トニー・スターク が あらわれた ! (クレイジー松本キヨシ)
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フェイズ0
プロローグ ――天才、転生


話の内容が思いついたら書いていくスタイルになると思います。

転生の原因がやや強引かもしれませんが、許してください。
何でも…(ry


キャプテン・アメリカこと、スティーブン・グラント・ロジャースが率いる反対派ヒーローと、僕が率いた賛成派ヒーロー同士での大規模な内戦。

 

シビル・ウォーと呼ばれる闘いは、様々な爪痕を残した。

 

キャプテンが率いたヒーロー達は、一度は監獄に入れられたものの、キャプテンの手によって脱獄、その後は行方不明になった。

 

その時、キャプテンから送られた1つのケータイは、送られたメッセージと共に僕が大切に保管している。

このことは僕以外に知る人間はいない。

 

 

 

そして僕のことなんだが……。

 

 

重度の心臓病を患い、それが悪化して死んだ。

 

 

心臓近くに残っていた兵器の破片を取り除いた手術の後遺症なのか、はたまたアークリアクターによる後遺症なのかはわからない。

だが、シビル・ウォーによる精神的疲弊、ストレスが重なり、心臓病を患ったのは確かだ。

 

僕はキャプテンやバナーのように、超人ではない。

 

だから僕はスーツに頼らなければ闘えない。

そして病には勝てない。

 

 

僕はこの死を、仕方なく受け入れてしまった。

 

心残りがあるとするならば、足腰が不自由になってしまったローディを助けられなくなってしまったこと。

 

そして、キャプテンと仲直り出来なくなってしまったことだろうか……。

 

 

 

 

 

 

 

さて、何故死んだ僕がこんな思考に浸っているのか。

 

それは僕が()()()いるからである。

 

何故かはわからないが、同姓同名でまた生まれたのだ。

思考できるようになった歳、まあ3、4歳頃になって、さすがの僕も混乱した。

何でこうなっているのかと。

 

まさか僕は過去に戻っているのかとも思ったが、どうやらそうでもない。

 

まず、父と母こそ同じだが、一般的家庭に生まれたことだ。

 

父は軍に関わっていない。むしろ普通の職、俗に言うサラリーマンというやつになっている。

母は家で家事をしている。

 

ここだけなら並行世界(パラレルワールド)とやらとも思うかもしれない。なんせアメリカは僕が知っている通りに戦争で勝っているから。

 

だが、この世界が前世と確定的に違うとわかったことがある。

 

 

アメリカの戦時中に、キャプテン・アメリカという兵士が存在していないのだ。

 

 

つまり、正義(ヒーロー)の原典とも言えるキャプテン・アメリカが存在しなければ、その対極である(ヴィラン)も存在しないのだ。

 

 

僕はこの出来事を知って唖然とした。そして前世とは違う世界なのだと、僕に知らしめたのだ。

 

そして僕はそんな世界で、どう生きれば良いのか、何故かわからなくなってしまったのだ。




変なところがありましたらご報告オナシャス、センセンシャル!

次回も少しプロローグ?


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プロローグ ――やはり造ってしまう

歳を取る。

プロローグではトニー視点と第三者視点。
プロローグ以降は第三者視点になる予定です。


何年か時が経ち、僕は12歳になったわけだが……。

 

とりあえず、前世と同じように生きてみることにした。

ただし、軍事兵器は造らないという方向性でだ。

 

軍事兵器を造っても碌な事にならないのは明白だし、身を持って知っている。それが原因かはわからないままだが、間違いなく僕が死ぬ要因にはなっているし。

 

なので、4歳で集積回路基盤を組み立て、5歳でエンジンを制作。

 

何?エンジンを造る歳が早い?

 

当たり前だ。材料さえ調達できれば、一度造ったことのある物を造るのなんて簡単な事だ。

 

材料やその資金はどこから調達した?僕がブログの広告、FXや株で金を儲けているんだよ。この時ほど前世の知識が役に立ったと思った事はない。

ブログの広告はFXや株に比べれば微々たる程度の物だがね。

その資金で材料は調達してる。

 

わかる通り、こんな事をしていれば周りから天才と呼ばれるようになる。

 

そんな周りからの評価に脇目も振らずに、僕は人工知能制作に手をつけていた。

 

そして、今。家の地下に僕の部屋兼研究室を造ってもらい、そこで幾度の試作を重ね、最新鋭の人工知能が完成した。

 

「よし……F.R.I.D.A.Y.気分はどうだ?」

『おはようございます、トニー様。問題無く稼働しています』

「そうか、それは良かった。これでやっとアレが造れる」

 

僕はディスプレイに映し出されている1つの設計図を見る。

 

……アイアンマンのスーツだ。

 

僕のスーツ依存症は、前世から引き継がれているみたいだ。僕はこれに関して苦笑する他なかった。

 

そして、そこから僕はアイアンマンのスーツに着手するのであった。

 

ああ、その前にブログに届いてる()()()()()()からのコメントを返さないと。このファン、中々筋が良くて僕に劣らない頭脳を持っているんじゃないかと思ってるんだよ。

 

○○○

 

日本。

 

とある家のとある部屋。

 

『不思議の国のアリス』を思わせるような服装を纏っている彼女――篠ノ之束はパソコンのモニターに釘付けであった。

 

モニターには英語で『トニー・スタークの開発日記』と銘打ったブログを読んでいる。

彼女も天才である故に、一々翻訳せずとも読めるのだ。

 

「――すごいなぁトニー・スタークは。私とそう年齢は変わらないのに、もう人工知能の開発を終わらせちゃったんだ」

 

束は楽しそうに、嬉しそうにブログを読む。

 

ちなみに、束よりもトニーの方が年齢は1つ上だ。

 

「私も頑張らなきゃ!」

 

束はトニーのブログを閉じ、フォルダを開く。

 

フォルダ名は『インフィニット・ストラトス』と書かれていた。

 




やっぱりプロローグはもうちょっとだけ続くんじゃ。


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プロローグ ――白騎士事件前日

ジャービスじゃない理由もちゃんとあるんやで。

合宿あたりにわかると思います。

※5月26日、21:46
今後の為、"無理"を"不可能"に変更しました。



15歳になった僕は今、マサチューセッツ大学で行われる、科学者の研究発表に参加していた。

 

いや、仕方なく参加したと言った方が良いのだろうか?

周りの大人達から、「君と同年代の子が出る」と聞いたからだ。そうじゃなかったら絶対来ていない。

 

というのも、アイアンマンスーツの開発が難航しているのだ。

まず、成長期である僕の身体にあったスーツと大人になった身長のスーツではサイズが違う。

とりあえず、前世での最終的な身長に合わせたスーツを主に造り、今の身長に合わせたスーツは1着だけ造った。

ここまで言っておいて何だが、身長の問題はどうとでもなると気づいた。

 

それよりも最大の難関である、スーツの動力源であるヴィブラニウムの精製だ。僕の前世の記憶を元に、精製をしようとしているんだが、これがどうにも上手くいかない。

これが無ければ、スーツの試験運用も出来ない。

パラジウムを使う手も考えたが、アレのせいで痛い目を見ている僕としてはあまり使いたくない。それにそんな急ぎでもないのでね。

 

とりあえず今は、自宅でF.R.I.D.A.Y.とロボットアームのダミーとユーが改善点を探してくれているだろう。

 

しかし、3年も改善点を探してはいるが、一向に見当たらない。

 

……それにダミーとユーが何かやらかさないか不安があるが。

 

そんなことを考えていると、僕の番が来たみたいだ。

 

とりあえず、人工知能と3Dホログラフィックモニターについて話そうかと思っている。

 

アイアンマンスーツについて話さないのかって?

 

あれは僕の自己満足の物だし、何より戦争に使わされそうで嫌だね。まぁ前世の時みたく、軍にスーツは渡さないよ。

 

……ローディもいないからね。

 

○○○

 

トニーが前に立つと、会場内の気が一瞬で引き締まる。

それ程、彼は凄い人物なのだ。

 

4歳で集積回路基盤を組み立て、5歳でエンジンを開発。そして12歳で最新鋭の人工知能を開発。

 

会場にいるみんながみんな、トニーが何を発表するかに興味と関心を抱いている。

 

トニーが前に立ち、マイクをONにして喋り始める。

 

『あー。んん、トニー・スタークだ。今回発表するのはみんなが期待してる程ではないと思うから、期待しないでくれ。じゃないと僕がプレッシャーで潰れそうだ』

 

何を言ってんだコイツは、と会場内にいる科学者はそう思い、笑う。

 

『じゃあ、まずは人工知能についての発表……。だけどこれはみんなが知っているかもしれないから飛ばそうと思う。ちなみに開発手段は開示しない。分野にもよるが、科学者なら自分で開発してくれ』

 

トニーはそう言う理由はちゃんとある。

 

前世でウルトロン計画を実施した時、世界が大混乱に陥ったからだ。

ヴィジョンやマキシモフ姉弟、そしてアベンジャーズの協力によってそれは打倒された。しかし、それによって起こった惨事も多いことをトニーはわかっている。

 

もしかしたら、ウルトロンのような人工知能を造る奴がいるかもしれない。そう思ったからトニーは開発手段を開示しないのだ。もし、誰かがウルトロンのような人工知能を造ったら、トニーはそれを破壊するつもりでいる。

 

『次で最後だが……。これは未発表。今回が初めての発表だ。既に僕の家では取り入れてる物。3Dホログラフィックモニターだ』

 

トニーが操作し、2()D()のモニターにその画像が映し出される。

 

『見てわかるように、モニターが3Dになっているだけ。ああ、タッチもできる。ん?そこの君、"信じられない"って顔をしているな。実際に見せてみよう』

 

今更だが、年上ばかりいる中でトニーの喋り方はあまりよろしくないだろうが、その年上の人間達が気にしてないので、トニーはその喋り方を続けている。

 

トニーはズボンのポケットから、ケータイサイズのガラスのような物を取り出すと、ステージの真ん中目掛け、それを手首で軽く振る。

 

すると、ステージの真ん中に3()D()モニターが現れた。

 

これに科学者達は騒めきを起こす。

 

『やっぱり3Dホログラフィックモニターの方が楽だね。さてと、ご覧の通り、自分の手でこのモニターを触って、動かすことができる』

 

トニーは3Dモニターの前に出ると、それを手で触り始める。

 

『この3Dホログラフィックモニターは既に完成されてはいるが、まだまだ改善の余地はある。だからこれに関しては僕が納得いく出来になったら、開発手段を開示しようと思う。あぁ、これを商品化するなら売り上げの50%は僕に渡すんだぞ。以上だ』

 

トニーはそれだけ言うと、ステージから降りた。

 

会場にいる科学者達は立ち上がり、今回最大の拍手をトニーへと送ったのであった。

 

○○○

 

さて、僕の発表が終わった次は篠ノ之束とかいう女性の発表だった。

 

どうやら彼女が僕と"同年代の子"みたいだ。

 

服装からして『不思議の国のアリス』を連想させるな。

 

彼女が前に立ち、発表が始まる。

 

研究発表内容は『インフィニット・ストラトス』。

 

宇宙空間での活動を目的としたパワードスーツ。

要は何がなんでも人命は守る宇宙服だ。いや、アイアンマンスーツに近いか?

 

僕は実に素晴らしい発明だと思ったが、周りはどうやら違うようだ。

「出来るわけがない」と罵る奴もいれば、ほくそ笑む奴もいる。

とりあえず、そんな奴らは無視して僕は彼女の研究発表を聞こう。

 

それに、どうやら彼女は僕のブログに熱心にコメントをくれたファンのようだ。なんでわかったかって?

最近になって、コメントだと嫌だという彼女とはチャットでよく意見交換をするんだが、その僕の意見が発表内容の所々に反映されているのを見てわかった。

 

僕は少し嬉しく思ったよ。同レベルの会話が出来るのは僕の造った人工知能かバナーくらいしか居なかったからね。

 

そしてその『インフィニット・ストラトス』。

大気圏内外でも高い機動力を有し、宇宙空間で邪魔な漂流物を撤去できるよう、武器も搭載されているようだ。

そして肝心の人命を守ることに関しては、2層のバリアによって守られるようだ。外側の層のバリアがもし破られたのなら、外側の層よりも出力の高いバリアがそれを守る。

 

彼女のアイディアはとても素晴らしい。特にバリアに関してはアイアンマンにも取り入れようかと思ったくらいだ。

 

しかし、周りの科学者はそうは思わないようだ。

 

彼女の発表が終わってステージから降りると、周りの科学者達は「不可能だ」だの、「机上の空論だな」だのと罵る。当事者である彼女は悔しそうに顔を伏せた。

 

少し癇に障った僕は、立ち上がって、拍手を彼女に送った。

 

それを見た周りの科学者達は、一気に鎮まり、彼女は僕を見る。

 

「素晴らしい研究じゃないか。人命をよく考えた良い研究だ。特に2層のバリアは僕も1本取られたよ」

 

僕がそう言うと彼女は少し嬉しそうな表情を見せる。

 

「そんなの不可能に決まってる」

 

ふと、誰かがそんな言葉を発した。

 

僕はその声がした方向を見て、反論してやった。

 

「不可能?じゃあ君はこれを実際に造ってみようとしたのか?造ってみようとした上で不可能と言ったのなら僕も不可能だと認めよう。どうだ?」

 

しかし、会場は静かなままだった。

 

()()()()()()にするのが科学者だと僕は思っている。だから、やる前から諦めるような奴は科学者を名乗らないでほしいね」

 

「まぁ、あくまで僕の意見だけどね」と付け加えて、僕はステージから降りた篠ノ之束に近づく。

 

そして握手を求めた。

 

「素晴らしい研究だ。頑張ってくれ」

「あ、ありがとう」

 

篠ノ之束はやはり嬉しそうに握手に答えた。

 

握手をし終え、これ以上この場にいても意味がないと思い、会場から退場し、自宅へと帰った。

 

 

 

 

 

 

篠ノ之束は憧れていたトニー・スタークに認められ、感激していた。

 

しかし、それもすぐに鎮まってしまう。

 

(凡人共にわからないなら、どうにかして見せつければいいじゃないか)

 

そう思いつくと、束もトニーの後を追うようにして会場から退場し、日本へと戻った。

 

○○○

 

自宅へ戻る途中、F.R.I.D.A.Y.からの電話があったので僕はそれに出る。

 

『トニー様、良いご報告があります』

「なんだ?まさかヴィブラニウムが精製できたのか?」

『そのまさかです』

「……なんだって?」

『ダミーが改善点を見つけ、そこを改善した所、上手くいきました』

「……そうか!ダミーに伝えといてくれ、良くやった、と」

『かしこまりました』

 

まさかの吉報に、僕は心が躍る。

自宅への足取りは、とても軽いものとなった。

 

 

 

 

ちなみにだが、褒められたダミーは嬉しそうにアームを回転させていたらしい。可愛い奴だよ、全く。

 

 




連投はこれで終わり。

ちなみに改善点とは、キャプテンの(レプリカ)シールドを挟んで高さを変えていた所。

それに気づかなかったトニーは少しお茶目。まぁしょうがないね。


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白騎士事件 ――前編

てぇーへんだ!てぇーへんだ!

スーツは私の好みでこれにした。異論は認め……


『トニー様、一大事です』

「……なんだF.R.I.D.A.Y.」

 

翌日。

無事生成できたヴィブラニウムを使い、スーツへの動力源として取り付けることができた。

 

何着もあるスーツに取り付けるのは一苦労であり、その日は大学を休んだ。

 

昨日から徹夜をしていたトニーは、昼寝をしていたところ、F.R.I.D.A.Y.に起こされた。

 

気持ち良く睡眠を取れていたトニーからしたら、少し不満があるが。

 

しかし、それもF.R.I.D.A.Y.の一言で眠気は吹き飛ぶ。

 

『アメリカ軍の固定ミサイルがハッキングされ、日本へと照準を合わし、発射しようとしています』

「何だって!?」

 

それを聞いたトニーは昼寝をしていたソファから飛び上がる。

 

「それは確かか!?」

『はい』

「アメリカ軍だけか?」

『日本を射程圏内とするミサイルの配備された軍事基地のコンピューターが全てハッキングされています。後は物理的な操作を行うのみです』

「ハッキングか……。そんなことできるのは僕くらいか?」

『トニー様?』

「冗談だよ、冗談」

 

トニーには心当たりがあった。

自分と劣らない才能、つまり天才である人物。

 

そうーー

 

「ーー篠ノ之束か」

 

トニーは呟いた。

しかし、その考えはすぐに消した。

軍がミサイルの管理をそう易々とハッキングされるような所に置かないだろうというのと、物理的な操作を必要とするからだ。精々砲台の方向を変えるくらいしかできない。

 

「じゃあ一体誰が……。日本が多方面からミサイルを守る手段があるとは……」

 

そこまで考えると、ある結論に至った。

そこからの行動は早かった。

 

「F.R.I.D.A.Y.、アメリカ軍事基地にハッキングして砲台の方向を変えるんだ。それと並行して現状のアメリカ軍事基地内の情報を集めてくれ」

『かしこまりました。トニー様は?』

「お出かけだ」

 

トニーはそう言うと、上着を脱ぎつつ、スーツが収納されているサークルへと足を運ぶ。トニーはタイツのような薄手の服装になっている。

 

『トニー様それは危険です。試験運用もしていなければ、空を飛ぶ計算もしてません』

「そんなものどうとでもなる。ちなみにこれは経験談だ」

 

サークルへと足を踏み入れると、上下からアームが出てきてトニーにスーツを纏わせる。

 

今の身長に合わせた唯一のスーツ。

 

『アイアンマン マークIII』

 

武装、色合いも前世そのまま。

唯一の変更点と言えば、動力源がパラジウムからヴィブラニウムに変わっているというところか。

 

「あぁ、やはり安心するな」

 

スーツを纏い終わったトニーは、小さい声でそう呟いた。

 

『ハッチ、開きます。充分なサポートは出来ませんのでご了承ください』

「わかってるよ。とにかくF.R.I.D.A.Y.は情報が手に入ったらこちらに回してくれ」

 

トニーはリパルサーレイを噴かし、飛び立った。

 

○○○

 

『あれ?』

「どうした、束」

 

日本上空。

織斑千冬は束から任された『白騎士』を纏い、空に待機している。

製作者の束は別の場所で千冬のバックアップをする予定だ。

 

現在、白騎士は世界各国から向けられたミサイルを撃墜――という名目で、ISの有用性を示そうとしている。しかし、ミサイルの発射などに関しては束は関わっていない。偶然なのだ。偶然にも、ISの有用性を示せる場が出来たから、束はその場を利用しているのだ。

 

『アメリカ軍のミサイルが発射されてないんだよ。砲台も元に戻ってるし……。こっちに向いてたんだけどなー』

「他国からもミサイルは飛んでくるんだ。むしろ1ヶ国分のミサイルが減って私は助かった」

『それもそうだねー。おっ、ちーちゃん来たよ!』

 

話していると、ロシア方面からミサイルが飛んできた。

 

千冬は白騎士に装備されている大型プラズマブレードを使い、次々とミサイルを斬り落としていく。

 

幸いにも海上のため、日本本土への被害は少ない。

 

「凄いな、このISというのは。実際に使ってる私にはわかる」

『へへーん、当たり前でしょ?なんてたってこの束さんが造ったんだから!』

「あぁ、そうだな」

 

千冬は友の言葉に思わずそう言い返し、口元に笑みを浮かべる。

 

(この白騎士と私なら、できる)

 

手にある大型プラズマブレードを握り直し、ミサイルを斬り落としていく。

 

○○○

 

各国から日本に迫るミサイルの脅威から千冬が奮闘している頃。

 

『逆探知を試みたところ、ハッキングをした者はアメリカ軍事基地内、管制室にいるようです』

「ナイスだF.R.I.D.A.Y.。ちょうど僕もアメリカ軍事基地に着いた」

 

軍事基地内に着陸すると、まず目に見えるのは倒れている人々だ。

 

生体反応からして、まだ生きている。

気絶しているだけだ。

 

「人手が少ない時に狙われたとはいえ、軍としてこれはどうなんだ?全く……ローディが見たら凄く怒るぞ」

 

かつての友の事を考えつつ、トニーは管制室へと向かう。

 

「F.R.I.D.A.Y.、管制室の中に誰かいるか?」

 

管制室の前に立ち、F.R.I.D.A.Y.に生体反応が無いか調べさせる。

 

『……1人の生体反応を感知しました』

「よし、突入だ」

 

リパルサーレイでドアを撃ち破って入る。

 

管制室にいた人物は突然のことに驚き、トニーの方を見る。

 

トニーはその人物にリパルサーレイを向けつつ警告した。

 

「大人しく投降した方が身のためだぞ」

「な、何もんだお前!」

 

相手の反応は当たり前である。

いきなり入ってきた人物が普通の軍人ではなく、ロボットのような人物が入ってきたからだ。

 

「悪党に名乗る名前はない」

「この!」

 

相手はかなりの速さで懐から1丁の拳銃を取り出し、トニーへと撃った。

 

しかし、そんな物がアイアンマンのスーツを貫くはずもなく、トニーはノーダメージである。

 

「はぁ……。僕は警告したぞ」

 

溜め息混じりにそう言うと、肩から麻酔針のようなミサイルを相手に撃った。

 

相手はそれに気づくことなく、気絶した。

 

「さて、とりあえずこいつを連れて外へ出るか。F.R.I.D.A.Y.、君はハッキングされた各国の砲台の方向を変えてくれ」

『かしこまりました』

 

 

 

 

トニーが外へと出ると、軍人が取り囲むようにしてトニーを待っていた。

指揮官が前に立ち、警告する前にトニーが喋った。

 

「今回の事件の関係者だ。ほら」

 

そう言ってトニーは片手で掴んでいた犯人を指揮官の前へと投げる。

指揮官が何か言いたげだったが、やはりトニーが先に喋り始める。

 

「僕はこれから日本に行って人助けをしないといけないから暇じゃない。あぁ、そうだ。戦闘機とか飛ばさないほうが良いぞ。損失が増えるだけだからな」

 

それだけ言うと、トニーはリパルサーレイを噴かせ、日本へと飛び立った。

 

○○○

 

F.R.I.D.A.Y.がハッキングし終える頃には日本に向かって撃たれていたミサイルは徐々に少なくなっていき、今ではもう撃たれる気配は無くなっていた。

 

「はぁ…はぁ…。どうだ、束」

『うん、ミサイルはもう来ないみたい。……待って』

「どうした束?」

 

急に真剣な様子に戻ったので、千冬は声をかける。

 

『……今度は戦闘機や艦隊がそっちに向かってる』

「何だって……?」

『ごめん、ちーちゃん……。まだ闘える?』

「任せろ。これを渡すわけにはいかんのだろ?」

『……うん!』

「引き続き、サポートは任せたぞ」

 

そこで一旦、通信を切る。

束も相手の数を調べなければならないからだ。

 

千冬は集中し直す。そのついでに、今回の真相について気になり始めた。

 

「しかし……何故日本に向かってミサイル何かを……。アメリカは何とか飛ばしてなかったが、他の国はどうしたというのだ……。まだISがあったから良いものの、無かったら大変な事に……。IS?」

 

そこで、千冬も少しづつ気付いてきた。

 

「ISが今回の引き金なのか?」

 

そこまで思考すると、束から通信が入る。

仕方なく思考を中断し、通信に応答する。

 

『戦闘機が207機、巡洋艦が7隻、空母が5隻みたい』

「数が多いな……」

『……ちーちゃん!12時の方向!』

 

束に指示された方向を見ると、ハイパーセンサーによって強化された視覚が、戦闘機を捉える。

 

「もう一踏ん張り……だな!」

 

千冬は気合を入れ直し、ブースターを噴かせた。




分けるんじゃ。

次回やっとISとアイアンマンが邂逅しますぞ!

