戦姫絶唱・テイルズ・オブ・シンフォギア (にゃはっふー)
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設定とあらすじ

オリ主の設定(一部隠し)説明、さらにあらすじ。
初投稿、楽しいが怖い。そんな作者ですが、よろしくお願いします。


 オリジナルキャラ説明(能力隠し)

 

 剣崎・龍(けんざき・りゅう)性別男性、現在16歳。

 黒いボサボサ髪に黒目の日本人。いわゆる転生主人公。

 物心ついた時から親はなく、孤児院を転々とたらい回しされ続けたが、あまり気にしていない。

 たらい回しの理由は、彼の周りに不可思議なことが起き、気味悪がられたりとさまざまな理由が挙げられるからだ。

 16になる時、女の子の声を聞き、それを追っていったら次元の亀裂のようなものに落ち、ついに異世界、ルミナシアにやってきてしまう。

 その際、カノンノ・グラスバレーに出会い、行く当てもないので彼女が所属するギルドに住み込み、この世界で生きようと思っている。

 所属するための試験を受けているとき、空から女の子、のちに救世主になる彼女を拾い、世界の命運を賭けた戦いに巻き込まれる。

 戦いの中、自分が自分になる前、なんであったかを知る。

 それでも、いまと、前は違う。そう判断して、彼女たちと共に、世界をよき方向に導く手助けに、その『前の自分』の力を使う。

 救世主と前の自分の力、そしてカノンノ、仲間達のおかげで、いまは平和な時を過ごす。はずだった。

 

 主な武器は、剣士の技に、格闘技。

 前世が人間でないためか、この世界に来てから飛躍するほど身体能力があがり、だいたいの言語や文字は、見ただけで理解できる。

 魔術も扱うことができるが、専門の方々から邪道と言われるほど、なにが何でも接近専用にかえて使う。

 

 性格は面倒ごどに首を突っ込むことを嫌うが、一度決めたことは死んでも貫くめんどくさい性格をしている。

 彼らの仲間曰く、素直ではない、ツンデレ、鈍い、イノシシ、戦闘狂などなど。

 料理など家事はでき、頭はいいはずなのに、面倒と言って力業で仕事する。

 

 ★★★★★★★★

 

 

 俺の名前は『剣崎龍』。本当なら普通の高校生のはずだった男だ。

 だが、自分はどうやら普通ではない。まあ当然だ。まず異世界に来たんだ、普通じゃねぇ。

 元々普通じゃない気配や、出来事はよく自分の周りに起きる。これは子供の頃からだが、実は五歳くらい、つまり物心が付いたときから起きるのだ。

 そもそも、物心ついたときからおかしい。気が付けば森の中にいて、大人達に発見されたんだ。最初は捨て子扱いだったが、あとから捨て子ではなく『そのとき生まれた』のだろうと推測できる。

 そのあとは、色々たらい回しにされた。まあ当然だ。俺は普通の人間じゃない。なんだろう、事実なのにこの厨二病感。

 別に不満はない、どうでもいいの一言ですまして過ごしてきた。

 そんな日々を送り、ある日、森の中で声を聞いた。

『こっ・・・ち・・・僕の・・・』

 これはあとから本人に聞いたが、力が必要だったから君を呼んだと、彼女『ラザリス』から聞いた。

 彼女とのやりとりは、この物語にとってはすでに終わった物語。ここで語る必要はないだろう。なによりいまはいない。深い眠りについて、いまは会えない

 それでも唯一語るとしたら、彼女は俺という異質を招く際、

『この世界だって、別世界を利用したんだ。それを利用させてもらったよ』

 と得意げに言った。それについても、謎のままだった。

 

 

 

 さて、そんなことはさておいて、いまを説明しよう。

「・・・なんだって?」

 俺はまた声を聞いて、仲間達に内緒でギルドから抜け出し、声の主に話を聞きに行った。

 俺は森の中を駆け抜け、開けた場所に着くと、それらは現れる。

 

 紅蓮の炎を纏う、上半身だけの魔神。

 

 モグラのようなもの、ダイヤのような鉱物をはやしたもの。

 

 下半身は魚の、身体が液状の女性。

 

 白いワンピースを着た、両腕が翼の、緑ストレートの女性。

 

 彼らは『精霊』と呼ばれる存在。始め消されるか?と考えたが、氷の精霊と知り合いのため、それはないと思ったが、そういう話ではないらしい。

 だが火の精霊、イフリートは静かに言った

「汝の世界、いや、汝が生まれた世界に、異変が起きている。故に元の世界に出向き、解決して欲しい」

 俺はとりあえず、逃げ出したいと心から思った・・・




・・・とりあえずすいません、主人公はチート能力を持たせます。
なぜこんな物語にしたか、勢いと好きなものを好きにクロスオーバーさせたいからです。
間違いを多くやりそうですが、できれば物語が終わりを迎えるまで書きたいと思います。
一人でも楽しんでもらえることを祈り、処女作を投稿します。
それでは、いまはここまで、ここまで読んでいただき、ありがとうございます


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帰る前の下準備

まだルミナシアです。タグやタイトルが予告無しで変更する可能性を感じながら、連載をしていきます。


 朝早朝、俺こと龍、こちらではリュウとも呼ばれてる俺は、ギルドマスターに依頼内容を説明する。

 まず精霊達についてだが、詳しい内容は元居た世界で異変が起きるとしか聞いてない。

 具体的な内容は彼らもわからない。正直受けたくないが、やはり気にはなる。

 俺が所属する組織『アドリビトム』を管理するマスターを始め、口が堅い仲間達に説明をした。

 その中の一人、クラトスという、俺を始め、若い者が多いこのギルド。メンバーの剣の師匠とも言える人が口を開く。

「お前一人で行く気か?」

 それに関しては全員の意見らしいが、俺は静かに頷く。

「俺の世界は特殊でね。『ノイズ』っていうのが、魔物みたいにいるんだ」

「のいず?」

 誰かが疑問系で聞き返す。

 俺も詳しくは知らないが、特殊指定災害?という名の存在を説明する。

 何年か前に世界政府が発表したそれは、触れただけで人を殺すことができる、とんでもない存在だ。

 それを聞き、少し信じられない顔をしているメンバーだが、俺は続けることにする。

「ノイズは俺でも、力を展開していなければアウト、だと思う。なにより、メンバー全員がいる前で話持ち込まなかった時点で、精霊達も危惧してるんだろう。他の奴らには悪いけど、ノイズと戦う羽目になれば、俺か彼奴しか、対処できない」

「そもそも、それが世界の異変ではないのか?」

「わからん、少なくても戦闘を想定して俺か彼奴以外、俺はあの世界に行く気はないし、引いて言えば、彼奴を連れて行く気もないから、こうこそこそ話し合いを始めてる」

 こんなこと話せば、我らが救世主は、異世界も救世しに来るだろう。

 それだけならいいが、触れなきゃいいだけだろと、お節介の固まりとしか言えない仲間達が次々とあの世界に流れ込むことになる。

 それを察してか、何名か頭を抱えたり、ため息を吐いたりしていた。

「はあ、それにしてもタダ働きか・・・」

 そう、ギルドマスターことアンジュが呟く。

「正直、貴方指名の依頼があるし、あの子達のこともあるから、いなくなられても困るんだけどね」

「すいません、準備ができ次第出発と、終わり次第帰ってきますから」

「わかったわ、貴方の長期クエストを承諾するわ」

「はい」

「準備というのは、いったいなにをする気だ?」

 クラトスの問いに、俺は簡単に説明するように頷いて、復唱するように伝えた。

「まずは宝石、貴金属関係のアイテムを持っていく。向こうの世界とこちらの世界が同じ時間で動いてるんなら、色々と問題が起きてるはずだ」

 まず召喚前、俺の向こうの生活を説明する。

 中学を終えたあとは、簡単にバイトばかりして生計を立てていた。正直高校に行く気もないし、孤児院は中学出たらついに独り立ちさせたのだ。

 寝る場所は、ネトカフェ、ここでは宿屋ということにして、そこを転々としていたと付け加え、俺は向こうの予測を立てる

「俺がいなくなっても騒ぎにはなっていないが、一年くらいは経ってるから、正直金の問題がある」

 前の暮らしに戻ればいいだけだが、なにがどうなるかわからない。資金は欲しいところなので、俺はこちらで稼いだ資金を使い、向こうで金にかえられる宝石、銀食器などを持って帰ることを説明した。

 次の問題は、衣類だが、これはなんと、こちらの世界にある。

 というのも、どのネトカフェを拠点にしようか考えている際、こちらに呼ばれたのだ、実は全ての荷物はこちらの世界にある。むしろ研究対象として学者達に盗られた。

「リュウ、気のせいか誤解のある考えをしてないか?」

「次の問題は」

 俺は無視して続ける。

 次の問題は、銃刀法違反、つもりこちらの世界で世話になった武器一式を、持ち込めないという事態だ。

 俺は仕方なく、腰に下げた剣を仲間達に預けることを説明した。

「次の問題は、本題、異変だけど・・・」

「その、のいず?だったかしら? それが関係してるのかしら?」

 そう、アンジュの言うとおり。向こうの異変について、俺は精霊達から聞いてない。曰く、わからないらしい。

 精霊達の反応からして、知らないのは事実だろうと思い、俺は依頼を引き受けて今に至る。

 だが正直に言えば、向こうの世界に異変なんて、ノイズしか思いつかない。

 まあ、不思議なことばかり体験してる身としては、向こうになにかあっても不思議じゃない。現に向こうの世界で、俺が生まれたんだから。

「とりあえず学者ども、俺の向こうの持ちもん返せ。あとは準備ができ次第、向こうに出向く」

「わかったわ」

 そう言い、学者達は(明らかに渋々)荷物を返し、俺は準備に入る。

 

 

 

 精霊達が指定した場所は『世界樹』の根本、そこで俺は向こうに帰る。

 いまいるメンバーは、クラトスとアンジュ。隠れるようにギルド本部を出ていき、いまは世界樹の根本に向かう。

「世界樹・・・」

 それは目の前の大木、世界樹を見つめる。

 それは世界を生み出す樹、いまは鉱石のようなものと共存しているように、いま世界を優しく見守るその樹を見つめる。

 本来、俺はその鉱石とともに、この世界を害悪として現れたのが、いまはこんな事態になっている。

 なにより、

「服が少しきつい・・・」

「少し背が伸びたんじゃない? それより、その格好があなたの世界の服なの?」

 俺はいま、安物の服を着ている。なんと五枚セットで安く売られていた大手のものだと説明する。

 ズボンや上着なんて、変じゃなきゃいい。だから俺を基準にされたら、向こうの世界の人達がかわいそうだ。

 そんな話をしながら、クラトスは静かに、俺に話しかけた。

「お前は向こうの世界にとどまる気は」

「ない」

 それははっきりそう告げた。

 向こうに友人も、家族も、なにもない。恨みもなければ、希望もない。だから、

「俺は必ずクエスト達成報告しに帰るよ」

「ええ、それはしてもらわないとね」

 ほほえみながら返すアンジュに対して、クラトスは静かにこちらを見つめてくる。

 クラトスは何かを考えているか分からないが、俺は俺の世界に興味はない。

 という、嘘を見抜いてるんだろう。

 正直に言う、俺は向こうの世界が嫌いだ。

 いや、滅んだっていいと思っている。

 俺はそう思う、出来事を知っている。俺は向こうの世界がゲスだと思っている。

 精霊が頼んで来なきゃ、無視している。勝手に滅べ、そう思っている。

 それを見抜いているような視線を感じながら、ついに根本までたどり着く。

「これが精霊が言ってたもんか」

「光の門、って言った方がいいわね・・・」

 感嘆に満ちたアンジュのつぶやきに同意する。

 俺たちの目の前に、光り輝く光の道がある。あとはそこを通るだけで、あの世界に出向く。

 それに若干、俺の力が蠢いた気がしたが、押さえる。

 やはり俺は嫌悪している、あの世界が嫌いで仕方ない。

 俺は剣などの武器を、クラトスに預けつつ、光の道を見つめる。

「それでは、リュウ・ケンザキ。ただいま精霊の依頼にて、異世界出張に行ってきますマスター」

「はい、受理します。いい結果を待っているので、速やかに帰るように。あと、こちらでできることがあれば、ためらい無く連絡などするように」

「はい」

 連絡手段などは思いつかないが、いまはとりあえず、精霊達を信じよう。

 捜索届けは出す人なんて思いつかないが、俺はかなりの月日をこちらで過ごしている。まずは情報集めと住処を見つけないとな。

 

 そう考えていたためか、気づかなかった。

 

 アンジュは俺を見送るため、気づかなかった。

 

 クラトスは俺の心境を見抜くつもりでいたため、気づかなかった

 

「!!?」

 始めクラトスが気づく、二つの影が俺に接近していることに、そのあとアンジュ。俺は気づかなかった。

 そういえばこの道の先なんだろう? 俺がこちらに呼ばれた場所なら日本だよなと思いながらだったため、気づかなかった。

「!?」

 後ろからだきつかれるようにタックルを食らい、そのまま道に入ってしまった。

「ちょっ」

 アンジュの悲鳴を聞きながら、俺は意識は一度ブラックアウトした。

 

 

 

「・・・マジか」

 俺はまず現状を把握するために当たりを見渡す。

 ここは俺が初めてルミナシアに行った先の森だ。ならばここは日本だろう。外国じゃないことにひとまず安堵する。

 荷物からスマフォを取り出し、充電器(手動)で充電して、久しぶりに蘇るスマフォを操作する。

「・・・やっぱ、それなりに月日は進んでるな」

 予測通り、俺がルミナシアに出向いてから、月日が経っている。

 っていうか、

「・・・なにこれ」

 ニュースなどの見て驚く。なんかクレーターが都内でできてる映像が入る。

「なんだこれっ!? ミサイルでも撃ち込まれたのかおいっ」

 それだけでなく、過去の記事を見ても驚くことばかり。

 曰く、月が丸くなくなった。欠けてるっ、なんでやっ!?

 ノイズ殲滅成功、のあとに、生き残りあり? なにがあった世界よっ

 集団変死事件、これもなにっ!? 全員白髪になってミイラか廃人みたいになってる。ノイズじゃないのかよ。

 いま一番は都内で起きた爆発によるクレーターのようだ。いまだニュースはそれを流している。

「えっ、カオスだぞおい。っていうか待て、異変って現在進行形?」

 あとは歌姫達の帰還、マリア、翼・・・ああいいやこれ、アイドル関係ないない。

 そんなことしながら、俺は空を見た。いまの時期は夏、夏休みという時期か。

 簡単に見ただけで、世界がなんか色々あったようだ。こんな短い期間になにがあったのさこの世界。まあいいや、

「空気が汚染されてるな」

 帰って来ての感想は、やはりルミナシアと違って、空気が悪い。

 俺はいま地球に帰って来たという実感をかみしめつつ、俺はいまだ目覚めない片方の頬を突く

 同い年くらいの少女達、同い年か年下の美少女二人。

「にゃっ」

 そんなこと言っても許す気はない。大剣、明らかな刃物を持つ、ピンクの髪の少女、カノンノ・グラスバレーを睨む。

「お前らは・・・」

「りゅ、リュウがいけないんだよっ、どっかに行くって聞いたから」

 彼女はカノンノ・グラスバレー。俺がルミナシアに来た際、始めにあった異世界人。

 ポニーテイルの少女は、剣と大きな荷物を持っていて、俺は睨みながら見る。

「誰から話を聞いた」

 それに目を逸らしつつ、とあるマッドサイエンティストの名前を口にする。

「ハロルド・・・」

 虚空を睨み、荷物返すのに一番渋っていた学者を思い出す。

「ってことは、カノンノ、お前話の内容は」

「えっと・・・貴方の世界に、触れてただけで人を殺せるものがいて、彼女と貴方以外は危険」

「なら来るんじゃねぇッ」

 俺は少し怒鳴り声を出し、それにぴくっと震える二人。あっ、こっちも起きてる。

 カノンノは申し訳なさそうにしている中、俺はため息を深く吐き、まずはと考える。

「とにかく、この世界でお前らの衣服は目立つ。まずは俺が安物の女服買うから、それ着て衣類の買い出し。あとはこの世界の常識を一通り教えるからな」

「はい・・・」

 落ち込むカノンノを無視して、俺は狸寝入りしている救世主の頭を叩く。

「いたっ」

「お前も起きろ、救世主」

「ううっ・・・」

 そういえばこいつの服装だけ、まだいいわけ立つなと思う。カノンノはファンタジー感覚があるが、こいつは外国の服と思う。

 まあ気にしてはいけない。

「ったく、ディセンダーのくせに、他人の世界にまで首を突っ込みやがって」

「そ、そんなことっ。リュウの世界のことだよ」

「お前はルミナシアの救世主だぞっ、はあ・・・」

 いまは座り込むこのディセンダーを立たせよう。そう思い手を伸ばす。

 だが俺は知らない。彼女がこの世界に、深く関わっていることを、俺は知らない。

「いくぞ、カノンノ、『セレナ』」

「「うん」」

 ルミナシアのディセンダー、セレナ。

 その敵として、イレギュラーとして生まれた龍。

 そして、この世界を守る六人の歌姫達。

 いま、新たな物語が紡がれる。が。

「カノンノ、とりあえずお前の衣装は目立つから、待ってろ」

「ええぇぇぇぇぇぇぇぇ」

「わたしは?」

「セレナは・・・平気だろ」

「やった」

 うれしそうにするセレナに対して、カノンノは泣きそうな顔でこちらを見る。

 俺は無視して、町を見下ろす。

 

 

 

 少し前、

「ん?」

 一人の少女が後ろを振り返る。それにリボンをつけた黒髪の少女が首を傾げた。

「どうしたの響?」

「えっと、なんでもないよ未来」

 一瞬光のようなものが見えた気がしたが気にせず、彼女たちは歩き出した。

 いま、物語が始まる、少し前・・・




ここからはゆっくり投稿します。非難はやめてください、私はすでにライフは-です。
わかっている方が多くいると思いますが、セレナはあのセレナです。カノンノと同い年くらいです。どうしてそうなったのかは、追々明かしていきます。
オリ主もまた、ディセンダーの反対の存在。これもわかるでしょう。オリジナルの解釈と設定があります。タグ増えますね。
時間軸はGX後、エルフナインちゃんは元気です。
次回、装者四名と出会う予定です。
あの二人はセレナ、出会ったときどうリアクションするんだろうな
ではここで。ご愛読ありがとうございます


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楽しい異世界ショッピング

とりあえず、オリジナル主人公の謎の力までは、早い段階で公開を目指します。
これは隠していたら、オリ主は戦闘で死ぬ。隠し続ける意味はないですからね。



「なんでこうなった・・・」

 とあるショッピングモール。ベンチに座り、目の前の店、服を選んでいる仲間達を見る。

 まず最初に、カノンノには安物でも女物の服を着てもらい、次に普段着を本格的に買うために、大型の店に着たのだ。

 ちなみにカノンノは向こう、異世界の格好の上、大きな剣を持っている。剣を土の中に隠し、服は公衆トイレで着替えてもらった。俺が持ってきた服を、有無を言わせずに着ろと言ったため、セレナに睨まれた。

 いまは向こうで着ている服の夏服版という格好のカノンノ。セレナも、異世界の服になのか、まあ二人とも楽しそうに買い物をしている。

(女子はどこ行ってもオシャレは好きなかね)

 二人には、この世界のある程度の常識を教えている。車など、カノンノはオーバー過ぎるリアクションをしたが、こちら側の人間にとって、世界中飛び回る、我らが本部こと、飛行船の方が珍しいんだけどね。

 セレナも初めての光景にびっくりしているが、前々からこちらのことは話したりしているため、すぐに休みにはしゃぐ少女達と言う反応になった。これは客観的で始め不安だったが、いまは大丈夫だろうと思う。

 なぜなら、

「あ、あの、僕はもう大丈夫ですからっ」

「えぇ~~~」

 隣の店から大きな声で悲痛の叫びが聞こえる。なんだろうと思いちらっと見ると、金髪の泣きほくろ、妹かなにかの少女の服を買っている、女子学生達が居た。

 夏服らしき女性の団体、その一人がこれでもかと言わんばかりに彼女に着せようとする服を持っている。

「せっかくのお買い物なのに、買い物しないなんてもったいないよっ。エルフナインちゃんかわいいんだから、もっといっぱい可愛い服着せたいよ~。あっ、この服可愛いっ、エルフナインちゃんにぴったりだよっ。次これ着よこれっ」

「ふぇっ」

 そんなカノンノ達以上にはしゃぐ少女がいるんだ。大丈夫だ~と言う心境で、金髪の子はツインテールの黒髪の子と協力して、まだ着せる服を集め、お目付役らしき二人の少女達はその光景を困ったように見ている。

 お金あるんだろうな、いいな~としか思えない。

 二人には悪いが、使用する資金に制限をつけて、値札見ながら買い物してもらっている。

 まずは宝石を売るため、そう言った店に出向いて宝石を売った。宝石と言っても向こうでも安物で、学生が持ってもギリギリ、これは気迫と演技力でカバーして、日本円に変えた。

 むろん、大量な宝石を学生が持ち込めばまずは警察なのは分かり切っているため、それを配慮してだ。

 次に、こちらにいた頃貯めに貯めた口座を確認。まだ生きていたため、俺一人なら何も問題なく過ごせただろう。

 だが問題は異世界人である二人だ。

 俺はともかく、二人には戸籍がない上、女の子だ。ちゃんとした衣食住を配慮しなければ、ギルドマスターに戻ったとき、どんなペナルティーがあるかわからない。

(まずは二人にはホテルなりで寝泊まり、俺はもう公園かどっかで野宿だな)

 昔はともかく、向こうでは野宿には慣れた。いまならできる選択肢である。

(問題があるとすれば、自分達はふかふかベットで、俺が草の上に納得するかだ)

 そこ向けのお人好しズの仲間である以上、反対するだろう。だが、二つも部屋を借りるもとい、資金使用は控えたい。

 

「「なら、一緒の部屋にすればいいじゃない」」

 

 怖い怖い怖い怖い怖い。いま二人に相談したらそんな返しが来る気がして、ぞっとした。

 年頃の女の子二人に男性一人? 帰ったら慈悲無しで処刑される。比喩なく死ぬ。

 ただでさえ、帰ってきたら異常な事件が立て続けに起きている世界に帰ってきたのに、その後も地獄ってどんな話だ。俺は前世でなにかしたか? いや前世事態、世界に害悪なもんだったんだ。くそっ。

「リュウ、買い物終わったよ」

 そう言って、衣類を買い終えたカノンノが話しかけ、セレナもちょこっと隣の店の騒ぎをちらみしたが、すぐにこちらに振り返る。

「大丈夫? ずっと難しい顔してたけど・・・」

「セレナ、そう思うならなんのためらいもなく飛び込んでくるなよ」

「はうっ」

 二人して図星をつかれ、すまなそうな顔になる。反省はしているようだ。

 正直ここに戻ったら、やることはたくさんあるが、一人ならノープランで問題ないと考えた俺の落ち度だ。

 連絡手段、帰還のための術、生活維持、異変への対応等々。考える時間があるのに、まずは現地に着てからと考えた俺のミスだ。

 二人にはそう言うが、まだ少し落ち込んでいる。このままではなにも進展しない。

「とりあえず移動するぞ、話はどっかの公園のベンチで、落ち着きながら対処する」

「「了解」」

 そう二人は言い、俺たちはその場をあとにする。

 

 

 

「デス?」

 そのとき、三人組の男女を振り返る。持っている服を棚に返そうとしているときだ。

「どうしたの切ちゃん?」

 ツインテールの少女が首を傾げ、話しかける。

「あっ、いえ。なんでもないデスよ調っ」

 だが一瞬、一瞬とは言え、先ほどの三人組。その中の少女の後ろ姿を思い出す。

「・・・気のせいデスね」

 そんな分けない、あるはずがない。そう言い聞かせ、着せ替えは続いた。

 

 

 

 どこかの公園のベンチに座り、俺はスマフォを操作、カノンノ達はそれを見つめる。

「っていうか、セレナは格好そのままで平気か?」

「ん~少し暑いけど、平気だよっ」

「セレナだけ、この世界と違和感ないよね? いいな~」

 カノンノはこの世界に来て、まず思ったのは季節の違いだったため、いまは夏服使用になっている。あいにくと女性服の知識がないため、夏服で、なるべく前の服をイメージしたという程度の反応。なぜか頬をふくらませ、そっぽ向かれた。

 まあそれはいい。どーせ新しい服ほめなかったことへの不満だろう。

「しっかし、なにがあったよ世界。月欠けたり、テロあったり、ノイズ殲滅ってなんだ? マジか、ノイズどうやって殲滅したんだよ」

 俺の知識ではノイズに対抗する兵器は無かったはずだ。それなのに、ネットではノイズはいなくなったという話題があるのに、再誕するノイズと言う記事もある。

 極めつけは都内の巨大クレーターだ。政府はいまだ詳細を発表してないが、事件の終わりは告げている。

「人が異世界で己の出世やら、異世界の命運賭けた戦いしてる間、こっちじゃなにが起きてたんだよ・・・」

 異変は終わったのか、終わってないのか、それとも起きるのか。いまだわからない。

「・・・」

 思考する。まず自分達はなにをすればいいのか、考えなければいけない。

「・・・」

 そんな中、セレナがふいに、スマフォ画面を見つめる。

 アイドル記事で、一人の歌姫が映っているが、俺はそれに首を傾げた。

「どうした」

「えっ、なにが?」

 だがセレナはなにか分からず、聞き返す。無意識の反応か? まあ異世界だから、珍しいんだろうな。

「まあいい、とりあ」

 俺がなにか言おうとしたとき、

 

 

 そのとき、なにか大きな爆発音が鳴り響く。

 

 

「「「!!?」」」

 三人はすぐに音のした方を見る。黒煙が上がり、少しずつ騒ぎ声が聞こえ出す。

「とりあえず、力使わずに救命活動するか」

「「うんっ」」

 魔術など、異世界の力は使えない、使わない。と強く言い渡し、三人は駆けだした。

 

 

 

「はい師匠ッ」

 四人はすぐさま連絡を受け、一斉に出る。話し相手は同一人物だった。

『都内で謎の爆発事故が起きたっ、原因は不明だが、かなり火の周りが早いっ。我々の出動要請が来たっ、すまないが休みは返上してくれ』

「了解しましたっ」

「チッ、しかたねぇな」

「がんばるデスよ調っ」

「うんっ」

 そう言って、彼女らも走り出す。そこで未知の出会いがあるとも知らずに・・・




装者達の口調大丈夫かっ!!?
あと戦闘パートまでいけるか、セレナのしゃべり方と性格はこれでいいのか。
俺のライフはまだ-ッ、それでもまだ終わらない。


関係ないけど、セレナの服、夏場であの格好は暑くないだろうか?


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火災現場で始まる物語

今回は長文で行こうと思います。


「大丈夫ですかっ、急いで外に避難してくださいっ」

 近くにいる大人達に声をかけつつ、避難活動を協力するカノンノとセレナ。

 ホテルという建物から、多くの人達が悲鳴を上げて出てくる中、炎の勢いが早く、混乱が目立つが、ホテルの人や、救護活動を手伝う人も居て、カノンノ達は指示を出し取り、手を貸したりしている。

(治癒魔術が使えれば・・・)

 安全な場所で、できる限りの応急処置しているカノンノは、治癒魔術を使える。セレナもそうだが、この世界に傷を塞ぐ魔法はないと釘をさされている。

 自分達にできることは混乱を収め、けが人を安全な場所に運んだりと、限られていた。

「って、セレナ、リュウは?」

「えっ」

 だが、そんな行動を自重しろと言った当人は・・・

 

 

 

 炎の中、瓦礫が落ち、足をふさがれた老人がいた。

「おじいちゃんっ」

 子供は泣きながら、男は老人を見る。

「頼む、孫を助けてくれっ」

「ですけど・・・」

 火の周りは早く、急がなければ自分も手遅れになる。

 男は迷う、このまま逃げ出したい気持ちと、老人を見捨てると言う罪悪感。

 だが、それを壊すように、それが現れた。

「『戦迅狼破』」

 そう突然現れた少年、龍は老人の瓦礫を粉々に吹き飛ばした。

 男達からすれぱ、それは異常だ。

 オオカミを模したなにかが、瓦礫を吹き飛ばし、龍はよしと頷き、

「この人頼む、俺は奧に用がある」

「えっ、あっ、ああ」

 呆然とするが、龍の助けで老人を背負う男。そして龍が通ってきた道にも驚愕する。

 邪魔なものは一切無く、炎で道もふさがれていない。これならがんばれば全員助かる。そう思ったが、龍の言葉を思い出す。

「奧って、奧はすでに手を」

 手を後れと言うよりも早く、彼は炎の中に飛び込んでいった。

 

 

 

 某司令室は、謎の火災による被害を検査していた。

「スプリンクラーなどの火災装置が何者かにハッキングされ、機能停止している模様。さらに連絡網にも何者かの痕跡あり、救援は後れると予測されます」

「何者かのハッキングだと?」

 Yシャツの男性はそれに眉をゆがめ、映像を見る。巨大モニターはいまも異常な早さで燃えている建物が見える。

「何者かの、人為的な災害・・・にしても、なにが目的で」

 この事態を起こした者は、まるで誰かが起こした人為的なものと言わんばかりに、足跡を残している。そう報告を受け考えつつ、いまは切り捨てた。

「俺たちの仕事は人の安否だ。現在の被害現場の状態はッ」

「ホテル従業員が対応している模様、建物内部にはスキャン・・・って」

「どうしたっ!?」

 モニターに映るのは何者かが爆走しているかのように、一人の生体反応が動き回っていた。

 本来壁がある道を破壊したのか、通り抜け、避難者達に道を無理矢理こじ開けていた。

「響くん達はっ!?」

 そんなことできる人物が思いつかず聞き返すが、

「いまだ外で待機中、いま現場ですッ」

「なんだとっ!?」

 こんな荒技ができる人物ではないことに驚愕しつつ、その反応は生体反応を自分以外いなくなっても、いまだ建物内にとどまる。というより、駆けていた。

「何者であろうと、放っておく訳にはいくまい。響くんっ」

『はい師匠ッ』

 

 

 

「ちっ、剣があればまだ動けるん、だがなッ」

 そう言って、開かなくなった扉を破壊して、部屋の中に入る。

 辺り一面炎だが、火山地帯歩いたことがある自分には関係ない。なにより、自分は害悪である。問題ない。

「お前で最後か」

 そう言ってしゃがみ込んだ際、頭上に何かが来るのを察する。

「!?」

 それは歌だった。誰かの歌が聞こえ、そして、

「お待たせしましたッ、救助ですっ」

 そう満面の笑みで、天井を砕いて、現れた。

(・・・なんだ?)

 自分くらい、もうストレートに言えばコスプレのような格好の女の子が、そんなことを言って現れた。

 

 

 

 反応を追って、建物を壊して着たら、黒い髪の男の人がいた。

「にゃー」

 その腕には小さな猫がいて、その猫を抱え近づく。

「まあいい、ほれ、こいつでこの建物にいる奴は全部だ。あとは俺らが脱出すればいい」

「そうですか、師匠ッ」

 いままで炎の中を駆けていたのに、彼は疲れている様子はなく、通信機からも連絡を受け、少女は頷く。

「それじゃ脱出しましょうっ、失礼しますっ」

「おう?」

 疑問を投げかけたが、少女は俗に言う、お姫様だっこして、足に力を込める。

(跳ぶ気か?)

 そう疑問に思うが、まさにその通りだった。

 

 

 

(・・・マジか)

 謎の少女は高く跳んだ。それはもう、自分がくりぬいた穴から、建物から脱出した。

 だいの男である自分を抱えてだ。

(しかも高いな)

 燃えるホテルは十階以上のフロアがあり、それなりの高さだ。

 だが少女はそれよりも高い距離を楽々跳び、いまは直地の動作に入る。安全な場所、この場合、近くの建物の屋上に直地するようだと判断する。

(・・・他にもいるな)

 こちらを見る視線を感じる。一人は怒り、これは考えなしの行動を咎めようとする怒りの感情。残り二人は呆れた勘定の視線を感じる。

 この子を含めて四人、少なくても自分を見ている。

 そう思ったときだった。

 

 

 

「あのっ、バカはッ」

 一人の少女は叫びながら、空中にいる二人組を見る。

「先輩落ち着くデスっ」

「落ち着けるかッ、私らのことは一般人に知られちゃなんねぇってのにっ、堂々と素顔さらしやがってっ」

 そう言う怒りを、空中に向けている際、なにかが見えた。

「!?」

 それは、

「狙撃だッ」

 

 

 

 遠くから狙撃と言う声が聞こえたとき、すぐに気づいた。

(なっ)

 驚愕する、自分に向かって何かが放たれたことに。

 よけることも防ぐこともできない、まさに絶妙なタイミングでの攻撃だった。

 そう、だった。

「『刹牙』」

 少女から離れ、それに高速の蹴りを放ち、砕いた。

「ふえっ!?」

 少女から驚愕の声を聞きつつ、落下していることを知り、少女に着地を任せ、俺は蹴り砕いたものを見る。

(・・・まさか)

 嫌な予感がする。蹴った感触が、とある生物と酷似している。

 キラキラ光る鉱石のような矢のかけらを睨みながら、彼らは屋上ではなく、どこか人気のない道路へと着地する。

「えっと」

「疑問はいいッ、まだ来るぞッ」

 そう言われた瞬間、すぐに少女は切り替わる。今度は早さではなく、数で放たれる鉱物の矢。

 周りは建物、ビルなどで囲まれているが、いまは人の気配はない。近くで大火災が起きれば当然と言うべきか、人が居ない。

 それでも建物を貫きながら、自分らを狙撃しようとする奴に、腹が立つ。

(こりゃ、人がいたら巻き込まれて死んだ奴いるだろうな)

 少女は歌を口紡ぎながら、矢をたたき落とす。俺より前に出て、

 だが、少女は歌うのを途中でやめて、顔をゆがませた。

「いった~いっ」

 鉱物の矢は砕けず、その場にたたき落とされただけ、少女は拳を押さえながら、涙目だった。

「って、シンフォギアでも壊せないのに、壊したんで」

 何かに気づき、後ろを振り返るか、そこにいたのは、

「にゃー」

「・・・ねこ?」

 一匹の猫しかいなく、俺は彼女から離れた。

 

 

 

(で、俺かよくそッ)

 心の中で舌打ちし、狙撃をかわしながら駆けている。

 壁や床、道路を足場に駆け、狙撃者を睨む。まだ距離がある。

(相手はおそらく、こちらが見えている。なにで見てるか分からないが、探知されてるなおいッ)

 建物に隠れながら走るが、それを貫きながら、確実に自分へと定められて放たれる矢に、心底うんざりしていた。

「剣が欲しいッ、剣ッ剣ッ剣ッ剣ッ」

 本来剣を使い戦うのになれている。また大半の技が剣技による。仲間達が使う剣技は、ほとんど使える自信がある。

 格闘技はほとんど剣技の応用で繰り出すため、メイン武器は剣であり、拳や蹴りではない。

 そんなことを吠えつつ、

「・・・だぁぁぁぁ、めんどくせぇぇぇぇ」

 ついに堪忍袋が切れた。

 急ブレーキし、狙撃者がいる場所へとまっすぐ向かう。むろん、敵がそれを見逃すはずはない。

 まっすぐこちらに来る敵に対し、いま自分は狙われているのを感じる。

 確実、神速、明確に狙いを定められている。

 いま放たれる矢はいままでの攻撃よりも、貫通力も早さも違うだろう。

 それでもまっすぐ、狙撃者へと走る。

 そして感じる、狙撃者の明確な確証。殺したという意志を感じ取った。

 空気が震え、一瞬の短い音のあと、矢が飛んでくる。

 まっすぐ、威力を落とさず、かなりの早さで迫る矢。

 気が付いた瞬間、目の前に、命を奪う矢が見えた。

「・・・」

 だが、俺は静かに笑ってやった。

 

 

 

 それは確実に殺したと思った。

 放った攻撃は確実に頭部を貫き、殺せると自負できる一撃。

 だから、

【ナゼダァァァァァァァァァァァア!!?】

 それは叫んだ、矢を防がれたことに、

「!!?」

 彼女たちは困惑した、その状況に、

「なっ、なんデスかあれはっ!?」

 鉱物のような巨人がいた。二階ほどの大きさで、人のような形をしていた。

 その左腕は弓のようになり、口のようなものから叫び声をあげている。

 そして、

『アアァ? それは』

 その矢をかみ砕き、それは一気に距離を縮めた。

 全身が黒い鎧に身を包み、三つの爪痕のような頭部が胸辺りに装飾されているそれ。

 血のような紅い目と、鋭い金色の目を持ち、まるで闇のような喉を持つ口で、矢を食い砕いた。

 銀色の刃のような髪を持つそれは、一気に鉱物の側によった。

 そのかぎ爪の、黒いもやのような、エネルギーを纏い、

『俺はゲーデッ、俺を殺せるのは救世の光のみッ』

 そう叫び、俺は前世の力を一気に解放した。

 

 

「!!?」

 巨大な負の力に、セレナは気づく。

「セレナっ!?」

「うん間違いないっ、リュウのバカっ、力使うなって人には言っておきながらッ」

 二人は叫びながら、救護活動を続ける。帰ったら文句言う、そう決めて。

 

 

 

『オラオラオラオラオラオラァァァァァァァァァッ』

 ただ力任せに殴る。それだけで粉々に砕ける肉体に、それは驚愕していた。

【己ゲーデッ、邪魔をするなッ】

『邪魔するさっ、俺は害悪だぜッ』

 頭を一度振り上げ、振り下ろす。

『『チェーン・ソード』』

 地面に突き刺さる髪が、その叫びと共に巨人を捕まえ、貫いた。

『フンッ』

 地面から這い出る髪をそのまま、地面のコンクリートを削りながら、地面へと引きずりながら、また殴り始める。

 その様子に、モニター越しで見ている司令部はもちろん、現場も困惑していた。

「な、なんだありゃ・・・」

「このキラキラした宝石、ノイズじゃないけど」

「うん、私を攻撃してたの、だと思う・・・けど」

「あの黒いのなんなんデスかっ!? 聖遺物デス!?」

 あの姿を見て思い出すのは、ネフィリムというものが思い出される。

 そんな言葉を聞き流しながら、俺はそれに聞いた。

『テメェ、ラザリスの世界、ジルディアと関係あるのかっ!?』

【答えぬわッ】

 右手から矢が現れ、また放たれるが、そんなものは片腕で粉々に砕く。

『じゃあいい、消えろッ』

「!?」

 両腕から闇が吹き出す。それに先ほどの少女は叫ぼうとした。

「だっ」

 だが、遅い。

『夢も、希望も、愛も優しさも、光り輝くもの全て全て全て全て』

 格闘により、ラッシュが放たれる。鉱物の巨人が粉々、いや削られながら、最後にアッパーにて胸を殴られ、拳がめり込む。

【がっは・・・】

『儚く、散れッ』

 巨大な爆発が起き、巨人は宙を舞う。

 それに右腕を大きく振り上げ、左腕を大きく振り下ろす。

 右腕と左腕で、ドラゴンの頭部を連想させる。

『秘奥義ッ』

「だっめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 少女の叫びを無視するように、それは閉じられた。

『黒喰龍ッ』

 まるで未来を閉ざすように、巨人は闇のドラゴンに喰われ、粉々に砕け散る。

 悲鳴もまた、わずかに響き、それでも闇はそれを喰らった。

 何も残さず、それは巨人を討ち取る。

『ハッ、テメェの命はこんなもんか』

 吐き捨てるように告げて、それは何事もなかったかのように、塵を見た。




オリ主、格闘系秘奥義・黒喰龍。その名前の通り、負の力でドラゴンを生み出し、敵の命を喰らうという技です。
そしてオリ主は、負というものの生まれ変わりです。これについてものちのち説明しながら、物語は進みます。
まだストーリーはできてる。途中からスローになったり、少し手直ししたりすると思いますが、ご愛読をよろしくお願いします。
ではいまはここまでにします。ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


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情報交換、それぞれの立場

ネタが尽きるまで走る続ける。
気が付けば感想が書かれていた、ありがとうございますっ。
返事できない性格してますがうれしいです。このままがんばります。


(さてと・・・)

 戦闘を終わらし、辺りを見渡す。それを見ながら、四人の少女達の反応を見る。

(一人は俺の行動、敵を殺したことに動揺している・・・)

 俺を背負い、跳んだ少女はどうしてこんなことするの?という顔でこちらを見て、他の、おそらく同じ能力らしき、少女達は、明らかに異質に対する敵意を向けている。

(まあ当然か、俺のいまの姿は)

 周りの人の気配はない。避難済みなのは助かる。

 自分はいま、黒い鎧のような姿だが、着ていると言うより一体化していた。装甲と言う感覚ではあるが、身体の一部という感覚もある。頭に至っては、完全に一つの固まりだ。

 血のような紅と金色の瞳、銀の刃の髪を伸ばしている。

 これを人と呼ぶ?

(呼ばないわ、俺は害悪だしな)

 さてどうするか、そう思いながら彼女たちの反応を待つことにした。

 

 

 

「・・・どうして」

 始めに言葉を発したのは、なにも武器を持たない少女。茶髪のショートの子だった。

「どうして殺したんですかっ!?」

 悲痛、動揺、それに対して、

『生き物ではなかったからだ』

 三人の少女は返答したことにとまどうものの、敵意は消さず、武器を構え、距離を保っている。

 それに驚く少女に、続けて説明した。

『あれはゴーレム? まあ、ゲームとかで出る、意志を持たない人形のようなものに、ある一定の知識と判断能力を持たせたもんだった。まあ、殴ったりして気づいたからな。アレの人や、生き物のものも知ってるが、あれはそれをベースにした、別のもんだった。まあ、殺したことには変わりないな』

 それに困惑する少女に、赤い、銃器のようなものを構える少女が叫ぶ。

「まるであれがなんなのか、知ってるそぶりだな」

『ああ、あれに近いものを知っている。だから、利用されてることに腹が立って殺したんだ』

 次にのこぎり、のようなツインテールの武器の少女が、こちらを見ている。

「あなたはなに、人間? それとも聖遺物?」

『せいいぶつ? 知らないが、人間じゃないな、人間である気もない』

 それに全員が困惑している感情を感じる。まあお互い分からないことばかりだ。

 

 

 

「・・・何者なんだあれは・・・」

 とある司令室、モニター越しに見ているそれに、困惑する一同。

「スキャンの結果はどうだ?」

 キーを叩き、オペレーターの一人が、たたき出されたデータに動揺しつつ、結果を報告する。

「高エネルギー反応は感知できるんですが、聖遺物反応はありません。ですが・・・」

 口を濁し、静かにもう一つの反応、そのエネルギーに驚きを隠せない。

「あの存在から、『イグナイトモジュール』時の装者達と同じエネルギーを検出されています」

「イグナイトモジュールだとっ!?」

 それに通信機から聞く装者達も旋律し、それを一斉に見た。

 

 

 

「・・・テメェはなんだ」

 急に感情が危険、危機感というものにかわり、引き金に力を込めた少女はそう呟いた。

 それに対し、戦闘準備に入る。明らかな敵対意識に、構えるしかなかった。

 それにすぐに二人、緑の鎌の子、ピンクの子も体制を取るが、

「まっ、待ってクリスちゃんっ」

 一人だけ違った。あわててそれを止める茶髪の少女。それにいらだちの感情を向ける。

「お前わかってるのかっ、そいつは敵かもしれないんだぞッ」

「だけど、こうやってお話しできるんだから、話し合いで解決するかもだよっ」

「テメェ、また悪い癖を」

『話し合い? してくれるのか?』

「「「えっ?」」」

 それを聞き、場の雰囲気が崩れるが、俺は気にせず、拳を下ろす。

『話し合いするならするが、どうする?』

「えっ、いいんですかっ!?」

 驚く茶髪の子に、俺は頷く。

『お互い、まだ信用できないから、武装状態は維持するが、そちらとこちら、詳しい話をしたほうがお互いのためだろう。俺は構わないが?』

「ほ、本当ですかっ」

 急に感情が読めなくなり、この子は俺に対して敵意を無くした。さすがにどうかと思うが無視する。

 他の子もどうすればいいのかわからず、困惑している。

「お前またそん」

 何かを口にしようとした赤い子だが、急に耳を押さえる。それは他の子達も同様、おそらくは通信機で誰かと話しているんだろう。

 驚きの声を上げる三人に対し、一人だけうれしそうにする茶髪の子。

 すぐに俺の方に振り返り、満面の笑みを浮かべる。

「いま師匠が貴方の話したいから、私たちに付いてきて欲しいそうですが、いいですかっ」

 その言葉に対し、俺は、

『構わないが・・・君は少し、警戒と言う言葉を覚えろバカ』

「ええっ!!?」

 それに三人は同意するように頷く。ああ、なにかカノンノとセレナと仲良くなるなと思いながら、俺達は移動を開始した。

 

 

 

 すぐ側にある廃屋、瓦礫と化したビルやマンションの中を歩き、指定された場所で待つ一同。三人は俺が変な動きをした瞬間、攻撃するという意志に満ちた目で見て居るんだが、約一名、そんな気配はない。

『お前他の子見習えよ、俺武装解いてないんだから、警戒しろよ』

「ええぇ~」

 なんで怒られているかわからない様子の子、この子大丈夫かと心配するのも変な話だ。

「それより、私はお前じゃなく、立花響、16歳のO型で」

『あーはいはい、お前もO型か、俺も人間じゃO型だ。話以上』

「えっ、人間じゃってどういうことですかっ。っていうか名前教えたんだから教えてくださいよ~」

『保護者っ』

「あたしゃはこのバカの保護者じゃねぇっ」

 赤い子がキレ気味に(いやキレてる)言い、立花をこっちに来いと放してくれた。

 そんなやりとりを複雑そうに見ている二人の少女。そんなことをしていると、黒い車がやってきた。

 

 

 

「エルフナインちゃん!?」

 立花は車から出てきた小さな少女に驚きながら、俺はYシャツの男を見た。

 Yシャツ以外は、俺に対して畏怖の視線で見つめ、男は俺がなんなのかという疑惑、思案という視線だ。

 エルフナインという少女は、歳相当、おっかなびっくりという視線だろうか?

『あんたは?』

「俺は風鳴弦十郎、国連直轄、超常災害対策機動タスクフォースの司令官をしている」

 その言葉を一つずつかみ砕きながら、理解しようとする。

 つまり国関係の組織、そして異常な災害に対して、対処する部署と考えながら、まずはどうするか考える。

『・・・俺はゲーデ、まずは仮名で名乗らせてもらう。んで、まずはそちらの質問に答える』

 まずは主導権を相手に渡す。そう提案し、こちらの考えを確かめるように、弦十郎は前に出て来る。

「ではまず、君と対峙したものはなんだ?」

 向こうも向こうで考えているだろうが、まずは俺と違い、話が見えないものの情報を得ようと、まずはそちらを聞きに来た。

『すまないが、俺も詳しくはわからない。だが、似ているものを知っている』

「似ているもの?」

『その疑問には、まず俺は何者で、いまから話すことを真実と前提にして聞いてもらわなければ、説明できない。いいか?』

 それに腕を組みながら、静かに頷く。それを見てから、俺は説明を始めた。

 

 

 異世界ルミナシア、世界樹と言う、世界を生み出す大樹により生まれた世界。

 世界樹の世界は複数あり、マナという魔法を使うためのエネルギーを世界に満たす樹の説明。俺はその一つの、とある物語を説明した。

 その世界と姉妹であり、生まれるはずだった世界、ジルディアの話。

 ジルディアの代表とも言うべき存在、ラザリスのことを説明する。

 かの世界は本来は生まれることができなかったが、ルミナシアが姉妹を見捨てたくないため、自分の世界に招き入れる形で助けようとしたこと。

 だが、ジルディアの代表であるラザリスは、ルミナシアという世界、その世界で生きているヒトに絶望し、自分ならこんな世界にしなかったと、乗っ取りのようなことをし始めたことを説明。

 その際、すでにいる生物を、自分の世界に生きるものとして変化させた。

『それに似ている。だがあれは違うし、ラザリス、ジルディアはもうそんなことはしない。ルミナシアといま共存して、共に生きている。あれは明らかに、ジルディアを元に誰かが作ったもんだ』

 吐き捨てるように説明するが、信じることができないのか、まだ半信半疑の感情が見える。約一名は、もう信じながら聞いている。

「ふむ・・・」

 弦十郎は考える、まずは目の前にいる彼についてだ。

(声からして男性、それに見た目の背丈からだが、響くん達とそう違う歳ではないな)

 そう考えながら、話を聞き続けことにしている。その様子を見て、次に説明するべきことを考える。

『次は俺の説明だな』

「ゲーデ、と言ったね。話からして本名ではないが、人間なのか?」

『いや、俺は違うと思うが、仲間は人間だって言っている。それはどうでもいい』

 そう切り捨てたとき、仲間達のブーイングが頭をかすめた。だが、俺自身、人間じゃなくてもいいと思って居るんだから、別にいいだろう。

 ゲーデ、世界にいきるもの達が必ず持つ、負の感情により生まれ出たものをそう呼ぶ。

 本来は世界樹が負を取り込み、世界樹の中で生まれ、消える存在と言われている。

『だが、俺はなぜか人として生まれた。少なくても、かなりの力を持つ、負の存在が、人として生まれたもの。俗に言えば転生者、それが俺だ』

「負の感情か・・・」

 それにちらりとエルフナインを見た弦十郎。エルフナインもこくりと頷く。

(本来イグナイトモジュールは、暴走状態を制御するもの。そして暴走の引き金になるのは、負の感情)

 いま目の前にいる彼は、その際に装者のエネルギーを軽く上回るほどのエネルギーを秘めている。

(彼の話が真実なら、彼は生まれつき暴走状態、それも装者一人二人を超えるほどの力を持っているということか)

「あの~」

 そう恐る恐る、手を挙げて、立花が会話に参加する。俺を見ながら、

「つまり、ゲーデさんは人間なんですよね?」

『いちおうはな、ルミナシアでこのことを知るまでは人間離れしたもんだと思っていたが、実際違っていた』

 ルミナシアに呼ばれた理由は、ジルディアが防衛本能とも言うべきか、ラザリスが無意識下で、ルミナシアと戦う際の戦力して、俺を呼んだらしい。

 この辺りはラザリスがそう言っており、その際、「君は僕のものだよ」と言った。

 そう言えば、なにか知らないが、あの二人が妙な感情をラザリスに向けていた。

「あれ? 呼んだり~とか、呼ばれた~とか、ゲーデさんって」

『ちなみに、人間として過ごしたのはこの世界だ。事実上、戸籍もあるぞ』

 それに全員が驚いた。目の前にいるのがこの世界の人間だということに驚いているのか知らないが、驚愕の感情を感じ取る。

「君は、この世界の人間なのか?」

『違うね。俺はもうルミナシアに永住する気だから、正直ここから俺の本題だ』

 弦十郎の問いかけにそう答え、俺はルミナシアからここに戻った理由を言う。

 精霊、世界樹と共に世界を見守る存在が、この世界に異変が起きるから、どうにかしてくれと依頼されたと告げる。

『正直、精霊からの依頼じゃなきゃ、この世界に戻る気はない』

「どうしてです?」

 立花の疑問に、吐き捨てるように、

『俺はこの世界が嫌いだ。はっきり言えば月が欠けた事件で滅んでて欲しかったと思うほどな』

 その言葉に、三人の少女ははっきりと憤怒、そして敵意を向けた。どうやら気に障ったらしい。

 それに立花も驚く。

「な、なんでですかっ!?」

『俺はこの世界にいい印象なんて一切合切絶対的に徹底的にない。家族も、友人も、恩人もなにもない世界だ。どうなろうと知ったことか、むしろ精霊に危惧される事態になるなら、月事件で消えてくれれば助かった』

 その言葉に、はっきりと隠す気はなく、赤い子が前に出た。

「テメェッ、人が大人しく聞いてりゃ言いたい放題にッ」

「何様のつまりデスかッ」

「勝手に滅べばいいって・・・」

 三人が飛びかかろうとするほど、怒りを見せるが、それを弦十郎は制止させる。

 赤い子に睨まれるが、抑えろの一言で、渋々後ろに下がった。

 その様子見ながら、俺はもういいだろうと切り替えて、弦十郎を見る。

『次は俺の質問だ、あんたらはなんなんだ。国家組織はわかるが、俺は月が欠ける前にルミナシアに行ってたから、その後の事件やら一切知らん』

 そう伝え、弦十郎はふむと頷き、こちらを見据える。

「なら、ルナアタック事件から、魔法少女事件まで、説明すればよさそうだな」

 

 

 

 少しめまいがした。彼女たち、シンフォギア装者達のこと、その前に起きた数々の事件に、異変すでに起きて終わってないかと、思いたくなる。

 弦十郎の指示で、装者達はエルフナインとともに後ろに下がり、こちらを見ている。

 むろん、三人は敵を見る目で見ていた。

『・・・あの様子だと、狙撃者の目的に気づいてなさそうだな』

「・・・わかるのか?」

 弦十郎がそう聞き返し、その反応にやっぱりかと納得する。

『二射目はともかく、最初の一撃、狙撃は明らかに立花を暗殺するものだ。俺に標的を変えたのは、おそらく一射目を防いだときだ』

 それに同意するように、弦十郎も頷く。

 俺はあとで知るが、まるで装者達を出すために引き起こされた火災の目的。それは装者暗殺なら頷けた。

 あの現状、装者の命を狙う者がいなければ、なんの対策もなく、彼女たちが出て救助活動をしていたのだ。

 そしてその命を狙ったのは、ジルディアの民のようなものだった。

『精霊が危惧する異変、装者達と関係あるのか・・・ちっ、ケンカ売った奴を守らなきゃいけないのか俺は』

「そう思うのなら、あんな言い方をしなければいいだけだろ」

『俺がこの世界を毛嫌いしているのは事実だ。隠しても仕方ないだろ』

 そう言う言葉に対して、弦十郎も感情が読めなくなる。彼から敵意が消えた。

(言い方、反応を見て、これは確実に子供だな・・・)

 それが弦十郎が彼に下した結論だった。

 力を持った子供、それに頭をかきながら思案する。

「君の目的は、精霊と言う、異変を解決すること。で、いいんだな」

『ああ、それ以外に興味はない』

「なら、君の要求はなんだ? 要求があるから、話し合いなんかしているのだろう?」

 そう言われ、俺は静かに頷く。

 彼はこのやりとりの中、俺がこの世界に一切の配慮はする気はないことを伝えている。つまりなにか問題ごとが起きても無視して、目的をなす意志を伝えている。

 だが、自分達に接触するメリットが見えていない。それを聞き出そうとしている。

『実はこの世界に、ルミナシアの救世主と、俺が世話になっている仲間が二人いる』

「なんだと?」

 世界樹の救世主、ディセンダーと言う存在を伝える。

 世界に危機が迫る際、純粋な心のまま生まれ、世界を救う救世主。

 俺からすれば、お節介で、優しすぎる仲間の一人。

 それに負けない、優しすぎる仲間の顔を思い出す。

『正直に言う、俺はこの世界がどうなろうと知らない。誰が死のうと傷付こうと知らない。だが俺の仲間達はそれをよしとしない、むしろ傷付かないように前に出るような奴らだ。この世界の問題に関わって欲しくなかったがついてきやがった』

 そう言いながら、静かに俺は、弦十郎に頭を下げた。

『俺の扱いはどうでもいい、俺の目的は、精霊の異変を解決することと、その二人の安全を確保することだ。この世界の、ふざけた政界の問題に利用されたくない。この用件を飲んでくれれば、俺はあんたらの指揮で活動する』

「・・・」

 弦十郎は少し驚いていた。彼の性格がわからないからだ。

(・・・少し整理するか)

 まず彼はこの世界の安否なぞ考えいない子供だ。

 彼ならもしかすれば、世界そのものを壊してでも、問題を解決するという矛盾をしそうなほど、この世界に対してなんの配慮はない。少なくても、本人はそう言うとらえ方をする発言をしている。

 だが、仲間と言う二人はそれをよしとせず、また彼はその二人を大切にしているのを強く感じる。

 その仲間に危害を加えるのなら、俺は敵になる。だけど仲間の安全を保証するのならば、こちらの用件を飲むと言っている。

(・・・子供だな)

 まさに子供のわがままだった。それに苦笑して、いまだ頭を下げる彼に向かって、

「わかった、君とその仲間達の安全は俺が保証する。そのかわり、俺の指示には従ってもらうぞ」

『・・・俺は別にいいんだが』

 そう言いながら頭を上げ、それとともに、負の力を消す。

「ま、信頼の証として見てくれ」

「・・・それが人としての君か」

 鎧は霧のように霧散し、銀色の髪は黒いボサボサ、肩ほどまで短くなり、オッドアイだった目は、日本人の顔立ちに変わる。

「こっちの戸籍じゃ、剣崎龍だ。生まれが生まれだから、孤児で、親もなにもない。中学で学校やめてるなら、学歴はない」

「わかったわかった。ったく・・・」

 まさか本当に子供、16~7の龍に、少しばかり驚いていた。

「あとで君のことは調べさせてもらう。まあ、君は嘘は言っていないが、そういうものだから気にしないでくれよ」

「お役所は大変だな・・・」

 そう言いながら、驚愕している装者達を見る。こちらに気づき、三人はいまだ睨むが、向こうもまた、シンフォギアを解除した。

「とりあえず、俺は仲間達を回収する。いままでゲーデの力使ってたから、ディセンダーである彼奴は近づいてるはずだ」

「なら俺の方は君らのことを伝える準備をしておこう、異世界人は二人分か」

「二人とも女性で、同い年くらいだから、部屋を二つ用意してくれ。むろん、こっちの世界のこと知らないから、まだ話し合う場を設けて欲しい」

「わかった」

 こうしていまは話し終え、俺は二人の気配を探ることにした。

 

 

 

「で、なんでお前らもついてくる」

 俺の問いかけに、赤い子が睨みながら、

「あたしらはまだ認めてねぇからだ」

 三人はいまだ俺に対して敵意を向け、それにおろおろする立花に対して、そうかいと付け加えて歩いていた。

 弦十郎に、カノンノの剣のことも話して、回収してもらいつつ、俺は光を追って歩いていた。すぐに接触するだろう。

「念のため言うが、俺はともかく、あの二人は立花みたいなバカだから、彼奴らには仲良くしてくれ。彼奴らは俺と違って、本当にこの世界の人達のために、働くからな」

「えっと、私みたいなバカってどういう意味ですかっ!?」

 その叫びを無視しながら、俺は二人を見つけた。

「おーい」

 二人ともすすだらけであり、買ったばかりの衣類が入った袋を持っていた。

 こちらの声に気づき、すぐに駆け出す。その空いている手を拳に変えて、

(・・・ひでぇ)

 そう心の中に思いながら、素直に殴られた。

 ごっと以外と深い拳。なにげに最近格闘術でも習っているのか、二人の拳を受けて、その場に座り込む。

「「リュウッ」」

 頭上から聞こえる不満に対して、悪い悪いと言いながら起きあがる。

「こっちだって使いたくって使った訳じゃねぇよ、使わなきゃいけない事態だから」

「うそ」

「リュウのことだから面倒だからって理由で、ゲーデの力使ったんだよ、間違いない」

 セレナの言葉に、図星のため視線を泳がせる。

 二人の視線は三人の視線よりも痛い。正直恨まれたり、憎まれたりするよりも痛い。

 立花がおろおろする中、赤い子はなんなんだという顔で、

「ん?」

 その後ろ、緑の鎌の子と、ピンクの子が、

(驚愕? 戸惑い?)

