東方家族録 (さまりと)
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『明渡 信』スペルカード一覧

こちらにまとめます


武刃(ぶじん)』〈秋水(しゅうすい)

霊力で作られた日本刀。

実際は霊力で型どり、魔力でそれっぽく見せている。でも刃の部分はどうしても再現できなかったため、赤の持ち手に赤い光の刃が映えている感じになっている。

ジャパニーズライトセイバー

 

 

 

一刀(いっとう)』〈陰鉄(いんてつ)

ほとんどは秋水と同じ。もしかしたら2本必要になるときが来るかもしれないと共が提案したので作っておいた。

刃の部分は魔力で作っているため青い刃になっている

 

 

 

光符(こうふ)』〈豪華絢爛(ごうかけんらん)

メッチャ眩しい。ただそれだけ。自分も食らうからタイミングが大事。

 

 

 

怪符(かいふ)』〈破壊光線(はかいこうせん)

マスタースパークのような極太レーザー。

 

 

 

運任(うんまかせ)』〈ドキドキわくわく抽選会(ちゅうせんかい)

ランダムでスペルカードの1枚を強化し、1枚をその弾幕ごっこで使えなくする。使用済みのカードも選ばれる可能性があるので最初に使った方がいい。

無双乱武だけは抽選から除外される。

 

 

 

舞踏(ぶとう)』〈暗黒盆踊り(あんこくぼんおどり)

体を自動的に動かして相手の攻撃を完璧に回避する。ただし攻撃はできないので注意。

 

 

 

迷惑(めいわく)』〈(やいば)(まい)

無数の手裏剣を型どった弾幕を展開する。

なにかにぶつかったりすると2倍になって跳ね返ってくる。全部で5回跳ね返る。6回目にぶつかったら消滅する。使用者を中心に半径30mのところで勝手に跳ね返ってくるので無駄弾はない。

使用者にも当たる。

 

 

 

幻符(げんぷ)』〈かくれんぼ〉

姿が見えなくする。気配が消えるわけではないので注意。

 

 

迷走(めいそう)』〈亡霊達(ぼうれいたち)(あゆみ)

使用者を中心に不規則に弾幕が漂い続ける。弾幕同士がぶつかることはない。

 

 

束縛(そくばく)』〈黒棺(くろひつぎ)

赤い箱のようなものに閉じ込める。強度はマスタースパークで初めて壊せるくらい。

 

 

花符(かふ)』〈千本桜(せんぼんざくら)

霊力によって作られた桜の木を沢山生やし、木そのものが花びらに変わり散っていく。

本来は防御用のスペル。メッチャきれい。

 

 

 

「『斬撃(ざんげき)』〈月牙天衝(げつがてんしょう)〉」

剣または刀に高密度&大量の霊力を流し、それを凝縮して放つ。

シンプルイズベストな高威力だよ

 

 

 

「『花符』〈千本桜 (ちゅう)〉!」

千本桜を空中に生やす。

相手の動きに制限をかけることが目的。

 

 

「『幻符』〈かくれんぼ〉

消える

 

 

包囲(ほうい)』〈四面楚歌(しめんそか)

相手を中心にして四方八方に気配を設置する。

すげえ地味。

 

 

跳躍(ちょうやく)』〈グラスホッパー〉

妖力を自分の足元で弾けさせて跳ぶ。

飛ぶのではなく跳ぶ。

初速が早いよ

 

 

 

足止(あしどめ)』〈草結(くさむすび)

魔力で植物を操作して相手を縛り付ける。

足止めとは名ばかりでかなり頑丈。そうそう引きちぎれない。

 

 

 

集結(しゅうけつ)』〈魔空包囲弾(まくうほういだん)

大量の弾幕で相手を包囲して一気に集結させて相手を襲わせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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終ノ符 一覧

しばらくの間、ちょっとずるします




主人公の切り札一覧になります

登場後に閲覧することをお勧めします

 

 

 

 

初登場:第28話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終ノ符(ついのふ)』〈無双乱武(むそうらんぶ)

 

残りの霊力の全てを費やし別のスペルカードに姿を変える。

明渡 信の最後の切り札。

様々な形態があり、すべての形を知っているのは信と、一緒に作った共だけである。

実は信の『共有する程度の能力』を霊力と掛け合わせて作り出している。そのため本人は弾幕ごっこではあまり使いたがらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初登場:29話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意志(いし)』〈ぬのぼこの(けん)

 

思いによってその強さと性質を変える漆黒の直剣。長さは170cmくらい。

終ノ符の中で最も応用性に優れた武器。

信自身の『意志』を霊力を込めて作り出した剣に共有させることで作り出している。

思念体でも物体でも、何なら概念でもなんでも斬れる。すべては信の思い次第。

 

弱点:斬ることしかできない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初登場:43話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

必中(ひっちゅう)』〈フェイルノート〉

 

何をしようと逃れることができないシンプルな見た目の弓。

終ノ符の中で最も多様性に優れた武器。

魔力や妖力を矢として様々な特性の攻撃を放つことができる。

神話上で登場するフェイルノート(別名:無駄なしの弓)の性質を霊力を込めた弓に共有させることで作り出している。

弱点:防げる

 

 

フェイルノート用

 

睡魔(すいま)』〈ディープショット〉

相手の副交感神経に直接作用して相手を強烈な眠気に襲わせる。

3発当てれば100%誰でも寝れる。

 

 

多望(たぼう)』〈ミリオンレイン〉

 

魔力を溜め大量の矢を同時に射出する。

もちろん全部当たる。

何にどれだけ当てるかは本人の思い通りになる。

 

 

「『貫通(かんつう)』〈スパイラルアロー〉!!」

 

螺旋回転をかけることによって幾つもの目標を連続して貫く。

通常弾幕なら密度にもよるが1000は余裕で貫く

 

 

「『一閃(いっせん)』〈(ひかり)()〉」

 

フェイルノートを使用する際の最速の矢。

文字通りその速度は光速とどっこいとなる。

速度は光速で固定だが威力は矢の密度によって決まる。

 

 

 

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第0話 【始まった幻想】

はじめまして、さまりと といいます
たくさんの誤字、分かりにくい文章、不定期更新となると思いますが精一杯やらせていただきます。


「明日から夏休みか~」

 

1学期の最終日、俺達3人は一緒に帰るところだった。

 

「今年の夏休みは有意義に使って見せる!!」

「勉強?」

「目指せ、東方プロジェクト完全攻略!!」

「「またそれか~」」

「信にいも一回やってみてって。すげぇ難しいから」

「時間があったらな。てか受験生、勉強しろ」

「正直、高校受験は楽勝」

「足元すくわれなきゃいいけど」

 

一緒に帰っているのは男の方は弟の(まこと)、女の方は妹の(ちか)。2人は双子で中学3年生。今年受験だが、まあこいつらの学力なら問題ないだろう。本番に緊張してテンパったりさえしなけば....

 

「確かに東方は難しいからな~。アリス可愛い」

「美鈴最高!!」

 

二人は東方プロジェクトというゲームが気に入っているらしかった。今までもよく話題に上がっていたし、二人以外からもよく勧められていた。そろそろ話題に乗れないのも嫌になってきたので手を付けてみようかと思う。

 

「悟空最強!!」

 

でもまあ今知らんから乗れないけどな。話題

 

「「東方じゃないしww」」

「そもそもどういうゲームかもよくわかってないからな?俺。……そろそろやってみようかな」

 

と、少しわざとらしく流し目で話してみると

 

「マジ!?じゃあ晩御飯の時に話すよ!!今日から信にいを東方厨にして見せるから!」

 

こんな風にやたら嬉しそうに言った。

 

「晩御飯の時だったら恭助も一緒になりそう……いやなるね。覚悟しといた方がいいよ?信にい」

「真も恭助も燈もそんなにハマるんだから面白いんだろ?望むところだよ」

「今夜はパーリーだああ!!!」

 

 こんな他愛のない話を家族とするのが心地よかった。

 

「でもゲームばっかりやってられないよ。父さん達しばらく帰ってこないから」

「いきなり世界一周ボランティア旅行に行くんだもんな。しかもじいちゃんばあちゃん達も」

「2年後だっけ?」

「うん。まあ、家事はだいたい俺達の仕事だからな。どうにかなるだろ」

 

 俺達の両親、両祖父母は5月の始め頃に突然海外ボランティアに向かってしまった。

 保護者組は家事が全くできないので今までの暮らしとすごく変わると言うこともない。お金も十分残してくれているので金銭面で困ることもなさそうだ。

 

「俺夕飯の食材の買い出しに行ってくる。風呂掃除と洗濯物の取り入れよしく。コトとモコのさんぽもな」

「おk」

 

 そういうことで俺は2人と別れた。

 

 今夜は何にしようかと迷ったが、献立を決め材料を買った。おびただしい量の買い物も今じゃすっかり地域の人たちも慣れてしまっている。

 買い物を済ませ、スーパーを出て大量の食材を持ち、俺は帰ろうとした。帰ろうとしたんだ。だけど……。

 

「ここは……どこだ?」

 

 全く知らない森の中に俺は立っていた。

 

 




次回から本格的な主人公のステータスがわかります


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第1話 【明渡 信】

おはこんばんにちわ。さまりとです。
いきなり戦闘です。
表現難しいですね、書いててほんとに思いますが。
では、ゆっくりどうぞ。


 

 

……まずは状況を整理しよう。

 スーパーで買い物を済ませてから帰ろうとして、いつもは通らない脇道にそれて、ぬけたら森。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「なにが起きたんだよ」

 

 とりあえず帰らなければ。今日の夕飯をつくらなければ下の弟たちが泣いてしまう。

 

「とりあえず歩くか」

 

 分からないときは考えるより動けが自分の中のセオリーだ。このままここで立ち往生してても帰れるとは思えないし……。

 そんなことを考えながら未知の森に歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結構歩いたげど人一人いないな。しかもなんか足跡あるし……これ動物のとは思えないしな。。てかこれ異世界に来ちゃったんじゃないか? ほんとは喜びたい状況なんだけどなぁ……」

 

 そんなことを呟いていると前方から声が聞こえてきた。

 

「だ・・・か・・・・・・けて」

「声?第一村人発見か?なんかいい情報があればいいけどなあ……」

 

 そのような思考ははっきりと聞こえた次の言葉でかき消された。

 

「だれかっ!助けてっ!!」

 

 その言葉を聞いた瞬間、俺は荷物を強く握りしめ、走り出していた。

 

 

side change

 

 

「だれかっ!助けて!!」

 

 まさかこんなことになるなんて。神社にお参りに行こうとしたら大量の妖怪達に遭遇してしまった。

 

「こんな所に誰も来ねぇーよ」

「俺 内臓食べる」

「肉っ!肉っ!!」

 

 捕まったら死ぬ。本能も理性もそう言っている。だが全速力で逃げていても相手は妖怪だ。逃げ切れるわけない。それでも死ぬわけにはいかない。

 

 彼は逃げた。必死に、全力で。だが現実は酷く、無情だ。不運にも木の根に足を引っかけてしまった。

 

「っ痛ぅ…逃げなきゃ…うっ」

 

 立ち上がろうと足に力を入れると激痛が走った。どうやら転んだ時に足を捻ってしまったようだ。妖怪達の声はすぐそこまで迫ってきている。……もう助からない。そう頭で思っているなか、4体の妖怪が姿を表した。

 

「もう鬼ごっこはおしまいかぁ~?」

「早く食べたい」

「肉っ!!」

「みんなの分もとっておかないと。この頃食料不足なんだから」

 

(もう終わるんだ。逃げられないし助けも来ない。ああ、死ぬ前に妹の顔を一回でも見たかったな)

 

「へっへっへ。悪く思うなよ。弱肉強食の世界だ。せめて苦しまないようにしてやる」

 

 錆び付いた鉈のようなものを持った妖怪が近づいてくる。

 もうわかってる。助からない事くらい。悪足掻きってことも知ってる。

 

「まだ……死にたくない……」

 

 だが、それが生きることをあきらめていい理由にはならない。

 

「誰かあああああ!助けてっ!!」

 

 無情にも構えられた鉈が勢いよく振り下ろされる

 

(終わるんだ。ごめんね、生まれる前に死んじゃって)

 

 死を覚悟して目をつむる。……が体に痛みが訪れることはなかった。

 変わりに体のすぐ横で何かが叩きつけらたような振動を感じた。恐る恐る目を開けるとそれは先程までとは全く違う光景だった。

 振り下ろされた鉈は自分の真横に突き刺さっており自分の体にはかすりもしていなかった。

 妖怪たちも表情が喜びから驚愕へと一転しており、鉈の妖怪は腕をクロスさせ少し距離を置いていた。

 そして何より、自分の目の前に突然現れた巨大な影。ゆらゆらと長い髪を揺らしながら足を振り上げたような体制をとり、その存在感に圧倒される。

 

 

「ふう……間に合ったか」

 

巨大な影はそうつぶやいた。

 

「あ……あ……」

 

 訳も分からず恐怖と驚愕のみが体を支配して声が出なかった。

 そして、巨大な影は長い髪を揺らしながら振り向き、力強く笑い、短く言い放った。

 

「もう大丈夫。何故かって?俺が来た!!」

 

 その声を聞いた瞬間、ありえないほど。信じられない程。自分の中の恐怖心が消えていくのが分かった。

 

side change

 

 

 声の方向に向かっていると何かに追われていることが何となくわかった。

 もっと進んでみると少年が化け物に追い詰められている。

 

「誰かあああ!助けてっ!!」

 

 助けなければ!!

 荷物をその場におき駆け出す。振り下ろされた鉈に蹴りをいれて軌道をずらした。

 

 間一髪。あとコンマ一秒でも遅れていたら少年はよくても致命傷を負っていただろう。

 化け物を観察してみると3体が驚愕の表情を浮かべていたが、鉈の妖怪だけが一瞬で戦闘する心構えに切り替えたようだった。

 すかさずそのまま回転して蹴りを入れる。間髪なく入れたはずだがしっかりとガードで防がれた。ちょっと悔しい。

 

「ふう……間に合ったか」

 

 何はともあれ少年を助けることは成功した。ふと振り返ってみるとその顔は死にかけたこともあり涙で濡れている。安心させるために何を言えばいいか。

 その時、最近読んだ漫画のあるワンシーンが脳裏に浮かんだ。

 

(これが一番か...)

 

 少年をまっすぐ見て、力強く笑いながら俺は言った。

 

「もう大丈夫。何故かって?俺が来た!!」

 

 

 

 

 さぁ、ここからどうしよう。鉈を蹴った感触からこいつらは相当馬鹿力だ。……まぁ大丈夫か。

 

「少年、名前はなんだ?」

「ッ!!えと……ケン…です」

 

 いきなり名前を聞かれて驚いたようだ。

 

「そうか...ケンこいつらは俺がどうにかするからお前は逃げろ」

「でも...足が」

 

 足を見ると腫れてしまっている。これじゃ逃げられないな

 

「じゃあ俺の荷物のところまで連れていくからそこでまってt「俺達のコトは無視ですかッッ!!」」

 

 妖怪の1人が痺れを切らして問いてきた。今すぐ襲われ直すわけにもいかないのでとりあえず……

 

「ちょっと待ってて。こいつ怪我してるんだ」

「せっかくの獲物を逃がすわけないだろ!!」

「じゃあ荷物をここに持ってくるからそれまで待っててくれ」

「だから、なんで待たないといけない?」

「喰われる人間の最後の頼みだ。聞いてくれてもいいだろう?」

「……わかった。早くしろ」

 

 無駄に聞き分けのいい奴で助かった。荷物のところまで戻り、持ってくる。

 

「ケン」

「は、はい」

「こいつらとやりあわないといけないからここから絶対動くな。ここにいれば、俺はお前を守れる」

「……わかりました」

「もういいか?」

 

 我慢の限界といった様子で聞いてきた。その声は先程よりわずかに低くなっている。

 

「あぁ。いいよ」

「話を聞く限り俺達4人をひとりで相手にするみたいだが、お前、死にたがりか?」

 

 鉈の妖怪が不思議がるように聞いてきた。それもそうだろう。人間が化け物4人の前に突然現れてケンカを売ってきたような物なのだ。普通に考えたらそんなことをするのは自殺志願者かバカしかいない。

 

「いいや?俺は死ぬつもりはない。こんな小さい子供が必死に助けを求めてたら迷わず助けにはいるのが普通だと思うが?」

「ああ、なるほど。お前馬鹿か」

 

 納得したようにそう言い、化け物は構えた。

 どうにも自分一人で相手をするという感じだ。完全になめられている。でもまあ仕方ないことだ。相手は化け物、こっちは人間。舐められて当然。

 

「一つ気になってたことがある」

 

 だから忠告の意味も込め、背後から飛んできた矢を後頭部を貫く寸前のところで止めた。

 

「「「「ッ!!!」」」」

 

 全員の顔が再び驚愕へと変わる。まるで信じられないといったように。

 さらに周りからはざわざわ話し声のようなものが無数に聞こえる。

 

「お前ら、4人じゃねえだろ?ざっと4~50ってところか……」

「……それが分かっててなぜ来た?」

「簡単さ」

 

 瞬間、無数の話し声も、風の音も、木々の揺らぎも無くなり、まるで深海の様な静寂に包まれるように思えた。

 

「守る為だ」

 

 矢を握りつぶし、構える。いつ、どこから、何体が襲ってきてもいいように全身の神経を化け物達に向ける。

 そして、()()()()()に、宣戦布告する。

 

「来いよ、化け物。人間をなめるんじゃねぇぞッ!!」

 

 戦いの火蓋が切っておとされた。

 

 

 

 

 化け物達は一斉に襲ってきた。

 

(武器が欲しいな)

 

 流石に丸腰で武器を持った化け物を相手にするのは危険だ。しかも今はケンを守りながらやらなきゃいけない。そこに一体の化け物の武器が視界に入った。

 

(太刀みたいだな。あれを頂戴しよう。)

 

 割りとすぐの位置にいるがこの場を離れるわけにはいかない。近いやつから対処していく。

 まずは最初にいた4体の内の3体の化け物が攻撃してきた。勢いよく突進してくる。

 1体目の攻撃を足をかけて転ばしながら回避する。その後の2、3体目の攻撃を流す。流した攻撃はケンの真横を通ったので、ビクンッと体を震わせていた。

 そのまま回転。2体の化け物に当て身をし、転ばせたやつの顎を思いきり蹴飛ばした。

 

「ッ痛!!」

「野郎!!」

「肉ぅ・・・」

 

 顎を蹴飛ばした妖怪のみが体から力が抜けた。

 バカ力だけではなく体も頑丈。当身はほぼ意味がないようだ。

 と、そこに太刀をもった化け物が上段の構えで突っ込んできた。太刀を振り下ろしてきたタイミングに合わせて持ち手に手を添え、そのまま突っ込んできたときの勢いを利用して背負い投げる。

 

「うお!!」

 

 投げられ視界が回転したのに驚き声を漏らした。だが、驚くのはそこではない。

 彼がこの時気を付けたのは『方向』と『距離感』。太刀の化け物を投げた先には当身を試した2体の化け物が体勢を崩している。

 つまり彼が狙ったのは……

 

「がっ!」

「うっ!」

 

 投げた妖怪の踵を2体の妖怪の後頭部に叩きつけることだった。

 勢いと遠心力を最大限に利用した強烈な両踵落としは見事命中。2体の妖怪の意識を断ち切ることに成功する。

 まだ終わらない。投げられた妖怪の体は当然地面に落ちる。が、先に足がつくようにしたため地面への衝突によるダメージがほぼない。よって

 

「よっ」

 

 投げ落とした瞬間軽くジャンプし、無防備となった妖怪の腹部に肩を垂直に入れる。

 全体重をかけめりめりと沈み込んだため「ごふっ!」と口から息を強制的にすべて吐き出し意識を失った。

 太刀を手に回転して素早く起き上がる。

 

「ふぅ……」

 

 一瞬で4体の妖怪がやられた。その事実が目の前で見せつけられた為他の妖怪たちが動きを止めてしまった。

 

「どうした?もう終わりか?」

「……さっきの言葉は訂正する」

 

 鉈の妖怪が静かに、だが臆することなく言い放った。

 

「お前は強い。だから、こっちも全力で狩らせてもらう」

 

 その言葉で周りの妖怪たちもニヤニヤとした表情が真剣になる。

 

「ああ。どんどん来い」

 

 第2ラウンドの幕開けだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 妖怪たちの攻撃は恐ろしく統率が取れていた。

 それぞれが互いの攻撃の邪魔にならないように、加えて常に連続して別々の方向から……特に死角からの攻撃を加えていた。全方位からの途切れることのない攻撃に苦戦を強いられる……

 

「よっと」

「ぬあ!!」

 

 ことはなかった。

 妖怪を投げると同時に次に攻撃してくる妖怪に投げつけ一瞬の間を作り、余裕と威力を 持った膝蹴りやハイキックを的確に急所に命中させる。それでも妖怪たちは攻撃を止めはしないがバタバタと倒れた体によって余計に攻めることができる範囲が限定されてしまい、数が減るスピードだけが加速した。

 と、ある1体が攻撃を自ら外した。

 というのも恐ろしく強い人間は何も1人で勝手に戦っているわけではない。ケンという少年を守りながら戦っているのだ。ならばそれを人質にすればいい。

 そう思い少年へと手を伸ばした。

 

「悪いが、それは悪手だ」

 

 伸ばした手を取られ下段の鋭い蹴り入れられ一瞬で宙に浮かされる。それでは終わらない。蹴りを入れた後止まることはなくそのまま回転して顔面に蹴りを加える。

 まだ終わらない。空中で蹴りを受けた為妖怪の体は空中で前転するように縦回転をしていた。その回転に逆らうように後頭部へと最後の太刀による殴打が加えられた。

 反発効果も加わり恐ろしい威力を食らった妖怪は何をされたのかもわからないままに気を失った。

 

「ケンを狙わないことだな」

「目の前に強者がいるんだ。それから目を離すのは自殺行為と同等だ」

 

 周りに注意するように鉈の妖怪がつぶやいた。やはりこいつがこの集団のボスだと確信した。ボスがいなくなれば戦意は喪失されこの戦いが終わる。

 ここで初めて彼は自分から攻撃を仕掛けた。

 

……だが

 

 ダーン!!ダーン!!!!という地響きがなり攻撃の手を止め警戒した。

 その音はなるたびに大きく、そして近くなっていき、ついのその音の正体が森の闇の中から姿を現した。

 

「……ジン、こいつは何者だ?本当に人間か?」

「「「ボスッ!!」」」

 

 相手の本当のボスが現れた体長はおよそ3、4メートル。さらに巨体だけではなくその肉体は鍛え上げられたプロレスラーのように太かった。

 

「俺はれっきとした人間だよ……あんたがボスか」

「あぁ、子分が随分世話になったな」

「まあな。できればこのまま子分を連れて諦めてくれると助かるんだが……」

「悪いが……俺達には余裕がないんだ。諦めることは諦めてもらおう」

「そうだよなあ。じゃあ……来いよ」

 

 その瞬間、ボスが仕掛けてきた。それが分かっていたように子分の妖怪たちはすぐさま横へと避け邪魔にならないよう行動した。

 大きな拳を振り下ろして叩き潰そうとしてくる。その軌道はまっすぐ自分だけを狙っていた。

 ならやりやすい。最小限の動きでその腕を僅かにずらすと両腕をボスの頭へと回しジャンプと引き付けるが加わった膝蹴りを顎へと食らわせる。

 

「ぐ……」

 

 どんな巨体でも脳があるのであればそれを揺らせば隙が生まれる。そして彼はその隙を見逃さなかった。

 身動きが取れなくなったボスの懐に潜り込み太刀の峰で思い切りすねを打ち付ける。

 踏ん張りがきかなくなったところで足を払い胸ぐらをつかみ、揺れている脳にさらなるダメージを加えため頭から地面に叩きつけた。

 

 

side change

 

 

 

 そこは、数多の瞳が存在する不気味な空間。

 誰もこの空間に立ち入ることはできず、誰もこの空間の存在を認識することはできない。

 

「フフッ♪」

 

 そんな空間にたたずむ一人の存在。

 大きなリボンの着いた帽子を頭にのせ、長い金髪の先はいくつかリボンで束ねられ纏められている。中華風のドレスをその身に纏い、大きな扇子で口元を隠し日も入らないこの空間で日傘を差して。

 そして、その空間の『スキマ』から大量の妖怪が一人の人間に手も足もでない様子を終始観察を続けていた。

 

「なんだか面白そうな子が紛れ混んだわね。楽しくなりそう♪」

 

 不気味な空間に足を組みながら浮かんでいるその美しい女性は、その光景をただただ楽しそうに見続けていた。

 

 

 

side change

 

 

「そんな……ボスが負けた」

 

 子分の化け物達は余程ボスを信頼していたのか信じられないといった表情をしている。

 

「・・すごい」少年ケンも同じ気持ちのようだ。

「じゃあ俺達は行くぞ。文句ないよな?」

「とどめをささないのか?」

「ん?もう復活したのか。まぁ命は食わない限り奪わない主義だし。実際お前の部下は誰一人死んでないはずだぞ」

「ッ!!そうか……」

「それと相当腹を減らしているみたいだから俺が持ってた食料置いてくぞ。野菜とかもあるけど」

「いいのか?と聞くのは野暮だな。ありがたくいたたくよ。最後に名前を聞いていいか?」

「俺の名前は信。明渡(あけど) (しん)だ」

「信。感謝する」

「おぉ。よし、ケン行くぞー」

 

 食料以外の荷物を持ってケンに呼び掛ける。

 

「は、はい!!」

 

 

 

 

 

 ケンをおんぶしながら歩いていると素朴な疑問が浮かんできた。

 

「そういえばお前何であんなところにいたんだ?」

「博霊神社って言うところにお参りにいこうと思って。妹が半年くらいで産まれるので」

「ほう。……兄弟はいるだけで安心できて、幸せになれるからな。いいお兄ちゃんになれよ。」

「はいっ!」

「それともうひとつ質問いいか?」

「なんですか?」

「ここはどこなんだ?」

「えっ?」

「気がついたらこの森にいてな。こんな森近所になかったし」

「なるほど。信さん、ここは幻想郷という世界です。そして、あなたは外来人ということになります」

「外来人?幻想郷?」

「順を追って説明します。まず、あなたがいた世界をここでは外界といいます。そこにいる人、またはそこから来た人を外来人と言います。そしてここは、外界から隔離された世界"幻想郷です」

「おk 理解した。帰る方法は無いのか?」

「今向かってる博霊神社から帰れるはずです。たまに迷い混む外来人もそこから帰れるらしいですし。」

「本当か!それはありがたい」

「やっぱり、帰るんですね...」

「そうだが...問題あるか?」

「いやっ、……何でもないです」

 

 そういうケンはどこか悲しい顔をしていた。

 

「?・・・あとどれくらいd「おなかがすいたのだーッ!!」」

 

 声のする方向に目を向けると金髪の幼い少女が地面に寝そべっていた。

 

「あっ、ルーミア」

「知り合いか?」

「はい。寺子屋の生徒です」

「おなかすいたのだーーーー!!」

 

 俺は学校に持っていってるエナメルバックからチョコ○イをいくつか取り出した。

 

「食べるか?」

「貴方は食べてもいい人間なのかー?」

「駄目だよ。それよりこっちを食え」

「誰なのかー?せんせーが知らない人から何か貰っちゃいけないって言ってたぞー」

「ルーミア、この人は信さん。いい人だよ」

「いい人なのかー。なら食べるのだー」

 

 そう言ってルーミアは俺の手からチョコパ○をとり、口に放り込んだ。袋ごと。

 

「ちょっ!待て!」

「味がしないのだー」

 

 チョコパイの袋を取り外してからルーミアの口に突っ込んだ。

 

「こうやって食べるんだよ」

「ムグムグ……美味しいのだー❤」

 

 残りのチョコパイも袋から出してルーミアに渡した。

 

「ムグムグ・・・美味しかったのだー。ほんとにいい人なのかー」

「変わった子だね」

「一応、妖怪ですし」

「もしかしてさっきのやつらも妖怪なのか?」

 

 ケンは頷いて肯定した。

 

「ケンは何処に行くのかー?」

「博霊神社に行く途中なんだ」

「そーなのかー」

「ケン、そろそろいこう」

「はい」

「またなのだーケン、いい人」

「俺の名前は信だ」

「またなのかー」

「「またね(な)ルーミア」」

 

 俺達はルーミアと別れ、博霊神社に向かった。

 



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第2話【博麗神社にて】

おはこんばんにちわ。さまりとです。
東方家族録では、紅霧異変はまだ起きてません。
それでは、ゆっくりどうぞ。


「ここが博麗神社です」

「やっとついたか」

 

 ルーミアと別れてからしばらくして、博麗神社に着いた。建造物自体は古く見えるが、庭の手入れもされていて、ありがたみが感じられる。しかし見渡してみても周りに元の世界に戻れそうな装置なんかは見当たらない。

 

「ここからどうやって帰るんだ?」

「ごめんなさい。詳しいことはあまりわからないんです。今日ここには初めて来たもので」

「初めて来たのか。そりゃあ大変だったな」

「本当に信さんが来てくれて助かりました。それでは僕はお賽銭してきます」

「ここに来たのも何かの縁だしな。俺もやっとこう」

 

 続いて賽銭箱の前に移動すると、ケンは本当にお参りだけをしに来たようで、持っていた巾着袋には財布しか入っていなかった。お金を投げ入れ後真剣な表情でしっかりと拝んでいた。

 

「さて、俺も……!?」

 

 すっかり忘れていた。今日、スーパーで買い物をしたときに小銭がきれいに無くなってしまったことを。そしてちょうど二千円のおつりが何故か今じゃ相当レアな二千円札で出てきたことを。その結果、俺の財布に入っているのは、二千円札と一万円札のみ。金額をとるか、レア度をとるか。こういうと時決まってある方を選んでしまう。

 

「諭吉さんを生け贄に捧げる日がくるとは……」

(無事、戻れますように)

 

 家で待ち続けている弟妹達を思いながらしっかり願う。すると、障子が勢いよく開けられる音が聞こえた。目を開け正面を見てみると、お賽銭箱の中を覗き込んでいる人物がいた。赤と白を主体にし、何故か脇のあいた巫女服を纏い、赤いリボンをつけている少女だ。

 

「いくら入れたの?」

「えっと...」

「いくらなの!?」

 

 彼女の必死な様子から隣のケンが完全に怯えてしまっている。安心させるために頭をなでながら一万円を入れたことを伝えると、目の前の少女は拳を硬く握りガッツポーズをとった。

 

「ここの巫女か?」

「そうよ。私がこの博麗神社の現巫女。博麗霊夢よ。あなたには感謝してるわ」

 

と、握手を求めてくる。握手に応じながら自己紹介を返す。

 

「俺は明渡 信。で、こっちは……」

「ケンです」

「信にケンね。よろしく」

「ところで感謝するってどういうことだ?ここの神様はそんなに力があるのか?」

「いえ、ここ最近お賽銭が少なくて本当に生活に困ってたのよ」

 

 お賽銭箱から諭吉さんを救出しようと蓋をおもむろに取り払うと、その瞬間博麗霊夢に手首を捕まれ止められる。

 

「どういうつもり?」

「見ての通りだ。金を意味もなく他人に渡す趣味はない」

 

 手を振りほどき賽銭箱に向かうが、今度は羽交い締めをされ止められる・・・が、それを気にせづ力ずくで近づいていく。

 

「えっ!なにこの馬鹿力。ちょっと待って!話だけ!話だけでも聞いて!!」

「おk。話を聞こう」

「聞き分けいいわね」

「話だけは聞く。納得するかどうかはそれ次第だけどな」

「わかったわ。とりあえず中にどうぞ」

「了解」

 

 中へ通され座っていると、ケンも隣に座って待っている。またあんな危険な場所を一人で歩かせるわけにはいかないので、今は少しばかり待ってもらうことにした。

 

「日本茶しかないけどよかったかしら?」

「大丈夫です」

「あぁ、むしろ好みだ」

 

 淹れたての熱いお茶を一口に含んで口を開いた。

 

「まず最初に、お賽銭がお前の生活費として使われる正当な理由を聞かせてくれ」

「わかったわ。改めて、私はこの博麗神社の現巫女、博麗霊夢よ。博麗の巫女は基本的に害をなす妖怪を退治したり、ここと外界を隔離する結界を管理したり、異変を解決したりといったことをやってるわ。外界っていうのが……」

「俺は外来人で、外界からこの幻想郷に迷い混んだって言うのはケンから聞いた」

「あぁ、あなたやっぱり外来人なのね。服装から何となくわかってはいたけど」

「で、異変っていうのは?」

「簡単に説明すると、誰かが起こした変なことよ。その対価として、お賽銭やお供えものを生活に当てているの」

「ひとつ質問いいか?」

「いいわよ。なに?」

「この幻想郷は弱肉強食なのか?」

「どういうこと?」

「さっきケンが森の中で大量の妖怪に襲われてたんだ。もし、本来それを助けるのが博麗の巫女の仕事だとしたら、職務怠慢ということになるが?」

「それは、多分そこにいるケンがよくわかってると思うけど」

「……ケン?」

 

 促されケンの方に目をやると、彼はうつむいたまま体を震わせている。なんとなく察しはするが、今は彼本人が話すのを待ったほうがよさそうだ。

 

「本当は人里からは一人で出てきちゃいけないって言われてたんです。森には人を食べる妖怪がたくさんいるからって。でも、妹が半年くらいで産まれるって思うと嫌なことばかり想像しちゃうんです。母さんの体に何かあったらどうしようとか、妹が産まれてこられなかったらって。僕にできるのは二人の無事を祈ることだけなので、先生に近くの神社の場所を聞いて来たんです。まだ半年も先のことで他の人に迷惑をかけるわけにいかないので…一人で」

 

 自分の思いをとにかく伝えようと、ただやってはいけないことをした事への罪悪感があるからか、涙をだがしながら言葉を紡いでいた。

 

「そういうこと。基本的は博麗の巫女は妖怪が何かしてからじゃないと動けないの。人間との共存の道を選んでる妖怪もいるからね。もちろん、人里の近くにも妖怪を退治できるくらいの人はいるわ」

「なるほど」

 

出来るだけ静かに。問いかけるような声色でそれを伝えた

 

「今お前がいなくなったらお前の両親も、産まれてくる妹も一生悲しみ続けることになるんだ。もう少し自分のことを周りのためにも、自分のためにも大事にしろ。わかったな?」

「……はい」

 

 頭はいいがまだ幼い。仕方ないことだ。今話をちゃんと理解し、考え、涙を流せるなら今後同じことをしてしまう事は無いだろう。

 

「それで……」

「霊夢でいいわ」

「そうか。霊夢、まずは謝らせてほしい。いきなり疑ったりしてすまなかった」

「別にいいわよ。私にも悪いところはあったし」

「それじゃあもうひとつ。俺は外来人な訳だが、どうしてここに迷い混んだんだ?」

「博麗の結界はたまに緩んじゃうときがあるのよね。そのときに多分来ちゃったんだと思う」

「なるほど。最後に、俺は外界に戻れるのか?」

「えぇ。結界を少し緩めればもどれるわ」

「そいつは良かった……」

 

 心から安堵した。一生戻れなかったらどうしようかと思っていた。やっと戻れる。

 

「早速頼んでいいか?」

「わかったわ」

 

 霊夢が鳥居の近くで時々呟いたりお札を鳥居に貼ったりと、恐らく結界を調整しているのだろう。その作業が終わったのか手招きで俺たちを鳥居の前へ誘導する。

 

「さ、これでいいわ。鳥居をくぐれば外界に戻れるわよ」

「すまないな」

「これも博麗の巫女の仕事だからね」

「信さん」

「じゃあなケン。お前はまだ子供なんだからもっと周りを頼れよ」

「はい!助けてくれて、本当にありがとうございました!」

「霊夢。ケンをよろしく頼む」

「えぇ」

 

 ケンは深々と礼をし、霊夢は手を振って見送ってくれていた。

 二人を背にして鳥居をくぐる。やっと帰れるのだ。心なしか体が軽く、一瞬浮遊感に似たものを感じた。どこに送られたのか周りを見渡し確認すると、先ほど見送ってくれた二人と目があった。

 

