ボーボボたちが幻想入り (にゃもし。)
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30XX年、列車に乗って幻想入りしてみました。

 

30XX年。

 

鼻毛真拳の使い手であり、黄色いアフロが目立つ長身のサングラスをかけた男ボーボボ。

彼と彼の仲間たちの活躍によりツル・ツルリーナ3世は倒され世界は束の間の平和を取り戻した。

平和を謳歌する人と人ではない者たちが行き交う不可思議な光景がそこかしこに生まれる。

もっともそれは彼らにしてみれば何気ない日常の風景の一コマである。

 

ツル・ツルリーナ3世を倒した後、ボーボボたちは仲間と別れてそれぞれ別の道を歩む。

そして彼らはいつかまた会うことを約束して、後日再び会った彼らは久々の仲間との語らいを楽しんだ。

 

 

「1000年前と比べるとおかしな連中が多いもんだな…」

 

 

それはボーボボがボソッと漏らした一言から始まった。

 

 

「……1000年前って、ボーボボはそんな昔から生きてるわけないでしょ?」

 

 

仲間の1人であるピンク色の髪の少女――ビュティはいつものおふざけかと呆れ顔で聞き流す。

事実、ボーボボは27歳。どう見積もっても1000歳には届かない。

 

 

「あれ? 言ってなかったっけ? 俺とボーボボと天の助は大昔の日本にタイムスリップしたことあるんだぜ?」

 

 

「あー、はいはいはい… スゴいですね―」

 

 

「ああん? さてはテメェ信じてね―だろ?」

 

 

オレンジ色の金平糖みたいな体のシルエットに細い手足が生えた生き物――首領パッチが凄みをきかせた顔で睨むもビュティは軽く笑いながら受け流す。

 

 

「だったら『幻想郷』に行ってみたらどうだ?」

 

 

天の助、全身の殆どがところてんで形成した人物。彼の提案に出てきた聞き慣れない地名にボーボボ、首領パッチを除く一同が「幻想郷?」と聞き返す。

 

 

「ああ、この駅から『魔列車』で行けるぞ?」

 

 

天の助の背後には禍々しい気配を放つ巨大な機関車が鎮座していた。

 

 

「駅あったの!? それに何この列車!? どう見ても乗ってはいけない類いのモノだよね!?」

 

 

「大丈夫だ。冥界に着く前に降りれば問題はない。それに俺たち三人は以前のギガ戦以降、地獄から出入り禁止を食らってるからな、行っても追い出されるハズだ。(……たぶん)

 

 

「今ものすっごい小さな声で不安を煽るようなこと何か言ってなかった!? それにそれが通用するのボーボボたちだけじゃん!」

 

 

ボーボボがビュティを安心させるために説明をするが、逆に不信感を募らせるだけに…

 

 

「ボーボボさん。なんか普通の列車もあるみたいですし、これに乗った方が安全かと…」

 

 

ボーボボの舎弟のヘッポコ丸が隣の車輌を指差して促す。

「え――」とボーボボは唇を尖らせて不満げな顔をすると…

 

 

「だってそれ、空を飛ばないんだぜ?」

 

 

「ボーボボさん、普通列車は空を飛べませんよ!? …っていうか、その魔列車は空を飛ぶんですか!?」

 

 

言った側から魔列車が動き出して、空を駆けていく。

 

 

「「空、飛んでるゥ――――っ!!!?」」

 

 

ボーボボたちが見守る中、魔列車は段々と加速して大空へと消えていった。

 

 

「魔列車は一度走り始めるとテリーマン以外止まらすことができない。時間はかかってしまうが仕方ない。普通の列車で幻想郷へ行こう」

 

 

「その方がいいと思うよ。ボーボボ…」

 

 

ムダにキリッとした表情で言うボーボボに疲れ気味な声で返事をするビュティ。

一行は普通の列車に乗車して目的地――幻想郷へと向かうことになった。

 

 

 

 

【少年少女移動中(人外も含む)】

 

 

 

 

列車に揺られこと数時間、途中「アッガイ村」という駅で首領パッチが「ここで降りる!」と暴れたが、それ以外は何事もなく無事に到着した。

そこは自然豊かな光景が広がる喉かな田園風景、さながら昔の日本の姿がそこにあった。

 

 

「着いたのはいいけどよォ、ここまで殴る必要なくネ?」

 

 

「人里があるのはこの先だ。そこまで歩いていくぞ」

 

 

顔中アザだらけで痛々しい姿の首領パッチを無視してボーボボを先頭に歩き出す一同。

やがて人里を目にするが、その入り口付近にある「幻想郷を救いし巫女とその使い魔たち」と題された銅像を目撃してしまう。

少女の像の周りにいる使い魔たちはボーボボたち三人に声を失うほどにそっくりだったのだ。

それを見た破天荒は「さすが、おやび~ん」と首領パッチの銅像に抱きつき、その場から動こうとしない。

ボーボボは早々に諦めて…

 

 

「破天荒は放っておいて中へ入るぞ。ついてきな」

 

 

目をキラキラと輝かせた破天荒を尻目に人里へ入っていく。

最後に入ろうとした小柄な影に向かってボーボボは…

 

 

「ただしつけもの、テメーはダメだ」

 

 

つけものと呼ばれたモノの表情が凍りついて動きが止まった。

 

 

 

 

【人里探索中】

 

 

 

 

「おかしな一団が人里に入ってきた。――と聞いてやって来たが、やはしお前たちだったか…」

 

 

物珍しく辺りを窺う一行を呼び止める声に振り向くと青い帽子に青い格好の長い銀髪の女性が腕を組んで立っていた。

 

 

「あの、あなたは…?」

 

 

「ああ、私か? 私はここ、人里の守護者をやらせてもらってる『上白沢慧音(かみしらさわけいね)』という者だ。お前たちはともかく、そこの三人組は私のことを知ってるハズなんだがな…」

 

 

「ボーボボと天の助はどうか知らないが、俺は過去は振り返らない主義なんでな…」

 

 

「要するに覚えてないわけね」と言うビュティに首領パッチは…

 

 

「ちょっとォ、いきなしそんなこと言わないでよ! 私がバカみたいじゃない!」

 

 

異口同音に声を揃えて「バカだろ」と指摘され「ヒドいわ」とわんわん泣き出す。

無論、誰も慰めない。

 

 

「慧音さんって昔のボーボボたちを知ってるんですか?」

 

 

「いや、私は彼らについてそれほど詳しいわけではないんだ。彼らに関しては他の人から聞いた方が早い。本人たちから聞くのが一番手っ取り早いのだがな…」

 

 

指を額に押し当てて困った顔で答える慧音。

 

 

「そもそもボーボボたちは突然やって来て、何も言わずに急にいなくなったんだ」

 

 

「「こんな風にか?」」

 

 

言うや否、目の前で「ヒュン」と姿が掻き消える三人。

その場にいた者は無言のまま硬直したが、やがて思い出したかのように叫ぶ。

 

 

「「ええ――――――――っ!!!?」」

 

 

ボーボボたち三人は文字通りに急にいなくなったので、残った者たちで調べることになったのは言うまでもない。

 




 
 (´・ω・)にゃもし。

 これを1話にして今まで書いた「東方×ボーボボ」を纏めるんだ。

※サブタイの 300XX年 → 30XX年 に修正しました。


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慧音 meet 首領パッチ

2015 / 07 / 07 に投稿した「慧音 meet ドンパッチ」を加筆修正したものです。


 

それは何の前触れもなく幻想郷にやって来た。

口紅を厚く塗った怪生物が「るんるん♪」と大通りのど真ん中をスキップしながら進んでいる。

途中で立ち止まったかと思えば、顔を赤くして不気味な人形を地面に何度も叩きつける。

 

そんな光景に遭遇した人間たちは唖然とした表情で遠巻きに眺めていた。

それが再び歩き出すとモーゼが海を割るかの如く人垣が二つに割れていき道が出来上がる。

 

 

 

 

はーい♪ みんなのアイドル兼ヒロインのパチ美よ~♪

なんかいろいろあって幻想郷ってとこにボーボボ、天の助と来たんだけど―…

途中で二人とはぐれちゃったのよネ―、あっはっはっは―。あとでぶっコロ―ス。 

 

そんなこんなで人里を歩いてるんだけど~

さっきから里の人たちがチラチラこっちを見てくるのよ―

モテる女ってツラいわ―

 

あらら、あんなところで子供たちが遊んでるわ。可愛いわねぇ…

いずれは私もやっ君と…… キャー! 私ってば大胆♥

 

 

 

 

道を挟んで向かい合う少年少女たち。

一人の男の子が女の子たちに手を振って呼び掛ける。

 

 

「おおーい、僕も仲間に入れておくれ―」

 

 

「ワガママ言うからダメだワサ、べー」

 

 

「そんなこと言わないで……」

 

 

それでも諦めきれずに彼女たちの下へ走って駆け寄る。

その子供たちの間を首領パッチが遮るようにして横切っていく。

少年は避けきれず軽く衝突、その際に首領パッチの体に泥がついてしまった。

 

 

 

 

   ト" ト" ト" ト" ト"     ト" ト" ト" ト" ト" 

 

 

 

 

水を打ったように静まり返り、心臓の鼓動に似た音だけが響く。

首領パッチの目元には鋭利な形のサングラスがかけられていて、劇画タッチの表情で佇んでいた。

少年は突如現れた存在に言葉を失い、首領パッチについた泥を見て顔を青くする。

罵倒を浴びせられると感じたか、身をすくませる少年。

だが首領パッチの口から出てきた言葉は…

 

 

「ボウヤ、泣かなかったのね。偉いわねぇ、ケガはない?」

 

 

劇画タッチの顔から一転。

パーマをかけた買い物帰りの主婦の格好と表情で優しく声をかけてきた。

子供たちと事の成り行きを見守っていた見物人は安堵する。

 

 

「ボウヤ、君いくつ? 4才? ふ―ん、偉いわねぇ…」

 

 

少年は質問に笑顔で答えると……突然、首領パッチが憤怒の形相に変貌する。

 

 

「それじゃあ、ブン殴ったって、いいよなぁぁぁっ!?

