とある宮古芳香の悪戦苦闘 (ゆっくり霊沙)
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プロローグ

【幻想郷のとある場所】〔数年前〕

 

「芳香えらい、えらい。」

 

「えへへ。」

どうも芳香じゃ。

私は青娥の操り人形・・・キョンシーじゃ。

・・・どうも私の体はキョンシーになってからの船数百年私の意思で動いてくれないのじゃ。

 

「青娥の役にもっとたちたいよ~。」

本心ではない。

この邪仙の都合の良いことしか私は喋れないのじゃ。

いや、二重人格となっていると言った方が正しい。

私の本来の人格はこうして心の奥で自分行動を見守ることしかできない。

感覚はないので体がバラバラになっても青娥が体を修復すれば私も戻る・・・体という牢屋にいる囚人が本来の宮古芳香じゃ。

 

「青娥!!青娥!!」

私の体が倒れた邪仙のことを心配している。

そのままくたばれ邪仙。

・・・という希望も虚しく邪仙は起き上がった。

 

「・・・ワシは?」

 

「青娥?」

おや?

 

「そこの娘・・・ここはどこだ!?」

 

「幻想郷だよ。青娥。」

 

「ふむ・・・ソ連はどこ・・・いや、ワシは亡命しなければ・・・どこか遠くに・・・。」

 

「青娥、青娥どうしたの?おかしいよ?」

 

「うるさい黙れ!!」

ペタ

 

邪仙は私の体に『自由』と書かれた札を貼り付けた。

 

「グリゴリー・クリーク様の前で騒ぐからこうなるのだ!!・・・さて、移動するか。」

青娥はどこかに行ってしまった。

 

〔3時間後〕

 

「アーアーア・・・!?体の感覚があるのじゃ!!」

ペリペリ

 

「おお!?」

私は顔に貼られていた札を剥がしても自分の体が自由(肘と肩は動かないが)に動いたことを確認すると

 

(・・・まさか・・・これが自由!?ふふふ・・・ハハハハハハ!!)

鑑がないからどんな顔をしていたかわからないが、酷く歪んだ笑みに違いない。

 

〔数分後〕

取り乱した。

すまぬ。

私がやるべきことは青娥に見つからないようにすること、安全の確保の2つだ。

頭の中で幻想郷の地図を思いだし、どこの勢力に移動すれば安全か考えた末・・・私は香霖堂に行くことにした。

・・・安全なところがそこしか思いつかぬ。

ん?聖の寺か?ダメじゃ。

すぐに青娥に見つかってしまう。

・・・さて、歩くとするかの。

 

〔数十分後〕

 

「歩きづらいんじゃ!!」

心からの叫びである。

少し気になったのが数十分も歩いた(跳び跳ねる)が妖怪どころか妖精1匹にも会わない。

不安に思いながら先を急ぐと不意に地面の感覚がなくなった。

 

「ふぇ?」

変な声を出しながら私は落下していった。

 

【???】

 

「ぐぇ!?」

両足が変な方向に曲がって凄く痛いのを我慢した私は、周りを見渡していると、私の後ろから刃物を突きつけられた。



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八雲一家

(なぜ私は刃物を突きつけられているんじゃ?・・・んーん?あ!?八雲籃と八雲橙・・・とあの邪仙が言っていたような?)

 

「貴様は住民か?」

九尾の女狐が私に刃物を突きつけながら話しかけてくる。

 

(・・・どうする私?操り人形の時の真似をするか?・・・よし。それでいこう。)

この判断が私の体を助けることとなる。

 

「住民?青娥のキョンシーだよ!!」

そう言うと少し触るぞと言われて様々な場所を触れられたが

 

「変わったところは無いようだな。・・・よし。」

と言われた。

 

「明日天界に避難させる。それまで個室で待ってもらえるか?」

 

「わかった!!」

 

「橙、案内してやってくれ。」

 

「はい!!らんしゃま!!」

私は6畳の個室に連れてこられ、

 

「キョンシーってご飯いるの?」

と猫又(橙と言うらしい)に聞かれ

 

(・・・いや、ここは我慢・・・私は死体、少し食べなくてもなんとかなるじゃろ。・・・いや、建前上あれを言っておくか。無いことを祈るんじゃ。)

 

「ん?ご飯?同類?死体。」

 

「あ、ごめん。死体はないよ。」

 

「わかった!!」

 

「じゃあゆっくりしててね。」

襖が閉められ、やっと1人になれた。

 

(天界・・・興味あるのじゃ。否、死体を入れてくれるほど甘くはない。・・・しかし何が起こっておるんじゃ?今思い出すとあの邪仙の様子も別人の様じゃったし、目に通る神経がイカれて歪んで見えるから何が起きてるかわからんかったが・・・ん?隣の部屋で何かやってるんのじゃ?)

私は襖を少し開け、覗くと黒い球体に目がついた何かが浮いており、その横に籃と橙が正座していた。

 

(なんじゃ?)

するとドサッと人が落ちてきた。

 

(ん?・・・あれは?)

昔に見たことがあるような気がした。

 

(傘?傘・・・紫の・・・多々良小傘じゃ!!どこかで戦った・・・ん?白黒と文屋もいるんじゃ・・・しっかしあの神々しいオーラを出す女は何者じゃ?・・・あ、落ちた。・・・よく見えないし、聞こえないんじゃ・・・ん?)

私は体を襖に押しつけすぎたのか襖が血(腐ってます)が滲んでしまった。

それに気がついた誰かが襖を勢いよく開け

 

「・・・なんだ操り人形のゾンビなんだぜ。」

 

「ゾンビじゃない!!キョンシーじゃ!!・・・あ。」

前になぜかいる男性以外は私の不自然さに気がついたのだろう。

 

(どうする!?歌でも読むか!?

襖奥 鬼門と知りつつ 覗ければ わが身いとおし 去れど無なし・・・駄作!!)

 

「橙縛れ!!」

 

「はい!!らんしゃま!!」

 

「話せばわかる!!話せば!!」

 

「こいつ犬養が取り憑いてるかもしれません。」

 

「傘!?何を言っておる!?私は宮古芳香だ!!」

ぐるぐるに縛られ、吊るされるのだった。



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事情聴取と解放

吊るされた私からは縄の締め付けと体重からやはり血が滲んでしまい、床を汚したことに申し訳なく思いながらも誤解を解こうとした。

 

「・・・で貴様は逃げ出したところを保護されたと・・・。」

 

「そうじゃ!!札が貼ってないときもある札が貼られないと本来の感情、表現、行動できないようになっておったからのぉ。」

 

「本当かどうか調べればわかるんだぜ。」

白黒魔法使いは床に垂れた私の血を変な物(スポイト)で取ると紙に陣を描いて血を垂らした。

 

「・・・嘘は言ってないんだぜ。こいつ千数百年も自我を出さないで生活してたんだぜ!?」

 

「誤解が解けたようですなによりじゃ。・・・早く縄をほどいてくれないかの?」

そう言うと今まで黙っていた男が縄を切り裂いた。

 

ドテ

 

「痛いんじゃ!!」

今度は肩が外れたらしい。

いくら防腐の術をしても表面だけなので骨はだいぶボロボロだし、中はグチャグチャ・・・あの邪仙がさらに何かの術をし、私の肉体を強化していたのは明白だった。

 

(そこまで私を側に置きたいのか。あの邪仙は!!)

ふと思うとなぜあの邪仙が私に肩入れするのかわからない。

とある豪族に産まれ、才女として有名となり、高家に嫁ぐ際にあの邪仙が

 

「良いわ。最高の素材!!」

と言ったが最後、肉体という牢獄に閉じ込められた。

 

(わからない。・・・たぶん永遠に知ることはないじゃろう。)

そう思いたい芳香であった。

 

「大丈夫ですか?」

小傘の声で意識を戻し

 

「大丈夫じゃ!!」

と答える。

実際は大丈夫じゃないがそう言った方が良い方向に進むと思ったため、大丈夫と言った。

 

「・・・軟禁の上で様子見。橙・・・汚れても良い部屋にこいつを移してくれ。」

 

「はい!!らんしゃま!!」

結果、別の部屋に閉じ込められるのだった。

 

〔3日後〕

体が乾燥して手足が干し肉の様になった頃、九尾の女狐が

 

「もう出て良いぞ・・・と言われた。」

何か・・・異変が終わったと感じた。

 

「私はどこに行けばいいんじゃ?」

 

「ここの敷地内で待機しててくれ。・・・幻想郷の再生が・・・再構築をヤマメがするから。」

 

「ヤマメ?再構築?何を言っておる?」

 

「まぁ観ていろ。」

私は女狐が指差した方向を見ると空が暖かい光に満ちていた。

さらに空間が捻れ、遠くに何やら大きな塔が沢山はえているのが何となく見えた。

 

「あれは?」

 

「彼女が住んでいた国を持ってきたらしい。」

 

「神か?あやつは?」

 

「知っているのか?」

 

「襖越しに覗いたんじゃ。神々しかったぞ。」

 

「わかるのか。」

 

「多少の心得はあるのじゃ!!」

 

「たぶんヤマメがこの忘れられた空間を全く別の物に変えてしまう・・・良いと思うかキョンシー。」

 

「時代は水物・・・変わらなければ私のように腐るもの・・・。」

 

「そうだな。」

この変化が私の運命を大きく変えることとなるとは思わなかった。



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物語の始まり

〔数週間後〕

私と八雲一家以外はヤマメという人を追ってどこかに行ってしまったが、私は頼み込んでここに残らせてもらった。

そんなある日

 

「ごめんください!!」

女性の声が聞こえた。

 

(ん?ここは結界で隔離されてる絶対領域のはずじゃ。・・・なんで客人が?)

不思議なこともあるものじゃと思いながらドアを開けると、前に神々しいと思った女性が立っていた。

 

「ん?式じゃないね~。・・・名前は?」

 

「いや、それは先に言うべきじゃろ。」

 

「ははは、ごもっともだね。私は黒谷ヤマメ・・・12大神末席。・・・まぁ要するに神のさらに上と考えてよ。」

 

「ほほう・・・私は宮古芳香じゃ。死人・・・キョンシーじゃ。」

 

「・・・賢者と式達はいる?」

 

「いるぞ。まぁ中に入れ。」

 

「失礼します。」

賢者と籃、橙がいる場所に案内し、私は隣の部屋で会話を聞くことにした。

 

「久しぶり・・・かな?」

 

「えぇ、久しぶりよ。今は形が安定してるでしょ。」

 

「そうだね。ちゃんと胡散臭げな感じがするもんね。」

 

「・・・で、どうするつもり?私の愛している幻想郷を・・・。」

 

「もう壊れたでしょ。・・・取りあえず国に組み込むよ。一部の人間を除いて壊滅した人里では弱い妖怪以外生き残った妖怪勢力に太刀打ちできない。」

 

「何があったか知らないけど・・・利害関係の整理ができるようになったのね。」

 

「妖怪の本質がわかったからね。」

 

「どんな?」

 

「人を恐怖させることで生きる妖怪は人間の上に立つべきだね。・・・味方に優しく、敵に厳しくすれば勝手に恐怖と信仰が手にいれられる。・・・新しい妖怪のスタイルだよ。」

 

「明確な敵がいなければ絵に描いた餅よ。」

 

「それを創るのは私の仕事。・・・まぁ偉い神様になっちゃったからにはどうにかするよ。」

 

「で、始めに何をするの?」

 

「国をこっちに持ってきたからここに最低限のインフラと交通網を作る。妖怪に再教育をさせる。」

 

「反発が大きそうね。」

 

「受け入れられる者達から優先的にやるよ。・・・時間が経てば考えも変わるからゆっくり焦らずね。」

 

「まぁいいわ。橙・・・あなた達は再教育を受けてきなさい。これから必要になるわ。」

 

「ゆかりさま!!橙はいらない子ですか?」

 

「橙、そうではないと思うぞ。私の後に紫様の面倒を見るのは橙の役目だからな。」

 

「らんしゃま!!わかりました!!」

私は襖を開け

 

「あの~私もいいかの?」

勇気を出して言ってみた。

するとヤマメは

 

「もちろんだよ!!」

と言った。

数日後私はヤマメの国に移るのだった。



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腐敗及び身体正常化処置

【旧第336コロニー 新医療特区】〔数日後〕

さて、私の現状を伝えなければならない。

まず腐っている骨を再生処置された。

これで変な方向に曲がり、肩が外れたプラプラした腕は治り、さらに軍用骨髄再生手術と内臓再生処置を受けさせてもらい、体を強く押し付けただけで出血することはなくなった。

次に曲がらない間接を補助する機械を肩、足に付けられた。

感覚の同化をしたので自由に動かせた。

しかも

 

「ありがとうなのじゃ!!」

 

「いいのいいの。」

ヤマメさんが全額負担してくれた。

 

「金は回さないといけないからね・・・。」

 

「はぁ?」

その時の私にはよくわからなかったが振り返ってみれば凄いことをしてもらったとわかりあわてたものじゃ。

・・・さて、そんな私も退院と共に特殊学校に入れられた。

特別教室・・・ヤマメさんが創った特別支援学級で、主に幻想郷から再教育を希望した者が集まったクラスだ。

メンバーは私、橙、慧音だけだった。

慧音は人里で教師をしていたが、人里が壊滅したせいで、教育熱が冷めてしまい再教育を受ける気になったらしい。

ちなみに教師は女性らしい。

で、私達(隣では元橙担任の教師と生徒が同じクラスで勉強する異常事態)は席に座り担任を待った。

すると

 

ドン!!

 

「何驚いているのよ!!私はハルヒ!!あんた達の担任よ!!」

 

(・・・ん?)

こうして約3年間の合同学習が始まった。

 

〔1年目〕

基礎学力の確認及び社会常識の学習だった。

 

「いい?あなた達の生活環境は明治維新前後よ。このままじゃ社会的弱者になる。私は嫌よ。平等とは言わないけど、基礎だけは知らないと奴隷になるわ!!」

と真面目に教えてもらった。

ただ、私は覚えるのが遅い・・・いや、要領が悪いようじゃ。

 

「あんたねー、何度言ったらわかるの?」

と呆れられることもしばしば合ったがなんとか1年目はついていった。

 

〔2年目〕

 

「ヌフフ・・・呼ばれてきたら面白そうな子がいますね。」

臨時講師で殺せんせーが加入し、5人で授業が進む。

成長著しいのが橙じゃ。

 

「英検1級・・・?あえて言おうカスであると!!」

英検4級をギリギリ取れた私に言った言葉である。

冗談のようだが橙は約2年で検定オタクになってしまったんじゃ。

前に進路を書く紙の自己PR欄が検定で埋まってしまったくらいじゃ。

ちなみに私スカスカじゃ。

 

〔3年目〕

さて、進路である。

私以外は

 

「中央医大行きます。」

これは橙である。

ちなみに国一番の難関大学であり、大学に行くために高卒認定試験を既に突破しているた。

 

「教師育成大学に進む。」

これは慧音じゃ。

熱を取り戻したらしい。

私は

 

「・・・牧場で働くのじゃ。」

学歴問わすの牧場に就職した。




神界人口
大神 1名
大天使(大神補佐 1名)
上神 12名(内閣 9名 残り元帥 3名)
中神 480名(国会に相当)
下神 3000万名(公務員)
上天使 3億名(一般人)
天使 5000万名 (子供)
下天使 1億5000万名 (国籍習得30未満)
特神 25名(幻想郷在住)
妖怪 6350名 (幻想郷在住)
妖精 3020名(幻想郷在住)
人間 70名 (幻想郷在住)
神界の通貨

現在はポンド
ただ、新通貨・・・通貨の代わりに信仰の取引を国が画策している。


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転職に次ぐ転職

【とある牧場】

私は就職後無難な生活をしているんじゃ。

4年前に幸運が重ならなければ、私はまだ邪仙の荷物持ち兼肉壁だった・・・いや、体を動かすこともできなかったと思う。

 

(今じゃ牛とヤギの飼育係か・・・。)

 

「新入り!!放牧に連れてってやれ。」

 

「了解なのじゃ!!」

住み込みで楽しい生活を私はおくっていた。

 

〔6年後〕

 

「クビ?」

解雇通知を牧場主に突きつけられていた。

 

「新通貨(下界と呼ばれている世界の信仰数)に馴れてないのに家の馬鹿が牧場担保に株で大負けしやがって・・・牧場主が変わるんだが上天使以上からしか雇用しないと通知が来てな・・・親戚の歴史保存学者が手伝いを募集してたから行ってみないか?」

 

「は、はいなのじゃ!!」

 

「餞別だ。」

 

「・・・!?種子じゃないか!!牧場の機密を外に出して良いのか!?」

 

「良くはないが・・・それほど俺がお前を解雇するのが辛いとわかってくれ。」

 

「オーナー・・・馬鹿ですまんのじゃ。」

私はその後オーナーの親戚の元に住み込みで働くこととなった。

 

【区営博物館】

オーナーの親戚の歴史学者(以後歴オタと略)は下神でお偉いさんだった。

 

「さあ田植え行くぞ子供達!!宮古はサポート頼むぞ!!」

 

「はいなのじゃ!!」

しかしお偉いさんで威張るのではなく、近所の子供達に歴史を教えたり、古い儀式(田植えや作物の育成)を体験してもらったりしていた。

 

(私は農業が古いと思わないんじゃが・・・ここだと機械がすべてやってしまうもんな。致し方なし。)

10年で私もこの国に染まってしまったのじゃろう。

そう思いながらも私は農業と簡単な木造建築に触れるのだった。

 

【とある医療機関】〔3年後〕

歴オタと歴史を学習しながら3年後、休日に私はとある場所で肉体の研究をされるのが日常になっていた。

 

「で、先生どうなのじゃ?」

 

「どうとも言われても・・・解析済みだし喋りたいだけでしょ。」

私が話している相手は八意永琳・・・幻想郷保護区に居ながら医者をしている人じゃ。

私が調べてもらっているのは生きてる人間に感染し、ゾンビにする可能性があるかないか・・・で、結果は安全と出たんじゃ。

そこで私は長年の夢だった子供はできるかと聞いたところ

 

「100%無理(笑)」

と言われたが

 

「・・・別の方向でできるかもしれないから少し時間をちょうだい。」

と言われて今にいたる。

 

「結果を教えるわね。・・・あなたの体に細工されたのを逆手にとる。キョンシーとして生命を作ればね。」

 

「そ、それじゃあ邪仙と同じことをしているんじゃ!!」

 

「焦らない・・・説明するわ。」

 



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説明

「まず邪仙とあなたが言ってる青娥があなたをキョンシーにした過程をあなたの証言とあなたの肉体を調べた結果から教えるわね。まず通常1人のキョンシーを創るのに元となる素材は複数いるの。例えば頭はAという人を使ったら体はBのを使う・・・みたいにね。余った素材はオプションのようにして使うの。足を速くしたり、腕の力を強くしたり・・・でもあなたは素材不足で完成しなかった・・・未完成の状態で出来上がってしまったわ。そこで邪仙は不足部分を植物と札を用いた。結果間接に異常があるもののお喋り人形が出来上がったわけ。」

 

「・・・複数人用いれば完成したキョンシーが出来上がるってこと?」

 

「そう。で、キョンシーを創る秘術はそこまで難しくないの。まず自身の髪の毛を藁人形に結びつけ、それを死体の心臓に入れる。次に藁人形が見えないように他の死体の肉で見えないようにし、首をハネる。最後に頭を乗せて真水に浸した糸で首と頭を繋げて特殊な呪文を15分以内に唱えれば完成・・・最低2人必要でしょ。」

 

「なるほどなのじゃ。・・・ん?子供を創るのと関係があるのか?」

 

「髪の毛で一部とはいえ体内に埋め込むのだから子供と言ってもいいじゃない?」

 

「屁理屈じゃの~。」

 

「まぁ使うかわからない・・・使わないで欲しいけど呪文の書かれた本を渡しとくね。」

 

「ありがとうなのじゃ。」

 

「代金は100グローブンね。」

ピ

 

「またのお越しをー。」

 

(しかし子供の~。)

作りたいが作れば捕まる・・・我慢するのじゃ・・・。

 

〔10年後〕

神界に野球が大ブームとなっている頃、歴オタのところから農園管理アルバイトに転職していた。

歴オタの人事移動が原因だ。

別の州に移動となったので私は解雇され、今にいたる。

彼から別れの際に163号と呼ばれる種籾20キロとジャカルタの種芋を2キロ、IR8と呼ばれる小麦ももらった。

 

「あの~。・・・これをもらっても・・・。」

 

「なに!!腐らないし200年間は保存できる。」

 

「いや、そういうわけじゃ・・・。」

 

「時間だからいくぞ!!」

 

「あ・・・行ってしまったんじゃ。」

後に私を色々と助けてくれることとなるのだった。

 

〔さらに10年後〕

 

『信仰の増加計画案が中神達の間で決定されました。これには増えた人口の捌け口を未開拓の大地に送り込む野蛮な政策だと言う中神もいましたが、ヤマメ様の直接提案とわかると手のひら返しをしたようです。VTRです。』

 

『圧倒的失策!!許されない。いや、認めさせない!!』

 

『・・・なにか文句でも?』

 

『あぁぁぁぁ!?』

グニャ~ン

 

(相変わらず政界はわからないな~。・・・ん?ポストになにか・・・。)

 

《解雇宮古芳香》

 

「ハァー。」

今年一番のため息を吐くのだった。




一人の信仰=10グローブン=10円

ちなみにヤマメが創った世界なら神は全てヤマメになる



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失業中

〔数日後〕

借りているアパートの1室で就職先を私は探していた。

 

「ハァー・・・良いのがないな。」

この世界の年間失業率は約1%ととても少ないため通常なら普通に再就職できるのだが・・・

 

「人間から半妖になり、さらに神化すると頭のよさが半端ないんじゃ。・・・IQが95くらいだと面接で確実に落とされるのじゃ。」

前のアルバイトは歴オタのコネで就職できたものの、結局解雇・・・。

 

「・・・悩んでも仕方ないのじゃ。本やでも行って気分転換をするのじゃ!!」

私は外に出ようとした時、ポストになにか入っていることに気がついた。

 

「手紙?」

部屋に戻り封筒から手紙を取り出すと

 

《再就職プログラム》

 

「ん?」

 

《宮古芳香様

 

国営再就職凱旋委員会

 

あなたは信仰増大化計画法適合者と判明しました。

 

内容

・信仰の管理

・文化財の確保

 

給料

出来高制》

と書かれていた。

 

(なんじゃ?これは?)

私は不安になったが近くの市役所にて詳しく説明と言われたので行くことにしたんじゃ。

 

【市役所】

紙を役所の人に渡すと分厚いマニュアルが渡された。

 

「まずこれを読んでください。」

と言われ、飲み物を渡された。

 

〔数十分後〕

 

(纏めると荘園の管理みたいなものじゃな。それが世界まるごと・・・規模が違うが・・・。その中で生活し、歴史的な分岐点を作ることで別の平行世界を作り上げる・・・それで信仰を集めるか。)

しかしそれだけではタダ働きになってしまうので、文化財を集めることに繋がるのじゃ。

文化財はその世界で手に入れた物を神界のオークションに出展され、その売上をその世界で働いている人に渡されることになっていた。

 

(あと、その世界で働いている者を神の使いみたいな感じで崇められれば1人につき5グローブンをもらえるのじゃ。)

一見凄く良い仕事に見えるかも知れないのじゃが、この仕事・・・死亡率と未帰還率がとても高い。

まずどんな世界に飛ばされるかランダムで運が悪ければ核戦争が終わって人が誰もいない世界や、魔王城の玉座に飛ばされ、首はねがあり得ることなのじゃ。

いくら天使でも肉片になれば再生できないし、海底に沈められれば死ぬ。

2つ目に初期投資金が回収できず破産もあり得るのじゃ。

死にたくないから戦闘ロボットを借金してまで購入し、連れていったが、返済期限を超えてしまい破産。

3つ目に持っていける量が決まっているのじゃ。

4トントラックに入る大きさとなってるんじゃ。

最後に100,000,000グローブンを払い終わるまで帰ることができないと言うリスクもあるんじゃ。

・・・ようはギャンブル。

私はその日家にそのまま帰り、翌日に返事を言わなければならなかった。



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再就職はギャンブルの様です

【アパート】

私は帰宅するとテレビをつけた。

 

(本当どうしよう・・・行くべきか?いや、リスクが高すぎる。なら普通に生活でも・・・ん?)

 

『今日の夕方に連続覗き魔が逮捕されました。犯人は霍青娥・・・種族は仙人の様です。』

 

ブーー

 

(ちょ!?え?今!?邪仙今捕まったの!?あれから約34年過ぎてるんだけど!?・・・いや、34年だけか・・・。)

私の思考はこの件で1つしか考えられなくなった。

 

(逃げるのじゃ!!)

あの邪仙に捕まるなんて自殺した方がましだ。

幸い邪仙が捕まったのはここから遠く離れた場所・・・幻想郷の賢者に協力をしてもらわない限り10日は逃げれる・・・。

 

【市役所】〔翌日〕

 

「やるのじゃ!!」

私は書類を昨日担当してくれた男性の座っている場所に叩きつけた。

 

「本当にいいのですね?」

 

「もちろんじゃ!!」

 

「では明後日には出発になるので用意しちゃいますよ。」

男性は立ち上がるとロボットのカタログと用意すべき物が書かれたリストを私に渡たしてきた。

 

「トラックはこちらが用意しますので安心してください。・・・一応聞きますが大型車の免許はお持ちですか?」

 

「あ、これか?」

 

「・・・はい、大丈夫です。では私は明日の朝にご自宅をお伺いするので、それまでに無償のロボット2体と持っていく物を決めてもらえますか?」

 

「え?ロボットって無償なのか?」

 

「一定収入以下で税金をしっかり払っていれば無償で2体貰えますよ。」

そう言われると私は挨拶して帰宅したのじゃ。

 

【アパート】

私は部屋の収納スペースに入れたままの米、ジャガイモ、小麦と牛の種を取りだし段ボールに詰め込むと、通帳からカードにお金をチャージし、買えるだけ物を購入した。

 

(日用大工一式、鍬2本、布団、タオル、着替え・・・。)

貯金していた30万グローブンが瞬く間になくなり、やっとのことで荷造りが終わった頃には日付がかわり、日の出前になっていた。

このまま寝るのもなんなので、八意先生に言われた藁人形を創るのことにしたのじゃ。

 

(・・・ん?髪の毛の他に植物も結べば変わるのか?・・・トウモロコシを夜食でたべたのじゃ。そのひげでも結んでおくかのー。)

私が藁人形を創り終わる頃には8時くらいになっていた。

 

「ハァー・・・3体しか創れなかったのじゃ。」

するとチャイムがなった。

 

「はいなのじゃー!!」

ドアを開けると担当の男性と引っ越し業者が立っていた。

 

「決まりましたか?」

 

「はいなのじゃ!!」

私はオールドタイプ(防水、防腐、体内加熱発電式)を2体選ぶのだった。



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始まり

〔次の日〕

 

「それでは頑張ってください。」

私は担当の男性にお礼を言うとトラックに乗り込みシートベルトをした。

すると魔方陣が浮かび上がりトラックが光に包まれた。

 

【???】〔???〕

光が収まると一番初めに感じたのは寒いことだった。

バン

 

「空気が清んでいるんじゃ。」

コートを着て外に出るとそう呟いた。

まず私はロボットの1体に周辺地域の地図を作成するように命令し、山が見えたのでトラックをゆっくり移動させた。

 

〔20分後〕

整地していない場所の移動は時間がかかるんじゃと呟きつつ周辺に集落がないか探したところ、人ではなく鹿と遭遇したのじゃ。

鹿はすぐに逃げてしまったが、中型の動物がいることがわかった瞬間だった。

 

〔30分後〕

人は全く見つからず、仕方なく綺麗な小川が流れている山の麓にトラックを止め、ロボットに木材の確保を命令した。

私も一緒に木を切り倒したのじゃ。

 

〔夜〕

日が落ちそうになるとすぐにトラックに戻り、鍵をしっかり掛けて眠った。

仮の住居が出きるまではトラックの運転席が私の寝る場所だった。

 

〔翌日〕

日の出とともに起床し、外に出ると地図を作成するように命令したロボットが帰ってきてたのじゃ。

 

「お疲れなのじゃ!!2体には引き続き木を切り、一定の大きさに揃えておくのじゃ。」

ロボット達はうなずくと作業を開始した。

 

「・・・ふむ。山に囲まれた盆地かのー。・・・で、集落はなし・・・。」

周辺に人がいないことが確定した瞬間じゃ。

 

「人がいないのなら自由にできるがのー。動物も侮れないのじゃ。」

鹿以外にどんな動物がいるか未知数・・・しかし生活しなければならない。

私はスコップを取りだし住居の予定地を半径25メートル、深さ2メートルで掘るのだった。

 

〔3日後〕

 

「ウム、最初はこれで良いじゃろ。」

床に丸太をさらに加工し、鉋や鑢で滑らかにした板を2重に敷き、8本の丸太を軸に、藁は人形で使うのでとりあえず木の板で屋根を形成し、持ってきたすだれを地上部分にかけ、いい感じの竪穴式住居が完成した。

これとは別に、隣に試作として丸太小屋を作り、外に置いておいても安全な物はそこにおくことにした。

 

「ふー。休憩なのじゃ。」

ペットボトルのお茶をコップに入れ地図を見ながらどうするか考えていた。

 

(気候がわからない・・・とりあえずジャガイモと小麦を植えようかのー。気温的に・・・試しだから少量じゃがな。)

近くには先程も言ったが山脈と小川、盆地が広がっており、山脈を越えると湿地帯、さらに奥に海となっているようじゃ。



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小さな畑

〔翌日〕

私はロボット達に原生物を探すように命令し、私は畑を作ることにした。

 

「しかし・・・キョンシーでよかったのじゃ。」

私、芳香はキョンシーであると同時に力が強い。

関節は補助してくれる機械がないと動かないが、これも250年動くらしいので、当分困ることはない。

この結果がどうなるかというと・・・

 

「まさか2刻半(3時間)で600坪が耕し終わるとはのー。」

前に歴オタの所で働いていた時はもっと時間がかかっていたので驚いたのじゃ。

 

(・・・怖いから明日もなるべく深くまで耕してから植えるのじゃ。)

そう決めた芳香だった。

 

〔翌朝〕

目が覚めるとロボット達が家の前で立っており、鹿時は狐の死体が置かれてあった。

 

「お主らが狩ったのか?」

するとコクンと首を縦に振った。

 

「・・・血抜きするからバケツと小さめの丸太、ナイフを持ってくるのじゃ!!」

私はロボット達に命令し、急いで血抜きをおこなった。

 

〔25分後〕

 

「終わったのじゃ。」

血抜きをして解体までおこなったが、知識はあっても上手くはできず、結構な部分をダメにしてしまった。

 

「・・・それでも15キロは食べられる部分じゃ!!」

皮は切り裂いてしまい敷物としては使い物にならないが、ゾンビの素材としては充分だった。

私は右側にいたロボットに

 

「地図を作成を続けるのじゃ。2週間で帰ってくるのじゃ!!」

と伝えた。

もう1体は昨日と同じように原生物を探すように命令した。

 

「さーて、やるかのー。」

ジャガイモの種芋と小麦を持っていき、もう一度深く耕し、畝をつくり、各300坪ずつ植えていった。

 

「これでラスト・・・ふう。あ、まだ時間があるのー・・・二十日大根でも植えておこうか。」

私は余った時間で二十日大根の種を蒔き、その日は日がくれてしまった。

 

〔夜〕

私は真っ暗の中で考え事をしていた。

 

(本当にこれで良かったのじゃ?・・・橙に頼めば手伝いくらいはできたのではないのか・・・本当は邪仙から逃げるためだけにこの仕事を受けてしまったのではないか・・・。)

足りない頭で一生懸命考える・・・どの方向に進めば良いのかわからない・・・。

圧倒的な情報不足、全くいない人間、あまり上がらない気温、晴れ続きで怖い気候・・・全てが不安になって私を襲ってきた。

 

(怖い・・・1人は怖・・・ん?邪仙はこれを恐れていたのか!?)

私の体に電流がはしるような感覚だった。

 

(長い時間を生きる仙人だからこそ1人が辛いのじゃ・・・自分の人生のことを知っている、なにも気を使うことのない・・・存在を欲したのじゃな。)



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整地

〔翌日〕

ロボットが新たに狩ってきた鹿の解体、畑に水を撒き、草取りを終わらせた私はスコップを片手に持ち整地を始めた。

理由は寂しさを紛らわすためと後々の畑の拡張と区画決めを兼ねていた。

 

「やるのじゃ!!」

気合いを入れて整地を開始した。

 

〔2週間後〕

凸凹がなくなった土地を見てにやけていると、地図の作成を頼んでいたロボットが帰ってきた。

 

「人間はいたのか?」

私の質問にロボットは首を横にふる。

 

「そうか・・・地図はどうじゃ?」

私はロボットから地図を受けとると形がある場所にそっくりだとわかった。

 

「・・・えーと日本の蝦夷地(北海道)なのじゃ!!」

なごりで昔の地名を言ってしまう癖がある私は蝦夷地ににた地図を見て首をかしげた。

 

「・・・?原住民のアイヌ民族がいるはずじゃ?なぜいない?」

不思議に感じていると、担当の男性から言われたある言葉を思い出したのじゃ。

 

「芳香様が働く場所は何かしらの変化がおこっているはずです。それがパラレルワールドの絶対条件・・・それが小さければある人物が産まれないとか、地震がおきなかったとかですが、大きければ人がいないというのもあり得るのをわかってください。」

と言われたことを・・・。

 

(楽観して考えるのならたまたま人が住んでる場所を見つけることができなかった・・・最悪は人がいない世界・・・。)

私は焦り、人がいる証拠を手に入れることをロボットに命令し、行かせた。

本当に焦っていたので、期限を決めることも忘れて・・・。

 

〔次の日〕

いったん整地を止め、草取りと水撒き以外を後に回し、地図を見ながら想像できることを連想していった。

 

(蝦夷といったら寒い、土地が広い、島、自然が豊か、巨大熊・・・あと山脈が所々にあるのじゃ!!)

そこから米作りはあまり適していないこと、しかし野菜の栽培、家畜の飼育には楽、大雪とそれぐらいしか頭の悪い私にはわからなかったので、トラックから劣化防止の魔法がかかった色々な本のうち、蝦夷に関する本を選んで仮住居に持ち込んだ。

 

(ふむふむ・・・なるほどのー。)

読んでわかったことは、現在の日本に牛と馬がいないこと、比較的近くに銅山があることくらいだった。

 

(持ってきた種々が無駄・・・こうなったら少し違法じゃが致し方あるまい・・・。)

私はとあるコネを使うことにした。

 

『芳香・・・こっち今夜中なんだけど・・・。』

 

「すまんな橙。クラスメートとして、友達として助けてくれぬか。この通り。」

1分の通話に100グローブンかかるが必要経費として割りきった。

 

『で、用件は?』

 

「うむ、お主のご主人の妖怪の賢者に子牛を1頭こっちに送ってくれぬか?座標はN89632じゃ。」

 

『金は立て替えておくから私に返してね。』

 

「本当にすまんのじゃ。」

 

『じゃあね。今度は運送会社に動物以外を頼んでね。』

そこで通信は切れた。



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子牛

ここで少し補足しておくのじゃ。

本来なら動物の移動は基本禁止されておる。

これは前に神界から犬を連れてきた人物が、仕事場になる世界で犬が突然変異し、化け物となりご主人を喰い殺したからじゃ。

また、橙が運送会社と言ったのは、文化財を神界に持ち込むためと、こちらが神界の3倍の値段になるが物を買って送ってもらうための会社じゃ。

例アマ○ン

 

〔2日後〕

朝起きるとホルスタインの雌牛とその首にプレートがかかっていた。

読んでみると

 

《頼まれていた子牛よ。渡したからね。・・・どうもヤマメです。今回は見逃すけど次やったらアウトね。期待してるから頑張ってね~。》

バレていた。

 

(危ないのじゃ・・・この1匹を大切に育てないといけないのじゃ!!)

その後2日かけて牛小屋を建てるのだった。

 

〔1週間後〕

 

「この牛は頭が良いのじゃ。」

基本放し飼いにして様子を見ていたが、私が整地をしていると嫌いな草以外は食べてくれるので、整地がはかどるし、畑のジャガイモを掘り返して食べようともしない(畑に入ろうともしない)、日が沈む頃になると勝手に小屋に戻るのじゃ。

そのため楽に飼育できて私は他のことを色々するのだった。

 

〔3ヶ月後〕

今さらロボットに無茶な命令をしたことを思い出し、慌てていた頃、私の家に死神がやって来た・・・。

その日の夜は暑くてなかなか寝付けなかった。

そのため外で風に当たろうと入り口に行くと

 

ガリガリ

入り口の近くに積んである丸太をなにかが引っ掻く音が聞こえた。

 

「・・・なんじゃ?」

私は残って狩りをしているロボットが帰ってきたのかと思ったが、丸太を引っ掻く音は不自然と思い、シャベルを持って外に出ると・・・。

 

グル ガリガリ

 

(熊じゃ!?)

私に気がついたのか熊は丸太を引っ掻くのを止め、私に襲いかかってきた。

 

「く、来るな!!」

私は思いっきりシャベルを熊に投げつけると、運良く頭蓋骨を叩き割り、脳ミソと血が辺りに散らばった。

もちろん絶命しておる。

怖くなった私はその日眠れなかった。

 

〔翌日〕

私は家の周りに壕を掘っていた。

ただ、子牛が間違えて落ちたら大変なので内側だけ壁のようにし、外側は緩やかな坂にしてある。

 

「ふあ~・・・眠いのじゃ。」

昨日の熊襲撃は精神的に堪えた。

妖怪、幽霊と見慣れているのは大丈夫だが、大型動物が襲いかかってくるのはいつの時代でも命の危機を感じてしまう。

 

「ダメじゃな・・・操られていた時はこんなこともなかったのじゃが・・・それが人間らしさかのー?」



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返済への道筋

グロ表現注意


【拠点】〔数日後〕

私はどのようにして借金を返済するか考えていた。

 

「ダメじゃ・・・採算が取れないのじゃ・・・。」

ここで詳しく話しておくことにするじゃ。

まず、神界では野菜の自給率は120%に調整され、残りの20%はバイオ燃料か他の世界に輸出しているのじゃ。

他の世界とはパラレルワールドのうち、人が滅んだ世界、動物がいない世界などの鉱物資源が採れるとわかった星を政府が金持ちに販売し、その星にロボットや、人間(これはヤマメが転生をするときに魂の受け皿を求めた結果誰もいない世界を開拓し、人間が住める様になればそこに過剰な魂を送り込むらしい)で資源、信仰を集めるために食料を星持ちの神や天使に売り付けているのでこちらから食料品を売っても利益にならないのじゃ。

次に鉱物資源も同様な理由で利益にならないため、私が利益を得るためには、文化財、コレクターが喜びそうな物、その星限定のなにかをオークションもしくは販売しなければならないのじゃ。

 

「とは言っても、人間がいなければ最初の2つはダメじゃし、星限定も魔法の道具があるわけでもないのじゃ。・・・こりゃ長期戦かのー。」

そんなことを考えていると数ヶ月前に誤った命令をしたロボットが帰ってきた。

 

「すまんな、パニックになって・・・ん?その袋はなんじゃ?」

私はロボットが抱えているなにかが気になった。

 

(なんじゃ?あの袋は?行った時は持っとらんかったのじゃ。)

私の前に置かれた袋を開けると・・・

 

「・・・死体、しかも新しい。」

中には男女のつがいであった。

・・・繋がった状態で女性の方の首には男性の手形があったため窒息死だと思われ、男性は喉元を引っ掻かれたようで出血多量による死亡だった。

 

「・・・これはどこで見つけたのじゃ?」

私はロボットに質問すると、拠点の中から地図を持ってきて、地面に広げ、ある場所を指差した。

 

「ふむ・・・白神岬の近くじゃな。そんなところまで探していたのか・・・お疲れ様なのじゃ。」

ロボットはなにも喋らない。

 

「ここら辺に集落があるのか?」

私の質問にロボットは首を横に振った。

 

「・・・なぜ男女でいるのじゃ?何かの儀式か?・・・わからん。」

私はとりあえず袋を持ち上げると拠点の中に入れ、実験台としてキョンシーにすることにしたのじゃ。

 

「ふむ・・・どの藁人形を使うかのー。・・・これにするのじゃ!!」

私が選んだのは頭に白鳥の羽と烏の羽が刺さっている人形だった。

 

「さて心臓に埋め込んだから首をはねる・・・前に真水を用意するかのー。」

私は持ってきたドラム缶に持ってきた濾過機で川の水を溜め、そこに糸を入れた。

次に女の死体をベースに男の骨、肉などを女性の死体に組合せ、醜い何かを作り上げた。

 

「なんか汚いのじゃ。」

そう呟きながら私は首をはね、真水に浸した糸で再び首を繋ぐと呪文を唱えた。



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実験体

【???】〔???〕

 

「これより儀式を始める!!」

長老に呼ばれた私は村のしきたりに従い、一枚の布で体を隠し、大きな水溜まりの近くに行った。

横には私の相手となる男がいる。

 

「銀、佐・・・準備は良いか?」

 

「「はい!!」」

銀とは私の名前だ。

村のしきたりとは20を超えた女性を婚約者と共に大いなる海に返す儀式だ。

私達は小さな丸太の船に乗り、水溜まりに入っていった。

 

〔???〕

2日が経った。

佐は私を抱きしめて離さない。

私は元々この男が好きではなかったが、親に薦められたので仕方なく結ばれた。

なので私はこの儀式で死ぬだろうが、心配しているのは4つ下の妹だ。

あと4年後に同じ目に合うのかと思うと悲しくなる。

私はイラつき、死ぬならこの男と一緒に死後の世界に行きたくないと思い、私は抱きついている男を振り払おうとした。

すると船が大きく揺れ、水溜まりに男は落ちそうになり、私の首をつかんできた。

私は苦しくなり、男を殴ると運良く男の喉元を引っ掻いた。

男から血が出る。

私は安心した瞬間に気を緩めると、男は最後の力で私の頭を殴った。

 

メシ

私は視界が歪み、意識を失った。

 

【拠点】〔儀式終了後〕

 

「終わったのじゃ・・・。」

時間ギリギリだが儀式は成功し、肉の塊だったものは美しい女性に変わった。

 

「裸でいるのも可愛そうじゃ。・・・予備の服で大きめの服があったかのー?」

私は持ってきた衣服の中から大きさの合うのを見つけると彼女に近づこうとしたそのとき

 

パチ

「・・・!?」

ガバ

彼女は起き上がった。

彼女はキョロキョロと辺りを見渡すと私に聞いてきた。

 

「あのここは!?」

彼女は知らない言葉を自分が話していることに驚いたらしい。

さらにそれを理解している自分がいることにも・・・。

 

「あなたは慣れるまで喋らないで良いのじゃ。・・・ここは・・・北海道と言っておくかの。その真ん中辺りじゃ。」

 

「・・・?」

 

「まぁそれはどうでもよい。体は動かせるか?私の手を握ってみるのじゃ。」

私は彼女の手を持ち、握るように言うと、しっかり握力を感じた。

 

「・・・68キロじゃな。・・・服はこれを着なさい。裸だと見事なたわわが隠せんぞ。」

そう言うと自分の体の変化に気がついたようだ。

 

「・・・お主の死体を蘇らせたのじゃ。その過程で体をいじらせてもらった。」

彼女は神を見るような目になり、ベットから起き上がると頭を地面につけ、ひざまづいた。

 

「良い、私の実験の一環じゃ。頭を下げるな。・・・お主の名前を喋れたら教えてくれないか?」

 

「・・・銀。」

 

「銀か・・・これからは水銀燈と名乗るのじゃ。お主は水辺で拾われたのと、新たな命を燈したからじゃ。」

 



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水銀燈

「・・・水銀燈。ありがとうございます。」

 

「敬語にならなくて良い。砕けた感じてな。・・・おっと私の名前を教えなくてはな。・・・宮古芳香じゃ。種族はキョンシー、水銀燈と同じじゃ。」

 

「種族?敬語?」

 

「・・・日常語以外はきついか。・・・どれ、色々教えるから座りなさい。」

 

「はい。お母さま。」

 

「ん?」

 

「私を産み直したからお母さま・・・ですよね?」

 

「・・・まぁよかろう。」

私は水銀燈に基本的なことを教えていったのじゃ。

まず教えたのが、私達は死体であることだ。

水銀燈は困った顔をし、手を見ながら握ったり、顔をつねったりして生きていることを私に伝えようとしてきたが

 

「・・・これをどう思うか?」

私は水銀燈の背中に包丁を刺した。

 

「なにかしましたか?」

 

「腹の辺りをよく見るのじゃ。」

水銀燈は不思議そうに腹の辺りを見ると腹から包丁が貫通していることを理解した。

 

「・・・痛くないじゃろ。体が馴染んでくれば痛みも自分の意思で感じることができるようになるのじゃがな。・・・顔色が真っ青から真っ白になっとるぞ。肌の色も青くなってるのも死んでる証じゃな。」

私は包丁を抜くと、水銀燈の腹にあった刺し傷がみるみる回復していった。

 

「ほう・・・私が蓬莱の医者から飲んだ肉体回復薬は血を少し分け与えただけでも効果があるのじゃな。」

 

「あ、あ。」

 

「ほれ、しっかりするのじゃ。話を続けるぞ。まず水銀燈が知らない言葉を理解しているのは私が頭の中に札を組み込んだことが原因じゃ。これは日本語というのじゃ。」

 

「あ、あ。」

 

「次にここでの生活についてじゃ。明日になったら水銀燈の家を建てる。それまではあの布団で寝るのじゃ。・・・ダメじゃなこれ以上は。」

 

「・・・。」

バタ

 

「よっこいしょっと。」

私は気絶した水銀燈を持ち上げて布団に寝かせるのだった。

 

「水銀燈に私の運命が左右されるのじゃ。頑張ってくれ。」

私は水銀燈の家を建てるために予定地をシャベルで堀始めるのだった。

 

〔翌日〕

 

「ん・・・ん?」

 

「おきたか?」

 

「あ、お母さま・・・。」

 

「慣れないと思うがゆっくりと慣れていってくれ。・・・さて、ここでの生活のことを教えるからついてくるのじゃ。」

 

「はい!!」

その後玄関前に吊るされた鹿を見て驚く水銀燈だった。

 

〔夕方〕

水銀燈の家が完成し、少し明るかったので水銀燈から前に住んでいた集落について教えてもらった。

水銀燈によると、集落の規模は350名くらいで約1年に1回豊作と天災防止に20歳を超えた男女1組を水に流す儀式があるようだ。

今回は水銀燈が選ばれ、流されたらしい。

生活は狩りと豆、ひえ、栗、ドングリを食べていたらしい。

 

(半分縄文時代が抜け出せておらんから縄文もしくは弥生かのー。)

翌日から生活で必要なことをマンツーマンで水銀燈教えるのだった。



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生活

〔水銀燈が少し生活に慣れた頃〕

日差しが高くなり、気候もだんだんと暑くなった頃、水銀燈は私に質問してきた。

 

「お母さまの腕と足は何で変な棒をつけているの?」

 

「これ?私はこれがないと上手く歩けないのじゃ。」

 

「ふーん。お母さま、神様ってどんな人?」

 

「いきなり話題を変えるな・・・そうじゃな。」

ゴソゴソと小物入れをあさると、私はある写真を取り出した。

 

「これが神様じゃ。」 

 

「綺麗ね・・・。」

 

「会いたいか?」

 

「え?会えるの?」

 

「何百年かかるかかわからないけど・・・本人を見せるのじゃ。」

 

「・・・お母さまワタシ頑張るわ!!」

 

「じゃあ田んぼを作るから手伝って欲しいのじゃ!!」

 

「はーい!!」

来年にむけて田んぼ作りを始めるのだった。

 

【草原】〔数ヶ月後〕

水銀燈と子牛を連れて散歩していると

 

「お?ヒエじゃ。」

ヒエがはえているのを見つけた。

 

「お母さま、持ち帰りますか?」

 

「取れるだけとって来年に植えるのじゃ。」

 

「はーい!!」

私達はこのような感じで食用の育てられる植物はどんどん取っていった。

ヒエの他にはソバ、菜種、自然薯、アワ、大豆、ゴマなども発見し、保管していた。

 

【畑】〔数日後〕

 

「・・・凄い。」

水銀燈が麦とジャガイモの収穫量に驚いていた。

 

「・・・ジャガイモは約250キロ、麦は約150キロ・・・来年に期待じゃな。・・・歴オタから石臼を貰っていたが、使うときが来るとはな。水銀燈、1号・・・製粉にするから手伝って欲しいのじゃ。」

水銀燈と1号と呼ばれたロボットは私の手本を見ながら麦を小麦粉を石臼で粉にし、ふるいで皮を取り除くのだった。

 

〔数日後〕

製粉が全て終わると、収穫前に建てておいた高床式倉庫3棟に全て押し込むと、次に干していた麦ワラを束ね、家の屋根にしていった。

約3日かけ私と水銀燈の家の屋根を藁で覆ったとき・・・雪が降り始めた。

 

「牛の体調に気をつけながら冬を乗り越えないといけないのじゃ・・・。」

蒸かしたジャガイモを食べながら呟いた芳香だった。

 

〔冬〕

藁でござや、雪靴を作りながら、近くで大量に取れたよくわからない豆をもやし栽培して生活していた。

ただ、積もった雪もそのままだともったいないため、牛小屋の近くに地下倉庫を作り、雪を貯めた。

 

「しかし、牛を飼っていて正解じゃな。」

というのも牛の糞を回収し、暇な夜の時間帯に牛糞ケーキを私と水銀燈は作っていたからだ。

1匹しかいないのでそこまで量は多くないものの、薪の量を抑える結果になった。

 

「しかし作るときに匂いがきつかったのー。」

自分の青紫色の手を見てそう呟くのだった。



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生活2

〔数週間後〕

 

「最近肉を食っとらんのー。」

 

「ふえ?」

水銀燈と食事をしているときに私は呟いた。

ちなみに水銀燈は口一杯にもやしとジャガイモの炒め物を食べていたため、変な声を出した。

 

ゴクン

「雪でロボット達を狩りに行かせてないからでしょ。お母さま。」

 

「そうなのじゃ。・・・じゃがふと思っての。2日に1匹ペースで狩っていたら周辺から鹿がいなくなってしまう。」

 

「どうするの?私はあのお肉好きよ。」

 

「飼育したいのじゃが・・・エサがそこまで確保できるか怪しくての。」

 

「エサ?牛みたいに放して飼ったら?」

 

「鹿は野生だからどこに行くかわからん。・・・エサ、エサ・・・しかたない。あれを買うか。」

 

「買う?買うってなに?」

 

「水銀燈には教えてなかったな。水銀燈はジャガイモをいっぱい持ってます。隣にいる人は水銀燈の大好きな鹿の肉をたくさん持っています。水銀燈は鹿の肉が欲しいです。どうするか?」

 

「持ってるジャガイモを渡して交換してもらうわ。」

 

「しかし鹿の肉を持っている人はジャガイモではなくもやしが欲しかった。」

 

「諦めるしかないじゃない!!」

 

「そこで登場するのが金じゃ。」

 

「かね?」

 

「ジャガイモと鹿の肉を交換するために必要になるのじゃ。・・・まぁ現物がないから上手く説明できないが・・・時期が来たら教えるのじゃ。」

 

「はーい。」

 

「さて、水銀燈こっちに来るのじゃ。」

 

「ん?」

 

ピ

「うわ!?まぶしい!!」

 

「N89632、クローバー、てんさい、ニンジン、大根、寒冷耐性薩摩芋、種芋及び種1袋・・・口座xxxのyyy番。」

 

『ご注文承りました。』

 

ピ

 

「お母さまこれは!?」

 

「さっき言った物を買う行為じゃ。私がここで生活する前に神界で働く・・・いや、金という対価を今払ったのじゃ。」

 

「へーって!!この光る箱はなに?」

 

「3Dテレビ電話か?ん・・・神のいる世界の物と言えば良いかの。」

 

「神の・・・。」

 

「こら。迂闊に触るな。変に弄れば私達は魂ごと消されるぞ。」

 

「ひ!?」

 

「これを使うのは緊急時と神界でなにかおきた時だけじゃ。」

 

「今回は緊急時なの?」

 

「いや、水銀燈へのプレゼント・・・贈り物じゃ。」

 

「贈り物?」

 

「私の子になってくれたお礼じゃ。親は子に頑張ったらご褒美を与えるものじゃ。だから鹿の肉が食べられるようにするのじゃ。」

 

「ご褒美・・・ありがとうお母さま。」

 

「うむ。さて、来年は忙しくなるぞ。頑張って美味しいものをたくさん食べ、よい生活をするぞ!!」

 

「はい!!」

翌日通販で頼んだ物が届いたのだった。




次のドールはだーれだ?
答えは数時間後


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〔翌日〕

 

「お母さま箱が家の前にあります!!」

 

「お、届いたのじゃ。」

 

「中は・・・いも?種?」

 

「春になったら植えるから部屋の中に入れといてくれるか?」

 

「はーい。」

 

(借金にはなってないが・・・そろそろ残金が少ないのじゃ。・・・なにかないか・・・ないか。)

 

〔1ヶ月後〕

春になり暖かくなってきた頃、私達はクローバーを草原にまき、種を芽吹かせるようにした。

 

「アワや、ヒエの苗はどうなってる?」

 

「だいぶ成長しました。お母さま、今年はお米が食べられるって本当?」

 

「ん?食べたことがあったのか?」

 

「はい。2回食べましたがヒエやアワより美味しかったわ。」

 

「そうか。たくさん食べれるように溶け残った雪を川に捨てて畑と田を広げないとな。」

 

「はい!!」

着実に農地を拡張する芳香だった。

 

〔さらに1ヶ月半後〕

田植え、種まき、苗を畑に移動と忙しい時期となり、いつもは狩りに出しているロボット2体をフル稼働させ、手伝わせたり、牛が成長し、繁殖が可能になったので私は人工受精をおこなった。

この数日後から牛の動きが少し落ち着いたので受精したと考えるのだった。

 

〔2週間後〕

 

「うむ。ちゃんといるのじゃ!!」

牛が妊娠したことを確認し、私と水銀燈は喜んだが、水銀燈はなぜ牛でそんなに喜ぶのか少しわかっていないようだった。

 

なぜかというと

 

「お母さま、鹿もこのように繁殖するのですか?」

と聞いてきたからだった。

 

(鹿の肉が好きすぎじゃろ・・・。)

そう思う芳香だった。

また、この時期は水銀燈が来て1年目が経つのでロボットを儀式予定日の1週間前には白神岬に向かわせた。

すると血が垂れた袋を持ったロボットが戻ってきた。

 

「お疲れ様なのじゃ。少しクールダウンしたら畑の草むしりを頼むのじゃ。」

 

コク

ロボットはうなずくと日陰に歩いていった。

 

「さて、水銀燈は・・・。」

 

「ここにいますよお母さま。」

 

「・・・じゃあ開くよ。」

袋の中にあったのはバラバラになった肉片とかろうじて女性とわかる顔を何かに抉られた死体だった。

 

「ウェェェェ・・・」

私の後ろにいる水銀燈が酸っぱい匂いと今朝食べた狐の肉のハンバーグが地面に落ちたように感じた。

 

「水銀燈は自分の吐いた物を埋めといてね。私はこれを使って家族を作るから。」

 

「・・・最後まで・・・見ます。」

 

「よく言った。始めるのじゃ。」

私は家の中に袋を家に運ぶと儀式を始めた。

 

【家】

肉片だった物を女性の破損部分にくっつけ、首を斬り飛ばし、くっつけた。

 

「・・・はい。完了じゃ。」

呪文を唱え終わるとほとんど元の肉体がわからかったがうねうねと肉体が綺麗な形になり、なぜかお腹が膨らんだ女性になった。

 

「・・・う、・・・?」

 

「起きた?」

 

「は!?ここはどこかしら・・・赤ちゃんは!?」

自身の体の変化に気がついたのか青紫色のお腹を擦るとそのまま倒れてしまった。

 

「水銀燈、布団に彼女を・・・水銀燈!!」

 

「は、はい!!」

水銀燈は驚いて腰を抜かしていた。



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次女

〔15分後〕

先ほど生き返らせ・・・いや、キョンシーにした彼女は15分後に起き上がると真っ先にお腹を確認した。

一時的に青紫色に戻っていた顔は真っ白になり、手は震えていた。

 

「なぜ意識があるのかしら。・・・いや、なぜ知らない言葉を私は意識し、話しているのかしら。・・・カナの子を守らないと・・・。」

私と水銀燈は彼女から見えない位置でじっと観察していた。

 

「カナの子?水銀燈、彼女は誰かわかるか?」

 

「たぶん・・・糸だと思うわ。15の歳で村長の3番目の息子と結ばれたわ。口癖がカナと言うの。」

 

「旦那さんとの関係はどうなのじゃ?」

 

「村一番のおしどり夫婦だったわたしか・・・。」

 

「・・・。」

私はなぜ彼女が私の子と言ったのが気になった。

 

(そんなに愛し合っているのなら私達の子もしくは旦那の安否を気にするはず・・・ん?・・・は!?)

私は思い出した。

キョンシーになる弊害で自信は最愛の者を忘れてしまうと邪仙に操られていた時に聞いたのを・・・。

 

「水銀燈は誰か好きな人・・・大切な人はいた?」

 

「妹が一番大切よ。」

 

「わかったのじゃ。少し彼女と接触してくる。」

私は物陰から姿を表すと彼女はお腹を必死に両手で守ろうとしている。

 

「お願いかしら。カナはいいからこの子だけは助けてほしいかしら!!」

その姿は母親だった。

私が一生望んでもなれないあこがれだった。

 

「・・・安心するのじゃ。お主らに危害は加えない。」

 

「ほ、本当かしら!!」

 

「水銀燈出てきなさい。」

 

「はーい。お母さま。」

水銀燈が奥から出てくると水銀燈は糸という少女に

 

「久しぶりね糸。」

 

「久しぶり?カナはあなたのことを知らないのかしら?」

 

「・・・銀と言えばわかるかな?」

 

「・・・銀、銀!!」

糸は泣き出した。

 

「怖かったのかしら!!こぉわぁかぁった!!」

彼女はお腹から手を離し、水銀燈に抱きついた。

 

「どうしたの?あなたらしくないじゃない。」

 

「・・・地が割れるような揺れがあったのかしら。みんなの性格が変わったのかしら!!」

 

「地が割れる!?私がいた頃は平和だったじゃない!!」

私は第三者として糸と呼ばれた彼女の話を纏めると

 

《・春に巨大地震発生

私と水銀燈はその日牛が妊娠した喜びで神界から持ってきた缶ビールを飲んでいてほろ酔いで気づかず

・津波の発生

私と水銀燈は内陸のため影響なし

・糸の村はこれらを神の怒りとし、怒りが納めるため季節が変わるごとに娘を捧げることとなった

・本来なら糸は子供を授かっていたので外されるのだが緊急時として子供ごと捧げられた》

 

「あなたの旦那はどうしたの!!彼なら村長に頼んで止めるでしょ!!」

 

「だ、旦那かしら?カナにはそんな人いたかしら?」

 

「え?」

 

「のう、お主は銀・・・水銀燈の大切な人を妹以外に知ってる?」

 

「おじいさんかしら。銀はよくおじいさんから鹿を狩った話を聞くのが好きかしら。」

 

「え?私は妹の真が一番大切よ?」

 

「え?銀どうしたのかしら?いつもはおじいさんと妹のどちらか悩んでたのかしら!!」

 

「ストップじゃ!!落ち着け2人とも。」

一旦彼女達を落ち着けるのだった。



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家族会議と金糸雀

私は水銀燈と糸を落ち着かせ、椅子に座らせた。

糸は椅子に慣れてないためクッションを置き、彼女達にこの現象を教えた。

 

「カナ「私は大切な人を忘れたの」かしら。」

 

「今の会話を聞いているとそうじゃ。」

 

「そ、そんな・・・。」

 

「お母さまなんとかならないの?」

 

「・・・すまないのじゃ。」

 

「思い出を・・・彼との思い出を返してほしいのかしら!!」

 

「糸やめなさい!!」

 

「銀は止めないでほしいのかしら!!」

 

「・・・お主らは良いな。」

 

「「!?」」

私の雰囲気の変化に気がついた。

 

「・・・私は知らないのじゃ。その大切な人が・・・。」

 

「お母さま・・・。」

 

「・・・お主らは知り合いと入れるから良いのじゃ。・・・この術は本来なら奴隷を作る術じゃぞ。」

 

「「え?」」

 

「カナは自由に動けるのかしら?」

 

「どういうこと?」

 

「私は1000年以上も人格を封印され、知り合いもおらず、肉体は死んでいるのに酷使された。お主らが自由に動けるのは私が奴隷・・・体の自由を奪う権利を放棄しているからじゃ。」

 

「「・・・。」」

 

「糸じゃったな。お主は私と水銀燈より恵まれておる。子供を産むことができるのじゃ。中が死んでいても私が復活させてやるからじゃ。」

 

「・・・すまないかしら。」

 

「大切な記憶を失った者同士仲良くしよう。それが私達にできることじゃ。・・・よいか?」

 

「お母さま・・・。」

 

「カナはいいのかしら!!生き返らせてもらっただけでもありがたいと思うのかしら。」

 

「糸・・・お主は家族として迎えたい。今日から金糸雀と名付ける。金は豊かを表す。雀は声が高いからじゃ。」

 

「金糸雀・・・いい名前かしら。・・・カナはあなたの名前を知らないのかしら?」

 

「宮古芳香じゃ。」

 

「カナは芳香と呼ぶのかしら。」

 

「家族にようこそ金糸雀。」

 

「お世話になるのかしら芳香!!」

二女である金糸雀が誕生した。

 

その後・・・

 

〔夕方〕

夕食を金糸雀に出すと驚いていた。

 

「・・・美味しい、美味しいのかしら!!」

 

「良かったわ。私の鹿肉のハンバーグとお母さまのパンを喜んでもらえて。」

 

「銀・・・いや、水銀燈、芳香ありがとう!!」

美味しくて泣きながら完食する芳香だった。

その後字を読めるようになった金糸雀は私が持ってきた料理本を農作業の合間に読むようになり、半年後には私より金糸雀の料理が美味しく、材料も少なく使用することからコックさん、カナ料理長と台所で呼ばれるようになるのだがこの時はまだ知らない3人だった・・・。

 



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〔2週間後〕

20畝つくった田に水をはり、均等に印をつけた縄を田の底に沈め、どこに植えるか明確にすると、事前に種米を苗にし、ロボット2体と私で田植えを始めた。

水銀燈と金糸雀はやり方がわからなかったので今回は見てもらい、別の場所をやってもらうつもりだ。

キョンシーとロボットなので疲れることはないので休憩なしで1畝を20分のペースで終わらせた。

 

「ふー。足腰にくることはないのじゃが・・・何となく疲れたように感じるのじゃ。」

 

「お疲れ様お母さま・・・綺麗ね。」

 

「苗が綺麗に植えられてるのかしら。何でバラバラに植えてはいけないのかしら?」

 

「・・・休憩がてら説明するのじゃ。」

私は地面に田の絵を書きながら説明を始めた。

 

「綺麗に苗を植えるのは苗に日が当たりやすくしたり、雑草が取りやすくできるのじゃが・・・これは後々わかる。簡単にわかるのは私達は呼吸・・・息を吸ったり吐いたりするじゃろ。苗・・・いや、そこら辺にある草でも人と同じように呼吸をしているのじゃ。洞窟の中で毎日生活したら息苦しくて生活もきついじゃろ?」

そう言うと一部納得したようだが植物が呼吸するのは信じてないようなので、私はビニール袋を家から持ってきて

 

「水銀燈か金糸雀息をおもいっきり吐いてみて。」

水銀燈が袋を持ち、中に息を吹き込んだ。

透けていたビニール袋が息で曇った。

 

「じゃあ・・・これでいいかの。」

私は近くにはえていた他より少し背が高い雑草にビニール袋を被せ、輪ゴムで口を縛った。

 

「少し時間がかかるから他の田に苗を植えるのじゃ。」

私達は田植えを再開した。

 

〔1時間後〕

2人が慣れてないので3畝しかできなかったが、一旦休憩にした。

2人はビニール袋を被せた植物が気になっていたのか、水銀燈は走り、金糸雀はお腹に赤ちゃんがいるので急ぎ足で先ほどの場所に戻った。

 

「曇ってるわ。」

 

「本当かしら。」

 

「これでわかったか?」

 

「他にもあるの?」

 

「まぁ色々良いことがあると言っておくのじゃ。詳しく知りたかったら本に書いてあるからそれを読んでわからないところがあったら私に質問してほしいのじゃ。」

 

「「わかったわ」かしら。」

 

「じゃあ続きをするのじゃ!!」

約5時間ほど続け、田植えは終了した。

 

【夜】

さっそく水銀燈と金糸雀は本を読みだしたが畝、反、町、石の単位がわからないようだ。

 

「・・・じゃあ教えるぞ。畝は1つの田んぼの大きさじゃ。私と水銀燈でつくったがだいたい均等な四角形じゃろ。あれを畝と言うのじゃ。これを10畝集めて1反と呼ぶんじゃ。1反は1石とも呼ばれ、普通なら1石は私達(本来なら成人男性じゃ)が1年間食べられる量を表すのじゃが・・・先ほどの綺麗に植える方法なら普通の2倍、さらに米が神界の特殊米じゃ。結果7~9倍の収穫量になる。だから間をとり私達は20畝を持っとるから何事も無ければ16石の収穫が可能じゃ。色々言ったがわかったか?」

 

「「はい。」」

 

「ならそろそろ寝るのじゃ。油が心許ない。」



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農業と前書きに補足

時代が進むまで畝、反を畑の基本面積とし、石と俵を収穫量とします。

ジャガイモ10畝→1反
小麦1石→180L→180㎏
大豆1俵→50㎏

1俵は50㎏で統一です。
ではゆっくりしていってね!!


〔2週間後〕

回転式田草取り機で田の雑草を抜きながら根に空気が行き渡るようにしている頃、ジャガイモ、小麦等を一気に植えていった。

ここで芳香が住んでいる集落の中身を説明しよう。

田は20畝、畑はジャガイモが5畝、小麦5畝、大豆2畝、他1畝という感じだった。

建物は竪穴式住居が6軒(4軒が倉庫)、高床式倉庫5棟、牛小屋となっていた。

今年も引き続き農業は種、苗の量を増やすことが目標となった。

 

「うむ、順調じゃな。牛の出産があと8ヶ月後を予定し、金糸雀はそろそろじゃな。・・・金糸雀の子は死産だと思うが・・・産まれた子供がキョンシーになるのか、キョンシーになったとして成長するのか、母体である金糸雀の変化・・・邪仙より質の悪い実験をしてるな私・・・しかし今金になるのがこれしかないとはな。」

人がいない・・・しかも文化的な物を神界に売れない私はキョンシーの生体レポートが一番の収入源だった。

 

「日記みたいに書いた箇条書きが・・・10万グローブンになるとはな・・・。」

世の中物好きもいるものだと思う芳香だったが、このレポートが後に復職した四季映姫が莫大な量の悪霊を管理するために魂の抜けた死体に悪霊をキョンシーとして労働させ償いをさせる方法が確立するきっかけになる。

(四季映姫はこれで昇進し、異世界組以外の幻想郷の住民で一番の金持ちと呼ばれるようになる。)

 

「あとは・・・土地の栄養か・・・。」

私達と牛の排出物及び生ゴミ、落ち葉を発酵させて肥料にしているが、拡大し続ける農地に量が足りず、農地の広さはこれで当分頭打ちとなった。

 

〔数日後〕

熊をシャベルで殺すのにもなれてきた頃、やっと鹿を雄1匹、雌4匹捕らえることに成功し、牛とは別に3重の柵を設けて広々した空間でストレスを感じないような環境をつくった。

夜に鹿を食べようと狼や熊が襲ってくるがロボットがそれを撃退し、毛皮を服や敷き物にしたりして寒さで体の一部が凍ることがないようにした。

 

(前の冬は怖かったのじゃ・・・起きたら横で水銀燈が凍りついて急いで解凍した事件もあったからの・・・。これから少し暑くなる時期になるが・・・冬に備えておけば安心じゃ。)

そんなこんなで充実した日々をおくっていると

 

「痛い痛い!!裂ける!!」

金糸雀の陣痛が始まった。

 

〔12時間後〕

色々あった・・・金糸雀が痛みをこらえるために鉄のパイプを握りしめていたが、最終的には鉄板になっていたという珍事もあったが子供を産んだ。

 

「・・・双子か。」

男女を子供で息をしていないためダメだと思ったが、数時間後に泣き出した。

 

「よしよし。カナの子かしら。」

金糸雀は満面の笑みだった。




これぐららいならR15タグですよね。運営に怒られないよね・・・なんか怖くなってきた。


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死亡

〔翌朝〕

夜に子供の名前をどうするか話しているうちに夜が明けてしまい、私達は睡魔に耐えきれずに眠ってしまった。

起きると金糸雀が男の子を抱いて泣いていた。

 

「金糸雀どうしたのじゃ!?」

 

「・・・。」

私は子供のことを見ると腕から血が流れていた。

そして・・・体の右側が干からびていた。

 

「・・・名前も決めてないのかしら!!カナより早く死ぬなんて・・・芳香!!芳香ならこの子を生き返らせることができるのかしら!!」

金糸雀の母親として子供を守ろうとする目に私は一瞬できると言おうとしたが、子供にもう一度目線をずらすと・・・体が灰に変わっているのがわかった。

 

(無理じゃな。・・・この子は消えてしまう。)

 

「この子はキョンシーとして復活させるのは無理じゃ。・・・しかし、彼の体を双子の女の子の体の補強として産まれてきた証を残した方が男の子も喜ぶのじゃ。」

 

「ほ・・・本当かしら!!」

 

「早くするのじゃ・・・その子が灰に変わる前に・・・灰になった部分を切り離すのじゃ。」

 

「・・・カナがやるかしら。」

ガクガク

金糸雀は震えていた。

涙を流しながら・・・。

私も悲しくなるが・・・金糸雀の震えた手を両手で握り、男の子の灰に変わった部分を切り落とした。

男の子は体の半分を失い絶命した・・・。

 

「金糸雀・・・よくやったのじゃ。」

金糸雀は今にも倒れそうだった。

 

「・・・女の子を強くして・・・。」

バタ

 

「後は任せるのじゃ。」

私は倒れた金糸雀をまだ寝ている水銀燈の隣に運び、横にした。

運び終わると私は生き残った女の子と半分になった男の子を抱えトラックの中に連れていった。

 

【トラックの中】

 

(・・・。)

私は男の子に八意の医者からもらった液体を体に投与するとスライムのようにネバついた青白い液体に男の子の体が変化した。

私はその男の子を女の子に飲ませた。

飲ませるだけではなくならないので、注射器に入れて何回も身体中に投与した。

 

「保護液か・・・。」

量が多すぎたので余った液体を冷凍保存し、私は八意の医者に貰った液体を眺めた。

 

 

回想

 

「なんじゃこれは?」

 

「・・・うちの姫様が体を液体にしてある人物を殺したいんだと。」

 

「なぜ私に渡すのじゃ?」

 

「何かに使うことがあるかもしれないでしょ。これで液体にされた相手は万能薬になるのよ。」

 

「これを投与するのか?」

 

「成長促進、破損部修正、肉体の強化、何百種類の免疫の獲得・・・まぁ実験用だから数はないけどね。5本渡しておくわ。」

 

「これ違犯薬剤じゃ・・・。」

 

「使わなければバレないバレない。」

後に八意はヤマメから直接注意されたそうだが、それを知ったのは私が神界に帰る数百年後のこと。



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次への一歩

〔数分後〕

女の子の体についた注射の痕が綺麗に消えたのを確認した私はトラックから外に女の子を抱えて家に戻った。

すると水銀燈が金糸雀を慰めていた。

 

「終わったのじゃ。この子はこれで大丈夫じゃ。」

 

「ありがとう芳香・・・。」

 

「お母さま・・・この子は生きているのですか?私達みたいに死体が動いているのですか?」

 

「・・・色々調べたら私達と同じキョンシーじゃな。・・・本来なら死産じゃが金糸雀がキョンシーだから何らかの影響でキョンシーになったと考えておる。」

 

「金糸雀が言っていた男の子が灰に変わったのはなぜなの?」

 

「おそらく拒絶反応・・・もしくは何かの過程でキョンシーになり損なったとしか・・・言えないのじゃ。」

 

「・・・暗い話はこれぐらいにしてほしいのかしら。カナは残ったこの子の名前を早く決めたいのかしら。」

 

「そうね。金糸雀は何かあるの?」

 

「苺みたいに頬っぺたが赤いから苺を入れたいかしら。」

 

「・・・雛苺はどうじゃ?雛は小さな子を表し、さらに雛というなんにでもなることができるという意味も込めて・・・どうじゃ?」

 

「雛苺・・・あなたは雛苺かしら。」

金糸雀は眠っている雛苺の頭を撫でるのだった。

 

〔数日後〕

金糸雀は雛苺の育児で少しだけ農作業を離脱したため、私と水銀燈に負担がかかった。

 

「ロボットは金糸雀が言ってたことを考えてまた岬に行かしておるから・・・きついのじゃ。」

ここらであることが問題になった。

塩の不足だ。

 

「うむ・・・ダメじゃ。思いつかぬ。」

塩の製法は知っているが労働力的な問題で無理と判断し、仕方なく残ったもう1体のロボットに海で魚を釣り、干物にしてくるように命令し、持ってきたまま使っていなかった自転車のタイヤを抜き取り、リアカーをつくって中に入れ物になりそうなのを片っ端から詰めこんだ。

 

「頼んだのじゃ。」

これにより負担は激増し、夜な夜などう負担を減らすか考える日々が続いた。

 

〔夏〕

魚の干物により塩の消費が抑えられるようになった頃、ロボットがまた死体を背負って帰ってきた。

今回は男がストレス性胃腸炎の悪化により死亡、女は心筋梗塞で亡くなったらしく目だった外傷はなかった。

 

水銀燈と金糸雀に誰か聞いたところ翠という少女で病弱だったらしい。

男は狩人だったが罠を仕掛けるタイプだった。

 

「労働力じゃ!!」

そんなこと関係ないと労働力問題であまり寝てない私は深夜のテンションで儀式を開始。

呪文を2回も噛むミスをしたものの無事成功した。



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翠星石

「ん・・・ここはどこですぅ?」

 

(おや?)

 

「ここはお主らが住んでいた場所からさらに北の大地じゃ。」

 

「あーあー。てすてす。・・・日本語です。・・・いや、ドイツ語も少し混じってるですぅ。」

 

「ん?お主・・・何もんじゃ?」

翠と呼ばれた女は周りを見渡し

 

「・・・転生者ですか?」

 

「ん?ちょっとまて、まず服を着て色々教えて欲しいのじゃ。」

 

「・・・え?」

裸だったことと、肌の色が青紫なことに気づき、フリーズしてしまった。

 

〔数分後〕

 

「見苦しい姿をさらしたですぅ。」

落ち着いた翠は私が飲もうとしていた麦茶を横取りして飲みほした。

少し落ち込む。

 

「おいしいですぅ。・・・で翠星石は未来人ですぅ!!」

 

「ん?翠が名前じゃないのか?」

 

「翠星石じゃ長いからみんなから翠と呼ばれてたですぅ。・・・で、私はなんでこんな肌になったですぅ?」

 

「肌だけじゃなくてお主は死体じゃぞ。キョンシーじゃ。」

 

「ktkr、翠星石は死なない肉体を手にいれた、ですぅ!!」

 

「・・・お主頭大丈夫か?」

 

「よく弟に言われなれてるですぅ!!」

 

「・・・で、未来人というのは?」

 

「聞いて驚けですぅ!!2021年の学園都市の常盤台中卒、エスカレーターで常盤台高を卒業後学園都市を能力封印処置を受けて離れ、東京農大農学部を卒業したです!!その後就職使用としたら弟と一緒に爆発テロに巻き込まれたですぅ!!」

 

「・・・常盤台?」

私はその後も経歴を話している翠星石を水銀燈と金糸雀に任せ、歴史書を引っ張り出した。

 

「・・・ククク・・・ハハハ!!ちゃんと異世界だったのじゃな!!」

 

「急に話をぶったぎるなですぅ!!」

 

「すまんすまん。・・・で、翠星石は死なない体を手にいれてそんなに喜ぶのじゃ?」

 

「私は中高と何度も死にかけ、大卒で実際に死に、神様に転生させて貰った先は元から心臓が悪いというおまけ付き・・・死なないとわかっていれば色々できるですぅ!!」

 

「・・・あまり良いものでもないぞ。」

 

「何かいったですか?」

 

「いや、なにも。」

 

「糸と銀もキョンシーになってたのは驚いたですがここを楽園にするですぅ!!」

 

「ほう・・・農大出身の実力を見せてもらうのじゃ!!」

 

「私は外に出てここ周辺を見てくるですぅ!!日が暮れる前には帰るですぅ!!」

彼女は家を凄い勢いで飛び出していった。

 

「お母さま・・・翠に何が?」

 

「生まれる前の記憶がある・・・それだけじゃ。」

 

「金糸雀・・・翠っておとなしくて外にあまり出ない子じゃなかった?」

 

「そうかしら!!カナも驚いているかしら!!」

 

「な、なんですぅ!!」

 

「・・・騒がしいのが来たのじゃ。」

翠星石が仲間になった。



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大興奮翠星石

〔翌日〕

 

「服の質を向上させるですぅ!!」

朝一番にこれである。

 

「昨日近くを色々とみたらまだまだ使える植物があったですぅ!!それがこれですぅ!!」

翠星石は長い植物を手に持っていた。

 

「翠星石・・・それはなんなのかしら?」

 

「お母さま翠星石の持ってるのはなんなの?」

 

「私にもわからないことがあるのじゃ。」

 

「ふふふ、青苧ですぅ!!」

 

「青苧・・・カラムシか!!」

 

「そうですぅ!!ここから少し歩いた所に群生地があったですぅ!!私が管理するですぅ。」

 

「・・・まぁ任せるのじゃ。ただこっちの畑も手伝って欲しいのじゃ。」

 

「もちろんやるですぅ。20年ぶりにガッツリ動けるから張り切ってるだかけですぅ。」

 

「翠星石無理はしないでね。」

 

「カナからも水銀燈と同じ意見かしら。」

 

「えっと水銀燈、金糸雀・・・大丈夫ですぅ!!芳香から貰った命は大切に・・・自分の夢に使うですぅ!!いざ農業!!待ってるですぅ!!私が緑の革命を起こすですぅ!!」

 

(・・・翠星石の話だと常盤台って所はお嬢様学校だったらしいのじゃが・・・本当か?)

お嬢様学校出身には疑ったが、農大出身者は本当だとすぐ実力で示してくれた。

理由は・・・

 

「このジャガイモ・・・しっかり連作障害が発生しないようになってるです!!しかも土の栄養分を大量に消費することもない・・・神ジャガですぅ!!」

 

「木炭を作るのは任せるですぅ。不完全燃焼なんかさせねぇーですぅ!!」

 

「腐葉土腐葉土集めるですぅ。」

このようにその知識をフル活用して私の足りてないところを補ってくれた。

 

〔3週間後〕

 

モォー

「頑張るかしら!!」

 

「もう少しよ。頑張って!!」

ビチャ

 

「おぉ!!やったのじゃ!!」

牛が雄牛を産んだ。

これにより子牛の飲む分以外の原乳を定期的に仕入れることができるようになった。

 

「「「「いただきます。」」」」

 

「んん~!?美味しいわ!!」

 

「・・・何かの料理に使えるかしら。」

 

「濃いーですぅ。」

 

「美味しいのじゃ。」

 

この原乳が飲み物に追加されたことによりあることがうまれた。

飲み物でどれが素晴らしいかで喧嘩するようになった。

 

「麦茶ですぅ!!あの濃くすれば苦味、薄くすればさっぱり飲めるですぅ!!」

 

「牛乳よ!!暖めても冷やしても最高じゃない!!あの味わい、舌触り・・・麦茶なんて・・・ねぇ。」

 

「「・・・翠星石と水銀燈水を飲めかしら」のじゃ。」

 

「「な、なんですぅ!!」すって!!」

このように現在は水を飲め派の私と金糸雀が優勢だった。



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翠星石の弟

〔初秋〕

畑と田に大量に実った農作物を初めて見て金糸雀は驚いていた。

 

「・・・10年分の実りを今年で使ってしまったのかしら。来年は不作かしら。」

 

「・・・大丈夫じゃ!!来年はこれ以上取れるように頑張るのじゃ!!」

 

「そうよ。私も去年は金糸雀と同じことを言ってたわよ。」

 

「・・・そうよね。心配してもしかたないかしら!!芳香いつ収穫するのかしら?」

 

「来月には・・・収穫したいのじゃ。」

 

「・・・なら儀式の後かしら。」

 

「翠星石儀式はそろそろか?」

 

「あと5日から10日のうちにおこるですぅ。」

 

「・・・今回はロボットを2体送るか。」

 

「毎回思ったのだけど、そのロボット何で動いてるですぅ?」

 

「体内加熱発電式じゃ。」

 

「そーじゃねーですぅ!!翠星石はそのエネルギーの源を聞いてるですぅ!!」

 

「たしか・・・ミノフスキー粒子といったかのー?」

 

「なんてガンダム・・・芳香はガンオタだったですか・・・。」

 

「軍であったなガンダムとか言うモビルスーツが・・・ガンオタではないぞ。」

 

「・・・まぁエネルギー源はわからないでいいですぅ。」

 

「ミノフス・・・。」

世界観の違いで食い違うが私は神界から来たといっても信じてもらえそうにないので、説明を諦めた。

 

〔2週間後〕

薩摩芋やゴマ、粟、稗等のメインの作物以外を収穫し終えた時、ロボットが男女を抱えて来たのだ。

初めて袋詰めされた死体ではなく、衰弱していたものの生きた人間だった。

ただ、翠星石の弟には私は突っ込んだ。

 

「なんでこの時代で180近くあるのじゃ!!しかも顔が全く似てないのじゃ!!」

彼は顔に鉄製の仮面を被り、いかにもヤバイ人だとわかる男だった。

 

「邪義(ジャギ)が名前ですぅ。木偶の坊でくっそ使えないですか、力だけはあるですぅ。」

 

(よく親もこんな名前をつけたものじゃ。私だったら改名してるのじゃ。)

 

「水銀燈から見てジャギはどんな男だったのじゃ?」

 

「村で一番器用な人物だったわよ。だだ、少し前に狼に肩を噛まれてから右手が肩から上に上げれなくなってたわ。」

 

「金糸雀はどうじゃ?」

 

「病弱な姉を必死で助けてたかしら。・・・姉の翠星石がそんなことを思ってたなんて知らなかったかしら。」

 

「・・・女の方は誰じゃ?」

 

「普通の娘ね。だだ、少し背が高かった印象だわ。」

 

「言われた事を黙々とやるタイプかしら。・・・自分で考えて行動してるか怪しいことがしばしばあったかしら。」

 

「木偶の坊にはピッタリの嫁ですぅ。・・・いや、木偶の坊には過ぎた娘ですぅ。」

 

(・・・とりあえず注射を射っておくか。)

私は冷凍保存していた保護液2人に入れるのだった。




蒼星石だと思った?
残念ジャギ様です。


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収穫

〔5分後〕

 

「う・・・。」

 

「さっさと起きるですぅ!!」

ゲシゲシ

 

(((うわぁ・・・。)))

衰弱している人を蹴る翠星石に私達はドン引きしたがジャギと言われた翠星石の弟はゆっくりと目を開けた。

 

「・・・懐かしいな。幻聴か?」

 

「だ、大丈夫か?」

 

「よっと!!」

彼は衰弱しているにもかかわらず彼はベットから立ち上がった。

 

「む、無理はするな!!死んでしまうのじゃ!!」

 

「へへへ・・・一回死んだ俺には・・・こうして生きているだけで神に感謝だ・・・翠星石・・・また会えたな。」

 

「なにカッコつけてやがるですぅ!!奥さんを幸せにするって言ってこのザマですぅ!!カッコつける資格はないですぅ!!」

 

「へへへ・・・翠星石。お前の夫はどうした?」

 

「・・・夫?翠星石は結婚してねーですぅ。衰弱して頭でも逝ったですぅ?」

 

「翠星石・・・あなたもかしら。」

 

「あ・・・お母さま。」

 

「な、なんですぅ!!みんなしてそんな目で見るなですぅ!!」

 

「ジャギと言ったか。きついと思うがまだ話すことができるか?」

 

「・・・すまねぇ。無理そうだ。膝が笑い始めやがった。」

 

「・・・明日にするか。水銀燈はジャギにお粥を食べさせて欲しいのじゃ。翠星石は今日はすぐ寝てくれぬか。明日色々話すから夜に寝れないかもしれん。金糸雀は雛苺にオートミールを食べさせる時間じゃないか?」

 

「そうだったかしら!!急がないと!!」

 

「わかったわ。ジャギ待っててね。」

 

「うー。わかったですぅ。」

各自動くのだった。

 

〔翌日〕

まだ日が出てない時間に私は起き、午前7時頃までにやるべき事を全て終わらせた。

途中で水銀燈と翠星石が朝食を作り、金糸雀が雛苺の面倒で起きてきたが・・・。

 

〔午前9時頃〕

ジャギが奥さんと一緒に起きてきた。

奥さんは布団の上で私達に会釈するとそわそわしている。

 

「すまねぇこいつは俺らの言葉をあまり理解できないんだ。今日は軽い食事を取らせたらまた寝かせる。」

 

「わかったのじゃ。ほれ、お粥じゃ。」

 

「すまねぇ。ありがとな。」

約30分後に彼は私達のいる家に傘をつきながらやって来た。

 

「杖の代わりになりそうなのがこれしかなかったから使わせてもらったぜ。」

 

「別に良いのじゃ。座れるか?」

 

「あぁ。」

私、水銀燈、金糸雀、翠星石、ジャギ・・・金糸雀の太ももにはまだ首の座ってない雛苺がママ、ママと言っておとなしくしていた。

 

「さて・・・ジャギ。お主は目が悪いのか?」

 

「ん?あぁ。元からだが色がわからないんだ。世界が黒白で見える。」

 

「・・・大変じゃな。」

 

「その分遠くまで見えるし・・・まぁ不便には感じねぇな。」

 

「ちょっと待っておれ。」

私はジャギの目に保護薬を垂らした。



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収穫2

「お、おおお!?」

ジャギは色を見えるようになって驚いていた。

ジャギは自分の手を見てから私達の体を見て違和感を感じたようだ。

 

「ん?俺と・・・えーと「芳香じゃ。」芳香達の肌の色が違わないか?」

 

「違うのじゃ。・・・では話すぞ。私達はすでに死んでおる。」

 

「はぁ?死んでる?」

 

「水銀燈ナイフを。」

 

「はい。お母さま。」

 

「・・・グ!!」

私は心臓部分にナイフを刺した。

しかし私が倒れることはなく、ナイフで刺した部分も徐々に治る。

 

「・・・ゾンビ?」

 

「私達はキョンシーじゃ。で、キョンシーになると大切な記憶が消える。翠星石は夫の記憶が消えている。」

 

「そんなことねぇですぅ!!翠星石は・・・あれ?」

 

「どうやら記憶の矛盾に気がついたようじゃな。」

 

「おかしいですぅ。なぜ翠星石は今まで2食分も料理を作ったですぅ?」

 

「それが翠星石から夫の記憶が消えている理由じゃ。次に水銀燈と金糸雀はジャギ・・・お主も知っている人物じゃ。」

 

「へ?」

 

「旧名銀よ。顔や体格が変わってわからないと思うけど・・・。」

 

「旧名糸かしら。カナは口癖が直らなかったからわかるかもしれないかしら。」

 

「言われてみれば・・・どことなく・・・。」

 

「ちょっと待てですぅ!!私が変わったところは肌の色だけですぅ!?」

 

「破損部分が少なかったから元をベースにできたんじゃ。水銀燈と金糸雀は・・・ひどい死体じゃったの。・・・まぁ翠星石は力を強くしたり、片目だけいじらせてもらったがの。」

 

「そういえば・・・翠星石の目は両目赤色だったかしら。」

 

「今は左目が緑色かしら。」

 

「あ・・・え?」

 

(農業で頭いっぱいで顔なんて見てなかった・・・みたいな顔をしてるのじゃ。なんか面白いの。)

 

「・・・ということで私達はキョンシーということはわかったか?あとジャギが未来から来たことはわかっておる。どんな事をやってたか教えてくれると助かるのじゃ。」

 

「俺は牧場で働いてた。専門学校卒業してすぐだから2年間働いた。」

 

「ん?それだと歳が同じじゃないか?」

 

「これでも双子なんだぜ。」

 

「・・・なるほどのー。・・・ついでだし言っておくかの。私はここの世界出身ではない。別世界から働きに来ておる。」

 

「働くですぅ?」

 

「文化遺産の回収、独自の物を神界で転売、信仰を集める・・・じゃ。」

 

「神界?」

 

「文字どおり神がいる世界じゃ。お主達は私に協力して信仰などを集めてほしい。」

 

「なにかメリットはあるですぅ?」

 

「神界から色々な物を取り寄せたり観光として気軽に行けるようになるのじゃ。・・・まぁ目標を達成しないと無理じゃがな。」

 

「どれぐらいの信仰を集めるですぅ?」

 

「10,000,000人分の信仰を集める。・・・まぁ方法はたくさんある。地図を見せるぞ。」

私は机にロボットが作った北海道の地図を広げた。

 

「私はこの島全体を神聖化させる。そして1年間在住させれば1人の信仰を手に入れられる。また1人につき集められる信仰は10年間で1じゃ。つまりここで生まれ育てば100際まで生きてくれれば10の信仰を集めたことになる。これが土着式信仰方、もうひとつは神聖化された場所から離れた場所で現地の人が信仰してもらう方法じゃ。これは広範囲信仰方という。ただ1人の一生で1しか入らぬ。・・・まぁ信仰以外の方法の方は普通に物を売る感覚でよい。・・・高く売れる物が書かれたカタログが存在するから後で読んでくれ。・・・これぐらいかの。」

 

「大変だけどやりがいはありそうだな。・・・で、どんな宗教にするんだ?」

 

「神は神界で大統領をしているヤマメ氏として、蘇を扱うものにする・・・まぁ形は後でゆっくりと考えていくのじゃ。・・・さて、話は一回これぐらいで収穫作業を始めるのじゃ!!」

 

「カナに任せるかしら!!」

 

「私も頑張るわ。」

 




水銀燈と金糸雀が途中から黙るのは事前に説明しているからです(描写なし)


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収穫3

前々話からタイトル詐欺だな・・・
ゆっくりしていってね!!

補足
1石→10斗
1斗→18キロ


〔8時間後〕

20畝の米を収穫した結果予想より少し多い16石と7斗ほど取れた。

 

「すごいわ・・・これで毎日お米が食べられる・・・いや、おかわりもできるわ!!」

 

「・・・料理本にのっていたチャーハンも作れるかしら。」

 

「はいはい。まずは干さないといけないのじゃ。少し待つのじゃ。」

 

「・・・現代でもこれほどの収穫量はきついですぅ。なぜ・・・。」

 

「・・・現代でもここまではなかなか採れねーですぅ。なにかあるですぅ・・・。」

 

「翠星石・・・この米は神界で改造されまくった米だからだと思うよ。・・・163号が正式名称だけど・・・。」

 

「・・・絶対収穫量をさらに上げてやるですぅ!!」

翠星石がなぜかわからないがイラつき出した頃、作業を終了した。

 

〔数日後〕

体力がだいぶ回復したジャギも収穫に参加し、小麦とジャガイモを回収した。

ジャガイモは5畝で3石、小麦は5畝で2石という結果になった。

 

「高床式倉庫も増設して10棟、家の横には5斗分の芋穴が8つも・・・これで神界から持ってきた缶詰めの消費量を抑えられるのじゃ。」

 

「ねぇお母さま。これからどうやってここを拡張するの?」

 

「・・・そうじゃな山の中でキノコを栽培したいが・・・東にある池に持ってきた蓮根の苗を植えたいのじゃ。あとは年数を重ねて牛と鹿・・・できたら猪も家畜として捕まえたいのじゃ。・・・ただな、塩の問題が厄介じゃ。その問題を越えなければこれ以上人を増やすことができないのじゃ。ロボット2体じゃ塩造りはきびしい・・・。」

 

「藻塩焼きで塩を取らないのか?」

言ってきたのはジャギだ。

 

「藻塩焼きか?」

 

「藻塩焼きから塩を作ってくるぞ。そこにいるロボット貸してくれれば。」

 

「お願いしたい。ただロボットも同じ作業を何回かやれば自分でできるようになるからジャギには早く戻ってきてほしいのじゃ。」

 

「言ってくれればすぐ行くのによ・・・で海までどれぐらいかかる?」

 

「歩いて3日かの。・・・じゃが川をボートで下れば半日で行けると思うぞ。幸い木製のボートなら橋を作るときに使ったのが何隻かある。」

 

「帰りはどうするよ。」

 

「ロボット達の力なら川を遡ることができるのじゃ。」

 

「そ、そうか。なら数日後に行ってくら。」

 

「すまんの。」

 

「代わりにあいつの事を頼む。水銀燈や金糸雀、翠星石の肌の色に怖がってな。」

 

「お主みたいに怖がらないのが異常じゃ・・・まぁ何とかする。頼んだのじゃ。」

 

「おう。」

翌日には木製のボートに乗ってジャギ達は塩を作りにいってしまった。

 




芳香の家の周り地図 ※車=トラック


    川川      柵   柵
    橋       柵   柵
    川  小屋    柵柵柵
    川    
田田田田川畑畑畑 家 車車 倉倉 畑畑  池
田田田田川畑畑畑 家    倉倉 畑畑 池池
田田田田橋畑畑畑    家 倉倉 畑畑  池
田田田田川畑畑畑  井 家 倉倉 畑畑
田田田田川畑畑畑 家家    倉倉 畑畑
    川川
     川川    林  山山山
      川川  林林林山山山山山

運営に注意されるかもしれないのでスクショするのを進めます。


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3年目の様子

〔数週間後〕

脱穀を終え、倉庫に物をしまう頃には雪が積もり始めた。

ジャギによって塩不足もある程度解消した。

 

「2年目の冬・・・早かったのー。」

私はヨチヨチと歩く雛苺と遊びながらそう呟いた。

雛苺を見ていると人間の成長速度より早い気がする。

これによりキョンシーになった人物から生まれた子が成長することがわかった。

 

「うにゅー。」

ちなみに雛苺の口癖はうにゅーであった。

 

〔春〕

今年は大雪だったため水銀燈達がいた村から流された人物の回収ができなかった。

しかしジャギと奥さんの頑張りにより新たな子供が宿った。

牛、鹿も妊娠したようで新たな命の健康を祈りながら農作業を始めるのだった。

 

〔夏〕

儀式の時期のためロボットを向かわせたが、戻ってきた時に袋から出されたのは片腕と片脚の骨だった。

 

「さすがにこれは無理じゃ。」

私は諦め、骨を穴に埋めるのだった。

また草取りなどをしながら私達はある実験をしていた。

 

「お母さま・・・木炭の増産をしましたわ。」

 

「カナは言われた通り砂鉄を集めてるかしら。」

 

「上出来じゃ。来年を目処におこなう。しっかり集めてくれなのじゃ。」

川から採れる大量の砂鉄を集める私だった。

 

〔秋〕

収穫量は去年より若干増加し、保存のために酒にしていった。

清酒、ビール、芋焼酎・・・ただ工程も本とにらめっこしながらだったため美味しいとは言えないものの、たまには飲みたいな程度にはできた。

また鹿とジャギの奥さんが子供を産み子鹿が4頭増えた。

名前子供の名前はジャギが決めたようだ。

 

〔冬〕

雪が降ってない日は家の建築と木の伐採をしていた。

何を作るにしても木が必要で木材の備蓄及び薪にして火で暖まりながら3回目の冬を乗り越えた。

 

〔4年目の春〕

暖かくなり雪を退かすと田植えをおこなった。

ジャギがまた奥さんを妊娠させて翠星石から蹴りを入れられたりするなか、私は夏から進めてきたたたら吹きに成功した。

ただ、ふいごを使って一気におこなえるほど人がいないので自然風を使い約20日をかけて銑鉄と玉鋼を砂鉄から取り出した。

玉鋼は今は使わないため保存し、銑鉄を再加熱して溶かし、型に入れていった。

これにより耐久に気にすることなく鉄製の農工具を使えるようになった。

 

「・・・次はあの銅山を露天掘りしたいのじゃが・・・何年先になることやら・・・。」

労働力不足は深刻だった。

 

〔田植えが終わった夜〕

田植えが終わり皆で酒を飲んでいるとどれぐらい酒が強いかがすぐにわかる。

一番強いのは私・・・どんなに飲んでもほろ酔いしかならない。

では一番弱いのは・・・

 

「もうやめてくれ!!」

 

「コップ1杯でくたばるなですぅ!!お前の奥さんなんか妊娠してるのに瓶飲んでるですぅ!!」

ジャギであった。

 



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4年目と5年目

とあるの原作まで持ってくのに時間がかかるな・・・。
2018年を原作スタートにしたいから・・・あ、400話超える(確信)
読者の皆さん頑張って読んでください。
(ヤマメ関連作品で東方projectの話数検索を圧迫する私の夢のために・・・。)


〔夏〕

皆で話し合い役割を分担した。

まず農業の田植え、種まき、収穫、脱穀は全員で一気に終わらせる。

他の農地の管理は翠星石がやり、水銀燈は山で木の伐採、植林、山菜採り、木炭加工を、金糸雀は子供達の教育と全員分の食事、時間が余れば砂鉄採りを、ジャギと奥さんは牛と鹿、捕まえてきた猪の家畜化を、私は全体の手助けと酒造、木材と鉄の加工をすることとなった。

ちなみにロボットは1体は狩り、もう1体は海釣りである。

 

(うーむ・・・やはり最低1人1つの仕事にするにはあと8人・・・農地の管理を細かくすれは12人ほしい・・・これはジャギに頑張ってもらうしかないな。あとは生きて儀式を乗り越えてもらうしかなかろう・・・。)

私は頭を抱えて唸るのだった。

また、今年の儀式も発見できなかった。

理由は2日間続いた暴風が原因と私達は見ている。

また、余った時間で川の一部に藁で作った網を2時間張ったところ大きい魚(イトウ)が12匹取れた。

効率は良いが捕まえすぎて数が減るのを防ぐため1年間で2回だけと皆で決め、川釣りは自由にした。(釣り道具が発達してないので1日2匹が限界)

 

〔秋〕

今年は豊作で全体的に1.2倍増しとなった。

こうして4年または3年神界の作物を食べてきた水銀燈、金糸雀、翠星石に変化がおこった。

青紫だった肌が白色に近くなってきたのだ。

体でも胸や身長が伸びたりとキョンシーになってからも少し成長するようだ。

 

(私は変化がないのじゃ!!)

さすがに千年以上も経過してしまったので私には何もおこらなかった。

 

〔冬〕

菜種から油を搾り取ることである程度の油を確保した。

天ぷらに使うか迷ったが夜にもある程度活動(勉強時間の確保)できるようにランプを作った。

ランプの効果で水銀燈と金糸雀は字を読めるだけでなくある程度書けるようになり、雛苺が真似して字を覚えていくのだった。

 

〔春〕

 

「頑張るかしら!!」

 

「ゆっくり深呼吸して・・・。」

 

「痛いなら翠星石の手を握るですぅ!!」

皆に見守られながら奥さんは第二子を誕生させた。

これにジャギは大喜びで翠星石に

 

「うるせえですぅ!!」

と顔パンされることもあった。

牛は雌を産み、鹿は雌11匹となり雄3匹と数が増えてきた。

 

〔夏〕

 

「蟻さんはどこにむかってるのー?」

テチテチと歩く雛苺を見ながら草取りをしていると

 

「あ!!ロボットさんなの。・・・赤い垂れてるのはなんなのー?」

 

「あ、雛苺!!こっちに来るかしら!!」

 

「はーいなの!!ママ!!」

金糸雀のファインプレイで雛苺に死体を見せずに済んだが・・・

 

「今年は誰じゃ?」

私はロボットから袋を預かるのだった。



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不人気さん

【家の中】

水銀燈、翠星石、ジャギ夫婦と私で袋の中身をひっくり返した。

 

ドバチャ

潰れたトマトみたいに赤い肉が入っていた。

原型は辛うじてわかるが・・・。

 

「・・・真。」

水銀燈が呟いた。

どうやら妹さんのようだ。

 

「今からキョンシーにするが・・・水銀燈、お主の妹か?」

 

「はい。お母さま。」

 

「ならやってみるか?後のことを考えると私だけできても困るからな。皆もじゃぞ。」

私は水銀燈に呪文が書かれた本を渡した。

 

「血液の一部と呪文の部分はやってくれ。それ以外は私がやるのじゃ。」

 

「はい。」

 

「・・・ではいくぞ!!」

私は死体を新しく形を作り上げていく。

水に糸を入れて準備を整えた。

 

「血!!入れるのじゃ!!」

 

「は、はい!!」

彼女の指先から紫色の血が垂れる。

 

ザシュ

首を斬り糸で繋げる。

 

「呪文!!」

私の合図で水銀燈は呪文を唱える。

噛みそうになりながらもなんとか成功させた水銀燈は疲れて床に座った。

 

「う・・・?」

 

「真!!」

 

「・・・誰?」

 

「銀よ!!わかる!!」

 

「銀・・・銀!?」

 

「真!!」

 

「銀!!」

水銀燈と妹さんは抱き締めあった。

 

〔5分後〕

落ち着いたのか姉の姿と自分の体を見て姉は白く、自分は青紫色になっていることに気がついたようだ。

 

「落ち着いたか?」

 

「は、はい。」

私が話しかけると少し不安な顔になる。

 

「今からお主のことを話すぞ。まず・・・。」

 

〔20分後〕

 

「本当に・・・私は生き返ったのね。」

 

「しかし・・・村がねぇ・・・。」

 

「儀式ではなく逃げてきたか・・・。」

水銀燈達の元いた村が隣の村に攻められたらしい。

真と夫はたまたま海の近くにいたため船で逃げれたらしいが、その他の村人はどうなったかわからないとのことだった。

 

「・・・遅いかもしれないが・・・ロボットを1ヶ月海岸に張り付ける。それでよいな。」

 

「はい!!」

 

「私はどうしたら良いかしら?」

 

「そうじゃな・・・真だけでは生前と同じでなんかしっくりこない(呼びづらい)・・・真紅はどうじゃ?」

 

「真紅・・・良い名前だわ。ありがとう。」

 

「真紅は私が預かるわ。」

 

「ここのことを教えてやってくれ水銀燈。」

 

「はい。お母さま。」

 

「お母さま?」

 

「水銀燈は私をお母さまと呼んでおる。ちなみに私の名前は宮古芳香じゃ。」

 

「・・・主人と呼ぶわ。」

 

「これまた独特な・・・まぁ良いのじゃ。・・・ようこそ真紅、歓迎するぞ!!」

 

「おじゃまするわ。」

こうして真紅はこの村に加わった。

ちなみに真紅の好きな飲み物は近くで取れた木苺を加工したラズベリー酒で毎晩飲むのだった。



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5年目秋~

〔秋〕

ロボットを張り付けた結果2組の男女を連れてくることに成功した。

 

「まさか生存しているとは・・・。」

彼らの話によると他の村の侵略に負けた村人は奴隷のように使われたらしい。

それを嫌った数人が海の向こうに見える陸地に儀式で行った人が住んでいることを願って海を渡ったらしい。

12人いた村人も船が転覆したり、熊や猪に襲われて残ったのがこの4人だった・・・とジャギが通訳してくれた。

私もさすがに古代の言葉はジャギの奥さんから教えてもらった簡単なものしかわからないからだ。

 

(・・・統一語として近代日本語と近代ドイツ語を使うことになるのじゃ・・・雛苺は大丈夫じゃがジャギの子はちゃんと教えればいけるかの?)

悩んでいる私だが近いうちにこの問題は解決するのだった。

 

〔収穫期〕

昨年のような豊作・・・とはいかなかったものの、それなりの収穫量で飢える心配はなかった。

人数も少ないので食事の時は全員が集まって一緒に食べるようにしていた。

私は笑顔で食事をしている彼女らを見て不安に思うことがあった。

 

(・・・今はコントロールできておるが・・・私以外は故郷を隣の村に滅ぼされたことになるのじゃ。・・・コントロールが効かなくなった時が一番きつい時期になるのー。まぁその前に手をうつとしようか・・・。)

私は集落の掟の構想を考え始めるのだった。

 

〔冬〕

5年間で一番の大雪、大寒波が到来した。

 

「鹿や牛を凍えさせないようにするのじゃ!!」

 

「俺達に任せろ!!」

動物達が凍えないようにジャギと奥さんが見守り、残りの私達は子供達が凍えないように薪や木炭、牛糞ステーキを使って室内を温め、病気が蔓延しないように湿度にも気をつけた。

 

〔6年目 まだ冬〕

その日はそこまで寒くはなかった。

私は熊をスコップで撲殺し、集落に戻ると水銀燈が慌てて何かを探していた。

 

「お母さま!!ちょうどよいところに!!」

 

「何かあったのか?」

 

「ジャギと奥さんがいないの。朝に牛乳を倉庫にしまっていたのを見て以来・・・。」

 

「なんじゃと!?」

金糸雀と子供達以外の全員で彼らを探した。

・・・見つけたのは3日も経っていた。

発見した場所は鹿を囲っている柵の近くで、自然の窪みがある場所だった。

窪みには下に奥さんが、上にジャギが雪に埋まっていたので、窪みに落ちた奥さんをジャギが助けようとしたが、雪に覆われて見えなかった窪みの深さは予想より深く、ジャギも一緒に落ちてしまい、その勢いで雪が崩れ、ジャギ夫婦を覆ったと思われる。

 

「事故じゃな。」

私は仮定を考えてそう呟いた。




住人 12人


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6年目

ジャギ夫婦を発見した私達は凍死した彼らを家に運んだ。

 

「・・・さて、問題になるのがどちらを生き返らせるか・・・じゃ。」

 

「難しいわね。」

 

「・・・ジャギではないの?集落の貢献的に。」

 

「真紅よく考えるかしら。貢献で全てを決めてしまえば今後に問題があるかしら。」

 

「・・・今回はジャギを生き返らせるのじゃ。そろそろ掟を作ろうと思っておったから、ジャギが復活したら大人を集めて話し合って決めるのじゃ。よいか?」

 

「それでいいですぅ。」

ジャギはこうして復活させることになったのだが・・・

 

〔15分後〕

 

「どうしてこうなったですぅ!?」

 

「私にもわからんのじゃ!!」

 

「2人とも落ち着いてほしいからしら!!」

 

「・・・ん?」

ジャギ(?)が起きた。

 

「気がついたようね。」

 

「・・・真紅か。・・・俺はあいつを助けられたのか?」

 

「・・・残念ながら。」

 

「そうか。・・・なぁ。俺の声・・・高くなってないか?」

 

「鏡を見る?」

 

「ありがとう水銀燈・・・て、なんだこりゃ!?」

ジャギ(?)は自分の体が女になっていることに驚いた。

 

「芳香さん!!これは!?」

 

「男の復活は始めてで何が起きるかわからんかったが・・・まさか女の体になるとは。」

 

「つまり知らないんだな。」

 

「そうじゃ。」

 

「・・・こっちの方がいいですぅ。」

 

「はぁ!?なに言ってんだよ!!」

 

「で、ジャギ・・・体の調子は大丈夫かしら?」

 

「調子は・・・いいね。前よりも強くなったように感じるよ・・・!?」

 

「口調も変化するか・・・。」

 

「芳香さん!?僕の体はどうなるの!?」

 

「一人称が僕に変わったわ。」

 

「水銀燈!?喜んでないでなんとかしてよ!!」

 

「諦めることも大切じゃぞ。」

 

「なんでキョンシーにした本人が諦めてるのさ!!」

なんやかんやでジャギ(?)は折れた。

 

「なら責任とって新しい名前をちょうだいよ。さすがに女の体でジャギって名前はきついからさ。」

 

「・・・翠星石の妹になったから・・・蒼星石で良いじゃろ。」

 

「蒼星石・・・。」

翠星石をチラ見した蒼星石に翠星石が

 

「なんか文句あるです?」

と睨む。

 

「・・・いや、ないよ。」

と諦めた顔をする蒼星石だった。

 

〔次の日の夜〕

蒼星石の一件もあって集落の掟を決めることになった。

最初に決めたことは集落の名前で翠星石、蒼星石に作った地図を見せ、未来でもこの場所が川上盆地と呼ばれていたので川上村とすることにした。

次にキョンシーにする定義は貢献度だけでなく、事故で両者が亡くなった時のために夫婦のどちらがなるかを決めることを予め決めておくか、後に亡くなった(長生きした)方がキョンシーになることにした。

ただ、これでは殺人をすることになるので殺された場合は殺した方を素材にすることにした。

 

(絶対にトラブルが起きると思うが・・・まぁ次の世代くらいに一部変更か、追加していけば良いじゃろ。)

簡単な掟が決まるのだった。




ジャギ→蒼星石


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6年目2

〔6年目春〕

蒼星石も春になる頃には体にも慣れたようで、今は自分の2歳と1歳になる息子達にお母さんだよと刷り込んでいた。

その時の翠星石の反応は・・・

 

「う、うわぁ・・・安いオカマバーに行った時に似てるですぅ。」

と言っていたが私からも突っ込んだ

 

「あれ?お主22歳で飛ばされたんじゃろ?・・・え?」

 

「・・・ち、違うですぅ。」

 

(ヤバイ・・・こやつ腐女子じゃ。)

ドSだと思ってたらさらに思考が腐っていると思う私だった。

翠星石は全力で否定したが・・・。

そんなこともあったが、新しく村に来た2組が子供を授かった。

お祝いを込めて新しく住居を2軒建てた。(竪穴式住居だが)

また、農作業のやり方も1から教えた。

彼らは戸惑いながらもしっかりやるべきことをやってくれるので元の頭は良いようだ。

 

〔夏〕

農業の大変な時期が過ぎたので、田と畑の拡張、牛小屋の改良に取りかかった。

何だかんだで牛の数は合計5頭になっていたため蒼星石が必死に頼み込んだ結果だった。

ちなみに蒼星石は睡眠時間が毎日4時間というのに気がついたのもこの頃だ。

 

「なんでそんな無理をしてるですぅ!!」

 

「翠星石・・・頭に響くからボリューム落として・・・僕もね・・・寝たいの。だけどね・・・牛の乳搾りをしないと牛の胸が破裂するから。」

 

「すまんな・・・私も蒼星石並に寝てないから手伝えなくて・・・。」

私は村の警備で夕方に4時間寝てる。

品種改良された牛は乳の出を良くするために自らのカルシウムを犠牲にして乳を作り続ける。

そのため乳を一定時間ごとに搾らないと破裂するか乳が固まって病気になる。

機械でやれれば良いのだが機械がないので何時間もかけて手で乳を搾らなければならなかった。

 

「・・・牛の数をこれ以上増やすにはきついな。雌牛3頭でこれじゃ。妊娠はさせるが新しく産まれた雌は乳搾りにするのではなく食用か畑を耕すのに使うのじゃ。」

ただ、あまりにも蒼星石に負担が凄いので、ロボットを常時1体蒼星石につけることにした。

 

〔秋〕

実りの秋・・・今年は寒波の影響で不作だったが昨年の備蓄もあり、余裕をもって冬を越せそうだ。

 

〔冬〕

村に新な子供が2人できた。

女の子だ。

これで雛苺を含めて子供は5人

村の力になるのはまだ先だが、遊んでるうちに農作業を覚えてくれれば大きな力になるためしっかり教育をするのだった。

 

〔7年目春〕

また村人が子供を授かった。

労働力が足りないのに戦力にならない子供が増えても・・・と思ったが、ここを越えれば安定して人口を増やせると思い、拡張した田と畑に苗を植えるのだった。




村人口14人


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7年目~

〔夏〕

うれしいことがおこった。

村民の1人がたたら吹きのやり方を見て覚えたのだ。

元の村でも鍛冶をしていたらしく、たたら吹きを覚えたらどんどん色々な道具を造るようになった。

さらに・・・

 

「うにゅー・・・火がもったいないの。」

 

「ん?どうしたやんじゃ?」

 

「あれだけ火を使うなら他にも使えるはずなの。」

 

「雛苺はどうしてそう思うのじゃ?」

 

「鍛冶から出る黒い雲に枝を入れたら燃えたの。なら他にも使えるの。」

 

「・・・そうじゃな。壺・・・いや、磁器を造るか。」

 

「磁器なの?」

 

「材料の骨はたくさんあるし、石灰もある。(すぐ近くにある山に部分的に石灰岩の鉱脈がある)・・・雛苺が大きくなる頃にはできると思うぞ。」

 

「そうなの?ヒナも芳香の手伝いがしたいの。」

 

「まずは金糸雀のご飯を一杯食べて大きくなるんじゃぞ。」

 

「うにゅー、わかったの。」

私はたたら吹きの施設の横に磁器を造るための施設をつくり始めるのだった。

 

〔秋〕

3ヶ月・・・時間があるときは建築の本とにらめっこ、木を削って模型をつくってみたりしてなんとか施設をつくった。

 

「・・・収穫で一時中断じゃがな。」

今年は面積が広がったので、米は20石程とれるようになり、今年と来年度に産まれる子の分は大丈夫そうだ。(ジャガイモや小麦の収穫量も増えてるため、実際に食べられる米の年間消費量は10石だが・・・)

また、今年はキノコの収穫もできるようになった。

キノコの種類はナメコ・・・それも大量ではなく、成功したのが1/3程度だった。

技術と知識の不足でもなんとか収穫できたが、来年からは工夫して収穫量を増やしていこうと思う私だった。

 

〔冬〕

菜種の大量栽培に成功したので冬の間に蜂の巣になる巣箱を作っていた。

他の人は字を覚えたり、雪かきしたり、本を読んだりと比較的充実した生活をおくることができた。

ハプニングは高床式倉庫の床が抜け、中に入っていた米俵が外に投げ出されていることがあったくらいだ。

 

(最近は熊も来ないな・・・何かあるのじゃ?)

