたまま反論するが……
「喧嘩しても、また仲直りすれば良い。アリサちゃんがそう言ってくれた! だから、フェイトちゃん!」
「……うん、わかったよ。なのは、一緒に!」
「……! うん!」
「(……眼福、眼福!)」
橋出が共闘の態勢をとったテスタロッサとなのはを見て何故かホクホク顔になっていたが、俺は首を傾げながらジュエルシードの攻撃を撃ち落とす。
「なのはにテスタロッサ! 俺がジュエルシードを抉り出すからその隙に封印しろ! 他のメンバーは俺を援護してくれ!」
俺がそう言うと、なのはとテスタロッサ以外のメンバーはシードモンスターの周囲を飛び回り、放たれる触手や竜巻を次々と払いのける。
「それじゃあ、新魔法のお披露目といかせてもらうぜ! 『ランス・ビット』、展開!」
俺がそう言うとT4Wを中心に槍の穂先型のビットが四個展開される。ランス・ビットはT4Wの穂先を中心に回転を始め、魔力の渦が穂先に産まれる。
「螺旋走破! 『スパイラルバンカーショット』!」
俺はそのまま魔力の渦『スパイラルバンカーショット』を撃つと、即座にスパイラルバンカーを作り突撃する。
「『デュアルバンカーブレイク』! ぶち抜けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
二つのスパイラルバンカーの相乗効果により産み出された破壊力はシードモンスターを貫くと、その内部にあったジュエルシードを露出させ、俺が空中で止まってもスパイラルバンカーと融合したスパイラルバンカーショットはシードモンスターの背後にあった海を貫き海底に穴を空けるほどだった。
「今だ!」
「レイジングハート!」
「バルディッシュ!」
俺が振り向きながら二人に言うと、二人はジュエルシードにデバイスを向けながら同時にこう言った。
「「ジュエルシード……封印!」」
そしてジュエルシードが封印されるとシードモンスターが海に戻った影響で巨大な津波が発生し、俺達はそれを避けるために空中に上がると俺達を追ってきた師匠達がそこにいた。
「全く……命令違反をしたんだ。指揮官クラス全員の説教は覚悟しておけよ」
師匠の言葉にあらかじめ予想していた俺達は溜め息を吐いて……? 空に何か転移してきたぞ?
「橋出、空から落ちてくるのをお前の千里眼で……」
「鮎川だ」
「は?」
「鮎川が飼い猫と一緒に空から落ちてくる」
「そうかそうか……笑ってる場合じゃねー!?」
俺達は橋出の言葉を聞いて慌てて鮎川を受け止める為に移動しようとするが、鮎川が落ちてくると聞いた瞬間に飛び出していたテスタロッサが既に受け止めていた。
「春雄、この数日間何処にいたの!? それにどうして空から……」
「ふぇ、フェイト……それに橋出君達も……」
俺達が駆け付けると鮎川は涙目になりながらこう言った。
「お願い……プレシアさんを……フェイトのお母さんを助けて!」
こうして、鮎川の言葉を切っ掛けにジュエルシードを巡る戦いは急転直下の事態を向かえることになる……
如何でしたか?
次回は鮎川君視点です。
次回もお楽しみに!
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第20話
「……そりゃ、本当か?」
薄暗い地下室で少年『
「ああ……俺は未来視のレアスキルを持っていてな。……このままだと、プレシア・テスタロッサは『プロジェクト
そして富美大は狙撃を含む傍観転生者全員に『とある映像』を送りながらこう言った。
「そして、それを防ぐのはあの青年と……魔力を持っていないあの『三人』だ」
その映像には猫の絵が描かれた黒い外套を羽織り、白い翼の生えた女性を従える『鮎川春雄』と杖を構えた青年、ダイヤモンドにも似た透明な剣を右腕に着けた『月村すずか』、髪が銀髪になり瞳が深紅に変わった、まるで女騎士のような装備を身に付けた『アリサ・バニングス』がいた……
………………
「……これは一体どういう状況かしら?」
私『プレシア・テスタロッサ』は本拠地にしている『
「……はぁ、傀儡兵は地面に埋まっている奴を引きずり出しなさい。私は坊やを寝室まで連れて行くから」
私は溜め息を吐きながら傀儡兵に命令をすると、鮎川春雄を抱き抱えると寝室に連れていこうとして……
「んぅ……おばさん、誰?」
寝惚け眼の鮎川春雄に言われた事にずっこけ、鮎川春雄と一緒に顔を打ち付けた。
…………
「……此処、何処?」
僕が目覚めるとそこは……顔色の悪いエルフのように耳の尖ったお兄さんがいました。
「……誰だ、てめぇは?」
「あ、鮎川春雄と申します……お、お兄さんは?」
お兄さんから如何にも不機嫌なオーラが漂っていて、物凄く怖いです……
「……鮎川、ああ、さっきまで『
……どうして中国の偉人の名前が出てくるんでしょうか?
「どーでも良いんだよ、そんなことは。……それにしても今日はズカズカと此処に踏み込んでくる奴が多いな」
「?」
僕が周囲を見回すと……
「あれ……? 鮎川!? あんた、三日間も此処で何してんのよ!?」
「あ、鮎川君!? 此処にいたの!?」
僕の後ろに怒り心頭なバニングスさんと心配そうな顔の月村さんがいました。
「ぼ、僕にも何が何だかわからないんだけど……それに三日間って何!?」
「三日間って何って……あんたジュエルシードに関わるなって言われた日の放課後に行方不明になったのよ! ミズサキ達は訳のわからんことを言う連中の残党の仕業かって頭を抱えていたし、テスタロッサは心配そうにあんたの席を見てたし、あんたの両親は声が枯れるまで探し回るしで……もう大変だったのよ!」
「フェイトや、お父さんにお母さんが……」
そ、それなら早く戻らないと……
「……少し黙れ」
「「「……はい」」」
僕たちは静かな怒りを発しながら何かを探す王天君さんにビビりながら黙りました。
「……そらよ、お前らこれを持ってけ」
そう言って王天君さんはごそごそと懐を探ると、天使の翼が描かれた宝石と、ダイヤモンド(後で月村さんに『模造』ダイヤモンドである『ジルコニア』だと言われました)、剣が描かれている玉を僕、月村さん、バニングスの順に渡しました。
「お前ら、自分の好きなヤツや友達が命懸けで戦ってるのに自分が戦えないのを悩んでるんだろ? それを使えば戦えるようになるはずだ」
「……良いんですか? そんな真似をして?」
「太公望の奴が『連中』に預けられたやつだ。『
「僕らはおまけ扱いですか!?」
「おまけだ」
王天君さんの言葉に僕がガビーンとなっていると、体が浮き上がるような感覚が現れました。
「……夢から目が覚める見てえだな。じゃあな、二度と此処に来るなよ」
王天君さんがそう言うと同時に僕の意識はそこで途絶えました……
………………
「……此処は?」
僕が目を覚ますと、そこはふかふかのベッドの上でした。
「あれ? 何で王天君さんから渡された宝石が……? それに何でミャオまで!?」
僕の傍らには王天君さんに貰った宝石がネックレスとして置いてあり、何故かミャオが僕の側で寝てました。
「とりあえず、此処から出なくちゃ……」
僕はネックレスを首に描けて、寝巻きから服に着替えた後、鞄を背負い、一緒に起きたミャオを肩に乗せて部屋から出ました。
………………
「む……起きたか、坊主」
「うん。太公望さんは僕が起きるのを待っていてくれたの?」
「うむ。三日間も目が覚めなかったから心配したぞ……って、ちょっと待てい! 何故わしの名前をお主が知っておる!? それに何故その
僕が部屋を出ると部屋のすぐ横の壁に背中を預けていた太公望さんがいたので僕が太公望さんの名前を言ったら……すごい勢いで驚かれました。
「え、えっと……夢の中で王天君さんに教えて貰ったんです。これも王天君さんに貰いました……友達のバニングスさんや月村さんも一緒に」
「アヤツめ……」
僕が目を反らしながら言うと、太公望さんは頭を抱えながら溜め息を吐きました。
『太公望様、『鮎川春雄が起きたならさっさと来なさい』とご主人様がお呼びです』
「わ! ロボットだ!」
「むぅ、わしとしては鮎川を説得してコアを取り上げたいんじゃが……仕方ないのぅ……(まあ、鮎川は信頼できそうな
僕がロボットに目を輝かせていると太公望さんは難しい顔つきで溜め息を吐いていました。
………………
「漸く起きたのね」
「おばさん……誰ですか?」
僕が部屋にロボットに案内された部屋に入って早々に言った言葉に黒髪の綺麗なおばさんは床に両手両膝をついてorzになりました。
「鮎川、女性にそういうことは厳禁じゃぞ」
「は、はい……」
そして僕は呆れたような表情の太公望さんに注意されました。
「……鮎川春雄は小学生、小学生だからおばさんと言われてもしょうがないわよね。そうね、そう思いましょう……」
「あの、おばさん……大丈夫ですか?」
「……私の名前は『プレシア・テスタロッサ』。貴方が仲良くしているフェイトの母よ。よく来たわね、鮎川春雄」
おばさん……プレシアさんはそう言って立ち上がると僕に微笑みながらそう言いました。
……同時に僕も聞きたかった事を言える人が目の前にいることがわかって内心驚きながらも話を始めました。
「あ、あの……プレシアさんは、どうしてフェイトにジュエルシードの捜索を命じたりしたんですか……? フェイトはそのせいで、高町さんと戦って、友達と戦ってるせいで傷付いているのに、どうして自分でジュエルシードを探さないんですか……?」
「……そうね、その理由はこれを見せてから言うわ」
そう言ってプレシアさんは後ろにあるコンソールを操作すると、壁がドアの様にスライドし、て……え?
「ふぇ、フェイト……?」
そこにはフェイトを少し小さくしたような女の子が……うわわわわわ!?
「な、何で裸なんですか!?」
「……鮎川、あれはお主の言う『フェイト』ではないぞ」
僕が慌てて目を塞いでいると、太公望さんは深刻そうな声色でそう言いました。
……フェイトじゃない?
