Fate/Zero ディルムッド(♀)の苦悩 (虚無龍)
しおりを挟む

プロローグ

他愛なし!(挨拶)
いやあ、やっと公開です、お待たせしてすみません......
5話までは隔日更新になります。


「私は…………私はこんな忠義を貫く為に生きて来たのではない!」

 

 忠義の騎士は慟哭する。

 

 

 ――こんな筈じゃなかった

 

 ――私が望んだものは決してこんなものではなかったっ!!

 

 

 忠義の騎士は自問自答する。

 

 

 ――何処から間違えた

 

 ――何処で選択を違えてしまったのだ

 

 ――いや、それでいったら私自身という存在が間違いなのだ

 

 

 既に賽は投げられたのだ。もう後戻りなど出来ない。後少しで忠義の騎士は『座』へと行く事になってしまう。

 願いを叶えたり、力を与える代わりに死後の全てを差し出す事になる世界との契約。

 それ故に忠義の騎士に次など無い。輪廻の環には二度と戻れないのだ。永遠とも思える時間…………もしくは永遠そのものの時を世界の守護者として過ごさなくてはならない。

 

「私は…………私はただ主と定めた御方に忠義を尽くせればそれで良かったのに。…………許されない事だとわかってる。でも、もしも次があるのなら、今度こそは主に忠義を尽くすと誓う…………『ディルムッド・オディナ』の名と誇りにかけて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――聖杯戦争。

 

 万物の願いを叶えるという魔術礼装〈聖杯〉を巡り、奪い合う命を掛けた大儀式。

 

 通常、聖杯と冠される魔術礼装、及び宝具の類いなどは、それが発見された際に勃発する魔術協会や聖堂教会の競争行為総てを指して〈聖杯戦争〉と呼ばれる。

 しかし今回言及する聖杯戦争は、極東の地にて数十年に一度行なわれる魔術儀式を指して先述の名が冠されている。

 

「ふんっ」

 

 500年以上続く、由緒正しい魔術師の名門・アーチボルト家の九代目頭首であり、「降霊学科」の一級講師でもあるケイネス・エルメロイ・アーチボルトは苛立たしげに吐息を漏らした。

 というのも、ケイネスは件の聖杯戦争に参加する為の資格である令呪が右手に浮かび上がった時から、魔術師の名門・アーチボルト家という立場や権力、財力などに物を言わせて入手したサーヴァントを召喚するたまの触媒、彼の有名な『征服王イスカンダル』が生前愛用していたというマントの切れ端。どれ程の財を注ごうがもう二度と手に入らぬであろう貴重な触媒が、あろうことか才能を丸で感じられない上に家柄すら非常に低い立場の子供に盗まれるという悲劇に見舞われたのだった。

 勿論名門・アーチボルトの当主足るケイネスは予備の触媒の用意も抜かりがない。その為触媒自体はあるのだが、その触媒によって呼び出されるであろう英霊がまたよくなかった。

 

――ディルムッド・オディナ

 ケルト神話のフィン物語群で語られるフィアナ騎士団の一員。若さの神、妖精王オェングスが育ての親である。主君フィンの花嫁候補として迎えられたグラーニャという姫から一目惚れされ、彼女に「自分を連れて逃げること」をゲッシュとして課された結果、駆け落ちしてアイルランド中を逃亡する羽目になる。結局、フィンと和解した後には、晴れてグラーニャと結ばれたものの、その幸福も長くは続かった。異父弟の生まれ変わりである猪によって致命傷を負わされたディルムッドは、癒しの魔力を持つフィンに助けを求めるが、グラーニャの件を根に持っていたフィンに彼は見殺しされてしまう。

 

 

 普通の魔術師であれば、正しく忠義の騎士であるディルムッドは扱いやすく、特にデメリットは無いように思われる。しかし、ケイネスの場合は非常に不味かった。

 理由の1つは、両者の相性が非常に良くないこと、そしてそれよりも重大なもう1つの理由は…………

 

(英霊ディルムッドが『輝く貌』、『魔貌』と呼ばれる様になった原因。育ての親から与えられたと言われている異性を魅了(チャーム)するという黒子。それがソラウに効いてしまう可能性があるということだ)

 

 そう、英霊ディルムッドの妖精から与えられた黒子は異性を魅了(チャーム)してしまい、尚且つその力はディルムッド自身にも制御出来ないのだ。

 そう聞くと英霊ディルムッドを呼び出すのは少なくともケイネスにとってはリスクばかりが高くメリットととてもでは無いが釣り合わない様にも思える。

 サーヴァントの召喚自体は実のところ触媒が無くとも、詠唱されすれば可能なので最悪の場合、触媒なしで召喚をすればいいのでは無いかと思う者もいるだろう。しかし、そう簡単に触媒なしの召喚を実行することは出来ないのだ。

 

「本当に大丈夫なのケイネス?」

 

「分からん。だが、触媒なしでの召喚はリスクが高すぎる。例え相性が良い英霊を召喚出来たとしても、実力が低すぎたりマイナーで知名度が低くて実力が発揮できないと言った事が起こるやも知れん」

 

 そう、触媒なしでサーヴァントを召喚した場合、召喚者との相性。つまりは、召喚者と気が合う(・ ・ ・ ・)英霊が呼び出され、サーヴァントとなるのだが、その場合相性のみを考慮して呼び出される為、相性が良い英霊の中からランダムに召喚されるのだ。つまり、戦闘に向かない英霊が呼び出され、サーヴァントになることも十分考えられる…………いや、どちらかと言うとその可能性の方が高いのか現実である。