※20:53追記
タグにオリキャラを追加しました。
ぶっちゃけると織斑家にもう1人の弟を登場させたいためです。
トニーのサイドキック的存在にしたいなぁと思っています。織斑兄弟の仲が悪いとかそういうのは考えてないです。
他にもちょっとした敵だったり生徒だったり…。そういうのでタグを追加しました。ご了承ください。


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白騎士事件 ――後編

F22のスペックを調べた。

※5月30日12時37分
誤字修正


――某国が所有している母艦。

 

千冬が次々と戦闘機を撃墜させていく中、船員は少しの不安を抱え始める。

 

そして、それは更に増大することになる。

 

オペレーターの1人が、モニターを見て叫んだ。

 

「未確認兵器が接近!マッハ1.58です!」

「米軍のF22か!」

「衛星映像、出ます!」

 

オペレーターが操作し、巨大モニターに衛生映像が映る。

 

そこに映っていたのは、米軍が保有するステルス戦闘機『F22』などではなく、人間サイズの赤と金色の装甲を纏った何かだった。

 

「どこの国のだ!?」

 

司令官がその映像を見て、オペレーターに怒声を放つ。

当たり前だ。戦闘機が白騎士に撃墜されている中にまたもや謎の兵器が現れたのだ。心情はあまりよろしくない。

 

「……未所属です」

「ッ!?ええい!我が軍の戦闘機はそいつを撃墜しろ!あの白いのは他の国も狙っているんだからどうにでもなるだろ!」

 

司令官は半ば自暴自棄になりつつ、怒気を孕んだ声で指示を飛ばした。

 

○○○

 

『トニー様、後方から戦闘機が3機接近しています』

 

日本の領空に差し掛かった辺りで、F.R.I.D.A.Y.が警告メッセージを発した。

 

「僕も敵と見なされた訳か。F.R.I.D.A.Y.、フレアの準備しとけよ」

『かしこまりました』

「ああ、それとF.R.I.D.A.Y.。エンジン部分と操縦席を避けつつ戦闘機を撃墜することは可能か?」

『難しいですが出来ないこともありません。少々お時間を頂きたいです。目標の指定と計算を行います』

「上出来だ。なら僕はドッグファイトを楽しむか」

 

トニーはリパルサーレイの出力を上げ、速度を上げる。

 

おおよそマッハ1.7は出ているかもしれない。

 

突然速度を上げたため、アイアンマンと戦闘機の距離が開く。

戦闘機も速度を上げ、距離を詰める。

 

「そうこなくっちゃな」

 

トニーはディスプレイに表示される後ろの映像を見ながら飛行を続ける。

よく見ると、戦闘機が徐々に近づき始めている。

 

戦闘機がトニーを射程圏内に捉えたところで、F.R.I.D.A.Y.が警告メッセージを発した。

 

『ロックオンされています』

 

それと同時に、戦闘機から追尾型のミサイルが飛ばされた。

 

バレルロールや急上昇、急降下を試してみるが……

 

「いくつか残ってるな……」

 

数弾の追尾型ミサイルは依然として、トニーの後を追っている。

 

「F.R.I.D.A.Y.、フレアを発射しろ」

『かしこまりました』

 

そう言うと、腰部分に付いていたホルダーから、フレアが撒き散らされる。

 

残っていた追尾型ミサイルは全弾当たり、爆発した。

 

その爆発の後ろから、戦闘機が追ってくる。

 

「F.R.I.D.A.Y.まだか?」

『もう少しで……、計算終了、目標を設定。いけます』

「よし、反撃に出るか」

 

直立状態からトニーは両手を前にし、減速する。

 

戦闘機の間を抜け、トニーは戦闘機の後ろに付く。

 

「中々楽しかったぞ。お礼のミサイルだ」

 

そう言って、トニーはお返しと言わんばかりに、左肩からミサイルを発射する。

 

トニーの急な減速、攻撃に対応できるはずもなく、戦闘機は撃ち落とされていく。

戦闘機に搭乗していたパイロット達は脱出し、パラシュートを開く。

 

「よしこれで……『パラシュートが開けていないのが1名』全く……!」

 

パラシュートが開いていないパイロットをセンサーで捉え、トニーはその後を追うため、下降する。

 

「前回もこんなことなかったか?」

 

1人そう呟くが、それを覚えているのはトニーのみである。

 

「このボタンだな……。ビンゴだ」

 

パイロットの近くまで寄り、座席にあるボタンを押して、パラシュートを開かすことに成功した。

 

「今度こそ行くぞ」

 

トニーは再び、目的地へと飛ぶ。

 

○○○

 

「あらかた片付けたか……?」

 

肩で息をしている千冬は束に確認するように呟いた。

 

『うん、もう撤退し始めてる。私達は勝ったんだよ!』

「そうか、それは良かった」

 

その言葉に安心し、一息吐く。

 

『エネルギーもそろそろ無くなるしもう戻っ……!ちーちゃんまだ何か来る!』

「何だと?」

 

束が千冬のバイザーにモニターを映す。そこには何かが急速に接近してくるのがわかる。

 

それが千冬に近づき――

 

「ん?何だ終わったのか。お手伝いが必要かと思ったんだがね」

 

――話しかけてきた。

 

「はぁぁッ!」

 

それを見たなり、千冬は斬りかかる。

無理もないだろう。相手が敵なら自分が死ぬかもしれないのだから。

 

「おいおい、待って!言っただろ、お手伝いに来たと!」

 

相手――といってもトニーなのだが、トニーはそれを簡単に回避する。

 

「だぁぁぁッ!」

 

千冬は続けて攻撃する。

どうやら千冬は一種のトランス状態に入っている様子だ。

 

「F.R.I.D.A.Y.、攻撃パターンを」

『もうやっています』

 

F.R.I.D.A.Y.にそう指示し、ひたすら距離をとる。

 

「おい、止めろ。聞こえてないのか!?」

『お願い、ちーちゃん止めて!』

「!その声、篠ノ之束か」

 

突然、オープンチャンネルから聞いたことのある声がし、トニーは驚く。

 

「乗っているのは篠ノ之束ではないのか?」

 

目の前にあるのはISで、それを造ったのは束だとわかっているトニーは、てっきり目の前にあるISに乗っているのも束だと思っていた。

 

『その声、やっぱりトニー・スターク!お願い、ちーちゃんを止めて!』

「そのつもりだ。君とは話さないといけないことがあるからな」

 

トニーはリパルサーレイを千冬に撃つ。

 

……だが

 

『バリアによって守られています』

「そうだった。相手にすると面倒くさいな」

 

トニーはマサチューセッツ大学で行われた科学者達の発表で、束の発表を思い出す。

 

ISには2層のバリアが張られていること。

 

そこでトニーは束に訊いた。

 

「何とかしてバリアを1層だけでも剥いでくれ。そうしたらこっちでどうにかする」

『わかった!』

 

束はその作業に取り掛かる。

 

「F.R.I.D.A.Y.、終わったか?」

『ちょうど終わりました。そちらにパターンを反映させます』

 

トニーの視界に、千冬の攻撃パターンが映し出される。

 

『トニー・スターク、バリアを1層剥いだ!』

「よくやった。後は任せたまえ」

 

千冬が一瞬で距離を詰め、トニーへと上段斬りをする。

 

「読めてたぞ」

 

一瞬で距離を詰めたことには少し驚いたが、攻撃パターンの予測から上段斬りがくるとわかっていたトニーはそれを白刃取りする。レザー部分がギリギリ当たりそうなところで止まった。

 

攻撃を止められたことに千冬は驚き、隙ができる。

 

それをトニーは見逃さない。

 

「悪いが少し眠ってくれ」

 

気絶させる程度の力で、アッパーカット。

千冬を気絶させた。

 

気絶したことにより、下へ落ちそうになるが、トニーはそれをキャッチする。

 

「デカイし重いな。もうちょっとスマートにならないのか?」

『トニー様、女性に対してそれは失礼かと』

「僕はこのISってやつについて言ってるんだ」

 

F.R.I.D.A.Y.のツッコミにそう返していると、束から接触通信が送られてきた。

 

『ありがとう、トニー・スターク』

「礼はいらないよ。とりあえず話しがある。僕の家まで来てくれ」

『えっ?』

「そこなら誰にも邪魔されないし盗聴される危険もない。一応この操縦者の身柄はこちらで預かる。要は人質だな。ああ、安心してくれ、酷いことする気はないから」

『……分かった』

「物分りが良くて助かるよ。少し待っててくれ。人目につきたくないだろうから向かえに行こう。それまでの間、どこかに隠れておいたほうがいいぞ」

『うん……。ちーちゃんに手を出したら、トニー・スタークでも殺す』

 

束はそう言うと、通信を切った。

 

「怖い怖い……。F.R.I.D.A.Y.、僕が家に着くまでの間、衛星映像をハッキングして適当な映像を流しておいてくれ。それと篠ノ之束の位置も割り出しておいてくれ」

『かしこまりました』

 

トニーもF.R.I.D.A.Y.にそう指示し、とりあえず家へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回で白騎士事件は終わり……。
結構長くなってしまった。
その後は原作で一夏が学園に入学するまでの話を書きます。

おかしなところあったら言ってください!


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白騎士事件 ――その後

不可能を可能にするってね


「ここが……トニー・スタークの研究室(ラボ)

「大した物は置いてないぞ?」

 

束は部屋のあちこちを見る。

 

あの後、何事もなく千冬を連れて自宅へと戻り、束も向かえに行って、今に至る。

 

千冬はISは待機状態になっているものの、未だに気絶している。

 

トニーもスーツを脱いでいる。

 

「さて、まずは君の質問から答えてあげよう。篠ノ之束」

「束で良い」

「なら束と呼ぼう。僕のこともトニーで良い」

 

適当な作業台の上にトニーは座り、束は用意された椅子に座る。

 

「トニーが着ていたのは……何?」

「早速その質問か。まぁそう来るとは思ってたけど」

 

トニーはそう言うと、作業台の上に置かれていたケータイのボタンを押す。そのケータイは時代を先取りしているようなデザインをしている。

 

すると、トニーがスーツを装着したサークルの中から、組み上がっているマークIIIが現れる。

 

「パワードスーツだ。君の造ったISと同じようなね」

 

トニーはマークIIIを視界に入れつつ、説明をした。

 

「……名前は?」

「……アイアンマン。そう、アイアンマンだ」

 

名前を変えようとも思ったが、随分と慣れ親しんだ名前を今更変えることもどこか面倒くさいと思い、アイアンマンと言った。

 

「鉄の男?」

「実際には鉄は使ってないぞ?金とチタン合金を使っている」

 

3Dホログラフィックモニターを出し、設計図を見せる。

 

束はそれを穴が空きそうなくらい、見始めた。

 

「すごい……量子格納を使ってないのに……あらゆる通信網の傍受……。本当にすごいや……」

「おいおい、そんなに褒めても何も出ないぞ?それと、君は僕に聞くことがあるんじゃないのか?」

 

そう言って設計図をしまい、スーツも格納庫に戻した。

 

「そうだね……。あのミサイルや戦闘機は誰の差し金?」

「少なくとも後者は前者の結果を受けた各国家のものだろう」

「前者は?」

「F.R.I.D.A.Y.」

『かしこまりました』

 

F.R.I.D.A.Y.の名を呼ぶと、モニターに映像と情報が映し出される。

 

「これは僕がアメリカ軍事基地に行った時の映像なんだが……」

「トニーがアメリカ軍事基地に行ったからアメリカからミサイルと戦闘機が飛んで来なかったのか」

「そういうこと。それでこの人物が各国のミサイルの砲台を日本に向け、アメリカのミサイルキーを押そうとしたところで僕が捕らえた訳だが」

「でも各国のミサイルは飛んだ。つまり、各国の軍事基地にもミサイルキーを押した奴らがいる」

「そう、話が早くて助かるよ」

 

ミサイルなんてものは普通に考えてネットワークで管理なんてしない。せいぜい砲台の向きを変える程度のことしかネットワークで管理しない。もしミサイル全体をネットワークで管理していたら、それこそアメリカのミサイルも飛んでいた。つまり、ミサイルを撃つ時には物理的な操作が必要なのだ。

トニーが行き着き、束も辿り着いた結論はこうだ。

それをトニーが代表して口にした。

 

「今回のこの世界を巻き込んだ事件。何かの組織が動いているんだろうな。目的はわかっているんだろ?」

 

束にそう言うと、首を縦に振る。

 

「私のISを使わせるため……」

「そう。ISが宇宙活動の為の物ではなく、()()としての有用性を示すことが目的だったんだろう」

 

それを聞いた束は歯軋りし、拳を強く握る。

それはそうだろう。凡人を見返す為とは言え、まんまと誰かの策に溺れたのだから。

それに束がISを造った理由。それは人類の宇宙進出のためだ。

それが兵器として見られるように使われたのだ。造った者からしたら堪ったものではない。

 

「あの発表会にその組織の関係者がいたんだろ。そして思った。今までにない、強力な兵器として使えるのではないか、と」

「……ッ!」

 

トニーは皮肉で言ってるのではない。事実を言っているのだ。

 

「……時代が動くぞ。各国がISについての説明を求め、各国はそれを欲しがる。あの手この手を使って日本は承認せざるを得ない。日本はそこまで強い国ではないだろうしね。そして、例え君が戦争の為に使うなと言ったところで、自衛の為と言って軍にISを設置するだろうな」

 

そこまで言って、トニーは一息いれるために、コーヒーメーカーがある場所に向かい、自分と束、千冬の分のコーヒーを淹れる。

 

千冬の分はロボットアームのダミーに持って行かせ、束の分はトニーが持って行く。

 

「……そうしたら君のアイアンマンだって」

 

束はトニーに聞こえるように呟く。

 

「そうだな。しかし置かれている環境が違う。アイアンマンは正体不明。映像はF.R.I.D.A.Y.が全て別の物にすり替えるか消去している。もし僕だとバレたところで軍がスーツを寄越せと言ってきたとしても、僕は渡さない。無理矢理奪うものならスーツは爆発させる。それにアメリカだ。各国からの圧力も耐えれるだろうな」

 

トニーは自分のコーヒーを呑み、束の分は彼女に渡す。

 

束はコーヒーを両手で包み、顔を伏せる。

 

「じゃあ……」

 

そして勢いよく顔を上げ、怒りの表情でトニーに言う。

 

「じゃあどうしたら良いのさ!私はただ、ISによって宇宙活動が活発になれば良いなって思って……!」

「それだよ」

「えっ?」

 

トニーはコーヒーを作業台の上に置き、言った。

 

「元々ISは宇宙活動の為の発明だ。それが今後、兵器として使われるようなことになってしまったら、それを止めることはできないだろう。しかし宇宙活動の為の発明だということを君は忘れてはいけない。兵器というイメージを、宇宙活動の為の発明というイメージに戻していくんだ。その為なら僕も協力しよう」

 

そしてトニーは束の前まで向かい、手を差し伸べる。

 

握手だ。

 

「できるのかなぁ……」

「君と僕ならできるだろ。僕は既に宇宙活動の為のアイアンマンも造ってる」

「えっ」

「それに僕は天才だ。君も天才と呼ばれているんだろ?」

「うん」

()()()()()()にするのが僕達、科学者だろ?」

 

その言葉、発表会でも言った言葉を、束に投げかける。束はそれ聞き、目を大きく見開き、何かに気付いた。

目には涙が溜まっていく。

そして、トニーの握手に応えた。

 

「うん、そうだね」

 

片手で溢れそうになる涙を拭う。

 

「そういうことだ。よろしく、束」

「よろしくね、トニー」

 

ここに天才と天才(天災)の間に、協力関係が生まれたのだった。

 

 

「んん!私のことを忘れていないか?」

 

 

――そこで、今の今まで気絶していた千冬が目を覚ました。

 

「ち、ちーちゃん!」

「おや、お目覚めか」

 

いきなり目覚めた千冬に束は驚く。トニー然程驚いてはいないが。

 

「大分前から起きてはいたんだがな……。そんなことよりも、トニー・スターク「トニーで構わない」……トニー、束をよろしく頼む。わかるように、彼女は不器用でな」

「ちーちゃん!」

 

束は恥ずかしそうに千冬に怒鳴る。

 

「不器用な女性というのもそれはそれで良い。それと、君にも手伝ってもらうぞ。えーと、ちーちゃん」

「織斑千冬だ。千冬で構わない」

「そうか。千冬は宇宙でISに乗ってもらうことになるだろうからな」

「その時は任せてくれ」

 

千冬は少し笑い、そう答えた。

 

『トニー様、大変申し訳ないのですが』

「なんだF.R.I.D.A.Y.」

 

すると、F.R.I.D.A.Y.が話しかけてくる。

 

千冬は何処から声がするのかがわからず、辺りを見回しており、束は束で目をキラキラさせている。……研究者の(さが)というやつだろう。

 

『犯人が所属している組織が判明しました』

 

しかし、F.R.I.D.A.Y.の言葉によって、空気は緊迫したものになる。

そして、F.R.I.D.A.Y.は続けて言った。

 

亡国機業(ファントムタスク)という組織です』

 




次回は少し飛ぶゾ〜。


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スターク・インダストリーズ起業 ――そして

科学者じゃなくて技術者だな、と思ってきた今日この頃。

※5月27日19:08
誤字修正
※5月27日23:14
誤字修正


あれから時が経ち、トニーは20歳。束と千冬は19歳になった。

 

あの事件の後、開発者が日本人ということもあり、日本がIS技術を独占的に保有していたことに危機感を募らせた諸外国はISによってISの情報開示と共有、研究のための超国家機関設立、軍事利用の禁止などが定められた条約、アラスカ条約が各国の間に結ばれた。

 

しかし、トニーが言った通り条約は建前であり、各国はISを軍に配備した。未だ国と国の闘いではISが使われたことはないが。

 

その際、束はISの心臓部分と言っても過言ではないISコアを世界各国に467個、配布した。

束は467個以上のISコアを各国に渡すことを拒んでいる。

その為、各国は限られたコア数で研究、開発、訓練をしている。

その数が表す意味があるのか、それとも単なる気まぐれなのか。それは束のみが知ることである。

ISコアは完全にブラックボックスと化しており、未だ束以外にISコアは造れない状況である。

 

ちなみに、467個以上造らないと束は言っているのだが、番外であるISコアを2つ、トニーに渡している。

1つはトニーと束の共同開発の為のISコア。

もう1つはトニーが興味本位でISコアを研究したいと言った為である。

 

閑話休題

 

世界各国にISコアが配られ、いざISを使おうとなった時に、1つの重大な欠陥が発見された。

 

それは女性にしかISを使えないことである。

 

そのことに一部の女性は過激に反応し、「自分達は特別な存在なのだ」と意識し始める。

 

それにより、世界は女尊男卑の風潮が出来上がってくる。

 

そしてそれに便乗するような形で、ISによる世界大会、第1回モンド・グロッソが開催される。

その大会の優勝者は織斑千冬。

 

女尊男卑の風潮は加速した。

 

 

○○○

 

僕が20歳になって、周りの環境が変わったことが3つある。

 

まず1つ目は、両親が亡くなった。

僕が20歳になってから暫くして亡くなった。ただ、死因は前世とは違う。

病で倒れて死んでしまったのだ。誰かに殺されたというわけではない。

僕は生まれてから一生懸命両親に孝行した。両親はそれに亡くなるまで応えてくれた。ある意味、というか少なくとも、僕は前世よりも両親との仲を深められただろう。

 

両親が亡くなった日、僕は初めて、この世界に生まれて涙を流した。

 

 

2つ目はアイアンマンとしての活動が世界的に認知されつつあることだ。

映像や情報を改竄したりしても、人が見たことを一々改竄できるわけではない。それのおかげかどうかは知らないが、世界中はアイアンマンのことを『正義の味方』『ヒーロー』と呼んでいる。嬉しい事には嬉しいのだが、最近はマスコミがアイアンマンの正体を嗅ぎ回っているので、非常に面倒だ。

 

 

そして3つ目は、僕が会社を起業したことだ。

 

その名もスターク・インダストリーズ。

前世とやっていることは同じ。ただ、軍事兵器の開発はしていない。

 

その代わりにISの開発を行っているのだが、あまり積極的に行ってはいない。

何故なら、僕が提示した条件に見合うテストパイロットが見つからないのだ。

 

テストパイロットがいないなら開発も進まない。

 

まぁ開発を始めたら、アメリカのIS企業トップになれる自信はある。

何て言ったって、アイアンマンを開発したノウハウがある僕と、協力者である束がいるのだ。

 

それはもう世界最先端のISができるだろう。

まぁテストパイロットが見つかるまではそんなことに興味はないけどね。

 

そうそう、束についてだが、現在は僕の家を隠れ家として暮らしている。

現在は僕と束、そして僕がある施設から連れ帰ってきた子と3人で暮らしている事になるのかな?

 

束とその子はたまに数ヶ月居なくなったりすることもあるが、ある程度定期的に帰ってきている。

 

千冬は日本のISの国家代表になり、第1回モンド・グロッソで優勝して多忙の毎日を過ごしているようだ。

たまに連絡を取ったり、会ったりはしている。

 

そして、僕が連れ帰ってきた子。名前はクロエ・クロニクル・スターク。名前からわかるように僕の養子だ。

僕がアイアンマンの活動として、非道な研究をしている研究所をつぶしている時に出会った子だ。

 

ふと、その出会いを僕は思い出した。

 

○○○

 

F.R.I.D.A.Y.の情報を受け、トニーはドイツのとある研究所にヘリで来ていた。

 

試験管ベイビーを造り、非道な研究をしているという情報だ。

 

トニーはそもそもドイツにはあまり良いイメージを持っていない。むしろ嫌悪していると言ってもいいかもしれない。

良いイメージがあったとしても、ビールとソーセージが旨い。その程度の良いイメージしか持っていないのだ。

 

トニーが研究をしている理由。前世ではナチスの流れを汲む秘密組織、『ヒドラ』がいた。

 

S.H.I.E.L.D.を内部から崩壊させたのはヒドラだし、マキシモフ姉弟を超人的な力を持つ人間にしたのもヒドラである。

 

そして何よりも、前世で両親を殺したのがヒドラなのだ。

 

ナチス、そしてヒドラが生まれたドイツを嫌悪してしまうのも無理はないのだろう。

 

トニーはドイツがヒドラと無関係とわかっているため、更に複雑な気分である。

 

「さてと、着いたぞ」

『生体反応は近くにありません』

「何だ?門番もいないのか?」

『そのようです』

 

トニーはそれを聞いて、呆れる。

 

それでも非道な研究所なのかと。

 

とにかく、トニーにとっては好都合なので、ずかずかと中へ入る。

 

「管制室はあるか?」

『あります。右を曲がったところに』

 

F.R.I.D.A.Y.の指示通りに進み、管制室の前に立つ。

 

『生体反応なし』

「ここもか……」

 

F.R.I.D.A.Y.の報告を受け、中へと入る。

 

中はモニターだけが映っており、電気は点いていない。

 

「どうやら地下があるようだな。恐らくそこで研究をしているんだろう」

『しかし地下への階段が見当たりませんが』

「それは僕も思った。恐らくこの部屋に隠し階段があると思うが……」

 

モニターに映し出されている施設内の地図を見て、トニーはそう言った。

 

トニーはスーツ、『マーク43』を前面から脱ぐ形で、外に出る。

ちなみだが、43以降のスーツはまだ開発途中である。

 

「F.R.I.D.A.Y.、お前は見張ってろ。誰か来たら睡眠ミサイルを撃っておけ」

『了解しました』

 

トニーは壁をノックしながら、隠し階段を探していく。

 

「隠し階段……、隠し階段……。ん?」

 

そして、壁の一面だけ音が違う事に気付き、その一面の壁を強く蹴り破る。

 

「うん、ビンゴだな」

 

その先には見事に隠し階段があり、トニーは下へと降りていく。

 

『トニー様、この研究所は廃棄された可能性が高いです』

「……あぁ。地下室を見て僕も思った」

 

下に降りたトニーの言う通り、地下室は研究所らしくなっていたが、所々が荒れており、悲惨な状況になっていた。

 

「とりあえずF.R.I.D.A.Y.も下に来い。……ん?」

『どうなされましたか?』

 

トニーがそう指示した途端、人の気配を感じる。

 

「……けて」

 

微かに声も聞こえる。

 

「……たすけて」

 

「たすけて」と言っている事に気付いたトニーは大急ぎでその場に向かう。

 

そこには、1人の少女が倒れていた。

 

「大丈夫か!?」

 

その少女を抱え、容体を確認する。

 

脈はあるが、かなり弱くなっている。

 

「……しにたく……ない」

「助けてやるから意識を手放すな!」

 

トニーは大急ぎで少女をヘリに乗せ、自宅へと連れ帰った。

 

 

 

少女――つまりクロエだが、かなりギリギリの状態であった。

 

自宅に連れ帰って来る間に一度、心肺停止状態になりかけた。

 

束と協力し、あらゆる手を尽くしたのだが、既に人の手では手遅れになっている状況だった。最終的にISコアを心臓の代わりに埋め込み、ISコアに搭載されているナノマシンによって、一命を取り留めた。

 

トニーは少女を見て、前世でアーク・リアクターを胸に埋め込んでいた自分の姿と重ねて見てしまった。

 

「この子、どうするの?」

 

極度の人見知りの束が珍しく、初対面である少女を心配している。

 

「僕が面倒を見ようと思う」

「私も手伝うよ」

「すまない、助かるよ。女性の事に関しては僕はできないからね」

 

 

 

その後、目を覚ましたクロエは、最初こそ混乱していたが、徐々にトニーと束のいる環境に慣れていき、今では家事を任せられるくらいには成長している。

 

 

 




裏設定集
・女尊男卑の影響と前世の記憶があるので、前世ほどトニーは女遊びをしていない。

・クロエの両目は普段は閉じており、生活するには杖を必要とするが、トニーがそれを良しとせず、生活補助の名目として、AIの『W.E.D.N.E.S.D.A.Y.』を与えている。そのおかげか、本来なら××××な料理も普通に作れるようになっている。

ということでオリジナルAIがクロエちゃんに実装です。
実際、エイジオブウルトロンでトニーがJ.A.R.V.I.S.の代わりになるAIを探していた時に、F.R.I.D.A.Y.の他にもあったぽいのでそれの1つとして考えてください。
また、クロエちゃんがどうなっているのかよくわからんちんなので、こうなりました。実際はどうなってるのか教えてくださると嬉しいです。



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テストパイロット ――彼女の夢

ランキングに載っててビビってる自分。
ま、まぁこれ以上は上がらないやろ(震え声)
知名度あるうちに更新しなきゃ(使命感)

そんなことより、次話でやっとワンサマーとその弟、オリキャラが出ると思います。
それに先駆け、オリキャラの名前を発表しておきます。

織斑一秋(おりむらかずあき)