ケ「あっ」

霊「えっ」

信「・・・・・・・。」

「ケン。じゃあな。お前はまだ子供なんだからもっと周りを頼れよ」

「え……は、はい。あ、ありがとうございました」

「霊夢。ケンをよろしく頼む」

「……うん」

 

 鳥居をもう一度くぐり、もう一度見渡してみるとやはり目が合う。

 

「「「・・・・・・・」」」

「どうして?」

「よくわからないけど、帰れないみたいね」

 

 一度は希望を与えられ、それは何故かわからないがやっぱり無理という現実を叩きつけられる。

 そのショックからか全身の力が抜けていき、その場に膝から崩れ落ちた。

 




返すわけないでしょう。


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第3話 【幻想郷の少女たち】

おはこんばんにちわ。さまりとです。
どうしても会話以外が単調になってしまいます。
小説って難しいですね。
それでは、ゆっくりどうぞ。


 なぜか戻れないことが発覚した後、そのまま外にいるのもなんだからということで一旦先程のちゃぶ台を囲み直していた。

 

「なんで帰れないんだ……」

「なんででしょうね?」

「ちくせう」

「大丈夫ですって。きっと帰れますよ」

「励ましありがとう。じゃあ戻れないってわかったんならもうここにいる意味は無いし、お暇させて貰うよ。世話になったな霊夢」

 

 そう言って立ち上がると、ケンの方を見て一緒に行くことを視線で促した。その意図が読めたようで、立ち上がり礼をする。

 

「そういえば、今日どこに寝泊まりするの?」

「ケンを送っていくし、人里の宿屋に泊まろうかなって。ケン、宿屋のところだけ教えてくれるか?」

「ああ、えっと……その……」

「宿屋ないのよ。一番近くの人里」

 

 なんとも歯切れの悪い返事をされたことに、信はなんとなく嫌な予感がしていた。そしてその嫌な予感は理不尽なほど早く肯定された。

 

「マジか。それなら野宿かな」

「それならここに泊まっていけばいいわ」

「は!?いいのか?一応俺も年頃の男だぞ」

「あなたは何かするの?」

「そういう訳じゃないが……まぁいいか。お世話になります」

「それで、人里に彼を送っていくのよね?私もついていくわ。夕飯の買い物もしないとだしね。準備してくるわ」

 

 二人が玄関で待っていると、出かける準備のできた霊夢が荷物を持ち合流する。ケンを信が背負い、周囲に警戒はするも楽しそうに話しながら人里に進んでいた。

 

「そういえば、ケンは妖怪の群れに襲われたんでしょう?よく無事だったわね」

「信さんが妖怪達を殆ど倒してくれたんです」

「え?数は?」

「大体4、50くらいかな?」

「嘘……ほんとにただの人間?」

「正真正銘ただの人間だよ」

 

 そう聞いた霊夢はまだ信じられないような顔をしていた。先程ケンが襲われていた場所も軽く見てみると、残っていたのは足跡だけで他に血液も何も残っていない事から信じることにした。

 そうこう話している内にどうやら人里の入り口らしき場所が視界に映る。門番らしき二人の人物が見慣れない服装と顔の信に警戒するお薄を見せるが、隣に霊夢がいることでその警戒はすぐに解かれた。

 

「信さんは僕のことを助けてくれたんですよ」

 

背負われているケンがひょっこり顔を出しながらそう言った。彼の顔を見て門番の二人はまず驚き、次に安心し、最後に顔の真っ赤にして怒っていた。

 

「ケン!!お母さんも慧音さんも心配してたぞ!!何処にいってたんだ!?」

 

 同時に背中でびくりと反応した。彼自身周りに迷惑をかけるような子ではないため、叱られなれていないのだと予想が出来る。

 

「ケンにはちゃんと俺から話しましたし、自分でもちゃんとわかってるからそれ位にしておいてあげてくれませんか?」

「ぬん……確かにその子は頭がいいし、慧音さんにも怒られるだろうしな。ケンを助けてくれてありがとう」

「では、中へどうぞ。ケンも早く顔を見せてやれ」

 

 門番さんに促され、三人は前へと進む。そして人里に一歩踏み出すと、信は自分の視界に映った物に思わず息をのむ。

 その光景にまるで時代劇のセットの中にいるような感覚を彼は覚えた。視界の中に何度も出入りする人間の多くは和服を身にまとっており、建造物も現代ではなかなか目にすることが出来ないものばかりだった。

 

「私は買い出しにいってくるから」

「りょ、了解。俺はケンを家まで送るよ」

「うん。じゃあまた後で」

「じゃあ、行くか」

「はい!」

 

 霊夢と別れた二人はケンの案内で彼の家までまっすぐ移動した。近づくにつれて肩に掛けられている手に力が入っていくのが彼には分かった。

 

「ここです」

 

 ひとつの家の前でケンはそう言った。ひねった足に負担がかからないように静かにおろし、なかなか一歩を踏み出せないケンの背中をポンと叩く。それによって覚悟が決まったのかゆっくりと引き戸に手をかけて一歩を踏み出した。

 

「ただいmッ!!」

 

 それと同時に女性がケンに抱きついてきた。体重がかかりそのまま倒れてしまいそうになっていたが何とかこらえて抱きしめかえす。

 

「ケン……よかった……おかえりなさい!」

「……ただいま、母さん」

「慧音さんに話を聞いて1人で博麗神社に向かったかもしれないって。お願いだから……もうこんな危ないことはしないでちょうだい」

「ごめんなさい」

 

 母親につられ泣きそうになっていたが、涙をこらえている。その目が信を視界の端に映らせた事でここに自分たち以外がこの場にいることを思い出したようだ。

 

「あ、母さん!この人は信さん。危なかった所を助けてくれたんだ」

 

 その声で気づき、一度しっかりと向き直し深々と頭を下げて礼を言った。

 

「息子を助けてくれてありがとうございます」

「いえいえ。困ったときはお互い様ですよ」

「本当に、なんとお礼をいえばいいか」

「いえ、本当に結構ですから。それじゃケン、慧音って言う人のところにもいかないとな」

「あ、はい!母さん、先生のところに行ってくるね」

「ええ、気を付けて」

「母さんも無理しちゃだめだからね」

 

 二人が少し遠くまで離れるのを見送り、ケンの母親はゆったりとした足取りで家の中に戻る。それを見届けた信は歩きながらケンの頭に手を乗せ割りと強い力を入れてグシグシとなでた。

 

「お前、愛されてるな」 

「……はい」

 

 うれしさと恥ずかしさを混ぜ合わせたような表情を浮かべ、小さいがはっきりと答えた。信は本当にケンはいい子であり、周りの人間から愛されているのだと事実に裏付けして実感していた。

 

「で、先生は何処にいるんだ?」

「多分、この時間はまだ寺子屋にいると思うのでそっちに行ってみようと思います」

 

 ケンの言うとおり寺子屋に向かってしばらく歩くと、それらしき建物が目に入った。誰かいないかと見渡してみると、窓越しに教室の中に人影を見つける。その人影を二人は同時に見つけたようで、ケンはその人物を知っていたのだ。

 

「先生!」

「ケン!あ、あっと……ちょっと待ってろ!」

 

 その呼び声にその人はすぐさま反応し窓から身を乗り出して彼に駆け寄ろうとするが、それはまずいといったん戻り、ちゃんとした通路を通って駆け寄ってきた。

 

「ケン!大丈夫か!?どこか怪我は……もう手当は出来てるか。私もお母さんも心配してたんだぞ!……いや、それはお前ならちゃんとわかってるか。それに私にも非はあるし……もっと迷惑をかけてもいいんだぞ?お前はまだ子供なんだから」

「はい!」

 

 しっかりと彼女を見据えてそう答えた。その様子に慧音と呼ばれていた女性は少し驚いていたが、改めてもう一度頷いた。

 

「いい返事だ。ただ、やってはいけないことをしたのは分かっているよな?」

「え?は、はい」

「なら、私は教師として罰を与えないとな」

「あ……」

 

 何かを感づいたようにケンは声を漏らした。その瞬間彼の頬を汗が伝う。そんな彼ににこやかな笑みを向け、彼女はこういった。

 

「歯を食いしばれ」

 

 瞬間、ガァン!!と硬い物同士がぶつかり合った音がその場に響く。彼女は一瞬大きくのけ反ったかと思うとその反りを利用して頭突きを繰り出した。

 その光景を見ていた信は「うわぁ」と言葉を漏らした。そこで彼女は今一度しっかり彼に向き直しあなし始める。

 

「失礼。こちらにも積もる話が色々あって置いてきぼりにしてしまって。君が明渡 信だな。霊夢から話を聞いたよ。ケンが世話になった」

「あなたが慧音さんですか。俺もケンからは色々と教えてもらったのでお互い様ですよ」

「そうか。君は出来た人間だな。ただ私のことは呼び捨てでも構わないし、そんな畏まらなくてもいい」

「了解」

「今回は本当に世話になった。霊夢から話は聞いたが、君は外来人らしいな。色々大変なことがあると思うが、何か困ったことがあったら出来る範囲で力になるから頼ってほしい」

「ああ。けど俺も帰れないからには何かできるかもしれないから何かあったら頼ってくれ」

 

 そんな会話を交わしながら二人は握手を交わす。頭を押さえていたケンがその間にようやく復活し、そろそろ帰らなければという雰囲気が夕焼けによって示される。

 

「ああ、そういえば霊夢が入口で待ってるといっていたぞ」

「わかった。それじゃあ、またの機会にでも」

「信さん、さようなら」

「あぁ。ケンももう無茶するなよ」

 

 ケンの送りは慧音に任せ、信は人里の入口に向かった。そこにはいくらかの食材を盛った霊夢が壁にもたれかかり待っており、信に気が付くとそちらに向き直す。

 

「もういいの?」

「あぁ。待たせて悪かった。荷物持つよ」

「それじゃよろしく」

 

 と、霊夢は持っていた荷物を全て信に持たせる。

 

「遠慮がないな」

「文句も問題もないでしょ?」

「いい性格してらっしゃる」

 

 そのまま二人は神社に向かった。その間も何か話はしていたが、信に気を使ってか外の世界の話はあまり振らなかった。

 

 

 

 

 

「私は夕飯の支度始めるわね。信は適当に時間潰してて」

「いや、泊めてもらう身だし俺が作るよ。何を作ればいい?」

「あなた料理できるの?」

「家族に作ってたからな。結構腕には自信がある」

「ならお願いするけど……」

「心配っちゃあ心配だけど、あいつらなら大丈夫だろ」

 

 何かを言いたげにするが自分からは言えないと口を紡ぐ。その態度が分かりやすかったのか、彼女の気遣いを彼は察し、話題にしても大丈夫だということをさりげなく提示した。

 

「そう。ちなみに何人兄弟なの?」

「弟が7人、妹が6人の14人兄弟だ」

「!?」

 

 わかりやすく驚く霊夢を少し笑いながらそのまま続ける。何度もされた反応で、そのあとどんな風に返すのかがもう決まっているらしい。

 

「その反応を期待してた」

「失礼かもしれないけど……再婚?」

「いや、両親は全員同じだ」

「すごいわね」

「で、親達は料理とかできないから俺が作ってたんだ。量が量だから勝手に上達した」

「なら安心ね。じゃあ、味噌汁と煮物、焼き魚でお願い。台所の床下に漬物があるからそれも一緒に出して」

「出汁は何を使えばいい?」

「任せるわ」

「合点」

「それと4人分作っておいて」

「……食いしん坊な女の子は俺はいいと思う」

 

 この場には二人しかおらず、ましてやタッパーなど料理を小分けにしておくことが出来るような便利グッツはここにはない。

 

「違うわよ。食べに来るやつがいるのよ。しかもいきなり」

「でもしっかり準備してやるんだな。やさC♪」

「あなた急に距離縮めてきたはね」

「堅苦しいよりマシだろ?」

「そうね。それじゃよろしく」

 

cooking

 

「出来たぞー」

「早いわね。私ならもう少しかかるのに」

「ドヤァ。で、まだ来てないのか?例の奴は」

「多分もうそろs「霊夢!食べに来たぜー!」」

 

 どこからか声がする。声の主はもうそう遠くはないはずなのになかなか見つけることが出来ない。それもそのはずだ。彼はずっと、自分の頭上を探そうとはしていなかったのだから。

 

「おっと……妖怪にも驚いたが、人もかなり変わってるっぽいな」

「幻想郷じゃ外の常識は通用しないわよ。覚えときなさい」

「へーい」

 

 二人の少女がゆっくりと地面に着地する。夕焼けが背後にあることもあり、二人の金髪が風に吹かれてキラキラと美しくたなびいていた。

 

「やっぱり来たわね。魔理沙、アリス」

「おう!勿論だぜ」

「今日もお邪魔するわね」

(白黒は魔理沙。青と白の服の方がアリスか)

「霊夢、そいつは?」

「彼は今日迷い混んで来た外来人よ。何故か戻れないからしばらくここに住ませるつもりよ」

「明渡 信だ。信でいい。以後お見知り置きを」

「私は霧雨 魔理沙。私も魔理沙でいいぜ。よろしくな、信。でかいな」

「私はアリス・マーガトロイド。アリスでいいわ。それでこの子が上海」

「シャンハーイ!」

 

 彼女が指し示す小さめの人形は両手を上げアピールをする。当たり前のように人形が動いているが、もうあまり驚いてはいない。

 

「それじゃあ、食べましょうか。ちょうど支度が終わったところなの」

「おっ、ラッキー。腹ペコなんだぜ」

 

 四人は囲むように食卓を囲み、

「「「「いただきます」」」」

の号令の後それぞれ食べ始める、

 

「相変わらず霊夢のご飯はうまいな。しかも今日はいつもより旨いんだぜ。また腕をあげたんじゃないか?」

「今日のは私が作ったんじゃないのよ」

「えっ?じゃあ、これは」

「俺が作ったんだ」

「そうなのか。霊夢よりうまく作るなんて相当だぜ」

「そうね、本当に美味しい。普段から作ってるの?」

「ああ。弟妹が多いから基本毎日作ってるよ。そしたら勝手に上達してた」

「これならしばらくは信に任せようかしら」

「おk。任された」

「こんなのが毎日待ってるだけで出てくるなんて、羨ましいんだぜ!」

「宿主の特権よ」

 

 霊夢が得意げにし、魔理沙が悔しそうに食べ進める。そしてその二人のやり取りを見ながら別の二人は笑い、四人の食卓は和気あいあいとした雰囲気で進んでいく。

 そしてもうすぐ皆食べ終わるといったところで、魔理沙があることを思いついたようで、それをそのまま口に出した。

 

「そういえば霊夢。信にあれのことはもう話したのか?」

「ああ、そういえばまだだったわね」

 

 そう聞きニヤリと笑ったかと思うとすぐさま話の相手を信に変更する。

 

「じゃあ信!飯が終わったら私が幻想郷についての重要事項を説明してやるぜ」

「ほんとか?助かるよ」

「ああ、だから今はしっかり腹ごしらえしておくんだぜ!」

 

 そう言った彼女はご機嫌そうに残りの夕食を掻き込んでいく。彼女と対愛の長い二人は何を企んでいるのかおおよそ見当がつくようで、他二人には聞こえない小さな声でひそひそとし始める。

 

「霊夢いいの?このままだと魔理沙始めちゃうわよ」

「多分大丈夫よ」

 

 何がとは言わないが、霊夢は確信に満ちた表情でそう話す。ただ、その言葉だけでアリスは安心したようで最後に一つだけ、確認した。

 

「その根拠は……もしかしていつもの?」

「そう。勘よ」

 

 




読んでいただきありがとうございます。
次回はいよいよアレです。皆さんならもうお分かりですよね


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第4話【弾幕ごっこ】

おはこんばんにちわ。さまりとです。
私は東方のキャラの弾幕を詳しく知らないので、描写は省かせていただきます。
許してくださいッ!なんでもしますから!
では、ゆっくりどうぞ


夕飯の後始末が終わり、信と魔理沙は庭で、霊夢とアリスは縁側で食後のお茶を楽しみつつ二人の様子を見守っていた。

 

「これからお前に教えるのはこの幻想郷で勝ち負けを決める際に行われる『弾幕ごっこ』についてだ。そんでもって、弾幕ごっこで一番大事なのがこれだ!」

 

 手を仰向けに突き出したかと思うと青いエネルギーの様な球体をポンと出した。優しく光る美しい物体である。

 

「おぉ」

「こいつを弾幕にしたりして勝負を決めるんだぜ!ちなみに私やアリスの場合は魔力を。霊夢の場合は霊力が元になってるんだぜ。慣れれば色々形を変えたりも出来るし面白いもんだぜ!」

 

 と言いながら弾幕を星形なんかに変えて見せる。目を輝かせながら縁側の二人に目をやると、アリスは魔理沙と同じ青い球体を、霊夢は赤い球体を出して見せてくれた。色こそ違うがやはりそっちも優しく光る美しいものだ。

 

「まずはこの弾幕を出すところからだな」

「なるほど。どうやるんだ?」

「フッとやってポンだ」

「アリスさーん。交代お願いします。」

「なんでだぜ!?」

「逆になんで出来ると思ったんだよ?」

「だってぇ」

「まぁ、こうなる気がしてたわ。私のイメージだけど教えるわね」

「よろしく頼む」

 

 仕方のなさそうに立ち上がると、持っていた上海人形を宙に浮かべ、それに自分が放出した魔力を薄い膜を張るように纏わせる。

 

「いい?魔力や霊力っていうのは、血液みたいに管を通ってるわけじゃないの。皮膚の下を薄い膜を張るようにして流れているわ。まずはその存在を感じ取れるようにならないといけないから、一番感覚を集中出来るところに意識を集めてみて」

 

 そう言われた信は自分の掌に意識を集中させた。皮膚の下を覆っている。そして流れているということは動いているのだ。彼女の言葉から自分なりに感覚を確かめていった。

 

「お!」

「感じたかしら?」

「これを外に出す。これを外に出す。これを外に出す」

「じゃあ次にそれを外に出す為に」

「待てアリス!」

 

 魔理沙の制止によって彼女は気が付いた。自分の言葉が既に届かなくなってしまっている事に。

 

「でも魔理沙、確かに集中力はすごいけど今霊力の存在を知ったばっかりの人がそれを操るなんて……」

「確かに簡単けど、もしかしたらもしかするかもしれないぞ?」

 

 面白そうに話す魔理沙にはいはいと今は言うことを聞くことにした。ただ、やはり無理な物は無理だと感じながら目の前の彼を見守る。時間が少し過ぎ、やはり無理だったと三人が思い始めた時だ。

 

「出た!」

 

 なんと出た。彼の手から赤く光る美しい霊力弾が確かに。しかし、それ以上の異変にその場の全員が感じ取る。

 

「なんだ……力が溢れて……抜けていく……!?」

「おいおいなんだこのとんでもない量の霊力は!?」

「私の倍、いや、それ以上かも」

 

 この場を一瞬にして大量の霊力が覆いつくす。それは間違いなく、今まさに彼からあふれ出ている霊力そのものなのだ。

 

「でも他にもなにか……じゃなくてどうするの?このままじゃ不味いわよ!」

「え、何が!?」

「あなたの霊力駄々漏れになってるのよ。このままじゃすぐに底をつくわ」

「底をつくとどうなる?」

「最悪死ぬわ。」

「え、やだ死にたくない!」

「なんとか自分で押さえるしかないわね」

「おk。やってみる」

「ずいぶん軽いな」

「死ぬのは嫌だからな」

 

 再び信は異常な集中力を発揮した。膨張している全身の筋肉を沈めるように、深く長く息をしながら。

 

「ふぅぅぅ」

「すごいわね。ほんとに出来てる」

 

 汗を流しながら少しずつ、しかし確実に周囲に漏らしている霊力が薄れていく。そして最終的には栓をしっかり閉められた蛇口のように一切彼の意にそぐわない放出が行われる事は無くなった。

 

「ふぅ。これでどうだ?」

「もう大丈夫よ」

「それにしてもあの霊力の量。信は何者なんだぜ?」

「一般的な外来人?」

「正直信じられないわね」

「で、どうするの?弾幕ごっこやるの?」

「あぁ。魔理沙、相手頼む。」

「いや、まだ説明しなきゃならないことがあるんだぜ」

「まだあるのか?もう命の危機は嫌なんだが……」

「大丈夫だぜ。スぺルカードっていう弾幕ごっこにおける必殺技のような物なんだぜ。あらかじめ決めた動作や性質を一瞬で展開するんだ。この白紙のカードにイメージを埋め込んで作るんだぜ」

「なるほど。ちょっと時間くれ」

「おう!」

 

 

---------考え中------------

 

 

「出来た!!」

「じゃあ早速やってみるぜ。スぺルカードは3枚。先に三発被弾した方が負けだ」

「OK」

 

 準備万端というように今か今かと始まりの合図を待つ信だが、その相手は顎に手を添えて何かを考えている。

 

「けど普通にやってもつまらないな……そうだ!負けた方は勝った方の言うことを何でも聞くことにするんだぜ!」

(ん?今なんでもって...)

「沈黙は肯定だな!じゃあ始めようぜ!」

 

 相手の返事も聴かずに魔理沙の合図で弾幕ごっこを始める為、持っていた箒にまたがり空高く浮かび上がる。信もそれに反応して構えをとる。

 そしてついに、彼が幻想郷に来て最初の弾幕ごっこが開始された。

 

「早速いくぞ!!『運任うんまかせ』〈ドキドキわくわく抽選会どきどきわくわくちゅうせんかい〉!!」

「いきなりなんだぜ!?スペカはここぞってときにとっておくのが普通なんだぜ!」

「このスペカはこれでいいんだよ」

 

 スぺルカードが発動されると、三枚のカードが現れ彼を中心に周回し始める。そして一枚がまるで燃えたように消滅し、1枚が赤い光を纏った。残された二枚は優しい光に包まれて再び姿を消していく。

 

「どういう効果なんだぜ?」

「それをばらしちゃ面白くないからな。後のお楽しみ!」

 

 言葉とともに霊力弾を狙いを定めて放出する。しかし相手は空中を高速で徘徊するため、そう簡単に被弾はしてくれない。

 

「おっと初めてにしては中々やるじゃないか。こっちからもいくぜ!」

「多すぎないか?」

 

 信は一発一発をマシンガンのように連続して放っていたが、魔理沙は彼女を中心に全方位にそれを放つ。また、量に関しては信を完全に圧倒している。

 

「こんなの普通だぜ。信ならそのうちできるだろ」

「いや、今すぐやってやる!!」

 

 いやまさかと他三人は一瞬感じたが、即座に彼を中心にして霊力弾による弾幕が展開される。どうやら先程の魔理沙の弾幕を模倣することでイメージを補強してるようで軌道や感覚が少し似ていた。

 

「うわっ!本当にやりやがった……しかもこれは……!?」

「よしって危ない!」

 

 弾幕を張る事だけに集中していた為か目前まで迫っていた魔力弾を想定外にギリギリのところで回避しようと体を捻らせた。

 

「まずっ!!」

 

 ある程度相殺しているとはいえ、量が量だ。すべてを回避することはかなわず一発をわき腹に食らってしまう。

 

「畳み掛けるぜ!!『魔符』〈スターダストレヴァリエ〉」

 

 それを好機と見たか魔理沙は初めてスペルカードを展開する。情報が多い中やはり信の集中力は異常で、弾幕を張ることを一時中断し回避に専念し始めた。

 飛べない人間とは思えない動きで次々に襲い掛かってくる星型の魔力弾を回避し続ける。もうすぐそのスペカも終わろうとしている時、両者は同時に新たなカードを手に取った。

 

「畳み掛けるぜ!『魔符』〈ミルキーウ」

「させるかよ!『光符こうふ』〈豪華絢爛ごうかけんらん〉!」

 

 瞬間、あたりが一瞬昼間になったかと思うほどの眩い光が神社を包む。夜の暗さに目が慣れていた魔理沙はその眩しさに思わず目が眩んでしまう。

 

「くっ!目が。でもこれくらいじゃm」

「目がああああああ!!!!!」

 

 しかしそれは魔理沙だけではない。光源はあくまでスペルカード。近ければ近い程その被害を受ける為、初同社は某サングラススーツの人の様なリアクションをとっていた。

 

「なんでお前も食らってるんだよっ!!」

「そういうスペカだ。それに両者が視覚を使えない時は、俺の方に分がある!」

 

 両社目が見えない状態の為、今こそ弾幕を張ることが一番の得策と思えるが、信はそうしない。見えていない筈なのに空中に浮かぶ少女に向けて単発の霊力弾をいくつか放出した。

 

「わっ!なら今度こそ『魔符』〈ミルキーウェイ〉」

「ちょっとそれはきついなっ!」

 

 お互いの視力が回復しきらないうちに両者攻撃を試みる。そしてどちらも手ごたえを感じると共に相手の弾幕に被弾してしまう。

 

「くっ!また一発もらっちまった」

「こっちもさっきので2発食らったんだぜ」

 

 これで両者の被弾数はニ。次に被弾してしまった方が負けるというお互いが崖際の勝負となる。しかし、魔理沙の表情は勝利を確信するようにニヤリと笑っていた。

 

「最後にいいこと教えてやるぜ」

 

 帽子の中から小さな八卦炉の様なものを手に取り、それを信に向けこう言い放った。

 

「弾幕は、パワーだぜ!『恋符』〈マスタースパーク〉!!!」

 

 突き出された手から放たれたそれはいわば極太レーザー。恐ろしい速度の光の集合体が、無駄な小細工は必要が無いと示す様にまっすぐ信に向かっていく。

 本来なら絶望的状況。だが、魔理沙と同じく信の表情は勝利を確信していた。

 

「パワーか。なら俺の勝ちだ!!」

「なにっ!!」

 

 奇しくも似た構えで右手を対象に突き出す。まっすぐ襲い来るレーザーから目を離さず、今まさに直撃するかと思われたその時だ。

 

「『怪符かいふ』〈破壊光線はかいこうせん〉」

 

 彼から同じく極太のレーザーが放出される。しかし、それは魔理沙の物とは二回りほど太さが違い、圧倒的なパワーによってマスタースパークは押し返されていく。

 

「嘘だろ!?なんなんだぜこのパワーは!」

 

 みるみる押し返されていく自分の必殺の一撃に注意を向けられてしまったが為、それが命中するまで彼女は回避をすることが出来なかった。

 勝敗は明白。それでも喜びを隠せなかったのか、もしくは自身の勝利をより明確にしたかったのか。それは分からないが、勝者は天高くに右手を突き出しこの勝負を終わりを示した。

 

「俺の勝ちだな!」

 

 




次回は主人公の能力が明らかに!チートにするつもりです。
魔理沙になにさせようかな~。
次回も楽しんでいっていただけたら幸いです。


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第5話 【能力】

おはこんばんにちわ。さまりとです。
書くことなくなりました。
では、ゆっくりどうぞ


「嘘……魔理沙が負けた?」

「流石に私も驚いたわね。」

「魔理沙ってそんなに強いのか?」

 

 観戦者の二人は全く同じ意見の様で目を見開いていた。息を整えその様子に気が付いた信は、勝利の高揚感からか少し失礼な言い方で疑問を唱えるが、今はそれを咎める者は誰もいない。

 

「この幻想郷じゃトップクラスね」

「なら、俺もトップクラスの仲間入りだな。魔理沙、今回は俺の勝ちだ。またその内戦ろうな」

「あー負けた!でも次は私が勝つんだぜ!」

 

 地面に倒れこんでいる魔理沙に近づき、念を押すように再び自身の勝利を口にする。魔理沙も悔しそうにはするが決して嫌な顔はせず、信が差し出した手を取り体を起こして汚れを払った。

 一連の動作が終わり、改めて彼は切り出した。今回の勝者に与えられる権利についてだ。

 

「それじゃあ、俺の言うことを聞いてもらおうか」

「チッ!覚えてたか……」

「まさか負けると思ってなかったら約束はなし。何て言わないよな?約束では『敗者は勝者の言うことをなんでも聞く』だったよな。なにお願いしようかな~♪」

 

 ゆっくりと魔理沙の回りながらニヤニヤとした表情で事実のみを並べていく。しかし、約束の内容が内容だけに何を商品にするのかは信次第の為、少しばかり嫌な想像くらいはしてしまう。

 

霊「エッチ」 ア「スケベ」 魔「変態」

 

 そんな態度をとってしまったらそりゃ言葉の矛先を向けられたとしても仕方がない。

 

「冗談は程々にして真剣な話だ。魔理沙、俺に空の飛びかたを教えてくれ」

「わかったぜ。って言っても、私は、飛ぶ事にはそこまで苦労しなかったからあまり期待するなよ?」

「おう」

「私の感覚はそうだな……さっきアリスが言ったように魔力とかは皮膚の下に薄い膜を張ってるような感じなんだが、体を動かすのと同じで魔力自体を動かすんだ。右手と左手でそれぞれ違う動きをするみたいにな。魔力は常に全身を回ってるからそれ全部を一気に動かすとやりやすいと思うんだぜ。浮いた後は聞くより自分で試す方が早と思うぞ」

「なるほど」

 

 足を肩幅に開き、手はだらんと脱力させる。体を動かすことと別に考えるのであれば今は体に意識が向かない楽な姿勢をとるのがいいと考えた為である。ここからが本番というように息を深く吐き、全身に流れている霊力に意識を集中させた。

 

「外に出さないで……全身を……一気に動かっあああああああああああああああああ!!!」

 

 瞬間、彼の体は高速で夜空に舞い上がった。いや、それは少し語弊がある。舞い上がったというほど優雅なものではない。直立のまま後方に回転させながら打ち上げられたように地面との距離を広げていった。

 

「はっはっは!見るんだぜ二人とも!めっちゃ回ってるぜ!」

「どこまで行くかしら?」

「笑ってる場合じゃ……フフッ」

 

 地上にいる三人は気楽なものである。

 逆に現在高速回転打ち上げに成功した信はとにかく止まる事をイメージし続けていた。

 

「止まる止まる止まる止まる止まる止まる止まる止まる止まる止まる!!!!!」

 

 しかしイメージだけでは止まるはずもない。ちゃんと霊力を用いて体の回転を止め、重力に負けない程度の浮遊感を持たせなければならないのだ。止まる事ばかりを意識していた彼を次に襲ったのは。

 

「今度は落ちるのかよおおおおおおおおお!!!!」

「ハハハハハハハハハハハ!!!」

「「……」」

 

 急降下ではなく墜落である。地面に当たればの話ではあるが。その様子に魔理沙は一切遠慮なく大笑いし、アリスと霊夢はせめてもの慈悲なのか口元を抑えて堪えている。

 そんな地上の様子も知る由もなく、しばらくの間高速の上下運動を繰り返していた。

 

 

 

「はあ……はあ……」

 

 ようやく空中で停滞することが出来た信だが、今はその達成感よりも疲労感の方が大きかった。その結果空中で膝をつくという不思議な光景が作り出されている。

 

「やっと止まったな……クッ……」

「お陰様でな……はあ」

「まあまあそう怒るなって。ほら上見て見ろよ」

 

 面白そうに笑う彼女の言葉につられ何も考えず空を見上げる。恐らく彼は、この時見た光景を一生忘れる事は無いだろう。

 今まであまりに激しい移動を行っていた為、今になって初めて現在の位置を正確に把握する。雲の上だ。いつもは見上げるだけで決して近づくことのできない。ましてや生身の人間が道具も使わずこの高さに来ることなど本来はあり得ないのだ。それ故に、遮るものは一切ないのだ。

 見上げた瞬間視界の八割をそれは覆いつくす。人間ならば誰もが見たことがあり、ごく少数ならそこに足を踏み入れた者もいる。優しく白い、加えてうっすらと黄色い暖色も交えながら地上を照らす。普段見るそれとは圧倒的に距離が違う。両手を広げ、全身で一段と明るい光を受け止めた。あまりに普段と違う光景の為、子供のように思わず手を伸ばしてしまう。

 

「月ってこんなにデカかったんだな」

「気に入ったか?幻想郷ここは邪魔するやつもいないし、少し飛んできたらどうだ?」

「ああ、そうさせてもらう」

 

 先程までの絶叫が嘘のように自身の意志で上下左右に飛行する。月の光を全身に浴びながら、ただ何の邪魔もない大空を飛び続けた。時に雲海の中を泳ぐようにしゆったりと漂い、時にただ広い空で眠るような体制で制止し、時に肌が風を受ける感覚を楽しむように今の最速で滑空する。

 一通りやりたい事を終えた後、先に戻っていた魔理沙に続いて神社に着地する。飛行時間が長かった為か一瞬足が浮くような感覚があったが決して不快ではない。

 

「ほんとに飲み込みが早いんだぜ。」

「教え方がいいんだよ」

「へへっ。ちょっと照れるぜ」

 

 お互いの価値観を少し共有した二人は子供のように無邪気に笑っていた。この和気あいあいとした空気の中で、何やら疑問がずっと残り続けていたのであろう人物が別の話題を切り出し始めた。

 

「えっと、信。少し聞いていいかしら?」

「何だアリス?」

「なんであなた魔力も使えるの?」

「……………え?」

 

 疑問を投げかけられ疑問が増える。彼自身はそのことに関して一切意識出来ていないものだとその様子から誰もが分かるだろう。

 

「やっぱり無意識だったのね。霊夢、魔理沙。彼、魔力と霊力と両方使っていたわよね?」

「最初垂れ流してる時も一緒に出てたし」

「さっきの弾幕ごっこでも使ってたな」

「えっ?ほんとに使ってた?」

「バッチリ使ってたぜ」

 

 三人に言われてはそうなのだろうと彼は上空に向かって手をかざし何発か放出するが、やはり霊力弾しか出てこない。

 

「でないけど?」

「さっきは間違いなく使ってたぜ」

「なら、試しに霊力弾を出してみなさい。それで今使ってる霊力の他にも体の中にエネルギーを感じない?」

 

 再び彼は自身の手に意識を集中させる。霊力の流れは今もしっかりと感じ取ることが出来る。それ以外に流れているエネルギーを模索する。

 

「あった。霊力より内側に流れてる」

「霊力と同じ要領で出してみなさい」

 

 言われた通り今度は左手で一つ放出すると、魔理沙やアリスと同じ青い魔力弾が出現した。

 

「ほんとに出た!」

「しかし妙ね」

「あぁ」「そうね」

 

 驚きの実の信とは別に他の三人は全員不可解な表情を浮かべる。

 

「なにか変なことがあるのか?」

「普通人間は魔力と霊力、そのどちらかだけしか持ってない筈なのよ」

「じゃあ俺変じゃん」

「えぇ。変ね」「変よね」「変態だぜ」

「おい最後のやつ!」

「だから多分あなたはなにか能力を持ってると思うの」

「能力?」

「幻想郷には程度の能力って言うのを持っているやつが結構いるのよ。私の場合は『空を飛ぶ程度の能力』」

「私は『魔法を操る程度の能力』だぜ」

「私も『魔法を操る程度の能力』よ」

 

 何それ凄い欲しい。と心の中では思っているが外には出さない。現代を生きる男子ならば一度は夢見る自分だけの異能力。それが自分の中にあると言われて興奮しない者はいない。

 

「それがどんな能力かってのは調べられないか?」

「元々そのつもりだったからね。ちょっとここに立ってくれるかしら?」

 

 霊夢に誘導された場所に移動すると、そのまま彼女は手をかざして目をつむった。信の周りをお札が周回し、何やら読むことのできない文字を空中に記していく。それに目を通した霊夢は一瞬顔をしかめると能力の詳細が分かったことを三人に知らせた。

 

「一体どんな能力なんだぜ?」

「なかなかずるい能力よ。『共有する程度の能力』それがあなたの能力」

「「『共有する程度の能力』?」」

 

 能力の名前を聞くとその所持者は何やら考え事をするように黙り始めた。目を一点から動かさず、ぶつぶつと誰にも聞き取れない声で何かを話している。

 

「なにか思い当たる節があるみたいね?」

「あぁ。試してみる」

「どうやるんだぜ?」

「魔理沙。お前さっき飯食ったばっかりだろ。なんでもう腹減ってるんだ?」

「ッ!!なんでお腹が減ってることがわかったんだぜ?」

「今、お前の考えていることを『共有』した。俺の能力のほかにこれからなにか食えないかん考えてたな」

「じゃあ考えてること全部お見通しなのか?」

「他にも感情がわかったりするな。そこらへんは俺のさじ加減だ。それと……」

 