「……フェイトはその子の『
「……え? クローンってどういう……」
「……流石は『
「……やはりか」
「……その通りよ。フェイトはこの子……『アリシア』のクローンよ」
プレシアさんは悲しそうな顔で話を始めました。
プレシアさんとアリシアは母子家庭であり、リニスさんはアリシアが無理を言って飼わせて貰っていた普通の猫でした。
プレシアさんは技術職だったために、アリシアと過ごす時間は少なかったけれど、とても幸せな日々を過ごしていたようです。……事故が起こるまでは。
前任者の杜撰なスケジュール管理、企業のよるテストの前倒し、技術的な危険性……それらが重なりあった結果の事故で、アリシアは死亡……プレシアさんはそれらを全て擦り付けられ、悲しみにうち震えていたそうです。
「だからこそ、私はアリシアを蘇らせる為に、過去の文献を片っ端から探してこの計画……クローンを製作し、そこに記憶を植え付けることで対象を復活させる『プロジェクトFATE』に行き着いたのよ」
「……じゃが、完全な死者蘇生の方法などありはせぬ。出来ても、それは他人でしかない」
「……そうよ。最もアリシアに良く似ていたあの子でさえ、リンカーコアの大きさや魔力適正、魔力の色などが食い違っていた。お陰で私はあの子を徹底的に虐待していたわ」
「……!」
僕がプレシアさんを睨んでいると、プレシアさんは「だけど……」と言いながら続きを話始めました。
ある時、フェイトを奪うためにプレシアさんに襲い掛かってきた集団がいたそうです。
プレシアさんはあっさりと撃退しましたが、集団の一人が襲いかかる前にこう言ったそうです。
「お前はアリシアの願いを無下にしているだけだ! フェイトはアリシアが望んでいた『妹』だろうが!」と。
プレシアさんはその言葉に衝撃を受けたそうです。
妹……アリシアは誕生日で「妹が欲しい」と言った事があったそうです。
「あの子は、フェイトはアリシアの遺伝子を使って産み出したクローン……つまり、アリシアが望んだ……『妹』。彼らの内の一人の言葉で、私は漸くそれに行き着いたのよ」
プレシアさんは懐かしむ様な顔でそう言いました。
「でも……!? ゴホゴホ……!」
「ぷ、プレシアさん!? ……あ」
僕が慌ててプレシアさんの背中を擦ると、プレシアさんは血に濡れた手を僕に見せました。
「……肺の病か」
「ええ、肺癌よ。それも末期のね」
「これが私が一緒に行けなかった理由よ」とプレシアさんは言いました。
「……健康でも行く気はなかったけどね」
「……どうしてですか?」
「……娘の幸せの為に、死ぬ気か」
「ご名答よ。私は、あの子の母親にはなれないわ。だからこそ、海鳴に散らばったジュエルシードを集めさせる名目であの子を行かせたのよ。……襲撃者達から得た知識でそこであの子に友達が出来るのはわかっていたから」
「どうしてそんなことを……」
「私はあの子を傷付け過ぎたわ。何より……アリシアを一人ぼっちにさせたくなかったから……」
『じゃあ、今すぐアリシアの元に送ってやるよ』
その声と共に、大きな揺れが襲いました。
「これは……転移反応!? しかも同時に傀儡兵や時の庭園の防衛機構がハッキングされている……!?」
「……動かないで」
僕の首に刀が突きつけられ、太公望さんとプレシアさんが驚愕の表情で僕の後ろを見ました。
「何時の間に……しまった、霧の『幻覚』か!」
「……正解。高度な『藍色の炎』は機械をも騙せる」
「侵入警報がならなかったのと、ハッキングはそれね……」
「違うにゃ、藍色の炎で出来るのは監視カメラとかを騙すくらいだにゃ。ハッキングの方はシロが得意なのと……私達が所属している組織の人間に体をデータに出来る奴がいて、それでデータを書き換えてるだけだにゃ。……いけ好かない連中だけど、能力だけはすごいにゃ」
僕に刀を突き付けているミツルギさんが侵入した方法をミツルギさんの使い魔である『ユカリ』さんがそう言うのと同時に扉が開かれ、中に年齢も装備もバラバラな人達が入ってきました。
「よう、プレシア・テスタロッサ。俺は『フェイズ・トウラーノ』、プロジェクトFATEにより作られたフェイトの兄だ」
「……そのわりには、アリシアに似てないけど?」
「……ふん、血や遺伝子の繋がりなど、同じプロジェクトにより作られた苦しみに比べたらあってないような物」
「……要するに、同じプロジェクトで作られた以外接点がないんじゃな……ぐえ!?」
「太公望さん!?」
太公望さんが呆れ返ったような声でそう言うと……リーダー格の男の子に殴り飛ばされました。
「黙れ……! 口答えした罰として、そのガキを殺してやる」
「「な……!?」」
「フェイトを惑わせた罰だ、死ね。一瞬だ、苦しみもなく死なせて……!」
『ご主人は僕が守る! 『
「へ?」
「え!?」
男の子の攻撃が僕に……当たる寸前に聞こえた声と共に発生した魔方陣に吸い込まれて、僕は空中に投げ出されました。
『な、何で空中に!?』
「春雄!」
僕はそばから聴こえる声に驚きながら、僕は此方に迫ってくるフェイトを見て、安心しました。
だって……高町さん達が一緒にいたから……
僕は安堵と共に早くプレシアさんの危機をフェイトに伝えなくちゃいけない気持ちになりました……
如何でしたか?
次回はクライマックスに向けて怒濤の展開が繰り広げられます!
次回もお楽しみに!
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第21話
「……マジかよ」
「うん……」
「私が、母さんの本当の娘から作られた、クローン……?」
俺達は空から落ちてきた鮎川の話を聴くと、その話はかなりヤバイ話だった。
「プレシア・テスタロッサが主任をしていたプロジェクトの事故は知っている。罪をプレシアに擦り付けた連中は後日全員が僻地に左遷させられるか、クビになるか、逮捕されるかのどれかになっていた筈だ」
「そうなんだ……」
「まあ、今更な話なんだけどな」
ユウヤが複雑な表情でそう言うと、ヤマトが苦々しい顔で溜め息を吐いた。
「フェイトちゃん……大丈夫?」
「なのは……うん、大丈夫」
なのはが心配そうな顔で自分がアリシア・テスタロッサのクローンだと知って顔を青ざめているテスタロッサを気遣うと、テスタロッサは弱々しい笑顔でなのはにそう言った。
……強がりだな。心は折れかけているのに、それを強靭な意思で繋ぎ止めている……ってところか? どっちにせよこのままだと不味いな。
「なんとか時の庭園にいる奴等と連絡をとらないとな……」
『みんな! 時の庭園から通信が来たわ! 急いで艦橋へ!』
師匠が難しい顔で呟いた瞬間にエイミィさんがそんな通信を入れてきたので、俺達はずっこけた後でアースラの艦橋に向かって走り出した。
………………
『ご機嫌よう、アースラの諸君。俺は傲慢な管理局を打倒する事で全ての管理世界を解放する正義の軍隊『
「……管理局所属艦アースラ艦長のクライド・ハラオウンだ。通信に応じてくれたことに感謝する」
『ふん、お前達の言いたいことはわかっている。『人質を解放して投降しろ』だろう? 条件をのめばすぐにでも解放してやる。……爺臭いしゃべり方をする男だけをな』
「……何?」
『条件は三つ。一つ.フェイト・テスタロッサをジュエルシードと共にすぐに明け渡すこと、二つ.アースラは今すぐ地球から退去すること、三つ.管理局は地球で何が起ころうとも介入をしないことを全管理世界に放送すること。これらをすれば我等は人質を解放する』
「……っ! それじゃあ無条件降伏みたいなものじゃないか!」
『おっと、口には気を付けろ。俺の機嫌を損ねれば人質の命は……』
クロノの言葉をトウラーノは首を斬る動作をしながらせせら笑う。
要するに殺すってことかよ……!
『返事は明日の午前10時まで。それまでに本局と話し合って条件をのむかどうかを決めろ。それでは通信を……』
「待って! 母さんは……母さんは無事なの!?」
トウラーノが通信を切ろうとすると、テスタロッサが焦った顔でそう言った。
『フェイト、あのような耄碌虐待毒婦の事は忘れろ。お前は俺達と共に管理局を……』
「違う! お前達が私を奪いに来てから、母さんは変わった。私と距離を取っていても、冷たい態度を取っていても、その根底にある優しさは変わらなかった! もしも母さんを傷つけてみろ……私は、地の果てまでお前を追いかけて報いを受けさせてやる!」
『フェイト……そこまであの毒婦とモブキャラに洗脳されていたのか。安心しろ、あの毒婦は生きている。最も、お前の洗脳を解いた後で今の今まで虐待していた報いを与える予定だがな。今度こそ通信を終える』
通信が切れると、アースラに重い空気が降りる。
「明日の午前10時……」
「後半日しかねえじゃねえか……」
「……アルフ、リニス。行くよ」
「……何処に行く気だ」
俺達が時間が無いことに焦っていると、テスタロッサが何かを決意した表情で艦橋を出ようとするとゼストさんがその前に立ち塞がった。
「時の庭園に行って母さんを助ける。ただ、それだけだ」
「無謀すぎる! それこそあいつらの思う壺だ!」
「それでも! それでも、私は、母さんを、アリシアを……助けたい! 例えアリシアの代替品として見ていても、私を愛情を持って育ててくれた母さんを、私の姉を……あんな奴等の手に置いておく訳にはいかないんだ!」
「そうだとしても、無茶だわ! 敵は時の庭園の防衛機構を全て掌握している上に魔導師の数も不明……此方は精鋭揃いのゼスト隊や、執行官であるクロノ、トップエースクラスの魔力を持つ高町さん達やミズサキ君達がいるけど戦力としては圧倒的に不利なのよ!?」
テスタロッサがデバイスを握りしめながら言った言葉に、クライドさんとリンディさんが必死に説得をしようとする。
……まあ、そんな風にしながらも俺達やユーノを見張る余裕があるんだけどな。
「(アヤト、なんとか気を反らせられない?)」
「(……無理だな。どんな手段を使ったとしても即座に師匠達に制圧されるのがオチだ)」
「(……だよねー)」
俺とユーノがアイコンタクトをすると、隙のない師匠達の見張りを見て二人揃って溜め息を吐いた。
「(打つ手……なしかよ……!)」
俺は目の前で涙を流しているテスタロッサと悔しそうな顔をしている鮎川を見ながら歯を喰い縛っていた……
…………
「さーて、そろそろ反撃といこうかのう……」
そう言って私と同じ牢屋に入れられた太公望は立ち上がった。
「此処からどうやって出るつもりなの? 私のデバイスは取り上げられたし、よしんば出る手段があったとしても魔法を封じられていたんじゃあ……」
「……わしは魔法を使って脱獄するとは一言も言っておらんぞ?」
「は?」
太公望が言った意味がわからずに混乱していると、太公望は懐から杖の様なものを取り出すと……
「久しぶりに技名でも言うかのう……『
それを横凪ぎに払うと杖から真空の刃が発生、牢屋の檻を両断しそのまま壁に大きな切り傷を付けた。
「……は?」
「やはり『
私が呆然としていると、太公望は頭を掻きながら溜め息を吐いていた。
「取り合えず通信室へ行くぞ、お主の娘達に来てもらう必要がある。……通信魔法は封じられておるようじゃしな」
「なるほど……人質が自分で逃げ出した事をフェイト達に気付いてもらう為ね?」
「うむ。その通りじゃ」
太公望がそう言って私の手を縛っていた手錠(魔法を封印出来る優れものよ)を小規模な真空の刃で破壊しながらそう言った。
「通信室は此処からかなり離れているわ。多分だけど逃げ出した事がわかればすぐにでも警戒のレベルが跳ね上がるわよ?」
「安心せよ、手は打ってある」
「……?」
私がその態度に疑問を感じていると……
「ぐぼぁ!?」
「な、何で『リリカルなのは』にこいつらが……がばら!?」
見張り役達が扉を破りながら吹き飛んできた。
黒焦げのこんがり焼かれた姿で。
「時間ぴったり……ぬおおおおおおおお!?」
次の瞬間、太公望は壊れたドアから飛んできたミサイルを叩き込まれて壁に叩きつけられた。
「生きてますか、太公望?」
「……生きてるみたいよ」
「お久しぶり~!」
「……『アストレア』、再開の挨拶は後だ」
「今は太公望さん達の無事を伝えないと!」
「あ、うん。ごめんクール『ツナ』に『
「取り合えずこれで夜中に叩き起こされた怒りは晴らせたわね」
『本当は私が直接殴ってあげたかったんだけど……』
「『エドナ』、気持ちはわかるけどなぁ……」
『今は喧嘩をしてる場合じゃない』
壊れたドアの向こうには背中から翼を生やした桃色、青、金色の髪の女の子(……何故か青色の女の子だけ背丈も胸も小さいわ)達、額に炎を灯した二人の男の子、白い髪の神々しい衣を纏い両腕に岩で出来た拳を従えた女性、そして金髪に左腕に風を纏った剣を持つ少年がいた。
「ぬぐぐ、『ロゼ』……何故『イカロス』にわしに向けて『
「はいこれ。貴方のでしょ?」
「え、ええ……」
ボロボロの太公望が立ち上がりながら文句を言うと、白い髪の女性はそれを無視しながら私にデバイスを手渡した。
「……太公望、マスターからの伝言です」
「……なんじゃ?」
「……『『アステリオス』のマスターは見つかったのか? 見つかったのならどんな人物か教えてくれ』だそうです」
「
「……プランA?」
私が言葉の意味を考えて首を傾げていると……
「侵入者だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「プレシアも脱走しているぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
そう言って集まった彼らが魔法を放とうとする。しかし……
「正面突破じゃ! 死なないように手加減はするが遠慮はするな!」
「『
「アルテミス」
「『
「『『グランドシェイカー』!』」
「『バーニングアクセル』!」
「「「「あぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」
あっという間にボロボロにされて吹っ飛んでいったわ。
「プランAって、もしかして『
「そうなんです……」
「わりい、家をめちゃめちゃにしちまって……」
私は言葉の意味がわかり愕然としていると、金髪の男の子と額に炎を灯した男の子の片割れが私に苦笑いをしながら謝った。
「別に良いわ……どのみち、私には不要になるものだし……それから危ないわよ?」
「え?」
「へ?」
「「ぐばら!?」」
空中から彼らに襲いかかろうとした敵を『フォトンランサー』で即座に撃ち落とす。
「助かりました! 重力10倍! クー、レン!」
「任せろ!」
『詠唱廃棄……』
「『『
重力により動きを止められた傀儡兵を剣から発生した環状の風が一気に凪ぎ払う。
凄い……
「これが、異界の戦士の力……一部伝承で描かれていない力があるけど」
「なんだそりゃ?」
「わしら通称じゃ。どうやら『あの時』の事が伝説になっとるらしい……」
「あ~『あの時』のね?」
あの時……聖覇の決戦の事かしら?
