バトルスピリッツ・ギガリーグ (ブラスト)
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No00.プロローグ

『行けッ!! ゴッドキャリバス!!』

『潰せッ!! ゼウスエデン!!』

 

全世界を巻き込んだ事件、それは多くの人々の目に映り、衝撃的な記憶となった。しかし人の記憶も所詮は長くは持たない。既に過去の事となった事件はあれから十年後の世界にて、多くの人々から既に忘れ去られていた。しかし、移り変わりの激しい人の記憶の中で十年を経た今でも人々から忘れ去られていない物が一つ。

 

『ほらッ、チビ共、早くしねぇと遅れるぞ! 急げ!!』

『リーダー、急ぐのは構いませんけど、俺をハルヤと一括りにしないでください』

『酷いよ桜!』

『五月蠅い! 下の名前で言うな!』

 

大通りの道を全速力で駆ける赤髪の少年と、その後ろを追い駆けながら口論する二人の少年。どこへ向かっているのか止まる事無く走り続ける彼等だったが、突然何かを見つけたのか、先頭を走っていた赤髪の少年はそこで足を止め、後の二人も合わせるように立ち止まる。

 

「着いたぜ!」

 

彼等が立ち止まった先にあるのは、巨大なドームの中に建てられたスタジアム。このスタジアム内では、既に多くの観客が賑わう中、さらに我先にと色んなカードバトラー達も会場内へと入場し、自分達も遅れまいと慌てて三人も入場者に並んで会場内へと入る。

 

『さぁさぁさぁ、カードバトラー皆!! 今日はたくさんの来場ありがとうーーッ!!』

 

入場するなり、彼らを出迎えるように響く大きな声、ステージ上では派手な衣装で手を振りながら挨拶する一人の女性の姿があった。

 

『みんなともだち???』

「「「YES! マジカル!!」」」

 

合言葉のようにスタンドマイクを客席に向ける女性に対し、会場中の全員が声を揃えて叫ぶ。彼女の名前はマジカルスター咲。まるでアイドルのような名前の彼女だが、その実は大会運営に携わっており、様々な会場で司会進行等を担当し、明るい性格やカリスマ性に多くの人々からアイドル顔負けの人気を得ている。お祭り騒ぎの様に賑わう会場、3人組の少年達も声を大にして周りの掛け声に負けない程叫んでいる。

 

「やっぱ乗り遅れたな。ほぼ一杯だ」

 

赤髪の少年の言う通り、既に客席は満員状態。会場の外ではさらに多くのカードバトラー達が並ぶが、あまりの行列に既に入場制限が設けられていた。

 

「キャプテン!! しっかりこのバトル見届けてやろうぜ!」

「俺の隣で騒いでんじゃねぇよ!! ぶっ飛ばされてぇか?」

「やんのかコラ、この脳筋馬鹿が!!」

「上等だ!! 何時でもやってやんぞ!!」

「どっちも喧しいぞ!! テメェ等!!」

 

「ねぇスグルもアカネも早く来なよ? もっと近くで見ようぜ!」

「こらアオト。あんまはしゃぎ過ぎんなよ?」

「私……人混み、嫌い」

「平気だって!! ほらほら早く行こう!!」

「ったくしょうがねぇなぁ。アカネ行くか?」

「うん。二人が行くなら、着いて行く」

 

「氷牙さん、もうすぐ始まりますよ?」

「むにゃ? あー……眠い。悪ぃけど沖田代わりに見といてくれ、俺寝るから」

「何の為に来たと思ってるんですか! いい加減起きてください!!」

 

彼等の他にも会場内に見られる個性的な面々。だが一見バラバラな彼等全員がこの会場に足を運んだ理由はただ一つだった。

 

『さぁ皆さまお待たせしました! 世界チャンピオンのエキシビジョンマッチ、間もなく開戦いたします!!』

 

司会の言葉に全員歓声を上げ、全員が一斉にステージを注目し、視線が集まるステージ上で、突如煙が噴射、そして出入り口のドアが開くと現れる二人の男性。その姿に観客達はさらに声を張り上げてエールや歓声を送り、それにこたえるように二人は手を振りながら反応を返す。

 

『さぁ始めようか? まぁお互い、楽しくやろうぜ?』

『はい! チャンピオンと戦えるなんて光栄です! でも手を抜きませんからね!!」

『あぁ、俺も本気だぜ?』

 

チャンピオンと呼ばれた橙色の髪にヘアバンドが目立つ男性。友好的な態度で対戦相手である少年と握手を交わし、そのまま二人は移動し、ステージに置かれた台の前へ立ち、お互い腰元に付けたケースからデッキと呼ばれるカードの束を取り出す。その正体は、”バトルスピリッツ”と呼ばれるカードゲームであり、全員が観戦に来た目的はこれから二人が行う”バトルスピリッツ”による戦いだった。

 

長い年月を経た現在でもなお、バトルスピリッツは人々の記憶から決して忘れ去られることは無く、今もなお根強い人気と共に、老若男女を問わず多くのカードバトラー達に親しまれ、もはや世界中でメジャーとなって社会現象にまで発展していた。そして多くのカードバトラー達の頂点に立つ男性のバトルがこれから行われようとしており、そのバトルを見ようと会場を埋め尽くす程、人が集まるのも当然だった。

 

『では二人共準備お願いします!』

 

女性の言葉に、お互い台にある専用の挿入口にデッキを差し込むと、二人の足場は突如浮遊し、地面を離れて両者同じ高さまで上昇し始める。その光景は全員見慣たように静観し、これから対戦する二人も既に闘志を燃やし始め、司会の女性は準備が整ったことを確認すると、スタンドマイクを手に持ち叫ぶ。

 

『さぁ皆、いつもの掛け声いっくよーーっ! せーの!』

『「ゲートオープン解放!」』

 

全員の言葉に空気が一斉に変わる。そして開戦を告げるようにお互いの台座に五つの光が灯り、そしてさらにリザーブと呼ばれる場所に3つの青い結晶と、そして一つだけ他の3つとは大きさと見た目の異なる赤い結晶が置かれる。

 

「始まったよ、吉馬!」

「それぐらい分かってる! それがどうした」

「そ、その僕、まだ初めてばっかりだから状況に付いていけるかなって」

「ったく、解説してやるから黙って見てろ!」

 

 

 

 

「先行貰います!」

 

ターン開始を告げる言葉と共に台座が光り、ターンを開始する少年の様子に合わせて、その言動を説明するように解説を始める。

 

「いいか? まずは基本のおさらいからだ」

「うん、ライフ5つとリザーブにある4つのコアを使ってスタートするんだよね?」

「正確には、リザーブにあるのは3つのコアとソウルコア1つでだ」

 

ソウルコアと呼ばれる赤いコア。それは数年前に新たなゲームシステムとして組み込まれた導入された者。その名前によく分からないように頭にハテナを浮かべた。

 

「えっと、ソウルコアってなんだっけ?」

「基本の使い方は普通のコアと一緒だ。コアの使い方はスピリットを呼び出すコストとして支払ったり、維持コストとして上に残す。ソウルコア自体に大きな能力はない」

「そうだったそうだった。で、確かそのスピリットを呼び出すのに必要なコアはお互い各ターンに1個ずつ増えるんだったよね?」

「先攻後攻を決めて最初にスタートステップ、次がコアを増やすコアステップ、そして手札を増やすドローステップ、次は疲労したスピリットとかを回復させたり、トラッシュ、つまり前に使ったコアをリザーブに戻すリフレッシュステップ、重要なのがスピリットを召喚することのできるメインステップ。最後に場のスピリットで攻撃できるアタックステップ。それがターンの流れでお互い交互にそれを繰り返す」

「先行はコアステップとアタックステップができないんだよね?」

「そうだ。先行の1ターン目でできるのはスタートステップとメインステップぐらいだな。後攻の2ターン目からコアステップ、アタックステップができる! そして互いに攻撃し合って、5つのライフ全てを削り切るか、相手デッキを全て破棄した状態で相手がスタートステップを行う。このどちらかが勝利条件だ」

「ありがとう! よく分かったよ!」

 

解説が進む中、既に対戦している少年はメインステップまで準備を進め終える。

 

[01ターン.少年side]

[スタートステップ]

[ドローステップ][手札]4枚→5枚

 

「メインステップ! まずはエッジウルフを召喚!」

 

[リザーブ]4個→0個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→4枚。

 

【エッジウルフ】3(2)赤、スピリット、皇獣。

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(3)BP5000、Lv.3(4)BP6000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

このスピリットをBP+3000する。自分のアルティメットがいる間、さらにこのスピリットをBP+3000する。

 

[フィールド]エッジウルフLv.1(S(ソウルコア)1)BP3000。

 

カードが台に置かれると、次の瞬間、ステージ上に現れるエッジウルフの姿。登場するスピリットの姿に全員が歓声を上げる。現在のバトルではバトルフィールドから3Dバトルへと形を変え、今は特殊な空間に移動しなくても、その場にスピリットがいるかのような迫力を感じさせ盛り上がっていた。

 

「これでターンエンド」

 

 

 

[02ターン.チャンピオンside]

 

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「メインステップ! 行くぜ、ヴェロキハルパーとアシガルラプターをLv.2で召喚」

 

[リザーブ]5個→0個。

[トラッシュ]0個→2個。

[手札]5枚→3枚。

 

【ヴェロキハルパー】1(0)赤、スピリット、地竜/機竜。

Lv.1(1)BP1000、Lv.2(3)BP3000、Lv.3(4)BP4000。

Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

このスピリットのアタックによって相手のライフを減らしたとき、自分はデッキから1枚ドローする。

 

【アシガルラプター】2(2)赤、スピリット、地竜。

Lv.1(1)BP2000、Lv.2(2)BP3000『このスピリットのアタック時』

このスピリットにソウルコアが置かれているとき、自分はデッキから1枚ドローする。

 

[フィールド]ヴェロキハルパーLv.1(1)BP1000、アシガルラプターLv.2((S1)1)BP3000。

 

「最後にバーストセット!」

 

[手札]3枚→2枚。

 

「バースト、来ましたか!」

 

裏向きに指定の位置にセットされるカード。【バースト】とはカードをセットし、カードに指定された条件を満たすことによって効果を発動できる罠のようなカード。当然相手はそれに警戒する。

 

「アタックステップだ! まずはトップは任せたぜ、ヴェロキハルパーでアタック!」

 

アタックステップ開始早々繰り出される攻撃の命令にヴェロキハルパーは頷きながら、フィールドを駆け出す。その攻撃に対しエッジウルフは物言いたげに少年に吠え始める。

 

「スピリットはやる気満々みたいだぜ? どうする?」

 

少年に尋ねるチャンピオンの言葉。プレイヤーは相手の攻撃に対し、いずれかの選択肢がある。その基本となるのが行動が可能なスピリットでその攻撃を防ぎ、バトルするブロック。だが防げない、若しくは防がない場合、プレイヤーがする事のできる手段は一つしかない。

 

「攻撃はライフで受ける!」

 

防げなかった攻撃に対してはライフで受けるしかなく、少年の言葉に台座に灯る5つの内、一つのライフがヴェロキハルパーの前にバリアのようにが展開され、その壁に対し連続蹴りを打ち付け、バリアを破壊する。

 

「ッ!!」

 

[少年side]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]0個→1個。

 

ライフが破壊され、5つの光のうち1つは輝きを失い、そしてライフを失った衝撃が少年自身、そして少年の足元も衝撃に揺れ、ライフの減少は文字通り命が削られた事を意味するように感じさせられる。しかしそれでもライフを失う事はデメリットばかりではない。失ったライフはリザーブへと送られ、使えるコアが増えればそれは反撃の機会にも繋がる。

 

「もう一度行くぜ? 次はアシガルラプターでアタックだ! アタック時効果で、このスピリット自身にソウルコアが乗っているから1枚ドロー!」

 

[手札]2枚→3枚。

 

「それもライフで受ける!」

 

ヴェロキハルパーと同様にバリアに対しアシガルラプターも連続蹴りをバリアに叩き付けると、また一つ少年のライフを破壊する。

 

[少年side]

[ライフ]4→3。

[リザーブ]1個→2個。

 

「これでターンエンドだ!」

 

 

 

 

[03ターン.少年side]

[スタートステップ]

[コアステップ][コア]2個→3個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]3個→6個。

 

「メインステップ! アイゼンドラゴンを召喚します!」

 

[リザーブ]6個→1個。

[トラッシュ]0個→4個。

 

【アイゼンドラゴン】5(3)赤、スピリット、竜人。

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(3)BP5000、Lv.3(5)BP6000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『このスピリットのバトル時』

BP3000以下の相手のスピリット1体を破壊する。自分のアルティメットがいる時、さらに自分はデッキからドローする。

 

[フィールド]アイゼンドラゴンLv.1(1)BP3000、エッジウルフLv.1(S1)。

 

「アタックステップ! アイゼンドラゴン、行け! 効果でBP3000以下のアシガルラプターを破壊!」

 

鉤爪を携えた竜、アイゼンドラゴンは吠えながら走り出すと、真っ直ぐ標的をアシガルラプターに定め、アシガルラプターは咄嗟の事に反応が遅れ、アイゼンドラゴンはそのまま鉤爪をアシガルラプターに突き刺し、そのまま宙に投げつけると、アシガルラプターは消滅。

 

「ぐっ! これは厳しいな!」

「まだまだ、次はメインアタックですよ!」

「ライフで受ける!」

 

そのまま今度は標的をプレイヤー本人に定め、展開されたバリアに鉤爪を大きく振りかぶり、そしてそのまま勢い良く振り下して切り裂き破壊する。

 

「ぐっ!!」

 

[チャンピオンside]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]2個→3個。

 

「もう一つライフを貰う! 次はエッジウルフでアタックだ!」

「それもライフだ!」

 

間髪入れずに今度はエッジウルフに攻撃指示を出すと、バリアに大きく突進しさらにライフを砕き、お互いにライフ3と、同点に持ち込んだ事に少年は嬉しそうに笑って見せるが、失たライフに対し、チャンピオンの男もまた、笑って見せた。

 

[チャンピオンside]

[ライフ]4→3。

[リザーブ]3個→4個。

 

「!?」

「ライフ減少でトリガーだ、俺のライフが3以下の時、このバーストを発動するぜ!」

「しまった!」

「ライフ減少時でバースト発動! 龍の覇王ジークヤマトフリード!」

 

【龍の覇王ジークヤマトフリード】8(3)赤、スピリット、古竜/覇皇。

Lv.1(1)BP6000、Lv.2(3)BP10000、Lv.3(5)BP13000、Lv.4(8)BP20000。

【バースト:自分のライフ減少時】

自分のライフが3以下の時、BP15000以下の相手スピリット1体を破壊する。この効果発揮後、このスピリットカードを召喚する。

Lv.2、Lv.3、Lv.4『このスピリットのアタック時』

相手のスピリット1体を指定し、そのスピリットにアタックできる。

Lv.3、Lv.4『このスピリットのアタック時』

自分のバーストをセットしているとき、このスピリットのBP以下の相手のスピリット1体を破壊する。

 

[リザーブ]4個→1個。

[バースト]龍の覇王ジークヤマトフリードLv.2((S1)2)BP10000。

 

 

「バースト効果でアイゼンドラゴンを破壊、さらにバースト召喚だ!」

 

天を裂いて突如降り注ぐ炎。まるで滝の様に降り注ぐその炎にアイゼンドラゴンは全身を焼かれ、炎の中で力尽き爆発を起こし、そしてそれを見届けると雲を裂いて舞い降りるジークヤマトフリード。

 

「ぐっ! これでターンエンド!!」

 

読みが外れたのか、歯噛みしながらもこれ以上の攻撃手段はなく冷静にターンを終え、続くチャンピオンへとターンが映る。

 

 

 

 

[04ターン.チャンピオンside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]1個→2個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]2個→0個。[リザーブ]2個→4個。[フィールド]ヴェロキハルパー回復。

 

「メインステップ! バーストセット、そしてカグヅチドラグーンを召喚」

 

[リザーブ]4個→1個。

[トラッシュ]0個→2個。

 

【カグヅチドラグーン】4(2)赤、スピリット、古竜。

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(3)BP6000。

Lv.1、Lv.2『このスピリットのアタック時』

自分はデッキから1枚ドローする。

Lv.2『このスピリットのアタック時』【激突】

相手のスピリットは可能なら必ずブロックする。

 

[フィールド]ヴェロキハルパーLv.1(1)BP1000、カグヅチドラグーンLv.1(1)BP3000、龍の覇王ジークヤマトフリードLv.2((S1)2)BP10000。

 

「アタックステップだ! ヴェロキハルパーでアタックだ!!」

「ライフで受ける!」

 

このターンもう少年を守るスピリットは一体もいない。その身を犠牲にするしかなく、再びバリアを蹴りつけ、ライフを破壊する。

 

[少年side]

[ライフ]3→2。

[リザーブ]2個→3個。

 

「次だ! カグヅチドラグーンでアタック!! アタック時効果で1枚ドローだ!」

 

[手札]2枚→3枚。

 

このターン、全ての攻撃が決まれば少年の負けが確定する。カグヅチドラグーンは目を輝かせながら一気に相手に襲い掛かるが、少年はまるで攻撃を待っていたのかの様に笑って見せた。

 

「フラッシュタイミング! マジック、炎刃ストライク!」

 

【炎刃ストライク】4(2)赤、マジック。

BP3000以下のスピリット2体を破壊する。コストの支払いに[ソウルコア]を使用していたら、さらに、相手のネクサス一つを破壊する。

 

[リザーブ]3個→0個。

[トラッシュ]4個→7個。

 

 

スピリットの攻撃を止める手段となり得るもう一つの方法、それがマジック。フラッシュと書かれたカードは自分か相手が攻撃したとき、若しくはスピリット等のバトル発生時に使用することが出来、使い所を見極めることが出来れば逆転の一手と成り得るカード。マジックの使用により、出現する炎を纏う刃。炎の刃は弓矢の様に飛び出すと、それはカグヅチドラグーンとヴェロキハルパーの二体を射止め、破壊してしまう。

 

『おぉーっと! ここでマジックによるカウンター! チャンピオン、これは油断したか!?』

 

司会の女性による実況に観客達も動揺する声が広がる。2体のスピリット失ったことにより、残るジークヤマトフリードだけでは少年に止めを刺すことが出来ず、守りを固めるべきと判断したのか、それ以上攻撃はせずそのターンを終えた。

 

 

 

 

[05ターン.少年side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]7個→0個。[リザーブ]1個→8個。[フィールド]エッジウルフ回復。

 

「メインステップ! バーストセット! そしてファイザードを召喚!」

 

[手札]4枚→3枚。

[リザーブ]8個→7個。

 

【ファイザード】0(0)赤、スピリット、翼竜。

Lv.1(1)BP1000、Lv.2(3)BP3000、Lv.3(5)BP4000。

 

呼び出されるのは小さな龍、だが当然少年の手はそれだけではない。会場の空気が変わる中、少年は次の一手を仕掛ける。

 

「炎の龍は究極に進化を果たす! アルティメットジークフリードをLv.4で召喚する!!」

「!」

 

突如噴き上げる火柱、だが真っ赤に燃える炎の中でも一際黄金の輝き、そして炎を吹き消して金色に輝く体を深紅の炎で染め上げる龍、スピリットを超越した究極存在────アルティメットジークフリードが現れる。

 

『出ました出ました!! スピリットを超える究極、名をアルティメット!!』

 

司会の声に観客達の歓声もより盛り上がる。バトスピのゲームシステムにおいて数年前に登場した第5のカードとして知られる存在、それがアルティメット。攻撃やブロック等基本行動はスピリットと同じだが場に出すためにはそれぞれ指定された条件を満たす必要がある、しかし出す事が出来れば究極の名の通り、その力はスピリットとは比べられない。スピリット達の中でもトップクラスの力を誇り、プレイヤーに与える恩恵は絶大だった。

 

「これがキーカードだ! アタックステップ! 行けッ! アルティメットジークフリード!!」

 

巨大な体を動かし、まるで獅子が得物を追い詰めるかの如く歩み寄るアルティメットジークフリード、そしてその進撃に合わせるように少年は右手を構える。

 

「アルティメットトリガー! ロックオンッ!!」

 

アルティメットだけが持ち、アルティメットの中で最も主流とされているキーワード能力、それが【U(アルティメット)トリガー】。少年は構えた腕を鉄砲のようにして撃つと、相手のデッキの上から1枚のカードが弾け飛ぶ。

 

「コストのコールお願いします!」

「『ツインブレードラゴン』、コストは5だ!」

「ヒットッ!」

 

アルティメットトリガーの最大の特徴は効果発揮時に相手のデッキの上の1枚を強制的にトラッシュに送り、そのカードが自分自身のコストを下回っていればその効果を発揮させる。少年の宣言と同時にアルティメットジークフリードは眼光を輝かせると、大きく息を吸い込み、吸い込んだ息を熱風として周囲全体に吐き出すと、その熱風はジークヤマトフリードを拘束するかのように収束し始めると、自らの意思とは関係なくアルティメットジークフリードに引き寄せられてしまう。

 

「アルティメットトリガーがヒットした時! 相手はスピリットは強制ブロックしなければならず、そしてブロックした時、相手ライフを一つ破壊だ!!」

 

【アルティメットジークフリード】6(3)赤、アルティメット、新生/古竜。

Lv.3(1)BP10000、Lv.4(3)BP14000、Lv.5(5)BP20000。

【召喚条件:自分の赤のスピリット1体以上】

U(アルティメット)トリガー】『このアルティメットのアタック時』

Uトリガーがヒットしたとき、相手は可能ならブロックする。ただし、アルティメットはブロックしなくても良い。相手のスピリットにブロックされたら、相手のライフのコア1個を相手のリザーブに置く。

Lv.4、Lv.5フラッシュ【真覚醒】『このアルティメットのアタック時』

自分のスピリットのコア1個をこのアルティメットに置く事で、このアルティメットをBP+3000する。

 

「さぁ! ジークヤマトフリードにバトル強制だ!」

「ジークヤマトフリードでブロック!」

「ならこの瞬間! ライフを一つ破壊だ!!」

 

アルティメットジークフリードの前まで引き寄せられ、ジークヤマトフリードが目の前まで迫った瞬間、一度相手へと視線を切り替え、巨大な火炎放射を吐き付けると、そのままバリアを焼き尽くし、ライフを破壊する。

 

[チャンピオンside]

[ライフ]3→2。

[リザーブ]3個→4個。

 

「ッ!!」

 

相手のライフ消滅を確認し終えると、得物へと視界を戻す。対峙する二体の龍、しかしその体格差は大きく、比べると龍の覇王もまるで子供の様に小さく見えてしまう。巨大なその姿を前にジークヤマトフリードでさえも圧倒されてしまったのか、身動きが取れず、アルティメットジークフリードは一撃で決めるつもりなのか、そのまま一気に前足を振り上げ一撃でヤマトを仕留めにかかる。

 

『チャンピオンのエーススピリット、ジークヤマトフリードは絶体絶命! そして残るライフは2つ!! 相手のスピリットも2体!! まさかこれは、チャンピオンが負けてしまうのか……!!』

 

緊迫した空気に包まれる会場、少年も王手を掛けたように勝利を確信するが、チャンピオンである男はそれに対し、静かに笑って見せた。 

 

「!?」

「ははっ、中々やるな!! こりゃ追い詰められたぜ!!」

「余裕ぶってても、もう勝負は決まったも同然────」

「おっと!」

 

言い掛けた少年の言葉を遮るようにチャンピオンは大きく叫んで遮り、そして続けて行く。

 

「チャンピオンとして、一つ言わせてもらうなら、勝負は最後まで何が起こるかわからないぜ!」

「?」

「俺のライフ減少時でバースト発動!!」

 

高らかに宣言すると、伏せたカードが弾け飛ぶと、まるでカードに呼応するように空が黒く染まる。

 

「俺のライフが3以下の時、相手のBP20000以下のアルティメットを一体破壊しこのアルティメットを召喚できる! 極覇龍アルティメットヤマトをな!!」

「何!?」

 

黒く染まったフィールド、しかし次の瞬間、暗いフィールドを一瞬で赤く染め上げる太陽が現れ、超新星の如く大爆発を起こし爆風から眩い黄金の輝きを放ちながら現れる龍────アルティメットヤマト。

 

【極覇龍アルティメットヤマト】8(3)赤、アルティメット、新生/古竜。

Lv.3(1)BP13000、Lv.4(3)BP17000、Lv.5(5)BP25000、Lv.6(8)BP40000。

【召喚条件:自分の赤のスピリット1体以上】

【バースト:自分のライフ減少時】

自分のライフが3以下の時、BP20000以下のアルティメット1体を破壊する。この効果発揮後、このアルティメットカードを召喚する。

【Uトリガー】Lv.4、Lv.5、Lv.6『このアルティメットのアタック時』

Uトリガーがヒットしたとき、このターンの間、自分のアルティメットが相手のスピリットにブロックされたら、相手のライフのコア1個をリザーブに置く。

 

[リザーブ]4個→1個。

[バースト]極覇龍アルティメットヤマトLv.2(3)BP17000。

 

 

「仲間を守れ! アルティメットヤマト!!」

 

和人の指示にアルティメットヤマトはすぐさま駆けだすと、今にも止めを刺さんと迫るアルティメットジークフリードに対し、黒い炎を吐き付け、その攻撃に気づいたのか咄嗟に飛び上がって炎を避け、真上に飛び上がる。

 

しかしその回避行動を読み切っていたのか、何時の間にかアルティメットヤマトも飛び上がり自分の目の前まで迫っていたかと思うと、その首元に喰らい付き、地面に引き摺り落とし、そして喰らい付いたままその大きな巨躯を持ち上げ、再度地面へと叩き付け破壊する。

 

「そ、そんな!?」

「なっ? だから勝負は最後まで分からねぇだろ?」

 

目の前の光景にへ垂れ込む少年にチャンピオンは対して人懐っこく笑い、見ていた観客達は全員喚起する。

 

「た、ターンエンド」

 

 

 

 

[06ターン.チャンピオンside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]1個→2個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]2個→0個。[リザーブ]2個→4個。[フィールド]龍の覇王ジークヤマトフリード、極覇龍アルティメットヤマト、回復。

 

「メインステップ! 龍の覇王ジークヤマトフリードをLv.1にダウンしてイクサトカゲを召喚!」

 

[リザーブ]6個→5個。

 

【イクサトカゲ】0(0)赤、スピリット、爬獣。

Lv.1(1)BP1000、Lv.2(3)BP3000、Lv.3(5)BP4000。

Lv.3

このスピリットにソウルコアが置かれている間、このスピリットをBP+6000する。

 

「さぁ行くぜ! 相棒!! 龍の覇王ジークヤマトフリードを【転召】! さらにイクサトカゲから不足コストを確保して召喚する!!」

「!」

 

龍の覇王が炎の中へと包まれ、そして炎の中で転生するかのように龍の覇王とは違う別の龍の影が炎の中より映り、誰もがこれから呼び出されるスピリットに期待するように羨望の眼差しで見つめるが、一番にそのスピリットの登場を待ち望んでいたのはチャンピオンだった。

 

「さぁ今日も頼りにしてるぜ!! 剣龍皇エクスキャリバスを召喚だ!!」

 

[リザーブ]5個→0個。

[フィールド]龍の覇王ジークフリード、イクサトカゲ消滅。

[トラッシュ]0個→6個。

 

炎を振り払って火の粉に白銀の体をより輝かせながら力強く吠える龍、チャンピオンが相棒と呼ぶエクスキャリバスの姿だった。

 

「召喚時効果! 相手のスピリットをBP6000まで! エッジウルフとファイザードを破壊するぜ!!」

「!!」

 

炎をその身に纏わせると、一気に二体のスピリットに向けて突っ込むと、そのまま二体に突進し、吹っ飛ばして破壊する。 

 

【剣龍皇エクスキャリバス】7(4)赤、スピリット、古竜/勇傑。

Lv.1(1)BP5000、Lv.2(3)BP8000。

【転召:コスト3以上/トラッシュ】

召喚コスト支払い後、指定コスト以上の自分のスピリット1体の上のコアを全てを指定場所に置かなければならない。

Lv.1、Lv.2『このスピリットの召喚時』

BP合計6000まで相手のスピリットを好きなだけ破壊する。

Lv.2【激突】『このスピリットのアタック時』

相手は可能ならば必ずブロックする。

 

『ついに出た! これまでチャンピオンを支えてきたキースピリット、エクスキャリバス!! その効果で相手のブロッカーを全て破壊してしまいました!!!』

 

実況の声にも力が入り、観客達もバトル終盤に差し掛かったにも関わらず、より大きな歓声を上げるが、チャンピオンはそれを全く気にする様子はないまま、ただ笑い自分のペースを保ったまま、バトルを続けていた。

 

[フィールド]剣龍皇エクスキャリバスLv.1(1)BP5000、極覇龍アルティメットヤマトLv.4(3)BP17000。

 

「アタックステップだ! 行けッ! エクスキャリバス!!」

「ぐっ! ライフで受ける!!」

 

エクスキャリバスは大きく吠えながら、再びその身に炎を纏わせると、展開されるライフのバリアに対しても一切止まる事無く、弾丸のような速度でライフへとぶち当たると、一気にライフを砕く。

 

「ぐあっ!!」

 

[少年side]

[ライフ]2→1。

[リザーブ]5個→6個。

 

「ライフは残り一つだ!」

「ま、まだまだ!! ライフ減少時でバースト発動! 天剣の覇王ジークスサノフリード!」

 

王手を掛けるチャンピオンだが、少年にしてもまだまだこのままでは終われない気持ちはある。ライフ減少と同時にトリガーが引かれ、弾け飛ぶカードを手に取る。

 

【天剣の覇王ジークスサノフリード】9(3)赤、スピリット、古竜/覇皇。

Lv.1(1)BP6000、Lv.2(3)BP10000、Lv.3(5)BP15000、Lv.4(7)BP20000。

【バースト:自分のライフ減少時】

自分のライフが3以下なら、自分の赤のスピリット1体につき、BP6000以下の相手のスピリット1体を破壊する。この効果発揮後、このスピリットカードを召喚する。

Lv.2、Lv.3、Lv.4『このスピリットのアタック時』

このスピリットをBP+10000する。

Lv.3、Lv.4

自分のバーストをセットしている間、このスピリットに赤のシンボル1つを追加する。

 

「俺のライフが3以下ならこのスピリットを召喚だ! 来い!! 天剣の覇王ジークスサノフリードLv.3で召喚!!」

 

フィールドに降り注ぐ無数の剣、それは円を描くようにフィールドに撃ち込まれると巨大な火柱を噴き上げ、火柱よりジークスサノフリードが姿を現す。

 

[リザーブ]6個→1個。

[バースト]天剣の覇王ジークスサノフリードLv.3((S1)4)BP15000。

 

「どうだ! これでこのターンは凌いだ!」

「へぇ、やるな! でも俺はさっきも言ったよな? 勝負は最後まで何が起こるかわからないって?」

「えっ?」

「まだ俺のターンは続いてるぜ! 今度は極覇龍アルティメットヤマトでアタックだ!」

 

ブロッカーとして新たに出現したジークスサノフリードに対しても全く怯まずに、アルティメットヤマトに攻撃指示を出すと、アルティメットヤマトは足元に黒炎を放ち、その炎を自らの翼に纏わせると、そのまま一気に相手へと駆け迫って行く。

 

「今度は俺の番だ! U(アルティメット)トリガー、ロックオン!!」

 

先程少年がやったような動作で今度はチャンピオンが狙いを定めて撃ち抜くと、少年のデッキの上のカードが弾かれる。

 

「コストコールだ!」

「じ、壬獣ジャガーエッジ、コストは3」

「ヒットだッ!」

 

Uトリガーがヒットしたのと同時にアルティメットヤマトは再度力強く咆哮し、眼光を輝かせて突っ込み、それを阻もうとジークスサノフリードは近づくアルティメットヤマトに対し構える。

 

「ぐっ!! まだ俺にはブロッカーがいるんだ! ジークスサノフリードでブロック!!」

 

[Battle]極覇龍アルティメットヤマトLv.4(3)BP17000vs天剣の覇王ジークスサノフリードLv.3(5)BP15000。

 

ジークスサノフリードは無数の天剣を宙に浮かべ、それをまるでミサイルのようにアルティメットヤマトへと向けて撃ち出す。しかしそれに対し、黒炎を纏わせた両翼で天剣に叩き付け、天剣をまるでガラスのように粉々に砕き、バラバラに砕かれた天剣は地面へと叩き落とされ、その光景に怯みながらも主を守るべく突っ込むアルティメットヤマトに対し、天叢雲剣を力の限り両手で握りしめ、その進撃を真正面から受け止める。

 

「よし! これで────!」

 

攻撃に耐え凌いだと、そう思って安堵する少年。安心するように一息つこうとする少年だったが、バトルではアルティメットヤマトは止められながらも進もうとするその足を止める事はなく、一歩、また一歩と進み続け、ジークスサノフリードは次第に押され始めて行く。

 

「何!?」

「アルティメットヤマトのトリガーヒット時の効果! 相手スピリットにブロックされた瞬間、ライフを破壊だ!!」

「!?」

「つまり、これで決まりだ!!」

「そ、そんな馬鹿な!!」

 

少年の最後のライフがバリアとして強制的に展開されると、アルティメットヤマトはそれを確認し、止まる事は無くそのまま一気に突っ込むとジークスサノフリードを突き飛ばし、突き飛ばされたジークスサノフリードはバリアの壁に押し付けられる。

 

「!!」

「仕上げだ! アルティメットヤマト!!」

 

そのままジークスサノフリードごとバリアを貫くと、スピリット諸共最後ライフを破壊する。

 

[少年side]

[ライフ]1→0[Lose]

 

 

 

***

 

 

 

 

『決まったーー!! チャンピオン、追い詰められながらも見事に大逆転を飾って見せました!! ぜひ熱いバトルを展開してくれた両者に拍手を!!』

 

バトルに決着後、二人に向けて贈られる拍手喝采。会場中が熱狂に包まれ、その全員が熱いバトルの余韻に浸っていた。

 

『チャンピオン勝利おめでとうございます! よければ会場のカードバトラーさん達に一言メッセージを!』

 

マイクを手渡され、それにチャンピオンの男性は「あまり偉そうに喋れる事ないんだけどな」と謙遜するように頭を掻いて見せながらも、それでもマイクを手に持ち何かを考え込むように数秒を間を置いて。

 

『カードバトラーの皆、今日は会場に来てくれてありがとう。俺は今こうしてチャンピオンとして皆の上に立ってる。だから今日来てくれたカードバトラー達とはいずれライバルになるだろう。だから戦う時は俺を超えるつもりで全力で向かって来い!!』

 

その言葉に刺激されたようにカードバトラー達は一気に大声を上げ、その光景にチャンピオンは笑いながら続けて行く。

 

「いつでも、この俺に!! この若槻和人に掛かって来い!!

 

高らかに自分の名を名乗るチャンピオン。彼こそ正真正銘世界を救ったカードバトラーであり、事件の事は既に人々の記憶から消え去っているが、それでも、彼の強さは今やチャンピオンとして、そして世界一として、その名は今もなお多くのカードバトラーの記憶に刻まれる存在となっていた。

 

「チャンピオン、いずれその最強の座は俺が貰う!!」

「キャプテン、その意気だ! 次の最強は当然キャプテンで決まりだ!」

 

「氷牙さん、ちゃんと見てましたね?」

「あぁ見てたよ。ったく、眠ぃけど、まぁ超えるつもりでやるのは変わりねぇな」

 

チャンピオンの宣戦布告とも取れる言葉に当然多くのカードバトラー達はそれぞれ意気込みを上げていた。そんな中、勿論3人組の少年達も他のカードバトラーと同じく、刺激を受けていた。

 

「チャンピオンに挑むのは当然俺達! 最強なるのも俺達だよな!」

 

赤髪の少年の言葉に二人も頷き、そして一人は自分のデッキを見つめながら静かに先程見た光景とチャンピオンの言葉を思い返す。

 

「僕も、最強に……!」

 

会場内に多くカードバトラー達が抱く己が最強になるという願い、その想いはいずれ、最強を、天下を掛ける戦いへの引き金を引く事になる。




皆さま、どうでもブラストです! お久しぶりでございます!!
前々から言っていた新作、本日今日から連載することになりました!!!!
今作品では「バトルスピリッツ激震の勇者」の続編となります! なので、今回、チャンピオンとして前作主人公の若槻和人にサプライズ登場してもらいました!! 他のキャラたちは登場予定あるのかな(笑)


キャラ紹介など、また詳しい設定を次回に書こうと思ってます。


それにしてもやっとこの新作からアルティメットや烈火伝に登場したあのスピリット達も登場させられると思うと意欲が沸いて沸いて仕方がないです!! まぁ既にアニメではダブルドライヴになっているのですが、勿論カードパートは新弾の物まで採用していくので、十二神皇のゲイルフェニックスや話題の異魔神なんかも書いていきたいです!! 前作はハイドカードなど、オリカを軸としたシリアス展開でしたからアルティメットなど大きな環境変化の為、カードパートを剣刃編以降更新できなかったので、今回は反省して同じことにならないようにします!多分……。←

世界観は天下など烈火伝なのかな?と思う方もいると思いますが、どちらかと言えば、仮面ライダー鎧武みたいな世界観かな?と思っています。今作ではシリアス展開っぽく語ってますが、あまりシリアス路線は無いかもしれません。まぁどんな展開になるかはこの先も読んでいただければ(ステマ)



バトルシステム、前作は見栄えよくしようと書いてましたが、今回からはソウルコアも導入してるので、分かりやすいように表現やターン表記など大きく書き方を変えました。実際に分かり易いかどうかは書いて聞いてみない事には分からないので、今回プロローグとして、短くバトルを書いてみました。表現が分かりづらいなど、この書き方はこうした方がいいなど気軽にご意見貰えれば幸いです。
また今日からバトスピ小説を書いていきますので、前作を読んでいただいた方や新しく小説を読んでくれるという方、ぜひ気合を入れて頑張りますのでよろしくお願いいたします!


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登場カードバトラー紹介


前回言った通り、今回はキャラ紹介をしていきたいと思います。
主人公やこれから本編にこれから登場するバトラーを紹介していきます。

ただし、前にも言ったと思うのですが登場キャラクターが本当に今作品では多くなると思います。なので、今回は主要の6属性のカードバトラー達、主人公を含め計7人だけの紹介をしようかと思います。今後のキャラ紹介などはこの作品に追加する形か、パート2みたいな感じで区切り区切り紹介していこうかなと思いますが、追々考えて行きましょう(笑)





 

 

輝来(キライ)ハルヤ/16歳、男。

本作品の主人公。初めて手に入れたXレアをきっかけにバトルスピリットを始める。その性格は気弱であまり物事を強く言い切れないが、心優しい性格。バトル経験はそれなりに長いものの実力は不十分。本人もその事を気にしているが、ある日を境にこのままじゃ駄目だと強くなることを決意。赤デッキの使い手で「リューマン」スピリットを軸としたデッキを扱い、使用キースピリットは「剣神無双リューマンゴッドソード」。

 

キャラモチーフ、イメージ:『ぬらりひょんの孫』より奴良リクオ。

 

 

 

 

火龍(ヒリュウ)エンザ/18歳、男。

赤髪と不良っぽい見た目が特徴的な少年。見た目通りの荒っぽい性格の持ち主だが、それでも自分の認めた相手にはそれなりの態度で接す。また若槻和人を尊敬しており、彼に対しては敬意を払っている。見た目にそぐわず、大の猫好きらしい。赤デッキの使い手で戦竜と武龍を主軸にしたデッキを扱い、「戦皇ゴッドスレイヤードラゴン」等をキースピリットとする。

 

キャラモチーフ、イメージ:『國崎出雲の事情』より菅原梅樹。

 

 

 

 

浪川海斗(ナミカワカイト)/18歳、男。

サメを模した髪型が特徴的な人物。エンザと負けず劣らず、荒くれた性格で、バトルにおいて自分が最強である事を目指す野心家。エンザとは度々正面衝突を繰り返し、バトルを重ねている。青デッキの使い手で海王類を模したスピリットを扱い、「ホオジロタイガー」や「鮫魔神」等をキーカードとしたデッキを使用する。

 

キャラモチーフ、イメージ:『イナズマイレブンGO』より浪川蓮助。

 

 

 

 

八鳥紫苑(ハットリシオン)/18歳、男。

反対側に被ったキャップとゴーグルの目立つ少年、人を煽るような態度と軽いノリが目立ち、妙に馴れ馴れしい性格。エンザとは親友らしく、エンザ自身彼の態度には手を焼くもののその実力は評価している。しかし本人は基本バトルは傍観者として立ち見に回ることが多い。紫デッキの使い手で使用キースピリットは「闇騎神ネメシス」。

 

キャラモチーフ、イメージ:『ポケットモンスタースペシャル』よりゴールド。

 

 

 

 

梶雷矢(カジライヤ)/17歳、男。

茶髪に派手目な格好の少年、だが派手な見た目の割にはその性格はしっかりしており、基本は誰にでも親しいが、自分が認める相手以外には本心を決して見せない。バトルは傍観に回ることが多いが、強いと思う相手には突然バトルを申し込むこともある。バトルでは緑デッキの使い手で、「甲賀頭首クワガスレイヤー」をキースピリットとした忍風デッキを使う。

 

キャラモチーフ、イメージ:『雲行きがまったく怪しくありません』よりライトニング。

 

 

 

 

獅戸氷牙(シドヒョウガ)/18歳、男。

銀髪の少年、基本だらけた怠惰な性格で、眠気を口癖のように吐き捨て、一日の半分は寝ていたいなどあまりやる気がないように見える。しかし、バトルの中、追い詰められると、眠気が覚めるという特殊なジンクスを持ち、眠気が覚めると人が変わった様に荒々しくなり、それはバトルにも影響する。白デッキの使い手で使用キースピリットは「魔星機神ロキ」。

 

キャラモチーフ、イメージ:『朝ごはん戦争』より高木末吉。

 

 

 

 

犬神神子(イヌガミミコ)/18歳、女。

まるで獣耳のような髪型が目立つ女性、誰にもでも礼儀正しい性格で凛とした性格の持ち主。普段は妹や弟とバトルの解説実況を行い、その為バトルする機会はあまりないものの、その分知識は群を抜き、バトルの実力も確かな物。黄色デッキを使いこなし、使用キーカードは「アルティメットリーン」、「凶神獣カオスペガサロス」。

 

キャラモチーフ、イメージ:『東方project』より豊郷耳神子。

 

 

 

 




以上旬事項を含め計7名のキャラ紹介でした。キャラモチーフやイメージなどは色々なジャンルから採用しましたね。漫画は最近comicoとかにはまっててよく読んでますね、アニメ等も浅いですが、その分広く見ているのでキャラはこれをモチーフにしたらいいとか考えてました。キャラ名とかよくわからないって方はググって貰えると(笑)多分原作と全然違うと思いますが、前作と同じく、キャラモチーフ、イメージは参考までになので、当然すべてほぼ同じという訳ではないのでご容赦を(ノД`)。


そして主人公や紹介したキャラたちが本編でどのような活躍をするのか! ぜひ期待してもらえれば!! 勿論、このキャラ達だけでなく、色んなキャラもどんどん登場予定!バトルでは、ゴッドゼクスやグロリアスシープ、ロードドラゴングレイザーに、アルティメットジークフリーデン!! 色々バトルで書きたいカードがとにかく多すぎます!!個性的なキャラたちが繰り広げるバトルの本編、ぜひ楽しみに頂けたらと思います。それでは本編更新まで頑張りますので、次回もよろしくお願いします!


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番外編・キャラインタビュー

以下注意
・茶番回+駄文

それでも大丈夫という方はどうか温かい目で見てもらえると幸いです。







 

 

 

 

「どうも皆さま、輝来ハルヤです」

「えっと、吉馬桜です。ってちょっと待て!!」

「!」

「何で俺とお前の二人!? ってか今日は何!?」

「え、えっと……僕も作者に呼ばれたんだけど、具体的な事は?」

「本編さぼってあのバカ作者何やってんだ、死ねばいいのに!」

「お、落ち着いて! い、一応作者から手紙は預かってるよ?」

「手紙?」

「うん。まだ読んでないから読むよ?」

 

『二人共、読者の皆様どうもです。まずはご報告させていただきまして、このバトルスピリッツギガリーグも早いもので、もう10話目となりました。これも読んでくださっている読者様のお陰です。まずはこの機会にお礼申し上げさせていただきます。そして今回は、それを記念して今回は特別編にしたいと思います!! 司会進行はハルヤと吉馬の二人で!!』

 

「……という事みたいです」

「何で俺ら二人!?」

「作者気まぐれじゃないのかな?」

「他なんか書いてる?」

「PS.他のキャラたちにインタビューでもすればだって」

「調子のいい事言って俺達に体よく仕事押し付けただけじゃねぇか!! やっぱ作者死ねばいいのに!」

「お、落ち着いて!! とにかく司会進行任せられたわけだし、進めて行こう?」

「府に落ちねぇ。まぁいいけど、具体的にどういう風にしていけばいいんだ?」

「まぁ10話目で登場キャラももう10人以上登場で、この機会に色んなキャラに質問を投げかけるみたいだけど、内容は台本もあるよ」

「人に仕事に投げる時だけは準備がいいよな?」

「そ、その辺でやめてあげて!! とにかく早速インタビュー始めて行こう!」

「もうどうでもよくなってきた、まぁさっさとやるか」

「まずは一人目!! この方への質問です!」

 

 

 

────Q1、天宝ザックへの質問。

 

「おっ? まずは俺からか?」

「うん、早速進めて行くよ? ザックへの質問。「自称カードコレクターとして、自分が自慢できることを教えてください」っていう内容の質問です」

「……自称が気になるが、そこは無視する。まぁ答えるぜ? 俺がカードコレクターとして、自慢できるのはやっぱ種類豊富に取り揃えてることだろうな」

「やっぱりそのコレクションもすごかったりするの?」

「当然。俺が使ってるのは基本緑だけど、他の色のカードも取り揃えてるぜ! そしてそれを手に入れる為に色んなカードショップを回ったりもしてる!」

「欲しいカードが見つかったら、やっぱりすぐに手に入れる感じ?」

「あー、まぁ欲しいカードを見つけたりすると直ぐ買いたくなるんだけど、そこは我慢して他のカードショップも見る感じかな?

「へー、そりゃどうして?」

「だって高値で買ったシングルカードが、その店が割高なだけだったり、後日安値に下がってたりしてるとかいう作者の二の舞になるじゃん?」

『作者)オイコラそれ言う必要ねぇだろ!!』

「いまどっかから今作者の声したぞ!!」

「つ、次の質問行きましょう!」

 

 

 

 

────Q2、犬神神子への質問。

 

「次は私ですね、まぁ答えれる事なら何でもお答えしましょう」

「えーっと、神子さんへの質問内容は「解説者としての知識をどこで手に入れているのか?」という内容です」

「はい。現代において情報は価値あるものですから、それを手に入れるには事欠かしませんよ? 弟のコン太が方々駆けまわって色んな情報を集めてくれますし、私自身バトスピの運営と繋がってるから情報を仕入れるのはそれほど困難じゃなかったりします」

「えっ? 神子さんって、運営と繋がってるんですか!? でもそんなこと本編じゃ一度も!!」

「あっ、これはネタバレなので」

「控えてください!!!」

 

 

 

────Q3、火龍エンザへの質問。

 

「リーダー、待ってました!」

「俺の番だな! 何が聞きたい?」

「リーダーじゃなくて……エンザさんへの質問は、「敬語が使えるのかどうか」という事みたいです」

「間違ってもその質問内容、俺へのディスじゃねぇよな?」

「ち、違うと思いますよ! 多分(目線逸らし」

「後で作者問い詰めとくとして、質問内容だな。俺は別に素だとこんな口調だが、尊敬する人に対してはちゃんと敬語を使うぜ?」

「目上の人じゃないんですね」

「あぁ、少なくとも作者は俺の目上だが絶対に敬語使わねえぞ」

「作者)おい!」

 

 

 

 

────Q4、浪川海斗への質問。

 

「……( 一一)」

「吉馬顔!! 次は海斗さん。お願いしますね」

「……ふん、手短にしろよ」

「は、はい。えっと質問内容が「海斗さんの好きな動物はやはり鮫なのか」という事です」

「くだらねぇ」

「俺もそう思う」

「あ、あははは。作者が適当に作った質問なのでご容赦ください。一応回答いただけると幸いです」

「……まぁ確かに一番好きなのは鮫かもな、動物もスピリットも強い奴にしか興味がない」

「バン)キャプテン、そんなこと言いつつ、この前水族館でイルカショーとか見てたじゃないですか?」

「おいハルヤ、吉馬。ここをカットしとけ。今からちょっとアイツを噛み裂いてくる!」

「バン)えっ? ちょちょちょっとキャプテン……!!ギャアアア!!!」

「あ、あはは……つ、次の質問に移りましょう」

 

 

 

 

────Q5、井澤バンへの質問。

 

「うぅ……キャプテンに思いっきりしばかれた(泣」

「自業自得だと思うけどな」

「と、とにかく早速質問に移りましょう! 質問内容は「同じチームメンバーの武凱との仲の悪さは理由があるのか?」だそうです」

「ネタバレのない範囲で頼むぞ?」

「はいはいわぁってるって。まぁ質問内容だけど、武凱の野郎とはとにかく馬が合わねぇのよ」

「具体的には?」

「まぁ挙げるなら色々あるが、中でもアイツとは一番気があわねぇと思った瞬間は俺がこの前き●この山派だっつったら、あの野郎! た●のこの里派だったんだよ!!」

「えっ?」

「そんな事か!?」

「馬鹿野郎!! やっぱ●のこの山が一番だろうが!! なのに●けのこの里が一番だとか抜かしやがって絶対に許せねぇぞ!!」

「もうお前等ス●ラトゥーンのフェスでもやってろよ!」

 

 

 

 

────Q6、武凱バズトへの質問。

 

「ガハハハ!! 今度は俺の番か!!」

「はぁー……ちゃっちゃと進めようぜ。ハルヤ質問内容」

「はい。えっと質問内容が「筋肉質な武凱選手ですが、筋トレとかしてるんですか」だって」

「ははは、まぁお前等の予測通りバッチリ鍛えてるからな!! 見せかけじゃねぇぞ!!」

「別に予測してねぇんだけど」

「え、えっと! それだけ鍛えるって事はやっぱりバトルにすることにおいても筋肉は必要だと考えてるんですか!」

「ん? まぁ鍛えるのは趣味だけど、ぶっちゃけバトルに関してはスピリットがバトルするわけだし、自分自身が戦う訳じゃないから筋肉があまり必要とは考えてねぇな」

「へぇー、脳筋とか言われてるけど意外と現実的な考えだったんだな」

「じゃぁ武凱さん。最後にこれからに向けて一言!」

「おぉ!! これからのバトル本編も活躍していくぞ!! 筋肉のねぇもやし野郎共には絶対負けるつもりはねぇからな!!!」

「おいさっきのコメントどこ行った!!」

 

 

 

 

────Q7、沖田美玲への質問。

 

「私の番ですね。というかフルネームをここで明かしちゃっていいんですかね?」

「大丈夫だ。問題があれば全て作者が悪い事になる!」

「え、えっと!! じゃぁ沖田さん質問良いですか?」

「はい何でもどうぞ?」

「えっと、質問内容が…………!!!」

「ん、どうした?」

「ご、ごめん!! この質問、吉馬が読んでもらっていい!」

「はぁ!? 何で!!」

「お願い!!」

「ったく何を躊躇って……ん? あーぁ、そういう事。じゃぁ質問行くぞ? 質問内容は『沖田さんに好きな人はいるのか?』だそうです」

「!」

「……(*ノωノ)(ドキドキ)」

「う~ん、そうですね……好きな人ですか。ハルヤさん」

「!!!!」

「それと氷牙さん」

「!?」

「他にも将君や神子さん、それに吉馬君もみんな大好きですよ?」

「あっ、はい……そうですよね( ;∀;)」

「……ハルヤ、ドンマイ」

 

 

 

────Q8、蛇目ルムへの質問。

 

「ねぇ僕、まだ本編で君らと絡んでないけど絡んじゃっていいの?」

「知らん! 全部作者のせいにするから細かい問題は俺等には関係ない!」

「はは、まぁ特別篇だしその辺は大人の事情って訳ですかね」

「ふーん、まぁどうでもいいけどね。質問どうぞ」

「はい。それでは早速質問に! 質問内容が「ルムの好きな動物は?」という事です」

「ねぇそれ誰かの質問と被ってない?」

「作者の野郎、後半で手抜きしてやがるな!! 特別篇終わったら締めとく!」

「面白そうだからそれ僕も加わっていい?」

「あぁいいぞ!」

『作者)ヤメロォ!!』

「(またどこからか作者の声が(汗))ま、まぁ一端それは置いておくとして、質問内容ですが、やっぱりルムさんは名前の通り好きな動物は蛇なんですか?」

「さすがにそこまで安直じゃないよ、蛇も好きだけど他の動物も好きだよ、例えばウサギとかも好きだし」

「へぇー、意外ですね」

「ほら、得物にされる動物程、儚い可愛さがあるっていうか」

「えっ?」

「理由は蛇道だったな」

 

 

 

 

────Q9、獅戸氷牙への質問。

 

「ふぁあ~……俺の番かよ。眠ぃなぁ」

「俺は氷帝のリーダーと絡んだ事ねぇけど、もう突っ込まねぇぞ」

「はは、まぁ早速質問に! 質問内容が「氷牙は普段何時間寝ているのか?」という事らしいです」

「んな質問か? そうだな、基本睡眠時間は12時間ってとこかな?」

「え!? ほぼ一日の半分寝てるじゃないですか!?」

「あぁ? 俺にとってはまだ足りないぐらいだし、こんぐらい普通だろ?」

「普通の人間の睡眠時間は8時間が平均だぞ?」

「はぁ? 何言ってんだよ、8時間とかまじありえねぇっての。俺は16時間ぐらい眠れてやっとすっきりするってのにその半分の時間しか寝てねぇ奴がいるとかマジ心配するわ」

「心配の言葉はそっくりそのままお返しされるぞ!」

「寝る子は育つって言うだろ?」

「限度って言葉があるだろ!」

 

 

 

 

───Q10、八鳥紫苑への質問。

 

「やっほーーッ!! ラストのオオトリ!! 満を持して俺の番だーーッ!!」

「イラッ(# ゚ω゚)」

「(吉馬、堪えて!!)」

「さぁこの有能で、完璧で、誰とでもフレンドリーなこのパーフェクトな俺様がどんな質問にも答えてやるぜ!!!」

「はいありがとうございましたー、以上で終r」

「おいおい待て待て待て!!! まだ俺何も答えてねぇから!」

「うるせーーッ!! 俺も読者もお前の質問なんか求めてねぇんだよ!!」

「おやぁ? 読者様の何が分かるっていうのかなぁ? 吉馬ちゃん♪」

「ぶっ殺すぞテメェ!!!」

「待って待って吉馬!! 頼むから堪えて!!」

「クソッ……後で作者とこいつ殺す」

「作者)なんで俺もだよ!!」

「ついでじゃ!!!」

「もう普通に会話してるし、まぁとにかく質問行くよ? 紫苑さんへの質問。「前回でシリアスな一面を見せてましたが、結局のところギャグ要員なのか、シリアス要因なのか」という事です」

「最後にメタ質問だな」

「おらさっさと答えろ、そして死ね!」

「口悪ぃぜお嬢ちゃん」

「誰がお嬢だ!! 俺は男だ!!」

「えー、質問内容の話だね」

「スルーかテメェ!」

「ぶっちゃけると俺はシリアスもでき、ギャグもできる。つまり両方の要因ができるいう有能のキャラなのだ!」

「自分で言うか普通」

「特別篇だからな、ばっちりアピールするぜ? 普段はギャグで皆様の心を掴みつつ、実は正体はこうだったという展開にもこなせてしまう!! あぁ、まさに俺って最強のキャラだと思うわー」

「究極のうざキャラだろ」

「まぁ今後とも俺の魅力を120パーセント読者様にアピーr」

「はい以上ですありがとうございましたー」

「待てって!! まだ言いたいことが100行分」

「そんなに言わせられるか!!」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「はは、色々ドタバタしてすみません。まぁとにかく以上で、10名のキャラたちによる質問でした。最後に僕宛にも質問が来てるので読みましょうかね? えっと僕宛の質問は「今後どうなりたいですか?」という事です。抽象的過ぎてなんて答えたらいいか分かんないですけど、僕はこれからも色んな人と出会ってバトルして、強くなって最強を目指せるような、いや最強のカードバトラーになりたいです! まずはチーム作りを目標にこれからも頑張って行きます! 最後まで読んでくれた皆様、ありがとうございました!! また次回、本編でお会いしましょう! これからもぜひ小説の程、宜しくお願いします!!」








いかがでしたでしょうか、今回は10話目の公開記念という事で特別篇をお届けしました。クソ茶番になってしまって申し訳ないです。キャラ数も大分増えたので、これを機に、少しでもキャラたちのアピールになればなと思った次第です。ただ魅力を伝えきれる画力がなくお恥ずかしい限りです(泣)今回のインタビューは全キャラと言う訳ではないので、また機会があれば残りのキャラたちへの質問を投げて行きたいですね、機会があれば(二回目)

質問は今回適当に決めましたが、読者の皆様からもこのキャラへの質問があれば募集……しても来るわけないですね、自分でもクソ企画だと思うので(ノД`)・゜・。


今日のアニメでは天魔神、登場しましたね。もう少し派手な効果かと思ったんですが、案外……。というか炎魔神vs天魔神と明らかにタイトルから比べてるんだから、もう少し強い効果にしてくれてもと思っちゃいました。まぁさすがに2章のX枠埋まってたので、そこまで強い効果というのはちょっと高望みしすぎましたかね。でもキキちゃんも可愛く、天魔神デッキ組みたいと思いました!次回はウロヴォリアスが効果が見れるかも!!アニメも楽しみです!!

次回は通常運行で本編更新頑張ります!!これからも応援のほどよろしくお願いします。最後に余談ですが、またいつか架空バトスピ者様とコラボしたいです(小声)




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第1章 開戦チームバトル
No01.勝利目指せ! 剣神無双乱舞


・以下注意。
誤字、プレイミスありかも。
バトル表記が人によっては分かりずらいかも。

それでも大丈夫という方はどうか温かい目で見てもらえると幸いです。発見したミスやバトル表記などのご指摘気軽にお待ちしております。







今世界で最もにぎわうカードゲーム、バトルスピリッツ。近年、これまでに無い程の盛況振りで多くのカードバトラー達が日々凌ぎを削り合っていた。

 

『ディストルクシオンでアタック!』

『ら、ライフで受ける! うわっ!!』

 

ここもまたバトスピが賑わう街の一つ、名を高天原。ここでもバトスピが繰り広げられ、バトルでは青髪の少年が扱うディストルクシオンが橙色髪の少年の最後のライフを破壊し、衝撃に思わず吹っ飛ばされる。

 

「痛ったたた……」

「アハハハハハッ! ごめんねぇ? 強くてさぁッ!」

 

どこかステージのような場所で繰り広げられるバトル、まるで大会のように周りには大勢の歓声客。ディストルクシオンの攻撃が決着を付け、バトル後に湧き起こる歓声に勝者である青髪の少年は嬉しそうに笑いながら手を振っている。

 

『さぁチームレッドドラゴンvsチームネオ、先鋒戦はチームネオ、水海アオト選手の勝利! 実況は私、犬神紅葉、解説は姉の犬神神子でお送りしております』

『はい、解説の神子でございます。初戦はあっさりと決まりましたね、アオトさんの戦略に対戦相手である輝来ハルヤさんは打つ手なしと言ったところでしょうか』

 

ステージの真ん中に設けられた実況台で語る二人の少女、解説の様子や先程のバトルのリプレイをどこから映してるのか、ステージのモニター、そしてネットを通じて全国に配信されていた。

 

『続く中堅戦、レッドドラゴン巻き返しなるか!』

 

数年の時を経て、バトルスピリッツはさらに進化し、バトルフィールドはバトルスタジアムへと姿を変え、そして今では腕に自慢のあるバトラー達はそれぞれが複数人によるチームを作り、チーム毎にランキングが付けられ、自分達が一番にならんと競い合うランキングバトルへと姿を変えていた。

 

そして続く中堅戦に先程戦った少年二人は舞台から降り、入れ違いになるように別の少年と少女がステージに上がる。

 

「龍王ジークフリードでアタックだ!」

「ダークティラノザウラー!! お願い、守って!!」

 

互いに頭突き合う二体のスピリット、ダークティラノザウラーはジークフリードを蹴り飛ばし、倒れたジークフリードの首元に喰らい付くと、そのまま破壊し、決着したバトルに安心するように少女は一息つくが、その様子に「甘い!」と少年が一喝。

 

「まだ俺のアタックは終わってない! 今度は極龍帝ジークソルフリードでアタック!」

「!」

 

ほっとしたのも束の間、直ぐに次の攻撃が仕掛けられ、少女の場には防ぐ手立てはなく、攻撃を喰らいライフが全て破壊され決着となる。

 

『レッドドラゴン、中堅戦は吉馬桜選手が勝利! そして最後は大将戦! チームリーダー同士の対決です!』

 

観客達動揺、実況の声にも力が入る。盛り上がる場の中、互いのチームリーダが前へと出ると、バトルは直ぐに開始された。

 

「オラァ! ゴッドスレイヤードラゴンでアタックだッ!! テメェのネクサスを破壊して、回復だ!」

「ディアボリカマンティスでブロック!」

 

 

続く試合は既に終盤、ディアボリカマンティスの鎌をゴッドスレイヤードラゴンは右手の盾で受け止めて弾き返すと、そのまま防いだ盾で直接ディアボリカマンティスを殴りつけ、重く鈍器のように振るわれた盾にディアボリカマンティスは地面に叩き付けられ破壊。そして続く再アタックで相手の残りライフを破壊しバトルに決着を付ける。

 

『決まりましたぁ!! チームレッドドラゴンあっという間に二連勝で見事に逆転!! お姉ちゃn────じゃなくて、解説の神子さんも一言』

『はい。チームレッドドラゴン、その実力を見せつけたという所でしょうか? 赤属性の力に見事押し切られましたね』

 

実況に合わせて観客達の声がさらに会場中に響く中、負けた対戦相手の少女は残念そうにしているが、チームリーダーは励ますように少女の肩を叩く。

 

「スグル……ごめん。私、勝てなかった」

「アカネ、気にするな。次は勝とうぜ」

「うん」

 

アカネと呼ばれる大人し気な金髪の少女にリーダーであるスグルは優しく頭を撫でながら励ますが、その様子を傍観している青髪の少年、アオトは頬を膨らませ、気に入らないようにムッとした様子。

 

「ったく、スグルもアカネも何やってんだよ、ボケッ! 折角僕が一勝したのに無意味じゃんか!」

「はいはい、悪かったな。お詫びになんか美味い物でも奢ってやるよ」

「言ったね? お詫びなら僕、遠慮しないからな!」

「嘘じゃないって、ほら早く行こうぜ?」

 

チームリーダーである緑髪の少年はまるで兄のように二人を引っ張り、その場を後にする三人、一方で唯一チームの中で敗戦してしまった少年、輝来ハルヤは俯きながらデッキを見つめ、「また勝てなかった」と静かに呟くが……。

 

「何泣いてんだよ、弱虫」

「!!」

 

その辛辣なコメントに「泣いてなんかないよ!」とすぐさま否定して振り返り、彼に言葉を掛けたのは、中性的な顔立ちにハルヤと同じぐらい低い背の少年、ハルヤと同じくレッドドラゴンのチームメンバーで名前は吉馬桜。

 

「いつまでも負け続き、いつになったら勝てるようになるんだよ?」

「も、もっと強くなるよ!」

「それって、何時になる話だ?」

 

幼い見た目とは裏腹の毒舌、ハルヤもその言葉に食い下がって見せるがその毒舌には押され気味。そんな言い合う二人だったがそこへ。

 

「コラァ! チビ!」

「「!!」」

 

突然背後から響き、思わず耳を紡ぐ程の大きな怒声。それにハルヤはビクッと肩を震わせ、恐る恐る体を振り返らせると、そこには赤髪の不良のような見た目の少年の姿が。

 

「り、リーダー……!」

「今日もテメェだけ黒星だ! 分かってるか?」

「はい、ごめんなさい! リーダー!!」

 

彼がリーダーと呼ぶ男、呼ばれた名の通り彼こそレッドドラゴンのチームリーダーにして、名を火龍エンザ。威圧するような彼の言葉にハルヤは怯えながらも、声だけは張り上げ必死に謝罪し、ハルヤの様子に少年は少しだけため息をつきながら、謝るハルヤの頭に手を置く。

 

「勝てねぇなら勝てるようになるまで付き合ってやる。だから帰ったら特訓だ。しっかり覚悟しとけよ?」

「ッ!! リーダー、ありがとうございます!」

 

不良のような見た目ながら、彼なりにハルヤを気遣う思いはあるのだろう。それが通じたのか、先程まで怯えていた表情を一変させて明るく返事を返し、エンザも笑いながら「じゃぁ猛特訓だからな」と付け足した。

 

「リーダーが言うなら、俺も特訓に付き合ってやるよ」

「吉馬、ありがとう!」

「か、勘違いすんなよ。お前の勝率が低いと足を引っ張られるってだけなんだからな!」

 

照れ臭そうにそっぽを向きながら言い放つ吉馬。言い争いながらもレッドドラゴンもまた、それなりの絆があるかのように三人の様子を同じくチームメイトの面々も見ているが、そこへ会場の空気を変えるかのように、突然実況の言葉が響く。

 

『さぁチームレッドドラゴンvsチームネオ! 勝利したのはチームレッドドラゴン! これによりランキング上位を見事に防衛することに成功しました!!』

 

マイクを握りしめ、声を大に語る紅葉の言葉。それに咄嗟にハルヤ達はステージのモニターに視界を向けると、画面にはまるでリストの様に上から順チーム名が並べられ、チームレッドドラゴンとチームネオの名前がそれぞれ同じ列に並べられていたかと思うと、チームネオの名前は下に降格していく。

 

『これでチームレッドドラゴン、チームランキング7位を維持! 他の下位チームにとっては立ちはだかる大きな壁となり、そしてさらに上位を目指す勢い! 他のチームも負けてられませんよ!』

 

湧き上がる観客達をさらに煽る様に、声を大に叫ぶ紅葉だったが、そこへ「姉さん!」と実況席に駆け寄る一人の姿が。

 

「コン太、どうかしました?」

「新しい情報掴んできたよ、はいこれ」

 

小学生ほどの小さな少年、紅葉達の弟なのか、駆け寄り神子に一枚の手紙を渡すと、それを手に取って内容を一通り読み終えると、面白そうに口角を上げる。

 

「紅葉、これを!」

「!!」

 

自分が読み終えた手紙を今度は紅葉に手渡すと、彼女もまたその内容に一瞬驚きつつ、面白そうに口角を上げた。

 

『さぁここで新情報です!! 何と先程別会場にて行われたバトルにてランキング昇華したチーム!! それが何とレッドドラゴンと同じ7位として同位に並んでしまいました!!!』

「「「!!」」」

『さぁ既にこの会場にも足を運んでいるみたいなので、大々的に発表しちゃいましょう!! レッドドラゴンの同位に並んだ強豪チーム!! チームリーダー浪川海斗率いる、チーム海皇です!!』

 

紅葉の声と共にステージ端に当てられるスポットライト、全員の視線が向けられた先には、革ジャン姿にエンザと同じ不良っぽい見た目の少年と、まるで大の大人のような大柄で筋肉質の少年の二人組がいた。

 

「ヒャッホーッ!! またもチーム上位に上り詰めたぜ!!」

「フンッ!! 当然だ! 立ち塞がる奴なんか俺様一人で十分蹴散らせるぜ!」

「あぁ!? そりゃ俺が必要ないって言いてぇのか?」

「五月蠅ぇッ! 文句あっか?」

「上等だ、いつでもやってやんよ!!」

 

人目に憚らず口論を始める二人、周りの人は二人の迫力に気圧され、何も言えず唯その口論を傍観するしかなかったが、その二人に対して、突如『黙れ!』、とその場の全員を怯ませるように響く声。

 

「「きゃ、キャプテン!?」」

 

先程まで周りを気にせず揉めていた二人が一瞬にして、声を低く恐る恐る振り返ると、そこにいるのはサメを模した髪型に左目の傷の少年、二人の言動からその男がリーダー格なのは明らかであり、彼こそ海皇のチームリーダー、浪川海斗だった。

 

「毎度毎度俺の手を焼かすんじゃねぇ、とっとと後ろに下がってろ」

「「へ、ヘイ!! キャプテン!!!」」

 

その言葉に二人とも明らかに圧倒され、言われるがまま身を竦めて後ろに下がると、海斗はそのまま歩き出すと、ステージ上にいるエンザ達の前まで歩み寄る。

 

「よぉエンザ」

「おぉ久々だな海斗、テメェ等が俺等と対に並ぶとは思ってもなかったぜ?」

「テメェ等がゆっくりしてるもんだからな、追いつくのは簡単だったぜ?」

 

以前から面識があるように会話を交わす二人、だが一触即発に成りかねない互いの言葉に観客やチームメイトたちは見ているだけで冷や汗を掻く程だった。

 

「気を抜いてると直ぐにテメェ等も追い越す! 俺等は鮫と一緒だ! 得物に喰らい付けば最後まで離さねぇぞ?」

「ハッ! その程度かよ? テメェ等が鮫なら俺等は龍だ! 龍は鮫と違って噛み付くどころか、得物の息の根そのものを止めるぜ?」

 

互いに一歩も引かずに言い争う両者、だが海斗は食い下がって見せるエンザに対し、その反応が分かっていたように笑って見せた。

 

「なら精々その意気で強がってろ、けど忘れんなよ? 油断してればいつでもその首貰いに行くぞ!」

「やれるもんならやってみろ!! 返り討ちにしてやるからよ!!」

「フン、行くぞ野郎共」

「「ヘイ! キャプテン!!」」

 

出口に向けて振り返ると、その場立ち去って行き、後の二人も追い駆けるようにその後を追い、何とか一触即発の事態にはならなかった事に、会場中の誰もが一安心するように大きく息を吐く。

 

『え、えぇ~っと、気を取り直しまして、チーム海皇vsチームレッドドラゴン、この2チームによるランキング争いは近い内に行われる予感です!! 私達バトルチャンネルオンライン、通称BCOではこの二チームによる激闘の詳細をスクープして行きます! それではまた次回!』

 

緊迫した空気に紅葉も気まずそうにするが、それでも気持ちを切り替えて状況を伝え、実況を締め括る。

 

「さぁ紅葉、コン太帰りますよ? 次はもっと白熱した実況を届けないとならないみたいですよ」

「分かってるよ、お姉ちゃん」

「はい姉さん」

 

実況解説を終えると、三人もまたその場を後に立ち去って行き、観客達もバトルが終わり、会場から立ち去り始める。

 

「あの野郎、大分俺等を挑発してくれましたよね?」

「ヘっ、挑戦してくる奴は誰だろうと勝つだけだ。向こうがやる気なら望むところよ! いいか、吉馬! 輝来!」

「「!」」

「何時あの野郎が来てもいいように、より気合入れて特訓だ!! 負けは許さない、そう覚悟してバトルしろよ!!」

「「はい!」」

 

三人もまた会場を後に、観客達と同様その場を立ち去って行くのだった。

 

 

 

 

***

 

 

 

「じゃぁ行くぞ!! 鬼武者ライザンでアタック!」

「ら、ライフで受けます!!」

 

あれから三日後、この前と違うステージ上でバトルを繰り広げるエンザとハルヤ。エンザの攻撃指示に甲冑を身に纏う竜、ライザンは駆け出し、展開されたライフに刀を振り下し破壊する。

 

「うわあっ!!」

 

最後のライフが砕け決着となり、衝撃に吹っ飛ばされるハルヤ。バトルが終わり、「またか」とため息をつきながらエンザはステージから降りる。

 

「また俺の勝ちだな、いや他の対戦相手でも結果は同じだったか」

「うぅ……」

 

この三日間、エンザをはじめレッドドラゴン内でのチームメンバー達と繰り返しバトルを行ってきたが、それでもただ一人ハルヤだけは思うような戦績を残せず、負け続きとなっていた。

 

「やっぱり、僕なんかじゃ勝てないですよ」

「俺等のチームに入った以上、そんな生温い事は言わせねぇぞ!!」

「!」

 

後ろ向きなハルヤの発言にエンザは顔色を険しくさせて一喝。そして表情を戻し、そのまま続けて行く。

 

「言ったろ? 勝てねぇなら勝てるようになるまで付き合ってやるって。根詰め過ぎなくていいから、勝つことだけ、前を向くことだけ考えてろ!」

「……はい。リーダー」

「まっ、一端休憩にするか。俺はちょっとカードでも買いに行ってくる」

「リーダー、なら俺も一緒に行きますよ?」

 

休憩、とどこかに行こうとするエンザに吉馬も着いて行き、二人は一度その場を後にすると、輝来もまた気分転換にと、会場を後にして行く。

 

 

 

 

「はぁー……、どうして勝てないんだろう」

 

近くの公園まで宛もなく散歩するハルヤ。ため息をつきながら自分の勝率の悪さに悩みながら、ふとデッキを取り出しその中の1枚のカードを抜き取る。

 

「リーダーはあぁ言ってくれたけど、やっぱり僕なんかじゃ皆に追いつけないよね。未だにキースピリットもまともに召喚できないぐらいだし」

 

取り出した1枚、Xレアカードである「剣神無双リューマンゴッドソード」と書かれたカードを眺めながら、呟くハルヤ。元々彼がバトスピを始めたきっかけはこのカード手に入れ、バトルで使ってみたいという単調な理由だった。しかし、実際はその好きなカードを呼び出す前に負けてしまう事がほとんどで、その事を思い返すと余計にため息が零れる。そんな暗い様子の彼だったが、突然そこへ強い風が吹いたかと思うと、風に思わず手に持っていたカードを離してしまい、風に煽られたカードどこかに向けて飛んで行ってしまう。

 

「あっ!!」

 

慌ててカードを追い駆け、駆けだすハルヤ。暫くして風が止むと一人の男性の前へとカードは落ちて行く。

 

「ん?」

 

目の前に落ちるカードを不思議そうに拾い上げる男性、すぐさま「すいません!」と男性の前にハルヤは慌てて駆け寄って行く。

 

「あー、もしかしてこれ君の?」

「はい、そうなんです。風で飛ばされちゃって」

「なるほどね、剣神無双ゴッドソードか。中々いいカードだね、もしかしてキースピリットだったりする?」

「えぇまぁ。もしかしてバトスピ、詳しいんですか?」

「ざっと10年前からかな、俺もやってるけどこう見えても結構強い方だと思うぜ」

 

見た目の的に恐らく20代ぐらいの男性だろうか、まだ少し幼さの残る子供のような笑顔で、自慢げに笑いながら語る男性。 

 

「いいなー。僕なんか弱いから強い人が羨ましいです」

「おいおい、君だってバトルやってるんだから強さは羨む物じゃなく、目指す物だろ?」

「はは、そうなんですけど、僕全然勝てなくて」

「そんな暗い表情してると、キースピリットだって浮かばれないぞ?」

「えっ?」

「バトルっていうのは、強いか弱いかじゃなくて自分の使うスピリットを信じるか信じきれないかっていう事だと俺は思う」

「スピリットを、ですか?」

「だって一緒に戦う仲間なんだぜ、信頼するのは当然だろ? まぁ昔、周りに偉そうに言ってたらから、もう俺の中でポリシーみたいになってる部分があるけど」

 

恥ずかしそうに語る男性だったが、その言葉はハルヤの中でどこか引っ掛かるような気がした。

 

「スピリットを、信じる。ですか」

「バトルはスピリットを信じて戦う。それだけだ」

 

そう言ってその男性は、リューマンゴッドソードのカードをハルヤに手渡すと、何かを思い出したように「あっ!」と慌てて懐を探り、二枚のカードを取り出す。

 

「よかったらこれ君にあげるよ」

「えっ!? そんな貰えないですよ!」

「気にするな、俺じゃ使いこなせないし。それなら君に使ってほしいと思ってさ。このカード達はきっと君と君の相棒を支える力になると思うからさ」

「で、でも!!」

「まっ、いいから受け取って────」

 

そこまで言い掛けた瞬間、また何かを思い出したようにふと時計を見る。

 

「げっ! やばい遅れる!!」

「何か用事ですか?」

「デート、って言われたけど、まぁ幼馴染と会うだけなんだけどな。悪いけど俺はこれで!」

「あ、あの……!!」

「まぁ君が強くなって進むならまたいつか会えるだろうぜ! それじゃあな!!」

 

慌てたように会話を切り上げると男性はすぐさまその場を立ち去って行き、結局男性に押し付けらえた二枚のカードを確認してみる。

 

「「リューマンゴッドブレイカー」と「リューマンライトニング」、こんな強いカード貰っちゃって、申し訳ないな」

 

MレアとXレアのカード、そんな2枚のカードを貰ってしまった事に罪悪を感じつつ、先程の男性の姿は何故だかハルヤにとって見覚えがあった。

 

「あの人どっかで会ったというか、見たというか」

 

靄が掛かったように思い出せないが、「また会える」とも言っていたので、その時にまたお礼を伝えればいいだろう。そう考える彼だったが、そこへ突然。

 

『おいハルヤ!!』

「!」

 

自分を呼ぶ声、だがその声はまるで慌てたように息を切らしながらの叫び。振り返ると、そこにはレッドドラゴンのチームメイトの少年の姿があった。

 

「ど、どうしたの!?」

『ハルヤ、エンザさんか、吉馬さん。どっちか見てねぇか?』

「見てないけど、何があったの?」

『それが大変なんだよ! チーム海皇の奴が!』

「!?」

 

明らかに唯事ではない、「いいから来い!」という言葉にハルヤは頷き、すぐさまスタジアムまで引き返すと、そこにはステージでバトルを繰り広げるレッドドラゴンのメンバーの姿があった。

 

『行きな! 海王神龍トライポセイドスでアタック!』

『ライフだ!』

 

バトルしているのは、以前、浪川の後ろに付き添っていたあの二人組の内の一人、革ジャン姿の少年だった。トライポセイドスはその少年の指示に腕の矛を振り下し、相手の最後のライフを砕き吹っ飛ばす。

 

『ぐわああああッ!!』

「ヒャッホーッ! これで10人抜き!! レッドドラゴンってのはこの程度なのかよ、オイ!」

 

勝利した少年は高らかに声を荒げながら周りの挑発し、既に多くのチームメンバー達はその少年の前に敗北を重ねていた。

 

『ぐっ、テメェ卑怯だぞ! リーダーや吉馬さんがいない隙を狙って!!』

「卑怯もラッキョウも大好物だぜ!! ヒャハハハッ!」

 

悔しそうに叫ぶ少年の言葉を足蹴に、歪んだ笑い声を上げながらさらに続けて行く。

 

「それに俺等のキャプテンはテメェ等に言ってたよな? 油断すればいつでも首を貰いに行くって忠告した筈だ!」

『ぐっ!』

「それなのに隙を見せたテメェ等が馬鹿なのよ! テメェ等相手にキャプテンが出るまでもねぇ、チーム海皇の一番槍こと、この井澤バン!! 俺一人でテメェ等なんか幾らでも相手できるぜ!!」 

 

高らかに名乗りながら、再度彼はデッキを構え周りを眺めながら「さぁ次は誰だ!」とデッキを構え、挑発するように全員を煽る。

 

「誰もいなきゃこのスタジアムはチーム海皇の物って事で決まりだよな?」

 

悔しそうに拳を握りしめながらも、多くのバトラーがバンの前に敗れ、既に挑んでも無駄だと悟っているのか名乗り出ようとする者はいない。そんな中、唯一人。

 

「それなら僕がやる!!」

『『!!』』

 

デッキを構え、名乗りを上げるハルヤ。チームメンバー達がハルヤが名乗りを上げた事に動揺する中、バンは自分に挑戦する相手を見た瞬間、思わず笑い出す。

 

「プッ、アハハッハハハッハ!! テメェが相手かよ? 知ってるぜ、確か黒星記録中の輝来ハルヤだったよな? 俺に敵うとでも思ってんのか!」

『そうだぜ、ハルヤ! お前じゃ無理だ!!』

 

馬鹿にしたように笑うバン。チームメンバー達も心配そうにその挑戦を止めようとするが、それでもハルヤの意思は変わらない。

 

「だってこのままじゃ言いなりだよ!! 勝てないかもしれないけど、僕もチームメンバーとしてせめて足掻きたい!!」

『!』

 

決意を固めた言葉にチームメンバー達はそれ以上止めようとはせず、バンをハルヤが本気で挑戦しに来ていることが分かったのか、笑い声を止める。

 

「意気込みだけは褒めてやる。まぁどの道テメェがラストだ。さっさと始めるか!」

「!」

 

バンの言葉に、ハルヤもステージへと上がりその様子を、傍観する影。

 

 

 

 

「へぇー、あの子がやんのか。どんな展開になるかはまぁ高みの見物で」

 

静かに呟きながら、ハルヤやレッドドラゴンのチームメンバー達の輪に入ろうとはせず、ただ静かにスタジアムの観戦席でその様子を傍観するゴーグル付けた一人の男性。その男性の後ろから何時の間に来ていたか、神子や紅葉、コン太の三人の姿があった。

 

「おっ! 早い早い、もう来たのか?」

「えぇ。当然スクープと聞けば飛んでいきますよ? 情報提供感謝しますよ、紫苑さん」

 

神子が紫苑と呼ぶ男性、紫苑と呼ばれた男はその言葉に観客席に寝転びながら「いいよ、いいよ」と軽い返事を返す。

 

「その代わりお礼は今度俺とのデートで」

「それは丁重にお断りします」

 

にっこりと笑いながら言葉を返す神子に「冷てぇなー」と残念そうに呟く。

 

「もう何回フられたのか分かんないんだけど、どう思う?」

「あはは、私はノーコメントで」

「僕も姉さんと同じです」

「はいはい、余計な雑談はそこまで。紅葉、コン太、早速実況準備しますよ?」

 

「はい」と頷く二人、すぐさま解説台を設け、準備を始める二人。それを見ながら、彼女は何か気になった様子で、寝転ぶ紫苑を見る。

 

「ところであなたは助太刀に行かないんですか?」

「俺にそう言うのなら神子ちゃんが助太刀すれば?」

「私は実況を務める上で公平な立場でいたいので、どちらかに肩入れする訳にはいきません。けどあなたは、レッドドラゴンのリーダー、火龍エンザさんとは親友なのでしょ?」

「確かにエンザとは仲良いけど、助太刀する程の義理はねぇよ。それに俺は基本バトルは見学派だしな」

 

喰えない態度を見せる紫苑。神子もあまり深入りする様子はなく、実況開設の準備を終えた紅葉達の様子に気づくと、紫苑から離れ解説台へと座る。

 

『さぁ皆さま! バトスピチャンネルオンライン、通称BCOより! 今回は何と、チーム海皇とチームレッドドラゴンでの対立に動きがあったので、お知らせです! 前回のチーム同位の発表からわずか三日! そして今日チーム海皇メンバーの一人、井澤バン選手が早くもレッドドラゴンに勝ち込みに現れました!!』

 

声を大に語る紅葉、その様子にバンも気づいたのか、「相変わらず嗅ぎ付けるのが早ぇな」と言葉を吐き捨てる。

 

「まっ、全国に俺の勝利を流すいい機会だぜ!」

 

ステージに上がるハルヤだったが、バンにとっては既にやる前から結果を見据えていた。そして目の前に立つハルヤの姿に「始めるぞ!」と叫ぶ。

 

『さぁ既に多くのレッドドラゴンのメンバーを破ったバン選手、次に迎え撃つのは、何と輝来ハルヤ選手です!!』

『彼の公式記録での勝利はまだありません、ハルヤ選手しかしそれに負けず、意地を見せてほしいものです』

『しかし相手選手と比べますと、ハルヤ選手には厳しい相手かもしれません。はしてどうなる事やら』

 

実況も盛り上がる中、二人はそれに構う様子は無くステージに立ち、デッキを構える。

 

「「ゲートオープン!! 界放ッ!!」」

 

宣言と同時に始まるバトル、「俺から先行だ!」とバンの台座が開始を告げるように輝く。

 

 

 

 

[01ターン.バンside]

[スタートステップ]

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「メインステップだ! ミノタコルスを召喚するぜ!!」

 

[リザーブ]4個→0個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→4枚。

 

【ミノタコルス】3(1)青、スピリット、異合。

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(3)BP5000。

Lv.1、Lv.2『このスピリットのアタック時』

相手は白のバーストを発動できない。

【連鎖:条件《赤シンボル》】

(自分の赤シンボルがあるとき、下の効果を続けて発揮する)

[赤]:自分はデッキから1枚ドローする。

 

呼び出されるのは牛のような外見の青のスピリット、ミノタコルス。先行の為、攻撃はできないが、それでもミノタコルスは今すぐにでも暴れたいのか、刺又を振り回しながら戦闘態勢に入っている。

 

[フィールド]ミノタコルスLv.1((S(ソウルコア)1))BP3000。

 

「これでターンエンド」

 

 

 

 

[02ターン、ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「メインステップ! リューマンフェニックを召喚!」

 

[リザーブ]5個→1個。

[トラッシュ]0個→3個。

 

【リューマンフェニック】3(2)赤、スピリット、竜人。

Lv.1(1)BP2000、Lv.2(3)BP5000、Lv.3(6)BP6000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3

自分のスピリットが2体以下の間、このスピリットはLv.3として扱う。

Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

自分はデッキから1枚ドローする。

 

[フィールド]リューマンフェニックLv.1((S1))BP2000。

 

「行くよ! アタックステップ!!」

「へっ、攻撃した所でBPは所詮2000だろ? 向かってきても返り討ちにできるぜ!」

「嫌、リューマンフェニックの効果!」

「!」

「僕の場のスピリットがリューマンフェニックを含めて2体以下なら、このスピリットは常にLv.3として扱われる!!」

「何!?」

「これでブロッカーも怖くない! リューマンフェニックでアタック! アタック時効果で1枚ドロー!」

 

[手札]4枚→5枚。

 

自身の効果で赤いオーラを纏い力を高めるリューマンフェニック。翼を羽ばたかせながら果敢にバンへと迫って行く。

 

「チィッ! ならライフで受けてやるよ!!」

 

展開されるライフのバリア、リューマンフェニックはそのまま両腕を一気に振り下し、その腕の爪でライフを引き裂き破壊する。

 

[バンside]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]0個→1個。

 

『おぉーーっと!! ハルヤ選手いきなり先制!! バン選手のライフを砕いた!!』

『バン選手、ミノタコルスで防ぎたくてもリューマンフェニックに勝てないとみて、ライフで受けるしかなかったようですね』

 

嬉々として場の状況を語る紅葉達。対するバンは先制されてしまったことに、少しだけ苛立ったように舌を打つ。

 

「ケッ! たかだかライフ1つ削ったぐらいでいい気になんなよ? まだ勝負は長いんだぜ?」

「……ターンエンド」

 

 

 

 

[03ターン.バンside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]1個→4個。

 

「メインステップだ! ミノタコルスをLv.2にアップ! さらに戦竜エルギニアスと戦闘獣バビルーザの2体を連続召喚だ!」

「!」

 

[リザーブ]4個→0個。

[手札]5枚→3枚。

 

【戦竜エルギニアス】1(赤1 青1)青、スピリット、戦獣。

Lv.1(1)BP1000、Lv.2(3)BP3000。

Lv.1、Lv.2

このスピリットは赤のスピリットとしても扱う。

 

【戦闘獣バビルーザ】1(1)青、スピリット、戦獣。

Lv.1(1)BP1000、Lv.2(2)BP3000、Lv.3(5)BP5000。

 

[フィールド]ミノタコルスLv.2((S1)2)BP5000、戦竜エルギニアスLv.1(1)BP1000、戦闘獣バビルーザLv.1(1)BP1000。

 

連続で呼び出されるスピリット、駆けだす仕草を取りながら頭部の角を構える牛を模したようなスピリット、エルギニアス。そして同じく牙を構えて何時でも突っ込むように唸る猪を模したようなスピリット、バビルーザ。

 

「一気に並べられた!?」

「ハッハ! テメェと俺の格の違いを思い知らせてやるぜ! アタックステップ! ミノタコルスでアタックだ! 【連鎖】の効果、一枚ドローするぜ!」

 

[手札]3枚→4枚。

 

先程のお返して言わんばかりにアタックを仕掛け、ミノタコルスは待ってましたと言わんばかりに得物を振り回しながら、勢いよく駆けだしていく。

 

「ライフで受ける!!」

 

ハルヤに防ぐ術は無く当然ライフで受けるしかない。ミノタコルスはバリアに武器を力一杯叩き付けると、バリアを破壊してしまう。

 

「ぐあっ!!」

 

[ハルヤside]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]1個→2個。

 

「まだ終わんねぇぞ!! 次はお前等だ!! エルギニアス、バビルーザ行って来いッ!!」

「!!」

 

攻撃の手を緩めることなく、今度は二体に指示を出すとほぼ同時に駆けだすエルギニアスとバビルーザ、その攻撃に対しても防ぐ術は無く展開されたバリアに最初はエルギニアスが突っ込み、自慢の角を突立て、そして間髪入れずに今度はバビルーザが大きな牙を突き刺し、連続してライフを破壊していく。

 

「うわああッ!!」

 

[ハルヤside]

[ライフ]4→2。

[リザーブ]2個→4個。

 

『何とハルヤ選手、序盤にしてもうライフを3つ失ってしまった!!』

『バン選手の真骨頂は速攻、ブロッカーを残さなかったことが裏目に出ましたね』

『ハルヤ選手、これは厳しい!! 早くも勝負は決まってしまうのでしょうか!!』

 

「どうよ、見たか! これがお前と俺の差よ! テメェみたいな弱い奴に俺が負ける訳がねぇだろ?」

「ッ!!」

 

一気にライフを削られて逆転されてしまい、余裕を見せるバンに対しハルヤは当然プレッシャーを感じてしまう。

 

「(どうしよう、やっぱり僕なんかが勝てる訳がないよ)」

 

押され気味の状況に思考も次第に後ろ向きになってしまう。チームメイト達もそんなハルヤの様子を察してか、バトルの行方に不安を感じてしまう。

 

”バトルはスピリットを信じて戦う、それだけだ”

 

「!」

 

暗い方向へ思案するハルヤだったが、突然思い出したように脳裏に響くあの男性の言葉。その言葉を思い出した瞬間、何故だか先程のまでの暗い思考が一瞬にして吹き飛ぶような気がした。

 

「(そうだ、まだ勝負は終わってないし、スピリットを信じきれてない。スピリットを信じて、最後まで戦うだけだよね!!)」

 

 

 

 

[04ターン.少年side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

[ドローステップ][手札]5枚→6枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]5個→8個。

 

 

「メインステップ! リューマンクロウLv.2で召喚。さらにもう一体、閃光の如く駆けろ! リューマンライトニングをLv.3で召喚!!」

 

[リザーブ]8個→0個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]6枚→4枚。

 

【リューマンクロウ】0(0)赤、スピリット、竜人。

Lv.1(1)BP1000、Lv.2(2)BP2000、Lv.3(5)BP4000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3【スピリットソウル:赤】

自分がアルティメットカードを召喚するとき、このスピリットに赤のシンボル1つを追加する。

 

【リューマンライトニング】5(赤2 極1)赤、スピリット、竜人。

Lv.1(1)BP5000、Lv.2(2)BP7000、Lv.3(3)BP10000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『お互いのアタックステップ』

系統:「新生」/「竜人」を持つ自分のスピリットが相手によって破壊された時、自分の手札にあるバースト効果を持つ赤のカード1枚を、バースト条件を無視して発動できる。

Lv.3『このスピリットのアタック時』

相手スピリットすべての『このスピリットの破壊時』/『相手によるこのスピリットの破壊時』効果は発揮されない。

 

[フィールド]リューマンフェニックLv.1((S1)BP2000、リューマンクロウLv.2(2)BP2000、リューマンライトニングLv.3(3)BP10000。

 

最初にフィールドに出現する小さな龍、リューマンクロウ。そして次に上空にまるで天の川の様に光る道が出現したかと思うと、その道を駆けながらフィールドに飛び降りる龍、リューマンライトニングが姿を見せる。

 

「(あの人から貰ったカードの1枚、信じて使いこなして見せる!)」

 

出現したリューマンライトニングの姿に静かに決意すると、そのまま「アタックステップ」と、コールする。

 

「リューマンライトニングでアタック!」

 

まるでフィールドを滑るかのように猛スピードで駆け出すリューマンライトニング、その姿に流石にバンも一瞬怯んでしまう。

 

『さぁバン選手、先程フルアタックしたせいでブロッカーは残っていません』

『攻めすぎるのも考え物という事ですね』

 

「五月蠅ぇ実況だ! 望み通りライフで受けてやるよ!」

 

展開されるライフ、リューマンライトニングはバリアの手前で飛び上がると、そのまま宙返りで勢いをつけ、バリアに渾身の踵落としを炸裂させて蹴り砕く。

 

「ぐおッ!!」

 

[バンside]

[ライフ]4→3。

[リザーブ]0個→1個。

 

流石にこれまでとは違い、リューマンライトニングの繰り出す重い一撃に応えたのか、思わず仰け反るが、それでもまだライフを残っており、攻撃に耐えきって見せた。

 

「これでターンエンド」

 

 

 

 

[05ターン.バンside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]1個→2個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][フィールド]ミノタコルス、戦闘獣バビルーザ、戦竜エルギニアス回復。

 

「足掻いたところでこのターンで終わらせてやるぜ! ミノタコルスをLv.1にダウン。さぁ出ろ! 俺のキースピリット!」

「!」

「巨大な力で敵を制圧、粉砕しろ! 巨人大帝アレクサンダーを召喚だ!!」

 

[リザーブ]4個→0個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→4枚。

 

フィールドを揺るがす程の大きな足音を響かせながら、フィールドへと現れるスピリット、アレクサンダー。巨人大帝の名の通り、等身ほどの槍を軽々と掲げるその姿は巨大な王としての風格を現している。

 

【巨人大帝アレクサンダー】6(3)青、スピリット、闘神/勇傑。

Lv.1(1)BP6000、Lv.2(5)BP10000。

Lv.1、Lv.2【強襲:2】『このスピリットのアタック時』

このスピリットは、ターンに2回まで、自分のネクサス1つを疲労させる事で回復できる。

Lv.2『このスピリットのアタック時』

コスト4以下の相手スピリット1体を破壊し、相手のデッキの上から、その破棄した相手のスピリットのコストと同じ枚数破棄する。

 

[フィールド]巨人大帝アレクサンダーLv.1((S1))BP6000、ミノタコルスLv.1(1)BP3000、戦竜エルギニアスLv.1(1)BP1000、戦闘獣バビルーザLv.1(1)BP1000。

 

『出たーーッ!! Xレア級のスピリット、アレクサンダー!! バン選手勝負を決めに来たか!!』

『ハルヤ選手のライフは2つ、ブロッカーは2体。対するバン選手は4体のスピリット。フルアタックされればライフを一気に削られかねません』

『という事はハルヤ選手! これは絶体絶命!!』

 

「端から俺とお前との勝負結果なんて分かり切ってたんだよ!! 所詮レッドドラゴンの奴等なんて、俺達チーム海皇に勝てる訳がねぇ!」

「そんなの、まだやってみないと分からないよ!!」

「じゃぁやって見せてやるよ!! アタックステップ! どの道お前はここで終いだ!! バビルーザ、行け!!」

「ライフで受ける────ッ!」

 

[ハルヤside]

[ライフ]2→1。

[リザーブ]0個→1個。

 

再び牙をバリアに突立ててライフを砕き、ライフは残り一つにまで追いつめられてしまい、王手を掛けた事にバンは勝利を確信するように笑って見せる。

 

「さぁ次だ! ミノタコルスでアタックだ! アタック時効果の【連鎖】! 1枚ドロー!」

「リューマンクロウでブロック!」

 

[Battle]ミノタコルスLv.1(1)BP3000vsリューマンクロウLv.2(2)BP2000。

 

激突する二体のスピリット、ミノタコルスは刺又をリューマンクロウに突き刺そうとそのまま得物で突くが、リューマンクロウは小さいながらも、身軽な動きで得物を裂け、そのまま飛び上がると、ミノタコルスの頭上を取り、両腕の爪を振り被る。しかし、ミノタコルスはそれに対し、迫るリューマンクロウに直接頭突きで吹っ飛ばすと、リューマンクロウは吹っ飛ばされ、破壊されてしまう。

 

「ヒャッハー! 相手にもならなかったな!! これで終わりだぜ!!」

 

バンの指示前から既に動けるように構えるエルギニアスとアレクサンダー。しかし、彼が攻撃しようとするその瞬間、リューマンライトニングは突然吠えだす。

 

「リューマンクロウの犠牲は無駄にはしない!! 「竜人」を持つリューマンクロウが破壊されたことで、リューマンライトニングの効果を発揮!」

「!?」

 

咆哮するリューマンライトニング、その声に呼応するようにハルヤの手に持つカードの一枚が輝きだす。

 

「相手によって破壊された時、リューマンライトニングの効果で手札にあるバースト効果を持つカード1枚を、バースト条件を無視して発動させる!」

「何だと!?」

「手札の「リューマンゴッドブレイカー」のバースト条件を無視して、発動させる!」

「!!」

 

【リューマンゴッドブレイカー】8(4)赤、スピリット、竜人。

Lv.1(1)BP6000、Lv.2(3)BP10000、Lv.3(5)BP15000。

【バースト:自分のライフ減少時】

BP10000以下の相手のスピリット1体を破壊する。この効果発揮後、自分のアルティメットがいる時、自分はデッキから1枚ドローし、このスピリットカードを召喚する。

Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

自分の手札にある、アルティメットカード1枚か、系統:『竜人』を持つスピリットカード2枚を破棄することで、このスピリットは回復する。

 

「バースト効果で戦竜エルギニアスを破壊だ!」

 

炎が龍の形を形成しその炎はまるで意思を持つかのように構えると、戦竜エルギニアスに向けて飛び出しそのまま勢いよく蹴り上げ、突然の攻撃に防ぐ術は無く、吹っ飛ばされて破壊されると炎の龍もその場から消滅する。

 

[手札]4枚→3枚。

[バースト]リューマンゴッドブレイカー。

 

『何とハルヤ選手!! ここでカウンターだッ!!!』

『今の反撃は見事でしたね、アタッカーを見事に破壊され、バン選手はこれでフルアタックしてもライフを削り切れません』

 

「(ぐっ! こいつ、俺にカウンターを悟らせねぇようわざとリューマンゴッドブレイカーをバーストセットしなかったのか!)」

 

悔しそうに歯軋りをしながらもまだ勝負は続いている。

 

「いい気になるなよ、テメェのライフはあと1つ! 次こそは決めてやる!! 俺はこれでターンエンドだ!」

 

 

 

 

[06ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]3個→4個。

 

「ドローステップ……!」

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

 

引いたカードに思わずハルヤの顔つきが変わる。それはこれまでハルヤがずっとバトルで使う事を待ち望んでいた「剣神無双リューマンゴッドソード」のカードだった。

 

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]4個→7個。[フィールド]リューマンライトニング回復。

 

「メインステップ! リューマンライトニングをLv.1にダウン!」

 

レベルが下がり、項垂れるように肩を落とすリューマンライトニング。だがレベルダウンの代わりにリザーブにあるコアを確認し、手札にあるスピリットの姿を見ながら決意するように前を見据える。

 

「天下切り裂く勝利の剣! 太陽の如く燃え上がれ! 剣神無双リューマンゴッドソードを召喚!!」

 

フィールドに突如燃え広がる炎、余りに高温の炎は他を全く寄せ付けずにいるが、高温の炎の中で光る眼光、そして次の瞬間、周囲の炎を一閃、携えた剣の一振りで周囲の炎を掻き消し、剣神無双リューマンゴッドソードがその姿を現す。

 

[リザーブ]9個→1個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]4枚→3枚。

[フィールド]剣神無双リューマンゴッドソードLv.3(5)BP10000、リューマンライトニングLv.1(1)BP5000、リューマンフェニックLv.1(1)BP2000。

 

「ずっと会いたかったよ、ゴッドソード!!」

 

バトルフィールドで会えることをずっと夢見、そして今日漸くその姿を見れたことに感激し、思わず涙する。ゴッドソードはハルヤの言葉に何を思うのか、応えるように咆哮し、バンに向けて剣の切っ先を向ける。

 

「ぐっ!」

「行くよ、まずはリューマンライトニングでアタック!」

「ライフで受ける!」

「リューマンフェニックも続くよ!」

「そっちもライフで受けてやる!」

 

猛スピードで駆け出し、ライフが展開された瞬間、勢いよく飛び出すとそのままバリアに飛び膝蹴り、さらに今度はリューマンフェニックが翼を羽ばたかせながら接近し、そのまバリアに突進。連続した衝撃と共にバリアが粉砕されてしまう。

 

[バンside]

[ライフ]3→1。

[リザーブ]0個→2個。

 

「ぐっ! クソッ!!」

「このターンで決めるよ!!」

「はぁ!? 何寝ぼけたこと言ってやがる!! 俺の場にはまだブロッカーとして、アレクサンダーが残ってんだよ!!」

「関係ない! リューマンゴッドソード、アタックッ! アタック時効果で1枚ドローするよ!」

「何!!?」

「リューマンゴッドソード、行っけぇーーッ!!」

 

ハルヤの指示に頷いて見せながら、リューマンゴッドソードは剣を構え、バンへと迫る。何度も攻撃することを予測できてなかったのか、バンは慌てたようにすぐさまアレクサンダーのカードを構える。

 

「だから俺にはブロッカーが残ってるつってんだろ! アレクサンダーでブロックだ!」

 

[Battle]剣神無双リューマンゴッドソードLv.3(5)BP10000vs巨人大帝アレクサンダーLv.1(1)BP6000。

 

両者の指示に駆けだす二体のスピリット、そして互いに渾身の力を込めて槍と剣を振るい、鍔競り合って激突する両者。しかしリューマンゴッドソードが力で上回ってるのか、鍔競り合いを制し、槍を弾き返してしまう。アレクサンダーも負けじと弾かれながらも今度は槍で直接貫こうと、リューマンゴッドソードに槍を突き刺すが、リューマンゴッドソードは剣に炎を纏わせ、一閃。突こうとする槍の切っ先を切り落としてしまう。

 

リューマンゴッドソードはそのまま一気に決めようと、炎を纏わせた剣を天に振り翳し、咄嗟に壊れた武器を捨てて盾に持ち替え防御態勢を取るアレクサンダーだったが、リューマンゴッドソードは両手で力一杯剣を握りしめて振り下し、盾ごとアレクサンダーを一刀両断、切り裂かれたアレクサンダーは爆発四散を起こす。

 

『ハルヤ選手のキースピリット、ゴッドソード強し!! バン選手のキースピリットを倒してしまいました!! しかし、これでハルヤのスピリットは全て疲労状態、あと一歩及ばずか!』

 

「その通り! これでテメェのアタッカーは0、次の俺のターンで終わりだ!!」

 

残念そうに語る紅葉の言葉に、合わせるように笑いながら語るバン。しかし、そんなバンの言葉に対して、「いや」と否定して見せる。

 

「まだ終わってない、リューマンゴッドソードのアタック時効果がある!」

「あぁ? その効果ならさっき1枚ドローして終わったろ?」

「リューマンゴッドソードの効果はそれだけじゃない!!」

「!?」

 

【剣神無双リューマンゴッドソード】5(赤2 極1)赤、スピリット、剣使/竜人。

Lv.1(1)BP4000、Lv.2(3)BP5000、Lv.3(5)BP10000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

自分はデッキから1枚ドローする。バトル終了時、自分の手札にある系統:「剣使」/「竜人」を持つスピリットカード/アルティメットカード1枚を、コストを支払わずに召喚できる。

【合体時】Lv.2、Lv.3『このスピリットの合体アタック時』

相手のスピリット/アルティメット1体を指定し、そのスピリット/アルティメットにアタックできる。指定したアルティメットにブロックされたとき、このスピリットをBP+15000する。

 

「バトル終了時、手札に「剣使」、又は「竜人」のスピリットかアルティメットがあれば召喚できる。よって効果により、手札から炎極天リューマンバーストを召喚!」

「なっ!!?」

 

勝利に勝鬨を上げるように吠えながら炎を纏わせた剣を天に掲げると、それに導かれ、天より黄金の輝きを放つ究極(アルティメット)、炎極天リューマンバーストがフィールドへ降り立つ。

 

【炎極天リューマンバースト】4(赤2 極1)赤、アルティメット、新生/竜人。

Lv.3(1)BP6000、Lv.4(3)BP9000、Lv.3(4)BP12000。

【召喚条件:コスト1以上の自分のスピリット1体以上】

U(アルティメット)ハンド】

自分の手札にある赤のカードがバースト条件を満たしたとき、そのバーストを手札から発動できる。

Lv.4、Lv.5『このアルティメットのアタック時』

相手のネクサス1つを破壊する。

 

「馬鹿な!!」

「これで終わりだ! リューマンバーストでアタック!」

「ら、ライフで受ける!!」

 

最後のライフに向けて、そのまま拳を握りしめ力を高めるように拳に炎が灯り、そのままバリアに向けてリューマンバーストは拳を打ちつける。

 

「お、俺がこんな奴にーーッ!!」

 

衝撃にライフは砕け始め、そしてそのままリューマンバーストは一気にライフを粉砕する。

 

「ぐあああああッ!!」

 

[バンside]

[ライフ]1→0[Lose]

 

「ぼ、僕が勝てた?」

 

勝利を掴んだ事に、まるで夢を見ているのかと一瞬疑いたくなる。それでも頬をつねって見ても痛みだけが残り、夢でない事を理解すると。

 

「やったぁーーッ!! 僕勝てたよーー!!」

 

嬉しさを堪えきれず、勝利の実感を噛み締めながら喜ぶハルヤ。その彼の姿を祝福するようにリューマンゴッドソード達も吠えると、その後バトルを終えたスピリット達は消滅する。

 

『なんと輝来ハルヤ選手、今まで黒星の記録から結果は明らかかと思われていましたが、何とバン選手を打ち破ってしまったーーッ!!』

『ハルヤ選手もようやくカードバトラーとしての道を歩みだしたという事ですね。これは行く末が楽しみです!』

『では本日はここまで! 画面の向こう側の皆様、また次回お会いしましょう!』

 

興奮冷めやらぬ様子で語る紅葉達、実況解説を終えるとそのまま三人はいち早くその会場を後に立ち去る。

 

「こりゃぁ面白いもんが見れたぜ、こうでなくちゃバトスピじゃねぇよな?」

 

神子達に情報を伝えたゴーグルを掛けた男性、ゴーグルを外して上にずらしながら勝利に喜ぶハルヤの姿を眺め、まるでこれから何かに期待するように笑いながら彼もまたその場を後にした。

 

 

 

 

「クソッ!! 俺が負けるなんて、こんなの有り得ねぇ!! 絶対有り得てたまるか!!」

 

一方バトルに負けた事に今でも信じられないのか、苛立ち気味にハルヤに突っかかろうとするバン。しかし「そこまでだ」と制止させるように響く声、振り向く先には吉馬とエンザの姿があった。

 

「ッ!!」

「俺のスタジアムに殴り込みに来て、これ以上勝手な真似はさせねぇぞ!」

「ぐぐぐっ!!」

「テメェ等のリーダーに伝えろ、真正面からテメェが来いってな」

「ッ!! ふ、ふざけやがって!! テメェ等なんざ俺等のキャプテンの足元にも及ばねぇ!! いつか借りを返してやる! 覚えてろよ!!」

 

地団太踏みながらも捨て台詞を残し、エンザの隣を走り抜けその場を立ち去るバン。その後姿が見えなくなると、エンザはハルヤの方に視線を向け、笑って見せる。

 

「勝負、神子達の中継を通して、見てたぜ? 強くなってたから一瞬見違えたぜ?」

「リーダー、ありがとうございます」

「あぁ、その意気でこれからも頑張れよ」

 

優しくハルヤの頭を撫でながら言い、チームリーダーからの激励の言葉はハルヤにとって素直に嬉しかった。

 

「フン、俺ならあんな奴もっとすぐに片づけられたぜ」

「はは、まぁそうだよね。僕も吉馬より強いとはまだ思えないし」

「……でもな、今日のバトル。ちょっと見直したぜ?」

「!」

「ちょ、ちょっとだけだからな!!」

「ハハ、テメェも素直じゃねぇな。ハルヤが強くなった。素直にそう言ってやりゃいいじゃねか!」

 

笑いながら楽しそうに語る三人。しかし「だが!」と顔色を変え、エンザは他のチームメンバー達を鋭い眼つきで睨む。

 

「今回はハルヤが勝ったからよかったが、テメェ等は揃いも揃って一人に何て様だ!!」

『『りー、リーダー。その、俺達は……!』』

「言い訳無用だ!! テメェ等もみっちり鍛えてやるから覚悟しろ!」

『『ヒィィィッ!』』

 

相変わらずエンザのスパルタな面に逃げ出すチームメンバー達、その様子にハルヤも吉馬も笑いながら見つめているのだった。




いかがでしたでしょうか?本編第1話!!相変わらず駄文でも読んでくれた方は本当にありがとうございます。第1話からもう色々なキャラが登場しましたね、ちょっと本編の流れを整理しましょうか?