 不自然に会話を切ったと思うと言葉の代わりにゆっくり目を閉じる。再び目を開けると、他の三人が自身の異変に気が付く。

 

「え……いやどういうこと?」

「なんで私が……いやアリスも」

「これ慣れないと気持ち悪いわね」

「悪い。これで分かったと思うけど、俺の能力はどうやら共有す・る・だけじゃなく共有さ・せ・る・ことも出来るみたいだ。今は三人の視界を俺に共有させた」

 

 彼が解除すると、それぞれ首を振ったり長めに瞬きをしたりと対処する。突然やったことを謝りながら、彼はさらに続けた。

 

「それともうひとつ」

「まだあるのぜ?」

「魔理沙、ちょっと怖いが協力しれくれるか?」

「あぁ。こうなったらとことん付き合うぜ」

「魔理沙。お前の『視覚』を持っていく。許可してほしい」

「?いいぜ?...!?」

 

 彼女がいいといった瞬間、その様子が変わる。腰が急に低くなったかと思うと、恐る恐ると手を誰もいない方向にゆっくり震えながら伸ばしたりし始めた。

 

「なぁ、信、霊夢、アリスそこにいるのか?」

「?いるわよ」

「本当か?何処にいるんだ?真っ暗だぜ」

「どういうこと?」

「落ち着け魔理沙。今返す」

「戻った。結構きついぜ」

 

 一瞬の事ではあったが息が上がっていた。それを整えようと深く長く空気を吐く。

 

「信。何をしたの?」

「俺の能力は対象の相手の許可さえあればなにかしら奪えるみたいなんだ。共有した時点で所持権は二人になるるだろ?それを元の所有者がいらないと宣言すれば、解除した時それは俺のところだけに残る」

「なにそれ怖い」

「試してみるか?」

「遠慮するわ」

「私も」

 

 能力の開設が終わり少しの不気味さがあたりを包み始めた頃、雲はもう帰り時だと示すように月を隠した。




主人公のステータスが大体出たのでプロフィールを公開します。
明渡 信 (17) O型 身長186cm 誕生日 4/2 長い髪を後ろでひとつ結いにしている。
習得している格闘技・武道:空手、柔道、剣道、弓道、合気道、サバット、護道、槍術、鎌術
能力 『共有する程度の能力』

趣味:料理
好きな物:努力 甘い物 激辛料理 家族
嫌いな物:ズル 殺生(自分)
得意教科:なし
苦手教科:なし

 明渡家14人兄弟の長男。両親、両祖父母がみんな別々の格闘技を持っていたため誰が信に教えるか喧嘩になりそうだったところを2歳の信が「全部やりたい!」といい放ち、解決。
 10歳の時には親達からおしえられたことは全部できるようになっていた。槍術、鎌術は独学。そして、親達は家事ができないので4歳から始め5歳には万能になってしまった。疲れた親達を癒すためにマッサージも極めている。
 部活には入っていないが、よく空手部などで練習の相手をお願いされる。努力すること事態が好きなので勉強もできる(全国40位くらい)。
 弟や妹たちには尊敬され、親達には感謝されているのをよくわかっているので、それがうれしく余計に頑張る。負の感情にはするどいが、良の感情には鈍い。
 アニメ、ゲーム、マンガは家族全体が好き。ニコニ○動画もよくみるのでネタもよくわかる。
 東方は名前しか知らない。






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第6話【適応】

おはこんばんにちわ。さまりとです。
サブタイトルってなにを書けばいいのか困りますね。
今回は短いです。
では、ゆっくりどうぞ。


「ふぅ・・・。今日は色々ありすぎたな。」

 

俺は今風呂に入りながら今日のことを振り替える。

 

「しかしどうしたんだ、二人とも。話が終わるなり急いで帰ってったし。俺なんか悪いこと言ったかな?」

 

・・・数分前・・・

 

「今日はほんとに世話になったな。霊夢、魔理沙、アリス。」

「こっちこそだぜ。次はぜったい勝つからな。」

「夕飯おいしかったわ。またご馳走してね。」

「おう。...」

「どうしたんだぜ?」

「いや、お前らホントにいい女だと思ってな。」

「「「ッ!!」」」

「見ず知らずの俺に色々教えてくれてさぁ。外界じゃこんな親切なやつ早々いないぞ。しかも全員可愛いときた。男にとってこれほど嬉しいことはないぞ。」

「えっあっその///・・きゅ、急用を思い出したぜ。じゃあな信、霊夢」

「わっ、私もっ」

 

アリスと魔理沙は急に急いで帰ってしまった。

 

「どうしたんだ?あいつら。」

「さあ?」

 

という霊夢も少し顔が赤くなっている

 

「どうした?熱でも出たか?」

「ちっ違うわよ。それよりお風呂入っちゃって。色々あって疲れてるでしょ?」

「助かるが、いいのか?さきに入っても」

「いいからはいりなさい!」

「お、おう。わかったよ」

 

 

 

 

(((可愛いって始めて言われた///)))

 

 

 

 

 

 

そして今に至る。

 

「信。着替えここに置いとくわね」

「あぁ、ありがとう。よく男物の服何てあったな」

「男の外来人もよく来るからおいてあるらしいわ。和服だけど大丈夫?」

「大丈夫だ、問題ない。ありがとな」

「じゃあ、ごゆっくり」

「ああ。……さてこれからどうしようか」

 

 実際これからどうすればいいのか見当をつけなければいけない。しばらくは帰れそうにないし、携帯は圏外だから通じないし、ずっと霊夢のところに居候するわけにもいかないだろうし。

 

「バイトって募集してるかな?」

 

明日、人里に行って仕事を探そう。それがいい。

そう決め、ゆっくりと今日の疲れを癒すように湯船に浸かっていた。

 

 

「霊夢~。風呂あいたぞ~」

「そう、じゃあ入ってくるわね」

 

霊夢が風呂に入ったあと、縁側に座って涼んでいた。

 

「あいつら大丈夫かな」

 

幻想郷に迷い混んでからまだ一日もたっていないが、ずっと一緒に暮らしてきたのだ。信頼はあっても心配はする。

 

「今はお前たちが一番上なんだ。しっかりしろよ、真、愛」

 

今はふたつしたの双子に任せるしかない。正直嫌な予感はするが。

 

「大丈夫かな……」

 

side change

 

・・・数時間前・・・

 

「ど、どうしよう恭助。信兄帰ってこない!!」

「落ち着けっての。兄貴のことだからきっと大丈夫だって言ってんだろ」

「で、でも今までこんなこと無かったし、やっぱり何かあったんじゃ!?」

「いいから落ち着けって」

「え、あっ警察ってひゃくとう番だよね。ひゃくとう番って何番だっけ?静どうしよう!!」

「愛姉さんも落ち着いてください。110番は110です」

「「はわわわわわわわわわわわわわ」」

「ったく……どうするよ静。二人とも完全に使いモンになんねぇぜ?」

「落ち着くまで待つしかないですね。でも本当にお兄さんどうしたんでしょう?」

「「はわわわわわわわわわわわわわ」」

「「はぁ……」」

 

 信の願いも虚しく、真と愛はもっとも頼れない状態になっていた。

 

 

side change

 

 

???「主が帰ってこない?一体……何が!?」

 

 心配していたのは兄弟達だけではなかった。

 

 




明渡 真 (あけど まこと)(15) O型 身長172cm 誕生日 4/10 髪は少し短めに切り揃えている
会得している格闘技・武道:空手

趣味:スポーツ カラオケ
好きな物:和食 手品
嫌いな物:質の悪い冗談
得意教科:数学
苦手教科:社会系

明渡家14人兄弟の次男。双子の兄。
父親と信に空手を習っていた。信には家事も習い、5年くらい前から手伝っている。
基本的には頼れるが、パニクるとどうにもできない。
純粋でよく冗談を本気にしたりするが、悪意に敏感なため騙されることは少ない。口喧嘩に勝てない。
頭はいいが、テストで愛に勝ったことがない。
アニメもゲームもマンガもすき。東方は大好き。信にはよく進めている。
好きなキャラは美鈴





明渡 愛 (あけど ちか) (15) O型 身長165cm 誕生日4/10 ポニーテール Bカップ
会得している格闘技・武道:合気道

趣味:泳ぐ事
好きな物:イタリアン おっぱい BL
嫌いな物:お化け 暗い所 落雷
得意教科:社会系
苦手教科:国語

明渡家14人兄弟の長女。双子の妹。真同様、頼れるが、パニクるとどうにもできない。
6年くらい前から家事を手伝っている。料理の腕は霊夢くらい。
合気道は信と母親にならった。
家事ができ、顔も整い文武両道なのでよく告白される(男女問わない)がすべて断っている。
外にいることが多いため、肌が褐色に焼けている。
活発な性格。よく真と組み手をする。
ゲームもアニメもマンガも好き。
東方は好きだがプレイは苦手。好きなキャラはアリス。




明渡 静(あけど しずか) (14) O型 身長160cm 誕生日4/8 ロングストレート Eカップ
会得している格闘技・武道:サバット

趣味:読書
好きな物:信が作った料理 静かな所 本
嫌いな物:落雷 
得意教科:国語
苦手教科:理科系

明渡家14人兄弟の次女
サバットは母方の祖母と信から習った。そのせいか足に多くの傷痕等が残っているので夏でも黒いストッキングを着用している。
物静かで、基本丁寧な口調で話す。よく恭助と喧嘩する。
学校では不良の抑止力になっているため彼女を尊敬する女子が結構いる。その女子たちからは『お姉様』と呼ばれている。図書委員長。
自制心が強く、何かあってもすぐに落ち着く。
同時に複数のことをやるのが苦手。家事は大体出来るが料理だけは出来ない。
頭はいい。わからないことは信によく聞く。
アニメやマンガはすきだが、小説の方が好き。ゲームは一人でやらない。
東方はストーリーとキャラだけしっている。どんなゲームかは知らない。
好きなキャラは妖夢とパチュリー。





明渡 恭助(あけど きょうすけ)(13)O型 身長169cm 誕生日3/30 10mmくらいの丸刈り
会得している格闘技・武道:空手、護道

趣味:野球
好きな物:豚肉 動物
嫌いな物:理不尽 初対面でビビられること
得意教科:理科系(特に化学)
苦手教科:数学 

明渡家14人兄弟の三男
目付きが悪く、口調が荒い。加えてよく静と喧嘩しているため、怖がられることが多い。静同様、学校では不良の抑止力になっているため、先生達に頼りにされている。野球部に所属。自制心が強い。
口は固く、根は優しいことを周りは知っているので、愚痴や相談の相手によくなる。
料理は信達に習いできるが、それ以外は苦手。
アニメよりもマンガが好き。明渡家で一番、東方をプレイしている。
好きなキャラは霊夢、フラン、レミリア






この後、しばらく明渡家は出てこないです。


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第7話 【働きたいでござる】

おはこんばんにちは。さまりとです。
今回は少し長くなってしまいました。キャラの口調は私のイメージなので違和感があったらごめんなさい。
では、ゆっくりどうぞ。


 

「ふぁあ。よく寝た」

 

 午前5時半、見慣れない天井の下で信は目を覚ました。伸びをし体の調子を確かめると、布団をたたみ、歯を磨いて顔を洗い、その長い髪を後ろで結ぶ。そんないつもの身支度を整えた。その間、準備を任されている朝食の献立を考え、一連の流れが終わると早速取り掛かった。

 

「おはよー、信」

 

 味噌汁の匂いが漂い始めた頃、家主が目を半開きにして起床する。よたよたと歩き信と同じく伸びをするが、それだけではどうも眠気が飛ばないらしく、一瞬柱にぶつかりそうになった。

 

「おはよう霊夢。もうすぐ朝飯準備できるから先に顔洗ってこい」

「ん」

 

 彼女が戻ってくるまでに仕上げに入る。人数分の皿を取り出し盛り付けていく。目が開いた霊夢が昨日と同じ場所に座ると、味噌汁とご飯をよそい、準備を完了させた。

 

「「いただきます」」

 

 お決まりの言葉と共によく噛み、体に蓄えるようにゆっくりと食を進めていく。霊夢の顔を見ると、薄く笑顔を浮かべていたので口に合ったようで何よりだと信は心の中で思う。

 

「この魚美味しいわね。味付けはなに?」

「お!流石お目が高いな。それは……」

 

そんな、のんびりとした空気で朝食を体に馴染ませていく。それが終わると機嫌のいい霊夢は後片付けは自分がやると慣れた様子で食器を洗い始める。袖をまくり、鼻歌を混ぜながら行う彼女にお茶を入れながら話しかけた。

 

「なあ、霊夢」

「なに?」

「今日人里に行ってもいいか?バイト仕事探したくて」

「別に気を使わなくてもいいのに」

「そうじゃなくて、気がすまないんだ」

「そ。まあ私に制限する権利はないし、好きにしたらいいんじゃない?」

「そうか。じゃ、いってきます」

「気を付けて……って言っても心配ないか。いってらっしゃい」

 

 やり取りを終えると財布だけを持ち今を出ようとした。しかし何か思いついたようで出た直後に顔だけが戻ってくる。

 

「霊夢、さっきのなんか夫婦みたくないか?」

「私の旦那になりたいならさっさと安定した収入を稼いできて頂戴」

「はーい」

 

 しっしと手を振ってその少年を追いやる。彼がちゃんと出発したことを確認すると、彼女は背後の壁に額をぶつける。

 

「……はあ。冗談でもそんなこと言わないでよ。心臓に悪いわ」

 

 額と頬赤く染めた少女は、誰に伝えるわけでもない。そんな言葉を秘かに呟く。

 

 

 

 

 

「昨日ぶりですね」

「おぉ、昨日はケンが世話になったな。今日はどうしたんだ?」

「簡単に帰れそうにないんで、仕事でも探そうかと」

「真面目だな。そういうことなら慧音さんに相談するといい」

「そうですか。ありがとうございます」

「若者よ、頑張れよ!」

 

 そのまま門番の人たちと別れ、取り敢えず寺子屋に向かった。向かう間もきょろきょろとあたりを見渡しながら歩いていくが、結局目的の人物は寺子屋の周りを掃除していた。

 挨拶を済ませ早速事情説明し、何か仕事は無いものかと聞いてみると、丁度いいといった様子である提案を投げかけた。

 

「信、君は勉強は得意な方か?」

「自慢になるが、人並み以上に出来ると思ってる」

「なら話は早い。ここで……寺子屋で働かないか?」

 

 背後にある建物を指し示す。人里は最近人材が豊富になっては来たが、人に教える時間と知識が両立している人物というのは不足しているのだという。

 

「もちろん人を相手にするから十分な報酬は払うつもりだし、悪くない提案だと思うが?」

「断る理由が無いな。ありがたく受けさせてもらうよ」

「なら、さっそく今日から入ってもらうぞ」

 

 二人が寺子屋内に入り、職員室の様な部屋で打ち合わせをする。今日は初めてという事もあるので生徒の名前と顔の認識。授業の主な進め方を認識してほしいとのこと。

 打ち合わせの合間、職員室内を見渡すと慧音の話の通り教員が少ない。その認識が余計に信のやる気を増させた。

 

「そろそろ生徒たちも入り始めるころだし、私たちも向かうとしよう」

 

 慧音と信が並んで教室へ向かっていくと、ちょうど着いたところで見覚えの人物と鉢合わせた。信の数少ない人里の知り合いであるケンだ。

 

「信さん!どうしてここに?」 

「色々あってな、今日からしばらくここで働くことになった」

「ホントですか!?」

「ああ。ほら、もうすぐに授業が始まるんだろ?早めに準備しとけ」

「はい!」

 

 ケンが教室に入り、それに続こうとするが慧音に肩を掴まれ止められる。どうにもここには好奇心が旺盛な生徒が集まっているから、いきなり入っていくと収拾がつかなくなる可能性があるらしい。だから最初に紹介するためタイミングよく入って来て欲しいとの事。

 信が了解の意を伝えると彼女は教室に入っていく。幼さを感じる元気な挨拶が聞こえ、先ほどまで賑やかだった教室が静かになった。

 

「さぁ、授業を始めるぞ。が、その前に紹介したい人がいる」

 

 そう言われると信は教室に入っていき、生徒達に体を向けた。そうしてみると人間の子の他に明らかに人間じゃない子もいた。羽が生えてたり、猫耳だったり。

 

「今日からしばらくの間、慧音と一緒にみんなに教えることになった明渡 信だ。よろしくな」

「分からない問題があったら彼にも聞いてくれ」

「「「はーい」」」

「フンッ!天才のあたいには必要ないわね!!」

「チルノちゃん、うるさくしちゃダメだよ」

 

 氷の様な水色の髪の少女が騒ぎ始めると、その隣に座っているうっすら透けた大きな羽を生やした少女がそれを注意する。今の会話だけで信は青い方は多分バk……頭が弱いと確信した。

 

「よし、じゃあ始めるぞ」

 

 最初は算数の授業だった。長めの文章問題で、ちょいちょいひっかけが入った物。出席表と生徒の顔を見合わせながら出来の方を見ていくと、全体としてはよろしくない。テレビも普及していない幻想郷では文字を読む機会が比較的少ない為か、はやとちりで間違ってしまう生徒が多かった。

 

「ほらここ、もうちょいしっかり読んでみろ」

「え!?あっほんとだ」

 

「頭のなかだけじゃなくて実際に書いた方が分かりやすいぞ」

「は、はい」

 

「こういうときは分けて計算した方が楽だぞ」

「なるほど」

 

 簡単な指摘をすると素直にそれを受け止める生徒が大半であった。しかし大勢集まればそうではないものが必ず一部いるものだ。

 

「ほら、ルーミア頑張れ」

「難しいのかー。眠くなってくるのかー」

 

 言葉の通り、最初は鉛筆を持ち考える姿勢を見せていたルーミアだが、名前以外の欄は全く埋まっていない。

 

「ちゃんとできたら飯作ってやるから」

「本当なのかー?」

「ああ。ちゃんと教えてやるから頑張れ。まずこれはな……」

「そーなのかー……じゃあここはこうなのかー?」

「おっ、いいぞ!そのまま自分だけでもやってみろ」

「わかったのかー」

 

 先程までとは違った様子で問題に取り組み始めた。一問だけ覗いてみると、ゆっくりではあるがちゃんと解き進めている。

 次に信は自称天才であるチルノの出来栄えを伺った。どうやら全て終わらせ時間を余らせているようだ。まさか本当に天才なのかと反省しかけながら答案を覗くと、……酷い有様だった。

 

「……なぁ、君」 

「え!は、はい」

 

 その隣でちょうど問題を解き終えた、先ほどチルノを静めていた隣の大妖精に声をかける。今まで集中していたこともあり少し驚いた声を上げた。

 

「チルノは本気でその回答であってると思っているのか?」

「彼女は正直ですから、ふざけてることはないですよ」

「そうか。ならよかった」

 

 ふざけている訳でも無ければやる気もある。なら、道筋を一つ一つ示せばいいのだ。

 

「よう、天才。もう終わったのか?」

「ふっふっふ。天才のアタイにかかれば、こんな問題ぞうさもないね!」

「流石天才だな。ただ、ちょっとこの問題をみてみろ」

「ん?この問題?」

「この問題で聞かれてることは?」

「野菜がどのくらいで買えるかでしょ?」

「で、お前の回答は?」

「かまくら4つ!」

 

 なんでやねん

 

「おしいな。ホントはそうじゃないんだ。問題の最後を読んでみろ」

「何円で買えるでしょう?」

「そう、この問題では何円で買えるのかを聞いてるんだ。つまり本当の答えは?」

「えっと、人参が80円で、キャベツが170円で、ジャガイモが140円で、買うのはキャベツとジャガイモがだから...310円ね」

「ご名答。流石天才だな」

「でしょ?ほんとにアタイって天才!!」

「よしっ。他の問題も今みたいにやってみろ。」

「うん!!」

 

 今まで書いた回答を一気に消し、再び問題を解き始めた。がりがりと筆圧が強い字を連ねていき、制限時間ギリギリのところですべてを解き終える。

 そして答え合わせは生徒が順番に発表していく方法で、チルノが正しい答えを出すと他の生徒がざわざわと騒ぎ出した。

 

「チルノが問題を…理解した……だと!?」

 

 他の生徒も驚いている。そんなにバカだったのか。

 そんな風に他の授業でもちょいちょいアドバイスしながらその日の授業はすべて終わった。丁度昼時だ。

 

「君はすごいな。ルーミアやチルノがあんなに自分で正解できてたのは始めてだぞ」

「弟も妹いるからな。教え慣れてたんだよ。それと台所借りていいか?ルーミアに飯作ってやんないと」

「構わないが、材料はいまないぞ」

「ちょっと買ってくるよ。そんなに混んだもの作るつもりもないし。なんなら慧音の分も作ろうか?」

「頼もうかな。材料費は私が出すよ」

「悪いな。すぐに準備するよ。ルーミアも呼んできておいてくれ」

 

 材料を買いそろえ、戻ってくる途中で今日何度も聞いた声が聞こえてきた。

 

「新参者のあんたに最強のあたいが弾幕ごっこしてあげるわ」

「これから昼飯作るけど、一緒に食うか?」

「ホント!食べる!!」

「チルノちゃん……」

 

 やはり扱い易いな。大妖精もその素直過ぎる性格を少し残念に思っているようだ。

 

「すいません。私達もご一緒させていただいて。」

「ご飯は大勢で食った方がうまいからな、

「し~ん!大ちゃ~ん!早く行こー!」

「あいつといると楽しそうだな」

「はい、本当に。いい友達に恵まれました」

「多分あいつもそう思ってるぞ。まあ、自覚してないだろうけどな」

「は~や~く~!」

「私達もいきましょうか」

 

 三人で寺子屋に戻り、台所を借りて全速力ででチャーハンとそれに合う中華スープを作った。料理の匂いが漂い始めたあたりでチルノとルーミアの腹の虫が本人よりも元気になっていたのが台所から聞こえた。

 

「「「「「いただきます。」」」」」

「うまいのかー!」

「がふっがふっ!!」

「二人ともそんなに急いだら喉つまらせちゃうよ」

「最強のアタイがそんなこと……ぐっ」

「だ、大丈夫!?はいっ水!」

「クク……見てて飽きないな」

「本当に、毎日飽きないよ」

 

 慧音も実の子どもをみるような目でその光景をみていた。

 ずっと幻想郷に棲み続けるのも悪くないかもしれない。そんな思いが少しずつ芽生え始めた。

 

「「「「「ごちそうさま(でした)」」」」」

「信!そ今度こそ最強のアタイがあんたの実力をためしてあげるわ!!」

「その前に食器洗ってくるよ。ちょっと待ってろ」

「私も手伝おう」「私も手伝います」

 

 後片付けは慧音とだ妖精が手伝った為すぐに終わる。それが分かると待ってましたと言わんばかりにチルノは宙を舞い始める。氷柱の様な羽が日光に反射しキラキラときらめく。

 

「さ、じゃあやろうか」

「信は幻想郷に来たばかりだろう。弾幕ごっこのやり方は知ってるのか?」

「あぁ。昨日魔理沙とやって勝ったよ」

「魔理沙にか!?」「え!?」

「ああ」

「ふ、ふーん。ま、魔理沙に勝てても、最強のアタイに勝てるかな」

「ではその最強の称号を、今俺が頂戴しよう!」

 

 明渡信の幻想郷で二度目となる弾幕ごっこが始まった。

 

 

 

 

 

 

「『怪符』〈破壊光線〉!!」

「うっ!」

 

 あっさり終わった。

 

「これで最強の称号は俺のものだな」

「こ、これで勝ったと思わないでね!絶対いつか最強のショーゴーを取り戻すんだから!!」

「いつでも来い!受けてたつ」

 

 

 

「あいつは強くなれるだろうな」

「妖精って言うのは元々とても弱い種族なんだ。それなのにあいつは努力してあそこまで強くなったんだ」

 

 人によっては持つこと自体が難しい自信を。劣っていることを恨むのではなく成長すること楽しめる。そんな彼女の天真爛漫な姿を、二人は見送った。

 

「そうだ!信、会わせたい奴がいるんだが……まだ時間はあるか?」

「いいけど、会わせたい奴って?」

「私の友人さ。ちょっと待っててくれ」

 

・・・待機中・・・

 

 

「なんだ慧音。行きなり会わせたい奴がいるからついてこいって……うお!なんだこの大男」

「その大男が会わせたい奴さ。ほら挨拶」

 

 連れてこられた長い白髪を結んだ少女は少し面倒そうに頭をかく。

 

「藤原妹紅だ。好きに呼んでもらって構わない」

「明渡信だ。信って呼んでくれ。よろしくな、もこたん」

「ちょっと待て。なんだその『もこたん』ってのは?」

「似合うと思って」

「初対面の相手によくあだ名なんてつけれるな?」

「堅苦しいより馴れ馴れしい方が打ち解けやすいと思ってるからな」

「面白い人間だろ?」

「まあ、悪いやつじゃ無さそうだが……もこたんはやめてくれ」

「さっき好きに呼べって言ったろ?」

 

 言ってしまった事を後悔するように再び妹紅は頭をかいた。そしてそれを訂正しようとしたのか口を開きかけたが、声には出さない。代わりなのかはわからないが、信に右手を差し出した。

 もちろん信はそれに応じ、お互いの手を握り合う。

 

「ま、こっちの生活もまだ慣れてないだろうし、何かあったら頼ればいい。私は向こうの竹林で炭を作って売ってるから、基本は人里かそっちにいるからな」

「渋いな」

「うるせえ」

 

 初対面の二人は何気ない会話を交わす。お互い遠慮のない言葉だが決して気分が悪いわけではなかった。こうして信の交友範囲は幻想郷でもその規模が拡大していくのだ。

 




私は妹紅が一番好きです。


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第8話【妖精の涙】

おはこんばんにちは。さまりとです。

では、ゆっくりどうぞ


「ンン゛。よく寝た」

 

 朝4時起床した。一時間も早く起きたのは毎日に行う朝の鍛練をするためである。本当は昨日もやりたかったのだが、流石に色々ありすぎたためゆっくり寝たのだ。

 

「いつも通りやるか」

 

 まずは柔軟。そしてランニング。そのあとは型の確認をしてイメトレと、いつもやっている朝の鍛錬。今日は一緒に行う相手がいないため少々物足りなさも感じていたが、それ以上考えると家のことを思い出してしまいそうになり彼は考えるのを中止し、朝食の準備に取り掛かった。

 

「おはよー。信」

「おはよう。霊夢」

 

 昨日と同じタイミングで家主が目を覚ます。やはり目は半開きでよたよたと顔を洗いに行った。

 

「「いただきます。」」

「今日も寺子屋に行くの?」

「寺子屋は、3日でて1日休みだからその日以外は全部いくつもりだよ」

「そう……」

「悪いな、居候なのに昼飯作ってやれなくて」

「それくらいいいわよ。信のおかげで前より全然家事は楽になったわ」

「そう言ってもらえると助かるよ」

 

 

 

「「ごちそうさまでした」」

「今日は時間あるし、俺も後片付け手伝うよ」

「そう?じゃあお願いね」

 

 二人で洗い物を始める。

 

「そういえば昨日はアリスも魔理沙も来なかったけどどうしたんだ?」

「なにも毎日来るわけじゃないわよ」

「じゃあどうして一昨日は来るってわかったんだ?」

「勘よ」

「勘?」

「そう、勘。博麗の巫女の勘はよく当たるの」

「それも『程度の能力』なのか?」

「そう考える人もいるわね。どう取るかは任せるわ」

「それでいいのか?」

「いいのよ。興味ないから」

「そーなのかー」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「それじゃあ、いってくるよ」

「行ってらっしゃい」

 

 教室にはもうすでにほとんどの生徒が入っていた。が、少し少ない。

 

「ミスティアは休みか?まぁ待つわけにもいかないし授業始めr「すみません!屋台の後片付けしてたらいつの間にか時間になってて。」」

 

 慧音が授業を始めようとしたところで、羽の子が勢いよく教室の戸をあけた。

 

「ミスティア。商売繁盛は嬉しいことだが、時間は守ってもらわないと困るぞ。」

「すいません、気を付けます。」

「昨日はそんなに儲かったの?」

「最後のお客さんが泥酔しちゃって...」

「よし。全員揃ったし、今度こそ始めるぞ」

 

 今日は比較的昨日に比べ間違いが少ない。チルノは相変わらずだが、説明してやればちゃんとできた。

 

「よしっ!今日はこれでおしまいだ。みんなお疲れ」

「終わったか。午後はどうしようか」

「信!!」

 

 チルノが勢いよく声をかけてきた。

 

「今日こそあたいが最強だってことショーメーしてあげる」

「その前に飯だな。近くにいいところないか?」

「それなら少しあるいたところにある蕎麦屋がいいですよ」

「そうか。一緒に食うか?」

「食べる!!」

「大ちゃんもどうだ?」

「え、あっはい。よろしければ」

「じゃあ案内してくれ」

 

 蕎麦を食べ終えたらもちろんあの話題になる。

 

「今度こそ、アタイが最強だってことをを教えてあげるわ」

「そう簡単に返すわけにはいかないな」

「あの……信さん」

「どうした?大ちゃん」

「今回は弾幕ごっこじゃないんです」

「?じゃあ何のことなんだ?」

 

 そう聞くと大妖精は耳元でチルノに聞こえないようにいった。

 

(チルノちゃんは単純に信さんに遊んでもらいたいんです)

(あぁ、そういうこと)

「どうしたの?まさかオジケヅイタわけじゃないでしょうね?」

「まさか。今日もお前のその最強の称号を頂戴させていただこう!」

「フンッ!今日のあたいはひと味違うわよ。そう簡単にチョウダイできると思わないで!」

 

 そんなわけでチルノタチと遊ぶことになった。

 

「されで?なにするんだ?」

「えっ!?」

 

 どうやらなにも考えていなかったようである。

 

「おーい。チルノー。大ちゃーん」

 

 声の方を見てみると寺子屋にた羽の子と触角の子がいた。

 

「ミスチー!リグル!」

「先生もいる」

「先生はよしてくれ。信って呼んでほしい。二人は……ミスティアに、リグルでよかったかな?」

「」

「改めて、よろしくな」

「信さんはどうして二人と?」

「こいつと最強の座をかけてこれから勝負するところだったんだ」

 

 そう言いチルノの頭に手を置く。

 

「ちょっ!信さん!!手!!!」

 

 大妖精がなにか慌てた様子で訴えてくる。

 

「冷たっ!」

「大丈夫ですか?」

「大丈夫かだけど、なんなんだ今?」

「あたいは常に冷気を出してるから、触ってるとトーショーになるよ」

 

 どこか寂しそうにチルノが言った。普段元気にしているこいつでも、悩みの1つや2つ普通にあるのだ。つまるところこいつは、人に触れられない。人懐こい性格のこいつが、気にしないわけない。

 

「体質みたいなもんか?」

「多分そうだと思いますけど」

「そうか。ならできるかな?」

 

 ちょっといいことを思い付いた。

 

「チルノ、ちょっと失礼。」

 

 もう一度チルノの頭に手を置く。

 

「ちょっと!そんな事したらまた……」

「大丈夫だよ。ほら」

 

 不思議そうにみんなが俺の手を見た。

 

「えっ。どうして?」

「俺の能力でな。チルノに体質を『共有』させたから、もう冷気で人を傷つけることはないと思うぞ」

「ホントに!?」

 

 真っ先に食い付いたのは勿論チルノだ。長年のどうしようもない悩みが解決するかもしれないのだから当然だろう。

 

「大ちゃん……いい?」

 

 チルノがおそるおそる手を出しながら確認する。

 

「いいよ。」

 

 大妖精がその手を両手で優しく包む。

 

「本当に冷たくない。チルノちゃん、冷たくないよ!!」

「ホントに?ホントのホントのホントに?」

「うん、冷たくない。温かいよ。」

 

 そう聞き、リグルとミスティアもチルノの体に触れる。

 

「すごいよ本当に冷たくない!」

「やったねチルノ。……チルノ?」

 

 チルノはうつむいて顔を上げない。体は小刻みに震えている。その体を大妖精が優しく包容した。

 

「チルノちゃん。これからはもっと近くにいられるね」

「……うん!」

 

 優しい雫がチルノの頬を伝う。それは大妖精にも同じだった。二人は親友の様だが、どうしても互いに気を使わなければならないところがあった。それがなくなり、これからはなにも気にせず付き合えるのだ。それでも他人の為に涙を流すのはなかなかできないことだ。

 

「あれー?みんな集まって何してるのかー?」

「おぉルーミア。これからみんなで遊ぶところなんだ。一緒にどうだ?」

「遊ぶのかー!」

「よしっ!人も増えたし、遊ぶぞ!!チルノ!」

 

顔を上げ、目元を腕でごしごし擦り、

 

「うんっ!!!」

 

 満面の笑みでその妖精は答えた。

 夕日が沈みかけるその時まで、全力で遊び続ける子供たちは影を伸ばし続けた。

 

 

 




今回の内容は、信の能力を思い付いたときからやりたかった話です。
チルノに悩みがあるならこれなんじゃないか?と思い、彼女の性格や行動から相当なやんでいることだと考え、このような内容になりました。
そして次回!!ついに初異変!!