「と、通信室が見えたわ!」
「……この周辺だけ妙に人間の敵が少なくないか?」
そう言って金髪の子が訝しげな顔になるけど、私達には他に目指す場所がないので傀儡兵を破壊しながら突入する。
だけど……
「うわっちゃあ……」
「ここまでするか……」
「……修復できんように完全に壊されておるな」
「私達が連絡をとろうとするのは敵にはお見通しだったわけね……」
そこには完膚なきまでに破壊された通信機器があった。
「となれば……手段は一つじゃ」
そう言って太公望は額に炎を灯した子の一人を見る。
「ツナ、頼んだ」
「わかった」
そう言ってその子は装備していたグローブを上に向ける。そして……
「『
天井を貫き、恐らく時の庭園の近くで待機しているであろう管理局の艦にも見えるレベルの炎がグローブから発射されたのを見て私はあきれ気味にこう言った。
「貴方達って……伝説で言われてる通りとんでもないのね……」
と……
……………………
「なあ、なんでアリシアの入ったカプセルが必要なんだ?」
「フェイズの命令だよ。姉を蘇らせてフェイトを完全に取り込もうって作戦なんだろ」
アリシアの入ったカプセルを運びながら話す二人の転生者達。二人はフェイズからアリシアを彼らが乗ってきた艦に乗せるように言われて運搬をしているのだ。
「でもよ、鮎川だったか? あのモブキャラ、ムカつくよなぁ……なんの力もないのに原作に関わりやがって!」
「そうだな。それにフェイトとも親しそうに話すから憎さも二倍だ。……ま、その幸運も今日までだけどな」
「どういうことだ?」
彼らは鮎川春雄に対して逆恨みも混じった愚痴を溢していると相方が言ったことにもう一人が興味深そうに聞いた。
「ん? ああ、あいつをフェイズが危険だって判断しているみたいでさ……アースラに電波を侵入させて転送システムを起動させて虚数空間に送り込んで殺す作戦をたててるみたいなんだ。あ、フェイトやなのは、淫獣に管理局のオリキャラ達は普通に時の庭園に来させるけどな」
「マジかよ!? エグい作戦をたてるなぁ……ま、身の程知らずのモブキャラには相応しい末路だな!」
「そうか。では、そんな醜い計略を嬉々として話すお前達には相応しい死を与えようか」
「「え?」」
そう言って二人が振り向くと……即座に首から上が回転し、そのままごとりと地に落ちた。
「「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? い、何時の間に……!?」」
「お前らが話していた間さ」
そう言って黒衣の男は血を吹き出している二人の体からアリシアのカプセルを遠ざけると、アリシアの体を魔法で観察する。
「……何者かがアリシアの遺体に手を加えていたな、アリシアが『
黒衣の男は溜め息を吐きながらそう言うも、その顔は何処となく嬉しそうな顔だった。
「死者蘇生ではなく、融合騎としての復活か。……まあ、融合騎化させたのが誰であれプレシアの願いはある意味叶ったのだから感謝はすべきだろう。しかし……」
黒衣の男は先程までの嬉しそうな顔を消し、見るものを凍り付かせそうな冷酷な顔になる。
「そこには鮎川春雄というお前達が身の程知らずのモブキャラと罵った相手がいなければ感動は成り立たないのだ」
そう吐き捨てて、彼は二人の遺体を消し飛ばすとそのまま転移して何処かへと飛んでいった。
それから数分後……
「う、ん……? あれ……? ここ……何処……? ママやリニ、ス……は?」
そう言って目覚めた少女は自動的に開かれたカプセルから出て時々くしゃみをしながらフラフラと歩き始めた。
……それから十数秒後、空になったカプセルを発見してフェイズ・トウラーノが怒りの声をあげたのは完全に余談である。
如何でしたか? リアルで色々あって遅れましたが、こうして新年に出せたことはある意味幸運でした……
次回もお楽しみに! それから今年も宜しくお願いします!
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第22話
「な、なんだありゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
俺は時の庭園から飛び出した巨大な火柱に愕然とした。
「あ、あれは一体……?」
「時の庭園で何が起こってるの!?」
「今の現象のスキャンを急げ!」
師匠、リンディさん、クライドさんの順で疑問やその疑問を解決しようとする動きがあって……! チャンスだ!
「(ユーノ!)」
「(わかったよ……?)」
俺達が師匠達の注意があの火柱に向かった隙を突いて時の庭園に向かおうとした時……
「これは……!? 艦長! 緊急転移システムが強制起動しています!」
「何だって!?」
緊急転移システム……確か十年前の『
「なんで起動しているの!?」
「わかりません! 対象者は……!? 民間協力者四名と鮎川君、テスタロッサさん達にミズサキ君達です!」
「な……!?」
「アヤト!」
そう言って師匠が俺に手を伸ばし……俺に届く前に俺達は転移していた。
…………
「っ……! くそ!」
そう言ってクレアは僅かに自分の弟子に届かなかった手を拳にして壁に叩きつける。
「落ち着け。今は彼らが何処に転移したかを知るのが先決だ」
「……わかっている、わかっているさ」
ゼストがそんな彼女を気遣うようにそう言うと、クレアは悔しそうな顔のままに握り拳を解いた。
「エイミィ、彼らが何処に転移したかを探るんだ!」
「わかりました! 転移した座標は……え?」
クライドがエイミィにアヤト達が何処に転移したかを探らせ、エイミィはその命令通りに何処に転移したかを転移座標を目安に探し……とある少年が何処に転移したかを知り、顔を青ざめた。
「……どうしたの?」
「……ミズサキ君達、高町さん達民間協力者、テスタロッサさん達は時の庭園にいるのを確認しました」
「待って。鮎川君は……?」
リンディがエイミィの顔が青ざめたのを見て問い掛け、エイミィは『鮎川春雄以外』のメンバーが何処にいるのかを言い、クイントが疑問に思うような顔で話しかける。
そしてエイミィは告げた、鮎川春雄が彼らにとって最悪の場所に飛ばされた事に。
「鮎川君は……『虚数空間』への転移を確認しました」
………………………
「が……ば、あ……」
「くそ! 間に合わなかったか!」
アースラの電脳空間で転生者『
「鮎川春雄を虚数空間よりアースラへ転移! 急げ!」
『虚数空間内での転移は不可能です』
「良いからやれ!」
『不可能です』
「……くそ! 俺は『傲慢な転生者から原作を守っている』と驕っていた時からそうだ……何時も、何時も肝心な所でへまをやらかす……! このままじゃあハッピーエンドは……!?」
男は額に手を当て、後悔しているような表情になるがすぐに何かに気付いたような表情になる。
「これは……久々の『予言』か。何々……『無垢なる少年が機械天使と浄化されし巨悪の巨人、地球の神に会うとき、神に力を与えられし猫と共に次元の狭間を超え愛しい少女を救う』……か。ならば、俺がすべき事は……!」
そう言って男は転移で何処かへと消えた……
…………………………
「……此処、何処……?」
僕が目を覚ますと、そこは黒い嵐が渦巻く空間でした。
僕は膜のようなものに包まれてその空間に浮いていて、まるで川の中で揺れ動く葉っぱのような気分です。
「目覚めたか、
僕が声に振り向くと、そこには深紅の髪に、天使のような白い羽を生やしていて……わわ!?