 謎の感情を、セレナに向けている。なんだと思いながら、立花に対して、

「とりあえず立花、俺は龍、名字なんて飾りだから呼び捨てでいい。カノンノ、セレナ、こっちの世界でアドリビトムのようにがんばってる奴らだ。仲良くしろ、俺はしないが」

「リュウっ」

 説明不足だが、俺がなにかしら反感を買うことをしたと察するカノンノが説教を始めるが、ひとまず区切らせて、

「私はカノンノ、カノンノ・グラスバレー。リュウは口悪いけど、根はいい人だから、気を悪くしないでね」

「俺のどこが根がいいんだよ」

 そう言ったら裏拳が二人から放たれ、腹を押さえる。ひでぇ。

「私はセレナ、ルミナシアのディセンダーです。よろしく」

「えっと、私は立花響、響でいいよっ」

 そう自己紹介する中で、目を見開き、セレナを見つめる二人がいた。

(セレ・・・ナ・・・)

(そんなわけ、ないデス・・・けど・・・)

 二人は驚きながら、セレナを見つめる。

 彼らは知らない。世界と世界、その繋がりを。

 それを利用する、存在を・・・

 




装者達と出会ったぞ~~
セレナは15か14くらいの女の子です。というわけであの人はかなり動揺させる気です。
ちなみにこのセレナは歌が好きで、暇なときや料理などしている際、鼻歌やらなんやら、歌うことが大好きな子です。だってセレナですから。
きっと向こうでファンクラブいるでしょう。
早くディセンダーセレナを戦いの舞台に立たせたい。だけどまだ先なんです、申し訳ない。
と言うわけで、ご愛読ありがとうございます。


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救世主と歌姫

まだ話のストックがある、なら俺はまだ走り続けられる。
そんなバカな精神でまだ進みます。
ついに装者、オリ主、そしてディセンダーが顔合わせします。


この世界に帰還して、初日から色々あった。目が覚めた俺は最初にそう思った。

「・・・日本か・・・」

 まず始めに、弦十郎、もとい司令官達が一時基本部にしている施設へ来たあと、色々疲れがあったり、用意もあるため、飯食って寝ることにしたのだ。

 その際、立花はカノンノとセレナとかなりうち解けていた。どうやらあちらは問題ない様子で、俺は安堵する。

 問題があるのは、いまだ自己紹介していない装者の三人だが、そのうち二人は妙だった。

 セレナを時折見ていた。少なくても分かる範囲ではそう言う印象だ。

 あとは時間になり、家がある装者達は帰り、俺達は仮眠室で寝る。むろん、すぐ隣だが、同室ではない。

 昼下がりの光を感じながら、俺はセレナへと振り返る。

「おはようセレナ、間髪入れずに殴ろうとするやめて」

「早起きしないリュウが悪いんだよ」

 そう満面の笑みで、俺は手ひどい一撃を食らう。ひでぇ。

 

 

 

「あっ、やっと起きたんですね龍さんっ」

 立花がカノンノと仲良く話している頃、俺はセレナに起こされ、朝食を抜いて現れた。

「ねむい・・・」

「なんでいつもそうなの・・・」

「あっははは・・・」

 カノンノは苦笑しながら、立花が施設を案内する。強制的に起こされなかったところを見ると、まだ急ぎの用はないようだが、

「いま外国にいる翼さん達と連絡して、もうそろそろでしたから、なんかみんなして話があったそうです」

「立花は?」

「私はセレナやカノンノに、この世界のことを教えたりしてましたっ」

「ヒビキに教えてもらってね、装者の二人、あいどるなんだって」

「リュウは知ってる?」

「俺はそう言うのはな、こっちにいる時は、寝るか働くか飯食ってるかだから」

「えぇ~翼さん達を知らないんですかっ!?」

 そんな話をしながら、俺達は司令室前へとたどり着いた。

「師匠~龍さん達をつれてきましたっ。連絡、は・・・」

 なぜか司令室は、険悪な雰囲気に包まれていて、立花は声の声も弱々しくなる。

「リュウがいつまでも起きないから・・・」

「はあ・・・」

 申し訳なさそうにする二人だが、そうじゃない気がする。

 とくに三人は、俺を意識してない。俺が悪いのなら、俺にそう言う感情向けているはずだ。だが、そんな雰囲気はない。

「おほん、いま呼びに行くところだった」

 指令がそう言い、俺はモニターに映る女性達と眼鏡の男性を見る。

「君達からまず紹介してくれないか、おそらく、前戦で肩を並べると考えられるからな」

「あ、はいっ」

 カノンノ、セレナ、俺は自己紹介をする。立花にしたときと同じ、アドリビトムのことや、ディセンダーのこと、ゲーデのことを付け加えること以外、かわらない挨拶だ。

 今度は装者、立花が自己紹介する。響って呼んでくださいと言っていたが、仲良くする理由はないので無視する。というよりよけいな情報は多い。

「ほらほらっ、クリスちゃん達も自己紹介自己紹介っ」

「・・・雪音・クリスだ」

「暁、切歌デス・・・」

「・・・月読、調」

 赤い子は雪音、鎌の子は暁、ピンクの子が月読と名乗り、俺を睨んだ。

「よろしく、私のことはセレナって呼んでねっ」

「「・・・」」

 セレナの問いかけに、なぜか妙な沈黙をする二人。

 複雑な環境で、よくわからない。そして今度はモニターの方の装者、青い髪の装者が話しかけてくる。

「私は風鳴翼、天羽々斬の装者で、いまはロンドンにいる。モニター越しですまないな」

 その問いかけに、カノンノ達は元気よく挨拶する。俺は風鳴より、気になるのは、さっきからこちらを見続ける。もう一人だ。

「・・・」

 その人はしばらく沈黙したが、視線の先になぜかセレナがいる気がした。巨大モニターのため、確証は得られない。

「マリア」

 そう、やっと言えたような、そんな声で、

「マリア・カデンツァヴナ・イブ。よろしく・・・」

 そしてあとは、オペレーター達など、裏方の人達自己紹介が始まるのだが、妙な雰囲気のため、少し気後れしている二人。

 そんな様子に咳き込む指令、腕を組みながら俺達を見る。

「とりあえず自己紹介と顔合わせを終えたところで、本題に入ろう」

「はい」

 俺はそう返事をして、お互いの状況確認をし始める。

 まずは俺達、異世界側の事情だが、

「悪い、俺だけだから行き当たりばったりでいいやって思って、精霊達には異変が起きるとしか聞いてない」

「ずいぶん気楽なこったな」

 雪音が悪態を付いてくるが、まあ仕方ない。

「ルミナシアの仲間、このことを知っているメンバーには色々と調べたりすることを頼んでる。全部終わったあと帰ることも考えていたから、向こうは転送装置やら、連絡装置を用意してる話になってる。しばらくすれば向こうから連絡するらしい」

「詳しく話しなかったの?」

「してたらお前らお節介ズが参加するから、詳しく話せずに来たんだ。向こうもどうやってするのか聞きたかったが、大丈夫って言ってたから、大丈夫だろう」

 カノンノを睨みながら俺はそう言い、セレナは嫌な顔をする。

「私たち、邪魔?」

「この世界にはノイズって、触れただけで即死するもんがいたんだ。ゲーデの力使える俺じゃなきゃ、対処できないと思うし、セレナも平気だろうが、俺とセレナだけってのは色々問題があるんだよ」

 セレナはなんで?と首を傾げているが、カノンノは納得してくれた。まあ本当に納得してくれているのか不安ではある。

「まあ、実際異変にはあった。ジルディアの民みたいな、鉱石の身体を持った人形」

「ふむ、それが装者、響くんを暗殺しようとしたことだな」

 それに立花が驚くが、指令の言葉に納得する。カノンノ達も驚き、確認してくる。

「本当にジルディアの民だったの?」

「ああ、正確にはそれに近い別のもんだ。命の輝きはなかった」

「命の輝き?」

 立花は疑問に思い首を傾げ、それにはセレナが答える。

「リュウや私は、人の心、その輝きが少しだけど分かるんだ。だから生き物かそうでないか、少しだけね」

「あれは確かに人形だ。まあ、自我があったから、殺したって言うのは正しいがな」

 複雑そうにするカノンノ達。それに対して、その話にまずはある確証だけだが、こちらの意見を伝えることにした。

「指令達には悪いが、俺達はこの件にジルディアの民が関わっているとは思っていない。むしろ悪用されていると思っている」

 理由としては、ただの希望論ではあると付け加えておくが、それでも、

「ジルディアの民はもう、誰かを傷付けるのを率先するはずはない」

 セレナ、カノンノもそう信じて欲しいと言う視線に、指令は考慮してくれるだろう。

 むろん、彼の立場では完全に捨てきれないが、それでもこちらの意見を聞いてくれる。正直本当に無茶な行動できないな。

「まあ、事情はここまでだな。装者の命狙われるのだって、考えれば対処できるのがシンフォギアだけだからっていう理由で説明がつく」

「ああ。調べた結果、ハッキングなどの足跡ははっきりしているのに対し、何者かがしたか、それだけは分からずじまいだ」

 それに重々しい雰囲気になる。つまるところ、敵がはっきりしていない以上、後手に回るしかない。

「まあ仕方ない。いまはなにがあっても対処できるように、情報の交換などを欠かさず、警戒するしかない」

「わかりました」

 カノンノ達全員も頷く中、ああそうだと指令が、

「龍くん、悪いがカノンノくんとセレナくんに、メディカルチェックを受けるよう、話をつけてくれないか?」

「ああ、はい。ですね、ケガした際の対処とか必要ですし」

「そういうことだ。君も受けておくといい」

「了解です」

「あっ、僕が案内しますね」

「ありがとなエルフナイン。カノンノ達を癒すマスコットになってくれ」

「ふえっ!?」

 意味がよく分からないことを言い、エルフナインという少女と俺達は、医務室へと移動する。

 

 

 

「・・・リュウ、メディカルチェックって、ドクメントを確認するの?」

「どくめんと?」

「簡単に言えば、魔法でDNAを視覚化する技術のことだ」

「でぃーえぬ?」

 カノンノのエルフナイン、二人と会話しながら歩いている際、ふと、セレナに振り返る。

「どうしたセレナ」

「・・・」

 なぜか黙り込む救世主。セレナは少し考えてから、首を振る。

「なんでもない・・・」

 そう言われるが、セレナだけは光が邪魔してよくわからない。だが、

「・・・」

 セレナの頭を撫でながら、そうかと伝えておく。カノンノもまた、セレナがなにか隠しているのかわからないが、安心させるため、手を握りほほえむ。

 まあいまはほほえましいのだが、まず先になにするか二人の前で血液検査する。青ざめる二人がいるのだが、それはエルフナインをだきしめて癒してもらおう。

 途中で男女に分かれて、検査を受ける。

 

 

 

 ロンドンのとある一角、マネージャーである緒川と共に見守る。

「マリア、少しは落ち着いたらどうだ」

「落ち着いているわ、私は」

 そう言いつつ、彼女はずっと部屋の中をぐるぐる歩いている。モニターで彼女の様子を仲間達もくもった顔色であり、響もまた事情を聞き、そわそわしている。

「結果出ました」

 その言葉に、モニターにかぶりつくマリア。他の装者達もまたモニターを見る。

「それで結果は」

 指令の言葉に、オペレーターは静かに、

「・・・現在医学の結果では、セレナさんは間違いなく、セレナ・カデンツァヴナ・イブさんと、同一人物です・・・」

「嘘よッ」

 それに叫ぶマリア、それでもエルフナインもまた協力して調べているが、間違いなく同一人物と出ているうえ、

「マリアさんとも関係があります、異世界人だからとは言え、この結果は・・・」

「うむ・・・偶然の一致、にしては、だが・・・」

 全員が困惑する中、マリアはまだ叫ぶ。

「あの子は見た限り、14歳くらいだわッ。あの子がもし生きていたのなら、もっと年上よっ」

「そ、そうデスよっ、マリアの言うとおりデス」

 そんな騒ぎの中、謎や不可解な点だけが増していく。

(異世界の救世主が、シンフォギア装者と全くと言っていいほどの同一人物、いや)

 よく考えればそれだけでなく、すでに龍と言う、異世界のイレギュラーがこの世界で起きている。

(彼のことだ、自分についてなら嘘は言わないだろう。むしろ気にしてないから詳しく調べていないと見ていい。だが)

 セレナのことと言い、異世界のゲーデと言う転生者がこの世界と関わりがあると言う事実を見過ごすことはできない。

(彼の話では、いずれルミナシアの仲間から連絡が来るそうだが、できれば早い段階で連絡したいな)

 そう考える中で、装者達の同様もまた、彼にとっては悩みの種になり、モニターの緒川と目が合う。

 お互い頷き合い、目を光らせるしかない。

 

 

 

(あり得ない・・・)

 そう言い聞かせるように、言葉を続ける。

(あり得るはずは、ないっ)

 

 だが、

 

 声が、仕草が、反応が、

 

 心の奥底から、彼女のことを

 

(違う違う違う違う違う違うッ)

 モニター越しから見た瞳、そのまっすぐな瞳を見て、龍と言う男の後ろに控えている彼女を見れば見るほど、

 セレナと、涙を流してしまいそうになる。

 間違いなく妹、セレナ・カデンツァヴナ・イブ。

 そう感じている、思っている、考えている。

「・・・」

 頭を抱え、黙り込むマリアに対し、みな言葉が詰まる。

 

 

 そのとき、

 

 

「えっ」

「・・・・・・・」

 息をのむマリア、それは静かに扉を開き、セレナ達が現れた。

「~~~♪」

 セレナは楽しそうに、歌を歌いながら、お菓子を持ってきた。

「すいません、勝手に台所借りました」

「しっかし、セレナ、カノンノ。ここはギルドじゃねぇんだから、おやつ食べたいってだだこねるなよな・・・」

 龍は呆れながらそう言い、いくつかのパイらしき焼き菓子を持って現れた。

「仲間から教えてもらったピーチパイですっ、みなさんの分もありますからどうぞっ」

 そう言い、セレナはまた歌い出す。

 龍は頭をかきながら、何かに気づく。

「どうした?」

「・・・」

 何人かはお菓子のにおいで和んだはずだが、ある一人の人間の反応に、固まっていた。

 マリアが、信じられないものを見る目で、こちらを見ている。

「その歌」

「えっ?」

 そんなマリアが口にしたのは、

「その歌はどこで覚えたのっ!!?」

 マリアの言葉に、セレナは龍の後ろに避難してしまう。視線が龍に突き刺さるが、龍は気にせずに、かわりに答える。

「この歌って、セレナの歌?」

「セレナの癖だよね? 暇なときとか、料理するときから、いつも歌って、みんなを笑顔にしてるんだよ」

「そうだな・・・って、ん?」

 カノンノの言葉に頷くセレナ、そのときに龍は首を傾げた。

「そう言えばセレナ、お前なんで歌覚えてるんだ?」

「どういうことデスかっ!?」

 くってかかるように、切歌達も話を食いつく。それに疑問に思いつつも、龍は答える。

「本来ディセンダーは、世界に危機が訪れた際現れ、危機を退けたあと、世界樹の中に眠り付く。その際、記憶をリセットするらしいんだ」

「そう言えば、セレナ、その歌ってどこで覚えたの?」

「えっ、知らないけど・・・」

 それに、カノンノ達はあれ?と言う顔になる。

「・・・そう言えば、ディセンダーだって分かる前、セレナは記憶喪失の子として、過ごしているとき、歌と名前で身元探してたな」

「だけど、セレナがディセンダーなら、どうして歌を?」

「ん~戦うことと一緒に、必要だから?」

「いや違うだろそれ」

 彼らもわからない顔をしている。

 その中で唯一、顔色が悪い者が居た。

「マリア・・・」

 調がそう呟いて、やっと我に返るマリア。

 それに龍達も気づく、そのとき、

 

 

 

 セレナと目が合った。

 

 

 

「・・・ごめんなさい」

 そう言って、連絡を切り、その場に座り込んだ。

「マリアっ!?」

 翼が駆け寄り、顔色を見る。よほどひどいのか、青ざめていた。

「・・・あの歌は、いったいなにがあった?」

 翼の問いかけに、マリアは、

「・・・あの歌は」

 静かに、

「・・・セレナが私によく聞かせてくれた、歌よ・・・」

 今後こそ、全員が静かに、黙り込むしかなかった。




いつアドリビトムのメンバーだそう。それより・・・ちらっ

ジュード達の世界


・・・いやいやいやいや。

未プレイのスレイ達

いやいやいやいや。

仮面の戦士、ライダー達。

それはダメですね、はいわかってます。この作品はシンフォギアとテイルズだけにします。
少し調子に乗りましたすいません。ここので読んでいただきありがとうございます。
ではまた次回、よろしくお願いします。


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動き出す思い達

事態動かさないとそろそろ、物語は加速します。


 色々謎が起きる中、結局進展はない。

 あるとすれば、マリア・カデンツァヴナ・イブという装者や、指令達がなにか隠しているということだけだ。

 通信をいきなり切られ、困惑するが、結局説明のないまま時間だけが過ぎた。

 そして、

「・・・お前か」

 異世界の仲間から、連絡が来た。

 

 

 

「カノンノ達の仲間から連絡来たって本当ですかっ!?」

 立花達が連絡を受けてやってくる中、俺達はエルフナインを囲んでいた。

「ん?」

 立花が首を傾げると、エルフナインの頭の上、緑のふわふわに気づく。

「クイッキ~」

「・・・この子は?」

「クイッキーだよ」

 そう言われた生物は、挨拶するように前足をあげている。

 なぜかエルフナインの頭の上にいて、とりあえず立花は写メしようとしたので止めておく。

「いま、話を聞こうとしてたんだ」

「わかるんですかっ!?」

 俺の言葉を防ぐ疑問、まあ立花ではなく、この場にいる装者や、指令達もそうだろう。

 カノンノが少しだけずるいと言わんばかりに俺を見ながら答えた。

「リュウはゲーデの力なのか、クイッキーみたいな子の言葉がわかるの。いまからクイッキーがなんでいるから聞くから」

「クイッキー」

 ちなみにモニターには風鳴とそのマネージャーである緒川もいる。

 マリア・カデンツァヴナ・イブだけが、この場にいない。

 クイッキーは手振りそぶりで、クイクイと鳴きながら、俺に話しかけ、説明が始まった。

 

 

 

「ククク、クイッ、クイッキー。クイ、クイイ、クイッ、キー・・・」

 クイッキーが動くたび、エルフナインの頭を動く。その様子を見ながら、響はクリス達に話しかける。

「マリアさんは・・・」

「連絡したみたい・・・だけど会えないって・・・」

「顔を少し見たんデスが、元気なかったデスよ・・・」

 そう言いながら、龍はうんと頷き、話を終えたらしい。

「その子はなんて言ってるんですか?」

「・・・」

 難しい顔をしながら、弦十郎の方を見て、全員に話しかける。

「まずわかったことは、いい話と悪い話だ」

「いい話と悪い話?」

 弦十郎の問いかけに頷き、まずはと説明し始める。

「ルミナシアという世界には、世界樹っていう、世界を生み出す樹があり、姉妹世界があることは伝えたよな」

「ええっと・・・はいっ」

 響が思い出しながら、クリス達も頷く。それを確認しながら、

「その世界の中に『パスカ』という世界があり、その世界が寿命を終えた際、パスカの子供と言うべき世界を見守るため、異世界に旅立った人がいる」

「ニアタのことだね」

 カノンノはうれしそうに呟き、それに頷く。

 ニアタ・モナド、パスカのディセンダーにとって、父親、家族のような彼らの話。

 意識を一つに統合し、機械の身体で世界を飛び回る、仲間の一人を説明する。

「ちなみに、そのパスカのディセンダーはカノンノとそっくりさん。というより、世界樹の世界事態の始まりに、カノンノという少女、言ってしまえばDNAの大元と関わりがあるらしいんだが、まあいまは関係ないな」

「えっと、話が飛躍されすぎてわかりませんっ」

「ごめんねヒビキ、あとで教えるから」

 カノンノはそう言い、龍は本題と言わんばかりに話を続ける。

「つまり娘が守った世界の子供達を見守るために、機械の身体で異世界中を旅する者がいる。その名前がニアタって言う人だよ」

 ニアタは世界樹の世界に、自分の意志を伝える機械の身体をいくつも持ち、その一つとルミナシアが接触しているが、本体は別の世界にあるらしい。

「その世界にジルディアの民もどきが出たらしい」

「「!!?」」

 セレナとカノンノが驚き、それは司令室にいるもの達もまた驚いていた。

「そのせいで、向こうもかなり大慌てで対応しててな。仲間のうちには、他ギルドの人や、国に所属する者もいるから、アンジュ、うちのギルドマスターもあわてて集めだして対応し始めている。ニアタの話と俺らの話、関係あると判断して大急ぎで連絡するため、クイッキーだけでも送り出すことにしたらしい。俺とは話せるからな」

 クイッキーの話では、向こうでニアタからその話を聞き、急いで通話と行き来を可能にするため動き出したらしい。

 学者達が言うには、いくつもある異世界で、目的の世界に行くためにはアンテナが居るが、なぜかそのアンテナがあるらしい。

「・・・絶対に勝手に改造してるよね、それ・・・」

 カノンノが呟き、セレナは頷く。

 龍は通信機こと、その改造されたものを取り出す。最初に気づくべきだった。知らないうちに、知らないアプリがダウンロードされていたのだ。

「こいつのおかげで、俺らの場所が分かって、あとは通路を開くだけだが、人一人安全に通過させる道の調整に、時間がかかるはずだった」

「はず?」

 クリスが聞き返し、それには呆れながら、

「仲間に、その、ドジな子がいてな・・・」

「・・・コレットがどうしたの?」

 セレナが龍が彼女のことをドジッ子と言っているので、そう聞き、龍はどうすればいいんだと思いながら、

「彼奴が転んだ時、偶然、たまたま、通路が安定する数字をたたき出したらしい」

 何時間かけて調整する数式を、偶然答えを出すなんて、

「「さすがコレット・・・」」

 二人は驚く中、他の人達は訳が分からない顔をしている。龍自身もわかんないという顔をしている。

「そういうことがあり、人はすぐには無理だけど、クイッキーくらいなら問題ないから、クイッキーが来たらしい」

「クイッキーー」

 両足を上げて、エルフナインの頭で胸を張る。

 連絡もそう少し調整すればできるらしい。龍はそれを見ながら、アンテナの役割を担っているものをカノンノに渡す。

「分解するのは問題あるからな、カノンノが持っててくれ。司令官、悪いけど連絡つけるように、電話を三台頼んでいいか?」

「ああ、響くん達や、俺達との通信機以外に、そういったものも用意しよう」

 カノンノは龍からそれを受け取り、クイッキーは一仕事を終えて、エルフナインの上で休んでいる。

「ところで、どうして僕の頭の上に?」

「・・・気に入ったからだろう、よかったな」

「じゃ、写メろう、エルフナインちゃん、未来に見せるから、こっち向いてっ」

 そしてクリスに怒られる様子に、龍はやっぱり保護者じゃねぇかと言う一言で、この話は終わった。

 

 

 

 クイッキーが来てから、話を聞いた俺だが、正直わからないこともある。

 異世界の現れたもどきのことや、マリアと言う装者のことだ。

「・・・ったく」

 指令達が本部として活動しているのは、潜水艇だった。なぜか二号と言う文字がついてるのに疑問があるが、それはどうでもよかった。我らアドリビトムもまた、飛行船であるのだから、気にすることではない。

 いまは港に止まり、多少なら外に出ることができるため、風に当たっているセレナを見つけだす。

「・・・はあ」

 セレナは表面上元気だが、生みを暗い顔で見つめるセレナに近づく。

「おい救世主」

「・・・リュウ」

「お前もなに隠してる」

 間髪言わずに聞く、セレナはびくっと全身を振るわせて、静かに近づいてくる。

「・・・変だよね」

「・・・なにが」

 下を向いたまま、静かに目を閉じて、一言、

「・・・あの人、マリアさんのこと、知ってる気がするの」

「・・・」

 それを黙ったまま聞き、いつの間にかセレナは俺に寄り添うように、体重を預けてくる。

「おかしいよね、最初リュウが使ってた機械で、あの人見たとき、頭の中で、知っているって思ったんだ」

「・・・」

 ここに来たとき、ニュース欄を見ていたとき、セレナがのぞき込んでいたことを思い出しながら、セレナは続ける。

「顔を見たときも、笑顔のあの人がいたの・・・だけど」

 実際あったら、あの人は悲しそうにしていた。

 こちらを見て、悲しそうにしていた。それが凄く、苦しいと思ってしまう自分がいた。

「変だよね、初対面の人に、そんな風に思うの・・・だけど、私は」

 なぜかは知らないが、笑っていて欲しい。他の人以上に、仲間達と同じように。

「だけど、私はあの人を傷付けた・・・」

 泣きそうな声で呟く。それを静かに聞くしかない。

(・・・どうなってる)

 ディセンダーであるセレナに、この世界どころか、過去なんてない。

 はずなのに、この感覚。セレナは嘘を言う子ではない。光の所為でセレナの心の動揺は

わからなくても、それくらいわかる。

(やっぱ、俺だけならともかく、別に何かが関わってるのかこの世界・・・)

 だとしたら、そう思うと舌打ちをしてしまう。

 自分はいい、負の象徴、ゲーデ。

 世界の害悪であり、滅びるべきものでいい。構わない。

 けして良き者ではなく、悪しきモノでいい。

 希望も、優しさも、希望も、愛も、いらない。必要とも思わない。

 だが、

(こいつらは違う)

 そう思い、ため息を吐いたあと、行動に出ることにする。

 

 

 

 とある日、ロンドンではとあるコンサートが行われる。その楽屋で、一人の歌姫は黙り込んでいた。

 そこに、

「まだ引きずっているのかマリア」

「翼・・・」

 今日、ともに歌い合う者同士。翼はマリアに近づき、マリアは顔を伏せていた。

「・・・切り替えなきゃ、だめよね」

「マリア・・・」

 かける言葉を思いつかず、翼はマリアを見つめる。

「わかってるの、だけど、どうしても、私は・・・」

 そう呟く歌姫達の元に、

「すいません翼さん、マリアさん」

「緒川さん?」

 突然楽屋に、翼のマネージャーである緒川が入り、それに、

「こんには」

「「っ!?」」

 緒川の後ろから、何かを持った龍がそこにいて、二人は困惑する。

「面と向かって挨拶は初めてだな、龍だ。よろしく風鳴さん、カデンツァヴナさん?」

 そう言いながら中に入る。マリアは少しだけ顔を背ける。

 セレナは彼に対して、少し、いや、かなり慕っている。

 その事実だけで、実は彼のことを嫌っている自分に、腹が立っていた。

「翼でいいよ龍。今後、ともに戦う仲間だからな」

「そうかい、それより渡すもんあるからな。えっと、カデンツァヴナさん」

「・・・マリアでいいわ。それで用事はなに?」

 そう言われ、龍は静かにテーブルに持ち物を置く。それに翼は首を傾げながら見る。

「これは?」

「セレナからあんたに、マリアへの贈り物だ」

「!!?」

 それに驚くマリアを無視ながら、

「彼奴の言葉だ、「先日はすいません。私がなにかしたかわかりませんが、私はあなたに笑顔でいてほしいんです。変なことなのはわかってますが、これを食べて笑顔でいてください」だ」

「・・・」

「彼奴はなぜかあんたのことを知っているらしい」

 驚愕するマリアに対して、翼達も驚いている。

 それでも龍は、

「あんたとセレナになにか関係あるのか分からない。だけど、いまのセレナの気持ちは伝えた。彼奴は立花達と一緒に、今日のライブを見るらしいぜ」

「・・・」

 それに押し黙るマリア。翼もまた黙り込み、龍を見つめる。

「・・・龍、ディセンダーというものは、世界樹から生まれるものなのか?」

「例外なんて、あるんだろう。そもそも、俺がそれだ。それで問題ないから、詳しく自分達のことを知ろうとしなかったが、問題が起きたから、俺はセレナのことを調べる気だ。あんたらが黙ったままでもな」

 その言葉に、翼は龍と言う人物が分からなくなった。

「君は人のために行動する、少なくとも、雪音達の話ではそう思えないのだが」

「その解釈であっている。他人のためになんて、俺は働かない」

 がと付け加え、

「彼奴らは違う、彼奴らが下向いてるのを見たくないだけだ」

「・・・君は変わっているな」

「前世が世界の害悪ですからね」

 その言葉を聞き、翼はまっすぐに龍を見る。

「害悪、君はなぜそう断言するんだ」

「精霊や、それに連なるもの達からそう言われている。負の感情、それが意識を持った者は、必ず世界の害悪になるならな。俺自身、どうでもいい話だ」

「・・・君はなぜ、この世界を嫌う」

「・・・」

 それに黙り込む龍。翼は怒りではなく、ただ真意を知りたい。感情は読めなくても、そういう目で龍を見る。

「・・・知る必要はない」

 そう断言して、翼の制止を無視して部屋を出ていく。

 残されたのは緒川、翼、マリア。そして、

「・・・」

 黙ったまま見ているマリアに対して、翼はそれを取りだした。

 少し冷めてしまっているが、おいしそうな焼き菓子。ピーチパイらしい。

「・・・食べないのか?」

「・・・」

 静かな静寂の中、緒川だけは時間を気にしている。翼もまた分かっている。

「本番まで時間がある。早くしなければな」

「・・・」

 勝手に食べる準備をし始める翼に対して、マリアはなにも言わない。

「・・・私、は・・・」

 

 

 

「そろそろだね、翼さん達のライブ」

 白いリボンがトレードの少女、響の友達である小日向未来がそう呟く。

「クイッキ~」

 クイッキーはなでられたりモフられたりして、エルフナインから、未来の肩に避難する。いま女子全員が、クリスの部屋に集まり、テレビを見ていた。

 カノンノ達も輪の中にいて、すでに仲良くなり、異世界の話をしたり、軽く治癒魔術を見せたりと、楽しそうに会話していた。

 そして、

(・・・マリアさん)

 セレナは、その顔を見て、静かに、

(・・・ありがとう、リュウ)

 その顔にもう迷いはなく、まぶしい笑顔の中、歌姫の歌が始まった。

 

 

 

「・・・」

 翼から敵意を感じなかった。調子狂う中、俺はライブの外にいた。

 その背後から、緒川が気配を消しつつ、話しかけてくる。

「癖かなんかか」

「こういう仕事なんで」

 そう言って現れた緒川は、静かに俺を見ている。彼からも何かも感じない。

「・・・剣崎龍」

 そして静かに、自分達が調べた結果を語り出す。

「貴方が孤児院を引っ越す際、たびたび言われる理由として、気味が悪いと言われていますが」

「言葉通りだよ」

 俺はけして振りかえず、空を見ながら目を閉じる。

 いまロンドンは夜の時刻、耳を澄ませば聞こえるのは、人の悪意。

「俺は外国の言葉も、文字も、見ただけで意味を理解する」

「それだけではないんでしょ」

「・・・」

 その問いかけには、不気味と言われた顔で答えた。

 血のような紅と、鋭い金色の瞳。銀色の刃の髪。

 ゲーデとしての、自分の姿。

「俺は人の負、それがわかる」

 子供の頃から、悪意だけ分かった。

 彼奴はああいいながら、こちらを見下している。

 愛していると言いつつ、どうして面倒見なきゃいけないかと愚痴る人等々。

 嫌になるほど見てきた。それを裏で指摘したり、バレるように動いていた。

 そんな問題児であり、現在の自分である。

「変わってるよなあんたらは、数日したくらい、ほとんどの役人から、俺への不満、負を感じなくなった」

「・・・わかるんですか」

「わかるから、こんな性格になったんだ」

 そして元に戻りながら、空を見る。真っ暗な空だと思いながら、

「+の感情だけがわからないからな、なにも聞こえないのはそういうことだ」

 その言葉を聞き、考えてしまう。

 幼い頃から、人の悪意だけははっきりわかり、人の善意だけわからない日々。

 いま彼がなにを考えているか分からないが、彼がこの世界に対して、いい印象を持てない理由だけはなんとなく察する。

「・・・」

 ライブ会場から、熱狂が聞こえる中、アンコールコールが外にまで聞こえる。

「苦手だな、こういうの・・・」

 苦笑しながら、元気になったんだろうなと思う。

「マリアから戸惑いが消えた」

 そう緒川に告げながら立ち上がる。

「いまならセレナに伝わらない。話してもらうぜ、そっちの事情」

 そう言いながら、緒川はしばらく沈黙後、頷いた。

 

 

 

「世界樹に突貫するか」

「世界樹は、ルミナシアにとって神聖なものなんだろう?」

 緒川の車の中、翼、マリア、龍が、緒川の運転で移動している時の、龍の感想。

「知ったことか、もしもセレナがマリアの妹なら、どういう経緯で自分らの救世主にしたか聞き出す。ロイド辺りに言えば、すぐに攻め入るだろう」

「戦争を仕掛けるような言い方ですね」

「世界樹になにかあれば、世界犯罪者になるからな、間違いじゃない」

「さすがにやめてくれないかしら」

 緒川の言葉に返答し、マリアが止める。

 そう言いながら、残しておいたピーチパイを食べている。

「だが、君の意見はどうなんだ? マリアの妹、セレナだと?」

「イレギュラーがあるからな。共通点や歌、俺のこともあるから、全くないとは言えないし、なによりセレナのためにならない」

 そんな話をしながら、窓の景色を見ている龍。

 食べ終えたマリアは、口元を拭いている。

「悪いが、妹さんの遺体は?」

「・・・見つからなかったわ、あの騒ぎで爆発や炎もあがっていたから、セレナの聖遺物だけは確保されただけ」

 その話を聞きながら、セレナにこのことを言うべきか考える龍。

 マリアはそんな龍に、少しだけ敵意を向ける。

「話は変わるけど、セレナは、貴方によくなついているわね。どういう関係」

「・・・マリアさん、なんで憎しみと敵意と殺意を向けるんですか?」

「向けてないわ、早く答えて」

 翼は少しだけほほえましく見ているが、龍はそういうものだろうかと翼を見る。

「別に仲間なだけだ。まあ、仕事する際、ルーキー同士なこともあるから、よく依頼を共にしたり、野外キャンプのさ」

 言葉が途中で止まる。

「野外キャンプ? セレナと二人っきりで野宿したの貴方?」

 首襟を捕まれる龍。それには翼もあわて出す。マリアは明らかに、機嫌が悪い。

「べ、別に、やましいことはしてないっ」

「・・・二人っきりというのは反論しないのね」

「しまっ」

 力が強まり、マリアの瞳から色が消える。

「別にわかっているわ、まだあの子がセレナであることはわからないことも。だからこれは違うと分かっているんだけど、もうだめなの、制止が付かないの」

「ギブギブっ」

「ま、マリアっ、少し落ち着けっ」

「落ち着いているわ、だけど妹と同じ子が、悪い道に入るのは見過ごせないだけ」

「待てッ、なにか勘違いしてるぞッ。俺とセレナはそんな関係じゃないッ」

 緒川は安堵していいかどうか思う状態に、苦笑いするしかなかった。

(少なくとも、響さん以外に、彼を受け入れてもらえれば、クリスさん達との仲も良好になるでしょう)

 ともかく、マリアが本格的に首を絞めようとしているため、急いでホテル、その後龍を空港に送らなければいけない。

 許可を取ったとはいえ、龍はもともとここに長くいる気はないようで、すぐにセレナ達のもとに戻る話になっている。

 安全運転をしながら、いま走行しているのは自分達だけのため、少しスピードを上げるか悩んだ瞬間、

 

 

 

『ホーリーランスッ』

 

 

 

 光の槍が、車を貫いた。

「・・・ほう」

 車はすぐに爆発したが、緒川を始め、全員がすでに待避していて、襲撃者を見る。

「緒川さん、すずみたいな動きだなって・・・」

 襲撃者は敵対しているもの達の動きに感心しながら、翼達は襲撃者を睨む。

「龍、彼を知っているのか」

「・・・ああ、いや違う・・・」

 一瞬頷きかけたが、首を振る龍。

 マリア達はいつでもシンフォギアをまとえる体制であり、龍も負の力を使える体制。

 緒川は急いで連絡し、この辺りの通行を止め、戦闘のサポートに回っている。

「・・・お前は」

「貴様がゲーデか、なるほど・・・お前のいる世界では、私がいたようだな」

「やっぱり、もう一人か」

 翼達は敵を睨む。宙に浮く、光の翼を持つ、金髪の男。

「・・・ユグドラシル」

 それはルミナシアにおいて、敵として戦った相手だが、目の前にいる者から、命の輝きを感じず、また、向こうもこちらとは初対面な言い方をする。

「悪いが、恨みはない。それでも、消滅してもらうぞ、負の怨念よッ」

 そしてまた、光が放たれ、それが開戦の合図のように、三人は走り出した。




中途半端になった、申し訳ない。それとも長文ではないのか、わからない。
マリアさんの扱い、これでいいのか? キャラ崩壊とか付け加えた方がいいのだろうか。
次回戦闘パート。ユグドラシルさんと、オリ主、装者達。ロンドンの町を舞台に戦います。
それではこれで、ここまで読んでもらいありがとうございます。


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墜ちた英雄と戦姫

戦闘パートがんばるぞ~

リアルの事情

ぐはっ、バタン

おおっ、作者よ。倒れてしまうとは情けない

という事態が多々ありますがよろしくお願いします


 ライブが終わり、興奮冷めることもなく、いま響達は司令室へと流れ込む。

 司令室の巨大モニターには、シンフォギアを纏い歌う翼。それを援護するマリアと龍。

 そして対峙する者に、カノンノとセレナは驚いた。

「「ユグドラシルっ!!?」」

 光る羽根で空をとぴ、武装していない腕で翼の太刀を防ぐそれに、クリス達は驚く。

「知ってるのかあの白タイツ野郎」

「うん」

「天使って種族の人で、危険な人だよ。かなり強いし、だけどロイド達が倒したって聞いてる・・・」

 セレナの答えに、疑問を覚える中、戦い方に切歌が叫ぶ。

「なにしてるデスっ、あの三人はっ!?」

 翼一人に相手をさせ、二人は距離を取りつつ、援護している。

 何人かも疑問に思ったが、

「いやそれでいい」

 弦十郎の一言で、すぐに片づけられる。

「マリアくんと翼なら問題なくコンビネーションはできている。が、相手はノイズや装者ではない。龍くんは向こうの手の内を知っているが、二人との協力戦はいまが初めてだ」

「それだけじゃないよ、リュウの話じゃ、ユグドラシルは一瞬で敵を無効化する術があるから、距離を取らないと一瞬で逆転されちゃう」

 二人はそれを聞き、いまの体制で戦っている。

 翼に接近戦を全て任せ、龍は手のひらに、負の感情を集めて放つ。『エイミングヒート』という技、マリアもまた中衛からの攻撃をし、翼は歌を歌いながら、ユグドラシルと戦う。

 だがカノンノとセレナは焦りの顔で呟く。

「このままじゃまずいよっ」

「龍は元々、全部の技を剣での攻撃でやる、もう前戦攻撃主義だから、サポートなんて無理なんだっ」

「剣?」

「あの男、剣なんって持ってないデスよっ」

「この世界の人、剣持ってたら捕まるから、おいてきたんだってっ」

 それを言われ、納得する中、翼達の戦いを見守る。

「翼の攻撃は防がれているが、確実に命中している」

 だが、なぜか決定打になっていない。高い攻撃を放とうとすると、見たこともない技、異世界の魔術で隙を狙われる。それにマリア、翼は対処できず、龍が守る形で防いでいる。

 逆に龍は、二人の戦い方が分からず、前に出られず、いまの状態だ。

「一撃の必殺が出せずじまいか・・・いきなりの協力戦では致し方ないとはいえ、歯がゆい」

 その弦十郎のつぶやきに、オペレーターの一人が叫ぶ。

「スキャンの結果出ましたッ、未知の敵から生体反応はありませんっ」

「「えっ」」

 それに驚く二人。セレナはモニターを見るが、モニター越しでは相手が生き物かどうか分からない。それにオペレーターは続ける。

「同時に謎のエネルギーを感知、それにより攻撃を防がれていると推測されます」

「破ることはできないのか」

「現段階ではなんとも言えません・・・」

 少なくてもただ斬りかかるだけでは致命傷を負わすことはできないのは明確であり、いまはじり貧な戦いが繰り広げられる。

 この状態の中、彼らはできる限りのサポート。戦闘による二次災害などを起こさせないようにするのでやっとだった。

 

 

 

「くっ、やはり斬れないか」

 ユグドラシルの身体に刃をたたきつけるたび、肉体ではなく、堅い装甲のような音が鳴り響く。

 それにより力を込めて攻撃しようとすれば、魔術らしき技が自分や仲間達に襲いかかる始末。

「『ホーリーランス』」

「くっ」

『『エイミングヒート』』

 急に現れる光の槍に、龍の黒い炎の弾丸が撃ち落とす。いまはその繰り返しだ。

「接近して一気に畳みかけられないのっ」

『ダメだッ、俺が知っているユグドラシル、あるいはそれ以上の戦闘力だッ。なら彼奴もあの技を持ってるッ』

 マリアの叫びに、龍は強く否定する。

 戦い始めた際も、龍が最初に言ったのがいまの状況。

 曰く、相手は自分達を同時に無力化する術があり、それに巻き込まれないように、距離を取りサポートしなければいけないとのことである。

 それがなんなのかわからないが、龍の言葉に従う二人が取ったのはいまの行動だ。

 つばぜり合いのような戦いから、距離を取り、後ろを見ずに話しかける。

「だがこのままでは戦いが長引くだけだ」

『悪い、俺があんたらの戦い方を知ってれば、技使うサポートできるんだが』

「仕方ないわ、私たちも敵の出方が分からず、貴方に頼りっきりだから」

 必殺の一撃を出せず、いまお互いにらみ合うしかできない両者。

 周りは瓦礫と化しているが、人気が無く、被害はいまのところ出ていない。

「しかし魔術・・・なんでもありだな」

 光の槍や剣、雷まで操る。龍のサポートがなければ致命傷になる一撃もあったが、どれも龍が危惧する術ではないようだ。

「・・・」

 こちらを見通す男、ユグドラシル。静かに見つめるは、

「ゲーデ、なぜ貴様は世界を守る?」

『・・・』

 話しかけるユグドラシルに、龍達はけして警戒を解かず、構えるしかない。

『・・・お前、俺の知っているユグドラシルじゃないな。お前こそ、なんで戦う?』

 それに対して、ふっと自虐的にほほえむユグドラシル。

「お前ならわかるはずだ、ゲーデ。私が生者ではないことを」

 そう言い、翼に斬られた箇所を見せる。それは鉱物、宝石のように輝く身体だった。

「何者かは知らないが、偽りの肉体を作り、私と言う人形を作り出した。理由はお前達と戦うためだ。あいにくとそこまでしか知らない」

「なんだと・・・」

 翼は驚きながら、ユグドラシルは鋭い視線で龍を見る。

「次は私の問いだゲーデ。世界の害悪にて、命が抱える矛盾の象徴よ。お前はなぜ、守護する側にいる?」

『・・・』

 黙り込む龍に、ユグドラシルはふんと呟きながら、思案する。

「お前は人の負、人の怠惰、色欲、憤怒、傲慢、強欲。数えればきりがない感情の固まりだ。醜く、愚かな人の心から生まれ、あまつ生み出した界より、否定された、生まれてはいけない存在。それがお前だ」

「!? なにを」

「実際全ての世界、ゲーデと言う存在は生まれた瞬間に消されている」

「「!!?」」

 それに驚くのは、二人だけでなく、それを聞いた全ての人だった。

「お前はいるだけで大罪と定められたモノ、なのになぜ、その世界のために戦う?」

 セレナとカノンノは黙り込む。実際そうだ。

 龍は、ゲーデは他の世界でも、世界樹の内に生まれ、浄化されている。

 意識を持ったゲーデは、龍の他にいるとニアタから聞いた。だが、それで終わっている。

 他の世界ではどうなのかわからない。負の感情、その象徴である龍は、

 

 

 

『・・・『チェーンソード』ッ』

 

 

 

 ためらい無く、不意打ちをした。

 地面から鋭い刃が、チェンソーのように刃を回転させ、ユグドラシルへと襲いかかる。

「!?」

『いまだ二人ともッ』

「ちょっ、それは」

「いくらなんでもっ」

 二人も驚くが、すぐに動いた。

 翼の剣は太刀から大剣へと変わる『蒼ノ一閃』を放ち、マリアは蛇腹剣を振るう。

「くっ」

 さすがに驚いたのか、ユグドラシルの表情がゆがむ。蒼ノ一閃を食らい、腕に亀裂が走る。

「ゲーデッ」

『ハッ、俺が害悪だぜッ。敵を倒すのに手段は考えねぇよッ』

 話し始めた際、ゆっくりと髪の刃を地面へと伸ばしていた龍。考え込むそぶりをして、視線を集めたりと、こそくな手を使った。

『俺の答えは一つ、知ったことかッ』

「!!?」

 ユグドラシルは驚き、龍は接近して、エイミングヒートを零距離で放ちながら、突撃する。

 地面にユグドラシルを削るように引きずりながら、その眼光を向ける。

『俺が悪? 別に構わないッ。世界だが知らん、知っちゃこっちゃねぇよッ』

「己を否定する世界、滅ぼそうと思わないのかッ!?」

 叫ぶユグドラシル、いつの間にか身体に髪が絡まり、龍は高く投げ飛ばす。

『知るかッ』

 その体制は二人は知っている。龍は両腕に負の力を集め、ドラゴンを作り出す。

『俺は俺だッ、世界だろうが神だろうがッ』

 拳と脚による打撃の嵐、そして胸にアッパーを放ち、体制を崩させる。

『俺を殺せるのは、セレナ、ディセンダーが持つ救世の光のみッ』

 ドラゴンが大きく口開き、ユグドラシルのが見開く。

『希望しか俺を殺せねぇよッ、黒喰龍ッ』

 ユグドラシルは黒喰龍に喰われ、龍は吐き捨てる。

『俺は壊すだけだ。誰かを守ったりしたことは一切合切絶対的に徹底的にあり得ない』

 そう言い、手応えに気づく。

『チッ』

 盛大に舌打ちして、口を開くが、そこにユグドラシルはなく、

「なるほどな、それがお前の答えかゲーデ」

 別の場所にいるユグドラシル。龍は体制を大きく動かし、かなりの隙を見せるが、二人がサポートの体制であるため、ユグドラシルは攻撃せずに見ている。

「これは」

「黒喰龍は確かに捉えていたはず・・・」

『瞬間移動かッ、くそッ』

 内心そんなことできるのかと驚く二人だが、龍はまた臨戦態勢を取り、ユグドラシルは笑う。

「世界の害悪、矛盾の存在よ。お前はいずれ、仲間達に殺されるだろうな」

『別にそれは構わないが』

「「龍っ!?」」

 翼とマリアは声をあげたが、それにユグドラシルは笑う。

「お前は・・・壊れているな」

『だからこそ、敵対してるんだろ。災いさん』

 ユグドラシルは静かに、龍を見つめながら、亀裂の走った腕を上げた。

「ならばこれに対して、どう行動する?」

 瞬間、空が光り出した。龍は、

『(ジャッジメント)』

 放たれる光の柱に、すぐに対応しようとするが、

『!?』

 方向は自分らではなく、別の、

「「『側の建物っ!?』」」

 しかもそこには、

「しまっ」

 戦いの様子を見ていた緒川がそこにいた。

 三人はすぐに動いた。龍はチェーンソード、マリアは蛇腹剣、翼は剣で光の柱を防いだが、

「固まったな」

 その瞬間、中心にユグドラシルが現れた。

 三人は気づき、龍は髪で緒川だけ距離へとぶん投げた。だが他は無理だった。

 

 

 

「『慈悲をくれてやろう。痛みすら感じぬッ。時を統べる力。タイム・ストップ』」

 

 

 ユグドラシルを中心に、灰色の空間が三人だけでなく、ギリギリで緒川以外を飲み込んだ。

 その瞬間、翼達の思考は停止した。

「これは」

 体制を整え、驚愕する緒川。

 瓦礫までも宙に止まり、全員が一斉動かない。

「時間を止めた、世界の害悪とて、時の理には逆らえない。いや、その身を人にした時点で、致し方ないことか」

 また空間移動し、彼らの斜め上の頭上に現れる。

 そして彼らを囲むように、光の魔法陣が現れ、無数の剣が現れた。

「!!?」

 緒川が拳銃を取り出し、ユグドラシルに放つが、微動だにせず、気にもとめない。

「二人の装者、そしてゲーデよ。痛み無く散れッ」

 だが、

「!!?」

 地面、翼達の地面から、銀色の刃が生え、翼達に巻き付く。

(あの男をかばうようにしたのは、動きを隠すためか)

 髪は動いていたのは知っていたが、まさかタイム・ストップ外まで地面の下に忍ばせて、攻撃に対する防御の術を隠していた。

(こざかしいが、己の身は考慮せずか)

 ユグドラシルは自分を守らない龍に対して、渾身の一撃を叫ぶ。

「『プリズム・ソード』」

 

 

 

「「!!?」」

 ユグドラシルが何か叫んだ瞬間、場面が変わるように意識を取り戻した翼達。

 まず全身に巻き付くのは龍の髪であり、それが光の剣を防いでいると感じ取ったときに見たものは、

 光の剣で貫かれて、鮮血を流す龍であった。

「「龍っ」」

 だが、

『取ったッ』

「!!?」

 タイム・ストップをすれば、必ず力を込めた一撃を放つだろう。

 緒川を助けるように投げれば、それに気を取られ、地面に忍ばせたチェーンソードに気づかないだろう。

 それがもし翼達を守るように動けば、より気づかないだろう。

 ミシッと、地面から何かが吹き出した。

『チェーンソードッ』

 本命、チェーンソードの一本は、ユグドラシルを貫く瞬間、そう叫んだ。

 

 

 

「ぐっはっ」

 身体に亀裂を走らせ、痛みらしきもので顔をゆがませるユグドラシル。

「きさ、ま」

『翼ッ、マリアッ。あとは任せたッ』

 もう自分は追撃はできない。さすがにダメージがでかい。

 それに二人は驚きつつ、胸のブローチへと手を伸ばす。

「させるかッ」

 ユグドラシルは貫かれたまま、追撃しようとするが、発砲音が鳴り響く。

 それを無視して、魔術を使う。はずだった。

「!!?」

 一瞬身体が動かず、困惑する。

 緒川が撃ったのは、ユグドラシルの影への発砲。

『影縫い』という技が、彼女らの必殺をする隙を生んだ。

「「イグナイトモジュール、抜剣ッ」」

 それを使用したとき、

『(・・・!!?)』

 世界が動いた。

 

 

 

「これはっ!!?」

 突如司令室にアラームが鳴り響き、弦十郎達は困惑する。

「どうしたっ!?」

「イグナイトモジュール並び、聖遺物、天羽々斬並び、アガートラームのエネルギーが上昇ッ、尋常じゃないエネルギーですッ」

「イグナイトモジュールの効果じゃないのかっ!?」

「違いますッ、それどころか、これは・・・」

 弦十郎の叫びに、エルフナインは困惑する。

「イグナイトモジュールでの翼さん達に対し、悪影響はありませんッ。パワーだけが尋常じゃないほどあがってますッ」

「なぜそのようなことが」

 司令室のアラームはいまだ鳴り響く、モニターのマリアと翼から、霧を通り越し、光のような柱が立ち上がる。

 

 

 

「これはっ!?」

「力だけはあふれてくる・・・違う、前以上に使いやすくなっているっ!?」

 二人の装者は困惑していた。少し慣れたとはいえ、イグナイトモジュール時にはかなりの精神が必要なのだ。

 だがいまはそれが、嘘のように無い。

 むしろ使いやすく、なにより身体に変化はない。悪影響だけが綺麗に消え、力だけが増していた。

「これは、どういう」

『ぐっ』

「!?」

『グアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ』

 

 

 

 モニターの中の龍が叫び、その姿は銀髪とオッドアイだけの龍になる。

 オペレーターはそんな中、そんなバカなと驚く。

「どうしたっ」

 弦十郎もまた現状を把握するために叫び、エルフナインも検出された結果に驚く。

「そんな・・・そんなことが」

「なにがあったのっ!?」

 響の問いに、エルフナインは叫ぶように言う。

「龍さんから聖遺物、天羽々斬とアガートラームを感知。龍さんからお二人の聖遺物の力が流れ込んでますッ」

「デスっ!!?」

 全員が驚く中、それでも戦局は動き出す。

 

 

 

「龍、これは一体っ!?」

「翼さんッ」

 緒川の叫びに我に返り、龍に近づくよりも早く、ユグドラシルを見る。

「『グランドダッシャー』」

 地面が揺れ、津波のように押し寄せてくるが、

「マリアッ」

「わかってるッ」

 龍をかばうように前に出て、剣を一降り、本人は一降りするだけだが、

「なっ」

 それは大地を削りきり、グランドダッシャーを切り裂いた。

(翼じゃないのに、なんなのこの力・・・)

 剣撃だけが飛び、ユグドラシルを捉え、後ろへと後退させる衝撃破。だが自分はそのつもりで振るったわけではない。

 二人とも瞬時に自分達、シンフォギアの外装を確認する。だがエルフナインによる強化されたイグナイトモジュール時の格好、姿そのままだ。

 変わっているのは、聖遺物の力のみ。

「くっ」

 それでも戦局を終わらせることを第一にするため、翼は歌う。

「くっ、はっ」

 身体に亀裂を走らせるユグドラシル。弱っていることもあるが、やはり圧倒する翼。

 彼女は歌う、ユグドラシルと言う敵を倒すため、

「これが奴が言っていた、イグナイトモジュールか」

 そう呟くユグドラシルに、必殺の一手を放つ。

 炎を吹き出し、鳥のように羽ばたく翼。

 その勢いのままに、ユグドラシルを切り裂いた。

「・・・見事」

『羅刹霧ノ型』に対して、ユグドラシルはそう呟く。

「・・・これでまた眠れる」

「!!?」

 それは先ほどまで聞いていたユグドラシル。歳相当の声ではなかった。

 まるで少年のような声で、ユグドラシルは砕け散る。

 

 

 

 なんだ。

 頭が痛い、雑音がひどい。

 頭に響く、なんだこの雑音はッ!?

 ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ・・・

 そんな削るような感覚が、音が左右から聞こえ、だが、

 ・・・歌?

 誰かの歌が聞こえた。

 滅びを願う歌、そう思える歌だが、

 泣いている?

