10×40 (作者B)
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プロローグ

「仮面ライダーは、無敵だ!」

「ショッカーの敵、そして人類の味方、お見せしよう!」

「出て来い怪人、風見志郎が相手になるぞ!」

「待ってくれ首領!貴方は人類を滅ぼすつもりか」

「見ていてくれ、オヤジ……」

「オレ、トモダチタスケル」

「天が呼ぶ!地が呼ぶ!人が呼ぶ!悪を倒せと俺を呼ぶ!」

「私はこの命の続く限り、ネオショッカーの悪事を叩き潰すまで戦い続けます!」

「人の夢の為に生まれた。この拳……この命はその為のものだ!」

「俺は……仮面ライダー10号」

「俺は改造人間、南光太郎!!」

「この世に光がある限り、俺は何度でも蘇る!!」

「行かなきゃ……誰かが俺に助けを求めてる……!」

「みんな一生懸命生きてるんだ。それを壊しちゃいけない」

「Jパワーの戦士」

「こんな奴らのために、これ以上誰かの涙を見たくない!」

「誰も……誰も人の未来を奪う事は出来ない!」

「俺は人を守るためにライダーになったんだ……」

「俺には夢は無い。だけど、夢を守ることは出来る」

「戦えない、大勢の人たちの代わりに……俺が戦う!」

「自分を必要としてくれている人間がいるって……人を助ける事に一生懸命になれるから俺は鬼になったんだ……」

「自分が変われば世界が変わる。それが天の道」

「弱かったり、運が悪かったり、何も知らないとしても、それは何もやらない事の言い訳にならない」

「僕は生きてみたいんだ。人間とかファンガイアとかじゃなくて。僕は僕として」

「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ!」

「俺は依頼人のために戦う……命がけで、あんたの教えを守る」

「あちこち行ったけど、楽して助かる命がないのはどこも一緒だな!」



『『『変身!』』』


「あ~、こりゃ駄目だ。一度ばらして修理しないと」

 

光写真館を営んでいる"光栄次郎"は、手に持ったカメラを眺めながら呟いた。

 

「ああ、直るんならそれでいい。修理の間、代わりになるカメラを貸してくれ」

 

その返答に対し"門矢士"は、高慢な物言いでカメラのレンタルを要求した。どうやら、彼のカメラが壊れてしまったらしい。

 

「別にいいけど……レンタル代も含めて、きちんと払ってくれないと困るからね」

「わかったわかった」

「じゃあ……はい、これ代わりのカメラ。僕は修理してくるから」

 

そう言って、栄次郎は士にポラロイドカメラを渡し、奥の部屋へ入っていった。

 

「さて、暫くはこれで我慢するか」

「我慢するか、じゃないですよ!いい加減溜まったツケを払って下さい!」

 

すると、士の態度を見かねた栄次郎の孫"光夏美"が、士に怒鳴り出す。

 

「わかってるって」

「士君の"わかった"は当てにならないんですから!……はぁ~、ユウスケも里帰りしちゃいましたし、どうしたらいいんでしょうか」

 

ユウスケとはこの写真館のもう一人の居候である。しかし、今回は登場しないので割愛する。

 

「お陰で口うるさいのが居ないから、最近は静かでいいな」

「もう!そんなこと言っては駄目ですよ!」

「その通りだぞ、家臣その6。私の世話をする者が一人減ってしまったのだからな」

「誰が家臣だ、誰が……ん?」

 

光写真館で暮らしているのは4人。今はユウスケが居ないので3人ではあるが、聞き覚えのない第五の声が写真館に響き渡る。ふと、士が振り返ると―――

 

「降臨。満を辞して」

 

白い鳥のような怪人が立っていた。

 

「貴方はジーク!?」

「おい、鳥!何でお前が居るんだ!」

 

その怪人の名前は"ジーク"。電王の世界にいるイマジンである。もっとも、二人とは面識があるものの余り良い思い出がないため、とても嫌そうな顔をしている。

 

「家臣の為に、この私自ら出向いたのだ。茶の一つくらい出せんのか、家臣その6」

「お前なぁ~ッ!誰が家臣だ!誰が!」

「落ち着いて下さい、士君!それで……士君の為って、どういうことですか?」

 

夏美が質問をすると、ジークは近くの椅子に腰をかけ、頬杖をつきながら足を組み、偉そうに話し始めた。

 

「届け物だ。ほれ、これはお前の物だろう」

 

そう言って、ジークは懐からあるものを取り出し、士に向かって投げた。

 

「?これは……」

「士君のカード、ですかね?」

 

士が受け取ったそれは、何の絵柄も描かれていない1枚のカードだった。

 

「そうみたいだな。おい!このカード、どこで拾ったんだ?」

「ん?そうだな、あれは確か、1~6ヶ月前の晴れか曇りか雨の日だったような……」

「……つまり覚えて無いんですね」

 

呆れ顔になった夏美と、そのまなざしに全く動じる様子を見せないジークを見て、これ以上の質問は無意味だと悟った士は渡されたカードを眺める。

 

「そのカード。これから何が起こるのでしょうか?」

「さあな。わかっているのは、また新しい旅が始まるってことだけだ」

 

そう言うと、士はカードを懐にしまう。

 

「今日は栄次郎は居ないのか?また私の美しい姿を写真に収めて貰おうと思ったのだが……」

 

要件は終わったと言わんがかりにカードに興味を亡くしたジークは、そう言いながら部屋を徘徊し始めた。

 

「ああ、そんなに歩き回ると―――」

「ぬおっ!?」

 

夏美の言葉も空しく、ジークは撮影用の背景幕の紐に足を引っ掛かけ、そのまま倒れてしまった。

そして、新たな背景絵が次の旅路を示すべく現れた。

 

「士君、これは……」

 

そこに映っていたのは、28人の戦士の姿だった。

 

「これは……"仮面ライダーの世界"」

 

今再び、士――仮面ライダーディケイド――の新たな物語が始まる。

 

 

 

 

 

 



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EPISODE.1 変身

「くそっ!あの鳥、後で覚えてろ!」

「でも、ここは一体何処なんでしょう?」

 

士と夏美は街の外れにあるアリーナの近くを歩いていた。何故そんな所に居るかというと、それは数分前に遡る。

 

 

 

 

 

――

――――

――――――

 

『おい、家臣その6。さっさと茶を用意しろ』

『誰がやるかっ!』

『士君落ち着いて下さ―――え?地震!?』

『何だ!?この揺れは何事か!?』

『おい、落ち着け!』

『ジーク、そんなに暴れると危ないですよ!』

『うるさい!家臣その6!さっさと揺れを収めてこい!』

『ちょっ、押すな―――うわっ!』

『つ、士君!?待ってください!』

 

――――――

――――

――

 

 

 

 

 

そうして士は写真館から追い出され、今に至るというわけである。

 

「それにしても士君。今回は服が変わりませんでしたね」

 

士の服装を見ながら夏美が呟く。行く先々で服装がコロコロ変わる士だが、今日は何時もの私服のままだった。

 

「ああ。まあ、当然といえば当然だな」

「え?それはどういう―――」

『キシャーッ!』

「「!」」

 

夏美の言葉は、明らかに人間の物ではない声によって遮られた。

 

「今のは……」

「士君!あっちです!」

 

夏美が声のした方を指さす。

するとそこには、カマキリを擬人化したような怪人と、黒をベースにした上から赤黄緑の3色の配色が施された戦士が戦っていた。

 

「あれは一体……」

「あいつは、"仮面ライダーOOO(オーズ)"」

「オーズ?」

「ああ。欲望の結晶"コアメダル"を駆使して戦うライダー。上下3枚のメダルを組み合わせることで、あらゆる状況に対応することが出来る」

 

士はポラロイドカメラで戦いの様子を撮りながら、夏美の疑問に答えた。

 

「オーズ……つまり、ここはオーズの世界なんですね?」

「いや、違う」

「?どういうことですか?」

 

夏美の疑問に、士はカメラから出てきた写真を眺めながら答える。

 

「ここは仮面ライダーの世界。あらゆるライダーの物語が重なり合う場所だ。ほら、見てみろ」

「え?……あっ、士君の写真が!」

 

渡された写真には、今戦っているオーズの姿がピンぼけせずに(・・・・・・・)写っていた。

 

「ここは俺の世界とも重なっている。だから写真もちゃんと写る」

 

【トリプル スキャニングチャージ】

『セイヤーッ!』

 

「おっと、向こうも終わったみたいだ」

 

再び視線を戻すと、オーズが先ほどのカマキリ怪人"ヤミー"を倒していた。

 

「さて……とりあえず会って話を聞いてみるか」

「そうですね」

 

状況確認のため、二人はオーズに向かって歩きだす。すると……

 

「おいお前ら、何をやっている」

 

金髪に白いシャツ、赤いジャケットを羽織った男に呼び止められた。

 

「え?あっ、あの、私達は―――」

「お前……グリードか」

「!」

 

士の言葉を聞いた途端、男は目を細め、警戒をあらわにした。

 

「グリード?」

「ああ。数枚のコアメダルと無数のセルメダルでできている怪人だ。見たところ、どうやらオーズとは協力関係にあるようだか……」

 

そこまで言うと、男は威嚇するような眼で士を睨む。

 

「貴様……一体何者―――」

『ぐぁっ!』

「「「!」」」

 

オーズの悲鳴を聞いて3人が振り返ると、そこには先ほどのヤミーとはまた別の、3体のモグラの怪人にオーズが襲われていた。

 

「何やってんだ、映司!」

『アンク!何かこいつら変なんだ!メダルを出さない!』

「なんだと?」

 

アンクと呼ばれた男と映司"仮面ライダーオーズ"には、見覚えの無い怪人。しかし士と夏美は、それをよく知っていた。

 

「あれはイマジン?まだ居たのか」

「士君!」

「ああ」

 

士はベルト"ディケイドライバー"を腰に装着し、ライドブッカーからカードを取り出す。

 

「変身!」

【kamen rider Decade】

 

カードをベルトに入れると、電子音と共に士は仮面ライダーディケイドへ変身する。

 

「お前、一体……」

 

アンクの呟きに答えることもなく、ディケイドはオーズのところへ向かう。

 

 

 

 

 

「くそっ、このままじゃあ……」

 

オーズはヤミーからの連戦に加え、3対1の状況に苦戦している。

すると、油断した隙を突かれ、オーズは2体のモールイマジンに捕まってしまった。

 

「うわっ!離せ!」

 

そして、残った3体目が、動けなくなったオーズに攻撃を仕掛けた。

 

「うわぁっ!」

 

避けることも叶わず、オーズはそのまま攻撃を食らってしまった。

 

「オオォー」

「く、くそ……」

 

地面を転がるオーズに、モールイマジン達はジリジリと距離を詰めていく。そして、とどめを刺そうと腕を振り上げた、その時―――

 

【attack ride blast】

 

銃撃音と共に弾丸が放たれ、モールイマジン達はそのまま後ろへと弾かれた。

 

「ッ!今のは!?」

 

突然の銃撃に、オーズは撃ち手がいるであろう方向へ振り向く。

するとそこには、ピンクと白のボディに十字のラインが入った仮面ライダー"ディケイド"が立っていた。

 

「貴方は一体……」

「通りすがりの仮面ライダーだ」

「仮面、ライダー?」

 

突然のディケイドの登場に動揺しながらもオーズは立ち上がると、イマジン達も立ち上がり再び戦闘体勢に入る。

 

「いくぞ」

 

【attack ride slash】

 

今度はライドブッカーが銃から剣へと変形し、ディケイドはそのままイマジンに向かって走り出した。

 

 

 

 

 

「はあっ!」

 

ディケイドが、向かってくる2体のイマジンを同時に切りつける。イマジンも反撃しようとするが全て躱され、あるいはガードされて攻撃が通らない。

 

「すごい……」

 

オーズの口から思わずそんな言葉が漏れた。今まで多くのヤミーと戦ってきたオーズだが、そのオーズから見ても、ディケイドはそれを上回る程に戦い慣れしている。

 

【final attack ride D D D Decade】

 

ディケイドライバーにカードを挿入すると、ディケイドはイマジンの方へジャンプする。すると、ディケイドとイマジンとの間に10枚の等身大のカードが並ぶ。ディケイドは現れた10枚のカードを通過し、イマジンに向かってディメンションキックを放った。

 

「はあぁぁぁっ!」

「オオォーッ!」

 

そして、その攻撃はイマジンの1体に当たり、その場で爆発する。

 

「オォー!?」

「オオォー!」

 

それを見た残りの2体は、これ以上は危険だと判断したのか逃走を謀った。

 

「あっ!待て!」

 

ディケイドの戦いを呆然と眺めていたオーズは我に返り、逃げたイマジンを追った。

 

 

 

 

 

「あいつら、何処行ったんだ?」

 

イマジンを見失ったオーズは、辺りを見回す。

 

「うわぁぁ!」

 

すると突然、子どもの悲鳴が聞こえた。

 

「あっちか!」

 

オーズは悲鳴の聞こえた方へ走り出す。するとそこには、自転車に乗った1人の少年と、彼に襲い掛かっているイマジン達が居た。

 

「危ない!」

 

しかし、オーズの呼びかけも虚しく、突然少年の身体から裂け目が生まれ、イマジン達はその中へ入っていってしまった。そして、少年は崩れるようにその場に倒れてしまった。

 

「あっ!君、大丈夫!?」

 

少年の身を案じたオーズが、すぐさま駆け寄ろうとした、そのとき―――

 

『ファァァン!』

 

汽笛と共に空から電車が走ってきた。

 

「な、何だ!?空から電車!?」

 

空からレールに乗って現れた電車はやがてオーズに沿うように停車した。すると、その中から1人の少年が降りてきた。

 

「君は……一体……?」

 

青と銀のボディに鋭い赤色の目、その名も"仮面ライダーNEW電王"。時の規律を正すライダーである。

 

 

 

 

 

少年にパスを翳すと、イマジンが飛んだ過去の時間が表れる。

 

「1971年11月11日か。今から40年前だな」

「こんな子どもが、何故40年前の記憶を?」

 

NEW電王の変身を解除した"野上幸太郎"と相棒のイマジン"テディ"が少年を介抱しながら話し合う。

 

「あの……」

 

そこに変身を解除した火野映司が話し掛ける。幸太郎とテディも映司に気が付いたのか、彼の方へ振り返る。

 

「君達は、一体?」

「あんた……誰だ?」

「おい、それはこっちの台詞だ!」

 

鸚鵡返しのように質問をした幸太郎に対し、苛ついたような口調で合流したアンクが返す。

 

「そいつは仮面ライダーオーズ。ここを守っているライダーだ。それと……お供のグリード、アンク」

 

すると、映司達の元に後ろから士が歩いてきた。

 

「お前は、さっきの……って誰がお供だ誰が!」

「またあんたか。今度は何の用だ?ディケイド」

「そう言うな。それに、今回は俺が先客だ」

 

士の顔を訝しげな表情で見る幸太郎。

そう。士は以前に電王の世界を旅したとき、迷い込んできたジークを返しに行った際、一度幸太郎と接触しているのだ。

 

「ディケイド?」

「ああ。俺は門矢士―――仮面ライダーディケイドだ」

 

映司の疑問に対し、士は自己紹介も兼ねて答える。

 

「じゃあ、そっちの君は?」

「野上幸太郎、仮面ライダー電王。俺もライダーだ。あんたと同じな」

「ディケイドに、電王……」

 

短時間で色々なことが起こったせいで、映司は状況を掴み切れずにいた。

 

「まあ、安心してよ。イマジンは俺達が責任をもって始末する」

「後ろの奴も言ってたが、そのイマジンってのは何だ?」

「それは私が説明しよう」

 

アンクの質問に対し、テディがそれを引き継いで答える。

 

「イマジンは契約者の記憶を辿って過去へ飛び、自分達の都合の良いように歴史を変える」

「で、俺達がこのデンライナーに乗って時間を飛んで、イマジンを始末するってわけ。それじゃ、俺達はこれで」

 

そう言って別れを告げると、幸太郎とテディは電車"デンライナー"に乗り込んだ。

 

「……おい、映司。俺たちも行くぞ」

「え?ってちょっと待てって!」

 

何やら思案顔をしていたアンクは、二人が乗ったのを見計らってデンライナーへと入って行く。その様子を見た映司は、慌ててアンクの後を追った。

 

「電王の世界の旅は終わったんだが……一応乗ってみるか」

 

そうて、士もちゃっかりデンライナーに乗り込むのだった。

 

 

 

 

 




※補足説明※

仮面ライダーの世界
"仮面ライダーディケイド"の世界観ではライダーの世界はそれぞれが独立している。しかし今回の"レッツゴー仮面ライダー"では、1号、2号……オーズまで全て同じ世界の物語となっているため、『ライダーの物語が重なる世界』=『仮面ライダーの世界』とした。(ただのこじつけです)



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繋がる過去

――デンライナー車内――

「はい、コーヒーどうぞ」

「わーい、やったー!」

 

デンライナーの客室乗務員、ナオミがコーヒーを配っていき、それを紫のイマジン"リュウタロス"が最初に受けとる。

 

「ありがとう。……あれ?ナオミちゃん、カップが多くない?」

 

次に受け取った青いイマジン"ウラタロス"が、何時もより多いカップを見てナオミに問いかける。

 

「これはですねぇ、あちらのお客さんの分ですよ」

「お客さん?」

 

そう言うと、ナオミは奥に居る乗客にコーヒーを配りに行った。

 

「はい、どうぞ」

「あっ、ありがとうございます。」

 

そのコーヒーを受け取ったのは、先ほど勝手に乗り込んだ映司とアンクだった。

 

「あぁん?何なんだお前ら」

 

その二人を見て、赤いイマジン"モモタロス"が突っ掛かってきた。

 

「あ、いや、アンクが電王の仕事手伝えって言うから……」

「はあ?アンクだかタンクだか知らねぇが、余計なお世話なんだよ!」

「お世話だー」

 

モモタロスの言葉に便乗してリュウタロスが煽る。

 

「それと……」

 

モモタロスはそのまま不機嫌そうに振り返る。

 

「なんでてめぇまで居るんだよ!」

 

その視線の先には、いつの間にか乗り込んでいた士たちが居た。

 

「相変わらず騒がしい奴だ」

「あぁん!?やんのかコラァ!」

「ちょっと、落ち着いて!士君も喧嘩を売らないで下さい!」

 

喧嘩腰の二人を見かねて、夏美が間に入って仲裁する。

 

「落ち着きなよ、先輩。それで……君たちは何で乗ってるの?別に手伝いに来たとかじゃないんでしょう?」

「ああ。そこを開けてみれば解る」

 

士が指したのは、デンライナーの客車の後方の扉だった。

 

「?どういう意味だ、そりゃ?」

 

モモタロスは疑問に思いながらも扉を開けた。すると―――

 

「なんだこりゃあぁぁぁ!!」

 

モモタロスの目の前にはデンライナーの客室ではなく、一軒家の客間のような空間が広がっていた。

 

「どうやら、デンライナーと光写真館が繋がってしまったみたいなんです」

 

夏が補足で説明をする。

 

「ふむ。よく来たな、家臣どもよ」

「あ!手羽野郎!なんでてめぇまでいやがる!」

 

そして、先ほど紛れ込んでいたジークがモモタロスの前に姿を現す。

 

「ああ。そいつ、こっちに紛れ混んでたんだ。引き取ってくれ」

「こっちだって願い下げだ!」

「あはは。何か賑やかだな、アンク」

「映司、あの出来損ないのヤミーを黙らせろ。さっきから煩くてイライラしてくる」

「誰が出来損ないだ!?誰が!」

 

そんなこんなでモモタロス達が騒いでいると、デンライナーの前方車両の扉からオーナーが現れた。

 

「乗ってしまったからには、仕方ありませんねぇ」

 

そう言いながら、持っていたステッキでモモタロス達の言い争いを止める。

 

「しかし、過去への介入は絶対に許しません」

 

オーナーは乗客全員、特にアンクと映司を見ながら話す。

 

「場合によっては、とんでもないことになってしまいます」

「そうなんですか!?」

「ええ。ですから、絶対にデンライナーからは……降りないで下さい」

「……」

 

 

 

 

 

 

――1971年11月11日――

「オォー」

「オオォー」

「見つけた!いくぞ、テディ!」

『ああ』

 

NEW電王に変身した幸太郎と剣になったテディはデンライナーから降り、見つけたイマジンと相対する。

 

『幸太郎、タイムは?』

「そうだな……」

 

そう言いながら、2体のイマジンを見る。

 

「12秒あれば十分だな」

『おもしろい』

「いくぞ!」

『12、11、10……』

 

テディのカウントダウンと共にNEW電王がイマジンへ向かっていく。

 

 

 

 

 

「…………あの、大丈夫だって。俺、ここから動かないから」

 

そして一方の映司はというと、モモタロス達に囲まれていた。

 

「あかん」

 

最初に口を開いたのは、黄色のイマジン――キンタロス――だ。

 

「オーナーから絶対に目ぇ離すなって言われてるんや…………zzZ」

「寝るなバカ!」

 

見張り始めた側から寝落ちしたキンタロスに、モモタロスがツッコミを入れる。

 

「おい」

「お前はともかく、その金髪トサカは信用ならねぇ」

「おいって」

「それを言われると……」

「おいっ!」

「うっせぇ!何だ!」

 

さっきから呼び掛けていた士に、モモタロスが返事をする。

 

「アンクならもう居ないぞ」

「何言ってんだ。此処にしっかり……ん?トサカが黒いぞ?」

「!アンクが居ない!何処行った!?」

 

アンクは現在右腕しか復活して居ない為、人間の肉体を借りて活動している。よって、アンクは腕だけでも動けるのだ。

 

「それならほら、そこだ」

 

士がデンライナーの窓の外を指すと、そこには脱走した片腕のアンクがいた。

 

「あーっ!連れ戻さないと!」

「よし、行ってこい!」

 

モモタロスにそう言われるや否や、映司はアンクを捕まえる為に外へ飛び出す。

 

「あれ?目を離しちゃ不味いんじゃないの?」

「あーっ!しまった!いくぞお前ら!」

 

ウラタロスに指摘されたモモタロスは、他の3人のイマジンを連れ、慌てて2人の後を追うべく走り出した。

 

「士君、私達も言った方がいいのでは……」

「ほっとけほっとけ。あいつらだけで十分だ」

 

そして士はというと、目の前の茶番劇に呆れたのか完全に傍観の姿勢のようだ。

しかし、この出来事が後の大事件を生むとは、誰も想像すらしなかった。

 

 

 

 

 

「はあぁぁぁ!」

「オオォーッ!」

 

NEW電王が走りながらイマジンを切り裂き、イマジンはそのまま爆発する。

 

「ふぅ……ん?1体足らないぞ」

 

 

 

 

 

「見つけたぞアンク!外に出たら駄目ってオーナーに言われただろ!」

 

メダルを持って宙に浮いているアンクを見つけた映司は、両手でアンク掴みかかる。

 

『うるさい!この時代なら、まだ他のグリードは目覚めてない。メダルは取り放題だ!』

「やっぱり、そんなことだろうと思った!さあ帰るぞ!」

 

逃れようとするアンクとそれを止める映司で綱引きの状態になっていた。

 

「オォー!」

「うわっ!」

 

そこへ、NEW電王から逃げてきたイマジンとぶつかり、二人は盛大に転んでしまった。

 

「見つけた!はあぁぁぁ!」

「オォーッ!」

 

追ってきたNEW電王が、イマジンを一刀両断する。そして、そのままイマジンは爆発する。

 

「うわぁぁぁッ!」

 

二人はその爆風で吹き飛ばされ、アンクは地面に落ち、その上に映司も落下した。そのせいで、アンクは思わずメダルを手離してしまった。

 

『映司!邪魔だ、どけ!』

「お前ら、いたぞ!」

 

アンクが映司を退けようと四苦八苦していると、向こうからモモタロス達が追いかけてきた。

 

『不味い!』

「僕に釣られてみる?そらっ!」

 

逃げようとするアンク、だがウラタロスの投げた網によってあっけなく捕まってしまった。

 

『離せ!』

「もう逃げられないよ」

「大人しくしろ!」

 

そうして一行は、暴れるアンクを押さえつけながら、元の時代に戻るべく退散していった。

 

 

 

 

 

「……イーッ?」

 

その場に一枚のメダルを残して―――

 

 

 

 

 

 

 



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変わる運命

「「「「「「…………」」」」」」

「……ほら、アンク謝れって」

「ふんっ」

 

アンクと映司はモモタロス達に囲まれて、責め立てるような視線を向けられていた。

 

「それでは、帰りましょう」

 

険悪な雰囲気の中、オーナーがその場を促し、一行は映司達の時代へと戻って行った。

 

 

 

 

 

――現代――

「時の列車、デンライナーかぁ……すごいなぁ」

 

映司は空に走り去っていくデンライナーを見ながら、思わず言葉をこぼす。

 

「アンク!俺たち時間旅行したんだぞ……ってどうしたんだ?」

 

一方のアンクは、しかめっ面をしながら辺りを見ていた。

 

「……気に入らないな」

「?お前が何かを気に入ることなんてないだろ?」

「……静か過ぎるんだよ。得体の知れない欲望が、他の欲望を抑えつけている」

「?」

 

そこは、街とは思えないほどの静寂に包まれていた。

 

 

 

 

 

――デンライナー車内――

「まったく、人騒がせな野郎だったぜ!」

「まあまあ、何事もなくて良かったじゃない」

 

苛ついているモモタロスをウラタロスが宥める。

 

「それはそうと……お前ら何時まで居座る気だ!」

 

モモタロスは、我が物顔で居座っている士に向かって怒鳴り散らす。

 

「しょうがないだろ。家がここにくっついてるんだ」

 

士はカードを整理しながら、面倒くさそうに返事をする。

 

「お邪魔してしまってすいません」

「いやいや、夏美ちゃんが謝ることはないよ」

 

すまなそうにする夏美に優しくフォローするウラタロス。この辺り、女性に対しての配慮が抜かりないのは流石というべきか。

 

「……」

「どうした?幸太郎」

 

しかし、皆が安堵の表情を浮かべる中、ただ一人表情の優れない幸太郎。そんな姿を見かねたのか、テディが声をかける。

 

「え?ああ、いや。何でもない」

「そうか?なら良いのだが……」

 

テディに対して生返事で返す幸太郎。しかし。幸太郎の表情は一向に晴れる様子はない。

 

(何だ?この胸騒ぎは……嫌な予感がする)

 

その瞬間―――

 

「うわっ!」

「な、何やっ!何事や!?」

 

デンライナーに激しい衝撃が襲った。

 

「うわ~揺れる~!」

「ちょっと、リョウタ押さないで!」

「皆、落ち着け!」

「手すりか机に掴まるんだ!」

 

突然の揺れに動揺しながらも、皆は近くの柱や机に掴まり、身体を固定して揺れをしのぐ。

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

そしてしばらく揺れた後、揺れは次第に収まっていった。

 

「ふぅ、もう大丈夫みてぇだな」

「それにしても……今の揺れは何やったんや?」

 

皆は揺れが落ち着いたのを確認すると、周りの様子を確認しながら動き出す。

 

「つ、士君!」

「いてて……なんだ?夏みかん」

「これ、見て下さい!」

 

先ほどの揺れで椅子から転げ落ちた士の肩を夏美が揺らす。夏美が指刺した方向には、士が先ほどまで整理していたライダーのカードが散らばっていた。

 

「一体どうしたって―――ッ!?」

 

カードを見た士はその瞬間、驚きのあまり目を見開きながら、慌てて散らばったカードを手に取った。

 

「あん?どうしたんだよ?」

「なになにー?」

 

モモタロス達も、士の騒ぎを聞きつけて集まってくる。

 

「これは……」

「ライダー達の絵が……消えてる?」

「はぁ?!なんだって?!」

 

そう。手に持った士のカードからは、ディケイド以外のほぼすべてのライダー達の絵が消えていたのだ。

 

「どういうことだ?一体なにが―――」

「どうやら、大変なことになってしまったようですねぇ」

 

士達が唖然としていると、奥からオーナーがやってきた。

 

「大変なこと?」

「どういうことですか?オーナー!」

 

幸太郎とテディが、タイミングよく現れたオーナーに質問する。すると次の瞬間、オーナーの口から衝撃的な言葉が放たれた。

 

「おそらく……仮面ライダーが、歴史から消滅してしまったのでしょう」

「何だと!?」

 

 

 

 

 

――現代――

Amigo(アミーゴ)?そんな……ここはCous Coussier(クスクシエ)だったはず……」

 

一度帰路に着いた映司とアンクの二人。しかし、そこにあったのはCous Coussier(クスクシエ)ではなく、Amigo(アミーゴ)と看板に書かれている廃墟だった。

 

「……」

 

しかしアンクは、遠慮せずにずかずかと中へ入って行ってしまった。

 

「あっ、ちょっと待てよアンク!」

 

映司は慌ててその後を追う。

 

 

 

 

 

ギイィッという音を鳴らしながら扉を開け、中に入っていく二人。そこには、散乱した机と瓦礫の山で埋め尽くされていた。

 

「比奈ちゃーん、知世子さーん。居ませんかー?」

 

映司がCous Coussier(クスクシエ)に居るはずの二人に呼び掛ける。だが、二人の声は返ってこない。

 

「一体何がどうなってるんだ……」

 

まるで状況が飲み込めず、映司は思わず言葉を洩らす。

 

「!」

 

すると突然、アンクが瓦礫の奥の方へ目を向ける。

 

「どうしたんだ?アンク」

「そこに誰か居る」

「え!?」

 

すると、アンクの言葉が聞こえたのか、瓦礫の奥から一人の子供が出てきた。

 

「お兄さん達、誰?」

 

そして、それを皮切りに奥から一人、また一人と子供が出てきた。

 

「君達、こんなところでどうしたの?学校は?」

「学校?あんなショッカーみたいな悪い奴らが作ったところ、行けるわけないよ!」

 

映司の言葉に、子供たちは大きな声で反論する。

 

「ショッ、カー?」

「そうさ、ショッカーに選ばれたエリートだけが学校に行くんだ。ショッカーの戦闘員になる為に。40年前に日本が支配されてから、ずっと……」

 

子供たちからの言葉に唖然とする映司。

 

「どういうことだ?40年前……俺達が時間旅行から帰ってくるとき、別の世界に来たっていうのか?」

「……お兄さん達何なの?こんなこと誰でも知ってるのに―――」

 

《ビーッビーッビーッ》

 

子供たちの内の一人が映司達に尋ねようとしたとき、突然何処からか機械音が聞こえてきた。

 