「何故目を隠す……ああ、この格好は主ぐらいの年齢には厳しいか」
その人の服装は大きい胸を殆どさらすような服でした。
「……換装、『
「……?」
僕が目を開けると、そこには僕の学校の高等部の制服を着た女の人がいました。
「えっと……此処は何処ですか? 貴方は誰ですか?」
「私か? 私の名前は、
「えんじぇろいど……? まるちおふぃさー……?」
「あ~……まあ、天使みたいな
僕がアステリオスさんの言ったことを必死に理解しようとしていると……
『ほぉ……誰かと思えば、お前か。アステリオス』
「……やはり虚数空間だったか。久々だな、『ベリアル』」
声が聴こえたので振り向くと、そこには紅い、大きな火の玉がそこにいました。
「~~~~~~~~~!?」
「……主、あれは人魂ではない。とある事情で魂だけになった私の仲間だ。……『元』が頭に付くがな」
僕が咄嗟にアステリオスさんに抱き付くと、アステリオスさんは頭を撫でながら火の玉が人魂ではないというのを説明しました。
「あの、所でどうして此処にいるんでしょうか僕達……?」
「私は修復が完了して主の危機を感じたから出てきたんだが……ああ、そう言えば私が出た時には既にこの膜は展開されていたな」
『俺は『
『あーら、三人ともお揃いで♪』
僕が声に振り向くと、そこにはぐったりとしたミャオとそのミャオを抱えた派手な格好をした女の人がいました。
「ミャオ!? ミャオに何をしたんですか!」
『ん~……『最終調整』かしらん?』
「ミャオをまるで物か機械の様に言わないでください! ミャオ、大丈夫!?」
僕は女の人から慌ててミャオを取り返すと、そのままアステリオスさん達の所に下がりました。
『そんなことより……貴方の大切な人が大変よん?』
「そんな事って……!」
『はい、映像だすわよ~!』
僕が女の人に怒っていると、女の人は何処からかテレビを出して電源もないのに着けました。
そこには……
「ぐえ!?」 「むぎゅ!?」 「ぐあ!?」 「うげ!?」
「おっと!」 「よいしょっと」 「くっ!?」 「くそ!」 「は!」
「にゃ!?」 「うわっと!?」
時の庭園の床に顔面から落ちた水崎君、萩野君、暁君、橋出君。
上手く着地した黒埼君と雪村君とフェイト、アルフさんとリニスさん。
尻餅を着く高町さんとスクライア君達でした。
「いてて……此処は何処だ……?」
「此処は時の庭園だ、管理局員」
水崎君が顔を押さえながら言った言葉に唐突に現れたトウラーノ君がそう言いました。
「ようこそ、
「他は……?」
「殺すって事だろうね……」
萩野君の呆れが入った言葉と共に、無数のロボットとそれを率いる人達がフェイト達の周りにいました。
「さて、覚悟は出来たかな?」
「……待て、鮎川は何処だ?」
トウラーノ君が性格が変わる前の不深山君のような笑顔でそう告げますが、橋出君が僕がいないのをみてそう質問しました。
「鮎川……ああ、あの
「な!? お前……なんて事を!」
「……え?」
トウラーノ君が心底蔑んだ目でそう言うと、橋出君が愕然とした表情になり、フェイトの顔には絶望が宿りました。
「ゆ、ユーノ君……虚数空間って……?」
「……この世界で言う『ブラックホール』みたいなところで、生きて帰った人は誰もいない、最悪の場所だよ」
「そ、そんな!?」
「嘘、でしょう……?」
「マジかよ……!?」
高町さんが青ざめた表情で此処の事をスクライア君に聞き、スクライア君が此処の事を言うと、高町さん、黒埼君、雪村君はショックを受けたような顔になりました。
「うそ、だ……嘘だ! 嘘だ! 嘘だ!」
「本当さ。証拠にあのゴミが虚数空間へ落ちていった画像でも見せるか?」
「あ、あああ……ああ……」
「フェイト、あの分不相応なゴミは死んだ。あんなゴミは忘れて俺と共に……」
「春雄、ごめん……ごめん、ね……」
トウラーノ君は涙を浮かべたフェイトに尚も何かを言おうとしましたが……フェイトは絶望した表情のまま、手に持っていたバルディッシュを落としそのまま倒れてしまいました。
「フェイト!」
「フェイトちゃん!?」
「フェイト!」
「お嬢様!」
僕は画面を叩きながら叫び、高町さん達は慌ててフェイトに駆け寄りましたがフェイトは光のない目で虚空を見たまま動こうとしません。
「……何故だ? 何故、ゴミが死んだくらいでフェイトが……」
「黙れよ……!」
「何……?」
「黙れよって言ったんだよこの糞野郎!」
トウラーノ君があり得ないと言いたげな表情で愕然としていましたが、水崎君が激昂した顔で叫びました。
「き、貴様……!」
「黙れって言ったよな!? お前、さっきの通信で自分達が正義の味方だの解放者だの言ってたけど……なんの罪も力もない鮎川を、正義の味方って名乗るなら守らなきゃいけない人間を殺した時点でお前は、お前達は正義の味方でも解放者でもない! 唯の……人殺しの悪党の集まりだ!」
「ば、バカな……」
「それにテスタロッサさんに対しても失礼だよ! 『ゴミが死んだくらいで』だって!? それはな……テスタロッサさんの初めての友達になった鮎川君とテスタロッサさんを侮辱する言葉なんだよ! このフニャ○○のキ○○○の生ゴミ野郎が!」
「ああ、テスタロッサにとってはな鮎川春雄は大切な友人だったんだ! それを侮辱する事は俺達が許さない!」
「ユウヤ、ヤマト! これは鮎川の弔い合戦だ! 全力で勝つぞ!」
「ああ!」 「うん!」
「おいおい……俺達も混ぜろよ!」
「鮎川様を殺したあいつらを……特にあの男は許してはおけません!」
そう言って水崎君、暁君、萩野君、黒埼君、雪村君はトウラーノ君率いる部隊に突撃を仕掛けました。
「も、戻らなきゃ……皆のところに……戻らなきゃ!」
『……どうやって?』
「……あ」
そうだった……此処は帰ってきた人が誰もいない場所でした……
『それに……よしんば戻れたとしても、何の力もない貴方がどうやって戦うのかしらん? 逆に皆の足手まといになるんじゃないかしら?』
「うう……」
確かにそうかも知れません。だけど……でも!
「それでも僕は皆のところに戻りたい!」
「……それは、どうしてですか?」
アステリオスさんが微笑みながら僕に理由を聞いてくる。
僕が戻りたい理由……それは……!
「フェイトに、泣いて欲しくないから……フェイトは滅多に笑顔を見せないけど、だから、だからその笑顔はとても綺麗だったから! フェイトに笑顔でいてほしいから! フェイトに……あんな顔をしてほしくないんだ!」
これは嘘偽りのない、僕の本当の気持ち。この胸の思いはまだわからないけど……今感じているこの思いは、全部本物なんだから!
『……くすくす、合格よ!』
「……ふぇ?」
『……御主人、見ていて首筋が痒くなるような言葉をありがとう』
女の人がくすくす笑うと、僕の腕から呆れたような声が聴こえてきました。
「ミャオ!? しゃ、喋れるの!?」
『……おい、
「妲己、お前……この猫を……!?」
僕が驚いていると、ベリアルさんとアステリオスさんは二人とも信じられないような顔で女の人を見ていました。
『ええ、その子猫はわらわが『
「え……?」
『……御主人の力になりたかったから……御主人が泣いたりしている時に、助けたいから! 例え普通の猫として生きられなくても、僕は御主人を助けたいんだ!』
「ミャオ……ありがとう。行こう!」
『うん!』
『じゃあ、出血大サービスでわらわが時の庭園まで飛ばすわ。貴方はその子猫……神造宝貝『
「はい! ありがとうございます!」
『待て、女狐! 何故俺まで……』
ベリアルさんの抗議を無視して、女の人……妲己さんは僕らを転移させた……
………………………………
『さ~て……あの子達や『あの女の子達』も送った事だし……』
そう言って妲己は後ろを振り向くと……そこにはボロボロの神々しい服を纏った者達が数人ほどいた。
これらは転生者達を送り込んだ神(一部)であり、不用意に地球に干渉しようとしたことで妲己の怒りを買い、神がいるべき場所から虚数空間まで引き摺り出されたのだ。
『拷問を……続けようかしらん?』
妲己の言葉を皮切りに、虚数空間内では憐れな神達の苦痛と断末魔の絶叫が暫くの間鳴り響く事になる……
…………………………………
「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! どけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「くはははは! 良いぞ! 俺がフェイトを管理局員から奪還するまでそのまま足止めをしろ!」
俺達は鮎川の弔い合戦の為にトウラーノの元に突進したのは良いんだが……トウラーノは俺達(なのはも含む)の相手を傀儡兵や配下に任せ、自分はテスタロッサの元へと向かうという事をしていた。
「シロにクロ! あんた達ねぇ……! 自分達の主が何をしているのかわかってるのかい!?」
「……肯定。だけれど私達にはどうしようもない」
「……わかってるよ。わかってるけど、俺達にはどうしようもねぇだろうが!」
「それは諦めって言うんだよこのバカちんどもが!」
「ユカリ、見損ないましたよ! 年齢も、主も違っていても思いは一緒だと思っていたのに……」
「……そうだね。私は、私達は結局御主人達を変えられない臆病者揃いだにゃん……だけど! 決着だけはつける!」
「望むところです!」
唯一テスタロッサを守れそうな使い魔達も、ミツルギ姉弟の使い魔達に押さえ込まれてるし……このままじゃ、テスタロッサが!
「…………」
「フェイト、俺と共に行こう。そしてあの毒婦と、管理局を打ち倒そう」
「私、は……私は……」
「大丈夫だ、なのは達もすぐに俺達の元に来る。心配することは何もない」
下卑た顔をしながらトウラーノはテスタロッサを抱き上げて……ん?
「なんだ、あの空間の歪みは……?」
橋出が俺と同じようにそれに気が付いたのか声を出し……
「フェイトに……!」 「「テスタロッサ(さん)に……!」」
「誰だ……」
「触るな!」 「触るんじゃないわよ!」 「触らないで!」
「ぐばらぁ!?」
そう言いながら空間の歪みから現れ、トウラーノを蹴り飛ばしてテスタロッサを奪い返したのは……すずかとアリサ似の誰かと、黒い猫の絵柄が描かれた外套を纏った鮎川だった……
難産でしたが出せました……
次回は無双回になるかもしれません。
次回もお楽しみに!
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第23話
久しぶり、『元』傍観転生者の橋出観夫だが……そんなことは置いといてだ!
「あ、鮎川!? い、生きてたのか!?」
俺は愕然とした表情でトウラーノを蹴り飛ばした鮎川に話しかけた。
鮎川は最初誰に話しかけられたのかわからなかったようだが、振り向くと俺がいたために俺が話しかけたと判断したみたいだ。
まあ、トウラーノを蹴り飛ばした際に地面に叩きつけられそうになったフェイトをお姫様だっこしているせいでテンパってるだけかもしれないけど……
「橋出君……うん、僕だよ。幽霊でもなんでもない、鮎川春雄だよ!」
「鮎川君! よかった……本当に良かったの……」
「どうやって生き残ったのとか聞きたいことは色々あるけど……生きてて良かった。本当に、良かった……!」
「俺達も、テスタロッサも心配させてんじゃねえよ、この野郎!」
鮎川が微笑みながらそう言うと、なのはとユーノは涙ぐみ、ミズサキはぶっきらぼうに言いながらもその顔は安堵で満ちていた。
で、鮎川と一緒に来たアリサ(?)とすずかはというと……
「あ、アリサ!? おま、え!? なんで背が伸びてんだ!?」
「此方が聞きたいくらいよ! あんたと春人が心配で、でも戦う力がないのを嘆いてたらなんか変な宝石を渡されて、それでそこから出てきた変な奴と契約したらこうなったのよ!」
『ちょっと!? 変な奴って
「あんたに決まってるでしょ! ま、まあ、焔や春人と一緒に戦う力をくれたんだから……感謝はしてるわよ! ……行くわよ、焔、『レイファー』!」
「おうよ!」
『……わかってるわよ!』
……ああ、うん。アリサだな。で、すずかの方は……
「……すずかお嬢様」
「……春人、ごめん。私は、春人や焔君と一緒に戦いたい。だって、私は春人の主人だから」
「……いえ、すずかお嬢様がお決めになった事なら私は歓迎致します。ただし……力には、溺れないでください」
「うん。ありがとう、春人。……行こう、『ジル』! 春人!」
「イエス、ユア、マジェスティ!」
『承知しました、お嬢様』
此方は主従としての会話のお手本になるようなやり取りをして、アリサや黒埼と同様に戦闘態勢に入る。
「ふざけるな……ふざけるなよ
だからフェイト達は
「……フェイト、此処で待ってて。終わった時には、プレシアさんもアリシアも、高町さん達も、全員がいるから。……フェイトの全ては、そこから始まるんだ。だから、フェイトも、高町さん達も……君達には絶対に渡さない!」
「……わあ」
「……鮎川、お前……大胆だなぁ」
「主、大胆過ぎるぞ……」
うん、鮎川の言った事って、完全に主人公の台詞だよなぁ。……そうか、鮎川は『巻き込まれ系主人公』だったのか。
「こ、このゴミが……! 殺……「わしらも混ぜんか~い!」ぶげぇ!?」
「フェイト!」
そう言ってトウラーノは……まさかのフジリュー版封神演義の太公望!? まじで!? ……こほん。太公望に蹴り飛ばされ、フェイトには心配した表情のプレシアが駆け寄った。
「あら、レイファーじゃない! 傷が治ったんだ!」
『……久しぶりね』
「……知り合い?」
『まあ、ね……』
「あの武器の形……ジルか!」
『良かった……ちゃんと起きれたんだ』
「ジル……知り合いなの?」
『……はい。私に、
「アステリオス先輩! 起きたんですね……ぶげ!?」
「……戦闘中に気を抜くなと教えただろ、『アストレア』」
「……マスターに良い報告が出来そうです」
「ついでに此処に来れなかったみんなにもね」
「みんな……良かったな」
「後は……彼らを倒すだけだ!」
……まさかのクロスに『そらのおとしもの』、『テイルズオブゼスティリア(ザ・クロスかどうかは不明)』、『エレメンタルジェレイド』、『家庭教師ヒットマンリボーン』かよ!? いや、リボーンは前々からわかってたけど後の三作品はびっくりだよこんちくしょう!