 意識が消えそうな中、女性の、誰かの歌が雑音の中で聞きながら、俺は意識を手放した。

 

 

 

「龍っ!?」

 シンフォギアを解除した二人は、龍に近づく。

 龍は血を流しながらその場に倒れ、緒川が脈を確認する。

「これは少し、早く病院へ運ばないと」

「ええ。だけど」

 マリアは頷くと同時に、自分達の聖遺物を見る。

 何事もないが、明らかに異常なことがおきた。

「マリア感じたか?」

「ええ、とてつもない力が、イグナイトモジュールを通して流れ込んできたわ」

 それと共に倒れる龍。なにか関係あるだろう。

「とりあえずいまは」

「日本に戻らねばなるまいな」

 そう思いながら、気を失う龍を見ながら、夜は過ぎていった。

 

 

 

 エルフナインは少し徹夜した。

「クイッキ~」

「ああ、僕なら大丈夫だよクイッキー」

「クイッキー」

 昨日のデータを見て、結果を報告する。

 いま装者達とカノンノ達はいない。真夜中、というよりもうすぐ朝だが、すぐに報告しなければと、起きている弦十郎達、緒川に連絡したのだ。

「それでなにがわかったんだい?」

 弦十郎の言葉に、少しだけ緊張しながら、仮説と推測が混じっていると付け加え、ある可能性を説明する。

「イグナイトモジュールと聖遺物、この異常な強化ですが、おそらく龍さん。ゲーデが関係あると考えられます」

「龍くんが?」

 はいとつぶやき、モニターを操作。それは龍と仮定された黒いコマと、装者達、各々の色のコマだった。

「まず聖遺物並び、イグナイトモジュールの機能に関しては、全く問題はありません。ですが、問題があるとすれば龍さん、ゲーデの力です」

 キーを叩きながら、コマの龍が黒い力、外装のようなものに包まれる。これはゲーデ状態の龍を表しているのだろう。

「龍さんやカノンノさん達のお話では、龍さんは自らの負や、世界に存在する負の感情を纏うと言う形で、あの姿になっているということです」

 そしてと、今度は蒼と銀、翼とマリアのコマが前に出る。

「イグナイトモジュールは本来暴走状態の装者であるみなさんをサポートする機能です。暴走状態はみなさんが知っている通り、響さん達の負の感情が原因でおきる状態で、ここからは仮説ですが」

 そう言い、モニターの中で、蒼と銀が黒い鎧を纏うと同時に、矢印、黒いベクトルが龍へと流れ込んでいるように写す。

「おそらく龍さんは、イグナイトモジュール時のみなさんの負の力を吸収していたと推測されます」

「龍くんが翼達の負の感情を?」

「もっと言えば、聖遺物の力をです」

「!!?」

 弦十郎はエルフナインか言おうとすることにいち早く気づき、めまいを起こしそうになった。

 龍は聖遺物、シンフォギア装者ではない。

 資格無き者が聖遺物を扱うことが自殺行為と言うことは、彼らが一番、よく知っている。

「おそらく負の感情と共に、龍さんは天羽々斬と、アガートラームを取り込み、拒絶反応で倒れたと推測されます」

 それならば、イグナイトモジュールを発動させた際、倒れたのに頷ける。だが、

「だが翼達は? あの力の強化は」

「それも仮説ですが、龍さんと一時繋がった状態になった聖遺物が、より純度の高いエネルギー源を得て、強化されたと思われます」

 簡単に言えば、龍は百パーセントを超える聖遺物を制御並び、運用てきる器がある。

 だが、龍は聖遺物を扱うことができないため、器である龍は壊れる。

 結果的に言えば、

「それって、装者である響ちゃん達が、龍くんから力を奪い取っているって」

 オペレーター男性の不用意な言葉に、女性からにらみで黙らせられる。

 だが、エルフナインはうつむいたまま、

「エネルギーのやりとり上、そう言う結論です・・・」

 その言葉に司令室に長い沈黙が訪れる。

「・・・ちなみに、彼を配慮しない場合、装者達による負担は?」

 聞かなければいけない立場である弦十郎は、渋々訪ねる。

 もしもこのことが公になればどうなるか、考えたくない。だが、万が一の場合、どんな事態であっても覚悟しなければいけない。

「響さん達には全くと言っていいほど無害です。むしろ無制限に近いほど、力が強化されると思われます」

 ですがと、付け加え、

「その場合、龍さんは・・・」

 静かに、

「確実に絶命します」

 はっきり、そう結論づけた。

 

 

 

 そこは真っ暗な闇だった。

 なにもない闇の中、それは静かに布を広げた。

 銀色の布と、蒼い布。平たく床に広がり、しばらくすると、何かが起きあがる。

「おめでとう」

 それは静かに呟いた。

 布で全身を隠したそれらは、体を動かし、調子を見ている。

「まだ君らは動かせないよ。まだ手を動かすわけにはいかない、まさかもう精霊達に気づかれるとは思わなかった・・・」

 そう言いながら、蒼は静かに、

「笑止、私を早く、ゲーデのもとに」

「あら、抜け駆けする気?」

 銀色はそう言い、無言になる蒼色。それにまあまあと落ち着かせる。

「まだ問題があるんだ。橙色の子、あれは不完全でね、君の力を少し使わせてもらうよ」

「・・・」

 銀色は黙り、橙色の布に包まれ、鎖に巻き付かれたそれを睨む。

「まだ焦らなくていい、それに、次動かすのはユグドラシルとは違って、制御できないから、出ない方がいい。よけいな戦闘はしたくないだろ」

 それに黙り込み、闇の中にとけ込むように消えた。

 静かに見送りながら、それは暗躍する。

「ゲーデ、君と相まみえる日を、楽しみにしてるよ・・・」

 それもまた闇のとけ込み、静寂が訪れる。




作者「戦姫絶唱の小説が少ないから始めたが、仮面ライダーともやりたいんだよね」
龍「出すなよ。テイルズオブだけで十分だし、他の話も終わってからにしろよ」
作者「ちなみに君は不死?と言わんばかりに殺る気だから、安心してチート」
龍「おう」
作者「おもにマリアとクリス辺りに殺ってもらうから」
龍「!!?」
作者「しっかし次回、君じゃなくカノンノ達の親睦会なんだよな。テイルズキャラも出さないといけないけど、誰だそう」
龍「待て、敵との戦いならともかく、マリアとかってなにっ!?」
作者「・・・セレナとラブラブ?」
マリア「少し話良いかしら?」
龍「待て、俺はなにもしてないッ」
作者「いまからしたことになるんだ」
マリア「・・・」ずるずると龍を裏に連れて行く
作者「マリアはこれでいいとして、この先どうなるんだろう。セレナの扱いとか、がんばります。それでは茶番はここで。お読みいただき、ありがとうございます」


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思いと想い

今回はロマンス回、戦闘パートと違うがんばりしよう


彼女たちはいま、ショッピングを楽しんでいた。

「えっと、これがしーでぃーなんだね?」

 セレナがそう言い、切歌はそうデスとうれしそうに言う。

「それに、昨日のマリア達の歌が記録されてるんデスよ」

 音楽が好きなセレナ。お金はまず龍が立て替えてくれたし、こちらが持つ宝石とお金を、弦十郎に頼み交換してもらっていた。

 本人は欲しいものがあれば渡すと言ってくれたが、ただでさえ住む場所を用意してもらっているんだ。私物はやはり自分達が稼いだお金だけにしたいと断った。

 セレナが欲しいと言った物は、音楽に関係するものだった。

 カノンノはスケッチブックとそれに関係するもの。彼女は風景画を描くのが好きなので、ショッピングのあとは、色々見て守るつもりだが、

「二人とも、元気ないね」

「うん・・・」

 小日向未来、響の友達として彼女たちに紹介した少女。ここにいるのはクリス、切歌、調とクイッキーだけで、未来が持つバックの中から、少しだけ顔を覗かせている。

 話は聞いた。装者達が、ゲーデから力を奪うように強化される状態になってしまったらしいことに。

 それを聞いて、クリス達はむろん、カノンノ達も青ざめた。

 エルフナイン曰く、ゲーデ状態の龍か、イグナイトモジュール時の装者がそろって起きる現象のため、どちらかがその状態でなければなにも起きない。

 だが、龍はゲーデの状態でなければ、ほぼ戦えない。獲物と言える武器は、ルミナシアに置いてきた。

 そして装者達も、必殺とも言えるイグナイトモジュールと言う切り札が無くなる。少なくとも、今後に関わる事態だった。

 いまエルフナインはゲーデと装者の関係に安全装置のようなものを視野に、研究と調査をしている。

 そしていま龍は目が覚めない。

 病院のベットで、外傷もなく倒れている。

 調べた結果、聖遺物による拒絶反応が原因であると見られる。

 つまり龍に天羽々斬とアガートラームの適正はないということだ。

 そしていまは気分転換のため、こうして買い物なんだが、

「セレナのこと。カノンノには」

「言ってない、龍さんは向こうで翼さん達に聞いたみたい。すっごく怒ってたって」

 響はそう呟きながら、音楽を聴いてるセレナ。切歌と調が付きっきりであり、クリスはカノンノのほう、スケッチブックなどのお店を案内してた。

「ごめんね未来、色々話聞いてもらって」

「別にいいよ。それより気になるのは」

「龍さんとクリスちゃん達だよね~」

 翼から、龍は負の感情、人の黒い部分を生まれた頃から分かる生き方だったと知ったとき、三人の顔色が悪くなる。

 三人とも、人の醜さは心底知っていた。

 それが生まれた頃から見ていたのなら、世界を嫌う理由はわかる。

 わかるが、

「それでも、色々な人が、大切な人達が守って、愛した世界だから、みんな龍さんに対して、ね・・・」

 複雑になる人間関係に、響は頭を抱え、未来はその様子を見守る。

 クイッキーは未来を見つめ、その頭を撫でながら、

「その人、龍さんってどんな人なの?」

 いまだ性格がわからないため聞く未来に対して、響はいままでの龍を思い返す。

「いい人? だと思うよ。師匠が言うには、わがままな子供って言ってた」

「ふむふむ」

「私的には、少しずっるうぅぅぅって言うこと平気でしちゃう人だけど、本当に悪い人って感じじゃないんだよね~」

 炎の中、猫を助け出し、自分を助けてくれた龍。

 この世界が滅んでいればよかったと言う龍。

 どちらが本当か、少しわからない。

 それを話してみると、

「どっちも龍さんなんじゃないかな?」

「えっ」

 その答えに驚くが、未来はそのまま、

「私はまだちゃんと会ったこと無いけど、その人、裏表ある人って印象はないよ。みんなのように、きっと事情があるんじゃないかな?」

「事情・・・」

 そのとき、異世界人の買い物を手伝う仲間達を見る。彼女たちも事情があり、敵対していた時期がある。

 それを考え、よしと前を見て、ほほえんだ。

「やっぱ未来は私の日だまりだよ、おかげでやりたいことがわかった」

「うん、それくらいは手を貸すけど。夏休みの宿題は少しだけだよ」

 それに悲鳴を上げながら、響は行動に移る。

 

 

 

 とある港付近、海の上にできた大地に、セレナとカノンノ達は驚いている。

「えっと、ここって本当に海の上? 道路とかわらないよ」

「うん、本当に下って海なの?」

 目立たないように驚いているが、そうだよ~と響が言う。

「ちなみにちゃんと説明できるか?」

 クリスが意地悪そうに言うが、えっとと目を泳がせる響。そんな風景に少女達は楽しそうに歩き出す。

 近くのオープンレストランでランチしながら、海風を感じつつ、カノンノは空気を吐く。

「なんだか久しぶりな気がするよ~向こうじゃ、海の上が当たり前だから」

「そうだね、バンエルディア号での生活が長いから」

「ああ、それって空飛ぶ船だよねっ」

 そんな話の中、ルミナシアでの話が盛り上がる。

 セレナの話に、切歌や調が詳しく聞く。

 異世界ルミナシアでの戦いや、たわいのない話。

 さまざまな種族や身分の仲間達。そして龍の話。

「「「・・・」」」

 三人は複雑そうに、龍の話を聞く。

 カノンノやセレナから話される龍は、ツンデレな天の邪鬼のような、それとも、

「ねえ響」

 小さな声で未来が聞く。

 龍の話をするたび、二人はうれしそうに、頬を赤く染め、優しく語っている。

 まるで大切な思い出を話すように、

「うん、だよね・・・」

 そんな二人に、切歌と調は複雑そうだった。

(こ、こんな話、マリアが知ったら)

(絶対に落ち込む・・・)

 そんな感想を思いながら、クリスは静かに、

「・・・お前らは」

 少し言いにくそうに、

「彼奴のこと、仲間って思ってるのか」

 それに二人は、なにが言いたいか分かっていながらも、

「うん」

「だって龍は」

「「私達にとって、大切な仲間だから」」

 口ではああいいながらも、誰よりも先に前に出る。

 その話の中で、

「仲間の中にね、双子の王族、ルークとアッシュって仲間がいるんだ」

 

 

 

 兄であるルークは、王位継承権を持つが、彼は双子の弟、アッシュが王にふさわしいと思っている。

 なにより、許嫁であるナタリアは、アッシュと総意相愛なのも知っていた。

 それでも口が悪く、それを素直に言えない男。

 アッシュもまた、素直ではなく、ルークにお前が王だと告げながら、王の資格が無いルークに苛立ちを募らせている。

 そんな中、ナタリアが何者かにさらわれた。

 それを知り、二人はすぐに動き、師匠である剣の師、ヴァンと共に犯人を追う。

 そして現れた、黒い鎧の剣士に対して、戦いを挑む。

「王でありながら資格無き者、そして王の資格を持ちながら、全てを諦めたおろか者よ。そんな中途半端な者は、なにも得られないと知れッ」

 三人かがりで斬りかかる中、そんな中、カノンノやセレナも参加するが、黒い剣士は一歩も引かず、現れる仲間達も次々と倒す。

「くっそ、テメェ、なにが目的でッ」

「俺達の問題に、他の奴を巻き込んでるんじゃねぇ」

「それは貴様達が弱く、己の真意を口にせず、流れのまま、時のまま、ただいるでくの坊であるが故に引き起こされているとわからないか。愚者よ、後悔に苦しみながら消えろッ」

 戦いの中、ヴァンが前に出たとき、強力な剣技がヴァンを切り裂いた。

「!!?」

 ヴァンは鮮血をまき散らしながら、その場に崩れ、仲間達の顔が青ざめる。

「お前ェェェェェェェェェェェェェェェェ」

「よくも師匠を・・・ちくしょ、チクショオォォォォォォォォォォォ」

「吠えるな愚者よ、これも貴様らが弱く、愚かな選択しか選ばぬ故だ」

 二人の猛攻を退けつつ、二人は叫ぶ。

「お前になにが分かるッ、俺だって、俺だってアッシュが王にふさわしいのが、ナタリアにはアッシュがいいなのはわかってるッ。けど、どうすればいいんだッ」

「それをなぜいま口にするッ、己の真意を分かっていながら、なぜあらがおうとしないッ。助けを求め、手を伸ばし、悩み、選ぼうとしなかったッ」

 剣をはじきながら、ルークを牽制している。そこにアッシュが割り込んでくる。

「貴様も貴様だ。王の資格を持ちながら、弟を苦しめている自覚がありながら、なにより、愛する者を苦しめていると知りながら、なぜ行動しない」

「貴様のような者に知る必要はないッ」

「語らぬか、愚か者よ。なら語ってやろう、それは兄の安否を気にしているのだろう」

「黙れッ」

 弟であるアッシュの発言が強まれば、ルークの立場が悪くなる。下手をすれば内乱の恐れが起きる。

 それがあるため、ルークの影になることを選んだアッシュ。

 それを剣士はあざ笑うように砕く。

「アッシュ・・・お前」

「愚か、実に愚かだッ。だからこそお前達は何も得られず、全てを失う。ならば、いまここで刈り取るッ」

「黙れッ」

 ルークとアッシュの連携に、剣士は静かに叫ぶ。

「貴様達は分かっていないッ、その選択、その先にある未来に、希望も、夢も、愛も、優しさも無い。己の自己満足がために、多くの者からそれらを奪うというのならッ」

 剣士は剣を強く握りしめ、

「いまここで散れッ」

「散らないッ」

「俺達にはまだ」

「「やるべきことがあるんだッ」」

 

 

 

「で、その剣士の正体は龍だったんだよね」

「ええぇ~」

 ちなみにこのことは一部のメンバーしか知らない上、ヴァンも一つ噛んでいた。

 知らない者達は躍起になって龍に挑み、倒された。

 ヴァンにいたっては「カノンノ達が近くにいるんだ、殺す気で来てくれ」と言われ、龍はその言葉通り、致命傷を与え、ルーク達の本音を引きずり出した。

「いま思えば、女性と男性で、攻撃も違ってたよね・・・」

「あのあと大変だったよ、ヴァンさんは三日間寝たきりだし、龍はやりすぎで他のみんなの仕事やったり、他のみんなも龍の所為で医務室行きだしって」

 翌日には回復したが、アンジュは話も聞かずに飛び出した罰と言って、龍ほどではないが仕事を回される。ヴァンもまた、よけいな話を龍にしたため、よけいな仕事を回されたらしい。

 だが、いまは少しずつだが、双子の王族の関係や、内情が少し良くなっている。

 少しだけ素直になった二人に、ナタリアは礼を言いに龍のもとに言ったが、

「「なら本当に問題解決したときにしろ」って言って、仕事に出かけてね」

「まあ、ナタリアさんも、それに納得したんだ」

 そんなことを言うが、実は龍は二人の技や、他のメンバーの戦いで傷を負っていた。

 アンジュ曰く「やせ我慢をやめたら、休ませてあげる」とのこと。

 だが龍は結局そのやせ我慢を貫いた。全くと呆れる二人。

「男の子ってどうしてこう、自分の本音とか言わないんだろう?」

「私たちの、アドリビトムの人達だけなのかな?」

「それは~私たちにも分からないかな?」

 響はよく考えると、歳の近い異性の友人はいない。クリス達はまた振られても困ると、そっぽをむく。

 そんな話の中、三人は険しくなる。

「わざわざ悪役受け持って、相手はなにがしてぇんだ」

「それはわからないよ、だけど」

「龍は自分が悪者でもなんでもいい、いつもそう思ってるの確かだよ」

 セレナの言葉に、クリスは黙り込む。

 昼下がり中、セレナはそれに、

「だけどね」

 うれしそうに、どこか恥ずかしそうに、

「だけど、いつも助けに来てくれる。他の仲間達みたいに、なにがなんでも駆けつけるし、一番は、大事なことの前に、絶対に現れてくれるんだ」

 彼女は話す、静かに、カノンノもまた、静かに聞く。

「私は最初、記憶喪失で、歌と名前しかわからないとき、カノンノやみんなと一緒に、龍もいてくれた」

 そして知った、自分が救世主、生まれたばかりの存在であり、龍の敵だと、

「精霊、初めてであった氷の精霊、セルシウス」

 彼女は言う「その男はゲーデ、世界に仇なす、害悪。ディセンダー、貴方の敵ですッ」と叫び、ともにいたリヒターと、龍へと襲いかかる。

 自分の言葉でその場が収まったが、それでも変わらない。

 ディセンダーとゲーデは敵同士であり、救世と害悪。その関係はかわらない。

 だが本人は、

「で?」

 その一言で終わらした。

「ばかばかしいよ、私、すっっっっごく悩んだんだよっ。セルシウスには、彼は敵だから仲良くなるなって言われ続けたりしたりして、なのにでで終わらすんだもん」

 そして結局、関係は変わらなかった。

 なにより、

「・・・始め、私が世界を救うって言われても、わかんないし、怖かった」

 私にできるのだろうか、私でいいのだろうか、そう悩み、考えているとき、龍が、

「龍が私を支えてくれた」

 うれしそうに、恥ずかしそうに、思い出を思い出す。

 救世主だろうが関係なく、セレナとしてしか見なかった。それは、

「みんな一緒、私がディセンダーでもなんでも関係なく、あの世界で生きる、一人の女の子だって、龍やみんなが教えてくれた」

 それを複雑そうに聞く響達。もしかすれば、そうじゃないかもしれないからだ。

 うれしそうなセレナを、切歌と調は見られない。

「だから守る」

 そうセレナは言う。

「龍は口ではああいうけど、この世界だって、守るのなら守る」

 それは龍を知るカノンノも頷く。

「そうだね、ああ言うけど、きっと」

「その事件を目の前にしたら、きっと守るために戦う。この世界で関係ない、火災現場に一番先に駆けだしたときのように」

 それに三人は驚く、そうだと。

 火の中で一番早く、その中に飛び込んでいた龍。

(・・・だけど)

 彼奴はパパやママが、自分達が守っている世界を否定した。

(マムが守ってくれた世界デス・・・)

(それを、あの人は・・・)

 なにも知らずに否定した。

 それが釘のように刺さり、彼を避ける壁となっている。

「セレナってすっごく、龍さんのこと好きなんだね・・・」

 響がそう、そう、なにげなく言うと、

「・・・」

 徐々に真っ赤になりながら、静かに、

 

「・・・うん、大好き・・・人だったら・・・恋人になりたい・・・」

 

 それはいままでの重々しい雰囲気を消し飛ぶほどの言葉だった。

 

 

 

「!!?」

 マリアが飲もうとしたカップが、突如ひびが入った。

「なぜっ!?」

 

 

 

 響達は真っ赤や真っ青な顔でセレナを見る。

 正直いまの話、マリアには絶対にできない。話を知る装者達が考えたことだ。

 それにカノンノは、

「・・・人だったらとか言うのなら、絶対に渡さないよ」

 ぼそっとつぶやき、沈黙が訪れる。

 小さな声で、隣にいる未来に助けを求める。

「こ、これってどうすればいいの未来っ」

「わ、私に言われても。こういうのは、ちょっと」

「なんでこんなことになってるんデスかっ、いまの話、絶対にマリアには言えないデスよっ」

「うん、そうだね切ちゃんっ」

「っていうか、カノンノもか、彼奴もか、彼奴もなのかっ」

 装者達があわてふためく無く、カノンノ達は真っ赤になる。いまになって、発言したのが恥ずかしくなったのだ。

 そして、

「!!?」

 近くから、爆発と共に炎があがった。

 

 

 

 港倉庫街、一人の警備員が拳銃を構え、不審者に向ける。

「て、手を挙げろッ」

 それは片腕で斧を持ち、片腕で機材を破壊した男。

 なんとも言えない恐怖を感じつつ、男は肩をならし、フゥーと息を吐く。

「あー・・・」

 静かに、

「今日の俺は・・・紳士的だぁ」

 そう言った瞬間、拳銃を持つ男の上半身は無くなった。

「だから、楽ぅに殺してやる・・・」

 空を見ながら、彼、狂戦士バルバトスは、近くにいる動くもの達へと、ゆっくりと近づいていった。




最・凶・降・臨。
装者達とディセンダーに、渇きが満たされるか。
それでは次回、よろしくお願いします。


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無双

この話でやりたいと思っていた場面だ。がんばるぜッ。


 走り出す響達。すでにシンフォギアを纏っている。

 走る彼女たちとともにいるのは、丸腰のセレナ。カノンノは未来と共に、避難誘導ぐらいの手伝いしかしていない。

「大丈夫なのか、丸腰で」

 クリスの問いかけに、ほほえむセレナ。

「うん平気、来て、『輝く光器・レイディアント・騎士』」

 そう言った途端、セレナの姿が光包まれて変わる。

 青を基調にした、剣と盾を持つ、ドレスの騎士姿。セレナはそれを纏いながら、

「それって」

「輝く光器レイディアントっていう、ディセンダーだけの鎧と武器。これは私がよく使うスタイルに特化した姿かな」

「聖遺物みたいデスっ」

 そしてたどり着いた先は、地獄だった。

「・・・そんな・・・」

 響は絶句して、みんな青ざめる。人が上半身、綺麗な吹き飛ばされている。

 いまは港の倉庫、コンテナもなにも粉々であり、火の手が上がりながら、それはいた。

「テメェかこれをやったのはッ」

「アン?」

 その姿に、セレナは戦慄する。

「バルバトス・・・」

 構えて睨む相手は、片腕で巨大な戦斧を肩に担ぎ、辺りを見渡す。

 他に人がいないのを確認して、今度はセレナを見た。

「ふむ、お前ぇがぁ、ディセンダーかぁ・・・」

 肩をならして、いつでも戦える、そんな素振りを見せている。

「どうしてこんなひどいことするのっ」

「そうデス、なにが目的デスっ!?」

 調と切歌に言われ、それは少し考え込む。

「目的か? あいにくと、俺にはそんなものは、ない・・・」

「・・・ない?」

 クリスの言葉に、それはセレナしか見ずに、静かにつぶやく。

「俺は奴らに敗北して死に、なにかによってぇ、この身体、鉱物の人形を与えられたぁ。それは理解できる」

「誰かって・・・それに、やっぱりあなたは、私のことを知らない・・・」

「アアァ・・・そいつが言っていたな、別の俺ぇがぁ、お前と戦い、敗北したらしいな・・・」

 響達は喉が渇きだし、構えを解こうとしない。

(ただ目の前にいるってだけで、なんてぇプレッシャーだこいつ・・・)

(少しでも気を抜けば)

(殺される・・・デス・・・)

 そんな三人に相手、バルバトスは続ける。

「なにをしているかだったな。暇ぁ、潰しだ」

「・・・ひまつぶし・・・」

 響が信じられないと言わんばかりに言葉を振り絞る。それにああと頷く。

「ただそこにいた、今日の俺はぁ紳士的だぁ。苦しまずに全員、殺して、やったぁ・・・」

「そんな、理由で・・・この人達を殺したって言うんですかっ!?」

 激昂する響に、セレナが前に出る。

「冷静になって響ッ、この人は私の知っているバルバトスと同じッ。ただ殺し合いをしたいだけみたいっ」

「そんな、殺し合いたいなんて・・・」

「事実だよ、この人は力を示したいとか、憎いとかじゃなく、ただ殺し合いたい。それだけしか考えていないッ。リュウが言っていたの、バルバトスから悪意はないってッ」

「!!?」

 いまだ驚愕する響に対して、バルバトスはせてと呟く。

「あいにくと、奴は俺を御しれないと判断してか、この世界のことや目的はぁぁ、まるっっっきりィ、わからんッ。だが、俺のすることは一つ・・・英雄と戦い、殺すこと」

 そしてセレナを見ながら、

「異世界の救世主、お前を殺して、まずは手始めに、この世界の英雄を皆ァァ、殺そう・・・」

「そんなことッ」

「させるかデスッ」

 そして装者と救世主、凶戦士との戦いが始まった。

 

 

 

 二人のデュエットが響き、みなが動き出す中、バルバトスは静かにたたずんでいた。

 調はローラーで攪乱しようと動いているが、まるで見向きもせず、彼女の技の一つ、鋸を放つ『α式・百輪廻』を放つが、

「・・・」

 防御もなにもせず、それが身体を切るはずだった。

「!?」

 歌いながらも驚愕する。本来は攪乱や牽制を目的とした技だが、それが命中しても威力無く、身体にめり込み、回転が止まった。

 だが切歌は裏に回っており、いつの間にか二つ持つ鎌を合わせて使用する技『双斬・死uデRぇら』で切り刻もうと、はさみのように使うが、

(デッ、デスッ!?)

 それは身体に食い込むが、それ以上深く切らず、離れようとしても、食い込んで離れない。

「・・・はあぁぁ」

 長いため息の中、ちらっと響を見る。

 響の全体重を乗せた蹴りが、顔に命中する。バルバトスの足場がめり込むが、バルバトス自体は、微動だにしない。

「そんなっ」

 響が驚くが、バルバトスはやっとなにかに反応する。

「『瞬迅剣』」

 槍のような鋭い突きが放たれ、セレナの攻撃だけは、斧を使い防ぐ。その瞬間、切歌や響はその場から離れ、セレナもまた離れた。

「むっ」

 そう言えば歌が変わっている。それはいつの間にか、全砲門を展開するクリスの存在に気づいた。

「くらえ、威力マシマシだッ」

 放たれたあとの叫び『BILLION MAIDEN』が放たれるが、

「・・・」

 それを静かに見ているバルバトスに、全弾命中した。

 

 

 

 煙が立つ中で、全員が一カ所に集まりながら、その中心を見る。

「やったデスか?」

「切ちゃん、それはやってない時の台詞だよ」

「そうだね、きっとまだだよ」

 セレナの言葉に、煙が離れていく中で、無傷のバルバトスがそこにいる。

「マジかよ・・・」

「人間の身体じゃないからって、シンフォギアの攻撃が効いてない・・・」

 セレナの分析だが、それは違うと呟く。

 事実、刃は食い込み、僅かに傷らしい傷はある。

 ただ、

「威力が足りない・・・この姿じゃ、彼奴に致命傷を与えられない・・・」

 調が悔しそうに言い、それは装者全員の気持ちだ。

 唯一バルバトスが警戒した攻撃は、セレナの攻撃だけであり、その攻撃も、

「軽い、な・・・これぇが、救世主・・・ディセンダーの、力かあぁぁ・・・」

「・・・」

 セレナは考えながら、しばらく沈黙後、

「ごめん、ここは私に任せて」

「セレナッ」

「なに言ってるデスッ」

「そんなことさせないよッ」

「テメェ一人に任せられるかよッ」

 響、切歌、調、クリスの順に叫ぶが、セレナは首を振る。

「翼さん達と同じ、私はあなた達の攻撃方を知らないし、その逆も・・・それに、私の武器なら、あの身体には有効みたい」

「どうやら、そのようだな・・・」

 攻撃を防いだ斧に、少しの亀裂が入っていた。バルバトスもまた、それを肯定する。

「このォ身体ァ、どうやら、お前の力には、相性は悪いよう、だっ」

 少し楽しくなったと言わんばかりに、肩を振るわせ笑うバルバトス。

 セレナは静かに構え、そして言う。

「大丈夫、私は負けない。この世界も、みんなを守る。たとえディセンダーじゃなくても・・・」

 光がより輝き、いつの間にか、双剣士の姿にかわるセレナ。

「私は、みんなの笑顔を守る。自由の灯火、ギルドアドリビトムのメンバーッ」

 そう言った途端、彼女はバルバトスへと立ち向かう。

 

 

 

「ヌオォォォォォォォォォォォォォオ」

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 セレナは二振りの剣で、巧みに攻撃を交わしながら、手数で攻撃していた。

「『散沙雨』『秋沙雨』ッ」

 確実にバルバトスに切り傷を与え、身体に亀裂を走らせるセレナ。これに、

「『灼熱の、バァァァァァァァァァァンッ、ストッライクゥゥゥゥゥゥゥゥ』」

 炎の火球、地面にクレーターができあがり、溶岩のように地面を溶かすが、その火のこの中に、セレナはいない。

「むっ?」

「『風刃縛封』」

 風の刃がバルバトスをそこに足止めする。いつの間にかセレナの姿は忍者を思わせる姿へとかわり、動きの止まったバルバトスに、

「オッリャアァァァァァァァァァァァ」

 赤い鎧に巨大な剣を持つ、大剣士にかわり、その大剣でバルバトスを叩く。

「『烈空刃』」

 たたきつけられた攻撃に、肩で受け止めるバルバトス。

 その顔がさすがにゆがむ。

「チッ『デモンランス』」

 暗闇の槍がセレナへと放たれるが、それが命中するも、木の葉へとかわり、別の場所に忍者のセレナがいる。

「これは」

「これでも、仲間に色々な人がいるから、色々な職業の技が使えるの」

『苦無閃』と言う技を放ち、バルバトスはそれをよけながら、セレナは叫ぶ。

「あとは時間稼ぎや隙作る技とか、小技や卑怯な技とか、教わった」

 致命傷にならないが、いまは確実にセレナのペース。セレナはある人物の教えを思い出す。

 

「相手の方が強いときは、小技で力そいで、行こうぜ」

 

 人のいやがる戦法をよく考え思いつく人。どうして自分はこんな人好きになったのか、わからない。

 けどいまは、これがベスト。

(このまま、ダメージを乗せ続ければ)

 双剣士、忍者、または狩人など、技を変え、スタイルを変え、バルバトスに切り傷を与え続けるセレナ。

 いまある作戦の下準備、そのために戦っている。

 

 

 

 そんな二人の様子を見るしかない装者達は、歯がゆい思いをしている。

「くっそ、見てることしかできないのかッ」

「落ち着くデスよ先輩っ」

「落ち着けるかッ、セレナだって致命傷を与えられねぇじゃなぇかッ」

 ヒット・アンド・ウェイを繰り返すセレナに、どうすればいいか考える装者達。

「待って、エルフナインちゃんの話じゃ、龍さんがゲーデじゃなきゃ」

「チッ、そうだな。こいつを使うしかないッ」

「一気に逆転デスッ」

「行くよッ」

 

 

 

「・・・ん」

「!?」

 バルバトスはこちらではなく、四人が立つ方を見た。

 四人は胸元にあるブローチへと手を伸ばしている。

「あれは・・・なん」

 疑問に思ったバルバトスが口にすると同時に、

「「「「イグナイトモジュール・抜剣ッ」」」」

 四人が叫ぶと、イグナイトモジュールが展開する。セレナはそれを知っているため、好機と捉えたが、バルバトスの様子に、はっとなる。

「・・・まさか」

 イグナイトモジュールの闇を纏い、向かってくる装者達。バルバトスは下を向く。

「もらったッ」

「畳みかけるデスッ」

「一気に」

「終わらすッ」

 向かってくる装者達。だが、

 

「・・・それは」

 

 彼女たちはすぐに、戦慄した。

 

「・・・アイテムか・・・」

 

 顔を上げたバルバトスの目に、凍り付く。

 

「アイテムなんてッ」

 

 バルバトスは地面に向かって、拳を振り下ろす。そして、

 

 

 

「・・・響・・・」

 人気のない安全地帯で、カノンノと共に響達の帰りを待つ。

 剣を持っていないため、カノンノはここにいるしかない。

「クイッキー・・・」

 未来の肩に、心配そうにしているクイッキー。その頭を撫でる未来だが、

「!!?」

 素人でも分かる、轟音が響き、次の瞬間、

「うそっ!!?」

 コンクリート、大きさからしてグランドくらい、倉庫がある場所の地面が、

 

 持ち上がった。

 

 

 

「!!?」

 響達はなにがあったかわからない。

 地面が急に、持ち上げられたのだ。

 身体が宙につき、そして、地面だったものがたたきつけられる。

 セレナを始めとした装者達の悲鳴が響く中、響だけはそれを粉々に砕いた。

 そのおかげで致命傷にはならなかったが、

「!?」

 亀裂の中から、バルバトスが現れた。

 斧を振り、その一撃がめり込み、血を吐かせ、骨を砕きかけた。

 次の瞬間、バルバトスの姿が消え、切歌、調、クリス、セレナが自分にぶつかり、地面へと落下した。

 地面を削る中、なにが起きているか理解するため、空を見た瞬間、

 

 バルバトスが巨大な戦斧を両腕で振り上げていた。

 

 響は拳を握りしめた。

 

 セレナは剣士になり、盾を構えた。

 

 クリスはまだ目を開けていない後輩達をかばうように、背を向けた。

 

「アイテムなぞッ、使ってるんジャネェェェェェェェェェェェェェェェェェエッ」

 

 次の瞬間、大地を砕き、振るわす振動が、放たれた。

 

 

 

「しゃがんでッ」

 未来をかばうように、カノンノが前に出る。

 地面にしゃがみ込んだ瞬間、轟音と振動がやってきて、近くにある建物の窓ガラスが吹き飛び、自然に生えている木がなぎ倒れ、悲鳴が聞こえ出す。

「いまの・・・」

「響ッ」

 未来が起きあがったとき、荷物が飛び散るが無視して、駆け出す未来の手を掴む。

「落ち着いて」

「けど響がッ」

「クイッキーッ」

 未来も分かっているが、カノンノを見てすぐに収まる。一番駆け出したいのは彼女だと、未来はすぐにわかるから。

「・・・みんな・・・」

 祈るように、戦いの方角を見るカノンノ。

「・・・クイ?」

 そのとき、クイッキーはあるものに気づいた。

 

 

 

 爆音が響いた戦場、バルバトスは煙でも吐き出すように、息を吐く。

「くっ・・・」

 セレナは片腕を押さえる。折れていると判断して、立ち上がる。

「セレナッ」

 響は立ち上がるが、イグナイトモジュールが解除されている。あまりの攻撃に、解除されてしまった。

「先輩っ」

 切歌の叫びに、シンフォギアが解除され、頭から血を流すクリスが視界に入る。切歌も調も、イグナイトモジュールが解除されている。

 だが一番のダメージは、クリスだった。

「・・・」

 セレナは盾を構え、剣士の姿のまま、響に、

「ヒビキはみんなをつれて、ここから離れて」

「セレナっ!?」

 セレナの左腕がたれていることに、響も気づいている。もう片腕が使えないことに気づかれるが、いまは、

「だめ、このままじゃみんな死んじゃうっ。だからヒビキ」

「ならなおさら、セレナを置いていけないッ」

「俺はお前らを逃がす気はないぞ」

 それに切歌も調も体を震わせ、バルバトスは斧を見る。

「ディセンダーはともかく、拳の女ぁぁ、お前はぁ、おもしろい・・・」

 斧に亀裂が入っている。セレナの所為ですでに傷付いていたとはいえ、亀裂を大きくしたのは響の一撃だ。

「いまのうち、殺して、おくか・・・」

 そして一歩、前に出る。

 切歌達も立ち上がろうとするが、その瞬間激痛が走る。

「これって・・・」

「シンフォギアを保つので・・・限界・・・」

 二人もまともに立ち上がることはできない。響は構え、セレナは盾を構えた。

 斧を持つバルバトスは、静かに、

「ここで死ね」

 その瞬間、前にいたはずのバルバトスは、

「先輩っ」

「セレナっ」

 

 後ろにいた。

 

「ヌオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ」

 

 振り払われる斧に、二人は防御できない。

 

「先輩ッ」

 

「セレナッ」

 

 装者二人、切歌と調の叫びを聞きながら、振り返るがもう遅い。

 

 響は一瞬、未来の顔を思い出した。

 

 地面ごと削る一撃が放たれ、煙が立ち上る。

 それを見て、切歌達は泣きそうな顔になるが、

「・・・ん?」

 バルバトスは、疑問符を呟いた。

「これ・・・!!?」

 光の槍が降り注ぎ、その場から離れた。

「えっ・・・」

 

 

 

「・・・あれ?」

 響が気が付くと、切歌達の隣に、誰かに抱えられていた。それはセレナも一緒だった。

「みんなっ」

 カノンノが駆けだしてやってきて、その現状に驚愕、するに治癒魔術をしようする。

「悪いな、少し後れた」

 そう言って、長髪の男は響とセレナを下ろし、もう一人誰かが駆け寄る。

「カノンノ、この子を頼む。出血はひどいが、君の治癒術なら問題ない」

「うん、二人ともバルバトスをお願いっ」

「あいよ」

「了解した」

 金髪の、白い甲冑。いかにも騎士と言った男は剣を握り、返答して歩き出す。

「・・・お前達は」

 バルバトスはそれを見ながら、長髪の男はお土産の木箱を置いて、自分の愛刀を取り出す。

「あとはお願い・・・」

 治癒術のため、僧侶の力を使うセレナに対して、

「まったく、うちの救世主様も無茶するぜ。リュウ大先生がいたら、やばいなこりゃ」

「ああ、彼が駆けつける前に終わらせないとね」

 そして二人の仲間は、バルバトスに叫ぶ。

「ギルド・凛々の明星(ブレイブヴェスペリア)メンバー兼、ギルド自由の灯火(アドリビトム)メンバーユーリ・ローウェル」

「同じく、ギルド自由の灯火メンバー兼、ガルバンゾ国騎士団隊長、フレン・シーフォッ」

 二人は叫び、明らかな敵意をバルバトスを放ちながら、

「テメェは俺らの仲間を傷付けた」

「彼の世界でのこれ以上の悪事、見過ごす気はないッ」

 その戦士の登場に、邪悪な笑みを浮かべるバルバトス。

「さあ、第2ランドを始めるかッ」

 こうして彼ら、アドリビトムも戦いへと参加した。




燃え尽きた・・・だが戦いを終わらせないと、ついにアドリビトムメンバー登場。
イグナイトモジュールアイテムでいいよね? バルバトスさん出すとタグを18にしなきゃいけないと思うのは気のせいだよね?
そんなこんなで次回、アドリビトムとバルバトスです。
決着のあと、そのあとはなにが待ち受けるのか、お待ちください。
それでは、ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


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自由の灯火

作者は考えた。あとがきでどうするか物語を来ます。
いまは本編をどうぞ。


 ユーリは辺りを静かに見つめる。切り傷だらけ、鉱石でではたバルバトス。

 頭から血を流し、気絶している女の子が、年下の子二人に見守られている。

「カノンノ、頼むな」

「うん」

 カノンノも駆けつけ、クリスに回復魔術をかけているのを見て、次に格闘家らしき子と、我らが救世主を見る。二人ともボロボロだ。

「こりゃ、ホントリュウには見せられないぜ」

「というわけだ二人とも、後ろに下がっててくれ」

 格闘家の子はなにか言おうとするが、その前にセレナとともに下がり、殺る気のバルバトスを見る。

「・・・」

 その姿、様子を見て、ニヤリと笑う。

「よし、セレナの作戦でいくぜフレン」

「ああ」

 そして二人はかけだした。

 

 

 

「・・・デス?」

 切歌は驚いていた。

 なぜならば、目の前で無謀にも、よくて鎧を着ているだけの男達が、バルバトスと互角に戦っていた。

「これってなんなんデスか?」

 それには調達も驚き、クリスも、意識を取り戻してみている。

 セレナ、僧侶の力と、カノンノの治癒のおかげだ。

「どーなってやがる」

 攻撃が当たらなければいい、そんなことをしているとしか思えないほど、攻撃をよけているだけだ。

 ユーリはスピードを、フレンは技を駆使して、攻撃をかわしている。

「ヌッオォォォォォォォォォォォォォォォオ」

「ハッ、さすがに凶戦士ッ」

「だが、魔神剣ッ」

 バルバトスが放つ、炎の固まりや、暗闇の槍。それらをはじく、フレンの剣や魔術。その隙にユーリが畳みかけている。

「それでも軽いデスッ」

「致命傷にはなってない・・・」

 調の一言には納得できる。だが、

「大丈夫だよ」

 カノンノはほほえみながら、

「私は、私の仲間を信じる」

 そしてもう一人、彼もまた、来る。

(・・・だから)

 早く倒して、そう願い、彼らが持ってきた木箱を側に置く。

 

 

 

「ちっ、やっぱり前より堅いなおいッ」

 ユーリはそう言いながら、バルバトスは笑う。

「なかなか楽しいが、この程度か」

「・・・なら」

 ユーリは剣を構え、そろそろやばいと思い、力を増す。

「そろそろ終わらすかッ」

 その瞬間、彼は消えた。

「デデスッ!?」

 切歌が驚く中、コンベアを始め、周りにある足場を使用して、彼は光速で斬りかかる。バルバトスはすぐに、目などの箇所だけの防御態勢に入った。

 

「開け、鮮烈なる刃ッ。無辺の闇を鋭く切り裂き、仇なすモノを微塵に砕くッ」

 

 そのスピードは、装者達ですら捉えられないほど速く、鋭く、凄まじい。

「前よりあがってる」

「ユーリ」

 セレナ達も驚く、ユーリが知らないうちに、力を増している。

 でやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁという叫びを聞きながら、バルバトスを刻む。

 

「きまった『漸殻狼影陣』」

 

 前よりも多くの斬撃のあと、その剣は光り輝き、それをバルバトスへと投げるが、

「まだだッ」

 その一撃を片腕ではじき、笑うバルバトスだが、

「僕がいるぞ」

「!?」

 フレンもまた、追撃を始める。

 

「炎よ、この剣に宿れッ」

 

「「!!?」」

 二人は驚く、フレンが見たこともないほど、炎を刃に宿らせた。

「紅蓮剣っ!? けど熱量が違う」

 

「焼き尽くすッ」

 炎の斬撃を放ち、そして放つ。

「『炎覇鳳翼翔』ッ」

 紅蓮の炎の鳥、鳳凰が放たれるが、フレンはまだだと言わんばかりに、剣に光を集め、放つ。

『光竜滅牙槍ッ』

 無数の竜が迫るが、バルバトスはその一匹を掴み、食いかかる竜同士を、ぶつけた。

「くっ」

「なかなかおもしろぉぉぉぉぉいぃぃぃぃぃぃぃぃぃいッ」

「そうかいッ」

 すでに剣を取り戻し、剣撃を放つユーリ。

「おもしろいッ、面白いぞお前らッ」

「・・・」

 バルバトスのその反応に、

「お前、気づかないのか」

「なに・・・」

 それにニヤリと笑う、それは、

「うちの救世主がピンチになるとな」

 蒼破刃を、木箱に放つ。それが木箱だけを破壊して、中身を空へと取り出す。

「なんのまねだ」

 バルバトスもわからないユーリの行動。だが、無視して続ける。

 

「世界の悪意が牙を向けるんだよッ」

 

 空中で、誰かが空気を蹴った。

 

 それは木箱から出てきた愛剣を手に取り、そして、

 

「殺す」

 

 それは不適に笑った。

 

「「リュウ」」

 

 二人の少女の叫び、空から突如現れたそれに、バルバトスは驚いた。

「オラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァァァァァァァァァァァ」

 剣撃の嵐だった。紅蓮、雷撃、疾風、凍傷による剣撃の嵐。

 技という技、剣技と言う剣技を放つは、なぜかいる龍であった。

「どこから来たゲーデッ」

「空飛んで来たんだッ」

 全ての攻撃手段を剣へとかえた男はそう叫び、叫ぶ。

「閉ざせッ『ネガティブ・ゲート』」

 地面に剣を刺すと、闇の球体がバルバトスを捉える。その瞬間を逃さない。

「一気に決めるぞフレンッ」

「ああッ」

 龍はすぐに紅蓮剣を放ち、その炎で姿をくらます瞬間、二人は剣を地面に刺し、魔法陣を展開。

 それに捕まったバルバトスに斬撃を繰り出し、空高くへと飛ぶ。

 

『『武神双天波』』

 

 二人から放たれる衝撃波は、巨大な光へとかわり、バルバトスを貫く。

 

 はずだった。

 

「ふんッ」

 

 身体に力を込める。身体に亀裂が走ることを無視して、そして、

 

「武神双天波がッ」

「防いだかッ」

 ユーリ達はそう叫び。二人の技が二つに裂け、バルバトスは耐えているが、

「「読み通りだ」」

『ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ』

 そのバルバトスで、暗闇を纏う龍がいた。その姿はゲーデそのものだった。

「!? 貴様、耐えると見込んで後ろにいたかッ」

『殺ス殺すコロス殺すッ』

 口のない口が開き、刃へと噛みつく。

 それを引きずるように刃を無理矢理、負の力で研ぐ龍。

 刃には、邪悪な、禍々しい力が宿る。

『魔竜・滅神剣ッ』

 ただそれだけで斬りつける。だがその刃には禍々しい、命が触れただけで穢れ、壊れ、砕かれる負が宿った刃の斬撃。

 それを後ろから斬りつけられた。

 バルバトスは背後から闇、真正面から光の一撃を食らいながらも、耐えていた。

「この程度で、俺を殺せ」

 だが、バルバトスは気づかなかった。

 三人はすでに、別の攻撃のために、体制を整えている。

「きさっ」

「本命は」

「ここ」

「からだッ」

 三人は同時に、多方面から、

「「「爪竜連牙斬」」」

 フレンは剣技の冴えによるもの、ユーリは格闘術を混ぜたもの、龍は荒々しい斬撃の嵐を放つ。

「グアァァァァァァァァァァァァァァァ」

 それにバルバトスは放たれるが、三人は同時に背後を見せる。

「まずいデスッ」

 だが、三人は笑う。

 バルバトスはすぐに片腕を振り上げたが、それに気づく。

「ナニ!?」

 それは、亀裂が入りすぎて、斧を持つ腕が砕け散った。

「これは、ナン、ナンダあぁぁぁァアァ」

「君の身体は、すでにセレナによって耐久力を失っていたんだ」

「そこに、俺らの大技を連続で食らったんだ、そりゃ、砕けるってもんよ」

 その言葉通りに、足や、身体、ありとあらゆる小さな亀裂が大きくなる。

 まるでそうなるように傷を付けた、いや、

「うちの姫様、なめちゃ困るぜ」

 ユーリが得意げに言い、刀をさやに収めた。

 セレナは始めから、こうなるように攻撃していたのだ。彼らはそれに、拍車をかけただけだった。

 バルバトスはただ、砕けていく身体で叫ぶ。それだけで崩壊が早まる。

「おのれ・・・オノレェェェェェェェェェ、覚えた・・・覚えだぞォォォォ、お前達の顔、しかとオボエタゾォォォォォォォォォォォォォォォォォオ」

 バルバトスはそう叫びながら、砕け散った。

 

 

 

「チッ、もう少し早く来れないのかユーリ、フレン」

 龍は苛立ちながらにらみ、アア?とにらみ返すユーリ。

「俺らはリュウ大先生がいるから、安心してたが、お前こそなにしてたんだよ」

「俺は外国にいたんだッ、これでもゲーデの力使って、無理矢理飛行してたんだよバカッ」

「それはまずくないかい? この世界でも、外交があると思うんだが?」

 ユーリと怒鳴り会う龍。フレンは深く考え込むが、そちらは報告していたので問題ないと付け加える。返事待ちはしてなかったが。

「俺らなんか、異世界だぞ異世界。ついさっき、こひなた? って子とカノンノと一緒にいたところ、いま来たんだよ」

「未来のことですね」

 響にカノンノがうんと頷き、龍は愛剣を見ながら、全員の様子を見る。

「とりあえずフレンも回復回れ」

「わかった、君達、傷を見せてくれ」

 切歌と調へとしゃがみ込み、治癒術を使用し出すフレン。

 彼らはシンフォギアらしい装備はなく、自分の能力だけで戦っていたことに、全員が驚いているが、いまは気にしない。

「セレナ、悪いな、遅く」

「リュウっ」

 うれしそうに龍にだきつくセレナ。カノンノがなにか言いかけたが、いまは見逃すのか大人しく、治癒術をクリスに使い続けた。

 龍はあーと呟きながらも、

「バルバトスに亀裂入れたの、よく思いついたな、えらいえらい」

「うん、確実に、誰も傷付かないように勝ちたかったから・・・だけど」

 少し沈むセレナ。それにだきしめながらこつんと叩く龍。

「仕方ないだろ、相手は相手だ。気にするなとは言わないが、教訓として糧にしろ」

「・・・うん」

 うれしそうに龍に頭を撫でられるセレナ。その様子にユーリはにやにやしながら、

「ま、なにはともかく」

「ここからがアドリビトムの本格活動だな」

「むろん、協力するよ、リュウ」

 フレンやユーリが、龍に接するたび、クリス達は少しだけ顔を曇らせる。

 仲間から強い信頼を得ている龍。だが、彼はこの世界に対する態度。

 なにより、

(・・・なにもできなかったデス・・・)

(あの人達が来なかったら、今頃・・・)

(・・・くそ・・・)

 装者達は険しい顔をしながら、こうして一つの戦闘が終わりを告げた。

 

 

 

「・・・」

 そして誰もいないところで、ぐったりしているところに、弦十郎がやってくる。

「なるほど、ゲーデの力も、使いすぎればこうなるのか」

 龍はなにも答えず、道路の上で意識があるが無言でいる。ユーリもフレンもいて、ああと同意する。

「まったく、いくらなんでも使いすぎだよ。カノンノやセレナは気づいているけど」

「けどま、セレナがこの世界の住人、ねえ・・・」

 ユーリもフレンもつい先ほど話を聞き、険しい顔になる。

「お前といい、セレナのこと、無関係じゃないな、すぐに連絡するか」

「できるのか?」

「君が持っていた通信機や、僕らが渡された通信機を弦十郎氏に渡した。あとは彼らが調整すれば」

「エルフナインくんがいま作業中だ。必ず異世界と交流できるようにする」

 それを聞き、まだ回復しきっていないが起きあがる龍。

 いまだ謎が残るなか、その顔にユーリが食いつく。

「なに考えてる?」

「敵さんの行動理由と、俺とセレナのこの世界の関係性」

 ユーリの問いかけに答える中、龍は考えている。

「・・・セレナは間違いなく、マリアの妹だ」

「なぜそう思う?」

 弦十郎が疑問に思うが、龍は静かに、

「・・・俺がこの世界にいて、この世界の住人が、ゲーデを滅ぼす存在、ディセンダーだから。じゃ、まだ弱いか?」

 それでも、ゲーデである自分がささやく。そう言っている。

「世界は何を考えている」

 その問いかけには誰も答えない。

 ユーリもフレンも、ただ一つ言えることは、

「いくら命尽きる人だったとはいえ、異世界の子を救世主にするのは、僕は納得できない。むろん、君が負の感情の転生体だから、滅びるべきものとも思っていない」

「同感だ。ま、その辺も暴いてやろうぜ。お前もそうだろ?」

 悪い笑みを浮かべるユーリに、まあなと同意する。

「俺はいい、俺はもう害悪だろうがなんだろうが、気にすることじゃねぇが」

 ただ一人、救世主として仲間と共に、笑顔の未来を目指す少女。

「彼奴らの笑顔を曇らせる気なら、その名の通り、世界を滅ぼす害悪になるだけだ」

 それに苦笑するフレン。同意するユーリ。

 その様子を見ながら、彼らの絆を見ながら、弦十郎は決意する。

(俺もまた、気を引き締めなければな)

 こうして、異世界の戦いは、幕を開けた。




というわけで、次回からアドリビトムと交流して、敵と戦います。
そこで感想を聞きたいです。
エクシリアとエクシリア2を出すか。
攻略本がある、ゼスティリアを出すか。
それともマイソロだけのコラボで終わらすか。
マイソロには出てない、カロルとか出すか。すいませんがよろしくお願いします。
返答は、物語にして答えるつもりです。
わがまま言って申し訳ございません。それではここで、ありがとうございます。


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番外編・シリアスはない

タイトル通りシリアスは無い話です。ノリはしないシリーズですね。
感想の方には申し訳ございません。感想の返事のやり方最近知っていまさらと思いまして、これからは返事をするよう勤めます。
物語はとりあえず、プレイした子達の物語だけにするつもりです。ゼスティリアと新作コラボはありません。エクシリアは出します。どう出すかは楽しみにしてください。

そして物語は時間軸とか考えずに話す、この物語のそのあとです。
・・・
私はマリアが嫌いなのだろうか? 彼女のファンの方には申し訳ないですが、このような扱いです。
その前置きの真意は、物語で知ってください。
ではどうぞ。


 

『モニター越し』

 

『リュウっ』

 モニターでは龍にだきつくセレナ。

「・・・」

 マリアは静かに、瞳から光を失いながらそれを見た。

 

 

 

『CDショップにて』

 

「翼さんとマリアさん、あとはえっと? しんぐる?」

 セレナが音楽を聴くために、買い物しているが、少し手持ちが無くなり、しばらく悩んだあと、一つだけ棚に戻した。

「!?」

 それに切歌達は顔を固めた。だが、それを知らずに、会計をすますためにセレナ達はレジへと向かう。

 マリアと翼の歌を買うセレナだが、一つだけ買い物するのに悩み、一つだけ諦めた買い物なのだが、

(なんでマリアじゃなく、翼先輩のを買うのデスかぁぁぁぁぁぁぁぁ)

 デュエット曲は買ったが、一人ずつで歌うものに対して、セレナはマリアではなく、翼の歌をうれしそうに買う姿を見ながら、青ざめた。

 

 

 

『出会い』

 

 妹と思われる少女。空港にて出会い、いま対面する。

「こんにちは始めまして、セレナです。ディセンダーしてます」

「マリア・カデンツァヴナ・イブ。よろしく」

 正面上はそう言い、軽い握手をするマリア。

 後ろには龍を始めとした、カノンノを除く知っている人達がいる。

 その手を握り、微笑むセレナが、妹と酷似していた。

(・・・やっぱり)

 心の中で思ってしまう。セレナだと、泣き叫び、だきしめたくなる気持ちを押し殺し、その手を放す。

「風鳴翼だ、よろしく」

「はいっ、よろしくお願いします翼さんっ」

 と、

 なぜかさっきより元気いいセレナ。両手で翼に握手するセレナ。それを横で見るマリアに対して、後ろの方々は小声で、

「おい、マリアさんから光が無くなってるんだけど、どうにかしてくれ」

「りゅ、龍さんこそ、なんとかしてくださいよっ」

「わ、私たちには無理デスよ、ゲーデであるあなたならどうにかできないデスかっ」

「っていうか先輩、気づいて、隣のマリアに気づいてっ」

 こうして装者は全員揃った。

 

 

 

『異世界人+αの寝床』

 

「というわけで、セレナとカノンノ達の寝床。司令が用意してくれたらしいからこのまま行くぞ。隣俺の住処だし」

「「はーい」」

「私たちもいくのか?」

 クリスの問いかけに、ああと頷く。

 そして、

「って、私ん家の隣かよっ」

「その隣が俺の寝床だぞ」

 クリスは知らずに、その隣に異世界人が引っ越してきた。

 さらに、

「はいこれクリスちゃん家の合い鍵だよっ」

「おいこら待てッ、なんでお前がカノンノ達に合い鍵渡すっ!?」

 響から合い鍵を受け取るカノンノ達。龍はあーあと言う顔で、響はさらにと、

「まだまだ~クイッキーの分っ」

「クイッキー」

「なんでクイッキーもだよっ!?」

 クイッキーも受け取る中、響はさらに、

「さらに、龍さ」

「「それはやりすぎだッ」」

 二人に怒られる響であり、結局もう一つの合い鍵は予備としてクリスが所持するのであった。

 

