白銀山の頂にて (ちょこふぉんでゅ)
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始まりと、アサギジム突破

「んー、寝みぃ……」

『そんなこと言わないの。女の子でしょ?』

「煩いみぃちゃん」

 

 肩に乗せた相棒、みぃちゃんに向かって文句を言い、ふっと肩の力を抜く。

 

「ジョウトのジムリたち、ぶっ飛ばしていくか……」

『そりゃ楽しみだわ。とりあえず新米からはっ倒していきましょうよ』

「賛成」

『ではアサギのミカンさんからね。あと、カントーには道場破りのナツメも居るし』

「ん、ジョウト制覇してからね」

『もちろん。シジマさんは……最後の方に残しときましょうよ。あとヤナギも。正直言って、強い相手こそ最後に残しといた方が楽しめると思うのよねぇ』

「それ同感。んじゃ、ちょっくらモーモー牧場? 行って肩慣らしにちょうどいいトレーナー探そっか」

『空を飛ぶはやだよ』

「走るか」

『だね!』

 

 モーモー牧場のトレーナーたちの運は、今日をもって尽きるだろう。

 

 *

 

「うーん、いい感じのトレーナー居ないねぇ」

『シーズン的に居ると思ったんだけどなぁ』

「だよね。とりあえず何処かの街行こう。野宿は面倒だし。エンジュとアサギ、どっちがいいか……」

『此処はおとなしくアサギに戻っておこうよ、ね?』

「そうだね……」

 

 空を飛ぶ要員を繰り出そうとした時。

 

「だ、誰かぁ……。誰か、助けてぇ……」

 

 声が聞こえた。

 

「みぃちゃん!」

『わかってる!』

 

 みぃちゃんが辺りを警戒しつつ、何時でも技を放てるようにする。そんな中、草むらに近づいて掻き分けて見ると。

 

「……んー、誰かぁ……」

「……ミカンさん」

 

 ジムリーダー・ミカンが倒れていた。

 

 

 とりあえず、チラーミィにミカンを見張っていて貰い、大きな木の枝を三本探してくる。何時も持ち歩いているロープを使ってそれで木枠の代わりにし、モーモー牧場で貰ってきた要らないシーツを上からかぶせる。

 簡易テントの出来上がり!

 中にミカンを押し込んでオレンの実を口に放り込む。こんなんでなんとかなるだろう。

 達成感に浸りながら適当にそこらをウロウロする。

 正直言って、育成はそこまで得意じゃないから、いよっし、トレーニングしてやろう! とか出来ないんだよね。

 道路の脇に座り込んでいたら、いつの間にか夜が明けてしまっていた。

 

「あー、ミカンさん、だいじょぶですか?」

「え、ええ……ありがとうございます……」

 

 詳しく聞いてみると、ミカンはお腹が空いて倒れてしまったんだそうだ。仕方ない、ちょっくら行ってきますか。

 

 

「……というわけで、すみません、早朝から悪いんですが、モーモーミルクを頂けませんか?」

「ええ、大丈夫よ。ちょうど搾りたてだし……あ、大きなのに入れて持っていきなさいな。サービスよ」

「ありがとうございます!」

 

 牛乳パックサイズのモーモーミルクGET!

 本来なら5,000円とかしそうな量だけど、サービスとして半額で頂けた。理由(わけ)あり商品だったそうだ。

 それを持って、ミカンの元へ。持っていた紙コップに注ぎ、渡す。

 

「何から何まで、ありがとうございます……」

「次からは気を付けてくださいね……」

 

 ジム開けなきゃ! と言ってミカンはすっ飛んで帰って行った。ので。

 

「みぃちゃん、私たちもアサギ行こっか」

『え、肩慣らしは?』

「いいよそんなもん。とりあえずボックスから炎ポケ出して挑めば何とかなるっしょ」

『ちょ、あなたそんな適当な人間だったっけ?』

「出てきて、もふふ!」

 

 チルタリスのもふふを出し、その背中に飛び乗る。

 

「レッツゴー!」

 

 アサギに向かった。

 

 *

 

「先程はありがとうございました」

「もういいですよ、そんなこと」

 