……さてと、
「も、モブが……
やるか!
………………………………
「「「「「死ねぇぇぇぇぇ!」」」」」
「『
「アルテミス、発射」
最初に仕掛けたのは『イカロス』とイカロス達の先輩とみられるエンジェロイドで……登場して以来、ずっと後ろにあった立方体が狙撃銃と大型のバックパックへと変形し、そのバックパックから百個もの端末が一斉に発進した後、レーザーを発射して弾幕を形成、イカロスはだめ押しとばかりに誘導ミサイルであるアルテミスを発射した。
「ぐばぁぁぁぁぁ!?」 「だ、弾幕が避けられ……ぎゃあぁぁぁぁぁ!?」 「こんな事が……あぶがぁ!?」
「骨は拾って……あば!?」 「格闘戦にさえ持ち込めば……うべぁ!?」
あっという間に襲い掛かった転生者の内、3人が撃ち落とされるがその3人を盾にした2人は接近しようとして……狙撃銃を構えていたエンジェロイドに叩き落とされた。
「プロトアルテミスで足止めと迎撃をして、突破してきたら『
「ですよね~私は『
そう言ったのは別の場所で戦っていた『ニンフ』とアストレアだ。……もしかして、オリュンポス十二神の数まで形態があんのか?
「『汝貴とかくいめ結ばん……』」
「『我ら友の心を導かん……』」
「不味い!? 奴等に歌わせるな!」
「させません! 『
「ぐばぁ!?」 「と、飛ぶ斬撃だとぉ!?」 「なめやがって!」
そう言ってすずか達を守る雪村に飛びかかろうとしたメンバーは……
「『我らは焔の剣とならん』! 『
「『かくいめ合わさん』! 『
『合わせて……『
『……悪くないかも』
「「「あ……あばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」
詠唱を終えた『クード=ヴァン=ジルエット』とすずかの合体攻撃を叩き込まれ凪ぎ払われた。
つーか、東風の環で猛焔の剣の焔を巻き込ん、で……? 待て!? なんで他のエディルレイドの力を使えるんだ!?
「死ね! 傍観してるだけの屑が!」
「おっと! 考え込んでる場合じゃないな! 『ガンド』!」
「ぶげ!? ……と、トイレぇぇぇぇぇ!?」
俺は俺を襲ってきた転生者に擬似的にFateのガンドを再現した魔法(……実態は近くの未来で捻り出す大便を今感じさせるだけのものだけどな。)を叩き込んでトイレへ直行させた。
「ひ、怯むな! たかだかガンド、ごと、きに……?」
「はい、トイレに5名様ご案内! ……『マシンガン』ガンド!」
「「「「「あばばばばばば!?」」」」」
俺は容赦なく傍観の能力を使用して連続でガンドを作り出して撃つ魔法でその場にいた全員をトイレへとご案内した。
「さて、他のメンバーはっと……」
俺が周りを見渡すと、丁度神依を纏ったアリサが『エドナ』の神依を纏った『ロゼ』、黒埼と共に転生者達のど真ん中に突入するところだった。
「よっし! レイファーでの戦い方は覚えたわ! 一気に行くわよ!」
「落ち着きなさいよ!」
「あれがアリサなんでな! 行くぞ、スノーホワイト!」
『承知しました、マスター』
そう言ってアリサ達に先行して黒埼が突っ込む。
「馬鹿が! 蜂の巣にしてやる!」
「死ね!」
大空の死ぬ気の炎を灯した転生者達が自慢の
「……重力千倍!」
叩き潰す前に『
「な……「隙ありだぜ? 『
愕然とする転生者達はそのままど真ん中で黒埼が氷の爪から発生させた衝撃波で隊列を崩され……
「焔! ちゃんと避けなさいよ! 『アースイグニッション』! 『ウィンドスマッシャー』!」
「ちょ、ちょっと!?」
そのままアリサが発生させた地面から飛び出す岩の棘で浮かしてからの風の大槌による一撃で沈められた。
まあ、黒埼はアリサの意図をわかってたのか岩の棘が発生する前に回避していたんだけどな。
「あんた、無茶するわね!? あいつが避けれなかったらどうするつもりだったの!?」
「焔は、私の執事だもの……絶対に避けられるって信じて撃ったのよ! レイファーの『穢れ』をレイファーが生き残るのを信じて吹き飛ばした『スレイ』さんや『ベルベット』さんのようにね!」
「……なるほど、ね。レイファーが契約するわけだわ」
『ちゃんと、心で通じ合えてるのね』
『まーね……』
ロゼが焔がまだいるにも関わらず攻撃したアリサに詰め寄るが、アリサは毅然とした表情で言い返し、ロゼはその答えに納得したのかアリサの後ろに迫っていた傀儡兵を殴り壊した。
「でも油断大敵よ?」
「……ごめんなさい」
にこやかに笑ったロゼにアリサは謝りながら背中合わせで戦い始めた。
「秘剣『雲霧』から『
「砲嵐! 『
で、ミツルギ姉弟の方はというと……
「無駄だ!」
『
まあ、元々歴戦の勇士の上に死ぬ気の炎を使った戦闘でもツナの方が一段上……しかも『死ぬ気の
「……本当に、お前達の世界の仇は管理局なのか? 他の可能性を考えた事はないのか?」
「……っ!」
「うるさい! 考えたよ! だけど……考えれば考えるほど、状況証拠で管理局が怪しく見えるんだ!」
……あ~なんか、説得しているっぽいな。だから2人を倒さないのか。
「ディバインバスター!」
と、今度はなのはか。どれどれ……
「死ねぇぇぇぇぇ淫獣!」 「くたばれ淫獣!」 「なのはの隣に相応しいのは俺だぁぁぁぁぁ!」 「いや、俺だぁぁぁぁぁ!」
「……確かに、僕はなのはの隣には相応しくないかもしれない。僕にもっと力があれば、なのはを戦いに巻き込まずにすんだかもしれない……だけど! だからと言って鮎川君を平気で殺そうとする君達が相応しいとも思わない!(それに、なのはには幸せになってほしいから……僕の大切な初恋の人だから。だからこそこいつらには渡せない!)」
口々にユーノを罵りながら殺そうとした転生者達は決意した表情のユーノのバインドでぐるぐる巻きにされる。
「……違う。ユーノ君は淫獣でもなければ私の隣にいるのが相応しくない人でもない! 少なくとも、鮎川君を平気で殺そうとするこの子達なんかとは比べ物にならない位良い!(それに……ユーノ君は、私の大切な初恋の人だから。一緒に歩きたいんだ! だから、絶対に殺させたりなんてしない!)」
そう言って、容赦なくディバインバスターでなのははユーノのバインドでぐるぐる巻きにされた転生者達を叩き落とした。
「ぐ!? くそ、だけど管理局は邪悪な組織なんだ! フェイトを大切に思うなら……」
「それには騙されないよ! アヤト君達と過ごした時間と、クライドさん達と接した時間分、私は管理局について知ってる……だから! フェイトちゃんはあなた達に渡さないし、あなた達にも協力しない! ディバインシューターR! ランダムシュート!」
「~~~~~~!?」
管理局を悪の組織として吹き込もうとした転生者は逆に毅然とした態度のなのはに論破されて、ディバインシューターRに撃ち落とされた。
「死ねぇぇぇぇぇ! 管理局員!」 「この侵略者どもがぁぁぁぁぁ!」 「俺のハーレムの為の生け贄となれぇぇぇぇぇ!」
「やれやれ……数ばっかり集めやがって!」
「……これだけの数を輸送するのは手間がかかりそうだな」
「ポジティブに考えれば、それだけ手柄も大きいって事だね!」
そう言ってミズサキ達、管理局員3人組は転生者達に突っ込む。
「な……!? 馬鹿な!? 税金泥棒の管理局員が「危険には突っ込まないってか? 生憎、俺達がこの年齢で局員になれたのは危険な事件に首を突っ込んだお陰なんでな! 危険には慣れてんだよ! アクセルバンカー!」ぐへば!?」
「隙あり……「あるわけねえだろ」ぐばん!?」
ミズサキが愕然とした転生者に槍の突きを叩き込めば……
「この……悪の管理局員の分際で! 「ならお前達には、殺人未遂の悪の組織の分際でと言わせてもらおう! ブラスターバレット!」あばぁぁぁぁぁ!?」
「くたばれ! 「おっと、ガトリングシューター!」うばばばばばば!?」
アカツキが華麗に銃撃を撃ち込み……
「この侵略者め……「侵略なんて、してないよ……『ラウンドシールドパンチ』!」ぶべら!?」
「このゴミどもめ……「そこは、大当たりだよ!」!? し、絞まるぅぅぅぅぅ!?」
ハギノが拳とバインドを駆使して叩きのめしていく。
「拉致があかねえな……ユウヤ、ヤマト! 特訓の成果を見せようぜ! ランサービット!」
「うん! 『エリアシールド』!」 「ああ! 『バレットゲート:ショットガン』!」
そう言って、3人は巨大なシールドの内部に転生者達を封じ込めると……
「スパイラルバンカーショット……『フォーメーション:ショットガン』!」
「あげばう!?」 「うべぶら!?」 「か、管理局員ごときにぃぃぃぃぃ!?」
そのまま内部に閉じ込めた転生者達を一掃した。
「死ね! フェイトを惑わすゴミが!」 「くたばれモブキャラ!」 「ここはお前みたいな力もない雑魚が来るところじゃないんだよ!」
げ!? 鮎川が……
「……ミャオ、ベリアルさん……行くよ!」
『オッケー、ご主人!』 『……ふん、良いだろう』
そう言って、鮎川は棍棒の様なものを持って……って、あれは!?
『
「『エクスプロージョンスマッシャー』!」
「「「な……!? ぎゃばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」
そのまま棍棒……『ギガバトルナイザー』を地面に叩きつけると、赤黒い霊子が鮎川を中心に爆発し、転生者達を吹き飛ばした。
「水に沈め!」
転生者の1人が特典を使ったのか巨大な水の塊を鮎川に……
「『
「お、俺の能力が……!? ふぎゃば!?」
叩きつけようとして太公望に仙桃を使われ、そのまま酒として飲まれたが……まさか仙桃を使っても不味い酒にしかならんとは……
「く、くそ! 傀儡兵! 一斉掃射であのモブを殺せ!」
『ご主人、危ない! 『
転生者の1人が、十把一絡げに蹴散らされていた傀儡兵に命じて鮎川を殺そうとするが、外套が独りでに動いてイカロスのイージスを展開したけど……なんかイカロスが使ってるのよりも弱々しくないか?
「ミャオの力は、あらゆる力を使えるけど本来の人が使ってるのよりも3分の1の力しか出ないんだっけ……僕を逃がすときに使ったあれも本来なら自由に座標を指定出来るものだって言ってたから……」
……ああ、なるほど。納得したわ。
「く、はははは! なんて、中途半端な力だ! まさにお前のようなモブの為の……」
「だけど……ベリアルさんの武器と組み合わせれば!」
『『
『小僧、ギガバトルナイザーに俺の力を集中させろ!』
「は、はい! ……『
「「「……へ?」」」
鮎川は鮎川の身長に合わせたかのような短さの『
「……強力な力になるんだ!」
そのまま鮎川は進軍しようとして……
『……!? ご主人、後ろだ!』
「……死ね!