 

 

『クリスとクイッキー』

 

「あのバカ・・・まさか男にまで持たせようとしやがって・・・」

「クイッキー」

「って」

 不意の声に驚くと、クッションの上にいるクイッキーに驚く。

「お前もう来たのかよ、あっ、こら勝手に眠るなっ。ここよりカノンノ達のほうで、ああ・・・」

 結局クイッキーはクリスの場所で眠り、クリスはタオルを用意する。

 

『クリスとクイッキー・2』

 

「おーい、入るぞ~」

 ノックする龍。クリスからの返事を聞き、中に入る。

「飯の時間だから来てくれってカノンノ達が」

「ったく、いつからこんなことになったんだ」

「ギルドじゃ、飯は当番制で、大所帯だから、作るにしても大勢の方に慣れてるんだ。なによりご近所だし、クリスだって問題ないだろ」

「お前がたびたび来ることに関しては文句ねぇよ」

「はいはい、それはまあわかるけどな~」

 知り合いだからって、一人暮らしの女の子の部屋に来るのはなと同意しながら、クリスも準備すると少し片付けを始めている。

 龍も呼んだんだからいいかと思い、出ていこうとしたとき、

「・・・」

 クイッキー専用と思われる寝床を発見して、少し考える。

(クイッキーに情が出なきゃいいが)

 いずれいなくなったとき、クリスが落ち込まないか、あとで適任者に相談しようと心に決めて、彼はセレナ達の元に出向く。

 

 

 

『これからの方針』

 

「それで連絡できるのか」

「ああ、とりあえず連絡しよう」

 オペレーターの人達と共に、弦十郎、緒川、ユーリ、フレン、そして龍。他の子達は交流会のように外に出ている。

「難しい話するんだ、彼奴らはいいだろう」

「リュウ先生は相変わらず過保護だな」

「それは君もだろ、風鳴司令官、お願いします」

「わかったよフレンくん」

 弦十郎の指示に、オペレーターの人達は通信機を操作して、少しずつ画像と音声が調整される。

 そして、

『聞こえるか、リュウくん』

「聞こえるよ、ニアタ」

 ニアタ、彼を通し、ルミナシアとの連絡は成功した。

 全員が安堵に包まれると同時に、ニアタに緊張が走る。

『むっ』

「!? どうしたニアタっ!?」

『いや』

 一気に雰囲気が固まる司令室。だが、

『異世界には俺が行くッ、いいだろ、王族が出ないでどうするんだッ』

『ふざけるなッ、お前は王位継承権が高い自覚はあるのかッ。異世界には俺が出向くッ、お前は国の維持していろッ』

『よっしゃ、世界樹にこれで出向くぞッ。行きたい奴は手を挙げろッ』

『アッハハハハ、楽しくなってきたぜッ』

『歌姫ちゃん達、俺様がいまいくかんね~』

 なぜか後ろから、暴走しているもの達がいることに、あーあと頭を痛める。

『それじゃ、私たちは世界樹に殴り込みに行きましょうか』

『応ッ、セレナのこと、とっちめてやるッ』

『待てお前達、それはセルシウスが、待てお前達ッ』

「・・・ニアタ切るぞ」

『待ってくれリュウッ、気持ちは分かるが待っ』

『だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、ボクのバンエルティア号で世界樹に突貫は』

『『『『『『アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ』』』』』』

 しばらく沈黙が訪れた。

 オペレーターの話では通話が切れた模様と、龍はとりあえず、いい顔で、

「よし、また明日にしよう」

「ああッ」

「それでいいのか君達はっ!?」

「僕を巻き込まないでくださいッ」

 フレンの悲痛な叫びは、意味無くこだました。

 

 

 

『龍とマリア』

 

「それであなた達の関係を知りたいの」

 追いつめられた龍は目を背ける。マリアの目に光はない。

「セレナとどういう関係」

「仲間です」

「仲間にしては少し馴れ馴れしいわよね」

「仲間です」

「仲間にしては慣れ慣れしいわね」

「助けて」

 響達は目を背けた。

 

 

 

 終わりです。




マリアに救済イベント作らないと・・・
まだハーメルンの使い方がわからない未熟者ですが、これからもよろしくお願いします。
ではまた、お読みいただきありがとうございます。


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状況は最悪だというこがわかった

マリアを救う手段がない。作者です。
そんな中で物語は動き出します。


 司令室にはシンフォギア装者関係者、組織の人達が勢揃いの中で、龍は紹介する。

「我がアドリビトムのマッドサイエンティストハロルドと、比較的常識人リタだ、よろしくしてくれ」

 まずリタからは躊躇無く殴られたが、ハロルドに関しては気にせずよろしくね~と言う。

 状況説明として、アドリビトム側で来られるのは数名にしておくことにしたマスターアンジュ。

 なぜかと言えば、人手不足であるギルドの上、この世界では武器を所持していれば捕まるのだから仕方ない。

 いまいるアドリビトムメンバーは、龍、カノンノ、セレナの他に、ユーリとフレンとクイッキーと、新たに来たリタとハロルドだ。

「あっちも色々大変なのよね~」

「ディセンダーの戦いに関してはごく一部の人しか知らないけど、やっぱりセレナのことが他国や他ギルドにも知られてるし、まだ種火のように戦火もあるから」

 セレナは申し訳なさそうな顔をする。いまだルミナシアは問題を抱えている。別世界であるこの世界に、救世主がいる時点で問題な気がする。

「まあ、気にするな。それよりお前らがいれば、色々と考えられるだろ」

「と言っても、情報が装者って子の命狙われたこと以外で、相手さんの目的なんてわからないわよ?」

 ハロルドの言葉に、うむと弦十郎も頷く。

 いまだ敵と想定されるもの達の目的もなにもわからない現状下、はっきりいえば後手以外に選択肢はない。

「だが、気になる点はいくつかある」

「バルバトスが私のこと知らなかったことだね」

 セレナの言葉に頷く龍。それはユグドラシルもそうだ。

「彼は確かに、最後の言葉。それは少年のような声だった」

 翼はそう言い、ユグドラシルの反応も不可解だ。それにハロルドは言う。

「それに関して、ニアタと相談して一つの仮説を立てたわよ」

「それは?」

 弦十郎の問いかけに、全員が耳を傾けて、推測、仮説と付け加えておいてから言う。

「あのユグドラシルとバルバトスは、私たちが知る彼らではなく、別世界のユグドラシルとバルバトスという、別軸の彼らという可能性があるわ」

「別軸の彼ら?」

 響が首を傾げたとき、エルフナインが付け加えて驚く。

「というと、別次元の同一人物ということですか?」

「そうね、その可能性が高いわ」

 この世界によく似ていて、全く違うと言う世界。その可能性を告げるハロルド。

「つまり敵さんは、バルバトス、ユグドラシルと言う人物で、もっとも強い意識を持つ彼らを呼びだして戦わせたという可能性があるわ。まあ、バルバトスは強すぎて制御できてないって、本人が言ってたし、ある程度制御できないみたいね」

「別可能性の自分か・・・」

 信じられない翼に対して、龍はカノンノを見る。

「別可能性の人なら、カノンノだな。別世界にカノンノはいるし」

「そうなんデスか!?」

 世界樹がある世界に、ニアタから聞いた話では、まずパスカのディセンダーカノンノの他に、グラニデの少女カノンノ・イヤハート。そしてルミナシアのカノンノだ。

「それだけじゃなく、グラニデにもアドリビトムがあって、ほとんどが似ているらしいな、ニアタから聞いた話じゃな」

「それと、オリジナル、世界樹の始まりにも、カノンノは関わってるから」

 それにみんなが驚くが、龍はあまり気にするなと付け加える。

「カノンノや、別の世界のカノンノは、結局別人だ。んなかわんないだろ」

「まあ、お話ししてみたいとは思うけどね」

「グラニデのディセンダーにも会ってみたいな、女の子だから話が合いそう」

 話が脱線し出すので、龍が元に戻し、ハロルドの仮説の続きをする。

「つまりあれだ、俺らが戦ったのは、死んだ一番強いバルバトスやユグドラシルということだよな?」

「でしょうね~」

 とりあえず敵の能力は、

「多次元への干渉と仮説を立てるけど、シンフォギアでそんなこと可能なものはある?」

 それにはエルフナインはしばらく黙り込むが、

「難しいですね、少なくとも、別可能性軸の世界に干渉すること事態不可能です」

「まあ、やっぱりいまのところ、撃墜するしかないわね、現れたら」

 身も蓋もないが、どうあっても後手に回るしかない状況に、クリスを始め嫌な顔をする一同。

 そして弦十郎は話の続きをする。

「敵との交戦だが、君ら側、アドリビトムとしての君達から、どう思う?」

「「装者邪魔」」

 ユーリと龍はあっさり言い、フレンは苦虫な顔、カノンノは驚き、セレナは理解できない顔をする。

「そりゃいったいどういう了見だぁ?」

 クリスの問いかけに、単純に、

「聖遺物が敵と相性が悪い。威力不足過ぎるんだ」

「同感だな」

 ユーリは少しだけ聖遺物、装者と手合わせしている。そして下した結論だ。

「ノイズを倒すのには聖遺物、装者は問題ないが、今回の敵に対して圧倒的に経験がなさ過ぎる」

 それがユーリと龍、フレンという、実際今回の敵と戦ったもの達の答えだ。

 マリアと翼は黙り込みながら、クリス、切歌、調は不満な顔をしている。

「・・・君達はどう思う?」

 それを察して、弦十郎は翼達に話題をする。すると難しい顔のまま、

「彼らの判断が正しいと思います」

「ちょっ」

「そうね」

「マリアっ!?」

 驚く装者達だが、翼達は続ける。

「私たちの攻撃は対して効かないことに対して、彼らは対処できていた。単純に慣れというわけでなく、私たちの場合、致命傷に威力が足りないということだな」

 翼の言葉に黙り込む、だが切歌は、

「それなら、イグナイトモジュールを」

「それは彼に死ねと言うこと?」

「・・・」

 イグナイトモジュール、彼女たちの一撃必殺の機能。

 だがそれを使えば、龍は死ぬ。

「デスけど、それはこの人がゲーデの力を使ってない場合デス」

「冷静な判断をすれば、彼が一番戦いやすいのよ。その彼の戦力を削って、私たちを優先するほど、戦局は甘くないわ」

 翼とマリアの答えに、三人は黙り込み、響だけは困惑する。

(色々まずいな・・・)

 三人が龍に対して好印象がないのは分かっていたが、翼、マリアは別だった。

 だが、それがよけいな溝を作り出していることに、弦十郎は頭を痛める。

「セレナ、ディセンダーがこの戦いの鍵だな。セレナの攻撃に対して、異常なまでにダメージが入ってるし」

「うん、がんばるよっ」

 セレナはそう言うが、龍達は実はそれがかなり引っかかる。

 そういう話をしながらも、いまは現状維持。なるべく固まって動き、各自対処という名目の元、話を終える。

 そのあとは、セレナ、カノンノを外しての、大事な話だった。

 

 

 

 二人の他に、翼とマリア以外の装者も外れ、リタはマリアに近づく。

「それじゃ、ドクメントを見せさせてもらうわ。気分が悪くなったら言ってね」

「わかったわ」

 マリアのドクメント、魔術によるDNA視覚化を始めるリタ。

 ハロルド達はすでにセレナのドクメントを見ていて、マリアと合わせて確認する。

 それは、

「はっきり言うわ」

 ハロルドは疲れて座るマリアに対して、

「貴方とセレナは姉妹よ、少なくとも、私たちの世界の技術でもそれは立証されたわ」

 記憶、医学的、別世界の技術。数多の酷似する話、それにマリアはそれで倒れそうになる。

 死んだ妹が生きている。だが、

「けどあの子は成長してないわ・・・」

 疲れた顔で呟くが、リタは難しい顔をして説明する。

「それでもセレナはディセンダーとしてのドクメントも持っているわ。実際どうなのか私たちじゃわからない」

「世界樹、ディセンダーを生み出したのなら、会話する意志はないのか?」

 それにはアドリビトム側は難しい顔をする。

「実際できるといえばできるが、できる人間がな」

 カノンノと龍とセレナ、正確には龍とセレナはオマケに近い、カノンノは世界樹の意志と対話したことがある。

 だがその際、彼女は体調を崩したり、心のありようでは死んでいたという話。

「もしもこの話をすれば、彼奴は間違いなく動揺する。その状況で世界樹と対話は自殺行為だ」

 それを聞き、全員が黙り込む。

「これも仮説だけど、やっぱりセレナは貴方の妹だと私個人は思うわよ」

 ハロルドはそう言う、なにを言ってるんだと龍は顔に出す。

「どういう仮説でそんなこと言うの」

「かなり外道の外道な考え方だけど、それでも聞く?」

 何か引っかかる言い方だが、ハロルドは確信に近い何かがあるらしい。

 マリアを見る一同は、静かに頷く。それを見ながらハロルドは龍を見た。

「はっきり言えば、リュウの所為よ」

「・・・俺?」

 龍はそう聞くと、ハロルドは説明する。

「まずセレナって、貴方が持つアガートラームの元の持ち主でしょ?」

「ええ」

 マリアは胸のペンダント、聖遺物アガートラームを握りしめる。

「つまり、あのセレナもまた、装者として戦える可能性が高いわ。っていうか使えわね、エルフナイン」

「!!?」

 全員が一斉に見る中で、エルフナインはしばらく黙り込み、静かに頷く。

「んで、イグナイトモジュールでの、ゲーデからのエネルギー吸収による力の強化。ここまで言えばわかるかしら?」

 その問いかけに、全員が戦慄する。

「まさか、セレナがディセンダーとして生きているのは」

「・・・彼を、殺すため?」

 全員が龍を見る。本人はしばらく考え込みながら、

「それなら、納得できるな」

「なにさらっと受け入れてるのよあんたっ!?」

 それに頭をかく弦十郎。それはそうだ。

「つまり、聖遺物を使える者を、相対する者に変えて、いざゲーデである龍くんを殺害する際に使用する、それがセレナくんがディセンダーになった経緯かっ!?」

「同じ世界ですもの、可能性としてはかーなーり高いわね」

「ふざけた話だなおいっ」

 ユーリが舌打ちするように言い放ち、マリアは青ざめている。

「だがそれなら同じ世界のセレナがディセンダーで、ゲーデである俺も同じ世界なら納得できる。順番的にも俺が先に生まれたんだ、その対処としてセレナが選ばれてもおかしくない」

「おかしいわよッ」

 マリアは受け入れている龍に対して激昂するように怒鳴る。だが龍は気にしない。

「俺はルミナシアの精霊達からも最初、命を狙われたんだ。世界がどう俺を見ているのかはいやでもわかる」

「だからってなんでセレナなのよっ、あの子を人殺しにする気なの世界はっ!?」

「人殺しじゃない、救世主だ」

「!?」

 それに対して翼達も少し怒り気味で見てくる。

 ユーリ達、慣れたいるもの達も怒っていた。

「君が前々から人として自分を勘定に入れてないのは知っているが、そろそろ改めてくれないか」

「俺が人間? ハッ、人の負に敏感な奴が人間かよフレン?」

 そんな言葉にフレンが何かを言う前に、ユーリが止める。

「やめておけよ、人の価値観なんか変えられないっての」

「だけど」

「こいつが人間だろうがなんだろうが、仲間なのはかわんねぇだろ」

「!?」

 フレンはそれに黙り込み、龍はため息を吐く。

「とりあえず話はこれ以上進展しないだろ。あるとすれば」

「はい、聖遺物による拒絶反応。少なくとも龍さんにそれが起きないよう、システムを作り上げるるそうすれば装者である響さん達は戦えますっ」

 エルフナインの言葉に、リタとハロルドは頷く。現状のパワーアップはそれしかない。

 その様子を見て、龍はその場から去る。もうようなしと言わんばかりにどこかに出向く。

「彼はいつもああなんですか?」

 オペレーターの一人が訪ねる中で、

「考えても見なさい。生まれた頃から人の悪意がわかっていて、人の善意だけがわからない人生だなんて、きっとろくなもの人生じゃないわよ」

 ハロルドの言葉を聞き、弦十郎達は黙り込む。

「・・・けど、セレナがディセンダーという可能性は」

「仮説だからまだ決定じゃないわよ。まあそれが本当なら、運命ってのは、よほどひどいもんよ」

 マリアは仮説の話を信じたくない。それはセレナが龍を殺すためにいま生きていると言う事実。それが本当なら、自分はどうすればいいかわからない。

 だけど現実味がある話だ。なにより、自分はすでにセレナのことを妹としか見えていないのも事実だ。

「全く、セレナも好きな相手を殺すためにいるなんて知ったら、どうなることやら」

「・・・」

 マリアはえっと言う顔で顔を上げた。

「まあだよな、っていうか、彼奴らまだ放置してるのか?」

「ええ、少なくとも、まだカノンノとセレナの告白の返事してないわよリュウ」

「・・・はあ?」

 マリアはもういっぱいいっぱいだった。

 だけど立ち上がり、何か黒いもやを出している。

「どういうこと・・・」

「・・・」

 まずっという顔のアドリビトムチーム。だがユーリだけは、

「ああ、俺らの最終決戦のとき、あの二人リュウ先生のこと好きって伝えてるからな。まあリュウの奴、いまだ返事せずに、二人も答え聞かずに現在にいた・・・」

 追いかけた。マリアは龍を追いかけて出ていった。

 翼も止めるために出ていき、ユーリだけがおもしろおかしく、

「あーあ、彼奴、どうなるんだろうな」

「わざとかいユーリ・・・」

 フレンは頭を痛めながら、ユーリは微笑した。

 

 

 

「なにか巨大な殺意を感じる今日この頃」

 そんなことを呟きながら、人気の無い場所にいる。

 ここなら何も聞こえない。やっと落ち着けると思い、空を見た。

「月が欠けたり、色々かわろうが、悪意だけかわんねぇな」

 あざ笑う。もう笑うしかない。変わらない悪意の声に、龍は笑うしかない。

「ゲーデだからか、よくわかるんだよな悪意って」

 小さなものから大きなものまで、人の悪意に敏感な自分。

 人は気味悪がって離れたり、時には利用して貶めたりとさまざまにこの特性を使う。

 だから人から嫌われる。問題ない。自分は人が嫌いだ。

「・・・」

 そう言えばと思う。そんな自分を好きと言う少女達。悪意の欠片も感じない、まっすぐな想い。

「・・・まったく」

 苦笑する。龍は知らないと言って、いまは寝っ転がる。

 寝ている時が一番静かだ。だから寝るのが好きだ。

 だから、

「寝ようとしているのを邪魔されるのが嫌いだ」

 それを見た。

 まっすぐ、自分に、殺意を向けるそれを見た。

「誰だテメェ」

 それは金髪ストレート、見たこともない異世界の服装。

 放たれる光に身に覚えがあり、剣もまた、同じ輝きを放つ。

「・・・私は」

 それがなんなのか知っている。しかも本物であることも分かる。

 その女性、二十歳くらいのそれから、魔力を感じながら、本能が言う。

 こいつは対極の存在だ。

「ディセンダーッ、貴様を滅ぼす者だゲーデッ」

(・・・ほんと、どの世界でも、俺は害悪か)

 苦笑しながら、不を纏い、相対峙する。

 戦局は、世界はいつだって、唐突に変わるんだよなと苦笑した。




襲いかかるディセンダーはグラニデの子ではありません。そこだけは言っておきます。
進む物語、正格が歪んでいるオリ主の背景。
それではお読みいただきありがとうございます。


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謎が謎を引き寄せる

少し話をまとめないといけないなと思いながら、物語をやってます。
別の話までやってて、この作者は何を考えてるんだろう。
こんな作者の物語を楽しんでもらえればうれしい限りです。
それでは、相変わらずマリアさんが救われない展開ですが、物語を始めます。
どうぞ、これからもよろしくお願いします。


 CDショップにて、内心冷や汗を流す切歌達。

 セレナは少ないお小遣いで私物を買う。それが翼の音楽だけで、マリアのものは手に取ってない。マリアの曲も好きと言うが、翼の数が多いからと言っている。

(お願いだからマリアの曲を一番にしてくださいデスーーーー)

 そのとき、手に持つものを全て棚に戻し、あわてて外に出ていく。

 それを見て驚き、装者達は駆ける。

「どうしたのセレナっ」

「響っ、ゲーデの力っ。リュウが戦ってるっ」

「!!?」

 セレナの言葉に、全員が駆けだしながら、翼達にも連絡する。

 

 

 

 負の自分は、まさに怪物だ。人気がないから使用したとかではない。

 元々人気のない場所に来ている自分。だからなのかは知らないが、

「『ファイヤーボール』ッ」

 彼女はためらいなく、魔術を使用するし、技も使う。

 この世界の人に対する、遠慮なんてない。

 あるのはただ、己の使命を果たすことしか頭にない。

『(・・・おかしい)』

 頭の中で何かが引っかかるが、自分の言葉なぞ耳に入らない。そんな殺気を感じて疑問が強くなる。

『(本来ディセンダーは記憶も何もない、真っ白だと言う話だ)』

 龍が知るディセンダーは一人、話で数名ぐらいだった。

 まずはセレナだが、初めてあったとき、セレナは歌、名前、戦い方ぐらいしか覚えていなかった。

 次にニアタから聞いたディセンダーは、名前と戦い方しか知らないが、ここである疑問がある。

 セレナと普通のディセンダーの違いは、すでに知っているのと、まるっきり知らないと言う違いだ。

 セレナは料理を見て、料理だと知るのに対して、ディセンダーは初めて知ると言う解釈をする。そう言う認識で間違いないとニアタから聞いている。

 ディセンダーは白い、何者の影響でどんな色にもかわる、純粋な力だ。

 だからこそ、悪にもなると聞く。現にパスカのディセンダーカノンノは、苦い思いをしたらしい。それ以上は追求はしない。

 話を戻そう。いま相対するのは間違いなくディセンダーで間違いないのだが、

『(こいつは根本が違う)』

 彼女の攻撃は、建物も物を破壊するほど強力な技と魔術を使用して、自分を消しにかかっている。

 そこに正義があるか? 答えは否。

『(このディセンダーはゲーデだけを消すためだけに生み出された)』

 そう、都合が良すぎるほど、自分だけを消すために、彼女はここにいる。

 なぜと聞きたいが、彼女の瞳には迷いなんて無い。必ず、ここで、ゲーデを、消す。

 それしか彼女から感じない。

「『ロックトライ』ッ」

 地面から石の槍が三本放たれるが、チェーンソードで砕きつつ、刃と化した髪の毛を見る。やはり砕けていた。

 救世の光を持つ、自分を消すために特化したディセンダーの出現。

 敵側からすれば、なんとも都合が良すぎる。

「覚悟しろ、世界の害悪ッ」

 彼女は疑問にすら思っていない。

『(とはいえ、俺の言葉には聞く耳はないな絶対)』

 もう消す対象しかない自分の言葉には耳を傾けない。だから、

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 斬りかかる剣に対して、それが前に出る。

「なっ」

 ディセンダーは初めて驚愕した。

 先に現れたそれに、龍も驚いている。ってきりセレナが来ると思っていたからだ。

「おませしましたッ」

 とびっきりの笑顔でそう宣言するのは、撃槍ガングニールの装者。立花響だった。

 

 

 

「あなたは何者ッ!? なぜゲーデを助けたのッ!?」

 困惑するディセンダーに対して、響は構えながら、その人を見る。

「龍さん彼女は」

『ディセンダーだろうが、どこの世界かは知らない。本人に聞くしかないが頼めないか?』

「はいッ、わかりましたッ」

 元気いいなと龍は思いながら、彼女を見る響。彼女は困惑していた。

「どきなさいッ、それはゲーデ、負の怨念ッ。この世界から消えるべき存在よッ」

「そんなことできませんッ、彼は私たちの仲間ですっ」

「なにを言っているのっ!? ゲーデは世界の害悪よっ、存在するだけで世界に仇なす存在なのよッ。いまここで消えるべき存在、それがゲーデよッ」

 それに響は驚いている。

「なんでそんなこと言うんですかッ!? 龍さんがなにをしたって」

「ゲーデはいるだけで消えるべきモノよッ」

 ディセンダーははっきりと告げた。

 響はそれが理解できない。

「いるだけって・・・そんな、そんな悲しい理由、あんまりですッ」

「悲しい? なにを言っているのッ!? ゲーデは負の存在、いるだけで消えなければいけない世界の敵よッ」

「そんなことないッ、消えていい人なんて、いるはずないですッ」

「それは人ではないわッ」

 はっきり言うディセンダーに対して、響が口を出そうとする前に、怒鳴り叫ぶ。

「それはいるだけで世界に仇なす、いるだけで命を不幸にする、有るだけで争いを生み出す、ただの害悪ッ。存在自体消えるべき存在よッ」

 はっきり、そう言うディセンダーに対して、響は叫ぶ。

「違うッ」

「違わないわッ」

「まあそうなんだけど」

 本人はいつの間にか人の姿になり、響を止める。響では求めている質問をしないと判断して、止めた。

「お前はいま言い争うのはそこじゃない、俺が聞きたいのは、お前はどこの世界のディセンダーだ」

「私がどこの世界の?」

 殺気を向けながら、響はとまどう。

(・・・どうして)

 どうして自分がいなければいいと言う言葉を受け入れているか?という顔を向けられるが、気にしても仕方ないので、龍は無視する。

「貴方は世界の敵よ、どの世界であろうと、それはかわらない」

「確かにそうだが、いまは違うんでな。お前がどこの世界のディセンダーだ、いや違う、どこの世界が、この世界の厄介ごと無視して俺を消せと願ったッ!? 俺が腹立つのはそこだッ」

 ディセンダーは首を傾げながら、剣を構える。

「そんなことはどうでもいい、私は貴方を消す」

「話にならないかくそ」

 もう彼女の中には、ゲーデを消す。それしかない、それ以外にない、そう判断する。

「都合が良すぎる」

 そのタイミングで、自分を消す存在なんて、敵対するもの達にとって都合が良く、また精霊の頼み、ルミナシアからの頼みできている自分が、いま世界の敵として敵対するのにもおかしい。

(このディセンダーは、まさか)

 そう考えているとき、剣を握りしめ迫るが、響が反射的に動き、それを止める。

 それと共に、

「デスッ」

「やらせないッ」

 切歌と調が現れ、それに続くように装者、セレナが現れる。

「戦える奴ら全員か」

「その装備はッ!?」

 セレナを見て驚愕する彼女。それにクリス達も、

「黙って聞いてりゃ好き放題言いやがってっ」

「この人が気に入らないのは同意デスが、限度があるデスっ」

「いなくていい人なんて、いないよ」

 クリス、切歌、調。まだ龍にいささか溝があるもの達がそう言いながら、龍は気にしてないんだけどとつぶやき睨まれる。

 そして、

「あなたもディセンダー!? なぜゲーデを助けるの」

「貴方こそ、どうしていまゲーデ、ううん、リュウを消そうとするの?」

 セレナはいま騎士の姿、本気で戦う際一歩手前の姿で、彼女見る。

 彼女はようやく、驚愕していた。

「なぜ? そんなことはそれがゲーデだから、負の感情、世界の害悪よッ。それだけで消す理由になるわッ」

「そんなの理由にならないッ」

「!?」

 何を言っているか分からない顔をするが、一番分からないのは、

「お前、本当にどの世界のディセンダーだ? いまルミナシアのディセンダーは俺と協力して、この世界の異変に対処して欲しい。俺はそうルミナシアの精霊に頼まれた」

「!?」

「いまあんたはその邪魔をしているんだぞ? この世界にとって、いま害悪なのはお前なんだ」

 それこそ信じられない顔をする彼女に、翼達は龍に駆け寄る。

「これはいったい」

「彼女はおそらく、ディセンダーの本質を利用されて作り出されたディセンダーだ」

 何もないディセンダーはふれあう人によって、考え方、思考なぞがかわる。

 セレナの場合、そんなそぶりはなかったから分からないが、ニアタが言うにはそうらしい。

 だが、そんな白い紙のようなディセンダーに、何者かが、

「ゲーデを消す。その明白な理由を書き込めるだけ書き込んだのが彼女だ。彼女はそれ以外に何もない。下手をすれば、世界救済というディセンダーの本文すらなくなるほど、ゲーデだけ消すために存在するディセンダーだ」

「私が、そんな存在・・・」

 始めて戸惑う彼女に対して、やはりと頷く。

「おそらく生まれてまだ時間すら経ってないなこりゃ」

「えっ」

 全員が驚く、そう全員。彼女自身、龍の言葉が理解できない。

「お前は誰だ」

 それに冷たく聞く。

「私は・・・ディセンダー・・・ゲーデを消す存在・・・」

 怯えながら、震えながら呟くが、それに冷たく、

「なぜ?」

「なん・・・で・・・」

「なぜ」

「・・・やめて」

「なぜ」

「やめて」

「な」

「やめてッ」

 名前すらないディセンダーは、その場に座り込み、耳を塞いでいた。

 セレナがその様子を見ながら、側による。

「どうして・・・」

 セレナに彼女は、泣きそうな顔で見た。

「どうしてゲーデをかばうの・・・私の知るゲーデには間違いない・・・それは世界の害悪よ・・・」

 その言葉に、セレナは悲しそうに頷く。

「ああそうだ。たとえ人に転生していても、魂の本質はゲーデ、俺は世界の害悪、負から生まれた忌々しいモノだ」

 それを受け入れている龍に、セレナは悲しそうな顔をする。

 それに響達も驚いていた。

「なんでです・・・」

 響がこちらを見ながら、

「なんでそんなこと受け入れるんですかッ」

 叫んでしまう響。龍はいつもとかわらず、

「・・・俺は人が嫌いだからだ」

 はっきりと言う。

「俺は人の負を見た、世界の、命の、ありとあらゆる存在の裏を知った。だから」

 はっきり、

 

「そんなもの達の仲間なんてごめんだ」

 

 負の存在であることを受け入れたのではなく、人であることを拒んでいる。

 龍ははっきりとそう、装者達に告げた。

 自分は人なんて者になりたくない。はっきりそう告げたのだ。

 セレナ達はそれを悲しそうに受け入れ、装者達はその発現に目を見開く。

 モニター越しで弦十郎は静かに、目を閉じた。

 

 

 

 それ以来、黙ったままのディセンダーに、周りは武装したまま、待機している。

 いま装甲車やらなんやら、色々と人が動き回っていた。

 龍がいた場所は木々が生えた山付近、人気のない場所とはいえ、魔術や武器の痕跡を消すのに、人手が多くいる。

 龍は苦々しい顔をしながら、弦十郎を見ていた。

「なにか言いたいんですか?」

 根負けしたのは龍だった。

 弦十郎はしばらく沈痛な顔のまま、

「・・・君はいつ、人であることをやめた・・・」

 そう聞かれ、龍は、

「・・・この世界で、魔が差した。人を助けた。結果・・・」

 その先を、言う気にはなれない。歯を食いしばりながら、思い出す。

「・・・結果なんだ」

「・・・あんたには関係ない」

 そう言って黙り込む龍に、弦十郎はこれ以上は無理かと思い、沈黙する。

 

 

 

「・・・」

 響達に囲まれている彼女は、黙り込んで座り込んでいた。

 何もせず、否、することがないのだ。

 ゲーデを倒すこと以外、やることがないのだ。

「調べたんだけど、貴方は確かにディセンダーね」

「・・・」

 リタの言葉に、いまだ静かな彼女。

「名前は」

「・・・知らない」

「貴方を生み出した世界は?」

「・・・知らない」

「そう」

 リタはそう告げて、彼女はいまだに座り込む。

 龍の予測通り、彼女はおそらくつい最近生まれ、ゲーデを倒すためだけに生み出されたディセンダーであることが立証された。

「・・・ねえ」

 彼女はセレナを見つめながら、小さく聞いた。

「どうしてゲーデをかばうの・・・」

 彼女にとって、ゲーデは滅ぼすべき敵だ。なのに、同じ存在がかばったことに、それほど驚いていた。

 セレナはそれに目線を合わせて、

「大好きだから」

 まっすぐに答えた。

「大好きってなに?」

 それすら知らない彼女に対して、セレナは続けた。

「あの人はゲーデの力を、けして壊すだけに使わない。壊すのは、誰かが傷付く未来だけだよ」

 その言葉に耳を疑う彼女に、話しかける。

 龍と言うゲーデのやり方。

 

 暴君のような騎士が、仲間達を傷付ける際、駆けつけて倒した話。

 

 病人の人を治療する場所へ連れて行くため、魔物の群れで囮を引き受けた。

 

 人で無くなり、絶望した人達に生きているんだからまだ絶望するなと怒鳴ったり。

 

 自分達の身勝手な願いを、ディセンダーに押しつけるなと激昂したり。

 

 誰よりも先に前に出て、仲間の危機に向かっていったり。

 

 危険と分かっていても、仲間が出向くと言うのなら、躊躇いもなく進んでいったり。

 

 仲間のために、悪役になったり。

 

 仲間のために、世界を賭けた戦いに、単身で出向いたり。

 

 その戦いの中ですら、戦う相手を思う世界のため、その願いの叶えるために戦う。

 

「彼はそんな人・・・私がディセンダーだって知っても、誰が誰でも同じにしかみない。私を私として見てくれた。彼を彼として見ていて、彼女を彼女としか見ない人」

 仲間達と同じ、だからこそ、

「私達も同じ、ゲーデでもなんでもいい、彼が彼だから、家族で仲間だから、彼と共にいるんだよ」

 それに近くにいるリタもまた、複雑そうにだが微笑む。

 カノンノも、ハロルドも、ユーリも、フレンも、いや、アドリビトムの仲間達は全員気持ちは同じだ。

「なにより、私にとって、大切な人。大好きな、人だよっ」

 満面の笑みでそう告げるセレナに、彼女はわからないという顔をする。

 そしてしばらく顔を伏せたあと、

「・・・ゲーデを消すのが私の使命」

 そう静かに呟くが、

「けどいまじゃない、それだけはわかった・・・」

 そう呟いたまま、もうなにも喋られない。

 

 

 

「・・・」

 カノンノは複雑そうにその光景を見つめている。

「・・・負けないもん」

 そうつぶやき、小さくガッツポーズを取った。

 

 

 

「しっかし、生粋のディセンダーまで用意できるなんて、ますます敵がなんなのかわからないな」

「そうだな・・・ん? マリアくん」

「!?」

 その顔から光が無く、そのよどんだ瞳で龍を見る。

 あまりの負に、龍は立ち上がり警戒した。

「な、なにがありました?」

「・・・」

 マリアは龍をじっと見ていて、ただそれだけで怖い。

 弦十郎も深く追求せず、ごほんとせきをする。

「なにしたんだろう俺・・・」

 そんなことを呟くと、

「・・・」

 それに、気づいた。

「!?」

 マリアにも光が戻り、弦十郎も気づく。

 緑色の布と、ピンク色の布の二人が、こちらを見ていると、

「非戦闘員は下がれッ」

 マリアは装者として前に出て、他のもの達はすぐにそれから離れたが、

【遅いです】

 そう言って緑色の者が、布から出て、龍へと斬りかかる。

 その姿をすぐに捉え、さすがに驚いた。

「なっ」

 その所為で一瞬、反応が送れ、鮮血が少し舞うが、

【浅いです】

【任せて】

 二つの丸鋸を取り出し、回転させながら斬りかかるピンクの子。

 やっと姿を確認して、周りも驚くが、それよりもすぐに動くマリア。

 蛇腹剣が舞い、それをよけて、姿を現す。

「みなさんッ、無事・・・」

「・・・デス・・・」

「なん、で・・・」

 その場にいる全員が驚愕する。

 斬りつけた鎌についた血を、ぺろりとなめて、うっとりとおいしいですと呟く緑の戦士に対して、丸鋸の子も少しなめた。

【ゲーデの血、おいしい・・・】

【やっぱ元が同じですからね、もっと食べたいです・・・】

 軽くだが血を流し、すぐに負でコーティングするように塞ぐ龍。

 その二人を見ながら、敵がなんなのは知りたくて仕方ない。

「テメェら、誰だ」

 龍の言葉に、にやっと笑う。

 

【イガリマです】

【シュルシャガナ】

 

 切歌に似ている紅い目の子はイガリマ、調に似ている紅い目の子はシュルシャガナと名乗り、武器を構えた。




新敵登場、どうなるオリ主。
えっ、マリアがかわいそうだ。
・・・どうすればいいのだろう?
話よりもそちらを考えるべきかと考えながら、今回はここまでにさせていただきます。
お読みいただき、ありがとうございました。


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連戦、乱入の大騒ぎ

少し物語が次回に続くが多いこの作品。
直したいですが、どうしてもこのように進行すると思います、申し訳ございませんが、それでも応援よろしくお願いします。


 歌が響く、同じ歌、同じ声、同じ姿の装者二人が二人と対峙する。

「この偽物っ、同じ歌を歌うなデスっ」

【私はイガリマですっ、貴方の偽物なんだから仕方ないのですよ。オリジナルはあほな子です】

「切ちゃんはあほな子じゃないっ」

【ちたまの時点であほな子だよオリジナル】

「どうして知ってるんデスかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 他の戦えるもの達は非戦闘員の安全確保のため、牽制するように武器を構え、龍はといえば、矢面近くで力を使えず、攻撃をよける。

「さっきから俺ばっか狙ってるなおいっ」

 先に受けた傷は無理矢理治療済みであり、負の力は解除。切歌、調並び、イグナイトモジュール使用の条件を整えておく龍。

 その龍の叫びに、二人は口元をつり上げる。

【私たちは偽物です、ですが本物でもあるんですよ】

【貴方ならわかるはず、私達が本物のなにを元に作り出された偽物か】

 そして下をぺろりと口もとをなめる。イガリマはそれだけで思い出す。

【だから、本物を越えるには、貴方を食べたいんですよゲーデ・・・】

【さっきのおいしい・・・もっと貴方を食べたい・・・】

「その姿でっ」

「変なこと言わないでっ」

 二人の武器が激突する中、龍自身もヤンデレに好かれたようで背筋に寒気が起きる。

 その様子にセレナ、カノンノも武器を強く握るが、リタを始め、冷静なもの達はそれを知り、青ざめる。

「装者の負から仮ゲーデを生み出したのっ!?」

「ディセンダーと言い、今度はゲーデ。それに」

「装者の負の感情と言うことは」

 装者達も弦十郎の言葉に戦慄する。

 つまり、

「私や雪音、マリアや立花もまた」

「出てくるってことかよっ!?」

 そのとき、頭上からの攻撃を察して、翼は剣を構え飛翔する。

 その技を見て、顔を歪める。

「言っている先からかッ」

 それは『千ノ逆鱗』が迫る中、『蒼ノ一閃』で防ぎ、その巨大な剣を駆け抜け、翼を見ずに、まっすぐ龍へと走り付ける。

【天羽々斬っ、押して参るッ】

「待てッ」

「また偽物かっ」

 それと共に、まだまだと言わんばかりに、ミサイルの雨が頭上に見える。

「なにあれっ!?」

 リタが叫ぶが、クリスは苦々しくそれを見て、撃墜するが、ミサイルの中に、発射した存在がすぐに龍へと迫る。

【悪いが、お前は私のだゲーデッ】

「ミサイルに乗ってきたか偽物っ」

 ユーリが急いで動こうとするが、その前に、セレナとディセンダーの彼女に迫る者に感じ取り、そちらへと歩を進める。

 それは二人を捕縛、もしくば殺すかのように、蛇腹の剣を振るっていたため、剣撃で切り払う。

「セレナ、リュウのことで我忘れすぎだぞ」

「ユーリっ!?」

「!?」

 そしてイチイバルとともに現れそれは、セレナを見ながら顔を狂気に歪めている。

【私はアガートラーム・・・ゲーデの前に、貴方達の用事を済ませる気なのよ。邪魔するのなら、死んで・・・】

「なら、やってみなッ」

 

 

 

 混戦だった。同じ鎌使いの少女達、翼と天々羽斬が剣をぶつけ合い、イチイバルが迫ってきて、アガートラームのもとにマリア、ユーリ、セレナが対峙する。

 そして敵の方は周りを気にせず、力を振るうため、他の戦闘員は非戦闘員を守るので手一杯。

 龍は持ち込まれた剣を振るい、イチイバル戦、クリスと共に戦う。

「ちっ、援護射撃してやるよっ、前出ろ龍っ」

「わかってるッ」

【お前が前に出てくれるのかっ、うれしいぜゲーデっ】

 弾幕を切り払いながら、目の赤いイチイバルへと斬りかかる。

「テメェに聞きたいがある、あのディセンダーは」

【私たちが知るかよっ、あれは私達は知らない。まあ彼奴なら勝手に動いてそうだが、その前に私に食われろゲーデっ。お前は私のだッ】

 クリスは顔を赤くしながら、その間に割り込む。

「私の顔で妙なこと言ってるんじゃねぇッ」

【妙なこと? 妙なのはお前だオリジナルっ】

 銃撃の雨の中、二人が対峙するが、向こうは周りを気にしてないだけに、クリスが押されていた。

【どうしてパパとママを殺した世界を守る? こんな世界ぶっ壊してやる、それが私の始まりだろ?】

「それは昔の話だっ、いまは違うッ」

【なら悪いが、私はそこから作り出されたんだ】

「!!?」

 その言葉に装者達は驚愕する。翼の目の前、天々羽斬もまた、口元をつり上げた。

【ああそうだオリジナルよ、私はお前、剣として身を研磨し、防人として戦場をかけた日々、友を助けられず、その感情のまま走り駆けた負より生まれしモノだ】

「昔の私か・・・」

【だからと言って、いまのオリジナルより劣るわけではないぞ】

 それに対して、イガリマとシュルシャガナは微笑む。

【ゲーデを取り込めれば私たちは貴方達を越える】

【口の中に含んだときの甘さ、この身体に染みこむ力・・・オリジナルを越えることとか関係ないし、ゲーデを食べたいです・・・】

 二人して身を合わせ、微笑むイガリマとシュルシャガナ。それに切歌と調は同じように隣り合わせに立ち、睨む。

「言い方を考えろデスっ」

【ちたまに言われたくないです】

「だからどうして知ってるんデスっ」

 混戦状態、それに色々と焦るのはこちら側だった。

 まず非戦闘員がいすぎる、その状況では装者達もユーリ達も戦いづらい。

 弦十郎はギリギリの中で指示を飛ばしながら、傍らにエルフナインを抱え、ハロルドも難しい顔をする。

「まずいわね、向こうのスペックもオリジナルよりも上のようよ」

「ああ、このままでは」

 押し負けるまでまだ時間がある。だが結果は少しずつ近づいてくる。

 そんな中、それを破るバカはいた。

「戦局変えるッ」

「「「やめろッ」」」

 アドリビトムの何人かが叫ぶ中、龍はゲーデ化してイチイバルを取り押さえる。

 だがイチイバル、いや達は顔をつり上げた。

【【【【【イグナイトモジュール、抜剣ッ】】】】】

 そのとき、本物達と同じ位置にあるイグナイトモジュールに手を伸ばしたが、

『全員ッ』

 アドリビトムメンバーは即座に動いた。

 

 カノンノは両手剣を握りしめ、セレナは騎士の剣をアガートラームへ。

 

 ユーリはそのスピードでイガリマ達へ。

 

 フレンは天々羽斬へ。

 

 そしてバカはすぐにゲーデを解く。

 

 まさかの強化後すぐにそれを解くというあほなこと、龍は無防備な体制をさらしているが、それよりも早く、彼らが動く。

「『獅子戦吼』」

 無防備になったアガートラームを吹き飛ばし、セレナはそれに斬撃の連撃を放つ。

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「くっあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 セレナの攻撃を受けるたび、外装のように肌が砕け、ヒビが走る。

 ユーリは二人の間に割り込み、『義翔閃』をたたき込み、目くらましをする。

 その瞬間、二人も武器をたたき込むが、致命傷にはならないが、体制を整えた。

 フレンの乱入に天羽々斬は苦々しく見て、イチイバルは、

【邪魔するなッ】

 リタの魔法が壁になり、イチイバルが無防備になった龍に発砲した弾丸は全て防いでいた。

 リタはすでに別の詠唱を始め、いつでも放てる体制であるし、

「あんたの相手は私じゃないわよ」

 その瞬間、龍は岩壁ごと、イチイバルを吹き飛ばす蒼破刃で吹っ飛ばす。

「よしどうにかなった」

「なったじゃねぇバカッ」

「君は相変わらずだな・・・」

 メンバーからの苦情を無視しつつ、体制を整えた戦局を静かに見る弦十郎。

 いまの騒ぎにハロルドは非戦闘員を守れる体制に入っていた。リタの魔法も自分へと向けられる攻撃ではなく、非戦闘員を守れるようにするために展開していた。

(自分への攻撃は、龍くんが相手すると信じての行動か)

 アドリビトムの絆とも言うべき連携と言うよりかは、無茶なことするメンバーへの援護になれている彼らに、呆れていいのかほめるべきか考える弦十郎。

 非戦闘員を守る中には、もう響とマリアもいる。これならば、

【ゲーデ・・・】

 名残惜しそうにシュルシャガナがそうつぶやき、彼女らは後退する。

「逃がさないデスっ」

 シュルシャガナはピンク、イガリマは緑の布を全身に巻き付けた。それと共に空間が歪み、切歌の鎌が触れる前に消えた。

「デスっ!?」

 その様子に天羽々斬もまた名残惜しそうに見て、イチイバルも舌打ちする。

【アガートラーム、お前も下がれ、身体が維持できてないぞ】

【わかっているわよ】

 その瞬間、各々の布が現れ、追撃するべきかと考えたが、いまは見逃すしかないと、全員が察する。

【では戦場でまた相まみえよう】

【・・・】

【またなホンモン】

 天羽々斬、アガートラーム、イチイバルはその場から消え、やっと一息つくのであった・・・

 

 

 

 暗闇の中、布にくるまれているアガートラームは、ため息をつく。

【私だけ身体の修復に時間がかかるわね・・・ディセンダーか、私たちの身体じゃ、相性は悪すぎね】

【そう言うなアガートラーム、お前の分のゲーデは残してやる】

【アァ? 天羽々斬は残すのか、あれは全部私のだっ】

【ゲーデはイガリマとシュルシャガナのモノですっ】

【二人で分けて食べるんだ】

 うれしそうに話し合う二人に、イチイバルは苦々しく見て、天羽々斬は面倒なという顔で見ていた。

【私たちの性格もオリジナルとほぼ一緒のようだな。思考パターンが似ている】

【まあ、元だからじゃないの?】

 座り込むアガートラーム、天羽々斬は静かにそうだなと納得する。

【しかし・・・うまかったか?】

 天羽々斬の一言に、イガリマもシュルシャガナは、うっとりしながら頷く。

【おいしかった・・・全部、身体に染みこむ・・・】

【あれが純度の高い負・・・私たち力の源・・・もっと仲良く分け分けして食べたいです・・・】

 彼女たちの刃が光る。もっと切り刻みたい、身体を裂く感触も、それで舞う鮮血も味わいたいと、彼女たちは想い続けた。

【心臓はどうする? イガリマ?】

【シュルシャガナが欲しかったらシュルシャガナにあげるですよっ。そのかわり、部位分けは私にやらせてです】

【じゃ、血をまき散らすのは私がするねイガリマ】

 そのときは一緒にやるですと、楽しそうに雑談する様子を見ながら、天羽々斬を始めとした彼女たちも求めている。

 本能が、純度の高い負を求めているのだと、確信を得ながら。

【そういえば、ディセンダーが増えてたわね? あの方に詳しい話を聞かなくちゃいけないわね】

【確かガングニールをどうするか思案していたはずだ。まあお帰りを待とう】

 

 

 

「寒気がする今日この頃」

「夏場だぜリュウ」

 ユーリの言うとおり夏場だが、寒気がしたのは事実なので、龍達は集まり一休みしていた。

 彼女だけは別の場所、隔離された部屋で何もせずぼーとしているらしい。

「あの装者ゲーデも、ディセンダーの力にもろいな」

「ああ、元がって言ってたけど、まあ仕方ないね」

 フレンの言葉に、装者達は認めたくないものを見せられ、黙る。

 自分の負、過去の出来事のことは詳しくは話していない。だがアドリビトムの人達は知っている。どんな人にでも負の面があるのだから仕方ない。

「一番の問題は、我々の連携と力不足か」

 翼の言葉に、全員が頷く。

 ここにいるもの達は、あまりに経験の違いが目立つ。

「歌歌いながら戦うって、俺らからすれば考えられないしな」

「魔術も同じだ。リタやハロルドにはいつも驚かされる」

 ユーリと翼の言葉に、真ん中の龍ははっきり言う。

「俺からすれば、全部ファンタジーじみてるんだが」

「お前はそのど真ん中だろ」

 クリスの言うとおりだが、龍は気にせずに、

「やっぱ連携とイグナイトモジュールだな。装者はもうイグナイトモジュールが前提で戦わなくちゃいけない」

「向こうも使おうとしてましたよね・・・」

 響の言葉に頷く一同。彼女たちは龍がゲーデ化した瞬間、イグナイトモジュールを発動させようとした。

 その隙を生み出すためだけに使ったが、まさかの結果だった。

「これは、俺ゲーデ使えないな。剣所持していたい・・・」

「拳使え」

「剣じゃなきゃ勝てるかっ」

 ユーリにそう返す中で、セレナ達はどうすればいいか色々ありすぎて疲れ始めてくる。

 ディセンダーにゲーデの存在。そんな中での力のやりとり。

「なんか話が混沌しすぎだ。これ以上混乱する事態にならなきゃいいが」

「だな」

 ユーリも同意する中だったが、それは無情にも警報でうち消されるのであった。

 

 

 

 弦十郎の話では、立ち入り禁止区域にガングニールの反応があるらしい。

 元リディアン女学院があった場所、龍からすればなにがあったんだろうと思うような事態であり、未知の建物があった。

 モニターに映るそれを見ながら、リタはセレナを見る。

「セレナ、龍、貴方達が捜査隊よ」

「二人だけか?」

 ユーリがそういう中、装者達が驚いている。弦十郎はその様子はわかっていた。

「装者達は向こう側、ルミナシアの魔術に対抗する術がないからだ。鍛錬すれば解決することだが、いまはそう言っていられない」

「俺とセレナの連携で対処か」

「頼む」

「了解、ここのことは任せたぜ」

 全員は仕方ないや、納得できないと言う顔で話を終わらし、二人は急いで駆けだした。

「二人とも気を付けて」

「任せてカノンノ」

「行って来る」

 

 

 

 橙色の布、鎖でしばられたそれを見ながら、ふふと笑う。

「さて、そろそろあのゲーデには降りてもらわないと・・・だが」

 世界の対応の仕方に対して、いささか疑問がある。

「まさか私に対抗してゲーデ・・・ディセンダーではなく? なにが目的だ?」

 考え込む中、だがいいとすぐに考えるのをやめる。

「いまはゲーデを、彼女を完成させることを考えよう」

 そして静かに、準備する。静かに、静かに、

「壊れろ、壊れろ世界・・・壊れて、滅びて、死に続けろ」

 そしてそれも姿を消す。それと共に、鎖が解かれた。

【アアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ】

 それは解き放たれ、咆哮をあげた。




装者ゲーデはみんなヤンデレ、オリ主やったね。
彼女と言われているディセンダーは、とある金髪のストレートのお姉さんです。なぜ彼女はここにいるのか、早く明らかにしなければ。
それではここで、謎ばかり残す話で申し訳ございませんが、よろしくお願いします。


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龍の過去、絶望の世界で

オリ主はセレナと共に元リディアン女学院に出向いてます。あそこまだ立ち入り禁止区域だよな~と思う作者です。
ヤンデレの描写だけ怖いな、イガリマ達もう少し病んでもいいだろうか?(傷口なめたりとか、不安な作者です。今回はそんな描写ありです。
それでは、物語始めます。


 リディアン女学院、名前はまあまあ知ってはいたが、音楽家関係の学園程度だった龍は、少しばかり変わり果てたそれを見て、内心驚いていた。

 周りは荒野と言っていいほど何もない。少し手入れをして、荒野にしたらしいが、妙な建物はあるし、色々と元の世界の価値観が変わる。

 まあ関係ないと、すぐに切り替えた。

 側にいるセレナは忍者の格好で、周りに敏感になり、カメラ回線の方に手を振る。

「そういうのいいから、いくぞ」

「うん」

 いまの龍の格好は、この世界の安物の衣類に、小手と両刃の両手剣と言う格好。小手はユーリ達が持ち込んだ装備の一部であり、龍のスタイルは、軽装で動き、思い一撃を放つ。

 だからか、セレナはスピードで手数で戦うスタイルを得意とする。

 余談であるが、カノンノは二人と組む際は魔術主体で戦うというのが、異世界での彼らの活動内容だ。

(カノンノ不在だが、このスタイルが一番頼りになる)

 そう思いながら、建物の中、壊れ、ヒビが入り、いつ崩れてもおかしくない建物へと見るが、ふいに気づく。

(地面が揺れる・・・)

 セレナと顔を合わせ、お互いに頷く。

 どうやら来る。何かが来るとお互いに思い、後ろへ後退し、外で待機。

「通信機、敵さんは向こうから来てる気がするが、反応は?」

『藤尭です、ガングニールの反応が近づいてま』

 そのとき、言葉を区切った。

『そんなバカなッ』

「リュウっ」

 地面の揺れが強まる。複数の数が地面から飛び出る感覚。二人は背中合わせになり、戦闘態勢にはいるが、

『ダメです逃げてくださいッ、この反応は』

 それは現れ、龍は驚いた。

『ノイズですッ』

 

 

 

「ノイズだとッ!?」

 弦十郎の叫びに、司令室全員が戦慄していた。モニターの二人はノイズに囲まれていた。

 さすがにユーリ達も驚いていた。

「ノイズって、あんたらが倒したんだろっ、なんでまだ」

「これも敵側の戦力かっ!? まずいっ、龍くんはゲーデの力を使わなければ」

「リュウっ」

 カノンノが急いで司令室へと飛び出そうとするのを、リタとフレンが止める。

「待つんだカノンノっ、君だって触れれば死んでしまうんだぞっ」

「放してっ、このままじゃ」

「仕方ない、俺が出るっ」

「君もだユーリッ」

「装者達をすぐにむかわ」

「ガングニール接近、もうすぐ視認しますっ」

「ちッ、こんなときにっ」

 

 

 

 ノイズが現れ、さすがに苦笑する龍。ゲーデの力を使おうか考えた瞬間、

【アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ】

 それは咆哮と共に現れた。

「・・・ここでかよ」

 それは髪が長く、目が赤というより、赤一色、顔は黒い影に覆われた立花響?