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第9話 【紅い霧】

おはこんばんにちは。さまりとです。
やっと異変です。
ゆっくりどうぞ。


「ムニャムニャ……もう一週間か……」

 

 信が幻想郷に来てから一週間がたっていた。チルノの体質を改善してから5日たち、今日も新しい1日が始まる。

 

「取り敢えず朝の稽古にいくか」

 

 時間は午前4時。朝日がまだ上りはじめばかりだ。そんな中、彼は一人鍛練に励む。

 

「今日は剣術にするか」

 

 彼は一応剣道を父方の祖父から教えられていたが 、どちらかというと剣道というより剣術といった方が近い。流石に居合いや峰打ちなど剣道にはない。その上、防具なんてつけたこともなく、あげくには習い始めて約5年、当時8歳の時にはすでに日本刀で稽古していて、完全に実戦重視のものであった。

 

「『武刃(ぶじん)』〈秋水(しゅうすい)〉」

 

 新しく作ったスペルカードを発動させ一本の日本刀の様な物を召喚する。

 

「重さもサイズもイメージ通りだし、存分に振れるな」

 

 流石にスペルカードが3枚だけは少ないと前日に魔理沙に言われたため、色々作ったがちょっとネタに走ってしまったのはいただけない。

 

「ふっ、はっ、でぇああ!!」

 

 勇ましい掛け声とともに刀を振る。重さは日本刀と変わらないが、それを思わせぬような軽やかな刀捌きで稽古を続ける。

 

「朝から元気ね」

「霊夢。すまん、起こしたか?」

「あんたが早く寝ちゃうから暇になって早く寝たのよ。そしたらこんな時間にもう目が覚めたわよ...。毎日今みたいになのをやってるの?」

「あぁ、習慣だからな。前までは弟や妹ともやってたんだが、今は相手がいないしな……」

「早く帰れるといいわね……」

「まあ、弟も妹もしっかりしてるし大丈夫だろ。俺もこっちの生活は楽しんでるし。帰る方法はのんびり探すさ」

「そう、もうちょっと見てていい?」

「あんまり面白いもんじゃないと思うが、それでもよければ」

 

 そう言って再び信は刀を振り始める。それを霊夢は飽きもせず見続けている。本来霊夢はこの様なことには興味をもたない。その彼女がどうして彼の稽古を見学しているのか?ご想像にお任せする。

 

「そろそろ朝飯作るよ」

「それより汗流してきなさい。私がつくってるから、用意できたら手伝ってちょうだい」

「わかった。ちょっといってくる」

 

 汗を流すために川まできた。そしたら朝早くから以外な人物に会った。

 

「アリス、魔理沙」

「こんな早くから何してるんだぜ?」

「朝の稽古で結構あせかいたからな、ながしに来たんだ。お前達はどうして?」

「朝の散歩よ。早くに目が覚めちゃってね」

「私もだぜ。そしたらそこでばったりアリスと会ってな、そのまま一緒に歩いてるんだぜ」

「シャンハーイッ!」

「面白い偶然も……あるもんだな」

 

 こんな朝早くに友人に遭遇したのは驚きだが、目的は汗を流すことだ。それに邪魔な服を脱ぎ準備を始める。

 

「ちょっ!何してるんだぜ!?」

「いや、だから汗ながしに来たんだよ」

「でっ、でもいきなり脱がなくてもいいじゃない」

「二人ともどうしたんだ?服脱いだくらい……」

 

 そう言いながらやっと気づいたようだ。そして、両腕を胸の前で交差させながら

 

「きゃーエッチー!(棒)」

・・・一瞬の沈黙・・・

「魔理沙……やっちゃいなさい」

「おう。『恋符』〈マスタースp「ストップストップ!!悪かったよ!!」」

 

 流石に何の用意もなくマスパをくらうのは信でも危ない。

 

「そっ、そうだ!朝飯一緒に食わないか?今霊夢が準備してる途中なんだ」

「勝手にそんな約束していいの?」

「あいつなら勘でわかるだろ」

「それもそうだぜ」

「決まりだな。先行っててくれ」

「おう」 「えぇ」

 

 

「なぁ、アリス」

「なに?」

「男の体ってあんなに引き締まってるもんなのか?」

「知らないわよ。見たことないんだもの」

「……なぁ、アリス」

「なに?」

「ムキムキだったな」

「……そうね」

 

 少女二人は朝食を食べに友人宅へと向かう。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「...で、二人もご飯食べに来たわけ?」

「そうだぜ。ゴチになるんだぜ」

「まぁいいわ。二人とも手伝って」

「なにすればいい?」

「じゃあまずは……」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「お待たせー。なに手伝えばいい?」

「やっと来たわね。もうやることないわよ」

「そんなに長く水浴びしたつもりじゃないんだが……」

 

 テーブルの上には4人分の朝食が用意されている。

 

「ボケッとしてないで早く食べましょ」

「そうだな」

「「「「いただきます」」」」

 

「何だかんだでみんなの手料理食うの初めてだな」

「そういえばそうね。お味はどう?」

「うまいよ。二人も手伝ったのか?」

「うん。霊夢もまだ準備始めたばかりだったしね」

「流石に黙って待ってるわけにはいかないぜ」

「アリスはともかく、魔理沙も料理できたんだな」

「どういう意味だぜ!?」

「なんとなく魔理沙は料理できなさそうな感じだった」

「お前は私をなんだと思ってるんだぜ」

「野蛮な女」

「「フッ……」」

「霊夢もアリスもなに笑ってるんだ。こっちはちょっと泣きそうだぜ」

「悪かったよ。でもホントにうまいな。誰に習ったんだ?」

「幻想郷では自給自足が基本だからね。普通に暮らしてるだけでもこのくらいできるようになるのよ」

「そういえば……信の兄弟って誰か料理できるの?」

「上の二人ともうひとつ下の弟ができる」

「その言い方だと他にもいるみたいね」

「弟7人、妹6人の14人兄弟だ。ちなみに両親はみんな同じだからな。それと犬と猫を2匹ずつ飼ってる」

「「!!」」

「ははっ。その反応を待ってた」

「そんなにいると大変そうね……」

「そうでもないよ。朝は習慣になっちゃってあんまり苦にならないし、家事は手伝ってくれるし、何より家のなかが賑やかだからな。毎日楽しいよ」

「……早く帰れるといいな」

「俺はこっちの生活も気に入ってるんだ。そんなに重く考えないでくれ。まあ、いつかは帰る気だが」

「そういえば今日はどうするの?寺子屋休みなんでしょ」

「幻想郷を探索しようと思ってる」

「「「なら私があんないする(わ)(ぜ)(わよ)」」」

 

 綺麗に3人ともハモった。3人は驚いたように互いの顔を見ている。

 

「おぉ、俺モテモテだな。でも1人で行くつもりだから案内はいいよ」

 

 3人とも少し残念そうな顔をして了承した。

 

(そんなに落ち込むことか?)

「ご馳走さま。じゃあ早速いってくるよ」

 

 食器を片付けそのまま出かける。

 

「いってらっしゃい」「気をつけてね」「迷子になるなよ」

 

 そう3人の少女から返され、信はそのまま空に飛び立つ。

 

「・・・」「・・・」「・・・」

 

 信が出かけたあと、食卓は急に静かになった。3人とも仲はいいためこんなに気まずい雰囲気になることはないのだが。

 

「...渡さないわよ」

「「ッ!」」

 

 その静寂を破ったのは霊夢の意外な一言だった。

 

「きゅ、急に何を言い出すんだぜ」

「この際だからはっきりいっておくわ。私は他人にこんな感情を持ったのは初めてよ。でも確信できる。私は信が好きよ」

 

 淡々とのべているが今までの霊夢からは信じられない言葉だった。他人に対してとても無関心な霊夢が人を好きになるなんて誰も考えなかったのだから。

 

「どうして急にそんなこと話したんだ?」

「なんとなくわかってるでしょ。ここにライバルが2人もいるからよ」

「霊夢がそこまで言うなら隠す必要もないな。私も霊夢と同じ気持ちだぜ」

「私もよ。こんな気持ち持ったのは彼がはじめて。譲る気はないわ」

 

 3人ともきっかけは1日目に言われたことだ。そのあともこの一週間、彼とふれあってるうちにその気持ちが大きくなってきた。魔理沙の場合は弾幕ごっこの時や、魔法の話をしているときに。アリスな場合は人形のことや、幻想郷のことについて話しているうちに。霊夢の場合は毎日信といる時間を過ごし、なにかを話しているうちに。

 

「やっぱりそう簡単にいかなそうね」

「避けてはは通れなさそうね」

「まったく、3人そろって面倒な相手を好きになっちまったもんだぜ」

 

 よく一緒にいる3人だからこそわかる。これは簡単にはいかないことを。そして宣言する。

 

「「「信の事はゆずらn「ただいまーって、俺がどうかしたか?」

「「「ッ!!」」」

 

 宣言できなかった。

 

「ど、どどどうしたのっ。こんなに早く」

「アリス大丈夫か!?すごい汗だぞ。何かあったのか?」

「べっべ別になっな、なにもないわよ」

「絶対なんかあっただろ。目が泳ぎまくってるぞ。魔理沙もそこでなにやってるんだ?」

「いやっ、た、ただちょっと壁の気分になりたかっただけだぜ」

「どんな気分だよ。霊夢もそれ、湯呑みじゃなくて茶碗だからな」

「ちょっとご飯をのみたかった気分なのよ!」

「ちゃんと噛め。喉つまらせるぞ。やっぱりなんかあっただろ」

「別になにもないわよっ!それよりどうして戻ってきたの?」

「あぁ、忘れ物してな。一応リュック持っていこうとしてたの忘れてた」

 

 そう言って信は自分が使っている部屋のエナメルバックから、少し小さいリュックを取り出した。

 

「それより何があったんだ?」

「「「なにもないっ!!」」」

「そ、そうか。まあ、いつでも相談にのるからあんまり溜め込むなよ」

「いいから早く行きなさい!」

「そうだぜ。1日なんてあっという間だぜ!」

「だから早く行きなさい!」

 

 少女3人に背中を押されて信はとても戸惑っている。

 

「わかったから押すなって!?じゃあ行ってきます」

「「「行ってらっしゃい!!」」」

 

 今度こそ信は出発した。

 

「「「はぁ、はぁ」」」

 

 3人とも不測の事態に息をきらしていた。

 

「本当に、面倒な相手を好きになっちまったもんだぜ……」

「「本当ね……」」

 

 信に少女の気持ちが伝わるのは相当先の事になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

「本当にどうしたんだあいつら。俺のこと話してたみたいだけど...。まさか・・・俺もしかして迷惑がられてる..のか?でもそんなふうには感じなかったし...。考えてもしょうがないし今は探索を楽しもう」

 

 彼は他人の敵意や憎悪など、負の感情に関してはとても敏感だ。勿論、尊敬や親愛などされていることも感じることはできる。しかし、好意などの恋愛感情に対してはとても鈍感なのだ。今まで大家族の家事を一人でやり続けてきたためそのようなことに興味をもとうとしなかった。

 

「取り敢えず、チルノ達に教えてもらった霧の湖にでもいってみるか」

 

 昼間だけ霧が出ていて不思議な湖だと大妖精に教えてもらった。不思議な事にはどうしても興味が湧く。

 

「確か……香霖堂の近くにあるんだよな。」

 

 前日魔理沙に香霖堂というところを紹介してもらった。その店主のこーりんは外界の道具に感心があるらしく、外来人の俺に道具の使い方を目を輝かせ聞いてきた。そのうちまた顔をだそう。

 

「大妖精の話だとそろそろ見えてくるらしいが……」

「しーーーん!!」

 

 どこからか聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「ようっチルノ、大ちゃん」

 

 チルノたちの近くにはそこまで大きくはない湖があった。霧は出ていない。

 

「しーーーん!!!」

「うおっ!!」

 

 着地と同時にチルノがタックルしてきた。あの一件からチルノはこういうことをいろんな奴にやるようになった。本当に嬉しいみたいでよかった。

 

「だ、大丈夫ですか!?」

「このくらい平気だよ。それより二人はどうしてここに?」

「あたい達はよくこの湖の近くでいっしょに遊んでるの!そして信っ!今日こそ最強の座をヘンジョーしてもらうわ!!」

「いいだろう。何度でも返り討ちにしてくれる!」

 

 幻想郷に来てから魔理沙に次いで、チルノと弾幕ごっこをやっている。本当に微妙なくらいだが、毎回力をつけているような気がする。

 

「ちょっと待ってて。準備するから」

 

 と言い、準備体操をはじめた。

 

「チルノちゃん、あれから本当に楽しそうなんですよ」

「そうか...。大ちゃん、ちょっと相談がある」

「?何ですか。」

「チルノの冷気のことは俺の能力で改善したけど、まだ俺の能力はわかってないことが多いんだ」

「どういうことですか?」

「今、チルノは俺の体質を『共有』して冷気が出てないわけだけど、この能力がいつまで続くのかわからないんだ。それと可能性として、一定の距離をおいたら能力が働かなくなるってことも考えられる」

「それってまさか……」

「あぁ。チルノの冷気が急にまたでてくる可能性があるんだ」

「そんな……」

「だから大ちゃんにはこの事を頭のすみにいれておいてほしいんだ。あくまで可能性の話だからな。もしチルノの冷気が出てきたら俺に教えてほしい。あいつが落ち込むのはあんまり見たくないしな」

「そうですね。わかりました」

「準備体操おわりっ!さっ信、勝負だ!」

「(それじゃあ頼んだぞ。)おう。やられる覚悟はいいか?」

「今日はあたいが勝つんだからそんな覚悟は要らない……よ……」

「ん?どしたチルノ。って急に辺りが暗くなって来たけど」

「信さん……あれ」

 

 大妖精が袖を引っ張って後方を指差している。その先には少なくとも外界では起きたことがないような現象が起きていた。

 

「紅い……霧?」

 

 明渡 信はその時、はじめて異変をその目に映した。

 

 

 




いつから紅魔館組がでると錯覚していた。
今回は霊夢たちの思いをさらけ出しました。素直な女の子って可愛いですよね?慌てている女の子も可愛いです。でももしこの回を読んで、「こんなの霊夢じゃねえ!!」等の意見があったらすいません。今後もこのような流れでいきたいと思ってます。
それと私は設定とかオリジナルの異変とかは考えていますが、基本的に行き当たりばったりでかいてます。矛盾してる点もあると思いますがどうかよしなに。
次回はあの居眠り門番と対面です。


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第10話 【紅魔館】

おはこんばんにちは。さまりとです。
これから戦闘の回が続きます。信くんのスペカもどんどん増えていきます。
それでは、ゆっくりどうぞ


 

 

「なんだ……あれ?もしかしてあれがここにでる霧か?」

「いえ、あんなの初めてみました。」

 

 背後に突如現れた紅い霧は不気味な雰囲気を漂わせている。とりあえずで確認した事もあっさり否定されてしまった。なれば、残った可能性はただ一つ。

 

「『異変』か」

 

 誰かによって起こされた、本来起こるはずのない事象。初めて目にしたそれは、普段感じる事のない圧があった。太陽を隠し、幻想郷をまるで夜のように暗転させる紅い霧は、人間にいい影響をもたらすとは到底思えない。

 

「にしても気味の悪いっていうか……なんか気持ち悪い霧だな」

「信さん。多分この霧妖力が混じってます」

「妖力?そんなのこんな風に撒き散らされて大丈夫なのか?」

「信さんみたいに霊力を操れたり、私達の様に妖力を持っていれば問題ないと思います。ただ……人里の皆さんには……」

「なら止めさせないとな。ちょっと行ってくる」

「アタイも行く!」

「ダメだ。危険かもしれない」

「でも……」

「大丈夫だ。俺を誰だと思ってる?」

 

 不安と怯えに表情が染まっているチルノは自分が力不足だと感じているのだろう。それでも自分を心配してくれるのだ。何より、この霧が今後変化し妖精や妖怪に影響を与えないとも限らない。ならば、止めなければならない。

 

「それより、お前達は人里の皆にこの事を伝えてくれ。出来れば最初は慧音にな。霧の広がる早さからそんなに時間はかからないで人里まで届くはずだ」

「でもっ!」

「大丈夫だって。さっさと終わらせて戻ってくる。信用できないか?」

「ううん。ちゃんと帰ってきてね」

 

 少しずるいが方法ではあるが今は時間が惜しい。後でちゃんと謝らなければ。

 

「おう!そっちも人里のこと頼んだぞ」

「うん。行こう、大ちゃん」

「信さん、気を付けて」

 

 飛び立った二人に背を向け、不安を抑え任せてくれたのその気持ちに応えるためにも、自分の頬を叩いて気合を入れ直した。

 

「よし、いくか」

 

 ただまっすぐ、異変の首謀者がいるであろう中心部に歩き出す。 

 

 

 

 

「なんだここ。前に上から見たときこんな建物あったか?」

 

 湖から森に入り、霧をたどってきてみるとまったく見覚えのない洋風の舘が森の中にあった。舘はとても立派でその周りから霧が発生しているように見える。

 

「あそこが正門か?門番っぽい人いるけど。」 

 

 周囲を回ってみると門の横にチャイナドレスの様なものを来ている女性がいた。その人に聞くのが一番手っ取り早いだろう。

 

「すいませーん」

「ん?どうしましたか?」 

「あの、この霧ってもしかしてこn!!」

 

 突然、その女性はハイキックを放った。驚きこそするが信もしっかりとそれを防ぎ、次の攻撃を警戒しながら質問の内容を変更した。

 

「どういうつもりだ?」

「すいません、ちょっとした好奇心です。貴方があまりにも隙がなかったのでちょっとたm!!」

 

 最後まで言えなかったのは信がハイキックをかましたからだ。まさかやり返してくるとは思っていなかったのか、先ほどの信以上に驚いている。

 

「これでお相子だな。じゃ、改めて聞こう。この霧ってもしかしてこの舘の人が出してる?」

「はい。この紅魔館の主、レミリア様がこの霧を出しました」

「単刀直入にお願いしよう。そのレミリアにこの霧を消すようにいってくれないか?」

 

 お互いの挨拶が終わった所でさっそく本題に入る。これで了承を得ることが出来、すぐさま霧が消えてなくなれば万事解決なのだが……

 

「それは無理ですね」

「どうして?」

「この霧はレミリア様達に必要なものだからです。だから、そのお願は聞くことは出来ません」

「なら直接お願いしよう。会わせてくれ」

 

 ならば作戦その2。題した本人に交渉して止めてもらえるように言いくるめる。

 

「それもできません。中には誰もいれるなと命令されているので」

 

 悲しい。ならば作戦その3。一番荒っぽく、人里に影響が出ないよう短時間で済ませるためにはここが限界。

 

「レミリアさんに交渉するためには、あんたをここで倒さなければならなと」

「そうですね。出来ればの話ですが」 

 

 不敵に笑う。やりたがり戦闘狂が二人、敵同士で出会ってしまったらこうならざるを得ないのだ。二人とも距離をとり、戦闘体制に入る。

 

「そういえば自己紹介がまだでしたね。紅魔館の門番を任されています、紅 美鈴です」

「博麗神社の居候、明渡 信。あんたとはその内ちゃんとした試合がやりたいな」

「奇遇ですね。同じ事を考えてました。ですが、今は我が主のため、何人たりともここを通しません!」

「こっちも早く終わらせないと人里の人達があぶないんだ。負けるわけにはいかない!」

 

 タイミングを見計らい、両者同時に動き出した。

 美鈴の基本弾幕は暗い黄色をしていた。霊力や魔力とは違う特有の色。この一週間で何度か見たことがある。

 

「その弾幕……あんた妖怪か?」

 

 二人の動きは根本的には似たものだった。放った弾幕で相手の動きを制限し、隙があると判断したら肉弾戦に持ち込む。弾幕ごっことは少し違うかもしれないが二人は当たり前のように今回の勝負をこの形に持ち込んだ。

 

「えぇ。ですからさっきの蹴りも防がれるとは思ってませんでした」

「最近霊力のコントロールができるようになったもんでな」

 

 皮膚の下に流れている霊力を体のより内側に流すことで、肉体が強化されることを少し前に霊夢に習ったのだ。これで妖怪たちを相手にしてもフィジカル面で後れを取る事は無い。

 

「なら遠慮はいらないですね。『華符』〈芳華絢爛〉!」

「綺麗な技だなってうおっ!!」

 

 どうやらそのスペカは体術も一部とされているようで、タイミングよく弾幕の展開の直後、美鈴が突っ込んできた。

 

「油断とは感心しませんね」

「油断じゃなくて純粋な感心さ」

「それはどうも。ですがまだまだいきますよ」

「こっちも急がなくちゃいけないからな。悪いが終わらせてもらう。『武刃』〈秋水〉、『迷惑めいわく』〈刃やいばの舞まい〉!」

 

 ジャパニーズライトセイバーの出現と同時に桃色の手裏剣が大量に放たれる。どれがどこに向かうかは完全にランダムで美鈴に向かうものは全体の一部だ。

 

「さあ、避けきれるかな?」

「これ位なら!」

 

 美鈴は自分に向かってきた手裏剣を余裕をもって避ける。その避けられた手裏剣は門にぶつかり、二つに増え再び美鈴に襲い掛かった。

 

「え!?これってまさか」

「その通り。ぶつかる毎に倍になって跳ね返る。最終的には32倍だぞ」

「でも、飛んでいく方向によっては数が減るはず」

「俺を中心に一定のところで勝手に跳ね返ってくるぞ。その考えは少し甘い!」

 

 そしてこのスペカは迷惑なことに何にでも当たり、それはもちろん本人にもだ。秋水で方向をコントロールしながらそこら中に散らばる刃の舞を美鈴に撃ち込む。刃の舞同士もぶつかりあい増殖を繰り返す為、弾いたそれもすぐ数を増やして戻ってくる。

 美鈴の周りはガッシャンガッシャン騒がしいことになっていた。

 

「これはちょっと多すぎないですか!?」

「だから『迷惑』なんだ。ほら『怪符』〈破壊光線〉!!」

「しまっ!!」

 

 大量の手裏剣の対処に追われていた彼女に容赦なく極太レーザーをぶつける。なす術もなく飲み込まれ、ばたりとその場に倒れこんだ。

 

 




もし既存のキャラのスペカがまったく検討外れの可能性もあります。ご注意下さい。
次回もゆっくりお願いします


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第11話 【VS十六夜 咲夜】

おはこんばんにちは。さまりとです。
結局一人としかやってません。楽しみにしてた方がいたら申し訳ありません。
少し短いですが、ゆっくりどうぞ。


 

 

「大丈夫か?」

「ちょっと遠慮無さすぎじゃないですか?」

 

 強力な一撃をくらい、美鈴はそのまま地面に寝そべっている。心なしかプスプスとちょっと焦げているようにも見えなくもないが、まあ気にしない。

 

「手を抜かれるのは嫌だろ?」

「それはそうですが……しかし悔しいですね。負けるというのは」

「そう思えるならまだまだ強くなれるさ。それじゃあ約束通り、ここは通させてもらうぞ」

 

 門を開け、紅魔館の敷地に足を踏み入れる。大きくこまめに整備されたであろう美しい庭だ。中心には大きな噴水が設置されており、風に乗る水しぶきが真夏の暑さを少し和らげてくれる。

 このような状況でなければ純粋に楽しめただろうにと、少し残念に思う。

 

「あ、そういえば多分この後また強い奴等が来ると思うから覚悟しとけよ」

「博麗の巫女……それに白黒の魔法使いですか。今日は全く骨が折れますね。私はしばらく動けませんので、通るのはご自由にどうぞ」

「ま、お互い頑張ろうな……じゃないな。今日はもう頑張らないでくれ」

 

 そう言い残すと信は館の敷地に足を運んだ。それを動かない体で見送り、しばらく回復を待っていた美鈴は思わずクスリと笑ってしまう。敵である自分に気兼ねなく接し、なんなら職務を怠慢してくれと頼んできたのだ。

 

「あれ程の力を持つというのに……おかしな人ですね」

 

 空を見上げた。自分の主が出した霧が太陽を隠して不気味な赤みを地上に降り注がせている。こんな不気味な状況で臆せず首謀者の本拠地に乗り込む彼は何者なのか。何も彼のことは分かりはしない。しないが、初めて人間に尊敬の念を覚えた。

 

 

 

 

 

「すごいな……レミリアって奴はどんなセンスしてるんだ?」

 

 紅魔館の中は広くそれ以上に早く目につくのが、館の目に入る全てが真っ赤に彩られていた。とても目によくないカラーリングである。

 

「どっちにいけばいいんだ?」

 

 レミリアがいるところまでいけばいいのだろうが、とても広い。なにも考えず進めば迷子になってしまうだろう。この状況であれば仕方ないと、美鈴の館の構造の知識を共有する。そんなことを考えてると急に3本のナイフが飛んできた。

 

「ッ!!」

 

 咄嗟に指で挟み凶器を受け止めた。そうしなければ間違いなく命中していたのだから投げた人物は相当の腕前の持ち主である。

 

「いきなりなんだってんだ……」

「侵入者?美鈴はいったい何してたのかしら」

 

 声をする方向を見るとメイド服を着こなした銀髪の少女が睨んでいる。どうやら美鈴の上司に当たる人物の様で表情が不機嫌で染まっている。

 

「責めないでやってくれ、俺が強かっただけだ」

「……あなた、名前は?」

「明渡 信。そっちは?」

「十六夜 咲夜。これ以上進むなら遠慮はしないわ。お嬢様のところにはいかせない!」

「女の子がそんな物騒なもん投げるんじゃありません!」

 

 どこからか取り出されたナイフを投擲された。これまた正確に、更にはしっかり関節や急所を狙ってきているのでかなりエグイ。

 

「普通、刃物が飛んできたら避けてしまうものだと思うけど?」

「刃物の扱いには少し心得があるもんでね!」

 

 会話の中でナイフを投げ、それを受け止めと、なんとも物騒なキャッチボールが繰り広げられる。しかし、キャッチする度ナイフを背負ったリュックに放り込む信の行動に疑問に思う。

 

「なぜ私のナイフをそれに入れてるのかしら?あげる為に投げている訳では無いのだけれど?」

「あんたみたいにナイフを投げてくる人は中々いないが、飛び道具を主に利用する奴にやらせちゃいけないことは決まってる」

「聞かせてもらっても?」

「喜んで。単純な話、外れたやつを回収されて無限に攻撃されるのが一番怖いんだ。だから一つ一つこっちが回収するのが一番手っ取り早い」

「成程ね。ならこれならどうかしら!」

「ッ!『武刃』〈秋水〉!!」

 

 瞬間、弾幕ともいえる大量のナイフが眼前に展開される。どれもが信めがけて推進力をもって襲い掛かる。とっさに秋水で出来るだけ弾く。しかしいきなり過ぎた為何本かかすってしまう。

 

「おいおい……今のなんだ?」

「悪いけどマジックの種を教えるほど野暮じゃないわよ!」

「そう何度も食らうかっての!『迷惑』〈刃の舞〉」

 

 スペカを発動し増殖と防御を同時に行い、秋水によって刃の舞の飛ぶ方向を強制する。ほぼ最大値となった迷惑な弾幕だ。簡単には避けることは出来ない。

 

「やったか!?」

「残念」

 

 背後から咲夜の声が聞こえた。秋水を構えながら後ろを振り向きナイフを対処する。

 

「今度は瞬間移動か。ちょっとずるくないか?」

「言ったでしょ、遠慮はしないって」

「まあいいが、出来ればりょっくを返してくれ。ってかどうやって取った?」

 

 今まで回収したナイフを入れていたリュックを一瞬で奪われてしまった。本当に一瞬で、あまりに早すぎる。それに加え、先ほどの瞬間移動だ。こんなことを出来るものと言えば……

 

「それも自分で考えなさい」

「………時間操作か?」

「ッ!!」

「羨ましいな。男なら誰でも一度は夢見る能力だぞ」

「驚いた……でも他人に羨まられても嬉しくないし……もう終わらせて貰うわね」

「こっちだって時間がないんだ。気が進まないがこっちも能力を使わせてもらう」

「あなたがどんな能力だろうと、私は職務をまっとうするだけ。『幻世』〈ザ・ワールド〉!」

 

 咲夜は時間を止め、ナイフを設置しようとする。止められた時間の中で動けるのはそれを実行した咲夜のみ。光よりも速く、誰も認知出来ない状態で攻撃を仕掛ける。自他ともに認める無敵と言える『時間を操る程度の能力』

 だが、今回ばかりは相手が悪かった。

 

「なんで……動けるの?」

 

 止められた世界の中で。十六夜咲夜のみが動けるはずの中で。明渡信は止まらなかった。

 

「お前との『時間』を共有した。もうその能力は俺に通用しない」

 

 ここで始めて彼女を前に霊力による肉体強化を行う。突然目の前の人間が今までにない速度で動き出すのだ。動揺は隠せない。

 

「速い!」

 

 一瞬で距離を積め霊力弾を直接その体にうちこむ。

 

「これで終わりだ」

「……申し訳ありません……お嬢様」

 

 

 

 



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第12話 【スカーレット姉妹】

おはこんばんにちは。さまりとです。
今回は少し長めとなっとります。
ゆっくりどうぞ。


 

 

「出来ればレミリアさんのところに案内してくれると助かるんだけど」

 

 咲夜に勝利したは良いが、レミリアがいるという場所が分からない。先程美鈴の知識を共有したところ、どうやら咲夜の能力を用いてこの館の構造を弄っているそうなのだ。その為彼女が知っている確実な場所は食堂と自室だけだった。

 

「するとおもってる?」

「そこをなんとか」

「無理」

 

 勿論聞いてくれるわけがなかった。当然のことだ。自分の主の邪魔立てをしようとする人物を案内するわけがない。本来ならばその筈なのだが、今回は事情が少し違う。

 

(咲夜。案内してあげなさい)

(お嬢様!?いったいこれは……)

(今パチェに魔法であなたにテレパシーが送れるようにしてもらってるの。そんなことよりそこの彼を私のところまで案内しなさい)

(ですが彼は!)

(これは命令よ)

(……かしこまりました)

「お嬢様から直々に許可が降りたわ。あなたをお嬢様のところまで案内します」

「本当か?助かるよ」

「ではこちらに……」

「おっと、大丈夫か?」

 

 立ち上がった瞬間、ふらりとその場に倒れかけた。すでに全体重を信にかけてしまっており、自力で歩けるかどうかは誰絵が見ても明白だろう。

 

「これくらい大丈夫よ」

「無理はよくないなっと」

「ちょっと!!」

 

 意時でも自力で歩こうとする彼女を、信は軽々と持ち上げる。少しでも急ぎたい為相手のプライドまで尊重する余裕が無いのだ。

 

「大丈夫だって言ってるでしょ!早く下ろしなさい!!」

「この方が速い。それともレミリアさんの前でそんなフラフラでいるのか?」

「それはそうだけど……」

「なら甘えとけ」

「わかったわよ……お願いするわ」

「こっちとしても、美人のメイドをお姫様抱っこする機会なんて中々無いだろうしな」

「……やっぱり下ろしなさい」

「するとおもってる?」

「……丁重に扱いなさい」

「仰せのままに」

 

 咲夜の顔は赤く染まっていた。だが信は急がなければいけないという使命感と、レミリアがどのような人物なのかとそのようなことばかり考え、銀髪の少女の様子に気付くことはない。

 

「ここよ、降ろして」

 

 咲夜の案内で館を進んでいくと、ある扉の前でそれは終わる。また転んでしまわないようにとゆっくり降ろし、服の汚れやシワを簡単に落とした。

 

「くれぐれも!失礼の無いように」

「善処する」

「……お嬢様。連れてきました」

「入りなさい」

 

 咲夜が扉を開けるとやはり真っ赤な部屋が広がっていた。3人の人物がいた。1人は頭と背中からコウモリのような翼を生やした女性。1人はパジャマのようなものをまとっている女性。そして最後の1人が紅い目をした銀髪の幼女だった。

 

「ようこそ、明渡 信。私がこの紅魔館の主、レミリア・スカーレットよ。そしてこっちが私の友人、パチュリー・ノーレッジ。そのとなりがパチェの使い魔の小悪魔よ」

「ひとつ質問いいですか?」

「なにかしら?」

「君は本当にレミリア・スカーレットか?」

「どういう意味かしら」

「紅魔館の主という割には幼すぎると思ったんだが……」

「まあ、そう思うのも仕方ないわね。私は正真正銘レミリア・スカーレットよ。それとこれでも500年以上生きているのだけど……そんな事を聞くために貴方はここに来たのかしら?」

「なら単刀直入に言わせてもらうが、外に出てる紅い霧を止めてほしい」

「えぇ、いいわよ」

「やっぱり駄目か。なら実力行使で……ん?今なんて言った?」

「いいって言ったのよ」

「え、いいの!?」

「ただし条件があるわ」

「やっぱりか。で、なにがお望みだ?」

「私の妹の遊び相手になってほしいの。妹が満足できたら霧は消してもいいわ」

「そんなことでいいのか?『てっきり私を倒せたらね』とか言ってくると思ってたんだけど」

「わざわざあげてから落とすような悪趣味なことはしないわよ。それじゃあ小悪魔、案内してあげなさい」

「はい。どうぞこちらです」

 

 小悪魔という女性に案内されて信は部屋から出ていった。

 二人が出ていくと、やはり疑問が残っている咲夜は自分の主人にその疑問を投げかける。

 

「一体、何をお考えなのですか?」

「気になるの?」

「……はい」

「運命が見えたのよ」

「運命ですか?どのような……」

「彼があの子と、フランと一緒に笑っている運命がね。」

「本当ですか!?」

「えぇ、しかもまったく濁りのない純粋な笑顔だったわ。彼なら、あの子を救えるかもしれない。初対面の人間に妹を任せるなんて、不甲斐ないわね」

 

 悲しそうな顔を隠すように紅茶を口に運んだ。

 

 

side change

 

 

「こちらが妹様のお部屋です」

「地下じゃん!本当に妹か?実はそこらでとらえた化け物とかじゃないよな?」

「ちゃんと妹様のお部屋ですよ」

「ならいいが。まあ、案内ありがとう」

「それでは」

 

 そういって小悪魔は立ち去ってしまった。しかしなぜ部屋が地下なんかにあるのだろうか。

 

「考えてもわかんないか。お邪魔しまーす」

 

 部屋の扉を開けるとやはり真っ赤な部屋が広がっている。ぬいぐるみや子供用のおもちゃ等が置いてある。赤いことを除いたら子供部屋のようだ。

 

(そういえば妹は何歳位なんだろう?)

「だれ?」

 

 声を発したのはベットに腰を掛けていた幼女だった。金髪に紅い目、そして羽のようなものが生えている。レミリアと違ってコウモリみたいな羽根ではなく、枯れ木に色鮮やかな結晶がついているような羽だ。おそらくこの子が妹だろう。

 

「俺明渡 信。信って呼んでほしい。君の名前は?」

「フランドール・スカーレット。皆はフランって呼んでる……なにしにきたの?」

「お前の姉さんに頼まれてな。遊びに来た」

「遊んでくれるの?」

「あぁ、遊ぼう。なにする?」

「それじゃあ、おままごと!!」

 

 どうしてレミリアがフランドールのことを自分に任せたのか正直わからなかった。あの紅い霧はレミリア達にとっては重要なものなのだろう。それがただの女の子と遊ぶだけで無くすなんて都合がよすぎる。

 

(考えれば考えるほどわからないな……ま、いいや。今はこの事全力で遊ぼう。)

 

 それから色々やって遊んだ。おままごとの後は人形を使って遊んだり、お馬さんごっこをしたりと、本当にただ幼い子供と遊んでるようだった。しばらくするとフランが外の話を聞きたいといってきた。

 

「そんなことが外にあるんだ」

「もしかしてこの部屋から出たことがないのか?」

「……うん」

「どのくらいいるんだ?」

「495年」

「へー……は!?」

 

 てっきりフランは本当に幼いのかと思っていた。

 

「495年、一度も外に出てないのか?」

「うん。お姉さまがダメだって。咲夜がよくぬいぐるみとか持ってきてくれるけどお姉さまはほとんど来ないの」

「ちょっとレミリアに文句いってくる!!」

「待って信!私が悪いの」

「どういうことだ?」

「私、狂気にとりつかれ易くて、それで何でも壊しちゃうから」

「……」

「なんでお姉さまが出ちゃいけないって言うのも分かってる。私が外に出たら色んな物を壊して皆に迷惑をかけちゃうから」

「……」

「でも、それだけじゃなくて……お姉さまは私のことが嫌いなんじゃないかって、邪魔とかいなくなればいいって思ってるんじゃないかって」

「落ち着け」

「私なんか産まれてこなきゃ良かったんじゃないかって……」

「落ち着け。大丈夫だから」

 

 そういってフランを抱き締めた。少し混乱した子供を落ち着かせるにはこれが一番だ。

 

 

「落ち着いたか?」

「うん。ごめんなさい」

 

 どうやらこれが俺に妹であるフランを任せた理由か。多分、レミリアもフランが自分のことを嫌ってるんじゃないかと思ってるんだろうな。すれ違いって怖い。

 

「でも私、さっきみたいなことを考えると怖くて……」

「多分だけどそれはないと思うぞ」

「え?」

「レミリアが俺にお前のことを頼んだ時な、少なくとも迷惑な感じじゃなかったんだよ。今なんとなく合点がいったが、多分お前のことを誰よりも気にかけてると思うぞ」

「どうして分かるの?」

「俺にも弟や妹がいるからさ。姉であるあいつの気持ちがよく分かる。多分レミリアも、お前とどう接すればいいのかわからないんじゃないか?」

「……ホントに?」

「あぁ、ほんとだ。だから安心しろ」

「良かった」

「じゃあその事をレミリアに言わないとな。あいつもそれで苦しんでるだろうから」

「うん」

「先に行ってるぞ。心の準備ができたらこい」

「うん!」

 

 そういって信はフランの部屋の出口に向かった。

 

(良かった。お姉さまは私のことが嫌いじゃないんだ)

 

 フランは信に感謝しながら彼の背中を見ていた。

 だが、現実は時に非常だ。心から感謝しているはずの恩人を『壊したい』と思い始めてしまう。

 

(ッ!!ダメ!!今狂気にとりつかれたら信を壊しちゃう!)

 

 狂気。それは狂った感情。いつもならやるはずのないことを笑顔でやってしまう。フランの場合は『何でも壊してしまう』。それが例え、自分のことを本気で心配してくれ、安心させてくれた恩人であっても。

 

「フフンッ♪」

 

 信に悪寒がはしる。危険だと本能が知らせている。その危険を確認するため、彼はゆっくりと振り向いた。

 

「カンタンニ壊レナイデネ♪」

 

 明らかに別人の雰囲気を纏い、不気味な笑顔を浮かべたフランがいた。

 

 



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第13話 【狂気】

おはこんばんにちは。さまりとです。
ゆっくりどうぞ。


 

「それがさっき言ってた狂気ってやつか」

 

 信は一瞬で理解する。どうしてレミリアがフランを地下から出さなかったのか。どうしてフランがレミリアに嫌われてると思ってしまったのか。

 

「その名の通り、まさに狂気って感じだな」

「遊ボッ♪」

「あぁ、遊ぼうか」

「アハッ♪」

 

 その瞬間フランから大量の弾幕が放たれるが、それ自体にはあまり集中せずに回避する。彼は今、フランを元に戻すためにはどうすればいいか。それだけを考えていた。

 

(まず狂気ってのがなんなのか確かめないとな)

「きゅっとして……」

「ん?」

「ドカーンッ!!」

「うおっ!」

 

 フランが上に手をむけて握った瞬間、その直線上の天井が爆発したように崩れ、そのまま信に降りかかってきた。

 

「!!」

「『禁忌』〈恋の迷路〉」

 

 信が移動した場所にむけてフランがスペカを唱え弾幕を展開する。

 

(ここだ!!)