 その為、ケイネスは婚約者であるソラウが魅了(チャーム)される危険性があってもディルムッドを召喚するしかないのだ。

 

「それでは召喚を始める。ソラウ、下がっていてくれ」

 

「分かったわ」

 

 そういってソラウは部屋の隅に移動し、ケイネスは部屋の中央に陣取った。

 そして、召喚が始まった。

 

「 降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ

 

 閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

 繰り返すつどに五度。

 ただ、満たされる刻を破却する

 

         

 ―――――Anfang(セット)

 

 ――――――告げる

 

 ――――告げる。

  汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

  聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ

 

 誓いを此処に。

 我は常世総ての善と成る者、

 我は常世総ての悪を敷く者

 

 汝三大の言霊を纏う七天、

  抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

 ケイネスが詠唱を終えた瞬間、ケイネスの前に出来た魔方陣が輝きだした。やがて、その中から人の形が浮き出てきた。

 そして、現れたサーヴァント。

 

 

「召喚に応じて参上しました。ランサーです」

 

 

 腰にかかる程に長くのびた艶のある黒髪。体にフィットした深緑色の装い。そして、激しく自己主張する豊かな胸。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………え? あ、あの…………マスター? 私の顔に何か?」

 

 何時までも口を開けてポカーンとしているケイネスを見てそれはそうだと思い、ソラウは部屋の隅からランサーの近くに歩いていき、

 

「えーと、あなたはこのケイネスに呼び出されたサーヴァント、ランサーよね」

 

「はい、そうです。間違いありません」

 

「そう…………なら聞きたいのだけど、あなたの真名は『ディルムッド・オディナ』で合ってるのかしら?」

 

 ランサーは真名を教えてもいいのか問うために、マスターであるケイネスを見るが、未だにケイネスは放心状態であり、ランサーは己の判断で真名を明かす事にした。

 

「はいそうです。確かに私の真名はディルムッド・オディナ。フィアナ騎士団の騎士である英霊です」

 

「本当にあの英霊ディルムッドなのね…………確かに、考えもしないわよね。まさか英霊ディルムッドが女性だったなんて」

 

 そう、ケイネスの召喚に応じて現れた英霊ディルムッドは伝説とは違い、何処からどう見ても少女(・ ・)だったのだ。

 

「そうですか…………やっぱり私は男性と言うことになっていたのですか…………」

 

「何か事情あるようね。取り合えずは居間にでも行って落ち着いて話を聞きましょう…………ケイネス? いつまで固まってるんですか?」

 

 ソラウはランサーの事情を聞くべきだと考え、落ち着いた環境に移動しようとするが、未だに放心状態のケイネスが中々動かないので、少し心配になってきたので、そろそろ正気に戻すことにした。

 

「ケイネス! ケイネス! いい加減に戻ってきなさい! 確かにディルムッドが女なのは驚いたけど、何時までもそうして固まっていてはダメよ」

 

 ソラウがそう言って語りかけると、ケイネスはようやく反応を示した。

 

「…………しい」

 

「ケイネス?」

 

「美しい!」

 

「「はっ?」」

 

 このケイネスからの突然のセリフにはソラウだけでなく、ディルムッドまでも口を開けて驚いていた。

 しかし、そんなのどうでもいいとばかりにケイネスはディルムッドに語りかける。

 

「あぁ、何と美しい姫君なのでしょうか! このケイネス思わず見とれてしまいました! 貴女様のその女神すら遠く及ばぬその御姿! 貴女様が私の様な者の召喚のに応じてくださるなど、このケイネス感動で涙が止まりません!」

 

「「…………」」

 

 このケイネスの様子を目にして、ソラウはひたすら困惑しており、反面ディルムッドは物凄く冷めた目をしていて、例えるなら『うわぁ、またか』とでも言いたげな表情だ。

 

「…………そういえば英霊ディルムッドの黒子には異性を魅了(チャーム)する能力があったわね」

 

 そう問われるとディルムッドは苦虫を噛んだ様な顔をして、

 

「はい、実は私の聖杯に掛ける願い――まあ、聖杯に叶えてもらう訳ではないので正確には願いでは無いのですが――もそれに関係してまして…………」

 

 ディルムッドはそこまで言うと、何か恥ずかしがる様な素振りを見せ、言葉を続けずに、言い淀んでしまった。

 

「へぇ? 聞かせて貰っていいかしら?」

 

 このまま待っていても自分から自発的にはなし始める事は無いだろうと思い、ソラウが思いきって尋ねてみた。

 なお、この間ケイネスはディルムッドいまだに賛美し続けていたが、完全にいないものとして扱われている。そして、ディルムッドに至っては完全にケイネスの存在を意識の外へと追い出していた。

 

「はい。私の願いは…………誰かに騎士として仕える事です」

 

「それは生前では出来なかったの? 貴女はフィアナ騎士団の騎士だったのでしょう? なら騎士として誰か主に仕えた事があるのではないの?」

 

「それが、無いのです。理由は単純です。私が仕えた主は私の顔を見た瞬間から私に熱をあげるように…………端的に言えば主従関係が逆転して私に自身がもつありとあらゆる財を貢ぎ始めます」

 

 ソラウは今なお歯が浮くようなセリフを並べたててディルムッドを讃え続けるケイネスを横目で見て「あっ(察し)」とでも言うような視線をディルムッドに向けた。

 