これがワイの限界や…。数と季節縛りの名前なんて難しすぎるやろ…。しかも数は前で季節は後ろ…。ウボァ…。

※5月28日11:46
オリキャラの名前を変更
かずと→かずあき
漢字の変更はありません。


スターク・インダストリーズ社の面接室前には、かなりの数の人が並んで座っていた。

 

何故こんなにも人がいるのか。

 

それは、トニーがISのテストパイロットを募集した為である。

会社が起業したと同時にテストパイロットを募集した以来である。

 

つまりこれで2回目の募集だ。

1回目は誰もテストパイロットになっていない。

 

何故か。それはトニーが必要としている条件を満たしている女性がいなかったからだ。

 

今回の募集はトニーによるものだが、本人は今回もテストパイロットになる者はいないだろうと踏んでいる。

 

監視カメラを通して、別室でその女性の列を見ていたトニーは呟く。

 

「人数が増えてないか?」

『前回よりも2倍近く増えています』

「……前回落ちた奴もいるな」

 

トニーは溜め息を吐く。

 

トニーがテストパイロットを募集するということは、かなりの話題となる。それを聞きつけた女性が、今ここに並んでいるのだ。

 

「とりあえず、面接を始めよう。頼んだぞF.R.I.D.A.Y.」

『お任せください』

 

 

 

 

『面接を開始します。1番の方、面接室へお入りください』

「はい」

 

F.R.I.D.A.Y.によるアナウンスで、面接が始まる。呼ばれた女性は、早速部屋に入る。

 

「誰もいないじゃない」

 

女性がそう言った通り、部屋の中には1つのイスとビデオカメラが向かい合うようになっている。更に部屋は辺り一面真っ白である。面接官らしき者はどこにも見当たらない。

 

『今回の面接官はそのカメラを通して貴女を見ています』

「そう」

 

女性は()()()()()()()と言われる前に、椅子に座った。

 

『……申し訳ありません。貴女は不採用となります』

 

それを見たF.R.I.D.A.Y.は残念そうに言った。

 

「はぁ?何でよ!?」

 

女性は勿論、抗議する。突然不採用と通告されたからだ。

 

『貴女のような太々(ふてぶて)しい態度を取るような方と一緒に仕事は出来ないと面接官が仰っています』

「ふざけてるのかしら?私がテストパイロットをやってあげるっていうのに!」

『話になりませんね。この方を連れ出してください』

 

F.R.I.D.A.Y.がそう言うと、女性が入ってきた扉から、黒服を着た女性が2人、入ってくる。

 

そしてその黒服を着た女性2人が、面接を受けに来た女性の両腕をそれぞれ掴み、外へ連れ出す。

 

「ちょ、離しなさい!周りから天才って言われてるからって調子に乗ってるんじゃないわよトニー・スターク!」

 

その言葉を最後に、女性は面接室から追い出された。

 

「今回も合格者は出なさそうだな……」

『私もその意見に同意します』

 

その後も、女尊男卑に影響を受けた女性が面接を受けては追い出される。それの繰り返しだった。

 

○○○

 

面接も終盤に差し掛かってきた。

 

「まさか最後の1人を残して全員が女尊男卑の奴らとは思ってなかったよ」

 

トニーは欠伸をし、退屈そうにそう言った。

そして、最後の1人もきっとそうなのだろうと、勝手に決めつけていた。

 

 

 

 

『最後の方、どうぞ』

「は、はい!」

 

F.R.I.D.A.Y.に呼ばれ、最後の女性は緊張しながら面接室へと入る。

 

中は最初と変わっておらず、周りも一面真っ白である。

 

それに女性は驚くが、声には出さなかった。

 

『……それでは()()()()()()

「し、失礼します」

 

そう指示されると、女性は恐る恐る座る。

 

ここまで来たのは彼女が初めてである。

それにトニーは興味を示す。

 

『それでは、貴女の名前と出身国を教えてください』

「は、はい。ナターシャ・ファイルス、アメリカ出身です」

 

F.R.I.D.A.Y.による、彼女への面接が始まった。

 

ビデオカメラを通して、トニーが見ていることは勿論の事、嘘発見器のような機能も搭載されており、嘘をついたらすぐに不採用ということになる。

 

『貴女は今朝、何を食べて来ましたか?』

「え?あ、すみません!シリアルとバナナ1本を食べてきました……。すみません、この質問って何か意味があるんですか?」

『どうやら貴女が緊張しているようなので、素っ気ない質問をしてみました』

「すみません、ありがとうございます……」

 

確かに、ナターシャの生体反応を見れば、動悸が激しくなっているのがわかる。

よほど緊張しているのだろう。

 

いくつかF.R.I.D.A.Y.が質問し、ナターシャが答える。

緊張も解けたのか、先程よりもスムーズに受け答えが出来ていた。

 

そして最後にF.R.I.D.A.Y.が1つの質問を投げかける。

 

その質問が、最も重要な質問だ。

 

『貴女はISに乗って、何をしたいんですか?』

 

ナターシャは少し間を取って、答えた。

 

「宇宙を……、宇宙を自由に飛んでみたいんです」

 

ナターシャは続けて言った。

 

「私、知ってます。ISが本当は兵器じゃないってこと。本当の使用目的が別にあることも。だから、私はこの会社のテストパイロットの募集を見て、やってみたいと思ったんです。兵器として使おうとしない、この会社のテストパイロットを」

 

ナターシャの目は真っ直ぐ、カメラの先にいるトニーを見据えているかの様だった。

 

 

 

 

トニーはそれを見て、ニヤリと口元を崩す。

 

「嘘はついていないようだ……。日本のことわざ、"残り物には福がある"とはよく言ったものだ。F.R.I.D.A.Y.、彼女をこの部屋に通せ」

『かしこまりました』

 

 

F.R.I.D.A.Y.がトニーの指示を受け、ナターシャが入ってきた扉の位置と向かいにある扉が開いた。

 

『おめでとうございます、ナターシャ・ファイルス様。貴女はスターク・インダストリーズのテストパイロットになる資格があります』

「え……?本当ですか!?」

『はい。ですので、この先へお進みください。トニー様がお待ちです』

 

ナターシャは頷いて、立ち上がり、奥へと進む。

 

すると、その奥には拍手をナターシャへ送っているトニーがいた。

 

「素晴らしいよ。正に僕が求めていた人材だ」

「あ、ありがとうございます」

 

ナターシャは大物有名人を前にして、また緊張感してまう。

 

「最後に1つだけ質問だ。世界が変わっても君のそのISへの考え、そして――その夢を変わることなくテストパイロットをやっていく自信はあるかね?」

 

ナターシャはそう訊かれ、すぐに答えを示す。

 

「この先の世界、どうなるかなんて私はわかりません。だけど、私の考えとその夢は変わらないと、誓えます」

 

ナターシャは自信に満ち溢れた顔でそう言い切ったのだ。

 

トニーはそれを訊いて、口元に笑みを浮かべる。

 

「知っているかもしれないが、僕の名前はトニー・スタークだ。よろしく、ファイルス」

「みんなからはナタルと呼ばれています。なのでナタルで構いません。よろしくお願いします、スタークさん」

 

今日、スターク・インダストリーズ社に、初めてのISテストパイロットが誕生した。




次回は第2回モンド・グロッソ。
やっと主人公が出るね!
やったねワンサマー!出番だよ!(出番が多いとは言ってない)

裏設定集
ナターシャ・ファイルス
愛称はナタル。原作ではアメリカ軍に所属するISのテストパイロット。今作ではスターク・インダストリーズのテストパイロットになった為、軍には属していない。
純粋に宇宙へと行くことに興味を示しており、それに束は共感を示したのか、ナタルはすぐに束の身内扱いとなった。
ちなみに千冬、束と同年代である。


そういえば一応、マドカの織斑としての本名も考えてありますよ〜。


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第2回モンド・グロッソ ――誘拐事件

お 待 た せ

切ろう切ろうって思って書いてたら結局1話で誘拐事件が終わった件。恐らく6000字超えはもうないだろう……(フラグ)

F.R.I.D.A.Y.にWCと言わせてみた。トイレって言ってるイメージがないからね。


キャプテンアメリカがヒドラの一員だったという設定のマンガが発売されましたね。
どうやら大炎上しているみたいですが、僕としては今後が楽しみです。どうなっていくのやら。

※5月30日0時48分
語彙修正
※5月30日12時34分
語彙修正
トニーがアイアンマンだと名乗ってないなと思い、オータムのセリフの一部を消去しました。
言葉の置き換えをしました。


第2回モンド・グロッソ。

会場はドイツとなっており、大人数の観客がスタジアムへと足を運んでいる。

 

トニーもそのうちの1人であり、ナタルを連れてスタジアムの中へと入っている。

 

今回、千冬からトニーの元に招待券が2枚届いた。

 

束は自宅に残ってテレビ中継で見ると言って、スタジアムに行くつもりはなかった。そもそも、束は今、失踪中ということになっており、公の場には行かないようにしているのだ。

 

クロエは「束様が残るなら私も」と言い、束と一緒に自宅待機である。

 

そこで、結果的に余ったトニーとナタルが行くことになったのだ。

 

その時、開催国がドイツだとわかった瞬間、トニーは渋い顔をしたが……。

 

「そういえば、スタークさんに聞きたいことがあるですけど」

「なんだ?美の秘訣とか?」

「男の人に聞くと女である私の立場がないですよ」

 

ナタルは苦笑しながら、売店でコーヒーを2本購入する。

 

「うちの会社って、その……女尊男卑の思想の人がいないな、って。スタークさんもやっぱり男として女尊男卑は嫌なんですか?」

「あぁ、そのことか」

 

トニーはナタルからコーヒーを受け取る。

コーヒーの缶を開け、一口呑んだところで、その質問に答えた。

 

「別に女尊男卑についてはいけないことではないと思うぞ」

「へ?」

「人間生まれて今日まで、平等なんてないだろ?」

「まぁそうですね」

「それに、何かと女が不平等な時代が長かった。今くらい男が不平等になる世の中でも僕は良いと思ってるけどね」

「じゃあ、なんでうちの会社にはそういう人がいないんですか?」

「単純だよ。そういう思想の奴らが仕事場にいたら、その場の雰囲気が最悪だろ?そうじゃない女性と僕達、男のモチベーションが下がる一方だ。最悪、会社の経営にも響きかねない。採用試験の時は大変だったよ」

「なるほど」

 

ナタルは納得した様子で、コーヒーの缶を開けた。

 

「あぁでも。女尊男卑で嫌な点は1つあるな」

「え、何ですか?」

 

ニヤリと笑い、トニーは言った。

 

「思想に染まった女性が多くて、女の子と遊ぶ機会が減ったことだよ」

 

それを聞いたナタルはジト目でトニーを見る。

 

「……セクハラですか?」

「おいおい、そんなつもりはないぞ?」

 

トニーとナタルは観客席に入る。

 

「しかし、スタークさんが千冬さんと束博士と知り合いだって知った時は驚きましたよ」

「やはり、天才と天才は惹かれ合う運命かもしれないぞ。千冬は頭じゃなくて武道の天才だけどね」

 

2人は席に座る。

前回の大会を優勝した千冬が招待した席は、やはりと言うべきか観客席の中で1番と言って良いほどの席であった。

 

トニーが座った隣の席には、日本人の少年2人が並んで座っていた。

見たところ、彼ら2人の親は見つからず、2人で来ているようだ。

 

そんな2人にトニーは話しかけた。

 

「君たち2人で観戦か?」

「うん!」

 

すると、2人のうちの1人がトニーの質問に答えた。

 

『ただいまより、第2回モンド・グロッソ準決勝を開始します。日本代表織斑千冬対――』

 

アナウンスが入り、会場が盛り上がる。

 

「始まりますよ」

「わかってるよ。F.R.I.D.A.Y.」

『わかっています。お任せください』

 

トニーは予め指示しておいた事を、F.R.I.D.A.Y.に実行させた。

 

○○○

 

千冬は圧倒的実力差を見せ、完勝。

相手が可哀想に思えるくらいだ。

 

今はもう1つの準決勝が終わり、決勝戦までの空き時間である。

 

「俺、トイレ行ってくる!」

「俺も!」

 

トニーの隣に座っていた少年2人は席を立ち、トイレへと向かった。

 

「私、飲み物買ってきます」

「僕はコーヒーで頼む」

 

「わかりました」と言って、ナタルも売店へと向かった。

 

「どうだ、F.R.I.D.A.Y.?」

『この会場内に亡国機業(ファントムタスク)がいることは確認しました。しかし、まだ目的が掴めていません。もう少しお時間をください』

「位置はわかるのか?」

『はい。会場の出入り口に5人、WCに4人』

「そうか。……待てよ?」

 

そこで、トニーはある事を思い出す。

 

隣に座っていた少年2人がトイレに行ったのだ。

 

「F.R.I.D.A.Y.、トイレに行ってくる。()()あったら束とクロエ、ナタルに連絡しろ。それと、一応43の準備をさせておけ」

『かしこまりました』

 

F.R.I.D.A.Y.にそう指示し、トニーはトイレへと向かう。

前世で培った経験が、トニーに嫌な予感を感じとらせた。

 

 

小走りでトイレまで来ると、曲がればすぐの角でトニーは隠れる。

 

トイレの入り口付近を、覗き見る。

 

ちょうど少年2人が、出てきたところを怪しい黒服達によって気絶させられているところだった。

 

「嫌な予感が当たったな……!」

 

トニーは腕時計を操作。

腕時計が展開され、それを掌まで持っていき、装着させる。

 

ハンド部分のみだが、グローブ型の簡易アイアンマンスーツになるのだ。

リパルサーは撃てないが、強力なフラッシュと相手を怯ませる爆音がそれぞれ使用できるようになっている。

 

トニーは角から出て早速、相手を爆音で怯ませる。

 

案の定、相手は怯み、こちらを視認する。

 

続けて強力なフラッシュを放ち、相手の視界を奪う。

トニーはサングラスをしている為、自身への被害はない。

 

相手が行動不能の間に、トニーは相手に近づく。

まず、目を抑えている相手を思いっきり殴って気絶させ、隣にいた相手の頭を掴み、膝蹴りをして続けて気絶させる。

 

残り2人になったところで、爆音が弱まって相手の視界が戻ったのか、こちらに攻撃を仕掛けてこようとしてきた。

 

1人目が殴りかかってきたので、トニーはそれを屈んで避ける。

 

2人目が銃をこちらに向け、撃とうとした瞬間。

トニーはハンド型アイアンマンスーツの手で銃口を塞ぐように掴む。

 

相手が引き金を引き、弾丸が発射された音がする。

 

偶然、トニーと相手は視線を合わせ、トニーは口元に笑みを浮かべる。

 

相手は銃を相手から引き剥がそうとするが、逆にトニーが離した。

 

それを好機と見たのか、相手はもう一度トニーに銃を向けた瞬間、違和感に気付いた。

 

銃が分解されていたのだ。

 

分解された銃を目を大きくして見て、トニーの方を見る。

 

分解された銃の部品がトニーの片手に。

トニーはそれで相手の頬に思いっきり殴った。

 

その相手が気絶して倒れそうになるところを腕を掴み、後ろから迫ってくる相手に向けて投げる。

 

後ろにいた相手は反応できずに投げられた相手共々倒れて気絶した。

 

「ふぅ……。これで終わりだな」

 

ハンド型のアイアンマンスーツを元に戻した時。

 

「両手を挙げな」

 

そう言って、何処からか現れた相手にトニーの頭に銃を突きつけられた。

声からして、恐らく女性だろう。

 

それに、新たに相手が現れ、トニーを取り囲む。

 

トニーは大人しく両手を挙げた。

 

女性は仲間の1人に指示し、トニーの片腕に着けている腕時計を取り外させる。そしてそれを女性が受け取り、眺める。

 

「お前、中々良いモン造ってんじゃねーか」

「おいおい壊すなよ?結構お金がかかってるからな」

 

と、トニーが言った側から、女性は腕時計を地面に落として踏み潰した。

 

「んで?何にお金かかってるって?」

「両親は君をもう少しお淑やかに育てるべきだったな」

「テメェ……!」

『オータム、落ち着きなさい』

 

通信越しでオータムと言われた女性は、トニーの発言に怒りで顳顬(こめかみ)を浮かべ、今にでも殺しそうになるが、通信でも言われた通り何とか怒りを抑える。

 

「お前、トニー・スタークだな?」

「そうだ。天才、金持ち、プレイボーイ、博愛主義者のトニー・スタークだが?」

「……お前にも付いて来てもらうぞ」

「おぉ、女性からのデートのお誘いとは、嬉しいね」

「黙んねぇとお前のそのお喋りな口に銃突っ込んで引き金引くぞオラ!」

「わかったわかった!わかった、大人しくする」

 

トニーはとうとう観念し、その女性に連れて行かれ、少年2人のうちの1人と共に黒塗りのバンに乗せられる。

 

そして、モンド・グロッソの会場から離れた。

 

○○○

 

廃工場に連れて行かれたトニーと少年。

未だに気絶している少年は柱に磔にされ、トニーは四角形になっているパイプに手首を縛られている。

 

オータムは、もう1人の少年の方に行ったので、ここにはいない。

 

だが、亡国機業(ファントムタスク)の構成員が4人、この場にいる。

 

トニーは手首を少し動かすと、近くにいる構成員に話しかけた。

 

「おい、縛るなら椅子に座らせろ」

「黙っとけ」

 

トニーは構成員の1人にそう文句を言うが、その構成員は相手にしない。

 

「今ならまだ助けてやるぞ」

「おいおい、聞いたか?俺の聞き間違いじゃなきゃコイツ、助けてやるぞって言ったぞ」

 

構成員は周りにそう言って、笑いを起こす。

 

「武器を捨てて、僕を椅子に縛りつけろ。ほら、5……4……バン!」

「ワォ……」

「もう死んだぞ」

「怖すぎるぜ」

 

構成員は近くにいた構成員と顔を見合わせ、笑っている。

明らかに、構成員の反応はトニーを馬鹿にしている。

それもそうだろう。先程みたいに腕時計を付けていなければ、縛り付けられて、動けないのだから。

 

「ほら、来るぞ。3……4……」

「黙れ」

 

茶番に付き合いきれなくなったのか、それとも目障りになったのか、構成員は本気のトーンでそう言う。

 

トニーは溜め息を吐いて……

 

「54333!」

 

そう言った瞬間。

 

廃工場の窓が割れ、トニーの右手目掛け、あるものが飛んできた。

構成員達は頭を抱える。

 

それがトニーの拘束具を外すと同時に、装着される。

 

トニーは装着された手を見てから、構成員達を見ると……

 

「言ったろ?」

 

そう言ったトニーはリパルサーを撃ち、構成員1人を倒す。

 

そしてすぐさま、もう片方の手の拘束具を外す。

 

近くにいた構成員に、トニーは近づく。

 

相手が持っている銃を、スーツの力で握り潰し、裏拳を顔に入れる。

 

そして、次に近くにいた構成員が、トニーの後ろから銃で殴りかかろうとするが、トニーはそれに気付き、スーツが装着されている手で受け止める。

その拳を握り潰そうとしたところで、新たなアーマーが飛んできて、トニーの片脚に装着される。

 

その装着された脚で、その構成員を蹴り飛ばす。

 

その時にまた、新たなアーマーが飛んできて、もう片方の脚に装着された。

 

その装着された両脚で、少し飛び、離れた場所にいた構成員の元まで距離を詰める。

 

突然のことで対応が出来なかった構成員は、トニーに銃を奪われつつ殴られ、呆気なく気絶した。

 

そしてその銃を最後の1人に向けたところ、その構成員は銃を持ち、少年の頭に突きつけていた。

 

「その装備を脱げ。そして銃も捨てろ!」

 

トニーは大人しく銃を地面に落とし、それを蹴って相手の近くまで飛ばす。

 

「後ろに気をつけた方がいいぞ」

 

トニーがそう忠告すると、構成員は後ろを向く。

しかし、遅かった。

すぐ目の前にトニーのアーマーが飛んできていたのだから。

 

当然、回避できるはずもなく、そのアーマーにぶつかり、気絶した。

 

「すまない。言うのが遅かったな」

 

そんなことを言いつつ、トニーは飛んで来たアーマーを装着する。

 

それを皮切りに、全てのアーマーがトニーの元に集結し、トニーはそれを全て装着した。

 

「ナイスタイミングだF.R.I.D.A.Y.。僕の計算した通りに来てくれた」

『トニー様がそう指示しましたので』

 

そう、最初のアーマーがトニーに装着するまでは、全てトニーの計画通りだった。

アーマーが来るように合図したのは手首を動かした時。

 

幸いにも、この廃工場に来るまでの間、眠らされることもなく、気絶させられるようなこともなかった。

 

その時にここまでの道のりを計算し、どれ位でアーマーが来るかの計算もしていたのだ。

 

「もちろん、ナタルに連絡しているよな?」

『もちろんです。あと数分で到着します。しかし、アイアンマンのことを話さずナタル様に今回のことを話すのは難しかったです』

「それは悪かったな。アイアンマンの事は来年くらいには打ち明けるか」

 

トニーとF.R.I.D.A.Y.の言う通り、ナタルがテストパイロットになってから今日まで、トニーがアイアンマンだと言うことはまだ言ってないのだ。

 

だから、アイアンマンスーツを持ってくるのにもトニーとF.R.I.D.A.Y.は苦労した。

 

「ナタルが警察を呼んでここに来るならここにいないほうがいいな。F.R.I.D.A.Y.、もう1人の少年の方はわかるか?」

『はい。既に千冬様が向かっています』

「何でそこで千冬が出てくる?」

『そこの少年ともう1人の少年が千冬様のご家族だからです』

「何だって?」

『トニー様なら気付いていると思っていたのですが』

「……確かに千冬がこの前そんなこと言っていたな。ということは2人は弟か」

 

そろそろ意識が戻るであろう少年の元まで近づき、少年の顔を見る。

 

「確かに顔が似てるな……。おい、起きろ」

「ん、ん……?」

「もうすぐで助けが来るから、大人しくしてろよ?」

「え?あ……うん」

「良い子だ」

 

トニーはそう言うと、リパルサーを吹かし、空を飛んだ。

 

少しづつ覚醒して来た頭で、少年は呟いた。

 

「あれって……、アイアンマン?」

 

その後、すぐに警察とドイツ軍を引き連れたナタルが到着し、少年――織斑一秋が保護された。

 

○○○

 

「やあ、お淑やかな女性」

「テメェは……!」

 

トニーがもう1人の少年――織斑一夏が囚われている所に着いた時には、千冬が既にいて、オータムはISを纏ってはいるものの、装甲がボロボロであった。

 

『一秋は無事か!?』

『一秋様なら既にナタル様によって保護されました』

『そうか……。ありがとう』

 

F.R.I.D.A.Y.からの報告に千冬は安堵した。

 

「後は貴様だけだ」

「みたいだな」

 

千冬は自身のISの唯一の武器である刀剣型接近武器"雪片"をオータムに向かって構え、トニーは片手のリパルサーをオータムに向けている。

 

「その言い方だと、あっちの織斑一秋とトニー・スタークも失敗だったみたいだな……!なら逃げるが勝ちだ!」

 

オータムは手榴弾のような物を呼び出し、それを地面に向かって投げた。

 

それはたちまち強烈な光りを放ち、あたり一面を真っ白にする。

 

「閃光弾か!」

「千冬、弟の側にいろ!」

「わかってる!」

 

何とか、トニーと千冬の反応が早く、光度調整をすることができた。

追いかけることもできたが、あくまで一夏のことが最優先だということは千冬も理解しており、その場から動かなかった。

 

 

 

光が収まって来たので、視界も通常通りに戻す。

 

「一応聞くが追跡は?」

『反応は消えています』

「だよな」

 

トニーはそれがわかると、千冬の方を向く。

 

「千冬がここにいるということは、大会には出てないのか?」

「ああ、そうだ。……トニー、助かった」

「何がだ?」

「わざと敵に捕まって、一夏と一秋を助けるつもりだったのだろ?」

 

千冬にそう言われて、トニーは驚く。

全くそのつもりはなかったのだから。

上手く事が運んでいたならば、会場内で助けることができたのだ。

 

「あー……そうそう、そうだよ。わざと敵に捕まってね、助けたんだ」

 

しかし、トニーのプライド的に本当のことを話すわけにもいかず、何とかして誤魔化した。

 

そして、千冬に聞こえない小声でF.R.I.D.A.Y.に言った。

 

「余計なことは言うなよ、F.R.I.D.A.Y.」

『……かしこまりました』

 

その時のF.R.I.D.A.Y.の返事は何故か、何時もよりもワンテンポ遅かったのであった。




裏設定集
・オータムはアイアンマンの正体がトニーだと気付いていません。
声でわかるやろ!ってなりますが、自分が追い詰められている時にそんなこと考える程余裕は無いかなと思ったので。


次話は……

お楽しみに!