と芳香は思っているが、ボス的な熊が芳香とロボット達によって狩られたため、比較的に気性がおとなしいものしかいなくなったからだ。

この事は蒼星石がわかっているが、蒼星石は上手く熊を家畜化できないかと考えている段階のため芳香には話していない。

この頃からだろうか、翠星石と蒼星石が自分の研究として作物や動物の改造を始めた。

まだ収穫量を増やしたり、産まれた子供がおとなしい性格にするようにしたり等だが・・・。

 



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8年目~

〔8年目春〕

養蜂用の巣を接地し、蜂蜜をとれるように努力しながらも、私達は8年目にしてやっと浴場を完成させた。

それまではドラム缶風呂に入っていたが、これでゆっくりと湯に浸かることができると現代的価値観がある私と翠星石、蒼星石は安堵した。

ちなみに水は高低差を利用した噴水をさらにわけ、浴槽に流し入れ、たたら吹きの余熱を利用したものだった。

ただ、それだけではぬるま湯なので鉄砲風呂と言われている木桶風呂の加熱部分を利用し、熱いお湯を循環させるようにした。

・・・しかし、薪の消費量が多いので2日に1回、1時間とした。

我慢できなければ今までのようにドラム缶風呂である。

ちなみに洗濯については米のとぎ汁を使って服の汚れを落としていた。

 

〔夏〕

今後に備えて開拓する場所と植林して木材の管理をする場所を決め、どちらもおこなった。

開拓で役にたったのが雄牛と妊娠していない雌牛だった。

地面の中に埋まっている岩を取り除いたり、深くまで耕したりと心強い味方だった。

 

〔秋〕

大量の作物が倉庫に入る。

とれた作物を調理するのは金糸雀で、彼女専用のキッチンで私達の食事を作ってくれる。

もちろん現代のような台所ではなく、新しく建てた竪穴式住居をまるまる食堂とした。

そのため色々な食材の下拵えが楽になり、量を多く作れるようになった。

 

「今日はご飯と味噌汁にハンバーグ、乾燥薩摩芋のスライスと漬物かしら。残さずに食べるのかしら!!」

 

「「「感謝、いただきます。」」」

と言って食事を始める。

感謝と言うのはそれだけ気持ちを込めるという意味で、あってもなくても別に良いのだが、知らないうちに習慣になっていた。

食事のルールは基本的には同じだが、基本残さない。

アレルギーという例外以外は食べることにした。

 

(まぁ楽しく食べれれば良いのじゃ。)

私は深くは考えなかった。

 

〔冬〕

やることは雪かきと農村家内工業のどれかだ。

各家で作るものは違い、どぶろくや清酒、ビール、芋焼酎等を作る家もあれば、草履を作る家もある。

まぁ村が小さいのでみんなで結局協力するが・・・。

そんな中、ついに青苧の服が完成した。

着物・・・にしたかったのだが、運動性を重視して洋服にした。

これにより青苧の布で敷物を作ったりして、毛皮以外の体温を保温する方法を身に付けた。

よって冬場の活動もある程度おこなえるようになり、村に今後必要になるであろう長屋の建設を始めた。

ただ、これはどちらかというと工場や倉庫を作るためのノウハウの備蓄だった。



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9年目~

〔9年目春〕

子供が産まれて村の人口はついに20を超えた。

最年長は7歳になった雛苺で彼女は子供ながらに色々と考えているようだ。

 

「芳香~芳香~。ヒナは川の水をもっと上手く使いたいの。」

金糸雀の料理は効率的に・・・というのをよく聞いていたからかこの歳にして効率房と呼ばれる者になっていた。

6歳の時には

 

「ちんたら歩いてんじゃないの!!時間がなければ勉強(何かを効率化させるため)ができなくなるの!!バケツリレーをして早く水を汲むの!!」

と言って小さな子供達にお使い感覚で頼んだ水汲みを笑い無しの作業にしたことがあった。

それから性格の補正にある程度成功したが、自分が効率的に動くのはやめなかった。

その影響で腕にいつも針と棒を装備し、何をするか決めると針で指を刺して血を出し、棒に血をつけて腕に書くという行為を繰り返した。

これはどんなに注意しても直らなかった。

 

 

〔夏〕

養蜂に成果が出た。

気合いを入れて30個つくった巣のうち20個に日本蜜蜂が住み着いた。

この内8個の巣箱から巣を1/4ほど削り蜂蜜を約10キロ程採取した。

蜂蜜を手に入れたことにより早速蜂蜜酒を造ったのはご愛敬。

 

「これはいいわ!!ラズベリー酒と日本酒を飲みながらこれを飲むと酔いが覚める。」

私達の中に真紅は(酒に対して)異常という認識になった。

好きすぎて自分で日々造れる酒の度数を上げる工夫をしたり、農作業中に酒で水分補給をしたりしている。

 

(こやつは大丈夫かのー・・・。)

少々不安になる私と水銀燈だった。

 

〔秋〕

蜂の巣から蝋を精製した私達はナメコの栽培に蝋で蓋をすることにした。

また、収穫は開拓した分だけ量が増えた。

他には鹿がなつき始めたくらいだった。

 

〔冬〕

蜂の巣から蜜蝋をつくった。

そこから蝋燭をつくった結果

 

「綺麗だわ・・・。」

と水銀燈をキャンドル馬鹿にしてしまった。

冬の間に1人で蝋燭を量産し始めた。

 

(((水銀燈は白色の物が好きなのか?)))

牛乳といい、蝋燭といい・・・村では真紅と姉妹そろって好きな物に労力を惜しまない人達という認知になった。

 

村人の反応

 

「まぁ村の役に立つならいいのじゃ。」

 

「こいつら・・・狂ってるですぅ。」

 

「翠星石には言われたくない言葉だと思うよ。・・・まぁ異常なのにはかわりないけどね。」

 

「子供が真似するかもしれないから真紅の酒だけは量を減らしてほしいかしら。」

 

「・・・手作業で蝋燭を作るのは効率的じゃないのー!!型から大量に作る方が実用的なの。・・・形にこだわりがある?知ったこっちゃないのー!!時代は量産、効率化なの!!」

 

「雛苺・・・カナにはわからないけど、どこでカナは雛苺の教育を間違ったのかしら・・・。」

雛苺も入れてスリーラブと呼ばれるようにもなった。




田30畝
ジャガイモ7畝
小麦6畝
大豆3畝
菜種6畝
他2畝
牛6頭
鹿 30頭(雄3頭)


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10年目~

ここからは何もなかったら飛ばします。


〔10年目秋〕

ナメコの収穫量を3倍に増やすことに成功した。

理由は菌をしっかりと木に移すことができたのと、移した菌を留めるために蝋で固めたことによると思う。

こうなると養蜂の規模を拡大しなければいけないと思う芳香だった。

 

〔11年目春〕

9歳になった雛苺が村の戦力に加わった。

 

(本来なら10歳くらいからにしたかったんじゃが・・・。)

私はそう思ったが、現状1人でも労力が欲しい私達は仕方なく雛苺を手伝いに加えた。

私達は大人になったことを表すため成人の儀と称した誕生日会を開いて、雛苺を祝った。

 

〔11年目秋〕

 

「・・・できたの。」

雛苺が7歳の時から必死にあるものを作っていた・・・水車だ。

おそらく本を読んで考えたと思うが、独自に作ったのは評価できる。

ただ、今は田に水を入れたりするだけだが・・・。

 

〔12年目冬〕

ちょっとした安定期に入った。

鹿、牛の飼育もローテーションをしっかり決めたことで負担を削減し、食料は少しずつ開拓した分だけ増える。

子供達も保護液の影響で今のところ病気もしていない。

・・・だだ、少し気になったことがある。

 

「肉体の保存は・・・大丈夫なのか?」

表面は綺麗に保っているが、体内はどうなっているかわからない。

万が一村で腹を引き裂いて確認したら恐ろしいウイルスが蔓延したなんてなったら目もあてられない。

・・・そこでテレビ電話を使って永琳先生に聞いてみることにした。

 

『大丈夫よ。神界のから持ってきた作物を食べてるならね。地上で栽培しても効果は同じだから。』

 

「そうなのか?私にはわからないのじゃ。」

 

『逆に言うと食べてないと腐るから・・・今度金ができたら連絡をちょうだい。腐るのを抑える薬を調合するから。』

 

「ありがとうなのじゃ!!」

 

『・・・あ、天界での出来事でヤマメ大統領の養子である黒谷雨咲が死から帰還したわ。不思議なこともあるのね。』

 

「私には関係がないのじゃ。・・・まぁ金ができるようにするのじゃ。・・・ちなみに時間のずれを確認したいのじゃが・・・。」

 

『だいたいあなたが行ってから6年が経ったわ。』

 

「2倍早いのか・・・ありがとうなのじゃ!!」

私はテレビ電話を切った。

 

「借金さえ返せれば・・・ヤマメ大統領が管理している別世界と交易できるから一気に儲かるが・・・。」

金をどうやって儲けるか考える私だった。

 

〔13年目冬〕

村人の1人がポックリ逝った。

理由は肺炎。

保護液は万能だがそれでも時間が経てば効果が薄くなるのがわかる結果だった。

ただ、小さいときに与えれば各種免疫を獲得できるため肺炎で死ぬことはないが・・・。

奥さんが残ったので彼女をキョンシーにした。



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14年目~

〔14年目春〕

現在村の人口は25人・・・そのうち子供は14人とバランスがあっていなかった。

 

(労働力問題が解決したら・・・次は人口爆発の兆しか・・・。)

私はなめていた・・・人間の繁殖速度を・・・。

現代人は理性のブレーキがしっかり出来上がっているが、弥生時代の人にはそんなものはない・・・それを経験を通して知った。

ちなみにだが水銀燈と金糸雀、真紅は元が弥生時代の人だからブレーキが効かないのかもしれない。(例酒馬鹿、キャンドルラブ、料理の達人など)

 

(これを子供達が引き継いでいたときに問題じゃ。・・・というか9歳になって成人した男が野獣の目になっておる。・・・子作りの時期も弥生時代は早いのか?)

時代差に困惑する芳香だった。(芳香が生きていた時代は飛鳥時代)

 

〔秋〕

豊作で全体的に通常の1.3倍も収穫できた。

それだけでなく、水車を使うことで脱穀や製粉の作業が私達1人の作業量の1.2倍にもなった。(キョンシーのため力が強いのと疲れをあまり感じないため普通の人間よりは圧倒的な作業量をおこなえます)

 

「凄いですぅ!!チビスケ(雛苺)よくやったですぅ!!」

 

「ヒナはチビスケじゃないのー!!」

 

「でも凄いことだよ。雛苺は僕たちのやるべきことを短縮してくれた。しかもまだまだ色々なことに使える水車をつくった。胸を張りなよ。」

 

「お母さんも嬉しいかしら!!」

 

(・・・問題は冬の時期は川が凍って動かないこじゃな。)

私はよろこびの半面、問題点も考えていた。

 

〔15年目夏〕

13歳になった雛苺と蒼星石(ジャギ)の息子が11歳と10歳になったを見ると雛苺は現代人のような成長をすることがわかった。

第二次成長期・・・と言った方がわかるかもしれない。

男の子は小さいままだが大人の階段は登っているようだ。

ただ勉強をさせた結果色々と使えることはわかった。

雛苺のようにいきなり科学の階段をジャンプすることはないが、彼らにも道具の使い方をしっかり教えると理解するし、日本語(ドイツ語は声帯の問題で微妙)ならしっかり話すことができる。

教育の大切さを実感する芳香だった。

 

〔16年目春〕

残っていた2人の村人が相次いで死んだ。

理由は心筋梗塞と転んだら拍子に頭をぶつけてくも膜下出血・・・転んで死んだのは生き返らせても一生言われ続けると思ったので心筋梗塞で死んだ奥さんの方を生き返らせた。

 

〔夏〕

動力としての水車(後々それに変化させるつもりだが)ではなく、農業用水を組み上げるための水車をつくった。

農地が拡大したことにより水路を近接させることができない作物に水をあげることや田に水をはるために水を入れる作業量が大変になったからだ。

小さいが動力としての水車を作るための経験を備蓄した。




人口 24人(キョンシー込み)

田38畝
ジャガイモ8畝
小麦8畝
大豆5畝
菜種6畝
他2畝
牛8頭
鹿 32頭(雄3頭)


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17年目~

〔17年目冬〕

恐れていたことがおきた。

 

「・・・妊娠しているのじゃ。」

母体がまだ10前後での出産だった。

しかも2連である。

 

「「ちょっとこっちに来い・・・なに顔面が歪んで前が見えなくなるだけですぅ」だよ。」

翠星石と蒼星石の2人は現代の感覚のためロリコン死すべし慈悲はない状態に突入した。

ちなみに彼ら(彼女ら)の親達は

 

「「ふーん。」」

と無関心の模様。

少しは子供の心配をしろと思うが実は金糸雀が彼女らからしたら異常らしい。

子供に何であそこまで溺愛するかよくわからないようだ。

 

(・・・あ、頭が痛い。村が割れる!!)

現在は親の2人に非難が集中している。

金糸雀は

 

「親としての自覚がないクズかしら。」

と言いったがそれには彼女らも反論した。

 

「私達は子供に構う時間も村のために働いていた。しかも学習させているのは金糸雀じゃない。」

とのことだ。

金糸雀これに激怒。

翠星石と蒼星石も

 

「基本的な学習は金糸雀がしたけど性教育は親がすることだ。無計画に家族を増やすからこうなる。」

 

「子供は何だかんだ言って親を見るんですぅ。・・・親がこれじゃ。」

 

「ふ、ふざけてるんじゃないわよ!!あなた達に私達を非難する資格はないわ!!子供を産んだこともないくせに!!」

 

(((あ・・・。)))

私、水銀燈、真紅はこの言葉を聞いて彼らの地雷を踏んだことを理解した。

 

「あ、あの子達が心配だから見てくるわ。」

 

「水銀燈だけじゃ心配だから私も行くわ。」

水銀燈と真紅はこの空間から脱出。

 

(逃げやったのじゃ!!私も行きたいのじゃ!!・・・ただ逃げたら村が崩壊する。なんとか妥協点・・・おとしどころを探さないといけないのじゃ。)

考えている間にも時間は過ぎていく。

その場では泣く、叫ぶ、罵倒する、掴みかかる、弾き飛ばすとどんどんエスカレートしていった・・・私は悟る。

 

(・・・仕方ない。)

 

「・・・2人には一時村から出ていってもらう。なに十分な食料は渡す。2ヶ月間頭を冷やしてこい。」

 

「わかったわ!!ふん!!」

彼女らは私と共に倉庫に行き、数が少ない塩類や甘味類を大量に持っていった。

 

「すまんのじゃ。それだけ持っていくと米とかは分けられんぞ。」

 

「良いわ!!芳香様は悪くありません。寛大な処置に感謝してます。」

 

「うむ。・・・しっかり生きるのじゃぞ。」

彼女らは村から出ていった。

 

「・・・残り少ない日数を・・・。」

 

〔夜〕

 

「何であそこまで寛大な処置にしたですぅ!!戻ってきても空気が悪くなるだけですぅ!!」

 

「・・・主、どうなの?彼女らが持っていった量は2人分じゃないわよ。・・・ダメージがあるんじゃない?」

 

「・・・いや、いいんじゃ。これで・・・。」

彼女達が動いて帰ってくることはなかった。




次の話でネタバラシ


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18年目~

〔18年目春〕

2ヶ月が経過し、私以外の人達は彼女らが帰ってくると思っていたが、何日たっても帰ってこない。

 

「・・・水銀燈と真紅はここで子供を見ていてくれ。」

私はそう言って金糸雀、翠星石、蒼星石の3人を連れてある場所に向かった。

 

【森の奥】

雪が薄く積もっていたが私はその木々の所々にある傷跡をたどりながら進んだ。

 

「彼女らも戻ってくる予定じゃったんじゃ。・・・しかしそれはできない。なぜなら・・・。」

私は洞穴の前で止まった。

 

「肉体の死じゃ。」

前にはバラバラになった数体の熊の死体と彼女らの肉片が落ちていた。

 

「「「う!?」」」

 

「私はここに行くように彼女らを誘導したのじゃ。実際にいるかどうか何回も確認に行った。見えないように監察も続けた。」

私はビデオカメラを取りだし、電源をつけ動画を再生した。

 

『1日目変化なし。私は彼女らを見せしめのために使うことにする。村が崩壊するよりは膿を切り捨てる方がいい。・・・何回もチャンスがあったが食料を持っていくときにその迷いもなくなったのじゃ。』

 

『1週間が経過したのじゃ。彼女ら体の変化に気がついたようだ。動きが鈍くなり、骨が軋む音がたまに聞こえてくる。』

 

『3週間が経過したのじゃ。神界から持ってきたてんさいを使った甘味類が尽きて数日が経過したのじゃ。・・・最初は反省したらまだ復帰させる予定じゃったが・・・食料配分も考えられんならいてもしょうがないのじゃ。・・・そうなると金糸雀、水銀燈、真紅は柔軟な頭を持っていたのじゃな。』

 

『1ヶ月と少しが経過したのじゃ。・・・あやつらは馬鹿か?体が動きにくくなっているのに熊に喧嘩を売るとは・・・あ、殺られた。体の内部が腐っているのもわからんのか?』

 

「これが彼女らがなぜ肉片になっているかじゃ。」

 

「・・・なぜ彼女らは体の内部が腐ったのですぅ?」

 

「実は教えてなかったのじゃが、神界の作物や動物は体を保護する働きがある。正確に言うと腐敗防止じゃな。だから数ヵ月たってもカビが付かなかったりするんじゃが・・・それが私達の体の腐敗化を抑えてるのじゃ。」

 

「・・・ねぇ、それって腐敗化したら戻らないの?」

 

「いや、食べ物をいつも以上に食べれば治っていくが普通の3倍食べないとなおらんぞ。神界から持ってきたものなら普通の量・・・いや、牛乳飲んでれば治るぞ。」

 

「・・・一歩間違えればこうなっていたのは私だったかしら。」

 

「・・・たぶんないと思うぞ。彼女ら・・・知らないと思うが時々美味しいものを隠したりしておったし、サボるし・・・。」

因果応報と言えば良いのか・・・結局彼女らは復活させることなく埋葬した。



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18年目~2

【村】

親が死んだことを子供達に話した感想はドライだった。

 

「いつも僕達のこき使うくせにあまり働かないし、僕達の成果は横取りするし・・・。」

 

「キョンシーになった時点で別の存在。しかるべき罰を受けた感じ。」

と言っていた。

問題は妊娠した女の子2人と妊娠させてしまった男達(まだ15にもなってない)の罰だが、産まれてきた子供をしっかり育てることにした。

 

「・・・決まりとして男女ともに15歳以上にならなければ子供を作ることを許さないことにする。」

私の発言はそのまま村の掟になった。

 

〔19年目春〕

2人の子供が産まれた。

母体も元気そうで安心した。

 

「・・・カナが性教育もした方がいいかしら?」

 

「・・・それは任せるのじゃ。」

 

 

〔秋〕

突然変異が密蜂でおこった。

理由は神界から持ってきたクローバーが原因だろう。

春に蜜を作り、その蜜を食べた女王蜂から産まれた子がその突然変異と私達は言っている。

何が普通の蜂と何が違うかというと・・・巣の大きさと交戦性だろう。

大きさは約2メートルほどあり、温厚という蜜を取ってくださいという感じだった。

なぜそんなに大きいのかというと臆病な熊しかいなくなったので中型動物を狩るよりも木の実や小動物、魚しか食べなくなったのが原因で、その中に蜂の巣ごと壊されることが多発したので巣を大きくして下部や中部を破壊されても上部だけ残れば生きていく仕組みになっていたからだ。

ちなみに見つけたのは木の実の採取をしていた子供達で最初は化け物だと思ったらしい。(その後生態を調べたのも子供達・・・頭がよくなりすぎじゃ)

 

((連鎖反応ワンチャンあるんじゃ・・・。))

翠星石と蒼星石はこの進化(突然変異です)をA1種と呼び、連鎖反応を期待した。

連鎖反応がおこれば突然変異した蜂も神界から持ってきた作物や動物と同じ働きをするので体が腐らない性質を引き継いでいるとも考えている。

 

〔20年目夏〕

・・・で、実際におこった。

まさかの鹿だが。

 

「僕の考えはあっていた!!(予想外)」

蒼星石に個別で聞いたところ小動物の突然変異がおこると思っていたらしい。

ワンチャンその蜜を食べる熊とも言っていたが・・・。

実際は鹿。

もう最初の鹿から3世代目に突入し産まれた子を育てているうちに変化に気がついた。

雄の角が異様に短いこと、ストレスが感じなくなってきたのか発情するのが季節ごとではなく年中になったこと、産まれる子の数が2~3頭に増えたこと、雄の比率が増えたこと・・・等だった。

家畜化に成功したのだ。



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21年目~ 人体実験レポート

〔21年目冬〕

世界の憲法のことが書かれた本や、自治体の決まりが書かれた本から村の決まりを決めようと頑張っていた私はふと翠星石と蒼星石がいた未来と自分が邪仙に連れられていた時の2005年頃、再教育の際に触れた神界の歴史の違いを考えてみた。

 

(・・・決定的な違いは大規模な学園都市があるかないかじゃな。私の時はなかった。神界の歴史だと日本に魔法使いの牛耳っていた学園都市、翠星石は大規模な学園都市のエリート。・・・しかもその学園には超能力の人工的量産ができるようになっておる・・・。ん?・・・量産?頭・・・洗脳・・・魔法・・・魔術。)

私は持っている本で関連する項目を探しては読むのを繰り返した。

引っ掛かった違和感のために。

 

(・・・これじゃな。)

それはユダヤネットワーク、魔法実験1917、近代医学基礎という3つの本に書いてあった。

私は翠星石を呼び、軽い質問をした。

 

「ここに普通のトランプがある。このトランプを上の箱に乗せるにはどうする?」

と聞いてみると

 

「手で持てばいいですぅ。もしくは・・・。」

 

(やはりいじくられているか。)

まずユダヤネットワークには紙を使った魔法の才能があるかないかの心理テストと書かれていた。

この本によると2つ答えを言ったものは才能がないらしい。

次に魔法実験1917には記憶処理をされた人は頭に刷り込まれた内容によっては何かしらの矛盾が生じると書かれていた。

2つ目を言おうとしているが口をモゴモゴしているためこれにも当てはまる。

最後に近代医学基礎には言いたくても言えない隠し事があるような時には指が勝手に動くと書かれていた。

じっと翠星石の目を見つめていると確かに指どうしを擦り合わせたりしていた。

 

「・・・お主、頭に何かさせたじゃろ。学園都市で。」

 

「学園都市から出るときに能力の処置で色々な薬を投与されたくらいですぅ。」

 

「それ以外にも問題があるかもしれん。いつになるかわからんが、神界に行けるようになったらすぐに病院に連れていく。・・・よいな?」

 

「わ、わかったですぅ。」

モヤモヤ何かを正確に特定することはできなかったが、頭に何かをされたことがわかった。

 

〔25年目夏〕

菜種も突然変異がおこった。

ところどころに白い花が混じるのだ。

油にすると普通よりも長時間燃えるため完全にランプの燃料だが・・・菜種が突然変異したことで神界から持ってきてない作物は一気に変化すると私達は見るようになり、より良い変化を望むのだった。



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26年目~

〔26年目春〕

ついに磁器を作ることに成功した。

 

(長かった・・・かれこれ15年年ちかくも経ってしまったのじゃ・・・じゃがこれからは色々作ることができる!!・・・まぁ副産物でまさか耐火煉瓦ができるとは思わなかったのじゃが、それのおかげで品質の良い磁器が作れるのだからなんとも・・・。)

芳香は忘れている・・・耐火煉瓦で反射炉を作ることができることを・・・。

 

「・・・ピザ食べたいから専用の窯でも作るか。」

副次効果は他にもあり、セメントとビールの品質向上、肉や魚を燻製にできるため村の裏にある山の斜面に6つの釜が並ぶことになる。

 

〔28年目春〕

ベビーラッシュが続き、現在の人口は40人を超えた今日この頃、最年長は9歳になっていた。

3代目となる男女を見ていると明かに普通の人間では無いように感じる。

・・・男子は幼いながらに遊びで木と木の枝を掴んで十字懸垂をしたり、キョンシーの蒼星石と腕相撲で負けなかったり・・・

 

(((あれ?こいつらまだ子供だよね?)))

 

(((キョンシーじゃないよね?)))

と普通の人間より力が強いはずのキョンシーと子供達が互角なのだ。

明かに異常である。

女子は女子で手先が器用だったり、体がゴムのように柔らかかった。

 

(羨ましいのじゃ。)

 

(((何で自分の頭と同じくらいの隙間に体をねじ込んでいれるの?)))

一部心の声が漏れているが、どうやら男子はミオスタチンを筋肉が受け付けない体らしい。(しかし食事量は普通である)

女子は何でかわからなかった。

最初私達は神界の食べ物を食べてきた両親から産まれたため動物と同じく突然変異かと疑ったが・・・神界の食べ物は関係ないようだ。

理由は倉庫である瓶を見つけたからだ。

 

《保護薬

 

 

注意

保護薬を接種した人物同士で子供を作るとDNAの一部が書き換えられる可能性があります。

保護薬の種類にもよりますが人間として生活するのに適応しやすくなるようにしているので化け物が生まれる可能性はありません。

超人はあるかもしれないけどね。

by芳香は私のモルモット 八意永琳》

 

メキメキ

 

(あ、あやつか!!)

私はどうしようか悩んだが

 

(・・・現状メリットしかないからよいか。)

と思い、子供達に異常がないか確認する毎日をおくるのだった。

 

〔30年目秋〕

キノコの栽培を本格的にし始めた。

もったいない使い方だが磁器の容器を使ったエノキのビン栽培法を始めた。

磁器を調子にのって作りすぎた結果だった。

 

「薪を浪費してんじゃないの!!」

 

「すみません。」

すっかり大人になった雛苺に怒られる私だった。




人口 44人
動力水車6基
共同風呂2ヶ所
窯 6基

田58畝
ジャガイモ20畝
小麦15畝
大豆10畝
菜種20畝
他4畝
牛16頭
鹿50頭


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31年目~

〔31年目夏〕

人口が50人になった頃、私は小豆を発見した。

すぐに持ち帰って畑に植えた。

 

(小豆餡・・・饅頭、どら焼き・・・。)

さつまいもで作った餡もあったのだが、原種とはいえあの赤紫色の餡を使った菓子を食べたかった芳香であった。

 

〔34年目冬〕

子供を除いた32名の村人が新しく作られた集会所に集まった。

 

「これより新しく作った村の掟の確認をするのじゃ。」

私が前々から作っていた掟を12項目で纏めたものを発表した。

 

《1.生きていることに誇りを持ち、死後は生きている者に協力し、集落を発展させるべし

自殺、他人の殺害は例外を除き禁ずる

11項目に例外を載せる

 

2.隣人を愛せよ、集落にいるのはみな同族であり、兄弟である

拡大し、集落が分裂しても血は繋がっているものである

血縁を尊いものとせよ

 

3.集落あるもの全て集落の財産であるため私物化せしめんとする者は村から追放すべし

 

4.働かざる者食うべからず

子供は学ぶことが仕事である

よく食べ、よく遊び、さまざまな知識と知恵を手に入れるべし

 

5.この世界にあるものは全て何らかの意味がある行為である

その意味を見つけ出すことが我々の目標とせよ

 

6.才能は誰にでもある

それが誰かに馬鹿にされようものでも何かしらの意味がある

自信を持って極めるべし

 

7.衣食住を発展させるべし

生活に必要になるものを発展させることが娯楽と思え

余裕ができるその日まで

 

8.犯してはならぬもの

・弱い者をいじめるべきにあらず

自信が強いのなら助けるべし

弱い者も強くなる努力をすべし

・強盗、愛なき暴力、集落に害がある放火

・成人すれば年齢は関係ない

正しいことをしっかりのべよ

 

9.よく話し合え

意志疎通は素晴らしいことである

産まれながらに障害があり、口で言えなくとも字を書くことで相手に伝えよ(耳も同様)

 

10.親の元を離れるのは15歳いこうとし、長屋の部屋を与える

16歳から婚姻を正式に認め、子を作ることを許す

その場合自身の両親と集落の代表者に報告すべし

 

11.殺人の例外

他の場所から来た集落を害するものはどこの集落が襲われたとしても近隣もしくは全集落が団結し私刑か死刑のどちらかをせよ。

死んだ害する者は襲われた集落の者たちをキョンシーの材料にする

あまり次第活躍したものから順に材料を分けていくものとする

将来大義名分が有れば他の場所に進行することもありけり

その場合兵士(士官も含め)以外は殺すべからず

 

12.以後法は増えると思うが上にあるものが基礎である

集落ごとに独自のものがあってもよいとする》




突っ込みどころ満載です。


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35年目~

〔35年目秋〕

一応計画して拡大してきた田畑だったが、色々と都合が悪くなってきた。

1つは洪水である。

春になると雪解け水が大量に川に流れ込んでしまい、川が緩やかに曲がっている場所がよく氾濫するのだ。

もう1つある。

食料の問題だ。

このままの勢いだと村の人口が150人を超えるのも15年以内であると計算しているのだが、開拓できる場所も限られている。

この2つの問題を解決するために集落の労働力を使い3ヶ所に新しい集落を20年後を目標に作ることにした。

もちろん全員参加だ。

前に決めた掟が効いているのか全員やる気だ。

 

「では、ローテーションを組ながら毎日大人の半数である16人は東側に仮の道をつくってほしい。・・・前に作った地図によると東にいくと川にぶつかる。そこを中心に新しい集落をまずは作るぞ!!」

 

「「「オー!!」」」

2体のロボットもフル活用して村の拡大を始めた。

 

〔36年目春〕

小豆の餡を塗ったパンを食べている芳香じゃ。

今私は水銀燈と真紅と一緒(他にも村人がいます)に新しく作る集落予定地までの道を作っていた。

 

「お母さま・・・ローラーを引くのすごく疲れるのだけど・・・。」

 

「あら?水銀燈なら私が代わるわ。」

 

「ん。ありがとう真紅。」

 

「水銀燈、仕方ないのじゃただ草を刈るだけではすぐに草が生えてくる。そして道として機能しなくなるのじゃ。」

そういって私はコンダラ(手動整地ローラー)を押す。

少量しか作れないセメントとたたら吹きで作った外縁部の鉄板を合わせることでなんとか5個用意した。

最初は牛に引かせていたが、細かいところは結局人の手によって行われた。

こうして夏の終わりまでには約15キロの道を砂利をローラーで圧したマカダム舗装し、集落までの移動を楽にした。

 

【第二の村予定地】〔37年目夏〕

 

「翠星石がこの大地を黄金色に変えてみせるですぅ!!」

次に田畑の場所と住居区の整備を始めた。

幸いここら一帯は平地なため区画整備はすぐに終わり、長屋の建築にとりかかった。

現状長屋と竪穴式住居しかないがたぶん当分はこれで十分と思われているからだ。

本当の縄文人や弥生人が使っていた竪穴式住居ではなく、37年間も改良を重ねてきたので耐久の問題を何とかしつつ、2階建ての竪穴式住居がほとんどになっていた。(2軒しかないが3階がある家も・・・)

 

(37年・・・始めはどうなるかと思ったのじゃが・・・ついにここまで来たのじゃな。)

私は新しく建った長屋を見て涙を流した。



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38年目~

〔38年目秋〕

震度4位の地震がおこったが、建物が崩れることもなく平和に拡張中の今日この頃、私達は川の治水工事を始めた。

 

「川の氾濫を無くせばさらなる田畑にすることができる。幸い曲がっている場所から水路をひき、下流の川に合流させればよいのじゃ。あの超人達(3世代目の男性)にやらせれば1年以内には終わるじゃろう。」

実際に超人達は牛の力も使ったが、約8キロの水路を完成させた。

 

〔40年目春〕

一部の村人をもうひとつの集落に移し始めた。

最初は翠星石と蒼星石の2人と15人の村人の17人だったが、すぐに子供が産まれ24人に増えていた。

どちらがどれだけ発展できるか勝負になり、一気に規模が拡大していった。

 

〔41年目冬〕

道沿いに長屋を建築し、人口増加に備える一方、さらなる道の拡張を始めた。

次に道を延ばすのは南東で山を避けながら道をひくことになった。

 

「・・・言い出しっぺの法則か・・・。」

今回は皆雪かきで忙しいので最初から最後まで私1人でやることになってしまった。

 

「うぅ、寒いのじゃ。・・・しかし今年は雪が例年よりも積もるのぉ。・・・何でじゃ?」

私にはわからなかったが、この寒波は約3年続いた。

温度変化に強い作物だったので大丈夫だったが、ある熊が凍死しているのを見つけた時は

 

「・・・これ大丈夫なのか?」

と呟く芳香だった。

 

 

閑話

芳香達約80人は余裕をもって(いつも通りに)過ごすことができたが、東北(一部関東と中部)はこの寒波により壊滅した。

人口が約1/3になるほどで、青森付近は無人の大地となってしまった。

中国ではこの寒波により漢王朝に対する不満が爆発し、約50年間にわたる泥沼の内戦が発生する。

 

閑話休題

 

〔44年目春〕

酷い寒波も終わり、3年ぶりに暖かい春をむかえた。

人口も100人を超え、4世代目も3世代目の特徴を引き継いだが、変わったところが女子も筋肉質になったところか。

 

(・・・しかし、25歳くらいになった3世代目がこの時代だと異常な大きさに皆なったのー。女性が小さくて160、大きいと170・・・男性は190が平均って・・・旧欧州人なのか?大きすぎじゃろ・・・。)

ちなみに私が生きていた頃にやんごとなき方・・・まぁ天皇陛下じゃな。

 

(あの頃は豪族がまだ輝いていた時代じゃな。孝徳様が政務をしていた・・・ん?斉明様じゃったかのう?今上様、御上と言ってたから時々わからなくなるのじゃ。・・・やっぱり腐っていたから記憶があやふやじゃ。)

昔を思い出せなくて悩む芳香だった。




3世代目の男達の体の肉付きはトリコとかバーサーカー(Fate/staynight)をイメージしてください。

この小説では芳香を平安時代にいた都良香説をガン無視しています。

(かすらせるとヤマメさんのアクションが色々起こってしまうので。)


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44年目~

(・・・まぁ思い出せないのはしかたないのじゃ。しかし、あの頃に天皇陛下が貴族達の身長を調べた時は158センチくらいじゃったからのー。・・・190は大きすぎじゃ。・・・私でも155しかないのに・・・。)

余談だが、キョンシーの中で一番背が高いのは水銀燈だ。

 

〔45年目春〕

第三の集落もできたのでそれらすべてを合わせた村の名前を決めていくことにした。

 

「集落は後々合体するが、今後は別の村も必要になるじゃろう。なら名前の基準だけでも決めておくのじゃ。」

と私が言ったことが始まりだった。

 

「主、どうするの?」

 

「うむ。そうじゃな・・・村の特産品と村の位置を合わせればよい。まぁ今いるここはそれらの中心じゃから政都としたい。」

 

「政都?なんで政が付くんだい?」

 

「今後発展させながら平安京規模まで拡大させたいんじゃ。それを3つ北海道につくり、政務をする場所、工芸品や着物等を中心に栄える都、海を面し、食と流通を統べる都の3都をな。」

 

「なるほど・・・いいんじゃない?私はお母さまに賛成するわ。」

 

「今は政の村で、規模が拡大してから都を付けた方が良いですぅ。」

 

「じゃあ政の村でいこう。」

とこの村の名前は政の村となった。

 

〔46年目夏〕

また塩不足が発生したため、塩の生産量を増やすため、毎月成人した男女3人ずつの6人を塩作りに当てることが決められた。

そのため、必要な住居の用意や生産施設の拡張、井戸掘りで夏と秋は終わってしまったが、冬から十分な量の塩を得ることができた。

流下式塩田で6人でなんとか管理できる状態なのでロボットも常時張り付けていないといけなかったが・・・。

 

〔50年目秋〕

人口が200人を超え始めたが、第二世代の一部が亡くなり始めた。

キョンシーにしているものの、金糸雀はこの死を辛そうにしていた。

 

「・・・本当の死よりははるかに楽じゃぞ。」

と私は呟いた。

 

〔冬〕

何だかんだで50年が経過し、2000グローブンずつ返しているが、返済までの道は長い。

 

(・・・このペースで人口が増えていったと仮定し、キョンシーの身体レポートも売れたと仮定したら・・・あと400年・・・きついのー。・・・まぁ払い終わる希望が持てるだけ良いか。・・・しかし成功した人達はどうやって返済したんだろう?)

実は、成功したタイプは3つある。

1つは芳香みたいに基礎からしっかりやったタイプで、芳香より早く返済したのはその世界が神界の数百倍の速さで時間が進んでいただけである。

2つ目は勇者や特別な役職を与えられ飛んだ瞬間から崇められたというラッキータイプ。(このタイプは魔王とガチバトルすることもある)

3つ目は神具を奪った者だ。

世界には信仰や自然的な要因で神力が宿るものがある。

それを回収して神界に売ればすぐに元がとれてしまうのだ。

それ以外の方法は今はない。



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52年目~

〔52年目春〕

キョンシーにする作業を私は水銀燈、金糸雀、翠星石、蒼星石、真紅、雛苺の6人にしっかり伝えた。

まぁだいたい見てわかる範囲なので、わかっていたようだが・・・。

 

「しかし・・・50近くで結構歳いってたのにキョンシーにしたら16~22くらいまで若くなるのじゃな。」

数年前から寿命で死んだ6人をキョンシーにした際の傾向だった。

 

「・・・まぁ見映え的には良いのじゃが、子供達や孫達はおばあさんやおじいさん・・・くらいの見た目だったのがいきなり自分と同じくらいの女性になるのはどう思ってるのじゃろう?」

と気になったが、見た感じ上手くいっているので下手につついて現状を悪化させたくなかったので私の心にとどめることにした。

 

【海】〔53年目冬〕

塩作りの当番で日本海側の海に来たが・・・寒い。

 

「夏なら泳げ・・・キョンシーじゃから海水はまずいかのー?・・・いや、たぶん大丈夫だと思うが・・・。」

そんなことを呟いているがしっかり仕事をこなして、塩を作る芳香であった。

 

〔60年目春〕

人口が400人を超えた。

私が前に舗装した道を使って時期はずれたが第三、第四集落の建設を急ピッチで進めた。

人口増加にともなって牛と家畜になった鹿も導入した一大工事は無事成功することとなり、それらの物流を管理するために市場(現状だと配給所と言った方が正確)が誕生した。

・・・でこの人数の配給制はそろそろ限界を迎えそうなので、物流経済に移行しようとし始めた。

 

「貨幣を使うのは良いですが・・・何を使うのですぅ?」

 

「私的には磁器を貨幣の代わりにしたい。」

 

「正気!?製造コストと見合わないよ!!」

 

「いや、現状で貝殻や石貨を貨幣として使っても悪用するやつが出るかもしれん。だったら生活に必要であり、使い慣れている磁器を貨幣にした方が分かりやすいと思うのじゃ。人数がもう少し増えれば北にある銅山を掘って銅貨に代えればよかろう。」

 

「大きさの問題もあるよ。」

 

「だから私は昔からだいたい同じくらいの器しか作らんじゃろ。だから大きさもしっかり決め、作る数をしっかり決めていれば問題なかろう。」

 

「量はどうするですぅ?」

 

「雛苺が作った動力水車を使ってろくろを動かして形を決めればあとは焼くだけじゃ。女性陣に作り方を教えればよかろう。」

 

「それだと密造しないかい?」

 

「動力水車のろくろを使わない分それだけ労力が必要じゃし、焼くには釜を使わなくてはならん。その時に絶対ばれる。・・・というか磁器の材料の配合は私しか知らんから無理じゃよ。」

はっきりいってそんなことをするなら彼らはもっと他のことをして豊かになろうとするのでそよな馬鹿な行為をするとは思えなかった。

 

「とりあえずやってみよう。人口が少ないうちに色々しないと後で困るからね。」



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61年目~

〔61年目春〕

やっぱり村人達は頭がよかった。

磁器で作った茶碗や皿を貨幣と認め、1年でしっかり浸透した。

これにより商人が現れると思ったが、まだ直売所的な役割なので商人は現れなかった。

ただ村人達から磁器だと持ち運びしづらいとのことで、早くも銅銭を検討する芳香だった。

 

〔68年目夏〕

村人達の間で自然とノーフォーク農法が確立した。

とある村人が肥料を撒くだけでは地力は回復しないと思ったらしい。(収穫量の低下)

それを翠星石に相談し、ノーフォーク農法を教えたらしい。

 

(もっと早くに教えてくれてもよかったのでは?)

と思ったが、人口爆発がさらに加速するためあまりやりたくなかったらしい。

この点は彼女なりに考えがあったようだが、相談によって理性のリミッターが解けノーフォーク農法を教えてしまったらしい。

 

(・・・まぁ計画を色々早めることになったのじゃがな。)

この方法が約10年で完全に確立すると一家に3頭の牛と20頭の鹿、家族は親子合わせて20人がベースとなった。

これまで以上に場所が足りなくなり、北の銅山までを村に組み込み、新たな村を塩を作っている場所に作ることが大人達の話し合いで決まった。

 

〔78年目冬〕

 

「10年で3倍か・・・。」

10歳で成人(比率的にその年から仕事してくれないと無理)とはいえ、総人口1200人で大人がその内の450人(キョンシーはさらにそこから40人)とどれだけこの10年で子供が生まれたかわかる。

幸いなのが5世代目となった子供達も親の力強さと頭の良さ、器用さを引き継いだので発達が早くて助かったが・・・。(この発達の早さが人口爆発の原因とわかっている芳香達だが止められる流れでもないので自然に収まるのを待つしかなかったが)

そんなこんなで人口に悩んでいたいところだが、さらに急がなくてはならない問題が出てきた。

磁器の貨幣不足である。

現在貨幣の最終的管理は水銀燈と真紅に任せていたのだが、現在ハイパーデフレーションが発生し、一時財産整理と現状通貨の総量の確認をするために20年後に資産を返す約束でもう一度統制経済にし直すはめになった。

 

「掟の第三状が生きた。村の財産に一旦することで文句を言わせることなく終結できたのじゃ。」

 

「お母さま申し訳ありません。」

 

「主、すみません。」

 

「水銀燈も真紅もこれは起こるべきしておこった問題だと私は見ている。次に生かせれば問題なかろう。今回の問題は明確な期限もある。20年で銅銭に移行する。・・・銅銭は本に載っていたからわかるな?」

 

「「はい。」」

こうして銅銭造りが始まった。



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79年目~ デフレ脱却

〔79年目春〕

冬の期間に北にある銅山を採掘する50人の選抜隊を選んでおき、春には採掘作業を開始してもらった。

そのために銅山までの道を舗装し、集落を建て、採掘した鉱石を精錬するための炉の建設、それらに平行して海沿いに向かう道の整備と慌ただしくなった。

この頃になると学校を建設し、金糸雀がまとめた教育の基本に沿った独自の学習が誕生し、10歳になるまでそこで色々教わった。(・・・ここに通うのは5歳からの5年間だがその間にだいたいの生徒は将来のパートナーを決定する。)

 

「忙しいのじゃー。」

 

「ホントだよ!!何で畜産関係の僕まで採掘作業の効率化を考えているのさ!!」

 

「ヒナの考えでは牛の力も動力にしたいの。だからそっちの専門家を呼んだの。私が蒼星石にお願いしたのは牛の引っ張る力と何時間歩き続けられるかだけなの。文句を言わないで欲しいの!!」

 

「その牛を使った歯車を回して採掘した鉱石を運ぶベルトコンベアの研究をしてるのは僕じゃないか!!」

 

「煩いの!!ヒナだってローマってところの水力採掘法について書かれた本を見ながら再現しようとしてるの!!そっちは弟子が一杯いるから良いの!!ヒナがやってるのはヒナ以外にはついてきてないの!!」

 

「そこまでじゃ。手を休めるな。文句を言うなら翠星石に言え。元を辿ればあやつじゃ。」

 

「クウゥ・・・!!翠星石は悪くないの。・・・蒼星石も言い過ぎた。ごめんなの。」

 

「僕も言い過ぎた。ごめんよ。」

 

「・・・思ったんじゃが私いる意味ある?採掘関係は無知じゃぞ?」

 

「「なら道の舗装をしてるの」なよ!!」

最近皆の当たりが強いため色々思うところがある芳香だった。

 

〔80年目秋〕

銅銭の鋳造が開始された。

猫ババする輩が出ないように使った銅、混ぜるのに使った鉱物の総量と出来上がった銅銭の重さが等しいか計り、誤差ではすまされないことがあれば私刑ということになった。

 

「そう言えばこの通貨の価値はどれぐらいですぅ?」

 

「米半斗(9キロ)で1銭じゃな。」

 

「あれ?磁器通貨は米2斗(34キロ)じゃなかったですぅ?」

 

「そうだよ。ただ銅銭だけ渡しても混乱がおきるだけだから村の皆に返却するときに磁器と銅銭どちらも渡せば銅銭の価値が認められるからね。」

 

「・・・思ったんだけど・・・通貨の掘られている文字・・・北海道銅銭はわかるですぅ。何で銅銭の名前を人類1号銭って名付けたですぅ!!」

 

「いや別に理由はない。何で呼んでも良いじゃ。」

後生でこの通貨を調べる運動で本当に人類1号銭と名付け直される珍事がおこった。



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82年目~

〔82年目夏〕

銅銭の量を増やしていくとともに、金貨の鋳造も始まった。

金は各地にある川から砂金を取っていた。

女性の中で20人近くを選び、砂金の採取チームを結成し水車を使って川の砂を運び、砂金と砂を仕分ける人と水車のメンテナンスに別れて砂金、副産物で大量の砂鉄、黄鉄鉱を採掘した。

この方法が確立したことで女性のしっかりとした仕事ができ、さらに水車の需要が高まり、雛苺が悲鳴を上げている姿をよく見られるようになるのだった。

しかし、彼女らの努力により純度の高い金貨を作ることができた。

価値は米4斗(72キロ)程にもなった。

 

(・・・この間にも人口が爆発中じゃ。・・・ただ紙幣の製造だけはできない。銀貨を造ろうにも砂金のように簡単にはいかぬ。・・・くそ!!全ての行動が後手になるのじゃ。・・・落ち着け私。冷静になれ。逆に考えれば通貨は足りないが人口は過剰になっている。通貨を使える場所を限定し、使える場所以外は米を基準とした物々交換を推奨する・・・これじゃな。過剰な人口は新たな土地を開拓する。さすれば需要を満たせる金山と銀山もある!!)

と考えていた直後・・・強い地震が発生した。

 

ドーン

軍事演習場で放射能不散布型核砲弾が爆発した衝撃と酷似していた・・・神界から持ってきた本を読むとそこは十勝岳と呼ばれるところだった。

噴火の様子は遠くにいる私達でもはっきりと確認することができた。

幸いなことに火山流、火山弾が我々に流れたり、飛んでくることはなく、風向きは北東なので火山灰がこちらに来ることもなかった。

しかし、この年から6年にかけて暖かい冬、寒い夏となり、不作になってしまった。

今の状態で食べるものに困ることは無いが、この噴火を私は最大限に利用して人口の爆発を続ければ食料が尽きることを力説し、防災と称し備蓄庫の増設、物資の輸送を早めるために道の更なる整備、食料生産量拡大のための治水工事を過剰人口を全てぶつけて人口のストップをかけることに成功した。

ここで稼いだ不作の6年間で通貨の問題だった量を確保し使える場所を縛る必要がなくなり、噴火によって石英等の火山からでる副産物を獲得することにも成功し、今回に限ってはありがたい噴火となった。

 

〔90年目秋〕

12年前に約束していた資産の返却をおこなった。

それは12年間に続いた統制経済の終焉と銅銭、金貨の浸透を始めた。

これにより貧富の差が多少出ることになるが、助け合いの精神でこれもほとんど誤差の範囲に落ち着いた。



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93年間~ キリスト教

〔93年目春〕

中々経済は難しい。

水銀燈と真紅が必死に極端なインフレとデフレを抑えてはいるが、経験と才能が足りない気がする。

経済に関する才能は、水銀燈も真紅も村の中では1、2を争うほどあるのだが、それでも難しいようだ。

 

(なんとかしたいが・・・こちらも問題が出てきてしまったからのー。)

人口にブレーキがかかった結果、今度は第6世代に当たる子供達が極端に少ないのだ。

その数は150人。

多いように見えるかもしれないが10年間でこれだけだ。

人口が3倍になった第5世代は最終的に13年間で1140人子供を産んだことから少なさが目立つ。

 

(これだけじゃないのじゃ。十勝岳の噴火と連動して地震の頻度が増しておる。現状南側にしかない塩を生産している村を他にも作らないといけないのじゃ。・・・これは完全に運が絡む。・・・自然の驚異がヤバイな。)

色々と悩む芳香だった。

 

〔96年目冬〕

例年通りの雪が積もり、普通の生活を村人達と一緒に芳香もしていた。

長屋を改装した広々とした食堂で女性陣が協力して作った飯を食べ、談笑をする。

会話の内容も様々で、ある者は小さな粒のなる木を庭先に植えて、実を大きくするための方法を仲間と話し合っていたり、次は何を食べようかと筋肉質の男達が話していたり・・・。

そんな普通の生活が奇妙な現象で中断された。

 

「長老様!!空がおかしいです!!」

長老と呼ばれたのは私(芳香)のことで、大多数の村人からは長老、長老様と私の呼ばれている。

 

「何があったんじゃ?」

 

「空が虹色に!!」

 

「はあ?虹色か?」

 

「じゃあ長老が見てくださいよ!!」

食べるのを中断して外に行くと空から白い翼を持つ女性が降りてきた。

 

「今宵はキリストの誕生を祝し、各地にある文明を持ったところを回り、最後になりましたが、あなた方もキリストを・・・さらに上のゼウスを敬いましょう。」

とトチ狂った発言をしながら降りてきた。

 

「ここの代表を呼びなさい。神からのありがたい言葉を聞けますよ。」

と近くにいた村人に向かって女性が話している。

私はヤマメ大統領のいる神界で何かあったのかと思い私は慌ててその女性のもとに移動した。

もしそれが本当なら来ている翼を持つ女性は担当の人物となり、テレビ通話で伝えられない何かがあったことを伝える人なので無礼なことは出来ないからだ。

 

「私が信仰増大化計画法でここN89の星の管理の担当をしている宮古芳香です。」

 

「・・・死人には用はない。」

女性はいきなり神力を使って浄化しようとしたため、私はとっさに避けた。

後ろにいたキョンシーに当たったが特に何も起こらなかった。

 

「なぜ浄化しないのです!?・・・なるほど、あなた達は徳が無いから天界に行けないのですね。可哀想に。」

とかさらに訳のわからぬことを言い出したので

 

「質問じゃ。この世界の一番上の存在はなんじゃ?」

と聞いた。

普通なら12大神とかヤマメ大統領の名前が出てくる。

それ以外の12大神の名前を言われたら上に報告するしかないが。

 

「死んで頭まで逝かれましたか。ゼウス様ですよ。」

 

「ダウトじゃ!!そんなやつは存在せぬ!!そやつを捕まえろ!!」

 

「善良な人はこの死人の言うこと・・・何で聞いているの!!私を縛るんじゃない!!」

油断しきっていたのかわからないが天使擬きは縄で縛られ、空き家に縛った状態で閉じ込めた。



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天使擬き

【芳香の家】

 

「はい、その天使擬きは今も隔離しています。」

私は神界にいる警察に天使擬きの対応で話していた。

 

「今回の天使擬きの所属を確認できました。大神であるちゅるや様が管理する世界の1つでキリスト教の狂信者がちゅるや様が管理する地獄で試練を与えられたらしいのですが、そこから脱走、時空の流れで力を得ながらここにたどり着いたようです。天使擬きはこちらの役員が確保し、そちらに謝罪として何か1つ無理の無いものを贈ると言うことで決定してます。受取人が来るときまでに欲しい物を決めておいてください。」

と言われた。

 

「了解しました。・・・1つ質問なのですが・・・。」

 

「私が答えられることなら・・・どうぞ。」

 

「キリスト教で天使になったということは、仏教やイスラム教、その他の宗教もあのような者が生まれる可能性があるのですか?」

 

「少々お待ちを・・・出ました。数名確認できましたね。ただ特殊な例もありますが聞きますか?」

 

「通信料はそちら持ちなので・・・。」

 

「・・・自然発生する可能性もある。もしそのような存在を確認できれば、監視もしくはこちらに報告を義務付けされています。ではこれで。」

と言って切られた。

 

〔夜〕

水銀燈、金糸雀、翠星石、蒼星石、真紅、雛苺と神力を直撃したキョンシー、4人の各世代の代表者計12人が集まり贈ってもらう物と宗教について話し合っていた。

 

「私は畜産系を贈ってもらいたいと考えているのじゃが、どう思う?」

賛成は私を含めて6人、賛成派の代表の蒼星石は

 

「現状牛と鹿で家畜系を占めているけど、今後は絶対に肉類が不足すると僕は見ている。そこで子を沢山産む鶏、豚、兔のどれかを育てたいと思っていたんだ。」

私は馬が欲しいと思っていたが、ここで反対すると内輪揉めになると考え黙った。

 

5人の反対派の代表は水銀燈は

「経済が混乱している時に家畜を増やすのは得策では無いわ。・・・それよりも青苧に替わる服の素材を確保して青苧の依存度を減らしたいわ。」

と言ったが、1人だけの中立派の代表翠星石は

 

「・・・豚と兔なら私は反対派にまわるですぅ。豚も兔もこの大地で突然変異で兔は家畜に、豚は猪から変わる可能性があるですぅ。・・・前はしぶしぶ猪を家畜化する前に食べ尽くしていたが、人口が増えたことで管理することも可能ですぅ。・・・ただ、豚は成長速度が問題ですぅ。必要量の肉を確保するには鶏か兔の必要があるですぅ。ただ兔よりも卵を産み、肥料にもしやすい鶏の方が良いと考えているですぅ。」

 

「・・・じゃあ採決するのじゃ。」

最終的に鶏にすると言ったこと、水銀燈の発言の緊急性のなさ、翠星石の具体的な理由で賛成10で決定した。

 

「次に宗教じゃな。」



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歴史的な会議

後世では紀元前6年に北海道の政都と呼ばれることとなる場所でおこなわれた会議の内容が重要文化財として残されることとなる。

まず重要なことはキリストの代理人がここで捕らえられたということ。

19世紀に宗教問題としてバチカンで法皇と代理人が協議することになるのだが、キリストはまだ産まれたばかり、または子供なため無名であるはずなのに名前が上がったことが協議を難航させ、ついには決着がつかず、法皇も賽を投げるほどだった。

結果的にキリスト教ではタブーとされる紀元前6年の虐待と言われるようになるが、それは日本だけであり、他国は闇に葬られることとなる。

次に歴史的な出来事は宗教を明確にしたことだ。

芳香やその時代を生きていた(現在も生きているが)人々は当たり前のことで、一番上にいる最高神は12人が存在し、そのしたには1000万を超える神がいると世界1神が存在する宗教ということになるのだが、その会議の内容が凄まじさかった。

 

「宗教・・・ヤマメ大統領は過激で暴力に使わなければ何を使っても良いって言ってたのじゃ。それでよかろう。」

と後の十字軍や宗教一揆全否定の内容が残っている。

凄いのが北海道では宗教一揆が全く起こらず、仏教も染まりきらず、共産主義のような神の否定をする勢力も現れなかった。

 

(まぁ宗教に関連した悪徳商売や、宗教を使った扇動をしなければ何してもよかろう。)

芳香の気持ちはこうだった。

 

〔94年目春〕

雪が溶けた頃、神界から担当の人が来て天使擬きを引き取っていった。

私は担当の人に神界の鶏を雄雌2羽ずつ贈るように頼むと担当の人はすぐに戻っていった。

 

〔夏〕

 

コケココココ

「本物の鶏さんなのー!!」

と鶏が来たときは村中から鶏がどんなものか見に来る人が沢山来た。

蒼星石によると東京烏骨鶏と呼ばれる種であるらしい。

これにより人糞、牛糞、鶏糞と灰骨粉と肥料にも厚みが出てきたことでさらに収穫量が安定することになる。

 

〔100年目春〕

海岸で塩を作る時間以外に海岸沿いの村が漁を開始した。

私が持っている本も貸し出して、全人口の10%にあたる200人が海岸沿いの村と協力して網を作った。

安全にできることを重視した結果・・・定置網漁とカゴ漁ができるようになった。

こうして内陸では鉱物、野菜、道具を海岸の村に送り、こちらの政都には塩、海草、魚が送られる物の循環が活発化し、牛にひかせて物を運ぶ大八車が大活躍し、大八車専用の組み立て小屋(工場の前身)ができるのだった。



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100年目~

〔冬〕

総人口2010人・・・毎年約2万グローブンが入ることになる。

 

(1億グローブンを貯めるにはやはり時間がかかるのー。・・・しかし生活は安定し、皆笑顔じゃ。)

私はこの仕事を引き受けて正解だったと思うようになった。

 

〔102年目・・・以降西暦表記に変更・・・西暦2年冬〕

この年は冬の間に色々な物が完成した。

1つが鞴(ふいご)である。

これによりたたら吹きの空気を送る作業が手動、もしくは水車を使った半自動となり鉄の生産量が増加し、それに伴って砂鉄の採取量と釣り合いを持たせるためにたたら吹きの施設を多数建設した。

また、窯の改良も進み、製造中に磁器が割れることがだいぶ減り、安定した温度を保てるようになった。

そのためまた私はある物を作ろうとし始めた。

 

「これが完成したら綺麗だろうなー。・・・頑張るのじゃ!!」

 

〔西暦5年夏〕

太陽暦を使ったカレンダーが完成した。

数年前から太陽、星の位置を測ることを趣味にしていた者達に記録してもらい、約12年の歳月で完成した素晴らしい物だ。

 

「これで集会をおこなった時のズレが少なくなるのじゃ。・・・祭りでも開いて時期を合わせるかな?」

そんな私の打算で毎年新年、5月の田植えの終了時、10月の収穫祭の3回祭りが始まることとなる。

 

〔西暦15年秋〕

野菜類の特別変異種が多数発見され、どれも神界と同じように保存性が身に付いき、1株当たりの収穫量も増えた。

この事でプチ人口爆発が起きるが、なんとか乗りきることになる。

乗り越えられた理由は新たに銅山を見つけられたからだ。

旧国光鉱山という場所で持ってきた本の中にとても小さく書かれていた。

発見されてからは銅以外にも資源が出てきたことでその銅山周辺には新たな集落が出来上がった。

その集落までの整地、道路の舗装には芳香も参加した。

 

〔西暦25年夏〕

ついに私は石英を使ったガラスを作ることに成功した。

 

(まさか耐火レンガと石炭を使うとはな・・・もっと簡単だと思っていたのじゃ・・・。)

まず石英を粉砕し、耐火レンガを使って石英が溶融する温度まであげる必要があったのだが、木炭だとその温度まで上げることが出来なかったので、私は近くに掘ればある石炭を使うことにした。

とてもでないが、石炭は現状燃料として使うなら、木炭を使った方が労力を少なくて済むので今まで使ってこなかったが、この石英ガラスの登場で少しながら需要ができてしまい、新たに炭鉱ができるのだった。

 

(まぁこのガラスを使えばコップ等の皿にも磁器以外で使えるようになるし・・・後々に使えるじゃろ。)

ちなみにこのガラスは型に流し込んで固めるため、宙吹きと呼ばれる丸い形にするための仕方はもう少し後に出てくることとなる。




人口 2430人
動力水車58基
共同風呂6ヶ所
窯 9基
たたら吹き施設 7ヶ所
銅山 2ヶ所
塩製造施設 3ヶ所

田158畝
ジャガイモ120畝
小麦100畝
大豆90畝
菜種50畝
他 各種40畝
牛300頭
鹿600頭
鶏120羽


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西暦30年~

〔西暦30年春〕

若者達の間で黒曜石を加工するのが流行っているようだ。

流行っている理由は前にあった火山近くでの砥石の産出量の増加、マグマが固まった地域で黒曜石が大量に産出、鉄製品の値段の高さが理由だった。

たたら吹きの改良がされたといっても鉄製品のほとんどがシャベルや鍬、ノコギリ等に加工されてしまうので家で使う包丁や貝の口を開けるためのナイフが不足してしまっていた。

困った彼らは代用品として黒曜石を選んだらしい。

しかし、力が強い男性陣が荒削りをし、女性陣が仕上げをすると包丁として普通に使えるほど綺麗な物に出来上がった。

ブームというのは時に新たな物を産み出すこともあるというものわかった。

・・・黒曜石を使った鏡だ。

 

「これは・・・見事じゃ!!」

まるでウォーターカッターで斬られたかのように真っ平らの半径10センチの円盤が光を反射していた。

私の顔もはっきりと写せるくらい綺麗な鏡が・・・50枚ほどあるのだ。

 

(これは良い拾い物をしたかもしれんの。)

私はこの鏡のようにを磨ぐ技術を推奨した。

 

(今は効果が薄いが、鍬等の日用品も日頃から磨くようになれば道具の寿命も延びよう。

それが正しいのじゃ。)

神界で芳香が受け入れられないものもあった。

それが大量生産大量消費である。

 

(もったいない。多少の損傷なら修理すればまた使えるのに・・・。)

芳香は古くから引き継ぐ日本人特有のもったいない精神が特に強かった。(神界では貧しい部類に入っていたことも関係ある)

そのため大量生産大量消費は必要とわかっていてもどこか嫌な気持ちになることがあった。

 

(まぁ使い捨ての物は仕方ないのじゃがな。)

 

〔西暦40年冬〕

・・・人が進化しました。

9世代目となる子供達が大人になったことでその異常性が見つかった。

男女共に真冬でも半袖で普通に生活し、霜焼けにも凍傷にもならないのだ。

おそらく耐寒性を身に付けたと見える。

ただ、目に見える違いは女性の髪が伸びるのが早いだけで、男性は屈強な筋肉が高速に震えることで体温を保っていると思われる。

 

〔西暦45年春〕

 

「人口も5000人を超えたところじゃ。そろそろ本格的に行政に関する施設・・・村から町いや、都市として機能できるようにするのじゃ。」

 

「でもお母さま。それだと区画の整備をしっかりしなければならなくない?」

 

「あのなー。私はそのためにあまり西側を空き地を多くしたのはその為じゃぞ。・・・で、作るに当たってレンガと生産量が増えてきたセメント、コンクリートブロックを使いたいのじゃ。だから改築する規模が少なくて済むように始めから部署を決めたいのじゃ。」

こうして政都の構想が始まった。



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西暦46年~

〔西暦46年秋〕

約1年半もかけて構想を決め、作り始めたのは結局146年目の収穫も終わった晩秋になっていた。

 

「あそこを深く掘ってくれ。固い地盤が出てくるまで掘るのじゃ!!」

木造の家とかはそこまでする必要がないのだが、レンガや石材等を使う場合建物が崩れることは許されない。

そのために地震が多いこの土地ではしっかりとした地盤が出てくるまで掘り下げ、そこに建物を建てる方法を考え出した。

これは鉱山で働く者達の知恵だった。

鉱山ではしっかりとしたところに木で補強していかないと崩れて生き埋めになる可能性があるため、何人も犠牲にしながら(後々回収されてキョンシー化)技術を高めていった経緯があった。

建物の下敷きになるのが自分達の子供だと嫌なので、私達に計画途中に直訴したのだ。

彼らの意見を取り入れつつ、地盤を固めるのだけでも100人かがりで1ヶ月、木材で形だけ作るのにさらに3ヶ月かかってしまった。

雪の中での作業というのもあるが、大型建造物に対する経験が皆無だったのが一番の原因だった。

 

(困った。農業をする時には人を割くことができん。・・・また私だけでやるのか。)

農業の時に私がやることは田植え、種まき、苗植えをそれぞれ3日間・・・計9日参加することで、手入れはそれ専門の者達がやることになっているため、私は暇になるのだが、他の者達はそれぞれの仕事、物の運搬、開拓、勉強と忙しいため私だけでやることになる。

 

(まぁ私の仕事のようなものじゃな。・・・建築以外だと道の舗装かたたら吹き、磁器作り・・・あれ?けっこう忙しいのじゃ?)

そんなこんなで1人でレンガを積んではセメントで接着する作業を繰り返した。

 

〔西暦47年春〕

結局1年かかってやっと屋根の手前まで進めることができた。

 

「いやーーー!!疲れたのじゃ!!秋と冬に手伝ってもらってこれじゃ。・・・さて、一番難しい屋根はまずコンクリートで固めるのじゃ。」

私はセメントを固めて薄いコンクリートタイルを作り、土台の木上に並べて、そこにコンクリートを流して固めていった。

 

「乾く前に最後のレンガタイルを並べて・・・できた。・・・おっと!?落ちる・・・あぁぁぁ!!」

25メートルの高さから落下し、私のつけていた補助装置の左腕の部分が破損してしまった。

これにより左腕が曲がらないので仕方なく今まで貯まったグローブンと壊れた左腕の補助装置を神界に送って修理してもらうことになった。

 

「あ、安全第一じゃな。」



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小話 村人の日常

普通の農民Aさんの場合

 

おらの朝は日ので前に始まる。

起きたら横で寝ている妻子を見てから長屋の外にある共有の井戸で顔を洗ってから(汲み取り式)便所に行って用を足し、再び井戸に戻って仲間達と共に田畑に向かう。

 

「お!?おはようですぅ。今日もがんばるですぅ!!」

朝どんなに早く畑に行っても翠星石さんは必ずおら達よりも早く作業を開始している。

彼女は口調はツンツンしているが、農業に関しての知識の量は凄まじく、おら達も勉強してるがなかなか追いつけない。

・・・というか追いつく前にだいたい逝ってしまう。

そんなこんなで作業を開始しする。

 

コケコッコー

鶏が鳴き出す頃に一旦作業を中断して朝食を食べるために食堂に向かう。

おらの妻もそこで働いている。

 

「今日のメニューは・・・お!?朝から海老の天ぷら定食があるだ!!」

 

「おいおい、山芋と牛肉で作ったハンバーグ定食だべ。」

仲間達と会話しながら最近食堂の後ろの壁に立て掛けられてある黒板に書かれた日替わりのメニュー5種の中から1つ選ぶ。

仲間達と食べていると横に市場で働いている若いにーちゃん達が座った。

 

「にーちゃんや、何かお勧めの品はあるかい?」

 

「あ、うちの所に入った将棋という玩具はどうでしょう。説明書をつけますから。」

 

「んじゃあとで子供連れていくべ。」

こんな感じて食事中は情報交換したり、世間話をするのが礼儀だ。

食事が終われば仕事に戻る。

太陽が頭の位置にきたら仕事を終える。

最近は便利になっているため日時計や水時計、砂時計で時計師と呼ばれる者に今の時間を聞くと10分単位で時間を教えてくれるし、ちょうど12時になると大きな指笛を鳴らして政都を歩いてくれる。聞こえたらその人も指笛を鳴らしていく。

だいたい10分くらいで政都じゅうに時間が伝わり、そこでおらは家に帰るか、長老の家に行って仲間達と本を読むか、熊を倒しに行くか、妻子と市場行って買い物をするかだが、今日は子供達を連れて市場に行った。

将棋を買ってやると嬉しかったようですぐに家に帰って子供達で遊び始めてしまった。

おらと妻は微笑みながら、その様子を見ていると風呂の時間になったので夢中に遊ぶ子供達に風呂だと言って中断させて風呂に向かった。

政都には共有風呂が14ヶ所もあり、すんでいる場所に近いところを利用する暗黙のルールがある。

風呂の作りは全て同じで、露天風呂、サウナ、釜風呂、足湯と体を洗うスペースになっていた。

体を洗うスペースには石鹸が常時置かれており、冬の農閑期に大量に作るため、石鹸が無くなることはなかった。

風呂から上がって家に帰れば家族の時間だ。

子供達に今日の出来事を聞いたり、夕食を食べたりして1日が終わる。




刻を使おうとしましたが、曖昧な部分が多いため時にしました。


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西暦47年~

〔夏〕

左腕の補助装置の修理に15万グローブンが飛んでいったが無事に修理されて戻ってきた。

 

(やっぱり片腕が動かないと生活が厳しいのじゃ。)

そんなことを呟いているが、今度は内装に取りかかった。

 

「えーと・・・ここに椅子か。木の机はここで・・・床はい草で作ったカーペットでよいか。・・・部屋と廊下全部じゃと足りるか?・・・足りない分は毛皮を使うしかないか。」

 

「忙しいんだから早くしてよね。僕も忙しいんだから。」

 

「そうよ。私も蒼星石も仕事の合間に抜けてきてるのだから。」

 

「すまんのじゃ。蒼星石も真紅も感謝しとる。あとは2階部分だけじゃ。」

 

〔秋〕

ついに行政を行う建物が完成した。(全校600人くらいの中学校をイメージしてください)

屋上を合わせると25メートルにもなり、1階と2階に分けられている。

1階は200人が入る討論場、今は食堂として使っている場所、初の上下水道を完備したトイレ、今は備蓄庫として使っている部屋(大きさは40人規模の教室)5つとなっていた。

2階は部屋が12室あり、図書室以外は今は使ってないが、すぐに埋まると思うので空き部屋となっていた。

完成した時は全人口で祭りをおこなって賑わった。

 

〔数日後〕

 

「とりあえず最初は水銀燈達をよんで各々がおこなっていたことを纏めた資料を移すことから始めんとな。」

ということで彼女達を呼び出して資料の整理を始めた。

 

「ヒナはここで資料を纏めてるなら現場に行ってさらに効率化した水流採掘をみてくるの!!」

 

「雛苺落ち着くのじゃ。ここで資料を纏めれば資材の無駄がなくなるし、設計図を纏めれば機材を作れる人が増えて結果的に効率化できるのじゃ。皆を見てみろ。最初から纏めていた翠星石と蒼星石は終わり次第無駄を無くす作業に入って効率化をはかっている。しっかり纏めてなかった水銀燈と真紅は無駄がたくさん見つかって修正しながら効率化をはかっておるのじゃ。雛苺も今頑張れば後々に繋がるぞ。」

 

「う、うにゅ~・・・仕方ないの。」

 

「雛苺私も手伝うから頑張るかしら。」

 

「お母さん・・・あれ?自分のは終わってるの?」

 

「何十年前に纏めて教科書にしたから大丈夫かしら。ほらここ計算がおかしいかしら。」

 

「ホントなの!!ありがとうなの!!」

微笑ましい光景だが、水銀燈と真紅は悲惨なことになっていた。

 

「真紅前の資料引っ張り出して!!」

 

「その資料は前に水銀燈が訂正するって持ってたんじゃ?」

他の者達は3日で終わったが、水銀燈と真紅は3週間もかかって終わらせた。



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西暦48年~

〔西暦48年春〕

建物の中身を北海政府とし、1年が経過する頃には機能し始めた。

まずそれぞれの部署を作り、自分達の弟子や、金で引っ張ってきた者達をそれぞれの補佐にあてることで活動が活発化したのだ。

部署は6つあり政務、教育、経済、流通建築、畜産農業、鉱物海産となっていた。

ただし、私が政務と流通建築は兼任しているためキャパオーバー気味になりつつあった。

 

「大工の者達を引っ張ってきたから建築はそいつらに任せてるから大丈夫じゃな。政務は・・・数年後に誰が一番村に貢献しているかを聞く投票をおこなおう。最初の数回は物で釣るが、数回後から政治に参加してもらおう。代表者会議じゃな。・・・いや、政治についての集会を開き、質疑応答をして誰が良いか選ぶか。それを何回もしていれば政治の概念が芽吹くじゃろう。」

とりあえず私は両方することにした。

最後に流通は私が道をひく場所を決め、それを建築にぶん投げた。

他に大八車の製造と保管の管理は私がするが、それをひく牛については畜産にぶん投げた。

蒼星石に文句を言われたが、色々と理由をつけて言いくるめた。

 

〔西暦50年秋〕

有言実行・・・私は人々に私の補佐をするための人が欲しいと言って何回か具体的な内容を教える集会を開きながらこの世界に来て150周年、集落ができて140周年ということで自腹きって村で一番真面目に働いていたか投票をおこなった。

投票の仕方は簡単で各食堂の黒板に自分以外の1人だけ名前を書いてもらった。

多少の不正は覚悟していたが、村人同士が不正を見張ることでトラブルはなかった。

少し離れた海沿いの村と火山近くの村でもおこなった結果、金糸雀が選ばれた。

理由として金糸雀が子供の時に一度は絶対に授業を受けていることと、教科書等には作者として絶対に金糸雀の名前が入っていたからだと思われる。

ちなみに私は2位、3位は海沿いの村に住む凄腕の漁師だった。

ということで金糸雀に私から米3俵を、3位の漁師に米1俵を渡した。

3位までは5年間再び選ばれないとして、1年後にまたおこなうことにした。

 

〔西暦68年冬〕

不思議なことがおこった。

3徹で眠い目を擦りながら食堂で食事をし、眠気を冷ますために井戸に向かう時に何かに躓いて転んで落ちそうになった。

慌てて起き上がり、躓いた物を見ると・・・マント被さり、胸に小さな十字架を突き刺された男性の死体だった。

 

「なんじゃこれは?」

私は気になったので、水子を数人分使って彼をキョンシーにしてみることにした。



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異様な者

【家】

 

ガヤガヤ

私の家の周りでは私が運んだ死体が誰なのか議論しているようだが、髪が金髪に近い茶色?なのは誰も見たことがないし、しかも顔が自分達とはかけ離れていたので、結局キョンシーになってから誰かの気候という感じに落ち着いたらしい。

 

グチャグチャ

 

「・・・はさみを。」

 

「は、はい!!」

医学の進歩のためにキョンシーにするときに内臓の位置を医者になりたい男女を付き添うにする決まりを作っていたので、アシスタントの代わりをしてもらっていた。

 

(・・・脳の部分が何かに蝕まれておるな。・・・一分切り取るしかなかろう。保護液(万能薬)を使えば時間はかかるが修復するじゃろ。)

約13分で終わらせた。

 

〔2日後〕

脳の一部を摘出したからなのか意識を取り戻すのに結構な時間がかかっている。

 

「体はキョンシー化したな。形がしっかりしたのじゃ。・・・綺麗な金髪に背は・・・少し小さいか。エメラルドのような色をした目じゃな。・・・まぁ肌の青紫色も2~3年で白くなるとはいえ・・・肌だけは似合わんな。」

 

「なぜだ・・・なぜ余が追われる・・・なぜだ!!なぜ裏切ったティゲリヌス!!」

ガバ

 

「おはよう。気分はどうじゃ?」

 

「・・・最悪だ。・・・なぁ青紫の女。」

 

「失礼な、私には古宮芳香と言うながある。」

 

「・・・芳香、余のローマはどうなった!!」

 

「・・・この世界にもローマがあるのじゃな。・・・はっきり言って知らぬ。」

 

「・・・ならここはどこだ?地獄か?」

 

「落ち着くのじゃ。これでも飲め。」

 

「・・・いただこう。」

私は牛乳に蜂蜜を少し入れた者を彼女に渡した。

 

「・・・ほほう。素晴らしいな、このカップを作った者は。」

 

「それを作ったのは私じゃ。成功するまで年単位でかかったがの。・・・今は量産品じゃ。」

 

「ほぉ!!これが沢山あるのか!!」

 

「これだけではない。・・・これも持ってみろ。落とすなよ。」

 

「・・・!?ガラスか!!しかしこれは型を使ったのか。」

 

「見ただけでわかるか。」

 

「余はこういうものは大好きだ。好きだからこそ調べる。」

 

「なるほど。・・・そろそろお主の現状を話すのじゃ。良いか?」

 

「あぁ。」

 

「まずお主は死人じゃ。それを私が復活させた。ただ、性別が女になっていること、容姿が今までと全然違うのは気を付けて欲しいのじゃ。身体能力は数倍から十数倍になっておる。ここはお主らが住んでいたローマから見て世界の裏側と言えば良いか。これは後で詳しく教えるのじゃ。・・・質問は?」

 

「なぜ余がここにいる?余はローマに埋められた筈だ。一回生き返った時に見たぞ!!」

 

「胸に十字架が刺さっていた。これじゃ。」

私はそれを彼女に投げ渡した。

 

バチ

「ツ~!?」

十字架は彼女に触れると静電気の様な感じになり、彼女が床に落とすと紋様が浮き出てきた。

 

《暴君ネロ・クラウディウス、イエスの名のもとに神罰を喰らわす。神聖なローマから世界の裏側に行くがよい。》

 



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暴君ネロ・クラウディウスの本心

「ほほう。・・・ネロ・クラウディウスと言うのじゃな。」

 

「・・・あぁ、そうだ。余が皇帝ネロ・クラウディウスだ。」

 

「・・・まぁそう言われても私には誰かわからない。そっちで偉くてもこっちではただの死人じゃしな。」

 

「・・・もう少し敬ったらどうた?皇帝だぞ。」

 

「私から見たら神力もないただの芸術好きの少女じゃ。・・・敬うのはヤマメ大統領だけで十分じゃ。」

 

「・・・それは絶対神なのか?」

 

「いや、ヤマメ大統領は神の中でも最上位中の末席でこの世界の最高管理者、私がそのところで管理という労働をしているの。」

 

「・・・なんかずいぶんと人間のような世界だな。・・・ん?芳香が管理者?」

 

「一応な、出稼ぎ労働者と同じじゃがな。」

 

「ふふ、ハハハハハ!!傑作だ!!出稼ぎ労働者なら出身はさしずめ天界か?」

 

「神界ってところだね。そこの幻想自治区が正確じゃな。天界はその幻想自治区にあるぞ。」

 

「自治区?」

 

「国の中でも独自の法、治安部隊の数を決められるところじゃ。紫という賢者がおさめておる。」

 

「ということは1神ではないのか!?」

 

「沢山いるぞ。3000万人くらいは。」

 

「・・・私の考えは合っていたのだな。」

 

「キリスト教でも迫害したか?あの十字を見れば何となくわかるが。」

 

「いや、余をあまりにも悪く言うから燃やした。」

 

「怖いの。・・・で本音はなんじゃ?」

 

「1神にすると別の神を崇めていた民衆が暴動を起こして再生したばかりのローマ帝国が崩れるからな。」

 

「暴君ではないな。」

 

「当たり前だ。・・・年を取ると考え方が固まって自分では無いような感覚になることはあったが、市民・・・いや、国民のために私は政治をしてきた。胸をはって言える。私生活はダメだったがな。」

 

「・・・ネロといったなお主の考え方が固まってしまった原因はこれじゃと思うぞ。」

私はネロの白くなった脳みその部分を皿に乗っけていた。

 

「これは・・・。」

 

「触るな!!・・・これは水銀じゃ。脳を蝕む物質でお主の頭の中にはこれが蓄積しておった。」

 

「余の中に・・・か。」

 

「・・・思い当たる節があるのか?」

 

「いや、年をとる毎に親友と絶交したりしたんだが今思うとなんとも幼稚であったと思ってな。そんな簡単なことで癇癪を起こしていた原因かもしれないと・・・な。」

 

「まぁとりあえずこれからどうしたい?ネロ?」

 

「・・・そうだなここについて知りたい。」

 

「ここか?ここは北海道の政都という場所じゃ。都都呼ぶには数が少なすぎるがいずれそれぐらいの数にはしたいと思っておる。」

 

「なら政都を見て回りたい。案内してくれるか?」

 

「すまん。私よりも適任がおる。金糸雀という女性じゃ。・・・金糸雀!!」

 

「待機してますから大声を出さないで欲しいのかしら。」

 

「こやつが金糸雀じゃ。彼女はネロ。案内を頼む。」

 

「カナに任せるのかしら!!」



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西暦49年~ ネロ有能

〔西暦49年春〕

約2ヶ月でネロもだいぶここに馴染んだようで、ここの和風と洋風、ローマの一部を融合した独自の文化を褒め称えた。

しかし道の舗装技術と上下水道の技術、家に対する技術は不満のようで、すぐに改善案を出してきた。

 

「・・・若いの自分で集めてやるんなら資材は出すぞ。・・・ただ家だけは無理じゃ。ローマ風にすると地震で崩れるからな。」

と言って家だけはいじるのをやめてもらった。

地震は彼女もすでに経験しており、その時は震動4くらいだったが天変地異の前触れとか叫んでいたためか、無理してまで改善使用とはしなかった。

 

(影でこそこそと耐震を備えたローマ式の建物を作ろうと頑張っておるが・・・諦めてくれんかの?)

彼女の努力が実るのかはまだわからない。

 

〔秋〕

収穫期が過ぎたためネロは動き出した。

まず現在舗装してある道のくぼみを利用し、そこに鉱山や炭鉱の採掘中に出た砕石を道に敷き詰め、このときまでに私が手伝って作ったある程度の量のセメントを流し込んだ。

そして表面だけ平らで分厚い石をセメントが固まる前に並べ、最後に横を止め石を並べて完成させた。

 

「金は払う。どんどん敷いていけ!!」

そんな金を渡した覚えはないが、彼女は私が自由に使ってよいと許可した窯を使って紅花を使った紅色磁器と吹き技法と呼ばれるガラスの加工法に薄い青色をつけた湯飲みと皿を市場で売って資金にしていたようだ。

 

(あれ、あやつが作っていたのか。)

私にも気づかれることなく作り、そして自身がしたいことのために金をふんだんに使う。

それは本当の政治家であり、芸術家でもあった。

経済を担当する水銀燈と真紅はまた金が足りないデフレになるかと怖がっていたが、そんなことはおこらず、金の回り方はより速くなったので好調だった。

 

(たぶんこれも計算しておるのじゃろ。・・・すさまじいな。こやつに政務を任せよう。私は少し趣味に走りたいからな。)

改修工事は約6ヶ月で全部の道がローマ式になり、物流はさらに活発化した。

 

〔西暦50年夏〕

ネロは政務は断ったが、物流建築の部署には積極的に参加したいと言ったので部長にした。

理由は予算を与えればそれだけ見返りが大きいし、彼にはまだ上下水道の整備の拡大、ガラスの量産と磁器の量産のための工房の建築等々が残っているからだった。

 

「余は政治も芸術の一種だと考えている。現に芸術作品と同じで繊細に扱わなければすぐに壊れてしまう・・・それが政治だ。」

と部長就任時に名言を残している。



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西暦52年~

〔西暦52年春〕

ネロは上下水道の工事の準備や自身が作っていた着色技術の伝授で1年が経過してしまったが、この間に各部署との摩擦をなくす努力をしていたようだ。

その努力によって畜産農業から牛のできる限りの貸し出しの約束を取り繕うことに成功したようだ。

 

「さすがじゃな。数年後に政務は渡すからな。」

 

「だから余はあまり政務はしたくない。人には向き不向きがある。余は趣味に全力をつぎ込むタイプだから全体の利益を考える政務は苦手なのだ。」

これだけ言っても首を縦に振らないので、人気もあり、全体をよく考えている金糸雀に政務を任せるように考えを変えた。

 

〔夏〕

ネロが本気を出した。

上下水道の整備を一気に始め、約2年契約の労働者を雇って1年中作業させることができる者を75人集めることで作業効率は格段に上がり、区画ごと15人のグループに分けた分担作業も彼女は提案し、実行。

その効率の良さに効率房の雛苺も

 

「何でこんな簡単なことを発見できなかったの!!」

と驚きながらもすぐにまねをするほどだった。

 

「手を抜いたら賃金を減らすが、頑張れば増やすことを約束する。」

と言って士気を高めたり、現場が欲している道具を事前に用意する姿勢は働いている者達が感激し、さらにやる気を出す好循環になっていた。

 

「すさまじいな勢いで上下水道が整備されていってるのじゃ!!しかも地震に耐えるように工夫されておる。」

よほど地震がネロの考えに変化を起こさせたのだろうと感じた芳香だった。

 

「・・・しっかし人口が1万人を超えたが、最近双子や三つ子が産まれた報告をよく聞くな?戸籍は昔から有るから良いが、書き直す作業が増えてきているから早めに行動しないとな。」

 

〔西暦55年夏〕

最初は政都のみだった上下水道の整備を住民達と、安定した賃金が貰える若い労働者達の希望で結局今ある集落まで全てで作業をおこなうことになった。

それら全ての作業が1年の延長を含めた3年間で完了し、今後は編み目のように各家庭に水を供給できるようにするようだ。

ただ、水道ができても井戸が無くなることはない。

井戸は農業用水と水道から離れている家では使われ続けることとなった。

 

〔西暦60年秋〕

今年は米と大豆が大豊作で通常の1.5倍、米は約2.5万石、大豆は約0.45万石と異常な収穫量となった。

 

〔西暦61年秋〕

今年も昨年と同じくらいの豊作・・・これにより始まった。

第二次人口爆発が・・・。

 

「じ、人口出生率が86じゃと・・・!?」

これは今年産まれた子供の数を総人口で割って1000をかけることで計算でき、現代日本は1.46である。

しかし人口爆発は始まったばかりだ。




人口 11500人
動力水車300基
共同風呂29ヶ所
窯 8基
たたら吹き施設 8ヶ所
銅山 2ヶ所
塩製造施設 7ヶ所

田16000畝
ジャガイモ3900畝
小麦3500畝
大豆3000畝
菜種500畝
他 各種400畝
牛5300頭
鹿8900頭
鶏1220羽


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西暦70年~

〔西暦70年春〕

人口が2万人を超え、2万5000人にどんどんと近づいていく今日この頃、過去のデフレを連想した老人達は顔を真っ青にし、対抗策を考えていた。

 

「このままでは資金不足にまたなってしまうぞ。」

 

「私と水銀燈が計算したところ・・・今は好景気だけど逆転するのに5年以内と出ているわ。・・・硬貨不足になるのはさらに数年後だけど、人口が異常な爆発中だから計算がさらに縮まる可能性があるわ。」

 

「教育機関も悲鳴をあげているかしら。今はギリギリキャパオーバーになっていないけど、そろそろ臨時講師を雇って10年で元に戻るようにしているけど、これも大丈夫とは言い切れないかしら。」

 

「食料の方も備蓄が危険水準を行ったり来たりしてるですぅ!!・・・後で全員に提案したいことがあるですぅ。」

 

「僕からは鶏の消費のサイクルがしっかりしたから肉不足で困ることはないと思うけど、鹿の毛皮は需要量を下回る可能性があると言っておくよ。」

 

「金貨と銅貨の生産量を増やすことは現状不可能なの。・・・技術者不足と設備の数が足りないの。」

 

「余からは特にないが、これ以上物流を活性化させるのは不可能だと行っておくぞ。」

 

「問題が山積みじゃ・・・これはデフレになった時より酷いかもしれん。1つ聞くが、部下達は今回の騒動に対応できておるか?」

 

 

「キョンシーで最初の人口爆発を経験した商人・・・前は配給係りは対応できてると言えるわ。・・・だけど他は酷いものよ。」

と水銀燈が私に報告した。

 

「経験不足は仕方がないのじゃ。他の所も似たような感じか?」

これにはネロ以外の全員がうなずいた。

 

「・・・とりあえず翠星石の話を聞こうか。」

 

「開拓団を大量に設営するですぅ。現在の生活範囲は北海道全体の1%多くて2%くらいしか使われてないですぅ!!そこで各技術を持ったキョンシーを隊長として広い生活圏を確立させるですぅ!!開拓団が作った集落には始めは物々交換を推奨し、政都にいる過剰な労働力を食料や道具を一緒に送りつけることで5年間我慢してもらうですぅ。5年もあればしっかりとした道が繋がるですぅ。これを爆発が収まるまで繰り返すですぅ!!」

 

「・・・現状手詰まりじゃ。やるしかなかろう。・・・開拓団の人については金糸雀と私で何とかするのじゃ。ネロは道の延長を計画してほしいのじゃ。水銀燈と真紅は開拓団に出す物資の調達、翠星石と蒼星石は生産量の拡充を急いでほしいのじゃ。雛苺は鉱山資源の開発を始めてくれ、銀という資源・・・が確か前に見つけた銅山にあるはずじゃ。探してみてくれ。色はわかるな?」

 

「うにゅ~。まぁ似た感じの鉱物は捨てずに貯めているからすぐにサンプルを持ってくるの。」

 

「頼むのじゃ。」



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西暦71年~ 開拓団始動

〔西暦71年春〕

1年かかったがようやく準備が整い、全50組5000人を第一弾として送り込んだ。

北に進むのが10組、海沿いを東に進むのが2組、海沿いを西に進むのが4組、火山の村からさらに西に進むのが26組、銅山から東に進むのが8組となっていた。

 

「・・・辛かったのじゃ。開拓団参加を希望者を募りそれが人数割れ起こして・・・。」

 

「・・・。」

魂が抜けた顔をしている金糸雀も横にいるが、他の者達は気の毒そうにこちらを見ていた。

 

「と、とりあえず第一弾は出発したじゃないか。これを5年単位でするんだよね。」

 

「そうじゃ。地図を見てくれ。・・・この札幌ってところを第二の都にしたいのじゃ。流通の中心としてな。」

 

「だから西の比率が片寄っていたのだな。」

 

「だからネロも西側を始めに道を整えてくれないか?北と東の方は平原が続くからの。西は一回山脈を越えなければならん。」

 

「余に任せろ。」

ただ、地獄はここから始まりだった。

雛苺からもらった鉱石に鉛と銀さらに亜鉛が含んでおり、そこから灰吹法(ネロがやり方を知っていた)を近くに何もない場所で改良を重ねながら銀の抽出が開始された。

副産物として銀でも鉛でもない亜鉛が出てきたのだが、これを低温で銅と混ぜた黄銅が出来上がった。

しかし現状銅貨不足が深刻な問題のため黄銅にして何かに使うなら銅貨にするので数百年使われることはなかった。

 

〔西暦76年夏〕

第二弾が出発、1年間の人口増加が3000人を突破し、いよいよ収拾がつかなくなってきた。

北海道政府内では睡眠時間が長くて4時間とおかしな展開だ。

第二弾の人数は2000人と規模を縮小したが、第一弾の成果は5年目でやっと成果が上がり始めた。

最初の頃は熊との戦闘で武器が壊れたから送ってくださいという感じでただでさえかつかつの物資を捻り出すだけでそれによって困る政府で働くしたっぱ達の眼光に胃に穴が開くような気持ちだった提案者の翠星石はこの結果に安堵した。

 

(今は収支がとんとんの集落がほとんどじゃがあと2年もすれば過剰資源が出てくるじゃろう。それが達成できるように影で品種改良を繰り返す翠星石の姿を見てきたからな。・・・問題は鉱物資源が採掘可能になるのが15年後になりそうなところじゃ。・・・クー!!頭が痛いのじゃ!!)

 

〔西暦81年春〕

第三弾を出発させ、第一弾から農作物が送られてくるようになったので食料問題はある程度解消しだが、増え続ける人口の原因を知ったらあまりに酷かった。

 

「体内に子宮が3つとか・・・それは三つ子が沢山できるのじゃ!!」

 



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西暦81年~

「で、この結果を報告してくれたのは誰なんだい?」

蒼星石が私に訪ねると

 

「はかせだよ。」

と言いながらいきなり扉が開いたと思ったら小さい女の子が現れた。

 

「「「・・・誰?」」」

水銀燈、真紅、ネロの3人が突っ込んだ。

 

「金糸雀の部下で雛苺の友人であるはかせじゃ。キョンシーで、世代は第四世代じゃ。」

 

「よろしくね!!・・・で、私が事故で死んでしまった若者をキョンシーにしたときに女の子だったんだけど子宮が3つあったんだよ。」

 

「・・・で、はかせは対策とかも考えてる感じか?今入ってきたってことはそうじゃろ?」

 

「思ったんだけど、人口を調整するから今回のような種を残すための進化をしたと思うのね。だから時間の経過に頼るしかないし、下手に手出しするともっと酷いことになるから考えても仕方がないが結論だよ。私だけじゃなくて下の皆はそう思っているのが大半。長老が調整することに凝ってるのが皆不思議がってるよ。」

 

「いや、調整する方が一番良いと思っていただけじゃ。」

 

「なら戸籍関連は別として抑制するのはすぐにやめてね。・・・吉報もあるよ。人間は退化もするからね。種を残さなければいけないと思わせないようにしてね。それが爆発を止める方法だよ。それじゃあね。」

いきなり出ていってしまった。

 

「・・・抑制を撤廃するぞ。用意をするから部屋を空けてほしいのじゃ。」

この動きによって約30年後に人口爆発は収まることになる。

 

〔西暦96年目夏〕

総人口が10万人を突破した。

約25年で人口が4倍に増えたのである。

今もなおネズミ算・・・とはいかないが似た勢いで増え続けている。

そして銀貨の供給が開始されたのはこの年である。

 

「これでやっとデフレの恐怖に怯える日々からの脱却に目処が付いたのじゃ。・・・しかし第二の都予定地近くで金山(銀も産出)が出るとはな。」

豊羽鉱山に集中していた銀の採掘と、砂金のみだった金の採取が安定化し、その金山(以後恵庭鉱山)の保有していると見られる金と銀だけでも現在必要な通貨600万人分を用意できると見られるほどなので恵庭鉱山の凄さがうかがえる。

採掘量の拡大と精製のために開始団の規模をさらに縮小し、その分恵庭鉱山周辺に移住させた。

結果、政都5万人に対して第二の都予定地札幌では人口が3万人に達しようとしていた。

・・・いわゆる北海道政府が推し進めたゴールドラッシュである。

この動きの結果、恵庭鉱山より4キロ北東に光竜鉱山という化け物金山が発見されることになる。

恵庭鉱山の数十倍の鉱物資源があると見られている。



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西暦100年~

〔西暦100年春〕

2つの金山を中心とした第二の都札幌の開発が開始した。

この町は最初完全に和風にしようと芳香は思っていたのだが、ネロが大量の資料と格闘しながら第二のローマを創ろうとしていたため、私の和風構想は誰にも話すことなく封印し、芸術、流通、経済の3つを中心とした円形都市となった。

 

「余はこういうことがやっぱり馴染むな。」

ネロいわく札幌開発はローマの大火災の後の再建よりも楽しいらしい。

 

(・・・北海道が各国の文化を融合した島になりそうじゃな。)

 

〔西暦102年冬〕

人口が20万人を突破した。

ここで水銀燈が大発見をする。

実用的な紙(和紙)の作り方を発見したのだ。

作られた理由はメモに使っていた黒板では記録を残すのに不便だったからで、なぜ発見できたかは彼女の尊厳のために黙っておくことにする。

これにより教科書用に生産性の低い紙ではなく、一般にも紙が使われ始め、各自が発見した技術を本にすることが流行り出す。

それによって図書館が新しくできたり、こうした発見の中から有益な物を選別してわかりやすくまとめ、販売する文屋が出てくることになる。

 

〔西暦110年秋〕

札幌は10年目でとりあえず完成した。

規模は政都と同等だが、市場の数等は圧倒的に札幌の方が多かった。

札幌開発の影響で政都と札幌の間にある道には1万人規模の町ができ、さらに消費地が近い関係で田畑の充実化にも成功した。

翠星石が提唱した政策の成功である。

ただ、この成功で下の役人達は自分達が白い目で翠星石を見ていたことを気にしてしまい責任を功績で埋めるために開拓団の人員を再拡大をした。

後に歴史評論家達は賛否両論になる北海道東西南北問題である。

その内容がわかるのはあと約100年後である。

 

〔西暦112年春〕

尋常ではない勢いで増えていた人口にやっとブレーキがかかり始めた。(それでも出生率は50~60、年間に12500人産まれているのだが)

それによって北海道政府の仕事は少し落ち着くことになり、政都内の再開発がおこなわれた。

農地が少ない北側と南東を伸ばしていき、途中で伸ばした場所を連結させるドーナッツのような都市にするつもりだった。

 

(都市設計ミスったのじゃ・・・畑を潰してしまうと再生に困るし・・・結局ドーナッツ型が安定してしまったのじゃ。)

ここに世界でも珍しい都市で畑を囲む都が誕生した瞬間だった。

 

〔西暦134年秋〕

開拓団の活躍のお陰で北海道全体の20%を生活圏にすることに成功した。

人口も50万人も超えそろそろ悪人が出るかと思われたが、生活が安定しているので穏和で下手な悪事に手を染めるなら勉強して役に立てという考えが一般で、悪事といっても買い物でまとめ買いし過ぎて他人を困らせてしまったくらいだった。

・・・後にこの評価は一変することになるが、まだ芳香達は知らない。



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西暦136年~

〔西暦136年春〕

政都の再開発をする傍らで新たに工房や窯の大量に建造した。

またこの建造の責任者に金糸雀をあてた。

これである程度成功してくれれば金糸雀を政務にあてられると私は考えていた。

 

「よろしく頼むぞ・・・金糸雀。」

 

「カナに任せるかしら!!」

 

〔西暦137年冬〕

・・・金糸雀に任せた工房と窯の建造計画は微妙な結果に終わった。

約2年で計画の最低ラインはできたものの、建造中に火災が起きたときに誤った指示で死者を出したのがいけなかった。

金糸雀はこの件で前のような人望が厚いリーダーとは見なされなくなってしまった。

・・・しかし依然として人気はあり、教育の部長から外れることはなかったが、政務を任せることは不可能になってしまった。

 

(・・・仕方がない。辛いが私がもう少し政務をしていよう。)

 

〔145年夏〕

北側の海岸に開拓団が到達したとの報告を受けた。

それによってまた道の整備が急がれ、大量の労働者をネロが集めて投入した。

この頃になると政都は10万人都市となり、札幌が5万人、1万人以上の町が6つとなった。

さらに椎茸等の一部のキノコ類の栽培に成功し、食卓がさらに豊かになっていった。

 

〔西暦160年春〕

この年に私達は一大決心をした。

税の導入である。

 

「なるべく負担にならないようにしなければいけないのじゃ。」

 

「消費税と湯銭と窯のレンタルだっけ?それで何とかなるのかい?」

 

「何とかなるわ。通貨の生産元は私達だから税率もなるべく低くするわ。・・・今回の税の導入は未来に必ず必要になるためのならしよ。搾取していると思われないようにしないといけないわ。」

 

「でも水銀燈・・・それよりも今は通貨の製造量を増やした方が良いって役人達は言ってるの。」

 

「雛苺・・・それは彼らが働きたくないからよ。開拓団を送り込むことを意識しすぎてこっちの仕事をサボりたいから言ってるだけだわ。」

 

「真紅そうなの!!あの野郎(はかせのことです)サボってたの!!ちょっとしばいてくるの!!」

ガチャ バン

 

カイギワオワッタ?

ハカセガサボッテイルコトガワカッタノ

エ?エ?

