問題児たちと『黄金の回転』が異世界から来るそうですよ? (あかひ)
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プロローグ
0.回転の軌跡-ゼロはマイナスへ-
また、上記の作品を読んでない方でも楽しめるよう努力をしておりますが、作者のクソ文才の影響で分かり難い描写があります。ご了承ください。
またその場合、上記の作品を読んでいただくと、より楽しめると思います。
長々と失礼しました。これらを見てもOKという物好き様たちは本編をどうぞ。
———これは『再生の物語』———
船着場に棒切れを杖代わりに使い青年が歩いてくる。彼のそばには馬がおり、
港には船が停泊しており出港はまだかとエンジンを燻らせている。
「!! あれっ!」
船の上いる小柄な男性が青年に気がつくと、彼———名をジョニィ・ジョースターという———も男性に気がついたようであった。友人というよりはおそらく顔見知り程度なのだろうということが態度から見て取れる。
「おや、君は………元気か? 何しているんだ? こんな船の上で………? この船、ヨーロッパ行きだよね?」
「何してるって………私の本職は税関職員ですから………」
———文字通り僕が再び歩き始めることになったいきさつ———
「
小柄な男性が尋ねる。ジョニィは馬と共に大きな木箱を引きずって来ていた。
その箱は人が一人まるまる入るほどの大きさであり、見る人によっては棺桶と見間違う大きさであった。
もちろん彼も仕事だ。いくら顔見知りであったとしても怪しい荷物を船に載せることはできない。
———そして思い返せば旅の間はずっと『祈り』続け———
「『遺体』だ」
手に持った『鉄球』をトンと木箱に当てる。自らは何も間違えていないと、己の考えを改めるつもりは無いと決意の篭もった瞳で真っ直ぐ答えた。
「友達の『遺体』それと友人の愛馬ヴァルキリー」
———この馬による大陸横断レースは『祈り』の旅でもあったのだ———
「この船で彼の故郷へ連れて帰る、そして家族へ渡すんだ」
それは彼のやらなければならない事。
その口調は、瞳は、心はたとえ犯罪まがいの事をしてでも連れて帰るという彼の意思がありありと見て取れる。
———明日の天気を『祈り』———
「え~と………馬はいいですが『遺体』の乗船許可は規則により出せません。誠に残念ですが火葬で遺灰になさるかこの国で埋葬してください」
だが、向こうも仕事。たとえどんな理由があろうと規則は守らなければいけない。
彼だけが特別、そんなもの通用するわけがないのだ。そんな事は誰でもわかる、もちろんジョニィも。
———朝 起きたら目の前の大地に道がある事を『祈る』———
「なるほど、じゃあ僕がいい解決策を教えてやろう。お前が………乗船許可を取ってこい」
しかし、知っていてなお考えを変えるつもりはないのだった。
無茶な話だ。解決策になってすらいない。しかし、彼は相手が何を言おうと意思を変えるつもりがないらしい。そういう男なのだ。
———眠る場所と食料がある事を『祈り』———
「絶対に友達は彼の祖国へ連れて帰る………絶対にだ! ワイロが欲しいなら払うぜ」
———焚き火に火がつくことを『祈る』———
「おいッ! みんな来てくれッ!」
「全員集めろッ! こっちだッ!」
「この積み荷を力ずくでおろせ!」
「ヤレェーッ」
小柄な男性———その誰もが似たような背丈に容姿をしている———が数人ほど出てきて全員で木箱へと掴みかかり強引にへから下ろそうと引きずり始める。
———このあたり前の事をくり返しながら———
ジョニィはなんの抵抗もせずその様を見守っていた。
もちろん諦めた訳では無い。木箱は奇妙な回転をして男性たちの手をすり抜け元の位置に戻る。
「どういうわけか………絶対に船から下ろせないんだなこれが………すでに無理、出航させるしか無いんだよ」
『ニョホホ』
まるでこうなるのがわかっていたようで、先程まで賄賂がどうと言っていた人物とは思えぬ落ち着き用であった。
そして何よりもジョニィのとなりでは、少し大型で鎖帷子を着たような人型の何かが奇妙な笑い声を上げている。 どうやらジョニィ以外にはこの人型は見えていないらしい。
———友と馬の無事を『祈る』———
「必要ならおまえが乗船許可を取ってこい! ………いいな? なんの問題もないだろ?」
彼は傲慢に言い放ち、船に乗り込んだ。
ここまで来るともはや呆れが優ったのだろう、職員達はこれはまた面倒な客だと疲れた表情で船内に戻って行った。
———そしてひとつひとつの河を渡る———
思えば
目を瞑ればアメリカの端から端まで余すとこなく思い出せる。それは最早単なる脳の記憶ではなく魂に刻み込まれた思い出なのだと感じる。
「『祈って』おこうかな………航海の無事を………」
そう、今までがそうだったように。
これからもそうであるように。
———今、最後の河を渡り終わった———
汽笛がなる。出港の合図だ。
僕は未だ見えぬ大西洋の先を見つめていた。
「この大西洋を渡って家に帰ろう………」
家に………
帰ろう………
*
翌日、ジョニィは船の中で目を覚ました。船の個室に一泊した彼は一つあくびをした後に大きく伸びをした。
SBRレースは文字通り命懸けの大陸横断レース、常に敵を警戒しなくては今こうしてあくびなどできていない。
こうして警戒をしないで寝たのは久しぶりだった。
「! おや?」
そこでジョニィは個室に備え付けられた机に手紙が乗っていることに気づく。
その手紙には『
「僕宛か………いつの間に………」
ジョニィは手紙を手に取り椅子に腰掛け封を切る。
『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。
その
己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、
我らの“箱庭”に来られたし』
「? いったいなんだこの手紙は。結構いい紙を使ってるしどこぞの貴族からの招待状か………? まぁ、いいか」
手紙を捨てようと足に力を入れゴミ箱へ向かう…
「えっ? なっ!」
しかしそれは叶わなかった。
足に力が入らないのである。
「馬鹿なッ! さっきまでは歩けてたのに! 足は使えたんだッ! 」
机を支えに立ち上がってみても、支えを失った瞬間床に崩れ落ちる。
歩けない
それはジョニィにとっては絶望的なことだった。大親友とすごしてきた約半年が無駄になってしまったように感じてしまう。
「まさかっ! この手紙が原因! すでに何か攻撃を受けているッ!」
ジョニィがそう考えるのも無理は無い。
なぜならその手紙は
「くそッ! こんな手紙!!」
送り主の分からない手紙を破り捨てようとしたとき———
ジョニー・ジョースターは
これは僕が再び歩き出す物語
この物語は僕がもう一度、心身共に前へ歩き出す物語
僕は今、ゼロからマイナスへと落ちた
もう一度ゼロへ………いや、彼は命懸けで僕にゼロへと至る道を教えてくれたんだ、いつまでもゼロではいられない
マイナスからゼロを超え———プラスへと向かっていく
そんな物語をここに
問題児たちと『黄金の回転』も異世界から来るそうですよ?
どうもあかひです。
今回が処女作という訳ではなく。
諸事情により前作は削除してます。が、この作品を楽しんでくれたらと思ってます。
本文を一部修正しました。(R2/05/09)
誤字等を一部修正しました。(R2/12/20)
感想、誤字脱字報告、お願いします。
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Yes! ウサギが呼びました!
1.新たな出会い、新たな仲間
「くそッ! こんな手紙!!」
送り主の分からない手紙を破り捨てようとしたとき、ジョニィの視界は一瞬で空へと移り変わった。
それを認識した数瞬後、身体は重力に従って下へと落ちていく。
「なっ! うおおおおおおあああああぁぁぁッッ!!」
ジョニィが投げ出されたのは高度四〇〇〇メートル。
日本一の山、富士山よりも少し高い位置からのひもなしバンジー。
要は落ちたら死は免れないだろう。
他にも三人ほど落ちていたがそっちに気を回してやる余裕はない。
(くそッ! もうダメだ!)
彼の力ではどうする事も出来ない。
ここで彼の、彼らの命は潰えたかに見えた。
「わっ!」
「きゃっ!」
「ぐッ!」
ボチャン、と着水。湖に落ちる前にあった緩衝材のような薄い水膜で勢いが衰えていたため四人は無事のようだ。
しかしジョニィは未だ生命の危機を免れてはいなかった。なぜなら湖とはつまり水深のある水溜りのことだ。それが何を意味するかと言うと———
「うぶ、がぼ、ぐぶ、はっ、ぶぐ」
(息が、できないッ!)
そう、ジョニィ・ジョースターは今しがた、脚が動かなくなったのだ。
つまり、泳げない、いや泳げるかもしれないがとっさに脚を使わずに泳ぐのは限りなく無理に近い。
(
「何やってんだよ」
瞬間、息ができるように、呼吸が楽になった。
誰かに引っ張られているのだ。彼はヤハハと笑いながら僕を岸の方へと連れていってくれた。
「ゲホッゴホッ、すまない、助かった」
「気にすんな」
そのまま彼は僕を岸まで引っ張り上げると、ほかのふたり同様服を絞り始めた。
「し、信じられないわ! まさか問答無用で引き摺りこんだ挙句、空に放り出すなんて!」
「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だな」
「………いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」
「俺は問題ない」
「そう。身勝手ね」
僕を助けてくれた金髪の彼と傲慢そうな彼女は友人なのだろうか。ともあれまずは現状確認が優先だ、持ち物は………たまたま近くにあった小さめのバックだけか。
中にはハーブと鉄球が入っていたはず。
そこまで思考を回していると、もうひとりの少女が口を開いた
「此処………どこだろう?」
「さあな。まあ、世界の果てっぽいのが見えたしどこぞの大亀の背中じゃねえか?」
(確かインドかどっかの神話でそんなのがあったな。平行世界を移動するどころか別世界に来てしまうとは)
「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前達にも変な手紙が?」
「そうだけど、まずは“オマエ”って呼び方を訂正して。私は久遠 飛鳥よ。以後は気を付けて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴方は?」
「………春日部 耀。以下同文」
「そう。よろしく春日部さん。次にそこのバンダナを着けている貴方は?」
「僕か? 僕はジョニィ・ジョースターだ」
「外人さん? 日本語がお上手ね」
(そう言えば僕はさっきから日本語を喋っている、あの手紙のスタンドのせいか? まぁ、意思疎通できるのはありがたい)
「最後に野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」
「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」
「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」
「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」
心からケラケラと笑う逆廻十六夜。
傲慢そうに顔を背ける久遠飛鳥。
我関せず無関心を装う春日部耀。
そんな三人を警戒しながら見ているジョニィ。
(案外この三人は敵ってわけではなさそうだ)
そんな彼らを物陰から観察している影がひとつ。
(うわぁ………なんか問題児ばかりみたいですねえ………)
と、少女の影はため息を漏らすのであった。
*
「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねえんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねえのか?」
十六夜は
「そうね。何の説明もないままでは動きようがないもの」
「………。この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思うけど」
「君も大概人のこと言えないけどな」
(全くです)
物陰から観察している少女はこっそりツッコミを入れた。しかし、ここでずっと観察していても状況は変わらない。
そろそろ出て行こうかと思っていた時、
「———仕方がねえな。こうなったら、
「なんだ、貴方も気づいていたの?」
「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ? そっちの猫を抱いてるやつと外人さんも気づいてんだろ?」
「風上に立たれたら嫌でもわかる」
「こういう気配には敏感だからな」
「………へえ? 面白いなお前ら」
四人に睨まれた少女、黒ウサギはやや怯みつつも四人の前に出てきた。
「や、やだなあ御四人様。そんな狼みたいな怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ? ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」
「断る」
「却下」
「お断りします」
「どうする? 何かやられる前に殺っとくか?」
「あっは、取りつくシマもないですね♪ ジョニィさんに至っては容赦を微塵も感じれません♪」
(肝っ玉は及第点。この状況でNOと言える勝ち気は買いです。これでもう少し扱い安ければ良かったんですが………)
四人の値踏みに思考を没頭させている黒ウサギ———の後から春日部が不思議そうに近づき頭部についたうさ耳を、
「えい」
「フギャ!」
力いっぱい引っ張った。
「ちょっ、ちょっとお待ちを! 触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引っこ抜きにかかるとはどういう了見ですか!?」
「好奇心の為せる技」
「自由にも程があります!」
「へえ? この耳って本物なのか」
今度は十六夜が右から掴んで引っ張る。
「………なら、私も」
今度は飛鳥が左から。左右に力いっぱい引っ張られた黒ウサギは、言葉にならない悲鳴を上げ、その絶叫は近隣に木霊した。
IF〜DIO〜
耀「・・・。この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思うけど」
黒(全くです)
物陰から観察している少女はこっそりツッコミを入れた。しかし、ここでずっと観察していても状況は変わらない。
そろそろ出て行こうかと思っていた時、
DIO「誰か知らんが、貴様! 見ているな!」
黒(!!!!!)