後、お気付きかもしれませんが、前世というか映画のオマージュがちょくちょく入ってます。これからも入れていくと思います。


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I am Iron man

まあタイトル通りです。

それと記者会見直後までをダイジェスト形式?でお送りします。

前話でオータムがアイアンマンと呼んでいましたが、トニーがアイアンマンだと言ったのは束しか知らないので、セリフの一部(アイアンマン)を消去しました。

ある意味サプライズ演出があると思います。


第2回モンド・グロッソで起きた誘拐事件の後。

 

誘拐事件の後始末をドイツ軍がする代わりに、千冬が1年間ドイツ軍の特別教官になった。

 

千冬がいない間の織斑兄弟は、日本の重要人保護プログラムによって、厳重に守られていた。

トニーと束は2人に何かあったらすぐに駆けつけられるように、準備をしていたが、杞憂に終わった。

 

○○○

 

その1年後。

 

千冬は特別教官の職務を終え、日本に帰国。

今度はIS操縦者育成機関の"IS学園"の教師として、教壇に立ち、鞭を振るう。

 

その時、トニーが「前々から疑問に思ってたんだが、千冬は人に教えることが出来るのか?」と言ったところ、千冬がキレた。その後は喧嘩となり、仲裁人はまさかの束である。

 

ドイツ軍では1人の落ちこぼれ兵士が部隊最強にまで上り詰めた。それをやってのけたのはその兵士だが、特訓を行ったのは千冬である。

なので千冬の人に教える才能は、()()()()()()()()()、高い基準を満たしている。

 

束は相変わらず世界中を飛び回っては帰宅を繰り返している。

クロエはそれに付いて行き、世界を見て学び、スポンジのように知識を吸収している。

 

ナタルは、やっとスターク・インダストリーズ製のISが出来たからか、忙しい毎日を送っている。

ナタルは四苦八苦しながら、操縦技術を磨いている。

 

トニーは相変わらず社長業の傍ら、アイアンマンとして活動している。

最近では束から貰ったISコアの研究が順調のようで、アイアンマンに取り入れられるかどうか考えている。

 

○○○

 

そして更に1年後。

 

世界は激震する。

 

"世界初、ISの男性操縦者見つかる"

 

社長室。

 

高価な椅子に座り、優雅にコーヒーを飲みながら、見出しでそう書かれた新聞をトニーは読んでいた。

 

「織斑兄弟がISに乗れるようになったのか」

『そうみたいだねー。予想はしてたけど、まさか本当にこうなるとは思ってなかったよー』

 

パソコンのモニターには束が映り込んでおり、そう言っている。

 

トニーと束は独自のネットワークで通信している。

なので、世界各国に束の足は掴めない。

まぁ、既に半分の国は諦めているが。

 

「最初の搭乗者が千冬だからか……」

『多分ね。全ての元となったISコアにちーちゃんの情報が登録されたからね。そこを基準にした結果、女性にしか乗れなくなっちゃった』

「しかし、遺伝子が最も似ているその家族。織斑兄弟はISに乗ることが出来た」

 

この場合、ISコアが織斑兄弟を()()()()だと思い、誤認してしまったのだろう。

 

『でも、今ならトニーもISに乗れるんじゃない?』

「まぁ確かにそうかもな」

 

トニーは束から受け取ったISコアの研究を続けた結果、ISコアの初期化に成功した。

要は千冬が白騎士に乗る前の状態にすることができたのだ。

 

「だけど僕にはアイアンマンがあるからね。保険程度に考えておくよ」

 

常に持ち歩いているISコア。

以前トニーが胸に埋め込んでいたアークリアクターと同じ形に加工した物を手に取り、眺めていた。

 

『そういえば、アイアンマンもそろそろ正体バレそうだね』

「人気者は辛いな。……やっぱりそろそろ潮時か」

『ということは……』

「あぁ。束はF.R.I.D.A.Y.と協力して全国ネットに配信してくれ」

 

トニーは椅子から立ち上がり、ネクタイを軽く締める。

 

『あいあいさー!面白いものが見れそうだ!』

「そうだな。僕には記者達が鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしているのが目に浮かぶよ」

 

トニーは束との通信を切り、社長室を出る。

社長室の側にはナタルがいた。

 

「おはようございます」

「あぁ、おはよう」

 

2人は記者会見場になっている1階のエントランスまで、並んで歩く。

 

「ついに私達の(IS)がお披露目ですね!」

「それ自分で言ってて恥ずかしくないか?」

 

エレベーターを待っている間に、2人はエレベーターの扉で身だしなみをチェックする。

 

「サプライズを用意しているから、楽しみにしていてくれ」

「それ今言ったらサプライズじゃない気がするんですが」

「……そうだな」

 

特に悪びれる様子もなく、トニーはエレベーターに乗る。それに続いてナタルも乗った。

 

 

今回行われる記者会見では、スターク・インダストリーズ社が初めて開発したIS、"スカイファルコン"のお披露目会となっている。

 

しかし、それ以上の発表があることを、ナタルは知らないのであった。

 

○○○

 

エントランスに着くと、トニーはすぐにマイクがある所まで行く。ナタルはすぐ近くで控えている。

 

「諸君、おはよう。今日はすまないね、こんな所での記者会見で。何せかなりの数の報道陣が詰め寄っていて、その、会議室とかだと入りきらない」

 

その言葉を聞いた記者達は苦笑する。

エントランスを急遽、記者会見場にしているが、それでもギリギリと言ったところだ。

 

「さて、早速始めるとしよう。我が社唯一のIS操縦者、ナターシャ・ファイルスだ」

 

トニーは手をナタルの方に向けると、ナタルは記者達に向かって、一礼する。その際、大量のフラッシュが焚かれる。

 

「おいおい、まだ撮って良いなんて言ってないぞ?……まあいいんだけどね」

 

トニーは苦笑し、続けて喋る。

 

「今回、我が社が開発したIS。機体名は"スカイファルコン"。わかるように、空をファルコンのように飛ぶ、というのがテーマだ」

 

トニーは説明し終えると、ナタルへ目配せする。

ナタルはそれを待ってましたと言わんばかりに、スカイファルコンをコールした。

 

一瞬の光がナタルを包み込む。

そして、光が収まってきて、ISの姿が見えるようになる。

 

全体的に見ると、他のISよりもひと回り小さい。

突起部分は全くなく、装甲は丸みを帯びた印象を受ける。

 

脚にスラスターが2つ付いていて、1番特徴的なのは背中部分だろう。

背中にスラスターが付いているが、それに隣接するような形で翼が付いている。

 

ナタルはその翼を自由自在に動かす。前に持ってきたり、収納したり。

伸縮性のある翼だということを示した。

 

「武装はサブマシンガン2つと自律型索敵機"スカイウィング"。"スカイウィング"は背中部分に収納している」

 

ナタルが背中を向き、スカイウィングを飛ばす。

 

記者達はオォ、と感嘆の声を上げ、記者達の頭上を飛び回る"スカイウィング"に目を向ける。

スカイウィングがナタルの元へと戻った時に、記者1人が質問した。

 

「スカイファルコンは第3世代の機体ですか?初めての開発にしては随分と挑戦しましたね」

 

トニーは答えた。

 

「勿論だとも。初めて開発した割には上手くできてると思ってる。流石僕だ。他企業に遅れは取ってないと思う」

 

スカイファルコンを見たトニーは自分を賞賛し始めた。

 

トニーが自分1人で話していることに気付くと、咳払いをして、気を取り直した。

 

「これで今回の発表は終わりだけど、僕になにか聞きたいことある?」

 

すると、前にいた女性記者が手を挙げた。

トニーは指名すると、彼女は質問を始めた。

 

「トニー・スタークさん。ISの男性操縦者が現れましたが、それについてはどう思いますか?」

 

その質問を他の記者達も聞きたかったのか、トニーの言葉に耳を傾けようとする。

 

「これから大変なことになるだろうな。ハイスクールは決まっていただろうけど、IS学園に強制入学になるだろう。周りは女の子ばかり。男は兄弟ただ2人。いや、でも周りは女の子ばかりだから羨ましいな。僕もIS学園に入りたくなってきたな」

 

口元は笑いながら、質問に答えた。

トニーの願望を聞いた記者達は苦笑する。

 

「では、()()()()()についてはどうお思いですか?」

 

先程と同じ女性記者が質問する。

 

トニーは少し間を空け、その女性記者に訊く。

 

「……メタルマン?」

「えぇ。赤と金の色をしたアーマーを身に纏っていてヒーローと呼ばれています」

「写真とかある?」

「こちらに」

 

自分の知らないところで新しいヒーローでも現れたのかと、トニーは思い、女性記者から写真を受け取る。

 

写真にはアイアンマンが写っている。

 

トニーは眉間にシワを寄せ、もう一度女性記者に訊いた。

今度は写真に写っている()()()()()()を指差しながら。

 

「これが……、そのメタルマン?」

「はい。そうですが?」

 

トニーはそれを聞いて、片手で頭を抱えた。

 

何でそんな情けなさそうな名前になっているのか。

 

確かに(アイアン)が名前に入っているから、その大まかな呼称として金属(メタル)もありかもしれない。

 

しかしトニー自身からしたら、やはり慣れ親しんだアイアンマンの方がいいし、メタルマンだと言い表せない感情が込み上げてくる。

 

「どこからメタルマンなんて名前出てきた?」

「日本の某動画サイトからだそうです。そこから世界的に広まっているようです」

「このヒーローの名前はアイアンマンだ」

「何故トニー・スタークさんがその方の名前を?」

 

思わず名前を訂正してしまい、墓穴を掘ってしまった。

女性記者の言葉に会場は騒めく。

ナタルも心配そうにトニーを見ている。

 

「わかった、静かにしてくれ」

 

トニーがマイクを使ってそう言うと、会場は静かになった。

 

「このヒーローについてだが」

 

トニーは写真に写っているアイアンマンを指差しながら、会場内にいる全員に見せる。

 

「このヒーローの名前はアイアンマン。何でアイアンマンって名前を知ってるかって?」

 

そして、トニーは言い放った。

 

「――私がアイアンマンだ」

 

 

 

このトニーのアイアンマン宣言は、束とF.R.I.D.A.Y.によって全世界に配信された。

 

そして織斑兄弟に次ぐ、世界を震撼させるニュースになった。

 

 




某動画とは一体何ニコ動画何だ!?

そして完全にアイアンマンに場を持ってかれたスカイファルコンとナタルさん。


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フェイズ1
自己紹介


トニーが生徒として学園に入る案は最初から考えてなかった…。


トニーのアイアンマン宣言から時は流れ、2ヶ月が経つ。

 

春になり、多くの学校は新学期に入る。。

 

例に漏れず、IS学園も新学期に入り、新入生も入学した。

しかし、今年度の新入生にはイレギュラーが存在する。

 

○○○

 

(四方八方女子に囲まれてる……!)

 

世界初の男性IS操縦者の1人、織斑一夏。

 

1番前の席に恐る恐る座っている。

 

右を見れば女子。左を見れば女子。

後ろを向けば女子。右斜め後ろも、左斜め後ろも女子だ。

 

一夏は、男性IS操縦者の1人であり弟である織斑一秋に助けを求めようとしたが、一秋は廊下側の1番後ろの席に座っており、隣の女子と談話していた。

 

出席番号順なら、一秋は一夏の後ろにいる筈だが、このIS学園は最初っからランダムの座席のようだ。

 

出席番号順だろ、と異議を申し立てたいが、完全にアウェイの為そんなことはできない。

 

そんな中、一夏は思った。

 

本当なら今頃は、友人の五反田弾、御手洗数馬と一秋と共に藍越学園に入学していた筈だ。

 

なのに何故こうなってしまったのか。

 

(俺が悪いんだけどさ……!)

 

一夏が藍越学園の試験会場だと思って入った場所は、IS学園の試験会場だったのだ。

 

そこにISが置いてあり、興味本位で触ってしまったことが人生のターニングポイントだったのだろう。

 

何故かISを起動させてしまい、試験監督に見つかってしまう。

そこから流れるようにして、一夏はこの場にいる。

 

「織斑君!」

「は、はいぃ!」

 

一夏がここまでの経緯を考えていると、教卓にいる教師から名前を呼ばれた。

 

驚いて思わず声が上ずってしまった。

 

そのことに周りの生徒はクスクスと笑い、一夏の弟である一秋は笑いを堪えていた。

 

「大声出してごめんなさい。でも出席番号順で織斑君……えっと一夏君の番なんだけど、自己紹介してくれるかな?」

「あ、はい」

 

一夏は教師である山田真耶にそう言われ、思い出す。

 

今の時間、SHRで自己紹介をしていたのだ。

 

一夏は何を話そうか、暫く考えた。

 

――が、何も思いつかず、溜め息を吐いて席から立ち上がった。

 

○○○

 

一夏が自己紹介を始める少し前。

 

千冬はある人物の紹介を職員室でしていたら、SHRに遅れることになった。

 

廊下を歩きながら、千冬は隣にいる人物に話しかけた。

 

「何故ここに来た?」

 

隣にいる人物――トニーは答える。

 

「面白そうだから」

「何?」

「というのもあるんだけど、偶には誰かに技術を教えるのも悪くはないと思ってね」

「……それでこのIS学園に来たのか」

「ああ、それは偶々だね。ダメ元でIS学園に交渉したら、好待遇で迎え入れられたよ」

「……その好待遇とやらは後で聞こう。でもいいのか?お前には会社もあれば、アイアンマンとしての活動もあるんじゃないのか?」

「それについては大丈夫。会社は信頼できる社員達に任せてる。それに書類業務ならこっちでもできる」

「アイアンマンの活動も、か」

 

 

そんな会話をしているうちに、千冬が担任を務めるクラス、1組の前に着いた。

 

「ふむ、どうやら一夏が自己紹介をするようだ。音を立てずに後ろから入るぞ」

「君も随分と物好きだな」

 

千冬はドアを音も立てずに開け、中へと入る。

トニーもそれに続き、中へと入った。

 

ちょうど、一夏が立ち上がり自己紹介を始めようとしていたところだった。

 

「お、織斑一夏です……以上!」

 

それだけだった。

 

千冬は溜め息を吐き、一夏に近づいて、出席簿を振るった。

 

「お前はまともに自己紹介もできないのか」

 

どう考えても出席簿で叩かれた音ではない音がして、クラス全員はその人物へと視線を向ける。

 

「げぇっ、関羽!?」

「誰が三国志の武将か、馬鹿者」

 

その中でも一夏が千冬に対してそう言うと、もう一撃、出席簿が一夏の頭に振り下ろされた。

 

「――いってぇ……!」

 

その痛さに一夏は頭を抱える。

 

「織斑先生、もう終わったんですか?」

「ああ、山田君。その人物も後ろにいるよ」

 

千冬がそう言うと、クラス全員の視線はトニーに集まる。

 

「やあ」

 

トニーは口元に笑みを浮かべ、軽く手を挙げた。

 

「う、嘘!トニー・スタークよ!」

「さんをつけろよこのデコスケ野郎!」

「私は女だぁぁぁ!」

「何でここにいるんだろう」

 

と、女子生徒がトニーを見て、一気に喋り始める。

トニーの目の前にいる一秋に関しては、目を大きく見開き、口を開けて驚いている。

 

更には……。

 

「千冬様よ!本物の千冬様よ!」

「貴方のようになりたくてここに来ました!」

「ずっとファンでした!」

「罵ってください!」

 

と、千冬へ熱い言葉を贈る輩もいる。

 

「んん!お前達静かにしろ。一夏、他にはないのか?」

「まだやんのかよ千冬姉!?」

「当たり前だ。それと、織斑先生だ」

「わ、わかりました織斑先生」

 

一夏は千冬の圧力に負け、再び自己紹介を始め、無事に終わらせた。

 

「次は一秋だ。手間を取らせるなよ……?」

「わ、わかってるって」

 

一秋も千冬の圧力に押され、立ち上がる。

 

「織斑一秋です。そこにいる一夏とは双子で、僕は弟です。趣味は機械弄り。えっと……」

 

一秋は後ろにいるトニーをチラッと見て、何かを言うのをやめた。

 

「皆よろしく」

 

 

 

 

暫くして、クラスの生徒全員の自己紹介が終わった。

 

そして千冬の視線はトニーへと送られる。

 

「何だ?僕にも自己紹介をしろって言うのか?」

「当たり前だ。何でお前がここにいるのか気になってる奴もいるだろうしな」

 

「仕方ない」と言って、トニーは自己紹介を始めた。

 

「皆も知ってる通り、僕の名前はトニー・スターク。スターク・インダストリーズの社長だ。今回、特別教師として3年間、皆に授業をすることになった。よろしくな」

 

トニーが自己紹介を終えると、1人の女子生徒が手を挙げた。

 

「はぁ〜い。トニーさん、アイアンマンは持ってきてるの〜?」

 

その質問に、一秋の身体が一瞬震えた。

 

トニーは気になったが、あえて今回はスルーする。

 

「勿論だとも。僕とアイアンマンは一心同体だ。なんなら放課後、見せてやってもいいぞ」

 

トニーのその言葉に、女子生徒達が反応する。

 

「まさかこの眼で生アイアンマンを見れるなんて!」

「やったぜ」

「IS学園に入学できて良かったぁ!」

 

「人気なのは嬉しんだが、静かにしたほうが良いんじゃないか?前にいる鬼が……って悪かったよ。だからその構えを解け。出席簿はフリスビーじゃないんだぞ」

 

トニーは前で出席簿を投げようと構える千冬にそう言った。

 

「まあいい。次の時間からは早速授業だ。お前ら、準備をしておけ」

 

千冬の言葉に全員が返事をし、ちょうどチャイムが鳴ったところでSHRは終了した。

 




スルーする、なんちって!

……

次回は一秋についての話です。

裏設定集
・スカイファルコン
第3世代型のIS。
前世にいたファルコンを参考に造られた。
装甲部分に目立った物はない。
特徴的なのはバックパックである。
翼は伸縮性があり、収納することも出来る。
また、翼は実弾を通さないようになっており、シールドとしても活用できる。
武装はサブマシンガン2丁と自律型索敵機スカイウィング。


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我思うゆえに我あり

短い上に前回の一秋視点なので話は進んでいません。
許してください、何でもしますから!(何でもするとは言ってない)


誤字報告してくださっている方、いつもありがとうございます。


僕の名前は織斑一秋。

 

歳は16。誕生日は9月27日。

 

趣味は機械弄り。

 

好きな食べ物はサンドウィッチ。嫌いな食べ物は特にない。

 

家族構成は父、母、姉、双子の兄、自分、妹。

両親と妹は蒸発。現在は姉と兄と自分のみ。

 

小学生の頃は剣道を習い、中学の時はパソコン部に所属。

 

高校受験の際、兄と共にISに乗れることが確認され、強制的にIS学園に入学。今に至る。

 

「こんなところかな」

 

僕は背筋を伸ばし、姿勢を崩す。

 

朝、起きた時は必ず自己確認することを心がけている。

 

こうでもしなければ、()()()()()が分からなくなってしまう。

 

「あの()()()さえ見なければなぁ……」

 

()()()というのは、僕がちょうど中学に入る前々日くらいに、知恵熱を出してから見るようになった夢だ。

 

夢、というよりかは()()()()の人生の追体験かもしれない。

その夢を見ている時はまるで、その人物として生きているかのような錯覚に陥る。

だから自己確認をしなければ、自分という存在が保てなくなる、かもしれないからだ。

 

ちなみに今日はIT関連の本を読んでいる夢だった。

 

このことは千冬姉と一夏には言っていない。

ただでさえ大変なのに、これ以上苦労をかけたくないのだ。

 

「おーい、一秋」

「今行く!」

 

朝食当番の一夏が声を掛けてきた。

 

僕はIS学園の制服に袖を通し、リビングに向かう。

 

 

夢のことを相談できるのは、僕に機械弄りの技術を教えてくれる束師匠か――

 

――()()()()()()だけだろう。

 

○○○

 

「はぁ……」

「一夏、それで溜め息何度目?」

 

朝食を済ませ、僕と一夏はIS学園に向かっていた。

 

IS学園の制服を着ているせいか、周りの人からの視線が集まる。

 

「まるで動物園の動物みたいだ」

「それには同意」

 

なるべく気にせずにしているが、ここまで視線が多いと嫌でも気にしてしまう。

 

「本当だったら藍越学園に行ってたんだけどな」

「一夏が試験会場を間違わなければね」

「ぐっ……!け、けど一秋が道を覚えてれば!」

「確かにそれは悪いと思ってるけど、一夏が絶対こっちだ!とか今日は俺に任せろ、とかって言ってたから信用して付いて行ったんだよ」

「す、すみません」

 

一夏は落ち込んで、肩を落とす。

 

「僕はIS……というか機械に触れられるから、IS学園でも良いんだけどね」

「一秋は本当に機械が好きだな。やっぱり束さんのお陰か?」

「そうかな?」

 

一夏が言った通り、師匠――束さんが随分と僕に技術を仕込んでくれたのも要因だろう。

 

「そんなことより、もうそろそろモノレールに乗らないと遅刻するぞ」

「やべっ!千冬姉に怒られる!」

 

時間を確認した僕達は駆け足で駅まで走った。

 

○○○

 

僕達は無事、遅刻せずにIS学園に着き、自分達のクラスへと入った。

 

僕は廊下側の1番後ろ。

不幸にも、一夏は1番前の真ん中の座席だった。

 

僕は一夏に「ドンマイ」と言って肩を叩いた。

 

一夏は泣く泣く、席へと向かった。

 

座った途端、隣の席の女子生徒と話しかけてきた。

 

確か、布仏本音さんだったかな?

丈の長い服を着て小柄な女の子だった。

 

独特なニックネームを付けるようで、最初は「オリムー」と呼ばれたが、一夏もいる為、僕は「アッキー」と呼ばれるようになった。そして一夏は「オリムー」になった。

 

謎の優越感。

 

本音さんは整備科を希望しているらしく、話の馬が合った。

ISの事も聞けたので、先生が来るまでの間、有意義な時間を過ごせた。

 

 

 

 

そして、先生が来て、自己紹介が始まる。

 

そこで僕は、アイアンマン宣言をしたトニー・スタークと再会した。

 

 




裏設定集

・織斑一秋
一夏の双子の弟。
双子の為、一夏と顔がそっくり。目が垂れ目くらいの違い。
一人称は僕。一夏ほどではないが、モテる。あっちが爽やか系ならば、一秋は癒し系だろう。運動能力では一夏に劣るが、知識面では圧倒的に一秋が勝る。束の弟子である為、技術者としての腕も高い。
中学に入学する前々日に知恵熱を出してから、謎の夢を見るようになる。
専用機:不明

厳密言えば、一秋君は転生者じゃないです。
トニーがいた前世の誰かの人生を追体験しているだけです。

今回、あるヒントを出しました。映画を見ていて、勘の良い人は気付くでしょう。
勘の良いガキは嫌いだよ!(掌返し)

そしてさりげなく妹。
一体誰なんだ……!


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教師としての威厳

恒例のセッシーイベント

しかしこの千冬さん、ノリノリである。


鰻のゼリーが好きな方、先に謝っておきます。
ごめんなさい!