《これより、国連でショッカーの決定が放送される。愚かな人間どもよ、テレビの前に集合しろ。繰り返す―――》

 

「国連がショッカーの決定を?この世界、本当にどうなってるんだ?」

「シゲル」

「うん」

 

子供たちは映司の疑問を余所に、灯りを持って家の奥へ歩いて行く。

 

「ミツル、この人達にも見せてあげたら?」

「……」

 

子供たちの一人にそう言われ、ミツルと呼ばれた少年は少し考える。

 

「……来いよ」

 

ミツルは映司達に向かってぶっきらぼうに言う。どうやら連れて行くことにしたようだ。

そして一同はテレビの前に並び、電源を入れた。

 

 

 

 

 

 



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敵か味方か

――ショッカー本部――

「ショッカーの唱える未来とは、優秀な人間を選び、動植物の特性を持った怪人に改造し、世界を支配することである。いかがかな?諸君」

 

赤いマントを羽織ったショッカー首領が、ショッカーの理念を活動指針として提案する。

 

「ゲドンは、ショッカーの考えに賛成だ」

「デルザー軍団も賛成しよう」

 

十面鬼ユム・キミルとジェネラルシャドウが同意する。

 

「クライシス帝国と暗黒結社ゴルゴムは反対する」

 

しかし、ジャーク将軍は立ち上がりながら首領に反対の意を示す。

 

「我々の目的は、全人類の抹殺だ!」

 

その言葉に大神官ダロムも頷き、周りもざわつき始める。

 

「ええい!今は争っている場合ではないのだ!」

 

その中、鶴の一声のようにアポロガイストの声が響く。

 

「アポロガイストの言う通りだ」

 

すると、アポロガイストの後ろで横たわっていたキングダークが引き継いで話を続ける。

 

「今我々がすべきことは、大組織同士が手を握ること。GODはショッカーに賛成する。」

「……」

 

考え込むジャーク将軍を見て、ショッカー首領は再び口を開く。

 

「いかがだろう。世界征服の後のことは、また我々だけで決めればいい」

「……ならば、今は我々も賛成しよう」

 

そして、ジャーク将軍と大神官ダロムも渋々ながら同意した。

 

「今ここに、全ての組織はショッカーに統合され、世界の平和を乱す愚かな人間どもを排除することが決定した!」

 

 

 

 

 

――Amigo――

『―――以上が国連での決定です。繰り返します―――』

「ふんっ。要するにショッカー以外の人間は全て殺すってことか」

「どうしてこんなことに……世界はどこで間違ってしまったんだ」

 

アンクはどこか気に入らなそうに、映司は愕然とした様子で呟く。

 

「そんなこと言う人初めてだよ。お兄ちゃん達、何なの?」

 

子供たちの一人、ナオキが問いかける。

 

「あ、ああ、実は俺た―――」

「大変だッ!」

 

映司が答えようとしたその時、外からシゲルが大声を上げて走ってきた。

 

「シゲル、どうした!?」

「ショッカーが……ショッカーの奴らが来る!」

「なんだって!?皆、隠れるんだ!」

 

その時、外から扉を蹴り飛ばしながらショッカーの怪人達が入ってきた。

 

「出てこい!不穏分子の一斉検挙だ、抵抗するな!」

 

そう言いながら続々と中に入ってくる。

 

「おい、ここで間違いないんだな」

「イーッ」

「そうか」

 

一歩、また一歩と奥へ歩いていく怪人達。店内は彼らの足音だけが響きわたる。

すると突然、奥から映司が消火器を手に持ち、怪人達の前に飛び出した。

 

「ッ!?」

「食らえ!このっ!」

 

映司が怪人達に向けて消火器を吹き付ける。

 

「うわっ!な、何だ!?」

 

突然視界が塞がれた怪人達は混乱し、その場から動けない。

 

「皆、第二アジトに集合だ!」

「わかった!」

「ほら、お兄ちゃんこっち!」

 

ナオキが映司に声をかけると同時に、皆は外へバラバラに散って走り出す。

 

「くそっ、追え!逃がすなッ!」

「「「イーッ!」」」

 

まだ視界が晴れない中で怪人の一人が声を上げると、戦闘員達が一斉に動き出した。

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

「お兄ちゃん早く!」

 

映司はナオキに手を引かれ、ミツルと共に裏通りの一本道を走っていた。

 

「ここまで来れば、大丈夫かな?」

 

少しスピードを落としながら息を整える3人。

しかし、その見通しは甘かった。

 

「そこの3人、止まれ」

 

彼らの前方には、ショッカーの怪人と戦闘員が待ち構えていた。そして、その手中には……

 

「ッ!?シゲル!」

 

逃走の途中で捕まったであろう、シゲルが捕らえられていた。

 

「このガキの命が欲しくば、大人しく投降しろ」

「ミツル……助けて……」

「…………」

 

弱々しい声で助けを求めるシゲル。しかし、ミツルは無言のままその場に立ち、シゲルとショッカー達を交互に見る。

 

「……いくぞ」

 

小さな声でそう言うと、ミツルはそのまま後ろへ振り返る。

 

「助けないの!?」

 

映司は慌てて、その場を離れようとするミツルの腕を掴み、引き留める。

 

「ショッカーに歯向かっても、どうせ勝てない」

「でも仲間なんだろ!?」

「……捕まる奴が悪い。弱い奴は……見捨てるしかないんだ」

 

シゲルの方を再度見ながらそう呟いたミツル。映司は視線をミツルの顔から下ろすと、その手は、血が出るのではないかという程強く握られていた。

 

「ミツル……」

「俺達はそうやって生き残ってきた!そうだろ!?」

「それは……」

 

ミツルの言葉に、何も言い返せないナオキ。

 

「あんな悪い奴らの言いなりになってて良いの!?」

「いい分けないさッ!」

 

説得しようとした映司の腕を、ミツルは振り払って反論した。

 

「だから……いつか、あいつらよりも悪くなって、強くなって……復讐してやるよ」

 

そう言って、ショッカー達を睨み付けるミツル。その言葉には、強い憎しみと怒りが込められていた。

 

「ミツル君、そんなの間違ってるよ!」

「おい、何をしている。早くしろ!」

 

痺れを切らしたのか、大声を上げる怪人達。すると映司は、覚悟を決めたように怪人達の前に立ちはだかる。

 

「……俺は行く。2人は早く逃げるんだ」

 

そう言うと、映司はベルトを腰に装着し、赤、黄、緑の3色のメダルをベルトに差し込む。

 

「お兄ちゃん?」

 

そして、右腰に着いているオースキャナーを取り、ベルトに差し込んだメダルをスキャンした。

 

「変身ッ!」

 

【タカ!トラ!バッタ!―――タ・ト・バ タトバタ・ト・バ】

 

ベルトから流れる変身音と共に映司の身体は光に包まれ、その姿を変えた。

 

「お兄ちゃん、もしかして……」

 

ナオキの問いかけに、映司は背を向けたまま答える。

 

「俺はオーズ。仮面ライダーOOO(オーズ)だ!」

 

そう言うと、映司――仮面ライダーオーズ――は怪人達に向かって走り出した。

 

「……どういうこと?仮面ライダーって、ショッカーの怪人の中で一番強い奴のことじゃないの?」

 

ミツルの質問に、誰も答える者は居ない。ナオキとミツルは、信じられないといった表情を浮かべながら、オーズの後ろ姿を見ていた。

 

 

 

 

 

「はぁっ!」

 

オーズは怪人達の攻撃を避けながらも攻撃を繰り出す。

 

「ていやぁっ!」

「イーッ!」

 

そして、シゲルを捕まえていた戦闘員を蹴り飛ばす。

 

「早く逃げるんだ!」

「うん!」

 

オーズに促され、シゲルはナオキ達の方へ走って行く。

 

「シゲル!」

「よし、行くぞ!」

 

合流した3人は一緒になって走りだす。しかしその時―――

 

 

 

ブルルルルルォォォン!

ブルルルルルォォォン!

 

 

 

3人の前方から、2つのバイクのエンジン音が聞こえてきた。

 

「あれは……」

「まずい、こっちだ!」

 

ナオキ達は慌てて建物の裏に隠れる。

 

ブルルルルルォォォン!

キキィィィッ!

 

バイクが怪人達の前で止まる。乗っていたのは、白い仮面(マスク)に赤い瞳、黒い体に緑のボディ、そして赤いマフラーをたなびかせ、その姿はバッタを彷彿とさせるものだった。

 

「仮面ライダー、1号2号……」

 

その姿をみ見た子供たちが、そう呟いた。

 

「仮面ライダー?じゃあ味方なのか?」

 

白い手袋とブーツを着けた1号と、同じく赤いそれを着けた2号は、無言のままオーズに近づいていく。

そして―――

 

「はあぁっ!」

「ぐあぁッ!」

 

オーズに向かって攻撃を始めた。

 

「どうなっているんだ!?―――ぐはぁっ!」

 

状況が飲み込めないオーズは、なすがまま1号と2号の攻撃に曝される。

 

「このライダー達は、敵なのか!?うわっ!」

 

そこに怪人達も加わり、形勢は一気に逆転された。止まない攻撃の嵐に、オーズは為す術も無くやられていく。

 

「……ほらみろ。やっぱり悪の1号、2号のほうが強いんだ」

 

物影に隠れたミツルは、手も足も出ないオーズを見ながら呟く。

 

「でも、オーズはシゲルを助けてくれたよ。オーズは味方なんだよ!」

「俺もそう思う」

「……だったらどうするんだよ。俺達じゃ、どのみち足手まといだぞ」

「それは……」

 

ナオキは何もできない己の無力さを悔やみながら、再びオーズの方へ視線を向ける。

 

「こうなったら……」

 

一方のオーズは、状況を打開するためにコンボチェンジしようとメダルを取り出す。しかし―――

 

「させるかぁっ!」

「うわっ!」

 

怪人の攻撃によって、手に持っていたメダルが弾かれてしまった。

 

「め、メダルが―――ぐはぁ!」

 

メダルに気を取られていたオーズに2号のパンチが決まり、オーズはそのまま壁際に吹き飛ばされた。

 

「あっ!オーズが!」

 

その光景を見て、シゲルが思わず声を上げる。

 

「……」

 

そしてナオキは、何か決意を込めた目でオーズの倒れているところへ走り出した。

 

「あ、おい!ナオキ!」

 

そして、ナオキは近くに落ちていたメダルを拾い集める。

 

「オーズ!メダルだよ!」

 

ナオキはオーズに向かってメダルを投げる。それを見たオーズは、満身創痍ながらも脚に力を入れて立ち上がり、そして投げられたメダルを受け取る。

 

「あ、ありがとう!」

 

オーズは受け取ったメダルをベルトに差し換え、オースキャナーでスキャンした。

 

【ライオン!トラ!チーター!―――ラタ ラタ ラトラーター!】

 

3枚のメダルのコンボにより、オーズは獣型メダルによる『ラトラーターコンボへ』とコンボチェンジした。

 

「はあぁぁぁっ!」

 

辺り一帯に熱量のある光を放つ、ライオンヘッドの固有技"ライオディアス"により、怪人達は視界を奪われる。

突然の強い光で動きが止まる怪人達。その隙に、オーズはナオキ達のところへ向かう。

 

「皆逃げるよ!捕まって!」

「う、うん!」

 

そう言うと、オーズは3人を抱き抱えた。

 

「うおぉぉぉぉぉ!」

 

そしてチーターレッグが持つ俊足の力を使い、オーズ達はその場を離脱した。

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

 

 

「……もう撒いたかな?」

 

オーズは再びタトバコンボへと戻り、辺りを見回していた。

 

「お兄ちゃん、前!」

「え?」

 

ナオキに言われて前を向く。すると、等身大もの大きさのトランプが回転しながらオーズの方へと飛んできた。

 

「ッ!?危ない―――ぐわっ!」

 

咄嗟にナオキ達を庇ったオーズはトランプに当たり、変身が解けてしまった。

 

「お兄ちゃん!」

 

ナオキ達はオーズに駆け寄る。

すると、飛んでいたトランプは地上に降り、その場で回転し始め、やがて人の形に変わった。

 

「お、お前は……」

 

映司が声を振り絞って、目の前の怪人に問いかける。

 

「我が名はジェネラルシャドウ」

「……ジェネラル、シャドウ?」

「まだこの世に仮面ライダーが居たとはな」

 

そう言うと、ジェネラルシャドウはゆっくりと映司達に近づいていく。映司は身体を引き摺りながら、3人を庇うように後ろへと下がる。

 

「……皆は逃げるんだ」

「もう無理だよ!」

「これ以上やったら、お兄ちゃんも死んじゃうよ!」

 

もはやボロボロの映司に、目の前には幹部クラスと思われる怪人。ナオキ達は弱気な声で逃げるように映司へ言う。

 

「……今、かなりドン底だけど、まだ終わりじゃない」

「お兄ちゃん……?」

「伸ばせる手を伸ばさなかったら、きっと死ぬほど後悔する。だから、最後まで諦めちゃ駄目だ!」

 

映司は正面に居るジェネラルシャドウを見据えながら、ナオキ達に向かって叫んだ。

 

「その威勢いつまでもつかな?」

 

ジェネラルシャドウがその右手を挙げる。すると、さっき撒いたはずの戦闘員達が続々と集まってきた。

 

「シャドウの生き甲斐は仮面ライダーの死。とどめだッ!やれッ!」

「「「イーッ!」」」

 

ジェネラルシャドウの合図で戦闘員達が一斉に映司達に襲いかかる……

その時―――

 

 

ファァァァァン!

 

 

汽笛と共に、空からデンライナーが現れた。

 

「あれは、デンライナー!?」

 

空を駆け抜けるデンライナーは、真っ直ぐと映司達の方へ向かって走ってくる。

 

「むっ!?させるか!"トランプショット"!」

 

増援を危惧したジェネラルシャドウが攻撃を繰り出す。だが、走ってきたデンライナーが映司達の前を走って壁となり、弾かれてしまった。

そしてデンライナーが通り過ぎると、辺りには誰も居なくなっていた。

 

「……逃げられたか」

 

そう呟くと、ジェネラルシャドウは戦闘員と共にその場から去っていった。

 

 

 

 

 

 



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新たな運命へ

――デンライナー車内――

テディが子供達を誘導し、映司は幸太郎の肩を借りながら、客席のソファーに座る。

 

「ありがとう。助かったよ」

「礼には及ばない。……でも、君が見た通り歴史は大きく変わってしまった」

「あのトサカ野郎のせいだよ」

 

幸太郎の表情は暗く、それを見たモモタロスは不機嫌そうに呟く。

 

「……一体、何が起こったの?」

 

映司は幸太郎達へ素直に疑問をぶつける。

 

「オーナーの話によれば40年前、ショッカーは独自に手に入れたコアメダルを改造し、ショッカーメダルを作った」

「コアメダルを?」

「ああ。しかし、それだけでは何も起きないはずだった」

「お前らがセルメダルを落とすまではな」

 

テディの説明の途中で、今の今までデンライナーに我が物顔で乗車していた士が口を挟む。

 

「コアメダルとセルメダル。この2つがあって始めてグリードは誕生する」

「そう。そして、ショッカー戦闘員の手によりセルメダルは首領の本へ渡り、コアメダルと融合して、究極の怪人"ショッカーグリード"が誕生した」

 

ショッカーグリード。本来生まれるはずのない怪人が生まれ、それによって歴史は大きく捻じ曲がってしまった。

 

「そして、その圧倒的なパワーの前に1号、2号は倒され、洗脳h手術により悪の怪人となってしまった。それから40年もの間、ショッカーによる支配が続いている。当然、新たなライダーも生まれることはなかった」

 

始まりのライダーが居なくなれば、当然後に続く者も生まれない。1号2号の敗北は、すなわちライダーの消滅、ショッカーの繁栄を意味する。

 

「……全部、俺とアンクのせいだったんだな」

「お前のせいじゃねぇよ、トサカ野郎だよトサカ野郎!一発ガツンと言っとけ!」

「とにかく、俺は今から40年前に飛んで時間を修復してくる」

「!それなら、俺も行くよ!」

 

余程、今回の件に負い目を感じているのか、幸太郎の言葉に映司が食い付く。

 

「いや、それは出来ない。歴史を修復出来るのは電王だけなんだ」

 

しかし、幸太郎は映司の申し出を断る。

 

「幸太郎は特異点といって、歴史の介入による影響を受けない」

「オーズが存在出来ているのも、俺と一緒に居るからだ。大丈夫、俺達に任せとけって」

「そ、そうなのか……」

 

気落ちする映司に、幸太郎は大丈夫だ、と自信に満ちた言葉を掛ける。

 

「……なあ、歴史が戻ったらショッカーは居なくなるのか?」

 

すると、今まで大人しく話を聞いていたミツルがテディに話しかける。

 

「ああ。正しい歴史では、仮面ライダーがショッカーを倒しているからな」

 

テディのその言葉を聞いたミツルとナオキは、お互いの顔を見て何か決心したように頷く。

 

「そういう訳だから、夏美ちゃん達も子供達と一緒に降りてね」

「あ、はい。分かりました。」

「……」

 

ウラタロスの言葉に夏美は返事をする。しかし、士はそっぽを向き、無言のまま何か考えるようにデンライナーの窓の外を見ていた。

 

 

 

 

 

――現代――

デンライナーから降りた映司達は、子供たちが拠点としている第2アジトの近くに居た。

 

「シゲル君!」

 

すると、向こうからシゲルを呼ぶ女性の声が聞こえてきた。

 

「あ、比奈さん!」

 

シゲルが走っていく先を見ると、そこにはアンクが借りている身体の持ち主の妹、比奈が居た。

 

「比奈ちゃん!?」

「え?どうして私の名前を?」

「?……あっ、もしかして歴史が変わったせいで、俺と比奈ちゃんは会ってないことに……」

 

歴史改変の影響か、比奈と映司は出会っていないことになっているようだ。

 

「比奈さんは、このアジトで俺達の世話をしてくれてるんだ」

「私、光夏美と言います。よろしくお願いします」

「あっ、これはご丁寧に……」

 

呆ける映司をよそに、自己紹介をする夏美達。

 

「あっ!ショッカーの飛行船だ!」

 

すると、比奈と一緒にアジトから出てきた子供の1人が、飛んできた飛行船を指差す。

 

『我々は遂に立ち上がった。全世界に派遣されたショッカーの、平和を乱す愚かな人間どもを根刮ぎ排除する―――』

「もうすぐ嵐がくる。頼んだぞ、幸太郎」

 

ショッカーの放送を聞いて、映司は今その場に居ない仲間に望みを託す。

 

「シゲル君、ミツル君達は?」

「あれ?一緒に降りたはずなんだけど……」

「あ!士君もいません!」

「まさか……」

 

 

 

 

 

――デンライナー車内――

「あーっ!さっきのガキどもだッ!」

 

モモタロスが、さっきまで子供達が座っていたソファーの方を見て叫ぶと、皆一斉に駆け寄る。すると、机の下から隠れていたであろうナオキとミツルが出てきた。

 

「俺達にも手伝わせてよ!」

「俺の父ちゃんはショッカーに拐われたんだ!父ちゃんを拐った憎いショッカーに復讐してやりたいんだ!」

「お前ぇ……馬鹿言ってんじゃねぇ!」

 

ナオキとミツルの言葉を聞き、モモタロスはそんな2人を怒鳴り散らす。

 

「あーっ!手のお化けはっけーん!」

 

そんな中、リュウタロスがソファーの後ろにあったものを掴み上げる。

 

『おいっコラ!離せ!』

「うわっ!」

 

リュウタロスに掴まれていた右手だけの(・・・・・)アンクが、リュウタロスの手を振り払った。

 

「あっ!てめぇ!」

『俺はメダルの持ち主だ。メダルは返してもらおうか』

「もとはと言えばお前のせいやで!」

「言葉の裏には針千本。君には、何か他の目的があるんじゃない?」

 

イマジンの皆が文句を言うな中、ウラタロスが探るようにアンクに問いかける。

 

『無い。俺を信じろ』

 

しかし、アンクは何の迷いも無く言い切った。

 

「今さら信じられるか!」

 

そう言うと、モモタロスはアンクに飛びかかる。

 

『ふんっ』

「ぬぉっ!」

 

だが、アンクは余裕な様子でかわす。

 

「いてて……野郎ども、やっちまえ!」

『ちっ』

 

モモタロスの言葉に他のメンバーも反応し、アンクを捕らえにかかる。流石のアンクもこのままではまずいと、一旦ドアの方へ飛んでいく。

 

「いけませんねぇ」

 

すると、ドアの向こうからオーナーが入ってきた。

 

「では、こうしましょう」

『なぁっ!』

 

オーナーは目にも止まらぬ早業で、持ってきた鎖付きの手錠でアンクを拘束する。

 

「モモタロス君が、アンク君のお目付け役となるのです」

 

そして、オーナーはモモタロスに鎖を渡す。

 

『くっ!俺を犬扱いするつもりか!?」

「はい。君はまた、40年前に戻ってメダルを探すつもりだったんですよねぇ?」

『はっ、悪いか!』

 

オーナーの核心を突いた言葉に、アンクは悪びれもなく自白した。

 

「よ~し、俺は犬は苦手だけどお前なら大丈夫なんだよ。よしお手だ!お手!」

『ふんっ』

「いでっ!……てめぇ、それがご主人様に対する態度か!?コラァ!」

 

生意気な態度をとるアンクに腹を立てたモモタロスは、そのままアンクに掴みかかり取っ組み合いを始める。

 

「まったく、少しは静かにしろ」

「うるせぇ!……って、ん?」

 

アンクとの格闘中に空気の読めない言葉を掛けられ、モモタロスはイライラしながら振り返る。すると、そこにはまた1人、不正乗車犯がいた。

 

「あーっ!てめぇまだ乗ってたのか!」

 

その声の主は、客席にふんぞり返っている士だった。

 

「俺も手伝ってやる。頭数は多い方が良いからな」

「余計なお世話だ!大体、特異点でもねぇお前がそんなこと出来る訳ねぇだろ!」

「お前こそ忘れたのか?電王の世界に行った時、一緒に過去に戻ってイマジンを倒しただろ」

「……あり?そうだっけ?」

 

そう。士は以前電王の世界で敵と戦った際に、自前のパスを使って過去に飛び、イマジンを倒したのだ。

 

「だが今回はメダルの回収だ。我々だけでも十分だと思うのだが……」

「さて、どうかな」

「?」

 

士は意味深な返事をすると、再び沈黙してしまった。

 

「それでは、最初に行った40年前の更に1分前に、レッツゴー」

 

話が一段落したのを確認し、オーナーの指示により、デンライナーは再び40年前を目指して走り出した。

 

 

 

 

 

――1971年11月11日――

「幸太郎、見つけたぞ」

「ああ」

 

幸太郎とテディは、モールイマジンとそれを倒した過去の自分達を見つけた。

 

『うわぁぁぁッ!』

 

すると、過去のアンクと映司が吹き飛ばされ、アンクがメダルを落とした。

 

「あれだな」

 

幸太郎は過去の自分達に見つからないように、メダルを回収する。

 

「よし、これで一件落着だな」

「ああ」

 

そして2人はデンライナーに戻っていった。

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

 

――デンライナー車内――

帰ってきた幸太郎達はカウンターに腰掛ける。

 

「しっかし、メダル1枚のせいでこんなことになるなんてな」

 

幸太郎はメダルを眺めながら呟く。

 

『俺のメダルだ!返せ!』

「うおっ!」

 

その光景を見たアンクが、メダルを取り返そうと暴れ出す。急にアンクが動き出した為、モモタロスが持っていた手錠が引っ張られ、手錠が外れてしまった。

 

「うわっ!」

 

アンクが飛び込んできたせいで、幸太郎が持っていたメダルは弾かれ、宙を舞う。

 

『よし!もらった!』

「させるかよ!」

「くそっ!」

 

我先にとアンク、モモタロス、幸太郎がメダルに手を伸ばす。

 

『取った!』

 

そして、そのメダルを手にしたのはアンクだった。

 

「てめぇ、この野郎!そいつをよこせ!」

 

しかし、モモタロスは再びアンクを捕まえる。

 

『離せ!』

「暴れんな!コラ!」

 

アンクはモモタロスから逃れようと、上下左右に激しく動きだす。

 

『おらっ!』

「うぉっ!?」

 

力いっぱい暴れたせいで、アンクはデンライナーの窓ガラスにぶつかり、ガラスが割れてしまった。

 

『ぐっ!』

「あぁーっ!メダルがぁーっ!」

 

そして、ぶつかった衝撃でアンクは再びメダルを落としてしまった。

 

『俺のメダル!』

「おい!ちょっと待てギャーッ!」

 

アンクはメダルを追いかけて客車の出口から外へ飛び出す。アンクを掴んでいたモモタロスも、つられて一緒に飛び降りてしまった。

 

「メダルが!」

「行くぞ!幸太郎!」

「ああ!」

 

2人の後を追って幸太郎とテディが飛び降りる。

 

「……ナオキ」

「うん」

 

それを見て、ナオキ達も外へ飛び出した。

 

「……嫌な予感がするな。俺も行くか」

 

そして、最後に士もその後を追うのだった。

 

 

 

 

 



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伝える絆

「さてと、メダルは何処だ?」

 

再び1971年の時間に来た士は、1人でメダルを探していた。どうやら、他のメンバーとははぐれてしまったようだ。

 

「おーい、そこのお前。ここらに銀色のメダルが落ちてなかったか?」

「見てないよ。なあ?」

「うん」

「そうか…………ん?」

 

士は聞き込みをしていると、白い帽子と白いシャツ、赤いネクタイをし、仮面ライダーのペンダントを付けている子供達を見つけた。

 

「あれは……少年仮面ライダー隊?」

 

少年仮面ライダー隊。仮面ライダーをサポートする為に結成された、少年少女達で構成されているチームである。

 

「ちょうどいい。おい!ちょっといいか?」

 

士は少年仮面ライダー隊の一人に声をかける。

 

「?どうかしたの?おじちゃん」

「おじっ……まあいい。お前達、銀色のメダルを見なかったか?あれがショッカーの手に渡ると大変なことになる」

 

士の言葉を聞いた子供達は、ショッカーという単語を聞いて士に懐疑の目を向ける。

 

「警戒するな。俺は味方だ」

 

それに気が付いたのか、懐から1号と2号のカードを取り出し、子供達に見せる。

そう、まだライダーの歴史が変わっていない今の時代なら、1号と2号の力は健在なのだ。

 

「ねえ、このおじちゃんは大丈夫そうだよ」

「おじちゃんはやめろ……で、どうなんだ?」

「いや、見てないよ。皆は?」

「俺も見てない」

 

しかし、子供達は誰も目撃していないらしい。

 

「そうか、弱ったな……」

 

士が困り果てていると、突然子供達の持っていたスピーカーから音声が流れてきた。

 

『こちらノッコ。ショッカー発見!』

「なんだって!?」

「大変だ!皆、ノッコを助けに行くぞ!」

「「「おう!」」」

 

そう言うと、少年仮面ライダー隊は自転車に乗って走り出した。

 

「あっ!待てお前ら!」

 

士も慌ててその後を追った。

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

一方その頃……

 

「あったぞ!メダルだ!」

 

モモタロス達は幸太郎達と合流し、転がって行くメダルを追っていた。

 

「?」

 

すると、自転車に乗っていた少女の足下にメダルがぶつかった。

 

「何かしら?これ……」

 

白い帽子に白いシャツ、赤いネクタイ、そしてペンダントを着けている少女はメダルを拾い上げる。

 

「おーい!」

 

少女が拾ったのを見た幸太郎は、彼女に声をかけるため、皆で近付いていく。

 

「そのメダル、俺達のなんだ」(少年A)

「渡してくれないか?」(見た目青鬼)

『さっさとよこせ!』(赤い手のお化け)

「てめぇは黙ってろ!」(見た目赤鬼)

「……」

 

すると、幸太郎太達を見た少女は無言のまま自転車に股がり、一目散にその場から離れていった。

 

「あっ!ちょっと待って!」

 

逃げていく彼女を見て、幸太郎達は慌てて後を追う。

 

「こちらノッコ。ショッカー発見!」

「こらーっ!俺達はショッカーなんかじゃねぇーっ!」

 

そう叫びながら必死に追いかける。

ノッコがある程度幸太郎達と距離を離した時、彼女の目の前にナオキ達が飛び出した。

 

「「止まれ!」」

 

二人に前に立たれ、思わずノッコはブレーキをかける。

 

「そのメダルを渡して」

「……あんた達何なのよ?」

「そう言うお前こそ、その格好何なんだよ」

 

ノッコの質問に、そのまま質問で返すミツル。

 

「私は少年仮面ライダー隊よ」

「「少年仮面ライダー隊?」」

 

ナオキとミツルはそんな馬鹿なとお互いの顔を見ながら唖然とする。それもそのはず、2人にとって仮面ライダーとは悪の改造人間。こういう反応になるのは当然ともいえる。

 

「や、やっと追いついた……」

「あっ!あのガキども、脱走してやがったのか!」

「げっ!」

「まずっ……」

 

やっとのことで追いついた幸太郎達に、ナオキとミツルは見つかってしまう。

 

「「「「やあーっ!」」」」

「うぉっ!危ねっ!」

 

そこへ、ノッコと同じような格好をした少年達が自転車に乗りながら幸太郎達の行く手を遮った。

 

「ノッコ、無事か?」

「みんな……」

 

どうやらノッコのピンチに駆けつけたようだ。

 

「まったく……ショッカーかと来て見れば、お前らか」

 

そこへ、ノッコの助太刀に入った少年達に遅れて士がやってきた。

 

「皆、あの人は?」

「あのおじちゃんは大丈夫だよ」

 

どうやら士は、先程のやり取りで味方認定されたようだ。

 

「何でてめぇは大丈夫なんだよ」

「その台詞は鏡を見てから言え。見た目赤鬼」

「こんの野郎……!」(見た目赤鬼)

 

士に煽られ、モモタロスの怒りのボルテージがどんどん上がっていく。

 

『いいから渡せ!』

「うぉっ!」

 

しかし、モモタロスよりも早く痺れを切らしたのか、アンクがモモタロスの手を払い退けてノッコに向かっていく。

 

「きゃっ!」

 

そして、ノッコはアンクにぶつかって転び、メダルを落としてしまった。

 

「メダルが!」

 

弾かれたメダルは地面をコロコロと転がっていく。そして、黒い足にぶつかる。

 

「イーッ?」

 

その黒い足の主、全身黒タイツのショッカー戦闘員が、転がってきたメダルを拾う。

 

『それは俺のだ。よこせ』

 

それを見たアンクは、メダルを奪いかえそうと向かって行く。

 