チョットコッチニクルノ

アァァァァゴフッ

 

「ただいま戻ったの。」

 

「具体的な税金はどうするのじゃ?」

 

「とりあえず消費税が1%、湯銭は銅銭1枚で10回入れる券を販売するわ。窯は2ヶ月単位で銀貨1枚とするわ。」

 

「・・・それくらいが妥当か。よし、すぐに税の導入を開始してほしいのじゃ。」

こうして世界で一番安い税ができた。



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西暦160年~

〔夏〕

税の導入は比較的スムーズに進んだ。

人々は反対するどころか自分達がお金をつかうことで町や人々の助けになれるという考えを持っていたようだ。

 

(・・・懐に金をしまい込むやからもおらぬし、役人達は多少のサボりたい願望はあってもそれは大きな目標のために動く・・・しかも失敗は隠すのではなく報告の上で取り返そうと努力する・・・今のところは理想的な役人じゃな。)

昔だが、神界でも役人の不正が発覚した時があったが、その罰が凄まじかったので誰も不正をしなくなったのは有名な話である。(神を堕天させてから誰もいない世界にある1粒の光る石を見つけるまで神界に帰れないという地獄のような苦痛の人や人類と未知なる生物の戦争中に自身の体を得たいの知れない何かに人体実験された後に味方なしで勝つことができたら神界に帰れる等)

 

〔西暦170年冬〕

ガタが来ていたロボットの1体が壊れた。

可哀想なので私達は政府の地下にある個室の中に飾った。

このロボットの核の部分は一歩間違えれば危険だが、現状取り外すこともできないのでそのままだった。

 

〔西暦185年春〕

私は3ヶ月間旅をすることにした。

理由は私が政務を離れてもしっかり政治ができるかと、第三の都予定地として考えている渡島半島の視察をしたいと前々から思っていたからだ。

 

「留守を頼むぞ。」

私はそう言って政府から出ていった。

 

【渡島半島】〔夏〕

着いた頃には夏になっていた。

持ってきた食料の関係で1週間くらいしかここにいることはできないが、せっかく少し暖かくなってきたので私は海で泳ぐことにした。

 

「少し・・・体に刺激があるが・・・これはこれで面白いのじゃ。」

前々から海水に浸かったらどうなるかを試してみたかったので試してみたらピリッとしていて気持ちよかった。(イメージは炭酸風呂)

 

「さて・・・夕方になってきたのじゃ。そろそろ上がるか。」

私は海から上がって体を拭こうとタオルを取り出した時・・・バックがゴソゴソと動いていた。

 

「ネズミか?食料品が危ないのじゃ!?」

私は急いでバックをひっくり返すと

 

「・・・こんにちは~。」

 

「・・・。」

私はこの瞬間思考をやめ握りしめた拳を小さき者にぶつけた。

地面は30センチもへこみ、ゆっくりと手をどかした。

 

「ワハ(なにするですか!?)」

 

「・・・すまん、パニックになってしまったのじゃ。」

 

「・・・これ欲しい(これをくれたら許すよ。)」

 

「水飴か?・・・これでいいか?」

 

「ありがとう(あま~い。)」

今水飴を舐めている生物は全長10センチくらいで私にはわかるのだが言っていることの後に補足のように遅れて言葉が聞こえてきた。




(・ワ・)<おめぇのせきねぇでそ


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(・ワ・)<やあ

致命的な誤字を発見しました。
・・・正確には宮古芳香が古宮芳香となっていました。
誤字修正をおこなっているので明日は投稿なしです。
早く終われば書きますが。


水飴を舐めている小さい生物に私は聞いてみた。

 

「お主はなに者じゃ?」

 

「ようせいさんだよ~(コロボックルだよ。)」

 

「・・・コロボックル?」

 

「?(そうだよ大きな生物。)」

 

「コロボックルとはなんぞや?」

 

「むずかしい(う、う~んそれを説明するのは種族で禁止されてるし、今言えって言われても答えることは僕には無理。)」

 

「・・・む。」

 

「ええっと・・・(大きな生物はどんな生き物なの?)」

 

「死人じゃな。死んでる生物。」

 

「死んでる・・・え?(それは体が冷たくなって動かなくなることじゃないの?だったら大きな生物・・・君は違うのではないのかな?)」

私はコロボックルと言っている生物を手のひらに乗せた。

 

「つめたーい(え?暖かくない。)」

 

「私は生きてないのじゃよ。わかったか?」

 

「わかった(・・・信じるしかないね。)」

 

「一応さらに詳しく言うとキョンシーという種族じゃ。名前は宮古芳香じゃ。」

 

「・・・友達?(・・・ねぇ僕と友達にならない?)」

 

「別に良いがなぜそんなに慎重なのじゃ?」

 

「こわい?(昔からの言い伝えで友達になるのは信じることができると瞬時に判断できた時に友達になれるの。)」

 

「なんか・・・大変じゃな。」

 

「わは(僕だけじゃなくて種族の仲間にしたいくらい信じることができそうなんだけどね。)」

 

「ん?仲間か?」

 

「えっと(種族に紹介することができるの。)」

 

「・・・まぁ友達で良いのか?ここに来れるのは何十年後にもなるぞ。私達の都に来ないか?」

するとコロボックルは何か考えているようだ。

少しすると

 

「よんで~(僕の呼び名はD2だ。そう呼んで欲しい。・・・都に行くのは辞めておくよ。)」

 

「そうか・・・D2・・・また今度会おう。日も落ちてきたのじゃ。」

 

「そうだね。また。」

コロボックルのD2はそう言うとどこかに行ってしまった。

その後帰るまで会うことはなかった。

 

〔数週間後〕

帰ってみると私がいなくてもある程度の政務の運営はできたようだ。

ただ、私がいつも利害調整用に残していた通貨が全て消えていたので自粛しないで色々と活動したらしい。

お陰で鶏の孵化装置が温泉にあったり、猫や犬の飼育がおこなわれていたりした。

 

「・・・さすがに色々とやり過ぎたのじゃ。」

その後やり過ぎたしっぺ返しが彼女達を襲った。

具体的には水銀燈と真紅だが・・・。

予算不足になってしまい、結果財布がきつくなったので全体の予算が厳しく監視されるようになった。

後々内務省や軍は財務省が操っていると言われることになる。



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西暦190年~ 返済完了

〔西暦190年夏〕

開拓団の影響により知床半島も渡島半島同様に都市建設が始まった。

渡島半島は漁業と手稲鉱山と呼ばれる新たに発見された鉱山が主要産業だ。

特にニシンは大量に獲れるのだが、翠星石と蒼星石の2人が禁漁とサイズの規定をおこなった。

これは彼女達が未来でニシンがあまり獲れなくなることを知っていたからだ。

 

(よし、これで北海道の半分は生活圏になったのじゃ!!人口も100万人をそろそろ超えるのじゃ。)

ちなみにだがこの時の日本列島(北海道を除く)の総人口が約58万人のためどれぐらいこの人口を維持できるかが凄いかわかる。

 

〔西暦200年春〕

返済しなければいけない金が残り100万グローブンを下回った。

来年には完済できると私は見ている。

私はそのため、神界に1度連れていく人数を決め、10人抽選で決めた。

ただ、翠星石は1度神界で精密検査をしなければならないので絶対に連れていくことになり、残り9人を1年かけて抽選した。

 

「で集まったのがこのメンツか。」

はかせ、ネロが知り合いでは当たった。

他は役人が1人、農民3人、漁師1人、商人1人、大工1人だった。

 

「新しい発見をするしてみる~。」

 

「お主早死にだから見た目が8歳だからって言葉まで真似なくてもいいんじゃないのか?はかせ。」

 

「長老・・・まぁこの体で婆臭いことを言ってみなよ~、みんなドン引きだよ。」

という会話をはかせとしながら始めに来たトラックに乗って神界に戻った。

 

【神界 市役所】

「お、おお!!凄いですぅ!!」

 

(相変わらずすごい技術力じゃな。)

上を見上げれば空を飛ぶ電車やその駅だったり、半透明で様々な映像が流れているビルだったり・・・。

 

「さて、ここじゃな。」

市役所の場所は変わっていなかったが、建物の大部分が変わっていた。

 

「・・・来たのじゃ。」

 

『こんにちはガイド用ヒューマロイドの弦巻マキです。こちらの9名を案内させればいいですか?』

 

「そうじゃ。ちと時間がかかるから弦巻マキさんに従ってここを色々と見て回ってくるのじゃ。20万グローブン渡しておくからマキさんよろしくお願いするのじゃ。」

 

『わかりました。私に任せてください。』

翠星石を除いた9人は彼女に連れられて観光に移動した。

 

「さて、翠星石は・・・。」

 

「もう来てるよ。」

 

「早かったな橙。」

 

「この子で良いの?」

 

「翠星石の精密検査を頼むのじゃ。終わったら連絡して欲しいのじゃ。」

 

「わかったよ。また後でね。」

翠星石も連れていかれたが全員神界が凄すぎて唖然とした感じだった。

 

「まぁ至るとこに翼のはえた人や神、妖怪がいたら驚くか。」



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手続きと頭脳

【市役所内】

 

「・・・はい。確認できました。お疲れ様でした。返済完了です。」

担当の女性に書類とグローブン貯まっているカードを渡したことで私の仕事は終わった。

 

「どうしますか?また戻ってそちらで生活することもできますし、こちらで暮らしつつ荘園のようにグローブンだけ手に入れることもできますが?」

 

「いや、戻るのじゃ。どこまで発展できるか知りたいし、少し気になることもあっての。」

 

「そうですか。・・・あ、政策の転換で新聞とカタログが読めるタブレットを渡します。使い方はグローブンが入っているカードを差し込んでください。通信料は半分政府が持ちますがもう半分は自己負担なので気を付けてください。・・・ただ、カタログはインストールすればグローブンはかかりませんが、購入するときと売るときには手数料がいくらかかかりますので気を付けてください。新聞は1回のインストールにいくらかかかりますが安いのであまり気にしなくてもいいかもしれません。」

 

「助かるのじゃ。ありがとう。」

 

「いえ、こちらも宮古様の様な方達に支えてもらってるので・・・できる限りの手伝いはしますので引き続き頑張ってください。」

 

「・・・あ、税金はどうなるのじゃ?」

 

「ええっと・・・年収の1%ですね。」

 

「わかったのじゃ。」

聞きたいことを聞き終わると私は外に出て八雲総合病院に向かった。

 

「せっかくじゃし神界で通信料が低い今新聞をインストールするか。」

私はカタログや新聞を歩きながらインストールしていった。

 

「ん?へー。」

私が見つけたのは

 

《南無三クッキングの様々なカレーを作る村紗水蜜さんが行方不明となっている。現在八雲紫と魅上照の2名が異空間を探索しているため発見は時間の問題と見られている。

専門家の池上・・・》

 

「あの宗教家は料理家に転身したか。今度挨拶に行ってみるかの。」

南無三クッキングの本店は2つ星がつけられていた。

 

【八雲総合病院】

ちょうど着いた時に電話がなって検査が終わったと伝えられた。

 

「なんじゃ。病院のロビーで漫画でも読もうと思ったのに・・・。」

 

「病院はそういうところじゃないから。」

橙に聞いてみたところ翠星石の頭にはいじくられた痕跡が見つかった。

 

「色々とヤバイのは摘出済みだから安心してね。」

 

「助かるのじゃ。」

 

「まぁ金額なんだけど200万グローブンなんだけどいける?」

 

「予算内じゃ。ありがとう。」

 

「いえいえ。」

その後翠星石を引き取って翠星石が食べたい物をレストランで食べた。



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買い物

「頭に危険な薬物が溜まっているって言われた時は驚いたですぅ。」

 

「あれ?翠星石・・・その時麻酔で意識がないんじゃ?」

 

「体が痺れて動かなくて痛みもなかったですが、意識はあったですぅ。」

 

「辛くなかったか?」

 

「いや、もうなんか人間じゃないことの再認知くらいにしかならねーですぅ。」

 

「この結果はメモしとかないといけないのじゃ。今は無理でも体内に刺さったものを摘出する時に参考になるのじゃ。」

 

「そうなのですぅ?・・・お姉さん焼き鳥とラーメン追加ですぅ。」

 

「はいよ。」

どこかで見たことがあるような白髪の女性が翠星石の注文を聞いて料理を作っているけど気のせいだろう。

 

「しっかしラーメンが食べられるとは思わなかったですぅ。・・・ラーメンが普通に食べれるようになるのはいつになるですかね?」

 

「・・・スープの材料がまだまだ未熟じゃし、火力の制御ができないのじゃ。・・・17世紀後くらい待てばなんとか・・・。」

 

「ちょっと待つです!!それ1700年後ですぅ!!」

盛り上がっているため私は端末にメッセージが届いていることに気がつかなかった。

はかせがグループから離れていることに。

 

【種市場】

 

「さて、翠星石が行きたがっていた種の市場に来たのじゃ。欲しい種はあるのか?」

 

「・・・見たことない植物が沢山あるですぅ・・・せっかくだからこれとこれ・・・あとこれにするですぅ。」

翠星石が選んだのはリンゴの種と桃の種、茶の種だった。

 

「リンゴは禁断の果実、桃は仙果と言われるくらい神聖な物だからかけてみたですぅ。・・・いや、桃は早く実るから果樹としての役割に最適だし、リンゴは無農薬で作るんだったら神界で品種改良された物を使いたいという理由もあるですぅ。」

 

「・・・茶は何でじゃ?」

 

「良い茶碗があるんだから茶を飲みたいと思ったですぅ。」

 

「・・・じゃあこれに綿花を加えて欲しいのじゃ。青苧だけでは服の種類が増えんし、青苧が連続して不作になったら目も当てられないからじゃ。」

こうして私と翠星石は4種類の種を購入し(やけに桃だけ高かったが)、次の場所に行こうとしたときに端末にメッセージが届いていることに気がついた。

 

「・・・はかせがグループからはぐれたのじゃ。警察の方に行かなければならなくなった。」

 

「絶対なにか起こると思ったですぅ。」

 

「とりあえず行ってみればだいたいわかるのじゃ。神界に入る前の関所にGPSがつけられているのじゃ。ただ、他人のGPSを確認するには警察の許可を得られば・・・。」



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はかせの行方

【第22マザーマシーン製造施設】

 

「ここはどこ?・・・雛苺の作っている水車の部品みたいなのが沢山あるけど・・・。」

 

「おおっと!!ここから先は危険だよ盟友。」

 

「ん?」

 

「人間じゃなくてキョンシーだったか。まぁここから先は危険だよ。」

 

「・・・お姉さんはいきなり現れたけどなにか仕組みがあるの?」

 

「・・・ただの子供のキョンシーじゃないね。本性はまた別か。・・・私が着ている服のせいだよ。」

この後彼女・・・にとりと意気投合して色々と質問する機会に恵まれた。

・・・お互いにひねくれた部分が合致したんだと思われる。

 

【休憩室 麻雀卓】

 

カカ

「へー。科学もまだ全然進んでない世界か。」

 

「あるとしても初期の初期。水車を動力とした物くらいだよ。」

 

「ふ~ん。私がそこに行ったら産業革命簡単におこせるけど・・・ねえ、はかせは機械に興味ある?」

 

「あるある。こんな面白そうな物生まれて始めてみたよ。」

 

「・・・リーチ。で、じゃあこれをあげるよ。」

 

「リーチ・・・これは?」

 

「技術の基礎が書かれている本だよ。最近は電子辞書が多いけど私は手で感じる本の方が好きだから・・・で、この本はパット見薄いけど中身は5000ページ近くあるから読んでみてよ。小さき盟友よ。」

 

「リーチ一発。勝ちだよね。」

 

「本当に初めてだよね?・・・小さき盟友の勝ちだ。・・・休憩も終わりだ。私は戻るよ。出口はあっちだ。」

 

「ありがとうにとり。」

私はそこでにとりと別れ、出口を出ると芳香が待ち構えていた。

 

「神界に行く前に確認したのじゃ。・・・危ないからはぐれるなと。」

 

「えへへ。」

この後こっぴどく芳香に叱られた。

 

芳香視点

 

「全く・・・今度はぐれたら連れてこないのじゃ。」

 

「はーい。」

 

「反省しておらんの。」

その後3人で色々な本を買って他の8人と合流した。

 

「1日ガイドありがとうございましたなのじゃマキさん。」

 

『いえ、こちらも楽しい思いができましたので。』

 

「・・・ネロ大丈夫か?魂が抜けたような顔をしてるのじゃ!!」

 

「・・・ローマが負けた。神の国はこれ程なのか。・・・水がどこでも飲めて、食もこれ程上手いものはない・・・。」

 

「完全に上の空じゃな。・・・帰るぞ。」

こうして私達は帰った。

 

【政都】

 

「神界は学園都市のさらに数百年未来の世界のようだったですぅ。ただ、人間味が色々なところにあったから神聖って感じではなかったですが、居心地は最高だったですぅ。」

 

「それは良かったね。僕も行ってみたいよ。」

 



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西暦202年~

〔西暦202年冬〕

前から開発していた都市・・・知床が都市として機能し始めた。

知床は林業と砂鉄の採取が盛んで他には特徴があまりないが、山が沢山あるので後々に鉱物も出るだろうと考えられていたのと、千島列島の足場となるための都市だった。

 

(下に南下すれば日本人同士で殺し合いが起こる可能性が高いのじゃ。しかも政治が貴族中心のところだから理不尽な条件で生活圏を放棄しなければならなくなるかもしれないのじゃ。)

現時点でそんな戦争なんかしたらギリギリなんとか保っている物価の調整が破綻することと、貧富の差が一気に拡大してしまうことを私は恐れた。

 

(戦争を悪いとは言わないが、それによって発展できるかが問題じゃな。現状は意味がないし基盤が300年経った今でも不安定じゃ。だったら北に拡大してしまうのが一番じゃな。)

 

〔西暦205年春〕

渡島にて都市が完成した。

これで北海道の南西から東の端まで繋がったことになる。

北と南にも都市の建設が予定されているが、数年間は食料の量産のために開拓を勧めることにするのだった。

 

「最近はかせが部屋に閉じ籠ってるらしいが大丈夫なのか?」

 

「仕事の時も休憩中に本を読んでたですぅ。」

 

「食事はとってるから大丈夫だと思うの。」

 

「それなら良いのじゃが・・・。」

その後はかせが奇妙な行動をとるようになった。

夜の誰もいない時間帯にたまたま熊対策で見回りをしていた役人が水車小屋ではかせを発見したり、鉄を特殊な形で職人に注文したりしたのだ。

 

(少し顔が青紫色に近づいているのが気になるが・・・これ以上悪化したら見に行くか。)

私は少し心配になってきた。

 

〔西暦207年夏〕

ネロが今までよりもコンクリートの耐震、耐衝撃に強い物を産み出すことに成功した。

 

「余の理想は神界にあった。・・・しかし、神界の様な建物を建てることは不可能。だったら似せるしかなかろう。似せるにしても技術を蓄積させなければならない。・・・そこで北の新しい都市予定地に冬宮殿と本に書かれている設計図を元にして作ってみたいと思ってな。コンクリートの強化をしないと地震で崩れるから・・・。」

 

「そんな物を建てて何に使うんじゃ?」

 

「その宮殿自体を都市とする。最上階が4階に建物の真ん中にある中庭には市場を形成できるようにするのだ。4階まで水を汲める雛苺が完成させたアルキメデスポンプと風車を組み合わせた最新式のを使えば、上の階で水が無くて困ることはない。」

 

「・・・まぁやってみるのじゃ。止めはしない。」



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西暦210年~

〔西暦210年春〕

人口が150万人に到達した。

ネロが未来では稚内と呼ばれる場所に都市の開発をスタートした。

一般人でもこの頃になると何らかの土木作業に2~3年携わっているので作業効率は高かった。

 

(なんか16歳以降は3年間の土木作業をおこなうのが一般的になってきたのじゃ。・・・そんなつもりはなかったんじゃがな。)

ただ、4階建ての建物は初めてなのでその分は遅れていたが・・・。

 

〔西暦211年冬〕

 

「できたできた!!」

はかせが執務室に飛び込んできた。

 

「なんじゃ?はかせどうしたのじゃ?」

 

「長老見てみて、これ。」

 

「ん?」

はかせが渡してきたのは平べったい鉄と少量の黄銅でできていると思われる箱だった。

 

「なんじゃこれ?」

 

「えへへ。」

はかせは嬉しそうに懐から同じ箱を取り出すと箱を組み立てていった。

 

「ジャーン!!はかせ特製の折り畳み式蝋燭置きです。」

 

「お、おお!?すごいのじゃ。」

 

「でしょでしょ!!はかせ頑張ったよ!!」

 

「凄いのじゃ・・・って子供っぽく言うのはやめて本当のことを頼むのじゃ。」

 

「えぇ・・・これの凄いところはネジにある。見てよ。小さいでしょ。これを作る道具を作製する材料を集めるのに時間がかかってしまった。・・・しかし、ネジや見えないけど中にある歯車を使えば色々な物が作れる・・・しかも私は平行して設計図をいくつも作ってみた。・・・まとめると色々な役立つ物を作る基礎ができたってこと。」

 

「・・・なら道具を作りつつ、雛苺の手伝いを頼めるか?最近風車の歯車が上手く噛み合っていないらしいからの。・・・改善されればたたら吹きの鉄製生産量が増えるからの。」

 

「なるほど・・・。わかった!!やってみる!!」

元気よく飛び出していった。

 

(・・・歯車か。長屋でおこなっている家内制手工業を発展させて集団化させた方が良いな。・・・しっかし面白い民族じゃよ。性格は温厚、頭が良く力も強い、手先が器用で集団になると気分が高揚する・・・病気にもあまりならないか。)

私は家庭で作られている保存食を集団化して大量に作るための工場を各地に建てることにした。

 

〔西暦220年秋〕

工場といっても長屋の壁を取っ払って、そこに作業用の机を沢山置いたところだったが効果は絶大だった。

まず発展したのが瓶詰めである。

吹きガラスの製造ができる者の増加により瓶が作りやすくなったことと、はかせと雛苺が書いたネジの原理という本が教材になっていたことからねじ巻式の瓶ができたことだった。

多少の歪みも許されない事から職人魂に火がつきさらに精度が上がるガラス細工だった。



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西暦222年~

〔西暦222年春〕

次に発展したことが味噌の量産である。

 

(各家庭で作っていた味噌じゃが・・・集団で作ることで味のばらつきがだいたいなくなったのじゃ。・・・一番の発見は味噌を大量に作ることで樽のそこに液体・・・溜まり醤油ができていたことじゃな。)

着々と保存食が充実していった。

 

「これで役人達が必死におこなっている開拓団が活動がやり易くなるじゃろう。・・・やれやれ、役人達もまだまだ詰めが甘いのじゃ。」

そんなことを呟いているとカタカタと机が揺れた。

 

「・・・地震か?」

すぐに揺れは収まったが、外が騒がしい。

外に出てみると渡島半島辺りで噴火のようだ。

 

「・・・救助に向かう。現地に近い渡島の被害はわかるか?」

私は近くにいた役人に聞いた。

 

「すみません長老・・・わかりません。」

すぐに私は考えを切り替えて風向きを調べた。

 

(・・・大丈夫じゃな北西から来る風じゃ。灰は全て海側に流れる。・・・あそこら辺にある山は・・・有珠山じゃな。)

私は救助に向かう人員と物資を集めてすぐに出発した。

 

(第二陣の指揮は金糸雀がその次は水銀燈が準備しておる。)

第一陣はすぐに出発したが道が整備されていても時間はかかる。

政都から渡島に着くのに1日かかってしまったが、到着してみると瓦礫の撤去まで終わっており、被害を纏めたレポートもできていた。

 

「これを作ったのは誰じゃ!?」

すると人混みの中から2人の男女が現れた。

 

「土間タイヘイです。で、こいつが・・・。」

 

「土間うまるです。キョンシーでタイヘイの祖母に当たります。渡島の都長が私で孫のタイヘイが札幌の救援隊の責任者です。」

 

「・・・すまない救援が遅れて。」

 

「ちょ、長老が頭を下げないでください。死人は出てないのですから。」

 

「うまる・・・タイヘイ・・・感謝するのじゃ。・・・で、復旧はどれぐらいになりそうか?」

 

「はい。札幌では今回の件で飽和状態の労働者をぶつけるので3ヶ月以内には片付くと話し合った結果そうなっています。」

 

「政都からも来るのですよね?救援部隊が。」

 

「第四陣も計画していたが要らなそうじゃな。私の第一陣と金糸雀の第二陣で十分と伝えておく。」

被害事態は土間一家の活躍により物的被害だけだったが、今回の一件で地震の観測、海の波の観測、天体を観測する3つの新たな仕事が生まれた。

天体観測は入れるつもりはなかったのだが、時刻の調整をおこなう時計屋のごり押しだった。

約320年が過ぎた今、職業の権力的バランスをとる必要性も出てきた瞬間だった。



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移民(・ワ・)<よろ

〔数日後〕

復旧は凄い早さで進んだ。

元が木造や石造でしっかり別れていたので色々な素材を使っていなかったことや、チームワークで流れるような作業、マッチョ達の素早い動きとパワーによるものだった。

 

(人が余り出したのじゃ。・・・この余った人材で温泉でも掘るかの。)

そんなことを考えていると足元を何かが引っ張っているように感じた。

 

「なんじゃ?」

 

「こんにちは(久しぶりだね。)」

そこにいたのは髭のはえたコロボックルだった。

 

「久しぶり・・・ということはD2か?」

 

「うん(そうだよ。)」

 

「久しぶりじゃな。・・・ん?今日は仲間もつれてきたのか?50人くらいか?」

 

「そうです(今の部族全員をつれてきた。)」

 

「部族全員・・・まさか噴火で生活できなくなったのか?」

 

「そうです(噴火・・・と言うのだね。部族の長が土に埋もれたから僕が新たな長になってね。生きていくために友達の協力をお願いしたい。)」

 

「まぁいいけど・・・ここだと色々とまずいのじゃ。とりあえず政都の政府に連れていくのじゃ。」

 

「ありがとー(感謝します。)」

お腹が空いているらしい彼らにとりあえず物陰に隠れてもらい、買ってきたサンドイッチを与えた。

涙を流しながら頬張る彼らを見るとどれ程辛かったのか良くわかる。

 

(風向きをや噴火する位置がもう少し西だったら・・・。)

自然の恐怖を感じた芳香だった。

 

【政都】〔さらに数日後〕

私がいつまでも渡島にいるわけにもいかないので金糸雀に第一陣の指揮も任せて私は書類整理のために政都に戻った。

・・・表向きの理由は。

コロボックル達のために少しスケジュールをずらしたのだ。

 

「ここが政都じゃ。」

 

「にんげんさんがたくさんいるです。」

 

「ここに空き家が1軒あるからここに住むと良いのじゃ。」

 

「ありがとー(食料は・・・。)」

 

「少し仕事を頼みたい。そこで貨幣を渡すから食料は自力で買えるか?最初のうちは私経由で良いが、途中から噂を撒く。」

 

「うわさーですか?」

 

「小さな妖精が現れるようになったのは都が発展している証拠、妖精に意地悪するとその都は廃れてしまうってな。」

 

「ようせいですか?」

 

「ぼくたちようせいさん!!」

 

「いい、いい!!」

コロボックル達が跳ねだした。

かわいい。

 

「じゃあ働いてもらう場所を教えるのじゃ。」

私はそう言うとコロボックル達を肩やポケットに入れてゆっくりと歩いた。

空き家の裏を歩いて30秒で政府がある。

そこにこもっているはかせにコロボックルを頼んだ。

 

「長老ありがとう!!コロボックル?妖精?わからないけど精密な物を作るのに役立つよ!!妖精さんもいい?」

 

「はたらくです!!」

 

「たまごうまうま。」

 

「これはなんですか?」

その日からはかせはさらに外に出なくなった。



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西暦230年~

〔西暦230年秋〕

噴火から約8年が経過し、完全に復旧が終わり、前以上の活況になったのがこの年だった。

噴火等の自然災害から身を守るために防災キャンペーンを実施し、保存食の売り込みをおこなった。

影響は凄まじく、食品加工工場の規模を約5倍にしなければいけなかった。

ただ、影響はそれだけでなく、初の会社ができるほどだった。

 

(社会の仕組みの過程を数段飛ばしで進んでいる気がするのじゃ・・・。)

最初の数年は会社と言っても政府に自分の店を承諾してもらうかわりに売上の4%を(合計5%)さらに税金として納めるというものだったが、政府御用達と書いた看板を掲げたのがきっかけで、客は政府に貢献している会社=その店で商品を買えば自分達も政府に貢献できるという感じになり、その店が爆発的に人気になったのだ。

これを見た周りの商人達も真似を始め、政府の許可をとっただけの店を個人店、さらに税金を納めて社会の活性化に貢献している店を会社と呼ぶようになったのだ。

で、会社の(その時は28店だけだが)代表と政府代表として真紅が決めた最低賃金と労働基本法が決められた。

これにより自社を盛り上げるために労働者を雇い出すと飽和していた人材が今度は少し足りなくなってしまった。

まず皺寄せが来たのが開拓団だった。

 

〔西暦231年冬〕

この年開拓団の一時凍結することが決定された。

 

「現状内需を発展させることで経済を回すべきだわ。」

 

「いや、伝統ある開拓団を一時とは言え凍結させるのは万が一貨幣不足を補う新鉱山発見が難しくことになるのでは?水銀燈経済部長。」

 

「いや、基盤整理のために凍結は賛成するね。新しく猪が豚のように家畜となった今整理するための時間が何よりほしい。しかも前のように人が飽和している状態じゃない。人が多くなったらまた開拓団を復活させれば良いんだしさ。」

 

「・・・蒼星石畜産部長。」

役人の一部は反対したが、現実をしっかり見ている役人と部長クラス、さらに私が凍結に賛成したことで凍結が決定された。

 

(・・・明確な理由もなく伝統だからと反対したやつらは解雇じゃな。)

私は事前に水銀燈達に話し合っていたが、長年解雇が出てないことを良いことに自分の利益を守ろうとして現状維持にのみ動くやからがいると・・・。

それははかせからの密告だった。

 

「私が部屋からでない理由は老害が能力もないのにでしゃばって来るのが嫌なの。いつも尻拭いは私か全体的な利益をみる人物、新人、良識がある人達で本当にじゃま。」

と本心で話していた。

結果約50人を段階的に解雇していった。



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西暦235年~

〔西暦235年秋〕

人口が200万人を超えた。

この年はかせが役人を辞め、折り畳み式蝋燭置きやネジ関連の金を使って会社を設立した。

 

「表向きはな。・・・コロボックルを今は独占している状態じゃ。隠すにしても政府がはかせ個人に金を渡していることが文屋にバレたら不味いのじゃ。」

約100年前から細々と正確な情報を伝えることを仕事にしている家族がいたが、それが会社となったのだ。

 

(無能な役人を解雇するのに使ったが・・・少々劇薬だったのじゃ。)

解雇された50名は文屋によって保身のために反対していたことがバレてしまい住民達による私刑になりそうだったため、仲介に入り初の裁判が行われた。

 

「・・・で、余が選ばれたのか。」

 

「公平に裁けるのは現場にいないネロだし、感情的にはならないからな。」

 

「なるほど・・・で、芳香はどうしたいのだ?」

 

「罰は要らないじゃろ。はっきり言って解雇しただけで私刑にされたらたまったものではないのじゃ。」

 

「なるほど・・・で市民はどうなのだ?」

 

「感情的になってるだけじゃ。」

裁判は結局無罪となったがこの出来事で解雇になった彼らは居心地が悪くて開拓に行ってしまう程の事件だった。

50人で色々な自己利益に懲りすぎるとこうなると言う見せしめにはなったかもしれないが、50人のキョンシー達は心理的に苦痛を与えてしまったので結果は微妙だった。

 

(あの後開拓に向かった者達に物資を直接持っていっているが・・・あんな風にならぬように気を付けないといけないのじゃ。)

社会が便利になれば比例して問題は難しくなっていった。

 

(はかせ・・・コロボックル達を頼むのじゃ。)

 

〔西暦240年春〕

妖精の噂がやっと広まりだし、ある程度コロボックル達の外出ができるようになったので、私が彼らに資金を送るのは止めた。

幸いバレることはなく、文屋はコロボックルの生態を調べることに夢中のようだ。

 

「プライバシーには気を付けているから良いか。・・・やり過ぎれば注意をすれば良いからな。・・・しかしこれは便利じゃな。」

私は壁にかけられた振り子時計を見つめて呟いた。

 

「はかせとコロボックルの合同作品じゃな・・・しっかし振り子時計なんてよくできたものじゃ。」

私は彼らに賞賛を誰もいない部屋のなかでおくった。

はかせとコロボックルの作品はまだあり、算盤や工具関係は飛ぶように売れていた。

 

(まだはかせとコロボックルの関係はわかっていないが・・・はかせの会社で雇っている労働者達から拡散する可能性があるからな・・・。)

なるべく穏便にコロボックルを一般に馴染ませる方法を考える芳香だった。



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西暦245年~

〔西暦245年夏〕

神界で総合体育大会が開催されていることを知った私はスポーツを推奨した。

とりあえず基本となる陸上競技10種目と相撲の全11種目を教えた。

特に相撲は人気で場所をあまり取らないことと、簡単なルールだったのですぐに広まった。

他にはコロボックルがやっと社会に馴染んだ。

今ではコロボックルが子供達と遊ぶ姿が見られるほどだった。

そこではかせがコロボックル一部を他の会社に勤めることを勧めてバラバラのところで働いている。

一応コロボックルの戸籍も作り、現在は84人いることを確認している。

 

「おつかれさまです。(・・・疲れました。)」

 

「D2・・・お疲れ様なのじゃ・・・ゆっくり休め。」

 

「ふ、ふー。」

コロボックルの最後は消えてなくなるらしい。

D2は光になって消えていった。

西暦245年の晩夏のことである。

 

〔西暦250年冬〕

会社と言えるものが200社を超えた。

これによりさらに労働者が必要になったが、10歳の子供を送り込まれても困るので学生の期間を14歳まで上げることになった。

金糸雀は

 

「はわわ!!書類の量が2倍かしら!!」

と叫んでいたが気にしないことにした。

嬉しいこともある。

ネロが都市の開発を終わらせたのだ。

冬宮殿をモデルにした建物は既に建設は終わっていたのだが結局冬宮殿もどきだけでは都市としての機能ができるはずもなく、周りに色々な建物を建てているうちに時間も延びてしまったのだ。

 

「・・・で、ネロ。満足か?」

 

「・・・満足なわけないだろ!!似せてもその神々しい感じは出ないし、居住性の向上のために無理な拡張をしてしまったからこれ以上の拡張ができない!!」

 

「・・・神々しいのは後からついてくるものじゃ。ローマでは建てられた初めから神々しかったかもしれんがそれは土地柄じゃ。数百年文明がある場所と開拓したばかりで何もない場所の違いじゃな。」

ネロは自分の作った宮殿を憎しみの意味も込めて十字宮殿と名付けた。

 

「お主が嫌いなキリストの象徴じゃ。」

 

「余があそこに行くときは大規模な改築工事をする時だ。」

それほどまで自分が作った宮殿が憎いネロだった。

 

【神界】〔西暦260年春〕

 

「久しぶりに来たのじゃ。」

私はオークションで面白いものを落札できたので取りに来た。

 

「宅配よりも直接取りに行かないと行けないとはな。」

それは宅配会社がお届け拒否と書かれていたので直接行くことになってしまった。

到着したのは政府直属の研究所だった。

「こちらになります。」

 

「おぉ・・・?こんなに小さいのか?」

 

「いえ、この光るのはソウルジェムと言いまして・・・まぁ人が押すと危険なのでこの箱に隔離しているのですがね。・・・制御はこちらでおこないます。」

 

「タブレットか?」

 

「はい。専用のタブレットを使ってもらいます。説明はこのタブレットの中にありますのでゆっくりと読んでください。」



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ソウルジェム

やっとこの世界に住む人間に近い名称を見つけました。
次の話で出します


【トラックの中】

私は専用のタブレットをいじってソウルジェムについての説明を読んでいた。

 

《・ソウルジェムの使用法

 

1.ソウルジェムは人の魂を扱うもののため、絶対に使用者はソウルジェムに触れないでください

 

2.ソウルジェムの箱の上にあるボタンはタブレットにあるその世界の大雑把な世界地図に線を表示するのに使います

ボタンを押すとレーダーが出ますのでタブレットの地図に円を描いてください

 

3.円が描けたらタブレットの発射と書かれたボタンを押します

すると円で囲った場所のどこかにソウルジェムが落ちます

 

4.円内をソウルジェムは動きます

 

5.ソウルジェムを増やすために人形生物に寄生します

 

6.寄生された人物はインキュベーターを夢で見たあとに実態として出現する

 

7.インキュベーターの役割はソウルジェムの量産である

 

8.寄生された人物はインキュベーターの叶えることができる願い事を叶えることができるが、それはインキュベーターが願い事を調節する可能性がある

 

9.夢を叶えてもらった人物は胸に自分の魂が具現化したソウルジェムができる

 

10.胸にソウルジェムができた人物は魔法使いとなる

 

11.魔法使いといっても最高火力で昔の中戦車主砲並み程度の攻撃魔法か空を飛ぶ程度

 

12.しかし円の内側でのみ魔法をつかえる

 

13.1ヶ月に1度魔女を駆らなくてはならない

駆れないと自身が魔女となる

 

14.魔女は魔女使いか人間10人を1ヶ月食べなくてはならない

食べないと死ぬ

 

15.使用者はソウルジェムが増殖するときと魔女が死ぬときにエネルギーを得ることができる

ただし、それはランダムのため使用者は実感することができないかもしれない》

 

「色々と曖昧じゃな。・・・まぁ欠陥品だったから凄い安かったし、損ではないのじゃ。」

 

【政都】〔数週間後〕

 

「なに!?洪水で水車が破損して資源がほとんど採れなかった!?」

 

「そうなの、頭が痛いの。なんとかできない芳香?」

 

「私に持ってこられても困るのじゃ!!少しずつ直していくしかなかろう。幸いなのかわからんが、今年は例年より人が余っているのじゃ。それを公共事業として当てればなんとか・・・。」

私は資源問題で頭を悩ませていたのだが、この時にこの話をコロボックル達が聞いていた。

 

「なんとかしたいです。」

 

「きゅうせいしゅさんをたすけるです。」

 

「いいものがありますよ!!」

 

「なんですか?」

 

「そうるじゅえむ?」

 

「やりかたはわかるですか? 」

 

「えい!!」

パァァァ

 

「きえたです。」

専用のタブレットには現在の中国と台湾、ベトナム辺りに大きな丸が書かれていた。



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西暦270年~

〔西暦270年秋〕

人口が300万人を超えた。

資源問題は少量だが備蓄していた資源を全て使いきることでなんとかなった。

 

「ふぅー。疲れたのじゃ。」

私は椅子の背もたれに体を預けて伸びをした。

 

「さて・・・ん?これは・・・。」

蒼星石のメモ帳だった。

報告書に紛れてしまったのだろう。

 

「・・・少し読んでみるか。」

蒼星石なら変なことは書いてないだろうと思い、ペラペラとメモ帳をめくった。

 

《・本当にここの人間には感心することが沢山ある。

僕に気がつかないことを普通に発見するし・・・身体能力も良いから最近見た相撲も昔に見た力士達と同じくらい迫力があった。

・なんだか人の能力を全て伸ばしたガンダムSEEDのコーディネイターの様な存在に感じることがある。

アニメでおこったコーディネイター優勢論みたいなのが出てくるのではないかと僕は心配でたまらないが・・・。》

 

「確かに人間という種で考えればどうみても進化しているが・・・。」

私はガンダムSEEDというものを見ていないのでなんとも言えないがそこまで気にしなくてもいいような感じがした。

 

「言っても自分達が巡りめぐって不利になるような発言は彼らはしないじゃろ。」

これが私の考えだった。

 

〔西暦280年夏〕

会社の数も増えているが、それよりも人口が増えるスピードの方が早いためまたしても労働者の飽和が発生した。

 

「開拓団の凍結解除じゃな。」

私の発言に反対者はいなかった。

少し前なら新たな都市を開発すれば良いみたいな意見が出たと思うが、会社が無人の地域を独自に開発して工場や社員宅を建てていったため、都市を北海道内に開発する必要が無くなった。

そのため開拓団の必要が増したのだ。

 

「で、どこにするの?」

 

「場所は決まっておるから安心するのじゃ水銀燈。・・・ここじゃ。」

私は地図を指差した。

場所は歯舞諸島と色丹島、択捉島、国後島の4ヶ所だった。

 

「比較的近くて冬場は流氷でこちらまで歩いて来ることができる距離じゃ。」

 

「夏場はどうするのかしら?」

 

「船を作るが・・・簡単な物なのじゃ。」

 

「主はこの機会に船の技術を発展させて十字宮殿の奥にある樺太に行きたいのではなくて?」

 

「ほとんどそれじゃ。じゃが今の島々の近海には沢山の魚が生息しているから漁業としても潤うのじゃ。」

 

「数十年単位でかかりそうだね。」

 

「ヒナは反対しないの。」

 

「「「我々は賛成します。」」」

こうして開拓団は復活し、新たに島々の開拓が始まったのだった。



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西暦400年~

一気に飛ばします


〔西暦400年冬〕

 

「開拓団復活から120年が経ったか・・・思えば早かったのー。・・・平和じゃからか?」

人口は500万人を超え、翠星石と蒼星石が

 

「「人口は現代を超えた。」ですぅ。」

と言っていた。まだまだ増え続けるだろうと予想している。

 

「まぁ翠星石と蒼星石がおこなった人口を何人までなら養えるか・・・というので北海道だけなら1500万人じゃったし、これに漁業は新たに部署換えで部長になった真紅に聞いたら・・・」

 

「乱獲しないことを前提に考えて約200万人分は現在の漁の方法でまかなえるわ。でもそれ以上になると網の量産が手っ取り早いわね。」

 

「と言ってたのー。・・・まぁギンザケを使った養殖もおこなわれておるからの・・・それが大量におこなわれればいいだけじゃし、網の量産もおこなっておるから・・・合計で約1700万人までなら養えるか。」

現状でも世界人口の約2.5%は北海道の住民であるので、1700万人となると約17%となる。

 

「それぐらいに人口がなるのはまだ先じゃし・・・いや、あと200年くらいかの?」

そう思う芳香だった。

 

〔西暦450年春〕

地域ごとに人数が増えたことで代表を選ぶ選挙をおこなわせた。

休日には相撲かラグビー、知らないうちに流行りだしたサッカーをしていたかれらには選挙はとても面白そうなものにうつったのだろう。

全人口の97.12%が選挙に参加した。

結果255人の代表が選ばれ、議会の開催ができるようになった。

これにより住民達の政治の意識が高まり、不正防止のために裁判所が政都に設置されるのだった。

 

「なぜか議長は私のままだし・・・。」

結局トップは芳香のままだったので、部署の部長達も同じである。

 

〔西暦500年秋〕

やはりと言えば良いのか悪いのかわからないが100年で800万人まで人口が増加した。

ただし樺太の開発が始まったことと、千島列島の全ての島に人が住みだしたことで食料の生産力の合計は大幅に見直されることとなる。

また、第二次産業と若干ながら第三次産業も発展していった。

これにより会社が財閥を形成するようになり、資本の一括して纏めたことで予算の割り振りが活性化したため、社会全体が人口と比例して成長していった。

 

「デフレになりそうで怖いのがこちらの心情じゃがな。」

そんな芳香だったが、実はこの数百年で数十ヶ所の鉱山を発見しているので当分は安心できると思われる。

ちなみにだが、政都と経済の中心の札幌では100万人都市を達成した。



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西暦550年~

〔西暦550年夏〕

コロボックルが完全に生存するうえでのパートナーになった。

全体数が2万人を超えたこともあると思われる。

また私はこの年にやっと後継者を出すことが出来た。

土間うまるである。

災害関連と独特なカリスマがあるため札幌を中心とした支持層が存在することが彼女が新たな議長になれる存在だといえるだろう。

私は議長を退陣したことで雛苺も部長から外れた。

雛苺のところにはうまるの孫である土間タイヘイ(現在は結婚して海老名に苗字を変更し、キョンシーとなったことで海老名菜々という名前になっている)が新部長となった。

雛苺ははかせの会社に入社して一緒に発明品を開発することになる。

・・・で、私だが

 

「やっとゆっくりできるのじゃ。」

書類地獄から解放されたのでゆっくりすることにした。

 

〔西暦600年冬〕

凄く暇になった。

一応仕事として窯の管理と磁器、ガラス細工をしていたが、凄い暇になってきた。

そこで私は樺太に出来た2つの都市(南樺太と北樺太)よりもさらに西に行った極東ロシアと呼ばれる地域の開発をおこなおうと決めた。

移動事態は冬は北樺太の海域が凍るので渡ることもでき、夏と秋は船で渡ることができる。

ただ、春は移動が難しくなるので約2ヶ月間の政府からの物資援助を期待できない開拓だが、参加人数は25万人を超えていた。

約2年間の開拓準備期間をえて、開拓を開始した。

 

〔西暦625年夏〕

難しいと思われていたが、島ではなく大陸だったことと野生のトナカイの半家畜にすること、広大な大地を使った農業、各地にある大規模な金山、銅山、鉄と合成することで更なる強度を得られることがわかったタングステンの鉱山などから海岸沿いは上東海道と呼ばれ、さらに奥にいった満州接する地区を農北と呼ばれるようになる。

 

 

〔西暦680年冬〕

人口が1500万人を超えた。

北海道に1200万人が生活しているが、上東海道に200万人、残りが農北と千島列島である。

人口増加に対応するために農北に翠星石が集団農園の方法等の技術指導が改めて必要になり、ネロと私はその食料を送るための街道づくりに日夜腐心した。

結局政府を離れても苦労するようだ。

しかしこれでも経済がしっかりしているのは金糸雀が定めた教育にあるため一番苦労しているのは全体の教育水準を一定以上にしていた金糸雀だったが・・・。

芳香はこの時は漢民族や満州族がいるため南下を控えていたのだが・・・中国では大異変が起こっていた。

 

「僕と契約して魔法少女になってよ。」



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西暦700年~ 中国の異変

〔西暦700年春〕

芳香達が必死に新しく開拓した場所の整備をしている頃、韓国の2つの政権である統一新羅(南)と渤海(北)以外の中華圏で魔法使いが爆発的に増えた。

理由は様々だが、皇帝が契約したことが国を崩壊させた。

それ以前に願いが叶うというのは人々の噂で拡散し、魔法使い(魔法少女)が増えればインキュベーターも増え、それだけ魔女ができ、民間人が巻き込まれ、それを助ける(自分のためでもあるが)ため魔女を退治し、魔法使いに憧れる人が増える。

まるで麻薬である。

始めは農民達だけだったが、それが商人、役人に渡ることで最後には皇帝にたどり着いたのだ。

・・・で、それだけならまだ皇帝が継続的に魔女を殺すことでなんとかなったかもしれないが、願いがダメだった。

 

「朕を天子ではなく天そのものとしたまえ!!」

どうなったか・・・一瞬にして気体となった。

周りにいた重鎮たちも皇帝の側に行くために次々に天の側にと願ったため消えていった。

結果・・・無政府状態に突入である。

強力な兵士を得るために魔法使いに兵士をさせ、魔法使いの兵士達はなにもせずに命令する上官を焼き殺して自分が上官になると宣言したものの、1ヶ月が経過して自分も含めて兵士の大多数が魔女になり、近隣農家の魔法使い達に殺されたりというのが各地におこり、戦国時代にも突入できなかった。

1億人を超えていた人口も今では半数まで落ち込んでいる。

台湾とベトナムは人口が少ないため完全に滅亡してしまった場所もあるからまだ良いのかもしれないが・・・。

 

〔西暦750年冬〕

 

「数百年掘っている北海道の銅山で新たな銅鉱脈が多数発見された・・・か。」

歴史の資料を見てもそこまで巨大な鉱脈があることは私の持ってきた神界の歴史書にも、翠星石と蒼星石の記憶にもなかった。

他にも砂金をとりつくしたと見られて採取が止められた川から大量の砂金と砂鉄が採れだした等の報告がある。よくわからないが何にせよ良いことである。

 

「やっと馬(蒙古野馬)を入手したが、まだ頭数が少ないから駅馬ができん。・・・神力が宿ったクローバーを食べてるせいじゃろうが・・・少し体格が大きくなってきているのが気になるのう。」

資源が出るのは良いことであるが最近はアリューシャン列島まで拡大した生存圏の物流を良くするために必死になってネロと道作りや情報交換を良くするために各地に文屋と飛脚を用いた新聞の交換をおこない、文屋は札幌にある本社で情報を統合して月に1度のペースで全国に情報を届けられるようにした。

この時に時を書くのがめんどくさいことと、人によって字が汚いことがあるため判子が進歩し始める。



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西暦800年~

〔西暦800年夏〕

農北の整備が完了した頃には9世紀に突入した。

 

「さて・・・そろそろ隣国の情報を仕入れるとするかのー。」

文屋改め新聞社達は私の意見に賛成した。

それは自分達のご先祖は今どのような生活や政治、文化をしているのか民衆は気になっていたのだ。

 

「ではどのようにすべきか・・・。」

7代目にあたる議長が私の提案に悩んでいた。

議長経験者は議長を辞めたあとも一定の権限を持っていた。

 

「私としては対岸地域に一定の生活できる環境を整え、その後は各地を巡って情報を集めてもらうのが一番安全と思うのじゃ。」

 

「では全て人間の方が良いですね。」

 

「よーし!!うまるも久々に頑張りますよ!!」

こうして7人で話し合われ纏められた提案は議会で5/4の賛成を受けて成立した。

・・・で、誰が行くか話し合われたが、政府が雇う者の他に新聞社は各社50人以下なら自由にと決められた。

後に新聞社と政府の人材からスパイ網が形成されることになるが、どんな厳重な警戒をされていても機密情報を盗んでしまうと言われるようになるのだった。

 

〔西暦850年冬〕

蒙古野馬の頭数を増やし終わり駅ができるようになった。

ここで近代的な馬車を量産したはかせと雛苺の先見性には舌を巻いた。

 

「まさにこんなこともあろうかと・・・じゃな。」

これにより今までよりも食料を各地に送ることができた。

 

「・・・さて、余ってしまった食料をどうするべきか・・・。」

私はそこでたまにやって来る騎馬民族のモンゴル人と関係を強化した。

彼らは食料を貰う代わりに駅馬の御者として活躍してくれた。

数十年で何個もの部族と婚姻を通じて同化し、北海道に初めて戦闘技能が入ってきた瞬間であった。

 

〔西暦900年夏〕

私は約100年で日本と韓国に築いた情報網を有効活用して後百済の王と条約を結ぶことに成功した。

後百済は領土は広かったものの、食料不足に悩んでおり、それに売り込んだ形となった。

後百済の王は感謝し、代表として来ていた私にこう呟いた

 

「北は蛮族しかいないと言い伝えがありましたが、良き国があるのですね。」

 

「そうじゃ。・・・私達は自国を北海道と呼んでおる。お主らの国は・・・後百済じゃったかの?」

 

「えぇそうです。」

 

「もっと後とかは過去の遺産を引きずって縁起が悪いぞ。大韓帝国と名乗れば良いのじゃ。」

 

「大韓・・・帝国・・・。」

 

「食料はこちらが送る・・・夢を見なければ進まんぞ。」

後の言葉により後百済の王は国名を大韓帝国として諸国を一気に統一した。

それから約400年間北海道は大韓帝国と良好な関係を築いていった。



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学問の神様1

【大宰府】〔西暦902年冬〕

私は九州の大宰府に来ていた。

 

「長老・・・こちらです。」

 

「うむ。お疲れ様なのじゃ。」

私は大宰府の警備員になって情報を集めていた者達の協力を得て、夜に大宰府の南館に侵入した。

 

「・・・ここか。」

私はとある部屋の前で立ち止まった。

 

「長老・・・今日の警備の者は全て買収しています。」

 

「または協力者なのでここの近くを通ることはありません。」

 

「助かったのじゃ。・・・では行くのじゃ。」

私は襖を開けた。

中には顔色がすぐれていない男性が座っていた。

 

「何者か。」

 

「何者でもない。」

 

「藤原か?」

 

「断じて違う。」

 

「迎えか?」

 

「そなたが思うことならそうであろう。」

 

「なにようか?」

 

「そなたが藤原の凋落を見たいのなら私に力を貸せ。」

 

「汝何を求める?」

 

「求めるものは貴殿の学である。」

 

「学とはなにぞ?」

 

「口で言えるほど容易いものではない。」

 

「我は大宰員外帥であるぞ。」

 

「藤原に負けて左遷されて何を言う。」

 

「負けてなどおらぬ。」

 

「最初から勝負になってないからのー。」

 

「・・・。」

 

「人工的に権力闘争に巻き込まれた気分はどうじゃ?」

 

「最悪だ。私の元には田口春音しかおらぬ。」

 

「私と行けば田口春音と別れるか同化することとなる。」

 

「答える方法を述べよ。」

 

「自決か田口春音と心中せよ。しなければ否と思う。」

バシュ

それは即決だった。

男性は近くに置いてあった太刀で自分の首を刺した。

 

「藤原がそれほど憎いのか?・・・いや、貴族社会に愛想を尽かしたのが正確じゃな。・・・昔に邪仙と一緒に会ったときは悪霊じゃったしな。最終的に自分の魂を振り絞って自分と息子達を京から追放した関係者を呪いで殺したからのー。・・・かわいそうに。」

私は菅原道真の死体を持ってきた袋の中に入れるとすぐにその場を去った。

 

〔1か月後〕

本州から一番近い都市の渡島で菅原道真のキョンシー化をおこなった。

材料は本州で見つけた餓死した農民2人程だった。

 

「・・・さて、起きた気分はどうじゃ?」

 

「良くもあり・・・悪くもある。なぜ女の体なのだ?」

 

「解明されてないのじゃ。」

 

「・・・ワハハ、なるほど。見た感じ都より色々と進んでいる感じがあるけど・・・まだ謎があるのだな。」

 

「で・・・菅原道真とこれからも名乗るか?」

 

「ワハハ・・・冗談はよしてくれ。死んで生まれ変わったのだ同じ名前はさすがに・・・ねぇ。」

 

「蒲原智美と名乗ればどうじゃ?蒲と美は語呂合わせじゃが、原は菅原の字を残した方が良いじゃろう。智は上の知の部分を学問の神様として当てたのじゃ。」

 

「蒲原智美か・・・ワハハその名に恥じぬ活躍をしてみようか。」



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学問の神様2

【政都】〔西暦903夏〕

 

「ワハハ・・・これはすごいわ。」

蒲原智美こと菅原道真は思った。

・・・私は本当に必要かと。

 

 

〔数ヵ月前〕

 

「政治が出来るものがあまりにも少なくて・・・そこで後世にも名を残すお主が欲しかったのじゃ。」

 

「ワハハ・・・私に任せなさい!!」

 

(ずっと思ってるが何で後世に名を残していることを芳香は知っているのぉか?)

疑問に思ったがお世辞でも頼りにされていることは伝わってくるので引き受けたのは良いのだが、芳香から渡された政治の本だけでも1000ページを超えていたし、宗教も違い、文化も違うのですごく戸惑った。

そして思った。

 

〔時間は戻って〕

 

(・・・別の本に書いてあったけどこれが井の中の蛙大海を知らず・・・か。・・・前に議会と呼ばれるところに試聴しに行ったけど・・・内容が高度すぎて政治の本をひきながらでやっとわかったからなぁ。・・・ワハハ、乾いた笑いしかおきないや。)

芳香に素直に無理と言うことは簡単だが、それをしたら私が生きている意味が消滅する。

 

(・・・ワハハ、どうしよっかな。)

その時机に置いてあった地図を見つけた。

 

「・・・!?ワハハ・・・良い場所見つけたよ。」

蒲原が見つけたのはアラスカだった。

 

「ワハハ・・・ここで時間を稼ぐしかないね。」

一応政治には関われる。

だけど開拓等の労働が必要だが・・・。

それでも蒲原は芳香に言ってアラスカの開拓団に参加した。

蒲原が中央の政治に参加するのはもう少し年月が経ってからである。

 

【上東海道 大都市 西集】〔西暦950年秋〕

私は約80万人が生活する西集の宿で北海道改め北邦共和国の地図を見ていた。

 

「総人口9800万人・・・北海道3300万人、上東海道4000万人、農北2000万人、その他500万人・・・食料自給率180%・・・大韓帝国とモンゴル部族以外にも日本の東北部に輸出するかのぉ。・・・いや、まだよいか。平清盛が出てくるまで待つしかないの。」

芳香の頭のなかに中国はなかった。

理由は内乱で超がつくほど危険地域になっていたのだ。

歴史を纏めている者とスパイの報告によると人口が10年間で8桁減少しているらしい。

もちろん子供が生まれるのでこれまで持ってきたが、あと20年もしないうちに8桁を人口が下回ると予想されていた。

 

「まぁ完全に人がいなくなった所は大韓帝国とモンゴルと協力して切り取っているがな。」

北満州は今は農北に組まれ、大韓帝国は南満州と旧北京まで勢力を拡大し、モンゴルは真下に南下していた。

 

「農北と上東海道の農地整理が終われば更なる人口を養えるようになる。・・・20世紀には何億人が北邦共和国の人口なんじゃろうな。」

 



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西暦1000年~

【唐 旧首都長安】〔西暦1000年春〕

 

「ここが・・・中華の首都じゃったのじゃな。」

私は長安まで来ていた。

 

「無人の廃墟となっていたとはな。」

数十年前から大韓帝国が朝貢を贈ってもお返しがないと言っていたのを聞いたスパイが政府に情報を届け、その代表として中華の皇帝に会っても無礼がないように私が選ばれた。

・・・しかし来てみれば焦げた木造建築と炭化した人間と思わしき物が転がっているだけだった。

 

「数十年前から人口が減っていたのは知っていたが、内乱でここまでなるかの?」

不思議に思いながらも調査を進めると燃えていない書物・・・恐らく日記のような物が発見された。

 

《ソウルジェム・・・インキュベーター・・・こいつらによってこの国は終わってしまった。・・・天子は魔女を殺すためだけに町の娘を役人が拐ってきて魔女にさせて殺していく。・・・それならまだよかった。魔女の大群がこの長安を襲った。魔女は人を殺し、強かった魔法使いも人数で殺していった。・・・凄まじい死体の山が出来上がり、私は家族と長安を脱出できたから助かったが・・・まるで地獄のようだ。》

漢文でそう書かれていた。

 

「長老・・・これはどうしますか?」

 

「北海道の知床にある博物館に送るのじゃ。」

 

「わかりました。・・・しかしこれはどう報告しましょうか?」

 

「・・・原因はわかったのじゃ。すぐにここの近くから離れるのじゃ。」

 

 

【北海道 政都 政府】〔数ヵ月後〕

255人の代表と部長クラス、議長が集まった場所で中華の現状を報告した。

 

「なるほど・・・わかったわ。・・・お母さまそれだけではないでしょ。」

 

「それだけでだったら芳香が議会に参加することはないかしら。」

初期から現在まで部長に残っている水銀燈と金糸雀から詳しく説明するよう追求された。

 

「・・・ソウルジェムは私が神界から持ってきた物じゃ。」

議会がざわめく。

 

「なぜ中華に行ったのかは全くわからないのじゃが・・・危険物の管理が不徹底だったことを罰してほしいのじゃ。」

 

第13代の議長が私に言う

 

「・・・承った。本件は最重要事項としてこの場で罰を考えるとする。・・・芳香殿に質問をする。・・・ソールジェムの後始末はどうなさるのか?」

 

「ここに来るまでの間に対処しました。(専用のタブレットにあった円を消した)」

 

「・・・よろしい。暫し控え室にて待たれよ。」

 

〔数時間後〕

会場はまだざわついているが、判決が出たようだ。

 

「・・・では宮古芳香殿を議長権限を行使して200年間の移動制限をかけるとする。」

 

「い、移動制限か?」

 

「北邦共和国内の北海道にて都市以外で細道を使うことを禁ずること、全てにおいて移動には見張り員を2人以上同行する。また見張り員はこちらから用意する。」

 

「・・・寛大じゃな。」

 

「それだけあなたが頑張ってきたと言うことですよ。」



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見張り員

【政都 とある食道】

 

「・・・で見張り員として呼ばれたのがお主らか。」

 

「確かに暇だったですぅ。けど翠星石じゃなくてもいいじゃないですか?」

 

「暇なら良いじゃろ。・・・でもう一人来るのじゃろ?」

 

「確か・・・はかせの・・・」

 

「あわわわ止めてくださいー!!」

人間ではありえない速度で私に迫ってくる女性がいる。

 

(・・・どうしろと。)

私はこの時避けるを選択した。

 

バン バキバキ

女性は思いっきり木に激突し、木は勢いよく折れた。

 

「し・・・死んだですぅ!?」

 

ガバ

「いたたたた。・・・は!?芳香さんと翠星石さんでよろしいですよね?」

私はこの時察した・・・こやつが私の見張り員であると・・・。

 

「あ、あってるのじゃ。」

 

「そ、そうですぅ。」

 

「久しぶりです!!」

 

「「久しぶり?」」

 

「はい。数百年前はこの姿ではなく、万能型として活動してました。」

 

「ま、まさかあの停止したロボットか!?」

 

「はい。現在ははかせから名前をもらって東雲なのと名乗らせてもらってます。」

 

「・・・後ろのゼンマイはなんじゃ?」

 

「飾りらしいのですが・・・外れないのです。」

 

(はかせ1人でロボットの修理、改造をしたのか!?ならあやつは本当の天才じゃな。)

実際はニトリからもらった本を見ながら修理していたら、お遊びで付け足した声帯装置が上手く機能したので外装を改造したらしいが・・・芳香達が知るよしもなかった。

 

「・・・で、これからどうしますか?」

 

「政都に罪人が居るのはふさわしくない。・・・100年間はアラスカに行き、その後は本州に行くのじゃ。」

 

「本州・・・ですぅ?」

 

「奥州藤原氏と貿易をしたいのじゃ。」

 

「なるほどですぅ。・・・でも100年で滅ぼされるのではないですか?」

 

「私的には芳香さんや翠星石さんが危ないところに行かれるのは反対したいのですけどね。」

 

「滅ぼされてよい。私が欲しいのは3人の人材じゃ。奥州藤原氏4代目藤原泰衡、戦の天才源義経、第八十一代天皇安徳この3名を確保したい。」

 

「義経と安徳はわかるですぅ。・・・何で泰衡ですぅ?」

 

「泰衡は政治手腕はなかったらしいのじゃが経済に関しての潜在能力を神界では鬼才と評価しておるのじゃ。だから欲しいのじゃ。」

 

「そうですか。・・・とりあえずアラスカに行きましょう。」

3人で今後600年近く行動するとはこの時誰も思ってなかった。

 

【アラスカ】〔西暦1025年〕

 

「ワハハ・・・芳香達が来たときは何事かと思ったけど・・・助けに来てくれて本当に助かったよ。」

 

「智美の頑張りの方が大きいぞ。」

極寒の地アラスカは開拓団と翠星石、蒲原智美の政治で農北同様に北邦共和国の食料庫となっていた。



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西暦1025年~

私ができることは道をしっかりひくこと、その間に駅を設置して馬がちゃんと移動でき、運搬が楽にできることである。

 

「せーの!!それー!!」

 

「長老少しはりきり過ぎですよ。」

 

「そうかのー?・・・ならこの先にある村までひいてしまうのじゃ。」

 

「へーい。」

開拓団との仲も良好でアラスカ最大の都市の亜安を中心とした道がひかれていた。

また、アラスカでは北海道で開発されたスプリンクラーを使った農法を採用している傍らで点滴灌漑と呼ばれる農法も翠星石が実験的に導入していた。

ただその前に川や上下水道、井戸の整備等の水問題を解決しなければならなかったが。

 

「ワハハ・・・平安京や太宰府ではこんなことはおきなかったなぁ。・・・貴族にはわからない問題が現場では多々おきている・・・か。」

 

「現場ばっかり行って政治能力はあるのに政治をしたがらない芳香もどうかと思うですぅ。」

 

「ワッハッハ・・・言うね翠星石。」

 

「目を離すと道つくってるか磁器焼いてるかってほど動くのが好きですぅ。・・・前世はなんだったのやら。」

 

「ワハハ・・・貴族で藤原と権力争いの傍らでやっていた政治が上手くいくはずないね。やっぱり貴族はダメだ。」

 

「・・・あぁ、前世ですぅ。」

 

「お茶を持ってきました。」

 

「ワハハ・・・ありがとう。」

 

「抹茶オレじゃない・・・チェンジですぅ。」

 

「えぇぇ!?」

 

「ワッハッハ。」

アラスカは今日も平和だ。

 

〔西暦1050年秋〕

原住民族との同化が開始した。

北邦共和国の男女はなぜか異民族受けが凄く良いので同化はスムーズにおこなわれた。

アラスカでは黄色人種同士の同化だが、農北ではヨーロッパ方面から流れてきたユダヤ系やスラブ系によって白人が少しだが増えてきていた。

私が神界の教授にこの事をレポートにして送ったところ、こんな返答が返ってきた。

 

《進化することに特化しているため別の血が入るとすぐに変化することが可能であると遺伝子情報から出ている。極端だが、そちら人で黒人のハーフと白人のハーフが子供を生んだ場合は黒人、白人、黄色人種のどれにでもなる確率が出た。

余談だか・・・遺伝子を調べていると面白い結果が出たので載せておくことにする。細胞の死滅期が遅い。40代でも20くらいに見えていると思う。》

と書かれていた。

 

(白人が増えるのは別に良いが・・・私が年齢の感覚が狂っておるな。最近よぼよぼの老人を見ないのはそのためか。)

この事が後に問題になるのだが芳香は知らない。



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西暦1075年~

〔西暦1075年冬〕

 

「やはりアラスカの冬は冷えるのじゃ。・・・しかし建築の技術の向上が素晴らしいのじゃ。」

技術が蓄積した結果と神界から持ってきた建築物の写真から職人たちが様々な建築物を建てるようになった。

 

「余に続け!!」

ネロがこのブームを焚き付けて十字宮殿の失敗を取り戻そうと気合いをいれて色々な建物を設計していた。

 

「北海道の南部では生活効率が良い和風、北部はローマ風、上東海道は洋風、農北は中華と和風とモンゴルの融合、アラスカは雪国の防寒に特化した建築・・・か。まるで別の国にいるみたいじゃな。・・・未来の歴史評論家は発狂じゃな。」

実際に北海道の建築史を調べた学園都市の教授が発狂する事件がおこる。

 

「まぁ食文化が違うことはないし、言語も同じ、北邦共和国民としての自覚もある・・・なかなか上手くできておるな。」

ただし、建築だけでなく武器も発展することになる。

広大な農地や牧場をヒグマ等の肉食動物から守るためにここ200年で一気に発展した。

 

「刀や太刀、槍じゃな。・・・ただこれを儲けられると考えた会社が量産してばらまいたからのー。私の知らない場所でさらに発展してるかもしれないのじゃ。」

その考えが政府にもありこの年から武器を研究する機関が創設された。

後に外国や本州ではその機関の学習、改良、コストダウンの速さに恐怖した。

その名前はSB・・・名前の由来は当時の議長の頭文字だったらしい。

 

「まぁ殺人に使われなければ良いのじゃ。」

 

【平泉】〔西暦1105年春〕

私と翠星石、なのの3人で平泉に来ていた。

 

「まだ支配体制が完全ではないのかのー。」

 

「後の歴史だと1105年奥州藤原氏が支配を初めて22年年目で平泉に拠点を移した年ですよ。まだ混乱していても仕方がないかと・・・。」

 

「とにかく代表の人物と会うですぅ。」

家臣団に潜り込んだスパイの協力により面会はスムーズにおこなわれた。

 

「陸奥押領使殿(藤原清衡)この度はこの様な場を設けていただきありがたく存じます。」

 

「私も北の国から来た者には色々と助けてもらっているのでありがたく思っています。」

 

「事前にお渡しした書は読みましたか?」

 

「うむ。有益だった。」

 

「では・・・貿易と互いの友好を結ぶでよろしいですか?」

 

「うむ。」

 

「では始めにこちらから食料と芸術品を輸出いたします。」

 

「ならこちらからは器(秀衡塗)と宝貝、武具(さらに職人も数人)を出そう。」

 

「ではこちらに。」

 

「うむ。」

こうして奥州藤原氏と協力関係になった。



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西暦1150年~

〔西暦1150年春〕

北邦共和国と友好関係にあるモンゴルの部族とそうでない部族で大規模な戦闘がおこった。

 

「人口と技術力でこちらが勝つじゃろ。」

 

「いえ、そうはいきませんでしたよ。」

 

「な、なんじゃと!?」

なのからの報告によると友好関係の部族が劣勢だったので援軍として10万人を武具を持たせて出撃したらしいが、地の利と機動力を活かして10万人を翻弄し、約7万人が討ち取られた(ただ6万人は敵の死体を利用して蘇生のため正確には1万人が死亡)

・・・で敵も消耗したので追撃はなかったが、この間に政府が軍の形態を確立させ、食料系の部門から補給部門が独立し、連動して軍が組織された。

軍は男女混合の志願式だったが国のためと100万人が集まった。

今回の戦闘でキョンシーとなった人物たちが新人に敵の情報を教え、対策を練り始め、敵が使っていた弓をSBが解析、改良、量産をおこなわれた。

5年後におこなわれた反撃(動員数約109万人、後方支援は別)により敵のモンゴル部族は崩壊した。

しかし崩壊してもそれらが最終的に集まってまた襲撃してくるので約30年近く小さな紛争が続くこととなった。

 

「結果が戦争による武器の発展か。」

 

「元々似た技術は民間でありましたが、それが武器に使われた結果ですね。」

新兵器として火炎瓶、バリスタ、長槍が開発、運用され、さらに刀や太刀、弓等も改良されていった。

防具は青銅と皮で出来たヘルメット、運動靴、チェーンメイルが初期に開発されたが終盤にはさらに発展したプレートアーマーが使用されるようになった。

 

「人口が2憶6000万人じゃから約100万人兵士にしても大丈夫じゃろうが・・・。」

 

「はい。問題は複雑化しているようですよ。」

 

「翠星石は今回の件をどう見てるのじゃ?」

 

「・・・戦争は今で良かったというのが本音ですぅ。銃が出てきたら死人の数も爆発的に増えるですぅ。・・・この戦争から医療関係も発展していってるのは喜ばしいことですぅ。・・・通常時の兵士の問題はどこに兵士を配置するかですぅ。最初は農北でいいですが、次第に本州からも武士の台頭で圧力がかかると思うし、アラスカもまだ大丈夫と安心していたら敵がいきなりできるかもしれないですぅ。・・・場所のバランスに注目していきたいですぅ。」

 

「なるほどなのじゃ。・・・しかしそれだけじゃなくて軍法も急がさないと戦場でロマンスがたくさん発生することになるのじゃ。・・・今回の戦争でたくさん子供を産んだり産ませたりしたらしいからな。」

恐ろしいことである。



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保元の乱・平治の乱 西暦1156年~

【平泉】〔西暦1156年夏〕

私は奥州藤原氏の3代目の藤原秀衡と話していた。

藤原秀衡は小さいときになのに教育を受けたため、私達になついていた。

・・・今はおっちゃんだが

 

「・・・芳香様・・・京にて上皇と天皇に別れた乱があったそうです。」

 

「平氏の勝ちか?」

 

「はい。平氏の家主である清盛が勝者です。源氏は一族を多く失ったため弱体化してしまいました。」

 

「なるほどの。・・・戦の準備はできておるか?」

 

「現在兵士は15万動員が可能です。これも息子が経済を支えてくれているのが大きいです。」

 

「・・・ならよし。力を貯めておくのじゃ。貿易で平氏を肥やしているが、そのうち源氏に潰されるじゃう。平氏に清盛以外は政治ができないぼんくらどもじゃ。・・・しかしここまで内政が上手い一族も珍しいの。」

 

「お褒めに預かり光栄です。」

 

「・・・さて、商談といこう。」

 

「こちらからは金と銅、それに刀を出しましょう。」

 

「こちらからは出稼ぎ労働者と青森を開拓しよう。」

 

「北邦共和国に一番近い場所ですね。・・・万が一の備えですか。」

 

「お前の息子や娘は戦と外交は弱い。だから備えは必要じゃろ?」

 

「十分です。・・・馬の配合も進んでいます。」

 

「ユダヤ人が乗ってきたアラブ種とモンゴルの馬を配合させた中種か・・・戦では活躍が期待できそうか?重種しかこちらは試したことがなくてのー。」

 

「重い物は運べませんが甲冑一式ならこちらにいる日本の馬より速さ、扱いやすさで勝っています。」

 

「まぁなんじゃ・・・頼んだぞ。」

 

「わかりました。」

 

〔西暦1160年冬〕

 

「清盛が権力を握ったか。」

 

パチ パチ

「・・・これぐらいですかね。」

 

「うむ、泰衡の計算は相変わらず早いのじゃ。」

 

「そろばんの力もありますが・・・何より金が好きなので。」

 

「守銭奴えぇ・・・。」

 

「翠星石さんには言われたくありませんよ・・・農業愛好家さん。」

 

「こいつムカつくですぅ!!」

仲が良い2人だったがこの頃京にて平治の乱が発生し平氏が権力を握った。

なのには京に行ってもらい、平氏の召し使いとして潜入させていた。

なの以外にも約2割りの宮殿の警備員と料理人が私達が送り込んだ北邦共和国のスパイであり、さらに奥州藤原氏独自の情報機関と共同して情報を集めた。

 

「これまた私の前で大胆なことをしますね。」

 

「藤原基成・・・か。北家といってもお主は左遷じゃろ。ほぼ縁切りしておるじゃろ。」

 

「そりゃそうですが。」

 

「・・・まったく、藤原北家も京で腐ったやつ以外はほぼ当たりじゃな。」

 

「お褒めに預かり光栄。」

 

「政治顧問としてもう少し支えてやってくれ。」

 

「わかってますよ。」



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西暦1174年~ 源義経

〔西暦1174年夏〕

 

「この度は鎮守府将軍殿のご意向感謝します。」

 

「うむ、義経殿も苦労しただろう。ささ、食事といたしましょうぞ。」

この年の夏・・・源義経が平氏から逃れるために平泉にやって来た。

 

(凄いイケメンじゃな。・・・こやつが源義経か。)

私の目的の人物がそこにいた。

・・・私は彼に近づこうとしたが、先に翠星石が揉め事をおこした。

 

「武力より農業!!圧倒的な人の数で敵を倒せばいいですぅ!!」

 

「否!!これだからおなごは・・・良いか人の数だけでは戦は勝てぬ。武具をしっかりと整え、味方と連携の上で速さで敵を倒すのだ。」

 

「違う!!経済力で相手を干せば簡単だ。」

ここに泰衡も話に入ってきた。

私と秀衡、基成は傍観者となりながらも

 

(((3人が協力すればどんな戦にも勝てると思うのは私だけだろうか。)))

と考えが一致した。

この時義経は15歳・・・まだまだ子供だった。

 

〔西暦1180年春〕

源頼政が挙兵したことが報告された。

 

「頼政のじい様が!?」

義経は驚いていた。

この時源頼政の年齢は74歳・・・この年代にこの年まで生きるのは化け物であると同時に、いつ死ぬかわからない人物だった。

 

「素晴らしい最後だったようです。」

老人の命をかけた決起に義経の心が動いた。

 

「鎮守府将軍殿私に兵を貸してくだされ!!」

 

「ならぬ。今はその時ではない!!今しばらく待たれよ。」

 

「・・・少し待てば北邦共和国から1万は用意できる。・・・北邦共和国のことは部外者ではお主しか教えておらんからな。」

 

「・・・わかりました。」

義経には北邦共和国のことを少し教えていた。

何かあったらさらにこちらに逃げれるように・・・。

 

〔夏〕

源頼朝の挙兵・・・これに義経は合流するために出兵した。

その数2万5000人・・・全員が北邦共和国の兵である。

 

「新人が半数もいるから練度は低いと思うが・・・役には立つじゃろう。・・・義経に従うように言ってある。頑張るのじゃ。」

 

「ありがとうございます。」

義経挙兵・・・それは平氏側にすぐ伝わった。

 

〔数日後〕

 

「関東にて平氏側の武家と衝突・・・これを損害なしで粉砕・・・頼朝と合流か。」

頼朝と合流するとすぐに富士川の戦いがおこった。

 

【富士川周辺】

バサバサ

 

「しまった!!水鳥が!!」

頼朝が湿地帯を慎重に進んでいたのだが、水鳥に驚かれて大きな音に平氏側が気づいてしまった。

 

「大群じゃ!!源氏の大群がきた!!」

平氏の大将平維盛が逃げ出そうとするが部下に維盛嫌いの人物がおり

 

「平氏の名折れよ。」

と呟いたのを維盛が聞いてしまい

 

「・・・全軍矢を放て。」

維盛ここに覚醒する。

 



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富士川の戦い

平氏側兵力2000騎と他1万名・・・対して源頼朝率いる源氏側兵力4万騎と義経率いる歩兵2万5000人。

ただ歩兵という概念がまだ確立していないため義経の兵士は雑兵と扱われた。

 

「く・・・歩兵の有効性も俺の兄はわからんのか。」

この時代騎乗して、しっかり武芸を身に付けた武士と雑用扱いで適当な武器を持たせている兵では強さがまったく違った。

本当に一騎当千の言葉と同じことがおこる時代なのだ。

 

「仕方ない。・・・我々は出番が来るまで待つとするか。」

 

【富士川周辺】〔数時間後〕

 

「退け!!退くのだ!!」

頼朝は戦下手だ。

騎馬だけて湿地に突入した時点でよくわかるだろう。

泥で動けなくなった源氏側が平氏側から放たれるの矢によりどんどん数を減らしている。

焦りが指揮を混乱させる。

 

「義経を出せ!!時間を稼いでもらうのだ!!」

頼朝は馬鹿にしていた義経の歩兵を時間稼ぎの駒にすることにした。

頼朝の近くにいた後に有力御家人と呼ばれる面々も頼朝の案に賛成した。

 

 

 

「遅いわ!!くそ・・・側面から突入する。」

湿地ではなく森の中を抜けて義経達は平氏に襲いかかった。

 

「敵に武士は少ない!!勝った!!」

 

「維盛様!!敵に矢が効きませぬ!!」

 

「維盛様!!敵は化け物でごさいます!!我が方が騎士が敵に斬り殺されていきまする!!」

 

「我が方の目的は頼朝の決起を討伐すること・・・なら持久戦にすれば良いのだ。今回の戦で頼朝方の武士は数を無意味に減らした。・・・撤退する。」

絶好・・・とはいかないものの良いタイミングで撤退を成功させた。

 

「どうせ追撃しても意味がない。今回は我々も戻るとしよう。」

義経も撤退。

この戦で頼朝の戦に対する評価が暴落し、頼朝は鎌倉に拠点作りに腐心することになり、義経の戦上手に嫉妬するようになる。

義経は勝ったことで人気者になったが、頼朝の関係を悪化させてしまった。

維盛は少ない騎数で頼朝にダメージを与えたことで一族内で一定の発言力を得ることになった。

 

〔西暦1183年春〕

 

「この訓練は中々きついな。」

 

「隊長もう少しで終わりです。頑張りましょう!!」

義経は北邦共和国の兵士達、近隣の駆り出された村人達を訓練しながら自身も同じ訓練をして友好を深めた。

 

「義経様はいい人だべ。」

 

「おらたちに美味しい飯を配ってくださるだ。」

 

「役人様や武士様もみんなこんなんだったらありがたいのにだ。」

この行為は義経の戦略的意味に基づいての行動だったが、他の武士には軽蔑を込めて蝦夷者と呼ばれるようになる。



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倶利伽羅峠の戦い 西暦1183年~

【平泉】

義経が兵士と共に訓練をしている頃

 

「・・・そうか。倶利伽羅峠で平氏は10万騎を失ったのじゃな。」

 

「平忠度が総大将でしたが崖から転落して死亡したようですよ。」

 

「・・・どうみるか?秀衡。」

 

「・・・京は陥落するでしょう。・・・ただ清盛が築いた西国の基盤と財力は絶大です。あるものがなければ再び返り咲くでしょう。」

 

「・・・あるものとは義経か?」

 

「彼の戦上手は天才とは違いますね。まさに神の域・・・。」

 

「神の域・・・か。ふふ、やはりやつが欲しいのじゃ。」

私が立ち上がり、秀衡から背を向けた時

 

「グァァガ!?」

心臓を押さえて倒れてしまった。

 

「秀衡!?秀衡大丈夫か?起きるのじゃ!!」

秀衡は起き上がることはなかった。

その後キョンシーとして蘇生させたが

 

「・・・病気で倒れてしまったことにしてください。うつると困るから私に近づけるのは基成と泰衡だけにしてください。この姿がバレると色々と問題がありますから。」

青白い肌と性別が女性になってしまったことから名前も小鍛治健夜と変えたが、政治的な問題で公にできず、自身の死と変化を隠すことにした。

 

「・・・なぜじゃ?最近なんかあったか?」

 

「・・・虫にさきほど・・・刺されました。」

 

「虫か・・・。」

結局何かはわからなかった。

 

〔夏〕

倶利伽羅峠で勝利した源義仲が都入りした。

対して平氏は都落ちとなり、西日本に逃亡。

 

「義仲の教養の無さは凄まじいのじゃ。」

 

「この報告には呆れます。」

政治顧問の基成と私は話していた。

 

「天皇の後継者問題にいきなり首を突っ込むか・・・。」

この時天皇には皇子が2人いたのだが、その2人を無視して王の子である北陸宮を即位させようとしたのだ。

皇統を無視しての動きだけに皇族、貴族の反感をかってしまった。

これだけで終わればまだなんとかなったのだが、さらに治安の回復を法王から命じられていたが配下の武士達が勝利に酔って略奪を開始してしまったのだ。

部下の責任を自分で受けるか、略奪を働いた部下を処罰すればまだよかったが、貴族や皇族に抗議された際に

 

「馬や兵に食べさせるものがなければ戦うことはできない。足りない分を徴収しただけである。大臣家や宮から徴収した訳ではない・・・。」

と言い訳をした。

これに後白河上皇は激怒し、義仲を平氏討伐を命令して京から追い出した。

ここに頼朝が気の効いた手紙と納税の申告により義仲討伐を頼朝に頼むことになる。

 

「義経が出陣したか・・・。」

その兵力3万騎と3万9000人の歩兵だった。



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粟津の戦い 西暦1184年~

【盛越川ほとり】〔西暦1184年1月〕

 

「突撃!!」

義経は京の警備として2万の兵と1万騎を残してきたのだが、相手は数百騎しかいなかった。

 

(やはり内部で分裂したか。)

義仲は戦の前に後白河上皇から最終通告を言われていた。

内容としては無礼な振る舞いをしたことに対する罪滅ぼしのために平氏を滅ぼすか、一戦交えるかだった。

戦になれば国賊・・・これに家臣達が動揺し、一族からも離脱者が出たのだ。

焦った義仲はまさかの後白河上皇の屋敷を襲撃し、幽閉してしまった。

ただ、上皇を捕らえる際にも犠牲者が出たのでこの数になっていた。

 

「弁慶殿・・・頼みました。」

 

「お任せあれ!!」

弁慶と呼ばれた図体がでかい黒光りしている男性は北邦共和国とモンゴルの紛争に20年間戦い抜いたベテランで、現在の年齢は36と現在25の義経より1まわり年が上だったが、お互いに信頼しあっていた。

 

「くらいやがれ!!」

弁慶は2メートルもある巨体で敵の馬ごと太刀で真っ二つにしてしまい、半分になった武士を掴んで、別の敵に投げつけて落馬させて殺すという離れ業をしてしまう。

 

「やあやあ我こそ!?」

叫んでいる間にプレートアーマーの集団に斬り殺される人も現れた。

 

「よ、義経は武士の礼儀も知らぬのか!!」

 

「・・・知ってるからこそ・・・勝つためにやるんだよ。」

義仲の背後には義経が刀を降り下ろしていた。

見ると鎧が部下の物だった。

 

「卑怯も・・・」

義仲戦死・・・それにより総大将がいなくなった義仲軍は武士達は自害し、全滅した。

 

「後白河上皇様を救出せよ!!」

後の歴史評論家は時代を先取りした天才戦術家と評価した・・・戦略家でないのはもう少し後にわかる。

 

〔1ヶ月後〕

後白河上皇という政治的怪物に丸め込まれてしまった義経は頼朝の指示を完全に逸脱した行動をとり始める。

それが平氏の討伐である。

頼朝の命令は京に入り鎌倉にいる源氏の影響力確保であり、義仲も暴走したため戦になってしまったが、頼朝的には平氏との壁(緩衝材)として使うつもりだったのだが義仲が戦死したことで狂ってしまった。

だが義仲の死は頼朝にもプラスとなった。

義仲の旧支配地域をそのまま頼朝の勢力圏にできたからだ。

・・・しかし、源平合戦の後半は義経という化け物が暴れだすのだった。

 

【一の谷周辺】

平氏討伐軍は2つの軍が存在した。

約5万騎を率いる頼朝に忠誠を誓っているため武士からの受けが良い源範頼率いる軍と北邦共和国の兵士と義経を慕う若者、武士で構成されている4万人の2つだった。

 

「範頼は背後に回り込もうとして被害が拡大していると・・・。」

 

「このままでは各個撃破されてしまう可能性がありますなぁ。」

 

「・・・弁慶動くぞ!!」

 

「・・・夜にしましょう。崖から縄をかけて降りれば安全かつ一気にけりがつくでしょう。」

 



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一ノ谷の戦い

〔夜〕

平家の兵士達、武士全てが油断していた。

崖を背にした陣地と源範頼率いる軍を撃退しているため油断していた。

・・・背後から来る魔物を・・・。

 

「突入。」

義経が低い声言った。

馬を崖の上に待機させ、ロープを張り、工作兵が崖下に降り、ロープと滑車を使った簡単なエレベーターを組み立て、鎧等を下に下ろしていった。

 

「・・・。」

義経が天才なのは味方を不安にさせないために指示以外は何も喋らなくなり、どんな報告でも真顔で感情を抑えられるところだろう。

平家の兵士が気がついて襲ってきたら下にいる部下が全滅してしまう・・・時間がとてつもなく長く感じているが、焦りを決して顔には出さなかった。

そして義経も崖下に降り、約5000人が準備を完了したと同時に

 

「突撃!!」

大声で叫んだ。

いきなりのことで安全だと思っていた場所の襲撃により平氏はパニックになった。

火が放たれ、火災が起こるとさらに悲惨なことになる。

平氏は安徳天皇を守りきったものね、多くの一族と武士を失ってしまった。

・・・しかし本陣が襲撃されたことを知らない範頼を追撃していた平維盛は本陣襲撃の数時間後に範頼を十数騎で逃げ出さなければならないほどの被害を与えるが

 

「何!?本陣がし・・・」

意識を伝令に向けた時、運悪くこめかみに矢が刺さった。

矢を放ったのは那須与一という青年だった。

義経は勢いのある今に追撃をおこなうべきと考えたが、範頼の敗走、船頭不足等もあり追撃を断念した。

 

【壇の浦】〔西暦1185年春〕

一族のほとんどを失ってしまった平氏は四国に一旦ていはくしたものの、数ヶ月後に放棄して太宰府近くまで逃げていた。

義経は平氏の動きを先回りして壇の浦で待ち伏せをしていた。

 

「・・・まさか源氏の生き残りにこれほどの戦上手がいたとは・・・。」

生き残った平氏の中で総大将となっている平宗盛は呟いた。

義経以外の源氏には平氏は全て勝利したのだ。

しかし義経は次元が違った。

 

「宗盛様!!戦局はいかがなのですか!!」

 

「勝てるのですよね!!」

女が叫び出す。

 

「もう少しで関東武士の顔が見えるでしょう。」

私は女どもにそれだけ言うと自害の準備を進めた。

 

「お婆様、わたしをどこへ連れて行こうとするのです?」

 

「・・・極楽浄土でございまする。」

 

「・・・まだやりたいことが私にはある。」

 

「安徳様?」

 

「・・・まことなのの言う通りであったな。・・・約束通りお主と共に行こう。」

 

「安徳様ありがとうございます。」

 

「あ、安徳様!!何をなさるのです!?」

 

「私は源氏の者に投降する。神器を・・・お婆様!?」

 

「なりませぬ!!源氏に渡るくらいなら!!」

二位尼、三種の神器を持って入水をはかる・・・が

 

「なの!!止めるのだ!!」

 

「はい!!」

すばやい動きでなのは二位尼の首を叩いて気絶させた。

 

「・・・さて、自害といこう。神器は草薙の剣だけは持っていくがな。」

 

「本当に自害でよろしいのですか?」

 

「私は見たいのだ。なのが言う北海道という場所の素晴らしさを。・・・投降すると最初で最後の冗談でお婆様が狂乱するとは思わなかったがな。」

 

「さぁ解釈を頼む。」

 

「待ってください。ここでは不味いので私の体の中にお入りください。」

安徳天皇この場から草薙の剣を持って北邦共和国に亡命。

・・・それがわかるのは2003年のことである。



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安徳天皇

【平泉】〔数週間後〕

 

「こちらが・・・安徳天皇の亡骸か。・・・なの数年間お疲れ様なのじゃ。」

 

「いえ・・・役に立てて嬉しいです。・・・安徳様はどうするのですか?」

 

「すぐにキョンシーとして蘇生させるのじゃ・・・もう1体死体はあるか?」

 

「いえ・・・私は持ってきてません。」

 

バチバチ

「お困りですか?」

泰衡がそろばんを弾きながらやって来た。

 

「出た守銭奴。」

 

「芳香様私も父が蘇生したその術を見させてもらえるのなら死体を用意しますが。」

 

「・・・いいじゃろう。」

 

「ありがとうございます。」

 

〔数分後〕

頭は安徳天皇として、体は別の死体を使って蘇生させた。

 

「ここは・・・。」

 

「気がついたか?」

 

「あなたは?」

 

「宮古芳香じゃ。なのの持ち主じゃ。」

 

「なのの・・・持ち主・・・?」

 

「安徳様大丈夫ですか?」

 

「おぉ、なの・・・自分の声が違うのだ。・・・体も・・・。」

 

「蘇生の弊害です。」

 

「そうか・・・で、芳香殿私はこれならどの様な立場になるのです?」

 

「本当に頭が良かったのじゃな。・・・現在平泉におる。そこから北海道になのが一緒に付いていく。そしたら私が戻るまではなのの製作者のはかせという人物の家で生活してくれ。・・・都よりは不都合もあるかもしれんが、色々と楽しいと思うのじゃ。」

 

「・・・一族から離れられるのなら何でも楽しいと思う・・・まぁよろしく頼みますぅ。」

 

「口調が関西弁になり始めたのじゃ・・・で、安徳天皇は名前はどうするのじゃ。」

 

「変更変更・・・たのんます。」

 

「弱音ハクでどうじゃ?」

 

「・・・・ええやん。気に入ったで。」

 

(数年後には凄まじい酒飲みになりそうじゃな。)

芳香の予想は数週間後に的中するのだが、まだ天皇としての威厳があった。

 

〔西暦1186年春〕

義経は平泉自分を慕っている兵と北邦共和国の兵を引き連れて平泉に逃げてきていた。

 

「何で俺はあんな馬鹿なことをしたのだろうか。」

 

「調子に乗った結果ですぅ。ざまぁですぅ。」

 

「だから戦術家どまりなんだよ。」

 

「ぐぬぬ・・・。」

義経は翠星石と泰衡に責められていた。

 

「でどうするのじゃ?はっきり言って平泉も危険じゃぞ。・・・一応アラスカに拠点を移動できるように準備はしたが・・・。」

 

「父はどうおっしゃってましたか?」

 

「全ての領土の放棄をするが、連れていける人は全て連れていく気じゃぞ。」

 

「・・・ならそうするしかないでしょう。」

 

「最北に港を作っておいてよかったなー。」

 

「芳香様はこうなることを知っていたのですか?」

 

「まぁな。・・・さて、頼朝のことじゃ。政治工作をしてからこちらを攻めるじゃろ。・・・1年じゃ。運べるだけ運んでしまうのじゃ。」

奥州大脱出が始まった。



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西暦1186年~

まず脱出するにあたり奥州藤原氏の直属の配下が17万・・・うち、土地を手放したくないというのが2万ほどで15万人、商人、職人、忍び衆、年貢が少なくなると言って連れていく農民等を加えると35万人まで膨れ上がった。

 

「許容範囲じゃな。」

 

「・・・え?芳香様・・・35万人ですよ。集めてなんですがこの数を移動させるとなるとお金が・・・。」

 

「別に大丈夫じゃろ。問題は身分差別があることじゃ。北邦共和国は身分が存在しないのじゃ。武士達が勝手に農民から税を取り上げたら周りが武士を血祭りにあげるのじゃ。」

 

「そ、そうなのですか・・・なら分散して軍に入れてはどうでしょうか。その方が使えますよ。」

 

「泰衡は良いのか?自分の身を守ってくれる存在じゃぞ。」

 

「金があれば身なんて守れますから。」

 

「ここまで守銭奴だと清々しいのー。」

問題もあったが大半は順調に進んだ。

 

〔秋〕

移動が開始した。

北邦共和国が出した船は600隻・・・普段は漁船や輸送船なので乗り心地は決して良くは無いのだが、それでも商人、職人、農民達は新天地に感情が高ぶっていた。

武士も一部は綺麗な船長(平安美人ではなく活発そうな女・・・普通の武士はそちらの方が好みだった)を見つけて浮かれている者もいたが、泰衡等の忠誠を誓っている者の命令とはいえ、異国の軍で働く不安にとらわれていた。

 

「・・・まぁ政府には言ってあるし大丈夫じゃろ。」

 

「あの・・・俺もですか?」

 

「何を言っておるのじゃ?・・・義経はモンゴルまで行って戦闘訓練を受けてくるのじゃ。」

 

「・・・俺絶対に逃げる場所間違えた。・・・大韓帝国まで行けばよかった。」

 

「大韓帝国は北邦共和国と永久同盟国じゃぞ。逃げたらわかるのじゃ。」

 

「・・・ところで我々が居なくなったら奥州はどうなるのだ?頼朝になにもせずに明け渡すのか?」

 

「実はな頼朝が奥州藤原氏から奪いたいのは政治機構なのじゃ。京から離れているにも関わらずなぜあれだけの権力と武力を握り続けているのか知りたいらしいのじゃ。」

 

「なるほど・・・それに関わっていた資料と人を移動させるだけで負担になるのか。」

 

「さらにお主のこともあるのじゃ。義経が捕まえられなくて、いつの間にか子供ができればその子を使って反乱を企てる・・・いや、そう捏造して農民の子が担がれるかもしれないのじゃ。そうなれば頼朝の制御が武士に効かなくなるのじゃ。」

 

「俺が生き残れば良いのか・・・まぁモンゴルとやらに行って死なないようにするか。」



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西暦1187年~

【アラスカ 新平泉】〔西暦1187年春〕

 

「身代わり達が殺されて頼朝に制圧されました。」

 

「報告御苦労様なのじゃ。・・・さて、頼朝はどう動くか・・・。」

 

「ワハハ・・・武士の統制がとれてなくて動けないんじゃないかな?」

 

「いや、まだ後白河相手に政治工作中だと思いますよ。」

政治の巨星元菅原道真こと蒲原智美と元藤原秀衡こと小鍛治健夜がこちらを攻める可能性を私を入れた3人で話していた。

 

「ワハハ・・・奥州とは小鍜治が思ってるほど小さくないぞ・・・大きな敵がいれば武功を稼げると思ってたんじゃないか?源平合戦は終始義経が圧倒的な力を見せつけただけだしな。・・・西国はリーダーの平氏を失い、見下していた関東武士達の命令に混乱し、源氏側は戦で大敗した頼朝が政治上手なだけに清盛のようにならないか心配しているし、一族がほとんどいないことにも危惧している。・・・動きようがない。いや、断言しよう・・・頼朝は動けない。」

 

「蒲原さんの意見もわかりましたが・・・外交的視点から言うとそうでもないのですよ。まず後白河上皇ですが武士の権力を落とそうとしましたが、それ以上に高官のほとんどを占めていた平氏がいなくなったことで貴族達がその場所を巡って対立しています。この中には頼朝派が一定数存在するので、頼朝派の貴族が勝てば義経の探索にこちらに攻めてくる可能性もあります。」

 

「・・・両方の意見を整理すると蒲原は北海道に攻めてくる可能性はない。小鍜治は貴族の争いに勝てばこちらを攻めてくる可能性がある・・・か。ふむ・・・少してこ入れをするかのー。」

 

「ワハハ・・・何をする気だ芳香。」

 

「ある山にちょっとした仕掛けをしてね。・・・決壊させる。」

農北やアラスカに大規模なダムを作ろうと計画していた北邦共和国政府は私に失敗しても困らない場所を教えてほしいと言ってきた。

私は真っ先に青森を指差して

 

「ここにある川を使うのじゃ。山に囲まれた場所だからやりやすいじゃろう。」

と言った。

奥州藤原氏では時代の流れに逆らう力がないことと、モンゴルでの戦争で大規模な軍事行動は無理と思っていたからだ。

脱出の際に時間差でダムが決壊する仕組みにしていた。

 

「青森で作ってきた人工物は全て流されるじゃろう。・・・だが安全と時間に交換することができた。」

 

「ワハハ・・・だから農民も移動させたのか。」

 

「先に言ってくれれば良かったのに。」

 

「だがな小鍛冶・・・それを言ったら守銭奴に何を言われるかわからないのじゃ。」

 

「それもそうですね。」

こういった話し合いで蒲原は平安京にいる藤原北家のみに敵意を向けるようになる。




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チンギス・カン(ハン) 西暦1189年~

【モンゴル とある部族】〔西暦1189年春〕

義経以下数千名がテムジンという北邦共和国派の部族長のもとで戦っていた。

最初は言語の違いに戸惑ったが、数年も一緒の生活をすれば馴染んでいき、お互いに子供ができたときは自分の子供が生まれたようにばか騒ぎをするほどだった。

義経はテムジンのことを長と呼び、テムジンは義経を将軍と呼んでいた。

 

「将軍・・・俺はこの内乱だらけのモンゴルを統一したい。」

 

「長ならできるさ。俺もつく。俺らが一緒に戦えば勝てない戦なんてないだろ。」

 

「それもそうだな。・・・統一したら強い国を作りたい。そして北邦共和国、大韓帝国と協力して世界を征服したい。」

 

「それができたら皇帝って呼ばなきゃいけないな。」

このとき義経は30歳、テムジンは27歳だった。

 

〔西暦1190年夏〕

テムジンと義経は3万を超える敵と戦っていた。

どちらも北邦共和国派だったために北邦共和国政府は動けなかったが、会社(大きいのは財閥とかグループと呼ばれるようになっていた)と芳香はテムジン側を支援したが、初戦は救援物資が間に合わず100名の死傷者と捕虜を出して負けてしまった。

義経は初めて負けたことになり、少ない兵をどれだけ効率よく戦わせるかを考えるようになった。

翌年の1月には物資も届いたことで反撃に転じる。

敵陣に雹が降り注ぐというラッキーもあり、次の戦いには勝利した。

 

【アラスカ 東都】

 

「そうか義経が勝ったか。」

 

「そのようですね。」

 

「なのはすまんな。すぐにでもハクのもとに行きたいだろうに。」

 

「いえいえ、もともと壊れたロボットがまた働けるだけうれしいのですよ。・・・そういえばアームは大丈夫ですか?」

 

「ああ、今は服がアームの代わりをしているのじゃ。特殊繊維と記憶合金、弱電気発生装置が色々ついているが見た目は普通じゃろ。」

 

「はい。」

 

「芳香~農業まだですぅ?」

 

「あと10年で私の付き人の期限も終わるからそれまで頑張るのじゃ・・・これじゃあどちらが罰を受けているかわからんのー。」

 

「ワハハ・・・面白いな。しかし芳香がいなかったらどんな世界だったんだいここら辺は。」

 

「ほとんど未開拓の雪に閉ざされた場所になっておったのー。」

 

「うへ・・・それは嫌だな。ワハハ・・・でも、人口も3億を突破したけど大丈夫かな?」

 

「心配ないですぅ。・・・秘密兵器が出来上がり始めたですぅ。」

 

「秘密兵器?初耳じゃな。」

 

「できてから度肝を抜かすですぅ。」

翠星石は何かをたくらんでいるようだ。



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西暦1195年~

【モンゴル】〔西暦1195年秋〕

 

「・・・長今言ったこともう一度言ってくれないか?」

 

「反北邦共和国派と現状の敵が一時的に同盟を結んだ。」

 

「・・・不味いな。」

義経は地図を見てため息を吐いた。

現在テムジンの配下の部族が13あり、戦闘に参加できる数は4万と少し、これに義経の配下の6千名を加えることになる。

対して敵は今回の同盟で13万を超えていた。

 

「中立のところを動かせないか?」

 

「できたとしても数が足りない。」

 

「・・・いや、こちらにつかせるだけでいい。それができれば北邦は動く。」

 

「なに?将軍どういうことだ?」

 

「北邦を動かすには2つ方法がある。1つは仲間の窮地、もう1つは投資だ。」

 

「投資・・・ならば敵の方が良いのではないか?」

 

「いや、条件が違ってくる。長・・・お前の父親が前にモンゴルとのパイプ役を取り仕切っていた。そのコネが俺をお前と結び付かせた。言っておくが俺の下にいるのは軍の幹部候補だ。それをむざむざ失うことはしないし、仲間の窮地を助けるために動いてくれるだろう。・・・ここで長が中立を味方にできれば北邦は更なる兵を動員してくれるだろう。・・・外交的に優れていると。」

 

「なるほど・・・将軍は武だけの人だと思っていた。すまない。」

 

「そういうのはいい。互いの仲だろ。」

 

「そうだな。」

 

【北邦共和国 政府】〔西暦1196年夏〕

 

「議長どうしますか?モンゴルの紛争は?」

 

「余はテムジンとやらを支援する。・・・部分動員令を発令しろ。」

 

「は!!」

第39代議長ネロが動員令を発令した。

その数は200万人・・・新兵も1割りいるものの、軍・・・いや参謀本部はこれまでの経験をフルに使い、事前に計画していた動員の素早い移行実現させた。

 

【モンゴル】〔冬〕

約6ヶ月で決着はついた。

テムジンはまだ動いていない北邦共和国が味方になったという偽の手紙で中立を引き込み、反北邦共和国派を足止めさせられるだけの兵を残して残り全てで敵を攻撃した。

挟撃をしようとしたら、挟撃された敵は圧倒的な物量を前に崩壊すると思われたが、さすがモンゴル民族である。高い戦闘能力と学習能力で約2ヶ月間戦線の崩壊を防いでみせたが、それを倒すために対騎兵に特化したパイクという武器が北邦共和国の前線に配備されると完全に崩壊した。

その後テムジンの全兵力を反北邦共和国派にぶつけて壊滅させた。

その戦いでは義経が見事としか言いようがない戦いをしたためモンゴル方面最高の将軍という名声を得た。

テムジンはモンゴルを統一させ、フビライ・ハンというモンゴル帝国を誕生させ、北邦共和国、大韓帝国は正式に同盟を結んだ。

戦場はヨーロッパに向かうことになる。



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西暦1200年~

【政都 政府】〔西暦1200年〕

罰則が解けた私は政府に再び戻りネロの手伝いをするようになった。

ただ、ネロが軍に関する法の整備と参謀本部の権限の監視に忙しく、内政と外交を私に投げ渡された。

私はその権限を使って蒲原を私の部下に移動させ、アラスカには小鍛冶を副代表にした。

代表には別の人をあてたが。

 

「さて、現状の問題点は・・・なんじゃこれは!?」

私が見つけたのは鉱山の採掘記録だった。

 

「廃坑になった場所がない・・・じゃと!?」

どんな鉱山でも100年持てば凄い方だがここでは1000年近く採掘され続けている鉱山がある。

 

「すぐに担当を呼んでくるのじゃ!!」

新しく秘書に雇った人物に叫んだ。

 

〔3分後〕

鉱物部門の部長がやって来たので詳しく説明を聞くと、鉱物は場所の条件が整えば自然生成される物というすっとんきょうな答えが返ってきた。

 

「そんな植物じゃないんだからすぐに生成されるわけなかろう!!」

しかし量が量なだけに信じるしかなかった。

 

(というかこんだけの量の金銀銅の貨幣があってもインフレにならない需要量にも問題があるか・・・。)

紛争で経済的には上向きを保っており、下手にいじることができない状態だった。

 

「まぁわかったのじゃ。すまんな呼び出して。」

私は鉱物部門の部長にお礼を言って帰させた。

 

「・・・もう私が理解できる範疇ではないな。」

小さく呟いた芳香だったが、仕事なので逃げ出す訳にもいかず、他の問題を片付けることにした。

まず問題は鉄の不足だったのだが永代だたらという方法が確立し始めているとの報告があったので問題はなく、さらにはかせから反射炉の試作施設が完成したとの報告もあったので時間の問題だった。

次に内陸の慢性的な農業用水不足が問題になったが、妖精と雛苺が量産している改良型風車を使った井戸水を使うことと、アラスカでは確立した点滴農法を農北や上東海道に伝えるよう手配することで終わった。

 

「ふむ?・・・おぉ!!こんな発明品もできたのか・・・。」

それは活版印刷機の改良品だった。

ただし漢字を全て使うと機械が大きくなるためカタカナだけを使うシステムになっていた。

 

「・・・色々と進歩しているのじゃな。・・・ん?」

ふと外がやけに明るかったので外を覗くと何かが光輝いていた。

 

「・・・なんじゃあれ?」

理解を越えた何かが起こっている証だった。

 

〔翌日〕

光の原因は草薙の剣だった。

剣に溜まった神力が暴走したようだ。

 

「ワハハ・・・不思議な力は色々と存在するのだなー。」

蒲原はこの時独自に研究機関を作り不思議な力を探すようになる。



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モンゴル帝国 西暦1205年~

【モンゴル】〔西暦1205年春〕

 

「・・・よし、これぐらいで大丈夫だと思うよ。」

蒼星石は北邦共和国の全部の馬の管理をしていた。

・・・で、本部は政都にあるのだが、第二の規模を誇る支部がモンゴルに存在していた。

で、今回蒼星石が支部にいる理由が20万頭を搬入させるためだった。

 

「しっかしモンゴルか・・・前世では行ったことがなかったけど・・・この気候と牧草地帯はそりゃあ馬が多いわけだ。」

 

「ぶつぶつ何を言っているんだ?」

 

「義経将軍か。いや、少し昔を思い出していてね。」

 

「そうなのか。少し従軍してみないか?」

 

「おや?ナンパかい?」

 

「いやいや、俺は嫁さん3人で十分。」

 

「ふ~ん。まぁいいよ。ただ、後方に頼むね。」

 

「もちろん補給面だから。前線は私がやる。」

 

「・・・で?モンゴルの隣と言えば北邦か小国の西夏かウイグルぐらいだね。どっちに行くんだい?」

 

「もちろん西さ。北邦の私と北邦派の皇帝がなぜ裏切らなければならない。」

 

「それもそうだね。」

この時義経はチンギス・ハンの弟や息子達、部族長、千人隊の隊長を含めた将官達とほぼ毎日西征について話し合いをおこなっていたのだが補給の概念がまだまだ未発達だった。(他国からは北邦と大韓の補給が過剰に見え、モンゴルのは未発達でも上位に位置した)

そこで補給に詳しいだろう人物の派遣を義経は頼んでいた。

もちろんそれは蒼星石ではないのだが、動物に精通している人物はモンゴルの騎馬兵ともわかり会えると直感で義経は確信していた。

この頃のモンゴルの兵站は略奪と連れていく複数の馬を解体して骨は矢じりに、血は飲み物に、肉はそのまま食べるようにしていたが、略奪ができなかった時の兵站の破綻に義経は危惧を示していた。

これは兵站、効率的戦闘、機動力、学習に重点を置く北邦共和国軍にも課題であり、義経の危惧を知った参謀本部からは大量の補給要員(50万人)と局地的な補給基地の建設の提案だった。

略奪時のリスクを考えるモンゴル将官達もこれには賛成し、駅馬も用いた新しい補給、輸送方法の確率を急いだ。

 

〔西暦1207年秋〕

収穫期を終え、大量の物資を受け取ったモンゴルは西征を始めた。

前衛はモンゴル人か北邦の精鋭軽騎兵、両翼部には大韓の弓兵やフルプレートを着た北邦装甲兵士後方にはモンゴルの精鋭部隊が配置された。

大体の部隊がこのようになり、一気に西夏を攻めた。

西夏は約2週間で降伏したため補給の成果は見られなかったが、ウイグル遠征では広大な領土に少ない人口のため補給の実験には最適で、有効性が実証された。



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西暦1208年~

【政都 東雲グループ本社】〔西暦1208年冬〕

 

「なのーなのー。これからどんな物が必要かな?」

 

「そうですね・・・政府は日常品の製造技術を軍の武器の技術向上にあてたいらしいので軍の関係がよろしいかと思いますよ。」

この時農業、林業、畜産、磁器等は数百年先を進んでいたのだが、造船技術と製鉄が遅れぎみだった。

 

「雛苺は?」

 

「そろそろたたら吹きから反射炉を使用した製鉄法に切り替えるのー。ただ、水質汚染が酷いからたくさん建てるのは危険なのー。」

 

「うんうん。そうだよね。・・・まぁ反射炉を公開するとして、石炭の採掘はどうかな?」

 

「石炭は前々から鉱山は抑えてあるのー。」

 

「ありがとう雛苺!!大好き!!」

 

「はかせは大げさなの!!」

 

「ぼくたちはどうするですか?」

 

「妖精さんは時計の細部の調整と芸術品の仕上げを引き続きお願いしたいな。」

 

「わかったー。」

時計はこの数百年で精密性を増してはいたが、電気の研究が政府のもとで始まったばっかりなので実用化にはまだまだ先になると見られていた。

ただ、時計を作ることで流れ作業となり、大量生産の基礎はでき始めていた。

 

「なのー。お酒まだない?」

 

「はいはい、ハク様・・・って何本目ですか?」

 

「まだ5~。」

 

「パット見で17本転がってますが?」

 

「あえ?」

 

「ハクは相変わらずの酔っぱらいなのー。」

 

「ハク、飲みすぎはいけないよー。」

 

「うぅ。」

その後最後の一杯と言ってジョッキを片手に持って

 

「おビール様!!おビール様!!」

とよくわからないことを叫んで酒を飲む元天皇だった。

 

【モンゴル】〔西暦1210年春〕

モンゴル帝国は旧中華の無人地帯を領土にしていき、次なる目標をアラル海を接するホラズム・シャー朝に狙いを定めた。

全軍120万・・・後方支援や衛生兵等の純戦闘能力がない部隊を除くと50万人ほどになるのだが、ホラズム・シャー朝にこの数を撃退できる兵や将軍はいなかった。

このホラズム・シャー朝は都市ごとに一定数の兵を置く専制防衛を基本戦略にしていたため、モンゴル軍とは相性が悪かったのだが・・・。

 

【要塞】

 

「く・・・この砦は落とすのに時間がかかった。」

義経は裏切った敵から要塞の情報を受け取ったが、時間がかかりそうだったので包囲して要塞を干した。

しかしなかなか陥落しないので一部部隊を除いて別のところを落とした時に陥落の報告が来たのだ。

 

「・・・SBに大型建造物の破壊兵器の開発を依頼しなければな。・・・平原だとやりにくいな。」

天才でも平原に存在する要塞はやりにくいようだ。



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西暦1210年~

〔西暦1210年秋〕

補給と機動力、超人的な将官の指揮能力にホラズム・シャー朝は5ヶ月で大半の都市がモンゴル軍によって落とされた。

王族達は首都に立て込もって徹底抗戦を叫んでいたためほとんど処刑された。

生き残った王族は首都から逃げ、別の敵から奪い取ったばかりの都市に逃げていった。

それはホラズム・シャー朝の最後でもあった。

 

「僕は医学に精通しているわけじゃないけど・・・ここの医療技術は北邦共和国やモンゴル帝国、大韓帝国よりも数十年進んでいたんだね。」

蒼星石は奪取した都市の資料館で医療のカルテを読んで呟いた。

 

「キョンシーになる技術があるからかな・・・医学・・・特に薬品系が発達しないな。」

外科はキョンシーになるためにいじくるので最先端だったが、内科・・・つまり薬が未発達なのだ。

まぁ北邦共和国はほとんどニュータイプみたいなものなので滅多に病気にならないのもあるが。

 

「さて、次の戦争に向けた準備をしないとね。」

蒼星石は準備を始める。

 

〔西暦1211年夏〕

準備期間を終えたモンゴル軍は行動を開始した。

初めはインドを攻撃目標地点にしていたが、中華が消滅したことにより人口と市場としての価値から貿易相手として残すことを決定した。

これによりインドから武器や独自の文化、南の食材、香辛料、糸を北邦、大韓の食料や砂糖、こちらの文化を交換することができた。

モンゴルはその輸送で4方共に儲けることができた。

その金で組織の地盤を固め、予定よりも早く準備を終えることができた。

次なる目的地はカスピ海を中心とした中央アジア諸国の完全制圧だった。

今回は義経の息子2人も従軍し、どちらも好青年って感じだった。

 

「さて、戦争をするぞ。」

不完全燃焼だった前回の遠征の反省点を踏まえて、今回は要塞兵器のカタパルト(マンゴネル複数発射及び固定器具式)がバラバラの状態で最前線に送られていた。

 

〔秋〕

義経はアラル海を下から回って進軍したが、連戦連勝でモンゴル帝国の支配に組み込んでいった。

この時補給線が細く延びてしまい、たまたま後方にいた蒼星石が率いる部隊が攻撃されたが

 

「所詮賊だ、恐れることはない。」

と名言を言って撃退した。

 

「なんだろう・・・僕の血が騒ぐ。」

 

「そ、蒼星石補給長どうしました?」

 

「いや、何でもない。」

これをきっかけに蒼星石は補給長をやめて志願兵として訓練を受けるようになる。

 

「あいつはまた奇行に走り出したですぅ。」

翠星石は蒼星石の報告を聞いてそう言った。



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西暦1212年~

〔西暦1212年春〕

義経は体調不良のなか無理を通して攻撃を続行した。

3月、4月は普通に指揮ができたが、ついに5月の初めに倒れた。

指揮は副官だったチンギス・ハンの弟に委託して義経は北邦で休養することになった。

しかし・・・

 

「だ、誰かいないか。」

 

「義経様どうしましたか?」

 

「すまん・・・私の命はここで終わりのようだ。・・・儀式の準備を頼む。」

 

「は!!」

義経は中央アジアのとある駅で息を引き取った。

53歳で、ほとんどを最前線で過ごす日々のストレスもあり、気管に異常がおこり、最終的に肺炎で死亡した。

 

「・・・戻るぞ。」

義経は儀式を終え、蘇生するとすぐに戦場に戻った。

身体は女性となったが、心はそのままだった。

道中で頭巾を被り顔を隠し、膨らんだ胸はさらしを巻いて隠した。

戦場に戻った義経は副官に言っていた合言葉を告げた。

キョンシーの秘術は北邦の人間にのみ効果があると他国には伝えていた。

副官は疑っていたが、指揮を再開し、卓越した戦術に義経が戻ってきたことを再認識した。

義経は白い頭巾を好んで使っていたためある物語が後生に残った。

赤ずきんはそのまんまであるが、白頭巾と漢字で題名は書かれており、内容は

 

馬に乗った白い頭巾は気を付けろ

人の首をかっさらう

槍を持った白い頭巾は気を付けろ

人の心を持っていく

剣を構えた白い頭巾は気を付けろ

人の体を割っていく

と恐ろしい歌で始まり、主人公は白頭巾に出会って生き延びた兵士が何度もやって来る白頭巾に仲間をどんどん失っていき、最後に自分を殺そうとする白頭巾の胸に主人公が剣を刺して終わる。

普通の物語なら◯◯と仲良く暮らしましたとかお金持ちになり、一生楽しく暮らしましたとかだがそれらの類いはどこにもなかった。

実際に義経は前線で指揮をしている際に暗殺者に襲われて胸を刺されるのだが、その暗殺者を切り裂いている。

これを見た別の暗殺者がこの話の作者と義経以下現場に居合わせた人は語る。

そんなトラブルがあったものの、翌年の夏には制圧に成功し、義経はここで記録的に死ぬことができた。

義経は佐天と新たに名乗り、チンギス・ハンの参謀としてチンギス・ハンが死ぬまで活動することになる。

 

【政都 参謀本部】〔西暦1220年冬〕

参謀本部・・・中を見ると美しい女性だけで構成されている軍の頭脳はキョンシーとなり、現場もしくは作戦立案で活躍してきた者と物資の輸送で功績があったもの達がここに集まっていた。

 

「モンゴルの遠征によりたくさんの経験と優秀な指揮官、熟練兵を得ることができました。」

 

「しかし、課題もありますね。」

 

「防御用の基地の改造と土木作業員の練度の未発達、攻撃力不足ですか。」

 

「そもそも要塞という概念が我々にはなかった。これを手に入れられたのは大きい。あと、歩兵もしくは現状の騎兵の集団突撃攻撃では攻撃力が不足しているため重装の騎兵の必要性もあるな。」

 

「我々は今攻める側だがいつ防御側になるかわからん。とりあえず要塞の研究から始めよう。土木作業員の練度は別の部署にも協力してもらわなくてはならない。で、研究施設はアラスカでおこない、一定の成果が出たら渡島に建設する。」

 

「賛成です。では解散ですね?」

こうして彼女達は動き出す。

 



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西暦1221年~

【アラスカ とある会社】〔西暦1221年春〕

その会社は就職案内の会社だった。

社長はキョンシーであり、元の名は藤原泰衡と言った。

 

「結局、人の流れを管理するだけで金になる。・・・あと、物も管理したいけど他の企業が割りを食うからどうしよっか。」

 

「社長、食品関係にしませんか?就職案内で契約している建設業界から名にか建てるものないかと言われたので安く入札してもらえると思いますし、大農園からも作物の提供を受けれますよ。」

 

「なるほどね~。ならさ、新しい食べ物作ろうよ。それなら利益はこっちに全部くるって訳よ。」

現在はアラスカを中心とした地方の中堅企業であったが社長の金に対する嗅覚により一気に成長していくのだった。

社長の名前はフレンダという。

 

【モンゴル民族会議場】〔秋〕

モンゴルの首都にこの会議場があった。(イメージは国会議事堂)

・・・で、通常時ならモンゴルの各部族長とチンギス・ハンの一族等しか入れないのだが、今回は例外だった。

次の皇帝を決めるための議会なのだ。

チンギス・ハンが結構な年であり、長男が戦死したために今回のようなことがおこなわれた。(長男はキョンシーにされて戦上手なだけに今も前線で指揮をして国境の防衛をしている)

幸いなのが兄弟の仲がとてもよいことだろう。

候補は3人おり、次男は長男ほどではないが戦上手であり、カスピ海から逃げる敵を追撃して勢いのままキエフ大公国を発見するという軍功があった。

三男は調停にずば抜けており、勢力のバランスをうまく整えることができた。

四男はチンギス・ハンの次に金持ちであり、金銭感覚がずば抜けていた。

ただ、それによって部下と揉めた等の報告はなく、使い道はしっかりしている。

各部族長は3:3:4といった感じに支持を表明した。

私こと芳香も蒲原と一緒にこの場におり

 

「蒲原はどうみるか?」

 

「ワハハ・・・三男一卓。」

 

「ほぅ・・・なぜじゃ?」

 

「ワハハ・・・トップに必要なのは勢力の調整か圧倒的カリスマのどちらかだ。圧倒的カリスマのあった長男が戦死したのだから三男にした方がいいんじゃないか。」

 

「ふむ・・・お?決まったようじゃな。」

一族の話し合いの結果蒲原が言った三男が次期皇帝に指定された。

また、この話し合いの後に次の遠征はヨーロッパ方面にチンギス・ハンの死後開始することが告げられた。

大韓帝国はそれに安堵の表情をした。

大韓帝国の財政は首都をソウルにしたことで圧迫されており、大遠征に耐えれなかった。



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西暦1225年~

【政都】〔西暦1225年春〕

この年は軍の整理がおこなわれた。

毎回毎回戦争の度に志願兵を募って数を足していては困るので、常備兵を明確化したのだ。

・・・で、具体的な数は、歩兵25万人、騎兵45万人、工兵10万人、補給兵75万人、予備軍25万人となっていた。

全人口が4億3000人なのでこのぐらいの軍を常備できた。

 

「人材不足、労働力不足と言っていた嘆きはどこにいたのやら・・・。」

芳香はこの報告を聞いてそう呟いた。

次にアラスカで研究されていた要塞建設及び性能実験の結果、要塞は不要という結論が出た。

広大な領土を守るのに要塞は不向きとされたのだ。ただし、海岸沿いにはカタパルトを使用して船を沈める方法なら要塞が必要と書かれており、上東海道東部、千島列島、北海道、アラスカ南部に作られることになる。

 

〔西暦1226年夏〕

十数年の歳月をかけて翠星石はついにあの方法を確立した。

 

「この技術は北邦共和国の未来を決めるですぅ!!約4億3000もの人口を支えている食料事情を爆発的に底上げするですぅ!!」

とある世界ではこう呼ばれている・・・オストワルト法

とハーバー・ボッシュ法と・・・。

どちらも密接に関係しているが、内容的には化学肥料の大量供給が可能になったのだ。

ただ、電気が等が未発達なので労力は比べ物にならないが・・・そこは人の数をいかした。

 

「やっと形になりましたねはかせ。」

 

「そうでなくては困る。・・・財産の半分をつぎ込んだからな。・・・なのーそれよりおやつは?」

 

「あ、はいはい。今持っていきますから待っててください!!」

 

「おかしですか?」

 

「そうだよー。」

 

「やった!!」

東雲グループの力を借りた翠星石はついに完成させたのだ。

ちなみにだが、東雲グループ以外にも大財閥や大規模なグループには退け並み融資をしてもらっていたり・・・。

何はともあれ現状で10億人は養うことが理論上可能になった。

 

「ちょっと不味いかもしれんのー。」

芳香は不安になってきた。

人口が減ることはないので増え続け、いつか全員が餓えて死の星になるのではないかと・・・そこで神界に相談した上で別の世界の購入を検討し始める芳香だった。

・・・が思わぬところからオファーが来た。

 

『事情は聞きました。私は地獄の閻魔第三席四季映姫です。融資と取引をお願いしたく通信を入れました。』

 

「四季映姫!?白黒閻魔か!!取引とな?」

 

『はい。地獄に人員派遣をお願いします。増え続ける死人にそろそろキャパオーバーになるので。』

 

「大変なのはわかったのじゃ。して見返りは?」

 

『おすすめの惑星の購入を安く売ります。あと、技術を覚えられます。』

 

「技術・・・神界のか?」

 

『えぇ、送れるだけ送ってください。頼みました。』

 

「え、あ?・・・きれてしまった。」

とりあえず物好き200名を集めて送り込んだ。



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西暦1227年~

〔西暦1227年春〕

チンギス・ハン死去・・・つまりヨーロッパ進行の開始である。

チンギス・ハンはキョンシーになることを拒み続け、生き返ることはなかった。

さて、モンゴル現帝王オゴデイがヨーロッパ遠征の開始を来年春とした。

北邦共和国と大韓帝国はこれに賛成、モンゴルの新都カラコルム、中央アジアの拠点アルマリク、ヨーロッパに一番近いタブリスの3大都市を北邦の融資によってできた広大な道を使った補給網で繋ぎ、新しいシルクロードを形成した。

モンゴル軍は北部から進行を計画し、北邦軍は陽動もかねたビザンツ帝国を進行、大韓帝国は旧中華の生き残りがいる大越とチャンパー、パガン朝の東南アジア方面の安全確保をそれぞれおこなうことになった。

北邦軍は今回の軍事作戦に100万人を投入し、将軍も義経等の長年従軍したベテランと優秀と言われている補佐官が送り込まれた。

一般兵の中には蒼星石の姿もあった。

 

〔西暦1228年春〕

蒼星石は自分の武器に特殊な物を使っていた。

神界にたまたま行けた時に特殊なハサミを買ってもらったのだ。

万能ハサミと言う名前の商品だった。

20メートル以内、自分が知っているはハサミとしてある形なら自由に変えることができ、刃物で切れる物ならどんな物でも切れると言う商品だった。

これが恐ろしく強かった。

近づいてきた敵を最大まで伸ばして串刺しにしたり、刃を逆にして振り回しただけで敵は半分に切れてしまう。

たとえプレートアーマーで全身をガッチガチに固めていた司令官でも・・・。

同部隊の兵士からはキル(殺すと切るを合わせて)と呼ばれていた。

 

「ふう。肩に槍を受けたけどやっぱりこの体は凄いね・・・自然に再生してしまう。」

キョンシーの自己再生能力は神力の宿っている物を食べ続けるほど上がっていく。たとえ飴玉1個を毎日食べるだけでも・・・。

戦闘中はキョンシーは飴玉か酒しか供給されない。

まぁできないのだが。

1日1個飴玉を食べれば腐らずに済むのだ。

空腹間はあっても生きているわけでないので必要かを聞かれたらいらないといえる。(美味しいものは食べると幸福な感覚になるが)

 

ゴクゴク

 

「度数が強いのはロシア人の特権だと思うけどね。人間だとこれで消毒にもなるから大切だけど・・・。」

生きている兵士達は敵を殺して持ってくるとその死体を使ってキョンシーとなり、余った死体は本国の家族のもとに防腐処置を施されて送られる。

こうすれば一族みんながキョンシーになれるのだ。(自分の息子や娘に死体を与えることは禁止されている)

まぁ大体の人は2人殺せばO.K.なので残りは同じ隊員に渡すか国に寄付することになる。

寄付すると周りから本国に貢献していると尊敬されるのだ。

まぁ自分の名声と家族のために不死の軍団はイスタンブールに迫る。



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西暦1230年~

〔西暦1230年秋〕

モンゴル軍はキエフ大公国を1年半で崩壊させ、ウクライナ方面からポーランドに雪崩れ込んだ。

偵察部隊は約7万人が進行し、征服を目指していた。

 

【北海道 政府】

 

「イスタンブールで北邦軍は停止して防衛戦をしているか・・・。」

報告書を読んでいる芳香はあることを思った。

 

(あれ?火薬って発展しておるか?)