 大事なズボンに泥つけやがって! テメ―が弁償すんのかよ!?」

 

 

首領パッチは最初からズボンを穿いていない。

全くの言い掛かりである。

 

 

「働いて弁償するたって、テメ―が働けるようになるまで俺は何年待てばいいんだよ!?」

 

 

周囲から甲高い悲鳴が沸き起こる。

首領パッチが握り締めた拳を高く掲げたのだ。

多少の例外はあるものの幻想郷に住んでる人間たち以外の住人は “ 人間よりも強い ”

況してや相手は子供。人外の存在から暴力を振るわれば一溜まりもない。

 

 

助けを求めるために一人の少女が走り出す。

人里の守護者であり、寺子屋の教師をしている上白沢慧音の下へ…

 

 

 

 

【 少女移動中 】

 

 

 

 

寺子屋にいる慧音の下に一人の少女が駆け込んできた。

騒ぎを目撃していた少女の一人だ。

慧音は彼女から事情を聞き、急ぎ足で向かうと…

 

 

「何、これぇぇ――――っ!!!?」

 

 

現場に着いた慧音が目にしたのは、件の妖怪を木製の十字架に磔にして、両手に持った松明で足元にある薪に火をつけようとしている子供たちの姿。

少女の語る、少年を虐げる妖怪の姿はどこにも見当たらない。

 

 

「すいません。自分、調子こいてました。

 毎月口座に振り込みますので、もう赦してください…」

 

 

心が折れたのか全身のトゲをしならせ、アザだらけの顔で子供たちに懇願する。

 

 

「こらっ! 火はやめないか! 火は!」

 

 

慧音が慌てて止めに入り、彼女に気づいた子供たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

 

 

「ハッハ―、アイツら口ほどにもねぇぜ! この俺様を恐れて逃げやがった!

 おい、そこの変な帽子を乗っけた青いの! とっとと俺様を解放しろ!」

 

 

子供たちがいなくなった途端に態度を豹変。

ついでに萎びれたトゲも元の鋭さを得る。

 

 

「解放するのは構わないが、お前は近頃人里を騒がせてる『関東野菜連合』の一員なのか?」

 

 

関東野菜連合のメンバーは人間大の野菜に細い手足と顔がついたよくわからん連中である。

目の前のコレがどことなく似ていなくもないと感じたのか慧音は尋ねてみたのだ。

慧音の記憶には刺々したオレンジ色の野菜の知識はないが…

 

 

「ああん? 『関東野菜連合』って何だよ?」

 

 

「知らないのか? 野菜に手足がついた連中で、野菜を残すと何処からともなくやって来て集団で暴行を加えていくんだ」

 

 

「ハッ、野菜に手足に暴行って、何言ってんだテメーは? バカじゃねぇの?

 さては脳にいく栄養分が胸の方に行ったんだろ、テメー?」

 

 

慧音の胸を直視しながら人を小馬鹿にするように「あひゃひゃひゃ」と笑い始める。

笑い続ける首領パッチの目の前で慧音の服装が青から緑に変化。

さらに頭部に二本の鋭い角が生えて、尖端を首領パッチに向けて――――猛突進。

 

 

 

 

『  ハ リ ケ ー ネ ミ キ サ ー !!!!  』

 

 

 

 

「満月でもないのに変身してるんですけど――――!?」

 

 

二本の角から激突。

十字架が衝撃に耐えきれずに粉々に砕かれ、首領パッチはきりもみ状態で打ち上げられる。

やがて受け身を取れぬまま、大の字で頭頂部から地面に落下。激突の際「げふっ!?」と吐血。

白目を剥いて口から泡を吹き、全身をピクピクと痙攣させる。

 

 

 

 

【 回想終了 】

 

 

 

 

「――――とまぁ、それ以降連中が人里で何か騒ぎを起こすたびに私が駆り出されるようになってしまったんだ…」

 

 

どこか遠い目で虚空を見つめる慧音。

 

 

「それはその何と言うか、御愁傷様です……」

 

 

ビュティは苦笑いしながら、そういうしか他なかった。

 




 
 (´・ω・)にゃもし。

 こんな感じに纏めようと思うんだ。
 過去の作品だけでなく、新しいのも書きたい。
 「ゆっくり魔理沙が逃げ出した」とかを…


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“ ゆっくり ” 売りのボーボボ

2015 / 07 / 13 に投稿した「" ゆっくり " 売りのボーボボ」を加筆修正したものです。


 

饅頭体形の頭部だけの生き物がカエルのように跳び跳ねて移動、一ヶ所に集まり始めている。

その謎生物たちを目で追うと田楽マンを取り囲んで集団で暴行を加えていた。

ビュティはその一部始終を見て、隣にいる慧音に尋ねる。

 

 

「なんかボーボボのお父さんみたいのがいるんだけど…」

 

 

「ああ、あれはボーボボが連れてきた『ゆっくり』という妖怪だ。

 ボーボボの父親というと想像がつかんのだが、どんな奴なんだ?」

 

 

「毛です」

 

 

「え、毛?」

 

 

「はい、毛です」

 

 

「そ、そうか…」

 

 

 

 

【 少女回想中 】

 

 

 

 

私の名は上白沢慧音(かみしらさわけいね)。

人里の寺子屋で教師をしているものだ。

数日前に自称「みんなのアイドル兼ヒロイン」を名乗る首領パッチに遭遇してから今度は……

 

 

「あー! アフロ屋さんの人だ――!」

 

 

子供たちが同じ方向へ走り出す。その先にあるのは荷車を引いた長身の男。

だが一番に目につく特徴はその黄色いアフロだろう。彼の名は「ボボボーボ・ボーボボ」

首領パッチ同様に幻想郷にやって来た外来人の一人だ。

 

時折こうして荷車にアフロを乗せて売っている。

物珍しさもあってか買っていく人が多い。

 

もっとも今回はアフロではなく、幻想郷で名の知れた人物を模したカツラを売っているようで、やや可愛くデフォルメされた作り物の頭にカツラを乗せて売っている。

 

 

「良かったら触ってね」

 

 

ボーボボの一声で「わーい」と無邪気に群がる子供たち。

小さな女の子が神社の巫女である霊夢を象った頭を手に取ると…

 

 

「汚い手で触ってんじゃねぇ!」

 

 

鬼の形相で女の子から引ったくるように奪い返して、罵倒を浴びせる。

 

 

「おいっ!? さっき言ってる事と違うぞ!?」

 

 

「買う気が微塵もない貧乏人が手垢をベタベタつけやがって、ヘドが出るぜ」

 

 

「お前はもう店をたたんでしまえ!」

 

 

いそいそと生首を荷台に戻すボーボボ。

 

 

「ゆっくりしていってね!!!」

 

 

その生首の口が滑らかに動いて喋った。

 

 

 

 

「なんか喋っとる――――っ!!!?」

 

 

 

 

作り物だと思ってたモノは生物の一種だった。

私は荷台に積まれてる、それらを指差して問い詰める。

 

 

「おい、ボーボボ! これは何なんだ!?」

 

 

「なんだって、ただの『ゆっくり妖怪』だが? 知らないのか?」

 

 

「さも当然のように!? 知らないから、こうして聞いているんだが!?」

 

 

「子供たちの間で流行ってるハズなんだがな、これ」

 

 

「初耳だぞ!?」

 

 

「他にも『マッスルインフェルノレース』『キョンシーレース』とかもあるんだが?」

 

 

「何だその物騒な名前のレースは!? いや、それよりも先ずはゆっくり妖怪の説明をしろ!」

 

 

彼はサングラスを中指で上げて「フッ」と小さく笑うと、糸が切れたように膝から崩れ落ち地面に両手をつけて、サングラスの隙間から涙を流す。

 

 

「何この生き物!? 俺も知らないんですけど!?」

 

 

「自分でもわからん得たいの知れないモノを人様に売るなぁぁぁっ!!!!」

 

 

アフロを両手で掴んでボーボボの額に頭突きをかます。

痛そうな鈍い音を響かせて、ボーボボは地面に突っ伏した。

 

 

「それは『まんじゅう族ゆっくり妖怪』よ」

 

 

ボーボボの代わりに答えたのは紫のドレスの女性――八雲紫(やくもゆかり)

幻想郷を管理してる妖怪。

 

 

「知ってるのか!? ゆかりん!?」

 

 

ガバッと顔を上げて、紫に尋ねるボーボボ。

アダ名で呼んでるところを見ると親しい間柄なのだろうか…? でも「ゆかりん」って…

 

 

 

 

 [ まんじゅう族:ゆっくり妖怪 ]

 

☆元々は頭部だけの妖怪が変化、進化したモノ。

 元となる人物が存在して、その人物と似た能力を持っていることもある。

 人語は理解しているようだが会話をすることはできない。

 性格は穏やかで人に危害を加えることは殆どない。     by 永遠の17才 ゆかりん

 

 

 

 

説明を聞き終えると「へぇ~」と感心するボーボボ。

売り主が真っ先に知るべき事柄だと思うのだが…?