「『幻符げんぷ』〈かくれんぼ〉」

 

 このスペルはただ単に姿を見えなくするものだ。これを利用して狂気の正体を暴く。

 

(狂気を共有する)

 

 能力を使い狂気を自分のなかにも発生させる。

 

(なんだ……これ……何もかも無くしてやりたい)

 

 狂気を共有して理解する。これをずっと持っていたフランはどれだけ苦しかったかを。

 

(でもまぁこれくらいなら……)

 

 信は自分のなかに芽生える異常な気持ちを押さえた。決してフランが精神的に弱いというわけではない。明渡 信は鋼メンタルである。

 

(それに、この狂気って奴は……)

 

 そして、抑えることが出来たからこそ分かった物がある。

 

「信ッ♪ドコ~?モシカシテ壊レチャッタ~?」

「そんな簡単に壊れないよ」

「アハッ♪ソウ来ナクッチャ♪『禁忌』〈フォーオブアカインド〉」

 

 影が増える。猟奇的な笑顔は数を増やし、対象に描ける圧を強める。身体的に人間の上位と言える吸血鬼。そして先程の天井の破壊した彼女の能力。それが目の前で、四倍になった。

 

(おいおい…まさかとは思うが……)

「「「「『禁忌』〈レーヴァテイン〉!コレデ壊レチャエ♪」」」」

「『舞踏ぶとう』〈暗黒盆踊りあんこくぼんおどり〉!!」

 

 四人のフランは全てが実態。手にした大剣を小さく細い腕で大きく振り回す。どれに当たろうとも圧倒的な質量と速度によって潰されてしまう事だろう。

 だからこその舞踏。このスペルは機械的に敵の攻撃を避けきるスペルだ。だがこれだけではいつまでもなにも出来ない。

 

「もちょっと我慢しててくれ。すぐにそっちにいくから」

 

 作戦は思い付いた。後は実行するだけ。

 

「『光符』〈豪華絢爛〉!!」

 

 部屋に収まりきらない圧倒的な光が二人を包み込む。

 

「ウッ!!」

「さあ、フラン。いくぞ?」

(フランの魂を共有する!!)

 

 激しい発光が治まっていく。ゆっくり、ゆっくりと。そして本来の明るさに戻った部屋の中で、先ほどまで激しく戦っていた二人は眠るように床に倒れこんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っと。ここがフランの魂か」

 

 そこはどこまでも際限なく広い真っ白な空間だった。しかし、そんな空間で不自然に存在感を出す扉が二つある。片方は真っ赤な扉。もう片方は真っ黒な扉。

そして赤い扉は鎖でぐるぐる巻きにされ、南京錠の様なもので止められている。

 黒い扉を少し開けると、部屋の中心で赤いモヤの様な物が佇んでいる。襲い掛かってくる様子もなく、ただそこに佇んでいるのだ。

 扉を閉め、次は赤い扉を開けるために南京錠を破壊する。

 

「フランいるかー?」

「えっ!?信!!どうしてここに」

 

 あくまでここは精神世界。行ってしまえば夢の様な他人が入ることがあり得ない世界だ。そこに先程まで現実で話していた人物が当たり前のようにいたら驚いて当然だ。

 

「まあ、俺の能力だ」

「でも、鍵みたいなのは……」

「壊した」

「え!?」

「で、多分向こうの部屋にいるのが狂気だろ?」

「う、うん。多分」

「向こうの部屋の中を見たことは?」

「ううん。普段は私が向こうに鍵をかけて抑えてるんだけど、狂気が無理やり出てきたらこっちに鍵がかけられちゃって……」

 

 主導権の奪い合っているのだ。あくまで狂気はフランの感情の一つ。それが理性や欲など他が全て集まった目の前のフランと奪い合いが出来てしまっている。精神的の幼い彼女が持つにしてはあまりに強く、大きい特出した感情だ。狂気を抑えるためには目の前のフランが成長して抑えられるようになるしかないのだ。

 しかしそれは、長い時間を必要とするものであり、一朝一夕でどうにか出来るものではない。

 

「俺の能力は本人の許可さえあれば何かを奪うことが出来るんだ。例えば、視力とか味覚とか」

「まさか……」

「お前の中の狂気を持っていく。許可をくれ」

「ダメだよそんなの!!そんなことしたら……今度は信が……」

「それなら大丈夫だ。一回外で狂気を『共有』してな、抑えられたんだよ」

「えっ!でもそんなこと」

「出来ちゃったんだよ」

「でも、迷惑じゃ……」

「そんなわけないだろ。俺はお前のことをもう妹みたいに思ってる。だから今踏み出す道の一歩目を俺が手伝うんだ。最初に教えておいてやるぞ。生き物ってのはな単体だと絶対長く続かないんだ。困ったら周りを頼れ!で、周りに困ってるやつがいたら助けてやれ。少なくとも、紅魔館の中にはお前を助けてくれるやつがたくさんいる。レミリアや咲夜、パチュリーや美鈴や小悪魔もいる。勿論俺もだ」

「……うん」

「今回は俺がどうにか出来る。だから勇気をだして俺を信じて頼ってほしい」

「うん」

「フラン、狂気を俺の中に持っていく許可がほしい。許してくれるか?」

「うん!」

「目が覚めたらレミリアと話をしような。けど、俺は少しやることがあるからちょっと待っててくれ」

「うん!ありがとう、信!」

 

 大きく返事をしたフランの頭を撫でると、能力を解除しこの場を去る。同時に狂気もこの場に無くなった為二つの部屋の存在も無くなった。

 隔てが無くなった白く広い空間で、少女は恩人を待つことにする。

 

 

 

 

 

 場所は変わってまた白い空間。しかしここは先程まで居たフランではなく信自身の魂の中だ。そこには彼だけでなく、連れてきた赤いモヤも漂っている。

 

「さあ狂気君。お前自我あるだろ」

『よく気づいたな。フランドール・スカーレットも今まで気付く素振りを見せなかったぞ』

 

 問いに対して当たり前のように答えた。信が共有した際に気付いたのはこれだ。狂気はフランの別人格として完全に孤立し、自我をもって行動していたのだ。

 

「あいつはお前のことを抑えられなかったからな、仕方ない」

『で、俺の影響を一切受けなかったお前はいったい何者だ?』

「ただちょっとメンタルが強いだけだよ」

『はっ!簡単にいってくれるな。……無駄話はもういいだろ。俺を封じ込めるんだろ?』

「お前が悪意たっぷりのトンデモ人格だったらそれもいいかもな。だけどそうじゃない」

『どういうことだ?』

「お前、人と関わりたかったんだろ?」

『な!?』

「そんな姿でも簡単に分かるさ。現に俺のことを支配しようと試そうともしない。フランをあんな風にしてたのは狂気としての本能……いや本質か?」

『お前はなにもわかってない!!俺は〈狂気〉!!人を狂わせる存在だ。そんなやつが救われようなんて甘ちゃんもいいとこだ!』

「だけど、狂わされない人物がここに一人」

『だが……』

「素直になれ。495年もずっと足掻いてたんだろ?もう報われちまえ!……俺も素直になろう。俺って寂しがりだからさ、お前みたいないいやつとずっと一緒にいたいんだよ」

『……後悔するなよ?』

「そんなの生まれたときからしないって決めてるんだ」

『変なやつが宿主になったもんだ』

「よし。じゃあ名前を決めよう」

『は?』

「ずっと狂気なんて不吉な呼び方するわけにはいかないだろ?う~んなにがいいか」

『本当に変なやつだな』

「500年近く暇してたんだから一緒にいるのも悪くないだろ?……よし決めた。お前の名前は『共』今日から明渡 共だ!」

『狂?』

「『ともに』って言う意味の共だ。狂気にも読み方が近いから違和感はあんまりないと思うが」

『共……か。ずっと変なやつと共にいるわけか……』

「どうだ?」

『悪くないな。これからよろしく頼むよ、信』

「よろしくな、共。……お前どうしたんだ?急に光りはじめて」

『わからんがどうにかなるみたいだ』

 

 どんどん光は増していく。そして目も開けられない程の光が迸る。

 そこにはもう狂気の姿はもうない。

 

「共……お前……」

 

 そこには新しい『明渡 共』の姿があった。

 

「どうやら名前をもらったことで体が形を得たみたいだな」

「……とりあえず、服着ようか」

 

 見覚えのある全裸の姿で。

 

 

 




私は誰かが犠牲になる展開が嫌いではないですが得意じゃないです。全員助かれよぉ……ってなります。
さあ狂気改め共は誰の姿になったのでしょうか。
それは次回のおたのしみ。


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第14話 【知らぬ間に】

 

 目を覚ますとフランの部屋のベットの上にいた。床の上で倒れていたのを移動させてくれたのだろう。

 何はともあれ、これで紅い霧を止めてもらえるはずである。しかしそれとは別にフランたちの問題も解消しなければならないと、体を起こしフランの姿を探す。

 

「フラン」

「あ、お兄さま。おはよう~」

「あぁ、おは…よ……う。お兄さま?」

「私のこと妹みたいにっていってくれたでしょ?だったらそう呼びたいな~って。ダメ?」

うるうるとしながら上目遣いで聞いてくる。

「大丈夫だ、問題ない」

「やったー!お兄さま~。」

(今さら妹の1人や2人変わんないか)

「レミリアのところにいくか」

「……うん」

「やっぱり少し怖いか?」

「お兄さまのことは信用してるけど、それでもやっぱり怖い」

「でも、心の準備はできてるんだろ?」

「うん」

「なら善は急げだ。レミリアにお前の本音を聞かせてやれ」

 

 2人はレミリアがいた部屋に向かう。移動中も部屋についてからも、やはりフランに緊張の表情が見て取れ、そのたびに頭に撫でてやり安心させようと試みる。

 

「緊張してるか?」

「ちょっと」

「大丈夫だ。ちゃんと話せばレミリアはわかってくれる。さあ、行ってこい!」

 

 無言で頷き、フランは部屋に入っていった。ここからは姉妹の問題だから手出しは無用。だが少し心配だから聞き耳を立てようとフランの視覚と聴覚を共有する。

 どうやら部屋には咲夜とレミリアがおり、

 

『おの……お姉さま』

『あなたが来ることは分かってたわ。なんの用なの?』

(おいおい。そんな態度だとフラン余計に怖がるぞ)

『お姉さまは……・・・なの?』

『はっきり言いなさい』

『お姉さまは、私のこと嫌いなの?』

『ッ!?』(ファッ!?)

『もしかして私っていない方がいいって思っt『バカなこと言わないで!!』』

『あなたは私のたった一人の私の妹なの!嫌いになんてなるわけないでしょ!』

『お姉さま……』

『あなたこそ、私のことを嫌いなんじゃないの?』

『そんなことないよ。だってたった一人の私のお姉さまだもん!』

『そう……良かった』

(不安と緊張が募って混乱しかけてたがうまいこといったな)

『お姉さま。私、外に出ていろんなこと知りたい。もっといろんな人と話したい』

『それは……』

「その事ならもう心配ないぞ」

「信!」「お兄さま!」

「多分、フランの狂気を心配してるんだろ?それは俺が取り除いたから大丈夫だよ」

「でもいったいどうやって?」

「俺の能力だよ。取り除いたってよりか『奪った』の方が正しいけど」

「平気なの?」

「ああ。何はともあれ、これでは条件達成だな。紅い霧を取り除いてくれ」

「もう消したわよ」

「……マジ?」

「あなたが言った後、博麗の巫女と白黒の魔法使いが来てね。負けちゃったのよ」

「それに、お兄さまが眠ってる間に霊夢も魔理沙も一回部屋に来てたんだよ」

「本当かよ……」

「それと伝言も頼まれたわ。『早く戻ってきて宴会の準備を手伝いなさい』って」

「宴会?」

「知らないの?この幻想郷では異変を解決したとき、その首謀者たちも含めて宴会を開くのが恒例らしいのよ。」

「無茶苦茶だな」

「無茶苦茶よね……」

「名指しなら断るわけにはいかないしな。博麗神社でいいのか?」

「そういってたわ」

「今夜は楽しみにしとけよ。腕によりをかけて飯を作るからな」

「あら、あなたが作るの?楽しみにしてるわね」

「おう」

「お兄さま……狂気は大丈夫?」

「大丈夫だよ。仲良くやってる。それじゃあ行くよ。また宴会でな」

 

 信が出ていった後、それまで無言だった咲夜にレミリアが質問を投げ掛けた。

 

「良かったじゃない咲夜。共通の話題ができて」

「なんのことでしょうか」

「わたしが気付いてないとでも?」

「え?どういうこと?お姉さま、咲夜!」

「いい、フラン。咲夜はn「わああああああああ!!!」」

「冗談よ。誰にも話さないわ」

「あまりからかわないでください///」

「???」

「フフッ♪ここでの生活は楽しくなりそうね」

 

side change

 

『信。私のことは話さなくて良かったのか?』

『そのうちはなす機会があるさ。しかしお前のその姿はどうしてなんだ?』

『おそらくフランドールの中にずっといたためだろう』

『でもなんで成長した姿なんだよ!?』

『そりゃあ、495年もたったら成長くらいするだろ』

『それはそうだが……』

『幻想郷では常識が通用しないんだろう?』

『言うじゃないか。まあその通りだな。考えとわからんことは仕方ないしな。早く帰ろう』

 

 狂気に新しく「共」という名前をつけ、その姿はフランが成長したらこんな感じになる、という姿に変わっていた。髪は腰くらいまで伸び、背も160ちょいくらいにまで高くなり、胸も膨らんでいた。とりあえず今はフランと同じような服を着てもらっている。

 

(流石に予想外だったな)

 

 そんなことを思いながら信と共は博麗神社に向かった。




次回もゆっくりお願いします。


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第15話 【もちろん】

「ただいま」

「おかえり。遅かったわね」

「悪いな。なに手伝おうか」

「とにかく料理して。たくさん作んないと間に合わないから」

「そんなに呼んだのか?」

「呼ばなくても嗅ぎ付けてやってくるのよ」

「やっぱりか...。魔理沙やアリスは?

「アリスは魔法の研究。今手が話せないって言ってたわ」

「魔理沙は?」

「逃げたわ。準備が嫌だったみたいでね。気付いたらいなかったわ」

「oh...ってことは準備すんの俺たちだけか」

「そうよ」

「何時から宴会なんだ?」

「日が沈んだらね。レミリアたちは太陽に当たれないから」

「そういえばあいつら種族はなんなんだ?」

「吸血鬼らしいわね。それより口を動かしてないで早く準備しなさい」

「はーい。(吸血鬼ってまじか...。流石幻想郷ってところか)」

 

ちょっと驚きながらも準備に取りかかった。今は大体5時半。この時期は日が沈むのが遅いから宴会が始まるのは7時半ごろってところか。急がないとな。

 

『信。こいつは誰なんだ?』

『話に出てた博麗の巫女だよ。名前は博麗霊夢。今は居候させてもらってる身なんだ』

(そうか。共は誰のことも知らないから俺が教えてやんないといけないのか)

 

新たなことに気付き知りつつ、宴会の準備に取りかかった。

 

 

 

 

・・・少年少女奮闘中・・・

 

 

 

 

 

「おーい霊夢~。きたぜ~」

 

時刻は7時すぎ。魔理沙(薄情者)が現れた。

 

「やっと来たわね...できた料理運ぶくらい手伝いなさい!!」

「わ、わかったぜ」

 

疲れている霊夢に怒鳴られ少し怯えていた。まあ、同情はしない。

 

 

 

 

魔理沙が来た後から博麗神社にはどんどん人が来た。人よりも妖怪の方が多いが。

 

「信!!」

「うわっ!チルノ!!今火使ってるんだから危ないだろ」

「すいません信さん。止めたんですけど」

「こらチルノ、邪魔しちゃ悪いだろ」

 

チルノや大妖精、慧音も来たようだ。そして壁からこちらをうかがうように妹紅もいた。

 

「みんなも来たのか」

「あぁ、今日は楽しませてもらうよ」

「もこたんも楽しめよ!」

「...」

 

なにも言わずに去ってしまった。

 

「前のことをまだ気にしてるのかあいつは」

「まあそのうち機嫌なおるだろ。もうちょっとで作り終わるから待っててくれ」

「信、早くしてね!」

「はいはい」

 

フランもそうだがこいつや大妖精やルーミアももう妹みたいなもんだな。

 

『顔が広いな……』

『どっかの誰かとは違うからな』

『はて、誰のことかな?』

 

共にみんなのことを説明した。もうすぐ始まるし、急がなければならない。

 

 

 

「よし、終わった。久々だな、こんなに一気に作ったのは」

 

盛り付けも終わり、後は運ぶだけとなった。その最後の料理を運んでいくと、ちょうどあいつらが到着したようだ。

 

「お、きたか」

「お兄さまーー!!」

 

フランが手を振りながら駆け寄ってきた。

 

「フラン、今日はたのしめよ」

「うん!!」

 

首謀者が到着し、宴会が始まった。

 

「おい魔理沙、お前未成年だろ。酒のんじゃ不味いだろ」

「ふっふっふ。そういうと思ったぜ。けどな信、ここは幻想郷だぜ。外界と違って酒は自由に飲めるんだ。さあ、お前も飲め!!」

「俺はいいよ。外来人だし」

「そんなの幻想郷じゃあ関係ないぜ」

「俺は気にするんだよ」

 

魔理沙の勧めを頑張ってかわしつつ、

 

「この料理美味しいな。これをあいつが作ったのか……」

「その通りだぞもこたん」

「げ、出た」

「出たってなんだ出たって」

「わ、悪い。それよりも今回の異変解決はお前も関わってたらしいな」

「俺はただフランと遊んでただけだよ」

「フランって?」

「チルノたちと遊んでるあいつさ」

 

フランはチルノやルーミアたちと走り回っていた。

 

「馴染むの早いな」

「ずっと一人だったからな。精神年齢が近い友達ができて嬉しいんだろ。」

 

なかなか話す機会のなかった妹紅と話し、

 

「あややややっ、あなたが噂の外来人ですか」

「多分そうだよ。お前は?」

「申し遅れました。私は文々。という新聞を書かせていただいている鴉天狗、清く正しい射命丸です。お見知りおきを」

「明渡信だ。で、俺になんのようだ?」

「はい、今回の異変解決に関わっていたという話を耳にしましてね、是非とも取材をさせていただきたいと」

「なるほどいいぞ、なんでも聞いてくれ」

「では早速、好きなタイプは?」

「黙秘」

「今いる気になる異性は?」

「黙秘」

「今この場で一番可愛いと思うのは誰か」

「黙秘」

「...なんでも聞いてくれって言いましたよね?」

「あぁ、答えると入ってないがな。それになんで色恋沙汰の質問ばっかりするんだ?」

「そちらはあまり気が進みませんね……」

「いってもいいが、つまらん回答になるぞ?」

「構いません。とにかく答えてください。好きなタイプは?」

「ない」

「今気になる異性は?」

「いない」

「今この場で一番可愛いと思うのは?」

「全員可愛い」

「黙秘の方が良かったですね」

「だろ?」

「質問を変えましょう。あなたの趣味は?」

「強いて言えば、家事・マッサージ」

「弾幕ごっこの経験は?」

「魔理沙とチルノに今のところ全勝中だぞ」

「あなたの能力は?」

「共有する程度の能力」

「あややっ!こちらの方が面白い記事がかけそうですね。でもそんなすんなり答えていいんですか?」

「ダメなのか?」

「ありがたいですよ。ただ今まで取材をまともに受けてくれた人なんて数える程度しか知りませんから」

「安心しろ。今答えたのは全部本当だからな。」

「はいっ。ご協力感謝します。」

 

ゴシップ誌を書いているであろう記者の取材を受けた。

宴会が始まってからしばらくし、霊夢の様子が気になる。なにかソワソワとし、こちらをチラチラと伺っている。

 

「なあ、霊夢」

「何よ?」

「どうしたんだ?さっきから落ち着かないで」

「はぁ~。あんたには謝らなきゃいけないと思ってね」

「どういうことだ?」

「あんたが帰れなかった理由がなんとなくわかったのよ」

「マジかっ!?...でもどうしてお前が謝るんだ?」

「帰れなかった理由で一番可能性があることだったからよ」

「?」

「読んだ方が早いわね。出てきなさいよ紫、いるんでしょ?」

 

霊夢はそう誰もいない空間に向かって呼び掛けた。

 

「さすが霊夢ね。見えないのに一発で当てるなんて」

 

そこから誰かが出てきた。その瞬間、回りが静かになった。

 

「あなたに会うのは初めてよね。はじめまして、幻想郷の創設者の一人、八雲 紫よ。ゆかりんって呼んでね☆」

「明渡信だ。よろしくなゆかりん」

「っ!?」

「どうした?」

「いえ、ほんとに呼ばれたのはあなたが初めてでね。嬉しいのよ」

「そうか。それで霊夢、帰れなかった理由ってのはなんだ?」

「そのスキマ妖怪の仕業ってことよ」

「ゆかりんがか?」

「ええ」

「魔理沙っ」

「は、はい」

「霊夢のいってることには根拠があるのか?」

「まあ、今まで気付かないように細工できたのも紫くらいだと思うぜ」

「そうか...。ゆかりんの仕業なのか」

「てへっ☆」

 

カチンッ

 

「なあ、ゆかりん」

「何かしら?」

「今俺は無性にあんたをぶん殴りたい」

「「「ッ!?」」」

「だがまあ、理由くらいあるだろ。聞かせてほしい」

「た、たのしくなりそうだったから~なんて」

「それでが理由か?」

「え、えぇ」

「やっぱりぶん殴りたいが、あんたみたいな美人の顔にアザをつけるわけにもいかないわけだ」

 

ポキ、ポキ、と手の間接をならしながら紫に近づく。

 

「だがあんたのおかげでこの幻想郷のみんなと親しくなれたってのも事実だ」

 

今度は首の関節をならしながらさらに近づく。

 

「し、信く~ん。怖いわよ……。ゆかりんって呼んで?ゆかりんって……」

「ゆかりん!!」

 

ビクッ!!紫は冷や汗を流している。

 

「それを差し引いても愛するべき兄弟達から俺を引き離したのも事実だ」

 

足を止め、全身にありったけの霊力と魔力を流す。

 

「そんなわけでだ。一回絞め落とす」

 

その場にいたみんなが思った。超怖いと。

 

「なんなのこの異常な霊力と魔力は!?」

「知らなかったの?霊力も魔力も持ってるのに加えて両方とも多過ぎて底が知れない。信が来た初日にだだ漏れになったのに気付かなかったの?」

「確かに感じはしてたけど寝てたから。それにすぐ抑えられたし……。」

「何か言うことは?」

「逃げた方が良さそうね」

「その方がいいと思うわ」

 

そういって紫はスキマに逃げ込んだ。

 

「あれがゆかりんの能力か?」

「そうよ」

「なるほど」

(ゆかりんの能力を共有する)

 

そして信もスキマを開く

 

「ちょっと捕まえてくる」

 

そういって信もスキマのなかに入っていった。

 

「いよいよチートだな。信は」

「本当ね。今までにないくらい怒ってたし」

「アリスっ!研究はいいのか?」

「頑張って終わらせてきたのよ。それにしても」

(((((((怒った信超怖ぇ)))))))

 

みんなそう改めて思った頃に、またスキマが開いた。

紫が逃げてきたようだ。

 

「お願い霊夢っ!助けてっ!ってか何であの子境界を操れるのよっ!?」

「それが信の能力よ。反省することね」

「そ、そんなぁ」

「今度はこっちか...」

 

信も現れた。その表情は阿修羅を思わせるような怒りの表情になっている

 

「ひいっ!」

 

紫は霊夢の後ろの逃げ隠れた。大妖怪の紫でさえ恐怖を覚え、立ち向かおうとさせない圧倒的霊力と魔力。それに加えられた存在感。その場の誰も信を直接なだめようとする気になれなかった

 

「もう一度きくぞ。なにか言うことは?」

「謝りなさいよ。信ならちゃんと許してくれるから」

「本当に?」

「可能性は十分にあると思うぜ。あいつすごい聞き分けいいし」

「謝るなら早くした方がいいわよ」

 

紫に信と付き合いが一番長い3人が助言する。そうすると紫は覚悟を決めて前に出てきた。

 

「ごめんなさい」

「よろしい」

 

信も霊力と魔力を止める。

 

「許してくれるの?」

「まだ起こってるけど、弟や妹にも言ってるからな。やりすぎはいけないって」

「はあ~~」

 

体の緊張がとけ、紫はその場に崩れ落ちた。

 

「じゃあ早速俺を家に返してくれ」

「「「「「「ッ!!」」」」」」

「えぇわかったわ。もうあんな目に遭うのはこりごりだし」

「本当に帰っちまうのか?」

「あぁ、世話になったな」

「おにいいさまあああああ!!」「しいいいいいいんっ!!!」

 

フランとチルノがどいいに突っ込んできた。

 

「「本当にいっちゃうの?」」

「あぁ、悪いな。向こうに待たせてるやつらがいるんだ」

「でもっすぐに帰ってくるよね?」

「難しいな、俺自身が行き来出来る能力を持ってるわけでもないし」

「でもさっき紫の能力を使ってたでしょ。それがあれば自由に...」

「どうやらゆかりんの能力は持続が難しいんだ。それに扱いも複雑だったそれにたよるのはできないかな。慧音、悪いな。寺子屋行けなくなった」

「構わないさ。この一週間君からは色々学ばせてもらったよ」

「そういってもらえるとありがたいよ」

「どうしてもいくのね」

「急で悪いな。世話になった」

「...元気でね」

「あぁ、みんなも元気でな。じゃあゆかりん頼むよ」

「わかったわ」

 

紫がスキマを開く。

 

「またいつか会おうな」

そういって信はスキマに入っていった。

 

 

 

 

 

信がいなくなった宴会場はとても静かになっている。

 

 

 

「いっちまったな...」

「そうね」

「こんなに急に帰ってしまうなんてね」

「うぅぅ。おにいさまああ」

「しん...ぐすっ」

 

チルノとフランに関しては泣いてしまっている。

 

「フラン、チルノ、大丈夫だぜ。あいつ『またいつか会おうな』っていってたんだぜ。きっとそのうち帰ってくるさ」

「「本当?」」

「信さんを信じようよ。チルノちゃん、フランちゃん」

 

ふたりを魔理沙と大妖精がなだめている。

片や一方では

 

「最後に話さなくても良かったの?咲夜」

「えぇ、そこまでの仲ではありませんので」

「本音は?」

「とても残念です。こんな気持ちは初めてでしたので」

「良かったわね」

「皮肉ですか...」

「そのまんまの意味よ」

「どういうことですか?」

「すぐにわかるわ」

 

霊夢はその場に座り込み酒をちびちびと飲みはじめた。

 

「おい霊夢。お前は平気なのか?」

「平気よ」

「なんでだぜ?」

「勘よ」

「勘?」

「えぇ、多分信はすぐに戻ってくるわ」

「本当かっ。でもいったいどうy「「お兄いちゃああああああああああああああああん。」」」

 

静かな宴会場に2つの幼い声が響いた。みんな慌ててそちらに顔を向ける。

 

「えっ!?」

 

霊夢の下に誰かがいる。ちょうど霊夢が座っているところに顔がありそうだ。そしてその体の上には幼い子供がのうつ伏せになってのっている。霊夢はそこからいち早く移動した。

 

「「「「「「「信っ!!!」」」」」」」

「お、おう。ただいま...」

そこには先程去った明渡 信がいた。

「ほんとに帰ってきたわね」

「俺も想定外だった。...なあ、霊夢」

「なに?」

「白って言うのはやっぱりゴフッ!!」

 

顔を真っ赤にした霊夢が2人の子供の間を通し、信のみぞおちに鉄拳を炸裂させた。

 



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第16話【リターンアンドリターン】

おはこんばんにちは。さまりとです。
これからどっと増えます



「「おにいちゃああああん!!」」「おにいさまああああ!」「しいいんんんん。」

 

信が戻ってきてからしばらくしても、2人の幼い子供の泣き声は響いていた。それに加えチルノとフランもしがみついてきた。

 

「よしよし。もういなくなんないから落ち着きなさい、な。」

「ホントに?」

「もういなくなんない?」

「本当さ。心配させて悪かった。フランもチルノも落ち着け。自力で来れるのがわかったから定期的に来るぞ。」

「「ホント?」」

「本当だよ。俺を信じろ。だからそろそろ離れてくれると嬉しいんだが...。」

「なあ、信。そろそろ説明してほしいんだぜ。」

「あぁ、何から話そうか。」

「まず、その子達は誰なんだぜ?」

「俺の一番下の兄弟だよ。ほら、みんなに挨拶しなさい。」

 

泣いていた2は落ち着きを取り戻し、女の子から自己紹介を始めた。

 

「はじめまして。あけど はなです。よろしくおねがいします。」

「はじめまして。あけど かざとです。よろしくお願いします。」

「2人は何歳なの?」

 

咲夜が優しい口調で問いかけてきた。

 

「「4さいっ!!」」

 

華と風人は元気に答えた。年相応でとても無邪気のようだ。

 

((((((可愛い。))))))

 

その場のみんなの意見がまたひとつになった。

 

「2人は双子なんだ。華がお姉ちゃんで風人が弟。仲良くしてやってくれ。」

「よろしくね。私は咲夜。」

「魔理沙だぜ。」

「霊夢よ。」

「私はアリス。」

 

以下省略

 

その場にいたみんなが自己紹介した。

 

「こんなに一気に自己紹介されて大丈夫なの?」

「大丈夫大丈夫。こいつら記憶力がいいんだ。あっちのお姉ちゃんは誰だ?」

「「れいむおねえちゃん!」」

「じゃあこっちのお姉ちゃんは?」

「「もこうおねえちゃん!」」

「じゃあそこのおねえちゃんは?」

「「レミリャおねえちゃん!」」

「えっ!?」

「まだ舌が回らなくてな、たまに呼べない人がいるんだよ。多目に見てやってくれ」

「そ、そうなの...。」少しショックを受けたようだ。

「しかし本当に覚えてるんだな。」

「それよりも次の質問いいかしら。」

「あぁ。」

「どうやって戻ってきたの?それになんであんなところから。」

「話せば少し長いんだこれが。風人、華フランたちと遊んでこい。フランたちも一緒に遊んでやってくれ。」

 

そういうと風人と華は寺子屋の生徒たちと一緒に遊びにいった。

 

「さてと。じゃあ最初から説明するぞ?」

 

・・・・・数十分前・・・・・

 

「よっと。ゆかりんサンキュな。」

「こっちも迷惑かけたわね。」

「いやいいさ。幻想郷での暮らしも楽しかったし。」

「そう言ってくれると助かるわ。じゃあこれで失礼するわね。」

「またいつか。」

 

別れの言葉と共に紫がスキマえと消えていった。信が送られたのは家の玄関の前だ。

 

「1週間しかたってないのに懐かしく感じるな。」

 

感慨深さを胸に扉を開ける。

 

「ただいまー。」

「「ワンッ!!」」「「ニャーン」」

「おぉ、モコ、コト、久しぶりだな~。トモとモモも。」

 

玄関に入るとまず出迎えてくれたのは犬のモコとコト、それに猫のトモとモモだった。モコとコトは玄関のなかに犬小屋を建てそこで飼っている。首輪はつけているがリードはしていなく、基本自由に家の中を歩き回れるようになっている。だが少し違和感がある。

 

「?...気のせい...じゃないよな。後で話そうか。」

 

今は兄弟たちに顔を見せるのが先である。なんの連絡もなしに1週間も家を空けたのだ。

 

「「かえってきた...。」」

「ん?」

 

靴を脱いでいるときに背後から声が聞こえた。

 

「「おにいちゃあああああんっ!!!」」

 

2つの影が胸に飛び込んできた。

 

「華っ!風人っ!...ただいま。」

「風人ー、華ー。どうし.た..んだ...。」

「よう、真。ただ「みんなっ!!信兄が帰ってきたぞっ!!!」」

「本当にっ!?」

「そこにいるんだっ!!本物が、すぐそこに!!」

 

居間にみんないたようでどんどん出てきた。

 

「ただいま。心配かけt「「「「「「「「「信にいいいいいっ!!」」」」」」」」」」

 

恭助と静を残して全員が突っ込んできた。

 

(あれ?これやばくね?)

 

今突っ込んできてるのは9人。俺は問題ないが風人と華が万一下敷きになったらヤバイ。

 

(どうする...。)

 

風人と華が足にしがみついてしまってすぐには動けない。9人を止めるのも正直無理だろう。

 

(どうする。明渡信っ!なにかいいアイディアは...あ!)

 

思い付いた。

 

(霊夢と座標と空間を共有する!!)