※6月4日20:29
誤字修正


SHRが終わった後。

通常通りに授業が始まった。

IS学園は一般の授業に加え、ISに関しての授業もある為、かなり詰め込まれたスケジュールである。

 

今は1時間目が終わり一夏はぐったりと、一秋は静かに本を読んでいた。

 

トニーと千冬は廊下に出ていた。

 

「それにしても、ここに来てから驚かせられたよ」

「何がだ?」

「大半の生徒はISが兵器としての側面があるってことを理解してないこと」

 

腕を組みつつ、壁に寄っ掛かるトニーはそう言った。

 

「仕方ないだろう。彼女達はスポーツとしてのISしか見たことがないのだからな」

「それにしてもだ。充分に危険だということくらいはわかって欲しいものだね」

「その為のIS学園だよ……」

 

千冬は苦笑する。

 

「しかし君の兄弟は実に優秀だな。片方はギリギリ理解できているかどうかだが、もう片方はクラスで1番じゃないか?前者に関しては全く理解していないと思っていたが、驚いたよ」

「一秋か。一秋はISができる前まで束に色々と教えてもらっていたからな。元々こういうのが好きなのかもしれないな」

「気に入ったよ。もう片方は?」

「一夏は確かに勉学では一秋に劣るが、運動面に関してはなかなかの物を持ってる。それと家事は一夏の方ができる」

 

「しかし」と千冬は続ける。

 

「入学前に渡した必読の参考書を一夏が古い電話帳と思って捨てて、勉強はしてこないだろうと私も思っていたが……。大方、一秋と一緒に少しは勉強したのだろう。優秀な弟達を持って嬉しいよ」

 

それを聞いたトニーは苦笑し、千冬に言った。

 

「……君、ブラコンだろ」

「何?」

「君の家庭事情を考慮すればそうなるのも当たり前かもしれないがな。恐らく兄弟もシスコンだろうね」

「そう、なのか……?」

 

千冬は自分で理解していなかったのか、首をかしげる。

 

「まぁ、家族で仲が良いのは良いことだ。だが、一線は越えるなよ?」

 

薄く笑いながら千冬にそう言い、トニーは教室に戻った。

 

「一線を越えるな?……!?するわけがないだろ!」

 

少し遅れてトニーの言葉を理解した千冬は顔を少し赤くして後を追った。

 

トニーの頭に出席簿が振り下ろされたのは言うまでもない。

 

○○○

 

休憩時間が終わり、2時間目が始まる。

 

生徒と真耶は千冬の顔が少し赤いのが気になったが、千冬から発せられる圧力のせいで聞けなかった。

 

「2時間目はクラス代表を決める」

 

生徒の1人が質問する。

 

「クラス代表って何ですか?」

「クラス対抗戦に出場する代表のことだ、クラスの顔と言っても良い。自薦他薦は問わん。誰かいないか?」

 

千冬の言葉に一斉に女子生徒の手が挙がった。

 

「織斑一夏君が良いと思います!」

「えっ、俺?」

 

「私は一秋君!」

「やっぱりか。予想はしてたけどさ……」

 

素っ頓狂な声を一夏は出し、予想していたのか溜め息を吐く一秋。

 

「ふむ、一夏と一秋か。他にいないか?いなければ……「納得いきませんわ!」何だオルコット?」

 

イギリス代表候補生のセシリア・オルコットが机を叩き、声を上げる。

「このクラス唯一の救い代表候補生である私を差し置いて、何故彼らをクラス代表にしなければならないのですか!?」

「自薦他薦は問わんと言った筈だ。人の話を聞いてなかったのか?」

「うっ……。わ、私セシリア・オルコットが立候補しますわ!」

 

痛いところを突かれたセシリアであったが、すぐに立ち直り、自分で立候補した。

 

「3人か。そうだな、3人で闘って勝った者がクラス代表になるというのはどうだ?」

 

千冬の言葉を聞いたセシリアは勝ち誇った笑みを浮かべ、自慢気に喋り始めた。

 

「その様な勝負、やる前から結果がわかっていますわ。それでもやるというのならば、やって差し上げないこともありませんよ?」

 

その言葉に一夏が食いかかった。

 

「随分と上から目線だな」

「当たり前じゃないですか。極東の猿など相手になりませんわ」

「よく言うぜ、イギリスも大した国じゃない癖にさ。イギリスは世界メシマズランキング何年間1位だよ」

「わ、私の祖国を侮辱しますの!?」

「先に言ったのはそっちだろ!」

「おい一夏抑えろ!オルコットさんもだ!」

 

一秋の仲裁も虚しく、一夏とセシリアの口喧嘩がヒートアップしていく中、今までの話を聞いていたトニーは静かに呟いた。

 

「鰻のゼリーは最悪だったな」

 

あの特有の泥臭さと悪臭が何とも言えない。

それを思い出したトニーは軽い吐き気も思い出す。

 

「トニー、お前もどうだ?」

 

突然、千冬がトニーにそう言った。

 

「どう、って何の話だ?」

「聞いてなかったのか……。お前も決闘に参加するということだ」

「おいおい、僕は生徒じゃないんだぞ?」

「教師の威厳を示しておける絶好の機会だぞ?アイアンマンとISの闘いに興味のある奴もいるだろうしな」

「アイアンマンは見世物じゃないぞ?」

「お前、さっき自分で言った言葉を忘れたのか?」

 

『なんなら放課後、見せてやってもいいぞ』

 

SHRの時間にトニーはそう言っていた。

それを思い出したトニーは、先程の言葉なんてなかったかのように、すぐに千冬の意見に賛成した。

 

「良いね、動いてる方が見栄えが良い。ただ、オルコットとだけ闘うことにしよう」

「……何でです?」

 

トニーの言葉に名前を呼ばれた本人であるセシリアが反応する。

 

「初心者相手に闘って勝っても意味がないだろ?」

「確かにそうですわね」

 

トニーの言葉に気分を良くしたセシリアであったが、トニーの次の言葉に顔を青く染める。

 

「それに、"極東の猿は相手にならない"と言ってたんだ。少なくとも千冬レベルということだろ、オルコット嬢?楽しみにしてるよ。あぁそうだ。スーツの整備をしなくちゃな」

「なっ、なっ!?」

 

トニーはそう言って、教室を出る。

 

「ふっ、確かにそうだな。では、一夏、一秋、オルコットの3人で決闘を行うことに決定だ。トニーはオルコットとの対戦のみだ」

 

千冬はトニーの言葉に悪乗りして、話を進める。

 

入学初日で短縮授業の為か、早いチャイムが鳴り、2時間目が終わる。

 

「一週間後にアリーナで行う。各自は準備をしておけ。それとオルコット」

 

千冬は教室を出る前にセシリアの方を見る。

 

「発言には気を付けろ?」

 

口元をニヤリとさせながら、忠告した。

 

 

 

 

 

 

後にセシリアはその時のことを、「まるで死神に命を狙われているかの様でしたわ……」と、身体を震わせながら語ったと言う……。

 




大人2人が大人気ない。

裏設定集
・織斑千冬
今作の千冬は優秀(予定)。
ブラコンの疑惑あり。



織斑千冬、24歳、独身です。
うわっ、ちょ、やめ(ry


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姉妹の仲

箒と束の関係性が原作とは違います。
まぁ自分でミサイルを日本に撃ったわけじゃないですしね。

てかモッピーの性格違うッ!ってなるくらいに大人しい。
一夏が絡んでないとこうなるのかな…?


4コンマの授業が終わり、昼休み。

 

生徒達は昼食を摂る。

大半の生徒は食堂へ行き、残りの生徒は自分で作ったお弁当などで済ませる。

 

職員もその例外ではない。

 

1組のあの騒動から整備室に篭っていたトニーは空腹を感じ、食堂へ来ていた。

 

トニーが食堂に来たことにより、周りの視線は集まり、騒がしくなる。

しかし、普段から騒がしい所や視線に慣れている為、気にせずに券売機へと向かい、券を購入する。

 

「お姉さん、これ頼むよ」

「もうお姉さん何て呼ばれる歳じゃないよ」

「そうかい?若く見えるよ」

「人を煽てるのが上手いねぇ!サービスだよ!」

「ありがとう」

 

食券をカウンターにいる従業員に渡し、頼んだ料理を受け取る。

 

他国からも入学してくる生徒が多数いる為、食堂のメニューも多種多様な物を揃えている。

 

トニーが注文したのはピザ。それとサービスされたポテトだ。

 

「さてと……。ん?」

 

それらが載せられたトレーを持ち、テーブルを探していると、1人で食事をしている生徒がいた。

 

1組で見たことがある生徒だった為、それとその生徒にある人物から頼まれごとをされている為、そのテーブルへと向かった。

 

「相席いいかね?」

「スターク先生……」

 

その生徒が「どうぞ」と言って、トニーは椅子に座る。

 

「ありがとう。ここに来て早々アレなんだが……。君に訊きたいことがある――Ms.篠ノ之」

 

トニーにそう呼ばれた箒は若干不機嫌な顔になり、トニーに言った。

 

「姉さんの居場所なら知りませんよ」

 

大人達は多くの場合、自分の姉を探していたり、姉のことを聞いてくる。

そう思って箒は言ったが、トニーは違った。

 

「その姉さんからの頼まれごとだ」

「……姉さんと知り合いなのか?」

「知り合いも何も、今は僕の自宅に住んでるぞ?」

「えぇ!?」

 

予想外の返答に箒は素っ頓狂な声を出す。

 

その声で周りの視線が自分達に集まっていることに気付いた箒は咳払いをし、トニーに顔を近づける。

 

「で、その姉さんが私になにかあるんですか?」

「そうだな、ここだと人が多い。場所を移さないか?」

 

トニーの提案に箒は頷き、2人は急いで昼食を摂った。

 

○○○

 

急いで昼食を摂り終えた2人が向かったのは校舎裏。

 

並んで壁に寄っ掛かり、会話を再開させた。

 

「スターク先生。先に私が質問しても良いか?」

「いいぞ。色々と聞きたいことがあると思うからね」

 

箒は道中で購入したお茶のペットボトルを手の中で回しつつ、聞きたいことを一度整理してからトニーに訊く。

 

「姉さんとはどうやって知り合ったんだ?」

「互いに初めて会ったのは発表会。そこからもう一度会う機会があって知り合いになったよ」

「極度の人見知りの姉さんが……?」

「僕もそう聞いた。けど彼女は僕の事を尊敬していたらしくてね。そんなに抵抗はなかったみたいだ」

 

そう言った後、缶コーヒーの蓋を開けて一口呑む。

 

「他に聞きたいことは?」

「とりあえずは無いです。姉さんからの頼まれごとというのを聞いてからにします」

「よし、なら僕の番だな。束から頼まれごとと言っても、質問だな」

 

トニーは横にいる箒を見て、続けて言った。

 

「"私のことをどう思っているか"だそうだ」

 

その質問をしてから少し間を置き、箒は静かに質問に答えた。

 

「家族がバラバラになったのは姉さんのせいだ」

「……」

 

トニーは束から聞いていた。篠ノ之家は重要人物保護プログラムによってバラバラになってしまったと。

 

「でも……、私にとっては尊敬する姉だ」

 

その言葉にトニーは驚いた。

 

「てっきり憎んでるのかと思ったよ」

「確かに家族がバラバラになったのは姉さんのせいだが、それは家族を守った結果だ」

「?」

「姉さんは誰よりも家族の為に行動し、家族を守る為にミサイルを撃ち落とした。日本を守ったのはその結果に過ぎない」

「君は白騎士事件のことについて知ってるのか?」

「姉さんが造ったISでミサイルを撃ち落とすって言ってて、それで姉さんと千冬さんがやったんだろうって何となく察してた。この事は誰にも言ってないが……」

「流石は妹と言ったところか……」

 

箒の推理力に感心し、トニーはそう呟いた。

 

「姉さんは元気ですか?」

「元気すぎて僕達の身が持たないよ」

「……すみません」

 

箒は苦笑しつつ、頭を軽く下げる。

 

「最後に僕からの質問良いかな?」

 

トニーがそう言うと、箒は軽く頷いて了承する。

 

「君は何故IS学園に入ったんだい?」

 

その問いに、今度はすぐに答えた。

 

「姉さんの夢の手伝いをしたい、それだけです」

 

その返答に満足したのか、トニーはニヤリと笑った。

そして腕時計を見つつ箒に言う。

 

「Ms.篠ノ之、質問に答えてくれてありがとう。そろそろ時間だから戻ったほうが良いだろう」

「そうですね。ありがとうございました。それと私のことは箒って呼んでもらって構わない」

「そうか?なら箒、また話そう」

「はい」

 

箒は教室に向かうべく、校舎裏を離れた。

 

トニーは胸ポケットに入れているポールペンのキャップ部分を押す。

 

すると……

 

『うわぁぁぁぁぁぁぁん』

 

そのボールペンから泣いている束の声が聞こえ始めた。

それにトニーは呆れて声をかける。

 

「うるさいぞ。そんなに嬉しかったのか?」

『嬉゛し゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛お゛。グスン、ヒグッ……』

 

既に声が女性のそれではない物に変わっていることに、トニーはさらに呆れる。

 

「僕もそろそろ時間だから切るぞ?」

『うんっ……』

 

少しだけ泣き止んだ束にそう言って、トニーは胸ポケットのボールペンのキャップ部分をもう一度押して、束との通信を切った。

 

「全く、不器用にも程があるだろう」

 

トニーはそう言うものの、薄く笑っていた。

 




これで箒ちゃんが専用機を持った時に他の生徒からの不満やヘイトを回避するフラグ?(その1)を建てた。

裏設定集
・篠ノ之箒
原作よりも姉妹間の仲は良好。姉を尊敬しており、姉の研究を見て、その手伝いをしたいと思っている。一夏に好意を抱いているのはそのまま。将来は篠ノ之神社を一夏と一緒に……(ry

箒ちゃん優遇されてね!?と思いの方。
気のせいだよ()


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夢の正体 前編

遅れてスンマセン!
そして短いです!



何で箒と同室になったんだろう。


昼食後の授業も終わり、一秋は一夏と一緒に教室に残っていた。

一夏の勉強に付き合う為だ。

 

「難しい……難しすぎる……」

「……」

「なぁ一秋、ここなんだけど……」

「……」

「一秋?」

「……」

 

一夏が教えてもらうために何度も呼びかけるも、一秋は窓の方を向いたまま一夏の呼びかけに気づかない。

 

「おーい、一秋」

「あ、ごめん一夏。どこかわからないの?」

 

一夏が一秋の肩を揺らすことで、自分が呼ばれていたことにやっと気付く。

 

「どうしたんだ?なんか心ここに在らずって感じだったぞ?」

「あー……。不思議なことがあるもんだなーって考えてて」

「?」

 

一秋が苦笑しながら答えると、一夏は首を傾げる。

 

「そんなことよりも何処がわからないの?」

「あ、そうだ!ここだよここ。何だよこれ、意味がわからねえ」

「これね。これは……」

 

「良かった!まだ織斑君達残ってたんですね」

 

一秋が教えようとした時、真耶が教室に来た。

 

「どうしたんですか?」

「2人の寮部屋が決まったんですよ」

「あれ?1週間は自宅からの通学じゃなかったんですか?」

「事情が事情だからな。部屋割りを無理矢理変更した」

 

一夏が真耶にそう訊くと、後から来た千冬が代わりに答えた。

そして続けて、一秋と一夏に言った。

 

「安心しろ。荷物なら私が適当に見繕った。着替えと携帯電話の充電器があれば充分だろ?」

「ま、まぁいいかな?俺と一秋は一緒の部屋何だろ?」

「違う」

「……えっ?」

「違う、と言った」

「えぇ!?何で!?」

 

千冬の返答に一夏は大袈裟に驚く。

 

「もしかして俺と一夏が2人一緒だと何かマズイ事でもあるんですか?」

「そうだ」

「ちなみに相部屋ですか?」

「ああ。一夏は私と、一秋はトニーとだ」

「千冬姉と一緒ならまぁいいかな……?」

「……まあいいだろう」

 

「やべっ!」と織斑先生と言わなかったことに一夏は慌てるが、今回はお咎め無しのようだった。

 

「スターク先生と……」

「どうした、一秋?」

「いいや、何でもないです」

 

何か思うことがあったのか、一秋は神妙な顔になるが、千冬からツッコまれると、笑って誤魔化した。

 

その後、簡単な寮についての説明をされてから暫く勉強をした後、一秋と一夏は寮部屋へと向かった。

 

○○○

 

「失礼しまーす……」

 

一秋がそう言って、トニーとの相部屋に入ると、中は真っ暗だった。

 

「スターク先生はまだ帰ってきてないのかな?」

 

そう呟くと共に、電気のスイッチを探すが、スイッチを見つける前に明かりがついた。

 

『部屋への入室を確認。該当者は織斑一秋』

「な、なんだ!?」

 

突然、明かりがついたと思ったら、何処からか声がする。一秋はそれに慌てながら声の出所を探す。

 

『おかえりなさいませ、一秋様。私はサポートAIのF.R.I.D.A.Y.です』

「はぁ……。これはどうも」

『トニー様はもう少しで帰ってくると思います』

 

何処に挨拶をすれば良いのかわからず、とりあえず軽く腰を折る。

 

すると、ドアがまた開く。

 

「なんだ、もう来てたのか」

『噂をすればなんとやら、ですね』

「おいおい、僕のどんな噂をしていたんだ?カッコ良いって?」

『一言も言ってません』

 

中に入ってきたのはトニーであった。

 

「スターク先生……」

「織斑一秋だな?よろしく」

「よ、よろしくお願いします」

 

握手をすると、中へ入るように促される。

 

「千冬から君は束の弟子だと聞いたが」

「弟子……だったんでしょうか?」

「少なくともそういう関係だったんだろ?」

「まあ、はい」

 

トニーはネクタイを外し、ブレザーを脱ぐと、それを椅子に掛けた。

そして着替え始める。

 

「あの、スターク先生」

「何だ?」

「相談したいことがあるんです」

「僕にか?何か造ってるのか?」

「いえ、そういう物じゃなくて、身体的な相談です」

「それなら僕じゃなくて病院とかに行った方が良いんじゃないのか?」

「これはトニーさんも関係してるんです」

「……何?」

 

そこまで言うと、着替え中の手を止め、一秋の方を振り返る。

 

「僕が見る夢について、相談に乗ってください……」

 

 




最近は気付くと意識を失ってる。

書いてる途中に。
そして電源は切れ、本文は全て最初から。

それを何回か繰り返してた。

次回はとうとう一秋の夢の正体が判明します。


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夢の正体 後編

遅れてすんまそ…。


友人「ガルパンはいいぞ(劇場版見ましょう)」
自分「ファ!?」←ガルパン未視聴勢

自分「ガルパンはいいぞ」

劇場版を見て、ガルパンが人気な理由がわかった。
今はガルパンの小説が書きたいくらいには好き。


「それで?君の夢の相談とやらを始めようじゃないか」

 

コーヒーを2つ入れ、1つは一秋に渡す。

「ありがとうございます」と言って、コーヒーを受け取る。

 

トニーはベッドに座り、一秋ももう1つのベッドに座る。

 

「えっと、まず僕が見てる夢なんですが……、中学に入る前から今日まで続いてます」

「持続性のモノか……」

 

トニーはコーヒーを一口呑み、一秋はそれを見計らって再び喋る。

 

「僕が見てる夢の内容は、誰かの人生を追体験してるようなモノです」

「それは1人だけか?」

「はい」

 

一秋もコーヒーを一口呑む。

 

「それで?」

「僕が初めて見た夢は、僕……その夢の中の人物が自我を持ち始めたところからでした。ここまでならただの夢かなと思ったんです。だけど、僕のことを他の名前で呼んだり、住んでる所が全く違ったり。それにその夢が続いて見るようになって、普通じゃないことがわかりました」

「ふむ」

「エレメンタリーハイスクールに入って、卒業する。ジュニアハイスクールに入って、卒業する。そこまではそう変わらないモノでした」

「でもハイスクールに入ってからは違った?」

「はい」

 

一秋は下を向き、喋るのを続ける。

 

「僕……じゃなくてその夢の中の人物が高校2年生の頃からかな?テレビを見てたらアイアンマン宣言をしたトニーさんが映ってたんです……」

「……」

 

トニーは無言になる。

 

「スタークエキスポが開催されて、そこでトニーさんが闘ってるのも見ました、テレビで。そして、ニューヨークの闘いも」

「もしかして……、チタウリとの闘いか……?」

「そのチタウリというのはわかりませんが、異生物と闘っていました。その時はトニーさんだけじゃなくて、緑の怪物、弓を持った人、唯一の女の人、ハンマーを持った人。そして……、アメリカのマークが模様されたと思われる盾を持った人」

「……!」

 

盾を持った人、と聞いてトニーは小さく驚いてしまった。

 

「最後に見た夢は……大きな空飛ぶ船が落ちてきた夢を見た所ですね。もちろんニュースで」

 

そう言い終わった一秋はコーヒーを呑む。

聞き終わったトニーは唖然とした表情で一秋を見ている。

 

「どうしました?」

「いや、その……。よく君は自我を保っていられたな。それに話を聞くに1回の夢で何日も過ごしてるわけだ。休めてるのかどうかわからないし、何より体感時間が狂いそうだ」

「そうですね……。毎朝起きて自分の確認をすることはもう欠かせなくなりましたし、体感時間も少し狂いそうになったことはあります。身体的な疲労は無かったんですが、精神的疲労がちょっと……。今は慣れましたがそれも最近です」

 

一秋は苦笑しながら答えた。

 

「そうか。それは大変だったな。誰かに相談はしてないのか?」

「いえ。束さんかトニーさんに相談しようと思ってました。……千冬姉と一夏には何だか相談できそうになくて」

「家族想いだな」

 

トニーは心を落ち着かせるためにコーヒーを呑んだ。

しかし、何故かコーヒーの味と苦味が無い。ただの液体が喉を通る。

そんな感覚だった。

 

「それで、僕が見た夢のことで、何か知ってることはありませんか?」

「……知っている。というよりもその本人だ」

「?」

「つまりは……、その、僕はこういうことはあんまり信じられないんだが……。所謂、前世ってやつだな。そして僕は今ここに輪廻転生している」

「……なんか、凄いですね。スケールが大き過ぎて若干飲み込めないです」

「最初の頃の僕もそうだったよ。しかし、何で僕の前世の夢なんかを君が見ているんだ……?」

「わからないからスターク先生に相談したんですよ」

「そうだったな」

 

2人とも苦笑しながらコーヒーを呑む。

 

そして、トニーはあることが気になり、一秋に訊いた。

 

「そうだ、君のその夢。誰かの夢なんだろ?」

「そうですよ?」

「その夢の中での名前はなんて呼ばれていたんだ?」

「えっと……」

 

一秋は頭をコーヒーを持っていない方の人差し指で軽く叩きながら、言った。

 

 

「チャーリー……、チャーリー・スペンサーです」

 

 

 

その名前を聞いた瞬間。

 

トニーの頭の中は真っ白になり、変な汗が出始める。

 

そんな中で、トニーは何とか絞り出すような声で言った。

 

「本当にチャーリー・スペンサー……なのか?」

「?はい」

「何でよりにもよって彼の人生を……」

 

そうい言ったトニーは頭を抱える。

 

「知ってる人なんですか?」

「……あぁ」

「……最後を知ってるんですか?」

「……」

 

その言葉にトニーは何も言えなくなる。

 

「……ダメ、ですか?」

 

トニーは何度も繰り返し悩み、決心した。

 

「いずれその時を見るんだ。今言ってもいいだろう」

 

トニーは俯きつつ、続けて言った。

 

「僕達、アベンジャーズの闘いの……、ソコヴィアでの戦いで犠牲になった」

「……ッ!?」

「IT企業への就職が決まって、ソコヴィアへボランティアに来ていたところを僕達の闘いに巻き込まれた」

「そう……なんですか……」

 

一秋もそれを聞いて俯いてしまう。

 

「君に言うのもおかしいが……。すまなかった」

「……いえ。でも、なんでこの世界でもアイアンマンとして活動してるんですか?」

「それは……、もう彼のような犠牲を出したくないからだ」

「……強いですね」

「僕は強くはない。結局、スーツを纏わなければ、ただの人間。それに僕は弱い。肉体的にもメンタル的にも」

 

トニーは立ち上がり、言った。

 

「少し風に当たってくる。君もそろそろ夕食を摂りに行ったほうがいい」

 

時計を見れば、既に夕食の時間であった。

 

扉の前に立ち、トニーは言った。

 

「話せて少し楽になった。ありがとう。明日の放課後、空けておいてくれ」

 

返事を聞かずに、トニーは部屋を出た。

 

一秋は首を傾げた。

 

○○○

 

「駄目だな、僕は」

 

外に出たトニーは苦笑して、夜空を見上げた。

 

星がいこにをもやしてるかのように光っていた。




今回は書くのが難しかったです。
何度も書き直しました。


ガルパンの方はまほとミカがヒロインの小説を考えつきました。

……書くならちゃんとアニメを見ないとなぁ


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専用機

アイアンマンスーツとウルトラマンスーツって何か似てますよね(フラグ)

短いです。


翌日。

 

一秋はトニーに言われた通り、放課後の予定を空けておいて、教室で待っていた。

 

一夏は箒に武道場へ連れて行かれた。

箒が前々から言っていた、剣道の指導の為だろう。

 

トニーが来るまでの間、一秋は昨夜のことを思い出していた。

 

(前世って言ってたけど、チャーリー・スペンサー()の出来事を引きずってるのか……)

 

昨日は結局トニーが帰ってきたのは一秋が眠りに入る位だ。

 

これから一緒に生活するのに気不味くなるかと思ったが、翌朝……というか今日の朝には既に元のトニーに戻っていた。

 

トニーが気にしないのであれば、一秋も気にしないようにしようと決めた。

 

(それに昨日聞いたところによれば、ソコヴィアでの闘いが終われば、恐らくこの夢も終わるだろうし)

 

一秋は昨日の話を聞いて、その結果に至った。

 

最初は驚いたり迷惑だったものの、今となってはこの世界では味わえない体験をできて、一秋は少し嬉しかった。

 

 

 

暫くすると、トニーが後ろに千冬を連れ、教室を覗いてきた。

一秋を見つけるやいなや、一秋に言った。

 

「予定は空けておいてくれたようだな。なら、僕達の部屋に行くぞ」

「は、はい」

 

一秋は慌ててバッグを持ち、トニーの後を追う。

 

「なんで僕達の部屋なんですか?」

 

一秋は千冬の隣に並ぶと、前を歩くトニーに訊いた。

 

「防音されてて、通信設備が整ってるからな」

「誰かに聞かれるとマズイんですか?」

「それはもう。なぁ千冬?」

 

トニーが千冬に同意を求めると、「ああ」と短く同意した。

 

 

 

トニーと一秋の部屋まで来ると、早速部屋に入る。

 

「F.R.I.D.A.Y.念のため部屋の周辺の盗聴機器のチェック、それと……」

『部屋に近づいてくる人物のチェック』

「それだ。頼んだぞ」

『かしこまりました。今の所、部屋周辺に盗聴機器と思われる物はありません』

 

F.R.I.D.A.Y.からの報告を受けると、トニーは椅子を出し、そこに座った。

 

一秋と千冬はベッドに座る。

 

「それで、予定って何です?それに千冬姉もいるし……」

「何だ?私は邪魔か?」

「そうじゃないよ……。ただ気になっただけ」

 

千冬が軽くからかうと、一秋は困ったようにそう言った。

 

「さて、今回はもう1人に参加してもらうぞ」

 

トニーはケータイを軽く振ると、宙に3Dモニターが現れる。

 

そしてそこには……。

 

『ハロハロ〜!みんな大好き束さんだよ!』

 

一秋の師匠である束であった。

 

「た、束さん!?」

 

当然、突然の師匠登場に一秋は驚く。

 

「束はアメリカで僕と一緒に住んでいるんだ。そこから通話に参加してもらってる」

『そうなんだよ!ブイブイ!』

「トニーさん、束さんと知り合いだったのか……」

 

すると、千冬が咳払いして言った。

 

「んん、一秋の専用機について話し合うんじゃなかったのか?」

「僕の専用機……?」

「そうだ。僕と束だと話が進まなさそうだったから、千冬も連れてきたんだ。連れてきて正解だな」

 

トニーは小さく笑う。

 

「あ、あの!僕の専用機ってどういうことですか?」

 

一秋は困惑しつつも、千冬が言ったの言葉について説明を求めた。

 

トニーがそれに答えた。

 

「世界初の男性操縦者である2人に専用機が造られる事になった」

「それなら一夏は何でここにいないんですか?」

 

その問いには、千冬と束が答えた。

 

「一夏のならもう既に決まってる。だろ、束?」

『そうそう、いっくんのは束さんが造るよ〜!』

「ということだ。君のは僕が造る事になった」

「えぇ……?」

 

トニー達がそう説明したものの、一秋は困惑したままだ。

 

「そして、今日は君にどんな武器を搭載したいか是非聞きたい」

 

トニーはケータイをまた軽く振ると、別の3Dモニターが宙に現れる。

 

「まず訊きたいのは君がどんなISに乗りたいかだ。やろうと思えば、アイアンマンスーツ型のISも造れる」

 

モニターには従来のISの設計図とアイアンマンスーツの基本設計図が映されている。

 

「僕が乗りたいIS……」

 

一秋は少し考え込むと、暫くして答えを出した。

 

「……アイアンマンスーツ型のISが良いです。その、スマートの方が好きなので」

「見込んだ通りだ。君ならそう言うと思った」

 

トニーは一秋の答えに満足そうに頷く。

 

そして、モニターに映されていた従来のISの設計図を消し、アイアンマンスーツの基本設計図だけが映されている。

 

「さて、どんなのにするか、訊こうじゃないか」

 

トニーはニヤリと笑いながらそう言った。

 

 

 

 

 

そして時は流れ、クラス代表決定戦が始まる。




誰か、自分に休みをください(懇願)

設定を考えるの楽しい……楽しい……。

以下からは次回から一秋が乗るISの設定です。
ちょっと気合い入れすぎたので長いです。
読まなくても多分大丈夫……!