―――――――
どうもあかひです。
今回は原作が強かったんではないかと。
どうにかして変えようと頑張ったんですがね・・・。
まぁ、んなことは置いておいて次回はもっと原作通りになるかもなんですよ、規約違反にならないか怖くて怖くて((((;゜Д゜))))ガクブル
とりあえず次回も楽しんで呼んでくれたらこちらも幸いです。
修正(R2/05/10)
一部修正いたしました。
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2.保証OK
2.保証OK
「―――あ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらう為に小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないのデス」
「学級でも何でもないんじゃあないか? そもそもの話」
「うっ、揚げ足を取らないで下さい!」
「いいからさっさと進めろ」
半ば本気の涙を浮かばせながらも、黒ウサギは話を聞いてもらえる状況を作ることに成功した。
先程三人が黒ウサギをいじっている間、ジョニィは近くの状況を観察していた。
(
と、黒ウサギの説明が始まりジョニィは思考を一旦止めた。
「それではいいですか、御四人様。定例文で言いますよ? 言いますよ? さあ、いいます! ようこそ箱庭の世界へ!―――――」
黒うさぎの言ったことを要約するとこうらしい。
・超能力を持った人間を『ギフトゲーム』なるものに参加させるために呼び出した。
・『ギフトゲーム』とは、神々から貰った恩恵、つまり超能力を使ったゲームのこと
・この箱庭では必ずコミュニティに属さなければいけない
・『ギフトゲーム』に勝てば提示された商品を手に入れることができる
・参加するためにはチップが必要。チップには、金品・土地・利権・名誉・人間など更にはギフトまでも賭けられる
だいたいこんなもんだった。
「さて。
「ちょっと待ってくれ、質問いいか?」
「はい、何の質問です?」
「まず第一に、例えば僕が今すぐ帰りたい。と言ったら帰れるのか?」
「いえ、今すぐは難しいですね」
やはり、とジョニィの予想通りの解答をした黒うさぎを見る。
彼女はさっき『皆さんの召喚を依頼した』と言っていた。つまり召喚したのは彼女では無く別の誰かだ。なら、帰るのもそいつに頼まなければいけないのかもしれない。
ジョニィはほかの三人とは違い、前の世界に未練がない訳じゃない、少なくとも親友の遺体を家族に届けなくてはいけない。
「次に、この世界には有りと有らゆる『ギフト』が存在しているんだよな」
「はいな、人造のギフトから神話に
次の質問もジョニィにとっては先の質問と重要度は同じだ。この箱庭に来る代償として失ったようなものなのだから。
「そのギフトは僕の脚を治せるか?」
「と言いますと?」
「僕のこの動かない足が治るのかって聞いているんだッ!」
「・・・それはわかりません。黒ウサギもすべてのギフトを把握しているわけでは無いので」
「・・・・・・そうか。じゃあ最後の質問だ」
「何でしょう?」
「あんたらは何者だ?」
「先ほど話したように、あなた達を箱庭に―――」
「あんたらは誰に雇われている? 大統領が保険として雇っていたのか? また並行世界から来たDioにか? それともそれ以外の誰かか?」
質問に答えようとした黒ウサギだが、それを新たな質問によって遮られる。
「・・・? 話の意図がつかめないのですが・・・」
「この世界はスタンドで創ったのか?」
「だから何を言っているのか」
「そうよジョニィくん。確かに疑うのも無理ないけど勝手に決め付けるのはどうかと思うわ」
「そうだぜ、ジョニィ。そもそも大統領とかDioって誰だよ」
「・・・・・・」
ジョニィは何よりも冷たい眼で黒うさぎを含めた四人をみた。
「まさかお前達ぐるなんじゃあないか!?」
「・・・ッ!」
久藤や十六夜の目が敵を見る目になったのに気付き、ジョニィは一度冷静になる。
「・・・・・冗談だよ、ウソ・・・落ち着けよ」
ジョニィは四人に言った後、自分に言い聞かせるように呟く。
「そう・・・落ち着けって・・・・・・僕の方がな・・・」
一度頭を冷し考えをまとめていく。
「四人は今出会ったばかりだ。グルの可能性は低い。そもそもこれがスタンドなら能力が一つじゃあない」
ジョニィは『とりあえず付いて行く』という結論に至った。
「すまない、さっきは取り乱した。まずあんたのコミュニティに行けばいいんだろ? 何か乗るものはないか? なんでもいい、馬とかそういうの」
「でしたら少し待っててください。森の中から連れてきます」
野生の馬を連れてくると言って森の中に入っていった黒ウサギ。ジョニィは、鎧が無い。と思ったが今は状況が状況なのでしかたがないと思う事にした。
数分後、黒ウサギが馬を連れてきた。
当然鎧も手網も鞍も無い。が割り切って馬に乗り込む。
「乗るの手伝いましょうか?」
「いや、大丈夫だ」
黒ウサギが親切で聞いてきてくれているんだろうが、今回ばかりは必要が無いだろう。
ジョニィは馬の頭に体を寄せそのまま体を回す。
「すごい」
春日部が驚嘆の声を上げる。確かに、こんな乗り方をする人などいないだろう。それ以前に足が動かないのに馬に乗るやつなんてジョニィくらいだ。
「僕はもう何時でも行けるぜ」
「で、では我々のコミュニティに
「ちょっと待てよ。まだ俺が質問してないだろ」
今度は今まで静聴していた十六夜が威圧的な声を上げて立つ。ずっと刻まれていた軽薄な笑顔が無くなっていることに気づいた黒ウサギは、構えるように聞き返す。
「・・・・・・どういった質問です? ルールですか? ゲームそのものですか?」
「そんなのは
十六夜は黒ウサギから視線を外し、他の三人を見回し、巨大な天幕によって覆われた都市に向ける。
彼は何もかもを見下すような視線で一言、
「この世界は面白いか?」
「――――――」
「――――Yes。『ギフトゲーム』は人を超えた者たちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」
IF〜ジョルノ〜
黒「それではいいですか、御四人様。定例文で言いますよ? 言いますよ? さあ、いいまs
ジョ「1度でいい事を2度ばかりか3度も言わないでくださいよ、黒ウサギさん。何度も言うって事は、無駄なんだ……無駄だから嫌いなんだ、無駄無駄……」
黒「話の腰を折らないでくださいっ!」
―――――――
どうもあかひです。
今回も原作が強かったんではないかと。
どうにかして変えようと頑張った結果がこれだよ・・・。
まぁ、んなことは置いておいて次回はジョニィをどっちに行かせるかで悩んでますよ、てか2000字軽く超えてるのに話が進まないという(当然)
とりあえず次回も楽しんで読んでくれたらこちらも幸いです。
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3.牙-問題児のとばっちり-
3.牙-問題児のとばっちり-
場所は箱庭二一〇五三八〇外門
箱庭の外壁と内壁をつなぐ階段の前で少年、ジン=ラッセルはいた。一人誰かを待っているようだ。
先程まで子供たちがここで騒いでいたが、待ちくたびれて帰ってしまったのだろう。
そこに彼を呼ぶ声が一つ
「ジン坊っちゃーン! 新しい方を連れてきましたよー!」
「お帰り、黒ウサギ。そちらの女性二人が?」
「はいな、こちらの御四人様が―――」
クルリ、と振り返る黒ウサギ。
カチン、と固まる黒ウサギ。
「・・・え、あれ? もう二人いませんでしたっけ? ちょっと目つきが悪くて、かなり口が悪くて、全身から“俺問題児!"ってオーラを放っている殿方と、あの馬に乗っていた、
「ああ、十六夜君のこと? 彼なら“ちょっと世界の果てを見てくるぜ!"と言って駆け出して行ったわ。あっちの方に」
「じゃ、じゃあジョニィさんは・・・」
「ジョニィなら十六夜が“ヤハハ、こいつも連れていくぜ"って」
「な、なんで止めてくれなかったんですか!」
「“止めてくれるなよ"と言われたもの」
「ならどうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか!?」
「“黒ウサギには言うなよ"と言われたから」
「嘘です、絶対嘘です! 実は面倒くさかっただけでしょう御二人さん!」
「「うん」」
ガクリ、と前のめりに倒れる。新たな人材に心を踊らせていたら、まさかこんな問題児ばかり掴まされるなんて嫌がらせにも程がある。
そんな黒ウサギとは対照的に、ジンは蒼白になって叫んだ。
「た、大変です! “世界の果て"にはギフトゲームのため野放しにされている幻獣が」
「幻獣?」
「は、はい。ギフトを持った獣を指す言葉で、特に“世界の果て"付近には強力なギフトを持ったものがいます。出くわせば最後、とても人間では太刀打ち出来ません!」
「あら、それは残念。もう彼らはゲームオーバー?」
「ゲーム参加前にゲームオーバー?・・・斬新?」
「冗談を言っている場合じゃありません!」
ジンは必死に事の重大さを訴えるが、二人は叱られても肩を竦めるだけである。
黒ウサギはため息を吐きつつ立ち上がった。
「はあ・・・・・・ジン坊っちゃん。申し訳ありませんが、御二人のご案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「わかった。黒ウサギはどうする?」
「問題児達を捕まえに参ります。事のついでに―――“箱庭の貴族"と謳われるこのウサギを馬鹿にしたこと、骨の髄まで後悔させてやります」
悲しみから立ち直った黒ウサギは怒りのオーラを全身から噴出させ、艶のある黒い髪を淡い緋色に染めていく。
「一刻ほどで戻ります! 皆さんはゆっくりと箱庭ライフを御堪能ございませ!」
全力で跳躍した黒ウサギは弾丸のように飛び去り、あっという間に三人の視界から消え去っていった。