「え!?」
「げ、汚ねえ!?」
ハリポタの透明マントで隠れていたトウラーノはそのままあいつの特典と思われる刀で……って、あれは!?
「じわじわとなぶり殺しにしてくれる! 『
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
そのまま猛スピードで斬りかかったトウラーノに鮎川は完全に翻弄され、そのままゴム毬の様に吹き飛ばされる。
「鮎川!」 「鮎川君!」 「俺達が援護に……」
「お前達の相手はこの俺だ!」
「またお前かよ!?」
慌てて援護に行こうとしたミズサキ達だったが、今度はヒテイに行く手を阻まれ援護に行けそうになかった。
……俺を含む他のメンバーはゾンビの様に起き上がってくる転生者達に阻まれてるし、唯一転生者に阻まれていないツナもミツルギ姉弟に阻まれている。
このままじゃ鮎川が……!
ギィン!
「あ……!?」
「至近距離から跡形もなく消滅させてくれる! 『
「主ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
「鮎川君……いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
エンジェロイドとなのはの悲鳴が響く中、トウラーノの技が鮎川を……
「『『ハーケンセイバー』!』」
「ぶべら!?」
消し飛ばす前に水色と、黄色の魔力刃がトウラーノを吹き飛ばした。
……あれ? これなんてデジャブ?
「い、今のは……?」
そう言って、鮎川が振り向くと……そこには水色のマントを羽織り、瞳が水色になったフェイトが立っていた。
「ふぇ、フェイト……?」
「うん……遅れて、ごめん。春雄」
「フェイトちゃん!」
なのはが叫びながらフェイトと鮎川の側に舞い降りる。フェイトはそれに気がつくと、微笑みながらなのはに向き直る。
「なのは、心配させてごめん。もう、大丈夫だから」
『もー! フェイト、好きな人と友達に謝るのは良いけど今は目の前の『自称兄(笑)』に注目!』
「あ、アリシア!? べ、別に私は春雄を……!」
『ん? じゃあ、私が貰っても……』
「ぜ、絶対にダメ!」
……え? アリシア? なにがどうなってんの!?
俺は、フェイトの言葉に大混乱に陥った……
如何でしたか?
次回は、フェイトとアリシアが何故ユニゾンしていたのかについてです!
次回もお楽しみに!
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第24話
「はぁ……はぁ……」
私『アリシア・テスタロッサ』はポッドの中で裸で目覚めてから数十分間、歩き回ったん、だけど……
「此処、何処ぉ!?」
……完全に見知らぬ場所で迷子になっていました。
「そもそも……私、どうして此処にいるの!?」
確か……あの日は、ママにとって大事な日で、ママがあわただしく出ていって……リニスと一緒に家でママの帰りを待っていたらママが働いていた辺りが光って……
「それから……どうなったんだっけ?」
確か、リニスを連れて逃げようとして……急に息苦しくなったと思ったら、目の前が暗くなって……
「何時の間にか此処にいたんだよねぇ……」
私が訳のわからない事態に頭を悩ませていたら、目の前に扉の開いた部屋があった。
「やった! 此処が何処か、わかるかも!」
……服も欲しいんだけどね。正直、裸のままだと肌寒いし、風邪もひきそうだし……
「お、お邪魔しま~す……」
私がそろりと入ると……そこは資料室みたいで、派手に荒らされた後だった。
「う~ん……服は……無い、かぁ……」
私は溜め息を吐きながらせめて此処が何処か知ろうとして……
『経過観察日記:個体番号1769番 フェイト』
そう書かれた書類に何故か心惹かれた私は、椅子に座って、その書類を開く。
『新暦59年9月13日 アリシア死亡から30年』
「……え?」
私が……死んだ? でも、そんな……どうして……それにこの筆跡は……ママ?
『この日、私はこのプロジェクトを……アリシアの蘇生を夢見て必死の思いでやって来たプロジェクトがついに身を結んだと歓喜した。失敗に失敗を重ねて漸く……漸く完璧にアリシアを蘇生した……と、思っていた。あの子が、フェイトの利き手がアリシアと反対の右手であるという事実に気がつくまでは……』
「何、これ……なんで、ママはこんな事を……?」
私は、ママの日記を震える手で読み進める。
『新暦59年10月13日 アリシア死亡から30年と1ヶ月
……此処1ヶ月の経過観察でフェイトのアリシアとの相違点は以下のようであるとわかった。
①:右利きであること
②:活発で明るく物怖じしないアリシアとは違い、大人しく控え目な性格であること
③:魔力ランクはC+であったアリシアに対して、フェイトはAAAだということ。恐らく私の魔導師としての資質を殆ど受け継いでいると思われる
④:魔力光はアリシアの水色に対し、金色だということ
……他にも勉強好きなど細かい違いはあるけど、それはおいておく。私は、アリシアの完全蘇生だけが望み! あんな紛い物じゃない! どうして……(此処からは筆跡が乱れに乱れている)』
「……ママ」
私は、ママの変貌への悲しみと哀愁、望まれずに産まれてきてしまった妹と言うべきフェイトへの同情に包まれながら、日記を読み進め……ある日でママの感情に変化が生じたのを見つけた。
『新暦61年3月22日 アリシア死亡から31年と6か月と9日
……最近、自分のフェイトを見る目が変わっているのを感じた。感情は……多分、母性ね。理由は自分でもわかる。多分、1ヶ月前にあの子を奪いに来た連中の言葉が効いているのね。
「フェイトはアリシアの望んだ妹」……実際に言われた言葉はもっと鋭いものだったけど、私にはとても痛い物だった。
アリシアの望んだ妹……そうね、そうなのよね……フェイトは、いいえ『プロジェクトF』を開始してから作り上げてきた全てのアリシアのクローンはアリシアの遺伝子から作り上げたアリシアの……妹。あの事故が起こる前の誕生日にアリシアに言われたこと、『妹が欲しい』。私は、はからずもアリシアの願いを叶えていたのね……でも、今更あの子の母親になんて……』
「……続きを読まなきゃ、くちゅん!」
私はくしゃみをしながら続きを読み続ける。
『新暦65年4月23日
かねてより計画していた『プロジェクトJS』を始める日が来た。予定では私が奴等の言っていた『ユーノ・スクライア』の輸送船に魔法を撃ち込む筈だったんだけど……奴等の一人が先走って攻撃してくれたお陰で手間が省けて良かったわ。後はあの子を、フェイトをあの子の支えになってくれる『高町なのは』のいる町へ送り込むだけ……アリシア、あなたの下へもうすぐ行けるわ』
「もうすぐ私の下へ行ける……? ママ、まさか……」
『新暦65年5月2日
最近、フェイトがクラスのとある男子……『鮎川春雄』の事を喋り始めるとモジモジしたり、顔を赤らめる事が多くなった。理由を聞いてみると、鮎川君がジュエルシードを物質にフェイトに高町なのはと共闘をするように言った理由が『フェイトが悲しそうにしていたから』と言ったときから鮎川君を見たり、話したりしていると胸がドキドキするから……らしい。……良い変化ね。鮎川君の事は奴等に聞いてもまるでわからなかったけど……恋をするのは、とても良いこと(私だってあの人と恋をした時には世界が普段よりも色鮮やかに見えた)。フェイトの心を支えてくれる、柱が増えることだから……』
「……」
私はママがある段階でフェイトをわざと傷付けて全ての罪を自分に擦り付けて死ぬつもりじゃないか? と疑問に思いながら日記を読み進める。
『新暦65年5月14日
今日、フェイトが通信の際に悲しい様なホッとしたような顔をしていたので聞いてみると鮎川君が管理局からジュエルシードの件から手を引くことを高町さんから聞かされた事を言った。まあ、温泉の時から無茶をしたり、フェイトと親しくしている所為で危害を加えられる様な事態になっているんだから当然の措置だけど……でも、多分だけど力を得るか、誰かから力を借りるかしてまた戦いに加わるわね……奴等から得た知識に鮎川君のような力のない子がそんな風に私のところに来る物語があったから……』
「……奴等って、誰?」
私は首を傾げながら日記を閉じる。
……ママの所に、フェイトの所に行かなくちゃ。私は生きているって事を、そして、ママがしようとしていることをしなくていいって……言わなくちゃ!
「良し、行くぞ~!」
私が気合いを入れながら部屋を出ようとして……
「その前に服を着ろ」
「きゃぁぁぁぁぁ!?」
何時の間にか後ろにいた黒衣の男の子に悲鳴をあげながら平手をお見舞いした。
……………………
「本っ当にごめん!」
「いや、良いんだ。いきなり声をかけた俺も悪かった」
『……本当に『シャオ』はタイミングが悪い。そのタイミングの悪さが『カミト』や『クロヒコ』に呆れられる点だった』
「『フィレア』、うるさいぞ。それに、俺はもう『あの世界』とはなんの関係もなくなった。あの世界は俺がいなくても回っていくことはわかったからな……」
私はほっぺに赤い紅葉がついた男の子に謝りながら男の子の持ってきた服を着ていた。
……そもそも、この子は誰なんだろう? さっきの声は何?
「ああ、俺『達』の事はどうでも良いんだ。それは、重要じゃない」
……あれ? 顔に出てた?
「ああ……服は、着たな。フィレア、転移」
『わかったよ。シャオ……』
私の視界から男の子が消えて……驚いた顔をしているママと……虚ろな眼の私に似た女の子……フェイトがそこにいた。
「あ、アリシア!? どうして此処に!? それになんで……」
「……ママ、お説教は後回し。今は、フェイトと話をさせて」
「……わかったわ」
私がそう言うと、ママは暖かい顔をして襲いかかってくる人達に魔法を撃ちまくる。
「……フェイト」
「……だ、れ……?」
「私は、アリシア。アリシア・テスタロッサ。貴女のお姉ちゃんだよ」
「アリ、シア……? 私の、オリジナル……私、は貴女の……居場所を……」
「私の居場所をフェイトは取ったりなんてしてないよ。むしろ、私を亡くして悲しくしてたママの側にいてくれてありがとう」
「それ、でも……私のせいで、春雄が……」
私がフェイトに話しかけると、フェイトは辛そうに全てに絶望したかの様な表情で、涙を流しながらそう呟く。
「……春雄って、あそこで戦っている子達の誰かの事?」
「……そんな訳、ない……虚数空間に送られ、て生きてるわけがない」
……フェイトがどうして絶望しているのか、わかった。私のクローンであることがわかった上に大切な人が死んだと思って、その悲しみで壊れそうになったんだ。
「何故だ!? 何故お前のような
ママに襲いかかっていた人達のリーダーがそう言いながら戦っている子達の一人を吹き飛ばした。
「ぐぅぅぅぅぅ!? そんなの……フェイトに、フェイトに悲しい顔をしてほしくないからだ!」
「……春、雄?」
良かった(あんまり良くないけど)……フェイトの好きな子は、生きてるんだ。
「なんだと!?」
「フェイトは僕と一緒に話してる時に時々見せる笑顔や、初めて僕と会った時の凛々しい顔が似合うから……君達のせいで、絶望した顔や、悲しい顔は似合わないから……だから、だから僕はフェイトを支えてあげたい! フェイトの側にいたい! ……この気持ちはまだわかんないけど、例え身の程知らずって言われても……僕は、フェイトの側で一緒に笑っていたいんだ!」
「この……身の程知らずのモブがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
咆哮と共に男の子にボールの様に吹っ飛ばされる鮎川君……このままじゃあ……!