カードバトラー達の多くがそれぞれチームに所属。
        ↓
主人公所属のチームvsチーム海皇
        ↓
そして主人公vs井澤バン。

ざっくり説明するとこんな感じかと、まとめすぎました?(笑)バトルはまぁまだ序盤という事で中々それほど今の最新弾の新しいカードは書いてませんね。でもまだ序盤ですので、ご安心を! 今後進むにつれてどんどん現環境のスピリット達も大活躍での登場する……筈←

それと今回から前書きに注釈表示を追加しました。一応見直し確認はしているのですが、それでも気づいていないミスや誤字あるかもしれませんので、ご指摘いただくと大変助かります。注釈表示は今後の本編での前書きで継続していこうかと思いますので、ご容赦ください。それでは次回もよろしくお願いします。


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No02.大怪獣進撃! vsゴモラ

・以下注意
誤字、プレイミスありかも。
バトル表記が人によっては分かりずらいかも。

それでも大丈夫という方はどうか温かい目で見てもらえると幸いです。発見したミスやバトル表記などのご指摘ご気軽に、お待ちしております。






 

海辺沿いに建てられたとある会場、そこはチーム海皇の特設スタジアムであり、その中でチーム海皇のリーダーである男、浪川海斗はチームメンバー以外は誰もいない観客席に腰掛け、静かに携帯画面を眺めていた。

 

『これで終わりだ! リューマンバーストでアタック!』

『ら、ライフで受ける!!』

 

携帯画面に映るのは前回行われたハルヤとバンによるバトル。リューマンバーストのアタックでバンのライフを削り切る瞬間まで見ると、彼はそこで携帯を切って画面を閉じた。

 

「言い訳は当然用意してんだよな? あるなら聞かせろ」

 

まるで威圧感を与えるかのような低い声、そして浪川の背後では観客席にほぼ正座の態勢で体を震わせているバンの姿があった。

 

「きゃ、キャプテン。違うんだよ、そ、その時はたまたまで! そう!! 俺が負けたのは運が悪かっただけっていうか!!」

「テメェ、「運も実力の内」って言葉知ってるか?」

「えっ!? そ、それは」

 

明らかに浪川のペースで、完全にバンは気圧され口籠り、思わず言い訳しようとした言葉を止めてしまう。しかし浪川はそれに構わずさらに続ける。

 

「俺の知らない内に勝手な事してこの様だ。俺はよ、基本お前等がどう行動しようが咎めるつもりはねぇ。このチームは自由行動の無法チームだからな」

「そ、それじゃぁ」

「だが俺が許せねぇのはただ一つ、敗北だけだぁッ!!」

「ひ、ひぃぃぃッ!!」

 

先程までの低い声から一変、大きく声を荒げての怒声。それには思わずバンも堪え切れない恐怖心を口にしてしまう。

 

「おい武凱、いるか?」

「呼んだか? キャプテン!!」

 

武凱と呼ぶ大柄な男、観客席の奥から浪川の言葉に顔を出す。

 

「号令を始めろ、今回はバンの野郎にもたっぷり聞かせてやれ」

「へへ、そういう事か。了解だ! よし!! テメェ等、集合だ!!」

 

浪川の言葉に頷くと、武凱と呼ばれた男は大きく声を張り剥げてドーム中に聞こえるほど力強く叫び、その声にスタジアム内の海皇メンバー達は武凱達の前に整列し始める。

 

「定期号令だ!! 今日も俺の後に続けよ!!」

『『『アイアイサー!』』』

「一つ! 俺達は!!」

『『『最強チーム! 無敵の海皇!!』』』

「二つ! バトルはいつも!」

『『『圧勝! 快勝!! 全勝だ!!!』

「三つ! バトルで負けた奴ぁ?」

『『『自分(テメェ)でその身を投げ捨てろ!』』』

 

スタジアム内に響き渡る程の号令の掛け声、あまりの声量にバンは耳を塞ぐような素振りを見せる。

 

「武凱の野郎、相変わらず物騒な号令だぜ」

「今のテメェに武凱を馬鹿にしてる余裕はねぇぞ? あれは俺達チーム内でのスローガンみたいなもんだ。そしてバトルに負けたテメェがどうなるのか、分かってるよな?」

「なっ!! ちょ、ちょちょちょっと待ってくれキャプテンッ!! た、確かに俺は負けた。もうそれは認める。け、けど!! もう一度、せめてもう一度チャンスを!!」

 

浪川の言葉にバンは形振り構ってられず、慌てて両手を合わせ、頭を下げながら懇願して見せる。しかしそれでも浪川の顔色は変わらず、変わらぬその表情にバンの内心は気が気ではなかった。

 

「た、頼む……!! キャプテン!!」

「…………チャンス、か」

 

暫く沈黙した空気が流れる中、怯えるバンを尻目に浪川はゆっくりと口を開く。

 

「よし、ならチャンスはくれてやる。だが二度目はねぇぞ?」

「さ、さっすがキャプテンだぜ!! 心が広い!!」

「調子に乗んじゃねぇッ!!」

「ヒィッ!!」

「次はねぇんだ、だったら二度と負けねぇよう特訓して来やがれッ!!!」

「へ、ヘイ喜んでッ!!」

 

慌てて観客席を降り、ステージの特訓に加わるバン。浪川はそれを見ると立ち上がってスタジアムを後にし、その会話の様子を聞いていた武凱と呼ばれた男は密かに笑みを浮かべる。

 

「(バンの野郎、見る影もねぇな。こりゃ俺にとって今が絶好の好機だなぁ!)」

 

何かを企むように、武凱と言う男は静かに笑みを浮かべる。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「すいませーん! 1パック下さい!!」

 

舞台は変わり、あるカードショップでカードを買うハルヤ、吉馬、エンザの三人。今は気分転換なのだろうか、スタジアムのような気迫は無く、穏やかな空気で三人共買ったカードパックを確認していた。

 

「さて、いいカード来るかな?」

「リーダーなら絶対来ますよ。まぁハルヤはどうか分かんないけど」

「い、一々言わないでよ! 僕だって来るかもしれないじゃん!!」

 

軽く言い合いながらも買ったカードパックを広げ、和気藹々と中身を確認する三人。エンザは「まぁまぁだな」とカードを確認し、一方の吉馬は何も言わずただ愕然とした様子でカードを見ており、二人の様子に苦笑いしつつハルヤも自分のカードパックを確認する。

 

「うん、Xレアは来なかったけど、まぁまぁ良いかな?」

『へぇー、中々強いカード当たったじゃん』

「!?」

 

背後から突然の声、驚いたように慌てて振り返ると、そこには後ろ向きに被ったキャップにゴーグルをつけた一人の少年の姿があった。

 

「えっ!? 誰ですか!?」

「あれっ!? 知らない? レッドドラゴンのチームメンバーだろ、俺割とそこに顔出してんだけど?」

「えっと、すいません、ちょっと知らないです」

「ふーーん。まっ、いいや、俺、八鳥紫苑ってんだ。以後シクヨロ!」

 

ノリの軽いような紫苑の名乗る少年に、ハルヤは困った様に「はぁー」と素っ気ない返事を返すしかなく、一方の紫苑は「それより」とハルヤのカードを見ながら言葉を続けて行く。

 

「ねぇねぇ、良かったらそのカード! これと交換してくんない?」

 

ハルヤの手に持っているレアカードを指指しながら、自分の提供するカードを見せる紫苑だったが、その見せるカードはコモンカードで、レートが全く合っていなかった。

 

「え、えっとそれはちょっと!!」

「ウチのメンバーにカツアゲ紛いな事してんじゃねぇぞ!」

 

紫苑の様子に困惑するハルヤだったが、そこに助け舟を出すように言葉を掛けるエンザ。「リーダー」と安心するように一息つくハルヤだったが、紫苑は「誤解だって!」とわざとらしい反応を見せる。

 

「俺のジンクス知ってんでしょ? ちょっとこの子にそのジンクスに付き合ってもらっただけよ」

「ジンクス?」

 

何の事か不思議に思うハルヤだったが、紫苑はそれに笑いながら先程ハルヤが買ったものと同じカードパックを手に取り、開封して見せたかと思うと、その中の一枚は先程紫苑がハルヤに交換を申し込んだものと同じレアカードがあった。

 

「!!」

「アハハッハ! これが俺のジンクスなのよ。相手に無茶なレート交換を頼んで断れた後にパックを買うと、交換してほしかったカードが何故か当たるんだよね!」

「ケッ、相変わらず腹立つジンクスだぜ!」

 

エンザの言う通り自分が損した訳ではないが紫苑のジンクスのダシとして使われたかと思うと何故か腑に落ちなく感じる。そんなハルヤの様子を察してか。

 

「ハハ! 悪かったよ、まぁさっきのこのカードあげるからさ、チャラって事にしてくれよ!」

「は、はぁ……」

 

先程のカードをハルヤに手渡す紫苑。人が良いのか悪いのか、まるで調子の掴めない紫苑にハルヤもどう対応していいのか分からなくなってしまう。そんな中、そこへ吉馬も合流するが、紫苑の姿に気づくと「げっ!」と嫌そうに驚いて見せる。

 

「よぉ桜ちゃん! 相変わらず美人さんだな」

「黙れクソ野郎!! もういっぺん言ってみろ? ぶん殴るからな!!」

「ひゃー怖い。俺ってば、エンザの親友なのによ」

「う、うぜぇ!!!」

 

紫苑に対し今にでも爆発しそうな怒りを堪えつつ拳を握りしめる吉馬にハルヤは動揺を隠せなかったが、先程紫苑の言った言葉に気になったのか、話題を変えようと「二人って知り合いなんですか?」と尋ねる。

 

「そっ! 俺とエンザはまぁマブダチって奴だな!」

「唯の腐れ縁だ」

 

「えー酷い」と棒読みな台詞を吐く紫苑を無視しながら「ハルヤは知らないだろうから説明するぞ!」と続けて行く。

 

「まぁ昔からの知り合いでな、こいつも一応チームリーダーらしい」

「そうそう。こう見えても俺一応チームシャドウのリーダー務めてんだぜ?」

「!?」

 

チームリーダーと名乗る紫苑に一瞬驚いたように反応するハルヤだったが、「チームシャドウ」の名前に聞き覚えがないのか、不思議そうにハテナを浮かべる。

 

「チームシャドウって多分聞かない名前だと思うんですけど、ランキングに入ってましたっけ?」

「そう思うだろ? 多分コイツの自称なのよ、第一に聞かない名前だし、チームリーダーとか言ってるが、肝心のチームメンバーを俺は見た事ねぇしな」

「おぉ? この親友の言葉を疑うのか!! 俺達チームシャドウは勝手気ままな連中が多いからな。基本自由行動でどこにいるのか俺も行方知れずよ。チームランキングに入ってないのは、俺がランキング争いに興味がねぇから運営からランキング外にしてもらってるのよ」

 

一応辻褄はあっているが、それでも信憑性には欠けており、話を聞いてもまだ信じがったかった。

 

「信じてねぇな? けどマジなんだぜ、何てたって運営に直談判しに行ったからな」

「どうして、ランキングバトルには参加しないんですか?」

「まぁのんびり気ままにバトスピしていたいからな。争い合うのはちょっと柄じゃねぇのよ。エンザともあんま戦いたくねぇしな」

「俺は別に、お前が強いなら戦いたいぞ?」

「えー、俺お前とのバトルでボコボコにされんの勘弁だわ」

 

そんなやり取りをしつつ、「さてと!」とその場から立ち上がる紫苑だが、何かを思い立ったように。

 

「そうだ! 俺暇だからお前等のステージ遊びに行くな?」

「はっ!? 来んな!!」

 

紫苑の言葉にすぐさま吉馬が嫌そうに断るが、エンザはそれにやれやれ、と呆れながら「俺に免じて許してやれ」と口添えし、エンザの提案に対し「リーダーがそう言うなら」と渋々承諾した。

 

「じゃぁ決まりだな!」

 

嬉しそうに笑って見せる紫苑に対し、吉馬はただため息をこぼし、そんな二人にエンザもハルヤはただ苦笑いするしかなく、何はともあれ紫苑を加えての4人は自分達のチームスタジアムに向けてその場を後にするのだった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「ん?」

 

暫くしてスタジアムが見え始めるが、スタジアムの入り口は何やら騒がしい様子で異変を感じ取ったのか、急ぎ足でその場に向かうと、そこには大柄な人物の影が。

 

「よぉ、待ってたぜ!! チームレッドドラゴン!!」

「テメェ確か! 浪川んとこの」

 

まるで大人のような体格の男、大柄なその男の顔ぶれはエンザ達には見覚えがあり、前に浪川やバンと一緒にいたあの男だった。

 

「俺の名前は武凱バズトってんだ! まぁよろしくな!!」

「そんな奴が俺達のスタジアムにまた何の用だ!」

「そう睨むな。俺が今回来た用事。それはな、輝来ハルヤ! テメェだ!!」

「ぼ、僕!!?」

 

力強くハルヤを指指し、指名された事に思わず動揺を隠せなかったが、「理由は?」と尋ねるエンザの言葉に武凱と名乗る男は笑って見せる。

 

「簡単だ! この前バンの野郎が無様に負けやがったからな。バンが負けた相手を今度は俺が倒せば、チーム海皇のナンバー2の地位は必然的に俺の物って訳よ!!」

「チーム同士で粗探しとポイント稼ぎって訳か! 相変わらず仲悪いな」

「フン! うちのチームは弱肉強食の縦社会なんだよ。テメェ等とは訳が違う!」

「まぁテメェ等の事情は知ったこっちゃねぇ。要するにバトルしたいだけなんだな?」

「あぁそういう事だ。生憎今日の俺の狙いはそいつ一人なんでな! 邪魔立てしてくれるなよ?」

「なるほどな」

 

何かを考え込むように間を置きつつ、エンザは静かにハルヤの方へ視線を向ける。

 

「御指名みたいだがどうする?」

「…………だったら!! 受けて立ちます!!」

 

ハルヤの言葉にエンザは「よく言った!」と笑って見せ、武凱もまた相手が決まった事を満足するように笑いながら「じゃぁ始めるか!」とステージに入っていく。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

『皆さまこんにちは!! BCOより実況担当の犬神紅葉! 本日もまたレッドドラゴンのチームスタジアムよりこの放送をお届けしております!!』

『同じく解説の神子でございます。今回対戦するのは前回に引き続きハルヤ選手と、チーム海皇メンバーの一人武凱選手のようですね』

『バン選手とはいつも対立している武凱選手!! チーム海皇ナンバー2になるという野望に燃え、今回ハルヤ選手に挑むようです!』

『ハルヤ選手は前回のバトルで大きな成長を見せてくれましたからね。今までと違い、勝負結果は見るまでもなく明らかという事はもうあり得ません!』

 

どこから現れたのか、ステージの観客席で武凱とハルヤの様子を映すコン太と何時もの様に実況解説を始める紅葉と神子、その隣にエンザ達も席に腰掛け、吉馬は紅葉達3人の姿に「お前等ナチュラルにこのスタジアムに侵入してないか?」と呆れ気味に呟く。

 

「吉馬さん、すいません。バトルの状況をお届けするのが私達の仕事なので」

「……い、いや別にそういう事なら大丈夫です」

「ではお言葉に甘えまして、実況解説させていただきます」

 

神子の言葉に吉馬は何時ものような毒舌ではなく、少し照れたように口籠り、その様子に紫苑は笑っている。

 

『さぁバトルは間もなく始まります!! 勝負の行方はどうなるのか!』

『最後までこれは目が離せませんね』

 

二人の実況に視線と注目が集まる中、ステージに立ち、睨み合う武凱とハルヤの両者は周りに構う事は無く、デッキを構える。

 

「「ゲートオープン!! 界放ッ!!」」

 

二人の宣言と共にバトルの開始が告げられ、ハルヤの先行から勝負が展開される。

 

 

 

 

[01ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「メインステップ! 行くよ、ルーキーリューマンをLv.2で召喚!」

 

[リザーブ]4個→0個。

[トラッシュ]0個→2個。

[手札]5枚→4枚。

 

【ルーキーリューマン】2(1)赤、スピリット、竜人。

Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

自分はデッキから1枚ドローする。

 

[フィールド]ルーキーリューマンLv.2((S(ソウルコア)1)1)BP3000。

 

「これでターンエンド」

 

 

 

 

[02ターン.武凱side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「メインステップ! オラ行くぞぉ!!」

「!!」

 

声を荒げながら手札を力強く構え、その迫力に何かが来ると、思わず身構えてしまう。

 

「まずはネクサス、焔竜の城塞都市を配置!」

 

[リザーブ]5個→0個。

[トラッシュ]0個→5個。

[手札]4枚→5枚。

 

武凱の背後に建てられ出現するネクサス、焔竜の城塞都市。その出現にハルヤもより警戒を強くさせる。

 

【焔竜の城塞都市】5(4)赤赤、ネクサス。

Lv.1(0)。

Lv.1『自分のアタックステップ』

相手のスピリットを破壊したとき、自分は1枚ドローする。

 

[フィールド]焔竜の城塞都市Lv.1(0)。

 

『武凱選手、まずは序盤でいきなりネクサスです』

『ネクサスカード、それはスピリットとは違いますが、場に留まり続け、様々な恩恵を与えてくれます。名前の通り、まさにプレイヤーにとっての城ですね』

『スピリットよりも地の利を固めたという事でしょうか?』

『そういう事になります』

 

実況解説を淡々と語る紅葉と神子。一方で武凱は「行くぞ!」とさらに声を荒げながらカードを構える。

 

「俺はそして!!」

「!!」

「これでターンエンドだ」

「『『えっ!?』』」

 

何かある様に思わせておきながら、あっさりとターンを終える武凱に対し、思わず全員がその場でずっこけ、その様子に武凱は面白そうに笑い出す。

 

「ガッハハッハハ!! これ以上は何もしねぇよ。所謂ブラフだ!」

 

ハルヤを始め、武凱の様子に呆れたようにただ苦笑い。バトルを見ている紫苑は「あいつも面白れぇな!」とケタケタと笑っているが、隣にいる吉馬は「ブラフとか威張れる事じゃねぇよ」と呆れ顔で呟いている。

 

『え、えぇ~っと、実況の私も思わずズッコケてしまいました』

『コホン! 気を取り直しましょう』

 

切り替えるように実況の神子達も一息つき、ハルヤも武凱のペースに呑まれかけながらも、冷静に戻り自分のターンを開始する。

 

 

 

 

[03ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]2個→0個。[リザーブ]1個→3個。

 

「メインステップ! リューマンフェニックを召喚!」

 

[リザーブ]3個→0個。

[トラッシュ]0個→2個。

[手札]5枚→4枚。

 

『おっと出ました! リューマンフェニック!』

『前回のバトルでも活躍してましたね、今回も活躍が見込めそうです』

『リューマンフェニックはスピリットが2体以下なら常に最高レベルとして扱われます。どこかの恐竜人や桃太郎お供のワンちゃんのような効果です』

 

神子達の解説の通り、自分以外にルーキーリューマンしかスピリットがいない為、リューマンフェニックは最高レベルとして扱われ、赤いオーラを纏い、上昇した力を示すように構えだす。

 

[フィールド]リューマンフェニックLv.3(1)BP6000、ルーキーリューマンLv.2((S1)1)BP3000。

 

「アタックステップ! ルーキーリューマンでアタック! アタック時効果で1枚ドロー!」

 

[手札]4枚→5枚。

 

「ライフで受けてやる!!」

 

先陣を切るルーキーリューマン、全速力でフィールド掛けながら拳を構え、そのまま展開されたバリアの手前で飛び上がり、バリアを殴りつけ破壊する。

 

[武凱side]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]0個→1個。

 

「ハッハ! 効かねぇな!!」

「!」

 

大柄な見た目は伊達ではないのか、ライフが破壊された衝撃を受けながらも、まるで微動だにせず、何ともないように平気な素振りを見せるばかりか、「もっと来い!」とむしろ挑発して見せた。

 

「だ、だったら行くよ! リューマンフェニックでさらにアタック! アタック時効果で1枚ドロー」

 

[手札]5枚→6枚。

 

「そいつもライフだ!」

 

今度はリューマンクロウが飛び上がり、そのままバリアを切り裂き破壊するが、それでも衝撃に何ともないように平静を崩さず、その様子にハルヤも若干怯むように、気圧されながら「ターンエンド」と小さくコールした。

 

[武凱side]

[ライフ]4→3。

[リザーブ]1個→2個。

 

『武凱選手いきなりライフを削られました』

『しかしその分コアが溜まってますからね。次のターンからが見物ですよ?』

『そうですね、武凱選手、一体どう動くのか! 注目が集まります!』

 

 

 

 

[04ターン.武凱side]

[スタートステップ]

[コアステップ]2個→3個。

[ドローステップ]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]5個→0個。[リザーブ]3個→8個。

 

「さぁ今度は正真正銘やってやるぜ!!」

「!」

「メインステップ、まずはこいつだ! 古代怪獣ツインテールを召喚だッ!!」

「怪獣!?」

 

[リザーブ]8個→6個。

[トラッシュ]0個→1個。

[手札]5枚→4枚。

 

武凱が呼び出すスピリット、カードが場に置かれた瞬間、地響きと共に地面に突如入る亀裂、そして地響きと共に亀裂から触手のようなものが飛び出したかと思うと、古代怪獣ツインテールが地面から勢いよく飛び出しその姿を見せる。

 

【古代怪獣ツインテール】2(赤1 青1)赤、スピリット、溶魚/異合。

Lv.1(1)BP4000、Lv.2(2)BP5000

 

『古代怪獣ツインテール! これが武凱選手の扱うスピリットなのか!?』

『怪獣とは随分珍しいスピリットを扱いますね。見た目通り巨大な力を持った曲者ですよ?』

 

「驚くのはまだ早ぇッ! 次は俺のキースピリットだ!!」

 

今度は虚勢ではなく正真正銘何かを仕掛けるつもりなのだろう。手札の一枚を構えるとフィールドは先程と同じく揺れ始める。

 

「古代の龍よ、暴れて暴れて暴れまくれ!! 古代怪獣ゴモラをLv.2で召喚だッ!!」

 

フィールドに起こる振動は先程の比ではなく、激しい地響きと共に、微かに何かの唸り声が響いたかと思むと、地面を突き破り巨大な怪獣、ゴモラが現れる。

 

[リザーブ]6個→0個。

[トラッシュ]1個→4個。

[手札]4枚→3枚。

[フィールド]古代怪獣ゴモラLv.2((S1)2)BP9000、古代怪獣ツインテールLv.1(1)BP4000。

 

『出ましたーーッ!! 武凱選手キースピリット! 古代怪獣ゴモラ!!』

『序盤で守りを手薄にしていたのはキースピリット召喚のための布石だったようですね。この展開は武凱選手の狙い通りだったようです』

『つまり現在ハルヤ劣勢という訳ですね!!』

「くっ!!」

「ふふん、行くぞ!! アタックステップだ!!」

 

武凱の言葉に一斉に吠える怪獣達、それは誰もが怯まされる程の迫力で、怪獣達はハルヤのスピリット達を完全に圧倒していた。

 

「まずは古代怪獣ゴモラでアタック!! アタック時発揮!!」

「!」

 

【古代怪獣ゴモラ】6(3)赤、スピリット、地竜/古竜。

Lv.1(1)BP6000、Lv.2(3)BP9000、Lv.3(5)BP12000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

相手のスピリット/アルティメット1体を指定してアタックできる。

Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

ネクサス1つを破壊する事で、自分はデッキから1枚ドローする。この効果でカード名に「城」と入っているネクサスを破壊したとき、このスピリットは回復する。

 

「効果発揮により俺は焔竜の城塞都市を破壊して1枚ドローする!! やれゴモラッ!」

 

ゴモラは自慢の長い尻尾を振るい、武凱の背後にある焔竜の城塞都市に叩き付けると、焔竜の城塞都市は大きな音を建てながら崩れて崩壊するが、その引き換えとして武凱は新たなカードをドローする。

 

[手札]3枚→4枚。

 

「自分のネクサスを破壊?」

「これだけじゃねぇ! この効果で「城」の名前が含まれているネクサスを破壊したとき、ゴモラは回復できる!!」

 

ネクサスを壊したゴモラは吠え、眼光を輝かせ赤いオーラを纏い回復すると進撃開始し、目の前にいるリューマンフェニックを睨み付ける。

 

「さらに相手スピリットに指定アタックができる! リューマンフェニックに指定アタックだ!!」

「! りゅ、リューマンフェニックでブロック!!」

 

[Battle]古代怪獣ゴモラLv.2((S1)2)BP9000vsリューマンフェニックLv.3(1)BP6000。

 

ゴモラの行く手を阻もうと飛び出すリューマンフェニック、しかしそれに対しゴモラは立ち止まり、リューマンフェニックに対し構えだすと、角に光が灯り、角をリューマンフェニックに向けると、超振動波と呼ばれる衝撃波をリューマンフェニックに放ち、その攻撃を真正面から受け、力尽き爆発四散してしまう。

 

「リューマンフェニック!!」

「スピリットの心配してる場合じゃねぇぞ! 回復したゴモラで今度は直接アタックだ!」

「ら、ライフで受ける!!」

 

そのまま勢いよく駆けだし、バリアに向けてゴモラはその巨大な角を直接バリアに突き刺し破壊する。

 

「うわっ!!」

 

[ハルヤside]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]1個→2個。

 

「もう一つライフを貰う!! ツインテール、テメェも行け!!」

「!」

 

今度はツインテールが進撃を開始し、バリアに対し、触手を勢いよくバリアに叩き付けまたもライフを破壊する。

 

[ハルヤside]

[ライフ]4→3。

[リザーブ]2個→3個。

 

『武凱選手攻めに出ました!! ライフを二つ破壊し一気に同点です!!』

『しかしこれで武凱選手の攻撃できるスピリットはもういません、一先ず危機は去ったと言ったところでしょうね』

『まだ勝負は序盤にも関わらず全く目が離せません!』

「ふん、俺はターンエンドだ!」

 

 

 

 

[05ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]3個→4個。

[ドローステップ][手札]6枚→7枚。

 

「!」

 

このターン引いたカードに思わずハルヤの目の色が変わる。そのカードは紫苑が自分に渡したカードであり、そのカードを見て、何かを思い立ったようにバトルに視界を戻す。

 

[リフレッシュステップ][トラッシュ]2個→0個。[リザーブ]4個→6個。[フィールド]ルーキーリューマン回復。

 

「メインステップ! 行くよ!! リューマンクロウをLv.3で召喚! さらにバーストセット!」

 

[リザーブ]6個→1個。

[手札]7枚→5枚。

[フィールド]ルーキーリューマンLv.2((S1)1)BP3000、リューマンクロウLv.3(5)BP4000。

 

「バーストだと!?」

 

ハルヤのフィールドにセットされる一枚のカード、それに思わず武凱の顔付きも変わる。

 

『おぉっと! ここでハルヤ選手バーストカードをセットしてきました!』

『バースト、条件を満たせば発動される罠のようなカードですね』

S(ソウル)バーストと呼ばれるものもありますがそれについては追々語るとして、バーストカードは発動条件が満たすと一気に発動!』

『スピリットをノーコスト召喚する物だったり、相手を破壊する物だったりと、効果は様々ですが発動すれば大きなアドバンテージとなり得ます!』

『これは武凱選手迂闊に動けませんね!』

「(チィッ! 何を伏せやがったんだ?)」

 

伏せられたカードが何なのかを思案する武凱だったが、まだハルヤのターンは終わってはいない。「アタックステップ!」と叫ぶハルヤの宣言に武凱も慌ててバトルに集中し直す。

 

「ルーキーリューマンでアタック! アタック時効果でドロー!」

 

[手札]5枚→6枚。

 

「ライフだ!!」

 

再びルーキーリューマンはバリアを殴りつけ、ライフを破壊する。

 

[武凱side]

[ライフ]3→2。

[リザーブ]0個→1個。

 

「ターンエンド」

「何だぁ? バーストセットで意気込んだかと思えばもう終わりかよ!?」

「うん、僕のターンはこれで終了だよ」

「へっ! 警戒するだけ損したぜ!!」

 

 

 

 

[06ターン.武凱side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]1個→2個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]2個→6個。[フィールド]古代怪獣ゴモラ、古代怪獣ツインテール回復。

 

「バーストなんざしゃらくせぇッ!! 俺は気にしねぇぞ!!」

「!」

「メインステップ! 暴君怪獣タイラントを召喚ッ!」

 

[リザーブ]6個→2個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→4枚。

 

【暴君怪獣タイラント】5(赤2 青2)青、スピリット、異合/星竜。

Lv.1(1)BP5000、Lv.2(3)BP7000、Lv.3(7)BP12000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

BP5000以下の相手のスピリット1体を破壊する。

Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

コスト5以下の相手のスピリットを破壊する。

 

また新たに呼び出される怪獣スピリット、タイラント。暴君怪獣と言う名の通り、右手の鎌と左手の鉄球を振り回し、荒々しさを強調して見せる。

 

「また怪獣!」

「もう一枚だ! さらにネクサス、破壊された城を配置する!」

「!」

 

[リザーブ]2個→0個。

[トラッシュ]3個→5個。

[手札]4枚→3枚。

[フィールド]古代怪獣ゴモラLv.2((S1)2)BP9000、暴君怪獣タイラントLv.1(1)BP5000、古代怪獣ツインテールLv.1(1)BP4000、破壊された城Lv.1(0)。

 

再び出現するネクサス、しかし今度は焔竜城塞都市とは違い、既に壊された後のようなボロボロとなったネクサスだった。

 

「アタックステップ! さぁ行くぞ! 怪獣共!!」

 

一気に攻めるつもりなのだろう、武凱の合図に三体の怪獣達は一斉に吠えながらゴモラは角を、ツインテールは脚部の鞭を、タイラントは両腕の鎌と鉄球をと、それぞれ武器となる各部を構える。

 

「まずはゴモラでアタック! アタック時効果だ!! 破壊された城を破壊し、一枚ドロー! さらに「城」の名を持つネクサスの破壊では回復だ!」

 

既にボロボロの状態のネクサス。ゴモラはそれに対し決定打を与えるように前のターンと同様にその長い尻尾をネクサスに叩き付け、粉々に叩き壊すと、効果により一枚ドローと共にゴモラは回復するが、武凱の狙いはそれだけではない。

 

[手札]3枚→4枚。

 

「ネクサス、破壊された城は破壊された時にその効果を発揮する!」

「!?」

 

【破壊された城】3(1)赤、ネクサス。

Lv.1(0)、Lv.2(2)。

Lv.1、Lv.2『このネクサスの破壊時〛

BP10000以下の相手のスピリット1体を破壊する。

Lv.2『自分のドローステップ』

ドローの枚数を+1枚する。

 

「なっ!?」

「リューマンクロウを破壊だ!」

 

壊れたネクサスの残骸がハルヤのスピリットへ降り注ぐと、リューマンクロウはその残骸に押しつぶされて破壊され、ゴモラはそのまま一気に進撃し、ハルヤへと突っ込んでいく。

 

『ハルヤ選手! ブロッカーを失い大ピンチ!! 万事休すか!!』

「……ライフで、受ける」

突っ込むゴモラに打つ手がないのか、静かにコールするとゴモラは再び超振動波をバリアに向けて撃ち出し、ライフを砕く。

 

「ッ!!」

 

[ハルヤside]

[ライフ]3→2。

[リザーブ]6個→7個。

 

「どうだ!! これで決まりだぜ!」

「……まだ負けないよ!」

「?」

「ライフ減少時でバースト発動! ブレイジングバースト!!」

「何!?」

 

【ブレイジングバースト】4(2)赤、マジック。

【バースト:自分のライフ減少時】

BP5000以下の相手のスピリット1体を破壊する。その後コストを支払う事で、このカードのフラッシュ効果を発揮する。

『フラッシュ効果』

自分の赤のスピリット1体を破壊する事で、このターンの間、相手のスピリットのアタックでは自分のライフは1つしか減らない。

 

トリガーが引かれたバーストカードを手に取り、それを掲げながらさらに続けて行く。

 

「バースト効果BP5000以下の相手のスピリット1体を破壊する! よってツインテールを破壊だ!」

「ぐっ!!」

 

ツインテールの足元に立ち上がる炎、炎に呑まれツインテールは全身を焼かれ破壊されてしまう。

 

「さらにフラッシュ効果! 自分の赤のスピリット1体を破壊する事で、このターン自分のライフは1つしか減らない。ごめんね、ルーキーリューマン!」

 

[リザーブ]7個→4個。

[トラッシュ]0個→3個。

[バースト]ブレイジングバースト。

 

ルーキーリューマンの足元にも炎が立ち上がるが、それに苦しむことは無く、まるでルーキーリューマンは炎を受け入れるように身を委ねて消滅し、その光景を見て、エンザと紫苑の二人も感心するように見ている。

 

「あれ、お前の渡したカードだろ?」

「そうそう。あの子、バッチリ使いこなせてんじゃん!」

 

「期待通り」と静かに呟き、エンザは「何か言ったか?」尋ねるが、紫苑はそれに対し、笑顔を取り繕って「何でもない」と返答する。

 

『さぁここでバースト、ブレイジングバースト!! その効果で武凱選手はこれ以上攻撃しても、もうライフ1つしか破壊できない!!』

『手数を優先するあまりルーキーリューマンに指定アタックしなかったのが痛いですね。そのせいでブレイジングバーストのフラッシュ効果を使用させてしまいましたね』

『武凱選手、これはバーストを読み違えたか?』

「ッ!! 五月蠅ぇ!! 一々バーストを読んでの警戒なんざ俺の性に合わねぇんだよ! これ以上アタックはしねぇ。ターンエンドだ!」

 

ライフを削り切れずともまだ武凱の場が盤石である事には変わりない。苛立ちながらも冷静な判断力は失っておらず、無理なアタックはせずにそのターンを終えた。

 

 

 

 

[07ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]6個→7個。

[ドローステップ][手札]5枚→6枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]7個→10個。

 

「メインステップ! 行くよ!!」

 

不利な状況ながらもその表情は下を向いてはいない。手札の一枚を掴み、そして叫ぶ。

 

「天下切り裂く勝利の剣! 太陽の如く燃え上がれ! 剣神無双リューマンゴッドソードをLv.3で召喚!!」

 

フィールドに突如燃え広がる炎、高温の炎の中で唯一煌びやかに光る眼光、そして剣の一振りで周囲の炎を掻き消し、リューマンゴッドソードが現れる。

 

[リザーブ]10個→0個。

[トラッシュ]0個→5個。

[手札]6枚→5枚。

[フィールド]剣神無双リューマンゴッドソードLv.3((S1)4)BP10000。

 

『来ました!! 前回バン選手を倒す決め手となったスピリット、リューマンゴッドソード! ハルヤ選手のキースピリット、満を持して登場だぁーーっ!』

『ハルヤ選手も勝負を決めに掛かるつもりですね!』

 

バトルも終盤と感じたのか、より一層実況する声に力を入れる。

 

「アタックステップ! 行くよ!!」

「来やがれッ!! 俺の怪獣共が防ぎきるぜ!!」

 

剣を構えるリューマンゴッドソードに対し、怪獣達も真っ向から受けて立つつもりなのか、指示が出される前から既に構えている様子。

 

「リューマンゴッドソードでアタック! アタック時効果で1枚ドロー!」

「ゴモラでブロックだ! 受け止めろ!!」

 

[Battle]剣神無双リューマンゴッドソードLv.3((S1)4)BP10000vs古代怪獣ゴモラLv.2((S1)2)BP9000。

 

睨み合う両者、先手を切ったのはリューマンゴッドソード。一気に駆け出し、ゴモラに向けて剣を振り下す。しかしゴモラはそれを自身の角で受け止め、弾き返すと、再び超振動波を放つ。リューマンゴッドソードはそれに対し飛び上がって避わし、ゴモラはそれ見ると、再び自慢の長い尻尾を叩き付けようと、リューマンゴッドソードに向けて尻尾を振り上げる。だが、それを待っていたの様に目を輝かせると、リューマンゴッドソードは剣を構え、振り上げる尻尾に剣を振り下し、両断。ゴモラの尻尾を切り落とし、尻尾を切られたゴモラは痛みに絶叫を上げて倒れ込んでしまい、何とか痛みに耐え立ち上がるゴモラだったが、その隙に一気に接近し、そしてゴモラに直接剣で一閃。切り裂かれたゴモラは倒れ爆発四散する。

 

「リューマンゴッドソードのバトル終了時! 手札の剣使/竜人を持つスピリットか、アルティメットを召喚できる!」

 

リューマンゴッドソードは勝鬨を上げるように剣を天に掲げ、呼応するように手札の一枚が光り出すと、そのカードを構える。

 

「敵を打ち砕け! 炎の一蹴必殺!! リューマンゴッドブレイカーをLv.2で召喚ッ!!」

 

不足コストの確保の為、レベルが下がるリューマンゴッドソードだったが、レベルダウンと引き換えに地面を砕き飛び出す龍の姿、飛び散った瓦礫を宙で蹴り砕き、フィールドへと降り立つリューマンゴッドブレイカー。並び立つ二体の龍達は一気に咆哮を共鳴させる。

 

『ハルヤ選手!! ここで2体目のXレアを呼び出したーーッ!! しかし、それでもまだ武凱選手のライフとブロッカーは健在、これでは────』

『いえ、最後まで分かりませんよ?』

『?』

 

既に状況を見据えたような神子の言葉に不思議に思う紅葉だったが、一方でハルヤは呼び出したリューマンゴッドブレイカーのカードを構える。

 

「リューマンゴッドブレイカーでアタック!! そしてLv.2のアタック時効果発揮!」

「!?」

「手札から炎極天リューマンバーストを破棄! アルティメットカードの破棄によりリューマンゴッドブレイカーは回復!!」

「なっ!? 回復だと!?」

 

『そう! リューマンゴッドブレイカーはアルティメット1枚、又は「竜人」を持つスピリットカード2枚を破棄することで回復する事できるスピリットなんです』

『という事はつまり! ハルヤ選手の手札にある対象のカードが尽きない限り、リューマンゴッドブレイカーは何度でも攻撃可能!! これは凄いッ!!』

「ぐっ! クソッ! アタックはタイラントでブロックだッ!!」

 

この状況下でリューマンゴッドブレイカーの効果は武凱にとっては完全に予想外。苛立ち気味にタイラントに防御指示を出すと、迫るリューマンゴッドブレイカーにタイラントが立ち塞がる。

 

[Battle]リューマンゴッドブレイカーLv.2(3)BP10000vs暴君怪獣タイラントLv.1(1)BP5000。

 

タイラントはゴッドブレイカーに向けて口を広げると、火炎放射を吐き付け、それに一切怯む事無く、放たれた火炎放射に対し、足に炎を灯して豪快な蹴りの一撃を繰り出すと、火炎放射を跳ね返してしまう。

火炎放射が跳ね返されてしまったことにタイラントは動揺を隠せなかったが、それでも即座に胸のコアを広げ、跳ね返された火炎放射を吸収する。しかし、その隙にゴッドブレイカーの接近を許してしまい、タイラントは咄嗟に近づくゴッドブレイカーに鉄球と鎌を振り上げ、同時に振り下すが、身を翳めながらもそれを裂け、そのまま回し蹴りをタイラントの頭に叩き込み、重い一撃によろけ、後ろに下がるタイラントに対して飛び上がると、空中で体制を構え、そのままタイラントへと飛び蹴り。ふら付くタイラントに避わす術はなく、直撃を受け爆発四散を起こす。

 

「お、俺の怪獣軍団が!!」

「まだまだ!! リューマンゴッドブレイカーで再アタック! 手札のリューマンクロウとリューマンライトニングを破棄することでさらに回復!」

「ら、ライフで受ける!!」

 

炎の蹴りでバリアを砕き、その一撃にさすがに武凱も堪えきれなくなったのか、衝撃に顔を歪める。

 

[武凱side]

[ライフ]2→1。

[リザーブ]4個→5個。

 

「これで止めだッ!! リューマンゴッドブレイカーでアタック!!」

「ち、畜生ッ!! ライフで受けてやるよ!!」

 

開き直った様に宣言すると、再度リューマンゴッドブレイカーが繰り出す蹴りが最後のライフを砕き、破壊する。

 

「ぐわああああッ!」

 

[武凱side]

[ライフ]1→0[Lose]

 

バトルに決着し、見ていたバトルを見届けていた観客達は一斉に歓声を上げる。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「さぁ、これで満足だろ? 大人しく帰りな!」

「っ!!」

 

決着後、その場に凭れ込む武凱にエンザは詰め寄りながら、スタジアムからの退場を促し、それに対し、武凱は悔しそうにしながらも返す言葉がないのか反論しようとはしない。

 

『やれやれ、武凱。テメェも揃って負けてるとはな』

「!?」

 

そんな中突如入り口付近より響く声、その声に一番強く反応したのは武凱であり、声の主は、武凱達、チーム海皇のチームリーダーである浪川だった。

 

「浪川、テメェまで俺のスタジアムに何の用だ?」

 

気に入らないように苛立ち気味に言い放つエンザに対し、浪川は顔色一つ変える様子はない。

 

「うちのメンバーが迷惑かけたからな。詫びに来ただけだ、まぁ俺もそれを二人分するとは思ってなかったけどな」

「うっ! きゃ、キャプテン。俺は……!」

「生憎言い訳なら聞き飽きてんだ。とっとと帰れ!」

「!」

 

武凱を一瞥しながらの冷たい言葉に、武凱は思わずその大きな体を震わせ、慌てて立ち上がるとすぐさまその場から逃げるように走り去っていき、その後姿を見届けると、ハルヤの方に視線を向ける。

 

「俺の狙いはテメェじゃねぇんだが、ウチのメンバーが迷惑かけたからな。一応リチームリーダーとして詫びさせてもらう」

「!」

 

軽くハルヤに対し、謝罪の言葉を伝えるとそのまま彼は次にエンザに視線を向ける。

 

「これ以上下らねぇことが起こる前に決着を付ける! 詫びの他に今日はそれを言いに来た!」

「決着だと?」

「あぁ。明日俺達チーム海皇のスタジアムに来い! これ以上無駄な小競り合いは必要ねぇ。俺とテメェ、チームリーダー同士そこで白黒つけようぜ!」

「宣戦布告って訳か!」

 

挑発的な浪川の言葉、先程まで声を苛立たせていたエンザだったが、その提案に対し、笑って見せる。

 

「望むところだ! 正々堂々受けてやるぜ!!」

「成立だな!! 楽しみにしてるぞ? お前をぶっ倒せる事をな!!」

「その言葉、1000倍にしてテメェに返してやるぜ!!」

 

睨み合う両者、まさに今チームレッドドラゴンとチーム海皇による決着の火蓋が切られ、明日に迫った対決。勝負を前に対立する両者共だったが、どちらもその頭にあるには自分の勝利、ただそれだけだった。




いかがでしたでしょうか?第2話! 本編と最初の2話は何とか今日中に投稿したかったので、確認等で遅れましたが間に合ってよかったです。でもさすがに2話更新は疲れたので、次回からはもうちょっとゆっくりになるかも。せめて最低週1ペース更新できたらなと考えております。まぁ不定期更新になるかもしれませんがどうかご容赦ください。

話は変わりまして、第2話! 今回は東方怪獣のカードがメインでしたね。コラボブースターのカード何ですが、コラボカードがどうこうより、思ったのはやっと最新カード書ける!!って事ですかね(笑)武凱の使ったキースピリットのゴモラ。結構「城」が入ったカードって、探してみると多かったのは意外でした。相性がいいのはやっぱり「破壊された城」ですが、他の「城」カード入れて見ても面白いかもしれません。それとツイッターでも言ったのですが破壊された城にゴーレムクラフトを使うという事を思いついたので、そういうデッキを組んでみたいと考えて見たり(笑)

本編は今回、特撮関係を意識して書いた部分が多数ですね。まぁどことは言わないですが(;´・ω・)←

ちなみに補足ですが、怪獣カードは主人公たちにとっては「怪獣」というスピリットカードという認識です。簡単に言うと、「テレビで見たことあるスピリットだ!」とかそんなことは一切言わないという事です(笑)


そして次回はレッドドラゴンのリーダー、火龍エンザとチーム海皇リーダー、浪川海斗のバトル!! 不良気質の二人がどんなバトルを繰り広げるのか、どうぞご期待していただけたらと思っております(笑)どうぞ次回もよろしくお願いいたします!


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No03.龍鮫激突! レッドドラゴンvs海皇

・以下注意

誤字、プレイミスありかも。
バトル表記が人によっては分かりずらいかも。

それでも大丈夫という方はどうか温かい目で見てもらえると幸いです。発見したミスやバトル表記などのご指摘ご気軽にお待ちしております。






海辺沿いに建てられたチーム海皇の専用スタジアム、街から離れてるという事もあり、普段はあまりチーム海皇メンバー以外の人気は少ない。しかし今日この日、この時、スタジアムより響く大きな歓声。普段は人気の少ないスタジアムが一変。観客席を埋め尽くす程、多くの観客達で賑わっていた。

 

『さぁ皆さまこんにちは! 今日も始まりましたバトスピチャンネルオンライン!! 実況を務めますのは毎度御馴染み! 犬神紅葉でございます!!』

『同じく解説の神子でございます。どうぞ今日も一日、この放送に視聴者様どうぞお付き合いください!』

 

スタジアム中央、定位置で既に設けた席にスタンバイしている紅葉と神子、そしてスタジアムの様子を中継するコン太の三人。毎度のことながらもその様子はこの場だけではなく、全国へと放送されている。そして今回、会場に足を運ぶ紫苑を初めとする多くのカードバトラー達がこの光景に注目する目的はただ一つだった。

 

『今日はついに!! チーム海皇リーダー、浪川海斗選手!! 同じくチームレッドドラゴン、リーダー、火龍エンザ選手!! その二人の激突が今日遂に幕を開けます!!』

 

高らかに宣言する紅葉の言葉に刺激され、より歓喜の声を上げる観客達。彼女の言う通り、昨日の浪川海斗の白黒はっきりさせると言う大々的な宣戦布告から翌日の今日、その決着が行われようとしており、二人の実力を知るカードバトラー達はその行方を見届けようとこの場へと足を運んだり、この場にいない者もまた放送されているバトル中継の画面に釘付けになっていた。

 

『今か今かと待ち望まれる対戦!! 私も既にもうテンションが上がっております!! 我らが姉、解説の神子さんも一言お願いします!』

『えぇ、私もとても楽しみにしております。浪川海斗選手と火龍エンザ選手、知る人ぞ知る強豪のバトラーの二人、当然白熱したバトルになる事でしょう!』

『えぇ全くその通りです!! おっと、スタジアムで動きがあるようです!!』

 

何かに気づいたように声を上げる紅葉、彼女の視線の先にはスタジアム入り口から人影が見えたかと思うと、そこに現れるのは赤い竜の旗を掲げて現るとある団体。全員がもしやと思う中、団体の中には吉馬とハルヤの二人の姿も見え、二人が入ってすぐにもう一人、赤いシャツを羽織る不良のような見た目の少年、火龍エンザが続いて現れる。

 

『来た来た来た!!! 龍の旗を掲げて現るは赤き怒涛の攻めを誇るチームレッドドラゴン!! そしてそのチームリーダーを務めるのはこの男!! 火龍エンザッ!!!』

 

入場コールにも事欠かさない紅葉、耳を塞ぐ程の大きな歓声にハルヤはただただ圧倒されるばかりだったが、吉馬とエンザはそれには慣れているのか大勢の観客の前でも平然としており、そしてチームリーダーとして、エンザはステージの前までゆっくりと歩み出り、ただ静かにその時を待ち、会場の空気が変わり始める中、突如として反対側の入り口のシャッターが開き始める。

 

『遂に来ましたーーッ!! ルール無用!! バトル最強がチームのモットー! 勝利と強さが絶対! 荒くれ者達の集うそれはまさに海賊!! それこそがチーム海皇!!!』

 

再び歓声が巻き起こり、姿を見せるチーム海皇メンバー達、武凱やバンも入場し、そして最後に出てくる人物の姿に場が一瞬にして静まり返る。

 

『荒くれ海賊集団を束ねるのはこの男、キャプテンと呼ばれ、その迫力にはチームメイトでさえもたじろぐ程! チーム海皇リーダー! 浪川海斗ーーッ!!』

 

威風堂々としたその姿、武凱やバンを押しのけながら、同じくステージの前へと立ち、目の前にいるエンザをただ強く睨む。

 

「ようやく大将直々のご登場だな! この場でテメェと戦う事になるとはな!」

 

口角を上げながら挑発的に言葉を掛けるエンザだが、浪川はその言葉に対し少しも気にする様子は無く、平然とした態度を見せる。

 

「フン、俺の前に立つ奴は全員得物だからな!! 前にも言ったよな? 鮫は得物に喰らい付けば最後、絶対に離さん!」

「俺が得物だと? 鮫が龍に対して牙向くとは随分大きく出たな!!」

「お前が龍だろうが、噛み裂き海に引きずり込むだけだ!!」

「やってみろ! 噛み付く前にぶっ倒す!!」

 

火花を散らして睨み合う両者、勝負前から既に闘志と敵意を全開に対立する二人、互いにそこで会話を切り上げると、ステージの左右奥の定位置にそれぞれ移動する。

 

「キャプテン!! レッドドラゴン如き俺達の敵じゃねぇぜ!!」

「そうともよ!! 最強の座に君臨するのはアンタしかいねぇぜ!!」

「黙って見てろ野郎共! 余計な事言わなくても俺は端から勝つこと以外考えてねぇ!」

「「!」」

 

チームメイトの声援でさえも余計なものと切り捨てる浪川。このバトルに勝利、唯その事だけに彼は集中しており、一方でこれから行うバトルに備えるエンザに吉馬とハルヤはすぐさま駆け寄る。

 

「リーダー、頑張ってください! 俺信じてますから!!」

「僕も、応援してます!」

「ハッ、負けるつもりなんて微塵もねぇよ! テメェ等の気持ちは受け取るが心配せずにそこで見てろ!! 俺の勝利をな!」

「「はい! リーダー!!」」

 

エンザもまた自信にあふれた様子で、間もなく始まろうとするバトルを前に浪川とエンザ以外の面々は後ろに下がり、当の二人はほぼ同時にデッキを取り出し始める。

 

「行くぞ!! 浪川! 全力でぶっ倒してやるから覚悟しな!!」

「粋がるなよ! テメェを噛み砕くっていう覚悟がこっちにはあるんだよ!!」

『さぁ両者それでは宣言をお願いします!!』

「「ゲートオープン!! 界放ッ!!」」

 

開幕するバトルに観客達も必死に声を上げ、会場中が熱気に包まれる。

 

 

 

 

[01ターン.浪川side]

[スタートステップ]

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「俺から先行だ! メインステップ、グラッディスクアーロ召喚!」

 

[リザーブ]4個→0個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→4枚。

 

【グラッディスクアーロ】3(3)青、スピリット、異合。

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(3)BP5000、Lv.3(4)BP7000。

 

[フィールド]グラッディスクアーロLv.1((S(ソウルコア)1))BP3000。

 

「これでターンエンド」

 

 

 

 

[02ターン.エンザside]

[スタートステップ]

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

 

「メインステップ! ジンライドラゴンを召喚だッ!」

 

[リザーブ]5個→1個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→4枚。

 

【ジンライドラゴン】3(2)赤、スピリット、武竜。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

このスピリットをBP+3000する。このスピリットにS(ソウルコア)が置かれている間、さらにこのスピリットは【真激突】『相手は可能ならばスピリット/アルティメットでブロックする』を得る。

 

[フィールド]ジンライドラゴンLv.1((S1))BP3000。

 

「アタックステップ! まずは初戦と行こうぜ!! ジンライドラゴンでアタック! アタック時効果でBP+3000! さらにソウルコアの力で【真激突】だッ!」

「!」

 

『さぁ火竜エンザ選手! 後攻2ターン目からいきなり仕掛けてきました!!』

『【真激突】、その効果はブロックの強制!! 可能であれば相手は必ずブロックしなければなりません』

『浪川選手のスピリットを序盤からいきなり狙いに来ました!!』

 

赤いオーラを纏いながら突っ込むジンライドラゴン、ブロックを余儀なくされ、グラッディスクアーロは自分の意思とは関係なく効果により構えさせられる。

 

「グラッディスクアーロでブロックする!」

 

[Battle]ジンライドラゴンLv.1((S1))BP6000vsグラッディスクアーロLv.1((S1))BP3000。

 

強制されるバトル。ジンライドラゴンは頭部の剣を構えながら突っ込み、グラッディスクアーロはそれを右手の盾で受け止めると、反撃に左手の剣を振り下すが、ジンライドラゴンは即座に翼を広げ、頭上に飛び上がり、そのまま降り立つと同時に刃を振り下し、切り裂かれたグラッディスクアーロは破壊される。

 

「ターンエンドだ」

 

 

 

 

[03ターン.浪川side]

[スタートステップ]

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[コアステップ][リザーブ]1個→2個。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]2個→5個。

 

「スピリットを1体破壊したぐらいで終わりとは随分温いな?」

「あぁ?」

「お手本を見せてやる! メインステップで磯武者キリサメを召喚だ!」

 

[リザーブ]5個→1個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→4枚。

 

【磯武者キリサメ】3(青1 極1)青、スピリット、家臣/獣頭。

Lv.1(1)BP4000、Lv.2(4)BP6000。

『このスピリットのアタック時』

自分はデッキからドローする。その後、自分は手札を1枚破棄する。このスピリットにS(ソウルコア)が置かれている時、さらにコスト3以下の相手のスピリット1体を破壊する。

 

グラッディスクアーロと同じくまた鮫を模したスピリットだがその見た目は異なり、甲冑を纏い、鮫肌で形成された刀身を持つ刃を掲げるスピリット。

 

[フィールド]磯武者キリサメLv.1((S1))BP4000。

 

「アタックステップだ! 磯武者キリサメでアタック! 効果発揮により、1枚ドローし、手札にあるオーシャンエナジーを破棄!」

 

『手札入れ替え! その効果は青の十八番ですね』

『ですが、今のキリサメの効果はそれだけでは終わりません!』

 

神子の言葉の通り、キリサメの効果はまだ終わらない。さらに眼光を輝かせ、ジンライドラゴンに向かって一気に駆けだすと、その刃でジンライドラゴンを切り裂き破壊してしまう。

 

「ッ!!」

「キリサメの効果はまだある。このスピリットにソウルコアが置かれていればコスト3以下のスピリットを破壊。スピリットを倒すのはバトルだけじゃねぇ。それを体験して覚えな!! さらにキリサメのメインアタック!」

「ライフで受けてやるよッ!」

 

キリサメ本来のアタックはまだ継続している。そのままエンザに向けて、鮫肌の刃を投げつけると、展開されたバリアに深々と突き刺さりライフが砕かれる。

 

[エンザside]

[ライフ]5→4。

 

 

「ッ!!」

「これが攻めだ、精々お手本にしろ!」

「うるせぇ、ライフ一つ削ったぐらいでもう勝った気か?」

「何?」

「こんなんじゃ俺はまだまだ倒れねぇ。そう言ってんだよ!!」

 

ライフを削られてもなおエンザの闘志はより燃え上がる。だが浪川もまたそれに一歩も引く様子は無い。

 

「虚勢だとしたら大したもんだな。俺はターンエンドだ」

「ハッ!! 虚勢かどうか直ぐに証明してやるぜ!!」

 

 

 

 

[04ターン.エンザside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]3個→4個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]4個→7個。

 

「メインステップ! イクサトカゲを召喚! テメェが赤バトラー相手に、嫌! 俺相手に攻め方を問うなんざ百年早ぇッ! それを今思い知らせてやる!!」

「!」

「戦は華! ド派手な華を今ここに飾れ! 戦皇ゴッドスレイヤードラゴンを召喚だッ!!」

 

 

[リザーブ]7個→0個。

[トラッシュ]0個→6個。

[手札]5枚→3枚。

 

【戦皇ゴッドスレイヤードラゴン】7(4)赤、スピリット、戦竜。

Lv.1(1)BP6000、Lv.2(3)BP10000、Lv.3(5)BP12000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

相手のネクサス1つを破壊する。この効果でネクサスを破壊したとき、このスピリットは回復する。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『このスピリットのバトル時』

カード名に「神」と入っている相手のスピリットとバトルした時、このスピリットをBP+5000する。

Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

相手のスピリット1体を指定し、そのスピリットにアタックできる。

 

不足コスト確保の為、イクサトカゲは消滅するが召喚パフォーマンスと共に一枚のカードを呼び出すと、フィールドに突如として火柱が二つ噴き上げ、火柱より飛び出すは巨大な盾と剣。そしてその二つに続き、巨大な三つ目の火柱が噴き上げると、炎の中より姿を見せるのは「戦皇」と「神殺し」の二つ名を持つ赤き龍、ゴッドスレイヤードラゴン。空中で剣と盾を掴み取ると、大きく大地を揺らし、巨大な音を起てながらフィールドへと降り立つ。

 

[フィールド]戦皇ゴッドスレイヤードラゴンLv.1((S1))BP6000。

 

『戦皇ゴッドスレイヤードラゴン!! 早くもエンザ選手、自慢のキースピリットを呼び出したぞーーッ!!』

『戦いに飢えた竜達、それが戦竜。その中でもゴッドスレイヤードラゴンはトップクラスに君臨するスピリット。レッドドラゴンのリーダーとして相応しいキースピリットですね!』

 

フィールドに立つ巨大なゴッドスレイヤードラゴンの姿に白熱する観客達の盛況の中、紅葉も高らかに実況を語り、神子もまた丁寧な解説の言葉を述べながらも、内心では紅葉や観客達と同じく白熱するバトルには心を躍らせていた。

 

「アタックステップだ! ゴッドスレイヤードラゴン、行けぇッ!!」

「ライフだ!」

 

前進するゴッドスレイヤードラゴン、最初に巨大な盾を振り被ったかと思うと、そのままバリアに向けて振り下し、本来は身を守る盾と言えど、強大な重量で振り下されるそれはまさに大槌の如し。あまりの衝撃に浪川のフィールドは揺れ、バリアに大きく亀裂を刻むと、そのまま間髪入れず次に振り下ろす剣でバリアを完全に砕く。

 

「ッ!!」

 

[浪川side]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]1個→2個。

 

「ターンエンドだ! どうだ! これで同点だぜ!」

「それで満足するのが生温いって言ってんだよ!」

 

 

 

 

[05ターン.浪川side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]2個→3個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]3個→6個。[フィールド]磯武者キリサメ回復。

 

「メインステップ、まずはバーストセット!」

 

『おっと! 浪川選手ここでバースト! 一体何を伏せた?』

「フン、バーストは本番前の下準備だ!」

『!?』

 

紅葉の実況する言葉に鼻で笑って見せ、その言葉は彼がこのターンの狙いが別にある事を示していた。

 

「エンザ、キースピリットを待ってたのはテメェだけだと思うなよ?」

 

浪川もまた待ち望んでいるスピリットがいるのか、バーストセットから続け様にすぐさま手札の一枚に手を掛ける。

 

「荒ぶる海の獣! 豪快怒涛に攻め上げろッ! ホオジロタイガーを召喚ッ!!」

 

フィールドの大地が水に包まれ始めたかと思うと、水場と化したステージ中央に巻き起こる渦潮。そして渦潮の中、微かに鮫の尾鰭を見せたかと思うと、瞬間、海面を突き破り渦潮から飛び出す鮫のような見た目の獣、ホオジロタイガーが現れる。

 

[リザーブ]6個→0個。

[トラッシュ]0個→5個。

[手札]5枚→4枚。

 

【ホオジロタイガー】6(3)青、スピリット、異合。

Lv.1(1)BP6000、Lv.2(3)BP8000、Lv.3(8)BP20000

Lv.1、Lv.2、Lv.3

S(ソウルコア)が置かれている自分のスピリットを、そのスピリットが持つ最高Lvとして扱う。

Lv.3『このスピリットのアタック時』

BPを比べ相手のスピリットだけを破壊した時、自分は相手の手札すべての内容を見て、その中のカード2枚を破棄する。

 

[フィールド]ホオジロタイガーLv.1(1)BP6000、磯武者キリサメLv.1((S1))BP4000。

 

『エンザ選手がキースピリットを呼び出したその矢先! 浪川選手も負けじとキースピリットを呼び出した!! その名もホオジロタイガー!!!』

『ホオジロタイガー、こちらもゴッドスレイヤードラゴンに負けず劣らず強力なスピリットですね、お互いキースピリット呼び出したここからが本番ですよ?』

『まさに龍虎、嫌、まさに龍鮫の激突!! 勝つのはどちらか!!』

 

観客や対戦する二人を煽る紅葉の決まり文句。しかしそれに対して、二人とも最初から今もなお自分達の勝利以外に余計な事は全く考えてはいない。

 

「勝つのは俺だ!! ホオジロタイガーでテメェを噛み砕いてやる!」

「ハッ!! 何時でも掛かって来い! テメェがどんなに攻めようと俺とゴッドスレイヤードラゴンがそれを超えてやる!!」

 

言い合う二人に互いのキースピリットもまた、互いの相手に向かって大きく吠えながら睨み合う。勝負に掛ける気迫も闘志も全くの互角の両者に見ている誰もが、そのバトルの勝者を未だ予測できずにいた。

 

「行くぞ、磯武者キリサメのソウルコアとホオジロタイガーのコアをチェンジ!」

「!」

 

2体の上に置かれていたコアが入れ替えられ、ホオジロタイガーの上にソウルコアが乗せられた瞬間、秘めたその力を開放するようにホオジロタイガーは眼光を輝かせ、力強く吠える。

 

「ホオジロタイガーはソウルコアが置かれている自分のスピリットを常に最高レベルとして扱う。そして自分自身に置かれ最高レベルとなったホオジロタイガーのBPは20000!!」

「ッ!!」

『これは凄い!! ゴッドスレイヤードラゴンを軽く凌駕してしまいました!!』

『ホオジロタイガーをLv.3にする為には通常だと多くのコアが必要になります。しかし、それをソウルコア一つでできてしまうとなればまさに相手にとっては脅威という他ありません!』

 

圧倒的な力を見せつけるホオジロタイガー、だが浪川はそれに対しても決して気を抜く事は無い。以前バトルに集中するように鋭く相手を睨み、一瞬の隙も見せない。

 

「さぁ行け! ホオジロタイガー!! 天下にその牙を届かせろ!」

 

ホオジロタイガーは海面に飛び込むと、背鰭を残して海面に身を潜め、そしてまるで弾丸のような速度でエンザへと一気に接近し、目の前まで近づいた瞬間、一気に海面から飛び出し、大口を開けて襲い掛かる。

 

「ライフで受ける!」

 

ホオジロタイガーはバリアにその牙を突立てて喰らい付くと、そのまま一気にバリアに亀裂を走らせ、一瞬で噛み砕いてしまう。

 

「ッァ!!」

 

[エンザside]

[ライフ]4→3。

[リザーブ]0個→1個。

 

「磯武者キリサメでさらにアタック! アタック時効果で1枚ドロー……!!」

 

引いたカードに一瞬だけ彼は顔色を変えたが、すぐにバトルに気持ちを切り替えると、冷静に手札の「ネコザメキャット」を破棄して効果を処理し終える。

 

「(あの野郎、何を引きやがった?)」

 

当然それをエンザも見逃す筈はないが、今はそれに構う暇はない。次に向かうキリサメの攻撃にも防ぐ手立てはなく、キリサメの刃がバリアを切り裂き、ライフをさらに破壊する。

 

[エンザside]

[ライフ]3→2。

[リザーブ]1個→2個。

 

「ターンエンド」

 

 

 

 

[06ターン.エンザside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]2個→3個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]6個→0個。[リザーブ]3個→9個。[フィールド]戦皇ゴッドスレイヤードラゴン回復。

 

「メインステップ! ゴッドスレイヤードラゴンをLv.2にアップ。さらに俺はイクサトカゲをもう一体召喚し、マジック、陀武竜ドローを使うぜ!」

 

[リザーブ]9個→4個。

[トラッシュ]0個→2個。

[手札]4枚→2枚。

 

【陀武竜ドロー】4(2)赤、マジック。

『メイン効果』自分はデッキから2枚ドローする。その後、自分のトラッシュにある系統「武竜」を持つスピリットカード1枚を手札に戻す。

『フラッシュ効果』このターンの間、スピリット1体をBP+2000する。

 

トラッシュにはキリサメの効果によってジンライドラゴンがあり、再び舞い戻るそのカードを手に取る。

 

[手札]2枚→5枚。

 

「戻したジンライドラゴンを召喚し、さらにハガネヴルム召喚だ!」

 

[リザーブ]4個→0個。

[トラッシュ]2個→4個。

[手札]5枚→3枚。

 

【ハガネヴルム】3(2)赤、スピリット、家臣/武竜。

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(3)BP5000。

Lv.1、Lv.2『自分のアタックステップ』

自分のスピリットが【真激突】/【連刃】を発揮するとき、自分は相手がブロックするスピリット/アルティメットを指定できる。このとき、疲労状態の相手のスピリット/アルティメットを指定してもよい。

Lv.1、Lv.2、【真激突】『このスピリットのアタック時』

相手は可能ならばスピリット/アルティメットでブロックする。

 

[フィールド]戦皇ゴッドスレイヤードラゴンLv.2((S1)2)BP10000、ハガネヴルムLv.1(1)BP3000、ジンライドラゴンLv.1(1)BP3000、イクサトカゲLv.1(1)BP1000。

 

『エンザ選手! 一気に三体ものスピリットを呼び出したーーッ!! これは勝負に出たかッ!?』

『浪川選手の場にはブロッカーとなるスピリットはもういません。このターンのフルアタックが決まれば、決着となります!』

『さぁ対する浪川選手、これには打つ手があるのか!?』

 

神子達の言う通り、一気にバトルの状況が変わる。守るスピリットのいない浪川に、4体ものスピリット達は構え始める。

 

「テメェにはこれ以上何もさせねぇ、これで終わらせてやる! アタックステップだ!」

「!」

「戦皇ゴッドスレイヤードラゴン、一番手はお前だ! アタックしろ!!」

 

エンザの言葉に頷きながらゴッドスレイヤードラゴンは駆け出し、浪川へ仕掛けられる攻撃に観客達はこれで勝負が決まるのかと息を呑む。

 

「ライフで受ける!」

『浪川選手!! 手札には何もないのか無防備だ!! これは勝負あったか!!』

 

紅葉の言葉に誰もがエンザの勝利、それを確信し始める。ゴッドスレイヤードラゴンは勇ましい咆哮を響かせ、剣を振り上げてバリアを切り裂き、ライフを削り取る。

 

[浪川side]

[ライフ]4→3。

[リザーブ]0個→1個。

 

「「キャプテン!!」」

 

追い込まれる浪川の姿に当然、心配そうに声を上げる二人。しかしその心配は無用なのか、二人の言葉に「五月蠅い!」と一蹴しながら、ライフが削られた瞬間、目を見開き、伏せたバーストカードを睨む。

 

「ライフ減少時でバーストだ!!」

「何!」

「No.26キャピタルキャピタルを発動!!」

 

【No.26キャピタルキャピタル】6(3)青、ネクサス。

Lv.1(0)。

S(ソウル)バースト:自分のライフ減少時】

このネクサスカードをコストを支払わずに配置する。

Lv.1『相手のアタックステップ』

ソウルコアが置かれていない相手のスピリット/アルティメットがアタックするとき、相手は、相手のリザーブのコア1個を相手のトラッシュに置かなければアタックできない。このネクサスにソウルコアが置かれている間、この効果でトラッシュに置くコアを+1個する。

 

[バースト]No.26キャピタルキャピタル。

 

フィールドに突如として出現するネクサス、キャピタルキャピタル。出現と同時に青い光を灯したかと思うと、その光はエンザのフィールドにも灯り始める。

 

「このターン、テメェはソウルコアが乗っていないスピリットでアタックするとき、リザーブのコアをトラッシュに置かない限り、アタック不可能となる」

「!?」

 

エンザのリザーブにもうコアは無い。ソウルコアを乗せたゴッドスレイヤードラゴンも先程の攻撃で疲労してしまい、残る攻撃手段を完全に奪われてしまう。

 

『浪川選手! ここでバーストによる反撃!! 勝負に出たエンザ選手だったが、リザーブにコアがなければこれ以上攻撃できない!!』

『一気に勝負を決めに掛かっただけにこれは悔しい。浪川選手に一本取られてしまったようですね』

「へっへ!! さっすがキャプテンだ! 防御も完璧だぜ!!」

「攻めるしか能のねぇエンザとキャプテンじゃ比べもんにならねぇぜ!!」

「……ッ!!」

 

形成を立て返す浪川の姿に歓喜する二人、対してフルアタックでの決着をつけるつもりのエンザだったが、勝負を焦ってしまったのかバーストの一手は完全に予想外だった。決して油断していた訳ではないが、それでもこのターン決められない事に悔しがらずにはいられない。拳に力を籠めつつも彼にこれ以上手はなく、静かに彼は「ターンエンド」とコールした。

 

 

 

 

[07ターン.浪川side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]1個→2個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]5個→0個。[リザーブ]2個→7個。[フィールド]ホオジロタイガー、磯武者キリサメ[回復]

 

「メインステップだ、海傭師団シャーガを召喚!!」

 

[リザーブ]7個→3個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]4枚→3枚。

 

【海傭師団シャーガ】5(2)青、スピリット、獣頭。

Lv.1(1)BP5000、Lv.2(2)BP7000、Lv.3(4)BP9000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『自分のアタックステップ開始時』

コスト4以下の相手のスピリット1体を破壊する。自分の手札が3枚以下の時、かわりに、このスピリットのコスト以下の相手のスピリット1体を破壊する。

Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

自分の手札が2枚以下の間、相手は、手札にあるマジックカードを使用できない。

 

海面より飛び出す新たなスピリット、シャーガ。だが浪川にとってはまだそれで満足はできないのか、さらに手札の一枚を構え、それは先程キリサメの効果によって手に入れた一枚だった。

 

「海の力を得し魔神! 異魔神ブレイヴの一角! 鮫魔神を召喚だッ!!」

 

また一体海面から飛び出す影、だがその体はまるで幽体のように半透明であり、異彩を放つ特殊なブレイヴ、鮫魔神がその姿を見せる。 

 

[リザーブ]3個→0個。

[トラッシュ]3個→6個。

[手札]3枚→2枚。

 

【鮫魔神】5(青2 紫2)青、ブレイヴ、異魔神/異合。

Lv.1(0)。

このブレイヴは疲労せず、スピリット状態のときアタックとブロックができない。

【右合体条件:コスト5以上】

コアが2個以下の相手のスピリット1体を破壊する事で、このターンの間、相手は手札にあるコスト3以下のマジックカードを使用できない。

【左合体条件:コスト5以上】

相手スピリットのコア1個を相手のリザーブに置く。

 

『何とここで呼び出されたのは、最強のブレイヴ! 異魔神ブレイヴが現れましたーーッ!!』

 

バトルも終盤、それでも紅葉は必死に声を張り上げて実況を続け、浪川はそれに構う事は無く、続く自分のターンに集中し切っている。

 

「さぁ荒ぶる海の獣共!! 今その最強の力を引き出せ!! ホオジロタイガーを鮫魔神に右合体(ライトブレイヴ)! シャーガを鮫魔神と左合体(レフトブレイヴ)だ!!」

 

鮫魔神はホオジロタイガーとシャーガに二体に取り付くと、二体の体に波動を撃ち込み、自分自身へとリンクさせると、先程まで半透明だった鮫魔神はその体を実体化させ、ハッキリとその姿を映すと、力強く吠える。

 

『サメサメサメ!! まさにサメ尽くしの浪川選手!!! 荒ぶる海の力を体現するかのようなスピリット達はまさに圧巻です!!』

『最強を豪語する浪川選手、その言葉が決して虚勢ではない事は、このバトルを見ている誰もがもはや一目瞭然化と思われます!』

『浪川選手、圧倒的にその力を見せてくれます! これは決まったか!』

 

浪川のフィールドに立つ強力なスピリット達。そのスピリット全てが今すぐにでも襲い掛からんと吠え、牙や刃を構えながらその時を待つ。

 

「最初にお前は俺に覚悟があるのかと聞いたな、今度は俺が言わせてもらう。今のテメェは覚悟ができてんのか?」

「愚問だ、初めから俺は真っ向から受けてたってんだ! 覚悟ができてねぇ訳ねぇだろ?」

「ならこれで正真正銘終わらせてやるよ! アタックステップ! 海傭師団シャーガの効果、ステップ開始時にこのスピリットのコスト以下の相手スピリットを破壊する! 消えろ、ジンライドラゴン!!」

 

宣言と同時にシャーガは両手に持つ刃を海面に叩き付けると、その衝撃は津波となってジンライドラゴンへと襲い掛かり、波へと呑まれジンライドラゴンは破壊される。

 

「ジンライドラゴン!」

「こっからがメインのアタックだ! ホオジロタイガーでアタック!! 鮫魔神の右合体時効果発揮!! コアが2個以下の相手スピリットを破壊! 次はお前だ、ハガネヴルム!!」

 

海面に飛び込み再び猛スピードで突き進むホオジロタイガー。その進撃開始と同時に鮫魔神は右手を構えて、光弾を作り出し、それをハガネヴルムへと放つと、直撃を受けハガネヴルムでさえも破壊されてしまう。

 

「ッ!!」

「まだだ! この効果でスピリットを破壊した事でこのターンお前の手札にコスト3以下のマジックを使用不能にさせる!!」

 

相手の反撃の手も制限してしまう鮫魔神の効果。ホオジロタイガーは合体していることによりダブルシンボルとなり、エンザの残るライフを削らんと一気に海面から飛び出す。

 

「ぐっ! イクサトカゲでブロックだ!」

「無駄な足掻きを」

 

[Battle]鮫魔神×ホオジロタイガーLv.3((S1))BP24000vsイクサトカゲLv.1(1)BP1000。

 

『勝負は見るまでもなく明らか!! 浪川選手の前にエンザ選手敗れてしまうのか!!』

 

紅葉の言葉に誰もがもう決まった、そう思い始める。武凱やバンも自分達のチームリーダーの勝利を確信するように拳を突き上げて歓喜し、吉馬とハルヤは対照的に追い詰められるエンザに姿に「リーダー!」と声を上げずにはいられなかった。

 

「お前の負けだ! エンザ!!」

 

絶体絶命の状況を突きつけるように声を荒げる浪川。しかし、エンザはその言葉に対して。

 

「勝負は何が起こるか分からない、此奴は俺の憧れた人の言葉だ!」

「何!?」

 

その目はまだ決して勝負を捨てておらず、何かを決意するような表情で前を向き直ると、「フラッシュタイミング!」と手札の一枚を掲げる。

 

「マジック! 火炎烈破斬をゴッドスレイヤードラゴンのソウルコアを使って発動させる!! 効果でテメェの自慢の鮫魔神とソウルコアの使用でキリサメをまとめて破壊だぁッ!」

「何だとッ!!?」

 

[フィールド]戦皇ゴッドスレイヤードラゴンLv.2((S1)2)10000→Lv.1(1)BP6000。

[トラッシュ]4個→6個。

[手札]3枚→2枚。

 

【火炎烈破斬】4(2)赤、マジック。

『フラッシュ効果』相手の合体しているブレイヴ一つを破壊する。この効果発揮後、コストの支払いにソウルコアを使用していたら、BP7000以下の相手のスピリット/アルティメット1体を破壊する。

 

レベルが下がり力の減少に片膝をつくゴッドスレイヤードラゴンだったが、すぐさま立ち上がり、剣を掲げて地面に突き刺し振り上げると、噴き上げる二つの炎。それは鮫魔神とキリサメの二体へと襲い掛かり、炎に呑み込まれ消滅してしまう。

 

『すごい!! 何と起死回生のマジック! エンザ選手、逆転に次ぐ逆転です!!』

『異魔神と言えど、ブレイヴには変わりありません。これは浪川選手、一杯食わされましたか?』

「ふざけるな!! 俺のターンはまだ終わってない!! ホオジロタイガーのバトルは継続してるぞ!!」

 

完全に予想外な反撃、しかし驚きつつもそれほど大きな動揺は見せず継続したバトルでは阻もうとするイクサトカゲをホオジロタイガーが一呑み、破壊されてしまう。

 

「ホオジロタイガーの効果! このスピリットのアタック時で相手のスピリットだけを破壊すれば相手の手札2枚を破棄させられる!!」

 

バトルに勝利したホオジロタイガーがその目を輝かせると、エンザの残る手札の2枚全てが弾け飛び「英雄皇の神剣」と「ジンライドラゴン」の2枚のカードがトラッシュへと送られる。

 

[手札]2枚→0枚。

 

『浪川選手マジックの反撃を受けながらも決して怯まない!! 効果によって、エンザ選手の手札全てを奪いきった!!』

『これでエンザ選手の手札は0、次のターンに反撃は難しいものと思われます』

『安堵したのも束の間、やはりエンザ選手不利な状況には変わりありません!!』

 

一難去ってまた一難。危機はまだ完全に去った訳ではない。浪川は相手の逆転の可能性を潰せたことに一先ず良しとしたのか、それ以上攻めようとはせず「ターンエンド」とコールし、続くエンザのターン。その行方を誰もが見守り、吉馬とハルヤは心配そうな表情を隠せてはいないが、当の本人はその状況に対してもまるで気にする様子はなく、その表情に一切不安の色など無い。

 

 

 

[08ターン.エンザside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]3個→4個。

[ドローステップ][手札]0枚→1枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]6個→0個。[リザーブ]4個→10個。

 

「メインステップ!!」

「手札一枚の状況でもまだやるつもりか!!」

「どんな状況でも関係ねぇ!! たとえこれがラストターンだろうと俺は最後まで全力だぁッ!!」

「!」

「行くぞ!! 烈火に燃える武の魂! 紅蓮の猛き龍!! センゴクグレンドラゴンをLv.2で召喚!!」

 

[リザーブ]10個→2個。

[トラッシュ]0個→5個。

[手札]1枚→0枚。

[フィールド]戦皇ゴッドスレイヤードラゴンLv.1(1)BP6000、センゴクグレンドラゴンLv.2((S1)2)BP7000。

 

天にまで届くような勢いで燃え上がる炎、そしてその炎を引き裂き姿を現すのは、四足歩行でさらに二刀の刃を携えし赤き龍、センゴクグレンドラゴン。

 

「最後の一枚で、Xレアだと!?」

『何と何と! この土壇場でさらにXレア!! 赤き龍、センゴクグレンドラゴンを呼び出したーーッ!!!』

 

流石に浪川も驚きを隠せず、センゴクグレンドラゴンの登場に再び会場中に湧き起こる歓声、喚起する観客達の声を浴びながらも並び立つゴッドスレイヤードラゴンとセンゴクグレンドラゴンの咆哮は一際大きく響き渡る。

 

『武に長けしセンゴクグレンドラゴン、そして戦に飢えしゴッドスレイヤードラゴン、まさにレッドドラゴンを象徴する主役の2体ですね!』

 

嬉々として語る神子達、エンザもまた2体の龍の姿に大きく笑って見せた。

 

「アタックステップだ!! センゴクグレンドラゴン、行けぇッ!! アタック時効果でこのスピリットにBP+5000! さらに【真激突】だぁッ!!」

 

【センゴクグレンドラゴン】6(3)赤、スピリット、武竜。

Lv.1(1)、Lv.2(3)、Lv.3(5)。

Lv.1、Lv.2、Lv.3【真激突】『このスピリットのアタック時』

相手は可能ならばスピリット/アルティメットでブロックする。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

自分はデッキから1枚ドローする。または、このターンの間、このスピリットをBP+5000する。

Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

このスピリットにS(ソウルコア)が置かれている間、ブロックしている相手のスピリットが消滅/破壊されたとき、相手のライフのコア1個を相手のリザーブに置く。

 

「また強制ブロックか!」

 

一気にBPを跳ね上げるセンゴクグレンドラゴン、シャーガは【真激突】の効果によって退路を断たれ、その攻撃を受け止めるしかない。

 

「ブロックしろ! シャーガ!!」

 

[Battle]センゴクグレンドラゴンLv.2((S1)2)BP12000vs海傭師団シャーガLv.1(1)BP5000。

 

センゴクグレンドラゴンは背中に取り付けた推進機を起動させ、猛スピードでシャーガへと突っ込み、シャーガは剣を交差させて突っ込むセンゴクグレンドラゴンを真正面から受け止める。しかしあまりのスピードとパワーに受け止めるシャーガの体はどんどん後ろに後退させられ始め、それでも主を守ろうと必死に受け止め続け、浪川の目の前でようやく止まる。

 

「ッ!!」

「これで決まりだぁッ!! センゴクグレンドラゴン!」

 

エンザの言葉にセンゴクグレンドラゴンはより力を引き出すようにその雄叫びを響かせると、シャーガの剣を二刀とも弾き飛ばし、そのまま一気にシャーガを切り裂き、致命傷を受けたシャーガは大爆発を起こす。

 

「ソウルコアの力でテメェのライフを貰う!!」

「おのれぇッ!!!」

 

センゴクグレンドラゴンはそのまま浪川の目の前まで迫ると、威嚇するように吠えながら二刀の刃を振り下し、バリアを両断、破壊する。

 

[浪川side]

[ライフ]3→2。

[リザーブ]2個→3個。

 

「続け!! ゴッドスレイヤードラゴン!!」

「ネクサス、キャピタルキャピタルの効果発揮!! ソウルコアのないスピリットのアタック時、お前のリザーブのコア一つ貰うぞ!!」

「コアの一つくれてやる!! その代わりテメェのネクサスも貰うぞ!!」

「!」

「ゴッドスレイヤードラゴンの効果!! 相手ネクサスを破壊して回復!」

 

リザーブのコア一つをトラッシュに送り、攻撃が可能となった戦皇。そのまま吠えながら浪川へと駆け出し、左手に持った盾をキャピタルキャピタルに向けて勢いよく投げつけると、鈍器の如く投げつけられた盾の直撃にキャピタルキャピタルは崩れ、海面の中へと沈み、そしてゴッドスレイヤードラゴンは無人と化した浪川のフィールドへと迫り、片手に持つ剣を振り下し、バリアを破壊する。

 

「ぐあああッ!!!」

 

[浪川side]

[ライフ]2→1。

[リザーブ]3個→4個。

 

「これで終わりだぁーーッ!! ゴッドスレイヤーでラストアタック!!」

「……ぐっ! ライフで、受ける!!」

 

再びゴッドスレイヤードラゴンは剣を掲げ、浪川はその姿を強く睨みながら叫ぶと、振るわれるゴッドスレイヤードラゴンの一撃がバリアを破壊する。

 

[浪川side]

[ライフ]1→0[Lose]

 

 

 

***

 

 

 

 

『決まりましたぁーーッ!!! 浪川海斗選手対火龍エンザ選手!! 勝ったのは、火龍エンザ選手ですッ!!!』

 

互いに全力を出し切っての壮絶なバトルに、観客達は惜しみない拍手と声援で二人を称える。勝負に決着後、二人共限界以上に繰り広げたバトルに息を荒げるが、それでも勝ったエンザは大きく笑いながら拳を天に突き上げる。

 

「俺の勝ちだぜ!! 浪川ッ!!」

 

勝利の宣言を高らかに叫ぶエンザ。レッドドラゴンのチームメンバー達はその姿に誰もが歓喜しながら大喜びの様子、対して浪川は無言のままステージを降り、チーム海皇メンバー達は心配そうに「キャプテン」と呟く。

 

「きゃ、キャプテン!! 気にする事ねぇよ!! 今回は向こうがたまたまツいてただけだ!」

「そうだぜ、あの野郎がセンゴクグレンドラゴンを引けてなかったら、間違いなく勝ってたのはアンタだ!」

 

バンと武凱はフォローするように声を掛けるが、浪川はそれに対し、「やめろ!」とすぐさまその二人の言葉を制止させる。

 

「今の俺はただの負け犬だ、グダグダ言ってもそれに変わりはねぇ」

 

勝負の結果を素直に受け入れ、言い訳をしようとせず、ただ黙ってステージから背を向ける海斗。その姿にエンザは「随分引き際をわきまえてるじゃねぇか?」と呼び止めるかのように声を掛け、その言葉に浪川は足を止める。

 

「今回はな。だが忘れるな! お前が俺の前にいる以上、俺は何度でも噛み付きに行くぞ?」

「いつでも来い! 俺もまだテメェに完全に勝ったとは思ってねぇんだ!! 次はキースピリットごとテメェを倒す!!」

 

対立しながらも互いにその実力を認め合っているのか、大胆不敵に笑って見せるエンザに対し、浪川もまた少しだけ笑って見せると、「行くぞ野郎共!」と海皇メンバーを引き連れてステージ出口へと姿を消した。

 

『チームレッドドラゴン!! これにて、チームランキングを7位を維持! そしてチーム海皇は8位に残念ながら降格です!』

『しかし熱い激突でした! この二人のバトルはいずれまた繰り広げられるかもしれません!』

『その時はぜひまた全力でバトル実況をお伝えします!! それでは皆様、また次回!』

 

実況を締め括る紅葉達、チーム海皇とチームレッドドラゴンによる激突は一先ず終幕を迎えた。勝利したエンザにチームメンバー達は祝福し、ハルヤと吉馬も嬉しそうにエンザに駆け寄る。

 

「リーダーやりましたね!! 俺最後までリーダーを信じてましたからね!!」

「サンキューな、吉馬。ハルヤも応援してくれてたんだろ? 一先ず礼を言っとくぜ?」

「は、はい!!」

 

一方のハルヤだが、何かと想い込んでいるのかエンザの言葉に遅れながら反応し、その様子に少しだけ、不服そうな態度を見せる。

 

「どうしたよ? 折角俺が勝ったってのに何か文句でもあんのか?」

「い、いえそんなことある訳ないです!!」

 

慌てるハルヤの反応に「冗談だよ!」と悪戯気味に笑うエンザ、そして「行くぞ!」彼等もまた会場を後に出口に向けて歩き出し始めるが、ハルヤもその後に続きながらも先程のバトルに何かを感じたのか、エンザ達の後ろ姿に彼は足を止める。

 

「(リーダー達に比べたら僕じゃまだまだだ。けどいつかは……!)」

 

何かを決意するようにハルヤはデッキを握りしめると、出口に向けて駆けだした。




どうも小説意欲が高ペース更新を実現させているブラストでございます!←(注:今だけ)



第3話いかがでしたでしょうか? 今回は主人公が完全に空気になってましたね(;´・ω・)まぁそれは大目に見てください←オイ

チームレッドドラゴンvsチーム海皇、今回でひとまず決着です。二人の関係は利家と兼次みたいなものですかね、面識ある二人ですが、その二人の因縁はまた追々語るつもりです。決して書くのを忘れてたわけじゃないんだからね←


一先ず冗談はさておき、今回使用したデッキ。エンザのデッキは私がリアルで使ってるデッキを参考にしました。ほぼほとんどリアルでも使ってるカードですね。ゴッドスレイヤードラゴンも古いカードですが、結構優秀なので愛用しております。ネクサス破壊と回復は割と優秀ですね! バトル時効果は、使ったことはありませんがその内使用できる事でしょう!(目線逸らし)
一方で浪川のデッキは終始サメ尽くしのデッキですね。小説で書こうと思った時は「趣味全壊だな」とか思ったりしてましたが書いてみると「あれ?強い!!」って事に気づきました。ホオジロタイガーと鮫魔神は割と強いのでレアリティもっと上げてくれてもいいよな気がしましたね。実際に組んでみようかと考えてます(笑)

第3話まで終わり、今のところ赤と青のスピリットしか使われてない事に気づきましたので、少し反省。でも次回からは他の色のスピリットも登場!かも……(笑)

今後も頑張って更新していきますのでぜひどうかよろしくお願いします。


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No04.忍参上! 新たな幕開け

・以下注意
誤字、プレイミスありかも。
バトル表記が人によっては分かりずらいかも。

それでも大丈夫という方はどうか温かい目で見てもらえると幸いです。発見したミスやバトル表記などのご指摘ご気軽に、お待ちしております。






チーム海皇とチームレッドドラゴンの決着を経て一日、まだ完全とはいかないが、一先ず決着を付けた事で二チームは衝突は終息についた。

 

「勝利おめっでとさーーん!」

 

何時もと同じレッドドラゴンのチームスタジアム、そこへ陽気な声で叫ぶ少年、八鳥紫苑。その姿に吉馬は「また来たのかテメェ」と露骨に嫌な顔を見せ、ハルヤは苦笑いしながらも軽く頭を下げて挨拶。

 

「ハルヤは相変わらず礼儀正しいな。それに比べて、隣の奴は女みたいな顔と名前の癖に愛想の一つもねぇ」

「あぁ!? テメェ今すぐ顔面ぶん殴ってやる!! 歯喰いしばれぇ!!!」

「吉馬堪えて!!」

 

相変わらずの紫苑に対し、怒りを隠せず拳を構える吉馬を慌てて抑えるハルヤ。当の元凶はその光景にケラケラと笑っており、チーム海皇との対立に片を付けた今でもレッドドラゴンのチーム内での騒がしさは健在だった。

 

『頼もーーッ!!』

「「「!」」」

 

そんな中、ハルヤ達の声を遮って響き渡る一つの声。全員がそれに驚いたように視線を向ける中、視線の先には金髪に派手目なジャッケットを着こなす煌びやかな格好の少年の姿が。

 

「来客みたいだぜ、ほらほら君達、相手相手」

「何で俺等が指図されんだ!」

「だって俺が相手する義理ねぇじゃん? お前等の役目だろ?」

「分かってる!! 分かってるけど、お前が言うと腹立つんだよ!!」

「まぁまぁ吉馬、堪えてってば!」

 

挑発気味に笑う紫苑に苛立ちながらもハルヤに連れられ、その少年の前まで行くと、吉馬は先程までため込んだ怒りをまだ切り替えられないのか、苛立ったまま「何の用だ?」と少年に尋ねる。

 

「あー、ここってレッドドラゴンのチームスタジアムだよな?」

「そうだ。分かってるなら言わせてもらうが、ここは普段チームレッドドラゴン以外は無暗に立ち入りお断りだぞ?」

 

吉馬がそう言うのも、この街には多くのスタジアムが建てられているが、その全てが気軽に使用できる訳ではない。スタジアムは上位チームに与えられた特設スタジアムと一般的に自由使用のできるスタジアムの二種類に分けられている。チームの特設スタジアムにはそれぞれルールがあり、そのチームリーダーによって様々だが、基本はチーム専用スタジアムはチームメンバー以外での使用を禁じている事が暗黙の了解としてなっていた。だがそれをその少年は理解しているのかいないのか、忠告するように吉馬は言い放つ。

 

「ここのルールは詳しくなくてよ、無暗に立ち入るつもりはなかったんだぜ?」

「なら何しにここに来た?」

「ちょっとこれ見てな。興味が持てたからここに来た」

 

少年の手には前日のエンザと浪川のバトルが映し出されており、それを見た瞬間、吉馬もその少年の目的を大体察し始める。

 

「バトル目的、か?」

「あぁそうだ。あんた等んとこのチームリーダー、火龍エンザと願わくば対戦できないかと、お願いしに来た!」

「……どこのチームだ?」

 

少年の言葉に武凱やバンの時の様に宣戦布告に来たのか、睨むように眼つきを変える吉馬。しかし、少年は平静のまま吉馬に手を振って「違う違う」と否定する。

 

「俺はチーム未所属だ、単純に俺個人でバトルしたいと思っただけよ」

「何だ、一般バトラーか、けどリーダーといきなり戦いたいってのは不躾じゃねぇのか?」

「腕には自信あんだぜ、退屈凌ぎぐらいにはなって見せれると思う!」

「……まぁ決めるのはリーダー次第だけど、生憎そのリーダーなら今日もいねぇぞ?」

「えっ?」

 

と言うのも、エンザは今日一日外出しており、要件は人探しという内容だったが、それ以上は吉馬やハルヤにも告げずにどこかに飛び出し、早朝から会場を飛び出してから未だに帰って来ておらずこの場に姿がないことがそれを証明していた。

 

「つー訳だ。どうする?」

「まじか。折角来たのに無駄足だったな」

「まっ来客があった事ぐらいは伝えてやる、また日を改め────」

「吉馬ちゃんってば塩対応はよくないよ?」

 

相手を帰そうと言い掛けた瞬間、突然横入りするように紫苑が後ろから吉馬の口を塞ぎながら加わり始め、それに苛立ったように「離せ!」とすぐさま紫苑を振り払うが、苛立つ吉馬を無視してその少年の前に出る紫苑。

 

「久々だな、ジライヤ? まさかお前までここに来るとは?」

「えっ!? 八鳥さんと知り合いなんですか?」

 

見知った様に紫苑はジライヤとその少年の名を呼び、その言葉に吉馬とハルヤは思わず動揺して相手を見るが、一方でジライヤと呼ばれたその少年は驚くハルヤの言葉に対し。

 

「……あー悪い、誰だお前?」

「「「!!!」」」

 

相手は完全に紫苑の事を知らないのか、その対応に思わず吉馬とハルヤはズッコケ、紫苑はそれに冷や汗を流しながら、恥ずかしいのかわざとらしくむせるような仕草を取るが、それに吉馬は「ごまかしてんじゃねぇ!」と突っ込む。

 

「まぁとにかく、お目当てがいねぇのなら俺は帰るわ。邪魔したな!」

「おっと待てよ!!」

 

先程の事に紫苑は黙ってられないのか、立ち去ろうとする少年を呼び止め、何を思ったか、ハルヤの肩を掴んだかと思うと、少年の前に突き出し始める。

 

「!?」

「折角来たんだ。そのまま手ぶらで帰るのも忍びねぇだろ? 相手ならコイツが受けて立つぜ?」

「えっ!? えっ!!?」

「ちょっ、お前何勝手に!!」

 

突然の紫苑の提案に驚くハルヤと吉馬。当然動揺を隠せず吉馬は止めようとするが、「いいからいいから!」と紫苑は勝手に話を進めてしまう。

 

「こっちはもう受ける気だぜ? それなのに帰っちまうのはさすがに失礼じゃねぇのかなー?」

「…………」

 

暫く考え込む少年だったが、ハルヤを見ながら、「まっ、最初に挑んだのはこっちだしな」と承諾するようにデッキを取り出す。

 

「それに丁度アンタにも少なからず興味があったしな?」

「えっ?」

 

ハルヤの事も少し知っているのか、期待するような眼差しを向け、一方の紫苑は承諾する相手の言葉に、満足するように笑って見せる。

 

「よぉしッ! これで決まりだ!!」

「ちょ、ちょっと紫苑さん? 僕まだやるなんて一言も?」

「あれ、もしかして不服? 当然やるよな?」

「…………」

 

強引に進める紫苑にハルヤも困った様に反応しながらもそれでもハルヤも少年を見ながら、静かに考え込むと自分もまたデッキを取り出し始める。

 

「ま、まぁ確かにバトルはやりたいですよ!」

「はいこれで両者同意!! 吉馬ちゃんも文句ねぇな?」

「だからちゃん付けするなと……!! もういい勝手にしろ!!!」

 

話を聞かずに進行し続ける紫苑に、吉馬ももう我慢の限界だったのか、吹っ切れたようにさじを投げてしまう始末だった。

 

「まあ対戦よろしくな? 俺は梶雷矢(カジライヤ)。さっきそこの男が言ったみたいに、名前からとって、普段はジライヤって名乗ってんだ」

 

派手目な衣装ながらも親しげに手を差し出す少年、友好的なその態度にハルヤは安心するように手を取って握手を交わしながら自分も名乗ろうとするが、手を突き出してそれを制止させる。

 

「あー悪いな、俺、名前覚えんの苦手だからな。名無しで呼ばせてもらうが、悪く思わないでくれよな?」

「……? 分かりました」

 

ジライヤの言葉に不思議に思うハルヤだったが、そこに後ろから紫苑は「耳を貸せ」と肩を叩く。

 

「(いいかハルヤ。アイツは一見友好そうに見えるがよ、それに騙されんなよ? あいつの本性はドライモンスターだ)」

「!?」

 

小声で語る紫苑の言葉に当然驚くが、紫苑はさらにそのまま続ける。

 

「(何か自分が認める相手には名前と顔を認知しねぇらしくてな。あぁ見えて意外と気障な野郎だ!)」

「(!)」

 

派手な目な見た目の割にはしっかりしているのだろう。だからこそさっきの紫苑の言葉に対してもまるで他人のような反応を見せた雷矢。

 

「(いいかハルヤ、内心では俺達を舐め切ってるんだ。目に物見せてやれ!)」

 

恐らく紫苑は軽視されているからこそ自分を雷矢に嗾けたのだろう。「自分でバトルすればいいのに」と一瞬思い掛けたが、それでも自分も軽視されているのかと思うと少しだけ腹が立つ気がしないでもない。バトルに勝つという思いを込めながら二人はステージへと立ち、紫苑は「始まるぜ?」と面白そうに状況を煽り、吉馬と共に観客席へ移動する。

 

『またレッドドラゴンでは面白そうな事をしていますね』

「!」

 

観客席に腰掛ける紫苑と吉馬の背後から、何時の間に現れたのか普段通りに顔を出す神子達3人。驚いたように反応する吉馬だが、紫苑は「いらっしゃい」と普通に対応して見せる。

 

「あなたもいたのですね紫苑さん。まぁ用は無いですけど?」

「あれ俺嫌われてる?」

「さぁね、それより吉馬さん? 今日も実況解説の為、このスタジアムにお邪魔させていただきますよ?」

 

神子の言葉に吉馬は顔を赤く染めながら「ど、どうぞ」と恥ずかしそうに言葉を返し、吉馬に対し、にっこりと笑って一礼をしながら彼女たちは何時もの準備を始める。

 

「あっれぇー? 吉馬ちゃん、神子ちゃんには優しいじゃん?」

「う、五月蠅い!! 俺の勝手だろ?」

「ハハ、分かり易いな。やっぱ神子ちゃんの事がすk─────」

「止めろーーッ!!!」

 

それ以上は言わせまいと叫びながら紫苑を突き飛ばしながら、慌てたように息を切らす吉馬。紫苑は突き飛ばされながらも「単純」と呟いた。

 

『さぁさぁさぁ!! カードバトラーの皆さん、今日も一日こんにちわ!! BCOの時間がやってまいりました!! 最後までクライマックスな実況お届けするBCOの顔! 私、実況の犬神紅葉でございます!!』

『BCO、解説担当の犬神神子でございます。今日も皆様よろしくお願いします!』

『さぁ神子さん、昨日の海皇vsレッドドラゴンの激突からわずか一日! またレッドドラゴンでの騒ぎのご様子!』

『ほんと話題に絶えませんね、そしてバトルするのは今注目のバトラー、ハルヤ選手のようです!』

『対戦相手は……こちらはチーム記録ない、ですね?』

『対戦相手の経歴なら私がご紹介しましょう、彼の名前は梶雷矢選手。17歳のカードバトラー、チーム未所属の為公式記録はまだありませんが、その実、その腕一つで渡り歩き、一部のカードバトラーの間ではジライヤとして、名の知れた人物です』

『さっすがお姉ちゃん! じゃなくて……バトスピの情報に長けた神子さん!! お詳しいです!!』

 

嬉々として実況を進める二人、一方でステージに立つ雷矢たちもそれぞれデッキを構える。

 

「まぁあんなこと言われているけど、お手柔らかにな」

「……僕は、全力でバトルさせてもらいますよ!」

「ふーん、まっ! 期待する様なバトルを頼むぜ?」

 

バトルに対するそれぞれの想いが交差する。一方で二人の様子を見守りながら紅葉はマイクを手に、間もなく始まる勝負を仕切る。

 

『それでは両者、開始コールをお願いいいたします!』

「「ゲートオープン!! 界放ッ!!!」」

 

二人の宣言共に幕を開けるバトル、開始を告げたバトルに多くのカードバトラー達が注目する。

 

 

 

 

[01ターン.雷矢side]

[スタートステップ]

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「序盤は俺からだな。メインステップで風魔アカオバード、召喚するぜ」

 

[リザーブ]4個→0個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→4枚。

 

【風魔アカオバード】3(1)緑、スピリット、忍風/爪鳥。

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(3)BP4000。

Lv.1、Lv.2『このスピリットの召喚時』

ボイドからコア1個をこのスピリットに置く。

 

呼び出される背中に刀を背負う一羽の鳥、風魔アカオバード、フィールドに現れた瞬間、緑の光をその身に纏い始める。

 

「召喚時効果発揮、ボイドからコア1個をこのスピリットの上に置く!」

『出ました!! 緑属性特有の効果! コアブースト!!』

『スピリットの召喚や維持コストの為に使うコア、それを増やすことが出来れば自分の戦略を大きく広げる事にも繋がり、それこそが緑属性の最大の特徴ですね』

 

実況は早速声を弾ませ、序盤から効果を発揮させるアカオバード。緑属性を扱う雷矢のバトルには油断できないものを感じさせられる。

 

「増やしたコアはリザーブに戻すぜ?」

 

[フィールド]風魔アカオバードLv.1((S(ソウルコア)1))BP3000。

 

「緑デッキの相手!」

「経験は少ないのか? まだ序盤だ。これでターンエンドする」

 

 

 

 

[02ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「メインステップ! リューマンクロウをLv.2で、続けてリューマンフェニックを召喚!」

 

[リザーブ]5個→0個。

[トラッシュ]0個→2個。

[手札]5枚→3枚。

[フィールド]リューマンフェニックLv.3((S1))BP6000、リューマンクロウLv.2(2)BP2000。

 

「アタックステップ! リューマンフェニックでアタック! 自分のスピリットが2体以下の間、このスピリットをLv.3として扱い、さらにアタック時効果で一枚ドロー!」

 

[手札]3枚→4枚。

 

「ライフで貰うぜ?」

 

先に仕掛けたのはハルヤ。リューマンフェニックを突っ込ませ、その攻撃に対し、雷矢は対抗手段がないのか、素直に攻撃を受け入れると、リューマンフェニックの攻撃がライフを砕く。

 

[雷矢side]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]1個→2個。

 

「これでターンエンド」

 

 

 

 

[03ターン.雷矢side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]2個→3個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]3個→6個。

 

「俺のターンだな。アカオバードのソウルコアをリザーブに戻し、ソウルコアを使って、シノビコガネを召喚するぜ?」

 

[リザーブ]6個→2個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→4枚。

 

【シノビコガネ】4(1)緑、スピリット、忍風/刃虫。

Lv.1、Lv.2『このスピリットの召喚時』

ボイドからコア1個をこのスピリットの上に置く。召喚コストにS(ソウルコア)を使用していたら、さらに、ボイドからコア1個をこのスピリット以外の自分のスピリットに置く。

 

「召喚時効果、シノビコガネ自身にボイドからコア1個を追加! ソウルコア使用でさらにボイドからコア1個をこのスピリット以外の自分のスピリット、アカオバードの上にコアを追加だ!」

「またコアブースト!?」

 

シノビコガネは自身とアカオバードに緑の光を灯すと、さらにコアを齎し、それぞれの上にコアが置かれる。

 

『さぁジライヤ選手、このターンもコアブースト!! コアが増える増える、ハルヤ選手との差を一気に広げました!』

『コアが多ければ多い程、できる事の幅は広がります。例えば、スピリットを大量展開、もしくは大型のスピリットの早期召喚など、ね』

『コアさえあれば何でも自在ですね!! ハルヤ選手、これは油断できないぞ?』

 

先手を仕掛けたにもかかわらず、依然コアを増やす雷矢に対し、何故か自分が追い詰められているかのように錯覚してしまう。それに対して雷矢は何を考えているのか、平静を保つ彼の考えはまるで読めない。

 

「シノビコガネのコアをアカオバードに移動させてレベルアップ」

「(リザーブのコアを使わないの?)」

 

リザーブにはまだコアが残っており、それで十分足りるにも関わらず、あえてシノビコガネのコアを代用してレベルアップさせるそのやり方に疑惑が浮かぶ。

 

[フィールド]風魔アカオバードLv.2(3)BP4000、シノビコガネLv.1(1)BP2000。

 

「これでターンエンドだ」

「えっ?」

 

場を整え、攻めに出るかと思いきや何もせずのターンエンド宣言。一瞬聞き間違いなのかと思うが、雷矢は再度繰り返すようにコールし、攻めようとしない事には疑問を感じずにはいられなかった。

 

『何と好機にもかかわらずジライヤ選手動きません!! これはどういう訳だ!!』

『恐らく何か狙いがあっての事でしょう? 動かざること山の如しということわざもあるように、今は攻め時ではないと見たのでしょう』

『成程! 何時動き出すのか全く読めない!! これは恐ろしいぞ?』 

 

当然警戒はしているが、それでもそれだけではどうにもならない。警戒すれど、こちらが動かない事には勝負は始まらない。バトルにより集中し、ハルヤは続く自分のターンを迎える。

 

 

 

 

[04ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]2個→0個。[リザーブ]1個→3個。[フィールド]リューマンフェニック回復。

 

「メインステップ! 炎極天リューマンバーストを召喚!!」

 

[リザーブ]3個→0個。

[トラッシュ]0個→2個。

[手札]5枚→4枚。

[フィールド]炎極天リューマンバーストLv.3(1)BP6000、リューマンフェニックLv.3((S1))BP6000、リューマンクロウLv.2(2)BP2000。

 

「アタックステップ! リューマンフェニックでアタック! 効果で1枚ドロー」

「ライフで貰う!」

 

[手札]4枚→5枚。

 

再度効果によってドローすると共に、リューマンフェニックの一撃がバリアに刻まれ、衝撃にライフが砕かれる。

 

[雷矢side]

[ライフ]4→3。

[リザーブ]2個→3個。

 

『さぁ果敢に攻めますハルヤ選手! 雷矢選手はこのまま押されっぱなしなのか?』

 

煽る様に語る実況。対してハルヤは「もう一度!」と声を大にして、今度はリューマンバーストに視線を向ける。

 

「リューマンバーストでアタック! もう一つライフを破壊するよ!!」

「おっと、そいつはいただけねぇな!」

「!?」

「フラッシュタイミング! 【神速】で甲賀忍ノミカゲを召喚だ!」

 

ハルヤの攻撃に対して突き出すカード、それはスピリットカードであり、自分のターンでもなければ本来スピリットカードは意味を成さない物なのだが、雷矢が突き出すカードのスピリットは、突如として風を起こしながらフィールドに出現し始める。

 

「!?」

『出ましたーーッ!! フラッシュタイミングでのスピリットを召喚! それは緑属性の得意中得意の戦法!! その名も【神速】です!!』

『本来スピリットは自分のターンで呼び出すことはできません。しかし、中では例外として相手のターンでも召喚が可能なスピリットは存在します。その中でも最も代表的な効果が【神速】ですね』

 

【神速】その召喚コストと維持コストはリザーブのコアのみしか使用する事ができないが、それでも扱う事ができれば相手ターンでも自分のターンでもフラッシュタイミングで呼び出す事の出来る効果。上手く使えば、追撃にも相手の意表を突く事も容易く、ハルヤでもさえも【神速】での召喚には驚かされずにいられなかった。

 

「そうか! だからさっきアカオバードのレベルアップに使うコアをリザーブじゃなくてシノビコガネから利用したんだ!」

「御明察! でも、今頃気づくのは遅いぜ?」

 

嬉々として語りながら、ノミカゲを呼び出すハルヤ。突然の姿にリューマンバーストは驚いたように駆けだすその足を止めてしまう。

 

[リザーブ]3個→1個。

[トラッシュ]3個→4個。

[手札]4枚→3枚。

 

【甲賀忍ノミカゲ】1(0)緑、スピリット、忍風/刃虫。

Lv.1(1)BP1000、Lv.2(2)BP2000、Lv.3(3)BP3000。

フラッシュ【神速】

手札にあるこのスピリットカードは、召喚コストの支払いと上に置くコアをリザーブから使用することによって召喚できる。

 

「炎極天の攻撃は、ノミカゲでブロックするぜ」

 

[Battle]炎極天リューマンバーストLv.3(1)BP6000vs甲賀忍ノミカゲLv.1(1)BP1000。

 

呆気にとられるリューマンバーストの隙を突き、指示を受けたノミカゲはすぐさま迎撃するようにリューマンバーストへと突っ込む。しかしリューマンバーストは驚きつつも、すぐさま拳を突き出して真っ向から受けて立つと、ノミカゲを殴りつけて弾き飛ばし、破壊する。

 

「これでターンエンド」

 

バトルには勝ったものの、二つ目のライフを削れなかった事には悔やまれる。悔しそうに拳を握りしめ、そのターンを終えた。

 

 

 

 

[05ターン.雷矢side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]1個→2個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]2個→6個。

 

「さぁそろそろ、本気行ってみるか?」

「(来るッ!)」

 

何かを予感させるその言葉、そしてすぐさま手札の一枚を構える。

 

「あらゆる忍術極めし忍の長! 風雷土遁に現れろ! 甲蛾頭首クワガスレイヤーをLv.2で召喚だぜ!」

 

[リザーブ]6個→1個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]4枚→3枚。

 

【甲蛾頭首クワガスレイヤー】5(3)緑、スピリット、忍風/殻人。

Lv.1(1)BP4000、Lv.2(2)BP10000、Lv.3(12)BP32000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

ボイドからコア1個を自分のスピリットに置く。

Lv.2、Lv.3『このスピリットのバトル時』

このスピリットのS(ソウルコア)を自分のリザーブに置く事で、自分のデッキの上から3枚オープンする。その中の系統:「忍風」を持つスピリット/ブレイヴカードをコストを支払わずに召喚する。召喚しない、または、残ったカードは好きな順番でデッキの下に戻す。

 

フィールド中央にまるで嵐のように吹き荒れる風、あまり強風に全員が吹き飛ばされるほどの影響を受ける中で、風が集束される中央で佇むスピリットの影。そして次の瞬間、収束される風の竜巻を内部から一閃、一気に竜巻を晴らし、一刀の刀を掲げたスピリット、甲蛾頭首クワガスレイヤーが出現する。

 

[フィールド]甲蛾頭首クワガスレイヤーLv.2((S1)1)BP10000、風魔アカオバードLv.2(3)BP4000、シノビコガネLv.1(1)BP2000。

 

『Xレア来たーーッ!! 忍びの術を受け継ぎしスピリット達それが忍風! その頭首たるクワガスレイヤーが雷矢選手のキースピリットとして現れたぞーーッ!!』

『増えたコアはこのスピリットの召喚の為だったようですね。さぁこれからが見物です!』

「まっ、そういう事だ。こいつが俺のキースピリットだ!」

 

そのスピリットの姿に自慢げに語る雷矢。圧倒される程の貫録を見せるクワガスレイヤーだが、ハルヤはそれに対し驚きながらも決して怯む様子は見せない。

 

「相手にとって不足はなしですよ!!」

「なら良かった! じゃぁ存分に力を見せてやれる! アタックステップだ!」

「!」

「当然、コイツでアタックさせるぜ! クワガスレイヤー、行け!」

 

眼光を輝かせ、持ち手の先に分銅を鎖で繋いだ特殊な刀を構え、攻撃指示に対してクワガスレイヤは刀身に緑の光を纏わせる。

 

「アタック時効果でボイドからコア1個をこのスピリットに置き、さらにLv.2のバトル時効果だ! このスピリットのソウルコアをリザーブに戻すことで、クワガスレイヤーの効果をさらに発揮させる!」

「!」

「とくと見てろよ! 忍法、召喚の術ってな!!」

 

両手で印を構えて叫ぶとクワガスレイヤーのソウルコアがリザーブに送られると同時に雷矢のデッキの上から弾け飛ぶ三枚のカード、それは上から「戦場に息づく命」、「風の覇王ドルクスウシワカ」、「甲蛾忍シュリカブト」の3枚。

 

「忍風の系統を持つシュリカブトを確認! よってコイツをLv.2で召喚だ、不足コストでアカオバードをレベルダウン!」

 

[リザーブ]2個→0個。

[フィールド]風魔アカオバードLv.2(3)BP4000→風魔アカオバードLv.1(2)BP3000。甲蛾忍シュリカブトLv.2((S1)2)。

 

【甲蛾忍シュリカブト】4(2)緑、スピリット、忍風/殻人。

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(3)BP5000、Lv.3(5)BP8000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

このスピリットのS(ソウルコア)を自分のリザーブに置く事で、自分のデッキの上から1枚オープンする。そのカードが系統:「忍風」を持つスピリットカードの時、コストを支払わずに召喚する。召喚しない、または他のカードの時はデッキの下に戻す。

 

新たに呼び出されるスピリット、クワガスレイヤーは刀を地面に突立てて印を結ぶと、それに呼びされるように煙を巻き上げて巨大な手裏剣を携えたカブトムシのような姿を持つスピリット、甲蛾忍シュリカブトが現れる。

 

『これはすごい!! クワガスレイヤーの効果でまたもスピリットを呼び出した!!』

『【神速】、コアブースト、そして効果でのスピリット召喚。まさに何でもこなす様は忍術ですね』

 

バトルではクワガスレイヤーは刀を引き抜き、そのままハルヤへと向けて剣を振るい、斬撃波を飛ばすと、展開されたバリアに直撃し、ライフを破壊される。

 

「うあッ!!」

 

[ハルヤside]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]0個→1個。

 

「もう一体! 甲蛾忍シュリカブトでアタック!! ライフを貰うぜ!!」

 

シュリカブトもアタック時効果を持つが、その効果を使う必要はないと感じているのか、アタック時効果は発揮させずに攻撃指示を出すと、シュリカブトは飛び上がって空中で背負う巨大な手裏剣を構えると、そのまま振り被り、手裏剣をハルヤに向けて振り飛ばすと、バリアへと真っ直ぐ放たれた手裏剣は大きく突き刺さり、ライフを破壊する。

 

[ハルヤside]

[ライフ]4→3。

[リザーブ]1個→2個。

 

「くっ!!」

「ターンエンド」

 

 

 

 

[06ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]2個→3個。

[ドローステップ][手札]5枚→6枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]2個→0個。[リザーブ]3個→5個。[フィールド]炎極天リューマンバースト、リューマンフェニック回復。

 

「メインステップ! バーストセット!!」

『ハルヤ選手! ここでバースト! しかし、それだけでは終わらない!!』

 

紅葉の言葉通り、まだ手がある様に手札の一枚に手を掛けると、一気に叫ぶ。

 

「天下切り裂く勝利の剣! 太陽の如く燃え上がれ! 剣神無双リューマンゴッドをLv.2で召喚!!」

 

ハルヤにとって待ち望んだキースピリット、呼び出すと同時にフィールドに突如燃え広がる炎。そして、高温の炎の中で唯一キラリと光る眼光。そして剣の一振りが周囲の炎を掻き消し、リューマンゴッドソードがその姿を見せる。

 

[リザーブ]5個→0個。

[トラッシュ]0個→2個。

[手札]5枚→4枚。

[フィールド]剣神無双リューマンゴッドソードLv.2(3)BP5000、炎極天リューマンバーストLv.3(1)BP6000、リューマンフェニックLv.1((S1))BP2000、リューマンクロウLv.2(2)BP2000。

 

『来ました! ハルヤ選手自慢のキースピリット!! ここで遂にリューマンゴッドソードのお出ましです!!』

『ハルヤ選手がこの局面で出したという事は、恐らくこのまま勝負を決めるつもりのようですね!』

『武凱選手やバン選手の時もリューマンゴッドソードが勝利のキーカードとなりましたし、今日も存分に活躍を見せてくれそうです!』

 

互いにキースピリットを呼び出した事に、実況する声をより高らかに語る紅葉達。その言葉の通り、ハルヤもこのターンで一気に決着を付けるつもりでいた。

 

「(相手のブロッカーは2体だけ。リューマンゴッドソードでの攻撃が決まれば勝てる!!)」

 

一気に勝利に道筋を見極めると、「アタックステップ!」と気合を入れるように大きく叫ぶ。

 

「リューマンゴッドソードでアタックだ! 効果で1枚ドロー!」

 

[手札]4枚→5枚。

 

果敢に攻めるゴッドソード。剣に炎を纏わせ、雷矢へと襲い掛かるが、その攻撃に対し、雷矢はまるで読んでいたように、口角を僅かに上げる。

 

「フラッシュタイミングだ! マジック、畳返之術! コストはシュリカブトから確保!」

「!!」

 

【畳返之術】3(2)緑、マジック。

『フラッシュ効果』相手のスピリット1体を疲労させる。その後、系統:「忍風」を持つ自分のスピリット1体を手札に戻す。

 

[フィールド]甲蛾忍シュリカブトLv.2((S1)2)→Lv.1((S1)1)。

[トラッシュ]3個→4個。

[手札]3枚→2枚。

 

「リューマンフェニックを疲労させ、さらに効果で、シュリカブトを手札に戻す!」

『何とここでカウンター!! 忍法、ではなくマジック! 畳返之術!! 効果により、リューマンフェニックを疲労させてしまった!』

『しかし、まだリューマンゴッドソードのアタックは継続しています。それに対してはどうするつもりでしょうか?』

 

展開の行方に期待する神子。その言葉に、「その点も考えてるよ!」と彼はさらに言葉を続ける。

 

「俺の狙いはスピリットの疲労だけじゃない、ソウルコアをリザーブに戻す事さ!」

「一体何を!?」

「見せてやる!! リザーブのソウルコアを俺のトラッシュに置く事でこいつの効果を使える! 【神速】を超えし、【ソウル神速】の力をな!!」

「ソウル神速!?」

「さぁ出ろ! マッハで現れ、シュシュと参上ッ! 烈風忍者キリカゲを召喚ッ!!」

 

【烈風忍者キリカゲ】7(4)緑、スピリット、起導者/忍風/殻人。

Lv.1(1)BP6000、Lv.2(3)BP10000、Lv.3(5)BP13000。

フラッシュ【ソウル神速】『お互いのアタックステップ』

手札にあるこのスピリットカードは、リザーブのS(ソウルコア)1個で召喚コスト全てを支払うことが出来、リザーブのコアを上に置く事で召喚できる。 

Lv.1、Lv.2、Lv.3【起導:緑】『このスピリットのアタック時』

このスピリットのS(ソウルコア)を自分のトラッシュに置く事で、自分の緑のS(ソウル)バースト1つを直ちに発動させる。

Lv.3『このスピリットのアタック時』

相手のスピリット1体を疲労させる。

 

[リザーブ]2個→0個。

[トラッシュ]4個→5個。

[手札]3枚→2枚。

[フィールド]烈風忍者キリカゲLv.1(1)BP6000。

 

『何と何と!! ジライヤ選手、マジックだけではなかったのか!! さらにカウンターとして、唯一無二の効果、【ソウル神速】を持つキリカゲを呼び出したぞーーッ!!』

 

クワガスレイヤーと同じく、或いはそれ以上に巻き起こる緑の旋風。突っ込むリューマンゴッドソードでさえもあまりの強風にその足を止め、吹き飛ばされまいと地面に踏ん張るので精一杯だった。そして竜巻の中で光る赤い眼光。竜巻を裂いて、キリカゲが勢いよく地面に降り立つ。

 

「召喚完了、ゴッドソードの攻撃はキリカゲでブロックするぜ!!」

「しまった!」

 

[Battle]剣神無双リューマンゴッドソードLv.2(3)BP5000vs烈風忍者キリカゲLv.1(1)BP6000。

 

フィールドに降り立ったキリカゲは即座に迫るリューマンゴッドソードを標的と定めると、両腕に取り付けた刃を手裏剣のパーツとして組み込むと、そのまま勢いよく振り投げ、すぐさま剣を盾にその攻撃を受け止め、地面に足を引き摺らせて後退しながらも何とか渾身の力を込めて、剣を振り切り、手裏剣を弾き返す。

 

だが既にキリカゲの姿は目の前からその姿を消し、慌てて周囲を見渡すがキリカゲの姿を見られない。しかし、突如背後から感じる殺気。何時の間にかリューマンゴッドソードの背後に迫りに構えるキリカゲ。いち早く殺気に気づき、背後のキリカゲに向けて振り返ると同時に剣での一閃。しかし、キリカゲを切り裂いたかに見えたのも束の間、その正体はキリカゲの速さが生んだ残像。攻撃は終わり、本物キリカゲは頭上へと飛び立っており、その手には先程弾き飛ばしたはずの手裏剣が握られ、そのまま剣の様にリューマンゴッドソードに向けて振り下すと、切り裂かれ破壊される。

 

「そんな……! ゴッドソード!!」

「返り討ち。まっ、勝負だから悪く思うなよ!」

 

目の前で破壊されてしまったリューマンゴッドソードの光景に信じられないようにハルヤは思わず絶句してしまう。キースピリットを破壊されてしまったのだから当然の反応だろう。

 

『ハルヤ選手!! 自慢のキースピリットで攻めるもキリカゲによって返り討ちにされてしまった!!!』

『完全に相手の手を予測できていませんでしたね。畳返之術でソウルコアを確保してからの【ソウル神速】、そのバトルスタイルはやはりハルヤ選手の上をいくものという事でしたね』

『ハルヤ選手、もはやこれは絶望的状況か!!』

 

キースピリットの破壊にはさすがに堪えているのか、俯きながら悔しそうに「ターンエンド」と呟き、その様子に対し雷矢は少しがっかりするような仕草で息を吐く。

 

 

 

 

[07ターン.雷矢side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]2枚→3枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]5個→0個。[リザーブ]1個→6個。[フィールド]甲蛾頭首クワガスレイヤー、烈風忍者キリカゲ回復。

 

「メインステップ、風魔アカオバードのコア1個をリザーブに戻し、甲蛾忍シュリカブトを再召喚!」

 

[リザーブ]7個→4個。

[トラッシュ]0個→2個。

[手札]3枚→2枚。

 

「さらにもう一つ! バーストセット!!」

「!」

『おっと! ここでジライヤ選手もバースト!!』

『バトルも終盤、そうなると彼が今バーストも限られますかね?』

『意味深な神子様の解説!! 果たして、何を伏せたのか!!』

 

淡々と実況を進める紅葉達だが、雷矢はそれに「まぁ見てな」と面白そうに呟きながらさらに続ける。

 

「烈風忍者キリカゲをLv.2にアップし、ソウルコアをキリカゲの上にさらに置くぜ?」

「(Lv.2に上げたてから、ソウルコアを乗せた!?)」

 

あえてLv.3にはさせず、当然何かを狙っている。それを分かっているように警戒を強めるが、雷矢にとって相手がどう構えようがお構いは無し。

 

[フィールド]烈風忍者キリカゲLv.2((S1)3)BP13000、甲蛾頭首クワガスレイヤーLv.2(2)BP10000、甲蛾忍シュリカブトLv.1(1)BP3000、風魔アカオバードLv.1(1)BP3000、シノビコガネLv.1(1)BP2000。

 

「アタックステップだ!! キリカゲでアタック!! さらにアタック時効果で【起導】を発動する!!」

「!?」

 

特攻を開始するキリカゲ、そして攻撃と同時にソウルコアをトラッシュに置いたかと思うと、それに連動するように先程伏せたばかりの筈のバーストに光が灯る。

 

「ソウルコアをトラッシュに置いたことにより、俺の伏せたバーストカード、S(ソウル)バーストを発動だ!」

「!!」

 

まるで嵐の様に吹き荒れる暴風、全てを吹き飛ばしかねない程に吹き荒れる風、その風に雷矢の伏せたバーストカードが吹き飛ばされたかと思うと、弾け飛んだバーストカードが露わとなり、トリガーを満たしていないにも関わらず、そのバーストは発動される。

 

S(ソウル)バースト、忍将軍クロハガネを発動! 効果で相手のスピリット1体! さらに【起導】によって発動したとき、さらに相手のスピリットかアルティメット1体を追加で疲労させる!!」

 

【忍将軍クロハガネ】7(3)緑、スピリット、忍風/殻人。

Lv.1(1)BP6000、Lv.2(3)BP12000。

S(ソウル)バースト:相手による自分のスピリット消滅/破壊時】

相手のスピリット1体を疲労させる。【起導】で個のバーストが発動していたら、さらに相手のスピリット/アルティメット1体を疲労させる。この効果発揮後、このスピリットカードをコストを支払わずに召喚する。

Lv.2『自分のアタックステップ』

S(ソウルコア)が置かれている系統:「忍風」を持つ自分のスピリットのアタックによって相手のライフを減らしたとき、相手のライフのコア1個を相手のリザーブに置く。

 

吹き荒れる風に地面に凭れ込むリューマンクロウとリューマンバースト、そしてさらに発動したバーストカードにより風と共にフィールドに降り立つ新たな忍、忍将軍クロハガネが姿を現す。

 

[リザーブ]1個→0個。

[バースト]忍将軍クロハガネLv.1(1)BP6000。

 

『出ました、通常のバーストを超える存在、S(ソウル)バースト!!』

『通常バーストは相手がトリガーを引く事によって発動します。しかしS(ソウル)バーストは、相手がトリガーを引くだけでなく、自ら発動させることもできる。まさに強力なカードです!』

『強烈なS(ソウル)バースト!! それにより、ハルヤ選手のブロッカーは全て疲労状態にさせられ、対するジライヤ選手のスピリットの総勢は何と6体!! これは勝負あったか!?』

 

決着を付けるには十分な程の戦力、見ている者からすれば勝負の結果はこの状況だけで明白だろう。しかし、圧倒的に場を揃えた雷矢だったが、その表情はどこか残念そうにつまらなそうにしていた。

 

「(所詮この程度、もう終わりかよ)」

 

溜息を吐きながら勝負の結果を見据えつつある雷矢。だが、相手の反応を見ようとハルヤの表情を確認すると、思わず雷矢は驚いたように目を見開いた。その理由は、この状況下に対しても、まだ決してあきらめないように前を向き続けるハルヤの表情にあった。

 

「ライフで受けるよ!」

 

継続するキリカゲの攻撃に対しても怯む事無く宣言すると、キリカゲはさらに眼光を輝かせて速度を上げ、展開されるバリアを引き裂き、あまりの速さに繰り出された攻撃はまるで衝撃が遅れているかのように、キリカゲの攻撃から数秒後にライフが砕ける。

 

「ッ!!」

 

[ハルヤside]

[ライフ]3→2。

[リザーブ]3個→4個。

 

ライフを削られ痛みと衝撃に突き飛ばされながらも、まだ諦めないように決して屈さず、自分も伏せたバーストを睨む。

 

「ライフ減少時でバースト発動!! ブレイジングバースト!!」

「!!」

「バースト効果で風魔アカオバードを破壊! さらにコストを支払ってフラッシュ効果! リューマンクロウを破壊する事で、このターン、もう僕のライフは1しか減らない!!」

 

[リザーブ]4個→2個。

[トラッシュ]2個→4個。

[バースト]ブレイジングバースト。

 

バーストによって、炎に包まれ風魔アカオバードは破壊され、リューマンクロウもまた炎によって破壊されるも、その破壊により、ハルヤのフィールドを炎が包みフラッシュ効果を発動させた。

 

『ブレイジングバースト!! これによりスピリットを大量展開したジライヤ選手でしたが、もうこれ以上ライフは残り一つしか破壊できませんよ?』

『いえ、今のハルヤさんのできる事はそれだけじゃないですよ?』

『!?』

 

神子の言葉通り、ハルヤは「さらに!」と言葉を続けると、リューマンバーストに視線を置くと、リューマンバーストの体に赤いオーラが灯る。

 

「リューマンバーストの【U(アルティメット)ハンド】を発動! 自分のバーストが条件を満たした時、そのバーストを手札から発動させる!」

「!?」

 

【起導】に匹敵する効果を持つそれが【U(アルティメット)ハンド】。リューマンバーストはその声を咆哮させると、手札の一枚にも赤い光が灯る。

 

「手札からライフ減少時バースト効果を持つリューマンゴッドブレイカーを発動! バースト効果でBP10000以下のスピリット、忍将軍クロハガネを破壊! さらに自分の場にアルティメット、炎極天リューマンバーストがいる事により、一枚ドロー後、バースト召喚できる!」

「ッ!!」

 

効果によって、炎に焼かれ消滅するクロハガネ。しかしそれだけではない。召喚条件も満たしたことにより、手札から一枚ドローすると、リューマンゴッドブレイカーのカードを構える。

 

「敵を打ち砕け! 炎の一蹴必殺!! リューマンゴッドブレイカーを召喚ッ!」

 

地面を砕きながら姿を現すリューマンゴッドブレイカー。空中で飛び散った瓦礫を蹴り砕きながら地面へ降り立つと、大きく雄叫びを上げる。

 

[リザーブ]4個→3個。

[手札]6枚→5枚。

[バースト]リューマンゴッドブレイカーLv.1(1)BP6000。

 

『さぁ一気に二つものバーストを発動させたハルヤ選手!! ジライヤ選手はこれにより、このターンでの決着は不可能となりました!!』

『しかし、ハルヤ選手がまだ追い詰められている事には変わりません』

『その通りです! ハルヤ選手、逆転できるのか!!』

「……ターンエンド」

 

勝負を決められず、これ以上攻撃はさせないのかターンを終える雷矢。しかしこのターンで決められなかったにも関わらず、自分の攻撃を凌いだハルヤに対し雷矢は何故か先程までつまらなさそうにしていた表情に笑みを浮かばせると、神子達の言葉にまるでハルヤがここから逆転するのを期待するように笑っていた。

 

「(さぁ、どういう手で来るのか! 存分に見せてくれよ!!)」

 

 

 

 

[08ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]3個→4個。

[ドローステップ][手札]5枚→6枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]4個→8個。[フィールド]炎極天リューマンバースト、リューマンゴッドブレイカー、リューマンフェニック回復。

 

「メインステップ! リューマンサージェントを召喚!」

 

[リザーブ]8個→6個。

[トラッシュ]0個→1個。

[手札]6枚→5枚。

 

【リューマンサージェント】4(赤2 極1)赤、スピリット、竜人。

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(2)BP4000。

Lv.1、Lv.2『このスピリットの召喚時』

自分のトラッシュにある[リューマンサージェント]以外のカード名に「リューマン」と入っているスピリットカードか、アルティメットカード1枚を手札に戻す。

Lv.2【スピリットソウル:赤】

自分が赤のアルティメットカードを召喚するとき、このスピリットに赤のシンボル1つを追加する。

 

「召喚時効果発揮! 効果により「リューマン」と名の付くスピリットを手札に戻す! 戻ってきて!! ゴッドソード!!」

 

リューマンサージェントの力で再びリューマンゴッドソードをトラッシュから呼び覚まし、トラッシュからハルヤの手札へと戻る。再び自分の元へ戻るキースピリットのカードに「お帰り!」と嬉しそうにハルヤも笑って見せた。

 

「もう一度行くよ! 天下切り裂く勝利の剣! 太陽の如く燃え上がれ! 剣神無双リューマンゴッドソードをLv.2で再召喚!!」

 

[リザーブ]6個→1個。

[トラッシュ]1個→3個。

[手札]6枚→5枚。

 

再び剣を掲げフィールドへと帰還するリューマンゴッドソード。ハルヤのフィールドに集う竜達は一斉に咆哮を上げて共鳴させる。

 

『再び舞い戻る剣神無双!! さぁ勝負の女神はどちらに微笑むのか!!』

『何れにせよ、ハルヤさんにとってチャンスはこのターンを逃せば恐らくもうないでしょう。ここが正念場ですよ!!』

 

期待するようにハルヤのバトルに注目する紅葉達、雷矢もまた同じように嬉々としてその目を輝かせており、どんな手で来るのか今か今かと待ち望んでいた。

 

「さらにリューマンゴッドソードのコアとリューマンフェニックのソウルコアをチェンジ!!」

「(ここでソウルコアを乗せた?)」

「さぁ、行くよ!!」

「!」

 

決意するように構えると、ハルヤのフィールドのスピリット達も一斉に構えだす。

 

[フィールド]剣神無双リューマンゴッドソードLv.2((S1)2)BP5000、炎極天リューマンバーストLv.3(1)BP6000、リューマンゴッドブレイカーLv.1(1)BP6000、リューマンサージェントLv.1(1)BP3000、リューマンフェニックLv.1(1)BP2000。

 

「アタックステップ! リューマンゴッドブレイカーでアタックするよ!」

「甲蛾忍シュリカブトでブロック!」

 

[Battle]リューマンゴッドブレイカーLv.1(1)BP6000vs甲蛾忍シュリカブトLv.1(1)BP3000。

 

互いに駆けだす二体、シュリカブトは飛び上がって手裏剣を投げようと再び空中で構えるが、リューマンゴッドブレイカーはそれよりも早く、シュリカブトが手裏剣を投げつける一歩手前、リューマンゴッドブレイカーは即座に飛び上がって、シュリカブトの腹部に飛び蹴りを叩きこむと、その一撃にシュリカブトは爆発四散する。

 

「さらにリューマンサージェントでアタック!」

「シノビコガネでブロックだ!」

 

[Battle]リューマンサージェントLv.1(1)BP3000vsシノビコガネLv.1(1)BP2000。

 

シノビコガネは全身を回転させ、まるで駒の様に触覚に備えた刃を振るいながらリューマンサージェントへと襲い掛かり、リューマンサージェントはそれを剣一つで受け止め、威力に押され後退させられながらも、目を輝かせ渾身の力を剣に込めるとシノビコガネの攻撃を受け切り回転を力づくで止めると、そのまま動きの止まったシノビコガネに剣を振り下し、その一撃を受けて破壊される。

 

「まだまだリューマンフェニックでアタック!」

「ライフで受ける!!」

「リューマンバーストも続けるよ!」

「それもライフで貰う!」

 

リューマンフェニックの蹴りと、リューマンバーストの拳がほぼ同時にバリアへと叩きこまれ、連続して衝撃が雷矢を襲い、砕けたライフから光が消える。

 

[雷矢side]

[ライフ]3→1。

[リザーブ]3個→5個。

 

『ジライヤ選手!! ライフ残り一つ!! 追い込まれたぞーーッ!!』

『しかしまだジライヤ選手には甲蛾頭首クワガスレイヤーが残っています! それがハルヤさんに立ちはだかる最後の壁ですね!』

『さぁどう出る!? ハルヤ選手!!』

 

紅葉達の実況の言葉、その答えはハルヤにとって最初から一つだけだった。そのままリューマンゴッドソードに視線を置くと、リューマンゴッドソードもその視線に気づいたのか振り返ると、ハルヤの気持ちを察しているかのように頷いて見せた。

 

「行くよ!! リューマンゴッドソードでアタック!! アタック時効果でドロー!」

 

[手札]5枚→6枚。

 

「やっぱり来ると思ってたぜ!! けど当然、俺だってまだ負けるつもりはねぇよ? 甲蛾頭首クワガスレイヤーでブロックだ!!」

 

[Battle]剣神無双リューマンゴッドソードLv.2((S1)2)BP5000vs甲蛾頭首クワガスレイヤーLv.2(2)BP10000。

 

激突する二人のキースピリット。リューマンゴッドソードとクワガスレイヤーは同時に剣と刀を振るい、鍔迫り合いながら切り合う両者。リューマンゴッドソードは力づくでクワガスレイヤーを弾き返し、対するクワガスレイヤーは弾かれながらも刀の先に備えた分銅を振るい、リューマンゴッドソードへと飛ばすが、その攻撃に対して、咄嗟に剣で受け止めて弾くと、そのまま剣を振り下し、分銅と刀を繋ぐ鎖を切り落とす。

 

『さぁさぁ白熱したバトルを展開する二体のスピリット!! しかしそのBP差は大きく、このままではハルヤ選手のゴッドソードがやられてしまうぞ!?』

 

紅葉の言葉通り、クワガスレイヤーとリューマンゴッドソードとそのBP差は倍。大きく開いた差に勝負結果はこのままだと明白だった。続くバトルでは剣をまるで槍の様に構えて突っ込むリューマンゴッドソードだったが、クワガスレイヤーは刀を持ったまま両手で再び印を結ぶと煙を巻き起こし、対して怯む事無く煙の中へと突っ込み、煙を吹き払う程の威力の突きを繰り出すが、既にそこにクワガスレイヤーの姿はなく、リューマンゴッドソードの攻撃は空振りに終わり、周囲を見回す中、突如リューマンゴッドソードを影が覆い、それに気づき見上げた瞬間、剣を振り下そうと空中で構えるクワガスレイヤーの姿が映る。

 

「さぁこれで終わりか!!」

「……まだだよ! 絶対に負けない! フラッシュタイミング!! マジック、ソウルオーラを使用!!」

「!!!」

 

[リザーブ]1個→0個。

[トラッシュ]3個→4個。

[手札]6枚→5枚。

 

【ソウルオーラ】3(2)赤、マジック。

『フラッシュ効果』このターンの間、自分のスピリット全てをBP+3000する。さらに、ソウルコアが置かれている自分のスピリットをBP+3000する。

 

「リューマンゴッドソードにはソウルコアが置かれている! よって合計BP6000を加算!!」

「(だからさっきリューマンゴッドソードにソウルコアを乗せたのか!)」

「これでBPは11000!! 決めるよッ! ゴッドソード!!」

 

上空のクワガスレイヤーに対し、自身も剣に炎を灯して飛び上がると、そのまま二体同時に空中で互いに向けて剣と刀を振るい、背を向けた状態で地面に降り立つ二体のスピリット。緊迫した空気が流れ、暫く硬直状態が続く中、クワガスレイヤーは微かにフラつき始めたかと思うと、次の瞬間、その場に崩れ落ちて倒れ破壊される。

 

『リューマンゴッドソード!! 何と絶望的な状況と思われながらの大逆転!!! ジライヤ選手のキースピリット! クワガスレイヤーを破った!!!』

『見事なマジックによる大逆転、これには私も驚かされました』

「……はは、まさかクワガスレイヤーを倒すなんてな。完全に期待してた以上だなこれ!」

 

キースピリットの破壊を快く思う訳ないではないが、それでも逆転して見せたハルヤの姿には雷矢も嬉々として今の状況にただ満足しており、バトルに勝利したリューマンゴッドソードは勝鬨の様に雄叫びを上げながら剣を掲げる。

 

「リューマンゴッドのバトル終了時効果で「剣使」、「竜人」を持つスピリットかアルティメットを召喚できる! 閃光の如く駆けろ! リューマンライトニングを召喚!」

 

掲げる剣の輝きに導かれるして、宙を駆けるように現れるリューマンライトニング。パフォーマンスを見せるかのように宙返りをしながらそのまま地面に降り立つ。

 

「これで決めるよ!! リューマンライトニングでアタック!!」

「ライフで受けるぜ」

 

決着となるリューマンライトニングの攻撃。それを素直に受け入れると、バリア対しリューマンライトニングは飛び膝蹴りを叩き込み、最後のライフを砕く。

 

[雷矢side]

[ライフ]1→0[Lose]

 

 

 

『決着ーーッ!!! ジライヤ選手の自由自在な忍風デッキに苦しめられながらもハルヤ選手、見事に逆転しましたーーッ!!!』

『バトルを繰り返す度にハルヤ選手は成長を重ねてますね。これからも期待したいものです!』

『ハルヤ選手のバトルに今後も注目していきたいですね。とりあえず今日の放送はここまでに!!』

『そうですね。また次回よろしくお願いします!』

『以上BCO、バトスピチャンネルオンラインでした!!』

 

決着となり、まだ興奮さめやらぬように嬉々として語る紅葉達だが、決着したバトルに実況を締め終えると、その場から一早く立ち去り、勝負後、雷矢はハルヤに対し、改めて手を差し伸べる。

 

「いいバトルだった。すっごい楽しめたぜ!!」

「はは、ありがとう。僕も負けるかと思ったよ」

「注目されてるバトラーだって聞いてたけど、期待以上だったぜ? 輝来ハルヤ」

 

握手を交わし、まだ名乗ってもいないのにハルヤの名前を呼ぶ事に、「知ってたの!?」と驚きを隠せなかったが、雷矢は悪戯っぽく笑いながら「ごめんな」と呟く。

 

「ほんとは知ってたけど、覚えきれる自信なかったからな。けどアンタみたいに強い奴ならもう絶対に忘れない。改めて、よろしくな! ハルヤ!!」

「うん、よろしくね。ジライヤ!!」

 

互いに満足のいくバトルを繰り広げられ、紫苑や吉馬もその光景に微笑ましく感じいていた。

 

「けど、残念だな。そんなに強いのならもっと上を目指したっていいんじゃないか?」

「えっ?」

「最強になる、それにチームメイトとして協力する立場じゃなく、目指す立場になってみないかって事!」

「そ、それってどういう!?」

「まぁ深く考えんなよ、俺未所属の放浪者だから偉そうに言えないし」

 

ハルヤにとって引っかかる言葉を言い残すと、「またバトルしようぜ」と雷矢は入り口に止めていたスケボーに乗り込み、そのまま何事もなかったかのように立ち去って行き、雷矢の後ろ姿が見えなくなるのを確認すると、紫苑と吉馬の二人もハルヤの元へ駆け寄る。

 

「最後まで気障な野郎だったが、勝ってくれたからスカッとしたぜ、バトルお疲れ様!」

「ハハ、ありがとうございます」

 

何だかんだで終始ブレない紫苑にハルヤはただ苦笑いするしかなく、それでも勝利を祝福する紫苑の言葉には素直に礼をした。

 

「まぁ前に比べたらかなり強くなったんじゃねぇの?」

「ありがとう吉馬」

「でも己惚れんなよ、まだまだ俺の方が強いんだからな!」

「はは、そうだよね。分かってるってば」

 

親しげに語る3人だが、その会話の中でも先程の雷矢に言われた言葉がハルヤにとってまだどこか引っ掛かっていた。

 

「最強を目指す立場、か」

「ん? 何か言ったか?」

「う、ううん。何でもないよ?」

 

咄嗟に平静を取り繕って吉馬に返答するハルヤだったが、雷矢の言葉が脳裏に浮かび続け、その言葉がずっと消える事は無かった。




第4話、更新無事で来ました!!
今回は忍風デッキ使いの梶雷矢さんの登場回でした。
最初紫苑と似たような感じで被るかなとか思ってたのですが、紫苑と雷矢を書いてると思いのほか、彼の方がしっかりしてましたね。紫苑と一緒に書いてて、違いがはっきりとしました(笑)

そんな彼のデッキは忍風デッキですね。コアブーストからの疲労に大量展開。まさに忍風も割と強いデッキかと思いますね。陰陽童さえいなければ←


アニメでは風魔神登場してましたね。炎魔神はいつ登場するのかと期待しております。それと夏には怪獣王の咆哮の発売も決定されましたね。コラボパックの第1弾は買い逃してたので、採録されるカードもあると聞いて歓喜しております!! 一体どんな効果を持つのか、ゴジラだと三式機竜とキングギドラが好きなので、新弾出たらシングルも狩ってデッキ構築しようかと!! 勿論ゴジラも楽しみにしておりますよ!!!本編は今後もなるべく早めに更新頑張ります!次回もよろしくお願いします!!