 

その瞬間、3人は姿を消した。

 

 

「ってことがあってな。俺もまさかあんなところに出るなんて予想外だったよ。はっはっは。」

 

ゴンッ。霊夢が今度は拳骨を放った。

 

「で、もう信は外界も幻想郷も自由に行き来出来るようになったわけだ。」

「そういうことだな。そんなわけだから、これからもよろしく。」

「「「「はぁ~。」」」」

「...もしかして、俺嫌われてる?」

「いえ、そういう訳じゃないんだけど。なんというか...。」

「しばらく会えないと思ったやつがさらっと帰ってきてな、」

「みんな拍子抜けしてるのよ。」

「なるほどな...。てかそろそろ戻るよ。あいつらも困惑してるだろうし。」

「1週間もいなかった兄貴が急に現れて、目の前から別の二人と一緒に消えたらそりゃあ混乱するわな。」

「そういうわけだ。おーい、華、風人、もう帰るぞー。」

「「はーい。」」

「バイバイ華、風人。また遊ぼうね。」

「「うん!バイバイみんな。」」

「それじゃあな。また明日来るよ。」

 

そういって信と華と風人は帰っていった。

 

「しかし良かったぜ。あいつ自由に来れるみたいでさ。」

「えぇ、本当に。」

「あなたも大変な相手に思いを抱いたものね、咲夜。」

「「「えっ!?」」」

「お嬢様っ!」

「あら、ごめんなさい♪でもこの際はっきりしたらどうなの?うじうじしてたら彼、別のやつに取られちゃうわよ。」

「詳しく聞こうかしら。」

「...はぁ~。お嬢様の話の通りよ。私は彼に...思いを...寄せている///。」

「あいつは倍率高いぜ?」

「...分かってるわよ。」

「いったいあいつ何人惚れさせる気なのかしらね。」

「しかも無自覚で無意識だろ?」

「それが余計たちが悪いわよね。」

 

少女たちの初恋は続く。




次回は明渡家14人兄弟が全員が登場です。


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第17話【明渡家14人兄弟とペット】

やっと兄弟全員登場です。あんまりしゃべってない子もいますけど。
プロフィールは全員あとがきにのせます。気が向いたら読んでください。
それでは、ゆっくりどうぞ。


「「「ただいまー」」」

 

 本日二度目となる帰宅。風人と華はいつもの様な様子に戻り、今ではすっかり元気である。

 

「信兄!」

 

 先程信の無事を全員に知らせた次男が再び出迎える。一週間姿を消し、やっと帰ってきたかと思えば目の前からふっと消え去った兄を前に本物かどうか定める様子も一瞬見られた。 

 兄に落ち着けと言われるとその言葉の通り深呼吸をして気持ちを静める。こんな状況でも随分素直なものだと共は感じた。

 

「みんなは居間か?」

「うん。大変だったんだよこの一週間」

「警察には連絡したか?」

「うん。明日また来るって」

 

 仕方のないことではあるが、やはり警察になんと説明したらよいものかと考えてしまう。それは後でいいかということで、自身の弟妹が待っている居間へと向かった。

 

「ただいま」

「「「「「「「「「「おかえりなさい」」」」」」」」」」

 

 いつものように重なって返されるこの言葉。やっともう一度聞くことが出来たのだと実感し、一瞬涙腺が緩んだ。が、皆の前で涙を流すわけにもいかないのでグッと堪え、いつもの場所に座り込む。

 

「すまんなみんな。心配かけた」

『なあ信』

『なんだ?』

『こいつらを紹介してくれ。お前の兄弟の名前はしっかり把握しておきたい』

『ああ、なら順番に紹介していくな』

 

「本当に、俺たちに何も知らせないで何処に行ってたのさ?」

「ホントだよ!この一週間どれだけ大変だったか……」

『まず、さっき出迎えてくれたこいつが次男の(まこと)、少し日に焼けてるのが長女の(ちか)。俺を抜いたら一番上の2人だ。真が兄で愛が妹の一卵性の双子な。それで二人とも許容オーバーの事が起こるとえらいパニックに陥る』

「お二人を落ち着けるのがどれだけ大変だったと思いますか?」

「大変だったのは俺達の方だっての……」

『俺の次に髪が長いのが次女の(しずか)、目付き悪いのが三男の恭助(きょうすけ)。上二人がダメな時はこの二人が頼りになるな。ただ……』

『ただ?』

「まあどっちかっていうと俺の方が大変だったがな」

「いえ、私の方が大変でした」

『ほら始まった』

 

 少し呆れた、というより困った様子で共に伝えた。何が始まっているのかと一瞬疑問に思うがそれはすぐさま理解できてしまう。

 

「「やるの(か)?」」

『なんかよく分からんところで喧嘩になるんだよ。一週間ぶりだからこの光景落ち着くな』

『止めてやれよ。愛……と、真。かなり困ってるぞ』

 

 声をそろえて敵意をむき出しにする。荒っぽい喋り方だった恭助はともかく、今まで丁寧な話し方をしていた静までこんな様子を見せた事に驚きは隠せない。上二人の名前を特徴と共に頭に記録しながら助け舟を出した。

 

「ほら二人とも座れ。俺はお前たちの喧嘩を見るために帰ってきたわけじゃ……ごめんやっぱりもう少し見て対気がする」

「「(信)兄(ちゃん)!?」」

「まあ兄貴が言う通り、」

「今やる事ではないですね」 

 

 下の弟や妹も見ている前なので、という事なのか恭助はドカッとその場に胡坐をかき、静は音を立てずに正座する。この仕草だけで二人が正反対の性格なのだと共は思った。

 そして何事もなく続けて紹介され始めた為、もう一度集中し直した。

 

「兄上、無事で何より」

「静姉、恭助兄も本調子に戻った」

「「我ら歓喜」」

「二人もさっきやっとこの調子に戻ったんだぜ。本当によかったっよっ……」

「陸余計なことは言わない」

「姉として、罰与える」

『あの武士みたいな話し方で左側の目元にほくろがあるのが三女の(そら)、右側にあるのが四女の(うみ)。で、その二人に今首を絞められてるのが四男の(りく)だ。陸は二人の世話役だから心配しなくても大丈夫だぞ。それと、この三人も一卵性なんだ』

 

 首絞めだけではなくヘッドロックまで食らっているが、まあ信がそういうならと共は納得した。一瞬顔が青くなり始めた様にも見えたが、信がそう言うのだ。納得。

 

「それで信兄どこに行ってたのさ!」

「あらいざらい吐いてよ!」

「罪をこくはくするみたいに!」

「三人とも落ち着いてね~。信兄はちゃんとここにいるから~」

『で、同じ顔の三人が五男の強太(きょうた)、六男の高太(こうた)、七男の深太(しんた)、その横でゆっくり喋ってるのが三人と一緒に生まれた五女の広美(ひろみ)だ。生まれた順に強太→広美→高太→深太な。この四人も一卵性だ』

『えっと……三人の見分けがつかないんだが』

「強太、高太、深太。俺は何日くらいこの家を空けてたっけ?」

「「「えーと、たしか……」」」

『こうやって考えてるときに顎をさわるのが強太、こめかみを掻くのが高太、腕を組むのが深太だ』

『……外見的な違いは?』

『無い』

「一週間と1日だ!」

「あ゛ー負けたっ!」

「ぐぬぬ……わかったのに……」

 

 今回の勝者は強太で、他の二人は負けたことを悔しがっていた。悔しがっているが、誰が誰だかわからないので、現時点で見分けることを断念する。

 

「信兄ちゃん次はいつ行くの!?」

「またみんなと遊びたい!!」

『最後に六女の華に八男の風人。二人は二卵性だな。これが俺の弟妹だが、覚えれたか?』

『一卵性ばかりじゃないか……そんな頻繁に生まれるものだったか?』

 

 もっともな意見だ。1卵生の双子が生まれる確率は一般に0.3%~0.4%と言われている。それが一家に3組。更には双子だけではなく三つ子や四つ子までもがいるのだ。こんな条件が揃った兄弟ができる確率は天文学的な数値のはずだろう。

 

「信兄、そろそろ説明してくれない?今までどこで何してたのか」

 

 待ちきれないといったように真が切り出す。落ち着きを取り戻したことによって今までため込んでいた様々な感情が混ざり合い、それを周りに悟られない為に表に出さずに切り出した。狂気の存在である共は正直頼りない印象しか持てなかったが、その一瞬の気遣いからガラリと評価が変わる。彼は優秀な人物であると。

 

「最初から話すぞ?真と愛と別れて買い物を済ませた後、見慣れない道を見つけたもんでそこを通ることにした。そしたら見たことが無い森の中にいたんだ」

「……なんか急にファンタジーになったね」

「続けるぞ?とりあえず歩いてたら妖怪に襲われてる子供がいてな、助けたんだ」

「兄貴、それはまさか女か?」

「いや、男だよ。ケンっていってな、ちょうど陸たちと同じくらいだな」

 

 ケンが男だということを聞くとなぜか恭助は安心したように息をついた。チラリと目線を泳がせたようにも見えたが一瞬のことで特に変わったことでは無いのだろうと結論付け話をつづけた

 

「そのケンに色々聞いてな。俺が迷い混んだのは『幻想郷』って言うところで、妖怪もいれば吸血鬼もいるそれこそファンタジーな世界だ」

「いいなー。俺も行ってみたかった」

「でもな強太。妖怪は人を食べるんだぞ?」

「強いの?」

「力はな。それに滅茶苦茶でかい奴もいたぞ?俺の倍くらい」

「やっぱり行かなくていいや」

 

 異世界でファンタジーと聞けば一度は行く、もしくは見てみたいというのが人間の性質だ。しかしその危険性を知った強太は好奇心ではなく自制心を内で勝たせ、自分の命を優先させる。

 

「ただ、そんなやつらだけじゃないぞ。ケンに教えてもらって博麗神社ってところで寝泊まりしてたんだが」

真&愛&静&恭助&空&広美「「「「「「それ本当(ですか)!!?」」」」」」

 

 突如幻想郷に行ったのあたりから黙っていた六人が身を乗り出して信に問い詰める。目を見開き、普段冷静な静やゆっくりしている広美さえも大きな声を出したので信もかなり驚いている。

 

「うわっ!どうしたんだいきなり」

「幻想郷に博麗神社って本当に行ったの!?」

「あ、ああ」

「もしかしてその神社に誰かいなかった?例えば脇が空いた巫女服の人とか!?」

 

 真に続き、愛も自身の体を用いながら説明を要求する。本当に何事なのかと動揺するも伝えることは自分の義務なのだからと落ち着く前に続けた。

 

「いたよ。博麗霊夢っていう巫女が」

真&愛&恭助&空&広美「「「「「キタアアアアアアア!!」」」」」

「本当にどうしたんだお前ら」

 

 五人は完全に興奮しており、その5人とは別に静も嬉しそうな表情で静かにガッツポーズをとっていた。

 

「前に真が東方プロジェクトっていうのを紹介したよね!」

「紹介されたけど、それがどうした?」

「博麗霊夢はそのゲームの主人公なんだよ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(゜ロ゜)?」

「こんな顔したお兄さん初めて見ました」

「待て待て、霊夢がゲームの主人公?じゃあ魔理沙は?アリスは?咲夜は?」

「全員登場人物だよ!」

「マジか……」

 

 まさかそんなことが、いや自身が実際に体験してきたことなのだからと混乱し実はあれは全て夢だったのではないかと一瞬自身の能力が存在しているかすら一度確認した。ちゃんとあり、共もちゃんといる。そこから少しづつ思い出すと、一週間前真は美鈴の、愛はアリスの名前を出していた。なぜもっと早く気付かない俺のバカ野郎と内心自分を罵倒すらし始める。

 

「で、他に誰と向こうで会ったんだぁ?」

「あと俺が向こうであったのは、もこたん、慧音、こーりん、ルーミア、チルノ、大妖精、リグル、ミスティア、レミリア、フラン、パチュリー、美鈴、小悪魔、ゆかりん、etc...」

「妖夢や幽々子にはまだ会っていないのですか?」

「誰だそれ?」

 

 東方プロジェクトを知っている者たちがなんとなく感付く。それを代表するように、真が問いかける。

 

「もしかして信兄、紅い霧とか見た?」

「あぁ、異変だよな。それがどうした?」

「ちょっと集合。信にいは待ってて」

 

 東方を知ってる者達が小さく円を作り会議を始めた。議題はもちろん信に何を伝えて何を伝えないかを明確にすることだ。

 

「兄貴は実際に紅霧異変を体験したわけか」

「言っちゃっても大丈夫なの?これからなにが起こるのか」

「ダメだろうな。ネタバレしたら次に向こうに信兄が行った時になんか悪いことが起きるかもしれない」

「例えば?」

「場合によっては何かしらの異変が解決されずに幻想郷が無くなっちまう可能性もある。」

「それだけは避けねぇとな」

「具体的にはどうすればいいのかな~?」

「信兄に、これ以上一切の幻想郷についての知識を与えないことだ。それに知識を持ってる俺達も行っちゃいけない」

 

 やる事、やってはいけないことを明確にするとこうなった原因に全員目を向けた。

 

「次はいつフランちゃんたちと遊べるかな?」

「明日にでも連れてってやるさ。あいつらも一緒に遊んでて楽しそうだったからな」

「やったー!」

 

 信の膝の上で無邪気に笑う双子を見て全員が和んだ。信がいなくなったことで一番わかりやすく落ち込んでいたのはあの二人なので、その兄姉は嬉しさを滲み出してしまう。

 

「羨ましい……じゃなくて、あいつらはどうする?」

 

 その中でも恭助だけは何故かこれから犯罪が起きそうな雰囲気を醸し出している。

 

「多分大丈夫。知識もないし、向こうで仲良くやってるんだったらあの子達はいってもあんまり影響受けないと思うよ?」

「姉貴、相当影響出るに決まってんだろ。だって風人と華だぞ」

「むしろいかせない方が悪影響だと思う。あの二人フランとも仲良くなってるみたいだから今更会わせないようにしてもそっちの方が悪影響だと思うぞ。そもそも俺はもうあの二人が泣くのを堪えてる顔を見たくない」

 

 彼の言葉で会議組は全員無言になった。しかし思うことは全員同じく、右に同意である。

 

「そうよ恭助。そもそも何か起きそうならお兄さんが何とかしてくれますよ」

「それもそうだなぁ。あとは俺達が我慢するだけ、か」

「残念だけど、私達が幻想郷に行けるのは相当先になりそうだね」

「決まったな。これ以上信兄に東方の知識を与えちゃいけない。もちろんキャラの名前もだ。ここで我慢すれば俺たちも幻想郷に行ける日がきっと来る。全員それまで我慢だ」

「「わかった」」

 

 以上をまとめ終えると真がそれを伝える。彼が話すのを信は時折聞き返し、自分の中で考えをまとめそれが終わると了解の意を伝える。何事もなく終えると安心して肩を落とした。

 それは他の皆も同じで緊張した空気がやっと無くなったことで、全員がやっと本当に聞きたいことを聞く質問タイムが始まる。

 

「そういえばお兄さん。弾幕ごっこはもうやったんですか?」

「やったよ、ほら」

 

 手の平から小さな霊力弾をいくつも放出した。それはまるで暗闇に漂う蛍のように美しく、手で包み込んだり、息を吹きかけて見たり、食べてみたりと対応は様々だがその場の全員がそれに夢中になった。

 

「ついでに飛べるぞ」

 

 弟妹の反応が嬉しかったのか、ご機嫌になり次を披露することにした。丁度前を空が通っていたので彼女を捕まえ、膝に乗せがら宙を舞い始める。

 

「我困惑!兄上放す!じゃなくて放さない!!」

「はっはっは!」

 

 固定もあくまで信の腕だけ、更に縦の回転もちょいちょい加えるのでそこらの絶叫マシンより普通に怖い。

 

「信兄すげえええ!!」

「次僕!」

「私もやりたーい!」

 

 高身長による肩車のように、下のメンバーによって予約がみるみる埋まっていく。この一週間あまり見ることが出来なかったであろう賑やかな光景が居間に溢れた。

 

「信兄、頼みがあるんだけど」

「なんだ?」

「幻想郷であった事は色々話してくれない?行かないとは決めたけど、やっぱり何があるかは気になるしさ」

「もちろん。楽しみにしとけよ?」

「やったー!」

 

 現在空中にいる愛が両手を挙げて喜んでいる。それは地面に足をつけていてメンバーも同じことで、皆がそろって歓喜の声を上げた。そしてこの質問タイムは、就寝時間ギリギリまで賑やかに続いた。

 

 

 

 皆が自室に戻り始めた頃、名前を覚えきることが出来たのか今まで無言だった共が和んだ雰囲気で話した。

 

『確かに、紫をあんなに怒るのも今なら分かる。戻れてよかったな』

『ああ。戻ってこれてよかった』

 

 自分が最後になった居間の電気を消し、ゆっくり歩きながらそう心の中で何度も繰り返す。それだけ嬉しく、重大なことなのだ。

 時刻は23時。普段なら既に寝ているはずの彼の歩みは暫くぶりの自室ではなくちょっとした事件が起こりかけた玄関に向かっていた。

 

「コト。話がある」

「クゥウン」

 

 玄関にいるのはそこで眠っているコト、モコの二匹だ。しかしコトに対して今の信だからこそ持つ違和感があった。一言だけで事は彼の後を付いていき、今度こそ信の自室に向かっていった。

 向かってゆっくり座り込むと、さっそく本題に入り疑問をぶつけ始めた

 

「単刀直入に聞くぞ。お前、普通の犬じゃないな?」

「……遂にその膨大な力をモノにしましたね。(あるじ)

 

 特異とは言っても相手は犬。言葉を理解することは出来ても話すことは出来ない。その常識の元『共有する程度の能力』でモコの思考を共有して対話を行おうとしていたのに当たり前の用意喋りだしたので流石の信もこれには驚いた。

 

「話せるのか……でも聞きたいことは変わらないぞ。普通の犬じゃないよな?」

「はい」

 

 すぐさま肯定の意が帰ってくる。では結局何者なのだと思いその続きを待つが、再度口を開く素振りが全く見えない。 

 

「終わりか?」

「質問にはお答えしたと思いますが……」

 

 不思議そうな顔で返されてしまったため信も少し困惑した後、「ああ……」と納得した。あくまで聞いたのは『普通の犬かどうか?』という質問だけでYESかNOで答えてしまえばそれで終わりなのだと。コトはかなり頭が固いことを頭に入れて質問を改める。

 

「悪い、今のはこっちが悪かったな。お前は何者なのか、モコはどこから連れてきたのか、どうして倒れていたのか、なぜ話せるのか。これを教えてくれるか?」

「御意。最初の質問ですが、私は俗に『神狼』と呼ばれる者です。何の力も持つことが出来なかった……ただの神狼です」

「『無かった』って言うのはどういうことだ?」

「私は生まれてすぐに力を集める事が出来なかったのです」

「なんで出来なかったんだ?」

「我々神の類いは、主に誰かの強い願い等によって生まれ、その者達の信仰によって力を得ます。質問の順序は変わりますが、私の場合はそれを得られず、弱り、倒れてしまいました」

「その倒れていたお前を拾ってきたのが俺か」

 

 その通りですとコトは頷く。信は今まで目の前にあった非現実的なことをゆっくりと噛み砕き、受け入れてながら更に話されるコトの事情を聴き続ける。

 

「弱り切っていた私は力を取り入れる必要がありました。ですので主から漏れ出ている霊力を少しばかり拝借させて頂き、私は回復することができました。ですので現在、私に必要なのは信仰の力ではなく霊力となっています」

「一週間も居なかったが大丈夫だったのか?」

「その辺はご心配なく。最初は主から霊力を頂いておりましたが、ご飯を食べれば自分で生成出来るのだと七年程前に分かりましたので、それからはずっと自給自足です」

「拾ってきてすぐの時は全然ご飯食べなかっのはたそういうわけか。あの時すごい心配したんだからな」

「申し訳ありません」

 

 ピンと立てていた尻尾を倒し、申し訳なさそうに謝罪した。根本的な習性はやはり犬に近いのかと少し面白く感じる。

 

「でも良かったよ。お前が少し特異だって分ってから少し警戒してたんだ。「フハハハハハ!!!よくも今まで気付かず力を与えてくれたものだ!」とか言い出したらどうしようかと思ってからな」

「主は私を一体何だと思っておられたのですか?」

 

 声色と共に倒れた尻尾をブンッ、ブンッと振り始め分かりやすく不機嫌になった。

 

「俺の霊力とコトの霊力の性質がほとんど同じだったからな。量もそれなりにあったし警戒するさ」

「それもそうですが……ですが私は「フハハハハハ!!!」などと笑ったりましません」

「悪かったよ。でも今はこうしてお前自身からちゃんと色々聞けて良かった。改めてよろしくな、コト」

「……はい。こちらこそよろしくお願いします!主」

 

 

 信に頭をやさしくなでられ自信を本当に受け入れて貰ったことから再び尻尾の振り方が変化する。今度はご機嫌なようで、この様子だけなら本当にただのワンコである。

 一番の心配事も取り除かれたので信は部屋においてあるペットボトルのお茶に手を伸ばした。ここまで話しっぱなしだったので少しのどが渇いたのだ。

 

「それで、モコはなんなんだ?お前が急につれてきたが」

 

 モコとは3ヶ月程前にコトが背中にのせてきた子犬だ。ほとんど普通の犬と変わらないがおかしいと思っていたところはある。

 

「あんなに恐ろしい早さで成長する犬見たこと無いぞ?」

 

 そう。おかしな点とは成長速度である。

 本来ワンコは1~3ヶ月が幼児期、4~6ヶ月が少年期と言われており少年期の成長が最も激しい。そのはずだが、モコは3ヶ月だというのに中型犬程の大きさに既になっていたのだ。成長が早い犬にしても早すぎる。

 ただそれも、今までの事から気を張って聞くようなことでは無いとお茶を一口飲みながら聞く。

 

「モコはニホンオオカミとホッキョクオオカミとハイイロオオカミの血が混じってはいますが普通の狼です」

「ゴフッ!!」

 

 普通に有名で異例な言葉を同時に複数聞いたため、普通にむせた。まず犬じゃなくて狼。次に狼の中でも有名な三種が何故か掛け合わされている。最後に絶滅したはずのニホンオオカミが混ざっている。これ聞いたら普通に誰でも驚く。

 

「大丈夫ですか主!?」

「ゲホッ……大丈夫だ。ニホンオオカミって絶滅したんじゃないのか?」

「彼らは数は減らしましたがひっそりと生きています。それで、モコを連れてきた理由ですが、モコは群れから追い出されたのです。あの子は生まれつき体が弱く、病気も持っていました。手を出すべきでは無いと思ったのですが……生きたいと必死に、何日も何日も吠え続けていましたので」

「病気はもう大丈夫なのか?」

「はい、それは既に解決しているのですが……」

 

 何やら煮え切らない返事をするが、それにも色々訳があったのだ。まずモコをここに連れてきたのは、病気を治すことも自分にはできないが、せめて最後くらいは家族の温かさを知って欲しかったからだという。

 だが、不測の事態が起きた。連れてこられたモコに信が近づいた途端、彼の中にある魔力を利用して自身の中に魔方陣を形成。そのまま病気を完治させたという事だ。

 しかもモコはそのことを覚えておらず、形成された魔方陣はコトにも全く理解のできないものだったという。

 

「元々ニホンオオカミは八百万の神々に遣える動物だったという説があります。その神々ならもしかすると不治の病を治すことのできる魔法を開発できてもおかしくありません。それに、あの日は綺麗な満月だったので、それに関係しているかもしれません。古くから魔法と月は切っても切り離せない関係なので」

 

 淡々と説明するコト。だが、話したことは全て仮説や想像に過ぎない。

 つまりモコが魔法を使えた理由というのは……

 

「簡単にいうと、よくわかんないってことだな」

「はい。よくわかりません」

 

 知識が無く分からないものはもうどうしようもないという事でこの話は終わった。切り替えの早さは主人に似たのかコトも次の話に乗り移る。

 

「最後に何故喋れるのかという事ですが、声帯だけ人間の物に変えているのです」

「へ~(完全に忘れてたなんて言えない)……ってことは人間になれるのか?」

「人の形を模したものにはなることが可能です」

「ちょっとやってみてくれ」

「主の願いならば、喜んで」

 

 クルンとその巨体で軽やかに宙返りすると、漫画やアニメでよくみられる煙と共にコトの姿は変化する。

 

「これが私の人間時の姿です」

 

 人間となったモコの姿は、身長は170cm弱、犬の時とおなじ白い髪をセミロングにしている。尻尾は腰のあたりから生えており、耳も犬のようなものが頭部から生えていた。顔は整っているが高めの身長にしては少し幼い印象を覚える。そして胸もそれなりに膨らんでいて成人した女性の平均よりも大きそうだ。

 

「……服着ようか」

「そうですね」

 

 無からウールや絹が生成されるはずもなく、彼女の裸体を隠すものは当然ない。なにも無い!

 

「ちょっと待ってろ。確か俺が昔来てたのがまだどっかにあったはずだ」

「「信兄。ちょっと話……が……」」

 

 コトに着せるための服を捜索していたところ、突然信の部屋の扉が開けられた。

 

「げっ……」

「真殿、愛殿。ご無沙汰しております」

「え、ちょ、なっ!」

「見ちゃダメ真。まだあなたには早い」

 

 2人の目の前には素っ裸の犬耳を生やした女性が座っている。更には誰に見られようとたわわな丘を隠そうとしないのだ。そんな光景に完全に混乱している双子の兄の両目を塞ぎ、もう一人の兄には軽蔑の目を向ける。

 

「お兄ちゃんのエッチ!変態!ケモ耳マニア!!」

「ちょっと待て!話せばわかる!頼むから待ってくれ!!」

「厄介なことになりましたね」

 

 明渡兄弟のいざこざはまだ続く。

 

 




明渡 空 (あけど そら) (12) O型 身長148cm 誕生日4/10 セミロング Aカップ
会得している格闘技・武道:剣道
明渡家14人兄弟の三女。一卵性の三つ子の一番上。
剣道は信と父方の祖父に習った。マッサージも海と一緒に信から教わった。
料理は愛に習ったから簡単なものは作れる。それ以外はまだできない。
頭はいいが、たまに天然。
膨らむ気配の無い胸に不安を覚えている。
左側の目元にほくろがあるのが空。
東方は兄がプレイしているのをよく見ている。好きなキャラは妹紅と輝夜。




明渡 海 (あけど うみ) (12) O型 身長148cm 誕生日4/10 セミロング Bカップ
会得している格闘技・武道:剣道
明渡家14人兄弟の四女。一卵性の三つ子の真ん中。
剣道は信と父方の祖父に習った。空と海が一緒にマッサージした人は溶ける。
頭はいいわけではないが上の兄弟によく教わるので成績は優秀。
最近膨らみ始めた胸を気にしている。
右側の目元にほくろがあるのが海。
東方は空に聞いただけでキャラしか知らない。好きなキャラは魔理沙。




明渡 陸 (あけど りく) (12) O型 身長153cm 誕生日4/10 スポーツ刈り
会得している格闘技・武道:柔道
明渡家14人兄弟の四男。一卵性の三つ子の一番下。
剣道は信と母方の祖父に習った。
頭は悪いため兄弟に勉強を教えてもらうことが多い。
手先が器用。空と海の髪のセットをよくやっている。
アニメ『天元突破グレンラガン』を見て男気を学んだ。
東方は名前しか知らない。




明渡 強太 (あけど きょうた) (9) O型 身長140cm 誕生日4/3 短髪
会得している格闘技・武道:無し
明渡家14人兄弟の五男。一卵性の四つ子の一番上。
生まれた順番をあまり気にしていない。4人とも仲がいい。
考えてるときに顎をさわるのが強太。四つ子の中で一番目がいい。
東方は真に聞いたがよくわからなかった。





明渡 広美 (あけど ひろみ) (9) O型 身長140cm 誕生日4/3 背中までのロング
会得している格闘技・武道:無し
明渡家14人兄弟の五女。一卵性の四つ子の二番目。
静を女性としての目標にしているため髪を伸ばしている。
四つ子のなかの抑制係り。
四つ子の中で一番舌がいい。
東方はストーリーは知っている。好きなキャラは慧音。




明渡 高太 (あけど こうた) (9) O型 身長140cm 誕生日4/3 強太と同じ
会得している格闘技・武道:無し
明渡家14人兄弟の六男。一卵性の四つ子の三番目。
四つ子の男3人に外見的な見分け方はない。信と保護者組だけ見分けれる。
兄弟の中で一番信を尊敬している。
考えてるときにこめかみを掻くのが高太。四つ子の中で一番鼻がいい。
東方はきゃらだけ知っている。好きなキャラは咲夜、小悪魔。





明渡 深太 (あけど しんた) (9) O型 身長140cm 誕生日4/3 高太と同じ
会得している格闘技・武道:無し
明渡家14人兄弟の七男。一卵性の四つ子の一番下。
見分けがつかないことを利用してよくイタズラをする。本人たちもたまに間違える。
考えてるときに腕を組むのが深太。四つ子の中で一番耳がいい。
東方は知らない。




明渡 華 (あけど はな) (4) O型 身長113cm 誕生日4/9 ツインテール Aカップ
会得している格闘技・武道:無し
明渡家14人兄弟の六女。二卵性の双子の姉。
無邪気な体力お化け。笑顔が絶えない。甘いものが好き。
東方は知らない。






明渡 風人 (あけど かざと) (4) O型 身長112cm 誕生日4/9 真に似ている
会得している格闘技・武道:無し
明渡家14人兄弟の八男。二卵性の双子の弟。
華ろ同じく無邪気な体力お化け。ご飯を美味しそうに食べる。
東方は知らない。





トモ ♂ (4) 雑種の黒猫。
モモ♀ (5) 雑種の白猫。

4年前に雨の中、段ボールに入って衰弱していたところを真と愛が連れてきた。
明渡家の人間には懐いているが他の人には激しい人見知りを起こす。
寝るときは一緒に寝ている。


モコ ♂ (3ヶ月) 普通の狼。
2ヶ月半前にコトが背中に乗せてきた普通の狼。
コトの事を本当の母親のように慕っている。自分の事を追い出したら群れのことは恨んでいるわけではない。
群れからはぐれた日本狼と密輸入された灰色狼の間に生まれた狼と、逃げ出してきたホッキョクオオカミの間に生まれた。
とても人懐っこい。トモやモモとも仲がいい
毛がもこもこで人をダメにする獣



コト(狼時) ♀ (8) 超白い神狼
体長195cm(鼻の先端から尾の付け根まで)
大分でかい。 真とか愛でも2人で余裕でのれる。
8年前に道端に倒れているところを信が小3の時に連れてきた。
正体を明かそうとしていたがタイミングがつかめず、ずっと犬として過ごしていた。
よく風人や愛が背中にのっている。
体長の問題で定員オーバーになるが、本当はもっと乗せれる。
近所の犬に尊敬されている

コト(人型時) 168cm Fカップ
髪は白く、狼時と同じく頭からは犬耳が、腰からは尻尾が生えている。
服を着る習慣がないためどうしても服に違和感を覚える。
信がこしらえた服はしっくり来るらしい。
狼時よりも霊力の扱いがうまくなる。







狼が云々は全部私が考えたことです。そんな説はあるかもしれないですが多分無いです。この小説のなかだけでの設定ととってください


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第18話【真実】

おはこんばんにちは。さまりとです。
そういえば次の異変ですが、オリジナルのやつを短めにいれようと思ってます。
まだ先の話ですが。
それでは、ゆっくりどうぞ。


「……で、この人誰?まさかお兄ちゃんがこんな性癖あったなんて思わなかったけど」

 

 コトに服を着せてから2人を呼び戻した。

 突然行方不明になったあげく、帰ってきたその日にナイスバディでけも耳の女性を裸で自分の部屋に連れ込んでいる。

そんな場面に出くわしたのだからさすがにちょっと不機嫌だ。

 

「どう説明したもんか……」

「すべて話してしまってはいかがですか?愛殿も真殿も非現実的なことは体験してますし」

「それもそうだな。いいか、2人とも。こいつはコトだ」

「「コト?」」

 

 何を言ってるのか分からないといった顔で再び沈黙が訪れた。

 

「見せた方が早いな。コト、狼モード」

「はい」

 

 短く了解するとまた煙を出して変身した。

 そして二人は目にした。煙の中から出てきたのはいつも自分達を出迎えてくれる4匹の獣の内の1匹。先程の女性が来ていた服を背中にのせたワンコのコトを。

 

「「……コトおおお!?」」

「実はこいつ神狼だった」

「何てこった……」

「非現実は身近にあった」

 

 ショックを受けてるなかコトは人間モードに戻った。

 

「どうします?他の皆さんにも打ち明けますか?」

「いや、もう少し待とう。幻想郷が実在しただけでもみんな興奮してたんだ。お前達のことはもう少し後に話そう。」

「たち?」

「お前達には先にいっとくが、モコも狼だった。しかも日本狼と灰色狼と北極狼の混血のな」

「犬が一匹もいないって……」

「コトもやたらでかいとは思ってたけど……」

「それでお前達の話ってのはなんだ?」

「あっ!そうだった」

「信にいさ、紅霧異変の解決に多分関与したよね」

「あぁ、したよ」

「それに多分フランとも仲良くなってるよね。さっき風人達との話を聞いてる限り」

「……ああ」

「で、信にいの能力を聞いてなんとなくわかったんだ」

「信兄、『狂気』、連れ帰ってきてるよね?」

 

 正直驚いた。異変解決に関与したことは想像できても共を連れて来てることを言い当てられるなんて思っていなかった。

 

「お前達に頭が回るな。正解だよ。でももうこいつは狂気じゃない、共だ」

「名前もつけたの?」

「これからずっと一緒にいる身だしな」

「主よ、それはどういうことですか?」

「今俺の中には、俺の他にもう一人の人格がいるんだ。変わるか?」

「出来るの?」

『共、頼めるか?』

『断る理由もないし、お前の兄弟達とも話しておきたい。こっちからも頼むよ』

『ついでに見た目もお前にするか。その方が分かりやすいだろうし』

『その辺は任せる』

「出来るよ。共もやってほしいって言ってるし」

「なら早速お願い」

(今日の姿を共有する)

『じゃあ任せるぞ』

 

 体を変化させながら意識を交換する。体は光を放ち全く別の姿へ変化する。

 

「さっき紹介された共だ。お前達の兄には世話になっている。どうぞよろしく」

「「「……………え?」」」

「どうやらあまり歓迎されてないらしいな」

「いやいやっ、違うよっ!」

「ただちょっと予想外なだけで」

「服大丈夫ですか?」

 

 186cmからいきなり160くらいにからだが縮んだため、服がギリギリうまいこと引っ掛かって見えない状態だ。

 

「そんなに長くこのままのでいる気はないしな」

「その姿って……………」

「信に名前を貰ったときにこの姿になったんだ。恐らくフランドールの体に長年いたからだろう。」

「むぅー………」

「どうした愛?」

「負けた……」

  

 そう言いながら胸元を押さえている

 

「まだまだ望みはありますよ」

「それに私の場合はマジででかくてもいいこと無いからな。あんたが羨ましいよ」

「悪意の無い励ましが余計に辛いっ!!(涙)」

「そろそろ本題に入ろう。共、俺達はあんたが信にいの体を乗っとるんじゃないかを心配して話をしに来たんだ」

「そんなことはしないさ。私を封じ込めないだけじゃなく、長年願っていたことを叶えてくれた。少なくとも今は信に感謝している。あんた達の言うようなことは起こらないものだと思ってもらいたい」

「まあ、信が自由にさせてる時点で悪いやつじゃないってことはなんとなくわかってたけど」

「まさかフランが成長したみたいな姿だとは思わなかったけど」

「それは私たちも驚いたよ。元々黒いもやみたいな姿だったからな」

『共、そろそろ戻ろう。眠くなってきた』

『そうか』

「信がもう眠いらしい。そろそろ戻るよ」

「あ、ちょっと待って」

「ん?どうしひゃいっ」

「ぶっ!」

「これはなかなか」

 

 愛が共の二つの大きな膨らみを手中におさめた。

 

「一体なにをっ!?」

「いや~、多分共ちゃんのこの姿にはしばらく会えないと思ってね。今のうちに楽しんでおこうと」

「もともとこの体は信のだぞ!兄貴のなんか揉んで嬉しいのか!?」

「今は共ちゃんだから問題なし!」

『信っ!助けてくれ!』

『なかなか悪くない光景だからもう少し見てたいんだが』

『いいから早く戻ってくれ!お前の妹の目が怖い』

『仕方ないな~』

 

 姿を元の信の姿に戻す。

 

「戻っちゃった」

「感想は?」

「柔らかいながらも張りがあって……82点!!」

「おー!なかなか高得点だな」

『なんの点数だよ……』

『愛は結構辛口なんだぞ?平均点は52点だ。よかったじゃないか』

『嬉しくない』

「共も高得点喜んでるぞ」

『おいっ!』

「てかそろそろホントに寝よう、明日は警察の人も来るし。もう12時になる」

「ホントだもうこんな時間か」

「それじゃおやすみー」

「おやすみなさい」

「おやすみ」

「あぁ、おやすみ」

 

 みんな自分の寝床に戻っていった。

 

『はあ、お前の兄弟もなかなか変なやつが揃ってるな』

『違いないw。けど、充実してるだろ?』

『あぁ、飽きなさそうだ』

『素直じゃないな。俺もそろそろ寝るよ。おやすみ』

『おやすみ。今日はゆっくり休もう』

 

 こうして明渡家は全員寝た。全員が安心して深い眠りについた。




明渡 共 (495?) 161cm フランと同じ髪型 DよりのCカップ
『共』の名前がついてとき成長したフランみたいな姿になった。
姿が変わってからちゃっかり一人称を変えている。
睡眠を必要としないため、信が寝た後人知れずに何かしている。







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第19話【睡魔と格闘】

午前4時

 

 

 

「ふあ~。よく寝た。」

『4時間しか寝てないぞ。』

「今日は昼寝もするつもりだからな問題ない。」

 

明渡家の朝は早い。とはいってもこんなに早く起きるのは恭助から上のやつだけだ。幼いうちから朝練は成長によくない。けど、休みの日でも全員6:30までには起きるので健康的だ。

 

『1つ聞いていいか?』

『ん?どした?』

 

顔を洗い歯を磨いていると共が質問してきた。

まあ、疑問になるのも無理はないが。

 

『家ってこんなに広いものなのか?』

『多分こんなにでかい家はなかなか無いだろうな。』

 

明渡宅はとてもでかい。紅魔館よりもでかい。正確には広い。道場もあり庭もあり、客室も相当数ある。初めて来た客人は基本的に迷うレベルだ。

 

『父さんが俺が3歳の時に宝くじで6億当ててな、その金で結構でかい山を買ってそこにこの家をたてたんだよ。親戚も結構多いから広い方がいいって。』

『お前の兄弟は飛べないんだろ?出掛けるとき大変じゃないか?』

『大変だが、お陰でみんな強靭な足腰と無尽蔵の体力を手に入れました。』

 

説明しながら移動してると道場についた。

 

「ん?静おはよう。早いな。」

「おはようございます、お兄さん。」

 

いつもは信が一番なのだが、今日は先客がいた。

 