「イーッ?……イーッ!」

『ぐぁっ!』

 

しかし、戦闘員に殴られて再びモモタロスのところへ戻ってきてしまった。

 

「へっ、殴られてやんのバーカ」

『うるさい!』

 

すると、向こうから他の戦闘員達と共に、黒い軍服をきた一人の男が歩いて来た。戦闘員は軍服の男にメダルを渡す。

 

「おぉ、これは間違いなく首領が探していたメダルだ」

 

戦闘員から受け取ったメダルを見ながら、軍服の男『ブラック将軍』は呟く。

 

「そのメダル、返して貰うぜ」

「絶対にお前達に渡さない!」

 

士と幸太郎が子供達を庇うように前に出て、ブラック将軍と対峙する。

 

「ほう、ならばどうする」

「こうするのさ」

 

幸太郎は取り出したベルトを腰に装着し、パスを握りしめる。

 

「変身ッ」

 

【Strike Form】

 

パスをベルトに翳し、幸太郎は仮面ライダーNEW電王へと変身する。

 

「「「!?」」」

「今更驚いてんじゃねぇ。こいつも仮面ライダーなんだよ」

「まっ、そういうことだ。変身ッ!」

 

【kamen rider Decade】

 

幸太郎に続き、士もディケイドへと変身する。

 

「君達は早く逃げるんだ!」

「うん!」

「よっしゃ、いくぜいくぜいくぜーっ!」

 

モモタロスを先頭に、NEW電王とディケイドはブラック将軍に向かっていった。

 

「はあっ!」

「ぬぅっ!」

 

NEW電王の攻撃を華麗な剣裁きで食い止めるブラック将軍。しかし、長剣とサーベルという武器の差のせいか、次第にNEW電王が押し始める。

 

「はっ!」

「ぐッ!し、しまった!」

 

NEW電王の攻撃がブラック将軍の手をかすめ、持っていたメダルがブラック将軍の後方に弾かれる。

 

「今だ!」

 

それを見たナオキが草陰から飛び出し、落ちたメダルを拾いあげた。

 

「それを持って逃げろ!」

「うん!」

「ナオキ、こっちだ!」

 

ディケイドに促されたナオキは、メダルを持ってミツルと共に走り出した。

 

「くっ、追え!逃がすな!」

 

しかし、そんなことはさせまい、とブラック将軍が指示を飛ばし、戦闘員達がナオキたちに向かって走り出す。

 

「おっと、お前らの相手はこの俺だ」

 

しかし、戦闘員たちの前にディケイドが立ち塞がった。

 

(ちっ……まあいい。既に他の怪人に手を回してある)

 

ブラック将軍はただ一人、誰にも気付かれないようにほくそ笑んだ。

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

「急げ!」

「うん!」

 

ミツルとナオキは、少しでもショッカーから遠ざかる為にただひたすら走っていた。

 

「そこのガキ、止まれ」

 

しかし、先程ブラック将軍が手回しした怪人達に行く手を阻まれてしまった。

 

「くそっ……戻るぞ!」

「イーッ!」

「なッ!?」

 

慌ててきた道を戻ろうとするも、気が付いた時には、既に後ろにも戦闘員が回り込んでおり、挟み撃ちの状態になってしまった。

 

「もう逃げられないぞ」

 

怪人達はナオキたちを捕らえようと、じわじわと距離を積めて行く。

しかし―――

 

「「「「おぉーーっ!」」」」

 

少年仮面ライダー隊が自転車で戦闘員達に突っ込んだ。不意打ちをくらった戦闘員達は突然の事態に対応できず、場が混乱に包まれる。

 

「貴方達、こっちよ!」

 

その隙に、ノッコは2人を近くの廃工場の中へ誘導した。

 

「ここまでくれば、もう―――」

 

中へと逃げ込んだ3人は、工場の入り口の様子を見ながら安堵の息を吐く。

 

「ふんっ!」

「うわっ!」

 

しかし、怪人が3人の前方から壁を突き破って入ってきた。

 

「メダルを渡せ」

「いやよ!誰があんたらなんかに!」

 

怪人の要求を頑なに拒むノッコ。

 

「このガキ!」

「きゃっ!」

 

ノッコの態度に腹を立てた怪人が、ノッコに手を上げる。

 

「危ない!―――ぐ……ッ!」

 

それを見たナオキが、ノッコを咄嗟に庇い、怪人の攻撃を受けてしまった。

 

「大丈夫!?」

「ナオキ!」

 

ナオキの手の甲には深い切り傷が傷つけられ、そこからは血が流れ出ていた。

 

「渡せと言っている」

「イーッ!」

 

怪我をして動揺している子供たちを見て、これ幸いにと怪人達は3人を取り囲み、再びにじり寄っていく。

 

「……も、もう無理だよ」

 

ノッコはナオキの肩を揺さぶりながら弱気な声で言う。

 

「……ま………ちゃ……だっ」

「……ナオキ?」

「最後まで諦めちゃ駄目だ!」

 

しかしナオキは2人に、そして自分にも言い聞かせるように、大きな声で叫んだ。

 

「今諦めたら……きっと死ぬほど後悔するからっ!」

「ナオキ……」

 

ナオキは、以前映司が言っていた言葉で自分を奮い起たせた。

 

「ならば……死ねぇ!」

 

しかし、無慈悲にも怪人の手が3人に降り下ろされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待てぃ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、工場の外から2つの黒い影が走ってきた。

 

「「とうっ!」」

「イーッ!?」

「イィーッ!」

 

掛け声と共に、2人はショッカーの戦闘員達を蹴散らしていく。その2人は、白い仮面(マスク)に赤い瞳、黒い体に緑のボディ、そして赤いマフラーを棚引かせていた。

 

「仮面ライダー!」

 

ノッコが嬉しそうな声で彼らの名前を叫ぶ。そして、敵を蹴散らした1号、2号が3人に駆け寄ってくる。

 

「よく頑張ってくれた」

「後は俺達に任せろ」

 

そう言うと、1号と2号は再びショッカーの怪人たちに向かって走りだした。

 

「1号、2号は僕達の味方なの?」

「当たり前よ!仮面ライダーは正義の味方よ!」

「正義の味方……」

 

ナオキとミツルは期待と不安が入り混じった複雑な表情を浮かべながら、1号と2号を見送った。

 

「「はあっ!」」

「イーッ!」

 

2号のパンチが戦闘員達を吹き飛ばす。1号は戦闘員達の反撃を華麗にかわし、自らの攻撃を当てる。そして1号、2号の同時攻撃により、怪人達は工場の外へ弾き出される。

 

「くそっ、調子に乗るな!」

 

戦闘員たちが次々とやられていく光景を目の当たりにした怪人は、1号と2号に向かって攻撃を仕掛ける。

 

「甘い!」

 

しかし、その攻撃を2号が受け止め、その隙に1号がカウンターを入れる。

 

「ぐぁっ!」

 

攻撃をくらった怪人は、戦闘員達が倒れているところまで吹き飛ばされた。

 

「よし!」

「おう!」

 

1号と2号は互いに頷くと、怪人に向かってジャンプした。

 

「ライダーキック!」

「ライダーパンチ!」

 

1号、2号の必殺技が怪人達に炸裂する。

 

「ぐあぁぁぁッ!」

 

2大ライダーの必殺技を食らった怪人達は、そのまま倒れ、爆発した。

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

「はあぁぁぁ!」

「イーッ!」

 

ディケイドもようやく、全ての戦闘員を倒した。

 

「さて……モモタロス達は上手くやってるのか?」

 

 

 

 

 

一方のモモタロス達は、NEW電王と共にブラック将軍を追い詰めていた。

 

「諦めろ。お前に勝ち目は無い」

「……それはどうかな」

 

するとブラック将軍は、その姿をヒルカメレオンへと変えた。

 

「へっ、だからなんだってんだ!おらぁ!」

 

モモタロスが攻撃しようと近付く。すると、ヒルカメレオンは突如としてその姿を消した。

 

「何!?」

「何処へ行った!?」

 

モモタロスとNEW電王は、互いに背を合わせ周りを警戒する。そして、辺りは静寂に包まれる。

 

「うわっ!」

「!幸太郎!」

 

突然、衝撃がNEW電王に襲いかかる。

 

「くそ!出てこい、この野郎―――ぐぁっ!」

「モモタロス!」

 

姿が見えない敵を前に、2人はなす術も無くやられていく。

 

「電王!」

 

そこへ、先程1号と2号に助けられたナオキ達がやってきた。

 

「バカ野郎!来るんじゃねぇ!」

「来ちゃ危険だ!」

『おい、メダルはどうした?』

 

3人に危険を知らせようと、近付かないように必死に言うモモタロスとNEW電王。しかし、そんなこともお構いなしに、アンクはメダルの安否を確認する。

 

「ちゃんと持ってる」

 

アンクに言われ、ナオキはメダルを持って見せる。

 

「貰った!」

「あっ!」

 

しかし、その隙を逃さず、ヒルカメレオンはナオキの持っていたメダルを奪い取った。

 

「メダルは確かに頂いた。さらばだ!」

「あっ、待て!」

 

NEW電王の静止を聞かず、ヒルカメレオンはその場を去っていった。

 

「まずいぜ……」

「これじゃあ、元の木阿弥だ」

「おい、どうした!」

 

そこへ、戦闘員を倒し終えたディケイドも合流する。

 

「ああ、実はメダルがショッカーの手に……」

「それなら大丈夫だ」

「1号!2号!」

 

NEW電王が事の顛末を話そうとすると、1号と2号が遅れてやってきた。

 

「話は全て、ナオキ君から聞いた」

「本物のメダルは此処にある」

 

そう言って2号が取り出したのは、先程ヒルカメレオンに取られたはずのメダルだった。

 

「どうしてそれを!?」

「ヒルカメレオンが持っていったのは、発信機が付いた偽物だ」

「偽物?」

 

どうやらナオキはメダルを見せることで、ヒルカメレオンにわざと奪わせたようだ。

 

「成る程な。その発信機を追って行けば、ショッカーの本部が分かるってことか」

「ああ」

「流石だな。でも、その前にこれを……」

 

NEW電王は2号からメダルを受け取り、宙に投げる。

 

「はっ!」

『あっ!お前なんてことを!』

 

そして、NEW電王はメダルを撃ち抜いて破壊した。

 

「これで、ショッカーにメダルが渡ることはなくなったな」

「よし、ショッカーを殲滅しに行くぞ!」

「おう!」

 

1号と2号と共に、仮面ライダー達はショッカーの本部を目指した。

 

 

 

 

 

 

 



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裏の裏の裏

ミツルとナオキは湖の岸に立っていた。その近くにはデンライナーが停車している。

 

「でも、まさかショッカーの本部がこんなところにあったなんて……」

 

そう。ショッカーの本部は、この湖の地下にあったのだ。多人数では侵入が困難な為、そこへは1号、2号、ディケイド、NEW電王、モモタロスの5人で向かうこととなった。

 

「俺も行きたかったなぁ」

「しょうがないよ」

 

ミツルはそう言いながら、湖を眺めていた。

 

 

 

 

 

――地下――

「こっちだ」

 

ライダー達は発信機の反応を頼りに、地下の洞窟を歩いていた。

 

「あったぞ。此処だ」

 

目の前には、明らかに人の手によって造られた扉があった。

 

「行くぞ」

 

1号と2号がゆっくりと扉を開ける。そして1号、2号に続いて中へ入って行くライダー達。

 

「此処が、ショッカーの本部……」

 

その中は洞窟の中のせいで薄暗く、首領が何時も居るであろう玉座の奥にはショッカーのエンブレムが飾られていた。

 

「……おかしい。もぬけの殻だ」

「おい……どうなってるんだよ」

 

しかし、玉座に腰を掛けている者は居らず、辺りは静寂に包まれていた。

 

『よく来た。仮面ライダー諸君!』

 

すると突然、何処からともなく声が聞こえてきた。ライダー達が再び辺りを見渡すと、玉座の奥から何者かが歩いてきた。

 

「お前がショッカーの首領か!?」

 

目の前にいたのは、赤いマントに頭全体を覆う赤いマスクで顔を隠した、ショッカーの首領その人だった。

 

「まんまと騙されたな、仮面ライダー!」

「ブラック将軍!?」

 

そして、大首領に付き添うように横からブラック将軍が現れる。

 

「メダルを処分したつもりだろうが、本物は此処にある」

 

そう言うと、ブラック将軍は懐からメダルを取り出した。

 

「何だと!?」

「私が落としたメダルは、既に偽物だったのだ」

『そう。全ては、お前達仮面ライダーを一網打尽にする為の罠』

 

そして首領は懐から、ブラック将軍が持つものとは別の、1枚の金色のメダルを取り出す。

 

『現れよ、ショッカーグリード!』

 

宙に投げられたショッカーメダルは、ブラック将軍の持っていたメダルを吸収し、セルメダルを増殖させていく。やがて、メダルは人型を形成していき、1体の怪人の姿へと変化した。

 

「ショーッカー!」

 

雄叫びを上げたその姿は、ショッカーのシンボルでもある鷲の姿を模していた。

 

「それだけでは無い!出でよ、再生怪人諸君!」

 

ブラック将軍の掛け声と共に、過去に1号、2号が倒してきた怪人達がライダー達を取り囲む。

 

「協力者の手を借り復活した怪人を相手に何処までやれるか、見せて貰おう」

「協力者だと?」

 

ディケイドの疑問をよそに、ブラック将軍もヒルカメレオンへと姿を変え、戦闘体勢へと入る。

 

「へっ、要するに全員ぶっ飛ばしちまえばいいんだろ?」

「そういうこと」

「よし、行くぞ!」

 

そうして、ライダー達は怪人達との戦闘員に突入した。

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

 

「ショーッカー!」

「うわっ!」

「幸太郎―――ぐぁっ!」

 

両腕の翼で飛翔するショッカーグリードが、モモタロスとNEW電王に向かって、すれ違いざまに攻撃する。

 

「ショーッカー!」

 

そして、地上に降りたショッカーグリードは翼を羽ばたかせ、羽根を散弾のようにして2人へ飛ばす。

 

「ぐっ、くそっ!」

 

【attack ride blast】

 

しかし、羽根はモモタロス達に当たる前にディケイドによって撃ち落とされた。

 

「しっかりしろ!」

 

【attack ride illusion】

 

ディケイドは3人に増え、それぞれ拳、剣、銃を構えてショッカーグリードへ向かっていった。

 

 

 

 

 

「はっ!」

「ゲソーッ!」

「でりゃっ!」

「ガラァーッ!」

 

一方、1号と2号は次々と怪人を倒していく。1度倒した相手に2度負けるほど、仮面ライダーは甘くない。

周りにいた全ての再生怪人を倒すと、2人は首領と相対する。

 

「正体を見てやる!」

『させん!』

 

首領はマントの中から火の玉を飛ばす。それを2人は転がりながらかわし、2号はジャンプして、玉座に居座る首領のマスクを剥ぎ取る。

 

『ちっ、ふんっ!』

「ぐぁッ!」

 

しかし、2号は首領に蹴られ、そのまま1号の下へ転がり落ちた。

 

『仮面ライダー……とうとう私の正体を見たな』

 

マスクを剥ぎ取られた大首領の顔、そこには無数の蛇が巻き付き、中心に大きな赤い目玉がひとつ付いている、不気味な姿だった。

 

『だが、私の正体を見た者は死ぬのだ!』

 

そして首領は先程よりも多くの火の玉を1号、2号に向けて飛ばす。

 

「ぬぅっ!」

「ぐはっ!」

 

その圧倒的的な火力に、1号、2号はなす術もなく倒れてしまった。

 

 

 

 

 

「ショーッカー!」

「ぐぁっ!」

 

ショッカーグリードの攻撃により、ディケイドの分身は消えてしまい、本体も後方へ弾き飛ばされてしまった。

 

「くっ、なんてパワーだ!」

「これが、ショッカーグリードの力ってやつか……」

 

その力の前に手が出せないディケイド達。

 

「へっ、グリードがなんだ。俺は最初から最後までグレートだぜ?行くぜ!おらぁっ!」

 

モモタロスが切りかかるが、かわされ、そのまま首もとを掴まれる。

 

「モモタロス!はあっ!」

 

NEW電王が助けに入るが、剣を受け止められ、同じように首もとを掴まれる。

 

「ショーッカー!」

 

そして、ショッカーグリードは2人を掴んだまま洞窟の外に向かって飛んでいった。

 

「あっ、待て!」

 

ディケイドは慌ててその後を追った。

 

 

 

 

 

「ふんっ!」

「うわッ!」

「ぬおッ!」

 

洞窟の天井を突き抜け、外までやってきたショッカーグリードは、2人を地面へ投げ出す。

 

「!?電王!」

 

湖を見ていたナオキ達は、急に現れたNEW電王を見て驚きの声を上げる。

 

「ショーッカーっ!」

「うわぁぁぁッ!」

 

ショッカーグリードの羽の散弾をくらったNEW電王は、その衝撃で変身が解けてしまった。

 

「幸太郎!」

 

モモタロスが幸太郎に近付き安否確認する。幸い意識はあるようだが、既に満身創痍だった。

 

「ショーッカー!」

 

しかしそれも束の間、ショッカーグリードが声を上げると、湖からバズーカを背負った亀の怪人『カメバズーカ』が現れた。

 

「メーガーッ!」

 

そして、カメバズーカは背中のバズーカでデンライナーに向かって砲撃を始めた。

 

 

 

 

 

――デンライナー車内――

「オーナー、攻撃されとるで!」

 

カメバズーカの攻撃により、デンライナーの至るところから火花が散る。

 

「このままでは、デンライナーが危険です。発車するしかありません!」

「えっ!?でも先輩達がまだ!」

「やむを得ません!」

 

 

 

 

 

カメバズーカから攻撃を受けているデンライナーは、砲撃から逃れる為にゆっくりと走り出した。

 

「皆、早く乗って!早く!」

 

出入口からナオミが顔を出し、外にいるモモタロス達に向かって呼びかける。

 

「お前ら、行くぞ!」

 

モモタロス達はデンライナーに向かって走り出す。

 

「ショーッカー!」

 

しかし、その前にショッカーグリードが立ち塞がる。

 

「ちっ!」

「ショーッカーっ!」

 

雄叫びと共に、ショッカーグリードの散弾攻撃が再び幸太郎たちに襲いかかる。

 

「危ない―――がぁっ!」

 

しかし、ショッカーグリードを追ってきた1号と2号が間一髪のところでモモタロス達の盾となった。しかし、そのせいで1号と2号は攻撃をまともに食らってしまった。

 

「1号!2号!」

 

2人はそのままモモタロス達の足元へ吹き飛ばされる。

 

「き、君達は早く逃げるんだ」

 

1号はボロボロになりながらも、力強く立ち上がる。

 

「ショッカーグリードは俺達が倒す!行くぞ!」

「おう!」

「1号!2号!」

 

1号と2号はショッカーグリードに向かって行く。そして、ショッカーグリードに掴みかかり、その動きを止める。

 

「今の内に、早く!ナオキ君達を頼む!」

「1号……わかった!」

 

1号の意思を受け取った幸太郎は、子供達を連れてデンライナーへ走った。

 

「メガ?メーガーッ!」

 

すると、カメバズーカは標的をデンライナーから幸太郎達へと移す。

 

「ぐっ!」

 

吹き荒れる爆風のせいで、思うように進めない幸太郎達。

 

「メーガーッ!」

「はあっ!」

「メガッ!?」

 

しかし、カメバズーカがショッカーグリードを追ってきたディケイドに背後から攻撃され、砲撃が止まった。

 

「ディケイド!」

「お前ら、あの亀は任せて早く行け!」

「でも!」

「心配するな。はあぁぁぁっ!」

 

そう言うと、ディケイドはカメバズーカに相対する。

 

「皆、急ぐんだ!」

 

幸太郎の声で、一斉にデンライナーに向けて走り出す。

 

「ほら、早くしろ!」

 

デンライナーに着いたモモタロスは先に乗り込み、後から来る子供達を抱え上げて中に入れる。

 

「ふう、なんとか間に合ったな……」

「……!ライダーは!?」

 

ナオキの言葉に、皆が一斉に外を見る。そこに見えたのは―――

 

『ぬわぁっ!』

『ぐはっ!』

 

ショッカーグリードに一方的にやられる1号、2号の姿だった。

 

『ぐっ!……私達は、決して悪には屈しない!』

『例えどんなにやられようとも、正義は必ず勝つ!』

 

「ライダー……」

 

『がぁっ!』

 

形勢は変わらず、ライダー達はなす術もなくやられていく。

その光景を、幸太郎達はただただ見ていることしか出来なかった。

 

「…………ッ、ライダーッ!」

 

遂に我慢出来なくなり、ナオキがデンライナーから飛び出す。

 

「ナオキ!」

「行っては駄目だっ!」

「オーナー!止めて!」

 

幸太郎がオーナーにデンライナーを止めるように叫ぶ。

 

「無理です!既にデンライナーは、爆発寸前です。もう制御が効きません!」

 

オーナーの言葉を肯定するように、デンライナーの至るところから火花が散り、煙が出る。

 

「ナオキ君!」

 

それを聞いて、ナオキを連れ戻そうと出口へ向かう幸太郎。

 

「待つんだ、幸太郎!」

「テディ!?」

「私が……ナオキ君を助ける!」

「ッ!」

 

テディはそう言うと、幸太郎に代わってデンライナーから降りた。

 

「テディ!」

 

テディはそのまま、ナオキ君が走っていった方向へ向かっていった。

 

「テディ……テディーーーッ!」

 

デンライナーは煙と火花を上げながら、空の彼方へと消えていった。

 

 

 

 

 

「……行ったか」

「メガーッ!」

 

【final attack ride D D D Decade】

 

砲撃を放ってきたカメバズーカに、ディケイドはディメンションブラストを撃つ。そのエネルギー弾は砲撃を飲み込み、そのままカメバズーカに当たる。

 

「メーガーッ!」

 

カメバズーカはその場に倒れ、爆発した。

 

「……テディ!これを持っていけ!」

 

ディケイドは、ジークから受け取っていたカードをテディに向かって投げる。

 

「これは……?」

「それをナオキに渡すんだ。いいな?」

 

テディはその言葉を聞いて1度頷くと、再びナオキの方へ走っていった。

 

「さてと……いい加減出てきたらどうだ?見ているんだろ?」

 

ディケイドが誰も居なくなったはずの草むらに話し掛ける。すると奥から、1人の男が出てきた。

 

「よくわかったな、ディケイド」

「偽物のメダル、再生怪人……話があまりにも出来すぎていたからな。それに、俺の邪魔をするのはどうせお前しか居ない。俺がデンライナーに乗ったら、それごと破壊するつもりだったんだろ?鳴滝(・・)

 

その男の正体は、ディケイドの宿敵『鳴滝』だった。

 

「そこまではしない。私の目的は、お前をこの時代に取り残すこと」

「……俺をショッカーグリードにでも倒させるつもりだったのか?」

「いいや違う。奴には1号、2号を倒して貰う。そして、お前の相手は」

 

話の途中で鳴滝の後ろから銀のオーロラが現れ、奥から人影がひとつ歩いてきた。

 

「……白い、クウガ?」

「お前の相手は、この"白き闇"が務める!」

 

現れた怪人は、色は違えどクウガのそれに酷似していた。

 

「お前はこの白き闇に、1号と2号はショッカーグリードに敗れ、特異点との接触手段を失ったお前はこの世から消えてなくなるのだ!」

 

そこまで言うと、鳴滝は銀のオーロラの中に消えていった。

 

「あっ、待て!」

 

ディケイドが追いかけようとすると、白き闇が攻撃を仕掛けてきた。

 

「ぐっ……やはりこいつから倒さないと駄目らしいな」

 

ディケイドはライドブッカーで白き闇に切りかかる。しかし、それは片手で易々と受け止められてしまった。

 

「何!?」

「あははははは」

「ぐぁっ!」

 

白き闇は再びディケイドに殴りかかる。ディケイドも受け止めようとしたが、その圧倒的なパワーにより吹き飛されてしまった。

 

「くそっ!ケータッチは……やはり使えないか」

 

ディケイドはケータッチを見ながら呟く。他のライダーの力が失われている為、ディケイドはコンプリートフォームへと変身することが出来なくなっていた。

 

「どうしたの?もっと楽しませてよ」

「な―――ぐはッ!」

「あははははははは」

「がぁッ!」

「あはははは」

「ごほッ!」

 

白き闇による一方的な暴力を前に、ただただされるままに攻撃をくらい続けるディケイド。

 

「あはは…………なんかつまらないなぁ」

 

もう立つのもやっとな状態のディケイドに向けて、白き闇が手を伸ばす。

 

「さよなら」

「があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

突如としてディケイドの身体が炎に包まれ、ディケイドはそのまま崩れるように倒れる。

 

「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは―――」

 

白き闇は笑いながら、ディケイドに背を向け歩き出した。

 

 

 

 

 

 



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そしてライダーもいなくなる

――現代――

 

『ショッカーの世界征服を邪魔する愚かな人間ども、そして反逆者のライダーどもを殲滅するのだ!』

 

「「「「「イーッ!」」」」」

 

現代では、ショッカーによる人間狩りが始まっていた。

 

「うにゅー!」

「イーッ!」

「「えいっ!」」

「イィーッ!」

「笑いのツボ!」

「イッ!?イーッイッイッイッイッイッイッ―――」

 

比奈、夏美と子供達はコンクリートできた大きな壁を境にして、第2アジトに侵入してくる戦闘員たちを撃退していた。

 

【クワガタ!カマキリ!バッタ!―――ガータ ガータガタキリーバ ガタキリバ】

 

「うおぉぉぉぉぉっ!」

「「「イィーッ!」」」

 

壁の向こう側ではオーズ・ガタキリバコンボが何体にも分身して、戦闘員達を次々と倒す。

 

 

ファァァァァン!

 

 

すると突然、上空で汽笛が鳴り響く。

 

「ッ!?デンライナーが!」

 

オーズが空を見上げると、そこには至るところから火花が散り、今にも墜ちそうなデンライナーが走っていた。

 

「大変だッ!」

 

オーズは急いでベルトのメダルを差し替えた。

 

【タカ!クジャク!コンドル!―――タージャードルー!】

 

オーズはタジャドルコンボへとコンボチェンジする。

 

「はあっ!」

 

そしてタジャドルコンボの固有スキルにより、オーズは空高く飛翔した。

 

「皆っ!」

「オーズ!ちょうど良かった!ミツル君を頼む!」

「わかった!」

 

デンライナーに近づいたオーズは、幸太郎からミツルを受け取り、下降しようと離れた。

次の瞬間―――

 

「うわぁぁぁっ!」

 

デンライナーから爆発が起こり、幸太郎とアンクが投げ出され、オーズも爆風に巻き込まれた。

 

「うわっ!ぐぅッ!」

 

オーズは自分を下にすることでミツルを守る。しかし、変身は解けてしまい、ベルトは遠くへ放り出されてしまった。

 

「わぁぁぁぁぁッ!」

 

幸太郎は幸いにも木の上に落ちたことで衝撃を和らげたが、こちらもベルトを手放してしまった。

 

「いててて……ミツル君、大丈夫?」

「うん…………あっ!」

 

ミツルが空を指差す。その先には、空中分解をしたデンライナーが、そのまま跡形もなく爆発した。

 

「デンライナーが……」

「オーナー……ナオミ……」

『小僧!亀!熊公!くそぉ、なんてこった…………ってあれ?』

 

モモタロスが自身の異変に気付く。

 

『俺、左腕だけになってるじゃねえか!』

『フッフッフッ、いい格好だな』(右腕)

『何だと!?てめぇ!』(左腕)

「……!そうだ!幸太郎、歴史の修復は!?」

 

右腕(アンク)左腕(モモタロス)をよそに、映司は幸太郎に質問する。

 

「……失敗した」

「そんな!」

「……それに、デンライナーが無いからやり直しも効かない」

 

幸太郎の言葉を聞き、映司は絶望の淵に追いやられる。

 

「つまりは最後の手段を失ったという訳だな」

 

その言葉を聞いたのか、向こうからジェネラルシャドウが戦闘員を連れて歩いてきた。

 

「ジェネラルシャドウ!」

「ッ!ベルトをっ!」

「もう遅い」

 

2人はベルトを拾おうと走り出すも、ジャーク将軍とアポロガイストによって2人のベルトは奪われてしまった。

 

「終わりだ。引っ捕らえよ!」

「「「イーッ!」」」

「くっ、ミツル君だけでも逃がさないと!モモタロス、頼む!」

『応よ!ミツル、こっちだ!』

 

映司と幸太郎が戦闘員たちを足止めをしている間に、モモタロスはミツルの襟元を掴んでアジトの方へ誘導する。

 

『これは返して貰うぞ』

「イーッ!?」

 

そんな中、アンクはどさくさに紛れて、戦闘員に渡されていたオーズのベルトを奪い取る。

 

『おらぁーーー!』

「うわぁっ!」

 

モモタロスはミツルの服を掴み上げながら、アジトの皆が防衛戦を張っていた高い壁を飛び越える。

 

「ミツル!」

「ミツル君!」

「シゲル!比奈さん!」

『皆、逃げるぞ!』

 

モモタロスの言葉を合図に、皆は一斉にアジトの奥へ走り出した。

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

 

ミツル達はひとまず安全そうな廃墟のビルの中に隠れ、一息ついていた。

 

「モモタロス、ナオキ達はどうなったの?」

『さあな、俺にもわからねえ』

 

すると突然、奥から足音が聞こえてきた。

 

『……お前は』

「テディって奴ならさっき見つけた」

 

奥から出てきたのは、憑依状態のアンクだった。

 

「着いてこい」

 

皆がアンクの後を追って中庭らしきところに出ると、そこには剣の状態のテディが地面に突き刺さっていた。

 

『おぉ!テンドン!無事だったのか!』

 

しかし、モモタロスの声に反応しないテディ。よく見るとその身体は、至るところが錆び付いていた。

 

『おいっ、嘘だろ!?テンドンッ!返事をしろッ!くそおぉっ、何でお前まで……』

 

モモタロスと皆が悲しみに暮れているなか、アンクはその剣を引き抜く。その時、アンクは地面に埋まっている固い物を見つけた。

 

「おい、下に何か埋まってるぞ」

「「「!」」」

 

モモタロスとミツル達は急いで剣が刺さっていたところを掘り返す。するとそこから、お菓子が入っているようなアルミで出来た箱が出てきた。

 

「タイムカプセル?」

 

ミツルはその箱を開けると、中から少年仮面ライダー隊の制服とペンダント、そして1枚の手紙が出てきた。

 

「……!ナオキからだ!」

 