旧中華で黒色火薬が発見されたのが200年前だが、武器としては発展途上だった。

モンゴルが本に載っていたてつはうを開発したため、現在モンゴル帝国が火薬の研究は2歩先に進んでいた。

 

「兵器ではなく花火や採掘用に発展させた方が良いかもしれんのー。」

一時的に火薬を武器として利用するのを放棄した。

これによって数年後にはかせの東雲グループとSBの協力により工業用爆破材(以後ダイナマイト)の製造が開始され、鉱物資源の採掘量がはね上がり、品不足状態の可能性が減ったが、後々の悲劇の引き金をひくこととなる。

 

【ヨーロッパ ポーランド】

先鋒の7万人だけでヨーロッパの主力が壊滅してしまい、東欧諸国は蹂躙されていった。

ただ、中には降伏したり、モンゴル軍に協力する人物が現れ、北邦の白人系移住者が爆発的に増えた。(それでも人口比からすると0.02%くらいであるが)

さて・・・モンゴルのヨーロッパ遠征は歴史では東洋の文化が入ることになるのだが、今回はモンゴル軍よりも恐ろしい物が入って来ることになる。

ペストの再来である。

モンゴル軍事態はポーランド東部で進軍を停止して、戦争により取り入れた文化や、モンゴルの内政に専念し、北邦共和国はダイナマイトの鉱物資源増産と食料の過剰供給により工場が爆発的に増えていった。主に北海道北部と上東海道で・・・、さらに様々なブームが重なったため、兵員よりも工場で働いた方が国のためになると思ったらしく、これ以上の遠征は無理だった。

大韓帝国も似たようなものである。

一番の被害者はキリスト教のバチカンである。

モンゴル進行、ペストによる膨れ上がる死体の山に教会の権威がみるみる低下していった。

さらに猫を魔女の象徴としてしまいペストの媒体であるネズミを食べる動物も不足し、ヨーロッパは文化や国の成長が長い間停滞することになる。

 

【アラスカ 新平泉】〔西暦1245年夏〕

 

「結局、カレーとラーメンは大成功だった訳よ!!」

大衆レストラン、フレンドリーと藤原工業の社長となったフレンダは人材派遣会社を売り払って、次なる一手を打とうとしていた。

 

「金・・・金・・・融資!?政府以外にも金を貸し出すところが有れば儲けられる訳よ!!」

アラスカ銀行の誕生だった。



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西暦1250年~

〔西暦1250年冬〕

希望者を募った地獄のアルバイト・・・しかし地獄で神界の金が貰えるとしれわたると大量の希望者で溢れかえった。

キョンシーのみと限定した割りには数十万の希望者が出たのだ。

四季映姫にどれぐらい送って良いか聞くと

 

『送れるだけ送ってください。』

と同じ答えを返してきた。

どうするか悩んだ末、希望者を全員送り出した。

勿論アルバイトなので辞めることは可能であるので地獄に働きにいく仲間達に頑張れとしか私は言えなかった。

 

〔西暦1270年夏〕

大韓帝国にて小中華主義者が現政府の転覆を狙った反乱がおこった。

中華が消滅した今、世界の中心は我々であると・・・。

政府は軍を動員し、鎮圧に乗り出す。

蜂起したのは南部地域のため、政府があるソウルや周辺の大都市、北部や旧中華圏の南満州や北京周辺は北邦やモンゴルからの貿易がいかに自分達の生活を豊かにしていることがわかっていたので蜂起した者達には冷ややかだった。

約20万人の反乱は50万人の専門の軍が鎮圧したが、大半が半島を飛び出して日本に逃れていった。

農民が中心だったが、蜂起の際に武器を持ち、集団で戦うことで数でも力でも圧倒的な軍の攻撃を分散させるための団結だったが、日本に思わぬダメージを与えることとなる。

歴史は繰り返される。

船で何とか渡れた者は日本の幕府から侵略者だと勘違いされ攻撃されるが、集団で武士を殺しにかかった。

数日間はそれが繰り返され、武士が負けていたが、台風の直撃と小さいが地震によりパニックになると壊滅してしまった。

九州の武士は今回の戦で借金をしながら戦ったが、恩賞が少なくて不満が溜まっていくことになる。

 

〔西暦1290年冬〕

2代目モンゴル皇帝がキョンシーになりながらも統治してきたが、各部族の不満が溜まっていることがわかり、皇帝を退位した。

ただ最後の命令で貴族共和制擬きの部族共和制に移行する。

 

【北邦政府】

 

「凄い政治形体がバンバンできてるなー。ワハハ・・・共和制・・・選挙制度・・・。」

 

「どう?私達が作り上げてきた国は?」

 

「私達の教育が基礎かしら。カナの教育はどうかしら?」

 

「ワハハ・・・本当にこの国が世界の中心なんだね。書物に書かれていたお釈迦の世界、神のいる世界、地獄・・・それが繋がって、現世の架け橋となり死すら乗り越えて未来を見ることができ、なおモラルを壊すことがない・・・。水銀燈と金糸雀はこの世界をどうしたいのか?」

 

「そうね・・・人類の進歩を最後まで見て、終わりそうなら神界に行って神にでもなろうからねー。」

 

「私は美味しいものを食べて、教え子に囲まれていれば良いかしら。」



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西暦1300年~

〔西暦1300年夏〕

モンゴルはモンゴル共和国と名称を変更して支配地域の整理に乗り出した。

そもそもこんな広大な領土を持っていても維持費がかさむのでモンゴル共和国はインドまでの道を中心としたモンゴル、旧中華の一部、ネパールまでの西側が半円を描く国境となった。

 

ここで各国の国力情勢(経済力、戦闘能力、技術力、人口の合計)

1位北方共和国 1450

2位モンゴル共和国 980

3位インド 970

4位大韓帝国 950(内乱の影響により南部の再建中)

5位タイ王国 600(人口ブースト)

6位スウェーデン王国 400

7位スペイン王国 390

10位日本 360(幕府の体制が崩壊し始めたため)

20位ポーランド 140(ペスト流行)

30位ベトナム 20(絶滅戦争並みの内戦中)

と言う感じになっていた。

 

「・・・今回のモンゴルの遠征は協力して正解だったのじゃ。」

武器以外にもこのような情報網を入手できるようになった。

この時に政府や民間の諜報機関が統合され情報部が設立された。

それにより人事移動があり、真紅が経済部の部長に戻され、水銀燈が情報部の部長となった。

 

「私達も偉くなったわね。金糸雀、真紅。」

 

「村・・・いや、里の小娘が部長を繰り返して年月を重ねたことで小国の王よりも圧倒的な権力を持ってしまったわ。」

 

「しかし、それを乱用することはないから偉いと思うかしら。」

 

「・・・で、歴史書によるとヨーロッパは色々な民族と国があるのよね。」

 

「市場としてはいまいち、技術力も現状はいまいち。」

 

「モンゴルのように強い国を作るかしら?」

 

「それは費用に合わないわ。水銀燈は今後の国家方針はどうするの?」

 

「私達がそれを考えることではないよ。それを決めるのは国民。100年は動かないけど、日本が大規模な内戦状態になれば動くらしいわ。」

 

「しっかし、翠星石も蒼星石も政界に戻ってほしいわ。それが無理でも近くにいてほしい。」

 

「あら?真紅がそんなことを言うなんて珍しいかしら。」

 

「・・・悪い?」

 

「いや、悪くはないかしら。・・・ネロは元気かしら?」

 

「議長をやめてまた都市作りに行ってしまったようよ。」

 

「ネロらしいかしら。」

 

「私はもうそろそろ仕事に戻るわ。それでは。」

 

「水銀燈、お疲れ様かしら。」

 

「これを持っていきなさい。」

 

「あら?これは?」

 

「新作のヨーグルトらしいわよ。安売りしていたから買ってきたわ。」

 

「ありがとう真紅。」

 

「どういたしまして、水銀燈。」

3人はそれぞれの仕事に戻る。



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西暦1350年~

〔西暦1350年春〕

鎌倉がなくなり、室町幕府が成立したのだが、南北朝、幕府の国内が3つの政府がある状態で不安定だった。

 

「・・・さて、働きますか。」

ハクはこの政治的混乱を利用しようと動き出す。

 

【北九州】〔西暦1360年冬〕

ハクは学者として北九州の守護大名大友家で政治顧問をしていた。

 

「大陸と貿易をするしかないよー。」

 

「学士様そうなのですか!!」

はっきり言うとハクからしたら日本の守護大名ごときを手玉にとるのに10年とかからないのだ。

ハクは北邦共和国では酒飲みの無能を装っていたが、ふらっと日本が混乱すると有力なところを見つけて寄生する。

韓の乱にて外部からの初の進行の時もふらっと山口辺りに現れて有力な座を組織し、そこに北邦と貿易を結ぶことで大量の資金を稼がせつつ、自分は利益の一部をもらってそれを別の場所で珍しい品にする。

それを北邦で売ると珍しさから数十年は遊べる金になる。

 

「さて、そろそろここも危ないから逃げますか。」

次に目をつけたのは美濃であった。

 

「あそこは場所がいい。商人を装って行きますか。」

これが後の化け物を誕生させるとはハクは思ってもみなかった。

 

【3国会議場】〔西暦1400年秋〕

モンゴル共和国、大韓帝国(飛び地)、北邦共和国の3国が唯一接する場所にある会議場でヨーロッパの病気について話し合われていた。

 

「「「こ、これは・・・。」」」

3人の外交員は北邦の情報部が仕入れてきたヨーロッパの現状を聞いて真っ青になった。

ペスト(黒死病)は約100年間猛威をふるい、ヨーロッパ人口の3/2である3000万人を死亡させた。

さらに、それによって起こった戦争は地獄の国力消耗戦となり、死の国とフランスは呼ばれるようになる。

各国がもう少し深入りしていたらこちら側まで大流行の可能性があったからだ。

 

「ヨーロッパの緩衝となる国を作りましょう。」

このような疫病に対抗するために3国は壁を作ることにした。

南に後でオスマン帝国と呼ばれる国と北のロシア帝国である。

・・・北邦は知らなかった。

後に自分を食い殺そうとする狂犬を育てていることに・・・しかもそれに大量の資金をつぎ込むことになろうとは・・・。

勿論北邦共和国だけでなく、モンゴル共和国と大韓帝国にも少なからずその脅威が迫ることとなる。

それはまた別のお話・・・。

また、この頃北邦と大韓の海岸沿いを荒らしていく海賊が現れるようになり、北邦と大韓は海軍を整備していくこととなる。



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西暦1450年~

【農南(南京周辺)】〔西暦1450年秋〕

ここ農南で天然ゴムが発見された。

何気ない木を斬りつけて遊んでいた子供が白い液体を発見し、それを学校に集めて持っていった時に、理科の教員がたまたまその子の話を聞いて色々と実験すると弾力性のある塊ができたらしい。

これが30年前のことである。

大きくなった子供は研究者となり、その物質を調べて何かに使えないか考えたようだ。

なかなか成果がでなく、周囲から変人扱いを受けていたが、死んでキョンシーになってからも研究を続けた結果・・・ゴムとして莫大な財産を築くこととなった。

農南はこれによりゴムの一大生産地となり、様々な品でゴムが使われるようになる。

それは日用品から武器にいたるまで・・・。

ゴムに限らず、1350年~1450年の間は後に続く発明が沢山あった。

改良型反射炉や改良型羅針盤、改良型印刷機・・・果ては、都市の住宅事情から鉄骨鉄筋コンクリート構造等も出てきた。

ただし、兵器関連は性能の向上のみで画期的な新兵器ができることはなかった。(戦争事態が無かったから)

さらに人口は7億を超えようとしている。

 

〔西暦1500年春〕

オスマン帝国が銃なるものを兵器として使用していることがわかった。

ただ芳香や翠星石、蒼星石にはその情報が届かなかったので北邦共和国に現物を入手するまで今しばらくかかる。

なお、火薬の生産は圧倒的に北邦共和国が優れ、精密作業も時計製造の中で技術が培われているので銃が普及する下地はあるのだが・・・。

 

〔西暦1514年秋〕

建国(ほとんど自然発生だが)以来初の大規模な飢饉が発生した。

理由は北海道周辺海域の漁の不振、農北にある火山の噴火による一大生産地の打撃によるものだった。

芳香は貯金のほとんどを使って神界から緊急輸入依頼を出したことが悲惨さを物語る。

キョンシーは極論飴玉1個なめれば1日もつのでなんとかなるが人は違う。

缶詰めと保存食の生活は次第に今までの生活がどれだけ豊かだったかを認知することとなり、少しずつ薄れていた団結を再び取り戻していった。

近代に町は資本主義だが下地は共産国家と呼ばれる用になるのだが、それが飢饉から身を守るためだとは歴史家達もわからなかった。

北邦でこれなのだから大韓とモンゴルはどうかと言うとそこまで酷いものではなかった。

大韓は南満州という食料庫があり、不足するどころか北邦に輸出できるほどだった。

モンゴルはインドからの輸入によりこちらも不足することはなかった。



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西暦1515年

【農北】〔西暦1515年夏〕

農北のとある町で約1万人が虐殺される事件が起こった。

ロシア帝国によるシベリア遠征が数十年前倒しでおこなわれたのだ。

もちろん軍もいたのだが銃と弓による徹底した遠距離攻撃と、コサックという騎兵を使った機動攻撃により、数が少なかった軍は壊滅してしまった。

大半がキョンシーだったので復活可能だったが、町に侵入されてしまい、このような惨劇となった。

進行してきた兵による強姦の最中に復活してのゾンビアタックにより進行してきた兵は壊滅し、死んだ者も進行してきた兵の亡骸でキョンシーにできたのだが、銃の脅威と敵国を作ってしまった政治的な失敗をしてしまった。

 

【政府】

今回の失敗を誰も追求しなかった。

本当に運が悪かったのだ。

軍の数が少なかったのは近隣に巨大な熊が出たので討伐しに行っていたこと、ロシア帝国だって疫病の盾として機能していた。

役割の違いと価値観の違い等もあり今回の惨劇が生まれた。

集まった彼らにできることは被害を受けた町に義援金を送ることと、軍に対策を練らせることだった。

 

「今後このようなことが無いようにするのも大切じゃが、自分の身は自分で守れるようにすることもしなければいけないのじゃ。」

 

【参謀本部】

銃の脅威を知った参謀本部の幹部達は銃のコピーをSBに依頼し、奪った200丁を使って兵器としての利用を研究することにした。

使用法はまだ死んでいなかった敵を拷問(ということにしてあるが、実際は酒を渡したら快く教えてくれた)し、わかっていたので欠点と利点を明確にしていった。

すると新兵でも使えることが一番の利点だった。

それに関係があるのか、クロスボウと呼ばれる弓の一種も新兵が使いやすいようになっていた。

銃は火薬などの点から身を守る飛び道具としては不向きなのでクロスボウが大量に生産されることとなる。

もちろん銃は軍が持っている国営工場にて製造された。

改造、改良が大好きな北邦共和国は銃に関しては独特な進化を遂げていくこととなる。

・2連発射型(複雑な構造だが正規銃)

・時限式発射型(時計の原理を利用した銃 後に撤退戦や遅延戦で活躍)

・半自動銃口清掃型(故障多数のため銃としては不採用 しかし銃と分離させる持運び式にすると採用される)

・・・他にも命中制度重視や簡易化された輸出用もあったが・・・失敗作も当然山のように存在した。

一番酷かったのは火薬半自動挿入型である。

弾を発射する前に自分の腕が吹き飛ぶのだ。



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西暦1550年~

戦国時代編スタート


【美濃】〔西暦1550年春〕

ハクは現在殿様の孫を育てていた。

その理由は・・・数十年前に遡る。

 

ハクは戦国の動乱に巻き込まれ、危険を回避するために頭巾を被って商売をしていた。

ある時に働かせて欲しいと弟子入りを希望する男が現れ、彼に商売の極意・・・というか集団心理学を教えた。

この彼こそ美濃の蝮と言われる斎藤道三その人である。

彼の少年期は悲惨だった。

父親は足軽、母親は病弱だった。

父親が元気だった頃はまだ生活が良かったのだが、父親が流れ矢の傷により足を悪くしてからは生活がどんどん苦しくなっていった。

母親の病気も悪化し寝たきりになっていった。

あまりの貧困に父親は道三を連れて商人の家に盗みを働くことにした。

その商人の家が私の家である。

護衛(孤児から育てた)もいたのだが、父親の決死の突撃に金が入った袋を1つ奪われてしまった。

父親はその時護衛に囲まれて討ち取られ、翌日家の前に磔にされた。

道三はその袋を持って家に逃げ帰る。

 

「新九郎(道三の子供の頃の名前)、おっとうはまだだべ?」

寝たきりの母親が道三に聞いてくる

 

「久々に仕事が入ったから遅くなるだ!!」

 

「そうかい。」

この時色々と道三は考えていた。

これから父親が死んだことをどう伝えるか、母親の薬代を稼ぐか・・・まだ道三は武芸など鍛えているはずもなく、本当にしたっぱの息子なだけだった。

・・・翌朝・・・母親は冷たくなっていた。

道三は幼いながらに両親を失ったのだ。

失意のうちに町に行くと父親が磔にされている。

あまりに残酷な現実である。

その夜・・・ハクは外で涼んでいた。

泥棒に入られたがはした金であったため、すぐに取り返すことができた。

すると外でザシュ、ザシュと何かを斬りつける音が聞こえてくる。

塀から覗くと子供が磔にされた男の首をとっているのだ。

道三は子供だったため、父親を持って家まで運ぶことができなかった。

そのため首をボロボロの袋に入れて持って帰った。

私は色々な人を見てきた。

偉大な祖父である清盛から衰退していった平家、源氏の家来達や大商人、豪農、乞食・・・たまたま入ってきた泥棒の息子というありふれた1人だったが、不思議な魅力を感じた。

 

(・・・面白いじゃない。)

道三はその後最後に盗んだ金と母親、父親を埋めた墓を作った後、寺で坊主として生活する・・・その間に薙刀を必死に覚え、読み書き、簡単な計算を覚え、商人に自分を売り込んだ。

それは本当にたまたまだった。

ハクは泥棒の息子が目の前の青年だと直感でわかった。

それからは自分が売っている商品の油を売りさばくのを任せてみた。




道三の過去は真実と嘘を混ぜているので信用しないでください。


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美濃の蝮

油売りとなった道三は人の心理をわかるようになっていた。

普通に売っても儲けることはできない。

そこで銭を使ったパフォーマンスをすることにした。

 

「さあさあよってらっしゃい!!この銭の穴に油を通すよ!!銭に当たってこぼれたら無料だ!!」

一歩間違えれば大赤字だが、道三は何百回と練習していたし、彼は人前で力を発揮するタイプだった。

見事成功して集めた客はパフォーマンス代として油を買っていく。

ハクはその儲けた金を原料代を除いた全てを彼に与えた。

 

「いつかその金が必要になるときが来るでしょう。」

ハクの元に弟子入りして5年が経過していた。

ハクが女性なのも彼は知っていたし、ハクの部下は全て捨て子や乞食等の底辺から救ってもらった者達であり、仲がよかった。

 

「味方はなにもしなければ集まりませんよ。」

道三の運命を変える言葉でもあった。

その後道三に旅をさせた。

関東の方面まで行かせたのだ。

ハクは道三が商人で終わらないと感じていたし、道三も美濃の外に出てみたいと思っていたのだ。

彼は行商をしながら小田原近くの草原に来ていた時である。

道三は道に迷っていた時に彼の被っていた笠に鷲が止まったのだ。

すると武士がやって来て殿様の鷲狩りの邪魔をしたと斬りつけようとしてきたが、いかつい老人がとめにはいる。

彼こそ美濃の蝮の武士としての師である北条早雲との出会いだった。

数回だけだかその後喋る機会があり

 

「信じれる仲間を最低6人集めよ。まずそこからだ。」

伊勢新九郎と言っていた早雲の過去から彼は学んでいった。

旅を終えた道三はハクに武士になりたいことを言い

 

「頑張りなさい。・・・早雲殿の言葉を借りるなら私がその信じれる仲間の1人です。」

酒が入ってないとこのような美人であるが・・・その夜に道三の新たな旅路を祝う宴会では・・・

 

ヒック

「道三!!殿様になれ~!!下克上で突き進め!!」

と危険なことを話し出す残念美人であった。

そんな彼女に道三は感謝した。

武士になった道三は功績をあげていき、殿様の弟に気に入られた。

その頃にはハク以外にも信じれる仲間ができていた。

後に西美濃四人衆と呼ばれる者達と結婚して親族となった明智家、金で雇った無口の武芸の達人だった。

その後気に入られていた殿の弟を暗殺して城を取る。

殿も弟に気に入られた時に作った城の設計をしたのが道三だったため石垣のとある部分の石を外すと全ての石垣が崩れる仕組みになっていたのですぐに殺害した。

武芸の達人がこの時殿についたが多勢に無勢であり、西美濃は道三が奪った。



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斎藤龍興

現在、私は道三の孫である龍興世話をしていた。

彼は幼いながらに頭がきれた。

自分が食べれる量のご飯を自分でよそって食べれたのだ。

まだ2歳(もうすぐ3歳)であるが、これは素晴らしいことである。

他にも障子に穴を開けて遊んでいると思ったら、障子の大きさを自分なりに考えていたらしく、筆で紙に障子と同じ大きさの四角形を書いたりしていた。

 

〔西暦1556年春〕

龍興の父親である義龍が実の父親である道三に謀反を起こした。

道三は義龍のことを木偶の坊や無能と言って斎藤姓を名乗らせず一色姓を名乗らせた。

両者の対立は必然であったのだ。

しかし義龍は道三が言うほど無能ではなかった。

いや、方向性が違う有能な人物だった。

道三は確かに国を取ることができた。

1552年には東美濃も切り取っているので有能な人物であるが、独裁的な面と残酷な面により家臣は恐怖していた。

対して義龍は協調性があり、1地方を取れる器、能力が存在したのだが、運が悪いのだ。

私は傍観した。

それは両者からの願いだった。

道三は最大の協力者であり、義龍からは小さいときに道三が見捨てるなか、私は最後まで勉強や武道を教えたため先生と呼ばれていた。

だから息子の教育をお願いしているのだ。

結果は道三の死だった。

私は義龍にお願いして道三の家族が眠る場所に道三の亡骸を埋めた。

また、美濃の後継者は義龍だけではなかった。

隣の織田信長も道三の娘濃姫こと帰蝶の婿であり、道三が美濃を譲ると言った人物であった。

龍興はこの流れを読めていたのだろう。

私が道三の墓を作ったときについてきて涙を流していたのだから・・・。

 

〔西暦1561年夏〕

義龍がこの時急死してしまう。

今からって時に・・・。

龍興が家督を継いだが、まだ14歳である。

道三のように特殊な生活環境でもなければ、義龍のように完全に成熟もしていない。

そんな義龍の最初の命令は・・・

 

「ハクに告ぐ・・・美濃から10日以内に出て行け。」

 

 

 

 

龍興視点

俺にはわかっていた。家督を継いだが皆父親である義龍に忠誠を誓っており、自分の基盤が曖昧なのだ。

そんなところにハクがいると危険なのだ。

ハクは自分は別の国の出身だと言った。

その場所は日ノ本よりもさらに北に存在し、ここよりも豊かであった。

 

「で、ですが・・・。」

私はハクの近くに行き袖の下に紙を入れ

 

「祖父や父と私は違う。」

と言った。

紙にはここが危険にさらされるから国に帰るように、俺が狂っていないことを書いた。

 

「早く行け!!」

この国は滅ぶ・・・なぜなら・・・

 

(俺を全く期待していないのだからな!!)



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スーパー龍興

中学の頃から歴史を題材にしたら龍興を主人公の物を書きたかった。


〔数日後〕

ハクの追放に家臣達は動揺した。

特に西美濃四人衆と明智家、頭脳鮮明な竹中家は瞬時に龍興のハク追放を愚策と思った。

龍興の頭の中でこの家臣の中から使える者と使えない者を別けていた。

先程上げた人物達や老人達は比較的使え、比較的若い連中は使えないと思った。

 

「今日の会合はここまでとする。」

強い口調で言いきり、自室に戻っていった。

 

【自室】

 

「すまないことをしたな。」

 

「いえ、我々もわかっておりましたし、ハク様の護衛もいるので大丈夫です。」

俺の前にいる老人は商人だった男だ。

ハクの元におり、護衛をしていたり働いていた者は俺の配下に加わっていた。

これが自分の支持層である。

 

「あいつらは来るだろうか。」

 

「来ますとも。」

 

「龍興様、稲葉様以下数名がお見えです。」

 

「部屋に入れろ。」

 

「は!!」

 

「龍興様!!なぜハク様を追放なさったのですか!!」

10名の使える家臣達が部屋の中に入ってきた。

 

「まぁ座れ。あと俺を殿様と思うな。」

 

「は!!・・・え?」

 

「理由を話していく・・・ハクを追放したのはここが危険であるからとハク自身がたまに国に帰りたいと言っていたのを聞いたからだ。ハクの国は日ノ本ではない。もっと北に存在する。ここが危険である理由は織田家の膨張と今川家の衰退だ。今川家の現当主もそれなりの者だが、勢いがないのだ。対して織田家は勢いがある。情報によると徳川家と同盟関係ができる可能性がある。妨害工作もしたが、効果があまりなかった。どちらにせよ戦火はこちらに来るだろう。」

 

「では・・・」

 

「言いたいこともわかる。こちらから攻めろだろ。したくてもできないのだ武田家がいつ動くかわからない。父は西の関係を重視した結果、東の武田は織田と友好関係である。・・・間違いなくこの国は滅ぶ。お前達には時勢を見て織田についてほしいのだ。」

 

「な、何を言うのですか!!」

 

「ふざけないでください!!」

 

「ふざけてなどおらぬ!!言いか、よき聞けよ・・・織田には帰蝶がいる。つまり斎藤家の者がいるのだ。お前達は古い家臣達だ、道三様、父の義龍、忠誠を誓っているのは俺ではなくそちらだろう。お前達は俺を見ていないのだ。私は信じることができない。なら斎藤家の有能な人物は帰蝶の元に送り、美濃侮りがたしと思わせてほしいのだ。無論俺も数年は動く、民を見捨てる訳にもいかないからな。・・・頼む。私には父のように大大名になれる力がないのはわかっているのだ。お前達は保身にはしってくれ!!」

彼らは義龍を呪った。

有能すぎて龍興に忠誠を心から誓えないからだ。



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龍興の本気

〔西暦1564年秋〕

収穫期直前に信長は進行してきた。

日ノ本で唯一職業軍人を持っている信長ならではの侵略であった。(職業軍人とはいかないものの、似たものを北条早雲が作っていたりする)

さて、龍興はどうしたかというと、事前に動きを察知して約500名を動員した。

それで十分だと思ったのだ。

草原や畑を戦場にする必要はない。

進行してくる道に罠をしかけ、200名に大量の旗を持たせて片方が山で、もう一方が腰ほどある雑草が生い茂る場所を選択した。

斎藤家は罠をはるのがうまいのだ。

道三も籠城の際には油で敵を焼き殺したり、義龍も道三を助けるために来た織田家を罠にかけて足止めしたりしていた。

 

「小僧に何ができる。」

信長は奇襲がないように林にも、山にも兵を向けていた。

 

「かかれ!!」

信長の掛け声で攻撃をしかける織田軍は騎兵の突撃と山からの弓で蹴散らそうとするが・・・

 

「かかった。」

地面には目立たぬように工夫された縄が馬の足を引っ掻けて転ぶようにしてあり、弓対策に大きな鍋を背中に背負わせていたのでそれで身を守った。

それを見計らったかのように織田軍内部で離反者が出てくる。

難しいが褒美を多く出すと言ってついてきたごろつきどもで、大声で悲鳴をあげて離反者がでたと叫べと言っていた。

大半が職業軍人でも陣借りは必ず存在する。

彼らはその声を聞くと恐ろしくなり逃げ出していく。

 

「く・・・一旦引くぞ。」

それを残りの200名が退路に隠れていて弓で攻撃してくる。

織田軍は2000名で出陣したのに約300名近くを失ってしまったのだ。

ただ、この采配は竹中半兵衛によるものと言って龍興は彼に褒美を与えた。

困惑する半兵衛を後ろに自身はすぐに部屋に戻って女と遊ぶふりをする。(女もハクの元世話役等の関係者)

 

(これでいい。これでいいのだ。)

龍興は自分と同じぐらい頭のよい竹中半兵衛を目立たせた。

今孔明等の渾名を広げたのも彼である。

 

〔西暦1566年冬〕

俺は竹中半兵衛を呼び出した。

城を乗っ取らせるために・・・。

彼の兄が城に熱で寝込んでいるので見舞いに来てほしいと。

俺の配下を使って半兵衛が女遊びばかりしている俺を戒めるためと言うシナリオである。

策は成功し、俺は城から逃げるふりをする。

半兵衛の名声はこれで高まり、俺が指揮してきた戦は半兵衛が影から操っていたと噂されるだろう。

 

(これでいい、これで・・・。)

 

〔西暦1567年春〕

いよいよ織田軍が城内に侵入間近となった。

俺の言いつけ通り裏切ったやつらもいれば、忠誠を尽くすと仮初めの忠誠を見せる老人もいる。

まぁいい。

俺は自分にあった家を作るそれだけだ。

俺は死装束で叔父にあたる信長の前にでる。



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信長と龍興

織田信長と斎藤龍興は9歳の差があった。

その9年で全てが決まっていた。

 

「斎藤家家長の斎藤龍興と申します。」

 

「堅苦しい話は無しだ。なぜ我を苦しめた。」

信長は堅苦しい話が嫌いであり、約6年間も美濃攻略に費やしてしまったことに苛立ちを覚えていた。

 

「我が美濃を守るためでございます。」

 

「・・・それだけか。」

 

「それだけです。」

信長は失望した顔をした。

家臣も我が父から受けついだ等があれば納得しただろうが、今の言葉で忠誠を捨てる者がいる時点で負けである。

 

(それに比べて・・・。)

信長の家臣には信長を慕っている者しかいなかった。

信長が織田家であり、織田家は信長の全てとなっていたのだ。

 

ギリ

信長に悟られないように拳に力を入れた。

 

「・・・我の前にその面を金輪際見せるな!!」

美濃からの追放である。

俺はわざと命が助かって安堵しているかのように演技した。

家臣・・・いや、旧家臣達は私をその時捨てた。

完全に・・・。

私は城から持てるだけの金品を持って城を出た。

 

「龍興様、手伝います。」

 

「すまないな。」

 

「いえ。」

私の元にはハクの元に行きたいと願う利害が一致した仲間が50人だけおり、家臣は1人もいなかった。

 

(俺はまだ20だ。今からでも巻き返すことが可能。・・・絶対に俺を見てくれる家臣を作る!!)

天才は孤独を好むというが、彼は時勢を読む天才でもあった。

 

【政都 金糸雀の家】〔西暦1569年冬〕

龍興は無事50人の希望者とともに北邦共和国に行くことができた。

行く途中に8~12歳の捨て子を5人ほど拾って連れてきた。

龍興は彼らを自分の家臣にするべく様々なことを教えた。

計算であったり、読み書きであったり・・・。

龍興自身も行商や、僧の真似事をしたりしながら彼らの食費を稼いだ。

北邦共和国に着いて彼は国境前で軍に捕らえられたがハクの手紙を見せると何か勘違いされたが通ることができた。

北邦共和国という国は日ノ本の何十倍もの領土と人、金を持っていた。

俺がさらに注目したのは身分差が無いことだ。

勿論部下や上司の関係はあるが、貴族や武士のような特権階級が無いことに驚いた。

俺も含めてハクの部下も北邦の生活は天国だと言っている。

身分を隠して1年間農家で俺は働かせてもらった。

そこでは大量の水車を使った稲作や、牛と時を告げる鳥(鶏)を飼っていた。

何も知らない俺と家臣(予定)に色々なことを教えてくれた。

家で出してもらった料理も自分が食べてきた飯が残飯のように感じるほど旨かった。

俺はこの農家が国の上流階級にあたる人物なのではと思い、聞いてみると

 

「何を言ってるだ?おでなんかぺーぺーよ。フツーの農家だ。この周辺だと小さい方だべ。」

凄まじいカルチャーショックが龍興を襲った。



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龍興の修行

農家でお世話になりながらも基本的なことを覚えていった。

北邦共和国だと龍興レベルの人材は普通だったのだ。

自分が天才だと思っていた部分が完全にへし折られたが、それでも頑張り続けた。

ハクの会うと、これからのことを色々と相談した。

するとハクがチビを連れてきて

 

「はかせという。チビっ子だと思ってると怒られるからな。こんな体格だが、この国の偉人であるからな。」

 

「そうだよ!!はがせは偉いんだよ!!」

 

「こんなガキが・・・!?」

 

パパパン

「私が作った新型の的になりたい?」

 

(な!?)

龍興は銃から3発の弾が出たことに驚いた。

先ほどの暴言を謝罪すると機嫌が直ったはかせは俺の願望を話すと

 

「う~ん。私だけで判断すると色々問題になるなら・・・なのー。」

 

「はかせなんですか?」

 

「この紙持って芳香のところに彼を連れてって。」

 

「わかりました。どうぞこちらに。」

なのという女性(背中に何かが刺さっているが)に連れられて巨大な建造物の中に入っていった。

 

コンコン

「失礼します。」

 

「ん?なのか。どうしたのじゃ?」

 

「はかせからこれを。」

 

「ふむ・・・後ろにいる男は?」

 

「日ノ本の美濃の斎藤家の当主・・・ハクがお世話になったところの方です。」

 

「あぁ、あそこのか。」

その後俺は芳香という女性に呼ばれた。

青紫色の肌をしており、一瞬死んでいるのではないかと疑ったが、どうやらこの国の最上位の存在らしい。

俺の願望を話すと3年間この国で仲間を集めたり自分の能力を高めるように進め、家を再建するならと日ノ本の最北(現在の青森県)を指差した。

芳香は潜在的な石高は35万石、北邦の米を使えば200万石も夢ではなかったし、日ノ本との窓口になればと期待した。

 

「期待しておるのじゃ。」

俺は彼女から資金援助を勝ち取った。

その額は約1億・・・100万金貨を100枚貰ったのだ。

俺はこの国の貨幣の仕組みも不思議だと思った。

1銭銅貨から始まり、1円銅板、10円銅貨、50円銅板、100円硝子貨、500硝子貨、1000円硝子貨、5000円銀貨、1万銀貨、5万円銀貨、10万円銀板、50万円金貨、100万円金貨、1億白金貨、5億白金貨があった。

俺に100万円金貨が100枚渡したのは一般人が使える最高額だからだろう。

白金貨は特殊な時にしか使用できないのだ。

 

「ありがたく頂戴します。」

俺は芳香様に感謝した。

それからは金糸雀様という人を紹介され、色々なことを教えて貰いながら家臣を集めていった。

退役した軍人や見習い料理人、農家の9男や肌の色が違う女性・・・幅広く集めた。



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新生斎藤家

〔西暦1570年春〕

俺は北邦のとある企業の娘と婚約した。

まぁその娘は3女であり、繋ぎになればと思ってる節がある。

力の差は歴然なので文句は言えないが・・・。

 

「しかし・・・準備はできた。仁!!」

 

「は!!」

途中で拾ってきた捨て子の最年長で忠誠心も高いので俺は一番信用していた。

 

「国取りだ。斎藤家を復活させる。」

集めた人員は結局220名だけだったが、今の生活を捨てて、不便な場所に移り住んでもらうのだ。

とても感謝しているし、彼らも色々な打算があってこちらについてきているのだ。

実家よりも広い畑を持ちたい、戦争の経験が欲しい、商店の支部を建てたい等である。

 

「行くぞ!!」

 

「「「おう!!」」」

勇ましい掛け声で船に乗り込む龍興一行だった。

 

【津軽半島】〔西暦1571年冬〕

上陸してすぐに近くの村を占領した。

幸い他の村から離れているし、納めている武士も戦でいなかったのですぐに占領できた。

占領後は港作りと畑の整理をした。

占領中なので文句を言えば殺されるので農民達は素直に従った。

簡易的な港が出来上がり、農業の専門家がした田園の改造と技術指導により村は稀にみる大豊作となった。

収穫期なので戻ってきた武士は見事に村を乗っ取られていたのだ。

 

「こいつバカだなー。」

縛られて転がされている青年達を見てそう思った。

何でも父親と家来で登城したが、帰る途中に父親が急死してしまい、城主に報告しようとしたら謀反を起こした人物に城が乗っ取られてしまい、必死になって逃げてきたらこの様である。

 

「く・・・切腹させろ!!」

 

「はぁ?なに言ってるんだ?今からその城を乗っ取るぞ。」

 

「え?」

 

「俺は斎藤家当主だ。元大名なんだよ。また大名になるために時期を伺っていた。お前を家来にしてやるからその謀反人を殺しに行くぞ。」

彼らはポカーンとしていたが縄をほどいて持ってきた刀を彼らに与えた。

 

「こ、これは!!良物!!」

 

「良い刀だろ。俺が大名になったらもっと良いのやるからよ。」

彼らは地形を把握しているはずなので案内役をさせ、約50名の城攻めが始まった。

 

〔夜〕

北邦共和国の人間は体がでかいし、頭が良いので戦闘能力は約150センチしかない俺よりもぜんぜん高い。

しかし、伊達に7年間もおじと戦争してきた訳ではない。

全員闇に溶け込める服を着用し、見張りを倒した後はすぐに城内に侵入した。

昨日の今日でいきなり攻撃されると思ってなかった彼らの目の前には自分より遥かにでかくてゴツい男達が自分と同じくらいの太刀を降り下ろしてくる。

すぐさま降伏するか斬られるかで呆気なく城は陥落する。



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津軽領制圧 上

 

制圧してまずしたことが捕虜にした380名のうち、交換条件をだした。

自分の命をとるか、持っている領土を捨てて、その分の金を貰う生活をするか。

約250名が拒否して切腹を選んだ。

残ったのは領土が少ない者や元から領土を持たぬ者、召し使い達だった。

 

「・・・さて、今度はこの人数で城を守らなければならねーな。」

龍興は持ってきた(在庫処分)1000丁の2連発火縄銃、量産品だがこちらでは良物とされる刀や槍、鎧を城に運び込み

 

「これを最初の前賃としてやる。」

と言った。

彼らは目をギラつかせて武器を手に取る。

 

抜刀して刃を確認し

 

「「「お~!!」」」

と感動していた。

やはり武器は彼らを焚き付けるのだろう。

50人の部下に彼らの訓練を任せると、俺は次に内政をしなければならなかった。

現在俺が支配できているのは最初の村だけであり、他の44の村はまだ支配できていない。

隣の南部領の65村、2町もとらなければならないので2年間で津軽領を制圧することにした。

俺がしたことは税率の引き下げである。

様々な諸税を廃止する代わりに検地をするという飴と鞭式でいくことと、農業改革の断行である。

収穫量が7倍近くになった最初の村から噂が広がっているので各農村に技術指導者を向かわせた。

 

〔西暦1572年春〕

雪が溶ける頃に南部家が領土奪還のために1500名を送り込んできた。

 

「来やがったな・・・まぁ雑魚だろ。あのおじに比べたらな。・・・お前ら!!銃を持ったか!!」

 

「「「おう!!」」」

 

「ならあいつらに十字砲火をくらわせてやれ!!」

 

「「「おう!!」」」

普通の軍なら無理だが、俺らの軍には過剰すぎる弾薬がこれを実現できた。

まぁ俺も硝石丘を作ってはいるが・・・。

そんなことを知らない南部家は前方の囮部隊にご丁寧に正面突撃をしてきたので蜂の巣にしてやった。

鉄砲隊が200人なので400発近くをもろに受けた南部家は立て直そうと右往左往し始め、その間に次の準備ができ、発射したときには死体の山が出来上がっていた。

 

「「「えいえいお!!えいえいお!!」」」

 

「こんなものか。」

約1000名の死者が出た南部家は数年間損害回復に努めることになる・・・その時間に斎藤家は国力を数十倍にする。

 

〔秋〕

俺の奥さんが子を産んだ。

元気な男の子でよかった。

広(ひろ)と名付け、元服したら道元と名乗らせることを決めた。

・・・で、港の整備が出来たことで貿易を開始した。

まぁこちらから売る物はまだ無いので、北邦の商品を日ノ本の商人に売る仲介をしたり、支店の場所代で儲けさせてもらった。

その代金でさらに技術指導者を呼び込むのにほとんど消えたが・・・。



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津軽領制圧 中

俺は近辺の村に赴いて何が必要かなどを聞いて回った。

収穫量がどんなところでも倍増しているので相場が心配だったが、東北でも関東に近いところでは飢饉が発生しているようなので値崩れはしなかった。

大半の村が裕福になれたので爺さん婆さんは俺が村に来ると拝んでくることがある。

 

「爺さん、婆さん、拝むんだったら先祖に拝めや。俺はできることをしてるだけなんだからさ。」

恥ずかしいからやめて欲しい。

 

【津軽城】

城といっても館だな。

そんなことより農業改革指導達や商人達がドス黒い笑みを浮かべながら領地改造をしようとしているのが心配だ。

何せ管轄外だからな・・・。

俺なりに領地を治めるためにどのような治世をすればよいか考えた結果、様々な部署を作った。

農業課、商業課、工業課、軍、外交・・・。

領主は全てにおいて3番目の権力を持つことにした。

それは素人が下手に首を突っ込んだら混乱するからだ。

俺の予想は当たり、上手く機能してくれている。

とりあえずこれで良い・・・これで・・・。

 

〔西暦1573年春〕

士農分離を俺は進めた。

信長のおじが強かった理由はそれだからだ。

農家の次男以下で希望者を募って訓練させると約半年も経過する頃には強兵となった。

 

「フルプレートでも輸入するか・・・。」

重装歩兵を導入しようか悩む龍興だった。

ただ、兵士だけでなく情報収集能力も高まっていた。

500年規模でおこなわれている北邦共和国の情報基地としての役割を勝ち取ったのだ。

その為日ノ本に関してはある程度の情報を得ることが出来た。

その報告書で信長包囲網についても書かれていた。

 

「・・・なんとかして包囲網を瓦解させなければ・・・。」

龍興は信長に天下を取って貰いたいと思っていたので、火縄銃(簡易量産型)を備蓄するようになる。

 

「いや、集めるだけではダメだ。・・・届けなければ・・・。」

北邦共和国が船の技術に関しては輸送船と漁船のみに長けていたので海上戦闘能力は皆無のことを俺は知っていたが、芳香様に時期を見て頭を下げに行った。

 

【芳香邸】

 

「芳香様、お願いします。」

 

「お主の気持ちもわからなくはないのじゃ。信長と言う男は情報を見ただけでも(昔の資料でもわかるし、幻想郷に行く前に邪仙が燃え盛る本能寺に首を取りに行かせたのは忘れない)天下を取る器があるからのー。」

 

「では!!」

 

「太平洋ルートから行くのじゃ。・・・ふむ、火縄銃2000丁か・・・もう1000と大筒を100門追加する。これでどうじゃ?」

 

「ありがとうございます。」

俺は信長に賭けることにした。



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信長救援 1

大量の武器と弾薬を防水加工し、それを詰め込んだ俺は船長と護衛隊の隊長のいる船長室で尾張までの日程を調整した。

 

「船長の村上です。よろしくお願いします。」

 

「僕は隊長の蒼星石・・・よろしく頼む。」

 

「俺は斎藤龍興・・・津軽の城主だ。」

 

「気になったけど大丈夫なの?今君がいないと不味いんじゃないの?」

 

「確かにそうだが、おじに恩を売っといて損はない。俺の部下達は優秀だし、敵は損害回復に時間がかかる。年単位でいる訳じゃないから大丈夫だろ。」

 

「そ、そうなんだ。」

蒼星石は困ったような顔をしたが、この後普通に日程を決めて、出港した。

 

【尾張の国】

海流と風の影響で予定よりも早く到着した。

港には異国の旗を掲げる船に興味本意で近づいてくる者がいたが、俺は港で代官に信長様に武器を届けに来たと伝えた。

 

【京】

 

「なに!?異国の船が尾張で武器を届けに来たと申しておるのか!!」

 

(何でこんな時に来るかな・・・信玄がいつ来るかわからない時に・・・。)

表では威厳を保っていたが、信長は優れた経済学者であり、カリスマ経営家なので、信長自身が戦場に行く際には味方が本当にヤバイところにしかいかなかった。

要するに本当の性格は真面目だが、戦はあまり好きではないし、粛清みたいなことも現場の独断だったりした。(比叡山焼き討ち等が例)

 

「我自身が行く。幸い出陣前だ。先に行って待っておる。」

 

「は!!ではそのように手配を。」

 

「すまぬな。蘭丸。」

 

「いえ、おきにめさらずに・・・この、成利をお使いください。」

精神的な支えの部分は森成利がおこっていた。

成利がいなければ今信長は居なかっただろう。

 

【尾張の国】〔数日後〕

俺が船で待機しているとおじ自身がやって来て、話を聞いてくれることになった。

 

「お、お前は!!」

 

「よう、おじさんや、会いたかったぜ。」

俺を見て鞘から刀を抜こうとしている。

 

「なぜ我の前に再び現れた。」

 

「言われなかったか?武器を届けに来たと。」

 

「本当にか。」

 

「ああ、包囲網を破る切り札として使ってくれや。俺はあんたが中央を抑えることで利益があるんだよ。」

 

「くく・・・ハッハッハッ!!その顔だ。我が見たかったのは!!あの席での死んだような目は演技だったか!!さすが蝮の孫よ。」

 

「俺は中央から一番離れた場所で国作りをしている。あんたが国を統一するのだろ?恩を売っといて損はねえからな。」

 

「我が甥よ。ありがたく貰うぞ。」

 

「これ以降の援助は期待するなよ。ちと厳しいからな。」

信長は船から降ろされる火縄銃と大筒、大量の火薬に感謝し、黄金を大量にもらうことが出来た。

 

「これも持っていけ!!」

 

「マントか・・・ありがたく頂戴する。」

俺はさらに信長の愛用しているマントをもらった。



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津軽領制圧 下

【津軽城】〔夏〕

武器を届けた俺はすぐに津軽に戻った。

信長からもらった黄金は使える。

これを全て芳香様に渡すことで俺と政府に信用が生まれる。

後々にこれは黄金よりも価値が出るだろう。

蒼星石に黄金の黄金の搬送を任せてすぐに領の掌握を急いだ。

 

〔秋〕

インフラが整備され始めると村と城下町を繋げることができるようになっていった。

それは物の流れが良くなることを意味する。

物の流れが良くなれば金が回る。

通貨は技術者達が北邦のよりは価値が1/2になる銅銭、銀貨を使用した。

 

(それでも日ノ本の銅銭の4倍は質が良いがな。)

この質の良い通貨の出現により中央より貨幣量が少ない東北の商人達は自然と斎藤家の領に集まってくる。

商人達が集まれば市が形成され、領内の物の流れがさらに良くなる。

約2年で経済的な支配を確立したのだ。

 

〔冬〕

北邦との貿易もこちらが売らないと現状維持だけで儲けが少ない。

そこで換金作物として輸入してきた寒さにとてつもなく強く、大量に取れる茶葉を主軸としたリンゴ、苺等の果物、てんさいから作る砂糖を輸出することにした。

北方での大量生産地がアラスカや農北、農南なので北海道の南部は比較的高値で売れるようだ。

まぁ10年近くかかるので、炭坑から出る石炭の輸出で当面は資金源とした。

冬の時期は現金収入が極端に減るので炭坑で働けるのは農民たちからは嬉しいらしい。(美味しい食事も出て結構な額を貰えるのも原因)

 

【大広間】

周辺の国を踏まえた地図を見ながら今後のことを考えていた。

 

「南部家と周辺の小国を倒せば奥州藤原氏並みの経済力になるか・・・。」

南部家を潰すのは決定事項だが、さらに南下すると秋田家、最上家、伊達家の3家が厄介だった。

 

「3家と同盟を結ぶか。・・・形式的に3家を立てることで、実質的には優位に立てればいいな。」

その為には南部家の領土を急いで切り取らなければならなかったが・・・。

 

「久しぶりだね。」

 

「すまんな蒼星石さん。」

今回は北邦の援軍を頼ることにした。

 

(人員は過剰気味だ。北邦から優秀な人材が大量に流れてくるからありがたいが。)

美濃では天才の龍興だったが、北邦では龍興レベルでは普通である。

領内にも学校を建てて人材を育成させているが、2年ではまだまだ育ってなく、上の人材はほとんどが北邦の者で占められていた。

 

(何とかしなければいけないな。)

 

「僕たちは南部家を倒せば良いんだよね。」

 

「あ、ああ。よろしく頼む。」

 

「こちらこそ実戦経験は貴重だからありがたいよ。1万人で一気に終わらせるからね。」

約2ヶ月で南部家は壊滅することになる。



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南部領内の統治

〔西暦1574年春〕

北邦との貿易をするための巨大貿易港の整備が元南部の領内でも始まった。

 

「しかし、やってくれたな。」

蒼星石は南部軍を壊滅させるとすぐに城を攻撃した。

あっさりと落城したため逃げる間もなく城ごと焼かれてお陀仏のようだ。

 

「でもさ、僕もしたくなかったよ皆殺しなんか。」

火矢を放ったのは蒼星石の命令らしいが、城が乾燥していたことと、城の土台が熱で崩れたらしい。

 

「追求はしないが・・・感謝する。」

頼んだのはこちらなので頭を下げた。

 

「お代は貰ってるからもう僕たちは帰るね。」

 

「ああ、済まなかったな。」

蒼星石は帰っていった。

ただ、その間に空白の時間が生まれてしまう。

結果的には南部領の8割りを奪えたのだが、残りの2割りを秋田家が持っていくことになる。

 

「・・・残りの小国を潰したら内政を力を入れていかなければならないな。」

俺は奪った南部領の混乱を治めるために奮闘するのだった。

 

〔秋〕

米の値崩れ問題も北邦に輸出することで解決した。

もう100万石も達しているので、旧南部領整備をすれば200万石には届く。

しかし不安もある。

 

(どこまで膨張していいのだろうか。)

色々と情報が入ってきている・・・信長は権力者として線引きが必要だろう。

巨大な領土を持つ大名は順次討伐されている。

例外は徳川家ぐらいだろう。

 

(となるとこれで我慢しなければならないかもしれんな。旧南部領の出っ張っている部分を秋田に渡すか。)

数日後、秋田家に約5万石分(青森県以外)を割譲した。

 

(初期計画とは違うが・・・無理をする必要はないな。)

北の端で日ノ本の情勢を慎重に見極める龍興だった。

 

【北邦共和国 政府】

 

「以上、蒲原研究所より報告でした。」

私と部長、議長は頭を抱えた。

蒲原が数百年かけて研究した不思議な力・・・魔術だが、実験中に神界の天才戦略家マックス元帥を召喚してしまったのが問題だった。

神界にもこの件が伝わり、約100人の異能力研究者が送られてきたのだ。

宗教(八百万の神・・・まぁ黒谷ヤマメの崇拝)に関係する異能力は初めてのことらしく、実験結果は物凄く高く売れたが、それが神界に実害があった場合・・・最悪管理権をもっと別の人が来る可能性があった。

 

「えー、結論から言いますと神界に直接影響がありそうな物は天使の召喚ですね。ただし実体のない神力の集合体が常人には精々でしょう。マックス氏が来てしまったのはマックス氏の部隊がワープ実験を失敗した偶然が重なった結果です。また、魔術の方ですが、肉体強化系以外は実用的ではないと言っておきます。」



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特殊内政

【津軽城】〔西暦1575年春〕

この年から龍興の内政は時代を先取りしたもので、歴史家達から内政の天才と渾名を付けられる。

1つ目が評定会と呼ばれる現代の議会を作ったことである。

王(他から見たら)である龍興が自分の体に鎖を巻いたのだ。

天才の所以は王家(斎藤家)の評定会の解散権限の永久放棄を盛り込んだのだ。

つまり立憲君主制の元を作ったのである。

さらにこの評定会は日ノ本初の国民投票によって決まる。

北邦共和国のアレンジである。

もっともこの国民投票は男性のみだったので女性の歴史家は批判的な立場をとることがある。

2つ目は国民投票を可能にすると識字率の急速な上昇である。

北邦の新聞制度の下位互換である瓦版制度の迅速な普及と高等学校制度である。

寺子屋の発展であった学校だったが、北邦から来る優秀な人材に負けないためにも高等学校が4ヶ所に設置されたのだ。

後に高等学校を卒業できれは江戸で老中をやれると言われるようになる。

その設置の年に入学できたのは4校で26人・・・ほとんどが武士の子供か商人の子供達であったが・・・

 

「やっと・・・やっとこんな醜い生活から出れる。」

4校の合同テストの結果、首席は農民の子供だった。

名は三十郎・・・後の豊富三十郎評議長(斎藤領の首相や宰相クラス)である。

3つ目が株式である。

北邦でも銀行までで株式にはいってないのに、企業融資の概念から発展し、株式市場を開拓した。

連鎖反応で北邦、モンゴル、大韓でも株式市場ができるきっかけはここだった。

最初の銘柄は5社・・・北邦系企業の支部4柄と斎藤領最大の企業でもある斎藤家の5柄であった。

斎藤家が企業というのは公共事業の出費は斎藤家から出ることになっているので、斎藤家事態が国の国銀のような存在であった。

この3つはどれも成功を収め、次世代に多大な貢献を残すことになる。

 

【津軽城下 駐屯地】

斎藤家が持っている軍は総勢3万名・・・2万が鉄砲足軽、残りは火炎攻撃隊である。

火炎攻撃隊とは火炎瓶や火矢を使った攻撃を主体とし、晴れの日の野戦や攻城戦には異常な強さを発揮するが、雨が降ると普通の弓兵となると部隊だった。(鉄砲足軽は雨の時は長槍兵となる)

基本的にまだこの部隊が活躍したことは無いため、戦が無いときは山賊退治等の武装警察の役割をしていた・・・そんな彼らに初の戦である。

 

「秋田家より500名が領内に侵入し、略奪をしているとのこと。場所はここより南西20里ほど!!」

 

「よし、我らの力を示すときぞ!!」

 

「「「おぅ!!」」」

彼らは出陣する。



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秋田進行

【斎藤領 国境から3里ほどの場所】

 

「歴史ある南部家を潰した小僧を揉んでやるとするか。」

秋田家は南部家と対立関係にあったものの、両家ともに鎌倉初期からあり、歴史は長く、名門と呼ばれる家であった。

それゆえにぽっと出の斎藤家を不審に思っていたものの、時の将軍からもらった一色(足利の次に幕府の名門の家苗字である)を証明する証拠の品、父の義龍が天皇からもらった感謝状等が一時的に秋田家は中央の名門出身なのではと思ったが、幕府消滅により多少の無茶は大丈夫と思ったのだ。

まぁ威力偵察であり、兵を率いている者も元南部領の豪族であり、懐は全く痛まないし、負けても豪族の反乱として切り捨てるだけであった。

そんなことを知らない豪族達は抵抗もなく村を占領できたことで、気を緩ましていた。

 

「油断しているな。」

北邦では軍曹だった男性が指揮をとっている。(年配だったのと経験不足から昇進が止まっていたので龍興の話に乗った)

初めての戦闘の者がほとんどだったが、士気は高かった。

 

「弾を気にするなよ!!弾幕こそが正義だ!!」

火縄銃の欠点の装填時間の長さを火炎瓶と火矢の弾幕で対処する方法を採用しているため、それはそれは豪快な戦だった。

 

「イギャァァァ!!」

 

「か、体が燃える!!」

 

「助けてくれ!!」

火炎瓶は専用の瓶と蓋が製造されており、それは現状の斎藤家でも製造可能だった。

ただしコスト面は圧倒的に北邦産が安いので実験用であり、発射台(クロスボウの改造品)は斎藤家の独力では製造不可能だったので配備されている数は少なかったのだが、火矢よりも燃え広がりやすく、装填も楽であり、放物線を描きながら約80メートル先まで届くので鉄砲隊の装填時間を稼ぐのにはもってこいの武器だった。

 

「これ程とは・・・。」

山から見ていた秋田家の一族の者と家臣数名は火を使った新しい攻撃に驚いていた。

 

「あれだけの火縄銃をどこから仕入れているのも気になるが、やつらは全く刀を持ってないな。」

 

「槍の束を背負っている兵がいるので、時と場所によって使い分けるのではないでしょうか?」

 

「ありうるな。・・・ここが潮時だろう。殿に報告しこれ以上の北に深入りすれば最上が北上する可能性も無くはないからな。」

これ以降火炎瓶による攻撃は斎藤家では消滅するが、その製造技術は瓶詰めに応用されることとなる。

 

【SB本部】

 

「これは・・・戦争を変えれる。」

画期的な新型銃を開発に成功する。

フリントロック式の銃である。

実に数十年先の技術であり、すぐさま改良がおこなわれる。



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経済力と人口

【津軽城】〔夏〕

秋田家との紛争?で5000人を動員した戦だったが、秋田家と和解してすぐに不可侵が結ばれた。

さらに秋田家の伝で伊達家とも不可侵が結ばれることとなった。

殿様だが、北邦の人達は日本式の礼儀作法に偏りがあるので相手の顔を立てる意味でも龍興が外交官として様々な場所に挨拶に行っていた。

そんな殿様が居ないときに評議会は人口統計と検地をおこなった。

どちらも国の基礎を固める意味で大切だったのだ。

しかし、どちらも農村から反対がおこった。

税金が増えると思われたのだ。

強行するのも不味いので、瓦版でしっかりとした内容を伝えることと、水の利権争いを終結させるために水路を公共事業としておこなうと伝えた。

ちなみにだが、豪族は龍興に忠誠を誓っている。

歴史ある豪族は津軽城攻略と南部家進行でほとんどいなくなり、反抗する豪族は農民ごと流通をストップした。(塩などの絶対に必要なのは止めなかったが)

これによる対応は3つに別れた。

諦めて抵抗をやめて服従を誓う、農民の決起による豪族の排除、反乱である。

1つ目と2つ目は問題がなかった。

3つ目はこちらも軍を出して鉄砲の空砲をした。

空砲でも豪族の兵が職業軍人ではなく農民なので逃げ出していき、一気に捕縛からの処刑で鎮圧。

ただ、武力だけで抑えるのも限界があるので実利も与えた。

豪族の息子等の一族を北邦に送り、今よりもよい生活と外国だが高等学校に進学させたのだ。

息子や一族の者が頑張れば自分も斎藤家の重役になれるという幻影を与えた。

北邦で学べば自分達の考えがいかに古いかよくわかるので豪族等になる前に北邦に住み着くか、帰っても親族と縁切りである。

そんなことを知らない豪族達は表向きの忠誠を誓って自分達の影響力が低下していった。

そんなトラブルがあったものの、検地と人口統計は進み、表向きの石高が20万石(実際は140万石)、人口は50万人が生活していた。(3万人の常備兵は最初から人口的にマックスの人数である)

どちらも終わったため、農民達に迷惑料として裏作の徴収(もとから取ってないが)を放棄する旨を発表した。

また、曖昧だった税金については目標徴収制とした。

まず目標値を決め、それは前年の半分の収穫予定量とし、目標値分だけ斎藤家は農家から直接作物を少し安めで買い取りに行く。

その作物を北邦や商人に売ることで金にして斎藤家は利益を出す。

残った半分の作物は農家の自由に使ってよいことにした。

農家からすれば多少買い叩かれてしまうが、徴収されて何も残らなかった今までとは違い現金を手にすることができ、さらに収穫量を増やせばさらに豊かになれる希望を持たせることができた。

斎藤家の主税は商人からの売上高による税金と貿易による利益なので農民も金を使ってもらわなければならなかった。

 

「ただ、これだけでは豊かとは言えないな。」

財政管理課の課長は自分の収入が増えるためと領民を豊かにするために次なる手を打とうとする。



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西暦1576年~ 軽工業化

〔西暦1576年春〕

斎藤領では生糸と木綿の製糸工場の誘致に成功し、多額の金額をかけて一大製糸工業地帯を作り始めることとなる。

生糸も木綿糸も農南が一大生産地であり、上東海道に工場群があったが、北邦の人口が9億人を超えてしまったので衣類の材料が不足気味だった。

神界の地獄から帰ってきた住民によりプチ産業革命がおこなわれていたが、軽工業の発展がやっとだった。

これに目をつけたのが龍興だ。

北邦の政府に許可を取り、ハクの働く東雲グループと龍興の嫁の実家の工業を誘致したのだ。

誘致するにあたり、一部税の免除や土地代を格安にしたりしてとにかく必死のロビー活動の成果である。

最初の数年は現地登用で技術を培ってもらい、それを後から作る斎藤家主体の工業の指導的立場に立ってもらおうとした。

限られた土地でできる限りのことはしようとした。

また、この時期に領内に4つの港が拡張工事が終了した。

 

【北邦共和国 アラスカ 藤原財閥本社】

一方、重工業も少しだが発展してきている。

製鉄業と薬品業界だ。

その製鉄業界のトップシェアを抑えたのが藤原財閥である。

もとからあった改良型反射炉を大形化、熱伝導計算を含めた新型反射炉の効果によるもだった。

それにより世界の製鉄の割合では北邦が70%と圧倒的だった。

 

「結局最後は私がトップになるって訳よ。」

さらに蒲原の研究グループと提携して魔術の利用にも積極的だった。

特に筋力活性化の魔術は藤原財閥以外にもありがたい技だった。

いくらコーディネーター並みの肉体があっても怪我をするときは怪我をする。

しかしこの魔術は不慮の事故による怪我を最小限に抑えてくれたり、仕事効率を上げるには最高だったのだ。

発動条件は食事の作法と味噌汁(神力が宿っている食材を使った)を1杯飲みきることだった。

それを毎日繰り返して2カ月後に効果が出始め、1年後にフルパワーになる。

 

「よく見つけられたのじゃ。」

この件に関して後でそう芳香はコメントしている。

 

「そろそろ後継者を探さないといけない訳よ。・・・リストを持ってきてくれる?」

秘書にフレンダは後継者探しを始める。

 

「とりあえず幹部のやつを社長に引き上げて、私はそろそろ引退な訳よ。」

フレンダは会社をやめて政治に参加使用としていた。

親で今は小鍛治健夜と名乗っている外交部の部長から政府に来いと言われ続けていた。

官僚から部長になって政府に参加するのも良いかと思ったが、議会の与党自由党と野党第一党の国民党に少しだが膿が溜まっているらしいので人民戦線党に参加予定のフレンダだった。



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グレート・ゲームと誕生

【北邦共和国 政府】〔夏〕

情報を整理しているうちに欧州の2つの強国の姿を見ることができた。

ポルトガルとスペインである。

後世ではここから世界を盤としたチェスが始まったと言われている。

スペインとポルトガルは海洋国家であり、西欧州の大国となっていた。

1571年に北邦共和国が撒いた種から成長し大国となっていたオスマン帝国を海戦で圧倒し、その軍事力を世界に示した。

もうひとつの種から大国となったロシアの狂犬とは違い、オスマン帝国はこちらにとって唯一海軍力が高い国だったので少し痛かった。

そんな北邦の政治情報を面白く書いていた新聞社がグレート・ゲームと命名した。

プレーヤーは北邦、ロシア、スペイン、ポルトガル、オスマンの5国でプレーヤーの北邦の姿はカバでその後ろには友人達と書かれた狼のモンゴル、猪の大韓、小さな像のインドが書かれていた。

さらにカバの近くには抜け落ちた牙が剣山のように自分達を守っていた。

そんな状況下で世界を揺るがす大事件がおこる。

 

「なに!?スペインがポルトガルを併合した!!」

ポルトガルは北邦のことを断片的に掴んでいたので、国交を結ぼうか議論していた矢先のことだった。

スペインの姿は頭に火を着けた牛で、様々な場所で暴れまわるからという理由だった。

スペインがポルトガルを併合したことによりマンパワーの北邦共和国、シーパワーのスペイン帝国の覇権争いへと進むことになる。

 

【津軽城】〔冬〕

換金作物であるてんさいの輸出が起動に乗り始めた。

それにより石炭1本だった輸出に幅ができることになる。

また、龍興待望の嫡子の誕生である。

ただ、この喜ばしい時に龍興はまた不在だった。

 

【越後 春日山城】

俺は単身で軍神である上杉謙信と強力な戦闘能力を有する家臣団のいる大広間で対談していた。

 

「元美濃斎藤家当主、現日ノ本最北の国斎藤家当主斎藤龍興ともうす。」

 

「関東守護上杉謙信だ。単身でこの軍神の地に乗り込むとはいい度胸だ。」

 

「それぐらいやらなければこの時代生きれねーよ。」

 

ガチ

上杉家の家臣が俺の言葉で刀を抜こうとする。

 

「待たれよ!!・・・で、なぜここに来た。」

 

「未来を見越した一手だ。」

 

「ほう?」

 

「謙信殿は確かに軍神だ。しかも内政にも優れてる。・・・だが足りないんだよそれじゃあな。天下には。」

 

「なに。」

 

「俺のおじ・・・織田信長はあんたに足りないもんを持っている。それが天下に届く可能性を導き出す。」

 

「貴様!!我らの殿を侮辱する気か!!」

 

「待たれよ!!龍興殿・・・足りないのはなんだ?」

 

「戦略眼だ。戦は勝てるが国取りは苦手だろ。」

 

「・・・お前にはあるのか?」

 

「あるけれど、おじにもあんたにも有るものが俺にはない・・・だから日ノ本の最北なんかに領土を持ってるんだよ。」

 

「ほう?」

 

「俺にはしっかりとした家臣団が存在しない。国にいるやつらは武士という名の商人どもだ。だから俺は戦略で生き残らなければならない。あんたもだ。天下にたどり着きそうなおじでも転ぶかもしれない。あんたも足下を見ろよ。・・・説教みたいになったな。」

 

「いや、有益だった。」

 

「ささやかなプレゼントだ。絶対に俺から貰ったことを言わないでくれよ。」

俺は紙を渡した。

 

「これは・・・。」

 

「城の前に置いておいたぞ。あんたの後継者にでも渡しとけや。」

火縄銃2000丁と高濃度の酒、弾薬、アルコールを分解しやすいつまみを俵単位で持ってきていた。

 

「おい!!気分がいい。宴会だ!!」

謙信はその後後継者を景勝に指名するのだった。



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特殊な国

【津軽城】〔1577年春〕

津軽と南部地域北部を青森に変更した。

これにより津軽城では立地が悪いので平城を津軽海峡に面した港に作ることにした。

この港には北邦の船が入るための巨大な港が存在した。

そのため城の建築資材の輸送はだいぶ楽であり、青森に相応しい町作りも平行しておこなわれた。

 

【伊達領】〔秋〕

晩秋の頃に俺は伊達領に行って嫡男の元服祝いをしていた。

 

「政宗・・・良い名だ。」

 

「おぅ、蜂のじじいもわかるのか!!」

 

「一応これでも俺は1国の大名だぞ。・・・まだ30代だし・・・。」

 

「何を言ってやがる。俺からしたらみんなじじいよ。」

 

「政宗様!!さすがに言い過ぎでは!!」

 

「小十郎もうるせえからまたな。」

 

「おう。せいぜい俺らの壁になってくれや。」

 

「言いやがって。」

蜂とはテリトリーに入らなければ積極的には攻撃してこないため俺は他家からそう呼ばれている。

まあ渾名だ。

伊達の嫡男である梵天丸こと、伊達政宗とは仲が良かった。

2回りも若い彼の頃に俺はさんざん苦労したので優しくしていたらなついたのだ。

何より気に入っていたのが器の広さである。

父親の輝宗も政宗に早く当主を譲りたいと言うほど器のデカイ男だった。

勿論俺がなつかれることは伊達家家臣から嫌な目をされるが、国境も接していないのに献金(友達料金)を払って色々な産物を買ってくれるお得意様だったのでなんとも言えなかった。

挨拶も程ほどにして帰り支度をして廊下を歩いていると政宗の母で俺の大嫌いな義姫と鉢合わせしてしまった。

 

「よう、貴女の息子は凄い器の広い男だな。母親の愛情がなくても立派に育って。」

 

「・・・早くくたばればいいのに。」

 

「生憎どちらもピンピンしてる。毒を政宗に盛ってみろ、貴女を蜂の巣にしてやんよ。」

 

「おお、怖い。それは家の実家も動くでしょう。」

 

「ところがどっこい、時間切れだ。越後の龍とは飲み友だ。一瞬で潰して楽にするさ。なに、貴女の兄は損得勘定がしっかりしている。そんなことになったらお前だけがくたばれや。」

 

「・・・早く死ねばいいのに・・・。」

気分が良くないのですぐに自分の国に戻る龍興だった。

 

【青森城予定地】

斎藤家の軍について龍興は考えていた。

北邦で様々な国の歴史について読んでいると権力者は自分のところに権力を抱え込みたくなるらしい。

俺にはそんな欲を出した瞬間に周りから殺されるので無理だが、ならどうしようかと迷っているだけでも進まない。

 

「・・・海・・・そうだ!!海があるじゃないか!!」

龍興が気にしていたのは軍の弱体化である。

乱世が終わり、治世の世になれば軍は縮小されていく。

それでは困るので龍興は海上で訓練することを軍に提案した。

大きな輸送船を造り、その上で漁をしながら訓練をする独自の育成法を提案し、それは明治の戦乱で活躍することになる。

 



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西暦1580年~ 2秒前

【北邦共和国 政府】〔西暦1580年春〕

 

「織田信長、石田三成、直江兼続・・・3名の死体がほしいのじゃ。」

 

「長老、理由をお聞かせください。」

 

「信長は経済と戦略の天才じゃ。三成は内政の天才じゃ、兼続は改革の天才じゃ。3名を選んだ理由は死体を盗みやすいからじゃ。」

 

「時期をみれば盗めると?」

 

「そうじゃ。他にも盗めそうなのは盗んできて良いぞ。その分報酬は弾むのじゃ。」

 

「長老の役に立つのが紅ですから。死なない程度に頑張りますよ。」

紅・・・地獄から戻ってきたキョンシー達からなる死体回収班。

彼女達は大体は戦地での遺体回収をしているのだが、私が唯一自由に動かせる直轄の部下だった。

そんな彼女達に戦乱の英雄を持ってくるように依頼する芳香だった。

 

【青森城】

3年の歳月をかけて完成した青森城と城下町は経済面に特化していたため、防御力はほとんどなかった。

ここまで攻め込まれたら詰みと思っているので不要な物は切り捨てた。

そんな彼も困ったことがおこっていた。

 

「悩みと言えばこれか。」

 

「すみません。」

 

「いや、仕方がないことだ。君が謝ることはない。原因が俺かもしれないからな。」

嫡男の新九郎以外の子供が出来ないのだ。

家臣達(形式的の)はベビーブームらしく(北邦の人間の影響 外人と結婚と言えば北邦でも羨まれるらしく、ましてや自分達の祖先が同じなので食文化も似ているので北邦から青森に移民して来た者達はほとんど結婚して子供を作っていた)沢山産んでいるためさらに彼女の焦りが出てきているらしい。

 

「出来ないものは仕方がない。新九郎の教育に力を入れて次の世代に血縁を増やそう。」

 

「どこから娘をとるのですか?」

 

「君の実家の関係も有るから正室ではなくても側室にはさせたいと思ってる。・・・血縁で血を繋ぎすぎると子供に障害が出るらしいからな。」

 

「父が1世代空けろと言っているので逆に側室にも入れなくても大丈夫だと思います。」

 

「なら大丈夫か。すまないな苦労をかけて。」

 

「いえ、大丈夫です。・・・お姫さまって良い身分ですね。物語だけの存在だと思ってました。」

 

「北邦には身分の差が無いものな。」

 

「えぇ・・・。」

 

「俺の予想だとさらに身分の差が日ノ本では激しくなるだろう。その前に色々としておかなければな。」

 

「何をするのですか?」

 

「身分の差に関わらない場所を作ろうと思っている。・・・地元の者だけが使える工夫はするがな。」

 

「それは良いですね。」

こうして出来たのが2階建ての食堂である。

2階部分を身分に関係なく暗号を言えば入れるようにした。

明治の争乱では反幕府の寄り合いどころとなる。

 



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地下街道計画

【青森城】〔西暦1581年春〕

秋田領を挟んで南にいる政宗が暴れまわっている間にこちらはさらに内政をしていく。

 

「さて、貿易品にこれが混じってたが使えるなら使いたいな。」

混じってた物はトロッコである。

北邦では港と鉱山で大活躍のトロッコだが、青森ではそんな大規模な鉱山もなく、港も路線を引いていたら異様なのでおじに目をつけられるかもしれない(必ず目をつけられる)そんな政治的な理由もあり、革新的な技術は控えていた。

 

「しっかし・・・どこかに使えないものか・・・。」

 

「地下ならどうでしょう?」

 

「ん?地下?愛弓どういうことだ?」

愛弓とは妻の名前である。

 

「武器の輸送で使えますよね。」

 

「武器・・・密造か。」

 

「はい。地下に貯めておけばいざというときに・・・。」

 

「まぁ確かにな・・・。」

これが武器ではなく、飢饉用の食料庫や普通に金庫として息子の新九郎に使われることになる。

 

「良いんちゃう?」

評定会で賛成多数で地下の計画は賛成された。

特に軍の賛成が大きい。

戦が無くなれば食えなくなってしまうので、土木工事をすることで予算を貰おうと計画していた。

悲しいかな、ここでは軍よりも評定会の重鎮が予算を握っているので下手なことは出来ないのだ・・・。

北邦でもそうだが・・・。

 

〔夏〕

ちなみにだが、斎藤家の収入源は物件の売買と評定会からのお小遣い(ほとんど外交官としての給料)、実家からの援助からなる。

 

(もう少しほしいな・・・何か無いものか。)

その理由は子孫について少々思うことがあったのだ。

子孫が増えれば取り分も減っていく。

北邦との外交官として雇われるかもしれないが、大体は家臣の婿にしたり嫁がしたり・・・それができないと本家が抱え込まなければならない。

それだと最終的に破産するのではと恐れていた。

 

「となると・・・店を出すしかないな。」

捨て子達の中に料理屋をしているのがいたので、城内の厨房で働かせて一人立ちさせるか、専売として石鹸を作ろうとしていた。

高給石鹸なら需要も尽きないし、他の大名に対しても贈り物として使える。

 

「石鹸工場を城内に作ろう。」

 

「は!!」

 

「頼むぞ仁。」

 

「お任せください。・・・龍興最近よく座ることを見かけますが大丈夫ですか?」

 

「おう!!大丈夫だ。」

 

「日ノ本では寿命が50歳ですからね。もう11年しかありませんよ。」

 

「たわけ。・・・仁も成長したな。俺に戯れ言を言えるぐらいにな。」

 

「ふふ・・・日ノ本すべてがこの様な平和な場所になれば良いですね。」

 

「ああ。」



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本能寺の変

【青森城】〔西暦1582年秋〕

 

「おい、俺に虚報を渡してただで済むと思うなよ。」

 

「お父様どうしたのですか?」

 

「・・・本当です。すぐに評定会に来てください。この案件は殿の参加が必要です。」

 

「わかった。新九郎、愛弓のそばにいろ。仕事だ。」

 

「早く帰ってねお父様。」

 

「・・・ああ。」

 

【評定会】

30人の代表者が集まって話し合っていた。

内容は戦略の根本であった信長が謀反により殺されたのだ。

 

「殿!!どうしますか!!」

 

「外交がわからないときついので意見を聞きたいのですが・・・。」

 

「まず秋田家、伊達家、最上家、上杉家を呼ぶ。例え同盟しても我々は天下を取ることは不可能。後継者を見極め付くべきところに付く。それが最善策。」

 

「では直ちに。」

 

「うむ。今回は私が行くわけにはいからないから頼んだぞ。仁。」

 

「殿、わかっています。」

 

「会長はどうする?決定権は俺じゃない。あんただ。」

 

「いや、最善だろう。・・・日ノ本の安定が30年遅れたな。」

 

「そうだな。」

 

【青森城】〔数週間後〕

最上家からは義光の側近の江口光清が、秋田家は当主の秋田愛季、伊達家は一門の伊達成実、上杉家は次期当主の景勝の側近の直江兼続が参加した。

 

「急な報告によりお互いに混乱していると思われるが最初に言っておく・・・織田家当主の織田信長及び嫡男の織田信忠が死去した。原因は家臣明智光秀の謀反と聞いている。この状態だと不味いことになる。」

 

「何が不味いのだ?」

 

「我らが協力して天下を取れば良いではないか。」

 

「そうだな。ではどこか・・・」

 

「待たれよ。今内乱をしている状態ではないのだ。」

 

「・・・どういうことだ?」

 

「キリスト教という宗教を知っているか?」

 

「なんだそれは?」

 

「・・・別の国の宗教だ。信者の数は1億人にもなる。」

 

「お、億だと!?」

 

「なんて数だ。」

 

「しかしそれだけの数が攻めてくる訳ではなかろう?」

 

「その通りだが、日ノ本にも90万人近くの信者がいる。日ノ本が荒れれば荒れるほどキリスト教の奴隷となる可能性がある。南蛮人から見たら我々は猿と同じなのだ。何をしても許される家畜。」

 

「・・・不味いな。」

 

「どうするか・・・。」

 

「後継者の候補者は数人いる。謀反人の明智光秀を討った羽柴秀吉、東海道の覇者であり信長との同盟国徳川家康、織田家筆頭柴田勝家・・・。」

 

「柴田はやめておきたい。あやつは上杉領を荒らして酷い目にあったからな。」

 

「となると・・・。」

 

「羽柴秀吉か徳川家康のどちらか・・・。」

 

「俺はとりあえず羽柴に賭けようと思っている。」

 

「理由は。」

 

「勢いと人気だ。民衆や武士の人気は羽柴に部がある。」

 

「とりあえず家に持ち帰り当主と協議する。」

 

「あと、経済的な繋がりを強めたい。」

 

「秋田家は賛成だ。」

 

「私も賛成です。上杉家の全権として断言します。」

 

「伊達家は当主に話を通ししだいい連絡する。」

 

「最上家も伊達家同様。」

こうして1回目の会合は終了した。



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ご本人登場

【青森城】〔数日後〕

とりあえず経済的な協力して国単位での貿易の取り決めをし、こちらからは工芸品と火縄銃を売り払った。

一通り終わって城で新九郎と将棋をしている時に来客である。

 

「久しぶり・・・龍興。」

 

「はあ?」

 

「私だ、私。信長だ!!」

 

「は?」

一瞬フリーズしたが、北邦では秘術(表向きは)で死者を蘇らせていると聞いたことがあった。

秘術の現場は見てないが、実際に蘇った人は多数会っていた。

 

「おじなのか?」

 

「今は魔王と呼ばれている。」

 

「魔王かよ。」

 

「まぁ生前も第六天魔王と自称していたしな・・・。しっかし最後の最後であの猿・・・裏切りやがって・・・。」

 

「ん?謀反を起こしたのは明智ではないのか?」

 

「明智ならここにいるぞ。」

 

「私がそんなことをすると思うか?して何がある。」

横にいたちびっこが話始める。

 

「あ、今はこなたって名前だ。」

 

「私確かに本能寺にいたけど・・・本殿でと、魔王と茶会して、疲れて寝てたら火だるまになって死んだ。」

 

「ん?じゃあ・・・」

 

「おそらく猿が立てた身代わり。影武者だ。」

 

「マジか・・・そこのもう1人は誰だ?」

 

「私の小姓の・・・」

 

「森・・・森成利・・・だった者で、今は五和と呼ばれています。」

 

「で、どうすんだ魔王さん達一行は?俺は建前だけの領主・・・金も限りがある。自分達で働いてもらわないと困るぞ。」

 

「ズバッと言うな・・・なに、3人で店でもやって儲けていくよ。」

 

「それだとありがたい。」

 

「ただ、費用がないから副業としてアドバイザーをやりたい。かわいい甥のために・・・。」

 

「そんなんだったら美濃なんてとってねーだろ。」

 

「まぁ冗談は置いておいて、財源を調べさせてもらったが、作物が片寄りすぎだろ。米と麦、換金作物のてんさい、果物は酷すぎる。・・・開拓して村お越しでもしてるからな。」

 

「任せるよ。」

 

「こなた、五和行くぞ!!」

 

「「は!!」」

おじは死んでも行動力が高い人でした。

まぁ、信長は領主なんてやりたくなかったのだと思うと日記に書いておこう。

後日、青森の近くに人口40人の小さな村が出来上がり、よく新九郎が友達を連れて遊びに行くようになる。

ここで体験した農業の大変さや、野性動物の怖さ、自分で採った物の美味しさの経験は家督をついで当主になった後に大変役立つのだった。

 

【大韓 首都ソウル】

 

「大韓帝国は今日をもち、政府に権威の大半を譲渡する。名称も大韓民国と改め、隣国と協力し、より良い国を作ることを宣言する。」

こうした韓国の一大イベントに北邦の席には空席が目立つ。

なぜなら・・・

 

【スペイン】

 

「第8回十字遠征の開始を宣言する!!」

ついにスペイン・・・いや、キリスト教と北邦で大規模な戦争が開始されたのだ。




信長 姿はまおゆうの魔王
森 成利の五和はとある魔術のあの五和


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宗教戦争 上の上

【北邦共和国 北海道】〔西暦1582年夏〕

ことは少し前に遡る。

スペインと国交が開いた時に宣教師が混じっていた。

そこで口論となり、そのまま裁判所にもつれ込んだ。

まず神の違いである。

こちらは八百万の神(実際はそれ以上だが)を信仰しているのに対して、宣教師達はゼウスの一神教であると主張。

裁判官は飽きれ

 

「どちらの考えでも良いじゃないか。人間思考が違うのは当たり前である。お互いに謝罪し、この件は水に流そう。」

と提案。

北邦側は受け入れたが、これに宣教師は激怒。

何もすることなく帰っていった。

 

「なんだったんだべ?」

 

「キリスト教だけしか信じられない愚か者ですよ。宗教の弾劾なんて・・・。」

上は裁判所に駆け込んだ町民、下は祖先がユダヤで、ユダヤ教を信じている裁判官だった。

 

【北邦共和国 農南】〔数週後〕

別の外人がやって来た。

・・・イギリス人である。

宗教裁判という馴染みがないことに一般の関心が高まっていた時に今度は宣教師ではなく、貿易商がやって来た。

現在農南の代表は小鍛治がおこなっており、ユダヤ系の通訳を交えながらの話し合いになった。

 

「北邦の人良いヨ、金持ち喧嘩シナイヨ。」

 

「有意義な話し合いになった。こちらも感謝の証にガラス食器と茶葉を渡そう。」

 

「アリガトウ。」

またスペインという国と宗教問題が起こったことを話すと

 

「キリスト教も色々アルデース。スペインは古い考え方を大切にシマース。私達イギリス人はキリスト教を広めることはしません。イギリス正教はイギリスでなければならないのデース。」

 

「ならいいが・・・まぁ、貿易頼むや。私達的にはキリストを教えても我々の神の中でも偉い神なんだなー程度だから。」

 

「独特デスネ。」

 

「まぁな。」

 

「売れたらまたキマース。」

 

「元気でな!!」

唯一イギリスは十字遠征に参加しなかった。

・・・というか、イギリスは北邦との貿易拠点をベトナム(人口がスッカスカで半分滅びかかっている)に建設し、英国領南ベトナムが誕生することになる。

 

【農北】〔西暦1583年春〕

異国の軍勢が国境を越えようとしたことから遠征軍と初めての戦闘が開始された。

前回の反省から民間人の避難を迅速におこない、約200キロの縦深を作り出すことに成功した。

ただ、農北だけが戦闘地帯ではない。

インドとオスマンも攻撃を受けていた。

農北以外では負け越している。

農北では約5万人の軍人が遠征軍10万人と対峙、遠征軍は光る弾を北邦軍に向かって発射してくる。

北邦軍に弾が当たると兵士達の体に紋様が浮かび上がり、尻餅をつく程度だったため、接近戦で遠征軍は多大な出血をしいることになる。



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宗教戦争 上の中

歴史家達はこの第八次十字遠征についても頭を抱えている。

まずなぜスペインはこのような軽率に大遠征をおこなえたのかである。

経済的な面ではポルトガル領を手に入れたことと、遠征軍の主体=キリスト教の守護軍的な位置なので海賊に南米からの銀が積まれた船が襲われないこと、東南アジアからの香辛料による利益で大遠征であるにも国庫は黒字、武器と船が売れるので国内の産業はバブルに突入したので、経済は関わらずびくともしなかった。

その割りを食らったのがロシア、フランス、オーストリア、ポーランドである。

4つの国は国がしっかりしていたのでその分遠征に出す人数も増え、少なくない支出をしいられた。

・・・よってヨーロッパの諸国を没落させ、自国はヨーロッパの覇者となるように仕組んだ国家戦略の合致がこの遠征を引き起こしたと見ている。

表向きは・・・。

スペインはこの遠征を利用して化け物や魔女のヨーロッパ追放を実行した。

この時期、魔女や化け物は各国家のどこかに所属し、影から国を支えていた。

しかし、王達にはそれが不気味に思ったのだろう。

第八次十字遠征200万人の参加者のうち、魔女(魔法使い)50万人、化け物(吸血鬼や狼男など)60万人が参加していた。

これがオスマンとインド戦線を苦しめている理由である。

オスマンはジリジリと後退してギリシャ-イスタンブールのラインで遅延戦をおこない、インドは南の約500キロを放棄して中南部で防衛をしていた。

・・・では農北の戦線というと・・・

 

【農北】〔夏〕

 

パパパパパパ

 

「列を作り前進せよ!!」

銃で列を作り、集団で攻撃していた。

構成は全てキョンシーである。

人が敵の撃つ光の弾に当たると当たった部分が抉れて絶命するため、効かないキョンシー達が最前線で活動することになる。

 

ドドドドド

「突撃!!」

 

「「「ヤー!!」」」

2万騎の突撃に耐えられるはずもなく倒されていく遠征軍だが・・・

 

「AMEN!!」

 

ザシュ

 

「たわいもない異教徒どもがのさばりおって・・・。」

キョンシーは不死身である。

力も強く、細切れにされても技術の進歩と肉体的なる。進化によりどんなことがあっても再生する。

そんな彼らを細切れにして反撃する連中もいた。

 

「吸血鬼もお忘れなく。」

 

ザシュ

吸血鬼もキョンシー1に対して3体分の強さがあり、必死に援軍が来るのを待ったが・・・

来たのは北邦軍50万人。

 

【北邦政府】〔少し前〕

 

「北邦共和国政府は侵略軍に対して部分動員を開始する。」

これにより北邦は800万人を動員した。(部分動員である 総動員は3000万人)

 

「侵略者を叩き出すのじゃ!!」

SB、蒲原研究所を筆頭にした戦争関連に予算が振り分けられ、恐ろしい早さで武器と魔術が進化していく。

前線に効果が現れるのは数年後先だが・・・。



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宗教戦争 上の下

広大な領土に素早く兵を移動する技術の開発が急務だった。

兵だけでなくその食料を運搬するのもだ。

これはトロッコに蒸気機関を搭載するものが実験より効率が良いことがわかり、さっそく実用品にするための研究に入る・・・。

 

【農北 前線司令部】〔秋〕

戦争が始まって5ヶ月が経過した。

前線で指揮をとる佐天は物資の略奪被害で頭を悩ませていた。

 

「吸血鬼・・・狼人間・・・夜に活性化する化け物が多いこと・・・。」

現状は地下に隠す方法をとっているが、それでも被害が減ることはない。

 

「・・・叩いて囲んで擂り潰すかな。」

佐天は部下に物資を中央に集めるように命令する。

 

〔夜〕

 

「しっかし馬鹿だよなここの司令官。」

 

「あぁ、物資を狙ってくださいっていってるものじゃないか。」

吸血鬼や化け物は個々で動くことが多く、また軍事教育を受けているわけでもない。

司令官に当たるのも脳筋なので突撃くらいしか指示を出さない。(いや、出せないのだ 個々で動くので)

頭の良い吸血鬼は初めからこの遠征にも参加していない。

 

「めちゃくちゃ今日は多くないか?」

 

「たぶん物資が到着したばっかりなんじゃないか?」

 

「そうだ・・・」

彼が言い切るとこは永遠に訪れなかった。

北邦の工作兵によって昼のうちに大きな穴を空け、中に大量のダイナマイトを仕込んでいた。

物資の表面は食料品だったが、残りは火薬である。

大量の物資に目が眩んだ吸血鬼達は導火線の火に気がつくことはなく、周囲500メートルを大爆発が巻き込んだ。

 

「突撃!!」

爆発を合図に一斉に北邦軍は突撃を開始した。

戦果は農北の戦線にいた吸血鬼の半数・・・2000人を討ち取る結果となった。

 

「これは使える・・・。」

以後佐天はダイナマイトによる大爆発戦術を多数使用するようになる。

ただし、それは今回のような敵そのものを攻撃するのではなく、遠征軍の基地からそこそこ離れた場所で爆発を起こして注意がそこにいった時に奇襲を仕掛けるなどの別の用途だった。

 

「削れる時に削る。攻めるときに削る。守るときは被害を最小限に抑える。粘り強く・・・。」

その後2回に及ぶ決戦を佐天と将軍達は勝利に導き、農北の北部地域から南下し始める。

 

【農北 南部】

 

「厳しいですね・・・。」

こちらはいたって普通の将軍が指揮をしていた。

 

「防御が有利になるのはこの戦争でよくわかりました。・・・しかし30万人が私の相手ですか。」

彼女は持久戦を選択し、初の塹壕戦術を採用する。

 

「機動力を捨てて、防御にガン振りする!!」

 



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宗教戦争 中の上

塹壕戦術を採用した北邦南部ではSBと蒲原研究所の実験に最適だった。

何より活躍したのが固定する中型のクロスボウである。

音も小さく、矢に術式を書き込むことや、紙を巻き付けることができたので、詠唱中の魔法使いは針鼠のような感じで戦死することがたくさんおこった。(死体は全て回収しました)

 

「ありゃ?塹壕戦術を採用してから被害がガクッて減ったな。」

最初は塹壕も敵の魔法とか砲弾とか銃弾とか弓とかから身を守るための仮の処置だったが、今回ので有効性が確証される。

 

「せっかく勝てる戦争だから試せるだけ試すか。」

南方将軍は数学者(弾道計算員)を呼び、理論上砲弾などを効率よく守れる作りを片っ端から採用して戦線に用いていった。

そのため銃弾よりもスコップ、ピッケル、手押し車が重宝されるとおかしな光景が広がった。

 

【シベリア東部】〔冬〕

北部地域の敗残兵や、援軍で55万人を超えた遠征軍と・・・

 

「これで大規模な攻めに転じることができる。」

北邦にも援軍を加えた300万人が真冬のロシア領シベリアで対峙した。

 

「敵軍の皆さん・・・ゆっくりしていってね!!」

南方将軍は冬の期間に雪が塹壕の上に積もり、保温性の高いかまくらのようになった。

また、北邦もシベリア並みに寒いところがたくさんあるので防寒対策と種族的な耐寒を得ていたので誰も死ぬことはなかったが・・・

 

ガチガチガチ

 

「あ、あ、あ。」

遠征軍の魔法使いや化け物以外は子供から順に死んでいった。

化け物も雪で足がとられて凍傷になる者が相次ぎ、冬が終わる頃には55万人から15万人まで減った。

 

「雪が溶ける前に一気に攻めますかね。・・・いや、ここは大丈夫ですね。インドとオスマン救援にこちらから半数を引き抜きさせますか。」

農北は完全に遠征軍を追い出し、シベリアの一部(約100キロ)を制圧することに成功する。

 

「さて、縦深を50キロまで狭めますか。」

農北は大半の地域を戦前のような生活レベルに戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

【インド】

約10ヶ月でインドは戦線を固定させた。

インドの兵も中には魔術(ヒンドゥー教による)を使えたのが原因だと思われる。

北邦から300万人の援軍により攻勢準備に入るが・・・

 

「夜戦こそ至高!!短期決戦で次のオスマンを助けなければならないのだ!!」

血の気が盛んなキョンシーで、生前から性格に難があるものの武勇に優れ、カリスマもあるという人物だった。

指揮下の約50万人を率いて夜に攻勢を開始してしまった。

 

「あのバカはなにをやっている!!」

インド援軍の将軍は自分の副将の独断に頭を悩ませた。

結果・・・焦土戦となってしまった。



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宗教戦争 中の中

携帯修理中の為記号の一部がおかしくなってます。


インドの最前線での悲劇は北邦の歴史上最大の汚点となった。

インドには約30万人の敵兵がいた。

ただし・・・それだけならすぐインド軍だけでも撃退できただろう。

現実は違っていた。

 

「ここまで手ごわいとは・・・。」

インド援軍副将は大規模な夜戦になればいかに吸血鬼とてかてないだろうと思っていたが・・・

 

「・・・いまこそ父の恨みを晴らすとき・・・。」

彼の前に立ちはだかるは、ラミアーと呼ばれる化け物だった。

ラミアーは下半身が蛇の女性の怪物で、ギリシャ周辺とポーランドに住んでいた。

ラミアーは人間の未亡人が夫と息子を戦争で亡くし、一人になった未亡人の周りにも未亡人が30人いる状態で、男性がいないと未亡人の下半身が変形してなる化けものであり、その中の司令官の女はラミアーから唯一生まれながらにしてラミアーだった。

ラミアー同士は意思の共有が可能であり、口から毒を故意に放つことができた。

身体的な利点を余すところなく利用し、夜に奇襲をしかけた北邦軍と北邦軍の本体との補給路を彼女達は断つことに成功する。

 

「いかん・・・囲まれたか・・・前衛はどうなっている?」

 

「奇襲の効果が切れ、徐々に押されはじめています。」

 

「・・・。」

彼は後ろを一瞬振り向いてみると・・・

 

「小隊単位で分散し、西に行軍する。上手くいけば包囲でき、最低でも脱出できる。命令しろ!!」

 

「は!!」

普通なら素晴らしい対処法であるが、相手に狼男がいたのがまずかった。

移動中に襲われ、犯されるかバラバラに引き裂かれたりした。

・・・それは朝になっても続き、被害は甚大なものになっていった。

 

「はあ・・・はあ・・・ここなら・・・。」

旧住宅街に逃げ込んだものが一番酷かったかもしれない・・・。

カースト制度の最下層がこれを機に反乱を開始した。

いきなり現れた第三勢力に遠征軍と板挟みにあった北邦軍はたまったものではない。

初の40万人を超える被害を出す結果になり、副官も平原に体のほとんどを埋められた状態で発見されることとなる。

・・・で、追い詰められた北邦軍がしたことが・・・魔術の無差別使用であった。

・・・別名自爆魔術・・・自身の血を水素に変えて周囲数百メートルを巻きこんだ爆発をしたり、理性を生贄にして筋肉のリミッターを外したバーサーカーとなる魔術をつかったのだ。

約3ヶ月後には・・・ラミアーと人狼、再生したキョンシー以外の生物及び建築物はすべて破壊された・・・。

後にインド最悪の日と呼ばれる。



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宗教戦争 中の下

【オスマン帝国】

インドは地獄だったが、こちらは虐殺現場だった。

老若男女関係なく遠征軍に殺され、ついにカイロとコンスタンティノーブルを占領され、窮地に追い込まれる。

しかしアンカラの奇跡と呼ばれる遠征軍の戦略を破綻させることに成功する・・・

 

「まだだ・・・オスマンはここでは終わらない。」

時のオスマン皇帝は北邦からの援助物資を見て必ずオスマン帝国を復活させることを心の中で誓う・・・

 

【スペイン】

スペインの財政を再建した名君フェリペ二世は自身の目的は達成したと思った。

まず諸国の財政を圧迫させることはイギリスを除いてできたし、化け物は大半が戦死した。

よくわからなかった北邦の軍事能力も把握でき、満足だった。

・・・しかしスペインが戦争から離脱しなければならない出来事が起こる・・・オランダ独立戦争である。

ネーデルランド北部の独立はスペイン経済的に無視できるものではなく、結果北邦との戦争が疎かになっていった。

これにドイツ諸国とフランス、イタリア諸国が戦争に消極的になっていく。

 

「くそ!!フェリペにやられた!!」

これにローマ法王は激怒したが、最大の献金国にそっぽ向かれるといくらキリスト教のカトリックといえどもきついことになる。

約1年で法王は十字軍解散を宣言することになり、北邦とヨーロッパの戦争は終わりを告げた。

・・・ヨーロッパとはだ。

ロシアの狂犬は何をトチ狂ったか戦争を継続・・・これが後世にロシアは戦争が飯の種と呼ばれる戦争狂達であった。

・・・まあ戦争狂と呼ばれるくらいには強いってことだが・・・。

 

【SB本部】〔西暦1583年春〕

銃剣の開発と蒸気機関の改良に成功し、銃剣はすぐにシベリアの前線に送られ、蒸気機関車が時速15キロのペースで10キロを走ることに成功し、30トンを初期型は運ぶことができた。

蒸気機関車はまだまだ改良の余地と戦略兵器という位置付けとなり、先にレールが引かれていった。

軌間は1435mmと定められ、レールの上を馬車が通ることが約50年ほど続いた。

 

「この鉄道は国家の血液となるかもしれないな。」

時のSBの鉄道開発主任が言った言葉はまさにその通りだった。

 

【蒲原研究所】

一方こちらでは降伏したラミアーと人狼を使った魔術の実験がおこなわれていた。

ラミアーや人狼もインドの悲劇を間近で見て、キリスト教だとか恨みだとか言ってられない状態になってしまったのだ。

そのため、降伏した後の実験にも比較的協力してくれた。

その中で開発されたのは幻影と特殊交配(遺伝子の改造)の魔術だった。

幻影はラミアーや人狼が人間の姿に化けるために作られた魔術で、これにより北邦では普通の生活が送れるようになり、特殊交配はキョンシーでも子供を産めるようになる魔術だった。



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織田家の内情

【青森城 周辺の村】〔少し時間は戻って西暦1582年冬〕

 

「やっぱり銭をいじってるのが私の天職・・・。」

信長が治める村では特殊な統治法を採用していた。

村の株式化(収入分配法)である。

村の収入を村長である信長が全て徴収し、代わりに紙に収入が書かれた紙を渡す。

集めた作物を各地に売り、それを元値に事業に金をばらまく。

そこから出た利益を紙の収入より5%プラスで渡してまた金を徴収する。

初めは不満も出たがその方が利益が出るので村の人も協力し、様々な物を作っていった・・・牧場、宿、市場・・・多少の借金もしたが、担保は村を龍興に渡すことである程度もらうことができた。

 

「信長様はこうでなくては。」

 

「そうだねー。」

 

「ちょっと作法や茶を教えて稼いでいるこなたさん。そのお金はどこに行ったのかな・・・。」

 

「知らないなー(棒)。」

 

「おや・・・こんなところに高そうな茶具が・・・。」

 

「謝るからそれだけはやめてー!!」

数分の五和による説教がこなたを襲う・・・

 

「しっかし・・・良くない表現かもしれないけど・・・あの織田家から逃れることができてよかったかもしれないな。」

 

「確かにそうですね・・・。」

 

「痛キチ朗、(危ない)勝家、(ひねくれ)滝川・・・。」

 

「普代でまともなのが佐々木と林の長老コンビと池田のみ・・・。」

 

「外様は愛想つかして裏切り連発・・・。」

 

「辛かったよね・・・お互い。」

 

「そうですね・・・。」

信長もそんな普代ばっかで病んでいた。

 

(しかもあのキチ猿は天下目指すし・・・。)

 

(キチ猿の謀反あれはないわー。)

本能寺の変では秀吉の裏切りで、発生したが、理由が竹中の最後に食べた飯が痛んでいたことが信長が竹中を殺して自分も殺そうとしているというトチ狂った考えだった。

 

「あいつが天下取ったらどうする?」

 

「あの猿が死んだ瞬間に徳川に天下とってもらうしかない。」

 

「ですよねー。」

 

【青森城】

 

「織田家の内情酷すぎ・・・よくこれで天下統一の手前まで行けたな・・・。」

狂人の集まりでしかなかった。

はっきり言ってこんなところで働きたくはない。

 

「しっかし・・・。」

羽柴秀吉から服従の手紙が来ていた。

密約で1583年の夏に東北の主な大名は彼に服従することは決めていた。

ただ、その秀吉が今に何かヤバいことをしでかそうとしているのではないかと思ってしまう。

 

「今のうちに評定会の資産を複雑化させて隠すように手配するか・・・。」

結果、表帳簿には複雑に財産がどこにあるか、石高はいくらか計算しても上手く誤魔化された物が出来上がる。



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宗教戦争 下の上

【北邦 最高裁判所】〔西暦1583年夏〕

インド救援軍副司令官であるキョンシーが法廷で責任を問われていた。

罪状として命令違反、市民の虐殺、反対した部下への虐待、勤務中に飲酒等があげられた。

昔のように数ヶ条の約束みたいに生易しいものではなく、それはそれは洗礼された法律ができており、年間約2000人が裁判所で判決を受けている。(まぁ大半が賠償で済むのだが・・・)