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No05.決意表明

・以下注意
誤字ありかも。
今回はバトルシーン無し。

それでも大丈夫という方はどうか温かい目で見てもらえると幸いです。発見したミスなどのご指摘ご気軽にお待ちしております。






 

「おーい戻ったぜ」

 

レッドドラゴンのスタジアム、一日空けてチームリーダである火龍エンザは顔を出し、チームメンバーの全員、嬉しそうに『リーダー!』と声を揃えて呼び、そしてその中で吉馬は真っ先にエンザの元へと駆け寄る。

 

「リーダー、昨日からずっと待ってましたよ!」

「おー吉馬、お前にも迷惑かけたな。昨日一日空けたが、変わりねぇか?」

「はい! 特に何も問題は無いです」

「そっか、それならいい」

「あのー、ところでリーダー?」

「?」

「結局聞きそびれてたんですけど、昨日一日出掛けてた理由って何だったんですか?」

 

エンザが出掛けた理由は人探しとの事だったようだが、詳しい内容は吉馬もあまり聞いていない。理由を尋ねる吉馬の言葉にエンザは「別に」と素っ気ない反応を返す。

 

「出掛けた理由は俺個人の事だ。チームとは別に関係ねぇ」

「それってどんな事なんですか?」

「唯の野暮用だよ、別に気にしなくてもいいさ」

 

ぶっきらぼうに答えながら、辺りを見渡すと何かに気づいたのか、「そんな事より」と話を変えるように続ける。

 

「チビ、じゃなくてハルヤの姿が見えねぇけどどっか行ってんのか?」

「リーダーが来るちょっと前に、どこか行きましたよ。何か考え込んでる表情でしたけど」

「? 何かあったのか?」

「分からないです。まぁハルヤの事だし、俺は別に気にするほどじゃないとは思ってますけど」

 

「そうか」とエンザも特にそれ以上追及することは無く、他のチームメンバー達に「それじゃぁ早速今日も特訓始めるぞ!」とチーム内での活動に勤しみ、一方で噂されている本人、ハルヤはと言うと。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「はぁー……。」

 

いつかの公園のベンチに腰掛け、ため息を吐きながら思い詰めたような表情を浮かべるハルヤ。昨日の一件以来、未だに雷矢に言われた言葉に何かを考えさせられ、その事にずっと頭を悩ませていた。

 

「僕が最強になるとか、そんな事考えてもみなかったよ」

 

今までずっと強くなりたいとは思いつつ、その先の未来までは見えてはいない。チームの為に戦えど、同じメンバーの吉馬、そして自分達のリーダーであるエンザよりも強くなるという程にまでは考えてはいない。そんな思い悩むハルヤだったが、そこへ、「おーい!」と聞き覚えのある声が彼を呼ぶ。

 

「! あ、あなたは確か!!」

「よっ、またここであるなんて奇遇だな」

 

親し気にハルヤに声を掛けた男性、前にリューマンゴッドブレイカーとリューマンライトニングを手渡したあの時の男性だった。

 

「久しぶりだよな、また会えるなんてすごい偶然だぜ」

「はは、本当ですよ! まさかまたここで会うなんて思ってもませんでした」

「俺も同じ。それよりバトル、随分上達したみたいじゃんか」

「あれ、見てるんですか?」

「おぉ、BCOだろ? 毎回じゃないけど、何回か目を通してるぜ? 勿論、君のバトルだってちゃんと見てんだぜ。俺のあげたカード、使いこなしてくれてるみたいで嬉しかった」

「あっ! そうだ!! あれからずっとお礼言いたかったんです。貰ったカードも今ではデッキになくてはならないぐらいに必要なカードになって」

 

「そりゃよかった」と人懐っこく笑い、嬉しそうなハルヤの言葉に男性もまるで自分の事の様に嬉しそうに言葉を返した。

 

「これからも強くなれよ、いっそ最強目指してさ!」

「!!」

 

何気なくそう言った男の言葉に、ハルヤはまた何か引っかかった様に一瞬硬直し、それに気づき、疑問を持ったように「どうかした?」と尋ねる。

 

「い、いえ別に何でもないんです。ただ最強っていう事に、ちょっと考える事があって」

「それってどういう?」

「……その実は」

 

吉馬にも打ち明けていない事だが、前にも相談に乗って貰い、その経緯から無意識に頼ってしまいたくなったのか、自分が考え込んでいたことを包み隠さず全て打ち明け、その話に聞き入りように相槌を打ち、最後まで聞き終えると、「成程な」と納得したように頷く。

 

「自分が最強を目指すべきか、そうじゃないか。そういう事だろ?」

「はい」

「それってそんなに悩む事か? 最強になりたいってカードバトラーならだれでも思いそうだけど?」

 

「俺もそうだったし」と付け足しつつ、ハルヤも相手の正論に対して特に否定する訳でもなく、頷きながらただ「分からないんです」と呟いた。

 

「分からない?」

「正直僕がバトルを始めたきっかけってただこのカードに手に入れて舞い上がってただけっていうか。チームに入ったのも友達が入るって知って、色々成り行きで今に至るというか」

「でも前会った時だって、強くなりたいって思ってんだろ?」

「そうなんですけど、あの時はチームの為にももっと強くなりたいって考えてたんですけど、やっぱり最強ってまでは……。」

「じゃあさ、君が目指す強さはどこまでの物だったんだ?」

「えっ?」

 

意味深な男の言葉に、一瞬戸惑ったように反応するハルヤ。数秒間をおいて考えるが、それでも答えは出ず「分からないです」と返すしかなかったが、それでも男は気にせず、言葉を続ける。

 

「最強になるって事はさ、どこまでも強さを追い求め続けることだって思うんだよ。アイツに勝ちたい、誰よりも強くなりたい、一番になりたい、そう思う事が最強を目指すって事だろ?」

「!」

「君が目指す未来、自分の強さに満足できる場所が見えたとき、自分がどうなりたいか、何を目指したいのか、見えてくる筈だぜ?」

「…………」

「まっ、そんな事深く考える程じゃないさ、要するに強く成り続けるってだけだよ。俺もそうだし」

「強くなり続ける事が、最強を目指す」

 

何かを掴めたのか、先程まで思い詰めたようなハルヤの表情も次第に明るいものに戻り、それを見ると男も満足したように口角を上げた。

 

「答えが出たなら、思う通りに進むだけだ」

「はい、ありがとうございます!!」

「おぉ、頑張れ!」

「あっ、それより前の彼女さんとはどうなったんですか?」

「!!」

 

呆気に取られたように、唐突なハルヤの質問に口をパクパクとさせながら、言葉を失ってしまい、数秒置いてからようやく恥ずかしそうに「覚えたのかよ」と小さな声で呟き、ハルヤ自身も申し訳なさそうに「気になったもので」と返す。

 

「ま、まぁ前遅れた詫びとして一応今日ここでまた会う予定してんだ」

「あっ、待ち合わせ場所だからここに来てたんですね」

「まぁそうだな。それと、別にまだ彼女じゃないからな!!」

「あぁ、不躾な質問ごめんなさい」

「べ、別に謝る程じゃないけどさ」

「まぁでもそういう事なら僕此処でお暇しますね。多分邪魔になると思うんで」

「幼馴染と会うだけなんだし、気を使わなくたっていいんだぜ?」

「いえ、お礼言えて良かったです。また会えますよね?」

「前にも言ったろ、君が強くなって進むならまたいつか会えるってな!」

「そうでしたね、じゃぁまた!」

 

吹っ切れたように笑顔でその場を立ち去って行くハルヤの後ろ姿を見届けると、後ろから一人の人物の陰が。

 

『なんか楽しそうだったけど、さっきの誰だったの?』

「!!」

 

男に声を掛けるのは、男性とほぼ同年代に見える一人の女性。面識もあり、男の言っていた待ち合わせ相手なのだろう。突然声に驚きつつも「ちょっとな」と口元を緩ませて返答した。

 

「随分早かったんだな、咲」

 

咲と呼ばれた女性は明るくにっこりとかわいらしい笑顔を見せながら、「別に普通だよ」と返した。

 

「さっき話してた子、何だか昔の誰かさんそっくりだったね」

「誰かさんって誰の事だよ?」

「さあね、前のデートに遅刻するような人の事かな?」

「ったく悪かったって!!」

「ハハ、冗談だよ。それより私達も行こっか?」

「はいはい、今日一日お付き合いしますよ」

 

悪戯っぽく笑う女性に男も形無しらしい。楽しげに会話を交わしながら二人もその場から立ち去って行った。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「リーダー!」

「! おっ、戻ったのかチビ!」

「うっ、だからそれは……!」

 

軽くコンプレックスに振れられ、落ち込むハルヤだったが、そんな話をしている場合ではないと首を振りながら気持ちを切り替える。

 

「リーダー、少し二人きりで話せませんか?」

「……珍しいな。相談事か?」

「そんなんですけど、ともかく聞いてもらいたくて」

「まぁいい。話なら向こうで聞くぜ?」

 

人気を避けて、一端その場から離れて行く二人。その様子にふと、吉馬も気づいたのか、その場を離れる二人の姿を不思議そうに見つめる。

 

「(リーダー? それにハルヤもどうしたんだ?)」

 

 

 

 

「で? 肝心の話って?」

「実は、その……!」

 

いざエンザを目の前にすると、やはりどこか一歩気が引けるのか、肝心な言葉を詰まらせてしまう。しかしそれでも言わなければならない。自分自身の決意を改めて固めると、真剣な顔つきでエンザを見る。

 

「実は、僕……レッドドラゴンを抜けようと思ってます!」

「!!」

 

自分の意思を明確に伝え、その言葉にエンザの表情も一変する。当然エンザ自身もその言葉に対し、色々言いたい気持ちあるだろう。しかし、ハルヤの真剣な表情に、その言葉が中途半端な思いでないことを理解する。

 

「訳を、聞かせてもらえるか?」

「……そのつもりです」

 

エンザの言葉に静かに頷くと、自分のデッキを取り出し始める。

 

「元々僕、チームに入ったのは成り行きだったし、チームに入った上で他の皆に迷惑かけたくなくて強くならなきゃって思ってましたけど、でもそれって目先の事ばかりで、先の事は全く考えてませんでした」

「……」

「でも、最近色んな強い人とバトルして、この前だってリーダーや浪川さんとのバトル見て思ったんです。もっと強くなりたいって!! リーダー達と同じぐらいじゃなく、超えるつもりで、これからやって行きたいんです!!」

「なるほど、そういう事か」

 

話を聞き終えると、エンザ自身も納得したように軽くハルヤの頭に手を置く。

 

「要するに俺と戦いたいって事か」

「はい! チームとしてじゃなくライバルとして!! リーダーたちと戦いたいんです!

「そうか、まぁお前なりの決意があるなら止めれねぇな」

「リーダー!!」

「お前なりの想いがあって相談してきたんだろう。ならチームリーダーとしての役目は、後押ししてやれることぐらいだ」

 

エンザの言葉に嬉しそうに笑顔を向けるハルヤ。しかしそこへ物陰から顔を見せる一人の人物。

 

『今の、どういう事だよ?』

「「!!?」」

 

物陰から顔を見せる吉馬の姿に、二人とも動揺を隠せなかった。しかしそれに構わず、吉馬は先程から聞いていた内容に黙っていられなかったのか、そのままハルヤの方へ歩み寄る。

 

「レッドドラゴンを抜ける。そう言ってたのかよ」

「うん。吉馬にも言わなきゃとは思ってたんだけど」

「そうじゃねぇ! 何でそう思うのかって俺は聞いてんだよ!!」

「!!」

 

エンザの時とは違い、ハルヤが抜ける事を快くは思ってはいないのか、声を荒げ、そのままハルヤの胸倉を掴み始める。

 

「ずっと今までやってきたのに、それでもあっさり抜けれるのかよ!!」

「……ごめん、吉馬」

「何でだよ、お前にとって俺達レッドドラゴンはその程度なのかよ!!」

「吉馬止めろ、ハルヤだって簡単にチーム抜けるのを決めたわけじゃ」

「リーダー、こればっかりは口を挟まないでください!」

「!」

 

初めてエンザの言葉にも反論して見せ、真剣な吉馬の表情にエンザも口を出すべきではないと考えたのか、身を引き、なおも吉馬は苛立ったように続ける。

 

「ハルヤ!! 例えリーダーが許したとしても、俺は……絶対に口を挟ませてもらうぞ!!! 黙ってられねぇんだよ!!」

「……吉馬」

「どうしてもチーム抜けるってなら、ケジメはつけてもらうぞ!!! 明日の朝、このチームスタジアムで俺とバトルしろ!! 生半可な想いじゃ、俺は絶対に認めねぇからな!!」

 

一方的に用件を伝え終えると、ハルヤを突き飛ばしそのままその場から飛び出す吉馬。一方でハルヤはその後姿を立ちすくんだまま、見届けエンザは「追わないのか?」と声を掛ける。

 

「……今行っても無駄です。吉馬があぁ言った以上、明日そこで決着するしかないです」

「お前等二人って確か、このチームに入る前から一緒だったよな? 今更何だが、どういう関係だったんだ?」

「僕が思ってるだけかもしれないですけど、僕に吉馬は最初にできた友達なんです」

「よければ詳しく話聞けるか?」

「はい」

 

過去を振り返りながら話し、その事はまだハルヤ達がレッドドラゴンのチームに入る前の頃にまで遡る。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

『へっへ!! また俺の勝ち!! ほんっとハルヤって弱いな!!』

 

当時小学生低学年の頃、その当時、放課後に行われたバトルにてハルヤともう一人、同年代程の少年は勝利に喜んだ様子で、対するハルヤは敗北の結果に落ち込むように俯いている。

 

『お前みたいな弱い奴にそんなカードもったいないぜ! 俺に寄越せ!!」

「えっ!?」

 

勝った少年は笑いながら、ハルヤのデッキに手を伸ばしたかと思うと、そのまま強引に取り上げてしまう。

 

「止めてよ!! それは僕の大事なカードなんだから!!」

『大事なカードを使いこなせてないなら宝の持ち腐れだ! そんなら俺が扱う方がよっぽど有意義だぜ!!』

「そんな酷いよ! 返してよ!!」

『五月蠅い! 弱いお前にはもったないんだよ!!』

 

ハルヤにとっては大事なカード。それを取り上げられ思わず目に涙が籠る。今すぐにでも涙を零しかねない程だったが、そこへ。

 

『そいつが弱いっていうなら、カードを取り上げてるお前は唯のクズじゃん!』

「『!?』」

 

背後の声に二人が気づき、視線の先にいたのは緑髪に中性的な顔立ちの少年の姿だった。デッキを取り上げている少年は、その言葉に腹立ったのか、「何だお前!」と突っかかって行く。

 

「別に、ただ見ててちょっと苛立ったから横入りしただけだ」

「部外者の癖に!! お前もバトスピやんのかよ?」

「あぁ。小物のお前なんかよりよっぽど強いと断言してやる」

 

相手よりも毒舌気味な少年の口調。そのままデッキを取り出すと、バトルを始める二人。その決着は直ぐについた。

 

「うぅっ……強い!!」

「ほら見ろ、やっぱ小物だったな」

「こ、こんなのまぐれに決まってる!!」

「じゃぁもう一回、叩き潰されるか?」

「ッ! もういい!! やってられるか!!」

 

結果は緑髪の少年の圧勝。相手は勝てないと諦めたのか、やけになった様にその場からと立ち去って行き、緑髪の少年はバトルに勝利し、ハルヤから奪ったデッキを取り返し、それを手に持つ。

 

「ほらコレ」

「!」

 

デッキをハルヤに投げ渡し、「あ、ありがとう」とやや緊張しながらも自分のデッキを取り返してくれたその少年に素直にお礼を言う。

 

「大事なカードだったんだ。取り返してくれて本当にうれしい」

「勘違いすんな。俺が勝手に横槍入れて、流れで今の結果になっただけ。別にお前の為じゃない」

「でも……!」

「それに、カード取られたぐらいでお前も泣いてんじゃねぇよ」

「な、泣いてなんかないよ!!」

 

ハルヤに対しても毒舌な少年。言い返して見せながらも、特に相手にする様子はなく、その場を後にしようと歩き出すが、「待って!」とその後姿を懸命に呼び止める。

 

「何だよ?」

「良かったら名前だけでも教えてもらえないかなって思って」

「は? 別に必要ないだろ?」

「そ、そんなこと言わないでさ! せめて名前ぐらい教えてくれたっていいじゃん!」

「……ったく、俺の名前は吉馬だ」

 

面倒くさそうに名乗る少年、しかしそれに「本名は?」と尋ねるが、ハルヤのその質問に対し、嫌そうに顔を歪めながら「言いたくない」と答えた。

 

「どうせなら本名を教えてよ」

「そ、そこまではいいだろ!!」

「上の名前だけじゃ呼び辛いかもだし、良かったら下の名前も教えてよ」

「……ッ!!」

 

中々食い下がらないハルヤに対し、吉馬も嫌そうな反応を示しながらも、観念したようにため息を零して、小さく続けた。

 

「桜だよ」

「?」

「だから下の名前は桜! 吉馬桜っていうんだよ!」

「へぇー、僕の名前は輝来ハルヤって言うんだ。よろしくね、桜」

「下の名前で呼ぶな!!」

「ご、ごめん 言いやすかったからつい!」

「……下の名前好きじゃないんだよ、俺の事は吉馬って呼べ」

「う、うん」

「ったく、もう行くぜ! じゃあな」

 

無愛想に今度こそその場を立ち去ろうとするが、再度呼び止め、「今度は何だよ!」と苛立ったように返事を返す。

 

「吉馬、良かったらさ、僕と友達になって貰えないかな?」

「!?」

 

突然の提案に驚いたように反応しながら、指を交互に自分とハルヤに向ける。

 

「友達? 俺とお前がか、何で?」

「何でって、理由を聞かれるとそれほど上手く答えられないんだけど、さっきのバトル見てて、吉馬のバトル、とても凄いと思ってさ。一言で言うと憧れたっていうか」

 

上手く言葉が見つからないのか、はっきりと言い切れないが、それでも数秒、間を置いて自分の思う気持を整理させる。

 

「吉馬みたいに強くなりたいんだ、だから一緒にいたくて……その図々しいお願いかもしれないんだけど、良かったら友達にしてくれないかなって?」

 

「ダメかな?」と恐る恐る尋ねるハルヤに対し、吉馬もまだビックリしたように表情を固まらせ、戸惑いを見せる。

 

「俺なんかと仲良くしたいなんて、お前物好きだな」

「物好きって、僕はただ……。」

「まぁお前がどうしてもいうなら、俺は構わないけど」

「!!」

 

照れたように頬を掻く素振りを見せながらも、ハルヤの言葉に承諾し、その言葉にハルヤは嬉々として目を輝かせた。

 

「じゃぁよろしくね!! お前じゃなくて、ハルヤって呼んでよ! 吉馬!」

「……っ、よ、よろしくな。ハルヤ」

 

ハルヤが差し伸べる手に対し、恥ずかしそうにしながらもその手を取って握手を交わす二人。吉馬とハルヤ、その日の二人の出会いが、現在を繋ぐ全ての始まりとなるのだった。





どうもブラストです。今回は第5話お届けしました。第5話はバトルパートはなく、茶番回となってしまい申し訳ない。バトルパートはたぶん長くなってしまいそうなので今回は割愛という事でどうかご容赦を!m(_ _)m

第5話では、ハルヤがついにチームを脱退する意思を決め、それが元で吉馬と揉める回となりました。吉馬とハルヤの二人の関係は次回のバトルでも触れながら書いて行こうかと。茶番でもいいよと心許せる方がいましたら本当に幸いです。次回はその分、迫力あるバトルを書こうと、無理してでも書きますのでどうかよろしくお願いします!!

そして新弾、いよいよ発売が2週間切ってましたね。アニメで活躍してた風魔神。そして明日は炎魔神の活躍が見られると思うので楽しみで仕方ないです! アニメも楽しみですね、その気持ちの100分1程でもいいので、自分の小説も少なからず期待してもらえてら幸いです。次回もどうかよろしくお願いします!


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No06.リューマンvsジーク 旅立ちの時

・以下注意
誤字、プレイミスありかも。
バトル表記が人によっては分かりずらいかも。

それでも大丈夫という方はどうか温かい目で見てもらえると幸いです。発見したミスやバトル表記などのご指摘気軽にお待ちしております。






 

 

 

吉馬と友達になってからというもの、それから普段から二人でいる事が当たり前となっていた。日々二人でバトルを繰り返す毎日。毎回負ける度に吉馬からは「ほんと進歩しないな」等、相変わらずの毒舌だったが、それでも互いに楽しげにバトルを行っていた。

 

「ねぇ、吉馬。火龍エンザって人知ってる?」

「誰だそれ?」

 

何時のもの様にバトルを交わす中で、不意にハルヤが投げかけた質問に気になった様に反応を見せる。

 

「最近有名らしいんだけど?」

「へぇー、強いのか?」

「何でもいろんな相手にバトルを挑んでは連戦連勝だって」

「ふーん。まぁ強いならぜひ挑みたいぜ」

「はは、吉馬ならそう言うと思ったよ。僕の知ってる中では吉馬が一番強いと思うからね」

「当然。そこら辺の奴なんか俺に敵うかよ!! まっ、でもそんな噂聞いちゃ当然、挑むしかないよな!」

「えっ? もしかして今から!?」

「当たり前だ! 探し出して俺がバトル挑むだけだ!!」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

その後の行動は早く、色んなバトスピショップを駆け回る事数件、そこでようやく火龍エンザと思われる少年を発見する。

 

「ようやく見つけたぜ! アンタが火龍エンザだろ?」

「そうだけど、お前は?」

「吉馬桜だ。アンタの噂は聞いてるぜ、強いんだってな、けど強者を名乗るからには、この街最強を狙う身として倒させてもらうぜ!」

「ハハ、生意気な奴だな。いいぜ、相手してやるぜ!」

「「ゲートオープン界放ッ!!」」

 

互いにデッキを構え、ステージの上に立つ二人。互いに闘志を燃やしながらバトルは開始され、吉馬はバトルに全力を出し尽くした。しかし……。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「これで終わりだ! ゴッドスレイヤードラゴン、行け!!」

「ライフで、受ける!」

 

ゴッドスレイヤードラゴンによる最後の攻撃を決まり、吹っ飛ばされる吉馬。決着後、「俺の勝ちだ!」と拳を突き上げるエンザに対し、吉馬は負けた事に動揺が大きいのか、無言のまま立ち竦み、ハルヤも同じく吉馬の敗北がまだ信じ難かった。

 

「吉馬が、負けるなんて」

「…………俺が負けた」

「ハッハ、強かったな。お前」

「!」

 

勝負後、吉馬に対し激励を贈りながらそのまま吉馬に対し手を差し伸べる。

 

「!?」

「お前気に入った。俺はチーム作ろうと思ってんだ、良かったらお前もどうだ?」

「……お、俺が?」

「俺について来いって言ってんだよ! 俺は最強を目指す。その為にお前の力も必要だ!」

 

エンザの言葉に吉馬は嬉しそうに目を輝かせながらその手を取る。

 

「ぜひ! こちらこそお願いします!!」

「あぁ」

 

二人の様子にハルヤは物言いたそうにしているが、気が引けるのか遠目から見ているだけだったが、その様子に吉馬が気づくと。

 

「ハルヤ! お前も来いよ!!」

「えっ?」

「俺はもっと強くなりたい! ハルヤだってそうだろ?」

「……う、うん!」

「何だ、もう一人いるのか。いいぜ、二人まとめて俺が引っ張ってやる。歓迎するぜ?」

「よろしくお願いします!」

「僕も、お願いします!!」

 

以上の経緯からレッドドラゴンに入る事となったハルヤと吉馬。そして今に至るのだった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「はは、お前等が昔入ってきた時が懐かしいな」

 

話を聞き終え、エンザもまた当時の事を思い返しながら懐かしむ。だが一方で話し終えた後もハルヤはまだ少し浮かない表情だった。

 

「吉馬に憧れて、そして吉馬がレッドドラゴンに入るって決めたから僕も付いてきたけど、今まで勝手に付いて来てた癖に、勝手に僕がチームを抜けるっていうんだから吉馬が怒るのも無理ないですよね」

「……お前友達の癖に、その友達の事、案外理解し切れてねぇな」

「えっ?」

「あいつが怒ってる理由はそんな小さな事じゃねぇよ」

 

そのまま立ち上がると、ハルヤの肩を強く叩く。

 

「!!」

「まっ、俺の口から言うのは野暮だ。本人達で決着付けな。明日のバトルで、腹割って話せ」

「……リーダーは、僕がチームを抜ける事に対しては怒ってないんですか?」

「ハッ、俺は別に怒ったりしねぇよ。お前が決めた事なら、俺はそれを尊重するだけだ。ただその前に、チーム抜ける前に吉馬とのケジメをはっきりさせろよ? 有耶無耶にしたままチームを抜けるっていうのはさすがになしだからな!」

「はい!!」

「それでいい、明日のバトル。俺は両方応援してるぜ!」

 

それだけ言い切ると、エンザは「じゃあな」とその場を立ち去り、ハルヤもまた決意するように自分のデッキを見て、自身のその決意を固め、対戦前の準備を終えたハルヤ達に本番となる翌日は直ぐにやってきた。

 

 

 

***

 

 

 

 

『さぁさぁ!! 今日もバトルが行われようとしている会場!! 現場は本日もまたチームレッドドラゴンスタジアム!! 実況放送担当の犬神紅葉です!」

『解説担当の犬神神子です。本日もどうぞ皆様よろしくお願いします!』

 

翌日早朝、レッドドラゴンスタジアムにて集まる観客達と、その中央で解説実況を始める紅葉達。観客達の視線の集まる先にはスタジアムに立つハルヤの姿があった。

 

『今日バトルするのは何と! チームレッドドラゴンのメンバー、ハルヤ選手と同じくチームメンバーの吉馬選手というまさかのチーム同士でのバトルとなります!!』

『聞く所によりますと、この勝負はハルヤさんのチームレッドドラゴンの卒業を決めるバトルだとか、そのケジメとして吉馬選手がバトルを挑んだようです』

『これは衝撃だ! まさに脱退試験と言ったような所でしょうか?』

『理由が何であれ、ハルヤ選手と吉馬選手のバトルは波乱が起こるでしょうね』

『色々選手や観客の皆様も言いたいことはあるでしょうが、カードバトラーなら何はともかくバトルあるのみ!! 全てを語るのはバトル一つで充分!!』

『おや、あなたも分かってきたじゃないですか。その通りですね、二人の気持ちはバトルの中で通じる事でしょう』

 

解説が進む中、会場ステージで歓声が聞こえ始めたかと思うと、吉馬もまた反対側の入り口から姿を現し、歓声を浴びながら吉馬もハルヤの前へと歩み寄って行く。

 

「吉馬」

「約束通り来たな。このバトル、本気でやらしてもらうからな?」

「うん、僕もそのつもりだよ。そうじゃなきゃ、吉馬に分かって貰えないから!」

「……言ってろ、お前の気持ちなんか知らない! 俺は唯、このバトルでケジメを付けさせてもらうだけだ!!」

「僕だって、本気だって事! 分かってもらうから!! 友達だから、中途半端な決意じゃないって分かってほしいんだよ!!」

「!」

 

ハルヤの言葉に一瞬動揺した反応を見せながら、すぐに切り替えるようにデッキを構え直す。

 

「何でもいい!! 本気で俺はバトルするだけだ!!」

「僕だって、本気で行くよ!!」

『それは両者、コールお願いします!』

「「ゲートオープン! 界放ッ!!」」

 

宣言と共に、バトルの幕が今開始された。

 

 

 

 

[01ターン.吉馬side]

[スタートステップ]

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「メインステップ、リザドエッジ2体を召喚。どちらもLv.2だ」

 

[リザーブ]4個→0個。

[手札]5枚→3枚。

 

【リザドエッジ】0(0)赤、スピリット、爬獣。

Lv.1(1)BP1000、Lv.2(2)BP2000、Lv.3(4)BP4000。

 

[フィールド]リザドエッジLv.2((S(ソウルコア)1)1)BP2000、リザドエッジLv.2(2)BP2000。

 

「ターンエンド」

 

吉馬先行から開始されるバトル。序盤に背に刃を携えたスピリット、リザドエッジを二体呼び出し、それのみでターンを終えた。

 

 

 

 

[02ターン、ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「メインステップ! リューマンドシャット、続けてリューマンインフェニティをそれぞれLv.1で召喚!」

 

[リザーブ]5個→0個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→3枚。

 

【リューマンドシャット】1(1)赤、スピリット、護将/竜人。

Lv.1(1)BP1000、Lv.2(2)BP2000、Lv.3(5)BP4000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3

このスピリットは相手の効果で破壊されない。

 

【リューマンインフェニティ】3(赤1 極1)赤、スピリット、竜人。

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(3)BP5000、Lv.3(5)BP7000。

トラッシュにあるこのスピリットカードは系統「極竜」/「次代」を持つ自分のアルティメットカードが召喚された時、手札に戻る。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

自分はデッキから1枚ドローする。

 

[フィールド]リューマンインフェニティLv.1((S1))BP3000、リューマンドシャットLv.1(1)BP1000。

 

「アタックステップ行くよ! リューマンインフェニティでアタック! アタック時効果で1枚ドロー!」

 

[手札]3枚→4枚。

 

「ライフだ!!」

 

展開されるライフにリューマンインフェニティは果敢に飛び出し、そのままバリアを力一杯殴りつけ、ライフを破壊する。

 

「ッ!!」

 

[吉馬side]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]0個→1個。

 

「ターンエンド」

 

 

 

 

[03ターン、吉馬side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]1個→2個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

 

「メインステップ、リザドエッジ2体をLv.1にダウン!」

『吉馬選手、スピリットのレベルを下げてコアを集める!』

『いきなり仕掛ける気でしょうかね?』

 

吉馬の様子に何かを察する神子達、会場の空気が変わり始め、それにハルヤも身構える。

 

「雷の炎司る龍! 雷皇龍ジークヴルムを召喚だ! 不足コスト確保でリザドエッジ1体を破壊!」

 

[リザーブ]4個→0個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]4枚→3枚。

 

【雷皇龍ジークヴルム】6(3)赤、スピリット、星竜/古竜。

Lv.1(1)BP4000、L.2(3)BP6000、Lv.3(5)BP9000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3【激突】『このスピリットのアタック時』

相手は可能ならば必ずブロックする。

Lv.3『自分のアタックステップ』

【覚醒】を持つ自分のスピリット全てに【激突】を与える。

 

リザドエッジ消滅後に、突如として鳴り響く雷鳴。吉馬の背後から雷鳴に目覚めたように姿を見せる赤い竜、ジークヴルム。雷鳴に負けない程の咆哮を上げながら翼を羽ばたかせ、フィールドへと降り立つ。

 

『おっと! 何といきなり雷皇龍の登場だ!!』

『懐かしいスピリットですね、しかしその力は今も健在です』

『吉馬選手、序盤からいきなり飛ばしてます!! ハルヤ選手、どうなる!?』

 

早くも呼び出されたジークヴルムに圧倒する程の威圧感を感じさせられる。しかしそれでも吉馬は遠慮なく、ターンを続ける。

 

[フィールド]雷皇龍ジークヴルムLv.1((S1))BP4000、リザドエッジLv.1(1)BP1000。

 

「アタックステップ! ジークヴルムでアタック!! アタック時効果で【激突】だッ!」

「くっ! リューマンドシャットでブロック!」

 

[Battle]雷皇龍ジークヴルムLv.1((S1))BP4000vsリューマンドシャットLv.1(1)BP1000。

 

雷皇龍は自身に炎を纏わせ、そのまま勢いよくリューマンドシャットへと向かって行き、リューマンドシャットは身に纏う鎧をまるで盾のようにして全身で構える。しかし、その程度では雷皇龍は止まらない。そのまま文字通り激突し、リューマンドシャットを大きく吹っ飛ばし、破壊してしまう。

 

「続けるぜ! リザドエッジでアタック!」

「ライフで受ける!!」

 

今度はリザドエッジがハルヤに突っ込んでいくと、そのまま全身を回転させて飛び出し、バリアへと突っ込み、背の刃で切り裂き破壊する。

 

「くッ!!」

 

[ハルヤside]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]1個→2個。

 

『吉馬選手! 雷皇龍を呼び出し果敢にフルアタック!! 一気に同点にも持ち込みました!!』

『しかしまだ勝負は序盤です。ライフまだお互いに4つ、本番はまだまだこれからですよ?』

『その通りです、ここからバトルはどう流れるのか、目が離せません!』

 

一方の吉馬はフルアタックの為、これ以上行動できるスピリットは無く、それを確認すると「ターンエンド」とコール。

 

 

 

 

[04ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]2個→3個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]3個→6個。[フィールド]リューマンインフェニティ回復。

 

「メインステップ! バーストセット! さらに炎極天リューマンバーストをLv.4で召喚ッ!!」

 

[リザーブ]6個→0個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→3枚。

[フィールド]炎極天リューマンバーストLv.4(3)BP9000、リューマンインフェニティLv.1((S1))BP3000。

 

「アタックステップ! リューマンインフェニティでアタック!」

 

[手札]3枚→4枚。

 

「ライフで受ける……!」

 

リューマンインフェニティによる攻撃が再度バリアに直撃すると、再びライフが削られ、衝撃に仰け反る。

 

[吉馬side]

[ライフ]4→3。

[リザーブ]0個→1個。

 

「これでターンエンド」

『おっとハルヤ選手、これ以上の攻撃は無しか?』

『次の攻撃に備えてリューマンバーストを残しましたね。堅実なスタイルですが、それが吉となるか、凶となるか』

『以前、勝負の行方は分かりません!』

 

 

 

 

[05ターン.吉馬side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]1個→2個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]2個→6個。[フィールド]雷皇龍ジークヴルム、リザドエッジ回復。

 

「メインステップ! 雷皇龍ジークヴルムをLv.3に、リザドエッジをLv.2にアップさせる!」

 

[リザーブ]6個→1個。

[フィールド]雷皇龍ジークヴルムLv.3((S1)4)BP9000、リザドエッジLv.2(2)BP2000。

 

「アタックステップだ! 雷皇龍ジークヴルムでアタック!」

「ライフで受けるよ!」

『おや、ハルヤ選手、リューマンバーストでブロックしないのか?』

『【激突】の効果はスピリットのみの対象ですからね、相手は可能ならばブロックするとのテキストがありますが、アルティメットは【激突】の対象としては含まれないものとして扱われます』

『おや、そうだったのですか!? 私てっきり!!』

『公式ルールです。まだまだ勉強が足りませんよ、紅葉』

『失礼しました。視聴者の方もぜひルール間違いにはお気を付けを!!』

 

話が逸れてしまった事に神子は咳払いをしながらバトルに意識を切り替え、バトルでは展開されたライフにジークヴルムは至近距離まで接近すると、そのまま零距離での火炎放射を吐き付け、バリアを焼き尽くし破壊する。

 

「ッ!!」

 

[ハルヤside]

[ライフ]4→3。

[リザーブ]0個→1個。

 

「ライフ減少時でバースト発動!!」

「!」

 

ライフを破壊されてもなお怯まずに果敢にバースト発動を高らかに宣言すると、弾け飛んだカードを手に取る。

 

「バースト効果でBP10000以下の相手スピリットを破壊! よって雷皇龍を指定するよ!!」

「ぐっ!」

 

雷皇龍の足元から突如噴き上げる炎。炎にその身を焼き尽くされ、雷皇龍はその場に倒れて消滅する。

 

「さらに自分のアルティメットがいる時、1枚ドローしてこのスピリットをノーコスト召喚できる!」

「ここで来るのか!」

「うん、行くよ! 敵を打ち砕け! 炎の一蹴必殺!! リューマンゴッドブレイカーを召喚ッ!」

 

地面を砕きながら飛び出す龍の影、飛び散った瓦礫を空中で蹴り砕きながら、赤き龍、リューマンゴッドブレイカーは地面へと降り立つ。

 

[リザーブ]1個→0個。

[手札]4枚→5枚。

[バースト]リューマンゴッドブレイカーLv.1(1)BP6000。

 

『来ました! ハルヤ選手の主力スピリット、リューマンゴッドブレイカー!!』

『吉馬選手、少々焦り過ぎましたかね? しかしまだどうなる事やら』

 

期待するように引き続きバトルの行方に注目する二人。一方で吉馬はリューマンゴッドブレイカーの姿を恨めしそうに睨みながらも、「ターンエンド」と止む得ずそのターンを終えた。

 

 

 

 

[06ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]5枚→6枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]1個→4個。[フィールド]リューマンインフェニティ回復。

 

「メインステップ! バーストセット! さらにリューマンゴッドブレイカーLv.2に、リューマンバーストをLv.5にアップ!」

 

[手札]6枚→5枚。

[リザーブ]4個→1個。

[フィールド]リューマンゴッドブレイカーLv.2(3)BP10000、炎極天リューマンバーストLv.5(4)BP12000、リューマンインフェニティLv.1((S1))BP3000。

 

「アタックステップ! リューマンゴッドブレイカーでアタック! アタック時効果で手札の「リューマンライトニング」と「リューマンフェニック」を破棄する事でこのスピリットを回復!」

 

[手札]5枚→3枚。

 

手札を失うも、その代償としてリューマンゴッドブレイカーは効果を発動させると、眼光を輝かせ、赤いオーラを纏い回復する。

 

『リューマンゴッドブレイカー回復! ハルヤ選手、このまま一気に決めるつもりか!!』

「まだだ! お前に負ける訳には行かねぇ! フラッシュタイミングでマジック! 紅蓮フレイムを使う!!」

「!?」

 

【紅蓮フレイム】6(5)赤、マジック。

『フラッシュ効果』BP8000以下の相手のスピリット1体を破壊する。コストの支払いにS(ソウルコア)を使用していたら、かわりにBP20000以下の相手のアルティメット1体を破壊する。

 

[リザーブ]6個→1個。

[トラッシュ]0個→5個。

[手札]4枚→3枚。

 

「リザーブのソウルコアの使用により、BP20000以下のアルティメット! 炎極天リューマンバーストを破壊する!」

「!」

 

マジックにより放たれる火球、ソウルコアの力を受け、さらにその火力を増し、爆発的な威力なってリューマンバーストを襲い、究極の存在たるアルティメットでさえもあまりの威力に耐え切れず破壊され、爆発四散してしまう。

 

「リューマンバースト!!」

「継続してるアタックはライフで受ける!」

 

仲間の破壊にリューマンゴッドブレイカーは怒りを込めるように、より威力を高めた蹴りをバリアに打ちこむと、そのままバリアを蹴り砕きライフを破壊する。

 

[吉馬side]

[ライフ]3→2。

[リザーブ]1個→2個。

 

「ぐっ……! でも、もうさすがにリューマンゴッドブレイカーの効果は打ち止めだろ?」

「ッ!」

 

衝撃を受けながらも、一歩も引かずに見透かしたように言い放ち、その言葉通り、既にハルヤの手札にはもうリューマンゴッドブレイカーの能力を使えるだけのカードは無くこれ以上の攻撃では吉馬のライフを削り切る事は不可能となっていた。

 

「ターンエンド」

「ふん、やっぱり図星だったようだな?」

 

「今度はこっちの番だ!」と次の自分のターンに、より一層表情を険しくさせ、その様子にハルヤも何かが来る事を本能的に直感した。

 

 

 

 

[07ターン.吉馬side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]2個→3個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]5個→0個。[リザーブ]3個→8個。

 

「メインステップ! バーストセット。俺は絶対お前に勝つ!! 行くぜ、太陽の力をその身に受けし龍! 進化した力を見せ示めろ! 極龍帝ジークソルフリードを召喚ッ!」

「!!」

 

[リザーブ]8個→2個。

[トラッシュ]0個→5個。

[手札]4枚→3枚。

 

【極龍帝ジークソルフリード】6(6)赤、スピリット、龍帝/古龍。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『このスピリットの召喚時』

自分の手札にあるカード名に「ジーク」と入っているスピリットカード1枚を、コストを支払わず、【転召】させずに召喚できる。

Lv.1、Lv.2、Lv.3:フラッシュ【覚醒】

自分のスピリットのコアを、好きなだけこのスピリットに置く事が出来る。

 

天より降り注ぐ炎が地面へと撃ち込まれ、まるでその炎を起爆剤かのように、撃ち込まれた地面から噴き上げる巨大な火柱。太陽を思わせる程の高温を放つ炎の中、その炎を振り払ってジークソルフリードがその姿を見せる。

 

『吉馬選手もいよいよ本気!! Xレアの一体! ジークソルフリードを召喚っ!!』

 

より声を張って実況する紅葉だが、「これだけじゃねぇ!」と、吉馬はさらに意気込むように続けて行く。

 

「ジークソルフリードの召喚時効果発揮! ジークと名の付いたスピリットを手札からのノーコスト召喚できる!」

「!!」

「現れろ! 戦国の世を生きし覇者よ! 戦国ジークフリードを召喚だッ!!」

 

ジークソルフリードはまるで何かを呼び出すかのように咆哮を唸らせると、地面から飛び出す一本の巨大な薙刀、飛び出した薙刀は円を描きながら宙を舞い、そしてさらに地面から一体の龍が飛び出すと、薙刀を手に取り、巨大なその薙刀を軽々と振るいながら地面へと降り立つ龍、その龍こそ戦国の世で新たな力を手にしたジーク、戦国ジークフリードの姿だった。

 

『凄い! 凄い!! 凄い!!! 何とさらにもう一体、強力なXレアを呼び出したぞ!!』

『太陽のジーク、そして戦国のジーク。並び立つと壮観な光景ですね!』

『ハルヤ選手、一気に大ピンチ!!』

 

二体のジークは咆哮を共鳴させながらハルヤを睨み、吉馬もまたその龍達と同じ、若しくはそれ以上に力強くハルヤを睨む。

 

「お前より、俺の方が強い!! それを心底思い知らしてやる!!」

「分かってるよ、でも僕だって負けない!!」

「嫌、勝つのは俺だ! リザドエッジのコア1個、さらにソウルコアを戦国ジークフリードに乗せてLv.2にアップだ!!」

 

レベルが下がり力が減少した事でリザドエッジは項垂れながらも、対照的にレベルを上げて力を増した戦国ジークフリードは薙刀を振り回しながら、咆哮をさらに強く響かせる。

 

[フィールド]戦国ジークフリードLv.2((S1)2)BP10000、極龍帝ジークソルフリードLv.1(1)BP4000、リザドエッジLv.1(1)BP1000。

 

「アタックステップ! 戦国ジークフリードでアタック! アタック時効果発揮!」

「!」

 

【戦国ジークフリード】8(6)赤、スピリット、武竜/古竜。

Lv.1(1)BP7000、Lv.2(3)BP10000、Lv.3(5)BP13000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3:フラッシュ【覚醒】

自分のスピリットのコアを、好きなだけこのスピリットの上に置く事が出来る。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

BP10000以下の相手のスピリット/アルティメット1体を破壊する。

Lv.2、Lv.3

このスピリットにS(ソウルコア)が置かれている間、このスピリットに赤のシンボル1つを追加する。

 

「効果により、リューマンゴッドブレイカーを破壊する!!」

「そんなッ!!」

 

戦国ジークフリードはそのまま飛び上がり、リューマンゴッドブレイカーに対して、薙刀を振り下しそのまま一閃。さらに薙刀による払いを繰り出し、斬撃が十字架を刻み、リューマンゴッドブレイカーは力尽き爆発四散する。

 

『ハルヤ選手のリューマンゴッドブレイカー成す術もなくやられてしまった!!』

『さらにソウルコアが乗っている事で今の戦国ジークフリードはダブルシンボルなっています。この攻撃に対し、ハルヤ選手はどう対処するのでしょう?』

 

ハルヤの行動に視線が集まる中、それでも周りの目は一切気にせず、バトルに集中するように戦国ジークフリードを姿を見ると。

 

「……ライフで受ける!」

「ならダブルシンボルの攻撃!! その身で受けな!!」

 

戦国ジークフリードは薙刀に炎を纏わせると、炎の斬撃をバリアに刻み、ハルヤのライフを二つ一気に破壊する。

 

「ぐあっ!!」

 

[ハルヤside]

[ライフ]3→1。

[リザーブ]8個→10個。

 

流石に二つのライフを一度に失う衝撃には耐えきれなかったのか、思わず吹き飛ばされてしまう。しかしそれでもまだ勝負は続いている。直ぐに立ち上がり、バーストを見る。

 

「ライフ減少時でバースト発動! 武威煌炎刃!!」

「!」

 

【武威煌炎刃】3(2)赤、マジック。

【バースト:自分のライフ減少時】

BP3000以下の相手のスピリット2体を破壊する。その後コストを支払う事で、このカードのフラッシュ効果を発揮する。

『フラッシュ効果』相手のネクサス1つを破壊する。

 

「バースト効果でリザドエッジを破壊するよ!」

 

[バースト]武威煌炎刃。

 

地面より噴き上げるVの字を描くような炎。それはリザドエッジを焼き尽くし、炎を受け、リザドエッジは爆発を起こして破壊されてしまう。

 

「ちッ、首の皮一枚繋がったな。けど次は決める! これでターンエンド!」

『ハルヤ選手、何とかバーストにより凌いだが、これは厳しいぞ!!』

『どちらにせよ、ハルヤ選手に後が無いのは確かですね』

 

神子達の言葉通り、ハルヤにとって追い詰められた状況なのは明白だった。しかしそれでもまだハルヤの目は勝負を捨てておらず、その様子に対し。

 

「ハルヤ、お前やっぱ本気で勝つつもりなんだよな」

「えっ?」

 

不意の吉馬の言葉。その表情は先程までと比べ、どこか寂しげなものだった。

 

「……昔の事、覚えてるか? レッドドラゴンに入る前からずっと俺等二人、一緒になってることが多かったよな」

「うん覚えてるよ、バトルが弱くても、吉馬はずっと僕と友達でいてくれたよね」

 

「昔から口は悪かったけど」と苦笑いしながら呟くハルヤに対し、吉馬もおかしそうに笑うが、また少し表情を寂しげしながらそのまま言葉を続ける。

 

「友達でいてくれた事に感謝してんのは多分俺の方だ」

「えっ、それってどういう!?」

「今だから言うけどお前と会うまで、勝気な性格のせいで、まともに俺と付き合える奴なんか一人もいなかった。皆、俺を避けて一人でいるのが常だった」

 

昔を思い返しながら、今までずっと一人でいる事の多かった吉馬だったが、友達になろうと声を掛けたくれたハルヤの存在はその時初めてだった。

 

「お前に会えて、リーダーに会えて本当に良かった。けど、だからこそ、お前がレッドドラゴンを離れるなんて我慢できなかった」

「……吉馬」

「分かってる。俺でも餓鬼っぽい理屈だって思う! けど、どうしても、俺はまだお前と! お前やリーダー達皆でレッドドラゴンを続けて行きたい!! だからハルヤ、今のままじゃあ、駄目なのかよ!!」

 

恥ずかしそうに顔を赤面させながらも、その言葉は吉馬にとって嘘偽りのない誠心誠意の本音なのだろう。吉馬の心情はハルヤにもしっかりと伝わる。その言葉に対し、ハルヤは。

 

「ごめん」

「!」

「吉馬の気持ちは嬉しいよ。けど、僕だってこの先をずっと考えてた。レッドドラゴンは勿論好きだよ、吉馬もリーダーも同じぐらい。けど、だからこそ、僕はこのままじゃいられないと思った。皆とは、嫌、皆だからこそライバルとして、挑みたいんだ!!」

「ハルヤ、それがお前の本音かよ?」

 

真剣な表情で頷き、ハルヤに対して吉馬は何を思うのか、フィールド全体を見渡しながら考え込むように数秒を間を置く。

 

「……だったら俺に勝って見ろ!! そうじゃなきゃ俺は絶対に認めねぇ!」

「分かってる。だから、絶対勝つよ!!」

 

 

 

 

[08ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]10個→11個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ]

 

「メインステップ! 天下切り裂く勝利の剣! 太陽の如く燃え上がれ! 剣神無双リューマンゴッドソードをLv.3で召喚ッ!!」

 

[リザーブ]11個→2個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]4枚→3枚。

 

燃え広がる炎のフィールド、その炎の中で眼光を輝かせ、炎を剣で掻き消し、リューマンゴッドソードが現れる。

 

[フィールド]剣神無双リューマンゴッドソードLv.3(5)BP10000、リューマンインフェニティLv.1((S1))BP3000。

 

『遂に来ました!! ハルヤ選手のキースピリット、リューマンゴッドソード!!! さぁここからどう反撃に出るのか!!』

『この先これ以上の他言は無用です。勝負の行方は当人同士にお任せしましょう』

『そうですね、勝負の行方がどちらに微笑むか、その時を見守りましょう!!』

 

バトルも終盤、睨み合う龍達。互いに一歩も引く様子はなく、真っ向からぶつかり合う事は火を見るより明らかだった。

 

「行くよ! 吉馬!!」

「さっさと掛かって来な! 俺は絶対負けない!」

「嫌、絶対勝たしてもらうよ! アタックステップ! リューマンゴッドソードでアタック! アタック時効果で1枚ドロー!」

「極龍帝ジークソルフリードでブロックだ!!」

 

[Battle]剣神無双リューマンゴッドソードLv.3(5)BP10000vs極龍帝ジークソルフリードLv.1(1)BP4000。

 

真っ向から互いに突っ込む二体のスピリット。リューマンゴッドソードは剣を、ジークソルフリードは両腕の爪を互いに振り下して真っ向から切り合い、互角に激突を繰り広げる両者。何度も切り合う両者だが、次にリューマンゴッドソードが振り下ろす剣に対し、ジークソルフリードは片腕で防ぎそのまま力任せに弾き返すと、リューマンゴッドソードは後ろに後退させられ、追討ちと言わんばかりに火炎放射を放ち、即座に上空に飛び上がって身を翳めながらも炎を避わす。

 

しかし一度避わしただけで終わりではない。空中で身動きの取れないリューマンゴッドソードに再度火炎放射を放つ。避けられない攻撃、ジークソルフリードはそれに仕留めたと自分の勝利を確信した。だが、リューマンゴッドソードは炎に対し、剣で真っ向から受け止めると、そのまま炎を切り進みながらジークソルフリードへと向かって行き、火炎放射を完全に相殺し切ると、最後に目の前に迫ったジークソルフリードに剣を振り下して一閃。その一撃にジークソルフリードは倒れ大爆発を起こす。

 

「まだ終わらない!! 相手による自分のスピリット破壊でバースト発動! フレイムバースト!!」

「!」

 

【フレイムバースト】3(2)赤、マジック。

【バースト:相手による自分のスピリット破壊後】

BP3000以下のスピリット全てを破壊する。その後コストを支払う事で、このカードのフラッシュ効果を発揮する。

『フラッシュ効果』このターンの間、スピリット/アルティメット1体をBP+2000する。

 

キースピリットを破壊されてもなお、ハルヤと同じく吉馬もまたその目は最後まで勝負を諦めてはいない。破壊をトリガーにバーストを発動させ、放たれる炎の渦にリューマンインフェニティは呑み込まれ、破壊されてしまう。

 

『吉馬選手、何とこの土壇場でバースト発動!! リューマンインフェニティが破壊された!! これでこのターンは凌いだか!?』

 

このターンは耐え切った。そう確信し、安心するように一息つこうとする吉馬だったが、ハルヤの表情に安堵する気持ちは直ぐに失せた。その理由はまだハルヤが勝負を諦めていない、それだけで充分だった。

 

「(まだ、勝つつもりなのか!?)」

「リューマンゴッドソードのバトル終了時! 手札の「剣使」、「竜人」をッ持つスピリットかアルティメット召喚できる! よって、リューマンファンタジスタを召喚!!」

「何!?」

 

リューマンゴッドソードは剣を天に掲げると、剣は光を灯し、その輝きに導かれるして、新たなスピリット、リューマンファンタジスタがフィールドへと降り立つ。

 

【リューマンファンタジスタ】7(赤2 極2)赤赤、スピリット、護将/竜人。

Lv.1(1)BP5000、Lv.2(3)BP7000、Lv.3(5)BP11000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『自分のアタックステップ』

ステップ開始時、自分のトラッシュのコア全てを、系統:「竜人」を持つ自分のスピリット/アルティメットに好きなように置く。

Lv.2、Lv.3『自分のアタックステップ』

自分のアルティメット1体につき、系統:「竜人」を持つ自分のスピリット全てをBP+5000する。

 

「最後の最後で、そいつを引きやがったのかよ!!」

「これで決めるよ!! リューマンファンタジスタでアタック! リューマンファンタジスタはダブルシンボル!!」

「ぐっ!! ライフで、受ける!!」

 

最後の一撃となる攻撃。リューマンファンタジスタは炎の火球を作り出し、それをまるでサッカーボールの様に勢いよく蹴り出すと、放たれた炎の火球はバリアへと激突し、残るライフを一気に破壊する。

 

「うわああああッ!」

 

[吉馬side]

[ライフ]2→0[Lose]

 

 

 

 

『勝負あり! 激しい戦いを制し勝ったのはハルヤ選手です!!!』

『素晴らしい激闘でした。まさにレッドドラゴンの卒業を決めるには相応しいバトルでしたね』

『ハルヤ選手、いよいよ新たな道を進むそうで、今後も彼からは目が離せないですね!』

『えぇ。全くその通りです』

 

バトルの行方に満足したように神子達はそこで実況を終えると、笑いながらその場を立ち去って行き、一方でバトルを終え、その場に俯く吉馬に対してハルヤは手を差し伸べる。

 

「!」

「初めて吉馬に勝てたよ! 僕強くなったよね?」

「フン、いい気なんなよ。まだ一度だ」

「ハハ、そうだよね。だからまた戦ってよ!」

「……また?」

「うん。例えもうチームじゃなくても、ライバルとしてこれからも、そしてこれからも友達だよね?」

「……っ!! あ、当たり前だろ!! バカヤロー!!」

 

間を置き、恥ずかしそうにしながらも顔を赤くさせながら懸命に叫び、その様子にエンザは笑いながら二人の肩に手を置く。

 

「はは、相変わらず素直じゃねぇな」

「「リーダー!」」

「吉馬も素直じゃない面があるけど、此奴の気持ちバトルを通してちゃんと伝わったよな?」

「はい、勿論です」

 

ハルヤの言葉に「なら良かった」と笑顔で答えると、エンザはハルヤに対し一枚のカードを差し出す。

 

「これって!?」

「贐だ。チームリーダーとして託すぜ、遠慮なく受け取れ」

 

差し出されたのは赤属性のカード、そのカードを見ながら嬉しそうに、そして誠心誠意感謝を込めて、「ありがとうございます」と頭を下げた。

 

「これからライバルだけど、覚えてけよ! レッドドラゴン全員、たとえチームを辞めても、ずっとお前とダチだ!」

「はい!」

「これから頑張れよ、俺等の仲間として、ライバルとして! もっと強くなれ!!」

「頑張ります! もっと強くなって、リーダー達と戦えるようになります!」

「おいおい、俺はもうリーダーじゃねぇぞ?」

 

「そうでした」とうっかりしてたように素振りを見せるハルヤに苦笑いしながらもエンザは真剣な表情に戻り、ハルヤを見る。

 

「ハルヤ、俺はいつでもテメェと戦える日を待ち望んでるぞ!」

「はい、エンザさんや皆、誰よりも強いカードバトラーになって見せます!!」

 

「その意気だ」と激励を贈るエンザ。レッドドラゴンのメンバー達に見送られながらハルヤはチームスタジアムを後にその場を立ち去る。この日を境にハルヤの運命も大きく動き出すのだった。







どうも第6話、無事更新できて何より!! 今回は吉馬とハルヤのバトルでしたね。ストーリーはグダッってた? はいおっしゃる通りです。お恥ずかしい、相変わらずの駄文でごめんなさい(ノД`)・゜・。←

吉馬のデッキはジークデッキでした。色々書いてて楽しかった気がします。ジークと言えば裏Xの……あれは、アスクレピオーズ→バニソ→裏ノヴァというコンボにトラウマを刻まれたのでもう思い返したくない←

バトル後、エンザが渡した一枚。何のカードかはお楽しみを(ステマ)
そう言えば、6月11日現在。いよいよ新弾が来週発売と迫りましたね!! 恐竜魔神等、新異魔神ブレイヴがやはりほしいですね。最近地竜デッキが組みたく合っているので
恐竜魔神はぜひとも欲しい所。Xレアとまで高望みはしませんだって運が悪いので(笑)

新弾発売されたそのカードも早速小説で書きたいですね。カードパートに送れるのはもう嫌ですから(笑)小説、次回はどうなるのか!これからも何卒よろしくお願いします。


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第2章 創設最強チーム
No07.神皇降臨、新たな仲間


・以下注意
誤字、プレイミスありかも。
バトル表記が人によっては分かりずらいかも。

それでも大丈夫という方はどうか温かい目で見てもらえると幸いです。発見したミスやバトル表記などのご指摘気軽にお待ちしております。






「はぁー……」

 

浮かない表情で近くの公園に腰掛けながらため息を零す少年、ハルヤ。昨日、チームレッドドラゴンを抜けて、新たな道を進むと決めた彼。その翌日、いきなり大きな問題を抱えていた。

 

「……これからどうしよう」

 

その言葉通り彼が悩む理由は「次の行動」だった。宛もある訳がなく、途方に暮れるしかなかったが、そこへふと。

 

『おや? ハルヤさん、こんなところで会うなんて奇遇ですね?』

「!?」

 

気品のある声、声の方角に振り返るとそこにいたのは神子達3人の姿だった。

 

「あれ、確か実況の!」

「バトル解説している犬神神子と申します。こうして話すのは初めてかもしれませんね?」

 

その通り。毎度実況している神子達とは面識はあれど、直に話す機会はなく、こうして対面するのも初めてだった。

 

「実況してる犬神紅葉だよ! 初めまして!!」

「姉さん達の弟の犬神コン太です。初めまして」

「あっ、はい。どうも」

 

普段の実況通り賑やかな紅葉と、反対に落ち着いた様子で軽く礼をするコン太。二人とも挨拶を交わしながら、当然三人が自分に声を掛けた要件が気になる。

 

「それで、僕に何の用が?」

「いえ、先日のバトルでレッドドラゴンを脱退されたらしいですが、もしかしてその事でお困りじゃないかと思いまして」

「あはは、正直に言うと恥ずかしい話、ちょっとこれからどうしていいのか分かんなくて」

「やっぱりそういう事ですか。それでしたらぜひ私達をお便りください」

「えっ?」

 

具体的な事は何も言わず「付いて来て下さい」とだけ告げると、どこかに向けて歩き出し、不思議に思いながらもハルヤも何も言わず、神子達の後に付いて行った。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「さぁ着きましたよ?」

 

神子達に連れられ暫く、目の前にあるのはBSマークを看板代わりに張られた一件のカードショップ。しかしそれの外観は広く、まさにドーム会場の様だった。

 

「あ、あのここって?」

 

外観に気まずそうに尋ねるハルヤに対し、神子はにっこりと笑ったまま「目的地ですけど?」と答えた。

 

「いや、そうじゃなくて、具体的にどういう場所なんですか?」

「お伝えしてませんでしたね。ここはバトスピショップですが、ただのバトスピショップではありません。この街、高天原内でのチームの登録管理を担う言わば運営店でもあります」

「チームの登録管理!? ここで!?」

「まぁ初めてにしても身構えなくていいですよ? 一から説明してくれると思いますし、とにかく付いて来て下さい」

「は、はい」

 

言われるがまま店内へと中を入るハルヤ達。

 

「おっ、いらっしゃい」

 

ハルヤ達の姿に、カウンターに腰を掛けて声を掛ける一人の男性。見た目は20代前半程の男性で紫髪に、手に持ったタロットカードが特徴的な人物だった。

 

「お久しぶりです。ダイキさん」

「よぉ、久々っていう割には前も来てたけどなァ、そっちは初めてだけど、新入りか?」

 

神子達とも既に面識があるのか、ダイキと呼ばれた男性は親しげに神子達と会話を交わしながら、ハルヤに姿を興味深そうに見ている。

 

「あ、あの……神子さん達にチームの登録管理ができるって聞いてたんですけど?」

「へぇー、見ない顔だが新規ってところか?」

「はい、まぁ」

「ダイキさん、実はハルヤさん。最近チーム脱退して新たなチームを作るそうなのですが、まだメンバーも集まってない状態でして」

「! そりゃ少し面倒だな」

 

少しだけ驚いた様に反応して見せ、頷く神子達に対し、ハルヤは何の事だか理解し切れていないが、一方のダイキは悩むようにしながらも、何かを思いついたのか後ろに振り返る。

 

「おい! 光!!」

 

光と呼ぶ別の人物、その声に返事をしながら奥から一人の女性が顔を出す。

 

「あれ? 神子さんたちいらっしゃったんですね。そちらの方は初めてですね?」

 

神子と同じく丁寧な口調の女性。気品あふれるその女性の対振る舞いはまるでお嬢様の様で、神子も女性に対して「お久しぶりです」と返事を返し、光と呼ぶ女性とも面識がある様子。

 

「御挨拶しますね。私、相崎光と申します。こちらの方は城島ダイキさん、私たち二人でこのバトスピショップを経営してます」

「二人で、ですか!?」

 

その言葉通り、他の店員の姿はなく、相当な広さにも関わらずそれを二人だけ営んでいる事に思わず動揺を隠せなかった。

 

「人員不足と思うかもしれませんが、元々このバトスピショップは、昔バトスピショップを経営していた人から任せられたんですけど、まだ新規開拓したばかりで体制が整ってなくて」

「ハッ、俺は見兼ねたから手伝ってやってるだけだ。二人だけでも慣れりゃ回せるぜ」

「えー、ダイキさんにしてみれば二人だけでもじゃなくて二人だけの方が都合がいいんじゃないですか?」

「!!」

 

落ち着いた様子で語るダイキだったが、不意な紅葉の発言に「お、大人を揶揄うな!」と慌てたように否定し、恥ずかしそうに口元を隠す素振りを見せた。

 

「ふふっ、紅葉さんも相変わらずですね」

「笑い事じゃねぇよ光。俺は別に……!」

「何も言わなくても、私はちゃんとわかってますよ?」

「っ! ど、どこが分かってんだよ!!」

 

面白そうににやける紅葉に、神子も「ダイキさんも光さんには敵いませんね」と口を挟み、それに対し返す言葉がないのか恥ずかしそうに黙り込んでしまう。

 

「姉さん、そろそろ本題」

「あっ、そうでしたね」

 

一方で完全に状況に付いていけず取り残されているハルヤに見兼ねたように話題を切り替えるコン太。神子も反省するように「すみません」と謝りながら本題へと入る。

 

「えっと、じゃぁ早速ハルヤさんのチーム登録の件についてお話ししたいんですが」

「あぁ。その事なんだがまだメンバーも揃ってないんだろう? まずはチームの事も全部は分かってないみたいだし、一度詳しい説明した方がいいと思うんだが?」

「それもそうですね」

 

ダイキの言葉に頷きながら、「それなら私が説明しましょう」と光が説明し始める。

 

「簡単に説明しますと、まずはハルヤさんが所属していたレッドドラゴンを始めとするチーム。そのチームは専用の施設でチームの戦績や活動、メンバーなどを把握管理しています。基本的にランキング登録されているのは全て地域ごとの専用施設で登録された物で、登録条件がチームリーダーを含めたメンバー5人以上所属していることになります」

「つまり、僕を含めてあと4人?」

「はい。なのでハルヤさんがもしチーム登録をされるというのであれば、メンバーを4人集める事が必要となります。一応こちらで仮登録だけはできますので、メンバーが揃ったらまだいらしてください」

 

4人ものチームメンバーを集める必要がある事に一瞬気が遠くなるような気もしたが、それでも強さを目指して突き進んだ己の道。弱音は吐けず頑張ろうと強く意気込む決意を固めた。そんなハルヤの様子にダイキは何かを感じたように一枚のタロットカードを取り出す。

 

「月の逆位置。結果は未来への希望か」

「えっ?」

 

取り出したカードを見ながら語り、その結果に対して面白そうに笑いながらさらにダイキは続けて行く。

 

「要するに頑張れば思うようになるかもって事だ。大変かもしれないけど、精々頑張れ」

「はい、ありがとうございます!!」

 

激励を贈るその言葉に対し、嬉しそうに笑顔で返答すると、思い立ったように出口の方へ振り返る。

 

「早速メンバー集め頑張ろうと思います。ダイキさん、光さんありがとうございました。それに神子さん達も、本当にありがとうございます」

「はい、メンバー集め頑張ってくださいね。私達も陰ながらハルヤさんを応援してますから」

 

神子達に見送られながら、その場を後に飛び出すハルヤ。その様子に対し、神子達も「それでは私達もこれで」と続くように店を後にし、4人の姿が見えなくなったのを確認すると。

 

「はぁー、色々騒がしい奴等だったなァ」

「そんな事言いながら、ダイキさんもあの子たちが気に入ってるんじゃないですか?」

「ハッ、否定はしねぇけどな」

「全く素直じゃないんですから。それにしても、あのハルヤさんって子。まるで誰かさんにそっくりでしたね」

 

光の言葉にダイキも頷き、その言葉は二人のよく知る人物の昔の姿とハルヤの姿が重なるように感じていた。

 

「あぁ、どっかのバトル馬鹿に思い出すぜ」

「あの人は今はどこで何をしている事やら」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

一方でバトスピショップを後に飛び出すハルヤ。どこかに向かうハルヤ。宛があるの中、走り続ける事暫く。一件のスタジアムへと顔を出すと、そこで誰かを見つけたように「おーい!」と手を振って駆け寄る。

 

『ん? ハルヤじゃんか? 随分だな』

 

ハルヤの声に気づいたのか、ハルヤに手を振り返す一人の少年。派手目な格好に金髪の目立つその少年は以前ハルヤと対戦した雷矢だった。

 

「よくここが分かったな」

「まぁ色んなバトスピショップ捜し歩いたから、ジライヤの事探してたんだけど、会えてよかったよ」

「俺を? 何でまた俺なんか?」

「実はさ……。」

 

これまでの経緯を雷矢に全て話し、話を聞き終えると面白そうに反応して見せた。

 

「お前も遂に最強目指す気になったんだ?」

「うん。ジライヤに言われた事ずっと考えて、僕ももっと誰よりも強くなりたいって思うようになってさ」

「いいと思う。俺は応援するぜ、それで? 今はチームメイト探しって訳か」

「うん、前にジライヤ、チーム未所属って言ってたし、良かったらジライヤとチームを組みたいなって思ったんだけど、駄目かな?」

 

以前対戦した事もあり、雷矢の実力はハルヤもよく知っている。だからこそ、チームメイトとして仲間になってほしいと思うハルヤだったが、雷矢はそれに対し悩むように腕を組みながら暫く考え込む。

 

「悪い、ちょっと無理かな」

「!」

「正直チーム未所属の方が何かと自由にできるしな。頼ってくれたのは嬉しいんだけど、本当にごめん!」

「いや、いいよ。別に無理に誘うつもりじゃないしさ」

 

だがハルヤにとって内心、残念じゃないと言えば嘘になる。宛にしていただけに断れた事には多かれ少なかれ凹まずにはいられなかったが、「けど」と雷矢は言葉を続けて行く。

 

「チームメンバー探すなら、丁度いい奴知ってるぜ?」

「本当?」

「あぁ、あれ見て見ろよ!」

 

雷矢が指指す方角にはフィールドで対戦している二人の少年の姿、場の状況を見る限り既に終盤らしく、バトルしているのはキャップを被った少年ともう一人、ハルヤと同じぐらいの背に赤のスカーフを首元に巻き、大きなカードファイルを背中に背負う少年。

 

『アタックステップ! 光牙鳳凰レックウマルでアタック!」

『ライフで受ける!!』

 

スカーフを巻いた少年はレックウマルをアタックさせると、相手の最後のライフを破壊し、決着となる。

 

『さぁ勝った勝った!! 約束のカード、頼むぜ!』

 

勝負に勝利した少年は自分の後ろにいる少年達にそう言うと、少年達はカードを手渡し始める。

 

『あぁ、やっぱ代行バトル頼んで正解だったよ、はい約束のレアカード。またよろしくな』

『サンキュー、報酬さえ出してくれるなら俺はいつでもオッケーだぜ?』

 

カードを受け取ると、少年達と別れ受け取ったカードを背負ったカードファイルに仕舞い、その様子を不思議そうに見ている。

 

「あれって、どういうことなの?」

「アイツの名前は天宝ザック。通称雇われバトラー」

「雇われバトラー!?」

「そっ、チーム間でのバトルに対して、代行バトルを請け負って勝ったら報酬としてレアカードを貰う。それを生業にしてるから周りじゃ雇われバトラーって言われてるんだ」

「へぇー、あの人勝ってたけど強いのかな?」

「あぁ。代行バトルじゃほぼ負けなしって言うぐらいにな」

「そんなに!?」

「あいつも一応チーム未所属だし、誘ってみるのも面白いと思うぜ」

 

雷矢の言葉に頷き、その様子に「まぁ頑張れよ」と声援を送り、「ありがとう!」とハルヤはすぐさまザックのと言う少年の元へ駆け寄って行き、観客席に腰掛けながらその行方を見守る雷矢だった。

 

 

 

 

「ねぇ、ちょっといいかな?」

「ん?」

 

ザックの元へ駆け寄って行くハルヤに、ザックは足を止め、ハルヤの方へと振り返る。

 

「あれ、アンタ知ってるぜ。確かレッドドラゴンの輝来ハルヤだろ?」

「あれ? 僕のこと知ってるの?」

「あぁ、割とBCO見てる人間にとっては有名なんだぜ、レッドドラゴン脱退したとか色々聞いてる」

「そんな事まで知ってるんだ」

「あぁ、で? そんな人が俺に何の用だよ?」

「あー実はさ、新しいチーム作ろうと思ってるんだけど、メンバーが揃ってなくてさ、もし良かったら新しくチームを作るためにチームメイトになってくれないかなって思ってさ」

「新しいチームねぇ」

 

単刀直入に用件を伝え、ザックもまたその提案に対し素直に受け入れがたいのか、考え込むような素振りを見せる。

 

「俺のこと知ってるかは知らないけど、俺は今レアカードを夢中だからな」

「あぁ、確か雇われバトラーだって聞いてるけど」

「まっ、何かと美味しい思いができるからな。こう見えてもカードコレクターとしてやってるからな、色んなカードを集めるのが趣味なんだ!」

 

カードコレクターなのは見た目通りな気もするが、苦笑いしながら突っ込む言葉を抑え、一方でザックはそれに構わずさらに意気揚々と続ける。

 

「まさにカードはお宝! 中でもXレアを超える究極のカード、それを手に入れるのが一番の目標だぜ!」

「究極のカード?」

「まっ、そういう訳で悪いけどチームは……!」

 

そこまで言い掛けた瞬間、何かを思い出したに言葉を止めた。

 

「そう言えば、アンタのキースピリットって確かリューマンゴッドソードだったよな?」

「うん、よく知ってるね?」

「当然、俺が今コレクションに探してたカードだからな! だからさ、それを掛けてバトルっていうのはどうだ?」

「えっ!?」

 

ザックの提案に思わず動揺を隠せなかった。ハルヤにとってリューマンゴッドソードは最も大切なキースピリットなのだから当然の反応だった。

 

「負けたら俺がチームに入る。まぁ無理にとは言わないけどな、アンタにとっても大切なカードだろうし」

「…………」

 

リューマンゴッドソードをカードを見ながら暫く考え込むハルヤ、暫く悩んだ末、何かを決意するように。

 

「いいよ、それでも」

「えっ!?」

「……できれば掛けたくないけど、何の条件もなしにチームに入ってっていうのも虫の話だと思うし」

「おいおい、そこまで俺にチームは言って欲しいのかよ? そこまでする必要あんのか?」

「うん。まだ会って間もないけど、何だかザックにはどうしてもチームに入って欲しいと思ってさ」

「ふーん。まっ、そのつもりならこっちも遠慮はしねぇぜ! 悪いけど勝たせてもらうぞ」

「うん。けど僕だって負けるつもりはないよ! リューマンゴッドソードは大切なスピリットなんだ。だから負ける訳には行かない!」

 

「決まりだな」と笑いながらバトルに臨むザックに、ハルヤもデッキを取り出して構え、二人はバトルフィールドへと移動する。

 

『さぁさぁさぁ今回もバトルの時がやって参りましたぁ!! 視聴者の皆様、今日も熱いバトルをお届けしたいと思います! 実況は御馴染み犬神紅葉、今日も一日よろしくお願いします!』

『解説の神子です。今日もよろしくお願いします!』

 

いつ来たのか神子達もその場へと足を運んで、いつもの様に実況解説を始め、ザックとハルヤは間もなく始まるバトルに準備を進めて行く。

 

『さぁ今回対戦しますのは、元レッドドラゴンメンバーであり、脱退後、その後の活躍に期待される話題のバトラー、輝来ハルヤ選手!! 一方で対戦相手につきましては、解説の神子さんに情報を伺いいたいと思います』

『はい、対戦相手は天宝ザック選手。こちらはチーム未所属ですが、チーム間同士の対決に代行を請け負い、雇われバトラーとして名の知れた人物ですね』

『今回もどのようなバトルになるのか、全く予想が出来ませんね!』

『ええ。なので実況解説者の我々は見逃す事なくバトルの状況をお伝えしなくてはなりません』

 

バトルの始まる前から嬉々として語る紅葉と神子達。一方でザックとハルヤの両方ともバトルの準備を終えたのか、それに気づくと紅葉達は仕切り始める。

 

『さぁ毎度号令! 両者コールをお願いします!』

「「ゲートオープン! 界放ッ!」」

 

二人の宣言と共に開始されるバトルに、誰もがバトルの行方に注目する。

 

 

 

 

[01ターン.ザックside]

[スタートステップ]

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「メインステップ! ソウルコアを使用して丁騎士シュバリエを召喚だ!」

 

[リザーブ]4個→0個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→4枚。

 

【丁騎士シュバリエ】3(1)緑、スピリット、十冠/爪鳥。

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(3)BP5000。

Lv.1、Lv.2『このスピリットの召喚時』

BP5000以下の相手のスピリット一体を疲労させる。召喚コストにS(ソウルコア)を使用していたら、かわりに、ボイドからコア1個をこのスピリットに置く。

 

「召喚時効果発揮! 召喚コストにソウルコアを使用でボイドからコア1個を追加だ!!」

「!」

 

鳴き声を上げながらシュバリエは自らの力でコアを齎す。緑属性得意のコアブースト。以前雷矢とのバトルでも経験した事のある戦法に油断できない事は百も承知だった。

 

[フィールド]丁騎士シュバリエLv.1((S(ソウルコア)1)1)BP3000。

 

「これでターンエンド」

 

 

 

 

[02ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「メインステップ! リューマンサージェント召喚!」

 

[リザーブ]5個→0個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]5枚→4枚。

[フィールド]リューマンサージェントLv.1((S1))BP3000。

 

「僕もこれでターンエンド」

『さぁお互いに動きは無し、場は硬直状態となっております』

『ハルヤさんのリューマンサージェントでアタックしても、まだ丁騎士シュバリエとはBPは互角。様子見は無難な判断かと思われます』

 

 

 

 

[03ターン.ザックside]

[スタートステップ]

[コアステップ]0個→1個。

[ドローステップ]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]1個→4個。

 

「メインステップ! ネクサス、白雲に茂る天翼樹を配置する!」

 

[リザーブ]4個→1個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]4枚→3枚。

 

【白雲に茂る天翼樹】4(2)緑、ネクサス。

Lv.1(0)、Lv.2(2)。

Lv.1、Lv.2『このネクサスの配置時』

ボイドからコア1個を自分のリザーブに置く。系統:「爪鳥」を持つ自分のスピリットがいる時、さらにボイドからコア1個を自分のリザーブに置く。

Lv.2

相手が、スピリットの効果でドローしたとき、ドローしたカード1枚に付き、相手のスピリット1体を疲労させる。

 

 

「ボイドからコア1個を、さらに丁騎士シュバリエがいる事により、さらにコアをリザーブに追加。そして丁騎士シュバリエ、並びに白雲に茂る天翼樹をLv.2にアップ」

 

[フィールド]丁騎士シュバリエLv.2((S1)2)BP5000、白雲茂る天翼樹Lv.2(2)。

 

「俺はこれでターンエンド」

『ザック選手増やしたコアで場を固める!!』

『緑属性ならではのコアブーストを巧みに使いこなしてますね。何時動き出すのか、それに警戒をしなくてはなりませんね』

『一瞬たりとも目が離せない! 先に動くのは果たしてどちらか!!』

 

 

 

 

[04ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]1個→5個。

 

「メインステップ! リューマンサージェントをLv.2にアップ! そしてリューマンサージェントのLv.2の効果、スピリットソウルを発揮!」

「!」

「アルティメットの召喚時、リューマンサージェントに赤のシンボル1つを追加し、炎極天リューマンバーストをLv.2で召喚! 不足コスト確保でリューマンサージェントをLv.1に戻す!」

 

[リザーブ]5個→0個。

[トラッシュ]0個→2個。

[手札]5枚→4枚。

[フィールド]炎極天リューマンバーストLv.2((S1)2)BP9000、リューマンサージェントLv.1(1)BP3000。

 

「アタックステップ! 炎極天リューマンバーストでアタック! アタック時効果発揮! 相手のネクサス一つを破壊する!」

「!!」

 

リューマンバーストは吠えながら両足に炎を灯すと、そのままネクサスに向かって勢いよく飛び蹴りを叩き込み、炎にネクサスは焼かれて消滅する。

 

「さらにメインアタック!」

「ライフで受けるぜ!」

 

展開されるバリアに渾身の打撃を叩き込み、そのまま一気に破壊する。

 

「ぐっ!!」

 

[ザックside]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]2個→3個。

 

「へっ、ネクサス破壊した上にアタックとはやってくれんじゃねぇか!」

「勝つつもりだからね! 僕はこれでターンエンド」

 

 

 

 

[05ターン.ザックside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]3個→4個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]4個→7個。

 

「メインステップ、丁騎士シュバリエをLv.1にダウン。そして、オウギエンショーを召喚!」

 

[リザーブ]9個→4個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]5枚→4枚。

 

【オウギエンショー】5(3)緑、スピリット、華兵/爪鳥。

Lv.1(1)BP4000、Lv.2(3)BP6000、Lv.3(4)BP7000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『このスピリットの召喚時』

自分の手札にある「華兵」/「爪鳥」を持つスピリットカード1枚を、コストを支払わずに召喚する。ただし、そのスピリットの『このスピリットの召喚時』効果は発揮されない。

 

呼び出されたのは黄金に輝く羽を持つスピリット、オウギエンショー。出現と同時に鳴き声を上げると、煌びやかなその身はさらにその輝きを増し始める。

 

『おっと、早速オウギエンショーの召喚時効果発揮だ!!』

『オウギエンショーは手札にある「華兵」、「爪鳥」を持つスピリットを1体ノーコスト召喚できる効果ですね』

『ザック選手、その効果で何を呼び出すつもりだ!?』

 

紅葉達の言葉に対し、ザックは「とっておきだよ」と呟きながら口角を上げて見せた。

 

「見せてやるぜ、俺の超とっておきのレアカード!」

「!?」

「気高く舞い上がる神の翼! 皇の風を巻き起こせ!! 酉の十二神皇ゲイルフェニックス、召喚ッ!!」

 

[リザーブ]4個→0個。

[手札]4枚→3枚。

 

ザックが呼び出すのは十二神皇の内の一体、酉の神皇(ゲイルフェニックス)。フィールドに突如として巻き起こる大風、全てのスピリット達を吹き飛ばす程の強風、だがその正体は天より舞い降りるゲイルフェニックスの翼の羽ばたきによるものだった。翼を羽ばたくだけで巻き起こる強風、ゲイルフェニックスはただ優雅に地面へと降り立ち、神の名の如く、神々しき鳴き声をフィールドに響き渡らせる。

 

『ななな何と!! ザック選手が呼び出したのは驚愕!!! 最強と名高い十二神皇の一体! ゲイルフェニックスだーーッ!!!』

『まさかの十二神皇の一体とは、ザック選手。かなり強力なスピリットを所持していたようですね』

 

ゲイルフェニックスの姿に誰もが驚きを隠せない。その事に対し、ザックは自慢気な様子だった。

 

「必死に探し回ってようやく手にした一番のXレアカードだ。それでお前に勝ってやるんだ。負けても誇りに思えよ!」

「くっ! いきなり十二神皇だなんて!!」

 

ゲイルフェニックスの姿にそれを扱うザックは勝利を確信する程の自信を得ており、それとは対照的に、対峙するハルヤにとっては、ゲイルフェニックスの姿による圧力は凄まじく、迫力は並みのスピリットを遥かに凌駕していた。

 

[フィールド]酉の十二神皇ゲイルフェニックスLv.2((S1)3)BP13000、オウギエンショーLv.1(1)BP4000、丁騎士シュバリエLv.1(1)BP3000。

 

「アタックステップ! ゲイルフェニックスでアタック! そしてアタック時効果発揮! 【封印】!!」

「封印!?」

 

【酉の十二神皇ゲイルフェニックス】7(4)緑、スピリット、神皇/爪鳥。

Lv.1(1)BP10000、Lv.2(3)BP13000。

Lv.1、Lv.2【封印】『このスピリットのアタック時』

このスピリットのS(ソウルコア)を自分のライフに置ける。

Lv.1、Lv.2【封印時】【飛翔】『このスピリットのアタック時』

バトル終了時、1コストを支払う事で、このスピリットは回復する。

Lv.2『このスピリットのアタック時』

系統:「神皇」か「十冠」を持つ自分のスピリット1体につき、このスピリットをBP+5000する。

 

「【封印】の効果により、ゲイルフェニックスのソウルコアをライフに置く!」

「ソウルコアをライフに!?」

 

[ザックside]

[フィールド]酉の十二神皇ゲイルフェニックスLv.2((S1)3)BP13000→酉の十二神皇ゲイルフェニックスLv.2(3)BP13000。

[ライフ]4→5。

 

ゲイルフェニックスは鳴き声を上げながらその効果により、ソウルコアをライフへと移すと、ソウルコアの赤い輝きがライフへと灯される。

 

「【封印】により、封印時のアタック時効果、【飛翔】を発揮! 相手の疲労状態のスピリット、アルティメットでのブロックが可能となる!」

「(えっ? わざわざこっちに有利な効果を付け足した!?)」

「Lv.2の効果、ゲイルフェニックス自身と十冠を持つ丁騎士シュバリエがいる事により、合計10000をゲイルフェニックスに加算して、BP23000だ!」

「ッ!!」

 

緑の光を纏う事でさらに力を手にするゲイルフェニックス。そのまま勢いよくハルヤへと迫って行くが、ゲイルフェニックスは向かいながらも、まるで敵に塩を送るかの様に、片膝を突くリューマンバーストに風を飛ばすと、その風を受け、先程まで疲労していたリューマンバーストは再び立ち上がる。

 

「アタックはリューマンバーストでブロック!」

 

[Battle]酉の十二神皇ゲイルフェニックスLv.2(3)BP23000vsリューマンバーストLv.4(3)BP9000。

 

圧倒的なゲイルフェニックスの存在に対してもリューマンバーストは決して怯まず、ゲイルフェニックスの恩恵を与えられたことで跳躍力も比較的に上昇し、そのまま勢い良く飛び上がると、ゲイルフェニックスの目の前で飛び上がり、炎を纏わせた蹴りを叩き込む。

 

だが、ゲイルフェニックスの力は今のリューマンバーストの比ではない。リューマンバーストの蹴りが決まるその直前、一瞬の合間にさらに高く飛び上がって蹴りを避けると、リューマンバーストの攻撃は空振りに終わり、空中で身動きの取れなくなったリューマンバーストをゲイルフェニックスはその翼で叩き付け地面へと叩き落とし、真っ逆様に落ちるリューマンバーストを追撃するようにゲイルフェニックスはさらに急降下すると、地面へ激突するリューマンバーストに止めを刺すように脚部の爪を突き刺し、そのまま破壊する。

 

「ぐっ!!」

『圧倒的な力でリューマンバーストを粉砕!! しかし疲労状態でブロック可能となっていたハルヤ選手、難なくこれで凌げました!』

『いえ、安心はできませんよ』

『おっと、それはどういう!?』

『十二神皇のゲイルフェニックスの力。その本領はここからですよ!!』

 

神子の言葉通り、まだゲイルフェニックスはその真価を発揮していない。バトルが終わりリューマンバーストを破壊されながらも攻撃を凌いだ事に安堵するハルヤだったが、「気を抜く暇なんてないぞ」と笑いながらザックは続けた。

 

「えっ?」

「バトル終了時効果! 1コストを支払う事で、ゲイルフェニックスは回復する!」

「なっ!?」

「よって1コストをゲイルフェニックスから支払って回復させる!」

 

[フィールド]酉の十二神皇ゲイルフェニックスLv.2(3)BP13000→酉の十二神皇ゲイルフェニックスLv.1(2)。

[トラッシュ]4個→5個。

 

コアがトラッシュに送られた事でレベルが下がるも、ゲイルフェニックスは緑の光をその身に緑の纏わせると再び起き上がり始める。

 

『何と再びゲイルフェニックスが回復したぞ!!』

『ゲイルフェニックスはバトル終了後、コスト支払う事で何度でも攻撃することが可能となります』

『驚愕の効果、これがゲイルフェニックスの力なのか!!』

『えぇ。ザック選手はこれによりまだ6回もの攻撃可能となります』

『6回、それはつまり……!!』

『ハルヤ選手のブロッカーを含めてもライフを削り切れる攻撃回数ですね』

『こ、これは衝撃!! ハルヤ選手、ここまでなのか!!』

「あぁその通りだ! まだまだ行くぜ、ゲイルフェニックスでさらにアタック!」

 

神子達の言葉通りこのターン全ての攻撃が決まればザックの勝利は必然となる。それが分かっていいたからこそ自分の勝ちを確信し、意気込みながらさらにゲイルフェニックスをアタックさせる。

 

「ライフで受ける!」

 

リューマンサージェントでもゲイルフェニックスは止められない。ライフで受けるしかなく、ゲイルフェニックスはバリアに両翼を勢い良く叩き付け、破壊する。

 

「ぐあっ!!」

 

[ハルヤside]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]3個→4個。

 

「再びコストを支払って、ゲイルフェニックスを回復させる!」

 

[フィールド]酉の十二神皇ゲイルフェニックスLv.1(2)BP10000→酉の十二神皇ゲイルフェニックスLv.1(1)BP10000。

[トラッシュ]5個→6個。

 

「今度はオウギエンショーでアタック!!」

「ライフで受ける!」

 

ゲイルフェニックスに続いて突っ込むオウギエンショー。そのまま勢いよくバリアに突っ込み、強烈な突進でバリアを破壊する。

 

「ッ!!」

 

[ハルヤside]

[ライフ]4→3。

[リザーブ]4個→5個。

 

「もう一度ゲイルフェニックスでアタック!! 終わりだぜ!!」

「フラッシュタイミング! ブレイジングバースト!」

「!」

 

[手札]4枚→3枚。

[リザーブ]5個→2個。

 

「リューマンサージェントを破壊する事で、このターン、もう僕のライフは1しか減らない!」

 

咄嗟に使用されるマジック。その効果によってリューマンサージェントが炎に包まれ消滅し、ゲイルフェニックスはそれに構わずバリアに爪を突立てて破壊するが、ハルヤのライフが削られた瞬間、これ以上の攻撃を止めるかのように炎が盾の様にバリアに覆い重なる。

 

『ここでハルヤ選手、間一髪マジックの使用です』

『見事に切り返しましたね。ザック選手はこれでこのターン、幾らゲイルフェニックスを回復させようともうライフを削ることはできませんよ』

 

止めを刺し損ねた事を不服そうに舌打ちながらも、これ以上の攻撃が無意味な事は確か。フィールドにもう余したコアは無く、スピリットを無暗に破壊するべきではないと考えたのかゲイルフェニックスの【飛翔】の効果は使わずにそのターンを終えた。

 

「悪運の強い奴。けど、次は無いぜ? 多分ラストターンだろうけど、この状況で逆転出来るものならやってみな!」

「(確かに、このままじゃ……!)」

 

ハルヤが追い詰められていることには変わりはない。次のターンがハルヤにとっての正念場だった。

 

 

[06ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

 

「!」

 

絶体絶命の状況下、このターン引いたカードに思わず顔色が変わり、その様子に何かが来たことをザックも直感した。

 

[リフレッシュステップ][トラッシュ]5個→0個。[リザーブ]5個→10個。

 

「メインステップ! リューマンクロウを召喚。さらに行くよ!」

「……来い!」

 

真っ向からザックも受け立つつもりなのか、構えるザックにハルヤもまた一歩も引かずに手札の一枚を掲げる。

 

「天下切り裂く勝利の剣! 太陽の如く燃え上がれ! 剣神無双リューマンゴッドソードをLv.3で召喚ッ!」

 

[リザーブ]10個→0個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]4枚→2枚。

 

 

熱く燃え上がる炎のフィールド、その炎の中、眼光を輝かせ、剣の一閃で周囲の炎を掻き消し、リューマンゴッドソードがその姿を現す。

 

[フィールド]剣神無双リューマンゴッドソードLv.3((S1)4)BP10000、リューマンクロウLv.1(1)BP1000。

 

『さぁハルヤ選手もここでキースピリットの召喚!!』

『いよいよ大詰めですね。逆転できるか見物です!』

 

満を持して現れるハルヤのキースピリットに湧き上がる歓声。リューマンゴッドソードの姿にはザックもまた目を輝かせた。

 

「ついに出たな! ご自慢のキースピリット、俺が勝ったら約束通り貰うぜ!」

「絶対渡さない! 絶対勝ってチームに入って貰う!!」

「やれるもんならやってみやがれッ!!」

「そのつもりだよ! 手札からバーストセット!」

「何!?」

『おっとハルヤ選手! この局面でバースト!!』

『終盤ですからね、あのバーストはどう動くかが勝負のカギとなりそうですね!』

 

伏せられたバーストカード。それが何なのか思案しながらも「アタックステップ!」と意気込むように攻撃に移ろうとするハルヤに、ザックもバトルに集中し直す。

 

「(バーストが何だろうと、俺のライフは5、ブロッカーも残ってる。凌いで見せる!)」

「行くよ、まずはリューマンゴッドソードでアタック! アタック時効果で1枚ドロー!」

「アタックはライフで受ける!」

 

[手札]1枚→2枚。

 

ブロックしてもシュバリエが返り討ちにされることは明白。ライフで受け、リューマンゴッドソードは剣に炎を纏わせて、そのままバリアを一閃。炎の斬撃がライフを破壊する。

 

「ぐっ!!」

 

[ザックside]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]0個→1個。

 

「へっ! この程度で勝てるとでも?」

「まだだよ! リューマンゴッドソードのバトル終了時、手札の「剣使」、「竜人」を持つスピリット、アルティメットを召喚できる! 僕が呼び出すのは、剣聖武竜ミツルギドラゴン!!」

「何!? そのカードは!?」

 

今までハルヤが使ったことのないカードに思わずザックや実況の紅葉や神子達も驚愕した様子。そのカードは以前、エンザが贐にと託してくれたカードだった。

 

「エンザさんから貰ったカード、使わしてもらいます!! 伝説を受け継ぎし龍! 炎の一撃を時代に刻め! 剣聖武竜ミツルギドラゴンをLv.3で召喚!!」

 

突如として天にまで届く程、高く燃え上がる炎。その炎の中に一本の剣が降り落ち、輝く炎の中でその剣を手に取る龍の影、手に取った剣で渦巻く炎を切り裂き、ミツルギドラゴンが現れる。

 

[フィールド]剣神無双リューマンゴッドソードLv.3((S1)4)BP10000→剣神無双リューマンゴッドソードLv.1(1)BP4000。剣聖武竜ミツルギドラゴンLv.3((S1)3)BP16000。

 

『は、ハルヤ選手の新たなスピリット!! それは何と、Xレア級のスピリット、剣聖武竜ミツルギドラゴンだーーッ!!』

『新しくハルヤ選手のデッキに加わったスピリットのようですね。果たして、ハルヤ選手はどのように使いこなすのか、楽しみですね!』

『えぇ、これは実況者としても目が離せません!』

 

周囲の誰もが騒然とするその姿。ザックもまたミツルギドラゴンの姿に一瞬圧倒されながらも、それでも継続するバトルに構え直す。

 

「まだそんなスピリットを残してやがったとは……!!」

「僕だって本気で勝つつもりだからね! 行くよ!! 剣聖武竜ミツルギドラゴンでアタック!! アタック時効果で【起導】の効果を発揮!」

「!」

 

【剣聖武竜ミツルギドラゴン】8(4)赤、スピリット、起導者/剣使/武竜。

Lv.1(1)BP7000、Lv.2(2)BP12000、Lv.3(4)BP16000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『自分のエンドステップ』

自分の手札にあるバースト効果を持つカード1枚をセットできる。

Lv.2、Lv.3【起導:全色】『このスピリットのアタック時』

このスピリットのS(ソウルコア)を自分のトラッシュに置く事で、自分のS(ソウル)バースト1つを直ちに発動させる。そのバースト効果で消滅/破壊した相手のスピリット1体につき、相手のライフのコア1個を相手のリザーブに置く。

 

「ソウルコアをトラッシュに置き、S(ソウル)バースト発動!」

 

剣聖武竜は一度鞘に剣を収めたかと思うと構え始め、それと同時にソウルコアを自身の力でトラッシュへと送ると、ハルヤの伏せていたバーストカードが弾け飛ぶ。

 

S(ソウル)バースト! 秘剣二天一龍!」

 

【秘剣二天一龍】4(2)赤、マジック。

S(ソウル)バースト:自分のライフ減少時】

BP5000以下の相手のスピリット2体を破壊する。この効果でスピリット2体を破壊したとき、自分はデッキから1枚ドローする。その後コストを支払う事で、このカードのメイン効果を発揮する。

『メイン効果』自分はデッキから2枚ドローする。

 

「バースト効果により、オウギエンショー! 並びに丁騎士シュバリエを破壊!」

「なっ!!」

 

弾け飛んだカードを手に取り、発動するカード。そのマジックの発動同時にミツルギドラゴンは一瞬で飛び出すとオウギエンショーとシュバリエの二体を纏めて剣を引き抜き一閃。あまりに速く繰り出される抜刀術に二体のスピリットはやられたと実感する前に倒れ、破壊されてしまう。

 

『ザック選手、これでブロッカーは全滅!! しかしこれだけでは────』

『いえ、まだです!』

『!』

 

神子の言葉通り、二体のスピリットを破壊したミツルギドラゴンはなおも止まらない、そのままゲイルフェニックスを一瞬ですり抜け、ザックの前へと立つ。

 

「ミツルギドラゴンの効果、アタック時に発動させたバーストで相手のスピリットを破壊したとき、そのスピリット1体につき、相手のライフを破壊する!」

「何だと!?」

「よってライフ2つ破壊させてもらうよ!!」

 

そのまま連続で剣をバリアへと振り下し、バリアをいとも簡単に両断してしまう。

 

「うあっ!!」

 

[ザックside]

[ライフ]4→2。

[リザーブ]1個→3個。

 

「さらにミツルギドラゴンのメインアタック!!」

「ライフで受けるしかねぇ……ッ!!」

 

再度繰り出されるミツルギドラゴンの一撃。わずか一体のスピリットに3つものライフが一気に破壊されてしまう。

 

[ザックside]

[ライフ]2→1。

[リザーブ]3個→4個。

 

「これで決めるよ! リューマンクロウでラストアタック!!」

「まさか、このターンでライフを全部削られるなんて……!!」

 

もうザックに防ぐ術はない。繰り出されるリューマンクロウの一撃が展開されたバリアへと炸裂し、最後のライフを砕く。

 

「うわああああっ!!」

 

[ザックside]

[ライフ]1→0[Lose]

 

 

 

 

『決着ッ!! ハルヤ選手、絶体絶命と思われた状況の中、見事に逆転を飾った!!』

『彼の留まる事を知りませんね、これはますますこの先が楽しみです』

『以上本日のバトルお届けいたしました。皆さま、また次回!!』

 

決着したバトルに興奮冷めやらぬ様子で語る紅葉達。一方でバトルを傍観していた雷矢もその結果に満足した様子だった。

 

「(やっぱ強いなハルヤは。またいつか、俺も挑戦したいもんだ)」

 

デッキを持ちながら静かに自分の想いを囁きながら、雷矢も神子達と同じくその場から立ち去って行った。

 

「あーぁ畜生!! 勝てると思ったのに!!」

 

一方で決着したバトルにザックは悔しそうに敗北に対して不服の様子。ハルヤはその様子に苦笑いしながらも、ザックに寄り添い手を差し伸べる。

 

「!」

「えっと、バトルは僕の勝ちだよね。約束通り、チームメイトになってくれる?」

「むー……。」

 

素直に受け入れがたいのか頬を膨らませながら考え込むようにするザックだったが、ハルヤの表情に根負けたのか、「はぁー仕方ねぇな」と観念したように息を零す。

 

「まっ、お前も大事キースピリットかけて俺にバトル挑んだんだし、条件呑まないと筋が通らねぇよな」

「それじゃあ……!」

「あぁ、チームメイトでも何でもなってやるよ。よろしくな、リーダー!」

「ハルヤでいいよ。今日からよろしくね、ザック!」

 

ハルヤの手に取り、メンバーとなる事を承諾するザック。チーム創設に向けて、これが始めの第一歩となるのであった。




第7話、遅くなりましたが何とか無事更新できました。
今回からは新章スタートとなりますので、その景気づけとして最新カードのゲイルフェニックスをど派手に登場してもらいました!! 新効果を早速書くことが出来てすごくうれしい限りです。

ゲイルフェニックス、本当強いですよね。コノハガニンとかあれば無限アタックできるし、恐ろしすぎる( ;∀;)←

そしてハルヤの新キースピリット、ミツルギドラゴンの登場! ミツルギドラゴンアニメでは未登場だったので、書く事ができてうれしいです。「剣使」の系統を持ってたので、リューマンゴッドソードと相性がいい事に気づき、新キースピリットと採用しました。本当はゲイルフェニックスとバトルさせようかなと思ってたのですが、さすがにどちらかを破壊させるのは気が引けたのでちょっと断念しました(;´・ω・)

今回はゲイルフェニックス使いのザックが新しくハルヤの仲間として加わりました。彼の性格の明るく、現金な性格のカードコレクターだと思い下さい(笑)


相変わらずの駄文ですが、それでも読んでくれた方には本当に頭が上がらないです。今後とも何卒よろしくお願いします!


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No08.気取り屋のガンマンバトラー?