ミツルの言葉に皆が注目する。ミツルは、皆にも聞こえるように声に出して、ナオキからの手紙を読み上げる。

 

「40年後のミツルへ。あの後―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――あの後結局、1号、2号はショッカーグリードに敗れ、僕と少年仮面ライダー隊は追われる身となってしまった。

 

テディも僕らを守ってくれたんだけど、深い傷を負って、僕に1枚のカードを託して、そのまま…………

 

やっとの思いで僕達は、40年後にアジトになるところを見つけて、身を隠す為に少年仮面ライダー隊の制服をタイムカプセルを埋めたんだ。

 

僕達が―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――僕達がっ……伝えたいっ、想いはっ……ただ1つっ……」

 

ミツルはぼろぼろと涙を流しながら手紙を読み上げる。

刹那、ミツル達の周りに銃撃が放たれた。

 

「ッ!」

『な、なんだ!』

 

向こうから現れたのは、先程撒いたショッカーの戦闘員だった。

 

『こうなったら仕方ねえ!』

「なっ!」

 

そう言うと、モモタロスはアンクが憑依している身体に入りこんだ。

 

「ふっふっふっ……俺、参上!」

 

そして、アンクの髪に一筋の赤いラインが入りオールバックとなった、アンク・モモタロス憑依verとなった。

 

『おい!この身体は俺のだ!返せ!』

「うるせぇうるせぇうるせぇ!」

 

どうやら主導権はモモタロスにあるらしく、右腕が騒がしいのを無理やり抑えつける。

 

「ミツル!こいつを持って逃げろ!」

「うん!」

「皆、こっちに!」

 

モモタロスはベルトをミツルに託し、(テディ)を持って戦闘員達に向かって行く。

 

「てめぇら……ひとり残らずたたき切ってやる!おらぁっ!」

 

そして、モモタロスは襲い掛かってくる戦闘員を切りふせ、無謀とも言える戦いに臨むのだった。

 

「「「「「イィーッ!」」」」」

「があぁぁぁぁぁッ!」

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

 

捕らえられた映司、幸太郎、モモタロス(&アンク)は上半身をロープで縛られ、怪人達に引かれていた。

 

「……俺、このベルトを絶対に届けて見せる」

 

ミツルの言葉に、周りにいた他の子供達が力強く頷いた。

 

 

 

 

 



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カルテット・心の声を聞け

都内の広場は今、たくさんの人で溢れかえっていた。人々が見ているのは十字架に張り付けられている幸太郎、映司、アンク、そしてそれを囲むように立っているショッカーの幹部と怪人達だ。

 

『なんだなんだ?』

『何事だ?』

 

観衆はざわつきながら、その様子を見ていた。

 

「ぐっ!ぬっ!」

 

映司達は必死で抜け出そうとしているが、両手足が頑丈に固定されている為か、全く外れる様子がない。

 

「幸太郎……テンドンのことだけどよぉ……」

 

モモタロスが言いにくそうに、幸太郎にテディのことを伝えようと口を開く。

 

「…………わかってる」

「え?」

 

しかし、幸太郎はモモタロスの態度で、いや、あの別れの時から察しがついていたのか、モモタロスの言葉を遮った。

 

「……何があろうと、俺とあいつの絆は切れない。今までも……これからもずっと……」

「幸太郎……」

 

そして、時が来たのか、ジェネラルシャドウが口を開く。

 

「愚かな人間どもよ、よく聞け!貴様らが最後の希望と称する仮面ライダーは、これにて完全に消滅するッ!」

『なんだって!?』

『どういうことだ!』

 

ジェネラルシャドウの言葉に、観衆が一斉に騒ぎ出した。

その頃、民衆の後方では白いシャツに赤いネクタイを着た子供達が集まっていた。

 

(……やるぞ)

(((応っ)))

 

手を合わせた子供達はそれぞれ四方に散らばった。

 

「構えよ!」

「「「「「「イーッ!」」」」」

 

合図と共に、戦闘員達が映司達に銃口を向ける。民衆はその光景を見て息を飲み、辺りは途端に静寂に包まれた。

 

「……」

 

そして広場の物陰には、ベルトを持った先程の子供が様子を伺っていた。

 

「……現れたな、ネズミが。"トランプショット"!」

 

それを察知したジェネラルシャドウは、子供が隠れている物陰に攻撃した。

 

「うわぁっ!」

 

辺りに火花が散り、子供は転んでしまう。そして、思わずベルトを離してしまった。すると、すかさず観衆の中からもう1人子供が出てきてそのベルトを拾う。

 

「あの子は!?」

「俺達は、少年仮面ライダー隊だッ!」

『なんだ!?』

『少年仮面ライダー隊だって!?』

 

子供が声を大きくして名乗りあげると、また辺りが再び喧騒に包まれる。

 

「捕らえよ!」

「「「イーッ!」」」

 

ジェネラルシャドウの合図で、戦闘員がその子供に襲い掛かる。

 

「このっ!」

「イィーッ!」

「くそっ!シゲル!」

 

戦闘員に捕まってしまった子供は、観衆の居る方へベルトを投げる。

 

「任せろ!」

 

人混みの中からまた1人、子供が出てきてベルトを受け取り、再び人混みの中に消える。

 

「イーッ!」

 

戦闘員もその後を追って人混みに入る。

 

『ベルトよ!』

『仮面ライダーのベルトだ!』

 

やがて、別の子供がまた人混みから出てくる。

 

「ミツル君!?」

 

ミツルは戦闘員をかわし、映司まであと数メートルというところまで行く。

しかし―――

 

「ショーッカー!」

「!?」

 

空より飛翔してきたショッカーグリードに行く手を阻まれてしまった。

 

「くそっ!うわッ!」

「捕まえたぞ」

「は、離せ!」

 

ショッカーグリードによって捕らえられてしまったミツル。必死に振り払うがびくともしない。

 

「フッフッフッ、これで終わりだな」

「くそぉ……」

 

不敵に笑うショッカーグリード。

 

「待てぃ!」

「!?」

 

しかし、それは叫び声によって掻き消された。

 

「「とうっ!」」

 

掛け声と共に跳んで現れたのは、洗脳されてショッカーの怪人と化している1号、2号だった。

 

「1号、2号……」

「ここは俺達に任せろ」

「ふん。では見せて貰おう。ショッカー最強の怪人が、如何にしてそのガキを始末するのかを」

 

ジェネラルシャドウの笑い声が辺りに響く。

 

「仮面ライダーッ!」

 

そんな中、ミツルが1号と2号に向かって叫ぶ。

 

「ナオキからのメッセージを聞いて!」

「「……」」

 

ミツルの言葉を聞き、1号と2号は無言のままミツルを見つめる。

 

「"僕達が、未来に伝えたい想いはただ1つ"!」

 

ミツルは息を荒くしながら続ける。

 

「"仮面ライダーは、正義の味方"!」

 

感極まって涙が流れ始めるミツル。

 

「俺もそう信じてるよ!"仮面ライダー"ッ!」

「「……」」

 

ミツルの言葉を、1号と2号は最後まで聞き続けた。しかし、二人は微動だにしない。

 

「仮面ライダー……」

「馬鹿め。どんな悪でも勝てば正義だ!オーズと電王を処刑し、ショッカーが正義となるのだ!」

 

ショッカーグリードは悪の、ショッカーの勝利を声高らかに宣言するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「…………ふははははは。はははははは!」」

 

突然、1号と2号が笑い出す。

 

「何のつもりだ?」

「ショッカーに、正義などあるものかッ!」

「この世の悪は、全て俺達が砕くッ!」

 

その言葉に、怪人達だけでなく、観衆やモモタロス達でさえも呆気に取られた。

 

「貴様ら……裏切るつもりか?」

 

ショッカーグリードが声を低くして二人に問う。

 

「私達は始めから、ショッカーに忠誠など誓ってはいない!」

「仮面ライダーを愛する者の想いを、甘く見ていたな。心あるショッカーの科学者が、俺達の洗脳を解いてくれたのだ!」

「何だと!?」

「私達は洗脳されている振りをして、貴様が現れるのを待っていたッ!」

「じっと悪の汚名に、耐えながらなッ!」

 

 

 

ワアァァァァァァァ!!!

 

 

 

1号、2号の言葉に観衆が沸き立つ。

 

『いいぞ、ライダー!』

『頑張って!』

 

その様子を見て、ミツルの顔から笑みが零れる。

 

「ええい!黙れッ!」

 

ショッカーグリードの言葉は届かず、辺りは一層歓喜の声に包まれる。

 

「行くぞ!」

「応!」

 

観衆の声援を背に、1号と2号は怪人達に向かって走り出す。

 

「てりゃあっ!」

「はあっ!」

「イーッ!」

 

1号と2号は怒濤の勢いで戦闘員達を凪ぎ払う。

 

「「はあぁぁぁっ!」」

「ぐッ!」

 

そして、2人の同時攻撃がショッカーグリードに直撃し、ミツルを救出した。

 

「早く逃げるんだ!」

「うんっ!」

 

ミツルは手に持つベルトを持って、映司の元へと走り出す。

 

「させるか!ベルトをよこせ!」

 

しかし、再び他の怪人の手によって捕らえられてしまった。

 

「ライダーに……ライダーに届けて!」

 

ミツルは自らの想いを込めて、大衆が集まる方へベルトを投げる。

 

「よこせ!」

 

ミツルを捕らえたのとは別の怪人が、ベルトが落ちた方へ歩いていく。そして、地面に落ちていたベルトを拾おうとした寸前、誰かに横からベルトを奪われた。

 

「何!?」

「ライダーに届けて!」

 

ベルトを拾ったのはたまたま近くに居た一般人の女性だった。女性はまた別の方向へベルトを投げる。

 

「このっ……!」

『行かせるか!』

『皆!やっちまえ!』

「ぬぉっ!?」

 

周りにいた観衆が怪人達を取り囲む。

 

『皆、仮面ライダーを助けるんだ!』

 

先程の女性の行動を皮切りに、大衆が怪人達の居る方へ走り出した。

 

 

 

 

 

 

士―――

 

(……なんだ?)

 

士―――

 

(……この声は)

 

起きるんだ、士―――

 

(俺は……この声を……知っている……?)

 

ピトッ

 

「うわっ!」

『ははは。相変わらずナマコが苦手なようだね』

 

気絶していた士は、突然ナマコを顔に当てられ、慌てて飛び起きた。

 

「此処は……」

 

士が目覚めた場所、そこは塵ひとつ無い、影と光だけの真っ白な空間だった。

 

『こっちだよ、士』

 

声の聞こえた方へ顔を向けると、そこには1人の男が立っていた。しかし、逆光のせいか顔がよく見えない。

 

「……あんたは一体――」

 

 

 

――戦う事が罪なら……俺が背負ってやる!――

――こんなことで分かり合えないなんて、悲し過ぎるから――

 

 

 

士の言葉が、誰かの声によって遮られる。

 

「これは……」

 

 

 

――おばあちゃんが言っていた。人が歩むのは人の道。その道を拓くのは天の道――

――どうやら切り札は、常に俺のところに来るようだぜ――

 

 

 

『これは、ライダー達の声だよ』

「ライダー達の?」

『ああ』

 

男は話を続ける。

 

『此処に居ると、色々な声が聞けるんだ。ライダー達に限らず、その周りの声もね』

 

 

 

――お前は、人間達の中で生き続けろ――

――そうだよ。だからこそ現実にしたいじゃない――

 

 

 

「どういうことだ?ライダーは消えたんじゃあ……」

『人の想いがある限り、ライダーは消えない。それを証拠に、ほら―――』

 

 

 

――仮面ライダーは正義の味方!――

――仮面ライダーを助けるんだ!――

 

 

 

「ミツル!それに……」

 

聞こえたのは、ミツル、そして大勢の人のライダーを望む声だった。

それを聞いた士は、無言でその場に立ち上がる。

 

『行くのかい?』

「ああ。此処は、俺の来るべき世界じゃ無いみたいだからな」

『そうか……』

 

そう言うと、士は男に背を向け歩き出した。

 

『そうそう。愛用してくれるのは嬉しいんだけど……僕が渡したカメラ、次は壊さないようにしてくれよ』

「!あんた、まさか―――」

 

士が振り返ろうとした瞬間、辺りが眩いばかりの光に包まれた。

 

 

 

 

 

【final kamen rider Decade】

 

突然聞こえた電子音に白き闇が振り返ると、そこには先程まで死に体だったはずのディケイドが、コンプリートフォームとなって立っていた。

 

「へぇ、まだ動けたんだ」

 

そう言うと、白き闇はディケイドに再び殴り掛かる。

 

「ッ!?」

 

しかし、ディケイドはそれを片手で受けとめた。

 

「…………っふふふふふ、あははははははははは!」

 

それを見た白き闇は、ショックを受けるどころか逆に嬉しそうに笑い出した。

 

「そうだよっ、それだよ。もっと強くなって、もっと僕を笑顔にしてよ」

 

そうして再び白き闇はディケイドにパンチを繰り出す。それを左腕でガードし、今度はディケイドが攻撃する。その応酬は、さっきまでのがまるで嘘のように、ほぼ互角の戦いとなっていた。

 

「あはははは、あははははは!」

 

殴られても尚、白き闇は笑うのを止めない。それどころか、どんどん殴る力が強くなっていく。

 

「……悪いが、お前の遊戯(ゲゲル)に付き合っている暇は無い」

 

【Kuuga kamen rider Ultimate】

 

一旦距離を空けたディケイドは、ケータッチのボタンを押す。するとディケイドの呼び掛けに応じ、クウガ・アルティメットフォームが姿を現した。

 

【final attack ride K K K Kuuga】

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「あははははは、はぁーーーーーっ!」

 

片腕に炎を灯したディケイドとクウガ、白き闇は同時に攻撃を放った。

 

 

 

 

 

一瞬の静寂が、その場を支配する。

 

白き闇の放った狂気の一撃は、ディケイドとクウガの間を抜けて空を切る。

 

ディケイドの放った破壊の一撃は相手の胸元に、クウガの放った封印の一撃は腰のベルトに入っていた。

 

「がっ……はっ……」

 

白き闇は仰向けになりながら、その場に倒れた。クウガも、その役目を終え姿を消した。

 

「……」

 

ディケイドは無言のまま、白き闇に背を向ける。

 

「……行くのかい?」

 

その時、白き闇の身体には、既に胸とベルトの2箇所にクウガの刻印が浮き上がっていた。

 

「ああ。俺を……仮面ライダーを待っている奴らが居るんでな」

 

ディケイドは振り返らずに答えた。

 

「そうか…………っははははは、あはははははははははは―――」

 

白き闇は最後まで笑いながら、その場で爆発した。

 

 

 

 

 




※補足説明※


白い空間に居た男

オリキャラです。モデルは"仮面ライダーディケイド"OPの、士にカメラを渡して居た人。ディケイド最終話直後の映画嘘(?)予告でもしかしたら語られたかもしれない、士の過去を知る人。


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世界の破壊者

「せーのっ、はい!」

 

比奈と夏美がシゲルとミツルを持ち上げると、2人は映司の両手足に着いた拘束具を外す。

 

「外れた!」

 

他のところでも、子供達が幸太郎、モモタロスの拘束を解く。

 

「皆、ありがとう!」

 

映司はミツル達にお礼を言うと、ショッカーに襲われている人のところへ向かった。

 

『これをライダーに!』

『ライダーに渡して!』

 

一方オーズのベルトは、巡り巡って白衣を着た眼鏡の男性に渡さられていた。

 

『ライダー』

『ライダー!』

「仮面ライダーッ!」

 

映司は、自分を呼んだ男性の方へ振り向く。

 

「これを!」

 

男性は映司にベルトを投げる。受け取った映司はもう一度投げた方を見ると、白衣の男性は力強く頷いていた。

そして映司は、決意を込めた目でベルトを腰に装着した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「変身ッ!」

 

【タカ!トラ!バッタ!―――タ・ト・バ タトバ タ・ト・バ】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

映司が仮面ライダーOOO(オーズ)へ変身すると同時に、辺りが歓声に包まれた。

 

「行くぞ!はあぁっ!」

 

メダジャリバーを構えたオーズは、そのまま怪人達に向かっていった。

 

 

 

 

 

「このっ!」

「ぐっ、離せ!―――うわっ!」

 

幸太郎は、ジャーク将軍からなんとかベルトを奪い返す。

 

『幸太郎、大丈夫か!?』

「ああ。テディが40年前で頑張ったのなら、俺は此処で頑張ってみせる。それが、俺とあいつの絆だ!」

 

幸太郎は、此処には居ないテディを思いながら言った。

 

「行くぞ!モモタロス!」

『応よ!』

 

モモタロスが幸太郎の近くに来ると、幸太郎は奪い返したベルトを腰に巻く。

 

「変身ッ!」

 

【Strike Form】

 

電子音が鳴り響くとモモタロスは剣の姿に、そして幸太郎はNEW電王に変身する。

 

『言っておくが俺は―――』

「最初からクライマックス、だろ?」

『そういうこった。いくぜぇいくぜぇいくぜぇ!』

 

NEW電王はモモタロスの言葉を合図に、怪人達に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

「はあぁっ!」

「とうっ!」

「イィーッ!」

 

1号と2号が怒濤の勢いで戦闘員達を倒していく。

 

「くそっ!調子に乗るなぁぁぁぁぁっ!」

「ぐぁッ!」

 

しかし、ショッカーグリードの散弾攻撃により1号と2号は観衆の方へ吹き飛ばされる。

 

「シャドウ剣!はあっ!」

「ぐわッ!」

「……ふんっ!」

「うわぁッ!」

 

ジェネラルシャドウのシャドウ剣とシャドームーンのシャドービームが炸裂し、オーズ、NEW電王も1号達のところへ転がっていく。

 

「フッフッフッ、どうやらこれまでのようだな。皆殺しだッ!構えよッ!」

「「「イーッ!」」」

『―――ライダーを守れッ!』

『守るんだッ!』

 

満身創痍の状態の仮面ライダー達の前に、人々が次々と両手を広げて壁になっていく。

 

「たった4人だけでショッカーに歯向かおうとした、自分達の愚かさを憎むのだな」

 

 

 

 

 

『そいつはどうかな?』

 

 

 

 

 

「何!?」

 

ジェネラルシャドウの言葉を否定するように、何処からともなく声が聞こえてきた。

 

『仮面ライダーは4人だけじゃ無いぜ』

 

【Hyper Clock Over】

 

電子音と共に現れたのは、過去の世界に取り残されたはずのディケイド・コンプリートフォームだった。

 

「士さん!?」

「ディケイド!」

『お前、一体どうやって!?』

「時を越えられるのは電王だけじゃ無い、ってことだな」

 

そう。ディケイドはカブト・ハイパーフォームの力を使い、時を越えてやってきたのだ。

 

「ディケイド!」

 

そんな中、ミツルが大声を上げる。

 

「このカードを……ナオキからの想いを、受け取ってッ!」

 

そう言うと、ミツルはディケイドに向かってカードを投げる。

 

「これは……」

 

ディケイドが受け取ったカードには、既に絵が浮き上がっていた。

 

「おのれディケイドォォォォォッ!」

 

そう叫んだのは、いつの間にかショッカーの怪人の中に紛れ混んで立っていた鳴滝だった。

 

「何故だッ!40年前に1号と2号はショッカーグリードに敗れ、仮面ライダーは歴史から消滅したはず!なのに……何故貴様が生きているッ!」

「それは、想いの力だ!」

「想いだと!?」

 

士は驚く鳴滝を余所に、言葉を紡ぐ。

 

「歴史とは想いが紡ぎだすもの。人々の想いがあるからこそ歴史は生まれ、そこから続いていく。いくら歴史を改竄しようとも、人々の"仮面ライダーを愛する気持ち"が消えない限り、"仮面ライダーを望む気持ち"がある限り、俺達は何度でも蘇るッ!お前達の野望を阻止する為になッ!」

 

【kamen ride ―――】

 

士はディケイドライバーに、ナオキからミツル、そして士へと託されたカードを挿入する。

 

「お前は……お前達は一体なんなんだァァァァァッ!」

「俺は―――いや、俺達は仮面ライダーだッ!よく、覚えておけッ!」

 

【All Riders!】

 

辺りに電子音が鳴り響くと、ディケイドの背後に銀色のオーロラが現れる。そして、奥から歩いてくる無数の人影が見えてきた。

 

「おおっ!あれはッ!」

 

オーロラの向こうから現れたのは、歴史の改変によって消滅したはずのライダー達だった。

 

「皆、行くぞッ!」

『『『『『応ッ!』』』』』

 

そして、ディケイドを先頭に、仮面ライダー達はショッカー怪人に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

――同時刻――

「Happy birthday to you~♪

 Happy birthday to you~♪

 Happy birthday dear―――」

 

とあるビルの一室で、1人の男性が歌を歌いながらケーキを作っていた。

 

「Happy birthday to you~♪」

 

そして歌い終わると同時に、ケーキが完成する。

 

「素晴らしいッ!!今此処に、仮面ライダー達が再誕したッ!!こんなめでたい日に、我々が何もしない訳にはいかないだろうッ!!」

 

その男性があまりの興奮に大声を出していると、突然扉をノックする音が聞こえた。

 

「ナイスタイミングだ。入りたまえ!」

 

外に居た人物は扉を開け、部屋の中に入る。

 

「何か用っすか?」

「ああ。仕事だ、直ちに出動したまえ伊達君!いや……『仮面ライダーバース』よッ!!」

 

男性が作ったケーキには、チョコレートで"Happy birthday Kamen rider"と書かれていた。

 

 

 

 

 

 



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Rの彼方に/全てを振り切れ

「V3ィィィ反転キィィィック!」

 

【Sword vent】

 

「でりゃあぁっ!」

 

仮面ライダー達の怒濤の攻撃により、ショッカー怪人は着実に数を減らしていった。

 

『行くぜ!幸太郎!』

「ああ!」

 

NEW電王もモモタロスと共に怪人を切り倒していく。

 

「はっ!」

「「イーッ!」」

 

左上から右下、右から左、左下から右上と、流れるように剣を扱い敵を切り伏せる。

 

「馬鹿め!後ろががら空きだ!」

「ッ!?しまった!」

『幸太郎!』

 

しかし、一瞬の隙をつかれ、背後にからの強襲を許してしまうNEW電王。これまでかと思われた、その時―――

 

「ぐわっ!」

 

何者かの手によって、怪人は蹴り飛ばされてしまった。

 

「うむ……この位の攻撃を避けられないとは、らしく無いぞ。幸太郎」

『お……お前……』

 

そこに立っていたのは、全身が青色の、鬼のような顔で、尚且つ優しそうな雰囲気を醸し出しているイマジンだった。

 

「テディ!」

『テンドン!』

「40年ぶりだな、幸太郎」

 

そう。彼は、40年前にショッカーに倒されたはずのテディだった。

 

「どうして!?」

「おそらく、ディケイドの力の余波で復活したのだろう」

 

どうやら、ディケイドのカードに込められた想いが、テディを復活させたようだ。

 

『それじゃあ、俺は行くぜ』

 

そう言うと、モモタロスは剣の形から人型に戻った。

 

「テディ」

「ああ!」

 

そして、テディがモモタロスに代わって剣の姿に変わる。

 

「さてと―――」

「先輩ーーーっ!」

「桃の字!」

「モモタロスー!」

「―――ん?」

 

モモタロスは聞き覚えのある声に振り返る。

 

「亀!熊!小僧!」

 

そこには、デンライナーの爆発と共に居なくなったと思われた、ウラタロス、キンタロス、リュウタロスが走ってきた。

 

「お前ら、無事だったのか!」

「うん。実はあの時―――」

 

 

 

 

 

――

――――

――――――

 

「うわぁっ!」

「いっててて…………此処は何処や?」

「ちょっとキンちゃん、いいから降りて!」

「此処は……写真館、ですかねぇ?」

「さっきから騒がしいぞ、家臣ども。まあ、わざわざこの私に会いにくる忠誠心は、褒めてやっても―――」

「どうやら助かったみたいやな」

「褒めて―――」

「そうみたいだね。運よくこっちに飛ばされたみたいだし」

「褒め―――」

「あれ?このドア開かないよ?」

「h―――」

「ああ、出口のデンライナーがなくなっちゃったからかな?」

「聞いておるのか!有ろうことか、この私を無視しおって!」

「あれ?ジーク居たの?」

「ええい!家臣ども!ご主人様の力を知るがいい!」

「ちょっと、ジーク暴れないで―――」

 

――――――

――――

――

 

 

 

 

 

「―――ということがあって、それでデンライナーが復活したから応援に駆けつけたって訳」

「な、なるほどな……」

「あと……はい。これ、オーナーから」

「?」

 

ウラタロスから手渡されたのは、ベルトとパスだった。

 

「へっ、真打ち登場ってわけか」

 

そう言うと、モモタロスはベルトを巻き付ける。

 

「変身ッ!」

 

【Sword Form】

 

電子音と共に、モモタロスは電王・ソードフォームへと変身する。

 

「俺、参じょ―――

 

「行くぞ、家臣ども」

 

―――う、って鳥野郎!台詞被せんな!」

「ほれ、届け物だ。ありがたく受け取れ」

「人の話を聞け!」

 

モモタロスはジークから届け物を受け取る。

 

「これは……、しょうがねぇなぁ。行くぞ、野郎ども!」

 

【Climax Form】

 

受け取ったケータロスを使いモモタロスは、ウラタロス、キンタロス、リュウタロス、ジークと共に電王・超クライマックスフォームへと変身する。

 

「イカーッ!」

「ガァラーッ!」

 

すると向こうから、仮面ライダーを倒すべく、ショッカー怪人のイカデビルとガラガンダがやってきた。

 

「よし、行くぜ!幸太郎!」

 

【Full Charge】

 

「ああ!」

 

【Full Charge】

 

電王とNEW電王が再びパスをベルトにかざすと、手に持つ剣の刀身がエネルギーに包まれ、光輝く。

 

「はあぁぁぁぁぁっ!」

「必殺!俺たちの必殺技!」

 

2人は走りながら、向かってくる戦闘員達を2回、走り抜けた後に振り向きざまに怪人を1回ずつ切り裂く。

 

「ゲソォーッ!」

「ガラァーッ!」

 

怪人達はその場に倒れ、爆発した。

 

 

 

 

 

「おのれライダーめ!」

「ここで全員始末してくれる!」

 

そう宣言したのは、ジェネラルシャドウと十面鬼ユム・キミル。それと対峙するのはディケイド、ストロンガー、アマゾンだ。

 

「くらえ!"トランプカッター"!」

「させるかッ!」

 

【attack ride Gaga no udewa】

 

「はあぁっ!」

 

ガガの腕輪を装備したディケイドが、飛んできたトランプを全て切り裂く。

 

「何!?」

「驚くのはまだ早いぜ」

 

ディケイドはライドブッカーから1枚のカードを取り出す。

 

「ちょっとくすぐったいぞ」

 

【final form ride S S S Stronger】

 

ディケイドがストロンガーの背中に触れると、ストロンガーの身体が光に包まれる。そして、ストロンガーは巨大な赤いカブトムシ『ストロングゼクター』にファイナルフォームライドした。

 

「変形しただと!?」

「何だその姿は!」

「これが俺と……俺達の力だ!」

 

【final attack ride S S S Stronger A A A Amazon】

 

ディケイドに装着されていたガガの腕輪はアマゾンに装備され、ストロングゼクターは電気を帯び始めた。

 

『行くぜ!はあぁぁぁぁぁっ!』

「ぐぁぁぁっ!」

 

電気を帯びたストロングゼクターは、ドリルのように回転しながらジェネラルシャドウに突っ込む。

 

「スーパー大切断ッ!」

「ぬぁぁぁぁぁっ!」

 

ギギの腕輪とガガの腕輪を装着したアマゾンは、必殺技"スーパー大切断"を十面鬼ユム・キミルに放つ。

 

「―――デルザー軍団、万歳ーーーっ!」

 

ジェネラルシャドウの断末魔を最後に、2人はその場に倒れ爆発した。

 

 

 

 

 

「ちぃっ!」

「くそっ!」

「はははははっ!素晴らしい、素晴らしいぞッ!この力ッ!」

 

一方の電王とNEW電王は現在、アポロガイストに苦戦を強いられていた。

 

「私は全人類にとって、とても迷惑な存在になるのだッ!」

「畜生!どうなってやがるんだ!?」

『おそらく、やられた怪人達のエネルギーを吸収して、パワーアップしたのだろう』

 

電王達が怪人を倒した後にやってきたアポロガイスト。しかし、アポロガイストはパーフェクターを使い、怪人達のエネルギーを吸収してスーパーアポロガイストとなっていたのだった。

 

「覚悟しろ!ライダーども!」

「くっ!」

 

スーパーアポロガイストが、自らの銃『アポロショット』を電王達に向かって放つ。

 

【attack ride blast】

 

しかし、第三者による妨害のせいで、それが電王達に当たることは無かった。

 

「何!?」

 

スーパーアポロガイストが驚愕していると、物影から1人のライダーが姿を現した。

 

「ッ!?てめぇは前にパスを盗んだ、名前は確か…………ダイコン!」

「大樹だ!海東大樹。間違えないでくれるかな」

 

スーパーアポロガイストの攻撃を防いだのは、海東大樹こと『仮面ライダーディエンド』だった。

 

「何でてめぇが此処に……」

「別に君達を助けに来た訳じゃ無い。ショッカーが作ったとされる伝説のメダル"ショッカーメダル"を手に入れに来ただけさ」

 

そう言って、ディエンドはディエンドライバーにカードをセットする。

 

「ディエンド、貴様かぁ……!」

「君の相手は彼がする」

 

ディエンドが銃の引き金を引くと、そこには仮面ライダーではなく、白いジャケットを着た1人の男性が現れた。

 

「何だ?あいつ……」

 

電王の疑問をよそに、その男性は懐からワインボトルを取り出した。

 

「今、僕のヴィンテージが芳醇の時を迎える……変身ッ!」

 

男性は、右手で大きくCを、ワインボトルを持った左手で┓を書き、腰に現れたベルトにワインボトルをセットする。すると全身がワインのような液体に包まれ、やがて1人の戦士が現れた。

 

「貴様……何者だッ!」

「僕は……"仮面ライダーG"!」

 

その姿は、黒い身体に赤く"G"と描かれたボディ、同じく目の周りに"G"マークをつけたマスクをしていた。

 

「行くぞ!」

 

Gはボディの"G"の部分に触れる。するとそこから"G"のマークをモチーフとした剣が現れる。Gはその剣を持って、スーパーアポロガイストに向かっていく。

 

「はっ!」

「ぐぅッ!」

 