 

 

「この『ゆっくり霊夢』をくださいな」

 

 

「買うんかい!?」

 

 

「30万円になります」

 

 

「高っ!?」

 

 

「現金一括払いで」

 

 

「なにぃっ!?」

 

 

「毎度ありぃ、ぐへへへへへ……」

 

 

受け取った札束を一枚一枚、指で捲って数え始める。

どうでもいいが表情が小悪党っぽい。

 

ゆっくり妖怪たちの中には私の知っている人物のもいた。

白髪にリボンをつけたゆっくり妖怪。

 

 

「ん? 慧音はゆっくりもこたんが欲しいのか?」

 

 

「もこたんって何だ? もこたんは?」

 

 

――と言いつつ財布の中身を確認。

 

 

   3160円

   くしゃくしゃのレシート

   コーラが入ったビンのフタ

   コーカサスオオカブトのオス

 

 

「すまないが、これで足りるか?」

 

 

「お前はそれで買えると本気で思っているのか?」

 

 

「分割払いは可能か?」

 

 

私は至極真面目に交渉を試みることにした。

その横にウサギ妖怪の従者を連れた黒髪の少女が現れる。

 

 

「姫様、あの女のゆっくりが売ってますね」

 

 

「あら本当だわ。それじゃあ頂きましょうか」

 

 

「30万円になります」

 

 

「高っ! 姫様、やめましょう! 生首に30万円は高過ぎます!」

 

 

「現金一括払いで」

 

 

「姫様!?」

 

 

「毎度ありぃ、ぐへへへへへ……」

 

 

黒髪の少女がゆっくりもこたんを抱き締めて、いずこへと去る。

その背中を黙って眺めることしかできない私…

 

 

ここは幻想郷、それはそれは美しくも残酷な世界。

 

 




 
 (´・ω・)にゃもし。

 古いのは順次、消しておこうと思うんだ。


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茨木華扇とハジケリストたち

2015 / 06 /30 に投稿した「茨木華扇とハジケリストたち」を修正加筆したものです。


 

ここ幻想郷に鉄道が敷かれてからというもの、時折だが旅人たちが訪れるようになった。

もっともやって来るのが善人とは限らない。

お世辞にも善人とは言い難い連中は幻想郷の管理人である八雲紫などが追い返している。

今回、幻想郷に入ってきた者たちは何の問題もないという話になるわけだが…

 

入り口にある首領パッチ像に抱きついて号泣する男を見て私は思った。

 

 

“ ダメだろ、コイツ ” …と。

 

 

私の中の警鐘が鳴り止まない。私はその男の存在を無視して人里へ入る。

 

 

 

 

【 少女回想中 】

 

 

 

 

私がそいつらに会ったのは人里。

 

――人里で妙な三人組がいる。

 

風の噂でそのこと耳にした私は彼らがよく出没するという場所に足を運んだ。

その三人組は物凄く目立っていて、大した手間も時間もかからずに見つかった。

私はそのうちの一人である、身体が “ ところてん ” でできている「天の助」に接触を試みる。

 

 

「ビュティじゃないか! お前もこの世界に来ていたんだな!」

 

 

その人物は親しそうに私、茨木華扇(いばらきかせん)に声をかけてきた。

無論、私が知るわけがない。

 

 

「ちょっと待ってろ、ボーボボ呼んでくるから」

 

 

「ちょっと待ちなさい! あなた!」

 

 

制止の声も何のその、私をその場に残していなくなる。

ボーボボという人物を連れてくるのだろう。

天の助に人違いされたが当初の目的、連中と会うことを考えて、私は待つことにした。

 

暫くしてから天の助が去った方角から土煙を巻き上げながら爆走するバイク集団が現れる。

そのバイクに跨がっていたのは人ではなく、人間大の野菜に細長い手足が生えた連中だった。

 

 

「なんか変なのが来た――――っ!!!?」

 

 

彼らは「関東野菜連合」のノボリを立てて、脇目も振らずに真っ直ぐこちらに爆走。

先頭を走ってるのは鋭利なサングラスをかけたニンジン。

その後ろにある荷台には木製の十字架に磔にされた天の助とアフロの男。

どちらも暴行の跡がくっきりと残されている。

 

 

「なんかやられてる――――っ!!!?」

 

 

ニンジンが「全体、止まれ!!!!」と指示を出すと一同がバイクを横滑りさせながら急停止。

その勢いでアフロの男を「べちゃっ」と乱暴に地面に落とし、その上に天の助も落とす。

 

 

「次、ピーマン残したら、この程度じゃすまねーぞ、わかったか?」

 

 

ニンジンがそう言い放つと「しゃー!!! いくぜ野郎共!!!!」の掛け声を残して去っていった。

 

 

「……だって、しょっぱいじゃんかよ…」

 

 

アフロ男はサングラスの隙間から涙を垂れ流しながら呟くと、力尽きたのか地面に突っ伏したまま微動だにしなくなる。

 

さすがに重傷の連中を放って置くことはできず、彼らに近寄ると…

アフロ男の方が急にムクッと上半身を起こし、こちらを無表情でじっと見つめる。

 

 

「おお、ビュティじゃないか!」

 

 

パアッと大輪の花が咲いたような笑顔で話しかけてきた。

ボロボロ同然の服装が元通りに、体につけられたキズもキレイさっぱり治っている。

以前の異変で戦ったことのある妹紅、彼女と同様に再生する能力があるのか…?

 

 

「残念ですけど私はあなた方の言うビュティでがはなく、茨木華扇という行者です」

 

 

間違いを訂正するも…

 

 

「なあボーボボ、あそこにいるのは首領パッチじゃないのか?」

 

 

「ああ確かにいるな、あのバカ」

 

 

「……………………」

 

 

聞いていなかった。

彼らの視線の先には橙色のコンペイトウに手足が生えた変な生き物が人里の自警団に尋問でもされているのか、涙を流している。手には何故か壊れた傘を携えて。

天の助からボーボボと呼ばれたアフロ男はアゴで指すと…

 

 

「仕方ない。ビュティ、あの非常食をさっさと引き取ってこい」

 

 

「非常食!? あれが!? それに私はビュティじゃないって言っているんですが!?」

 

 

…とはいえ放置するのも気が引けるので重い足取りで自警団のところに向かう。気は進まないが…

 

 

「だから空からじゃわかんないって言ってるでしょ?」

 

 

「だって本当なんだもん」

 

 

件の首領パッチと自警団の女隊長はそんな会話のやり取りをしていた。

首領パッチは私の接近に近づくと泣き止み、嬉しそうな顔で…

 

 

「あっ! ママ!!」 …と宣い。

 

 

「お宅のお子さんですか?」

 

 

「いえ、非常食です」

 

 

質問してきた自警団の女性に私はスゴく冷めた表情で冷淡に答えた。

首領パッチは私の答えた “ 非常食 ” という単語に驚いて固まる。

 

 

「困りますよ、非常食はキチンと管理してもらわないと…」

 

 

「すいません。以後、気をつけます」

 

 

――こうして私はコイツらと出会ってしまった。

 

 




 
 (´・ω・)にゃもし。

 約1年前の作品だったことに驚いた。


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バラバラ殺首領パッチ事件

2015 / 07 / 15 に投稿したものを加筆修正したものです。


 

私の名は茨木華扇(いばらきかせん)。

ただの行者であり、仙人の端くれでもある。

 

あの三人組に会ってから私の周りは少々、騒がしくなった。

 

私が彼らの共通の知人によく似ているせいか、頼んでもいないのに彼らがやって来る。呼んでもいないのにやって来る。

 

でも、さすがに妖怪の山まで来れないでしょう。

それに普通の方法では入れない場所に居を構えているから連中もおいそれと……

 

部屋の壁が吹き飛び、奥から両腕を交差させたボーボボが飛び出してきた。

 

 

「ビュティ、大変だ!」

 

 

何の前触れもなくやって来た珍客に私は思わず「ブフォッ」とむせた。

 

 

「どうやってここに来たんですか!? 壁を破壊した意味は!? 玄関あるんだから、そこから入ってきてください! 家は土足厳禁です! 靴は脱いでください! あと、私は茨木華扇です!」

 

 

「そんなことはどうでもいい!」

 

 

「この家の主は私なんですけど!?」

 

 

私の注意を無視して彼は青色の四角い箱、未開封のプラモデルを取り出す。

品名は「DONPACH」首領パッチを模した模型なのだが、誰が買うのだろうか…

 

 

「首領パッチがバラバラになった!」

 

 

ボーボボがそのプラモデルを指差して叫ぶ。

頭の中で思考を巡らす。つまり、このプラモの箱が首領パッチという意味で…

 

 

「プラモ化しとる!? バラバラってそういう意味なの!? 

 これ組み立てたら首領パッチが出来ちゃうの!?」

 

 

額に汗を滲ませて頷くボーボボ。

彼は重々しい雰囲気を纏わせて首領パッチがバラバラになった経緯を語り始めた。

 

 

 

 

【 アフロ 説明中 】

 

 

 

 

「パチ美がやっくんを額に括りつけて人里を練り歩いていた時の話だ」

 

 

「あの―、さっそく意味不明で理解に苦しむ単語と行動が出てきたんですが…?」

 

 

「言葉だけではわかりにくいか… なら、これでどうだ」

 

 

ちゃぶ台で紙芝居を始めるボーボボ。

ちなみに題名は「バカ物語」ケバい化粧をした首領パッチと不気味な人形が描かれていた。

 

 

「「ゆっくりしていってね!!!」」

 

 

ボーボボが呼び出したのか、大量のゆっくりと共に紙芝居を観賞。

壮大な音楽が流れ、紅いカーテンが左右に開いていき、物語が始まる。

 

 

パチ美がやっくんという名の人形を引き摺りながら人里でデートしているとやっくんが一人の女性に心奪われてじっと見つめる。

嫉妬に狂ったパチ美。背後に炎を燃やして、ネギを片手にその女性へと飛んで行く。

 

 

 

 

風見幽香(かざみゆうか)に!