 

「被告を餌の刑とかす。」

数十年ぶりに最高刑が判決された。

 

「い、嫌だ!!あそこは嫌だ!!」

第1実験動物収容施設・・・そこは熊が大量に飼育されており、キョンシーの処刑施設となっていた。

キョンシーは燃やしても、首を吊らしても、首を切り落としても最終的には復活する。

しかし、肉片がバラバラの状態で消化されるとさすがに蘇生しない。

・・・まぁキョンシーにとって本当の死刑である。

 

ガチャ イアアアアアァァァ・・・

バギボキとぐちゃぐちゃという嫌な音だけが響くのであった。

 

【シベリア】

佐天と南方将軍が合流し、ほとんど消化試合となっていた。

本当の未来では人が畑から取れると言わしめるロシアだったが、この世界ではどうなるか怪しい。

既に500万人の男性が戦死して人口ピラミッドに歪みが出ていたのだ。

それでもまだ戦争を続けるロマノフ王家には北邦も驚いているが・・・。

 

「さて、今回の戦争で塹壕と足止めによる出血戦術が有効なのが証明されましたね佐天将軍。」

 

「そうですね・・・やはり機動戦はそろそろ限界ですかね。」

 

「おりょ?」

 

「私もなんとなくわかってましたよ。機動戦は少数による奇襲・・・それが大きい。大規模な奇襲ではインドの悲劇のようになりますからね。」

 

「確かに・・・。」

 

「まぁ今度は騎兵は解体されて工兵と中々の活躍をした砲兵が主力になるでしょう。」

 

「戦争の進化・・・。」

 

「極端な話私達は相手からしたら悪夢のような動員力と補給能力によって勝っているに過ぎませんからね。・・・画期的な兵器が登場すれば私達の優位は脆く崩れ去ります。」

 

「確かに・・・。」

 

「時間を稼ぐことがこの国にあっているのかもしれませんね。」

 

「しかし・・・200年はこの優位はひっくり返ることはないですよ。」

 

「それは慢心と言いますよ。・・・何が起こるかわからないのが世の常・・・私達は軍人として国を守らなくてはならない・・・なにが起きても対処できるように気を引き締めていきましょう。」

 

「そうですね・・・頑張りましょう。」



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宗教戦争 下の下

〔西暦1584年春〕

戦線に50万人を張り付けて戦争は停滞した。

北邦の経済力的には問題なく、逆にちょうど良い訓練になるというロシアとっては喉元に突き刺さる寸前のナイフであったが・・・。

この戦争を総括するとスペインと大韓民国、モンゴルの大勝利である。

スペインは戦略目標の達成、大韓民国とモンゴルは戦略物資の販売で大儲けであった。

勝利は北邦とイギリスである。

経済がこの戦争で活性化した北邦と戦争の隙に利権を取ることができたのだ。

まぁ北邦はインドの所業で信用問題が発生、イギリスは出兵しなかったことでキリスト教の諸国から突き上げられる。

トントンはドイツ諸国、フランス、ポーランド、二重帝国、イタリア諸国で経済にダメージがあったが、協力したという外交的な札を持った。

敗北はオスマン、バチカン、ロシアである。

オスマンは国家は残ったが弱体化し、さらに少数民族問題も吹き上がり北邦の援助によって国力が回復するのに100年近くの歳月を要した。

バチカンは権威の失墜と外交的な不利、さらにプロテスタントの勢力拡大で収入激減と踏んだり蹴ったり・・・。

まぁそれでもロシアよりはマシである。

ロシアは人口ピラミッドの崩壊、経済崩壊、国家権力の失墜、政治の失墜と過去の狂犬ぶりから周辺諸国からの突き上げ(ポーランドには進行されている)もあり、国家を建て直すまで200年近くの歳月を要した。

・・・まぁ赤く染まったあの国が生まれるのだか。

ソビエトロシアが1600年に爆誕することになる。

初代ソビエト議会は王家を処刑するが、ヨーロッパ諸国は無関心だった。

ロシアはこの時点文明国扱いされてないのだ。

 

「今に見ておれ・・・。」

狂犬は頭脳を明細な狂人となるのは今しばらくあとである。

 

【北邦 参謀本部】

 

「やっと終わったな。」

 

「これで北邦も世界盤のプレイヤーとなりました。」

 

「今まではアジアの雄だったが・・・これからは覇権争いに巻き込まれるか。」

 

「防御をしてから反撃方法を確立させましょう。」

 

「だったら大砲を有効に使えるようにしましょう!!」

 

「簡易に作れる障害物も考えなければ・・・。」

 

「当分忙しくなるな。」

 

「そうですね。」

史実のソビエトの火力主義に傾いていく軍首脳部だった。

・・・まぁこの世界のソビエトも火力主義なのだが・・・。

すぐに大砲と銃、火薬類を要請するが・・・。

 

「④ね。」

もちろん財務部がストップをかける。

平時に泣きを見るのが北邦の軍であった。



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政治家

【京都 細川家の館】〔西暦1583年夏〕

俺は春の終わりに供回り100人を連れて青森城を出発、秋田城で秋田家、伊達家の代表と合流し、最上義光がいる館で最上家の代表と合流し、そのまま上杉領の春日山城にて景勝と面会の後に代表を連れて海路で一気に近畿に移動し、細川氏の領土で船を降りた。

細川氏には数ヶ月前に秀吉との面会申し込みに俺と数人で乗り込んだ。

その時に

 

「(足利)義輝様の信長殿をどう見たかわかった気がする・・・。」

と呟いていた。

まぁその時は飯をゴチになり、秀吉の面会許可を手に帰ったが・・・。

 

「龍興殿を秀吉様は心待ちにしていました。どうぞこちらに。」

 

「え?」

 

「なんじゃ?ワシがいちゃ不味かったか?」

 

「秀吉様・・・。」

俺はすぐに土下座をした。

 

(今天下人に一番近い存在・・・俺とでは器が違う・・・。)

俺につられて各家の代表も頭を下げる。

 

「面を上げよ。・・・美濃では助かった。お主のお陰で今の身分があるからのー。何しに来た?」

 

「日ノ本の最北で下克上でのしあがりました。秀吉様に領土の安堵を祈願しに来た所存。」

 

「さすがじゃな。他の者は伊達、上杉、最上、秋田か。良かろう。ワシは気分が良い。天下がそこらから転がり込んでくるのは実に気分が良いことにじゃな。」

 

「ありがとうございます。」

 

「これより兵の指揮権はこちらに移ったとみなす。・・・まぁ早く帰って主君に伝えるといい。」

 

「「「は!!」」」

面会が終わる直前に俺は秀吉が不気味な笑みを浮かべているのに気がついた。

 

(こいつ・・・俺らも食う気だ。)

俺は4つの茶器を秀吉に渡した。

 

「・・・おぉ、真っ白の茶碗に青い模様の硝子の器、独特な形じゃが味のある茶器に緑色が鮮やかな茶器か。」

 

「4家の宝でございます。私目には成り上がり者で持っておりませぬが・・・。」

 

「良い心がけじゃな。5家の領の安泰しかと認めるぞ。」

 

「「「「「ははぁ。」」」」」

どれも北邦では安いコップや茶碗だったが、喜んでもらえたようだ。

その顔にはまだ良いかと思っているのが丸分かりだった。

 

【帰りの船】〔夕方〕

 

「あんな茶器我が家には・・・」

 

「我が家にもないぞ。」

 

「俺の宝から出した。あの野郎俺らを食らう気満々だったから宝で釣った。」

 

「助かった。感謝する。」

 

「これからが大変だ。あの野郎のことだ。領地換えがあるかもしれない。・・・銭に換えたり、茶器や芸術品等にして移動できるようにした方が良いだろうよ。」

 

「さすが龍興殿、先を読まれますな。」

 

「読まないと生きていけないぞ。・・・今後はバラバラに動いて警戒心を解くように心がけよう。家が残れば挽回できる。」



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西暦1584年~

【青森城】〔西暦1584年春〕

北邦では戦争を継続していたが、青森城下では平和そのものであった。

というか俺の跡取りである新九郎(8歳)と最上の駒姫(4歳)の婚姻がひっそりとおこなわれた。

政略結婚であるが、最上家とは末長い付き合いをしたいのと彼の妹である政宗の母との不仲によって両家の関係が崩壊するのを恐れたためである。

ひっそりとおこなわれたのは秀吉の目がどこにあるかわからないからだ。

 

「これで正室はできた・・・後は北邦からもらえるだけもらうか。」

この後9人の側室ができ、特殊な小学校(有力家臣の子供達、その妻や新九郎の妻達の40人編成)で同じクラスにして仲を深めてもらった。

後々新九郎は

 

「自分は1人なのに俺にはたくさんかよ。腹上死する・・・。」

と言っている。

ちなみにこの小学校制度は新九郎によって高校まで繰り上げられ、明治維新まで続くことになる。

 

【尾張北部】〔夏〕

秀吉に出兵命令を受けて俺は1000の兵を率いて秀吉の軍に合流した。

東北の大名で徴集させられたのが俺だけのを見ると織田家の後継者争いの延長と俺は読んだ。

一応信長の親族ではあるのでここでそこそこ活躍しないと最悪改易・・・難しいのは活躍しすぎても駄目な点だ。

 

「さてどうしたものか・・・。」

 

「おい、お前が悩んでどうすんだよ。」

 

「・・・長可か。」

秀吉の陣中で仲良くなれた1人だった。

他には池田恒興、福島正則、加藤清正、石田三成、大谷吉継、黒田官兵衛、前田利家等の若手、知性派、一部の織田家古参組とは仲良くなれた。

織田家古参組は言うまでもなく、腐れ縁みたいだったが、酒を飲んで昔話をしたらすぐに打ち解け、知性派と若手は竹中半兵衛から龍興のことを話されていたらしい。

 

『私が恐れるのは信長、毛利元就、信玄、謙信・・・絶対に敵に回してはならないのが龍興です。』

 

『大殿が美濃を制圧して・・・。』

 

『そうですが・・・それは初めから彼にとって消化試合だったのです。それで7年・・・私にはできませんし、したくもありますせん。それを14の若さでやったのですよ。あなた達に生きていたら会わせたい。』

と言っていたらしい。

死に際に秀吉に

 

『龍興殿を味方にすれば天下が近付く。敵にすれば崩れる。』

と言ったらしい。

その話を聞いた俺は膨張だとか捏造とか言ったが、なぜか俺は池田と長可の別動隊に組み込まれることになる。

・・・そう豊臣秀次である。

 

(嫌な予感がする・・・武器全てに痺れ薬を塗るように指示するか。)



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VS家康

【長久手】〔数日後〕

 

(くそ、あの馬鹿。俺の指示を聞かないでいきやがって・・・。)

秀次は俺のことを全く信用していなかった。

そのため俺の助言に反した行為をおこなったのだ。

結果は池田、長可の戦死である。

俺は秀次を安全に退かせるため(後ろで戦わずに逃げたら何を言われるかわからないため)織田徳川連合軍約1万2000と壊走していた池田森連合を吸収した約2500で迎撃体勢を整えた。

 

「敵に家康本人の旗がある。青森の兵が天下一の精鋭と言うのを教えてやれ。」

俺は簡易の土豪を何個も作り体を隠しながら敵が動くのを待った。(その待っている間に別動隊を臨時で作成し、織田に奇襲を仕掛けた。)

 

「撃て。」

奇襲を受けて僅かに前進した部隊を俺は狙い撃ちにした。

被害は小さいが再統制厳しいだろう。

 

「さて、仕事だ。」

俺は大きな太刀を手に取ると緊迫した戦前の前に立ち

 

「斎藤龍興なり。いざ、勝負といこう。」

 

ザワザワ

雑兵はいきなりの大将首に欲が眩み6名の足軽が襲いかかるが・・・

 

「遅いぞ。」

一瞬にして6人の首が飛ぶ。

斬られた6人は自分の首がないにも関わらず20寸(60メートル)ほど走り続け、そこで倒れた。

 

「我が勝てば池田恒興殿の首を返してもらいたい!!」

 

「渡辺守綱がお相手いたす!!」

徳川十六将の1人で槍の名手が出てきた。

 

「いざ。」

 

「勝負・・・。」

この勝負は後世の歴史で語り継がれることになる。

渡辺が長いリーチで初めは龍興を圧倒するが、龍興は太刀の腹を使って槍の突きを上手くいなす。

龍興は第24撃目に一気に渡辺との距離を詰め・・・太刀を構える。

渡辺はその振り上げた瞬間を見逃さなかった。

一気に槍で突いてきたのだ。

 

ザシュ・・・ビチャァー・・・

勝負は龍興が勝った。

龍興の太刀は渡辺の穂先から槍と渡辺の体を真っ二つにしたのだ。

 

「も・・・守綱!!」

家康叫ぶ。

まさか守綱が破れるとは思ってなかったようだ。

 

「・・・最後の一撃誠に天晴れなり。」

俺の太刀に亀裂が入り、そのまま壊れてしまった。

俺は池田殿の首を貰うとすぐに自陣に戻った。

家康はそのまま軍を率いてどこかに行ってしまった。

 

【秀吉本陣】〔夜〕

 

「親父をありがとうございます!!」

池田の首を大切に受け取った池田の次男輝政は俺に何度も頭を下げた。

秀吉も徳川に一矢報いたことで名誉が守られたと笑顔で言われた。

 

「そちはもうすぐ跡取りが元服だったな。おめでたじゃ。国に戻り祝ってやるがよい。」

 

「は!!」

秀吉は功労者の俺に褒美を出さなかった。

後に豊臣家を滅ぼす要因となる。



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池田

【青森城】〔秋〕

 

「何でお前がいるんだ?池田?」

 

「それはこっちの台詞だし。」

死んだ池田恒興がなぜかキョンシーになって帰ってきた。

池田華菜という名前になって・・・。

 

「私の人生ついてないし・・・信長様の弟分だったから無理やり奇抜な遊びに付き合わされた少年時代・・・しかも信長様や仲間達がやらかした失敗をカバーするのはいつも華菜だし。」

 

「お、おう。」

池田は生前から真面目な人だった。

それだけに胃に結構なダメージを受けていたらしい。

しかも頭も良いので俺が仮初めな領主なこともわかっているらしく、俺と池田の関係も新しく雇われた殿の見回り衆の1人だった。

といってもいつも俺の愚痴を聞いてもらう人で、キョンシー限定の職種だった。

まぁ今は池田の愚痴を聞いているだけだが。

 

「くそ、あの猿も長可も・・・何で家康には奇襲は効かないと言ったのに・・・。」

 

「そもそも俺らを殺すことが目的だったのかもな。信長の血縁がある俺、古くから使える恒興、筆頭家老だった森の次男長可陰謀論になるかも知れないが・・・。」

 

「それだし!!・・・でも輝政が生き残ってくれたし。」

 

「まぁ待ってろ。もう少ししたら俺は家康につく。一族皆殺しにしてやるからよ。」

 

「ありがとうだし!!」

その後も色々な話をした。

お互い愚痴が大半だったが・・・。

 

〔冬〕

新九郎が元服し、道元という名前になった。

 

「どうだ?元服した気分は?」

 

「これから嫁達のことや親父の外交官としての仕事を引き継ぐとなると頭が痛くなるだろ。」

 

「そんなんだからこの年で禿げるんだよ。もっとどっしりしろ。」

 

「畜生!!」

ちなみに9歳だがさすが北邦の血である。

俺とも対等に話せるし、礼儀や茶道もたしなみ、領民からは大根様(色白の顔が細長い、体はがっしりしている)と呼ばれて親しまれていた。

 

「まぁまぁ、大根も気を楽しにして私の子を産みなよ。」

 

「そうよ。」

 

「産んでなんぼ。」

 

「畜生、俺の周りは肉食系しかいねーだろ!!」

道元は簡素な元服を終えた後、側室の北邦の娘達にお持ち帰りされていた。

 

「新九郎様はどこに行ったのですか?」

 

「駒姫もいずれわかるよ・・・あいつを慰めてやってくれ。」

 

「はーい。なぐさめるってなに?」

必ず駒姫を道元の憩いの場にしてやろうと決心する俺と横から見ていた愛弓だった。

 

【紀伊】〔西暦1585年春〕

秀吉からの命令で紀伊制圧を命令された。

制圧できれば奥州守護台を任命するとのこと・・・。

 

「あの猿・・・。」

奥州守護は伊達家が代々引き継いでいるものだ。

それを俺にやることで伊達家との仲を引き裂こうとしていることがわかった。

 

「親父・・・。」

 

「あと15年まて、お前が当主になる頃にはあいつはいない。我慢だ。」

俺は紀伊に密使を放つ。



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紀伊の国

【雑賀衆本拠地】〔数日後〕

俺は息子の道元を連れて雑賀衆の本拠地に来ていた。

 

「うーす。景気はどうだ?」

 

「最悪だよ。あんたらのせいでな。」

初めは敵の大将がのこのこやって来たので射殺しようとしていたらしいが、俺の密使が効いたらしい。

 

《1.俺は斎藤龍興であることを証明する

2.そちらの本拠地に息子と2人で行きたい

3.単刀直入に言うと雑賀衆を雇いたい

4.名前を変える必要はあるが正規登用

5.1人あたり20石相当の金を出す

6.嫌なら射殺しろ

7.できれば根来衆も雇いたい

8.秀吉は駄目だ 新しい天下を最前線で見させてやる》

と書いた紙を出したのだ。

 

「心は揺れたか?」

 

「ああ、揺れたさ。・・・実際問題そんなに金があるのか?」

 

「俺にはねえな。」

 

「なんだよほら・・・これは・・・」

 

「純金・・・2文(約7キロ 3200万相当)だ。」

 

「正気か?」

 

「正気だ。金を出すのは評定会だ。俺は仮染めの当主。実権のほとんどはそっちにあるし、評定会にとってこれぐらいの金は端金にもならねーよ。」

 

「嘘ついたら殺す。」

 

「あぁ、殺してみやがれ。日ノ本は滅ぶがな。」

 

「なに?」

 

「この銃を見てみろ。」

俺は北邦から輸入した3連発後詰め式の銃を渡した。

 

「連射が可能なのか!!」

 

「雨の日でも撃てる。これが200万丁、改良型が350万丁あるらしい。動員数もしかりだ。」

 

「そりゃー大変だな。」

 

「まぁホラ話と思うわな。・・・じゃあ俺の息子はどう思う?」

 

「へぇがたいはいいな。」

 

「ここのつ。」

 

「はぁ?」

 

「まだ9歳だ。」

 

「詐欺だろ。」

 

「斎藤道元と申します。以後お見知りおきを。」

 

「息子を置いていく。俺はあの猿の使者の目からお前らを守らないといけないからな。」

俺は道元を置いてい館を後にした。

 

〔数分後〕

 

「で、置いていかれただろ。」

 

「お前面白い口調だな。」

 

「そうか?・・・まぁ親父は言わなかったがあともうひとつ取引がある。」

 

「なんだ?」

 

「嫁欲しくない?」

 

ガタ

「「「欲しい、べっぴんならなおさら!!」」」

 

「お前ら!!目の前にいるのは小僧だそ!!」

 

「まぁ良いだろ。これが絵だ。リアルに俺が描いたから裏切りはないだろ。」

 

ドドドド

 

「おお!!見たことない絵だが綺麗だ。」

 

「すげぇ。綺麗だ。」

 

「未婚で年は9~15までだろ。身長が高いのが欠点と言えばあるな。」

 

「身長が高いか・・・。」

 

「悪い言い方だとな。言い換えれば安産型で子沢山になれるだろ。・・・ちなみに家臣不足と領民不足で開拓するもよし。評定会で権力を握るもよしだろ。」

 

「おい、お前さんは次期当主だろ!!」

 

「俺はお飾りで外交権と祝辞などの飾らなければならないところと、軍事行動の最終決定権だけだ。」

 

「大変だな。」

 

「泣きたくなるぐらい。」



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紀伊の国2

【雑賀衆の村】〔数日後〕

俺が再び村に行くと雑賀衆だけでなく根来衆も合わせた約4500名が俺を出迎えた。

 

「斎藤家の話を受けます。」

 

「ただ、根来衆としては仏教の保護を約束して欲しい。」

 

「大丈夫だ。キリスト教の扇動及び教会の建築を認めないとする。貿易は許してくれよ。」

 

「それは勿論。」

 

「道元、100人付けるからこいつらを青森に届けろ。・・・上杉領に家の貿易商人がいるからそいつらに乗せてもらえ。」

 

「は!!」

 

「追加だ。これで頼む。」

俺は1億円相当の金銀を雑賀衆と根来衆それぞれに渡した後、自陣に戻った。

 

【斎藤本陣】〔数時間後〕

 

「さて、俺は爆弾を抱え込んだ訳だ。」

 

「・・・豊臣は負けますかね。」

 

「お前もわかってんだろ?官兵衛。」

 

「ふふ、なんのことやら。」

 

「胡散臭いの何とかしないとマジで死ぬからな。」

 

「肝に命じときますよ。」

胡散臭い男・・・黒田官兵衛であるが、実力は本物である。

秀吉も後に

 

「官兵衛と龍興が組んだらどんな天下もすぐに終わるだろう。」

と言われた。

まだこの時、黒田は豊臣である。

 

「しっかしあなたと将棋を打つと本当に楽しいですね。どうやっても最後は負けてしまう。」

 

「将棋じゃなくて現実でしてやろうか?」

 

「おぉ、怖い。」

 

「とにかくすぐに終わるだろう・・・紀伊は落ちた。」

 

「確定ですか。」

 

「俺の家臣(表向き)は有能だから俺が指揮するまでもねーよ。」

実際雑賀衆と根来衆がいなくなった紀伊は残りは複雑な権威にどっぷり浸かった僧や山賊、忍び等なので甲賀と伊賀は雇い入れ、その他はすりつぶした。

 

「殲滅せよ!!敵対する者に青森の兵の力を見せてやれ!!」

司令官達は北邦由来の森林戦術を使って確実に倒していった。

 

【大坂城】〔数週間後〕

 

「天晴れであった。」

秀吉と俺の近くにいる秀次は不機嫌そうであった。

何かミスがあれば改易もしくはとり潰そうとしたのであろう。

 

「ははぁ。」

 

「よって奥州探題の地位を与える。」

 

(約束とちげえぞ。)

 

「は!!」

俺は頭を下げながら必死に媚びた。

 

「あ、そちの姫を大坂に入れるように。」

 

「!?・・・ははァ!!」

人質である。

愛弓を行かせないと俺や息子は辺境に飛ばされる。

 

(罰ばっかりじゃねえかよ!!)

俺は無表情のまま頭を下げた。

これには外様と呼ばれる豊臣政権に後から参加した者達から哀れみの視線が送られた。

中には家康もいた。

 

【廊下】

 

「大丈夫ですか?」

 

「家康殿・・・。」

 

「我慢の時ぞ。」

 

「・・・頼みますよ。」

俺は家康の懐に紙を忍ばせた。



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西暦1585年~

【北邦共和国 SB】〔少し戻り西暦1585年夏〕

 

「キリスト教の信者ども・・・いまに後悔させてやる。」

彼女らはキリスト教を完全に敵と見なした。

 

「鉄道計画が完成すれば!!」

総延長19000キロの100年計画が開始された。

初めは政都と札幌間が開通した。

そこで使用された機関車は16両の貨物車を引くことができ、なおかつ時速30キロで走ることができた。

 

「北邦の底力だ。貴族蔓延るところにはできまい。」

時のSB社長の言葉である。

すぐに政府に鉄道部ができ、技術の公開がされた。

それだけSBは利益よりも国益を選び、国力の底上げとなった。

その成果はすぐに現れ、1ヵ月1両の機関車だったが1ヵ月15両となり、鉄道も民間企業がある程度引けるように整備された。

 

「SBの悲願・・・総動員計画がこれでできる。」

総動員数2500万人は伊達ではない。

 

【イギリス領 南ベトナム】〔秋〕

 

「北邦とはこれほどの国力があるのか。」

南ベトナム総督府のイギリス人総督は1週間で広大な領土を巡る新聞、郵便網、何万もある民間企業の競争経済、国中心の考え方をする一般人、一般人の全てが自分達と同じくらいの高度な学問をたしなんでいること・・・

 

「本国には伝えていますが嘘だと言われてますね。」

 

「教会の連中も冷や汗を流しているからな。欧州で唯一国交がある我々もキリスト教だしな。」

 

「これで凄いのは商売は商売と区切っているところ。・・・あと一番驚いたのが孤児がいないところだな。」

 

「いや、総督様、商人的にはお互いに利益がある取引が成立しているのが一番凄いですね。」

 

「それは有りがたいな。銀で決算してるんだよな。」

 

「はい。ほとんど我々から銀を流出はしてません。若干銀は流入気味ですね。」

 

「良い傾向だな。」

 

「いやー本当です。この箱を売らなくて済みましたからね。」

 

「アヘンか。」

 

「まぁ本国では売れると思ったんでしょうね。全く売れないと思いますが。」

 

「確かにな。」

総督はその後無人地帯のインド南部を買って本国に送る準備をする。

 

【北邦共和国政府】

 

「国民からキリスト教に対抗すべき宗教を作れと意見書がたくさん届いてます。」

 

「宗教は我々が勝手につくって良いものじゃなかろうに・・・。」

芳香は呆れたが、本当に国民はキリスト教に対抗可能な宗教を欲していた。

 

「仏教と神道、ヤマメ様崇拝を混ぜた徳道を作ろう。さすれば満足するじゃう。」

 

「はい!!」

国教が決まったが、それはモンゴルに伝播し、約11億人が崇拝するようになる。



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国力整備

【青森城】〔夏〕

愛弓を大坂城に入れた後、俺は新た領民となった約6500名のうち、女性は茶畑、生糸生産、漆細工、大衆料亭に働かせ、男は忍びの技術を学校で教えさせる教師、鉄砲鍛治はガラ紡等のカラクリを作ってもらったり、鉄砲の改良や、様々な用途があるネジを作ってもらった。

 

「本当に金が貰えるな。」

 

「ここでは武士もこんな生活だよ。金こそが生きるための糧だ。」

 

「面白い考え方だな。」

俺の前にいるのは雑賀孫一・・・鉄砲の名手で、今も軍の教官に即座に抜擢される逸材である。

 

「・・・民の全てで勝負しなければ俺の国はもたない。・・・斎藤家はこの地から離れないこと、民はこの国の生活を向上しつつ力を蓄えてもらわないといけないからな。」

 

「民なんて搾り取ってなんぼだろ。」

 

「いや、それは上級社会の考え方だ。民に蓄えた物を使って更なる富を築いてもらう。その循環の中に出る利益の一部を頂戴するだけで黒字だ。石高に出ない国力だよ。」

 

「ちなみにだが太閤の検地係から石高はどれぐらいと言われた?」

 

「30万石だ。・・・気候もあるから纏まった米がとれないと言ったら信じたよ。」

 

「実際の石高は?」

 

「60万石だな。収入が。」

 

「収入が?」

 

「240万石が正確だ。やろうと思えば増やせるがこんなに米はいらない。生糸や布、芸術品を作った方が儲かるからな。」

 

「どこで作ってんだ?」

 

「色んなところよ。山の一部をくりぬいて大きな窯作ったり、職人用の町があったりな。税は1割だから利益で職人はさらにたくさん作るんだよ。」

 

「なんか怖くなってきたわ。」

 

「経済回れば貧困起きず。」

 

「名言だな。」

 

「そりゃどうも。」

上手く検地や監視の目を欺いて青森は発展する。

ちなみに城の地下にも巨大な銃製造工場があったりする。

 

 

ボソ

「俺もそろそろヤバイか。」

 

「どうした?」

 

「いや、何でもない。」

右腕の肘が動きにくくなり、右手の中指と小指に痺れを感じるようになった。

俺はこれを寿命が近づいてきているととらえた。

この時龍興は43歳・・・人生50年という時代なのでいつお迎えが来てもおかしくなかった。(父親が急死したので自分もあり得るのではないかと考えるようになる。)

 

(家督を道元に譲らないといけないが・・・まだ9歳・・・なめられるな。あと7年待たなければ・・・。)

静かなる死闘を繰り広げる龍興であった。

 

〔秋〕

 

「頭が痛いだろ。」

道元の側室6人が妊娠した。

 

(北邦の血ってやっぱり凄いんだな・・・。)

遠い目をする龍興だった。

ちなみに腹の大きさから1人あたり平均3人産まれる予定。



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西暦1586年~

道元がおめでたいことになっている横で龍興は魔王達を呼んで秀吉の動き・・・いや、行動理念を考えていた。

 

「わたしわかるよ~。」

明智ことこなたが手を上げた。

 

「魔王様は良くも悪くも彼の思考を読みきれなかったね~。私も油断したけど。・・・彼は信長というレールを進むのが行動理念だよ。・・・秀吉は信長の弟を殺したことを主君と家臣の形で実行した。信長ならどうする。どうやって天下を治める。これが秀吉の中身。」

 

「となると天下を治めることで信長というレールが途切れれば・・・。」

 

「必ず暴走するし。」

 

「・・・北邦に伝えるか。・・・三十郎!!大切な仕事だ。北邦に行き今のことを伝えてこい。」

 

「は!!」

 

「仁、甲斐で一揆をおこせ。不安定にさせることで時間を稼ぐぞ。」

 

「は!!」

数少ない俺の直属の家臣に命令した。

 

〔西暦1586年春〕

甲斐北部で震度7を観測した大地震が発生する。

天正地震である。

(旧)正月の準備を始めるために賑わっていた城下町は土砂崩れで飲み込まれ、仁はたまたま農村にいたので助かったが、すぐに青森に戻って地震の様子を伝えた。

 

「大地震です!!海の近くは溺死した死体で溢れかえり、城下町は土砂で埋もれました。最低でも3つの大名が家臣もろとも全滅しています。」

 

「なに!?」

 

「・・・豊臣政権の基盤に亀裂が発生しました。徳川家も今回の地震でダメージを受けています。」

 

「評定会に米の大量輸出をするように言え。稼ぎ時だ。服も売れるぞ。」

 

「すぐに手配を。」

 

「・・・今回はうちだけだな。他の4家にはお釣りで利益を上げればいいな。」

思考が金第一である。

恩を売りながら金を巻き上げる・・・まさに商人である。

今回の件で豊臣は俺に恩ができてしまい、無闇に改易できなくなってしまった。

 

〔夏〕

 

「人の不幸で飯が旨い・・・飯旨状態!!」

 

「道元残りの3人も産ませたからって現実逃避するなー。」

 

「甥よ、お前の息子大丈夫か?」

 

「魔王に言われたくないね。自分の息子に奇妙丸なんて・・・。」

 

「あの時はそう思っただけで・・・反省してます。」

 

「まぁ良いが・・・何を企んでる魔王?」

 

「なに・・・面白いことだ。」

 

〔数日後〕

そこには様々な芋が並べられた。

 

「実は困窮作物を生前から研究していてな。やっと量産できそうだ。」

さらに芋を使ったレシピ本や他にも肥料の配合率、船の設計図等が並べられていた。

 

「少々頭の中から引っ張り出すのに時間がかかってな。」

 

「・・・天才だな。」

俺は信長・・・今は魔王が天才であることを改めて理解した。

 

「ん?覚えたものはいつでも思い出せるだろ普通は?」

この価値観が本能寺の変を起こしたのではと言いたくなった。



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【青森城】〔秋〕

斎藤家にベビーブームが到来した。

手始めに18人(男10 女8)が産まれた。

 

「オギャーオギャー」

 

「だー。」

 

「ういっす。」

上から長男の太郎、長女の雪姫、8女の箒姫である。

通称モッピー。

理由は・・・。

 

「・・・フ、モッピーは知ってるよ。父親が大根のこと。」

産まれて1分後のことである。

 

「しゃべった!?」

 

「これも北邦の血?」

 

「いやいやないですよお義父さん。」

 

「子供ながらにわかるのですが・・・お姉さま、これはおかしいですよね?」

 

「モッピーは知っるよ。あなたが正室なこと。・・・モッピーを政略結婚に出させる気でしょ。この悪魔(笑)!!鬼畜(笑)」

 

「うぁぁぁん。」

龍興その場から逃げる。

すると箒姫が追いかけてきて・・・

 

「傀儡乙。」

と言われた。

 

【自室】

 

「ヤバイ、あいつは早くどこかにやらなくては・・・。」

龍興は頭を抱えることになる。

 

〔数日後〕

箒姫のことは孫一に任せ、俺と道元は仕事に逃げた。(財産整理)

 

「失礼します。」

 

「お、どうした?」

 

「米の売買の結果報告です。約30万貫(45億円)程の利益をあげられました。」

 

「だいぶ稼いだな。」

 

「なによりの成果は甲斐周辺の大損害を出した商人を立て直させ、流通網に食い込めました。数百年単位で利益になるでしょう。」

 

「米は転がしたか?」

 

「里見家という上総、下総の大名には滅んでもらいました。」

 

「海賊衆か。雇えたか?」

 

「食いつきましたね。」

 

「後々に彼らの技術も必要になるからな。評定会はなんと?」

 

「2年分の税金分は稼いだと言ってました。この金で塩とにがりの量産体制を整えるとも言ってました。」

 

「確かに塩は生きるために必要だし、北邦では田んぼに少量撒いていたから肥料にもなるのかな?」

 

「畑には絶対に撒いてはいけないですけどね。」

ずいぶんたかったようだ。

 

〔冬〕

残りの3人の側室も9人の子供を産み、合計27人(男15 女12)となった。

 

「さて、俺は仕事に・・・。」

 

「モッピーは知ってるよ。また9人を産ませたことを。」

 

ダダダ

「・・・。」

モッピーこと箒姫は学んだ。

人は極限まで追い詰められると走って逃げることを・・・。

 

「・・・他のお兄さまやお姉さま、弟妹にはない自我があるんだから何か役立つことをしようかな?モッピー偉い子素敵な子。」

数日後から屋根裏にネズミがたくさんでるとの噂が城を騒がすことになる。(箒姫が屋根裏を伝って自室を抜け出すようになったことから)

 

「箒姫の婚約者早く見つからないかな。」

道元の胃痛は終わらない。



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経済状態

〔西暦1587年1月〕

俺は魔王達からアドバスをもらいながら評定会の財務部と青森の経済指数、成長率、備蓄財産、収支、総人口を調べていた。

今回の検地は前回の検地で税が上がらなかった(逆に減ったところはあった)のでスムーズにおこなわれた。

結果・・・

 

「報告します。経済指数は今年を100とするのでお伝えできませんが、成長率は2年連続で15%上昇です。道を整えたのが効きました。備蓄財産は3450億円になり、収支は収入が2600億円内40%が北邦との貿易、25%が他国への輸出、残りが税金となります。支出が1300億円・・・大半が北邦への輸入や人件費、新事業への投資、米の買い上げによるものです。総人口はベビーブームもあり65万人まで増えています。」

 

「もうひとつの報告です。世界の国力の最新版が北邦から届きました。なんと31位で日ノ本で一番です。ちなみに日ノ本全てが合わさると10位になります。」

 

「国力は1位の北邦が3690、2位がモンゴル1010、3位が大韓の980、欧州筆頭のスペインが4位の975、次にイギリスの880が続き、日ノ本は490となってます。ちなみにうちは98です。欧州全てを合わせても3100でした。」

 

「やはり北邦は化け物だな。」

 

「北邦の貿易もこちらに送った額以上を回収するだろ。」

 

「まぁそれでも間接的には我々の利益に繋がっているからな。」

 

「評定会も元は北邦共和国の人間なのでこの関係が続くように努力します。」

 

「しかし生糸の生産量を増やした方が良いだろ。」

 

「儲かるよね~。人をたくさん吸収するから人口が増えれば増えるほど儲かる。」

 

「あとは椎茸よ。北邦では大量に作られているが、日ノ本でも高価ですだし、日ノ本以外でも大韓、モンゴル、インド、北ベトナム、南方の諸国にも高価な物だけら。」

 

「華菜ちゃんが買った造船所もボロ儲けだし。・・・まぁ中規模しか造れないけど・・・。」

 

グルングルン

「超ヘブン状態!!」

 

「モッピー知ってるよ。これを一時的な繁栄って言うこと。」

 

「殿!!急報です!!」

 

「なんだ?」

 

「出兵要請です。場所は九州の島津です!!」

 

「・・・人数は?」

 

「2000だそうです。」

 

「火縄銃と槍、シャベルを持たせろ。くそ!!」

 

「おやじ、ついでにお袋の顔を見てくんね?」

 

「畜生!!畜生!!」

龍興の秀吉に対するヘイトが高まるが今回のみは八つ当たりであることを明記しておく。

 

【伊達領 米沢城】

 

「ちとヤバイな。」

豊臣秀次と仲が良かった政宗は米沢城で忍から秀次と秀吉の仲が疎遠になっている傾向があると聞いたのだ。

 

「伊達領85万石の領土を守らなければ・・・。」

ちなみにだが最上家は62万石、秋田家50万石、上杉120万石が彼らから見た東北の大大名であり、30万石(表向き)の斎藤家は格下と思われていた。

 

「でも斎藤のおじきは何かあるな。」

政宗は探り始める。



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島津平定

【大坂城】〔3月〕

俺は大坂城の留守を任され、2000名の兵士は蜂須賀家政が指揮することとなり、俺は戦で功績をあげることができなくなった。

しかも仕事は兵糧や弾丸等の物資の確保と普通の武将なら困る仕事を与えられた。

 

(残念だったな秀吉さんよ。)

俺は普通の武将ではないからだ。

 

スラスラスラ

「石田、これでいいか?」

 

「・・・おお、完璧だ。」

 

「腕っぷしは3の次。計算とかできんと太平では生きていけんからな。」

 

「斎藤家ではこうなのか?」

 

「まぁな。俺の検地表を見ればわかるが開墾しても寒いから米があまりとれねえ。豊かにするには工夫が必要だが、ある程度学がないとその工夫もうまれねえからな。」

 

「面白い考え方でごさるな。」

 

「大谷もか?」

 

「いや、三成以外の普通の武士なら前線で指揮をしたり、戦ったりしたいものだと思うでござるよ。」

 

「太閤様に目をつけられてるからな・・・俺、いかに領土を安堵させるか必死なんだよ。それだけだ。愚痴になったなすまない。」

 

「いやいや、人間味があって良いじゃないか。天下を狙ったりしないのか?」

 

「こら正家!!」

 

「石田も冗談だから落ち着けって。長束もお前らのおやじくらいの年齢の俺をからかうなよ。」

 

「実際どうなのですか?」

 

「はっきり言うが俺や息子の器じゃ2国の太守が限界だ。1国だと余裕ができるから1国なだけで・・・例え兵力があってもダメ。経済の中心地である関西まで遠すぎる。しかも例え天下が取れても内乱で終わる。だから日ノ本の最北なんかに城も1つしか持たないで細々とやってるんだ。」

 

「なるほどな。」

 

「どうしても斎藤殿が戦国の世を生き抜いてきた大名である限り豊臣政権は警戒し続けるでござるよ。」

 

「息子に家督を譲られては?」

 

「長束・・・あと10年・・・いや、あと5年待ってくれ。俺の息子はまだ10だぞ。家督を譲りたいのは俺も思ってるが・・・なぁ。」

 

「確かに厳しいな。」

そうこう話している間にも仕事は増え続ける。

必死に消化していく龍興達だった。

 

〔数週間後〕

 

「え。」

 

「嘘だろ・・・。」

俺と合流した道元は九州平定作戦の途中経過で自分の部隊が5割りという異常な損害を出していることに絶句した。

 

「部隊は勇敢に戦い・・・いや、肉壁とされました。生き残った者も五体満足の者は少なく・・・。」

 

ギリギリ

「おい、道元。」

 

「は。」

 

「この事を青森の評定会に伝えろ。あと北邦にもだ。豊臣政権との貿易停止を呼びかけろ。」

 

「代わりは?」

 

「家康殿で良いだろうよ!!」



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島津平定2

【大坂城】〔数週間後〕

 

《首だけでも返還するべし》

 

「評定会も切れてるな。全員キョンシーにして下士官にするしかねーな。前線司令官もすくねーからな。」

俺は評定会からの手紙を読み終えると紙を火にくんだ。

 

「目見ものを見せてくれようぞ。」

後世で龍興はゲーム等で3つの特性を持つ。

1つ目は7年間の美濃での知将だがやる気がないステータスも智謀だけ少し高い一般武将だが、2つ目に当たる青森の大名としては内政能力がゲーム内最高のマックス100となる。

他のステータスも少し上昇する。

3つ目・・・九州平定終了後から龍興のステータスは魅力以外が90以上、唯一ステータスに100が2つある武将となる。

戦国〇サラでは九州平定まではモブキャラだが、九州平定後に凱旋中の秀吉の横から刀で脇を貫き、登場するという明智に並ぶ腹黒武将となる。

そのセリフが

 

「どうだ・・・肉壁の痛みは・・・。」

となっている。

強さは信長並みに強く、ゲージが溜まると周囲の敵が全て死に、ゾンビアタックし始めるのが特徴だった。

まぁリアルでも似たようなことをしたためだが・・・。

 

〔数日後〕

五体満足な兵士は350名だった。

2000名が出発したのにも関わらず・・・。

350名と雇った川原者で首だけの兵士を青森まで運んだ。

川原者には悪いが、青森に着いた時に彼らには死んでもらい戦死者の蘇生に使わせてもらった。

足りない分は生きた絶えた領外の農民や物乞いを使わせてもらった。

生き返った彼らは口々に

 

「打倒豊臣。」

 

「一族皆殺し。」

と叫んだ。

しかし時期が悪いので今はまだ耐えるときと言って恨みを心の奥に閉まってもらった。

 

「今に見てろよ。」

 

【青森城 評定会】

評定会の面々が集まり、今後を話し合っていた。

 

「今回の件で死者を出させたのは豊臣政権であることに代わりはないが、何かしらの武器を持たなくてはいけないことがわかった。」

 

「例えば?」

 

「東北・・・いや、関東圏までの商人を配下に置く。」

 

「物流の掌握か。」

 

「あぁ。豊臣政権は関西の経済に依存している。ならばそれに勝てる経済を作れば良いこと。既に青森は我々が支配しているのだ。それを拡張するだけのこと。」

商人を乗っとるのは色々な方法がある。

借金漬けや血縁者になる、こちらの商人と戦わせて負けさせそのまま乗っとる等。

甲斐や上野、武蔵、信濃は地震に耐えきれずに破産、それを吸収したのだ。

 

「潰す。経済の恐ろしさを豊臣政権には味わってもらうぞ。」

東西の経済対決が始まろうとしていた。



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西暦1588年~

【青森城】〔西暦1588年春〕

青森で4高等学校研究所が発足した。

 

「全てにおいてSBや北邦にある研究機関の下位互換であるが、それでも国内研究所が有れば何かしらの発明が見込める。」

という意味で作られた。

高等学校も東西南北で名前がつけられ、東校と北校は農産物の品種改良に強く、南校と西校は工業製品の研究に長けていた。

この4校のおかげで鎖国してからも青森は西洋に科学技術で負けることはなかった。

特に1発目に西校が開発したネジの旋盤加工(初期)は工房で雑賀衆等の職人達にしかできなかったネジ製造を6、7秒に1個ペースを水力の力を使うことで量産に成功させたのだ。

雑賀衆等の職人集団は旋盤加工機を作ったり、それ以外にも仕事があったので文句は出なかった。

 

〔夏〕

評定会で金利上限法が成立。

年利10%以上を違法とし、法外なヤミ金は兵士に捕らえられることとなる。

また警察制度の導入もこの時期である。

北邦では数百年前から存在していたが、青森では武装警察が導入された。

帯刀許可であり、江戸時代には足軽身分となるが、切り捨て御免は特例(辻斬り犯、強盗殺人犯の逮捕)を除いて禁止された。

 

〔秋〕

駅馬制度の導入開始。

経済力の飛躍のために物流の効率化を計った。

この時期に日ノ本最大の銅山が発見される。

評定会、斎藤家どちらもこれを隠す。

採掘もせずにである。

秀吉に漬け込まれたら堪らないためである。

 

「耐えるとき・・・。」

 

〔冬〕

道元・・・54人の子持ちとなる。(男30 女24)

財政が圧迫され始めたので北邦に子育て支援を側室が要求。

通常の半分となるが支援を引き出すことに成功し、促成教育を開始する。

1歳から6歳までを対象にした血縁要員としての教育だった。

一番この事実に納得していたのがモッピーこと箒姫である。

 

「結構な腕前で。」

茶道

 

「鯛の煮込みと味噌でんかくでございます。」

料理

 

チクチク

「衣でございます。」

裁縫

 

パチパチ

「1貫半。」

計算

等々・・・産まれた時はヤバイやつであったが、今は一番落ち着いた女性となっていた。

 

「女傑の才あり。」

そんな噂が流れ徳川の家臣である本田忠勝が訪ねてきた。

 

「我が殿の4男である福松丸との交際を検討してみないか?」

とのことだった。

道元は離縁不可、序列は何でもいいという条件箒姫を送り出した。

 

「本田殿・・・1の年で自我がある私は妖怪かもしれませんな。」

 

「龍興殿はそうなると妖怪の親玉・・・ぬらりひょんですかな?」

 

「ふふ、さぁどうでしょう。」

 

「年がもう少し有れば私があなたを奪っていたかもしれませんな。」

 

「ふふ、まだ幼い福松丸の世話は任せてください。」

この時福松丸は8歳であった。



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福松丸との婚約

【浜松城】〔西暦1589年1月〕

 

「お前が箒姫か?」

 

「はい。私は箒と申します。」

 

「お前はまだ1つと聞いたが?」

 

「あってますよ。」

 

「何ができる?」

 

「家事全般と茶道、計算を少々。」

 

「計算とな?わかってないな箒よ、武士は腕っぷしが大切だぞ?」

 

「確かにそうですが・・・腕っぷしが強いのと豊臣の竹中殿や中国の孔明みたいな人物・・・どちらが歴史に残りますかな?」

 

「う・・・しかし・・・。」

 

「計算など女々しいものである。そんなもの商人にやらせれば良い・・・等と言う時代は終わりました。経済が全てです。・・・徳川には大久保忠世殿、井伊直政殿、本田正信殿・・・素晴らしい武将ですよね。武士から武将に昇格するには武だけではない部分が必要になるのですよ。」

 

「・・・なるほどな。」

福松丸も頭が良く、人の心を読む能力に長けていたため今回、箒姫を試したが、満点以上の解答をしたのだ。

 

「箒よ。そなたは私と婚約するであろう。5代も揃って化け物が産まれた一族に私は相応しいだろうか?」

 

「十分ですよ。」

 

「そうか。」

数週間後に龍興と道元、数名の家臣が嫁入り道具を担いでやって来た。

他の徳川家臣団は当主と次期当主が嫁入り道具を担いでいることに驚愕したが、家康と秀忠、正信はこの意味を正確に理解した。

 

「敵意無し・・・いや、下に付くことを明確に示した・・・か。」

 

「父上、前に貰った密書にも。」

 

「そうだな。」

 

《天下は回る。徳の有るものに流れ着く。》

 

(やはり我々徳川一族に天下がやって来ると言うメッセージか。野心は無いが臆病な革新的思考の持ち主が龍興、太平の世を願いながらも一族繁栄に尽力する道元、わずか1つの年にもかかわらず福松丸を感心させる度量を持つ斎藤家の最高傑作か。)

家康は勝ちを確信した。

渡辺の件も武士らしい一騎討ちという最高の場で起こったこと。

家康自身がどうこう思っても仕方がないと諦めた。

 

「クケケケ、この正信今日ほど嬉しいことはございませぬ。」

 

「なに?ということだ?正信?」

 

「最高の忍び集団を我々は手に入れたのです。」

 

「なに?」

 

「全ての忍び集団に必ず混ざり混み、全ての大名の家臣にも混ざり、大商人にも化けている北ノ衆・・・と呼ばれる者がいるらしいと。」

 

「見つけたのか?」

 

「どういう手を使ったか知らないが斎藤家は日ノ本一番の情報網は持っているのは確かですな。・・・殿には話しましたが先日北ノ衆を名乗る者に接触しましてね。貿易を打診していることを・・・。」

 

「条件は斎藤家との婚約。」

 

「松永の爺の時並みに面白くなりそうですな。」

ボンバーマン松永の技術的後継者・・・本田正信動く。

 



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小田原の役

【大坂城】〔12月23日〕

 

「北条の奴・・・ワシに楯突くとは・・・殺してくれるは。」

各大名に小田原制圧に向け兵を徴集した。

 

【青森城】〔1月〕

 

「ふむ・・・1万出すぞ。憂さ晴らしだ。そろそろ本気で戦って大坂城を落とす予行演習とするか。」

軍もいつでも動員可能と出ていた。

 

「ちと一緒に行ってもいいかな?」

話しかけてきたのはこなた。

 

「ん?どうした?」

 

「いや、本能寺の地下に隠した宝物を取ってくるだけだよ~。」

 

「そんなものがあるのか。」

 

「私には神聖な物を感じ取れる力があってね。生涯肌身離さなかったんだけど・・・死ぬ間際に地面に埋めてね。」

 

「ふむ・・・まぁ途中までな。」

 

「話がわかるね~。」

これがアジアの歴史を動かす出来事なのだが・・・それはもう少し後の話・・・。

 

【小田原周辺】

斎藤軍1万の動きは凄まじかった。

伊達政宗と佐竹氏の2家と合流したが、勢いのままに小山城を全方位からの力攻めで半日で立て籠る2000の兵の半数を討ち取り、こちらは200の損害で留めた。

続いて古河城を水攻めをおこない、近くの川を決壊させて二の丸、三の丸を水没する。

本丸も水浸しになり降服・・・損害は無し。

岩付城は旧雑賀衆と旧根来衆の混成特殊部隊により夜襲をしかけ、二の丸の南側の屋敷にいた兵士50名を殺害、そのまま水堀を泳いで城下町に侵入し、3つある門のうち2つを外の工兵と連携して爆破・・・西の木製の門は20メートルも飛び上がり、約200メートル後ろに落下した。

 

「勧告無しの一撃・・・非道なり。」

佐竹氏はこの戦いで城下町に住む民衆も巻き込んだためにこのような言葉を残している。

 

「残りは火攻めで落とせ。」

軍司令官は風を計算して火矢で城に火を付けた。

冬のため乾燥した木の部分がよく燃え、1200名の城兵を焼き殺した。

損害は21名。

生き残った城兵は江戸城に逃げ込み、江戸城の城代は龍興を城攻めの達人と認知して野戦に持ち込んだ。

 

「それを待っていただろ。」

初陣の道元は指揮官学校に行って前線司令官の資格は得ていたので箔付けもあり500名の鉄砲隊を率いて伏兵として森に隠れていた。

 

「撃て。」

精密度には難が有るものの、大量の弾丸が後北条氏の兵に降り注ぎ、立て直そうとした時に前から政宗率いる伊達騎馬隊が混乱している所に突撃。

佐竹氏の兵士がさらに追撃し、後北条氏の軍は玉砕。

江戸城にて自刃している城代の一族を発見しすんなりと入城。

その後数日の休養の後に秀吉の本軍と合流した。



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小田原の役 2

【豊臣家本陣】

 

「支城を3つも落とすとは流石じゃな。」

 

「いえ、太閤様はそれ以上に天下を落とす直前ではございませんか。私めでは到底不可能でございます。」

 

「実に気分が良い。何か欲しいものはあるか?」

 

「・・・恐れながら三好粉吹を欲します。」

 

「ほう。それで良いのか?」

 

「はい。」

 

「では持っていくが良い。」

秀吉は家臣に箱を持ってこさせると中に三好粉吹が入っていた。

 

「ありがとうございます。」

 

「うむ。今後も頼むぞ。」

顔にはあんな茶器くれてやるという顔がまじまじと現れていた。

 

(馬鹿め・・・三好粉吹は三好一族の繁栄に関わっている宝具・・・あらゆる運を上昇させる代わりに寿命を縮めるという効果もあるがな。)

俺はすぐにこれを蒲原研究所に送り、呪いの解除を依頼した。

 

【小田原城周辺 斎藤家本陣】

 

「で、小田原城の設計図は完成したか?」

 

「あぁ、特殊部隊が中を調べられただろ。・・・というか風魔党の風魔小太郎がこちらに付くとは考えてなかっただろ。」

 

「それだけ後北条氏に不満があったんだろ。」

 

「親父、何かしただろ。」

 

「なーに、風魔小太郎の屋敷に忍び込んで茶会しただけだ。」

 

「やめてくれ、あんたが毒殺や殺害でもされた日には・・・。」

 

「あ、降すために就職凱旋しないといけねーんだよな。とりあえず馬の扱いと医療の心得があるから大規模な牧場経営と村医者をやってもらうっきゃねーな。」

 

「どんどん青森が魔窟になっていってるのは気のせいか?」

 

「なーに、北邦が本気出せば終わるから。」

 

「はぁ・・・非常識な。」

数年後忍び集団が化学反応して魔術ではなく忍術を正式に確立するようになり、数百年後に魔術、科学、宗教の3つの陣営を前に北邦の魔術と科学を融合した物と連動して第四陣営として暗躍することになる。

 

【本能寺跡地】

 

「なぁー蒼髪のねーちゃん。本当に埋まっている物見つけたら小判5つもくれるんか?」

 

「それぐらい価値がある物だからね。集めてる奴もいるんだなーこれが。」

 

「変な奴もいるべな。」

 

「だべだべ。」

 

「ん?なんだこれ?」

 

「当たりだよ。」

大きな鉄の箱が4つ出てきた。

 

「槍が20、刀30、茶器25、書物7、キセル5、武具4・・・ふぁー。そしておまちかねのーじゃじゃーん。小判60枚!!」

 

「おぉ!!」

 

「これに私の各自小判5枚をつけて1人小判10枚。」

 

「やったべ!!良いベベ買ってやれるだ。」

 

「金持ちだ!!」

 

「じゃあ・・・と言いたいところだけどせっかくだから報酬上乗せ・・・青森に来ない?農民でも側室持てるくらいには潤ってるよ。」

 

「おら達3男だったりするからすぐに行けるだ。嫁さんも一緒だがいいが?」

 

「どんどん来なよ。」



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小田原の役 3

【斎藤家本陣】〔数週間後〕

 

「ちぃ、風魔・・・マジで出るのか?」

 

「はい。小田原城は妖怪が出ます。化け狐と城内では言われていました。」

 

「会ったことはあるのか?」

 

「はい。北条の先代が上杉に攻められた時に現れました。武田の時もです。」

 

(妖怪・・・本当に存在するのか。)

北邦では当たり前のように存在するキョンシーは特殊な法則と肉体的な理論で形成される魂を留める仙術のため俺は妖怪とは見ていなかった。

 

「強襲作戦の変更を軍団長に立案するしかねーな。」

 

「殿が軍の司令官では?」

 

「いや、俺は飾りだ。実務は他の奴らがおこなっている。」

 

「それは・・・大丈夫なのでしょうか?」

 

「俺自身が日ノ本以外の国に行き学んできた政治形態だ。その国では乱世になることなく約1600年も治世が続いている。」

 

「それは凄いですが・・・怖いですね。」

 

「まぁな。もちろん一定数の悪人はいるが、大抵は軍に入って自分の残虐性を抑えようとしている。戦争になると恐ろしく強い、普段は経済力に力を入れている国・・・それがその国だ。」

 

「奇妙・・・いや、口を慎みます。」

数時間後、小田原城強襲作戦が前倒しになり、4日後に200名の部隊を6部隊・・・計1200名が襲撃することとなった。

 

〔4日後 夜〕

不気味なほどその日は静かな夜だった。

強襲隊の司令官は49歳のベテランだった。

美濃斎藤家の時からハクに使えていたこともあり、龍興とは顔馴染みの中年であった。

 

「諸君・・・戦争は火力こそ至高である。・・・では少ない火力で相手を殺すには・・・奇策をするしかなかろう。」

彼は30頭の馬に火薬が満載した樽をくくりつけると各馬の尻尾に火を付けた。

 

「突入よーい!!」

彼らは刃が横にもついた槍を持ち、一斉に馬の後ろから突入した。

 

【小田原城内】

 

ドン バラバラバラ

「何事だ!!」

 

「敵襲!!東門と周辺の街で火災が発生!!死者多数、敵の数わからず。」

 

「伝令!!内応者多数!!成田氏を含め約30名がこの襲撃に便乗しました!!」

 

「凶報!!北条幻庵殿討ち死に!!死因は爆殺!!」

 

「伝令!!西門陥落!!鎧から徳川家家臣井伊直政隊、規模3000!!」

 

「・・・降服をする。ただしなんとしてもこの夜を越えろ!!」

 

「「「は!!」」」

 

【三の丸】

強襲部隊は三の丸まで浸透していた。

しかしここで不思議な光景を目にする。

 

「ここから先は通しません!!」

 

「ほう・・・引け。後から小生も行く。」

 

「「「は!!」」」

 

「・・・え?」



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小田原の役 4

「何でですか!!敵なら正々堂々と私と戦いなさい!!」

 

「小生は侍ではない。軍人である。軍人は指示に従うのが前提である。前線の司令官が独自に動くのは上が無能でない限り絶対にしてはならないのだ。」

 

「じゃあ誰が司令官ですか!!」

 

「小生であり、他であり、皆である。」

 

「はぁ?」

 

「つまりだ・・・。」

 

ババババ

 

「煙!?」

そのまま司令官は脱出した。

 

「ケホケホケホ・・・は!?奴は!?」

狐の妖怪は自分が化かされたことに気がついた。

 

「くーやーしーいー!!」

 

〔翌日〕

軍団司令官や、参謀、道元等の隊長クラスが集まり戦闘レポートを作成していた。

「損害・・・15か。やはり特殊訓練(長期間の高密度訓練)の部隊を作った方が良いな。」

 

「北邦と比べるのもなんですが・・・弾薬の製造技術や科学技術が遅れているため個々の技量が左右されてしまいます。」

 

「様々な忍び集団の技術を取り込ませた部隊作成を急ぎます。」

 

「あぁ、また財務部に小言言われるだろ。」

 

「若、頼みましたぞ。」

 

「畜生、約1万の北邦軍に修行に行かせるのだけでも予算で小言言われたばかりなのに・・・。」

 

「我々も新しい道を作ったりしますので・・・。」

 

「畜生。」

中間管理職となりつつある道元だった。

 

〔午後〕

小田原城降伏・・・斎藤軍はすぐに300名だけのこして帰国した。

残ったのは龍興と道元、その側近達と騎馬隊だった。

 

「・・・よし、綿花と椿の苗を手に入れることは出来た。あとは北邦に品種改良を依頼して青森で量産しなければ・・・。」

とにかく産業を伸ばそうとする龍興は必死である。

それにより莫大な富が動いているのだが、それでも足りないと思っていた。

関西ではさらに金が動いていたためだ。

 

「米の量産のために棚田を作ったり、新しい町作りに専門家(ネロがアップを始めた)を呼んだりしなければならないからな・・・金はいくらあっても足りない・・・北邦以外にも貿易をするか?」

数年後イギリスと太平洋航路で貿易を開始するのであった。(青森から果物や海産物の加工品、工芸品、布等 イギリスの商会が東南アジアから胡椒や油、コーヒー等)

鎖国後も貿易は続くことになる。

 

【大坂城】〔数日後〕

北条の一族が処刑されるとそのまま大坂城に赴き、秀吉に頭を下げた。

ここに全国統一をなし得たのだ。

 

【北邦共和国 札幌】

豊臣氏の全国統一の報告を読んだ経済界の重鎮達は日本をプレーヤーとしてみた。

 

「駒はこれですかね?」

彼らは将棋の駒を手に取り桂馬を置いた。

 

「前にしか進めない・・・か。」

 

「早く金になってもらいたいものだ。」

自分達は龍を手に持ちながら呟く。




きた、携帯直ったので更新早くなるかも


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軋む政権

【青森城】〔西暦1590年冬〕

 

「本格的にきな臭くなってきやがった。」

 

「蜂のじじいどういうことだ?」

 

「政宗来てたのか。」

 

「おいおい大丈夫かよここの警備は・・・ザル過ぎるぞ。」

 

「俺がいなくても領内経営は上手くいくからな。」

 

「だからってよ・・・。」

 

「まぁさっきの愚痴についてだろ、お前が気になってるのは。」

 

「あぁ。」

 

「三十郎!!地図持ってこい。北邦と周辺のだ!!」

 

「は!!」

 

「国絵か。それと関係がある・・・!?」

 

「お前の友の秀次のことではない。あの老害が大陸に進行しようとしているだけだ。」

 

「まじかよ。日ノ本だけじゃ足りないのかよ。」

 

「足りねーよ。お前が死ぬまで天下を狙うように老害も世界を納めたいんだよ。」

 

「まさに狂人だな。」

 

「お待たせしました。」

 

ビラ

 

「これが・・・。」

 

「南東にある3つの島が日ノ本だ。そのすぐ上にある島に北邦の首都の政都がある。」

 

「この蒼く塗られた国が全部北邦かよ。・・・この紅いのが・・・朝鮮か?」

 

「正確には大韓民国な。そして西にある緑はモンゴル共和国。さらに南西にあるインド帝国。」

 

「まさか・・・。」

 

「老害が喧嘩を売ったらこれら全てが敵になる。まぁうちは貿易相手だから残されるが・・・秀吉が死んだ後も戦争が続くのなら200万が攻め込んでくるな。」

 

「どうすんだよ!!そんな大軍日ノ本の兵を集めても拮抗に持っていくだけしかできねーぞ。」

 

「・・・実際を言うとあっちからしたら老害の爆発なんて軍事演習の延長でしかない。俺が言いたいのは老害に米は出しても兵は出すな。後悔するぞ。・・・あとお前が期待しているスペインはイギリスに海戦で敗北して欧州でいっぱいいっぱいだ。期待するなよ。」

 

「チィ。・・・さてどうするか。」

 

「港整備しとけ。北邦に交渉してそっちとも貿易させっから。」

 

「どういう風の吹きまわしだ?」

 

「予備が欲しいんだよ。北邦は。俺が改易された時のよ。」

 

「なるほどな」

 

「俺の孫が嫁いだ奴が徳川の4男だ。・・・徳川は関東250万石では終わらない・・・必ず天下に届く。・・・おいおい、目をギラつかせてもお前には無理だよ。天下は決まってるんだ。徳川家康・・・いや、徳川秀忠の手に収まるだろうよ。」

 

「家康ではないのか?」

 

「歳を考えろ。俺よりも上だぞ。秀吉が死ぬ頃にはじじいになってるから自然に息子にいくたろ。」

 

「蜂のじじいと話しているとつくつく俺が小さく見えるな。」

 

「ガキが意気がるな・・・まぁ上手くやれば100万石にはいくだろうな。精々ボロを出すなよ。」

 

「へいへい。」



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松平忠吉

【江戸城】〔西暦1592年春〕

俺は単独で江戸城に来ていた。

 

「家康のじーさんいるか?」

 

「・・・相変わらずお主はお供も付けずによく行動するな。」

 

「お?鳥居のじじいじゃねーか。殿様はいるか?」

 

「はぁ。・・・こっちだ。面会届けを出すのも自身ではなく家臣にさせれば良かろうに。」

 

「君臨すれども統治せず・・・俺の領土ではそういう統治方法だから直臣も数がすくねーし、その少ない直臣は息子や孫の教育で忙しくてね。」

 

「全く・・・。」

 

「元忠は相変わらず堅いのう。」

 

「家康様。」

 

「よう、たねきのじーさん。元気か?」

 

「ピンピンしとる。で、今日はどうした?」

 

「豊臣崩壊後に領土安堵の代わりに金儲けの話と伊達と最上がお前に密書贈ってるが、その返事を回収しにな。」

 

「じーさんじーさん言うがお主と5つしか変わらないのじゃぞ。」

 

「お互いにじーさんだろうが。・・・あぁもう右手が動かねーんだ。元気なたねきじーさんが羨ましい。」

 

「久しぶりに一杯やろうや。家臣達も異国の話は貴重な経験だからな。」

 

「料理はそっち持ちな。代わりにこれを渡すわ。」

 

「おぉ!?見事な・・・。」

 

「蒼と紅がシンプルに直線で重なりあって出来た紫を現した大皿だ。」

 

「良物だな。これはどうした?」

 

「職人が5ヵ月弟子と共に作り上げた一級品だ。・・・俺の国力を表している。」

 

「ふむ・・・面白い。」

 

「国を豊かにする方法ばかり習ってきたからな。」

そのまま客間に行くと徳川四天王と呼ばれる面々や、次期当主の秀忠、俺の孫の夫である松平忠吉(数日前に元服 現在10万石の領土を持っている)、その母親である西郷局、孫の箒姫、他の重鎮も集まり計30名が座っていた。

 

「楽にせい、徳川の新領の安泰を願っての宴会じゃ。徳川の家臣や一族しかおらぬ。・・・良いな。」

 

「「「は!!」」」

そこから宴会が始まった。

 

〔数分後〕

他の者達が酒を飲んでいる横で、俺と秀忠は地図、資料、貿易額、裏帳簿を全てさらけ出していた。

 

「これは・・・最高機密ではござらぬか。」

 

「そうだ。・・・おそらく徳川の政権になれば秀忠、お前が主役だ。俺の領土から大量の米が取れるのはこの米のお陰だ。まぁさすがに肥料は特殊な配合と何年も研究してきたからただで渡すことはできないが・・・まず忠誠の証としてこの米を渡します。」

 

「すぐには信じることは出来ぬな。」

 

「それと、手っ取り早く収穫量をあげるために米の育て方についての本を渡しておきます。その代わりに貿易の保証をお願いしたい。天下が徳川に行き次第に利益の1割りを納めるでどうだ?」

 

「・・・いや、それよりも東北の細々したやつらを転移させ、松平忠吉に徳川分家を作らせる。そこでも貿易はできるか?」

 

「無論だ。・・・というか北邦は国が大きすぎて物流が時間がかかるから品薄のところがある。それを解消するためにこちらからの貿易はとにかく必要らしい。」

 

「何が売れる?」

 

「三河で取れていた綿花、日本酒、刀、布、芸術品、食料全般だな。」

 

「それで金や銀が手に入るなら良いな。」

 

「それも良いが銅銭の技術を買えば経済を支配できると思うぞ。俺も協力する。」

 

「助かる。成功すれば譜代扱いにすることを約束しよう。」

 

「いや、それよりも火縄銃や大砲の研究をさせてくれ。結果は逐一徳川に報告する。」

 

「それでいこう。」



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松平忠吉 2

〔数分後〕

宴会も中盤に差し掛かり、今度は松平忠吉、箒姫の2人と話していた。

忠吉は今12歳、箒姫は5歳になっていた。

 

「じい様、青森の様子はどうですか?」

 

「ぼちぼちってところか・・・。」

 

「なるほど・・・わかりました。」

ぼちぼちの意味は全てが順調であることを含めた言い表しだったが、箒は気がついたようだ。

 

「・・・龍興様、婚姻の儀以来ですね。」

 

「そうだったな。孫婿殿よ。10万石を手にしたらしいな。」

 

「はい。・・・しかしまだ若いので家臣に頼っていますが・・・。」

 

「頼れ頼れ。お前には頼る事ができる家臣がいる。忠誠心も孫婿殿にある家臣を大切にしろよ。・・・親族も頼れ。それは大きな後ろ楯だからな。」

 

「肝に命じます。・・・人材採掘をするにはどうすれば良いでしょうか?」

 

「直接出向くのが一番良いが・・・ダメなら一から育てた方が良い。」

 

「育てる・・・ですか?」

 

「なるべく孤児を育てろ。親がいるとうるさいからな。それ以外なら教育機関を作ってしまえば良い。」

 

「なるほど・・・。」

 

「忍城周辺なら成田長親を登用しろ。」

 

「なぜですか?」

 

「石田等の豊臣文治派がそいつを絶賛していた。領主の鏡だとよ。」

 

「なるほど・・・戻り次第検討します。」

忠吉、箒の両名は城に戻ると城下にいた彼を登用した。

実際は政務については無能であったが、民から愛され、彼の元部下達には優秀な者が多くいたため、土着勢力を丸々治めることに成功する。

 

〔数時間後〕

宴会も終わり、家康に挨拶するとそのまま忠吉、箒と共に忍城に行った。

 

【忍城 城下の農村】〔数日後〕

 

「どっこいしょっと。」

 

「おっさん何してるだ?」

 

「せやせや。」

 

「ん?あぁ、豊臣が作った堤防を農業に使えないかと思ってな。」

 

「どうなんだべ?」

 

「この苗木を植えていけば水害にはならないでしょう。」

 

「なんだべ?それは?」

 

「さくらんぼっていう甘いちいさな実ができる。美味しいぞ。」

 

「そうなんかなぁ。」

 

「怪しいが貰い物は大切にするだ。」

数年後さくらんぼが大量に取れるようになりのだった。

 

「こんなものか。」

そのまま青森城に帰っていった。

 

【青森城】

 

「ふー。ふー。」

 

「おぎゃー。おぎゃー。」

 

「産まれただろ。」

駒姫ついに出産である。

160人目の子供だった。

 

「一応この子が次期当主なんですよね。」

 

「そうだろ。・・・長男達はもう修行に入っただろ。」

道元はやっと14歳になり、息子達は5歳になっていた。

大半の子供達は城下で人を雇って商売をしていたり、学校に通ったり、弟や妹の世話をしたりと様々だ。

 

「一人人口爆発じゃないのが怖いだろ。」

この現象が各村でもおこり、既に人口が200万人を超えようとしていた。



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信長の宝具

【青森城近くの村】〔1年前〕

 

「こなた遅かったな。」

 

「信長様もってきたよ~。」

 

「おぉ。懐かしの武具・・・でかした。」

信長は紅いマントと鉄甲冑、家紋が付けられた兜を被る。

 

「胸がきついな。・・・しかし。」

全ての防具を着け終わると周りに赤い木瓜紋(織田家の家紋)が現れる。

 

「ん!?なんだこれは?」

信長が家紋に触れると何かを触る感覚を覚える。

 

「これは・・・火縄銃。」

家紋から現れたのは火縄銃だった。

導火線に火がついており、私は慌てて地面に向かって発砲した。

 

ビー

 

周りにいた村人やこなた五和腰を抜かす。

火縄銃から似つかわしくない光線が出たのだ。

撃った本人である私も驚いている。

 

〔5時間後〕

私もこなたも五和も宝具である武器か武具、茶器でも自分の家紋が現れては不思議な事がおこった。

私は家紋が20個以上現れて、大小調整できるようで、自身の前方にある山に向かって腕を降り下ろすとビームが大量に出た。

ただし、全力で撃つと山に大きな穴がしまい、自身も気だるさが全身を被った。

こなたは家紋から巻物が現れ、巻物を広げることで青色の弾を出せるようだ。

こなたの場合は喉が渇くようだ。

最後に五和は家紋から槍と弓が現れ、弓だと光の矢が現れ、槍だと光を纏いながら突き刺した部分を消滅させることができた。

ちなみに農民達も持たせてみたがわからなかった。

 

「龍興に相談するか。こなた、五和安全な範囲で調べていてくれ。」

 

「わかりました!!」

 

「りょーかい。」

第六天魔王信長、聖天忠臣成利、準古今伝来継承光秀この名称が後にキリスト教に伝わる。

それが意味することとは・・・。

 

【北邦共和国 北海道のとある財閥】〔時間は戻り〕

公害問題を予測した財閥が脱硫装置を開発した。

既に石炭を使った蒸気機関の運用が広がりを見せていたので脱硫装置は魅力的な商品だった。

財閥だけでなく軍も装置の取り付けを急がせた。

硫黄も火薬を造るのに必要不可欠だからだ。

火薬は大砲を使った戦術を採用している北邦にとって生命線だったので備蓄も進んでいた。

・・・が、日常的に採掘や工事で使われる爆薬によって硫黄不足に陥っていた。

窒素肥料から火薬にするためにも硫黄が必要だからだ。

脱硫装置設置義務付けが採用され、火薬の値段が下がり、さらに採掘や工事が進むため結局需要が増えてしまい、硫黄不足は解消しなかったが・・・。

 

「どこかに大量に硫黄を取れる場所は無いものか・・・。」

頭を悩ませる参謀達だった。



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朝鮮出兵

【青森城】〔龍興が江戸城から帰国した直後〕

 

「ついにやりやがった。あの老害・・・大韓民国に手を出しやがった。」

北邦共和国、大韓民国に秀吉は宣戦布告をしたのだ。

北邦共和国政府からこちらに手紙が送られ

 

《・部分動員を発令

・大韓民国国家総動員を発令》

と書かれていた。

 

(部分動員なら貿易は関係ない。・・・このまま続けられるか。)

秀吉は俺がどこかと貿易をしているのは知っていたが、尻尾を掴めずにいた。

中型船で北海道まで行って詰め込めば事足りるし、かといって南蛮人や紅毛人、韓国人もいないので実情が全くわからなかった。(北邦の船も堺の商船の旗を立てたりして欺瞞工作をしているせいでもあった。)

 

(・・・ちと待てよ、何かを忘れている・・・なんだ?・・・うーん・・・!?)

龍興に電流はしる。

 

「仁!!仁はいるか!!」

 

「は!!ここに!!」

 

「秀吉の動員兵数、火縄銃の種類、火薬の量を調べてこい。」

 

「は!!」

 

〔数分後〕

 

「こちらです。」

 

「・・・大韓民国の10分の1以下の兵数に火縄銃もこちらでは4世代前の銃じゃないか!!大韓民国がうちと同等、北邦は最新型を量産している・・・これに新型の制度向上型の大砲がつく・・・虐殺になれば・・・西日本で大規模な飢餓が発生するかもしれない!!」

龍興の連想は的を得ていた。

 

「今が政権転覆の下準備だな。」

時期を読み間違えることなく龍興は静かに立ち上がるのだった。

 

【朝鮮南部】

昔の内乱の影響から農地がほとんどだった朝鮮南部は日ノ本と大韓民国、北邦共和国の主戦場となっていた。

後に大韓民国は産業見直しで大幅な国力増強を成功させた戦争としても歴史に残っている。

 

日ノ本軍改めて侵略軍約190000名

大韓民国軍約2000000名

北邦共和国軍約1000000名

 

結果は言わずもがな・・・。

まず侵略軍は海上で攻撃を受けずに上陸すると、南部の警備隊を蹴散らして大韓民国首都ソウルを制圧しようとした。

しかし、侵略軍の進行はここまでだった。

ソウルから100キロ離れた草原でおこなわれた大戦闘は大韓民国軍と北邦軍が繰り出す新型の大砲が繰り出す砲弾の雨によって壊滅した。

功を競って前に出ていた小西行長、加藤清正、福島正則の3部隊合計22450名は逃げ遅れ、砲撃後の大韓民国軍の突撃により全員死亡している。

残った者も少ないながらに損害が発生したため、戦線を後退させた。

 

「僕は秩序を守らない軍は嫌いだ。」

第5歩兵団団長の蒼星石は侵略軍の人さらいの行為に激怒した。

そんな人さらいによって日ノ本に連れてこられた韓国人が日ノ本に焼き物等の文化が発展するのは皮肉だろう。



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大韓民国軍の実力

【大韓民国 首都ソウル】〔数日後〕

 

「勝ちましたか。」

 

「大統領閣下おめでとうございます。」

 

「いえ、全ては国民のおかげというのを忘れてはなりません。いけませんよ参謀総長」

 

「これは失礼しました。」

第89代大統領ホン・シンシューは鉛筆を回しながら韓国軍参謀総長の失言を訂正させる。

韓国軍の特徴は基本的に防御である。

北邦軍の積極的防御ではなく、前線を後退させながら半包囲の状態に持っていき、飛び道具で敵中央を破壊するのだ。

また、韓国軍は基本海軍国である。

黄海と日本海に面し、黄海の大半は大韓民国の領土で囲まれている関係で造船所が建ち並んでいた。

北邦の海軍力を1とした時、日ノ本は3、スペインが20、イギリスが25、大韓民国が18と世界で3番目の海軍国家であった。

・・・つまり大韓民国軍の防御からの包囲が可能であった。

侵略軍はそれを打ち破れる海軍力がないのだ。

 

【黄海】

侵略軍の補給船が大韓民国軍の船に鹵獲されたり、撃沈され、海上封鎖が開始された。

これに激怒した秀吉は海軍を任されていた九鬼氏を左遷させ、小早川秀秋がそこにあてられ、海軍の拡張を秀吉は急がせた。

・・・が、そんなにすぐ拡張できないのが海軍である。

海軍の損害が増えるに比例して秀吉の怒りも高まっていった。

 

〔冬〕

約10ヵ月近くが経過すると、慣れない土地のため風土病が発生する。

 

「くそ・・・なぜ池田家に災いが降りかかる・・・なぜだ。」

池田輝政は嘆いていた。

父や兄、優秀な家臣を失って一気に池田家は衰退するかと思われたが、政略結婚により秀吉に拾われる。

豊臣家準一門になったものの、家臣は秀吉の息がかかった者が多くいた。

 

「何で俺ばっかに・・・。」

さらに今回九鬼氏左遷後に実務部分で秀秋の補佐を任され、現場を仕切っていたが、いきなり出撃命令(秀吉の怒りによる理不尽なもの)が出たため急いで朝鮮に渡った。たまたま沈められることはなかったが・・・。

 

「手持ち1000でどうすれば良いんだよ・・・。」

さらにとどめとして部隊内で病気が蔓延し、行動できるのは、半数となっていた。

 

「・・・詰んだし。」

さらに言えば、輝政のいる場所は朝鮮半島南部の山で、朝鮮軍に山を囲まれていた。

 

「畜生・・・生きて帰って俺をこんな場所に飛ばしたやつを殺してやる。豊臣家なんて滅んでしまえ!!」

周りにある秀吉の息がかかった家臣の死体を蹴りつけて絶望的な戦況を打破しようと必死に考える輝政だった・・・。

輝政は知らない・・・7年間も包囲されることとなるとは・・・。



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池田輝政の憂鬱

【朝鮮半島南部の山】〔西暦1593年夏〕

山に自生する食べ物や動物を狩ってなんとか飢えをしのいでいた。

手元には250名しかいなかったが、彼らは異国の中でも自分達を指揮して守る輝政が神にでも思えたのだろう。

出身国が様々だった彼らは輝政を守るということで団結し、ともに生活していた。

輝政もただ生活するだけでは武器が無くなるので、包囲(もう壊滅したと思い込んで補給拠点になっていた)が緩んでいる場所を探しながら、偵察兵を集団で殺し、鉄砲や剣、槍を奪っていった。

 

「我々は戦う相手を間違ったのだな。」

鉄砲は撃ちやすい、連射もできる。

剣は刀に似ている物も有れば、刀身が針のように細長い物、打撃に特化した物等があった。

槍も無名なのがもったいないと思う一品であり、持ち手も黒い物が巻き付いて

大抵は害獣用に打撃に特化した物だったが・・・どれも日ノ本なら良物として扱われている物だった。

 

「米・・・食べたいな・・・。」

輝政はたまたま周辺の村から略奪できた芋(じゃがいもやさつまいも、自然薯)を中心とした食生活を打開しようともしていた。

 

〔秋〕

苦難は続く・・・。

日ノ本では池田輝政が戦死したことになり、お家とり潰しとなり、そこに秀吉の小飼の者を入れていた。

秀吉はこの頃から政務よりも秀頼を可愛がることばかりするようになっていたため、その政策に反対することはなかった。

ちなみにこの政策を提示したのは増田長盛である。

 

「情報が全く無いとは恐ろしいことだな。」

このことを6年後に知る輝政の教訓である。

 

〔西暦1594冬〕

寒い季節である。

毎年この時期は山の一部を掘って身分関係なく体を預けあって生活する。

冬は恐ろしい季節であり、食料が尽きると餓死した者も泣く泣く食べねば生きれなかった初年度、蓄えができたが、凍傷により手足が腐り、死んだものが出た2年目・・・今年はそのようなことはなかった。

・・・ただ、男だけだとむさ苦しい。

それだけは不満だった。

禁欲が2年も続けば僧でもやれる時代である。

さらにいつ敵が攻めてくるかわからない恐怖に震える兵達は自らを鍛えたため、異常に強くなっていた。

熊や虎を1人で倒せるほどに・・・。

それを異常と思えなくなっていた。

それが常識となり始めていたのだ・・・。

とても恐ろしいことであった。

 

〔西暦1596年春〕

・・・俺は・・・俺らはもののけとなっていた。

半霊となっていた。

人を食らったからだろう。

閉鎖的な空間で生活していたからだろう。

そんな俺らの前に南蛮人が倒れているのは何かの試練だろうか?



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池田輝政の憂鬱 2

「・・・う、ここは・・・。」

 

「気がついたか・・・。」

 

「ここはどこなんだい?」

 

「・・・朝鮮半島の南部の山だ。それ以外はわからん。」

 

「なるほど・・・。自己紹介がまだだったな。私はアーカード。しがない旅人だ。」

 

「アーカードか・・・俺は池田輝政だ。武士だな。」

 

「武士・・・日ノ本の人物か。」

 

「あぁそうだ。」

その時アーカードは周りを見て気がつく・・・半霊ばかりであることに・・・。

 

「すまない・・・アーカード殿、日ノ本の侵略軍はどうなっておる?」

 

「半年前から停戦交渉が始まったらしい。」

 

「そうか・・・。」

 

シクシク

周りにいる男達が涙を流す・・・。

 

「長かった・・・237名にまで減ってしまったが・・・これで死んだ者も国に帰すことができる。」

輝政も涙を流す。

 

「詳しく話を聞かせてはもらえないか?」

アーカードは起き上がって数分しか経過していないのに元気になっていた。

 

「体調は大丈夫なのか?」

 

「なに軽い貧血だ。気にすることはない。」

その後全員を集めてアーカードにこれまでのことを話した。

 

「生きる努力をしていたらこうなったと?」

 

「そうだ。・・・それしかわからん。」

 

「・・・諦めなかったのだな。この絶望的な戦線で・・・4年も。」

 

「諦めたことは無かったな。ただ純粋に生き残りたいと願い、そして今ここに存在する。」

 

「私は輝政殿に・・・いや、ここにいる者達に敬意を祓わねばならない。アーカード・・・真祖の吸血鬼だ。」

 

〔西暦1598年冬〕

その後アーカードが俺の部下となり、ともに生活した。

そして吹雪の夜・・・俺らは下山した。

もう補給基地としての役割もなくなった場所には村の駐屯所として機能していたため、まずここを襲撃し、殺さずに武器、弾薬、防具、馬、食料、金を手にいれると南に向かった。

 

「・・・おお!?海だ!!海が見える!!」

 

「殿!!ありがとうございます!!我々は帰った後も殿に付き従います!!」

 

「それよりも船だ!!行くぞ!!」

奪った武器で船員ごと略奪すると、日ノ本についに向かうのだった。

 

【名護屋城】

停戦交渉が締結間近の時に朝鮮から中型(日本から見て)の船が入港してきた。

 

「・・・7番隊中入・・・池田輝政ただ今帰還!!責任者を出してもらいたい!!」

名古屋城城代の鍋島直茂は池田輝政の前に行くまで、側近にと本人かどうかを念入りに確認し、本人だとわかると青ざめた。

 

「池田家がとり潰されて500石にて織田家に吸収させたことを知ったら・・・。」



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星二号作戦

【北邦共和国 政府】〔時間は戻り西暦1592年夏〕

この日・・・新しいステージに私達は登ることとなる。

 

「・・・落札じゃ!!」

 

オォォォォォ!!

議員達は年甲斐もなく叫んでてを叩いて喜んだ。

地獄で国民が貯めたお金や私こと芳香の収入を全てをつぎ込んだ大勝負・・・神界の政府が主催する無人の惑星の購入に成功したのだ。

資料には地球と似ているがドラゴン等の魔物が多数いるためやや危険、農作物の栽培可能と神がかりの物件だったので落札は厳しいと思われたが、たまたま神界の資本家達が売りの時期に当たったため、なんとか落札に成功したのだ。

 

「登用の限界もきていた頃じゃ。億単位のキョンシーを送り込もう。開拓自由の届けを出せば良かろう。開拓に成功すれば魔物の素材を加工する工場を建てたり、他の異世界に輸出してぼろ儲けじゃ!!」

 

「信仰の利益はこちらに半分来るのですよね。」

 

「そうじゃ。政府が管理することになる。もう半分は神界のヤマメ大統領の元に行くがな。」

 

「お母さま、すぐに準備しますわ。」

 

「そうじゃった。最高責任者の水銀燈には責任もあるから頑張るのじゃぞ!!」

 

「はい!!」

ついに惑星の購入に成功し、雇われている立場から一歩上に登ることに成功するのだった。

 

「芳香、ちょっと良いかしら?」

 

「なに金糸雀?」

 

「小さな星も付いてきたのだけど・・・どうするかしら?」

 

「ん?・・・金糸雀に任せるのじゃ。」

 

「わかったかしら。」

 

【SB】〔少し進んで・・・〕

 

「3・2・1。」

 

ドン

 

「目標位置より300メートル左!!」

 

「砲身に亀裂発生!!」

 

「畜生また失敗か!!」

SBは蒸気機関の研究もしながら、大砲の改良も進めていた。

・・・が、素材の脆さが悩ましかった。

軍が求めた性能は10馬力で時速15キロ移動可能な物、最低でも300発は発射できること、着弾点が300メートル以内の誤差、有効射程が6キロメートル以上となっていた。

重さもとい、馬力の制限があまりにもきつかった。

 

「仕方ない。鋼の比率調整からし直そう。それが終わるまでは従来型の大砲で我慢してもらうしかないな。」

武器に関してはヨーロッパのように競いあって開発する環境がないためなかなか進歩せずに、地道な努力とヨーロッパに潜伏するスパイの情報により着実に進歩を重ねていく北邦軍だった。

 

【朝鮮戦線】

決戦の勝利により侵略軍の支配地域を半分を取り返し、戦争によって遅れていた南部の整備を軍道として開始したり、線路を引いて国内整備をする韓国軍の姿がそこにはあった。



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朝鮮出兵中の龍興

【青森城】〔西暦1592年夏〕

俺は手元にある兵糧の1/4を大坂城に部下を使って届けた。

もちろん評定会の許可は取っていたが・・・。

届けた部下が石田の感謝状を持ってきた。

まぁ感謝の言葉と年に石高の1/4を頼むとのことだった。

 

「石田も大変だな。あの老害に振り回されて・・・。」

哀れんだが、俺もそんなに余裕があるわけでもないため、朝鮮出兵の混乱に乗じて国外にいる武将や北邦の人材採掘に勤しんだ。

で釣れたのが・・・

 

「こ、この茶器が量産品!?」

信長の弟である織田有楽斎であった。

愛称は茶馬鹿である。

本人も嫌がってないので俺らからそう呼ばれている。

出会いは(まだ)池田領で茶道の先生をしている人がいると聞いて来ると織田有楽斎が日雇いの教師をしていた。

 

「家来る?」

 

「O.K.」

こんな感じですぐに決まり、青森で日ノ本側の文化を強化してもらうことにした。

 

「異国の文化に染まりすぎじゃないですか。料理も美味しいだけでなく盛り付けでも美しく見せられるのですよ!!」

天職のようで4つ高校で文化の教師をしながらも、民衆に日ノ本の中心地京都の文化を浸透させていった。(商人がまず飛び付き、次に手工業で生計を立てる農民に広がりを見せた。)

 

「異国の文化良くない?」

 

「死んでなかったんか!!」

兄弟?の感動?の再開早々に北邦の文化に染まり、商売魂の塊になった信長(女)と有楽斎の仁義なき文化の浸透させる争いは終わることはなく、約250年続くことになる。

 

〔西暦1594年秋〕

北邦の求人倍率が下がり始めた。

恐らく愛国心溢れる北邦共和国民が

 

「日ノ本敵国だしな・・・。」

 

「青森は日ノ本の中で最友好国だけど・・・ねぇ。」

という感じらしい。

 

「・・・厳しいか。仕方がないな。戦争だし。・・・道元に家督を譲る準備をするかな。」

 

〔西暦1595年春〕

道元に家督を譲り、評定会の権力が強まる。

 

議長である人物の号令で閣僚会議が始まる。

 

「さて、内政をしますかね。」

外交関係を斎藤家から一時的に評定会が委託されたことで徳川との関係強化と日ノ本の文化理解に重点を置いたスタンスをとる。

そのため織田有楽斎と引退した龍興を外交特別顧問という職に付け、残りは内政に力を入れることとなる。

 

「手工業と農業の更なる集団化、新聞の導入、製紙業の開拓を5年間の目標にしますかね。」

この年から斎藤領では五ヵ年計画と呼ばれる産業育成目標が定められることとなる。

 

???

「俺の名前を言ってみろ!!」

東高校にて食用の蛙が作られたようだ。




メーター

人口増加 14(1万人で1)
人口200(1万人で1)
工業 5/500
経済 38/1000
農業 50/150
文化 2/100


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秀吉の死

【大坂城】〔1598年8月5日〕

 

「家康殿・・・秀頼を頼みましたぞ。」

 

「太閤様!?」

豊臣秀吉・・・五大老、三中老、五奉行に見守られながら死亡した。

秀吉の死は隠されたまま休戦交渉が進まされた。

宗氏が最初は代表者だったのだが、いまいち信用できず、朝鮮側から斎藤龍興氏を名指しで指名されたので龍興出向く羽目になった。

もっとも大老であった毛利輝元と宇喜多秀家は韓国との内通を疑い、解任しようとしたが、家康、前田利家、上杉景勝の賛成、五奉行の賛成により停戦役となった。

 

(・・・西日本の大名の反感が凄まじいな。・・・例外は黒田と島津か・・・島津はなぜ俺に協力的なんだ?)

島津領は石田三成によって国家基盤を鎌倉で止まっていたため、それを戦国時代までもっていったのだ。

そのため三成が味方しているのならという感情がつよかったのだ。

・・・まぁ龍興は知らないのだが・・・。

 

【対馬】〔10月中旬〕

宗氏は最後の仕事として朝鮮側の代表者を対馬に呼び込むことに成功し、交渉が開始された。

 

「よろしくお願いします。」

 

「よろしくお願いします。」

部屋には俺以外に日本側が3人、朝鮮側4人、北邦共和国側2人となっていた。

 

「大韓民国としては賠償金と韓国人の返還を求めます。」

 

ガタ

「豊臣は負けておらぬ!!賠償金など言語道断!!」

 

「豊臣政権としては停戦なので何も・・・ということになっています。」

豊臣の家臣達は決して負けを認めようとしなかった。

しかし、損害比が10:3の時点で負けは確定である。

 

「・・・少し熱くなっているようです。別室で涼んで来るのはいかがでしょう。」

 

「な!?龍興貴様!!やはり内通しておったな!!」

 

「我が刀の錆びにしてくれる!!」

 

ドスドスドス バタバタバタ

 

「神聖な交渉の場を汚しおって・・・死んで詫びろ。」

俺は動く左手で特注の投げナイフを使って豊臣に与する交渉役を葬った。

 

「見苦しところを見せました。・・・賠償金の件はどれぐらいになりますかな?」

 

「金額は日ノ本で約450万石・・・北邦共和国換算だと4500億円ですな。」

 

「ふむ・・・20年返済でよろしいですかな?」

 

「O.K.だ。ただし、利息の代わりにそちらの領土と貿易させてくれないか?柑橘類や果物が旨くなくてな・・・土地のせいもあるが・・・。」

 

「仕方ありませんよ。そちらは野菜や繊維業、海運特化なのですから。」

 

「助かる。元々貿易をさせるのが目的だからな。」

 

「北邦はありますか?」

 

「政権交代を要求する。もう元は取れているからな。」

 

「それは約束します。では私は動くのでよろしくお願いしますよ。」

すぐに停戦協定は結ばれた。



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動き出す歴史

【大坂城】〔数日後〕

 

「なんとか平等まで持っていきました。・・・ただ、最終調整のために3名はまだ対馬に残るようで病気(毒)の宗氏当主に替わって纏めているようです。」

 

「ご苦労であった。」

五大老の面々は俺に事務的な謝礼を言ってくるが、俺が3人を殺害、宗氏当主を毒殺したのは時期にバレる。

それまでに愛弓を助け、国に帰らないといけない。

さらに国でも家康が動くまで時間を稼がなくてはいけないし・・・まぁ東北・・・奥州の大名が敵になることはないので手前・・・上の2つは絶対にしなければならなかった。

しかし・・・

 

「なんか呆気なかったな。」

 

「私の身代わりを置いていきましたからね。」

愛弓に似たの貧民がいたので、いつか役に立つだろうと愛弓は密かに教育していたらしい。

約6年間侍女として働いていたため動き方もわかっているらしく、ある程度の時間は稼げるだろう。

言っては悪いが他人だ。切り捨てる時は真っ先に切り捨てる。

 

「第一関門は突破だ。次は無事に国に帰らなければ・・・。」

 

【青森城】〔1ヶ月後〕

無事に帰国するとすぐに周辺の大名に準戦時体制に入ると手紙を送った。

伊達、最上、上杉、秋田、徳川、佐竹、宇都宮・・・貿易相手や、同盟国がほとんどだ。

 

「まぁこうなるわな。道元!!」

 

「親父、上杉は中立を表明、手紙は家中で処分したらしい。・・・ただ、佐竹の息子が三成に報告したらしい。」

 

「三成から手紙が来ている。・・・停戦の件は助かった。しかし、処分をしなければいけないから登城するべしだと・・・。」

 

「もちろん行かないだろ。常識的に考えて・・・。」

 

「いや、俺はここで斬られてくる。遺体は回収頼むぞ。」

 

「命をかけた最終策略か?」

 

「まぁ最低でも頭は丸めるがな。」

生きるか死ぬかの大勝負・・・龍興は敵地に向かう。

 

【大坂城 大広間】〔3週間後〕

大広間には五大老、三中老、五奉行以下大名や旗本がひしめく。

奥には秀吉の妻・・・ねねこと高台院(北政所)と浅井長政とお市の娘である茶々こと淀殿、秀吉の嫡男秀頼が座っていた。

 

「頭を下げよ!!秀頼様の御前であるぞ!!」

 

「・・・くくく、可笑しい。爆笑だよ。逆臣が天下を取るなんてよ。秀吉!!俺は知っている。本能寺の真実を・・・。逆臣の息子に頭を下げる必要などない!!」

 

「貴様!!」

 

「生かしてはおけぬ!!」

 

「黙れ!!秀吉の犬どもめ!!なぜ秀吉を破滅へと導いた貴様らに指図されなければならない!!あの戦争を今度は日ノ本でする気か?・・・北政所様、あなたならわかるはずだ。あなたが実の子のように扱っていた福島や加藤のような若者を増やす気か?・・・私は御免だ。俺は宣言する。豊臣の家臣から外れることをな!!」

 

「言わせておけば!!」

 

「斬り殺してくれる!!」

 

バシュ

その瞬間龍興の右腕は無くなった。

彼が自分で右腕を切り落としたのだ。

 

「絶縁だ。」



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脱出

俺は血が流れる切り口を紐で結んで止血し、大広間に煙幕をはった。

周りから罵声が飛び交うが、俺にはもう関係ないことだ。

 

「あばよ。」

俺は大広間を飛び出し、地上から約80メートルの位置から空へダイブした。

 

バサ

北邦からスポーツ用のパラシュートを使用して地面に着地するとそのまま領地に戻ろうとした・・・が、大坂城から東に100キロの地点の関所で足止めされてしまう。

 

「小癪な!!」

中央突破を選択し、愛馬で雑兵を蹴散らした。

 

パン

その時に狙撃されたが、絹で作られた(斎藤家が唯一北邦に優っている)防弾服が銃弾を止めた。

さらに龍興はしたに楔帷子を着用していたので鉄製の槍による突き以外では貫通することはなかったため、なんとか三河まで逃げることに成功する。

そこでたまたま放浪していた池田輝政と出会う。

 

「父のことといい、今といい・・・龍興様に助けてもらってばかり・・・。」

 

「うるせえよ。今は無事に領地に帰らなければならいんだよ!!」

仲間に引き入れて領土に戻る・・・。

アーカードという吸血鬼が俺の領地のキョンシーを気に入らないとぬかすので、そいつとは少し嫌悪な関係だったが、他の者とは普通に接することができた。

 

「て、輝政!!」

消息不明だった輝政を見て恒興こと池田華菜は抱きつき、そのまま親子で話し合いに発展したようだ。

 

「さて、俺の方もなんとかしないといけないな。」

 

「どうするだろ?」

 

「やりたくなかったが・・・商人衆を召集する許可を評定会から貰ってきてくれ。」

 

「了解だろ。」

 

〔翌日〕

中堅商人の連合体・・・商人衆。

大商人としての役割が斎藤家と評定会の2つがあるため、御用商人としての立場がないため、結果多数の中堅商人が生まれた。

数は300を超える。

この商人のほとんどに道元の子供が養子や婿、嫁として関係があったため、親族でもあった。

・・・ちなみに楽市楽座で大半が神社の神道信者が多い国なので安定しているため、利権整理が楽だった。

 

「東の日ノ本と関西の経済力の比率はいかほどか?」

 

「は!!7:6程度です。」

 

「・・・攻めろ。今ここで攻めるのだ。堺の商人の利権を奪い取ってしまえ!!」

 

「は!!」

その日から堺では米の転売や銀と金の換金差を利用した両替業界が深刻なダメージを受ける。

米は米余りと米不足を繰り返し、その間を漬け込まれて破産する米屋が相次ぎ、両替屋はその煽りを受けて連鎖倒産がおこった。

煽りはそのまま農村や武士に直撃する。

 

「儲かりまっな。利休さんの財産奪いまっせ。」

豪商だった千利休の跡継ぎもこの流れに負けて破産。

天下の台所は火の車となった。



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敵と味方の整理

【青森城】〔西暦1599年春〕

1年間・・・斎藤家は戦時体制に以降し、全ての産業の効率化をした。

評定会は溜め込んだ金のほとんどを内政と軍事に振り分け、貿易でも新型銃の輸入量増加が目立ち始める。

外交面では奥州秘密同盟の完全締結、豊臣方の切り崩しが激化した。

対して豊臣政権はいきなり下がった経済の立て直しと政権の安定を急いだが、武統派と文治派の争いが激化してしまった。

理由としては朝鮮出兵が原因である。

対外戦で負けてしまい、その条約の負担が斎藤家から支払われていることが宗氏からわかると、揉めに揉めた。

敵に豊臣の負の遺産を肩代わりしてもらっている状態に、権威が地に堕ちたのだ。

 

「なんとか軍の拡充は進んだな。」

 

「ええ、なんとかなりました。・・・ただ、親衛隊はちょっと・・・。」

 

「仕方ないだろ。評定会から2000名の親衛隊(実験隊)を作れって言われたんだから・・・。」

親衛隊とは評定会からつけられた斎藤家直属の部隊である。

どちらかと言えば武装警察に近い。

一応軍が治安を維持しているが、緊急時の時や、軍が住民に害した時、武器の実験等に用いられることとなった。

 

「いえいえ、そういうことではなく・・・人体実験の方でして・・・。」

 

「忍び衆か。」

 

「えぇ、大変だと聞いています。」

忍び衆は親衛隊の約4割りが所属する忍術、医学の専門解析、開発部隊である。

 

「・・・本当はやりたくないですけどね。」

 

「キョンシー技術は北邦の秘術で国外に渡ることを許されてませんからね。」

 

「・・・まぁ大々的にやらなければ問題は無いがな。」

 

「生きてる人間は長生きできるに越したことはありませんし、小さな子供が亡くなり、キョンシーになっても・・・。」

 

「労力不足と本人の申し訳無さが原因で自殺することがあるからな。」

 

「それだけは・・・見たくないものだよ。本当に・・・。」

 

【大坂城】

 

「まだ討伐軍が編成できないのですか!!」

ヒステリックに声をあげ怒鳴り付ける女性がいた。

・・・淀殿である。

彼女にとって武統派だとか文治派だとかは関係ない。

秀頼が馬鹿にされたことに腹をたてていただけなのだ。

対立している両者の共通点はこの女を早く失脚させたいのだが、秀頼の母親ということで粗末に扱えず、秀吉の負の遺産である大勢の奥方を味方につけた第三勢力を築いてしまっていた。

完全に動けなくなった大坂城を見て熱が冷めた三成と大谷、長束の3名はついに自国に帰ってしまう。

永遠と進まない斎藤家討伐についに前田利家は家康に接触する。



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老兵の決断

〔秋〕【江戸城】

前田利家と息子利長が数名の供回りを連れてやって来た。

内容は家康がどちらなのかということだった。

利家にしてみれば龍興は美濃で正々堂々と戦った武将であり、信長の輝きを増すきっかけ・・・織田家臣団が成長した踏み台であった。

対して秀頼は子供・・・しかも成長するにつれ、本当に秀吉の子供か疑いたくなる。

秀吉に対しての恩や友情もある。

ただ、それだけでは生きていけないのが戦国大名・・・決断の時だと思ったのだ。

 

「どちらかと問われれば・・・秀頼に義があるように見えるが・・・実際のところ龍興だろうな。」

家康の本心である。

 

「ただし、彼には覇気がない。天下統一をする覇気が・・・。」

 

「・・・家康殿・・・勝てるのですか?亡き太閤殿が作り上げた組織に。」

 

「勝てる。致命打を与えるには十分すぎる時間を得られた。・・・豊臣政権は腐っている。」

 

「信長様がいたらなんて言いますかね?」

 

「あの猿がやるじゃないか・・・息子はボンクラだがな。」

 

「言いそうだ。・・・利長をお願いしますぞ。」

 

「わかった。安心しろ。100万石は約束する。」

数週間後に利家は病没する。

それを期に豊臣政権は一気に崩れることとなる。

 

【大坂城】

 

「三成覚悟!!」

利家が病没した日の正午・・・三成が武統派に襲われ死亡する事件が発生。

これに文治派が激怒して諸将に武統派討伐を呼び掛けるが、利家の病没と江戸に滞在していた家康が大老の閣議に参加できず、結果三成と仲の良かった景勝だけが討伐に賛成し、残りの2人は反対して否決された。

毛利輝元は反対はしたものの、武統派を囲うようなことはせずにいたが、宇喜多秀家はこの期に乗じて一大勢力を築きあげる。

文治派でも三成と仲の悪かった五奉行筆頭の浅野長政は秀家の勢力に参加した。

 

【青森城】〔西暦1600年春〕

 

「悔しいヴァ・・・あんなところで命を落とすなんて・・・。」

石田三成を回収してくるとすぐに(キョンシーに)蘇生した。

現在は日下部みさおという名前になっている。

 

「・・・あれ?石田三成の武功・・・。」

道元はこなたに連れられて退出した。

 

(思っても口に出すなよ馬鹿息子。・・・水攻め失敗と朝鮮の失敗、九州攻めでも・・・見なかったことにする。)

その後三成は高校に一発合格で入学し、農業を極めるご様子。

 

【江戸城】

 

「始めるかな・・・天下統一を!!」

家康は秀頼を操る(ということにしている)宇喜多秀家討伐軍の要請。

これに前田家、上杉、伊達、最上、佐久間、佐竹、秋田、伊達、鍋島、細川、長宗我部、島津諸々が参加した。

 

「長宗我部と島津は石田に助けてもらってるからな・・・しかし大友が参加しないのは意外だな。」

対する宇喜多秀家は権力をフル活用し、近畿周辺、長宗我部を除く四国勢、武統派諸々で約11万名を秀頼の名で挙兵した。

 

「俺も混ぜさせてもらおう。」

龍興、道元も江戸城に集う。



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青森の巨人

【江戸】〔夏〕

青森からの動員兵力25000名、うち新鋭隊1000名と攻勢限界ギリギリの数を用意した。

 

「百戦錬磨・・・とはいかないが、十分な練度はある。・・・まぁ全て特殊部隊だがな。」

特殊部隊の基準は森、湿地、山でスムーズな活動ができること、銃の扱いに長けているかつ、剣術、槍術もできることとなっていた。

 

「・・・キルキル部隊がな。」

 

「殿あれは制御できませんので・・・。」

キルキル部隊思考が皆平等を声高らかに言う共産主義集団。

実力がは凄まじいのだが、思考をねじ曲げるので扱いが難しかった。

・・・後にこいつらが爆弾となる。

 

「殿は第2軍で、若が本体でしたよね。」

 

「ああ、徳川秀忠様とともに中山道を通り大坂を目指す。」

 

「お気をつけて。」

 

「そっちもな。将軍。」

 

【真田領】〔数週間後〕

真田家は父親と弟が秀家につき、兄だけがこちらについた。

 

「秀忠様どうされますか?真田昌幸、幸村を殺りますか?」

 

「うむ、徳川家と真田家は相性が悪くてな。なるべくなら勝ちたい。」

 

「しかしそれでは決戦に間に合わないのでは・・・。」

 

「確かに・・・。」

 

「ではこうしませぬか?」

地図を広げ策を話す

 

「影武者!?」

 

「はい。秀忠様の影武者をたてていただき本物の秀忠様以下家臣の皆様は決戦に向かい、約8000ほど残していただければ。・・・真田昌幸の基本は大軍で攻撃することに対しての防御です。同数より少し多いなら勝てる軍になりますな。」

 

「なるほどな。」

 

「・・・斎藤家の忠義をあなたに見せたいのです。秀忠様は死ねと命じれば良いのですよ。」

 

「くくく、役者め。ならば命じる。死ねとな。」

 

「了解。」

蜂と狐の戦いが始まる・・・。

 

「抜刀。森に突入。」

まず戦う場所を山道から山奥に移動した。

地の利は敵に有るが、森林作戦に耐えることができるメンバーであり、秘密兵器も投入していた。

森林戦ができない普通の兵は名目上の大将である俺の周りにつけた。

 

【森】

森の中では森用に改造されたクロスボウとナイフを使った攻勢に真田軍はジリジリと後退していた。

昌幸は軍事の才能は確かに凄かったのだが、武器を造り出す能力はなかった。

時代の最先端を走る未知の攻撃の対策に時間が必要だったが・・・その時間が無かったのだ。

 

「門は閉じた。・・・前進!!敵を多く討ち取れば恩賞も思うがままぞ!!」

森の制圧が完了すれば後は力攻めである。

 

「制圧砲撃よーい・・・うてぇ!!」

爆発はしないものの、鉄球が直撃すれば石垣や門は壊れる。

後は雑兵で十分だった。



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一門皆強し

【関ヶ原】〔数日後〕

龍興は真田領にて討ち取った真田昌幸と真田幸村を材料として真田領の鎮静化を急いでいたため、決戦には参加できなかったものの、影武者を使ったが、徳川秀忠本人が作戦立案、指揮委託という感じで部下の能力を見極める事ができたこと、街道の安全が確保出来たことは評価された。

これにより現場の龍興も家康から

 

「両兵衛合わせても勝てない策略家であるが、野心家ではない。義には義を。恩には恩で返す男だ。まさに蜂(女王蜂の元で勇敢に戦うことや忠誠心を表している)である。」

 

そんな評価をされているため息子である道元も期待される。

 

「やれることをやるだけだろ。」

後に関ヶ原の戦いと称される戦は西軍大将宇喜多秀家の兵力11万8000名対東軍大将徳川家康、副将徳川秀忠の9万6000名の戦いとなった。

 

始めに動いたのは上杉景勝隊である。

 

「我らに毘沙門天の加護あり。」

景勝は秀吉存命期間中に必死で謙信の戦術コピーと装備の一新を進めたのだ。

その中で景勝が改良したのが奇しくも北邦の佐天が得意とする浸透戦術であった。

 

「抜刀!!」

上杉軍の特徴は槍がとにかく短いこと、騎兵隊は抜刀して突撃できること、1兵がとにかく強いこと、更に対銃撃戦用に盾や鎧の一新をしたことにより防具が新しいことだろう。

 

「突撃!!」

銃撃を盾持ちが防ぎながら一気に進んでいく。

銃撃の合間に突撃し、大乱戦となる。

 

「今だ!!」

前後挟撃と呼ばれる集団突撃をおこない、先鋒を倒していく。

 

「赤揃えの意地を見せるのだ!!」

上杉軍に負けない勢いで突撃する井伊直政の赤揃えに西軍右翼は後退していく。

好調の東軍左翼に対して東軍右翼は最悪であった。

 

「報告します!!秋田隊壊滅!!当主秋田実季討死!!また、一族男子全滅でございます。」

 

「凶報!!里見義康の反旗でございます!!数2000!!」

 

「追報!!千本義定討死!!右翼の2層目崩壊!!」

 

「鳥居元忠様討死!!鳥居隊は本田忠勝様に吸収されました。」

東軍右翼が壊滅した理由は西の名将である立花宗茂と高橋直次の2名と前線で毛利勝永が猛威を奮っていたのだ。

この東軍右翼に道元は投入された。

 

「2大将(道元の上司2名)は本田忠勝隊の救援に向ってるだろ。3小将は俺に続いてやる気のない小早川秀秋隊から崩す。」

小早川秀秋は徳川家康に内通していたが、運が悪いことに道元は知らなかった。

 

「粉砕せよ!!」

力押しである。

装備面が他と超越していたため、改良されていない火縄銃では効かず、長槍隊の攻撃にも最新型の銃による集団発砲にて壊滅させた。

 

「突撃!!」

切れ味がおかしい刀を持ち、洗練された動きで次々と切り込み、秀秋隊は壊滅した。

秀秋は単独で逃走したため、その場での命は助かったが、斎藤家親衛隊副隊長の鈴木孫一が射殺した。



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一門皆強し 2

「俺に続くだろ!!」

 

道元率いる部隊は叫びながら毛利勝永隊に突撃をおこなった。

 

「チェストーーー!!」

ここで道元伝説を残す・・・2メートル近い身長なため、突きだした槍が敵の武将と雑兵合わせて6名を貫いたのだ。

しかも全てが顔を・・・。

 

「道元覚悟!!」

 

「ふんぬ!!」

槍が刺さって抜けないと見た足軽が俺に攻撃してきたが・・・

 

ザパー

太刀で一刀両断。

 