「箱庭の兎は随分速く跳べるのね。素直に感心するわ」
巻き上がる風から髪の毛を庇う様に抑えていた久藤が呟く。
「凄いね三毛猫、私も黒ウサギと友達になったらあんな風に速く跳べるのかな?」
『
「ふふ、そうだね」
春日部は春日部で黒ウサギを話題にしているようだ。
「黒ウサギも堪能くださいと言っていたし、御言葉に甘えて先に箱庭に入るとしましょう。エスコートは貴方がしてくださるのかしら?」
「え、あ、はい。コミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。齢十一になったばかりの若輩ですがよろしくお願いします。二人の名前は?」
「久藤飛鳥よ。そこで猫を抱えているのが」
「春日部耀」
ジンが礼儀正しく自己紹介をすると、飛鳥と耀はそれに倣って一礼した。
「さ、それじゃあ箱庭に入りましょう。まずはそうね。軽い食事でもしながら話を聞かせてくれると嬉しいわ」
飛鳥はジンの手を取り、胸を躍らせるような笑顔で箱庭の外門をくぐるのだった。
――――――――――
「あーもう! 一体どこまで行っちゃったんですか!?」
黒ウサギは十六夜達を探して半刻が過ぎようとしている。
彼らの身を案じ、焦りを募らせ走る黒ウサギだったが、背後から声をかけられ足を止める。
「ん? おや、誰かと思えば。君、黒ウサギかい? 随分雰囲気が変わったね。どうしたんだい? その髪、赤色・・・いや、緋色になってるぜ?」
「ジョニィさん! 良かった、十六夜さんは御一緒では?」
「いや、逆廻なら先に行ったぜ。おかしな話だよな、僕を連れて来といて置いていくんだぜ?」
「アハハ、全く十六夜さんは自由すぎますヨ」
笑って誤魔化そうとするが、十六夜の自由人っぷりは誤魔化せない。ガクリと肩を落とす。
「では、十六夜さんはこの先に?」
「ああ、この先にいるぜ・・・
「え! 今なんて言いました?ちょっと待ってください! 今、小さくたぶんて付け足しませんでした? たぶんッ!?」
「うるさいな、大丈夫だ。いるって・・・
「何ですかそれ!? きっと!?」
「うるさいな、行けばわかることだろ?」
ギャーギャーと叫ぶ黒ウサギを置いて馬を走らせるジョニィと、それを追いかける黒ウサギ。
彼女はジョニィにストップをかける
「まっ、待ってくださ―――」
しかし言い切ることはできなかった
黒ウサギのセリフを遮ったのは巨大な大地の揺れだった
「うおッ! なんだ!」
「わわ! ま、まさか、十六夜さんが幻獣と!」
黒ウサギはすかさず大河の方角を見ると、彼方には肉眼で確認できるほど巨大な水柱が幾つも立ち上がっている。
「幻獣が何かはわからないが、取り敢えずヤバイってことはわかった! 早く行こう!」
「はい!」
黒ウサギとジョニィは先を急いだ。
―――――――――
「この辺りのはず・・・・・・」
黒ウサギが辺りを見回すとまたも背後から声がかかった。
「ジョニィ、遅いぜ」
「遅いって・・・。君が速すぎるんだよ」
ジョニィは馬から降りて少し馬を休ませる。
ほんの数刻だけだが足場の悪い森の中を走ってきたのだ。度々休ませてやらないと馬の足が壊れてしまう。
「そうか? ・・・あれ、お前黒ウサギか? 」
黒ウサギ達に気づいた十六夜は二人に声をかける。
ジョニィは十六夜と軽く会話をしているが、黒ウサギは異世界から呼んで早々に二人に振り回されたからか怒髪天を衝くような怒りを込めて勢いよく十六夜に声をかける。
「もう、二人して一体何処まで来ているんですか!?」
「“世界の果て"まで来ているんですよ、っと」
「ああ、見ればわかるだろ。というかあんたはこの世界に住んでいるんだろう? もしかしてあんたは俗に言う馬鹿ってやつかい?」
「く、黒ウサギは馬鹿じゃありません!」
ジョニィの茶化しで更に怒っていく黒ウサギ
「まあそんなに怒るなよ」
十六夜の憎たらしい笑顔も健在だ。心配して急いで来たがそれは希有だったようだ。
「しかしいい足だな。遊んでいたとはいえこんな短時間で俺に追いつけるとは思わなかった」
「むっ、当然です。黒ウサギは“箱庭の貴族"と謳われる優秀な貴種です。その黒ウサギが」
アレ? と黒ウサギは首を傾げる。
箱庭の貴族である黒ウサギが半刻以上も追いつけなかったことを疑問に思ったからだ。しかし
(途端でジョニィさんにあったりしていたのでそのせいでしょうか・・・?)
と今は簡単に結論を出し特に気にもとめずに話を進めていく。
「ま、まあ、それはともかく! 十六夜さんが無事で良かったデス。水神のゲームに挑んだと聞いて肝を冷やしましたよ」
「水神?―――――ああ、
え? 黒ウサギは硬直する。十六夜は川面にうっすらと浮かぶ白くて長いモノを指さした。黒ウサギが理解する前にその巨体が鎌首を起こし、
『まだ・・・・・・・・・まだ試練は終わってないぞ、小僧ォ!!』
なんでも、試練を選べ、と言ってきた蛇神に対し、十六夜を試せるかどうか試させてもらったらしい。
ジョニィは、いやジョニィじゃなくても今の話を聞けば誰でもそう思っただろう。
コイツ、何を言っているんだ?、と
『貴様・・・・・・付け上がるな人間! 我がこの程度の事で倒れるか!!』
蛇神の甲高い咆哮が響き、巻き上がる風が水柱を上げて立ち昇る。
「十六夜さん、下がって!」
黒ウサギは庇おうとするが、十六夜の鋭い視線はそれを阻む。
「何を言ってやがる。下がるのはテメェだろうが黒ウサギ。これは俺が
「僕はそんなつもりは無いぜ?」
『心意気は買ってやる。それに免じ、この一撃を凌げば貴様の勝利を認めてやる』
「寝言は寝て言え。決闘は勝者が決まって終わるんじゃない。
『フン―――――その戯言が貴様の最後だ!』
蛇神は水を操っているのか、蛇神が雄叫びを上げると竜巻のように渦を巻いた水柱が蛇神の丈よりも遥かに高く舞い上がり、何百トンもの水を吸い上げ、周囲の木々をも巻き込んでゆく。
「十六夜さん!」
黒ウサギが叫ぶ。しかしもう遅い。
竜巻く水柱は十六夜の体を激流に飲み込む―――!
「―――ハッ―――――しゃらくせえ!!」
水柱を殴り飛ばした。
比喩にあらず、周りの木々を巻き込みながら十六夜を襲っていた水柱は、その十六夜の手によって粉砕された。
「ま、なかなかだったぜオマエ」
蛇神の胸元に跳び込んだ十六夜は蛇神が胴体に蹴りを浴びせる。
その蹴りで蛇神の巨躯は空中高く打ち上げられて川に落下した。
更に、十六夜が殴り飛ばした水柱も無くなった。
しかし、水柱に巻き上げられていた木々が重力に従い落ちてくる。巨大な蛇神よりも高かった水柱に巻き上げられていた木々がその高さから落ちてくるわけで、それはもはや
そしてその木々の下には、馬から降りているジョニィがいる。
「な、うおおおぉぉ!!!」
一瞬、十六夜の行為に絶句したが、すぐに自分の危機に気づく。
ジョニィとしてはあまり自分の能力は知られたくない、がしかし足が使えない以上、避けるという選択肢は無くなる。
必然、彼の能力。
「うおおおああぁぁact.2!!!」
すぐさま巻き上がっている木々とは別の周りの木々に視線を向け、木の葉から黄金長方形のスケールを見つけ出す。
自然界に存在する、約1:1.618の比率からなる美しい長方形。そこから無限に生み出される回転は、ジョニィの爪を回していく。
ドバッ! ドバドバッ! ドバッ!
派手な効果音を立てて爪は回転したまま飛んで行き、着弾した爪弾はかくじつに木々を粉微塵にしていく。
だが圧倒的に数が足りない。
ジョニィが打てるのは両手分十発、既に四発撃った。爪の回復には数分かかる。それに対し、木々はその何倍もある。
「うおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」
ドバッ!
最後に一発分音がしたが、何を破壊することもなく、ジョニィだけが潰された。
「ジョ、ジョニィさん!」
「なんだ? ジョニィはもう
十六夜は無慈悲な言葉を告げる。
まるで弱いものには興味無いというようである
「な、何呑気なことを言っているのでございますか!」
「・・・ここで再起不能って事はその程度ってことだろ。そこまできにする必要は・・・ん?」
そこまで言って十六夜はなにかに気がついた。
それは落下した木々の残骸の下から移動してきた奇妙な穴だった。その穴は“ギャルギャル"と音を発し、
そしてそれは徐々に十六夜に近づいてくる。
不思議に思い穴に触れてみる。普通に考えればこの行為は危険だ、得体の知れないものに触れるのだから。しかし、十六夜はたとえ何が来ても自分がやられる訳が無いという、一種の自惚れにも似た自信を持っていた。
バキィ!
「ッ痛!」
だがそんな十六夜の自信とは逆に十六夜の指はダメージを受けた。指先は穴に触れただけなのにも関わらず、刃物でズタズタに切り刻まれたようになっていた。
「・・・なんだ? この穴は」
呟いた数瞬後、穴からズズッと何かが出てくる。
十六夜は一瞬で臨戦態勢に入る。
穴から出てきたのは指のような物だった。
ゆっくりと穴から這い出すそれはやはり指であった。そしてその後からは手、腕と次々に穴から出てくる。
腕が出てきたところで、十六夜は警戒を解いた。これが誰なのかがわかったからだ。
その腕には特徴的な
IF〜ポルナレフ〜
十六夜「なぁ、ポルナレフ、世界の果て見に行かねぇか?」
柱「はぁ? 黒ウサギについて来いって言われただろ?」
十「いいだろ? 別に」
柱(こいつッ! 何が何でも俺を連れていく気だぜッ!)
柱:そこで問題だ! 十六夜からの圧力が凄い中どうやってあの勧誘をかわすか?
3択―一つだけ選びなさい
答え①ハンサムのポルナレフは突如断る口実がひらめく
答え②
答え③断れない。 現実は非情である。
俺がマルをつけたいのは答え②だが期待はできない・・・本人達には悪いがあの二人がアメリカンコミック・ヒーローのようにジャジャーンと登場して「まってました!」と間一髪助けてくれるほど優しそうには見えねーぜ。
やはり答えは・・・①しかねえようだ!