・以下注意
誤字、プレイミスありかも。
バトル表記が人によっては分かりずらいかも。

それでも大丈夫という方はどうか温かい目で見てもらえると幸いです。発見したミスやバトル表記などのご指摘ご気軽に、お待ちしております。






前回、ザックとのバトルを制したハルヤ。苦戦を強いられながらも新たなキースピリット、ミツルギドラゴンで見事勝利を収め、バトルを経てザックもハルヤの実力を認め、チームメンバーとなる事を決意、だったのだが……。

 

「チームメンバーが俺で一人目ってマジか!?」

「う、うん」

 

とある広場で人目に憚らず驚いたように声を上げるザックに、ハルヤは気まずいながらも頷き、ハルヤの返答に思わずザックは頭を抱えた。

 

「おいおい、そりゃ脱退してから日はまだ浅かったけど、まさかまだ俺が一人目立ったなんて」

「な、なんかごめん」

 

ザックにとっての期待は大きかったらしく、肩を落としながら俯くザックにもうし申し訳なさそうに謝る。

 

「まぁ入るって言ったからにはそりゃ付き合うけどよ、せめて今すぐにでも上位チーム狙えるぐらいだったなら専用スタジアムも夢じゃねぇのに」

 

ザックがそういうには勿論理由がある。現在高天原を始めとする街ではバトルスタジアムが全国のスタジアムやバトスピショップに導入され、多くのバトスピブームとして賑わっている。しかしあまりに人気があり過ぎる為、ほとんどのバトスピショップやフリースタジアム等は連日多くのカードバトラー達での満員状態でバトルスタジアムの利用ができない日も度々だった。

 

しかし、その中でチームランキング20位圏内にランクインしている上位チームは例外として特設スタジアムを設けられ、そのスタジアムはチームでほぼ貸し切り状態。十分すぎるその設備はザックにとっても望ましい環境だった。

 

「はぁー、上位チームは高望みにしても今後メンバー増える事も考えたら集まる場所ぐらいは確保しときたいな」

「あっ、それなら心配ないと思うよ?」

「?」

 

何か宛があるように話すハルヤ。その言葉に疑問を浮かべるザックだったが、そのままハルヤはどこかに向けて移動し始め、ザックも不思議に思いながらも何も聞かずにその後を付いていく。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「おい、ここって?」

 

暫くして辿り着いたのはとある一つのスタジアム。そのスタジアムを見上げながらザックは足を止める。

 

「おい、お前まさかここ利用するつもりなのかよ?」

「うん。そうだけど!?」

「嫌、お前知ってんのかよ? ここって確か────!!」

 

ザックはこの場所に見覚えがあるかのように中へ入る事を躊躇って見せるが、一方でハルヤはまるで躊躇う事無くそのままスタジアムへと入って行き、それに慌てたて引き留めようとハルヤの後に続いてザックも入って行く。

 

『おいお前等!! こんなところに何の用っすか!!』

 

スタジアムの中へ入って早々、二人の姿に気づくとその場で二人に向かって叫ぶ一人の少年の声に、二人も足を止め、水色の髪に丸メガネをかけ、ハルヤ達とあまり背丈の変わらないその少年は二人の行く手を塞ぐように立つ。

 

「お前等、ここがチーム氷帝と知って来たんすか!!」

 

その少年の言う通り、このスタジアムは上位チームの為に設けられた専用スタジアムのうちの一つであり、ザックもまたこのスタジアムがどういう場所なのかを把握していた。

 

「(氷帝って言えば、上位チームの中でもかなり高ランク。確か、チームランキング5位のチームじゃねぇか!!)」

 

レッドドラゴンを上回るチームランキング。氷帝の名はザックやハルヤも当然耳にしたことのある名前であり、だからこそザックはこの場所に来る事を躊躇っていたのだった。

 

「誰かは知らないっすけど、メンバーでもなければ無暗に立ち入りはお断りっすからね!!」

 

チームスタジアムの使用はメンバー以外の使用を禁じていることがチーム一般的な暗黙了解だった。だからこそ相手の対応も当然だろう。しかし、そこへ。

 

『あれ? ハルヤ君?』

 

少年の後ろから顔を出す一人の少女、銀色の髪を束ねたポニーテールの似合うその少女はハルヤを見知っているかのような口振りでその女性のハルヤの除く二人とも驚いたように動揺を隠せなかった。

 

「お、沖田さん!? もしかして知り合いなんですか!?」

 

沖田と呼ばれた女性は少年の言葉に頷き、ハルヤ本人も面識がある様に「どうもです」と一礼を返す。

 

「本当に久々だね、バトル見てるけど大分強くなってたみたいだし、それで? 今日はどうしたの?」

「実は、急なお願い何ですけど、チーム作ろうと思ってその間、メンバーが集まるまでちょっと場所だけでも借りられたらなって」

「はっ!? 何言ってんすか! そんなの駄目に決まってるっす!」

 

ハルヤの要件に少年はすぐさまそれを拒むように否定するが、沖田と呼ばれた女性は「まぁまぁ」と少年を宥める。

 

「ハルヤ君なら私はいつでも大丈夫だよ!!」

「ちょっと沖田さん! そんな勝手に!!」

「分かった。じゃぁ氷牙さんに話し通すから、それなら文句ないでしょ?」

 

それならと沖田の提案に少年は頷くと、その女性は氷牙と呼ぶ男性の名前をスタジアム後方の観客席に向けて叫ぶ。

 

『ふあ~~……何だよ……何だよ呼びやがって?』

 

観客席から大きく欠伸しながら起き上がる一人の少年、眠いように目を擦りながら沖田達の方を見る。

 

「何だぁー……? ハルヤまでいんのか? 随分久々だな」

「氷牙さん、お久しぶりです」

「おぉー……久々」

 

その男性もハルヤと面識がるように挨拶を交わすが、まだ眠気があるように欠伸交じりの声での返答に「相変わらずですね」と苦笑いするようにつぶやいた。

 

「今日はまだ昼までしか寝てねぇから眠いのよ」

「(昼まで寝りゃ上等だろ?)」

 

氷牙と呼ばれた男の言葉にザックは心の中で突っ込みを入れつつ、「それで何の用だよ?」という氷牙の質問に沖田が口添えするように「ハルヤさん達にもこのスタジアム使わせてあげていいかどうかです」と答え、氷牙はその言葉に面倒くさそうに「別にいいじゃね?」と即答した。

 

「ちょっとリーダー!! そりゃないでしょ!?」

 

あまりに簡単に用件を承諾する氷牙に慌てたように声を荒げる少年。動揺しながら「リーダー」と叫びその言葉は氷牙という男がこのチームのリーダーであることを示し、彼こそチーム氷帝のリーダー、獅戸氷牙であり、ザックはそれに驚いたように反応を示し、一方で少年の言葉に対し氷牙はなおも面倒臭い様子で。

 

「別に勝ち込みに来たんじゃねぇんだからいいじゃねぇか、まぁどうせ好きに使えよ。俺は寝られりゃいいからよー……。つ~訳だ、俺は寝る。お休み」

 

再び観客席で横になってその場に眠る氷牙に少年は納得が行かない事を表情に現しながらも地団太を踏みその場から立ち去っていく。

 

「色々騒がしくてごめんね。ともかくこれで遠慮せずに使ってよね」

「本当にすみません、沖田さん」

「うん。大丈夫だよ? 困ったときはお互い様だしね。それじゃぁ私はこれで!」

 

「また後でね!」と手を振りながら彼女はその場を後にし、状況の流れに対し、ザックは未だについていけない様子だった。

 

「ハルヤどういう事なんだよ! 何でお前がチーム氷帝のメンバーやチームリーダーと面識があるんだ!?」

「あー、沖田さん。この氷帝の副リーダーなんだけど、前にチーム間じゃなくて個人的バトルしたことがあってそれをきっかけに知り合ったんだ」

 

「氷牙さんとは沖田さんを通して知り合ったよ」と続けながら答えるハルヤにザックは「案外お前って顔広かったんだな」と意外そうに呟いた。

 

「それにしても綺麗な人だったな、あんな人と知り合えるなんて正直羨ましいな」

「う、うん。そうだね」

「もしかして好きな人だったり?」

 

一瞬言葉を詰まらせるハルヤの様子にザックは何かを感じたように尋ねる質問にハルヤは顔を真っ赤にして「そ、そんなんじゃないよ!!」と慌てたように否定する。

 

「(コイツ分かり易いな)」

「もうともかく! 仮だけど場所も確保できたし! 早速メンバー集め行くよ?」

「あー、それなんだけど折角場所確保できたんだからちょっとデッキ調整したいな」

「デッキ調整か、確かにそれも必要だよね」

「お前もリーダーなんだからデッキ強化ぐらい常にしとけよ、これとか余ってるし、やるよ!」

 

カードファイルから1枚のカードを取り出すとそれをハルヤに手渡す。

 

「いいの!?」

「うん、まぁそれ3枚以上持ってるしな。他にも必要なカードがあったらショップで見てくればいいと思うし」

「そうだねメンバー探しのついでにカードも見てくるよ。」

 

「カードありがとう!」と続けながら、ザックに見送られその場を後にした。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

スタジアムを出て暫く、道を歩いているとそこへ泣いている一人の小さな子供の姿があり、すぐに「どうしたの?」と尋ねるとその子供は目の前にある木を指指す。

 

「うっ……僕の、カード。風で飛ばされて木に引っ掛っかちゃった!」

 

その子供の言う通り指指す先には一枚のカードが引っ掛かっており、泣いている子供を放っておけず、何とかしなくてはと思うもののハルヤ自身も背は低く、割と高い位置にあるその場所に少し困った様子だった。

 

「(高いけど、攀じ登るしかないか)」

 

上を見上げながら考え込むハルヤだったが、そこへ。

 

『お困りか? ヘルプならしてやれるぜ?』

「!?」

 

振り返ると、そこにはハットを被り、ベストをきたその格好はまるで西部劇に出てくるようなガンマンのような格好の少年、ハルヤよりも背の高いその少年は状況を把握すると、そのまま木に軽々と登って行き、カードを手に取ると持ち主の元へと投げ、カードを受け取ると泣き声を止め、嬉しそうに「ありがとう!」とお礼を伝えるとその場を立ち去って行った。

 

「あの僕からもありがとうございます!」

「いいって事よ、俺は当然のことをしたまで!!」

 

木に腰掛けながらハットを掴んで気取る少年。若干その様子に返す言葉が見当たらないように苦笑い。

 

「…………」

「? どうしたんですか?」

 

カードを取り終えたその少年だったが、一向に木から降りようとはせずその様子を不審に思ったのか尋ねるハルヤだったが、少年は下を見下ろし、その表情を引きつらせていた。

 

「そ、その」

「?」

「た、高い所怖い!!」

「えぇっ!?」

 

震えるように木にしがみ付く少年、その言動から高所恐怖症らしく、「どうにかして降りられませんか?」と尋ねるハルヤに「無理!」と即答した。

 

「うーん、それじゃぁ僕が受け止めますから飛び降りて!」

「だ、大丈夫なのか?」

「何とかしてみます。一、二、三で飛び降りてください!」

「お、おぉ!!」

「行きますよ! 一!」

「はい!!」

「えっ!?」

 

ハルヤの言葉に返事を返した瞬間、その少年は目を瞑ったまま飛び降り始め、次の瞬間、ドンと大きな音を立てながらハルヤはその少年の下敷きにされた。

 

「痛たたたた、タイミングぐらいちゃんとしてくださいよ!」

「悪い、マッハで降りたくてつい!!」 

 

慌ててハルヤの上から退きながら「少しでも高い所にいたくなかったんだ!」と両手を合わせて平謝りする少年。

 

「高所恐怖症なら何で上ったんですか」

「上るのは良いけど、高い所から降りる時はどうしてもな。さっきの事を解決する事しか考えてなくて、解決した後は考えてなかった」

 

苦笑いしながら語る少年、考えるよりも真っ先に行動するタイプのようで、やや変わり者だとは思いつつ、根は優しいらしい。

 

「礼を言わせてもらうぜ。一応ネームを聞いときたいんだけど?」

「名前ですか? 輝来ハルヤって言います」

「オーケー、ハルヤだな。俺はキッド、フルネームでキッド・ラルド。よろしくな!」

「? 珍しい名前ですね」

「育ちがアメリカだからな。アメリカネームよ」

「そうなんですか!?」

 

「住んでたのは物心つくまでだけどな」と親し気に会話を交わす中、ふとハルヤの腰に差してあるデッキケースが視界に映る。

 

「それバトスピだろ? カードバトラー?」

「えっ? そうだけどもしかしてキッドも?」

「おぉ。それなりに強いと思うぜ」

「へぇー、もしかしてチームとか入ってたりするの?」

「? チーム、何だそれ?」

「えっ? 知らない?」

 

まだ最近の事情を把握していないのか頷きながら答えるキッドに対し、ハルヤはチームってはね」と前に光達に教えてもらった事の受け売りをキッドに伝え、話を聞き終えると興味深そうに反応を示していた。

 

「へぇー、チームってのが随分ポピュラーになってんだな!」

「ねぇ、キッドも良かったらチームに入らない!!」

「じゃあもしかしてお前もチームを作ってたりするのか?」 

「うん、と言ってもまだメンバーが足りてなくてまだできてはないんだけど、良かったらキッドもメンバーに加わってほしいなって!」

「成程な。いいぜ、興味あるし、ぜひ入りたい!」

「それじゃぁ!!」

 

「ただし」と言葉を紡ぎながら、キッドはデッキを構えながら続けて行く。

 

「仲間になるって事なら生半可な実力じゃアウトだろ? まずはバトルでテストしようぜ、お前にとっては俺が必要な実力を持ってるか、逆に俺はお前が俺の力を貸すに値する実力か、お互いをテストする為にバトルしようぜ!」

「そういう事か、いいよ! バトルを挑まれたからには受けて立つまでだよ! バトルはこの先のスタジアムでどう?」

「オーケー、お前の実力、存分にチェックさせてもらうぜ?」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

『さぁさぁさぁ本日もやって参りまいりました!! バトスピチャンネルオンライン、通称BCO!! 本日はチーム氷帝スタジアムより中継しております! バトル実況担当は犬神紅葉でお送りします!』

 

舞台は変わって氷帝のチームスタジアムに戻り、バトルフィールドに構えるハルヤとキッドに何時の間にか紅葉や神子達も定位置で観客席を設けており、ザックもその隣に腰掛けながら、紅葉達の姿に「お前等どこでも現れるよな」と呟いた。

 

『今回対戦するのはBCOで最も話題なカードバトラー! 輝来ハルヤ選手!! 対するはこちらは公式記録はありませんが、対戦名簿にはキッド選手とありますが、情報については解説の神子さん! お願いします!」

『はいでは私が把握している情報をお伝えしましょう、キッド選手。アメリカからやって来たカードバトラーのようですね!』

『これはビックリ!! アメリカバトラーですか!?』

『とは言っても何年か前から日本に越してきたみたいですね。まだ日本に来てチーム所属は無く、公式記録はありませんが、個人記録は日の浅い内から目を張るものがありますよ! 対戦した事のあるバトラーによると、『早撃ちのキッド』の名で知られているとか』

『成程見た目通りガンマンスタイルと言う訳ですか!! どういうバトルになるのかこれは注目したいです!』

『えぇ、今日も最後まで目が離せませんね』

 

淡々と実況解説を語り、神子達の言葉にこれから行われる二人のバトルに注目が集まる。一方に当の本人達はデッキを構え、準備を進み終えて行く。

 

「本気で行かせてもらうからね!」

「そのつもりで来い! 俺も全力、マックスでやるからよ!!」

『さぁそれでは互いにいつものコールお願いします!』

「「ゲートオープン! 界放ッ!!」」

 

互いに開始の言葉を叫び、バトルの幕が開き、ハルヤのターンからのスタートとなる。

 

 

 

 

[01ターン、ハルヤside]

[スタートステップ]

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「メインステップ! リューマンフェニックを召喚!」

 

[リザーブ]4個→0個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→4枚。

 

「これでターンエンド」

 

 

 

 

[02ターン、キッドside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「メインステップ、カグヅチドラグーンを召喚!」

 

[リザーブ]5個→0個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]5枚→4枚。

 

【カグヅチドラグーン】4(2)赤、スピリット、古竜

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(3)BP6000。

Lv.1、Lv.2『このスピリットのアタック時』

デッキから1枚ドローする。

Lv.2【激突】『このスピリットのアタック時』

相手は可能ならば必ずブロックする。

 

[フィールド]カグヅチドラグーンLv.1((S1)BP3000。

 

「ターンエンド」

 

 

 

 

[03ターン、ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]1個→4個。

 

「メインステップ、リューマンインフェニティを召喚!」

 

[リザーブ]4個→1個。

[トラッシュ]0個→2個。

[手札]5枚→4枚。

[フィールド]リューマンフェニックLv.3((S1))BP6000、リューマンインフェニティLv.1(1)BP3000。

 

 

「アタックステップ! リューマンフェニックでアタック! アタック時効果発揮で1枚ドロー!」

 

[手札]4枚→5枚。

 

「ライフで受ける!」

 

全速力で飛び出すと、そのまま真っ直ぐバリアに突進し、激突による衝撃がライフを破壊する。

 

[キッドside]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]0個→1個。

 

「続けるよ! さらにリューマンインフェニティでアタック! アタック時効果でさらに1枚ドロー!」

 

[手札]5枚→6枚。

 

「それもライフで貰う!」

 

今度はリューマンインフェニティによる拳がバリアへと叩きこまれ、さらにライフが破壊される。

 

「ッ!!」

 

[キッドside]

[ライフ]4→3。

[リザーブ]1個→2個。

 

「うん、さすがにやるなぁ。けどまだまだだぜ?」

『おっとキッド選手、相手の先制攻撃を許したものの俄然まだまだ強気だ!!』

『彼にとってはライフ二つ失ったぐらいどうという事は無いみたいですね。彼もやはり実力者という事でしょうか』

『さぁハルヤ選手どうする?』

 

相手に様に当然ハルヤも警戒しているが、これ以上の攻撃の手段はなく、「ターンエンド」とコールした。

 

 

 

 

[04ターン.キッドside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]2個→3個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]3個→7個。

 

「メインステップ! カグヅチドラグーンをLv.2にアップ。さらにカウスワイバーンをLv.2で召喚!」

 

[リザーブ]7個→0個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→4枚。

 

【星弓竜カウスワイバーン】4(2)赤、スピリット、星竜。

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(2)BP4000、Lv.3(4)BP5000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『このスピリットの召喚時』

相手のBP3000以下の相手のスピリット1体を破壊する。

Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

自分のアルティメットがいる時、BP5000以下の相手のスピリット1体を破壊する。

 

[フィールド]カグヅチドラグーンLv.2(3)BP60000

 

「召喚時効果発揮! BP3000以下の相手スピリットを破壊! ターゲット、リューマンインフェニティ!」

「!!」

 

カウスワイバーンは吠えながら、口を開けて炎の矢をリューマンインフェニティに向けて撃ち出すと、炎の矢に貫かれリューマンインフェニティは破壊される。

 

「さぁさっきのリベンジ! カグヅチドラグーンでアタック! アタック時効果で、1ドロー!」

「ライフで受けるよ!」

 

カグヅチドラグーンはハルヤへと至近距離まで迫って行き、バリアが展開されるとそのまま至近距離からの火炎放射を吐き付け、バリアを焼き尽くしライフを破壊する。

 

[ハルヤside]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]2個→3個。

 

「ネクスト! カウスワイバーンでさらにアタック!!」

 

さらにカグヅチドラグーンに続いてカウスワイバーンが飛び出すと、そのままバリアに向けて炎の矢を吐き出し、バリアを正確に射貫く。

 

「うあッ!!」

 

[ハルヤside]

[ライフ]4→3。

[リザーブ]3個→4個。

 

『キッド選手もフルアタックでのお返し!! ハルヤ選手のスピリットを破壊しながら同点へと持ち込んだ!!』

『ここまでは両者五分五分。しかし互いの実力差を示すのはここからですよ?』

『と言いますと?』

『バトルが進めば進むほど、その人の本当の実力が現れるという事です』

 

何かを察するように神子の意味深な言葉。その言葉に紅葉や観客達も固唾呑んでバトルの行方を見守る。

 

「俺はこれでターンエンド!」

 

 

 

 

[05ターン、ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

[ドローステップ][手札]6枚→7枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]2個→0個。[リザーブ]5個→7個。

 

「メインステップ! 閃光の如く駆けろ! リューマンライトニングをLv.2で召喚ッ!」

 

[リザーブ]7個→0個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]7枚→6枚。

 

宙に道が掛かり、その道を駆ける竜、リューマンライトニング。そのままフィールドへと降り立ち、大きく唸りを上げる。

 

「さらにバーストセット!」

『ここでバースト来ました!! さぁ一体何を伏せたのか注目が集まります!』

 

[フィールド]リューマンライトニングLv.3(3)BP10000、リューマンフェニックLv.3((S1))BP6000。

 

「アタックステップ! リューマンライトニングでアタック!」

「ライフだ!」

 

出現早々の攻撃指示に即座に駆けだすと、そのまま飛び上がり宙返りからの踵押しをバリアに叩き込み、ライフを砕きこれまで以上の衝撃がキッドを襲う。

 

「ッ!!!」

 

[キッドside]

[ライフ]3→2。

 

「僕はこれでターンエンド」

「……おいおいもう終わりかよ? 俺のライフはまだ残ってんだぜ?」

 

煽る様なキッドの言葉。しかし冷静に場の状況を見渡し、「ターンエンド」と繰り返してターンを終え、ハルヤの様子に「後悔するなよ」と告げた。

 

 

 

 

[06ターン、キッドside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]1個→2個。

[ドローステップ][手札]5枚→6枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]2個→5個。[フィールド]カグヅチドラグーン、星弓竜カウスワイバーン回復。

 

「カグヅチドラグーンとカウスワイバーンの二体をLv.1にダウン。行くぞ、このターンにフィニッシュにしてやる!」

「!!」

 

勝負を決めに掛かるつもりなのか、力強く構える手札の一枚に何かが来ることをその場の全員が直感する。

 

「究極に滾る炎を撃ち放て! アルティメットサジットアポロドラゴンをLv.4でコールだ!!」

 

[リザーブ]8個→0個。

[トラッシュ]0個→5個。

[手札]6枚→5枚。

 

キッドが呼び出したる究極(アルティメット)に進化を果たした射手座の龍、そのカードを呼び出したと同時にフィールドが全体を照らす程の眩い光。そして空を裂き、フィールドへと振り落ちる巨大な弓形の銃。そのまま地面へと落ちて硝煙を巻き上げたかと思うと、硝煙の中一層強い輝きが灯されたかと思うと、硝煙を吹き払い黄金の輝きを放つ究極、アルティメットサジットアポロドラゴンがその姿を見せる。

 

『ここで現れたのは伝説の三龍神の一体、アルティメットサジットアポロドラゴン!! 最強の地位に君臨するアルティメット、威風堂々の登場です!!!』

 

紅葉を始めとする誰もが圧倒的なその姿に驚きを隠せない。ただその場に存在しているだけで圧倒的な威圧感を放ち、アルティメットサジットアポロドラゴンは攻撃を解きを待ち望むかのように銃を掲げながら咆哮を響き渡らせる。

 

「アタックステップだ! アルティメットサジットアポロドラゴン、アタックッ! そしてアタック時効果発揮だ!」

「!」

「ダブルアルティメットトリガー、ロックオン!」

 

両手をまるで銃のようにして構えると、ハルヤのデッキから2枚のカードが弾け飛ぶ。

 

【アルティメットサジットアポロドラゴン】7(3)赤、アルティメット、三龍神/光道。

Lv.3(1)BP12000、Lv.4(3)BP20000、Lv.5(5)BP23000。

WU(ダブルアルティメット)トリガー】Lv.3、Lv.4、Lv.5『このアルティメットのアタック時』

ヒットしたU(アルティメット)トリガー1回につき、BP15000以下の相手のスピリット1体を破壊する。【ダブルヒット】Uトリガーが2回ヒットしたら、さらに、このアルティメットに究極シンボル1つを追加する。

Lv.4、Lv.5『このアルティメットのアタック時』

相手のスピリット1体を指定し、そのスピリットにアタックできる。Uトリガーがヒットしていた時、指定したスピリットを破壊したら、相手のライフのコア1個を相手のリザーブに置く。

 

「コールチェック! コストは幾つだ?」

「「ネオダブルダブルドロー」と「リューマンサージェント」、どちらもコスト4」

「ダブルヒットだぁッ!!」

 

まるでガンマンのように撃ち抜く動作を示しながら叫ぶと、サジットアポロドラゴンは銃を構え、リューマンライトニングとリューマンフェニックの2体に向けて撃ち出すと、銃口から撃ち出された炎の矢は2体を正確に射貫き、2体とも破壊され、爆発四散する。

 

「!!!」

『ハルヤ選手、スピリット全てを失ってしまった!』

『破壊されたことでリューマンライトニングの効果が発揮されますが、果たしてバーストが今の手札にあるのかどうか』

「ッ!!」

 

「新生」、「竜人」を持つスピリットが破壊された時に発動されるリューマンライトニングの効果。それは自身にも適用され、手札にバーストがあれば発動条件を無視して発動することが出来る。しかし、それに対し、ハルヤは手札を見ながらも該当するカードが無いのか、発動を宣言する様は無くそれに勝ちを確信したようにキッドを口角を上げる。

 

「手札にバーストは無いみたいだな、そうなると残るはその伏せてるバーストだけだが、どうする?」

「くっ! ライフで受ける!!」

「ならダブルヒットの効果でダブルシンボルだ! ライフを二つ、クラッシュだ!」

 

ハルヤに対して銃口を向けると、そのまま目にもとまらぬ速さでの早撃ち。無数の矢がバリアへと撃ち込まれ、ライフを一気に破壊する。

 

「うあああッ!」

 

[ハルヤside]

[ライフ]3→1。

[リザーブ]4個→6個。

 

ライフが二つ一気に砕ける衝撃がハルヤを襲う。一気に追い詰められ、衝撃に仰け反ってしまうが、それでもまだ続くバトルに諦めた様子はなく吹き飛ばされそうになる体を必死に踏み止まらせる。

 

「まだ、終わってないよ!!」

「!」

「ライフ減少時でバースト発動! 炎龍刀オニマル真打!!」

「ワット!?」

 

絶体絶命の中で起死回生となる一手。発動されるカードにバトルを見ているザックは真っ先に反応を示し、そのカードこそハルヤに渡したカードだった。

 

【炎龍刀オニマル真打】6(3)、ブレイヴ、剣刃。

Lv.1(1)BP5000。【合体時+5000】

S(ソウル)バースト:自分のライフ減少時】

BP6000以下の相手スピリット全てを破壊する。【起導】でこのバーストが発動していたら、さらに【超装甲】を持つ相手スピリット全てを破壊する。この効果発揮後、このブレイヴカードをコストを支払わずに召喚する。

【合体条件:コスト5以上】

【合体時】『このスピリットのアタック時』

バトル終了時、BP12000以下の相手のスピリット1体を破壊する。

 

「バースト効果発揮! 相手のBP6000以下のスピリット全てを破壊!」

「!!」

 

フィールド全体に突如として燃え盛る炎、アルティメットサジットアポロドラゴンには効いていないようだが、カウスワイバーンとカグヅチドラグーンの2体はその炎に耐え切れないように破壊され、そして相手のスピリットを一気に焼き払い、焼け野原となったフィールドに一本の刀がフィールドへと落ち、地面に大きく突き刺さる。

 

[リザーブ]6個→5個。

[バースト]炎龍刀オニマル真打Lv.1(1)。

 

『ハルヤ選手!! バーストでの反撃!! 自軍のスピリットを失いながらもキッド選手のスピリットを焼き返した!!』

『キッド選手はこれで攻撃を手段を失いましたね』

「ッ!」

 

神子の言う通り、もうザックに残っているのは疲労状態のアルティメットサジットアポロドラゴンのみでこれ以上の攻撃手段は無い。決められなかったことに悔しそうにしながらも止む得ず「ターンエンド」とコールするしかなかった。

 

 

 

 

[07ターン、ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]5個→6個。

[ドローステップ][手札]5枚→6枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]6個→10個。

 

「メインステップ! こっちもキースピリット行くよ!」

 

ハルヤもまたこのターンに待ち望んでいたカードを引けたように口角を上げ、手札の一枚を掲げながら叫ぶ。

 

「天下切り裂く勝利の剣! 太陽の如く燃え上がれ! 剣神無双リューマンゴッドソードを召喚ッ!」

 

[リザーブ]10個→5個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]6枚→5枚。

 

再びフィールドを包むように広がる炎、その炎の中、眼光を輝かす一体の龍の姿。そして手に持つ剣を振るい、そのまま周囲の炎を一気に掻き消し、炎の中より姿を見せるリューマンゴッドソード。

 

「それがお前のキースピリットか!」

 

リューマンゴッドソードの姿はキッドにとっても相手にとって不足はない。何時でも来いと言わんばかりに構えるが、その様子に対しハルヤは「これだけじゃない!」と続けて行く。

 

「さらに炎龍刀オニマル真打をリューマンゴッドソードを合体(ブレイヴ)!」

「!」

 

リューマンゴッドソードは地面に深々と突き刺さった炎龍刀に、手を掛けると、そのまま一気に引き抜き、両手に持った剣と刀を掲げて力強く咆哮を上げる。

 

「もう一体、リューマンファンタジスタを召喚!」

 

コア1個をリザーブに戻し更に呼び出される一体の龍、リューマンファンタジスタ。咆哮するリューマンゴッドソードに続いてリューマンファンタジスタも咆哮を共鳴させる。

 

[リザーブ]6個→0個。

[トラッシュ]4個→9個。

[手札]5枚→4枚。

[フィールド]剣神無双リューマンゴッドソード×炎龍刀オニマル真打Lv.1((S1))BP10000、リューマンファンタジスタLv.1(1)BP5000。

 

「アタックステップ! ステップ開始時にリューマンファンタジスタの効果を発揮! トラッシュにあるコア全てを「竜人」を持つ自分のスピリット、アルティメットに置ける! よって剣神無双リューマンゴッドソードとリューマンファンタジスタの2体をそれぞれLv.3にアップ!!」

 

トラッシュのコア9個全てが一気にハルヤのスピリット達へと移され、レベルを上げた事でさらに咆哮を力強く響かせる。

 

「アメイジング、大型スピリットを出してくれた上にトラッシュのコアまで回収とはやってくれんじゃねぇか!」

「一気に行くよ! リューマンファンタジスタでアタック!!」

 

ハルヤの指示に一気にリューマンファンタジスタはキッドへと飛び出す。

 

『リューマンファンタジスタはダブルシンボルを持つスピリット!! ブロッカーのいないキッド選手、これは勝負あったか!?』

「ノープロブレム、俺だって無策な訳じゃねぇんだよ!!」

「!」

「フラッシュタイミングでマジック! 光翼之太刀! 不足コストはアルティメットサジットアポロドラゴンをLv.1にして確保!」

 

【光翼之太刀】3(2)白、マジック。

『フラッシュ効果』このターンの間、自分のスピリット/アルティメット1体をBP+3000する。その後、そのスピリット/アルティメットは疲労状態でブロックできる。

 

[フィールド]アルティメットサジットアポロドラゴンLv.4(3)BP20000→アルティメットサジットアポロドラゴンLv.3(1)BP12000。

[リザーブ]2個→1個。

[トラッシュ]5個→8個。

 

『何とここで予想外なキッド選手の一手! 白のマジック!!!』 

「マジックの効果だ! アルティメットサジットアポロドラゴンにBP+3000、さらにこのターンの間疲労ブロッカーとなる! リューマンファンタジスタの攻撃をそのままブロックさせるぜ!」

 

[Battle]リューマンファンタジスタLv.3(5)BP11000vsアルティメットサジットアポロドラゴンLv.3(1)BP15000。

 

銃を連射しながらリューマンファンタジスタを撃ち抜いていき、リューマンファンタジスタは放たれた炎の矢を蹴りで弾き飛ばしながら突き進み、そのまま飛び上がると、宙で巨大な火球を作り出し、それをアルティメットサジットアポロドラゴンへと向けて蹴り飛ばす。アルティメットサジットアポロドラゴンはそれに対し、銃を構え、出力を上げるようにエネルギーを溜め、火球が自分の目の前に迫るまでチャージすると、銃をそのまま撃ち出し、放たれた矢は火球を貫き、そのまま止まる事無くリューマンファンタジスタをも撃ち抜くと、撃ち抜かれたリューマンファンタジスタは空中で爆発を起こす。

 

「!!」

「返り討ちだぜ!! これでクライマックスだ! 次の俺のターンで────」

「嫌、悪いけどこのターンで決めるよ!」

「!?」

 

キッドの言葉を遮りながら、さらにハルヤは続けて行く。

 

「合体したリューマンゴッドソードでアタック! アタック時効果で1枚ドロー!!」

 

[手札]4枚→5枚。

 

「往生際が悪いな! 幾らアタックした所でブロックできる!」

「最初から僕はそのつもりだよ!」

「!?」

「リューマンゴッドソードの合体アタック時の効果! このスピリットは相手のスピリットか、アルティメットに指定してアタックできる! よってアルティメットサジットアポロドラゴンに指定アタック!!」

「何! 自滅する気か!」

「嫌、勝つ為だよ! さらにフラッシュタイミングでサンブレイカーを使用!」

「!」

 

【サンブレイカー】5(赤3 極2)赤、マジック。

【トリガーカウンター】

手札にあるこのマジックカードは、相手のUトリガーがヒットしたとき、ヒット効果発揮前に次の効果を使用できる。

・自分はデッキから2枚ドローする。さらにヒットしたカードが赤のカードならガードとする。

『フラッシュ効果』このターンの間、自分の合体スピリット/合体アルティメットがBPを比べ、相手のスピリット/アルティメットを破壊したとき、相手のライフのコア1個を相手のリザーブに置く。

 

[リザーブ]5個→2個

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→4枚。

 

[Battle]剣神無双リューマンゴッドソード×炎龍刀オニマル真打Lv.3((S1)5)BP15000vsアルティメットサジットアポロドラゴンLv.3(1)BP15000。

 

『リューマンゴッドソードでアルティメットサジットアポロドラゴンに指定アタック!? これは自殺行為!! ハルヤ選手、この土壇場でまさかのプレイミスでしょうか?』

『ふふ、果たして本当にそうでしょうか?』

『?』

『勿論見ていれば分かります』

 

バトルではアルティメットサジットアポロドラゴンは今度はリューマンゴッドソードに向けて銃を撃ち出していき、あまりの早撃ちに見ている観客達は捉えきれない程のスピード。しかしリューマンゴッドソードは放たれた矢を正確に見切っているのか、剣と炎龍刀を振るいながら放たれた矢を全て斬り落としながら突き進み続け、それならばとサジットアポロドラゴンは狙いを定め、先程以上の出力を込めた炎の矢を撃ち出す。

 

「決まりだぜ、勝負はこっちの勝ちだな!」

「さっきも言った通り、勝つのは僕だよ! リューマンゴッドソードの合体時効果はまだある!」

「!?」

「アルティメットを指定し、そして指定したアルティメットにブロックされた時、リューマンゴッドソードはさらにBP+15000!」

「15000だと!? って事は!!」

「合計BP30000!! 行っけぇーーッ! リューマンゴッドソード!!」

 

放たれた矢に対し、リューマンゴッドソードは剣と炎龍刀を交差させて真っ向から受け止めると、そのまま力一杯両腕に持つ得物を振り切り、受け止めた矢を正面から斬り払うと、そのままアルティメットサジットアポロとドラゴンへと突き進み、剣で手に持った銃を切り裂き、無防備となった瞬間、さらに炎龍刀での一閃。切り裂かれたアルティメットサジットアポロドラゴンは大爆発を起こす。

 

「サンブレイカーの効果発揮、合体スピリットが相手のスピリット、アルティメットを破壊したのでライフ1つを破壊する!」

 

バトルに勝利したリューマンゴッドソードは追撃するように、一気にキッドへと迫ると展開されたライフに剣と炎龍刀を同時に振り下して破壊する。

 

「ぐあッ!!」

 

[キッドside]

[ライフ]2→1。

[リザーブ]2個→3個。

 

「ゴッドソードのバトル終了時に手札にある「剣使」、「竜人」を持つアルティメットか、スピリット1体を召喚できる! 伝説を受け継ぎし龍! 炎の一撃を時代に刻め! 剣聖武龍ミツルギドラゴンを召喚ッ!」

 

地面より噴き上げる火柱。その火柱の中に一本の剣が落ちて行き、炎の中で剣を手に取る影。炎の中で手に取った剣を振るいて渦巻く炎を掻き消すその影こそ剣聖武竜ミツルギドラゴン。

 

[リザーブ]2個→0個。

[フィールド]剣聖武竜ミツルギドラゴンLv.2(2)BP12000。

 

 

「これで終わりだよ! 剣聖武竜ミツルギドラゴンで、ラストアタックッ!!」

「まさか、ここまでなんて……! ライフで、受ける!!」

 

もう対抗する手段は残ってはいない。ミツルギドラゴンは剣を掲げ、そのままバリアを一刀両断し、最後のライフを破壊する。

 

[キッドside]

[ライフ]1→0[Lose]

 

 

 

 

***

 

 

 

 

『ハルヤ選手、見事大逆転!!! 圧倒的絶望な状況かと思われながら土壇場からの大逆転です!!』

『実に良いバトルでした。今日も目の離せないバトルでしたね』

『えぇその通りです。今日の放送はこれまで! また次回、どうぞBCOをよろしくお願いします!』

 

決着したバトル。一方でバトルを終えるとキッドは負けた事に対して悔しそうにしながらもその白熱した勝負には満足したのか、その表情は笑っていた。

 

「はは、まさかあの状況から逆転されるなんてな、ビッグサプライズだったぜ」

「運良く手札に救われたよ。僕も負けるかもって思ったし」

「俺に勝ったんだからそんな謙遜すんなっての! いいバトルだったぜ!」

「ありがとう。それよりチームの事なんだけど」

「あぁ。正直チームについてはよく分かんねぇけどお前みたいな奴とこれからもバトルできるならチームメイトでも何でもなってやる」

「じゃぁ!!」

「おぉ! 俺もそのチームっての? 入らせてもらうぜ。よろしくなリーダー!」

「うん。ハルヤって呼んでよ! これからよろしくねキッド!」

 

互いに実力を認め、握手を交わす二人。その様子にザックも「ようやく二人目だな」と二人の輪の中に入って行く。

 

「じゃぁまぁチームメイトとしてよろしくな! けど、一応俺がこのチームじゃ先輩だかんな?」

「俺より小さい割には面白いジョークだな」

「はぁ!?」

「まぁ同じチームメイトとしてよろしくだけど、先輩とか後輩と堅苦しいのは抜きでよろしくな!」

「そうだな。そういうのは抜きで……っていい訳あるかコノヤロー!」

「ふ、二人共落ち着いて!」

 

キッドの発言に苛立ったように突っかかるザックに慌てて仲裁に入り、メンバーが増えた事で嬉しさを感じつつも、言い争う二人にため息を零しながら今後の行く先に不安を感じるハルヤだった。




いかがでしたでしょうか?第8話!! 今回新たに仲間に加わったキッド。元海外出身という事で、今までにない風を吹き込んでくれたらなと思っています(笑)

そして昨日遂に炎と風の異魔神が販売されましたね。私も早速昨日発売日にワンボックス買って、ガルデアと炎魔神が当たって歓喜しました!!! 炎魔神まだどのデッキに入れるか悩んでますが、同弾収録のカードに古竜強化がかなり来たので、エクスキャリバスデッキ、環境変化に止む得ず崩してしまったのですがもう一度組みなおして、炎魔神を組み込んでやろうかと思っております!!( `ー´)ノ


エクスキャリバスに炎魔神をブレイヴ!って叫びたい(笑)

公式では十二神皇第2弾の情報も来てましたね【突進】強そう。でもUダゴン臭がするので好きになれそうにないです←
基本リクドウとUダゴンにボコボコにされてすぎて個人的に嫌い2トップになってるんです。どうにかして対抗策が見つかればなと思います。小説、また次回もよろしくお願いします!


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No09.チーム氷帝、眠れる獅子

・以下注意
誤字、プレイミスアリかも。
バトル表記が人によっては分かりずらいかも。

それでも大丈夫という方はどうか温かい目で見てもらえると幸いです。発見したミスやバトル表記などのご指摘気軽にお待ちしております。






「沖田さん今日もお世話になります」

「同じくお世話になります」

「ミートゥ、お世話になります!」

「うん、三人とも今日もよろしくね」

 

昨日と同じくチーム氷帝スタジアム。新たにキッドを加えた三人で、今日もスタジアムを尋ね、ハルヤ達を沖田は快く出迎える。

 

「ハルヤ君達は今日もメンバー探し?」

「え~っと、さすがに今日はちょっと一日デッキ調整に使わてもらえたらなと思って」

 

というのも昨日は結局キッドとの一件でデッキ調整をする暇がなく、昨日ザックから渡されたオニマル真打のカードも唯デッキに入れただけというバランスに不安のある状態なので今はそれを解決したかった。

 

「うん。何でも大丈夫だよ? ハルヤ君達なら遠慮なく使ってくれていいから」

 

にっこりと笑顔で答える沖田にハルヤは表情を赤くしながらも嬉しそうに「ありがとございます」と礼をし、その様子にザックとキッドは面白そうに表情をニヤけさせながら見ていた。

 

「ハルヤ―、顔が赤いぜー?」

「随分ホットな様子だな?」

 

揶揄うように笑う二人に対し、ハルヤは余計に顔を赤くしながら動揺を隠せていない。

 

「ハルヤ君大丈夫!? もしかして風邪!?」

 

だが沖田本人はハルヤのその様子に違う意味での心配して見せ、それには呆気に取られたようにザックとキッドは「えっ?」と顔を見合わせた。

 

「あ、あはは。何でもないです」

「そうだったらいいんだけど? 無理しないでね?」

 

あまりその方面での感情には疎いかのような素の対応。ザックはその様子に沖田本人に対し「案外鈍いんだな」と呆れるように若干呆れ気味に呟く。だが、その一方でハルヤ達の様子に対し、それを快く思わない人物が一人。

 

『ッ!! もう我慢できないッス!!』

 

苛立ったように観客席から鉄格子を握りしめてその様子眺める一人の少年、その少年は以前ハルヤ達がここに来た際をそれを断固として拒もうとした水色の髪に丸眼鏡を掛けたあの時の少年だった。

 

「氷牙さん!! 氷牙さん!!!」

 

その場で声を荒げながら自分達のチームリーダーの名を力一杯叫び、暫くして大きな欠伸をしながら背後の椅子影から起き上がる白髪の少年、チーム氷帝リーダーの獅戸氷牙が顔を出す。

 

「ふぁ~……うるせぇな、人が気持ちよく寝てるときに叫びやがって」

 

眠い目を擦りながら、少年の声に不満の声を零す氷牙だったが、少年はそれにはお構いなく氷牙の姿にすぐさま彼の元へと駆け寄って行く。

 

「氷牙さん!! 俺もう我慢できないっすよ!」

「……むにゃ? 何がだ?」

「アイツ等っすよ!! アイツ等!! あの新しいチームを作るとか言ってるハルヤって奴!」

 

ハルヤ達を示しながら叫ぶ少年だったが、氷牙はそれを面倒な様に「別にいいじゃねぇか」と軽く一蹴。

 

「どうせアイツ等はチームに殴り込みに来たとかそんなんじゃねぇし、場所ぐらい貸してやったっていいじゃねぇかよ」

「そんなの駄目っす!! チームスタジアムを部外者に好き勝手に使われてるなんて他のチームに知られたら何て噂されたものかわかったもんじゃないッス!!」

「別に隙に言わせとけよ、俺は……寝れりゃぁそれでいいんだよ」

 

必死の少年の言葉を氷牙はまるで真剣には扱わず、欠伸をしながらの対応には少年は我慢ならなかった。

 

「そもそも氷牙さんがリーダーとしてしっかりしてくれればオイラも文句ないんすよ!!」

「あぁ? チームの活動なら沖田がしっかりやってくれてるだろうが?」

「沖田さんは優しすぎるからアイツ等にも甘い顔で対応しちゃうんッスよ!! 元々オイラはチーム氷帝の強さを聞いてここに入団を決めたのにリーダーがこれだとガッカリしてるッス!!」

 

溜め込んだ怒りを爆発させるように主張する少年、氷牙はそれに対し「結局何が言いたいんだ?」と尋ねると、その言葉に少年はデッキを強く構える。

 

「バトルしてもらうッス!! いつまでもそんなだらけた態度じゃチームメンバーとして納得出来ないッス!! オイラが勝ったらこのリーダー交代してもらいますからね!」

 

「面倒くせぇな」と言葉を吐き捨てながらも、少年の真剣な表情と熱意には断れない事を悟ったのか、渋々ながらもデッキを取り出し「分かったよ。バトルしてやるよ」と承諾して互いに観客席からスタジアムへと降り、その様子に置き達も気づいたように「どうしたんですか!?」と慌てたように駆けよるが、少年は「止めないでください!」と強く言い放つ。

 

「リーダーとしてこれ以上、オイラは氷牙さんを認められないッス! だからこのバトルに勝って、俺がリーダーになるッス!」

「だとよ? 面倒くせぇんだけどよ、断り切れねぇからバトルする羽目になっちまった」

「そんな……!」

 

何とか平和的に解決できない物かと思うが、既に怒りの溜まる少年にはもう聞く耳は持ち合わせてはいなかった。もはや止める事は敵わない。しかし、沖田それを最初から分かっていたように「やっぱりこうなったか」と呟き、ハルヤ達は沖田のその言葉に「やっぱり?」と疑問を抱く。

 

「あの子とはハルヤ君とザック君は昨日も会ってるよね?」

「はい。でも僕が来てた頃は見てない顔ですよね?」

「うん。あの子の名前は藤丸将君、最近チームに入った子だからね」

 

何を思うのか、将に対し少しだけため息を零して彼女はさらに続ける。

 

「ほら、見ての通りあの子ちょっと気の短い性格でさ。氷牙さんも氷牙さんでいつもあんな調子だから、いつかこうなるんじゃないかって思ってたんだけど」

 

のんびりしすぎる氷牙の様子を見る限りはハルヤやザックも将程ではないにしても、その気持ちは分からないでもなかった。正反対な性格の二人がこうなる事は必然。しかし予測できてたとは言え、いざこうして実際に起きてしまうとやはり心配せずにはいられなかった。

 

「沖田さん、どうするつもりなんですか?」

「残念だけど、もう私じゃ手に負えないよ」

「そんな……!」

「こうなった以上当人同士で解決してもらうしかないよ。でも、結果論だけど、私も氷牙さんのだらけた態度にはちょっとうんざりしてるから、これはいい機会かな?」

 

彼女も彼女で氷牙の様子には改善してほしい気持ちがあるのか、あまり止めようとはせず、ザックとキッドは「それでいいのか?」と疑問に思うが、二人に対し、彼女はどうにかなると何かを確信してる様に「まぁ見てれば分かるよ」と呟いた。

 

一方でこれから始まる氷牙と将のバトルに「面白そうな事になってますね」と何時の間にか神子達3人が沖田たちの後ろから顔を出す。

 

「「「!!?」」」 

「どうも皆さま、ハルヤさん達、それに沖田さんもお邪魔しております」

「ビックリしたぁー。相変わらず神子さん達は突拍子な登場ですね」

 

沖田の言葉に「恐縮です」と礼をしながら答えると、彼女たち三人は何時もの様にの場に実況台を設け始める。

 

『さぁさぁ皆さま今日もこんにちは!! 白熱したバトル提供がモットー! BCOのお時間でございます!!』

 

準備を終えると早速二人の様子を撮影しながら、いつもと変わらず声を大にして紅葉は実況を語り始め、その放送が通じて多くのカードバトラー達は画面上での放送に釘付けとなる。

 

『本日チーム氷帝スタジアムよりお届けしています!! 今回バトルするのは、チームランキング5位! そのチーム氷帝リーダー獅戸氷牙選手と、チームメンバーの藤丸将選手というチーム内同士でのバトル! 実況担当の紅葉、最後までこのバトル行方をお伝えしたいと思います!』

『解説の神子です。私も同じく解説として、このバトルを視聴者の皆様にお伝えしますよ』

『では解説の神子さん。まずは最初に対戦相手のプロフィールをご紹介願いますでしょうか?』

『はい、ではまずは獅戸氷牙さんのプロフィールから、チームランキング5位、氷帝のチームリーダー。その実力は完璧な守りを有し、鉄壁として謳われているそうです』

『はいはい、では対戦相手の方は?』

『藤丸将さん、彼は最近チーム氷帝への入団をしたらしいが、こちらはまだ未知数ですね。しかし挑戦するからにはそれなりの自信がある事でしょう。何が起こるかは分かりませんよ?』

『成程! その点を踏まえて、今から行われるバトルに注目したいです!』

 

期待するかのように注目する中、ようやく二人もバトルの準備を終えたのか、ステージに立ち、それぞれをデッキを構える。

 

『さぁ両者準備整ったようで! 早速コールの程お願いします!!』

「「ゲートオープン! 界放ッ!!」」

 

二人の宣言と共に、バトルの幕が開ける。

 

 

[01ターン.氷牙side]

[スタートステップ]

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「ふぁ~……俺から先行とはかったりぃな」

 

氷牙の先行から開始されるバトル。しかし始まってもなお、依然変わらず気怠いように欠伸を零す氷牙に対し、将は「バトルぐらいちゃんとやってください!」と苛立ち気味に言い放つ。

 

「はいはい、わぁってるっての。メインステップ、ブリッツラクーンをLv.2で召喚」

 

[リザーブ]4個→1個。

[トラッシュ]0個→1個。

[手札]5枚→4枚。

 

【ブリッツラクーン】1(1)白、スピリット、機獣。

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(2)BP6000。

 

[フィールド]ブリッツラクーンLv.2((S(ソウルコア)1)1)BP6000。

 

「あー眠ぃ……。俺はこれでターンエンド」

 

 

 

 

[02ターン.将side]

[スタートステップ]

[コアステップ]4個→5個。

[手札]4枚→5枚。

 

「オイラのターン! シュライクンをLv.2で召喚するっす!」

 

[リザーブ]5個→2個。

[トラッシュ]0個→1個。

[手札]5枚→4枚。

 

【シュライクン】1(1)白、スピリット、機獣/爪鳥。

Lv.1、Lv.2【重装甲:赤】

このスピリットは、相手の赤のスピリット/ブレイヴ/ネクサス/マジックの効果を受けない。

Lv.2

このスピリットの色とシンボルは緑としても扱う。

 

[フィールド]シュライクンLv.2((S1)1)BP3000。

 

「これでターンエンド!」

 

 

 

 

[03ターン.氷牙side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]1個→2個。

[ドローステップ]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]1個→0個。[リザーブ]2個→3個。

 

「俺のターン。何もしない、このままターンエンド」

『おっと!? 氷牙選手、まさかメインステップもアタックステップも何もせずにターンエンド!? これはどういう事だ!?』

『相手の様子見か、それとも無策なのか。はたまた単純に面倒臭いだけなのか』

『え、えぇ~っと、私は単純に面倒臭がってるだけだと思うのですが?』

 

神子の言葉に呆れたように実況を述べる紅葉。一方で氷牙のバトルスタイルに対し将は何かを思うように拳を握りしめる。。

 

「氷牙さん、どこまでアンタはいい加減なんっすか!」

「あぁ? 別にいいだろ? 動かないのは正直楽だし」

「ふざけないでください!! こっちは真剣なんッスよ!」

 

だらけた態度の氷牙に対し、メンバーとして将の怒りは相当なものだった。バトルを見ている沖田も副リーダーとして、将の気持ちは理解できるが、当の本人はなおも変わらず、それにますます苛立ちを見せながら将は自分のターンを迎える。

 

 

 

 

[04ターン.将side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]2個→3個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]1個→0個。[リザーブ]3個→4個。

 

「絶対許せないッス!! すぐにその眠気覚ましてやりますよ! メインステップで、シュライクンをLv.1に戻して、要塞蟲ラルバをLv.2で召喚するッス!」

 

[リザーブ]5個→0個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→4枚。

 

【要塞蟲ラルバ】4(緑2 白1)緑、スピリット、怪虫。

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(2)BP5000。

Lv.1、Lv.2『このスピリットの召喚時』

ボイドからコア1個ずつを、自分の白のスピリット2体に置く。

Lv.2

このスピリットは白のスピリットとしても扱う。

 

「召喚時効果発揮! ボイドからコア1個ずつを自分の白にスピリット2体の上に置く! 要塞蟲ラルバはLv.2で白のスピリットとして扱われる為、シュライクンとラルバ自身の上にコアを追加ッス!」

 

硬い鉄の甲殻を持つスピリット、ラルバ。出現と同時に自らとシュライクンに緑の光を灯すと、自身のシュライクンにコアを齎す。

 

「さらにバーストセット!」

 

[手札]4枚→3枚。

[フィールド]シュライクンLv.2((S1)1)BP3000、要塞蟲ラルバLv.2(3)BP5000。

 

「アタックステップ! 行くッスよ! 幾ら氷牙さんがリーダーだからってもう容赦はしないッスよ!! シュライクンでアタック!」

 

先手を仕掛ける将。シュライクンは攻撃指示に翼を羽ばたかせながら氷牙へと真っ直ぐ向かって行く。

 

「あー……ブリッツラクーンでブロックする」

 

気怠いながらも迫るその姿を薄目で確認してブロックさせると、氷牙の声に頷くようにブリッツラクーンは鳴き声を上げながら迫るシュライクンへと向かって行く。

 

[Battle]シュライクンLv.2((S1)1)BP3000vsブリッツラクーンLv.2((S1)1)BP6000。

 

一気に突っ込むシュライクンに対し、ブリッツラクーンは首元のパーツをまるで襟のように展開すると、展開したパーツを回転させながらそのまま突っ込み、真っ向からぶつかる両者。しかしパワーで勝ったのはブリッツラクーンだったのかその体当たりにシュライクンは空中に跳ね飛ばされ、消滅する。

 

「この瞬間、相手による自分のスピリット破壊でバーストを発動ッス!」

 

自軍のスピリットの損失。しかし将にとってそれは初めから想定内だった。シュライクンの消滅と同時にバーストを発動させ、弾け飛ぶカードを手に取る。

 

「バーストタートル! コイツのバースト効果でブリッツラクーンを手札に戻し、このスピリットを召喚するッスよ!」

 

【バーストタートル】5(2)白、スピリット、甲獣。

Lv.1(1)BP4000、Lv.2(2)BP7000。

【バースト:相手による自分のスピリット破壊後】

相手のスピリット1体を手札に戻す。この効果発揮後、このスピリットカードを召喚する。

Lv.1、Lv.2

お互いのデッキは破棄されない。自分のアルティメットがいる間、さらに、このスピリットは相手のスピリットの効果を受けない。

 

[リザーブ]2個→1個。

[フィールド]要塞蟲ラルバLv.2(3)BP5000→要塞蟲ラルバLv.2(2)BP5000

[バースト]バーストタートルLv.2((S1)1)BP7000。

 

発動されたバーストタートル、その効果によってブリッツラクーンはその場から吹き飛ばされ氷牙の手札へ強制的に送還されると、入れ違いになる様にバーストタートルがフィールドへと飛び出して行く。

 

『おっと! ここで将選手、いきなりバーストだ!!』

 

感心するように神子もバトルに魅入る中、バーストタートルを呼び出すと意気込むように将はさらに続けて行く。

 

「これでもうブロッカーはいないッス! 一気に行くッスよ! 要塞蟲ラルバ、さらにバーストタートルで連続アタックするッス!」

 

ブロッカーは無く、氷牙は防ぐ術がないのか「ライフで受ける」とのんびりした口調で言い放つと、そのままラルバとバーストタートルは自らの硬い体を武器に、勢いよくバリアへと突進すると、氷牙のライフを連続して砕いていく。

 

[氷牙side]

[ライフ]5→3。

[リザーブ]5個→7個。

 

『さぁ一気に攻めた将選手! フルアタックでいきなり二つものライフを削り先制しました!!』

「どうだ見たッスか!! オイラの攻撃!」

 

高らかに実況を語る紅葉に、将自身も自慢げな態度を見せるが、対する氷牙は攻撃受けてもなお「痛ぇ痛ぇ」と棒読みのような台詞で未だ変わらぬ様子だった。

 

「ッ!! まだそんな調子なんスか! いつまでもそんなんじゃ直ぐに終わらせますからね!!」

 

以前怒りを堪え切れず、釘を刺すように言い放ちながら「ターンエンド」とコール。

 

 

 

 

[05ターン.氷牙side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]7個→8個。

[ドローステップ][手札]5枚→6枚。

 

「メインステップ、ブリッツラクーンを再召喚。さらにもう一体、機巧武者シラヌイをLv.2で召喚だ」

 

[リザーブ]8個→0個。

[トラッシュ]0個→5個。

[手札]6枚→4枚。

 

【機巧武者シラヌイ】5(3)白、スピリット、機巧/武装。

Lv.1(1)BP5000、Lv.2(2)BP8000。

Lv.1、Lv.2【超装甲:赤/紫/白】

このスピリットは相手の赤/紫/白のスピリット/アルティメット/ネクサス/マジックの効果を受けない。

Lv.1、Lv.2『相手のアタックステップ』

このスピリットにS(ソウルコア)が置かれている間、このスピリットは疲労状態でブロックできる。

Lv.2『このスピリットのブロック時』

このスピリットをBP+5000する。

 

ブリッツラクーンに続いて新たに現れるスピリット、機巧武者の名の通り、鋼鉄の体に腰に差した太刀を掲げながら、フィールドへと降り立つ。

 

[フィールド]機巧武者シラヌイLv.2((S1)1)BP8000、ブリッツラクーンLv.1(1)BP3000。

 

「こ、ここでシラヌイっすか!?」

 

強力なスピリットであるシラヌイの出現には思わず将も一瞬怯んでしまう。だが、その一方で氷牙はスピリットを召喚してもなおあまり気乗りしないように眠そうな素振りを見せる。

 

「ふぁ~……今度も何もしねぇ。ターンエンド」

「なっ!? また動かないんすか!?」

 

攻める気がないのか一向に動かない氷牙。実況の神子や紅葉もその様子に不審に思うが、氷牙は全く気にする様子はなく、そのまま自分のターンを終えてしまう。

 

 

 

 

[06ターン.将side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]1個→2個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]2個→5個。[フィールド]バーストタートル、要塞蟲ラルバ回復。

 

「メインステップ! 一気に行くッスよ! オイラのキースピリット!」

 

手札に手を掛ける一枚に手を掛けると、力強く叫ぶ。

 

「純白の龍、絶対零度の刃を振るえッ! 爆氷の覇王ロードドラゴングレイザーを召喚ッス!!」

 

[リザーブ]5個→0個。

[フィールド]バーストタートルLv.2((S1)1)BP7000→バーストタートルLv.1(1)BP4000、要塞蟲ラルバLv.2(2)BP5000→要塞蟲ラルバLv.1(1)BP3000。

[トラッシュ]0個→6個。

 

不足コスト確保の為、ラルバとバーストタートルはレベルダウンに項垂れるも、呼び出されるキースピリット。猛吹雪と共に、巨大な氷の柱がフィールドに突如隆起したかと思うと、氷の中に眠る一体の龍の姿。氷の中で目を覚ますように眼光を輝かせると、氷を砕きロードドラゴングレイザーが現れ、刃を天に掲げて吠える。

 

[フィールド]爆氷の覇王ロードドラゴングレイザーLv.1((S1))BP6000、バーストタートルLv.1(1)BP4000、要塞蟲ラルバLv.1(1)BP3000。

 

『ここで将選手のキースピリット来たーーッ!! 爆氷の覇王ロードドラゴングレイザーです!!』

 

Xレア級のスピリットの登場に観客の歓声も大きく湧き起こる。一気に攻めようと「アタックステップ!」と叫ぶ将だったが、氷牙の場の様子に攻撃の手を躊躇ってしまう。

 

「ッ!!」

『おっと将選手どうしたんでしょう? 動きません!』

『恐らく動かないのではなく、動けないんでしょう?』

 

将の攻撃を躊躇う理由は神子も理解していた原因を示すようにシラヌイを指さしてさらに彼女は続けて行く。

 

『シラヌイはブロック時、BP+5000。さらにソウルコアが乗っていれば、疲労状態でブロックが可能となります』

『それってつまり?』

『えぇ、どんなに攻撃を仕掛けてもシラヌイ一体が場にいるだけで全ての攻撃をブロックできるようになります!』

『何と!! これは辛い!! 氷牙選手、まさに鉄壁の防御だ!!』

 

見直すように語る紅葉に対し、将は攻め手がないのか悔しそうに「ターンエンド」とコールするしかなかった。

 

 

 

 

[07ターン.氷牙side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]5個→0個。[リザーブ]1個→6個。

 

「あー……メインステップ、ブリッツラクーンをLv.2にアップ。さらに手札からデスヘイズをシラヌイに直接合体させるぞ?」

「!?」

 

[リザーブ]6個→3個。

[トラッシュ]0個→2個。

[手札]4枚→3枚。

 

【デスヘイズ】4(紫2 白2)紫、ブレイヴ、魔影。

Lv.1(1)BP4000。【合体時+4000】

Lv.1『このブレイヴの召喚時』

自分のスピリットを好きなだけ破壊し、破壊したスピリット1体につき、自分はデッキから1枚ドローする。ただし、『このスピリットの破壊時』効果は発揮されない。

【合体条件:コスト4以上】

【合体時】『このスピリットの破壊時』

自分の手札1枚を破棄することで、このスピリットは疲労状態で自分のフィールドに戻る。

 

鎌を持つその姿はまるで死神、ブレイヴであるデスヘイズが出現すると、そのまま手に持った鎌を空中に放り投げると、シラヌイに取り付き、シラヌイの青白い鎧はデスヘイズの色を現す紫色に染まり、手に持った太刀を投げ捨てると代わりにデスヘイズの投げた鎌を手に取り、合体スピリットとなる。

 

『氷牙選手!! ここでブレイヴであるデスヘイズとシラヌイを合体(ブレイヴ)させました!!!』

『ソウルコアの力で疲労状態でブロックできるシラヌイ。そしてデスヘイズは合体時、破壊時に手札一枚を破棄することで疲労状態で場に残ります!』

『ではつまり、疲労状態でブロックできる上に、シラヌイはバトルに負けても手札がある限り場に留まり続けるという事ですか!?』

『その通りです』

『!!?』

 

牙城の如く気づき上げられた防御。気怠そうにしながらもチームリーダーとしてやはり氷牙の実力は本物なのだろう。場に揃えたデスヘイズとシラヌイによる壁はまさに鉄壁だった。

 

「ふぁー……最後にバーストセット。俺はこれでターンエンド」

 

[手札]4枚→3枚。

[フィールド]機巧武者シラヌイ×デスヘイズLv.2((S1)1)BP12000、ブリッツラクーンLv.2(2)BP6000。

 

「ッ! ここまでしときながらまだ攻めないつもりッスか!!」

 

だが、ここまで完璧な防御を築き上げてもなお一向に動こうとはしない。今なおのんびりとした氷牙のバトルに対し、積もり積もった将の怒りは我慢の限界だった。

 

 

 

 

 

[08ターン.将side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]6個→0個。[リザーブ]1個→7個。

 

「氷牙さん、アンタにはとことん呆れたッス!! そこまで完璧な防御を展開しときながら、反対に一向に攻めない!! そんなだらけたバトルにはもううんざりッス!! いつまでもそんな調子なら一気に終わらせてもらいますからね!!」

 

氷牙の場に対し、攻め手を手にしたのか、苛立つ感情を剥き出し彼は「メインステップ!」と荒々しく手札のカードを手を掛ける。

 

「バーストセット! さらにラルバをLv.2に、ロードドラゴングレイザーをLv.3にアップして、手札からコテツティーガーを直接合体させるッス!!」

 

[リザーブ]7個→1個。

[トラッシュ]0個→2個。

[手札]4枚→2枚。

 

【コテツティーガー】5(緑2 白2)、ブレイヴ、剣獣/機獣。

Lv.1(1)BP5000。【合体時+5000】

フラッシュ【神速】

手札にあるこのブレイヴカードは。召喚コストの支払いと上に置くコアをリザーブから使用することで召喚できる。

【合体条件:コスト5以上】

【合体時】『このスピリットのバトル時』

BPを比べ、相手のスピリットだけを破壊したとき、相手のライフのコア1個を相手のリザーブに置く。

 

将も負けじと手札からデスヘイズと同じブレイヴを呼び出すと、林の中を駆け抜け、フィールドへと飛び出す一頭の虎、ブレイヴであるコテツティーガーその姿を見せ、背に背負った太刀と自らを分離し、自らをブレイヴパーツへと変形させると、コテツティーガーのパーツをロードドラゴングレイザーは右腕へと取り付け、黒腕となったその腕で太刀、名刀────虎徹を手に取り合体スピリットとなる。

 

[フィールド]爆氷の覇王ロードドラゴングレイザー×コテツティーガーLv.3((S1)3)BP18000、バーストタートルLv.1(1)BP4000、要塞蟲ラルバLv.2(2)BP5000。

 

『おっと将選手もここでまたブレイヴを呼び出した!!!』

 

対抗するように将もまた合体スピリットを呼び出すと、ッ観客の歓声先程以上にヒートアップ、シラヌイは鎌を、ロードドラゴングレイザーは太刀をそれぞれ構えながら睨み合う。

 

「アタックステップッス!! これで決めますよ! 合体(ブレイヴ)スピリットで合体(ブレイヴ)アタック!!」

 

将の指示をずっと待ち望んでいたかのように攻撃宣言に大きく咆哮を響かせると、太刀を両腕に構え、そのまま一気に氷牙へと突っ込む。

 

「フラッシュタイミングでさらにリカバリーラッシュを使用するッス!」

「!」

 

[リザーブ]1個→0個。

[トラッシュ]2個→3個。

[手札]2枚→1枚。

 

【リカバリーラッシュ】4(3)白、マジック。

自分の白のスピリット全てを回復させる。このターンの間、この効果で回復した、コスト10以下のスピリットはアタックできない。

【連鎖:条件《緑》】

(自分の緑シンボルがあるとき、下の効果を続けて発揮する)

[緑]:相手は、相手スピリット2体を疲労させる。

 

「マジックの効果発揮! 自分の白のスピリット全てを回復! さらに要塞蟲ラルバの緑シンボルを条件に【連鎖(ラッシュ)】発揮! スピリット2体を疲労させてもらいますよ!」

「あー、だりぃな。ブリッツラクーンは疲労、シラヌイは【超装甲:白】の効果で防ぐぞ?」

 

自らの身に纏う白の光と、太刀に灯る緑の光。ロードドラゴングレイザーは吠えながら太刀に灯った光を斬撃波としてシラヌイとブリッツラクーンへと飛ばし、斬撃波を受けブリッツラクーンは地面に凭れ込み疲労してしまうが、シラヌイだけはその攻撃に対して、超装甲による耐性を持つ。手に持つ鎌を大きく振り下し、斬撃波を相殺し、打ち消してしまう。

 

「関係ないッス!! コテツティーガーがあれば、もう防御は怖くないッス!」

 

『現在合体している機巧武者シラヌイのBPは12000、ブロック時効果によってさらに17000にまで上昇しますが、対するコテツティーガーと合体したロードドラゴングレイザーは18000。BPを上回ってますね』

『しかしお姉ちゃん……失礼。神子さん! デスヘイズと合体していることによって、シラヌイは先程言っていたように破壊されても場に残れるんでしょ?』

 

ならばどんなに攻撃をしても防げるのではと疑問に紅葉だったが、「確かにその通りですが」と、神子は疑問に答えるように続けて行く。

 

『勿論それは将さんも把握しています。だから彼はコテツティーガーをブレイヴさせたのでしょうね』

『と言いますと?』

『コテツティーガーはバトル時、BPを比べて相手スピリットを破壊すればライフ1つを破壊する効果を持ちます。それは例え、シラヌイがデスヘイズの効果によって復活してもね』

『!』

 

神子達の言葉に「その通り!」と同意して見せる。

 

「合体スピリットの攻撃はブロックしても確実にライフを貫通するッス! たとえシラヌイが何度も復活する疲労ブロッカーでも怖くないっすよ!!」

「……あー、ライフで受ける」

 

ブロックしてもバトルに負ければライフを削られてしまうのだからシラヌイの防御は通用しない。そのままライフで受け、ロードドラゴンの太刀による一閃がバリアへと振り下され、破壊される。

 

「ッ!」

 

[氷牙side]

[ライフ]3→2。

[リザーブ]3個→4個。

 

さすがにその攻撃には効いたのか、氷牙も少しだけ仰け反り、それを見ながら将は勝ち誇った様子だった。

 

「合体したロードドラゴングレイザーのコストは合計13! よってリカバリーラッシュで回復後の攻撃が可能! もう一度合体したロードドラゴングレイザーでアタック! さらにフラッシュタイミングでリカバリーラッシュをもう一枚使用! 不足コストはラルバから確保するッス!!」

 

[フィールド]要塞蟲ラルバLv.2(2)BP5000→要塞蟲ラルバLv.1(1)BP3000。

[トラッシュ]3個→4個。

[手札]1枚→0枚。

 

『何と将選手!! もう一枚リカバリーラッシュを持っていた!?』

『このターンで確実に決める気なのでしょう! ロードドラゴングレイザーの攻撃が全て決まれば、将選手の勝ちは必須ですよ?』

『何という事だ! これはもう勝負あったか!?』

 

突っ込むロードドラゴングレイザーの姿にもはや勝者が誰か予想がつき始めた。将もこのターンで決着となる事を信じて疑わない様子だったが、そのアタックに対して氷牙は。

 

「……その攻撃はシラヌイでブロックさせるぞ?」

「!?」

 

ブロックさせてもバトルに負ければライフを破壊されるにも関わらず構う事無くブロック指示。それには紅葉や将、バトルを見ているハルヤ達も驚いた様子だった。何を考えているのか誰もが動揺する中で、氷牙は自分の指示を訂正することなくそのままシラヌイを迎撃させる。

 

「ブロック時効果でBP+5000だ!」

「無駄っすよ! それでもこっちの方がBPが上!! そしてバトルに勝てばどの道ライフは破壊! 所詮は無駄な足掻きっスよ」

 

[Battle]機巧武者シラヌイ×デスヘイズLv.2((S1)1)BP17000vs爆氷の覇王ロードドラゴングレイザーLv.3((S1)3)BP18000。

 

互いの得物である鎌と太刀を相手に向けてそれぞれ振り下し、鍔競り合う両者。一見互角に見える両者の激突だが、ロードドラゴングレイザーは吠えながら太刀を振り下す手に力を籠め、やはり力負けしているのか、シラヌイが少しずつ押され始める。

 

「プレイミスするぐらいにまで寝ぼけてるなんて心底呆れたッス!」

 

苛立ったように言葉を吐き捨てる将だったが、対して氷牙はまだ眠そうにしながらも将の言葉に口元を緩ませた。

 

「確かにまだ眠ぃがよ、生憎眠気でプレイミスする程にまでは堕ちちゃいねぇぞ?」

「?」

「フラッシュタイミングでマジック、鉄壁ウォールを使用だ」

「!」

 

[リザーブ]4個→2個。

[トラッシュ]2個→4個。

[手札]3枚→2枚。

 

【鉄壁ウォール】4(2)白、マジック。

トラッシュにあるこのカードは一切の効果を受けない。

『フラッシュ効果』

このバトルが終了したとき、アタックステップを終了する。コストの支払いにS(ソウルコア)を使用していたら、さらにこのバトルで相手によって破壊された自分のスピリット全ては疲労状態でフィールドに残る。

 

「効果により、このバトル終了時でアタックステップを終了させるぞ?」

『ここで氷牙選手もマジックで対抗だ!!』

「ッ!! でもまだバトルは継続してるっスよ!」

 

将の言う通りまだバトルは終わってはいない。継続した二体の激突ではパワーで上回るロードドラゴングレイザーがそのままシラヌイを後方に弾くと、身を屈めて翼から粒子の刃を展開すると、そのままスラスターを起動させて猛スピードで突っ込み、シラヌイに粒子の刃を突立てると、火花を散らしながらシラヌイはその場で大爆発を起こす。

 

「コテツティーガーのバトル時効果でさらにライフを破壊するッスよ!!」

 

爆風の中から飛び出すと追撃するように氷牙へと突っ込み、再び太刀を振るい、バリアを両断し破壊する。

 

[氷牙side]

[ライフ]2→1。

[リザーブ]2個→3個。

 

「防いだところでどうせ次のターンで俺のターンで終わりッスよ!」

 

氷牙の残るライフは1、このターンを強制終了させながらも次でそれを削るのはもはや容易だろう。以前優勢は変わらず将は余裕の様子だったが。

 

「ふぁ~~……!」

「!!」

 

この状況でもなお欠伸をしながら背伸びする氷牙に、「まだそんな調子なんスか!」と苛立ち気味に言い放つが、それに対し、氷牙は。

 

「悪いな、でも今ようやく目が覚めた所だ」

「えっ?」

 

先程まで眠そうに細めた目を見開き、のんびりとした口調から一変。先程までと違う雰囲気に空気が変わったような感覚をその場の全員が感じ始める。

 

「お前が攻めてくれたお陰でようやくスッキリしたぜ」

「い、今更その気になってももう遅いっスよ! そっちのライフは1。次の俺の攻撃が決まれば、残るライフは削れるッス!」

「……本当にそう思うか?」

「?」

「生憎、ここから先のバトルは浅くねぇ。見せてやるよ! 俺の本気をなッ!」

 

まるで別人の様にその目をギラつかせ、口角を大きく上げる。

 

「寝覚めの礼だ! その目でしっかり括目しろぉッ!!」

「!?」

 

何かを仕掛けるつもりなのか、バトルに敗北したシラヌイに対し効果を使わないのか、そのままデスヘイズごとトラッシュへと送り、それには思わず驚きを隠せなかった。

 

「効果を使えるのに残さないんっすか!?」

「生憎残る手札はやれねぇからな!」

「一体何を!?」

「黙って見てな! 自分のコスト6以上の白のスピリットが破壊された時、このカードをノーコストで召喚できる!」

「!?」

「黒き孤高の獣! 黒天弧ネガナインテールを召喚ッ!!」

 

【黒天弧ネガナインテイル】7(3)白、スピリット、機獣。

Lv.1(1)BP6000、Lv.2(3)BP8000、Lv.3(4)BP12000。

手札にあるこのスピリットカードはコスト6以上の自分の白のスピリットが相手によって破壊された時、コストを支払わずに召喚できる。

Lv.2、Lv.3『このスピリットのバトル時』

BP合計(このスピリットのBP)まで相手のスピリットを好きなだけ手札に戻す。

【連鎖:条件《緑/黄》】

(自分の緑/黄シンボルがあるとき、下の効果を続けて発揮する)

[緑]:相手はバーストを発動できない。

[黄]:このスピリットは相手のスピリットからブロックされない。

 

[リザーブ]5個→4個。

[手札]2枚→1枚。

[フィールド]黒天弧ネガナインテールLv.1(1)BP6000。

 

フィールドに輪の様に隆起する氷の柱。そしてその中央で一際大きな氷柱が出現すると、氷を砕いて黒天弧ネガナインテールがその姿を現す。

 

「で、でもたった一体だけじゃ!」

「言ったろ、この先は浅くねぇ! さらに相手による自分のスピリット破壊後でバースト発動だ!」

「!」

「バースト発動! 魔星機神ロキ!!」

 

【魔星機神ロキ】7(3)白白、スピリット、星将/武装。

Lv.1(1)BP6000、Lv.2(3)BP10000、Lv.3(5)BP14000。

【バースト:相手による自分のスピリット破壊後】

自分のライフが3以下の時、コスト合計8まで相手のスピリット/アルティメットを好きな順番でデッキの下に戻す。この効果発揮後、このスピリットカードを召喚する。

Lv.2、Lv.3【超装甲:可変】

このスピリットはこのスピリットの色の相手のスピリット/アルティメット/ネクサス/マジックの効果を受けない。

 

「バースト効果! 要塞蟲ラルバ、デッキの底で眠ってろッ!」

「!」

 

ラルバを包む白の光、そのままデッキの底へと送られ、さらに続けて行く。

 

「この効果発揮後にバースト召喚できる! 鋼の鎧に身を包みし、神の名を持つ白き王者! 魔星機神ロキを召喚だ!!」

 

[リザーブ]4個→3個。

[バースト]魔星機神ロキLv.1((S1))BP6000。

 

突如として吹き荒れる猛吹雪。余りに強いその吹雪は視界を覆う程激しく吹き荒れるが、暗い吹雪の中で赤く輝く眼光、そして次の瞬間、一瞬にして吹雪を吹き晴らし、最強の槍と謳われたグングニルを掲げるスピリット、魔星機神ロキが吹雪より姿を見せる。

 

『い、一気に氷牙選手二体ものXレアを召喚しました! これは圧巻です!』

『チーム氷帝リーダー、いよいよその本気を明らかとしますね!』

 

 

 

 

[09ターン.氷牙side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]3個→4個。

[ドローステップ][手札]1枚→2枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]4個→8個。

 

『さぁ、二体のXレアを展開した氷牙選手! ここからどう動くのか!』

 

もはや別人のかのように豹変する氷牙のバトルに全員が目が離せない中、氷牙は手札を構える。

 

「将、一気に決めるっていうのはどういう事か、教えてやるぜ」

「!?」

「メインステップ、異次元に眠りし最強の獅子! 今こそ目覚めの時だ! 獅子星鎧レオブレイヴを召喚!」

 

[リザーブ]8個→4個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]2枚→1枚。

 

【獅子星鎧レオブレイヴ】5(2)白、ブレイヴ、機獣/光導。

Lv.1(1)BP5000。【合体時+5000】

このブレイヴカードは1コスト以上支払わなければ召喚できず、合体条件を無視できない。

【合体条件:星将/コスト8以上】

【合体時】【超装甲:赤/緑】

このスピリットは、相手の赤/緑のスピリット/アルティメット/ネクサス/マジックの効果を受けない。

【合体時】『自分のアタックステップ』

Lv.3以下の相手のスピリット/アルティメットが疲労したとき、このスピリットは回復する。

 

裏12宮と呼ばれる最強のブレイヴの一体、獅子星鎧レオブレイヴ。空間を駆け抜けながらフィールドへと現れ、背後に獅子座を輝きを灯し、唸りを上げる。

 

「次だ! 凍て付く闇を統べし剣! 白夜の宝剣ミッドナイトサンを召喚ッ!!」

 

[リザーブ]4個→2個。

[トラッシュ]3個→4個。

[手札]1枚→0枚。

 

【白夜の宝剣ミッドナイトサン】6(6)白、ブレイヴ、剣刃。

Lv.1(1)BP5000。【合体時+5000】

【合体条件:コスト5以上】

【合体時】【重装甲:緑/白/黄/青】

このスピリットは相手の緑/白/黄/青のスピリット/ブレイヴ/ネクサス/マジックの効果を受けない。

【合体時】

このスピリットの【連鎖】は、条件を無視して発揮する。

 

白く輝くソードブレイヴと呼ばれし闇の剣、ミッドナイトサン。あまりの冷たさにその切っ先は凍り付き、地面へと突き刺さる。

 

『ななななななな何と!!! 裏十二宮ブレイヴと、ソードブレイヴを一気に呼び出した!? ここまで場を揃えられると、もはや言葉を失う程です!!』

『確かにこれは圧倒的過ぎて、私も言葉がないですね』

 

壮絶な氷牙のフィールド。だが、当然氷牙にとってまだそれだけでは終わらない。むしろこれから本番だった。

 

「白夜の宝剣ミッドナイトサンをネガナインテールと合体させてLv.2に、さらに魔星機神ロキと獅子星鎧レオブレイヴと合体させLv.3に! 不足コスト確保でブリッツラクーンを破壊だ!」

 

ネガナインテールは地面に突き刺さるミッドナイトサンの持ち手に喰らい付くと、そのままミッドナイトサンを咥えてソードブレイヴスピリットとなり、さらに獅子星鎧は頭部と体を分離し、それぞれブレイヴパーツへと形状を変化させると、ロキへとそのパーツを組み込ませ、肩にレオブレイヴの頭部を取り付けると、グングニルとレオブレイヴのパーツの一部である刃を掲げ、ロキもまた合体スピリットとなり、その力を見せ示す。

 

[フィールド]魔星機神ロキ×獅子星鎧レオブレイヴLv.3((S1)4)BP19000、黒天弧ネガナインテール×白夜の宝剣ミッドナイトサンLv.2(3)BP13000。

 

「ッ!!」

 

圧倒的な氷牙のスピリット、だがそれでもまだ将も諦めないように自分の伏せたバーストを見る。

 

「(まだ大丈夫ッス! オイラの伏せたバーストは絶甲氷盾。ライフはまだ5つ全て残ってる。このターンは絶対凌げるはずッス!!)」

 

まるで自分に言い聞かせるように想い込む将だったが、氷牙とってはもはや相手が何を考えていようと自分のすべき事は決まっている。

 

「アタックステップ! ソードブレイヴスピリットでアタックだッ! ネガナインテールのバトル時効果でこのスピリットのBP合計まで相手スピリットを戻し、さらに【連鎖】! ミッドナイトサンの合体時効果で条件を無視して発揮! 相手はバースト発動できず、このスピリットは相手スピリットからブロックされない!」

「!?」

 

一気にフィールドを駆け抜けるネガナインテール、は自らに搭載された砲門をバーストタートルに向けて撃ち出すと、バーストタートルは直撃を受けて吹き飛ばされ、将の手札へと戻され、さらに阻もうと立ち塞がるロードドラゴングレイザーだったが、ネガナインテールは止まる事無く飛び出すと、ロードドラゴングレイザーを踏み台にしてさらに高く飛び上がり、そのまま咥えたミッドナイトサンを将へと振り下す。

 

「うあッ!!!」

 

[将side]

[ライフ]5→3。

[リザーブ]0個→2個。

 

「(ぐっ、【連鎖】の効果で、絶甲氷盾が発動できない!!)」

「まだ終わらねぇぞ!」

「!!」

「さらに合体スピリットでアタック! 魔星機神ロキはダブルシンボル! ブレイヴした事でさらにシンボルを追加し、トリプルシンボルだ!!」

「!?」

 

残るライフ全てを削りかねないロキの攻撃に、将は慌てたようにロードドラゴングレイザーを構える。

 

「ぶ、合体スピリットでブロックするッス!」

「レオブレイヴの効果! Lv.3以下の相手スピリットに疲労で回復だ!!」

 

[Battle]魔星機神ロキ×獅子星鎧レオブレイヴLv.3((S1)4)BP19000vs爆氷の覇王ロードドラゴングレイザー×コテツティーガーLv.3((S1)3)BP18000。

 

ロードドラゴングレイザーは両腕に握りしめた虎徹を渾身の力で振り下す。だが、ロキはそれを片腕に持つ刃だけで渾身の一閃を受け止め、そのままロードドラゴングレイザーを蹴り飛ばし、後ろに弾き飛ばす。

 

弾き飛ばされながらもグレイザーは氷のブレスをロキへと吐き付けるが、ロキは放たれた氷のブレスを刃の一閃で掻き消してしまうと、そのままもう片腕に握りしめたグングニルを構え、そのままロードドラゴングレイザーに向けて一投。投げつけたグングニルはロードドラゴングレイザーの胸へと突き刺さり、そのまま一気に接近すると刃でさらに一閃。最後に胸に突き刺さったグングニルをロードドラゴングレイザーから引き抜くと、その場で大爆発を起こし、爆風の中、主を失いながらコテツティーガーは何とか生還するも、既に力を使い切ったようにその場に凭れ込む。

 

『あ、圧倒的すぎる氷牙選手!! これがチーム氷帝の本当の力のなのか!!』

 

「そ、そんな!!」

「止めだ!! 合体スピリットでアタック!」

「ら、ライフで受けるッス!!」

 

手札は無く、止める術は何もない。グングニルの槍のよる突きと、刃による一閃が同時にバリアへと叩きこまれ、粉々に残るライフと共にバリアは砕け散る。

 

「うああああッ!!!」

 

[将side]

[ライフ]3→0[Lose]

 

 

 

 

***

 

 

 

 

『決まったぁーッ!! 勝利したのはチーム氷帝リーダー獅戸氷牙選手!!!』

『圧倒的な実力でしたね。チームリーダーとしての名はやはり本物でした』

『果たして彼より強いバトラーは現れるのか!? 否、圧倒的過ぎるバトルはもはや敵なしと言っても過言ではないでしょう!』

『鉄壁の防御に、怒涛の攻め。強力な白属性使いでしたね』

『本日の放送はここまで!! また次回も白熱したバトルを我らがBCOがお届けします! それでは皆様、またの機会を!』

 

興奮冷めやらない様子で語る紅葉達、実況を締め括りながらも生き生きとしたように語り、一方で決着後の将達はというと。

 

「氷牙さん!! オイラの完敗です!! 見事なバトルでした、やっぱり氷牙さんは凄いッス!! オイラが間違ってました!」

 

先程の苛立った氷牙への態度を一変。氷牙のバトルには将もまた感動したように目を輝かせ、あまりに速い変わり身に見ていた沖田やハルヤは呆れるように苦笑い。

 

「今までの生意気な態度許してください!! 氷牙さんの事はこれからぜひ兄貴と呼びたいッス!!」

「はは、俺が兄貴か」

 

将の言葉に氷牙はまんざらでもないように笑って見せながらもまたデッキを取り出し始める。

 

「まぁそれはそれでいいがよ。生憎寝起きの運動にはまだ足りてねぇ、折角起こしてくれたんだ、まだまだ付き合ってもらうぞ?」

「えっ?」

「チームリーダーとしての俺の実力をまだまだ見せてやるって言ってんだよ!」

「わ、ワーイ。兄貴に付き合えるなんてウレシイナー。」

 

目をギラつかせながら笑う氷牙に対し、将もまた笑いながら呟くがその表情は引きつらせ、「ほら行くぞ!」と氷牙に連れ出されるように二人はスタジアムを後にし、その様子にただ気の毒と感じたのだった。

 

「はは、ともかく一件落着かな」

「そうですね。にしても氷牙さんのバトル、久々に見たけど凄かったですね」

 

苦笑いしつつも、ハルヤもまた氷牙のバトルには感動しており、「確かに」とザックとキッドも同意するように頷く。

 

「防御から一気に攻撃に転じて一気に5つのライフを削るなんてすげぇぜ」

「だな。こりゃ俺達も負けてられねぇ。プラクティスがもっと必要だな」

「テメェはもっと普通にしゃべれねぇのかよ!」

「生憎これが俺のフリースタイルだよ!」

 

また口論を始める二人に「まぁまぁ」と慌てて宥めるハルヤだったが、ふと隣を見ると、何か寂しそうに表情を曇らせる沖田の様子に気づく。

 

「沖田さん……?」

「ん? あぁごめんごめん。ちょっとぼーっとしてた」

「沖田さんがぼーっとするなんて珍しいですね。何かあったんですか?」

「うーん、将君見てたら何だか前の事思い出しちゃってね」

「?」

 

「いや、別に大したことじゃないけどね」と何でもないような素振りを見せる彼女に不審に思うが、沖田の様子にハルヤは直感的に深く追求するべきない事を感じるのだった。




皆さまこんばんはブラストです。今回は第9話更新できました!!
日の変わるまでに今日更新できてよかったです。
相変わらずの駄文なのですがそれはご容赦ください泣


今回、ロードドラゴングレイザーと魔星機神ロキが一番の活躍でしたね。割とシラヌイデスヘイズもアピールしたいところなんですが、キースピリット召喚の為に前座となってしまいました(汗)でもシラヌイデスヘイズ結構使えると思うので、割とお勧めしたいです!

そして話は変わりましてツイッターとかで炎魔神がかなりブームになってますね。やはり炎魔神ゼクスが流行ってるみたいで。ただ自分は他のスピリットと組ませても充分強いと思いますけどね、今日活躍したロキとかでも相性は十分良好かと! バーストを破棄して塵プルシンボル! 超装甲で赤もつくから烈刀斬にも耐性!!まぁ一番いいのは随分お好きなスピリットを強化する事ですけどね、単純な強さでもロマン性でもやりたい道を突き進めるのがバトスピ!!(ステマ)

小説本編ですが、早いものでもう9話。次回で10話目になります!アニメに話数の数に追いつきつつある(笑)今回第9話、最後のは伏線です。回収作業は後になるかもですがご期待してもらえると! そして次回のバトルは……!! まだ秘密です(←

これからも小説どうぞよろしくお願いします。


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No10.毒蛇強襲、抗う激流

・以下注意
誤字、プレイミスありかも。
バトル表記が人によって分かりずらいかも。

それでも大丈夫という方はどうか温かい目で見てもらえると幸いです。発見したミスやバトル表記などのご指摘気軽にお待ちしております。






「行くぜザック! アルティメットサジットアポロドラゴンでアタックだ!」

 

スタジアムでバトルを行っているのはザックとキッドの二人。昨日のバトル以来、将も「兄貴が認めるなら許すッス!」と気兼ねなく使用できるようになり、今日はバトルスタジアムではなく、フリー台で気軽にバトルを行っており、その様子をすぐ隣でハルヤも見守ってる。

 

「二人とも頑張れ!」

 

両者共に応援する中、バトルではキッドの攻撃にザックはライフで受け、残り一つにまで追いつめられていた。

 

「どうだ、俺の攻撃は? パーフェクトだったろ?」

「フン、舐めんな! 勝負はこれからだぜ!」

 

続き返しのターン、追いつめられながらもまだまだザックは強気な様子。

 

「行くぜ、このターンで逆転できるカードを引いてやる! 俺の引き運見せてやるぜ!!」

 

強く意気込むように次に引くカードに強く手を掛ける。

 

「俺のターン! ドr────」

『アローーハーーッ!!!』

 

次にカードを引こうとした瞬間、突然大きく声を張り上げて顔を見せるのは、後ろ向きに被ったキャップの上にゴーグルを付けた少年、紫苑。突拍子なその登場に思わず三人共、「「「わあっ!!」」」と驚いたようにその場から飛び上がってしまう。

 

「ヤッホー! ラリホー!! お久しぶり!! 皆さん、ご機嫌いかがーーッ!」

 

ハイテンションな挨拶。その登場には驚かされ、「し、紫苑さん、普通に来て下さい!」と叱咤するが、「うん無理」と即答する紫苑に思わずズッコケてしまう。

 

「も、物凄いインパクトのある人だな」

「あぁ。ビックリした、ハルヤの知りあいかよ?」

「う、うん。まぁね」

 

ザックの言葉に苦笑いしながら答えるハルヤに、紫苑は「そうそうハルヤとはマブダチなんだぜ!」と相変わらず馴れ馴れしい態度を見せる。

 

「はは、紫苑さん今日は突然来るなんて、どうしたんですか?」

「ちょっと様子見にな、レッドドラゴン辞めたの全然知らなかったから、何時の間にかいなくなってて寂しかったんぜ?」

「すいません、伝える暇がなくて」

 

最近の事情を把握していない様子に紫苑に軽く謝りながらも、紫苑は気にする事無く「いいよいいよ」と軽い調子で続けていく。

 

「そう言えば、エンザさん達はどんな調子でした?」

「ん? 別に変わりねぇぜ。前会った時もバトルの特訓励んでたわ」

「へぇー、そうなんですか」

「まっ、また機会があればよろしく伝えといてやるよ。そっちはそっちでチーム集め順調みたいだな?」

 

ザックとキッドの二人を見ながらそう言い、二人は初対面の紫苑に対し若干気まずそうに軽く「どうも」と会釈をするが、紫苑は初対面でも全く気にする事ないように軽い様子で「ヨロシクー」と挨拶。

 

「まぁちょくちょくここにも遊びに来るから、また会おうぜ」

「ここって僕たちのスタジアムじゃないんですけどね」

「関係ないって、どうせ氷牙の事だ。もう一人ぐらい来たって許してくれんだろ?」

 

「まっ、今日はゆっくりする間がねぇのが残念だけどな」と小さな声で呟く紫苑に、気になる様に「何かあるんですか?」と尋ねると、明るく笑いながら続けて行く。

 

「まぁちょっとな。対した用事じゃねぇけど。つー訳で俺はこの辺で、またな!」

 

まるで嵐のように一方的なペースでその場を後にする紫苑。結局紫苑に一方的に振り回され、キッドとザックは苦笑いしながらその後姿を見送っている。

 

「紫苑って随分賑やかな奴だよな」

「ハルヤのフレンドなんだろ? 面白そうな奴ではあるな」

 

一方でハルヤは紫苑の様子に何か気になったように表情を硬くさせており、それに不思議に思ったのか「ハルヤ?」と名前を呼びかけ、その声に慌てた様に反応する。

 

「ど、どうしたの?」

「どうしたのってこっちの台詞だよ。急に考え込んだりして、どうしたんだよ?」

「あー……うまく言えないんだけど、何だか様子がおかしかった気がして」

「おかしいと思ったのはお前だけじゃないと思うんだけど」

「い、嫌そういう意味じゃなくてさ!! 何か、紫苑さん。さっきはいつもと違ったっていうか。いつも以上にわざとらしく明るくしてたと言うか」

「?」

 

先程の返答の際、少しだけ平静を取り繕うように言葉を返していたことを察したのか、それに不信感を覚えるハルヤだった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

舞台は変わり、海辺沿いに建てらた一つ会場、チーム海皇のチームスタジアム。

 

「野郎共!! 今日も号令の時間だッ!!! 準備はいいかぁッ!!」

『『『アイアイサー!!』』』

「行くぞッ!! まず一つ! 俺達は!」

『『『最強チーム! 無敵の海皇!』』』

「二つ!! バトルはいつもぉ!!」

『『『圧勝! 快勝!! 全勝だ!!!』』』

「ラストッ!! バトルで負けた奴ぁ!!!」

『『『テメェでその身を投げ捨てろ!!!』』』

 

武凱を筆頭にチーム海皇の号令を叫ぶメンバー達。その隣であまりの声量に耳を塞ぎながらバンも聞いている。

 

「ケッ、相変わらず声のでけぇ脳筋馬鹿だ! 合わせる方も気の毒だな」

「んだとこの貧弱もやし野郎! 文句でもあんのか? 筋肉もねぇ単細胞の癖しやがって!!」

「あぁ!? 単細胞は倍速度のブーメランで返してやんよッ!!」

 

相変わらず犬猿の仲の武凱とバン。いつもの事ながら他の海皇メンバーは二人の希薄に圧倒されて止める事が出来ずに見守るしかなかったが。その二人の口論に、奥から顔を出す一人の少年。

 

「止めねぇかテメェ等ぁッ!!!」

「「!!」」

 

会場中に響き渡る怒声、その声に圧倒されるように先程まで口論していた二人はピタリと制止させられる。

 

「「きゃ、キャプテン!!」」

 

チーム海皇リーダー、浪川海斗。彼の声にすぐさま二人は口論を辞め、キャプテンと呼ぶ浪川の方を向く。

 

「ったくいつもいつも騒がしい。テメェ等に愛想つかされるぜ」

「「す、すいません。キャプテン!」」

 

相変わらず自分達のチームリーダーには頭が上がらない様子。そんな中、突然スタジアム入り口前から聞こえる騒ぎ声。

 

『きゃ、キャプテン!! 大変です』

「?」

 

海皇メンバーの一人が慌てた様子で駆けつけ、慌てたその様子から急用であることを察するとすぐに「どうした?」と尋ねる。

 

「チームへの殴り込みです!! それが物凄い強くて!! とにかく何とかしないと!」

「テメェ等揃いも揃って対処の一つできねぇのかよ?」

「そ、それがすごいバトルの強い奴でして」

 

「とにかく来てください」と言われるがまま、その場に出向く事となり、バンと武凱の二人もその後に続いていき、向かった先には海皇メンバーの一人と、一人の少年がバトルをしていた。

 

『はいアタック。これでお終い』

『ら、ライフで受ける』

 

バトルをしている相手は、浅く被ったフードに灰色の髪の少年。既に何戦も海皇メンバー達と戦い、全て連戦連勝だった。

 

「つまんない。チーム海皇ってこの程度なんだね?」

 

呆れた様子で小馬鹿にしたような発言。それには当然悔しそうに拳を握りしめながらも負けたメンバー達は返す言葉がないようにその言葉を呑み込むしかなかった。

 

「おい、お前……俺達に何の用だ?」

「!」

 

浪川の声に気づくとその少年は振り返る。

 

「あっ、ついに鮫の大将さんの登場だね」

「質問に答えろ、俺達に勝ち込みに来たのか?」

「……勝ち込みって訳じゃないけど、まぁちょっと人探しにね」

「人探し? ここに来た目的がそれならバトルする必要はねぇだろ?」

「あぁこれは人探しのついでだよ」

「ついでだと?」

「チーム海皇の名前は知ってるからね。どんな強さなのか興味があって来たんだよ。けど、正直がっかりしてる。この通りどいつもこいつも弱くてさ、上位チームの割には大したことないんだね」

 

挑発気味なルムの発言に、バンと武凱は侮辱された事に当然黙ってられる訳がなく、その挑発に乗って掛かる様にルムの前へと出る。

 

「テメェ、俺達海皇を舐めんじゃねぇぞ!! 下っ端倒したぐらいでいい気になりやがって! 威勢を張りたいなら俺を倒してからにしやがれ!」

「俺も相手になってやるぞ! 怪獣デッキの餌食にしてやるぜ!」

 

二人共デッキを構えてその少年に挑む様子だが、少年は「どうせなら」と二人から視線を外し、浪川の方を見る。

 

「海皇リーダー、浪川海斗。アンタがやってよ? その方が一番楽しめそう」

 

口角を上げて笑うその少年だったが、浪川はその挑戦に受けて立つつもりはないのか、「断る」と一蹴。

 

「どういう意図が知らないが、お前なんかに時間を割くほど暇じゃねぇんだよ」

「あれ? チームリーダーの癖に挑まれた勝負から尻尾を巻いて逃げる気? なんか拍子抜けだな」

 

「キャプテンの侮辱は許さねぇぞ!!」とバン達は怒りを剥き出しに突っかかるが、「黙れ」と声を低くし、二人を制止させる。

 

「安い挑発に乗る気はねぇ。テメェの本来の要件がないならさっさと帰れ」

 

挑発的なルムの言葉にも少しも動じる事は無く、引き返そうと背を向けて戻ろうとするが。

 

「どうやらエンザに負けてからすっかり、ご自慢の牙を抜かれたみたいだね?」

「!」

 

その言葉にはピタリ、と足を止め、眉間に皺を寄せて振り返る。

 

「テメェ、俺の前でエンザの名前を口にしたんだ。覚悟はできてんのか?」

「安い挑発には乗らないんじゃなかった?」

「テメェが思ってるほど俺は短気だったみたいでな。その名を口にした以上、挑発でもなんでも乗ってやるさ」

「へぇー、なら楽しませてもらうよ?」

「楽しませるだと? 俺に挑む以上、そんな気も起きない程に噛み裂いてやるよ! 俺の牙が抜け落ちてるかどうかその目に見せてやる!」

 

もはや止めに入れる雰囲気ではない、そのままスタジアムへと移動し、ステージの上に立ち、武凱とバンは観客席でその様子を眺める。

 

『また面白そうな事になってますね』

「!!」 

 

そんな二人の後ろにはいつもの如く神子や紅葉達の姿もあり、呆れながらも二人はいつから来たのかについては深く突っ込まなかった。

 

「ったく、お前等のスクープ根性には呆れるの通り越して尊敬するぜ」

「褒め言葉として受け取ります。例の如く今日もこのバトル取らせてもらいますよ?」

「あぁいいよ。その代わり! キャプテンの勇士を盛大にとってくれよ!!」

「まぁ贔屓目で査定する訳には行きませんが、バッチリ放送しますよ。ねっ、お姉ちゃん!」

「えぇ。コン太もしっかり撮影頑張ってくださいね」

 

三人共それぞれこれから始まるバトルの為の実況準備を手早く進めて行く。

 

『さぁ皆さまこんにちは!! BCOのお時間です!! 今回はチーム海皇スタジアムよりバトルをお届け!!  対戦するのは海皇チームリーダーの浪川海斗選手、対戦するのは……お名前を先に伺いましょう!』

「あぁ、そう言えば名乗ってなかったね。蛇目ルム。それが僕の名前だよ?」

『ルム選手ですね。私の知る限り公式記録がありませんが、解説の神子さんはご存知でしょうか?』

『いえ、私も残念ながら初耳です。知る限りのデータにはないですね』

 

情報に長けた神子でさえも知らないルムの記録。だが先程の海皇メンバーを相手に連勝した彼の実力は確かなものである事は浪川には分かり切っていた。

 

「チームシャドウ所属してるんだけど?」

『チームシャドウ? どこかで聞いたような?』

 

心当たりがある様に首に手を置いて考え込む素振りを見せる素振りの紅葉だが、それに対し「関係ねぇ!」とルムの言葉を両断するように叫ぶ。

 

「テメェが誰だろうと俺は噛み裂くだけだ!」

「強気なのは嫌いじゃないけど、それが虚勢でないことを祈るよ?」

「抜かせ、テメェこそ歯応えぐらいあるんだろうな?」

 

互いに一歩も引かずに言い合って見せる両者、試合前からの気迫は見ている紅葉達にも伝わる程だった。

 

『両者準備は良いようですね! それではコールお願いします!!』

「「ゲートオープン! 界放ッ!!」」

 

互いの宣言と共に幕が上がるバトル。試合はルムの先行からのスタートとなる。

 

 

 

 

[01ターン.ルムside]

[スタートステップ]

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「メインステップ、蛇僧侶ハリムを召喚するよ」

 

[リザーブ]4個→0個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→4枚。

 

【蛇僧侶ハリム】3(1)紫、スピリット、妖蛇。

Lv.1、Lv.2『このスピリットの召喚時』

自分はデッキから1枚ドローする。

Lv.1、Lv.2『相手によるこのスピリットの消滅/破壊時』

相手スピリット/アルティメットを1体を疲労させる。

 

「ハリムの召喚時効果発揮、手札1枚引かせて貰う」

 

[手札]4枚→5枚。

 

召喚時効果を発揮させ手札を増やすルム。ハリムの姿に、ルムが紫使いであることをすぐに理解する。

 

「最後にバーストセット。これでターンエンド」

 

[手札]5枚→4枚。

[フィールド]蛇僧侶ハリムLv.1((S(ソウルコア)1))BP1000。

 

 

 

 

[02ターン.浪川side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「バーストセット、さらにネコザメキャット、Lv.2で来い!」

 

[リザーブ]5個→0個。

[トラッシュ]0個→1個。

[手札]5枚→3枚。

 

【ネコザメキャット】1(1)青、スピリット、異合。

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(4)BP8000。

 

[フィールド]ネコザメキャットLv.2((S1)3)BP8000。

 

「アタックステップだ! ネコザメキャット、行け!」

「ライフで貰う」

 

先手必勝、ネコザメキャットを即座に攻撃させると、身軽な動きでフィールドを駆け抜け、そのまま展開されたバリアに喰らい付き、破壊する。

 

[ルムside]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]0個→1個。

 

「ライフ減少時でバースト発動! 妖華吸血爪!!」

 

【妖華吸血爪】5(2)紫、マジック。

【バースト:自分のライフ減少時】

自分はデッキから2枚ドローする。その後コストを支払う事で、このカードのフラッシュ効果を発揮する。

『フラッシュ効果』自分の手札を好きなだけ破棄する。その破棄したカード1枚につき、相手のスピリット1体のコア1個を相手のトラッシュに置く。

 

「バースト効果により2枚ドローさせてもらうよ?」

 

[バースト]妖華吸血爪。

[手札]4枚→6枚。

 

『ルム選手! さらに手札を増やす!! 次の戦略につなげる気か!?』

「させるか!」

「!」

 

ライフを削られながらも、バーストを発動させるルム。しかしその発動効果を終えた瞬間、それを読んでいたかのように叫ぶと、浪川の伏せたバーストも弾け飛ぶ。

 

「効果による手札増加がコイツのバーストだ! グリードサンダー!!」

「!!」

 

【グリードサンダー】5(3)青、マジック。

【バースト:相手の効果によって相手の手札が増えた後】

相手は手札が5枚以上の時、相手は手札全てを破棄することで相手はデッキから2枚ドローする。

 

「バースト効果だ! その手札全部捨ててもらうぞ! 代わりに2枚のドローはくれてやる!」

 

[バースト]グリードサンダー。

[ルムside][手札]6枚→0枚→2枚。

 

マジックによる放たれる雷がルムの手札へと放たれ、全ての手札が弾け飛び、引き換えに2枚のカードを手札に加えられるが、代償はあまりにも大きかった。

 

『何とルム選手のバーストを発動させた矢先、それを条件として浪川選手もさらにバースト発動だ!!!』

『手札を増やして優位に立とうとしましたが、浪川選手、それを見事に封じましたね』

『浪川選手これは上手い!! やはりチーム海皇リーダーの実力は伊達ではない!!』

「やってくれるね。折角、ネクロリバースやデッドリィバランスも引けたってのにさ」

「紫相手に何も対策してねぇと思ってたのか? やるからには誰だろうと徹底的に噛み砕くだけだ!」

「へぇー、それは楽しみだね」

 

まだ序盤だからか、手札を失いながらもそれほど気には留めていないように平静なルムの態度にどこか不気味さを感じさせられながらも、浪川は「ターンエンド」とコール。

 

 

 

 

[03ターン.ルムside]

[スタートステップ]

[コアステップ]1個→2個。

[ドローステップ]2枚→3枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]2個→5個。

 

「メインステップ、蛇僧侶ハリムをLv.2に、そして蛇僧侶ハリムをもう1体、Lv.2で召喚するよ」

 

[リザーブ]5個→0個。

[トラッシュ]0個→2個。

[手札]3枚→2枚。

 

「召喚時効果で1枚ドロー、これでターンエンドするよ」

 

[手札]2枚→3枚。

[フィールド]蛇僧侶ハリムLv.2((S1)1)BP2000、蛇僧侶ハリムLv.2(2)BP2000。

 

『さぁルム選手、流石に先程のバーストで手札を奪われ、攻め手がないのか、もうターンエンドです』

『紫は本質を発揮するにはそれ相応の準備が必要となりますからね。浪川選手にとっては今がチャンスでしょうね』

『成程! 浪川選手、一気に動くか?』

 

 

 

 

[04ターン.浪川side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]1個→0個。[リザーブ]1個→2個。

 

「メインステップ! 海傭師団シャーガを召喚! 不足コスト確保でネコザメキャットをレベルダウン!」

 

[リザーブ]2個→0個。

[フィールド]ネコザメキャットLv.2((S1)3)BP8000→ネコザメキャットLv.1(1)BP3000。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]4枚→3枚。

 

二本の刀を掲げて水面と化したフィールドから飛び出すシャーガ。刀を打ち鳴らしながら相手を威嚇するように大きく吠える。

 

[フィールド]海傭師団シャーガLv.1((S1))BP5000、ネコザメキャットLv.1(1)BP3000。

 

「アタックステップ! ステップ開始時効果、コスト4以下の相手スピリットを破壊する!! 蛇僧侶ハリム、波に呑まれて消えろッ!」

 

二刀の刀を力一杯海面に叩き付けると、衝撃に津波を引き起こさせ、そのまま波は蛇僧侶ハリムを呑み込み、波に呑まれて消滅する。

 

「蛇僧侶ハリムが相手によって破壊された時スピリット1体疲労させるよ、対象はネコザメキャット」

「それがどうした! シャーガでアタックさせる!」

 

効果に疲労させられたネコザメキャットはその場に座り込むが、それに全く構う事無くシャーガを突っ込ませる。

 

「ライフで貰う」

 

[ルムside]

[ライフ]4→3。

[リザーブ]2個→3個。

 

「……痛いね」

 

衝撃に仰け反りながらも言葉とは裏腹にまるで平静な態度のルム。その一方で浪川のスピリットは全て疲労状態。これ以上の攻撃は不可能だった。

 

「ターンエンド」

 

 

 

 

[05ターン.ルムside]

[スタートステップ]

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[コアステップ][リザーブ]3個→4個。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]2個→0個。[リザーブ]4個→6個。

 

「メインステップ、蛇僧侶ハリムをLv.1にダウン。じゃぁ……そろそろ行こうか!」

「!」

 

何かを狙っているかのような発言、そしてこれから呼び出すであろうそのカードに手を掛け、今までの平静な表情を一変、狂気を思わせるかのように口角を一杯にまで上げた笑みを浮かべる。

 

「牙で噛み裂け、毒で射殺せ! 双頭の龍王バイジャオウを召喚ッ!」

 

[リザーブ]6個→0個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]4枚→3枚。

 

フィールドに広がる毒沼、まるで渦の様に逆巻く毒沼より顔を見せる二頭の蛇、否二頭一対の蛇、双頭の龍王バイジャオウが毒沼から飛び出しその姿を見せる。

 

『双頭の龍王バイジャオウ!! 不気味に、そして不敵に現れたーーッ!!』

 

二頭の首はそれぞれ浪川に対して大きく吠えながら、その不気味な迫力にはバトルを見ているバンや武凱でさえも威圧感を感じてしまい、浪川はもまた怯みはしないものその姿には警戒をせずにはいられなかった。

 

[フィールド]双頭の龍王バイジャオウLv.2((S1)1)BP4000、蛇僧侶ハリムLv.2(2)BP2000。

 

「そいつがお前のキースピリットか?」

「まぁね、お気に入りだよ? 強者を仕留める為の一体としてね!」

「!」

「行くよ? アタックステップ、蛇僧侶ハリムで海傭師団シャーガを指定アタック!」

「!?」

『ルム選手、ここでハリムでシャーガに指定アタック……ってあれ? ハリムにそんな効果ありましたっけ?』

『いえ、ハリムの自身による効果ではありません』

『?』

 

状況を把握したような神子の言葉、一瞬それには疑問持つが、その言葉の真意は紅葉もすぐに理解できた。理由を示すようにバイジャオウは大きく吠え、その咆哮に反応するかのようにハリムに紫に光が灯る。

 

【双頭の龍王バイジャオウ】5(3)紫、スピリット、妖蛇。

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(2)BP4000、Lv.3(4)BP6000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3

系統:「妖蛇」を持つ自分のスピリット全てに【呪撃】『このスピリットのアタック時』バトル解決時にブロックしていた相手のスピリット1体をバトル終了時に破壊するを与える。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『このスピリットの破壊時』

このスピリットを手札に戻すことが出来る。

Lv.2、Lv.3『自分のアタックステップ』

【呪撃】を持つ自分のスピリット全ては、アタックする時、疲労状態の相手のスピリット1体を指定し、そのスピリットにアタックできる。

 

『効果により、妖蛇を持つハリムとバイジャオウ自身に【呪撃】を与え、そして【呪撃】を得た事で、バイジャオウのLv.2に効果により指定アタック可能となったのです』

『という事は、シャーガを狙い撃ち!? しかしBPは』

『いえ、それも含めてもルムの狙い通りでしょう』

『!』

 

蛇僧侶ハリムは地を這いながらシャーガへと迫り、それを見ながらシャーガは刀を構え、真っ向から受けて立つつもりだった。

 

「シャーガでブロック。迎え撃て!」

 

[Battle]蛇僧侶ハリムLv.2(2)BP2000vs海傭師団シャーガLv.1((S1))BP5000。

 

バトルでは杖を持ち、地を這いながらシャーガへと襲い掛かるが、シャーガは難なく片方の刀でハリムの振るう杖を受け止め、もう片方の刀で一閃。ハリムを切り伏せ、破壊する。しかし、それで終わりではなかった。

 

「バトル終了時、【呪撃】の効果発揮。ブロックした相手スピリットをバトル終了時に破壊する!」

「!」

 

バトルを終え、浪川の元へ戻ろうとするシャーガだったが、背後から感じる殺気。すぐさま後ろに振り返るシャーガだったが、時既に遅く、振り返った瞬間、シャーガの体を杖で貫く影、それは先程破壊された筈のハリムであり、その姿は破壊された恨みを募らせた怨霊、シャーガを道連れにその場から二体とも消滅する。

 

「シャーガ……ッ!!」

「まだだよ、今度はバイジャオウでネコザメキャットに指定アタック!」

「ッ! ネコザメキャットでブロック!」

 

[Battle]双頭の龍王バイジャオウLv.2((S1)1)BP4000vsネコザメキャットLv.1(1)BP3000。

 

疲労状態により地面に凭れ込むネコザメキャットに一気に迫るバイジャオウ。片方の頭がネコザメキャットに突進し、空中に跳ね上げると、もう片方の首が跳ね上げたネコザメキャットに喰らい付き、そのまま噛み裂き破壊する。

 

『ルム選手、一気に浪川選手のスピリットを破壊してしまった!?』

『何か仕掛けるとは思いましたが、まさかこれほどとは……!』

「きゃ、キャプテンのスピリットが全滅だと!?」

「あの野郎……!!」

 

神子達を始め、バン達も動揺を隠せず、バイジャオウは己以外の存在が無くなったフィールドに満足するように吠える。

 

「ターンエンド。どう? 自慢のバイジャオウ攻撃は?」

「……舐めるなよ、この程度で俺が終わる訳ないだろ?」

 

動揺を隠せない周りに対し、唯一人浪川本人は以前強気な態度を崩さず、その反応にルムはまた笑って見せた。

 

「へぇー、ならもっと楽しませてよね?」

「楽しませるだと? そんな気も起きない程にテメェを噛み裂くだけだ!!」

 

 

 

 

[06ターン.浪川side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]2個→3個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]4個→3個。

 

「メインステップ! 行くぞ!!」

 

果敢に掲げる一枚のカード、浪川もまたその手に握るのはキースピリットたる一枚。

 

「荒ぶる海の獣! 豪快怒涛に攻め上げろッ! ホオジロタイガーを召喚ッ!!」

 

[リザーブ]7個→0個。

[トラッシュ]0個→6個。

[手札]4枚→3枚。

 

フィールドに突如として水が浸り始め、辺り一面に水が満ち海のように化すと、海面に巻き起こる渦潮。そして渦潮の中に蠢く影が見えたかと思うと、瞬間、海面を突き破って飛び出す獣────ホオジロタイガー。

 

[フィールド]ホオジロタイガーLv.3((S1))BP20000。

 

『ここで浪川選手!! 自慢のキースピリットを呼び出した!! さぁ一気に動くか!?』

 

キースピリットを呼び出し、期待するかのように実況を語る紅葉だったが、その期待とは裏腹に冷静にフィールドを見渡すと、浪川は「ターンエンドだ」と何もせずにターンを終えてしまう。

 

『な、浪川選手動きません!? これはどうした事だ?』

『動かないのでは無く動けないんですよ』

『?』

『さっきのバイジャオウの効果を見たらわかると思いますが、今ホオジロタイガーをアタックさせても形成に変わりはありません。そればかりか、次のターン先程の様にバイジャオウに攻撃されればホオジロタイガーと言えども簡単に倒されて状況は余計不利になります』

『という事は今は完全にルム選手にフィールド支配されてしまったと!?』

 

紅葉の言葉に神子は静かに頷き、それに驚いたような表情を浮かべ、一方のルムは浪川の様子に「つまらないな」と呆れ気味に呟く。

 

「折角の召喚コールが聞いてあきれるね? それでもう終わりなんて」

「ほざけ、挑発にはのらねぇぞ?」

「……ふーん。まっ、何でもいいけどがっかりさせない程度には足掻いてよね?」

「テメェこそ俺を舐めるなよ? 言った筈だ! テメェを噛み裂くと!」

「強気なのはいいけど、生憎牙を持つのは蛇も同じだよ? それも鋭く、毒を持ったね!」

 

 

 

 

[07ターン.ルムside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]2個→3個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]3個→7個。[フィールド]双頭の龍王バイジャオウ回復。

 

「メインステップ、ライフチャージを使用するよ?」

 

[リザーブ]7個→3個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]4枚→3枚。

 

【ライフチャージ】4(3)緑、マジック。

『フラッシュ効果』コスト3以上の自分のスピリット1体を破壊する事で、ボイドからコア3個を自分のリザーブに置く。

 

「効果の対象はバイジャオウを指定」

『おっと!? ここでルム選手まさかのキースピリットを自ら破壊させるのか!?』

『それもまた彼の狙った上です』

 

ライフチャージの効果によってバイジャオウは緑の光と共にその場から消滅するが、破壊されてもなおその魂は消得ない事を現すかのように蛇の雄叫びがフィールドに響く。

 

「!」

「バイジャオウの破壊時効果、このスピリットは破壊時に手札に戻せられるのさ!」

 

[リザーブ]5個→8個。

[手札]3枚→4枚。

 

破壊されてもなおバイジャオウの魂が消える事は無い。コアを増やし、再びバイジャオウのカードを手札に呼び戻し、それに対し警戒するように構える。

 

「まだ終わらないよ? クリスタニードルを召喚、さらに戻したバイジャオウを再召喚、どちらもLv.2!」

 

新たに呼び出される怪しげな紫の体色を持つ蛇、クリスタニードル。そして先程破壊したバイジャオウを再びフィールドへと呼び戻し、二体の蛇達は鳴き声を共鳴させる。

 

[リザーブ]8個→0個。

[トラッシュ]4個→8個。

[手札]4枚→2枚。

[フィールド]双頭の龍王バイジャオウLv.2((S1)1)BP4000、クリスタニードルLv.2(2)BP2000。

 

「アタックステップ、クリスタニードルとバイジャオウでそれぞれアタックするよ?」

「どっちもライフで受ける!」

 

バトルに勝利しても道連れにされるのであれば容易に止める手立てはない。バイジャオウとクリスタニードルはそれぞれ展開されたバリアへと飛び掛かり、その牙を突立てライフを破壊する。

 

「ぐッ!!」

 

[浪川side]

[ライフ]5→3。

[リザーブ]0個→2個。

 

「フフッ、これでターンエンド」

『ルム選手、フルアタックで一気に同点に持ち込んだ! バイジャオウによって浪川選手完全にフィールドの支配権を奪われました』

『ブロックしても【呪撃】によって道連れ。破壊してもバイジャオウは何度でも手札に戻れる。浪川選手にとっては相性はよくないですね』

『浪川選手、打つ手はあるのか?』

 

心配そうに神子や海皇メンバー達がバトルの行方を見守る中、続く浪川は自分のターンを迎える。

 

 

 

[08ターン.浪川side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]2個→3個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]6個→0個。[リザーブ]3個→9個。

 

「メインステップ、バーストセット」

 

[手札]4枚→3枚。

[フィールド]ホオジロタイガーLv.3((S1))BP20000。

 

「これでターンエンドだ」

『あぁ!! 浪川選手このターンも打つ手なしか! 何もせずにターンエンド!!』

『やはりフィールドの支配権がルム選手にある以上、この勝負厳しいですね』

 

バイジャオウ一体の為に攻めにも守りにも迂闊にできない状況。ルムは笑いながら「もう終わり?」と挑発気味に尋ねる。

 

「……何度も言わせるな、俺のターンは終わりだ」

「へぇー、なら後悔しないでよ?」

 

 

 

 

[09ターン.ルムside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]2枚→3枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]8個→0個。[リザーブ]1個→9個。

 

「メインステップ、バイジャオウとクリスタニードルをレベルダウン」

 

既にリザーブにコアがある状況でまださらにリザーブのコアを増やすルム。何を呼び出すつもりなのか、嵐の前の静けさの様にフィールドを包む静寂。

 

「邪なる冥界の魂喰らいし陰の皇! 蛇皇神帝アスクレピオーズをLv.2で召喚ッ!」

 

[リザーブ]11個→0個。

[トラッシュ]0個→7個。

[手札]3枚→2枚。

 

フィールドを包む瘴気が日の光を隠し、薄暗くなったフィールドを怪しく灯す紫怨の炎、その炎を纏いながら暗い闇の空より舞い降りるスピリット、蛇遣い座に伝えられしアスクレピオーズの姿だった。

 

『こ、ここでルム選手アスクレピオーズ!!? 二体目のXレアを呼び出した!?』

 

邪悪な蛇達の姿は見るもの全てに恐怖を刻みかねない程の迫力。その光景に対し、唯一人ルムだけは笑みを浮かべて眺めており、その笑みもまた邪悪を感じさせるほどの笑みだった。

 

[フィールド]蛇皇神帝アスクレピオーズLv.2((S1)3)BP12000、双頭の龍王バイジャオウLv.1(1)BP3000、クリスタニードルLv.1(1)BP10000。

 

「ハハハ! 覚悟はいいよね? アタックステップ! クリスタニードルでアタック!」

「ライフだ!!」

 

クリスタニードルの牙を剥き出しに再びバリアに喰らい付くとライフを破壊する。

 

「ッ!!」

 

[浪川side]

[ライフ]3→2。

[リザーブ]9個→10個。

 

「アスクレピオーズでさらにアタック!!」

「ライフで受ける!」

 

紫の魔神、アスクレピオーズはつえを天に掲げると、禍いを象徴するかのように黒い雷を放ち、その雷撃がバリアへと撃ち込まれ、ライフを破壊される。

 

「ぐあっ!」

 

[浪川side]

[ライフ]2→1。

[リザーブ]10個→11個。

 

さすがに衝撃が堪えたのか、衝撃に表情を歪め、バンと武凱はすぐさま「キャプテン」と心配する様に叫ぶ。

 

「残りライフは一つ、終わりだね? バイジャオウでアタック!!」

 

最後のライフを目掛けて一気にバイジャオウは進撃。【呪撃】を持つスピリットのアタックだが、それでも残るライフは1つ。結果に対しても、止めるしか打つ手はなかった。

 

「簡単に負ける程、俺は浅くねぇぞ!! ホオジロタイガーでブロック!!」

 

[Battle]双頭の龍王バイジャオウLv.1(1)BP3000vsホオジロタイガーLv.3((S1))BP20000。

 

互いに吠える蛇と鮫。二頭の首がホオジロタイガーへと喰らい付かんと襲い掛かるが、ホオジロタイガーは咄嗟に海面に飛び込み、姿が見えなくなった事にバイジャオウは足を止め、海面の様子を伺うが、次の瞬間、まるでミサイルのような勢いで海面から飛び出すホオジロタイガーの姿。あまりに猛スピードの突進にバイジャオウは宙へと突き上げられ、そのまま真っ逆様に落ちるバイジャオウにホオジロタイガーは大きく飛び上がると、その大きな口を広げ、二頭の首を纏めて喰らい付き、破壊する。

 

『ホオジロタイガーでのブロック、浪川選手何とか凌いだか!?』

「いや、まだだよ?」

「!?」

「言った筈だよ、終わりだってね!!」

 

ルムの言葉と同時に、フィールドに響く蛇の叫び。アスクレピオーズは杖を手に翳した瞬間、フィールドへと現れる紫の霊、それはまさに蛇の姿をした怨霊。無数の怨霊達がフィールドへと集い収束されると一つに集う怨霊達は徐々にその姿を変えて行く。

 

「BPを比べて破壊された時、アスクレピオーズの効果を発揮させる!」

「!」

 

【蛇皇神帝アスクレピオーズ】9(5)紫、スピリット、光導/魔神。

Lv.1(1)BP7000、Lv.2(4)BP12000、Lv.3(9)BP14000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『このスピリットの召喚時』

系統:「星魂」を持つ自分のスピリット1体を破壊する事で、自分はデッキから3枚ドローする。

Lv.2、Lv.3『自分のアタックステップ』

BPを比べ、系統:「光導」/「妖蛇」を持つ自分のスピリットが破壊された時、そのスピリットを回復状態で自分のフィールドに戻す。

Lv.3『このスピリットのブロック時』

このスピリットがブロックした相手のスピリット上のコア全てをボイドに置く。

 

集う怨霊達が黄泉からバイジャオウをフィールドへと呼び戻し、再び姿を現したバイジャオウは唸りを上げる。

 

『バイジャオウまたしても復活!? 破壊しても倒しても蘇り続けるルム選手のスピリット達はまさに恐怖! 私も正直怖くなってきました』

「まだ終わってないよ? さらにバイジャオウ自身の効果により【呪撃】を発揮。バトル終了後にホオジロタイガーを破壊!」

「!」

「自慢のスピリット、毒牙で仕留めてあげるよ!!!」

 

バイジャオウは蘇ると早々にバトルを終え、戻ろうと引き返すホオジロタイガーに再度突っ込み、その殺気にすぐさま振り返り迎撃しようと牙を構えるが、一頭の首が毒を吐き付け、ホオジロタイガーはそれを避けようとするが体勢を崩し、その隙にもう一頭の首が毒牙をホオジロタイガーに突き刺し、破壊してしまう。

 

『頼みの綱のホオジロタイガーも【呪撃】の前に倒れた!! 浪川選手、もはやこれまでか!!』

 

キースピリットを失い、回復状態で復活したバイジャオウはまだ攻撃が可能。もはや誰もがこの勝負の結果を見据えていた。「終わりだね?」と価値を確信するように笑いながら述べるルムだが、それに対し。

 

「……終わりだと、本気で思ってるか?」

「?」

「俺も言った筈だぞ、簡単に負ける程俺は浅くねぇと!!」

 

その目はまだ決して勝負に絶望する表情ではなく、どこまでもルムに牙を突立てんとと敵意を剥き出しに、その闘志は尽きてはいない。

 

「!」

「相手によるスピリットの破壊でバースト発動だ!」

 

勢いよく伏せたバーストが弾け飛び、それを力強く掴み取ると、そのカードを翳す。

 

「バースト効果発揮! 系統「主君」、「獣頭」を持たないスピリットを敵味方諸共全て破壊する!!」

「!?」

 

浪川の言葉とほぼ同時にフィールドに広がった海面は、突如として激流を巻き上げて上昇し、そのまま地上に向けて巨大な津波の如くフィールド全てを激流が呑み込み、激流による余りの水圧にクリスタニードル、バイジャオウ、アスクレピオーズの三体は押し潰されるかのように激流に沈み、バトルによる破壊では無い為アスクレピオーズは自らの効果を使えず、そのまま三体とも激流の中で消滅してしまう。

 

「バイジャオウは破壊時効果で手札に戻す!」

 

[手札]2枚→3枚。

 

「関係ねぇ! この効果発揮後にこいつをバーストを召喚できる! 荒ぶる激流の力で全てを呑み込み破壊し尽せ!! 七海大名シロナガスをバースト召喚!」

 

【七海大名シロナガス】12(3)青、スピリット、獣頭。

Lv.1(1)BP11000、Lv.2(3)BP15000、Lv.3(4)BP18000。

S(ソウル)バースト:相手による自分のスピリット消滅/破壊後】

系統:「主君」/「家臣」を持たないスピリット全てを破壊する。この効果発揮後、このスピリットカードをコストを支払わずに召喚する。

Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

自分のライフが3以下の時、このスピリットのコスト以下の相手のスピリット/アルティメット1体を破壊し、このターンの間、この効果で破壊した相手のスピリット/アルティメット1体が持つシンボル1つに付き、このスピリットに青のシンボル一つを追加する。

 

フィールド全てを埋め尽くす激流はさらにその激しさを増すが、海面より蠢く一体の巨大な影。その影は手に持った薙刀を振るい、繰り出す斬撃は海面から空へと向けて撃ち放たれ、海面を真っ二つに裂いて雨の様に降り注ぐ水飛沫を浴びるそのスピリットこそ、七海大名シロナガス。

 

『おぉっと!! 敗北必死の状況下で浪川選手、逆転となる新たなキースピリットを呼び出した!!!』

『七海大名シロナガス、ホオジロタイガー以外にもまだこんな強力なスピリットを隠し持っていたとは』

 

神子達の言葉に「エンザの時には出せなかったがな」と答え、ルムはシロナガスの姿に対し何を思うのか、冷静にその姿を見つめている。

 

「やるね、そうでなくちゃね。僕はこれでターンエンド」

「虚勢のつもりか? 生憎ここからはもう俺の勝利で飾らせてもらう!!」

 

 

 

 

[10ターン.浪川side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]8個→9個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ]七海大名シロナガスLv.3((S1)3)BP18000。

 

「メインステップ、海王神獣トライポセイドスを召喚だ!!」

 

[リザーブ]9個→3個。

[トラッシュ]0個→5個。

[手札]4枚→3枚。

 

【海王神獣トライポセイドス】6(3)青、スピリット、異合/神星。

Lv.1(1)BP5000、Lv.2(4)BP8000。

Lv.1、Lv.2『自分のアタックステップ』

自分のコスト7以上のスピリット全てを、そのスピリットが持つ最高Lvとして扱う。

Lv.2『自分のアタックステップ』

自分のコスト7以上のスピリット全てをBP+3000する。

 

海面から飛び出すスピリット、だがまだ足りないのか、さらに手札の一枚に手を掛ける。

 

「海の力を得し魔神! 異魔神ブレイヴの一角! 鮫魔神を召喚だッ!!」

 

海面から飛び出す幽体のような半透明な体を持つブレイヴ、鮫魔神。

 

[リザーブ]3個→0個。

[トラッシュ]5個→8個。

[手札]2枚→1枚。

 

「荒ぶる海の獣共!! その底力を見せしめる時だぁッ!! トライポセイドスを鮫魔神に【左合体(レフトブレイヴ)】! シロナガスを鮫魔神と【右合体(ライトブレイヴ)】だッ!!」

 

鮫魔神はトライポセイドスとシロナガスの二体に取り付き、己とリンクさせ、ブレイヴした事で鮫魔神もまた力を開放するかのように先程までの半透明な体を完全に実体化させ、力強く吠える。

 

「アタックステップ!! トライポセイドスの効果発揮!! 俺のコスト7以上のスピリット全てを最高レベルとする! 鮫魔神とブレイヴした事でトライポセイドス自身のコストは11! シロナガスのコストは17!! よってこの二体を最高レベルとして扱い、さらにトライポセイドスのLv.2の効果でブレイヴした2体をさらにBP+3000!!」

『浪川選手!! 圧倒的なパワーを見せてくれます!!』

『現在のトライポセイドスのBPは15000、シロナガスのBPは21000、ホオジロタイガーをも上回る驚異のパワーですね』

 

嬉々として語る実況、だが浪川にとっては実況の言葉も、自分に向けられた声援も聞く耳を持ち合わせてはいない。彼が求めるのは唯一つ、このバトルによる勝利のみ。

 

「行くぞ!! トライポセイドスでアタック!!!」

 

腕の矛を掲げながら一気に進撃するトライポセイドス。激流をその身に纏いながら突っ込み、豪快な一撃をルムへと叩き込むと一気にライフを破壊する。

 

[ルムside]

[ライフ]3→1。

[リザーブ]6個→8個。

 

「これで終わりだ! 鮫は喰らい付けば蛇と違って最後までその牙を離さねえ!! 身をもってそれを知れッ!! シロナガスでアタック!!」

 

鮫魔神は両手の光弾を海面に撃ち込み、衝撃によって再び津波を引き起こすと、シロナガスはその波に乗り上げ、一気にルムへと迫る。

 

「……ここまでだね。ライフで受けるよ」

 

打つ手立てはないのか、諦めたように言葉を吐き捨てると、最後のライフに向けて、津波の勢いを乗せて一気に薙刀での一閃。残るライフを豪快に破壊する。

 

「ッ!!!」

 

[ルムside]

[ライフ]1→0[Lose]

 

 

 

 

***

 

 

 

 

『決まったーーッ!!! 浪川選手、やはり強し! レッドドラゴンと互角にぶつかり合ったその実力は今なお健在だ!!』

『いえ、あの時よりも浪川選手はさらに強くなってます。これは浪川選手にも今後目が離せないですね』

『成程!! では今日の放送はこれまで!! また次回も熱いバトルを!』

 

放送を終えた瞬間、「終わった?」と突然を声を掛ける人物。その声にバン達も気づき、振り返ると、そこには紫苑の姿があった。

 

「よっ、神子ちゃん達に海皇メンバーの皆も御揃いで」

「紫苑さん、本当にあなた神出鬼没ですね」

「あれぇ? 神子ちゃんがそれ言っちゃう? まっ、俺も今さっき来たとこなんだけどさ」

 

軽い調子での会話だが、紫苑の姿に武凱とバンは紫苑を受け入れがたいように表情で示し、「何しに来やがった?」と苛立ち気味に尋ねる。

 

「相変わらずお二人さん怖いね、ちょっとは落ち着いてよ?」

「うるせぇ、解説実況の神子達ならまだしも、テメェみたいな部外者が何しにここに来やがったんだ!!」

「御尤、けど安心してくれよ。用事済ませたらすぐ帰るからよ」

「用事だと?」

 

バン達の言葉に対し、紫苑は「あいつにな」と指刺し、その先にいたのはルムの姿だった。

 

「あいつに!?」

 

不思議に思いながらも紫苑はそれに構う事無くステージと降り、ルムと浪川の間に駆け寄って行き、二人も紫苑の姿に気づく。

 

「八鳥、紫苑だったな? お前もここに何の用だ?」

「見知っていただき恐縮。用としては、そこにいる内のチームシャドウのメンバーを迎えに来た次第でさぁ」

「チームメンバー! こいつがか!?」

 

紫苑の言葉に驚いたように反応し、ルム本人も特に否定する様子はなく、それに頷いて見せる。

 

「チームシャドウ、てっきり俺は架空のものだと思ってたんだがな」

「あー、どっかの誰かさんにもそれ言われたわ。まぁチームメンバーにも他にいるし、存在してるって事ぐらいは認知してもらえたかな?」

「あぁ覚えてやる。そして此奴が今回俺にバトル挑んできたのもテメェの差し金って事か?」

 

眉間にしわを寄せて声を低くして尋ねる浪川の言葉に、紫苑はわざとおどけた反応を示しながら「違う違う」と否定して見せる。

 

「悪魔でそれは誤解だって。うちらチームシャドウはランキング未登録だからな」

「別にお前等のチームの現状はどうだっていい。テメェのメンバーぐらいテメェでしっかり管理しとけ」

「おや? それに関してはブーメランになるけど?」

 

バンと武凱を一瞥しながら言い、二人は心当たりがあるかのように言葉を詰まらせる。

 

「まあ、確かに今回の事はチームリーダーとして謝罪さしてもらうぜ。ルムによーく俺の方から言っとくし、ルムもバトルできて満足だろ?」

 

紫苑の言葉にルムは静かに頷き、先程のバトルを思い返し満足したような笑みを浮かべる。

 

「うん。負けたけど、楽しかったよ。噂通りの強者だったよ、浪川海斗。できればまたやりたいね。今度こそ勝利を飾るためにさ」

「ふん、テメェが俺に歯向かうならいつでも噛み裂いてやるよ。それはテメェも同じだぞ、紫苑!」

「お、俺は別にそんな気ないって。まぁとにかく迷惑かけたからこの辺で失礼するぜ」

 

おどけた調子で言いながら背を向けてスタジアムを後にしようとする紫苑とルムだったが、「待て!」と声を荒げて呼び止める。

 

「紫苑、テメェいつまで弱者の皮を被ってるつもりだ?」

「? ちょっと何言ってんのか分からねぇな」

「……まぁいい。いずれせよ、俺の前に立つ奴は全員噛み砕く。それを覚えてけ!」

「へぇへぇ、肝に銘じておきますよ!」

 

「じゃぁこの辺で!」と最後まで軽い調子でスタジアムから出て行く二人、その姿を見届けると、バンや武凱も浪川の元へと駆け寄る。

 

「キャプテン、バトル凄かったぜ! やっぱ敵なしだな!」

「そうともよ、この調子でエンザにもリベンジして、他の上位チームも倒してすぐにキャプテンがナンバーワンを証明する日も近いぜ!」

「……正直それで終わりなら楽なんだがな」

「えっ?」

「超えるべき相手が目先だけにいるとは限らねぇって話だ」

 

何かを見据えたかのような浪川の言葉、バンと武凱はその真意を把握できていないように顔を見合わせて首を傾げる。

 

「キャプテン、言ってる意味がよく?」

「八鳥紫苑、あいつもまた俺の超えるべき相手になりかねねぇ事だ」

「紫苑? あんなのエンザとつるんでる唯の腰巾着じゃないですか? チームリーダーっぽいっすけど、バトルも基本しないし、実力も大したことある訳────」

「お前の目は節穴か?」

「!?」

「チームメンバーのルムはそれなりの実力だった。そしてあいつとバトルして確信できた。強者と戦う事を常とする目、そういう目の奴は絶対に自分より弱い相手には従わない。例え演技だと受け入れ難いほどにな」

「?」

「もし仮に奴が本当に実力が取るに足らない相手なら少なくともルムはアイツを自分のリーダーである事を認める事はねぇ。だが認めている以上、アイツの実力はルムより上なのは確かだ」

「う、嘘だろ!?」

 

浪川の言葉には二人とも唯々衝撃的だった。しかし浪川は二人は別に、少しだけを口元を緩ませ、笑って見せた。

 

「まぁどんな奴にしろ、負ける気はないがな」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「で? お前が来たって事はあいつも来てんのか?」

 

舞台は変わり、スタジアムを後に街外れを歩く紫苑と、その後に続くルム。歩きながら振り返る事無くルムに向けてそう言うと、ルムは足を止めて「いいや」とその言葉に応える。

 

「まだ私用が忙しんだって。でも言伝は預かってるよ」

「ほぉ? で、何だって?」

「『そろそろ本格的に動け』だってさ」

 

意味深な伝言だが、それに対し紫苑は可笑しそうに笑って見せる。

 

「ハハ、だからお前が来たって訳か」

「そうかもね。で? どうするの?」

「フン、アイツが来ねぇうちは何もしねぇ、そんな命令みたいな伝言聞いてられるかよ」

「それ聞いたらアイツなんて言うだろうね」

「知るかよ、リーダーは俺だぜ? それとも文句でもあるか?」

「別に。僕は言伝に預かっただけ。後の事は従うだけだよ」

「なら今まで通り好きにやらせてもらうだけさ。気楽にいこうぜ? お互いにな」

「別に構わないよ、リーダー」

 

言葉の真意は分からないものの会話を話終えると、二人は再び歩き出すのだった。




まず最初に更新遅れてすみません、ちょっと最近小説活動がローペスになってました。今までが早すぎただけで今後からこんなペースになってしまうかもしれませんが、なるべく早めに早めに投稿できるよう頑張ります! 読んでいただいた方には本当にありがとうございます。そしていかがでしたでしょうか! 今回のバトル!!