「春、雄……私は、私は……!」
「……フェイトはどうしたい?」
『……貴方はどうしたいですか?』
私とフェイトのデバイスの問いに、フェイトは涙を流し立ち上がりながら答える。
「アリシア……バルディッシュ……私は、春雄と一緒にいたい。この気持ちを、春雄の言葉で知っちゃったから……この気持ちを伝えたいから。だから、お願い。私に力を貸して、バルディッシュ!」
『……yes、sir!』
「……私も、力を貸すよ。フェイト」
私はフェイトの答えに笑いながらそう言う。……私の身体の事をフェイトと会ったことで知ったから。
「……アリシア? どういう事……?」
「……こういうこと!」
そう言って、私は目を閉じると私の身体に付けられた『
私の身体が光に包まれ、その光が収まると私の服はエメラルドとスカイブルーを基調とした服になり、フェイトにその機能を送信する。
「!? あ、アリシアが私の……私専用の『
私から送られた情報に愕然とした表情になるフェイト。……私もこれを知った時にはちょっと驚いたんだよね。
「そう言うこと! ……フェイト、私も一緒に戦わせて!」
「アリ、シア……うん。お願い!」
「オッケー! お姉ちゃんに任せて!」
「……うん!」
私はフェイトの隣に並び、その
「「ユニゾン……イン!」」
私達がそう言うと、私の身体がフェイトに溶け込みフェイトの全ての情報が私に流れ込んできた。
……あいつ、フェイトの兄だのなんだの言いながら……最低な奴じゃん!? ぶっ飛ばさなきゃ気がすまない!
『……アリシア、気持ち悪くない?』
「全っ然! むしろ、力が沸き上がってくるよ! 行こう、フェイト! あいつをぶっ飛ばす為に!」
『うん……行こう!』
そう言って私達はフェイズの所へと突っ走る。フェイトの想い人を助ける為に、この戦いを終わらせる為に……
如何でしたか?
次回はユニゾンフェイトの無双回……と、管理局3人組の危機兼強化への布石回です!
次回もお楽しみに!
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第25話
「フェイト……アリシアの幽霊と話してるの?」
「「「「いや、違うから!?」」」」
目の色の変わったテスタロッサにそんな頓珍漢な事を言った鮎川に俺達はそうツッコンだ。
「な、何故だ……何故、アリシアが
「ゆ、ユニゾンデバイス……!? って、何?」
俺達は驚きながらも首を可愛らしく傾げたなのはの言葉にずっこけた。
「ゆ、ユニゾンデバイスっていうのは簡単に言えばなのはがレイジングハートと融合して更に強力な砲撃魔法を使えるようになる……っていう事を可能にするデバイスなんだ。
でも、同時に融合事故っていうのも起こる危険性があって余程相性が良くなければ融合するのも不可能な筈なんだけど……」
「テスタロッサ……いや、『フェイト』はアリシアの『妹』。相性は完璧なんだろうよ」
「……アヤト君」
俺の言葉になのはがにっこりと笑ってくるが俺はそっぽを向くことで誤魔化す。
「く、くそ! 何故だ! 何故フェイトの兄である俺の邪魔をするんだ!
『べーだ! フェイトの兄だとかなんだとか言いながらやってんのはただのテロリストのうえに、嫉妬でフェイトの想い人を殺そうなんて器の小さいあんたにフェイトはあげないよーだ! 行こう、フェイト! あいつを倒して、ママと話そう! 今までの事、これからの事を……たっくさん!』
「うん……始めるんだ、本当の私を! そして、春雄に伝えるんだ……この
「んじゃあ……」
テスタロッサ……フェイトの言葉をきっかけに俺達はデバイスを構え直す。
「クライマックスだ!」
俺達は呆然としている敵に総出で突っ込む。
「ふざけるな、ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな! フェイト! 俺はお前を手に入れる! その為にこのモブを殺す! かかれ!」
そう言ってフェイズの命令でまたゾンビの様に起き上がった連中が鮎川に……
「させない! 『
『ライトニングスマッシャー!』
襲いかかる前に水色と黄色の混ざった雷の砲撃が一撃でゾンビ軍団の半分を打ち倒す。
「な!? ま、まだだ! まだこいつを殺す軍勢は……」
「『
『フラッシュ・ソニック・ストライク!』
フェイズが慌てて命令しようとすると、フェイトの姿が消え……って、なんだ!? いきなり鮎川の姿が消えたと思ったら俺達の目の前に現れたり、カンリが吹っ飛んだり、俺達を取り囲んでいたゾンビ軍団が倒れたりするぞ!?
『タイムアップ!』
「今の私の前では時すらも止まる……って、アリシア!? なんでこんな恥ずかしい台詞を春雄がいる前で言わせるの!?」
俺達が立て続けに起こる変化に若干混乱していると、俺達の目の前に現れたフェイトが恥ずかしい台詞を言って……顔を真っ赤にしてアリシアに抗議した。
『え~、かっこいいじゃん!』
「アリシアには格好よくても私には良くないよ! 春雄が変な勘違いしたら……」
「わあ、格好良かったよ! フェイト!」
「…………」
……フェイト、そんな涙目の顔で俺達を見るな。俺達は鮎川の趣味については何も関与していないんだからな。
「ま、まだだ! まだ俺の特典による能力は続いている! 起きろ、お前ら!」
フェイズが慌てたようにそう言うと、またゾンビ軍団が起き上がる。本当にしつこい……!
「無駄だ! 痺れろ!」
『ライトニングバインド!』
次の瞬間ゾンビ軍団は凄まじい電撃に襲われ、倒れ伏す。すぐに立ち上がろうとするが……あ。
「これは……無限ループになっとるな。起き上がれば電撃が発生して倒れ伏し、倒れてもすぐに起き上がる……」
「でもまた電撃が発生する……」
「このゾンビ軍団は再起不能になるわね……最悪、魔力が切れて生身になったら重度の後遺症残るかも……」
「だったらその前にフェイズを倒して止めるだけだ!」
俺達はフェイトの施した魔法による後遺症で苦しむ人間を作らないために突進する。
「く、くそ! お前ら!
「そ、そうだ! あんな神速で移動する魔法が連続で使える筈がない!」
「それに数はまだ俺達の方が有利なんだ! 押し潰せ!」
そう言って襲いかかってくる敵達にフェイトはデバイスを敵に向ける。
「私は、お前達のモノにはならない! 『
『フォトンランサー……』
「『トランプルシフト!』」
その瞬間現れたスフィアから無数の魔力弾が出現し、一瞬でそいつらを擂り潰した。
「なんつーか……あれだ……」
「うん」
「そう、だな……」
俺達は殆ど無双状態にあるフェイトに唖然としながらこう言った。
「「「もう残り全部あいつ一人で良いんじゃないか(な)?」」」
「「「良いわけないでしょ(だろ)!?」」」
「うむ、後はあやつに任せてわしは……」
「行かせないわよ!?」
「イカロス、少しでも太公望が逃げる気配があったら拘束しろ」
「わかりました」
俺達がそんなぐだぐだな雰囲気になっていたら……
「フェイズの作戦は失敗か……ならば!」
そう言ってカンリは手を床に叩きつけると俺、ユウヤ、ヤマトの足元に黒い渦が発生し、カンリの仲間にも同じ渦が発生する。
「これは……『夜の炎』!?」
「いけない! 君達、逃げるんだ!」
「『禁断の炎』!? カンリ、どうして君がこれを!?」
「……どうして!? どうしてこの炎が……!?」
俺達はそんな声を聞きながら、慌てて逃げようとして……
「
ヒテイの言葉と共に俺達は渦に飲まれた……
…………………………
「いってて……此処は、何処だよ?」
俺が目を覚ますと、そこは洞窟の中だった。
洞窟の中は乾いていて、両側には色々な色の炎が……? って、これあいつらが使っていた炎と同じ……!?
「……ようこそ、私達の故郷で唯一残された……残っていた『聖域』へ」
俺が声に振り向くと、そこには雰囲気の変わったミツルギ姉がいた。
「聖域……もしかして、4年前に滅びたお前らの故郷『アーレイオスク』のか?」
「……うん」
……第233管理外世界『アーレイオスク』。この世界独自の魔力のあり方……魔力を様々な能力を持つ『炎』として展開する能力(誰もがではない)と高い魔力を持つ人間が生まれやすい土壌により優秀な局員を多数出している世界……だった。
四年前に突如起きた巨大な次元震、それにともなう謎の災害により世界のほぼすべてが消滅し、今ではその災害の中心部と思われている住民に『聖域』と呼ばれていた遺跡が土地と共に次元空間をポツンと漂っている悲しい世界だ。
「……私はあの災害を生き残ってユウトと此処で飢え死にを待つだけだった」
「……ああ、そう言ってたな」
「……そして、私達を助け出したヒテイに『悪いのは管理局と転生者。奴等の下らぬ嫉妬と深い欲のせいで俺達の世界は滅んだ』と言われた」
「そうだな」
「……最近は疑っているけど」
「……用件を言えよ」
俺は俺に向かって闘志を放ちながら話すミツルギ姉にT4Wを向けながらそう告げる。
「……アヤト・ミズサキ。私と戦え」
「……残りの二人は何処だ」
「……あそこ」
そう言って俺は壁のモニターを見る。そこには……
『……さあ、やろうか』
『……ああ、これが終わったら俺達の話を聞いてもらうぞ』
『……良いよ』
『……明らかに後方支援の僕に自分をあてがうって……君、友達いないだろ』
『黙れ、悪の管理局員! 今日がお前の最後の日だ!』
『……もう何も言えないよ』
ミツルギ弟と向き合うユウヤとカンリと向き合うヤマトがいた。
……カンリ、お前もう正義とかそんなんじゃなくて卑怯者そのものだぞ。
「……参る」
「来やがれ!」
俺は刀を構えて突進してくるミツルギ姉にT4Wの穂先を向けて突進する。
「……『
俺は穂先と刀の切っ先がぶつかる寸前で嫌な予感がして慌てて避けると、切っ先が刺さった部分を中心に壁が凍り付いた。
「……技が、違う?」
「……今までの私の技は、強すぎて周りに害を及ぼす私の『地の七炎』を押さえ込むためにユウトから半分借りた『天の七炎』を使って鍛え上げた技。此方が私の本当の技」
「……マジかよ」
つまり、ユウヤは……
『真・砲嵐!』
『ぐ、ああ!?』
やっぱり全開のミツルギ弟相手に大苦戦かよ!?
ヤマトは……!?
『っ……! そこ!』
『当たりだがハズレだ!』
『うわああああ!?』
カンリの黒い炎を使った瞬間転移による戦法に翻弄されていた。
「行く。『
「うおおおお!」
俺は木の葉のような炎を刀に纏わせたミツルギ姉の怒濤の連撃をT4Wで弾き、逸らすが……
「っ!? この葉っぱ、切れるのかよ!?」
「答える義理はない。『
「あぶねえ!?」
俺は切り傷のついたバリアジャケットを見てあの葉っぱに切れ味があることを確認するが、ミツルギ姉が刀を突き立てた瞬間に山の如く尖りながら盛り上がった地面から逃げる。
「続く。『
「っづ、ああ……!?」
今度は洪水した川の様に荒々しい炎を纏った体術に吹っ飛ばされる。
「この……スパイラルバンカー!」
「『
「嘘だろ!? ランサービット! 突貫!」
「『
反撃に放ったスパイラルバンカーはいきなり足元に現れた沼に滑って見当違いの方向に炸裂し、隙を消すために放ったランサービットはミツルギ姉の周囲でいきなり増えた重力に潰された。
「退路を断つ。『
「これは……!?」
俺の後方に氷山が壁になるように出現する。
「この一撃で終わらせる」
「……こうなったら!」
俺は重力を軽くしたのか、飛翔するミツルギ姉を下から見上げながらT4Wの周りにランサービットを展開する。
「『
「デュアルバンカー……ブレイク!」
『
『ブラスターバレット……フルバースト!』
『
『バリアー……シュート!』
そして、俺達の最後の一撃は……それぞれの相手の全力の一撃に弾き飛ばされた。
「ここまで、かよ……」
『……まだだよ』
その声と共に俺の意識は途絶えた。
如何でしたか? 次回はアヤト達の強化です。
次回もお楽しみに!