柱「お、俺も早く箱庭がとんなとこか見たいんだよ! な! だから世界の果てには一人で―――」
十「かんけぇねぇ、行くぜ」
そう言って十六夜はポルナレフの襟首をつかみ跳躍した。
答え―③かわせない。現実は非常である。
―――――――
どうもあかひです。
まず一言
ものすごく遅くなりました、すいませんm(_ _)m
あらすじで書いている通り受験生を不本意ながらやっているので
まぁ、んなことは置いておいて次回もまた一ヶ月、下手すると二ヶ月ほど開くかも知れませんが、失踪はしないので忘れた頃にまた見に来てください、てか前回の文字数を二倍以上超えてるのに話が進まないという(困惑)
とりあえず次回も楽しんで読んでくれたらこちらも幸いです。
感想.評価.誤字脱字報告、お願いします。
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4.ノーネームの真実
この前書きの場を借りて少し注意書きをさせて頂きます。
今回、この話は受験後に書いたものなのですが、前回の話を投稿してから既に約半年が経ってしまっています。
文才の無い作者は以前の書き方を少し忘れてしまいました。
よって、今回に関しては前回と口調や話の持ち運び、場面の転換などが不自然だったりとがあるかと思います。
それらは見逃してくれるとありがたいです。
では、長くなりましたが本編をお楽しみください。
4.ノーネームの真実
ギャルギャルギャル
「ッ痛!」
十六夜はその回転しているのであろう穴を見て、触れて驚いた。
日本の伝統遊具コマを知らない人はいるだろうか。おそらく今この中にはいないだろう。では、回っているコマに触れたらどうなるか、そんな事、実際やった事が無くてもわかるはずだ。回っているものに触れたら『止まる』のだ。どんな物も外力を受けたら止まる。わかりきっていることだ。
ギャルギャルギャルギャル
だがその穴は回転が衰えること無く回り続けている。それはまるで無限に、永遠に回り続けるのではないかと錯覚するほどだ。
ズズズッ
「ッ!」
そしてその穴から、ゆっくりと何かが出てくる。
ゆっくりと、ゆっくりと。
やがて出てきたのは――――
「やはり敵だったか。
少しの怪我も負っていないジョニィだった。
「おいおい、ちょっと待てジョニィ。今のはただの事故だぜ?」
十六夜はこちらを撃ち殺さんばかりの勢いのジョニィに弁明しつつ、静かに考察していた。
(ジョニィの能力――本人曰く牙と言うらしいが――は恐らく、いやほぼ確実に指先から何かを撃ち出す能力だ。
攻撃の時、必ず指先を対象に向けている、またやたらめったらに撃たなかったということは弾数制限がある、つまり指先にあり数が決まっているもの。
ジョニィは――いや有り得ないと思うが――爪を撃ち出している可能性が高い。
そして、あの穴から出てきた能力だ。あれは全くわからない、原理すらも)
「ただの事故・・・だって?」
ジョニィが尋ねる。 それも仕方が無いだろう、彼は
しかし、今回、十六夜たちには悪意はない。
「ああ、俺もまさかお前が潰されそうになるとは思わなかったしな。黒ウサギもその距離じゃ潰される前に助け出すのは難しいだろ」
「事故・・・か。確かにそうだな。すまない、また早とちりをしたみたいだ」
自分の考え過ぎに気づいたジョニィは謝罪をする。
だが、そんな謝罪の声は、それ以前に彼らの会話は黒ウサギには届いていなかった。
(人間が・・・神格を倒した!? それもただの腕力で!? しかも、その十六夜さんを一瞬怯ませるジョニィさんの能力・・・なんてデタラメな―――!)
ハッと黒ウサギは思い出す。彼らを召喚するギフトを与えた"
(信じられない・・・・・・だけど、本当に人類最高クラスのギフトを所持しているのなら・・・・・・! 私達のコミュニティの再建も、本当に夢じゃないかもしれない!)
黒ウサギは興奮を抑えきれず、鼓動が早くなるのを感じ取っていた。
「おい、どうした? ぼーっとしてると胸とか脚とか揉むぞ?」
「え、きゃあ!」
いつの間にやら黒ウサギの背後に移動していた十六夜は彼女の豊満な胸や脚の内股へと手を伸ばしていた。
黒ウサギはさっきの感動も忘れて叫ぶ。
「な、ば、おば、貴方はお馬鹿です!? 二百年守ってきた黒ウサギの貞操に傷をつけるつもりですか!?」
「二百年守った貞操? うわ、超傷つけたい」
「お馬鹿様!? いいえ、お馬鹿様!!!」
十六夜たちのおふざけを聞きながら、ジョニィは改めて異世界に来てしまったことを実感していた。
(黒ウサギ、十六、七歳くらいにしか見えないのに、二百歳か・・・。それにさっきの竜やウサギの耳、本当に僕のいた世界じゃあないのか)
「―――おいジョニィ、聴いてんのか?」
「あ、ああ、すまない」
ジョニィが考え事をしているうちに話は黒ウサギのコミュニティの話になっていたようだ。
「で、話を戻すが、黒ウサギ達は
表情には出ていないが黒ウサギの動揺は激しかった。
十六夜の質問は黒ウサギが意図的に隠していたものだからだ。
「それは・・・言った通りです。十六夜さん達にオモシロオカシク過ごしてもらおうと」
「ああ、俺も最初はそんな感じの純粋な好意とかかと思っていた。俺は超絶暇だったわけだし、ジョニィ以外からは異論が上がらなかったってことは、あの二人にも箱庭に来るだけの理由があったんだろうよ。だからお前の事情なんて特に気にかからなかったが―――なんだかな。俺には、黒ウサギが必死に見える。ジョニィはどうだ?」
「どうだろう、でも確かに少し必死には見えるかな」
口調は穏やかだが何か確信めいたような鋭い視線で黒ウサギを見る。
その時、初めて黒ウサギは動揺を表情に出した。
それからは十六夜の質問が黒ウサギに一気に襲いかかった。
彼は自分の憶測を言うが、どうやらそれは当たりだったらしい。
「今のコミュニティの状況を話せば、協力していただけますか?」
「ああ、面白ければな」
「僕はどっちでもいいけど」
「・・・・・・分かりました。それではこの黒ウサギもお腹を括って、精々オモシロオカシク、我々のコミュニティの惨状を語らせていただこうじゃないですか」
ほとんど自棄だった黒ウサギが告げた惨状は酷いものだった。
彼女のコミュニティは『魔王』と呼ばれる者によって、地位も名誉も仲間も名も誇りも、すべてを奪われた。しかも、今のコミュニティのメンバーは、黒ウサギとジンという男の子以外の百二十人はすべてギフトを持たない子供、今住んでいる土地は空き地だらけの廃墟というのだ。
もう崖っぷちである。
だが、それでも彼女達が新しく旗印と名を作らないのは、旗印と名を取り戻し仲間の帰る場所を守りたいという願いからだった。
「ふぅん。魔王から誇りと仲間をねえ」
黒ウサギは深く頭を下げて懇願するが、十六夜はやる気の無い声を返す。
(ここで断られたら・・・私達のコミュニティはもう・・・・・・!)
十六夜はたっぷりと三分間黙り込んだ後、
「いいな、それ」
「――――・・・・・・は?」
どうやら彼女達の状況は十六夜の気に召したようだ。
IF〜花京院〜
黒「箱庭を襲う最大の天災―――“魔王”によって」
花「魔王なんているわけがないじゃあないですか・・・ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから」
十「そのファンタジーやメルヘンの世界に来ている件」
花「・・・・・・・・・・・・」
――――――――
どうもあかひです。
受験終わりましたよ。
どうにかこうにか、ギリギリでした。
さて、今回ここでは誤解されてる方も多いと思いますので、この作品の一話ごとの話の長さについて言っておきたいと思います。
作者は一話平均2000〜5000字を目安に書いています。
これは、どこでも手軽にサッと読める、というのを意識しています。
けして『長く書くのは無理』だとか『集中力が続かない』とか『短くしとけば話数稼げんじゃん』とかいった理由ではありません。
そこのところ間違えないでいただきたいです。
そのような事は
とりあえず次回も楽しんで呼んでくれたらこちらも幸いです。
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5.初ゲーム前日
なれない新生活であまり時間が取れず、書くことができませんでした。
今後もこういったことがあると思いますが、失踪だけはするつもりはないので今後もよろしくお願いします。
また、上記の理由により、物語があまり進展していませんがどうかご理解ください。
では、本編をお楽しみください。
5.初ゲーム前日
黒ウサギは彼女らのコミュニティの事を洗いざらい話した後、当初の目的通り“世界の果て“と呼ばれているイグニスの大滝へと行った。
そして、日が暮れた頃に噴水広場でジン達と合流したのだが・・・
「な、なんであの短時間に”フォレス・ガロ”のリーダーと接触してしかも喧嘩を売る状況になったのですか⁉」「しかもゲームの日取りは明日⁉」「それも敵のテリトリーで戦うなんて!」「準備している時間もお金もありません!」「一体どういう
「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しています」」」
「黙らっしゃい!!!」
どうやら三人が窮地の黒ウサギのコミュニティにさらに問題を持ってきたようだ。
フォレス・ガロとは今現在彼女らのいるここ、二一〇五三八〇外門付近を縄張りとしているコミュニティである。
彼は自らのコミュニティを大きくするために他コミュニティの女子供を攫っては人質とし無理矢理に従わせ、しかもあろうことかその人質は攫った日には殺していたのだという。
「別にいいじゃねぇか。見境なく選んで喧嘩売ったわけじゃないんだから許してやれよ」
「い、十六夜さんは面白ければいいと思ってるかもしれませんけど、このゲームで得られるものは自己満足だけなんですよ? この”
”契約書類”は”
今回黒ウサギが見せてきた”契約書類”には、
「“
「確に自己満足だ。時間をかければ立証出来るものを、わざわざ取り逃がすリスクを背負ってまで短縮させるんだからな」
ジョニィが読み上げた契約書類の内容を聞き、十六夜が黒ウサギの言葉を肯定する。
「そうです。しかも肝心の子供達は・・・その、」
「そう。もうこの世にいないわ。でも、その証拠を掴もうととしたら少々時間がかかるのも事実。あの外道を裁くのにそんな時間をかけたくないの。それに、私はあの外道が私の活動範囲内で野放しにされている事も許せないわ」
飛鳥が自分の気持ちを告げた。一見自分のためのように聞こえるが、彼女なりの一本の信念が通っている。
この飛鳥の気持ちにはここにいるみんなが共感していた。
「むぅ・・・。仕方がない人達です。まあ“フォレス・ガロ”程度なら十六夜さん一人いれば楽勝でしょう」