 再びミカンさんに頭を下げられ、私はやんわりと返す。

 そして始まったジム戦。

 

「行け、ガモス!」

 

 気合いを充分に込め、ウルガモスをフィールドに送り出す。

 あらかじめ伝えておいたシナリオ通り、ガモスは開始一発でフレアドライブをする。綺麗にハガネールに攻撃が突き刺さり、教え込んだ反動の受け流し方で力を逃す。

 一方ハガネールは、フレアドライブに怯みつつもステロを撒き、岩雪崩でガモスの動きを牽制し、その隙にあの巨体で躊躇いなくアイアンテールをかましてくる。

 

「熱風! ガモス耐えて!」

 

 熱風で軌道を逸らすが、ガモスにはかなりのダメージが入る。対して、ハガネールは最初のフレアドライブのみ。効果抜群ではあるが、レベルの高さと合わさってそこまで酷いダメージではない。

 状況は、若干此方が不利。ステロを撒かれたので無闇に交代は出来ないので、このまま居座るのが賢明だろう。

 普段は中々発揮できない頭の回転を速めながら、炎の渦と吸血を指示。

 対してミカンさんは、

 

「吠える!」

 

 吠えてきた。

 強制的に此方の手持ちが入れ替わり、本来ならこの試合に出すつもりはなかったトノが出される。

 ボックスに預けておくべきだったか、と悔やみながら、

 

「水の波動!」

「捨て身タックル!」

 

 捨て身で近付いてきたハガネールを、トノが水の波動で押し返す。雨降らしの恩恵もあって、パワーアップしているそれは、ハガネールを牽制したが———

 

「え、嘘でしょ……!?」

 

 ハガネールは身体を逸らして受け流し、そのままの勢いでトノにタックルする。

 瀕死。

 一発で。

 油断すべきではなかった。そう思いなおし、モンスターボールを天に投げ上げる。

 

「行けえぇ、キング!!」

 

 一つ目のジム戦だというのに、私は雨パのエースを投入した。

 キングドラも突然のことに驚きながらも、やる気を見せる。

 

「ハイドロポンプ!」

「アイアンテールで迎え撃って!」

 

 物凄い勢いで放たれた水流を、アイアンテールで相殺される。だが、

 

 此方は雨乞いの恩恵がある。

 

 これこそ、雨パの醍醐味だ。相手には何ら影響が無いくせに、此方は恩恵に預かれる。

 キングの水量が僅かながらも増えていく。

 

「お腹の底から、水をはきだしてぇぇぇぇえええええ!!!」

 

 私の叫びに反応し、キングは全力でハガネールを押し流した。

 

「ハガネール、戦闘不能!」

 

 ———ジムリーダー・ミカンVS挑戦者コハクの、対ジムリ一軍1on3の戦いが終わった。

 

「……強いですね」

「一応、別地方も旅してたので、まぁそこそこくらいの実力はあるとは思ったんですけど……」

「あなたにはこれが相応しいです。バッジをどうぞ」

 

 バッジ、GETだぜ☆

 

「旅、頑張って下さい」

「また顔を出しますよ」

 

 言いながら、ジムを出る。

 一つ目のジムで、これだけの強さなのだ。ジョウトも舐めたもんじゃない。

 パーティ構成を考えながら、私はアサギのポケモンセンターに向かって歩き出した。




記念すべき第1話! なのですが……。
すみません、結構駆け足早足でお送り致しました。
誤字脱字、文章がおかしいところも多々あるでしょう。
それは後々、物語が変わらない程度に修正していきたいと思います。
……何せ、主人公の性格が途中から変わってますから……。
次からは、テンポ良く、駆け足にもゆっくり展開にもならない旅をお送りしたいと思います。

・解説
「みぃちゃん」
チラーミィ♀。主人公の相棒。定位置は頭の上か肩。

「もふふ」
チルタリス♀。旅パ。

「ガモス」
ウルガモス♂

「トノ」
ニョロトノ♂。雨パ起動要員。

「キング」
キングドラ♀。雨パのエース。伏線である描写がされている。


ただの雨パではないのだ……!


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