「と言うわけで1つ願いがあるのですが、私のマスターになっていただけないでしょうか? どうにしろこの人が私のマスターを続けると長く無いですよ。色んな意味で」

 

「…………そうね。取り合えずケイネスには工房で大人しくしていて貰いましょう」

 

 マスターをあっさり鞍替えするような事を言うディルムッドもディルムッドであるが、それを了承するソラウもソラウであった。

 その後、ディルムッドの魅了の効果でケイネスに言うことを聞かせてソラウに令呪を移し、ディルムッドのマスターはソラウになったのだった。

 

「こんなんで大丈夫なのかしら」

 

「私が何とかして見せますよ! フィアナ騎士団が一番槍であるこのディルムッドが!」

 

「願いが叶って貴女生き生きしてるわね」

 

「きっと貴女様の前では神話に名を連ねる女神すら霞む…………いや! あまりの美貌に平伏するでしょう! 其ほどまでに貴女様は…………あれ? ソラウ? ディルムッド様? 何故私の両腕を両サイドから捕まえるのですか? 何故そのまま引っ張って行くのですか? え? ここ地下室じゃないですか。え!? なんで扉を閉めるんですか!? ちょっと! ここから出してくださいよ! おーぃ…………ぉーぃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                  続く

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お願い! アインツベルン相談室(次回予告篇)!』

 

 

アイリ「遂に始まってしまった聖杯戦争! そして第一の戦い、セイバーvsランサーの決闘! 忠義を貫き通す事を願いとするディルムッドは意気揚々として戦いに臨むが、セイバーからのまさかの言葉が!」

 

 

 

セイバー『ランサーよ! 私は必ずやあなたを我が妻にしてみせる!』

 

ランサー『えっ』

 

 

 

アイリ「そこにあらわれるライダー! 出てきてそうそうに飛び出す爆弾発言!」

 

 

 

ライダー『余はこの度ライダーのクラスを得た者、真名はイスカンダル! 征服王イスカンダルである! ランサーよ余はお主の事が気に入った! 必ずや征服して妻にして見せよう!』

 

ランサー『ちょっ、まっ』

 

 

 

アイリ「その発言を聞き颯爽と登場する金ぴか…………アーチャー!」

 

 

 

アーチャー『ふん、勝手な事を申すな、有象無象の雑種どもが! この世の財は全て我の物! つまりこのランサーも我の物だ! 喜べランサーよ、貴様を我が妻にしてやろう』

 

ランサー『だから私の意思は!?』

 

 

 

アイリ「そして遠目からランサーを見てしまい、魅力が作用してしまう切継!」

 

 

 

切継『僕が愛してるのはアイリとイリヤだけなんだー!』ガンッガンッ(木に頭を打ち付けている)

 

 

 

アイリ「聖杯そっちのけで始まってしまう一人の女を取り合う戦争! さあ、ランサーの願いはどうなってしまうのか! キャー! ゼっちゃん! 一人のヒロインを巡っての壮絶な戦いって憧れない!?」

 

ゼっちゃん「師匠、なんかイキイキとしてますね…………」

 

 

                  終われ

 

 

 

 

 

 

 

 

クラス名:ランサー

 

真名:ディルムッド・オディナ

 

マスター:ケイネス・エルメロイ・アーチボルト→ソラウ・ヌァザレ・ソフィアリ

 

筋力C+

耐久B+

敏捷A++

魔力C

幸運C

宝具B

 

対魔力(B)三節以下の詠唱による魔術を無効化。大魔術・儀礼呪法など大掛かりな魔術を持ってしても傷付けるのは難しい。

 

心眼(真)(B)修行・鍛錬によって培った洞察力。窮地において、その場に残された活路を導き出す戦闘論理。

 

愛の黒子(EX)魔力を帯びた黒子による異性への誘惑。対魔力スキルで回避可能。というのがランクCであり、ランクEXは正確には魅了ではなく、本人の魅力を極限までブーストするものである。つまりはランクCの効果である魅了が相

 

手を状態異常にするのに対し、ランクEXのブーストは本人の能力、つまりはディルムッド自体が魅力的になる効果なので、これを抵抗するには、対魔力だけでなく、強い意志が必要。(切継が完全にディルムッドに惚れていなかったのはこの為)

 

騎士の武略(B)詳細不明




あとがきは基本作者のどうでもいい話が書かれているだけなので、読まなくても問題ありません。

挨拶が「他愛なし!」の理由

学校で友人に「お前の『他愛なし!』再現度高けぇなおい」と言われたから。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ランサー陣営「どうしてこうなった」

他愛なし!(挨拶)
今回までは文字数少なめですが、次話からは少し増えます。


 聖杯戦争--------ありとあらゆる願いをかなえるとされている万能の釜。聖杯を七人のマスターとそのサーヴァントが奪い合い、欺きあい、殺しあう儀式。参加者は聖杯をありとあらゆる手段を行使してでも手に入れようとするが故に聖杯戦

 

争なのだ。

 無論、何事にも例外というものはある。今回の聖杯戦争のマスターの一人(だった)、ケイネス・アーチボルトもそれに当てはまるだろう。そもそも、ケイネスは聖杯戦争の参加者としては珍しい、最初から聖杯自体にはあまり興味がない者である。

 

である。

 しかし、基本的にはマスターとサーヴァントは遭遇し次第、血みどろの殺し合いが始まるはずなのだ。

 既に聖杯戦争は始まっている。そして今宵ランサーとソラウはセイバーとそのマスターらしき女性と遭遇した。普通であればここで戦闘が始まり、最悪どちらかが脱落することだって普通にありえる。