飛鳥の気持ちにおされ、渋々ながらだがゲームへの参加を許可した。
十六夜とジョニィへの評価は高い。ならば二人が出れば安心というやつだ
しかし―――
「何言ってんだよ。俺らは参加しねえよ?」
「もちろん、貴方達なんて参加させないわ」
フン、と鼻を鳴らす二人。黒ウサギは慌てて二人に食ってかかる。
「だ、駄目ですよ! 御二人はコミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しないと」
「黒ウサギ、そういうことじゃないと思う。これは久遠達が売って、アイツらが買った喧嘩だ。決着を付ける権利は彼女らにだけある」
「あらジョニィ君、分かってるじゃない」
「・・・・・・。ああもう、好きにしてください」
丸一日振り回された黒ウサギは、もうどうにでもなればいいと呟いて肩を落とすのだった。
―――――――
ガルドと戦うことになったノーネーム一行は、ギフト鑑定をするためにコミュニティ”サウザンドアイズ”へと向かうことになった。
黒ウサギが彼らの歓迎会のためにいろいろと準備をしていたようだが、すべて無駄になったのは別の話。
道中、十六夜・飛鳥・耀・ジョニィの四人は興味深そうに街並みを眺めていた。
桃色の花を散らしている街路樹を見て、飛鳥が呟いた。
「桜の木・・・ではないわよね? 花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けているはずがないもの」
「いや、まだ初夏になったばかりだぞ。気合の入った桜が残っててもおかしくはないだろ」
「・・・? 今はまだ秋だったと思うけど」
「何を言っているんだ、SBRレースが終わってすぐにこっちへ来たんだ。今は冬だろ?」
ん? っと噛み合わない四人は顔を見合わせて首をかしげる。黒ウサギが説明した。
「皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されているのデス。元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系など所々違う箇所があるはずですよ」
「へぇ? パラレルワールドってやつか?」
「近しいですね。正しくは立体交差平行世界論というものなのですけども・・・今はあまり時間がないので、またの機会にということで」
黒ウサギが曖昧に濁して話を終わらせた。どうやら目的地に着いたようだ。
「まっ」
「待った無しです御客様。うちは時間外営業はやっていません」
・・・目的地に着きはしたが、どうやらここでも一悶着あるようだ。
「なんて、商売っ無いない店なのかしら」
「ま、全くです! 閉店時間の五分前に客を締め出すなんて!」
「文句があるならどうぞ他所へ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」
「出禁⁉ これだけで出禁とか御客様舐めすぎでございますよ⁉」
キャーキャーと騒いでいた黒ウサギに、店員は冷めたような眼と侮辱を込めた声で対応する。
「なるほど、"箱庭の貴族"であるウサギの御客様を無下にするのは失礼ですね。入店許可を伺いますので、コミュニティの名前を聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」
「・・・う」
一転して言葉に詰まる黒ウサギ。
「もういい、こんなヤツほうっておいて帰ろうぜ。僕達は別にギフト鑑定なんて受けなくてもいいし」
ジョニィはそう告げるとクルリと馬で器用にUターンする。他の三人も「そうだな」と言った具合に帰ろうとした。
しかし、店の奥から聞こえてくる奇妙な声、そして猛烈なスピードで飛んでくる何かによって、彼らの帰宅は阻止された。
「いぃぃぃやほおぉぉぉぉぉぉ! 久しぶりだ黒ウサギイィィィィ!」
黒ウサギは店内から砲弾のように飛んできた幼女に
「・・・驚いた。あんなちっこいのが飛んで来るなんて・・・、流石人外魔境の世界ってことか」
「・・・おい店員。この店にはドッキリサービスがあるのか? なら俺も別バージョンで是非」
「ありません」
黒ウサギへと飛んできたこの幼女はどうやら彼女の知り合いらしい。が、知り合いだとしても過激すぎるスキンシップ、まるでおっさんのような幼女についに我慢できなくなったのか、頭をつかんで店に向かって投げた。
それを
「ゴバァ! お、おんし、飛んできた初対面の美少女を足で受け止めるとは何様だ!」
「十六夜様だぜ。以後よろしく和装ロリ」
この一連の流れで十六夜らを除く全員は呆気にとられるのであった。
IF~リンゴォ~
白「いぃぃぃやほおぉぉぉぉぉぉ! 久しぶりだ黒ウサギイィィィィ!」
黒ウサギは店内から砲弾のように飛んできた幼女に抱きつかれ、街道の向こうにある浅い水路まで飛んで・・・
リ「マンダム」
白「サギイィィィィ!」
黒ウサギは店内から砲弾のように飛んできた幼女に抱きつかれ、街道の
リ「マンダム」
白「サギイィィィィ!」
黒ウサギは
リ「マンダム」
白「サギイィィィィ!」
リ「終わりのないのが終わり、それが(ry
―――――――
どうもあかひです。
前書きでも伝えましたが、遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
話は変わりまして、いつの間にか増えていた『原作改変予定』のタグについて説明したいと思います。
問題児の世界にジョニィを送り込んだわけですが、彼は『牙-AKT4』という強力なスタンドを持っています。恐らく、このスタンドにはあの閣下様でも最終的には負けてしまうのではないか、という不安がよぎってしまいました。
そこでこの駄作者はこの世界のパワーバランスを整えるため、敵側にもスタンドに目覚めてもらおう、と考えたわけです。
見切り発車なため当初にはない展開になってしまい申し訳ありません。
また改変等が苦手な方には深くお詫び申し上げると共にご理解お願いします。
今後もこの駄作をお願いします。
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6.確固たる目的
失踪してしまったと思われた方もいるでしょうが、ここに誓います。失踪だけはしません、どれだけ時間がかかろうとも。
作者は学生という身分のガキんちょなので勉強が難しくなってきまして...。
時間を見つけてやっとこさ完成されられました。
それではお待ちかねの(誰も待っていない)第6話です。
お楽しみください。
6.確固たる目的
謎の幼女――白夜叉というらしい――に連れられ、サウザンドアイズの暖簾をくぐり彼女の私室へと向かう。
「もう一度自己紹介をしておこうかの。私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えている"サウザンドアイズ"幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女と認識しておいてくれ」
「はいはい、お世話になっております本当に」
投げやりな言葉で受け流す黒ウサギ。その隣で耀が小首を傾げて問う。
「その外門、って何?」
「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。数字が若いほど都市の中心部に近く、同時に強大な力を持つ者達が住んでいるのです」
黒ウサギが描く上空から見た箱庭の図は、外門によって幾重もの階層に分かれている。その図を見た四人は口を揃えて
「・・・超巨大タマネギ?」
「いえ、超巨大バームクーヘンではないかしら?」
「そうだな。僕もバームクーヘンだと思う」
「ふふ、うまいこと例える。その例えなら今いる七桁の外門はバームクーヘンの一番薄い皮の部分に当たるな。更に説明するなら、東西南北の四つの区切りの東側にあたり、外門のすぐ外は"世界の果て"と向かい合う場所になる。あそこにはコミュニティに所属していないものの、強力なギフトを持ったもの達が棲んでおるぞーーーその水樹の持ち主などな」
白夜叉は薄く笑って黒ウサギの持つ水樹の苗に視線を向ける。
「して、一体誰が、どのようなゲームで勝ったのだ? 知恵比べか? 勇気を試したのか?」
「いえいえ。それは十六夜さんがここに来る前に、蛇神様を素手で叩きのめしてきたのですよ」
「なんと!? クリアではなく直接的に倒したとな!? ではその童は神格持ちの神童か?」
「いえ、黒ウサギはそう思えません。神格なら一目見れば分かるはずですし」
「む、それもそうか。しかし神格を倒すには同じ神格を持つか、互いの種族によほど崩れたパワーバランスがある時だけのはず。種族の力でいうなら蛇と人ではドングリの背比べだぞ」
難しい顔で悩む白夜叉に黒ウサギはふと浮かんだ疑問をぶつける。
「白夜叉様はあの蛇神様とお知り合いだったのですか?」
「知り合いも何も、あれに神格を与えたのはこの私だぞ」
「へえ? じゃあお前はあのヘビより強いのか?」
「ふふん、当然だ。私は東側の四桁以下のコミュニティ最強の“
「そう・・・ふふ。ではつまりあなたに勝てば私達のコミュニティは東側最強という事よね」
「無論、そうじゃが。おんしら、私にギフトゲームで挑むと?」
「え? ちょ、ちょっと御四人様!?」
「よいよ黒ウサギ。ふふ、そうか。――――――しかし、ゲームの前に一つ確認しておくことがある」
「おんしらが望むのは『挑戦』か――――――もしくは『決闘』か?」
刹那、四人の視界に爆発的な変化が起きた。
脳裏をよぎるのは知らぬ景色。
あまりの情報量に微かな頭痛がする。
一瞬景色がフラッシュし気がつくとそこは、太陽が水平に廻る白銀の世界だった。
「今一度名乗り直し、問おうかの。 私は“白き夜の魔王”――――――太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への『挑戦』か? それとも対等な『決闘』か?」
魔王・白夜叉。少女の笑みとは思えぬ凄味に、息を呑む四人。
白夜叉曰く、この世界も彼女のゲーム版の一つという。その事実に十六夜達は再度息を呑む。
「参った。やられたよ。降参だ白夜叉」
しばしの静寂の後―――諦めたような笑みを浮かべ十六夜が挙手をした。
「ふむ? それは決闘ではなく、試練を受けるということかの?」
「ああ、これだけのゲーム盤を用意できるんだからな。あんたには資格がある。―――いいぜ。今回は黙って
十六夜は苦笑と共に吐き捨てるように言う。
「く、くく・・・して、ほかの童達も同じか?」
「・・・・・・ええ。私も、試されてあげてもいいわ」
「右に同じ」
「ああ。別に、戦う意味も無いしな」
一連の流れをヒヤヒヤしながら見ていた黒ウサギは、ホッと胸をなでおろす。
「も、もう! お互いにもう少し相手を選んでください! “階層支配者”