 

 

 

 

「ちょっと、なにやってんの――――――――!!!?」

 

 

 

 

憤怒の形相をしたパチ美が「真のヒロインは私よ!」と襲いかかるも、あっさり返り討ち。

あろうことか近くにいたアリスを指差して「あの人に命令されて、やらされました!」と、罪を擦り付けようとするも、あっさりバレる。

 

 

「…でしょうね」

 

 

なんやかんやで、笑顔の幽香から口の中に傘の尖端を突っ込まされて『マスタースパーク』

 

 

「えぐっ!?」

 

 

「めでたし、めでたし」と締め括って紙芝居を終わらすボーボボ。

いったいどこに感動する要素があったのか、ゆっくりたちが涙を流して嗚咽を漏らす。

 

 

「正直、コイツはウザいから無視して放置したいのだが…」

 

 

「一応、仲間だよね? あなたたち?」

 

 

「万が一、何かの間違いで復活でもしたら…」

 

 

「何かの間違いって…」

 

 

「ヤツのことだ、ねちっこく言ってくる」

 

 

「うん、そうだね」

 

 

青い箱にローマ字で書かれた首領パッチのプラモデル。

彼と思われる似てないイラストに、税抜きで「80円」の値札が張られている。

 

 

「でも組み立てるにしても、私は作った経験ありませんよ?」

 

 

「大丈夫だ、問題ない。こんなこともあろうかとプロを呼んでおいた」

 

 

自信満々で答えるボーボボ。

襖の戸が開かれ、奥から天の助が現れる。

ただし、全身を獣にでも引っ掻かれたようなキズを負っていて、立っているのが精一杯だった。

 

 

「この家の周辺にいる虎、竜、鷹に襲われた……」

 

 

そう言ってバッタリと前のめりになって倒れる天の助。

 

 

「動物を放し飼いにしてるのを忘れてたわ…」

 

 

私たちは天の助が復活するのを待った。

 

 

 

 

【 天の助 再生中 】

 

 

 

 

「組み立てるだけならば、ここじゃなくてもよいと思うのですが?」

 

 

ここは妖怪の山の近くにあり、見つけるのが困難な場所。

わざわざ組み立て作業をするためだけにここに来る必要はない。

 

 

「ああ、それはだな…」箱を逆さにひっくり返して中の部品を畳の上に落とす天の助。

滝の水のように落ちていくプラモの部品。部屋一面を埋め尽くしたところで空になる。

明らかに箱の容量を大きく上回っている。

 

 

「部品がざっと5000以上あるからな、広くて誰にも迷惑がかからない場所が必要なんだよ」

 

 

「部品、多っ!? 家だったら迷惑かかってもいいっていうの!?」

 

 

 

 

【 バカ 組み立て中 】

 

 

 

 

静かに首領パッチを組み立てる天の助。胴体の半分まで完成している。

彼の横には外科医の格好で魚の骨格標本を作り上げるボーボボの姿が…

 

 

「よし、そろそろ骨を組み込むか…」

 

 

「ああ」と短く頷いて魚の骨を手渡すボーボボ。

 

 

「それも部品だったの!? …っていうか骨が魚の骨!?」

 

 

骨を手にした天の助が首領パッチの体に入れようとしたとき「にゃ~」という複数の猫の鳴き声とともに障子を破って大きな二つの影が部屋に転がり入る。

旧地獄のお燐と九尾の式である橙。

 

 

「猫は猫でも、化け猫!?」

 

 

二体の化け猫は部屋の中の壁と天井を蹴りながら縦横無尽に跳び回り、天の助とボーボボを間に挟んだ位置にて猫のように四つ足で体を低くして着地。

 

 

 双 龍 牙 斬 烈 破 (そうりゅうがざんれっぱ)!!!! 』

 

 

身を屈んだ状態から螺旋を描くように高速回転、天の助とボーボボを挟み込むように上昇しながらアッパーを喰らわせた。

 

 

「なんかスゴい技、出した――――っ!!!?」

 

 

アッパーを喰らった二人は天井を突き破って空へ打ち上げられ、頭を下にして庭に落下。大の字になって倒れ、そのまま動かなくなる。

ちなみに二体の化け猫は魚の骨を根こそぎ奪って逃走。

去り行く彼女たちの背を見て私は心配する。

 

 

「首領パッチの骨を食べて大丈夫なのかしら…」

 

 

私の疑問に全身を包帯にくるまれたボーボボが世にも恐ろしい回答を述べた。

 

 

「最悪、首領パッチと同じ思考になるかもしれん」

 

 

「ええ――――――――っ!!!?」

 

 

「急いで回収した方がいいだろう。急ぐぞ、天の助!」

 

 

しかし、ボーボボの呼び掛けに反応を示さない。

彼がいる方向に振り向くと啜り泣くゆっくりたちに囲まれ、倒れたままの天の助。

 

 

 

 

【 天の助 死亡 】

 

 

 

 

「「死んどる――――っ!?」」

 

 

これが後のしょーもない小さな事件『バラバラ殺首領パッチ事件』

その事件の一部に過ぎなかった。

 

 




 
 (´・ω・)にゃもし。

 変更点が幾つかあるよ。


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ちょっと変わった食堂に行こう 【 現代 】

 

ボーボボたちが仲間を連れて人里にやって来た――と、思えば急にいなくなった。

今回はどこへ消えたのか…? それは誰にも知るよしはなく、確かめる術もない。

無論、ボーボボに連れられてきたこの仲間とて例外ではない。

 

 

「ここで立ち話をするのもなんだし、移動しないか? この近くにちょっと変わった食堂があるんだ」

 

 

 

 

【 少女 移動中 】

 

 

 

 

目的地に向かう傍ら、彼らについて考える。

白髪の少年とピンク髪の少女は今のところ問題はない。ボーボボの知り合いにしては普通。

問題はその後ろの存在、名前がソフトンという頭がピンクのアイツだ。

行き交う人々が彼を一目見てはギョッと驚いて遠巻きに眺めている。

これから連れていく場所にあれを入れてもいいものだろうか、正直悩む。

どうしたものかと悩んでいると… ソフトンは貸本屋の前で立ち止まって入り口を見ていた。

 

 

「ボーボボがこの幻想郷に古くから携わっているなら… ボーボボたちが関わった事件、事項が書かれている書物があってもおかしくはない。俺は少しここで調べてみるから、その間お前たちはそちらの女性と一緒に人里を散策するといい」

 

 

「終わったら後で合流しよう…」そう言うと貸本屋「鈴奈庵(すずなあん)」に入っていく。

暫くしてから甲高い少女の悲鳴が聞こえたが、食堂に彼を連れていくよりは幾分マシといえよう。

私はヘッポコ丸とビュティを連れて目的地の場所へと足を運ぶ。

 

 

「ここがその食堂だ」

 

 

横開きの戸を開けて店内に入ると店の主人がカウンター越しに顔を出す。

その主人の顔を見たヘッポコ丸とビュティが絶句する。

 

 

「いらっしゃい、慧音先生。今日は随分と賑やかですね」

 

 

手足が短く、頭でっかちの幼児体型。モノアイの頭部にタコのような口。

人間サイズの水陸両用のモビルスーツが割烹着姿で親しそうに声をかけてきた。

 

 

「「 アッガイ――――――――っ!? 」」

 

 

硬直している二人をよそに私は席について、料理の注文をお願いする。

カウンターの奥にある厨房で料理を作っているアッガイを尻目にヘッポコ丸は店内の壁に飾られている白黒写真を唖然とした表情で眺めていた。

そこには古びた日本家屋を背景にして大家族が並んで写っている。

ただし全員アッガイ。服を着たアッガイ。

 

 

「男も女も、老いも若きもアッガイなんですか…」

 

 

「ああ、アッガイ村だからな」

 

 

出来上がった料理を持ってアッガイがやって来る。

 

 

「前菜の “ モッツァレラチーズとトマトのサラダ ” カプレーゼ。イタリアの代表的なサラダです。トマトとチーズを一緒にして召し上がってください」

 

 

「「 アッガイがイタリア料理、作っとる――――――――っ!!!? 」」

 

 

彼ら二人は驚きながらも出された料理を口にしていく。

 

 

「ボーボボたちの知り合いと聞いて、ある程度の覚悟はしていたんだが… 思ってたよりもマトモで助かったよ」

 

 

向かい側に座るビュティが「ははは…」と顔をひきつけらせながら苦笑いをする。

食事を交えながら双方が知っているボーボボたちの情報を交換、というよりも自分たちの知らないボーボボたちのことを互いに話し合い、または愚痴を溢した。

 

 

「主人、こちらに外来人が来てないか?」

 

 

そんなときに丈の短いスカートに導師服を着たピンク髪の女性が店に入ってきた。

人里に時折やって来ては説教を施す仙女、茨木華扇。

彼女は店内にいる私たちに気づき、次にビュティへと視線を移すと…

 

 

「ピンク色の髪…… もしや、ボーボボの言うビュティ…?」

 

 

ボソッと小声で呟いた。

私はボーボボが茨木華扇、彼女のことを「ビュティ」と呼んでいたことを思い出した。

 

 

「そういう貴女は…?」

 

 

彼女は敵意のない微笑みを浮かべて答える。

 

 

「私の名は茨木華扇。ただの行者です」

 

 

 

 

――ボーボボたちの被害者の一人です…

 

 

 

笑顔から一転、暗い表情で答えた。

 




 
 (´・ω・)にゃもし。

 バラバラ殺首領パッチ事件は時間もバラバラなので、埋め合わせる感じのお話?