Gの斬撃をアポロカッターで防ぐスーパーアポロガイスト。

 

「はあぁっ!」

「くッ!しまった!」

 

しかし、Gの巧みな剣捌きにより、スーパーアポロガイストはアポロカッターを弾かれた。

 

「ふっ!はぁっ!」

「ぐあぁッ!」

 

スーパーアポロガイストはよろめきながら距離を取った。これを好機と見たGは透かさず攻撃を仕掛ける。Gはベルトの左脇にあるボタンを押す。そしてベルトから出た赤いエネルギーが"G"の文字に伝わっていき、そしてそのエネルギーは再びベルトを経由して左足に集中する。

 

「スワリング・ライダーキック!」

 

Gは地面を蹴ってジャンプすると、左足をスーパーアポロガイストに向け、横回転をしながらキックを放った。

 

「はあぁっ!」

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

攻撃を受けたスーパーアポロガイストは、そのまま爆発した。

その炎の中には、"G"の文字が浮かび上がっていた。

 

 

 

 

 

「ふっ!はあぁっ!」

「イィーッ!」

 

オーズはトラクローを使い、次々と戦闘員達を倒していく。

 

「おのれ!こうなれば一気に蹴散らしてくれる!集えッ!怪人達よ!」

 

ブラック将軍の声を聞いて、周りからアンノウン、ファンガイア、オルフェノク、グロンギ……果てはイマジンまで、続々と集まって来た。

 

「うわっ!何だこの数!?」

 

「ふはははは!仮面ライダーと言えど、これだけの数を相手には出来まい。皆の者、かかれッ!」

 

『『『オオォォォッ!』』』

 

ブラック将軍の言葉を合図に、怪人達がオーズに向かって一斉に襲い掛かる。

 

【final form ride R R R Ryuki H H H Hibiki】

 

しかし、電子音と共にリュウキドレッサーとヒビキアカネタカが現れ、辺りの怪人達は一斉に蹴散らされた。

 

「危なかったな」

「士さん!」

 

そして、後に続いてディケイドが、オーズのピンチに駆けつけた。

 

「あのドラゴンと大きな鳥は一体……」

「あれは、俺とあいつらの力だ」

「え?」

 

【final form ride O O O OOO】

 

「ちょっとくすぐった……いや、痛みは一瞬だ」

 

そう言うと、ディケイドはオーズ―――ではなく、近くに居た怪人達の背中を叩く。すると、怪人の身体の中からそれぞれメダルが出てきた。

 

「成る程な、そういう力か。映司!受け取れ!」

 

ディケイドが拾ったメダルの1枚をオーズに渡す。

 

「これは……コアメダル!?どうしてこれを!?」

「気にするな。いいから使ってみろ」

「は、はい!分かりました!」

 

オーズは受け取ったメダルをベルトに入れ換え、オースキャナーでスキャンする。

 

【タカ!カンガルー!バッタ!】

 

オーズは亜種・タカガルバにコンボチェンジした。

 

「すごい……腕が軽い!」

 

オーズは、カンガルーアームの使い心地を確かめるようにシャドウボクシングをする。

 

「よしっ!うおおぉぉぉぉぉぉっ!」

 

カンガルーアームによるラッシュ攻撃で、次々と怪人達をKOしていくオーズ。

 

「おのれ!いい気になるのも今の内だッ!」

 

ブラック将軍はヒルカメレオンへと姿を変え、戦闘体制に入る。

 

「映司!これも使ってみろ!」

 

ディケイドは先程手に入れたもう1枚のメダルをオーズに渡す。

 

「また新しいメダル……今度はどんな力を秘めているんだ?」

 

オーズはベルトのカンガルーメダルの代わりに受け取ったメダルを入れ、カンガルーメダルをバッタメダルと入れ換えた。

 

【タカ!パンダ!カンガルー!】

 

オーズは亜種・タカパンガルへコンボチェンジする。

 

「腕にパワーが……それに、足も軽い……」

 

今度は足となったカンガルーレッグとパンダアームを見ながら呟くオーズ。

 

「オォォッ!」

「これなら―――はあぁぁぁっ!」

 

カンガルーレッグのハイキック、ローキック、飛び蹴り、そしてパンダクローによる投げ技、切り裂き攻撃と、多彩な技で残りの怪人達を全て倒していった。

 

「ならば私が最後の相手だッ!」

 

そういうと、ヒルカメレオンは保護色でその姿を消す。

 

「ッ!何処へ行った!?」

 

オーズが辺りをキョロキョロ見回していると、突然背後から攻撃を受ける。

 

「うわっ!」

 

その後も、オーズに見えないのをいいことに、攻撃しては距離を取り、攻撃しては距離を取りのヒット&アウェイを繰り返していた。

 

「くそっ……どうすれば―――」

「オーズ、頭だッ!頭を使えッ!」

「頭を使えって言っても……頭?」

 

ディケイドの言葉に何か引っ掛かったオーズ。

 

「頭…………!そうか!」

 

ディケイドの真意に気付いたオーズは、タカヘッドの力を使い、ヒルカメレオンを探す。

 

「何処だ?……何処に居―――そこだッ!」

 

オーズは右側から迫ってきていたヒルカメレオンを、パンダクローで捕らえる。

 

「何ッ!?」

「もう逃がさないぞ!はあぁぁぁっ!」

 

オーズはヒルカメレオンをそのまま頭上に持ち上げ、パンダアームでぐるぐると回す。

 

「はあっ!」

「ぬぁぁぁッ!」

 

そしてヒルカメレオンを真上へ投げ出す。

 

「はあぁぁぁっ!セイヤァーッ!」

 

そして落ちてきたヒルカメレオンに、カンガルーレッグの回し蹴りが炸裂した。

 

「ぐあぁぁぁぁぁッ!」

 

攻撃をくらったヒルカメレオンは地面を転がり、そのまま爆発した。

 

 

 

 

 




※補足説明※

ストロングゼクター
・姿はゼクターカブトに似ているが、足がバネで出来ていたり、背中に一本黒い筋が入っていたりと多少の誤差はある。(詳しくはHERO SAGA参照)


オーズのFFR
・ぶっちゃけパンダやカンガルーを使いたいが為にやった。執筆当時はオーズのFFRは存在してなかったので、HERO SAGAとは違うものになっている。


仮面ライダーG
・シェードの手で改造人間にされてしまった元ソムリエの"吾郎"が、正義に目覚め、シェードと敵対した"愛の為に戦う仮面ライダー"。


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明日のメダルとパンツと掴む腕

「ようやく追い詰めたぞ!」

「40年前の雪辱、今こそ果たしてやる!」

 

1号、2号は街の外れの荒れ地でショッカーグリードと対峙していた。

 

「馬鹿め!返り討ちにしてくれる!」

 

ショッカーグリードはそう叫ぶと、2人に向かって走り出す。

 

「よしっ!」

「行くぞ!」

 

二人は互いに向き合い頷くと、1号2号もショッカーグリードに向かって走り出した。

 

「はぁっ!」

「とうっ!」

 

相手の攻撃を受け流しては1号と2号が攻撃し、こちらの攻撃を止められてはショッカーグリードが反撃する。その攻防の様は、まさに一進一退だった。

 

「貴様ら……いつの間にこんなに強くなったのだ!?」

「仮面ライダーを信じる者が居る限り、私達はどこまでも強くなれる!」

「そして仮面ライダーが居る限り、お前達ショッカーの好きにはさせない!」

 

そして1号と2号のダブルパンチが決まり、よろめきながら後退するショッカーグリード。

 

「ぐっ……おのれぇぇぇぇぇ!」

 

激昂したショッカーグリードは空中に飛翔する。

 

「最後に笑うのは、我々ショッカーだァァァァァッ!」

 

そしてショッカーグリードは、そのまま2人に突進していく。

 

「いくぞ!」

「応ッ!」

 

そう言うと、1号は右手の握りこぶしを腰に、左手は指を伸ばして右上に向けて伸ばし、2号は両腕を直角に曲げて両手を握り、右手を左胸に、左腕を頭の横に持っていく。

そして2人は、ショッカーグリードに向かって跳び上がった。

 

「はあぁぁぁぁぁっ!」

「「ライダァァァァァダブルキィィィック!」」

 

突進してきたショッカーグリードにダブルライダーの必殺技が炸裂する。

 

「ぐあぁぁぁッ!」

 

ショッカーグリードは吹き飛ばされ、そのまま地面に落下する。

 

「―――ショォォォッカァァァァァッ!」

 

そして断末魔と共に、ショッカーグリードは爆散した。

 

 

 

『よし!コアメダルゲットだ!』

 

物陰に隠れていたアンクが、爆発によって宙に飛ばされたショッカーメダルに向かって飛んでいく。

 

「そうはいかないよ」

『何!?』

 

しかしそれは、横から割り込んできたディエンドに掠め取られてしまった。

 

『おいッ!そいつを渡せッ!』

「こういうのは早い者勝ちさ。じゃあね」

 

【attack ride invisible】

 

『あっ!待て!』

 

ディエンドはインビジブルのカードを使ってそのまま何処かへ消えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

一方他のライダー達は、街から離れた荒れ地でショッカー首領と死闘を繰り広げていた。

 

「おおぉぉぉぉぉっ!」

『ふんっ!』

「ぐあぁぁぁッ!」

 

一斉に向かっていくも、ショッカー首領のマントの内より放たれた火炎弾攻撃により全て弾かれてしまった。

 

「くっ!ボルティックシューター!」

 

【バッシャーマグナム!】

 

ライダー達は負けじと攻撃を行う。

 

『無駄だと言っているのが分からないのかッ!はぁっ!』

 

しかし、それさえも、ショッカー首領のたった一度の攻撃で全て相殺されてしまった。

 

「馬鹿な!?」

『はははははッ!』

 

ショッカー首領の笑い声と共に、ショッカー首領の顔に巻き付いている蛇が5匹、ライダー達に向かって首を伸ばし始めた。

 

「な、何だ!?―――うわっ!」

「離せ!このッ!」

 

蛇の首がライダー達に巻き付き、そのまま上へ持ち上げる。

 

『はあぁっ!』

「うわあぁぁぁッ!」

「がぁッ!」

 

結構な持ち上げられたライダー達は、他のライダー達のところに向かって叩きつけられた。

 

『はあぁぁぁっ!』

 

そして追い討ちとばかりにショッカー首領は、蛇の頭から火炎弾を飛ばす。その圧倒的な火力を前に、ライダー達は為す術もなく倒れた。

 

「ぐっ……一体どうすれば……」

 

オーズから思わず言葉が溢れる。他のライダー達もなんとか立ち上がるが、その目には力が込もっていない。

 

「皆、大丈夫か!?」

 

そこへ1号、2号が合流する。

 

『何?奴らの相手をしていたショッカーグリードはどうした?』

「それなら、彼らによって倒されたさ」

『何だと?』

「!海東!」

 

大首領の疑問に答えるように突然現れたディエンド。その手には、先程の言葉を肯定するかのようにショッカーメダルが握られていた。

 

「あれはショッカーメダル―――ッ!そうか!」

「ん?どうしたってんだよ?いきなり」

 

【final form ride O O O OOO】

 

近くに居た電王の問いかけには答えず、ディケイドはそのまま電王の背後に移動する。

 

「ちょっとくすぐったいぞ」

「ちょっ!お前また何かする気―――いでっ!」

 

ディケイドが電王の背中を叩くと、電王の身体の中から、桃が描かれた1枚のメダルが出てきた。

 

「何か出たァーーーーーッ!」

「モモ……モモタロス……イマジン……イマジンメダルってところだな」

 

そしてディケイドは、ライドブッカーからもう1枚カードを取り出す。

 

「海東!そのメダル、使わせてもらうぜ!」

 

【final attack ride O O O OOO】

 

「!僕のお宝が!」

 

ディケイドの持っていたことがイマジンメダルとディエンドの持っていたショッカーメダルが、オーズのベルトに装填された。

 

「これは……?」

「映司!使ってみろ!それがお前と俺達の力だ!」

「士さん…………はいッ!」

 

ディケイドの言葉を聞いたオーズは、オースキャナーを手に取りメダルをスキャンした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【タカ!イマジン!ショッカー!―――ターマーシー タマシー ターマシーー! ライダァァァァ タ・マ・シーッ!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおっ!あれは……!」

 

1号、2号、電王、ディケイド、そして他の全てのライダーの想いを背負って、オーズは(ショッカー)をもって正義(オーズ)と為すタマシーコンボへと変身した。

 

『今更何をしても無駄だ!はぁっ!』

 

ショッカー首領はオーズに向かって火炎弾を飛ばす。しかしオーズは、今までライダー達を退けてきたその攻撃に全く動じなかった。

 

『何っ!?』

 

そしてオーズは再びオースキャナーを手に取り、メダルを再度スキャンする。

 

【スキャニングチャージ!】

 

「おおォォォォォォ―――」

 

オーズは腰を低くし、両手を左の腰の辺りに、手の平を向かい合わせるようにして構える。するとその手に包まれるように、球体のエネルギーが炎を纏って現れる。

 

「はあぁぁぁっ!」

『ぐッ!』

 

やがてショッカーメダルの模様に変化したエネルギーを、ショッカー首領に向けて放つ。

 

「はあぁぁぁぁぁぁああ―――」

 

そして、残ったエネルギーも同様に、タカメダルとイマジンメダルの模様に変化させる。

 

「セイヤァァァァァァァッ!!」

 

ショッカー首領に向かって放たれたタカメダルとイマジンメダルは、先に放たれていたショッカーメダルと重なることで膨大なエネルギーが解放され、大爆発を起こした。

 

『ぬぁァァァァァァァッ!』

 

ショッカー首領はその爆発により、遥か彼方まで吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

「―――っはぁはぁはぁはぁはぁ……」

 

力を使い果たしたのか、オーズはその場に膝をつく。

 

「よくやった、映司」

「これで一件落着だな」

 

そんなオーズに、ディケイドと電王が駆け寄って労いの言葉を掛ける。それに遅れて、他のライダー達も近くに来る。

 

「皆……」

 

その時―――

 

「なっ何だ!?」

 

突然地面が、まるで巨大な何かが動き出したかのように揺れ始めた。

 

「皆ッ!あそこだッ!」

 

そう叫んだNEW電王の視線の先には、ショッカーと同盟を結んだGODの幹部『キングダーク』が立っていた。

 

「で、でかい……」

「あんなの反則だろッ!?どうやって倒せばいいんだよッ!」

『終わりだ!ライダーども!』

 

キングダークはライダー達を見下ろしながら、声高々に叫ぶ。

すると今度は、キングダークとは別の、何か巨大な者が歩いて来るように地面が揺れ出す。

 

「おいおい……今度は何だってんだ……?」

 

電王が辺りをキョロキョロ見回していると、突然後ろからドスンッと大きな地響きが起こった。

 

「今度は後ろかァァァッ!」

「あれは……仮面ライダーJ!」

 

その足音の正体は、キングダークに対抗する為に精霊の力を借りて巨大化した『仮面ライダーJ・ジャンボフォーメーション』だった。

 

『それで私と互角になったつもりかッ!』

 

そう叫ぶとキングダークはJに向かって歩き出す。Jも負けじとキングダークに向かっていく。

 

『ふんっ!』

『ぐッ!』

 

Jのパンチはキングダークに弾かれ、逆にキングダークから反撃を受ける。

 

『はあぁっ!』

『ぐぁぁぁッ!』

 

キングダークから渾身の一撃を貰い、Jは後方へ殴り飛ばされてしまった。

 

「やべぇ……このままじゃやられちまうぞ!どうすりゃいいんだ!?」

「だったら―――こうすればいい」

 

そう言うとディケイドはまたカードを1枚取り出す。

 

「海東、ちょっとくすぐったいぞ」

 

【final form ride D D D Diend】

 

「ッ!?士、何をする―――」

 

ディケイドがディエンドの背中に触れると、ディエンドはファイナルフォームライドにより『ジャンボディエンドライバー』へと姿を変えた。

 

「J、受け取れ!」

 

そしてJは現れた『ジャンボディエンドライバー』を掴むと、『ディエンド・コンプリートフォーム・ジャンボフォーメーション』へと変身した。

 

『何だと!?』

 

突然姿の変わった相手を見て、驚きの声を上げるキングダーク。

 

『やれやれ。今回は特別大サービスだ』

 

【final attack ride D D D Diend】

 

ディエンドが銃口をキングダークに向けると、その直線上を囲うように無数のカード型のエネルギーが回転し出す。

 

『はぁっ!』

 

そしてディエンドが引き金を引くと、ディエンドライバーから必殺技『ジャンボディメンションシュート』が放たれた。

 

『ぐぁぁぁぁぁッ!』

 

ディエンドに撃ち抜かれたキングダークは、その場に崩れ落ち、そのまま爆発した。

 

「よっしゃあッ!」

 

キングダークが倒れたことにより、一同は安堵する。

しかし―――

 

「ッ!また揺れが!?」

「しかも、さっきよりも強いぞッ!」

 

再び地面が、さっきのJやキングダークの比ではない程に強く揺れ出した。

 

「あれは何だ!?」

 

オーズが指を指した方向にライダー達が一斉に振り向いた。するとそこからは、キングダークの何倍もの大きさを誇る巨体が地面を突き破って出てきていた。

 

「何なんだ、一体……」

 

やがて巨大な身体に覆い被さっていた土が全て落ち、その全貌が明らかとなった。身体の表面は岩石に覆われ、遥か上空にある顔は鬼のような形相、そしてそれに付いている赤い目は、ライダー達を見つめるように不気味に光っていた。

 

「あれは……ショッカー首領の真の姿"岩石大首領"!」

「岩石大首領!?」

 

すると、岩石大首領の力により空が暗黒に包まれた。そして大地は割れてマグマが吹き出し、空からは膨大な数の隕石が辺り一帯に降り注ぎ始めた。

 

「うわあぁぁぁっ!」

「モモタロス!―――がぁッ!」

 

その圧倒的な物量に、ライダー達は何も出来ずに倒れていった。

 

『ぐぁぁぁッ!』

 

先程キングダークを倒したディエンドも、隕石の直撃を受けて元の大きさに戻ってしまった。

 

「くっ……どうすればいいんだ……」

 

両手を地面につきながら、なんとか立ち上がろうとするオーズ。

 

「オーズ!危ないっ!」

「!?」

 

オーズが空を見上げると、今までのものよりも一回り大きい隕石がオーズに向かって来ていた。

 

「うわぁぁぁッ!」

 

思わず両腕で顔を覆うオーズ。

 

 

 

 

 

【セル・バースト】

 

 

 

 

 

しかし、その隕石はオーズに当たること無く、空中で破壊された。

 

「ッ!?今のは!」

 

オーズは攻撃が放たれた方を向く。

 

「遅くなったな。わりぃ」

「伊達さん!」

 

そこには、伊達明こと『仮面ライダーバース』が立っていた。

するとエネルギーが切れたのか、隕石の落下は収まり始めた。仮面ライダー達はそれを機に、最後の力を振り絞って立ち上がる。

 

「仮面ライダーは、ショッカーを倒すまでは絶対に死なんッ!」

「そうだ。それに、俺達にはまだ仲間が居る。海東!これを使え!」

 

ディケイドは1枚のカードをディエンドに投げて渡す。

 

「これは……やれやれ、君も人使いが荒いな」

 

【kamen ride All Riders!】

 

ディエンドがカードを使うと、バースの後ろに銀のオーロラが現れる。

 

「うおっ!何だ!?」

 

そしてオーロラの向こうから現れたのは、ある時は支え合い、ある時は敵対し、またある時は共に戦った、全ての仮面ライダー達だった。

 

「おぉっ!皆、来てくれたのか!」

 

自分達の呼び掛けに応じてくれたことに感激する1号。

 

「今こそ、全ての仮面ライダーの力を合わせる時だ」

 

【final attack ride All R R R Rider!】

 

ディケイドが再びカードを使うと、その場に居る全ての仮面ライダーのバイクが光を纏って現れる。

 

「これは……」

 

ライダー達が自らのバイクに手を触れると、上空に岩石大首領まで続く光の道が現れた。

 

「皆!行くぞッ!」

「「「「「応!!」」」」」

 

ライダー達はバイクに乗り、オーズを先頭に岩石大首領の元まで走り出す。

 

『ォォォォォォォオオオ』

 

岩石大首領は再び隕石を落とし始めたが、ライダー達はそれに構うことなく走り続ける。

 

「我々の40年の想い、受けてみよッ!」

 

ライダー達は、走りながら"40"の形に隊列を組む。

 

 

 

「オールライダァァァブレェェェイクッ!!」

 

 

 

ライダー達のバイクは一層強い光に包まれ、そのまま岩石大首領に突進していった。

 

『ォォォォォォォオオオ』

 

ライダー達に身体を貫かれた岩石大首領は、その場に崩れ落ちながら爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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エピローグ

 

 

 

 

 

《再びライダーが揃って戦う日まで、全ては君たちの力にかかっている》

《頑張るんだ、仮面ライダー!私達は、ずっと見守っているぞ!》

 

 

 

 

 

映司達は、先程までライダー達が居た方をじっと眺めていた。

 

「ライダー!」

「「「仮面ライダー!」」」

 

後ろを振り向くと、ミツルや子供達が走って来ていた。

 

「よし、これで一件落着だな!ハッハッハッ―――」

 

モモタロスが映司の背中を叩きながら喋り出す。

 

「ん?何か忘れているような……」

「……ッ!ナオキだ!」

 

幸太郎の言葉に、一同は慌てだす。

 

「もう一度40年前に戻って、ナオキ君を連れ戻さねば」

 

 

 

「その必要はないよ、テディ」

 

 

 

すると、向こうから白衣を着た眼鏡の男性が歩いてきた。

 

「え?どうして私の名前を―――」

「…………父さん?」

 

テディの言葉に被さるようにミツルは声を絞り出した。

 

「ミツル!」

 

その男性も、それに答えるようにミツルの名前を呼ぶ。

 

「……父さん、父さん!」

 

ミツルは男性に駆け寄って、今まで会えなかった寂しさを埋めるように抱きしめ合う。

ミツルを抱きしめる男性の手の甲には、一筋の古傷があった。

 

「その傷……あんたまさか!」

 

男性の傷は、ナオキがノッコを庇って受けたそれに酷似していた。

 

「そう。ナオキだよ」

「え!?」

 

その男性――ナオキ――の言葉に、一同は唖然とする。

 

「ちょっと待てよ。過去に飛んだナオキの息子が、ミツルだってのか!?」

「ああ。驚かせてすまない」

「……父さんが、あのナオキなの?」

「うん」

 

そしてナオキが皆に向かい合う。

 

「ミツルも、皆も聞いてくれ。僕は40年前に残ったことで辛い目にもあったけど、ノッコと結ばれ、ミツルを授かり、ショッカーの科学者として1号と2号の洗脳を解き、それも全てかけがえのない時間となった」

 

そしてナオキは一息おく。

 

「だから僕は、このままでいい」

 

ナオキは力を込めた目でそう言った。

 

「ナオキもまた、ライダーの歴史の一部になった、という訳か」

「彼もまた仮面ライダーを信じる者。うん、素晴らしいお宝だ」

「……あっ!そういえば!士君今まで何処に居たんですか!?こっちは大変だったんですよ!」

 

突然居なくなったことに文句を言う夏美を、士は面倒くさそうにいなす。

 

「まあ、僕は目的の物は手に入ったし、何でも構わないけどね」

「お前、いつの間に……」

「あっ!おい、そいつを寄越せ!」

 

海東が取り出したメダルを見て、呆れる士と未だに文句を言うアンク。

すると、2枚のメダルは光の粒となって消えてしまった。

 

「僕のお宝が!」

「おそらく、役目を終えて消えたんだろ」

「ちっ!散々苦労して結局無駄働きだったか」

「元はといえばお前が原因だろうが!」

「あぁん?」

「やんのかコラァ!」

 

言い争うアンクとモモタロスをよそに話を続ける。

 

「僕は仮面ライダーを信じてきて良かった。そして、そのバトンは君たちに渡された。今度は、君たちの手でバトンを渡して欲しい。次の世代へ」

「重そうなバトンだけどね」

「まあ俺は、新たな旅で新たなライダー達に伝えるさ」

「俺もとりあえず、今を一生懸命戦います」

「それでいい」

 

ナオキは満足そうにうなずいた。

 

 

 

ファァァァァン!

 

 

 

すると、空にデンライナーの汽笛が鳴り響く。

 

「出発の時間だ。俺達の時間はもう始まってる」

「また会えるといいな、俺達」

「会えるさ。新しい旅路で」

 

そう言うと士は、手の平を下にして前に出す。

 

「未来で」

 

幸太郎もそれに見習い、自分の手を士の手の上に乗せる。

 

「俺達の新しい明日で!」

 

映司も自らの想いを込めて、2人に手を合わせた。

 

「……ほらよ」

 

その雰囲気に感化されたのか、アンクに手を差し伸べる。

 

「……」

 

しかしアンクは、我関せずといった感じでそっぽを向く。

 

「てめぇ~~、最初から最後までクライマックスで嫌な野郎だな!」

「落ち着けモモタロス!」

「離せ!テンドンッ!」

 

デンライナーが士達の脇に停車すると、中から1人の老人が出てきた。

 

「居た居た。おーい!士くーん!」

「おじいちゃん!?」

 

その人物は、先程までずっと士のカメラを修理していた栄二郎だった。

 

「修理が終わって出てきたら、誰も居ないんだもん。びっくりしちゃったよ」

「……おじいちゃん、もしかして気が付かなかったんですか?」

「え?何が?」

 

どうやら仕事に熱中していたあまり、今回起きた事件も気付かなかったようだ。

 

「おや?どうしたんだい?こんなに集まって―――あっ!そうだ!」

 

何か思い付いたように手をポンッと叩く栄二郎。

 

「これから修理したカメラの試し撮りをしないといけないんだけど、皆さんどうですか?記念に1枚」

 

栄二郎は皆に提案する。

 

「いいですねぇ。今日という、かけがえの無い日の思い出を残すのも」

 

そう言いながら、デンライナーからオーナーが出てきた。

 

「さあ、時間は有限です。皆さん並んで下さい」

 

 

 

 

 

 

「わーい、格好良く撮ってねー!」

「ちょっとキンちゃん、狭いって」

「しゃーないやろ!」

「家臣ども、苦しゅうない」

「てめえはもう少し詰めやがれ!」

「ほら、アンク。スマイルスマイル」

「……ふんっ!」

「綺麗に取ってくれたまえよ」

「なんだか、士君が撮られる側に居るのも珍しいですね」

「まあな」

「父さん、こっちこっち」

「ああ、分かったよ。ミツル」

 

 

 

 

 

「それじゃあ撮りますよー」

 

 

 

ジーーーーーーーーーー

 

 

 

「はいチーズ!」

 

 

 

 

 

 

 

カシャッ!

 

 

 

 

 

 

 




「ただいまー……ってあれ?皆どうしたの?そんな疲れたような顔して……」
「あぁ、やっと帰ってきたか。仮面ライダークウキ」
「おいおい!誰が空気(クウキ)だ!誰が!」
「ユウスケ、生きてたんですか!?よかった……」
「え、えぇっ!俺が居ない間に何かあったの!?」
「……僕のお宝が」ズズ~ン
「こっちも何があったの!?」
「そっちは何時もの事だ。気にするな」
「はぁ……ん?何だこの写真。モモタロス達が写ってる」
「ほら、散々休んできたんですから、少しは働いて下さい」
「ち、ちょっと夏美ちゃん押さないで―――うわっ!」ガラガラガラッ
「!これは……」
「士君!」
「ああ。どうやら旅は、まだまだ続きそうだな」






仮面ライダーディケイド。幾つもの世界を越えて、その瞳は何を見る!