速いものでもう第10話目の更新となってました。そしてまた新たに新キャラ蛇目ルム! キースピリットであるアスクレピオーズやバイジャオウ等、前の小説で書きたかったのですが、書く場面がなく今回この小説で登場させることが出来てとてもうれしいです!!



ラストはちょっとシリアスっぽいのですが、まぁ今後はどうなるかはこれからもッ見逃さず見てもらえれば(ステマ)
話は変わりまして、アニメでは新たに亥の神皇、カラミティボア出ましたね! デッキ破棄が封じられてても相手スピリットへの連続指定アタックだけでも脅威となるのでかなり強いのではと思います。でも正直カラミティボアより次の弾で出る新規古龍Xと辰の神皇が気になってます(笑)
【呪縛】がどんな効果なのか凄い気になってます!! 指定アタックしたスピリットが動いてバトル終了時に死ぬという効果なのかと予想してますが、まぁ期待して待つ次第です。

小説は第10話まで書けたので、次はその記念として特別篇的なものを書きたいな思ってます。クソ茶番になりそうな予感がしますが、温かい目で見てもらえると助かります(ノД`)・゜・。

これからもこの小説をどうぞよろしくお願いします!


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No11.聖獣降臨、アルティメットvsアルティメット

・以下注意
誤字、プレイミスアリかも。
バトル表記が人によっては分かりずらいかも。

それでも大丈夫という方はどうか温かい目で見てもらえると幸いです。発見したミスやバトル表記などのご指摘気軽にお待ちしております。






 

「行くよ! リューマンゴッドソードでアタック!」

『ら、ライフで受ける!!』

 

いつも通りスタジアムでバトルしているハルヤ達。相手はチーム氷帝メンバーの内の一人のようで、リューマンゴッドソードの攻撃に対し、相手はライフで受けるしかなく、リーマンゴッドソードの振り下す剣の一閃が最後のライフを破壊する。

 

『決まったぁーーッ!! ハルヤ選手今日も絶好調!! 見事に華麗な勝利を収めましたーーッ!!』

『えぇ、今日もまた見ごたえのあるバトルでした』

 

同じくそのバトルの様子を実況する神子達、白熱した実況の声に見ている観客達は歓声を上げ、ハルヤもその歓声を誇らしげに受け止めていた。

 

「バトルありがとうございました」

『クソ―、負けた負けた!! 本当強いぜお前』

 

対戦相手は悔しそうにしながらも、ハルヤの実力を認め勝負できたことを満足する様に握手を交わし、その後ろではザックとキッドも「お疲れ!」と声を掛ける。

 

「だいぶバトル重ねて、リーダーとしての実力に見合って来たんじゃねぇの?」

「ありがとうザック。でも僕まだ正式なチームリーダーになった訳じゃないんだけどね?」

「ノープロブレム、この調子ならすぐに他の2人も見つかるさ」

「そうだな、そろそろチーム名ぐらいは考えとけよ、かっこいい奴!」

「う、うん。まぁ頑張るよ」

 

和気藹々と語るハルヤ達、その様子を眺める一人の少年、コン太。何を思うのか、実況を終えた後も気になるようにハルヤ達の様子を見つめる。

 

「……」

「コン太、どうしたの?」

「えっ、あっ……別に何でもないよ」

 

後ろから声を掛ける紅葉に一瞬遅れて反応し、紅葉だけでなく神子もその様子を不思議に思う。

 

「どうかしたんですか? 何かあるなら相談に乗りますよ?」

「別に姉さん達が心配する様な事じゃないよ。実況も終わったし、また別の情報集めに行ってくるね」

「あっ、はい。ではお願いしますね」

「うん、任せて」

 

未だ疑問は晴れないが、コン太の言葉に頷くとその場から飛び出し、姉である紅葉や神子達にとって、その様子は気がかりだった。

 

「お姉ちゃん、コン太何か様子が可笑しかったね」

「えぇ。でも」

 

神子もコン太の想いを知る訳ではなかったが、何となくそれに深入りするべきではないように感じられた。心配する気持ちはあれど、それを言葉にせず、神子達もまたその場を後にしていく。

 

 

 

 

***

 

 

「僕だって……!」

 

神子達と別れた後、近くのフリースタジアムまで来ると観客席の鉄柵に肘を置いて、何かを想うようにただ静かに言葉を零すコン太。思い詰めたように考え込みながらも、しばらくして考える事にも疲れたのかぼんやりとスタジアムでバトルしているカードバトラー達の様子を眺める彼だったが、そこへ。

 

『おらぁどいたどいた!! このスタジアムは今日から俺様のものだ!!』

「!?」

 

周りのカードバトラー達を押しのけ、不躾な態度で叫ぶ一人の男。何事かと身を乗り出して慌ててその様子を確認する。

 

「聞こえなかったか? 今日からここは俺様のスタジアムにする!! 文句がある奴はかかってきな!」

 

傲慢な男の態度は見ていて気持ちのいいものではない。男の様子に対し周囲のカードバトラー達は困惑するばかりでその状況に痺れを切らしたのか、真っ先に男の元に向かうコン太。

 

「ねぇ、そう言うのよくないんじゃない?」

「あぁ? 何だチビ? 文句でもあんのか?」

 

コン太の言葉に、振り返り小馬鹿にしたような態度で言葉を返す男。その言葉に対し、少しだけ苛立つように反応を示す。

 

「チビじゃない。犬神コン太。それが僕の名前だよ!」

「犬神……何だ、誰かと思えば実況の奴等か。そんなのが俺様に何の用だよ?」

「要件は大体分かるよね? スタジアムの独占なんて勝手な真似許されると思ってるの?」

「許されなかったら何なんだよ?」

「決まってる。アンタの望み通り、これで解決するだけだよ!」

 

自分のデッキを構えながら挑戦する意思を示し、コン太のその様子に男は口角を上げ、笑みを浮かべる。

 

「ハハハ!! いいぜ、やってやる!! 俺の相手になるかは知らないけどな!」

「馬鹿にするな! お前なんかに負ける訳ないだろ!」

「何でもいい! ともかくやるだけだ!! 行くぞ!」

「!」

 

互いにデッキを構える両者、周りのカードバトラー達はその様子をただ静かに傍観する。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「はぁー、あと二人。中々チームメンバーが集まらないね」

 

舞台は変わりチーム氷帝のスタジアムで現状に悩むハルヤ達。メンバー集めに苦労しているのか、悩みを呟きながらスタジアムでただのんびりとバトルの練習を繰り返すハルヤ達。

 

「焦る事はねぇって、例えチームが出来なくても俺にとってのリーダーはお前だけだぜ、ハルヤ」

「そうだな。まっ、俺にも勝ったんだしそこはもう認めてるぜ」

「はは、二人ともありがとう。でもチームが出来ないってのは嫌だな」

「馬鹿冗談だよ、冗談!! チームは絶対できるって!! リーダーがそんなつもりでどうすんだよ!」

「ご、ごめん!」

 

ザックに対して軽く謝りながら賑やかに言葉を交わすハルヤ達。そこへ突然「すみません!」と慌てたようにスタジアムへ駆け込む一人の少年。

 

「何ッスか!! ここは氷帝メンバー以外立ち入れないっすよ! 例外もいるけど」

 

ハルヤ達を一瞥しながらその少年に対応する将。だがその少年にとって今はそれに構える状況じゃなかった。

 

「ご、ごめんなさい!! でも大変なんです!!」

「一体どうしたんっすか? 訳ありなら聞っすよ?」

 

焦るような少年の様子に将も唯事ではない事を感じたのか、落ち着くように少年を促し、焦る少年の理由を聞く。

 

「実は、このスタジアムを独占するとか言い出して……!」

「!」

「影井秀って名乗る男で、そいつに対して今誰かが戦ってくれてるんですけど、状況は良くないみたいで。だからチーム氷帝のメンバーに何とかしてほしくて!!」

 

少年の言葉を無下にする訳にはいかない。何とかしてあげようと真っ先に駆けつけようと思う将だったが、今の彼にはそれを行動に移せない訳があった。

 

「な、何とかしてあげたいのは山々っすけど、今日は兄貴もいないし、沖田さんも私用で出掛けてて、俺がここを離れる訳には……!」

 

悩みの種にどう動いていいのか分からず仕舞いの将だったが、話を聞いていたのか、「それなら!」とハルヤ達が名乗りを上げる。

 

「将さん! それなら僕達が行きます! それなら問題ないでしょ?」

「ハルヤ!」

「僕だって、みんなのスタジアムを勝手に独占使用だなんてカードバトラー許せませんから!」

 

ザックとキッドもハルヤに同意するように頷き、「ならお願いするッス!」とハルヤ達に要件を任せると、少年に案内され、ハルヤ達はすぐさまその場に向かうのだった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「うわあッ!!」

 

一方でスタジアムでは最後のライフを砕かれ、衝撃に吹き飛ばされるコン太。決着となり、自分の勝利に満足するように男は高らかに笑い声を上げる。

 

「アハハハ!! 全く大した事ねぇな! やっぱ俺の相手にはならなかったぜ!」

「ぐっ!!」

 

悔しそうに拳を握りしめるコン太だったが、悔しがる相手の様子に影井は面白そうに笑みを浮かべる。

 

「お前みたいに弱い奴ならデッキももったいねぇ。こいつは俺が貰ってやるよ」

「なっ!! 返せ! それは僕の大切な……!」

「ハハハ、取り返したかったらもっと強くなってまた挑んでくるんだな。まぁまた俺に負けんのは目に見えてるけどな!!」

 

デッキを取られ、あまりの悔しさに涙を浮かべるコン太。「さぁ今度は誰だ?」と次の相手を催促する影井に、先程のバトルを見ていたカードバトラー達は誰一人名乗りを上げようとはしなかった。

 

「けっ、どいつもこいつも雑魚ばかりだな。ならこのスタジアムは俺様の物に……ん?」

 

何かに気づいたようにスタジアムの入り口に視線を向ける影井、コン太もつられるように振り返ると、そこには一人の少年に案内され駆けつけるハルヤ達の姿。

 

「ハルヤさん? どうしてここに!?」

「さっきの子に事情を聴いて案内してもらったんだ」

 

「それより」と影井に視線を向けるハルヤ。一目でその男が騒ぎの犯人であることを理解し、ハルヤ達の姿に影井も「助っ人を呼びやがったか」と状況を理解したように言葉を吐き捨てる。

 

「スタジアムを独占なんて許せない!」

「ハッ! なら掛かって来い! 俺が勝ったらそいつみたいにデッキを貰うぞ?」

「!」

 

コン太を指差す影井の言葉。あまりに過ぎる影井のやり方にはハルヤもますます怒りを感じずにはいられなかった。

 

「僕が勝ったらコン太のデッキも返してもらうよ!」

「あぁ、勝てればな!」

 

すぐさまバトルを始めようとする二人、だが「待ってください!」と、不意に掛けられる二人のバトルを制止する一人の声。

 

「「!?」」

『そのバトル、私にさせてください』

 

振り返った人物の姿にハルヤ達は驚きを隠せず、そして何よりその人物の姿を一番に驚いたのはコン太だった。

 

「ね、姉さん!?」

 

その言葉通り、そこには自分の姉である神子と紅葉の姿があった。

 

「ね、姉さん達まで何でここに!?」

「すみません、深入りするべきではないかと思ったのですがやはり弟を放っておく事はできなくて」

「場所は私が教えたよ、私だってコン太と同じく情報には長けてるんだから! こんな騒ぎすぐに分かったよ!」

「まっ、無駄話はこの際おいて置くとして、本題に入りましょう。ハルヤさん、このバトルぜひ代わってくれますね?」

「えぇ、はい。でも神子さんって……!」

「状況は概ね把握しています。それに大丈夫です。私だってこんな方には絶対負けませんから」

「なんだと?」

 

神子の態度を気に食わないように苛立ちを表情に表す影井だが、神子は全く気にする事無く続けて行く。

 

「早速始めましょうか、バトルするのは私です。いいですね?」

「フン、誰が相手だろうが別にいいがよ、たかが実況連中の奴が俺に敵うと本気で思ってんのか?」

「相手の力量も図れないのなら底が知れますよ」

「ほざけ!! 勝つのは俺だ! 俺が勝ったらお前のデッキを貰うからな!」

「なら私が勝ったら弟のデッキを返してもらいます。そしてこの場から出て行ってもらいます。紅葉、このバトルに関しては実況は不要です。この人とのバトルには実況価値はありません」

「ッ!! 馬鹿にしやがって目にも見せてやるぜ!」

 

煽る様な神子の言葉に額に青筋を立てながらデッキを構え、神子も自分のデッキを取り出すと互いにバトルの準備を整える。

 

「「ゲートオープン! 界放ッ!!」」

 

二人の掛け声がバトルの開始を告げ、神子の先行によってバトルの幕が開かれる。

 

 

 

 

[01ターン、神子side]

[スタートステップ]

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「メインステップ、華黄の城門を配置します!」

 

[リザーブ]4個→1個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→4枚。

 

【華黄の城門】3(2)黄、ネクサス。

Lv.1(0)、Lv.2(2)

Lv.1、Lv.2『自分のスタートステップ』

自分の手札にあるスピリットカード/マジックカード1枚をオープンして手元に置く事で、自分はデッキから1枚ドローする。オープンしたスピリットカード/マジックカードは、ゲーム終了時まで手札にある時と同様に使用できる。

Lv.2『相手のターン』

スピリット/アルティメット/マジックの効果で回復した赤/緑/青のスピリット/アルティメット全てを破壊する。

 

[フィールド]華黄の城門Lv.1(0)。

 

「これでターンエンドです」

 

 

 

 

[02ターン、影井side]

[スタートステップ]

[コアステップ]4個→5個。

[ドローステップ]4枚→5枚。

 

「へっへ! 女だからって容赦しねぇぞ!」

「ふふ、女性に対して強引な方は嫌われますよ?」

「そっちから挑んできやがった癖に今更何言ってやがる! まぁ今から精々俺に挑んだことを後悔するんだな!」

「随分な物言いですが、勝負に関して私は負ける気はありません。あなたに対しては少し私も怒っているんですよ?」

「ハッ! 怒ってるからどうしたんってんだよ!! たかが実況解説者風情が俺に敵うか! 行くぜメインステップ! まずはガーネットドラゴンを召喚だ!」

 

[リザーブ]5個→0個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]5枚→4枚。

 

【ガーネットドラゴン】4(赤2 白2)白、スピリット、甲竜。

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(2)BP4000、Lv.3(4)BP6000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3

このスピリットの色とシンボルは赤としても扱う。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『相手のアタックステップ』

系統:「甲竜」/「竜人」を持つ自分のスピリットすべては疲労状態でブロックできる。

Lv.2、Lv.3『重装甲:赤/紫/白/青』

このスピリットは相手の赤/紫/白/青のスピリット/ブレイヴ/ネクサス/マジックの効果を受けない。

 

[フィールド]ガーネットドラゴンLv.1((S(ソウルコア)1))BP3000。

 

「アタックステップ! ガーネットドラゴン行けッ!」

「ライフで受けます」

 

ガーネットドラゴンは機械交じりの鳴き声を上げながら翼を広げて神子へと迫り、頭部の角をバリアに突立て破壊する。

 

「ッ!」

 

[神子side]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]1個→2個。

 

衝撃に多少仰け反り、コン太と紅葉は心配そうに見るが、本人はバトルには慣れているのか何でもないかのようにすぐに平静に切り替える。

 

「ターンエンド」

 

 

 

 

[03ターン、神子side]

[スタートステップ]

 

「私のターンのスタートステップ開始時、ネクサス、華黄の城門の効果を発揮させます!」

「!」

「手札にある「レイキ」をオープンする事で1枚ドローします!」

 

ターン開始と同時に発動するネクサスの効果、手札にあるレイキをあえて相手にも公開することにより、新たなカードを一枚ドローする。

 

[オープン]レイキ。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[コアステップ][リザーブ]2個→3個。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]3個→6個。

 

「メインステップです。まずはオープンしたレイキをそのまま召喚させます」

 

[リザーブ]6個→3個。

[トラッシュ]0個→2個。

 

【レイキ】3(1)黄色、スピリット、想獣。

Lv.1(1)BP2000、Lv.2(2)BP3000、Lv.3(4)BP4000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3【聖命】『このスピリットのアタック時』

このスピリットのアタックによって相手のライフを減らしたとき、ボイドからコア1個を自分のライフに置く。

Lv.3

【スピリットソウル】を持つ自分のスピリット全てに【聖命】を与える。

 

[フィールド]レイキLv.1((S1))BP2000、華黄の城門Lv.1(0)。

 

「アタックステップです。レイキでアタックさせます!」

「はは!! ガーネットドラゴンの効果を忘れたか!!」

 

神子の宣言に突撃するレイキだが、その宣言を聞くと口角を上げて笑いだし、その声にガーネットドラゴンも反応するように吠え始める。

 

「姉さん! 無茶だよ!! ガーネットドラゴンは疲労状態でもブロックできる効果を持つスピリット!! このままじゃ……!!」

「ハハハ!! もう遅い!! 知識不足だな!! レイキはガーネットドラゴンで返り討ちにできるぜ! ガーネットドラゴンでブロックだ!」

 

[Battle]レイキLv.1((S1))BP2000vsガーネットドラゴンLv.1((S1))BP3000。

 

互いに駆け出し、そのままお互いの相手に突進し、激突する二体。だが、パワーで上回るガーネットドラゴン。少しずつレイキを押し返していき、その様子にガーネットドラゴンの勝利を確信するが、対して神子は全くその様子に動じる事は無かった。

 

「フラッシュタイミングです。マジック、ウイングブーツを使用します!」

「何ぃっ!?」

 

【ウイングブーツ】4(3)黄色、マジック。

『フラッシュ効果』自分のスピリット1体を指定する。このターンの間、バトル解決時、そのスピリットのLvがブロックした相手のスピリット以上の時、BPを比べずに相手スピリットにブロックされなかったものとして扱う。

 

[リザーブ]3個→1個。

[トラッシュ]2個→4個。

[手札]4枚→3枚。

 

黄色の十八番であるマジック、ウイングブーツの効果によりレイキの体に羽が取り付けられたかと思うと、その大きな体が宙に飛び上がり、ガーネットドラゴンを飛び越え、そのまま直接相手へと迫り、レイキは一気に飛び降り、展開されたバリアに直接圧し掛かり、その圧力でライフを破壊する。

 

「ぐあっ!!」

 

[影井side]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]0個→1個。

 

「私に知識を問うなんて愚問です。実況解説であれだけ語ってる人間が、知識不足な訳ないでしょう。浅はかだったのはあなただったようですね」

「ッ!! テメェ!!」

 

神子の言葉に苛立ちを隠せないが、まだ神子のターンは続いている。相手に攻撃を決めた事でレイキは自身の効果を発動させ、突如吠えたかと思うと、失ったライフに再び光が灯り始める。

 

「レイキがライフを減らしたので、【聖命】の効果を発揮させます。 ボイドからコア1個を私のライフに置きます」

「!」

 

[神子side]

[ライフ]4→5。

 

「ちぃッ! ライフを回復しやがったか!!」

「これでターンエンドです」

 

 

 

 

[04ターン.影井side]

[スタートステップ]

[コアステップ]1個→2個

[ドローステップ]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]2個→6個。

 

「メインステップ! ガーネットドラゴンをLv.2にアップ、さらにもう1体、ガーネットドラゴンを召喚だ!」

 

[リザーブ]6個→0個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→4枚。

 

[フィールド]ガーネットドラゴンLv.2((S1)1)BP4000、ガーネットドラゴンLv.2(2)BP4000。

 

「ふん、ライフを回復しようがこっちは一気に攻めまくるだけだ!! アタックステップ! 二体のガーネットドラゴンでそれぞれアタックだ!!」

 

二体のガーネットドラゴンに一気に指示を出すと、それぞれ神子へと迫って行き、その頭部の角をバリアへと突立て一気に神子のライフを破壊していく。

 

「くっ!!」

 

[神子side]

[ライフ]5→3。

[リザーブ]1個→3個。

 

「ターンエンド! どうだ! 幾ら小細工しようが俺には通じねぇぞ!!」

「言葉は選んでくださいね。でないと、軽く見えますよ?」

「ほざけ!! どれだけ粋がっても勝つのは俺だ!」

「……あなたのような人に、私は負けるつもりはないですよ」

 

真剣な表情と、神子の言葉に感じられる迫力をバトルを見ているコン太と紅葉は感じ取り、ライフを失ってなお全く動じることはない。

 

 

 

 

[05ターン.神子side]

[スタートステップ]

 

「ネクサスの効果、スタートステップ開始時に手札のフルーツチェンジをオープンし、一枚ドローします」

 

[オープン]フルーツチェンジ。

[コアステップ][リザーブ]3個→4個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]4個→8個。

 

「メインステップ、レイキをLv.2にアップ。さらに聖天馬スカイをLv.5で召喚します!」

 

[リザーブ]8個→1個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]4枚→3枚。

 

【聖天馬スカイ】5(3)黄色、アルティメット、次代/想獣。

【召喚条件:コスト1以上の自分のスピリット1体以上】

Lv.3、Lv.4、Lv.5

コスト7以下の自分のアルティメットカードの召喚条件を無視する。自分の究極シンボル全てを黄のシンボルとしても扱う。

U(アルティメット)トリガー】Lv.4、Lv.5『このアルティメットのアタック時』

Uトリガーがヒットしたとき、ボイドからコア1個を自分のライフに置く。

 

フィールドに舞い降りる神話に語られし究極、気高い鳴き声を上げながらその翼を羽ばたかせる。

 

[フィールド]聖天馬スカイLv.5(3)BP13000、レイキLv.1((S1))BP2000、華黄の城門Lv.1(0)。

 

「アタックステップです! 聖天馬スカイでアタック! アルティメットトリガーロックオンです!」

「!」

 

翼を大きく羽ばたかせ、文字通り天を駆けながら向かって行くスカイ。その攻撃と共に、影井のデッキに片手を構え、デッキから一枚のカードを弾き飛ばす。

 

「!」

「さぁ、コストのコールを!」

「チィッ、イグアバギー、コスト1だ」

「ヒットです! ヒットしたときの効果によりボイドからコア1個をライフに置きます!」

「クソッ、またか!!」

 

[神子side]

[ライフ]3→4。

 

再び失ったライフを回復させ、スカイのメインのアタックに対し、影井はライフで受ける事を宣言すると、スカイはそのまま相手に迫って行き、展開されたバリアに勢い良く突進する。

 

「がぁッ!!」

 

[影井side]

[ライフ]4→3。

[リザーブ]0個→1個。

 

「これでターンエンドです」

 

 

 

 

[06ターン.影井side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]1個→2個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]2個→5個。

 

「メインステップ! まずはバーストセット! さらにオートマチックガンナーを召喚!」

 

[リザーブ]5個→4個。

[手札]5枚→3枚。

 

【オートマチックガンナー】1(1)白、スピリット、武装/動器。

Lv.1(1)BP2000、Lv.2(2)BP3000。

Lv.1、Lv.2【スピリットソウル:白】

自分がアルティメットカードを召喚するとき、このスピリットに白のシンボル1つを追加する。

 

「ガーネットドラゴンは赤のスピリットとして扱い、さらにオートマチックガンナーの【スピリットソウル】を発揮だ! 白のシンボル一つをオートマチックガンナーに追加!」

「!」

「赤のシンボル2つ、白のシンボル2つで軽減シンボルをすべて確保!! さぁ行くぜ俺のキーカード!! 灼熱の炎と鋼鉄の体を持つ究極の竜! アルティメットジークフリーデンをLv.4で召喚だぁッ!! 不足コスト確保で2体のガーネットドラゴンをレベルダウン!」

 

[リザーブ]4個→0個。

[フィールド]ガーネットドラゴンLv.2((S1)1)BP4000→ガーネットドラゴンLv.1(1)BP3000、ガーネットドラゴンLv.2(2)→ガーネットドラゴンLv.1(1)BP3000。

[手札]4枚→3枚。

 

大地から噴き上げる炎と吹雪、正反対の性質の持つ二つだが、それは次第に一つとエネルギーとして収束され始めると、黄金の輝きを放ち収束されたエネルギーから飛び出す究極の竜、アルティメットジークフリーデンがその姿を現す。

 

「どうだ!! 俺のキーカードの姿は!!」

 

フィールドを揺るがす程の咆哮。その姿に自慢げに語るが、神子はそれに対し、ただ純粋に「何故」と問いかける。

 

「?」

「あなたもそれなりの実力があるかと思います。けど、だとすればなぜこんな真似をしているのですか?」

「ハッ、何かと思えば今更文句か? 俺は強いんだ! だったら強い奴には強い奴の権利ってもんがあるだろ? だから俺がこのスタジアムを独占出来んのも当然の権利って訳だ!!」

 

神子の言葉に対し、悪びれる気もなく返答して見せる影井、その言葉に対し神子は唯呆れたようにため息を吐き捨てる。

 

「悲しい人です。あなたが幾ら強者を名乗ってもそういう考えでは、どれだけ虚勢を張っても底は知れますよ?」

「何ぃ!? ふざけるな!! 俺の底が知れるだと? テメェに何が分かる?」

「私は間違ったことを言ったとは思いません。それを証明させますよ」

「ほざけ! 何が証明だ! このターンで俺の勝ちはもう目に見えてんだよ!」

 

既に自分のフィールドの状況に、勝利を確信しているかのように強気な発言。そのまま一気に勝負を決めようとアタックステップと力強く宣言する。

 

[フィールド]アルティメットジークフリーデンLv.4((S1)2)BP20000、ガーネットドラゴンLv.1(1)BP3000、ガーネットドラゴンLv.1(1)BP3000、オートマチックガンナーLv.1(1)BP2000。

 

「行け!! アルティメットジークフリーデン!!」

 

勇ましく吠えながら翼を羽ばたかせ一気に飛び出すアルティメットジークフリーデン。先程のお返しと言わんばかりに影井も先程の神子同様に片手を構える。

 

「さぁ今度はこっちの番だ! アルティメットトリガーロックオン!」

「!」

 

今度は神子のデッキから1枚のカードが弾き飛ばされる。

 

「さぁ、コストは幾つだ?」

「コスト1。シンリューです」

「ヒットだ! ヒットした時コスト1につき、相手のBP10000以下のスピリットを破壊! よってレイキを破壊だ!」

 

アルティメットトリガーをヒットすると同時にアルティメットジークフリーデンはその眼光を輝かせ、自身の炎を槍の様に収束させると、炎の槍をレイキへと一気に投げつけると、炎の槍はレイキの体を貫き、破壊される。

 

【アルティメットジークフリーデン】7(赤2 白2)極、アルティメット、新生/古竜/武装。

Lv.3(1)BP12000、Lv.4(3)BP20000、Lv.5(6)BP30000。

【召喚条件:自分の赤スピリット1体以上と白スピリット1体以上】

U(アルティメット)トリガー】Lv.3、Lv.4、Lv.5『このアルティメットのアタック時』

Uトリガーがヒットしたとき、トラッシュに置いたカードのコスト1につき、BP10000以下の相手のスピリット1体を破壊する。

Lv.4、Lv.5『相手のアタックステップ』

相手のアルティメットがアタックしたとき、自分の手札にあるアルティメットカード1枚を破棄することで、このアルティメットは回復する。

 

レイキが破壊されたことでライフを失い、もうブロッカーは残っていない。無防備となったフィールドにアルティメットジークフリーデンは一気に突っ込んでいく。

 

「お前のライフは4! これで決まりだぜ!!」

「まだですよ! フラッシュタイミング、マジック、フェアヴァイレを使用します!」

「!」

 

[リザーブ]2個→1個。

[トラッシュ]3個→4個。

[手札]3枚→2枚。

 

【フェアヴァイレ】3(2)黄、マジック。

【バースト:相手の『このスピリット/ブレイヴの召喚時』発揮後】

バースト発動時に発揮した『このスピリット/ブレイヴの召喚時』効果を、自分のスピリットが発揮したものとして、同じ効果をもう一度だけ発揮できる。その後コストを支払う事で、このカードのフラッシュ効果を発揮する。

『フラッシュ効果』相手のスピリット1体を指定する。このターンの間、指定されたスピリットはアタック/ブロックできない。

 

「対象はオートマチックガンナー、よってそのスピリットはこのターン攻撃できません!」

「まだマジックを持ってやがったのか! だがアルティメットジークフリーデンの攻撃は続いてるぞ!!」

「それはライフで受けましょう」

 

一気に接近し、至近距離で強烈な火炎放射を浴びせるとそのままバリアを焼き尽くし、破壊する。

 

「ッ!!」

 

[神子side]

[ライフ]4→3。

[リザーブ]1個→2個。

 

「まだだ! 2体のガーネットドラゴンもアタックさせる! 畳み掛けろッ!!」

「ライフで受けます!」

 

追撃するように迫る二体のガーネットドラゴン、一体は炎を、もう一体は電撃をそれぞれバリアに向けて撃ち放ち、ライフをさらに削って行く。

 

[神子side]

[ライフ]3→1。

[リザーブ]2個→4個。

 

「ハハ、オートマチックガンナーさえ攻撃できりゃ決まってたんだがな。まぁいい! これでお前のライフは残り1つ。もう悪足掻きも通じねぇぞ?」

 

首の皮一枚で繋がった神子だったが、影井の言葉通り追い詰められ、絶体絶命の状況なのは明白。その状況に対し、コン太は不安の色を隠せていない。

 

「姉さん、僕のせいで……。」

 

巻き込んでしまった事に責任を感じるコン太だったがその背中を叩く紅葉。

 

「!」

「そんな顔しない! 大丈夫、お姉ちゃんは絶対負けないよ?」

「でも、もうライフが……!」

「関係ないよ、お姉ちゃんが勝つって断言した以上、絶対負ける事は無いよ? なのに信じてあげなくてどうするの!」

「!」

「ハルヤ君達も見ててね、お姉ちゃんのバトルの本気、真骨頂はここからだよ?」

「!?」

 

笑顔で語る紅葉の言葉に不思議に思うハルヤ達だったが、バトルをしている神子もまた、追い詰められながらも凛とした態度は決して崩してはいなかった。

 

 

 

[07ターン.神子side]

[スタートステップ]

 

「手札から「魂円舞」をオープンし、一枚ドローします」

 

[オープン]フルーツチェンジ、魂円舞。

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

[ドローステップ][手札]2枚→3枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]5個→9個。

 

「メインステップ、そろそろ行きましょうか」

 

手札を見ながら、準備を終え一気に動くつもりなのか手札の一枚に手を掛ける。

 

「伝説に受け継がれし神話の聖獣、究極の輝きとその光をフィールドに!! アルティメットリーンをLv.5で召喚します!」

 

[リザーブ]9個→1個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]3枚→2枚。

 

全てを照らす程の眩い光がフィールドを包み、その光の中でより一層強い輝きを放つ黄金の姿、その姿こそ究極の名を持つ一体、大きく吠えながらフィールドを駆けるアルティメットリーンの姿だった。

 

「なっ!! 馬鹿な!! そのアルティメットの召喚条件は!!」

「えぇ、本来アルティメットリーンを召喚するには黄色のスピリットが2体以上必要です。ですが、スカイの効果によりコスト7以下の私のアルティメットはその召喚条件を無視できます」

「!!」

「さらにまだ終わりませんよ? 私の場にアルティメットが召喚された時、手札のこのカードはノーコストで召喚できる!」

「ま、まさかそれって……!!」

 

神子の言葉に何かを察する影井。その様子に口元を緩ませながらさらに続けて行く。

 

「命の源たる星より生み出されし剣! 星の力を究極へと受け渡せ! 地球神剣ガイアノホコを召喚!」

 

突如として地面に亀裂が走り、亀裂より噴き出す緑に輝く光の柱、その光の柱からゆっくりと浮かび上がる一つの剣、その剣こそ地球の力を纏いし星の剣────ガイアノホコ。

 

【地球神剣ガイアノホコ】5(緑2 極1)緑、ブレイヴ、剣刃。

Lv.1(1)BP3000、【合体時+5000】

手札にあるこのブレイヴカードは、自分のアルティメットが召喚された時、コストを支払わずに召喚できる。

【合体条件:コスト5以上のアルティメット】

【合体時】

XU(クロスアルティメットトリガー)を持たないアルティメットと合体している間、このブレイヴをコスト0として扱う。

【合体時】『このアルティメットのバトル時』

相手はバーストを発動できない。

 

「アルティメットリーンに地球神剣ガイアノホコをブレイヴ! 合体究極(ブレイヴアルティメット)となれ!!」

 

宙へと浮かび上がるガイアノホコをアルティメットリーンが咥えると、ガイアノホコの力を一気にその身に纏い、より強大となった力を示すように先程以上に大きく吠える。

 

[フィールド]アルティメットリーン×地球神剣ガイアノホコLv.5((S1)3)BP26000、聖天馬スカイLv.3(3)BP13000、華黄の城門Lv.1(0)。

 

「アルティメットにブレイヴだと!?」

「終わらせましょう。アタックステップです! アルティメットリーン、アタックです!!」

「!」

 

一気にフィールドを駆け出すアルティメットリーン、それと同時に今度は両手を構える。

 

「ダブルアルティメットトリガー、ロックオンです!」

「!!」

 

2枚のカードが弾け飛ばされ、弾け飛ぶ2枚のカードを慌てたように掴み取る。

 

「コストのコールをお願いします」

「……ぐっ! 双翼乱舞とムゲンドラ、コスト4と1だ」

「ダブルヒット! よってアルティメットリーンの効果を発揮!」

「!」

 

アルティメットリーンは自身の体から雷を放つと、その雷は2体のガーネットドラゴンへと直撃し、雷を受けた二体は体を痺れさせながら地面に凭れ込んでしまう。

 

「な、何なんだよ!?」

「アルティメットリーンのUトリガーはヒットしたトリガー1回につき、相手のスピリット、またはアルティメットを1体を指定し、指定されたスピリットかアルティメットはブロックできなくなります!」

「そ、それじゃぁ!!」

「えぇ。ですから幾らガーネットドラゴンが疲労ブロッカーでも、ブロックそのものができなくなりました」

「!!」

 

【アルティメットリーン】6(3)黄色、アルティメット、新生/想獣。

Lv.3(1)BP11000、Lv.4(2)BP14000、Lv.5(4)BP21000。

【召喚条件:自分の黄スピリット2体以上】

WU(ダブルアルティメット)トリガー】Lv.3、Lv.4、Lv.5『このアルティメットのアタック時』

ヒットしたUトリガー1回につき、相手のスピリット/アルティメット1体を指定する。指定したスピリット/アルティメットはブロックできない。【ダブルヒット】:Uトリガーが2回ヒットしたら、さらに、このターンの間、自分のアルティメットすべては、BPを比べ破壊された時、回復状態でフィールドに残る。

Lv.5

このアルティメットに黄のシンボル1つを追加する。

 

「だがお前のアルティメットのアタック時にアルティメットジークフリーデンの効果発揮! 手札から「アルティメットマグー」を破棄することでアルティメットジークフリーデンを回復させる!」

「ならばこちらも続けますよ? フラッシュタイミングでオープンしている魂円舞を使用します! 不足コストは聖天馬スカイから確保!」

「!」

 

効果により再び白い光を纏い立ち上がるアルティメットジークフリーデンだが、神子も負けてはいない。手元にオープンしている魂円舞を手に取り、それを発動させる。

 

[フィールド]聖天馬スカイLv.5(3)BP13000→聖天馬スカイLv.3(1)BP8000。

[トラッシュ]4個→6個。

 

【魂円舞】5(3)黄色、マジック。

S(ソウル)バースト:自分のライフ減少後】

相手のスピリット/アルティメット1体を指定できる。このターンの間、そのスピリット/アルティメットはアタック/ブロックできない。その後コストを支払う事でこのカードのフラッシュ効果を発揮する。

『フラッシュ効果』

このターンの間、相手のスピリット/アルティメット1体をBP-6000する。この効果でBP0になったスピリット/アルティメットを破壊する。

 

「オートマチックガンナーにBP-6000! BP0となり破壊します!」

 

舞い乱れる桜吹雪、それはオートマチックガンナーの周囲に吹き荒れ、桜吹雪に吹き飛ばされオートマチックガンナーは破壊される。

 

「だったら俺のスピリットの破壊時にバーストを発動させる!」

「無駄です!」

「あぁ!?」

「ガイアノホコの効果。ブレイヴしたアルティメットのバトル時、相手はバーストを発動できない!」

「!!」

「そしてガイアノホコとブレイヴした事で、アルティメットリーンに緑のシンボルが一つ追加、さらにアルティメットリーンのLv.5の効果で黄のシンボル一つ追加。合計トリプルシンボルです!」

 

オートマチックガンナーは破壊され、二体のガーネットドラゴンはブロック不能。残るライフを全て削らんとアルティメットリーンはより早く空を駆けながら影井へと迫って行く。

 

「ま、まだだッ!! 俺にはアルティメットジークフリーデンが残ってんだ! アルティメットジークフリーデンでブロック! 俺を守れ!!」

 

迫るアルティメットリーンの前に立ち塞がるアルティメットジークフリーデン、全速力で駆け出したまま振るわれるガイアノホコをアルティメットジークフリーデンは強固なその身で真っ向から受け止める。

 

[Battle]アルティメットリーン×地球神剣ガイアノホコLv.5((S1)3)BP26000vsアルティメットジークフリーデンLv.4(3)BP20000。

 

激突する二体の究極。だが力ではアルティメットリーンが上回っているのか少しずつ押され始め、巨大なアルティメットジークフリーデンの体が地面を引き摺りながら後ろに後退させられていく。

 

「(このターンさえ凌げりゃ俺の勝ちは目の前!! この勝負貰ったぜ!!)」

 

影井にとってアルティメットジークフリーデンも捨て駒に過ぎない。ただこのターンを凌ぎ次のターンで勝つ。その事しか彼の頭にはない。しかし、神子もまた相手のその考えは手に取る様に察していた。

 

「あなたにとってはアルティメットジークフリーデンも捨て駒ですか」

「あぁそうさ! 結局最後は勝てりゃぁいいのよ! このターンさえ凌げばお前は終わりだぜ!」

「どこまでも浅はかな人ですね。けど、残念ながらあなたのターンはもう来ないですよ?」

「何だと!?」

「フラッシュタイミングです、オープンしているフルーツチェンジを使用します!」

 

[リザーブ]1個→0個。

[トラッシュ]6個→7個。

 

【フルーツチェンジ】3(2)マジック。

『フラッシュ効果』このバトルの間、BPを比べるとき、お互いのバトルしているスピリット/アルティメットのBPを入れ替える。

 

「こ、今度は何だ!?」

「フルーツチェンジの効果、バトルしているお互いのスピリット、アルティメットのBPを入れ替えます。よって現在バトルしているアルティメットリーンのBPを20000に、アルティメットジークフリーデンのBPを26000に変更します!」

「は? 折角BPで上回ってたのに自分からBPを入れ替えただと!? ハハハハハ! こいつは傑作だ! 最後の最後でとんだプレイミスだな!!」

 

マジックの効果により、BPが入れ替えられた事により力の差が逆転すると、先程まで押されていた状態から一転、アルティメットリーンを押し返し始めて行き、そのまま弾き返す。

 

「さぁお前のお陰でBP差が逆転したんだ、アルティメットジークフリーデン、礼代わりにそいつのアルティメットを返り討ちにしてやれ!!」

 

アルティメットジークフリーデンは力強く吠えながら左手に炎を灯し、そのまま勢いよくアルティメットリーンへと迫ると、炎を纏わせた拳をアルティメットリーンに叩き込み、その一撃にアルティメットリーンは悲鳴を上げながらその場から消滅してしまう。

 

「どうだ!! これでお前のキーカードは倒した! 次のターンでの俺の勝ちはより確実となったな!!」

 

自分の勝利を疑う気はもはや微塵もないが、その様子に対して神子もまた可笑しそうに笑って見せた。

 

「な、何が可笑しい!?」

「本当に浅はかな人ですね。私がプレイミスをしたと本気でお思いですか?」

「ふん! また何か仕掛けつもりけるつもりか! だがもう手遅れだぜ!」

「いいえ、手遅れなのはあなたです」

「!?」

「アルティメットリーンがBPを比べ破壊された時、その効果を発揮させます!」

「な、何を!?」

 

再びフィールドに灯る黄金の光、金色の雲が一点に集い始めると、その雲の中から先程破壊された筈のアルティメットリーンがガイアノホコとともに再びフィールドへと現れる。

 

「ブレイヴアルティメットを回復状態でフィールドに残す! よって再び復活します!!」

「ば、馬鹿な!? そんな事が……!?」

「最初にアルティメットリーンのWUトリガーが二度ヒットした時から、既に効果は発動していたんですよ。アルティメットリーンのWUトリガーが2回ヒットした時、このターンの間、BPを比べて破壊された私のアルティメット全ては回復状態でフィールドに残ります」

「そ、それを狙ってさっきわざとマジックでBPを入れ替えやがったのか!?」

「えぇその通りです。言った筈ですよ? あなたに負ける気はないと!」

「!!」

「これで本当に終わりです! ブレイヴアルティメットで再アタック!! WUトリガー、ロックオン!」

 

再び両手を構え、またも二枚のカードが弾き飛ばされる。

 

「ぐっ、幻影氷結晶とアルティメットドラグサウルス。コスト2と4!!」

「ダブルヒット!! 再びガーネットドラゴン2体を指定し、ブロック不能させます!」

「ぐぅッ!!」

 

再び降り注ぐ落雷を浴びせられ、行動不能とさせられる二体のガーネットドラゴン。手札は残り一枚、その手札にもうアルティメットは無く、アルティメットジークフリーデンの効果を使う事はできず、これ以上影井に打つ手はなかった。

 

「う、嘘だ!! この俺が!!」

「終わりです! ブレイヴアルティメットでアタック!」

「ら、ライフで受ける!!」

 

咥えたガイアノホコを振り下し、残るライフ全てを破壊し、勝負に決着を付ける。

 

「うわあああああッ!!!」

 

[影井side]

[ライフ]3→0[Lose]

 

 

 

***

 

 

 

 

「返してもらいますよ、弟のデッキ」

 

バトルを終えると、影井からコン太のデッキを取り上げるが、勝負の結果に対し、影井は「ふざけるな!」と怒声を上げる。

 

「こんなのまぐれだ! 今度は俺が勝つに決まってる!」

 

諦めが悪いようにまだ食い下がる影井だったが、「いいや」と横槍を入れるように紅葉が口を挟む。

 

「残念だけど、あなたじゃ何度やってもお姉ちゃんには敵わないよ?」

「なっ!? テメェに何が分かる!!」

「あなたの事は知らないけど、大体結果は分かるよ? だってお姉ちゃんはチームランキング3位、チーム聖霊のチームリーダーだからね!」

「!!?」

 

衝撃的な紅葉の言葉、それには影井だけでなくハルヤ達もまた驚きを隠せていなかった。

 

「み、神子さんがチームランキング3位!?」

「ワット!? それってかなり上位のチームだな!」

「まったく紅葉は……。それは秘密の筈ですよ」

「あっ!! ごめんなさい!! つい!!」

 

口を滑らしたように慌てて口を塞ぐようなそぶりを見せる紅葉。その様子を見る限り、偽りではないのだろう。相手が遥かに格上だったという事実に影井はまだ動揺し切っていた。

 

「そ、そんな訳が! だ、だってお前等は唯の実況者じゃ……!!」

「普段はBCOとしての活動を主にしてますからね。情報はあまり公開していませんが、確かにチームランキング3位、チームリーダーとしての地位も担っています」

「!!!」

「けど、仮に私が上位チームでなかったとしても勝負の結果は見えてましたよ」

「!?」

「自分の力に過信し、ただ傲慢の限りにバトルし、相手の力量も見定められない人などその程度なんです。だからこそ私は、一人のカードバトラーとしてあなたに負ける気はありませんでした」

「ぐっ!!」

「今日みたいな真似を繰り返すようなら私は絶対に許しません! いいですね!」

「ち、畜生!!!」

 

返す言葉もないのか一目散にその場から走り去る影井。特に後を追うとはせず、終始毅然とした態度の神子には誰もが敬う程だった。

 

「さっすがお姉ちゃん!! 今日も決まったね!」

「紅葉あなたも口を慎みなさい! さっきの発言と言い、少々あなたは口が軽いですよ?」

「ご、ごめん! つ、つい実況してた時の癖で」

「はぁ……まっ、それはともかくとして、それよりコン太、大丈夫でしたか?」

 

取り返したデッキを手渡し、デッキを受け取りながら神子の言葉にコン太はただ静かに頷く。

 

「……姉さん、ごめんなさい。僕」

「謝る事なんて何一つないですよ。姉妹なんですからもっと頼ってください」

「……嫌、違うよ」

「?」

「身内だからいつまでも姉さんに頼ってられないんだよ。僕だって強くなりたい!」

 

何を思うのかハルヤ達の方に視線を向けると、そのまま歩み寄る。

 

「ハルヤさん、折り入ってのお願いです! 僕を、チームに入れてください!」

「えっ!? コン太!?」

「!?」

 

突然のコン太の頼みに動揺を隠せない神子達。ハルヤ達もまたコン太のその言葉には驚かずにはいられなかった。







更新遅れておりました。申し訳ないです。何とか今週に更新できてよかったです。そして第11話、いかがでしたでしょうか?今回は実況解説している神子のバトルでした。それなりに黄色デッキらしいトリッキーな戦い方が出来たかなと思います。アルティメットリーンとフルーツチェンジ、中々面白かったです(笑)今回対戦相手だったモブ、何か同じような方を見た事があるがデジャブかな(すっとぼけ)

それとアニメではウロヴォリアス活躍してましたね。呪縛面白そうとか思ってましたが、そんな生温い事言えないぐらいガクブルな効果でしたね。ヴァラルや古いカードでスカルピオーネと組ませたらさらに恐ろしそうです。後、新規の紫で、ついに相手のリザーブのコアをメインステップで死竜の召喚コストに使用できるカードとかも登場しましたね。紫がどんどんやりたい放題になって行く。まるで今日のキャラのようだ←


まぁともかくアニメのこれからも期待ですね。来週いよいよ十二神皇編発売!待ってろよウロヴォリアス!!(爆死フラグ)小説でも早めに新規のカードが掻きたいです。また次回もぜひよろしくお願いします!


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No12.強くなります、妖戒大将出陣

・以下注意
誤字、プレイミスありかも。
バトル表記が人によっては分かりずらいかも。

それでも大丈夫という方はどうか温かい目で見てもらえると幸いです。発見したミスやバトル表記などのご指摘気軽にお待ちしております。







『ハルヤさん折り入ってのお願いです! 僕を、チームに入れてください!』

「!?」

 

突然のコン太の願い、それにはその場の全員が驚きを隠せず、中でもその言葉に一番に驚いていたのはハルヤだった。

 

「コン太、落ち着いてよ。チームに入れてって急にどうしたの?」

「強くなりたいんです。もう今のままの自分じゃいたくなくて!」

「どういう意味?」

「そのままの意味です。さっきもあんな奴に勝てなくてデッキを取られて、結局姉さんに助けられてしまった。自分の力じゃ何もできないのが嫌なんです!」

 

先程の事を思い返し、未だ悔やむように言葉に力を込めながら語るコン太。だが本人からはまるで焦ってるかのような様子が何となく感じられ、その様子を見かねたのか、神子はコン太を呼び止めるかのように声を掛ける。

 

「コン太、落ち着いてください。急な話でハルヤさんも困ってますよ?」

「姉さん! 僕は……!」

「大丈夫です、咎める訳ではありません、あなたが何を思っていたか、それは少なからず分かってますから」

 

コン太の想いは神子も察しているのか、そのままハルヤの方へ視界を向ける。

 

「ハルヤさん、コン太と二人きりで話をしてもらえませんか? コン太もチームに入る上でその想いハルヤさん打ち明けてください」

 

神子の言葉にコン太は静かに頷き、それを見ると「私達は席をはずします」と一端その場を後にし、キッドとザックもまた二人きりで話す内容を聞くべきではないと考えたのか同じくその場を後にする。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「じゃぁコン太、早速だけど聞かせてくれるかな? どうして僕のチームに入りたいって思ったの?」

 

二人きりとなり、単刀直入に本題を切りだし、その言葉にある事を思い返す。

 

「ハルヤさんが、目標だからです」

「えっ?」

「……実況解説を通して、ハルヤさんのバトルはずっと見てきました。初めは負けてても、それでもバトルを通していく内に強くなって、キースピリットを扱うその姿に憧れてました」

「憧れるだなんて、僕はただバトルしてただけだよ?」

「えぇ。僕はそのバトルに魅かれましたから。僕は先程の結果を見ていただいた通り、まだまだです。キースピリットも満足に扱えず、実力は姉さんと比べて足元にも及ばないです」

 

デッキから取り出す一枚のカードを取り出し、自分のキースピリットであるそのカードを見ながら寂しげに表情を曇らせるコン太。だが、ハルヤはそれに対し、何か引っかかった様に。

 

「そう言えば、神子さん達は上位チームなんだよね。コン太は神子さん達のチームメンバーじゃないの?」

「僕は姉さんたちのチームには入ってないです。入ってるのは紅葉姉さんと、他3人です。最初は僕にも声を掛けてくれたんですけど、それは断っちゃいましたから」

「えっ? どうして?」

「チームメンバーとして、嫌、姉さんの弟として僕が取るに足らない実力だからです」

「?」

「先程のバトルを見ていただいた通り、姉さんの実力は相当です。けど、僕には姉さん程の実力は無いです。バトルが弱くて、いつも先程みたいなトラブルに巻き込まれた際には姉さんの助けられてました。でももうそれじゃあ嫌なんです。僕も一人のカードバトラーとして、守られてばかりじゃいられない! もっと強くなりたいんです!」

 

自分の願いを打ち明けるコン太、その姿はハルヤにとっても共感する所があった。

 

「分かった。けど、その前に一つバトルしない?」

「?」

「神子さんの実力は確かにすごかったけど、僕はコン太が神子さんの足元に及ばないなんて思えない。コン太も強いと思うよ?」

「そんな事ないです。ハルヤさんには分からないですよ」

「まぁ確かにコン太とバトルした事ないし、そう言われちゃそれまでなんだけど、僕も前は中々勝てなくて落ち込んでたけど、ある人に言われたんだ。『バトルはスピリットを信じて戦う。それだけ』って」

「スピリットを信じて、ですか?」

「うん。その言葉のお陰でここまで来れたような気がした。だからコン太もスピリットを信じて戦ってみてよ。チームへ入るとかどうかは置いといて、その想いで戦えばきっとコン太も強い筈だよ!」

「……」

 

ハルヤの言葉にただ自分のデッキを見ながら何かを考え込むように数秒間を置きながらも何かを決心したように構える。

 

「ならバトルお願いします! このバトルで何かが変われそうな気がします!」

「うん。受けて立つよ! 全力で行くからね!」

 

嬉しそうに言葉を交わす二人。互いにバトルステージまで移動しデッキを構える二人。その様子に気づいたのか、神子やザック達も観客席でその様子を眺める。

 

「おっ、コン太にハルヤ君、バトルするみたいですね! これは早速、実況ですね!」

「おいおい、こんな状況でもか?」

「当たり前! それが実況魂ってもの!! って訳でザックさん撮影お願いします!」

「はぁ!? 俺が!?」

 

紅葉は撮影用のカメラを手渡し、半ば強引に押し切られ渋々承諾し、一方で神子は何かを想うようにコン太を遠目から見つめる。

 

「(コン太が強くなろうとしていたのはずっと感じていた。けど、やはり弟としてどうしても過保護になってしまっていた)」

 

コン太の想いを知る上でそれを見守る事こそが一番の最良なのだが、どうしても自分の弟として助けを出さずにはいられず、そのことを反省するように悔やむ。

 

「(コン太が決意した事なら私はただそれを尊重しなければなりません。だからこおそ、コン太、このバトルであなたの強さと覚悟を見せてもらいますよ)」

 

神子もまた強く決心すると、「解説を始めましょうか」と普段通り冷静に紅葉を取り仕切り、その言葉に頷きながら二人とも定位置に実況席を設ける。

 

『さぁ皆さま! 本日もBCOが熱いバトルを皆様にお届けします!! 今日バトルするのはハルヤ選手と、対戦相手は我らが弟、犬神コン太とのバトルです!!!』

『えぇ、しかし実況解説はあくまで公平に行っていきますので本日もどうぞよろしくお願いします』

 

普段通り高らかに実況を語る紅葉と冷静に言葉を述べる神子の二人、一方でバトルの準備を終えたように二人は互いの相手を見据える。

 

『準備が整ったようですね、早速行きましょう! 両者、コールお願いします!』

「「ゲートオープン! 界放ッ!!」」

 

 

 

 

[01ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「メインステップ! リューマンフェニックを召喚!」

 

[リザーブ]4個→0個。

[トラッシュ]0個。

[手札]5枚→4枚。

[フィールド]リューマンフェニックLv.3((S1))BP6000。

 

ハルヤの先行で開始されるバトル、序盤から早速リューマンフェニックを呼び出し、リューマンフェニックは力強く吠える。

 

「ターンエンド」

 

 

 

 

[02ターン.コン太side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「メインステップ、行きます! まずは手札のギュウキの効果を発動させます!」

「発動!? 召喚じゃなくて!?」

 

自分のターン開始と同時に突き出す一枚のカード、ギュウキ。だがギュウキはスピリットカードであり、コン太のその言葉には疑問を持つが、問題ないようにコン太は笑って見せた。

 

「えぇ。ギュウキには二種類の使い方があります。スピリットとして召喚する通常の方法、そしてもう一つはこのスピリットカードをマジックカードとして発動させる方法!」

「!?」

「よって、手札のギュウキを僕はマジックカードをとして使用します!」

 

[リザーブ]5個→3個。

[トラッシュ]0個→2個。

 

【ギュウキ】2(黄1 白2)黄、スピリット、妖戒/機獣。

Lv.1(1)BP2000、Lv.2(2)BP3000。

このスピリットカードは、マジックカードとしても扱う。

『フラッシュ効果』(この効果はフィールドにいる間、使用できない)

このターンの間、相手のスピリット1体をBP-3000する。この効果でBP0になったスピリットを破壊する。

Lv.1、Lv.2

このスピリットの色とシンボルは白としても扱う。

 

「マジックとして使用した場合、召喚はできず使用後にトラッシュに送られますが構いません! ギュウキの効果により、リューマンフェニックにBP-3000します! そしてさらにもう一枚、手札のギュウキをさらにマジックカードとして発動!」

「!!」

 

[リザーブ]3個→1個。

[トラッシュ]2個→4個。

 

『何と!! コン太いきなりギュウキをマジックカードと使用しました!! しかもそれを連続使用でハルヤ選手のリューマンフェニックを破壊してしまった!!』

『ギュウキの特性を理解した上で、それを十二分に活かせてますね』

 

弟のコン太のバトルに、二人は贔屓目で実況解説をしている訳ではないが、序盤からいきなり黄色としての戦い方をこなすコン太のバトルには感心するように見ていた。一方で自分のスピリットが破壊されたことに動揺を隠せないながらも、ハルヤもまたコン太のバトルには素直に「すごい」と評価する程だった。

 

「いきなりリューマンフェニックを破壊してくるなんて、驚いたよ!」

「まだ始まったばかりですよ? これはまだまだ小手先程度です。今はこれでターンエンドしますよ?」

 

 

 

 

[03ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「驚いたけど、僕だって負けないよ! メインステップ! リューマンクロウをLv.2で、続けてリューマンインフェニティを召喚!」

 

[リザーブ]5個→0個。

[トラッシュ]0個→2個。

[手札]5枚→3枚。

 

[フィールド]リューマンインフェニティLv.1((S(ソウルコア)1))BP3000、リューマンクロウLv.2(2)BP2000。

 

『ハルヤ選手、先程スピリットを破壊された場を再び立て直しました!』

『一方でコン太の場には先程のギュウキをマジックカードと使用していた為、ブロッカーとなるスピリットは0。ハルヤ選手にとって、これはチャンスですね』

「アタックステップ! リューマンインフェニティでアタック! アタック時効果で一枚ドローするよ!」

 

[手札]3枚→4枚。

 

神子の言葉通り、コン太のフィールドはがら空きの状態。まさに絶好の攻め時だった。リューマンインフェニティを一番手に攻撃指示を出すと、リューマンインフェニティ勢いよく飛び出し、コン太へと迫って行く。

 

「ライフで受けます!」

 

攻撃を止める手立てはないのか、その宣言にリューマンインフェニティが繰り出す拳がバリアを砕き、ライフを破壊する。

 

「ッ!!」

 

[コン太side]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]1個→2個。

 

「ターンエンド!」

 

 

 

 

[04ターン.コン太side]

[スタートステップ]

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[コアステップ][リザーブ]2個→3個。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]3個→7個。

 

「メインステップ! 行きますよ!」

「!」

「一世一代の大夢抱く家臣! カシャネコをLv.2で召喚!」

 

[リザーブ]7個→1個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]4枚→3枚。

 

【カシャネコ】4(3)黄色、スピリット、家臣/妖戒。

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(2)BP5000、Lv.3(3)BP6000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『このスピリットの召喚時』

自分のトラッシュにある[カシャネコ]以外の系統:「妖戒」を持つスピリットカード2枚を手札に戻す。

Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

このスピリットのS(ソウルコア)を自分のトラッシュに置く事で、[カシャネコ]以外の系統:「妖戒」を持つ自分のスピリット2体を回復させる。

 

猫のような愛くるしい見た目に兜を着た一体のスピリット、カシャネコ。舞い踊るようにフィールドへと現れ、見た目と同じような可愛らしい鳴き声を上げる。

 

「カシャネコ、それがコン太のキースピリット!?」

「ええ、でも見た目に油断しないで下さいよ? 召喚時効果発揮! 自分のトラッシュにあるカシャネコ以外の妖戒を持つスピリットカード2枚を手札に戻します! よって先程使用したギュウキを手札に戻します!」

「!!」

 

[手札]3枚→5枚。

[フィールド]カシャネコLv.2((S1)1)BP5000。

 

『何と! 先程連続使用したギュウキを回収しました!?』

『ギュウキをマジックカードとして使用し、カシャネコで回収。これは上手いですね!』

 

再びギュウキが手札に戻った事に警戒するように構えるハルヤ、だがまだコン太にとっての手はそれだけではない。

 

「続けます! バーストセット!」

「!」

「さらに戻したギュウキを再びマジックカードとして使用します!」

 

[リザーブ]1個→0個。

[トラッシュ]4個→5個。

[手札]5枚→3枚。

 

「対象はリューマンインフェニティ! BPを-3000し、BP0となったリューマンインフェニティを破壊します!」

「くっ!」

 

効果によって放たれる雷の直撃を受け、リューマンインフェニティは全ての力が奪われるとそのまま倒れ、その場から消滅してしまう。

 

「まだ終わりませんよ! アタックステップ! カシャネコでアタックです!」

「ライフで受ける!」

 

なおも果敢に攻めるコン太、カシャネコイクサは軽快なステップでフィールドを駆けながらハルヤへと迫るとそのままバリアに直接体当たり、衝撃にライフが砕かれる。

 

「うあッ!」

 

[ハルヤside]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]1個→2個。

 

「ターンエンドです」

 

 

 

 

[05ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]2個→3個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]2個→0個。[リザーブ]3個→5個。

 

「メインステップ! バーストセット! 僕も行くよ!」

「(来ましたね!)」

 

力強く言い放ち構える一枚、これまで実況としてハルヤのバトルを見てコン太にとってはそれがキースピリットである事を瞬時に察した。

 

「天下切り裂く勝利の剣! 太陽の如く燃え上がれ! 剣神無双リューマンゴッドソードを召喚!」

 

フィールドを包む炎、その炎の中で眼光を輝かせる影が一つ。その影は、手に持つ剣で周囲の炎を掻き消し、リューマンゴッドソードがその正体を現す。

 

[リザーブ]5個→0個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]5枚→3枚。

 

[フィールド]剣神無双リューマンゴッドソードLv.1((S1))BP4000、リューマンクロウLv.2(2)BP2000。

 

『ここで来ました!! リューマンゴッドソード!! ハルヤ選手のキースピリットです!』

『ここまではコン太のペース、ですからハルヤ選手は一気に自分のキースピリットを召喚して流れを掴むつもりですね!』

 

神子の言葉通り、ライフの数は両者同点といえど、ここまでの流れでは完全にコン太に分がある。だからこそ一気に形勢を逆転しようとリューマンゴッドソードを見る。

 

「アタックステップ! 一気に行くよ!」

「来るならいつでも来て下さい! 真っ向から受けて立ちますよ!」

「勿論そのつもりだよ! まずはリューマンクロウでアタック!」

「ライフで受けます!」

 

まずはリューマンクロウを筆頭に攻撃指示を出すと、リューマンクロウはその指示に頷き、全速力で駆けながら飛び上がると腕に爪を振り下してバリアを切り裂く。

 

[コン太side]

[ライフ]4→3。

[リザーブ]0個→1個。

 

「さらにリューマンゴッドソードでアタック! アタック時効果で一枚ドロー!」

 

[手札]3枚→4枚。

 

リューマンゴッドソードも指示に対し剣を構え、勢いよく飛び出し、その呼応激に対しても「ライフで受ける!」と宣言し、龍ーまんゴッドソードは展開されたバリアに剣を振り下し、破壊する。

 

「リューマンゴッドソードのバトル終了時効果! 手札にある「剣使」、「竜人」を持つスピリットカードをノーコストで召喚できる! よって手札の「剣聖武竜ミツルギドラゴン」を呼び出すよ!」

「!」

「伝説を受け継ぎし龍! 炎の一撃を時代に刻め! 剣聖武竜ミツルギドラゴンを召喚ッ! 維持コストはリューマンクロウから確保!」

 

天にまで届く程、高く燃え上がる炎。その炎の中に一本の剣が降り落ち、輝く炎の中でその剣を手に取る龍の影、手に取った剣で渦巻く炎を切り裂き、ミツルギドラゴンが現れる。

 

[手札]4枚→3枚。

[フィールド]リューマンクロウLv.2(2)BP2000→リューマンクロウLv.1(1)BP1000。剣聖武竜ミツルギドラゴンLv.1(1)BP7000。

 

『ハルヤ選手!! リューマンゴッドソードの効果でミツルギドラゴンを呼び出した!! これはハルヤ選手にとっての必勝パターン!!』

『ハルヤ選手もまた本気ですね。このターンで一気に攻めて行くつもりです!』

 

二体のXレア級のスピリットに見ている観客達は圧倒され、対戦相手であるコン太にとっては観客達の感じる迫力の比ではなかった。だがそれでも怖じ気づく様子は決してなく、真剣な眼差しで龍達の姿を見る。

 

「ハルヤさんのキースピリット達は、いつ見ても壮観ですね」

「ありがとう。でも手加減はしないよ!」

「はい、そうしてください!!」

 

お互いに一歩も引く様子はなく、剣聖武竜は相手を見定めると静かに剣を鞘に納め、抜刀術の構えに入る。

 

「剣聖武竜ミツルギドラゴンでアタック!!」

 

鞘から剣を引き抜くと同時に飛び出すミツルギドラゴン。だがその攻撃に対し、コン太はそれに対し、「待ってました!」とまるで期待していたかのような反応を見せる。

 

「フラッシュタイミングで手札のギュウキをマジックカードとして使用! ミツルギドラゴンのBP-3000します!」

 

[リザーブ]2個→1個。

[トラッシュ]5個→6個。

[手札]3枚→2枚。

 

「えっ!?」

 

再び発動されるギュウキの効果により、ミツルギドラゴンは力を奪われように肩を落とす。

 

『ここでコン太ギュウキを再びマジックカードとして使用!! しかし、何故このタイミングなのでしょう?』

 

紅葉の言葉通り、ハルヤも全く同じ疑問を抱いていた。ギュウキのカードをまだ一枚手札に温存していたことはハルヤも把握していたが、ミツルギドラゴンの元々のBPは7000。例えギュウキの効果を受けても破壊はされず、アタックそのものは有効として続行される。だからこそこのタイミングでの使用の意図が不可解だった。

 

「アタックはライフで受けます!」

「(回復させてブロックする訳でもない。一体何を考えて!?)」

 

疑問に思う中、ミツルギドラゴンは力を減少させられながらもまだバリアを破壊する程度の力は温存できており、そのまま剣を振り切ると、バリアを切り裂きコン太野ライフをさらに破壊する。

 

「ぐッ!!」

 

[コン太side]

[ライフ]2→1。

[リザーブ]1個→2個。

 

残りライフは一つ追い込まれながらも伏せていたバーストカードに視線を置くと同時に「バースト発動!」と狙い澄ましたように力強く宣言する。

 

「ライフ減少時がこのバーストのトリガーです! 妖雷スパーク!」

「!?」

 

【妖雷スパーク】3(2)黄色、マジック。

S(ソウル)バースト:自分のライフ減少時】

このターンの間、相手のスピリット2体をBP-5000する。この効果でBP0になったスピリット全てを破壊する。その後コストを支払う事でこのカードのフラッシュ効果を発揮する。

『フラッシュ効果』自分はデッキから1枚ドローし、このターンの間、スピリット1体をBP+2000する。

 

「バースト効果により、ミツルギドラゴンとリューマンゴッドソードの2体を指定し、2体のBPを-5000。さらにこの効果でBP0になったスピリットを破壊します!」

「しまった!!」

 

マジックによる放たれる雷撃、それはリューマンゴッドソードとミツルギドラゴンの二体へと直撃し、雷撃に打たれリューマンゴッドソード力尽きて倒れ、ミツルギドラゴンもまた、度重なる力の減少に耐え切れなくなり破壊されてしまう。

 

『何と!! コン太、ここでハルヤ選手のキースピリットを纏めて破壊!? ライフ1に追い込まれながらも見事に逆転し返しました!!』

『ミツルギドラゴンのBPは7000。妖雷スパークの効果だけでは倒すことはできない。だからこそ、この時の為にギュウキを温存していたんですね』

 

完全にハルヤの手を読んでいた上でのカウンター。キースピリットを二体とも破壊されてしまった事には当然ハルヤにも応えた。

 

「リューマンゴッドソードとミツルギドラゴンとのコンボ、必ず狙ってくると思ってました! だからこそ、仕掛けさせてもらいましたよ!」

「まさか読まれたなんて……やっぱりコン太は強いよ!!」

「いえ、僕なんてまだまだです。姉さんに比べたら」

 

少しだけ俯き、姉のバトルを思い返しながら呟くコン太だったが、それに対してハルヤは。

 

「そんなの関係ないよ!」

「えっ?」

「僕も前は同じ事考えてた。周りの人と比べるとどうしても自分の実力に自信が持てなくて、後ろ向きな事ばかり考えてた。けど、色んな人とバトルして、エンザさん達に、ザックやキッドたちに認められて漸く僕も自分自身の強さに自信が持てるようになった!」

「……」

「だからコン太ももっと自信を持ってよ! 強さは誰かと比べて分かるものじゃない。誰かに認められて、そして自分自身で認められることが強さだよ!」

 

ハルヤの真っ直ぐな言葉に対し、コン太は先程まで俯ていた表情を上げて、口元を緩ませる。

 

「本当に、どこまでも真っ直ぐですね。だから僕はあなたのバトルに魅かれたのかもしれません」

「えっ?」

「いえ、何でもないです。続けましょう! コストを支払って妖雷スパークのフラッシュ効果を使用します! バースト効果発揮により、1枚ドロー! さらにカシャネコをBP+2000します」

 

[リザーブ]2個→0個。

[トラッシュ]6個→8個。

[バースト]妖雷スパーク。

[手札]2枚→3枚。

 

抜け目なく手札を増やすコン太に対し、ハルヤにはこれ以上の手はなく、「ターンエンド」と宣言するしかなかった。

 

 

 

 

[06ターン.コン太side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]8個→0個。[リザーブ]1個→9個。

 

「メインステップ、カシャネコをLv.3にアップ、さらにかっぱっぱをLv.1、ジェネラル瀬戸大将をLv.2で召喚!」

 

[リザーブ]9個→1個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]4枚→2枚。

 

【かっぱっぱ】2(1)黄色、スピリット、家臣/妖戒。

Lv.1(1)BP2000、Lv.2(3)BP4000。

Lv.1、Lv.2『相手によるこのスピリットの破壊時』

コスト3以下の相手のスピリット一体を疲労させる。このスピリットにS(ソウルコア)が置かれている時、さらにこのスピリットは疲労状態でフィールドに残る。

 

【ジェネラル瀬戸大将】4(3)黄色、スピリット、妖戒。

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(3)BP5000。

このスピリットとはマジックカードとしても扱う。

『フラッシュ効果』(この効果はフィールドにいる間、使用できない)

このバトルの間、BPを比べる時、BPの代わりにLvを比べ、Lvが同じか低いスピリット/アルティメットが破壊される。

 

一気に攻めるつもりなのか、スピリットを展開しフィールドに並ぶ妖怪達。カシャネコを筆頭にそれぞれ意気込むように腕を掲げる。

 

[フィールド]カシャネコLv.3((S1)2)BP6000、かっぱっぱLv.1(1)BP2000、ジェネラル瀬戸大将Lv.2(3)BP5000。

 

「さぁこのターンで一気に決めますよ! アタックステップ! ジェネラル瀬戸大将でアタックです!」

「ライフで受ける!」

 

食器で構成された奇怪な体を持つスピリット、ジェネラル瀬戸大将はそのまま真っ直ぐハルヤへと突っ込み、両腕を掲げてそのままバリアへと振り下し破壊する。

 

「うあッ!!」

 

[ハルヤside]

[ライフ]4→3。

[リザーブ]2個→3個。

 

ライフを破壊され衝撃に怯みながらも、それでも衝撃に耐えきるとそのまま目を開き伏せたバーストを掴む。

 

「ライフ減少時でバースト発動! エナジーバースト!」

「!」

 

【エナジーバースト】5(3)赤、マジック。

【バースト:自分のライフ減少時】

BP合計7000まで相手のスピリットを好きなだけ破壊する。その後、コストを支払う事でこのカードのフラッシュ効果を発揮する。

『フラッシュ効果』このターンの間、スピリット/アルティメット一体をBP+3000する。または、相手の合体スピリットのブレイヴ一つを破壊する。

 

「バースト効果でBP7000まで相手のスピリットを破壊! よってジェネラル瀬戸大将とかっぱっぱを破壊!」

 

吹き荒れ燃え広がる炎、かっぱっぱとジェネラル瀬戸大将は炎に吹き飛ばされ破壊される。

 

「ッ! さすがに簡単には行きませんか。ターンエンドです」

 

 

 

 

[07ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]3個→4個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]4個→8個。

 

「メインステップ! リューマンクロウをもう一体召喚、さらにまだ行くよ! 敵を打ち砕け! 炎の一蹴必殺! リューマンゴッドブレイカーをLv.2で召喚! 不足コストは2体のリューマンクロウから確保! 力を借りるよ!」

 

[リザーブ]8個→0個。

[手札]4枚→2枚。

 

 

二体のリューマンクロウが消滅した後、地面から飛び出す一体の龍。舞い上がる瓦礫を空中で蹴り砕きながら地面に降り立ち、リューマンゴッドブレイカーが咆哮を上げる。

 

[フィールド]リューマンゴッドブレイカーLv.2((S1)2)BP10000。

 

『ここで来ました!! ハルヤ選手のさらなるキースピリット、リューマンゴッドブレイカー!!』

『バトルも終盤です。ハルヤさんも出し惜しみなく全力をコン太にぶつけてますね!』

 

互いに一歩も引いていないのは神子達にも、そしてそのバトルを見ている観客達にも見て取れる。バトルしている二人もまた、互いの実力を認めつつそして自分が勝たんとバトルに集中し切っていた。

 

「アタックステップ行くよ! リューマンゴッドブレイカーでアタック! アタック時効果発揮、手札のリューマンバーストを破棄して回復させる!」

 

[手札]2枚→1枚。

 

『リューマンゴッドブレイカー、アルティメットを破棄することで回復! 連続アタックで勝負を決めに来ました!』

「カシャネコでブロックです!」

 

[Battle]リューマンゴッドブレイカーLv.2((S1)2)BP10000vsカシャネコLv.3((S1)2)BP6000。

 

突っ込むリューマンゴッドブレイカーを真っ向から立ち向かうカシャネコ。駆け出し激突せんとする二体のスピリットに、紅葉達も実況の声に力が入る。

 

「連続アタックはさせませんよ! フラッシュタイミング! 手札の雪ガールをマジックカードとして使用します!」

「!」

 

[リザーブ]5個→3個。

[トラッシュ]3個→5個。

 

【雪ガール】3(1)黄色、スピリット、家臣/妖戒。

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(3)BP5000。

このスピリットカードは、マジックカードとしても扱う。

『フラッシュ効果』(この効果はフィールドにいる間、使用できない)

このバトルが終了した時、自分のライフのコアが2個以下なら、アタックステップを終了する。

 

「雪ガールの効果、僕のライフは1! よってバトル終了時にアタックステップを強制終了させます!」

「!」

 

バトルでは、果敢にリューマンゴッドブレイカーに飛び掛かるカシャネコだが、リューマンゴッドブレイカーは両足に炎を纏わせ、そのまま炎を纏わせた蹴りの一撃がカシャネコを空中に蹴り上げ、空中に跳ね飛ばされたカシャネコはそのまま破壊され消滅する。しかし、雪ガールの効果によって回復しているリューマンゴッドブレイカーだが、それ以上のアタックは封じられ、残る1つのライフを目の前にしながらも、ハルヤの元へ戻るしかなかった。

 

「ターンエンド」

 

 

 

 

[08ターン.コン太side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]6個→7個。

[ドロステップ][手札]1枚→2枚。

 

「!!」

 

手札に加えた一枚、そのカードにコン太の目付きも変わり、何かが来たことを全員に直感させ、場の空気も一変する。

 

[リフレッシュステップ][トラッシュ]5個→0個。[リザーブ]7個→12個。

 

「メインステップです! やっと引けました!」

「!?」

 

引いた一枚はコン太にとって待ち望んでいた一枚。目の色を変え、その引いたカードを構える。

 

「見せてあげますよ! これが僕のとっておきの一枚です! 奇天烈奇怪な百鬼夜行! 全ての妖怪束ねし大将!! 妖戒大将カシャネコイクサをLv.3で召喚します!」

 

[リザーブ]12個→3個。

[トラッシュ]0個→5個。

[手札]2枚→1枚。

 

フィールドに差し込む一筋の光、その光より舞い降りる一体のスピリット、そのスピリットの名はカシャネコ、否、百鬼夜行の大将の座を冠するカシャネコイクサ。Xレア級のスピリットの登場に誰もが驚き、ハルヤもまたカシャネコイクサの姿に動揺し切っている。しかし、コン太にとってカシャネコイクサはXレア以上としての思い入れがある。何かを想うようにコン太はカシャネコイクサの姿を見、カシャネコイクサもコン太の視線に気づいたのか、自分の主に振り返る。

 

「カシャネコイクサ、僕は君を、キースピリットとして使いこなせるバトラーになったと証明したい! ハルヤさんに僕の実力を認めたい! 僕自身も実力があると証明したい!! だから力を貸してください!!」

 

偽りのないコン太の想い、それを聞き入れるとカシャネコイクサはただ笑いながら頷いて見せ、それに嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「行きますよ! ハルヤさん! 僕の実力の全て、ぶつけます!」

「受けて立つよ!! 僕もまだ負けるつもりはない!」

 

お互いに本気のバトル、コン太はそのまま「アタックステップ!」と宣言し、ハルヤとリューマンゴッドブレイカーはそれを受けて立つように構える。

 

『コン太意気揚々とアタック宣言! しかしハルヤ選手にはリューマンゴッドブレイカーがブロッカーとして待ちかまえ、ライフもまだ3つ残ってる! どうするつもりだ!!』

「関係ないです! カシャネコイクサでアタック! さらにお互いのアタックステップで、カシャネコイクサの効果を発動!」

「!」

 

【妖戒大将カシャネコイクサ】5(3)黄色、スピリット、主君/妖戒。

Lv.1(1)BP5000、Lv.2(3)BP8000、Lv.3(4)BP9000、Lv.4(10)BP25000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3、Lv.4『お互いのアタックステップ』

系統:「主君」/「妖戒」を持つ自分のスピリットカード全てを、『フラッシュ』相手スピリット一体を指定する。このターンの間、そのスピリットはアタック/ブロックできないという効果のマジックカードとしても扱う。

Lv.2、Lv.3、Lv.4『自分のアタックステップ』

このスピリットにS(ソウルコア)が置かれている間、スピリットカードをマジックカードとして使用した時、その効果発揮後、そのスピリットカードをコストを支払わずに召喚できる。

 

「手札にあるカシャネコをマジックカードとして扱い、使用します! その効果は相手スピリット1体を指定し、このターンの間ブロックさせなくします! よってリューマンゴッドブレイカーはこのターンブロックできませんよ!」

 

[リザーブ]3個→0個。

[トラッシュ]5個→8個。

[手札]1枚→0枚。

 

カシャネコが半透明の状態でフィールドに現れたかと思うと、てにわっかのようなものを持ち、それをリューマンゴッドブレイカーに向けて投げつけると、わっかはリューマンゴッドブレイカーを拘束し、その動きを封じてしまう。

 

「そんな!!」

「まだです! さらにカシャネコイクサLv.2、3、4の効果! この効果発揮後にスピリットをマジックとして使用した時、そのスピリットをノーコストで召喚します! よってカシャネコをLv.3で召喚です!」

 

半透明だったカシャネコの体が徐々に濃くなり始めたかと思うと、カシャネコイクサの恩恵を受け、カシャネコがフィールドへと実体化する。

 

[フィールド]妖戒大将カシャネコイクサLv.3((S1)3)BP9000→妖戒大将カシャネコイクサLv.1(1)BP5000。カシャネコLv.3((S1)2)。

 

「カシャネコの召喚時効果発揮! トラッシュのジェネラル瀬戸大将と雪ガールを手札に戻します! そしてカシャネコイクサのメインアタック!」

「ライフで受ける!」

 

背中に背負う御旗を掲げそれをバリア対し、まるで剣のように振り下すと、そのままハルヤのライフを破壊する。

 

「うッ!!」

 

[ハルヤside]

[ライフ]2→1。

[リザーブ]0個→1個。

 

「さらにカシャネコでアタック! アタック効果発揮! このスピリットのソウルコアをトラッシュに置く事でカシャネコイクサは回復します!」

「!」

 

カシャネコは舞いながら黄色の光をカシャネコイクサに灯させると、再び力が戻った様に立ち上がり、再度御旗を振り回し、カシャネコはそれを確認すると、ハルヤへと視界を向け、そのまま勢い良く突進する。

 

[ハルヤside]

[ライフ]2→1。

[リザーブ]1個→2個。

 

「回復したカシャネコイクサで再アタック!! これで決まりです!」

「ぐッ! ライフで、受ける!!」

 

リューマンゴッドブレイカーは主を守らんとするが、体の自由を奪われどうにもできない。カシャネコイクサはそのままリューマンゴッドブレイカーを素通りしながらハルヤへと向かって行き、両手に握り締めた御旗を力一杯に振り下し、ハルヤの最後のライフを破壊する。

 

「うわああッ!!!」

 

[ハルヤside]

[ライフ]1→0[Lose]

 

 

 

***

 

 

 

 

『お互い全力を出し尽くしたバトル!! 白熱したバトルに惜しみない拍手を送りたいです!』

 

バトルを終え、感動したように語る紅葉、神子もその隣で紅葉の言葉に納得するように静かに頷く。

 

『解説者として贔屓目で見ては無いです、それでも大健闘でした。二人とももう立派なカードバトラーですね』

『姉として私達も鼻が高いです。しかし余計な話は割愛しましょう! 本日のバトルはここまで、皆さまご視聴ありがとうございました! また次回お会いしましょう!』

 

実況解説を切り上げると、紅葉達は直ぐにコン太の元へと駆けつけ、バトル後、コン太はハルヤに対し、手を差し伸べる。

 

「バトルありがとうございました。とても楽しかったです」

「うん、僕もだよ。負けちゃったけど、とっても楽しかった!」

 

差し伸べられた手を取り、握手を交わす二人。二人のバトル結果にはザックとキッドもただ感心するように眺めていた

 

「それで、チーム入団する、その資格は僕にあるでしょうか?」

「あはは、資格なんてたいそうなものないよ。それに本気でやって負けたのは僕の方だし、偉そうに仕切るのも何か可笑しいよね」

 

気まずいように苦笑いを隠せないハルヤだったが、ハルヤの言葉に対し「いいえ」と首を横に振る。

 

「実力を認めてもらえても、僕はまだハルヤさんを完全に超えたとは思ってません。今日の結果が出せたのだって、ハルヤさんのお陰ですから」

「えっ?」

「まぁとにかく僕にとってのリーダーはハルヤさんだけです。だから、僕をチームに、チームメンバーとして入れてください!」

 

真っ直ぐなコン太の想いと言葉。その言葉に対し、断る理由は一つもない。

 

「うん! コン太がそう思ってくれるならぜひお願いしたい! まだできてないけど、チームリーダーとしてこちらこそぜひ入団をお願いさせてよ!」

「はい! 喜んで!」

 

「どうやら決まったようですね」、と二人に元へ神子達が声を掛け、その声に反応する二人。

 

「姉さん、そういう訳です。ハルヤさんのチームメイトとして、僕はいつか、姉さんも超えます!」

「……まさか、あなたから宣戦布告される日が来るなんて思ってもみませんでした」

 

コン太の言葉に驚きつつも、その言葉に神子も嬉しそうに表情を緩ませる。

 

「コン太、あなたはもう私達の弟ってだけじゃない。私達は兄弟であり、ライバルです。いつかあなたと戦える日を心待ちにしてますよ?」

「はい! 望むところです!」

「では、私達はこれで。ハルヤさん、コン太をよろしくお願いします。これは姉としての言葉です」

「私からもお願いします!」

 

ハルヤに対し一礼をしながら神子と紅葉はその場から立ち去り、その後姿を見送ると、緊張が切れたように二人はその場に座り込む。

 

「おいおい二人共大丈夫かよ?」

「二人共デンジャー、ちょっと無理しすぎじゃねぇか?」

 

ザックとキッドの肩を借りながら立ち上がる二人。「ちょっと熱くなり過ぎちゃって」と苦笑いしながら口を揃えて答える。

 

「まっぁとにかくお疲れ様、コン太も新しいチームメンバーとして俺からも歓迎するぜ」

「俺も同じだ、よろしくな!」

「はい。二人ともよろしくお願いします」

 

コン太を新しくチームメンバーと加え4人。残り一人、チーム創設までいよいよ実現まであと一歩と迫り、それには4人共心躍らせていた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

舞台は変わり、とあるチームのスタジアム。バトルしているのはややぽっちゃり体型の男と、オレンジのベストにグローブを付けた一人の少女。その少女はチームには属しておらず、無名のカードバトラーだったが、対戦している男はチームランキング20位、上位チーム、「森羅」のリ―ダを務める実力者だった。当然男も見ている観客達にも勝負の結果は見るまでもないと思っていた。しかし。

 

 

「ブレイヴスコーピオン召喚。召喚時効果、相手のアルティメットを破壊するよ」

「!!」

 

 

呼び出される裏十二宮と呼ばれるうちの一体、ブレイヴスコーピオン。出現と同時に、相手の場にいるアルティメットカイザーアトラスにその尾を槍の突き刺し、そのまま尾を振り回してアルティメットカイザーアトラスを宙に放り投げると、空中で爆発四散する。

 

「な、何故だ!! こ、この上位チームリーダーである僕様が何故!! 圧倒される!!」

 

スピリット、マジック、ブレイヴ、アルティメット、バースト。自分の打つ手立てが全てその少女には通用せず、ここまで圧倒される現状がとても信じられなかった。

 

「はぁ、一々驚かないで。この程度の事で。つまらないよ」

「な、何だと!?」

「まぁこれで終わらせるよ、アルティメットドライアンでアタック」

「ッ!! ら、ライフで!!」

 

光のような猛スピードで突っ込むアルティメットドライアン。最後のライフを砕かれ、衝撃に吹っ飛ばされる男。

 

「約束だよ、君のスタジアム、貸してもらうからね?」

「ぐっ……お、お前一体!?」

「……さぁね。君程度に名乗る必要はないね」

「何だと!?」

 

毅然とした態度でバトルスタジアムから降り立つ少女、圧倒的なそのバトルには誰もが衝撃を感じずにはいられなかった。






いかがでしたでしょうか?第12話。今回は初の主人公の敗北回となりました。カシャネコイクサ強い! 黄色デッキ、自分も妖戒で組んでて特にヌエと組み合わせるのが良好になってます。最近ライフ回復効果に必要以上に目が行き、そう思うのはゼクスと今弾のウロヴォリアスのせいでしょうね(笑)今弾。昨日発売介しされましたが皆さま結果はどうでしたでしょうか? 私は2ボックス買って爆死しました(泣)なので悔しくてウロヴォリアスをシングルで購入。ゲイルフェニックスと組ませてデッキ組もうかなと思います。

そして話は変わりまして本編。最後もまた新たな影。次回もどうなるのか期待してくださるとうれしいです。次回も何卒よろしくお願いします!


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No13.戦慄、キラーバトル

・以下注意
誤字、プレイミスアリかも。
バトル表記が人によっては分かりずらいかも。

それでも大丈夫という方はどうか温かい目で見てもらえると幸いです。発見したミスやバトル表記などのご指摘気軽にお待ちしております。






「おはよーございます」

 

朝早くからの氷帝スタジアムに顔を出すハルヤ達、沖田や将達もハルヤ達の姿に返事を返し、奥で氷牙もいつも通り眠そうにしながらも適当に欠伸交じりの返事を返す。

 

「沖田さん、今日も一日スタジアム借りますね」

「うん、いいよ。それよりハルヤ君達も昨日もうチーム4人になったんだっけ?」

「はい、あと一人でようやくチームができます!」

「へぇー、って事は俺達と漸く対等になるって訳っすね」

「ハルヤ君達のチームと戦えるのも私も楽しみだな。早く最後の一人見つかるといいね」

「はい、ありがとうございます」

 

嬉々として返事を返すハルヤ、そこへ続けて、キッドとザックの二人も顔を出し、二人もいつものように挨拶を交わす。

 

「二人共おはよー、今日も宜しくね」

「おぉ、それよりコン太はまだ来てねぇのか?」

 

辺りを確認するように言い放つザックの言葉に頷くと、「なら、丁度いいか」と呟く。

 

「ハルヤ、なら今のうちにデッキ強化しないか?」

「えっ?」

「昨日結局コン太に負けたし、そろそろデッキを見直す個所も出てきたろ? 今やっとくのがいい機会だと思ってな」

 

ザックの言う通り今まで使って来たデッキはそのままの状態で、前にザックから貰った炎龍刀のカードもただ入れただけの状態。この前のコン太のバトルを通してハルヤ自身も見直すべき部分に気づき始めていた。

 

「確かにね。そろそろ強化必要かも」

「そうと決まれば俺も手伝うぜ、丁度余ってんたんだけど、お前と相性のよさそうなカードが幾つかあるし」

「えっ? いいの?」

「俺等のリーダーなんだからもっと強くなってもらわなきゃ困るってだけだよ! だから勘違いすんなよな!」

「はは、素直じゃねぇな」

「ほんとだね」

「ッ! うるせぇ、カード渡さねぇぞ!」

 

照れ臭そうにしながらもカードファイルからカードを取り出すとそれをハルヤに手渡し、そのカードを受け取ると、「ありがとう」と素直に礼を言いながら、台にデッキのカードを広げ、デッキのカードとザックから渡されたカードを交互に見比べる。

 

「ハルヤのデッキって悪くはないけど、ちょっと単調すぎるよな?」

「う~ん、中々他の色入れるとバランスが崩れそうだから怖くて、キッドは確か白のマジック入れてたんだっけ?」

「まぁ光翼之太刀とかかな。他の色でもコストが低いなら使いやすいし、割と気にならないな」

「多色のマジックはともかく、他の色のカードでもこれなら使えるだろ?」

「あぁ確かに!!」

 

ザックから受け取った内の一枚に目を輝かせながら、その後も二人のアドバイスを受け、デッキを新しく見直す事暫く、「出来た!」と嬉々として声を上げながらデッキを構築し終える。

 

「よし! じゃぁ早速どんなもんか俺がテスト、してやろうか?」

「そうだね、一戦頼むよ!」

 

早速デッキの試運転も兼ね、練習バトルを行おうとする二人だが、そこへ遅れてようやくコン太も「おはよーございます!」と顔を見せる。

 

「あっ、コン太!!」

「よぉ、遅かったじゃんか?」

「すみません、でもその分面白い情報掴んできましたよ?」

 

口角を上げ、自信ありげな様子で語るコン太。その情報に当然ハルヤ達も興味がある様にその話に聞き入る。

 

「情報って?」

「上位チーム、チームランキング20位の森羅はご存知ですか?」

「まぁ、名前ぐらいなら」

「先日、その森羅がある一人のカードバトラーとの試合に敗れたみたいです。相手は相当な実力者みたいだったと」

「へぇー、そんなに強いんだ」

「しかもその相手と言うのがまだチーム未所属らしくて、スカウントする手はないと思いますよ」

 

実際にどんな人物かはあって見ない事には分からないが、それでもかなりの実力者というのはハルヤ達の興味をそそる話題だった。

 

「確かにそれぐらい強い相手なら、チームは別として一度バトルしてみたいね」

「何言ってんだ、あと一人なんだ!! チーム別としてなんて言ってらんないだろ!」

「えっ?」

「チームラスト一人! そいつで決まりぐらいの気持ち行くのが一番だぜ、そうと決まればマッハで行くしかねぇだろ!!」

「ちょっ! キッド────!!」

 

思い立ったがすぐ行動するようにその場から立ち上がると強引にハルヤを連れ出し、その光景に若干呆れるようにザックはため息をつきながら眺めている。

 

「はぁー、この前までチームのこと知らなかった奴が一番張り切ってやがる。つかあいつ場所知ってんのかよ?」

「はは、でもあと一人、急ぐ気持ちも分からなくないですね。楽しみなのは僕も同じですから」

 

「まぁな」とザックもその点は否定しないように笑いながら頷いた。

 

「それより相変わらず情報掴むの早ぇよな」

「まぁ元BCOの情報屋として動いてましたから。それの賜物です」

「情報掴むことに長けてんなら、今度ぜひ新しいレアカードとかの情報頼みたいんだけど?」

「生憎ですけど個人の使いぱっしりはごめんです。僕はあくまでチームとしての情報屋として動くつもりですから」

「ちぇッ、つれねぇな」

 

コン太の言葉につまらなさそうにいじけて見せるザックだが、コン太は「それに」と笑いながら続けて行く。

 

「僕に頼るより望むカードの情報は自分で仕入れてこそ、価値があると思いますよ?」

「ハッ、それもそうだな。まっ、んな話はともかく俺等も行くか」

「はい、それには賛成です」

 

二人もまたハルヤ達の後を追い駆け、移動する事暫く、話題のチーム森羅のスタジアムが見え始める。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「ようやく着いたぜ、ここがチーム森羅のスタジアムか」

「まぁほとんどコン太に案内してもらったんだけどね」

 

ハルヤの言う通り、結局情報から場所までコン太に頼りっきりになってしまった事に申し訳なく思うが、それに対しコン太は「気にしないでください」と笑って見せる。

 

「チームの一員である以上、僕も力になりたいだけですよ。それより最後の一人、無事決まるといいですね」

「ほんとだね。まぁとにかく行ってみないとね!」

 

早速スタジアム内に入ろうと足を進めた矢先、「待て!!」とスタジアムへの入場を阻むかのような声。

 

『お前等誰だ! ここが俺達チーム森羅のスタジアムだと分かってんだろうな?』

 

ハルヤ達を呼び止める一人の男、口振りからして恐らくチームメンバーの一人なのだろう。話題の事ですっかり抜けていてが、ハルヤ達がその人物に会う前に、他のチームへのチームスタジアムへ入ろうするのだから、将の時と同様、男がそれを拒むのは当然の対応だった。

 

「ご、ごめん。僕達、このスタジアムにいるカードバトラーに会いたくて。何でもこのチームのリーダーを倒すほどだって」

「なっ!! テメェ等なんでそれを!?」

 

隠す訳でもなく正直に用件を単刀直入に伝え、ハルヤの言葉に男は驚いたような反応を示し、コン太はその横で自分の掴む情報の速さを自負する様に自慢げな表情をか浮かべていた。

 

「な、何でテメェ等が知ってるかは知らねぇが、どの道テメェ等をスタジアムには入らせねぇぞ!! あいつといい、これ以上部外者をチームに入れたら俺達のチームの名誉はガタ落ちだ!」

 

男の言葉から察するにやはりコン太の掴んだ情報は確かなのだろう。しかし、その人物に会う以前にこうして門前払いを受けては話にならない。困り果てた様子のハルヤ達だったが、そこへ。

 

『おやおや、誰かと思えば今話題のハルヤ君じゃないか』

「!?」

 

スタジアム奥からその場に顔を出すもう一人の男、ぽっちゃりとした体形の目立つその男はまるでハルヤを見知っているかのような口振りで、その姿にチームメンバーの一人は「リーダー!?」と驚いたように声を上げ、その言葉が意味するのは唯一つ。このチーム、森羅のリーダーという事だ。

 

「あ、あなたは?」

「始めましてだね。僕様の名前は、金盛マサ。このチーム森羅のリーダーだよ」

「あなたが」

「あぁ。君達の要件は聞いていたよ、あのカードバトラーと戦いたいんだよね?」

「はい! ぜひ一度バトルしてみたくて」

「そうかそうか。だったら案内してあげるよ。僕様についてきたまえ!」

「!!」

 

金盛と名乗る少年、やや傲慢さの目立つ口調だがハルヤ達の要件を案外あっさりと受け入れてしまい、そのままハルヤ達を招き入れ、思わずハルヤもチームメンバーの男もその態度に呆気に取られるが、すぐに気を取り直しその行為に甘え、案内されるがまま金盛の後に着いて行く。

 

『(ちょ、リーダー何考えてるんですか? 唯でさえやばい状況なのにまた部外者をここに入れるなんて)』

 

一方で男はあっさりとした金盛の態度が腑に落ちないように、恐る恐る小声で疑問を尋ねるが、その言葉に対し、金盛は何か意図があるかのように微笑した。

 

「(ふふふ、今に分かるさ)」

「?」

 

そのままスタジアム内へと連れられ、そこにはチーム森羅のメンバーとは明らかに違う異彩を放ちながらデッキを組む一人の少女の姿があった。

 

「あれがそうかな」

「多分間違いないですね」

 

それならばと早速バトルを申し込もうとそのまま駆け寄ろうとするハルヤだったが、突然、金盛はハルヤもよりも前に出始めたかと思うと「おい!」とその少女を威圧的に呼びかける。

 

『……また、何か用ですか?』

 

だが金盛に対し、少女は全く気圧される事無く、呆れたように返事を返し、二人の様子にはただただハルヤ達は混乱するばかり。

 

「用も何もわかってるだろう! いい加減、このスタジアムから立ち退いてもらうぞ?」

「またですか、あくまで借りてるだけなのに随分強引ですね」

「五月蠅い!! お前をこれ以上、僕様達のスタジアムでデカイ顔をさせてたらチームの名誉も何もあったもんじゃない!! 早々に立ち退いてもらうぞ?」

「ならまたバトルしますか? 何度やっても結果は同じですけど?」

「ふふふ、それはどうかな? 次のバトル相手は僕様達じゃない。こいつらさ!!」

「えっ!?」

 

不敵な笑みを浮かべてハルヤ達に視線を送る金盛。以前話の流れに着いて行けず混乱したままだったが、唯一ザックだけは「そういう事かよ」と状況を察したように呟く。

 

「お前等はバトルに勝ってそいつを追い出す事が目的。だから俺達をダシに使う、そうだろ?」

「えっ? どういう事?」

「要するに俺達は利用されてるって事だよ」

「ふふ、君達の要件は彼女とバトルする事だろう? 何か問題でもあるかな?」

 

利用されたことに気づき、当然腑に落ちない訳がない。一方で少女も状況を察した様子で、呆れ気味にため息を零す。

 

「やれやれ自分達でなく他人の手まで使う訳ですか。上位チームの癖に小物なんですね」

「五月蠅いぞ! お前ぐらい倒すのは僕様でも訳はないが、生憎調子が悪いだけだ! 必ずお前をここから追い出すぞ!」

「元々ここを貸して欲しいとの条件でバトル仕掛けたのは私ですけど、相手を舐めて掛かったのはそっちの落度じゃない?」

「ご、ごちゃごちゃと五月蠅い!!ともかくバトル受けるよな! 嫌とは言わせないぞ!!」

 

「おいおい、俺らまだやるとは言ってねぇんだけど」

「はは、まぁでもここまで来た以上引くには引けないしね」

 

金盛達の様子に未だ腑に落ちない気持ちをぬぐいきれないザックだが、ハルヤはあまり気にすることは無く、少女もまた「やれやれ」と悪態をつきながらも特に気には留めていない様子。

 

「まぁやるなら誰でもいいですけどね、で? 私の相手はあなたですかね」

「うん、何だか状況はよくわかってないけど、バトル良かったらお願いするよ」

「バトルはいいとして、あなたは何か目的があるんですか?」

「えっ?」

 

少女にしてみればわざわざ金盛に利用されてまで自分とのバトルを望むという事は、当然金盛とは別の理由があるのだろう。それを確かめようと尋ねるが、その質問に対し、「目的ってほどじゃないんだけど」、と少々照れ臭いように頬を掻く。

 

「えっと、僕達チームを作ろうと思ってるんだけど強いカードバトラーって聞いてさ。もしできたらチームに入ってほしいと思ってるんだ」

「要するにスカウトって訳ですか」

 

提案に対し、一瞬悩むように頬に手をつきながらも、後ろの金盛達の視線が気になるのか、一端思考を放棄した。

 

「まっ、今回は余計なギャラリーもいますし、チームに入るかどうかは一旦別としましょう。どの道、私は自分より弱い人のチームに入る気はありませんからね」

 

相当の自分の腕に自信があるのか、デッキを構え、ハルヤもまたすぐさま受けて立つように自分のデッキを構える。

 

「先に名乗っておきますよ! 桐美スズ。それが私の名前です」

「輝来ハルヤ、よろしくね! スズ!!」

 

今すぐにでもバトルを始めんとする二人、そこへ……。

 

『やっほーッ!! 今日も早速激闘の予感ですね!!』

「「!!」」

 

会場に響く明るい声、どこからか紅葉と神子もその場に現れ、突然の姿に驚く面々だが、紅葉はそれに構わず早速いつものように楽しげに語っている。

 

「相変わらず足が早ぇな、さすが実況ソウル」

「勿論、何時でも激熱の実況がモットーですから!」

 

嬉々として語る紅葉、その横で神子は「対戦するのはハルヤさんみたいですね」とプレイヤーを確認するが、ハルヤの対戦相手であるスズを見た瞬間、見知った人物なのか、何かに気づいたように反応する。

 

「さぁ早速実況……!」

「紅葉、待ってください」

「うん? お姉ちゃんどうかした?」

「今日は解説実況お休みにしましょう」

「!!?」

 

突然の神子の提案に思わず紅葉もコン太も驚いたように反応し、特に白熱したバトルの実況を常としている紅葉にとっては衝撃的という他ない。

 

「ど、どうして!? 折角今日も凄いバトルになりそうなのに!!」

「気持ちは分かりますけど、多分対戦相手の彼女は嫌がると思いますし」 

「えっ!?」

「あまり目立ちたくない。そう言ってました」

「!?」

 

スズの事を知っているかのような様子、スズと神子が面識がある事は姉妹である紅葉やコン太でさえも把握しておらず、顔を踏み合わせながら不思議に思うばかりだった。

 

「姉さんって、あの人のこと知ってるんですか?」

「えぇ、まぁ面識が彼女本人というよりは……嫌、今は別に話す程の事じゃないですね」

「?」

 

躊躇うように途中で話を切り終える神子を不思議に思うが、一方で今回は実況できないという事を知ると、あからさまにがっかりした様に紅葉は肩を落としている。

 

「うぅ、実況出来ないなんてつまらないよ!!」

「まぁまぁ、せめて今回は普通の見学者としてバトルを見届けましょう。次回の実況解説の勉強になりますよ」

「……はーい」

 

がっかりした様子だが神子の言葉に素直に従うと、ザック達と並びバトルを静かに見守る二人。二人の会話が聞こえたいたのか、スズはほっとしたように息を吐きながらも、気兼ねなく視線を対戦相手であるハルヤへと向ける。

 

「さぁ早速始めましょうか!」

「そのつもりだよ!!」

 

互いにお互いの相手を睨み、既に互いにバトルに掛ける意気込みは充分すぎる程だった。

 

「「ゲートオープン、界放ッ!!」」

 

即座にバトル開始の宣言を力強くコールする二人、バトルの幕が下ろされ、二人のバトルに注目が集まる。

 

 

 

 

[01ターン、スズside]

[スタートステップ]

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「私のターン、スタードライアンを召喚します」

 

[リザーブ]4個→0個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→4枚。

 

【スタードライアン】3(白1 青1)白、スピリット、新生。

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(2)BP4000、Lv.3(3)BP6000。

Lv.1

このスピリットの色とシンボルは青としても扱う。

Lv.2、Lv.3

このスピリットの色とシンボルは赤としても扱う。

 

開始早々呼び出すのは青き体を持つ龍、スタードライアン。フィールドに颯爽と現れると、まるで相手を威嚇するように吠える。

 

[フィールド]スタードライアンLv.1((S(ソウルコア)1))BP3000。

 

「白のスピリット?」

「それだけじゃないよ、スタードライアンはレベルによってその色を変化するスピリット、そして例え考えた所で私のデッキは読み切れないよ、これでターンエンドです」

 

何かを狙っているのはすぐに分かる。だが彼女が何を狙っているのかまでは分からない。勝負はまだ序盤だが、片時も気を抜けない事をすぐに察した。

 

 

 

 

[02ターン、ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「メインステップ! リューマンドシャットを召喚!」

 

[リザーブ]5個→3個。

[トラッシュ]0個→1個。

[手札]5枚→4枚。

 

「さらにマジック、双翼乱舞を使うよ!」

 

[リザーブ]3個→0個。

[トラッシュ]1個→4個。

[手札]4枚→3枚。

 

【双翼乱舞】4(2)赤、マジック。

【バースト:相手の『このスピリット/ブレイヴの召喚時』発揮後】

自分はデッキから2枚ドローする。その後コストを支払う事で、このカードのメイン効果を発揮する。

『メイン効果』自分はデッキから2枚ドローする。

 

「デッキから二枚ドロー! これでターンエンド」

 

[手札]3枚→5枚。

[フィールド]リューマンドシャットLv.1((S1))BP1000。

 

序盤は互いに動きはなく、どこか緊迫した空気が流れる中、ザックや神子達は集中するようにただ黙ってそのバトルに見入っていた。

 

 

 

 

[03ターン.スズside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]1個→4個。

 

「ネクサス、サファイアの彫像を配置。さらにマジック、ストロングドローを使います」

 

[リザーブ]4個→0個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]5枚→3枚。

 

【サファイアの彫像】4(2)青、ネクサス。

Lv.1(0)、Lv.2(1)。

Lv.1『自分のアタックステップ』

自分のU(アルティメット)トリガーの「デッキ破棄効果」で、相手のデッキが6枚以下しか破棄されなかった時、さらに相手のデッキを上から4枚破棄する。

Lv.2『お互いのアタックステップ』

相手のバースト発動後、相手のデッキを上から7枚破棄する。

 

【ストロングドロー】3(2)青、マジック。

『メイン効果』自分はデッキから3枚ドローする。その後、自分はデッキから2枚を破棄する。

『フラッシュ効果』このターンの間、スピリット1体をBP+3000する。

 

「マジックの効果で3枚ドロー、そして手札から「俊星流れるコロッセオ」と「海帝国の秘宝」をそれぞれ破棄します」

 

[手札]3枚→6枚→4枚。

[フィールド]スタードライアンLv.1((S1))BP3000、サファイアの彫像Lv.1(0)。

 

「これでターンエンド」

 

 

 

 

「相手、中々動かないな」

「えぇ。赤デッキのハルヤさんとは対照的に場を整える事に専念してますね。ですが、それも恐らく何かを始める為の準備」

 

ここまでの状況を見ながら意見を呟くキッドと神子、その言葉に同意するかのように「そうなんだ!!」とチームリーダーである金盛が声を上げる。

 

「今はまだ動きを見せないが、あいつが恐ろしいのはこれからだ!」

 

対戦した時のことを鮮明に振り返りながら、その時の事に恐怖を感じるように冷や汗を流しながら語り、その話に何を仕掛けるつもりなのか、スズの次の手により注目が集まり、ハルヤもまた油断する訳には行かなかった。

 

 

 

 

[04ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]5枚→6枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]1個→5個。

 

「メインステップ! 早速新しいカード、使わせてもらうよ! 六分儀剣のルリオーサをLv.2召喚!」

「?」

 

[リザーブ]5個→0個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]6枚→5枚

 

六分儀剣(セクスタント)のルリオーサ】4(緑2 赤1)緑、スピリット、殻人/星魂】

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(2)BP5000。

Lv.1、Lv.2『このスピリットの召喚時』

ボイドからコア1個ずつを、自分の赤のスピリット2体に置く。

Lv.2

このスピリットの色とシンボルは赤としても扱う。

Lv.2

自分の手札は相手の効果を受けない。

 

初めて使う緑のスピリット、ルリオーサ。そのカードこそザックから貰った一枚であり、その姿に「来たな!」とザック達も反応して見せる。

 

「ハルヤさん、緑のスピリットを使うんですか?」

「コン太はまだ知らなかったな。俺が渡した一枚さ、ルリオーサ。緑のカードだけどハルヤのデッキとは相性がぴったりだと思って渡したのさ」

 

コン太に話ながら、バトルしているハルヤに「さぁその力を見せてやれ!」と声援を贈り、ハルヤもその言葉に頷きながらバトルに意識を戻す。

 

「召喚時効果発揮! 自分の赤のスピリット2体にボイドからコア一個ずつ置く! ルリオーサはLv.2で赤のスピリットとして扱われる為、自身とリューマンドシャットにコアを置く!」

 

 自分とリューマンドシャットに緑の光を灯し、光によってコアが齎される。

 

「コアブースト、ですか」

「さらに2体をLv.1にダウンし、リューマンチャージャーをLv.2で召喚!」

 

[フィールド]六儀剣のルリオーサLv.2(3)BP5000→六儀剣のルリオーサLv.1(1)BP3000、リューマンドシャットLv.2((S1)1)BP2000→リューマンドシャットLv.1(1)BP1000。

[トラッシュ]3個→4個。

[手札]5枚→4枚。

 

【リューマンチャージャー】3(2)赤、スピリット、竜人。

Lv.1(1)BP2000、Lv.2(2)BP3000、Lv.3(4)BP5000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

自分はデッキから1枚ドローする。

Lv.2、Lv.3

カード名に「リューマン」と入っている自分のスピリット/アルティメットすべてをBP+1000する。

 

「リューマンチャージャーの効果発揮! 名前にリューマンを持つスピリット全てをBP+1000、よって自身とリューマンドシャットにBPを加算するよ!」

 

[フィールド]リューマンチャージャーLv.2((S1)1)BP4000、六儀剣のルリオーサLv.1(1)BP3000、リューマンドシャットLv.1(1)BP2000。

 

「アタックステップ! ルリオーサとリューマンチャージャーでそれぞれアタック! リューマンチャージャーのアタック時効果で一枚ドロー!」

 

[手札]4枚→5枚。

 

先に攻撃宣言を口にしたのはハルヤ、ルリオーサとリューマンチャージャーは手に剣を構え、片手で振り回しながらそのままスズへと向かって行き、攻撃に対し「ライフで受ける!」と宣言し、ルリオーサが繰り出す剣による突きの一撃と、リューマンチャージャーの振り下ろす剣の一閃がバリアへ放たれ、衝撃によってライフを破壊する。

 

「ッ!!」

 

[スズside]

[ライフ]5→3。

[リザーブ]0個→2個。

 

「ターンエンド」

 

 

 

 

[05ターン.スズside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]2個→3個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]3個→7個。

 

「メインステップ! なら私も反撃させてもらいますか、海将軍カニメデス召喚です!」

「!」

 

[リザーブ]7個→2個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]5枚→4枚。

 

【海将軍カニメデス】6(3)青、スピリット、異合。

Lv.1(1)BP6000、Lv.2(4)BP13000。

Lv.1、Lv.2『このスピリットの召喚時』

コスト5以下の相手のスピリット全てを破壊する。この効果で破壊したスピリット1体につき、相手のデッキを上から1枚破棄する。

【合体時】Lv.2【強襲:2】『このスピリットのアタック時』

このスピリットは、ターンに2回まで、自分のネクサス1つを疲労させることで回復する。

 

地面より突如噴き上げる海流、海流を伝い、そのまま上空へと飛び出す影、その影の正体こそ、硬い甲殻を身に備えたスピリット、カニメデスの姿だった。

 

「召喚時効果発揮! 相手のコスト5以下のスピリット全てを破壊する!」

「!!」

 

カニメデスは両手の鋏を打ち鳴らしながら構えると、その両腕を地面に勢い良く叩き付け、青の衝撃波がハルヤのスピリット達へと襲い掛かり、あまりの速さに避ける事は叶わずリューマンチャージャーとルリオーサは吹き飛ばされ、破壊されてしまうが、リューマンドシャットだけは手に持った大槌を盾のように構え、衝撃波に耐え切る。