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第26話
「……此処は、何処だ……?」
俺は目を開けるとそこは何処かの通路だった。
「これは……写真か?」
通路には幾つもの写真が……って、これ聖覇の決戦の頃の写真か!? ユーノが見たら狂喜乱舞しそうな写真だぜ……
俺は写真を一枚一枚じっくり見ながら歩き始める。
写真には色々あったが、主にあったのはそれぞれ七つの武器を持った男女と黒い弓を持った赤毛の男の写真だった。
「……これって、『七つの武器を持ちし乙女達と黒弓の男』か? でも、他の7人は一体……?」
俺は写真を訝しげに見ながら呟いた。……でも、写真を見る限り15人とも仲が良さそうなんだよなぁ……特に炎を纏う双剣を持った黒髪の女と炎を纏っている刀を持った金髪の優しそうな男って、どう考えても娘に見える奴と一緒に撮った写真があるし。
「っと、此処が終点か」
俺は最後の写真がある壁に辿り着くと、そこにかけてある写真を見る。
そこには……
「なんと言うか……」
「スッゴい……」
「幸せそうだな」
そこには(多分)自分達の思い人の隣を巡って争う大半の女性陣(一部男性あり)とそれに苦笑いする男性陣と一部の女性陣の写真。黒髪のフォークを持った男に争っていた女性陣と男性陣全員が頭にフォークが刺さった状態で正座させられ説教されている写真。そして、中央にガチガチのタキシード姿の覇王とウェディングドレスを着て微笑みを浮かべる聖王を配置して覇王側に男性陣、聖王側に女性陣が並んでの写真だった。
……って!
「ユウヤにヤマト!? どうして此処にいるんだ!?」
「それは此方の台詞だよ! 気が付いたら此処にいて……」
「……どうやら俺達は3人とも何時の間にか此処に来たようだな」
俺がユウヤとヤマトがいることに驚くと、ヤマトがそれにツッコミ、ユウヤが苦笑いしながら呟いた。
……でも、謎があるぞ?
「俺はミツルギ姉の攻撃で死にそうになって、女の声に導かれて此処に来たんだけど……お前らは?」
「僕は矢鱈とテンションが高い女の人の声だったけど……?」
「俺は冷静な男の声だった」
……どうやら俺達はそれぞれ別の人間に連れて来られたようだな。
「にしても誰が……」
『太陽いわく燃えよカオス!』
「おうわぁ!?」
俺は誰が俺達を此処に連れてきたのか考察しようとした時……いきなり後ろから物凄いハイテンションな声と共に現れた女に驚いてひっくり返るはめになった。
「こ、この人だよ! 僕を呼んだ声の人は!」
『はいは~い! 何時もニコニコ這い寄る混沌! 『ニャルラトホテプ』こと『ニャル子』の
ヤマトの言葉に反応した銀髪アホ毛の女が意気揚々と自己紹介をしようとした所で……写真に写っていた黒髪の女と、オレンジ色の髪に額に火を灯した男がその後頭部に拳を叩き込んでいた。
『……いきなり彼らを混乱させるな』
『ジョットの言う通りだよ。いきなり出てきて彼らを混乱させたニャル子が全面的に悪いよ?』
『ううう……それでも私は諦めなイアガラの滝!?』
俺達は頭を押さえながらもテンションをあげていこうとする銀髪の女の顔面に容赦なく拳を叩き込んだ。
「話が進まねえから早く自己紹介してくれねえか?」
「……ああ、それに此処が何処だかも知りたいしな」
『それもそうだね。僕の名前は『アレクサンドラ=アルシャーヴィン』。少し長いから『サーシャ』で良いよ。君を呼んだのは僕だよ、ミズサキ君』
『俺は『ジョット』。お前を呼んだのは俺だ、アカツキ』
俺達は向こうで踞っている(フリ)をしているニャル子と呼ばれた女にちらりと目を向けつつ自己紹介をされる。
「……で、此処は何処なんだ?」
『……着いてきて』
俺は質問に踵を返すことで答えたサーシャさんに着いていく……ん?
「……他の二人は?」
『これから先の『試練』は一人でやらないといけないから』
……試練?
俺がサーシャさんの言葉に疑問符を浮かべながら着いていき……ついた場所は真っ白な広い部屋だった。
「……此処が試練の場所か?」
『そうだよ。あそこの黒い弓は見える?』
「ん……見えるけど……?」
俺はサーシャさんが指を差した場所にある黒い弓に少し心を奪われそうになりながらそう答えた。
『……あれを取れば良いだけだよ』
「……? それが試練……?」
『うん。……簡単じゃないだろうけどね』
俺はサーシャさんの言葉に眉を潜めながら弓に触れ……次の瞬間、襲いかかってきたあらゆる悪感情に弓を手放しながらひっくり返った。
「なん、だよ……これは……!?」
『その弓は君の鏡とも言える弓。そこから流れる悪感情に逆らわずに、全部の悪感情に対する自分の思いをきちんと告げれたら試練は終了だよ』
俺はサーシャさんに告げられた内容に苦笑いをする。9年間生きてるだけでこれだけの悪感情が湧くのかよ……
「まあ、なんにせよ……やってやるか!」
俺はもう一度弓を手に取り、集中する。
……なんで、なんで『あの人』は『あんな奴』を……! 俺が、俺の方が先に……!
「(……これは、俺の『初恋の人』に対する悪感情か)」
俺の故郷での、俺が師匠に弟子入りして、管理局に入るのを後押ししてくれた……あの人。俺の初恋の人とその人と現在進行形で付き合っている幼馴染みに対するものか。
「(だけど……んなもん、とっくの昔に……乗り越えてねえか。今でも高校生くらいの俺があの人に告白してるの、夢に見るし)」
それでも、あの人達を守るために強くなる。そう師匠に宣言した決意はあの日から変わっていない。だから……負けてたまるかよ!
何もかも無駄なんだよ。権力には逆らえないんだよ……
「(おいおい……今度は俺達が3人で初めて挑んだ事件かよ)」
確かあの時は有名な女子高で生徒を使った売春で不正な利益を得ていた理事長一派と癒着していた管理局の高官が勇気を振り絞って告発した生徒の恋人(教師)に冤罪を着せて無理矢理事件の解決を図ったんだっけか。
「(だけど……俺達3人は、命令なんて無視して捜査を進めたんだっけ)」
どうにかこうにか証拠を見つけて、無茶もして犯人達を逮捕したから良いけど……下手をしたら俺達は3人揃って消されてたな。
それから……
俺に才能なんてないんだよ。諦めろよ。お前に高町達と戦う資格なんてないんだよ。
「(一緒に戦うのに資格なんてあるかよ!)」
敵うわけないだろ、あんな力を持った化け物によ。
「(……それでも、それでも管理局を否定しかしていないあいつに負けるわけにはいかねえんだよ!)」
……お前は依存しているだけだろ? あの2人の友情にさ。
「(依存なんかしてねえよ! 俺がユウヤやヤマトに抱いている友情と信頼は悪意なんかに歪められやしねえよ!)」
鮎川を見下しているんだろ? 魔力がない一般人の分際でって。
「(んなわけあるか!)」
様々な悪感情があることないことを吹き込んでくるが、俺はそれをことごとくはね除けながら言葉を返す。
そして……
なんで、なんであの女を助けようとするんだよ。さっきだって殺されかけたのに……さ。
俺の頭の中に映像が浮かぶ。そこには駆け付けてきたクロノから真相を聞かされたことでヒテイに対する憤怒と憎悪に満ちた目から人形の様な虚ろな目になったミツルギ姉弟と、その2人に対し、満足そうに頷きながらユーノ達を殺すように命じるヒテイの姿があった。
……クロノから聞いた通りだな。ミツルギ姉弟の世界は、アイツが父親を唆して黒い炎の力を無理に手に入れさせた所為で崩壊したんだ。
だから、俺は……
「(許せねえからだよ)」
……許せない? どっちを?
「(ヒテイだよ。自分が世界を崩壊させておきながら、それをさも管理局や転生者って奴等がやったように言って、ミツルギ姉弟を洗脳したのもそうだけど……本当の意味で許せないのは、2人やなのは達を物扱いしてるからだ)」
皆は生きている人間だから。アイツのおもちゃじゃねえから。だから……!
「俺はアイツをブッ飛ばす! そのために、力を貸してくれ!」
…………汝の思い、理解した。受けとるが良い、魔弾の王と戦姫、そしてそれに付き従いし剣士達の力を……!
…………………………
「ミツルギさん、しっかりして!」
「マスター!」
「ご主人、目を覚ますにゃ!」
「……管理局員、ユーノ・スクライア、抹殺、まっさつ、マッサツ。高町なのは達を確保、かくほ、カクホ」
「ユウト、しっかりしろよ! 俺だ、シロだよ!」
「ダメだ! 完全に操られている!」
「管理局員、殺す、ころす、コロス」
ハロー! 現在進行形で緊急事態の橋出だぜ! 俺達はフェイズを制圧し、カンリ達を追いかけるために行動をしようとしたんだが……その直後に現れたカンリ達とほぼ同時に現れたクロノ達の口から衝撃の事実が放たれた。
元々カンリ達の世界には『禁断の炎』……リボーンのラスボス組織『
……それを聞かされ、騙された挙げ句、自分達の世界の仇に散々利用されたことに気付いてぶちギレたミツルギ姉弟がカンリに襲いかかったんだが……2人のデバイスに仕込まれていた洗脳機能により2人は洗脳され俺達と戦わされているんだ。……2人が展開した匣兵器も含めて。
「くはははははは! 良いぞ! そのままKYどもをぶち殺せ! なのは達は俺がいただくからな!」
そう言ってカンリは自分の匣兵器の1つ『
くそ! 好き勝手にしやがって……!
「くくく……KY達もすぐにあの管理局員達の……」
「後は追わねえよ」
「……へ?」
得意顔のカンリが大苦戦している俺達にそう言うが……後ろから聞こえた声に振り向いた瞬間……
「僕の『宇宙CQC・フルフォースマキシマム』! 『怒りの撲滅鉄拳』!」
「ぐべら!?」
「穿て……『
「ぎゃばら!?」
「吹き荒れろ、『アリファール』! 轟け、『クシャルダオラ』! 『
「がばっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
そう言ってニャル子の『フルフォースフォーム』の豪華版(腕にはクー子の炎、背中にはハス太の風とルーヒーの水を翼状にしたもの、足にはアト子の糸がついてる)を身に纏ったハギノ、額に見たこともない死ぬ気の炎を灯し、手には同じ炎を放つリボーンに登場するどのリングにも似ていない指輪を装備したアカツキ、『魔弾の王と
……マジでどうなってんの!?
リアルで忙しく、大幅に時間がかかってしまいましたが何とか出来ました。次回も遅れそうですが、何とかエタらずに頑張りたいです!
次回もお楽しみに!
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