「我らは不死身の巨人なり!!」

道元は自分達を巨人と言って相手をびひらせた。

自分の身長よりも50センチも高い人と戦いたくない敵はじりじりと後退していく。

 

「恩にきるばい。」

横からの伏兵・・・島津が射撃をおこなったのだ。

たまたまだが、十字砲火となったため銃の殺傷能力が上昇し、俺と接触している部隊と後詰めの部隊の間に空間があく。

こうなると士気は崩壊する。

 

「お、お、おわぁーーー!!」

 

「ひぃぃ!!」

雑兵は腰が抜けたり、武器を投げ出して逃げ出す。

 

「釣れただろ。」

 

【斎藤軍大将達のいる場所】

 

「釣れたか。」

 

「さすがは道元だな。最高だ。」

片方は黒いスーツを着た初老の将軍・・・もう片方は片眼が潰れている中年のデブの将軍。

2人とも北邦共和国軍では大佐止まりであったが、斎藤軍にて軍事経験を大量に積んだため、この地位にいた。

 

「本田殿、我々は敵左翼を壊滅させに向かいます。本田殿はどうしますか?」

 

「三河武士として向かわない手はないだろ。」

トンボの兜を擦りながら彼は答える。

 

「それでなければ戦は楽しくない。」

 

「同意しますな。」

 

「もっともだ。」

2人の大将は部隊を自分の手足のように操り、攻勢に出る。

 

「・・・個人の武は不要になるのか。」

忠勝は小さな声で呟く。

その背中は寂しさを現していた。

 

【中央】

 

「細川殿、ここは反転させればよろしいかと。」

 

「助かる。」

細川軍には2人の頭巾を被った武将がいた。

 

「うーん。同僚に様をつけるのは疲れるね~。」

 

「言うな。俺だって驚いてんだからさ。」

 

「まぁまぁ。私達は秀吉に対しての鬱憤をぶつけられるし、細川家は安泰・・・win-winの関係だから。」

 

「異国語使うのやめてくれませんか信長様・・・わからないので。」

指揮官達は落ち着いているため兵達も落ち着いて攻勢できる。

その中でも2つの部隊はキレッキレだった。

 

「行きなさい。敵を2人殺せば距離を取りなさい。継続的な突撃をおこなうのです。」

鎧で顔を隠した五和と

 

「汚名返上だヴァ。」

弓による長距離攻撃で削るみさおの活躍で数で劣る中央も耐えていた。



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決定打

道元が更に離反した里見義康を討ち取ったことで東軍の右翼は立て直すことに成功した。

これで左翼は優勢、中央は拮抗、右翼は若干の劣勢と言う感じであった。

 

「最前線だから被害が・・・。」

初めて500人超えの損害が発生し、武器の損耗も激しかった。

 

「大将方・・・何かありますか?俺達ができることは。」

 

「道元中将、今決定的な攻撃をすることは我々はできません。」

 

「まぁ・・・あれだ。」

真ん丸に太った腹を擦りながら彼は答える。

 

「伊達の小僧が止めを刺すだろうよ。」

 

「では島津と協力しながら・・・」

 

「それでよろしいかと。」

スーツの汚れを手で払った初老の大将は断言する。

 

「勝ちましたな。」

 

【東軍左翼】

史実では小早川秀秋が寝返りをした場所に伊達政宗はいた。

 

「小十郎・・・あれか?敵の大将がいる場所は。」

 

「は!!宇喜多秀家はあそこにいます。」

 

「けっ。豊臣秀吉の威光もこれで終わりか。あっけねーな。・・・成実も思うよな。・・・あれ?」

 

「殿、成実殿なら手勢1500名を連れて突撃しました。」

 

「はぁ!?あいつまじで何やるかわからん!?」

 

【伊達成実隊】

 

「(#`皿´)」

 

「成実様は突撃と仰っておる!!突撃じゃ!!」

 

「Ψ( ̄∇ ̄)Ψ」

 

「成実様より鉄砲隊に合図!!」

 

「(つД`)」

 

「部下の死で悲しんでおられる。」

政宗がわからないのも無理はない。

実際に成実の部下の数名しかわからないのだから。

しかし実力は凄まじい。

 

【徳川本陣】

 

「なに!?敵左翼が崩壊した?」

 

「伊達家重鎮伊達成実殿の突撃が宇喜多秀家の重鎮3名を討ち取ったようです。現に宇喜多秀家隊が敗走しています。」

 

「追撃だ!!ここで削れるだけ削るのだ!!」

左翼が崩壊した西軍は連載で中央も崩れ、結果勝っていた右翼まで崩壊することとなる。

追撃戦により豊臣家の配下が多数討ち取られ、宇喜多秀家は領地に戻る最中に落武者狩りにあい、重傷を負った状態で井伊直政隊に見つかり、大友の2武将のうち立花は陣中にて切腹、高橋は刀傷が元で病没と、大友家の影響力は更に低下することとなる。

 

【大坂城】〔数週間後〕

 

「これにて終わりです。」

家康が一応まだ立場が上の秀頼に挨拶し、秀家の処分等を書いた紙を見せて関ヶ原の戦いは終わった。

 

【京都】〔数日後〕

家康が征夷大将軍に任命されることを天皇約束させることに成功したので、天下はついに徳川のものとなった。

 

【江戸城】〔数週間後〕

 

「青森藩35万石と蝦夷貿易の許可を斎藤道元に任命する。」

 

「ありがたき幸せ。」

俺と道元は頭を家康に下げた。

 

「松平忠吉に徳川の名を名乗ることを許可し、旧秋田家の50万石、蝦夷貿易の許可に奥州鎮台を命じる。」

 

「ははぁ!!」



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トラップカードオープン 革命

【ロシア首都 サンクトペテルブルク】〔1600年春〕

 

「長いようで・・・短い16年だったわ。」

青い髪の女性は処刑台に立った王族を見ながらそう呟いた。

 

「同志サヤカ時間です。」

 

「そう。」

前世の名は美樹さやか・・・今世の名はサヤカ・ギレラリーレ。

転生を経験した者であり、魔女である。

 

(生まれ変わって36年・・・きっかけは夫の他界か。)

サヤカは36年前にサンクトペテルブルクから南に80キロの村の豪農の長女として生まれる。

生まれ変わって3年は前世の整理と反省に費やした。

私の前世・・・最後は本当にあっけなかった。

 

 

〔36年前〕

 

「公安万歳!!」

私はNJOというデスゲームで命を落とした。

社会主義に似た組織の支部の幹部まで登り詰めたのだが、頂上戦争と呼ばれる海軍と海賊の戦争イベントで招集されて海賊と戦うこととなった。

中盤戦に入った時に私は死んだはずのマミさんに狙撃されて死んだ。

なぜマミさんがそこにいるのか知らないけれど・・・マミさんは涙を流しながら

 

「不満があるなら言ってほしかった。」

と呟いたのを最後に聞いた。

一瞬病院の風景が見えた瞬間に頭が焼かれた。

 

「ヒァァァァァ!?」

無様な断末魔を上げながら。

そしたらどこかの公園のベンチに私は座っていた。

 

「嬢ちゃん若いのに早死にとは両親泣いてるぞ。」

 

「え!?」

振り向くと芝生の上でダンボールをひいては酒を飲んでいるホームレスがいた。

 

「あ、俺長谷川・・・神のみんなからはマダオって呼ばれてる。」

始めに思ったことはホームレスの戯れ言としか思えなかった。

危ないおじさんの近くから離れたいから立とうとすると立てなかった。

 

「え!?」

間抜けな声を出して倒れる。

頭から地面にぶつかる。

 

「イッツツツ。」

再び立とうとしても起き上がることすら出来ず、ホームレスが近づいてきて私を持ち上げベンチに座らせた。

 

「俺の担当している空間では死人は手足が無くなるんだよ。まぁ嬢ちゃんも死人だから動けない。」

 

「えっえ?」

 

「混乱しているようだから別のやつから処理してくる。座ってるかベンチで寝てろ。」

ホームレスは立ち上がってどこかに行ってしまった。

落ち着くために深呼吸をしていると自分が死んだことを理解できるようになってきた。

 

「あたしってほんとバカ。」

マミさんの悪口で身を滅ぼしたのも自分の身から出た錆だし、馬鹿な権力闘争で数人の命を奪ってきた。

 

「なーにやってんだ。あたしって。」

ベンチにねっころがって上を向いていると桜の木の花びらがすべて落ちた頃に実る小さな赤色の実が私の口に入ってきた。

 

「う!?」

凄まじく不味かったけど・・・仰向けなので上手く吐けず結局飲み込んだ。



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第四勢力

木の実を無理やり飲み込むとグッタリしていた私に凄い勢いでホームレスが戻ってきた。

 

「あぁぁぁ!?やっちまった!!」

ホームレスは頭を抱えてうずくまる。

 

「バルタンに〆られる。・・・証拠隠滅。確か・・・お、ここでいいや。さやか頑張れや。」

 

「えええ!?」

 

バカ

私の真上に歪んだ空間が・・・・

 

「ちょっと・・・な〇うやハーメルンじゃこんなの見たことなァィ・・・」

 

 

 

 

「オギャァ・・・。」

その日から私は前世の悪行を悔やみ、許されるために動いた。

 

 

〔4年後〕

 

「あたしが食べたのは知恵の実だったか。」

知恵の実というか頭でネットにアクセスできるというものだった。

そのためロシア語の読み書きを子供のうちにマスターし、英語やフランス語、ドイツ語のWi〇iを見るために習得し、体作りをしていた。

そんな時たまたまやって来た商人に隣の大国について聞くことができた。

 

「北邦共和国?モンゴル共和国?なんだそれ?中国どこ行った。」

自分の知識が万能でないことを知る。

 

〔10年後〕

原始共産主義を使った使用人達の意識改革を初め、村での自給自足能力の強化に勤めた。

ロシアの大地はそれだけ村と村の距離が離れていたのだ。

 

「トナカイを家畜にしたことは当たりだった。肉を継続的に取れて毛皮も高く売れるから一石二鳥!!」

と転生チートを使って儲けていた。

大半の自給自足ができても塩がどうしても手に入らないため行商人を使って稼いだお金で塩を買っていった。

 

〔西暦1583年春〕

悪夢の戦争が始まった。

村からも20名の男達が意気揚々と出兵した。

自分の夫も富豪だから率いる立場として出兵した。

 

〔西暦1584年春〕

1年間でイワン皇帝の増税が続いた。

イワン皇帝が国内の反乱分子を処刑し尽くしたため国内経済はボロボロとW〇kiには書いてあり、よくそんな状態で戦争ができたと思った。

 

〔冬〕

暗いニュースばかり続く。

貴族達は情報の隠蔽をはかってるらしいが口コミによるとロシアはぼろ負けしたらしい。

 

「さらなる重税が課せられたら・・・。」

飢え死にが確定する。

そんなことはまっぴらごめんなため、あたしは村の者達を集めて革命を促した。

 

「なぜ生活が辛いか・・・それは王と貴族のせいだ。増税と言って民を苦しめる。立ち上がるんだ!!私達は家畜ではない!!人間だ!!」

 

〔西暦1585年春〕

戦争は終わった・・・しかし革命は始まってしまった。

 

「立ち上がるんだ!!あたし達は国の家畜ではない!!人なんだ!!」

 

「貴族だけじゃない!!司祭もあたし達から富を奪う悪だ!!」

こうした運動はロシアを包み込み・・・紅くした。



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北邦の8年間

〔時間は戻り西暦1592年冬〕

星二号作戦は順調に進み、更にSBはついに成果を出した。

 

「ネジの原理か。」

ライフリングである。

時計技師がSBに呼ばれ、必死に命中精度を上げていたところ、たまたま試作した物がライフリング加工された大砲だった。

命中精度、射程の項目に余裕が出来たため、何とか陸軍の要望に答えることが出来るようになった。

・・・北邦の恐ろしいところはそこで完結しないことである。

ライフリング加工はすぐにプレス加工と組み合わされ大量の大砲を所有できるようになり、ライフリング加工は鉄砲にも応用された。

更にネジを止める金具にもライフリング加工の有効性が実証され、さらなる精密機械を作ることか出来るようになった。

蒸気機関の発展も合わさってゆったりとした産業革命が始まるのであった。

 

〔西暦1598年秋〕

北邦全範囲鉄道計画が採択され、国家の一大プロジェクトが開始された。

また、自転車の普及により自転車用道路、馬車道等の整備も合わさってインフラ大改造が始まる。

 

〔冬〕

 

「この理論を原理主義の基礎と命名する。」

ある地方大学教授が上記の社会主義の名前を原理主義と変えた理論を発表したが、総スカンをくらう。

 

「人間皆平等だったらキョンシーは違うことになるし、侵略軍も我々と同じなら我々も侵略軍と同じと言うことになるだ!!」

あってるようで間違っている回答が新聞に掲載されたがためだった。

この国は個人主義ではなく国家社会主義である。

後に持論を撤回した教授は国民共同体なる国民の余力を分配することで全国民が幸せになればいい、但しそれらは雇い主や労働者の立場は必ず有りうるためそれを調停するのが政府でもあると回答している。

 

〔西暦1600年春〕

政府が大韓民国政府と技術交換をし、海軍の情報とインフラ関連を交換した。

ただし、大韓民国は機関車をまだ正確に理解できていないのでレールの上を馬車でひかせるのが伝わった。

 

「海軍・・・あれ?いるか?」

芳香ここで海軍が無いことに気がつく。

 

「・・・イギリスの船をパクるか。」

設計図はある(スペインやイギリス)ので木造大型戦列艦が製造開始された。(輸送船の方が大きくて速い船なのはご愛敬。)

 

「私の知識では産業革命は無理じゃからな・・・ここいらで更に教育をあげる必要があるかの・・・。」

金糸雀の指導のもと、拡大教育が始まる。(詰め込み教育の強化版)

 

「国民総賢人化計画かしらー。夢が広がっていくかしらー。」



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江戸幕府

【江戸城】〔西暦1601年春〕

俺は改めて改良された米や麦と青森の国絵(地図)を渡した。

 

「確かに受け取った。」

家康と秀忠は真っ先に徳川家についた斎藤家を譜代大名として扱った。

理由としては有力譜代大名であった伊井直政が関ヶ原にて受けた傷が治らずに下半身不全になってしまったのだ。

少しでも徳川家の戦力が低下したと見て未だに元気な豊臣家が関西で暴れられて経済が崩壊すれば目も当てられないため、数十年かけて巨大な経済力をつけた青森を建前だけでも支配する必要があったため、この配慮をしたのだが、龍興は

 

「譜代では不味いと思う・・・代わりに江戸まで船で行くことを許可してくれ、勿論500石以上の船を使うことはしないし、隻数もそちらが決めてほしいが。」

 

「枷でもあるんだがな・・・例外的に幕政に参加できるようにはするぞ。」

 

「そんなの要らないんだがな。」

 

「人質だよ。お前も年だ。ワシよりも長生きはしないと思うがな。」

 

「天下人が長生きなのは良いことだ。政治が安定するからな。」

後に参勤交代の移動期間と財政の圧迫を回避できる唯一の藩となる。

 

〔西暦1602年秋〕

江戸城にて道元に家督を正式に譲ったことを家康と秀忠に伝える。

また、徳川忠吉の移動が完了し、秋田家の旧家臣も吸収して50万石を保有した。

ここに秋田徳川家が誕生する。

 

【伊達領 仙台藩】

マニュファクチュア(工場制手工業)の波及が伊達家に伝わった。

 

「こりゃあいい。最高だ。」

居城を仙台に移し、仙台藩が確定し戦国が終わろうとしているのを感じていた政宗はどうやって国力を上げるか必死に考えていた。

できることをしなければならなかったので農地の開拓、治水工事、産業の育成をしていたがこれといった特産品が無かったのだ。

 

「よし、この方法を使い大量の農具を作れば・・・。」

残念なのは政宗以下家臣達も米こそが収入だったために石高と本税だけを意識した藩政となる。

 

【上杉家 越後藩】

対して上杉は120万石を保有していたが、幕府の警戒を避けるために20万石を家臣に分配して寄子の藩を5家作成した。

その穴埋めに工業を目につけ

 

「越後平野の開発と工業の発展をおこなって加工品を専売し、他国に売れば上杉家は200年安泰になるでしょう。」

直江兼続が主導して毎年黒字の上杉家と呼ばれる基礎を作っていく。

 

【青森藩 評定会】

青森藩では他国に売る肥料作りを急いでいた。

 

「食べ物は食べれば無くなる。しかしだからみんな作る。しかし肥料は作らない。なら売れる。」

このように売れる商品を作り続けるため評定会と青森藩、藩民は豊かであり続けた。



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水銀燈project

【江戸】〔西暦1604年夏〕

徳川秀忠の長男が誕生する。

後の家光である。

道元が贈り物を持って登城し、無難に対応してきた。

 

【青森城】

一方こちらではある人物が来日していた。

 

「おばかさん!!ホントにホントにおばかさん!!」

数百年間財務大臣席に居座り続ける経済界のトップ・・・水銀燈財務大臣である。

 

バンバン

「なんで大型船の製造を北邦や大韓に依頼しないの!!幕府に目をつけられる?なら外国用と割りきりなさい!!北邦の港に一旦止めてそこから中型船に積み替えればいいでしょ!!」

 

「競争意識がたりないわぁ。ガンガン輸出攻勢かけなさいよ!!私達もかけるけどあなた達は市場が目の前に転がってるのになんで安定思考で動くの!!」

 

「もっと貪欲になりなさい・・・あら?なんで賭け事をしないのかしら?治安が悪くなる?あまい!!競馬、チンチロ、花札・・・政府(藩)が仕切りなさい。」

水銀燈のストッパーである官僚や他の大臣がいないのでガンガン経済方針や改革をさせる。

評定会も目の前の人物が子供の時から北邦を大国に1から導いたレジェンドの1人(ローゼンメイデン組と宮古芳香が伝説の開拓者として名を残してる 準レジェンドとしてネロもいる)の助言を聞き、すぐに改革を断行した。

 

・・・メジャーリーガーに投げ方を注意されたら誰だって変えるでしょ、それと同じ理屈。

 

「あと江戸城に登城したいんだけど良いわよね。」

 

軍事課長(元帥クラス)「龍興行け。」

運搬課長「龍興Go。」

評定会会長「龍興頼みました。」

 

「俺・・・出家したんだけど・・・。」

 

財務課長「斎藤家の給金ストッ・・・」

 

「やるからそれだけは止めてくれ!!」

泣く泣く船で出発する龍興であった。

 

【江戸城】〔数日後〕

とにかく急いで江戸まで行き、家康と会談できることになった。

 

「どうした?龍興らしくないな。そんなに慌てるとは・・・。」

 

「北邦の【老中】クラスの人物が将軍に貿易や経済の件で話したいらしい。・・・女性だが北邦の地力を日々上昇し続ける女傑だ。幕府にも利益があると思ってな。」

 

「北邦とは貿易をしたかった。ただ江戸では危険だから小笠原諸島で貿易港を作ろうか重鎮と話してはいた。」

 

「彼女は北邦の経済を全て操るので一発で経済関係の条約は決まるでしょう。」

 

「楽しみだと言っておこう。」

 

〔数日後〕

 

「初めまして将軍様。」

綺麗な正座をする水銀燈に幕臣はざわつく。

 

「私から幕府に求めることは貿易だけね。経済を発展させてアジアで大貿易網を作りたいのよ。」

 

「ほほう?」

 

バサ

「商売といきましょう。」

巨大な地図を水銀燈は広げた。



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水銀燈100年の計

バサ

水銀燈の地図には各国の国境が書かれていた。

 

「まずは国境の整備をしたいのよ。これまでは曖昧で日本もなんとかなったかもしれないけど、倭寇の対処や貿易に必用なのよ。」

 

「それはそれは・・・。」

 

「あと貿易港をどこにするかも教えてほしいわ。」

 

「この場では決めかねぬな。」

 

「そう・・・時は金なりよ。」

 

「・・・。」

家康はあまり水銀燈が好きにはなれなかったらしい。

天下人に対して無礼に思ったのか、水銀燈のエリート意識・・・上から目線が三河魂を刺激したのかはわからないが・・・。

ただ、横から水銀燈を好意的な目で見る人物もいた。

秀忠と忠吉だ。

 

「・・・将軍になったら語り合いたいな。」

秀忠は武がなかったが、内政については心得があったため有効性を気がついていたらしい。

忠吉は領内の発展に貿易が絶対必要と考えていたので水銀燈の行動を気にしなかった。

 

「また来るわ。」

去り際に水銀燈はそう言った。

 

【東雲グループ】

 

「1から作ったから滅茶苦茶時間がかかったよ・・・。」

時代を数百年間先取りした銑鋼一貫製鉄所と石炭発電所、バイオコークスの製造所の建築をしていた。

 

「アラスカ銀行や政府の銀行、他の財閥から借りまくった金を返せるよ・・・やっと。」

これにより東雲グループの業績は一気に回復・・・いや、発展したが、他の財閥の借金返済として設計図を売却したため、東雲式銑鋼一貫製鉄所、石炭発電所が各地に作られることとなる。

 

【SB】

 

「東雲はがせさんがやってくれた!!これで更に良質の鋼を使った武器が造れる!!」

武器関連も影響は連鎖する。

電気が発達したため、街灯に光が灯り、今までのハーバーボッシュ法等の科学分野の効率が上昇した。

SBが喜んでいるのは東雲式銑鋼一貫の中にある連続鋳造による納期短縮が本当は嬉しかったようだ。

 

【地獄 四季映姫の部屋】

四季映姫は北邦に関するレポートを読んでいた。

 

「・・・文明発展がモザイク過ぎる・・・。」

戦艦に関してはほぼ最下位、農業は別次元、政治の熟成もほどよい、武器は1世代前、戦術は最先端、国民意識は高い。

 

「・・・まぁ楽園にはなってるわね。」

 

「映姫さま~宮古芳香が購入した惑星の状態です。」

 

「・・・まだ都市ができたくらいですね。まぁ監視は続けましょう。」

 

バン

「四季映姫様!!一大事です!!」

 

「どうしました。」

 

「地下ラボのフロアC-11号室にて作業中の旧大日本帝国の亡霊が一斉に放棄、フロアC全般に普及し、警備用のキュベレイが1台略奪されました。」

 

「ふぅ・・・鎮圧しなさい。」

 

「更に悪い知らせです・・・実験中の牧瀬紅莉栖博士、岡部倫太郎博士、橋田至準教授以下大日本帝国陸軍亡霊4名がキュベレイと共に異世界に・・・。」

 

「あぁもう。私の管轄外でしょ・・・トロツキーに連絡しなさい。」



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そびえと

【北邦共和国 農北】〔西暦1605年夏〕

政権をとって5年・・・サヤカは革命途中から資金や物資の援助をしてくれた北邦(主に藤原財閥)の重役達と会談していた。

 

「今後も何とぞ。」

 

「いえ、こちらも【安全】が手に入るのなら必用な投資ですからな。」

安全とはソ連とポーランドの戦争で出る利益である。

ソビエトは革命によって王族や貴族の金を得ることができた。

それを使って人工国家ソビエト社会主義共和国連邦の土台を固めている最中である・・・最中であるが故に隣の強国ポーランドが鬱陶しかった。

 

(ポーランドのモロトフ・リッペントロップ協定の境界線まで奪わなければならない・・・安全面で。)

サヤカの頭の中では社会主義など革命の建前でしかない。

協力してきた貴族も一部を除き革命闘争中に亡くなった今、労働者と農民の国であるソ連は小さい内に農業改革を断行したのだ。

まず北邦から農業顧問と作物を買って自国の生産性を高めていっる・・・ここまでが建国からの5年間である。

北邦は農業大国でもあるので農作物を輸出したいのであまりソ連の農業推進に賛成していないが、革命による農地の荒廃はそれを黙らせるほど酷かったのだ。

また、ウクライナの穀倉地もまだ手に入れてないため本当に死に絶えの小動物でしか今のソ連はなかった。

 

(役回りがこんなのばっかり・・・。)

前世から苦労が絶えない彼女はそれでもニコニコと藤原財閥のご機嫌をとった。

 

・・・まぁサヤカの苦労はロシア人には好意的に受け取られているのはせめてもの救いだろう。

 

【青森】

北邦を挟んだ赤い国が七難八苦しているのを知らない青森では水銀燈の改革が実を結んでいた。

貿易摩擦覚悟の輸出の大攻勢は北海道の道民の意欲向上に繋がった。

 

「青森何かに負けるな!!」

 

「北邦に勝つぞ!!」

両者の意地のぶつかり合いは青森が優勢だった。

まず賃金の違いがあり、更に北邦製品の転売が可能な青森はとにかく金、銀を溜め込むことができた。

煽りはそのまま江戸幕府・・・ではなく豊臣家に直撃した。

二代目将軍徳川秀忠は北邦の貿易を開始、江戸で同じ商品は売れないので大坂が狙われたのだ。

良くも悪くも豊臣は成金であったため金遣いが荒いため散財の限りを尽くした。

それは徳川への嫌がらせでもあり、見栄でもあったが・・・その金は青森以下奥州、関東にばらまかれた。

数十年前倒しの貨幣経済が浸透したことにより更に青森の製品が売りやすくなるという未曾有の好景気となっていた。

・・・まぁ北邦も儲けてはいるが。



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1605年 世界

ここで1605年の世界情勢の解説を挟ませてもらいます。

物語の後半に関わるので・・・

 

 

スペイン

欧州三大海軍国としてメキシコ、南米、アフリカとの貿易でめちゃくちゃ元気な国。

イギリス、オランダと貿易協定を結んだためフランスの偉人が出るまではフィーバータイムが継続するようだ。

 

イギリス

北邦、日本等アジアの品を欧州に届けることで莫大な利益を得ている国。

欧州三大海軍国の1つ。

オランダとは貿易品が被っているので仲は微妙である。

・・・が、産業革命の第一段階の囲い込みが始まった。

めちゃくちゃ元気。

 

オランダ

三大海軍国の1つ。

アジアとアフリカで幅広く活動している。

またオスマン帝国とも貿易ができる唯一の国でもある(なぜかは知らないが)。

最近チューリップがオスマン帝国から伝わったらしい。

めちゃくちゃ元気。

 

神聖ローマ帝国

オワコン国家。

現在は小健状態。

 

イタリアの諸国

こちらもボロボロ。

バチカンの権威が下がったので法皇の領土が減っている。

 

フランス

スペイン、イギリス、オランダに囲まれているので軍に力を入れている。

が、宗教関連で揉めている。

 

ポーランド

絶賛赤狩り中。

ただしポーランドも前の遠征で弱っているので抜本的な解決はできていない。

 

北欧

バルト王国が絶賛ノルウェーの切り取りをしている。

経済は神聖ローマ帝国から利益を搾り取っているため回復している。

 

オスマン帝国

北邦の属国その1

外征自粛と北邦とバルカン経由での欧州貿易で復活の兆しがやっと見えてきた。

 

インド帝国

北邦の属国その2

南部の荒廃が酷かったため断腸の思いでイギリスに売ったのが功をそうした。

経済は回復してきている・・・更に無限の人口を武器に綿製品の輸出攻勢をしている。

 

アラブの諸国

オスマンの属国組

元をたどればモンゴル帝国からの分裂体である。

世界情勢にはあまり関わっていない。

 

タイ

北邦の属国その3

北ベトナムの煽りを受けて内乱中だが、米の大量生産による人口増加でなんとか耐えている。

北邦に軍事顧問派遣を要請。

 

モンゴル共和国

北邦の属国その4

運搬用の馬を飼育して販売することにより利益を獲得してきたが、機関車の出現に警戒している。

他にも仕事はあるためめっちゃ元気な国。

 

大韓民国

北邦の属国その5

アジア最大の海軍国。

ソウル、北京、新京の3都市が絶対防衛線。

 

ソ連

今は北邦の傀儡のようなものだが、人民の協力により徐々に建て直り始めた経済と革命的な組織運用術には定評がある。

 

日本

北邦の中間貿易国。

北海道と農南の海路を繋いでいる。

内戦で国内は荒れ放題だが。

 

旧中華

北ベトナムと台湾で生活している。



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3代目 龍元

【青森城】〔冬〕

龍興、道元と2代に渡って表向き知勇優れた義将と呼ばれている斎藤家・・・いや、青森藩の3代目にあたる嫡子が元服となった。

現在15歳である。

名は龍元・・・身長175センチ、体重128キロ・・・デブである。

ただ、彼は一種の病気であった。

どんなに運動しても中々体重が減らないのだ。

・・・駒姫の愛と適度の睡眠等による相撲取りの体型だったため動けるデブであった。

ただなにぶん他の大名の嫡子や旗本には虐められた。

江戸での6年の生活が龍元を精神的に疲れさせた。

 

「3代目は駄目のようだ。」

 

「受け継がれなかったのだな・・・才を。」

 

「斎藤の木偶の坊。箒姫とは真逆よの。」

 

「・・・。」

ただ、悔しがった彼を慰め続けたのは龍元に付けた農業学者である邪義という仮面の男だった。

 

「若!!おれはーこの顔で家族から捨てられた!!お前はどうだ?家族に愛され、領民からーその裸体を見てどう言われた!!豊かの象徴だぞ。負けるな!!負けたら全てを裏切ることになるぞ!!」

そんな邪義の教えもあり彼は一切馬鹿にする者に自身の学や武を見せなかった。

元服し、龍元と名を貰うと彼は地力で評定会の経済課、軍事課、土木課のテストに全てトップで通過し、土木課に進んだ。

 

「り、流通を活性化させるために必要なのは土木関係なんだな。道と港の整備をやるのがおでの使命なんだな。」

ただし、ちゃっかり中尉の階級も取る。

 

「あにきやあねき達にも手伝ってもらうんだな。土木課ってどうしても予算が限られてるんだな。援助してもらわないときついんだな。」

元服して約8ヶ月で1000人の労働者を雇って正規の舗装された道ではなく、脇道を作ったことで使えることをアピールした。

 

道元も龍元とは別の意味で頑張っていた。

 

「息子達の教育費を稼がないと・・・。」

養蜂と石鹸、塩造り、藩営工場の利益の拡大を急ぎ、道元の時には既に藩内に武士が存在しなかった。(建前上のしか)

その為道元は他の藩(主に関西勢)との関係改善にも腐心した。

 

「武士武士って言われてもわからねーだろ。なんであいつら米で生活してんの?金じゃないの?常識的に金使えだろ。」

石高というよくわからない税制度、穴だらけの徳川幕府の経済の法・・・何より理解できないのが末期養子の禁止である。

 

「なんで養子を取るだろ?」

北邦の家族で争うなんて事がほとんどないため御家騒動が理解不能であり、養子を取れない事態に陥ることはないと思っていたのだ。(お前の父親を見ろ。道元)

 

「常識がわからないだろ!!」

必死に認知をあわせていく道元だった。



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沈黙の時間

【青森城】〔西暦1609年春〕

青森城下の拡張整備が開始された。

今まで武器の購入として北邦に払っていた代金が戦が無くなったので削減することができたのだ。

その予算で人で溢れた青森城下の居住区と商業区の整備をすることで堺並みの都市を目指したのだ。

 

「小学校の増築、評定会用の鉄骨のビルの建設・・・豊かになっただな。」

元から青森に住んでいた初老の男性は孫の手を握ったままそう呟き、平和な国にした斎藤家と豊かにしている評定会を愛した。

 

【江戸城】

逆にこちらの三代目・・・竹千代は山積みにされた弟国松の贈り物を見て泣いていた。

竹千代は母であるお江に愛されず、お江を溺愛していた二代目将軍の秀忠も次第に国松を愛してしまったがために竹千代は孤立した。

また、国松は小さいながらも顔立ちも良く、頭も良かった。

対して竹千代はお世辞にも顔は良いとは言えず、運動音痴であった。

 

「三代目はダメだな。」

譜代や旗本、御家人は斎藤家の三代目である龍元のことを言いつつ、暗喩で竹千代のことを馬鹿にした。

 

「・・・。」

そんな家光の姿を斎藤福(以後お福)は母親のお江の代わりに愛情を注いだ。

 

「竹千代様、斎藤龍興殿より巻物が贈られてきましたよ。」

 

「・・・爺か。」

龍興とは3回しか会ったことは無かったが、家光のことを馬鹿にしない数少ない大名でもあり、激動の戦国時代の織田、豊臣、徳川の3傑を見てきた唯一の人物でもあり、贈られてくる書物を大切に読んでいた。

 

「・・・耐えることができる者が最後は勝つか。・・・国松は甘やかされて駄目・・・龍興殿の書物は良いな。俺へのダメ出しもあるが・・・的を得ている。しかも今は武力よりも文治の時代・・・頭の時代か・・・。」

 

「お福も見ております。竹千代様、今日はどうしますか?」

 

「江戸城下の地図を見せてくれ・・・あと筆も。」

ただ、竹千代も将軍になったらどうしたいかという考えは存在した。

 

「江戸の巨大貿易港と造船所を作りたい。」

 

「金平糖も置いておきますよ。」

 

「ありがとうお福。」

まだ5歳ながら頭のキレはピカ一な竹千代であった。

 

【青森城下】〔時間は戻り西暦1607年冬〕

織田有楽斎が城下にて茶道の私塾を開校。

これにみさお、信長、こなた、五和、池田ァが臨時教師として参加、更に・・・

 

「ビクビクビク・・・パァ~旨い!!やっぱり青森産と京都の酒は旨いぃ!!」

貴方の背後に這い寄る軍神こと生涯独身上杉謙信・・・現在はニャル子と名乗っている残念系美少女もそこにいた。




謙信がニャル子なのは調べるほどに戦術が謎過ぎるから


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青森の政治

【青森】〔西暦1608年冬〕

この国初の選挙が実施された。

ただ徳川の監視もあるため色々な工夫が施された。

まず評定会の議席を120に増やし、その下の部署に各約1000の官僚を付けた。(軍人は士官を除いて例外)

合計すると7980名にもなる。

この約8000名にもなる公務員を表向きは武士とし、記録上斎藤家の家臣とした。

更に道元が必死になって周りの主従関係を把握した結果、評定会議長を大老、評定会長を老中筆頭、各課長を老中、その他も役職ごとに建前上の名前を付けた。(まぁ使われるのは外部に渡す書類上だけだったのでここまではあまり関係がないが・・・)

それを利用して議長選挙をおこなったのだ。

まぁ大頭領のようなものだ。

まず選挙管理委員を勤める10名に出馬を表明する書類を提出、次に出馬する者達が集まり顔会わせをし、選挙期間である半年間選挙活動をする。

絶対的なルールとして徳川幕府や他の藩の人物と接触するのは絶対の禁止行為とし、親族や知り合い経由で頼むのも禁止された。

・・・で選挙期間終了間近になると投票用紙が各家に1枚渡される。

家単位なのは人口が完全に把握できないのと政治的な要因のため。

そして各村に置かれている目安箱(通常時は要望を書いていれるための箱)に投票用紙を入れて集計。

結果議長が選ばれ、会長を任命して終わりだ。

・・・で議長就任期間は10年とされ、2期までとされた。(20年まではO.K.)

他にも郡長(現在の県長に当たる)決め選挙も期間は1ヶ月だが似た形で行われたりする。(就任期間は15年まで)

これだけなら一応現代でもありそうな選挙だが、ここから大きく違う。

まず議長には一色という苗字が与えられる。

一色というのが議長という王冠と思ってもらいたい。

形式的には養子である。

一色家という架空の家が与えられ幕府等には議長が変わるごとに一色家に養子が入ったことを報告するためだ。

これと同様に会長にも豊田、町田、石田、弐田、竹田、松田、菱田の架空の家に入ることになる。

で、任期が終わり、議長を辞めると元老という地位と佐藤という苗字が与えられる。

元老は江戸屋敷の管理人となり、幕府との連絡役にもなる。

なので今後元老が3人いるとかの状態になりかねないがそれはそれで管理が楽になるため認められた。

・・・現在元老には例外処置として龍興が就任し、江戸屋敷に送られることになった。

 

「おい!!人質じゃねえかよ!!」

悲しいかな・・・龍興には決定権はないのだ。



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貿易

【北海道】〔西暦1609年冬〕

徳川幕府との貿易でついに硫黄の需要量に追い付いた。

ゴム、火薬、農薬、製鉄・・・北邦の最重要資源だった。

それだけで約6000億円分を輸入したため北邦だけでなく徳川幕府は貿易により莫大な財産を手に入れたのだ。(江戸幕府の直轄地の税収が約6000億円、全体でも9000億円である また、決算は全て銀でおこなわれた)

幕府は色々な物を輸出したため合計1兆もの金を手に入れ、その金を使い生糸、ウール、着物、香木、大砲、酒、毛皮、砂糖を輸入した。

北邦は貿易赤字であったが、インドとソ連で黒字だったので困ることはなかった。

 

「久々に本気になるですぅ!!」

硫黄と電気により完成したハーバーボッシュ法を使って作物の収穫量が上がったため、翠星石が雛苺、はがせと協力して農業の半永続的繁栄・・・高速サイクルを確立するために動いた。

 

「他の財閥にも噛んでもらえたよ。」

 

「さすがはがせなのー。」

 

「えへへ・・・。」

 

「助かるですぅ。」

そんなこんなで会議が始まる。

 

「まずなんだかんだ言っても大半の貿易の主力は穀物や野菜類・・・北邦のアラスカ、農南、農北と3大食糧生産地は豊かな土壌ですが、このままだと地下水不足で不毛の大地になる可能性もあるですぅ。・・・まぁ点滴農法で米以外は大丈夫ですが・・・。」

 

「米は確かに水が必要なの。」

 

「そ・こ・で、水の輸送と土壌の悪化を防ぐ方法を考えて欲しいのですぅ。」

 

「・・・巨大パイプラインを作る・・・のはきついよね。」

 

「土壌問題は頭を悩ますの・・・。」

 

「・・・植物が育つに必要なのは水、光、酸素と二酸化炭素、土の栄養・・・ですぅ。」

 

「・・・とりあえず研究機関を増やして当たりを探すしか無いの・・・。」

 

「せめてLEDが有れば・・・学園都市の地下菜園ができるですぅ。」

 

「電気の供給問題もあるの・・・ダム造りと海水浄水装置の開発、栄養剤で我慢するしか無いの・・・。」

全人口13億と周辺合わせて20億、更に移民中の第二の母星に対しての供給もあるので、食料生産関連は軍事技術よりも優先されていた。

 

「実験のために北海道農業大学の倍の広さの農業都市を作るですぅ・・・。」

農園都市と呼ばれる学園都市を農業特化にしたものが5つもできるほどだからその力の入れようがわかるだろう。

 

【青森城】

 

「さて、生け贄の父親(龍興)は江戸に行ったから全市制を目標にするだろ。」

村と町を全て市レベルの人口にしようとする動きが加速した。



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奇跡のカーニバル開幕だ!!

【北邦のとある場所】〔西暦1610年7月22日〕

 

《普段と変わりが有るとしたら朝の時に小さな地震があったことだろう。》

 

「魚が今日も沢山取れたとよ。」

 

「良かったわ。」

この夫婦が後のキーとなる。

 

13:56分・・・食事中の夫婦の後ろで突然の爆発音・・・

 

「どげんしただ!!」

夫窓から外を見る・・・アラスカ南部、アリューシャン列島よりやや北の出っぱり部分にあるパブロフ山の大噴火であった。

頂上周辺は噴火による爆発で吹き飛び、割れ目からはドロッドロの溶岩と天を突き抜ける煙が見えた。

 

「た、大変だと!!」

奥さんの手を握り、政府から言われていた緊急袋(30キロのローラーバック)をもう片方の手で引っ張りながら避難場所に指定されている学校に駆け込んだ。

 

「山が!?」

学校に到着し、周りが騒いでいたのでその方向を見ると海側の山が噴火による影響で土砂崩れが起こったのだ。

土砂崩れの先には農地だけだったため人的な被害は無かったが・・・巨大な波が発生した。

 

《地面がえぐられた山からは絶え間なく溶岩が溢れていた。2000メートルもある山の3/7が海に向かっていった。・・・津波が発生した。》

夫婦や逃げてきた人達は火山灰から逃れるために学校に入るか、市役所、公民館、博物館、図書館、市民総合体育館のどこか大きな建物の中に避難した。

窓から外を見ると外が灰で真っ白だった。

 

《政府から言われていた緊急時の避難訓練・・・被災してからでないとその必要性はわからないだろう。しかしこの時ほど政府をありがたく感じたことはない。》

役人が各自持ってきた食料品を出すように言われていた。

不安から反対した者もいたが、最後は皆に説得されてしぶしぶ食料品を差し出した。

 

【オランダ領インドネシア】〔数時間後〕

扇のように広がった津波は北海道に1メートル、日本の太平洋側に1.8メートルの津波が襲ったが、それは余波であった。

インドネシアでは暑い日差しの中農作業がおこなわれていた・・・が、威力を増した20メートルの津波により80%の人口と75%の建造物、90%の収穫が消えてなくなった。

オランダの領館も波で流され全滅、以後オランダは日本との貿易をすることができなくなってしまった。

オランダだけでなくスペインのいるフィリピンも18メートルの津波により壊滅的打撃を受けたため奪える者を奪って撤退、イギリスも拠点であった北部が津波で流されたためオーストラリアを一時的に放棄する被害を被ることとなった。

 

 



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カーニバル継続中

【江戸】〔噴火からすこし経過して〕

空前の好景気に世間は秀忠に一色であった。

 

青森の歩き巫女の情報

 

『大御所様と将軍様について。』

 

江戸の町人A

『将軍様だな、江戸の拡張で金が沢山もらえてな。大御所様の時より金が多くもらえるからな。』

 

行商B

『みんなの財布が緩いから沢山儲かりまっせ。』

 

オフレコ 御家人C

『大御所様は戦に関係することは確かに凄かった。智謀や戦略、戦術、指揮能力・・・ただ、治世となれば秀忠様だな。』

理由は簡単・・・戦が無いため各大名が自領の内政をおこなえたことに・・・公共事業による金のサイクルが出来上がったことと、輸送網の発達により魅力的な商品が各地で売買できるようになったため金を使うことが増えた等だった。

 

【とある建物の中】

 

「貿易商としてもこれは美味しいですな。」

北邦貿易会社の幹部、青森の貿易商人、幕府の重役が薄暗い部屋で話し合いがおこなわれていた。

 

「本多正信殿は苦しそうですな。」

 

「ククク・・・全く理解してない幕府の他の重役達がな。」

 

「経済をですかな?」

 

「しかり。後50年から60年で好景気は終わり、貿易の制限をする馬鹿が出そうで怖い怖い。」

本多が言うことは的を獲ていた。

土地は有限である。

無限に開拓出来るような土地はないのだ。

例外は北邦くらいだろう。カナダの一部も開拓してアラスカに編入していたりしている。

 

「それはまだ先の話・・・北邦での噴火により不味いことが起きるかもしれません。」

北邦の社員が話す。

 

「詳しくお願いします。」

青森の貿易商人が食いつく。

勿論本多正信も聞いている。

 

「海流・・・いや、波の流れが変わりました。」

 

「何か問題でも?」

 

「波の流れは熱を運ぶのです・・・焚き火に団扇で風を送ると風の方向に火が向かい、一緒に熱も移動するでしょ。・・・その団扇が壊れました。来年から数年にわたり冷夏が予想されます。」

 

「ケケケ・・・幕府的にはありがたいな。大半の大名が没落するからの。・・・前田、伊達辺りは危ないかもしれんな。」

 

「大名貸をするでしょうな。」

 

「利子で商人は儲かるの。・・・一枚噛ませろ。」

 

「では許可が降りたと見ますね。」

 

「ケケケ・・・任せろ。」

大名貸とは大名に対しての借金であり、年利率10%から20%という現代なら暴利の借金である。

許可は要らないのであるが、借金が莫大になると踏み倒し(お断り)が発生するため、それを押さえるための手段として幕府を使うことにしたのだ。

これは八代将軍吉宗の時代に崩壊するがそれまでは有効な借金の取り立て方法であった。



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家光

〔西暦1611年秋〕【アジア】

北邦の予想通り冷夏となりアジア全体で飢饉が発生した。

北邦は第二の母星に強制疎開を決行したことで約1億人の食料削減した。

・・・が、日ノ本では関西を中心に大飢饉が発生し、約20万人が死亡、大韓民国、モンゴルでは備蓄を食いつくして難を逃れたが、台湾、東南アジアでは飢饉により全滅という最悪の結果になった場所もあった。

・・・人口全滅で一番心配されたソ連は数年前から地道におこなっわれてきた農業の集団化、効率化、北邦からの肥料の輸入、ジャガイモ等の作物の多様化、畜産業の強化により逆に輸出するほど余裕があり、軍役の改変、第一次産業と流通網整備に国家予算の大半を使ったことで現状は社会主義の基礎作りに奔走した。

今回の件で飢餓で麻痺し始めていたインドはソ連編入主義が生まれることとなり、カースト制度の崩壊が始まった。

 

【ソ連 クレムリン】

 

「・・・軍を半分放棄して正解だった。」

 

「流石です。同志サヤカ。」

サヤカは現在共産党最高指導者兼人民委員会議議長という独裁体制をひいていた。

軍の縮小は民間人からなる赤軍が元軍人からなるソ連軍を吸収したことにより達成し、赤軍幹部はサヤカとソビエトに忠誠を誓っていたために軍縮を受け入れられたのだった。

 

「あたしの代では国力回復だけに注ぎ込みます。」

 

「それがよろしいかと同志サヤカ。」

 

【インド】

絶賛内戦中である。

人口があるのに政府が弱いと内戦になるのは自然の理である。一応北部を完全に押さえているインド帝国が優性だが、内部にはソ連編入主義者や反政府主義者がいた。

一方中部では群雄割拠であり、人口の2%が消滅する激しい戦闘が続いていた。

南部はイギリスがアジアで打撃を受けたためその損害を補填するために大規模な移民を開始し、オーストラリアの代わりに流刑地としての役割もあった。

 

【第二の母星 銀星】

豊かな大地に大規模な農園、今回の件で工場も建てられ比較的順調だった。

また、この星経由で北邦に神界からの家畜を輸入したりしていた。

そんなこんなで結構儲かっている。

 

【青森】

 

「人の不幸で飯が旨い!!」

財務課が不謹慎な発言をしているが、輸出することが可能だった青森では跳ね上がった米相場によって天文学的な利益を得たのだ。

支配下の商人を使って借金漬けにした技術者や学者を青森に招くことで更に国力と技術を上げるという恐ろしいことをやっていたが・・・。

更に競馬場、藩営賭博場、藩営風俗等もできた。



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大坂の陣

こんなにつまらない大坂の陣があっていいはずないので改訂します!!


【大坂城】〔西暦1614年冬〕

約60万石まで没落した豊臣家。

病気だが大谷吉継が必死に土台を支えていた。

・・・が、大谷が淀殿に嫌われ孤独死すると遂に亀裂がはいる。

家康もこの機会を見逃すほど甘い人物ではなかった。

全国の大名に討伐が命じられると約2万5000の兵力を連れて真っ先に斎藤家が呼応した。

 

龍興

「豊臣死ね。ついでに淀殿も死ね。」

 

道元

「豊臣死ね。奥の者は誰一人逃すな。常識的に考えて。」

 

龍元

「初陣なんだな。」

斎藤家三代が家康に迫った。

しかし・・・

 

「待たれよ。この戦ただの戦では有らず。日ノ本の主を決める戦いぞ。勝手な行動はいかに龍興殿の頼みでも無理である。」

と先鋒に任されることはなかった。

代わりに伏見城に入城して待機するように命じられた。

 

【伏見城】〔3週間後〕

伏見城に着くとすぐに情報を集め、大坂の全容を3代と将官達で話し合っていた。

 

「大坂の豊臣も厄介な者を集めましたな。」

スーツの老人大将が話す。

 

「大友親盛率いる旧大友家臣団、故小西行長、故加藤清正、故福島正則の家臣及び親族衆、元黒田家家臣の後藤又兵衛、旧キリシタン大名の明石全登、塙団右衛門、浅井政高、毛利秀秋、内藤元盛、仙石秀範、南部の生き残りの北信景、井上時利、大野治長・・・中々の猛者揃いです。浪人合わせて・・・12万7000程でしょうな。」

 

「私は反対だったがなこの戦争は・・・まぁ結果的には良いか。」

中年デブの大将は大坂城の地図と政治的な理由を話していく

 

「これ以上の斎藤家の活躍は斎藤家にとっても幕府にとっても損でしかない。危険視されるのがおちだろう。・・・道元中将、なぜ徳川幕府は豊臣を攻め滅ぼす必要がある?」

 

「不穏分子を抱えたくないからだろ。一度天下をとったことによる恐怖。」

 

「5点だ。ならなぜ足利義昭は生きていた?なぜ織田家は攻め滅ぼされなかった?理由は頭を下げたかそうでないかの違いだ。今なお豊臣家にとって徳川家康は家臣であり、五大老の1人でしかないのだよ。そう、征夷大将軍となり幕府を開いてもな。豊臣家は何度も家康に頭を下げるチャンスはあった。しかし淀君のプライドが許さなかった。幕府そこまで来て攻め滅ぼす必要ができたのだ。」

 

「また、家康も見逃していたんだ。豊臣の財力を。徳川や青森は確かに豊かだが、富は各地に分散している。しかし親族が少ない上に、秀頼以外の豊臣、木下家は死んでしまっている。分散する必要がない富は大坂城の地下に貯まっている。その財力も家康は恐れたのだ。」



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大坂の陣 2

「大坂方もなかなかだが、対してこちらは全国の大名に徳川の譜代、旗本、御家人か。」

 

「危険性を考えれば徳川の幕臣達と外様に溝があることだけなんだな。」

 

「・・・豊臣は関西を軍事制圧しなかった。もう負けは確定している。後は上手く勝つだけ。」

斎藤家が任されたのは北側。

堀が一番深く、多く設置された防御陣を落とさなければ内堀に入れない大坂城で最も侵入しづらい場所であり、報告によると明石全登、塙団右衛門の両名が防御陣の改築中らしい。

 

「さて、幕府はどう動く?」

 

 

 

【大坂 徳川家康陣】〔数日後〕

 

「斎藤家は秋田徳川家当主徳川忠吉に従うものとし、北側大将徳川忠吉、副将斎藤道元とする。異論はあるまいな。」

 

「は!!」

事実上の攻撃禁止命令である。

南の前田、東の伊達、西の上杉・・・この三家も幕府の譜代が監視役につき、その下つけられた。

不満はあるが忠吉は道元にとって婿殿である。

斎藤家には最大限の気遣いをしていただいたので礼をして斎藤家の陣に戻っていった。

 

【斎藤家陣】

 

「どうやら大御所様は譜代、旗本、御家人に手柄を与えたいらしいな。幕府の権威向上には良いと思うが・・・。」

龍興は不安であった。

龍興はこれでも色々な兵を見てきたつもりである。

織田の弱兵から美濃兵、三河兵、甲斐の武田も一時だが見る機会があった。

関ヶ原はそれらの集大成でもあった。

しかし、今の三河武士は地位がある。

祖父や父親が築き上げた地位が。

それを崩さないことが指名と思っているためどうしても自分の命が惜しいのである。

龍興が一番悲しんだのは井伊家である。

武田より受け継がれし赤揃え・・・小田原の役ではその強力な攻撃力で天下に井伊の名を広めた。

 

「それが・・・。」

井伊直政は関ヶ原の後破傷風からなる様々な病気で死亡していたため現当主は次男の井伊直孝であった。

勇敢で知恵は回る良い司令官だが赤揃えが腐っていた。

 

「見た目だけだな。若い、鎧も新しく傷がない。戦の緊張感もないとはな・・・上杉とはどこで差がついたのやら。」

一方上杉は車懸りの完全コピーに成功していた。

しかし浸透戦術と車懸り、時代は浸透戦術の方が使いやすく、効果的であったが、切り札としてしまい込み、見せ札として車懸りを使用しようとした矢先に監視役が来たのだ。

監視役は本田忠勝の息子である本多忠政で忠勝の息子とは思えないほど無能であった。

 

「これでは上杉が活躍できないではないか!!」

直江兼続は名指しで家康に本多忠政の監視役交代の書状を送りつけるほどだった。



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大坂の陣 3

【大坂城 北側】〔数日後〕

烈火のごとく攻撃する家があった。

池田家である。

池田輝政は豊臣によって父と兄を失い、戦の最中に領地まで失っていた。

その怨みは恐ろしく、池田家は豊臣に怨みを持った者を積極的に雇い入れ、一兵に至る者まで反豊臣で団結していた。

 

「斬り殺せ。一兵も許すな。」

捕まえてきた兵はすぐに斬り殺されるか馬に引きずられて殺されるかと残虐な殺し方をしていたため徳川忠吉の家臣が止めに入るという程のヤバイことをしていた。

恐ろしいのはそれでは止まらず、地下を掘り進め、穴を開けて城内に侵入に成功したのだ。

しかし相手は名将明石であるためすぐに追い返されたが、侵入可能という実績を作ったのは大きく、大坂城の短期攻略が可能という戦略的選択肢が広がったのだ。

しかし、功績を上げた輝政は

 

「虚しいの。・・・戦が悲しく感じるとは。」

輝政は関ヶ原で大名に復帰して既に14年が経過していた。

憎しみのみで全てを動かしてきた男の寿命の蝋燭に再び火が灯る。

 

【大坂城内】〔数日後〕

 

「うって出ましょう!!このまま籠城しても勝てませぬ!!秀頼様の声で突撃を兵に告げさえすれば万に一つの可能性が生まれます!!」

 

「ならぬ!!秀頼は総大将・・・天守でどっしりと構えることこそが最高の士気をあげる方法!!秀頼はださぬ!!」

 

「淀君!!この期に及んでまだそのようなことを!!」

大広間では淀殿と浪人衆の頭達が連日秀頼と協力しての突撃許可を得ようと必死だった。

理由としては兵糧不足と火薬不足が深刻化したのだ。

 

(なぜだ・・・金は有るのに・・・。)

とある豊臣家の武将はそう思うが、東日本の市場をコントロールしていた斎藤家の商人衆は損害覚悟の大値引きと貨幣不足を誘発し、堺にあった大小何百もの商家を身投げに走らせ、大名の倉を扱う商人を買収し、堺の流通網を破壊した。

結果は値引きから一転した値上げと米倉等の戦略物資の秘密裏に江戸へ搬入、治安の悪化による年貢の搬入失敗が相次ぎ、深刻な物資不足になっていたのだ。

・・・この騒動の影には5歳の天才が潜んでいた。

 

「・・・ふふ、溜め込んでましたね。私にかかれば吐き出させることなど造作もないのです。・・・さて、私の商会の軍資金はできました。両替商をしながら北邦でも攻めましょうかね。」

千早商会会長・・・千早ちひろ。

1万両(13億円)を片手にタブーとされていた北邦との金レート交換を始めるのであった。

 

「争え・・・もっと争え・・・。」

 

 



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大坂最終決戦

〔西暦1615年1月〕

パラパラと雪が降り、視界が悪くなった今日この頃、斎藤家では兵達が急いで動いていた。

 

「穴を掘れ!!それを連結させ、手前には土を詰めた俵を置け!!」

スコップとピッケルを振り下ろし、今では1キロに七重にまで延びた強固な防衛陣が出来上がっていた。

 

「体が鈍らないように動かせてはいるが・・・いつまで続くのだろうな。」

 

「おやじ、もう少しで大坂の食料は尽きるだろ。・・・一番怖いのは自暴自棄になって突撃してくることだが・・・。」

 

「まぁ譜代の連中が止めるだろうな。それより忠吉の守りはどうだ?」

 

「双眼鏡で見た感じ・・・こちらほどではないがしっかりしてるだろ。」

 

「箒の奴も来てるんだったな。確か第一子がもうすぐだったな。おちょくりに行くか。」

 

「大将達もいるしな。なんとかなるだろ。」

 

「おではここにいるんだな。」

 

「お前は動け、もう少し!!」

 

「やなんだな。陣中でどれだけ美味しいお菓子ができるか挑戦中なんだな。」

 

「・・・塹壕の一部をくりぬいて窯にしたのはお前か!!」

 

「お前、お前うるさい父親なんだな。別におでだけが使ってる訳じゃないんだな。従軍した料理人も使ってるんだな。」

 

(陣の一部がレンガになってたのはそれか。道元も大変だな。まぁ俺には関係ねーな。)

その時

 

ドン

 

爆発音と共に大坂城の一部の陣か城かがぶっ飛ぶ。

 

「突撃ですな。」

 

「さて、久々の仕事だ。心が躍る!!」

一斉に将官達がどこを攻撃したか話し出す。

 

「たぶんこちらにも来てるだろうな。忠吉様がいるし。」

 

「本命は大御所様だろうな。」

 

「秀忠様のところにも行ってると見て・・・。」

 

「「「あれ?城内空じゃね?」」」

 

「伝令!!明石殿の旗が南にあるとのこと!!」

 

「そうだな・・・道元、龍元に5000と2500を渡すから大御所と将軍を護りに、残りは陽動と思われる部隊を潰してから大坂に入る。」

 

 

 

 

【南側】

196センチ、体重168キロの大きな男が巨体な馬に乗り、槍を振り回していた。

名を秀頼、苗を豊臣。

大坂城では余裕がなく追い詰められたために淀殿の楽観的な見方が無謀だと馬鹿でもわかり、大御所徳川家康の首を取ることだけに突撃を決行した。

 

「私に続け。」

その巨体には似合わない優しい声が兵を励ます。

槍には肉片がついてまるで鬼のようであった。

そのため徳川譜代の部隊は陣の爆発による衝撃と籠っているだけで油断していた譜代の部隊は次々に壊滅。

親族の松平家も3家の当主が討ち取られる被害が出ていた。

 

「勝てる・・・勝てるぞ!!」



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呆気ない最後

【大坂城の北】〔秀頼突撃から10分後〕

 

「突入!!」

援護射撃の中決死の突入が開始された。

3連発の最新ライフル銃なため、大坂城の壁の一部は貫通して抵抗が少なくなった瞬間に周りにいた徳川忠吉隊、池田隊、山内隊、佐竹隊等々も突入を開始、外堀は数分の内に陥落し、内堀も攻略間近な時、別方面では激戦がおこなわれていた。

 

【徳川秀忠の陣】

 

「者共耐えるのだ!!ここで逃げる腰抜けなど我が幕府には有らぬ!!死ぬ気で止めよ!!」

秀忠の部隊は若い者が多くいたた・・・いや、最悪のタイミングで老兵達と交換したばかりだった。

家康は秀忠の政権にスムーズに移行するために大坂に行く前に側付きの老人を秀忠と年の近い若い者に交代したのだ。

そのため秀忠が留まると言った瞬間に真っ青になった。

自分の命が惜しいから・・・。

それを見た将軍の秀忠は身内や譜代を信用できなくなっていた。

 

「糞が。今に見ておれ。」

自身も槍を振り回していたその時、横から駆けつけた伊達の騎馬鉄砲隊によって命を救われる。

 

「大丈夫かよ将軍様よ!!」

 

「政宗殿か!!助かったぞ!!」

 

「前田や黒田、少数だが斎藤や上杉、最上も来てる。大御所様も毛利や真田が護ってる。」

 

「・・・生き残れたか・・・。」

 

「後は俺らに任せな。陣を直してどっしり座っとけ。」

 

【家康の陣】

 

「放て。」

 

バババババ

 

「ワシ自ら指揮を執らねばならぬとは・・・弱体化したな我が軍は。」

家康は大坂城の爆発とともに本陣を捨てて元陣がある場所からかなり離れた場所で雑兵を払いながら絶大な信用を寄せるの丹羽長重(現1万石の大名で元西軍参加者)の陣到着するや否や譜代を中心に攻撃の命令をした。

 

「目的は達せずか・・・秀忠、苦労をかけるの。」

 

【旧家康の陣】

譜代の攻撃をかわして秀頼は肩、わき腹に矢を受けながらもここまで到着していた。

 

「届かぬか・・・。」

 

「秀頼様。」

 

「又兵衛、ここまでこれたのはお前のお陰だ。介錯を頼む。」

秀頼自刃。

この攻撃は家康には届かなかった・・・が、徳川秀忠の譜代に対する失望は今後百年単位で問題となる。

 

【大坂城】〔数分後〕

 

ドドドドド

「ここか!!」

 

「ひい!!何をする!!・・・貴様は朝敵斎藤の家臣か!!」

 

「いかにも、淀殿覚悟!!」

立て一閃。

悲鳴もあげられぬまま、淀殿は絶命。

その後龍興が階段から足を滑らせて足を痛める等という珍事があったが、千姫とその養女を救出し、大坂城は落城した。

天守には徳川の旗が立てられ

 

「三好、織田、豊臣、徳川天下人代わる代わる戦国の世、ついに終わり太平の世。後3代皆偉大なれども苦労絶えず。一色という苗字から斎藤と直し、祖父道三を模して成り上がり初めて見えた別世界。仏が我を見るのなら、我は乞おう斎藤の安泰を!!」



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経済戦争

【青森 千早商会】〔西暦1615年秋〕

青森藩は半譜代と呼ばれる地位に付いた。

この地位には伊達家も置かれ、家康亡き今、将軍秀忠の譜代改易の嵐が吹き荒れた。

その嵐が始まった頃から世界を巻き込んだ戦争が始まる。

・・・第一次経済戦争である。

始まりは青森藩にある大商会(主に北邦との貿易をしていた)千早商会からであった。

 

「慶長小判・・・1万両・・・使いましょう。」

まず北邦の銀行にてイギリスの銀に金1枚につき銀10枚に交換し、日本に持ち帰る、イギリスの銀1枚は日本の1分銀3枚と交換のため30枚の1分銀となり、それを金と交換する・・・日本の金と銀のレートは1分銀10枚で金1枚・・・気づいただろうか。

3枚儲けていることに・・・。

千早ちひろが単純であればこれで終わるだろう。

だが彼女は歴史に名を残す。

この取引は数日間続き、300万両という莫大な金を得ることとなるが、深刻な金不足となりレートが変わる、その瞬間に金を銀に交換し、1.5倍の価値の銀を入手。

凄まじい貨幣の混乱により市場はデフレとなる。

ちひろの攻撃は終わらない。

このデフレ時に船と北邦の最新技術の大量輸入をおこない、残った銀で北邦で金の買い戻しをおこなって青森経済を元に戻し、約100万両の財産と船、最新技術を千早商会は得ることとなり、自国内で鉄道をひくことが可能になった。

・・・初動の遅れた北邦は大量の銀と金、最新技術を自国の金でかっさらわれる結果となり、財務省の水銀燈は

 

「・・・仕方がないわ。貨幣経済に移行するわよ。」

怒りを抑えながら貨幣経済を脱却に向けて動くこととなり、青森藩は千早商会という第三の大企業(評定会と斎藤家が大企業)の出現に国内での商業活動は活性化することとなる。

 

【江戸幕府】〔西暦1616年冬〕

次期将軍の竹千代も譜代の不信感が募っていた。

教育係として付けられた3名以外で弟の国松を将軍に使用としていた輩を名簿に記入し、さらには母のお江のような武士の娘・・・いや、大奥を毛嫌いした。

お福と一部の外様、数名の教育係だけ味方の時期があまりに長すぎたのだ。

 

(父上が死んだら・・・大奥を潰してやる。)

 

「竹千代様、怖い顔をしないで。」

 

「すまんな・・・長門。」

側室として青森の町娘の長門がそこにはいた。

将軍秀忠とお福しか知らない絶体の秘密がそこにはあった。

・・・この長門が江戸幕府を化学変化のごとく一気に方向性が変わることになろうとは・・・今は誰も知らない。



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久しぶりの芳香

【北邦 芳香宅】〔西暦1617年春〕

芳香は政府から離れ、再び隠居生活をしていた。

 

「プラクティビギナール・・・。」

 

シーン

 

「やっぱり神界の魔法は私には才能が無いようじゃな。」

生活に必要な金は政府持ちなので、魔法の練習や書道、盆栽、歴史書の修正作業をしながらのほほーんと生活していた。

 

「やはり私は仏教的な仙術を使う方が良いな。」

蒲原の魔法研究所から様々な魔法いや、術が発見されていたが、芳香に適正があったのは仏教の逸話や伝説を元にした物だった。

 

「紫電。」

紫色は最高位の色であり、雷は様々な逸話にのっている。

そのため紫色の雷を手から出すというものや

 

「導引術。」

特殊な呼吸で体調を整えたりすることができた。

 

「便利は便利じゃが・・・地味じゃな。まぁ邪仙のように悪用する気もないし、茨木華扇殿のように元が鬼から来る力が有るわけでもないからの・・・それよりも神力を宿したこの筆の方が凄いか。」

芳香の愛用している筆は5本一組となっており、それらで字を書くとキーワードの物が現れるようになっていた。

ただし、二文字までという制限があった。

 

《柚子》

 

ポン

柚子の実が現れる。

 

「今日は柚子風呂にしようかのー。」

ただ、芳香は乱用しようとはしなかった。

 

「乱用するほど何かがしたい訳じゃないのじゃ。しかも・・・こんなのごろごろしてるのじゃ。」

聖水が勝手に溜まる湯飲み、仙桃が実る庭の木、悪を断つ刀、イギリスではエクスカリバーと呼ばれている剣の強化版の剣、今は亡き中華の遺産の一族の繁栄を約束する金印等々、芳香の家には様々な物が置かれていた。

別に集めているわけではないのだが、農産物の神力が浸透した茶碗等が勝手に神聖化していくのだ。

川の水も神聖化してその水で冷ました刀や剣も神聖化するという状態であるため、市場で物を買えば1/2の確率で神聖化した物を買えるというなんとも贅沢な状態になっていた。

 

「・・・青森にでも旅行に行こうかの。ハクでも誘って。」

 

【ハクの醸造所】

その頃ハクは自分専用の醸造所を経営していた。

約30種類にもなる様々な旨い酒を造ることで有名であった。

 

「おビール様を崇めなさい!!我々の聖水!!命の源なり!!アハハハハ!!」

完全に酔っているが、これが今のハクである。

龍興が見たら発狂しそうだが、本来の姿はこちらである。

ちなみにこの姿を見た蒲原や小鍛治、フレンダ、佐天は天皇家がこんな酒に溺れて良いのかと頭痛に悩まされたりしていた。

 

ガラガラ

「ハクいる?」

 

「アヒャヒャヒャヒャ・・・。」

 

「まーたラリってるのか・・・これ、日ノ本に行くのじゃ!!」

 

「JAPAN!!JAPAN!!」

 

「これけれ、・・・ダメじゃな。」

芳香は酔っぱらいを気絶させると拐っていった。

 

「これ借りるのじゃ。」



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お茶会

【青森城】〔数週間後〕

こちらもこちらで千早商会のおこなった経済戦争での後始末でどたばたしている時期であり、そんな時に北邦の元最高権力者が来るといったら絶対にクレームの類だと覚悟していたため、千早商会会長のちひろ(7歳)が白装束を着せられて背中にはいつでも火をつけて殺せるように藁の束を背負わされていた。

 

「横暴反対!!」

残念ちひろ、味方はいないんだよ。

 

・・・で、完全に旅行気分で青森を訪れていた芳香は青森城に連れていかれ、(建前の)城主と評定会議長の土下座を前にして一言

 

「私はなにをしたのじゃ?」

混乱しまくりである。

2時間の質疑応答にて誤解は解け、ちひろも解放となったが、芳香から

 

「ちひろ、他人に恨まれたら商人は2流以下になるのじゃ。何人の民をインフレやデフレで傷つけた?それを考えないと辻斬りにあうぞ。」

 

「き、気をつけます。」

ちひろが儲けた金で蒸気機関車と低金利の銀行を作るのはこの会話がきっかけだったと数百年後の歴史書に書かれることとなる。

 

【青森城下 信長の別荘】〔数日後〕

ハクは青森城に置いて、アルコールを抜いてもらうことにし、私は文通していた信長(魔王)と会談するために信長の別荘に来ていた。

 

「お主が芳香か。・・・なんだか北邦を作ったって割には覇気がないな。」

 

「第一声がそれか・・・まぁ覇気を出すほど何かをしようって気はないからのー。しっかし実物はこんなに大きなたわわとはな。」

 

「胸を見るな胸を。・・・で、そんな暇な芳香はなんで青森なんかに?」

 

「なに北邦の盾を見に来たのと、寺巡りをな。」

 

「寺?なんでまた。」

 

「書いてなかったか?私は仏教徒じゃが、北邦には神社はあるが寺はないからの~。・・・まぁお主が仏教徒と戦っておったことも聞いておる。嫌な顔をして・・・子供じゃないのだから顔を作るようにしないと後悔するぞ。」

 

「・・・死ぬ前に言って欲しがった。」

 

「お互いにキョンシーじゃからな。今更くよくよしてもしかたなかろう。それよりも今後をどう生きるかじゃよ。・・・まぁ夢に向かって頑張るのじゃぞ。」

 

「もとよりそのつもりだ。」

 

「その顔じゃ。良いじゃないかの~。」

芳香は信長とその後も色々話し合い、お互いのことを知っていった。

また、本能寺の真実や歴史の裏側を聞くことができた。

 

「そうは言えば・・・五和とか言う部下はどうしたのじゃ?」

 

「五和なら歴史書を作りに旅立った。なんでも日ノ本の歴史を完璧に調べたいそうだ。」

 

「面白いやつなのじゃな。」

 

「行動力があるやつだからな。」



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そんなことより

【北邦】〔同時刻〕

芳香達が青森にいる頃、北邦では再び農業革命の時期がやって来た。

噴火による冷害で被害を受けたことから、生産性の向上と物流の再計画運動を纏めたのがこの第二次農業革命であった。

 

「神力を宿した作物ばかりと言ってもその基礎部分を品種改良をおこなえば更なる生産性向上が見込めることがわかったですぅ!!そして目玉は内燃機関式トラクターの普及ですぅ!!」

上東海道、北海道南部、アラスカの西部の工業地帯から吐き出される蒸気機関の製品により鉄道網も軌道に乗ると余力が出てきたのである。

その余力は普通の国なら軍に向かうのだが、北邦では農業へと向かうこととなる。

 

ガガガガ

「流石20馬力!!力強いべ!!」

北邦の国民はある程度の金は備蓄しているためトラクターを買うのは難しくはない。(企業が値下げ競争をしているのもあるが)

そのため急速に普及していき、勢いのまま残っていた穀倉に適した土地はみな開拓が終わってしまったのだった。

これ以降の開拓は史実のソ連のような湖を干上がらせることをしなければならないため効率は悪いが、農南の山脈地帯の棚田の開発に力を入れていくことになる。

 

【アラスカ銀行】

 

「青森の小娘・・・力の違いを思いしる訳よ!!」

大財閥の藤原財閥は今回の件で大打撃を被ったが、備蓄予算で耐え抜き、反撃を開始しようとした矢先に政府の国銀による新紙幣と貨幣による交換により初動が遅れた。

 

「ぐぬぬ。」

しかし終わる頃には青森も建て直ると見えていたため、別方面に利益の回収をおこなうことにした。

・・・インドである。

北邦政府は北側を援助していたのだが、皇帝が亡くなると一気に守勢となってしまったので損切りを開始していた。

 

「結局、ソ連を使う訳よ!!」

ソ連に2世代前の銃やトラクターの普及により余っていた農耕馬に馬具をセットに販売し、これにソビエト議長であるサヤカは大量に購入し、銃はそのまま侵略に、馬は農耕馬として活用することを決定し、余った馬具はドイツ騎士団に輸出した。

・・・で、その武器を使った侵略はサヤカの全力内政政策を一時的に中断する結果となり、ソ印戦争(1617年冬~1618年夏)が開始されることになり、カースト最下層や下層の協力もあり半年で侵略に成功。

皇族の処刑と農地の集団化により北部と中部の一部は以後ソ連として組み込まれた。

中部の残りはイギリスがちゃっかりもらったが・・・。

なににせよ、ソ連は今回を気に更に国力を増加させ続ける。




北邦 人口10億ちょっと
ソ連 人口3億ちょっと


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動き

【青森藩 津軽】〔夏〕

北海道より暑い夏がやって来た。

私は現在旧津軽城下(現文明都市津軽)に来ていた。

 

「綺麗な町並みと和洋中合わさった食の技術は凄いな。」

 

ゴキュゴキュ

「中じゃなくて北な。(北邦が中華の一部文化を継承したため)お菓子が多くない?」

合流したハクは日本酒(1升ビン)をらっぱ飲みしながら答えてくる。

 

「和洋北だと語呂がのー。」

ここで少し江戸時代の説明をする必要が出てきたので言っておく。

江戸幕府ができて17年も経過し、大きな町(京都、大坂、江戸)の原型が完成したのはこの時期であったが、他の大名はまだ山城から抜け出すことができない者もおり、日本中で建築ブームでもあった。

また有名でないが武家諸法度の現和令が出された時期でもあり一国一城の原則が出来たので城の取り壊しもこの建築ブームによる経済成長に一役かっていた。

さて、そんな他の藩の経済を横目に北邦と経済戦争をしていた青森藩は青森城という流通センターの役目も兼ねた建物であり、城の工事はなく、豊臣政権時代に警戒を招くとして青森城以外の城を破壊していたので、他国よりも早く第二次の貨幣経済の成長により好景気となっていたが、千早商会の後始末によりその好景気も終わりをむかえていた。

 

「しかし・・・ここで第三次好景気とはのー。」

数ヵ月の不景気を吹き飛ばす急成長をむかえていた。

青森の文化爆弾(お菓子類)が江戸や九州、四国で爆発したのだ。

大ブレイクしたお菓子は将軍にも届けられ、将軍御用達という看板を掲げることができたのも人気を更にあげる結果となった。

こうした中、評定会は増えた予算で人口過疎地域の大開発を断行し、更なる金の循環をさせていた。

 

「まぁ金や銀の替えとなる藩札もこの流れを加速させたんじゃろな。」

ぶつくさ言いながら私はお菓子を頬張る。

 

ゴクゴク

「で、そのお菓子の品質管理を徹底させているのがここの後継ぎである龍元ってこと。」

 

「品質管理は本当にありがたいことじゃぞ。言っては難だが江戸幕府から輸出される茶葉はこちらでゴミを取り除かなければいけないかのー。・・・イギリスも日本から茶葉を買わないのはそれが理由だと思うのじゃ。」

この品質管理・・・史実では第一次世界大戦後もできておらず、1930年代でやっとましになっている。

 

「まぁ青森はそんなことがないから・・・ほれ。」

店の中をガラス越しで見ることができ、そこでは洋服や着物を着た女性達が優雅に紅茶を飲みながらケーキを食べていた。

 

「こっちも。」

店先の椅子に腰をかけた若い夫婦が団子を美味しそうに食べており、横には緑茶が入れられた茶碗が置いてあった。



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水戸

【水戸藩領】〔西暦1619年夏〕

 

「なんかなにもないところじゃな。」

 

「あれ?私が北邦に戻った時はここに美味しいキノコの料理を作る村があったんだけど・・・。」

私達はハクが小生瀬村と言う場所を目指して水戸まで来ていた。

 

「旅の人、ここは呪われておる。念仏を唱えながら立ち去りなさい。」

 

「お坊、どう言うことじゃ?」

 

「数年前までこの地には小生瀬村という集落があったが、村人とお侍さんが年貢で揉め、お侍さんを殺してしまったそうな・・・重鎮様が大層お怒りになり、村人を全て殺してしまったのだ。」

 

「じ、じゃあ小生瀬村は・・・もうないの。」

 

「ここがその小生瀬村の跡地ぞ。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏・・・。」

坊さんはそのまま立ち去っていった。

 

「どうするのじゃ?」

 

「・・・ここで生活しよう。村人達を供養したい。」

 

「酒に溺れたハクではなく、久しぶりに天皇としての安徳を見たのじゃ。」

 

「照れるし、もう私は死んでるから安徳じゃないし・・・。」

 

「さてと、久しぶりに腕がなるの~。ここを豊かにして寺か神社を建てることを目標にするのじゃ!!」

 

「おー!!」

 

〔数週間後〕

小さな家を建てた。

芳香も建築技術が上がったため、前のような竪穴式住居を少し良くした物ではなく、近場の素材でコンクリートをつくり、それを使った和風と洋風が合わさった家が建てられた。

 

「とりあえず持ってきた椎茸栽培キットで来年は椎茸の栽培でお金にするとして、今は山菜や二十日大根、川魚で生活するしかないのー。」

 

「・・・でもそれだと神力の補給できる食べ物である二十日大根ができるまでヤバくない?」

 

「いや、こういう時のために飴を3袋持ち歩いてるのじゃ。100個入りだから150日は大丈夫じゃぞ。」

 

「ほっ。」

 

「ハクは本当に酒が抜けると頭の回転速度が上がのじゃ。」

 

「でも、お酒は聖水だから!!」

 

「私もたまにの晩酌は好きじゃがな。」

 

【水戸】〔数日後〕

盗賊を撃退し、その遺品を売るためにハクを残して水戸の城下町に来ている時に、立て札が町の前に刺さっていた。

 

《徳川頼房様入城により祭りを開催する》

とのことだった。

 

(祭りか・・・まぁ今回は私には関係ないのじゃ。)

私はそのまま城下町に入っていった。

 

【城下町】

所々に壊れた建物や火事で半焼した建物があったが、比較的治安も良く、綺麗な町であった。

 

(そういえばここは旧佐竹の領地だったのじゃ。・・・争ったのじゃな。)

佐竹は旧宇喜多の領地のうち10万石となっていた。

理由は大坂の陣で無様な撤退をしたためだった。

25万石近くあったうち15万石を減らされたのだから、その分の家臣が追放され、ここで一揆を扇動したのだろうと色々考える芳香であった。



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世界情勢

【水戸】

芳香は盗賊の遺品を売却し、帰る途中に青森から流れてきた米や麦を村で購入して帰宅した。

 

〔西暦1620年夏〕

世界情勢として、カナダにけっこう食い込んでいた北邦共和国の開拓団がこれ以降は補給ができないとして一時停止。

以後南下を開始する。

電灯が一般に普及するようになり、電線が通り始める。

また、電気の需要増加にともない大規模なソーラー発電所(地獄から持ち込んだ技術その1)と地熱発電(地獄から持ち込んだ技術その2)の整備が開始され、蒸気機関の友好国に輸出が始まった。

ソ連、大韓民国、青森、モンゴルの順に蒸気機関は浸透していった。

 

イギリスの船が新大陸にて町の建設が開始される。

 

大韓民国新型帆船であるクリッパーの開発に成功。(当時5~7ノットが普通の時代に19ノットが出る化け物である)

北邦は大韓民国からの技術交換で大砲技術と交換し、クリッパーを獲得(なお並列生産年間200隻という化け物が北邦、ただ大魔王大韓民国は350隻年産)

来年には日本にも技術が渡るらしい。

 

タイに北邦の米が伝わる。

原種の米が駆逐され食料自給率2500%とかわけわからん数値になる。(タイの土壌は神の奇跡で、原種を適当に撒くだけで近代日本並みの収穫量を誇っていました)

 

北ソ韓土モ間の国境確定及び食料協定、防御協定を確定した。

後に日泰緬が加わる。

 

北英蘭韓の貿易協定成立。

 

〔冬〕

家光と長門の間に3人の子供が産まれる・・・が、縁起が悪いとのことで長男以外の次男、三男は1万石の譜代大名の跡継ぎがいない家に養子にさせられた。(最上領の隣)

 

【北邦 参謀本部】

 

「はぁ。・・・海軍どうするのよこれ。」

この時の参謀総長は海にも精通していた。

海軍の必要性も考えていたのだが、いかせん軍縮と内政に全振りであるため予算が下りなかった。

 

「・・・財閥の私兵の方が兵力あるわよ。海に関してだけど。」

貿易関連はとにかく強くなっていた。

中には独自に戦列艦を保有する企業まであったから笑えない。

 

「・・・計画だけ・・・いや、企業に協力してもらってデータだけでも集めないと・・・はぁ。」

悲しいかな仕事と予算がないとこんな感じである。

 

【財務省】

逆に紙幣化にともない仕事が多すぎて牢獄と称されているのが財務省である。

水銀燈が金本位制の成立に成功したため国民と周辺諸国には緩やかに浸透していったが、その分の苦労は財務省に全て行ったため、北邦でも初めて過労死が発生した。

・・・要するに軍の逆である。



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ニャル子

〔西暦1621年秋〕

やっと結構な量の米等の作物を収穫することができた。

・・・で、この時代の武士の性質を知っていた私は律儀にも田畑の面積等を記入した紙を水戸の役人に提出した。

 

「ふむ・・・おなご、しかも農民の身分にも関わらず良い心がけだな。ところで壇家には入っておるかのか?」

 

「いえ、何分親が亡くなり悪い親族に土地を召し上げられ・・・お役人様、何卒都合をつけてはもらえませぬか?」

私は対価として干し椎茸を10個渡す。

江戸時代の賄賂とは殆どが対価として物を渡したり、日常品を贈ることである。

言うなればお中元くらいの品が良い。

お金は逆に受け取った方も処罰されるので受け取る役人は殆んどいない。

 

ペラペラ

「ここの寺は書物も沢山あり、藩からも評判が良い。少し遠いが良いか?」

 

「ははぁ。」

 

「よきよき。」

 

【寺】

壇家となったので挨拶に私とハクは向かった。

そこでは住職と見習い坊主がお経を読んでいる途中であった。

また、横にある小屋ではそこそこ年を取った坊主が近所の子供達に学を教えていた。

 

「ごめんください。」

 

「なにようか?」

しわしわの住職が出てくる。

 

「壇家となった芳香と言う者です。今回はご挨拶をと思い。」

 

「おぉ、これはこれは。椎茸などと言う高価な物を。」

 

「少量ですが山奥で取れましたので・・・。」

ハクも挨拶をしてその日は終わる。

 

〔数日後〕

畑を耕耘機(北邦から持ってきたが、青森では渡しそびれたため使用していた 内燃機関で木炭でも動くように改造済み)で耕していると青森から使者がやって来た。

いや、使者なのだろうか?

 

「ニャル子です!!又の名を這い寄る軍神上杉謙信と申します!!今日は青森からのお届け物をと言われてここに来ました!!あと、ここに今日から住みます。」

私はここ1800年近くで抵抗があるのでなんとかなったが、ハクはめちゃめちゃ驚いていた・・・いや、引いていた。

そんなこんなでニャル子が仲間になり、私達は畑を耕し紙を買っては知っている歴史を書き込んでいき、寺で書物を漁り、又書き込んでいく。

そんなこんなで数十年3人で暮らすのであった・・・。

 

【北邦】

大軍縮は師団数を減らすこととなった。

150近くあった師団は25師団にまで削られ、武器の開発費以外は大半が削られた。

軍需はお寒いが内需は技術力、開発力、文化は世界最先端をつき進んでいた。

重機の発展によりいよいよ水が無くて農業が難しい場所のための治水工事が始まるのだった。



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で、幾年過ぎる

【江戸】〔西暦1632年冬〕

徳川秀忠が死亡し、家光の親政が開始される。

 

「徳川8家の召集をおこなう。」

まず家光がしたのは徳川と名前がつく家康の血縁7家の召集であった。

秀忠の治世の時に秀忠の兄秀康の長男忠直に徳川の苗字が与えられ、7家に加わっている。

そんな忠直の福井藩(21万石)に秋田藩(50万石)水戸藩(25万石)紀伊藩(55万石)尾張藩(61万石)これに自身の息子であり、他家に送られたものの、家光は旧最上領の酒田藩(20万石)因幡国の鳥取藩(15万石)が7家である。

家光はこの7家を各地方の監視役として改めて任命し、幕府として期待した。(酒田と鳥取はまだ期待できないが)

 

「次は・・・斎藤の爺と伊達の爺を呼ばねば。」

 

〔数時間後〕

 

「「上様、私めになんのご用で?」」

 

「楽にせよ。人払いは済ませておる。」

 

「んじゃ、楽にするぞ。」

政宗は老人となっても覇気をまとった戦国の大名であった。

 

「ふぅ。なんで俺は長生きしてんのかね。」

そして龍興である。

85に迫り、三英傑を生で見ている人物であり、さらにはその3人に戦で勝っていた。

また政治にも強く青森という極寒の地を貿易と米の品種改良(と思われている)、新農法で豊かな土地にした天才である(と家光は思っている)。

 

「内政について考えていてな。なにか案は有るか?」

 

「したらば」

政宗を龍興が制止させる。

 

「上様、なぜ外様である我々に言うのですか?まずは譜代に聞くのが順序かと。」

 

「・・・一部を除き堕落した譜代に聞くのならば有能な外様に聞くのが筋である。また、北邦と貿易しているが、いつ戦になるかわからない状態なのに大坂での譜代の活躍を聞くと・・・な。」

秀忠は死ぬ間際まで譜代を信用せず、一部の血縁者と独裁により政治をおこなってきたが、家光は独裁者の器はなかった。

そのためこうして外様や親族に頼っているのだ。

 

「・・・我々は何も言ってないことにしてくだされ。・・・北邦と大韓は軍縮をおこなっており、数百年は攻めないでしょう。まず変えるとするならば農法、次に工業、次に鋼と船の量産、最後に武器。これは鉄則としてくだされ。」

 

「俺は内政だけでなく貿易の拡大をするがな。残念だが俺の仙台藩は農業国だから青森みたいな国力はないが、港を整備したことで食料が足りない地域に輸出することが可能だ。今の日ノ本もうちと似たり寄ったり。だから売れる物を売って金にしてそれで技術を買い、内政に費やす。」

 

「農法に関してなにかあるか?」

 

「うちの職人が北邦からからくりを輸入したらしく、それが田畑を耕すのに良いらしい。詳しくは後日に現物を見せましょうぞ。」



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寛永の改革

【江戸】〔西暦1632年正月〕

家光は全大名を集め広間にて宣言した

 

「祖父や父はそなた達の力を借りて将軍となった。だが余は生まれながらの将軍である。余に家臣として仕えることに異存の有るものがおれば・・・ただちに国へ帰り一戦交える支度をせよ!!決して邪魔立てはせぬ!!」

 

「その時はこの政宗が上様の代わりに出陣いたす!!」

 

「我が強兵青森男子の錆となる覚悟をいたせよ!!」

ここに家光の時代の強硬な基盤が出来上がる。

この数日前に家光の弟忠長が発狂の後に自害していたため、諸大名は色々と不安になっていたが、今回の宣言により幕府に逆らう勢力はいなくなった。

 

〔春〕

後に寛永の改革と呼ばれる一大改革が始まった。

先ずは家康、秀忠が大きくした大奥の大粛清をおこなった。

今の家光の正室は公家の鷹司孝子であったが、不仲であり、権力は育て親のお福と嫡子を産んだ合理主義の長門であった。

2人は家光の粛清に賛成し、約200名いた大奥を20名まで追放した。

大奥は2人の女傑に任せた家光は政治改革に乗りだし、老中・若年寄・奉行・大目付の制を定め、将軍を最高権力者とする幕府機構を確立し、徳川7家から緊急時の最高権力者である大老が出される決まりも定められた。

この時に酒井忠利に武家諸法度の改定に着手を命じている。

 

〔夏〕

キリスト教の布教禁止を発布し、数年早くポルトガル船来航を禁止する。

ただし現キリシタンは布教しないのなら引き続き信仰することを許される。

 

〔秋〕

 

「そもそも余は北邦の地や大韓の地を知らぬ・・・制度や内情を知るためにも使節を派遣しよう。」

将軍である家光自身が直接向かいたかったが無理だと判断し、幕府から伯父である徳川忠吉の派遣を決定した。

忠吉は徳川家の中で長老的立場であり、家光は昔に叔父も北邦に行きたいと言っていたのを聞いていたのでこの人事となった。

また、若手の下級武士、外様でも希望した大名は北邦に向かうこととなった。

案内は斎藤龍興が務める。(大韓民国は対馬藩が案内を担当)

 

【北邦】

使節は北海道に広がる工場と見慣れる機械に驚き、さらには農民と思われる人物達の知識の高さにただただ驚いた。

今回の使節は内部調査だけなので簡単に済ませられ、書物や古い文献を読み漁る者もいれば、政治の仕組みなどを北邦政府の案内人に聞く人もいた。

共通したことは

 

(((日ノ本も改革に着手せねば!!)))

ということだった。

友好の証として北邦からはクリッパーを送られ、使節の証言を基に家光は近代化を進めていく。



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寛永の改革 2

【大坂】〔西暦1633年春〕

将軍家光は使節団が北邦(大韓民国)にいる間にも改革は進む。

 

「セッセッセッ。」

 

「いっせいの!!」

 

「壱班遅れてるぞ!!」

大坂城の改修工場と堺の拡大工事がおこなわれていた。

堺は現在越後屋(三井の前身)、住友、鴻池の生き残った両替屋と今井、津田、茶屋、角倉を含めた7家からなる豪商が堺を仕切っていた。

青森と堺の経済戦争にて敗北した彼らは関西の人脈と幕府の改革を追い風として自分達の富を貯えると、そこから協力して青森に負けない経済力をつけるために様々な

融資をおこなって産業を独自に育てていった。

幕府はこの動きに乗っかって、青森藩から輸入した製紙工場、製糸工場等の官営工場を建て、その技術を民間に転用させた。

 

【江戸】〔冬〕

帰国した使節団は幕臣や忠吉はすぐに近代産業への改革を求め、他の藩の家臣達は自分達の藩を豊かにするために戻っていった。

 

「伯父上、北邦はいかがな場所で?」

 

「うむ・・・見たこともない鉄の箱に車輪がついた物が煙を出して走っていたり、工場からは大量の物が波のような勢いで作られていた。しかもからくりが大部分を占めていた。」

 

「ううむ・・・直接行っていないからわからんな。」

 

「青森では実験段階ですが鉄の箱の運用に成功したようですな。」

 

「なに!?・・・なら我々も急がなければならんな・・・技術者を呼ぼう。」

 

「この国にですか?」

 

「そうだ。北邦、青森、大韓民国、オランダやイギリスも・・・とにかく豊かにするためにできることはやろうと思うが・・・。」

 

「この忠吉は賛成しますぞ。」

 

「ではすぐに発布せよ。」

 

「は!!」

この瞬間に家光は昨年に作った緊急時の大老に忠吉を置く。

とは言うものの、家光も権力はガッツリ握っているので忠吉は副将軍という立場となる。

 

【北邦】〔西暦1634年春〕

 

ガヤガヤ

技術者募集について北邦政府に打診した徳川幕府に対して失業者(ちひろの経済戦争にて)対策として大々的におこなうことを発表した。

すぐに低収入の若者がこれに飛び付いた。

 

「「「日ノ本を強化すれば大韓民国のシーパワーに対しての守りができる。」」」

と若者は考えたのだ。

大韓民国は長年の同盟国だが、海でフリーハンドを今までの様に与えるわけには政治的に許せるものではなかったのだ。

結果、初陣だけで10万人が派遣されることとなる。

 

【萩】〔夏〕

 

「もっと深くしないと育たねーべ。ちっと見とけろ!!」

北邦から派遣された若者は幕領だけでなく様々な藩に振り分けられた。

近代改革はまだまだ続く。



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大改革

 

〔冬〕

北邦から持ち込まれた苗や種は技術者とともに全国に広がっていった。

青森藩は技術者の案内、住居の提供、建築資材の工場を建てることにより圧倒的だった収穫量のアドバンテージを失ったことによる損失を埋めることに成功した。

そのため軽工業重視だった工業も日ノ本で唯一蒸気機関を生産できる重工業社会を実現した。

 

「奥州街道の延長もしなければならぬな・・・参勤交代制は延期だな。」

家光はインフラに各藩が金を使っている現状から参勤交代制延期の英断をする。

 

〔西暦1635年夏〕

横浜港、大坂港の整備を幕府主導のもと開始する。

青森藩は蒸気機関車を青森から津軽までの距離を走らせることに成功する。

 

〔秋〕

米が大豊作となる。

 

「まずい!!今米の相場が暴落すれば幕府の収益に多大な影響が出る・・・いかがすべきか・・・。」

大老徳川忠吉は青森藩藩主で食に関して独自研究をしている龍元を江戸に召集した。

 

「簡単なことなんだな・・・売れる品を作ることなんだな。」

武士とは思えないデップリとした腹を抱えながら彼は話す。

周りに人がいれば不敬と言って後ろから斬られてもおかしくはない姿勢であり、態度である。

 

「米を粉末にして、刻鳥(鶏)の卵を混ぜながら練って焼き固め、砂糖と果物から作ったジャムを塗れば保存の効くお菓子となるんだな。酒にすれば貿易の品にもなるんだな。今回は北邦に相談すればただでさえ人口飽和状態の北邦ならほとんど買ってくれると思うんだな。」

 

「なるほど・・・しかし餓えがなくなったというのにこれとはな。」

 

「一時的に武士を助けるために米ではなく金貨や銀貨で渡した方が良いと思うんだな。」

 

「いや、流石に・・・。」

 

「一時的な処置なんだな。」

 

「一時的か・・・考えておく。」

その後も龍元は利のある提案を数々出して立ち去った。

忠吉は家光と相談の後に龍元が言ったことを元にした米異国売買の令を発布した。

幕臣達は表向き不満を口にしたが、屋敷の中では米暴落に対する有効的な政策と貧窮しなくて良くなったことから幕府の評判は高まった。

 

しかしどこも幕府のようにできた訳ではない。

 

【前田】

 

「べ、米価が!?暴落!?」

加賀100万石の前田家は実の入りが1/2まで下がってしまい、国政に支障をきたしてしまった。

青森のとある商人から借金をすることで何とか一時的に持ちこたえたが、それは遅延性の猛毒であった。

 

「ふふふ、加賀の経済は支配できたわ。」

青森の大財閥の長・・・ちひろであった。



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フランスとソ連の飛躍

【欧州】〔西暦1636年春〕

三十年戦争・・・新教勢力対ローマ・カトリックとの大戦争である。

イギリスとスペインはそれぞれ海軍国として小規模な海戦をほどほどにして仲間に武器を売り付けて利益を上げ、お互いは紳士協定で南米はスペイン、北米はイギリス(メキシコは除く)と密約を結んでいた。

・・・で、全力で殴りあった神聖ローマ帝国の諸侯の領土は荒廃し、バチカンは北邦の十字軍で失った教徒を戦争の激化で取り戻すことができた。

・・・で、フランスはこの間はほとんど武器を売り付けたり、少数の義勇兵を送るだけにとどまった。

それだけ十字軍の疲弊が大きかったのだ。

フランス王朝ブルボン家は疲弊しきったフランスを見て史実のような散財をすることはできないと、節制と産業、軍の3つを掲げて王となった。

そのため軽工業と火薬の生産力は史実の2倍にもなっていった。

囲い込みもその影響でおこっており、イギリスの様な土地が貧しいことによる産業革命ではなく、国自体が貧しいことによる産業革命の土壌が出来上がりつつあった。

 

【ソ連】

ポーランド王国はこの時期に西へと領土の拡張を開始していた。

ソ連とポーランド王国の間には空白の地域が存在していたためだ。

ソ連上層部はその空白部を組み込もうとしていたが、サヤカ議長の号令でインドへの介入以外は内政に全振りであった。

無理な軍拡をしなかったこと、日々豊かになり飢えと無縁の生活、政府が配給してくれる生活必需品の数々・・・愚民ゆえに日々全力で働いたのだ。

結果として第一期と呼ばれる社会主義の正否を別ける期間を北邦、モンゴルとの貿易と周囲に侵略主義を掲げる敵国がいなかったこともあり成功という結果になった。

 

「第二段階への移行を宣言する。」

次は労働者の質の向上である。

学を与えることと、軽工業重視を目標とした。

ただし少しずつ軍の拡張も開始する。

 

「・・・北邦やモンゴルとは利害が一致する限り友好を維持しよう。狙うはウクライナとポーランドの穀倉地帯・・・ポーランドは独立国として残し、防波堤となってもらわなければいけないよ。」

広げた地図を指差してとある場所を指さす。

 

「ここら辺に武器工場を建てれば・・・まだまだ後になるけど・・・ウ!?」

・・・議会でサヤカが倒れ、ソビエトは次の議長が選出される。

サヤカは過労と疲労回復魔法の使いすぎにより魔力切れが同時に起こってしまったのだ。

 

「ソビエトはサヤカの意思を継いで教育に力を入れよう!!」

それは転換期となる。



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チューリップバブル

【オランダ】〔西暦1637年夏〕

オランダでバブル経済の崩壊が発生した。

ただ、小規模だったため数人の成金と十数名が首を吊っただけで混乱は済んだ。

ただ影響は北邦とソ連に波及する。

北邦は過剰な投資はかえって市場を混乱させるという教訓を得たためこの後個人の借金の限界が儲けられることとなり、自己破産禁止令も議会から発表された。

自己破産禁止令は自己破産申告自体は許されるが、損失分を現物差し押さえと星二号作戦に強制参加か危険な仕事への強制勤務のどちらかを選ばされる。

・・・まぁ星二号作戦参加がほしいんだが・・・。

・・・で、ソ連はというと・・・

 

「やっぱり資本主義(帝政)って糞だわ。革命輸出しなくちゃ。(使命感)」

という連中が10年後に大量生産されることになる。

今まで愚民だった奴等にいきなり学習させればこうなる。

サヤカが恐れていた拡張主義に転じたきっかけがばらまかれることになる。

 

【青森】

食料をただ作るのでは他の藩に負けるため、評定会はいち早く食品加工工場の拡張と漁の水揚げ量向上に躍起になった。

 

「貨幣は回転率が高ければ豊かに、悪ければ貧窮するのです・・・回転率を上げる方法?学(者の涙ぐましい努力)と物(質的な人の犠牲)です。」

千早商会の格言である。

まぁ千早商会だけでなく対抗できる企業群が青森のこの転機にボチボチ出現し始める。

 

【薩摩藩】

修羅の国薩摩・・・その地では毎日のように人の血が流れていた。

何かしっぱいがあると誰か切腹か斬首であり、恐ろしい反面、技術関係や藩の政策に対しては命懸けで遂行するためあらゆる面で速いが違った。

 

ザシュ

「いいか、おいどんば気短いけんね。半年後までにこれできんかったら転がっとるめーもんみたいになるけん。覚悟せんしゃい。」

それはクリッパーであった。

沖縄に難破したクリッパーを韓国人を脅(5名死亡)して奪い取り藩に持ち帰っていた。

工事中に下級武士12名、現場監督2名、町人10名、農民5名、上級武士1名の犠牲が出たがクリッパーのコピーを5ヶ月で完成させるという事からどれだけ研究速度が速いかよくわかるだろう。(幕府1年2ヶ月 土佐藩2年10ヶ月)

この薩摩の狂人じみた開発能力、研究能力、(修羅補整)は後々の薩摩の悲劇と呼ばれる大事件の引き金を引くことになるとはまだ誰も知らない・・・。

 

【北邦】〔西暦1640年春〕

 

「やっと・・・全面開通・・・長かった。」

新設された鉄道省悲願の全路線機関車投入の完了と鉄道全路線開通である。

史実のシベリア鉄道を線路を並列5線引いた感じのが完成する。

なお、鉄道省はこれによりダイヤルマスターが過労により多数倒れることとなる。



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天草島原の乱

【天草】〔西暦1642年秋〕

天草藩の領主は幕府の改革に追い付けない古い思考の持ち主であった。

彼は周囲の藩が発展していくのを見て取り残された藩主で結託し、農民に重税を課していた。

数年間は農民達に幕府から持たされた米によって石高は上がったため良かったが、米価が下落すると藩は困窮し始め、家臣の不満が日に日に高まっていった。

藩主はストレスの捌け口として嫌っていたキリシタンを粛清という名の虐殺を開始した。

 

「・・・ブチ。」

これにキリシタンでない農民達も巻き込まれ、あれよあれよと武器がどこからともなく(旧豊臣だったり没落した豪族だったり)集まり原城に立て籠った。

その数4万・・・総大将は天草四郎・・・でその側にはなぜか五和の姿があった。

 

(信長様・・・キリシタンの術を盗んでこいって言うからここに来たら術の先生が総大将になってヒャッハー始めるし・・・あれなの?神の試練的なことなの?)