 黒いマントを羽織っており、見た目二十歳くらいか、姿形が違いが有りすぎる。

 巨大な槍まで持っていて、片腕で振り回しながら、龍へと向かってきた。

「セレナはノイズッ、俺はガングニールだッ」

「ツッ、了解ッ」

 ノイズの存在を知っているため、現れたそれらがノイズとわかり、顔が歪むが、龍の指示を聞き、辺りに湧いてくるノイズを切り裂くセレナ。

 龍はガングニールと戦いが始まる。

【ゲーデッ、ゲーデゲーデゲーデ、ゲェェェェェェェェェェデエェェェェェェェエ】

 声は確かに響だが、理性がない獣であり、その猛攻を捌く龍。

 マントが盾のように堅くなったりと、いささか戦い方がおかしい。

「偽物でもカスタムしてるのか・・・くそ」

【ゲェェェェェェェェェデェェェェェェェェェ】

「るっせぇぇぇ、本物並みにしつこいなおい」

 剣を構え、それは炎を纏う。

『紅蓮剣』

 紅蓮の刃を放ったあと、続けざまにそれは鳥になる。

『鳳凰天駆』

 炎をおいやがれ、その側にいるノイズもまた炎で焼かれるのを確認して、少しばかり大技を放つ。

『タイダルウェイブ』

 剣を振り回すと同時に、海流が刀身から放たれる。ノイズと共に巻き込み、吹き飛ばす龍の魔術剣技。

 リタ達から外道と言われる。威力も範囲も狭く、その上魔力を本家より使うというが、その分本家より早いのが売りの龍の魔術。

「周りも邪魔だッ『サンダーブレード』」

 辺りに雷の刃を乱射する。ノイズもガングニール、特にガングニールに連打する。

 だがそれはマントで全て防ぎながら、突進してくる。

【ゲェデェェェェェェェェェェェエ】

「早いッ」

 剣と槍が交差し、激突するが、ガングニールは片腕で巨大な槍を振るっている。

 腕に警戒していた際、剣がぶつかると同時に、槍の矛先が回転した。

「しまっ」

 剣だけははじき飛ばされなかったものの、一瞬隙が生まれ、腕を捕まれた。

【ゲェェェェェェデェェェェェェェェェェェェェェェ】

 その叫びのまま身体が空中に投げ出される。浮遊感のまま、次に備える。

『粋護陣』

 身体の気を固め、地面に激突されたが耐える。両手で剣を持ち続ける限り、負ける気がない。

 すぐに体制を整えようとするが、その前にガングニールは馬乗りになり、そして、

 

【ガッ】

 

 口を大きく開き、首筋を噛みついてきた。

 

「リュウっ」

 

 さすがの龍も驚き、すぐに刹牙を放つが、無理矢理身体を密着させて、血をすする。

「やめっ、ぐっ」

 羞恥心よりも、歯が食い込みがひどい、血をむさぼりつくさんとばかりに食らいつく。掴む手も、爪が食い込み、血がにじむ。

 何度刹牙を放っても離れず、ゲーデを連呼しながら血を飲んでいる。

「離れろッ」

 そう言ってガングニールに特大の一撃を食らわしたのは、本物だった。

「立花すまん」

「大丈夫ですか龍さんっ!?」

 すでに他の装者達もノイズを倒している。龍の側に駆け寄り、様子を見る。

「女の子怖い」

 真顔で感想を告げるが、あまりは場違いなことを言ったためか、何言ってるんだと呆れている。

「出血は平気か」

「肉体を強化したからな、血が出る程度だ。他のところもな」

 内心、そこを舌でなめられたりしたとか言うべきか、いやセクハラかと思い、やめておく。

 獣のようなガングニールの容姿を見ながら、側の響を見る。

「似てるようで似てないよな、あれ」

「ですよね、髪長いですし・・・」

「・・・あのマント、私がガングニールのマントね」

「?」

 マリアの言葉にセレナが首を傾げたが、翼は剣を構えながら、

「マリアはガングニールを纏っていたことがある。それに似ているということだ」

 流れ出る血を治癒系の体術で治し、剣を構え直す。

 口元の血をすすり飲むガングニールに、響はうへと嫌な顔をする。

「ゲーデ装者にとって、貴方って食べ物のようね」

「言わないでくれ」

 マリアに言われたとおり、ガングニールはすぐに胸のブローチに手を伸ばす。

【イグナイドモジュゥゥゥゥルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ】

 黒い柱が立ち上がり、その姿はまさに、イグナイトモジュール時の響である。

【ゲェェェデェェェェェェェェェェ】

「それしかないのかあれは」

「来るぞッ」

 ノイズもまた迫る中、全員が全員走り出す。

 龍は必然的にガングニールと対峙する。戦場が歌で満ちるが、獣の咆哮がかき消している。

「立花達のように歌わないのにこいつ・・・『サイクロン』」

 風の刃が調の丸鋸のように回転しながら、ガングニールに迫り、それを片腕で掴んでいる。

 キュュュュュュと言う音が鳴り響くが、それを投げ飛ばすガングニールに、嫌になる龍ではあるが、気にせずに剣と槍がぶつかり合う。

「龍さんっ」

 それにサポートとして、乱入する響。ガングニールはそれにも対処するが、

(行き当たりばったりだが、やるしかないかッ)

 響の歌を邪魔せずに、うまく身体を動かす龍。

 槍と拳、片腕同士なのに、二人を圧倒するガングニール。それに驚きながら、響の顔が歪みつつある。

(私もイグナイトモジュールを使う・・・)

 響が押されている中で、内心そう思う。

 そのとき、ガングニールと目があった。

【ドウジデ】

 それは初めて喋った。

【ドウジデゼガイをニグマナイ】

 そう言いながら、ガングニールは槍の矛先を回転させながら、響へと振り下ろす。

 まずいと龍は察して、剣をたたきつける。

『剛・魔神剣』

 ガングニールの槍をはじき返し、響はそれを見て、

「借りますッ」

 そう言って龍の肩を踏み、勢いを付けて拳をガングニールにたたき込む。

 その顔に向かって、だが、

【ガアァァァァァァァァァァァァァ】

「なっ」

 ガングニールはその拳を口で噛み防いだ。

 響は驚いた瞬間、マントが響にまとわりつく。

「響っ」

 龍もまたそれに斬りかかろうとするが、ガングニールの手が、響のイグナイトモジュールに触れた。

【ヨコセ、オマエの負ヲぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ】

 そのとき、ガングニールは響のイグナイトモジュールを発動させた瞬間。

 世界は闇に覆われた。

 

 

 

「・・・あれ?」

 響は突然のことに驚き、そして状況もかわっているので驚いていた。

 自分の周りが森になっていて、辺りを見渡しても誰もいない。

 シンフォギアを纏っていて、ガングニールと龍も、他の人達もいない。通信機も使うが、返答はない。

「いったい、なにが・・・って」

 響が再度辺りを見渡すと、そこに一人の少年がいた。年齢は4~5歳くらいだろうか。黒い髪に黒いぼろ切れを着込んでいるだけの、虚ろな子供だった。

「君大丈夫っ、どうしてここにいるのっ!?」

 子供に話しかけてもなにも言わず、そこに大人の人達がやってくる。

「わわっ、えっと」

 いまの姿を見られたと思ったが、大人達はこちらに気づいていない。

「あれ?」

 そう思った瞬間、大人達が響をすり抜けて、子供の方を見る。

 驚きながら子供を見て、何か話し合っていた。

「これって・・・映像?」

 大人や周りのものに触れようとしても、触れずに通過する。

 この状況に困惑しながらも、子供は大人達に連れて行かれた。

 

 

 

「立花っ、龍っ」

 翼達は黒い柱を見る。空すら真っ黒に染める闇が立ち上る中、戦場に五つの布が現れ、それを払い現れた。

【出遅れたッ】

【ずるいですッ、ゲーデは私とシュルシャガナが切り刻むつもりなのにっ】

【まだ食われ終えていないはずだ、その前に残りでも取り出すぞッ】

 ゲーデ装者達は焦りながら、その光景を見て走り出す。

 

 

 

 目まぐるしい変化の中、響は吐き気を抑えていた。

 

『はあ、面倒。どうして子供の面倒みないといけないのよ』

 

『あの子不気味だわ、なに考えてるかわからないんですもの』

 

『金欲しい、金金金金~』

 

 ずっと頭の中に響く声、それは人の負。

 子供はそんな世界をずっと見続けていた。巡るように孤児院をたらい回しにされながら生き続けた。

 ずっと聞き続ける声、響は倒れそうになる。

「この子は・・・」

 子供は少年へと成長する。それは面影がある。龍だ。

「龍さんの子供時代・・・」

 そんな人より距離を置きながらも、嫌ってほど人の裏を知り続ける日々。

 響はそんな中、ボランティアで彼は病院にいる。

 これで孤児院関係だが、龍しかいない。他の人は他の人の用事という名のサボりだ。

 そんな声を聞きながらも、龍はめんどくさそうに病院にいる。

「・・・あれ?」

 その病院に心当たりがある。そして病院のカレンダーを見て、青ざめた。

「この日、翼さんと奏さんのライブ・・・」

 その一言で、病院があわただしくなる。

 ノイズの災厄、ライブ会場の事件。それは響の心に亀裂を走らせた。

 あの日、自分が死にかけたあの事件の当日だった。

 

『すいません通してくださいっ』

 

 そのとき、自分がいた。

 

 ベットで横になり運ばれる自分。それに呼びかける家族。

 

 ああ間違いない・・・あの時だ

 

 響は思う。あの日、自分はノイズの戦いの中で死にかけ、奏に助けられたことを思い出す中、

「血が足りないっ、誰かっ、この中にO型の方はいますかっ!?」

「・・・えっ」

 響はそれを聞いて、心音が強くなる。

 それを聞いたのは、たまたまいた龍だった。

「あっ、自分O型です」

「お願いしますっ、手術のために血が足りないんですっ」

「お願いしますっ、響を、娘をお願いしますっ」

 突然のことに龍は驚いていた。父親が龍の手を取り、泣きながら頭を下げていたのにも驚くが、龍はいままで負の中にいた。

 純粋に助けたいと言う感情がわからず戸惑いつつ、彼は頷き、血を提供した。

 

 

 

 それから、間をおいてはあるが、血を提供し続けた。自分にもわからないが、なんとなくだった。

 

 そして少女は目を覚ました。両親らしき人から涙を流しながら感謝された。心がわからず気持ち悪かったはずだった。

 

 だけど悪い気がせず、ガラス越しでこちらが見えないが、両親と笑い合う少女を見て、不思議と嫌な気にならなかった。

 

 いつも一人がよかった。人気のない場所ならなにも聞こえない。人がいれば聞こえるのだ、人の悪意を。

 

 だから寝るか一人になるかが自分の日常に、血を提供すると言う不思議な行動が増えて、それが終わったことに、少しだけ不思議な気分になる。

 

 初めての感覚だったから鮮明に覚えている。だからこそ、その反動も強かった。

 

 少女に対する悪意が頭の中に流れ込む。

 

 違う、あの子は自分のために、他人を犠牲にしていない。やめろ。

 

 やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロッ

 

 頭が壊れそうになる、おもしろがっている奴、心底むかついている奴、どいつもこいつも何も知らずに罵る声が頭に響く。

 

 ああ嫌になる、やめろやめろッ。苛々する。ムカムカする。殺したくなる。

 

 壊れろ、滅びろ、全て全てスベテッ。

 

 そう考えていたら、声の中に彼女の住所の言葉があった。

 

 気になって見に行ったら、最悪だった。

 

『ごめんな響・・・』

 

 あの父親が娘達を置いて出ていった。

 

 はあ? あんたは娘が助かった泣いて喜んでいたじゃねぇかよ。

 

『あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』

 

 少女の嘆きが頭を叩く。ハッ、なんだこれ? これが俺がしたことか?

 

 結局変わらない声、前よりもひどく聞こえる声。

 

 苛々する。

 

 これが世界、これが日々、これが人。

 

 こんなことのために、俺は行動した? ははっ

 

 それは笑いそうになりながら帰路につく。その際、不良グループを見つけては憂さ晴らしに暴れていった。

 何度も壊れそうになる。痛みより、血が流れるより、何より、痛いと言う意味がわからない。

 いつからか、それが楽しくなった。

 壊すことが楽しい、それが頭の中の声がひどくなっても・・・

「ああそうか・・・はき出せばよかったんだ」

 口元がつり上がる。

 もうどうでもいい。何かが目を覚ます感覚の中、龍は自分と相手の血の中で狂ったように笑う。

 その日から学校に通うこともなく、なんとなく日々を過ごす日常が彼の人生になったのだった。

 

 

 

 響はその場に座り込んだ。

 その事実を知り、目の前で自堕落な日々を過ごす光景を見せつけられて、首を振るしかない。

 唇が振るえるが、声が出せない。

【これがお前の負だ】

 背後からガングニールが迫る。それに気づかない。

【お前が引き起こした、負だ。飲まれろ、そして私によこせ・・・】

 飲まれかけようとしていた。響は何もせず、ただ光景を見ていたが、

「ざっけるな」

 そう言ってガングニールを蹴り飛ばした者に、恐る恐る顔を上げた響。

「龍・・・さん・・・」

「・・・あのときの子だったんだな」

 龍も複雑そうに響を見ながら、響は静かに顔を伏せる。

「私のこと、龍さんにもひどいことしてたんですね・・・」

 力無く笑うが、それに対してどうすればいいか考える龍。

 仕方ないと前を向きながら、

「もう気にしても仕方ないだろ、お互い」

「・・・」

 龍の言葉に響は黙り込む、その様子を見ながら、

「確かに俺はあの日からこの世界を完全に見切った。世界なんて、人なんて、無い方がいいといまでも思う」

 その言葉は、やはり自分の事件が全てのきっかけ、龍が人を見きるきっかけだと宣言していた。

「だけどな」

 龍は響の頭をわしわしと撫でながら、笑う。

「だけど俺はいまは違う」

「・・・龍さん」

 壊れたような笑いではない、前を向いて笑う龍がそこにいた。

「俺はあのあと、アドリビトムと出会った。カノンノに、仲間達に出会った」

 そして仲間と共に過ごす世界を知り、龍は前を向く。

「だからって壊れていい理由にもならないってわかった。お前はこのままか?」

「私、は・・・」

 そう言って手を差し出す龍。

 その手を見ながら、響は満面の笑みで掴み、立ち上がる。

「私のお父さん、あのあと時間はかかりましたけど、いまみんなで暮らしてます」

 それを聞いて、少し驚くものの、そうかと苦笑する。

「もう平気か?」

「はいっ、平気、へっちゃらですっ」

 その様子に、ゲーデの響は困惑して叫ぶ。

【ナゼダっ、ナゼ】

「知るか、お前が決めるな」

「それじゃここから」

「「脱出しますか」」

 そして向かってくるガングニールへ、響は歌い、龍は剣を振るう。

 そのたびに世界が砕けていく。光り輝く、光が、

「ん?」

 その中に、橙色の布に包まれ、鎖で抑えられている何かがあるのに気づく。

【!!? あれニフレルナっ】

 そんなことを言われれば、龍はその鎖を断ち切る。

 その瞬間、槍が布から現れ、ガングニールを貫く。

【グギャアァァァァァァァァァァァァァァァァ】

「って」

 その槍に驚愕する二人。

 布の中から出てきた人は、ニヤリと笑う。

「悪いけど、このまま身体もらうぜっ」

 

 

 

 闇が消えた。装者達とゲーデ装者達は一斉に振り向く。

 そこにいるのは、

【!?】

【ガングニールッ!?】

 ガングニールがガングニールに貫かれ、一人の女性が微笑む。

「よっしゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 そう叫びあげて、ガングニールは砕け散る。

 現れた女性は肩に槍を置き、響を見た。響は呆然とその人を見た。

「あなたは・・・」

「ん? ああ、私は奏『天羽奏』まあ、記憶やらなんやらかき集めたから、本物かどうか自分でも判断できないけどね」

 苦笑する奏に、全員が驚いているが、奏だけ槍を振り回し、ノイズを吹き飛ばす。

「なにしてるんだ翼っ、ほうけてるとやられるぜっ」

「なっ」

「話はあとだっ、ゲーデの奴はやばいっ」

「!?」

 そう言われれば、龍はさっきから地面に寝っ転がっていた。

 それに気づくイガリマとシュルシャガナが駆け出す。

 それに響が前に出るが、

【邪魔です】

【そこをどけッ】

「絶ッ対にどくもんかッ」

 響はイグナイトモジュールに手を置く。

 一瞬だけ龍の顔を思い出す。

(私は、まだ龍さんと話がしたいんだッ)

 そう決意して、叫ぶ。

「イグナイトモジュール、抜剣ッ」

 

 そのとき、黒い闇が吹き荒れる。

 

「!?」

 

 黒い竜が現れ、飛翔して、砕け散り、響へと纏われた。

 

 両腕は強く、堅く黒い装甲に覆われ、マフラーのようなものが首に巻かれた。

 

 いつものイグナイトモジュールではない、より黒いドラゴンを模した装甲が増えた、撃槍ガングニールがそこにあった。




すいません、ディセンダーではないよ。もっと凄い子として登場する奏さんです。
そして響もパワーアップ。このままたとえ次回に続くばかりであろうと、物語は止められない。というか止め方が分からない(ダメ作者。
オリ主が人間嫌いになった原因と響の関係。あとは彼女の知り合いを出す準備。
物語、次は情報が舞い込む回、その前に響無双。
新しい力で響が前に出ます。
それではこれで、お読みいただきありがとうございます。


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二つのガングニール

彼女についての正体や、黒幕の正体は終章辺りで明らかになる予定。
物語的にいいのかと思いながらも、謎はかなり引っ張ります。
パワーアップした響と、現れた奏回です。まずはこれを楽しんでください。
それではどうぞ。


 モニター越しにその光景を見ていた弦十郎は驚愕して、開いた口がふさがらない。

 死んだはずの少女と、その少女に助けられた子の歌が、戦場に奏で響く。

「この歌・・・やっぱり奏・・・」

 そう翼が唖然となる中、天羽々斬は見逃さないが、響の片手に両足を置き、響にぶん投げてもらい、天羽々斬に斬りかかる。

【くっ、ガングニール・・・違うっ、失敗した意識、オリジナルかっ!?】

「へえ、あんたらからしたら私もホンモンか。まあ話は後々だ」

 後ろで驚きつつも構え、奏を見る翼。

 それに苦笑しながらも、

「私のことはあとだ、ノイズやこいつらを倒すぞ翼っ。久しぶりのツヴァイウィングだぞ、気を抜くなっ」

「あっ、ああっ」

 うれしそうに返答し、歌を重ね合う。

 その様子に、弦十郎は一瞬司令としての立場を失いかけたが、すぐに取り戻して、響を見る。彼女のいまの姿、そして、その力だった。

 

 

 

「貫けェェェェェェェェェェェェェ」

 黒いドラゴンが戦場を駆け、その余波だけでノイズが消し飛ぶ。

 その威圧だけで、クリス達も空気がピリピリと振動しているのが分かる。

「なんだよありゃ、響の身体は無事なのかっ」

 司令室に連絡すると、エルフナインがコンソールなど、響の状態を見ながら叫ぶ。

『問題ないのが問題ですっ、なんでこんなに力が上がるのに、響さんが無事かわかりませんっ、ああっ、まだあがる』

『響さんのバイタル正常値っ、ですがそのほか、聖遺物関連のエネルギーの底上げは止まりませんっ』

『まずいですっ、スキャンがこれ以上、機材オーバーヒート寸前、計測不能計測不能っ』

 司令室ではかなり混乱しているようであり、クリス達も近づけない。

 

 

 

【本物のくせに、ゲーデの力を取り込んでるですっ、ずるいですっ】

【あれは私とイガリマのっ、これ以上その力使うなオリジナルッ】

 イガリマの『切・呪りaッTお』とシュルシャガナの『α式・百輪廻』が放たれるが、マフラーが尻尾のように動き、全て防ぐ。

 布のようなものだが、瞬間硬化したように、攻撃を防ぐだけでなく、黒い炎を吹き出して、突撃力を上げて響の一撃を重いものへとかえた。

【ですっ】

【イガリマっ】

 その一撃で吹き飛ぶ。身体に亀裂が入り、敵は顔を歪める。

【ここは引くわよっ、もともとガングニールの独り占め止めに来ただけなのよっ、これ以上は持たないわっ】

【くっ、わかりましたですよアガートラームっ】

「逃がさないッ」

 響が駆けようとするが、ノイズがまた大量に出てくる。

 それを見ても、響は止まらない。

「龍さんっ」

 その言葉に、響の目の前に林のように、刃の森が生えて、ノイズを貫く。

【でですっ!?】

 それはまさに、ゲーデ時の龍が使う、チェーンソード。

 髪と瞳だけが変わった龍は、倒れながら顔を上げ、ニヤリと笑う。

【気絶してなかったっ】

 響の拳が、イガリマを捉えた。

 その一撃が深く深く食い込む。

【イガリマぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ】

 イガリマよりも悲鳴を上げたシュルシャガナ。イガリマは下半身が砕け散るが、だが、まだ動いた。

【でっすっ】

 だがその鎌は、奏と龍が防ぐ。それに合わせて、緑の布がイガリマを包み、消えた。

「ちっ」

 その瞬間、他のゲーデ装者達もその場から逃げていった。

 

 

 

「はあ、やっと終わったか」

 奏はそう言い、シンフォギアを解く。するとコートを羽織って、ズボンをはいた、普通の女子の服装。上着はシャツだけのような気がするが、下着はあるなと奏は呟く。

「とりあえず、起きろよ龍、いい加減に」

「だめだめ、倒れてる。立つの無理」

 横になる龍は、実はさっきの姑息な技で体力がないのだ。

 セレナが近づき、すぐに座り込んで頭を膝に乗せた。マリアから負を感じた。

「大丈夫リュウ?」

「あー体力と魔力がないだけだ、問題ない」

「えっと、とりあえず」

 響は自分の姿を確かめる。身体がもの凄く軽く、少しの力加減で難なくなんでもこなせる。そう思うくらい自分が強くなっているのに気づいている。

 ともかくと、いつもの感覚で解除すると、元に戻って、響は安堵した。

「あれはなんだったんでしょうか?」

「あれについてや、私については、まあ旦那んとこで説明するよ」

 奏はそう言い、装者達も奏を見る。みな、前ガングニール装者である自分を知っていることを知り、あーと空を見ながら、難しい顔をする。

 

 

 

「機材の修理と響くん達の回収を急げッ」

 弦十郎の指示に、いま司令室は大慌てで動いており、モニターの全員を見る。

 ハロルド達もまたそれを見ながら、難しい顔をしていた。

「なにがなんだかわからないけど、あの姿は」

 響の様子は、その感覚だけで分かるアドリビトム。弦十郎もそれに耳を傾ける。

 ゲーデの力、響は間違いなくその力を正常に使用していた。

「まあ、普段から本人の側で見てたからな、それくらいの判別はできる」

 ユーリの言葉を聞くが、エルフナインはそれに異議、もとい異論を言う。

「ですが、龍さんと聖遺物の相性は悪いはずです。チェーンソード、ゲーデの力を使ったところを見る限りは」

「なにもなかったか・・・まあ、本人達が帰ってきたら、また話し合いねって」

 ハロルドがそう言っていると、ある連絡が入る。

「ニアタから、ルミナシアかグラニデでなにか進展でもあったかしら?」

 いい方がいいわねと言いながら、リタ達は息をのむ。

 

 

 

「よお旦那っ、久しぶりっ。っていうのも変かっ」

 あっはと苦笑するのは奏であり、いまは途中で買った衣類を着ている。

 龍はソファでぐったりしていて、全員が落ち着きを取り戻していた。

「お前はかわらんな」

「・・・まあ、実際人間かどうかわからないんだけどね」

 苦笑しながら、少しだけ暗い顔になる奏。

 それに翼や響も心配そうに見る。

 弦十郎だけは確かめるために、代表して訪ねた。

「自分がなにか、まずはわかるか?」

 天羽奏は死んでいる。誰もが、いや、本人も知っている。そう頷き、奏は言う。

「記憶的には、絶唱歌ったあとは、真っ暗な闇の中で、記憶はそこで途切れてる。そのあとの記憶が、私は一度死んで、ゲーデとディセンダーみたいな方法で作り出されたまがい物だっていう記憶で、いまここにいる」

 まず最初はガングニールを元に、負の感情を集め、疑似ゲーデを作り出すのが目的だったらしいが、まさかの力不足。そのために、負以外の感情も使ったうえ、ガングニール関係者の負まで使っての、あの不完全暴走ゲーデ装者だった。

「私はゲーデというより、ディセンダー側に近かったらしいから、むしろ封印、拘束されてた。始め、装者を殺そうとしてただろ? あれは装者を殺すのが目的じゃなく、装者の負の感情を集められればよかっただけだ」

 そのあとの襲撃はまさにそれだ。イグナイトモジュールで負の感情を集め、ゲーデ装者を生み出した。

 ノイズ、ジルディアの民もどきもまた、それらの負から生み出したまがい物と説明し出す奏。

「強い負でできた奴は、どうも奴に操られたり、賛同したりするから事実上敵の味方だな。私はまあ、意識的には天羽奏だから、翼達の敵になる気なかったから、あんなんにされた」

 それらの言葉を聞きながら、リタは訪ねた。

「奴ってのに、心当たりは?」

「ごめん、もう視界も身動きも取れないようにされたから、記憶で自分になにが起きたくらいしかわからない。とりあえず目的だけしか、向こうのことはわからない」

「目的?」

 弦十郎は聞き返すと、静かに頷く。

「全ての世界の負を集める。そのために、全世界で最も純度の高い負を殺す、それが目的らしい」

「全世界で最も純度の高い負?」

「そいつだよ剣崎龍」

 全員が龍を見る。奏の言葉を聞く限り、龍は最も強いゲーデらしい。

「まあ、精霊が間髪入れずに攻撃するレベルなのは知ってたが・・・」

「それ以上は、なんか色々してるみたいとしかわからない」

 奏はそう言い、リタは前に出る。

「あとでドクメントやこの世界の医学技術で身体を調べるわ、いいわね?」

「ああ、それでやっこさんに一泡吹かせられるなら問題ないよ」

 笑う奏だが、リタはハリセンでバンッと叩く。

「ばっかじゃないのっ、あんたが人間で、ちゃんとした暮らしできるか調べるってことよっ。まあ確かに、それもあるけど」

「って言われても、私が死んで数年経ってるし、翼が同じ年とかだし・・・私自身、天羽奏としての記憶があるだけで、本人かどうか言われると自信ないよ?」

 あまり気にしていないそぶりだが、もう少し気にしろと言いたくなる。

「負の感情は、自由人すぎる・・・」

「リタ、この人の場合元だと思うぞ俺は」

「それは否定できないな」

 弦十郎もはあとため息を吐く。仕草、考え方が奏であり、その様子に初めてばつが悪そうな顔で辺りを見る。

「本当に天羽奏でいいのかな? 死んだ記憶あるし、人間じゃないかもしれないんだぜ?」

「私に聞かないでよ奏・・・」

 翼がそう悲しそうに呟く。翼もそんなこと言われれば悲しい。

 なぜならば、自分はもう一度、奏に会えた。そう思っているのだ。

「ともかく、次は響くんのことだっ。あれについて説明できるか?」

「えっ、私ですかっ!?」

 響は驚き、ハロルドは頷きながら、説明する。

「あれは明らかにゲーデ、龍の力を完全に取り込んだガングニールのイグナイトモジュールね。なんかないの? パワーアップしたきっかけとか?」

 その瞬間、響は目線で「言うなよ」と言う意志を感じる。

 龍からの視線に冷や汗流しながら、響は、

「私、龍さんと仲良くなりたいと強く思いましたッ。だからですッ」

「「・・・えっ・・・」」

 カノンノ、セレナが急に振り返り、龍を見る。その目は笑ってない。

 響はいつもの笑顔満点であり、カノンノは静かに龍へと近づく。

「なにが・・・あったの?」

 笑ってない。

「あ、あのな、カノンノ」

「なにがあったの・・・」

「・・・」

 昔あったことを説明する、その様子をアドリビトムメンバーは、

(あいっかわらず、変な方向で弱いよなリュウ先生は)

(あっはははは・・・)

 しかし、あまり笑えない話である。

 話す相手はなぜかカノンノとセレナに土下座しているものの、内容が龍が世界もとい、人間嫌いになるきっかけであり、響も少しだけ暗い顔になり、顔を伏せていた。

 二人も怒る気はなくなり、響は話し終えて、穏やかに微笑みながら言う。

「だから私、龍さんや奏さん、色々な人に助けてもらって。龍さんとはちゃんとお話ししたいって、強く思いました。その気持ちでイグナイトモジュールを発動させただけです」

「ふむふむ、そういうこと・・・」

 ハロルドとリタが考え込む。

 その様子を見ながら、アドリビトムだけは察する。

「その様子じゃ、仮説くらいはあるんだな」

「まあね」

 ユーリのつぶやきに頷くリタ。エルフナインは驚きながら、ハロルドは続ける。

「まあ話は簡単よ、もともと装者がゲーデの力を使えないのは、龍が聖遺物と拒絶反応出すだけだから使えないだけだから、使わなきゃいいのよ」

「えっと、よくわかりませんっ」

 響が元気よく答えるが、リタが細くするように続ける。

「力のやりとりは、ゲーデの負を、イグナイトモジュールが回収して貴方達装者へ流し込む。ゲーデもまた同じように、聖遺物の力ごと、装者の負を取り込む。そのときに聖遺物の拒絶が出るの」

 そう言われ、エルフナインはあっと声を上げる。

「それじゃ、あのときの響さんと龍さんは、そんな関係ではなかったと」

 それに二人は頷き合う。

「おそらく、ヒビキの負の吸収が発動せず、ヒビキにだけに力を渡す形での、力のやりとりになった結果があの姿よ」

「ならば我々も」

「それはわからないな」

 翼が食いついたが、龍はすぐに否定する。

 話の内容はつまり、龍が装者の負の感情を取り込まなければ、装者達だけを強化できるという話だが、龍ははっきりと、わからないと言った。

「どういうことだ?」

「負の感情は誰にでもある。あの姿のときは、大小関係なく、負を取り込んでるんだ。なんで響やアドリビトムのメンバーからは起きないか、俺自身制御不可能なんだよ」

「そうなの?」

 マリアの言葉に、セレナが頷く。

 セレナことディセンダー以外だと、精霊からですら負を取り込む龍。アドリビトムも前は取り込んでいたらしいが、最近は全くないらしい。

 だが理由はわからないと龍は言う。

「立花も確かに完全に取り込めなくなってる。他の装者だと、翼以外は、マリア、3人は論外だ」

 その言葉に、響とカノンノ、セレナは首を傾げたが、他はマリアをジッと見た。

 マリアは龍に含むところがあるので、顔を背けた。

 3人は論外なのは、嫌われているからだ。

「まあこればかりは変えられないわね。んでと」

 ハロルドは少し間をおき、有る話をする。

「ニアタから連絡はあったわ、しかもかーなーりやばめのね」

「これ以上あるのか」

 

 

 

 広い空間、外で装置の用意をするリタ達、少しばかり機材の調整をして、準備する。

 エルフナインは興味津々に手を貸して、クイッキーはクリスの肩にいた。

「異世界、グラニデか・・・確か、負が蔓延して、浄化が追いつかず、ゲーデが生まれて、ディセンダーがどうにかしたんだよな」

「うん、それで私みたいに、使命を終えてもまだ滞在してる子なんだよね?」

「来て欲しくないな、ゲーデを敵として戦ったんだろ?」

「ニアタの話じゃ、分かり合えたらしいよ。向こうの私が、貴方とお話ししたいって、ディセンダーの子と一緒に言ってたって」

 カノンノやセレナの話を聞きながら、それでも嫌な顔をする。

 奏達も苦笑しながら、奏の方は吹っ切れた。自分は自分として生きると決めた。

「まあ、このあとどうするかはあとで考えないな。人かどうかもわからないし、実際死んでるし」

「とりあえず、いまは異世界の来訪者を待つしかないよ奏」

 翼の言葉に頷く。

 いまグラニデで問題があり、何人かそっちに送る話になっている。

 そのための門を作る中、準備が終わった。

「んじゃま、スイッチオンっ」

 その瞬間、光り輝き、感電する地面。

 響達が驚き中、突如爆音が響き、龍はそれを見て、

「死んだか」

「早い早い」

「ユーリも違うだろ」

 フレンが呆れながら、煙から咳き込む声を聞きながら、何人か現れ、一人を見て嫌な顔をする龍。カノンノはびっくりする。向こうもだ。

「あなたが」

「あっ、始めまして『私』っ、私もカノンノ、カノンノ・イヤハートっ」

 そう言って、カノンノに近づくカノンノに、龍は苦手な人が増えたことにいやがる。

「それで、あとのはだれだ」

 龍が煙がはれると、彼らが現れた。知らないアドリビトムかと思ったが、

「彼らは違うらしいわよ、グラニデとは違う世界から、この事件に関わり合うから来たっていう異世界人」

「異世界で異世界人ってもうわけわからん」

 呆れながら、彼女たち、ディセンダー以外の子を見る。

 

 一人は髭を生やし、スーツ姿に剣と拳銃を持つ男性。

 

 喋るピンクの人形と、ピンクを基調にした衣類の少女。

 

 ボーイッシュな格好で、鞄を提げて、ロットのようなものを持つ短髪の少女。

 

 白衣を着ていて、格闘家らしき武器を装備している黒髪の男性。

 

 エルフナインくらいの、大きな猫とともにいるツインテールの小さな少女。

 

「って、エルっ、どうして君もいるのっ!?」

「あれ、お留守番じゃなかったのっ!?」

「おいおい、異世界行きに巻き込まれたときといい、さい先悪すぎだろ・・・」

「あっははは、どうしよう・・・」

 小さな子は向こう側にも驚く内容であるらしく、その様子を見ながら、空を見る龍であり、そう言えばと、

「あのディセンダーはなにしてるんだろう。話し合いくらい顔出させないな」

 そう思いながら、異世界の奴らににやにやと笑いながら挨拶する。

「こんにちは異世界の人、俺がゲーデだ、よろしくな」

 こうして、異世界から来た者達、グラニデのカノンノとディセンダーが現れた世界。

 その出現に、色々な思惑が交差するとも知らず、少しずつぎこちない音が鳴るのであった。




分かる人には分かる人達登場、これで次はディセンダーの彼女が何者かわかります。伸ばしてしまったっ、申し訳ございませんっ。
老人とあのお方は来れません、来たら政界荒れる荒れる。同じ理由で残りの二人も来れるはずもない。
あとはグラニデのディセンダーの容姿はどうしよう? 作者の好みでいいなら、某聖杯で出てくる、ロンドン暗殺者の少女を、ゴスロリモチーフの衣装で出すか。
響と奏のデュエットやれた、あとあるとすれば翼と奏のデュエットか。やれるか?、頭の中のストーリーではないが・・・
あとはマリア救済だが、だめだ、希望はない。セレナは龍のことが好きだから救われない。どうすれば救えるんだろう。
こんな作者ですが、これからもよろしくお願いします。ではお読みいただきありがとうございます。


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霧に包まれた真実

まずは最初に謝ります。どうも話の謎や、物語の区切り方が次回に続く方式しか思いつきません。申し訳ございません。
これ以上はしつこいのでここまでにし、これからも物語をよろしくお願いします。
さて、一番の危惧は言った。あとは誤字に気を付けつつ、進んでいきます。
手始めに、新たな来訪者達との情報交換、それによる新たな謎との対面です。
どうぞ、楽しんでくださいませ。


 司令室で弦十郎達は彼らを歓迎し、みんながみんな、彼らを見る。

「貴方がゲーデ?」

 12~3くらい、銀髪のショートの子、服装はふりふりなどが目立つが黒を基調にしたワンピース姿。だが腰にナイフと拳銃を下げた少女が話しかけてきた。

「ああそうだぜ、グラニデのディセンダー」

「私の名前、ノワール」

 ほっぺをふくらませる少女。ディセンダーの輝きはセレナと全く変わらず、本能が近づくなと二重の意味で言っている。

 ノワールはしばらくしてから、腰に張り付いてきた。

「なっ、こら放せ」

「知ってるゲーデに似てる、友達になるっ」

「はあ? 断る離れろディセンダー」

「や」

 ゲーデとしてディセンダーに近づくなと言う勘と、身に降りかかる理不尽な勘が働く。もうすでにセレナとカノンノ(ルミナシア)が、不機嫌モードに移行しつつある。

「だ、だめだよノワールっ、そうくっついちゃ」

「ゲーデ、逃げる。名前聞くっ」

「俺の名前は別にいいだろゲーデで」

「あっ、この人は龍さんって言うんだよノワールちゃんっ」

「立花ぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 勝手に名前を教えられ、ノワールはリュウと認識して頬スリし始める。イヤハートも苦笑するが、カノンノとセレナは少しだけ睨みを龍へと向ける。

 響は響と呼ぶようにと、周りにつきまとうようになり、話が脱線しかけている。

 弦十郎がそれを止める中、ノワールは龍にはりついたままだが、話を進めることにした。

「えーそれでは、異世界側の、君達の話を詳しく聞かせてくれ」

「はい」

 それに白衣を着た青年が前に出て、やっと本格的な話が始まる。

 

 

 

 ある世界に、精霊が住まう世界、人が住む二つの世界。この三つが共存する世界がある。自分達はその世界の出身者であると説明した。

 その世界の、精霊達の王もとい、原初の精霊『オリジン』がいる。

 彼は時の精霊『クロノス』と共に、負を押さえ込む責務をしていたらしい。

「らしい?」

「本来なら、負を抑えているはずのオリジンが、僕らの前に現れたんです。『負が盗まれた』と言って」

 彼らは、ジュード。アルヴィン。レイア。エリーゼと、他にもいる仲間達にテレパシーのようなもので話しかけ、まとまったところでその話をしたらしい。

「世界にとって、あんたらってどんな奴だ?」

「まあなんていうの、厄介ごと片づけたもんとか、精霊に知り合いが多いとか、んなとこかな?」

「友達なんだよ~」

 アルヴィンがそう言い、エリーゼの人形のティポが喋りながら説明。龍は気にせずに、負の感情について考えた。

「負に関してはなら、押さえ込むんじゃなく、浄化したほうが早いだろ。テメェら精霊にとって、俺らは邪悪でしかないんだから」

「そう言う言い方、知ってるゲーデみたい・・・やっぱ、リュウとも友達になるっ」

 だきつく力が強まりつつ、ジュードはそれに首を振る。

「君の言いたいことは分かるけど、オリジンはそれをよしとしなかったんだ。僕らのためにね」

「はっ、他の世界じゃ一目置かずに害悪なんだがな。変わり者だなあんたらの原初の精霊は」

 オリジンは人の、魂の昇華を期待している。だがオリジンの話を聞く限り、無駄だと龍は言う。ゲーデとして、そんなことはあり得ないと否定する。

「お前、自分のことなのに否定的だな」

「世界が変わろうが、人の本意はかわらないのを知ってるからな。俺ら負は害悪、それ以上でも以下でもない。それが絶対でかわらない事実だ、人は人のままだ、無駄骨だよオリジンって言っておけ」

 そう言うが、それにジュードはこちらを見て、まっすぐな瞳で龍を見る。その瞳に負は感じず、内心感心している。

「確かに、魂の昇華なんてことはどうなるかわからないよ。けど、世界をよくする、僕らがすることはそれだけだよ。その思いだけはなにがあっても、ゲーデである君に否定されても変わらない」

「・・・」

 腕を組み、なにも言わない。弦十郎は咳をして、話を戻す。

 オリジン、クロノスが言うには、何者かが一つの世界に、負を集め始めていると言う、次元、時間、空間、世界。考えられる可能性という可能性を飲み込む準備をしているとわかるらしい。

「そういえば、妙なことも言っていたな、オリジン達」

 アルヴィンがひげに触れながら考え込む。翼はそれに首を傾げながら聞く。

「妙なこと?」

「ああ、負の原初がいないというのに、誰がそんなことをしたのかわからないってな」

「負の原初」

 そのとき、一瞬考え込む龍。まさかと思う。

 胸に顔を埋めるノワールが気づき、顔を上げた。

「どうしたの?」

「奴らは俺のことを、最も純度の高い負と言っていた。まさか原初の負は俺のことかなって思ってな」

 それを聞きながらリタ達も考え込むが、まだ憶測であり、だからどうしたというのも事実。そのままジュードは話を続けた。

「ともかく、僕らはオリジンから、近くの世界に出向いて、この事態がなんなのか調べて欲しいと言われて、まずはグラニデに来訪しました」

「まあ、そのときからも、俺らの世界で、妙なもんが現れたから、無関係って話じゃなかったんだ」

「それって」

 カノンノの言葉に、レイアは頷く。

「うん、鉱物でできた人間・・・ううん、人形。いま他の仲間、ガイアス達が討伐してるんだ」

「言葉もなにもない、ただの石です・・・」

「ボリバー怖かったよ~~」

 その言葉を聞き、ルミナシアメンバーは複雑な顔、ユーリと龍だけはあからさまな怒りを見せた。

 ジルディアの民、それを利用した行動。彼らの逆鱗に触れるには十分すぎる。

「そのあと向こう、グラニデのアドリビトムの方々と出会うことができまして」

「それで、ニアタから貴方達や、彼女のことを聞いて、来ることにしました」

「彼女? ディセンダーのあのこのことか」

「はい」

 ジュード達は頷く中、そこはわからないままであり、そう言えばと、

「そう言えば、ちっこいのと、猫はどこだ」

 

 

 

 なにがしたいわけではない。

 

 ゲーデを消せ。

 

 それ以外を求めた。

 

 ゲーデを滅ぼせ。

 

 それはもう、偽りの使命だと分かっている。

 

 ゲーデを討伐しろ。

 

 違う、やめて、それは私の意志じゃないッ

 

 この世の負の原因である、彼を殺せッ!!!

 

 それは、間違っている。

 

 殺せ、剣崎龍、ゲーデをッ。

 

 

 

「・・・」

 彼女はつたない手で、調理室で鍋の中、スープを煮込んでいる。

 なにも考えていないと、頭の中で彼を殺すことが何度もよぎるため、なにか手を動かしたく、こうして手を動かしていた。

 なんとなく味見をして、食べられるものだなと思いながら、これをどうするか考えている。

 そのとき、がちゃと扉が開き、な~お~と鳴き声が聞こえた。

「ねこ?」

「・・・」

 小さな少女が、猫と共に現れた。こちらを見てびっくりしていたが、彼女は首を傾げていた。

「小さい子って、エルフナインって子以外、いないんじゃ? アドリビトム、他の子? まあ、ここの関係者なのは間違いないわね」

「・・・」

 なぜかびっくりしている少女。どうすればいいのか考える彼女。

 部屋に引きこもっている間、人間関係と言うものがわからなかったため、文字を教えてもらい、本やテレビなど見たりしているが、やはりどうすればいいかわからない。

「とりあえずスープ作ったから食べる?」

 それが彼女の考えた末の答えで、少女はそれに、

「食べるっ」

 満面の笑みでそう言って、すぐにテーブルに座った。それにため息をつきながら皿に移したスープを渡す。

「熱いから気を付けなさいよ」

「エル、そこまで子供じゃないよっ」

「にゃ~お~」

「あなたはミルクね・・・」

 子供のお世話をしながら、エルと言う少女はスプーンのスープを、ゆっくり食べていた。うれしそうに、泣きそうな顔で、

「どうしたのよ」

「・・・大好きな人と、同じ・・・」

 泣きそうな顔でそう言われ、彼女は困惑する。この場合どうすればいいかわからない。自分の中には、あとで付け加えた知識以外、ゲーデを消すこと以外ないのだ。

「ちょ、待って泣かないで」

「エルは泣かないよ、我慢するっ」

「泣きたきゃ、泣けばいいんじゃねぇかいまは」

 そう言いながら現れたそれを見て、一瞬近くに刃物がないか探す自分。すぐに我に返り、それを見た。

「ゲーデ」

「よおディセンダー」

「・・・あなたも、ディセンダー?」

「その腰のは?」

「グラニデのディセンダー」

「ノワール」

 そう言いながら、エルとルルも挨拶する。そこにみんな現れ、挨拶する。

 正直、武器を見るたび、それで龍を殺せと頭の中に声が響く。

「・・・あなた達は、なにもないの?」

「「!?」」

 二人のディセンダーにはなにもない。ということはやはり、

(私の方がまがい物・・・)

 その事実にふさぎ込む彼女に、龍は無視してエルを見る。

「とりあえず、敵さんも負の感情を集めてる。お前のことはともかく、情報が断片しかなさすぎるな」

「なら、負を消せばいい、あなたを消せば世界を救える・・・」

 だが彼女からその気はない。言葉からそう感じながら、響達装者、ジュード達、グラニデのメンバーも黙る。

「そんなのだめだよっ」

「負は害悪でしかない。命を蝕み、人を狂わせ、輝きを汚す。ディセンダーである貴方だって」

「それでも、それは人の心」

 ノワールはそう言って、龍にだきついていた。

「私は、ゲーデとは戦わない。絶対、だって、一緒にいられるもん」

「うん、ノワールの言うとおりだよっ。負の、ゲーデとだって、平和な世界を作れる。私達グラニデは、自由の灯火は諦めないよっ」

 イヤハートはそう言い、ノワールはうれしそうに龍にだきつく。

 ほほえましいが、セレナとカノンノが不機嫌な、そんな負を感じる(ディセンダーはいまいちわからないが)し、マリアはそんなセレナを見て、こちらを見ている(目が笑ってないし、光もない)

 そして彼女は短く、そうと呟く。

「・・・そう言えば、ディセンダーさんは名前なかったんですよね、このままでいいんですかっ」

 響が突然そう言い、ジュード達に少しだけ何か言いたいこと、言いたくとも言えないという、状態への苛立ちの負を感じる龍。

(なんだ?)

 内心そう思うだけにして、彼女はといえば、

「好きに呼べば」

 そう短く返答した。

 それに響はみんなを交えて考え出す。当本人はどうでもいいと言わんばかりに椅子に座り、その様子を見ながら、龍にすら求め出す響。それには嫌そうな顔をする彼女だが、龍は少し考えて、

「なら『ミラ』でいいんじゃね?」

 そのとき、逃さなかった。

 ジュード達が、驚愕するという顔を見逃さず、内心疑問に思いつつも、

「ミラ、恒星から取ったのかしら?」

「さすがだなマリア、ラテン語で不思議なって意味だ」

「ふん、身元のわからない私にとっていい名前ね。それでいいわよ」

 こうして不思議なディセンダーこと、ミラはそう言うが、正直不思議なのはジュード達の反応であった。

(・・・とりあえず、ノワールが少しずつ上ってくるのを何とかしたい)

 

 

 

 そんな感じで、今日はお開きになり、龍に至っては外出を禁止された。

「敵の狙いは君である以上、異論は認めんぞッ」

 弦十郎の言うとおりなため、仕方なく龍は奧へと幽閉された。アドリビトムメンバーが牢屋に入れろ、手錠しろ、身体を拘束しろと言って来るため、どこの重罪人だろうという状態であったが、隙を一瞬見ては逃げだそうとしたため、装者達はなにも言わなくなった。

「さて、あほは拘束したし、私たちは響のパワーアップの件を調べて、少しでも戦局をよくするようにするわよ」

 と研究者チームは意気込み、セレナ達は暇になる。

 むろん、単独行動はしないが条件であり、連絡も絶やさないことになっている。

 そんな中、マリアは少しだけ行動を起こす。

「せ、セレナ」

「はい?」

 セレナにある場所に行くので、貴方も来るか聞く。切歌も調も用事があると言う話し合わせはしていたため、セレナははいと頷き、町へと出かけた。

 途中で花を買いながら、セレナはその様子を見ながら、歌手で有名人のマリアは変装していて、その様子を見ながら、

「これからどこにいくんですか?」

「・・・」

 少し黙り込み、そして静かに、

「マム、私や切歌、調にとって、母のような人よ・・・」

 貴方にとっても、そう言えずに、彼女をマムのもとへと連れて行く。

 

 

 

 人気が無くなり、静かな場所へとたどり着き、セレナも自前で花を用意して、マムの墓にたむけていた。

「始めまして、セレナです。異世界で救世主してます」

 きっとマムも驚いているだろう。マリアはそう思いながら、微笑む彼女見る。

 何もかも、仕草や好き嫌い(向こうで改善したらしい)も同じであり、いつも口紡ぐ歌は、セレナがいつも歌う、あの歌だ。

 心から、逃れられないほどに彼女のことを妹しか見られない。

 そう思いながら、マリアも花を置きながら、それを聴いた。

「~~~♪」

 それは、当時、あの実験施設にいたとき、いつも歌っていた、あのとき、フロンティア事変でも自分に勇気をくれた歌を歌う。

 涙があふれそうになる。セレナだ、この子は間違いなく妹のセレナだ。

 止まらない、止められない。もう、自分は、

「マリアさん」

 それに正気に戻る。

 マリアは何を言おうとした。彼女にとってはいい話ではない。

 勝手に死んだ妹と重ねて、妹扱いなんてできない。そう思い、すぐに我に返る。

「なにセレナ」

 

 だが、セレナは、

 

「・・・」

 

 次の瞬間、彼女は、

 

「貴方は私を知ってますか?」

 

 彼女の思いを壊すには、十分な一言だった。




拘束されているオリ主(仮面ライダー龍騎の蛇さんみたいです)
仲良くなりたいディセンダー登場。助かったと思うオリ主。
ディセンダー思いっきり、顔に頬スリしたり、動けないことをいいことに仲良くなろうとスキンシップしてくる。オリ主はうなる。
カノンノ(ルミナシア)登場。
ユーリ達、修羅場から距離を取り、見守る。

いま裏でこんなこと起きてます。
お読みいただき、ありがとうございます。


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私はだれ?

シリアスです。それ以上はなにも言わず、どうぞ。


 セレナからの言葉に、マリアは、世界が止まったように思った。

 セレナは真剣にこちらを見ていて、ただまっすぐに見つめてくる。

「私はあなたを知っている、そんな気がします」

 そう、始めて見たときから、知っていると思っている自分がいた。

 あるはずもない、龍達はなにも言わないが、なにかあると思う。

 だってこの人はいつも、私を見て悲しそうに、うれしそうにしているんだから。

「教えてください、あなたも、私を知ってますか?」

 壊れそうになる。もうだめだ。

「セレナ・・・」

 涙が流れ出る。間違いない、間違いであっても止められない。

 もう自分は、この子のことを妹、セレナとしか見られない。

 そう言い、だきしめようとしたとき、その身体を、

 

 セレナに拒絶された。

 

 なぜ? そう思った瞬間、鮮血が舞った。

 

「せれ・・・な・・・」

 

 何者かに斬られた少女。その後ろにいるのは、

 

【私は貴方をセレナとは認めない】

 

 同じ姿の、黒い自分だった。

 

 

 

「!?」

 エルフナインを盾にして持ち上げ、響とノワールから逃れている龍は、すぐに負に気づいた。とてつもないほど巨大な負であり、恥ずかしそうにしているエルフナインを置いた瞬間、サイレンもまた鳴り響く。

「なにっ!?」

「爆発的な負を感じたっ、これはマリアのだッ」

 そう言って飛び出す龍。それを追うように響とノワールは外へ走り出し、エルフナインもそれに気づき、3人の行動を伝えるために司令室へ走り出す。

 

 

 

「アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」

【本物だというのに、私以上に負をまき散らすのね】

「黙りなさいッ」

 すでにマム達から離れた位置で、イグナイトモジュールを使用して戦うマリアとアガートラーム。

 瞳の色が違うだけの二人の戦いだが、それを捌くアガートラームが一枚上手だ。

 なにより、我を失って、暴走状態になりかかっているマリアなど、敵ではない。

【貴方を殺して、セレナを奪ったこの世界を壊す。だいたいゲーデより、元である貴方から負を取り込んだ方が、確実に強くなる】

 蛇腹の剣が交差する中、マリアは暴走すれすれでアガートラームを睨む。

「ならなぜセレナを斬ったのッ!? 貴方は私なら、あの子を斬れないはずよッ」

【あれはセレナではないわ。妄言に囚われないで本物。あの子は殺された、この世界に、マムも同じ。いい加減に目を覚ましなさい】

「違う・・・あの子は、あの子はセレナよっ」

【それはそう思いたいだけよっ】

 ぶつかり合う中で、アガートラームは内心微笑んでいる。

 それに気づかず、マリアは負をまき散らしながら、暴れていた。

 

 

 

「まずいっ、マリアの奴、負の力をまき散らしてるッ。この距離でわかるっていうか、徒歩きついっ」

「なにも考えずに出ましたからねっ、走るしかないですよっ」

「いつものこと」

 響とノワールはそう言いながら、龍も焦る。

 元々装者ゲーデは装者の負でできているのなら、装者達からも負を取り込むことは可能だろう。

 この状況はまずい、マリアは相手に力を貸しながら戦っている。

「仕方ない、響はイグナイトモジュールでいち早くいけっ」

「わっかりましたっ」

 そう言い、人気がないことを確認したとき、ノワールは盗賊の姿になり、響への攻撃を防いだ。

「!?」

【新しいディセンダーですっ!?】

 いつの間にか現れたイガリマの鎌を防ぐノワールは、次に海賊にかわり、銃を乱射しながら、イガリマは後ろに下がる。

「イガリマだとっ!? 響に下半身砕かれたんじゃないのかっ!?」

【シュルシャガナが貴方を分け分けしてくれたから、早く回復したんですよゲーデ】

【だからいっぱい切り刻むよゲーデ】

 そう言って現れたシュルシャガナに、イガリマもうれしそうに頷く。

【私、切り傷から血を直接飲んでみたいですっ、いいですよねゲーデっ】

「いいわけあるかっ」

【私は少しずつ削りたいな・・・えっへへ、楽しみ♪】

 うれしそうにシュルシャガナがほっぺを両手で押さえ、赤らめている。イガリマも楽しそうに頬を赤く染めている。

 さすがの響もうわっと言う顔になり、ノワールはむうと頬をふくらます。

「痛いのめっ、リュウは、ノワールのッ」

「いつからだディセンダーッ」

 そして腰に下げていた(よく考えれば置いていかなければいけない)剣を取り出す龍であり、響はイグナイトモジュールをすぐに発動しながら、シンフォギアを纏う。

 その姿はすでに、ゲーデシンフォギアだった。

「力加減間違えるな、サポートするぞノワールっ」

「うん、ガンマンッ」

「行きますッ」

【オリジナルとディセンダーは邪魔ですっ】

【私たちはゲーデと楽しみたいだけなのっ】

 そしてぶつかり合う、急いでマリアのもとに出向くためにも、

 

 

 

「くっ」

 イグナイトモジュールを纏いながらも、剣と剣がぶつかり合う。

【貴方は所詮逃げてるだけよ。あれはセレナじゃない、もしかすればそれを元に作られた別の者よ】

「そんなの」

【わからないわね、だって、なにか確証はあるの?】

「黙れッ」

 その大きな仕草に、アガートラームは邪悪に笑う。

【バカなオリジナル】

 そう言った途端、刃にまるで龍が使った、負を剣に纏わせて斬りつけるように、刀身に負が集まり、蛇腹の刃が自分を切り刻む。

「がっ」

 その場に倒れ、シンフォギアが解かれる。

 アガートラームは遠くの林に飛び、マリアはしまったと自分を呪った。

【所詮貴方は弱いのよ】

 そう言いながら剣を構え、アガートラームは近づいてくる。身体を動かしたくても、動かない。

【だからセレナは死んだ】

 そう言いながら、同じ顔が近づいてくる。

【だからマムは死んだ】

 そして剣を構えながら、静かに見下ろす。

【セレナかもしれないと思ったときもそう、あなたは結局、怖くて真実に近づこうとしなかった。そうよね、あの子がいなくなってから私は、人を殺しているのだから】

「!?」

 それに言葉を無くす。そう、自分は敵兵を殺した。多くの人の人生を壊した。

【ねえオリジナル、それであれがセレナだったらどうする? 話す?】

「黙りなさい・・・」

 震える声、考えたくない。セレナがいまの自分、過去の自分を知られることが怖い。マムを救えず、なにもできなかった自分の罪を、知られることが怖い。

【わかったでしょ、あれがセレナであることが不幸の始まりよ】

 その言葉に折れそうになる。そうだ、あの子がセレナでなければいい。そうすれば苦しまなくてすむ。

 いつの間にか、自分から黒いもやが出ていることに、マリアは気づかない。

【ねえオリジナル、もういいでしょ? いい加減にしましょ。甘い幻想なんて見ず、現実を見ましょう】

 その様子に口をつり上げて笑う。アガートラーム。

 これでオリジナルを食らえば、ゲーデを食える。そう確証したら、身体が求める。あの男の全てを、自分のモノにできることへ。

【さあ、貴方の心の底の言葉を見せなさい。妹やマムを奪った世界に、その姿を象った偽物に、刃を突き向けなさいッ】

 そう言われ、手を差しのばされた。

 それを手に取れば、いま楽になる。そう思えてしまう。

 そう思ったとき、セレナとセレナが顔を見せた。

「ふざけないで」

 その瞬間、黒いもやは消えた。

「確かに私が弱いから、あの子が本物かどうか受け入れない、いまだってそうよ」

 そうはっきりと睨みながら、だが、彼女から負はもうない。

「だけど、それでもその手を取る理由にはならない。二人のセレナにも、マムのためにもならないわっ」

 少なくとも、あのセレナは自分に向かい合おうとした。それを思えば別の怒りが燃え上がる。もしも邪魔されなければ、ちゃんと話し合えていたはずなのだ。

【・・・そう】

 そして無表情な顔になり、剣を振り上げた。

【なら、切り刻んで取り込むわね。メインディッシュがあるの、あまり体力を使わせないでね】

 マリアはそれでも諦めない。剣をよけ、アガートラームを回収する。敵もそれはわかっているはずだと思考を巡らせているとき、

「!?」

 歌が、聞こえた。

 

 

 

 初めて見たとき、懐かしく思った。

 

 初めて対面したとき、緊張した。

 

 改めて話したとき、心からうれしかった。

 

 わからない。私は違う世界の子、だけど、あの人とは仲良く、ううん。

 

 私はあの人と、家族になりたい。

 

 なぜそう思ったの? 自分でもわからない。

 

 今日は知らない人の墓参りに、一緒に来て欲しいと言われた。名前を聞いたとき、行かなければいけないと思った。

 

 そして、私は覚悟を決めた。変な子と思われてもいい。だから、

 

 姉さんと呼んでいいか、私と貴方の関係はどんなものですかと聞こうとした。

 

 だから、

 

 私は傷を癒して、すぐに走った。

 

 目の前には振り下ろされようとする剣を前にしても、抗おうとするあの人がいた。

 

 そしてあの人の力が目の前に光る。私の武器は輝きはある。

 

 なのに私は、それを手に取った。

 

 その瞬間、口が勝手に動いた。

 

 

 

「!!?」

 白銀の輝きがアガートラームを押しのけ、マリアの前に現れる。

 マリアはそれを静かに見つめる。呼吸すら忘れ、それを見た。

 その姿は覚えている。炎の中、血まみれの姿が最後だった。

 だけど、目の前にいるのは、

「・・・セレナ」

 そう呼んだとき、セレナは涙を流しながら、満面の笑みで、

 

「ただいま、姉さん・・・」

 