 だが、今宵の聖杯戦争は様子がこれまでとはまるで違うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とうに日など落ち、夜の帳がおりた夜中。

 相対する二つのサーヴァントらしき人影、そして少し離れた所にいるこれまた二つのマスターらしき人影。どれもがそのシルエットからして女性のようだった。

 そのまま、聖杯戦争のルールに則って血で血を洗う戦いが始まる......そのはずだった。

 

 

 

「ランサーは私の妻だ! 貴様の様な趣味の悪い金ぴかの成金風情には指一本たりとも触れさせん!」

 

「おうともよ! ランサーは余が征服し、戦利品として余のものとすることは既に決定事項だが、そこの英雄王にだけはわたす訳にはいかんな!」

 

「はっ! ずいぶんと大きく出たな雑種共! 我は英雄の中の英雄、英雄王ギルガメッシュぞ! この世の財はひとつ残らずこの我のものぞ! 本来ならこの遊戯に使われている聖杯とやらも我のものだが今回は貴様等にくれてやろう騎士王に征服王! 我はそれよりも遥かに価値の高い財(ランサー)をみつけたからな!」

 

「ふざけるのも大概にするがいい英雄王。要するに貴様は聖杯をくれてやるからランサーを渡せといっているのだろう? そんなのは断じて認めない! この娘とそんなゴミ(聖杯)で釣り合いが取れるはずがないだろうが!」

 

「その通りだ! 大体聖杯に余が願うのは受肉、その程度ならランサーを手に入れる過程で貴様を倒し、貴様から奪った財宝を使えば何とかなるであろう!」

 

「どこまでも愚かな雑種共だ、我が与えてやった温情を無下にするとはな! よかろう! ならば戦争だ! 征服王、お前に関しては一片の容赦もなく滅ぼしてやる! 貴様のような弱小王ごときが我のような最強最高の王、この英雄王ギルガメッシュに勝てるはずもないことを思い知らせてくれるわ! そして騎士王、そうだな......貴様はそれなりに我の好みだ。倒した後に我の側室にでもしてやろう!」

 

「ほざいてろ成金金ぴか風情が! お前とかカリバーで軽く一ひねりにしてくれるわ! 一発だぞ! いざとなったらどーにかこーにかしてロンゴミアントとかカリバーン使って殺るからな! 脅しじゃないからな!」

 

「いやセイバーよ......それはいくらなんでもふかしすぎじゃないのか?」

 

「......ごめんなさい嘘つきましたできません」

 

「「......そ、そうか」」

 

「きゃー! もしかして、いや、もしかしなくてもこれは一人の美少女をめぐるドロドロの戦い......昼ドラっていうものなのかしら! テンション上がってきたー!」

 

「......え? 私の意志は!? というかどうしてこうなった!」

 

 もはやこの場においてまともなのはランサー陣営のみだった。

 

 

 

 

 

 ------------少し離れた森

 

 銃や爆弾など、魔術師たちが毛嫌いするが故によく効く現代兵器を用るセイバーの本当のマスター、衛宮切嗣。

 彼もまた、ランサーやセイバー、そしてそのマスター達が相対していた場所を一望できる場所からスナイパースコープ越しで監視していた。隙あらば他のマスターを殺せるようにと。

 しかし、忘れてはいけない。ランサー----------ディルムッドの固有スキルの発動条件はディルムッドの直接間接問わずに顔を見ることだと……

 

「僕が愛しているのはアイリとイリヤだけなんだ! こんなのまやかしだぁー! うおおおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「切嗣! しっかりしてください! やめてください! 何故いきなり木に頭を打ち付けはじめたんですか! ちょっ! 額からの出血がしゃれにならないことになってます!」

 

 彼もまた、哀れな犠牲者なのだった。

 

 

 

 

 

 混沌とした戦場。少し離れた所に立っていたランサー------------ディルムッドとソラウは空を仰ぎしみじみと呟く......

 嗚呼......

 

「「どうしてこうなった!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------------------------------------------------------------

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 冬木の地に眠る聖杯......その内の聖杯の大本となる大聖杯。

 なにかしらのトラブルが起きたときなどに令呪の再配布を行ったりすることから、大聖杯には聖杯戦争の進行を円滑に進めるためのサポート機能のようなものがあることがわかっている。

 それは例えば、マスターに無視できないほどの異変が起こったり、聖杯戦争の進行自体が難しくなったりすることなどが該当する。

 そう、今回のように......

 

 

 

 

 

 

 

 ----------------聖杯戦争の進行が滞っていることを確認

 

 

 ----------------異変を調査中......

 

 

 ----------------特定完了。今回の聖杯戦争におけるサーヴァントの一人、ランサーの固有スキルが原因と見られる

 

 

 ----------------解決法を模索中......

 

 

 ----------------聖杯戦争を本来の道筋に修正するためにエクストラクラス《ルーラー》追加召喚を実施しま......

 

 

 ----------------Error! 内部からの侵食を確認! 分離実行......失敗。

 

 

『ずいぶんと面白そうなことになってんじゃねえか。おれ自身が介入することは不可能なようだが、場を引っ掻き回すくらいの嫌がらせと暇つぶしはさせてもらうぜ?』

 

 

 ----------------承認します。さらに追加でエクストラクラス《アヴェンジャー》召喚を実施します。

 

 

 ----------------全工程完了。これより、召喚を実行したのち、再び休眠状態へと移行します......