錯乱しているが幹部扱いである。(女性だが総大将の弟子ということで)

 

(うわぁ・・・いっぱい来たし。)

幕府軍の軍勢は約25000名くらいで殆どが火縄銃を持っていた。

対してこちらは火縄銃は少数であり、弓や石が武器となる。

 

(兵糧も乏しい・・・本気でどうしようこれ。)

本気で悩んでいるのは私だけで残りはゼウスに祈りを捧げるだけで信じる者は救われるという思考らしい。

 

【江戸城】

 

「島原と天草の一部で大規模な一揆・・・か。しかも中身がキリシタン。・・・面倒な。」

家光は一揆なんかしている暇があるなら改革を頑張れと言いたくなるが、藩主が改革活動が鈍く、この一揆が発生したことは知っていたため両成敗というのは決定していた。

 

(威張るだけで使えない譜代、旗本、御家人を押し付けるか。それで死んだらそれまで、活躍すれば信用してやる。)

ただ、家光は少しずつ体調が悪くなっていたのでこの案件を片付け次第、長男の家綱に将軍の地位を譲ろうと考えた。

 

「ただ、あいつは少し過激だからな・・・参勤交代の義務化は絶対にするだろう・・・保科正之を後見人にしてストッパーになってもらわなければ・・・。」

保科正之は家光の弟だか母親の地位が低かったため養子にされ、徳川を名乗れなかった者であった。

徳川家で家綱を止められるのは徳川忠吉、保科正之、斎藤龍興、斎藤道元のみで残りは歳が近かったり、地位の関係で止められなかった。

 

「ホーホホホ、行きますよ正之さん、中根さん。」

過激革新派徳川家綱。



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青森の老人

【江戸 斎藤邸】

島原で一揆が発生している頃、龍興は人生を振り返っていた。

 

(102歳・・・俺はどこまで長生きするんだろうな。もうしわくちゃで髪も白く細くなったもんだ。・・・政宗も5年前に逝きやがって・・・何が蜂の爺だよ。さきに死ぬんじゃねぇよ。・・・道元も66、龍元も38、ひ孫も沢山いるが道元の嫡子は10人いてそいつも中々の才を持ってやがる。あの千早ちひろの女傑のお気に入りだからな。中々の野郎だよ。西龍。)

西龍22歳・・・兄弟仲も良く利害調整と交渉術にたけ、ちひろを18の時に再び経済戦争を準備していたちひろ商会に内通者を出させ、事前に摘発した猛者であり、次期評定会会長の地位に一番近い人物である。

 

(西龍も5人子供を生んでるから斎藤家は安泰。・・・しっかし叔父信長の2倍以上生きるとは思わなかったな・・・さて、次の将軍様は有能だが野望があるらしいからな。それを叶えたら俺の寿命も尽きるだろう。)

家綱は既にこの戦国最強の知将龍興を味方にし、地盤強化を成功させていたのだった。

 

【水戸藩】

水戸徳川藩次期当主徳川光圀(14歳)が鷹狩りと称して各地で暴れまわっていた。

光圀は三男であり本来なら長男である兄が藩を次ぐべき(次男は病死)であるが、父親の徳川頼房が長男の出生届けを徳川本家(幕府)に出し忘れ、長男がなぜか光圀の弟であるという訳のわからない家庭環境になり、さらにこの頼房が歌舞伎者で着物の袖を切って半袖にしたり、室内で傘をさしながら歩いたりとハチャメチャで、教育に関しても養子として一時三木夫妻に育てられたが、父親として振る舞いたかったのか色々な特訓をさせたりしていた。(例 斬首した家臣の首を真夜中に取りに行かせる 死体が浮いている川で水泳をさせる等々)

・・・どうなるか・・・こうなった

 

「新世界の神となる!!」

ガッツリ中二病にかかり、辻斬りもおこなうほどで城下の人々は次期当主がこれではと嘆いた。

そんな彼は数人の家臣をつれて芳香の村に来ていた。(現在人口3人なので村というのもおこがましいが・・・)

 

「農民!!お前は何ができる!!」

珍しい造りの家を見つけた瞬間に光圀はドアを蹴破って入ってきた。

収穫を終えて一段落していた芳香達はいきなり入ってきた少年に驚いたが、腰に下げた刀が良物とわかった芳香と動きからして武士であると感じたニャル子はアイコンタクトをするとニャル子は茶を淹れに台所へ向かい、芳香は呆然としているハクに頭を無理矢理下げさした。

 

「これはこれは武士様、農民ごときができることなど畑を耕すことぐらいでありますぞ。」

 

「・・・つまらん。死ね。」

芳香に向かって抜刀して斬りつけて来る。

 

ガキン

 

「な!?」

万年筆で芳香は刀を止める

 

「意味は違うがペンは剣よりも強し・・・という言葉があるのじゃ。あと若様、人はつまらない者などいないのじゃ。」

 

「ええい、無礼な!!」

 

「若様!!何事!!」

 

「農民風情が若様に歯向かうとは!!」

 

「まぁまて、・・・光圀様、少し遊びをせぬか?今斬り殺しても後で斬り殺しても変わらんじゃろ?」

 

「・・・いいだろう!!ただし面白くなければ殺す!!」



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島原熱烈大歓迎

【原城】〔冬〕

数ヵ月を乗りきった五和は必死に今後のことを考えていた。

 

(日本の文明に混ざった魔術の回路を使って敵を無意識に誘導して罠にはめることでなんとかなってるけど・・・そろそろ私のキャパオーバー・・・逃げることも今はできなそうだから水中で呼吸できるのと自分の都合良く海流を操ることを覚えないと・・・天草先生なら教えてくれると思うけど・・・。)

 

「「「イエスキリストサンチアゴウ!!」」」

 

(信長様が手間取った本願寺もこんな感じだったな。・・・隣国の北邦共和国の本にあった宗教は薬という意味がわかった。・・・少量なら不平不満の解消となるが多量なら体を蝕む・・・か。)

 

五和は宗教関連に関して強い危機感を持ち続けることとなる。

 

〔西暦1643年春〕

約400の兵が壁を登ろうとしていた。

五和は自ら火縄銃を持ち、そして撃った。

 

パン

乾いた音がする。

・・・真下にいた武将が地面に落下していく・・・その武将こそ幕府軍の最高司令官だった男であり、彼が戦死したことにより一時的に幕府軍の包囲に穴ができることとなった。

 

〔夜〕

月は雲に隠れ、真っ暗な夜に何者かが海に飛び込む音がした。

見張りのキリシタンは誰かが海に落ちたと叫んだ。

海底ではそんな声も聞こえない。

五和は魔術と忍術を合成させた新術で海の中を時速50キロで進む。

 

(燃費が悪い・・・良くて萩辺りで効果がきれる・・・。)

五和はそんなことを考えながらもしばし海底散歩を楽しむのであった。

 

【青森】〔数日後〕

 

ガヤガヤ

城下では大感謝祭と呼ばれる春の祭がおこなわれていた。

そこでは剣道や柔道、弓道や射撃等の項目の他に蹴鞠や和歌比べ相撲やサッカー、野球等もあった。

 

「西~草津の村~東~青の森~。」

相撲ではその力士の出身の村を言うのがしきたりである。

その村や町の力自慢が集い大会賞金である北邦家族旅行(経費は藩持ち)を勝ち取るために予選を勝ち抜いた猛者達であった。

そんな力士達の中に仮面を被った大男がいた。

青の森・・・身長2メール29センチ、体重145キロ・・・予選ではその重量による突っ張りは初参戦した力士ではその肋骨を折ってしまい、力を分散させて耐えたとしてもその巨大なのに繊細な指により回しを掴まれたら一気に土場から放り投げられた。

・・・まぁ龍元なのだが、パフォーマンスの一種で家光もお忍びで龍元の相撲を見たときに感動して龍元を江戸に呼び出し、無双の2文字の直筆の掛け軸を与えたほどであった。

 

「さあ!!かかって来るんだな!!」

龍元38歳・・・まだまだ現役である。



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中二病

【水戸藩 芳香宅】

ニャル子は芳香の言葉を台所で聞こえたため、面白い物とお茶を持って芳香の所に戻っていった。

・・・それは芳香が大切にしていた巻物である。

 

「どうぞ。」

 

「うむ!!」

光圀はお茶を受けとるとすぐに飲み干した。

 

「旨い。」

光圀はそれだけいうが、何か格好いい言葉でも頭の中で探しているのだろう。

光圀の側近の1人は北邦に通じる者であり、情報はとある機械(神界製のパソコン)で調べていた。

 

(まぁ情報を閲覧するだけの機械じゃからその情報を得るためにはスパイがいるんじゃなか。・・・北邦のネットワークは怖いのじゃぞ。)

 

「よいしょっと・・・。」

 

ジジジジジ

 

私は巻物を思いっきり引っ張り、高速で回転する巻物からは本が飛び出してくる。

 

「「「おお!?」」」

光圀の護衛も驚いている。

 

「光圀様、お読みください。」

光圀は近くに散らばっていた本のうち1つをおもむろに開き始めた・・・。

 

〔35分後〕

光圀の護衛達も毒味役1名を除いて皆が各々に本を読み出して十数分・・・光圀は「お茶」としか言わないほど真剣に本を読んでいた。

全てを読み終わったか、キリが良いのかは知らないが、光圀は本をゆっくりと閉じて私の眼を見た。

 

「・・・そなたがこの本を書いたのか?」

 

「そうじゃ。全ての本は私が書いた。」

 

ババ

「私に学を教えてくだされ!!」

光圀は土下座をした。

護衛達は止めようとしたが、光圀は土下座を既にしてしまった。

それは主命ということとなる。

 

「・・・光圀様、私は宮古芳香ともうします。私は学をあなた様に与えましょう。」

 

「おお!!」

 

「ただし、私は基礎しか教えられませぬ。軍はここにいるニャル子が、産業はハクが出来ます。我々は3人で生きてきました。」

 

「先生の教えが受けれるのならば!!」

 

「この本を私からあなた様に渡しまする。・・・自分なりの答えを導き出すことができたのならばここにまた来て私達を登用してください。でなければ学は身に付きませぬ。」

 

「わかった。受けとるぞ先生!!」

不敬罪で斬首もあり得るが、芳香の渡した日本の歴史書(全国版2375ページ 著者芳香)は光圀の心理に確かな変化をもたらした。

その後暴れることもなくなり、言葉づかいは良くなり、礼儀正しくなとていった。

周りでは若の変化を喜び城下の民の不安も少しずつなくなっていった。

 

(芳香先生・・・あなたは北邦の民・・・いや、元指導者だった偉人・・・なぜこんな場所に・・・。)

徳川の情報網をフルに活用した結果、宮古芳香の身元を突き止めた。



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西暦1643年目

【水戸藩】〔西暦1643年夏〕

天草一揆が鎮圧されたとほぼ同時に光圀は芳香を登用した。

事前に芳香達の家で

 

「覚悟は決めました。・・・貴女が私を利用するのなら私は貴女を利用するのみ。・・・とりあえず大奥で生活を約束します。当主になるまでは我慢してください。」

 

「なら、まだ自由が欲しいのじゃ。大奥では資料作成も進まんじゃろうし。」

 

「任せます。」

 

こうして芳香達は光圀の臨時の家臣となった。

水戸学はこうして始まっていく・・・。

 

【江戸城】〔冬〕

 

「将軍を家綱に譲る。」

家光、風邪を拗らせて死期と勘違いし、家綱に将軍職を譲ってしまった。

 

「父上、この身を呈して国を豊かにしていきまする。」

 

「頼んだぞ。」

 

「は!!」

ここに24歳の徳川家綱が将軍となった。

【家綱の部屋】

 

「伯父上、この家綱将軍となり、神国の発展をおこなっていきますよ。」

すぐに家綱は伯父であり老中予定の保科正之を召集した。

 

「上様、おめでとうごさいます。」

 

「初めの仕事としてやりたいことが3つありましてね・・・。伯父上に順番を尋ねたくなりました。参勤交代の制度化、琉球の島々の一部を直轄領、小笠原諸島の領有化。」

 

「順番としましては参勤交代を先におこなうのがよろしいかと。次に小笠原諸島の領有化、最後に琉球ですな。島津家との関わりもありますから。」

 

「ふむ・・・どうしましょうかね。・・・今大御所は病にて床に付していますからね。やれることはやりましょう。」

 

「技術革新はどうしますか?」

 

「大老の忠吉伯父上に任せることにします。私は私にしかできないことをしなければなりませんからね。」

ホーホホホッホと部屋に笑い声が響く。

 

【北邦】

フランスでルイ14世が5歳で即位した頃、北邦では久々に政権交代がおこり、中央党のネロが議長となり、大統領制、連邦制に移行を宣言した。

 

「余は更なる発展のためにこの巨大化した北邦を各州による競走をすることによって意欲を、人間の潜在的存在する向上心を刺激する。余は断言する。この国に住む全ての民の給料を倍にすると!!」

平均月収22万円を平均月収44万円にする宣言は新聞では叩かれたがネロならやってくれると国民は期待した。

 

「まずは妖精達の力を増やそうか。」

ネロは政府企業や財閥が所有していた妖精の解放をおこない、産業革命の加速を狙い、最新技術である電灯の量産で会社での活動時間を延ばしたりと給料は上がるが、仕事時間は延ばすと飴と鞭の政策をおこなった。

 

「・・・トラクターのエンジンと無限起動を改良し、国民の移動手段としなくては・・・。」

北邦では車ではなく一家の移動手段としてトラクターが流行りそうである。




家綱の性格はフリーザ様


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フリーザ家綱

【江戸】〔西暦1645年夏〕

家光が病気から回復の兆しが見え始めた頃、大老であった忠吉がついに病死した。

彼は寿命を削りながら自分の藩から大坂(青森は別として)軽工業の工場群である関東中西ベルトを作り上げた。

また道の舗装、港の整備、寺子屋の制度化等に尽力し、徳川の産業基盤を作り上げた。

また、貿易の利益が膨大なため相対して年貢の引き下げがぼちぼち始まり、貨幣の浸透が農村にまで波及していった。

忠吉の遺体は復活することなく秋田に埋められた。

 

「彼の死は痛いですが・・・我が弟達の出番が出てきましたね。さて、どういたしましょう。」

約2年で家綱は自身が考えていた3つのやるべきことを終わらせていた。

琉球は一部を一時直轄地とし、新たに琉球藩10万石として末の弟の綱吉に任せた。

末といっても22歳なので問題はなかった。

 

(それよりも酷いマザコンになりかけてましたからね・・・はっきり言えば左遷ですが、貿易基地としての役割もありますし、台湾に食い込めれば幸いですかね。)

で、小笠原諸島に関しては中立派の若い旗本達に島々を与え、浪人の登用場所とした。

家光の様々な小大名の一斉改易が原因である。

 

(中立派の保護にもなりますからね。)

幕府は数種類の派閥で政争がおこなわれていた。

まず大御所派・・・これは家光の側用人等のごく少数であり、将軍である家綱の命令も受け入れている。

次に保守派・・・革新反対派ともいい、老人か戦国に憧れた若者が多くいた。

これに協力している井伊家を除いた徳川四天王の三家である。

で、若者や下級旗本や御家人の多い革新派、知識層や上級旗本が多い中立派、血縁が多い将軍派となっていた。

 

「そろそろ消す必要がありますね・・・白組若頭の刃都辺さん、できますか?」

 

「は!!」

シュ

忍びはすぐにいなくなる。

 

「これで動きやすくなりましたね。さて、台湾問題を協議しますかね。」

翌日、江戸の屋敷にて集まっていた保守派が惨殺されているのが発見された。

 

【イタリア バチカン】

戦争によって力を取り戻しつつあるバチカンでは、国教がないソ連の情報を集め、調べられた情報により大混乱に陥っていた。

 

「社会主義に・・・共産主義だと!?」

 

「この思想が広まれば我ら教会は消えてしまうではないか!!」

 

「戦争をしている場合ではないぞ!!王や皇帝の地位も危険になるのではなかろうか!!」

 

「悪い話だが、この国とオスマンが結託しているらしい。」

 

「それだけではない!!北邦も後ろにいる。」

 

「早急に手を打たなければ。」



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台湾分割

【農南 上海】〔秋〕

国際都市上海・・・この地にはイギリス、オランダ、ソ連、モンゴル、タイ、ビルマ、韓国、日本そして北邦の国々の町が存在していた。

ここがあるため日本の長崎はただの1港まで価値が低下してしまっていたが・・・。

そんな上海に幕府の全権を持った1人の侍が降り立った。

 

「まさに異世界・・・。」

徳川道々・・・鳥取徳川家初代当主である。

彼が来ていた理由は台湾問題の決着をつけるためである。

台湾は地理的に北邦が近いが、東南アジアに進出するためにはどうしても欲しい場所であった。

なお、この問題は日本と北邦、韓国だけでなく、基地として使いたいイギリスとオランダも関わっていた。

しかし台湾には超戦闘的な原住民が存在していたため中々手を出すことが出来なかった。

港から徒歩3分の会議場に到着すると係員の案内で会議室に通された。

 

(いかに幕府に利益を残すかを考えなければ・・・。)

 

「少しよろしいですかな?」

 

「ん?」

 

【江戸城】〔冬〕

 

「ご説明してもらいますよ・・・道々さん。」

人は怒り狂うと逆に冷静になる。

今の家綱がその状態であった。

 

「イギリスは台湾での問題を有利にするために私に協力をする代わりとしてオーストラリアという土地の権利と交換することを条件に出してきました。」

 

「・・・で、素直に協力したと・・・馬鹿かてめぇは!!昔あった津波で作物が育たない不毛の大地をホイホイ受け取りやがって!!」

 

「し、しかしこの広さならば・・・。」

 

「・・・お前は発狂した。養子として綱吉を入れた。発狂したお前は浪人を雇い開拓地へと出ていった。」

 

「し、将軍様!!ご慈悲を!!」

 

「目障りです。」

ドゴ

 

家綱は道々を鞘で叩きつけた。

 

「知ってるんだよ!!お前は勝手に藩にあった全ての金銀だけにとどまらず幕府の利益の3年間分の借金手形まで渡しやがって!!これで死刑にならないだけありがたいと思いなさい!!・・・あ、参勤交代はあなたは不要です。あなたの息子が出来たらこさせなさい。」

 

【鳥取城】

 

「・・・ミスった。」

イギリスとの取引は秘密裏におこなったはずであったが全て兄である家綱にバレていた。

イギリスは彼を売ったのだ。

日本は大切な取引相手であるためオーストラリアの売却もだいぶ安く売られたが、実際はイギリス本国で革命中であり、革命派が資金を調達するために売り払ったのだ。

ただ売ると後々日本との貿易に響くので道々をスケープゴートにすることで悪影響を防いだのだった。

 

「・・・浪人を雇うしかないな。」



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国家転覆の計

【江戸】〔西暦1646年春〕

道々がオーストラリアに飛ばされるまであと少しというころ、軍事学者の由井正雪が反乱を計画していた。

 

「小笠原に浪人を送るだけでは全国の50万にもなる浪人を捌くには無理である。・・・反乱をおこし、浪人の困窮を訴えるしかない。」

という理由だった。

 

「松平さん。首謀者をここに口が聞ける状態で連れてきなさい。絶対に殺してはいけませんよ。」

将軍の情報網は並ではなく、忍び衆の報告により家綱は反乱計画を事前に知ることができた。

家綱は由井正雪に興味を持ち、そして話を直接聞いてみたくなった。

 

〔数日後〕

縄でぐるぐる巻きにされた由井正雪以下首謀者達が将軍である家綱の前につきだされた。

頬には殴られたような跡もある。

 

「縄をほどきなさい。」

 

「う、上様!!」

若年寄の1人が悲鳴のような声で言う。

 

(まだこいつは使えますね・・・。)

家綱は必死の声で縄を解くことを撤回して欲しい若年寄は使えると判断しながらも、縄を解かせた。

 

「幕府を揺るがす謀反人・・・大罪人のあなた。失敬、由井正雪以下首謀者の皆さん。ごきげんよう。4代将軍の徳川家綱です。・・・あなた方の行動力は実に素晴らしいものです。感動すら思えますよ。」

 

(下にいる無能どもよりね。)

 

「私はあなた達を旗本にしたい。いや、あなた達の協力者も御家人にしたいくらいですよ。・・・ただあなたは今は大罪人です。・・・どうでしょう?もちろん浪人の中でも学の有るものは北邦共和国の使節団が不足しているので学んでこの国を豊かに、力有るものは道々が開拓使用としているオーストラリアにて頑張ってみては。」

 

「・・・上様は謀反人ある我々を登用すると言うのですか?」

 

「上様!!何を言い出すのです!!幕臣ではダメなのですか!!」

 

「黙りなさい。私は由井正雪と話しているのですよ。あなたとは話していませんよ。」

 

(優越感が人を駄目にするのですかね・・・一定数は有能な人物もいるのですがね・・・。)

 

「どうしますか由井正雪さん。」

 

「お受けします。」

 

「でしたら、あなた方に浪人の選別と第二次使節団の責任者の仕事を与えましょう。資金はこちらから出します。有意に使いなさい。」

ホーホッホッホ・・・甲高い笑い声で家綱はこの場を締めた。

 

約半年後に道々と由井正雪の活躍?により浪人の9割りは何かしらの職に着くことができたそうだ。

 

「良い人材が転がっているのじゃ。水戸に引っ張ってきたのじゃ。」

 

「従業員が足りなかったので追加で雇うことができました。」

芳香とちひろの力もあったが・・・。



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西暦1648年~

【ソ連】〔西暦1648年春〕

 

「欧州での戦争が終わった・・・。」

ボソボソと小声で呟く男性はソビエト2代目議長であった。

彼はサヤカの意思を継ぎながらも、革命輸出をおこなう推進派の盟主であった。

彼が議長になってからポーランド、ハプスブルク領土、バルカン半島に革命を輸出していた。

しかしそれら全てがものの見事に失敗し、戦争になるかもしれなかった。

 

「元帥方、勝てますかな?」

ボソボソとソ連赤軍の5人の元帥に質問する。

 

「先ずはウクライナそこからポーランドに流れ込む計画はできています。現在建設中の鉄道を大規模に拡張してくださるのならより速やかに行動できるでしょう。」

 

「防御面でも塹壕の試作実験を繰り返した結果、短期間に強固な防衛戦をおこなうことができるでしょう!!」

ソ連赤軍は北邦との戦争から数の集中運用の怖さを知っていたため、大規模な部隊を速やかに移動できる鉄道を基本に戦略を建てていた。

また、北邦には及ばないものの、初期のライフル銃やインドの綿花を使った防寒着、スキー板等の武器防具ともに欧州よりも先を行っていた。

・・・が、その広大な土地と莫大な人的資源があるにも関わらず、兵士の数は28万人と少なかった。

原因は豊かになっていたからである。

豊かになれば危険に身を投げ出さなくても食っていけるためだった。

 

「仕方ありません。先制攻撃の作戦を考えておいてください。」

戦争が始まる。

 

【欧州】

アウクスブルクの和議は欧州に主権国家を誕生させた。

同時に大国も誕生した。

スペイン、イギリス、フランス、ハプスブルク家のあるオーストリア大公国、デンマーク王国、スウェーデン王国である。

オランダは確かに経済力はあったが、なにぶん領土が小さく、史実よりも内政に力を入れ、改革を断行してきた大国フランスがあるため残念ながら大国とは見られなかった。

ポーランドは討伐対象のため除外である。

そんな中、バチカンでとある組織が作られた。

神の右席、グレゴリオの聖歌隊、ローマ正教十三騎士団、スペイン星教の4つである。

これはプロテスタントや東洋の異教徒に対抗するための組織であり、全ての組織に原石か聖人が含まれていた。特に神の右席はまだ前方しかおらず、そこにはアンデルセン6世という人物が着いた。

彼の家は長男が皆、聖人になる特殊な家柄で、約300年前から法皇の護衛の地位にいた。

ただ彼は温厚の性格のため、法皇に助言する補佐的な役割の神の右席が作られるのだった。

そう、これが運命の分かれ道となる。



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第一次ポーランド戦争

【ソ連】〔西暦1650年春〕

北邦では国内経済成長率が10%を超え、日本は幕府が購入したオーストラリアとその航海上基地となる島々の開発による特需、大韓民国は両国の船の需要量の増加による特需、オランダとイギリスは3国の貿易、神聖ローマ帝国以外の欧州の他の国は戦争終結による復興特需と世界的に見たら明るい年、好景気の期間であったが、ソ連の国内はピリピリしていた。

 

「急げ急げ!!」

 

「せーの!!」

国の威信をかけた鉄道計画はソ連が有する約4億というマンパワーと北邦の技術顧問、北邦で量産され始めた重機の輸入、自国の工業拡大による道具の不足が解消されたことにより、ソ連の鉄道計画は突貫工事のため安全性に問題はあったが、複線の鉄道がサンクトペテルブルクからハイデラバードまで繋がる鉄道とサンクトペテルブルクからモスクワ経由のウクライナ方面に向かう鉄道が短期間に終わったのはやはり超大国になる素質がある国である。

実際、国土面積だけなら世界1位である。

そして・・・

 

「宣戦を布告する!!」

ソ連の戦争は国内に潜む同志の救出という名目で始まる・・・。

 

【ポーランド東部】

ウクライナはソ連と違い、近代化政策を行わず、政府も弱く、軍も弱かった。

そのため約2ヶ月という短時間で戦争は終了し、自治権、外交権、軍事権全てを剥奪した。

しかし、飢えさせたり差別したりはせずに、ポーランドとの戦争に協力するのなら一部自治権を戻すことを条件に鉄道の延長に駆り出した。

そのため秋に入る頃にはポーランドに進行することができるようになった。

 

「冬に進めなさい。」

28万人という兵士の少ないソ連赤軍は攻勢に不向きな冬に攻勢を結構した。

雪が積もり、場所によっては吹雪の中の強行は防御側のポーランド自慢の騎兵は動くことができず、銃身は凍りつき、逆にロシア人が多くいるソ連赤軍は耐寒訓練と耐寒装備、新兵器であるスキー板の活用により逆に機動戦を可能にした。

結果、冬が終わる頃にはワルシャワを半包囲するところまで追い詰めていた。

ポーランド王国はこの圧力に屈し、ワルシャワから数百キロ東部の穀倉地帯の分割、馬1万頭の譲渡、ポーランド王国国庫の1/10の賠償金を条件に和平をし、ソ連はこれに応じた。

ポーランドはこの後リトアニアと分裂し、リトアニアはソ連に無謀にも挑み、35日の攻防の末に吸収合併されることとなり、ポーランド王国は急速に力を失っていくこととなる。

 

「次の戦争に移ります。」



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大激論

【水戸】〔西暦1661年春〕

家綱と水戸新当主の光國がタッグを組んで関東圏の更なる改革に着手していた頃、水戸では芳香を中心とした者達が宗教改革と日本史の編集、内政改革を断行していた。

仏教と神道の分離と仏教腐敗の改善を目標にした改革である。

徳川家は三河一向一揆の件もあり裏では仏教が大嫌いで(表は仏教を擁護しなければならない立場)、儒教の普及に努めていたが、これが中々進んでいない状態であり、前の島原の乱でキリシタンの反乱からさらにこの動きは遅れていた。

そんな中、仏教擁護、神道の理解もある芳香はとある人物達を登用した。

名禅僧の鈴木正三と吉川神道の創始者の吉川惟足である。

鈴木は仏教が民のためになるとして幕府の命令を無視して無断隠居をした猛者であり、吉川惟足は超がつく仏教嫌いで有名な人物であった。

 

「「ぶち殺す!!」」

仲の良い()彼らは会う毎に挨殺をする程で騒がしい人達であり、彼らは日和見を決めていた寺や神社を片っ端から破壊していきました。

その数約2500あった寺や神社を970まで減らし、短期間で仏教と神道の分離を達成し、仏教も腐敗した寺から燃やされる(僧ごと)ので腐敗も短期間に改善していった。

ちなみに儒教と神道はこの間に悪魔融合を開始し、それが後の尊皇に繋がっていき、水戸学の始まりとされている。

日本史については光國の教育係であった人見卜幽、辻端亭に加え、小宅処斎、真幸筆海、光國の日本史の先生である林羅山、息子の林鵞峰これに芳香を加えた豪華なメンバーであった。

林羅山の家は元から日本史の編集をしていた家柄で、約9割り完成していたため、芳香が持ってきた資料を加える、誤字の修正をする作業で殆ど終わる。

強いて言うなら平成時代前期から更に前の古墳まで正確なことが書かれた歴史書となる本朝編年録が1年後に完成し、予備として写しを5冊残している。

ここで満足しないのが光國であり、更に全国の資料を集めて25年の歳月をかけて完成させる水戸全千年史もこれを元にして作られていく。

内政としてはお家騒動で没落した最上家の4男である山野辺義忠を軸にした治水工事と食品加工工場の増設を行った。

治水は水戸の水が飲み水に適していないため、飲料水確保のために用水路を作り、食品加工工場に関してはこの山野辺義忠と光國が大の鮭好きだったこと、芳香が伝えたラーメンブームの影響と、青森藩、仙台藩という食料の一大生産地と江戸、横浜港の大量消費地、最大級の貿易港の間という立地を最大限に活かして莫大な富を得るようになる。

 



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240話

【ソ連】〔夏〕

1661年・・・ソ連はポーランドの工業を破壊し、割譲された領土にあった文化財は分解して北邦に売ったことでポーランドはソ連にとって神聖ローマ以西の壁となった。

共産主義・・・いや、社会主義の軍の戦力を不安視していた自称軍事評論家達はポーランド戦争の成功により過激に民衆やソビエトを動かした。

あまりに行き過ぎた者達は秘密警察により殺されたが、動き始めた歯車は加速していき、戦争を望んでいた2代目ソビエト議長の推進もあり、7月22日・・・曇りの中、宣戦布告をした。

 

「ふむ、経験稼ぎには良いだろう。これであと30年は内政に尽くすことができる。」

呟いているのは5人の元帥の1人である。

渾名はダイヤルマスター・・・輸送を秒単位で組み立て、作戦の成功率を跳ね上げることができる人物だった。

後に大モルトケと並ぶ偉人であり、大モルトケクラスがソ連赤軍の時代を超越した士官育成機関により3名いた。

残りの2人も他国では英雄と言われるほどの者である。

 

「散兵の力を試すには良いだろう。今回はポーランドから奪った馬でコサック部隊の数も増えた・・・今なら圧勝だろう。」

 

〔数日後〕

約25万のソ連赤軍は第二の主要都市であるサンクトペテルブルクに集結していた。

目を見張るのは18ポンド砲2000門、24ポンド砲1000門、32ポンド砲350門、46ポンド砲52門、新兵器である列車砲(72ポンド砲)7門であった。

ポーランド戦争のよな機動力重視ではなく、火力に力を入れた布陣であり、砲兵3:歩兵2:騎兵2:予備3という兵の分配からもどれだけ火力重視かわかるだろう。

対するスウェーデン王国(バルト帝国)もソ連赤軍を押し返すべく無理をして30万の兵を動員した。

 

「無理をして集めれば集めるほど烏合の衆となることがわからないようだ。・・・どれ、砲兵達よ黄泉へと導く協奏曲を哀れな彼らに送り届けよ。」

 

ドンドンドン バババババ

遠距離からブドウ弾鵞峰スウェーデン王国軍に降り注いだ。

もちろんスウェーデン王国軍の大砲も火を吹くが、練度が違いすぎた。

 

「ちぃ、・・・距離をおけ、丘の上にて陣を立て直す。」

スウェーデン王国軍の将軍達も無能ではない。

すぐに後退し、的確な場所に陣を直すように指示するが、そこにいたのはコサックであった。

機動力を活かして一撃離脱を繰返し、足を止めさせ、後ろからくる大砲の砲撃の挟撃により、じりじりと数を減らしていったが、コサックが3割りの被害が出たことで戦場は長期戦の兆しを見せ始めた。



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芳香の腕と翠星石

〔西暦1662年春〕

北方戦争が続くなか、龍興が病死し、キョンシーとなった。

チヨという老婆になり、これからも青森を見ていくらしい。

4代目の西龍も44歳となり、御意見番の地位を確立しながらも幕政には関わらないため譜代達には喜ばれたが・・・(将軍である家綱は次期将軍(嫡男)である家義の保証人になって欲しかったらしく裏経由で打診はあったが)

そんな時勢の中、芳香の補助アーマーの片方が壊れた。

当時の最新式だったためステルス機能付で、アーマー自体が見えていなかったが、老朽化してついに片腕のステルスが切れてしまった。

 

「・・・不味いのじゃ。・・・骨折で数ヵ月は持たせるしかないのー。」

ただでさえ陰ではおなごがでしゃばりおってと思っている人がいるのだ、この間に政争なんて起こったらただでさえ紛争が燻る水戸は大炎上不可避である。

そんな芳香の不安は杞憂であった。

数週間後には神界にいる翠星石から最新式のアーマーが送られてくることになる。

 

《そろそろアーマーの寿命と思って送ったですぅ。芳香のことだから忘れてそうで怖いから紙にでも書いて忘れないようにしておくですぅ。》

 

「感謝じゃな・・・。」

芳香は水戸の名産品の詰め合わせを翠星石に返お礼としてすのであった。

 

【神界】

数えきれないほど管理する世界が増えた影響か神界で取り扱う物も多種多様であった。

その分値段も張るのだが・・・。

 

「それでも買う価値があるのが凄いところですぅ。」

翠星石は今回は農業技術をここ神界で学ぶために来ていた。

一応ここ神界でも差別とは言わないが、神界以外から来た者に対しての技術提供は100年前までとなっていた。

・・・まぁ今は管理している側なのでタッチパネル1つ押すだけでその宇宙空間にいる全生物を処分することも可能だが・・・。

恐ろしいと思いながらも翠星石は下宿しているアパートに戻っていた。

 

「・・・ドラえもんの道具が沢山あるですぅ・・・もしもボックスを作ろうとした馬鹿が逮捕されたですか。夢がねーですぅ。」

前世が女子大生のためドラえもんやポケモンは小さい頃にアニメを見ていたので結構知っている翠星石はカップラーメン(黒ごま、白ごまトッピング 味噌味)をズルズルと食べながらニュースを見ていた。

なお、一番好きなアニメは昭和ガンダムシリーズである。

 

「200分の1スケールのガンプラがリアル使用で設計図を電子パネルに写しながら作ったら、コントローラーで動いたのは驚いたですぅ。・・・この世界のバ〇ダイナ〇コの力は凄いですぅ。」

こうコメントしている。



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歴史は飛ぶ

江戸時代飛ばします。
すみません。


〔西暦1666年春〕

北方戦争終結。

以後ソ連併合したフィンランドを生かし内政に力を入れ、スウェーデン王国は復讐戦争をするために軍事改革を断行していく。

 

〔西暦1700年代〕

北邦共和国の大統領選挙にて真紅が勝利し、福祉政策を中心とした緩やかな成長戦略を発表。

 

徳川道々オーストラリアの民族融和政策を開始。

わすがに残った白人が抵抗するも、道々の息子時斎の側室に白人の少女が入ったことで沈下。

 

東日本横断鉄道の開通。

 

フランスの財政黒字化により、ルイ14世は神君として名を轟かせる。

 

対岸であったイギリスはこれに焦りを覚え、フランスとの貿易を少しずつ減らしていくこととなる。

 

〔西暦1720年代〕

北方大戦争発生。

対ソ連同盟により約20国がソ連に宣戦を布告。

10年後の1730年の秋にスウェーデンの経済破綻により終戦。

 

オスマントルコ北進開始。

 

台湾の制圧が完了。

 

徳川家綱隠居、以後大御所となり、将軍は5代目の家時となる。

 

〔西暦1740年代〕

アメリカ大陸にて電気をベンジャミン・フランクリンが発見。

 

フランスはアメリカの利権をスペインに売却、スペインはこれに承諾し、フランスはアフリカ開発と内政に全力を尽くす。

 

この動きにイギリスが過剰反応し、第二次イギリス・スペイン戦争が始まり、スペインは北米の利権を渡すかわりにイギリスは南米の利権をスペインに渡すことで和平。

仲介はオランダ。

 

七年戦争が始まり、プロイセン、イギリスが勝利。

フランスはインドにあった領土をイギリスに割譲。

プロイセンはハプスブルク家から領土を一部割譲させた。

 

〔西暦1760年代〕

6代将軍徳川後家就任。

 

オーストラリア藩の国高が400万石を超える。

 

オーストラリア独立戦争開始。

4年後に幕府軍により鎮圧。

徳川7家から出た反乱に幕府基盤に亀裂が生じる。

 

青森にて他の藩の人間に薬物実験をしていた木原藤五郎が斬首される。

息子も斬首のハズであったが、イギリスの貿易船に密航し、国外逃亡に成功する。

以後上海と台湾を拠点にする。

 

アメリカ独立戦争開始。

北方は両陣営に食料と日用品の輸出を継続させるが、これにアメリカ側は難癖をつけ、貿易商人を殺害する事件がおこる。

戦争中のため犯人も逮捕できなかったため、政府の力が疑われる。

責任をとり、大統領であった真紅は辞任し、ユダヤ系のトト・フランクという元大学教授が次の大統領となった。

 

〔西暦1780年代〕

フランス革命発生。

貴族と聖職者がギロチンで毎日首が飛んだ。

ブルボン家はこの混乱で没落し、共和制に移行していく。

最終的にナポレオンが第一総統となる。



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ナポレオン1世

【西暦1800年冬】

独裁者となったナポレオンはルイ14世からおこなわれていた産業改革・・・後世では産業革命をフランスで完成させる。

北邦、イギリスに次いで3番目の産業革命に成功した国である。

この2年後には大韓民国、日本も続く。

 

「内政ばかりしている暇がないのが一番困ったことだ。」

 

軍に関しても砲兵と徴兵制を用いた画期的な軍は無煙火薬の運用によって質だけなら北邦にも勝てるほどの軍を作ることに成功した。

これにより対仏大同盟を粉砕し、神聖ローマ帝国の半分、北イタリア、アフリカの北部、中部を支配する強国となる。

共存を選んだスペインは遅れること5年後に産業革命に成功し、イギリスとの南北アメリカ大陸において貿易競争を激化させ、フランスは支配地域による半ブロック経済に移行していった。

 

「困ったわ。売れるは売れるけど、貿易による利益は前のようにいかないわね。」

経済の支配者水銀燈はフランク大統領の閣僚から漏れ、代わりに北邦銀行の総裁をしていた。

 

「緩やかな成長戦略の破綻が痛かったわ。あのまま真紅が大統領なら何年後になるかわからないけど軍の再編は完了できたわ。・・・まさかあんな事件で下ろされれとはわからないものだわ。」

事実上真紅の大統領辞任は軍部、政府上層部にとって誤算であった。

 

「フランク大統領は重工業の発展を目的にしているのはまだいいわ。問題は造船よ。任期中に大規模なドックを10箇所つくり、クリッパーの装甲化、海軍の拡張に乗り出したけど、それだと大韓民国の利権にガッツリ食い込むわ。・・・頭が痛い。」

悩んでいたのは水銀燈だけでない。

陸軍の佐天も悩んでいた。

 

「機動戦術の放棄・・・愚策すぎるでしょ。」

塹壕戦術重視、列車砲の数の削減、防御重視のため縦深戦術理論の改竄・・・。

縦深戦術理論は塹壕戦術重視として名を馳せていた旧南方将軍も大反対し、現在は閑職に回され、真紅時代の参謀も4割りが予備役にぶちこまれ、フランク人事と呼ばれる無血粛清がおこなわれていた。

佐天は上の粛清により空いたポストに座ったが、組織の再編で忙しく、優秀な将軍を教官に当てるなど大統領の逆鱗に触れない程度に士官育成に努めた。

しかし、このフランク人事が外交的に致命傷となる。

 

「・・・白人こそが至高!!我等KKKの名の元に鉄槌を!!」

第一次アラスカ紛争。

アメリカの武装KKK団員約20名が国境近くの学校を襲撃し、生徒7名を殺害した事件から発展した局地戦にてアラスカ第11連隊が敗北したのだ。

ここからアメリカ戦争が始まる。



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第一次アラスカ紛争

【アラスカ】〔西暦1801年春〕

アメリカ戦争が始まると初戦の汚名返上のため、防御優性の法則に従い、前線に塹壕と仮設路線をひき、防衛拠点を作っていった。

しかし、元々数が少ないKKKは同志1000名を集めると無差別テロを決行し、写真など存在しないし、白人も混じる北邦の町で犯人の逮捕及び、未然に防ぐのは困難を極めた。

 

「大統領命令として武装警察法と公安部の設立を宣言する。」

 

陸軍>武装警察>公安>海軍>湾岸治安維持隊>警察という6つの国が管理する武装組織誕生の瞬間である。

この他に私兵として財閥や大企業、はたまた中堅企業までもが兵を保持している状態となる。

 

【アラスカ銀行総裁室】

 

「まずい訳よ。・・・このままだと近々またやらかすと思う訳よ・・・あの大統領。」

フレンダ総裁を筆頭に父親である小鍛治外交副顧問、SB代表さらには東雲グループのはかせ、北邦銀行総裁水銀燈、勤勉党党首金糸雀、蒼星石准将、技術総研雛苺所長、自由党党首、石田重工、SAT財団総裁、アラスカ大学教授、元大統領真紅等々の大会合が総裁室にておこなわれていた。

 

「フランク大統領になって既に40年。そろそろ引きずり下ろさないと腐るわ。国が。」

 

「選挙制を上手く改正されたのがいたかったよね~。」

 

「年々増える人口と子供に対して必要な教育関連の予算が毎年同じなのはおかしいかしら!!」

 

「自由党としましても大統領の強権が多発して議会が動いていない状態です。」

 

「・・・軍の諜報機関を使ってるんだけど・・・こんな物が見つかったよ。」

蒼星石が取り出したのは収支報告書である。

そこには赤ペンで修正箇所が沢山書かれていた。

 

「あら?おかしいわ?私達が見ているものと違うわ。」

 

「水銀燈、それよりもこれを見てちょうだい。」

 

「・・・!?あのやろう。」

 

「うにゅ・・・これはひどいの。」

 

「どこかに金が消えているのですか?」

 

「・・・金が送られた先は様々・・・だけど突き止めた。送られていたのは反オスマン帝国組織とKKK。」

 

バキ

「あの野郎!!」

 

「なの。民間新聞社にこの情報を流して。大統領を弾劾するよ。」

 

「次の大統領は誰にしますか?」

 

「自由党、戦争屋のララー・エクニクルにでてもらうでしょ。」

 

「戦争は元の国境線まで押し返せばいい。それよりも大統領が軍の人事権を持っているのはおかしいわ。そこを改革しないと。」

 

「ではそのように。」

数日後、フランク大統領のスキャンダルは大統領解任デモとなり、フランク大統領は窮地に追い込まれる・・・が、彼は最悪の一手を打ってしまった。

 

パン

大統領の私兵とかしていた治安維持隊、デモ隊に向かって発砲。

デモに参加していた少女に重症を負わせる。



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デモ

【政都】

ララー・エクニクルは祖先がインド系の男性だが、ララーという女のような名前とは裏腹に超がつく戦争屋であり、元中将でもあった。

彼は元老のような建国の勲労者、大企業の者達から連署を授かっていた。

 

《臨時大統領にエクニクル氏をおく。以下名義の者は貴殿を支持する。・・・》

700名にも登る名前の数々・・・。

 

「最高じゃないか!!」

熱狂し、すぐさま彼は行動に移した。

 

『皆さん。フランクは狂っている!!精神異常者であり売国奴だ!!我々の力で倒さなければならない敵である!!』

各地で演説をおこなっている最中に大統領のスキャンダルがついに報道される。

ララーの演説はデモに繋がり、そして少女が撃たれた。

 

『ゆいの血を無駄にするな!!』

この言葉を合言葉に突撃隊という親衛隊を編成し、退役軍人等を教官としたそこそこの練度の私兵を短期間で育成し、治安維持隊に攻撃を始めた。

情報部、文屋が初めて協力して政都の住民の避難勧告を出した数日後、軍、警察も協力した政都奪還作戦が開始された。

総司令部は札幌におかれ、シャーロット元帥が前線指揮をした。

 

ババババ

治安維持隊は大統領に心酔しており、約3万人が建物に立て籠った壮絶な市街戦となった。

地上からは通常歩兵、下水道から特殊部隊、川には水軍の地上制圧部隊、山から試験グライダー部隊がそれぞれ突撃し、歩兵の後ろで物資運搬、退路確保として突撃隊、警察が展開された。

大都市である政都は政府の首脳部だけにその大きさも経済都市の札幌に次ぐものであり、人口も170万が生活していた場所である。

現在も中央区以外は普通に生活している人もいるくらいに大きい。

 

「第12中隊郵便局を占拠。」

 

「第337小隊下水道にて発見。全滅のようです。」

 

「伝令!!新兵器の開発にBSが成功しましたがいかがいたしますか?」

 

「使えるもんは使え。」

 

「は!!」

 

【市街地】

キュラキュラキュラ

 

「な、なんだあれは!?」

 

黒煙を吐き出す鉄の固まり・・・化け物。

蒸気機関で動く戦車擬きである。

時速12キロ、移動距離50キロ。

兵の壁としては役にたち、火炎瓶以外の武器からは現状対抗手段がない化け物である。

そんな初級戦車が化け物ではなかった。

狙撃中隊。

北邦の最強の狙撃部隊であり、約2キロ先からの精密射撃が出来る者達であった。

 

パン

 

「・・・命中。次、エリア22。」

 

敵にも化け物は存在する。

ペリメス特例伍長渾名は短刀使いのデブ・・・総キル数127うちナイフでのキル数が99ということからもわかるとうり近接戦闘に長け、市街地というこの場所、しかも待ち伏せや夜になると出会ったら即死である。

 

「血を見せろ。」

 



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政都奪還作戦

市街戦はまさに泥沼化してしまったが、旧南方将軍はアラスカの戦争の総司令官に復帰し、逆襲に転じた。

 

「のんびりもええが・・・そろそろオイタが過ぎたんやで~。」

企業にいた私兵を徴集し、反撃に移る。

 

「そもそもテロは防御しても無駄や。敵の本体を潰すまで進む。」

速度はゆっくりであるが、1日10キロの行軍・・・全兵力50万・・・高々1000名が勝てるはすがない。

すぐさま国境線を越え後にワシントン州になる場所を占領した。

そのまま自然停戦となる。

 

「さて、政都はどうなったか。」

 

【政都】

アメリカ戦争はスムーズだったが、こちらは地獄であった。

最初は大きなショックを与えた戦車はエンジン部分を狙撃され爆発し、投入した95%が故障し、実験兵器として飛行船やフランスにいたスパイが盗み出した無煙火薬を使った初期の機関銃を投入したが、治安維持隊はガス兵器とトラップで対抗した。

質が悪いのがどちらも一定時間で蘇生することである。

5000名ほど捕縛、処刑するのに2ヶ月も経過している。

 

「V作戦を計画する。」

victoryのVである。

 

散発的な突撃では泥沼が続くだけだということで、北邦の技術の全てを集めて作られた巨大列車砲・・・20センチ砲からの中央にある大統領府に向かって集中砲撃後、飛行船の大量運用による新設空挺団の降下作戦、10万人もの外部からの再突撃である。

 

「これで終わらせる。」

 

〔11時45分〕

 

「最終チェック!!」

 

「機関異常無し!!」

 

「装填装置移動します。」

 

カンカンカン

鳴り響く警告音

 

「装填装置無事装填完了させました。」

 

「角度計算!!」

 

「修正右2度、上1度!!」

 

ジジジジジ

砲身が動き始める。

 

「調整完了!!」

 

「次弾装填準備完了。」

 

「目標大統領府・・・て!!」

 

〔11時50分〕

ドン

 

爆音と水蒸気が遠くからも聞こえ、そして見えた時、1つの光が町の中心部に突き刺さった。

 

カンカンカンカン

 

「作戦開始繰り返す作戦開始!!」

 

「ヤーーーー!!」

兵が叫ぶ。

 

ババババ

機関銃が援護する。

 

空からは味方が・・・

 

バンシュボ

飛行船が爆発し、燃えながら墜落する。

落下地点とは違う場所で空挺団は地面に降り立つ。

 

「計画第二段階失敗!!補助計画であるムカデを開始せよ。」

 

キュラキュラキュラ

鉄の化け物も参戦し、燃える政都の中を突っ込んでいった。

 

【政都内部】

蒼星石は自分のハサミを持って突入していた。

 

チラ

 

バン

敵の攻撃の中、次弾装填の瞬間を見て飛び出す。

 

バン

慌てて発砲する敵だったが、狙いが甘く形を変えたハサミで防がれてしまう。

 

ウギヤァ!!

 

ピシピシビシ

手でサインして味方に安全を伝え、さらに進む。



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V作戦

V作戦・・・後に北邦は祖国の危機になると発動する作戦となり、それだけ規模が大きな作戦である。

 

「浸透率80%を超えました。」

 

「政都の占領領域が70%を超えました!!」

 

「第2飛行船隊壊滅です。第7飛行船隊を送ります。」

 

「・・・参謀総長・・・勝利です。」

 

「・・・そうか。」

いまだに抵抗している場所はあるが、時期に物資切れをおこす。

それはもう戦うことができないのだ。

 

「・・・参謀総長、不味いことが起きました。」

 

「なんだね?」

 

「日本にて政変がおこり、大日本帝国が成立しました。」

 

「ふむ。・・・で、将軍家は亡命を希望しているのか?」

 

「いや、それが・・・」

 

【日本 江戸城】〔全国の大名が集まった日〕

 

「武士は調子に乗りすぎた・・・今こそ大政奉還の時!!」

将軍自らがこんなことを言い出し、徳川7家、薩摩、青森が賛成し、翌週には大政奉還がおこなわれてしまったのだ。

理由として、現在の武家システムでは広がった領土を管理することが不可能であり、人種差別も現地でおこなわれていることを知った尾張藩藩主が将軍に書状を送ったことから始まり、将軍もシステムの改革が必要と考えていた。

数年前から働き詰めだった下級武士が不審死することが相次いでおこり、青森の医者がストレスの定義を発表し、これが過労死ということが判明する。

で、将軍が書状を読んでいる最中に側にいた若年寄(38歳)がいきなり倒れて死亡したことから将軍としても無視することができなくなってしまい、優藩と呼ばれる薩摩、青森、越後、長州、土佐の5藩を集めた結果、薩摩と青森がそれぞれ理由つきで幕府の権利を天皇に返還すべきという意見になり、親族会議の結果、大政奉還を強制決行をおこない、大日本帝国初代宰相(後に首相に改名) 徳川松家が就任し、外務卿に斎藤赤龍、軍事卿に徳川家斉、内務卿に松平定信、宰相補佐に田沼意次の息子の水野忠徳がつく豪華なメンバーが新政府の主軸となった。

即座に廃藩置県がおこなわれ、青森、薩摩といった幕府に対抗可能な勢力は廃藩置県推進派であり、越後藩の上杉家は廃藩置県の発表後に県長になることを条件に受け入れる。

 

「・・・嫌だね。今こそ倒幕の時!!」

雄藩長州藩の毛利家は元々隙が有れば倒幕を狙う過激派であり、他にも伊達家の仙台藩、他の小藩が新政府に反乱を起こしたが、東日本は旧幕府軍と旧青森軍が鎮圧し、伊達家は一部を除いて処刑された。

 

「だが負けないのが毛利だ!!」

長州決戦が始まる。

 



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248話

【北邦】〔西暦1802年春〕

V作戦後も抵抗していた勢力を一掃し、ついに内戦が終結する。

新大統領のララーは大統領の私兵を持つことを禁止し、弾劾選挙に関する法律をすぐに仕上げ、荒れた政都の改造計画を発表した。

 

【日本】

時同じくして長州征伐が完了し、山口県に名前が変わる。

これにて極東の内戦は無事終了するのだった。

 

〔西暦1869年夏〕

徳川の首相制度が崩壊し、旧朝敵であった長州藩藩士の吉田松陰が7第総理大臣となる。

 

芳香達北邦組が帰国。

なぜか謙信ことニャル子がついてくる。

 

〔西暦1870年春〕

イタリア統一

 

〔西暦1914年〕

今宵・・・運命のパレードが始まる。

 

【バルカン半島】

サラエボ事件が発生し、連鎖的に大戦が始まる。

 

史実より力がないドイツ帝国

 

ナポレオン1世の再来と名高いナポレオン5世率いる超大国帝政フランス

 

フランスの影に隠れた海洋大国スペイン

 

インドパワーがあまりない大英帝国

 

不気味な成功した社会主義国家、指導者はレーニンのソビエト社会主義共和国連邦

 

軍拡し、南米に手を出しているアメリカ合衆国

 

全てのパワーバランスを綱渡りし、勝ち取った大国の座、コロンビア

 

弱い以下略、オーストリア=ハンガリー帝国

 

死に損ないの老人オスマン帝国

 

世界の経済を握る国、北邦共和国

 

世界第三位の海軍を持つ国、大韓民国

 

狂犬になりつつある大日本帝国

 

保護国扱いのモンゴル共和国

 

役者は揃った。

戦争を始めよう。

 

【北邦】

 

「武器以外の輸出に留めるですぅ。」

翠星石大統領はイギリスとドイツから武器を輸出するように言われていたが、極端な輸出は関係悪化の懸念になるとして生活必需品に留める。

 

日本はイギリスとフランスに武器を輸出、ソ連はドイツとオーストリアに武器を輸出、アメリカはどちらにも武器を輸出した。

 

ドイツ軍は国力的な理由により全軍の7割りを率いてベルギーに雪崩れ込んだ。

 

史実であれば耐えることができたベルギーだが、東部戦線がない今のドイツ軍をはねのける力は無く、大半を無傷で通過させてしまう。

 

「・・・プラン17を発動。私は北部に出向き兵を耐えさせる。ジョゼフ・ジョフル参謀総長、頼んだぞ!!」

 

「は!!皇帝陛下のご厚意に感謝!!」

ドイツの動きにフランスは皇帝の権限で議会を一時凍結。

すぐに総動員法が発令し、対ドイツ帝国進行作戦プラン17を発動した。

このプランはスイスの国境線ギリギリ上からドイツ帝国に雪崩れ込む作戦であり、この世界では戦略兵器の列車砲等も戦前から配備され、最精鋭部隊が揃っていた。

 



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戦時特需

【北邦共和国 政都】〔第一次大戦中〕

12億(第二の星も合わせると28億)の人口を持っているにも関わらず、北邦の国民は豊かであった。

世界の工業力の40%、食料自給率105%、陸軍は世界5位の数である35師団(70万人)、海軍は世界7位(戦艦はイギリス製のが2隻、日本産が2隻、大韓民国産が4隻、自国産が2隻)、金銀備蓄量世界1位と世界最大の超大国である。

今回の戦争は足りなくなるであろう食料品や生活必需品を売り込むことで、売り込んだ先の市場をコントロールし、戦後に火器類しか造ってなかった反動による工業の壊滅を狙った作戦もあった。

現在復権し、大蔵大臣となった真紅は戦後の成長戦略を構想していた。

そのために北邦銀行総裁水銀燈、アラスカ銀行総裁フレンダ、以下数名の大手銀行も交えた話し合いをしていた。

 

「現在この国の生産は適量消費社会になっている。・・・つまり今後は昔なんとか収めたマネーゲームがまた起こる可能性がある。」

 

「ずいぶん楽観的ね。可能性があるのではなく絶対よ。真紅、あなたはこれから起こる隣国とのつきあい方が問題よ。今は外交ではないから止めておくけど。」

 

「それよりも今は時間を稼いだ方が良いわけよ。・・・1916年前にテコ入れしないとドイツ帝国が負け。」

 

コト

紅茶を置いた真紅はゆっくりと持論を述べる

 

「・・・将来この国は様々な国から難癖をつけられて攻められるでしょう。モンゴルは来月にも国民投票によりこの国に合併するけど大韓民国、大日本帝国も今は仲間だけど大韓民国と大日本帝国の両国間の関係は日に日に悪化するばかり。アメリカ、カナダは3回も小さな戦争をし、さらに経済的な摩擦もある。ユダヤ問題も内部で噴出し始め、フランスとスペイン、イタリアは歴史的な問題から和解不可能、ソ連も書記長と副議長を兼任しているスターリンの動きが不安定。・・・そろそろ金本位制を捨てるしかないと私は考える。」

 

「・・・時期的にも最適ね。わかったわ。北邦銀行は追加の増刷を近々発表するわ。」

 

「アラスカ銀行はその動きに追従する。」

他の総裁達も賛成を表明し、マネーゲームの危険性を下げる方向に舵をきった。

・・・大蔵は見逃していた・・・自国の外交団が無能だったことを・・・。

 

確かに北邦の諜報部は独自の世界ネットワークを持っているため最強と名高いが、外務省は切り札の切り方が下手であった。

下手でなければアメリカとの関係悪化もなんとかすることが出来ただろうし、カナダを敵にすることもなかっただろう。

この戦争の不参加の理由もしっかり伝えられず、各国から不気味に思われることもなかっただろう。

悲劇は近くまで迫っている。

 



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ヴェルサイユ条約と戦間期

〔大戦中〕

北邦は最終的に中立国経由でドイツとオスマンに武器の密輸をおこない、1917年はなんとかむかえられそうである。

アメリカの本格参戦が決まったため詰みでもあるが。

それはそうと、日本も連合国側で参戦し、地中海でオスマン、ドイツ帝国連合海軍を盛大に沈め、2個師団もフランスに送ったらしい。

大韓民国も3個師団陸軍を送っている。

両国も近代戦闘経験を得たいらしい。

まぁ最終的にドイツ帝国、オスマン帝国、オーストリア=ハンガリー帝国の敗北で終わった。

ドイツ帝国以外は列強の座から転落し、大韓民国と大日本帝国が列強入りした。

パワーバランスは結局アジア>欧州>アメリカという感じになったが、アメリカの成長を見ると欧州はすぐに抜かれるだろうとの計算が諜報部から発表されている。

 

・・・で、敗戦したドイツ軍は国力の弱さと自分達の実力が慢心であり、本当の軍隊(フランス陸軍、イギリス海軍、ソビエト赤軍、北邦陸軍、アメリカ海軍)には勝てないという意識が芽生え、本当の軍になるために新技術を駆使した戦いをしなければならないと共通認識を持った。

そのため、数十万人規模の軍関係者が隣のソ連に逃げ込み、協同で戦車、軍用機の開発、運用をすることとなる。

代表者は史実では敗戦したドイツを纏めあげたグレーナ将軍だった。

 

〔西暦1936年〕

ドイツはソ連と北邦の援助で建て直し、史実通りヒトラーが何とかして国力を上げている頃、北邦でも航空機と戦車の研究が進められていた。

結果作られた軍用機は万能性を追求した双発戦闘機であり、全長12メートル、全幅28.5メートル、総重量7580キロ、最高時速600キロメートル、限界高度8900メートル、エンジンはSB式空冷エンジン2式、八雲グループ製造の20mm機銃2挺、22mm機関銃2挺の戦闘機タイプと60キロ爆弾2発もしくは120キロ爆弾2発を装備できる攻撃機になっていた。

名前は設計者の苗字が当てられ1式真中という名前になっていた。

戦車は・・・いや、設計思想が独特で、自走砲、大砲の防御としての役割を目的にしているため、見た目は全長6メートル、全幅4メートル、高さ2.25メートルの長方形の箱に62口径8.8cm砲が固定された時速35キロで動く駆逐戦車が主力であった。

ほとんど鉄板でできているために防御力が無いのが問題だが、軽機関銃は防げるので採用されており、砲塔開発を急いでいた。

しかしトラック(キャタピラがタイヤの代わり)等の運搬車は揃っていたので、北邦の問題点はとりあえず防御力のみとなっていた。




駆逐戦車の名前はパートナー01


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始まり1938

〔西暦1937年〕

ドイツから同盟の打診が来た。

同盟の利益もあるのでブロック経済により滞っていた貿易品を格安でドイツに送った。

見返りとして一部遅れていた通信技術を入手でき、軍が大蔵に頼み込んで予算を出してもらったVT信管を効率的に利用できるレーダー技術、無線技術が飛躍的に高まることとなる。

また日本から空母技術を、大韓民国から型落ち潜水艦を購入し、せめて自国の近海だけでも守れる海軍を作るようにした。(空母は航空機の地方基地代わり、潜水艦が主力)

 

〔西暦1938年3月22日〕

史実ではワシントン州と呼ばれた商東州においてアメリカ海軍が大砲を発砲して軍港近くに着弾し、警告として反撃し、至近弾をあたえた事件をきっかけにアメリカはハルノートを北邦に突きつけた。

 

「・・・こんな馬鹿な話はありえねーですぅ!!」

大統領の翠星石は交渉なしでのこの外交文章にぶちギレ、外交団に各国に説明してアメリカに味方をしないようにし、できるなら北邦に協力するように命令した。

結果失敗して、仲の良かったイギリス、ソ連、大韓民国、日本を見下したかのような高圧外交に総スカン、大韓民国と大日本帝国は同盟解消、ソ連は同盟解消から不可侵に条約内容が変わり、イギリスは経済圏の出入り禁止と最悪の事態に発展し、マスコミは外交の無能を叩きまくり、翠星石はさらに血管が浮き出ながら外務省を大統領直轄組織に格下げし、外務省の中を粛清した。

さらに翠星石は責任をとる形で辞任、戦時になりそうなことから長老である芳香が持ち上げられ大統領に就任。

 

「アメリカの非道は類を見ない。最終警告とする。ハルノートを撤回するのじゃ。」

テレビとラジオにも流しながら芳香はアメリカに警告した。

アメリカのルーズベルトは

 

「No!!」

と拒絶し、戦争が始まった。

北邦は総動員法を発令し、1ヶ月後には膨大な人口から繰り出す数の暴力が始まる。

 

「正義は我々にある!!」

アメリカは準備していたらしく、史実のマジノ線並みの防衛陣で先行部隊を撃退すると、追撃に出る。

 

・・・北邦の苦難の始まりである。

 

パートナー1と呼ばれた駆逐戦車、1式真中、大小の大砲を使った追撃部隊を壊滅させようとしたがそれを逆に壊滅させられてしまう。

相応の被害が出たため追撃は終わり、国境から12キロ北邦は後退することになる。

パートナー1 損害21両 1式真中 損害40機 大砲 損害70門

 

〔同時刻〕

 

「頭を叩けば終わる戦いだ。貴様らの活躍によりアメリカは救われる。」

 

アメリカ海軍動く



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北海道防衛戦

【十勝基地】

 

バラバラバラ

「飛べる航空機は全て飛ばせ!!敵の機体の実力は情報以上の可能性がある!!通信連携を厳密にしろ!!」

 

空母による奇襲・・・まだ配備され始めたばかりのレーダー基地が早期発見することができたのだ。

北海道に置かれた1式真中は5000機、他の実験機もあるが、主力は真中である。

そのうちの60%を稼働させた迎撃作戦は政都郊外にある水田に3発の爆弾を降らせる結果と最終防衛ラインで止める結果だった。

1式真中の損失は11機、対してアメリカが投入したB-17は45機、戦闘機のワイルドキャットは70機と全滅させる結果となった。

 

【参謀本部】〔翌日〕

 

「敵の爆撃機と戦闘機の残骸を調べた結果、真中の攻撃力は十分ですが、防御力と近接戦闘に不向きなことがよくわかりました。」

 

「そうやね。・・・1式真中の改造として双発機から単発機に作り替えるよう開発班に連絡しといて。海軍に関しては潜水艦を使った探知の徹底。陸軍は現地にてパートナーが易々と破壊した敵戦車の情報を送るように。」

 

「「「は!!」」」

 

参謀総長となった元南方将軍は戦車等の運用に頭を悩ませていた。

 

(そろそろお役御免やな。戦車や軍用機の扱いが老人には厳しい。・・・まぁ佐天は機動面から詳しいと思うけど・・・さて、ここからズルズル負けるとあかんな。・・・日本の動きも怪しゅうから警戒しておくかいな。)

 

「参謀総長、わしの自信作は?」

 

「おっと、すまんすまん。あかんね~考えると周りの声が聞こえなくなる癖は。」

 

「しっかりしてくれよ婆さん。」

 

「小僧にいわれとうないや~・・・ええやん。とりあえず量産させたる。500作って実戦で使ってから本格量産させたるよ。」

 

「へい。まぁわしにかかればちょちょいよ!!」

 

「期待してるで、両津中将。」

 

【商東】〔数日後〕

前線は国境から30キロ地点で落ち着いていた。

 

「フム、やはり北邦は戦車等の機甲戦力は前回の戦争からあまり発達してなかったのだな。」

アメリカは史実のような圧倒的な強者ではなく、チャレンジャーであった。

国力、人口、軍事費と全てで負けていたアメリカ軍はどうすればワシントン州を奪還できるかを考え抜き、結果、機甲戦力の増加と徹底的な爆撃による工場郡の破壊であった。

パットン将軍は600両のM2、M3戦車からなる実験機甲旅団を率いて初戦を勝利していた。

しかし、アメリカの戦車では北邦の62口径8.8cm砲固定砲の破壊力に耐えることはできずに、50両も失っていた。

 

「M4中戦車の量産を急かす必要があるな。」



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商東決戦

【商東】〔4月30日〕

アメリカ軍の撃退と国境まで押し返すための反攻作戦が商東にておこなわれた。

司令官は極東の女モルトケと名高い神塀大将だった。

 

「1軍(25師団 5軍団)を投入した反攻作戦です。祖国のために全力で叩き出しますよ!!」

彼女の独特な演説のあと、作戦が開始された。

 

空軍から大規模な攻撃機約1500機が作戦空域に飛び立つ。

同時に第三、第七155mm砲兵師団(砲兵師団=2000門)、第一、第八、第十二88mm砲兵師団、第十、第十一76mm砲兵師団、さらには虎の子の第一機甲師団(戦車の車両数200両、装甲車500両、通信車10両、輸送車500両)、17の歩兵師団が陣容であった。

他にも補給部隊がいるが、補給師団(15師団、3人の将官つき)も500機の航空機と400門の対空自走砲を保有していた。

 

「攻撃開始!!」

縦深攻撃の原則は爆撃や砲撃で敵戦線を前線司令部ごと吹き飛ばすことであるが、残念なことに、まだ戦略爆撃機が開発されていないので、攻撃機の1式真中を活用していた。

 

「万能機の利点もわからなくはないが・・・特化型出ないと空は戦えんだろう。」

両津中将は実験機中隊(36機編成)を自ら率いて空を飛んでいた。

それは大きさは日本の零戦を少し大きくし、SB式空冷エンジン2式を串型に配備し、二重反転プロペラ方法を採用し、平均時速625キロ(最高高度9000メートル)、22mm機関銃2挺を採用し、時速を落として小回りが効きやすく、防御力も1式真中の2.35倍ほどあり、新兵でも扱いやすい単座戦闘機だった。

しかしコストが1式真中の2倍、工程も1.5倍と高めのため、短期間では40機が限界だった。(それでも1ヶ月に実験機を40機も揃えるのは北邦の工業力の高さを伺える。)

ちなみにこの機体は両津の頭文字からR-0とつけられた。

 

『中将どの!!この機体は良いです!!まるで体の一部のような錯覚を覚えます!!』

 

『なにが錯覚を覚えますだ。いい婆さん達が・・・。あ~あ、若い男がほんといね~の。』

 

『ホモ?』

 

『おい、今ホモ言った15番機、後で兵舎でヒイヒイ言わすぞ!!』

 

『婆さんにむきにならないでよ。両津中将。』

 

『これだから女は・・・。』

 

「中将殿、敵です。」

 

『・・・のび太一等兵、でかした。帰ったらわしのコレクションから何か分けてやる。』

 

「冗談半分には聞いておきます。」

 

『腹に食い付け。鉛玉で引き裂いてやれ。』

 

「『『了解!!』』」

 



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空中戦

【作戦空域】

空軍は初の戦争であった。

いままでは小規模の衝突はあったが、個々での力量が勝敗を左右したが、無線を使った組織的な攻撃は初であり、どれくらい効果があるかも未知数であった。

 

『HQ!!敵の数が違うじゃねえか!!なにが100だ!!1500はいるぞ!!』

 

『HQ!!第三百二十九中隊損失55%オーバー!!』

それは悲鳴であった。

空軍としての問題点は訓練過程にあり、教官の数が足りなく100対1という割合で教えるため成熟していない点、1式真中が単座機でありながら1人では動かしずらく、火器系統の問題点もある。

北邦民というコーディネーター並みの学習能力と肉体能力、適応力があったから動かせるが、他国のパイロットなら空中で動かすのもままならない機体であった。

しかも単座が無理がある。

 

まぁ悲鳴がある傍ら、1式真中を操って既に7機落とすエースもいるのでなんとも言えないのが現状であり、攻撃機としては他国の攻撃機よりも優秀で、戦果も着実にあげている。

 

一方両津実験中隊は36機撃墜なし、被弾は平均2発、平均撃墜数5機と彼らだけで約180機も落としていた。

 

『中将殿!!こいつは最高ね!!』

 

「だろう。ワシの設計に抜かりはないぞ。」

 

『中将、キル2追加。』

 

「のび太一等兵、今日で16機とは飛ばすな。そろそろ弾が持たんだろ。」

 

『いえ、一撃でコックピットを仕留めるのでまだ90%残ってます。』

 

「化け物だな。帰ったら二階級特進させる。気を抜くなよ。」

 

『まぁ。死にたくありませんからね。』

 

「お前さん本当に19歳かよ。」

多数のエースを産み出すこととなるこのR-0だが、この後出てくるヘルキャットやP-51と激戦を繰り広げることとなる。

 

しかし・・・空での進行もここまでであった。

 

【前線司令部】

 

「神塀大将!!最悪なことがおきました!!」

 

「何事ですか!!」

 

「15:24:33にてカナダが北邦共和国に宣戦布告。同時にイギリスとその属国も宣戦布告を国際線で発表しました。これにより進撃中の部隊から多数国籍の部隊と交戦しているとのこと。さらにアラスカに進行中の敵軍があるそうです。」

 

「・・・アラスカは防衛線まで引いて出血を強いることを意識してください。司令部にも援軍を要請してください。第二機甲旅団を敵との遭遇地点に送ってください。作戦は変更しません。前進を続けてください。」

 

「は!!」

 

【参謀本部】

 

「佐天元帥、ドイツの観戦武官を連れて商東に向かってほしいんや。」

 

「いいけどあれ貸して。試作戦車の155mmのやつ。」

 

「ええけどあれ遅いよ。」

 

「牽引車を装甲車に改造したからじっけんしたいんだよ。あれ乗り心地そこそこ良いから観戦武官もそっちの方が良いでしょ。」

 

「・・・わかったで、50両出す。持ってき!!」

 

「良いね!!ありがたく使うわ!!」

 

 



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地獄の・・・

【商東】

イギリス諸国の参戦により作戦は崩壊し始めた。

まずスペックの劣るウェストランド・ホワールウィンドという双発戦闘機に奇襲効果があるとはいえ、5対1のキル数で負けてしまい、全体の半分が墜落もしくは大破したことにより制空権がどんどん奪われてしまったのだ。

さらにイギリスはフランスという大国から自国を守るために作り出したマチルダII歩兵戦車の保護国がライン生産できる使用にしてあり、マチルダⅡ600両が側面に突っ込んで来たため、パートナー1はなすすべもなく破壊され、武器を放棄しての撤退に移っていった。

 

「神塀閣下・・・作戦は失敗です。現在国民のアラスカに避難させることには成功しました。司令部もアラスカ司令部と合流させ、そこで機会を待ちましょう。」

 

「・・・損害を教えてください。」

 

「パイロットは撃墜後、回収が完了していたので死者はいません。しかし、歩兵と砲兵はとにもかくにも、機甲師団は車内にて蒸し焼き状態になり、完全消滅が7207名、再生不可能の傷害を負ったのは1397名です。」

 

「・・・義肢の予算書を回してください。移動だい書きますから。」

 

〔1か月後〕

ワシントン州の奪還によりアメリカは講和派が主流となり、北邦は和平を時間稼ぎとして新設された外交省にその役目を与えた。

 

「間に合わずに申し訳ない。」

 

「佐天元帥・・・自分が不甲斐ないばかりに申し訳ありません。」

 

「・・・お互いに謝っても仕方がないな。問題点を話していこう。」

 

「はい。」

アラスカ司令部では佐天が総司令官として防衛戦線を構築し、イギリス諸国の攻撃を撃退した。

そこからすぐに反撃はしないで力を必死に蓄えていた。

 

「元技術者のワシからも意見したい。」

 

「両津中将、何か案が?」

 

「戦闘機に関してはワシの設計したR-1を量産すればなんとかなる。あと、調べてわかったが、1式真中のエンジン配置だと致命的な欠点も見つかった。ボコボコ撃墜するから調べたが、火薬の粉がエンジントラブルを起こしていた。頑丈なエンジンだから飛んでいたが、速度が少しずつ減速していき、最終的には時速490キロまで落ちる。それを改良することと複座にし、2人乗りかつ防御力を上げれば時速550キロ台でも戦術爆撃機としては使い得ると思っている。」

 

「そんな欠点が・・・。」

 

「早急に対処する。」

 

「戦車と兵器に関して意見があります。」

 

「夜神月技術少将発言を許可します。」

 

「問題点を洗い出した結果、防御力がないこと、機動性が悪いことが欠点のパートナー1に対し、佐天元帥が持ってこられた試作戦車00は時速こそ25キロと遅いですが、155mm砲と7.96mm機関銃に他国より遅れているとはいえ砲塔循環リンクを搭載し、88mm砲の直撃も耐えることができるチタン合金装甲、傾斜装甲と、集団で戦うのならこれほど最適な戦車はないでしょう。」

見た目はソ連戦車のKV-2に似ているが、さらに側面や正面の装甲を厚くし、後ろにエンジン保護用の鉄の網が張られていた。

 

「コストはどれぐらいだ?」

 

「パートナー1の30倍になります。」



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鬼才

コストの件は激論となり、実験部隊の成果次第ということになった。

 

「とりあえず今有るもので何とかしましょう。パートナーは装甲を外して別の装甲にして組み立て直す。箱形では防御力がないから傾斜装甲と待ち伏せ戦術で現在は対応しましょう。」

以後パートナー1は駄作という位置づけが決定し、開発したSBは社運をかけた、他の企業は市場に食い込むためにあの手この手で戦車と航空機を開発していくことになる。

 

【政都】〔8月21日〕

 

「・・・戦争が始まってから約半年・・・局地的な勝利は多々あるが、戦術観点、戦略観点では負け続けなのじゃ・・・アメリカか。やはり手強いのじゃ。」

総力戦に突入し、軍はどんどん肥大化していく。

既に25万人編成の地方軍が第1から第6と150万人を編成完了していた。

 

「戦車がここまで強いとは・・・運用にも問題があったとはいえ1000単位で破壊されておる。敵の戦車はほとんど砲兵が仕留め、戦車を破壊するために大砲が駆り出されるため戦術が破綻する・・・か。最悪じゃな。・・・ドイツから中古戦車を叩かれるの覚悟で購入するかの。」

いままで散々負け続けのことを強調していたが、他国より圧倒的に進んでいる軍事技術もいくつかある。

レーダーやコンピューター関連(トランジスタ式を採用)、無線関連・・・自動小銃である。

自動小銃は戦車を貫通する威力はないが、他国より10年、20年先の銃を開発することに成功していた。

量産性はアサルトライフルより劣るものの、射程、精密度、連射力、故障率の低さは圧巻であり、扱いやすさと互換性も高かった。

この芳香銃と呼ばれる銃が配備されれば選曲を逆転できると思っているため悲壮感はあまりないのだ。

 

「ドイツもそろそろ頑張るじゃろ。」

 

【大ドイツ】〔8月30日〕

計画を前倒しにしてヒトラーはチェコスロバキアのズデーテン地方を編入していた。

 

「総統閣下、北邦の友人から取り引きが来ています。」

 

「うむ。」

 

ペラペラ

 

「国防軍に回せ。嬉しい取り引きだ。」

 

「は!!」

ドイツの違いはSSが無いこと、軍の年功序列が崩壊しており、現在はマンシュタイン、グデーリアンの2人が機甲師団を、老人達は歩兵を率いるという役割分担が完成し、祖国のためにユダヤの共存を意識し、グレーナー元帥が総司令官をしていた。

 

「資源と自動小銃を渡すから戦車を寄越せだと・・・北邦の老人もしたたかですな。」

 

「Ⅱ号戦車Gを渡してやれ。余ってるのはそれぐらいしかないからな。」

 

「は!!」



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新型戦車

試作戦車は佐天元帥のもと、100台が纏めて実戦に投入された。

この戦車には新たな試みとして自動装填装置がつけられており、装填時間を10秒まで短縮することに成功していた。

ただし、平均20発に1回弾詰まりを起こすので機械的信用性は低い戦車だった。

しかし、実践での活躍は素晴らしかった。

アラスカに進行していたイギリスとの突発的戦闘において6両の試作戦車が実力を遺憾無く発揮した。

時速24キロしかでないマチルダII歩兵戦車は避けることができずに榴弾による攻撃で戦車の内部の弾薬庫に引火し、次々に撃破、鹵獲されていった。

 

「コストがネックだが、素晴らしい戦車であることはわかった。・・・佐天元帥の頭文字からST-1としよう。」

しかし、複雑な戦車のため日産2両が限界であり、大量生産に向いた戦車の開発が進むこととなる。

 

〔9月22日〕

アメリカの和平交渉団がやって来た。

和平する気のない私達は新兵器の開発にこの貴重な時間を費やした。

まずSBは自走砲の問題点の改善が完了し、現在ある大砲の自走化に取りかかっていた。

元から部品などの互換性があることもあり、R-1戦闘機の大量生産の開始、装甲車の改良、試作戦車の開発も順調に進み、とある中堅企業が協力し、とある戦車が改造された。

元々はドイツから輸入したⅡ号戦車Gを前50mm傾斜装甲、20経口75mm滑空砲、大手エンジンメーカーフリーズグラブのフリーズグラブエンジンⅤを搭載し、不整地時速60キロを実現した30トン中戦車試作戦車24号。

これより性能は劣るもののパートナー1の改善型で傾斜装甲と足回りを良くした駆逐戦車のパートナー2、エンジンを2つにし、装甲厚を前面100mm、側面85mmの傾斜装甲を実現し、出入口を後ろにした駆逐戦車のパートナー3等の北邦の開発能力と地力の高さ、マンパワーにものを言わせた本当の総力戦が始まっていた。

 

「これで勝負にはなるじゃろう。」

 

【日本】〔10月5日〕

後に一零五の妥協と呼ばれる政変が大日本帝国でおこる。

石原中将と東條英機中将の和解が成立したのである。

この和解によって陸軍内部の派閥が整理され、残る対立は陸海軍の派閥と日本を牛耳る斎藤一族の派閥のみとなる。

斎藤一族が勝てば北邦に協力した体制になり、海軍が勝てば大韓民国に宣戦布告、陸軍が勝てば北邦に宣戦布告の可能性が出てきたのだ。

 

【北邦政府】

 

「政治工作も進めるのじゃ。・・・とりあえず来日して天皇と友好関係にあるのをしめすかの。」



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その頃のアメリカ

〔10月2日〕

偶発的な遭遇戦が発生した。

アメリカ軍は200名の歩兵と戦車5両、装甲車2両、輸送車2両の編成であり、北邦軍は歩兵150名、S-1戦車5両、装甲車(新型車両であり、主力装甲車、無限起動の装甲厚全面90mm、SB式30mm機関砲2門)3両、輸送車10両、ジープ15両の装甲中隊であった。

 

「隊長なんですか!!こっちの弾が効きません!!」

 

「イギリスの言っていた巨人はあいつか!!」

 

「無限起動を撃て足止めをしろ!!」

 

「隊長!!奴らの足にもこったの弾が効きません!!うわぁ!!」

 

「C車応答しろ!!・・・クソ。」

 

「敵突っ込んできます!!」

 

「歩兵連中を下がらせろ!!」

 

「ダメです!!後ろにも戦車が来てます!!」

 

「なに?」

彼らが戦車と言っているのは北邦の装甲車であるが、そんなことを知らない彼らは後ろにいた歩兵は機関砲の餌食となり、辺り一面は血で染まっていた。

 

「撤退だ!!撤退し」

 

ドゴン

北邦製の硬芯徹甲弾が指揮車両に直撃し、車両は爆発した。

恐怖のあまり動けなくなった残った戦車も15秒以内に全て破壊された。

逃げ切ることのできたアメリカ軍の装甲車は司令部に報告し、司令部は対抗策を必死に考えさせられることとなる。

 

〔11月15日〕

イギリス、アメリカ、ドイツの潜水艦の設計図を諜報部が奪取し、それを元にした300艦計画が始動した。

これまで旧式となった戦艦や陸軍の余り物を貰って(トランジスタコンピューターやレーダー、列車砲の砲弾等)運用していた駆逐艦や軽巡洋艦のことを考えると、やっと独自兵器の運用ができることに海軍の上から下まで興奮した。

しかしながら魚雷の研究は初期で止まっており、方向性も何もない状態なのでまだまだ海軍の苦難は続いていくこととなる。

 

「自国には言われないけど他国から穀潰し扱いや海軍軍縮条約に呼ばれなかったのは屈辱クマ。」

 

「見返してやるっポイ。」

 

【ソ連】

 

「・・・バルカンは死にますね。」

 

「やはりそうですか。同志サヤカ。」

 

「同志ヨシフも。」

ソビエト議会の議長のサヤカと書記長のスターリンがソ連を運営していた。

彼女と彼の働きによりソ連は世界恐慌中も成長し続け、人口も7億に達していた。

国力も北邦、アメリカに次いで3位であり、H〇I風に例えるなら北邦のICが4500、アメリカが2300、ソ連が2000、フランスが1200という感じである。(ドイツ400、日本390、大韓民国390・・・)

 

「ドイツがバルカンを食ってもフランスには勝てないというのに・・・。」



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陸の休戦 海の継続戦争

〔12月14日〕

アラスカは氷に閉ざされ、自然と両軍は休戦となる。

しかしながらそれは陸だけであり、海での戦争は続いている。

アメリカ海軍の動きは比較的おとなしかった。

理由として、海軍大国である大韓民国と大日本帝国が近くにいたからである。

2つの国が万が一、作戦行動中に参戦すれば、袋叩きに会う可能性が高かったことと、北邦に海軍の攻撃があまり意味が無いことが判明したためだ。

北海道の政都は射程外であり、最大の金融都市の札幌は日本海側である。

中規模の町が太平洋側にもあるが、近くには軍事基地が存在し、参戦当時のような奇襲も大打撃を与えることはもう無理である。

日本海側に回ろうとすれば千島列島の基地から砲撃されるし、日本海に出ようとすれば大日本帝国や大韓民国が警戒するため上東海道の工場ベルトに打撃を与えることは出来なかった。

そのためアラスカに攻撃をするのが海軍の役目だが、物量で迎撃してくる1式真中改に戦艦はともかく、駆逐艦、巡洋艦の撃沈数が増えていた。

冬の間の北邦は閉じ籠るしかできないことから、フランスの絵師が虎に噛みつかれながらも甲羅で身を守る亀が描かれた。

 

【北邦政府】

 

「今上天皇との会談は成功じゃな。いきなり宣戦布告はないじゃろう。」

 

「お疲れ様ですぅ。」

 

「悪いのう・・・翠星石。」

 

「しかたねーですぅ。で、どうするですぅ?」

 

「それは私から・・・。お母様・・・いや、大統領閣下、まずは大統領閣下の支持率ですが、99%で残り1%は移民の一部です。反対者は袋叩きに合うくらい支持されてます。」

戦時のため銀行は全て統一され、水銀橙は財務大臣に戻り、臨時統一銀行総裁にはフレンダがその職に就いた。

他にも色々と戦時のため統一された。

まぁ大企業は膨大な利益を得ることができる代わりに中小企業に最新技術を渡さなくてはならないため、損得半々という感じである。

 

「内務省からは特にない。」

 

「外務省からはドイツとの同盟強化ですね。1年以内には動くようなのでフランスとスペインはなんとか直接戦争は回避できそうです。」

スペインもICで例えると400近くあり、しかも3個艦隊を保有している海軍大国である。

 

「ナイスなのじゃ!!」

 

「農林水産省から報告ですぅ。漁業はやはり制海権を取られてから低下ぎみですぅ。しかし、最新の養殖技術でストップさせてるからこれ以下にはならねーですぅ。主力の農業もアラスカの一部で打撃を受けたですが、まだまだ自給率100%を超えてるですぅ。畜産も同様ですぅ。」

 

「工業省から報告するのー。兵器の生産力は約3倍程向上したの。また、マザーマシーンの作成によるによる製造ラインの簡略も進んでいるの。」

 

「諜報部は引き続き世界の情報を集めます。」

 

「頼んだのじゃ。」



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バランスが崩れる危険性を持つ国

【日本 紺碧会】〔12月24日〕

 

「山本さんいかがしますか?」

 

「大高さん。あなたもわかっているでしょう。いや、東條首相や近衛さん。石原さんも腹をくくっているのですよ。」

 

「では・・・。」

 

「紺碧会は北邦政府に対して1月1日に宣戦布告をする。」

 

「・・・北邦も無差別級攻撃はしないでしょう。」

 

「この国は膿が溜まりすぎました。斎藤一族、徳川一族は最後の防波堤であり、その片方を維新の名の元に粛清した馬鹿によって今の政府がある。・・・我々は斎藤一族と意見は同じだが、どうせならその馬鹿の尻拭いまで彼らにやらせる必要はないでしょう。」

 

「かの国は良心がある。理由も話してはいる。」

 

「より良い敗けを・・・ですか。アレイスター・クロウリー氏を招いての新東京計画も始まったことですし・・・。」

 

「・・・日本の首都圏にもうひとつの首都を作る計画。」

 

「学生、研究者、文化人・・・そして将軍家の生き残りである旧水戸藩次期当主の徳川・・・いや、今は上条を名乗っている斉幸氏と鳥取藩の鳥木姫、秋田徳川家にして現在は徳川本家となった当主徳川道時以下5名のご子息、斎藤一族の軍人以外はこちらに移動する計画。」

 

「口の悪い人はゲットー呼ばわりされてますがね。」

 

「ここに皇族病死したことになっている大正帝が行くと。」

 

「・・・膿を出し尽くすまでの辛抱だが、その怒りは我々の命にて償おう。」

 

「我ら紺碧会・・・鬼となり悪魔とならん。」

 

「「「おう!!」」」

紺碧会幹部メンバー20名ここに誓う。

 

【参謀本部】〔西暦1939年1月1日〕

 

「参謀総長・・・悪い報告です。・・・日本が宣戦布告をしてきました。」

 

「なに?」

 

「さらに悪い報告です。・・・コードネームⅠと呼ばれる航空機の性能が判明しましたが・・・我々が主力とするR-1よりも45キロも速いことが判明しました。」

 

「よんじゅう・・・ほんとうやろな?」

 

「はい。」

 

「あかん・・・あかんで。」

 

「いや、大丈夫だ。」

 

「両津中将!!」

 

「ワシがこれぐらい考えてないと思ったか?コストの面でやめていたが、現在の4枚ではなく8枚にすれば670キロぐらいは出せる。後はエンジンの出力向上に期待するしか無いがな。」

 

「すぐに採用する!!急いで部所にまわすんよ!!」

 

「エセ京都弁が壊れてますよ。参謀総長閣下。」

 

「それだけ慌ててたんよ。・・・で、要求は?」

 

「流石ものわかりが閣下、実はこれを。」

 

「・・・なんやこれ?」

 

「木造戦闘機です。防御は低くなりますが、即時炎上のしにくさや脱出のしやすさ、コストを1式真中の1/12に押さえながら8枚二重反転プロペラ時速690キロを出すことができる機体です。最も20mm機関銃で限外なので拡張できる部分がエンジンしかないのが欠点だかな。」

 

「初期で100、次に4000、最期別エンジンのを10000作る。いいな。」

 

「へいへい。」



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疎開

【北邦政府】

 

「・・・なぜじゃ・・・なぜこのタイミングなのじゃ。」

大日本帝国の宣戦布告は致命傷であった。

海軍を育てなかったツケが今・・・支払わなくてはいけなくなったのだ。

 

「・・・ソ連方面も危ういかもしれん。大韓民国は陸軍は弱い。あそこは大丈夫じゃ。しかし・・・。」

 

「大統領閣下・・・それは参謀総長がやることです。」

 

「そ、そうじゃな。・・・魔術や秘術、非合法実験の解禁、そう伝えてくれ。」

 

「了解しました。」

 

「ワハハ・・・やっと私の出番か。」

 

「蒲原は最後まで使いたくなかったのじゃ。」

 

「仕方ないよ。・・・手始めに・・・航空機か?」

 

「うむ。術式を施してほしいのじゃ。」

 

「了解。」

 

「貴女が焦るとはね。」

 

「小萌か。徳川光圀の方がよいか?」

 

「むー。好きでこんな体になった訳じゃないのに・・・。」

 

「・・・で、お前さんらが来たってことは、そういうことだろ?」

 

「まぁバレバレじゃな。」

 

「龍興もしわしわのキョンシーか。今はチヨか。」

 

「人形遣いのチヨでございますがな。・・・光圀公及び斎藤367家中12家が亡命を希望する者なり。一族ではないが織田信長、家臣の森成利、明智光秀、何故かいる上杉謙信の4名もでございます。」

 

「わかった。が、秘術を伝授してほしいのじゃ。」

 

「恩には報いますぞ。」

 

「頼んだのじゃ。」

 

【芳香宅】

 

「これは使いたくなかったが・・・致し方ないのー。」

とある刀を鞘から抜き、ブンブンと振る。

 

「発!!」

刀は光輝き、そして元に戻る。

 

「思考誘導で、敵は夜間爆撃をしたくなくなるのじゃ。」

神器を使えばこのようなことができる。

直接的な物でないからたちが悪いが。

 

「さて、勝てるかのー。」

 

【参謀本部】〔1月5日〕

縦深戦術において大切なのは、面での攻撃と継続的な突破力である。

北邦はどちらもあるように思えていたが、1つ足りなかったのである。

 

「空挺兵。」

誰かが呟いた空挺兵こそ北邦が本当の意味で足りてなかったものであり、それを運ぶ輸送機(爆撃機)をやっと開発できたのだ。

 

「アメリカ軍のB-17の設計はそのままで、防御力と航続距離を伸ばすために新素材の合金アルミニウムを使用しました。しかし強化ガラスを使いましたがどうしてもコックピット部分が弱点になり、護衛機が必要です。そのため護衛用に給油装置という技術を組み込みました。時間は地上の1.3倍程かかりますが81%の給油成功率を誇り、初期型としては十分な性能だと自負しております。」

 

「日本に進行しなくてはいけなくなった。給油機どうこうは関係ない。2000作れ。それを日本に飛ばして占領する。」



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疎開 2

大日本帝国の紺碧会の計算違いがあった。

1つは北邦にまだ余裕があるだろうということである。

現在輸送網を振る活用してアラスカに集結している780万人、それに配るための弾薬も銃も物資もまだ足りないのである。

さらに戦車や軍用機はもっと数が足りてなかったのである。(トラック 無限起動付きは余るほどあるが)

2つ、国民性を間違えていたのである。

温厚で能力は全てにおいて高い感情よりもモラルを重んじると思われているが、キレたら何よりも優先して社会の敵を攻撃する民族である。(よく民主主義ができたな)

この2つの誤算は日本だけでなく、世界を巻き込んでいくこととなる。

 

 

【北邦政府】〔1月8日〕

 

「政府のデータの疎開は開始するのじゃ。場所は上東街道の新京(満州の中心部よりもやや南の位置)とアラスカの東都に。どちらも巨大銀行がある場所だから金融麻痺になることは無いじゃろ。・・・また、人間の疎開を急がせるのじゃ。キョンシーを中心にここで抵抗の構えをとる。・・・しかし翠星石は最高の仕事をしてくれたのじゃ。地下農業プラント計画を・・・。」

農業生産高を上げるために地下鉄の要領で地下50メートルと地下100メートルの硬い岩盤がある場所を利用し、柔らかい地層をくりぬいた巨大な地下空間を人工的に作り上げていたのだ。

地盤沈下や崩落が起きないように上には国営の農業実験用の畑しかないため被害も少ない。

今回はこの地下空間をシェルターや武器庫(火薬類)をしまうための施設に改造中である。

 

「これ以外にはどうしようも・・・」

 

ジリリリリリ

電話が鳴り出す

 

「なんじゃ?」

 

『北海道に日本軍2個師団に上陸されました。・・・場所は知床半島。』

 

「知床半島じゃと!?」

 

『対策はうつから政治を任せます。』

 

「わかったのじゃ。」

 

ガチン

 

【知床半島】

 

知床半島は突出部であり、要塞化されていたのだが、長門級戦艦の超長距離精密射撃に一部穴が空きそこから上陸されたのだ。

2個師団だが、600両の戦車が附属されており、なかなかの火力である。

その戦車は五式中戦車改と呼ばれ、75mm砲を装備しており、現在の北邦戦車では普通に貫通させられ、北邦戦車でも試験配備中のHEAT(対戦車榴弾)か155mm砲でしか貫通しない防御力を持ちながら時速48キロで走る化け物戦車であった。

 

「出撃!!待ち伏せに気を付けろ!!」

日本軍の攻撃により要塞の約3割りが無力化され、一気に政都に迫ろうとしていた時に地獄が始まった。

 

「ふひひひ。」

 

「あぁぁぁ!!」

キョンシーの不死身によるゾンビアタックである。

殺しても殺しても復活して銃撃してくる彼女達に百戦錬磨の日本軍も恐怖のドン底に落とされたのだ。



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日本の進撃

〔1月29日〕

現在北海道では3ヶ所から上陸され、政都近くまで迫られていた。

本州方面の青森航空基地から繰り出される爆撃により札幌より南部では壊滅的打撃をうけ、地下鉄網や下水道を使い、地下からゲリラ戦に移行し始めていた。

 

【参謀本部】

 

「チクショウ!!はぁはぁ。」

 

「参謀総長・・・どうしましたか?」

 

「SBに高高度爆撃機の納入が3日遅れるとの報告が入ったの。」

 

「参謀総長、確かにそれは日本やアメリカを攻撃するのに良いとは思いますが・・・現状だと不発が多い手榴弾を何とかしませんと。」

不具合発生率35%と致命的な欠点が存在した。

 

「日本の言葉で足りぬ足りぬは工夫が足りぬというけど・・・それでも時間だけはどうにもならないのよねー。」

 

「そんな参謀総長に良い報告です。・・・10個師団の訓練が完了しました。毎週10個師団の訓練が完了していく目処が立ちました。」

膨張化する陸軍は止まるところを知らない。(海軍はそれを羨ましそうに見ているしかない)

 

【大日本帝国海軍省】

 

(我々が前世で経験したアメリカの生産力・・・それを凌駕する北邦の兵器はまだ弱い。しかし、僅か1カ月で改良された新兵器が千単位で吐き出してくる。我々の戦略は破綻し始めているのかもしれんな。)

 

「さて、紺碧艦隊を出撃させるように打電しろ。来週には北海道を海上包囲する。」

 

「は!!」

 

〔2月9日〕

 

で、実際に日本海軍の潜水艦隊の通商破壊作戦により北海道の補給は途切れたかのように思えたが、高高度爆撃機を輸送機の代わりにしたことで何とか食いつなぐことに成功する。

・・・で、新型戦車の殆どが上東海道で作られていたため、政都にはパートナー1で戦わなくてはいけなくなったのだ。

苦肉の策としてエンジンを替えて60キロ出せる駆逐戦車に改良し、白く塗装すると撃破されることが30%も減ったのだ。

 

「あれ?なんで?2キロ先にいるやつこっちみえてないん?」

 

「前までだったら普通に攻撃してきたのに?」

視力2.5は伊達じゃない。

航空機も雪と同色で何メートルも積もった雪の中に点在する戦車を見つけろと言うのが酷である。(観測機が吹雪で殆どが飛べないが、北邦製のは普通に飛ぶため逆に早期発見されるのは敵のほう)

 

「砲手・・・ボーナスタイム中に給料アップを狙うよ!!私達がエースになれるきかいだからね!!」

 

「雪で動けなくなるとかw」

 

「さようならw」

通商破壊作戦後の方が戦車の損耗率が高いという訳のわからない戦場となる。

 

「あれ?現地改造すればもっとつよくなるんじゃね?」

 



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今日の総統

【ドイツ】

 

「よしゃ!!チェコ併合。後はソ連に喧嘩売ってぼろ負けしたポーランドに東プロイセン回廊を奪えば大ドイツの完成!!」

 

「良かったですね総統。」

 

「おお、グレーナーか。どうしたんだ?」

 

「元モルヒネ野郎がモルヒネ止めた瞬間に怖がりに成って、性能を上げてとコストを下げる工夫を技師達と直接話し合ってたらしいんだが、ヒートアップし、ビール飲んだら徹夜になり、それを5回繰り返したからクルト・タンクがぶっ壊れてゲテモノ設計してそれを量産許可しやがった。」

 

「やばいん?」

 

「プロペラが後ろに付いて、時速740キロで飛べる。拡張性も申し分ない。」

 

「鴨に似てるな(こなみ感)」

 

「どうします?」

 

「ゲテモノにかわりないが、スタイルどうこう言っていたら何も始まらんからな。黙認する。」

 

「これで1つめ、もう1つ報告です。大日本帝国の戦車は相当優秀なようです。ご丁寧に鹵獲品をこちらに運んできましたよ。」

北海道でいったんバラバラに分解して、輸送機で運び、それを上東海道で組み立て、鉄道でドイツまで運ばれた。

ソ連にも別の車両を渡してある。

 

「側面が斜めに角度がついているが、これは何故かね?」

 

「どうやら傾斜装甲と言い、砲弾を弾くことで車体を守るのだそうです。」

 

「画期的だ。これは我が帝国でもできるかね?」

 

「できます。軍人ではなく労働組合の1人として言います。」

 

「ふむ・・・。」

 

「観戦武官によると攻撃側は速度が一番必要で2番目に攻撃性、最後に防御性らしいです。」

 

「守りは?」

 

「1つに見つからないこと、次に防御性、最後に攻撃性らしいです。」

 

「真逆か・・・成る程。守りのも計画だけは進めてくれ。」

 

「ジーク!!ハイル!!」

 

【北邦 農南】〔2月19日〕

上海より南西に30キロ地点に日本軍4個師団上陸。

配備され始めた木造戦闘機R-2木型は敵の航空機である日本軍の電征より速いこの気体は防御力のあるR-1と同じく終戦まで使われ続けた。

また、日本軍によるチャフ攻撃と電波阻害攻撃を初めて受けてしまい、レーダーの過信は危険であり、無線も電波阻害攻撃時にも使えるように改造しなければならないと反省点も多く残したが、最終的に日本軍の武装放棄による即時撤退という結果になる。

撤退追撃戦には1式真中改や8枚2重反転プロペラを搭載し、エンジンを新型のSB空冷エンジン3式を採用した複座の戦闘爆撃機は216機は空母赤城、軽空母2隻、重巡洋艦2隻、軽巡洋艦1隻、駆逐艦4隻を沈めたが、戦艦比叡による新三式弾による攻撃で72機が一撃で葬られてしまった。(魔術的な一時防御術により消滅者が出なかったのが幸いだろう)

今後も戦争は続いていく。



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スノーモービル

【アラスカ】〔2月28日〕

数ヵ月前に民間人が集まって改良されたスノーモービルを軍に提出してきた。

北邦では軍需品よりも民間品の方がスペックが良かったり、コストが安かったりした。

例としてはエンジンである。

現在戦車で使われているエンジンは全て民間品からの転用である。

そんな北邦製品でもスノーモービルは安くて頑丈、燃費もよく、扱いやすいという外国からも輸入殺到の品であった。

理由として、北邦の殆どの地域で雪が積もるため、いくら無限起動がついている車といっても、動けなくなることがあるので、その時の足として活用するために開発されたのがこのスノーモービルだった。

・・・・で、今回は軍用スノーモービルがまだ開発途中の中で困っていたところに自主的に渡してきたのである。

 

「おぉ、機関銃なら十分に耐えることができるな。」

 

「10mm機関銃を搭載することもできますし、ポケットと呼ばれる部分には無線機も搭載できるスペースもあります。」

 

「民間品からの転用なので量産もすぐにできますね。」

 

「ありがたく使わしてもらいますぞ。」

このように現地の将官からの受けも良く、すぐに量産されることとなる。

 

さらに別の所では後に北邦に最もあっている武器と呼ばれるものが花火職人によって作られていた。

コードネームは職人達が面白がって火龍と呼ぶ筒型の兵器は引き金を引くと弾が煙を出しながら飛び出し、何らかの障害物に当たると爆発してダメージを与えるというものであった。

この職人の甥にあたる人物が敵戦車の攻撃で消滅しており、仇討ちのための兵器であった。

アメリカ軍も似たような兵器を後に作るが、その時の名前はバズーカと言われる物だった。

これは3月20日に量産が始まる。

 

【アメリカ】

 

「和平に乗ることはないな。北邦の悪魔達は。」

 

「大統領閣下、かの国はいささかおかしいです。初戦で大敗し、その後も3個軍程のダメージを受けているのに勢いが衰えるどころか激しくなっております。」

 

「対してこちらは10万人の死者が出ております。このまま戦争が続けば確実にマンパワーの枯渇が起きると思われます。」

 

「日本はどうなのかね?」

 

「日本によるとこちらも2個軍ほどを撃滅しているはずなに抵抗は増すばかりで、北海道の戦線が持たない可能性が出てきたとのこと、イギリスはドイツがキナ臭くなってきたため、動けなくなりつつあります。」

 

「大統領閣下、オッペンハイマー氏からある提案があるそうです。資料はこちらに。」

 

「うむ・・・オッペンハイマー氏をここにつれてきてくれたまえ。あとボーイング社の者もだ。」



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列車砲

【北海道】〔3月2日〕

日本は札幌制圧作戦、日の入り作戦を開始した。

通信量の多さから近々に日本の一大作戦が開始するだろうと読んでいた参謀本部は素早い対応をすることができた。

 

「85cm列車砲よーい。」

 

「気化弾装填。」

 

「角度調整中。」

 

「後続車両同様。」

 

「・・・本車両完了。」

 

「放て。」

 

ドゴォォォォンンンンン ドゴォォォォンンンンン ドゴォォォォンンンンン

 

3両の85cm列車砲による攻撃は20キロ先にいた日本軍航空基地、物資集積場、現地司令部をそれぞれ襲った。

3発の威力は200トン爆弾と同様であり、特殊弾とはいえ、戦略兵器となった瞬間である。

なぜ日本軍はこんな化け物を発見することができなかったかというと、この化け物は地下鉄を使って現地に運ばれたからであった。

何より恐ろしいのが、この列車砲が連射可能ということだろう。2分間の冷却後にさらに3発放たれ、日の入り作戦は完全に破綻し、4師団が降伏する大損害を与えることに成功する。

敵の死者は7万人、大将1人、中将2人も亡くなった。

対してこちらは損害は0である。

この損害に津軽海峡までの北海道南部の放棄を日本軍は決定し、残りは日本軍の損害が4割を超えた知床半島の一部と、北海道北部の一部であった。

 

「・・・その前に制圧作戦を開始しよう。アメリカが動き始めるとあかんからな。」

参謀総長は追加納入された3トン戦略爆撃機(爆弾の搭載量が3トンであって、爆撃機本体が3トンではない)3000機がR-1に守られながら3月11日、紅葉作戦が始まった。

 

【青森】〔3月11日〕

晴天のその日、基地のサイレンはなりっぱなしだった。

いつの間にか敵は日の入り作戦を頓挫させた列車砲を20門も揃えて津軽海峡の海上封鎖をしていた長門、金剛、陸奥、山城達を葬った。

いよいよ本土に海からやって来るだろうと兵士達の間では話されていたが、敵は空からやって来た。

レーダーを見ていた私は目を疑った。

白い塊がこちらに動いてくる。

パット見で6000は余裕で超える。

しかも9000メートルで飛行するなんて・・・。

 

「司令!!」

 

「慌てるな。我々には蒼萊がある。各基地からも援軍は来る。なに、我々は地下壕でこの編隊が壊滅した報告を聞けば良い。」

 

「そ、そうですね。そうですよね。」

しかし気体は裏切られる。

蒼萊200機は敵の護衛機の異常とも言える防御力により、中々本体に攻撃できなかった。

空から人が降ってくる。

パラシュートでゆっくりとではない、いや、パラシュートのもあるが、それは箱だけである。

 

ベチャ

肉片が落ちてきた。

 

ムクムク

形を形成する。

 

「う、うわぁぁぁあ?!」

驚いて拳銃の引き金を引くが、

 

「遅いのよね。」

 

ゴキ

私は暗転する視界で化け物を見つめていた。



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フランスとスペインの動向

【西欧】

北邦が成層圏まで届く列車砲をぶっぱなしている頃、西欧でも戦争に備えた動きが着々と進められていた。

フランスでは闘将ガムラン参謀総長がペタン元帥と共に機動防御戦術を提唱し、軽戦車を視察と敵歩兵の掃討、重戦車を対大砲、対戦車として史実のマジノ線計画を破棄した分だけ予算が当てられ、強力無慈悲の両戦車が量産されていた。

ルノーB1改・・・フランス主力重戦車であり、戦車兵が不満を抱いていた部分を改良されたタイプで、無限起動が剥き出しのため足を撃たれると行動不能になることがあるが、鉄壁のルノーと言えばこれに当たるほど防御と兵の生存性は高いものであった。

これが850両

ルノーR40改・・・フランスの主力軽戦車であり、37mmの主砲を40mmに、視察を主とするために時速45キロを出せるようにされたのがこの車両である。

これが1380両生産され、ルノーR45という新型も出来つつあった。

これいがいにもルノーR40が350両、ルノーR35が600両配備され、無線も全車両に乗っけられていた。

 

「ナポレオン6世陛下、どうですかな?陸軍は?」

 

「素晴らしい。これなら我がフランスは安泰だ。」

 

陛下!!陛下!!陛下!!