に喧嘩を売る新人と、新人に売られた喧嘩を買う“階層支配者”なんて、冗談にしても寒すぎます! それに白夜叉様が魔王だったのは、もう何千年も前の話じゃないですか!!」
「何? じゃあ元・魔王様ってことか?」
「はてさて、どうだったかな?」
ケラケラと悪戯っぽく笑う白夜叉。ガクリと肩を落とす黒ウサギと三人。しかしジョニィは一人あまり興味のなさそうな顔で周囲の白銀の世界を見回している。
親友から回転の技術を教わってから、新たな土地に来たらまず、黄金長方形を探すのが癖になっているようだった。そして彼はふと思い出したように言った。
「なあ黒ウサギ。ここに来た目的、忘れているわけじゃあないよな?」
正直な話、彼は早く『ギフト鑑定』なるものをしてほしかった。
この世界に来て歩けなくなった理由は分からないが、何かとても大きな違和感をずっと感じていた。その違和感をなくし、脚を治し、元の世界に戻るには少しでも多くの情報が必要だ。
「あ、そうでした」
「なんだ? 何か目的があってここにきたのか?」
「ああ、ギフト鑑定をしてくれ、白夜叉」
「うっ、金髪の小僧、今ギフト鑑定といったか? よりにもよってそれか。専門外どころか無関係もいいところなのだが」
困ったように頭を掻く白夜叉は、突如妙案が浮かんだとばかりにニヤリと笑った。
「よかろう。おんしらのギフト、鑑定はできんがそれなりのことはできる」
「本当ですか⁉」
「ああ、しかし一つ条件がある。先ほどおんしらを試すといったからの、私がおんしらのギフトを鑑定をするに値すると思えたならばやってやろう」
「別に俺らは鑑定なんか―――」
「―――そんなことでいいのか? 何をすればいい?」
十六夜の言葉を遮りジョニィが質問をする。
「ちょっとジョニィ君、一人で話を進めないでくれないかしら? 私たちは別に鑑定してほしいとは思ってないわよ?」
はっきりと拒絶するような声音の飛鳥と、それに同意するようにうなずく二人。
「関係ないね。あんたたちが鑑定しなくてもいいなら僕一人でも試練を受けるさ」
決めたことは覆さんと言うかのように意思と決意のこもった言葉に、さすがの飛鳥もたじろぐ。
「僕には目的があるんだ! この再び動かなくなってしまった脚を動かすという! 元の世界に戻って親友の遺体を彼の故郷へと送るという目的がッ! そのためだったらなんだってするさッ! どんなことでもッ!!」
「・・・・・・わかったよ。まったく、今日は妥協してばっかだ。いいぜジョニィ、俺も試練を受けてやるよ。元・魔王様がどんな試練を出すのか気になるしな」
十六夜達はジョニィの勢いに押されつつも試練を受けることになった。
IF〜リンゴォ〜
白「おんしらが望むのは(中略)それとも対等な『決闘』か?」
リ「公正なる『果し合い』は俺を人間的に成長させてくれる。改めて・・・・・・よろしくお願い申し上げます」
黒「えぇぇ」
ーーーーーー
どうもあかひです。
前書きでも伝えましたが、遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
謝っておいて早速ですが、次回も恐らく同じくらいかそれ以上間が空いてしまうと思います。あらかじめ謝罪をしておきます。すみません。
前書きの通り、作者学生という身分でして、一個人にはどうする事も出来ない多忙な毎日です。
難しくなっていく勉強、増えていく課題、遅くまでの部活。そして多様化する趣味。
言い訳とはわかっていますが、どうか理解の方を、そして次の話が投稿されるまで長い期間の我慢をお願いします。
重ね重ね謝罪申し上げます。
今後もこの駄作をお願いします。
感想、誤字脱字報告、お願いします。
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7.ギフト
7.ギフト
白夜叉が用意した試練というのは、鷲獅子グリフォンの背に跨り湖畔を舞う、というものだった。
「この鷲獅子に勇気、知恵、力のどれかを示せばいいんだろう? いいぜ、そのくらい僕一人でも―――」
「私にやらせて」
春日部が名乗りを上げた。しかしもともと試練に乗り気ではなかった三人にジョニィは参加させるつもりはなかった。
「・・・悪いけどあんた達には任せられない。僕がやる」
「私にやらせて、お願いします」
真剣に頭を下げる春日部。グリフォンと聞いてからの食い付き、彼女にも譲れない何かがあるのだろう。
しばらくの沈黙の後、折れたのはジョニィだった。
「うっ・・・わかった! わかったよ! わかったから頭を上げろ!」
「本当に! ありがとう!」
「ただし、負けたら容赦しないからなッ!」
「もちろん負けるつもりはないよ」
足が動かないというアドバンテージ、彼はこのゲームは分が悪い事を理解していた。
渋々、本当に仕方がなく彼女に任せることにした。
白夜叉・・・否、グリフォンとのギフトゲーム。
春日部は『命』を、グリフォンは『誇り』をかけたゲームは春日部が何とかクリアできた。
「うむ。試練をクリアしたおんしらへちょいと贅沢な代物だがサービスをしよう。コミュニティ復興の前祝いだ」
パンパンと白夜叉が柏手を打つと、四人の眼前に光り輝くカードが現れる。
コバルトブルーのカードに逆廻十六夜・ギフトネーム"
ワインレッドのカードに久遠飛鳥・ギフトネーム"
パールエメラルドのカードに春日部耀・ギフトネーム"
アイルトーンブルーのカードにジョニィ・ジョースター・ギフトネーム"
「ギフトカード!」
「? なんだ、それ」
「お中元?」
「お歳暮?」
「お年玉?」
「ち、違います! というかなんで皆さんそんなに息が合ってるのです!? このギフトカードは顕現してるギフトを収納できる超高価なカードですよ!」
「つまり素敵アイテムってことでオッケーか?」
「だからなんで適当に聞き流すんですか! あーもうそうです、超素敵アイテムなんです!」
黒ウサギに叱られながら四人はそれぞれのカードを物珍しそうにみつめる。
「我らの双女神そうめがみの紋のように、本来はコミュニティの名と旗印も記されるのだが、おんしらは"ノーネーム"だからの。少々味気ない絵になっているが、文句は黒ウサギに言ってくれ」
そう言って己のギフトカードを見せる白夜叉。彼女のカードには2人の剣を持った女神が向かい合っている。
「そのギフトカードは、正式名称を"ラプラスの紙片"、即ち全知の一端だ。そこに刻まれるギフトネームとはおんしらの魂と繋がった"恩恵ギフト"の名称。鑑定はできずともそれを見れば大体のギフトの正体が分かるというもの」
「へえ? じゃあ俺のはレアケースなわけだ?」
ん? と白夜叉が十六夜のギフトカードを覗きこむ。そこには確かに "正体不明"の文字が刻まれている。ヤハハと笑う十六夜とは対照的に、白夜叉は表情の変化は劇的だった。
「・・・いや、そんな馬鹿な」
白夜叉は顔色を変えて十六夜からギフトカードを取り上げる。
「"正体不明"だと・・・? いいやありえん、全知である"ラプラスの紙片"がエラーを起こすはずなど」
「何にせよ、鑑定は出来なかったってことだろ。俺的にはこの方がありがたいさ」
むむむ、と白夜叉が納得出来ずに考えを巡らしている隣でジョニィも驚きに目を見開いていた。
「馬鹿なッ! いや、しかし・・・少し前からあった違和感。なぜ・・・
ここに存在するはずのないモノ。
ここに存在していては行けないもの。
ジョニィは自身の左腕、その恩恵から恐ろしいほどの重圧を感じていたのだった。
六人と一匹は暖簾の下げられた店前に移動し、耀達は一礼した。
「今日はありがとう。また遊んでくれると嬉しい」
「あら、駄目よ春日部さん。次に挑戦するときは対等の条件で挑むものだもの」
「ああ。吐いた唾を飲み込むなんて、格好付かねえからな。次は渾身の大舞台で挑むぜ」
「いつか、勝てるようになったら、改めて、挑ませてもらうよ」
「ふふ、よかろう。楽しみにしておけ。・・・ところで」
白夜叉はスッと真剣な顔で黒ウサギ達を見る
「今さらだが、一つだけ聞かせてくれ。おんしらは自分達のコミュニティがどういう状況にあるか、よく理解しているか?」
「ああ、名前とか旗の話か? それなら聞いたぜ」
「ならそれを取り戻すために、“魔王”と戦わねばならんことも?」
「聞いてるわよ」
「・・・では、おんしらは全てを承知の上で黒ウサギのコミュニティに加入するのだな?」
「そうよ。打倒魔王なんてカッコいいじゃない」
「"カッコいい"で済む話ではないのだがの・・・全く、若さゆえなのか。無謀というか、勇敢というか。まあ、魔王がどういうものかはコミュニティに帰ればわかるだろ。それでも魔王と戦う事を望むというなら止めんが・・・そこの娘二人と小僧。おんしらは確実に死ぬぞ」
春日部、久遠、ジョニィを正面から見据え、予言するかのように断言する。三人は一瞬だけ言い返そうと言葉を探したが、魔王と同じく"主催者権限"を持つ白夜叉の助言は、物を言わさぬ威圧感があった。
「魔王の前に様々なギフトゲームに挑んで力を付けろ。小僧はともかく、おんしら二人の力で魔王のゲームは生き残れん。嵐に巻き込まれた虫が無様に弄ばれて死ぬ様は、いつ見ても悲しいものだ」
久遠と春日部は白夜叉の経験から来る確信にも近い予言にゴクリと生唾を呑み込む。
「そしてバンダナの小僧。おんしはいくつかの死線を潜ってきたのであろう? そういう目をしておる。だがここでは勝手が違う、このままで生き残れると思うな」
「ご忠告どうも、でもそんなの僕には関係ないね。僕には目的があるんだ、そのためだったらなんだって利用してやる」
「ふふ、そうか。おんしがそれで良いのなら良い。娘二人も覚悟をしておくのだな」
「ご忠告ありがとう。肝に銘じておくわ。次は貴女の本気のゲームに挑みに行くから、覚悟しておきなさい」
「ふふ、望むところだ私は三三四五外門に本拠を構えておる。いつでも遊びに来い。・・・ただし、黒ウサギをチップに賭けてもらうがの」
「嫌です!」
「つれない事を言うなよぅ。私のコミュニティに所属すれば生涯を遊んで暮らせると保証するぞ?三食首輪付きの個室も用意するし」
「三食首輪付きってソレもう明らかにペット扱いですから!」
怒る黒ウサギ。笑う白夜叉。店を出た四人と1匹は無愛想な女性店員に見送られて"サウザンドアイズ"二一○五三八○外門支店を後にした。
場所は再び白夜叉の私室。
そこにいるのは二人、部屋の持ち主白夜叉と異邦人ジョニィ・ジョースター
「して、聞きたいことというのはなんだ、小僧。わざわざ一人で引き返してきたのだ、あの四人にはあまり聞かれたくない話なんだろう?」
「・・・単刀直入に聞く、並行世界の中でひとつの世界にしか存在のしない物ってあるのか?」
お久しぶりです! あかひです!
遅くなりましたがもういっそ開き直ってみます^^
レポート地獄なども生還し、およそ一年ぶりの最新話! 普段より5割増でハイテンションです!