 

「!」

「ぐっ! リューマンドシャットは相手の効果で破壊されない! よってカニメデスの効果は効かないよ!」

「打ち漏らしましたか、でも関係ない! カニメデスの効果はまだ続く! このスピリットの効果で破壊した相手のスピリット一体に付き、相手デッキを一枚発揮! 二体のスピリットの破壊で2枚破棄させてもらいますよ?」

 

ハルヤのデッキから弾け飛ぶ二枚のカード、一枚は「リューマンサージェント」、そして残るもう一枚のカードが露わとなり、そのカードは「剣聖武竜ミツルギドラゴン」のカードだった。

 

「そんな!! ミツルギドラゴン!!」

 

青の特性の一つ、デッキ破壊。カニメデスもその効果を持ち、カニメデスの効果は予想以上の成果を上げたように彼女は口元を微かに緩ませる。

 

「思わぬ大収穫ってところかな」

「!」

「でもまだ終わりませんよ、寧ろこれからです!」

「(来るッ!)」

 

二体のスピリットは吠えながら既に攻撃の態勢に入っており、その様子にハルヤも攻撃に備えるように構える。

 

[フィールド]海将軍カニメデスLv.1(1)BP6000、スタードライアンLv.1((S1))BP3000。

 

「アタックステップ! カニメデスでアタック!」

「ライフで受ける!」

 

地面に足跡を強く残す程構えると、スズの指示にそのまま勢いよく駆け出し、両右腕の鋏をバリアに向けて突き出すと、バリアをいとも簡単にその自慢の鋏で粉砕してしまう。

 

「うあッ!!」

 

[ハルヤside]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]3個→4個。

 

「これでターンエンド」

 

フルアタックはせず、スタードライアンをブロッカーに残した状態でのターンエンド。現状ライフの差でハルヤがリードしているものの、しかしスピリットを破壊され、キースピリットであるミツルギドラゴンをも失い、今どちらが優勢なのかは明白だった。

 

 

 

 

[06ターン、ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

[ドローステップ][手札]5枚→6枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]5個→9個。

 

「メインステップ、バーストセット! さらにリューマンインフェニティをLv.1で、炎極天リューマンバーストをLv.5で召喚!」

 

[リザーブ]9個→0個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]6枚→3枚。

 

[フィールド]炎極天リューマンバーストLv.5((S1)3)BP12000、リューマンインフェニティLv.1(1)BP3000、リューマンドシャットLv.1(1)BP1000。

 

「アタックステップ! リューマンバーストでアタック!! さらにアタック時効果で相手ネクサスを破壊するよ!」

 

攻撃指示に対し、果敢に攻め込んでいくリューマンバーストそのまま飛び上がり、腕に炎を灯し、その炎をサファイアの彫像に向けて撃ち出すと、直撃を受けそのまま炎上し消滅する。

 

「甘いよ、フラッシュタイミング! アビスブレイク! 不足コストはスタードライアンから確保!」

「!?」

 

[リザーブ]2個→0個。

[トラッシュ]4個→6個。

[手札]4枚→3枚。

 

【アビスブレイク】4(3)青、マジック。

『フラッシュ効果』コスト4以下の相手のスピリット1体を破壊する。この効果は、メインステップで使えない。

【連鎖:条件《白シンボル》】(自分の白のシンボルがあるとき、下の効果を続けて発揮する。)

白:相手のバースト1つを破棄する。

 

「フラッシュ効果でコスト4以下のスピリット、リューマンインフェニティを破壊」

「ッ!!」

 

不意に放たれるマジックによる反撃。マジックにより放たれる青の旋風、それはリューマンインフェニティへと炸裂し、直撃を受け爆発四散してしまう。

 

「まだですよ、さらに【連鎖】の効果発揮! スタードライアンの白のシンボルで条件は満たしてます! よってバーストを破棄!」

「!!」

 

マジックの発動に呼応するように吠えるスタードライアン、自身に白の光が灯るとアビスブレイクが放つ青の旋風もまた白く変化し、そのままハルヤの伏せたバーストを吹き飛ばし、吹き飛ばされたバーストは、リューマンゴッドブレイカーのカード。

 

「しまった! アビスブレイクの【連鎖】をスタードライアンで最大限に生かしてるんだ!」

「御明察です。まっ、気づいたところで遅いですけどね」

「ぐっ!! でもリューマンバースト攻撃はまだ終わってないよ!」

「えぇ、ライフで受けます」

 

リューマンバーストはそのまま一気に拳をバリアに叩き込み、バリアを突き砕き破壊する。

 

「ッ!」

 

[スズside]

[ライフ]3→2。

[リザーブ]0個→1個。

 

「ターン、エンド」

 

ライフを削り確実に追い込んではいるものの、彼女は涼し気な表情で余裕を見せており、彼女の打つ手立てになぜか自分の方が追い込まれているような気がした。そしてその直感は強ち間違っていないのか、続く自分のターンに彼女は口角を上げて笑って見せた。

 

[07ターン.スズside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]1個→2個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]6個→0個。[リザーブ]2個→8個。[フィールド]海将軍カニメデス回復。

 

「メインステップ、カニメデスをLv.2にアップ、さらに天蠍星鎧ブレイヴスコーピオン召喚!」

 

[リザーブ]8個→0個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]4枚→3枚。

 

【天蠍星鎧ブレイヴスコーピオン】6(3)青、ブレイヴ、異合/光導。

Lv.1(1)BP5000、【合体時+5000】

Lv.1『このブレイヴの召喚時』

相手は、最もコストの低いアルティメット1体を破壊する。

Lv.1『このブレイヴの破壊時』

自分のトラッシュにある青のネクサスカード3枚を、コストを支払わずに配置できる。

【合体条件:コスト4以上】

 

「召喚時効果発揮! 相手の最もコストの低いアルティメットを破壊する!」

「なっ!」

「標的はリューマンバースト! よって破壊するよ!!」

 

出現したるは裏十二宮ブレイヴと呼ばれる蠍座の一体。奇怪な鳴き声を上げながら尾を構え、リューマンバーストに狙いを定めるとその長い尾を振るい、リューマンバーストを貫き破壊してしまう。

 

「リューマンバースト!!」

 

尽く相手の手を潰していく彼女のバトルスタイル、その戦い方には見ている観客達にとっては戦慄する光景だった。

 

 

 

「バーストに続いて、アルティメット破壊。容赦のねぇバトルだな」

「あれが奴のバトルスタイルだ。僕様のスピリット、アルティメット、バーストの何もかもが通用しなかった」

「スピリットもアルティメットも、何もかもを狩り尽す。例えるなら、キラーバトラー、と言ったところでしょうかね? これはハルヤさんには今までになく厳しい相手ですかね」

 

ここまでの流れに対し、状況を見定め厳しいように語る神子。しかしその言葉に対し、「まだ分かりませんよ」と真っ先に否定したのはコン太だった。

 

「どんな相手でもハルヤさんは諦めてませんよ、誰が相手でも、ハルヤさんはそういう人ですから」

「おいおい、ハルヤの強さを知ってるのはお前だけじゃねぇぞ、俺等もあいつがどういう奴かはバトルしたからよくわかってる!」

「オフコース、勿論俺も同じだぜ。俺等は唯応援するだけだ」

「そうですね。僕たちは応援するだけです。僕たちのリーダーを」

 

和気藹々と語る弟の姿に神子や紅葉も姉としてそれを微笑ましく思いながらも、続くバトルの行方に視線を戻す。

 

[フィールド]海将軍カニメデスLv.2(4)BP13000、天蠍星鎧ブレイヴスコーピオンLv.1(1)BP5000、スタードライアンLv.1((S1))BP3000。

 

「アタックステップ! もう一度行け! カニメデス!」

「ぐっ! ライフで受ける!」

 

再び両腕を振るいながら突っ込むカニメデス、展開されたバリアに両腕を同時に突き出しそのままバリアを破壊する。

 

[ハルヤside]

[ライフ]4→3。

[リザーブ]5個→6個。

 

「スタードライアンでさらにアタック!」

「それもライフで受ける!」

 

スタードライアンは攻撃指示を待ちに待っていたように全速力でまるで飛び回る様にフィールドを駆け、そのまま飛び上がり、宙返りで勢いをつけた尾の一撃をバリアに叩き込み、さらにライフを破壊する。

 

「うわあッ!!」

 

[ハルヤside]

[ライフ]3→2。

[リザーブ]6個→7個。

 

「これで同点、ターンエンド」

「ッ! やっぱり強い……けど、まだまだ負けてられないね!!」

「!」

 

追い詰められながらもまだハルヤも反撃を狙うように強く闘志を燃やし、その様子に少し驚いたような表情を浮かべながら、まるで興味深そうに口元を微かに緩ませる。

 

「(次のターン、どんな手を打つか。まっ、お手並み拝見ですね)」

 

 

 

 

[08ターン、ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]7個→8個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]8個→12個。

 

「メインステップ! リューマンクロウ、リューマンサージェントを連続召喚!」

 

[リザーブ]12個→8個。

[トラッシュ]0個→2個。

[手札]4枚→2枚。

 

「リューマンサージェントの召喚時効果発揮! トラッシュにあるリューマンの名を持つスピリットを手札に戻す! 対象はリューマンゴッドブレイカー!」

 

[手札]2枚→3枚。

 

「(キースピリットを回収してきましたか)」

「行くよ! 敵を打ち砕け! 炎の一蹴必殺!! リューマンゴッドブレイカーをLv.2で召喚! 不足コスト確保でリューマンクロウを破壊!」

 

地面から飛び出す赤き龍、飛び散る瓦礫を空中で蹴り砕きながら地面に降り立つそち、リューマンゴッドブレイカーは大きく咆哮を轟かせる。

 

[フィールド]リューマンゴッドブレイカーLv.2((S1)2)Lv.2、リューマンサージェントLv.1(1)BP3000、リューマンドシャットLv.1(1)BP1000。

 

「アタックステップ! リューマンゴッドブレイカー! アタック!! アタック時効果発揮! 手札から紅炎竜ヒノコを破棄! アルティメットの破棄で回復!」

「(手札を残り1枚にしてでもという事は……このターンで決めに来ますか)」

 

勝負に王手を掛けようと一気に突っ込むリューマンゴッドブレイカー、地面を強く蹴り上げ宙高く飛び上がるが、まだ彼女にしても対策がない訳がなかった。

 

「フラッシュタイミング! キングスコマンド! 不足コストはカニメデスから確保!」

「えッ!?」

 

[フィールド]海将軍カニメデスLv.2(4)BP13000→海将軍カニメデスLv.1(2)BP6000。

[トラッシュ]4個→6個。

 

【キングスコマンド】4(2)、マジック。

【バースト:相手の『このスピリット/ブレイヴの召喚時』発揮後】

自分はデッキから3枚ドローする。その後、自分は手札1枚を破棄する。その後コストを支払う事で、このカードのフラッシュ効果を発揮する。

『フラッシュ効果』このターンの間、コスト4以上の相手のスピリットはアタックできない。

 

「効果により、コスト4以上の相手スピリットはアタックできない!」

「!!」

「継続中のアタックはブレイヴスコーピオンでブロック!」

 

[Battle]リューマンゴッドブレイカーLv.2((S1)2)BP10000vs天蠍星鎧ブレイヴスコーピオンLv.1(1)BP5000。

 

迫るリューマンゴッドブレイカーにブレイヴスコーピオンは狙いを定めるかのように尾を構え、まるで尾を砲台の様にリューマンゴッドブレイカーに向けてレーザーを撃ち放つ。だがリューマンゴッドブレイカーは宙に飛び上がった状態で足に炎を灯し、その場で体制を整えて飛び蹴りを繰り出すと、放たれたレーザーを蹴り破り、そのまま一直線にブレイヴスコーピオンに飛び蹴りを叩き込み、衝撃に耐え切れず爆発を起こす。だが、破壊されたその瞬間、爆風からブレイヴスコーピオンの体の一部が飛び出したかと思うとそれはスズのフィールドへと降り注ぎ、瞬く間に降り注いだ残骸は光となってネクサスを映し出す。

 

「!?」

「ブレイヴスコーピオンの破壊時効果、トラッシュのネクサス3枚までを自分のフィールドに配置する。よってトラッシュのサファイアの彫像、俊星流れるコロッセオ、海帝国の秘宝を連続配置!」

 

映し出されたネクサスはそのまま実体化し始め、スズのフィールドへと出現する。キングスコマンドをあえてバーストセットしなかったのは、恐らくブレイヴスコーピオンの破壊時効果を使う為だろう。最初からハルヤがキースピリットで攻めてくると読んだ上での対策。誰の目から見てもハルヤよりも彼女の方が一枚上手なのは明らかだった。

 

【俊星流れるコロッセオ】3(2)青、ネクサス。

Lv1(0)、Lv.2(1)

Lv.1、Lv.2

相手は、相手のフィールドにあるシンボルと同じ色のマジックしか使用できない。

Lv.2『自分のアタックステップ』

相手のスピリット/ブレイヴ/ネクサス/マジックの「BPを+する」効果は発揮されない。

 

【海帝国の秘宝】4(2)青青、ネクサス。

Lv.1(0)、Lv.2(1)。

自分の手札は相手の効果を受けない。

Lv.2『自分のアタックステップ』

自分の青のスピリット/アルティメットの効果で破棄する自分の手札の枚数を-1枚する。

 

「ぐッ……ターン、エンド」

 

悔しい気持ちはあれど、攻め手がない以上どうする事も出来ない。悔しい気持ちを胸に、そう宣言するしかなかった。

 

[09ターン.スズside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]1個→2個。

[ドローステップ][手札]2枚→3枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]6個→0個。[リザーブ]2個→8個。[フィールド]海将軍カニメデス、スタードライアン回復。

 

「メインステップ、カニメデスのコアをリザーブに戻します!」

 

[フィールド]海将軍カニメデスLv.1(2)BP6000→海将軍カニメデスLv.1(1)BP6000。

[リザーブ]8個→9個。

 

「リザーブにコアを集めてる!?」

「えぇ。私もそろそろ一気に行きますからね!」

 

「行きますよ!」と意気込むように手札の一枚を構え、そして叫ぶ。

 

「究極の竜!! その輝きと名を銀河に轟かせッ! アルティメットギャラクシードラゴンを召喚!!」

 

[リザーブ]9個→5個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]3枚→2枚。

 

【アルティメットギャラクシードラゴン】5(青2 極1)極、アルティメット、新生/翼竜。

Lv.3(1)BP9000、Lv.4(2)BP11000、Lv.5(4)BP15000。

【召喚条件:コスト1以上の自分のスピリット1体以上】

Lv.3、Lv.4、Lv.5

自分の究極シンボルすべてを青のシンボルとしても扱う。

U(アルティメット)トリガー】Lv.4、Lv.5『このアルティメットのアタック時』

Uトリガーがヒットした時、トラッシュに置いたカードのコスト1につき、相手のデッキを上から2枚破棄する。

 

辺り一帯に包まれる黄金の輝き、そして地面から飛び出す巨大な龍の翼、そのまま地面を突き破り、巨大な咆哮を轟かせるその龍こそ、アルティメットギャラクシードラゴン。

 

「アルティメット!!」

「驚くのはまだ早いですよ、自分のアルティメットがいる時に召喚できる! 私の本当のキーカードを!!」

「!?」

 

さらに手を掛けるカード、スズにとってそのキーカードはアルティメットギャラクシードラゴンをも超える自分にとっての最強のカード。

 

「黄金の輝きに身を包みし蒼白の龍! 流れる流星の如く突き進め! アルティメットドライアンをLv.4で召喚ッ!」

 

[リザーブ]5個→0個。

[トラッシュ]3個→6個。

[手札]2枚→1枚。

 

先程以上に強くフィールドを照らす眩い光、空を駆けてフィールドへ降臨する龍────アルティメットドライアン。並び立つ二体の究極の龍はより一層強く咆哮を共鳴させ、その咆哮はフィールドを震動させる程に響き渡る。

 

「二体のアルティメットを一気に!?」

 

目の前に並び立つ二体のアルティメットの姿にはハルヤでさえも一瞬圧倒される程の光景、その光景がスズの本気を証明するには充分すぎる程だった。

 

[フィールド]アルティメットドライアンLv.4(2)BP17000、アルティメットギャラクシードラゴンLv.3(1)BP9000、海将軍カニメデスLv.1(1)BP6000、スタードライアンLv.1((S1))BP3000、サファイアの彫像Lv.1(0)、俊星流れるコロッセオLv.1(0)、海帝国の秘宝Lv.1(0)。

 

「決めるのは私の方ですね、このターンで決着にしますよ!」

「ッ!!」

「アタックステップ、アルティメットギャラクシードラゴンでアタック!!」

「リューマンドシャットでブロック!」

 

[Battle]アルティメットギャラクシードラゴンLv.3(1)BP9000vsリューマンドシャットLv.1(1)BP1000。

 

迫るアルティメットギャラクシードラゴンにリューマンドシャットは大槌を盾の様に構えるが、無駄な事だった。アルティメットギャラクシードラゴンはその巨大な手を振り上げ、一気にリューマンドシャットへと振り下すと、盾代わりとする大槌を意図も容易く粉砕し、衝撃にリューマンドシャットは吹き飛ばされ消滅してしまう。

 

「さらにアルティメットドライアンでアタック! WU(ダブルアルティメット)トリガー、ロックオン!」

「!!」

 

間髪入れずに次にアルティメットドライアンに攻撃指示を出した途端、両腕を構えてハルヤのデッキから2枚のカードを弾き飛ばす。

 

【アルティメットドライアン】7(青3 極1)極、アルティメット、新生/極竜。

Lv.3(1)BP10000、Lv.4(2)BP17000、Lv.5(4)BP25000、Lv.6(6)BP28000。

【召喚条件:自分のアルティメット1体以上】

WU(ダブルアルティメット)トリガー】Lv.3、Lv.4、Lv.5、Lv.6『このアルティメットのアタック時』

ヒットしたWUトリガー1回につき、このアルティメットのLvを1つ上のものとして扱う。【ダブルヒット】Uトリガーが2回ヒットしたら、さらに、このアルティメットは回復する。

Lv.6『自分のアタックステップ』

[アルティメットドライアン]以外の自分のアルティメット全てを、そのアルティメットが持つ最高Lvとして扱う。

 

「アルティメットドライアンのトリガーがヒットすれば自身のレベルアップ。そして2回ヒットすれば、回復できる! 何度でもね!」

「!」

 

トリガーがヒットし続ければ永久的に攻撃し続ける事の出来るアルティメットドライアン。まさに彼女がキーカードと呼ぶに相応しい強さだった。そして弾き飛ばされたカードを示しながら彼女は続けて行く。

 

「さぁコールコストお願いしますよ!」

「……ネオコールオブロストと炎龍刀オニマル真打、コストは5と6」

「ならダブルヒッ────」

 

これで決まったと、勝利を確信するように宣言する彼女だったが、それを言い切る瞬間、「まだだ!」と制止するようにハルヤは強く叫ぶ。

 

「!?」

「二回目のトリガーがヒットする前に手札にあるこのマジックカードを使うことが出来る!」

「まさか……!!」

「【トリガーカウンター】発揮! 手札からサンブレイカーを使用するよ!!」

「!!」

 

【トリガーカウンター】、その効果はアルティメットリガーがヒットした瞬間、その効果が発動する前に発揮する事のできる効果。まさにそれはアルティメットトリガーに対抗し得る唯一無二の効果。

 

「不足コスト確保でリューマンゴッドブレイカーをレベルダウン。そしてサンブレイカーの効果で2枚ドロー、さらにヒットしたカードが赤のカードなら、コストに関係なくガードとしたものとして扱う! 二回目にヒットしたカードは炎龍刀オニマル真打は赤のブレイヴカード、条件は満たしてる!」

「!!」

 

[リザーブ]1個→0個。

[フィールド]リューマンゴッドブレイカーLv.2((S1)2)BP10000→リューマンゴッドブレイカーLv.1(1)BP6000。

[トラッシュ]8個→11個。

[手札]1枚→0枚→2枚。

 

「(まさか最後の一枚に持ってたなんて)」

 

完全に予想外の一手。余裕の様子だったスズの表情も崩れるが、まだアルティメットドライアン自身の攻撃は残っている。直ぐに冷静戻り、バトルを継続させる。

 

「回復はできなくても一度目のヒットでアルティメットドライアンをLv.5にアップさせ、さらにメインのアタックは続いてます!」

「ライフで受ける!!」

 

そのまま光の如く突き進むと、一気に展開されたバリアに突っ込み激突すると、ハルヤのライフを破壊する。

 

「ッ!!」

 

[ハルヤside]

[ライフ]2→1。

[リザーブ]0個→1個。

 

残る一つのライフ、だがアルティメットドライアンが回復できない事で、攻め手が足りず、このターンで勝負を決める事は不可能だった。一瞬勝負を決められない事に表情を険しくさせるも、すぐに場を状況を確認し、次のターンで確実に勝負を決めると言い聞かせながら冷静さを取り戻すと「ターンエンド」とコール。

 

「追い込んだことには変わりありません、次のターンで決めます!」

「いや悪いけど、僕だって負けてられない! 最後まで、諦めないよ!!」

 

 

 

 

[10ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]1個→2個。

[ドローステップ][手札]2枚→3枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]11個→0個。[リザーブ]2個→13個。

 

「メインステップ! リューマンゴッドブレイカーをLv.3にアップ! さらに行くよ! 天下切り裂く勝利の剣! 太陽の如く燃え上がれ! 剣神無双リューマンゴッドソードLv.3で召喚ッ!」

 

バトルも終盤、決着を付けるこの局面に呼び出したるは一番のキースピリットであるリューマンゴッドソード。フィールドに炎が燃え広がり、その中で輝く眼光。周囲の炎を手に持つ剣で一閃し、リューマンゴッドソードが満を持してその姿を見せる。

 

「それが、あなたのキースピリット!」

「そうだよ、これが僕の一番のスピリットさ!」

 

[フィールド]剣神無双リューマンゴッドソードLv.3((S1)4)BP10000、リューマンゴッドブレイカーLv.3(5)BP13000、リューマンサージェントLv.1(1)BP3000。

 

睨み合う両者のスピリットとアルティメット。どちらが勝つか、それは間違いなくこのターンで結果を示す事になるだろう。場を整え終えると、そのまま力強く「アタックステップ!」と宣言する。

 

「リューマンゴッドブレイカーでアタック! アタック時効果で手札のリューマンフェニックとリューマンライトニングを破棄して回復させる!」

 

[手札]2枚→0枚。

 

「ライフで受ける!」

 

残る手札全てを捨ててリューマンゴッドブレイカーを回復させ、一方で防御札は尽きたのか、リューマンゴッドブレイカーの攻撃を受け入れ、そのまま展開されたバリアに飛び膝蹴りを叩き込むと、強烈な一撃にバリアは破壊されライフは砕け散る。

 

「くッ!」

 

[スズside]

[ライフ]2→1。

[リザーブ]0個→1個。

 

「さらに回復したリューマンゴッドブレイカーで再アタック!」

「甘いですよ! フラッシュタイミングでピュアエリクサーを使用します!」

「!?」

「不足コスト確保で、スタードライアンを破壊!」

 

[リザーブ]1個→0個。

[フィールド]スタードライアンLv.1((S1))BP3000→スタードライアンLv.0(0)消滅。

[トラッシュ]6個→8個。

[手札]1枚→0枚。

 

【ピュアエリクサー《REVIVE》】3(2)白、マジック。

『フラッシュ効果』自分のスピリット/アルティメット全てを回復させる。このターンの間、この効果で回復したスピリット/アルティメットはアタックできない。

 

まだ万策は尽きていなかったのか、残る一枚でのカウンターマジック。効果によりスズの二体のアルティメットに白い光が灯ると、再び立ち上がり二体のアルティメットは大きく咆哮を共鳴させる。

 

「リューマンゴッドブレイカーはアルティメットドライアンでブロック!」

「!」

 

[Battle]リューマンゴッドブレイカーLv.3(5)BP13000vsアルティメットドライアンLv.4(2)BP17000。

 

リューマンゴッドブレイカーは再び飛び上がると、足に炎を灯し、そのままアルティメットドライアンに強烈な踵落としを繰り出すが、咄嗟にアルティメットドライアンは後ろに飛んでその一撃を避わすと、先程までアルティメットドライアンがいた地面はリューマンゴッドブレイカーの一撃によって大きく砕けるが、攻撃を外しアルティメットドライアンの姿も見失ってしまう。

 

すぐさま周囲を見渡すが、次の瞬間、青い閃光がリューマンゴッドブレイカーに近づいたかと思うと、その閃光の正体はアルティメットドライアンであり、高速で繰り出す一撃を受け、リューマンゴッドブレイカーは宙に跳ね飛ばされ、空中で身動きの取れないリューマンゴッドブレイカーに追討ちを駆けるかのようにさらに高速状態での攻撃を繰り返し、幾度とない攻撃の前にはさすが耐え切れず、リューマンゴッドブレイカーは破壊されてしまう。

 

「まだだよ! リューマンゴッドソードでアタック! アタック時効果で一枚ドロー!」

 

[手札]0枚→1枚。

 

「アルティメットギャラクシードラゴンでブロック!」

 

[Battle]リューマンゴッドソードLv.3((S1)4)BP10000vsアルティメットギャラクシードラゴンLv.3(1)BP9000。

 

駆け出すリューマンゴッドソード、それを阻まんと今度はアルティメットギャラクシードラゴンが立ち塞がり、突っ込むリューマンゴッドソードに、まるで翼を刃のように振り下し、リューマンゴッドソードもそれを手に持つ剣を盾の様にして受け止める。互いに一歩も譲らず互いに翼と剣に力を込め、真っ向から激突する二体。だが拮抗する力比べに埒が明かない事を悟ったのか、一端リューマンゴッドソードから距離を置き、翼を広げて飛び上がったかと思うと、そのまま大きく口を開きリューマンゴッドソードに向けて破壊光線を放ち、あまりに高威力にその場に大爆発が起こる。

 

爆音を轟かせ、爆風に視線を向け確実に得物を倒したと確信するアルティメットギャラクシードラゴン。しかし、爆風が晴れた瞬間、その場にはリューマンゴッドソードの影も形もなく、アルティメットギャラクシードラゴンは驚いたように慌てて周囲を見渡すが、その瞬間、不意の気配を察知し真上を見上げると、そこには自分の頭上に位置し、剣を構えるリューマンゴッドソードの姿があり、先程、破壊光線が放たれた瞬間、間一髪でそれを避けたばかりか、巻き起こる爆風に上手く乗り上げ、アルティメットギャラクシードラゴンよりも高く飛び上がっていたのだった。

 

「行っけぇーーッ!! リューマンゴッドソード!!!」

 

ハルヤの言葉に応えるかのようにリューマンゴッドソードは雄叫びを上げながら剣に炎を纏わせ、そのままアルティメットギャラクシードラゴンに一閃。炎の一撃にアルティメットギャラクシードラゴンは力尽き、その場に巻き起こる大爆発。

 

「リューマンゴッドソードのバトル終了時に、手札の「竜人」、「剣使」を持つスピリットかアルティメットを召喚できる! よって手札から武将龍萬を召喚!」

「!」

 

リューマンゴッドソードが剣を天に掲げ、その剣に導かれるして現れるスピリット、炎の灯る刀を握りし戦国の龍、武将劉萬。

 

【武将劉萬】5(2)赤、スピリット、武竜/竜人。

Lv1(1)BP4000、Lv.2(3)BP7000。

このスピリット/スピリットカードはカード名に「リューマン」が入ってるものとして扱う。

Lv.1、Lv.2『このスピリットの召喚時』

BP6000以下の相手のスピリット1体を破壊する。召喚コストにS(ソウルコア)を使用していたら、かわりに15000以下の相手のアルティメット1体を破壊する。

 

「召喚時効果発揮! カニメデスを破壊するよ!!」

 

刀に灯す炎をより大きく燃え上がらせるとその場からカニメデスに向けて振り下し、切っ先から炎が斬撃波のように撃ち出され、その炎は真っ直ぐカニメデスへと直撃し、炎の斬撃波を受けてカニメデスは破壊される。

 

「……まさか最後の一枚でそれを引くなんて、驚きですね」

 

手札を使い切りもはや打つ手はなかったが、彼女の表情はどこか清々しく、「いつでもどうぞ」と、敗北を覚悟しながらも最後まで勝負続けるように目を輝かせていた。

 

「行くよ! 武将劉萬でラストアタック!! これで決まりだ!!!」

「ライフで、受けます!」

 

最後の一撃となる武将劉萬の一閃、残るライフを砕き、勝負に幕を下ろす。

 

[スズside]

[ライフ]1→0[Lose]

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「ありがとう、いい勝負だったよ」

「……はぁー、負けるなんて思ってもなかった」

 

やはり負けた事に悔しいのか不満を述べながらも、どこかわざとらしい態度で、悔しい気持ちよりも内心はバトルに満足して様だった。

 

「それでチームの話なんだけど、どうかな?」

「あっ、そうでしたね」

 

すっかり忘れていたようにハルヤの話題に、スズは少しだけ困ったように表情を曇らせる。

 

「あぁ、ごめん。無理なら強制はしないよ。スズさえ良かったらでいいんだけど」

「……一つ聞いていいですか? ハルヤさんのチームってまだ無名ですよね?」

「う、うん。まだ5人揃ってないからね。スズでようやく5人目なんだけど、やっぱり無名のチームじゃ駄目かな?」

「あっ、嫌そういう訳じゃないんです。寧ろ、逆ですかね」

「えっ?」

 

静かに呟くスズの言葉に一瞬疑問に思うが、「気にしないでください!」と直ぐに話題を切り替え、そのまま続けて行く。

 

「じゃあ遠慮なくチームに入らせてもらいますよ? 負けるなんて初めてですから、私より強いならリーダーとしても認めます」

「いいの!?」

 

ハルヤの言葉に笑顔で頷くスズに、「やったぁーーっ!!」と喜ばずにはいられず、それを見ているザック達も「やったな!」とその場に駆け寄り、祝福するように声を掛ける。

 

「これで5人遂に揃った! 俺達もようやく今日からチームって訳か」

「念願のチーム、断然目指すならナンバーワンだな」

「スズさん、同じメンバーとしてこれからよろしくお願いします。勿論ハルヤもさんも!」

「はい。よろしくお願いします」

 

新しいメンバーとしてスズと挨拶を交わす面々、全員が自分の事のように喜び、その様子に金盛達もまた笑っていた。

 

「何はともあれ、アイツが勝ったのならこれでようやく僕様達の名誉も安泰だな」

「あの、リーダー。ところで本当にこれでよかったんですか?」

「よかったも何もこれで解決したじゃないか」

「いやそうなんですけど、あいつらってこれでチームメンバーが揃ってことですけど、俺等を倒すようなカードバトラーが他所のチームにいるってその、色々まずくないですか?」

「えっ……あぁ!?」

 

その事に気づくと、顔色を変えて慌てたように「直ぐに特訓だ!」と慌ててメンバー達に告げ、一方でチームメンバーが揃ったことに喜ぶハルヤ達だが、「その前に」と、やるべきことを思い出したように、気持ちを一端抑える。

 

「チーム5人揃ったなら早速ダイキさん達に報告に行かないとね」

 

5人揃ったからと言ってまだ正式にチームとなった訳ではない。早速チームへの登録をしようと動こうとするハルヤ達だったが、『その必要はねぇぞ』と、突然の声がスタジアムに響き、振り返るとそこにはスタジアム前に腰掛けるダイキの姿が。

 

「えっ!? ダイキさん!?」

 

噂をすれば何とやら、何時の間に来ていたのかその姿に驚くように声を荒げ、何故この場にいるのか唯々不思議だったが、疑問を尋ねるよりも前に「ちょっと呼ばれてな」と疑問に答える。

 

「呼ばれたって誰に?」

「はーい、それは私達だよー!」

 

手を上げながら嬉々として語る紅葉、「姉さんが!?」と先程まで一緒にいたにもかかわらずコン太も気づいてなかったように驚きを隠せなかった。

 

「はい、コン太がハルヤさんを信じてるならきっとこういう結果になると思い、お呼びしました。気が早いかと思ったのですが、結果的にはベストタイミングになったようで何よりです」

「まぁお姉ちゃんの直感は冴えてるからね! こう見えて、私もハルヤさんが勝つって信じてたんだよ!」

 

神子に合わせるように胸を叩きながら自信ありげに語る紅葉。それには少々苦笑しつつも素直に「ありがとうございます」と一礼する。

 

「まぁともかくひとまずチームメンバーが揃っておめでとうだな。早速登録始めるぜ」

「そう言えば登録って具体的には何を?」

「まぁ簡単だ、チームメンバーの把握と、チーム名の決定。まとめてこの二つだけだ」

「チーム名……!」

「あぁ、ちゃんと考えてるか?」

 

悪戯っぽく笑うダイキに質問に対し、ハルヤは何かを考え込むような素振りを見せるが、自分の中で既に決まっていたのか、すぐに「はい!」と返事を返した。

 

「ずっと考えてたんです。チーム名、ちょっと恥ずかしい気もするけど」

「照れるなって、どんな名前だよ?」

「え~っと、「龍攻威(リュウセイ)」って名前で。由来は自分のデッキを参考に考えたんですけど」

「成程な、中々いい名前だと思うぜ、全員そうだろ?」

 

ダイキの言葉に他のチームメンバーも否定するつもりはなく、寧ろ自分達も気に入ってるのか賛成するように静かに頷き、それを見ると「決まりだな」と口角を上げて見せた。

 

「それじゃぁ登録完了だ! 今日からお前等はチーム、「龍攻威」だ! これから最強目指して、全員頑張れよ!!」

「「「はい!!」」」

 

ようやく念願のチームを結成できた事に誇らしげな気持ちを感じていた。意気揚々と今後に向けて、これからも頑張るという気持ちで一杯だった。

 

「ハルヤさん、チーム創設おめでとうございます。これで私達ともライバルになる訳ですね」

「はい、戦う時はぜひよろしくお願いします!」

「えぇ、その時を心待ちにしてますよ。ダイキさんも今日は急な呼び出しに応じてくれてありがとうございます」

「まっ、別にいいぜ。今回は他の用事もあったしな」

 

ダイキの言葉に不思議にそうに首を傾げるハルヤ達だが、そのまま一枚の紙を取り出し始めたかと思うと、不敵に笑みを浮かべる。

 

「お知らせさ、バトスピ大会のな!」

「「「!?」」」

 

取り出した紙には、その詳細が書かれており、それは新たな波乱を起こす火種となるのであった。




大変お待たせしました!今回ようやく第13話更新できました!!相変わらず自分のようなものが書く駄文でも読んでくださってくれている読者様には本当に感謝の気持ちで一杯です。最近更新ペースが遅れておりますが、できるだけ早く更新できるよう頑張りますので、何卒よろしくお願いします。


そして今回は、ハルヤの最後のメンバーとなる桐美スズとの対戦。アルティメットギャラクシードラゴンとアルティメットドライアンはお気に入りなので今回小説で登場させて大変楽しかったです。アルティメットギャラクシードラゴンは持ってないのですが泣
決着となり、無事チームへと入団した彼女。伏線持ちです( `ー´)←(言い方)何気に現段階で色々と伏線が多いですが、そのうちに回収するという事で(←目線逸らし)

次回からは新たな章として大会編をお送りいたしますのでどうぞよろしくお願いします。そして話は変わりまして、明日いよいよゴジラコラボ販売開始されますね。

ツイッター内でフラゲしてる方をかなり見ているので、もう今すぐにでも買いたい衝動に駆られています。自分は採録のメカゴジラ狙いですかね? あと、絶甲氷盾も採録されてるのは美味しいですね。ぜひともいいカード当てるぞ!←フラグ


何はともあれまた次回も宜しくお願いします(*^^*)


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第3章 激闘バトル大会
No14.開幕乱戦、剣神無双vs異海神


・以下注意
誤字、プレイミスアリかも。
バトル表記が人によって分かりずらいかも。

それでも大丈夫という方はどうか温かい目で見てもらえると幸いです。発見したミスやバトル表記などのご指摘気軽にお待ちしております。






 

 

 

 

『さぁついにやって参りました!! バトスピ大会!! 会場は既に、開始前から多くの強豪バトラーが集い、今か今かとその時を待ちわびております!! BCOより、犬神紅葉がこの光景を中継しております!!!』

 

まだ朝早い時間帯にも関わらず、とある会場に集う多くのカードバトラー達。ある者は集中するようにただ黙々とその時を待ち、またある者は他のカードバトラー達と情報を共有し、またある者は周りの様子を伺いながら様子を探っている。色んなカードバトラー達がいる中で、その中には勿論ハルヤを含むチーム5人の姿もあった。

 

「公式大会、初めてなので緊張します」

「緊張すんなって、ただビクトリー飾り続けるだけだぜ!」

「へっ、優勝するのは俺だ!」

「意気込んでるところ悪いですけど、優勝の枠は私が独占しますからね?」

 

チームメイト同士と言え共各々自分の優勝を目指すように語る面々。彼らが今なぜ現在にに至るのか、それは経緯を遡る事、数日前。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「大会、ですか!?」

 

大会告知用の紙を掲げるダイキ、突拍子もない突然の告知、驚くのも無理もなかった。

 

「そうだ。開催は3日後、指定の場所での大会だ。当然規模もそれなりだ」

「ず、随分急ですね?」

「まぁな、けど突拍子もない開催告知が案外この街の持ち味かもな?」

「えっ?」

「準備期間がほとんどない分、カードバトラーとしての実力以上の真価が問われる。そういうコンセプトだろ?」

「真価、ですか……!」

「まぁまだ3日ある。基本大会は誰でも参加可能だが、チームの場合は戦績によってランキングにも影響されるからな。俄然お前等にはちょうどいい機会じゃねぇの?」

「!」

「大会は当日受付だが、どうする? 参加する気はあるか?」

 

全員顔を見合わせるが、最初からハルヤ達5人の答えは決まり切っていた。

 

「「「勿論参加します!」」」

「そう来なくっちゃな。腕に覚えのあるカードバトラーが集うんだ、気合入れとけよ!」

「はい!」

 

今から既に気合を入れるように声を張っての返事。その日からハルヤ達、メンバー全員それぞれ特訓に励み、そしてあっという間に3日と言う期間が流れ、現在に至る。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「それにしても規模もそれなりって聞いてたけど、大会ってだけあって、やっぱり思ってた以上だったね」

「あぁ。けど、こんな大舞台でバトルできるのは願ってもない事かもな」

「そうだね。まぁ全力で頑張るだけだよ!」

 

キッドにそう答えてながらも、実際の所、予想以上の規模の大会に緊張せずにはいられなかった。何とか落ち着こうと深呼吸するハルヤだが、そこへ……。

 

『誰かと思えば、ハルヤじゃねぇか』

「!」

 

突然背後からの声、それに一瞬驚いたように背筋を震わせるが、その声には聞き覚えがあり、すぐさま振り返る。

 

「り、リーダー!!」

 

そこにはいるのはかつて自分が元所属チームであるレッドドラゴンのチームリーダー、火龍エンザと吉馬の姿だった。

 

「おいおい、前にも言ったぜ。俺はもうお前のリーダーじゃねぇっての」

「あっはい。つい癖で」

「はは、相変わらず変わってねぇな」

 

可笑しそうに笑うが、「いや違うか」とすぐに自分の言葉を撤回するようにつぶやく。

 

「変わったと言えば変わったか。神子達の放送から聞いてる、ついにお前も正式にチームリーダーになったんだろ? それに相応しい面構えになってきたじゃねぇか」

「えっと、そうですかね?」

「ふん、まぁ精々俺と戦った時よりは強くなったんだろうな!」

「それは当然!」

「それならいいけどよ、それよりそっちはお前のチームメンバーなんだっけ?」

 

ザックやキッド達を見ながら、それぞれがそれなりの実力者である事をすぐに感じ取れた。

 

「ふーん、まぁ戦う時は楽しめそうかもな」

「戦う、って事はやっぱり吉馬達もこの大会に?」

 

ハルヤに言葉に対し「当然」と即答し、参加するのはエンザも同じなのか吉馬に同意するように頷いて見せ、その言葉にザックは面白そうに笑って見せる。

 

「俺等だって、あんた等と当たるときは全力で行くぜ? 勿論例えリーダーのハルヤだったとしてもな!」

「はは、なるほど相手が誰だろうと勝ちに行くってか。中々いい根性したカードバトラーが揃ってるじゃねぇか」

 

ザックの言葉を聞くと、エンザもまた面白そうに反応して見せながら口角を上げてさらに続ける。

 

「お前等全員相手にとって不足はねぇ! 俺も吉馬と同じく戦えるのを楽しみにしてるぞ!!」

 

挑戦状ともいえるエンザの言葉、全員それにもちろん受けて立つ意思を見せるかのように頷き、早くもこれから行うであろうバトルに向けて闘志を燃やす中、『あーーッ!!』とそこへまたも聞き覚えるのある声が。

 

「うん?」

「ハルヤ!! それに火龍エンザッ!! テメェ等二人揃ってこの大会に向けてノコノコ現れるとはいい度胸じゃねぇか!! まさに飛んで火にいる夏の虫ならぬ、夏の龍ってか?」

 

エンザと同じく不良っぽい少年と、大柄な男の二人、チーム海皇所属のメンバーであるバンと武凱の姿だった。

 

「何だぁ? お前等も来てたのかよ。そっちのリーダーはどうした?」

「俺達のキャプテンなら生憎デッキ調整で今日は来てねぇ。だが今日この大会でお前と会えたならキャプテンの手を煩わせるまでもねぇ、今日ここで俺がキャプテンに変わってテメェをぶっ倒してやるぜ!!」

「バン、テメェには荷が重ぇ、此奴を倒すのは俺様だ!!」

「んだと!? 武凱、テメェ人の手柄を奪う気か!!」

「奪うも何もテメェじゃ手にも入らない手柄だってんだよ!」

「あぁ!?」

 

相変わらず犬猿の仲の二人、本題そっちのけで口論する二人に吉馬は「相変わらず騒がしい」と呆れて見せるが、二人の様子に対し、エンザは「勝手に話を進めるな!」と二人の会話を中断させる。

 

「「!!!」」

「ここで騒いでも始まらねぇだろ? 当たるのは時の運。俺に挑んできたときに全力で来やがれッ! 誰が相手だろうと負ける気はねぇがよ!!」

「ハッ、上等だぜ。テメェがどんなに息巻こうが勝つのは俺だ! それと、テメェにもな! ハルヤァッ!」

「!!」

「前に負けた屈辱、あれ以来一度たりとも忘れた事はねぇ! テメェもエンザもぶっ倒し、俺の屈辱を晴らす!!」

 

一方的な挑戦状を叩き付けると、用が済んだ様に武凱とバンはその場を後に、それを見届けるとエンザ達も「また後でな」と言い残してその場を立ち去って行く。

 

「やれやれ、騒がしいですね」

「けど、誰がバトルの相手でも楽しめそうな奴等ばっかりだぜ」

「まぁそれは否定しないですけどね」

「ともかくバトルが楽しみになって来たね」

 

『ハルヤ君!』

 

自分を呼ぶ声、その言葉に一瞬顔を赤くしたかと思うと、すぐに振り返り、そこには沖田と将の二人の姿が。

 

「お、沖田さん!!」

「やっぱりハルヤ君もこの大会来たんだね。チームも出来たみたいだし、ひとまずおめでとう!」

「あ、ありがとうございます!!」

「ふん、チームが出来てようやくオイラ達のチームスタジアムを貸す必要がなくなったから清々したッスよ」

「迷惑かけてごめんね。沖田さんもすみません」

「嫌、私は気にしてないから謝らないでよ。それより今日はライバルとして、対戦する事になるかもね」

「は、はい。僕の方こそよろしくお願いします!! 沖田さん達がいるって事は氷牙さんも?」

「いや、あの人は眠いとか何とか言ってさぼってて」

「だから兄貴に変わって俺達が成果の残すッスよ!」

「まぁとにかくそういう訳で参加するのは私達だけ。よろしくね?」

 

 

顔を赤くしながら必死に沖田に返事を返すハルヤの様子にザックとキッドは「相変わらずだな」と呟くが、その様子に対しスズは不思議に思うように首を傾げる。

 

「ハルヤ、随分テンパってない?」

「そうですね、何だかさっきよりも緊張してるっていうか」

「あぁー、やっぱそう思う?」

「何か知ってる?」

「あの人、ハルヤの好きな人なんだってよ?」

「「えっ!!?」」

 

コン太とスズは驚いたように声を上げながらも、コン太はそれを聞くと、「へぇー」と口元を緩ませて微笑ましく二人の様子を見守り、一方でスズは二人の様子に対し何を想うのか、ただ黙ってその様子を眺める。

 

「スズ、どうかしたか?」

「! べ、別に何でもないよ!」

「?」

 

慌てて平静を取り繕いながら答え、ザックはそれに不思議に思いながらも、「だったらいいんだけど」、と特に気にすることは無く会話を切り上げる。

 

「(別に私が気にする事なんてない、よね?)」

 

スズ自身も一瞬自分が慌てた事に疑問を想いながらも直ぐに何でもないように平静に戻り、一方でハルヤも沖田たちとの会話を切り上げ、ザック達の元へ戻る。

 

「ごめんごめんすっかり話し込んでて、あれ? 何かあった?」

「べ、別に何でもないですよ!」

「?」

 

スズの様子にハルヤもまた不思議に思い、ザックと顔を見合わせるが、ザックもまたわからないと言いたげに両手を上げて見せる中、ようやく動きがあったのか、スタッフが会場へと誘導開始し、会場に入場し始める観客やカードバトラー達。それにスズは「ほら行くよ!」と周りと同じく移動を開始し、ハルヤも慌ててその後を追うように会場へと入って行く。

 

『皆さま、ようこそいらっしゃいました! 本日は多くの方に来場いただき、誠にありがとうございます!』

 

会場へ入った矢先、彼らを出迎えるのはチームの運営管理を担う光、ステージ中央に立ちながらさらに彼女は続ける。

 

『今回の大会、司会進行はこちらの方々にお願いしています、それではどうぞ!』

 

『レディースアンドジェントルメーン! 皆さま大変長らくお待たせしました!! これよりバトスピ大会の開幕を宣言致します!!! 司会担当は私、BCO実況解説で御馴染みの犬神紅葉と!!』

『はい、毎度解説させていただいてます犬神神子が担当します』

 

光りの後ろに続いて顔を出す二人、コン太は二人が大海を実況することを全く知らなかったのか、「姉さん!?」と驚いたような表情を浮かべていた。

 

「やっぱりこういうイベントには事欠かさないな」

「はは、まぁもうサプライズって程驚く事はねぇな」

 

一瞬驚きはしたものの、さすがにいつもどこにでも現れる普段の経緯を見慣れるだけにそれほど大きくは驚きはしない。見慣れたように苦笑いするザック達だったが、それを聞いて聞かずか……。

 

『さてさすがに司会担当させていただきますが、普段の放送で私達を見慣れてる方は驚きはしないでしょうね。だからここでサプライズとして、私達の他にさらにもう一人ゲストが来てくれてますよ』

「「!?」」

『早速お呼びしましょうか? 紅葉、お願いします』

『はいはい、では早速お呼びしましょう!! 本日のスペシャルゲスト!!!』

 

声を大に背後に視界を向けると、ステージの奥から姿を現す人物。それには思わず会場中の誰もが一瞬言葉を失う。

 

「あ、あの人って!!」

 

信じられないかのように叫ぶハルヤ、彼を始めとするカードバトラー達の視界に映ったのは、現チャンピオンである、若槻和人の姿だった。

 

『本日のスペシャルゲスト!! 多くのドラゴン達を使いこなし、今なお天下という頂点に君臨するチャンピオン、若槻和人選手だーーッ!!!』

「「「!!!!!」」」

 

高らかに会場に響く声、チャンピオンである和人の姿に、会場中の空気が一変する。

 

『和人さん、本日は宜しくお願いしますね』

『同じく宜しくお願いします。早速ですがコメント戴いてもいいですか?』

「二人ともよろしく。まぁ恥ずかしいけど、じゃぁマイク借りるぜ?」

 

会場中がざわめく中、一方で和人は照れるように頭を掻きながらも、さすがに場慣れしているようにマイクを受け取ると、会場中のカードバトラー達を見渡す。

 

『今日は来てくれてありがとう。みんなのバトルぜひ今日見せてもらう! 俺の闘志を駆り立てるような熱いバトルを頼むぜ!!』

 

チャンピオンの言葉に、誰もがよりこれから行うバトルに気合が入る。チャンピオンが見ているというだけでバトルに俄然気が抜けない。

 

『チャンピオンありがとうございました! それでは皆様も待ちくたびれてると思うので早速、大会始めて行きましょう!!』

『えぇ、本日の大会参加者は総勢32名。名のあるチームのバトラー達も多く見えます。この中の誰が優勝するのか、私達も期待しながら見届けましょう!』

『えぇバトルでは私達がいつもと同じく! バトルの実況解説させていただきますよ!!! まずは第一試合から、発表しちゃいますか! それは皆さま、モニターにご注目!!!』

 

既に準備し終えていたように手早く段取りを進めると、モニターを指すとモニターに映し出される選手達の画像が映し出さたかと思うと、まるでスロットマシンのように回転を始めて行く。

 

『さぁそれでは第一回戦、最初の組み合わせはこちら!!』

 

紅葉の言葉と共に、回転が止まると最初に対戦する二人のカードバトラーが映し出される。

 

『第一回戦は何と! チーム龍攻威リーダー、輝来ハルヤ選手と、チームネオ所属、水海アオト選手だッ!!!』

「えっ!? い、いきなり僕!?」

 

大会初戦のトップバッターを務める事に当然緊張しない訳には行かない。緊張に落ち着かないが、それを見兼ねた様にスズはハルヤの肩を叩く。

 

「!」

「しっかりしてください。それでも私達のチームのリーダーなんですか?」

「うっ……! ごめん」

「しっかりしたバトルじゃなきゃリーダー交代ですね」

「あはっ、案外悪くねぇかもな。そしたら俺がこのチームのリーダーになってやるぜ!」

「ちょ、スズもザックもあんまりだよ!!」

 

二人の様子に少しだけムッとした様に反論するが、緊張も解けた様子でそれを確認すると二人は笑いながら「冗談」と呟く。

 

「まぁ初戦頑張りな。チャンピオン見てんだぜ?」

「……うん、そうだね。あの人がチャンピオンだったのは驚きだけど、今は唯目の前のバトルに集中するだけだよね! ありがとう、バトル頑張るよ!」

 

見送られるようにバトル中央のステージへと赴き、対戦相手の少年もまたステージへと降り立ち、ハルヤの姿に気づくと。

 

『あっれぇー? ハルヤじゃん! こんな舞台でまたも戦うなんてね!』

「!」

 

青髪の少年、水海アオト。それは以前大会で戦った際、ハルヤが負けたあの時の相手だった。

 

「アオト……久しぶりだね」

「あはっ、覚えてたんだ。まぁあんだけコテンパンにされちゃあ忘れたくても忘れられないよね?」

 

挑発気味な態度で口角を上げるアオトだが、それに対してハルヤは真剣な表情でアオトを見る。

 

「忘れてなんかいないよ。だから今日は、あの時のリベンジさせてもらうよ!」

「ふん、無駄無駄。お前もリーダーとしてちょっとは強くなったらしいけど、僕はその倍以上の強さなんだからね!!」

 

既に勝利を見据えているかのように強気な態度のアオトだが、ハルヤもまた決して物怖じておらず、必ず勝つという思いを胸に秘める。

 

『第一回戦から面白い組み合わせですね! 対戦するの新しく結成されたチーム龍攻威、そのチームリーダーとなるのは今注目のカードバトラー、輝来ハルヤ選手!!』

『えぇ。そして対戦相手はチームネオの水海アオト選手。彼は一度公式戦でハルヤ選手を倒しています。ハルヤ選手にとってこの試合はリベンジマッチとなる訳ですね!』

『第一回戦からどうなるのか! 早くも期待を欠かせない試合となりました!! 早速、注目のバトル始めていただきましょう! それでは両者準備を!』

 

紅葉の言葉と共に、二人はステージへと立つと、デッキを構えそして叫ぶ。

 

「「ゲートオープン! 解放ッ!!!」」

 

掛け声と共に開幕するバトル。ザックやスズ、チームメンバーを始め、エンザやバンと言ったライバルたる面々もバトルに釘付けになるように魅入り、そしてまたチャンピオンである和人もそのバトルに注目する。

 

「(あの子もついにチームリーダーか、どれぐらい強くなったのか? 見せてもらうぜ)」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

[01ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「メインステップ、リューマンインフェニティ召喚!」

 

[リザーブ]4個→0個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]4枚→3枚。

 

[フィールド]リューマンインフェニティLv.1((S(ソウルコア)1))BP3000。

 

「ターンエンド」

 

 

 

 

[02ターン.アオトside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「僕ターン、行くっよッ! ネクサス、海魔巣食う海域を配置!」

 

[リザーブ]5個→0個。

[トラッシュ]0個→5個。

[手札]5枚→4枚。

 

【海魔巣食う海域】5(青2 赤1)青赤、ネクサス。

Lv.1(0)、Lv.2(1)。

Lv.1、Lv.2『自分のアタックステップ』

【連鎖】を持つ自分のスピリットがアタックした時、そのスピリットのLvを一つ上のものとして扱う。

Lv.2『お互いのアタックステップ』

相手は赤/緑/白のバーストを発動できない。

 

ネクサスの出現と共に空は黒く染まり、突如として荒れ狂う天候に波も荒れ果て、その名の通り、何かが潜んでいるかのような気配を漂わせ、アオトの場へと配置される。

 

「ターンエンド」

 

 

 

 

[03ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]1個→4個。

 

「メインステップ! リューマンフェニック召喚!」

 

[リザーブ]4個→1個。

[トラッシュ]0個→2個。

[手札]5枚→4枚。

[フィールド]リューマンインフェニティLv.1((S1))BP3000、リューマンフェニックLv.3(1)BP6000。

 

「アタックステップ! リューマンインフェニティでアタック! アタック時効果で1枚ドロー!」

 

[手札]4枚→5枚。

 

「ライフで受ける!」

 

[アオトside]

[ライフ]5→4。

 

「さらにリューマンフェニックでアタック!! アタック時効果でさらにドロー!」

 

[手札]5枚→6枚。

 

リューマンインフェニティに続いてリューマンフェニックもアオトへと突っ込み、それをライフで受け、バリアに突進し、ライフをさらに破壊する。

 

[アオトside]

[ライフ]4→3。

 

「ハッ、この程度で僕が倒れるとでも? 舐めんなよ、コラッ!」

 

しかしライフを失いながらもまだまだ血気盛んな様に強気な態度を見せるアオト。だが、ハルヤも決して気持ちでは気圧されてはいない。冷静にバトルに集中しながら「ターンエンド」とコール。

 

 

 

 

[04ターン.アオトside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]2個→3個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]5個→0個。[リザーブ]3個→8個。

 

「メインステップ、ミノタコルス召喚、さらに続けて海将軍カニメデス召喚!」

 

[リザーブ]8個→0個。

[トラッシュ]0個→6個。

[手札]5枚→3枚。

 

[フィールド]海将軍カニメデスLv.1((S1))BP6000、ミノタコルスLv.1(1)BP3000。

 

「カニメデスの召喚時効果発揮! コスト5以下のスピリット、全て破壊だ!」

 

両腕の鋏を勢いよく地面へと叩き付けると、リューマンフェニックとインフェニティの2体の足元より噴き上げ、吹き飛ばされた2体は空中で消滅する。

 

「破壊したスピリット1体につき、さらにデッキを1枚破棄!」

「!」

 

スピリットの破壊と連動するかのようにハルヤのデッキから2枚のカードが弾け飛び、「リューマンファンタジスタ」と「サンブレイカー」の2枚がトラッシュへ送られてしまう。

 

「まだまだ、こっからだ! アタックステップ、海将軍カニメデスとミノタコルスでそれぞれアタック!! ミノタコルスは赤シンボルを条件に【連鎖】発揮! 1枚ドロー!」

 

[手札]3枚→4枚。

 

「ライフで受ける……ッ!!」

 

カニメデスの鋏のミノタコルスの矛が同時にバリアへと叩き付けられ、2つものライフが一気に破壊され衝撃に仰け反る。

 

[ハルヤside]

[ライフ]5→3。

[リザーブ]3個→5個。

 

 

「これでターンエンド」

 

『おぉっと、先手をハルヤ選手が取ったと思いきや、アオト選手も直ぐに巻き返してきました!』

『まだ序盤ながら既にお互いヒートアップしてますね。次の展開ももっと熱くなることでしょうね』

『やはり1回戦目から目の離せない対決ですね!』

 

ここまでの互いの実力は互角、どちらが先に仕掛けるのか、見ているカードバトラー達はそんな事を想いながら続くバトルになおも注目し続ける。

 

 

 

 

[05ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]5個→6個。

[ドローステップ][手札]6枚→7枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]2個→0個。[リザーブ]6個→8個。

 

「メインステップ! エクスムゲンドラ召喚!」

 

[リザーブ]8個→5個。

[トラッシュ]0個→2個。

[手札]7枚→6枚。

 

【エクスムゲンドラ】2(1)赤、スピリット、新生/古竜。

Lv.1(1)BP2000、Lv.2(2)BP3000、Lv.3(5)BP4000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3【スピリットソウル:赤】

自分がアルティメットカードを召喚する時、このスピリットに赤のシンボル1つを追加する。

Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

自分はデッキから1枚ドローする。

 

「エクスムゲンドラの【スピリットソウル】を発揮!」

「!」

「紅炎竜ヒノコをLv.4で召喚ッ!」

 

[リザーブ]5個→0個。

[トラッシュ]2個→5個。

[手札]6枚→5枚。

 

【紅炎竜ヒノコ】5(3)赤、アルティメット、次代、星竜。

Lv.3(1)BP9000、Lv.4(2)BP12000、Lv.5(5)BP15000。

Lv.3、Lv.4、Lv.5

コスト7以下の自分のアルティメットカードの召喚条件を無視する。自分の究極シンボル全てを赤のシンボルとしても扱う。

U(アルティメット)トリガーLv.4、Lv.5『このアルティメットのアタック時』

 

光輝く炎を纏いながらフィールドへと現れる究極(アルティメット)、紅炎竜ヒノコ。身に纏う炎を振り払い、その咆哮を響かせる。

 

「系統「次代」を持つアルティメットの召喚により、トラッシュのリューマンインフェニティを手札に戻し、さらにバーストセット!」

 

[手札]6枚→5枚。

[フィールド]紅炎竜ヒノコLv.4((S1)1)BP12000、エクスムゲンドラLv.1(1)BP3000。

 

「アタックステップ行くよ! 紅炎竜ヒノコでアタック! U(アルティメット)トリガー、ロックオン!」

 

攻撃と同時にアオトのデッキに狙いを定め、そして弾き飛ばされる1枚のカード、アオトは警戒するように表情を歪めながらも、弾け飛ぶカードを手に取る。

 

「コストコール!」

「フン、「星海獣シーサーペンダー」、コストは5! ガードだ!」

「!」

 

ヒノコにはヒットすれば2枚ドローできる効果を持つが、それはあくまでも、ヒットすればの話。ヒットしなければアルティメットトリガーを持つアルティメットはその効果を使用することはできない。

 

「残念だったね、折角のアルティメットトリガーなのにさ!」

「それでも、アタックは継続してるよ!」

「……チッ、ブロッカー無し。ライフで受ける!」

 

舌打ち交じりのコールと同時にヒノコは展開されたライフに火炎放射を吐き付け、炎がバリアを焼き焦がして破壊し、アオトのライフをさらに破壊する。

 

「ッ!!」

 

[アオトside]

[ライフ]3→2。

[リザーブ]0個→1個。

 

「ターンエンド!」

 

 

 

 

[06ターン.アオトside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]1個→2個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]6個→0個。[リザーブ]2個→8個。[フィールド]海将軍カニメデス、ミノタコルス回復。

 

「メインステップ、悪いけどもう勝負決まったみたいだね?」

「!?」

 

『アオト選手、早くも勝利宣言!? これはまさか……!』

『えぇ、恐らくこのターンで仕掛けてきますね』

 

アオトの言動に一早く何かを察するように呟く神子、観客達も息を呑む中、アオトは手札の1枚に手を掛ける。

 

「深海より来たれ! 大海を統べし覇者! 異海神ディストルクシオン、召喚ッ!!」

 

[リザーブ]8個→2個。

[トラッシュ]0個→6個。

[手札]5枚→4枚。

 

【異海神ディストルクシオン】8(4)青、スピリット、異合。

Lv.1(1)BP6000、Lv.2(2)BP9000、Lv.3(5)BP14000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

コスト5以下の相手のスピリット1体を破壊する。

【連鎖:条件《赤/紫シンボル》】

(自分の赤/紫シンボルがあるとき、下の効果を続けて発揮する)

[赤]:【強化】を持つ相手のスピリット1体を破壊する。

[紫]:疲労状態の相手の合体スピリット1体を破壊する。

Lv.2、Lv.3

相手のブレイヴ/ブレイヴカード全ての合体条件をコスト7以上にする。

 

突如としてアオトの背後より押し寄せる大津波、激流がフィールドへと降り注ぎ、飛沫を跳ね上げながら異海神ディストルクシオンが現れると、見ている観客達は皆驚いたように声を上げるが、その様子にアオトは「まだだ!」と、さらに手札に手を掛けて叫ぶ。

 

「覇者たる者を王へと導け! 青き闇のソードブレイヴ! 深淵の巨剣アビスアポカリプスをディストルクシオンに直接合体(ダイレクトブレイヴ)!」

 

[リザーブ]2個→0個。

[トラッシュ]6個→8個。

[手札]4枚→3枚。

 

さらに海流を巻き込みながら上空へと噴き上げる激流、上空へ巻き上げられた大量の水は雨の様にフィールドへと降り注ぎ、雨と共にフィールドへと振り落ちる闇の剣、アビスアポカリプス。それをディストルクシオンは一気に咥え取る。

 

【深淵の巨剣アビスアポカリプス】5(3)青、ブレイヴ、剣刃。

Lv.1(1)BP5000。【合体時】BP+5000。

Lv.1『このブレイヴの召喚時』

このターンの間、自分のスピリット全てを、そのスピリットが持つ最高Lvとして扱う。

【合体条件:コスト5以上】

【合体時】

相手は、相手のフィールドにあるシンボルと同じ色のバーストしか発動できず、相手のフィールドにあるシンボルと同じ色のマジックカードしか発動できない。

 

「アビスアポカリプスの召喚時効果発揮! このターン、僕のスピリット全てを最高レベルとして扱い、さらに合体時効果で相手は自分自身のフィールドにあるシンボルと同じマジックとバーストしか使えない!」

「!!」

 

闇の剣が起こせし雨はアオトのスピリット達にとっては文字通り、天の恵み。雨が恵みを齎すかのように三体のスピリットに青黒い光が灯ると、最高レベルとしてその力を一気に上昇させる。

 

[フィールド]異海神ディストルクシオンLv.3(1)BP19000、海将軍カニメデスLv.2((S1))BP12000、ミノタコルスLv.2(1)BP5000。

 

「アタックステップ! このターンで落とすッ! 行け、ディストルクシオン!! ソードブレイヴアタックッ!! アタック時効果でエクスムゲンドラを破壊だ」

 

ディストルクシオンは大きく唸りを響かせ、そのまま海面を滑るかのように進撃を開始し、そして動き出すと同時に胸部の器官に電撃が走り出したかと思うと、それを直接エクスムゲンドラに向けて撃ち出し、直撃を受け破壊されてしまう。

 

「これでお前に残るのは疲労状態のアルティメットだけ! ソードブレイヴスピリットはトリプルシンボルだッ!」

「ッ! フラッシュタイミング!」

「無駄だ、さっきも言った筈だぜ! アビスアポカリプスは合体時効果で相手は常に自分のフィールドにある同じシンボルのマジックとバーストしか使えない!! 今お前の場にあるのはアルティメットシンボルだけ!! それで使えるマジックカードとバーストは皆無!」

「!」

「つまり、これで終わりッ!!」

 

反撃の手を許さない決定打となる攻撃、ハルヤの場には自分を守るブロッカーは無く、止めを刺そうと一気にハルヤへと迫り、これで勝負が決まるのかと誰もが驚いたような表情を浮かべる中……。

 

「……僕がマジック、バーストを使うのに必要なシンボルがあればいいんだよね?」

「!?」

 

意味深なハルヤの言葉に不思議に思う中、ハルヤは口角を上げて笑って見せたかと思うと、そのまま手札に手を掛け続けて行く。

 

「紅炎竜ヒノコの効果! 自分の究極シンボル全てを赤のシンボルとしても扱う!」

「何ッ!?」

 

紅炎竜の効果は常時発揮され、その効果は自身にも適用される。そしてハルヤの場に赤のシンボルが存在する事で、アビスアポカリプスによる抑制を受け無くなる。

 

「フラッシュタイミングでマジック! 双光気弾!」

 

[リザーブ]1個→0個。

[フィールド]紅炎竜ヒノコLv.4((S1)1)BP12000→紅炎竜ヒノコLv.3(1)BP9000。

[トラッシュ]5個→7個。

[手札]5枚→3枚。

 

【双光気弾】3(1)、赤、マジック。

【バースト:相手による自分のスピリット破壊後】

自分はデッキから2枚ドローする。その後コストを支払う事で、このカードのフラッシュ効果を発揮する。

『フラッシュ効果』相手の合体スピリットのブレイヴ1つを破壊する。または、相手のネクサス1つを破壊する。

 

「効果により相手のブレイヴを破壊!!」

「何ッ!!」

 

目の前まで迫るディストルクシオンは一撃で勝負を決めようと、咥えたアビスアポカリプスを大きく振りかぶるが、その瞬間、突如放たれた二つの火球が直撃。不意の一撃にディストルクシオンは弾き飛ばされ、咥えていたアビスアポカリプスは火球によって砕かれてしまう。

 

「ブレイヴを失ったことでディストルクシオンの攻撃じゃライフは0にならないよ!」

「ぐッ! けど、メインアタックは残ってんだぜ!! どの道押し切れる!! ディストルクシオンそのまま行けッ!!」

 

火球に怯まされながらも、ディストルクシオンの攻撃はまだ生きている。双光気弾による炎の強襲は異海神の怒りを大きく増徴させてしまったのか、大きく咆哮を響き渡らせると、そのまま飛び上がりバリアへと取り付き、胸部の器官を伝い、その電撃を全身へと走らせ、そのままバリアに組み付いたまま放電し、バリアを一気に破壊する。

 

「うわあああッ!!」

 

[ハルヤside]

[ライフ]3→1。

[リザーブ]0個→2個。

 

追い詰められた状況には変わりない。一気にライフを二つ破壊され、その衝撃に思わず吹き飛ばされそうになるが、それでもまだハルヤは諦めないように踏み止まる。

 

「ライフ減少時でバースト発動! 炎龍刀オニマル真打!!」

「!!」

「バースト効果により相手のBP6000以下のスピリット全てを破壊し、このブレイヴを召喚ッ!!」

「ぐッ! アビスアポカリプスは例え破壊されても召喚時効果はまだ継続してる! 最高レベルとして扱っているディストルクシオンとカニメデス破壊されないぜ!!」

「それでもミノタコルスは破壊するよ!」

 

空より降り落ちる一刀の剣、オニマル真打。空中で炎の円を描きながらフィールドへと突き刺さると、刀身に宿る炎はそのあまりの熱さに周囲の海面を蒸発させながらさらに燃え広がり、ミノタコルスを焼き尽くし破壊する。

 

「(ぐっ……!! 残るのはカニメデスだけ、これ以上アタックしてもライフを削り切れない!)」

 

冷静に状況を見渡し、あと一手足りない事に歯痒さを覚えながらも、どうする事もできない。苛立ち気味に「ターンエンド」と宣言するしかなかったが、それでも次のターンは確実に決めると言いたげにハルヤを睨み、ハルヤもそれに対し後がないことは重々承知していた。

 

 

 

 

[07ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]2個→3個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]7個→0個。[リザーブ]3個→10個。[フィールド]紅炎竜ヒノコ回復。

 

「メインステップ! 僕も一気に行くよ!」

 

全力を込めるように手を掛ける一枚、そしてそのまま強く叫ぶ。

 

「天下切り裂く勝利の剣! 太陽の如く燃え上がれ! 剣神無双リューマンゴッドソード、Lv.3で召喚ッ!」

 

[リザーブ]10個→2個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→4枚。

 

燃え広がる炎のフィールド、その炎の中で眼光輝かせる龍、そして次の瞬間、周囲の炎を一瞬で剣の一振りで掻き消すと、リューマンゴッドソードがその姿を現し、フィールドに揃う両者の気スピリットに観客達は全員喚起の声を上げる。

 

「まだまだ行くよ! リューマンゴッドソードを炎龍刀オニマル真打と合体!!」

「!」

 

地面に突き刺さるオニマル真打に掴むと、そのまま力強く一気に引き抜き、両手に持った剣と刀を天に向けて掲げる。

 

[フィールド]剣神無双リューマンゴッドソード×炎龍刀オニマル真打Lv.3((S1)4)BP15000、紅炎竜ヒノコLv.3(1)BP9000。

 

「リューマンゴッドソード、チーム龍攻威としての晴れ舞台!! 存分に決めるよ!!」

 

ハルヤの言葉にリューマンゴッドソードは応えるように振り返って頷き、その反応を嬉しそうに笑いながら、「アタックステップ!」とバトルを続けて行く。

 

「リューマンゴッドソードでアタック! アタック時効果で1枚ドロー! さらに合体時効果で、ディストルクシオンに指定アタックッ!」

「ぐっ!! 迎え撃て! ディストルクシオン!」

 

[Battle]剣神無双リューマンゴッドソード×炎龍刀オニマル真打Lv.3((S1)4)BP15000vsディストルクシオンLv.1(1)BP6000。

 

互いに吠える剣神無双と異海神。両者真っ向から互いに突っ込み、ディストルクシオンは先手を奪うように胸部の器官から電撃を撃ち出すが、リューマンゴッドソードは炎龍刀と剣を交差させ、電撃を切り伏せながら止まる事無く突き進んでいきそのまま一気に二刀の得物をディストルクシオンへと振り下すが、それを頭部の角で受け止めて見せ、拮抗する力に両者弾かれる。

 

『さぁキースピリット同士の熱い戦い!! どちらがこのバトルを制するのか!!』

 

観客一同バトルに注目する中、ディストルクシオンは先程同様再び全身に電撃を纏わせると、そのまま勢いよく海面を飛び出し、電撃を纏った状態でリューマンゴッドソードを押し潰さんと真上に飛び上がる。それに対し、リューマンゴッドソードは二刀の剣と刀に自身の炎を最大限に込めると、高温の炎を刀身に纏わせ烈火の刃と化した剣と刀を握りしめ、そのまま自身へと圧し掛からんとするディストルクシオンに対し、烈火の刃を二刀同時に振り上げ、ディストルクシオンの身に纏う電撃を炎で相殺しながらそのままディストルクシオンを切り裂き、炎の斬撃はディストルクシオンの身を焼き焦がし、全身に燃え広がる炎に断末魔を上げながら大爆発を起こす。

 

「そ、そんな……!」

「バトル終了時、炎龍刀の効果発揮、BP12000以下の相手スピリット1体を破壊! よってカニメデスを指定!」

「!!」

 

追撃するかのように烈火の刃を地面へと突きさすと、それは先程、炎龍刀単体が引き起こした炎の比にならない程の出力を帯びた火柱がカニメデスへと放たれ、高出力の炎はカニメデスの硬い甲殻を焼き尽くし破壊する。

 

「さらにリューマンゴッドソードのバトル終了時、手札にある「剣使」、「竜人」を持つスピリットか、アルティメット召喚できる! よって手札に戻したリューマンインフェニティを再召喚!」

 

再びフィールドへと舞い戻るリューマンインフェニティ。ヒノコと並び立ち、二体は共鳴するかのように雄叫びを上げる。

 

「これでもうブロッカーはない! 決めるよ!! 紅炎竜ヒノコ、リューマンインフェニティ、行っけぇーーッ!!」

「ッ!! ライフで、受ける!!」

 

もうアオト打つ手立てはなく、攻撃を受け入れると残るライフを目掛け、リューマンインフェニティとヒノコはほぼ同時に火炎放射を撃ち出し、同時に放たれた炎は一つとなり、より大きな炎となって展開されたバリアを焼き尽くし、アオトの残るライフを全て破壊する。

 

[アオトside]

[ライフ]2→0[Lose]

 

 

 

 

***

 

 

 

 

『決まったーーッ! 初戦から手に汗握る熱いバトル!! 見事、初戦を制したのは、チーム龍攻威リーダー、輝来ハルヤ選手!!!』

 

バトルを終え、観客達から両者に送られる惜しみない拍手。スズやザック達も自分達のリーダーの勝利を称えるように拍手を送り、ハルヤ自身は歓声と勝利を喜ぶようにガッツポーズを掲げる。

 

「(本当に強くなったな。初めて会った時とはもう違うんだな、これは断然、戦う時が楽しみだ)」

 

和人もまたハルヤの勝利に手を叩きながら拍手を送り、そして小さくその感想を口にして呟く。

 

「……ちぇッ、負けた。こんなに強くなってたなんて聞いてないぜ」

 

一方で後ろで両手を組みながら、負けた事に悔しそうにいじけて見せるアオト。しかし、ハルヤに視線を向け、口元を緩ませる。

 

「まぁ仕方ないか、負けて愚痴愚痴言うのもかっこわりぃしね。いい勝負だったよ」

「ありがとう、アオト!!」

「フン、お礼なんか言うより優勝することだけ考えなよ、僕に勝ったんだからさ!」

「あはは、まぁ全力で頑張るよ! またバトルしようね」

「いいけど、その時は同じ結果にはならないからね! 覚えてけよ!」

「うん勿論!」

 

「精々応援してるよ」とだけ言い残し、その場を立ち去るアオト。入れ違うになるようにすぐさまザック達がハルヤの元へと駆けつける。

 

「お疲れ様、何とか勝てたな。見てて冷や冷やしたぜ」

「俺も同じだ、まぁ俺等のリーダーなんだからヴィクトリーにしてもらわなきゃな」

「えぇ。一応私達のリーダーなのに、初戦で負けたら話にならないですから」

「うぅ、皆コメント厳しいね」

「まぁまぁ皆何だかんだ言っても、結局はハルヤさんの勝利を応援してましたよ?」

 

フォローするように気落ちするハルヤに言葉を掛け、他の3人は少々照れ臭そうな素振りを見せながらも否定する様子はなく、それに嬉しそうに笑って見せる。

 

「まぁ次は皆の番だよね。頑張って勝ち抜けてよね!」

「あぁ、当然だぜ!」

「勿論俺もヴィクトリー飾ってやるさ!」

「僕も頑張って結果を残します!」

「私だって勝ち抜けますよ。例えハルヤと当たったとしてもね!」

 

次に控えた自分達の試合に備え、意気込むようにコメントする4人、しかしそれは彼等だけに限った話ではない、エンザや吉馬、雷矢に将達もまた優勝を目指す事しか考えておらず、まだまだ大会は開催したばかり。より白熱した激闘が繰り広げられるのは必須だった。







久々の更新! 長らくお待たせして申し訳ありません!!
仕事と私事(←)で長らく更新進められず……。今回やっと14話かけて何よりです!

今回は新章突入!大会編です!!!今まで登場したキャラたちが登場しましたね。第1話で登場したアオト等久々の登場になりますが、案外気に入ってるキャラなのでまた登場させてみたいなおもってみたり。彼が今回使用したキースピリットディストルクシオン。
ブレイヴ条件変更は異魔神が主流の現環境でまた活躍してくれそうですね。最近見ないですが……(汗)


先日埼玉でガンガンスリンガー参加しまして、やはり牙魔神やアメジストからの異魔神速攻型が多かったので今回ディストルクシオン書いてて、ありがたみが分かった様な気がします(笑)小説本編は次回は誰がバトルするのか、ぜひともご注目くださるとうれしいです。

話は変わりまして神皇編三章とメガデッキの情報をもうきましたね。9月もマネーロストが激しそうだ(血涙)とりあえずブラムザンドはさておき、私が狙うのは申の神皇ですかね?多分来週辺りに登場しそうなので見た目の効果に期待大です!手に入れたら天魔神入れて、キキデッキがくみたい(笑)何はともかく次回もぜひよろしくお願いします。



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No15.犬猿決着、武凱vsバン

・以下注意
誤字、プレイミスアリかも。
バトル表記が人によっては分かりずらいかも。

それでも大丈夫という片はどうか温かい目で見てもらえると幸いです。発見したミスやバトル表記などのご指摘ご気軽に、お待ちしております。






第15話

 

 

 

『すっかり、盛り上がって始まってるみたいだな』

 

大会に盛り上がる会場、そこにまた足を踏み入れる一人の人物。それは八鳥紫苑と蛇目ルムの姿であり、あまり人の目に映らないよう会場観客席の最後尾からスタジアムの様子を伺いながら呟く。

 

「にしても、ルムもこういうの出たかったんじゃねぇの?」

「まぁね。けど、勝手な事は許してくれないんでしょ?」

「はは、分かってるじゃねぇの」

「これでもアンタのチームメイトだからね」

「はは、まぁ拗ねてくれるなよ? 案外外野に回るってのも悪くねぇぞ?」

「アンタはいつもそれだよね。というか動く気あるの?」

「さぁな。今はともかくこの大会を見物させてもらうだけさ、楽しくな?」

 

悪雲漂う会話を交わす二人。一方でバトルで、ハルヤと同じく龍攻威メンバーや見知った人物たちは順当に一回戦を勝ち抜け、次の二回戦は直ぐに行われた。

 

『さぁさぁ二回戦からもヒートアップ! 現在は我らが弟、犬神コン太と、チーム未所属、フリーバトラーの梶雷矢選手のバトル実況を御送りしております!』

 

現在の状況は、お互いにライフ1つ。雷矢の場には烈風忍者キリカゲが一体。だが、対するコン太にはブロッカーとなるスピリットやアルティメットは一体も場におらず、次の雷矢ターン、追い込まれた状況だった。

 

「アタックステップだ! キリカゲでアタック!」

「フラッシュタイミングで、アブソリュートゼロを使います!」

 

【アブソリュートゼロ】3(2)黄、マジック。

【トリガーカウンター】

手札にあるこのカードは、相手のUトリガーがヒットした時、ヒット効果発揮前に次の効果を使用できる。

■ヒットしたカードが黄のカードなら、そのUトリガーをヒットさせた相手のアルティメットは効果全てを失う。

『フラッシュ効果』

このターンの間、相手のスピリット/アルティメット一体のシンボルを0にする。

 

「対象はキリカゲ! マジックの効果でシンボルを0にします!」

 

マジックより放たれる雷がキリカゲに撃ち込まれ、雷による痺れに膝を突かされ、さらにシンボルを失ってしまう。

 

「(よし、これでこのターンは凌いだ!)」

「やるな、さすがにハルヤのチームメイトだけの事はある。しかし、褒めてやりたいところだが、生憎まだまだ甘いみたいだな?」

「えっ?」

「俺もフラッシュで、畳返しの術を使う! マジックの効果でキリカゲを手札に戻す!」

「!?」

「まだ俺のフラッシュだ! さらにソウルコアを使って、【ソウル神速】を発揮! 今手札に戻したキリカゲを再び召喚だ!」

「手札に戻して再召喚、まさか……!」

「その通り、一度手札に戻った事でアブソリュートゼロの効果は効かなくなった! さぁもう一度行け! キリカゲ!」

「……ライフで、受けます!」

 

キリカゲは背の手裏剣を刃の如くしてバリアをッ切り裂きコンタの最後のライフを破壊する。

 

「うあっ!!!」

 

[コンタside]

[Life]1→0[Lose]

 

『勝負あり! 勝者は雷矢選手ッ!! 三回戦進出です!! コン太も検討したのですが、残念です』

『確かに、ですが贔屓目で査定する訳には行きません。このバトルを糧に、本人がより成長を期待しましょう』

 

「雷矢さん、いい勝負でした。ありがとうございます」

「おっと、俺は名前にちなんで、ジライヤって名乗ってんだ。できればそっちで読んでくれた方がうれしいかな?」

「ジライヤ、忍風使いだから上級忍者の名を借りてるって事ですかね?」

「よく気づいたな。まぁその通り、それよりバトルも俺もいい勝負だったと思ってる。名前は確かコン太だったよな? 覚えたぜ、また機会があればよろしくな」

「はい!」

 

以前の時もそうだったが、雷矢は自分が見溜めた相手以外の名前を決して呼ばない。だからこそ、コン太の実力を認めたという事だろう。互いに握手を交わし、お互いに健闘を称え合いながらスタジアムを後にする。

 

「コン太、頑張ったけどな」

「うん、残念だけどね。それより雷矢もやっぱり出場してたんだ。しかも、前よりも強くなってる!」

「ハルヤの知人はほんっと強い奴が多くて武者震いが止まらねぇな。まっ、次は俺のターン、コン太の負けた分は俺がヴィクトリーを飾って晴らしてやるよ!」

「うん、キッドも頑張ってよね」

「お互いにな」

 

二回戦もより白熱したバトルが展開され、カードバトラー達は唯目の前に相手に対し、全力でバトルに臨むだけだった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「さぁアタックステップ! アルティメットサジットアポロドラゴンでアタックだ! Uトリガーロックオン!」

「ぐっ、コテツティーガとバトルシップモア! どちらもコストは5ッス!」

「ならダブルヒット! 効果でお前のロードドラゴングレイザーとシュライクン、クラッシュ!」

 

キッド対将のバトル。アルティメットサジットアポロドラゴンは炎の矢を二は続けて撃ち出し、その矢は鋼の体を誇るグレイザーとシュライクンの二体を貫き、矢に貫かれた二体はそのまま炎に身を焼かれ破壊されてしまう。

 

「ぐっ! アルティメットの効果じゃ、【重装甲】で対応できないッス!」

「ここまでだな! フィニッシュ行くぜ! サジットアポロドラゴン!」

「ライフで受けるッス!」

 

最後のライフ目掛けて、サジットアポロドラゴンが将に向けて最後の一発として、矢を放ち、勝負に決着を付ける。

 

「ぐっ!! オイラが負けるなんて……兄貴に申し訳が立たねぇッス!!」

「はっは悪いな、うちのリーダーに大口言った以上、それをライアーでは済ます訳には行かないだろ?」

 

有限実行、宣言通り勝ち残った事にキッドはVサインを掲げ、ますますヒートアップするバトルに会場中が熱気に包まれる。

 

『さぁ二回戦もそろそろ大詰め、次はどんなカードバトラーがどんなバトルを繰り広げてくれるのか! 期待を胸に組み合わせを発表しましょう!! 二回戦最後の対戦カードはこちら!!』

 

紅葉の言葉とともに再びモニターの画面がスロットマシンの様に回転を始めると、次の対戦カードとして二名のカードバトラーが選出される。

 

『決まりました! 続いては、井澤バン選手vs武凱バズト選手!! 同じチーム同士でのバトルとなりました!!』

「「!!」」

 

対戦カードが発表され、ざわめく会場。そして発表後、すぐにスタジアムにそれぞれ別々の入り口からステージに姿を現す二人。

 

「よぉ、武凱。まさかこんな所でテメェと戦うとはな?」

「俺もだ。まさかこんな大舞台でお前を負さなきゃならんとは、同じチームメイトとして流石に同情するぜ」

「あぁ? 何テメェ自分が勝つ前提の話をしてやがる? テメェの勝利を一体だれが決めた?」

「決めたのは俺自身だ! すぐに証明もできるぞ!」

「ほざけ、俺がいつテメェに負け越した?」

「勝ち越したこともねぇだろ? どの道今日で決着付けてやるよ! 強化した俺の最強の怪獣デッキでな!」

「決着だと? それは俺の台詞だ! デッキを強化したのがテメェだけだと思うなよ? 俺の新しいデッキの真骨頂、その真髄をテメェに味合わせてやる!」

 

勝負前から既に火花を散らす程睨み合う二人、相変わらず犬猿の仲の二人に、紅葉は苦笑しながらも、実況を進めて行く。

 

『相変わらず喧嘩っ早い二人ですね、とは言え、互いにバトルに臨む準備は既にOKという解釈で間違いないですかね』

『えぇ、良くも悪くも同じチームメイト同士だからという遠慮はあの二人には無縁でしょう。互いに全力で相手を倒す、最も単純ながら最も純粋な想いを胸に、あの二人はバトルに臨むはずです』

『なるほど! 犬猿の仲はさておき、本気のバトルが見れるのは間違いありませんね、それでは早速両者準備を!!』

 

ステージに上がりデッキを構える二人、その様子を確認し終えると、紅葉は手を振り上げ、「それでは両者コールを!」と、まるでスタートを切る様に叫ぶ。

 

「「ゲートオープン! 界放ッ!!」」

 

 

 

***

 

 

 

[01ターン.武凱side]

[スタートステップ]

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

バトル開始と同時に武凱からの先行と共に、幕が上がる。意気込むように「行くぞ!」と力強く手札を構える。

 

「俺はネクサス、超古代都市ルルイエを配置だ!」

 

[リザーブ]4個→0個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]4枚→5枚。

 

【超古代都市ルルイエ】4(3)青、ネクサス。

Lv.1(0)、Lv.2(2)。

Lv.1、Lv.2『お互いのアタックステップ』

カード名に「怪獣」と入っている自分のスピリットが破壊された時、自分はデッキから2枚ドローする。その後、自分は手札を2枚破棄する。

Lv.2『お互いのアタックステップ開始時』

自分の手札/トラッシュにある[超古代尖兵怪獣ゾイガー]1枚をコストを支払わずに召喚できる。

 

[フィールド]超古代都市ルルイエLv.1(0)。

 

「これでターンエンドだ!」

 

 

 

 

[02ターン.バンside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「ハッ、ネクサス配置しただけで終わりじゃ、守りが手薄なんだよ! 行くぜ、メインステップ! 俺は戦竜エルギニアス2体をそれぞれLv.1、Lv.2で召喚!」

 

[リザーブ]5個→0個。

[トラッシュ]0個→1個。

[フィールド]戦竜エルギニアス(A)Lv.2((S1)2)BP3000、戦竜エルギニアス(B)Lv.1(1)BP1000。

 

「アタックステップだ! Lv.1のエルギニアスでアタック!」

「ライフで受けるぜ!」

 

エルギニアスはバリアへと突進し、ライフを砕き衝撃が武凱を襲うが、まるで衝撃が聞いてないように平然としながら笑って見せる。

 

[武凱side]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]0個→1個。

 

「俺のライフ減少時に手札のこのカードの効果発揮させる!」

「何!?」

「さぁ出ろ! カプセル怪獣アギラをノーコストで召喚だ!」

 

[リザーブ]1個→0個。

[手札]4枚→3枚。

 

【カプセル怪獣アギラ】3(1)赤、スピリット、地竜。

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(3)BP6000。

『相手のアタックステップ』

手札にあるこのスピリットカードは、自分のライフが減ったときコストを支払わずに召喚できる。

 

地面を突き破りながら姿を現すアギラ、以前武凱が扱っていたタイラントやゴモラと比べるとやや小さいが、やはり怪獣という名を持つだけあって、それ相応の迫力を秘め、大きく鳴き声を上げる。

 

「チィッ、ターンエンド」

 

『バン選手、相手の場がガラ空きと先手を仕掛け、ライフを削ったのも束の間、ライフ減少に合わせて、いきなり武凱選手の場にお得意の怪獣スピリット、アギラが召喚されました!』

『まるでバーストのような使い方ですね。武凱選手はネクサスなどで場の準備をしてから一気に仕掛けるタイプでした。その準備までにどうしても防御が手薄になってしまうのをアギラでサポートしているんでしょう』

 

冷静に状況を把握しながら的確な解説のコメントを述べる神子。ハルヤとバトルし、負けてから相当デッキを強化したのだろう。二人もまた強くなっていることに、バトルを見ているハルヤは危機感を覚え、一度勝った相手と見縊れば、敗北は必須であることを十分理解していた。

 

 

 

 

[03ターン.武凱side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]1個→5個。

 

「メインステップ! カプセル怪獣アギラをLv.2にして、さらに超古代尖兵怪獣ゾイガーをLv.2で召喚!」

 

[リザーブ]4個→0個。

[手札]4枚→3枚。

 

【超古代尖兵怪獣ゾイガー】2(赤1 青1)青、スピリット、異合。

Lv.1(1)BP2000、Lv.2(3)BP4000。

Lv.1、Lv.2

ソウルコアが置かれているカード名に「神」と入っている自分のスピリットを、そのスピリットが持つ最高Lvとして扱う。

Lv.2『自分のメインステップ』

自分の手札にある[邪神ガタノゾーア]を召喚するとき、そのコストを-1する。

 

[フィールド]カプセル怪獣アギラLv.2((S1)2)BP6000、超古代尖兵怪獣ゾイガーLv.2(3)BP4000。

 

「アタックステップ! アギラでアタックだ!」

「ッ! ライフで受ける! ぐっ!」

 

[バンside]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]0個→1個。

 

アギラの攻撃によってライフを削り返すと、満足した様に「ターンエンド」と宣言し、続くバンのターンへと移る。

 

 

 

 

[04ターン.バンside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]1個→2個

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]1個→0個。[リザーブ]2個→3個。[フィールド]戦竜エルギニアス(A)回復。

 

「俺のターン、俊星流れるコロッセオを配置だ!」

 

[リザーブ]3個→2個。

[トラッシュ]0個→1個。

[手札]4枚→3枚。

 

「さらにもう一体! こいつで一気に行くぜ!! 巨大な力で敵を制圧、粉砕しろッ! 巨人大帝アレクサンダー召喚ッ! 不足コストはエルギニアスから確保だ!」

 

[リザーブ]2個→0個。

[フィールド]戦竜エルギニアスLv.2((S1)2)BP3000→戦竜エルギニアスLv.1(1)BP1000。

[トラッシュ]1個→4個。

[手札]3枚→2枚。

 

フィールドを揺るがす程の大きな足音を響かせフィールドへと降臨するアレクサンダー、自分の等身と同じ大きさを誇る槍を軽々と振るい、その王者の貫禄を見せしめる。

 

[フィールド]巨人大帝アレクサンダーLv.1((S1))BP6000、戦竜エルギニアス(A)Lv.1(1)BP1000、戦竜エルギニアス(B)Lv.1(1)BP1000。

 

「アタックステップだ! アレクサンダー、行けッ! アタック時に【強襲】を発揮! ネクサスを疲労させて回復だ!」

「ゾイガー、ブロックしろ!」

 

[Battle]巨人大帝アレクサンダーLv.1((S1))BP6000vs超古代尖兵怪獣ゾイガーLv.2(3)BP4000。

 

ゾイガーは翼を広げて飛び上がると、そのままアレクサンダーへと火球を吐き付けながら特攻を仕掛ける。対するアレクサンダーは放たれた火球を全て右手に盾で全て遮断し、そのまま槍を構え、ゾイガーは再度火球を放つが、アレクサンダーは構う事なく構えた槍を突き出し、槍の一撃は放たれた火球ごとゾイガーを貫き破壊する。

 

「ふん、この瞬間! ネクサス、超古代都市ルルイエの効果発揮! 「怪獣」の名前を持つゾイガーが破壊された事で俺はデッキから2枚ドローし、2枚破棄するぞ!」

 

青の得意とする手札交換。発揮されるネクサスの効果によって二枚のカードを手い取るが、そのカードを見た瞬間、明らかに武凱の反応が変わる。

 

「(来たか……!)」

「!?」

 

「続けるぞ」、そのまま手札を2枚引いた後、「破壊された城」と「ソウルドロー」を破棄すると、効果を処理し終える。

 

「何が来たかは知らねぇが、まだ俺のターンは終わってねぇぞ! 回復したアレクサンダーで再度アタックだ!」

「来なッ! 今度はライフで受けてやるよ!」

 

アレクサンダーは今度は対象を武凱とし、そのまま駆け出し、武凱は宣言通りその攻撃をライフで受けると、展開されるバリアを巨大な槍で一気に貫く。

 

「ッ!!」

 

[武凱side]

[Life]4→3。

[リザーブ]3個→4個。

 

「これでターンエンド!」

 

 

 

 

[05ターン.武凱side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][フィールド]カプセル怪獣アギラ回復。

 

「メインステップ、俺はもう一体、ゾイガーをLv.2で召喚。さらにアギラをレベルダウンし、ゾイガーのLv.2効果発揮させ、手札にある邪神のコストを-1する! さぁ、覚悟はいいか、バン! その目にたっぷり拝ませてやるぜ! 俺の新しい力をな!」

「!!」

 

手札に手を掛け、声を荒げそしてこれまで以上に力強く叫ぶ。

 

「古代に封印されし邪神! 禁断の封印を解いてこの地へと現れ、闇の力を今解き放てッ!!! 邪神ガタノゾーア、召喚ッ!!」

 

[リザーブ]4個→0個。

[フィールド]超古代尖兵怪獣ゾイガーLv.2(3)BP4000→超古代尖兵怪獣ゾイガーLv.1(1)BP2000、カプセル怪獣アギラLv.1((S1))→カプセル怪獣アギラLv.0(0)消滅。

[トラッシュ]0個→6個。

[手札]3枚→2枚。

 

フィールドに突如満ち始める海、維持コストを失ったアギラはその海の中へと呑まれて消滅し、そして海と化したフィールドから中央で巻き起こる巨大な渦潮、その渦潮よりゆっくりと浮上し始める巨大なアンモナイトのような影、そしてギラリと光る眼光が映ると、邪神ガタノゾーアがフィールドへと降臨する。

 

『つ、つつついに出ました!! 武凱選手の新たなキースピリット! 邪神ガタノゾーア!! 不気味なその姿、邪神の名の通り、私は既に見た目から既に禍々しいオーラをフルに感じております!!』

『闇の支配者とでも存在ですかね、まさかこれ程のスピリットを用意していたとは……! 私も正直驚いております』

 

武凱の新たなキースピリット、邪神ガタノゾーア。畏怖を抱かせるそのスピリットの姿に誰もが恐ろしさを感じながらも、同時にその迫力と威圧感に一切目を背けることが出来ず、それは対戦相手であるバンも勿論例外ではない。

 

「邪神、ガタノゾーア……!」

「そうだ。俺はコイツと共に最強を証明する! キャプテンの右腕はこの武凱バズト様、唯一人だけってな!」

「ッ!! ざけんな、テメェなんかに右腕の座を渡せるか!!」

「フン、コイツの姿を見てもまだそんな強気でいる気か! だがな、直ぐに分からせてやるよ! コイツと俺様の前に敵なんかいねぇって事をな!」

「!」

「ゾイガーの効果発揮、コイツは邪神のコストを-1にするだけじゃねぇ。自分の「神」の名を持つスピリットにソウルコアが置かれていれば、そのスピリットを最高レベルとして扱える! キャプテンのホオジロタイガー同様にタイミングは常にだ!」

「って事は……!」

「そうだ! 「神」の名を持つ邪神ガタノゾーアを最高レベルとして扱い、そのBPは30000だッ!!!」

「さ、三万!?」

 

『これはまさに圧倒的!! 驚異のBPを誇るガタノゾーア!! 武凱選手、これ以上にない程、強力なスピリットを操り、まさに敵なしと豪語する言葉に偽りはない!!』

 

[フィールド]邪神ガタノゾーアLv.3((S1))BP30000、超古代尖兵怪獣ゾイガーLv.1(1)BP2000。

 

圧倒的なガタノゾーアに既に武凱は勝利を確信していた。そして勝気な様子で「アタックステップ!」と高らかに宣言する。

 

「さぁ行け、ガタノゾーア!! 闇で全てを破壊しろ!!!」

 

武凱の宣言と共にガタノゾーアは咆哮を上げ、邪神の咆哮にフィールドに満海は大きく荒れ狂う。

 

「アタック時効果発揮! コスト8以下のスピリットを破壊だ!」

「何だと!?」

 

【邪神ガタノゾーア】9(6)青青、スピリット、異合。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『相手のリフレッシュステップ』

相手のフィールド/リザーブにソウルコアがあるとき、相手は相手のトラッシュのコア全てを相手のリザーブに戻せない。

Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

コスト8以下の相手のスピリット1体を破壊する。このスピリットにS(ソウルコア)が置かれている時、この効果で破壊したスピリットをデッキの下に戻す。

 

「さらにこのスピリットにソウルコアが置かれていれば破壊するスピリットをデッキの下に戻す。アレクサンダー、デッキの底に沈めぇッ!!」

「!」

 

ガタノゾーアは海面に浸かった足元から鋏状の腕と触手を伸ばし、アレクサンダーの両手両足を拘束すると、そのまま海の中へと引きずり込んでしまう。

 

「アレクサンダー!!」

 

キースピリットに対する叫びも虚しく、成す術もなくアレクサンダーは海の底へ沈み、デッキボトムへと送られ、さらにガタノゾーアによるメインアタックは継続しており、腕と触手を伸ばして襲い掛かる。

 

「ぐっ! エルギニアスでブロック!」

 

[Battle]邪神ガタノゾーアLv.3((S1))BP30000vs戦竜エルギニアスLv.1(1)BP1000。

 

足元が海面に浸かっている為、鈍い動きながらもフィールドを駆けてガタノゾーアを阻もうとするが、ガタノゾーアは鋏状の腕を伸ばしてそのままエルギニアスへと振り下し、そのまま押し潰されエルギニアスは破壊される。

 

「まだだ! ゾイガー! さらにお前も行けッ!」

「ライフで受ける!」

 

翼を広げて海面から空へと飛び立ちそのままバンへと迫り、火球を吐き付けライフを破壊する。

 

「うあッ!!」

 

[バンside]

[ライフ]4→3。

[リザーブ]2個→3個。

 

ライフ消失による衝撃に片膝を突かされながらも耐え切るバン、武凱はその様子に笑ながら、余裕の表情でターンエンドと宣言。

 

「ほら、次はテメェの番だ。あっさり終わってくれるなよ?」

「ぐッ! ったりめぇだ!」

 

煽る様な武凱の言葉、それに苛立ちながらもまだ強気に言い返して見せながら打付く自分のターンを迎える。

 

 

 

 

[06ターン.バンside]

 

「スタートステップ! コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ!」

「この瞬間! 邪神ガタノゾーアの効果を発揮!」

「!?」

「お前のリザーブ、又はフィールドにソウルコアがあるとき、テメェはトラッシュのコアをリザーブに戻せねぇ!」

「何っ……!?」

 

現在バンのトラッシュに置かれたコアは4つ。それをリザーブに戻そうとするが邪神がそれを決して許さない。眼光を輝かせ、トラッシュのコアを封じ込めてしまう。

 

[リザーブ]4個。

[手札]3枚。

[トラッシュ]4個。

 

『バン選手これは辛い!! ソウルコアを使用しなかったことが仇となり、リザーブにはたった4個しか残されていません!!』

『今あるコアだけでこの状況を打開するのはほぼ不可能です。バン選手、苦しい状況に追い込まれましたね』

 

半分以上のコアを使用することが出来ない事にはバンも苛立つように歯噛みしながらも、それでもまだバトルは続いている。このままやられてなるものか、と強く気持ちを保ってバトルを続けて行く。

 

「ソウルコアが俺のリザーブとフィールドになけりゃぁいいんだろ! だったら俺はソウルコアを使って、ミノタコルスを召喚ッ!」

 

[リザーブ]4個→1個。

[トラッシュ]4個→6個。

[手札]3枚→2枚。

 

「ハッハ、ソウルコアを使ったのはいいが、たった1体召喚しただけで、もうテメェに残るコアは1つしかねぇじゃねぇか!」

「うるせぇぞッ! 俺はバーストをセット。これでターンエンドだ」

 

[手札]2枚→1枚。

[フィールド]ミノタコルスLv.1(1)BP3000、戦竜エルギニアスLv.1(1)BP1000、俊星流れるコロッセオLv.1(0)。

 

「(フン、苦し紛れのバーストか。こりゃぁ完全に勝負は見えたな)」

 

 

 

 

[07ターン.武凱side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]2枚→3枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]6個→0個。[リザーブ]1個→7個。[フィールド]邪神ガタノゾーア、超古代尖兵怪獣ゾイガー回復。

 

「メインステップ! さぁ決めるぜ! 俺はカプセル怪獣アギラをもう一体召喚! さらに超古代都市ルルイエをLv.2にアップ!」

 

[リザーブ]7個→1個。

[トラッシュ]0個→3個。

 

「そしてアタックステップ! ステップ開始時にネクサス、超古代都市ルルイエの効果を発揮! 俺の手札/トラッシュに存在するゾイガー1体を召喚できる! 勿論、この効果でトラッシュのゾイガーを復活だ!」

「!」

 

海面から飛び出す翼、トラッシュよりアレクサンダーによって破壊されたゾイガーが再びフィールドへと姿を現し、武凱の場に出そろう怪獣達は一同に咆哮を共鳴させる。

 

[リザーブ]1個→0個。

[フィールド]邪神ガタノゾーアLv.3((S1))BP30000、カプセル怪獣アギラLv.1(1)BP3000、超古代尖兵怪獣ゾイガー(A)Lv.1(1)BP2000、超古代尖兵怪獣ゾイガー(B)Lv.1(1)BP2000、超古代都市ルルイエLv.2(2)。

 

「邪神ガタノゾーアでアタック! アタック時効果だ! ミノタコルス、深海へと沈めぇッ!!」

 

再び触手がミノタコルスを拘束し海へと引きずり込みデッキの底へと送られ、さらに追撃するように鋏状の腕を伸ばし、バンへと迫る。

 

「さぁ、このアタックはどうする!」

「……ライフで、受ける!!」

「ハッ! 覚悟は決まったか! なら喰らえ! ダブルシンボルの攻撃をな!」

 

展開されるバリアへと叩き付けられる二つの鋏、そのままバリアを切り砕き、一気にバンのライフを破壊する。

 

「がぁぁぁぁぁ……ッ!!」

 

[バンside]

[ライフ]3→1。

[リザーブ]2個→4個。

 

『邪神による強烈な一撃がバン選手へと決まったぁーーッ!! 残りライフは一つ! もはやバン選手、ここまでか!!』

 

追い詰められ、どちらが優勢なのか状況は明白。「終わったな」、と勝利宣言とも取れる言葉を吐き捨てる武凱だが、その言葉に対し、バンは小さく「まだだ」と否定して見せた。

 

「?」

「俺が、キャプテンの右腕だ。それは絶対譲れねぇ……だから! 死んでも負けてらんねぇんだよ!!」

「!!」

「俺のライフ減少時でバースト発動! 雷神轟招来!」

「!?」

 

【雷神轟招来】6(3)青、マジック。

【バースト:自分のライフ減少時】

コスト4以下からコスト1つを指定する。指定したコストの相手のスピリット全てを破壊する。その後コストを支払う事でこのカードのフラッシュ効果を発揮する。

『フラッシュ効果』コスト5以下の相手のスピリット1体を破壊する。

 

「コスト指定は2だ! よって、コスト2のゾイガーを2体纏めて破壊するぜ!」

「ッ!」

 

バーストにより起ち込める黒雲、雷を走らせ、それはすぐに雷雲へと切り替わると二体のゾイガー達へ落雷を落とし、雷が二体のゾイガーがまとめて破壊する。

 

「なっ!?」

「へっ、どうだ! これでこのターン、決着はつけられねぇだろ?」

「ぐッ!!」

 

『何とここでまさかのバースト!! バン選手、武凱選手による攻撃を何とか凌いで見せました!!』

『やはり強くなってるのはバン選手も同じでしたね。これはまだまだ勝負は分かりませんよ?』

 

「「怪獣」の名前を持つスピリットが破壊されたことでルルイエの効果だ、俺はデッキから2枚ドロー、その後「古代都市ルルイエ」と「古代怪獣ゴモラ」を破棄だ、たとえゾイガーが破壊されてもまた復活する。このターンを凌いだところで、悪足掻きにしかならねぇぞ、俺はこれでターンエンド!」

 

武凱の言葉通りあくまでこのターンを凌いだだけに過ぎない。次にターンでの敗北は避けられないだろう。だがそれでもバンはまだ自分負けを認める様子は一切なく、その様子に会場の空気も徐々に変わり始める。

 

 

 

 

[08ターン.バンside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

[ドローステップ][手札]1枚→2枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]6個→0個。[リザーブ]5個→11個。

 

前のターン、ソウルコアをトラッシュに送った事でこのターンのリフレッシュステップ。ガタノゾーアによる効果は受けず、トラッシュのコア全てがバンのリザーブへと戻り、そして戻ったコアと手札を見ながら彼は静かに口角を上げて見せる。

 

「武凱、テメェとの決着、俺の新しいキースピリットで白黒つけてやるぜ!」

「何?」

「テメェが邪神を見せてくれたように俺も見せてやるぜ! 俺の最強のとっておきをな!!」

「!」

 

バンもまた強い目で力強く叫び、そして手札のカードを掴み取る。

 

「猪突、爆! 進!! 道塞ぐ物全てをその牙で突き砕き、目の前の敵を打ち壊せ!!! 亥の十二神皇カラミティボア、Lv.2で召喚だぁッ!!」

 

[リザーブ]11個→2個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]2枚→1枚。

 

バンがそのカードを呼び出した瞬間、遥か地平線の向こうに青い光が柱の様に上ったかと思うと、その光はこちらに向けて猛スピードで迫り始め、近付く光の正体は十二神皇の一体として数えられし、亥の名を持つ神皇、カラミティボアの姿。足元に浸る水を蹴り弾きながら突き進み、そのままバンの前で足を止める。

 

『ななな何と!!! バン選手の新たなキースピリットの正体は十二神皇の一体!! 亥の十二神皇カラミティボア!!!』

『バン選手が新しくキースピリットして選んだスピリット、武凱選手の邪神ガタノゾーアとも決して退けを取ってはいませんね』

『神vs神!! このバトル、ますます白熱してまいりました!!!』

 

カラミティボアは力強く咆哮を上げ、ガタノゾーアもまた対抗するように咆哮を強く響かせ、二体のスピリットによる咆哮は周りの物、他のスピリットを全てを吹き飛ばす程の声量で、エルギニアス、ゾイガー、アギラは吹き飛ばされまいと地面に踏ん張るのが精一杯だった。

 

「まさか、それが新しいキースピリットかよ!」

「そうさ、言った筈だぜ! デッキを強化したのはテメェだけじゃねぇと! 俺はこんな所で、誰だろうと負けてらんねぇ! 行くぜ、アタックステップだ!」

 

[フィールド]亥の十二神皇カラミティボアLv.2((S1)4)BP18000、戦竜エルギニアスLv.1(1)BP1000。

 

「お前のアタックステップ開始時、ゾイガーを再び召喚だ!」

 

[リザーブ]2個→1個。

[フィールド]超古代尖兵怪獣ゾイガーLv.1(1)。

 

ルルイエの効果はお互いのアタックステップに及び、再び海面から浮上するゾイガー、しかしバンはそれに全く構う事無く、カラミティボアもまたアタックステップ開始と同時にこれから駆け出すかのように水に浸る地面に強く足をめり込ませて体制を構えて見せ、バンはカラミティボアに向けて「行くぞ!」と強く言い放つ。

 

「カラミティボア、アタックだッ!! アタック時効果、【封印】発揮!」

「!!」

「俺のソウルコアをライフに【封印】!」

「【封印】、来たか!!」

 

【亥の十二神皇カラミティボア】6(3)青、スピリット、神皇/爆蒼。

Lv.1(1)BP10000、Lv.2(4)BP18000。

Lv.1、Lv.2《封印》『このスピリットのアタック時』

このスピリットのS(ソウルコア)を自分のライフに置ける。

《封印時》Lv.1、Lv.2【突進】『このスピリットのアタック時』

最もコストの低い相手スピリット1体を指定してアタックする。ブロックしたスピリットを破壊した時、次にコストの低い相手のスピリット1体を指定して、ブロックさせる。

Lv.2『自分のアタックステップ』

系統:「神皇」/「十冠」を持つ自分のスピリットをブロックしたスピリットが消滅/破壊された時、相手のデッキの上から8枚破棄する。

 

ソウルコアの赤い輝きがライフへと灯り、カラミティボアは一気に水を蹴り上げ、駆け出すその蹴りはあまりにも強いのか、まるで足元の水を抉る様に蹴り上げ、水場にスピードを落とすどころか、徐々に加速しながらそのスピードを上げて走り出す。

 

「封印時効果、【突進】発揮! 最もコストの低いスピリットに指定アタック! お前だ、ゾイガー!」

「チィッ! ならゾイガーでブロック! 迎え撃ちな!」

 

[Battle]亥の十二神皇カラミティボアLv.2(4)BP18000vs超古代怪獣ゾイガーLv.1(1)BP2000。

 

ゾイガーは火球を放ち迫るカラミティボアを迎撃するが、カラミティボアは放たれた火球をまるで気にする事無く、そのまま真っ直ぐ進み続け、猛スピードによる特攻で火球を粉砕しながら止まる事無く進み続け、ゾイガーはその様子に空へ一旦逃げようと翼を広げるが、カラミティボアは加速し続け、数メートルの距離を一瞬で詰めるとそのままゾイガーが空へと飛び立つ前に突進し、その衝撃はまるで巨大な弾丸に撃ち抜かれたのと同様、ゾイガーは断末魔を上げながら爆発四散する。

 

「Lv.2効果、系統、「神皇」/「十冠」を持つ自分のスピリットをブロックしたスピリットの消滅、または破壊された時相手デッキを8枚破棄!」

「!」

 

武凱のデッキから一気に8枚ものカードが弾き飛びトラッシュへと送られ、「さらに」とバンは言葉を続けて行く。

 

「怪獣が破壊されたことで、テメェのネクサスの効果を発揮させてもらおうか!」

「ま、まさかテメェの狙いは……!」

 

あくまでもルルイエの効果は強制発動。そのまま2枚のカードを引かされた瞬間、バンの狙いが何であるか察する。

 

「御名答、このターン俺のスピリットは2体だけ。正直言って、このターンでお前のライフは削り切れない。だからもう一つのやり方で勝たせてもらう!」

 

バンの言うもう一つの勝ち方。本来は相手のライフ5つ、先に削った方が勝者。これが最も主流となる方法。だが、勝ち方はライフを削り切る事だけに限った訳ではない。それは青のデッキ破壊が得意とするデッキアウトによる勝利、それは相手のスタートステップ開始時にデッキのカードが1枚もなければ成立するもう一つの方法。ライフを削り切れない事を理解したうえでバンが狙うのはこの方法だった。

 

「(しまった!! 完全にルルイエの効果が裏目に出てやがる!! 今の8枚と、ルルイエの効果で引いた2枚。今俺のデッキに残るカードは後18枚! これじゃぁ……!)」

「理解できたようだな、まだ終わらねぇぞ! カラミティボアがバトルに勝てばさらに次にコストの低いスピリットをブロックさせる! さぁ次だ!!」

「ぐっ、クソッ!! アギラでブロック!!」

 

[Battle]亥の十二神皇カラミティボアLv.2(4)BP18000vsカプセル怪獣アギラLv.1(1)BP3000。

 

 

カラミティボアはなおも加速し続けながら進み、アギラは真っ向から迎え撃とうと駆け出し、迫るカラミティボアに角を打ちつけるが、アギラによる攻撃ではカラミティボアはビクともしない。カラミティボアは止まる事無く駆け出し続け、アギラはその威力に完全に負け、足を引き摺らせながら後退させられ続け、そのままカラミティボアは牙を突き上げると、アギラを宙に跳ね上げ、アギラは空中で消滅する。

 

「破壊により8枚破棄! さらにテメェのルルイエの効果で2枚ドローしな!」

「!!」

 

[デッキ]18枚→8枚。

 

「最後だ! ガタノゾーアにアタック!!」

「ッ! ガタノゾーアで、ブロック!」

「ゾイガーがいなけりゃ、ガタノゾーアは最高レベルじゃねぇッ! カラミティボア、邪神を突き崩せぇーーッ!!」

 

[Battle]亥の十二神皇カラミティボアLv.2(4)BP18000vs邪神ガタノゾーアLv.1((S1))BP10000。

 

ガタノゾーアは吠えながら、鋏を海面に叩き付けると、カラミティボアの行く手を塞ぐように隆起し始める幾つもの岩壁。だが、カラミティボアは決して止まる事は無い。硬い岩壁をまるでガラス細工の如く粉々に粉砕しながら突き進み続け、ならばとガタノゾーアは触手と腕の鋏をカラミティボアへと伸ばすが、カラミティボアは二本の牙を振り上げ、触手と鋏を弾き飛ばし、そのまま一気にガタノゾーアへとぶち当たる。

 

激突した瞬間、さすがにカラミティボアも一瞬止めるが、それでもまだ駆け出そうとするその足は止めておらず、眼光を輝かせながら駆け出し続け、カラミティボアによる激突にガタノゾーアの硬い甲殻に亀裂が走り始め、そのままさらにカラミティボアは一気に駆けだす足により一層力を込めて進み出すと、ガタノゾーアの体に走る亀裂は全身に及んだ瞬間、まるで砕け散るような音と共にその場に巻き起こる大爆発、そしてその爆風の中をカラミティボアはそのまま駆け抜ける。

 

「効果発揮、デッキを8枚破棄だ!」

「ッ!!」

 

[デッキ]8枚→0枚。

 

「これで俺のターン、終了!」

 

 

 

 

[09ターン.武凱side]

「俺の、ターン……!」

 

苦い声で自分のターンを迎える武凱だが、既にデッキは無くこの瞬間、デッキアウトによる敗北が決定し、勝負に幕引きとなる。

 

『武凱選手、デッキアウト!!! 勝者! 井澤バン選手です!!』

『いい勝負でした。どちらも強くなっていたのは言うまでもありません、しかし、より成長したのはバン選手だったようですね』

『バン選手の新たなるキースピリット、カラミティボア。これは他の選手も決して油断できませんよ!』

 

「亥の十二神皇、カラミティボア……あれがバンの新しいキースピリットなんだ」

「へぇ、あいつも十二神皇使いか。中々羨ましいレアカードだが今はそんな事言ってる場合じゃねぇな。ぜひとも俺の酉の呪に神皇で一戦交えたいぜ」

「そうだね、でも僕だって戦いたい気持ちは同じだよ」

 

バンのキースピリットの姿にどう勝つか、バンと次に戦う時自分はそれをどう攻略すればいいのか、二人のバトル見守る中でそんなことを考える中、ザックはあまり気難しく考えてはおらず、その様子にハルヤも笑いながらそれに答える中、神子達はさらに実況言葉を続けて行く。

 

『さぁ二回戦、全ての試合が終わりました! まずはここまでに勝ち残った8名の方を紹介しましょう、まず最初はチーム龍攻威からはリーダーである輝来ハルヤ選手とメンバーである天来ザック選手、キッド・ラルド選手、桐美スズ選手の4名、次にチームレッドドラゴンはリーダーである火龍エンザ選手、チーム海王メンバーである井澤バン選手、チーム氷帝の副リーダー、沖田美玲選手、チーム未所属の梶雷矢選手、計8名が三回戦進出です』

 

「ちっ! バン、俺に勝ったんだから絶対優勝しろよ! じゃなきゃまた俺が右腕の座を取り返すからな!」

「誰に言ってんだ、俺は初めからそのつもりだ! キャプテンの右腕の座に掛けてな!」

 

「沖田さん! オイラ負けちゃったけど、その分沖田さんの応援を全力でするッス!」

「はは、嬉しいけど正直優勝できるか不安だな。けど、やれるところまでやり切って見せるね!」

 

「リーダー! 俺の分まで頑張ってください! 応援してますから!」

「おぉ、吉馬、お前の分までしっかり勝ち抜けてやるよ!」

 

ここまで勝ち抜けたカードバトラーは皆実力者で揃い揃っていた。この中の誰が優勝しても決して不思議ではない。

 

『さぁ早速三回戦の組み合わせを発表しましょ! 今回は一斉に決めますよ! それでは皆様、モニターにご注目!!』

 

モニターにランダムにシャッフルされる対戦カード、暫くシャッフルが続きようやく止まり始め、組み合わせが決まる。

 

『さぁ決まりました! 対戦表はこちらの通り!!』

 

・輝来ハルヤvs井澤バン。

・天来ザックvsキッド・ラルド。

・桐美スズvs沖田美玲。

・梶雷矢vs火龍エンザ。

 

『対戦表は御覧の通りです! そして第1試合は輝来選手vs井澤バン選手との対戦です!!』

「「!!」」

 

早速第1試合から決まった事に、誰よりも対戦する本人が一番早く反応して見せた。

 

「(僕の次の相手は……バン!)」

 

その場からバンへと視線を向けるハルヤ、バンもまたその視線に気づいたようにハルヤを睨む。

 

「(ハッハ! ついに来たかリベンジマッチの時が!! 待ってろよ、ハルヤ。俺のカラミティボアの次の得物は、テメェだ!)」

 

間もなく始まろうとする対戦、既に互いにバトルに掛ける闘志で満ちていた。




いかがでしたでしょうか。第15話、今回はタイトルからどうでもいいキャラのバトルでブラウザバックした方も多いかと思われます。

バン・武凱「「殺すぞ? 作者」」

すみませんでした。冗談です(涙目
何はともかく、今回は初のデッキ破壊での勝利回でした! 何気に前の小説でもデッキ破壊の勝利は1回しか書いてなかったので今回久々に掛けたのは楽しかったです! ルルイエのように効果に「できる」ではなく「する」と書かれている時は「強制発動」なので、一見有利にネクサスも場合によっては今回のように相手に利用されてしまうので、気を付けましょう。

そして今回掛けた青の十二神皇カラミティボア! 最新弾を代表するこのカードを掛けて大満足です。次はウロヴォリアスもかけたらいいなぁなんて(笑)


話は変わりまして、いよいよ明後日、申の十二神皇の影が見えそうですね! 何よりキキが活躍するのがうれしい!←
申の十二神皇、せめてカードイラストだけでもアニメ登場してほしいですね。小説本編でも申の十二神皇が書きたい!まぁまだ先になりそうですが(;´・ω・)

何はともかく、次回はバンvsハルヤのバトル。ぜひ次回も小説呼んでくださるとうれしい限りです。次回も宜しくお願いします。


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No16.亥を止めろ! 勝利と敗北のカウントダウン

・以下注意
誤字、プレイミスありかも。
バトル表記が人によって分かりずらいかも。

それでも大丈夫という方はどうか温かい目で見てもらえると幸いです。発見したミスやバトル表記などのご指摘気軽にお待ちしております。


 

 

 

 

 

『さぁさぁ皆さま、第二回戦も終了し、続く三回戦! 会場はこれまでの選手達の白熱した戦いにますますヒートアップしております!!』

 

二回戦までの試合を終えた中で、これまでの白熱したバトルに興奮冷めやらぬように会場中に巻き起こる熱気、その熱気をより煽るかのように実況の声により力を込めながら語る紅葉。

 

『さて、大会もいよいよ後半戦となりました、果たして誰が勝ち残るか! カードバトラーの中から一体誰が優勝するのか、私未だに予測できません!』

『えぇ、それは私も同じです。だからただ私達は見守るだけです。この行方を!』

『そうですね、では三回戦も張り切って参りますよ!! それでは両選手に入場いただきましょう!!』

 

進行の言葉と共にさらに激しく巻き起こる歓声、その歓声を浴びながらそれぞれの入り口サイドからバンとハルヤの両二名が姿を見せる。

 

『まずはこの方! チームリーダーに対する忠誠は揺ぎ無いその様はまさにチームの忠臣! チームの一番槍を豪語する特攻バトラー! 井澤バン選手ッ!! それに相対するのは相棒の龍達と共に成長する期待の超新星! 新チーム、龍攻威のリーダ、輝来ハルヤ選手だぁーーッ!』