 その言葉を聞いた瞬間、涙があふれ出した。

 ああもう間違いない。

「セレナっ」

 二人の姉妹はだきしめ合いながら、二人は名前を呼び合う。

「姉さんっ、姉さんっ」

「セレナ、あなたっ」

「うん覚えてるっ。ネフィリムのとき、絶唱を歌ったこと。マムのこと、施設のことっ。私は、私はディセンダーセレナ。だけど」

 アガートラームを解き、それをマリアに渡しながら、優しく微笑む。

「セレナ・カデンツァヴナ・イブ、前アガートラームの聖遺物装者」

 それに涙が止まらない。マリアは微笑みながら、セレナをだきしめていた。

【フザケルナァァァァァァァァァァァァァ】

 突如、黒い闇をはき出しながら、アガートラームが現れ、辺りを睨む。

【くそッ、あと少しでオリジナルを取り込めたッ。ここにきて己を思い出すか忌々しいッ】

「あなた、この子がセレナだって」

【ああ知っていたさっ、だがそれがどうしたっ。私たちは偽物っ、どうでもいいことだッ】

 それを聞き、聖遺物のアガートラームを力強く握りしめる。

 つまりこれは、

「セレナと知りつつ、もう一人の私だというのに、セレナを斬ったのね・・・」

 そしてシンフォギアを纏う、だが不思議と軽い気がする。いつもより、心が広い気がする。

 その隣でセレナも、ディセンダーの力を纏う。

「姉さん、つもる話はあと、いまは」

「ええ、ともに戦いましょう」

 セレナにそう言うが、それを笑うアガートラーム。

【忘れたのオリジナルっ、もしその子がセレナなら、その子がディセンダーになった理由をッ】

「・・・」

 そうだ。この子がディセンダーになった理由、憶測の中にあるのは、龍を殺すと言う使命だ。それがいま確証に近くなった。

 だが、

「もしそうだとしたら、また世界を敵に回して、龍を助けないといけないわね」

 そう微笑みながら、セレナが生きるきっかけを作った龍を思い出し、ほんと嫌になると思いながら、叫ぶ。

「イグナイトモジュールッ、抜剣ッ」

 その瞬間、美しい黒い輝きが、マリアから吹き出た。

【それはっ!?】

 黒いドラゴンは周りを飛び、マリアへと纏われる。

 黒い翼はマントのように、紫の炎をまき散らしながら、美しく白銀と黒曜石が鎧のようにマリアを包む。

 その剣もまた、白銀の黒曜石でできた剣へとかわり、美しく髪をなびかせて現れた。

【バカなっ、貴方はゲーデのことを】

「妹が世話になっているのよ、それなりには信頼してるわ」

「いくよ、姉さんっ」

「ええっ」

 

 

 

 騎士の姿のセレナがアガートラームを押し込み、その穴を縫うように、剣が舞う。

 歌が響く、二人の歌、同調して、身体の早さは二人とも早くなる。

【そんなっ、貴方はシンフォギアではないのにっ、なぜ力が増すっ!?】

 驚愕するアガートラームは、銀の布を取り出し、逃げだそうとするが、それをセレナが矢で貫き、アガートラームは睨む。

 その瞬間を見逃さない。

 マリアの刀身が伸び、双頭龍のように、あまりの早さで二本あるように錯覚する。

 黒と白のロンドが舞い上がり、アガートラームを砕いた。

【ぐっ】

「これでおしまいだよ」

【!?】

 剣が光へとかわり、セレナは静かに告げる。セレナだけの技、世界を輝きへと染める剣撃であった。

『レイディアント』

 振り下ろされた輝きは、アガートラームを包み込む。

 その光を見て、イガリマとシュルシャガナはすぐに撤退し、彼らもまた走る。

 

 

 

「ばっかものッ!!!」

 弦十郎に怒られた飛び出したもの達。

 そしてセレナの方は、説教後話し合いが始まった。

 彼女は、セレナ・カデンツァヴナ・イブとしての記憶を持っていた。

 だから、彼女はマリアに言う。

「ただいま・・・」

 それにマリアは静かにだきしめながら、

「お帰りなさい、セレナ・・・」

 こうして姉妹は再会し、その様子を一人を除き、優しく見守った。

 

 

 

 真夜中の港、龍は星空を見ていた。

「どうしていないの?」

 セレナが後ろから話しかけながら現れ、座り込む龍を見つめる。

「・・・気に入らないからだ」

「私の、世界樹がしたこと?」

 まだわからないが、やはり原因があるとすれば龍、ゲーデだろうと思う。

 セレナを自分の防護策にするため、家族から引き離した。それが気に入らない。

「私は、少し感謝かな? 絶唱って、使うと肉体に負荷がかかるから、死んでたと思うよ」

「それでもだよ」

「そう」

 隣に座り込むセレナに、龍はため息をつく。

「姉さんと再会したのに、いいのか?」

「いまはいつでもできるし、今日は思いっきり甘える気だよ。マムのことや、私がいなくなった話も、まだ少ししないといけないからね・・・」

 育ての親のような人がもういない。セレナは顔を曇らせた。

 それ以上はなにも言わず、龍は側にいるだけだった。それだけでうれしいセレナ。

「ねえ龍」

 昔の記憶を取り戻したいま、セレナは龍に近づく。

「なん」

 

 そのとき、やわらかいものが、唇にふれた。

 

「・・・・・・・・・・・・えっ・・・・・・」

 なにが起きたか分からず、龍は黙り込む。目の前には頬を赤く染めながら、優しく見つめてくるセレナがいた。

「かわらないから、ディセンダーセレナも、セレナ・カデンツァヴナ・イブでも。この想いはかわらないからね」

 そうほほえみ、肩に頭を乗せてうれしそうにするセレナ。

 龍はさすがに面食らいながら、なにいっても自爆かと思い、星空を見つめるのであった・・・




 響達はマリアを呼びに言った。
 軽い晩餐会のようにお祝いしていた際、龍とセレナがいないためか、マリアもいなくなっていたのだ。
「あっ、いましたよ」
 響がマリアを見つけた。物陰から何かを見ながら、
「ひぃっ」
「デデスっ!!?」
 もうオーラのようなものを出し、コンクリートの建物を握りしめているマリアがそこにいて、全員がガタガタと怯え、翼が前に出る。
「ま、マリア、ど、どうした?」
 その言葉に振り返るマリア。目の光りはなく、ただ一言。
「私、次あの姿になる自信はないわ」
 そう呟くだけで、これ以上先にはいかせられないと足止めするマリアであった。



 注意・この作者はどうやら諦めたようです。
セレナの秘奥義が、某アニメの聖剣です。服装も似てるよ剣士の服装。
イガリマ達もヤンデレで、オリ主はどうなることやら、覚悟しろオリ主。
っていうかセレナっ、カノンノよりフラグが立つよ、カノンノもそれなりにオリ主にアタックしてます。ただ作中するか不明です。
次はゲーデ装者は誰と戦い、誰がパワーアップするか楽しみに。
では、お読みいただきありがとうございます。


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番外編・嵐の前の静けさ

しない風で少しお休み回です。
それではどうぞ。


 

『というわけで』

 

 暗闇の中、イチイバルは叫んだ。

【って、番外編で一番先はなんで私らなんだッ!? 普通は出ないだろッ】

【落ち着けイチイバル】

 天羽々斬がそう言いながら、刃を整備していた。

【そうですよイチイバル、出られるんなら番外編でも出たいものですよ】

【そうだねイガリマ】

 片方は盗撮写真をプリントアウトし、もう片方は切り刻む。交互に繰り返す二人に、イチイバルは叫ぶ。

【っていうかお前らはなにしてるっ!?】

【ゲーデを切り刻む練習ですっ】

【今度は私の番だよイガリマ】

【ですっ】

 そう言いながら、刃物を使い、頬を赤く染めながら龍の写真を切り刻む二人の少女。それについてはなにも言わずにおいて、イチイバルは天羽々斬を見る。

【お前もお前でなにしてるんだよ】

【むろん、いつでもゲーデと死合えるよう、刃を磨いているんだよ。ふふっ】

 こちらもこちらで、その瞬間を愛でるように、刃を優しく撫でている。

 ゲーデが大元の自分達だが、オリジナルのデータもあるからわかる以上、異常な出来事なのはわかる。だが、自分もゲーデである。

【まあいいや、私はゲーデ捕まえたときように、鎖と首輪のストック増やしておくか】

 その行為もまた、異常だと気づかず、首輪と鎖を恋する乙女のように集めて楽しむもの達。今度は牢屋などの準備もしなければと、楽しそうにその日を待つのであった。

 

 

 

『色々な後始末』

 

 天羽奏、ディセンダーミラ、異世界の来訪者達。色々な出来事に雑用に走る人々達を見ながらも、響は少しだけ居心地が悪い顔になる。

「なにかお手伝いしたほうが」

「お前とマリアはゲーデでのイグナイトモジュールができるんだ。この中でセレナ、ノワールに続く最大戦力だ。むしろ休め」

「そうだよ響」

 未来がそう言い、ううっとわかっているが、忙しそうな人達を見ながら、ユーリはリンゴをかじる。

「まあどっしり構えてたり、ハロルド達が呼びに来たら指示に従えばいいんだよヒビキ先生」

「私、先生ってがらじゃないんですけど~」

「そういえば寝室だけど、異世界組は部屋数とか多いから、すでにあるカノンノ達や俺のとこで寝泊まり決定だ」

「クリスちゃんはだれ泊めるんだろう?」

「クリスは自宅だから外してやれよ・・・」

 まあ、ルルとクイッキーは寝泊まりそうだなと思いながら、響を見ながら未来が淹れたお茶を飲むのであった。

 

 

 

『姉妹』

 

 セレナの自室前、カノンノの部屋に遊び、いや、妹に会いに来たマリア。

 アガートラームを纏った際、セレナは記憶を取り戻した。彼女はもう、自分の妹なのだから、おかしくないのだ。

 もう迷わない。セレナと居られなかった時間を埋めるため、できる限り一緒にいると心に決めたのだ。扉をノックするマリア。

「セレナ、私よ」

『あっ、マリア姉さんっ。手が空いてないけど、それでもいいなら入っていいよ』

「わかったわ」

 内心スキップしそうなほどうれしい。セレナと仲良くするため、扉を開けた。

「いらっしゃい姉さん」

「・・・」

 セレナが翼のポスターを壁に貼っているのを見て、少しだけ黙り込む。あれは確か新作についてる限定品のものだ。

 よくみると音楽関係は翼が多い。マリアは黙り込み、首を傾げるセレナ。

「どうしたのマリア姉さん?」

「なんでもないわセレナ」

 精一杯内心を悟られないようにするマリア。

 一方。

「さてと、逃げるか」

 隣の部屋から希望を失った、嫉妬などの負を感じ取った龍は、飛び火しないうちに逃走を開始したのであった。

 

 

 

『翼と奏』

 

「しっかし、死んだ記憶あるって変な話だよな~」

「奏は少しお気楽すぎだよ」

「お気楽って、こんなんになっても、かわらないのもどうかと思うけどな」

 色々検査したところ、ディセンダーとゲーデと言うより、精霊やホムンクルスと言ったようなものに近いらしい。

 奏は成長もするし、普通の人間とかわらない身体。周りの人達も気にしていないので、天羽奏として、また生きることにした。

「けど、もう奏と一緒に歌えないよね・・・」

 悲しそうに呟く翼。それに奏もそうだなと呟く。

「けど、よく考えたらルミナシアやグラニデがあるんだ。そっちでまた歌おうぜ」

 そう言って、だきついてくる奏。翼は少し真っ赤になるが、うんと頷く。

 ちなみに龍とユーリが、少し甘えている翼のこと気遣ってか、通せんぼしていることに、奏はあとで感謝したという。

「よかったな奏、翼っ」

「司令、カメラで見るのもどうかと思いますよ・・・」

 緒川はそう言い、苦笑するのであった。

 

 

 

『異世界人の食事会』

 

「で、なんで私の部屋なんだ」

 クリスの文句を聞きながら、今日の料理当番の龍が聞きたいと顔になる。

 アルヴィンとジュードは、司令室の方で手伝いなどしているため、事実男性は自分だけという事態なのも気になる。

 ノワールはクイッキーとルル、エルとともに楽しくし絵本を読んだりしていた。

「けどまあ、お前って料理できたんだな」

「アドリビトムは当番制だからね~」

「あっ、うちのアドリビトムも当番制なんだよ」

 イヤハートとカノンノ、双子のような二人はそう言う中で、龍はあーといいながら、料理をテーブルに運ぶ。さすがに『マリア』も手伝う。なぜいるんだろう?

(・・・・・・・・)

 そしてある、クイッキーとルルの寝床。クリスは無自覚で、二匹を優しく撫でたり、膝に乗せたりしている。

 この先に待つ未来を考え、早いうちに手を打たなければ、夕焼けに照らされた部屋で寂しくしてるクリスを幻視しながら、料理を運んだ。

 

 

 

『異世界人の料理会・ルミナシア』

 

「向こうは大丈夫かしら」

 そう言いながら揚げ物を食べるアンジュ。アドリビトムメンバー全員が料理を食べながら、異世界のことを考える。

「向こうにはユーリ、フレン、リタ、ハロルドもいるんだ。心配ないさ」

「ワイール、クイッキーもいるよ~」

 そう言う中でご飯を沢山食べる。カノンノがいなくなり、仕事していないと心配で心が避けそうな育て親のためだ。

「そうね、私たちはどっしり待っていましょう。きっと彼らなら、道を切り開くわ」

 そして全員が真実決意をして、時間が過ぎる。

 

 

 

 そして、入浴時間。女性陣は戦慄する。

「・・・・・・・・・・・太った・・・・・・・・」

 

 

 

「なんでお前の料理、ヘルシーよりなんだ? うまいから別にいいけどな」

(ルミナシアで俺が調整しないと、毎晩毎晩ダイエットによる負の声聞くからだなんて、絶対に言えない)

 

 

 

「ふふふふふふ・・・みなさんにはもっといっぱい食べてもらわないとですね」

 

 

 

『対策』

 

 エルフナインが休憩中に頼むことにした。

「俺達が帰ったら、寂しがるクリスのために、これつけて住んでくれ」

 そういって猫みみをエルフナインに装備させる。恥ずかしがるうえ、わけがわからないエルフナイン。可愛いと思い、なでくりまわしてやった。

 

 

 

『対策・後』

 

 結局断られたので、猫みみ持ってリタのもとへ。

「リタ、これやる」

『ファイヤーボールッ』

 

 

 

『響と龍』

 

 色々話し合った。父親と家族の和解など聞きながら、龍はそうかと言う。

 考え方は簡単には変わらないが、いい人と響は認識して、龍から響と呼ばれるようになったことに、うれしいと思う。

 話をしていたら、家族と話したくなり、いま話している。

 まだ国家機密のようなものなので、話せないことが多いが、龍を紹介したい。

 だから、

『それじゃ響、身体、大事にしなさい』

「うんっ、それじゃまたっ。あっ、そうだ」

 そして、

「今度男の人紹介するからっ、楽しみに待っててねっ」

『・・・・・・・・・・えっ』

 そう言って電話を切り、よしと意気込み、みんなのもとに出向く響。

 

 

 

「!? 響がなにかやらかした気がするっ」

「どうした小日向さん? まあ、俺もそう思うが・・・」

 戦慄する未来と龍であった。




・・・
爆・弾・投・下。
本編では立花家は関わらないので、作者は知りません。
それではここで、次回から物語本編のみです。
お読みいただきありがとうございます。


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嵐は動き出す

さて、ヤンデレ達もそろそろ本腰を入れる。どこまで許されるんだろう。


 何事もない日々というのは憂鬱だ。

 龍はそう思いながら、いまの日々を考える。

 セレナはセレナ・カデンツァヴナ・イブという、この世界の少女。

 アガートラームを纏い、記憶を取り戻した少女は、姉と日々を過ごす。

 だが、本当の問題はまだ残っている。

 なぜ彼女はルミナシアのディセンダーとして生きており、そしていまこの世界で起きている異変とはいったいなんなのか?

 わからない問いかけに、苛々しながらも、一人雲を見る。

 

 

 

「あれ?」

 響は本部で右往左往しているノワールを見つけ、イヤハートも見つける。手を握りあって、この世界の衣類を着ている少女達。本部であるためか、腰には愛用の武器を下げている。

「二人とも~」

「ヒビキ」

「リュウいない・・・」

 ノワールの一言に、響はああと納得する。

「龍さんってよく一人になるよね、一人はよくないよ」

「うん、私もそう思って、カノンノと一緒に探してるの。他の人も探してる」

「そうなんだ。なら私も探すよっ」

 

 

 

 人を捜す中で、ミラは部屋で静かにしていた。

 鍵はかけられていないが、静かにしていた。

 そんな中、エルはルルと共に、ミラの側にいる。

「・・・・・」

 なにも言わずに側にいる。エルは何か言いたげに、けど、なにも言わずに側にいる。

 いや、ではなかった。むしろ、その方がゲーデを考えずにすんでいる自分に驚いていた。

 平和な時を過ごす中、ミラは少しだけ小さく、

「このまま・・・」

 静かに、祈るように、

「このままならいいのに・・・」

 そう確かに呟いた。

 

 

 

「なにもない、嵐の前に静けさか」

 弦十郎はコーヒーを飲みながら、緒川達、オペレーターとも共にいる。

 ジュースのエルフナインは、リタ達と共に飲み物を飲みながら、ため息をつく。

「やっぱり、ヒビキ達のイグナイトモジュールの進化は、リュウのゲーデの影響で、聖遺物の拒否反応が無ければ、無尽蔵に強化された結果があの姿ね」

「ですが、やはり龍さんへの信頼関係が高くなければいけないのですが、その基準はわからないままです・・・」

 エルフナインがへこむ中、それをリタがぽんぽんと頭を優しく叩く。

「人の信頼関係なんて、数字で表せるものじゃないの。マリアだって、セレナのことでリュウのことよく思ってないのに、二回目も成功してたじゃない」

 この日々の中、成功者達だけで二回目も成功させていた。そのうえ、奏もディセンダーのような力を使える。

「敵に対して有効なのが五つの力、ディセンダー3人に、イグナイトモジュール二人か・・・」

 そんな中、難しい顔をする弦十郎に、緒川は疑問を投げかけた。

「どうしたんですか?」

「げせん」

 そう一言、切り捨てた。

「まるでシナリオのように進んでいる」

「それは・・・確かにそうね」

 リタも納得して考え込む。

「話のおかしなところは、まずはセレナくんや龍くんという存在から、その後の展開だな。向こうからすればすでにガングニールは倒されたうえ、敵になり、アガートラームは倒されたんだ」

 だというのに、自分達は敵の存在が全く分からない。

 わかっているのは心に関するなにかができて、それによるゲーデ制作とジルディアの民もどき、はてはディセンダーを生み出している。

 そしてそれは終わっていないうえ、世界樹の無い世界も侵攻されている。

 負の感情を集められ、敵は全ての負を集めるため、龍と思われる、原初の負を手に入れるのが目的。

「やはり現段階では原初の負は龍くんを指しているとして、その先はなんだ?」

「負で起きることは、疫病の蔓延や、大地の衰退化。人も影響を受けて争いが耐えなくなるわ」

 それが目的?と言われればわからない。

「なにより龍くんを取り込んで、本当にどんなことが起きる? 確かに装者達はあり得ないほど強くなっているし、本人も強いが」

「おかしいわよね・・・」

 考え込む中、緒川はまだ考えることがある。

「ディセンダーといえば、ミラさんもですね。滅ぼそうとする辺り、彼女の考え方は彼捕獲を考える、敵側の意志と逆だと思われます」

 全員が頭を痛める中、弦十郎は乱暴に髪をかいた。

 

 

 

「・・・」

 変化とは、望む望まないと関わらず起きる。

 龍はそう思いながら、ははっと苦笑した。

『あーだりぃ、眠い。もうやだ』

『彼奴何様だよ、客だからってえらそうに』

『なんであんなブスがモテモテなのよ』

 絶えず聞こえる悲鳴じみた、身勝手な声の中、

【待ってるです】

【来なきゃ、色々なもの切り刻むよ】

 そう聞こえたのだった。

 

 

 

「・・・」

 カノンノは龍を探す間、おやつの時間になり、おやつを作っていた。

 イヤハート達は手を止めたカノンノを見て、首を傾げる。

「どうしたのカノンノ?」

「・・・少し、やっぱり弦十郎さん達に頼んで、彼を捜してもらうっ」

 なにか嫌な予感がする。

 彼らしく、またなにかする。

 確信めいたそれに、カノンノは焦り始めた。

 

 

 

 とある海辺近く、声の気配を頼りに、龍は剣を下げて現れる。

 目の前にはすでにイグナイトモジュールの姿の、イガリマとシュルシャガナが待っていた。

 無数の切り刻まれた写真が周りにあり、うれしそうに刃物で切っている。

「・・・いつの間に」

【ゲーデっ!! 来てくれたですっ】

【ほんと・・・一人で来てくれて、うれしい】

 写真の龍に刃物を突き刺して、立ち上がる二人は、頬を紅く染めて、龍を見る。

【もう我慢できないですっ、ゲーデっ。切り刻むですっ】

【大丈夫、優しく殺るから・・・】

 構える二人を見ながら、ゲーデの力を僅かに使う。

(・・・吸われてるな)

 その様子に、ゲーデは使えないのを確認して、彼は剣を構えた。

 剣があれば負けない。彼はそう決めて戦い始める。

 

 

 

「ったく、あの問題児はっ」

 弦十郎は頭を痛め、姿を消した龍を徹底的に探す。

「カメラにも痕跡らしきものを残していませんっ」

「まずいわね、そういう風に姿消すってことは、厄介ごとに突き進んだ証拠よ」

 ハロルドの言葉に、全員が龍を探すために集まり、アルヴィンはアドリビトムメンバーに尋ねた。

「おたくらのところの奴、そんなに問題児なの?」

「彼だけじゃなく、メンバーの誰かがなにも言わずに姿を消すのは、十中八九問題を一人で解決しようとするってことですよ」

 フレンの言葉に、お前が言うなとアドリビトムのメンバーのほとんどが睨む。

 ジュード達は似たもの同士なのかと苦笑しながらも、すぐに切り替える。

「ということは彼一人でいま戦っている可能性は高いッ。装者達並び、ディセンダー達のサポート。君達は龍さん捜索。他の者は武器のたぐいのことを考え、敵がここを攻めたときのために待機だっ。そのときは頼むぞ」

「了解」

 弦十郎は全員に指示を飛ばし、ユーリの言葉を聞き、全員が動き出す。翼はバイクに乗り動き、クリス達はサポートを受けて、ヘリや車に乗る。

「セレナ、彼をお願いね」

「任せてカノンノっ」

 そう言い、セレナはマリアと別れ、行動に出た。

 

 

 

 魔術の爆発や歌の旋律が辺りを包む空間。人気はなく、なぜと思うが、敵がなにかしているのか誰も来ない。

 おかげで存分に戦える。そう思いながら、風を剣に集め、サイクロンもどきを放ちながら、イガリマの鎌を受け止める。

【おとなしく切り刻まれてくださいっ、戦う気はないんですっ】

【楽しいことしよゲーデ】

「楽しくない楽しくないっ」

龍の叫びなぞ無視して、楽しそうに戦う二人。

【ずっと貴方を想っていたですっ、貴方の腕を切りたい、貴方の血が舞い上がるのを見たい、ずっとずっとっ】

【もう我慢できないですっ、もう我慢なんかしたくないんですっ】

「なんだこの状況ッ『紅蓮剣』ッ」

 炎で牽制するが、無視して来る。やはり人でないためか、瞬きなどの一瞬の隙はないのに舌打ちする。

【あの方の作戦なんて知らないですっ、私たちが貴方を取り込めば世界の負は手に入りますっ】

「!?」

 イガリマは何か口を滑らしている。この二人に、内心苦笑する。

(所詮はゲーデのまがい物、欲望以外考え無しか、なら)

 情報を引き出す。そのために戦闘を防御に移行して剣を振るう。

「世界の負? なんのことだっ!?」

【言葉通りですっ、全ての可能性、時間軸、別軸、ありとあらゆる可能性っ。有する世界に無き世界、未来も過去も現代も、全ての負を一つの世界につなげるッ。その力を一つの形にするんですよゲーデっ】

「・・・」

 いまなんて言ったという顔になりながら、イガリマは狂ったように口元をつり上げていた。

【そのためには、負の原初が必要なんですっ、けど関係ない、私は貴方が欲しいですっ。殺して、シュルシャガナと仲良く分けるですっ】

【私もだよイガリマっ、一緒っ、一緒に一生愛するよゲーデ】

「色々と間違ってるッ」

 二人の攻撃に、二人だけがテンションを上げていく。

【男の人にはわからないですよっ、私たちの想いっ。貴方を手に入れて世界を壊すですっ、ずっと一緒ですよゲーデ】

【もう放さないっ、あなたは私たちのもの・・・世界を一緒に壊そうゲーデ】

【【もう絶対に放さない、ずっと切り刻んで愛してあげる】】

 そう微笑みながら、これを喜ぶほど龍はとち狂っていない。

 すぐに刃と刃がぶつかり合う。剣があれば問題ないが、気を抜けばやられると思いながらも、彼はイガリマ達に叫ぶ。

「っていうか、あの方って誰だっ。そもそも何者だっ」

【興味ないですっ】

【いまは楽しもうゲーデっ】

 そんなやりとりの中、刃が空を切った。

 

 

 

「・・・なんの騒ぎ?」

 ミラはエルと共に、慌ただしい司令室へと来た。ジュード達は始めどうするか考えたが、ちゃんと答えた。

 ミラは気にもとめず、モニターに映る装者達を見る。

「・・・なにも言わないんですね」

「・・・もう私はなんなのかわからないからね」

 そう呟きながら、それでもと付け加える。

「私の中で、彼を殺せと囁く。なにかがある・・・」

「でも、やらないんですよね?」

「ええ・・・」

 エルの手を握りしめ、そのときだけミラは微笑む。

 エルも少しだけうれしくなり、少しぎこちないが微笑む。

「けど、どうしてここまで私に、ゲーデを討たせたかったのかしら?」

「それはわかりません、なにか思い当たりますか?」

 ジュードの言葉に、ミラは首を振る。

「私が知るゲーデは、負の固まり。人の心を荒み、大地を衰弱させ、病魔を広げる害悪としかないわ」

「・・・」

 ジュードはその言葉を聞きながら、少し考える。

 その様子に首を傾げるミラ。何かおかしなところでもあるのだろうかと思った。

「いえ、僕の世界。オリジンは、負もまた人の心。行き過ぎた人のエゴという見ていて、浄化するのではなく、悪い部分を押さえ込むという選択をしました」

「負もまた人の心・・・」

 ミラは信じられない顔をするが、装者達も、探索中に、彼らの話を聞いている。

「確かにな、人の心。怒りも憎しみも、悲しみ。どれもこれも結局は、我々人間が生み出したものだ」

 弦十郎は頷き、アルヴィンも言う。

「俺達の世界、オリジンはある試練を人間に与えた。どんな内容かはいまは割愛させてもらうが、その試練にうち勝った男がいてな。オリジンは人間、俺達の可能性を信じてくれたんだ」

「負に負けず、世界をよりよい方へと作る。精霊オリジンはそう信じてくれた。僕らもまた、彼のために、彼が守った世界を守ると決意してます」

「彼?」

 ミラはその言葉に、エルは強く手を握る。

「エルのアイボーだよっ」

 そう言われ、ミラは戸惑う。

「負は害悪よ、あるだけで世界によくないもの。オリジンがどう思おうとかえることはないわ」

「それはわかってます、それでもやるしかないんです」

 まっすぐな瞳に、ミラは見られず顔を背ける。

 だが、

「違うよ」

 カノンノだけはそう言う。

 アドリビトムメンバーだけが、なにか言いたげにしている。

「負が害悪って言うのなら、その元である人間なんてもんも、害悪だ」

 ユーリはそう言い、フレンも頷く。

 ミラはそれに首を振る。

「人間は負を生み出すだけの人だけじゃないわ、なにより人に」

「人間の方が負よりたちが悪い、うちのゲーデの言い分だぜ」

 ユーリはミラの言葉を遮るように言う。そのまま続ける。

「彼奴はいつも言ってるぜ。どんな人間にも、サボりたい、彼奴が憎い、羨ましいって感情がある。人を見下す奴もいるし、他人事のように可哀想って言葉で見下す奴もいる。たちの悪いのは、よくも知りもせずに、相手が悪いっていう第三者らしいぜ」

 その言葉に響の心臓が飛び上がる。

 それはもしかしたら自分の件じゃないかと、全てのきっかけ、彼が世界を、人であることを嫌った理由。

「彼奴は前に言っていたぜ、人間じゃなくってよかったってな。人間の悪いところは、他人を理解できないこと、自分のしていることが悪と自覚しないことだとよ」

「・・・」

 ミラは黙り込みながら聞く。だからとフレンは付け加える。

「だから彼は願ったんだ、そんな人間なんかになりたくない、俺はゲーデだって、彼は受け入れて生きている」

 人であることを嫌い、化け物として生きる。受け入れたのではなく、選んだが正しいかと、みんなが思い、響の心が締め付けられた。

 そうなるきっかけは、自分の事件だから。

 唯一知る奏はそれを思い、黙り込む。

「なら」

 その沈黙を破ったのは、ミラだった。

「なんでゲーデは戦うの?」

 その言葉に、ユーリ達アドリビトムは、

 

 

 

 戦いの中、向こうはどうやら永続的にイグナイトモジュールが使える。もう夜遅い、勘がいいアドリビトムのチームのことだから、もう動いているだろうと思いながら、

「仕方ないッ」

 少し賭に出る。剣を空へと投げ、無防備になる。

 二人はそれを見ても、すぐに動かない。彼にはゲーデと言う奥の手がある以上、無防備でも近づけない。

 だからこそ、格闘技は放てた。

『戦迅狼破ッ』

 イガリマに狼を模した闘気を放ち、シュルシャガナへとぶつける。

 彼の戦いは基本剣であり、剣を軸に、様々な姑息な手を使うのがスタイル。

 相手を騙すためなら、このような手も使う。

 剣をキャッチして、少しびっくりしたイガリマ達を見る。

 二人とも構えたを見ながら、刀身を握る。

「ほらよ」

 手のひらを切り、その鮮血を目つぶしのようにまいた。

 二人とも驚きながら、その甘い血に、一瞬警戒を解いたのを見逃さない。

(欲望の忠実なのも考え物だな)

 ゲーデの血に酔った瞬間、彼は畳みかける。

 剣の秘奥義。ありとあらゆる角度からの同時斬撃。

 

『剣ノ世界』

 

 ただ同時に、連続で斬り続けるだけの技だが、それはほぼ同時であり、13回もあれば秘奥義と言っていいだろう。それがアドリビトムメンバーの意見であった。

「だっ、はっ」

 これをするとさすがに疲れるため、一気に空気を吸う龍。

「なんとかなった」

 そう言い、斬ったイガリマ達を見る。

 悲鳴する前に口もとを壊したからか、少しずつ身体が砂に、シュルシャガナからは気配はない。

(シュルシャガナは倒したか)

 そう思いながら、イガリマを見る。彼女からはまだ意識、気配はある。

 彼女たちの鉱物の身体、さすがにマリア達が見たら、少し睨まれそうだなと思うが、苦笑する龍。

「嫌われ者が気にすることじゃないか」

 まだイガリマには警戒しながら、それに近づく。

 逃げられないように、気を付けながら、イガリマに剣を向けながら、その胸辺りに手を置く。

「ドクメント見せてもらうぜ、ついでに負としてどうなってるのかも確認させてもらう・・・」

 切歌がいたら殺されそうだなと思いながら、ドクメントと負、彼女達の肉体を形成する何かを見ようとした。

「・・・はあ?」

 それにひどく驚いた。

 

「お前ら、ゲーデじゃないっ!?」

 

 彼女たちには僅かに負はある。だが、根本は違う。

 その根本に触れて、龍は驚き、意識に隙ができた。

 ザシュ、という音が鳴り、龍はまた驚く。

「・・・ぐふっ」

【・・・あっは♪ おいしいですよ、ゲーデっ♪】

 彼女の腹から腕が生え、刃の腕が腹を貫く。

 イガリマは笑い、その髪が伸びた。オリジナルと同じ金髪は、ツインテールへとかわり、身体も変化して、押し倒された。

 それと共に、両手両足にも鎌の刃で拘束され、剣を握りたくても、馬乗りで顔にかかった吐血の血を指で取り、なめるイガリマ。いな、

【【おいしいです、やはりゲーデの負はいいもの】】

 シュルシャガナとイガリマ。両方の気配と力を感じ取りながら、二人が合わさった存在は、ぎゅと龍をだきしめる。血をそれでゆっくりと搾り取りながら。

 顔を片腕で押さえ、すりすりと身体へほおずりする。それだけで切り傷ができる龍は、たまったものではない。

【【始めから私たちはこれしていればよかったです、私たちはザババ。ゲーデの妻ですっ♪】】

 そう言って、吐血して流れ、頬を伝う血をなめた。おいしそうにほほえみ、頬を紅くしてゲーデを見る。

【【ゲーデはこれから私たちのものです、もう決定です。逃がさない、ゲーデの血は一滴も残さず、全部私たちの♪♪】】

 その言葉の通りか、鎌の刃から血が吸われている。すぐにゲーデで硬化させたが、それでも力は吸われている。だが血よりかはマシかと、頭を動かすが、腹の刃が刺さったままなのがまずい。全身に力を入れられない。

 本当に流れる血も自分達のものと言わんばかりに、ザババは吐血して流れる血を手で受け止めながら飲んでいる。

 いや、触れているだけで血を通して、負を取り込んでいた。

【【・・・口の中もいっぱいあるです】】

 そう言って、顔を固定させて、近づけてくる。

(待てッ、それは別の意味で待てッ)

 そう思うが、なにもできず、口と口が触れそうになる。

 だが、

 

「「私達の姿で妙なことしないで「デスっ」」」

 

 そう言って、斬撃が飛び、ザババはすぐによけ、距離を取る。

 その瞬間、すぐに傷口を負で覆い止血、すぐに肉体を活性化させて回復を始める。こういうとき、人間じゃなくて助かるとつくづく思う。

「暁、月読か」

「なにしてるんデスっ、人の偽物でいちゃいちゃしないでくださいデスっ」

「いまのはセレナに報告する」

 二人はそう言うが、果たして俺が悪いのかと問いかけたいが、正直吸われた血も負も多く、それでも立ち上がる。

「とりあえず助かったが離れろ、お前らじゃ、戦えば俺は死ぬから」

 そう言って立ち上がる。少し咳をして血を出すが、その様子に、複雑そうに見る二人。なんだろうと思いながら、立ち上がるザババを見ながら、二人は、

「死にたくないんデスか?」

 切歌は投げやりに聞いてくる。なにかあったかと思いながら、

「ルミナシアのギルドマスターに、帰るって約束したからな。死にたくても死ねないんだ俺は」

「「・・・」」

 

 

 

 彼は戦う、始めはもう終わりを求めていた。

 

 聞きたくなかった。もう聞きたくないと彼は言った。

 

 もう、

 

 あの子のような泣き声は聞きたくない。

 

 だから滅びたい、死にたく、倒されたい。

 

 それが、ゲーデの望みだった。

 

 

 

 そう言い、世界を愚かで醜いと切り捨てた男は、前に出て戦い。倒されることを心のどこかで望んでいた。

 だがいまは違う。死ねない理由ができ、それでも戦う理由がある。

 二人はそれを聞いて複雑そうにしていた。

「なんで一人で戦うんデス?」

「別に、死ななきゃいいだろ」

「死にかけてたのに」

「ああ助かった、悪いサンキュー」

 そんな軽口で、まだ戦う気の龍。その傷口は硬化されても痛々しい。二人はそれを見る。

「痛くないの?」

「・・・」

 それにしばらく黙り込み。

「・・・あの叫びを聞くよりかはマシだ」

 二人は分からない返事をされた。だが、その顔はユーリ達、アドリビトムにも秘密の事件。世界を見切った事件に関係するのだろうと察する二人。

 アドリビトムは深く聞かない。ただ一つ、本当に人が嫌いになるきっかけになったのだろうと思っていると伝えられている。

 それがどんな事件かは知らないし、だからと言って、マム、彼女たちの大切な人が救った世界が、滅んでいいと言いのける彼を許すきっかけにはならない。

((・・・だけど))

 静かにザババは構える。両手に鎌を、ツインテールの丸鋸を構える。まるで自分達が合わさったように見えるが、二人はお互いの手を取り、ブローチに触れる。

「待て待て、俺は死ねないんだけど」

「黙るデス」

「けが人は大人しくしてて、私たちが戦う」

 その言葉に龍は気づく。気づいて、ため息を吐き、座り込む。

「・・・わかったよ」

 彼女たちから、負は感じなかった。

「「イグナイトモジュール・抜剣ッ」」

 二頭の飛竜が舞い上がり、彼女達にザババは驚愕した。

【【なっ】】

 二人は左右合わせて、肩の鎧が強化され、ドラゴンの頭部のようなもの。切歌は黒と緑の鎧に、ドラゴンが鎌の形になったような武器を握りしめ、左腰に緑と黒の大きなリボンをつけている。

 反対に調は切歌とは別の肩の鎧が強化され、ピンクと黒のリボン。ツインツールは竜の頭部のようなもので、髪が守られている。

「進化完了デスっ」

「ここで倒すよ切ちゃん」

「おうデスっ」

【【ゲーデは渡さないッ】】

「「いらない(デスっ)」」

 そして二人の歌がぶつかり合う。

 龍はなにが二人にあったんだろうなと思いながら、剣を握る。

「はあ、ユーリ辺りか。過去バナしたところで、いい奴にならないと思うんだけどな俺は・・・」

 そう思いながらも、ニヤリと笑い、剣を振るい、戦う。

 歌の邪魔にならないが、二人が睨んでくる。

 ゲーデの出現に、飛び跳ねるように斬りかかるザババに対して、やれやれと肩をすくめた。

「それじゃ、フィナーレ頼む」

【【!!?】】

 瞬間、切歌の肩、ドラゴンから無数の鎖が放たれる。調からも放たれて、ザババを拘束した。

 瞬間、巨大化した鎌に乗る切歌。それに鎖で繋がる調は車輪のようなもので、迫り来る。

 黒い刃はお互いの色を混ぜ合わせて、ザババへと迫る。

【【くっ】】

 今度こそ砕け散るザババの気配に、やっと龍は一息ついて、海へと吐血した。

 

 

 

「「大人しくしてって言った「デスっ」」」

 二人から怒られる中、硬化のおかげで、致命傷はなんとか回復する。近くに負を吸収する人もいないから、その力を自然治癒に一気に回す。

「あ~こういうとき、人間じゃなくってよかった」

「なに言ってるんデスかもうっ」

「これもセレナに言わなきゃ」

「やめて、カノンノやセレナ、キレると大人しくするのに時間かかる」

 彼女たちもシンフォギアを解き、仲間達に連絡。他の人達も辺りで色々していた。

 ケガの方はこちらでどうにかできるで、いまは砂浜に座り込む。

「とりあえず、私達の偽物でいちゃいちゃしていたこと謝るデスっ」

「すいません、刃突き刺されることっていちゃいちゃと分類されるんですか?」

 抗議したいのだがなと思いながら、いつの間にかの反応に、ユーリ達、お節介に負を送る。まあ届かないが、

(・・・・・・響や奏には知られてなきゃいいが)

 唯一知り得るであろうもの達に、難しい顔をする。

 奏は誰かに言いそうだし、響は誰にも言わずに抱え込む。

 その場合、言わなきゃいけないが、言いたくないのが龍である。

 そう思い立ちあがった瞬間、まだ文句言い足りない二人をどうするか、

「!?」

 考えた瞬間、押した。

「「!?」」

 突然突き放されたことに驚くと共に、龍の背中が誰かに切られた。

「!?」

 調達はすぐにシンフォギアを紡ごうとしたが、その前にそれは切歌へと迫り、拳を溝にたたき込む。

 調は焦り、すぐに斬りかかるが、それは切歌を持って飛んだ。周りに蒼ノ一閃をまき散らしながら、

「させないよっ」

 調がすぐに盾のように丸鋸を広げ防ぐ。

 先ほどの技で誰か分かる。気絶した切歌を抱え、うっすらと笑い、青い布を取り出して叫ぶ。

【もらっていくぞ】

「切ちゃんっ」

 調は叫んだが、その前に消える天羽々斬。まさかと思いながら、呆然となる。

『調くんっ』

 弦十郎からの通信が届き、調はすぐに叫ぶ。

「みんな、切ちゃんが、切ちゃんがッ」

『落ち着くんだッ』

 落ち着けと言った翼だが、一番腹が立つのは翼である。

『翼も落ち着け、お前いま自分の姿した奴が不意打ちにいらだってる時じゃねぇぞ』

『・・・ああそうだな』

 それでも怒気が込められており、全員が急いで現場に急ぐ。

 だがアドリビトムは違った。

『待って、リュウの怒り声とか聞こえないっ、リュウは!?』

「っ!?」

 そうだったと調は自分を恨んだ。

 彼は自分達をかばい、背中を切られた。それを言いながら振り返るが、

「・・・えっ」

 彼の姿はなく、血だけは舞っているが少量である。近くになにか、ステンドガラスのような、青色のガラスの破片がある。

 それを手に取ると、そこに亀裂のように、『待っ』と言う言葉が刻まれている。

「・・・まさか」

 

 

 

 彼はいま気配を消して疾駆する。すぐに顔を上げた際、切歌はさらわれたあと。

 目の前には青いガラスの文面。

『ここに一人で来いゲーデ、待っているぞ』

 すぐに手に取り、動き出す。まずは負を察しするディセンダーから逃れ、指定された場所まで走る。

 剣がある、あとは維持と気合いでカバー

「無理ゲー」

 そう苦笑しながら、それでも彼は迷いなく動いて走り出した。




よくて息が届く程度、頬の血なめたのセーフなはず。
15ですよねこの作品、18ならザババ(というよりオリ主)危ない。
切歌と調はお揃いです。お互いに、左右の肩がドラゴンの頭部のようなもので守られ、大きなリボンを腰につけております。テレビで勝手にですが右側の切歌、調は左側ですから、切歌は右肩、調は左肩が強化されてます。リボンは反対側につけられてますね。
響は両腕とマフラー、マリアは上半身(というより胸と背中)が強化。
二人は龍には龍の事情があり、いい奴でないと思っています。
ですが、いい奴ではないが、彼は家族を、仲間を守る、その大切なものも守る存在であると知り、アドリビトムの真意を信頼した結果、強化できたという解釈です。
切歌はさらわれました、オリ主はズタボロです。どうなるか楽しみに。
一番のヤンデレがいなくなった、これで作者は一安心です。
では、お読みいただきありがとうございます。


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闇と狂気と防人

タイトルが難しくなる。
物語はそろそろ中盤に向けて突き進めたい、ほのぼのはなくなると思われます。
あとは残酷な描写は躊躇いなくやります。オリ主は心臓と頭あれば死なないですので。
では、切歌のために、オリ主戦え。
どうぞ。


 気が付いたら、ドームのようなところで、ど真ん中に寝かされていた。

「デス・・・」

 手足が綺麗な鉱物で繋がれていて、身動きができず、青い布で身体を覆い、椅子に座っていた天羽々斬が、こちらに気づく。

【目が覚めたか】

 周りは蒼いドーム、東京ドームくらいか、あとはうっすらと濡れている岩場の足場。

 不愉快極まりない状況、天羽々斬はイガリマのペンダントを見せる。

【悪いがこれは預かるぞ】

「返すデスっ」

 そう叫ぶが、口を大きく開く天羽々斬。なにをと思った瞬間、

 ごっくんと聖遺物イガリマは天羽々斬に食べられた。

【これでお前は戦えない】

「・・・」

 翼と同じ姿だが、やはり人間じゃないと、戦慄する切歌。

 辺りを見渡してもどこかわからず、仲間と連絡できない。

「私でなにする気デスっ!?」

【ゲーデと死合う】

 間髪入れずに答え、はあと甘いため息をつく。

【早く死合いたいものだ・・・】

「背中から不意打ちしておいてない言うデスっ」

 その言葉に、天羽々斬は首を傾げた。

【何を言う、隙を見せたゲーデが悪いし、彼奴は一手気づいていた。斬られたのはよけいなことをしたからだ。防御されたがな】

「・・・」

 それはつまり、自分達を突き飛ばした所為で斬られたということかと、切歌はムッとなる。にを考えているんだと。

(そんなに仲がいい訳じゃないんデスから、気にしなくてもいいんデスっ)

 確かに納得できる部分があるがと思いながら、天羽々斬は切歌に気にせず、剣をうっとりとしながら見る。

【ゲーデ、早く来てくれ・・・私がお前を殺してやる・・・】

 

 

 

「解析結果を急げッ」

 龍の行動に、司令室は焦り、ガラスの手紙を拾い集め、急いで解析などするが、

「これは」

 念入りに粉々にされたうえ、別々の場所に捨てられたそれを回収して、直したが、肝心の場所がわからない。

 その様子を見たハロルドは冷静に分析する。

「やられたわね。彼奴のことだから、わざとわかりやすいところに文章の欠片を置いて回収されている隙に逃走。場所の欠片は全く別の場所、しかも念入りにばらばらに捨てているでしょうね」

「変なところで知恵をつかいおってッ」

 弦十郎は怒鳴り、フレン達も黙り込む。

「彼一人で対処させるしかないのか」

「そんなことさせられるかッ、治療班が看たが、だいぶ失血しているんだぞッ。五体満足動けていること自体おかしいッ」

 弦十郎の言葉に、リタはすぐに動く。

「セレナ、カナデっ、リュウはゲーデの力で無理矢理身体の器官を補助している可能性があるわっ。その反応を追って」

『『了解ッ』』

「エルフナイン、聞いたでしょっ。この世界で妙なエネルギーを何でもいいから見つけだしてっ、それが彼奴のはずっ」

「わかりましたっ」

「それは我々オペレーターにもお任せあれっ」

 そう言い、彼らもまた動き、弦十郎はやれやれと思いながら、別の指示を飛ばす。

「装者達は現時点で別々に待機、各自、どこであろうといち早く動けるように、サポート班は装者達を運べるように準備に取りかかれッ」

 こうして彼らもまた、動いている。調は静かに祈る。

(切ちゃん・・・)

 

 

 

 切歌は静かに、横たわり、天羽々斬はうれしそうに鼻歌を歌っている。

「その歌は翼先輩のデス、お前が歌うなっ」

 その言葉を無視しながら、天羽々斬は気にしない。

 もう戦う準備をしながら、あとは待つだけだと、にしても遅い気もする。

(・・・だいぶ時間が経ってる気がするデス)

 夜から朝日くらい昇っていてもいいが、自分はどれくらい気を失っていた?

 それが分からないし、あのあとのことがわからない。

【・・・少し下準備しすぎたか?】

 そう言い、初めてやってしまったと天羽々斬は思う。

「下準備?」

 切歌も聞き返し、ああと頷く。

【お前を助け出すために、ゲーデをおびき寄せた、ここの場所ではない場所にな。今頃は、コピーされたジルディアの民と混戦している頃だろう。まあそのあともわかった場所で混戦してるが】

「・・・」

 つまり龍は自分を助けるために罠にかかり、罠をかいくぐり、また罠に飛び込んでいるということか。

「ふ、ふざけるなデスっ。そんな疲労した龍と戦う気デスかっ!?」

【ああ、きっと私が一方的に勝つだろう】

 そう言いながら、不適に笑う。

【だからどうした】

 それは天羽々斬、翼と違うとはっきり分かる。

「・・・翼先輩の偽物のくせにッ、卑怯者デスッ」

 苦々しく睨む仲、あっははと笑う天羽々斬。

【武士として当然だろう? 相手を徹底的に弱らして斬る、剣として生まれたからには敵は必ず殺す。私は本物と違い、本当に身体は剣だッ。剣はただ、敵を殺せばいい】

 そう言い、イグナイトモジュールの姿で、そろそろ来てもいいのに来ないゲーデに、天羽々斬は考える。

【さすがに殺されたと言うのは考えすぎだな。あれはその程度で終わらない、よくて・・・ああ】

 天羽々斬は何かに納得して、切歌を見る。

 そしてその上着を掴み、それを引きちぎった。

「デ、デスっ!?」

 さすがに驚き、離れようにするが、天羽々斬はそれを押さえつけて、切歌に言う。

【もしかしたら様子を見ているかもしれないな、悪いがお前を傷付ければ出てくるかもしれないし、早まるかもしれない。傷付けさせてもらうぞ】

 そう言いながら、どう傷付ける気かわからないが、身の危険を感じる切歌。

 そのまま衣類に手を伸ばす天羽々斬。切歌は内心、心の中で助けを呼んだ。

 

 瞬間、ドームの頭上から何かが入り込み、それは天羽々斬に斬りかかる。

 

【ようやく来たかゲーデっ】

「りゅ」

 その姿はボロボロで、所々から血を流す、自分の嫌いな男だった。

「・・・龍・・・」

 頭からも血を流し、ああくそっと呟きながら、剣を向けた。

「余裕ないんでな、さっさと終わらすぞ天羽々斬」

【ああっ、死合おうぞっ】

 その瞬間、二人は一気に迫り、剣と剣がぶつかり合う音が鳴り響く。

 

 

 

 とある一角で、精神を統一する翼。

(・・・このままでいいのか)

 自分の偽物が、仲間をさらい、卑怯な手段を駆使している。

 どうすればいい。そう考え込みながら、拳を強く握っていた。

(あれは私・・・この身を剣と言い聞かせ、意地を張っていた頃だろう)

 自分の負について思いつくことがある。あのころの間違いが仲間を苦しめている。

 翼はそう思っていると、通信が入る。奏からだ。

「どうした奏?」

『ん? いや、翼のことだから、昔の自分がって一人で抱え込んでいるって思って』

 それを言われ、黙り込む翼に、図星かと呆れる奏。

『まあ、そうなったのは私の所為か』

「違うっ、奏の所為じゃないッ。私が勝手に、一人で抱え込んだから」

『それでもだよ、相棒に全部任せて死んだ私の責任だよ、ったく・・・』

 お互い黙り込みながら、それでも奏は静かに、

『翼は彼奴、龍のことどう思う?』

「どうって・・・」

 彼は言った、世界が滅んでいて欲しいと。

 彼の仲間は言う、それでも彼は世界を守ると。

「私は少なくとも、彼は仲間を裏切らないと思う。どんなことがあろうと」

『ああ、そうだ。翼・・・』

 そして語る、ライブの裏、響が抱えていた問題。それに僅かに関わった龍のこと。

 それを聞き、愕然となる翼。

 奏もまた、複雑そうにしていた。

『私たちはあのライブで、多くの人を守れなかった。そのあとも、な』

「・・・」

 そして奏ははっきり告げる。

『けど、いまは違うッ。私はいまは生きてるし、翼も昔の翼じゃないんだっ』

「・・・ああ、そうだな」

 そして静かに決意する。そのとき、ふとっ考える。

「・・・装者ゲーデは、私たちの偽物」

 そうつぶやき、何か考え出す。

 

 

 

 血が舞う、動くたび、剣を振るうたび、血が流れ、飛び散り、それが天羽々斬の身体にかかれば、それは天羽々斬の力となり、吸収される。

「3カ所もハズレ用意しやがって・・・」

 そんな文句を言いながら、彼は動かない。動けない。

【あっはははは、だいぶ弱ったなゲーデッ】

 そう言い、切歌に斬りかかる天羽々斬。それに切歌は気づいていた。

「私のことは気にせずに戦うデスっ」

「こいつは本気で殺す気だッ」

【ああっ、かばうのをやめればイガリマ装者を斬るッ】

 そう宣言して、時には距離を取り、遠距離などを駆使して、龍を無駄に動かしたりと、わざと疲労させて戦わせている天羽々斬。

 始めからトドメは刺さず、確実な瞬間が来るまで弱らせる気らしい。

【ああ楽しいっ、この瞬間が来るのを待っていたっ】

 返事はせず、それでも闘争心は消えず睨む龍に、つばぜり合いをする天羽々斬。

【これぞ剣の本懐ッ、相手を殺すことこそ、剣として、もののふの本能ッ】

「違う・・・」

 虫の息の龍は、天羽々斬を睨む。

「翼は防人だ、武士じゃねぇ」

【本物なんてどうでもいい、剣はただ敵を斬ればいい】

 そう言い構えた。

【どんな手を使ってもな】

 それは後ろの切歌に呼びかけているのか、それを守る体制に入る龍。

「龍ッ」

「・・・」

 呼吸をやめて、前の敵だけを見るが、周りに対しても警戒している。天羽々斬のことだから、目の前だけに集中するのはまずい。

(確実に致命傷を与えなければいけない)

 そろそろまずい、血が、負が足りない。

 呼吸するたび、喉が切れてる気がするし、左腕の感覚が薄い。

(なら)

 そう考えつき、天羽々斬は斬りかかる。

 真っ正面の斬りかかり、だがそれにすぐに左腕を剣から放し、戦迅狼破を放つ。

 それで防がれたと思われた瞬間、

「・・・片腕はくれてやる」

 

 いつの間にか肩に剣を置き、左腕を引っ込めることもなく、右腕で全力で切り裂いた。

 

 自分の左腕ともども。

 

「!!?」

 鮮血が舞い、さずかに天羽々斬も致命傷に斬られたが、続けざまに『瞬迅剣』を放ち、傷口を貫いた。

【ぐっ、だがまだまだッ】

「・・・エイミング」

【!!?】

 背後から炎を感じ取り、突き刺さる身体のまま見た。

 切り落とされた左腕は、ゲーデの腕で、炎を集めていた。

【そんな芸道がッ】

『ヒィィィィィィトォォォォォォォォォ』

 炎が爆炎と共に舞い上がり、天羽々斬を粉々に砕いた。

 

 

 

「な、なに考えてるんですかッ」

 叫ぶ切歌に、腕を広い、繋げる龍。ゲーデの力で神経など繋げるが、ほぼ無理矢理であり、正直そうそうしたくない手だ。

 龍はそっぽ向きながらなのも気に入らず、切歌は叫ぶ。

「こっち見るデスっ、話は終わってないデスっ」

「いやだって・・・」

「デス?」

 そのとき思い出す。自分は上着をはぎ取られた。

 つまりいま、下着が見えている。

 真っ赤になり、口をぱくぱく動かし、龍はため息をつく。

「あとで文句聞くから、あとにしろ」

「・・・・・・・・・・デス・・・・・・」

 それを見ながら、龍は身体を動かすが、正直立っているのでやっとだ。

「ここから出るのに、力を使うしかないか」

「そもそも、ここってどこなんデスか?」

「海底、日本海だ」

「・・・マジデスか?」

 そう言うが、日本海付近にその手のドームを作り、巡った龍はああとしか言えず、そしてドームの壁は異常に堅い。

「まあ、剣あればいける」

「少し休んで助けを待つのは」

「場所を教えてないから来ない」

「バカデスかあなたはッ!?」

 頭部の血が目にかかり、片目を瞑る。仕方ないだろと雑談した瞬間、

 強烈な殺気に気づき、剣で防いだ。

「なん・・・」

【・・・まだだゲーデ】

 ニヤリと笑う天羽々斬に、切歌も驚いていた。

「どうしてまだ、さっきのは」

【偽物だッ】

 刃が切歌に迫り、それを右腕で遮る。腕だけをゲーデ化させているが、それでも血が僅かに流れ、離れる。

【イガリマ飲んだのはさすがに偽物でな、あれのおかげで、バレずにすんだぞ装者】

「イガリマ飲んだっ!? 反応を誤認してたのかくそっ」

 それに切歌は青ざめながら、血を流す龍を見る。明らかに限界間際だ。

【ここまで弱らせれば問題ない、さあ死合いの続きだ。楽しもうゲーデ】

「ふざけやがって」

【ふふっ、もう立つことしかできないか。なら、ここで死ねぇぇぇぇぇぇぇ】

 高く飛び上がり、斬りかかるが、正直剣が重いと初めて思う。

(こうなればやけだ)

 全身ゲーデ化して斬られて、チェーンソードのカウンターを狙うかと力を全身から放つ。

 だが、龍は気づいた。

(・・・あっはは)

 それは最も最良であった。こちらを見ながら、天羽々斬は叫ぶ。

【終われッ【千ノ落涙】】

 無数の剣を見ながら、はっと腹で笑う。

「聞こえないのか」

【!!?】

 そして放たれるのは、

『天ノ逆鱗』

 巨大な剣が千ノ落涙をなぎ払い、ドームを切り裂き、乱入する。

 それに斬られたが、僅かなものであり、身体をよけて、それに驚愕する。

【オリジナル・・・】

「・・・」

 剣の真上に立つ防人は、卑劣な武士を見下ろしていた。

 

 

 

「すまない、送れた」

 そう言って現れる奏。ガングニールの槍を持ち、龍はようやく剣を手放して、その場へ倒れ込む。

 切歌が動き、それを支える中、翼は天羽々斬を睨む。

【どうしてここが】

「私が外道に身を置き、どう考えるか必死に考えた。結果からして当たりだっただけだ天羽々斬」

 それに驚愕する天羽々斬。忌々しく翼を見る。

【己・・・剣の分際で、防人などのたうち回る弱者の分際で、武士の戦いに口出しするなッ】

「・・・もののふだと? 笑わせるな」

 人質を取ってもなおそんなことを言う天羽々斬に、翼はイグナイトモジュールへと手を置く。

「貴様なぞより、彼の方がよほど、剣として、防人として、武士として立派だ。貴様はどれも名乗る資格なぞ無いッ。イグナイトモジュール、抜剣ッ」

 黒い飛竜が舞い上がり、それを纏う翼。

 頭部の部分が強化、ドラゴンの角のようなヘットギアと髪留めをつけながら、黒と蒼の剣を握りしめ、歌を紡ぐ。

「さあ、私の歌も聴けッ」

 奏も参戦し、天羽々斬は忌々しく迫る。

 

 

 

 切歌は僅かに身体全体で龍を支える。流れる血の暖かさや肌の感覚から、彼は限界が近いとわかる。

「・・・」

 いま上着がなく、下着だけだが、そんなこと気にしていられないほど、弱々しく呼吸する龍を心配する。

 その目を見る。その目は3人の戦いを見ていた。

 二人の歌に翻弄される天羽々斬。

 だが決定打がないことに、天羽々斬は笑う。

【どうやらここまでくるのにも時間がかかったようだな、息が荒いぞ】

「仲間と共に戦えば問題ない」

「ここであんたを倒すッ。翼の過去、いや、それを汚す偽物ッ」

 二人に注意が向いている。

 

 それを見た瞬間、

 

 ゲーデは笑った。

 

 瞬迅剣。ただ全力で放ったのだから、

 

 全員が戦慄する。天羽々斬は身体を貫く刃に瞳孔を開き、ゲーデを見た。

 

 それは笑っていた。

 

「忘れていたお前が悪い」

 

 そして翼はすぐに、蒼と黒を纏いながら、離れたゲーデに続くように、剣を杭のようにして斬撃をたたき込む。

 

 轟くは外道の武士が放つ雄叫び。こうしてまた一つの戦いが終わった。

 

 

 

「はあ、どうして私まで」

「そういうなって、人手が足りないから、あんたの監視も同時進行なんだ」

 そう言ってミラに笑いかけるアルヴィン。レイアやエリーゼもまた、離れたキャンピングカーで待機していた。

「ま、会う訳じゃないからいいけどね」

 ミラはそう言い、エルと共に食事の準備をする。これは非戦闘員には喜ばれており、ミラもエルと共に楽しそうにしている。

 

 

 

 離れた位置で、龍の上着を着ている切歌は、調に泣き付かれて困っていた。

「切ちゃんっ、切ちゃん」

「調落ち着いてくださいっ、私なら大丈夫デス」

「一番無事じゃねぇのは俺だ」

 朝日を浴びながら、海辺の太陽を憎々しく睨む龍。

 セレナ達はむしろ龍を睨む。

「色々と言いたいことがあるけど、なんでキリカはリュウの上着着てるの?」

 カノンノの目が笑っていないので、翼と奏に任せた。

「ああ、天羽々斬に上着はぎ取られて、下着むき出しだから、龍から借りてるんだ」

「デデスっ!!?」

 俺死んだと思ったとき、セレナ、カノンノ、マリア、調がこちらを見つめる。瞳から光がないのは気のせいです。

 切歌は気にしないで欲しいデスと止めてくれるが、できれば、

「トドメ刺す前に聞いてくれ、敵がなんなのかわかった」

「!!?」

 全員が驚きながら、龍は立ち上がる。その身体から血を流しながら・・・

「彼奴らは、いや、敵の正体は」

 そのときだった。

 

 

 

 時間は少し先戻る。

 ミラは静かに料理しているとき、不意に、そう不意に、顔を上げた。

 

 ゲーデを殺せ。

 

「・・・えっ」

 

 ゲーデを消せ。

 

「・・・」

 

 ゲーデを滅ぼせ。

 

 いままで以上に身体が硬直する。

 

(い、いや・・・)

 

 だが身体が、刃物を手に取る。そして、

 

「? ミラ?」

 

 エルが気づき、首を傾げ、ジュード達も気づく。

 

 ゲーデを

 

「とめ、て・・・」

 

 泣きそうな顔で、彼らにそう告げた。すぐに気づき、動いたが、

 

 ゲーデを滅せよッ。

 

 

 

 響達は、それを見て唖然となった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ・・・・・・・・・・・・」

 いま自分の顔にかかったのはなんだろう?