と、ここで本文中の補足を致します。(急に真面目なトーン)
ジョニィのギフトの内に"漆黒の殺意"というギフトが含まれています。
こちらに関してはジョニィの強烈な意思がギフトとして昇華したものと考えて頂ければ幸いです。
目的のためならば一国を敵に回しても良い。そんなにも強い意思ならばそれはもうギフトとして認められても良いのではないか。
そもそもギフトとは才能、ジョニィのこの意思もある意味では才能、つまるところギフトでは無いのかと思ったのです。
以上の点をこの作品内での共通認識と致しますので、ご理解していただいた上で、今後ともこの駄作をよろしくお願いします。
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8.聖人の遺体
並行世界の中でひとつの世界にしか存在のしない物はあるのか。
たったひとつの疑問、しかしそれは彼のギフトに関係する重大な疑問だ。
「ふむ……そんな奇妙なものは存在しない。どんな物もあらゆる世界線で姿形が違えども必ず、何かしらの形で存在する」
ここで一度話をきり、白夜叉はジョニィの様子を伺う。
驚いたような、困惑したような何とも言い表せない表情に白夜叉はやはりな、と一人で納得していた。
というのも彼女はジョニィの質問の意図を理解していたのだ。ジョニィは知っているのだろう、彼の言う『あらゆる世界線で一つしか存在しない物』を。
「……本当に存在しないのか?」
「ああ、本当だとも。1本では自立しない爪楊枝も何十、何百と束ねれば自立するように、存在とは多くの世界で同時に存在しなければとても不安定になってしまうものだ」
「………」
白夜叉の説明は理解できた、しかし納得ができなかった。
それならば彼が見たモノは、彼のその身に宿している
「その『あらゆる世界線で一つしか存在しない物』とやらを見せてみよ」
持っているんだろう、そう尋ねられジョニィは悩んだ。彼女には遺体を見せてもよいものかと。
しばらく黙考し、彼はそっとギフトカードを取り出し、若干の警戒を残しつつ白夜叉に見せる。
「成人の遺体:左腕部……これか? 実際にモノを見せてみろ」
ジョニィは静かに左腕を前にだし
白夜叉もまさか左腕の中に入っているとは思わなかったのだろう。目を見開き遺体を見た。
遺体を受け取りしばらくの間それを眺めなると、これは……と唸る。
「わかったのか? それがなんなのか」
「先程も言ったようにギフト鑑定は専門外なんでな、私の憶測も混じっているが………」
無言で続きを促すジョニィ。
礼儀を知らんやつだ、とは口に出さずどう説明したものかと言葉を選ぶ。
「この遺体、たしかにひとつの世界にしか存在しない。……しかし複数の世界に存在するのも確かだ」
「…………? ちょっと待ってくれ、一体どういう事だ?」
混乱
白夜叉の言葉は一瞬前の自分の言葉と矛盾する。
ジョニィにはその真意を図りかねる。
「ああそうだ。仮に遺体のある世界線を基準世界としよう。おんしは何故
「どういう………意味だ………?」
「木の幹から枝が生えるように基本世界から並行世界が枝分かれしている。そしてその木は何本もあるわけだ」
例えばある基準世界では他の基準世界では開催されないアメリカ大陸横断レースが開催される。
例えばある基準世界では大きく発展した科学知識がある。
例えばある基準世界では他の基準世界には存在しない大財閥がある。
「そしてそれぞれの基準世界からまたさらに細かく並行世界が広がっている。イメージとしてはこんなものだ」
あくまでもイメージだと付け加える白夜叉。
事実として立体交差並行世界として詳しく説明しようとなるとこのお茶菓子が少なくともあと1ダースは必要になる。故のイメージだ。
「その聖人の遺体とやらが小僧のギフト『
またも彼は目を見開く。
一体何度この
「………その通りだ。関係しているさ、僕のスタンドにも。そして、僕はこの脚を治す為にも遺体を集めなくてはならないッ!」
なるほど合点がいった、とようやく白夜叉は彼の質問の本当の意味を理解した。
「して、私にその遺体を集めてほしいんだな」
「いや、遺体を集めるのは僕だ、僕だけの権利だ。あんたには探してほしい。どこにあるのか、誰が持っているのかを」
白夜叉は目を丸くして呆気にとられた。彼女ほどの権力があれば箱庭中から情報を集めるどころか遺体の一つや二つ簡単に集めることが可能だ。
しかし彼はあくまで自らの手で集めるつもりなのだ。
「く、くくく………。よかろう、そのくらいであれば協力してやろう」
話をまとめたジョニィはサウザンドアイズ二一〇五三八〇外門支店を後にした。
*
ガルドは彼の屋敷で頭を抱えていた。
「くそ………くそ、くそくそくそこのドチクショウガァ!!!」
彼は身近にあった執務机を持ちあげて窓の外に放り出した。ガラスの割れる音が彼の苛立ちを加速させる。
黒ウサギコミュニティの”箔”としても”駒”としても彼の欲を満たす玩具としても欲しかった人材であった。しかし彼は先走りすぎてしまったのだ。
「あの女………あんなのがいたら勝ち目なんてねえぞ!」
彼の頭痛の原因である女性を思い浮かべさらに頭痛が悪化する。
直接精神に触れるようなギフトに対して有利に戦えるようなゲームなど彼には皆目見当がつかなかった。
頭を抱えているガルドに、割れた窓の向こうから凛とした女の声がかかる。
「———ほう。箱庭第六六六外門に本拠を持つ魔王の配下が”名無し”風情に負けるのか。それはそれで楽しみだ」
「っ、誰だ⁉」
あらわれたのは華麗な金の髪を靡かせた、十六夜達よりも二、三歳年上の女性だった。
「テメェ………どこのどいつか知らねえが、俺は今気が立ってるんだ。牙を剝かねえうちにとっとと失せろ」
「まあそう言うなよ。私もあの”名無し”には少々因縁があってな。お前が勝てるようにギフトをいくつかやろう」
「うるせぇ! か、勝てるわけがねえだろ! お、俺はあのガキ共に手も足も出なかったんだ!」
「うむ。今のお前では万に一つも勝ち目はないだろうな。しかしお前が”鬼種”のギフトと神格にも匹敵するギフトを手に入れたとしたらどうする? 勝ち目も出てくるのではないか?」
ここにきてガルドは初めて女と目を合わせた。
「………。俺に”六百六十六の獣”を裏切れと? それに神格に匹敵するほどのギフトがそう簡単に存在するわけがねえ」
「結果的には裏切ることになるな。たとえ神格の話が嘘だったとしても”鬼種”が手に入るだけでも儲けものだろう?」
「………。」
ガルドは冷静さをわずかに取り戻していた。
しかし、彼女に利用されようとしていることがわかっていても乗らない手がない状況であることも理解していた。
「さあ、どうする? ギフトを受け取らずに潔く裁かれるか、ギフトを受け取り無罪を勝ち取るか」
「ッチ。選択肢はねえか、いいぜ。けど時間がない。種族そのものを変質させるにはどれくらいかかる?」
金髪の少女は楽し気に頬を緩ませた。
「ふふ、それなら気にするな。今この時、この場の僅かな時間で済む。先にこれを渡しておこう」
「何?」
彼女はガルドに人間の下半身のようなモノが渡された。
ソレを彼が受け取った瞬間ソレはガルドの下半身と同化した。
「おい! どうなって———」
ガルドが取り乱した瞬間、金髪の少女の牙は首筋を食い破った。
「ギャ、ガッッッ!??」
刹那、細胞の一つ一つが燃え盛るような苦痛に襲われ彼は意識を手放した。
「さてさて。どう出る、新生”ノーネーム”」
お久しぶりです。あかひです。
いったでしょう、失踪はしないって
いや、偉そうにすみません。
いわゆる自粛ムーブでふと執筆欲が沸いて途中だったものを仕上げました。
さて次の投稿はいつになることやら………。
楽しみに待っていてください。
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9.ハンティング
お ま た せ
———箱庭第二一〇五三八〇外門”ノーネーム”本拠。
屋敷の廊下にキコキコと車輪の回る音が響く。日が昇ってから数刻、早朝と呼ぶにふさわしい時間で空はまだうっすらと色づいたところだった。
音の主、ジョニィジョースターは小さくため息をついた。つい先日まで彼はSBRレースに参加しており日の出と共に起床する癖がついてしまっていたようだ。むしろゆっくりと寝すぎた程か。
「ここの厨房………、まあ勝手に使っても問題はないか」
本拠一階にいくつかある厨房の一つに入る。
およそ半年の間アメリカ大陸で野宿をしてきただけあり最低限の料理は――なんならまともな調理器具が無くとも――できる。無難にパスタをゆで、食堂まで移動する。
広い食堂でもくもくとパスタを口に運んでいると、閉まりきっていなかった食堂の扉からひょコン! と狐耳が頭をのぞかせた。
「あ! ジ、ジョニィ様、おはようございます!」
「君は………えーと、確か………」
「リリと申します。ジョニィ様は朝お早いんですね」
「……見ての通り僕の分の朝食はいらないからな」
しまった、年端もいかない少女に対し冷たい物言いだったか。と気づき言い直そうと彼女の方へ顔を向けると、リリは百点満点の笑顔を向けていた。
「わかりました! またお腹が空いたときはいつでも言ってください」
「あ、ああ。その時は頼むよ」
「はい! 今日は頑張ってください!」
どうやら彼女には気にならないようで、その前向きさと早朝からの元気いっぱいな姿に少しばかり尊敬の念を抱き、ジョニィは食堂を後にした。
*
———箱庭第二一〇五三八〇外門。ペリベッド通り・噴水広場前。
”フォレス・ガロ”の居住区画へとむけて移動していた”ノーネーム”の面々は”六本傷”の旗が掲げられた昨日のカフェの前で声をかけられた。
「あー! 昨日のお客さん! もしや今から決闘ですか?」
『お、鉤尻尾のねーちゃんか! そやそや今からお嬢達の討ち入りやで!』
ウェイトレスの猫娘は近寄ってくると一礼した。
「ボスからもエールを頼まれました! この外門にいて連中に不満のない人なんていないくらいですよ! どの区画でもやりたい放題でしたもの! 二度と不義理な真似が出来ないようにしてやってください!」
力強くエールをおくる鉤尻尾の猫娘に飛鳥は苦笑しながらも強く頷いて返した。
「もちろん、そのつもりよ」
「おお! 心強い御返事だ!」
満面の笑みで返す猫娘だったが、急に声を潜めてヒソヒソと呟いた。
「実は皆さんにお話があります。”フォレス・ガロ”の連中、今回のゲームを舞台区画じゃなくて居住区画で行うみたいなんですよ」
「居住区画でですか?」
返答したのは黒ウサギ。初めて聞く単語にジョニィ達は首をかしげるがそれを見たジンが補足をした。
「舞台区画というのは居住区画とは別にギフトゲームを行うための区画です。ほかにも様々な区画がありますが、今回のようなギフトゲームは舞台区画でやるのが普通なんですが………」
「しかもですよ! 傘下に置いているコミュニティや同士をみーんなほっぽり出してるんですよ!」
「………それは確かにおかしな話ね」
「でしょでしょ⁉ 何のゲームかは知りませんが、とにかく気を付けてくださいね!」
熱烈な応援を背に”フォレス・ガロ”の居住区画へと向かった一行はその有様を見て目を疑った。というのも、その居住区画が森のように豹変していたのだ。