 

高らかな入場コールに合わせてステージへと進み、互いの相手と正面から向き合う二人。

 

『バン選手とハルヤ選手、さぁどんなバトルが期待できることでしょう?』

『えぇ、バン選手は以前、ハルヤ選手とバトルした際、敗北を経験しています。当然今度は勝利を飾ろうとあの時のリベンジの意味も込めてバトルに臨む事でしょう』

 

神子の言葉通り、前にレッドドラゴンとのスタジアムでバンはハルヤとの対戦に敗れている。その経験はバンに本人にとっては忘れたくとも忘れられない物だった。

 

「ハルヤ、ついにこの時が来たな。俺はこの時をずっと待ってたんだ……!」

「えっ?」

「前にテメェと戦った時、楽に勝てる相手だと、勝って当然だと舐めて掛かった。その結果があの無様な敗北よ……!」

「!」

「あれ以来、俺へのキャプテンの信頼はガタ落ちだ。だからこそもう油断はしねぇ! 最初から最後まで本気を出し尽して、テメェに勝つ! そうしなきゃ俺のリベンジは果たせねぇッ!!」

 

一見すると逆恨みに近いように思えるが、その言葉の本当の真意は自分が本気を出さなきゃ行けない相手、つまり以前とは違ってハルヤの実力を認めている事なのだろう。デッキを力強く構え、始まる前から既に試合への闘志は充分な程だった。

 

「うん、僕だって本気で行くよ! 絶対勝ちたいって思ってるのはバンだけじゃない!」

「望む所だッ! どっちが強いか、このバトルではっきりするだろうぜ!」

 

『二人共意気込みは充分なようで早速始めていただきましょう! 両者コールを!』

「「ゲートオープン! 界放ッ!!」」

 

ステージへ上がるや否や、バトルの開始を告げる宣言。バトルの幕が上がり、バンの先行で試合が開始される。

 

 

 

 

[01ターン.バンside]

[スタートステップ]

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「メインステップ! 俺はタヌビートを召喚だ!」

 

[リザーブ]4個→0個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]4枚→3枚。

 

【タヌビート】3(2)青、スピリット、爆蒼。

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(3)BP5000。

Lv.1、Lv.2『このスピリットのブロック時』

相手のデッキを上から3枚破棄する。この効果で破棄したスピリットカード1枚につき、このスピリットをBP+5000する。

 

[フィールド]タヌビートLv.1((S(ソウルコア)1))BP3000。

 

「これでターンエンドだ」

 

 

 

 

[02ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

 

「メインステップ! リューマンドシャットをLv.1で、続けてリューマンフェニックを召喚!」

 

[リザーブ]5個→0個。

[トラッシュ]0個→3個。

 

「最後にバーストセット!」

 

[手札]5枚→2枚。

[フィールド]リューマンフェニックLv.3((S1))BP6000、リューマンドシャットLv.1(1)BP1000。

 

「アタックステップ! リューマンフェニックでアタック! アタック時効果で一枚ドロー!」

 

[手札]2枚→3枚。

 

「ブロックしろ! タヌビート!」

 

[Battle]リューマンフェニックLv.3((S1))BP6000vsタヌビートLv.1((S1))BP3000。

 

翼を広げ突っ込むリューマンフェニック、それを迎え撃つようにタヌビートは駆け出すが、走り出した瞬間、タヌビートの身に青い光が灯る。

 

「タヌビートのブロック時効果! テメェのデッキの上から3枚破棄だ!」

「!」

 

ハルヤのデッキから弾け飛ぶ3枚のカード、上から順に「六分儀剣のルリオーサ」、「リューマンチャージャー」、「紅炎竜ヒノコ」の3枚が破棄される。

 

[ハルヤside]

[デッキ]34枚→31枚。

 

「さらにそれだけじゃねぇ! この効果でスピリットカードを破棄した時、このスピリットのBPを+5000だ! ルリオーサとリューマンチャージャーの破棄で、BP+10000!!」

「!?」

「タヌビート! リューマンフェニックを返り討ちにしろ!」

 

青い光はタヌビートに力を齎し、タヌビートはより早く一気に地面を駆け出し、リューマンフェニックを上回るスピード突っ込むと、弾丸のような速度でリューマンフェニックを弾き飛ばし、リューマンフェニックは消滅する。

 

『なんとデッキ破壊に加えて、その効果でハルヤ選手のリューマンフェニックを圧倒! 破壊してしまいました!!』

「ハッハ! テメェと初めて戦った時、そいつには随分手を焼かされたからな、まずはリベンジの第一歩だ!」

「ッ! まだまだ! 次はリューマンドシャットでアタック!」

「ライフで受ける!」

 

リューマンフェニックを破壊されてもなお怯む事無くさらにリューマンドシャットを攻撃させ、その大槌をバンのライフへ振り下し、衝撃がライフを打ち砕く。

 

[バンside]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]0個→1個。

 

「ターンエンド」

 

 

 

 

[03ターン.バンside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]1個→2個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]2個→5個。[フィールド]タヌビート回復。

 

「メインステップ! ウリマジロを召喚! さらにもう一体、葵の爆獣バビレーサーをLv.2で召喚だッ!」

 

[リザーブ]5個→0個。

[トラッシュ]0個→2個。

[手札]5枚→3枚。

 

【ウリマジロ】0(0)青、スピリット、爆蒼。

Lv.1(1)BP2000、Lv.2(4)BP5000。

 

【葵の爆獣バビレーサー】4(2)青、スピリット、爆蒼。

Lv.1(1)BP4000、Lv.2(2)BP5000。

Lv.1、Lv.2『お互いのアタックステップ』

系統:「爆蒼」を持つ自分のスピリットがアタック/ブロックしたとき、相手のデッキを上から2枚破棄する。

《封印時》Lv.2『自分のアタックステップ』

系統:「神皇」、「十冠」を持つ自分のスピリットがアタックしている間、相手がバーストを発動するとき、相手はそのカードのコストを支払わなければ発動できない。

 

「アタックステップ! バビレーサー行け! アタック時効果でお前のデッキをさらに2枚破棄だ!」

「くっ!」

 

再びハルヤのデッキから2枚のカードが破棄され、「双翼乱舞」と「リューマンサージェント」が破棄される。

 

[ハルヤside]

[デッキ]31枚→29枚。

 

『バン選手、果敢に攻めながら順当にハルヤ選手のデッキを削っています! 前の試合同様、デッキ破壊を狙っているのでしょうか!』

『恐らくそれも狙いでしょうが、バン選手は本来相手のライフを討ちに行く速攻型。デッキ破壊とライフ、どちらも貪欲に狙いに行く彼のバトルスタイルは戦う相手には大きくプレッシャーとなるでしょう』

『ライフにしても、デッキにしても油断すればすぐに削り切られる。ハルヤ選手、それにはどう対応していくのでしょう!!』

 

着実に相手を追い込んでいくバンのバトル、そのままバビレーサーは駆け出しながらハルヤへと突っ込み、メインアタックに対してライフで受けると宣言すると、そのままバリアに突進し、ライフを破壊する。

 

[ハルヤside]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]1個→2個。

 

「ぐっ! ライフ減少時でバースト発動! エナジーバースト!」

「何ッ!?」

「バースト効果でBP7000まで相手のスピリットを破壊! ウリマジロとバビレーサーの2体を破壊するよ!」

 

バーストの効果によって二体の足元に噴き上がる火柱、そのまま炎が二体を焼き尽くし、破壊する。

 

「ハッ、流石にやるじゃねぇか。まぁそうじゃねぇとリベンジする甲斐がねぇよな! 俺はこれでターンエンドだ」

 

 

 

 

[04ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]2個→3個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]3個→6個。[フィールド]リューマンドシャット回復。

 

「行くよ! メインステップ! リューマンドシャットをLv.2にアップ、さらに武将劉萬を召喚!」

 

[リザーブ]6個→0個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]4枚→3枚。

[フィールド]武将劉萬Lv.1((S1))BP4000、リューマンドシャットLv.2(2)BP2000。

 

「召喚時効果発揮! 相手のBP6000以下のスピリット1体を破壊! タヌビートを破壊!」

 

炎の斬撃波をタヌビートに向けて撃ち出すと、避わす間もなく、直撃を受けて爆発四散する。

 

 

『おぉっと! これでバン選手のスピリットは全滅!! まさに今が好機か!!』

 

当然がら空きとなった今の状況を逃す手は無い。そのまま「アタックステップ!」と力強く宣言すると、一気にリューマンドシャットと武将劉萬でフルアタックさせ、バンのライフを二つ破壊する。

 

[バンside]

[ライフ]4→2。

[リザーブ]4個→6個。

 

「ターンエンド」

 

『ハルヤ選手、このターンもフルアタック! 攻撃の手を緩めていませんね』

『えぇ、デッキ破壊相手への鉄則はデッキを削り切られる前に早期決着を付ける事。だからその前に決着を付けようとしているんでしょう。ですが、ハルヤさんがそれを狙っていることはバンさんも承知の上でしょうがね』

『以前勝負の行方はどうなるか、まだまだ見逃せません!』

 

 

 

 

[05ターン.バンside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]6個→7個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]2個→0個。[リザーブ]7個→9個。

 

「メインステップ! バーストセット! さらにネクサス、俊星流れるコロッセオを配置!」

 

[リザーブ]9個→6個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]4枚→2枚。

 

「次はこれだ! マジック! ストロングドロー、効果で3枚ドロー後、2枚破棄するぜ!」

 

[リザーブ]6個→4個。

[トラッシュ]3個→5個。

 

カードを引いた後、次に捨てるカードに掛けた瞬間、少しだけ口元を緩ませ、その様子に一瞬疑問が浮かぶ。

 

「行くぜ、俺は手札から「葵の爆獣グリズクラッシュ」を2枚破棄、そしてこのカードが自分の効果で手札から破棄された時、効果を発揮!!」

「!?」

「このカードをトラッシュに置く代わりにノーコストで召喚! 二体ともLv.2で召喚するぜ!!」

 

[リザーブ]4個→0個。

 

【葵の爆獣グリズクラッシュ】7(4)青、スピリット、十冠/爆蒼。

Lv.1(1)BP7000、Lv.2(2)BP9000、Lv.3(5)BP15000。

自分の手札にあるこのスピリットカードは自分の効果で手札から破棄されるとき、自分のトラッシュに置くかわりに、コストを支払わずに召喚できる。

《封印時》Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

相手のデッキを上から7枚破棄する。この効果でマジックカードが破棄された時、最もコストの高い相手のスピリット1体を破壊する。

 

[フィールド]葵の爆獣グリズクラッシュ(A)Lv.2((S1)1)BP9000、葵の爆獣グリズクラッシュ(B)Lv.2(2)BP9000、俊星流れるコロッセオLv.1(0)。

 

『これは仰天!! 先程全滅させられたバン選手の場に新たに大型のスピリットが一気に二体も出現しました!!』

『この局面でグリズクラッシュ、ハルヤ選手に対して、一歩も引いていませんね』

 

解説する神子の言葉に対し、「当然だ!」と豪語しながらそのままタックステップへと移る。

 

「行けッ! グリズクラッシュ! アタックだッ!」

「ライフで受ける!」

 

豪快に飛び出すと、大きく両腕を振り下してバリアを切り裂き、その強靭な爪跡を刻み込み、亀裂の入ったその個所にさらに頭突きを打ちつけるとバリアを完全に破壊する。

 

「うあっ!!」

 

[ハルヤside]

[ライフ]4→3。

[リザーブ]0個→1個。

 

ライフを削り、もう一体のグリズベアーはブロッカーとして残す判断なのか、それ以上攻撃しようとはせず、「ターンエンド」とそのターンを終える。

 

 

 

 

[06ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]1個→2個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]2個→6個。[フィールド]武将劉萬、リューマンドシャット回復。

 

「メインステップ! 閃光の如く駆けろ! リューマンライトニングをLv.3で召喚ッ!」

 

[リザーブ]6個→0個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]4枚→3枚。

 

上空に突如として浮かび上がる光のロード。それを駆け抜けながらフィールドへと飛び降りる一体の龍、リューマンライトニング。

 

[フィールド]リューマンライトニングLv.3(3)BP10000、武将劉萬Lv.1((S1))BP4000、リューマンドシャットLv.2(2)BP2000。

                     

『ハルヤ選手、これで場のアタッカは三体!! 対するバン選手のブロッカーはグリズクラッシュのみです!』

『バン選手の残ったライフは二つ。フルアタックが決まれば勝利となります。ですが果たしてハルヤさんはどう動くのか』

『手札やバーストも警戒大ですからね! この局面が大きく勝敗を分けそうですね』

 

互いに睨み合う両者、バンは依然強気な態度を崩さず、それはカウンターのカードを持っているからなのか、それとも虚勢なのか、相手の真意は分からないがそれでも、悩んでいるだけでは始まらない。

 

「アタックステップ!!」

 

決心するように強く叫ぶと、ハルヤのスピリット達は一斉に構える。

 

「リューマンドシャットでアタック!」

「グリズクラッシュでブロックだ!」

 

[Battle]リューマンドシャットLv.2(2)BP2000vs葵の爆獣グリズクラッシュ(A)Lv.2((S1)1)BP9000。

 

飛び上がり、大槌を振り下そうと構えるリューマンドシャットだが、グリズクラッシュは怯む事無くそのまま突っ込み、右腕を振り上げてリューマンドシャットを簡単に弾き飛ばし、弾き飛ばされたリューマンドシャットは空中で消滅する。

 

「まだまだ! 武将劉萬でアタック!」

「ライフで受ける!」

 

バンの場にブロッカーはもういない。疲労し項垂れているグリズクラッシュ達を擦り抜けてバンへと駆け出す劉萬。刀を振り下してそのままバリアを一刀両断。

 

「うぐッ!!」

 

[バンside]

[ライフ]2→1。

[リザーブ]0個→1個。

 

ライフが砕け衝撃に少し仰け反るバン。すぐさまバーストが発動するのかと警戒するが、バーストは以前沈黙のまま動く気配はない。

 

「(バーストは発動しない? やっぱりブラフ? だったら……!)次はリューマンライトニングでアタック!!」

 

相手にもう反撃の手は無いと読んだのか、そのままリューマンライトニングもアタックさせ、攻撃指示に対しリューマンライトニングは残るライフを目掛けて、全速力でフィールドを駆け出す。

 

『もうバン選手の0! 果たしてこれで決まるのか!!!』

 

注目の瞬間に観客の視線が集まり、自分へと迫るリューマンライトニング。だが、その瞬間、バンは口角を上げながら「甘ぇよ」と呟いた。

 

「フラッシュだ! マジック、ミストバラッジ!」

「!?」

「不足コストは、二体のグリズクラッシュから確保!」

 

[フィールド]葵の爆獣グリズクラッシュ(A)Lv.2((S1)1)BP9000→葵の爆獣グリズクラッシュ(A)Lv.1(1)BP7000。葵の爆獣グリズクラッシュ(B)Lv.2(2)BP9000→葵の爆獣グリズクラッシュ(B)Lv.1(1)BP7000。

[トラッシュ]5個→7個。

[手札]2枚→1枚。

 

【ミストバラッジ】2(1)白、マジック。

『フラッシュ効果』相手のスピリット1体を指定する。このターンの間、そのスピリットは自分のライフを減らせない。自分のバーストをセットしているとき、かわりに、相手のスピリット/アルティメット1体をしていする。このターンの間、そのスピリット/アルティメットは自分のライフを減らせない。

 

「リューマンライトニングを指定! そいつのアタックじゃ、俺のライフ減らねぇ!」

「!!」

 

リューマンライトニングはそのまま飛び膝蹴りをライフに叩き込もうとするが、その瞬間、突如として霧がリューマンライトニングを包み込み、その視界を覆い隠され、構う事無くそのまま真っ直ぐ突っ込むが、霧が晴れた瞬間、リューマンライトニングの攻撃しようとする先に相手であるバンの姿はなく、攻撃が空振りとなってしまう。

 

『バン選手! ここでマジックによる反撃!! やはり持っていたのか!!』

「残念だったな! これでお前に攻撃できるスピリットは残ってない、あと一歩及ばずだな」

「ッ! ターンエンド」

 

 

 

 

[07ターン.バンside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]1個→2個。

[ドローステップ][手札]1枚→2枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]7個→0個。[リザーブ]2個→9個。[フィールド]葵の爆獣グリズクラッシュ(A)、(B)回復。

 

「(ヘッ、来たか……!)」

「!」

 

このターンで引いた一枚に笑みを見せるバン、当然それが何なのかハルヤにも理解できた。そしてそのままメインステップ後、すぐさま引いたカードに手を掛ける。

 

「まずはグリズクラッシュ1体をLv.2にアップ。さぁ行くぜ! 俺の最強のキースピリット!!」

「!」

「猪突、爆! 進!! 道塞ぐ物全てその牙で突き砕き、目の前の敵を打ち壊せ!!! 亥の十二神皇カラミティボア、Lv.2で召喚だぁッ!!」

 

[リザーブ]9個→0個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]2枚→1枚。

 

遥か地平線の彼方の先に柱のように上がる青い光、そしてすぐさまその光はこちらに向けて猛スピードで近付き始めたかと思うと、それは光りの如き速さで迫る亥の十二神皇カラミティボア。バンの前で止まると、大地を揺るがす程の咆哮をフィールド中に響き渡らせる。

 

『ついに出てしまった!! 亥の十二神皇カラミティボア!! バン選手のキースピリット、ついに! ついに!! 登場です!!!』

 

[フィールド]亥の十二神皇カラミティボアLv.2((S1)4)BP18000、葵の爆獣グリズクラッシュ(A)Lv.2(2)BP9000、葵の爆獣グリズクラッシュ(B)Lv.1(1)BP7000。

 

神皇の姿に湧き上がる観客達。一方でハルヤはその姿に対し構えて見せるが、バンはその様子に「警戒しても無駄だ!」と自信あり気に豪語して見せた。

 

「これが俺の本気だ!! 今日こそテメェに勝つ!! 骨の髄まで俺のキースピリットの威力をたっぷり味わせてやるぜ!!」 

「!!」

 

カラミティボアもバンの気迫の呼応にするようにさらに咆哮を強く張り上げ、その衝撃にハルヤも完全に圧倒されていた。だが、その姿を前にしても退く事はできない。強く意識を整え、真っ直ぐフィールドに向き直る。

 

「いい覚悟じゃねぇか、そんなテメェだからこそ、俺のリベンジも大きく意味を持つってもんだ! さぁ行くぜ、アタックステップ!」

「(来るッ!)」

「カラミティボア、アタックだッ!」

 

地面を強く蹴り、攻撃指示とほぼ同時に駆け出すと猛スピードで一気にフィールドを駆け抜け、突っ込んでいく。

 

「アタック時効果発揮! 【封印】! ソウルコアを俺のライフに!!」

「!」

 

カラミティボアのソウルコアがバンのライフへと移され、ソウルコアによる赤い光がライフに灯され、「さらに!」と続けて行く。

 

「封印時効果! 【突進】! 最もコストの低い相手へ指定アタック! 武将劉萬お前だ!!」

「!」

 

[Battle]亥の十二神皇カラミティボアLv.2(4)BP18000vs武将劉萬Lv.1((S1))BP4000。

 

「一気にデッキを破壊しつくしてやるぜ! カラミティボア、やれ!!」

 

受け止めようと刀を構えるも、到底猛スピードで突っ込むカラミティボアを劉萬では受け止めきれる訳はない。そのまま突き破ろうとカラミティボアは吠えながらさらにスピード上げて迫って行く。

 

「フラッシュタイミング! マジック、ブレイジングバースト!」

「何ッ!?」

               

[リザーブ]2個→0個。

[トラッシュ]3個→5個。

 

「フラッシュ効果、自分の赤のスピリット1体を破壊する事でこのターン、ライフは1つしか減らない! 対象は武将劉萬!」

 

突如、劉萬の身を炎が包み込むと、カラミティボアが激突する前に炎によって消滅し、カラミティボアによる突進は空を切っただけにすぎなかった。

 

『ここでハルヤ選手! ブレイジングバーストで指定アタックを回避しました!!』

『カラミティボアの突進はあくまで指定アタックで破壊した時だけに継続する物。自分で破壊してしまえば突進による連続アタックは起こりません!』

『これはハルヤ選手、上手い! マジックを巧みに使いこなしました!』

 

「ぐっ! まだだッ! 突進の連続アタックはできなくても、Lv.2の破棄効果はバトルで消滅した相手にも対応する! よってテメェのデッキを8枚破棄だ!」

「!」

 

攻撃は空振りに終わっても、その効果を完全に不発で終わる筈はない。攻撃を防がれてもなおカラミティボアは咆哮を上げ、その咆哮がハルヤのデッキから8枚ものカードを吹き飛ばし、トラッシュへと送る。

 

[ハルヤside]

[デッキ]28枚→20枚。

 

「さらに続けるぞ! Lv.2のグリズクラッシュでアタック! アタック時効果でテメェのデッキからさらに7枚破棄!」

 

[ハルヤside]

[デッキ]20枚→13枚。

 

さらに追討ちを駆けるようにデッキが破棄され、「ルーキーリューマン」、「リューマンドシャット」、「六分儀剣ルリオーサ」、「リューマンインフェニティ」、「リューマンチャージャー」、「リューマンクロウ」、そして「絶甲氷盾」が破棄される。

 

「マジックカードあり! 効果発揮だ! テメェの最もコストの高いスピリットを破壊するぜ! リューマンライトニングを破壊だ!」

「!」

 

グリズクラッシュはリューマンライトニングに両腕の爪を振り下して破壊し、さらにそのままハルヤへと向かって行き、バリアに突進する

 

「うあッ!」

 

[ハルヤside]

[ライフ]3→2。

[リザーブ]4個→5個。

          

「ブレイジングバースト効果でこれ以上はライフは削りきりねぇ、ターンエンド。だが、もうお前のライフもデッキも底が見え始めたな!」

 

バンの言う通り、もうライフにしてもデッキにしてもこれ以上削り切られるわけには行かない。何としても次の自分のターンでの決着を付けなければ恐らく勝利は無いだろう。だが、だからこそハルヤにとって、ここで勝負を諦める訳には行かない。

 

「絶対最後まで諦めない! 勝つと信じてやり切るだけだよ!」

「フン、そんなの俺だって同じだ!! テメェが勝つか俺が勝つか、根競べと行こうぜ!!」

「勿論! 望む所だよ!!」

 

 

 

 

[08ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ]5個→6個。

[ドローステップ]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]5個→0個。[リザーブ]6個→11個。

 

「メインステップ! リューマンドシャットをもう一度召喚! さらにもう一体、行くよ!」

「!」

「天下切り裂く勝利の剣! 太陽の如く燃え上がれ! 剣神無双リューマンゴッドソード召喚ッ!!」

 

[リザーブ]11個→0個。

[トラッシュ]0個→5個。

[手札]4枚→2枚。

 

燃え火がる炎のフィールド、その炎の中で眼光を輝かせる龍の影、手に持った剣の一閃で炎を掻き消し、剣神無双リューマンゴッドソードが召喚される。

 

『ハルヤ選手もここでキースピリット召喚しました!!』

『バトルも大詰め、ここからが正念場ですよ』

 

[フィールド]剣神無双リューマンゴッドソードLv.3((S1)4)BP10000、リューマンドシャットLv.1(1)BP1000。

 

「最後にバーストセット!」

 

[手札]2枚→1枚。

 

「一気に攻めて来るか!」

「うん、全力で行くよ! アタックステップ!!」

「来やがれッ! テメェの全力、全て受け切ったうえでテメェを超える!!」

 

両者のスピリット全ては互いの相手に向けて一斉に吠え、それぞれが大槌や爪、牙や剣を構え始める。

 

「まずはリューマンドシャットでアタック!」

「ライフだ!」

 

リューマンドシャットはそのまま飛び上がり、大槌を勢いよくバリアに叩き付けそのまま粉砕する。

 

「ぐっ!」

 

[バンside]

[ライフ]2→1。

[リザーブ]0個→1個。

 

「さらに続けるよ! リューマンゴッドソードでアタック! アタック時効果で1枚ドロー!」

 

[手札]1枚→2枚。

 

「グリズクラッシュでブロック! 受け止めろ!」

 

[Battle]剣神無双リューマンゴッドソードLv.3((S1)4)BP10000vs葵の爆獣グリズクラッシュ(B)Lv.1(1)BP7000。

 

爪と剣で互いを斬り合っていく二体のスピリット。グリズクラッシュは力で一気に押し切ろうと両腕を振り下すが、リューマンゴッドソードは高く飛び上がってそれを避わすと、そのまま剣に炎を纏わせ、着地と共にグリズクラッシュに炎を纏わせた剣を振り下し、炎の一閃にグリズクラッシュは倒れ爆発四散する。

 

「まだまだッ! 相手による自分のスピリット破壊でバースト発動! 爆砕轟神掌!!」

 

だが、スピリット破壊されてもなおバン自身も決して怯むことは無く、バースト発動の宣言と共に、弾け飛ぶそのカードを手に取る。

 

【爆砕轟神掌】5(2)青、マジック。

【バースト:相手による自分のスピリット破壊後】

相手のデッキの上から、このバースト発動時に破壊された自分のスピリットのコストと同じ枚数破棄する。その後コストを支払うことで、このカードのフラッシュ効果を発揮する。

『フラッシュ効果』自分のスピリット1体を回復させ、このターンの間、そのスピリットのLvを一つ上のものとして扱う。

 

「バースト効果で破壊されたグリズクラッシュのコストと同じ枚数、デッキを破棄! さらにコストを支払って、カラミティボアを回復し、レベルアップだ!」

 

[ハルヤside]

[デッキ]11枚→4枚。

 

[フィールド]亥の十二神皇カラミティボアLv.2(4)BP18000→亥の十二神皇カラミティボアLv.2(1)BP18000。

[トラッシュ]3個→6個。

[バースト]爆砕轟神掌。

 

「どうだ! 勝つのは俺だ!!」

「まだ終わってないよ! リューマンゴッドソードの効果、バトル終了時、手札にある「剣使」、「竜人」を持つスピリットかアルティメットをノーコストで召喚できる!」

「!!」

「伝説を受け継ぎし竜! 炎の一撃を時代に刻め!! 剣聖武竜ミツルギドラゴンをLv.3で召喚ッ!!」

 

天にまで燃え上がる炎、その炎の中に一本の剣が降り降ち、、渦巻く炎の中でその剣を手に取る龍の姿、渦巻く炎を両断し、炎の中より姿を現すのは剣聖武竜ミツルギドラゴン。

 

[フィールド]剣神無双リューマンゴッドソードLv.3((S1)4)BP10000→剣神無双リューマンゴッドソードLv.1(1)BP4000。剣聖武竜ミツルギドラゴンLv.3((S1)3)BP16000。

 

『出ましたーーッ!! ハルヤ選手のもう一体のキースピリット、剣聖武竜ミツルギドラゴン!!』

 

新たに出現するハルヤのキースピリットの姿に観客はより一層歓声を上げ、バトルを見ているエンザもその姿に対して反応して見せた。

 

「(ミツルギドラゴン、随分使いこなしてるみたいだな。けど……。)」

 

『二体目のキースピリットを召喚したハルヤ選手! だがしかし先程のバーストにより、カラミティボアは回復してしまい、そのBPは18000! ミツルギドラゴンをも上回っています』

『ですがハルヤさんにはもう後がない。ここで決めなければ敗北は必須です』

『果たして、ハルヤ選手どうする!!』

 

紅葉達の実況に対しも、ハルヤは迷う事無くミツルギドラゴンを見ると、ミツルギドラゴンもハルヤの意思が伝わってるのか、振り返り静かに頷く。

 

「ミツルギドラゴンでさらにアタック!! そしてアタック時効果、【起導】発揮! このスピリットのソウルコアをトラッシュに置き、伏せたS(ソウル)バーストを直ちに発動させる!!」

「!!」

 

剣を突き出しながら特攻するミツルギドラゴン、赤い光を纏いながら大きく吠えると、自身の効果によりソウルコアがトラッシュへと送られ、それに反応するように伏せられたバーストカードが弾け飛ぶ。

 

S(ソウル)バースト! 炎龍刀オニマル真打! ミツルギドラゴンに直接合体(ダイレクトブレイヴ)!!」

 

[フィールド]剣聖武竜ミツルギドラゴンLv.3((S1)3)BP16000→剣聖武竜ミツルギドラゴンLv.2(3)BP12000。

 

空より降り落ちる一本の剣、それは刀身に纏う炎で円を描きながらミツルギドラゴンへと振り落ち、その剣を手に取り合体(ブレイヴ)スピリットとして、さらに強く咆哮を響かせる。

 

「そしてメインアタックだッ!」

「カラミティボアでブロック!! 迎え撃て!!」

 

[Battle]剣聖武竜ミツルギドラゴン×炎龍刀オニマル真打Lv.2(3)BP17000vs亥の十二神皇カラミティボアLv.2(4)BP18000。

 

カラミティボアは迫るミツルギドラゴンを迎え撃つように勢いよく駆け出し、そのまま猛スピードで突っ込み、対するミツルギドラゴンも炎龍刀と自身の剣を構え、真っ向から受けて立ち、カラミティボアの牙を二刀の得物で受け止める。

 

「フラッシュタイミング! サンブレイカー! 不足コストはリューマンゴッドソードとリューマンドシャットから確保!」

「!」

 

[フィールド]剣神無双リューマンゴッドソードLv.1(1)BP4000→剣神無双リューマンゴッドソードLv.0(0)消滅。リューマンドシャットLv.1(1)BP1000→リューマンドシャットLv.0(0)消滅。

[トラッシュ]6個→8個。

[手札]2枚→1枚。

 

「このターンの間、合体スピリットが相手スピリットを破壊すれば、ライフを1つリザーブに送る!」

「貫通ダメージって訳か! だがな、カラミティボアのBPは18000!! 所詮勝負に勝てなきゃ意味がねぇんだよ!!」

 

バトルでは、激突する二体だが力はカラミティボアに分があり、ミツルギドラゴンは徐々に押され始め、足を引き摺らせながら後退させられていく。

 

「決めるぜカラミティボア!! 何としてもこのターン、凌ぎ切る!! そしてお前に絶対勝つ!!!」

 

勝利に掛けるバンの執念は相当の物。カラミティボアは一気に押し切ろうと眼光を輝かせながらさらに力を込め、観客達は勝負が決まるのか、固唾を呑んでその光景を静観する。

 

「負けない!! 絶対! スピリット信じて、勝利を最後まで信じ切る!」

「!?」

「さらにフラッシュ! ソウルオーラ! 不足コストはミツルギドラゴン自身から確保して効果発揮! このターンの間、BP+3000!!」

「何ぃッ!!?」

 

[フィールド]剣聖武竜ミツルギドラゴン×炎龍刀オニマル真打Lv.2(3)BP17000→剣聖武竜ミツルギドラゴンLv.2(2)BP17000。

[トラッシュ]8個→9個。

[手札]1枚→0枚。

 

「最後の一枚、まさかゴッドソードのアタックで引いたのかよ! どれだけテメェはツイて────」

 

そこまで言い掛けた瞬間、バンははっとしたようにそこで言葉を止め、「違うな」と呟いた。

 

「運なんかじゃねぇ、それはテメェの言うスピリット信じた結果って奴か」

「うん!」

 

真っ直ぐな目で頷くハルヤに対し、バンは微かに笑って見せながら覚悟するようにバトルを見る。

 

「(……どうやらここまでか、カラミティボアを信じる気持ちが俺には足りなかった。それが勝因の結果か)」

 

バトルでは押し切ろうとするカラミティボアだが、ミツルギドラゴンも眼光を輝かせ、地面を凹ます程、強く足場を踏みしめて留まり、そのまま炎龍刀と剣をカラミティボアの牙に食い込ませ、そのままカラミティボアを持ち上げ始める。

 

「行っけぇーーッ!! ミツルギドラゴン!!」

 

そのままカラミティボアを宙に投げつけ、二刀の剣に炎を纏わせるとそのまま真っ逆様に落ちるカラミティボアを二刀の剣で切り裂き、炎の斬撃がカラミティボアに刻まれ、その場で大爆発を起こす。

 

「カラミティボア、すまねぇな」

「サンブレイカーの効果でライフに貫通! これで決めるよ!!」

「来なッ! 最後のライフ、くれてやる!!」

 

爆風を突っ切ってミツルギドラゴンはそのままバリアに剣を振り翳し、その攻撃を受け入れると、二刀の斬撃がバリアを切り裂き、最後のライフを破壊する。

 

「ぐああああああ……ッ!!」

 

[バンside]

[ライフ]1→0[Lose]

 

 

 

***

 

 

 

 

『決まったーーッ!! 何という熱い攻防!! キースピリット同士の激突を制し、三回戦を見事勝ち抜けたのは輝来ハルヤ選手だぁッ!!』

 

冷めやらぬ興奮を胸に、実況の声を叫ぶ紅葉。神子も二人のバトルを称えるように拍手を送り、観客達も同じく歓声や拍手をバトルした二人へと送る。

 

「いい勝負だったよ、バン」

「…………」

 

勝負を終え、手を差し伸べるハルヤ。それに対しバンはまだ何か思う事があるのか、しばらく黙り込んだままだったが、暫くして口を開き始めたかと思うと。

 

「本気を出し尽して結果がこれじゃぁ、言い訳のしようもねぇ」

「えっ?」

「認めてやるよ、輝来ハルヤ。お前は、俺より強い」

「バン!!」

「だが今のところは、だ! もっと強くなって今度こそ俺が勝つ! そして必ずキャプテンに認められてみせる! だから勿論、次もバトルしてくれるよな?」

「うん、勿論だよ!!」

「言ったな? 勝ち逃げしたら承知しねぇからな!!」

 

ハルヤの手を受け取り握手を交わす二人、その様子に観客達は惜しみない拍手を送りつつ、紅葉はさらにテンションを上げながら実況する言葉を続けて行く。

 

『さぁ第1試合から白熱した勝負を見せてくれたところで、次も張り切って行きましょう!! それでは第2戦目、開戦としましょう!!』

 

続く三回戦の試合、ザックやエンザ達も続く試合に望み、観客席を後にしステージを後にし、試合はすぐに行われた。

 

「行けッ! ゴッドスレイヤードラゴン!!」

「ゲイルフェニックスでアタック!!」

「Uドライアンでアタック!!」

 

続く三回戦、エンザ、ザック、スズの3名はそれぞれのキースピリットによる攻撃で勝負に決着を付け、連続したバトルに観客一同よりヒートアップする。

 

『さぁ三回戦全試合決まりました! 勝ち抜けたのは、天来ザック選手、火龍エンザ選手、桐美スズ選手です!!』

『ここまで勝ち抜けた強豪バトラー達、続く準決勝、さらに見逃せないバトルとなるでしょうね』

『準決勝に勝ち抜けた4名、誰が優勝するのか最後まで分かりません!!!』

 

激闘続く大会、いよいよ終盤も近づく中、その様子を見ているチャンピオンも期待するように静かに注目の眼差しを向けている。

 

「(みんな強いな、こりゃ俺も唯見学するだけじゃぁつまらないか)」

 

何か思いついたのか、笑いながら一瞬だけ席を外しチャンピオン。まだまだ続く戦い。その結果、行方がどうなるのか、まだ誰も知る由は無い。







いかがでしたでしょうか第16話。亥vsミツルギドラゴン。何気にミツルギドラゴンの対スピリットのバトルは今回初だったのでかけてとても楽しかったです!!

それと後半で書いてチャンピオンが今まで空気になってたのに気づきました(;´・ω・)何とかチャンピオンも前作主人公として活躍させたいですね。まぁ今後を期待してくだされば(遠い目)


一方アニメではハヌマーリン登場しましたね。正直テキストが公開された初見の時は、えーと思ったのですが、アニメでの活躍で見る目が180度変わりました(単純)シンボル追加のオンコット、ハヌマーリンで使えば召喚した自身にもシンボルが追加されるのは気づかなかったのでびっくりしました。それでもなくとも黄色にはライフドリームやシユウなどアンブロッッカブル効果が多いので、アクセル8コストでも採用は全然ありかと。コモンなので、入手しやすいにも嬉しいです。

来週発売なので、フラゲできない田舎勢たる私は発売日に売り場に駆け込みます←


アニメは次回、「海魔神」がどんな効果なのか気になってます!勿論アニメだけでなくこの小説もどうか今後ともよろしくお願いします。


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No17.戦国龍

・以下注意
誤字、プレイミスありかも。
バトル表記が人によっては分かりずらいかも。

それでも大丈夫という方はどうか温かい目で見てもらえると幸いです。発見したミスやバトル表記などのご指摘気軽にお待ちしております。


第17話

 

以前熱気に包まれた会場。観客達が声援を送る中、ステージに向かい合うスズとハルヤの姿、間もなく始まろうとするバトルに備え、二人はデッキを構える。

 

「まさか、こんなに早く戦う機会があるなんて……でもチームリーダーだからって手加減しませんよ?」

「うん、僕だって同じ! 互いに本気でバトルお願いするね!」

「そのつもりです。あの、ところでハルヤは────」

「?」

 

何か言いたいことでもあるのだろうか、口籠るスズ。不思議にそうに首を傾げるが、結局本人は気持ちを切り替えるように首を振りながら「やっぱり何でもないです!!」と声を荒げて自分の言葉を取り下げる。

 

「す、スズ? どうかした?」

「い、いえ、何でもないです」

 

不思議に思うハルヤに、余計慌てた様子のスズ。勿論本人もなぜ自分がこんなに慌てているのか、その理由さえも分かる筈はなかった。

 

「(ほんと、何だかおかしいよね。さっきだって……)」

 

そう言いながら思い返す節があるのか、それは先程、沖田とバトルした時の事にまで遡る。

 

 

 

 

***

 

 

 

「アルティメットドライアンでアタック! これで決まりです!」

「ライフで、受けます」

 

準々決勝、第3試合、沖田とスズとのバトル。自分のキーカードであるアルティメットの攻撃を決め手に、決着を付けて彼女は勝利する。

 

「バトルありがとう。スズさん、だったね。負けちゃったけど楽しかったよ? ハルヤ君のチームメイトだからどんな実力か楽しみにしてたけど、やっぱり期待以上だね」

「か、買いかぶり過ぎです。でも、嬉しいです。ありがとうございます」

 

バトルを終え、それまであまり交流のなかった二人だが、友好的な相手の態度にスズも警戒する事無く、すぐに打ち解け、互いに健闘を称えながら親しげに会話を交わす二人。

 

「準決勝、頑張ってね。応援してるよ、でも同じチームメイトのハルヤ君やザック君も勝ち残ってるから、二人と当たったらやっぱりちょっと気まずかったりする?」

「いえ、やるからには当然勝つことしか考えてませんから心配は無用です」

「そっか。なら全力で頑張ってね! 私はスズさんもハルヤ君も、みんな応援してるよ!」

「……あの、沖田さん。一ついいですか?」

「うん? どうしたの?」

「沖田さんは、ハルヤの事をどう思って────!」

 

声を小さくしてある質問をしようとするスズだが、その言葉は本人の自覚なく無意識の内に発せられた言葉であり、そこまで言い掛けた瞬間、自分が何を言っているかようやく理解すると、慌ててそこで口を止め、「す、すみません!! やっぱり何でもないです!!」と訂正する。

 

「う、うん? よくわかんないけど、とにかく頑張ってね! それじゃあ」

 

沖田自身はよく聞き取れていなかったのか、不思議に思いながらも特に追及はせずに手を振ってその場を後にし、それに同じように手を振ってその後姿を見送った。

 

 

 

***

 

 

 

 

「(あの時と言い、さっきと言い、一体私は二人から何を聞こうとしていたんだろう……。)」

 

振り返る記憶、正直それは今でも思い返すと恥ずかしいが、必死にそれを忘れようと意識をバトルに切り替える。

 

『さぁさぁ、大会もいよいよ大詰め!! 準決勝、決勝戦を残すのみとなりました!! 果たして優勝と言う名の栄冠を掴むのはだれか!』

 

「いくよスズ!!」

「はい、何度も言いますが手加減はしませんからね!!」

 

紅葉達の実況の声を筆頭により歓声を上げる観客達。バトルは直ぐに開始され、そして……。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「リューマンゴッドソードでアタック!」

「ライフで受けるッ!!」

 

最後のライフを砕き、バトルを制したのはハルヤ、勝利と共に「やったぁーーッ!!」と大はしゃぎする無邪気な姿に、笑いつつも観客達と同じく勝利するハルヤを称えるように拍手を送る。

 

「やっぱり強いね、まっ、だからこそ私もこのチームにいるんだけどね」

「はは、でもスズも強かったよ? 前に闘った時よりもっと強くなってる」

「あ、ありがとう」

 

照れ臭そうにしながらも素直にその言葉を受け取り、そしてバトルを終え二人は一度観客席へと戻って行き、二人を待っていたようにキッドやザック、コン太の二人は「お疲れ様」と声を掛ける。

 

「いい勝負だったぜ、ヒートなバトル、見てて目が離せなかったぜ」

「僕も同じです。二人共いいバトルでしたよ!」

「キッドもコン太もありがとう。正直ここまで来れたのが今でも信じられないくらいだよ」

 

少し前までは大会などに出場しても予選敗退ばかりで実力の不十分を自覚していたが、すっかり多くのカードバトラー達と戦い、こうしてチームのリーダーとしてこの大会を勝ち進めていることには、夢の感覚だった。

 

「おいおい、俺達のリーダーがそんな謙遜な態度でどうすんだよ! 次にお前と戦う俺を前にして、後ろ向きな発言は控えてくれよ!

「!!」

 

そんなハルヤの言葉に喝を入れるザック。ハルヤとは正反対に先程の発言と合わせて、勝つつことを当然のように自身に溢れた様子だった。

 

「ご、ごめん。次はザックの番だよね? 試合、頑張ってよ!」

「当然だぜ、絶対勝つ! そして決勝を戦うのは俺とお前だ!」

「そっか、僕もザックとバトルできるの楽しみにしてるよ!!」

「おぉ、少し待ってな、俺も直ぐに決勝に上がるぜ!」

 

『さぁ続きまして、準決勝第2試合、まもなく開始いたします! 対戦者は天来ザック選手、そして火龍エンザ選手! 両選手はステージまでお願いします!!』

 

突然会場全体に掛かるアナウンス。「早速来たか!」と、すぐさま観客席を立ち上がり、ハルヤ達も頑張れ、と声援の言葉を贈り、振り返らず手を上げて返事を返しながらステージへと向かう。

 

「ハルヤ、ザックにはあぁ言ってましたが、エンザっていう人と、ザック。本当はどちらと戦いたいんですか?」

 

スズの言葉に対し、腕を組んで考え込むハルヤだが暫く考えても答えが出ないのか、悩んだ末「戦いたいのはやっぱり両方かな」と返答を返し、それに対し「相変わらずだね」と笑って見せた。

 

「はは、まぁ俺はあいつに負けちまったけど、誰が戦おうと唯応援しながら見守るだけさ」

「うん、そうだね。僕達が出来るのはただ見守る事だけだよ」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

『さぁ準決勝第2試合! 次の勝負はザック選手とエンザ選手のバトルです!! 勝ち残った方が、ハルヤ選手と決勝を戦う事になります!! 果たして勝つのはどちらか!!』

『ゲイルフェニックスなどをキーとした緑デッキのザック選手と、ゴッドスレイヤを始めとする赤デッキのエンザ選手、どのような結果になろうとも白熱した展開になるのは間違いないですね』

『ならばこそより試合が楽しみとなってまいりました! それでは早速両選手入場を!!』

 

司会進行の言葉と共にステージへと上がるザックとエンザ。観客席ではハルヤ達やレッドドラゴンメンバーの面々は声を大に一際目立つ声援を送る。

 

「火龍エンザ、レッドドラゴンのチームリーダーだったな」

「?」

「少し前まではチーム未所属だったが、アンタの事は色々耳にしてた。準決勝の舞台で戦えるのは光栄だぜ」

「フッ、そうか。でも俺もハルヤのチームメイトがどんなやつか気になってたんだ。この機会に戦えて嬉しいのは俺だって同じだ」

 

顔を見合わせながら言葉を交わす二人。ザックの言葉を素直に受け取り言葉を返すエンザだが、「だがよ」と付け足しながら言葉を続けて行く。

 

「勝負は勝負だ。手加減するつもりは一切ねぇぞ」

「あぁ俺だって同じだ。それに、絶対勝つって、自分のリーダーに宣言しちまったしな」

「そうかよ、まぁ勝負の結果がどうあれ、恨みっこなしの真っ向勝負でやり合おうや!」

「あぁ、望む所だぜ!」

『両者は意気込みは充分ですかね? それでは早速準決勝第二試合を始めていただきましょう!!』

 

紅葉の言葉と共に、ステージ台に立ち、デッキを構える二人。そしてバトルフィールドが起動を示すように光を始めると、『両者コールを!』とバトル開始を促す。

 

「「ゲートオープンッ! 界放ッ!!」」

 

 

 

***

 

 

 

 

[01ターン.ザックside]

[スタートステップ]

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「メインステップ! ソウルコアをコストに、丁騎士シュバリエ召喚!」

 

[リザーブ]4個→0個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→4枚。

 

「召喚時効果発揮! ソウルコアをコストに使用した時、ボイドからコアを追加。シュバリエの上にコアを置くぜ!」

 

[フィールド]丁騎士シュバリエLv.1(2)BP3000。

 

「ターンエンド」

 

 

 

 

[02ターン.エンザside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「俺のターン、イクサトカゲをLv.3で召喚だ」

 

[リザーブ]5個→0個。

[手札]5枚→4枚。

 

「Lv.3の効果、このスピリットにソウルコアが置かれていればBP+6000、よってBP10000だ」

 

[フィールド]イクサトカゲLv.3((S(ソウルコア)1)4)BP10000。

 

「いきなり高BPのスピリットかよ!」

「勝負はまだ始まったとこだぞ? このぐらいで驚いてる場合か?」

「そんな事、言われなくても!」

 

エンザの言葉に少しだけムッとしたよう言い返して見せるが、ザックの態度に少しだけ口元を緩ませ、「なら行くぞ!」とそのままアタックステップに移り、開始早々イクサトカゲに攻撃させると、その攻撃をブロックはせずにライフで受ける。そのままターンエンドとコールし、ターンを終える。

 

[ザックside]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]0個→1個。

 

 

 

 

[03ターン.ザックside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]1個→2個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]2個→5個。

 

「メインステップ! もう一度ソウルコアをコストに使って、丁騎士シュバリエをもう一体召喚! 召喚時効果でボイドからコア1個を追加!」

 

[リザーブ]5個→2個。

[トラッシュ]0個→2個。

[手札]5枚→4枚。

 

「またコアブーストか」

「まだまだ! さらにネクサス、白雲に茂る天翼樹を配置!! 配置時効果でボイドからコア1個をリザーブに追加! 自分の場に爪鳥を持つスピリットがいる事でさらにコアを追加だ! 増やしたコアは二体のシュバリエにそれぞれ追加してレベルアップ!」

 

[リザーブ]2個→0個。

[トラッシュ]2個→4個。

[手札]4枚→3枚。

 

『ザック選手、コアブーストが止まらない!! 一気に3つのコアを増やしてきた!!!』

『さすがにここまで勝ち残った実力は伊達ではありませんね。緑の効果を存分に使いこなしています』

『先程はエンザ選手に先手を許してしまいましたが、コアを増やし、ザック選手一気に反撃なるか!

 

[フィールド]丁騎士シュバリエ(A)Lv.2(3)BP5000、丁騎士シュバリエ(B)Lv.2(3)BP5000、白雲に茂る天翼樹Lv.1(0)。

 

「アタックステップ! 二体のシュバリエでそれぞれアタック!!」

「来たか、どっちもライフで受けてやるぜ!」

 

二体とも展開されるバリアに取り付き、そのまま爪足を突立ててバリアを破壊し、先程のお返しと言わんばかりにライフを削り返す。

 

「ぐっ!!」

 

[エンザside]

[ライフ]5→3。

[リザーブ]0個→2個。

 

「ターンエンドだ」

『さぁさぁザック選手も負けてはいません! ライフを削り返しすぐさま逆転しました!』

 

実況する紅葉の声、ザックもライフの差を逆転した事に笑みを浮かべるが、対するエンザもまた攻撃を受けながらも笑って見せながら「まだまだ!」と強気な様子。

 

 

 

 

[04ターン.エンザside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]2個→3個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][フィールド]イクサトカゲ回復。

 

「メインステップ! イクサトカゲをLv.1にダウン。そしてネクサス、故郷の山に似た山を配置!」

 

[リザーブ]7個→4個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→4枚。

 

【故郷の山に似た山】4(2)赤、ネクサス。

Lv.1、Lv.2『自分のメインステップ』

自分の手札にある系統:「武竜」を持つスピリットカードを召喚するとき、そのコストを-1する。

Lv.2『自分のアタックステップ』

自分のライフが減ったとき、自分のトラッシュにあるS(ソウルコア)を、系統:「武竜」を持つ自分のスピリットに置く。

 

「ネクサスの効果で手札にある武竜を持つスピリットのコストを-1。よって手札のジンライドラゴンとハガネヴルムをLv.2でそれぞれノーコスト召喚だ!」

 

[リザーブ]4個→0個。

[手札]4枚→2枚。

 

「一気に並べて来たか!」

「まだだ、最後にバーストセットし、イクサトカゲとソウルコアをジンライドラゴンのコアとチェンジだ!」

 

[手札]2枚→1枚。

[フィールド]ジンライドラゴンLv.1((S1))BP3000、ハガネヴルムLv.2(3)BP5000、イクサトカゲLv.1(1)BP1000。

 

『ここでエンザ選手、一気に手数で攻めの構え!! 早期決着を狙うつもりか!!』 

「アタックステップだ! ジンライドラゴンでアタック! アタック時効果でBP+3000、ソウルコアの力で【真激突】を持ち、合わせてハガネヴルムの効果発揮だ!」

「!」

「ハガネヴルムの効果で【真激突】を持つジンライドラゴンは指定アタックが可能だ! よってシュバリエにアタック! 掛かって来な!!」

「ッ! シュバリエでブロック!」

 

[Battle]ジンライドラゴンLv.1((S1))BP6000vs丁騎士シュバリエ(A)Lv.2(3)BP5000。

 

ジンライドラゴンは駆け出しながらそのままシュバリエへと突っ込み、頭部の刃を振り下すが、シュバリエは間一髪翼を広げて飛び上がり、刀の一閃を回避すると、そのまま反撃するように爪足を構えて強襲するが、翼があるのはジンライドラゴンも同じ。同様に翼を広げて回避すると、その場で反転し、尾にも備えた刃を振るい、シュバリエを切り裂き、破壊する。

 

「シュバリエ!」

「まだだ! さらに続け、イクサトカゲ!」

「ぐっ! ライフだ!!」

 

再びイクサトカゲは駆け出しながらそのままザックへと飛び掛かると、展開されるバリアに圧し掛かり、破壊する。

 

「……ッ!!」

 

[ザックside]

[ライフ]4→3。

[リザーブ]3個→4個。

 

「ターンエンド。これで同点だな」

「へっ、すぐにまた逆転するさ、嫌……一気に決めてやるさ!」

「!」

『おぉっと! ザック選手、早くも勝利宣言か!!』

 

強気なザックの発言に注目が集まる中、続くターンを迎えて行く。

 

 

 

 

[05ターン.ザックside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]5個→9個。[フィールド]丁騎士シュバリエ回復。

 

「メインステップ、丁騎士シュバリエをLv.1にダウン。そしてこいつの出番だ!!」

「!」

「光の翼を広げて空を舞えッ! 輝きを天に煌かせろッ! 光牙鳳凰レックウマルをLv.3で召喚!」

 

[リザーブ]11個→2個。

[トラッシュ]0個→5個。

[手札]4枚→3枚。

 

光りを纏い空へと撃ち上がる一筋の光、その光の正体は広い空に大きな翼を広げ、ザックの言葉通り空を舞いながらより己の身を輝かせるスピリット、光牙鳳凰レックウマル。

 

『ここでXレア級のスピリット来たぁーーッ!! 光のスピリットであるレックウマルの登場です!』

『エース級のスピリットですね。一気に勝負を仕掛けるとは、恐らくこのスピリットを指しての事でしょう!』 

 

何かを察するような神子の言葉、そのままザックはレックウマルの姿を一目見ると、エンザへと視界を戻しそのままバトルを続けて行く。

 

「レックウマルの召喚時! 【分身】発揮!!」

「!」

「デッキの上から2枚を裏向きで置き、リザーブに置く事でレックウマルの分身スピリットと扱うぜ!!」

 

大きく吠えて見せたかと思うと、突然レックウマルから光の影が分離し始めたかと思うと、それはレックウマルと瓜二つの姿となり、文字通り自分の分身だった。

 

『【分身】、その効果はカードに書かれた体数分までカードを裏向きで置き、リザーブのコアを上に置く事でスピリットとして扱える事の出来る効果です。その効果で、ザック選手一気にスピリットを展開しましたね』

 

【光牙鳳凰レックウマル】7(3)緑、スピリット、爪鳥。

Lv.1(1)BP5000、Lv.2(3)BP9000、Lv.3(4)BP11000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3【分身:2】『このスピリットの召喚時』

自分のデッキの上から2枚までを裏向きで自分のフィールドに置き、自分のリザーブのコア1個以上を置く事で、ゲーム終了時まで、そのカードをコスト0/系統:「分身」/Lv.1/BP3000/[緑]の分身スピリットにする。

Lv.2、Lv.3【強化】

アルティメット以外の自分の「相手への疲労効果」の体数を+1する。

Lv.3『このスピリットのアタック時』

相手のスピリット1体を疲労させる。

 

[フィールド]光牙鳳凰レックウマルLv.3((S1)3)BP11000、分身レックウマル(A)Lv.1(1)BP3000、分身レックウマル(B)Lv.1(1)BP3000、丁騎士シュバリエLv.1(1)BP3000、白雲に茂る天翼樹Lv.1(0)。

 

「アタックステップ! レックウマル、突っ込め!!」

 

翼を大きく羽ばたかせながら狙いを定めると、そのまま一気に急降下しながらエンザへと迫って行き、レックウマルが動き出した瞬間、吹き荒れる強風。

 

「アタック時効果発揮! 相手スピリット1体を疲労! よってハガネヴルムを疲労させるぜ!!」

 

吹き荒れる強風、あまりに強い風にその場を動く事さえままならず疲労状態にさせられ、ブロッカーのいないがら空きと化したフィールドにレックウマルは猛スピードで突っ込んでいく。

 

『エンザ選手!! これでブロッカーは0!! フルアタックが決まれば、ザック選手の勝利!! 早くも勝負が決まってしまうのか!!』

 

戦慄の走るバトルの行方。観客席にいる吉馬達、レッドドラゴンの面々は「エンザさん!!」と自分達のリーダーを心配するように観客席から思わず立ち上がるが、エンザ本人は……。

 

「アタックはライフで受ける!」

 

追い込まれた状況下でも一切動じる事は無く、冷静にコールすると、レックウマルはそのまま至近距離までエンザへと接近すると、両翼から撃ち出す風の塊をバリアへと撃ち付け、破壊する。

 

[エンザside]

[ライフ]3→2。

 

「ッ!! ライフ減少時だ、バースト発動!」

「!?」

 

衝撃を受けながらも、そのまま伏せたバーストに視線を置き、カード手に取り発動させると、エンザに背後に炎の文字が浮かび上がる。

 

「覇王爆炎撃! バースト効果でBP4000以下の相手を三体まで破壊だ!!」

「!!」

 

【覇王爆炎撃】6(3)赤、マジック。

【バースト効果:自分のライフ減少時】

BP4000以下の相手スピリット3体を破壊する。その後コストを支払う事で、このカードのフラッシュ効果を発揮する。

『フラッシュ効果』相手の合体スピリット1体を破壊する。

 

「二体の分身スピリット、並びに丁騎士シュバリエ! 纏めて破壊だッ!!」

「しまったッ!!」

 

背後に浮かび上がる文字はそのまま火の粉となってザックのスピリット達へと降り注ぎ、炎に焼かれたスピリット達は次々と力尽き爆発四散していく。

 

『バーストによるカウンター!! ザック選手、これでアタッカーとなるスピリットをすべて破壊されてしまいました!!』

『エンザ選手は激突や指定アタックなどを狙った攻撃型、正攻法で挑むなら当然ザック選手は攻撃の隙をついて一気に攻めるしかない。だからこそこの局面を見越してのバースト。さすがですね』

『対してザック選手、これは少々攻め急ぎ過ぎましたかね』

 

的確に状況を見定める解説の言葉。一方で相手の反撃を予測できていなかったのか、悔しそうに表情を歪めながらも、それでもまだ勝負は終わっていない。拳を握りしめながらターンエンドとコールする。

 

 

 

 

[06ターン.エンザside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]1個→2個。

[ドローステップ][手札]1枚→2枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]2個→5個。[フィールド]ジンライドラゴン、ハガネヴルム、イクサトカゲ回復。

 

「メインステップ! バーストセット。そしてハガネヴルムをLv.1にダウンし、マジック、フェイタルドローを使用だ!」

 

[リザーブ]7個→5個。

[トラッシュ]0個→2個。

[手札]2枚→0枚。

 

【フェイタルドロー】4(2)赤、マジック。

『メイン効果』自分はデッキから2枚ドローする。自分のライフが2以下の時、さらに、自分はデッキから1枚ドローする。

『フラッシュ効果』このターンの間、スピリット/アルティメット1体をBP+2000する。

 

「攻めてくれてたことに礼を言うぜ! 俺のライフは2。よって合計3枚ドローだ!」

 

[手札]0枚→3枚。

 

「こっからがお返しだぜ、ドラマル、続けてツインブレードドラゴンを連続召喚だッ!」

 

[リザーブ]5個→0個。

[トラッシュ]2個→5個。

[手札]3枚→1枚。

 

【ドラマル】0(0)赤、スピリット、武竜。

Lv.1(1)BP1000、Lv.2(3)BP3000。

Lv.1、Lv.2『自分のメインステップ』

自分がカード名に「サムライドラゴン」か「ソウルドラゴン」と入っているスピリットカードを召喚するとき、このスピリットに赤のシンボル1つを追加する。

 

【ツインブレードドラゴン】5(2)赤、スピリット、戦竜。

Lv.1(1)BP4000、Lv.2(2)BP6000、Lv.3(5)BP8000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

自分はデッキから1枚ドローする。自分のバーストをセットしているとき、さらにBP4000以下の相手のスピリット1体を破壊する。

Lv.2、Lv.3:フラッシュ『自分のアタックステップ』

自分のバースト1つを破棄することで、このターンの間、自分のスピリット1体をBP+5000する。

 

[フィールド]ツインブレードドラゴンLv.1(1)BP4000、ジンライドラゴンLv.1((S1))BP3000、ハガネヴルムLv.1(1)BP3000、イクサトカゲLv.1(1)BP1000、ドラマルLv.1(1)BP1000、故郷の山に似た山Lv.1(0)。

 

『エンザ選手!! 一気に5体ものスピリットを展開!! 対するザック選手の場には疲労状態のレックウマルのみ!!』

『先程分身による展開をやり返したという所でしょう。カウンターを決めた今の状況で勝負を決めにかかるタイミングとしてはまさに最適と言えます』

『まさに逆襲と言う訳ですね!! ザック選手大ピンチです!!』

 

「アタックステップだ!! 行けッ!! ツインブレードラゴン!! アタック時効果で1枚ドローだ!」

 

[手札]1枚→2枚。

 

「ライフで受ける!!」

 

展開されるバリア。ツインブレードドラゴンは攻撃指示と同時に飛び出すと、その名の通り両手に握り締めた二刀の刃を振り翳し、そのまま一気に二刀同時に振り下し、バリアを破壊する。

 

「ぐッ!!」

 

[ザックside]

[ライフ]3→2。

[リザーブ]3個→4個。

 

「ドラマルでさらにアタック!!」

「そいつもライフだ!」

 

今度はドラマルへの攻撃指示。鳴き声を上げながら、手に持った槍を突き出し、構えたまま駆け出すと、その槍でバリアを突く。

 

[ザックside]

[ライフ]2→1。

[リザーブ]4個→5個。

 

「次だ! イクサトカゲ、やれッ!」

 

勝負に決着をつけんと息巻くようにイクサトカゲは吠えながら駆け出し、勝負が決まろうとする瞬間に誰もが固唾を呑む。

 

『残るライフは一つ! これで決まってしまうのか!!』

「……いいや、まだまだこんな簡単に終われるか! フラッシュタイミング! マジック、ストームアタックだ!」

「!」

 

[リザーブ]5個→3個。

[トラッシュ]4個→6個。

[手札]3枚→2枚。

 

【ストームアタック】4(2)緑、マジック。

『フラッシュ効果』相手スピリット1体を疲労させる。その後、自分のスピリット1体を回復させる。

 

「マジックの効果に合わせて、レックウマルの【強化】発揮だ! ハガネヴルムとジンライドラゴンを疲労させるぜッ!」

 

マジックによって吹き荒れる風、さらにレックウマル自身も大きく翼を羽ばたかせ、巻き起こる風をより広げると、その風はハガネヴルムとジンライドラゴンの二体を巻き込み、二体共々疲労状態となり、その場に伏せてしまう。

 

「さらにストームアタックの効果でレックウマルを回復! そのままブロックだ!」

 

[Battle]イクサトカゲLv.1(1)BP1000vs光牙鳳凰レックウマルLv.3((S1)3)BP11000。

 

地を這うように迫るイクサトカゲだが、レックウマルは再度翼を大きく羽ばたかせ、先程以上の強風を巻き起こすと、そのあまりの強風にイクサトカゲの体を宙に浮かび上がり、そして空中で身動きの取れなくなったイクサトカゲに対し、レックウマルは翼でイクサトカゲを叩き落とし、真っ逆様に地面に叩き付けられ、イクサトカゲは爆発四散する。

 

『ななな何と!ザック選手もまたマジックによるカウンターです! 両者まるで

譲らない!!』

『お互いにやられたらやり返す。実力の差は拮抗しています。これはどちらが勝っても、不思議ではありませんね』

『予測のつかないカウンターの応酬! これはまだまだ勝負の行方が分からなくなってきました!!』

 

再び会場に響く歓喜の声。一方でアタッカーを全て失い、凌ぎ切った事に朽ちっ元を緩ませるザック。対してエンザもこのターンによる決着を防がれたものの、それでも的確に対処して見せたザックに対し、「やるじゃねえか!」と素直に彼を評価し、そしてそれほど動揺した様子を見せず「ターンエンド」とコール。

 

 

 

 

[07ターン.ザックside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]3個→4個。

[ドローステップ][手札]2枚→3枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]7個→0個。[リザーブ]4個→11個。

 

このターンに引いたカード、そのカードを見た瞬間、口角を上げエンザもそれに何かが来ることを直感し、そしてメインステップ開始と同時に手札の一枚を構える。

 

「気高く舞い上がる神の翼! 皇の風を巻き起こせッ!! 酉の十二神皇ゲイルフェニックス、召喚ッ!」

 

[リザーブ]11個→0個。

[トラッシュ]0個→5個。

[手札]3枚→2枚。

 

酉の名を持つ十二神皇の一体、ゲイルフェニックス。その翼を羽ばたかせるだけでフィールド全体に広がる風はまさに台風。優雅に地面へと降下し、気高い鳴き声を響かせる。

 

『出ました!! ザック選手のキースピリット!! 酉の十二神皇ゲイルフェニックス!! ザック選手、今度こそ勝負を決めにかかるようです!』

「あぁ、これで決める!! 絶対に勝って先へ進む!」

「絶対に勝つ、か。なら見せて見ろッ! お前の本気、全てをな!」

「あぁそのつもりだ!! 俺はレックウマルのソウルコアとゲイルフェニックスのコアをチェンジ! そしてアタックステップだ!!」

 

[フィールド]酉の十二神皇ゲイルフェニックスLv.2((S1)5)BP13000、光牙鳳凰レックウマルLv.3(4)BP11000。

 

並び立つゲイルフェニックスとレックウマル。二体のXレアはこれから来るであろう攻撃指示を前に意気込むように同時に鳴き声を上げ、フィールド全体にその声を響き渡らせる。

 

「ゲイルフェニックスでアタックッ! アタック時効果、【封印】! ソウルコアを俺のライフに置く!」

 

[フィールド]酉の十二神皇ゲイルフェニックスLv.2((S1)5)BP13000→酉の十二神皇ゲイルフェニックスLv.2(5)BP13000。

 

ライフに灯る赤い光。ゲイルフェニックスはそのままエンザへと突っ込んで行く。

 

「そして【封印】により【飛翔】の効果を発揮! 相手は疲労状態でのブロックが可能となる! さらにLv.2効果で神皇/十冠を持つスピリットの数だけゲイルフェニックスにBP+5000! よってBPは18000だ!」

 

翼を羽ばたかせ地面に項垂れているエンザのスピリット達に風を送ると、その風に仰がれたスピリット達の背に透明な翼のようなものが備えられ、先程まで項垂れていたスピリット達は再び戦闘可能の意思を示すかのように一斉に起き上がり、迫るゲイルフェイルフェニックスに対し構える。

 

「ゲイルフェニックスのアタックは継続してる! さぁどうする!」

「だったら、ジンライドラゴンでブロックだ!」

 

[Battle]酉の十二神皇ゲイルフェニックスLv.2(5)BP18000vsジンライドラゴンLv.1((S1))BP3000。

 

迫るゲイルフェニックスを迎え撃たんと頭部の刃を構えながら正面から突っ込むジンライドラゴン。それに対し、ゲイルフェニックスはまるでドリルのように回転しながらよりスピードを上げて突っ込み、そのままジンライドラゴンと激突し、力の差があまりにも大きいのか、ジンライドラゴンの頭部の刀は折れ、弾き飛ばされ破壊される。

 

「【飛翔】の効果! バトル終了時に1コスト支払う事でゲイルフェニックスは回復ッ! ゲイルフェニックス、何度でもその翼を広げて空へ羽ばたけッ!」

 

コアの続く限りゲイルフェニックスは何度でも攻撃できる。再びその場を飛び立つと、再度エンザへと迫って行く。

 

「ツインブレードドラゴンでブロックだ!」

 

[Battle]酉の十二神皇ゲイルフェニックスLv.2(4)BP18000vsツインブレードドラゴンLv.1(1)BP4000。

 

ツインブレードドラゴンは手に持つ二刀の刃を掲げ、そのままゲイルフェニックスへと投げつけ、ゲイルフェニックスは舞うようにそれを紙一重で避けながらなおも突き進んでいき、それならばと迫るゲイルフェニックスに対し、火炎放射を吐き付けるが、ゲイルフェニックスは一歩身を引いて両翼を羽ばたかせ、巻き起こす強風で火炎放射を自分の目の前で受け止めると、そのままさらに翼を強く羽ばたかせて炎をそのままツインブレードドラゴンへと跳ね返し、跳ね返った自らの炎に焼かれ爆発四散する。

 

「【飛翔】の効果! コストを支払って回復! もう一度行けッ! ゲイルフェニックス!」

「……その攻撃は、ライフで受ける!」

「(! ブロックしないのか?)」

 

まだブロッカーとなり得るスピリットは残っているものの、それをあえてブロックさせずにライフで受ける事を疑問に思う中、ゲイルフェニックスはそのままバリアへと組み付き、その鋭い嘴を突き刺すと、一気にライフを破壊する。

 

[エンザside]

[ライフ]2→1。

[リザーブ]3個→4個。

 

『エンザ選手、まだスピリットでのブロックが可能でしたがこれはプレイミスでしょうか?』

『いえ違います。恐らくエンザ選手の狙いは……!』

 

何かを確信するように呟く神子。そしてそれは的を射ているのか、ライフが減った瞬間、口元を緩ませながらバーストへと視線を置く。

 

「ライフ減少時でバーストだ! 絶甲氷盾ッ!」

「!」

 

【絶甲氷盾】4(1)白、マジック。

【バ―スト:自分のライフ減少時】

ボイドからコア1個を自分のライフに置く。その後コストを支払う事で、このカードのフラッシュ効果を発揮する。

『フラッシュ効果』このバトルが終了した時、アタックステップを終了する。

 

「バースト効果だ! ボイドからコア1個を俺のライフに置き、さらにコストを支払って、フラッシュ効果! お前のアタックステップは終了だ!」

 

[エンザside]

[ライフ]1→2。

 

突如として吹き荒れる猛吹雪と共に、氷の壁が行く手を塞ぐように隆起し始め、吹雪と氷の壁を前に、いかにゲイルフェニックスと言えどもこれ以上攻めるのは不可能だった。

 

「絶甲氷盾、そいつを発動させる為にリザーブにコアが溜まるまで待ってたって訳か!」

「あぁ。幾ら連続アタックが可能でもアタックステップを終了させちまえば、アタックそのものができなくなるからな!」

「ッ!」

 

一度目ならず二度も決着となる攻撃を防がれてしまい、それを悔しく思う気持ちは当然一度目よりも比較にならないほど大きい。だが例えどれだけ悔しかろうと今はそれを受け入れるしかなかった。

 

「【飛翔】の効果、レックウマルのコアを使ってゲイルフェニックスを回復! レックウマルはLv.2にダウン。これでターンエンドだ」

 

[フィールド]光牙鳳凰レックウマルLv.3(4)BP11000→光牙鳳凰レックウマルLv.2(3)BP9000。

[トラッシュ]7個→8個。

 

 

 

 

[08ターン.エンザside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]3枚→2枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]9個→0個。[リザーブ]1個→10個。[フィールド]ハガネヴルム、ドラマル回復。

 

『さぁマジックで再び窮地を凌いだエンザ選手ですが、もう後はありません。果たして逆転の手はあるのでしょうか!』

『ザック選手の残るライフは2つ。そしてブロッカーにはレックウマルとゲイルフェニックス。並のカードバトラーでは確かにこの壁を崩すのは至難の業ですが、果たして』

 

緊迫した状況、紅葉達の言葉に観客達は固唾を呑んで見守る。だが、その一方でエンザ本人は追い詰められた状況でもまるでそんなことを気にもしてないようにただ静かに口元を緩ませる。

 

「まさかここまで追いつめられるとは、やっぱり思ってた通り、嫌、俺の思ってた以上に強いカードバトラーだったな」

「褒め言葉か? だったら素直に受け取らせてもらうぜ」

「あぁ。けどな、まだ俺だって負けるつもりはねぇ。勝ってアイツと戦いたいし、何より、あの人が見てる前で負ける訳にはいかねぇ!」

「(あの人……?)」

 

意味深なエンザの言葉を不思議に思うが、「余計な話はここまでだ!」と、バトルに意識を戻すと、そのままメインステップ開始と同時に手札の一枚に手を掛ける。

 

「ドラマルの効果発揮、ソウルドラゴン、又はサムライドラゴンと名の付くスピリットを召喚するとき、このスピリットに赤のシンボル一つを追加する。さぁ行くぜ!」

「!!」

「乱世を制す猛将よッ! 赤きその最強の姿を天下に焼き付けろッ! 戦国龍ソウルドラゴンを召喚ッ!!」

 

[リザーブ]10個→3個。

[トラッシュ]0個→2個。

[手札]3枚→2枚。 

 

空に突如として出現する炎の球体。空を真っ赤に焼き焦がす程熱く、太陽を思わせるその炎の中に、煌めく眼光。そして炎を振り払い両手に持つ槍を掲げ、ソウルドラゴンがその姿を現す。

 

『新たなるXレア来たーーッ!! エンザ選手の新たなるキースピリット、それは何と、戦国龍ソウルドラゴン!!』

『ゴッドスレイヤードラゴン、センゴクグレンドラゴンをも凌ぐ程の力を持つソウルドラゴン。エンザ選手の底はやはりまだまだ知れませんね』

 

湧き上がる歓声、バトルを見ているハルヤ達もその姿に驚き、目が離せないように注目し、ザックもソウルドラゴンの姿にはただただ驚くばかりだった。

 

[フィールド]戦国龍ソウルドラゴンLv.3((S1)4)BP13000、ハガネヴルムLv.1(1)BP3000、ドラマルLv.1(1)BP1000。

 

「赤のXレア、まさに超レアカードだな。羨ましいぜ」

「ハッ、コイツのレアリティだけじゃねぇよ。それを今から見せてやる! アタックステップだ!!」

「来るかッ!」

「あぁ行くぜ! 戦国龍ソウルドラゴンでアタックだッ! そしてアタック時効果発揮だ! 【連刃】!!」

「何!」

「ソウルコアをトラッシュに置く事で、相手は可能なら2体でブロックしてもらう!! 同時バトルだ!」

「二体とバトル、だと!?」

「あぁ、ゲイルフェニックス! レックウマル! 二鳥揃って掛かって来いッ!」

「ぐっ! ゲイルフェニックスとレックウマルの二体でブロック!」

 

ゲイルフェニックスとレックウマルに対し斬撃波を飛ばし、二体はすぐさま空に飛び去ってその攻撃を避わし、挑戦とも取れるその攻撃に触発されたのか、二体はそのままソウルドラゴンに向かい始め、それを見ると、ソウルドラゴンも刀を構えながら二体へと迫って行く。

 

[Battle]戦国龍ソウルドラゴンLv.3(4)BP13000vs酉の十二神皇ゲイルフェニックスLv.2(3)BP13000、光牙鳳凰レックウマルLv.2(3)BP9000。

レックウマルが先手を仕掛けるように翼を振るい、羽を刃の様にソウルドラゴンへと飛ばすが、ソウルドラゴンは槍を振り回し、盾の如くその攻撃を全て弾き落とし、今度はゲイルフェニックスが回転しながらソウルドラゴンへ突っ込み、その攻撃を槍で正面から受け止め、衝撃に両者互いに弾かれる。

 

『二体のスピリットを相手取るソウルドラゴン! 見ている私達もまさに圧倒的な迫力に言葉を失っております!』

『キャンサードやへラクダイナスなどと違い、二体のスピリットと同時バトルを行うのはソウルドラゴンのみ』

 

激突する3体のXレア、だがその背後でエンザの場ではまだイクサトカゲとハガネヴルムがいつでも攻撃できるように構えており、その姿に気づくと、「そういう事か」と何かを察したように呟く。

 

「バトルしている二体の内、ゲイルフェニックスのBPは13000。ソウルドラゴンと同じだ。だから相打ちを狙ってでもブロッカーをなくして、手薄になったところに攻め込む、そういう事かよ。けど、そうはさせないぜ!」

「!」

「フラッシュタイミング! マジック、ダブルソニック! 不足コストはレックウマルから確保だ!」

 

[フィールド]光牙鳳凰レックウマルLv.2(3)BP9000→光牙鳳凰レックウマルLv.1(1)BP5000。

[トラッシュ]5個→7個。

[手札]2枚→1枚。

 

【ダブルソニック】4(2)緑、マジック。

『フラッシュ効果』相手のスピリット2体を、相手が疲労させる。系統:「異魔神」を持つブレイヴと合体している自分の合体スピリットがいる時、かわりに、相手のスピリット2体を疲労させる。

 

「効果発揮だ! ハガネヴルムとドラマルを疲労させてもらうぜ!!」

 

突風の如く放たれる風の刃、それは即座にジンライドラゴンとドラマルの二体へと直撃し、直撃を受けた二体は力を奪われたかのようにその場に項垂れ、一方のバトルでは、ゲイルフェニックスとレックウマルは吠えながらそのままソウルドラゴンへと突っ込み、二体の突進を槍を盾にして受け止める。

 

『おっとッ! ザック選手も再び負けじとマジックによるカウンターッ! これによりエンザ選手のスピリットが全て疲労状態に!! これはまたも形勢逆転か!!』

 

このターンの攻撃は確実に凌いだと自信気な表情を見せるザックだが、その様子に対し、エンザもまた笑って見せた。

 

「ハッ、ブロッカーを残して残ったスピリットで勝ちに行く、か」

「?」

「……言った筈だ、ソウルドラゴンは俺にとっての切り札だ。なら当然勝ち筋もコイツで決める! 他のスピリットで決めるなんてちゃちな真似やる訳ねぇよッ!」

「!?」

「俺もフラッシュだ! マジック! 武将転生!」

「!!」

 

[リザーブ]3個→1個。

[トラッシュ]2個→4個。

[手札]2枚→1枚。

 

【武将転生】4(2)赤、マジック。

【バースト:相手による自分のスピリット破壊後】

このバースト発動時に破壊された、自分のトラッシュにある系統:「武竜」を持つスピリットカード1枚を、コストを支払わずに召喚する。ただし、『このスピリットの召喚時』効果は発揮されない。その後コストを支払う事で、このカードのフラッシュ効果を発揮する。

『フラッシュ効果』このターンの間、系統:「武竜」を持つ自分のスピリット1体をBP+5000する。

 

「効果によりソウルドラゴンのBPを+5000!! これでBP18000だ!!!」

「そんなッ!!」

 

バトルではゲイルフェニックスとレックウマルを槍一本で受け止めるソウルドラゴンだが、槍を片手に持ち替え、空いた片手で即座に腰に差した太刀を握りしめると、そのまま槍を捨てると同時に太刀での一閃。ゲイルフェニックスは殺気に気づいたのか紙一重で飛び上がって斬撃を避けるが、レックウマルは回避が間に合わず振るわれた斬撃に切り裂かれ破壊される。

 

「レックウマル!!」

「残るはゲイルフェニックス!! テメェだけだ! ソウルドラゴン、決めろォッ!!」

 

エンザの叫びに呼応するように、ソウルドラゴンを命一杯その咆哮を轟かせ、大地を踏み締め、ゲイルフェニックスを追うように高く飛び上がり、ゲイルフェニックスはソウルドラゴンを叩き落とさんと、周囲の風を塊のように収束させてソウルドラゴンへと飛ばす。だが、ソウルドラゴンは決して避けようとはせず、真っ向から突っ込み、太刀に炎を纏わせその風塊を真っ二つに切り裂くと、その場で炎を纏わせ太刀をゲイルフェニックスに向けて一投。その太刀はゲイルフェニックスを貫くと空中で大爆発を起こす。

 

「ゲイルフェニックスッ!!」

「最後だ! 【連刃】の効果で破壊したスピリットの数だけライフを破壊する!!」

「なっ!?」

「つまり、これで終わりだぁッ!」

 

爆風を突っ切り、ザックに向けて一気に急降下するとそのまま落下のスピードを加えた太刀の斬撃を展開されたバリアに一閃。地面へと降り立ち、そのまま太刀を鞘に納めると、斬撃の刻まれたバリアは崩壊し始め、二つのライフが同時に砕け散る。

 

「うわああああッ!!」

 

[ザックside]

[ライフ]2→0[Lose]

 

「俺の、勝ちだ!!」

 

ライフを削り、自分の勝利に拳を突き上げながら勝鬨を上げ、ソウルドラゴンも同じく勝利の咆哮を響かせる。

 

 

 

***

 

 

 

 

『決まりましたぁーーッ!! 準決勝第2試合、勝者は火龍エンザ選手!! おめでとうございます!!! そして惜しくも敗れたザック選手にもどうぞ拍手を!』

 

白熱した勝負を称え、両者に送られる拍手喝采。その声援を受けながらもザックは負けた事にはやはり悔しいのか、少しだけ落ち込んだ様子だった。

 

「……必ず勝つって言っときながら、負けちまったか」

 

「情けねぇ」と自分に対しての言葉を呟きながらも、勝負は勝負。直ぐに気持ちを切り替えるように顔を上げるとエンザの方を見る。

 

「いい勝負だった。負けたけど、全力を尽くせたし、言う事は何もない」

「あぁ俺もだ、熱いバトルだった、礼を言うぜ」

「決勝、次はハルヤとのバトルだろ? 俺等のリーダーだから応援してるけど、俺はアンタの事も応援してるぜ」

「そうか。まぁ次も全力でやるだけだ。何てったって、アイツとのバトルは特別だからな」

 

前にハルヤが言った言葉、もっと強くなって自分と戦う。その言葉を静かに思い返しながら観客席にいるハルヤの方へ視線を向ける。

 

「(あの時の約束、果たす時は来たぜ。決勝の舞台で、テメェがどれだけ強くなったか見せてもらうぜ!)」

 

視線の先にいるハルヤに対し静かに闘志を燃やす中、それはハルヤも同じだった。エンザの視線に気づいているように、エンザを見ながらハルヤもデッキを持つ手に力を籠める。

 

「決勝、エンザさんとのバトル。今の僕と僕のスピリット達の全てをぶつけますよ!!」

 

決勝を前に既に二人の闘志は最高潮だった。そして今かと今かと、会場中が熱気に包まれ、決勝の時を待つのだった。

 

 

 

 







長らく更新遅れていて申し訳ございません。最近かなりさぼり気味でした泣
今回やっと更新できて、本当によかったです!!

今回はザックとエンザのバトルでした。ソウルドラゴン、連刃の二体同時バトル、今回書いてて一番楽しかったです。やはり二体同時バトルは熱い!! その内三体同時バトルとかになったりして(笑)そして次回は決勝! エンザとハルヤのバトル。どちらが勝つのかこうご期待ください!(ステマ)

話は変わりまして、アニメでは選手ミストラルビットが活躍してましたね。アタックとブロック時で跳躍発揮なんてズッチぃなー(ズッチくない(パチン!(消滅)←

ミストラルビットでなくても三章のカードではハヌマーリンとリボルティーガが現環境で暴れまくってますね。ハヌマーリン、最近回すのが楽しくなってます。アルティメットリーンと一緒に組んでますね、強いのか分かりませんが汗
また神皇でなくても前にエクスキャリバスデッキを組み始めて、古竜速攻でさらに改造しております。なお強さのほどはryu←


アニメもこの小説本編もどうぞこれからも宜しくお願いします。次回はなるべく早めに更新できるよう精進します!!!!!





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No18.決勝の舞台、ハルヤvsエンザ

・以下注意
誤字、プレイミスあり。
表記の仕方が人によっては分かりづらいかも。

それでも大丈夫という方はどうか温かい目で見てもらえると幸いです。発見したミスやバトル表記などのご指摘気軽にお待ちしております。



準決勝を終え、間もなく始まる決勝に会場はより熱気に包まれる中、その会場に足を運ぶ一人の人物、チーム海皇リーダー、浪川海斗の姿だった。

 

『おや、海皇のキャプテンさんが遅れて登場か?』

 

会場に入るや否や声を掛ける一人の人物、声の方角に振り返ると、観客席に凭れながらこちらに手を振る紫苑と、その隣で以前戦ったルムの姿もあった。

 

「お前等か」

「まぁ怖い顔せずに俺等もあくまで見学だからよ。アンタだって観戦しに来たんだろう? つっても、もう残る試合は決勝だけだけどな」

「フン、今までのバトルなら神子達の実況配信で事足りる。だが、決勝だけはどうしてもこの目で見たくてな」

「あっそ。それよりオタクのチームメイトはこの決勝に入ってないけどいいの?」

「あいつらもあいつらなりに善処した、ならそれでいい。最も労ってやるつもりはないがな」

「はは、キャプテン様はお優しいのかそうでないのか分かりゃしねぇな」

「例えチームメイトでも慣れ合うつもりはない。俺はただ自分が最強であることを目指すだけだ。お前にそれをどうこう言われる筋合いはねぇ」

「御尤もだ。俺も野暮だったな、まぁ気を悪くせず、お互い高みの見物と行こうぜ? なんせ次はエンザとハルヤのバトルだからな?」

「エンザ、やはり決勝まで勝ち残っていたか」

「エンザも強いがよ、あのハルヤって奴も強いぞ? このバトルでもし、ハルヤがエンザに勝ったらどうする?」

「どうもしない。言った筈だ、自分が最強であることを目指すと。どっちが勝とうと、この大会の勝者が俺の標的だ!」

「ハハ、相変わらず。まぁ見学見学!」

 

 

 

 

***

 

 

 

『さぁこれまでの激闘を戦い抜いたカードバトラー達、しかし長く続いたこの大会もいよいよクライマックスです!!!』

 

舞台は変わり決勝を前に意気揚々と実況を語る紅葉。これまでの白熱したバトルに興奮を隠せない彼女の気持ちは会場中の全員が抱くものだった。

 

『さぁそれでは決勝戦、対戦するカードバトラーの入場!! 火龍エンザ選手と輝来ハルヤ選手です!!』

 

それぞれのステージ入り口から入場するエンザとハルヤの二人、二人の姿に観客達は歓喜の声を、吉馬を始めとするレッドドラゴンメンバーや、ザックやスズ達はそれぞれ自分のチームリーダーである二人に声援を送る。

 

「よぉ、いよいよこの時が来たな。ハルヤ!」

 

互いに顔を見合わせ、真っ先に声を掛けるエンザ。その言葉にハルヤはただ黙って頷いて見せる。

 

「いつか俺と戦う。そう言ってお前は俺のチームを抜けた。そしてその言葉がこんなに早く実現されるとは正直思ってもなかった」

「はは、それは僕も同じです。けど、こうして決勝の舞台で戦える事が何より嬉しいです!」

「そうか。確かにこれ以上ない舞台だな。なら舞台が最高なら、それに見合ったバトルをしねぇとな!!」

「!」

「お前も勿論そのつもりで来い! 俺は必ず勝つ!! その思いで終始バトルするだけだ!!」

「はい! 勿論です。僕だって勝ちたい! いや、勝ちます!」

 

バトルに掛ける意気込みは充分。後はその時を待つのみであり、それを確認すると、紅葉は即座に進行進めて行き、「両者、ステージへ!」と準備を促し、二人もその言葉にすぐさまデッキを構えて、ステージ上のバトルフィールドへと足を移す。

 

『いよいよ決勝、二人共ぜひ最高のバトルをお願いします』

『さぁそれでは両者コールをお願いします!』

 

「「ゲートオープン! 界放ッ!!!」」

 

開始の宣言、その言葉後にいよいよ決勝戦への幕が上がる。

 

 

 

 

[01ターン、エンザside]

[スタートステップ]

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「メインステップ! マジック、陀武竜ドロー! 効果で2枚ドローだ」

 

[リザーブ]4個→0個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]5枚→4枚→6枚。

 

「これでターンエンド」

 

 

 

 

[02ターン、ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「エンザ行きますよ! まずはリューマンクロウをLv.2、続けてリューマンフェニック、召喚です!」

 

[リザーブ]5個→0個。

[トラッシュ]0個→2個。

[手札]5枚→3枚。

 

「いきなり並べて来たな。それで、攻めんのか?」

「……いえ、アタックはしません。これでターンエンドです」

「へぇ、なるほどな」

 

『おぉっとハルヤ選手、スピリットを召喚したものの動きはありません! 絶好のチャンスの筈なのに!!』

『まずは様子見という判断ですかね、まだ勝負は序盤、相手の出方を見るのも十分戦略の内ですよ』

『なるほど、ではこれはどちらが先に仕掛けるのかが、楽しみになってきますね』

 

紅葉の言葉に対し、神子も「その通り」と言葉を返しながら勝負を見守り、一方で続くエンザのターン。

 

 

 

 

[03ターン.エンザside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]6枚→7枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]1個→5個。

 

「メインステップ! ジンライドラゴンを召喚!」

 

[リザーブ]5個→1個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]7枚→6枚。

[フィールド]ジンライドラゴンLv.1((S(ソウルコア)1))BP3000。

 

「さて、アタックしてくれてればジンライドラゴンをLv.2に出来たんだがなぁ。もしかして読まれてたか?」

「当然です。ずっとエンザさんのバトルを近くで、元レッドドラゴンのメンバーとして見てきましたから!」

「はは、そうだよな」

 

ハルヤの言葉に対し、嬉しそうに笑いながらも「けど」と顔色を変えて、さらに続けて行く。

 

「お前が俺のバトルを見てきたのは知ってる。けど、ただ見てただけで俺の底を知った気になってる訳じゃねぇよな?」

「はい! 勿論です!」

「ならいい。続けるぞ? 俺はさらにバーストセット!」

「!」

 

[手札]6枚→5枚。

 

「ターンエンド」

 

 

 

 

[04ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]2個→0個。[リザーブ]1個→3個。

 

「メインステップ! バーストセット。そしてリューマンクロウをLv.1にダウン。早速出番だよ!」

 

これから呼び出すそのカードに対し言葉を掛けると、そのまま一気にカードに手を掛ける。

 

「天下切り裂く勝利の剣! 太陽の如く燃え上がれ! 剣神無双リューマンゴッドソード召喚ッ!」

 

[リザーブ]4個→0個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]4枚→2枚。

[フィールド]剣神無双リューマンゴッドソードLv.1(1)BP4000、リューマンフェニックLv.1((S1))BP2000、リューマンクロウLv.1(1)BP1000。

 

燃え広がる炎のフィールドのその中央で輝く眼光、周囲の炎を手に持つ剣で一閃、白銀に光る体と剣を掲げてリューマンゴッドソードが炎より姿を現す。

 

『早速出ました!! ハルヤ選手のキースピリット、リューマンゴッドソードッ!』

『序盤から繰り出してきましたね、ここからが見物ですよ!』

 

早速現れるハルヤのキースピリットに湧き起こる歓声。エンザもその姿に「さっそく来たか!」とまるで期待するかのように声を上げる。

 

「アタックステップ! 剣神無双リューマンゴッドソードでアタック!!」

 

[手札]2枚→3枚。

 

剣を握り締めて一気に駆け出すリューマンゴッドソード。自身の効果により1枚ドローすると共に、そのまま真っ直ぐ突っ込んで行く。

 

「そのアタック、ライフで受けてやるぜ!」

 

対するエンザもその攻撃に対し、まるで退く様子はなく勝気な態度で叫ぶと、そのままリューマンゴッドソードによる剣の一撃がバリアに刻まれ、ライフを破壊される。

 

「ぐッ!」

 

[エンザside]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]0個→1個。

 

「ライフ減少時でバースト発動! 秘剣二天一龍!」

「!」

「バースト効果、BP5000以下のスピリット2体、リューマンクロウとリューマンフェニックを破壊し一枚ドローだ!」

 

ライフが破壊されてもタダでは転ばない。勢いよくバーストを発動させると、Vの形を形成した炎がリューマンクロウとリューマンフェニックの二体へと直撃し、炎に焼かれた二体は爆発四散し、破壊される。

 

「ハッ、少し甘かったんじゃねぇか?」

「まだです! 相手による手札増加後でバースト発動! 千枚手裏剣!!」

「緑のマジック!?」

「流石にここまで来たからには一筋縄じゃないですよ!」

 

【千枚手裏剣】4(2)緑、マジック。

【Sバースト:相手の効果によって相手の手札が増えた後】

相手のスピリット2体を疲労させ、ボイドからコア2個を自分のリザーブに置く。その後、コストを支払う事で、このカードのフラッシュ効果を発揮する。

『フラッシュ効果』

このターンの間、スピリット1体をBP+4000する。

 

「効果でボイドからコア2個を追加!」

「!」

「さらにリューマンゴッドソードのバトル終了時、効果発揮! 手札にある系統「剣使」、「竜人」を持つスピリットかアルティメットをノーコストで召喚! よって、手札にある「リューマンインフェニティ」をLv.2で召喚!」

 

リューマンゴッドソードは吠えながら剣を大地に突き刺し、その雄叫びを上げるとその叫びに呼応するようにフィールドへとリューマンインフェニティが舞い降りる。

 

「なるほど。バーストもバッチリ読んでた訳か」

「はい、さらに続けますよ! リューマンインフェニティでさらにアタック! アタック時一枚ドロー!」

 

[手札]3枚→4枚。

 

「そいつもライフだ!」

 

インフェニティもゴッドソードに続き、剣を構えてそのままエンザへと突っ込み、剣による突きがバリアを砕くとライフを破壊する。

 

[エンザside]

[ライフ]4→3。

[リザーブ]1個→2個。

 

「ターンエンド」

 

『先手を取ったのはハルヤ選手! 早くもエンザのライフを二つ破壊しました!』

『キースピリットを出した上での攻めですからね、ですがエンザ選手このままでは当然引き下がれないでしょう』

 

 

 

 

[05ターン.エンザside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]3個→4個。

[ドローステップ][手札]6枚→7枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]4個→7個。

 

「メインステップ、ジンライドラゴンのソウルコアをリザーブのコアとチェンジ、そしてイクサトカゲをLv.3で召喚! さらにネクサス、故郷の山に似た山を配置!」

 

[リザーブ]7個→0個。

[トラッッシュ]0個→2個。

[手札]6枚→4枚。

[フィールド]ジンライドラゴンLv.1(1)BP3000、イクサトカゲLv.3((S1)4)BP10000、故郷の山に似た山Lv.1(0)。

 

「アタックはしない。俺はこれでターンエンドだ」

 

 

 

 

[06ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]1個→4個。[フィールド]剣神無双リューマンゴッドソード、リューマンインフェニティ回復。

 

「メインステップ、リューマンゴッドソードをLv.3にアップ」

 

[リザーブ]4個→0個。

[フィールド]剣神無双リューマンゴッドソードLv.3((S1)4)BP10000、リューマンインフェニティLv.2(3)BP5000。

 

「これでターンエンド」

 

『おっとハルヤ選手! 前のターンでは怒涛の攻めを見してくれましたが、このターンは動きません!』

『今攻めてもリューマンゴッドソードとイクサトカゲのBPは同じ。ブロックされれば相打ちは必須。だからこそ動かないのではなく動けないのでしょう』

『攻めに攻められないとは赤バトラーにとってはまさに悔しい瞬間ですね』

 

冷静にバトルの状況を語り、現状のライフの差ではハルヤが有利だがさすがにそれだけではバトル全体の優勢は図れない。次にどう勝負が動くのか、観客の視線はその事に集中し切っていた。

 

 

 

[07ターン、エンザside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]0個→2個。[リザーブ]1個→3個。

 

「ハルヤ、そろそろ俺も、本番に入るぜ!」

「えっ?」

「さぁメインステップだ、イクサトカゲのソウルコアと、ジンライドラゴンのコアをチェンジ。さらにイクサトカゲをLv.1にダウン。そして行くぜ!」

「!!」

「戦は華! ド派手な華を今ここに飾れッ! 戦皇ゴッドスレイヤードラゴン、Lv.2で召喚ッ!」

 

[リザーブ]7個→0個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→4枚。

 

地面より天へと燃え上がる二つの火柱、そのすぐ後に一際巨大な火柱と共に飛び出す一つの影、その影こそ赤い体に神殺しの名を持つ龍────ゴッドスレイヤードラゴン。

 

最初に火柱より飛び出す大盾と大剣を空中で手に取り、大きな衝撃音と共に地面へと降り立つと、高らかにフィールド中にその咆哮を響き渡らせる。

 

『出たぁーーッ!! エンザ選手も同じくしてキースピリットを出してきましたーーッ!!!』

 

興奮するように叫ぶ紅葉の実況。観客達もそれに刺激されるように歓喜の声を上げ、フィールドではリューマンゴッドソードとゴッドスレイヤードラゴンは互いの相手に対しそれぞれ剣を構えて睨み合う。

 

[フィールド]戦皇ゴッドスレイヤードラゴンLv.2(3)BP10000、ジンライドラゴンLv.1((S1))BP3000、イクサトカゲLv.1(1)BP1000。

 

「ゴッドスレイヤードラゴン……!」

 

エンザのキースピリットであるその姿を真正面から見るのはハルヤも初めてだった。圧倒的な迫力だが、それでも決して怯んではいられない。真っ直ぐゴッドスレイヤードラゴンの姿を見据え、それにエンザは笑いながら続けて行く。

 

「さぁ覚悟はいいか! さっきも言ったが、互いのキースピリットが揃ったこっからが本番だ!」

「はい!! いつでも受けて立ちます!!」

「よし、だったら行くぞ! アタックステップだ!!」

「!」

「ゴッドスレイヤードラゴン、行けッ! アタック時効果、リューマンゴッドソードに指定アタックだ!!」

「ッ! リューマンゴッドソードでブロック!」

 

[Battle]戦皇ゴッドスレイヤードラゴンLv.2(3)BP10000vs剣神無双リューマンゴッドソードLv.3(S1)4)BP10000。

 

ゴッドスレイヤーは勇ましく吠えると、そのままリューマンゴッドソードに向かって真っすぐ飛び出して剣を振り下し、間一髪身を引いてその攻撃を避けるが、その一撃は先程までリューマンゴッドソードが位置していた地面を大きく抉り、巨大なクレーターを築き上げてしまう。だがその威力に怯むリューマンゴッドソードではない。ゴッドスレイヤーの剣の一撃を目にしても再び真っ向から迎え撃ち、ゴッドスレイヤーには無い身軽さを武器に連続で剣を振るい、ゴッドスレイヤーは大盾を構えてその攻撃を全て遮断する。

 

『互いのキースピリットによる激突! しかし、お互いのスピリットのBPは10000、このままでは相打ちです!』

『いえ、まだです!』

『えっ!?』

 

神子の言葉に不思議に思う紅葉、一方でバトルしているゴッドスレイヤー達を見ながらエンザは大きく口角を上げる。

 

「ゴッドスレイヤードラゴンのバトル時効果発揮!」

「!」

「「神」の名を持つスピリットとのバトル時、このスピリットにBP+5000する!」

「「神」の名を持つ……しまったッ!!」

 

何かを察した様なハルヤの様子に「気付いたようだな」と呟き、さらに続けて行く。

 

「そうさ、「剣神無双」の名を持つリューマンゴッドソードとのバトルによってゴッドスレイヤードラゴンのBP+5000! これでBPはこっちの方が上だ!!」

「!」

「神殺しの名は伊達じゃねぇ、ゴッドスレイヤー! お前の真の力を見せてやれッ!!」

 

連続で斬り合うリューマンゴッドソードとゴッドスレイヤーだが、互いに斬り合う中、ゴッドスレイヤーはさらに己の力を高めるかのように眼光を輝かせ、より強く咆哮を挙げて剣を振るうと、その一撃は先程よりも重く剣を盾にするも大きく後ろにさせられる。しかしそれでもなお負けじと、リューマンゴッドソードも剣を構えて、最大限の力を込めての突きを繰り出すが、その攻撃を待っていたと言わんばかりにゴッドスレイヤーは手に持っていた大盾を大きく振り上げたかと思うと、そのまま振り下し、リューマンゴッドソードの剣を地面に押さえ付けてしまう。

得物を抑えられ、すぐに引き抜こうとするが、それに一瞬動きを止めたのが運の尽き。その隙を見逃さず、動きの止まったリューマンゴッドソードに剣の一撃を叩き込み、耐え切れない程の一撃にリューマンゴッドソードはその場で爆発四散を起こす。

 

『キースピリット同士の激突は互角化と思われましたが、ななな何と、ゴッドスレイヤードラゴン、神殺しの名の通り、リューマンゴッドソードを打ち取ってしまいましたッ!!』

「そんな……!!」

 

騒然とする会場、バトルを見ているザック達も驚いたように動揺を隠せないが、キースピリットに破壊に一番の衝撃を受けたのは何よりハルヤ自身に他ない。しかし……。

 

「オラッ、まだまだ行くぞ!! 次はジンライドラゴンでアタック! BP+3000、さらにソウルコアの力で【真激突】発揮!」

「……! リューマンインフェニティでブロック!」

 

[Battle]ジンライドラゴンLv.1((S1))BP6000vsリューマンインフェニティLv.2(3)BP5000。

 

感傷に浸る間もなく、次にジンライドラゴンが切り込んでいくと、リューマンインフェニティはバトルを強制され、受けて立つしかなくジンライドラゴンの頭部の刀を自身は拳で受け止めるが、それでもパワーで劣るのか、簡単に弾き返され、そのまま刀で貫かれ、破壊される。

 

『リューマンゴッドソードに続いてリューマンインフェニティも破壊! ハルヤ選手のスピリットが瞬く間に全滅です!!』

『ついにエンザさんも本領を発揮してきましたね。これはハルヤさんも苦しくなってきましたね、ライフ差はリードしてますが、どう巻き返せるか、はたまた巻き返されるのか』

 

冷静にバトルの状況を語りながら見守る神子達。観客席にいる浪川や紫苑、吉馬達もそれぞれ真剣な眼差しでそのバトルを見守っている。

 

「どうだハルヤ! まさかこの程度で終わりか?」

「……いえ、まだまだです! まだ勝負は続いてます。バトルは最後まで、何が起こるか分かりません!」

「ハッ、言うようになったじゃねぇか。ならもっとお前の見せて見ろ! 俺はこれでターンエンドだ」

 

 

 

 

[08ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]9個→10個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ]

 

「メインステップ! リューマンサージェントをLv.2で召喚ッ!」

 

[リザーブ]10個→4個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]5枚→4枚。

 

「リューマンサージェントの召喚時効果発揮! トラッシュにある「リューマン」の名を持つスピリットを手札に戻します! 戻って来て、リューマンゴッドソード!」

 

リューマンサージェントは剣を天に向けて構えると、先程破壊されたリューマンゴッドソードのカードが再びハルヤの手に舞い戻る。

 

「キースピリットを回収してきたか」

「まだ続けてますよ! さらにリューマンサージェントの【スピリットソウル】を発揮! 赤のシンボルを追加して、紅炎竜ヒノコをLv.3で召喚!」

 

[リザーブ]4個→0個。

[トラッシュ]4個→7個。

[手札]5枚→4枚。

[フィールド]紅炎竜ヒノコLv.3(S1)BP9000、リューマンサージェントLv.2(2)BP4000。

 

「行きますよ、アタックステップ! リューマンサージェントでアタック!」

「イクサトカゲでブロックだ!」

 

[Battle]リューマンサージェントLv.2(2)BP4000vsイクサトカゲLv.1(1)BP1000。

 

地を這いながらそのままリューマンサージェントへと飛び掛かって行くが、それに即座に反応すると、飛び掛かるイクサトカゲに剣を振るい、そのまま破壊する。

 

「ターンエンド」

 

 

 

 

[09ターン.エンザside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]1個→2個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]2個→6個。

 

「メインステップ、ジンライドラゴンと戦皇ゴッドスレイヤードラゴンをLv.3にアップ。さらにバーストセット!」

 

[リザーブ]6個→1個。

[手札]5枚→4枚。

[フィールド]戦皇ゴッドスレイヤードラゴンLv.3(5)BP12000、ジンライドラゴンLv.3((S1)3)BP5000、故郷の山に似た山Lv.1(0)。

 

フィールドを御手堅く固め、さすがにまだ攻め切れる準備は整っていないのか、アタックすることなく、「ターンエンド」とコール。

 

 

 

 

[10ターン.ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]7個→0個。[リザーブ]1個→8個。[フィールド]リューマンサージェント回復。

 

「メインステップ、紅炎竜ヒノコをLv.5にアップ。さらに武将劉萬を召喚!」

 

[リザーブ]8個→0個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→4枚。

[フィールド]紅炎竜ヒノコLv.5((S1)4)BP15000、武将劉萬Lv.1(1)BP4000、リューマンサージェントLv.2(2)BP4000。

 

「召喚時効果発揮! 相手のBP6000以下のスピリットを破壊! よってジンライドラゴンを破壊します!」

「!」

 

炎の斬撃波を撃ち放つと、炎の斬撃は真っ直ぐジンライドラゴンを切り裂き、破壊されたジンライドラゴンは爆発四散する。

 

「アタックステップ! 紅炎竜ヒノコでアタック! アルティメットトリガー、ロックオン!」

 

攻撃と同時にヒノコは吠えだしたかと思うと、その声圧はエンザのデッキから一枚のカードを弾き飛ばし、エンザは黙ってそのカードを手に取る。

 

「コストは3、ハガネヴルムだ」

「ヒット! ヒット時の効果で2枚、デッキからドローします!」

 

[手札]5枚→7枚。

 

「ライフで受けるぜ!」

 

ヒノコの攻撃に対し、そう宣言するとヒノコはその場で火炎放射を放ち、展開されたバリアを炎で破壊する。

 

「ッ!!」

 

[エンザside]

[ライフ]3→2。

[リザーブ]5個→6個。

 

「ライフ減少時によりバースト発動! 絶甲氷盾!!」

「!」

「ライフを一つ回復し、さらにコストを支払いアタックステップを強制終了だ!」

 

[エンザside]

[ライフ]2→3。

 

「くッ! ターンエンド」

 

 

 

 

[11ターン.エンザside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]6個→7個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ]

 

「ようやく来たか、まっ、来てくれたのは絶好のタイミングだな」

「?」

 

このターン引いた一枚に対して呟くエンザ。その言葉を不思議そうに首を傾げる中、エンザは顔色を変えて、睨むような目付きでハルヤに視線を戻す。

 

「まずはゴッドスレイヤーをドラゴンをLv.2にダウン。そしてドラマルを召喚し、バーストセット!」

 

[リザーブ]9個→8個。

[手札]5枚→3枚。

 

「さらにネクサス、故郷の山に似た山の効果発揮! 俺の手札にある系統:「武竜」を持つスピリットのコストを-1! さらにドラマルの効果、俺の手札にあるコイツを召喚する時、赤のシンボルを一つを追加だ!」

「それって……まさかっ!」

「あぁその通りだ、特と見ろッ! 乱世を制す猛将よッ! 赤きその最強の姿を天下に焼き付けろッ! 戦国龍ソウルドラゴン、召喚ッ!!」

 

[リザーブ]8個→1個。

[トラッシュ]0個→2個。

[手札]5枚→4枚。

[フィールド]戦国龍ソウルドラゴンLV.3((S1)4)BP13000、戦皇ゴッドスレイヤードラゴンLv.2(3)BP10000、ドラマルLv.1(1)BP1000、故郷の山に似た山Lv.1(0)。

 

紅蓮の炎がまるで太陽に様に形を成して収束され、その炎の中に煌めく眼光。両手に持った二刀の槍で自分の周囲の炎を切り裂き、その場で気高く吠える。

 

『ついに出た!! エンザ選手のもう一体の切り札! ソウルドラゴン! 準決勝でザック選手を下したスピリット、今回も満を持しての登場だ!!』

 

もう一体のキースピリットの登場にさらに観客達は歓声の声を大に沸き立ち、同じく観客席で浪川はソウルドラゴンの姿を見ながら「あれがあいつの本命か」と呟く。

 

「ソウルドラゴン、ついに!」

「あぁ待ちかねてたろ! これが俺の全力だ!! ソウルドラゴンの召喚時効果発揮! BP20000以下の相手のアルティメットを全て破壊! ヒノコを破壊だッ!」

 

地面へと降り立つと同時に、槍を天に掲げて振り回し、その勢いのまま槍を地面へ降り下ろすと、地面に叩き付けた衝撃が火柱となって噴き上がり、それはヒノコへと直撃し炎に焼かれて破壊される。

 

「!!」

「まだまだ行くぞ! アタックステップ!!戦国龍ソウルドラゴンでアタックだッ!」

 

攻撃指示と共に槍を突き出して特攻を仕掛けるソウルドラゴン、咆哮を挙げながら突っ込み、その声に共鳴するかのようにソウルコアが赤く輝く。

 

「アタック時効果発揮だ! ソウルコアをトラッシュに送り、【連刃】を発揮! 相手スピリット2体との同時バトルだ!」

 

[フィールド]戦国龍ソウルドラゴンLv.3((S1)4)BP13000→戦国龍ソウルドラゴンLv.3(4)BP13000。

[トラッシュ]2個→3個。

 

「くっ! リューマンサージェント、武将劉萬でブロック!!