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バラバラ殺首領パッチ事件【 事件発生編 】

2015 / 08 / 03 の作品を加筆修正したものです。


 

私の名は上白沢慧音(かみしらさわ けいね)

寺子屋で教師をしており、人里の守護も兼ねている。

最近は幻想入りしてきた 3バカを止めるために呼び出されることが増えてきた。

 

現在は魔法の森に住んでいる人形使いアリス。

彼女とともに寺子屋で行われる人形劇について話し合っているところである。

 

彼女が人形劇を行う場合は人里の広場で開催するのだが、首領パッチの件と安全面を考えると場所を移しざる得ないと判断した。

首領パッチが出てきた日には子供たちに悪影響を及ぼす恐れがあり、教育上にもよろしくない。

既に手遅れな気もするが…

 

アリスと真面目に考えてるときに、教室の戸が勢いよく開かれ、顔見知りの青年が現れる。

 

 

「大変です慧音さん! 首領パッチが風見幽香にケンカを売りました!」

 

 

私の平穏が何の前触れもなく瓦解した。

 

 

私はアリスに同行をお願いして現場へと向かう。

アリスは心底イヤな顔をしていたが…

それは幽香に対してか、それとも首領パッチか… きっと両方。

本音を言えば私も行きたくない。

…かといって、放っておけば何を仕出かすか分からないので行かざる得ない。

私はアリスの恨みがましい視線を背中に受けながら早足で駆けていく。

 

 

 

 

【 少女 移動中 】

 

 

 

 

さして時間も掛からず到着、私たちがそこで見たのは…

幽香と彼女に頭頂部のトゲを掴まれ、片手で宙に持ち上げられた首領パッチの姿であった。

首領パッチは幽香の手から逃れようと必死にもがくが、微動だにしない。

彼は私たち二人に気づくと、こちらを指差して――――

 

 

「あの人たちに命令されて、やらされたんです! 本当です!」

 

 

そう宣う。…無論、風見幽香が首領パッチの言うことなどに信じるハズがなく。

 

 

「私が… この風見幽香がそんな戯れ言を信じると、思っているの?」

 

 

どういった経緯か知らないが、風見幽香とアリスは顔見知りである。

彼女たちの付き合いは首領パッチよりも古い。そう簡単に知人を裏切るハズもなく。

風見幽香がさらに腕に力を込めたのか、首領パッチのトゲが「ミシミシっ…」と音を立てながら潰れていき、首領パッチのやかましい叫び声が通りに響く。

 

しかし…

 

 

「トランスフォーム “ 手裏剣 ” !」

 

 

首領パッチがそう叫ぶと体の輪郭を変えながら縮んでいき、顔のついた十字の形をした手裏剣と化して、幽香の手からすっぽ抜けて逃れる。

幽香は首領パッチに変形に僅かに目を見開きしたが… すぐさま気を取り直し、首領パッチを捕まえるべく――――宙に浮いた彼に腕を伸ばす。

 

もっとも端から見たら高速の “ 突き ” にしか見えないが…

 

幽香の手刀が頭を貫くと、首領パッチは陽炎のように揺らめかせ「ビュン!」と掻き消え――――同時に幽香の袖が細切れになって地面に落ち、彼女の細く白い腕が露になる。その細腕には細かな刀傷が幾重にも刻まれていた。

 

 

「…風見幽香とアリス・マーガトロイドを仲違いさせて争わせ、両者が疲弊したところを亡き者に… そして俺が新たな幻想郷のヒロインとなり、新世界の神になる計画が潰れるとはな……」

 

 

幽香の背後、数歩下がった距離で手裏剣の姿を解いた首領パッチが偉そうにふんぞり反っていた。

 

 

どうしよう、コイツ。救いようのないバカだ。

隣にいるアリスもゴミでも見るような目で蔑んでいる。

 

 

「あなたが幻想郷のヒロインとやらになるには、幻想郷にいる女という名の生き物を全て抹殺する必要があるわよ?」

 

 

「私も含めてね?」…振り返った幽香の顔には弱者をいたぶる加虐嗜好特有の暗い笑顔が張り付いていた。

そういう問題ではないのだが…

 

 

「ならば、オレ様の栄光への道( ヴィクトリー・ロード )の第一歩として、テメ―を血祭りにしてやんよ!」

 

 

鎖鎌を手に飛び掛かる首領パッチ。鎖鎌の刃で突き刺すよりも速く……

 

 

「ぶべらっ!?」

 

 

幽香が斜め上に突き上げた日傘――――その尖端が首領パッチの口の中に直撃。

その衝撃で首領パッチは白目を剥き、口から血が混じった泡を吹いて傘に刺されたまま「ピクピク」と痙攣する。

さらに幽香の攻撃はこれだけにとどまらず、首領パッチを刺したままの日傘を真上に向けると…

 

 

「ラストシューティング」

 

 

大きな建物すらも呑み込むであろう極太のレーザーを射出。

首領パッチがレーザーで上へ上へと押し上げられ…

遥か上空で大きな大爆発を二度引き起こし、空を紅蓮に染め上げる。

 

 

「汚い花火ね」

 

 

幽香は大空に咲いた爆煙をそう見立てると人里の外へとのんびりとした歩調で向かっていた。

 

 

「私たちも帰るか…」

 

 

アリスは反対することなく小さく頷いて、私たちは寺子屋へと戻る。

どうせ、そのうち復活するんだろうなあ… と思いながら。

 

 




 
 (´・ω・)にゃもし。

 加筆修正作業が意外とツラい。


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貸本屋『鈴奈庵』

 

 

人里にある貸本屋「鈴奈庵」

そこで店番をしているのは本居小鈴(もとおり こすず)という少女である。

この鈴奈庵には人だけではなく、人為らざる者も来店してくる。

そのせいか、彼女は多少のことでは驚かなくなった。

 

 

「店主はいるか? 過去の文献を調べたいのだが……」

 

 

その日も人ではない何者かが、やって来た。

多少のことでは動じない彼女でも、その人物の来店には絶句した。

特徴的で衝撃的なトグロ状の頭部を持つソフトン。

 

 

彼が店に足を踏み入れた瞬間、悲鳴を上げる子鈴。

だが、店にある書物を守るべく頭を切り替える。

竹箒を手に取りカウンターを飛び越えると、得物を槍に見立てて、鬼気迫る表情でソフトンに連続で高速の突きを繰り出す。

 

 

「往ね! 去れ! ここから消えろ! 本に臭いがつく!」

 

 

しかし、小鈴が全力で放つ突きを――――ソフトンは長箒の柄に拳の甲を当てて逸らす。

逸らされた突きの衝撃がソフトンの周囲の壁を抉り削っていく。

 

 

「落ち着くんだ少女よ、俺は君の敵ではない。その矛を収めてくれないか?」

 

 

竹箒を両手で捌きながら、小鈴に休戦を促してみるが…

 

 

「喋らないでください! 本に臭いがついたら、どうするんですか!?」

 

 

鬼のような形相で切り捨てる。

対話は無理と悟り、後ろに大きく飛び退き、店を出るソフトン。

彼が去ったのを確認すると、小鈴は入り口付近に消臭スプレーを吹きかけ始める。

 

 

一方、店の外に追い出されソフトンは「鈴奈庵」の前で顎に手を当てて考え込む。

ボーボボたちの過去を調べるには貸本屋がいいだろう、と判断した彼だが……店主から武力で店の外に追い出されるとは思わなかったようで…「解せぬ」とボソッと呟いた。

 

 

「あれ? ソフトンさん? 探し物は終わったんですか?」

 

 

そこに通りかかったビュティが声をかける。

後ろにはヘッポコ丸、慧音…もう一人、ソフトンの知らない女性、華扇もいる。

彼女はソフトンを見て「ビクッ」と身を竦ませたが…

 

 

「いや、入ろうとしたら何故か断られた。正直、困っているところだ。……ところで後ろの女性は?」

 

 

「えーっと、ボーボボの知り合いの茨木華扇さんです」

 

 

「俺の名はソフトン。バビロンの……宗教上の理由で初対面の人間との握手を禁じられている。……赦せ」

 

 

ビュティにソフトンを紹介された華扇は彼の出で立ちを見て終始、顔を引きつらせていたが…「宗教上の理由」と聞いた瞬間、華扇は今日ほど宗教の存在に感謝した日はない、というぐらいに笑顔になった。

 

 

「それじゃあ、私たちだけで行ってみよう。ソフトンさんだと入れさせてもらえないみたいだし……」

 

 

視線を逸らしながら言うものの、ソフトンを除く面々は理由を察していた、お前の頭の被り物が原因だと……

 

 

「ああ、その方がよさそうだ。気をつけろビュティ。ここの店主は “ 強い ” …」

 

 

ソフトンを外に残して中に入っていく。

彼らはこの時、気づいていなかった。

ソフトンが店の外にいることによって、他の利用者が入りづらくなっていることを…

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっちが人里の子供たちにケンカを売って、火炙りにかけられそうになった首領パッチ」

 

 

見開いた挿し絵には悲痛な表情で火炙りにかけられる寸前の首領パッチの描かれている。

 

 

「こっちは遮光器土偶と一緒に地底を探索している天の助」

 

 

冒険者の格好で巨大な蟻の巣のような場所を探索している。

その天の助の背後には人間サイズの遮光器土偶が後ろを窺っている。

 

 

「それと日本猿の群れに追われているボーボボ」

 

 

木の陰に額に汗を足らしながら身を潜めているボーボボ。

彼の視線の先には枝から枝へと飛び移って移動している日本猿の群れが映っている。

 

 

「……何これ?」

 

 

「何これ? …って、1000年前のボーボボたちですけど?」

 

 

ビュティが漏らした呟きに、さも当然のように答える小鈴。

 

 

「これじゃあ、ますます謎が深まっただけだよ。ボーボボたちのことが詳しく書いてある書物とか他には無いんですか?」

 

 

ソフトンを退けさせる強者の存在に体をこわばせながら店内に入った一行だが……そこに居たのは強者とは程遠い幼さを残す少女しかいなかった。

 

 