視察に訪れただけで民衆は万歳をしてフランス皇帝の来迎を喜んでいた。

 

「ふむ、悪くはないな。」

陸軍だけでなく、空軍、海軍も史実の2倍から3倍程の規模があった。

 

対してスペインではまるで自走砲とも言えるような46mmの主砲に車体後ろにある砲塔、前60mm、横35mm、後55mmの装甲、整地を時速40キロで走る戦車はKNG-20と呼ばれる戦車であり、現状の欧州では最高の中戦車である。(T34とも砲塔変えれば戦える拡張性もある)

これが800両あり、自走砲も中々の数が揃えられ、防衛だけ考えれば十分な航空戦力も持ち、何より海上戦力を2個艦隊持っている国は欧州ではイギリス以外はない。(フランスでも1個艦隊・・・ロイヤルネイビーは例外)

史実のような内戦もなく、ジブラルタルもしっかり保有しているスペイン帝国はフランスとドイツを天秤にかけるのであった。

 

【アラスカ】〔3月20日〕

ちょうど北邦で初期バズーカが量産され始めた頃、アメリカはG作戦を発動した。

冬の間に作られた新型主力中戦車のM4シャーマン300両、技術提供でカナダが生産されたグリズリー巡航戦車60両が作戦に参加した。

しかし、200師団(400万人)が終結していたアラスカにこんな数で突っ込んでも、パートナー3待ち伏せ部隊1万両が撃滅させた。

アメリカの迷走が激しくなる。



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空でのG作戦

【アラスカ上空】

G作戦はアメリカ軍とカナダ軍の冬季攻勢であり、陸では戦車隊が壊滅したものの、運用データを録ることには成功したため、目的は達成していた。

上空ではその戦車隊を見せ札とした新型爆撃機B-29によるアラスカ4大都市の亜津、番実宇、東都、新平泉にある工場郡の戦略爆撃を目的とし、これが本命であった。

100機の新型爆撃機は高度10000メートルにてアラスカに侵入したが、高高度爆撃機・・・メモリアルⅡ(仮名3トン爆撃機)ベースB-17とし、初期型を輸送任務に全振りしたために新たに開発された爆撃機兼高高度迎撃機である。

素材は合金アルミニウムと北邦が特許を持つ強化ガラス強化を使用し、火器制御装置により針鼠のような弾幕を半自動ですることが可能になった。

爆弾の代わりとして試作型ミサイルを50本連続発射する装置や40mm機関砲を搭載することも可能なゲテモノ爆撃機である。

初の無線妨害システムを搭載しているこれにより返り討ちにされてしまったのである。

 

【アラスカ司令部】

 

「今回はレーダー網の上空を敵新型爆撃機が通ったからよかったけど、これがレーダーがない地点や万が一レーダー基地が破壊されて穴が空いたときに爆撃されると迎撃が間に合わない可能性が出てきたね。」

 

「佐天元帥・・・我々はHH作戦(ホワイトホース作戦)のために戦力を蓄えている段階です。これを爆撃されると次のIN作戦(イエローナイフ作戦)に支障が出る可能性もあります。」

 

「元帥、提案があります。」

 

「ん?空軍の中将だな?どうした?」

 

「迎撃機を開発するのは時間がかかりすぎると思われるので、高射砲を量産されては?地上攻撃も転用可能にすれば予算も空くかと。」

 

「・・・よし、統一企画にするよ!!戦車の主砲も全て8.8cmか15.5cmにして、高射砲もそのどちらかにしよう。予算も空くからそれで対空弾や対戦車弾の新型を開発しよう!!・・・あ、海軍にもなんか渡そう。」

 

「潜水艦の開発していた場所が運悪く敵の潜水艦によって破壊されてしまったそうですからね。」

 

「海軍の奴ら皆泣いてたからな。」

 

「陸軍の1/10000が彼らの予算だからね。仕方ないっちゃ仕方ないか。」

 

「戦艦もその潜水艦が怖くて出撃させれないからね。・・・国民からホテル呼ばわりされてるし。」

 

「可愛そうだけど・・・戦争だからな。」

 

「佐天元帥!!吉報です!!新型軽戦車が完成しました!!L-2の重量を5トン減らし、88mm2連砲を搭載して不整地時速70キロを走る軽戦車です!!前装甲50mmですがこの速度なら相手の砲弾も当たりません!!」



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L-3軽戦車

L-2の上位五感であり、開発者も同じなのでL-3と名付けられた戦車はすぐに量産されることとなる。

 

〔4月1日〕

北邦軍はHH作戦を発動、アメリカ軍には真空管を用いた電算機による偽の作戦地域を掴ませた。

しかし、この時アメリカ軍はなりふりかまわない異常な兵力を集めて防御したため、北邦は偽の作戦地域に・・・又はその先に何かあることが判明するのであった。

作戦自体は佐天の神憑り的な指揮もあり、敵を殲滅、間髪いれない突撃で体勢が整う前に作戦目標の都市ホワイトホースを10日で占領することに成功する。

続けてIN作戦を発動し、恐慌状態から建て直していたカナダ・イギリス連合軍は空挺の50万人降下という常軌を逸脱した降下作戦と155mmという現世代最強戦車ST-1を盾にして速度で勝負するL-2、L-3が孤立した部隊を掃討していき、カナダ軍は戦力の8割を、イギリス遠征軍も5割を失い地上戦力は壊滅した。

活躍した戦車だったが、ここでエースと呼ばれるものを車両ごとに規定された。

航空機のように個人ではなく約5人で1両を扱う戦車はこうするしかエースを規定できなかったという上層部の悲しみもあったが・・・。

で、この戦車のエース規定に伴ってカスタムという制度が導入された。

一種のモチベーション向上のための制度である。

エースは自分の機体もしくはチームの車両をカラーリングすることや、現地改造、スコアによっては専門技術者(頑固のババア達の有効活用)が与えられ、そいつらが可能な改造とお値段ならどんな改造もO.K.というものだった。

今までのmobエース達は色を塗る、通信機の性能を上げる、追加装甲を着ける、ガソリンタンクの増設等比較的大人しい物が多かったが、両津中将の指揮下の36機のR-1は真っ黒に塗られ、その中でも両津中将の機体は自作エンジンを使用した平均時速780キロ、特殊ターボジェットを詰め込み瞬間的に亜音速の域を出すように改造され、武装もロマンの30mm機関砲1門と22mm機関銃を搭載し、最強のロマン戦闘機ができたのである。

他にものび太軍曹(昇進)の30mmライフル砲による初の狙撃用戦闘機がR-1を改造してできたり、アイドルグループの似顔絵が描かれた痛い機体が多数現れたり・・・まぁ、ヤバイ感じに北邦軍が進化し始めた。

なお、戦略目標のイエローナイフという都市を制圧し、アメリカは北西部だけでなく中部の北、更にカナダ東部も守らなくてはいけなくなる。



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ドイツの執念

〔5月1日〕

北邦がカナダを半分以上占領したニュースは世界を駆け巡った。

日本は海上封鎖を強固なものにするため、一連の海軍軍縮条約破棄を宣言。

これに伴ってアメリカ、フランス、スペイン、イタリアも破棄を通告。

イギリスと大韓民国だけとなり海軍軍縮条約は完全に破綻することとなる。

そして、イタリアはアルバニアを併合、ドイツはデンマークに宣戦を布告。

フランスは戦時体制移行を宣言。

フランスとスペインは第5陣営として同盟を結び、パリ、バルセロナ、ニューメキシコのスリーポイント線を発表。

イタリアはこの動きに地中海の安全を損ねるとしてドイツと枢軸同盟を締結する。

日本は海上封鎖を効率化するためイギリスと日英安保条約を締結、アメリカとも不可侵が結ばれる。

ソ連はフィンランドに大規模工場郡を作ることを発表。

ノルウェーがイギリスを盟主とする連合に加盟。

一気に欧州の戦争の危機が迫る。

 

【大ドイツ 国防軍】

SSがないこのドイツ国防軍はグレーナーを中心とした陸軍による戦略が練られていた。

フランスをどのように殺すか・・・それだけを必死に考えたドイツはフランス以上に機甲戦力の効率運用を考え、グデーリアンが提唱する電撃戦にマンシュタインの提唱するルートBをもとにした戦略と、前線にて戦車の恐怖を身に染みて味わったヒトラーは北邦に送ったⅡ号戦車G型が発展改造されたL-2を見て、これをもとにしたレオパルドという軽戦車が開発され、Ⅲ号戦車と並んで戦争初期の主力として活躍することとなる。

 

「・・・しかし、総統はポーランド人にうらみでもあるのか?目の敵にしているが。」

 

「総統は前の大戦でポーランド人に狙撃されたらしい。後ろから。」

 

「末期の時だな。」

 

「それからポーランドは滅ぼさなくてはいけないと呟くようになったからな。」

 

【日本】〔5月11日〕

抵抗むなしく東北は北邦軍100師団に占領された。

玉砕攻撃は天皇が許さず、それにより死傷者は5万人以下に抑えられ、北邦上層部と日本上層部の間で日本本土の攻撃禁止区域、戦略爆撃の禁止が定められた。

日本は講和に向けた動きが始まる。

 

【ソ連】〔5月30日〕

北邦とアメリカの戦争により目まぐるしく変わる兵器の進化にソ連は新型戦車としてT-34の開発を着手する。

世界最大規模のソ連空軍はソビエト陸軍同様に北邦に観戦武官を送ることを決定し、世界規模の争乱に備え始めるのであった。

 

「同志スターリン・・・トロツキーは見つかりましたか?」

 

「いや、まだです同志サヤカ。」

 

「急ぎなさい。世界革命等、ソ連を破綻に導く悪ですよ!!」



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芳香の演説

【諜報部 テレビ及びラジオ室】〔6月5日〕

長期戦となり、現状有利に戦っている北邦軍は気持ちに余裕が出てきていた。

この調子で頑張ってもらうため、また士気を上げるために芳香は苦手ながらに国民のために演説をおこなった。

 

ピピーガガ・・・

『私は元を辿れば裕福な少女であった、次は長い期間奴隷であり、次には自由を喜ぶ農民になり、最後は指導者となった。・・・戦争・・・善か悪かで言えば悪であり、正義か悪かと言われれば正義であり、正義か善かと言われれば正義であるのじゃ。・・・どこにも善などないのじゃ。・・・私は指導者として全ての悪を被る覚悟はできている。故に前線にて戦っている兵士諸君は後ろを守るために戸惑うことなく引き金を引け。故に工場で武器を作る者は前線にて戦っている兵士のために働け。農家も、輸送関係も、第三次産業者も漁師も・・・ありとあらゆる職は悪を気にすることなく自身の正義を持って行動するのじゃ。・・・しかし、絶対に戦争中は善を犯していることを考えるな。・・・村民よ、市民よ、国民よ!!アメリカ、イギリス連邦諸国、日本は強い。故に手を抜くな。誰が世界の最大にして強国かを教えてやるのじゃ。北邦2000年の歴史!!その技術力と生産力を!!奴らに叩き込め!!』

 

次に金糸雀がその場にたった。

そしてこう発言した。

 

『欧洲陷入混乱吧。我们被友好国家。・・・以上かしら。』

それは中国語で欧州は混乱に陥るだろう。我らが友好国によってという発言だった。

北邦でも極僅かしかしらない言葉にラジオを聞いていた敵の諜報員はこれを新型の暗号として何かのメッセージととらえた。

しかし、アメリカもイギリスも解読不能と解るやいなや、この事を上層部の間で秘蔵した。

 

〔7月1日〕

東條内閣が辞職。

日英安保破棄を通告し、北邦と和平を締結。

 

《・25名の戦争指導者を北邦の収容所にて隔離

・陸軍を一部解体

・治安維持法の撤廃

・北邦に一部技術の公開

・憲法の一部改正

・共同技術研究所の設置》

鈴木新内閣はこれにサインして日北の戦争は終結した。

北邦軍は一部治安維持目的の部隊を除いて撤収した。

北邦は日本の優れた戦車や戦闘機、海上戦力と日本が誇るトラック技術を手に入れる。(北邦の車両はタイヤが無いため初めてタイヤのついた車両を作れるようになる)

 

【参謀本部】〔8月2日〕

アメリカ、イギリス連合軍も北邦軍も大きな動きが無いまま月日が流れていた。

アメリカはM4シャーマンの量産による波状攻撃をするため、イギリスは大敗による戦力回復をはかるため、北邦は日本の技術を応用した新型兵器の開発を急いでいた。

日本は本土決戦用に六式戦車チル(61式戦車)を開発していたのでそれを押収し、バラして解析、改造をSBが中心に進めていた。

 

「戦車の分類をしっかりした方がよろしいのでは?」

これが参謀の誰かが囁いたのが始まりである。



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ポーランド侵攻

【ドイツ】〔9月1日〕

ドイツはソ連と不可侵を締結しポーランド侵攻を開始した。

秘密条約の中には北邦をソ連が侵攻する場合ドイツは不可侵を厳守するという項目もあり、ソ連はどさくさ紛れにイギリス領土の南インドを保護占領を開始した。

イギリスが抗議しようと打電しているときにドイツはポーランド領土に侵攻を開始したのだった。

思考が第一次大戦から引き継がれていたため騎馬戦力を主力としていたため、3500両のⅢ号戦車を中心にレオパルド1000両、Ⅳ号戦車300両の10個もの機甲師団とゲーリング自慢の世界初の急降下爆撃機の戦線投入、エンテ型戦闘機(前翼型、エンデはドイツ語で鴨)の侵略目的での使用はポーランドを恐慌状態に陥れるのには十分だった。

白作戦・・・マンシュタイン将軍立案のルートBに移るために必要な計画でルントシュテット将軍がグレーナーの戦時輸送計画範囲内で出来る最大規模の侵攻作戦であり、それを立案、運用、責任を背負っていた。

史実では電撃戦と呼べない戦いであったが、今回のポーランド侵攻は電撃戦と呼べるだけのものであった。

一番活躍したのは速度があるレオパルドで、故障率の低さ、新兵にも扱いやすい設計もあり、ポーランド主力騎兵を機関砲や主砲で肉片に次々に変えていった。

戦闘の流れとしては、9月2日にポーランド回路を奪還、3日にポーランドの心臓部分であるレジア地方を制圧、その午後に歩兵1旅団分を失いながらも敵の主力部隊を壊滅、夜に紛れる形でワルシャワに突入、4日にワルシャワ包囲完了、5日ソ連国境に到達した部隊が現れる(ロンメル少将指揮下の部隊でだいたい史実のモロトフ・リッベンドロップ協定の国境線)、8日にはワルシャワと数ヶ所の例外を除いて全て制圧、11日ワルシャワ陥落、13日ポーランド滅亡という流れであった。

自由ポーランド政府はできたものの、史実の規模より15分の1くらいしか影響力も武力もなかった。

この戦争はポーランド9月戦争と呼ばれ、欧州での大戦の始まりを意味した。

イギリスはポーランドの民間人を無視した無差別攻撃に対して絶対悪という表現を使うようになる。

 

最終的にドイツ・スロバキア軍死者13000人、戦車102両、航空機89機で、ポーランド軍・ポーランド国民は死者127000人、戦車42両(保有していた戦車の40%)航空機431機・・・ポーランド降伏後も2回に及ぶ血の日曜日事件、更には過酷な強制労働により2ヶ月後には7桁の死者が出るようになる。



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今日の北邦

【アラスカ】

ポーランドが地図から消滅した頃、アラスカの前線にも異変がおきていた。

通称ヘビータンクショックである。

車高が高く、2門の砲塔自体も北邦の強化された走行を貫通するだけの火力もあり、何より恐れられたのが、この戦車だけが使える蛸壺戦術と呼ばれる簡易な穴に身を隠し、砲撃したら別の穴に移動するというもので、準備砲火によるこちらが空けた穴に身を隠すから相性が最悪であり、報復しようにも、砲弾が角度により88mmでは弾いてしまう問題も発生した。

しかも馬力が大きいため、穴から出るのも速い。

更に言うとこの戦術はアメリカ軍の攻勢時にも使えるということである。

L-3やパートナー3、ST-1で対応しているが、残りの戦車では立ち向かうことが厳しい戦車であった。

これを問題視した佐天元帥は夜神月技術少将とIN作戦で汚名返上を果たした神塀将軍を召集し、ST-1の発展型を作るように命令した。

 

「佐天閣下、東條英機元大日本帝国首相と肉片から復活させた黒猫(笑)と自称する辻元帝国陸軍中将、護衛の軍曹が来ていますが。」

 

「とうしちゃっていいよ。」

 

「では。」

 

〔1分後〕

 

「失礼します。」

現れたのはハゲ、(笑)、目が赤く光っている男であった。

 

「どうぞ座ってください。」

 

「失礼します。」

 

「こんな最前線にようこそ。東條さん。辻さん。」

 

「表向き戦犯ですからな私達は。」

 

「で、ご用件は?」

 

「一部の馬鹿どもをこちらで戦わせてはくれませんか?血の気が盛んな奴らが血に飢えてまして。」

 

「私的には良いけど・・・実験データ録りたいからそちらのチルと改造したチル改を使ってほしいのだけど・・・良いよね?」

 

「えぇ、構いません。指揮官はどうしますか?」

 

「東條さんが指揮してください。場所はシアトルを目指してください。シアトル手前の50キロで停止し、蒼星石将軍率いる第4軍団を送ります。合流後は遊撃部隊として動いてください。」

 

「わかりました。辻はここに置かしてください。」

 

「ふふふ、戦略の神こと黒猫を崇めるがよい!!」

 

PAN

 

「神は禁句だよ。戦争関連は神が誰か決まってるからね。」

 

「い、痛いじゃない!!」

 

「死体だからヘッドショットしても大丈夫でしょ。・・・はぁ。」

 

「で、ではこれで私は失礼します。」

 

(辻はなー使えるけど使えないからな。・・・日本に観光に行った時に知り合ったけどナルシストと中二病を混じった感じのハゲだったから・・・今は猫耳着けた黒髪ロングだから眼には優しいけどさぁ。)

頑張れ佐天元帥。



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(・ワ・)忘れてないよね

【上東海道 各工場長合同会議場】〔数日後〕

夜神は旅客機を使って上東海道に来ていた。

 

「夜神さん!!無茶言わないでくださいよ!!生産ラインがパンクしますよ!!」

 

「だから僕はパートナー1と1式真中の生産中止分の余力を試作の方に移して欲しいとたのんでるじゃないか!!」

 

「ST-1よ!!あれの発展となればパーツをどんなに簡略化しても死ぬわ!!」

 

「ふふふ、アハハハハハハ!!死ぬ、今さら何を。君達は1度は死んでいる身だろう。なに、僕もこんな無茶をただではと言わない。対価として時間を渡す。」

 

バサ

「こ、これは!!」

 

「パートナー1の改良型を更に・・・。」

 

「いや、パートナー3よりも・・・。」

ざわつく中、ある程度静かになったのを見計らって月は話始めた。

 

「・・・まず、北邦の戦車の前提は高火力、生産性が良い、(北邦国民が)使いやすいこれが大切だ。・・・しかし、今回の戦争でアメリカとイギリスには現状で7000両近くを破壊され、日本にも短期間に改良型が2000両破壊されている。生産性が高くてもこれじゃあいつか破綻する。そこでだ、僕はパートナー3で成功した生存率の向上と防御力の関係を研究し、それを元にした設計を開始した。新型戦車はこの戦車の足回りを流用すれば良いし、155mmも同じだ。エンジンもーズグラブの新型Ⅵを乗せればいい。注目してほしいのが型に流し込むことによる時間の短縮化だ。しかも装甲はパートナー3の100を120mmにして、傾斜装甲にすることによって砲塔以外を240mm以上の防御力を誇ることになる。(砲塔は300mm)でだ、他国との違いとしてチタン装甲を採用することになった。均質圧延鋼装甲処理もすれば50トン以下なのに合計400mmの防御力の戦車の完成だ。」

 

「「「おお!!」」」

 

「北邦ではチタンがゴミのように鉱山で出るからな。有効活用できるだろう。」

見た目はソ連駆逐戦車のSU-100Yに似ているが、全体的に丸みをおびた装甲には繋ぎの部分が全くなく、唯一主砲と本体の接続部にあるだけだった。

機械的な信用度を増した半自動装填システム、5人乗りの臨時の指揮車両にもなり得る広さを持ち、なおかつ70発もの砲弾を車体にしまうことができた。

夜神はこの戦車をパートナー4とし、2年間は他国より優位に立てる駆逐戦車であった。

 

(内部は妖精にやらせるか。この戦車の問題は拡張性があまりないことだ。さて、僕にしてもこれが吉と出るか凶と出るか・・・。)



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他国からの評価

【アメリカ陸軍総司令部】

 

「なぜだ!!なぜ奴らは作り出した兵器をすぐに上回る兵器をすぐに作れるのだ!!」

アメリカ陸軍総司令官は怒り狂っていた。

開戦初期に北邦の国民性は温厚で押しに弱い部分があり、女尊の国で外交下手のイメージのため初期に戦略目標のワシントン州地域を奪還し、即講和すれば北邦は折れるだろうというのが大半の意見だったが、その講和は不可能となった。

アメリカ国内にいた北邦国民はゲリラ活動を盛んにおこない、戦争の前では普通のパン屋の若い奥さんが、ビルを3棟破壊してなお逃走を続ける爆弾魔となったり、北邦国民が小さな軍事基地を制圧し、弾薬類と戦車を持ち逃げする事件も発生している。

 

「北邦の鹵獲兵器の解析はどうなんだ?」

 

「第一に運用は不可能です。運用しようにも4人では砲塔を動かすにも一苦労ですし、普通に運用するには倍の8人が最低でも必要ですが、そんなスペースが存在しません。」

 

「無理矢理動かそうとしてレバーを引いたら急発進して死亡事項が起きてます。」

 

「なぜだ!!我々白人が黄色人種に負けるなど・・・あってはならぬのだ!!」

北邦の全ての武器が北邦人が一番使いやすい様に設計されているため、他国の人が使おうとすると自殺兵器となってしまっていた。

頭の回転数も、筋力も、神経伝達速度もあらゆる面で北邦人とそのキョンシー達は他の人類を超えていた。

他国では155mm砲砲弾を装填するのに、戦車という動きづらい場所で25から30秒近くかかるのに対して、ある程度訓練した北邦軍人は10秒を普通にきる。

最速だと6秒と普通では考えられない速度で装填する。

これらのことから北邦兵器は一部を除いて欠陥兵器という名称を得て、ST-1やパートナー1もパンジャドラムと並ぶ珍兵器と未来では言われ続け、それを普通に運用させる北邦軍上層部を他国国民から無能と言われるのであった。

しかし、北邦兵士にしてみれば傑作兵器であり、北邦の上層部も初戦の敗北いこう、試作→試験運用→改良→試験運用→改良→量産という手順を踏まえているため、即運用することはだいぶなくなっていた。

アメリカ軍やイギリス軍は北邦の国民に合った兵器であることを認知という問題を気がつかないまま欠陥、欠陥と叫び続けたのである。

その間にも北邦は新たな兵器を作り出していく。

 

【北邦空軍試験飛行場】

風速8メートルと中々の強風の中、ジャイロ飛行機が地面から飛び立った。

SB式空冷エンジン3式を3機詰め込み、3箇所に接続されてるプロペラが回っていた。

イギリスの珍兵器シエルバ・オートジャイロ W.11に似ているが、全体的に洗礼されており、安定性も問題なかった。

3人乗りで、蛸壺戦術打破のためと敵の潜水艦撃破のために開発されたそれは戦争に革命をもたらそうとしていた。



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パートナー4

【ワシントン州】〔10月5日〕

 

「試作パートナー4部隊前に。これより実戦にてその性能を生かせるか試す。健闘を祈る!!」

 

「「「ウラー!!」」」

時速35キロでパートナー4が20両動き出す。

結局計算上前面390mm、側面300mm、背面290mmの400mm以上になったのは砲の接続部分の490mmだけだったが、155mmの主砲に高速電算機も積むことができ、兵士達から簡易司令部という愛称でよばれることとなる。

そんなパートナー4は目標のヘビータンクが蛸壺戦術で待ち伏せしているのをたまたま発見する。

相手にも発見されたが、ヘビータンクの76mmの主砲ではどこも貫通せず、パートナー4が1200メートル先からの射撃はヘビータンクの砲塔に直撃し、HEAT弾が砲塔ごと抉りながら貫通した。

随伴していた歩兵が周囲を掃討し、ヘビータンクの撃破判定に近づくと、砲手は抉れた砲塔と一緒の場所に上半身があり、下半身は車内でミンチになっていた。

他の乗務員も頭が割れていたり、椅子に体がめり込んでいたり、肉片だったりと地獄のような光景だった。

そのパートナー4は小隊として偵察のL-3と合流し、その日だけで6両撃破する大戦果を得てエースとなる。

パートナー4の有効性が立証され、ST-2ができるまでの繋ぎとして量産されることとなる。

そんな中、アメリカはイギリス経由である物を購入した。

A-20・・・T-34の前に量産された現段階のソ連の最多戦車である。

T-34のコスパが予想よりも良く、年産1万台ペースで作られているため余りつつもある戦車がこのA-20だった。

このA-20をアメリカは76mm砲に交換し、パートナー4以外の戦車に対して有効射撃できるだけの攻撃力を持つ戦車を格安で手にいれたのだ。

カナダ軍は現在A-20が主力でM4シャーマンが次と自国戦車がごく僅かという悲しいことになってしまったが・・・。

予想外にも予算を獲得できたソ連は赤いナポレオンことミハエル・トハチェフスキー元帥の北邦の縦深突撃を更に完成させたものを作り出そうとしていた。

そもそも北邦の縦深突撃理論は不完全のまま各戦線で繰り返されたが成功例が2つだけであり、残りは全て失敗で、トハチェフスキー元帥は日本におこなった立体挟撃の方が国に合ってるという見解を示すほどであった。

しかし、ドクトリンをいきなり変えることはできず、戦術面を変えることで縦深突撃を完成させようと北邦上層部は考えるようになり、試行錯誤を繰り返すのであった。



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緑作戦

【ドイツ】〔10月11日〕

ギリシャ以外のバルカン半島を属国化したハンガリー軍と協力して制圧する緑作戦をヒトラーは発動させた。

イタリアも同調して未回収のイタリアを回収し、そのままドイツ軍と合流した。

ドイツ=イタリア枢軸同盟であり、これにハンガリーと北邦が入りドイツ=イタリア=ハンガリー=北邦4ヶ国同盟とも呼ばれるようになり、アメリカ、イギリス等からは悪の枢軸と呼ばれるようになる。

作戦自体はスムーズに進み、1ヶ月で戦略目標を達成した。

 

【ワシントン州】

シアトル奪還作戦がドイツの緑作戦と同じタイミングで発動された。

イギリスの横槍を入れさせないためにドイツと協議の上で日付が決定されたこの作戦は、日本軍のチルの性能を全世界に示すことになる。

チリ改とチル、チル改合計240両はチト改を盾にしながら蛸壺戦術をしていたT1ヘビータンクを易々と撃破し、M4シャーマンを体当たりで撃破したりと無双状態で、救援に来た空軍機も電征と電征改により撃退されてしまい、合流するはずであった蒼星石中将率いる第4軍の援護無しに敵の野営防衛部隊を撃破した。

50キロ地点にて第4軍と合流し、蒼星石の判断で市街地戦に同行し、シアトルに移り住んでいたアメリカ民間人を含めた60万人との戦闘になった。

北日連合軍の数は約53万人であり、銃の性能は世界一、しかも全員がゲリラ経験ありの軍人のため、10日で占領され、40万人の捕虜のうち、22歳未満は日本の学園都市に、それ以上は北邦の捕虜収容センターに送られた。

 

〔11月1日〕

北邦にて内閣改造が行われ、副大統領に対米強硬派のネロ、首相に金糸雀が就任。

ネロは

 

『ホワイトハウス破壊するまで余は戦争のためにありとあらゆる事をする。』

という就任演説をした。

アメリカにいた講和派はこの後完全に消滅し、本当の意味で総力戦となる。

アメリカも焦りが出始めていた。

 

〔12月24日〕

北邦はクリスマス作戦を発動し、ワシントン州東のアイダホ州で抵抗が激しい地域の空爆作戦が開始された。

1万機ものR-1、R-0、戦闘機に、メモリアルⅡ戦略爆撃機が飛んでいた。

中には2式真中や両津中将の新作でR-1の性能を高めた時速680キロを平均で出すR-2も混じっていた。

空爆は成功し、周囲の軍事基地を破壊することに成功し、余った爆弾を研究所らしき場所に投下した。

 

ピカ

 

研究職員7割消滅、2割被爆により数日後に死亡・・・オッペンハイマー博士は外出中のため無事だったが、マンハッタン計画は暗礁に乗り上げてしまったのである。



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1940年

〔西暦1940年1月11日〕

アメリカは北邦のクリスマス作戦の報復としてギガント作戦を発動し、シアトルの包囲に成功し、駐留していた第10軍50万人が閉じ込められる。

第4軍を援軍に包囲の一部を挟撃するものの中々崩れなかった。

アメリカはこの瞬間に賭けに出る。

残りの軍、イギリスとカナダの残存兵を集めてパットンルート作戦を開始。

カナダ都市のイエローナイフ奪還を目標とした攻撃である。

ヘルキャット駆逐戦車等の後に活躍する実験兵器も多数持ち出された作戦は北邦の激しい抵抗があったもののなんとか勝利する。

ただし、損害は北邦の3倍の6師団分も膨れ上がり、アメリカ軍の活動に支障が出るほどであった。

ちなみにイエローナイフまでの間や最前線の部隊は戦車を持っていなかったが、バズーカの集中運用、対戦車地雷等を上手く使うことで出血を強いることに成功している。

 

〔2月1日〕

シアトルの一時放棄を佐天元帥が決定し、シアトルから60キロ北に後退した。

こちらでもアメリカ軍の損害が酷く、150万人を動員して30万人が戦死し、30%が負傷した。

人口的に負けの色が濃厚になってきたが、アメリカ軍は日本戦車のチルを滷獲することに成功し、戦車の発展速度が飛躍的に上がることとなる。

 

〔3月2日〕

北邦は同盟国のドイツの将軍にドイツ人用に人間工学に基づいた戦車・・・88mmを載せた駆逐戦車(ヘッツァー駆逐戦車)の輸出を提案する。

代わりにドイツから海軍士官に北邦海軍の教育を依頼するという取引が成立する。

ヘッツァー88は500両がドイツに無事に到着する。

 

〔5月10日〕

ドイツはマンシュタイン将軍の黄色作戦、第2フェイズのフランス本土進攻の赤色作戦を発動する。

主力戦車はⅣ号戦車に移り、レオパルド、ヘッツァー88、その他様々な装甲車両がフランスに襲いかかった。

 

「見ろ、人がゴミのようだ!!」

フランスの将官の誰かが叫んだ。

フランスの闘将ガムラン総司令は皇帝ナポレオン6世に

 

「ドイツは焦りすぎました。我々の勝ちです。」

と堂々と宣言し、ド・ゴール中将の機動軍団(機甲師団3個 主力はルノーB1改重戦車の発展型のルノーB2重戦車とルノーR45軽戦車)にマジノライン戦術を託していた。

マジノライン戦術はマジノ将軍がマジノ線という要塞を作ろうとしたのだが、それを機甲師団で再現した鉄壁の機動防御戦術で、ドイツは9個師団が瞬く間に消失する大損害を被る。

別ルートにいたペタン元帥が進行を開始する。

これはグデーリアン率いる戦車師団が食い止める。

ヒトラーは事態を重く見て、立案者のマンシュタイン将軍を現地に送ると黄色作戦は瞬く間に成功する。

ド・ゴール将軍も負けるわけにはいかないので壮絶な戦車同士の戦いがアンデンヌの森で起こるが、ドイツ空軍による攻撃が成功すると一気に戦局がドイツに傾くが・・・。

 

「ここから先は通行止めだ。」

イタリア、ドイツとの同盟関係を一方的に破棄し、フランス、イタリア連合はドイツ南部を急襲し始めた。



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閑話 国ごとの内情

国ごとの内情をセリフつきで解りやすく表現して見ようと思います。

 

フランス「見ろ、ドイツが溶ける!!フランス帝国は偉大なり!!」

 

イタリア「WWⅠで敵だったじゃん。何不可侵破ったくらいで怒ってんの?ベルリン燃やすよ。」

 

ドイツ「〇ね。」

 

ギリシャ「こっち来んな。」

 

ドイツ「行くわけ無いだろ〇ス。」

 

イギリス「こっち来んな。」

 

フランス「次お前な。」

 

スペイン「英西戦争って知ってる?」

 

ノルウェー「ドイツ分割すんの?」

 

スウェーデン「俺らも混ぜろよ。」

 

ドイツ「ウェーザー演習するから。〇ね。」

 

ソビエト「殺伐としすぎやろw資源やるからドイツも落ち着けや。」

 

ドイツ「あくしろよ。」

 

ソビエト(売った資源で技術美味しいです(^q^))

 

ドイツ「北エモ~ン、ソビエトは資源くれるってよ。」

 

北邦「もうドイツ君たらしかたないな。(最恵国)レートだけど良いよね。」

 

ドイツ「代わりに海軍から好きな将軍あげるよ。」

 

北邦「レーダーとフジツボ(デーニッツ)ちょうだい。」

 

ドイツ「O.K.」

 

日本「たまげたな。」

 

北邦「日本なんかいる?」

 

日本「戦艦とか空母あげるし、造るから金と資源沢山ちょうだい。民間品も作るよ。」

 

大韓「戦争特需美味しいです(^q^)」

 

ソビエト「それな(^q^)」

 

アメリカ「死にそう、助けて。」

 

カナダ「死にそうなら何で200師団に50の機甲師団があるんですかね?空軍も8割り残存で海軍は無傷じゃないですか。」

 

イギリス「カナダにレンドリリース急がないと。」

 

カナダ「兵士くれ、エジプト辺り余ってんだろ。」

 

イギリス「トルコが怖くて動かせません。」

 

アメリカ「北邦〇ね。」

 

北邦「アメリカ人滅ぼすまで止まりません。新しい農地を確保するんです。」

 

アメリカ「ソ連助けて。」

 

ソビエト「武器だけで我慢しようか。」

 

北邦「武器もやめてくれませんかね。」

 

ソビエト「稼ぎ時なんで・・・。」

 

日本「戦争終わってから経済成長率が10%超えてドイツにならんだんじゃ~。気持ちいい!!」

 

タイ「日本にならって成長中~。資本家さん。私財はこっちに移動すれば安泰よ。」

 

ドイツ「何で日本、大韓、ソビエト、タイは別ゲーやってるんですかね。シビ〇イジェーションかな?」

 

北邦「ドイツ大丈夫?(真顔)ルール地帯ヤバイやん。」

 

ドイツ「あかんけどⅤ号とⅥ号戦車の量産体制が整ったからこれからよ。空軍も新しい機体ができたから造るために資源くれ。代わりに高濃度ウランあげるから。」

 

ソビエト「ウランで何作ってるんですかね?」

 

北邦「アメリカは原爆作ってました。(チクリ)うちは大規模な温室に使います。(無害をアピール)」



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進化の年

〔5月22日〕

イタリアの宣戦布告でドイツはバルカン半島にいた軍を引き上げ、戦力を抽出し、足が遅いことで黄色作戦に投入されなかったⅤ号試作戦車(パンター)とⅥ号試作戦車(ティーガー)をイタリア国境に展開し、空軍の全面的な協力と、海軍の潜水艦による陽動作戦で最悪の事態は避けることに成功する。

資源が史実よりゆとりがあるドイツはこれを期にⅤ、Ⅵ両車両の量産と、2つの戦車の良いとこ取りをした戦車を造ろうとヒトラーは考え、総統命令第38号で計画を命じる。

 

一方アメリカでは、滷獲されたチルの優秀な車体を北邦戦車の傾斜装甲を取り入れた新型車重戦車T29とM4シャーマンの想像以上に使えなかったことからこれに代わるM4の最終形態であるイージーエイトを量産する。

イージーエイトが早く作れた理由は北邦戦車の技術革新の影響である。

これらの車両によりパートナー4以外の戦車を破壊できるだけの性能であり、アメリカはついに北邦戦車に対する矛を手にいれたのだ。

 

〔6月2日〕

北邦海軍にてようやく600の潜水艦が完成する。

しかし、計画していた独自の潜水艦計画は日本軍の攻撃で頓挫し、ドイツ海軍の旧世代潜水艦のⅦC型をライセンス生産した形となった。

しかし、それでも何かしらの特徴をつけたかった海軍は日本の潜水艦の特徴的な高性能ワルター機関を搭載することで性能の引き上げをはかり、表面を特殊ゴムコーティングでソナーに反応しにくくなっていた。

残りの主力海上戦力は泣く泣く日本と大韓、駆逐艦はタイにまで製造を依頼して揃え、アラスカ防衛に向かわせた。

日本は高性能で、技術の継承と莫大な予算もらったこと島風型駆逐艦を大量に製造(終戦までに80隻)し、大韓は量産性からアレン・M・サムナー級駆逐艦に似た駆逐艦(金級 キム級)を製造し、既に50隻(終戦までに200隻)が造られた。

金級の良いところは航続距離が6200海里と十分な距離を移動できるところだった。

タイは神風型駆逐艦 (2代)と同性能の駆逐艦を輸入した。

また、日本からは大鳳型空母を、大韓からは戦艦(長門級)をそれぞれ8隻輸入し、軽空母、軽巡洋艦も大量に輸入することとなり、大戦中に北邦は潜水艦と輸送艦以外は自国生産の水上戦力が両手で数えられるほどしかなく、戦後日本の艦隊〇レクションにて輸出された艦は全て日本や韓国の特徴的な姿で、ある大鳳型空母セリフが

 

「北邦海軍は泣いていい。」

というもので、北邦海軍がどれだけ閑職だったかを現していた。



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ソ連の至宝

【ソ連赤軍総司令部】〔6月30日〕

 

トゥハチェフスキー元帥はソ連を挟んでおこなわれている大戦を1人自室にて思考していた。

 

(ドイツのⅤ号、Ⅵ号試作戦車の量産は恐怖だ。持論である縦深理論の突撃に突き刺さる。T-34は確かに傑作戦車であり、発展型のT-34-85も量産に入った。8億というマンパワーをいかにうまく使うか・・・。同志サヤカの段階的近代化政策、今は亡き同志レーニンのネップ・・・そして同志スターリンの工業化計画・・・全て成功し、アメリカが台頭するまでは世界第2位の工業力をもっている。さて、空軍は世界で一番進んでいるが、問題は陸軍だ。ドイツだけでなくイギリス、フランス、北邦、アメリカの4ヵ国の軍事技術の発展は目に余るものがある。アメリカにいるスパイから手にいれた情報によると戦局を一変させる可能性を持つT29という重戦車に対抗馬のパートナー4で成功した戦車の巨大化が制空権が有れば逆に有効的であるとこがわかった。・・・ふむ、KV-1の鈍足で使えないと思っていたが、改良すれば何かに使えるかもしれんな。ソ連には必要でないからフランス、イギリスに売るように同志スターリンに進言しよう。)

しかし、トゥハチェフスキーも強かであり、売った金で新型重戦車計画を進めていくこととなる。

 

【フランス】

ドイツとの戦争は重戦車をしっかりと歩兵の盾に使い、空は空軍が頑張ることで、人的損害を少なくしていた。

そんなフランスで待望の新型重戦車の開発に成功し、ドイツのⅥ号試作戦車の対抗馬として開発されたARL40(ARL 44)を量産に移した。

フランス的にはイタリアを引き込んだことで参戦が確定している北欧の3方面からの半包囲が完成し、ドイツはいつ敗戦するかのタイムレースに入ったと言える。

問題は北邦であり、今だに他国に物資を輸出することができるほど余裕があり、日産100両の戦車、100機の航空機は恐怖でしかなかった。

アメリカが殺られれば次は欧州であり、逆にドイツと挟撃されるのではないかという恐怖もあった。

 

(しかし、ソ連がどちらにつくかがこの戦争のキーになるだろう。ソ連が敵につけばこちらは負ける。逆にこちらにつけば・・・ドイツも北邦も負けるだろう。・・・忌々しいがイギリスと協力してこちら側につくように思考を誘導させなければならんな。・・・面倒だ。)

闘将ガムランは電話をかける。

 

「・・・ああ、私だ。赤服に繋いでくれないか。」



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ST-2

ST-2の性能表

前面装甲100mm(200mm)、側面75mm(150mm)、背面50mm(75mm)、砲塔周回速度30秒、平均装填速度9秒、弾薬量60発、フリーズクラブⅥ型エンジン搭載。
さらに火災自動消火装置が搭載され、継続戦闘能力が上がった半面、消火装置に内臓されたガスが漏れ、異臭がすることがある戦車だった。
速度は時速30キロ出る。

転作扱いになるのかな?自分の書いた作品のを他の作品に持ってくるのは?


【上東海道】〔7月20日〕

想像以上にこの新型重戦車ST-2は開発に時間がかかった。

パートナー4の成功点である防御力をあげようとしたが、重量の関係で妥協され、パートナー4の半分程の防御力の戦車となった。

コストはパートナー4の1/2、ST-1の5/3と技術の進歩により比較的安くなっていた。

しかし、佐天元帥はずんぐりとした形状が不満で、

 

「ドイツのⅥ号試作戦車(ティーガーⅠ)・・・あれはかっこよかったな~。2は強いけどスマートじゃないし、どんどん縦深突撃の機動力が消滅してるんだよ・・・次に造る戦車は・・・Lシリーズになるな。それだとLは時速が速い戦車で前面を重戦車、側面をL等の中戦車から軽戦車、敵後方を空挺で包囲・・・が理想的だね。・・・ふー。さて、戦力差を見ようか。」

この時点でアメリカは250師団を保有している。

人口が約1億5000人のアメリカにとって総人口の実に3.3%が兵士となり、戦っていた。

無茶をすれば500師団を集められるが、指揮は崩壊して革命となるだろう。

 

対して北邦では750師団の編成が完了していた。

現在の人口が約23億という点からして少なく感じるだろう。

上層部も5000師団の編成計画を表明していた。(流石に嘘だろうと他国からは思われているが)

自動拳銃や軽機関銃、バズーカ等歩兵の武器は2年半の年月で進化し続け、ドイツと共同開発により完成したラインメタルMG3は2人に1機の比率で配備されるほどの傑作機関銃で、対歩兵に対して絶大な威力を発揮していた。

また、戦術面でも変化が現れ始めていた。

アメリカは戦車を歩兵の壁という古い運用を続けている(歩兵が全機械化されているが)のに対して、北邦は散発的な戦車運用が完全になくなり、空軍を見習った2両1分隊2分隊1小隊9小隊1中隊の36両運用を基本として、そのなかでも軽戦車、中戦車、重戦車、駆逐戦車と分類を分け、極めて近代的な運用をできるようになる。

初期に師団の大半が崩壊していた砲兵隊の反省から自走化も完了し、約25師団の自走砲師団が完成した。

第20~23自走師団には最強(最凶 他国運用不可能)の200mm砲を2門つけた6人乗りの自走砲に、第24、第25自走師団には7.7mm対空自走砲が配備され、対空能力の強化がなされた。

指揮系統もハッキリなされ7月1日に参謀本部>アラスカ総司令部>カナダ方面軍(10個軍250師団)=アメリカ方面軍(10個軍250師団)=戦略予備上東海道方面軍(5個軍)=訓練北海道滞在軍(5個軍)>各軍司令部>各軍団司令部(1軍団=5師団)>各師団司令部>各連隊>各大隊>各中隊>各小隊>各分隊と縦の関係が完成したのだ。



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総統

【ドイツ】〔7月22日〕

ドイツは北にあるノルウェーとデンマークの両国が宣戦布告してくるタイミングを見計らいヴェーザー演習作戦を発動した。

計画は成功し、北の驚異を瞬く間に打破したことにより戦略的な再配置をするための時間が確保された。

イギリスではチェンバレンから労働党の党首が首相となったが、戦局の悪化からジョージ6世は議会に現首相を解任すべきではないか?と投げ掛けたことをきっかけに内閣は辞職し、チャーチルが戦時内閣首相の地位に就任した。

 

「ジークハイル!!」

 

「よろしい。補佐、ポーランドの話を聞かせろ。」

ヒトラーが補佐と呼ぶ人間は全てが平均でできたような男で、声がよく裏返る癖がある人物だった。

しかし、思考は過激だ。

 

「現在ポーランド人の労働によりⅤ号パンター、Ⅵ号ティーガー戦車の量産は進んでおります。試作時におこった問題点も改善されており、フランス戦車と互角以上の戦えております。」

 

「・・・補佐、参謀総長を呼んできてくれ。」

 

「ハイル!!」

 

〔3分後〕

 

「ジークハイル!!」

 

「よせ、グレーナー・・・お前に言われると気持ち悪い。」

 

「上がやらないと下がやらないんだよ。で、総統、用件は?」

 

「今後の戦争のビジョンについてだ。勝てる、勝てると国民には伝えているが、軍人としてはどうなんだ?それを知りたい。」

 

「いまのところ五分五分・・・今年は蓄えの年です。フランスの方が我が国よりも遥かに国力は大きいですが、近代的な攻撃のドクトリンが敵には存在しません。」

 

「防御に徹しても昔のように補給切れになることはないな。・・・戦略物資の備蓄も3年分はある。」

 

「しかし、守りだけでは勝てません。なので国防軍では以下の計画を準備しています。」

 

ゴト

置かれたのは表紙が青い計画書であった。

 

「イタリア方面を来年の夏までに片付けるので、来年の秋にこの作戦・・・青色作戦を発動します。」

 

「概要を教えてくれたまえ。」

 

「A、B、C、Dの4つの軍に分けAは赤色計画のルートをそのまま使うのでアンデンヌの森をⅣ号戦車やレオパルド等の速度が出るのを中心に使用します。Bはルール地帯から進行します。戦車は最新の物を中心に編成し、ルールから叩き出すことを目的としています。言い方を代えれば陽動です。Cはイタリア北部からフランスに進行します。山岳兵と空軍の空挺により立体的な攻撃をおこない、突破口をこじ開けます。Dはイタリア方面の押さえです。ここには88ヘッツァーを配備して迎撃します。」



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8月作戦

【太平洋】〔8月1日〕

ワシントン州で待機していた北邦の第1北太平洋艦隊により今大戦初の大規模海戦がおこなわれていた。

 

「戦艦十勝沈んでいきます!!」

 

「旧式艦だ、仕方がない。それよりも反撃はどうした!!」

 

「潜水艦が仇は討ちました。」

 

「よろしい!!」

現在北邦海軍は練度の差から苦戦を強いられていた。

 

「航空機を発艦させろ。全艦から全力出撃だ。最新式のR-3ならいけるだろう!!」

R-3・・・R-2の派生であり、エンジンの出力が向上したことにより最高時速710キロが出せ、攻撃機としても優秀だったため真中を完全に駆逐し、約2年間このR-3のバリエーションだけが戦闘機として生産され、日産150機にまで作業が短縮化され、109500機が2年間で生産されることとなる。

この物量と性能はアメリカ海軍のヘルキャットを完全に翻弄する結果となる。

しかし、この海戦は北邦海軍の戦艦3、空母1、重巡洋艦5以下25隻を失う敗北となる。

アメリカ海軍は空母を1隻と巡洋艦6隻、駆逐艦5隻を失った。

 

【ニューヨーク】〔8月20日〕

北邦秘密作戦である8月作戦が開始された。

証券取引所にて北邦の特殊部隊が浸透し、とある人物達の暗殺に成功する。

 

「キンメル提督以下数名の海軍士官殺害に成功。」

それは本当にたまたまこの場にいたのだが、個人のスケジュールさえも北邦は抜き取り、把握していることを示すにはちょうどよかった。

この事件はFBIに衝撃をあたえ、大統領命令をもとに北邦狩りと呼ばれる内部で疑わしい者の逮捕に踏み込んだ。

スパイや本当に北邦関係者はこの時点で脱出しているのに気がつかず・・・。

 

【ソ連】〔9月10日〕

トゥハチェフスキーの指示から僅か約2ヶ月という超短期間でKV-1の代わりとなる戦車の案が2つも出てきたのだ。

1つはKV-13という中戦車の機動性(T-34並みのため55キロほど)とKV-1の持つ強力な装甲防御力を併せ持つ汎用戦車というコンセプトの戦車計画だった。

もう1つはT-43という中戦車で、T-34の発展型である。

しかし、トゥハチェフスキーはこの2つの案の量産を認めなかった。

 

「Ⅳ号戦車ならまだしも・・・ⅤやⅥ号戦車、T29、北邦のST-1すらも貫通しないではないか!!いらないそんな打撃にならん戦車は。」

そんな数日後に北邦がさらなる新型重戦車の量産情報が入り、トゥハチェフスキーはサヤカに知恵を借りに行くことになる。

後の化け物誕生である。



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国家方針 緊急軍需工場法

〔9月11日〕

背後のソ連にて不審な動きがあることが判明したため、ソ連に刺激しない範囲で上東海道のみに集中している軍需工場を農南にも作るよう法案を可決した。

鉄道網は整備されているので部品や物資の輸送はスムーズにおこなわれ、効果が現れるのは12月20日以降になるようだ。

 

「しかし、アメリカも中々折れんの・・・メキシコでも引き込むかのう?」

 

「戦略的には良いかもしれないかしら。ただ、メキシコは炎上しやすいから国境を接した瞬間からマフィアが侵入してくるかもしれないかしら。」

 

「後のことを考えると止めた方が良いと言うことじゃな?」

 

「そのとうりかしら。」

 

「なるほど・・・総司令、速成訓練による予備役だった者の現役復帰はどのくらい軍に貢献しておるのじゃ?5000師団計画を決定した者として把握したいのじゃ。」

 

「現役の者より可もなく不可もなくですね。元々銃社会のため銃の扱いがわからない者もいないし、人間工学が他国より発展しているから銃本体も使いやすいってのもあるんやけど。長時間の共同作業も淡々と従うから軍としては最高やな。」

 

「ならよかったのじゃ。・・・雛苺、ドイツに輸出する兵器の増産は可能か?Ⅵ号戦車の輸入計画があるのじゃが。」

 

「Ⅵ号の話は聞いてるの。簡略化したのなら量産は可能だと思うの。」

 

「・・・となると、輸入するだけしてみるかの。潜水艦で輸入になるから錆びるかもしれんがな。」

 

「輸送潜水艦を使うと良いの。それなら普通に内部格納庫に入ると思うの。」

 

「しかし燃料が持たないのじゃ。」

 

「うにゅ。」

 

「ドイツの潜水艦に期待するしかないのー。」

 

「ところで大統領はドイツがどこまで戦えると思ってるん?そこはっきりせな。」

 

「何事もなくいけば1947年くらいまでは戦えるじゃろう。しかし、欲を出してフランスに大攻勢をしたら3年は縮むじゃろうな。背後から一撃があればもっと厳しいと思うがの。」

 

「背後というとソ連?やっぱり不穏な感じがあるん?」

 

「戦時でもないのに兵器の生産量がおかしいのじゃ。更新の時期ではあるけど明らかに軍拡のレベルじゃ。中東に進出するのなら手を出さないけどこっちかドイツの可能性があるのじゃ。」

 

「経済界はなるべく早くこの戦争を終わらして欲しい。軍以外の産業の停滞は経済の鈍化を招くわ。これが続くと発展なき冬の時代になってしまう。」

 

「真紅の言うことも解るがまだまだ時間がかかるのじゃ。少なくともあと5年は続くのじゃ。」

 

「・・・わかったわ。説得してくる。」

 



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彼は少将なり

【ルール地方 前線】〔10月17日〕

彼はH・D・ムースタッカド少将、フランス帝国の若きホープである。

過激な発言の数々はフランス国民を奮い立たせ、ドイツの攻勢を何度も退けた名将である。

 

「少将!!ド・ゴール閣下から電文です。」

 

「読みたまえ。」

 

「は!!この地方は少将に任せる。私の脇を頼む。だそうです。」

 

「そうか・・・そうか!!ド・ゴール閣下に電文を頼む。任されました。とな!!」

 

(・・・閣下、命に代えても守りましょう。)

 

「聞きたまえ、諸君、背後はフランスだ。左右はフランスだ。前は敵だ。最高の仕事になるぞ、君らは英雄になる可能性を与えられたのだ。見よ!!大量の女神達を。黒くて巨大で実に美しい。・・・ドイツを潰す。虫けらのようにな!!」

 

「「「オォォォオオ!!」」」

 

フランスはガムラン総司令を中心に北部フランスをペタン元帥が防衛し、中央部がド・ゴール中将、ドイツ占領地をムースタッカド少将、南部をその父親のカステルノー元帥、イタリア遠征軍をド・ゴール親衛隊とも言える将官が完全防御体制に移っていた。

ARL40も前線にてドイツのⅤ、Ⅵ号戦車と激しい戦いを続け、練度が上昇しつつあった。

 

「だが、足りない。ドイツは止まらん。」

マックス少佐はそんなフランス相手に圧倒し続けた。

白豚と呼ばれるくらい太った体をⅥ号に押し込んで指揮をし続けた。

 

「建物を遮蔽物として50度の角度で豚飯だ。ティーガーは抜けん。そんなロマンの欠片もない主砲ではな。」

 

ガン

 

「8号車、前進しろ、そのまま左の建物を砲撃して崩せ、我々は横から回り込む。」

 

「敵の指揮官も中々だ。しかし、戦争はそれだけでは勝てないものだよ。見せてやろう。フランスのイカヅチを・・・ARL40。」

緻密に計算された戦場では最高の芸術的な戦闘が続けられた。

上空では制空権を取ろうと両軍の戦闘機が戦い、歩兵は機関銃を構え、敵の歩兵を倒そうとし、戦車は敵の戦車を潰そうとする。

大砲は後ろから対空砲火を続けている。

両軍でもトップクラスの将軍による攻防は少ない犠牲で戦場が更地になってなおも続けられた。

 

「「中々やるではないか。見えない敵の将軍よ。」」

 

【アメリカ】〔10月20日〕

欧州の芸術的な戦闘とは裏腹に、こちらでは最悪の兵器をアメリカが使用した。

青弾(ホスゲン 目や気管にダメージを与える)と黄弾(マスタードガス 神経毒)を使用したのだ。

 

(ガスは効かない。北邦人はな!!)

アメリカ軍の奇襲的な生物兵器使用は一時的な混乱を与えたものの、死者0で、油断したアメリカ軍が逆に返り討ちになるという結果となった。

 

「ナパーム弾の使用を許可するのじゃ。焦土にするのじゃ。」

報復の連鎖は加速する。



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楽しいな~闘争は

【ルール地方】〔10月29日〕

 

「・・・なに?88ヘッツァーが来るだと?本当かね?」

 

「少佐殿、確かにここに書かれております。ヘッツァーだけでなくレオパルドと試作の戦車も来るそうです。」

 

「・・・素晴らしい、実に素晴らしいよ。総統はわかってらっしゃる。で、試作戦車の名前は?スペックは?数は?」

 

「ティーガー2という名称で、スペックはこちらになります。数は未定ですが、最低3台は来るようです。」

 

「・・・なるほど、防御でしか使えんな。しかし・・・素晴らしい。これで我々は現時点で最強の盾を手に入れたわけだ。」

88ヘッツァーやレオパルドも嬉しいが、何より新型のテストに自分の部隊を選んだ上層部には感謝の極みであった。

 

「この闘争が続くまで、休みはないな。実に良い。これこそが戦争だ。」

 

【イギリス】

 

「やっと決心したのかヘルシング卿、で、私はどこに行けばいい?」

 

「焦るなアーカード、戦場は逃げん。血を吸い放題だからとはしゃぐ気持ちもわからなくもないがな。」

 

「私がはしゃぐ?とんでもない。私は落ち着いている。」

 

「・・・まぁいい。カナダだ。」

 

「相手は北邦だな。わかった。やれることはしよう。」

 

「アーカードにしては弱気じゃないか。何かあるのか?」

 

「いや、私も命を対価にしなければあの戦場では危険だからな。・・・ヘルシング卿、欧州と新大陸は根本的に戦争が違うと覚えておけ。」

 

「君から言われるとむずかゆい。わかった。気を付けよう。」

 

【イタリア】

 

「エェェイィメンッッ!!」

 

ザシュ

 

「この中央のアンデルセン、貴様らごときプロテスタントに負けるわけがないのだ!!ハーリーハーリー!!肉片になりたいやつからかかってこい!!」

 

「ふむ、やはりバチカンが来るか。」

イタリア方面軍最高司令官ロンメル大将はバチカンの戦力をしっかりと把握していた。

神の右席やそれ以外の組織の戦力もである。

 

「しかし、魔術は科学の力に負けたのだ。ドイツの科学の結晶の力を見せてやろう。ルドル・フォン・シュトロハイム大佐!!」

 

「ジーク・ハイル!!」

 

「誇り高きドイツ軍人の力を見せてやれ!!」

 

「ナチス・ドイツの科学力は世界一!!神の右席どもは任されました!!」

 

「よろしい!!命令は簡単だ。粉砕し、死ぬことなく叩き潰せ!!」

 

「ジーク・・・ハイル!!」

 

「対魔術大隊諸君もシュトロハイム大佐の援護を頼むぞ、イタリア方面の最高戦力は君達だ。存分に暴れたまえ!!」

 

「「「クリーク!!クリーク!!クリーク!!」」」

 

 



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我がナチスの戦闘力は世界一ィィィィィィ

【イタリア方面】

 

ザッザッザ

 

ザッザッザ

 

「貴様かァーッ・・・ドイツを苦しめる狂神父アンデルセンわァーッ。」

 

「ナチス等というわけのわからん新興宗教に惑わされた軍人め。私自ら引導をくれてやる。」

 

ザッ

 

シュトロハイム大佐は改造された体から露になる重機関銃、背中から無数のアームが持つ武器の数々。

 

ザッ

 

片や魔術礼装が施された150mmの鋼をも貫通させる30cmのナイフを持ち、周囲には光輝く聖書が舞っていた。

 

「ナチス「バチカンは負けはない!!」ナァァァァァイ!!」

 

間合いをアンデルセンがシュトロハイムとの間合いを詰めるまでに実に5秒間・・・シュトロハイムは50発の鉄鋼弾、1発のロケット、16発の弾丸をアンデルセンに浴びせた。

 

直撃は7発、しかし、アンデルセンのダメージはナイフ3本が折れたのみである。

 

「エェイメェンン!!」

 

「死にやがれェッ!!狂神父!!」

 

ガン ガン ガン パン ガン

 

シュトロハイムは一撃毎に16本のアームを削られ、アンデルセンは一撃毎にナイフを折られていった。

 

「手強かったが・・・神罰の代理人である私には勝てないのだよ!!」

 

「それァーッどうかなァ!!」

 

最高の一撃、アンデルセンのナイフはシュトロハイムの右肩から先を抉り取り、機械の腕からはオイルが絶え間なく流れ出す。

 

シュトロハイムの一撃はアンデルセンの両足を骨ごと撃ち抜いた。

しかし、血液は聖書によって応急処置をされ、出ていない。

 

「ナチキチ野郎!!代理人には勝てないのだ・・・あ?」

 

6000メートル先、対魔術師狙撃兵の20mm空冷5連炸裂鉄鋼狙撃銃から放たれた5発の特殊弾がアンデルセンの眉間を綺麗に貫いた。

 

「目標クリア。イタリア右席の排除完了。」

 

「イタリア・・・いや、バチカンは戦争を根本的に理解できていない。シュトロハイム大佐の戦闘力は確かに素晴らしいが、集団には無力なのだよ。」

灰色の狐・・・ロンメル大将はコーヒーを飲みながら次の攻撃目標を絞りこむ。

横には手当てを受けたシュトロハイムの姿もあった。

 

バチカンは5人の最高戦力と強力な魔術師を多大な犠牲を与えることなく消失した。

純血と呼ばれる一派であった右席5人の穴を埋めるために他国の聖人を集めるようになる。

それだけではなく、制御のきく他派を吸収していくこととなる。

 

「ナチスの戦力は世界一ィィィィィィ!!次はカエル野郎の息の根を止めて見せらァーッ!!」

ナチス・ドイツは止まらない。

優秀な人材が有る限り。

 

【???】

ギイギイギイ

 

「物資はたんまりとある。最高の気分だ。茶色の先生はどうだ?」

 

「そうか、そうか。代行が言うなら良いのではないか?」

 

「少年はどうかね?」

 

「あァ(怒)そんどころじゃねぇわ!!アメリカのガスをどうするか考えて夜も眠れん!!」

 

「君、ここはドイツだ。少年は勘違いをしていないか?」

 

「ホロマシーニ。だから馬鹿なのだよ君は。」

 

「落ち着け黄色。総統の為にも我々がもめてもしかたないだろ。」

 

ギイギイギイ

 

 



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ヒトラリズム

【ベルリン】〔11月1日〕

 

ゴォォォォォオオ キキィ シュー

 

「シベリア鉄道は長い・・・か。ローマ街道よりも偉業だな。」

北邦共和国副大統領ネロ到着。

 

「ようこそおいでくださいました。総統がお待ちです。」

 

「うむ。すぐに行く。」

 

(見事・・・ベルリンはパリをも越える世界都市となった。緻密に計算された都市設計は北邦の大都市をも越える・・・か。うむ。観ているだけでもワクワクする。)

戦時中のベルリンでは軍人が行き交うが比較的に賑わっていた。

ネロは指定された場所で車から降りるとゲッベルス宣伝大臣の指示か音楽とともにハイル!!の掛け声やハイル北邦、ジークハイル、ハイル・ヒトラーと言う声も規則正しく聞こえてくる。

 

手を振ると歓声にそれがかわる。

ネロは最高の気分でヒトラー総統がいる総統府に歩いて向かった。

 

【ヒトラーの私室】

 

「ミス、ネロ時間通りの到着感謝するぞ。」

 

「ヒトラー総統、余も会えて光栄に思う。」

 

「「単刀直入に言う、同盟は続けるべきか否か。」」

 

声が被る。

一言一句同じことを言った。

 

「・・・ふふ。」

 

「これは傑作だ。」

 

「「最高だ。」」

 

「私は続けるべきだと思う。イギリスが全力を出せないからね。」

 

「こちらもだ。アメリカが本気を出せば勝利は無くなる。問題は・・・」

 

「「ソビエト。」」

 

「現状北邦から見ても総統から見てもかの国はフリーハンドを得ている。国際的な目を気にしながら自国が最高の利益を得れる瞬間を狙っている。」

 

「余もそうだと考えている。同盟は続けるで意見は一致したな。次に移ろうではないか。」

 

「直接話すと決めるのが早くて良いな。・・・Ⅵ号の輸出についてにしよう。」

 

「対価が欲しい。Ⅵ号は雛型だ。様々な戦車に進化する可能性がある。それに見合う何かが欲しい。」

 

「余の権力ではオートジャイロ機のK-00偵察機(北邦にて開発されたオートジャイロ機 搭載重量1.6トン、最高時速150キロ、空中では75mくらいで最高の性能が出せる。)くらいしか渡せないな。・・・しかし、貴国の持つ携帯ロケット兵器ならば地上戦力である戦車に対しての兵器になるのではないか?」

 

「オートジャイロ機・・・か、良かろう。あとこれを持っていけ。」

 

「これは・・・!?」

 

「余が描いたスケッチだ。良くできておろう?」

 

「なるほど、魔術にも精通していると思ったが・・・空想科学者だったとはな。」

 

「空想の超能力でも世界を変える力がある。栄光あるドイツを描けばそれが見えてくる。我が闘争はそれを見せるための媒体だ。どうだ?ただの売れない絵描きにして国を取った超能力者は?」

 

「ふふ、最高だ。これはありがたく受けとる。有意義だったぞ、絵描きよ。」

 

「貴様こそ皇帝に相応しい。」

ネロはヒトラーから青写真を受けとる。

ドイツの技術ではできなくとも北邦ならばできると感じたのだろう。

E-50とE-100の設計図を・・・。



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アーカード 降臨

【カナダ前線】

ネロがベルリンに到着した頃、北邦の前線にて不審な甦生不可能の死亡するキョンシーが増えていた。

 

「・・・精神的に悪いな。これは。」

 

「蒼星石将軍、いかがいたしますか?」

蒼星石は敵がアーカードでその能力、性格を知っていた。

 

「・・・指揮権を少将に移行させてくれ、後で軍法法廷に出廷する。」

 

「閣下?」

 

蒼星石はポケットから小さなハサミを取りだし、それを巨大化させた。

 

ザク

 

「交渉してくる。護衛は不用。」

 

【最前線】

 

zap ドサッ

 

「やはりキョンシーはタフで困る。中々死なないからな。・・・ん?」

 

ヒューン ドン

地面にクレーターを作りながら現れたのは・・・蒼星石だった。

 

「「「蒼星石閣下!?」」」

 

「君らはここでは足手まといだ、他の戦線に救援に行ってくれ。」

 

「し、しかし!!」

 

「上官の命令は従うものだ、中々待ちくたびれたぞ、強者よ。」

 

「アーカード・・・串刺し公め。・・・十字遠征の時には見逃したが明確な敵となるなら時間は稼がせてもらうよ。」

 

「倒すとは言わないのだな。」

 

「最低でも10万回も君は殺せない。10万の命を一斉に放出等慎重な君は切り札がないとしないだろ?今の君にはそれがない。しかし、こちらも殺しきれない・・・ならば延ばすだけだ。最低でも2年は粘らせてもらうよ。」

 

「ほう。年を跨ぐか・・・面白い、やってみろ、将軍!!」

 

そこから半径10キロは立ち入り禁止となった。

アーカードの銃弾は尽きることがない。

蒼星石はハサミや体を回転させながらソニックブームで攻撃を続ける。

途中から格闘戦を交えた近接戦になる。

蒼星石の回転は終らない、回転途中で魔術や妖術を発動させる。

回転している途中に軸となる足やハサミで魔方陣を描けばすぐにできるのだ。

アーカードは自慢の拳銃で急所や足を狙うが、回転がそれを完全にいなしていく。

アーカードはそれを笑いながら蒼星石の体に拳銃を撃ち続け、蒼星石は必死に止まらないように動き続ける。

蒼星石には勝てない相手だが、足止めは完全に成功した。

 

【メキシコシティ】〔11月15日〕

 

パン

 

乾いた一発の銃声がとある老人の体を貫通させた。

 

「は、反革命主義者め・・・共産主義は必ず復活す・・・」

 

パン パン パン

 

ドサ

 

その日、社会主義は進化を始める。

 

赤い赤ーい軍靴が牙を剥き出しにするのだった。

 

『ソ連特殊部隊が世界革命主義者トロツキーを暗殺。』

その情報は世界を動かす。

 

【コロンビア】

 

南米1の大国コロンビア・・・ここも戦略のキーとなる。



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戦略空軍の完成

【北邦 参謀本部 空軍部署】〔11月30日〕

空軍は両津中将の直属の上司である大原が空軍の元帥としてトップに立ったが、実態は両津中将が完全に部署を掌握した。

これを陸海両軍、政府は承認し、戦術だけの空軍から独自作戦が展開可能なように進めるようにした。

両津中将が始めにおこなったことは窓際に追いやられた真中博士の名誉回復であり、とにかく速くて大馬力に耐えれる攻撃機の設計を任せた。

両津自身もRシリーズの限界が見えたからだった。

また、両津中将の下に大財閥との関係がある秋山少佐と中川大佐を召集し、経済界の関係を強化し、バリエーションを増やして戦況に合った航空機を使うために独自試作機を万単位で導入し、航空機に強くなっていた日本に共同開発を依頼し、韓国にも同様にした。

部隊編成も変更し、最高36機の中隊規模計算でしていたのを1軍団1024機編成に変更した。

エース制度の積極推進もおこない、カスタムの幅を広げ、戦略空軍へと変貌し始めるのであった。

現時点でR-00、4万9700機、R-1、2万1250機、R-2、1万100機、R-3、7250機、K-00(オートジャイロ機)700機、K-100(オートジャイロ機 3枚のプロペラが3ヵ所にあり、3トン近くの搭載量を誇る 地上支援機)500機、2式真中、6900機、メモリアルⅡ、4万機が戦力である。

 

「足りんな。ジェットエンジンなるものも基礎研究は始めたが・・・上手くいかん。となると現在ある機体を増やすしかない。」

 

その為には農南の工場群が完成するのを待つしかなく、北邦の土地にはもう大量に余っている場所などなく土地不足に悩むようになり、両津中将だけでなく政府も悩むのであった。

 

「仕方がない、趣味の設計でもしてるか。」

 

【日本】

戦争が終結してから凄まじい勢いで経済成長を遂げていた日本は植民地(同化政策中)のオーストラリアの開発を急いでいた。

今回の大戦で北邦と首都が近すぎるという問題を解決するために遷都する事が決定し、そのために未開発だった場所もくまなく開発された。

その中で人手不足が深刻化し、政府が産めよ増やせよを戦時中よりも徹底させた。

 

「稼ぎ時だ。」

田中角栄もこの時期に北邦から輸入した重機を操り、着々と資金を集めていた。

そんな中、人数が減った紺碧会では北邦と共同開発で何を作るか考えていた。

 

「史実のドイツ後期から末期の機体で良かろう。設計図はある。あちらからはエンジンと一部の電子機器を受けとれば後々有効なカードになるからな。」

日本では既に他国よりも早くジェット機の試作をしていた。

敗戦国でありながらも世界第三位の海軍と74式戦車相当の強力な戦車に兵器の数々、ジェット機が組合わさりながら高度経済成長中と超大国になり得る可能性が出てきた。

それにはまだマンパワーが少なかったが・・・。



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のび太

〔約半年前〕

 

「新設第150中隊召集完了しました!!」

 

「・・・よろしい。やぁ、僕がのび太中尉だ。2等兵からここまで上がった成り上がり者だ。・・・君達はキョンシー・・・35名全てが僕より年上ということになる。目上を敬え・・・昔中華と呼ばれた国ではそう言われていたが北邦では完全な実力主義だ。ここにいる新兵諸君もわかっているだろう。」

丸ブチ眼鏡をかけた坊主の男が問いかける。

敬礼は崩さない。

野比のび太大佐・・・両津中将が隊を離れた後すぐに部隊が解体され、隊員全てが教官や部隊長に昇進。

その中でも約2年間の戦争でのび太中尉はずば抜けていた。

改造されたR-1に両津中将が瞬間的に速度を加速させる特殊ターボジェットは燃料がすぐ尽きるため補助的な役割であるが付属され、現在世界最速の戦闘機である。

・・・いや、だった。

両津中将が作ったエンジンは整備性が最悪で両津中将以外では最高のパフォーマンスを引き出すことが不可能であった。

その事に早くから気がついていたのび太中尉は30mmライフル砲をさらに改造し、30mmモーターカノンライフル砲として命中制度を向上させ、超長距離射撃を可能にし、日本の新三八弾を小型、弱体化させた気化弾を愛用し、アメリカ軍を大いに苦しめた。

綜合撃墜数297機、掃射にて36両の輸送車両、3両のシャーマンを破壊している。

そんなのび太の訓練は熾烈を極めた。

実弾訓練である。

キョンシーだからできる芸当だが普通はやらない。

それ以外にもアラスカ山脈のデリナ(約6100メートル)で低酸素訓練をおこなったり、30時間飛行訓練をおこなったりもした。

3ヶ月の促成訓練を完了する頃には新設第150中隊は熟練パイロットと同じくらいの力を発揮するようになる。

のび太はこの実績から、権力を掌握する前の両津中将が立案したパイロットの教育大隊(教官を教育するための隊)の大隊長に就任することとなる。

パイロットとして空を飛べる時間は少なくなったが、それでも時間を見つけてはスコアを伸ばしていった。

 

〔12月6日〕

良いところ無しであったイギリスがスピリットファイヤー等の新型戦闘機をカナダに持ち込むようになった。

カナダ政府もスピリットファイヤーのライセンス生産を始め、一部地域で互角の空中戦を展開し始める。

さらにイギリスは新型駆逐戦車チャレンジャーと新型駆逐戦車AT7を投入した。

チャレンジャーはST-1、ST-2以下155mm砲搭載戦車は全面貫通し、それ以外の戦車も側面や背面から撃破することが可能だったが、AT7はST-2とパートナー4のどちらかでしか攻撃が効かなかったが、足の遅さから歩兵のバズーカを集中的に叩き込まれることとなり、足回りを破壊され滷獲されることが相次いだ。



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最悪のクリスマスプレゼント

【ドイツ ルール地方】〔12月24日〕

 

「前夜祭の砲撃だ。楽しいな~。どれだけ損害を抑えつつ、そして補填されてくる兵器を増やして駒を増やすゲームは。実に楽しい。この冬・・・この冬さえ凌げばフランスを叩き潰せる。・・・ロンメル将軍閣下の話では北イタリアは完全に制圧、ベルギー方面もマンシュタイン将軍閣下が抑えている。・・・中央のさらに中央である我々が抜けばこの戦争は終わる・・・相手も同じことを考えているのだろう。ふふ、あははははは!!最高だ。」

 

「マックス少佐!!参謀本部から緊急電文です!!」

 

「どうしたのかね?私の気分を害してまで伝えなければならないことかね。」

 

「小官には権限がないのでなんとも・・・。」

 

「かまわん音読しろ。」

「は!!」

 

ビリ

 

「・・・そ、ソビエト共和国連邦・・・不可侵条約を一方的に破棄し、越境を開始!!規模およそ45師団の90万相当で、高度に暗号化されているためこちらからでは解析不能・・・だそうです。」

 

「・・・それだけか。」

 

「もう一枚ありました。ルール地方攻勢軍及びマックス少佐を少将に昇進の上、フリードリヒ・パウルス元帥指揮の第6軍に編入し、ソ連軍に遅延戦術をおこなうように・・・だそうです。」

 

少佐は静かに怒りを露にした。

 

【北邦参謀本部】

 

「ソ連がこちらにも越境を開始したんやと!!」

 

「は!!規模はおよそ100師団ほど。」

 

「100師団やと・・・」

 

ニタァと参謀総長は不気味な笑みを浮かべた。

 

「きた、きたきたきた!!私のプランEを発動させるんやで!!佐天だけが才気溢れる将軍やないんやで!!」

外国から渾名もつけられることなく頭の古い参謀総長と呼ばわりの現状を打破するために5000師団計画にて作られた第21から30軍を投入した。

が450万人が防衛にあたる。

 

【農北】

ソ連軍主力戦車T-44は近代的な形をした強力な中戦車であった。

しかし生産され始めて時間があまり経過していないためT-34-85、T-43の戦車も混じっていた。

農北には2戦級になっていたパートナー1、パートナー2、L-2が配備されていたため、数はあっても劣勢であった。

航空機はYak-9Pを中心とした戦闘機群にYak-5、9、3の各シリーズを投入していた。

種類ごとに戦い方が違うため緊急量産されていたR-00では勝てなかった。

知らない北邦の影響で戦争後期の技術がフル動員され、しかも国力もアメリカ並みと恐怖の軍が完成していた。



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短針

【トルコ】

ソ連の影響はここでも連鎖する。

トルコ共和国は今は無きケルマが完成させた近代国家であり、欧州と中東を結ぶ位置であり、地中海、黒海に面していた。

そのトルコは昔の伝で北邦から旧式となったパートナー1を輸入して独自改造し、そこそこの戦車を完成させていた。

中戦車ケルマ・・・KRM-1である。

設計はドイツのⅣ号D型に似ていた。

この他にドイツに輸出していた88ヘッツァー交渉の末に輸入していた。

 

「我が国での戦車は1ヶ月で40両が限界だ。現状の300両(88ヘッツァーは)だけではソ連の1戦車師団にすら勝てない。」

 

「工場を増やすか奪うかですな。」

 

「奪う?どこから?」

 

「ギリシャから。あそこには連合軍の基地がある。そこから奪えば・・・。」

 

「ダメだ。国際社会が許さない。地道に工場を建設するしかなかろう。」

トルコは結果的にだがソ連から攻められることはなかった。

しかし、この間に内政全振りの影響で戦後地中海と中東の経済を握る大国に再び返り咲くこととなる。

 

【ソ連】

 

「奇襲は成功・・・か。で、参謀総長は私に何を求めるのかな?トゥハチェフスキー元帥。」

 

「我々の戦略目標はドイツの征服とフランスの救援、北邦への圧力です。北邦へは現在押していますが時期に第一線の兵器が投入されれば膠着するでしょう。その間に鉄道を使いKV-13と新型のIS-1を大量に送り出血目的の防御戦に移行。東は守りに徹することになるでしょう。ドイツは第一波の攻撃途中で第二波を投入し、行軍速度が遅くなり始めたら空挺を投下し、第一波を前線に戻して攻勢を続けます。」

 

「本当の縦深突撃か・・・楽しみにしてるよ。」

 

「да。」

 

(私って本当バカ。)

 

【旧ポーランド】〔12月25日〕

ゲオルク・フォン・キュヒラー上級大将は必死にポーランドの兵力で膨大なソ連軍相手に戦っていた。

 

「キュヒラー大将閣下!!ソ連軍の戦車は我々の兵器では効果が低いです!!」

 

「そんなことわかっている!!対戦車地雷を埋め込んで時間を稼ぐのだ!!対戦車塹壕も忘れるな!!」

 

「は!!」

 

「とにかく最終防衛ラインは死守しなければならない!!本国に雪崩れ込まれるぞ!!」

 

「空軍より新型機が本国から来ています!!ソ連軍の主力戦闘機と互角以上の戦いができるそうです!!」

 

「とにかく耐えろ!!いいな!!」

 

「・・・閣下、最悪のタイミングでワルシャワにて大規模暴動です。幾つかの収容所が制圧され12万人のパルチザンが補給線を脅かしています。」

 

「この際だ!!パルチザンの地区を全て爆撃か砲撃で吹き飛ばせ!!」



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悪化する戦局

【北邦 農北】〔12月30日〕

北邦はソ連軍の攻勢を止めることに成功した。

縦深突撃理論は北邦でも進められているもののため、防御に回れば対応が可能だった。

しかし、ソ連の兵器は強く、ゾンビ戦法でのゲリラ的自爆攻撃が一番効いていた。

特にソ連軍の兵器のカチューシャは北邦を恐怖に陥れた。

大量のロケット弾は塹壕を破壊し、防衛地点を破壊し、戦車を破壊していった。

長距離から狙撃して破壊するか航空機で爆撃するしか倒せない兵器であった。(狙撃は全面の戦車に阻まれ、制空権が取れてないためカチューシャの独壇場であった)

たちが悪いことにこのカチューシャ・・・数さえあればパートナー4を破壊することができる唯一の地上兵器であった。

そのため対カチューシャ用の兵器開発が急務であり、小型、それでいてそこそこの火力、最低でも時速75キロの25トン以外の戦車開発を上層部に依頼し、輸出用にされていたL-1を急遽自国に戻し開発されたのがLL-0Xと呼ばれる戦車で全面17mmととてつもなく薄い装甲だが、革新的な、すべての転輪がベルトドライブで駆動する動輪、高出力だが発火率が高いことから正規の戦車には採用しなかった中川財閥開発の三日月エンジン、88mmライフル砲、電動モータ補助砲塔回転補助装置、初期全自動装填装置とあるものを詰め込んだ戦車となった。

時速は時速89キロ・・・稼働距離680キロと計戦車としては最高の戦車だった。

特殊弾を利用でき、T-44も破壊可能であった。

・・・まあ本当に急造だったため初期型は車輪の脱輪、装甲の不自然なへこみ、加速の影響で70キロ程しか出ない車両等の北邦には珍しい自国民に機械的欠陥がある戦車に乗せることとなる。

 

【ポーランド】〔西暦1941年1月5日〕

 

ボーキー

 

「諸君到着だ。戦場だ。我々が変えるぞこの戦局を!!」

 

ルールの悪霊 マックス大佐

 

「協賛主義者め!!よりにもよって・・・よりにもよって最悪のタイミングで攻めてくるとはな!!」

 

ラインの悪魔 デグレチャフ少佐

 

「なァにィ。我がナチスの指揮能力は世界一ィィィィイ!!共産主義者などおそるるに足りなィ!!」

 

イタリアの移動戦術兵器 シュトロハイム大佐

 

「早く飛ばせてくれ!!イワンどもの息の根を止めるからなぁ!!」

 

戦車狩り ルーデル中佐

 

4人の天災がポーランドに降り立つ。

 

「さぁ・・・諸君、戦争だ。フランス並みの抵抗を期待するぞ。楽しませてくれ、私を、我々を。」

 

その後ろの列車の席にとあるスーツを着た男が座っていた。

 

「ふふ、フーハハハハハ!!この総統補佐が後ろをやってやろうじゃないか。さぁこい。ドイツの心臓は私だ。討ち取ってみろスターリン!!」



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東西線戦

【ソ連】〔西暦1941年2月25日〕

 

「早すぎる!!新型戦車が現れただと!!」

 

トゥハチェフスキー元帥は北邦の兵器開発速度と量産速度を把握しているつもりだったが、全てのリソースを戦争につぎ込んだ北邦は異常すぎた。

資本家達が損をしてても独自兵器を作り、数を作り、死者を減らし、労働者は国のために食事を削りながら兵士のために働いた。

他国には絶対いる売国奴が全くいないのも恐怖であり、様々なルートで北邦に入ることはできるが、住民全てが監視しているかのような視線を常時スパイは感じ、捕まり、いつのまにか一族皆殺しにされている。

 

「狂気だ。」

 

それが北邦。

優しい農耕民族から全ての暴力の化身と変貌した。

 

「祖国は早まったかもしれん・・・。」

 

【北邦 農北】〔2月28日〕

 

プランE・・・発動。

拮抗していた北邦軍とソ連軍だが北邦がソ連軍の国境全てで進行を開始した。

それはインドまでの中小国を踏み潰して進む作戦であった。

タイは作戦範囲外であったが、ミャンマーことビルマは3日で踏み潰された。

5日後には全ての戦線で戦闘行動が開始された。

 

「進むの。それが祖国に残された生きる道なの。」

 

インド進行方面軍総司令高町なのは上級大将

 

「シベリア鉄道が致命傷を与えるであろう。」

 

シベリア進行方面軍総司令羽衣狐上級大将

 

それは世界の全てが戦争で1つのラインで繋がった。

 

「押し返せ、敵の戦車は旧式だ、こちらの戦車で!?」

ソ連軍は戦車が歩兵に破壊されている光景を見てしまった。

超長距離対物ライフルの開発に成功し、戦車から頭を出した戦車長を狙撃し、動きが止まった瞬間にバズーカの飽和攻撃で運悪く弾薬庫に当たった車両から爆発炎上し、ダメでも無限機動を破壊され、動きが止まったところを車内の人を射殺して滷獲していったのだ。

 

「カチューシャで吹き飛ばせ!!」

 

「甘いの・・・我にカチューシャは通用せんぞ。」

羽衣狐上級大将はLL-0Xの数が少ないため別の方法で倒すことにした。

カチューシャよりも射程の長い大砲で砲撃したのだ。

 

「古くてもようは使いよう・・・列車砲師団やってしまえ。」

 

キーーーーシュ ドンドンドン フシュー

 

その大砲の射程は実に100キロ・・・成層圏を通る超兵器であり、パリ砲のような旧式ではなく砲身が3重構造となっており、火薬の推進力を最大限出せるようにしている。

言うなればムカデ砲とパリ砲を合体させ、それを少々コンパクトにした感じである。

 

「僕の技術的理論は完璧だ。これが新時代の砲身になると僕は確信していたからね。・・・さぁ新世界の創成だ!!」

夜神月技術士官はこれを多薬室列車砲と命名し、この砲の運用データから小型で戦車に載せられる高圧砲の開発を開始する。



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フランスの猛攻

【ルール地方】

2月と冬であるがソ連に向けて大幅に部隊を引き抜いた影響で防御が薄くなったドイツ陣地にフランス軍が一大攻勢を開始した。

 

「ふはは!!見よAMX13 41とAMXM4mle.41の威力を!! 」

 

先行量産された軽戦車のAMX13と重戦車のAMXM4mle.を華麗に操るH・D・ムースタッカド少将はマックス大佐の指揮によって支えられていた戦線に穴をあけ、そこから雪崩のように入っていった。

 

「ん?他方面の軍が遅れているようだな。仕方がない。一時停止だ。」

 

この僅かな停止がドイツを救うこととなる。

 

「・・・おぃ、何の音だ?」

ムースタッカド少将の言葉に観測班はすぐに答えた。

 

「敵の新型です!!あ!!大砲の砲弾がちゃくだ!!」

 

「報告は最後まで言え。」

 

「砲弾が効いていません!!着弾数5、無傷です!!化け物戦車です!!」

 

「車両数報告。」

 

「大型3両、小型10両!!その他ティーガーⅠとティーガーⅡの姿もあります。」

 

大型はポルシェ社が開発したVK 41.01 (P) Ausf. B通称ハーゼ・・・野うさぎである。

小型はVK 41.01 (P) Ausf. A通称キンド・・・子供である。

どちらも試作機であり、量産数は戦争中100両と少ないが、あるだけをこの戦線にぶちこんだ。

 

「・・・あれは固いだけだ。砲は他の戦車と代わらないぞ。」

 

ムースタッカド少将は瞬時にドイツの新型戦車の火力不足を見抜いた。

 

【ソ連】

 

「なんだあれは!?」

 

一方こちらでは大量のパンターが投入された。

それは地面を覆うほどであり、この反撃はポーランド中部まで敵なしだったソ連軍が25師団が壊滅、12師団半壊、10師団が要再編成と進行が一時不可能の大打撃となった。

ドイツの指揮官は3人の悪魔であり、ルーデルは個人で367両の戦車、9機の戦闘機を破壊し、地方指令部を爆撃し、4名の中将以下将官12名の爆殺に成功した。

 

しかしデクレチャフ少佐は不機嫌であった。

 

「確かに共産主義社どもを撃退できたが、これでこの戦争の勝利は不可能になった。上手く遣り繰りしてあと4年が精々だろう。技術が停滞するな。」

実際兵器は新型重戦車の投入で世界より2歩先にいるが、フランス、北邦はドイツの影響で一歩後ろに、米英ソがその差を猛烈な勢いで埋めている。

 

「頼むから弾薬が半分以下の補給で攻勢命令だけはやめて欲しい。・・・無理か。」

 

「なァァァに不安そうなァ顔をしているゥ!!デクレチャフ!!」

 

「シュトロハイムか。我が祖国を思うとな。」

 

「なァに!!人造機械化兵団計画が終わればァ!!勝利は我々ドイツのものだァ!!」

 

(だといいがな。)



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カナダ崩壊

【カナダ】〔3月20日〕

 

ソ連の宣戦布告によりアラスカ司令部は急ぎ北アメリカを制圧するはめになった。

今までは敵の出血を与え、ガス欠を狙っていたが、一気に作戦が変更された。

方面軍を10個にわけ、カナダをまずは征服するために動いた。

 

「L-3、全車両で攻勢を開始、装甲車、輸送車も続け!!」

機械化された歩兵師団が25個単位で動いていく。

その後ろから122mm、155mm、20cm自走砲部隊が続く。

そして司令部や野外病院用の大型トラックが、最後に給油用のタンクローリー数千両、補給車両が重戦車ST-1、ST-2、パートナー4に護られながら進んでいく。

対空兵器は自走砲部隊の近くに集中的に配備されていた。

 

過去の戦訓を研究し、これだけ近代的な編成をすることができたのだった。

 

〔5月22日〕

フランス、ドイツ戦線はドイツが大きく後退したものの膠着し、ソ連は新兵の訓練および、損失した兵器の補充、アメリカは未だに去年に承った損害を回復できていなかった。

カナダはイギリスから送られてくる兵器を頼りに北邦の猛攻を防ごうとしたが不可能であった。

歩兵の質は圧倒的であり、戦車も速度重視だがバランスのとれた中戦車にイギリス産の戦車は足回りがあまりにも悪かった。

そして悪魔のように飛来する戦闘機や爆撃機を防ぐ力はもうなかった。

5月22日・・・2年近く戦い続けたカナダは首都オタワ占領によって幕を閉じた。カナダは亡命政府をイギリスに置いて徹底抗戦の構えだが、イギリスに渡せるものは旧式の駆逐艦数隻と傷付いた兵だけであり、事実上のリタイアである。

北邦は日本の統治とは全く別の統治方法を採用し、完全併合、カナダは西海岸側をカナダ州、東海岸側を工中、カナダの中部を工東と3つの州に別けた。

すぐに3つの州に産業プラントが設置され、内政が始まる。

 

【アメリカ】

前回と違い兵力があまりなく、様々な方法で戦争を煽っても国民はついてこなくなっていた。

ルーズベルトはこの状態に大変危機感を感じており何とかして北邦ととの講和・・・それもなるべく有利のを模索していたが、北邦側の返答は

 

《・西海岸全州の割譲

・五大湖の企業郡の株の51%を譲渡

・海軍の全船合計重量50トン以下

・陸軍は10万人以下

・海軍、陸軍の予備となる組織の新設の禁止

・海外利権の放棄

・賠償金 現物の金40万トンの譲渡

・軍の暗号技術の割譲

・KKK組合員をC級戦犯とすること》

ととても飲めるような条件ではなかった。



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長期的な膠着

【北邦】〔西暦1942年5月2日〕

約9ヶ月間・・・世界全体で大規模な作戦が行われることはなかった。

全ての国が守りに入ったためである。

ドイツ、アメリカは言うに及ばず、ソ連は来るべき大攻勢のための準備を、フランスは戦争で疲弊した兵を休ませるためにローテーション制度を5ヶ月間だけ実施し、戦争の疲れを癒し、イギリスはカナダ陥落の動揺で分裂し始めた連邦諸国を纏めるために動いていた。

 

「参謀総長、この1年間で兵器は進化したのじゃ?」

 

「はい。纏めた物がこちらです。」

 

《新兵器

・多連砲(カチューシャのパクり)

・R-3☆(R-3を全体的に性能を向上させ、上がった出力でリヴォルヴァーカノン方式の20mm機関砲を2門搭載した地上支援もおこなえる戦闘機)

・ST-3、ST-4(癖が強すぎて扱うのが難しいが、200mmの榴弾砲は強力である

どちらも30の限定生産)

・北ティーガーⅠ(北邦生産のティーガーⅠただし足にスカートがあり、履帯が切れる可能性を低くした。)

・メモリアルⅢ(アメリカのB-32みたいな形での圧力装置の不具合は無い)》

 

「・・・航空機の独自開発したものはでなかったのか?」

 

「出るには出たのですが・・・なにぶんRシリーズ関連が高性能すぎて・・・。」

 

「・・・ん?日本と共同開発したあれはどうじゃ?」

 

「あれ・・・ですか。」

共同開発した兵器は爆龍といわれる爆撃機で、とても特殊な機体であった。

本体部分は普通の爆撃機よりも高性能であるが、付属する無人特攻爆弾がついてその真価が現れる。

しかし、この爆弾をつけると・・・着陸が水上のみでしかおこなえなくなるのだ。

北邦側はこの爆撃機計画を試作飛行時に武器としての運用を却下。

細かい技術だけを引き抜くだけの結果となった。

 

「仕方がないの・・・敵のアメリカはどうじゃ?新兵器の姿はあるか?」

 

「いえ、依然として変わりありません。」

 

「そうか・・・。」

 

「ただ、廃棄されていたマンハッタン計画が再びおこなわれているのが判明しました。」

 

「核か。この際じゃ。こちらも持つとしよう。使い方は沢山ある。」

 

「お願いします!!海軍に!!海軍にその原子力エネルギーをください!!」

 

「海軍司令長官・・・。」

海軍は頑張っていたが運用経験の差で敗けを繰り返していた。

責任をとって海軍は陸軍と空軍の傘下に入り大破した戦艦の主砲等を渡したりしながら必死に潜水艦の予算を確保し、通商破壊作戦をおこなっていた。

 

「結果を見せるのじゃ。」



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原子力

【北邦 農南 重慶郊外200キロ】〔5月30日〕

最終兵器開発計画始動。

物理学者百数十名、数学者数百名、博士号持ち工学者数十名、その他数百名の北邦の頭脳的人物達が集まって開発を開始した。

アメリカのマンハッタン計画とは違い、秘密の徹底はさせなかったが、場所が誰も住んでいない原っぱの真ん中なのでスパイ達も侵入しずらかった。

なのでアメリカのマンハッタン計画よりも活発に情報交換がなされ、研究速度も速くなっていく。

 

「重水素核分裂プラント設置を完了しました。」

 

「ミーティオもです。」

 

「動力用発電所の開発も75%の進行具合で進んでおります。」

 

「日本のとある将軍が世界最終戦争論を唱えていたが、その武器となる最終兵器・・・それがこれなら・・・。」

 

「なに、昔に星二号作戦は成功しているんだ、そっちの星で新しく暮らせば良い。」

 

「最悪アメリカという国はなくなるかもしれんがな。」

 

「その時はその時であろう。」

どこまでも北邦は自国優先であった。

 

【北邦 西部戦線】〔6月11日〕

 

北邦はこの戦線の航空機量を爆発的に増加させた。

独自開発機の投入である。

 

ツインR-2・・・アメリカのツイン・ムスタングを彷彿させる機体で、R-2を生産していた工場が両津中将に利益の一部を空軍に返却する方法で特許を借り、造られた。

最高時速は690キロ、長距離飛行のためのタンクがついているため急激な旋回はできないが、急上昇、急降下に定評があり、後ろが見やすいようにバブルトップという全面ガラス越しで見えるようにされた。

 

Tフレッシュ・・・アメリカ戦闘機サンダーボルトXP-47H型にそっくりだが、内部が色々変わっており、最高時速700キロ、10800メートルをも飛べる戦闘機である。

 

R-00をもとに独自に改造され、それを洗練させた機体はYak-7Lに似ており、速度も時速695キロ、多数の機関銃や機関砲を搭載することができる。

ただし、コストは少しだけ高くなってしまったが。

 

最後に銀河二十型・・・中島飛行機が北邦に売り込んできた爆撃機であり、メモリアルⅢより最高時速は遅いものの、彗星エンジンと呼ばれる新型エンジンの影響で2トン分の装備を乗せられる出力、最高高度11400メートルの超上空を飛べる戦略爆撃機だった。

これらは西部戦線にて強力なソ連のYak-9Pの脅威を完全に取り除くことに成功する。

さらに最新型のバズーカⅡ、C型対戦車ライフル等の歩兵武装も強力な物になっていった。



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パールハーバー

【真珠湾】〔7月1日〕

北邦で再編された北太平洋第1、第3、第4艦隊が真珠湾に進んでいた。

 

第1艦隊・・・戦艦2隻、巡洋戦艦2隻、重巡洋艦4隻、軽巡洋艦4隻、駆逐艦8隻

 

第3艦隊・・・装甲空母4隻、空母2隻、軽空母6隻、護衛空母10隻、軽巡洋艦4隻、駆逐艦10隻、航空機は日本軍から輸入した電征200機、紫式水戦50機、攻撃機春嵐60機、R-00水上機型60機

 

第4艦隊・・・空母6隻、戦艦1隻、巡洋戦艦3隻、軽巡洋艦10隻、駆逐艦10隻、航空機は電征100機、春嵐60機、春嵐改40機、R-00水上機型30機の大艦隊である。

 

また、海中では北太平洋を12のブロックに分け、各60隻つづ潜水艦を配備していたので戦闘時に海中に16隻の潜水艦もいた。

 

対してアメリカ海軍はアジア、太平洋連合艦隊は空母15隻、軽空母20隻、戦艦6隻、巡洋艦10隻、駆逐艦15隻、潜水艦6隻、航空機はP-38が40機、A-30が80機、P-39が250機、P-40が400機、B-17が30機、B-29が45機、さらに真珠湾航空基地よりB-32が50機、A-31が200機、F6Fが200機と北邦がやや不利であった。

 

先に艦隊を発見したのは北邦海軍であった。

とある長門型戦艦に搭載された巨大なレーダーは北邦の最新技術をフル活用して作られており、海上での出力は世界最大である。(地上での最高出力レーダーはフランスにある 次いで北邦、ドイツになる)

 

「全力出撃。賭けに出るぞ!!」

 

3艦隊総司令官はアメリカ海軍を見てアジア艦隊だけだと思っていた。

そのため一撃で葬るために全力出撃を命令する。

 

「潜水艦ポイントを移動。」

 

以外かもしれないが潜水艦は潜水艦で艦隊があり、別の指揮系統となっていたが、水上艦隊よりも潜水艦隊の方が上位となっている。

16隻の潜水艦隊は空襲で目を奪われたアメリカ艦隊を確実に仕留めるために真珠湾付近にて待ち伏せをおこなう。

 

「なに!!大規模な国籍不明の航空機だと!!」

 

アジア・太平洋連合艦隊司令官のキング元帥は対空戦闘の指示を即時に出し、攻撃機の爆弾放棄即座に決定。

これにより反撃は一時できなくなったが、全力出撃で出てきた北邦海軍の航空機の作戦中止を決定させる。

 

昼の部

北邦海軍は航空機の21%を喪失もしくは修理不能、潜水艦2隻消失

 

アメリカ海軍は航空機の10%を喪失、港付近のガソリンタンクが漏れだし、港が約2日使用不可能、戦艦1隻、巡洋艦5隻、駆逐艦5隻喪失



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DIO

【北海道】

 

北邦海軍がほぼ全力でアメリカ海軍の太平洋連合艦隊を撃滅させようと頑張っている頃、歩兵にある装備と特別編成師団が完成した。

 

精鋭重駆逐機械化歩兵師団と北邦吸血鬼化装甲擲弾兵戦闘師団の2つ、計4万名である。

 

精鋭重駆逐機械化歩兵師団はドラグノフ狙撃銃(ソ連の武器を滷獲し、設計方法を元にして作られた狙撃銃、スコープは20倍に固定)、ワルサーMP(のような短機関銃)、1942型手榴弾(M26手榴弾もどき)、対装甲車用拳銃(プファイファー・ツェリスカ)の重装備だがよく訓練されており、敵の歩兵と砲兵部隊の殲滅、戦車隊等の足止めと幅広い地域で活躍できる部隊だが、機動性が欠ける欠点が有るため、戦略的配置をしなければならない。

 

対して北邦吸血鬼化装甲擲弾兵戦闘師団はドラグノフ狙撃銃にライフルシールドと呼ばれる頭を隠すための防弾ガラスが付けられるようになっており、その他にもバズーカⅡを装備し、空挺強襲からの部分的重要拠点制圧に適していた。

 

・・・で、この2つの師団は上をベルント・バルツァー大佐というソ連、フィンランド地区からの亡命者の子供だった。

社会主義嫌い、軍事教育及び特殊な訓練方法からこの生まれたての重駆逐機械化歩兵師団を精鋭へと進化させた。

 

下はディオ・ブランドー少将(渾名は恐王)が指揮、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル中佐(渾名は氷柱)が作戦立案、補給を担当する。

 

この2つの部隊が実戦に投入されるのは少し後のことである。

 

【真珠湾】〔7月2日〕

 

潜水艦隊は海上の3艦隊と協力して真珠湾機雷封鎖作戦を実施、気づかれたものの第3艦隊が囮として攻撃を受けたため損害を出しながらも封鎖に成功する。

慌てたアメリカ海軍連合艦隊は一か八かの突破を試みる。

 

が・・・1日目に決着がつかなかったことがアメリカ海軍の敗因である。

 

第2艦隊・・・重巡洋艦10隻、軽空母5隻、軽巡洋艦10隻、駆逐艦30隻、電征150機、R-00水上機型20機

 

グループE、F潜水艦隊計90隻が到着したのだ。

 

第2艦隊は速さ重視であるため駆逐全てが島風型駆逐艦であり、約39ノットで艦隊が移動する援護艦隊でもあった。

 

異例の大規模砲撃戦、雷撃戦となり、約3時間続き、北邦は丸々2艦隊分の船(空母は軽空母が2隻沈んだのみ)が沈み、アメリカ海軍は2艦隊丸々失った。

 

ただし、アメリカの艦隊がみんな沈んだ訳ではなく、空母5隻、軽空母6隻、戦艦2隻、他3隻の滷獲に成功し、ハワイ諸島の占領にも成功する。



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アメリカと補足

アメリカ軍視点に変更


【カナダ オタワ前線】〔7月3日〕

 

・・・第239連隊・・・敵と遭遇。

 

約2時間の戦闘後塹壕に戻ることができたのは39名。

 

「嫌だ、嫌だ・・・死にたくない。」

 

「なんでアメリカはこんなことになったんだ!!」

 

「勝てるんじゃなかったのかよ!!」

 

ベテラン・・・それも戦争初期から戦ってきた俺に言わせればこんな若者を寄越すことしかできない軍部は既に人材枯渇が深刻だとわかる。

 

死にそうな時は沢山あった。

 

敵はイエローナイフ攻略を目指したIN作戦の大量にやって来た戦車群・・・味方の大砲の砲撃は効かず、味方の戦車の主砲も弾かれ、対して敵の砲撃は味方の戦車に直撃した瞬間に轟音とともに戦車の後ろに隠れていた味方の歩兵が真っ黒になるほどの火炎をあげて爆発した。

 

・・・親友やダチはその戦いでみんな死んだ。

 

必死に撤退して何とか軍法会議を回避して前線に戻ったらこれか・・・。

 

「弱音を吐くんじゃない。この後ろにある合衆国の主要都市には家族や知り合いがいるんじゃねえのか!!」

 

渇を入れる。

 

とにかく士気崩壊だけはさせねぇ!!

 

「敵機!!パートナー3だ!!」

 

「伏せろ!!」

 

ヒューン ドババババ

 

モコ

 

「生きてるか!!」

 

「何とか。」

 

「こっちもです。」

 

「少し待ってろ。報告しねぇと。」

 

無線が繋がらない。

 

「伝令を出すぞ。行く奴はいるか!!」

 

「じ、自分が!!」

 

「よし!!行ってこい!!」

 

 

 

 

 

 

走る・・・途中で放棄されていた自転車を入手した僕は壊れていないことを神に感謝し、前線司令部に向かった。

 

あそこには強力な対空陣地や150機が収容してある飛行場、数百両の巨大で勇敢な戦車が鎮座していたのを思いだし、あそこなら安全、あそこなら前線よりおいしい食事があるかもしれないと希望的な観測を持ちながら移動していた。

 

 

 

 

 

 

 

ガラガラ

 

「え?」

 

あったのはうめき声、走り回る衛生兵、散らばる肉片、崩れた司令部、鉄屑となった兵器だった。

 

「伏せろ!!」

 

誰かの声に従い地面に伏せる。

 

ヘルメットに石が当たる。

 

爆撃機の次は戦闘機の制圧射撃だった。

 

うめき声は少なくなり、代わりに衛生兵の死体が増えた。

 

「なぜだ・・・合衆国は神の作った国じゃなかったのかよ!!」

 

少年は叫ぶ。

 

理不尽なこの状況に・・・。

 

ただただ叫ぶことしかできない現状に・・・。

 

ニューヨーク進行作戦の数ヵ月前の出来事である・・・・。

 

 

 

「勝つのだ・・・・なんとしてでも!!・・・う!?」

 

「大統領!!」

 

フランクリン・ルーズベルトの急死。

 

世界の混沌は加速する。

 

 

 

 

 

 

 

 




補足

忘れられてるがこれはとある魔術、とある科学の二次創作になります。

ヒトラーは原石という描写がありましたがヒトラーは原石と同時に聖人でもありました。

ナチズムという宗教的な組織を作るには聖人でないと無理があるからです。

物語の中にも聖人はちょくちょく出ています。

アンデルセン神父はどの代でも聖人という設定で、アーカードは原石、ナポレオンは聖人で、ビスマルクは原石、ナポレオン3世も聖人で、チャーチルは原石と歴史的な指導者は聖人か原石のどちらかであろうという感じ。

天皇も聖人に当たる。

信長は原石で、キョンシーになるとその力が発現し、力を得ます。

原石と聖人力を意図的に両方使うことができるのはヒトラーのみ。

カエルの医師は空襲時に負傷したアレイスターを助けた青年軍属の医師

学園都市の規模を拡大する予定

ロシア正教は消滅、共産主義の第三思考を踏まえておくこと。


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革命

【ドイツ 旧バイエルン王国地区】〔8月12日〕

 

その日・・・とある場所で赤い旗が立てられた。

 

 

ドイツ8月革命の始まりである。

 

強まるフランスとソ連の圧力、一時は安定していたイタリアにスペイン軍50万人が上陸すると再び戦線が増える。

 

国民の生活は史実より豊かだった・・・だからだろう。

 

ナチズムという力を緩めてしまい、そして四方八方敵ばかり、勝利して獲た地域は北欧の一部のみに転落し、国民は戦争の意味がわからなくなっていた。

 

(負けても一時我慢すれば豊かな生活にもどれるのではないのか?)

 

(ならみんな豊かになれる共産主義に・・・)

 

背後からの一突き、第三帝国の崩壊である。

 

〔8月22日〕

 

ヒトラーは自室で遺書を書いていた。

 

自分の役目が終えることができないむねをネロに綴った・・・

 

「総統閣下!!反乱軍がベルリンに迫っております!!脱出を!!」

 

「余はここに残る。ナチズムは既に崩壊した。余はここに残ることで良識ある軍人、科学者、博士達を逃がす時間を稼ぐ。ゲーリングと海軍に伝えろ。総統命令第678号、潜水艦、長距離爆撃機にて北邦に亡命しろ。陸軍の将官、士官もだ。ゲッベルス君、きみも行きたまえ。」

 

「いえ、残りますとも。ただし、仕事はします。」

 

「・・・後は託した。」

 

ヒトラーは一人で自殺した。

 

様々な手段を使って時間を稼ぎ、反乱軍が追い詰めるまで約15日も逃げたのだ。

 

稼いだ15日・・・それは国外に脱出するのに十分な時間だった。

 

ゲッベルスはラジオで総統命令を前線に伝えると反乱軍に捕まり死亡、ヒムラーもゲッベルスに協力し、反乱軍に射殺される。

 

参謀本部、政府上層部は無事に脱出するが、空軍のゲーリングが乗った爆撃機はソ連軍に補足され撃墜、そこで死亡した。

 

ナチス高官の中でこの混乱に対して北邦に亡命者受け入れ要請を円滑に行い、実行できたヨアヒム・フォン・リッベントロップ外務大臣とナチスの3大頭脳の1人ラインハルト・ハイドリッヒ親衛隊大将の2人が亡命政府の主格となる。

 

また、ソ連はこの混乱の余波を受けてしまい、攻勢する部隊、後退する部隊、とどまる部隊と指揮系統に大混乱がおこってしまった。

 

そのため東部戦線では5万人の兵、指揮官がギリシャの潜水艦基地から脱出に成功する。

 

フランスはこの動きを好機と見て一大攻勢を開始、全戦線が食い破られ、臨時政府擬きはフランスではなくソ連に降伏を打電。

 

混乱は更に拍車がかかる。

 

〔9月14日〕

 

フランス軍、ベルリン占領。

 

欧州事情は複雑怪奇



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第四帝国

【北邦 北海道 北邦政府 大統領執務室】〔9月10日〕

 

「臨時ドイツ政府の皆さん、心境を察するのじゃ。」

 

ラインハルト臨時首相とリッベントロップ副首相に向かって話す。

 

「・・・前を向くしかありません。」

 

「まず同盟国として旧カナダのユーコン準州、北西準州を貸すのじゃ。今急ピッチで工場や農場も整備しておる。」

 

「助かります。」

 

「脱出できた者のリストをこちらの政府に渡してもらいたい。よいか?」

 

「えぇ。」

 

「とりあえず最後に・・・この総統補佐・・・奴は何者じゃ?」

 

「総統補佐・・・彼はドイツの裏の政府です。ドイツの政策の殆どが彼らの息がかかってます。」

 

「彼ら?」

 

「総統補佐だけでなく数人が補佐をしていたので、誰が本当の頭なのかわからないのです。」

 

「ふむ・・・まぁ良いのじゃ。ナチズムはどうするのじゃ?」

 

「現状じゃ無理ですね。生命の泉をおこないたいですが・・・女性が少なすぎます。それに全員旦那が居ますし・・・。」

 

「こちらで女性職員を沢山送るのじゃ。」

 

「ありがとうございます。」

 

【臨時ドイツ亡命政府】〔9月15日〕

 

「シュトロハイム大佐が・・・死んだ!?」

 

「正確にはソ連に捕まった。」

 

「シュトロハイム大佐はナチスの技術の結晶だぞ!!あれがソ連に渡ったということは・・・」

 

「ドイツではなし得なかった量産ができる可能性がある。」

 

「不味い・・・。」

 

シュトロハイムは撤退する味方を助けるために敵中で壮絶な戦死を遂げた。

 

2個師団を壊滅に追い込んだが、無限に出てくるソ連軍には敵わなかった。

 

「シュトロハイム大佐!!」

 

デグレチャフ中佐はその時に柄にもなく叫んだ。

 

損得勘定抜きの友人と見ていた彼の死である。

 

マックス大佐は

 

「素晴らしい闘争だ。その闘争は私が引き継ぐ。」

 

と側近の医者のドクにもらした。

 

【北邦政府】

 

「ドイツが居なくなった今、戦場はこちらに移るのじゃ。幸いアメリカ、イギリスの海上兵力はほぼ皆無。欧州も戦争の傷跡は3年間は癒えることがないじゃろうな。」

 

「余としては講和も手だと考えておる。」

 

「講和・・・か。条件はどうするのじゃ?」

 

「太平洋側の州の割譲と北邦の国家予算3年分(アメリカの国家予算10年分)の40年分割払い、太平洋側の島々の利権放棄くらいじゃな。強くやり過ぎても抵抗が続くだけ。」

 

「ソ連は。」

 

「旧国境線での白紙講和、世界勢力の再編成をする方が余としては良いと思っておる。」

 

「となると・・・欧州はフランスの一強状態にさせ、ドイツ臨時政府はカナダで新国家を作ってもらうとするかの。アメリカが残るのも癪じゃがこの戦争によって南米の半分を勢力下に置いて、最盛期のドイツ並みの強国コロンビアが出来上がってしまったからの。壁として生かすか。」



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終結に向けて

〔11月2日〕

 

北邦政府はアメリカに向けた3つの和平案を提出した。

 

このことによって世界中の国がこの終わり無き戦争がようやく終わりが見えてきたと言うようになった。

 

しかし・・・

 

北邦は自分の武器を磨き続ける。

 

「V2・・・か。いや、ロケット技術の遅れていた私達の国からしたら嬉しいの。うにゅ~それにしても流石技術大国ドイツなの。」

 

「そるぇをつかって、新兵器つくったよ。」

 

「はかせ、流石!!」

 

「えへへ・・・。まぁ振りはここまでとして、対ロシア戦術兵器としてドイツのブルムベアをこちらで量産できる体制は整えたよ。行動距離問題は戦車輸送車両を付属させたからある程度大丈夫だと思うよ。」

 

「これでLL-0X等という薄っぺらい恐怖の軽戦車に乗せずに済むの。」

 

「攻撃が当たらないから評価できる点も沢山あると思うけど?」

 

「発火率が高過ぎるの。この問題を解決するには装甲を厚くする必要があるの。」

 

「エンジンエンジンエンジン・・・どこまでいってもエンジン。」

 

「仕方ないの。地道に努力するしか・・・。」

 

「はかせ、雛苺さん。お茶が出来ましたよ。」

 

「ありがとうなの。」

 

〔1943年2月10日〕

 

アメリカ・・・今大戦における最終兵器計画破棄を決定。

 

T29不足が目立つようになり、M4シャーマンジャンボを実戦に投入。

 

今時大戦最後のアメリカ大量生産戦車となる。

 

逆に北邦はこの日に原子力のコントロールに成功。

 

原子力エネルギー計画に移行するが、放射能問題解決に向けた動きが加速するようになる。

 

〔3月2日〕

 

北邦陸軍新型戦車開発案を提出する。

 

航空機に関しては各企業が独自開発した物が合ったので良かったが、陸軍ではSTシリーズの新型ST-5(主砲に4連155mmライフル砲を搭載した重戦車で、時速30キロ、スペック的には16mm対空機関銃1門、2重キャタピラ、超信地旋回ができ、フリーズクラブⅨ型エンジン、フリーズクラブⅧ型ディーゼル補助エンジン、前面250mm(傾斜装甲とチタン装甲の合計装甲620mm)側面200mm(400mm)、上面180mm(360mm)、下面100mm(200mm)、後面180mm(360mm)渾名はマンモス、コストがバカ高いが現STシリーズ最高傑作である)とパートナー5(パートナー4のコストダウンバージョン型だが、持ち前の防御力が下がり、主砲も互換性がない90mmと生産ラインを混乱させる駆逐戦車となり、120両量産され、生産は中止された)があったが、あまりにコストが高いため、新型戦車はコストが安く、主砲は10.5cmまで、時速40キロ以上の戦車が求められるようになる。



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Eシリーズ

〔4月30日〕

 

ソ連の動きが活発化し、フランスがアメリカに兵器の輸出を開始した頃の北邦は不気味なほど静かであった。

 

5000師団計画は95%完了し、機械化も80%と異常な軍隊が完成しつつ合った。

 

数年間の戦争で北邦は超農業国家から覇権国家に完全に変貌し、陸軍は縦深突撃理論を本当の意味で習得し、最低5回の波状攻撃が可能になり、歩兵の主兵器はアサルトライフル、防弾チョッキの全隊員分配備と元々のキョンシーとしての回復力に防御力が備わった。

 

異質な軍隊は終戦に向けた攻勢をかける準備を始める。

 

〔5月10日〕

 

この時期も蒼星石とアーカードは激戦を繰り広げていた。

 

終わり無き戦闘も蒼星石のドロップが尽きたことで終息する。

 

「アーカード、僕の負けだ。時間切れだ。」

 

アーカードも残機が100を下回っていたので蒼星石のことを強く言えない。

 

まさに拮抗していたのだ。

 

「・・・次だ。次の機会に決着をつけるぞ。」

 

〔5月22日〕

 

新型戦車計画始動、上層部はイニシャルEと命名。

 

E-10、E-50、E-75を駆逐、中戦車、重戦車とし、軽戦車はL-3、LL-0Xが継続して任務に当たる。

 

Eシリーズ量産によりパートナーシリーズはパートナー4を除き打ち切り、STシリーズも砲塔の肥大化解消が不可能と判断されたため、車体のみ転用する新型車両が出来るまでSTシリーズも生産停止が決定。

 

Eは、我々を勝利に導く最後のピースになるだろう。

 

〔12月23日〕

 

Eシリーズの実戦にて運用データを備蓄。

 

E-75以外は全てのEの改良必要とし、E-50S(スモール)、E-25、E-100型ヤークトパンター、E-100が量産に入る。

 

E-75は今後を見据えて拡張設計されたE-125重戦車に発展していくこととなる。

 

準備は整った。アメリカ戦線を整備する。

 

【アメリカ北部】〔1944年3月〕

 

死に体のアメリカに1000師団の機械化部隊が攻撃を開始。

 

アメリカ戦車ではE-10以外の戦車を貫通することができず、ジリジリと国内の最終防衛線にて撃退の構えを取る。

 

「ここじゃ。」

 

芳香は絶妙なタイミングで講和を持ちかけた。

 

トルーマンが大統領になってから纏まりが無くなっていたアメリカはこれを承諾。

 

2ヶ月後には休戦が結ばれ、その翌週、和平が成立した。

 

《・太平洋側の州の割譲

・北邦の国家予算4年分(アメリカの国家予算15年分)の40年分割払い

・太平洋側の島々の利権放棄

・南米の利権の放棄

・一部技術の無条件開示》



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西方ドイツ

〔5月9日〕

 

ドイツ臨時政府はドイツに戻ることを不可能と悟った。

 

確かに今の北邦ならできないことはないと思うが、莫大な犠牲者を出してまで祖国を取り戻せるのか?国民に捨てられた我々は戻っても歓迎されないのではないのかという疑心暗鬼に陥ってしまった。

 

・・・結果出来上がったのが西方ドイツ共和国である。

 

女性の全体数が少ないため混血政策が強制的に進められ、北邦に余っていた女性達は活きの良い雄に群がった。

 

数年後には数十万人に人口が増えていそうな勢いだった。

 

また、海軍は戦争を元にした空母優先ドクトリンを主軸とした海軍のスリム化を目指した。

 

戦争中に軍縮する謎の行為だが、海軍の予算で莫大な艦隊を維持するのは不可能であり、7艦隊あった艦隊数を4つまで減らし、戦艦は4隻まで、重巡洋艦は廃艦が決定された。

 

駆逐艦も結構な数が減らされるが、全て北邦産になる予定だ。

 

戦争の終わりは近い。

 

〔9月30日〕

 

300師団によるインドのソ連軍撃滅作戦が開始された。

 

両国の航空機が空を覆うと、陸軍は長距離からの砲撃を行った。

 

大量のブルムベアによる砲撃は今までのソ連戦術に有効打を与え、E-50、E-50Sを中心とした中戦車打撃部隊が砲撃により麻痺したソ連前線を食い破る。

 

ただ、ソ連もIS-3を中心とした重戦車で対抗し、一時持ちこたえたが、E-125重戦車(時速35キロ 105mmライフル砲)とE-25の大群に後退を余儀なくされ、戦争の勝敗は決した。

 

〔1945年1月〕

 

ソ連と白紙和平が成立。

 

残りは欧州勢力のみとなる。

 

〔1946年4月〕

 

大西洋決戦と呼ばれる海戦が北邦勝利で終わったことで戦争は終結する。

 

イギリスは没落が決定するが、戦後北邦による経済援助で国体を守り、バチカンは影響力拡大に入る。

 

フランスはドイツ工業地帯を併合したことにより超大国となる。

 

が、北邦という化け物がいるためECが早くに発足。

 

なおイギリスは入ってない。

 

ドイツは保護国まで転落し、バイエルン王国並の国土となる。

 

ソ連は戦争により近代的な機械化部隊を獲得し、国内の不穏分子を戦死させることに成功する。

 

また、シュトロハイムを分解し、解析したことによりサイボーグ技術が発展、後の学園都市と戦う際にある程度対抗できるようになる。

 

日本は首都をオーストラリアのシドニーに遷都し、東京都は特別区の23区が学園都市に編入され、第53学区まで拡大される。

 

北邦は大統領を交代し、統制的な体制を6年かけて自由民主的体制に変更する。

 

役割を終えたため、芳香は数十年の隠居生活を送る。

 

その他重鎮達や将軍はローゼンメイデン組を除き、なぜか学園都市に記憶を封印した状態で潜入する。



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約80年後

とある超電磁砲開始


【芳香宅】〔2020年〕

 

カポン

 

「なんじゃ?6人そろって。」

 

私の家に水銀燈、金糸雀、真紅、翠星石、蒼星石、雛苺が集まっていた。

 

「2000年前の記憶だから曖昧だったですが、そろそろ学園都市の暴走が始まる頃ですぅ。」

 

「学園都市・・・の暴走じゃと?」

 

「そうですぅ。第三次世界大戦が始まるですぅ。」

 

「・・・学園都市との戦力差とこちらの総動員時の戦力は?」

 

「科学技術は1から2年程度の遅れだわ。経済力はこちらが圧倒しているわ。ただ、日本がバックにいるから下手な干渉は厳しいと思うのだわ。」

 

「芳香が管理している4つの星を合わせると60億近くの人口が居るわよ。ただ、相手の超能力者達の実力がいかほどか・・・。」

 

「超能力ならあちらよりも進んでおる。」

 

「「「え!?」」」

 

「・・・知ってたですぅ。キョンシーの場合はレベル4までにしか絶対ならねーですぅ。翠星石も細胞分裂の活性化を超能力で操ることができるですぅ。」

 

「・・・この際じゃ、あっちで様子を見るとしよう。」

 

この一言から全てが始まった。

 

【蒲原超能力研究所】〔2年後〕

 

私こと芳香以外の6人は学園都市に行ってしまった。

 

私は仕事の引き継ぎ等で2年間も拘束されたが・・・。

 

「ワハハ・・・芳香か。今日は何の用だ?」

 

「例の完成者を学園都市に連れていきたくてね。」

 

ヒュン

 

『コーヒーゼリー10年分で手を打ってやる。』

 

斉木楠雄、原石から覚醒した完全体の超能力者・・・甘党。

 

「なに逃げてんのよ!!」

 

タツマキ、北邦式の超能力者育成プログラム第12号、人間であるが、成長が12で止まってしまった。

 

(・・・斉木をつれていくかの。)

 

『約束は守れよ。』

 

「あぁ、ちゃんと対価は払う。」

 

「無視!!無視なの!!」

 

『ロリババァが。ヒステリックになるなら独りでやれよ。』

 

「むきぃ!!まだ20代だもん!!」

 

「ワハハ、タツマキ、残念だったな。」

 

(じゃあ頼むぞ斉木。)

 

『元大統領もな。芳香さん。』

 

【学園都市】

 

佐天は昔の記憶がない。

 

学園都市に来る前の記憶がぼんやりとしかないのが正確か。

 

「弟たち元気かな?」

 

たまに呟く弟はこの世界に存在しない。

 

レベル0の少女は今日も元気に初春のスカートを捲る。

 

【ファミレス】

 

(結局・・・私は何者な訳よ。)

 

こちらも記憶がない。

 

暗部に入ってかれこれ5年、レベル2のパイロキネシスしか使えない自分はどこで生まれ、どこで育ったかわからない。

 

気がついたらこの学園都市の教室で授業を受けていたのだから。

 

不気味だ。



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とある科学の超電磁砲

〔原作 1学期〕

 

「私は常盤台中在学の御坂美琴よろしくね佐天さん。」

 

「はい!!・・・常盤台のエースっていうから凄いお嬢様をイメージしてたんですけど、普通の人で良かった・・・。」

 

「聞こえてるんだけど。」

 

「あ、いや、良い意味ですよ!!」

 

「まぁまぁお姉様も佐天さんも。クレープを食べましょうよ。」

 

何気無い日常・・・新しく出会った友達。

 

楽しい日々。

 

私が私を思い出すのはこの後すぐであった。

 

「キャー!!」

 

銀行強盗、学園都市では能力を過信した学生が暴走して犯罪に走ることがある。

 

逆に無能力者は能力を持つ者に暴力を振るうこともある。

 

つまり、犯罪が他の日本の地域より起こりやすいのだ。

 

(修羅の国は例外だけど。)

 

ジャッチメントという学生の治安維持活動を行う団体に所属する初春と白井さんは強盗を逮捕しようと動く。

 

その混乱で近くにあったバスから子供が居なくなってしまう。

 

強盗と戦闘中の白井さんの代わりに私、初春、御坂さんは居なくなった子供を探す。

 

私は強盗の人質になりそうになっていた居なくなった子供を保護すべく走った。

 

「行かせない!!」

 

「このガキ!!離せよ!!」

 

「くっ!!」

 

「おらぁ!!」

 

それは偶然だった。

 

私の腕にナイフが刺さった。

 

痛み・・・がないのだ。

 

デローン ボダボダ

 

腐ったような血が垂れる。

 

その光景は近くにいた子供だけが見ていた。

 

犯人は逃げるために背を向け、御坂さん達は私を刺した犯人を捕まえるべく能力に集中している。

 

(あれ?・・・時間が長い?)

 

どんどん時間が長くなる。

 

御坂さんが放った電撃が止まって見える。

 

ピタ

 

完全に止まった瞬間に私は私が何者なのか、源義経であることを思い出した。

 

腕の再生を始める。

 

すぐに傷が塞がると時間は再び動き出した。

 

バチン ビリビリ

 

「これが常盤台のエース、御坂美琴お姉様ですわ。」

 

白井さんがカッコいいセリフを言って事件は幕を下ろした。

 

【自宅】

 

「思い出したは良いけど人格が混ざるな。この技術、記憶を封印することで若々しい思考を得てみようとか学生の気分に戻れますっていうコマーシャルだったのに・・・欠陥だらけなんだけど。」

 

一応病院で検査してもらい、異常なし(機械に数値を誤魔化すように細工)と言われ、夜には帰宅できた。

 

帰宅後は自分の能力の確認や今後どうするかを考えていた。

 

「学園都市に存在する様々な噂を調べてみるか。仮人格も噂話が好きなようだし。」

 

調べると沢山出てくる学園都市の噂話。

 

クローン人間だとか、能力を2段階上げる機械だとか、脱げ女だとか、アームの女性だとか。

 

(アームと言えば芳香だが、元気かな?)



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