先出し!裏設定集!
・ウルティメイト
一秋のIS専用機。
全身装甲のIS。
一応、第3世代型のISとなっている。その理由は後述。

アイアンマンスーツとウルトラマンスーツを足して割ったようなフォルムになっており、フィッティングするまでのスーツの色は灰色。
第一形態に移行すると、赤と白を基調としたデザインになる。
背中にスラスターが備わっている。機体というよりか、スーツと言った方が適切である。

トニーがアイアンマンスーツがISになったらどうなるのかという思惑だったり、トニーと束が造った試験用兵装を積んでいたりと、プロトタイプ的な意味合いが強いISである。その為、"根本的な"という意味でウルティメイトと名付けられた。

兵装一覧
・エネルギーブレード
ウルティメイトの特徴的な兵装の1つ。両腕に備わっている。その名の通り、ブレードとして扱うこともできるが、コネクターを通して両腕を接続することでエネルギー光線を撃つことができる。しかしデメリットとして、エネルギー光線を撃った後は暫くの間エネルギーブレードを使うことが出来ない。更に、破壊力が高い故に反動が強く、足場が固定できる場面でしか使えない為、使い所が限定される。

・リパルサー
アイアンマンに搭載されている物と同じ物。
兵装としての能力も同じ。
ISにはPICが搭載されている為、浮遊はリパルサーを使わなくてもできる。
ちなみにリパルサーで加速や飛行、空中姿勢の修正などを行う為、ウルティメイトにはカスタム・ウィングが搭載されていない。

・試験用空裂
日本刀型の兵装。後に赤椿に搭載される空裂のプロトタイプ。
振るとエネルギー刃が飛ぶ。普段は拡張領域に仕舞われている。

単一仕様能力
・リミッター解除
ただのリミッター解除だが、単一仕様能力に設定されている。理由としては、スーツ及び着用者に多大な負荷がかかる為。
よって、最大3分間のみ使用可能となっており、所謂"奥の手"。
出力が大幅に上がり、スーツを自壊させない為に装甲が展開されて余剰エネルギーが放出される。(ガンダムで例えるならAGE-FXやユニコーンを想像してみてください)
一応、第3世代型と登録されているが、リミッター解除時のみ、第4世代型になる。
リミッター解除による恩恵もあるが、デメリットの方が多い。
上記の他にも、シールドエネルギーを消費する。シールドエネルギーの残量によって、使える時間も変わる。

ウルティメイトの単一仕様能力は奥の手であると同時に諸刃の剣である。





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クラス代表決定戦 Stage1

お待たせしました。

GGXrdR購入しました。
ストーリーが面白くて一気見でした。

それと遊戯王のタイラー姉妹の妹が可愛いネ。
ちなみに自分はE・HEROデッキとギャラクシーデッキなので、融合次元かエクシーズ次元のどっちかになるのかな……。


クラス代表決定戦当日。

 

第2アリーナの観戦席は1組の他にも、放課後だからか同学年の他クラスの生徒や2、3年生の生徒、職員もいる。

 

その観客の視線の先、フィールドにはIS――"ブルー・ティアーズ"を装着したセシリアが宙に浮かんでいた。

 

しかし、その相手は未だに姿を現せない……。

 

◇◇◇

 

ピット内。

 

そこに一夏、一秋はいた。

他にも千冬と箒もいる。

 

「なぁ、箒」

「……なんだ?」

「気のせいかもしれないんだけどさ」

「……なら気のせいだろう」

「ISのことを教えてくれるんじゃなかったのか?」

 

一夏のその言葉に、箒は露骨に視線を逸らした。

 

「えっ、一夏もISのこと勉強してないの?」

 

すると、一秋が驚きながらもそう言った。

 

「も、ってことは一秋もしてないのか?」

「うん。僕もスターク先生と徒手空拳て軽い組手やったくらいかな」

「専用機は?」

「最後の仕上げだってさ」

 

一秋は困ったように笑っていた。

 

何故、2人はフィールドに出てないのか。

それは彼らの専用機が到着していないのだ。

 

だから2人はピット内で立ち往生していた。

 

後ろで話を聞いていた千冬が2人に向かって言った。

 

「どうせ貴様達は中学から碌に動いていなかったんだ。座学よりも闘いの感を思い出した方がマシだ。その点、篠ノ之とトニーの選択は間違っていない。それに、一秋はまだしも一夏は頭で考えて覚えるよりも動いて覚えるタイプの筈だ」

「うっ。そ、そうだけどさ」

 

千冬の的確な言葉に一夏はぐうの音も出ない。

 

「あの!織斑君!織斑君!」

 

山田先生が急いで来たのか、慌ててピット内にやって来た。

 

「山田先生、どっちの織斑ですか?」

「あ、すみません!一夏君の方です!」

「そうですか。……一夏、準備しろ」

「え、うん」

 

千冬に促された一夏は、制服を脱ぎ、朝に着ておいたISスーツの状態になる。

 

そして、遅れてコンテナが運ばれてきた。

 

コンテナの扉のロックが解除され、一夏の専用機が姿を見せた。

 

一夏がそのISを見た初めての印象は"真っ白"であった。

 

「……これが俺のIS」

「あぁ、そうだ。機体名は"白式"」

「白式……。座ればいいんですよね?」

「そうだ。後はシステムが最適化するだけだが……。時間がない。試合中に済ませろ」

「わかっ……えぇ!?」

「山田先生、カタパルトの準備を」

「は、はい!」

「ちょ、千冬姉!?」

 

一夏の声も虚しく、時既に遅し。

今更降りるわけもいかず、一夏は大きく溜息を吐いて観念した。

 

「一夏、頑張れ!」

 

何故か気合いの入ってる箒がそう言う。

 

一秋は何も言わず、片手の親指を立てて一夏を見送る。

 

「行ってこい、一夏」

「……あぁ!白式出ます!」

 

教師としての千冬では無く、姉としての千冬の言葉を受け取り、一夏はピットから飛び出した。

 

 

 

「一秋」

「何?千冬姉」

 

一夏が飛び立った後、管制室に移動しようとした時、千冬が一秋に声をかけた。

 

「勝てると思うか?」

「うーん……」

 

2人はフィールドの方を見る。

もう既に試合開始のブザーは鳴り、セシリアからの攻撃から逃げているところだ。

 

「可能性0ではないよね」

「……ふっ、そうか」

 

一秋の答えに満足したのか、千冬は小さく笑った。

 

「初心者な上にあの欠陥機で勝てるなんて僕は到底思えないぞ」

 

そう言って2人の後ろから現れたのはトニーであった。

 

「なんだ?一秋の専用機の調整は終わったのか?」

「もちろんだ。後は最適化するだけ」

「そうか。ならこの試合が終わるまでに最適化を済ませておけ」

「わかった」

「よし、なら整備室に行こう」

 

そう言った後、千冬は管制室へ向かい、トニーと一秋は整備室へと向かった。

 

 

 

 

 

整備室。

 

辺りが暗い中、トニーが手をライトアップされているISの方に向ける。

ライトアップされているせいか、並々ならぬ雰囲気をそのISが発しているかのように一秋は感じた。

 

「これが……、僕のIS」

 

全身の色が灰色で、フォルムはアイアンマンに似てはいるものの、所々のデザインが異なる。

何より、マスクに角のような物が付いていて、完全にアイアンマンのマスクとは別物だった。

 

「そうだ。これが君のIS――

 

――"ウルティメイト"だ」

 




わかる通り、一夏VSセシリアの戦闘は割愛です。勝敗は次回でわかります。

NGシーン集
一秋「可能性0ではないよね」

一秋「可能性の獣だからね」

千冬「!?」

もしかしたら、読者の総意によっては一夏が織斑一角になる可能性が微レ存……?


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クラス代表決定戦 Stage2

一夏「2人揃って楯突くか、読者の総意の器であるこの私に!」
↑これじゃあフルフロンタルやないかい!(セルフツッコミ)
一夏君にはこの作品の数少ないネタキャラになってもらおう。

いや、弟が強いから兄も強化してあげないとな、と思いまして……。
なので白式は亜種の第一形態になる予定です。
白式の設定については次話かな?

※6/27
後書き追加、誤字修正


フィッティングを終えたトニーと一秋は、ピットへと戻って来た。

 

ピット内に入ると何故か重苦しい雰囲気が漂っており、トニーは気になって近くにいた箒に何があったのかを訊いた。

 

「何があったんだ?」

「その……」

 

箒はそれだけ言って、視線をある方向に向けた。

 

「何故雪片を使わなかった?」

「何だよ、雪片って」

 

重苦しい雰囲気の原因は千冬のようだった。

千冬は試合が終わったのであろう一夏と喋っていた。

 

「お前が第一形態に移行するまで持っていた近接武器のことだ」

「それ、第一形態に移行した時にはもう()()()()()?」

「何だと……?」

 

一夏の言葉を聞き、千冬は驚きのあまり目を見開いている。

 

「おいおい、どうした?」

「いや……、後で話そう」

 

トニーは千冬に近づき、肩に手を置いてそう言うと、千冬はそう返した。

 

「勝敗は?」

「一夏の負けだ」

「ふむ、予想通りか」

 

トニーが予想していた通りの結果になり、思わずそう呟く。

 

「それよりも一秋の方はもう出れるのか?」

「フィッティングは終わってるよ」

「インターバルもそろそろ終わる。一秋は準備しろ」

「はい」

 

一秋は千冬にそう言われ、カタパルトに入った。

 

「……どうしたのだ一秋?」

 

しかし、一向にISを展開しない一秋に箒はそう問う。

 

「……どうやってISを展開するの?」

 

その言葉に、箒は思わず転びそうになり、千冬は溜め息を吐いてしまう。

 

「君の両手に指輪が嵌められてるだろう?」

「これのこと?」

 

トニーがそう言うと、一秋は自身の両手に嵌められている赤と青のそれぞれの指輪をトニーに見せる。

 

「そうだ。それが君のISの待機状態ってやつだ。で、どうやってISを展開するかだが……。僕が開発したせいか少々他のISと勝手が違う。君のISを展開するには特殊な操作が必要でね」

 

そこまで言うと、トニーは両手を拳にして、両手の拳を合わせた。

 

「両手の拳を合わせる」

「両手の拳を?」

「ああ。指輪と指輪が上手くぶつかるようにだ」

「……こうですか」

 

そう言うと一秋も両手を拳にして、両手の拳を合わせた。

 

するとISが起動し、瞬く間に一秋の身体にISが装着された。

 

「……本当だ」

「少々面倒くさいが我慢してくれ」

「いや、大丈夫です。ヒーローの変身ポーズみたいで好きです」

「……奇遇だな、僕もだ」

 

そんな2人の会話を他所に、後ろにいた箒達も一秋のISを見る。

 

()()()()()()()()()()

 

一秋のISを見てから一度、一夏を見てから箒がそう言った。

 

「なんかアイアンマンに似てないか?」

「あのISの作成者はトニーだからな。何処かしら似ているのだろう」

 

一夏の問いに千冬がそう答えた。

 

「さて、君の初陣とやらだ。頑張れよ」

「……どこまで出来るか分かりませんが、頑張ります」

 

『一秋君、発進お願いします!』

 

管制室にいる山田先生からの通信を受け取り、一秋はリパルサーを吹かし、飛ぶ準備をする。

 

「じゃあ、行ってきます」

 

短くそう言うと、一秋はピットから飛び出してフィールドへと飛んだ。

 

○○○

 

一秋がセシリアの前に浮遊すると同時に試合開始のブザーが鳴る。

 

「……貴方の兄と同じように、無様な姿を――」

 

セシリアが何かを言う前に、一秋がセシリアに向かってリパルサーを撃った。

 

何とかセシリアはこれを交わし、一秋に怒鳴った。

 

「なっ、私が喋ってる最中に何で攻撃してくるんですか!?」

「えっ?だってもう試合始まってるし、……駄目なの?」

「うっ……。そ、それもそうですわ」

 

セシリアは気を取り直し、真剣な表情で言った。

 

「なら、"ブルー・ティアーズ"の奏でるワルツで踊りなさい!」

「ダンスは……苦手だな」

 

ブルー・ティアーズから放たれた射撃ビットが一秋に向かっていく。

 

一秋はその場に留まるのは危険だと判断し、リパルサーを吹かして逃げ出す。

 

その後を射撃ビットが追う。

 

(何でか分からないけど、動き方がわかる)

 

一秋は不思議な感覚に浸りながらも、アリーナを覆うシールドに沿って逃げる。

 

射撃ビットがレーザーを撃ってくる中、それを一秋は何とか当たらずに回避する。

 

「逃げてばっかりで!」

「なら!」

 

一秋は飛行を続けた状態のまま、リパルサーを後ろに付いてくる射撃ビットに向かって撃った。

 

射撃ビット4基の内の2基を撃ち落とす事に成功し、後は2基となる。

 

「よしっ!」

 

そこで一秋は日本刀型の兵装である"試験用空裂"をコールし、腰に装備する。

そして、逃げ回るのをやめて攻めるためにセシリアの元に向かう。

 

「させませんわ!」

 

だが、ただで接近させるセシリアではない。

ブルー・ティアーズに装備されている六七口径特殊レーザーライフル"スターライトmkII"で一秋を落とさんとする。

 

「っ!流石は代表候補生か」

 

一秋の初心者染みた回避程度では、セシリアの射撃を避けきることができず、何発か貰ってしまう。そして隙が出来る。

その隙が出来たところを後ろに付いてきている射撃ビットが追撃をしてくる。しかし、それは何とか避けた。

 

「あの射撃とビットが同時に来るとヤバイな」

 

今は片方のみでしか攻撃してこない辺り、手を抜かれている。そう一秋は推測する。そして、そうだと思ってしまい、一秋は歯軋りする。

 

「舐めてくれやがって……!」

 

少しの怒りを覚え、一秋はビットを破壊することが優先だと考える。

 

そこからの行動は早かった。

 

空裂を引き抜き、それでビットを破壊する。

 

一秋も剣道を多少なりとも嗜んでいたお陰か、その動きはスムーズであった。

 

一の太刀で残っているビットの内の1基を斬り落とす。そしてそのまま流れるように最後のビットまで脚を運び、二の太刀を振るった。

 

4基の射撃ビットは全て破壊された。

 

「くっ!ここまでは貴方の兄と同じですね!」

「本気を出さなかったのが悪いんだからな!」

 

一秋は立て続けにセシリアに向かって刀を持って2回ほど振るった。

 

セシリアの常識の中では、刀は近接武器である。

だから、距離が離れた場所で刀を振るっても意味がない。

そう思っていた。

 

しかし、その常識は崩れた。

 

一秋が振るった刀から、エネルギー刃が飛んできたのだ。

 

「なっ!?」

 

その常識外の攻撃に回避も遅れ、攻撃を受けてしまう。条件反射で思わず腕をクロスさせてガードする。少しのシールドエネルギーが削られた。

 

「中々面白いことを……っ!?」

 

条件反射で腕をクロスさせてしまったせいか、視界が塞がれた隙を突かれ、一秋の接近を許してしまう。

 

一秋に攻撃を許すのかと思いきや。

 

セシリアは腰部に連結されていたミサイルビットを2基、発射して一秋に攻撃した。

 

「ッ!?」

 

思わぬ攻撃に一秋はそれをモロに喰らってしまい、シールドバリアが減る。もう、一秋のシールドバリアは半分以下になってしまう。

 

更に、ミサイルの衝撃のせいか、刀を手から落としてしまった。

その上、ミサイルによる爆風で一秋は目の前が見えない。

 

「貰いましたわ、インターセプター!」

 

ブルー・ティアーズの唯一の近接武器である近接ショートブレードの"インターセプター"をコールし、片手に握る。

そして、そのままインターセプターで爆風の中にいる一秋を斬ろうとする。

 

だが、それは一秋によって阻まれた。

 

「もしや、まだ近接武器を!?」

「ああ!」

 

セシリアの攻撃を防いだモノは、腕に備われていたエネルギーブレードであった。

 

爆風の中から現れた一秋は、もう片方のエネルギーブレードで攻撃する。

 

セシリアはそれを片方の手に持つスターライトmkIIで防ごうとするも、呆気なく斬られた。

 

「スターライトが!」

 

爆発寸前のスターライトmkIIを手放し、セシリアに防ぐ術はもうない。

 

「これで、終わりだ!」

 

一秋はそのままの勢いで、セシリアを斬りつける。

 

セシリアのシールドエネルギーは0になり、試合終了のブザーが鳴った。

 

 




次回は一秋とセシリアの試合後と一夏と一秋の試合。


※補足
指輪の色にはちゃんと意味があります。
今後の伏線……?


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クラス代表決定戦 Stage3

ん?2試合目が短い?

気のせいじゃよ()

※追記
雪片は後々出ます


私は父のような男性が嫌いでした。

母には常に媚びていて、軟弱な性格で弱い男。

そのせいで男性へのイメージは凝り固まり、更にISが登場したことによってそのイメージは加速しました。

 

どうせISを使えるようになった男やアイアンマンというモノをやっている男だってきっと私なんかよりも弱い。

そう思ってました。

 

だけど、そのイメージは覆されたんです。

 

織斑一夏も今まで出会ってきた男性の中でも頑張っていた方だと思います。

結局、私が勝ちましたが。

 

だけど、私は次の試合で負けたのです。

織斑一夏の弟に。

 

兄よりも軟弱そうな性格で弱い男だと思っていましたが、それは違ったんです。

 

対決してわかりました。

 

彼は軟弱な性格なんかじゃない。

強い男でした。

 

要は何が言いたいかと申しますと――

 

 

 

――私は織斑一秋という存在に心奪われたのです。

 

○○○

 

「……あ、起きた」

 

目を覚ましたセシリアを見て、頭部ヘルメットを外していた一秋がそう言った。

 

「ここ……は?」

「君がいたピットだよ。あの後君が気絶しちゃったからここまで連れてきたんだ」

 

あの後、シールドエネルギーが切れたと同時にセシリアが気を失ってしまった。

それを危なくも一秋が抱え、そのままピットへと運んだのだ。

 

「そうなんですか……。ありがとうございます」

「いや、いいよ。当然のことをしたまでさ」

「いえ……。それと」

「?」

「今までのご無礼、申し訳ございませんでした」

 

セシリアがそう言うと同時に、頭を下げた。

突然、頭を下げられた一秋は驚くが、その内容を察した。

 

「うん、もう気にしてないよ。後で1組のみんなにも謝らないとね?」

「はい、重々承知です」

 

セシリアの言葉を聞いた一秋は、満足したのか笑みを浮かべて立ち上がった。

 

「大丈夫そうだから僕はもう行くよ。一夏を待たせてるんだ」

 

そう言うと、頭部ヘルメットを再び装着する。

 

「あの!」

「ん?」

 

セシリアが呼び止め、一秋は振り返る。

 

「その……、頑張ってください!」

「……あぁ!」

 

驚いたのか、少しの間を空けて一秋は力強く返事をした。

 

○○○

 

一秋が再びアリーナの中に戻ると、既に一夏が宙に浮いて待っていた。

 

第一形態に移行した一夏のISは、全身装甲に変わっていた。

頭部には角が生えており、背中にはカスタム・ウィングが備わっており、腕にはトンファーのような物まである。そして後ろにはライフルのような物が。

 

「もう大丈夫なのか?」

「もう目も覚ましたし、軽い気絶だったみたい」

「そうか」

 

どうやら一夏も心配していたようだ。全身装甲で顔は見えないが、安堵の表情をしている。

 

「一夏」

「ああ」

 

そこで試合開始のブザーが鳴る。その途端。

 

「「勝負!」」

 

両者共、突撃して取っ組み合いになる。

 

そのまま上昇し始め、天井ギリギリで一秋が両手のリパルサーを撃つ。

 

「ぐっ!」

 

手を離して手へのダメージを防いだものの、それは胸部に当たり、一夏はそれを受けた反動で後ろに下がる。

タダでやられる訳にはいかないと、すぐさま後ろにマウントされていたライフルを両手で構える。

 

「ビームマグナムで!」

 

一夏がトリガーを引き、ビームマグナムと呼ばれた武器からビームが放たれる。

 

「躱せる!」

 

その言葉の通り、一秋はビームを躱す。

 

……だが、一秋のシールドエネルギーは減っていた。

 

「掠めただけで4分の1のシールドエネルギーが!?」

 

一夏の方を見ると、ボルトアクションライフルのように空になった弾が排出され、次弾が装填されていた。

 

「まずい!」

 

あれはもう喰らってはならない。

一秋は直感的にそう感じ、一秋はすぐさまその場から離れる。

 

その直感は正しかったようで、もう1発放たれたビームマグナムがアリーナのシールドに穴を開けようとする勢いで当たる。

 

ビームマグナムを撃ち続け、残弾が0になったところで一夏は動く。

 

「ハァァァァァ!」

 

加速して一秋に近づき、腕に備わっているトンファーから1本のグリップを取り出す。

そしてそこからビームの刃が放出された。

 

「サーベルか!」

 

一秋もそれに気付くと腕に備われているエネルギーブレードで対抗する。

 

光と光の鍔迫り合い。

 

動いたのは一秋であった。

 

「ショウラッ!」

 

ビームサーベルを上に捌き、踵落としで一夏に攻撃したのだ。

 

勿論、一夏はこれを受け、地面へ落下する。

 

初心者だからか、受身を取ることができずに地面に墜落してしまう。

 

そして一夏は膝を着くことでなんとか体勢を立て直す。

 

「どこだ!?」

 

さっきいた場所を見るが、既にそこには一秋がいない。

 

すると、後ろから首部分にナニカを当てられた。

 

「チェックメイトだ、一夏」

 

背後に移動していた一秋が刀を首に当てていたのだ。

 

流石に打つ手がないとわかった一夏は両手を挙げ、言った。

 

「降参だ」

 

第3試合、織斑一秋の勝利で幕を閉じた。




以降ちょっとしたネタバレ……?