もっともビュティたちは今までに外見と強さが一致しない強敵と死闘を繰り広げた過去がある。

目の前の少女もそんな存在なのだろうと恐る恐る頼み込んだが、件の少女は快く承諾。

ボーボボたちに関する文献などを店の奥から引っ張り出してくるも、お世辞にも役に立てそうなものはなかった。

 

 

「うちにあるのはこれで全てですから、そうですねえ……情報をもっと知りたいなら彼らと関わりが深いと言われている――――」

 

 

…と、言葉をいったん区切ってから彼女は提案する。

 

 

 

 

「博霊神社に行ってみてはいかがですか?」

 

 

 

 




 
 
(´・ω・)にゃもし。

読んでくれて、ありがとう。

現代 → 過去 → 現代 ……

ってな感じでやろうと思うんだ。

※誤字報告のをやってみたよ。便利だね。


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博麗神社の巫女

 

 

博麗 霊夢(はくれい れいむ)、彼女は博麗神社の巫女であり『空を飛ぶ程度の能力』という異能を持った少女であるが……如何に彼女とて始めからこの能力を使えたわけでもなく、凡人には到底達成が困難な修行の果てに身につけた物である。

 

 

だが、この幻想郷には空を自由自在に飛ぶ存在は多々おり、地上から上空にいるそれらへ向けての対空攻撃はやや難しく厄介である。

 

 

そして件の巫女は面倒事が大っ嫌いである。

 

 

彼女は対抗手段として、また便利な移動手段として空飛ぶ海亀である『玄爺(げんじい)』を捕獲。

以降、玄爺の背に乗って異変を解決していた。

 

 

しかし、特異な力を持った人外の存在とはいえ玄爺は高齢の “ 亀 ” である。

力の弱い妖怪、妖精なら兎も角……大妖怪や、はたまた神の端くれ等と力ある者と戦闘することになれば…? 近づくだけでも命を削る行為となる。

 

 

それに空中戦で玄爺がやられ霊夢が宙に投げ出されれば…?

その結末は言わずもがな、である。

 

 

「そんな霊夢に朗報よ♪」

 

 

当然、霊夢の身を案じる知己が彼女のために行動を起こすのは必然といえよう。

幻想郷の管理者たる八雲 紫(やくも ゆかり)もそのうちの一人である。

紫の背後には彼女が連れてきたであろう三つの影が……

 

 

「ボーボボです」「天の助です」「首領パッチで―す♥」

 

 

「「三人揃って、不気味トリオで――――す♪」」

 

 

邪気の無いつぶらな瞳と陽気な声で自己紹介する三人組。

ボーボボと名乗った長身の男はかろうじて人間の姿をしているが、他の二人はどう見ても魑魅魍魎、妖怪の類いにしか見えない。

 

 

たっぷりと間を置いてから霊夢は酷く冷めた目で紫に問いただした。

 

 

「何、ソイツら?」

 

 

問われて三人は「テュキリュリ――ン」と白い閃光が額に走り、直後に後ろを振り向く。

そこには慌てて茂みの奥へと去っていく背中にトゲのある小さな妖怪の後ろ姿があった。

 

 

「チュパカブラか驚かせやがって、凶悪な花妖怪が出たと思ったじゃねぇか…」

 

 

手で額の汗を拭う首領パッチ。

過去に酷い目に遭ったことがあるのか、その身は恐怖で小刻みに震えていた。

 

 

「さっきの何!? …というか私はあなた達に対して言ったつもりなんですけど!」

 

 

 

 

 *** 紫、説明中… ***

 

 

 

 

神社にある居住区、その居間にてちゃぶ台を囲むようにして一同が座っている。

 

 

「――空を飛べるようになるための先生? コイツらが?」

 

 

「ええ、今後この先のことを考えれば必要になるでしょ? そのための先生たちよ」

 

 

「いらないわよ、面倒くさい。それに玄爺がいるし、今まで通りに背に乗ってやれば……」

 

 

「残念だけど玄爺はもう限界よ」

 

 

紫の言葉を待っていたかのように、襖が開かれて……両手にある松葉杖で床を突きながら器用に二足歩行する海亀――玄爺が現れた。

 

 

「霊夢、貴女が敵の攻撃を防ぐために玄爺を “ 盾 ” として使っているせいでボロボロなのよ」

 

 

「ごめんなさい」

 

 

霊夢は頭を下げて謝罪し、顔を上げると真摯な眼差しで言う。

 

 

「でも紫、これには深い訳があるのよ」

 

 

「どんな理由があるのよ?」

 

 

「だって当たると痛いじゃない?」

 

 

「「 避 け ろ よ 」」

 

 

 

 

 *** 一同、移動中… ***

 

 

 

 

「いきなし『空を飛べ!』と言われても、凡人がいきなし空を飛べるようになるわけがない」

 

 

境内にある広場霊夢とボーボボたち三人が向かい合うように対面、玄爺と紫ら二人は神社の縁側で茶を啜りながらその様子を見守っている。

 

 

「そこで、この補助道具を使う」

 

 

そう言ってボーボボが取り出したのは柄の長い箒。

それを首領パッチの頭の上にポンと置くと……首領パッチが勢いよく急上昇。

首を上げるのが辛くなるほどの高さにまで達すると花火のように弾けて、消えた。

 

 

「さあ、次は霊夢の番だ」

 

 

「あれを見て、やるわけないでしょ」

 

 

真面目な顔で箒を押しつけてくるボーボボ……霊夢は彼の持つ箒を片手ではたいて落として拒否。

暫し睨み合う二人、が直ぐにボーボボは後ろを振り向く…

 

 

「残念ながら俺たちではこのじゃじゃ馬を御することはできないようだ。紫、悪いが他をあたってくれ…」

 

 

そう言い残して夕陽を背景に神社から立ち去るボーボボたち三人と、彼らの背中を黙って見送る霊夢たち…

 

 

 

 

 *** 時は進む… ***

 

 

 

 

「――――こうして、その時代の巫女は『空を飛ぶ能力』を身につけて、以降の異変を解決していったのよ…」

 

 

同じ名前の、しかし別人である霊夢が語る。

 

 

「イヤイヤ! 覚えた場面なかったよね!? ボーボボたち、あっさり諦めたよね!?」

 

 

片手をパタパタと振って否定するビュティ。

その後ろにいる面々も「ウンウン」と頷き、ビュティの意見に同意する。

 

 

「期待してたとこ悪いけど……うちの神社にある文献とか歴史書物じゃあ、こんな物ぐらいしかないわよ? ましてや1000年以上も前の出来事を綴った物なんて幻想郷内にあるのも疑わしいわね」

 

 

「そんなあ、ここに手掛かりがある可能性が高いから来たのに…」

 

 

傍目からでも分かるほどに肩をがっくしと落として落胆するビュティ。

そんなビュティに霊夢が妙案を出す。

 

 

 

 

「でも、1000年以上生きた妖怪たちなら話は別よ?」

 

 

 

 




 
 
(´・ω・)にゃもし。

読んでくれて Thank You 


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幻想郷初のハロウィンだよ。

※2016/10/31 に投稿した短編だよ。


 

 

『ハロウィン』という催し物がある。

オバケに扮した子供たちが家々を回ってお菓子を貰う行事だ。

発案者は紅魔館に住んでいる吸血鬼レミリア・スカーレット。

単に本人がやりたいだけの可能性があるが…

とはいえ娯楽の少ない幻想郷、たまにはこういう祭りも悪くはないだろうと、博麗の巫女や良識のある大人たちの監修の元、ハロウィンを開催することになった。

その下準備として寺子屋の一室に子供たちを集めているところだ。

 

 

「うわ――ん! 慧音先生!」

 

 

教室内にて、着替え終わった子供たちの中、一人だけ普段着のままの男の子がいた。

大方、衣装を忘れてきたのだろう。両手を目に当てて泣きじゃくっている。

 

 

「衣装と間違えて ボボボーボ・ボーボボ 持ってきちゃった!」

 

 

なるほど。衣装が入っていたであろう箱の中には衣装はなく、代わりにボーボボが箱の中から上半身を出して、伸ばした鼻毛をくねくねと動かしていた。

 

 

「はっはっは、しょうがないなぁお前は……って、ボーボボ !!!?

 

 

一体どうやって入ったのか、弁当箱ほどの大きさしかないその箱から「よっこらせ」と出てくる。

 

 

「やれやれ、寺子屋の教師ともあろう者が俺たちの存在を忘れるとはな」

 

「ハロウィンといったら首領パッチ。という言葉があるぐらいなんだぜ」

 

 

さらにその後から天の助、首領パッチが続けて出てきた。

突然の乱入者に「ひぃぃっ…」という誰かが漏らした悲鳴が聞こえる。

 

 

「おっしゃあ! ガキども、この俺様が正しいハロウィンというものを教えてやる!」

 

 

顔面に蝶々マスクを装着し、両手にムチとロウソクを携えた首領パッチが「ついてこい!」とムチを床に打って鳴らすと子供たちを引き連れて教室を出ていってしまった。

首領パッチの突飛な行動に取り残された私は暫し唖然としていた。

 

 

「ボーッとしているけど、追いかけなくていいの?」

 

 

天の助から問われて気付き、慌てて跡を追う。

 

 

 

 

   少女移動中 NowLoading...

 

 

 

 

「「 ト リ ッ ク ・ オ ア ・ ト リ ー ト ♪ 」」

 

 

首領パッチはあっさり見つかった。

子供たちと一緒に女の子を連れたおじいさんにつぶらな瞳でお菓子をせがんでいるところだった。

前もって通達していたこともあったお陰か、見るからに人の良さそうなおじいさんはイヤな顔を一つせずにニコニコ笑顔で子供一人一人にお菓子を手渡していく。

大事に至らずに済みそうでホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、首領パッチがおじいさんからお菓子を貰うと…

 

 

「こんなモンいるか! カネを寄越せ! ジジイ!