 

 

 

 

 聖杯の内部に巣くうものによって更なる混沌の渦へと引き込まれていく聖杯戦争。この戦いの行く末を知るものはまだだれもいない......(平行世界旅行を生身でする変態ジジイや根源接続者みたいなガチモンの人外共を除く)




最近起こったこと
友人「ほら、あのラッスンゴレライで有名になったやつ......そうだ! 一万年と二千年バズーカ!」
虚無龍「え?」
友人「え?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ランサー「自害希ボンヌ」ソラウ「あかん、それはあかんで」

他愛なし!(挨拶)
いまさらですが、この作品は行き当たりばったりの見切り発車ですので、複雑な伏線などはたぶんないです。


 ここはランサー陣営が拠点としている場所。第三次聖杯戦争の折に作られたエーデルフェルトの双子館の片割れである。

 元はといえば、ケイネスはマンションの最上階を貸し切って魔術工房を作り上げ、防衛がしやすい安全な拠点を作り上げ、万全の状態で聖杯戦争に臨むつもりだった。しかし、肝心要の魔術工房をつくるケイネスが今なおディルムッドに魅了された状態であり、ぶっちゃけまるで役に立たないのでその計画が頓挫したのであった。

 そこで第三次聖杯戦争でエーデルフェルトに手によってつくられ、そのまま魔術協会に譲渡されたこの双子館を魔術協会との交渉によって借り受けることができたのだ。無論、もともとの計画のケイネスによる魔術工房よりは防衛力は落ちるが、拠点の隠密性という点においては、こちらのほうが遥かに上だろう。

 そんな拠点の中で、成り行きでマスターになってしまったソラウ・ヌァザレ・ソフィアリとそのサーヴァント、ランサーことディルムッド・オディナが今後の方針についてはなしあっていたのだが......

 

「マスター......もう聖杯あきらめませんか? というか自害していいですか?」

 

「さすがに諦めるの早すぎでしょ! 後、自害もダメ!」

 

 既にランサーのテンションは底辺をぶち抜く勢いで駄々下がりしていた。というか、自害を希望するレベルで落ちていた。

 そこに、召喚され、マスターがソラウに変わったときのあの願いが叶った時の喜びは微塵も見られず、おまけに目のハイライトまでなくなっている始末である。

 何故こうなったかというと、ま、お察しの通り昨夜のことが原因なのだが、

 

「いや、あいつらほんとなんなんですか。なんで真名を隠していかに自分の情報を敵に与えないようにしながら敵の真名に関する情報を集めていくことが定石の聖杯戦争でいきなり真名ばらしまくってんですか。というか、またここでも呪いが顔だしてくるんですか。あいつら英霊なのになんでなんの抵抗もなく魅了かかってるんですか、しかも一番めんどくさい形で。というか、セイバーにいたってはどっからどう見ても明らかに女性なのになんで呪い作用してるんですか。そういう反応するのはどっちかって言うと青じゃなくて赤でしょ。それにセイバーは騎士王、ライダーは征服王、アーチャーにいたっては英雄王とか、一介の騎士にどうにかできる相手じゃないでしょ。どれと戦っても宝具使われた時点で負け確じゃないですか。しかもこのままだと私、セイバーと同性婚してセイバーの妻にされるか、アーチャーの財兼妻にされるか、ライダーに征服されるかしか未来ないんですけど............マスター、やっぱ自害していいですか?」

 

「だからダメだって!」

 

 セイバーやライダー、アーチャーと遭遇し、ついでに求婚されたあの後、案の定その三名が------(本人の意見は頑無視して)ランサーの所有権をかけて------戦闘を始めてしまい、ソラウを連れて脱出しようとはしたものの、セイバーがいつの間にか背後に移動して、後ろから抱きしめられ、

 

 

『夫の下から黙って去ろうとするなど......悪い娘だ』

 

 

 と、耳元で甘い声で囁かれれ、そのセイバーの魔の手から逃れ、再び隙を見て逃げ出そうとすると今度はライダーに、《神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)》を使われて回り込まれ、

 

 

『ははは! ランサーよ、そんなにこの場を離れたいのであれば諦めて余のものになることだ!』

 

 

 と、絶対に逃がさないという意志を感じさせるマジな目で言われ、それでも尚逃げ出そうとすると、いきなり全身をアーチャーの《天の鎖(エルキドゥ)》で雁字搦めにされ、そのまま空中につるし上げられ、

 

 

『おいおい......我は勝手に動いていいとはいってないぞ? 今こいつらを片付けるゆえ、少しそこで待っていろ』

 

 

 と、ジャイアニズム感凄まじいことをいわれ、そのまま吊るされたまま放置されていたのだった。

 ちなみにソラウは取り合えずランサーの近くにいると攻撃が飛んでこないことを悟ったので、ずっとランサーの近くにいた。セイバーもライダーもアーチャーも今のところはソラウに手を出す気は無かったことも幸いしたのだった。

 結局、その後、バーサーカーが乱入してきて、そこら辺に刺さっていたアーチャーの宝具をパクって大暴れし、最初のうちは無視してランサー争奪戦を続けていた三名も流石にうっとおしくなってきたのか、三名によるバーサーカーへの集中砲火が行われ、バーサーカーは逃走、ランサーとソラウもそれに乗じてその場の脱出に成功したのであった。