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次回予告「10vs44」

「はあ……またバイト、不採用かぁ」

 

 

 

いつも通りの日常。いつも通りの風景。それは、ある一人の男によって崩される。

 

 

 

「この番号は舞か?もしもーし。どうし―――」

『紘汰!?大変なの!ミッチが!』

「ッ!?わかった!俺も今すぐ行く!」

 

 

 

仮面ライダー鎧武、葛葉紘汰。彼の前に現れたのは

 

 

 

【final attack ride D D D Decade】

「ぐあぁッ!」

「ミッチぃぃぃぃぃっ!!」

「これで、ここの仮面ライダーは後2人」

 

 

 

世界の破壊者だった。

 

 

 

「お前……よくもミッチを!」

「こいつらは俺が封印した。残りは、お前だけだ」

「くそッ!」

 

 

 

鎧武を助ける仲間たち

 

 

 

「伏せろ!衝撃集中爆弾!」

【Slash】【thunder】

【Lightning Slash】

「ウェェェイ!」

 

 

 

次々と襲われるライダーたち

 

 

 

「士さん!やめてください!どうしてこんなことを!」

「ッ!?まさか、もう追ってきたのか!?じいちゃん!」

「うん。幸太郎!行くよ!」

 

 

 

戦いの中で起こる悲劇の再開

 

 

 

『ウォォォォォッ!!』

「始!?どうしてこんなことに……」

 

 

 

破壊者の目的とは一体

 

 

 

「士はそんなことする奴じゃねえ!」

「なんでそんなことが言い切れる?奴は大ショッカーの大首領だぞ」

「決まってるだろ!それは、俺とあいつが友達(ダチ)だからだ!」

 

 

 

その裏で暗躍する組織

 

 

 

「財団X、ですか?所長」

「そうなのよ、泊ちゃん。最近、風都の方で財団Xと犯行と思われる事件があったみたいで、私たちも警戒するようにって」

 

 

 

その背後に浮かび上がる謎の男

 

 

 

「初めまして、泊進之助。私は財団Xの兵器開発部所属、アダマン・タイト 」

『アダマン・タイト……思い出したぞ!確か、蛮野が契約した出資者のリストに名前があった!』

「なんだって!?ベルトさん、それじゃあ!」

「そう、ロイミュードの技術も既に我が手中」

 

 

 

集結する仮面ライダーたち

 

 

 

「そこまでだ!ライダァァァ変身ッ!」

「受け取りたまえ。僕のお宝、大事に使ってくれよ?」

「さあ、振り切るぜ」

 

 

 

遂に訪れる最終決戦

 

 

 

「要するに、あいつをぶっ飛ばせばいいってわけだな。紘汰、ひとっ走り付き合えよ」

「ああ。ここからは俺たちのステージだ!」

【オレンジ】【Start your Engine】

「「変身!」」

【オレンジアームズ!花道オンステージ!】【Drive Type-Speed】

 

 

 

そして、世界の運命は―――

 

 

 

「違うな。俺は、通りすがりの仮面ライダーだ」

【kamen rider Decade】

 

 

 

10(ディケイド) vs 44(オールライダー)

 近日公開予定




一応、今作の設定を若干引き継いだオールライダー系の次回作です。

絶賛執筆中。


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フォーゼの世界

今更ながら、ディケイド再登場記念。
以前書いた短編を投稿します。



ディケイドの時系列は本作のエピローグ終了後、次回作予告前

フォーゼの時系列はMOVIE大戦MEGAMAXあたりです。


 

 

 

 

 

「学園祭キターッ!」

 

 

 

 

 

天ノ川学園高校のとある教室で、学園指定の制服とは違う黒い学ランを着たリーゼントヘアの男子生徒『如月弦太郎』が、朝からハイテンションに叫んでいた。

 

「うるさいぞ、弦太郎」

 

その近くの席に座っている真面目そうな男子生徒『歌星賢吾』が、煩わしそうな目で見ながら弦太郎を諭す。

 

「うおっ、わりぃわりぃ。でも考えてみろよ!もうすぐ学園祭だぜ?テンション抑えろって方が無理な話だ!」

「まったく、お前という奴は……」

「でも、弦ちゃんの気持ちも分かるなぁ。学園祭っていえば、高校生活きっての大イベントだからね」

 

すると、隣に座っていた、天真爛漫という言葉を体現したような女子生徒『城島ユウキ』が弦太郎に同意した。

 

「そうだろそうだろ!?やっぱりここは、仮面ライダー部も学園祭で何かするしかねぇ!」

「おぉっ!それいいね!」

「だろ?ユウキもやっぱりそう思うよな!」

「お前ら……いい加減先生が来るぞ」

「あっ、そっか。……でも園田先生遅いね。どうしたんだろう?」

 

弦太郎たちが談笑している現在、本来はHRが始まる時間のはずなのだが、担任である『園田紗理奈』がまだ来ていない。そのため、クラスでは生徒たちが雑談に花を咲かせている状況だ。

すると、噂をして影がさしたのか、教室の外から廊下を走る音が聞こえてきた。

 

「ごめんね遅くなって!」

 

ガラガラガラッと教室の扉を開け、先程弦太郎たちの話題に出ていた園田先生が息を切らしながら入ってくる。それと同時に、生徒たちは私語を止めて各々の席に着く。

 

「えー、さっそくHRを始めたいのですが、その前に転校生を紹介します」

「「「「「転校生!?」」」」」

 

先生の言葉を聞き、教室の中がどよめく。

 

「この学校、転校生が多いな」

「お前が言うな。転校生一号」

「どんな人かなぁ?」

 

突然の知らせに、クラスは瞬く間に先ほど以上の喧騒に包まれた。

 

「はい皆静かに!それじゃあ門矢君、入って来ていいわよ」

 

クラスを静めた園田先生は、廊下に待機させていたのであろう転校生を呼ぶ。その言葉が聞こえると、教室の扉が再び開けられて外から一人の男子生徒が現れた。

 

「……」

 

その転校生は無言のままチョークを手に取り、黒板に自分の名前を書き始める。

 

『門矢士』

 

書き終わると、転校生は反転してクラスメートの方へ振り返る。

 

「俺の名前は門矢士。例え制服でも完璧に着こなす男だ。よろしくたのむ」

「「「……」」」

 

その瞬間、転校生『門矢士』のよく分からない自己紹介のせいか、はたまた、その発言から読み取れる不遜とも尊大ともいえる態度のせいか、クラスが沈黙に包まれた。

 

「え、えっと、門矢君の席は一番後ろに用意しておいたから」

 

しかし何となく二番煎じ感が強かったせいか、いち早く我に帰った園田先生がその場を収め、士を席へと誘導した。

 

「ではHRを始めます。今日の予定は―――」

 

 

 

 

 

時は変わって、今は昼休み。弦太郎、賢吾、ユウキの三人は中庭を歩いていた。

 

「しかし、お前みたいなとんちんかんな自己紹介をする奴が他にもいたとはな」

「どういう意味だそりゃ!」

「まあまあ、落ち着いて」

 

賢吾は、始めて弦太郎を見たときのことを思い出しながら、皮肉混じりに転校生のことを話し始めた。

 

「まあいい。アイツともいずれダチになれるしな」

「その根拠はなんだ?」

「勘だ!」

 

まったくこいつは……と賢吾が呆れていると、ユウキが今朝の話題を振ってきた。

 

「そういえば弦ちゃん。学園祭に仮面ライダー部が参加するって言ってたけど、何をやるの?」

「おぉっ、すっかり忘れてたぜ」

 

そう言うと、弦太郎は懐か、一枚の紙を取り出す。

 

「見て驚くなよ……これだ!」

「……伝説の仮面ライダー?」

 

弦太郎が取り出した紙には、ネットに転がっていたであろうまとめ記事が印刷されていた。

 

「そうだ!フォーゼ以外の仮面ライダーについて調査する。これ以上に仮面ライダー部の発表に相応しいものはないだろ!」

「おぉー!すごいよ弦ちゃん!」

 

弦太郎とユウキはハイタッチしながら二人揃って舞い上がる。

 

「まったく……この間パソコンと睨めっこしていたのは、この事だったのか」

 

賢吾は溜め息混じりに、弦太郎の持ってきた資料を見る。

 

「まあまあ、いいじゃねぇか。それでどうだ?俺のアイディアは!」

 

そんな賢吾のことなどお構い無しと言わんばかりに、弦太郎は胸を張ってどや顔で賢吾を見る。

 

「はぁ……大体お前に―――」

『うわぁーっ!怪物だぁっ!』

「「「ッ!?」」」

 

賢吾の言葉は生徒の悲鳴によって遮られた。

 

「今の声は……」

「こっちだ!行くぞ!」

 

弦太郎が急いで先行し、残りの二人がその後を追う。

そして現場に着くと、そこには不良らしき生徒と、彼に襲い掛かっている黒い鳥を模したような怪人がいた。

 

「やはりゾディアーツか!」

「ッ!ねぇ、あれ!」

 

何かに気付いたユウキが指を差す。すると、その先に居たのは、怪人に向かって走って行っている転校生の士の姿だった。

 

「はぁっ!」

『うわッ!』

 

士は怪人『ゾディアーツ』に突進して隙を作る。

 

「おいお前、早く逃げろ!」

「は、はいぃぃぃ!」

 

士の言葉を聞いた不良は、腰を抜かしながらも一目散にその場を離れた。

 

『僕の邪魔をするな!』

「ッ!ぐッ!」

 

すると、突き飛ばされたゾディアーツは、獲物を取られた腹いせとばかりに士に襲いかかった。

 

「ッ!?危ねぇ!」

「弦太郎!」

「わかってる!」

 

士の危機に、弦太郎はフォーゼドライバーを腰に巻き、変身しようとポーズを取る。

しかし―――

 

「……ん?」

 

弦太郎は起き上がろうとしている士を見て、その動きを止めた。

 

「まったく……こういう話題に事欠かないな。俺の周りは」

 

立ち上がった士の腰には、いつの間にかベルトのようなものが取り付けられていた。

 

『むっ、何なんだお前は』

 

ゾディアーツが士に問いただす。

 

「俺は……通りすがりの仮面ライダーだ。変身ッ!」

 

【kamen rider Decade】

 

電子音が鳴ると、士の周りに十体の人型のビジョンが出現する。そしてそれが士に重なり、一人の戦士が姿を現した。

 

「何ッ!?」

「仮面ライダーだと?」

「フォーゼ以外の仮面ライダー……」

 

突如として現れた仮面ライダー『ディケイド』を見て、弦太郎たちは三者三様の反応を示す。

 

「行くぞ。はぁっ!」

 

ディケイドはライドブッカーを手に持ち、ゾディアーツへ向かっていく。

 

「おっと、こうしちゃいられねぇ!」

 

我に帰った弦太郎は、腰に装着したフォーゼドライバーの4つスイッチを入れ、ベルトの右サイドにあるレバーに手を掛ける。

 

【three】

【two】

【one】

 

「変身ッ!」

 

レバーを引くと、身体が光に包まれ、弦太郎は仮面ライダーフォーゼへと変身する。

 

「宇宙キターッ!」

 

フォーゼは握りしめた両手を空高く突き上げ、高らかと叫ぶ。

 

「仮面ライダーフォーゼ、タイマン張らせてもらうぜ!」

 

そしてフォーゼはゾディアーツへ向かって走り出した。

 

 

 

 

 

「はあぁっ!」

「おりゃあっ!」

 

ディケイドとフォーゼが交互に攻撃を繰り出し、ゾディアーツを翻弄させていく。

 

「へへっ、中々やるな」

「お前もな」

 

お互いに称え合う二人。その一方で、ユウキと賢吾は戦いの解析に努めていた。

 

「賢吾君、どう?何か分かった?」

「あのゾディアーツは恐らくカラス座だ。だがあの仮面ライダーは……」

「分からないの?」

「ああ。フォーゼと全く別のシステムを使っているとしか……」

 

賢吾は手に持っている解析機を睨みつける。どうやら、数々のゾディアーツを解析してきた賢吾を持ってしても、ディケイドの詳細な力を把握するには至らなかったようだ。

 

『調子に乗るな!ふんっ!』

 

すると、ろくに攻撃出来ずに怒りを増したゾディアーツは、腕と一体化した翼から、散弾のように羽根を飛ばす。

 

「何ッ!?」

「うぉッ!」

 

突然の攻撃に二人は避けられず、そのまま散弾の餌食となってしまった。

 

「痛てて、くっそぉ~……」

「弦太郎!シールドを使え」

「お、おう!わかった!」

 

フォーゼはフォーゼドライバーの左から二番目のアストロスイッチを変え、新たにスイッチを押す。

 

【Shield-ON】

 

すると、フォーゼの左腕に白い盾が現れる。

 

「よっしゃ!これでもう怖くないぜ!」

 

フォーゼは盾を前面に出して防御しながら、再びゾディアーツへ向かっていった。

 

「だったら、俺はこいつだ」

 

【kamen rider Agito】

 

ディケイドはベルト『ディケイドライバー』にカードを入れる。すると、その身体が光に包まれ、ディケイドは黄金の戦士『仮面ライダーアギト』へと変身した。

 

「ッ!馬鹿な!」

 

その様子を見ていた賢吾が思わず声を張り上げる。

 

「ど、どうしたの賢吾君?確かに姿が変わったのは驚きだけど……」

「変わったのは姿だけじゃない。エネルギーの波長が全く違う。今の姿はさっきのと全く別系統の力だ」

「どういうこと?」

「あの謎の仮面ライダーは技術やエネルギー、起源の異なる力を使えるということだ。それも、恐らくいくつも」

 

正体不明の力を目の当たりにして驚きを隠せない賢吾。そんな彼を余所に、ディケイドは再びカードを取り出し、ベルトに挿入する。

 

【form ride Agito Trinity】

 

すると、アギトとなったディケイドは赤くなった右腕で剣を握り、青くなった左腕で杖を握る、金・赤・青のボディの三位一体の戦士(トリニティフォーム)にフォームチェンジした。

 

「行くぞ!はあぁぁぁっ!」

 

ディケイドは左手のストームハルバードを回転させ、羽根を弾きながら進む。

 

「たあぁっ!」

 

そして、先行していたフォーゼが敵の攻撃をガードしている隙に、右手に持つフレイムセイバーで相手を斬り伏せた。

 

『ぐぁッ!』

 

ゾディアーツは切口から火を上げ、よろめきながら後退する。

 

「おお、助かった―――って誰だお前!?」

「誰って……さっきまで一緒に戦ってただろ」

「さっき?あぁ、あのピンクの仮面ライダーか!」

「マゼンダだ!」

 

先程の姿とのあまりの変わり様に大声を上げるフォーゼと、微妙に怒るところが違うディケイド。

 

『くそっ!何故何時も邪魔ばかり入るんだ……』

 

そんな中、ゾディアーツはぶつぶつと呟きながら立ち上がった。

 

『はっ!』

「うおッ!」

 

そして、ゾディアーツが腕の羽を振るうと、ゾディアーツを囲うように強い風が竜巻となって吹き荒れる。

 

「……くそっ、逃げられたか」

 

そして風が止むと、既に2人の前からゾディアーツの姿は消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

ところかわり、士を含む弦太郎一行は月面にある秘密基地『ラビットハッチ』に来ていた。

 

「俺の名前は如月弦太郎。天ノ川学園高校の全員と友達になる男だ!宜しくな!」

 

士をここまで連れてきた弦太郎が、大きな声で自己紹介を始める。

 

「私は城島ユウキ。それでこっちが歌星賢吾君」

「ああ。宜しく頼む」

 

弦太郎を見習い、ユウキも名前を名乗る。

 

「次は私ね。私は風城美羽。この仮面ライダー部の部長よ」

「俺は大文字隼。主に力仕事の担当だな」

 

椅子に腰掛けていた茶髪のショートヘアの女子生徒と、筋トレをしていたジャージ姿の男子生徒が続いて自己紹介する。

 

「…………私は野座間友子」

「そんでもって、俺はJK(ジェイク)っす。何か知りたいことがあれば、何でも聞いてくれていいっすよ」

 

最後に、目の下の黒メイクが特徴的な女子生徒と見た目通り軽そうな性格をしている男子生徒が自己紹介をした。

 

「それで……貴方が弦太郎の言っていた仮面ライダーなの?」

「ああ。俺は門矢士。幾つもの世界を旅してまわっている」

「幾つもの、世界?」

 

美羽の疑問を聞いて、士は説明を始める。

 

「訪れた世界でライダー達と出会い、その世界でのやるべき事をやり、そして次の世界へと旅立つ。俺はずっとそうやって旅をしてきた」

「凄いわね……異世界を旅するなんて」

「成る程な。見たことも無い技術が使われていると思ったら、そういうことだったのか」

 

士の話を聞き、驚愕の表情を浮かべる美羽と、納得の表情を浮かべる賢吾。すると、弦太郎が身体を乗り出して話に加わる。

 

「なあなあ!他の仮面ライダーにも会ったことあるんだよな?なら、これ知ってるか!?」

 

そう言って弦太郎が見せたのは、昼休みに賢吾達に見せていたプリントだった。

 

「……伝説の仮面ライダー?この七人なら会ったことがあるぞ」

「おお!マジか!?やったぞユウキ!これで学園祭は俺達仮面ライダー部の勝利だ!」

「やったね弦ちゃん!何に勝つのかよく分からないけど!」

 

士の言葉を聞いて、弦太郎とユウキが舞い上がる。

 

「学園祭?」

「何の話だ?俺達は聞いてないが……」

 

二人の反応を見て、初耳だとばかりに美羽と隼が疑問の声を上げた。

 

「おお、そうだった。実は、今度の学園祭で俺達仮面ライダー部も何か出し物をやろうと思ってな」

 

そう言うと、弦太郎は今度は二人に見えるようにプリントを前に突き出す。

 

「それでこの『伝説の仮面ライダー』について調査しようって訳だ!士にも協力して貰えば、もう他の出し物なんて目じゃ無いぜ!」

「へぇ、良いんじゃない?」

「確かに面白そうっすね」

「そうだろそうだろ?」

 

好感触な部員の反応を見てテンションが上がる弦太郎。

 

「盛り上がるのは結構だが、その前にあのゾディアーツはいいのか?」

「あっ、そうだった」

 

そんな弦太郎達に、士が横槍を入れる。

 

「そういえば、ここ数日で学校の不良達が何人も襲われて病院送りになってるそうっすよ」

「戦っていた最中の奴の言動から察するに、動機は恐らく復讐といったところか」

 

JKの情報を元に賢吾が推測する。

 

「よし!こうなりゃ片っ端から聞き込みだ!行くぞ、士!ユウキ!」

「はあ?何で俺が―――って引っ張るな、離せ!」

「あっ、待ってよ弦ちゃん!」

 

弦太郎は士を強引に引っ張り、ユウキと共に出ていってしまった。

 

「おい待て!……はぁ、まあいい。俺は今のうちにあのゾディアーツの解析をしておくか」

「…………何だか弦太郎さん、何時もよりテンションが高い」

「あいつは今朝からあんな感じだ。まったく、学園祭もまだ先の話だっていうのに……」

 

愚痴を溢しながらも賢吾はバガミールで記録した映像の解析を始めた。

 

 

 

―――――――――――――――

 

――――――――――

 

―――――

 

 

 

――とある部屋の一室――

 

 

 

窓一つ無い薄暗い部屋には、椅子に座る男と、その男に頭《こうべ》をたれる若い男が居た。

 

「スイッチャーの調子はどうだい?リブラ」

「今のところ順調です、理事長。しかし……」

 

リブラと呼ばれた男は言葉を濁す。

 

「"未知の力を使う者"。君が心配するのはこれだね?」

「はい……」

 

リブラの反応を見て、理事長と呼ばれた男は椅子に深々と腰掛け、不適な笑みを浮かべる。

 

「狼狽する必要は無い。この広い宇宙において、我々の予測を上回る事態が起こることなど日常茶飯事だ」

「しかし理事長。彼の者を放置して置くのは些か不安です」

「ならば……その判断は君に任せるとしよう。期待しているよ、リブラ」

「了解しました。理事長」

 

その言葉と共に、リブラと呼ばれた男は手に持つスイッチでリブラゾディアーツへと変身し、その場を後にした。

 

 

 

―――――――――――――――

 

――――――――――

 

―――――

 

 

 

――中庭――

 

 

 

「さっぱり進展しねえなぁ……」

「やっぱり、宛ても無しじゃ無謀だったんじゃない?」

 

ラビットハッチを飛び出した弦太郎たちは、一連の事件の情報収集に当たっていた。しかし、中々思うように情報が集まらずに途方にくれるのだった。

 

「おい、一旦さっきの場所に戻った方が―――」

『―い!――せ―前が―――んだ―!』

「―――ん?何だ?」

 

士が帰るように諭そうとした時、遠くから数人の怒声が聞こえてきた。

 

「喧嘩?……行ってみるか」

「ん?あっ、おい士!待てって!」

 

声が聞こえてきた方向へ一人で走っていく士。そんな彼を追いかけるべく、弦太郎とユウキも続けて走り出した。

 

「お前だろ!?あの怪物に近藤(こんどう)さんや篠木(ささき)さんを襲わせたのは!」

 

そこには、腰が抜けたのか地面にへたり込んで後退りしている眼鏡を掛けた男子生徒と、彼に問い詰めている三人の不良らしき男子生徒たちが居た。

 

「大人しく白状しろ!」

「ち、違う!僕じゃない!」

「てめぇ……」

「おい!お前ら、何やってんだ!」

 

目の前の騒ぎを放っておけなかったのか、弦太郎は仲裁をしようと眼鏡の生徒と不良の間に割って入る。

 

「うるせぇ!関係ない奴は引っ込んでろ!」

「そうはいかねぇ。寄って囲ってひとりを脅してるような奴は特にな」

「はんっ!そいつが恩を仇で返すのがいけねぇんだ!」

「……何?」

 

恩を仇で、そんなただの脅しにはおおよそ無縁であろう単語が出て来たせいで、頭の上に疑問譜が浮かぶ弦太郎。そんな弦太郎の疑問に答えるように、不良の一人が続ける。

 

「そいつ、前に近藤さんに助けて貰った癖にあの怪物を使って襲わせたんだ」

「違う!僕はそんなことやってない!」

「嘘つけ!それに―――」

「どっちも落ち着け」

 

不良と眼鏡の生徒の言い争いに発展しようかというところで、見兼ねた士が止めに入った。

 

「大体、その話はどっから仕入れたんだ?ちゃんと確かな情報なんだろうな?」

「当たり前だろ!?それに、ここにいる前田《まえだ》が見たって言ってるんだぞ!」

 

話していた不良が後ろにいた二人の内の一人を指さすと、指名された不良『前田』が頷き、1歩前に出る。

 

「ああ。一週間前の昼休み、こいつが校舎の裏で怪物と何か話しているのを見た」

「近藤さんが襲われたのも一週間前。確かその日、お前用事があるとかで来なかったよな?」

「そ、それは先生に頼まれて授業に使う道具を倉庫から出してくるように言われて……」

「じゃあそれを証明出来る奴は居るのかよ!」

「それは……」

「お前達!こんなところで何をしている!」

 

眼鏡の生徒が言葉に詰まっていると、騒ぎに気がついたのか、向こうから先生が駆けつけてきた。

 

「やべぇ!先公だ!」

「ちっ、覚えてろよ!」

 

不良は捨て台詞を吐くと、そのまま一目散に逃げ出す。

 

「俺達も逃げた方が良いじゃないか?」

「そうだな。士、ユウキ、逃げるぞ!」

「うん!ほら、君も!」

「え?ち、ちょっと!」

 

眼鏡の生徒と共に、弦太郎達は急いでその場を離れた。

 

 

 

 

 

「……ふう、何とか撒いたか」

 

先生から無事に逃げ切れた弦太郎達は一息ついた。

 

「はぁ……はぁ……君、大丈夫だった?」

「え?あっ、はい。体力は人並みにはあるので」

 

ユウキの言葉に、眼鏡の生徒は大して息切れした様子も無く答える。

 

「助けてくれてありがとうございます。僕は飯塚(いいづか)勇斗(はやと)っていいます」

「おう、俺は如月弦太郎だ。それにしても災難だったな。妙な疑いを掛けられて」

「……」

 

弦太郎の言葉を聞いて表情が暗くなる勇斗。

 

「近藤、だったか?お前と面識があるみたいなことをあいつらが言っていたが、なんでお前みたいな真面目君が不良とつるんでたんだ?」

 

不良と内気な生徒。あまり見ないような組み合わせに疑問を持った士が、勇斗に問いかける。

 

「……前に僕が他校の生徒に絡まれていた時に、近藤さんが助けてくれたことがあったんです」

 

士の疑問に答えるように、勇斗はその表情にやや影が射しながらも語り始めた。

 

「近藤さんは不良だけど情の厚い人で、でも結局口論だけじゃ収まらず、喧嘩にまで発展しちゃって。それで近藤さん、このせいで数日の謹慎処分を受けてしまったんです。なんで見ず知らずの他人にそこまでするのかって聞いたら、『困っている奴は助ける。当たり前だろ』って言っていました」

 

だから―――と勇斗は続ける。

 

「僕は近藤さんみたいに、強くて優しい人になりたいって思ったんです」

「~~~ッ、いい話だぁ!」

 

勇斗の話を聞いて、弦太郎は感動のあまり漢泣きをしていた。

 

「でも例の怪物事件で近藤さんが怪我をした時、一番怪しい僕が疑われて。そんな時、近藤さんと古くからの知り合いの篠木さんが『俺がお前の潔白を証明してやる』って出ていって……」

「そいつもやられたってわけか」

「はい……」

 

士はどうしたものかと考えていると、飯塚のポケットから何か零れ落ちるのが見えた。

 

「?何か落ちたぞ」

 

そう言って士が拾い上げようとした、その時―――

 

ガサガサッ!

 

「!?」

 

近くの林から物音が聞こえてきた。

 

「何モンだ!」

 

弦太郎の声を聞き、草むらからひとつの人影が現れた。

 

「お前は、さっきのゾティアーツ!」

 

そう、そこに立っていたのは、昼休みに不良を襲っていたクロウゾティアーツだった。

 

『酷いじゃないか。僕一人に罪を擦り付けようだなんて』

「な、なんだお前!僕はお前なんか知らないぞ!」

『ふふふ、どうせフォーゼに僕のことを始末させて口封じをするつもりだったんだろ?』

「ち、違う!」

「いい加減にしろよ、お前」

 

勇斗とゾティアーツが言い合っているところを、弦太郎が割り込む。

 

「まずはお前の化けの皮を剥いでやる。行くぞ士!」

 

弦太郎はそう言い、士が居る方へ振り向く。しかし―――

 

「……あれ?居ねぇ?」

 

いつの間にか、士の姿は消えていた。

 

『おや?助っ人が居ないと不安かな?』

「うるせぇ!こうなりゃ一人でも―――」

 

弦太郎は腰にフォーゼドライバーを巻き付け、4つのスイッチをONにする。

 

【three】

【two】

【one】

 

「変身ッ!」

 

掛け声と共にベルトのレバーを引き、弦太郎は仮面ライダーフォーゼへと変身した。

 

「宇宙キターーーッ!」

 

フォーゼは叫びながら両腕を空に突き上げる。

 

「仮面ライダーフォーゼ、タイマン張らせて貰うぜ!」

 

 

 

 

 

 

「ここは……」

 

一方の士はというと、突然銀色のオーロラに身体が包まれ、気が付けば見知らぬ場所に立っていた。

 

「こんな真似をするのは……出てこい!鳴滝!」

 

士が後ろを振り向くと、予想通り其処には、士をいつも付け狙う『鳴滝』が立っていた。

 

「やはりか。今度は何なんだ」

 

「ディケイド。君を倒すのに相応しいライダーを用意した」

 

鳴滝がそう言うと、その後方に再び銀色のオーロラが現れ、その向こう側から一人の仮面ライダーが現れた。

 

「終わりだ!貴様は此処で朽ち果てるがいい!」

 

そして、入れ換わるように鳴滝がオーロラの向こうへと消えていった。

 

「お前は一体……」

 

士が呟くように訪ねると、相手は人差し指を立ててチッチッチッと横に振る。

 

「お前も俺も、何者であろうと関係ない。お前の運命(さだめ)は、俺が決める」

「ふんっ、面白い。変身ッ!」

 

【kamen rider Decade】

 

士はベルトにカードを差し込み、ディケイドへと変身した。

 

 

 

 

 

「はあぁっ!」

「ッ!くそっ!」

 

フォーゼは転がりながらも、なんとかクロウゾティアーツの散弾攻撃を回避し続けていた。

 

(くそっ!シールドを使ったとしても防御が手いっぱいで攻撃出来なくなるし、一体どうすりゃいい……)

『ちっ!猪口才な!くらえっ!』

「ぐッ!ああくそっ!こうなったらこいつだ」

 

痺れを切らした弦太郎はスイッチを二つ取りだし、ベルトにセットする。

 

「これでどうだ!」

 

【Luncher-ON】

【Gatling-ON】

 

フォーゼは右足にランチャー、左足にガトリングを装着した。

 

「うりゃりゃりゃりゃあぁぁぁぁっ!」

『何!?』

「きゃっ!」

「うわっ!」

 

フォーゼの両足から放たれた弾丸の雨は、敵の羽根の散弾諸共辺り一帯を吹き飛ばした。

 

「もう!危ないよ弦ちゃん!」

「わりぃわりぃ。後はこいつで止めだ」

 

フォーゼはリミットブレイクを使うべく、再びスイッチを取り出す。

 

『くそッ……はぁっ!』

「うおっ!」

 

しかしクロウゾティアーツは羽根を一枚放ち、フォーゼの手に持つスイッチを弾いた。

 

『今だ!ふんっ!』

「ッ!?くそっ!またこれか!」

 

フォーゼの隙を作ったゾティアーツは、再び強風を自身の周りに発生させる。そして―――

 

「……また逃げられた」

 

風が止んだ頃には、ゾティアーツの姿は消えていた。

 

 

 

 

 

「ホワァチァーッ!」

「チッ!」

 

一方の士も、謎の仮面ライダー相手に苦戦していた。

 

「……ふん、こんなものか」

「なんだと?」

 

相手は士を見下すような発言をすると、右腕に装着しているガントレットの三つのレバーの一つを引く。

 

【Jupiter ready?】

 

そしてガントレットに指を翳《かざ》し、指紋認証を行う。

 

【OK!Jupiter!】

 

電子音が鳴り響くと、右手を覆うように木星を模した巨大な球体が現れる。

 

「ホワァチャアッ!」

「ッ!?くそっ!」

 

ディケイドは敵のその攻撃を間一髪で(かわ)す。そして、敵の拳はそのままディケイドの背後にあった岩に当たり、岩は粉々に砕かれてしまった。

 

「……なんつう威力だ」

「避けたか……まあいい。次でお前の運命が決まる」

 

謎のライダーは、ベルトに差し込んであったスイッチを取りだして腕のガントレットに挿入する。

 

【limit break!】

 

そして、謎のライダーは再びガントレットに指を翳して指紋認証を行う。

 

【OK!】

 

ガントレットから認証完了の音声が流れると、ガントレットの周りを青いエネルギーが纏いはじめる。

 

「ハァァァァァ……」

「だったらこっちは―――」

 

今にも技を発動せんとする相手に対し、ディケイドは一枚のカードを取り出す。

 

「ホワァァァァァッ!」

【form ride Kabuto masked】

 

敵の拳が当たる寸前に、ディケイドは【カブト・マスクドフォーム】に変身した。

 

「ホワァタァッ!」

「ぐッ!」

 

攻撃をまともに食らい後ろに飛ばされたディケイド。だが、後ろに転がりながらも、ディケイドは敵の必殺技を耐えきった。

 

「何だと!?」

 

耐えられたことに驚きを隠せない謎のライダー。そんな相手を余所に、ディケイドは1枚のカードを取り出しながら立ち上がる。

 

「次はこっちの番だ」

 

【attack ride cast-off】

 

電子音と共にディケイドが纏ってした鈍重な装甲が弾け飛び、ディケイドは【カブト・ライダーフォーム】へと変身した。

 

「装甲を捨てた?なら―――」

 

【Saturn ready?―――OK!Saturn!】

 

謎のライダーは再びガントレットのレバーを引き、今度は土星を模したものが右手に現れる。

 

「ホワァチャアッ!」

 

謎のライダーはカッターのように右手から無数の土星の輪を飛ばす。その土星の輪は、ディケイドの逃げ道を塞ぐように囲いながら襲いかかる。

しかし―――

 

【attack ride clock-up】

 

ディケイドは高速移動で敵の包囲網から抜け出した。そして、即座に相手の背後に回り込んだ。

 

「ッ!?消え―――」

 

【final attack ride Ka Ka Ka Kabuto】

 

「はあぁぁぁっ!」

 

ディケイドはそのまま、敵に回し蹴り(ライダーキック)を放った。

 

「ぐはぁッ!」

 

咄嗟の事態に反応出来ず、攻撃を(もろ)に受けてしまった謎のライダーは、そのまま地面を転がった。

 

「……はあ……はあ……どうやら、此処までのようだな」

 

弱々しくも方膝をついて起き上がった謎のライダーは、再び銀のオーロラの向こうに消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

――ラビットハッチ――

 

 

 

「弦太郎の話から察するに、復讐という線は薄いな」

 

帰ってきた弦太郎達を出迎えて大体の事情を聞いた後、賢吾が話を切り出した。

 