 

 

お菓子を地面に叩きつけて、おじいさんの胸ぐらを掴んでそう要求してきた。

 

 

「オカシじゃなくてオカネを要求している!? っていうかこれって只の強盗!!」

 

 

いきなりの変化に戸惑うおじいさん。

もたもたしてる間に首領パッチが女の子の背後に回り…

 

 

「おっと、大人しく言う通りにした方が身のためだぜ?」

 

 

人質にするつもりなのだろう女の子の腕を掴むと…

 

 

「ぎゃぁぁぁっ!? すいません! 自分、調子こいてました!」

 

 

逆に女の子に「えいっ! えいっ! えいっ!」と片腕を後ろに捻られて拘束されてしまう。

 

 

「くっくっく、この通り人質は捕らえたぞ。さあ、どうする?」

 

 

多少痛いのか涙目ながらも悪どい表情でにやける首領パッチ。

 

 

「いや、何でそんなに強気なの?」

 

 

女の子を人質に捕らわれて、おじいさんの怒りが頂点に達したのだろう。

獣のような雄叫びを発して胸の前で両拳を打ち合わして鳴らすと、体が倍以上に膨れ上がって衣服が弾け飛び、老人にあるまじき鍛え上げられた逞しい上半身を晒す。

 

 

一言でいうと筋肉爺。

 

 

「すいません! 俺はそこの天の助に無理矢理やらされました! 本当です!」

 

 

強そうな外見に勝てないと判断したのか、天の助を指差して責任転嫁を謀る。

無論、そんな言葉に惑わされるわけもなく…

 

 

筋肉爺は膝を抱えたまま空中で高速回転。

次の瞬間、首領パッチの脳天に踵を打ち下ろした。

 

 

「マッスル・ジジイ・踵落とし!」

 

「げふっ!?」

 

 

頭蓋骨が砕く音とともに体の半ばまで踵がめり込み、体半分を地面に埋没させた。

さらに他人事のように見物していた天の助の腹に槍のような鋭い蹴りを叩き込む。

 

 

「連帯責任!」

 

「何で俺まで!?」

 

 

直撃を食らった天の助は吹っ飛ばされ、石造りの蔵の壁に大の字で激突、血を吐き白目を剥いてそのまま動かなくなる。

筋肉爺は動かない彼らを面白くなさそうに一瞥すると、左肩に女の子を乗せて悠々とその場を去った。

無言で去る彼らを私は無言で見送ることしかできなかった。

 

 

「いや~~~、大量大量♪」

 

 

能天気な声と荷車を引く音に振り向くと、大量のカカシを荷台に乗っけた笑顔のボーボボがやって来た。

 

 

オカシじゃなくてカカシ集めとるぅぅぅ――――っ !!!?

 

 

荷台にはカカシだけじゃなく左目を額当てで隠し、顔の下半分もマスクで隠している男性も乗っていた。

 

 

「あの~、自分『はたけカカシ』という忍の者なんですが…」

 

 

カカシ違い! っていうか何処から連れてきた !?

 

 

取り敢えずどう見ても外来人なので幻想郷について説明を、と思ったら…

ドドドドド…という複数の激しい足音が耳に入り、音のする方向に目をやると、チルノを先頭に仮装した妖精と小妖怪の集団を出鱈目に刀を振りかざして追いかけ回す半人半霊の少女――魂魄妖夢の姿が視界に飛び込んだ。

 

 

「慧音、助けて! 妖夢を脅かしてたら ぶちギレた!

 

 

チルノたちが私の背後に回り込み、グイグイと背中を押してくる。

そこへ逆上し目が血走った妖夢が到着。両手で持った刀を頭上に翳して斬りかかってきた。

 

 

「ま、待て妖夢! 落ち着け!」

 

 

しかし、こちらの言葉が聞こえていないのか、問答無用で刀を振り下ろす。

あわや刀の刃が肌に触れる寸前、横からカカシがクナイで刃を受け止め――――カカシと妖夢、両者の視線が交差した瞬間、妖夢がカカシにもたれ掛かるようにして気を失った。

 

 

「この子に幻術をさせてもらいました。暫くしたら気がつきますよ」

 

 

と穏やかな表情でボーボボが持ってきた荷車の荷台に横たわせる。

ホッと安心し、この元凶を作った当人たちに事情を説明してもらうべく振り向くと…

 

 

「チルノはクールに去るぜ!」

 

 

冷気を撒き散らしながら仲間とともに後ろ背中をこちらに見せて逃亡した後だった。

やり場のない怒りをいつか晴らすと心に決めた瞬間、今度は大音響で音楽が流れ始める。

音の発生源は即席で作られたステージで騒ぐ山彦と夜雀。

ハロウィンと肝だめしを一緒くたにしたチルノたちと同様に勘違いしたのだろう。

さらに何処から聞きつけたのか騒霊三姉妹も騒ぎに便乗して音楽を奏で始める。

 

 

「ギターの九十九 弁々!」 …と琵琶の付喪神。

 

「ベースの九十九 八橋!」 琴を空中に浮かべて指につけた爪で弾く。

 

「ドラムの堀川 雷鼓!」 ドラムの上に腰掛け周囲にある小さなドラムを叩いて鳴らす。

 

「ボーカルの少名 針妙丸!」 ふよふよと浮かぶ御椀に乗っている小人が名乗る。

 

「「私たち〝 幻想郷 横分金蝿 〟!」」

 

 

思い思いの決めポーズをそれぞれが決めた瞬間、背後で色つきの爆煙が発生。

先日の騒動の首謀者とその一味たちが対抗して騒ぎに加わった。

 

 

「おいボーボボ! どうにかならないか!? うるさくてかなわん!」

 

 

ボーボボが一つ頷くとアフロがパカッと上下に分かれて開き…

小人らしきバンドの一組がアフロをステージにして歌う準備をしていた。

 

 

「スカッシュの一夜限りの復活ライブよ――――!」

 

 

黄色い声援に振り向くとファンらしき女性の集団が集まっていた。

紡ぎ出される外の世界の音楽。やがて曲が佳境に差し掛かるとボーカルの歌に力がこもる。

 

 

「シャケ! シャケ! シャケ!

 

 

目を蕩けさせて「もうダメ…」と倒れる女性が続出。

 

 

シャケで!?

 

 

「ふむ。これで静かになっただろう」

 

 

周囲は失神した女性で溢れていた。

その中には山彦・夜雀の二人組。騒霊三姉妹。幻想郷 横分金蝿も含まれていた。

ボーボボはその光景を感慨深く眺めると…

 

 

シャケってスゴいんだな…

 

ああ、そうだな。

 

 

こうして幻想郷の夜が更けていき、幻想郷初めてのハロウィンは終わった。

 

 




(´・ω・)にゃもし。

こんな感じで増えていくと思うの。


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書物「お前を首領パッチにしてやろう」

2016/11/10 に投稿した短編です。


 

 

人里にある貸本屋「鈴奈庵」

そこには人だけではなく、人ではない…

例えば妖精、妖怪、はたまた神なんてのもやって来る。

 

 

「転生者ものが流行ってるらしいから、この俺も書いてみたぞ!」

 

 

後はところてんの付喪神(?)なんてのもやって来たりする。

余程傑作なのか自信の満ちた表情で本を見せびらかしていた。

 

 

「その名も『お前を首領パッチにしてやろう』だ!」

 

 

店番をしていた小鈴が口の端を上げて引きつらせたのは致し方あるまい。

 

 

 

 

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「よし、お前を 首領パッチ にしてやろう」

 

 

一人の男が目覚めると目の前にボーボボがいて開口一番にそう宣い

言い終わると同時に男の姿が首領パッチへと変わった。

 

 

「ええええっ!!!? 何で首領パッチ!? っていうかここ何処なんだよ!?」

 

 

男は突然の出来事に狼狽し、ボーボボに詰め寄る。

 

 

「人間ごときが 〝 神 〟 である俺に気安く触るんじゃねぇ!」

 

 

自称神の後ろ回し蹴りが首領パッチの側頭部に炸裂

首領パッチは堪らず頭の横を両手で押さえながらゴロゴロと転げ回る。

 

 

「神である俺に非は全く無いが、それでも事故は事故ということで下等な生き物である貴様を転生させてやることになった」

 

「事故って何だよ?」

 

「お前の『命の蝋燭』を面白半分に水に浸からせたら、火が消えてお前が死んだ」

 

「非しかねえ! っていうか100%お前のせいじゃねか!?