ツタの絡む門をさすり、鬱葱と生い茂る木々を見上げて耀は呟く。
「………ジャングル?」
ジンはそっと木々に手を伸ばす。その樹枝はまるで生き物のように脈を打ち、肌を通して体動のようなものを感じさせた。
「やっぱり———”鬼化”してる? いや、まさか」
「ジン見ろ、”
馬上からの声につられ|契約書類«ギアスロール»に集まる面々。門柱に貼られた羊皮紙には今回のゲームの内容が記されていた。
『ギフトゲーム名 ”ハンティング”
・プレイヤー一覧
久遠 飛鳥
春日部 耀
ジン=ラッセル
・クリア条件 ホストの本拠内に潜むガルド=ガスパーの討伐。
・クリア方法 ホスト側が指定した特定の武具でのみ討伐可能。指定武具以外は”|契約≪ギアス≫によってガルド=ガスパーを傷つける事は不可能。
・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
・指定武具 ゲームテリトリーにて配置。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、”ノーネーム”はギフトゲームに参加します。
”フォレス・ガロ” 印』
「ガルドの身をクリア条件に……指定武具で打倒⁉」
「こ、これはまずいです!」
ジンと黒ウサギが悲鳴のような声をあげる。
「あいつを始末すればいいわけだろ? 討伐ならそう難しくない」
「確かに御二人であれば討伐も容易でしょう。問題なのはルールの方です。このルールでは飛鳥さんのギフトでも、耀さんのギフトでもガルドに危害を加えることができない事になります…………!」
理解が追い付かない面々に十六夜が補足をする。
「つまりその”指定の武具”でしかあいつを討伐できないってことだ。他の方法で攻撃しても”
「すいません、僕の落ち度でした。初めに”契約書類”を創ったときにルールもその場で決めておけばよかったのに………!」
ルールを決めるのが“
「だ、大丈夫ですよ! “
愛嬌たっぷりに励ます黒ウサギと“ノーネーム”の面々に各々が気合いを入れ直し、ついに飛鳥達の初めてのギフトゲームが幕を開けた。
*
――箱庭第二一〇五三八〇外門。フォレス・ガロ居住区画
敷地内は木々が
森の奥には豪華な館があり、ここがフォレス・ガロの本拠であることが見て取れる。とは言ってもこの館も他の住居と同様に木の根に蝕まれており、
ギフトゲームが開始して暫く、久遠飛鳥とジン=ラッセルはその館から少しの茂みに身を隠していた。
「とりあえず、もう一度状況を整理したいわ。ほんとにあれが昨日会った
「はい。彼は元々、人・虎・悪魔から霊格を得たワータイガーでした。ですが彼の様子やこの居住区画の様子を見る限り吸血鬼によって人から鬼種に変えられたのでしょう」
二人は先程、本拠の館で対峙した虎の怪物を思い出していた。出会い頭の力強い咆哮、目にも止まらぬ突進から辛うじて逃げられたのはこの場にいない春日部耀が殿を務めてくれたお掛けだ。
「そして恐らくは彼が背後に守っていた白銀の十字剣が今回の指定武器じゃないかと」
「吸血鬼に銀と十字架……ね。それなら春日部さんと合流したら十字剣を奪う方法を考えなくてはいけないわね」
理性のない獣と化したガルドを相手にどう立ち回れるか、如何にしてあの剣を手に入れるのか。グルグルと思考を回しているその傍で不意に茂みが揺れた。
「誰?」
「……私」
茂みから出てきたのは血だらけの耀だった。
「か、春日部さん! 大丈夫なの!?」
「大丈夫じゃ……ない。ちょっと本気で泣きそうかも」
右腕を抑えフラフラと歩いていたが、ついぞ痛みに耐えかねその場で崩れ落ちる耀。その手には白銀の十字剣が握られていた。
飛鳥は崩れ落ちる彼女の様態を見て血の気が引いた。
十字剣を握る右腕のからの出血が一際目を引くが、しかし怪我は右腕だけではなかった。腹部や背中、脚に至るまで身体中が切り傷だらけでここまで辿り着けた事に驚く程だ。
「春日部さん……いったい、何が……」
「なにか……変なギフトを持ってる……。床が
「耀さん! まずは先に治療です! ちゃんとした事はできませんが、応急処置だけでも!」
自信が着ていたローブをなんとか破り、耀の傷に巻き付けていく。多量の出血を防ぐために気休め程度でも止血をするジンを一瞥した飛鳥は、白銀の十字剣を手にスクリと立ち上がった。
「ジン君、春日部さんをお願い。今からあの虎を退治してくるわ」
「ちょ、ちょっと待ってください! 一人じゃ無理です! 悔しいですがここはもう、降参しましょう!」
ジンは、このまま戦えば新たに来た仲間達を失うことになる、それだけは避けなければならないと飛鳥を引き止めた。焦るジンに飛鳥は冷静な声音で返す。
「大丈夫よ。知性の無い獣に負ける程ヤワじゃないわ。――それに、悔しいじゃない? 私達が頼りなくて春日部さんは一人で戦ったのよ?」
情けない。あれだけ大口で喧嘩を吹っ掛けておきながら、実際はどうだ? 対峙し、逃げることしかできなかった。
春日部耀はあの虎と戦うために久遠飛鳥が戦力にならないと、そう判断されたのだ。
「
「……飛鳥」
「大丈夫よ、春日部さん。今は休んでいて」
「気をつけて……。あいつは
「潜る……。ええ、わかったわ。ありがとう、行ってくるわ」
そうして館の方へと進む飛鳥の背を見届け、耀は意識を失った。
*
ふわりと、いつもと違ったどこか焦げ臭い匂いにふと顔を上げた。
屋敷の二階に蹲っていたガルド=ガスパーは屋敷の異変に流血の止まらない左足を引き摺りかつての執務室から出た。
(屋敷が……燃えている……!?)
咄嗟に屋敷から飛び出す。その胸中に渦巻くのは怒り、恐怖、困惑。私の屋敷が、炎はダメだ逃げなくては、一体なぜ。
ガルドは炎から逃れるように、血の匂いに釣られるように、森の中、左右に分かれた木々合間を走り抜ける。辛うじて保っていた最後の理性は木々の先、標的の元へ辿り着く頃には既に欠片程も残っていなかった。
「……待っていたわ。思っていたより早かったのね」
瓦礫に灯した炎と白銀の十字剣を手に飛鳥は
諸手に携えられたそれに、ガルドはジリリと僅かに後ずさりした。理性のない彼の本能からの恐怖だった。
「あら、今さら尻込みかしら? ……今の貴方に言葉は通じなさそうね。春日部さんの事もあるし、これ以上時間は割けないの。だから」
炎を脇に投げ捨てる。それを合図に両者は動いた。
「一体一です。来なさい」
「GEEEEYAAAAaaa!!」
虎と少女、対峙してどちらに軍杯が上がるかなど問題にもならない。しかし、この少女はほぼ手付かずの原石の才能を持っていた。
原石を一つの方向へ磨き始めた彼女が理性のない獣に負ける道理は無かった。
「今よ、
「GEEEYAAAAaaaaaaa!!!」
――はずだった。
飛鳥の一喝で鬼種かした木々が
しかしその枝々がガルドを拘束するその瞬間、
「消えた!?」
辺りを見回す。身を隠せる場所など、無い。一体どこへ。
ふと、足元へ視線が降りる。ズズズと地面が沈んでいた。まるで沼の上のようにゆっくりと沈んでいく。
(春日部さんの言っていた現象! 館の中だけでは無いの!?)
耀が気を失う前に残した情報。飛鳥は特殊なギフトを使い館に細工したのだと考えていた。
(人の言葉も解らなくなっているガルドが館に細工? そんなわけないじゃない!!)
思考を回す。
これはガルド自身のギフト、どんな能力かを見極めなくては。地面が緩い、でも姿を消した事と何も関係がない。春日部さんは潜ると言っていた。なら地面の下!? でも館とは違ってこの下には反対側がないわ、壁や床を通り抜けるのとは訳が違う。
グルグルと回る思考と相反して、チリチリと焦りが募る。虎と少女、策がなければ負けは必至。耀の怪我もある。時間をかけて不利になるのは飛鳥の方だった。
理性があろうとも、ただの少女は理性の無い獣には勝てないのだ
焦り、思考。故に周囲を警戒していても気づけなかった。
「GEEEYAAAaa!」
「後ろ!!?」
背後からの攻撃に辛うじて十字剣を間に挟み込む飛鳥。ガルドは十字剣を嫌がり即座に距離をとる。
そして、地面に沈んでいくガルドを目にした。
「やっぱり地面の下に!」
尻餅をついた飛鳥は即座に体勢を立て直す。
泥のような地面を触ってみれば、手触りは何の変哲もない地面だった。普通の地面、なのに沼のように沈んでいく。理解の外にある現象だった。
「とにかくこのまま動かないのはまずいわ!」
背後に潜ったガルドから逃れるように走り出した。
*
息を切らし走り続ける飛鳥は既に満身創痍と言えるほど傷だらけだった。足を止めてしまうほどの重症がないことが不幸中の幸いだが、決して軽傷では無い。
飛鳥は走りながらもガルドの攻撃を
(彼の能力。きっとあれはあの前足で触れた物を液状化させる能力に違いないわ。館でもここでも地面に触れてドロドロに溶かしていたんだわ!)
地中や水中などの空気中よりも密度の高い空間は、空気中と比較して音の伝達も早いと言われている。そう考えれば地中からこちらの位置が把握されるのも納得が行く。動物の聴力を持ってすれば尚更だ。
「はあ、はあ。もう、逃げるのは辞めましょうか」
ただ逃げていた訳ではなかった。辿り着いたのは元の場所。そこは未だに轟々と焔をあげているフォレス・ガロ本拠の館。
左右は木々の道、後ろは炎の壁。いくら地中へ潜れようとも、もう攻撃は正面からしか来ない。
「GEEYAAAAAAAAAAAaaa!!!」
「ううっ!! きゃあ!」
まるで飛魚のような器用さで地中から飛鳥へと飛びつくガルド。来る方向が分かっていても受け止めるのは容易ではない。
勢いそのままに弾き飛ばされる飛鳥。元から不利な状況だった飛鳥は、背に地面を背負った事でさらに不利な状況となってしまった。
相対する敵が地に伏せている。負けるわけがない。ガルドは勝利を確信し飛鳥へと飛びかかった。
「GEEEEEYAAAAAAAAaaaa!!」
ガルドの体が飛鳥を覆い隠し、そして――
「GYA……Aa……」
「――よかったわ、上手くいって」
ガルドの頭を白銀の十字剣が貫いていた。
「私の力じゃきっと、なんの拘束もない貴方に剣を突き刺すなんて無理だったわ。だからこうして、貴方と私の力比べじゃなくて貴方と地面に力比べして貰ったの」
深々とガルドの頭蓋を貫く十字剣の柄は突っ張り棒の様に地面へと伸びていた。
「正直、怖かったわ。失敗なんてできないもの」
冷や汗を拭う飛鳥は、サラサラと灰になっていくガルドに呟いた。
「今さら言ってはアレだけど………貴方、虎の姿の方が素敵だったわ」
ガルドが完全に灰となると、周辺の木々も一斉に霧散した。
樹に支えられていた廃屋が、炎に焼かれた館が、居住区画の建物が倒壊していく音を聞き、飛鳥は達成感と疲労感からか瞼が重くなっていくのを感じた。
ガルドの灰の中に埋もれた奇妙な遺体が自身の身体へと入り込んでる事に気づく暇もなく、飛鳥の意識はプツリと途切れた。
きっと最後に残ったあの館の執務室が、彼にとってのオアシスだったのだろう。
3年は誤差です。
投稿したので失踪はしてないって事で。
実際7割くらいは前回投稿からひと月位で描き上がってたんで、ね?
さて、次は何年空くことやら……。
空かないように頑張ります
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