 なま暖かく、自分だけじゃなく、他の人にもかかっていた。

「・・・龍」

 セレナが呟くと同時に、光の刃が消え、龍はその場に倒れた。

 その光に先にいる人物は、車などを無視して、彼を貫いたことを知り、

「アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」

 大きな叫び声を上げて取り乱し、ジュード達はすぐに取り押さえた。

 そしてリタ達も気づく。

「なにしてるのッ、回復魔法ッ」

 セレナ達も急いで動き、龍の傷を治そうとするが、大きな傷、致命傷だけは消えない。それにノワールは気づく。

「ディセンダーの力っ」

 それはディセンダーの力、負を滅する聖なる力。

 その力で傷付けられたためか、ふさがらない。

 

「お願いっ」

 

 ミラはただ、涙を流しながら、

 

「止めてッ」

 

 ジュード達に取り押さえながら、

 

「誰か私を殺してッ」

 

 そう叫びながら、混乱のまま、日が昇る・・・




さて、次回は突如として都合良すぎるだろっ!?という展開があります。
ですがその都合が喜ばれると私は信じ、次回に続きます。
それでは、お読みいただきありがとうございます。


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真っ白な世界か真っ黒な世界か

ご都合主義全開ッ、説明不足、それらしいフラグはない?
そこは申し訳ございませんッ。
だがやりたいんだ、俺の文章力がないだけに感動が少ないと思いますが、この1話はオリ主でも戦姫達でもなく、彼に捧げる1話です。
ではどうぞ。


 真っ白な空間、彼はいるだけだった。

 

 考えることもなく、いるだけだった。

 

 はずだった。

 

 僅かに何か聞こえた。真っ白な世界で、確かに聞こえた。

 

 

 

「・・・」

 難しい顔をしたまま、モニターには二人の人物が写る。

 腹を貫かれ、いまだ傷が癒えず、出血を止めるので精一杯で、意識が回復しない龍という少年。

 もう一人は、完全に錯乱してあり、地下室で引きこもり、誰とも会おうとしないミラと言うディセンダーである。

「すいません・・・」

 苦しい顔をしていたのはジュード達だった。彼女の異変に気づき、止められなかった。彼女もそれを望んでいたのにもかかわらず。

「気にすることはない、我々も甘く見ていた。彼女にかけられた使命、いやもう呪いだ」

 吐き捨てるように言う弦十郎。それにはここにいる関係者全員が頭に来ている。

 ゲーデが瀕死だからだろうか、ミラの意識がほとんどおかしくなるほど、無理矢理使命を果たさせたのだ。おかしいと一言に尽きない。

「けど、リュウが言う正体ってなんなの・・・」

 リタが考える。龍はどうやら敵の正体を知ることができたようだが、いまだ油断できない状態の龍。この状態では何もできない。

「傷の手当ては?」

 クリスもさすがに聞くほどの状態であり、それにノワール、ディセンダー達は苦しそうに首を振る。

「あれはディセンダーの輝き・・・リュウの身体というより、存在そのものを貫いたの・・・自己回復以外、リュウは治せない」

 それを聞き、黙り込む一同。そして、エルは前に出る。

「ミラは」

 それに、また全員が黙り込む。

 弦十郎はエルのためにも、ちゃんと言う。

「彼女の意志を尊重して、いま地下に隔離している。むろん、なにかあれば」

「なにかってなにっ!? ミラを傷付けないでっ」

 その少女の要望に、弦十郎は険しい顔になる。

 だが、混乱し、錯乱する中で彼女は、

 

『誰か私を殺してっ』

 

 そう言うほど、彼女はいま、自分の行動を止めたいと願っている。

「エル」

 カノンノはそのエルを優しくだきしめる。

「いまは難しい話ばかりだけど、大丈夫。リュウもミラさんも、なんとかするよ」

 そんな理由も、確証もないことを言うカノンノ。だが、

「おう、彼奴のことだ。悪い刺されたってミラに謝るだろうよ」

「そうだね、それも問題ではあるのだけど。彼はこの程度で死ぬほど、身勝手じゃないよ」

 ユーリとフレンはそう言い、ハロルドはうっふふふふと笑う。

「それもそうね、彼奴のことは死ななきゃいいっしょ」

「まあね、その前に無断で動いたんだから、しばらくベットの上がいいわ。それよりミラの方ね」

「だね」

 リタの言葉に、セレナは頷く。クイッキーはエルフナインの頭の上で両腕をあげていて、みんなの様子に驚く一同。

「龍なら自分のことより、ミラさんのことを考えるよ」

 セレナはそうみんなに言う。カノンノもうんと頷きながらエルを撫でる。

「いま大変なのはミラさんだよ、エル、ミラさんのこと大好きでしょ?」

「うんっ」

 少しの迷いなく言うエルに、カノンノは微笑む。

「なら、ミラさんのために行動しないと」

「あのリュウ大先生なら、すぐに起きる、いや、あの性格なら必ず起きる。なにより敵さんだってまだいるんだ、なにがあってもいいように、動かないとな」

 彼らは信じている。龍は刺されたことを一切も気にせずに、そして必ず生きて現れると信じている。

 その様子にノワールとイヤハートはほほえみ、その信頼感に、装者達も信じる。

「彼奴のこと信じてるんだな」

 クリスの言葉に、クイッキーはジャンプして、頬スリし出す。

 最初は恥ずかしかったが、仕方なくのど元を撫でてやりながら、クリスは微笑む。

 

 

 

「・・・」

 地下室で座り込むミラ。

 なにも言わず、頭の声を無視している。

(助けて・・・)

 泣きそうになる。自分がゲーデを殺す存在。だからか知らないが、いまはゲーデを殺すことしか考えられない。

 だけど、それをしようとすると、エルの顔が思い出す。

 きっと、彼を殺せば、あの子を傷付ける。

 嫌だッ。だから、殺して欲しい。だけど誰もそうしてくれない。

「誰か・・・私を殺して・・・」

「そんなこと誰も喜びません」

 響がそう言いながら、扉を開けて入る。その手に鍋を持ち。

「・・・ヒビキ」

「これ、エルちゃんが未来、私の友達に習って作ったスープです」

「・・・だから」

「ミラさんあのあとなにも食べてませんよね? なにか食べないと体が持ちません」

「けど、私は、私は・・・」

「ミラさんっ」

 響はミラの手を取り、力強く握る。

 そして、

「平気、へっちゃらですっ」

「!?」

「龍さんはこの程度じゃ死にません、きっと謝る機会があります」

「謝るって、そんなこと」

「許してくれますッ、絶対、あの人はそういう人ですっ」

 その言葉に、ほほに暖かい涙が流れる。

 スープを置いて去る響。ミラはスープを見つめた。

「私は・・・私は」

 頭の声はまだ続く。だけど、負けるわけにはいかない。この暖かいもののためにも。

 その暖かい空間は、あざ笑うように、警報を聞くまで続いた。

 

 

 

「ノイズ反応多数ッ、同時にジルディアもどきも多数出現ッ。しかもここを取り囲むように出現しましたっ」

「予想できなかったのかくそっ」

 弦十郎達は苦虫を噛むが、リタ達は冷静に分析する。

「元々防壁とか無意味なのかも、相手は空間移動できると仮説した方がいいわね」

「こっちの防衛機能完全無視かっ、全く役に立たないな俺達は」

 そう言いながらも、すぐに装者達に連絡して迎え撃たせる体制を整えつつ、非戦闘員並び民間人などの安全確保と、フレンやユーリも動く中、エルの方は、

「ミラくんの料理で、未来くんと一緒にいる。カノンノくんとイヤハートくんがいるから問題ない」

 そう言いながら、彼らは動く。

 

 

 

「ちっ、数だけは多いな・・・」

 クリスは悪態を付きながら、ノイズは簡単に吹き飛ばすが、ジルディアもどきだけは簡単にはいかず、苦戦する。

 他の装者達は、イグナイトモジュールはゲーデの恩恵を受けており、ジルディアもどきも大量に倒している。

「!?」

 そう思っているとき、歌が聞こえて、空を睨む。

「攻撃来るぞっ、マシマシだッ」

「デ、デスっ!?」

 ミサイルの雨が、敵味方関係なく降り注ぎ、クリスはそれを同じ技で最低限防ぐ。その様子に、イチイバルは睨む。

【テメェ、邪魔すんじゃねぇよホンモン】

「ニセモンッ」

 偽物の手には鎖と首輪があり、装者達は構える。

「首輪と鎖って・・・」

【私のゲーデ用だっ、やっといいのあったし、他の奴いなくなったから、飼うスペースもあるからな】

 得意げに言うが、自分の偽物がそんな性格なのに、クリスは怒り、強く銃を握る。

「テメェ、人の姿形で妙な趣味持ってるんじゃねぇよッ」

【ハッ、イガリマとシュルシャガナと一緒にするなッ。彼奴らのように盗撮したもん切り刻んだり、アガートラームのように衣類盗んだりしてねぇよッ】

「待って、アガートラームってそんなことしてたのっ!?」

【っていうか、他の奴らゲーデの写真で。ドン引きすることしてたし】

「色々聞きたくないデスッ」

 そんな叫びの中、イチイバルはイグナイトモジュールの姿になり、また虚空からノイズやジルディアもどきが出てくる。

【彼奴も最終段階に入る気らしいからな、出し惜しみは無しだッ。ゲーデを食べさせてもらうぜッ、大事にするから安心しろッ】

「させないよッ」

 響はマフラーを光へと変えて、なぎ払いながら突き進む。

 それが合図に、戦闘が始まる。

 

 

 

 イチイバルへの印象は、まずいの一言だった。

 ノイズ達、ジルディアもどき達が完全に統一された動きをし、イチイバルの壁となり盾となり、銃撃がうまいくらいに放たれる。

(クリスにはない動き・・・)

 仲間を盾にし、仲間を犠牲し、確実に敵を殺るスナイパーのように、時たまに無差別に攻撃して攪乱している。

 響のように接近しても、格闘術もあるためか、防衛のみに集中して、ノイズ達で防いでから距離を取り戦う。

(他のゲーデ装者は自分の欲望に一直線だった)

 ガングニールは獣、ザババは切り刻む、天羽々斬は死合う。アガートラームはわからないが、全員が欲望のまま動いていた。わかりやすいほどに動く。

 だがイチイバルは逆に冷静沈着だった。

 目的のためなら、確実性を取っている。

(力はゲーデの力を持つ我々の方が上、だが)

 非戦闘員などがいる戦場の中、周りに気を配りながらの戦闘故に、うまく機能していない。

 ユーリとフレンなどは避難班でがんばっているが、彼らもノイズは対峙できない。カノンノ達がそこをフォローしていると指示が出ている。

 つまりイチイバルには自分達しか相手がいない。だが攻めきれない。

「苛々するデスっ」

「やろう、うまく立ち回る・・・」

 クリスも苦々しく睨むが、イチイバルはハッと笑い飛ばす。

【これが戦闘だッ、パパやママを奪った世界のやり方だホンモン】

「うるさいぞニセモンッ」

 しかも時折、こちらの緊迫した糸を切るように、挑発してくる。

【第一私のゲーデの独占欲はお前からなんじゃねぇのか? お前って、好きなもん独占して監禁癖があるんじゃねぇ?】

「私にんな趣味はねぇッ」

「心を落ち着かせるんだっ、相手の思うつぼだぞっ」

【そう言う天羽々斬のオリジナルだって、天羽々斬がゲーデの写真であんなことしてたんだ、お前もそういう趣味か?】

「な、ななななんのことだっ」

「翼、貴方も」

【一番はアガートラームだけどな】

「っ!!?」

 そんな感じで戦局を混乱させたりと、完全に向こうのベースだ。

 そんな感じだが、効かない子がいる。

「でっやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 響がイチイバルに突貫し、それには舌打ちする。唯一妙なネタがないのは、響だけだったのだ。

【やりずれぇぞガングニールのホンモン。これでもニセモンだぞ、平気なのか殴るのッ!?】

「許可はもらってますッ」

【チッ】

 そして戦いはノイズなどの数でうまく立ち回るが、じり貧だ。

【この男っ気ないもんどもがッ、どーせテメェらは百合百合してればいいんだよっ。人の行動邪魔すんじゃねぇッ】

「?」

【よくわかんねぇ顔すんじゃねぇよッ】

 響の反応だけはイチイバルは読めないようであり、さっきの言葉は装者達の方に響くものであった。

「あのパチモンが・・・」

「必ずここで倒すわよ」

「・・・」

「デス・・・」

「・・・」

 少しは気にしていたらしい装者達は、ノイズとジルディアもどきを倒しつつ、確実にイチイバルを押していた。

【いい加減に、遊ぶのはやめだッ】

 そう言いながら、イチイバルはノイズを集める。

 それは鏃のように鋭く、尖っており、イチイバルはそれを構えた。

【お前ら行き後れに構っていられないんだッ、ここで逆転させてもらうッ】

 そう言って放たれた矢を、全員がよけた。

「ハズレだバカッ、っていうか行き後れてねぇよッ」

 そんなこと言うが、イチイバルは禍々しく、口元をつり上げた。

【いや、解放してやってぜ】

「!?」

 みんなで攻撃の先を見た。

 土煙が立ち上り、地下を貫き、ある部屋を貫通させた。

【さあテメェの使命を果たせッ、ディセンダーッ】

「あっ、アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」

 一人の悲鳴がこだまする中、響達は戦慄した。

 

 

 

 その場で光り輝く剣を振り回すミラ。解放された部屋、自分が自由になったと分かった瞬間、頭の声が強くなる。

 ゲーデを滅ぼす。どこにいる? そこにいると響いてくる。

「ダメッ、そんなの、いやッ」

「ミラさんッ」

 響が向かおうとするが、ノイズやジルディアもどきが壁になる。

【させねぇよ百合娘っ】

 そんなこというイチイバル、全員が困惑する。

「お前の目的はゲーデではないのか?」

【アァ? 別に飼えれば死体でもいいし、冷凍保存すればいいだろ? 散歩とかの必要もないしな】

 何を言っているかのかわからない、わかりたくもない。

 だが、イチイバルはミラの反応にいらだっていた。

【自分が改造されたくせに、役に立たない道具が、少しは役に立てよな】

「改造だとっ!?」

 興味ないように、ああと頷くイチイバル。

【彼奴が時空の狭間で死にかけ見つけて、保存してたもんだよ。ディセンダーとして変化できやすいからってな】

「彼女もセレナと同じ、元は人間なのッ!?」

 その言葉に、イチイバルは興味ないと言う顔で構えた。

【あとは彼奴にゲーデを殺させればいい。さて、お前らは私と遊べ。女と遊ぶのは好きだろテメェら】

「クリスちゃんならともかく、貴方とはいやですっ」

「響ッ、こいつの裏の言葉を理解しろッ」

 そんなこと言っている場合ではないのだが、イチイバルは自分達を邪魔するように立ちふさがる。

 

 

 

「ああ、アァァァァァァァァァァァァァ」

 頭の中が黒く染まる。ゲーデを、違う、龍を殺せとわめき騒ぐ。

「い、や・・・」

 それをすればあの子が、エルが悲しむ。

 なぜそこまで執着する? まだ出会って間もない子なのに、気にかける道理はない。

「それでも・・・それでもいやなのッ」

 ディセンダーの使命を全うせよ、自分の存在を示せッ、ゲーデを、剣崎龍を殺せ。

「嫌だッ」

 そう言ったとき、何度も頭を地面にたたきつける。血が出ても気にせず、自分を止める。どうあっても、

「お願い・・・止めて、誰か私を殺してッ」

 だが、誰も叶えてくれない望み。

(なら)

 光の剣を見て、覚悟を決める。

 その剣を自分へと向けようとするが、

「だめっ」

 その腕に張り付くのはエルだった。

「え・・・る・・・」

「『魔神拳』」

 ジュードが辺りのノイズを吹き飛ばし、アルヴィン、エリーゼ、レイア、カノンノやイヤハートも現れ、エルは腕に張り付く。

「だめだよミラっ、そんなのだめッ」

「放してッ、このままじゃ私は、私はゲーデを殺すッ」

「そんなことはさせねぇよッ」

 アルヴィンは声を高くして叫び、ジュードも拳を構える。

「今度こそあなたを止めますッ、絶対に」

「私たちを信じてミラ」

「今度は私たちがいますっ」

「ティポ達にお任せあれ~」

 全員の思いを受け、カノンノやイヤハートも頷く。

 その様子に涙を流しながら、それでも鳴りやまない声に、ミラは首を振る。

「どうして・・・どうして私を」

「・・・貴方は」

 そのとき、ジュードの言葉を遮るように、イチイバルの弾丸が飛び込むが、イチイバルのものと知り、ジュードは殴り、アルヴィンは防ぐ。

【ハッ、テメェらその女の、前の知り合いかッ】

「前の・・・」

 ジュード達の側にいる。歯がゆい顔で装者達はノイズと対峙している。

【そいつは時空の狭間で死ぬはずだったのを、彼奴がディセンダーにしてやったんだよッ】

「!? それじゃ」

「私は・・・ジュード達の」

「いまはそんなこと関係ないっ」

 みんなの驚愕の中、一人だけはっきりと声を上げるエル。

「ミラが『ミラ』だろうと関係ないっ、エルたちはここにいるミラを守るッ」

「ああそうだなっ」

 アルヴィン達はすぐに切り替えて、武器を構える。

 ミラはその様子に困惑しながらも、頭の声はまだ響く。

【死にかけてたところ、彼奴に救われたんだ。そもそも害悪殺すの邪魔すんじゃねぇよ・・・】

 禍々しいものを放つが、ジュードは拳を固めて、構える。

「救われたからって、この人がいやがることを強制することは間違ってますッ」

「そんなことさせるかっての」

「私たちの仲間だろうと、違うても関係ない」

「困っているなら助けますっ、それが友達、仲間ですッ」

「どんと来いや~」

「私たちも」

「邪魔させてもらうよッ」

 カノンノやイヤハートにも、睨みながら、ノイズとジルディアもどきを出すイチイバルだが、彼らはひるまない。

「エルはミラさんとッ、僕らはッ」

「お前らを守るッ」

 だから引かない。彼らもまた無謀に向かう。

 

 

 

「あの馬鹿者達はッ」

 弦十郎はモニターを見ながら、ディセンダー班を見る。こちらもこちらで手こずっている。誰もミラ達の方に向かわせられない。

 なによりユーリやフレンも同じようなことしている。全くと頭を痛める。

「・・・まずいわね」

 リタはそうつぶやき、コンソールを操作して、エルフナインは同じ画面を見て青ざめていた。

「やっぱりかあのバカッ」

 

 

 

「オッラァァァァァァァァァァァァァァァ」

 その間に割り込むように、剣撃を放つ。バカがいた。

「おっいッ、お前が来るなッ」

 アルヴィンも叫び返し、死にかけがイチイバルと対峙する。

【ゲーデ来てくれたか、ご主人様が迎えに来てやったぞッ】

「お前はそっちかッ。そんな趣味はないッ、帰れッ」

 龍を見たミラは焦る。自分は彼を貫いたのだ。彼だって分かっているはずだ。

 そう思っているとき、

「悪い悪い、死んでたわ。あとで聞くから謝るなよ。気にすることでもねぇし」

 そう笑いながら、剣を構える龍。

 ミラは頭の中が真っ白になる。

「君、死にかけてたのに・・・思ってた以上の人だね」

「人じゃねぇ、化け物だよ」

 ジュードと笑い合いながら、武器を構える。

 イチイバルもその様子に苛々していた。

【ふざけんな、ご主人様の言うこと聞けよゲーデッ。テメェもいま生きてるのはゲーデを殺すためだッ、そのために生きろよッ】

「こいつの生き方はこいつが決めることだッ、勝手なこと言うな」

 ぶつかり合う戦いの中、龍はノイズを蹴散らす。

 ジルディアもどきはジュード達が相手取り、その様子をエルと共に見る。

(・・・私は)

 

 ゲーデを殺せ。いや。ゲーデを消せ。負けない。

 

 ゲー負けないッ。

 

「私は負けないッ」

 

 そして視界が真っ暗に染まる。ゲーデを消すと言う思考が頭も視界も覆い隠す。

 ミラの悲鳴が轟く中、それでも、

「負け、ない・・・」

 苦しい、エルが泣きそうな顔でこちらを見る。

 龍もまだ本調子ではない。死にかけていたのだからそうだろう。

(誰か・・・)

【ちっ、この役立たずがッ】

 銃口が光り、まっすぐ向かってくる。エルをかばうように、突き放す。

 それを静かに見ながら、ミラは目を閉じた。

 そのとき、真っ暗な世界で光が差し込む。ある言葉と共に。

「    」

 それを短く、呟いた。

 

 

 

 さあ、目を覚まして

 

「だれだ・・・」

 

 君はいまから、世界の害悪を滅ぼすために生きるんだ

 

「世界の、害悪?」

 

 君ならできる。だから、こっちに来て

 

 差しのばされた手を見ながら、それを取ろうとしたとき、

 

「?」

 

 真っ暗な世界が見えた。後ろにある、真っ暗な世界に、声は叫ぶ。

 

 ダメだッ、そっちは君の世界じゃない。君がいるべき世界じゃない。

 

 この手を取るんだッ。早く。

 

 その言葉に、そうだと思った。

 

 暗闇の世界は禍々しく、醜いと思った。

 

 だけど。

 

『    』

 

 その瞬間、手を払いのけて飛び出した。

 

 

 

 光が交差した。

 土煙の中、エルは呆然とその光景を見た。

「・・・ミラ・・・」

 だが、エルは聞こえた。

「えっ」

 ある時計から、僅かな鼓動を感じ取り、煙がはれた。

「・・・・・」

 息をのむ。それはジュード達もだった。

【誰だテメェはッ!?】

「・・・」

 一人ただずむそれは、黒い鎧に身を包み、側に槍を地面に刺してたたずむ。

 ミラを抱き上げ、ゆっくり下ろす。

「・・・」

 その姿を見て、黒の世界が消える。

 目の前にいる黒い戦士、彼の姿を見て、涙がたまる。

「任せろ」

 彼はそう言い、槍を構え、龍は驚愕するが、なぜか、仲間と思った。

「ジュード、アルヴィン、エリーゼ、レイア」

 彼らも呆然としていたが、その言葉に我に返る。

「行くぞ」

 その言葉に全員が叫ぶように返事をして、イチイバルへと向かう。

 

 

 その猛攻にイチイバルは驚いていた。

【お前、まさか、彼奴が用意してた、宿命を越えた者かっ!?】

「関係ないッ、いまはお前を倒す」

「俺も忘れるな黒いのッ」

 龍も参戦して、イチイバルを追い込む。

 その姿にクリスは眺めていた。

「彼奴・・・ボロボロのくせに、まだ戦うのか」

 その様子を見ながら、クリスは歯を食いしばる。

(・・・まだ彼奴の言った言葉は許せない)

 だが、

「だけど、このまま彼奴を放っておく方が、もっとゆるせられっかッ」

 そして赤い飛竜が舞い上がる。

【!?】

 イチイバルは驚愕する。それはクリスの変化、それを見て龍はなんでと思いながら苦笑する。

「どいつもこいつも、俺への評価間違ってる」

 現れたクリスは足の装甲がドラゴンの足のように、赤と黒で強化されていた。

 武器もまた、重火器であり、一気にぶっ放す。

 弾幕の雨が降り注ぎ、ノイズも敵全て吹き飛ばす。

【くっそ、まさか、ここで彼奴が失敗するなん】

 そう愚痴っているとき、光の槍が刺さる。

「うっおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

 光の槍が乱舞して、最後の一撃が自分に突き刺さる。

【ぐっ】

『マター・デストラクト』

 槍に貫かれ、粉々に砕け散るイチイバルに、槍の戦士は空を見上げた。

 

 

 

 戦いが終わり、全員が集まる。

 龍はその場に座り込み、セレナとカノンノが飛びついてくる。

「「リュウっ」」

 それに(一部の反応に)恐怖を感じる龍。なにより体力がないために、やめて欲しい。

 切歌もすぐに近づいてきた。

「やっと起きたデスっ、どんだけ心配したと思ってるんデスかっ」

 切歌は泣きそうな顔で、それでもうれしそうにしている。その様子のまま、ノワールも参加して困ったことになる。

 その様子に弦十郎達も現れる中、黒い戦士は静かにただずむ。

「君は」

「すいません、俺はまず」

 彼はジュード達を見る。なにか言う前に、

「貴方の顔を見るのは、あの子が先に、名前もね」

 そう言ったのはミラだった。

「ミラ・・・」

「全く・・・お互いしぶといわね・・・」

 その言い方に、ジュード達は驚く。

「まさか」

「貴方のおかげよ、彼奴の書き換えられた記憶を取り戻せたのは・・・だけど、貴方と始めに会うのは、あの子よ」

 そう言い、身体をどけて、一人の少女を見せる。

 時計を持ち、降着する一人の少女。

 それを見る戦士は、静かに、

「~~~♪」

 鼻歌を歌う。エルはそれを聴き、体を震わせて、同じ歌を歌う。

 そして静かに鎧を解きながら、少女に近づく。

 涙を流す少女をだきあげ、優しい微笑みを見せながら、青年は言う。

「ただいま、俺のアイボー」

「おかえり・・・るどがー・・・」

 その様子を見守る彼らは、状況はよくわからないが、龍は静かに、

「・・・居心地悪いな」

 苦笑しながら、そう愚痴った。




・・・いかかですか?
作者なりに感動を目指しました。文章力の低さに泣きたいですが、全力出しました。
彼は真っ白な世界より、真っ黒な世界、ミラ達を選択したことにより、最終章です。
余計なことはせずこのままに、次回終章へと駆け出します。
全ての敵、彼奴の正体。そして最後の異世界の戦い。
ここまでお読みいただきありがとうございます。


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さあ、終わりを始めよう

そのタイトル通りです。どうぞ。


 ルドガーと言う青年の説明を始める瞬間、空が割れた。

「・・・」

 龍は驚かず、全員が空を見た。

 そして一人の女性を睨む。

「どうして・・・」

 一人の女性、髪は長く、透明と言っていいほど綺麗な白、瞳も銀色であり、ただ空に浮く。その存在に、苛立ちを持っている龍が前に出る。

「やって表舞台に出てきたか」

「ゲーデ、なんで彼は君側にいるの? 貴方は光、正義であるこちら側なのに?」

 15~6くらい、ワンピースにマントを羽織った少女は無表情に聞く。

 ルドガーが首を振りながら、その槍を構える。

「君は間違っているんだよ、だからもうやめるんだ」

「やめる? 私は正しいよ、だって私なんだから」

「・・・そういう性質か」

 龍、ミラ、ルドガー達だけは相手がなんなのか知り、全員が集まり、武器を構える。

「誰なんですか」

「あれは」

 響の言葉に、龍は少し間をおく。その間も空が割れ、白い世界、白い惑星が現れながら、空の様子を睨みながら言う。

 

「自然に、偶然に生まれた純粋のディセンダーだ」

 

 その言葉に全員が黙り、翼は剣を構えながら首を傾げる。

「自然にとは」

「言葉通り、偶然生まれた。ただ害悪を倒すための存在、それが彼奴」

 精霊でもなく、救世主でもない。

 精霊でもあり、救世主である。

 それが目の前にいる、救世の精霊とも言える存在。

「救世だとっ、こいつがしていることがんなこと言えるかよっ」

 クリスが叫び睨み、団員が構えるが、彼女はなにも言わず、ルドガーを見る。

「なぜ黒い世界を選んだの? 貴方はまた傷付け、傷付き合うの?」

「・・・俺はミラを、エルを守る」

「なら私が正しい、守るためにいる、救うためにいる、助け出すためにいる」

 歌うように空の星、白い世界を見る。

 空中でくるくる舞うが、なぜかみんな攻撃しない。まるで攻撃してはいけないと心の底で思うほど、龍だけはなにか違う。

「・・・いい加減にしろ」

 それはゲーデ故なのか、龍だけは違う。

「お前の正義は正義であって正義じゃないッ」

「私は正義から生まれた、私は正義、救い、奇跡。だから私は貴方を、全ての負を消さなくてはいけない。ルドガーの力を借りたかったけど、それでも私は諦めない。必ず貴方達を滅ぼし、全てを救う。それが私」

 それを聞きながら、なに言っているのかと思う面々だが、全員が黙り込む。

「ゲーデ、これ以上貴方は存在してはいけない。白の世界、全ての負を集め、滅ぼす私の空間に招待する。準備は整った、あとは貴方を消せば、世界の負を消せる」

「どういうことだっ!?」

 その問いかけには答えず、彼女は姿を消す。

 空の異変に町はパニックになる故、彼らはまずそれを止めるために行動する。

 

 

 

「状況の確認よ」

 リタの言葉に、司令室に緊張が走る。

 町の方は世界中規模であり、いまオペレーターおよび、多くの機関が押さえ込んでいる。弦十郎もその話しに耳を傾けながら、ルドガーは頷く。

「彼女は言ったとおり、たまたま生まれたディセンダーなんだ」

「たまたま生まれたディセンダー?」

 首を傾げたノワール。ミラは続けて答えた。

「彼女は、世界の外から生まれた感情、誰かを思い、誰かを救い、誰かを助けたいと思う純粋な思いから生まれた、純粋なディセンダーというより、精霊に近いものよ」

「そんな奴が、どうして敵になるんだよ」

「世界から負を消すためだよ」

 ルドガーの言葉に、意味が分からない装者達だが、ジュード達はなんとなくわかる。

「完璧な世界なんて存在しない。負もまた人の心、それを消すことはできない」

「ああ、だけど彼女は本能でそれを成そうとしているんだ。たとえ世界がとんでもないことになろうとも」

「はあ?」

 全員に疑問が浮かぶが、龍だけはなんとなくわかる。

「全ての負をまとめて消すんだ、世界もなにもかも巻き込んで、どんな結果が起こるか分からない」

「その通り、彼女は結果だけをなそうとしている。過程もその後も何もない。負だけ消そうとしているんだ。その結果、君が邪魔なんだ。同じ理由で生まれたゲーデが」

 それに全員が龍を見る。龍は分かっていた。

「俺の生前、純粋、世界の悪意から偶然条件が整って生まれたゲーデ。向こうもか」

 それら二人は頷く。

「二つの黒と白の純粋な存在か」

「ですけど、片方は黒から人へと変わりました。白は白のまま、黒を全て消すため、全てにあの世界、空間につなぎ合わせようとしてます」

 ルドガーの言葉に、エルフナインは手を挙げる。

「全てと言うと?」

「言葉通り、異次元、可能性、過去の歴史、全ての世界、その負を消すんです」

 ですがと言葉を止め、龍を見る。

「その全てを防ぎ、それと繋がる負がいます」

「俺か」

 原初の負がそれらを止めている。だが逆に原初の負を消せば、世界の負を消せるらしく、その話を聞きながら、もう一つの疑問を聞く。

「あの人の言っていることがわかりません。ミラさんの記憶を都合良くしたり、ジルディアの人達の偽物を作り出したり」

「それは簡単だよ」

 ルドガーは静かに、

 

「彼女は負を感じることはない。自分のしていることを悪とわからず、行動して居るんだ・・・」

 

 全員が戦慄する。ミラは静かに、

「本当よ、それ以外の感情はない。あるのは人々の心の光、それだけ」

「なんじゃそりゃッ」

 これ以上の話は無駄だと、叫ぶクリス達に告げてから、龍は宣言する。

「明日、あの空間に挑む。俺達がしなきゃいけないのは、間違いを認識できないバカを叩いて止めるだけだ」

 それに全員が頷き、

 

 龍を投獄させた。

 

「いいんですか?」

「リュウはああいって、準備中に出向いたの」

「前科持ちだから、マリア姉さん、逃がさないように一緒に見張ってね」

「ええわかったわ」

「んぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」

 口元まで塞がれた龍は、渋々大人しくなる。

 

 

 

 さすがに一度は拘束されたが、もう出し抜かないと言わせて、装者達と最終決戦前のひとときを過ごす。

 決戦は、ゲーデ、装者達、ディセンダー達、そしてルドガーしか出向けない。

 エルフナインやリタ曰く、空間が特殊なため、もどきであるミラと奏ぐらいしか行けないらしい。

 ちなみにゲーデである龍からは、二人は精霊に近い人らしい。新たな命を得たと、ルドガーにもそう言う。

 全員が各々と楽しく会話などするが、龍だけは居心地悪そうな顔で輪から外れているが、このメンバーからは逃れられない。

「龍さんっ」

「・・・響か」

 最近名前呼ぶしないと面倒ということで、響と呼ぶようになる。未来と言う友人も近づき、どうあっても一人になれないらしい。

「最後の戦い、私たちはどうすればいいんでしょうか。どう思います?」

「殴れ、以上」

 そう即答する。響はえ~と言うが、龍は、

「何度でも止めてやればいい、彼奴の善意は間違っているだけで正しい。それを直してやればいいだけだ」

「できると思うの? そんなこと」

 マリアが真剣な顔をして聞くが、それにセレナが答える。

「できるじゃなくってするんだよ姉さんっ」

「アドリビトムは、敵を倒すんじゃないっ。間違いを正してあげるんだっ」

「うんっ、あとはそのためにがんばるだけだねノワールっ」

「おー」

 アドリビトムメンバーはそう宣言して、ユーリもフレンも苦笑する。

「まあバックアップは任せな、俺らがいる」

「君達は君達の戦いを、後ろを任せてくれ」

「やってもらわないとなユーリ先生」

「わかってら~リュウ大先生」

 お互い笑い合う中で、響はその様子を見守る。

 未来だけは何かに気づき、アドリビトムはディセンダーを正すために、明日に挑む。装者達はそれを見ながら、明日を見る。

 

 

 

 響は少し黄昏れていた。

「ひ~びきっ」

「未来・・・」

 後ろから現れた親友に、少しだけ難しい顔をする。

「なに考えてるの響?」

「ん~とね・・・」

 未来に全て話す。

 龍と自分の関係。龍はこの世界、人間に見切りをつけた理由は、自分だと知った。

 それを静かに聞きながら、それでと思う。

「もう龍さんはそのことを気にしてないんだけど、私がね・・・」

「引きずってるんだね響・・・」

「・・・うん」

 彼女は知らない、彼の戦う理由。

 もう聞きたくない声がある。それを知る者は少ない。

「響はどうしたいの?」

「・・・もうできることはないんだよね」

 苦笑しながら、あの光景を思い出す。楽しそうにしている龍。

 もうやることはない。ないのだ。

「・・・あれ?」

 少しだけほほに暖かいものが流れた。未来はハンカチで拭きながら、微笑む。

「悲しいな・・・」

 本当はこの世界でしなければいけないことを、異世界に任せてしまった。

 彼は失った、見失ったものを全て異世界で見つけた。傷付けたのはこの世界、自分なのにと思う。思ってしまう。

「私・・・もうなにもできないんだよね」

「響・・・」

「だいじょうぶ・・・へいき、へっちゃら・・・いまだけだから、未来・・・」

 未来へとだきつく響。その思いを未来が受け止めながら、優しく微笑む。

 

 

 

 ルドガーはミラと共にキッチン室を占拠していて、リタは呆れながら、アルヴィンを見る。

「なぁにしてるのよ」

「まあ、決着つけるんだよ。二人ともエルコンだから」

「そうなの」

 エルは楽しそうに二人を見ながら、おいしい料理を作っている。いいにおいにエルフナインもはっふぅ~と言いながら休憩と共にやってくる。

「エルフナイン、異世界の方は?」

「他の世界でも同じ現象が起きてるようです。ですがアドリビトムや他の世界の方々ががんばってるようです」

「ハロルド達、私たちは異世界の混乱を収めるしかできない。なら、がんばるしかないわね」

 料理はスープ対決であり、ミラはルドガーを睨む。

「お互いブランクがあるからって手を抜いたら斬るわよ」

「お手柔らかに頼む・・・」

 苦笑するルドガーに、エルはスープを楽しそうに食べてる。ミラは得意げに腕を組み、ルドガーは苦笑する。

「二人ともおいし~」

「二人ともっ!? 私の方がおいしいわよっ」

「まあまあ」

「ミラさん落ち着いて」

 そんなやりとりを見ながら、エルフナインは微笑む。

 

 

 

「はあ、色々あったデスね」

「そうだね切ちゃん」

 切歌と調はお互い身体を休ませながら、気になることがある。

「・・・」

 

『あの叫びを聞くよりかはマシだ』

 

 その言葉はなんなのかわからないが、なぜか重く、なぜか心に刺さる。

「・・・死ぬことよりも聞きたくない叫び・・・」

「・・・あの人にはあの人なりの重みがあるんデスね」

「なんの話だ」

 クリス達、響以外の装者の登場にデデースと驚きながらも、調が説明する。

 その話を聞き、翼とマリアはなんとなく頷く。

「最初はともかく、結局彼なりの世界を見て、世界を歩いたってことね」

「私も最初の言葉には含むところはあるが、龍は龍なりの正義があるんだということだな」

 いつも世界の悪を見る龍。それでも、

「それでも、私は完全に悪と彼を見ることはできないな」

 翼の言葉に、クリスはけっと言いながらも、同意する。他の二人もまた同意する。

「ま、まあ、私は助けられた恩があるデスから」

 そう言いながら、少しだけ頬が赤いことに、むっと調は気づく。

「どうしたの切ちゃん?」

「デス? どうしたんデス調」

「少しあの人の肩持つから」

「べ、別にっ、なんもないデスよっ」

 そのやりとりを見ながら、マリアはだけどと、

「だけどセレナのことだけは許さないわ」

「ま、マリア・・・」

「お前、目がマジだぞ・・・」

 クリス達も若干引きながら、マリアは鋭い怒気を放つ。

「セレナを泣かしたら、次元を引き裂いてでも彼を討つわ・・・」

 

 

 

「ん?」

 セレナはカノンノ達と共に、龍を見張る。龍は剣の整備しながら、

「どうしたセレナ?(あとはなにこの殺気)・・・」

「ん~少し、姉さんが少しね」

 そう言いながら、カノンノ達、アドリビトムメンバーと共に、明日を見る。

 白い世界が広がる世界で、龍ははあとため息を吐く。

「一人で行くのはダメだよ」

「・・・」

 龍の考えを見透かされ、龍は黙り込みながら、

「ったく、もういやになる」

 そう思いながら、龍はゲーデの力で世界を見る。

 白い世界に怯え、不安がる悲鳴。

 それでも、

(響の声に比べれば届かねぇ)

 その言葉に怒気が、殺意が、全てが込められている。

 いまだ許せない悲鳴。あの声が全てを、否、本当の自分を知らせてくれた。

 

 壊す、滅ぼす、殺す、倒す。

 

 絶望、嘆き、憎しみ、殺意。

 

 それが己であり、根本である。

 

 それらが血であり、肉体であり、魂であり、心である。

 

 かわらない、変えられない。それこそ自分、それこそ剣崎龍、原初のゲーデだ。

 

 やっとわかった。あの瞬間、悲鳴を聞いて、己がなんなのか知り、そして、

 

「・・・?」

 カノンノは首を傾げ、龍はははっと苦笑する。

 受け入れた仲間達、世界に笑う。

「ねじ曲がった害悪と、純粋すぎる正義。どっちか勝つか・・・」

 そう空を獣のような顔で睨みながら、

「決着つけようぜ、希望」

 

 

 

 白い世界、白しかない世界。

 空間の中、無表情に少女は願う。

「全ての世界に、平和を・・・」

 こうして静かに、全てが始まり、終わる。




次回最終決戦、戦うのはディセンダーセレナ、ノワール、ミラ、奏。
装者、ガングニール響、天羽々斬翼、イチイバルクリス、イガリマ切歌、シュルシャガナ調、アガートラームマリア。
異例、宿命を越えた者ルドガーと、原初のゲーデ龍。
敵は偶然生まれた精霊とも、救世主とも言える者。
お読みいただきありがとうございます。


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狂いきった黒と真っ直ぐ過ぎる白の激闘

最ッ終ッ決ッ戦ッ。


 異次元に渡るために、リタとハロルド、エルフナイン達が用意した転送装置(仮)に戦闘メンバーが集まる。

 向かうは天空にある、別次元の白い世界。その世界に人々は恐れ、怯える中、モニターなど、他の機材も確認する。

「どうやら、他の世界、異次元の現状を知る組織は、モニターで様子を見ることはできるけど、手は貸せないわ」

 リタの言葉に、そうかいとゲーデ状態の龍は言い。盗賊のノワール、剣士のセレナ。

 そしてガングニールの奏は槍を構え、ミラは剣を何度も振るう。彼女の剣はディセンダーの力がある。

 装者達もすでにゲーデイグナイトモジュールであり、その力に不思議な顔をする。

「不思議だな、この姿は通常のイグナイトモジュールよりも安心する」

「デスっ」

「負の力ってわりに、嫌な気分じゃねぇよな」

「それは負もまた心の一部だからだよ」

 ルドガーがそう言い、あとは彼が外殻になればゲートを開き、突撃するだけ。

 その言葉を聞きながら、ジュードは頷く。

「君達が自分の負を受け入れたから、その力が君達を守る力になったんだよ」

「私たちの負が、守る力・・・」

 それに獣のような姿の龍を見る。なぜかいる未来や彼女と同じ、響の友達達が龍に驚くものの、怖いと言うのではないのに、龍は嫌そうな顔をしている。

 響は龍を見ながら、カノンノとセレナが龍を見ていることに気づく。

(どうしたんだろう?)

(・・・まさか、響さんもっ!?)

 そんなこと考える中、龍の背に乗って戦ってみるデスとか言って話しかけてくる切歌に、調はむうと頬をふくらませて、龍を見る。

 龍は微妙な負を向けられながら、ため息をつく。

「もういいだろ、そろそろ切り替えるぞ」

「だな・・・準備はいいかッ」

 弦十郎の言葉に、全員が力強く返事をして、彼らは白い世界へと出向く。

『止めてやるッ、待ってろバカディセンダーッ』

 

 

 

 真っ白な世界、建物らしき壁や床があるが、少し違うだけで、全てが白でできている世界。

 綺麗な純白なのに、彼女たちは嫌な気持ちになる。

「なんでデスかね? こんなに綺麗なのに・・・」

『綺麗過ぎるんだよ、不気味なほどにな』

「そういうもの?」

 調が聞き返す。それにああと龍は告げる。

『響を考えろ、自分が色々やらかしたのに、忘れたようにつきまとってくるん。それを思い出せ』

「どういうことですかそれっ!?」

 響の言葉を無視して、クリスはああと納得する。

 その様子にセレナ達もまた、世界の様子を見ながら、

「たぶんこの先だね」

「うん」

 ディセンダー二人の言葉に、まがい物達も頷く。

「記憶書き換えられたのは、その先よ」

「私もそれだけはわかる、ここに来たからか?」

 ミラと奏はそう言い、ルドガーが槍を構えて見る。

「急ごう」

 歩き出す道は、途中で窓のようなものを見る。

 それを見ると、それは星が移っていた。

「まるでテレビ番組で惑星見てるみたい・・・」

 響の言葉に、龍は窓のように移る星々を見る。そして、

『これは実際ある世界だな』

「実際ある世界って」

『いま現在、この白い世界に侵略されてる世界ってことだ』

「・・・」

 負を感じる、白い世界に不安な世界の声。

 だが龍にとってはどうでもよく、その先に行き。青ざめる。

「・・・」

 全員が黙り込む。まず部屋なのだが、壁らしきものに鉄格子、鎖があり、首輪がいっぱいあり、ボールなど大型犬でも飼うような部屋だ。

『なんの部屋か考えたくない』

「同感だ・・・」

 クリスはそう言い、そのときに進むと、今度は、

「ひいぃ」

「・・・デス・・・」

 滅茶苦茶切り刻まれた龍の写真。壁一面も刃物が突き刺さられたりと、怖い部屋である。誰の部屋かわかるのだが、もう目を閉じて走りたいと思う。

「この部屋の中にいなくてよかった」

 奏がそうつぶやき、ミラもそうねと同意する。

 というか、古い男性の衣類、下着もあるのだが、龍はなにも言わない。考えない。

『先に急ぐぞ』

「はい」

 そして走る中で、扉が見え始める。

「あれは」

『よし』

 そう言って、蹴り破りはいる龍。全員おいっと思ったが、そのまま流れ込む。

 白いドームのような空間が広がり、その真ん中にクリスタルのような球体が浮かんでいる。それだけが水晶のような輝きを持ち、白い色以外のものだった。

「・・・ゲーデ」

『よお、救世』

 綺麗な少女だが、何も感じない。気持ちというものを感じることはなく、彼女の周りに白い剣と盾など、武器と防具が現れ、浮遊する。

「結局争うの・・・」

 それを悲しそうに呟くが、表情は変わらず、感情も感じない。

 悲しい、そう言った感情を感じられない響達は、背筋に冷たいものを感じた。

「終わらせる」

 そう静かにディセンダーは言う。

「全ての世界から負の終わりを」

 こうして白と黒は激突を始めた。

 

 

 

 戦いの様子は、ルミナシア側も見えていた。赤髪の王子、ルークが舌打ちをする。

「くっそッ、見てるしかないのかよっ」

「黙れッ、お前だけじゃないッ」

 同じ顔の弟はそう言うが、ジェイドと言う軍人がモニターを見ながら首を傾げ、キールと言う学者達も気づく。

「なにをしてるんだ彼女たちはっ!?」

 戦いの中、攻撃は龍へと集中する中、彼女へ攻撃するのは、ルドガーと龍だけだった。

 その様子に、響達装者全員、困惑している。

「まるで自分達も分からない顔をしてます」

 すずと言う少女の言葉に、ヒスイもなんなんだと思い、モニターに叫ぶ。

「テメェらなにしてるんだッ、そこの赤いのっ、持ってる銃は飾りかっ」

「・・・なにかおかしい」

 クレスの言葉に、セレナもまた困惑している。

 ルミナシアのメンバー達は静かにモニターを見ながら、その様子を見守るしかできなかった。

 

 

 

(・・・なんで)

 響達は攻撃しようと歌おうとするが、なぜか歌が胸の奥底からわき上がらない。

 なにより、握りしめた拳を、彼女に向けられない。

「ど、どうしてデスッ!?」

「なんで・・・」

 全員攻撃しようとすればするほど、なぜかできない。

 それを見ながら、龍は一人納得する。

『・・・そうか、ディセンダーだからか』

「そうみたい・・・俺達がやるしかないのか」

「・・・」

 少女は無表情で浮遊しながら、ゲーデを見つめる。

「私は救世の輝き、世界が望みし希望であり、正義。故に私は負けることはない。争わず、全てを助け出す」

『この状況でそれを言うかお前ッ』

 どうやら彼女を攻撃対象にできない。することすら考えられないらしい。

 その枠組みの中にいる響達もそれを理解するが、くそっと抗うクリス。

「なんでこんな」

 引き金を引けず、切歌達もどうしてと思う。

「どうして争おうとするの? 私は世界を救うためにしているのに」

「世界を救うためって、どうして龍さんを消さないといけないのっ!?」

 響の叫びに、彼女は真っ直ぐに答える。

「彼は負だから」

 そう簡単に答えた。

「彼は怒りから、嘆きから、恨み、嫉妬、妬み、辛み、苦しみ、絶望。ありとあらゆる世界の負より生まれた存在。いてはいけない、あってはあらない。争いの元凶」

「それは違うッ」

 翼は叫び、それに装者達も叫ぶ。

「確かに私らは最初、こいつが嫌いだった。けどな」

「だからって死んでいい、消えていいって思ったことはないデスッ」

「好きになれないからって、消えていいとは思わないッ」

「貴様のしていることは間違っているッ。龍がいったいなにをしたという」

「負の原初、だからと言って、妹の大切な人、消させはしないッ」

 その言葉を聞きながら、静かに首を振る。

「なにを言っているの?」

 彼女はここで、本当にわからない顔をした。

 

「貴方達は争いを止めたいと願っている」

 

 その言葉に、装者達やセレナ達は戦慄する。

 

「貴方達は絶望を止めたいと祈っている」

 

 手に持つ武器、握る拳から力が抜けていく。

 

「貴方達は悲しみを消したいと思っている」

 

 その瞬間、彼女たちは武器を落とした。

 

「だから私は戦う、貴方達の願いを叶えるために、それらを消す」

 

 そう言って、彼女は銀色の瞳を黒へと向ける。

 

 手には武器を持たず、静かに構えて、

 

「私は救世の輝き、世界の願いにより生まれた存在だからッ」

 

 そして放たれる攻撃に対して、

 

 黒は、

 

『だが届かない』

 

 邪悪に笑った。

 

 

 

 黒い魔剣のようなギザギザの刀身を振るい、より強大な負へと変わり果てる。

 獣の雄叫びを上げ、人の原型などは無く、口を開く。その口は真っ黒な闇しかなく、紅と金の瞳、刃の髪を振るい、白の奇跡を砕く。

『お前は真っ直ぐすぎる、俺を滅ぼせない』

 紫の炎をまき散らし、獣は疾駆して希望を砕く。

『力無き希望は絶望に負け』

 光の魔術が放たれるが、ただの雄叫びが、それをはじき飛ばす。

『祈りなぞ、無慈悲な力の前では何者にも届かない』

 刃を向けて、槍のように盾へと突き刺す黒。

『ただ助かりたいだけのものの前に、癒しなど現れない』

 それを砕き、初めて彼女を刀身で吹き飛ばした。

『そして憎しみは、けして消えず、燃え上がり続ける』

 そして獣は最終形態のように、巨大な龍神へと変わる。禍々しき、魔なる存在。

『貴様は何も救えず、守れず、助けられることはなく消えるだけの存在だ』

 原初のゲーデはそう言い、ルドガーはみんなをまとめて、その様子を見る。

「どっちが悪だよ・・・」

 誰かがそう呟いた。

 

 

 

「くっ・・・」

 悔しそうに立ち上がるディセンダーに対して、はあとため息を吐く。

『無駄だ、貴様じゃ俺は倒せない』

「私は諦めない」

『諦めなければ奇跡が起きる? 無駄だ、奇跡は貴様には訪れない』

「・・・そのための」

 そのとき、水晶が輝く。頭上の水晶を見上げ、ゲーデは静かに睨む。

『貴様ッ』

「準備はしたッ」

 突如色の付いた鎖が装者達に放たれ、ルドガーが槍を振るう。

 だが、それと共にジルディアの民が現れ、ルドガーを止めた。

「くっ」

「放せデスっ」

 装者達がドームを六角形に囲むように、魔法陣に繋がれた。

 その真ん中にいる龍は剣を構え、飛翔して水晶へと剣を突き刺そうとしたが、

 その前に歌が流れる。

 

 

 

「これはっ!?」

 エルフナイン、司令室に戦慄が走る。

 それは世界を壊す歌、ある錬金術師が歌った滅びの歌。

 それをいま、装者達が歌い始めている。

 

 

 

「なっ」

 ゲーデの鎧が消え始め、舌打ちしながら、地面に降りる。

 そして水晶の中に眠る少女を見る。やはり、

「エルフナイン? なんでエルフナインが水晶の中で歌う?」

 そして無理矢理響達も同じ歌を歌う。それを聴くと、頭の中で雑音が頭の中をかき巡る。

 頭痛なんて生やさしいものではなく、そこに白い閃光が放たれる。

「おっと」

 それをよけながら、少女はルドガーを見る。

「いまのゲーデを貴方に倒して欲しかった」

 そう呟きながら、装者達は口を閉ざそうとするが閉ざせず、歌を歌う。

「貴方を滅ぼすための準備はした」

 そう言いながら、無数の武器を作り出す少女。

「まずは力を集めた。滅びの歌い手、次元に落ちた子、そして宿命を越えた者。滅びの歌を強化するための力」

 その話を聞き、龍はかみ砕き考える。

 つまり、水晶の中の子が歌う歌を強化するため、響達の力が欲しかった。

 次元の落ちた子はミラであると知りながら、ため息を吐く。

「・・・負が使えない」

「この歌は貴方を滅ぼすための歌、本当は作り出した子達は歌いながら貴方を倒させるつもりだったけど、仕方ない」

 そして静かに、水晶を背にしながら、

「もう終わりだよゲーデ。奇跡はいつだって、勝つの」

 そう言い、無数の閃光が、雨のように放たれる。

 

 

 

 フ・ザ・ケ・ル・ナッ

 

 

 

 白い閃光を剣のみで切り伏せ、龍は前進する。

「なっ・・・」

「初めて感情らしい顔見せたな」

 そう言いながら、ジルディアの民もまた向かってくるが、それもわかる。

「コピーか、んなもんに負けるか」

 拳を握りしめて、粉々に砕く。これはもう身体能力のみ。それに驚愕する。

「そんな、どうして」

「どうしてだと? 簡単だ」

 白い閃光を切り伏せながら、龍は彼女を睨む。

「お前の正義は薄っぺらいを通り越して、意味がない」

 ただ頑丈な剣だけで戦う龍に、セレナは微笑む。

 いつだってそうだと、セレナは確信する。

「うん、お願い・・・私の、私たちのディセンダー」

 そう龍に告げる。

「お前は犠牲を持って、世界を救おうとする。その時点でお前は俺に勝てない」

 そう言いながら近づく。それに驚き、攻撃を強めるが、届かない。

「正義とはこの世に存在しない。なぜならば、誰かを救おうと戦う者、それを見て悲しむ者がいる限り、絶対な正義なぞ存在しない」

 そう言いながら、どんなに攻撃の嵐が強まろうとも引かず、前に進む。

「お前は戦うのを、傷付けるのをやめた者達を戦場にかり出させた。そして、負を消す名目のもと、彼らを使い、他の世界までその手を伸ばした」

 彼女は驚く。初めての感情、龍はただ剣を振るい続ける。

「お前は俺を滅ぼすために、犠牲を生み出そうとした。それがどれほど身勝手な偽善であろうとも、いな、それすらわからない。哀れな救世主」

 そして静かに、

「俺を殺せるのはただ一つ」

 剣ではなく、彼女の前に立ち、

「こんな俺を仲間と言う、優しい言葉だけだ」

 そう言って、チョップを頭に放ち、そのあと剣を担ぎ、飛んで水晶をたたき壊す。

 その様子にセレナ、そしてカノンノは思う。

((やっぱり、貴方らしい・・・))