裏設定集
白式
本来なら第3世代だが、トニーとの協力により、研究が進んだおかげか、第4世代に生まれ変わった。
全身装甲で、頭部にはアンテナである角がある。
装甲はユニコーンガンダムとほぼ同じだが、背後のバックパックだけが、本来の白式と同じものになっている。
カラーは原作の白式と違い、足の紺色以外は全て白。
装甲展開された場合のみ、露出されたフレームが青色に光る。

兵装一覧
・ビームマグナム
強力なビーム兵器。
1弾当たり、セシリアのスターライトmkIIの約4発分以上の威力がある。
また白式専用兵装の為、他のISが使えば、腕が使い物にならないくらい反動がデカい。
掠れただけでもシールドエネルギーを4分の1減らす。

・ハイパーバズーカ
ビームマグナムが強力すぎて、使用できない場合はこちらが使われる。
通常弾の他に、特殊散弾弾頭も使われる。

・ビームサーベル
両腕のトンファーに1本ずつ収納されている。
使用される際はビーム状の刀身が形成される。
また、トンファーからそのまま使用することもできる。
やろうと思えば、ビーム兵器の攻撃を弾き飛ばすことも可能。

・頭部バルカン砲
頭部に仕込まれているバルカン砲。
牽制に使われたりするが、ISの装甲を撃ち貫く位には威力が高い。

・シールド
白式同様、装甲展開が可能なシールド。
装甲展開された際は、ビーム兵器やエネルギー兵器を無効化する機能が搭載されている。

単一仕様能力
・零落白夜
原作と同じ呼称であるが、仕様が違う。
零落白夜が使用された場合は、装甲が展開され、白式の身長が一回り大きくなる。露出されたフレームは青色に光る。
ウルティメイトと同様、性能が大幅に上がるが、操縦者の負担を考慮し、使用時間は3分までとなっている。また、本来の零落白夜と同様にシールドエネルギーを消費する。
ちなみに、装甲展開された時の性能は白式の方が上である。


フレームの色が赤色ではなく青色の理由は、原作の白式に青色が使われているからです。


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クラス代表決定戦 StageEXTRA

マーク45の装着シーンが無いんだよなぁ……。

Fate/GOのサーヴァント強化にて
式(剣)「ありがとう。……でも、まだいけるわよね?」
僕「ビクンビクン」

……深い理由は無い。


一秋と一夏が試合を行っている最中。

 

トニーはセシリアと対面していた。

 

「この後僕と試合をやる予定だが……、体調は大丈夫なのか?」

「はい、問題ありません。スターク先生、1つ宜しいでしょうか?」

「ん?」

 

セシリアは深々と頭を下げて言った。

 

「今までのご無礼、申し訳ございませんでした」

「おいおい、どうしたいきなり」

 

急に謝りだしたセシリアに驚き、トニーは慌ててそう言った。

 

セシリアは頭を上げて言う。

 

「今まで男性は弱い者とばかり考えていました。それも今の風潮のような考えです。しかし、今日の試合で気付きました。決して男性は弱くないことに」

「……そうか」

「はい。私は心を入れ替えて精進するつもりです。改めて、今までのご無礼、申し訳ございませんでした」

 

もう一度、セシリアは頭を深々と下げてそう言った。

 

「もうわかったよ。頭を上げてくれ」

 

トニーはそう言って、セシリアに頭を上げさせる。

 

「別に今のような風潮が悪いとは思っていない。僕だってスーツを着なきゃ弱い男だからね。だけど君のその変化は良い変化だ。今の君ならぼくも応援したくなる」

 

トニーは微笑みながらそう言った。

 

「あ、ありがとうございます」

「それで、次の試合はどうする?」

「予定通りで大丈夫ですわ」

「そうか。ハンデはどうする?」

「ハンデ……ですか?」

 

そう言うセシリアは少し考え込む。

 

「ISとアイアンマンは違う。だが君と僕の戦闘経験だと僕に武が上がるだろう。だからハンデだ」

「……それもそうですね」

「とりあえず、僕が提示するハンデは……、僕に1撃でも与えられたら君の勝ち。僕は手に装備されているリパルサー以外の武装は使わない、だ」

 

トニーは自分の手をアイアンマンの手に見立ててそう説明した。

 

「1撃?」

「ああ。ビットなりライフルなり。近接武器でも構わない。それと、僕が負けたら君のISの整備係になってあげよう」

「な、なんですって!?」

 

セシリアは驚く。

 

それもそうだ。トニーは技術者としての腕前は世界一と言っても過言ではない。それに最近ではISの開発にも着手している為、ISに対しての知識もある。セシリアからしたらメリットしかないハンデだからだ。

 

「ほ、本当に宜しいんですか?」

「ああ。僕に二言はないよ」

 

トニーはニヤリと笑い、そう言った。

 

「わ、わかりましたわ。そのハンデ、謹んでお受けします」

「そうか。次の試合、楽しみにしてるよ」

 

そう言うと、トニーはその場から立ち去る。

 

その途中。

 

『ご説明されなくてもよろしかったのですか?』

「何をだF.R.I.D.A.Y.?」

 

腕時計に備わっている通信機のような物からF.R.I.D.A.Y.が尋ねた。

 

『アイアンマンにシールドエネルギーという概念が存在しないこと。なので下手をすれば死ぬ可能性があることを』

 

そこまで言われると、トニーは少し間を空けて答えた。

 

「下手に手加減されても嫌だからね。それに、ハンデがあっても僕が勝つさ」

 

○○○

 

「いやぁ、一秋強いな。よくあんなに自由自在に動かせるよな」

「スタークさんのアイアンマンをよく見てたからね」

 

一秋と一夏の試合が終わり、2人共ピットへと戻ってきた。

 

「お疲れ、一夏、一秋。後は休むだけだ」

 

箒が2つ分のタオルとドリンクを持って2人を出迎えた。

 

「サンキュー、箒」

「ありがと。箒は良いお嫁さんになるよ」

「良い……お嫁さん……!」

 

2人共それを笑顔で受け取る。

一秋の何気ない一言に、箒は顔を紅く染める。

 

「しかし、ただ休むのでは駄目だ。次の試合、しっかりと見ておけ」

 

と、箒の後ろから千冬が現れそう言った。

 

「次の試合って言うと……」

「スタークさんとオルコットさんの試合だね」

 

一夏が言う前に一秋がそう言った。

 

「そうだ。一夏はオルコットを、一秋はトニーをしっかりと見ておけ」

「わかった」

「うん」

 

2人の返事を聞いた千冬は満足そうに少し笑う。

 

「おいおい、頑張らないといけないみたいな空気じゃないか」

 

すると、タイツのような薄い服装のトニーがピット内へと入ってきた。

 

「トニー、準備はできているのか?」

「出来てるぞ?だからみんなそこの円の中から退いてくれ」

 

トニーがそう言ったので、その場にいた全員が円から出る。

 

「F.R.I.D.A.Y.頼む」

『かしこまりました』

 

F.R.I.D.A.Y.が返事をすると、円の中心に立つトニーの周りの下からアームのような機械が現れる。

 

「うおっ!?」

「おおっ!」

 

一夏は驚き、箒は目を輝かせてるように見える。

一秋も声に出していないものの、箒同様に目を輝かせていた。

 

アームによって、トニーに次々とパーツが装着されていき、やがてそれはアイアンマンとなった。

 

「ん?私が見たことのあるスーツではないな」

 

今まで見たことのないスーツの為、千冬はついそう訊いてしまった。

 

「ああ、千冬が見たことあるのは確か……。マーク3とマーク43か。マーク3は家で保管してる。マーク43はちょっと訳ありでな。修理中だ」

 

トニーが今着ているスーツ、"アイアンマンマーク45"。

流線型のボディとリアクターの形状が六角形になっているのが特徴のスーツ。ユニビームと腕に備わっているペタワットレーザーを使用してもエネルギー切れを起こさない位には出力が上がっている。

ただ、動きやすい分、装甲が薄くなっているのが難点だが。

 

『各パーツのテスト終了。いつでも行けます』

「そうか。なら行くとするか」

 

リパルサーを起動し、アリーナへと飛び出した。

その動きですら、洗礼されており、無駄が無い動きに一秋は驚いた。

 

○○○

 

トニーは地面に着地すると、上で浮遊しているセシリアを見上げる。

 

「すまないね、アイアンマンにPICは搭載されていないから地面からのスタートになる」

「構いません。それよりもあの約束、守ってくださいよ?」

「勿論だ。君が勝てればだが」

 

そう言った直後。

 

試合開始のブザーが鳴った。

 

セシリアは射撃ビットを展開し、それをトニー目掛け放つ。

 

トニーはその場に立ったま、セシリアを見上げている。

 

「F.R.I.D.A.Y.」

『お呼びですか?』

「彼女のISに搭載されている武装は?」

『レーザーライフル1丁、射撃ビット4基、ミサイルビット2基、近接ナイフが1本。それ以上の武装は確認されていません』

「仕事が早くて助かるよ」

 

トニーはそう言うと、やっと動き出す。

その時に、向かってくる射撃ビット2基をリパルサーで撃墜する。

そしてそのまま空中へと飛ぶ。

 

「近接武器が無いのなら出し惜しみはしません!ミサイルビット!」

 

セシリアはそう言って、2基あるミサイルビットも射出した。

 

「ほう、考えたな。……追跡型か」

『それくらいなら対処は簡単ですが、レーザーライフルを使われたら難しいですね』

「しかし見たところ、ビットの操作で忙しそうだぞ」

 

トニーは射撃ビットからの攻撃を避けつつ、セシリアに目線を向ける。

 

そう、一夏の試合も一秋の試合も、射撃ビットを動かしながらのレーザーライフルでの狙撃をしてこないだ。

ここまでくれば、自ずとよく見てる人なら理解できる。

 

セシリアは射撃ビットを動かしながらのレーザーライフルでの狙撃が出来ない。

 

「本人も今後の課題だと理解しているだろうな」

 

トニーはそう呟き、後ろを向いて残りの射撃ビットも撃ち落とした。

 

残るはミサイルビット。

 

ハンデの為、フレアが使えないのでトニーはどう対処するか考える。

すると、F.R.I.D.A.Y.が提案した。

 

『リパルサーで爆発させることは容易いですが、それだと面白味に欠けます。ここはセシリア様の近くまでミサイルビットを近付けさせてから爆発させた方がよろしいかと』

「……君も中々染まってきたな」

 

若干、F.R.I.D.A.Y.の提案に引きつつもトニーはその提案に乗ることにした。

 

トニーはセシリアに向かいつつ、バレルロールを交えつつ飛ぶ。

 

「一体何を……?」

 

セシリアはスターライトmkⅢの銃口をトニーに向けるが、バレルロールしながら飛んでいるせいか、中々照準が定まらない。

 

「よし、一気に行くぞ」

 

トニーがそう言うと、リパルサーの出力を上げ、加速。

 

セシリアを通り過ぎる。

 

そしてすぐさまリパルサーを前にして緊急停止。

振り返り、セシリアの近くにミサイルビットが来るのを見計らい……

 

「ここだ」

 

トニーはリパルサーを撃ち、ミサイルビットを爆発させる。

 

「なっ!?」

 

まさか自分の武装でダメージを与えてくるとは思っていなかったのか、セシリアは対処できずにシールドエネルギーを減らす。

 

『追撃をかけましょう』

「勿論さ」

 

トニーはそのままリパルサーをセシリアへと撃ち続ける。

 

やがてブザーが鳴り、試合はトニーの勝利となった。




マーク43が修理中な訳は鈴ちゃんが来る前に外伝という形で書きます。
そしてあと2話くらいでクラス代表の話も終わる……。



篠ノ之箒
やはり姉妹で似ているのか、アイアンマンの装着シーンを見て興奮した。


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クラス代表決定!

お待たせしました。

章の追加をしました。


「1組のクラス代表は織斑一夏君に決まりました〜。あ、1()繋がりで縁起がいいですね!」

 

クラス代表決定戦から翌日。

 

朝のSHRで山田先生の口からそう告げられた。

 

みんなが拍手をする中、当の本人は驚きで口を開いていた。

そして少しして再起動すると、机から身を乗り出しす。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!何で俺なんですか!?昨日の結果で1番負けたの俺ですよ!?」

 

そう。昨日の試合で一夏は一度も勝てていない。

本来なら一秋かセシリアがなるべき筈。

なのにクラス代表が自分になっていては、異議を申し立てたくもなる。

 

「え、えーとそれは……」

「一秋とセシリアが辞退したからだ」

 

一夏の気迫に圧され、山田先生は口籠ってしまうが、ちょうど遅れて来た千冬が一夏にそう言った。

 

「辞退……?……なんでさ!?」

 

一夏はそう言うと同時に後ろを振り返る。

一秋とセシリアは苦笑していた。

 

「クラスのみんなを纏める力を僕は持ってないからね。その、カリスマ性ってやつ?なら、一夏かセシリアが良いかな〜って思ったんだけど……」

 

一秋が辞退の理由を明かしつつセシリアの方を見ると、セシリアはそれに笑顔で応えた。

 

「私もですわ。皆さんには既に謝罪したとはいえ、私がクラス代表になっても納得しない人がいるかもしれません。それなら、と」

 

セシリアは一夏の方を向いてそう言った。

 

確かに、セシリアは昨日の内にクラスメイト全員に初日の事についての謝罪を済ませていた。

勿論、一夏もそれに含まれており、一夏も自分の非礼を詫びた。

 

2人から辞退の理由を聞いたものの、一夏は困惑していた。

 

「でも、俺……」

「大丈夫。サポートはするよ」

「そうですわ。射撃のことなら私が教えることができます」

「近接攻撃のことなら箒がいるしね」

「も、勿論だとも」

 

クラスメイト達もそれに続き、「私も手伝うよー」「整備のことなら私に任せて〜」と言ってくれる。

 

そのことに一夏は嬉しくなり、涙腺が緩む。

 

「ありがとう……!」

 

そして、クラスメイト達に感謝の言葉を言った。

 

「今日の放課後はお祝い会しましょ!」

「良いね!一夏君は大丈夫?」

「勿論!」

 

朝のSHRにしては煩くなってしまったが、教卓から山田先生はニコニコしながらそれを見守り、千冬は小さく微笑んでいた。

 

○○○

 

その頃。

 

中国の空港。

 

「君が鳳鈴音か?」

「えぇ、私が凰鈴音よ。アンタがIS学園から来たって人?」

 

トニーは凰鈴音と会っていた。

 

「あぁそうだ。トニー・スタークだ。よろしく」

 

トニーが右手を差し出すと、鈴音は驚きながらもそれに応じた。

 

「トニー・スタークって……。IS学園に!?」

「そうだ。今年度から特別教師として3年間ね」

 

そう言いながらも、トニーは鈴音に歩くように促す。

それに従い、鈴音は歩きながらまた質問した。

 

「どういう風の吹き回し?最初はIS学園から迎えが来るなんて言ってなかったじゃない」

 

今朝突然政府から『IS学園からの迎えが来る』などという内容の電話があり、鈴音は驚いていたのだ。

 

トニーは鈴音からの質問をいつもの調子で答えた。

 

「まず君は代表候補生だ。その代表候補生に何かがあっては困る。最近は物騒だからね。そして、IS学園で特別暇なのが僕で、僕なら不測の事態でも対処できるだろうと判断されてここにいる訳だ」

「そう」

 

そんなことをしていると、トニー達は飛行場へと出た。

 

「……?…ちょっとどこ行くのよ。飛行機はあっちよ?」

 

鈴音が指差す方向とは逆の方向にトニーは向かっている。

 

しかし、トニーはそちらに見向きもせず、腕時計を操作して鈴音に言った。

 

「僕達が乗るのはこれだ」

 

トニー達の目の前に突然、それは現れた。

 

"クインジェット"

トニーが前世で使用していたステルス迷彩が施されている航空機。

 

「さぁ、行くぞ」

「……え、えぇ」

 

鈴音は驚きながらもクインジェットに乗り込む。

 

トニーはその後に続く前に呟いた。

 

「何も起きなければいいが……」



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謎の襲撃者

FateGOの小説を書いてみたいけど、ぐぬぬ……!
まだどうしようか悩み中。

勿論、この作品と他2作ともに支障が出ないレベルでやるつもりですが……。


クインジェットによるステルス飛行。

日本領空に入った途端、それは起きた。

 

『トニー様』

「何だ?」

 

F.R.I.D.A.Y.が突然、トニーの名を呼んだ。

ということは何か不測の事態が起きた。その報告だろう。

 

何処からともなく発せられた声に鈴音は驚き、辺りを見渡す。

トニーはそれを無視してF.R.I.D.A.Y.からの報告を聞く。

 

『後方からunknownが2機迫ってきます』

「ISか?」

『そうです』

「所属国は?」

『韓国、ロシア。統一性がありません』

「そうだな。……どういうことだ?」

『わかりません。そのunknown2機は明らかにこちらを捉えてるかと』

「おいおい、冗談はよせ。ステルスモードだぞ?発信機が無かったら……」

 

途中まで言って、トニーは気付いた。

 

「凰鈴音の荷物を調べろ」

『スキャンします』

「ちょっ!?」

 

F.R.I.D.A.Y.はすぐさまスキャンを開始した。

 

鈴音はトニーがいる操縦席まで詰め寄り、文句を言った。

 

「私がスパイだとでも言うの!?」

「いや、その可能性は全く頭に無いよ。何だ、君はスパイなのか?」

「違うに決まってるじゃない!」

 

鈴音がトニーの横まで顔を見せ、そう言った。

その間にF.R.I.D.A.Y.はスキャンを終え、結果を報告する。

 

『凰鈴音様のポーチに発信機を発見しました』

 

そう言うと同時に、操縦席のモニターにその発信機を映す。

マニキュアのような容器だが、F.R.I.D.A.Y.からの解析によって蓋部分に発信機が仕組まれていた事が分かった。

 

そのマニキュアを見た鈴音が「あっ!」と声を上げた。

 

「何だ、心当たりがあるのか?」

「これ、昨日突然渡されたヤツよ!」

「渡された?誰にだ?」

「中国政府の人間によ。数回しか会わない奴だったから名前は知らないけど、『入学プレゼントだ』とか言って渡してきたの!」

「F.R.I.D.A.Y.」

『中国政府の役員の容姿画像とその人物の詳細ですね?』

「あぁ」

 

F.R.I.D.A.Y.に鈴音に発信機を渡した奴を調べてもらっている間に、トニーは鈴音に説明する。

 

「凰鈴……」

「鈴音でいいわ」

「そうか、なら鈴音。恐らくその発信機を渡した役員。そいつはスパイだ」

「スパイ?何処の国からのよ」

「国じゃないな。亡国機業(ファントムタスク)だ」

亡国機業(ファントムタスク)?」

「そう。そしてその亡国機業(ファントムタスク)は恐らく僕が来ることをある程度予想していたんだろう。そして僕を見失わないように――」

「――発信機を()()()()()?」

「……オヤジギャグってやつか?」

「違うわよ!」

『終わりました』

 

F.R.I.D.A.Y.の一声に、鈴音は咳払いして気を取り直した。

 

『凰鈴音様、マニキュアを渡してきたのはこの女性ですか?』

 

F.R.I.D.A.Y.がそう言うと同時にモニターにその女性を映した。

 

「そう、こいつよ!」

『この方は今日付けで退職しており、その後の消息は不明です』

「明らかに確信犯だな。()()()()()()()()に報告しておいてくれ」

『既にしてあります』

「流石だな。オート操縦に切り替えてくれ」

『かしこまりました』

 

トニーはそう言って、操縦席を離れる。

その後ろを鈴音が付いて行く。

 

「とりあえず発信機を」

「わ、分かったわ」

 

鈴音はすぐさま自分のポーチからマニキュア(発信機)を出し、それをトニーに渡した。

 

トニーが鈴音に「何処かに掴まっておけ」と言い、ハッチを少し開く。

そしてマニキュアを投げ捨て、ハッチを閉めた。

 

「少し大回りで運転しろ」

『かしこまりました』

 

そう指示し、モニターの所まで戻り、unknown2機の動きを確認する。

 

ステルスモードだから、真っ直ぐに移動しなければ、それで撒けるかと思った。

 

しかし……。

 

「ちょっと、撒けてないわよ?」

 

鈴音の言う通り、unknown2機はクインジェットの後ろを追って来ている。

 

「何だ?高性能なサーモグラフィーでも積んでいるのか?」

『unknown2機、モニターに出ます』

 

モニターに映し出されたunknown2機。

 

1機は通常よりもとても太い腕が特徴的なIS。

全身装甲であるため、誰が乗っているかは確認できない。

 

そしてもう1つのISは――

 

「おいおい、冗談だろ!?」

 

――アイアンモンガーのようなISであった。

 

これにトニーは驚きを隠せないでいた。

 

『トニー様、unknown2機との接触まで後、約30秒です』

「ちょっと、どうするのよ?」

 

鈴音がそう訊いてくる。

それによってトニーは我を取り戻し、鈴音とF.R.I.D.A.Y.に言った。

 

「とりあえず君は此処にいろ。そしていつでもISを装着できるようにしておけ。F.R.I.D.A.Y.、マーク45を」

『かしこまりました』

 

F.R.I.D.A.Y.はトニーに指示された通りにマーク45を用意し始める。

 

しかし、鈴音はトニーの提案に異議を申し立てた。

 

「ちょっと待ちなさいよ!私は闘わずに此処にいろって訳!?」

「そうだ。学園側に不測の事態があれば僕だけで対処しろと言われている」

「そんなんじゃ納得できないわよ。私も闘うわ!」

 

鈴音がISを展開しようとするが、トニーが腕を掴みそれを阻止した。

 

「少し試したい事があるんだ。それに命の危険もある。だから君は待っていてくれ」

「……わかったわ。でも、アンタがもし不甲斐ない闘いをしてたらハッチを突き破ってでも闘いに参加するわよ」

「ああ、それで良い」

 

不満気に鈴音はそう言って、椅子に座った。

 

ハッチまでに行く間に、アイアンマンのパーツがトニーに装着されていく。

 

「……!」

 

鈴音は少し目を輝かせてそれを見ていた。

 

トニーはハッチを開け、外に出た。

 

外に出てすぐに、unknown2機の姿が見えた。

 

すぐさま小型ミサイルを2機に放つ。

 

「……だよな」

 

しかしそれはアイアンモンガーによるリパルサーによって破壊される。

 

「おいおい、前はそんな事出来たか?」

『前?』

「あー、いや、何でもない」

「……」

 

トニーがそう問いかけるが、アイアンモンガーは答えない。

 

「とりあえず、邪魔をするなら撃墜するぞ?」

 

両手のリパルサーを向けて警告する。

 

しかし、やはりunknown2機は何も言わない、答えない。

 

怪しく思ったトニーはF.R.I.D.A.Y.に指示する。

 

「中に人がいるか調べてみてくれ」

『かしこまりました』

 

だが、調べようとした時。

unknown2機は元来た道を引き返して行った。

 

「……どいうことだ?」

『意図が全く掴めません。すみません、トニー様。解析出来ませんでした』

「しょうがない。それより束に通信を」

『直ちに』

 

そしてすぐに束は通信に出た。

 

『はーいもすもす!』

「束、今しがたunknown2機と接触したのは知っているな?」

『うん。追跡しようとしたけど、ロストしちゃった。うーん敵も中々のステルス機能を付けているね』

「そうか……。マーク1はあるか?」

『あるよー?』

「ということは1から造ったということか……。ありがとう、束」

『ううん。さらば〜!』

 

そして束との通信を終了した。

 

「あのunknown2機を造ったのは間違いなく亡国機業(ファントムタスク)だな。その製造者だが……」

 

前世でのアイアンモンガーの搭乗者であるオバディア・ステインがこの世界に自分と同じように来た。という線も考えたが、トニーの()()が正しいのであれば、その線は限りなくゼロに近い。

 

「あいつにそこまでの()()()があるとは思えないしな。それにあいつは男だ。ISに乗れない。……まぁ性別が変わってるならわからないが」

 

トニーはクインジェットに戻る最中も考えていたが、結局答えは出ないままであった。




ぶっちゃけ、製造者はラスボスのようなモノです。
ISの登場人物かマーベル(映画)の登場人物かはまだ言えませんが……。
言えるのはオリキャラ(作者による完全オリジナルキャラ)では無いです。

わかった!って人も楽しみにしておいてください。



それと、この話を書いてる最中、鈴音の「ぬわぁんですって!?」って言ってる姿を想像して吹いた。

※あとがきに訂正!というか追加!しました。
(映画)が付いてます。


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つかの間の帰国と休息

暇だろうと思っていたら、実際はあんまり暇じゃなかったという。(言い訳)

タイトルの「つかの間」っていうの、漢字にしたら「束の間」ってなるんですけど、そのキャラが出てきてややこしくなりそうなので平仮名にしておきました。

久しぶりにあのキャラが出ますよ。




鈴音を無事、IS学園に送った後。

トニーはすぐさま自身の自宅であるアメリカへと飛んだ。

千冬にはクラス対抗戦までには戻ると伝えてある。

 

アメリカへと帰国する理由としては、今回の謎の襲撃者の件を束達と詳しく調べる為。それと、ついでに会社でしかできない業務を済ませてしまおうという考えもあった。

 

今回の件、鈴音には誰にも喋らないように、と伝えてある。

クラス対抗戦が控えている中、無駄な混乱を与えたくないからだ。

その意図を汲み取った鈴音はすぐに了承した。

 

○○○

 

会社に戻るなり、トニーは社長室に篭もり始め、2時間が経つ。

 

社員達は突然帰ってきたトニーにビックリしていたが、トニーの性格を概ね理解している為、すぐに自分達の仕事へと戻った。

部下に必要な書類を部屋に持ってこさせ、トニーも自分の業務を行っていた。

 

「もう、帰ってくるなら電話の1本下さいよ」

 

そう言いながら、部屋に入ってきたのはナタルであった。

 

「久しぶりだな、ナタル。サプライズだよ、サプライズ」

 

笑いながらトニーは言うが、ナタルは不満気な表情をしている。

 

「急に用意出来ないモノだってあるんですよ?それに、女性社員の1人なんかスタークさんが急に来るもんだから何かあったのかと思ってちょっと泣いてましたし」

「以後気をつけよう……」

 

まさか間接的とはいえ、女性を泣かせることになるとは 思っていなかったトニーは少々バツの悪い表情をする。

 

「でも、ちょうど良かったです」

 

ナタルはそう言うと、1枚の書類をトニーに渡す。

 

それを受け取り、トニーは書類に目を通す。

 

「……専用機開発の依頼、か」

 

トニーがそう呟いたように、その書類は政府からの専用機開発の申請だった。

 

書類の下の方には、代表候補生の顔写真と簡単なプロフィールも書かれている。

 

「流石に社長代理の私がそれに返事をするのはどうかと思いまして」

 

ナタルはトニーが会社にいない間、社長代理の職務に就いている。というのも、トニーの仕事を間近で見ていたのはナタルだけなので、ナタルに任せるしかないのだ。

 