「え?何でだよ」

「もし復讐が目的だというのなら、正体を隠したりせずに相手に自分の存在を誇示するはずだ。そうでなければ、相手に対して"自分が復讐した"という事実を突き付けられない」

「確かに。今までのゾディアーツ化した生徒の中にも、そんな感じの人は居たわね」

 

賢吾の推測に美羽が肯定の意を示す。

 

「じゃあ、目的は別にあるってことか?」

「ああ。それなら、関係ない生徒に罪を擦りつけようとするのにも説明がいく」

「何なんだ?その目的ってのは」

 

弦太郎が賢吾に問いかける。

 

「さあな。そこまでは分からない」

「分からないって……はぁ。士もどっか行っちまったし、八方塞がりかぁ……」

 

結局話が振り出しに戻り、思わずため息がでる弦太郎。

 

「いや、そうでもないぞ」

「え?」

「居るだろ?お前が言っていた人物の中で一人、唯一誰にも疑われずに飯塚に罪を押し付けられる奴が」

「…………ッ!前田か!」

 

弦太郎は大声を上げて立ち上がる。

 

「よし!そうと決まれば前田の奴をとっちめて来るぜ!」

「あっ!弦ちゃん待ってぇ!」

 

弦太郎は駆け足でラビットハッチを飛び出して行く。ユウキも慌てて後を追った。

 

「おい弦太郎!……まったく、まだ確証は無いっていうのに」

「まあ、いいんじゃない?それより私達はゾディアーツの解析を続けましょう」

 

本日二度目の光景を見て思わず呆れる隼を促し、美羽はゾディアーツの映像に目を移す。

 

「しかし、これと言って目新しい情報は無いと思うが」

 

賢吾はそう言いながら映像を見る。

 

「………………」

「?どうした野座間」

「……このゾディアーツ、何か変」

「何だと?」

 

 

 

 

 

「さてと……此処か。被害者が入院してる病院は」

 

一方の士は、弦太郎達とは合流せずに独自に事件の調査を行っており、今は不良達が入院しているという病院に来ていた。

 

「ちょっといいか?」

「?はい、何でしょうか」

 

士は通路を歩いていた看護婦を呼び止める。

 

「天ノ川学園高校の近藤と篠木って奴の病室を知らないか?見舞いに来たんだが」

「近藤様と篠木様ですね?かしこまりました。少々お待ち下さい」

 

そう言うと看護婦は受付へ行き、確認を取る。そして、病室が分かったのか士の下へ戻って来た。

 

「申し訳ございません。近藤様は確かに居りますが、篠木という方はこの病院には入院されておりませんよ」

「何?」

 

 

 

 

 

「やはりこそこそと嗅ぎまわっているようだな。目障りな」

 

士の居る病院から少し離れた所で、士の様子をリブラゾディアーツが見ていた。

 

「勘も中々に鋭いようだ。せっかくの素材をこのまま台無しにされても困る。今の内に排除しておくか」

 

そしてリブラは持っていた杖を構え―――

 

「ッ!?くッ!」

 

突如、銃撃に襲われた。

 

「何者だ!?」

 

リブラは怒鳴り声をあげながら狙撃者が居るであろう方向を睨み付ける。

 

「やれやれ。そう怒鳴らないでくれるかな」

 

そう言いながら物陰から出てきたのは、その手に銃『ディエンドライバー』を握っていた『海東大樹』だった。

 

「貴様……何のつもりだ。奴の仲間か?」

「僕の目的はただ一つ。君達十二使徒(ホロスコープス)だけが持つとされる特別なスイッチ、それが欲しいだけさ」

 

『kamen rider―――』

 

大樹がディエンドライバーにカードを差し込み、そのまま銃口を真上に向ける。

 

「変身ッ」

 

『―――Diend』

 

大樹が引き金を引くと三体の人型のホログラムが現れる。そしてその三体は大樹の身体に重なり、大樹は『仮面ライダーディエンド』へと変身した。

 

「チッ!」

 

リブラは杖を振りかざし、目の前に複数の『星屑忍者ダスタード』を呼び出す。

 

「成る程。それならこちらも……」

 

ディエンドはカードを二枚取りだし、ディエンドライバーに挿入する。

 

『kamen rider Garren

 kamen rider Zolda』

 

ディエンドが再び引き金を引くと、ディエンドとダスタードの間に『仮面ライダーギャレン』と『仮面ライダーゾルダ』が現れた。

 

「更に―――」

 

『attack ride cross attack』

 

電子音が鳴り響くと、ゾルダの前に契約モンスター『マグナギガ』が出現する。ゾルダはマグナギガの背中に己の銃口をセットすると、マグナギガの胸部が開き、全身からミサイルや銃口が剥き出しの状態になった。

そしてゾルダが引き金を引くと、マグナギガから大量のミサイルとレーザーが放たれ辺り一帯に降り注ぐ。

 

「な、何!?―――ぐッ!」

 

ゾルダの攻撃により、リブラが呼び出したダスタードは跡形もなく消滅した。

 

「くっ、馬鹿な……」

 

辺りに煙がたちこむ中、リブラは見失うまいと必死に敵の影を追う。

するとその時、煙の中から上空へ跳び上がる一つの影が現れた。

 

「そこか!はぁっ!」

 

切りもみ回転をしながら跳んでいる影、ギャレンに向かって、リブラは手に持っていた杖を槍投げのように飛ばす。

しかし、杖が当たる直前に、ギャレンは左右に分裂して躱《かわ》した。

 

「何だと!?」

「はあぁぁぁぁぁっ!」

 

そしてギャレンは、そのままリブラに向かって『バーニングディバイド』を放った。

 

「ぐあぁぁぁッ!」

 

ギャレンの攻撃をもろに食らったリブラ。しかし、よろめきながらもなんとか持ちこたえた。

 

「くっ……覚えていろ……」

 

リブラはそう言い放つと、自分の足元に火花を散らし姿を眩ました。

 

「……逃げられたか。まあ良い、僕の本命は別にある」

 

『attack ride invisible』

 

大樹はそう言い残すと、インビジブルのカードを使いその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

「中々見つからないな。飯塚の姿も見えないし」

 

一方、ラビットハッチから意気揚々と出てきた弦太郎だったが、探し人が見つからずに途方に暮れていた。

 

「もしかしたら、もう校内に居ないかもしれないね」

 

弦太郎と一緒に探していたユウキがポツリと呟く。

 

「かもな~」

 

弦太郎も頭をぽりぽりと掻きながら同意する。

 

「お?お前達、まだ帰ってなかったのか」

 

すると、弦太郎達に一人の教師『大杉忠太』が声を掛けた。

 

「あっ、先生。ちょうど良かった。前田って奴、何処に居るか知らないか?」

「前田ぁ?ああ、アイツか。それなら確か、飯塚を連れて校門を出てったぞ」

「!それだ!行くぞユウキ!」

「うん!」

 

大杉の言葉を聞くや否や、弦太郎とユウキは校門の方へ駆け出した。

 

「……?何だったんだアイツら」

 

大杉の疑問に答える者は誰も居なかった。

 

 

 

 

 

その頃士は、話を聞く為に近藤の病室を訪ねていた。

 

「つまり、お前を襲った犯人は前田だったってわけか」

 

士は今まで近藤から聞いていた話をまとめ、再度近藤に尋ねる。

 

「ああ。襲ってきた黒っぽい奴が俺の目の前で変身を解いたんだ。それがまさか前田だったなんて……今でも信じられない」

「……そうか」

 

士は近藤の話を、訝りながら聞いていた。

 

(前田は何故、近藤に正体を曝したんだ?それじゃあ、飯塚に罪を着せても意味が無い……ん?)

 

すると士は、近藤の後頭部に何かが付いているのに気付く。

 

「何だ?これは……」

 

士は近藤にくっついていたものを取る。すると―――

 

「がッ!」

「ッ!?どうした!」

 

近藤が急に頭を抱えて(うずくま)った。

 

「ぐッ……あッ……」

「待ってろ!すぐ医者を―――」

「まっ……待てッ!」

 

急いで病室から出ようとしていた士を近藤が引き留める。

 

「はぁ……はぁ……思い出した……犯人は、前田じゃ……ない……」

「……何?」

 

 

 

 

 

 

 

「いい加減にしろよな!」

「ひぃぃぃっ!」

 

とある廃れた工場の一角。其処には怯えきっている飯塚と、彼に掴みかかっている前田が居た。

 

「た、助けて……」

 

飯塚は後退りながら弱々しく呟く。

 

「お前……この()に及んで―――」

「待て!」

 

今にも前田が拳を振り上げようとした時、二人の場所を突き止めてやって来た弦太郎が制止の声を上げる。

 

「前田!口封じなんて馬鹿な真似は止めろ!そんなことしたって何にもならないぞ!」

「はぁ?何言ってるんだ?いいか!そいつは―――」

『そいつは僕に不良を襲わせた、とでも言う気か?』

「ッ!?」

 

突然聞こえた声の方向に弦太郎達が振り向くと、其処にはクロウゾディアーツが立っていた。

 

「何!?ゾディアーツは前田じゃなかったのか!?」

『そうだ。そして其所に居る前田をゾディアーツに仕立て上げれば、僕は晴れて自由の身だ』

「て、てめぇ!」

 

挑発するようなクロウゾディアーツの態度に対し、怒り心頭の弦太郎。

 

「ユウキ、二人を連れて下がってろ」

「うん!」

 

弦太郎は三人を避難させると、ベルトを腰に装着する。

 

『three』

 

飯塚と一緒に下がったユウキが後ろから見守る。

 

『two』

 

クロウゾディアーツが不敵な笑みを浮かべながら近付いて来る。

 

『one』

 

弦太郎はそれを向かい討つべく、手に力を入れる。

 

「変身ッ!」

 

ベルトの右脇のレバーを引き、弦太郎は仮面ライダーフォーゼへと変身した。

 

「宇宙キターッ!」

 

フォーゼは両手を上へ突き上げる。

 

『ふんっ!今度こそ仕留めてやる』

「そうはいかねぇぜ!」

 

『Eleci-ON』

 

フォーゼはエレキスイッチの力を使い、エレキステイツに変身する。そしてビリーザロッドを右手に持ち、クロウゾディアーツの方へと走っていった。

 

「うりゃあっ!」

 

フォーゼはビリーザロッドでクロウゾディアーツに切かかる。

 

『ふん、学習能力のない奴だ!はぁっ!』

「うわっ!」

 

しかし、クロウゾディアーツの羽根の散弾により、フォーゼは行く手を阻まれてしまった。

 

「くそっ、こうなったらリミットブレイクで一気に……」

 

フォーゼはビリーザロッドのプラグを付け替え、再びベルトに手をかける。

 

「弦太郎!」

「ッ!士!?」

 

いざ必殺技を放とうとしたその時、何処からともなく士が姿を現した。

 

「士、お前今まで何処に―――」

「弦太郎!奴の後頭部を狙え!」

「後頭部!?よく分からねぇけど……」

 

『Ereci limit break』

 

「どりゃぁぁぁっ!」

 

リミットブレイクを発動させたフォーゼは、そのまま背中の噴射口を利用し、クロウゾディアーツを飛び越えて後ろに回り込む。

 

「ライダー100億ボルトシュート!」

 

フォーゼは振り向き様に、ビリーザロッドに纏った電気を、雷の刃にしてクロウゾディアーツへ飛ばした。

 

『何ッ!?―――ぐぁぁぁぁッ!』

 

避けることが叶わなかったクロウゾディアーツは、後方から直撃を食らい、そのまま爆発した。

 

「よし!さぁて、正体は一体誰だったんだ?」

 

弦太郎は変身を解き、ゾディアーツの正体であろう倒れている人物に近づく。

 

「おい、大丈夫か?」

 

弦太郎は声を掛けながら、俯せで倒れている男を起こした。すると、その顔を見た途端、前田の目が大きく見開いた。

 

「篠木さん!?」

「ッ!?何だと!?」

 

前田の言葉を聞いて弦太郎が驚きの声を上げる。

 

「そんな……篠木さんが犯人だったなんて……」

「飯塚君……」

 

自分に優しくしてくれた人物が自分を陥れようとしていたことを知って、気を落とす飯塚。近くに居たユウキは、飯塚を慰めるように側に寄り添った。

 

「篠木が犯人だったのか……。士、お前篠木が犯人だってよく分かったな」

 

弦太郎は、さっきの意味深な発言も踏まえて士に訪ねる。

 

「ああ。さっきまで近藤の居る病院で話を聞いていたからな。そこで知った。そして―――」

 

士は一呼吸置く。

 

 

 

 

 

「真犯人は別に居るってこともな!」

 

 

 

 

 

「「「ッ!?」」」

 

その瞬間、衝撃的な事実を言い放った士の言葉を聞いて、その場に居た人間は例外なく息を飲んだ。

 

「ど、どういうことだよ士!こいつの他に黒幕が居るってことか!?」

 

弦太郎が士を問いただす。

 

「ああ、そうだ。更に言うなら、篠木はスイッチャーじゃない」

「えぇ!?」

 

篠木が犯人どころかスイッチャーですらないと言われ、ますます混乱する弦太郎。するとそんな中、おそらく走ってきたのであろう、息を荒くした賢吾が工場に入ってきた。

 

「賢吾!」

「弦太郎!あの黒いゾディアーツは偽物だ!おそらく本体が別の場所から操っている!」

「っ!偽物!?」

「ああ、そうだ!」

 

士と賢吾の言葉を聞いてますます訳が分からなくなる弦太郎。それを感じ取ったのか、賢吾は肩で息をしながらも話を続けた。

 

「野座間がゾディアーツに違和感があると言ってな。詳しく調べてみたら、今までのゾディアーツよりもエネルギーの反応が極端に弱いことが分かった。それの証拠に……弦太郎、お前と戦った時も攻撃らしい攻撃をしなかっただろ」

「た、確かに。言われてみれば、あいつは羽根を飛ばすぐらいしかしてなかったな」

 

弦太郎はゾディアーツと対峙しているときのことを思い出しながら肯定する。それを横目で見つつ、賢吾は倒れている篠木に目をやりながら話を続けた。

 

「思えば最初に気付くべきだった。クロウゾディアーツのモデルであるカラス座は、かつてその身体を白い羽毛で覆っていた。身体が黒に染まったのは、太陽神アポロンに嘘をついたがために呪いをかけられたからだといわれている。つまり、黒いクロウゾディアーツは……」

「嘘……偽物ってわけか」

 

賢吾の言葉を繋ぐように弦太郎が答えた。

 

「ああ。だから早いところ真犯人を探さないと―――」

「その必要はないぜ」

 

すると、いままで黙っていた士が賢吾の言葉を遮った。

 

「必要ない?どういうことだ」

「そのままの意味だ。もう本体はわかっている」

「何!?」

 

賢吾が驚くのを余所に、士は手を挙げ、人差し指を立てる。

 

「犯人は……」

 

士はその人差し指で、ある方向指さした。そこには―――

 

「お前だ、飯塚」

 

ユウキに寄り添われている飯塚がいた。

 

「「「ッ!?」」」

「ま、どういうことだよ!士」

「ああ。思い返してみればお前の行動には違和感があった。ユウキに手を引かれて先生から逃げていたとき、お前は息ひとつ乱さなかった。いくら体力が人並みにあるとはいっても、あれだけ走って息を乱さない奴を人並みとは言わない」

 

いじめられてたわりにずいぶん鍛えてたんだな、と飯塚に皮肉を言う士。

 

「それに、あのゾディアーツもだ。不良でもなく、かといって正体を知っているわけでもないお前を執拗に狙っていた。まるで自分は飯塚の敵だ、自分は被害者だと弦太郎に印象付けているみたいにな」

 

さらに、と士は懐からあるものを取り出す。

 

「これは、お前が弦太郎と一緒に不良から逃げているとき、お前のポケットから落ちたものだ。どうせまだ持っているんだろう?この……カラスの羽根を」

 

士がそこまで言うと、さっきまでおとなしく話を聞いていた飯塚が不意に顔を俯かせた。

 

「い、飯塚君?」

 

顔を伏せた飯塚をみて不安になり、ユウキが声をかける。

 

「……ク……クク……ク……ククク……」

 

すると突然、飯塚は肩を小刻みに震えさせながら笑いをこぼし始めた。

 

「なんかヤバそうだ……離れてろ、ユウキ!」

「う、うん」

 

弦太郎はユウキを挙動のおかしい飯塚の傍から離れさせる。一方の飯塚は、依然と笑いをなだらその場に立ち上がった。

 

「よくわかったね。そうさ!僕が黒幕さ!」

 

飯塚は突然大きな声を上げ、あっさりと自白した。

 

「ずいぶんと潔いんだな。無駄な足掻きでもするかとおもったが」

「羽根の秘密に気付いたってことは、近藤の催眠を解いたんだろ?それなら白を切る意味もないもんな!」

 

士の皮肉交じりの言葉に対し、さっきとは打って変わって饒舌になる飯塚。すると、今度は弦太郎が大声を上げる。

 

「なんでだ飯塚!なんでこんなことをしたんだ!お前、近藤に恩があるんじゃなかったのかよ!」

 

そんな訴えかけるような弦太郎の言葉に対し、飯塚は嘲笑しながら答える。

 

「はっ、恩だって?あんなの、僕が近藤に近付くための芝居に決まってるだろ!」

「ッ!?」

 

すべて仕組んでいたこと、そんな発言に動揺を隠し切れない弦太郎を尻目に、飯塚は次々と話し出す。

 

「ああ、そうさ!思えばあいつは最初から勘の障る奴だった!困ってる人は放って置けない?弱い人を守る?つまはじき者の癖に薄汚い偽善を振り撒きやがって!」

 

飯塚の感情を剥き出しにした言葉には、並々ならぬ怨み辛みが込められているように感じられた。

 

「何故そこまで近藤を恨むんだ?特別、奴に怨みがあるわけでもないんだろ?」

 

弦太郎とは打って変わって平静さを保っている士が、飯塚に問い掛ける。

 

「ああ?別にあいつ個人のことはどうでもいいんだよ。ただ、ああいう奴を見ていると昔のことを思い出して無性にイライラするんだよ」

「昔?」

「そうだ!あれは中学の頃、ある性根の腐った女にずっとこき使われてたことがあってな。ある日、あいつは僕の財布を奪って金を取りやがった。流石に僕はその時、無理矢理にでも取り返そうとした。そこまでは別にいい。相手は所詮女、取り返せる自信はあった。だがな……そこであの野郎が邪魔をしやがった!」

 

飯塚は憎悪の感情を隠そうともせず、まくし立てるように話し続けた。

 

「あの野郎だ!あの偽善野郎!あいつはあろうことか、女の方を庇いやがった!女は周りには猫を被っていたから、端から見れば僕が恐喝しているように見えたのかもな。だが、真実は違う!それなのに野郎は!野郎が信じて疑わない『正義』とかいうもののせいで俺は犯人に仕立て上げられたんだ!」

 

段々と口調が荒くなっていく飯塚。

 

「野郎はすぐに教師にチクりやがった。教師どもは俺を犯人だと疑わなかった。野郎は普段から素行がよく、あの糞女も上面だけはよかったし、対して俺はただの平々凡々な学生。どっちを信じるか、言うまでもなかった。噂はあっという間に学校中、それに俺の家にも広がり、俺は自宅でも学校でも孤立した」

「それでお人よしが嫌いってわけか。それなら何故、女の方を恨まない?そもそもの原因はそいつだろ?」

 

飯塚の今までの話を聞いた士は、率直な疑問を投げ掛ける。

 

「ああ!?そんなもん糞女も憎いに決まってるだろうが!だがな、あの偽善野郎がしゃしゃり出て来なければあそこまで大事にならなかったんだ!あいつは俺が糞女から財布を奪い返そうとしたとき、俺を殴って止めやがった!こっちは今まで糞女に手も触れてねぇにもかかわらずだ!あいつは他人よりも強い腕っ節を使って自分が悪と決めた奴を弾圧する、ただの独善者なんだよ!」

 

飯塚はそこまで言うと、今度は弦太郎の方を向いて喋りだす。

 

「お前もだ、如月弦太郎!お前、いままでその力を使って俺みたいな生徒を倒してきたんだろう?どうだ?自分の正義を押し付るのはさぞ気持ちよかっただろうな」

「違う!俺は……」

「だがそれも今日までだ。ここからは俺が正義となって、お前らを粛正してやる!」

 

『last one』

 

飯塚はそこまで言うと、ラストワンとなったスイッチを押し、クロウゾディアーツへとその姿を変えた。その近くには、全身を糸で巻かれたような飯塚の身体が横たわる。

 

「まずい。だいぶ精神が侵食されているな。弦太郎!」

『そうはさせねぇ!』

 

賢吾の言葉を遮るようにクロウゾディアーツは、まだ変身していない弦太郎と士に向かって羽根の散弾を飛ばした。

 

「ぐぁぁぁぁッ!」

「弦太郎!―――がぁッ!」

「弦ちゃん!士くん!」

 

クロウゾディアーツの容赦の無い攻撃が二人を襲う。

 

『どうだ!圧倒的な力に蹂躙される気分は!』

 

しばらく続いた羽根の散弾攻撃が止むと、そこには地に伏せる弦太郎と士の姿があった。

 

『所詮、力あるものが絶対なんだよ!お前の言う友達や友情なんてのは必要ない。必要なのは、支配する側とされる側の関係だけだ!』

「……そいつは、違う……」

『―――何?』

 

クロウゾディアーツの言葉に反応するように弦太郎が立ち上がる。

 

「……確かにお前が言う通り、俺がいままでやってきたことは全て正しいとは限らないし、だからといって自分を曲げて、近藤や佐々木や他の不良を襲ったお前を正しいとは認めることは出来ねぇ。だがな、飯塚。俺はお前とダチになりたいと思ってる」

『……何だと?』

「俺はお前の抱え込んでいるものごと全部、お前を受け入れる。それが、ダチってもんだからな」

 

弦太郎はふらつきながらも立ち上がると、しっかりとその両目で飯塚、クロウゾディアーツを見据えていた。

 

『ふ、ふざけるな!この期に及んでまだそんな冗談を!』

「冗談なんかじゃない」

 

弦太郎の思いもよらない言葉に動揺するクロウゾディアーツ。そんな相手の反応を見て、今度は士が立ち上がる。

 

「こいつは友達(ダチ)を思いやり、友達(ダチ)のために戦える男だ。そして、お前のような力でねじふせるような奴でさえ、こいつは受け入れ、友達(ダチ)になろうとする。友達(ダチ)が道を間違えれば自分が正し、自分が間違えれば友達(ダチ)が正してくれる。それこそが友情であり、お前のような仮染めで不安定なものじゃない、こいつの確固たる真の力だ!」

 

そう言い終わると士は、弦太郎と並ぶように立つ。

 

『くっそ、お前は……そういうお前は何者なんだ!』

 

クロウゾディアーツの言葉に答えるように、弦太郎はフォーゼドライバーを装着し、四つのレバーをオンにする。

 

「俺は……通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ!」

 

『three』

 

士がディケイドライバーを装着する。

 

『two』

 

そして、ライドブッカーから一枚のカードを取り出す。

 

『one』

 

士はカードを右手で持ち、前に掲げる。そして―――

 

「「変身!」」

 

『kamen rider Decade』

 

二種類の電子音が流れ、士は仮面ライダーディケイドに、弦太郎は仮面ライダーフォーゼへと変身した。

 

「宇宙キターーーーーッ!」

 

フォーゼは空高く両拳を突き上げた。

 

『くそッ!僕は認めない……認めないぞ!』

 

激昂したクロウゾディアーツが二人に向かって走り出す。

 

「いいぜ。俺らが相手になってやる!」

「ああ」

 

そして、二人の言葉に呼応するかのように、ライドブッカーから三枚の絵が描かれていないカードが飛び出す。ディケイドがそれを受け取ると、三枚のカードからそれぞれフォーゼの絵が浮かび上がった。

ディケイドはその内の一枚を、ベルトに挿入する。

 

『final form ride F F F Fourze』

 

すると、フォーゼの背中と両手両足にオレンジ色のパーツが装着された。

 

「うぉっ!何だこれ!?」

『食らえ!』

「ッ!?危ねッ!?」

 

クロウゾディアーツの攻撃を、フォーゼは装着されたオレンジのパーツで咄嗟に守る。

 

「弦太郎。ちょっとくすぐったいぞ」

 

ディケイドは、敵の攻撃を防いでいるフォーゼの背中を軽く叩く。すると、背中のパーツが頭に覆い被さり、両手足が折り畳まれ、身体全体を囲うようにオレンジのパーツが展開する。最後に、脚部分からロケットエンジンノズルが現れ、フォーゼは【フォーゼロケット】へとファイナルフォームライドした。

 

「げ、弦太郎が……」

「変形したーーー!?」

 

まるで、弦太郎が愛用するロケットスイッチのロケットに酷似した姿になったフォーゼを見て、賢吾とユウキは度胆を抜かれた。

 

『な、なんだそれは!』

『士!こいつは……』

「そうだ。これが、俺とお前の力だ」

 

ディケイドがフォーゼロケットの背中にある取っ手を掴む。すると、下のノズルから推進剤が噴射される。

 

「はぁっ!」

『なッ―――ぐあッ!』

 

ディケイドはロケットの推進力を利用して敵に突っ込むと、そのまま敵諸とも工場の天井を突き抜け、空へと飛翔する。

そして、ディケイドはカードを一枚取り出し、再びベルトに挿入する。

 

『final attack ride F F F Fourze』

 

ディケイドは敵を振り下ろすと上空で旋回し、今度は敵の方へと向かっていく。そして、ロケットの推進方向へ右足を突き出す。

 

「はあぁぁぁっ!」

『行くぜ!ディケイド・ロケットキィィィック!』

 

ディケイドとフォーゼの必殺技が、空中で身動きの取れないクロウゾディアーツへと炸裂する。

 

『うわぁぁぁっ!』

 

必殺技が直撃したクロウゾディアーツは、そのまま爆散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天ノ川学園高校の校門前。そこで、私服に着替えた士がバイクのエンジンをかけていた。

 

「もう行っちまうのか?士」

 

その校門には、士を見送りに来た弦太郎、ユウキ、賢吾が立っていた。

 

「ああ。この世界での、俺の役割は終わったみたいだからな」

「そっか。寂しくなるね」

「心配ねえさ。例えば離れてたって、俺達はずっとダチだからな」

「まったく、お前はいつも変わらないな」

 

少し悲しそうなユウキ、満面の笑みを浮かべて見送る弦太郎、皮肉混じりにだけど優しく微笑む賢吾。三人の表情が士の心に刻まれる。

 

「じゃあな」

「おう!また会おうな!」

 

最後の別れを軽く済ますと、士はバイクに跨がり学園を後にするのだった。

 

「行っちまったな」

「ああ」

「そういえば弦ちゃん。士くん帰っちゃったけど、学園祭の出し物はどうするの?」

「……あ」

「お前、気がつかなかったのか?」

「全然考えてなかった!あぁーもう!こうなったら俺達だけでやるしかねぇ!」

「おぉ!その意気だよ、弦ちゃん!」

「まったく、また暫くは騒がしくなりそうだな」

 

 

 

 








「帰ったぞ」
「士君!一体今まで何処に行ってたんですか!?心配したんですよ!」
「おーい、コーヒーくれ」
「ちょっと!ちゃんと聞いて下さい!」
「まあまあ、落ち着いて夏美ちゃん」
「はい、士君。コーヒー……っと、おおっとっとっと!」
「お、おじいちゃん!?危ない!」
「―――ふう。なんとかコーヒーは零れずに済ん「貰うぞ」だって士!取って貰ってそりゃないだろ」
「痛たたた……あれ?また新しい幕が」
「これは……赤い魔法陣?」
『Connect』
「ん?」
『please』
「うぉっ!」
「つ、士君!?」
「士が突然空中に現れた魔法陣の中に引きずり込まれた!?」
「そんな説明口調で話してる場合じゃないです!また士君が何処か行っちゃいました!」
「これが……魔法。いや~長生きはしてみるものだなぁ」
「おじいちゃんも関心してないで、士君を探して下さい」
「わ、わかったよ!」



仮面ライダーディケイド
―――その瞳に何を見る


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ウィザードの世界

今回はウィザード本編52、53話の改変です。


 

 

『助けて―――』

 

「何だ?今の声……このでかい魔法石の中から?」

 

『助けて!』

 

「うおっ!?何だ!?吸い込まれ―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何処だ?此処は」

 

士は、光写真館に居たところを謎の魔法陣に引き込まれ、気がつけば見知らぬ森の中に居た。

 

「あの魔法陣の絵、恐らくウィザードの世界だと思うんだが……」

 

急に放り出されて行く宛てもない士は辺りを見回す。すると、近くから草木を掻き分けて走る足音が聞こえてきた。

 

「ん?何だ?」

 

士は物音のする方へと歩き出す。すると、その途中で走っていた二人組の子供が士にぶつかった。

 

「痛っ!」

 

士にぶつかって転んだ子供達。それは、大きな木箱を大事そうに抱えている少女と、彼女の手を引く活発そうな少年だった。

 

「おいおい、大丈夫かよ」

「……コヨミ、行くぞ」

 

だが、少年は士のことを気にも止めず、コヨミと呼ばれた少女の手を引き歩き出す。しかし―――

 

『グォォォ……』

『キシャアッ!』

 

彼らの行く手は、突如として現れた怪人達の手によって阻まれた。

 

「っ!ハルト!」

「あいつら、もう追いついたのか!」

 

ハルトと呼ばれた少年はコヨミと怪人たちとの間に入り、彼女を守るように立つ。だがその手は、決して敵わない相手と相対している為か、小刻みに震えていた。

そんな彼らの様子を見兼ねた士は、二人の方へ歩き出し、少年よりも前に出たところで立ち止まった。

 

「アンノウンにオルフェノクにファンガイアか……随分と纏まりのない奴らだな」

「お、おい!危ないぞ!」

「餓鬼は引っ込んでろ」

 

そう言うと、士はディケイドライバーを腰に装着し、ライドブッカーから一枚のカードを取り出す。

 

「変身」

 

【kamen rider Decade】

 

そしてベルトにカードを挿入し、士は仮面ライダーディケイドに変身した。

 

「ハルト!あれって!」

「仮面、ライダー……」

 

驚く二人を余所に、ディケイドは怪人たちへライドブッカー・ガンモードの銃口を向ける。

 

【attack ride blast】

 

『グォッ!?』

『ギャッ!?』

 

ライドブッカーの分裂した複数の砲台から放たれた銃弾は、ホーミングしながら怪人たちに被弾する。そして、ディケイドは空かさずライドブッカーをソードモードにする。

 

「はぁっ!」

『ギィッ!?』

 