 

[Battle]戦国龍ソウルドラゴンLv.3(4)BP13000vsリューマンサージェントLv.2(2)BP4000、武将劉萬Lv.1(1)BP4000。

 

真っ向からソウルドラゴンへと立ち向かい、二体同時に剣と刀をソウルドラゴンへ向けて振り下し、それを槍で受け止める。二体はそのまま押し切ろうと、剣と刀に渾身の力を籠めるが、それでもソウルドラゴンの力は二体の力を遥かに上回っており、そのまま押し返して弾くと、弾かれ隙の出来た二体纏めて一閃し、破壊する。

 

「【連刃】効果! ライフ2つ破壊だ!」

「!」

 

スピリットを一掃してもなおソウルドラゴンは止まらず、爆風を突っ切って、そのまま展開されたライフを切り裂き、ハルヤのライフを一気に破壊する。

 

「うあっ!!」

 

[ハルヤside]

[ライフ]5→3。

[リザーブ]9個→10個。

 

「さらにドラマルでアタック!」

「ぐっ! ライフで受ける!!」

 

今度はドラマルの槍がバリアへと突立てられ、さらにライフが衝撃共に破壊される。

 

「ッ!!」

 

[ハルヤside]

[ライフ]3→2。

[リザーブ]10個→11個。

 

「これでターンエンドだ」

『おっとエンザ選手、スピリットを一層し、ライフ差を逆転したにも関わらず、一気に攻め切らない!』

『堅実と言えば堅実ですね』

『次のハルヤ選手の攻撃に備えたという事でしょうか?』

『えぇ、それにハルヤの手札にはリューマンゴッドソードが戻っていることは承知済みですからね、それに備えてゴッドスレイヤードラゴンをブロッカーに残したのでしょう』

『なるほど! 確かにゴッドスレイヤードラゴンは、ゴッドソードにとって天敵と成り得るカードですからね。これはハルヤ選手どうするつもりだ!』

 

煽る様な紅葉の言葉に観客達の視線も集まる。だが、それでもハルヤはただ自分のバトルを行うだけに過ぎない。

 

 

 

 

[12ターン、ハルヤside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]11個→12個。

[ドローステップ][手札]7枚→8枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]12個→15個。

 

終盤に差し掛かりバトルはエンザの優勢に変わったとみて間違いないだろう。追い込まれた状況下、それでも手札を見ながら浮かべる表情は、決して負けを認めた物では無い。

 

「メインステップ! バーストセットして、もう一度行くよ! 天下切り裂く勝利の剣を再び振るえ! 剣神無双リューマンゴッドソードをLv.3で召喚!」

 

[リザーブ]15個→5個。

[トラッシュ]0個→5個。

[手札]8枚→6枚。

[フィールド]剣神無双リューマンゴッドソードLv.3((S1)4)BP10000。

 

再び炎を切り裂いてフィールドへと出陣するリューマンゴッドソード。目の前のソウルドラゴンとゴッドスレイヤドラゴンを見据えながら意気込むように、咆哮を挙げて剣を構える。

 

「ハッ、やはり来ると思ってたぜ! けど真っ向勝負以外の策は無かったのか?」

「いえ、エンザさんに勝つには正面突破からじゃない無理ですから!」

「あぁそれでこそだ!! だったら来やがれ! こっちも受けて立ってやらぁ!」

 

互いの闘志は互いのスピリット達にも届いているのか、それぞれが唸る様に雄叫びを上げ、フィールドに三体の龍による咆哮が響き渡る。

 

「アタックステップ! 剣神無双リューマンゴッドソードでアタック!」

「いいぜ! ゴッドスレイヤードラゴンでブロックだぁッ!! バトル時効果、BP+5000!」

 

[Battle]剣神無双リューマンゴッドソードLv.3((S1)4)BP10000vs戦皇ゴッドスレイヤードラゴンLv.2(3)BP15000。

 

互いに剣を構えて飛び出す二体の龍、二度目も正面からの真っ向勝負で互いに剣を振り下し、斬り合う斬撃音が辺り一面に響き渡る。

 

『再び激突する両者のキースピリット! しかしこれでは先程の同じ!!』

『えぇ、ゴッドスレイヤードラゴンは神と名の付いたスピリットとのバトル時にBPを+5000する効果。確かにこのままでは二の舞です。ただ、ハルヤさんに何も手がなければですが……。」

『!』

 

ゴッドスレイヤーは剣を大きく振るい、リューマンゴッドソードはそれを飛び越え、そのまま切りかかって行くが、右手の大盾を突き出して全ての攻撃を受け切り、頑丈な大盾に幾ら斬撃を叩き込んでも全くビクともしもしない。

 

「何度向かってこようが返り討ち! この程度か!! ハルヤぁッ!」

 

再び喝を入れるように声を荒げるエンザだが、その怒声に少しも驚く様子はなく真っ向から睨み合って見せる。

 

「いえ、終わらないです!! 絶対勝つ! そのつもりで! その覚悟で! 僕はエンザさん、いやエンザに挑みます!!」

 

ハルヤもまたエンザに対し強く声を荒げて叫ぶと、手札の一枚を強く握りしめる。

 

「フラッシュタイミング! マジック、ソウルオーラ!!」

「何!」

 

[リザーブ]5個→3個。

[トラッシュ]5個→7個。

[手札]6枚→5枚。

 

「このターン、自分のスピリット全てにBP+3000、さらにソウルコアが置かれているスピリットにさらにBP+3000!!」

「……ッ!」

 

マジックの恩恵を受け、リューマンゴッドソードは剣に纏う炎をらに熱く燃え滾らせると、両手に持ち替え、力の限り剣を振るって行き、渾身の力で繰り返し叩き付けられる斬撃に、ゴッドスレイヤーもさすがに防ぎきれないのか、大盾を支えながらも徐々に後ろに後退させられ、押し切られまいとゴッドスレイヤーも剣を振り下しての応戦、しかし斬り合いにも全く押される事無く、リューマンゴッドソードはさらに剣を早く、力を込めて振るい続け、ゴッドスレイヤーも対応しきれないのか、剣劇においても押され始め、そして次に振り下ろすリューマンゴッドソードの斬撃によってゴッドスレイヤーの剣は弾き落とされ、好機と見るや、リューマンゴッドソードは最初の攻防時と同様に突きの構えを取ると、即座に飛び出し、ゴッドスレイヤーも大盾を両手に持ち替えて真っ向から受け止める。

 

正面衝突する二体の龍、だが次第に攻撃を受け止める大盾に皹が刻まれていき、リューマンゴッドソードはさらに剣に纏う炎を巨大にさせて押し込むと、大盾を砕き、そのままゴッドスレイヤーへと剣を突立て、絶叫を上げながらゴッドスレイヤーはその場で大爆発を起こす。

 

「俺の、ゴッドスレイヤーが!!」

『何とハルヤ選手、エンザ選手のキースピリット! ゴッドスレイヤードラゴンをついに倒してしまったぁッ!! これは凄い凄すぎるぞ!!』

 

キースピリットの破壊にはさすがにエンザも驚きを隠せず、紅葉達も驚きながらも実教を絶やさず、そして紅葉の言葉に、神子は「まだです!」と続けて行く。

 

「リューマンゴッドソードのバトル終了時効果発揮! 手札「剣士」、「竜人」を持つアルティメットか、スピリットをノーコストで召喚! 僕が召喚するのは当然コイツです!!」

 

手札の一枚のカードを突き出し、そのカードにエンザも反応して見せ、そしてそのカードを見ながらエンザはゆっくりと口を開く。

 

「……剣聖武竜、ミツルギドラゴン。やはりお前が選ぶのはそいつか」

「はい、エンザさんが託してくれたカード、だからこそこのカードで決着を付けます! 行きますよ、伝説を受け継ぎし龍! 炎の一撃を時代に刻め! 剣聖武竜ミツルギドラゴンをLv.3で召喚ッ!」

 

[リザーブ]3個→0個。

[フィールド]剣神無双リューマンゴッドソードLv.3((S1)4)BP10000→剣神無双リューマンゴッドソードLv.2(3)BP5000。剣聖武竜ミツルギドラゴンLv.3((S1)4)BP16000。

 

『ついに来ました!! ハルヤ選手ももう一体のキースピリット、ミツルギドラゴンを出しました!!』

『お互いに、持てる力の限りを尽くしていますね。果たして勝者となるのか、ここまで来ればあとはお互いの気力の勝負になるでしょうね』

 

「ミツルギドラゴン、こんな形でまた俺の前で見れるとは、随分嬉しいな」

「エンザさんが渡してくれたこのカードに今まで、随分助けられました。本当に感謝してます。だからこそ、このカードを持って、持てる力を尽くして勝つ! そうずっと戦う前から誓ってました!」

「全く、本当にお前は言うようになったじゃねぇか。もう俺が前にいなくても、異お前はもう強い。いや、もっと強くなれる!」

「!!」

「ハハッ、まぁ雑談は俺の性じゃねぇ、バトルを続けようぜ!! 来な、ハルヤ!」

「はい!! 行きます! アタックステップ、剣聖武竜ミツルギドラゴンでアタック!」

 

鞘に納めた剣を抜くと同時にエンザへと突っ込み、ミツルギドラゴンの攻撃に合わせさらに続けて行く。

 

「アタック時効果、【起導】! ソウルコアをトラッシュに置く事で、S(ソウル)バーストを発揮! 炎龍刀オニマル真打!! バースト効果により、BP6000以下の相手スピリット全てを破壊し、バースト効果発動後、オニマル真打をミツルギドラゴンへそのまま直接合体(ダイレクトブレイヴ)!」

 

フィールドに飛び出す一本の剣、出現と同時に放たれる炎の斬撃波がドラマルへと直撃し、破壊されると、ミツルギドラゴンは剣を片手に持ち替え、飛び出すオニマル真打をそのまま空いた片手で掴み取る。

 

「さらにミツルギドラゴンの効果! 発動させたバースト効果で破壊したスピリット一体につき、ライフを破壊!!」

「ッ!!」

 

[エンザside]

[ライフ]3→2。

[リザーブ]5個→6個。

 

『エンザ選手、これで残るライフは2!! ブロッカーもなしです!!』

『加えて、合体した事でミツルギドラゴンのシンボルは2つ。この攻撃が決まれば、ハルヤ選手の勝利です!』

『これは決まったか!!』

 

「決めろッ! ミツルギドラゴン!!!」

 

止めを刺さんと両手に握り締める二刀の剣を振り翳すミツルギドラゴン、エンザはその攻撃に対し、「本当に強くなったな」と言葉を吐き捨てる。だが……。

 

「強くなった、それは認める。けど俺は言った筈だぜ、勝つと思うのは俺も同じだと。 レッドドラゴンのリーダーとして、いや、カードバトラーとして俺は負けられねぇ! 負けたくねぇんだよ!! 相手によるスピリットの破壊で、バースト発動だ!」 

「ッ! このタイミングで!!」

「バースト、双光気弾! デッキから二枚ドロー。さらにコストを支払ってフラッシュ効果! 相手のブレイヴを破壊する!」

「!!」

 

[手札]4枚→6枚。

[リザーブ]6個→4個。

[トラッシュ]3個→5個。

 

放たれる炎の火球は真っ直ぐミツルギドラゴンへと直撃し、爆発と共に片手に握るオニマル真打は砕け散ってしまうが、それでもミツルギドラゴンは怯むことなく、残ったもう一方の剣を振り下し、展開されたバリアを両断する。

 

「ぐっ!!」

 

[エンザside]

[ライフ]2→1。

[リザーブ]4個→5個。

 

「…………ハハッ、どうだ? ブレイヴが無けりゃシンボルは一つ。俺に止めを刺すまでには至らなかったな!」

「そ、そんな!!」

「ここまでか? ハルヤ?」

「……ッ! ミツルギドラゴンの効果、エンドステップ時、手札のバーストをセット。これでターンエンドです」

「まだ足掻きを見せるって事は、まだ勝負を諦めてねぇって事か?」

「当然です! まだ勝負は終わってない!!」

「あぁ、その意気だ!! なら俺も、最後まで全力で答えてやる!!」

 

 

 

 

[13ターン.エンザside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]5個→6個。

[ドローステップ][手札]6枚→7枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]5個→0個。[リザーブ]6個→11個。[フィールド]戦国龍ソウルドラゴン回復。

 

「メインステップ! マジック、陀武竜ドロー。効果で2枚ドローし、トラッシュの「武竜」を持つスピリット1体を戻す。俺が選ぶのはハガネヴルム! そしてそのままハガネヴルムを召喚し、ソウルコアを再びソウルドラゴンに乗せる!」

「!」

 

[リザーブ]6個→2個。

[手札]9枚→8枚。

[フィールド]戦国龍ソウルドラゴンLv.3((S1)4)BP13000、ハガネヴルムLv.1(1)BP3000、故郷の山に似た山Lv.1(0)。

 

「(来るッ!)」

「アタックステップ! 行くぜ、ソウルドラゴンでアタック!! ソウルコアをトラッシュに置き、【連刃】を発揮!! それと同時にハガネヴルムの効果も発揮! 対象にリューマンゴッドソードとミツルギドラゴンの二体を指定だ!」

「この為にハガネヴルムを!」

「気付くのが遅かったな! そのまま二体に同時にバトルだ!! ソウルドラゴン、行けぇッ!!」

「くっ! リューマンゴッドソード、ミツルギドラゴンでブロック!!」

 

[Battle]戦国龍龍ソウルドラゴンLv.3(4)BP13000vs剣神無双リューマンゴッドソードLv.2(3)BP5000、剣聖武竜ミツルギドラゴンLv.3(4)BP16000。

 

リューマンゴッドソードとミツルギドラゴンの二体は真っ向からソウルドラゴンへと突っ込み、ソウルドラゴンを槍を天に掲げて振り回しながら迎え撃ち、二体が振り下ろす剣を槍で受け止める。

 

『再び連刃での同時バトル! しかしハルヤ選手のミツルギドラゴンはBP16000、倒せるのはリューマンゴッドソードのみです』

『しかし例えミツルギドラゴンには敵わなくても、ゴッドソードさえ破壊してしまえばライフを一つ破壊できる。そうなれば残るハガネヴルムで充分止めをさせます。最も、その安直な戦略がハルヤさんに通じるか、ですが』

 

ハルヤへと視線を繰りながら語る神子。当然ハルヤにしてもまだ手がない訳ではない。

 

「(僕の伏せたバーストはエナジーバースト。ライフ減少時にBP7000以下を破壊できる。例えリューマンゴッドソードが破壊されても、ミツルギドラゴンがソウルドラゴンに勝てば、勝機はある!)」

 

互いに斬り合う3体の龍、先手を掛けるようにリューマンゴッドソードは飛び上がって、ソウルドラゴンへと剣を振り下し、一歩身を引いてそれを避けるが、追撃するようにさらに連続して剣を振るい、その攻撃を全て槍で捌いて行くが、ミツルギドラゴンも加わる様にリューマンゴッドソードに合わせて剣を振り下して行き、流石に二体同時の攻撃には対処しきれず、咄嗟に槍を手放して距離を置き、二体は逃がさまいと、さらに追討ちを掛けるようにソウルドラゴンへと飛び出していく。

 

「ハルヤ、悪いがこれで最後だ!」

「!?」

「フラッシュタイミング、マジック、武将転生!!」

「!!」

「効果により、ソウルドラゴンにBP+5000! 終わりだぁッ!!!」

 

ハルヤのバーストを読んだかのように発動されるマジック、ソウルドラゴンの全身に炎が纏われると、眼光を輝かせて大きく吠え、そのまま迫る二体を真っ向から受け止め、弾き返して見せたかと思うと、そのまま太刀を抜き取ると意気高々に吠えながら剣に力を込めると、それは巨大な炎の斬撃となって振り下され、リューマンゴッドソードは即座に剣を構えて真っ向からそれを受け止め、ミツルギドラゴンはその合間に右に逸れて斬撃の範囲から一度離脱。しかし強大な炎の斬撃が受け切れる威力ではなく、ミツルギドラゴンが動いたと同時に、受け止めた剣ごとリューマンゴッドソードを両断し、破壊する。

 

残るはミツルギドラゴンのみ。ソウルドラゴンは敵を見据えて静かに再び太刀を構え、ミツルギドラゴンもそれを見ると、一度剣を鞘に納めて、そして収めた剣の柄に手を添えての抜刀術の構え。互いに相手を睨み合い、静止したまま一向に動こうとしない。ならばタイミングを掛けてやるべきは互いのバトラーのみだった。

 

「これが正真正銘最後の大一番だ!」

「はい、僕も覚悟は決めています!」

「なら行くか!」

「はい!!」

 

そして互いに口を揃えてお互いに信頼するキースピリットの名を叫ぶ。

 

「行けッ!! ソウルドラゴン!!!」

「ミツルギドラゴン、行っけぇーッ!!」

 

互いの合図を引き金にソウルドラゴンは太刀を大きく振り被り、そしてミツルギドラゴンは瞬時に鞘から剣を引き抜き、そして互いに一閃────。

 

剣を振い、ほぼ同時に立ち止まる二体。暫く沈黙が続いたかと思うと、何かが砕ける音共に、ソウルドラゴンの甲冑に皹が刻まれ、その破片が地面へと落ちるが、完全には砕けておらずソウルドラゴンもまた健在。一方でミツルギドラゴンの胸に炎の斬撃が刻まれており、握りしめた剣は零れるように手から滑り落ち、自身もまた地面に伏して倒れ、その場で爆発四散を起こす。

 

「ミツルギ、ドラゴン……!」

 

ゴッドソードに続いて、ミツルギドラゴンもまた倒れ、そしてソウルドラゴンは倒した相手を振り返る事無く、ゆっくりハルヤへと歩み寄り、この瞬間、ハルヤは敗北を受け入れるように覚悟を決めて近づくソウルドラゴンから一切目を離さない。

 

「ハルヤ、お前の強さは確かに伝わった。けど、悪いな。先に高みに駆けあがるのは俺だ!! だから、勝つのは……俺だぁッ!!」

 

エンザの叫びとほぼ同時にソウルドラゴンは展開されるバリアに両断、残るライフ二つを一気に破壊する。

 

[ハルヤside]

[ライフ]2→0[Lose]

 

「うわあああああッ!!!」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

『決まったーーッ!! 決勝戦を制した優勝者は、火龍エンザ選手だぁッ!!!』

 

大々的に優勝決定の瞬間を語る紅葉。隣で神子は何も言わずただ二人のバトルを称えるように拍手を送り、観客達も同様に決勝にふさわしいバトルとして二人に拍手喝采を送る。

 

「エンザさん、バトルありがとうございました」

「あぁ本当に強くなったな。けど、生憎だったが今日に関しては俺は誰よりも負けられねぇんだな」

「えっ?」

「チャンピオンが見てるからな、いつかこれが超えるべき人が……嫌、世界で一番憧れた人の前だからこそ、俺は負けたくねぇのさ」

 

神子達の隣で拍手を送る和人の姿を見ながら語るエンザ。このバトルに掛ける意地は誰よりもエンザが強かったのだろう。だからこそ、ハルヤも今回はエンザの執念に一歩及ぶことが出来なかった。

 

「けどお前も強くなってた。だからこそ、俺はお前をライバルだと思ってる。この負けで終わってくれるなよ? ハルヤ!」

「はい!! 勿論です!!! もっともっと、今よりももっと強くなります! だからその時は……!」

「あぁ、またバトルだ!」

 

最後まで聞くまでもなく笑顔でそう答えると、ハルヤも満足そうに笑って見せ、二人の姿にザックや吉馬達も静かにその様子を眺めている。

 

『さて、それでは優勝者への表彰式に移りたいと────」

『嫌、待ってくれ!』

「「『!?』」」

 

バトルを終え、進行を進めようとする紅葉だが、突然その言葉を紡ぐように和人が声を上げて見せ、チャンピオンの言葉に一瞬で会場の空気が変わり、その場の全員誰もが驚きを隠せない。

 

『まずは二人共最高のバトルをありがとう、嫌、二人だけじゃない、この大会に参加してくれた全てのカードバトラー達。皆のバトル全てが白熱した素晴らしいバトルで、カードバトラーの魂を刺激する物だった。そしてそんな数々のバトルを見られたんだ、だから俺もそれに応えたい』

『か、和人さん? あのそれは?』

 

完全に予定外の出来事なのだろうか、神子も戸惑ったように言葉を掛け、それに対して口角を上げながらさらに続けて行く。

 

『簡潔に言うと、俺もバトルしたい。それこそ会場中の皆を湧かせられる様な、チャンピオンだからこそ、嫌、俺にしかできないバトルを見てもらいたい!』

『!!』

『だから言うぜ、優勝者の火龍エンザ君。ぜひ君に、この大会優勝者としてK身にバトルを申し込みたい! 今ここで!!』

「「!!?」」

 

宣戦布告とも言える和人の宣言に、当然エンザも動揺を隠せていない。だが動揺と同時に彼に感情にあるのは歓喜だった。

 

「……断る理由はねぇ、ある筈もはねぇ。だからこそその挑戦、受けて立つ!! 他ならねぇ、誰よりもアンタと戦いたいと願って来たのは俺だ!!!」

 

嬉しそうに声を張り上げて応え、和人はそれに「決まりだな」と呟き、神子も紅葉も終始動揺した様子だったが、止められる訳もなく互いに顔を見合わせて少しだけ笑うと気持ちを切り替えるように再びマイクを手に取る。

 

『えっと、突然の事態ではありますが、チャンピオンの申し出、そしてエンザ選手の承諾もあり、ここに宣言致しましょう!!』

 

ざわめく会場を他所に、そして会場全体に声を響かせるように。

 

『これより、エキシビジョンマッチとして、火龍エンザ選手と、チャンピオンである若槻和人選手のバトルを開始します!!!』

 

その言葉は一瞬にして、会場の動揺を歓喜の声に一変させ、そしてそのバトルに誰もが注目せざるを得ない。




まずは更新長らく遅れて申し訳ございませんでした。言い訳のしようもなく、さぼり気味になってまして、更新をお待ちいただいてた読者の皆様には大変申し訳ございませんでした。

しかし何とか年内に更新できてよかったです。恐らくこれが今年最後の更新になるかと。

今回はエンザとハルヤの決着回でした。そして次回はいよいよチャンピオンである和人のバトル! 前作の激震の勇者を読んでくださった皆様、ぜひ大人になった和人がどんなバトルをするのか、楽しみにしてもらえると幸いです。

そして最近ではブラムザンドに4章発売来ましたね、どちらも早速購入しました!4章でヴァンディール当たったので、アルティメットの暴力をするのが楽しいですね笑

アニメでもヴァンディール、どんな活躍をしてくれるのか期待です!まぁ前回のアニメで理不尽な超風魔神されたタツミ様がかわいそすぎて……。リアルでも最近の環境ではミストラルビット、ガルダ―ラ、超風魔神と有り得ないスピードで展開されるので絶句しかないです泣

奴等は悪い文明!ビランバしてやる(笑)余談が過ぎましたが、ともかく次回の更新は新年の予定です。今年もあと少し、どうかこの小説をこれからも宜しくお願いします。



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No19.絶晶神

・以下注意
誤字、プレイミスありかも。
バトル表記が人によっては分かりづらいかも。

それでも大丈夫という方はどうか温かい目で見てもらえると幸いです。発見したミスやバトル表記などのご指摘気軽にお待ちしております。


 

開幕したバトスピ大会、その優勝者も無事決まり、会場も次第に静粛に戻り、閉幕する筈だったが、ハルヤとエンザの決勝戦を終えた今でも、会場中は静粛に戻る事は無く、寧ろ先程の決勝戦以上に会場はかつてないほどの熱気に包まれていた。それもその筈、何故なら現チャンピオンである若槻和人が、優勝者である火龍エンザにバトルを申し込み、そのバトルが間もなく行われようとしているのだから当然だった。

 

「エンザさんと、チャンピオンのバトル……どうなるんだろ」

 

エンザとの終え、ハルヤはザックやスズ達の元に一度戻り、これから始まるバトルの展開をできる限り予想しながら呟いた。

 

「決まってるだろ、最高のバトルが見られるに決まってるぜ!」

 

そんなハルヤの言葉に真っ先に回答を返したのはエンザと同じチームメンバーである吉馬。その隣には当然のように相槌を打ちながら観客席に座る沖田や雷矢、バンなどの他のチームの面々も見られた。

 

「……ったくぞろぞろと。何時の間にか人の横で群れやがって」

「あぁ? テメェの横に来た覚え何ざねぇよ!!」

 

相変わらず毒付く吉馬、その言葉に突っかかって見せるバンだが、それを沖田が仲裁に入り、騒がしくなってきた状況にハルヤ達は思わず苦笑いするだけだった。

 

「ハルヤ、惜しかったね。もしハルヤが優勝してたら、チャンピオンとバトルできてたかもしれないのに」

 

そんな状況下の中、ハルヤに声を掛けるスズ。その言葉に、動返答するか少し迷ったようにしながらも。

 

「まっ、羨ましくはあるけど、でも悔しくはないかな」

「?」

「エンザさんに負けたのは単純に僕の力不足。今の僕じゃまだまだチャンピオンとバトルするには早い。だからこそ、このバトルを見れて、もっともっと強くなる糧にしたい!」

「へぇー、案外前向きですね。まっ、リーダーなんだから後ろ向き過ぎても困りますけど」

 

スズの言葉に、ザック達も頷いて見せながら、チームメンバー達の様子にハルヤはただ苦笑いするしかなかった。

 

 

 

 

「はぁー、和人ってばまた勝手な事してる」

 

一方でステージ裏では会場様子を眺める咲の姿があり、和人のアドリブに呆れたように頭を抱えていた。

 

『ハハ、まぁ和人らしいって言えばそれまでなんだけどね』

「!」

 

そこへ聞き覚えのある懐かしい声、振り替るとそこには青髪にボーイッシュな服装が印象的な女性、前に和人達と知り合いだった川村愛実の姿があった。

 

「愛実さん!! どうしてここに!?」

「ちょっとね。BCOの放送見て、和人がバトルするっていうから丁度近くだったし、見に来たんだよ、まぁ久々に見てもアイツはやっぱり相変わらずだったね」

「アハハ、何だか恥ずかしいです」

「まぁいいんじゃない、アイツはアイツで変わってなくて何か安心したよ。それは咲もだけどね」

「私も、ですか!?」

「まっ、それはそれとして、折角来たんだしアイツの、チャンピオンとしてのバトル、見せてもらおうかな」

「そうですね。何だかんだ言っても和人のバトル、結局目が離せなくなっちゃうんですよね」

「それは本人もでしょ?」

「か、揶揄わないでください!!」

 

冗談交じりに会話を交わしながら、「ごめんごめん」と謝りながら、二人はこれから始まる和人のバトルに注目し、一方で肝心の和人はステージ前まで足を進めており、目の前には対戦相手であるエンザも既に準備万端と言った様子でステージ前で構えていた。

 

 

 

 

「エンザ君だっけ、無理にバトル申し込んでごめん。けど、どうしてもその実力を見込んで、バトルしてほしかったんだ」

「エンザでいいです。俺もチャンピオンとはバトルしたかった! むしろ光栄です、だって何しろ、アンタは俺の憧れの人だ!」

「へぇ、そう言ってもらえるのは俺も光栄だ。けど、バトルは全力で頼むぜ!」

「勿論です! 最初から最後まで勝つつもりですから!」

 

「その意気だ!」と、エンザに言葉を贈りながらこれから始まるバトルを心待ちにする和人、その気持ちは会場中の誰もが同じ気持ちだった。

 

『さぁ突然の事態ではありますが、チャンピオンのバトルが見られると聞いてこの紅葉、今から実況出来る事にとても楽しみです!』

『えぇ、予定外の事と言えど当人同士が了承し、お恥ずかしながら私も解説者としてではなく、カードバトラーとして、チャンピオンのバトルはぜひ見て見たい気持ちがあり、止めたくても止められないのが本音です!』

『いえいえお姉ちゃん、ではなく神子さん! チャンピオンのバトルが見たいのは会場中の誰もが同じ! だったら止める理由も必要も皆無です!』

 

紅葉の言葉に対し、一本取られた様子で、少しだけ笑いながら「そうですね」と返答し、紅葉はそのままバトルの進行を進めて行く。

 

『それでは皆様のお待ちかね!! 待ちに待った今大会優勝者であるエンザ選手と、現チャンピオンである若槻和人選手のスペシャルエキシビジョンマッチ! 開催いたします!!!』

 

紅葉の言葉に一斉に歓喜の声が響き渡る。

 

『それでは両選手! コールを!!』

「「ゲートオープン! 解放ッ!!!」」

 

待ち望んだチャンピオンのバトル、いよいよ開始の幕が上がる。

 

 

 

 

[01ターン.和人side]

[スタートステップ]

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「メインステップ、ネクサスNo.6マウンテンシェイプを配置!」

 

[リザーブ]4個→0個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]5枚→4枚。

 

【No.6マウンテンシェイプ】4(3)赤。

Lv.1(0)、Lv.2(2)

Lv.1、Lv.2

自分のバーストをセットしている間、このネクサスに赤のシンボル1つを追加する。

Lv.2:フラッシュ『相手のアタックステップ』

このネクサスのS(ソウルコア)を自分のスピリットに置く事で、そのスピリットのBP以下の相手のスピリット1体を破壊する。

 

「これでターンエンドだ」

 

『チャンピオン和人選手、まずはネクサスを配置しただけでターンエンド。会場中が、チャンピオンがどう動くのかまるで目が離せません!』

『それはチャンピオンを相手にするエンザさんにも同じ事が言えますけどね。チャンピオンのバトルに何処までついて行けるか、いえ、超える事が出来るか見物ですね』

 

 

 

 

[02ターン.エンザside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「メインステップ、鬼武者ライザン、召喚だ!」

 

[リザーブ]5個→0個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]5枚→4枚。

 

【鬼武者ライザン】4(2)赤、スピリット、家臣/武龍。

Lv.1(1)BP4000、Lv,2(2)BP5000、Lv.3(5)BP7000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3【真激突】『このスピリットのアタック時』

相手は可能ならばスピリット/アルティメットでブロックする。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

自分はデッキから1枚ドローする。

Lv.2、Lv.3『自分のアタックステップ』

系統:『武龍』を持つ自分のスピリットが相手のアルティメットにブロックされた時、そのスピリットをBP+10000する。

 

「和人さん、先手もらうぜ!」

 

憧れた人とのバトル、この舞台で実現できた事に今でも笑顔が零れる。だがそれでも彼がこのバトルでも求める物は変わらない。どれだけ憧れた人のバトルでも、否、憧れた人とのバトルだからこそ、臨む物は勝利だけ。

 

「あぁ、バトルに遠慮は無用だ。いつでも来な!」

「お言葉通り! アタックステップ!! 鬼武者ライザンでアタックだ!」

「ライフで受ける!」

 

剣を突き出す刺突の構え。そのまま真っ直ぐ突っ込み、バリアに剣を突き立て、衝撃と共にライフを砕く。

 

「ッ!」

 

[和人side]

[Life]5→4。

[リザーブ]0個→1個

 

『エンザ選手!! チャンピオン相手に先制攻撃! 先に仕掛けたのはエンザ選手だ!』

『さすがはエンザ選手ですね。これまでに何度もバトルを重ねていますが、未だにその勢いは衰えてはいませんね』

『お姉ちゃん、ではなく解説の神子さん、このバトルに当たって、私一つ質問があるのですが、もしこのバトルでエンザさんが勝利した場合って……?』

「「「!!!」」」

 

神子に対して紅葉がそこまで言った瞬間、会場中に思わず動揺が走る。

 

『このバトルは正規のチャンピオン戦ではありません。なので仮にエンザさんが勝ってもエンザさんがそのままチャンピオンになるという訳では────』

「いやそんな訳ないぜ」

『『!』』

 

神子の言葉に対し、真っ先に否定の言葉は入れたのはチャンピオン自身だった。

 

「例えこれが公式戦じゃなくても、俺が挑んで仕掛けたバトル。ならその俺が負けた時は正真正銘俺より対戦相手であるエンザの方が強いと言う何よりの証明だ。例え他の誰かがこのバトルの結果を認めなくても俺自身が、チャンピオンであることを認める!」

「さすが、それでこそ……! 俺の憧れたチャンピオンだ!!」

 

 

和人の言葉にさらに会場全体が動揺し、ステージの裏で川村や咲は頭を抱えながら若干呆れた様子だった。

 

「はぁー、立場も気にせず勝手な事言ってる。昔から何も変わってないね」

「はは、まぁ和人らしいでしょ」

「そうだね。何にも変わってないね、本当。和人も……それに咲も」

「私?」

「咲が和人のあぁ言う所に魅かれてるのは私でも分かるよ?」

「!」

 

川村の言葉に咲は顔を赤くし、川村はその様子に少しだけ笑いながら、「私も同じだからね」と小さな声で呟いた。

 

「えっ? 今なんて?」

「な、何でもないよ。ほらまだバトルは続くよ?」

「は、はい!」

 

 

 

 

[03ターン.和人side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザ―ブ]1個→2個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]2個→6個。

 

「メインステップ! バーストセット! さらにバーストセット中にネクサスの効果発揮、赤のシンボル一つを追加し、モダニックドラゴンを召喚!」

 

[リザーブ]6個→4個。

[トラッシュ]0個→1個。

[手札]5枚→3枚。

 

【モダニックドラゴン】3(2)赤、スピリット、古竜。

Lv.1(1)BP2000、Lv.2(3)BP4000。

Lv.1、Lv.2『自分のメインステップ』

自分が系統:「古竜」を持つスピリットカードを召喚するとき、このスピリットに赤のシンボル2つを追加する。

 

「モダニックドラゴンの効果発揮! メインステップ中に古竜を召喚する時、シンボルを追加! さぁどんどん行くぜ! 泰平龍ピースメーカーを召喚!」

 

 

[リザーブ]4個→1個。

[トラッシュ]1個→3個。

[手札]3枚→2枚。

 

【泰平龍ピースメーカー】6(4)赤、スピリット、古竜。

Lv.1(1)BP7000、Lv.2(2)BP10000

Lv.1、Lv.2『このスピリットのアタック時』

このスピリットのアタックによって相手のライフを減らす時、相手のライフを減らすかわりに、自分の手札にある系統:「古竜」を持つスピリットカード1枚を、コストを支払わずに召喚できる。

Lv.2『自分のアタックステップ』

このスピリットか自分の[大戦龍ウォーモンガー]が相手のスピリットを破壊した時、系統:「古竜」を持つ自分のスピリット1体を回復させる。

 

[フィールド]モダニックドラゴンLv.1(1)BP2000、泰平龍ピースメーカーLv.1(1)BP7000、No.6マウンテンシェイプLv.1(0)。

 

「さぁ行くぜ! アタックステップ! ピースメーカーでアタック!!」

「ぐっ! ライフで受け────」

「だったらこの瞬間! ピースメーカーの効果発揮!」

 

ブロッカーがいない以上、エンザにはそれ以外の選択肢がない。しかしライフで受ける事を宣言した瞬間、ピースメーカーは展開されたバリアに突進する寸前、寸での所で踏み留舞って見せたかと思うと、天を仰ぎ大きく咆哮を挙げる。

 

「相手のライフを減らす代わりに手札の古竜をノーコストで召喚できる!」

「何!?」

「久々に出番だぜ、相棒……! モダニックドラゴンを【転召】!」

 

手札に一枚に視線を向け、相棒と言葉を掛ける。和人がそう呼ぶカードはただ一枚しかない。

 

「炎纏いし龍の皇! 剣皇龍エクスキャリバスを召喚だッ!!」

 

[手札]2枚→1枚。

[トラッシュ]3個→4個。

 

地面から噴き上げる火柱がモダニックドラゴンを包み込むと、炎の中により大きな龍の影が映ると、次の瞬間、炎を振り払い、火の粉にその身を輝かせながら現れる白銀の龍────エクスキャリバスが姿を見せる。

 

『出たぁーーッ!! 何年経とうとこれまでチャンピオンを支え、またチャンピオンに支えられてきた唯一無二のキースピリット、エクスキャリバス!!』

 

「召喚時効果発揮! BP6000まで相手のスピリットを破壊! よって鬼武者ライザンを破壊!」

 

ライザンに火炎放射を吐き付けると、耐え切る事は叶わずその場で爆発四散を起こして破壊される。

 

「!」

「まだまだぁッ! エクスキャリバスでさらにアタック!」

「ライフで受ける!!」

 

全身に炎を纏っての特攻。展開されたバリアに勢いよく激突すると、そのまま粉々に粉砕する。

 

「ぐあっ!」

 

[エンザside]

[ライフ]5→4。

[リザーブ]1個→2個。

 

「ターンエンド」

『チャンピオン! 自慢のキースピリットを呼び出し、ライフを削り返しました!!』

『さすがはチャンピオンですね。しかし、まだバトルは序盤。まだまだ勝負の行方は判断しかねます』

『えぇ、エンザ選手ここからどう巻き返すのか!!』

 

 

 

 

[04ターン.エンザside]

[スタートステップ]

[ドローステップ][手札]5枚→6枚。

[コアステップ][リザーブ]2個→3個。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]3個→7個。

 

「メインステップ、イクサトカゲ2体を召喚! 内一体はソウルコアを置いて、Lv.3で召喚し、さらにネクサス英雄皇の神剣を配置!」

 

[リザーブ]7個→0個。

[トラッシュ]0個→1個。

[手札]6枚→3枚。

 

【英雄皇の神剣】3(2)赤、ネクサス。

Lv.1(0)、Lv.2(3)

Lv.1、Lv.2

自分のバーストをセットしたとき、自分はデッキから1枚ドローする。この効果はターンに1回しか使えない。

Lv.2『自分のアタックステップ』

合体していない系統:「覇王」を持つ自分のスピリットすべてをBP+3000する。自分のバーストをセットしている間、さらに、合体していない系統:「覇王」を持つ自分のスピリット全てをBP+5000する。

 

「バーストセット、英雄皇の神剣の効果で1枚ドロー。これでターンエンドだ」

 

[手札]2枚→3枚。

[フィールド]イクサトカゲ(A)Lv.3((S1)4)BP10000、イクサトカゲ(B)Lv.1(1)BP1000、英雄皇の神剣Lv.1(0)。

 

『ここでエンザ選手再びスピリットを展開して守りを固める! イクサトカゲはLv.3効果により、ソウルコアの力を受けてBP10000!』

『バーストも伏せてますからね。ですが、チャンピオンが果たしてこれで攻めあぐねるとは限りませんが』

『!』

 

 

 

 

[05ターン.和人side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]1枚→2枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]1個→5個。[フィールド]剣皇龍エクスキャリバス、泰平龍ピースメーカー回復。

 

「メインステップ! 大戦龍ウォーモンガーを召喚!」

「!」

 

[リザーブ]5個→0個。

[トラッシュ]0個→5個。

[手札]2枚→1枚。

 

【大戦龍ウォーモンガー】7(3)赤、スピリット、古竜。

Lv.1(1)BP8000、Lv.2(3)BP12000、Lv.3(5)BP15000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『このスピリットの召喚時』

BP合計10000まで相手のスピリットを好きなだけ破壊し、破壊したスピリット1体につき、自分はデッキから1枚ドローする。

【合体時】Lv.2、Lv.3『自分のアタックステップ』

系統:「古竜」を持つ自分のスピリットがBPを比べ相手のスピリットだけを破壊した時、相手のライフのコア2個を相手のリザーブに置く。

 

[フィールド]大戦龍ウォーモンガーLv.1(1)BP8000、泰平龍ピースメーカーLv.1(1)BP7000、剣皇龍エクスキャリバスLv.1((S1))BP5000、No.6マウンテンシェイプLv.1(0)。

 

「ウォーモンガーの召喚時効果発揮! BP10000まで相手のスピリットを好きなだけ破壊する! Lv.3のイクサトカゲを破壊だ!」

「ぐっ!!」 

 

フィールドに現れるや否や身に備えた砲門をイクサトカゲに向けると、幾つもの砲門の内の一つをイクサトカゲに向けて撃ち出し、直撃を受けて破壊される。

 

「破壊したスピリットの数だけドロー、よって1枚ドローだ!」

「構わねぇ、こっちも相手による自分のスピリット破壊でバーストだ!! 双光気弾!! 効果により2枚ドロー!」

 

[和人side]

[手札]1枚→2枚。

 

[エンザside]

[手札]3枚→5枚。

 

『エンザ選手、バーストでドローするも、チャンピオンの場には三体もの龍!! 戦力差は圧倒的です!』

 

エクスキャリバス、ウォーモンガー、ピースメーカーはそれぞれ大きく咆哮を挙げながら、今にも襲い掛からんばかりにエンザを睨み付け、三体の龍達による殺気には並みのカードバトラーは恐らく戦意喪失してしまう程だろう。だが、その龍達を前にしても、相対するエンザの表情に不安や恐怖と言った感情は一切抱いてない事を示すように、寧ろその表情は笑っていた。

 

「(やっぱすげぇぜ、次から次へとこっちの手を軽く凌駕してくれる。だが、それでも、だからこその俺の憧れた人だ! 憧れたチャンピオンだからこそ、このバトルで認められてぇ……嫌、勝ちてぇ!!)」

 

自分の感情を表情に曝け出すように、よりその眼差しを輝かせながら笑うエンザに和人もまたエンザの心情を理解したのか同じように笑いながら、「アタックステップ!」とそのまま続けて行く。

 

「さぁ行くぜ! ピースメーカーでアタックだ!!」

「フラッシュ! リミテッドバリア!」

「!」

 

[リザーブ]5個→1個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]3枚→2枚。

 

【リミテッドバリア】4(1)白、マジック。

『フラッシュ』このターンの間、コスト4以上のスピリット/アルティメットのアタックでは、自分のライフは減らない。コストの支払いにS(ソウルコア)を使用していたら、さらに、相手のネクサス1つを手札に戻す。

 

「ソウルコアを使わずに使用だ! 効果によりこのターンコスト4以上のアタックでは俺のライフは減らない!」

「(ソウルコアを使わずに……?)」

 

ピースメーカーはエンザに突っ込むが、展開されるバリアにより強固なバリアが重なる様に展開されると、ピースメーカーはそのままバリアへと突進するが、その攻撃に対してもバリアには傷一つさえ付いてはいない。

 

『エンザ選手! ここで出し惜しみなくフラッシュによる防御!! リミテッドバリアの効果により、コスト4以上のアタックではライフが減らなくなってしまいました!』

『チャンピオンの場のスピリットは全てコスト4以上、ピースメーカーによるアタック時の効果もあくまでライフを減らす代わりに発揮される効果。ライフを減らす事自体が出来なければ発揮されません』

 

「……まっ、これ以上は手は出せないな。なら、これでターンエンド」

 

 

 

 

[06ターン.エンザside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]2個→3個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]5個→0個。[リザーブ]3個→8個。

 

「チャンピオン、そろそろ俺も反撃開始させてもらう! 俺のキースピリット! 存分見てもらうぜ!!」

「来るか!」

 

意気込むエンザの様子に和人も構えて見せ、そのまま手札に手を掛け、そのキースピリットの名を叫ぶ。

 

「戦は華! ド派手な華を今ここに飾れッ! 戦皇ゴッドスレイヤードラゴン、Lv.2で召喚ッ! 不足コストはイクサトカゲから確保だ!」

 

イクサトカゲが場から消滅すると同時に、地面より噴き上がる三つの火柱、内中央の火柱は一際巨大で、その炎の中には龍の影が映り、次の瞬間、炎に潜みし龍────ゴッドスレイヤードラゴンが勢いよく飛び出すと、左右の火柱に手を伸ばして、大盾と剣をそれぞれ引き抜くと、そのまま勢いよく地面へ降り立ち、盾を構え、剣を掲げながら唸りを上げる。

 

『エンザ選手!! チャンピオンに負けじと自らもキースピリットを呼び出しましたぁッ!! フィールドに既に4体もの龍、まさに圧巻の一言です!』

 

広々としている筈のフィールドを圧迫させるかのような巨大な龍達の姿。フィールドに出揃う龍達の姿に、実況の紅葉達や観客達も刺激されるように声を大に歓声を上げる。

 

[リザーブ]7個→0個。

[トラッシュ]0個→5個。

[手札]5枚→4枚。

 

[フィールド]イクサトカゲLv.1(1)BP1000→イクサトカゲLv.0(0)消滅、戦皇ゴッドスレイヤードラゴンLv.2((S1)2)BP10000、英雄皇の神剣Lv.1(0)。

 

「ゴッドスレイヤードラゴン、君のキースピリットに相応しいカッコイイ龍だな」

「あぁチャンピオンにドラゴン達にも負けず劣らずですよ! さぁ派手に行くぜ!! アタックステップだ!!」

「来いッ!」

「ゴッドスレイヤードラゴンでアタック! アタック時効果発揮! 相手ネクサスを破壊して、回復だ!」

 

和人の背後にあるマウンテンシェイプに向けて、火炎放射を吐き付け、炎の直撃を受けてマウンテンシェイプは瞬く間に炎上し、場から消滅。さらにその破壊を受けて、ゴッドスレイヤードラゴンは赤いオーラを纏い回復する。

 

「なるほど、回復効果の為に、双光気弾やリミテッドバリアで俺のネクサスを除去しなかった訳か!」

「あぁ、さらにゴッドスレイヤードラゴンの効果だ! 泰平龍ピースメーカーに指定アタック!」

「ピースメーカーでブロックだ!」

 

[Battle]戦皇ゴッドスレイヤードラゴンLv.2((S1)2)BP10000vs泰平龍ピースメーカーLv.1(1)BP7000。

 

ピースメーカーを倒し勢い付くゴッドスレイヤーに、ウォーモンガーは敵を討たんと、全砲門を向けて一斉放射。さすがのその攻撃には避わし切れる訳もなく、咄嗟に盾を構え、砲弾を受けて大爆発が起こり、爆風を見ながら標的を仕留めたと確信するウォーモンガーだったが、爆風が晴れた瞬間、その場には大盾の残骸しかなく、ゴッドスレイヤーの姿がない事に気づいた瞬間、既にゴッドスレイヤーはウォーモンガーの頭上高く飛び上がっており、再び砲門を構え直すが時はすでに遅い。ゴッドスレイヤーは振り被った剣をそのままウォーモンガーに突き刺し、貫かれた部位から電流を放出しながら爆発四散を起こす。

 

『エンザ選手!! チャンピオンのスピリット一気に二体も倒してしまった!! これで残るのはエクスキャリバスのみだ!』

 

一気にキースピリットの召喚から形勢を逆転して見せるエンザに観客達は盛り上がるように声を上げ、一方でエンザはこれ以上は動かずそのターンを終える。

 

 

 

 

[07ターン.和人side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]2個→3個。

[ドローステップ][手札]2枚→3枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]3個→7個。

 

「メインステップ、エクスキャリバスをLv.2にアップ。さらにマジック、双翼乱舞。効果で2枚ドロー。これでターンエンドだ」

「!」

 

[リザーブ]7個→2個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]2枚→4枚。

[フィールド]剣皇龍エクスキャリバスLv.2((S1)2)BP8000。

 

『チャンピオン、エクスキャリバスをレベルアップしたのみでのターンエンド。やはり迂闊には動けないか!!』

『エクスキャリバス一体では確かに攻めきれないですからね。これはいよいよエンザのペースに動いてきましたかね』

 

神子の言葉に当然、エンザもまたこの機会を逃す手は無い。続く自分のターンを迎え、より意気込む様に声を荒げながら「俺のターン!」とコールを宣言する。

 

 

 

 

[08ターン.エンザside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]5個→0個。[リザーブ]1個→6個。[フィールド]戦皇ゴッドスレイヤードラゴン、回復。

 

「メインステップ、バーストセットし、ネクサス、英雄皇の神剣の効果で1枚ドロー、さらにゴッドスレイヤードラゴンをLv.3にアップし、ハガネヴルムをLv.2で召喚だ!」

 

[手札]4枚→3枚。

[リザーブ]6個→0個。

[トラッシュ]0個→1個。

[フィールド]戦皇ゴッドスレイヤードラゴンLv.3((S1)4)BP12000、ハガネヴルムLv.2(3)BP5000、英雄皇の神剣Lv.1(0)。

 

「アタックステップ! ゴッドスレイヤードラゴンでエクスキャリバスに指定アタックだ!」

「エクスキャリバスでブロックする!」

 

[Battale]戦皇ゴッドスレイヤードラゴンLv.3((S1)4)BP12000vs剣皇龍エクスキャリバスLv.2((S1)2)BP8000。

 

エクスキャリバスはその身に炎を纏うとそのまま一気に特攻を仕掛け、ゴッドスレイヤードラゴンも両手で剣を構えて迎え撃ち、真っ向から激突する二体の龍。互いに鍔競り合う両者だが、ゴッドスレイヤーは地面に足場をめり込ませるほど強く踏ん張り、咆哮を上げて剣を持つ手に力を籠めると、そのまま勢いよくエクスキャリバスを切り上げ、上空に叩き上げると、自身も大きく飛び上がりエクスキャリバスをそのまま一閃、切り裂かれたエクスキャリバスは大爆発を起こす。

 

『何と何と!! チャンピオンのキースピリットまでもが倒されてしまったーーッ!!』

 

バトルフィールドの光景に観客達はさらに驚きと興奮する声を響かせ、一方でキースピリットの破壊に対し、流石に堪えるものがあるのか顔色は変えないものの決してその光景から目を離すことなく最後まで見届け、そんな和人の様子にエンザは少しだけ罪悪感を感じる。

 

「チャンピオン、あなたにとって大切なスピリットの筈だ。けど勝負は勝負は何だ。どうか悪く思わないでほしい」

「……これは勝負だ、お前もそれを分かってるなら変に気遣うな。一切手加減なく本気でやってこそ、相手に対しての、そして自分に対しての敬意だ!」

「!」

 

エンザの言葉に、和人はまるで喝を入れるように言葉を掛けると、罪悪感を感じて暗くしていた表情を一変、明るい表情で笑って見せる。

 

「ははっ、チャンピオン。あなたの口からそれを聞けて嬉しいぜ!! やっぱりあんたは俺が憧れたチャンピオンだ!! だからこそ超える事に意味がある!! さらに行くぜ! ハガネヴルムでアタックだ!」

「ライフで受ける!」

 

腕を振り上げてそのまま展開されたバリアを殴りつけると、バリアを破壊し、ライフを砕く。

 

「ッ!」

 

[和人side]

[ライフ]4→3。

[リザーブ]5個→6個。

 

相手のキースピリットを倒した事で勢いづいたのかフルアタックで猛襲。だが、その攻撃を喰らってなお、チャンピオンである彼にとってただ黙って引き下がっている訳などある筈がない。

 

「俺のライフ減少時でバースト発動ッ!! 俺のライフが3以下ならBP15000以下の相手スピリットを破壊し、召喚する!」

「!」

 

瞬間、突如空が黒雲に染まると同時に、天より降り注ぐ業炎。炎はゴッドスレイヤードラゴンを一瞬で呑み込むと、断末魔を上げる間すらなく、あまりの威力に炎の中で爆発四散を起こす。

 

「ゴッドスレイヤー!!」

「さらに! この効果発揮後にこのスピリットをバースト召喚できる!」

「……!!」

 

これから呼び出すであろうカードを構えるその様は、まさに反撃の狼煙。そして声高らかにエクスキャリバス同様にこれまでチャンピオンを支えてきたもう一体のキースピリット。

 

「赤き剣を振るいて全てを征す覇王(ヒーロー)! 勝鬨上げてフィールドに降り立て! 龍の覇王ジークヤマトフリードを召喚!」

 

[リザーブ]6個→3個。

[フィールド]龍の覇王ジークヤマトフリードLv.2(3)BP10000。

 

空を覆う黒雲、刹那、黒き空を烈火の剣で真っ二つに引き裂き姿を現す龍────ジークヤマトフリード。背後に響く雷鳴を背に、高らかに剣を掲げてその咆哮を雷鳴以上に響かせる。

 

『出た出た出ました!!! チャンピオンのもう一体のキースピリット、ジークヤマトフリード!!! その登場と同時に何とエンザのキースピリットを破壊してしまったぁッ!』

『エクスキャリバスを倒したことでエンザさんは完全に勢い付いていました。しかし、バーストの発動で一気に逆転。チャンピオンは最初からこの展開を予測していたんでしょうね』

 

冷静に語る神子の言葉、一方で同じくバトルを見ているハルヤ達も驚きを隠せなかった。

 

「こうなるを見越してって……キースピリットをまさか囮にするなんて」

「囮、本当にそうなのかな」

「えっ?」

 

ザックのその言葉に対し、ハルヤは疑問を持ちながら、少しだけ悩んだように「それは違うと思う」と否定するように呟き、さらに続けて行く。

 

「あの人、スピリットとバトルすることが何より楽しそうだし、だから簡単に囮に出来るような信頼関係じゃないと思う。むしろ信頼しきってるからこそ、あの状況を任せた。囮じゃなく、勝つ為の布石にした。そういう気がする」

「……ハルヤ、お前」

 

いつになく和人に対し、何かを感じているハルヤの様子にザック達は少しだけ関心を抱いたように、再びバトルに見入り、一方でバトルではキースピリットを破壊され流石に今は打つ手がないのか、悔しさ交じりに「ターンエンド」とコールし、和人のターンへと移る。

 

 

 

 

[09ターン.和人side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]3個→4個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]4個→7個。

 

「俺のターン! バーストセット! さらに決めに行くぜ! 焔龍魔皇マグーを召喚ッ!」

 

[リザーブ]7個→0個。

[トラッシュ]0個→6個。

[手札]5枚→3枚。

 

【焔龍魔皇マグー】7(3)赤、竜人/古竜、スピリット。

Lv.1(1)BP5000、Lv.2(3)BP8000、Lv.3(5)BP10000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『自分のアタックステップ』

ステップ開始時、自分のトラッシュのコアを、好きなだけこのスピリットの上に置くことができる。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『自分のアタックステップ』

系統:「竜人」/「古竜」を持つ自分のスピリット全てをBP+3000する。

Lv.2、Lv.3

系統:「古竜」を持つ自分のスピリット全てに赤のシンボル1つを追加する。

 

『チャンピオン、また新たに強力なドラゴンを召喚しましたッ!! バトルは既に終盤に差し掛かってますが、強力なスピリット達が連続で登場し続け、今もなおバトルはさらにヒートアップしております!』

『ここでマグーとは、チャンピオン本当に一気に終わらせるつもりですね』

『えっ? ですが、エンザ選手のライフはまだ4つ。マグーとジークヤマトフリードだけじゃ……。』

『相変わらず知識不足ですよ、まぁ説明せずとも見てれば分かりますよ』

 

姉の言葉に首を傾げる中、一方で和人は意気揚々と「アタックステップ!」と宣言すると、マグーは待っていたと言わんばかりに鎌を振り上げながら唸りを上げる。

 

「アタックステップ開始時、マグーの効果だ! トラッシュのコア全てをマグーの上に置く!」

「ぐッ!!」

 

[トラッシュ]6個→0個。

[フィールド]焔龍魔皇マグーLv.3((S1)6)BP13000、龍の覇王ジークヤマトフリードLv.2(3)BP10000。

 

「レベルが上がった事でマグーの効果をさらに発揮させる! アタックステップ中、系統「古竜」を持つジークヤマトフリードとマグー自身をBP+3000、さらに古竜のスピリット全てに赤のシンボルを追加!」

「!!」

 

『赤のシンボルを古竜全てに追加!? という事は!!』

『えぇ、チャンピオンの場のスピリット二体ともダブルシンボルとなり、全ての攻撃が決まれば必然的に勝利となります』

『!!』

 

紅葉もようやく状況を察した様に呟き、「決めに行く」と宣言した事に偽りはなく、正真正銘このターンで決着を付けるつもりだろう。

 

「ジークヤマトフリードでアタックだッ!」

 

マグーの恩恵を受け、より力を増しながら剣に炎を灯し、エンザへと迫るジークヤマトフリード。観客達の多くはついに追い詰められたと認識するが、エンザ自身はまるでそんなことを感じさせないように不敵に笑って見せた。

 

「まだまだ終わらねぇッ!! 相手によるアタック後でバースト発動! 天下烈刀斬!!」

 

【天下烈刀斬】3(2)赤、マジック。

【Sバースト:相手のスピリット/アルティメットのアタック後】

自分はデッキから1枚ドローする。【起導】でこのバーストが発動していたら、このターンの間、自分のスピリット全てに赤のシンボル1つを追加する。その後コストを支払う事で、このカードのフラッシュ効果を発揮する。

『フラッシュ効果』

相手のネクサス1つを破壊する。コストの支払いにS(ソウルコア)を使用していたら、さらに、シンボル2つ以上持つ相手スピリット/アルティメット1体を破壊する。

 

「デッキから1枚ドロー! さらにソウルコアをコストに、フラッシュ効果を使用!! 対象は、マグーだ!」

 

[手札]3枚→4枚。

[リザーブ]5個→4個。

[トラッシュ]1個→2個。

 

地面から噴き上げる炎の刃がそのままマグーを両断し、破壊しその場で巻き起こる大爆発。

 

「マグーの破壊により、ジークヤマトフリードはダブルシンボルじゃなくなった!」

「だが、メインアタックは続いてるぞ!」

「ライフだ!!」

 

展開されるバリアに対し、剣を大きく振りかぶりそのまま叩き切る様に振り下し、バリアをいとも簡単に破壊するが、それでもマグーを失ったことによりその力は些か減少しており、エンザを一つだけ削る事しかかなわなかった。

 

[エンザside]

[ライフ]4→3。

[リザーブ]4個→5個。

 

「……仕方ないな。これでターンエンド」

 

『エンザ選手! 和人選手の攻撃凌ぎ切ったーーッ!! ここから大逆転となるか!!』

「ハッ、端から勝つことしか考えてねぇんだから当たり前だろ!!」

 

紅葉の実況の言葉に意気揚々と勝つ事を豪語しながら、続く自分の自分のターンを迎えて行く。

 

 

 

 

[10ターン、エンザside]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]5個→6個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]2個→0個。[リザーブ]6個→8個。[フィールド]鋼ヴルム、回復。

 

「メインステップ、ハガネヴルムをLv.1にダウン。そしてドラマルを召喚し、ドラマルの効果発揮! 俺の手札にあるコイツを召喚するときに、赤のシンボル1つを追加する!」

「やっぱり、という事は来るのか!」

「あぁ、一気に決めるのは俺の方ですよ。チャンピオン、俺ももう一体のキースピリットを呼び出すぜ! 乱世を制す猛将よッ! 赤きその最強の姿を天下に焼き付けろッ! 戦国龍ソウルドラゴン、召喚ッ!!」

 

[リザーブ]10個→1個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→3枚。

[フィールド]戦国龍ソウルドラゴン Lv.3((S1)4)BP13000、ハガネヴルムLv.1(1)BP3000、ドラマルLv.1(1)BP1000。

 

空に収束される炎は球体上に収束され、まるで太陽を思わせるかのような炎の塊。その炎の中で眼光を煌かせる龍の影、一気に炎を振り払い、得物を構えながらその咆哮をフィールド中に轟かせる。

 

『エンザ選手!! ここでついにソウルドラゴンを呼び出した!!! お互いのキースピリット同士が再びフィールドにて相対します!!』

 

互いの相手を睨みながらジークヤマトフリードとソウルドラゴンはそれぞれ咆哮を上げて、和人もまたこれから来るであろう攻撃に対し真っ向から構えて見せる。

 

「さぁ、遠慮はいらねぇ。来るなら来い!!」

「勿論! 敬意を払うからこそ、この勝負! 俺は全力でアンタに勝ちに行く!! アタックステップだ! ソウルドラゴン、アタックッ!!! さらにアタック時効果発揮! 【連刃】!」

 

ソウルコアをトラッシュに送ると同時に、ソウルドラゴンは真っ直ぐジークヤマトフリードへと突っ込んで行く。

 

「ハガネヴルムの効果で疲労状態でも【連刃】での対象が可能だ! ジークヤマトフリード、討ち取らせてもらう!!」

「ジークヤマトフリードでブロックだ! 迎え撃て!!」

 

[Battle]戦国龍ソウルドラゴンLv.3(4)BP13000vs龍の覇王ジークヤマトフリードLv.2(3)BP10000。

 

ジークヤマトフリードもまた翼を羽ばたかせながらソウルドラゴンへと突っ込み、ソウルドラゴンは手に持つ槍を投げ捨て、得物を太刀に切り替え、互いに剣と太刀を同時に振り下し、打ち合う金属音が衝撃となってその場に響き渡り、渾身で振るう衝撃に互いに一度弾かれるも、直ぐに二体とも再び突っ込み、再度得物を振っては激突を繰り返す二体の龍。

三、四度程討ちあった後に、ソウルドラゴンはジークヤマトフリードの腹部に蹴りを入れて、後ろに退かせるとそのまま一気に火炎放射を放つがジークヤマトフリードは紙一重で空へと飛び立ち炎を避けると、そのまま一気に急降下し、再び剣を振り下すが、ソウルドラゴンはその動作を見切ると、剣の持ち手を片手で掴むと同時にジークヤマトフリードをそのまま後方へ勢いよく投げ飛ばす。

 

「決めろッ! ソウルドラゴン!!」

「おっと、そうはさせないぜ! フラッシュタイミング! ソウルコアをコストに支払って、マジック、鉄壁ウォール!」

「何ッ!?」

 

[リザーブ]7個→3個。

[トラッシュ]0個→4個。

[手札]4枚→3枚。

 

【鉄壁ウォール】白、マジック。

トラッシュにあるこのマジックカードは、一切の効果を受けない。

『フラッシュ効果』

このバトルが終了した時、アタックステップを終了する。コストの支払いにS(ソウルコア)を使用していたら、さらにこのバトルで相手によって破壊された自分のスピリット全ては疲労状態でフィールドに残る。

 

ジークヤマトフリードを投げ飛ばし、体制を立て直す前に決着を付けようと一気に太刀を振り下し、その一閃に確実にジークヤマトフリード破壊される、筈だった。切り裂かれその場に巻き起こる大爆発。だが、次の瞬間、その爆風を一瞬で吹き払う程の炎が噴き出しかと思うと、破壊された筈のジークヤマトフリードが再びその場に姿を現す。

 

「ッ! けど例え場に残ろうが、破壊したことに変わりはねぇ! ソウルドラゴンの効果でライフを破壊だ!!」

 

ソウルドラゴンはジークヤマトフリードから視線を外すと、足元の槍を拾い上げて、そのまま和人に一投。槍は真っ直ぐ展開されたバリアへと突き刺さり、衝撃にライフが破壊される。

 

[和人side]

[ライフ]3→2。

[リザーブ]3個→4個。

 

「甘い! ライフ減少時でバースト発動!! 天剣の覇王ジークスサノフリード!」

「二体目の、ジーク!?」

「バースト効果で赤のスピリット1体につき、BP6000以下の相手スピリットを破壊! よってハガネヴルムを破壊だ!」

 

天より突如、炎を纏った剣が振り下されたかと思うとそれはハガネヴルムへと直撃し、破壊される。

 

「さらにそのままバースト召喚だ! 覇王の頂点に座する最強の黒龍! 無数の剣で思うが侭に敵を蹂躙せよ! 天剣の覇王ジークスサノフリード召喚ッ!」

 

フィールドにさらに降り注ぐ無数の剣、円を描くようにフィールドへと突立てられると、その中央に巨大な火柱が噴き上げ、草薙の剣を振るいながら雄叫びを上げてジースサノフリードがフィールドへと現れる。

 

『ここでチャンピオン、さらに強力なドラゴンを呼び出した!! チャンピオンの戦力は、まさに留まる事を知りません!!』

『えぇ、スピリットもそうですがチャンピオン自身のバトルスタイルも決して生半可なものではありませんね』

『と言うと?』

『鉄壁ウォールで確実に自分のスピリットを残した上でジークスサノフリードのバースト効果で相手スピリットの破壊を狙っていた。この私でもまだまだチャンピオンの底が知れません』

『!』

 

一方でフィールドに並び立つ二体のジーク、その二体の姿にはさすがにエンザも息を呑むが、それでもまだ負けた訳ではない。どこまで諦めないように強い眼光を輝かせ、「次は絶対に決める!」とそのターンを終えるが、和人にしてみてれば、エンザに次のターンを与える気は到底ない。

 

 

 

 

[11ターン、和人side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]3個→4個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]4個→8個。[フィールド]龍の覇王ジークヤマトフリード、回復。

 

「メインステップ、ジークヤマトフリードをLv.1にダウンし、ジークスサノフリードをLv.2にアップ」

「(ジークスサノフリードのレベルを上げた?)」

「……なぁこのバトルで俺は言ったよな。全力でやる事こそが相手と自分に対する敬意だと」

 

エンザに対してまるで尋ねるような和人の言葉、その言葉をどこか不思議に思いながらも、黙ってエンザは頷く。

 

「お前も全力でそれに対して答えてくれた、全力の敬意を俺に見せてくれた。だから今度は、俺の番だ!」

「!!」

 

何かが来る事をすぐさま直感した、会場全体の空気が一変し、その何かに対し、全員が息を呑む。

 

「絶の名を冠する六体が神の一体! 己が極めしは『剛力』! 根源へと至るその力の全てを解き放てッ!! 六絶神剛力のドラグマグナ、召喚ッ!!!」

 

[リザーブ]8個→4個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]4枚→3枚。

[フィールド]六絶神剛力のドラグマグナLv.1((S1))BP10000、天剣の覇王ジークスサノフリードLv.2(3)BP10000、龍の覇王ジークヤマトフリードLv.1(1)BP6000。

 

召喚口上と共にそのカードを呼び出した瞬間、突如フィールド全体が激しく巻き起こる地震、地面だけでなく、空や大気をも大きく揺るがし、空は荒れ、大地は地割れを起こす程。そして最後に、地面からまるでドアを叩くかのような轟音が響いたかと思うと、大地を一気に突き破って飛び出す龍の姿、それこそがドラグマグナの姿だった。

 

『チャンピオンここにきてさらなるスピリットを召喚!! 六絶神、一体どんな力を持つスピリットなのか!!』

『六絶神、噂に聞いたことはありますが私もこの目で見るのは初めてです』

 

滅多に人の目に触れる事ないカード、六絶神の姿に会場中がざわめき、エンザもまた警戒心を隠せなかった。

 

「(六絶神、ここに来てまた凄まじいスピリットが来やがった。けどまだ俺にだって手はある!!)」

 

ドラグマグナがどのような力を持つのかエンザにとってはまるで未知数だったが、それでもまだまだチャンピオンの攻撃に対して耐え切る自身は充分にあった。だがそれでも、勝気な表情を浮かべながら和人は「アタックステップ!」と力強く叫ぶ。

 

「ジークスサノフリードでアタックだ! アタック時効果、BP+10000!」

 

攻撃開始と同時に赤いオーラを纏いながら咆哮上げて、自身の力を増すジークスサノフリード、さらにそれと同時にドラグマグナもまるでジークスサノフリードに共鳴するかのように同じく咆哮を響かせる。

 

「ドラグマグナの効果! 自分の赤のスピリットがアタックした時、このターンの間、このスピリットをBP+10000!」

「またBPが上がっただと!! だけど、BPが上がった程度で……!」

「そう言うの、油断大敵っていうんだぜ!」

「!?」

「フラッシュタイミングで、マジック! ギャラクシーエターナルレクイエム!」

「青のマジック!?」

 

[リザーブ]4個→0個。

[トラッシュ]3個→7個。

 

【ギャラクシーエターナルレクイエム】4(2)青、マジック。

『フラッシュ効果』

このターンの間、自分のスピリット全てを、そのスピリットが持つ最高Lvとして扱う。

 

「効果により、俺のスピリット最高レベルとして扱う!」

「ここでレベルを! 何の為に!?」

 

驚くようなエンザの言葉に「今に分かるさ」と笑みを浮かべながらさらに続けて行く。

 

「アタック中のジークスサノフリードは最高Lvとなり、そのBPはアタック時効果と合わせてBP30000、これでドラグマグナが発揮される!!」

「一体何を!?」

「ドラグマグナ、Lv.3の効果! 自分のアタックステップ中! BP30000以上の自分のスピリット全てのシンボルを赤のシンボル3つにする!」

「赤のシンボルを……だと!?」

『ドラグマグナ、衝撃効果が発揮!! 何とBP30000以上ならどんなスピリットでもトリプルシンボルにしてしまう驚異の効果!!』

『えぇ、しかもエンザさんのライフは残り3。この攻撃は防ぐしかありません』

 

神子の言葉通り、トリプルシンボルとなったジークスサノフリードの攻撃を受けてしまえばその時点でエンザの敗北が決まる。圧倒的な力を前にしても、それを防ぐ以外の選択肢がなかった。

 

「ぐっ! クソッ!! ドラマルでブロック!」

 

[Battle]天剣の覇王ジークスサノフリードLv.4(3)BP30000vsドラマルLv.1(1)BP1000。

 

力の差は比べる間でもなく歴然。懸命に駆け寄るドラマルに対し、ジークスサノフリードはまるで押し潰すかのように天剣を振い、あっけなくドラマルは破壊されてしまう。

 

「次だ! ドラグマグナでアタック! 自分の赤のスピリットがアタックした時、このスピリット自身をBP+10000! さらにLv.2、Lv.3効果発揮!」

「まだ何かあるのかよ!」

「あぁ、このスピリット自身がアタックした時、このターンの間、自分の赤のスピリット1体をBP+10000、よってジークヤマトフリードを指定だ!」

 

【六絶神剛力のドラグマグナ】5(3)赤、絶昌神、スピリット。

Lv.1(1)BP10000、Lv.2(3)BP12000、Lv.3(5)BP15000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3『自分のアタックステップ』

自分の赤のスピリットがアタックした時、このターンの間、このスピリットをBP+10000する。

Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック時』

このターンの間、自分の赤のスピリット1体をBP+10000する。

Lv.3『自分のアタックステップ』

BP30000以上の自分のスピリット全てのシンボルを、赤のシンボル3つにする。

 

『六絶神圧倒的な力です!! その効果によりドラグマグナの現在のBPは35000!!!』

『それだけじゃないです、ジークヤマトフリードもドラグマグナの効果でBP30000、これでチャンピオンの場のスピリット全てがトリプルシンボルです!』

 

まさにチャンピオンと呼ぶに相応しい程、圧倒的すぎるバトルだった。残るライフを一気に削らんと、猛々しく吠えながらドラグマグナはフィールドを駆け抜けて行く。

 

「フラッシュタイミング! リブートコードだ! 疲労状態のスピリット全てを回復!」

 

[リザーブ]3個→0個。

[トラッシュ]5個→8個。

[手札]3枚→2枚。

 

「ソウルドラゴンを回復し、そのままブロックだ!」

 

[Battle]六絶神剛力のドラグマグナLv.3((S1))BP35000vs戦国龍ソウルドラゴンLv.3(4)BP13000。

 

自分の主であるエンザを死守せんと、真っ向からドラグマグナに立ち向かい、ドラグマグナはそれに対し、振り上げた剛腕をそのまま勢いよく突き出す。

咄嗟に槍でその一撃を受け止めようとするが、あまりのパワーに受け止めようとした槍は粉々に砕かれ、すぐさま太刀に持ち替えて切り掛かるが、所詮同じ事。ドラグマグナは同様に拳を振るい、相殺するどころか、ドラグマグナの拳を受けた剣は切っ先からまるでガラスの如く砕け散り、得物を失ったソウルドラゴンに対し、ドラグマグナは三撃目の打撃を叩き込むと、身に纏う甲冑は一瞬で亀裂が走り、ソウルドラゴンは悲鳴を上げながら爆発四散を起こす。

 

「ソウルドラゴン!!!」

 

キースピリットの破壊に思わず叫ばずには入られなかった。しかしそれでもエンザのその叫びは直ぐに虚しい程に勝利に吠えるドラグマグナの咆哮に掻き消される。

 

「ラストだ! ジークヤマトフリードでアタック!!」

「ぐっ!! ライフで、受ける!!!」

 

展開されるバリアにジークヤマトフリードは一瞬で距離を詰めると、渾身の力を振るって、バリアを両断、さらに間髪入れずにすぐさま二撃目、三撃目を叩き込み、X字を刻み込むと、バリアを完全に破壊し切る。

 

「うわああああああああああッ!!!!」

 

[エンザside]

[ライフ]3→[Lose]

 

 

 

 

***

 

 

 

 

『決まったぁーーッ!! 勝者チャンピオン!! 王者としての実力はなおも健在!! 圧倒的過ぎるバトルでエンザ選手を下してしまいました!!!』

 

バトルを終え、声高らかに叫ぶ紅葉の言葉に触発されたように観客達も大歓声を上げ、バトルに対する声が会場全体に響き、一方でバトルを終えた二人は……。

 

「……一瞬、勝てると思えたときは、チャンピオンとしての道のりが目の前まで見えた気がしたんだが、やっぱり思い違いだ。アンタを超える。その夢はやっぱりまだまだ遠かった」

「なら、諦めるか?」

 

悪戯っぽく尋ねる和人の言葉に、エンザは笑いながら「それはない」とはっきり答えて見せた。

 

「遠ければ遠い程、俺の夢は実現させる甲斐がある! 絶対俺はこの夢を諦めねぇ。どんなに道のりでも、俺は絶対超えてチャンピオンになる!」

「よく言った。なら目指せ! お前がまたチャンピオンの座を狙いに来るまで俺はチャンピオンであり続ける!」

「それでこそだ! アンタはやっぱり俺の憧れで、俺の目標だ! それはずっと変わらねぇ!」

「光栄だ。今日はバトルありがとう。楽しかったぜ」

「こちらこそです!」

 

互いに検討称えながら握手を交わし、その姿にハルヤや吉馬達もエンザ負けた事にショックを受けながらも、その職をすぐに忘れる程の気持ちを抱きながら、拍手を送り、観客全員も同じく拍手や歓声を送っている。

 

『本日は一日、どのバトルも決して目が離せない最高のバトルの連続でした! 改めて、BCO実況担当この紅葉も全てのバトルを実況出来た事とても幸せでした!』

『えぇ、解説であるこの私同じ気持ちです。ご参加いただいたすべてのカードバトラーに改めて感謝したいです。それでは最後にチャンピオンから改めてお言葉を!』

 

和人へとマイクを手渡すと。マイクを受け取り、「コホン!」と一息置いてから司会を務めて行く。

 

『あー、今日はみんな一日本当に最高バトルの連続をありがとう! そして俺自身もバトルできて本当に楽しかった。皆が俺を楽しませてくれたように、俺のバトルで見てくれたカードバトラー達の心を熱く滾らせられたならこれほど嬉しい事は無い!』

 

会場中の全員に向けての言葉、勿論その言葉は会場の全員が耳を傾けながらしっかりと聞いている。

 

『俺はチャンピオンとしてこれからもあり続けるつもりだ! だからみんなもいつか俺を超えるつもりで、今日以上のバトルで俺を楽しませてくれ!! 誰が俺を超えて新しいチャンピオンとなるのか、とても楽しみにしてるぜ!! 俺からは以上だ!』

『チャンピオン、ありがとうございます。これにて、本日の大会は正真正銘とさせていただきます。カードバトラーの皆様も改めてありがとうございました!』

 

大会が終わっても会場全体はまだまだ興奮冷めやらぬ様子で、一方でエンザや浪川、それにハルヤ達を始めとする多くのカードバトラー達の誰もがチャンピオンを超えるべきは自分だと、大きく胸に抱いた野望で一杯だった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

『お疲れ、和人』

「!」

 

会場を後にしようと裏口から出ようとする矢先に、駆けられる声。そこにいたのは咲や川村達の姿だった。

 

「咲! それに川村! どうしたんだよ、すげぇ久々じゃんか」

「少し様子見に来ただけだよ、相変わらず大袈裟」

「はは、その口振は変わんねぇな、けど会えて嬉しいぜ」

「馬鹿、咲がいる前でそういう事あんまり言わないで」

「!」

「わ、私は別に気にしてないですから!!」

 

顔を赤くしながら反論する咲、和人自身も少しだけ照れ臭そうにしながらそんな二人の様子に川村はただ可笑しそうに笑って見せる。

 

「今日バトル見せてもらったよ。やっぱりチャンピオンは凄いね。まっ、世界を救った英雄なんだから当たり前か」

「それは大分もう昔の話だろ。今は関係ないさ」

 

昔の事を思い返しながら、まるで懐かしむように笑いながら語る三人。「それより」と何かを思い出したように話題を切り替える。

 

「さっき司会で新しいチャンピオンを超えるのは誰になるか楽しみって言ってたけど、それって本当?」

「別に嘘なんかついちゃねぇさ。まっ、簡単にチャンピオンの座を譲る気はねぇけどな」

「うわっ、大人げない」

「それぐらい普通だろ! ケジメだって、ケジメ!」

「冗談。それぐらい分かってるよ。自分を超えるかもしれないって期待してるのは、今日バトルしたあのエンザって子?」

「まっ、そうだけど、期待してるのは彼だけじゃないさ」

 

その脳裏には少しだけハルヤの事を考えながら、これからの事を期待するように笑って見せた。

 

「まっ、チャンピオンの座を掛けて今度は誰が俺の前に立つのか、楽しみだ」

「へぇー、まっ、私も今度見に来るよ。今日は様子見に少しだけ仕事抜けちゃったし、この辺で私は帰るね」

「仕事って、川村は何してんだよ?」

「さぁね」

 

彼女もまた可笑しそうに笑いながら、その場を立ち去って行った。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「チャンピオンのバトル、実力は予想以上にビッグだったな」

「あぁ、チャンピオンの実力は想像以上、さて俺等のリーダーはどう考えてる?」

 

率直な感想を述べながらハルヤに尋ねるキッドやザックの言葉に対し「どう考えるも何も最初から決まってるよ!」と返答して見せた。

 

「もっと強くなって、チーム龍攻威を最強のチームとして! そしていつかチャンピオンになる! その道をこれからも目指すだけだよ!」

 

迷いのない真っ直ぐなハルヤの言葉に、ザックやキッドも満足した様に「それでこそだ!」と言葉を返す。

 

「だったら俺等もその道を目指すだけだ! リーダーと同じくな!」

「あぁ、俺等も同じだ! チャンピオンにヴィクトリーを飾るのは勿論、例えリーダーにも譲らねぇけどな」

「はは、じゃぁチーム同士でもライバルだね。まぁこれからも僕ら、お互いに頑張って行こうよ!」

「あぁ当然」

「はい!」

「当たり前です」

「オフコース!」

 

チームメンバー全員、ハルヤの言葉にすぐさま返事を返し、それを聞くとハルヤも嬉しそうに笑って見せ、5人は会場を後にした。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「…………」

 

一方で会場奥でバトルを静観していた浪川も、見学を終えると席から立ち上がりその場を後にしようと、出口を足を進める。

 

「おや、もう行っちまうのかい? 海皇キャプテンさん?」

 

そこへ同じく終始会場のバトルを見学していた紫苑が声を掛け、その言葉に浪川は足を止める。

 

「ふん、見たいものは見れた。ドラグマグナにソウルドラゴン、奴等の切り札はいずれ俺がこの牙で打ち倒す! そして俺が最強である事を証明して見せる!」

「相変わらず最強に拘るね、そんなに強さを求めてどうしたいのよ?」

「こそこそと動いてばかりの貴様に俺の事をどうこう言われる筋合いはねぇ。俺の事を疑問に持つ前に、少しはテメェも強者である事を証明したらどうだ?」

「買いかぶり過ぎだって前も言ったろ? ランキング争いにも興味はねぇし、俺は自由に楽しくやるだけの無名チームバトラーさ」

「フン、勝手にしろ」

 

呆れたように言葉を吐き捨てると浪川は再び足を進めてその場を立ち去り、その姿を見送ると、自分達も出ようと席から立ち上がる。

 

「ふー、それじゃあルム、俺達も帰りますか」

「あぁ、そうだね。大会も終わっちゃったしね。けどやっぱり見学だけってのはつまらなかった」

「そう言うなよ、高みの見物ってのはいい物なんだぜ?」

 

相変わらず調子のいい笑いを浮かべながら語る紫苑にルムは「やれやれ」とため息交じりに呟くが、そこへ……。

 

『だけど、あまり傍観者を気取られてもこっちも困るのだけどね』

「「!!」」

 

突然の声、先程まで笑っていた紫苑の表情はその声に一変し、咄嗟に辺りを見回すと、紫苑たちの前には、虎縞模様の装束に、狐面で素顔を隠し、声は中性的な人物の姿だった。

 

「何でアンタがこんな所に!!」

「やだなぁ、僕の事は「九尾」って呼んでよ。折角チームメイトなんだからさ」

「ッ!」

 

「九尾」と名乗るその人物を前に、何時の様な笑みはなく、どこか表情を厳しくさせながら、その人物と顔を合わせていた。

 

「九尾が俺に何の用かって聞いてんだけど?」

「聞くまでもないだろう、君があまりに動かないから注意喚起に来たのさ」

「ケッ、釘差しに来たって訳か」

「まぁそれも一つ。けどもう一つ、ちょっと厄介な事になってね」

「厄介な事?」

「あぁ、少し面倒な奴等に目を向けられちゃってね、だから少し、君に協力してもらいたいんだ。だって、君は僕等のリーダーなんだからね」

「チッ!」

 

九尾の言葉が意味するのは紛れもなく、彼もチームシャドウの一意であるという事。だが、何故だか紫苑は面白くなさそうに表情を歪め、ルムはその様子に口を挟まずただ静かに傍観しているが、一つだけルムには分かっている事があった。

 

「……それで、俺は何をすればいい?」

 

九尾の言葉を、紫苑は絶対に了承するしかない事を。




作者「皆さま、あけましておめで───」
エンザ「おせぇわ!! コラ!!」( ゚Д゚)=O);∀;)」
作者「ごめんなさい!!」
エンザ「テメェもう新年あけて何日どころか、月終ってんだけど? そして忍がつの何日だと思ってんの?」
作者「すみません、FGOがいそがしくて!!」
エンザ「ソシャゲじゃねぇか!」(# ゚Д゚)=O);∀;)」


長らく更新遅れてすみませんでした。遅れてしまいましたが、皆さまあけましておめでとうございます。中々更新ペースが進まず、遅れて射s舞いましたが今日やっと更新できて何よりでした。亀ペースになってしまってますが、何とか頑張りますので新年もどうか本小説をよろしくお願いします。

そして第19話いかがでしたでしょうか?エクスキャリバスなど久々に書けて楽しかったですが、何より注目はチャンピオンの新切り札、六絶神ドラグマグナ!!

私もこのカードはエクスキャリバスと同じく好きで、今回のバトルで書けてとても嬉しく、十全に生かしたバトルに出来たのなら幸いです。

アニメでは十二神皇編もいよいよ終盤ですね、邪神皇がアルティメットと聞いてどのような効果なのか、期待で一杯です!!


次回もどうかこの小説をよろしくお願いいたします。





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No.20.影と光

・以下注意
誤字、プレイミスアリかも。
バトル表記が人によっては分かりずらいかも。

それでも大丈夫という方はどうか温かい目で見てもらえると幸いです。発見したミスやバトル表記などのご指摘気軽にお待ちしております。



 

 

 

『世界とは時に壮大なストーリー、そしてその世界に住む人、その全ては物語の登場人物にすぎない』

 

まるでどこかのライブハウスのような場所に佇む三人の人影、他に人気はない薄暗いこの場所こそがチームシャドウの溜まり場であり、壁に凭れながら静かに狐面を被る九尾は唐突に言葉を呟き、チームシャドウのリーダーである紫苑と、チームメンバーであるルムは静かにその話に耳を傾けている。

 

「何を言い出すのかと思えば、お前の解釈がどうあれ関係ねぇだろ? 登場人物全てがこの世界の主役なんだ、だったら誰もが自分のしたいように人生を謳歌する。それだけだ」

「君ならそういうと思ったよ」

「あぁ?」

 

隣で聞いている紫苑は九尾に対して率直な感想を述べるが、九尾はまるで最初から紫苑の言葉を理解していた様子だった。

 

「だけどね、誰もが主役って訳じゃない。誰もが主役というのは個人の人生の話。有体に言えば、自分だけの世界での主役さ。世界全てを指してじゃない」

「ならつまり、この世界の主役は一人だけってか?」

「あぁそうさ。この世界のたった一人の誰かががね」

「その誰かってのは……。」

「さぁね、少なくともボクではないさ。今のボクは君に付き従うチームメンバーにすぎない」

 

「でも」と、言葉を呟きながら、九尾は仮面の下で微笑し、その様子は紫苑たちにも感じ取れた。

 

「仮に主役に成れなくとも重役になる事はできる。間違いなく、今この時ボク等はこの世界のカギを握っているさ」

「…………」

 

九尾の言葉の真意を理解しているのかいないのか無言で反応を示す紫苑に対し、ルムは興味がない様子で聞き耳を立てながらも視線は明後日の方角に向けていた。

 

「さて物語のカギを握る以上、ボク等はそろそろ次のステージに進まなきゃならない。なら分かるだろう? リーダー?」

 

含みのある言い回しで紫苑をそう呼びながら、紫苑は気怠そうに首に手を付きながらも、どこかに向けて歩き出し、九尾とルムの二人も後に続く形でその場を後にした。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

『で? 昨日の今日でよくお前等他所のチームに遊びに来れたな』

 

舞台は変わりレッドドラゴンのスタジアムで、適当な台で対戦する吉馬とハルヤ。対戦しながらも吉馬の最もな発言にハルヤは苦笑いしながらも罪悪感を感じるように謝る。

 

「ごめん、さすがに沖田さんのとこにずっと世話になる訳にもいかないし、でも他に頼れるとこなくて」

『気にすんなよ。元チームメンバーの頼みだ。それにウチのチームのバトルの練習にもなるならこっちとしても好都合だ』

 

二人の会話に上機嫌な様子で割って入るエンザ。その姿に吉馬とハルヤはほぼ同時に反応して見せる。

 

「エンザさん、ありがとうございます」

「リーダー、寛大なのはいいですけどうちのチームが無双されるのはどうかと思います」

 

そう言いながら指さす方角にはスズやキッド、ザックやコン太の面々も他のレッドドラゴンのメンバーとフリーバトルを始めており、吉馬の言う通り、ほぼ連戦で吉馬の言う通り無双状態だった。

 

「あれはあいつらの問題だな。後で追加で特訓だな」

 

ぼそっ、と呟くエンザの言葉にレッドドラゴンの面々を気の毒に思いながらも、「そう言えば」とハルヤに対しエンザは何かを思い出した様子で。

 

「お前等、前回の大会の戦績もチームランキングに反映されてるんじゃねぇか?」

「あっ、そうでした。確認してみますね」

 

一台の端末を取り出し、早速何かを確認するハルヤ。一方でスズ達もフリー対戦も区切りを付けたのか、バトルを止め、ハルヤの様子に気づくと、その場に一旦合流する。

 

「ハルヤ、どうかしたんですか?」

「あぁ、そう言えばスズ達はチームランキングについてあまり把握してないんだっけ?」

 

ハルヤと違ってスズやザック、キッドはこれまでチームとしての活動は皆無。だがコン太だけは神子達と普段から行動してただけあってチームとしての活動内容にも詳しいのか、「それなら僕が」と、少しだけ得意げに説明を買って出る。

 

「チームランキングは、チーム所属者の個人戦績からポイントとして合計。合計のポイントが高い順にランキング。ポイントは加減点でチーム所属者が別のチーム所属者に負ければマイナス、勝てばプラスです。対戦する相手が自分よりランキングが高いチームであるほどその分勝ち点も増え、その人がチームでの個人戦績が高いほどさらに増えます。負けた場合はその逆です」

「細かい事はともかく、要は勝ち続ければいいだけだろ?」

 

説明を聞き終え、率直な要点だけ尋ねるザックに黙って頷く。

 

「有体に言えばそうなります。ランキング維持を狙って保守的なバトルをするチームもありますが、チームランキングは20位以内までが上位チームとされ、上位チームにはそれぞれチーム専用のスタジアムも所有できるので、基本上位チームは積極的にバトルを仕掛けるより、チームランキングの維持の為、保守的にバトルする人が多いですかね」

 

上位チームの中で積極的にチームバトルを仕掛けてるのはレッドドラゴンと海皇ぐらいなものだろう。後のチームはコンタの言う通り、保守的なのか中々あまりバトルを仕掛けているという事はハルヤ達の耳には入っていない。だが、まるでそんなものは関係ないというように、笑った様子でキッドが切り出す。

 

「他がどうあれ、俺達には関係ない、俺達はトップ目指して、積極的にバトルをトライするだけだ。そうだろ?」

「まぁやるからには一番目指すだけです。私の所属するチームならそれぐらいになってもらわないと」

 

キッドもスズもハルヤに視線を向け、二人の視線に一瞬だけ固くなりながらも、端から答える事は決まっている。直ぐに表情を柔らかくして口を開く。

 

「勿論、一番目指して僕ら頑張って強くなり続けるよ。少なくともレッドドラゴンのエンザさんにもリベンジできるぐらいに、もっと強く!」

 

最初から目指し続けてきたことを改めて口に出すハルヤ。そしてだが、その言葉に対して。

 

『ハハハハハハッ!』

 

突然甲高い笑い声が会話に加わって来たかと思うと、その声の主はチームシャドウのリーダーである紫苑であり、先程までの会話を聞いていたのか、スタジアム入り口からこちらに向かい、紫苑の後ろにはもう二人見慣れない人物の姿があり、紫苑の姿を見るや、吉馬は「うげっ」、と苦虫を噛み潰したように表情を歪め、その様子に紫苑は肩を竦めて見せた。

 

「おいおい、吉馬ちゃん。相変わらず辛辣な態度勘弁だぜ」

「ちゃん付けで呼ぶなと何度言わせんだテメェ。つかそれ以前に何で白昼堂々と俺達のチームに来てんだ!」

 

紫苑に対してはいつものように敵意剥き出しだが、「まぁ待て」と軽く吉馬を宥める。

 

「よぉ紫苑、久々だな。相変わらず唐突に来やがって」

「ははっ、まぁたまには顔見せに行かねぇとな。ハルヤ達にもついでに顔見世できたのはラッキーだったぜ」

 

軽くハルヤ達にも挨拶を交わし、ハルヤもそれに挨拶を返す。

 

「……オイ、アンタ。さっき何が可笑しかったんだ?」

 

ザックだけは最初の紫苑の態度に不服だったように突っかかるが、紫苑はそれにすぐ「悪いな」と謝りながら視線をザックに向ける。

 

「可笑しくて笑ったんじゃねぇ、楽しくて笑ったのさ」

「楽しい?」

「あぁ。生憎俺達のチームはランキングから外れてる。だからランキング上位とかそういう競り合いには興味はねぇ。けど、他人のバトルには興味がある。どんな奴らが、どんな思いで、どんなバトルをするのか、俺はそれを見れるともうとワクワクするんだ」

「お前がそれに加わろうとは思わねぇのか?」

 

不意のエンザの言葉、それに対して笑っていた口元を閉じ、返答に少しだけ間を置いて返す。

 

「俺はそういう性質じゃねぇ。高みの見物してるほうがよっぽど俺の性分に合ってるよ」

「テメェの実力は見学者ぐらいに収まらねぇだろ」

「買いかぶりすぎだってよ。それに言ったろ? 今日もあくまで顔見せだしな」

 

「こいつらも含めてな」と付け足すと、紫苑の前にフードを被った銀髪の少年と狐面に虎模様の装束に身を包んだ人物が前へと出る。

 

「チームシャドウメンバー、蛇目ルム」

 

自分が紫苑のチームメイトである事と名前だけを口にすると、それ以上は何も言おうとはしない。

 

「おいおい、ルム。初対面なんだから愛想よくしてもいいんじゃねぇか?」

「別に。名前だけでいいでしょ? 仮にそれ以上の挨拶が必要なら」

 

「これで充分でしょ」、と自分のデッキを持ちながら自信満々な様子で言ってのけた。

 

「ほぉ、チームメイトはリーダーと違って血気盛んみたいだな」

「まぁね、僕はバトルは大歓迎さ。強い人に限るけどね」

「なら試してみるか?」

「はいはい、そこまで」

 

一触即発な二人に割って入ると、咄嗟にルムを下がらせる。

 

「今日は顔見せだけだっての。悪いな、エンザもそういう訳で今日は退いてくれるか?」

「しょうがねぇな。で? そっちのもう一人は?」

 

自分の番を終えたようにルムは下がり、入れ違いにもう一人は前へと出る。

 

「初めまして。ボクの名は九尾。チームシャドウメンバーさ」

 

狐面から発せられる明るい中性的な声、だが九尾とだけ口にするその名にハルヤもエンザも不信感を覚える。

 

「九尾さん?」

「君がハルヤさんだよね? リーダーから君の事はボクの記憶にしっかり覚え込ませてもらってるよ。それにエンザさんもね。以後宜しくお願いするよ」

「宜しくっていう割には素顔を一つ見せてくれねぇんだな」

「レッドドラゴンと龍攻威のリーダー二人に対して、ボクなんか素顔を晒すのは恐れ多いよ。少なくとも、今のボクじゃあね。まぁともかくよろしくね」

「う、うん。よろしく」

 

あくまで謙遜の意味なのか、だがそれでも九尾に対しての不信感は晴れず、それはハルヤも同様の様子だったが、不信感を覚えつつも九尾に挨拶を返す。

 

「にしてもチームシャドウ、ちゃんとチームメンバーが存在してたとは驚いたぜ」

「チームメンバー見るのは確かに初めてですもんね」

「おいおい二人とも疑ってたのかよ。まぁでもこれで信用してもらえただろ?」

「まぁ一応はな。で、後残り二人は?」

「いずれ紹介するさ、言ったろ? どいつもこいつも勝手気まま。俺の言う事なんか気来やしねぇ」

「チームリーダーがそうだもんな」

「はは、否定はしねぇ。まぁ今日はこの辺でな」

 

あくまでも用件は挨拶。その要件を終えると早々にその場を後に去り、ルムと九尾もその後に続く。

 

「ハルヤ、どう思う?」

「紫苑さんの事、ですか?」

 

立ち去るその姿を見送ってすぐにハルヤに質問を投げると、回答に対して黙って頷く。

 

「元々エンザさんと紫苑さんってどういう関係で知り合ったんですか?」

 

以前からエンザと紫苑は面識があり、その経緯は同じメンバーだった吉馬やハルヤでさえも知らない。分かるのはただお互いに互いを友達として認識しているという事だけ。

 

「知り合ったのは昔、勿論バトルを通じてだ」

「紫苑さんって昔からあぁいう人なんですか?」

「無礼講なのは昔からだな」

 

基本的な性格は昔かららしいが、それでも一つ気がかりがあるのか「ただ」と付け足して言葉を続ける。

 

「あいつは傍観者で満足する様な奴じゃなかった。なんせ俺もアイツもバトル馬鹿だったし、あそこまで喰えねぇ奴じゃなかった」

「それって?」

「奴が変わった原因なのは間違いなく環境。その環境はチームメイトか、あるいは」

 

それ以上の理由はさすがにエンザにも見当がつく訳は無く、言葉を紡いだ。

 

「ハルやとにかくテメェも気を付ける事だな。紫苑はともかく、そのチームメイト。特に……あの九尾にはな」

「!」

 

紫苑以上に読めない九尾にハルヤも不信感は晴れず、エンザの言葉により一層警戒心は強まった。

 

 

***

 

 

 

 

「輝来ハルヤ、そして火龍エンザか。君が目を掛けてるのがあの二人って訳か」

「どうだった? 会ってみた感想は?」

「悪くはない、とだけ言っておこうかな。君が目を掛けるのは理由は何となく察しが付くよ」

「そうかい、なら決まりか?」

 

裏路地を歩きながら意味深な会話を交わす紫苑と九尾、そして何かを確認する紫苑に対して九尾は黙り込んだまま紫苑の先頭へ出るとそのまま振り返って前に立ち止まる。

 

「ボクが決断した所で、君は関係ない筈だよね、リーダー?」

「はっは、そうだよなぁ。俺には管轄外、それで構わねぇさ」

 

口角を上げて笑うと、そのまま九尾の横を通り過ぎて裏路地の角を曲がる。だが、その後を付けているようにもう一人の影があり、その人物も後を追うと角を曲がる。

 

「思った通りだったね」

『!』

 

だが曲がった先には紫苑と九尾の姿は無く、代わりにルムの姿があり、その人物の背後から九尾と紫苑が顔を出し、紫苑達の前にいるのはどこか小柄の女性の姿だった。

 

「いつから、気づいてました?」

 

自分の状況を正確に把握すると、その女性はそれほど驚いた様子は見せず冷静に尋ねる。

 

「気付いていたのはずっと前だよ。別に泳がせても良かったんだけどね、そろそろ目障りだったんでいい加減諦めてもらおうと思ってさ」

「そういう訳だ。何を探ってたかは知らねぇがここらで手引いてもらおうか?」

 

真っ先に質問に答えたのは九尾。それに続いて、紫苑もその女性に対して、警告するように言い放つが、当然黙って退く気はない。

 

「もし、それに従わない場合は?」

「手荒な事はしねぇ。俺達はカードバトラー、揉め事や争い事も決めるのは一つだ」

 

言い放つと同時にその真意を即座に理解したのか、紫苑もその女性もほぼ同時にデッキを取り出す。

 

「察しが良くて何よりだ。やる前に名前ぐらい聞かせてもらおうか?」

「時雨雪、それが僕の名です。そちらの自己紹介は不要ですよ、紫苑さん?」

「手間が省けて助かるぜ、なら当然俺達のバトルも場所も把握してるだろうな?」

 

雪と名乗る女性は黙って頷き、「ならついて来い!」とすぐ近くのステージまで場所を移すと、そこで互いにフィールドに上がってデッキを台座にセットする。

 

「この場所なら邪魔は入らねぇ。人目にもつかねぇし、神子達BCOの連中にも嗅ぎ付けれねぇさ」

「まさかこんな場所にまでバトルフィールドがあるなんてね」

「白々しい。とっくに調べてはいたんだろう。まぁこのスタジアム自体は空き家同然だったのを俺等が勝手に拝借して、フィールドは俺等が用意したんだけどな」

 

一方でルムと九尾の二人は先にステージの観客席に腰掛け、雪は二人を一瞥しつつも対戦相手である紫苑を見る。

 

「一ついいですか? このバトル、何故あなたが真っ先に出てきたんですか?」

「不服か?」

「そういう訳ではないです。ただ、アナタは傍観すると思ってましたから」

「気にするな、たまにはそうい事もあるってだけだ。それより、俺からも一つ聞かせてもらっていいか?」

「えぇ、どうぞ」

「テメェが知りたい一番の情報は何だ?」

「……調べる以上、全てに決まってます。何もかもすべて」

「はっ、俺達のチーム名はシャドウ。つまり影だ、影を探ったって出るものなんかありゃしねぇ、それにどの道、負ければこれ以上お前等ができる事は無くなるさ」

「あくまでも、私が負けたらの話ですよね?」

 

互いに一方も引かない様子だが、その様子を傍観してる九尾は、やれやれと手を上げながら紫苑の様子を呆れるように見ていた。

 

「相変わらずボク等のリーダーは口数が多い。こういう時ぐらいは刹那に終わらせてほしいものだよ。君もそう思うだろ? ルム」

「僕には関係ないさ。リーダーがやるって言ったんだからそれに合わせるだけ。アンタもそうでしょ?」

「そうだね。この場においてのボク等の役職は何もない、この場の役目はリーダーの仕事さ」

 

以前何を考えているのか、九尾からはンアに一つ感情が読み取れず、ルム自身は言葉に反応する素振り一つ見せず、ただ静かにこれから始まるであろう二人のバトルをただ傍観する。

 

「さぁそろそろ始めるか」

 

一方で互いに準備を終え、時雨も構えると互いに開戦の合図を叫ぶ。

 

「「ゲートオープン界放ッ!」」

 

 

 

 

***

 

[01ターン、紫苑side]

[スタートステップ]

[ドローステップ]4枚→5枚。

 

「俺のターン、さまよう甲冑を召喚」

 

フィールドに現れるさまよう甲冑、既に死した存在でありながら甲冑を纏い、戦うその姿は亡霊武者と例えるに相応しい姿だった。

 

【さまよう甲冑】3(紫1 白1)紫、スピリット、魔影。

Lv.1(1)BP1000、Lv.2(3)BP3000。

Lv.1、Lv.2『このスピリットの召喚時』

自分はデッキから1枚ドローする。

Lv.1、Lv.2

このスピリットの色とシンボルは白としても扱う。

 

[リザーブ]4個→0個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]4枚→5枚。

 

「召喚時効果で1枚ドロー。これでターンエンドだ」

 

[手札]4枚→5枚。

[フィールド]さまよう甲冑Lv.1(1)BP1000。

 

 

 

 

[02ターン、時雨side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

[ドローステップ][手札]4枚→5枚。

 

「メインステップ、機兵フルングニル、さらに神機ゲイボルグをそれぞれ召喚します」

 

一体はホバーボードを乗りこなす機械兵型のスピリット、フルングニル。もう一体は神話に語り継がれし兵器の名を持つスピリット、ゲイボルグ。

 

【機兵フルングニル】2(2)白、スピリット、武装。

Lv.1(1)BP1000、Lv.2(2)BP2000、Lv.3(3)BP3000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3:フラッシュ『相手のアタックステップ』

このスピリットを疲労させることで、このターンの間、自分のスピリット/アルティメット1体をBP+(このスピリットのBP)する。

Lv.2、Lv.3

バトルしていない疲労状態のこのスピリットは相手のスピリット/マジックの効果を受けない。

 

【神機ゲイボルグ】3(2)白、スピリット、武装。

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(2)BP6000。

Lv.2【強化】

自分の「スピリット回復効果」の体数を+1体する。

 

[リザーブ]5個→0個。

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]5枚→3枚。

[フィールド]機兵フルングニルLv.1(1)BP1000、神機ゲイボルグLv.1((S1))BP3000。

 

「私はこれでターンエンドです」

「白デッキ使いか、攻めてこないのもやはり守り重視って訳か?」

「まだお互い最初のターンです。そう判断するのは早計すぎませんか?」

「確かにな。まぁ口が軽いのが俺の性分だ、早計なのもそのせいかもな」

「口が軽いですか……。その割には、あなたの心情は何一つ理解できませんけどね」

 

まるで紫苑の事を見透かしたような言葉、それが引っかかったのか、「それはどういう意味だ?」、と涼しげな表情で尋ねる。

 

「いえ、別に非難してるわけではないです。ただ、まだ出会って間もないですけど、あなたの言葉から、何一つあなたの心を察せない、そう思っただけです」

「んな事言われたのは初めてだな。案外カウンセラーとかに向いてるかもな。アンタ」

「さぁ、それは分かりませんが、あなた自身、自分の本心を他人に語るつもりはないでしょう?」

「さぁな。まぁ無駄話は飽きちまう。さっさと続けようか?」

 

 

 

 

[03ターン.紫苑side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]5枚→6枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]1個→4個。

 

「メインステップ、ソウルホースをLv.2で召喚。さらにさまよう甲冑をLv.2にアップ。最後にバーストをセットだ」

 

【ソウルホース】1(紫1 赤1)紫、スピリット、魔影。

Lv.1(1)BP1000、Lv.2(2)BP2000。

このスピリットは赤のスピリットとしても扱う。

 

[リザーブ]4個→0個。

[手札]6枚→4枚。

[フィールド]さまよう甲冑Lv.2(3)BP3000、ソウルホースLv.2(2)BP2000。

 

 

 

 

[04ターン、時雨side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]1個→4個。

 

「僕のターンです。鉄砲機兵タネガシマを召喚します」

 

[リザーブ]4個→3個。

[手札]4枚→3枚。

 

【鉄砲機兵タネガシマ】1(1)、白、スピリット、機巧/武装。

Lv.1(1)BP3000、Lv.2(2)BP5000、Lv.3(4)BP7000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3

お互いのデッキは破棄されない。このスピリットにソウルコアが置かれている間、さらに、このスピリットは、相手のスピリット/アルティメット/ネクサスの効果を受けない。

 

また新たに現れるスピリット、さらに続け様にもう一枚のカードに手を掛ける。

 

「マジック、リロードコアを使用します」

 

【リロードコア】5(2)、白、マジック。

『メイン効果』系統:武装を持つ自分のスピリット1体につき、ボイドからコア1個を自分のリザーブに置く。

『フラッシュ効果』このターンの間、スピリット1体をBP+3000する。

 

[トラッシュ]0個→3個。

[手札]4枚→2枚。

 

「武装を持つスピリットは現在三体、ボイドからコア3個をリザーブに追加。さらにそのコアで鉄砲機兵タネガシマをLv.3にアップ」

 

[リザーブ]3個→0個。

[フィールド]鉄砲機兵タネガシマLv.3((S1(3)BP5000、神機ゲイボルグLv.2(1)BP5000、機兵フルングニルLv.2(1)BP2000。

 

「へぇー、白マジックでコアを増やして、どこまでも堅実な戦略だねぇ」

「続けていいですか?」

「はいはい、アンタはお喋りは不要みたいだな。まっ、バトルを続けてどうぞ」

「では遠慮なく」

 

アタックステップ開始を意味するように手を紫苑へと向けると、時雨のスピリット達は一気に戦闘態勢に切り替わる。

 

「神機ゲイボルグでアタック!」

「ライフで受けるぜ」

 

初手の一撃、ゲイボルグの槍が展開されたバリアを貫き、破壊する。

 

[紫苑side]

[Life]5→4。

[リザーブ]0個→1個。

 

「続けます。鉄砲機兵タネガシマでアタック!」

「そいつはさまよう甲冑でブロックさせる」

 

[Battle]鉄砲機兵タネガシマLv.2((S1)1)BP5000vsさまよう甲冑Lv.2(3)BP2000。

 

「フラッシュタイミングだ、手札から妖花吸血爪を使う。不足コストはさまよう甲冑から確保だ」

 

[リザーブ]1個→0個。

[フィールド]さまよう甲冑Lv.2(3)BP3000→さまよう甲冑Lv.1(1)BP1000。

[トラッシュ]0個→3個。

 

「手札を1枚破棄。効果で機兵フルングニルのコアをトラッシュに送るぜ」

 

[手札]4枚→2枚。

 

コアを失った機兵フルングニルはその場から消滅するが、一方でタネガシマとさまよう甲冑のバトルに影響はない。そのままBPで上回るタネガシマはさまよう甲冑の振り下す刀を銃で受け止めて弾き返すと同時に手に持つ銃の火縄を着火させ、構えると同時に発砲。銃弾は身に纏った甲冑を貫き、さまよう甲冑は爆発四散する。

 

「相手による自分のスピリット破壊後でバーストだ! アルティメットランスロット!」

 

【アルティメットランスロット】6(3)極、アルティメット、魔影。

Lv.3(1)7000、Lv.4(3)10000、Lv.5(5)BP13000

【召喚条件:自分の紫のスピリット1体以上】

【バースト:相手による自分のスピリット/アルティメット破壊後】

自分のトラッシュにある系統:「魔影」を持つスピリットカード1枚を召喚できる。この効果発揮後、このアルティメットカードを召喚する。

【Uトリガー】Lv.4、Lv.5『相手のアタックステップ開始時』

Uトリガーがヒットした時、このターンの間、カードが下にある相手のスピリット全てはアタックできない。

 

「アルティメットランスロットはトラッシュにある魔影を持つスピリット一体をノーコストで召喚できる」

「という事は、さまよう甲冑を再召喚、という事ですね?」

 

先程バトルによって破壊されたさまよう甲冑の系統は魔影。条件を十分に満たす為、召喚は可能だが、時雨の言葉に対し、「はぁ?」と可笑しそうな表情を浮かべる。

 

「俺がさまよう甲冑を復活させるなんて一言も言ってねぇだろ? 俺が呼び出すのは、コイツだ」

「!?」

 

口元を歪めながらあるカードを指して呟くと、フィールドの地面に渦巻く暗い影、不用意に近づくとまるで吸い込まれそうに感じるソレは例えるならブラックホールのようなものだろう。そしてその黒い影の出現と共に、何か掛け抜ける音がその影から響きだす。

 

「さぁ出番だ。堕ちし闇の世界を統べし騎士よ、全ての光を断ち消せ! 闇騎神ネメシスを召喚ッ!」

 

黒き影の中、何かが駆け抜ける音は徐々に大きくなり、そして次の瞬間、ピタリとその音が止んだかと思うと、刹那に黒き影から飛び出す騎士の姿、そのスピリットこそ闇騎神ネメシスの姿。

 

「ネメシス! 何時の間にそんなカードがあなたのトラッシュに……嫌、あの時ですか!」

 

そこまで言い掛けた瞬間、先程紫苑が妖花吸血爪を使用した事を思い返し、咄嗟にマジックの効果で捨てた一枚こそネメシスであることを瞬時に察し、紫苑はそれに笑って見せた。

 

「御明察。コイツこそが俺のキースピリットだ。気づくのはワンテンポ遅かったな」

「……ターンエンドです」

 

冷静な態度でターンエンドをコールするが、状況がどちらに優勢化は明白。そのまま紫苑へとターンは移っていく。

 

 

 

 

[05ターン、紫苑side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]0個→1個。

[ドローステップ][手札]2枚→3枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]3個→0個。[リザーブ]1個→4個。

 

「ネメシスとアルティメットランスロットをそれぞれLv.2にアップ! そのままアタックステップだ!」

「!」

 

[リザーブ]4個→0個。

[フィールド]闇騎神ネメシスLv.2((S1)2)BP11000、アルティメットランスロットLv.4(3)BP10000、ソウルホースLv.1(1)BP1000。

 

「ネメシス、テメェの思う存分やってやれ!」

 

紫苑の指示にネメシスはまるで喜ぶように剣を振り回しながら、手綱を引くとそのまま時雨へと向かって行く。

 

「ネメシスのアタック時効果! 【毒刃】発揮ッ!!」

 

剣に瘴気を集わせ、そのまま駆け出しながら剣を振り下すと、時雨のデッキから2枚のカードが飛び出し、そのカードは時雨のスピリットであるゲイボルグに取り込まれる。

 

【闇騎神ネメシス】8(4)紫紫、スピリット、魔影。

Lv.1(1)BP7000、Lv.2(3)BP11000、Lv.3(4)BP14000。

Lv.1、Lv.2、Lv.3【毒刃:2】『このスピリットのバトル時』

相手のデッキの上からカード2枚を裏向きで相手のスピリット/アルティメットの下に置く。下のカードはそのスピリット/アルティメットがフィールドを離れる時、破棄する。

Lv.3『このスピリットのアタック時』

このスピリットがブロックされた時、相手のスピリット/アルティメット全ての下にあるカード3枚につき、相手のライフのコア1個を相手のリザーブに置く。

 

「ネメシス、メインのアタックだ!」

「ライフで受けます!」

 

一気に飛び上がると展開されたバリアへと圧し掛かり、自身の体重に加えそのまま、剣の一撃を加えて、時雨のライフを2つ破壊する。

 

[時雨side]

[ライフ]5→3

[リザーブ]0個→2個。

 

「ぐっ!」

「ターンエンド」

 

 

 

 

[06ターン、時雨side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]2個→3個。

[ドローステップ][手札]2枚→3枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]4個→0個。[リザーブ]3個→7個。[フィールド]鉄砲機兵タネガシマ回復。

 

「……闇騎神ネメシス、それがあなたのキースピリットですか」

「あぁ、それがどうかしたか?」

「……闇の神、あなたのキースピリットという点では納得できるスピリットです」

「やけに含みのある言い方じゃねぇか。さっきからテメェは一体俺の何を探ってんだ?」

「…………」

「黙秘か。まぁいいぜ、でもバトル中だ。余計な詮索はなしにしようぜ?」

「えぇ、でもそれはお互いに、ですね」

 

不穏な空気を漂わせながらも、会話をそこで切り上げてバトルに戻る。

 

「キースピリットを出して優勢気取りかもしれませんが、そこまでです。まずはバーストセット、そしてタネガシマをLv.2にダウンさせます」

「!」

「眩く照らすは王者の凱光! 究極の翼で白銀の空に昇れッ! アルティメットグランウォーデン! Lv.4で召喚ッ!」

 

ネメシスの時とは真逆に空に昇る白い光、白銀の翼を広げて雲を裂き、眩いその姿を映し出す究極の姿────アルティメットグランウォーデン。

 

[手札]3枚→1枚。

[リザーブ]10個→0個。

[トラッシュ]0個→5個。

[フィールド]アルティメットグランウォーデンLv.4(3)BP20000、神機ゲイボルグLv.1(1)BP3000、鉄砲機兵タネガシマLv.2((S1)1)BP5000。

 

「へぇ、アンタのキーカードはアルティメットか」

「えぇ、お互いに切り札が出そろい、これでお互いイーブンです」

「いいぜぇ? さっさと来な!」

 

「遠慮なく」、そう言ってアタックステップを開始させたと同時に、突如アルティメットランスロットは剣を構えて、その眼光を輝かせる。

 

「この瞬間! アルティメットランスロットの効果発揮だ!」

「!」

「アルティメットトリガー、ロックオン!」

「コスト4、氷雪サークル」

「ヒット!」

 

カードを撃ち抜くような仕草を取ると同時にアルティメットランスロットは掲げた剣を振り下すと、地面から突如茨が飛び出し、それはゲイボルグを拘束し始める。

 

「!」

「裏向きのカードを入れられてるゲイボルグはこのターン、アタックはできねぇぜ?」

「だったら! アルティメットグランウォーデン、アタックです!」

 

臆することなく果敢にキーカードであるアルティメットグランウォーデンに指示を出すと、白銀の翼を広げ、一瞬で空へと飛び出すと、両腕の砲台を紫苑へと構える。

 

「今度はこっちの番です。アルティメットグランウォーデンのアルティメットトリガー、ロックオン!」

「!」

 

【アルティメットグランウォーデン】8(4)極、アルティメット、新生/武装。

Lv.3(1)BP15000、Lv.4(2)BP20000、Lv.5(5)BP30000

【召喚条件:自分の白スピリット1体以上】

【Uトリガー】Lv.3、Lv.4、Lv.5『このアルティメットのアタック時』

Uトリガーがヒットした時、トラッシュに置いたカードのコストと同じ体数の相手スピリットを残し、他の相手のスピリット全てをデッキの下に戻す。

【クリティカルヒット】:ヒットしたカードのコストが3以上なら、さらに相手のスピリット3体を手札に戻す。

Lv.5『このアルティメットのアタック時』

系統:「武装」を持つ自分のスピリット1体を疲労させることで、相手のバースト1つを破棄する。

 

やられたらやり返す、そう言わんばかりにアルティメットトリガーを発動させると、紫苑のデッキの上のカードを吹き飛ばすと、咄嗟にそのカードを手に取る。

 

「コストは?」

「ハッ、ソウルホース。コストは1だ」

「ヒット! 効果によりスピリットが一体になるようデッキボトムに送ります!」

「アルティメットランスロットは対象外。だったら俺はソウルホースをデッキ下に送るぜ」

 

「残念だったな! 俺のネメシスは除去できてないぜ!」

「ですがまだアルティメットグランウォーデンのアタックは続いています!」

「そいつはアルティメットランスロットでブロックだ!」

 

[Battle]アルティメットグランウォーデンLv.4(3)BP20000vsアルティメットランスロットLv.4(3)BP10000

 

アルティメットランスロットはその場にしゃがみ込んだかと思うと、まるで足をバネのように一気に空中へ飛び上がると、剣を構えてそのままアルティメットグランウォーデンへと迫り、突きを構えるが、上空に高く飛び上がるアルティメットランスロットとは対照的に、アルティメットグランウォーデンは翼を下ろして、急速に降下し、アルティメットランスロットが繰り出す突きが空を切った瞬間に、高度をそこで止めると、そのままアルティメットランスロットに視界を向けて両腕の砲台を構えると、そのまま空中で身動きの取れない相手に向けて一気に撃ち放ち、破壊する。

 

「まだです。タネガシマでさらにアタック!」

「ライフだ!」

 

タネガシマによる追撃、火縄銃を構えて展開されたライフを射ち貫くと紫苑のライフを破壊する。

 

[紫苑side]

[Life]4→3。

[リザーブ]3個→4個。

 

「ちッ!」

「これでターンエンドです」

 

 

 

 

[07ターン、紫苑side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]4個→5個。

[ドローステップ][手札]3枚→4枚。

[リフレッシュステップ][フィールド]闇騎神ネメシス回復。

 

「メインステップだ。もう一度バーストセット。さらにネメシスをLv.3にアップして、さまよう甲冑を召喚。召喚時効果で1枚ドローだ!」

 

[手札]2枚→3枚。

[リザーブ]5個→0個。

[フィールド]闇騎神ネメシス、さまよう甲冑。

 

「闇騎士ネメシスでアタック! そして【毒刃】発揮! 今度もゲイボルグにカードを2枚裏向きで入れる!」

「!」

 

再び2枚のカードを取り込まさせられ、まるで苦しむようにふらつき、そのまま力無くに項垂れる。

 

「ゲイボルグでブロックします!」

 

[Battle]闇騎神ネメシスLv.3(5)BP14000vs神機ゲイボルグLv.1((S1)1)BP5000

 

自らの形状を槍に変形させそのままネメシスに突っ込むが、流石に力の差は歴然。いとも簡単にその一撃を簡単に弾き返し、ネメシスにとってゲイボルグではまるで相手にならなかった。興味が失せたようにゲイボルグから視線を外し、そのまま時雨に向けて剣を構え始める。

 

「ブロックしたな? ならネメシスの効果発揮だ! ブロックされた時、相手スピリットの下にあるカード3枚につき、ライフを1つ破壊する!!」

 

構えた剣が輝き始めると、そのままその光を斬撃波として一気に撃ち出し、咄嗟にバリアが展開されるも、斬撃波は一瞬で展開されたバリアを切り裂き、ライフを破壊する。

 

[時雨side]

[ライフ]3→2。

[リザーブ]0個→1個。

 

「ハッ! そしてメインのバトル! BP差は圧倒的だ、ネメシス、決めちまえッ!」

「……いえ、決めるのはこっちです! ライフ減少時により、バースト発動!」

「!?」

「マジック、次元断! バースト効果により、さまよう甲冑を手札に!」

 

【次元断】4(2)、白、マジック。

【バースト:自分のライフ減少時】

相手のスピリット1体を手札に戻す。その後コストを支払う事で、フラッシュ効果を発揮する。

『フラッシュ効果』このバトルの間、自分のライフを減らした相手のスピリット1体を破壊する。または、このバースト発動時に自分のライフを減らした相手のスピリット1体を破壊する。

 

トリガーが引かれたバーストカードを手に取ると、即座にその効果を発動させると、さまよう甲冑はその場から吹き飛ばされ、紫苑の手札へと戻されるが、バーストの効果はそれだけではない。

 

「コストを支払う事で、このバースト発動時に自分のライフを減らした相手スピリットを破壊する! 不足コストはアルティメットグランウォーデンから確保!」

「!!」

 

[フィールド]アルティメットグランウォーデンLv.4(3)BP20000→アルティメットグランウォーデンLv.3(1)BP15000。

 

次元断を発動させると同時に、アルティメットグランウォーデンは片膝を突きながらもその眼光を輝かせると、片腕の砲台を構え、粒子砲を集束し始めたかと思うと、集束された粒子砲はさながら刃の如く、地面を切り裂きながらこちらに向かって駆け出すネメシスに対し、粒子の刃を一気に振り上げ、巨大な刃と化した得物に避ける術はなく、ネメシスは両断され、その場で大爆発を起こす。

 

「(ネメシスの効果を知った上で、ライフ減少時のバーストに繋げたのか!?)」

 

肉を切らせて骨を断つ、当然ネメシスが先にマジックの効果で破壊された事でゲイボルグはバトルによる破壊を免れ、逆に紫苑は自分の場のスピリットを全滅させられてしまい、これ以上の打つ手はなかった。

 

「…………」

 

目の前でキースピリットが破壊され、フィールドはがら空き状態。だがそんな光景を目の当たりにしても、多少驚いたように目を見開くだけでそれ以上のリアクションをすることは無く、キースピリットの破壊に何も感じていないか、または感情を表に出さないだけのか、紫苑の真意は対戦している時雨でも全く分からなかった。

 

「キースピリットが破壊されたっていうのに、あまり落ち込んでるようには見えませんね」

「それは、俺が冷たい人間って意味か?」

「……いえ、そういうつもりはないです。ただあなたが今何を考えているのか、それが分からないだけです」

「まだ俺なんかを理解しようとしてたのかよ。アンタも物好きだな」

 

物可笑しそうに笑って見せながらも、相変わらず食えない態度で、「だが」と言葉を続けて行く。

 

「残念だが幾ら俺を理解しようとしたとこで無駄だ。俺の腹の中なんて誰にもわかりゃしねぇ。嫌、そもそも分かってもらおうとも思っちゃいない」

「何故そこまで自分を隠すのですか?」

「ハッ、自分を隠すだと? 面白れぇこと言うなぁ。なら逆に聞くがテメェは他人に自分の全てを理解してもらっていると本気で言えるか?」

「?」

「人間ってのは大なり小なり隠し事を抱えてる生き物だ。だからこそ、何考えてるかも読み切れないものがあるから面白い。隠し事一つもねぇ正直者なんて、ただつまらねぇだけだ!」

 

口角を上げて、不敵に発言するとそのままターンエンドをコールし、紫苑の発言に対し時雨はますます警戒の色を隠せなかった。

 

「それがあなたの考えなのですね。成程、ハッキリしました」

「?」

「僕とアナタではまるっきり考えが正反対みたいですね。ならばこそ、このターンであなたを倒すことに躊躇いはない!」

「へぇ、言ってくれんじゃねぇか!」

 

 

 

 

[08ターン、時雨side]

[スタートステップ]

[コアステップ][リザーブ]1個→2個。

[ドローステップ][手札]1枚→2枚。

[リフレッシュステップ][トラッシュ]8個→0個。[リザーブ]2個→10個。[フィールド]アルティメットグランウォーデン回復。

 

「メインステップ、オートマチックガンナーをLv.2で召喚、さらに全てのスピリットとアルティメットグランウォーデンを最高Lvにアップ」

 

[手札]2枚→1枚。

[リザーブ]10個→0個。

[フィールド]アルティメットグランウォーデンLv.5(5)BP30000、鉄砲機兵タネガシマLv.3((S1)3)BP7000、神機ゲイボルグLv.2(2)BP6000、オートマチックガンナーLv.2(2)BP2000。

 

「アタックステップ! アルティメットグランウォーデンでアタック! アタック時、アルティメットトリガー、ロックオン!」

「ッ! コスト5、マークオブゾロ」

「ヒット!」

 

アルティメットトリガーがヒットするが、既に紫苑の場にはスピリットは無く効果を使うまでもない。本命の効果はその先にある。

 

「さらにアルティメットグランウォーデン、Lv.5の効果。オートマチックガンナーを疲労することで相手のバーストを破棄します」

 

再び砲台を構えて、伏せられたバーストカードを撃って吹き飛ばし、バーストが破棄され、ブロッカーも既に紫苑の場にはない。残りライフは3つ、全ての攻撃が決まれば、バトルは時雨の勝利で間違いなく幕引きとなるだろう。

 

 

 

 

だがあくまでも決まれば、の話。

 

「……宣言した筈だ、読み切れない物があるから面白いと。バトルだってそうだ、最後まで明かしてねぇとっておきで勝負を決められたなら、そいつはさぞ痛快になるだろうぜ」

「!?」

 

意味深な言葉、咄嗟に警戒するように構えるが、紫苑にとってもう成すべき準備はできている。口角を上げて大きく笑って見せる。

 

「身構えなくてもすぐに分かるさ、引き金は引かれた!」

「一体を何を!?」

「バースト発動! 丙の紫煙巨人!!」

 

吹き飛ばされた筈のバーストが紫苑の元に突如舞い戻ったかと思うと、そのバーストを発動させ、フィールドに紫の瘴気が形となって集い始めると、それは形となり、その中心に見開かれる眼光、紫煙巨人の姿だった。

 

【丙の紫煙巨人】7(3)紫、スピリット、十冠/霊獣。

Lv.1(1)BP5000、Lv.2(3)BP8000、Lv.3(6)BP10000。

セットしているこのカードは、相手によって破棄された時、バースト条件を無視して発動できる。

【バースト:相手による自分のスピリット破壊後】

疲労状態の相手のスピリット/アルティメット1体と、相手の合体しているブレイヴ1つを破壊する。この効果発揮後、このスピリットカードをコストを支払わずに召喚する。

Lv.2、Lv.3『このスピリットのアタック/ブロック時』

このスピリットをBP+5000する。

 

「どうして、確かにアルティメットグランウォーデンの効果で破棄した筈!」

「引き金は引かれたと言ったろう。こいつはライフ減少時で発動するバーストだが、それとは別に、相手の効果によって破棄された時にも発動される!」

「バースト破棄された時が、トリガー!?」

「さぁ、バースト効果だ! 相手の疲労状態のスピリット、又はアルティメット一体を破壊だ! グランウォーデン!!」

 

紫煙巨人は迫るアルティメットグランウォーデンに対して手を翳すと、その体に瘴気がまとわりつき始め、紫煙巨人が翳した腕を徐々に閉じて行くと、体にまとわりつく瘴気はまるで拘束具のように徐々に締め付ける力を強めていく。

 

「グランウォーデン!」

 

アルティメットグランウォーデンの動きは完全に空中で静止、と同時に最後に紫苑は「殺れ」、と止めを促すように囁くと、そのまま紫煙巨人は無慈悲にその手を握り締め、アルティメットグランウォーデンは完全に締め潰され、その場で爆発四散する。

 

「ッ! ターンエンド」

 

キースピリットを破壊され、これ以上追撃するべきではない。そのままターンを終え、続く紫苑のターン。

 

 

 

 

[09ターン、紫苑side]

[スタートステップ]

[コアステップ]8個→9個

[ドローステップ]1枚→2枚。

 

「メインステップ。そろそろ終いにしようか。闇を呼び込む深淵の使者、獄土の魔導士ディナイアル、召喚」

 

[リザーブ]9個→3個。

[トラッシュ]0個→5個。

[手札]2枚→1枚。

 

暗い闇から這いずるように現れるディナイアル。死霊の魂を傍らに付き添わせながらその不気味な姿を見せる。

 

「ディナイアルの召喚時効果発揮、【ソウルドライブ】! リザーブにあるソウルコアを除外!!」

「ソウルコアを!?」

 

【獄土の魔導士ディナイアル】6(紫2 極2)極、アルティメット、邪神/魔影。

Lv.3(1)BP10000、Lv.4(2)BP14000、Lv.5(4)BP16000。

【召喚条件:自分のライフ3以下】

Lv.3、Lv.4、Lv.5『このアルティメットの召喚時』

【ソウルドライブ】自分のリザーブのソウルコアをゲームから除外すると、相手のスピリット/アルティメット1体のコア全てを相手のリザーブに置く。この効果で置いたコア1個につき、自分のトラッシュにある紫のスピリットカード1枚をコストを支払わずに召喚できる。

Lv.4、Lv.5『このアルティメットのアタック時』

疲労状態の相手のスピリット1体を破壊する。

 

ソウルコアを手に取ってフィールドのディナイアルに投げ入れると、ディナイアルはソウルコアを粉々に砕きその眼光を輝かせる。

 

「ソウルドライブ! オートマチックガンナーを対象に効果発揮。そのスピリットのコア全てをリザーブに送る!」

 

宣言と共に紫の瘴気を含んだ沼がオートマチックガンナーを引き摺り込み、闇の中に呑み込まれてしまう。

 

「さらに効果だ、この効果でリザーブに送ったコア1個につき、トラッシュの紫のスピリットを一体召喚できる」

「!」

 

オートマチックガンナーに置かれていたコアは2個。よってトラッシュのスピリットを2体まで召喚可能だが、紫苑は呼び出すべきスピリットは決まっている。

 

「安心しろよ、出番は主役は1役、なら登場も1体だけでいい。つー訳でディナイアル、お前も主役の出番に立ち退いてもらうぞ?」

「一体何を!!」

「あぁ? 分かり切ってるだろうだが、呼び出すスピリットは俺のキースピリット!! 再び冥府より舞い戻れ、闇騎神ネメシス、Lv.2で召喚ッ!!!」

 

ディナイアルから維持コストを確保し、ディナイアルはその場から消滅するとー、先程オートマチックガンナーを呑み込んだはずの沼は徐々に広がり始め、そこから闇騎神ネメシスが再び飛び出す。

 

「!!」

「アタックステップだ、ネメシスでアタックッ! そして【毒刃】の効果発揮だ!」

 

再度2枚のカードがゲイボルグに取り込まされ、ネメシスが迫り来るが時雨にとって、その攻撃を止める以外に手はなかった。

 

「鉄砲機兵タネガシマでブロック!」

「無駄だ、ブロックした瞬間ネメシスの効果発揮! 下に置かれてるカード、3枚につき相手のライフのコア一つをトラッシュに送る!」

「しまった! ゲイボルグに置かれてるカードは合計6枚!!」

「そういう事だ、どの道アンタの幕引きは決められてんだよ、これでエンドだ!」

「!」

 

そのまま立ち塞がるタネガシマごと時雨に向けて斬撃波を撃ち放つと、剣撃は目の前のタネガシマを両断し、そのまま時雨の残るライフをも両断してしまう。

 

 

 

 

「約束だ。バトルは俺の勝ち、これ以上俺達の詮索は無し、いいな?」

「……分かりました」

 

バトルに負けた以上、相手の要求を拒否する権限は無い。大人しくステージを降り、入り口に向けて歩き出す。

 

「……紫苑さん、一つだけ僕が探りたかったことを教えます」

「?」

「バトルする前に、僕にこう言いましたよね? 影を探っても出てくるものは無いと」

 

一端その場に足を止めて、時雨の言葉に「あぁ」と相槌を返す。

 

「けど、影は何もない場所からはできない。光があるからこそ影が存在する。だから僕が知りたかったのはそれなんですよ、あなたの言う影を作り出した光を」

「!」

 

「あなた風に言えばね」と付け足して、そのまま止めた足を再び動かし、一瞬呼び止めようと声を出しかけるが、気にする事ではないと言い聞かせて、呼び止めようとした言葉を呑み込み、時雨は構うことなくその場を立ち去った。

 

「甘いんじゃないのかい?」

 

バトルを終えて、その場に立ち尽くす紫苑に対し九尾が声を掛ける。その声は平淡ながらも、どこか不服そうに感じ取れた。

 

「役目は果たした。それでいいだろ? それ以上の事は、俺の役目じゃねぇ」

 

どういう意図の言葉なのかは読み取れないが、九尾も一応はその言葉に納得したようにそれ以上は突っ込むことは無かった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

『詮索は失敗したようだな』

 

一方でスタジアムを後にし、帰路を辿る時雨の前に一人の人物が立つ。

 

「すみません、白竜さん」

 

その人物は白髪に白いジャケットを着こんだ一人の少年、白竜。時雨はその少年に対してその場で頭を下げるが、白竜自身は気にしている様子がないように、「構わない」と呟く。

 

「いずれこうなるとは思っていた。まぁ、想定以上に速かったが、どの道遅かれ早かれだ」

「では素直に手を引くという事ですか?」

「あぁ。事情は把握している。バトルに負けた条件である以上、これ以上奴等の詮索には手が出せない」

「申し訳ありません」

「気にするな。俺もあの男自身が仕掛けてくるとは思ってなかった。それに、奴等の詮索が駄目でも、他に探るべきところは山程ある」

 

「行くぞ」と、時雨もその後に続きその場を後にする二人。チームシャドウ、そして時雨と白竜の二人組。彼らはそれぞれ何を隠し、何を探すのか、それを知る者は誰もいない。

 

 





お久しぶりです、ブラストです。長らく更新遅れておりました。お待ちいただいてた方には大変申し訳ありません。気づけば6か月、ほぼ半年遅れの更新となってしまいました。

気付けばバトスピアニメも終わり、リアルも色々ありモチベが上がっていないこの頃でした。本当にすみません……。


今回の話如何でしたでしょうか?今回は初の紫苑のバトル回でした。いつもはおちゃらけてる感じの紫苑ですが今回はまじめなシリアルでのバトル。性格は前作のダイキと同じっぽいですが、彼は彼でダイキとはまた違う心情があるのでご期待いただければと。

今後はもっと早く更新できるよう心がけるつもりです。どうか今後とも問う作品をよろしくお願いします。


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