「稽古はサボってないな。」

「むしろみんなお兄さんがいなくなった日からすごい頑張ってましたよ。」

「帰ってこない方がよかったかな?」

「……はぁ。そんな事みんなの前では絶対言わないでくださいよ?本当に死んじゃったんじゃないかって心配してたんですから。」

「すまんすまん。それより誰もまだ来てないし、試合してみるか?」

「そのつもりで来ましたから。」

「そうか、じゃあアップ終わったらやろう。」

 

 

 

「今日は何を使うんですか?」

「今日は護道の気分。相手がいないと実感わかないし。」

「相変わらず余裕ですね。」

「余裕は常に100%力を出すために必要なことだ。油断するのとは意味が違うからな。」

「もう何回も聞きました。」

「何回でも言うさ。」

「では、参ります!!」

「来いっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

静「参りました。さすがにまだ勝てませんね。」

信「一生負けないつもりだよ。だが本当に頑張ってたみたいだな。1週間前に比べてキレも増して速くなってる。」

静「お兄さんに言われると自信がつきます。」

信「そりゃあよかった。」

真「信にい俺ともやってよ。」

愛「真の次私!」

恭助「じゃあ俺が最後か。」

 

静との試合中に来た3人が争うことなく順番を決める。明渡家ではこういうことはいったもん勝ちにしている。

 

信「なんなら全員いっぺんにかかってきてもいいぞ?」

真&愛&恭助「「「タイマンでやりたい。」」」

信「そういうと思ったよ。1人10分だ、完全無傷で終わらせてやる。」

 

 

 

 

・・・・・30分後・・・・・

 

 

 

 

真「いつになったら勝てんだろ。」

愛「しかもこっちも無傷だからね。」

恭助「清々しいほどの完敗だよ。」

信「一生負けんさ。そろそろ朝飯の準備しにいってくるよ。お前らはまだ続けてていいぞ。」

真「献立は?」

信「お楽しみだよ。」

『全員分信だけで作るのか?』

『あぁ、量を作るのはそんなに苦じゃないしな。』

 

道場を後にして朝食の準備に取りかかる。時刻は5時。7時位に完成させる予定でいいかな。

 

 

 

・・・・・調理中・・・・・

 

 

 

「フンッフンッフン♪フンフフッフン♪コロコロ転がす~♪」

四つ子「「「「おはよ~。」」」」

風人&華「「おはよーーっ!!」」

信「おはよう。」

 

6時くらいに四つ子と末っ子組が起きてきた。いつもに比べちょっと早い。

 

信「今日は早いな。」

広美「昨日はみんなのすぐ寝付いちゃったからね~。」

深太「今日は信にいがご飯つくんの?」

信「そだよ。出来るまで時間あるからモコとコトの散歩にいってくれないか?」

双子「「いくっ!!」」

強太「ご飯何時頃に出来るの?」

信「7時くらいだよ。それまでには戻ってきてくれ。」

高太「はーい」

深太「いってきまーす。」

信「いってらっしゃい。車に気をつけろよ。」

(散歩コースに車が通る道なんて無いけどな。)

『狼に散歩なんて必要なのか?』

『コトはともかく、モコは必要だな。狼って言っても実際は犬としてあんまり変わらんらしいし。』

 

 

三つ子「「「おはよー。」」」

10分後に三つ子が起きてきた。

信「おはよう。空、海、寝癖すごいぞ。」

海「まあね✨」

空「これもまたよし。」

信「良くないよ。陸、直してやれ。顔もついでに洗ってこい。」

陸「了解。空、海、行くよ。」

空&海「「はーい。」」

 

 

 

信「よし、完成っと。」

愛「信にい~、ごはんできてる?お腹減った~。」

信「丁度よかった。今完成したから運ぶの手伝ってくれ。」

風人&華「「ただいまーっ!!」」四つ子「「「「ただいまー。」」」」

信「おかえり。もうすぐ準備できるぞ。」

 

 

 

 

一同「「いただきます。」」

静「さすがですね信お兄さん、美味しいです。」

信「そう言ってくれると嬉しいよ。そういえば今日警察の人がくるんだろ?いつ来るんだ?」

真「1時くらいに来るらしいよ。信にいが帰ってきたの連絡しといた方がいいかな?」

信「頼むよ。俺午前中は向こうに用事あるからさ、昼飯も頼む。」

真「了解。」

愛「わかったけど、向こうで何かあるの?」

信「俺慧音の寺子屋で働いてるんだよ。夏休み中はずっと行こうと思ってる。」

恭助「絶対やってると思った。」

静「風人と華も連れていくんですか?」

信「うん。あいつらにもいい機会だと思うしな。」

海「勉強の魔の手がついに華達にも・・・。」

空「それもまたよし。」

陸「それ気に入ったの?」

信「ごちそうさま。じゃあ準備してくるよ。後始末よろしく。」

真「了解」愛「がってん。」静「わかりました。」恭助「了解。」

信「風人、華、食べ終わったらチルノ達のところにいくぞ。」

風人「ふぁーい。」

華「むん。」

 

風人と華は口いっぱいに頬張りながら答えた。癒される。

 

 

 

信「行ってきます。」

華&風人「「きまーすっ!!」」

 

準備を整え慧音の所へ移動する。

 

「おはよう慧音。」

「うわっ!なんだ信か。心臓に悪いな君の能力は。」

「誰かのところじゃないと移動できないっぽいんだよな。」

「さすがに万能というわけではないか。...確か華に風人だったな。おはよう。」

「「おはようございますっ!!」」

「今日はこいつらにこれからしばらく授業受けさせてもらってもいいか?まだこいつら勉強したこと無いんだ。」

「構わないよ。よろしくな。私のことは覚えてるか?」

「「けいねおねえさんっ!」」

「フフッ、元気がいいな。ここでは私のことは慧音先生と呼ぶんだ。わかったか?」

「「はいっ、けいねせんせー。」」

「かわいいやつらだな。1人くれないか?」

「やらん。」

「冗談だよ。そろそろ行こうか。」

 

慧音と共に教室に向かった。その道中で華と風人は珍しいものを見るようにキョロキョロしていた。

 

「授業を始める前に今日から少しの間仲間が増えることになった。」

「あけどはなです。よろしくおねがいしますっ!」

「あけどかざとです。よろしくおねがいしますっ!」

「みんな仲良くしてやってくれ。2人はあそこに座ってくれ。」

 

2人の席は丁度チルノと大妖精の後ろの席だった。昨日一緒に遊んだこともあって嬉しそうにしている。人見知りがあまりない2人なら他の子達ともすぐに仲良くなるだろう。

 

「よしっ、はじめるぞ。まず今日は...」

 

 

 

「今日はここまでだ。おつかれ。」

 

今日の授業が終わった。風人と華がなにかを探すように辺りを見回しいていた。

 

「どした?」

「フランちゃんどこにいるの?」

「あぁ、フランか。ここにはいないよ。」

「なんで?」

「あいつはここに通ってないんだ。家庭の事情で。」

「じゃあ一緒に遊べないの?」

「今連れてくるよ。弁当食って待ってなさい。」

 

そう言いながら作っておいた弁当を渡す。

 

「ちょっといってくるな。」

 

紅魔館の門のところに移動した。

 

「っと。よう、美鈴。ちょっと中入っていいか?」

「・・・。」

「美鈴?」

「zZZ」

「・・・お邪魔しまーす。」

 

寝ている美鈴をスルーして門をくぐった。

 

「誰かいませんかー?」

「お嬢様のお客様ですか?」

 

背中からチルノ達のような羽を生やしたメイドがいた。

 

(妖精かな?)

「フランに用事があるんだ。今どこにいる?」

「妹様方は今食堂にいらっしゃいます。こちらです。」

 

妖精メイドに案内されて食堂に向かった。だんだんと食欲がそそられるいい匂いが充満していった。

 

「こちらです。少々お待ち下さい。」

 

止まったところには他の部屋とは違う形状をした扉があった。ここが食堂のようだ。

 

「お食事中失礼します。お客様をお連れしました。」

「お邪魔しまーす。」

 

食堂にはいるとみんなはもうすでにデザートを食べていた。

 

「あっ、お兄さま!」

「あなたを招いた覚えは無いんだけど?」

「勝手に来たからな。」

「それで、何のようかしら?」

「そうだった。フラン、遊びに行こう。」

「えっ、でも...」

「今は行かせられないわ。」

「どうして?」

「私たち吸血鬼は太陽の光が弱点なのよ。だから昼間から外にはあまり出られない。」

「それなら俺の能力で平気にできるぞ。」

「えっ!?」

「ほんとにっ!!」

「本当だよ。それなら問題ないだろ?」

「え、えぇ...。」

「フラン、いくぞ。」

「うんっ!」

 

デザートだったプリンを食べ終え、信のもとに駆け寄った。

 

「いってきます!」

「楽しんできなさい。」

「行ってらっしゃいませ、妹様。」

「そうだ咲夜、美鈴門の前で寝てたぞ。」

「...わかったわ。」

 

職務怠慢を報告して信はフランと共に消えた。

 

「お嬢様、少しの席をはずさせていただきます。」

「いってきなさい。」

 

咲夜が姿をその場から消した。能力を使い美鈴のところに行ったのだろう。

部屋の中にはレミリアとパチュリーと小悪魔だけが残った。

 

「レミィ、あなたはよかったの?」

「たしかに魅力的な話だったわね。でも今はいいわ。」

「どうして?」

「なんだか嫌な予感がするのよ...。」

 

その予感は的中することになる。

 

 

「っと、連れてきたぞー。」

「みんなっ!」

 

フランはチルノ達の所へ駆け寄っていった。日の光も問題無さそうだ。

 

「風人、華、あんまり遠くに行くんじゃないぞ。」

「「はーい。」」

「お兄さまは一緒に遊ばないの?」

「俺向こうで用事があるんだ。悪いけどみんなと遊んでてくれ。」

「...うん。」

 

納得はしたようだが少し寂しいそうな顔をしていた。

 

「用が終わったら戻ってくるさ。そしたら一緒に遊ぼう。」

「うんっ!」

 

嬉しそうな顔をしてみんなと一緒に遊びにいった。

 

(いくか。警察の人に何て説明しようか。)

 

言い訳を考えながらコトと座標を共有した。

 

 




どうしても登場人物の出る回数に差が出てしまいます。難しい。


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第20話【結果】

おはこんばんにちは。さまりとです。
少し間が開いてしまいました。ごめんなさい。
では、ゆっくりどうぞ。


 

 

ピンポーン

 

「来たかな?」

 

戻ったあと昼飯を食べ、警察の人にする言い訳を考えていたら1時ぴったりにインターホンがなった。四つ子と三つ子が遊びに行き、恭助は部活で静は図書館に行っているため今家にいるのは信と真と愛だけとなっている。

 

「俺がいくよ。玄関でいきなり会うのはちょっと気まずいでしょ?」

「頼むよ。」

 

真が気を使ってくれたようで玄関に向かった。

足音がだんだんと近くなってくる。そしてその足音を発していた人物が表れた。

 

「今までどこにいってたんだ?信。」

春人(はると)伯父さん!」

「電話がきたときはビックリしたぞ。お前がいきなり失踪したってすげえ声色で真達が言うもんだから。」

『この人は誰だ?』

『明渡 春人。俺のお父さんの弟だよ。よく子供をつれて遊びに来るんだ』

「ご迷惑お掛けしました」

「まぁ、お前のことだから何かしらあったんだろ。そういえば兄貴も昔、1週間くらい失踪したことがあったんだよ。やっぱり親子だなぁ」

「父さんも?」

「おっと、この話はあんまり口外するなって言われてたんだった。今聞いたのは忘れてくれ。...そろそろ俺も仕事しないといけないからな。この1週間何があったか詳しく説明してほしい。」

「...これから話すのは本当の事なんだ。疑わないで聞いてほしい」

 

今まで起きたことを東方関連のことを除いて話した。

 

「...つまり異世界に行って、そこのお偉いさんに妨害されて1週間もいなくなってたと」

「そういうことなんだよ」

「マジか……。羨ましいなおい」

「信じてくれるの?」

「信じるさ、俺はな。俺に嘘が通じないこと知ってるだろ?……だけどこっちの上司になんと報告したものか...」

「それなら山籠りで修行してたことにするといいよ。この山は結構広いし、基本誰も入ってこない。1週間くらいなら見つからなくても不自然はないと思う。」

「ん~、とりあえずそれで報告しておこう。一応口裏は合わせておいてくれ。多分通ると思うけど。」

「よろしくおねがいします。あと異世界にいったっていうのは内緒で。」

「わかってるさ。今度失踪するときは事前に報告しろよ。」

「善処します。」

 

気持ちを楽にさせるためか軽い冗談をいって春人は署へ帰っていった。

 

「信にい。どうしても幻想郷のことを話さなかったの?」

「念のためさ。東方は相当広い範囲で知られているからな。悪気もなくどこかから情報がもれたら色々面倒だと思ったんだよ。」

「なるほど。」

「で、お前ら来るのが春人伯父さんって知ってただろ。」

「なんのことかなぁ~♪」

 

愛が面白そうにいっている。

 

「はあ、無駄に緊張した。フランたちと遊ぶ約束してるからいってくるよ」

「そういえば信にい、夏期講習とかはいかないの?」

「期末テストでの上位5名はでなくてもいいんだよ」

「ちなみに何位だったの?」

「1位」

「さすが」

「じゃあ行ってくるよ。多分5時くらいには帰ってくるから。」

「「いってらっしゃい。」」

 

能力で大妖精のところに移動する。

 

「わあっ!し、信さんっ!」

「よう、大ちゃん。今なにy「しーー。」」

 

悲鳴をあげた大妖精だったがはあわてて人差し指を口に当てて静かにするように示した。

 

「大ちゃんと信見つけたのかー!」

「かくれんぼか、ごめんな大ちゃん。」

「いえ、多分見つかってたと思いますし...」

「大ちゃんたちで最後なのかー。」

「終わり時みたいですし。」

 

ルーミアに見つかりみんなが待っていると言うところに向かった。

 

「そういえばチルノに変わった様子はないか?」

「はい。今はなにも問題は無さそうです。」

「それはよかった。」

「「おにいちゃんっ!」」「お兄さまっ!」「信っ!」

 

先に見つかってたやつらがいる場所についた。

 

「よう。用事終わったから遊びに来たぞ。」

「次はなにしようか。」

「ケードロやろう。」

「遅れてきた信が鬼ね。」

「いいだろう、すぐに全員捕まえてやる。」

「「逃げろーっ!」」

「わはー♪」

 

風人も華もみんなと仲良くなれてるようで何よりだ。

 

「28...29...30。よしっ、いくか。」

 

それから帰る時間までとにかく遊んだ。ここ最近楽しいことばかりだ。

 

 

 

「そろそろ帰んないとな。」

 

ひとしきり遊び時刻はすでに夕方の5時。夕飯の準備に大体2時間前後かかるのでそろそろ帰らなければいけない。

 

「もう帰っちゃうの?」

「さすがにいつまでも遊んでるわけにはいかないしな。」

「また明日みんなで遊びましょう。」

「あぁ。風人、華、帰るぞ。」

「「はーい。」」

「しばらく2人はこっちに通わせようと思ってるんだ。遅くなったが、みんな仲良くしてほしい。」

「もちろんですよ。」

「これからもよろしくね。」

「なのかー。」

「「うんっ!」」

「じゃあなみんな。また明日寺子屋で。」

「「バイバイっ!」」

 

信たちは玄関にいるコトの所へ移動した。

 

「「「ただいまー。」」」

真「おかえり。もうご飯の準備始めてるよ。」

信「悪いな。なんか手伝うか?」

愛「じゃあ信にいは洗い物やっといてちょうだい。」

信「了解。」

 

3人で夕飯の準備を始めた。学校のない日は7時に食べ始める。ゆっくり準備すれば丁度良さそうだ。

 

 

 

信「洗い物おわったぞー。」

 

あとは食べ終わった後のものしかない。

 

(でもなんか忘れてるような...。)

風人「お兄ちゃん。」

風人がズボンの裾を引っ張ってきた。

信「ん?どうした?」

風人「弁当箱。」

信「あぁ、それか。」

 

確かに昼に風人たちに渡した弁当箱はまだ洗っていない。

 

信「どこに置いてたか覚えてるか?」

風人「寺子屋にある切り株においてきた。」

 

寺子屋の周辺は少し林が切り開かれていて、いくつかの切り株がそのままにされてあった。

 

信「わかったわ。ちょっと向こうに取りに行ってくるから真たちにいっておいてくれ。」

(こんな時間だと慧音はもう家にいるだろうし...。チルノのところにいくか。)

 

一番近くにいるのがチルノだと予測しすぐに能力を使う。

 

「ん?」

 

移動した先では目の前に寺子屋がある。本当に近くにいてくれたようだ。

 

「いきなりごめんなチルノ。華たちの弁当箱知ら...な..いか?」

「あ……信。やっぱり……戻ってきたね。」

「チルノっ!!」

 

そこには明らかに顔色の悪いチルノがいた。華と風人の弁当箱をもって切り株に寝そべっている。

 

「おいっ大丈夫かっ!」

「なんかね、昨日くらいから体が暑くて寒くて……重くて…足もなんか…ふわふわするの。頭もぼーっとして。」

「妖精って風邪ひくのか?」

「カゼじゃないよ。妖精はカゼひかない。」

 

チルノの額にてをのせる。触れると一度は凍傷を起こしそうになったのが嘘のように熱い。

 

(ならなんだ。妖精は風邪をひかない。ならなんでこんなに熱いんだ。)

 

信は頭を回転させる。妖精が体調を崩さないことは大妖精から聞いていた。ならどうしてチルノがこんなに苦しそうなのか。最近なにか本当なら起こらないはずのことが起こったからだ。

ここまでの情報の中で導き出された答えはただひとつ。

 

「俺の...せいか。」

 

そしてそれは約1週間前に信がやったことにあてはまる。

 

「だったら...。」

 

チルノに使っていた能力を解除する。本当にこれでいいのか。そう思いながらチルノが回復するのを願うしかなかった。

 

「信...。」

 

祈りながら。願いながらただひたすらに待つしかなかった。

そして、チルノの顔から苦しさが消えた。

 

「チルノっ!大丈夫か。まだぼーっとするか?」

「なんか体が軽くなったみたい。暑くもないし寒くもない。」

「そうか、よかった...。」

「信、なにしたの?」

「お前には説明しなきゃいけないな。お前がさっきみたいになってたのは、俺が前にお前の体質を変えたからなんだ。...すまなかった。」

「どうして謝るの?」

「お前が辛くなった理由は俺の軽はずみな行動のせいなんだ。さっきみたいなことはちゃんと考えていればわかったことだ。」

「でもあたいは楽しかったよ。」

「っ!!」

「冷気を抑えてもらってからすごい楽しかったんだよ。みんなに触れられて、みんなに近寄れて。だから信は謝らなくてもいいんだよ。」

「...。体はもう平気なのか?」

「もう平気っ!だってあたいは最強なんだよっ!」

「敵わないな。だけど冷気はもう俺の能力ではおさえない方がいい。それはわかってるのか?」

「...うん。」

「...そうか。次はちゃんとした方法を考えてくる。」

「あたいにできることがあったら言ってね。あたいの体の問題なんだから。」

「わかった。」

「じゃあ、あたいもう行くね。大ちゃんも心配してるだろうから。」

「気を付けて帰れよ。」

 

チルノはいつもの調子に戻って去っていった。ただ、振り向く瞬間、一瞬だけ寂しそうな表情をして。

 

「...早く帰らないとな。」

 

静かに呟いた信は、風人と華の弁当箱を持って家に帰った。




最強の人はいても、完璧な人はいません。誰だって失敗します、人間なんだもの。


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第21話【ハイペースに前向きに】

帰ってきてから弁当箱を洗い、晩ごはんを食べ、風呂に入り、じぶんの部屋に行った。

 

『信、あんまり自分を責めるな。チルノも平気そうだったじゃないか。』

 

その通りだ。自分を責めていてもなにかが変わるわけでもない。だが許せない。自惚れていた自分が。浮かれていた自分が。

 

「信にい、ちょっといいか?」

 

恭助が来たようだ。だけど...

 

「今は1人にしてほしい。」

「失礼しまーす。」

「おいっ。」

 

拒否したのに関係なく入ってきた。

 

「なんか向こうであったの?」

「色々あったんだよ。」

「もし、その色々で自分を責めてるんだったら話してくれよ。」

「よくわかったな。」

「信にいが本気でイライラしてる時は基本自分に対してだからね。明渡家では常識だよ。」

「...チルノって知ってるだろ?」

「うん。」

 

チルノの冷気のことについて。そして何を引き起こしたのかを話した。

 

「ふうん。」

「俺はどうすればいいんだろうな。」

「チルノと約束したんでしょ。さっさと果たせばいいじゃん。」

「簡単にいってくれるな。」

「でも、それしかないでしょ?信にいが納得できるやり方って。」

「その通りなんだが、また間違えたらどうしようと思っちゃうんだよ。怖くて怖くてしょうがない。」

「『石橋は砕いてから渡る』だっけ?信にいの座右の銘。」

「あぁ。」

「じゃあさっさと砕いて渡っちゃいなよ。今の信にいは叩くどころか渡ろうともしてないんだから。『常に余裕をもって』でしょ?」

「・・・。」

「早く立ち直ってよ。みんな心配してるんだから。」

「・・・恭助。」

「ん?」

「チルノって能力持ってるか?」

「やっぱり信にいはそうでなくっちゃな。チルノの能力は『冷気を操る程度の能力』だよ。もしかしてもうなにか思い付いた?」

「いやまだだ。だから今日はもう寝る。」

「本当に切り替え早いな。それじゃ、おやすみ。」

「あぁ、ありがとな。おやすみ。」

 

恭助が部屋から出ていき、部屋には信一人となった。

 

(失敗を引きずってる場合じゃないよな。)

 

方法を考えるために布団に潜り込む。そして意識を夢の世界に飛び込ませる。

 

(やっぱり考え事をするならここだな。)

 

信は明晰夢を見ることができる。だからいつもは寝ているときに勉強の復習をやっていたりする。たまになにかじっくり考えたいときも寝て、夢の中で考える。

 

『お前はこんなこともできるんだな。』

 

真っ白い空間のなかに共が現れた。

 

(そっちこそ、人の夢に普通は入ってこれないだろ。)

『あいにく普通じゃないからな。』

(無理して付き合う必要はないんだぞ。)

『私がじぶんの意思で付き合うんだ。それならいいだろう?』

(・・・ありがとな。まずは情報の整理からしよう。)

 

共と一緒にどうすればいいかを文字通り、一晩中考えた。

 

 

 

 

 

(これがやっぱり一番だな。)

『...やっぱりそれは信に負担がかかりすぎるんじゃないか?』

(これくらいはしないとな。)

『...無理はしないでよ?』

(もちろんだよ。...そろそろ朝だな。行ってくる。)

 

夢から覚め、時計を確認する。時間は午前4時ぴったりだ。

 

『というか寝たことになるのか?』

「多分...。頭使ってるのになんで疲れがとれてるのか不思議だけどな。」

 

今更な不思議を思いつついつも通りの朝をすごす。

 

恭助「おはよう、信にい。」

信「おはよう、恭助。昨日は悪かったな。」

道場に向かう途中で恭助と一緒になった。

恭助「なにかいいアイディア思い付いた?」

信「あぁ、さっそく今日試してみようと思う。」

 

道場に着くとまだ誰もいなかった。

 

信「お礼といっちゃなんだが、今日は稽古の相手になるよ。護道はあまりみんなに知られたくないんだろ?」

恭助「助かるよ。それじゃあ、よろしくお願いします。」

 

 

 

 

 

信「これくらいにするか。」

恭助「ありがとうございました。」

 

もうそろそろ真達が来てもおかしくない時間帯だ。護道は切り上げていつも通りの組手に移る。

 

愛「2人とも早いね。」

 

愛が丁度やって来た。切り上げておいて正解である。

そのあと真と静も来てみんなで朝の稽古をいつも通りやった。3人も昨日のことを気にしていたようだが、信が立ち直ったのがわかりすぐに稽古に集中した。

 

信「そろそろ朝飯の準備してくるよ。」

 

時間になると稽古を終え、手際よく朝食の準備をする。

 

一同「「「いただきます。」」」

 

準備を終えみんなが集まってから食べ始めた。

 

広美「信にいもう平気なの?」

信「あぁ、もう大丈夫だよ。」

空「強太たち昨日の信にいを見て怯えちゃってたんだよ。」

強太「そんなことないよっ!」

深太「でも確かに昨日の信にいは怖かった。」

高太「常に無表情はさすがにな~。」

海「ゴンさんみたいだったからね。」

信「わるかったよ。でもゴンさんはいいすぎだろ。」

 

恭助の行った通りみんな心配していたようだ。

 

(しっかりしなきゃな...。)

 

昨日のことを話ながら食べ進めた。

 

一同「ごちそうさまでした。」

信「風人、華、いくぞー。」

風人&華「「はーい。」」

信「それじゃあ、行ってくるよ。」

静「無理はしないでくださいね。」

真「先に言われた...。」

信「大丈夫だよ。留守番よろしく。」

 

責任をとるため幻想郷へ向かった。

 

 



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第22話【責任】

「今日はここまでだ。みんな頑張ったな。」

 

寺子屋での授業が終わり、みんな体を伸ばしたり話を始めたりしている。

 

「チルノ、あとで話がある。」

「うん。」

 

一晩中考えてベストだと思った考えを早速今日実行する。だけどその前にやらなきゃいけないことがある。

 

「風人、華、弁当だ。フランのところにいってくる。」

 

昨日はチルノに対する罪悪感で気がまわらなかったが、フランの体質も変えていた。だからその事を説明しなければならない。

 

「よう、美鈴。」

「えっ!?あ、信さんでしたか。昨日はすいません。」

 

急に現れた信に驚きながら謝罪してきた。

 

「いやいいさ。それよりフランたちに話があるんだ。入ってもいいか?」

「ちょっと待っててください。今確認してきます。」

 

そういうと美鈴は紅魔館のなかに入っていった。しばらくして出てきた。

 

「お嬢様の承諾を得られました。どうぞお入りください。」

「それじゃあ、お邪魔しまーす。」

 

門をくぐった瞬間にレミリアのところに瞬間移動する。

 

「よう。」

「お兄さまっ!」

 

どうやら今日はみんなもう食べ終えているらしい。昨日食器があったスペースには紅茶のはいったカップが置れていた。

 

「今日も一緒に遊べるのっ!」

「ごふっ!」

 

抱きつきながら聞いてきた。余程楽しみにしていたのであろう。だけど...。

 

「フラン...、もうちょっと手加減してくれ。」

 

吸血鬼は身体能力が人間より遥かに高いため結構痛い。

 

「それと今日は話があるんだ。レミリアたちにも聞いて欲しい。」

 

フランをイスに座らせ、昨日のことを話始める。

 

 

「レミィの嫌な予感が当たったわね。」

「よりによってね。」

「では妹様は...」

「もう外で遊べないの?」

 

予想通りの反応が帰ってきた。やはりみんな残念そうな表情をしている。だが、

 

「いや、フランは問題ないと思うぞ。」

「ホントにっ!?」

「でもあなたの話だと、フランにもそのうち体に異変が起きるんじゃないの?」

「チルノの場合は種族が問題だったんだ。あいつの体温が普段すごい低いのを急に俺と同じにしたからな。でもフランの場合は日の光に対する体の反応を変えただけだからな。チルノみたいにはならないはずだ。」

「っていうことは、」

「また遊べるの?」

「あぁ、遊べるよ。」

「やったー!」

「よかったですね、妹様。」

「でも問題ないならどうして話したのかしら?」

「俺なりに責任をとりたかったんだよ。まだわからないことがある俺の能力を浮かれて使っちゃったことにさ。」

「律儀ね。」

「責任逃れは嫌だからな。それじゃあ、遊びにいくぞ。」

「うんっ!いってきまーす!」

「いってらっしゃいませ。」

 

フランと信はその場から姿を消した。

 

「当たってなかったはね、レミィの予感。」

「うっ、そ、そんなことより咲夜はよかったの?信とあんまり話せなかったけど。」

「...どうしても彼を前にすると言葉がつまります///。」

「「・・・・・。」」

 

顔を赤くしながらそういう咲夜をみて、レミリアとパチュリーはお互いの顔を見合わせた。

 

「「フフッ♪」」

「どうして笑うんですか...。」

2人に悪意はない。ただかわいいと思った。

 

 

 

 

 

「戻ったぞー。」

「みんなっ!」

 

フランがチルノたちの所へ駆け寄っていった。信もその後についていく。

 

「チルノ、さっきのことだが向こうで話そう。大ちゃんもついてきてくれ。」

「うん。」

「はい。」

「何かあったの?」

「何でもないよ。ちょっと2人と話してくるから先に遊んでてくれ。」

 

信とチルノと大妖精は林のなかに入っていった。

 

「大ちゃんはもう聞いたか??」

「はい。それで...話っていうのは?」

「チルノの冷気をどうにかする方法を考えてきた。」

「もうですかっ!?」

「早い方がいいだろ?それでな、その方法はチルノに頑張ってもらうしかないんだ。やるか?」

「もちろんだよ。」

「どのくらいかかるかわからないし、多分大変だぞ?それに本当にできるようになるかはわからない。それでもやるか?」

「できるよ。だってあたい最強だもん。」

「それでこそだ。じゃあ説明するけど、見せた方が早いな。」

そういって信は目を閉じた。

「「っ!?」」

 

そして信が目を開いたときにはさっきとは明らかに違うところがある。いや、同じところが無い。

 

「えっ!?えっ!?」

 

大妖精がチルノと信を交互に見ている。驚くのも無理はない。

 

「信さん、...その姿って...チルノちゃん..ですよね?」

「あぁ、色々理由があるんだ。」

 

信の姿は完全にチルノと同じになっていた。

 

「記憶と人格以外ぜんぶチルノと『共有』した。...大丈夫そうだな。大ちゃん、ちょっと来てくれ。」

「は、はい。」

 

近づいてきた大妖精の頬に手をつける。

 

「つめたっ!え?」

「気づいたか?」

「大ちゃんっ!大丈夫?」

「..うん。信さん、もしかして。」

「そうだよ。今俺は完全にチルノとおんなじだ。でも、大ちゃんに触れてる。どういうことかわかるか、チルノ?」

「トーショーになってない。」

「そういうことだ。つまりだ、冷気自体はチルノ自信で押さえることはできる。まあ、体温は雪みたいなままだけど人に害を与えるほどじゃない。」

「どうやってるのっ!?」

「お前の能力だよ。」

「あたいの?」

「あぁ。お前の冷気を操る程度の能力を使えば冷気は解決できる。」

「でも...今まで出来なかったし。」

「多分おまえはまだじぶんの能力を制御できてないんだ。だから能力をちゃんと使えるように俺が教えてやる。あとはお前次第だ。俺は厳しいからな、覚悟はいいか?」

「うんっ!」

 

覚悟のこもった目をして、チルノは力強く答えた。

 

 

 









信くんの能力使えば裸とか見ほうdごふっ!!(無言の腹パン)


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第23話【さらに】

「ふわぁ。よく寝たな。」

 

チルノの特訓を始めてから6日、簡単にはいかないと思っていたが昨日チルノは冷気を抑えることに成功した。それもチルノの努力の賜物なのであろう。

 

「今日は寺子屋が休みだからな~。」

 

午前中はなにもすることがなく、今日は何をするかを考えた。

 

「午前は空たちと一緒に稽古するか。」

 

三つ子はまだ朝の稽古には参加していないため、平日は夕方、休日は午前中にしていたのだが、最近忙しくて一緒にできなかった。

そう決めていつも通りの朝を過ごす。

 

 

 

信「風人と華を向こうに送ってくるよ。」

真「戻ってくるの?」

信「午前は空たちの稽古に付き合うつもりだよ。」

陸「信にいとやるのは久し振りだな。」

海「私たちの成長を見てもらおうじゃないか。」

空「今日こそ真剣を...。」

信「いってきまーす」

風人&華「「きまーすっ!」」

 

 

信「ただいま。」

空&海&陸「「「おかえり。」」」

信「もう準備し終わってるのか。感心感心。」

海「信にい、今日は真剣持たせてくれる?」

信「その竹刀が操れるようになってからって言ったろ?」

 

明渡家の道場には竹刀が2種類置かれている。普通の竹刀と日本刀と同じくらいの重さのもの。

 

空「ふっふっふ。もう操れていたりする。」

 

そういいながら空と海は1.5kgの竹刀を自在に振り回している。

 

信「おぉ、ずいぶん良くなったな。」

空「でしょ?だから真剣を...」

信「それじゃあ、第2段階だ。」

海&空「「えっ!?」」

信「その竹刀で陸とちょっとやってみろ。」

陸「...え?」

海「約束が違うよ。」

空「この竹刀はもう操れるよ?」

信「やってみれば解るさ。陸、お前はいつも通りやればいい。」

陸「え、あ、うん。」

海「陸だったら余裕だよ。」

空「楽勝。」

 

そうして柔道対剣道の異種混合戦が始まった。

 

 

 

 

海&空「「負けた...。」」

 

10秒ずつやって2人は陸に綺麗に投げられた。

 

信「陸、やってみてどうだった?」

陸「すごい単純だった。」

空&海「「ぐふっ!」」

信「はっはっは。」

 

陸の直球ストレートな言葉にショックを受け2人はその場に寝そべった。

 

信「なんで陸に簡単に負けたかわかるか?」

海「う~ん...。」

空「...予備動作?」

信「そう。戦いのなかでの動きってのは全部全く同じ動きから始まるのが理想だ。でもお前たちの動きは予備動作から何をやってくるのかはっきりわかるんだよ。簡単な話、まだその竹刀に振り回されてるんだよ。それに陸の方が実力が上ってのもあるしな。」

空「悔しい。」

海「でもどうすれば良くなるの?」

信「今までは型や素振りばっかりやって来たからな。これからは2人で試合だ。動きの違いとかをお互い指摘しあって理想に近づけていく。それしかないな。」

海「真剣...。」

信「真剣は陸に勝てるまで無しだからな。日々精進せよ!」

海&空「「は~い。」」

信「それと陸、お前もこれからはもっと技の種類を増やすぞ。」

陸「はいっ!」

 

 

 

 

信「よし、今日はここまで。おつかれさま。」

空&海&陸「「「ありがとうございました。」」」

 

3人との手合わせをしつつ技の練習をしていたらもう昼食の準備をしなければならない時間になっていた。

 

信「後始末頼むぞ。俺は昼飯の準備してくるから。」

 

始末を任せて台所へと向かう。ここ最近昼食の準備は任せっきりだったため今日は自分も作ろうと決めていた。

 

(献立は何にしようか...。)

 

 

 

 

 

 

一同「「「ごちそうさまでした。」」」

真「信にい午後はなんか予定あるの?」

信「今日はこーりんのところにいく約束してるんだ。」

真「ってことは商品の鑑定?」

信「あぁ。外来人の鑑定ほど頼りになるものは無いそうだ。」

 

霖之助の能力で名前と用途がわかっても使い方がわからない道具が香霖堂にはたくさんまだあるそうなのだが、色々あって全然行けてなかった。だから霖之助に今日来るようお願いされたのだ。

 

信「だから洗い物終わったらそのままいってくるよ。」

真「そういえば信にい、帰ってきてからも幻想郷とかに行ってばっかりだけど宿題はいいの?」

信「そんなものは夏休み前に終わらせたわ!」

真「なんと!」

 

 

 

 

 

信「じゃあいってくるよ。」

 

食器を洗い終えて霖之助のもとへと移動する。

 

「やっと来てくれたか。」

「ごめんなこーりん。最近なにかと忙しくて。」

「仕方ないさ。では、早速鑑定してくれないか。ずっとうずうずしてたんだ。」

「了解。まず何からにする?」

「まずはこれだ。」

 

そういって霖之助が持ってきたのは現代を生きる者なら誰しも見たことがある物だった。

 

「自転車かぁ。」

「乗り物だとわかったんだけどね、一体どう乗るのかわからないんだよ。一回乗ってみたら何事もなく横に倒れたし。」

「これは自転車っていってな、こう乗るんだ。」

 

そういって普通に乗った。

 

「一体どうやってるんだい?そんな不安定そうなものでどうやったら倒れないんだ。」

「慣れたら普通に乗れるよ。外界の人は大体できる。」

「なるほど。じゃあ次はこれだ。」

「これはな.....」

 