 三名も始めは追いかけていたが、ランサーの敏捷のステータス値がA++ということもあり、なかなか追いつけずにいたのだった。ライダーだけは宝具の戦車を使って移動しているため、あまり差はつかなかった。

 そして、セイバーが自分のスキルである魔力放出を、アーチャーが《天翔る王の御座(ヴィマーヤ)》を使いはじめたあたりでようやくそれぞれのマスター達がストップをかけ、帰還を命じたのだった。

 アーチャーはもちろんのこと、セイバーも抵抗したものの、セイバーはこのままでは追いつく前に自分と自分のマスターの魔力が尽きることをさとったので、渋々手を引き、アーチャーは『まあ、たまには楽しみを後にとっておくのもよいものか』といい引いていった。ちなみにライダーはマスターの顔色が凄まじいことになっていた為に、二人より早く離脱していた。

 

 

「もうやだ......なんで私ばっかりこんな目に......うぅ、グスッ、ひっく......」

 

「ちょっ、泣かないでよ、きっとまだ希望はあるわよ! ......多分」

 

「うわぁぁぁぁん!! もうやだあいつらこわいよぉぉぉ!!」

 

 ランサーの負った心の傷はかなり深いようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------------------------------------------------

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ、くそっ! 時臣ぃぃぃぃ!」

 

 時は遡り、昨晩。

 バーサーカー陣営、間桐雁夜と、霊体化して傍らにたつバーサーカー。

 バーサーカー陣営の目的は聖杯を手にして遠坂家から間桐家に養子にだされ、いまなお蟲に犯されているであろう旧名遠坂桜。現間桐桜を救うことだった。

 しかし、魔術師としての能力はほとんどない雁夜が先ほどのように敵サーヴァントに真正面から挑んでも魔力量的にも勝ち目が無かった。

 多量の魔力を使用したことによって、己のからだが内側から蟲に食い荒らされていくのを感じ、与えられる激痛とともに桜を養子にだした時臣への憎悪を募らせていたのだった。

 

「はあっ、はあっ,,,,,,ん?」

 

 思うように動いてくれない体に鞭打って、引きずるように歩き、ようやく拠点たる間桐家の屋敷にたどり着いた雁夜だったが、どこか違和感感じたのだった。

 いやな予感がするが、雁夜に屋敷に帰らないという選択肢はない。何故なら屋敷には雁夜が戦う理由である桜がいるのだから......

 そして、屋敷の敷地内に入った直後、雁夜は決定的な違いに気づく。

 

(屋敷に張られている結界が変わってる!?)

 

 没落しているとはいえ、もともと間桐は魔道の家系。神秘の隠蔽のためにも、外敵への対策のためにも結界ははられていた。しかし、今屋敷に張られている結界はがわ(・ ・)こそ変わりないが、効果が多少かわっていたのだった。現在の結界は、内部で異変が起こっても、外部にはなにも漏れないようにすることに適したものだった。

 そして屋敷に足を踏み入れたがゆえに結界の妨害なく五感が伝えてくる異変。何かが焦げるような臭い(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 雁夜は桜の身を案じ、屋敷の中へと急いだ。

 

「桜ちゃん! 桜ちゃん! どこだい桜ちゃん!」

 

 焦るあまりひたすらに桜の名前を叫び続け、少ししてようやくこの異臭の元が地下の蟲蔵だということにきづいた。

 --------まさか、臓硯が桜になにか無茶なことをしてるのか?

 その可能性に行き着いた雁夜はぞうけんの機嫌を損ねれば矛先が自分に向くのもいとわず蟲蔵の中へ飛び込んだ。

 

「桜ちゃん! 無事か......い?」

 

「すごいすごいアヴェンジャー! あんなにたくさんいた蟲を一瞬で焼き払うなんて流石私のサーヴァント!」

 

「そうでしょそうでしょ! 私の力っをもってすればあんなモザイク必須物一発よ! この調子であの優等生ぶったやつだってパパっと焼き払ってやるんだから!」

 

 そこに臓硯の姿はなく、いたのは桜と黒く染まった旗を携えた黒い金髪の少女だけだった。

 

「ん? また蟲が一匹入ってきたわね。 人面蟲とか気持ち悪い、今すぐ焼き払ってやるんだから!」

 

「へ? あ、ちょっ、アヴェンジャー! その人は蟲じゃないから! ストォォォップ!」

 

「熱っっっつぅぅぅい!!」

 

 ついでに焼かれかけた(ところどころ焦げた)。

 解せぬ。

 




最近の虚無龍さん
 学校でクラスTシャツの背中に好きな文字を入れられるらしいので、友人の背中に入れる文字を「ゆえつしんぷ」にしておいてあげた(本人の許可なし)
 なお、本人は「チンパン」といれてもらう模様


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

?「お腹へった」

他愛なし!(挨拶)
 執筆するときはようつべをみながら書くんですけど、最近フルブの動画に飛んでそのままフルブを起動して数時間やりこむ悪循環ががが
 フルブを知らない人は......世の中知らないほうが幸せなこともあるんやで(遠い目)


 その日の冬木市はとてもいい天気だった。

 雲ひとつ無い......といえば流石に誇張だが、それに近い清々しいほどの晴天だった。

 ただ日のあたるところを歩いているだけでもどんな陰鬱な感情も吹き飛ぶこの空の下で、

 

「はあぁぁぁぁ、絶対私が自害するのが一番の最善策ですって。これマスターの為に言ってるんですよ? ほんとですよ?」

 