「……これは一度持ち帰って決めることにするよ。結果は後で報告する」

「了解。なら私はこれで」

 

そう言ってナタルは部屋から退出した。

 

「F.R.I.D.A.Y.」

『お呼びでしょうか』

「念のためだ。アメリカ政府の役員を洗いざらい調べてくれ。この代表候補生もだ」

『かしこまりました』

「よし、では僕もこの仕事を終わらせるか」

 

トニーはその後暫くしてから仕事を終え、帰宅した。

 

○○○

 

「お帰りなさいませ、トニー様」

「元気にしてたか、クロエ?」

「はい!」

 

トニーの養子であるクロエが出迎えた。

クロエの頭を撫でると、くすぐったそうに身体を縮こめる。

 

「束は下か?」

「はい。亡国機業(ファントムタスク)について調べていると思います」

「そうか。今日の夕飯の分、僕のも用意しておいてくれ」

「本日はこちらでお召し上がりになるのですか?」

「あぁ。そのくらいの時間はあるさ」

「久しぶりにトニー様と食事を共にできるのですね!?今日は腕によりをかけて頑張りましょう、W.E.D.N.E.S.D.A.Y.!」

『勿論です、クロエ様』

 

クロエはそう言うと、キッチンの方へと姿を消した。

 

「しっかりとサポートできているようだな」

 

サポートAIである"W.E.D.N.E.S.D.A.Y."とのやり取りを見て、安心すると、トニーは下へと降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下へ降りると、そこは研究室のような造りの部屋になっていた。

 

電気も点けず、そんな暗がりの中で唯一光を発しているモニターと睨み合いをしている束に、トニーは近くにあったコーヒーメーカーでコーヒーを作り、それを束の頬に当てた。

 

「熱ッ!?!?」

 

突然、頬に熱いモノを当てられてビックリしたのか、その勢いで椅子から転がり落ちた。

 

「いてて……。もぅー!酷いじゃないかー!」

 

束は頬を膨らませながらトニーを見上げた。

 

「ハハ、ブレイクタイムの合図にはちょうど良いと思ってね」

 

トニーはコーヒーを束に渡す。

 

「目処が立ってきた頃だしちょうど良かったかな〜」

 

束は立ち上がり、モニターに接続されているキーボードを片手で操作する。

 

「ほい」と束がモニターに調査結果を映し出した。

 

コーヒーを一口飲んでそれをテーブルに置くと、束は説明を始めた。

 

「まず、やっぱりあのunknown2機の追跡は無理だったよ。だけど、やっぱり亡国機業(ファントムタスク)だった。これ見て」

 

束はモニターに手を掛けると、2枚の調査報告書と思われる物を拡大してトニーに見せた。大方、ハッキングして手に入れたのだろう。

 

1枚は韓国語、もう1枚はロシア語で書かれていた。

 

「何て書いてあるんだ?」

「ざっくり言うと、"ISが何者かによって1機盗まれましたー"っていう報告書」

「なるほど。そして、その何者かっていうのが……」

「そう、亡国機業(ファントムタスク)。そこに所属しているISも確認できた」

 

そう言って次に見せてきたのは画像だった。

そこには粗い画質であったものの、蜘蛛のような形をしたISが確認できる。

 

「何時ぞやのお淑やかな女性か……」

 

それを見て、そのISに乗っている女性の顔を思い出す。

 

「まだ居場所がわからないけどね」

「いや、今はこれくらいで充分だろ」

『トニー様、先の件について調べ終わりました』

「モニターに映してくれ」

 

束が何のことかわからないからか、首を傾げている。

 

「アメリカ政府に専用機を開発してくれと頼まれてね。一応、亡国機業(ファントムタスク)の奴らがいなかだけの確認だけだ」

「なるほど〜」

 

トニーの説明に束は納得した。

 

『こちらが結果となります』

 

顔写真と共に表示されるのは、"亡国機業(ファントムタスク)の構成員という可能性は極めて低い"という文字だった。

 

「意外な結果だね〜?」

『アメリカ政府はどうやら定期的に内部調査を実施しているようです』

「しかし、可能性は極めて低い、ってだけだ。今後も注意深く探らないとな」

『そうですね。それと、代表候補生についてなのですが……。この方は現在、IS学園に在籍中との事です』

 

そう言って映し出したのは1人の代表候補生。

 

「……ふむ、2組か。彼女には僕が接触してみよう。返事を返すのはそれからでも遅くないだろ」

 

トニーはそう言うと、F.R.I.D.A.Y.にモニターの結果を消すよう指示した。

そして、思い出したかのようにトニーは束に訊いた。

 

「そういえば、束は箒の為のISを造ってるのか?」

「まだ造ってないよ〜。設計図は出来てるけど」

「そうか。出来るなら、箒が代表候補生か企業のテストパイロットになったら専用機は与えてやれ。そっちの方が周りからの風評も少ないだろうしな」

「えぇー!?別に良いじゃーん!何なら、箒ちゃんの悪口言った奴は私が社会的に殺してあげるのに」

「そういうのは止めとけよ?箒に嫌われ「はい、やめまーす」……全く」

 

トニーは束の手のひら返しに思わず苦笑する。

 

そこで束は良いことを思いついたかのように手を叩き、トニーの方を見た。

 

「箒ちゃんをトニーの会社のテストパイロットにすれば良いじゃん!」

「……あー」

 

確かにその手があったかと、トニーは考え始める。

 

「しかし、公私混同というのは……」

「今更じゃない?」

 

束の言葉にぐうの音も出ない。

 

「そ、それも、箒に確認してからにしよう」

 

トニーはそこでその話を止めると、W.E.D.N.E.S.D.A.Y.が良いタイミングで声をかけた。

 

『トニー様、束様。夕飯のご用意が出来ました。食卓へお越しください』

「ありがとーW.E.D.N.E.S.D.A.Y.。くーちゃんのご飯だ!」

 

それを聴いた束は楽しそうに駆け出して行った。

トニーもその後に続いて行く。




2組の生徒とは一体……ウゴゴ……
そのキャラには代表候補生という設定を付け加えてました。

ブレイクタイムなのに休憩してない?
手を休めるという意味でのブレイクタイム(適当)


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一秋による惚気話

おっと……?



なんだかんだ言って、トニーがIS学園に戻ったのはクラス代表対抗戦が行われる前日の夕方になってしまった。

 

「なんだか久しぶりに戻ってきた気がするな」

 

トニーは自分の部屋に向かっている途中、そう呟いた。

1週間程度の期間だったが、それでも長く離れていたような感覚がしたのだろう。

 

「ん……?」

 

すると、向こう側から生徒2人が歩いていた。

何やら熱心に話し合っていて、トニーには気付いていない。

知らない生徒達ならスルーするトニーだが、1人は知り合いの生徒――というよりルームメイトの一秋だったので、トニーは声をかけた。

 

「やぁ、何を熱心に話しているんだい?」

「あ、トニーさん。帰ってきてたんですね」

「ああ。今帰ってきたところだ」

「そうなんですか。えっと、こちらは1年4組の日本の代表候補生でクラス代表の更識簪さんです」

「特別教師のトニー・スタークだ」

 

一秋が隣にいた簪を紹介すると、トニーは手を差し出し自己紹介をした。

 

何故か簪は緊張した表情をし、慌てている。

 

「え、えっと、よ、よろしくお願いします!」

 

両手でトニーの手を覆うように握手に応じた。握手に応じたかと思ったら、彼女はすぐさま手を離し、一秋の方に向く。

 

「ご、ご、ごめん!一秋、ま、また後で!」

 

そう言って頭を下げると、簪はその場から逃げるように走り去っていった。

 

「?僕は彼女に何かした覚えはないんだが……」

「ははは……。彼女、僕と一緒でトニーさんのファンなんですよ」

「なるほど。そういうことか」

 

不思議そうに彼女の後ろ姿を追うように見ていたトニーがそう言うと、一秋は困ったように笑い、トニーにそう教えた。

 

「僕がいない間にあの子を部屋に連れこんだのか?」

「そ、そんなことしませんよ!」

「冗談だよ」

「まったく、勘弁してくださいよ……。確かに気が合いますけど、彼女は友人で、手伝いをしてるだけです」

「手伝い?」

 

トニーが訊き返すと、一秋は困ったような表情をした。

 

「あー……。ここじゃアレですし、部屋に行きませんか?」

「ちょうどいい。僕は部屋に向かってる途中だったしな」

 

トニーと一秋は自分達の部屋へと向かった。

 

○○○

 

「それで?何を手伝っているんだ?」

 

コーヒーが淹れられているマグカップを一秋から受け取ると、トニーはさっきの質問の続きを始めた。

 

「えっと、一応誰にも言わないでくださいね?……彼女の専用機を造る手伝いをしてるんです」

 

それを聴いたトニーは呑んでいたコーヒーを思わず噴き出しそうになるが、何とかそれを喉に流し込む。

 

それが原因か、少しむせた。

 

「ゴホッゴホッ……。専用機を造るだって?」

「と言っても、外装は9割完成してて、後はプログラムとかだけなんです」

「何だ、訳ありか?」

「そうなんです。えっと……」

 

そして一秋は簪が自らの手で専用機を造っている訳を説明した。

 

 

 

 

元々、簪の専用機は倉持技研という所で造られていた。

しかし、男なのにISを操縦できる兄弟が現れてからは事態は一変。

その兄弟の内の兄の方……、所謂一夏の専用機を倉持技研で造ることに。

政府の命令もあり、一夏の専用機を優先的に造らないといけないことになってしまい、簪の専用機は未完成のまま放置状態になってしまった。

 

簪は色々と思うことがあったらしく、自分の専用機を自らの手で完成させることに決め、未完成のまま受領した。

 

その後、倉持技研は一夏のISをどんな風に造るか話し合っている最中、結局は束が一夏の専用機を造ることになり、倉持技研は手持ち無沙汰の状態になった。そして、手持ち無沙汰だったので、簪の専用機を完成させると話を持ちかけた。

 

しかし、簪は既に倉持技研の事を信用していなかったらしく、その話を一蹴したらしい。

 

 

 

 

「なるほど。それは災難だったな」

 

トニーはそれを聴いて、この場にいない簪に同情した。

 

「どうやら簪、一夏の事を若干恨んでいるらしくて」

「君の兄のせいではないが、恨むなとも言い難いだろうな」

「そうですよね……」

 

一秋は思わず溜め息を吐いた。

 

「それで、君は兄の罪滅ぼしの為に彼女に協力しているのか?」

「いえ、そんな気持ちは……。いや、最初は多少なりともありました」

「正直だな。ところで、何で彼女と友人関係になったんだ?」

「えっと、じゃあそれも説明します」

 

そして、次に出会いと今に至るまでを語り始めた。

 

 

 

 

まず一秋と簪が出会うきっかけは、一秋と同じクラスであり、隣の席の布仏本音からのお願いによるものだった。

その願いというのが、簪に会ってほしいというものだった。

本音曰く、一秋なら簪と馬が合うと思ったからだそうだ。

 

最初は"一夏の双子の弟"ということもあって、簪は少し素っ気ない態度を取っていたが、一秋が自身の趣味である機械弄りについて語りだすと、そらに簪が食いついた。

そこから時間はかからず、すぐ仲良くなった。

 

そして、今では彼女の専用機を造る手伝いをする仲になった。

 

 

 

 

「さっきも言ったように、最初は多少なりとも兄の罪滅ぼしの為、と思って手伝っていました。でも、それはすぐに無くなったんです」

 

トニーは一秋の話を静かに聴き始めた。

 

「簪の為に。今はそれが1番の理由となって、僕は彼女の手伝いをしています。それに、簪と一緒に機械弄るの楽しいですし」

 

一秋は照れ臭そうに笑いながらそう言った。

 

「……まさか惚気話を聴かされるとはな」

 

何故か呑んでいたコーヒーが段々と甘い味になっていた感覚がしたトニーは小さくそう呟いた。

 

そして、疑問に思ったことを一秋に訊いた。

 

「何で彼女は1人ででもISを創ろうと思ったんだ?」

「……簪の姉が1人で自分のISを造ったらしくて。それに対抗してるんだと思います」

「1人で?」

「はい。簪は姉に対してコンプレックスを抱いてるみたいです」

「コンプレックスか……。しかし、彼女の姉が1人でISを造ったというのは本当なのか?」

「にわかに信じ難いですが、簪からそう聴いてます」

「……そうか」

 

()()1()()()()()()I()S()()()()()という点にどこか引っかかりを感じるトニーであったが、今はそれを考えないことにした。

 

「僕の手で完成させてあげようとも思ったが……。それは最後の手段にしておこう。何か確認してほしいところがあったり、手伝ってほしい時は言ってくれ。喜んで力を貸そう。彼女にもそう伝えといてくれ」

「本当ですか!?今すぐに伝えてきます!」

 

一秋は自分のことのように喜び、部屋から出ようとする。

 

その行動にトニーは少し呆れる。

 

「……後、連絡先くらい交換しておいた方が良いぞ」

 

どうやら図星だったらしく、一秋は苦笑しながら「わかりました」と言って、部屋を出た。

 

その後、トニーは少し思い出すようにして呟いた。

 

「更識……。ということは生徒会長と血縁者か……。明日にでも話を訊いてみるか」

 

少しお節介か、そう思ったトニーは小さく笑った。




メインヒロインの匂いがプンプンするぜぇ!()

いや、自分でそう書いたんですけどね?


2組の代表候補生は次回以降に持ち越しに。


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ティナ・ハルミトン その1

すみませんお待たせしました!

活動報告通り、大まかなプロットを書き直しておりました…。
プロット直すのに集中していた為、これからはちゃんと他の作品も投稿出来ると思います。

今回久しぶりの癖してざっくりしてて短いですがご容赦を…!



クラス代表対抗戦を翌日に控えた夜。

 

鈴音はルームメイトであるティナ・ハルミトンにある事を愚痴っていた。

 

「イライラするわ!あの鈍感には!」

「はは……」

「絶対一夏に土下座させるんだから!」

 

一夏の事であった。

 

「初戦はその一夏なんだっけ?」

「そうよ。ボッコボコにしてやるんだから!」

 

ティナが最後までチョコたっぷりなお菓子を口にくわえながらそう訊くと、鈴音は強く拳を握りながらそう言った。

 

鈴音が何故一夏と知り合いなのか、何故今はこんなにも怒っているのか。それは一通り鈴音自身から聞いているティナは今の鈴音を見て、苦笑していた。

 

「私の代わりって言ったらなんだけど、頑張ってね?」

「勿論よ!」

 

ニカッと笑いながら鈴音はそう答えた。

 

○○○

 

元々、2組のクラス代表はティナであった。

専用機は無いものの、彼女は国の代表候補生である為、クラスメイトは皆してティナをクラス代表にしたのだ。

ティナ自身、専用機を持っていない為に自ら立候補してクラス代表になるつもりはなかったが、その時は周りの勢いに流されクラス代表になった。

 

後々あまり気乗りしてこなくなったが、ティナにチャンスが訪れた。

 

2組に鈴音が転入してきたのだ。

中国の代表候補生であり、なんと専用機も持っているという。

また、人懐っこい性格なのかクラスにもすぐに馴染んだ。

 

暫くして彼女はクラスメイトに訊いた。「クラス代表ってどうなってるの?」と。

 

1人のクラスメイトが「凰さん、クラス代表やりたいの?」と訊く。

 

すると、鈴音は答えた。

 

「えぇ。でももう決まってるのなら……」

 

そこでティナは待ったをかけた。

 

ティナは鈴音の前まで行き、彼女の両手を取って言った。

 

「私の代わりにクラス代表になってくれる?」

 

鈴音はそれを聞いて嬉しそうに笑顔を見せて訊いた。

 

「いいの?」

 

ティナは自身が代表候補生ではあるが、専用機を持ってないことを説明した。

 

「私だとちょっと力不足かなーって思ってる。でも専用機を持ってる鈴音なら務まると思ってる」

 

「皆はどう?」とクラスメイト全員に尋ねると、クラスメイト全員「ティナちゃんが良いなら」ということで、2組のクラス代表は鈴音になった。

 

そして、鈴音と一夏が喧嘩?をして今に至る。

 

○○○

 

そんなつい最近の思い出に浸っていると、ティナ達の部屋の呼び鈴が鳴った。

 

「ったく、こんな時間にいったい誰よ……」

 

ブツブツと何やら言いながら鈴音は玄関へと向かった。

 

(もしかして、一夏君が謝りに来たとか?……いや、それは鈴音から聞いた限り無さそうだなぁ……。じゃあ先生かな?)

 

「ティナー!アンタにお客さんー!」

 

ティナは訪問者が誰なのか予想していると鈴音が自分を呼ぶ声がしたので、ティナも玄関へと向かった。

 

「えっ……!?」

 

ティナは玄関前まで行くと、そのお客さんとやらが予想外の人物であり、口を開き驚く。

ティナが驚くのも無理はなかろう。

 

ティナが驚いているのを他所に、鈴音はそのお客さんにまるで知り合いかのように話しかける。

 

「それにしても、アンタと会うのも久しぶりね?」

 

だって――

 

「アメリカに戻っていたからな。それと鈴音、ここでは教師としているからな?」

 

アメリカでは――

 

「そういえば言ってたわね。……一応気をつけるわ」

「一応?」

 

知らない人物はいないと言われている――

 

「あぁ、君がティナ・ハルミトンか?少し話があるんだが……、都合は大丈夫か?」

 

――トニー・スタークなのだから。

 




次回は来週の日曜日以内に投稿します。

ティナの専用機は弓を使うISにする予定ではいますよ…


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ティナ・ハルミトン その2

今回も短いです。

最近は忙しすぎたから、執筆の感覚を徐々に取り戻していきたい…。

この話の次からは、お待ちかねのクラス代表戦です!




「少し、と言っても本当にすぐ終わる……ってどうかしたか?」

 

驚きのあまり言葉を失っているティナに、トニーはそう問いかけた。

 

トニーに言葉をかけられているという事実に数秒後理解すると、慌てて話し始めた。

 

「あ、え、えっと、その、なんというか……」

 

しかし、急に有名人が目の前に現れて何を言ったらいいのかわからなくなる。

 

それを見て何かを察したのか、トニーは得意気に笑う。

 

「あぁそうか。僕はアメリカだとあまりにも有名だからな。そうなるの……って、何だ鈴音」

 

トニーが隣を向くと、そこには冷ややかな視線を送る鈴音がいた。

 

「何、アンタってナルシストなの?」

「僕は自分が大好きだからね」

 

それに対しトニーはさも当たり前のように言う。

 

鈴音は溜め息を吐く。

 

「ティナに話があるんでしょ?何なら何処か行ってるけど?」

 

鈴音の提案にトニーは手で制した。

 

「いや、それには及ばない。簡単な質問を彼女にするだけだからね」

「質問……?」

 

ティナは疑問に思う。

あのトニー・スタークが私なんかに質問をする事があるのだろうか、と。

 

しかし、ティナが思っていた質問ではなかった。

 

「君は専用機を持つという覚悟はあるのか?」

 

理解するまでに2、3秒かかった。

 

ティナの視界にいる鈴音も、自分の事ではないが、驚きで目を見開いている。

 

少し考えた後。

ティナはトニーの質問に答えた。

緊張はまだしていたが、初めてしっかりとした言葉で答えられた。

 

「政府との話では一応、専用機を受領するということで話は進んでます。……でも、正直悩んでます」

「何故だ?」

「先輩達がまだ専用機を持ってないのに、1番後輩である私が専用機を貰ってもいいのかなって思って……」

 

ティナの言う通り、現在のアメリカ代表候補生は専用機を誰1人所有していない。

「僕は別に良いと思うがな。……まぁ、そこは君次第だ。まだ悩んでいるなら後日にまた訊きにこよう」

「……はい」

 

そう言ってトニーはティナ達の部屋を後にした。

 

トニーがいなくなり、ティナは安堵する。

 

「はぁ……、緊張したぁ」

「緊張?」

「鈴音はどうかわからないけど、私達アメリカ人からしたらトニーさんは凄い人なんだからね?」

 

だからティナはさっきの鈴音に対し、「そんな人に敬語を使わないで喋ってたらアメリカ人に怒られるよ?」とティナは注意した。

 

「私の癖みたいなものだからなるべく気をつけるけど、多分無理ね」

 

鈴音は自分のベッドまで行き、腰を下ろして続けて言った。

 

「それにトニー……先生と一緒に変な()()()()に巻き込まれたから、尚更難しいと思うわ」

 

「その時にフランクに接してる分ね」、と鈴音はベッドに横になる時にそう付け加えた。

 

()()()()という言葉が気になったが、特に追求はせずにティナも鈴音に倣い、何となくベッドに横になる。

 

そしてしばらく沈黙が続いた後、鈴音がふと、ティナへと言った。

 

「別に、ティナは専用機を受け取っても良いと思うわよ。それはつまり、アンタの努力の結果なんだろうから」

 

その言葉にティナは少し驚くが、すぐに「ありがとう」と伝える。

 

「……もう明日の為に寝るわ」

 

少し気恥ずかしくなったのか、鈴音はティナに背を向けてそう言った。

 

 




次回も日曜日以内に投稿します。


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一夏、今私の胸の事なんつった……!

今回の話でティナのある特技?みたいのが分かるかもしれません。

10/15 後書きにお知らせを追記しました。


クラス代表戦当日。

 

学園の外から沢山の来賓が来る中、トニーは来賓席ではなく管制室に来ていた。

そこには、試合の準備をしている千冬と山田先生もいる。

 

そんな中、千冬はトニーに尋ねた。

 

「来賓席に行かなくて良いのか?お前は教師である前に、社長だろ?」

「あっちよりもこっちの方が観戦としては最高だろ?それに他の奴らの相手をしたくないからね」

 

トニーは壁に張り出されているトーナメント表を見て呟いた。

 

「ほう、一試合目は織斑兄と鈴音か」

「なんだ、知り合いなのか?」

「この前ちょっと仲良くなったんだ。それより、警備の方はどうなんだ?」

「会場の警備なら万全ですよ?」

 

トニーの疑問に、山田先生が答えた。

 

「そうか。……けど念のためにF.R.I.D.A.Y.にも見張らせよう」

 

トニーはそう言って、自身のケータイ端末から学園の警備システムにF.R.I.D.A.Y.を送りこむ。

 

「……何かあるのか?」

「いや、念には念を、ってやつだ」

 

操作が終わり、ケータイ端末を自分の懐に戻す。

 

「僕の杞憂で終わればいいんだがな……」

 

トニーは管制室の窓から空を見上げた。

 

○○○

 

暫くして時間が経ち、試合が始まる時間になった。

 

既にフィールドには一夏と鈴音がそれぞれのISを纏い、宙に浮遊していた。

 

「へぇ、噂には聞いてたけどアンタのISは全身装甲なのね」

「あぁ。それよりも、俺が勝ったら約束の事、ちゃんと教えてくれよ」

「嫌よ、説明なんてしたくないわ!」

「だから言ってんだろうが!教えてくれりゃ謝るって!」

 

一夏と鈴音が言っている()()

 

それは小学生の時、鈴音が中国に帰る時に一夏と交わした約束である。

 

その内容とは、「料理の腕が上がったら毎日酢豚を食べてもらいたい」という鈴音なりのプロポーズでもあった。

正確には日本人がよく知っている言葉のアレンジである。

 

しかし、肝心の一夏はそれを中途半端に理解、覚えていた。

 

「毎日酢豚を奢ってくれる」

 

という風にだ。

 

プロポーズのつもりの約束をした鈴音と、今日までそう記憶していた一夏が再開してその約束の話になれば、喧嘩になることは必然とも言えた。(主に鈴音がキレる)

 

「このバカ!朴念仁!」

「誰が朴念仁だ、この貧乳!」

 

互いにヒートアップしている中、一夏がそう言った。言ってしまった。

 

鈴音は静かに怒りを言葉に乗せ、一夏を睨む。

 

「……アンタ今なんった?」

「えっ……?」

 

鈴音は自分が持っている武器、双天牙月の持ち手を折らんとばかり握りしめる。

 

「私の胸がまな板みてぇーだってェ!?」

「そうとは言ってねぇ!?」

 

鈴音の激怒の咆哮と同時に試合開始のコールが鳴り響く。

 

瞬時加速を使った鈴音は自身の持つ双天牙月で一夏を真っ二つにするかの如く、振り下ろした。

 

「あぶねぇ!?」

 

一夏はそれをギリギリ横に避け、鈴音と距離を取る。

 

ゆっくりと顔を一夏に向け、睨む。それは先程よりも凄まじいものとなっている。

 

「私の胸にケチつけた奴は何モンだろうと許しはしないわ……!」

 

静かにそう言うと、鈴音は双天牙月を構え直し、非固定浮遊ユニットである龍砲を一夏に向けた。

 

○○○

 

2組の()()()()()()()()()()()()()()ティナが、察した

 

「一夏君、鈴音を怒らせたね……」

 

ティナは溜め息を吐き、()()()()()()()()()()

 

「何、アレ……?」

 

ティナはナニカを見た。

 

それと同時刻、アイアンマンが空に飛び出した。




では次の話もよろしくです。
次回はトニーが空に飛び出すところから始めるつもりです。

鈴音の例のキャラ成分に関しては元からそのつもりでした(震え声)

10/15
ただいま旅行中で執筆できない状況です。
なので再来週の日曜日に次話をアップしますので、ご理解の方をお願いします。( ˇωˇ )

ちなみに沼津…


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