 

「ちょっと水に浸かった程度で消える貴様の命が悪い!」

 

 

メリケンサックを填めた拳が首領パッチの腹に深く突き刺さり

再度、地面を転がる首領パッチ。

 

 

「俺としてはそのまま『無間地獄』に叩き落としたい所だが…

 ある物好きの神が超人に身を落とす代わりにお前にチャンスを与えたいとほざきやがってな」

 

 

首領パッチは名の知らない恩人に涙を流した。

因みに『無間地獄』は大罪を犯した罪人が送られる場所である。

 

 

「さらにスタンド能力をつけることになった」

 

「え!? マジで!?」

 

 

突然の好境遇に思わず聞き返す。

 

 

「スタンド『チープ・トリック』だ。ありがたく受け取れ」

 

「あんぎゃあ~~~!? 世界で一番いらねえスタンドじゃねえか――――っ!!!!」

 

 

小柄なスタンドが首領パッチの背中にベッタリ張り付いた。

 

 

「おいコレ、他人に背中を見られたらどうなるんだよ!?」

 

 

背後にいるスタンドを指差す。

数あるスタンドの中でもこのチープ・トリックは本体に害を与える特殊なスタンドであり

他人に背中を見られると、背中を抉り取られた上に全エネルギーを吸収されて殺される。

 

 

「安心しろ。チープ・トリックが憑いたまま復活する。

 人に迷惑かかるとイケないからな」

 

「ひぃぃぃぃぃっ、デメリットしかねぇ!」

 

「安心しろ。他のスタンド使いと遭遇しても戦えるように『スター・プラチナ』と同じ能力を付けてやろう」

 

「おお!?」

 

 

最強のスタンドと呼び声の高い『スター・プラチナ』

その一因たるが「時を止める」という能力である。

 

 

「指が伸びる」

 

「スタンド背中に張り付けたままじゃ意味がないんですけども!?」

 

 

首領パッチの背後で指をびょんびょん伸び縮みさせるチープ・トリック。

 

 

「無理だから! こんな張り付いた状態で指が伸び縮みできても戦えないから!」

 

 

涙を流しながら抗議の声を上げる。

やがて鬱陶しいと感じて根負けしたのか…

 

 

「それじゃあ、もう一つ特典つけてやるから、これで最後にしろ」

 

 

渋々、実行に移す。

 

 

「奮発して尻相撲の技全部

 

「何でだよ!?」

 

「『競女!!!!!!!!』見てたら尻こそが至高であり、最強にして最高なんじゃないかと思ってな」

 

「最強で最高でも、俺背中を見られると死ぬんですけど!?」

 

 

片手をパタパタ振って、特典の変更を望む。

 

 

「うるせえ! 転生トラックをぶつけるぞ!?」

 

 

ぶちギレた神が派手な装飾が施されたデコトラで撥ね飛ばし、さらに轢く。

 

 

 

 

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――――んで、どうだ?」

 

 

一通り読み終わった小鈴に意見を求める天の助。

 

 

「専門家の阿求に聞いてみよう」

 

 

小鈴は友人を巻き込ませることにした。

 

     




(´・ω・)にゃもし。

地道に増やしていくよー。


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クリスマスの準備とハジケと慧音

 

 

「「真っ赤なお鼻の~♪」」

 

 

ボーボボは赤い格好のサンタの衣装を、天の助と首領パッチはトナカイの角を模した飾りを頭に付けて、定番のクリスマス・ソングを愉しそうに踊りながら歌っている。

 

 

「「サンタのおじさんは、言いました~♪」」

 

 

そこまで歌うと突然動きを止めて踊るのを止める三人。

天の助と首領パッチは暗く沈んだ表情で立ち尽くし、ボーボボは豪奢なイスに腰掛けていた。

ボーボボがイスを回転させて二人に背中を向けると…

 

 

「今日中に辞表を提出したまえ」

 

 

そう冷たく言い放った。

 

 

「サンタ、冷たくない!?」

 

 

クリスマスを数日後に控えたある日…

──慧音とボーボボたちはその準備をしている真っ最中だった。

 

 

「勤務中に酒を飲むような輩と一緒に仕事はできん」

 

 

キッパリと切り捨てるボーボボ、

その視線は天の助と首領パッチが付けている赤く丸い鼻に注げられていた。

 

 

「トナカイの鼻が赤いのは、酒を飲んでたからじゃないと思うぞ?」

 

 

正直、この三人だけには頼みたくなかったのだが…

他の連中は自分たちのことで手一杯らしくて、こっちまでには手が回らないとのこと。

 

 

「安心しろ慧音。他のバカは兎も角、俺はちゃんとこの通り用意をしてきた」

 

 

パンパンに膨らんだ白い袋を見せるボーボボ。

その中にはアフロがギュウギュウに詰まっていた。

 

 

うん。ボーボボのことだから、これは予想の範囲。

 

 

天の助が持っている袋の中には大量の「ゼリー」と少量の「ところてん」

天の助の性格を考えれば袋の中が「ところてん」のみと考えていたんだが…

 

 

「ところてんだけじゃ誰も受け取ってくれないから、抱き合わせてみた」

 

 

何かを悟ったように遠い目をする天の助。

お前はそれでいいのか?

 

 

「…ったく、どいつもこいつも自分のことしか考えてねぇなァ、おい

 その点、俺様は貰う人のことを第一に考えたプレゼントを用意したぞ」

 

 

袋の紐を緩めて中身を見せる首領パッチ。

その中に入ってあったのは…

 

 

「慧音のパンツ」

 

「今すぐ返せ」

 

 

得意気な顔を見せる首領パッチに頭突きをかましたのは言うまでもない。

 

 

いそいそと下着を回収する私。

その中に見覚えのないものが交ざっていた。

 

 

「何だ? この妙に柔らかく生温かい感触のモノは?」

 

 

悩む私に第三者が答えた。

しかも、超至近距離から…

 

 

「それは私のおいなりさんだ」──と、

 

 

私が触っていたのは男性の股間だった。

部屋の中にはいつの間にかに顔面に女性物下着を装着し、ブリーフしか穿いていない男が侵入していた。

 

 

「いやぁぁぁ────っ!!!?

 

 

触れていた手を瞬時に引っ込めてぷらぷらさせる私。

その男は私の声に驚いたのか、ここが二階にも関わらず窓をぶち破って外へと飛び出した。

 

 

「うわっ!? 慧音先生がいる教室から変態が降ってきたぞ!?

 

 

すぐさま変態を目撃したであろう人里の人間たちの声が聞こえてきた。

 

 

ひぃぃぃっ!?

只でさえ、ボーボボたちを扱う変な人と呼ばれているのに…

このまま変態を放置すると、さらにロクでもない噂が流れてしまう!

 

 

「おい、ボーボボ! なんとかならないのか!? あの変態!」

 

「くぅっ! すまない慧音、今すぐ走って追いかけたいのは山々なんだが…」

 

 

ファミコンでドラクエをやっていた。

 

 

「この〝 りゅうおう 〟を倒さないといけないから、この場を離れることができないんだ!」

 

 

涙を流しながらピコピコとボタンを押すボーボボ。

 

 

「それ今やる必要ないよね!?」

 

「これ〝 アクティブ・タイム・バトル・システム 〟制だから!

 ちょっと目を離したらパーティーが全滅する恐れがあるんだ!」

 

「ドラクエにそんなシステムなかったよね!?」

 

 

そうこう言っている間にも、変態は屋根から屋根へと跳び移って移動し…

やがて、視界の外へと姿を消した。

 

 

「え~~~ん、パチ美のお気に入りが盗られたぁ────!」

 

「アレ、あんたの下着だったの!?」

 

 

両手を顔に当てて泣きじゃくる首領パッチ。

むしろ、あっちの方が被害者かもしれない…

 

 

「やれやれ、随分と騒がしいとこだな」

 

 

教室の扉を開いて現れたのはサンタクロースの格好をした老人。

ただし、その色は真っ黒。

 

 

「そう、警戒するでない。

 ワシもそいつらと同様に幻想入りしたものじゃよ」

 

 

勝手知ったる他人の家とは言わんばかりに、ちゃぶ台に腰掛けて茶を啜り始める。

 

 

「良い子にプレゼントを配るのが赤い奴の役目。

 ワシはその逆、悪い子に罰を与える者がこのブラックサンタの役目なんじゃよ…」

 

「初めて耳にしたんだが、

 あと普通に不法侵入をしているんだが?」

 

「部屋の中に、動物の内臓をぶちまけるのがダメらしい」

 

「当たり前だ」

 

 

外の世界にはトンでもない風習があるようだ。

 

 

「ワシが幻想入りしたということは、そういうことなのだろう…」

 

 

外の世界で忘れ去られた者たちが最後に行き着く場所──それが幻想郷

このブラックサンタを名乗る老人も…

 

 

「まだ諦めるのは早いぜ、じいさん。

 あれを見てみな、まだお前を──ブラックサンタを必要としている連中がいるぜ?」

 

 

ボーボボが指差した場所には、時空の穴が…

その奥にはクリスマス前だというのに浮かれているカップルたちを容赦なく襲撃するフンドシにアイマスクという半裸の男たちの集団。

それを率いているのは白い覆面を被ったレスラーのような格好の二人組。

そいつらはクリスマスのモニュメントや飾り付け等を素手で破壊して回っていた。

さらに、そいつらに指示を出しているのが何処かで見たことのある妖怪。

確か「嫉妬心を操る程度の能力」を持った地底の妖怪で…

 

 

「ああ、ワシを必要とする者たちがあんなにおる。

 まだワシには帰れる場所があるんじゃ、こんな嬉しいことはない」

 

 

ブラックサンタが体を震わせて感動の涙を流していた。

いいのか、それで?

 

 

「こうしては、おられん。

 ワシもすぐにカップルどもを成敗せねば!」

 

「お前の役目は悪い子に罰を与えることだよな?」

 

「世話になったな若いの! サラバじゃ!」

 

 

時空の穴を通って祭りに参加するブラックサンタ。

その表情はとても生き生きしていた。

 

 

「「いい話だ…」」

 

「どこが!? むしろ、犯罪に加担してない、これ!?」

 

「誰にも忘れ去られるよりも、それは幸せなことかもしれんぞ?」

 

 

そう言って教室の扉を開けたのは、古代ローマの衣装を纏った壮年の男性…

 

 

「私はサンタクロースの元となったと云われている人物、

 名は「ニコラウス」という…

 私は近年のクリスマスについて物申したい」

 

 

「いえ、仕事の邪魔なので帰ってください」

 

 

有無を言わさず扉を閉める。

キャッキャッとはしゃぐ三人を見て私は思った。

 

 

「〝 類は友を呼ぶ 〟…というやつか?」

 

「でもそれってさぁ…」

 

 

私の漏らした呟きに対して、首領パッチは疑問に思ったことを口にした。

 

 

「慧音も入るんじゃね?」

 

 

それを聞いた私は暫くの間、意識を失っていたという。

 

 




(´・ω・)にゃもし。

深夜のテンションで書き上げた。


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