「だからダメっていってるでしょ! それに私のためとか言っておきながら何で疑問系で話すのよ!」

 

 とても暗いそれはもうお先真っ暗な『もう私には絶望しかない』と口に出さずとも周囲の人間に伝わるほどに陰鬱なオーラを纏った女性と、必死に励ましながらその横を歩く女性がいた。言わずもがなソラウとディルムッドの二人によるランサ

 

ー陣営である。

 結局あの後、『家に閉じこもってばかりではよけいに気がめいるばかりだ、今日はちょうどいい天気だし気晴らしに外出しよう』ということでソラウがランサーを半分無理やり外へと連れ出したのだが、ランサーを見る限りでは、気が晴れるどこ

 

ろか、そこらですれ違った人たちに不幸を分け合うレベルのオーラを出していた。

 

「じゃあ真面目な話あの怪物たち相手にどう戦えって言うんですかますたぁー?」

 

「それは......向こうが勝手に潰し合って全滅してくれるのを待つとか?」

 

「結局実力でも策でもなんでもない運任せじゃないですかやだー」

 

 このようにソラウが励ましても逆効果になることも多かった。もはや忠義のかけらもうかがえない。

 しかし、実際問題ランサー陣営の実情は現在控えめにいっても絶望的であった。理由としてはもちろんあのセイバー(百合王)ライダー(色ボケ征服(意味深)王)アーチャー(人類最古のジャイアニスト)のせいである。

 あの三名もいまのところやってること自体は馬鹿丸出しだが、その当人たちの実力は確かなものである。片や知る人ぞ知る伝説の騎士王、片やただひとつの夢を追い求めて幾多の国々を征服した征服王、片や最も古き英霊にして最

 

古の王である英雄王。

 正直な話、勝手に向こうが潰れでもしない限り、勝てる相手ではない。少なくとも馬鹿正直に真正面から戦って勝てるあいてでは断じてない。それ故に、勝ち残る気があるのであれば何かしらの策が必要である。

 

「じゃあ他のマスターと同盟を組むとかは? あの三体のサーヴァントは他のマスターにとっても十分脅威のはずよ。こちらから申し出たら受けてくれる可能性は十分あると思うのだけど」

 

「同盟......ですか。......うん、いいかも知れませんね! そうなるとバーサーカーがいいと思います。あのアーチャー(ナルシスト野郎)に対しても対等に近い状態で戦えてましたし、私がサポートすればあの三人組を倒すことだって十分

 

可能です! いや、私の為にも殺って貰わなければ困る!」

 

「そ、そうね」

 

 目標と自身の(貞操の)危険を排除できる活路を開く方法を見つけたランサーは心なしか生き生きとし始めていた。

 

「そうと決まれば行動あるのみです! さあ、いきましょ......あぅっ!」

 

「きゃっ!」

 

 希望が見えてきて前後不覚になっていたランサーは、意気揚々と歩き出すと、向こうから歩いてきた少女とぶつかってしまった。そのままランサーにぶつかってしまった少女は後ろへと力なく倒れ......

 

「危ないっ!」

 

 なかった。

 先ほどまで情けない姿をさらしていたとは言え、ランサーは三騎士と称されるサーヴァントの中でも特に優秀とされるクラス、その上ランサーの敏捷のステータス値は規格外たるEXに片足をつっこんだレベルのA++。バランスを崩した少女

 

を倒れる前に支える程度は実に容易いことだ。

 

「すいません! 前を見てなくて、大丈夫でしたか? ......あれ?」

 

 ランサーがぶつかってしまった女性へと気遣うように声をかけたが、返事が返ってこない上に様子がおかしかった。

 ぐったりとしており、体に力が入っておらず、呼吸もどこか弱々しい。しかし意識はあるようで少しではあるが顔を上げてランサーを上目遣いのように見上げ、搾り出すような声で喋った。

 

「だ、大丈夫です。こちらこそすいませんでした」

 

「......ほんとに大丈夫ですか? 具合が悪そうに見えますが.......」

 

 ランサーは純粋に少女の体調を気遣って声をかけるが、当の本人は明らかに体に力が入っていない状態にも関わらず、どこか焦るようにその場を逃げるように去ろうとしたが、

 

 

 ぐううぅぅぅぅ

 

 

「......えっと?」

 

「......うぅぅ......」

 

 唐突に鳴り響いた主を裏切った腹の虫の鳴き声(空腹を知らせる音)に赤面しつつ涙目の少女にランサーはどう声をかけていいのかわからず、両者にとってとても痛い沈黙が訪れた。

 完全に空気となっていたソラウにいたっては明後日の方向を見ていることから、『私は何も見てない聞いてない』というスタンスをとるようだ。ようするに『じぶんでなんとかしてくれ』ということらしい。

 気まずい空気にになってきて、とうとう少女の方から極々小さな音ではあるが嗚咽が聞こえてきてますますランサーはどうすればよいのがわからなくなってきていた。

 しかし、捨てる神あれば拾う神あり。三人にとっての救世主とも言える存在が現れたのだった。

 

「あれ? ジャンヌお姉ちゃん? こんな所でなにしてるの?」

 

「へっ? あ、し、士郎! 何でこんなところにいるんですか!?」

 

 そこにあらわれたのは赤髪の小さな少年だった。どうやら金髪の少女と知り合いのようで、少女のほうにとてとてと走りよっていった。

 

「お使い頼まれたから買い物に行ってきたんだよ。それよりジャンヌお姉ちゃんはどうしたの? もしかしてどこかにいっちゃうの?」

 