 そう微笑みながら、そのあと、彼女に着地する龍を、セレナが殴った。

 

 

 

「もう、龍っ」

「いやだって、いちおう敵だろこの子」

 そう言って、お姫様だっこで持つエルフナイン似の少女を床に置く。

「この子だれや? 見た限り、奏さんみたいに、肉体がないのを無理矢理器作って押し込めたようだが」

「それじゃ」

 響達も近づき、その言葉に驚き、名前を呼ぶ。

「キャロルちゃんっ」

 そう言って揺さぶると、かすかに反応を見せて、目を覚ます。

「・・・」

 そして響の顔を見て、

「見たくない顔を始めに見たな」

「キャロルちゃんっ」

 うれしそうにだきしめ、だきくつくなと怒鳴るキャロル。

「とりあえずそっちはいいが、もう片方は気絶してるか」

 顔に足跡を付けたディセンダーを見ながら、やれやれと思う。

「お前、このままでいいのか?」

 だきつく響を睨みながら、キャロルは龍を見る。

「わかるのか?」

「俺は始まりからこいつの暴走を見てたからな、こいつがなんであり、そのためにあろうとしたかわかる」

 それに龍はそうかと頷く。

「それって」

「こいつは善意で生まれたが、吐き気がするものだ」

 キャロルは静かに、立ち上がり語り出す。

「希望、正義、慈愛から生まれたが、どれもこれもひどいものだ」

 希望は自分は助けられ、救われる。といった、根拠無い何かに期待するもの。

 正義とは、自分は正しいと思い上がった思い。

 慈愛は、結局のところ、相手を可哀想、助けなければいけないと言う、見下し。

「そいつはそういう、第三者や当事者の心境なんかお構いなしで生まれた、白と言う名前を借りた奇跡だ。俺が最も嫌うものだ」

 自分しか救えないと言う正義感など、彼女はそういった思いから生まれた救世主。

「身勝手な人達の思い、こいつも被害者か」

「お前もそうとう歪んでるがな」

 キャロルはそう言いながら、気絶している少女を見る。

「とりあえずこの世界を壊すか、そうすれば」

「またやるだろう、ここでこいつを殺せゲーデ」

「断る」

 キャロルの言葉を無視しながら、龍は剣を肩に置く。

 その言葉になぜだと見ると、

「そんなん、めんどくさいからだ」

「・・・」

 世界すら巻き込んだ、偽善者の処罰を、面倒と言ってやらない龍。なによりと、

「こいつの偽善は世界が背負わなきゃいけないもんだ、無いことにするなんて許されないぜ」

 そう言い、セレナはそれに微笑む。

 みんなもまた複雑そうな顔をして、セレナは彼女を背負う。

「それじゃ、この子はアドリビトム、ルミナシアが預かりますっ」

「それでいいだろ、人手不足でマスターが喜ぶ」

「・・・いいのか?」

 クリスがつい聞いてしまう。世界を巻き込んだ偽善者、それに対して、邪悪に笑う。

「文句があるなら滅ぼすだけだ、そいつを。俺は世界の害悪だぜ」

 その言葉に、全員が唖然となるが、セレナは得意げに胸を張る。

「こいつは間違っていた。だが、悪として裁く権利は誰にもない」

 そう告げて、ルドガー達は苦笑する。

「君は強いな」

「勝手なだけだ」

 そういい、響だけその様子を見て、顔を伏せた。

 彼は前を向いている。生まれた世界で傷付き、異世界で顔を上げて歩いていた。

 それを直視できない。

「んじゃま、外から壊せるか、色々と・・・」

 そう思ったとき、世界が揺れた。

「なん」

 そのとき、龍以外の足下に魔法陣が現れる。

 

 

 

「えっ・・・」

 響達は驚き、辺りを見渡す。どこかの岬、全員が警戒する。

 空には白い世界が広がっていた。

「これって」

「!?」

 翼はすぐに通信機を取り出し、コールに出る。

『全員無事かっ!?』

「司令ッ、これはいったい」

『わからんっ、だがいま君達が居るのは俺達の世界だ』

「なぜ龍はいないんデスっ!?」

 セレナは背負っている少女を見るが、彼女は意識を取り戻していた。

「・・・何が起きてるの」

 彼女も驚き、そのとき、誰かが現れる。

「!?」

 弦十郎達、ルミナシア、グラニデを始め、異世界に関われる者達が驚く。

 それは、

『我らは精霊、大儀であった、戦士達よ』

「異世界の精霊達っ!?」

 それに驚くセレナ、火の精霊は代表のように叫ぶ。

『貴殿らのおかげで、世界の異変を回避、そして災いを納めることができた。礼を言う』

「お礼・・・いや待てっ」

 ルドガーが叫ぶと共に、何かが放たれ、火の精霊達は怪訝な顔でそれを防ぐ。

『・・・どういうことだ、他世界の原初の精霊よ』

『それは僕らのセリフだ、火の精霊』

「オリジンッ!?」

 白い少年が、ある精霊達と共に現れる。その一人はミラと同じ姿をしていた。

「ミュゼ、ミラ」

「ごめんなさいルドガー」

「いま話している暇はないッ、そこの精霊達の暴挙を止めるッ」

 そう言って飛翔するが、土の精霊が岩の壁を張る。

 だがミュゼと言う精霊がそれを吹き飛ばし、剣を振るうが、水の精霊が槍で止め、時の精霊クロノスは、ルドガーのもとへと来る。

「やはり我らでは白い世界には関われない、白きディセンダーよ、お前の力でゲーデを呼び起こせ」

「なにを」

「このままでは原初のゲーデはお前の世界ごと消えるっ」

 全員が驚き、精霊を見た。

『いまこそ世界の始まりたる負を消す。それが世界のためだ』

「なにを」

 そのとき、白の世界に違和感が、閉じていくように空間が閉じていく。

『白き世界へと幽閉し、負を永劫の時に閉じこめる』

「どうしてそんなことするんですかっ!?」

 響の問いかけに、精霊達は、

『負だからだ』

 そう答えた。

「ふざけんなっ、彼奴は精霊に頼まれて、異変を終わらせようとしてたんだぞッ」

 クリスが銃器をぶっ放すが、風の精霊がその機動を変える。

 精霊ミラは水の精霊と戦いながら、

「始めからそのつもりだったのだっ、彼女、純白のディセンダーを利用して世界の負を消すのが目的。ルミナシアの精霊すら騙したんだっ」

 そう言われ、全員が驚く。オリジンは、彼は怒りのように彼らを見つめる。

『君達は世界を越えて、別の世界に関わり、変える権利はない。それくらいわかるはずだろ』

『ならばこそ、全ての世界の汚点たる負を消すのに何が間違いがあるオリジンよ』

『むしろ貴様がおかしい。なぜ負を受け入れる』

『なら君達の世界はどうだ? 負を否定して平和な世界かい?』

 オリジンの問いかけに精霊達は黙り込む。

『それが答えだよ。負を一方的に否定した結果、世界はねじ曲がったんだ』

『違うッ』

 火の精霊が燃え上がりながら、辺り一面に放つ。それに翼とマリアが剣を取り向かう。

「少なくても、貴方達が敵なのはわかったわっ」

「龍は消させはせぬッ」

 

 

 

「・・・」

 その様子を見ながら、少女はわからない顔をする。

「どうして争うの」

「どうしてって」

 響は彼女は困惑しているのがわかる。その手を握り、響に聞く。

「貴方だって恨まれ、憎まれた。悲しい思い、辛い思い、苦しんだはず」

「それは・・・」

 それに黙り込む響、そして言う。

「あなたは彼を目覚めさせた」

「えっ・・・」

 それに世界が歪んだ気がした。

「貴方の心の悲鳴が、彼のゲーデを目覚めさせた。父親が居なくなった日、心の悲鳴がゲーデを起こした」

「わた、しが・・・」

 それに全員が驚く中、世界が閉じようとしていた。

「まずい、純白のディセンダーッ、原初のゲーデをこの世界に呼べッ」

「断ります、彼は消えるべき存在です」

「違うっ」

 響が叫ぶ。だが彼女は、

「彼がいなくなればもう悩む必要はない」

 そう優しく、響に語りかける。

「もう父親が戻ってきて、家族が貴方は傷付く必要はないんだよ」

 そう言った。

 そのとき、響は、

「違うッ」

 はっきりと響はやっと、答えを得た。

「私の所為で傷付けたんなら、私は龍さんとお話ししたいッ、向かい合いたいッ」

「どうして? 辛いだけだよ、苦しいだけだよ?」

「それでもッ、私は逃げないッ」

 そう叫び、響は彼女の手を取る。

「私は向かい合うッ、彼に向かい合いたいッ。だからお願いッ、龍さんを」

『させるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』

 炎の剣が、響達へと振り下ろされる。

「響ッ」

 

 

 

 爆音が轟き、炎が舞う。

 響は、立ち上がり、辺りを見た。

『なぜだ純白のディセンダーよ』

 彼女は傷付き、精霊を見る。響を突き飛ばし、響を守った。

「・・・私は」

『まあいい』

 いつの間にか世界の空が、元に戻っている。

 全員がそれに、絶望した。

『これで原初の負は消えた』

『君達は・・・』

 オリジンは悲しそうにそれを見て、精霊ミラとミュゼは精霊達を睨む。

『なぜ怒る? 災いが消えたのだ、これで我らの世界もまた救われっ』

『愚かな、君達の世界の問題を、彼に押しつけて・・・』

 オリジンはそう言うが、精霊達は聞かない。

 セレナは呆然と立ちつくしていた。

 そのとき、

「!?」

 空間に亀裂が走る。

 そこから、

「負の気配っ!?」

 全員が驚き、亀裂を見る。

 精霊達も戦慄する。セレナ達は、

「!?」

 セレナは驚き、剣を構える。

「これは違う、龍じゃないッ」

 そう言って現れたのは、

「ヌオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ」

 現れた者に、彼女は驚く。

「どうして・・・」

『バカな、念のために用意していた力が、暴走しただと』

 火の精霊がそう言い、現れた斧を持つ凶戦士。

 青い髪の大柄の男。鉱物の身体を持つそれは、世界を見渡して叫ぶ。

「・・・とりあえず、殺すか」

 凶戦士バルバトス、精霊が純白のディセンダーが失敗したときに利用しようとした力が、いま裏目に出て世界に出現した。




・・・駄文じゃないか。
考えたシナリオと違う気がする。急展開過ぎないか、自分。
ラスボスが純白の彼女だと思った? バルバトスさんがラスボスですっ。
次回語り足りない部分を補えないといけないな。
そんなことを考えつつ、ここで。
お読みいただき、ありがとうございます。


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自由の旋律

バルバトスを躊躇無く出したんだ、もはや何も考えない。
考えるな、もう考えずに物語を打ちます。いや撃ちます。
ではどうぞ。


 現れた男は手当たり次第に暴れ出す。

 その男は凶戦士バルバトス、かの者はありとあらゆる次元と時空、可能性の中で英雄を殺し続けた実績を持つ、邪悪な人間だ。

 そう考えていた精霊達は、驚愕している。

『バカな、ただの人間が、どうしてあれほどの力をッ!?』

 大量の瘴気を全身からはき出し、斧を振るう。

 この場所は人気の無い砂浜だが、海水が汚染され毒水へかわり、魚が次々と浮かぶ。

 木々は枯れていき、空気を吸う装者達は立っているのでやっとであり、いまバルバトスと戦うのは、ルドガーとセレナ、ノワールの3人。奏とミラはみんなを守るために、参戦できない。

「くっ・・・」

 顔を歪める翼だが、ミラ・マスクウェルを始めとした精霊達が結界を張る。

『どうなっている異世界のオリジン、なぜ人が、これほどまでの負を自在に操るッ!?』

『彼がそういうものだからだよ』

 オリジンが困惑する精霊達に、装者達を始め、この光景を見るもの達に説明する。

『彼は君達がつなぎ合わせた負のたまり場に幽閉されていた、その場は原初とも言える自然発生させる、ゲーデやディセンダー製作所と言っていい場所だ』

『ああ、その場所で純白のディセンダーは、ジルディアの民、装者のゲーデを己の力で作り出した』

 その言葉に、彼女は目の前の光景に驚いていた。

 精霊は間髪入れずに、オリジンに聞く。

『だがどれも彼女には逆らえないし、彼女以上の存在に昇華することはない。負や宿命を越えた者以外、彼女に危害を加えられる存在はいないぞ』

『いや違うよ』

 オリジンはそれを否定して、純白のディセンダーを悲しそうに見つめる。

『彼はたまり場に放置されながらも意志保っていた。もう一度英雄と戦いたいと言う、願望だけでね』

「そんなこと、できるはずがない・・・」

 彼女は驚きながら聞き返すが、それに首を振る少年オリジン。

『事実だよ、彼は君の力を越えて、原初のゲーデのように器を得てた』

 白の世界が閉じ、一瞬、その一瞬負を抑える力が消えた瞬間を、彼は見逃さず、この世界に顕現した。オリジンの言葉に、彼女は青ざめる。

「なら私が彼を倒します」

『君は無理だ、彼はディセンダーにより生まれたゲーデ、だから』

 戦いの中、セレナの一撃、ノワールの連撃はまるで意味が無く、ルドガーの隙を作るのでやっと。そこに連携が取れない彼女が入るのは悪手でしかない。

『いや、純白のディセンダーならば、人間の負なぞ簡単に』

『いい加減にするんだッ』

 オリジンの言葉に、精霊達は黙り込む。

 ミラ・マスクウェルもまた、それに同意する。

「まだわからないようだな、この事態はそもそも人から生まれた負がいくらあろうと問題ない、そう判断したお前達が引き起こした異変だぞ」

『それは・・・』

 言葉を失う精霊と彼女。

『・・・なぜだ』

 精霊の一人がその状況下で、静かに戦いを見る。

『なぜ一人の人間風情の負が、世界をかえられる・・・』

 そう呟く中、オリジンは静かに答える。

『負に大小なんか関係ないんだよ』

 誰かを見下す、誰かの思いを無視する。

 身勝手な者一人居るだけで、世界はこうもかわる。そうオリジンは告げる。

『僕はかつてオリジンの審判なる試練を、人類に与えた。答えとなるものが存在しないという、理不尽なものだ』

「オリジンの審判・・・」

 ミラはかすかにオリジンを見る。その目には少しばかり殺気がある。

『僕の試練は多くの人の人生を狂わせた、人から見れば僕は悪だろう』

「どうしてそんなことをしたんですか」

 響が苦しみの中で、オリジンに問うたとき、オリジンはすぐに、

『必要だから』

「えっ」

『僕の世界では精霊と人の間に深い溝があった。そしてその溝をほおっておけば世界はどっちに傾こうと、最後には破滅しかないことを知り、それを防ぐための試練だった』

 オリジンは語る。たとえ争う関係になったとして、精霊が勝とうと、人が勝とうと待つのは破滅だと断言する。

 それは、

『それはお互いの中に、自分とは違うものを否定する、心があるからだ』

『だからこそ負が害悪だろうッ、それがなければ』

『だが、負を害悪と言うのも、負だろう?』

 それに精霊達は衝撃を受ける。

 響達を静かに見つめながら、彼らに示す。

『彼女達は原初のゲーデと、自らの負を受け入れ、その力を守るために使っている。この力は世界にとって害悪かい?』

『そ、それは・・・』

『君達は負を利用しているように見えていたようだけど、ここからは彼女達の言葉がいいか。頼めるかい?』

 オリジンの問いかけに、響達装者は、静かに精霊達と、彼女を見る。

「私は最初、パパとママが大切にした世界を否定した彼奴が嫌いだった」

 クリスはそう言い、切歌と調も静かに頷く。

「デスが、あの人にも、あの人なりの理由があるとわかったデスし、嫌いだからと言って、嫌いのままじゃないデス」

「まだちゃんとお話ししたい、少なくても、ゲーデなんてことは、私たちには関係ない」

 そう言われた後、マリアは少しだけ複雑そうに、

「私の妹、セレナの大切な人よ。嫌いだけど、あの子が大好きな人なんだから、邪悪ではない。それ抜きにしても、私は彼の存在が悪と思えないわ」

「ああ、仲間のために血を流す、防人の一人だ」

 そして響は胸に手を置きながら、静かに、

「私は、あの人を嫌いにはなれません・・・私がゲーデを、あの人を傷付けたのなら、ちゃんと話がしたいです」

 精霊達は愕然とする。なぜだと呟くことすら無意識に。

『なぜゲーデが受け入れられるッ!?』

『ゲーデを受け入れてるんじゃないよ』

 オリジンは、軽く微笑む。

『剣崎龍という、人間が受け入れられている。こんな風にね』

 

 

 

『戦迅狼破』

 戦いの中、真横から現れたユーリに、バルバトスがムッと顔を変える。

「貴様か剣士ィィィィィィィィィィィィィィィ」

「僕もいるし、どうやら、もの凄いことになったみたいだよ」

「!?」

 空間がひび割れ、一隻の船が現れる。

 空を飛び、何名かが飛び降りて、剣を振り下ろす。

「でっやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 バルバトスはルークの剣を防ぎ、続けざまに入る剣撃をさばきながら、アッシュは叫ぶ。

「一番に出てるんじゃねぇッ」

「うるっせぇよっ」

「ケンカしている場合か」

 セネルが拳を振るいながら、猛攻する。

 船からビビと音が鳴り、すぐにジェイドの声が響く。

『敵は瘴気をまき散らしてますから、回復されながら戦ってくださいっ』

『ユーリっ、援護は任せてッ』

『熱々おでんがあるのじゃから、早めに終わらせるぞっ』

「こりゃまた・・・カロル大先生達か」

 ユーリが呆れながら、攻撃を休めず、シングが輝く剣を振るう。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ輝けッ、俺のスピリアッ」

「でばってんじゃねぇッ」

 紅い目のエミルが叫びながらラッシュが続く。それにバルバトスは叫ぶ。

「図に乗るなアァァァァァァァァァァァァアッ」

 闇の槍が地面に放たれ、その余波だけでダメージを受けそうになるが、全員が回復魔法など飛ばしながら、援護射撃する。

「レイモーンの民の力、見せてやるッ」

「凍えろッ」

 海上はすでに干上がり、戦える。岩場で数多の魔法と剣、武が混じり合う。

「バルバトスッ」

「カイルかッ」

 バルバトスは嬉々としてカイルを見たとき、スタンも駆けながら戦う。

 矢も入るのだが、バルバトスに変化が起きる。

「アアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」

 体中が鉱石にかわる、元々怪物のような男が、よりそれを増す。

『バカな、己の負だけで、世界の理を凌駕するかッ!?』

『それもまた人の可能性だよ』

 オリジンの言葉に、全員が戦慄するが、

 

 

 

「キュッキュ~エネルギーチャージ完了っキュ」

「いくでも撃てますっ、ジェイドさん船長命令です」

「はい撃ちます♪」

 仲間がいるのもお構いなく、敵へ一斉砲撃する船。

 仲間達が一番驚いた。

 

 

 

『マダダ、マダオワラヌハッ』

 煙の中、黒いもやを出すバルバトスに、無数の影が現れた。

『冥空斬翔剣ッ』

『皇王天翔翼ッ』

『極ッ光ッ剣ッ』

『斬ッ空ッ、天翔剣ッ』

『天翔ッ、蒼破斬ッ』

『セルシウスキャリバーッ』

『殺撃ッ幻竜陣ッ』

『レイディアント・ハウルッ』

『ビーストブロウッ』

『魔王灼滅刃ッ』

『天翔光翼剣ッ』

『アイン・ソフ・アウルッ』

『翔旺神影斬ッ』

『獣破轟衝斬ッ』

 弾幕の中と共に、彼らは全員、各々の技をたたき込む。

 

 

 

「あのっ、馬鹿者どもがッ」

 魔術師組が術式を完成させて、どうするか思案するが、

「お仕置きもかねてだッ、覚悟しろッ」

 躊躇いもなく、

 

 

 

「ウチらもやるよッ」

「オッサン前衛じゃなくってよかった~」

 矢弓もまた、放たれる。

 

 

 

「って、仲間ごとかよっ」

「ど派手だね~」

 奏も苦笑する、容赦ない攻撃の中、それでも前衛は駆ける。

「どうして」

 彼女は困惑する。

 それにアルヴィン達、ジュードも現れ、ミラ・マスクウェルは微笑む。

「どうやら、彼らは信頼しあっているようだな」

「しんらい?」

 彼女はそうつぶやき、アルヴィンは苦笑する。

「攻撃はたから見れば、敵味方問わずだけど、不思議だな・・・絶対に当たらないって確証できるな」

「相手と相手、すっごく信じ合ってますっ」

「うんっ、凄いよアドリビトムっ」

 全員が信じている。不思議とそう感じる戦いに、オリジンは問う。

『君達の目から見て、彼らはどう映る?』

『・・・信頼しあっている、少なくとも、彼らから負は感じない、むしろ』

『むしろ、希望の、救世の輝きを感じるだろ?』

 それに精霊達が頷く。彼女もまた、

『そして彼らは信じている』

 そう、信じている。

『立花響』

「え、は、はいっ」

 突然話しかけられた響に、オリジンは伝える。

『君に原初のゲーデがどんな存在か、教えてあげるよ』

 

 

 

 それは暗闇の中で生まれた。

 

 暗闇の中、顔を上げれば光り輝く星々があった。

 

 それは自分を呪った。自分と言う存在を呪う。

 

 それは自分を食い始めた。何度も食った、自分自身を。

 

 上を見上げれば星々の輝きが見えた。それがまぶしく、それから逃げるように暗闇の中で、自分を食べ続けた。

 

 自分を憎んだ、自分を嘆いた、自分に絶望し、自分で苦しんだ。

 

 憎しみを憎み、嘆きに嘆き、絶望に絶望し、苦しみに苦しみ続けた。

 

 そして、それは負を食べ続けた。

 

 

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 セレナは戦う、自分の攻撃が意味もないのを感じながらも、それでも戦う。

『ジャマダコムスメぇぇぇぇ、オレハタタカウ、エイユウぅヲコロスぅぅ』

「邪魔するよ、彼が来るまで」

「うんっ、諦めないッ」

 カノンノと共に剣を構え、クロスさせて斬りかかる。

 光の斬撃を片手で止めるが、それども仲間達の援護は尽きない。

『ナゼオキラメナイぃぃぃ』

「それは」

「彼が来る前に終わらせたいからッ」

 その真っ直ぐに告げて、彼らは駆けた。

 

 

 

『ありえんッ、永劫と化した空間から抜け出すことなぞできぬッ』

『それでも信じている、彼が来ると』

「・・・」

 響がそれを聞きながら、オリジンは訪ねる。

『君はこのまま止まるかい?』

「えっ・・・」

 響は白い精霊、オリジンに見つめられながら、考える。

「わた、しは・・・」

 瞬間、翼達、装者のゲーデ装甲が外れた。

「時間切れかッ!?」

 響のも外れたが、響は動じずに考える。

「私は」

 立ち上がった瞬間、黒い闇が吹き出す。

 赤い目となり、響は獣のようにバルバトスを睨む。

『コチラガワニキタカ、コブシノ』

 その言葉に、

「違うッ」

 装甲が闇の中に入り込み、獣と化した響は叫ぶ。

 

 

 

「私は立花響だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ」

 

 

 

 その瞬間、赤い目の響が闇から現れる。その全身が、ゲーデ装者の鎧に身を包み、髪の毛も伸びて、背丈も少し大きく成長していた。

 その目はゲーデと同じ、金と紅の瞳に変えて、

「彼が来る前に、貴方を倒しますッ」

 そして黒い閃光が、凶戦士へと迫った。

 

 

 

「・・・もう無理かよ」

 ユーリ一同、全員が歯がゆくその光景を見る。

 二人して空を飛びながら、戦っていた。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

『フンッヌウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ』

 大気が揺れ動く中、響は真っ直ぐにバルバトスを見る。

『ドコカラソンナチカラヲダスっ!?』

「私、わかりましたっ。ゲーデの、原初のゲーデが人間になったのがッ」

 そう叫びながら、蹴りが巨斧の一撃を塞ぐ。

「あの人は怒りに怒り、憎しみを憎み、悲しいことを悲しんでくれた。他人の、もして関係ないことでも」

 拳と闇の槍が交差するが、拳が闇を粉々にする。

「あの人は、誰かのために怒り、憎み、苦しみ、悲しんでくれる・・・だから人になったんだっ、間違いないッ」

 そうはっきり、満面の笑みで答え、拳を構える。

「だから私は、彼とまたお話ししたいッ。その前に、貴方を倒さないと」

 その一撃に、全てを込めて、

「あの人が貴方と戦うからッ」

 放つ拳、だがバルバトスが巨斧を折り下ろす。

 激突する中、響の顔が歪む。

 その瞬間、

 

 

 

『だから、勝手に美化するなッ』

 

 

 

 そう言い、空間から巨大なドラゴンが現れ、バルバトスへブレスを吐く。

 現れたそれに、精霊達は驚く。

 空間を無理矢理壊して、それは現れた。

 禍々しいのに、その背中を見たとき、装者達は安心する。

「龍さん」

『ったく、出るのに苦労した』

 現れたのはもはやドラゴン。どっから見ても悪しきドラゴンなのだが、怖いとかそんなことはなかった。

『んじゃま、歌い手なんだから歌え、アドリビトム面々、俺を足場ってッ、誰かすでに背中上ってるなッ!?』

 巨大なドラゴンを足場に、第二ラウンドと言わんばかりに戦う準備する面々に、龍は文句を言うが、まあいいと呟く。

「みなさん、力貸してくださいッ」

「おおっ、異世界のかわい子ちゃんに頼まれちゃ、お兄さんがんばるしかないねぇ」

「あんたはいつもがんなっ」

「がんばろうねっ」

 全員が乗り、セレナが剣を構える。ゲーデに乗りながら、セレナが、

「・・・ちなみに、スカートの中見えてないよね?」

『見えるかッ』

 そんなことをいいながら、そして、

『全力で飛翔するッ、その瞬間全部の力で殺れッ』

『おうッ』

「わかりましたッ」

 原初の負が闇を、セレナが光り、響は歌を纏いながら飛翔する。

 バルバトスはそれを真っ向から砕くと、武器を構える。

 

 そして、

 

 一人の凶戦士と、仲間を持つ闇がぶつかり合う光景を見ながら、

 

「・・・私は・・・」

 

 静かに涙を流しながら、

 

「ただ世界を、救いたかっただけなのに・・・」

 

 間違いに気づき、膝をつく。

 

 砕けた上半身がまだ動くが、闇のドラゴンが姿を化し、人の姿になる。

 

 その姿はまるで、

 

『闇のディセンダー・・・』

 

 オリジンはそうつぶやき、バルバトスを砕く。

 

 その後何名か海に見捨て、何名かを髪の毛で守るゲーデであった。

 

 こうして、異世界の希望と絶望の争いは、希望の絶望が勝利を収めた。




 暗闇の中、それは自分を食べていた。

 なぜ? だって、自分がいれば、あれを壊すのだから仕方ない。

 星々を見上げては、自分を食べ続けた。

 そして静かに、それから遠ざかる。

 触れたかった、側にいて欲しかった。

 だけどだめだ。壊してしまうから、だから背を向けた。

 そしていつからか、いつの頃かわからない。

 黒はいつの間にか、人になった。

 誰にも分からない、奇跡か絶望か。

 オリジンを始めとした、世界の意志は、その判断は人に任せた。



次回完結、お読みいただきありがとうございます。


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黒の輝き

全ての戦いが終わります。それではどうぞ。


 結局その後、全てが終わった後は関係なかった。

 まずは事故処理だが、それは司令こと、弦十郎達の仕事であり、自分達はあとは帰るだけだった。

 それも、早急にだった。

『もともと無理して君達を呼んでしまった。その辺りはすまないと思っている』

 オリジンはそう言い、むしろ早く帰らせないといけないからいい。アドリビトムは問題児が多いし、エステル王族達もいるのだから、響が遊びに連れて行きそうなのを止め、未知なる輝くに触れようとするもの達を止めたりと、大変だから一日も早い、もう帰りたい龍であった。

 そして話を進めて、わかったことは、ミラはミラの世界に滞在できないらしい。

『彼女の身体は無理矢理作られた。ミラ、キャロル、奏、そして彼女は世界樹がある世界でしか、身体を維持できない』

「・・・そう」

 短く返事をして、悲しそうにルドガーを見る。ルドガーはどうやら問題ないらしい。

「なぜだオリジン」

『簡単な話、彼はそういうものを乗り越えた存在だからだよ』

「そう言えば何でも在処よ」

 詳しい話をすれば、時空間の問題らしい。

 彼女は本来、青い色の世界のものを、赤い世界に呼んだようなものだと説明する。

 別の世界の色が混じり合えば、世界は悪い方へとねじ曲がるが、白の力である彼女はそれをねじ曲げた。

 だが、その根本たる世界が消えた以上、元々の世界、もしくばそれに近い世界にいなければ生きられないと説明する。

『次元と別次元の波長を合わせること、むしくば繋げることができればいいんだけどね・・・』

 そう呟いた後、少しだけ微笑む。

 全員が怪訝な顔をしたが、結果、こうなった。

 ジュード、アルヴィン、レイア、エリーゼ、ティポ、エル、ルル、ミラ・マスクウェル、ミュゼはオリジンとクロノスの力でもとの世界に戻り。

 ミラとルドガーは、ルミナシアで過ごすらしい。

「どうしてそうなるのよっ」

 ルドガーに怒鳴り散らすミラだが、エルは、

「大丈夫、エルは一人で、二人の帰り待ってるからっ」

「エル・・・」

「そういうことだよ、ミラ」

 その後、彼らは彼らで話し合いが始まり、彼女達の物語も終わりが近づく。

 

 

 

「・・・・・・・・」

「キャロルちゃんキャロルちゃん、お洋服買いに行こうよ~」

 キャロルはモニターでエルフナインの仕事を手伝っていた。

 不機嫌な顔をしながら、響から顔を逸らす。

「ったく、俺まで生き返る形になりやがって・・・ご丁寧に、失った記憶やその後もあるし、あの女、一度分解してやろうか・・・」

 かなり物騒なことを言いながら、響にまとわりつかれ、ぶち切れるまで耐えるのであった。

 

 

 

「ってわけだから、向こうでトップアーティストでもなるわ」

「・・・そんな簡単に・・・」

 翼達、司令官は奏の言い方に呆れながらも、奏はあっははと笑う。

「ん~まあ、なんか、あのギルドの面々見てれば、なんとかなる気がしてな。あんまり深刻に考えられないんだよこれが」

「それもそうだね」

 翼はそう言いながら、奏はだきつく。

「まあそういうわけだから、泣くんじゃねぇぞ翼っ」

「ちょ、泣くわけないでしょっ」

 そんなやりとりの中、彼女たちの物語も終わりに近づく。

 

 

 

 マム、ナスターシャ教授の眠り場所で、セレナは長い話をしながら、一息つく。

「・・・疲れた?」

「姉さん、うん、少しね」

 そう言いながら、切歌と調もいる。

 実はオリジンから聞いた。自分の本当の役割、予想通り、龍を殺すための素材にして器、それに選ばれただけだった。

「・・・少し辛いな、好きな人を傷付けるために、いまこうしてここにいるの」

「・・・する気はないし、あれはほおっても問題ないわよ」

 そう微笑むマリアに、セレナはうんと笑顔で返す。

「それじゃ、もっと向こうの話、聞かせてデス」

「切ちゃん、龍の話を聞きたい訳じゃないよね?」

「ッ!?」

 セレナの反応に違うデスと答える切歌。マリアは今度マムの手みやげは彼の方がいいかと、アガートラームを強く握りしめる。

 

 

 

 こうして、さまざまな思いを残したまま、異世界の人達は帰っていった。

「・・・はあ」

 クリスはため息をつく、クイッキーとルルのベット。いまさらちゃんとしても、もう使うものはいないのにと、ばかばかしいと思う。

 ピンポンと誰か来たが、なんだと思う。ここに来る人間は、ほとんどチャイムを鳴らしたりしない。

 扉を開けて、出てみると、

「にゃ、にゃ~」

 猫耳をつけたエルフナインがそこにいて、クリスはしばらく黙り込む。

 

 

 

「やっぱり、龍さんの作戦だめなんじゃ・・・」

「響が同意してたじゃないっ、怒る前に止めるよ」

「待ってくださいデスっ」

「・・・奧に上げられたよ」

 そしてしばらく膝の上に乗せて、終始無言のまま、猫エルフナインを膝に乗せている。扉の隙間からその様子を見守る一同は何も言えず、ただ傍観していた。

 

 

 

「はあ・・・」

「マリア、少し気が抜けすぎではないか?」

 マリアはセレナが帰ってから、ずっとこの調子であり、翼は心配するが、

「貴方にはわからないわ、私の気持ちなんて・・・」

「それは違うぞ。私とて、奏が」

「そうじゃないわよっ」

 机を強く叩き、翼の襟を掴むマリア。

 その様子に驚き、困惑する翼。

「どうして貴方の歌ばかり持って帰るのっ!? しかも限定品でポスターだって持っていってッ、私も出してるのよセレナ~ポスター用意するわよっ。なのに、なんで自分のお金じゃないと意味がないっていうのっ!? そしてどうして翼のが多いのッ!?」

「おち、おちつ、落ち着いてくれまり、マリアっ」

 翼の首をがくがくと揺さぶりながら、マリアの愚痴は翼から龍へとかわり、収集がつかず、緒川が来るまで泣きそうなマリアであった。

 

 

 

「ただいま~」

「お帰りなさい。試験はどうだった?」

「問題ないよアンジュ」

 キャロル達は、試験のための鉱物をぞろぞろと机に置き、ミラはふうと息を吐き、キャロルは盛大に舌打ちする。

「なんで俺までこんなことを」

「まあいいじゃないか、そのわりに楽しんでたぞ」

「う、うるさいっ。とりあえず、これで正式なメンバーだな」

「えっ、まだだよ」

 引率のセレナがそういうと、ルドガーを始め、新メンバー達がえっと言う顔をする。アンジュことマスターだけは、

「各国に戻った人達が多いから、次は急いで討伐クエストお願いね~♪♪」

「だーーくっそがっ、いいだろう。全部分解してやるっ、さっさと次のクエストを教えろッ」

「落ち着いてキャロル、怒るのはダメな負だよ」

 彼女はそう言いながら、キョロキョロしている。まだ名前は保留されているが、いずれ綺麗な名前をつけようと決めている(本人は龍につけて欲しいと言って、カノンノとセレナから戦慄された)

「・・・彼はどこ?」

「えっ? きっとどこかでサボりだと思うけど・・・」

 その場に龍はいなかった。

 

 

 

「・・・」

 ある場所に来ていた。読んでいたと言わんばかりに、オリジンとクロノスがそこにいて、静かにたたずむ。

『世界樹は始め君の負を恐れていた、だから世界は近くにいるルミナシアに頼み込み、彼女をディセンダーに変えて、準備した』

 君を倒すその日に備えてねとオリジンは言う。

『記憶を消すのは忍びなかったから、奥底に封じ込めた。そして君はジルディア、ラザリスの声を聞き、まさかこの世界まで来た。ラザリスが君に気づいたのは、セレナで関わった所為だろうね』

「・・・」

 そんな話を聞きながら、そうかと興味なく聞き流す。

『まあ、世界にとって、君の性格は読めなかっただろうね。まさか記憶を失ったディセンダーと、自分か何者か知らない君が、恋仲になるなんて』

「違う」

 いま次元を越えてマリアの殺気を感じた龍。

 オリジンはその様子をほほえましく見ながら、告げた。

『ルミナシアの世界樹からの伝言だよ、君の願いは、行けるようにするだけだそうだよ』

「問題ない」

 それを聞きながら、前を進むとき、後ろを振り返る。

 そこにいた少女に、ため息を吐く。

「カノンノ」

「なにしに出かけるの?」

 少し不機嫌な顔のカノンノに対して、龍は静かに空を見る。

「・・・純白のディセンダーが白の世界を作り、無理矢理世界を繋げられた」

 ならばと思い返す。そして思い出した。

「俺には剣があった、人々を傷付ける武器で、刃物の代名詞、最も多く使われた武器である原初のゲーテ、その剣がある」

『彼はそれを取り戻して、異世界と異世界を行き来する術を得ようとしているんだ』

 オリジンの補足を聞き、次元を切り裂き、次元を繋げる剣を得ようとする。そうなんだと納得した。

「みんなのため?」

「・・・」

 そういうとき黙る龍に、微笑むカノンノ。

 だが、どこか悲しそうな顔をする。

「私は手伝えない?」

『これから行くかの地は、黒の世界。人の身で出向くのは危険な場所だ』

 クロノスがそう言うと、龍は黒い闇を纏う。ゲーデの闇、彼が彼である証のように、それを纏おうとする。

「そういうことだから」

「・・・そう」

 それじゃと言って、だきつく。

「おいかの」

 そして、紡がれる言葉を止められる。

 カノンノは少しずるいかなと思いながら、唇を放して、いたずらっぽく言う。

「戻ってきてね、私もセレナは、まだ聞いてないよ」

「・・・・・・・・」

 負が消え、真っ赤な顔の龍。その場に座り込み、しばらく考え込みながら、切り替える。

 オリジン達はその様子に微笑む。

「・・・んじゃ、こんな終わり方壊すために、剣取ってくる」

「行ってらっしゃい♪♪」

 

 

 

 それはずっと自分を食べていた。だって、居ちゃいけないんだ。

 

 悲しかった、自分が自分であることが悲しかった。

 

 苦しかった、辛かった、もうわからなかった。

 

 終わらない。ずっとそう思っていた。

 

 憎い、自分が憎い。だから壊しつつづけた、自分を。

 

 いつもそうして、いつもそう過ごす。

 

 そしていつしか剣が生まれたが、無視していた。

 

 それを振るう日なんて、欲しくなかった。

 

「って、前世の俺はこんなんか?」

 

 それはそう言ってきた。同じと思ったけど、違うとも思った。

 

「よお俺、悪いが、終わりが来たぜ」

 

 それを聞き、本当か疑った。だけど、なんだかそう思えた。

 

 やっと悲しいのが、絶望が、苦しみが、辛い思いが終わる。

 

 だけどそれは笑った。

 

「違う、これからだ」

 

 そう言って、剣を取る。

 

「絶望も、悪意も、害悪も何もかも背負って生きる」

 

 だけど、その顔は上を向いた。

 

「だが俺のあり方は俺が決める」

 

 絶望を壊す絶望、滅びを苦しめる滅び、害悪を殺す害悪。

 

「俺の名前は剣崎龍ッ、自由の灯火アドリビトムの黒い輝きッ」

 

 剣を構え、俺は俺を見た。

 

 その言葉を聞き、剣が自分を砕いた。

 

「んじゃ、またな俺」

 

 

 

「・・・」

 

 真っ黒な世界に、暖かい日差しと、空が広がる。

 

 それを見て、黒は初めて暖かいものを感じて、何かが頬を伝う。

 

「・・・きれい・・・」

 

 

 

『善悪なんてもの、はっきり決められない』

 オリジンは世界を調整しながら、かの精霊達に告げる。今回の後始末、彼らは世界を見下ろしながら、オリジンは告げる。

『それを決めるのは、世界に、いまに生きる者だ』

 その言葉を胸に秘めて、彼らは彼らの世界を見る。

 今度こそ間違えない。そう思ったとき、

「手貸すか?」

 意地悪な黒が現れ、精霊達は驚く。

 禍々しい剣を持つが、彼らは静かに、

『いい、のか・・・』

「報酬は高いぜ、とりあえずテメェらの世界のんまいもん食わせろ」

 そう言って、オリジンは彼と精霊達を見送った。

『言っておいで、黒の救世主』

 きっとかわれる、そう確信しながら、調律を再開する。

 物語はこうして幕を閉じた。




次回色々なこと忘れて温泉回。シンフォギア並びテイルズキャラの女子メンバーが秘湯に出向く。来たい奴は手を挙げろ。
オリ主「殺してやるよ楽にな」
オチは決まっている。それでも彼らは出向く。
ゼの付く人「せめて湯煙のシルエットだけでも・・・」
オッサン「オッサン、本編じゃ死人だしね」
元祖大王「・・・俺はなんで呼ばれる・・・」
もう一度言うオチは決まっている。それでも彼らの生き様を、お楽しみに。
オリ主「本編の終わり、これでいいのか?」
カノンノとセレナ「アドリビトムらしくっていいと思う」
ではお読みいただきありがとうございます。


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最終回は番外編・オチは決まってる

それでもロマンのために戦うバカな男達にこうご期待。


「というわけでルミナシアだぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 響はうれしそうに叫び、未来はもうと落ち着かせる。

 切歌や調は異世界にはしゃぎ、マリアはセレナにだきしめていて、翼は奏と握手しながら、龍はアンジュに報告する。

「とりあえず、問題児は隔離したぞ」

「ああありがと♪」

 という話をしながら、それじゃとアンジュは微笑む。

「温泉に行きましょうか」

『おお~』

 こうしてアドリビトム女性達は、温泉地へと、問題児など置いて飛び立っていった。

 

 

 

 ある日のこと、ゲーデは無人島で温泉を発見。キュッポ達と共に、自分用にしていたのだが、ある日、女性達に見つかった。

 結果奪われ、現代に至る。

 

 

 

「温泉か~気温もなかなか寒いし、なんだかちょうどいいねっ♪♪」

「ああそうだな・・・」

 キャロルはだきつく響を引き離しながら、船は近く無人島に移動する。

 

 

 

「だからって止められると思うなよ」

 ゼロスを始め、温泉覗き隊が、無人島へと集まる。

「まさか前日三日前に行動するとは思わなかったぜ・・・」

 ここにいる面々は名前は伏せておこう。だが願いは一つ。

 いま前にそびえる山、その山頂にある秘湯に集まる女性達の素肌、それを拝むためのみ考えながら、彼らはいま集まった。

「だが、準備は俺達の方が早い、こうなることを予測して脱出経路と進入経路、こちらの方が上手だったぜ」

「よしいくぜテメェら、敵にこっちの動きを悟られちゃ、意味がないぜ」

「おう」

 ぞろぞろで動く中、いまはまだ昼間、視界良好。

 そんな中、突如暗闇が吹き出す。

「!?」

「これは」

「負か? なんだこいつらっ!?」

 武器を構えながら、それを見る。武器を持つ者、獣のような黒い装甲に、それは龍ゲーデ時に似ている。

 まさかと、

「あの野郎、負で魔物を創造して、使役しているのかッ!?」

 番外編だからね。

「おいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ、いまの声だれだぁぁぁぁ」

「くっそが、だがオチは決まっているんだッ。なら俺達は突破できるはずっ」

 何人か終わるけどね。

「また聞こえたぞぉぉぉぉぉぉぉ」

「幻聴だッ、気にしたら負けだッ」

「オッサン、ここで終わる気はないのよね・・・」

 そして彼らは、負の魔物達に立ち向かった・・・

 

 

 

 んなむさ苦しい戦いが眼下で起きている頃。

「うっわあぁぁぁ、ひっろ~いっ♪♪」

 響達の前に広がるのは、青い空と海、澄み切った空気の中に湯気と、すがすがしいものであり、響以外も顔が笑顔になる。

「クイッキ~」

「よしよし、いいのか? クイッキー私のところで」

「はいなっ、クイッキークリス好きだよっ。だから会えないぶん、いまいっぱい大好き伝えるっ」

 そう言って、クイッキーをだきしめるクリス。

 一部クイッキーを見る際、クリスのある部分を見て愕然となる者が現れたが、割愛でお風呂に入る。

「私の入るのは水風呂だから、気を付けて」

「セルシウスさん、わかりました~」

 エルフナインは返事をして、湯気が出ているところを気を付けてはいる。

「よあ響~せっかくだから、先代と現役ガングニール使いで、後で歌おうぜ~」

「えっ、いいんですか奏さんっ」

 それに翼も驚き、手を伸ばすが、その前に、手を上げるセレナ。

「あっ、なら翼さんっ、私とデュエットお願いしますっ」

「!!?」

 マリアが衝撃を受けて、翼も突然のことに困惑している。

 キャロルは呆れながら、水風呂に果物まで入れている面々に呆れながら、ゆっくりと身体を伸ばす。

「いい湯だな・・・」

 

 

 

「くっそっ、ヒスイっ、回復魔術をッ」

「ゼロス無事かっ、回復使える奴を守れっ」

 彼らを追いつめる負の魔物達。なかなかに強く、何人か心折れそうになっていた。

「諦めるなッ」

 そこにレイヴンが前に出て、魔物の攻撃を防ぐ。

「レイヴンっ」

「ここで俺達が終わって何になるッ、いまここで志を捨てて、俺達は俺達でいられるかッ!? いなッ、断じて否ッ」

 そして胸の機械へ手を伸ばす。それに仲間達は叫ぶ。

「待つんだレイヴンッ、さっきも使ったばかり何だッ、これ以上使えば」

「安心しろッ、この命・・・凛々の明星、仲間達のために、あるッ」

 レイヴンの力は限界を超えても尚輝きを放ち、魔物達を撃つ。

 それを見た男達は、武器を握りしめて走り出す。

「負けてたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 

 

「ソフィ、果物食べる?」

「えっ?」

「シェリア、私はこっち。その子シラベだよ」

「ああごめんなさい」

「ううん、平気です」

 同じ顔と背丈も似ている二人に、切歌はデスデスといいながら現れた。

「二人ともよく似てるデス、あがるとき、洋服交換してみて欲しいデスっ」

「シラベがいいなら」

「私も別にいいよ、切ちゃんも誰かの借りよ」

「私もデスか、楽しみデス」

 そんな話をしながら、キャロルは響を引き離す。

「いーいーかーげんにしろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

「ええぇっ」

「っていうか、その手に持つカチューシャはなんだっ!?」

「猫耳カチューシャだよっ、エルフナインちゃんとお揃いだよっ」

「ふざけるなっ、誰がそんなもんつけるかっ」

「似合うと、いいでしょ、ねえねえねえねえねえ」

 翼達も翼達で、お風呂を楽しんでいた。

「セレナ、こっちでの暮らしはどう?」

「楽しいよ、この前はエステルの国で、歌ったしね」

「エステルの国?」

「ああ、私はこの国で王族で・・・セレナさんに、コンサートをお願いしたんです」

「そうだったの・・・」

「うんっ、龍も・・・彼も聞いててくれてね」

「・・・・・・・・・・」

 

 

 

「くっそ・・・くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

 レイヴンは力無く倒れていて、それを支えるゼロスは空へと吼えた。

「レイヴンっ、お前」

「どうやら俺はここまでだ・・・俺を置いて、お前達だけでも」

「ふざけるなッ、仲間を置いて、行けるわけないだろっ」

「ふざけるなとはどっちだッ、いまここで行かなければ、敵の増援を許すんたぞっ。このまま理想を諦める気かッ」

「しかし・・・」

「かっこつけるんじゃねぇッ」

 ヒスイがレイヴンを背負い、シングが剣を構える。

「どうあってもこの山頂を越える、いくぞシング」

「ああっ、輝けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

「ふっ・・・どうやら、また仲間に助け出されるのか、俺は・・・」

 

 

 

「あっの~ところで、翼さんとマリアさんって、向こうじゃ、トップアイドルなんですよね? せっかくですから、アニスちゃん、こっちでコンサートしていいと思いますよ~」

「そうだねっ、サンセーサンセーダイサンセー」

「アニス、ノーマ、目がガルドよ・・・」

 ティアが呆れるが、エルが手を挙げて叫ぶ。

「エル、みんなの歌聴きたいっ、ミラも出ようよっ」

「わっ、私もっ!? ま、マスクウェルのミラに言って、私は無理よっ」

「わ、私とて無理だっ」

「あっ、お姉ちゃん、二人のミラと一緒に歌いたいわね~」

「いいね~記事になるよっ」

「ピンク、衣装はピンクがいいですっ。調さんのシンフォギアみたいなピンクですよっ」

「「そ、そんなこと言われてもっ」」

 

 

 

 山頂付近まで魔物を払いのけたが、アイテムが少なくなる。まさかここまで猛攻がひどいとは、思わなかった。

「だがまだ、あと少しだ・・・」

 そう思ったとき、一人の男が背を向けた状態で現れた。

「若いな、わからないわけではないが」

「貴方は・・・」

 警戒するが、彼はこの世界の人間ではない。男達はそう思い、Yシャツネクタイの男を見つめる。

 彼は弦十郎、ここの守護を任されていた。

「だがうら若き乙女の入浴を覗くこと、俺が許すと思うか?」

「悪いが、俺達は本気だぜ・・・」

「ああ、たとえその時に地獄があろうと、そんな地獄を進んでやるよッ」

「諦めてたまるか」

「・・・そうか」

 そして弦十郎は腕組みしながら、静かにたたずむ。

 その姿はまるで、背中で語るように、

「ならば、容赦するのも野暮だなッ」

 その瞬間、彼の背中が語る。その勢いはまるで・・・

 

 

 

「ん?」

「響、どうしたの?」

「未来~いま師匠が『弦十郎ビーム』とか叫んだ気が」

「? 教官みたいな人?」

 ソフィがそう聞き返す中、カノンノとイヤハート、彼女とノワールを止めていた。

「「彼とも入りたい」」

「「だめだよっ」」

 そんなコントを見ながら、おでんを食べるパティなど、皆を見て、

「大きい者は大きいのう」

 ある一部のもの達は気にして隠し、ある一部のもの達は、すとんと自分を見て、それを憎々しくにらみつけた。

 

 

 

「ま、まさか・・・異世界の人間が魔術を・・・」

 彼らの周りに魔物、弦十郎もいる中、弦十郎は静かに告げる。

「これで終わりだ」

 ここで終わる。彼らはそう思ったとき、弦十郎はその場から急いで離れる。

 無数の槍が彼がいた場所に振り落ち、それを放ったものを見た。

「お前は・・・」

「待たせたのう、皆々集」

「お前はテイルズオブレジェンディアのモーゼスッ!!?」

 そう、槍を構え現れた男は、ワールドでは出てこない男だった。

「こんなおもろしげな祭り、ワイが出てこないと思ったか?」

 そして負の魔物達は、鎖のようなもので消し飛ぶ。それは風だった。

「この風は」

「穢れ相手に、俺が必要だろ?」

 帽子をかぶった男が、ペンデュラムを構えながら、ニヤリと笑う。

「お前は、テイルズオブゼスティリアのザビーダっ!?」

 彼らは困惑した。本来作者はレジェンディアはともかく、ゼスティリアは未プレイに近いというのに、彼がここにいることに驚いていた。

「おいおい、いまはどうでもいいだろう?」

「いまワイらがしなきゃいけないのは、理想郷へ向こうこと、違うかッ!!?」

 その言葉に、男達は最後の力を奮い立たせる。

「まだ立ち上がる、だと・・・」

 弦十郎も驚き構える中、彼らは言う。

「それに、ここに俺達がいるってことは」

「向こうにも・・・」

 

 

 

「あれ、グリューネさんも来たんですか?」

 シャーリィの言葉に、あらあらと微笑む。

「わたくし達もご一緒してもよろしいでしょうか?」

「っていうか、天族見える人いるの、ここ?」

 ライラ、エドナに続き、騎士としてクロエなどに、色々訪ねるアリーシャもいて、お湯に入る。

「はあ楽しいな、やっぱりお風呂はみ~んなで入ると楽しいね~」

 響の言葉に、一人の女性がむすっという顔をしている。

 他の人達もいたが、ミラ・マスクウェルが言う。

「ベルベット、君も入りなさい。女主人公として、助言くらいする」

「・・・」

 静かに頷き、湯に入る。

 

 

 

『・・・うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ』

 彼らから光り輝く力を放つ。

 弦十郎はそれに押され、負の魔物達も後退する。

「マジかッ、っていうかえっ、マジかッ!!?」

「番外編だからってやっていのかやっていいんですッ」

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉここで引けるかッ」

「ちなみにハーツもイノセント、テンペスト、不参加の面々もおるでぇぇぇぇ」

 モーゼスの叫びに、彼らの志気が高まり、弦十郎は驚く。

「まさかここまでとは、だが、通すつもりは、ないッ」

「悪いが通してもらうッ、たとえその先が地獄だろうがなッ」

 男達は弦十郎へ向かっていく。その先が破滅でも、彼らは彼らであるために、戦うことをやめられなかった。

 

 

 

「・・・・・・長かった」

 誰かがそう呟いた。

 竹で作った脱衣所があり、その先に、女性の楽しそうな声が聞こえる。

 男達は気配を消そうとしたとき、声が聞こえた。

「ねえねえ一緒に入ろ、リュウ」

 それに全員が驚愕した。

「あのな、入れないって言ってるだろノワール」

「もう、龍を困らしちゃだめだよノワール」

「セレナ、そう言って見せてるの、ずるい」

「み、見せてにゃいよっ」

 噛むセレナに対して、全員がえっと言う顔をしていて、風呂場からブラシを持って、発掘機を持つ龍が現れ、驚く。

「あっ、生きてた」

「おまっ、どうして」

「・・・」

 哀れな者を見る目で、龍は男達を見る。

 その声に気づき、女湯から声が、怒声が響く。

「バカなのっ、ちゃんと整備されてないところで裸になる分けないじゃないッ。水着着用風呂よここッ」

「まだ整備中だからね~」

 アンジュの言葉に、膝から崩れ落ちる男達。愚か者を見ながら、つるはしを置く龍は、ため息を吐く。

「むしろ俺の放った負の魔物や、弦十郎さんとよく戦うなお前ら」

「だってッ、だってッ」

 血の涙を流す者もいて、龍は引く。

 というわけで、

「いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、何も見ずに倒されるのは嫌だぁぁぁぁぁ」

「せめて水着ッ、水着見せてくれッ」

「お兄ちゃんサイテー」

「ぐふっ」

「ヒスイぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃい」

 少し哀れだなと思いながら、龍はトドメ刺しました。

 

 

 

 地面と共に落下する男達を見下ろしながら、キュッポ達もお風呂に入る。

「気持ちいいっキュ」

「はあ、俺は作業で疲れたよ」

「水着着て入るデス?」

 少し意地悪そうに切歌が聞くが、それに頷けば自分も彼らと同じ道なのでいいと首を振る。

 よろしいと、アンジュも意地悪に微笑む。

((私はいいんだけどね・・・))

 セレナの思いに、マリアは気づき、ギロッと龍を見る。

(まあ、盛大ではあるな・・・)

 みんな美人だからな~と、水着姿の美少女美女達を見ながら、男はキュッポ達除けば自分だけなので、居心地悪い。

 そう思っていたとき、

「わっわっ」

 コレットが、竹の壁、倒れた際に盛大に破壊した。

「!? コレットっ」

 龍達があわてたが、なにかふわふわしたものが顔にかかる龍。

「なん・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・えっ・・・・・・」

 竹で作られた場所は更衣室であり、その壁が壊された結果、更衣室が壊された。

 オチは決まっている。ラッキースケベがひどい目に遭うんだ。

「・・・・・・・」

 顔にかかった布状のものを手に取る。周りにも似たものがあり、何人かが真っ赤にして龍を見る。

「・・・」

 響が特に顔を赤くして、龍が手に持つものをすぐに取る。

 そして響く、彼女たちのシンフォギアの歌。そしてゲーデイグナイトモジュール、フルパワーバージョン。

「あああ、当たると痛いこの拳っ、いまはそれで十分っ」

「・・・・・・・・」

「覚悟・・・いいね・・・・」

「・・・・・・・・」

 セレナとカノンノの目が怖く、これで貴方を殺せると、目が語るマリア。

 切歌達も歌う。奏か何人か納められないから、冥福を祈られる。

 響は真っ赤な顔のまま、拳が迫る。

「・・・・・・・・・・ひでぇ・・・・・」

 

 

 

 その後、龍はもはや語れないレベルでボコボコにされ、男達は戦慄するが、

「それでもいいから見たかったです」

 そう言った奴もまた同じ末路を辿る。

 横になって白目で空を見る龍は、セレナとマリアのデュエットなどはちゃんと聞く。

「楽しいね」

 彼女はそう言い、微笑む。

「・・・」

 その微笑みは、普通の女の子のようだったため、ため息を吐きながら、

「ああ、これで終わりだ終わり」

 そう言って、これにて幕を下ろさしてもらいます・・・




作者「これがオチだ」
ゼの付く人「ひでぇ」
作者「君達に甘い思いさせる気は一切合切無かった」
オリ主「俺は?」
作者「死なないから問題ない」
オリ主「ひでぇ・・・」
響「それでは」

お読みいただき、ありがとうございました。


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