間髪入れず、ディケイドはライドブッカーで怪人たちへ切り掛かる。

 

『グォ……』

 

【final attack ride D D D Decade】

 

怪人たちが怯んだ隙に、ディケイドは再びベルトにカードを挿入する。すると、ディケイドと怪人たちの間に10枚のホログラム状のカード型エネルギーが現れる。

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

ディケイドは10枚のカード型エネルギーを潜り抜けながら突進し、強化されたライドブッカーの刀身で放つディメンションスラッシュで、敵を両断した。

 

『グォォォッ!』

『キシャァァァッ!』

 

横一閃に放たれた必殺の剣により、怪人たちは爆発した。

 

「まあ、ざっとこんなもんか」

 

怪人たちを倒したことを確認したディケイドは変身を解く。

 

「おいお前ら、大丈夫―――」

「仮面ライダー!」

 

士が子供達の方へ振り返ると、二人は士の台詞を遮るように食い気味に言葉を出す。

 

「ライダー!私たちを助けて!」

「……何だと?」

 

 

 

―――――――――――――――

 

――――――――――

 

―――――

 

 

 

「人間が怪人になる世界?」

「ええ、そうなの」

 

コヨミの打ち明けた信じられないような話を聞き、士は思わず自分の耳を疑った。

 

「でも、俺たちは怪人になんかなりたくない。だからこの世界から脱出するんだ」

 

まだ士に警戒心を持っているのか、ハルトは少し睨みつけるような目つきで士を見る。

 

「やっと……やっと突き止めたんだ。その方法を」

 

そう言うとハルトは視線を下げる。その手は、彼の硬い決意を表すかのように力強く握りしめられていた。

 

「なるほど。大体分かった。それで、怪人たちはその脱出に使うその秘宝とやらを狙って、お前たちを襲っていたってわけか」

 

そう言って、士はコヨミの持つ木箱に目を向ける。

 

「多分そう。きっと、アマダムの命令で私たちを……」

「アマダム?」

「この世界の支配者だよ。そして、この世界で一番強い奴だ」

 

ハルトはぶっきらぼうにそう答え、コヨミの持つ箱に一瞬視線を向けると、再び士の方へ振り返った。

 

「あいつらは、俺達が探し当てた秘宝を奪うつもりなんだ。自分に歯向かう力になりうる可能性を潰すために。こいつには、多分それだけの力がある」

「だったら、さっさとこの世界から脱出すればいいじゃないか。秘宝はもう手元にあるんだろ」

「駄目なの。この世界の魔力が最も高まる(とき)、地球が空のちょうど真上に昇った時じゃないと」

「地球?」

 

コヨミに言われて空を見上げると、そこには月のように薄っすらと空に浮かぶ地球の姿があった。

 

「この世界は……地球じゃなかったのか」

 

その幻想的な景色を見て思わず零れた疑問は、誰の耳にも届くことがなかった。なぜなら―――

 

「ようやく見つけた」

 

再び、子供たちにとっての招かれざる客が来たのだから。

紅く輝く丸い宝石を模したマスクに、全身を覆う黒い衣。その姿からは、先の怪人たちとは明らかに違う、正義の躍動を感じさせる。

 

「なるほどな。あんたがウィザードか」

 

彼こそは仮面ライダーウィザード。この――正確には今いる世界の外の――世界の仮面ライダーだ。

 

「さあ、その箱を渡してもらうぞ」

 

ウィザードは子供たちに促すように手を差し出す。しかし、コヨミは木箱を力強く抱え、ハルトはコロミを庇うように両腕を広げて前に立ち、ウィザードを睨みつける。

 

「……渡すんだ」

「い、嫌だ!」

 

ウィザードの要求に対して、ハルトは声を震わせながらも力強く叫んだ。

 

「子供のおもちゃを取り上げるなんて、随分と大人気ないんじゃないか?」

 

すると、今までのやり取りを横で眺めていた士は、皮肉交じりの口調でウィザードに話しかけた。

 

「なんだ、あんたは」

「俺は、まあ……こいつらのお目付け役、ってところだな。―――変身」

 

【kamen rider Decade】

 

そうして、士は再びディケイドへと変身し、ウィザードと相対する。

 

「ッ!?あんた一体!」

「ほら、さっさと行け」

 

驚くウィザードを無視し、ディケイドは二人に逃げるよう促す。それを見たハルトは、横目でディケイドの姿を捉えながら、コヨミの手を引いて走りだした。

 

「あっ、待て!」

「悪いが、そうはいかない」

 

二人を追おうとするウィザードの行く手をディケイドが遮る。

 

「どいてくれ!今はあんたの相手をしてる暇はない!」

「残念だが、お前には少し付き合ってもらうぞ。はぁっ!」

 

慌てるウィザードを余所に、ディケイドはライドブッカーを握り、ウィザードに斬りかかる。

 

「ちぃっ!」

 

【Lupacchi Magic,Touth to Go】

【Connect please】

 

ウィザードはディケイドの一撃を、魔法陣から取り出したウィザーソードガン・ソードモードで受け止める。

 

「だったら押し通させてもらうぞ!」

 

ウィザードは腰に着けている指輪を1つ取り出し、左手の中指に填める。そして、指輪を填めた手をベルトに翳す。

 

【Hurrycane please】

Air(フゥ),Air(フゥ)!Air(フゥ),Air(フゥ),Air(フゥ)Air(フゥ)!】

 

宝石を模したマスクは緑色の逆三角へと変わり、ハリケーンスタイルとなったウィザードは、全身に風を纏い飛翔する。

 

「はあぁぁっ!」

 

そしてディケイドから離れた上空で、ウィザーソードガン・ガンモードから風を纏った弾丸を発砲する。

 

「ちぃッ!」

 

自身の攻撃は届かないディケイドは、為す術なくウィザードによる一方的な銃撃に晒される。

 

「だったら、こんなのはどうだ!」

 

【kamen rider OOO】

 

ディケイドはライドブッカーからカードをベルトに挿入し、仮面ライダーオーズ/OOO・タトバコンボへと変身した。

 

「ッ!姿が変わった!?」

「はぁっ!」

 

ウィザードが気を取られた隙に、Dオーズはバッタレッグの力を使ってウィザードが浮遊している空中へと跳躍する。

 

「何ッ!?」

 

そして、トラアームの鉤爪でウィザードへと掴みかかる。

 

「このッ……離せ!」

「そうはいくか!はぁっ!」

「うわッ!」

 

空中でバランスを崩したウィザードは、ディケイド諸共地面へと落下した。

 

「くそっ!」

 

【Water please】

Water(スイ) Water(スイ) Water(スイ) Water(スイ)~】

 

空中での利を生かせないと判断したウィザードは、蒼く輝く宝石のウォータースタイルへとスタイルチェンジする。そして、今度は右手の中指に指輪を填め、再びベルトに右手を翳す。

 

【Liquid please】

 

すると、ウィザードの体は指輪の力により青い液体へと変化した。

 

『これで、しばらくおとなしくしてもらおうか』

「何だと―――ぐッ!」

 

液体と化したウィザードはそのままディケイドに巻きつき、動くを封じる。

 

「RXみたいな能力か……だったら」

 

Dオーズはウィザードに動きを阻まれながらも、なんとかライドブッカーから1枚のカードを取り出す。

 

【form ride OOO SYA-U-TA】

 

それをベルトに挿入すると、Dオーズはシャウタコンボへとコンボチェンジする。

 

「はぁぁぁああっ!」

 

そして、ウナギアームの撓る鞭をウィザードごと自身に巻きつける。そして、鞭から電撃を発生させる。

 

「がぁぁッ!」

 

ディケイドの捨て身の電撃攻撃によりウィザードは弾かれ、液化が解除されてしまった。

 

【form ride OOO RA-TORA-TA】

 

Dオーズは、ウィザードが怯んでいる隙にラトラーターコンボへコンボチェンジする。

 

「でりゃあっ!」

「な―――ぐぁッ!」

 

Dオーズは、チータレッグによる高速移動でウィザードを掻き乱し、すれ違いざまにトラアームの鉤爪でウィザードを切り裂く。

 

「速―――がはぁッ!……くそッ!」

 

【Land please】

E-E-E-E-Earth(ド・ド・ド・ド) Earth()!E-E-E-E-Earth!(ド・ド・ド・ド)!】

 

当初とは一転して劣勢になったウィザードは、Dオーズの連続攻撃に対処すべく、防御力の高いランドスタイルへとスタイルチェンジする。

 

【Deffend please】

 

そしてウィザードは、向かってくるDオーズと自身の間に岩の壁を出現させる。

 

「この程度の壁」

 

【form ride OOO SA-GO-ZO】

 

Dオーズはサゴーゾコンボへとコンボチェンジし、さっきとは一転して重々しく力強い歩みで岩の壁へと近づく。

 

「はあぁぁぁっ!」

 

雄叫びと共に、Dオーズが岩の壁に向かって両手でパンチを繰り出す。すると、堅固な岩の壁が物の見事に粉砕した。

 

「マジかよッ!?」

「はぁっ!」

「うおッ!?危なッ!」

 

先ほどのラトラーターコンボの攻撃よりも強力、しかし鈍重な攻撃を、ウィザードは不意を突かれたとはいえなんとか躱す。

 

「なんて奴だ……」

 

ウィザードはDオーズから距離を取り、再び睨み合いが始まる。

 

「おい。何故お前はあの二人を狙う。アマダムの命令か?」

 

ここで、Dオーズがウィザードに問い掛ける。

 

「別にいいじゃないか。たかが子供の一人や二人、外に出してやったって」

「そうは行かない。あの子たちがやろうとしていることは、そんなことじゃすまない」

 

そう言うウィザードの言葉からは、何か切迫したものを感じた。

 

「?どういう―――」

 

しかしDオーズの疑問は、突然の来訪者によって遮られた。

 

『新たな仮面ライダーか』

「ッ!?お前らはアマダムの手下の!」

 

森の奥から、再び様々な世界の怪人の集団が現れた。

 

「秘宝なら俺が取り戻す。だから手を出すなといっただろ!」

『知らんな。我らは我らで動く。邪魔をするなら、容赦しない!』

 

そこまで言うと、怪人たちはウィザードとDオーズに襲い掛かって来た。

 

「くそっ!」

 

【Flame Dragon】

Burn(ボウ)Burn(ボウ)Burn(ボウ) Burn(ボウ) Burn(ボウ)!】

 

ウィザードは再び左手に指輪を填め、フレイムスタイルを更に強化したフレイムドラゴンスタイルへとスタイルチェンジした。

 

「なるほど。色々と事情がありそうだな」

 

【form ride OOO TA-JA-DORU】

 

ウィザードの様子に何かを感じながらも、Dオーズはタジャドルコンボへと変身する。

 

「はあぁっ!」

「でりゃあっ!」

『ッ!?ぐがぁッ!』

 

ウィザードはウィザーソードガン・ガンモードの銃撃で、Dオーズはタジャスピナーから火炎弾を放ち、怪人たちを近づけさせない。そして、互いに合図するまでもなく、二人は弾丸の発射位置を調節して怪人を一箇所に集まるよう誘導する。

 

Very Nice(チョーイーネ)!Special Fabulous(サイコー)!】

【final attack ride O O O OOO】

 

ウィザードが右手に填めた指輪をベルトに翳すと、ウィザードの胸部からドラゴンの頭部『ドラゴスカル』が具現化する。一方のDオーズは、左腕に装着されたタジャスピナーにエネルギーを貯める。

 

「「はあぁぁぁぁぁっ!」」

 

そして、ウィザードのドラゴスカルから強力な火炎放射を放つ『ドラゴンブレス』と、Dオーズのタジャスピナーから放たれる6枚のセルメダルを模したエネルギー弾『セルメダルエネルギー弾』が、怪人たちに炸裂した。

 

『ぐあぁぁぁッ!!』

 

そして、ダブルライダーの必殺技が直撃した怪人たちは、そのまま爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで?お前は何故、子供たちが持つ秘宝を狙ってたんだ?」

 

変身を解除した士は、同じく変身を解除したウィザード・操真晴人に問いかける。

 

「……それは、この世界を破壊から守るためだ」

「世界の破壊、だと?」

 

士が聞き返すと、晴人は深刻な面持ちで話を続けた。

 

「あの子たちがやろうとしているのはこの世界からの脱出。だがその方法は、秘宝の力を使ってこの世界を破壊することなんだ。ここは魔石の中、怪人たちが暮らしている世界。もし、そんな世界が破壊されれば……」

「怪人たちが外の世界に溢れ出すってわけか」

 

なるほどな、と士は納得する。それならば、この世界の仮面ライダーである晴人が秘宝を狙う理由も分かる。だが……

 

「それなら、何を迷っている」

「迷う……俺が?」

「そうだろう?でなきゃ、戦っててあんな一方的な展開になってないだろ」

 

士の言葉に晴人は一瞬困惑する。しかし晴人は、士の言葉がスッっと自らの心の中に収まったように感じた。まるで、自分でも気がついていなかった、いや、目をそらしていた事実に気がついたかのように。

 

「そうか。迷っていた、のか……」

 

晴人はその言葉を皮切りに、ポツリポツリと話し始めた。

 

「あの二人は、小さい頃の俺と暦にそっくり……いや、あいつらはこの世界の(ハルト)(コヨミ)なんだ。俺が守りきれなかった暦を、あいつ(ハルト)は守ろうとしているんだ」

 

そう語る晴人の手は、いつの間にか力強く握られていた。

 

「怪人になりたくないあいつらにとって、この世界からの脱出はあいつらに残された最後の希望なんだ。でも、他の大勢の人々を守るためなら、この世界を壊す訳にはいかない。だから―――」

「何をいうかと思えば、そんなことか」

「なッ!?」

 

話を途中で遮った士の言葉を聞いて、晴人の表情が一変する。

 

「そんなことって、どういう意味―――」

 

晴人が士に向かって反論しようとした瞬間、士は晴人に人差し指を突き立ててそれを制する。

 

「お前は、魔石とやらの中であるこの世界の外から来たんだろ?何故入ってきた」

「何故って、そりゃ……」

 

晴人は士に言われ、魔石を発見した時のことを振り返る。あの時は確か―――

 

「助けて、って声が聞こえて。それで……」

「なら、もう答えが出てるじゃないか」

「え?」

 

士の言葉を聞き、あっけにとられる晴人。

 

「で、でも!あいつらの手助けをしてこの世界が壊れたら、怪人たちが!」

「勘違いをしてる。お前も、あの二人もな」

 

士は意味深な発言をすると、晴人に背を向けて歩き出す。

 

「お、おい!何処にいくんだ!」

「取り敢えず、あいつらを探しに行く。怪人に捕まったりでもしたらやっかいだからな」

「待てって!それなら俺も!」

 

 

 

 

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」

 

その頃、士と別れたハルトとコヨミは川辺を全力で走っていた。

 

「コヨミ!もうすぐだ、頑張れ!」

 

ハルトは、だんだん走る速度が遅くなっているコヨミに励ましの言葉で及びかける。しかし―――

 

「追いついたぞ!餓鬼ども!」

 

彼らの行く手を遮るように、一人の男が現れた。

 

「ッ!アマダム!」

「さあ、秘宝を渡してもらうぞ。やれ!」

 

アマダムの一声で、アマダムの背後から現れた怪人たちが一斉に襲いかかった。

 

「やめろ!離せ!」

「きゃっ!」

「コヨミ!」

 

二人の抵抗も虚しく、怪人たちに捉えられ、木箱を奪い取られてしまった。

 

「やったぞ。ついに我が手中に」

 

アマダムは怪人たちから秘宝を受け取ると、大事そうにその秘宝が入った木箱を撫で回す。

 

「返せ!」

「悪いがそうは行かん。が、安心しろ。お前の望みは叶えてやる。ふっふっふっ……」

「な、何?それって」

 

不敵な笑みを浮かべるアマダムに、ハルトは背筋が凍るような悪寒に襲われる。だが、その真意を聞こうとしたハルトの問いは新たな介入者によって掻き消された。

 

「待て!」

「その二人を返して貰おうか」

「ッ!仮面ライダー!」

 

そう。ディケイドとウィザード、二人の仮面ライダーがアマダムと怪人たちの前に現れた。

 

「誰かと思えば。秘宝回収の協力感謝するぞ、ウィザード。そして初めましてだな、ディケイド」

 

アマダムは、突然のライダーの登場にも特に驚いた様子もなく、柔らかい口調で応える。

 

「秘宝は手に入ったんだろ!?だったら、もう二人には用がないはずだ。二人を開放しろ!」

「確かに、最早用はないが……だが分からん。何故この二人を助けようとする?」

「何だと?」

 

ウィザードのその反応を見てアマダムは嬉しそうな笑みを浮かべ、話を続ける。

 

「この子たちはいずれ怪人になる。怪人になるということは、ライダーの敵になるということだ。それを態々助けたところで、新しく敵を増やすだけだと思わないかね?」

「ライダーの、敵?」

 

アマダムの話を横で聞いていたハルトは、ウィザードたちを覚えたような眼差しで見つめる。

 

「違う!俺は……」

 

子供たちの反応を見て困惑するウィザード。人々を助ける、怪人を倒す、この2つの間でウィザードは板挟みの苦しみを味わっていた。

 

「だったらなんだって言うんだ。そのことと、お前らからこいつらを助けることは何も関係ない」

 

しかし、ディケイドはアマダムの言葉など気にも止めず、アマダムに向かって走りだす。

 

「愚かな。はぁっ!」

 

しかし、アマダムがウィザードとディケイドに手を向けると、二人からカードとリングが引き寄せられ、アマダムに吸収されてしまった。

 

「何だ、と……」

「これは、力が、抜け……」

 

突然の出来事に二人は抵抗もできず、力が抜けてその場に膝をついてしまった。

 

「仮面ライダー!」

「はっはっはっー!ライダーが俺に叶うと思っているのか!怪人たちの長である、すべての怪人の起源(はじまり)の力を持つこの俺に!」

 

彼の前で力なく屈する二人を、アマダムは高笑いをしながら見下す。

 

「何でだよ……ライダーなら、怪人を倒してくれるんだろ!そして、俺のことも……」

 

ハルトは正義の味方への期待といずれ自分の敵になる恐怖が入り混じりながら二人を見つめる。

 

「無駄だ!起源(はじまり)の力を持つ俺に、敵う怪人など居ない。それが仮面ライダーであっても……いや、仮面ライダーだからこそな!」

 

アマダムは口角を釣り上げ、笑みを浮かべる。

 

「そうだ!この力があれば、奴らに復讐できる!俺を封印した、あの忌々しい魔法使い共に!」

「……なるほどな。やはり……そういうこと、だったか」

 

アマダムの独白を聞き、ディケイドは弱々しくもその場に立ち上がった。

 

「お前の正体は、かつてこの世界に封印された魔法使い。子供たちをそそのかして秘宝を見つけさせた、そんなところだろ?」

「っ!?そうか!お前の目的は、最初からこの世界を破壊し外に出ること!」

 

ディケイドの言葉を聞き、ウィザードがアマダムの真の目的に気づく。

 

「ふん!今更気がついたところでもう遅い!秘宝は俺の手に、そして今の俺にはこの力がある!貴様らが罪を、炎の十字架(クロスオブファイア)を背負っている限り、俺には勝てん!はあぁっ!」

 

アマダムが再びその手を相手に向けると、突如発生した謎の衝撃波がディケイドとウィザードへ襲いかかった。

 

「何!?―――うわッ!」

「ディケイド―――がッ!」

 

弱った二人は為す術もなくそのまま吹き飛ばされ、変身も解除されてしまった。

 

「ッ!?ディケイド!ウィザード!」

「俺の力は怪人たちの起源。俺と同じ起源から生まれたお前たちの力を、俺は奪うことができる!」

「……怪人とライダーが、同じ?」

 

ハルトの狼狽する様を楽しそうに眺めるアマダムは、ハルトに真実を突きつけるべく話し続ける。

 

「ライダーは言うなれば怪人の成り損ない。そこのウィザードは、サバトの儀式でファントムに成り損なった者。ディケイドに至っては、本来大ショッカーの大首領となるべく生まれた存在。仮面ライダーとは、我々と同じ悪の存在なのだ!」

 

そう言うと、アマダムは苦しみながら横たわっている士と晴人を見る。

 

「俺に刻まれた炎の十字架(クロスオブファイア)が反応し、力を奪えたことが何よりの証拠。それこそ、貴様らに炎の十字架(クロスオブファイア)が、悪から生まれたという罪の証が宿っている証拠だ」

「そんな……」

 

声を大にして笑い続けるアマダム。そんな彼の言葉を聞き、ハルトは動揺する。たとえ自分が怪人になる運命なのだとしても、悪を挫き平和を守る、誰もが信じる正義の味方のはずの仮面ライダーが、悪の存在だったなんて。ハルトにとって、とても許容できることではなかった。

 

「ハルト……」

 

そんなハルトの様子をコヨミは心配そうに見つめる。なにか声をかけてあげたい、でもなんて声をかければいいのかわからない。そんな時―――

 

「それは……違うな」

 

コヨミの気持ちを代弁するかのように、士は地面に手をつき、立ち上がった。

 

「……かつて、敵だった獣人と友になった男が居た。かつて、人ならざる友のために自ら化け物(アンデット)になった男が居た」

 

士は仮面ライダーディケイドとして幾つもの世界を巡り、そして今まで出会ってきたライダー達を思い出す。

 

「俺たちは確かに、悪と同じ存在から生まれた。だが、その後の生き方まで悪に縛られる謂われはない」

 

士の言葉を聞いて、隣で倒れていた晴人も立ち上がる。

 

「俺の力は、確かにファントムの力だ。だが、それでも多くの人の希望を守ることができた」

 

瞬平、凛子、今まで助けた多くの人の笑顔が晴人に戦う力を与える。

 

「俺達だけじゃない。たとえ、悪の力を持つものが生まれようとも、その中に必ず現れる。俺達の後に続く者たちが」

 

二人のその視線は、さっきまで嘲笑っていたアマダムを射抜く。

 

「黙れ……黙れ黙れ黙れぇ!」

 

力を奪い、ライダーの存在意義を奪っても尚立ち上がる二人を見て、アマダムが怒りを露わにする。

 

「だったら!正義を自称する貴様らは何故こいつらを助ける!怪人、敵になるこいつらを!」

 

アマダムはハルトとコヨミを指差す。その様子を見た士は、アマダムに向かって言い放つ。

 

「俺たちは正義の為に戦うんじゃない。ある人は言った。『人間の自由のために闘うのだ!』ってな」

 

そう言うと、士と晴人はベルトを腰に装着する。

 

【Driver On please】

【Shabadoobie Touch to HENSHIN】【Shabadoobie Touch to HENSHIN】

 

ウィザードのベルトの待機音が、今まさに始まろうとしている戦いの前奏曲を奏でる。

 

「正義でもない、怪人でもない。だったらお前は……お前は一体何者なんだ!」

「俺は、通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ!」

 

士はカードを取り出し前に構え、晴人は左手の中指に赤い宝石の指輪を填める。

 

「「変身!」」

 

【kamen rider Decade】

【Flame please】

Fire(ヒー) Fire(ヒー),Fire(ヒー) Fire(ヒー) Fire(ヒー)!】

 

二人のベルトの音声と共に、二人は仮面ライダーディケイドと仮面ライダーウィザードに変身した。

 

「小癪な!出てこい!怪人たちよ!仮面ライダーを始末しろ!」

 

アマダムの一声で、ハルトたちを拘束していた怪人たちも含め、周りに潜んでいたすべての怪人たちがライダーの前に集まる。そして、仮面ライダーを見据えると一斉に走りだす。

 

「悪いが、雑魚の相手をしている暇はない」

 

【attack ride illusion】

 

ディケイドがカードをベルトに挿入すると、イリュージョンの力によりディケイドが3人に分身する。

 

「そんなこともできるのか!だったら俺も」

 

【Copy please】

【【Copy please】】

 

ディケイドの分身を見たウィザードは、複製の魔法であるコピーを使って自身を2人に増やし、更にそれぞれがもう一度コピーを使うことで、最終的に自分を4人に複製した。

 

【【【final attack ride D D D Decade】】】

 

【【【【Very Nice(チョーイーネ)!Kick Strike!Fabulous(サイコー)!】】】】

 

「「はあぁぁぁぁぁっ!」」

 

3人のディケイドによる多重ディメンションキックと4人のウィザードによる多重ストライクウィザードが怪人たちに放たれ、怪人たち一掃した。

 

「何ぃ!?だが、力の殆どを奪われた貴様らなど取るに足らぬわ!」

 

怪人を根こそぎ倒されたアマダムは、自らの姿を怪人へと変身させる。

 

「それはどうかな?」

『なんだと?』

 

しかし、そんなことに全く動揺しないディケイドは、ライドブッカーから1枚のカードを取り出した。

 

「少しくすぐったいぞ」

 

【final form ride W W W Wizard】

 

「え?ちょ、何を―――」

 

ディケイドはウィザードの背中に触れると、ウィザードに龍の爪、翼、尻尾が具現化する。そして、頭に覆いかぶさるように龍の首と頭部が具現化すると、ウィザードの身体全体が魔力の鱗で覆われ、ウィザード・ドラゴンへとファイナルフォームライドした。

 

『俺がドラゴンに!?』

『な、何だその力は!?』

 

力を奪ったはずの二人から巨大な力を感じたアマダムが、驚愕の表情を浮かべる。

 

「これが、俺とこいつの新たな力だ」

『そういうことなら、覚悟してもらおうか。ハァッ!』

 

ウィザード・ドラゴンはその翼で飛翔すると、アマダムに向かって突っ込む。

 

『ぐッ!』

 

その巨体から繰り出される衝撃に耐えられるはずもなく、アマダムは大きく後方に吹き飛ばされた。

 

『まだまだ!はぁっ!』

 

ウィザード・ドラゴンは追撃に、自らの尻尾をアマダムに叩きつけた。

 

『ぐあぁぁぁッ!』

 

追い打ちを食らったアマダムは力を急速に消耗し、遂には吸収したはずの二人の力を解き放ってしまった。

 

「力は返してもらったぜ」

『お、おのれ……だったら、こいつらならどうだ!』

 

壁に力無くもたれ掛かるアマダムが手を振り上げる。すると、何処からともなく魔化魍バケガニ変異体とエラスモテリウムオルフェノク激情態の、二体の巨体な怪人が現れた。

 

「ウィザード。でかいサイの方は任せろ」

『ああ、分かった』

 

バケガニをウィザード・ドラゴンに託すと、ディケイドはケータッチを取り出す。

 

【Kuuga Agito Ryuki Faiz Blade Hibiki Kabuto Den-O Kiba】

【final kamen ride Decade】

 

ケータッチに宿った9人の仮面ライダーの力により、ディケイドはコンプリートフォームへと強化変身した。

 

【Faiz kamen rider Blaster】

 

ケータッチにあるファイズのボタンを押すと、ディケイドの横にファイズ・ブラスターフォームが出現する。

 

『■■■■■■■■■■!!』

 

最早、人語を話すことすら忘れたエラスモテリウムオルフェノクは、ディケイドの姿を確認すると興奮した様子で突っ込んできた。

 

【final attack ride F F F Faiz】

 

迫り来る巨体に臆することなく、ディケイドはディケイドライバーにカードを挿入する。そして、背部からエネルギーを噴射してエラスモテリウムオルフェノクの突進攻撃を躱し、頭上へと飛翔する。

 

「はあぁっ!」

 

そして、ディケイドとファイズは落下速度を利用して、渦巻くフォトンブラッドで周囲を薙ぎ払いながら『ブラスタークリムゾンスマッシュ』を同時に放った。

 

『■■■■■ッ!』

 

ディケイドとファイズの必殺技が直撃したエラスモテリウムオルフェノクは、赤いΦ模様の残像を残し、灰となって消滅した。

 

『ギギギッ!』

『たあっ!』

 

一方のウィザード・ドラゴンは翼による竜巻攻撃でバケガニの動きを封じていた。

 

『これでどうだ!はぁっ!』

 

そして、炎のブレス攻撃を放ち、それが竜巻と合わさることで炎の竜巻となってバケガニを襲った。

 

『ギギ……ギ……』

 

硬い甲殻を4持つバケガニも炎攻撃には耐えられなかったのか、最後にはその場で力尽きた。

 

「さあ、後はお前だけだ、アマダム」

 

巨大怪人を倒し終えたディケイドと人間形態に戻ったウィザードがアマダムと相対する。

 

「何故だ……何が違うというのだ!俺と、お前たちが!」

「それがわからないようじゃ、俺達には勝てない!」

 

【final attack ride W W W Wizard】

 

ウィザードは再びドラゴンの姿になり飛翔すると、更に変形して龍の鉤爪のような形となる。そして、ディケイドも跳び上がると、変形したウィザード・ドラゴンにその足を合体させる。

 

「はあぁぁぁぁぁっ!!」

 

そしてディケイドは、巨大な自身の幻影を纏い、ウィザード・ドラゴンと一体となって『ディケイド・ストライクエンド』を放った。

 

「何故だ……お前たちと俺は、同じ力を……」

 

そして、ディケイドとウィザードの必殺技が直撃したアマダムは、その場で爆発した。

 

 

 

 

 

「ごめんな。結局、お前たちを外に連れて行ってやれなくて」

 

晴人は気まずそうにハルトに謝る。世界の崩壊を防ぐ為には、住人であるハルトたちを連れていく訳にはいかないからだ。

 

「ううん。いいんだ」

 

しかしハルトの瞳は、先程までのすべてを拒絶するようなものとは違い、希望に満ち溢れていた。

 

「怪人になったって、悪い奴になるとは限らないって分かったから」

 

そう言うとハルトは、今度は士に視線を向ける。

 

「俺もなれるかな?仮面ライダーに」

「さあな。それを決めるのは俺じゃない」

 

すると、士はぶっきらぼうな態度でハルトに1枚の写真を渡す。

 

「お前自身だ」

「……うん!」

 

渡された写真を見たハルトは、嬉しそうに、力強く頷いた。

 

「じゃあ、俺は元の世界に戻るか。お前はどうするんだ?士」

「変わらないさ。また旅を続ける、それだけだ」

 

すると、士の目の前に銀色のオーロラが現れる。

 

「……俺をこの世界に呼んだのは、お前の魔法だったのかもな。ハルト」

 

士は小さな声で呟きながら、ハルトに渡した写真を思い浮かべる。それに写っていたのは、コヨミの手を繋ぐハルトの姿と、背景にぼやけて重なるウィザードの姿だった。

そして、士はオーロラを潜り、新たな世界へと旅立つのだった。




この後、次回予告の「10vs44」に続く予定です。(続くとは言っていない)


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