「いや......その......いつかは私もいなくなってしまう訳ですし、なによりあまり士郎の親御さんたちにご迷惑をお掛けしたくないので......」

 

 この二人の会話から察するに、どうやら二人は同じ家に住んでいるが、家族というわけではないようだ。そして、この少女------ジャンヌは家出ないし、黙って家を出てきたようだ。

 

「......いなくなっちゃうの?」

 

「うぅ......そんな捨てられる子犬みたいな目をしないでくださいよぉ......そのほうが士郎たちにとっても安全なんですよ」

 

「ぐすっ......もう会えないの?」

 

「へっ? な、泣かないでくださいよ士郎! お願いですから引き止めないでください!」

 

「うぅ......ぐすっ」

 

「わ、わかりましたから! 私はどこにも行きませんからなかないでください!」

 

 どうやらジャンヌが折れる形ではなしは纏まったようだ。

 

「そう、よかった! なら早く帰ろうよ。きょうは材料大目にかってきたからね。母さんもジャンヌお姉ちゃんはたくさん食べるからつくりがいがあるって言ってたよ」

 

「へっ!? そんなとこ言ってたんですか!?違うんですよ! 私がたくさん食べるのはちゃんと理由があるんですよぉー!」

 

 そのまま少年------士郎に手を引かれてジャンヌと士郎は家への帰路についたのだった。

 そして、ランサーとソラウはしっかりとみていたのだった。ジャンヌが折れた瞬間の士郎のくったくない笑顔を。

 

「「あの子......将来は女泣かせになるな......」」

 

 そう確信(直感)した二人だった。

 

 

 

 

------------------------------------------------------------

 

 

 

 

 今日のセイバーさん家

 

 

 第四次戦争において、紛れも無い優勝候補であるセイバー陣営。

 聖杯戦争において最優のクラスと言われているセイバー。そしてセイバーのマスターである衛宮切嗣。そしてそのバックにいる聖杯を作った御三家の一つたるアインツベルン家

 セイバーの真名はアルトリア・ペンドラゴン、世界的に有名なこのアーサー王であう。当然知名度も高く、元々の実力もあり、まさしく最優の名にふさわしい存在となっている。

 そのマスターたる衛宮切嗣は聖杯製作をなした御三家の一つ、アインツベルンの婿養子であり、本人も魔術を道具とみなし、本来魔術師が毛嫌いする現代の機械や兵器を使いこなす魔術師殺しと恐れられる凄腕の殺し屋だ。

 

 閑話休題(それはさておき)

 

 セイバー陣営の拠点である、森の中のアインツベルン城。

 そこではスーツを着たセイバーと普段着のアイリスフィールがこの上なく真剣な顔で話し合っていたのだった。

 

「ふむ......アイリスフィールどう思いますか? 私はこの三番目の案がなかなかにいいとおもうんですが」

 

「うーん......やっぱり三つ目も捨てがたいんだけ......ここは最初の案にするべきよ。身に纏うものがどれだけ凄くても、その纏う者の良さを塗りつぶしてしまっては意味が無いわ」

 

「なんと! それは盲点でした! 流石はアイリスフィールです。この事に関しての知識では私を遥かに凌駕している。これからも頼りにさせてもらいます」

 

「えぇ、これくらいならお安い御用よ。あれ? そんなことろでなにしてるの切嗣。そうだ! 切継はどれがいいと思う?」

 

 ちょうど二人がいる部屋の前にきたので様子を見ていた切継だったが、アイリスフィールに見つかったために、おとなしく二人のまえに出て行き、自分が持っていた疑問をぶつけたのだった。

 

「アイリ、セイバー......なにをしているのかな?」

 

「あら、決まってるじゃない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 セイバーとランサーが挙式するときにランサーが着る衣装よ」

 

「........................はっ?」

 

「やっぱり素材の良さを出すためにシンプルなウェディングドレスがいいと思うんだけど......あ! いっそ天の衣(ヘブンズフィール)を着せてみるってのもいいかも......あれ?切継どこにいくのー?(切継ー?)

 

 ------なにも聞かなかった。

 そう、衛宮切継はなにも聞いてないのだ。アイリスフィールが門外不出の魔術礼装をランサーに着せたいとかいってたなんて断じて聞いていない。

 

「切嗣? どうかしたのですか?」

 

「舞弥......」

 

 城の中をがむしゃらに走っていた切嗣は偶然向こう側から歩いてきた舞弥と会ったのだった。

 

「舞弥......一つ聞いていいかい?」

 

「はいなんでしょうか?」

 

「僕たちの目的はなんだ?」

 

「もちろん聖杯戦争を勝ち抜き聖杯を手にするためですが......どうしてそんなことを聞くのですか?」

 

「そうだ、そうなんだよ。おかしいのは僕じゃないんだ。舞弥......君だけがたよりだ」

 

「ヘッ? き、切嗣!?」

 

 やっとまともな感覚を持つ人とであえ、感極まって切嗣は舞弥を抱きしめた......

 そう抱きしめてしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「き  り  つ  ぐ  ? 浮気は許さないわよ? うふふふふ♪ あははははは♪」

 

 影からその光景を見ているものがいるとも知らずに,,,,,,

 

 

 

 今日のセイバーさん家  続く......かも?

 




最近の虚無龍さん
 いまさらダクソをはじめて死にまくって発狂している模様。なお、原因は倒さなくてもいい強敵に凸しているから。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。