そういうやりとりがしばらく続いた。

 

 

 

「いやー助かったよ。おかげですっきりした。お礼に一つ、この中から君の好きなものを譲ろう。非売品を除いてだが。」

「本当か!?それじゃあ遠慮なく...。」

たくさんある商品の中からなにか良いものはないかと探し始める。

「これはどうだ?」

「それはダメだ。」

 

「これはどうだ?」

「それはダメだ。」

 

「これはどうだ?」

「それはダメだ。」

「...本当にくれるのか?」

「私が気に入っているものは譲れないんだ。すまないが他のものを探して欲しい。」

「むぅ~...ん?」

 

色々ダメ出しされて少しいじけているとあるものが目にはいった。

 

「こーりん、これはどうだ?」

 

手に取ったのはシンプルなネックレスのようなものだ。女だけでなく男がつけていてもおかしくないデザインだ。

 

「それならいいよ。装飾品は私が持っていても意味がないからね。」

「じゃあこれにするよ。」

 

そういいながら首につける。いい感じだ。

 

「似合うじゃないか。」

「それはどうも。また何かあったら遠慮しないで頼ってくれよ。」

「そうさせてもらうよ。」

「それじゃ、また。」

 

そういって霖之助と別れ、寺子屋に向かう。慧音に寺子屋のことについて伝えなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(珍しい力を持った人間だな。)

 

 



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第24話【誉めて伸ばす】

「おーい慧音、いるか?」

「信か。どうしたんだ?」

「もう少しで寺子屋に通えなくなるからな。それについて説明しに来たんだ。」

 

慧音に夏休みのことについて説明した。

 

「ふむ。...というか、信はまだ学生だったのか。今更だが歳はいくつなんだ?」

「17だよ。ちなみに誕生日は4月2日だ。」

「17か。とてもそうは思えないな。」

「そんなに老けて見えるか?」

「いや、君の雰囲気がそう感じるだけだ。決して老けて見えるわけではない。」

「慧音、少し話が...信?」

 

妹紅が扉を開けて入ってきた。どうやら信がいたことには気がつかなかったようである。

 

「よう、もこたん。」

「やっぱりなんでもない。」

 

そのままUターンして出ていこうとした。

 

「えっ。」

「(ちょっと待て妹紅。信のことについて話に来たんだろう?)」

「(どうしてわかったんだ!っていうかそれがわかってるんなら止めないでくれよ。)」

「(そんなことより、彼なら話しても大丈夫だと思うぞ。)」

「(何を根拠に...。)」

「(なんとなくだよ。お前もそう思ってるから相談しに来たんだろう?)」

「(...うん。でも、)」

「(大丈夫だよ。早くいってこい!)」

 

慧音は妹紅の背中を押し出して信の前に向かわせた。

 

「ちょっ、慧音!まだ心の準備が。」

「俺になにか話があるのか?」

「っ!!」

 

信の目の前に立ち、硬直する。何とも言えない空気がその場に流れる。

 

「...そういえばもこたん。もこたんて何歳なんだ?」

「なっ!?なんでそんなこと聞くんだ?」

「前に自分が年寄りみたいな言い方してたから気になってな。」

「...信用してもいいか?」

「?あぁ。」

「わ、私は...不老不死なんだ。歳は...1300...くらい...。今まで隠しててすまなかった。」

「長生きだな。」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「いやもっと他にあるだろっ!!!」

 

一瞬の沈黙を妹紅が破った。

 

「他にって?」

「不老不死のことについてとか、年を取りすぎだとか、もっとこう、他に。」

「不老不死でも1300歳くらいでももこたんはもこたんだろ。それくらいじゃもう驚けないしな。」

 

キョトン。もしくはあっけらかんとした表情で妹紅は固まってしまった。それをみて慧音は笑いを堪えている

 

「すぅううううううっ、はぁあああああああ。」

 

大きく深呼吸をし、真っ白い頭をやり場の無いモヤモヤを込めて力強く掻いた

 

「なんだ、ビクビクしてた私がバカみたいじゃないか。」

「そこもまた可愛い。」

「ふんっ!」

「痛いっ!」

「やっぱり大丈夫だっただろ?」

「そのせいで恥ずかしい思いをしたけどな。」

「それじゃあ、改めまして...」

 

信は妹紅に手を出しながら言った。

 

「明渡家長男、明渡 信17歳。信と呼んで欲しい。」

「藤原 妹紅。好きに呼んでもらって構わない。」

 

何か落ち着いたような、吹っ切れたような、安心したような、嬉しいような。そんな表情をしながら妹紅は握手に応じた

 

「よろしくな、もこたん。」

「あぁ、よろしく。...というか17歳なんだな。」

「慧音にも言われたよ。」

「やっぱり未成年とは思えないよな。」

「見た目はそうでもないんだが、こう、雰囲気が。」

「こう、落ち着いてるっていうのか?凛としているというか、堂々としているというか。」

「とりあえず、たった17年でそんな風になるなんて思えないな。」

「誉め言葉として受け取っておこう。ってかそろそろいくよ。まだやりたいことが残ってるんだ。」

「長居させて悪かったな。」

「問題ない。それじゃあな。

 

そういいながら信はその場から消えた。

 

 

「...なぁ、妹紅。」

「なんだ?慧音。」

「告白はいつするんだ?」

「そっちこそ。」

「なんのことか。」

「信と話してるときだけ完全に女の顔になってるぞ。」

「ほ、本当か?」

「あぁ。まぁ、信は気づいてないみたいだが...。」

「で、いつ告白するんだ?」

「気が向いたらかな。」

 

信が去った空間では、仲のいい2人が初めての恋ばなをしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「よう、美鈴。」

「こんにちは信さん。今回は一体どんな用事ですか?」

「ずいぶん遅くなったけど、お前と試合がやりたいと思ってな。」

「ルールは?」

「弾幕の使用は禁止。霊力や妖力のなんかはOK。能力はどうする?」

「無しでお願いします。」

「おk。そんで勝敗は気絶または降参した時点で決まりで。」

「わかりました。」

「面白そうなことしてるわね、美鈴。」

「よう、レミリア。」

「お嬢様っ!これは..えっと...その...。」

「続けなさい、私は観戦させてもらから。無様な試合はしないでちょうだいね?」

「はいっ!ありがとうございます!」

「それじゃあ始めようか。レミリア、合図お願いできるか?」

「えぇ。」

「それじゃあ、やろうか。」

「よろしくお願いします。」

 

両者が距離をとり、構える。

 

「始めっ!」

 

その試合は、レミリアの合図と共に静かに始まった。

 

両者は動かない。互いが相当の手練れであるとわかっている以上、迂闊に踏み込むことは敗北を意味している。

 

「お嬢様、日傘お持ちいたします。」

「あら、咲夜。ずいぶん遅かったわね。」

「申し訳ありません。夕飯のデザートの支度に手間取ってしまいまして。...お嬢様はどっちが勝つと思いますか?」

「貴方もおおよそ分かってるでしょう?」

 

その時、美鈴が仕掛けた。

一気に距離をつめ中段の蹴りを放った。だがそれを信は軽々と受け流し、そのまま回し蹴りを打ち込む。これを屈んで避け1本のみとなった体を支える足を払いにかかる。それを予測してたかのように信は上へ飛ぶ。いや、正確には美鈴の方へと飛んだ。

 

「ッ!!」

 

そのまま踏み込んだ足で美鈴の顔面に蹴りこむ。

間一髪のところで美鈴は体を反らせ、これを回避。だがまだこれで終わりではない。

体を反らせ回避したということは、バランスを崩し背後をとられたということ。

 

(まずいっ!)

 

急いで体勢を立て直そうとするがもう遅い。上体を起こした時には信の腕が美鈴の首に回っていた。

 

"裸締"

 

動脈を圧迫され脳に酸素が通わなくなる。振りほどこうにも力が入らない。その上に相手は信だ。そう簡単に抜けさせてくれるわけがない。

 

(意識がっ...。)

「ここまでだな。」

 

そういって信は裸締を解いた。

 

「げほっ げほっ。はぁ、はぁ。」

 

勝負がついた後の2人の状態は天と地の差だった。信は汗一つかいていないのに対し、美鈴は地に手をつけ必死に酸素を取り込もうとしている。

 

「...まさかここまでとわね。」

「大丈夫か?美鈴。」

「げほっ、平気...です。」

 

明らかに美鈴に余裕がない。

 

「私も近接格闘なら負けない自信があったんですけどね。」

「いやあ強かったよ。あんなに早い攻防したのはいつぶりだろ。」

「今の位のものを以前もやっていたんですか?」

「あぁ、父さんとかと手合わせしたときはいつもこれくらいだな。久々に楽しかったよ。またその内やろう。」

「...質問してもいいですか?」

「ん?なんだ?」

「今のは何割くらいの力でやりましたか?」

「ん~。大体4、5割位だな。」

「あれで...ですか?」

「うん、本気でやると技がもっと複雑になったりとか、あともうちょっと早くできるな。」

「...自信無くしました。」

「お前も十分強かったぞ?」

「私は全力でやったんですよ?それでも5割程度しか出していなかったなんて...。」

「お前はこれからまだまだ伸びるだろうし気にするなよ。」

「...もう一つ質問いいですか?」

「いいよ。」

「最後はなんで絞め技にしたんですか?あの状況だともっと有効な手があったと思うんですが。」

「単純さ。美人に傷を残したら男が廃るだろ?」

「えっ!?そんな理由で...でも蹴りとかは...」

「あれくらいならきっちり避けれると信用できたからやったんだ。」

「...敵わないですね。」

 

微笑みながら手を差し出した。

 

「またお願いします。」

「こっちこそ。」

 

2人が握手を交わしたのを見計らってレミリアが口を開いた。

 

「信。あなたもここで働かない?」

「嬉しい誘いだが、そいつはできないな。俺はまだ学生だからどこかにずっと勤めることはできないんだ。」

「学生?あなた歳は?」

「...17歳です。」

「「「17っ!?」」」

「やっぱりそういう反応するか。」

 

最早お馴染みである。

 

「そろそろ俺帰るよ。夕飯の支度しなきゃいけないし。それと働くことはできないけど困ったときはいつでも言ってくれよ?その時には力になるから。」

「えぇ。」

「それでは信さん、また。」

「おう、またな。」

 

「申し訳ありませんお嬢様。失態をお見せしてしまって。」

「私は楽しめたわよ。それに彼が相当強いから仕方ないでしょう。...で、咲夜。」

「なんでしょうか?」

「早くしないと彼、どんどん高倍率になるわよ。」

「どういうことでしょうか。」

「どうやら美鈴もあなたと同じみたいよ?」

「えっ、べ、別にそういうわけでは...」

「私に隠し通せると思ってる?」

「...負けませんよ?」

「私もそう簡単に勝たせるつもりはないわ。」

(フフッ♪本当に退屈しないわね。)

 

また1人ライバルが増えた。

 




次回はオリジナルの異変をいれていきます。
楽しんでいただけると光栄です。


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第25話【もちつけ】

おはこんばんにちは。さまりとです。
ついに新しい異変がスタート。でも今回は全然進みません。
では、ゆっくりどうぞ。


 

 

 

 

 

 

そこは1年のなかでもっとも低い位置ある月によって照らされていた。

 

「...逃...げ......ろ..。」

「嫌だよ...。あんたを放っておいたら直ぐに博麗の巫女たちに退治されちまう。そんなの嫌だよ。」

「頼...む。逃げ...て...くれ。そう...しな...いと俺...は...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前たちを...殺してしまう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、今日はここまで。それから今日は信の最後の授業だからな。みんなでお礼を言おう。」

「「「ありがとうございました。」」」

「ありがとうみんな。短い間だったけど楽しかったよ。人里には頻繁に出入りする思うから見かけたら気軽に声をかけてくれ。」

 

何だかんだでもう8月15日。夏休みももうあと5日しかない。新学期の準備やらで忙しくなるため今日でアルバイトはおしまいだ。

 

「助かったよ信。今までありがとう。」

「こっちこそ貴重な経験だったよ。お世話になりました。」

 

慧音に礼を言って教室を後にする

 

「信っ!!」

 

出て直ぐに最早聞きなれた声に呼び止められた。

 

「弾幕ごっこよ。今日こそアタイが最強になるんだから。」

 

チルノだ。何だかんだで幻想郷の住民のなかで一番長い時間一緒にいる気がする。

 

「いいだろう。今日も俺が勝つ!」

 

最近はほぼ毎日チルノや魔理沙と弾幕ごっこをやっている。

 

 

 

「これで終わりだっ!」

「うぐっ」

 

逃げ場を無くしたところに早さ重視の霊力弾を打ち込み勝利する。

 

「今日も俺の勝ちだな。」

「チルノちゃん大丈夫?」

 

2人の弾幕ごっこを見ていた大妖精たちが駆け寄ってきた。

 

「今回もダメだったね。」

「むぅうう。」

「はっはっは。いつでも挑戦は受けるからな。」

 

いつも通りチルノに勝ち少しテンションが上がっていた。

 

「今日は外界の方で用事があるからな。俺は一回向こうにいくよ。」

「信っ!!明日は絶対アタイが勝つんだからっ!」

「そう簡単に負けないさ。それじゃ。」

 

そういった信はその場から姿を消した。

 

(そういえば真、今日は寺子屋が終わったら直ぐに帰ってこいっていってたけどなんかあったかな?)

 

信が言った用事と言うのは、朝寺子屋に来る前に真に「今日は寺子屋が終わったら早く帰ってきてね。」といったことだ。

 

(今日は特になにもなかったよな。)

 

疑問を抱きつつ真のもとへ移動する。

 

信「ただいま。」

真「おかえり信にい。」

真がいた場所は台所だった。そして何かを大量に蒸している。

信「...なにやってるんだ?」

真「え?餅つきの準備。」

信「どうして?」

真「だって今日十五夜でしょ?」

信「...残念ながら今日は十五夜じゃない。」

真「えっ!?でも8月15日が十五夜なんじゃないの?」

(また誰かの冗談を本気にしたな。)

信「それは旧暦の話だ。今年の十五夜は9月15日だよ。」

真「...本当に?」

信「嘘言ってどうする。」

真「このもち米どうしよう。」

信「まあつくしかないだろうな。幸い今日も満月だ。一ヶ月早いけど月見しようか。」

 

急遽餅をつくことになった。

 

信「そういえば臼と杵の準備はできてるのか?」

真「うん。愛たちが今やってる。」

(ん?確か愛たちは十五夜について知ってたよな。)

 

今年の正月に餅をついたときに、愛が餅を次はいつ食べれるのかを聞いてきた。十五夜には食べれるといったらすぐに調べてきて9月15日と知らせてきた。その時恭助や静もそれを聞いていたはずだ。

 

愛「あ!信にい。おかえり。」

静「お帰りなさい。」

恭助「おかえり。」

信「ただいま。臼と杵のの準備できたか?」

愛「うん。あとはつくだけ。」

信「(なぁ、お前たちは今日が十五夜じゃないって知ってたよな?なんで一緒に餅つことになってるんだ?)」

愛「餅が食べたかったから!」

恭助「右に同じ。」

静「私もです。」

 

非常に素直で単純な理由だった。

 

信「(真に今日が十五夜って言ったのも?)」

愛「(まさか本気にするとは思わなくて。)」

信「(それにあんな量ついたら来月まで普通にもつぞ。)」

 

いつも明渡家で餅をつくときは大量につくる。だがそれは保護者組(特に男性陣)が餅が大好きなためにつくるのだ。だが今保護者組は旅行中でいない。それに今蒸してるものの他に同じくらいの量の米がスタンバイされている

 

恭助「幻想郷のみんなにお裾分けしたら?」

信「そうするか。餡子とかはどうするんだ?」

愛「もう準備できてる。きな粉とゴマはこれから準備するよ。」

信「でも晩飯まで結構時間あるなあ。」

 

時刻はまだ12時半。今ついてもすぐに固くなってしまう。

 

信「お前たち昼はもう済ませたのか?」

静「はい。真兄さんが早めに済ませておこうって。」

信「そうか...よしっ。餅は二回に分けてつこう。今持っていっても昼飯食べてるだろうし夜に乾燥させたやつを。みんなに配ればカビる前に食えるだろう。俺たちの分は5時半くらいにやり始めようか。」

愛&静&恭助「「「了解。」」」

真「蒸し終わったよ~。」

信「それじゃあ、始めるか。」

 

 

 




異変が始まるのにこんなタイトルでいいのだろうか...。


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第26話【餅だー!!!】

今回も全然進みません。





信「よし、役割を確認するぞ。まずは静と愛。お前たちは餅の運搬と準備。」

愛「りょーかい!」 静「了解しました。。」

信「次は真と恭助。ひたすらに餅をつけ!」

真「OK」 恭助「承知。」

信「で、俺は餅をかえす。それでは各員持ち場につけ!」

真&愛&恭助「「「イエッサー!」」」 静「はい。」

 

久々の餅つきでテンションが変になっている。だがこれくらいで丁度いい。

 

信「真、恭助、俺のことは気にしなくていいからな?」

真&恭助「「もちろん!」」

愛「もってきたよー。」

愛と静が蒸し上がったもち米を2つの臼にそれぞれいれた。

 

それらをまずある程度杵でこねて準備が終わる。

 

信「よし。始めるぞ。」

 

 

 

 

真「ぜあああああああああああああっ!!」

恭助「うおおおおおおおおおおおおおっ!!」

信「ふんっふんっふんっふんっふんっふんっ!!」

 

明渡家の餅つきはとても単純。

1、餅を突く人は全力でつく。

2、それに合わせて餅を返す。

3、出来上がるタイミングで新しいもち米を持ってきて交換する。

4、これを繰り返す。

ちなみに餅を返す作業ができるのは信と父親だけである。

 

信「愛っ!静っ!次だっ!」

愛「はいよっと。」 静「よいしょっと。」

 

少しこねる。

 

真「ぜあああああああああああああっ!!」

恭助「うおおおおおおおおおおおおおっ!!」

信「ふんっふんっふんっふんっふんっふんっ!!」

 

~~~1時間後~~~

 

信「一回目はこれで終わりだな。」

真&恭助「「はあ、はあ。」」

 

真も恭助も肩で息をしている。4キロ弱のものを1時間も全力で振り続けたらそりゃあ疲れる。

 

愛「おつかれ~。」

静「お茶持ってきました。」

真「すまん。」 恭助「助かる。」

静が持ってきた麦茶を2人は一瞬で飲み干す。

恭助「ぷはーっ。」 真「たまらん。」

静「お兄さんもどうぞ。」

信「ありがとう。ごきゅっごきゅっ、あ゛ああ。うまい。」

 

例年に比べて涼しいとはいえ今は真夏だ。そんな日に餅をついていたらどうなるかは用意に想像できるだろう。

 

信「次は5時半から始めるからな。」

 

そういいながら準備しておいたたわしで臼と杵を軽く洗い始める。

 

愛「信にいってさ、よくもち返せるよね。熱くないの?」

信「滅茶苦茶熱い。でもだんだん慣れるからあんまり苦ではないな。……やってみるか?」

愛「まあそのうちね」

静「全力の2人に合わせて餅を返すなんて怖くないんですか?」

信「まあ怖くなくはないけど、あいつらは絶対同じリズムでやってくれるからな。それがわかってるから平気だよ」

 

付着していた餅を洗い流し杵と臼を放置する。

 

信「それより付け合わせとか準備しなきゃな。俺はみたらし作るぞ。真、恭助、お前らはちょっと休んでろ。」

真「そうさせてもらうよ。」

愛「じゃあ私はゴマ用意するね。」

静「私はきな粉準備しますね。」

 

真と恭助を休ませて食べるための準備を始める。ついた餅はクーラーで涼しくした部屋においてある。

 

 

 

 

 

信「じゃあ第2段、始めるぞ。」

一同「「「「おーっ!」」」」

 

~~~約1時間後~~~

 

真「ぜあああああああああああああっ!!」

恭助「うおおおおおおおおおおおおおっ!!」

信「ふんっふんっふんっふんっふんっふんっ!!」

 

始めてから約1時間、もうすぐ最後の餅もつき終わる。

 

真「はあ、はあ。」 恭助「ぜえ、ぜえ。」

(2人とも限界が近いな。)

 

休憩を挟んだとはいえこの重労働を疲れを感じずに行うのはさすがに無理がある。

その時

 

(しまった!)

 

限界が近くなった恭助が本来より早く杵を振り下ろしてしまった。このままいくと信の手もペっちゃんこだ。

 

恭助「信にいっ!」

 

すかさず手を引っ込めようとするが思考に体が追い付かない。

 

(このままだと入院だな。今まで通り...ならな。)

 

瞬間的に霊力を体に流す。

 

(だが!今の俺に不可能はないっ!!)

 

勢いをそのままにコンマ数秒の早さで餅を返す。返された餅はスパンッといい音をたてつかれる。

 

信「恭助っ、リズムを整えろ。」

恭助「っ!はいっ!」

信「真っ、気張れよ?もうすぐ完成だ!」

真「了解っ!」

信「さあ、ラストスパートだ。」

真「ぜあああああああああああああっ!!」

恭助「うおおおおおおおおおおおおおっ!!」

信「はあああああああああああああっ!!」

 

そして大量にあった餅がついにすべてつき終わった。

 

 

真「終わったー。もうだめだ。腕上がんない。」

恭助「腕が...。」

 

倒れ込んだ2人の腕は他から見ても人目でわかるくらいぷるぷる震えていた。

 

信「みんなおつかれ。」

愛「ふぅー。終わったー。」

静「さすがに堪えますね。」

 

真と恭助だけではない。愛と静も相当の重量の餅をもって動き続けていたんだ。相当の疲れがたまっているはすだ。だが、

 

愛「やっとお餅食べれる。」

真「腹減った~。2キロぐらい食べてやる。」

恭助「何から食べようか...。」

静「早く食べたいです。」

 

もうすでに餅のことを考えている。

 

信「よしっ、じゃあ全員集まったら一緒に食おう。」

 

早速食べることにした。

 

 

 

 

 

信「全員集まったな。」

 

居間には兄弟全員がテーブルを囲んでいる。そしてその真ん中には大量の餅。

 

信「今日は真の勘違いで餅を食べることになりました。」

真「てへっ✨」

信「その上大量に作ったからな。好きなだけ食べよう。それではっ」

 

一同「「「いただきますっ!」」」

 

風人「わーいもちだー。」

華「おいしそー。」

海「陸、きな粉取って。」

空「私にも。」

陸「はいよ。」

強太「信にい、次大根おろしちょうだい。」

高太「餡子どこ?」

深太「はい餡子。」

広美「私にも頂戴。」

トモ&モモ「「ニャーン。」」

信「ん?お前たちも食うか?」

 

トモとモモも餅は大好きだ。

そしてやはり、みんな各々の好きな食べ方がある。だから必然と起こることがある。

 

真「やっぱり餅は海苔に醤油だな。」

愛「餅といったら餡子でしょ。ね?静ちゃん。」

静「私はみたらしですね。」

恭助「やっぱりおろしポン酢だろ。」

静「みたらし。」

恭助「おろしポン酢。」

静「みたらし。」

恭助「おろしポン酢。」

・・・・・・・・・・・・

恭助「やるか?」

静「覚悟はいい?」

真「ストップストップ。」

愛「落ち着いて。」

恭助「だって静がおろしポン酢よりみたらしがいいって。」

静「餅との付き合いが餡子やきな粉と同じくらい長いみたらしに何の不満があるの?」

恭助「なにおう!?」

静「なによ?」

 

仲のいい二人だがたまによくわからないことで喧嘩が始まる。

 

信「こういうときは多数決だ。どっちが多いかで決めればいいだろ。」

恭助「望むところ。」

静「同じ。」

信「決まりだな。じゃあまずは風人と華。2人はどっちが好きだ?」

風人「あんこっ!」 華「きなこっ!」

 

早速2択じゃなくなった。

 

恭助「そうじゃなくてだな。みたらしとおろしポン酢のどっちが好きかって...。」

風人「あんこっ!」 華「きなこっ!」

恭助「うぅ。」

静「どうする?」

信「いいじゃないか。全員自分の一番好きな食べ方を言って多い方の勝ちで。」

強太「じゃあ次俺。俺は海苔醤油。」

真「右に同じ。」

愛「私は風人とおんなじで餡子だね。」

広美「私はゴマだな~。」

深太「きな粉かな。」

高太「おろしポン酢。」

恭助「よしっ、まず1人。」

空「みたらしに1票。」

海「次いでもう1票。」

静「フフン♪」

恭助「ぐぬぬ...。」

陸「おろしポン酢かな~。」

静「なっ!」

恭助「同点か。」

静「まだよ。まだ1人いるわ。」

 

全員の視線がある人物に集まる。

 

静「お兄さん。何が好きですか?」

恭助「もちろんおろしポン酢だよな!」

静「みたらしですよね!」

真「いや海苔醤油だろ。」

愛「餡子だよねー。」

風人「ねー。」

深太「きな粉も美味しいよ。」

広美「ゴマもだよ。」

信「んー...。俺は...」

 

緊張感が走る。そして信が出した答えは...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

信「俺は、納豆がいいな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ちなみに餅は50キロついてます。


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第27話【異形】

今回からが本番です


一同「「「ごちそうさまでした。」」」

 

信「いやー食った食った。」

真「もう入んない。」

愛「美味しかったー。」

恭助「おろしポン酢。」

静「みたらし。」

信「まだ言ってるのか。」

 

食べ始めてから約1時間後、外はもう暗くなっている。恐ろしいことに14人で全体の約3/10の餅を平らげてしまった。

 

信「幻想郷のみんなの分はどうなってるかな?」

 

お裾分けする分の餅はクーラーを効かせ、涼しく乾いた部屋においてある。6時間日に当てていたからそろそろいいはずだ。

 

信「おっ、いい感じだな。早めに持っていくか。」

 

頃合いがよいためすぐに持っていくことにする。

 

信「餅いい感じだからみんなに配ってくるな。」

他「「「行ってらっしゃーい。」」」

 

簡単に容器に分けていれ、袋につめる。さすがに全部を一気に持っていくことはできないので何回かに分ける。

 

(まずは霊夢のところに行くか。)

 

移動した先には縁側に座ってお茶を飲んでいる霊夢がいた。

 

「あら、信。こんな時間に来るなんて珍しいわね。」

「ようっ、霊夢。お裾分けに来たぞ。」

 

霊夢に餅を差し出す。

 

「餅?なんでこんな時期に?」

「弟が今日が十五夜って勘違いしててな。しかも大量に作っちゃったからみんなにも食べてもらおうと思ってな。」

「そう。ありがたく貰っておくわ。」

「じゃあ俺はこれで。他のみんなにも配んないといけないし。」

「待って信。お茶でも飲んでいかない?」

「でも他のやつにも配らないといけないし...。」

「今日はいい月が出てるのよ。少し位ゆっくりしてもいいんじゃない?」

「う~ん...。せっかくだし貰おうかな。」

「ちょっと待ってて。」

 

そういった霊夢は台所に行って一つ湯呑みをもって戻ってきた。

 

「どうぞ。」

「ありがとう。」

 

受け取ったお茶を一口すする。

 

「ズズッ、うまい。」

「よかった。」

・・・・・・・・・・・・・

「なあ、霊夢。」

「なに?」

「満月の日って物騒だったりするのか?」

「いきなりどうしたのよ。」

「いや、興味本意でな。満月の夜って妖怪が強くなるイメージがあるからさ。」

「強くはなるわよ、個体差はあるけど。でも私が退治できないほど強くなるやつなんていないからね。」

「流石ですな。」

「フフッ、もっと誉めなさい。」

 

なんだか久々に霊夢とゆっくり話した気がする。

 

「静かな夜だな...。」

 

ドゴオオオオオオンッッ!!!!

 

突如とてつもなく大きな爆音が響いた。

 

「静かじゃないわね。」

「今のは一体なんの音だ?」

「分からないわ。でもいってみた方が良さそうね。」

「あぁ、そうだな。」

 

湯呑みを置き、2人が飛び立とうとしたとき

 

「...さんっ!信さんっ!」

 

聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「この声は...ケンか。」

 

そう確信して鳥井の方へいくとケンはもう1人いた別の人物に背負われていた。

 

「お前はっ...」

「よかった...。いてくれた。」

 

そこにいたのは、はじめて幻想郷に来たときにケンに止めを刺そうとしていた妖怪だった。

 

「何をしに来た?」

 

ケンのことを降ろし、その妖怪はその場に座り込み、拳と額を地面につけた。

 

「明渡 信!無理は承知だ!だが頼みを聞いてほしい!この通り...。」

「...わかった、話してみろ。」

「助かります。」

 

その妖怪は立ち上がり話をし始めた。

 

「俺たちのボスが...今苦しんでるんだ。助けてほしい。」

「状況を説明しろ。」

「満月の夜になると俺たち妖怪は強くなる。」

「あぁ、それは知ってる。」

「ボスも満月の夜は強くなるんだ。でもそれとは別にあることが起きる。」

「それってなんだ?」

「満月の夜はボスの本能が活性化するんだ。ボスは今それに飲まれ掛けて苦しんでる」

「ん?妖怪なのにお前達は平気なのか?」

「ボスが特例なんだ。昔恐ろしくて狂暴な妖怪だったボスが他人と繋がりたくて今みたいになったんだ。でも満月の夜はそれが活性化して暴れだす。他の満月の日だったらボスも抑えられてたんだけど今日は月が最も低く近く位置してる。だから今日は抑えられなかったんだ」

「今まではどうしてたんだ?」

「今までは今日みたいな時だけ冬眠みたいな状態に入ってたんだ。でもそれには相当のエネルギーが必用になる。でも最近は全然獲物が取れなくて...。」

(そういえば前も食料不足とか言ってたな。)

「でもなんでケンが一緒にいるんだ?」

「あんたが最近人里にいるって聞いてたんだ。だからそっちに行ってみたら。」

「いなかったわけか。」

 

それに続けてケンが話す。

 

「その時たまたま里の入り口を通りかかった僕に声をかけてきたんです。『頼むっ!明渡 信と話をさせてほしい!』って。」

「でもあんたは人里に居なかった。そしたらこいつがここにならいるかもしれないって教えてくれたんだ。」

「でもなんで一緒に来たんだ?」

「ボスにここに近づくなって言われてて、博麗神社の正確な場所がわからなかったんだ。」

「なるほど。最後の質問だ。どうして俺なんだ?霊夢がいるだろ?」

「...今のボスをみたら問答無用で退治されると思ったんだ。」

「多分するわね。」

「なるほど。事情はわかった。協力しよう。」

「いいのか?」

「よくなきゃこんなにしっかり話は聞かないよ。」

「うぅ...。ありがとう。本当にありがとう。」

「感謝はお前たちのボスを助けてからにしてくれ。」

「うぐっ...ああ。」

「信、私もいくわ。」

「そうか。でも力加減間違って退治するなよ?」

「私をだれだとおもってるの?」

「愚問だったな。ケン、お前はここに残ってろ。今から人里にいくと巻き込まれる可能性がある。」

「わかりました。」

「よしっ、いくか。場所は?」

「魔法の森って呼ばれてるところだ。」

「魔法の森!?まずいな。あそこには魔理沙やアリスがいる。急ごう。」

 

3人は空を飛び、目的の場所まで急いだ。

 

 

 

「いたっ!」

 

森のある部分に大きな穴が見える。木が何十本も薙ぎ倒されているようだ。

 

「アリスっ!、魔理沙っ!」

 

その近くを飛んでいる2人を見つけた。

 

「信っ!キャッ!!」

「うわっ!!」

 

こちらに気づいた瞬間なにかに吹き飛ばされたように信の所に吹っ飛んできた。

 

「おっと。大丈夫か?」

「あぁ、すまないんだぜ。」

「助かったわ。」

「いったいあいつはなんなんだぜ?あんなの見たことないぜ。」

 

魔理沙が顔を向けた方向に目を向ける。

 

「おいおいマジかよ。本当にあれがお前たちのボスか?」

「ギャウウウウウウウウウっ!!」

そこには以前見たボスとは全くかけはなれていた。

身長は前回より2mくらいでかくなっており、頭からは角が生えている。そして何より脇腹の辺りから左右1本ずつ、肩甲骨の辺りから左右1本ずつ剛腕が生えている。その新たに生えた4本の腕の先には、手の代わりに鎌のような強靭な鉤爪がついていた。

 

 

その姿はまさに、化け物そのものだった。

 

 

 

「ギャウウウウウウウウウ!!!」

 

異形な化け物の叫びは、静かな夜に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第28話【切り札】

「ウギャオオオオオオオオオッッ!!!」

 

化け物は先程まで交戦していた魔理沙とアリスを見失って尚も破壊を続けている。

 

「っ!おいっ、あの倒れているやつらって...。」

 

化け物近くにたくさんの妖怪が倒れている。

 

「みんなっ!!」

 

やはり子分の妖怪のようだ。

 

「おいおいまずいぞ。」

 

暴れまわっている化け物がこのままいくと足元に倒れている妖怪を踏み潰してしまいそうだ。

 

「みんなっ!あの妖怪たちの避難を頼む。あいつは俺が引き付ける。」

「「「わかったわ(ぜ)」」」

「よし、いくぞっ!」

 

5人は化け物の元へ急ぐ。

 

「おいっ!!お前の相手は俺だっ!!!」

 

声を聞き化け物は振り返る。

 

「ギャオオオオオオッ!!!」

「『武刃』〈秋水〉。さあっ、いくぞっ!」

 

 

 

 

(ぐっ...でかいくせになんて正確な攻撃だよ。)

 

化け物の攻撃は鉤爪と拳を組み合わせ信の体を正確に捉える。しかもその一発一発が直撃すれば粉砕、あるいは切断される威力だ。

そして信がこの戦いに勝利する条件は、月が隠れるまで待つことである。だがそれは化け物の猛攻をあと約6~7時間耐え続けなければならないということだ。

 

(出し惜しみなんてしてられないな。)

「『一刀(いっとう)』〈陰鉄(いんてつ)〉っ!」

 

秋水とは別のもう一本の日本刀のような物を召喚する。

 

「第2ラウンドだ。」

「ギャウウウウウウウウッ!!!」

 

 

「ぐっ..。。」

 

信も持てる技とフルに活用して攻撃をいなし続ける。だが、傷つけてはいないという条件と相手が圧倒的馬鹿力、更には正確な攻撃をしてくるという事実がある。それを長時間続けるのは信でも容易なことではない。

 

『信、大丈夫か?』

「まだまだ行けるさ。」

『私の時みたいにこいつの体から本能を奪うことは出来ないのか?』

「本能ってのは生物の根源だ。それを奪っちまったら助かったとしてもこいつがこいつじゃなくなるかもしれない。」

『少しだけ奪うことはできないのか?こいつが本能を抑えられる程度まで。』

「俺が奪えるのは全部の時だ。少しだけ持っていくことはできない。」

『じゃあ...。』

「覚悟はしてたさ。月が消えるまで持ち堪えてみせる。」

「う...があ..ああ...。」

『「ッ!?」』

 

突然相手の動きが鈍くなった。

 

「た......む。...こ...て....れ。」

「お前っ!意識があるのか?」

「少..し..の..間だ...けだ。」

 

依然として体は攻撃してくるが先程のようなパワーもなければ正確さもない。

 

「たの...む。俺..を...し...れ。」

 

その妖怪は苦悶の表情を浮かべながら必死に伝えようとする。

 

「俺..を...俺..を...」

 

その妖怪が伝えたかったことは...

 

 

 

 

 

 

「殺...し...て...くれ。もう...傷つ...け..たくな..い。」

 

 

 

 

 

 

 

「お前...。」

「ギャウウウウウウウウウッ!!!」

 

突然動きが戻った。先程の言葉が最後の抵抗だったようだ。

 

「しまっ!」

『信っ!!』

 

突如戻った動きに反応しきれず、とっさに威力を吸収したものの流すことはできない。そのまま力に任せた凪ぎ払いによって吹き飛ばされてしまう。

 

「うわああああああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで全員ね。」

 

一方霊夢たちは妖怪の救出を無事終えていた。

 

「おいっ、大丈夫か!おいっ!!」

「全員意識を失ってるだけみたいね。」

「それだけで十分奇跡だぜ。」

「それよりも速く信の所にい「うわああああああ!!」」

「「「「ッ!!!」」」」

 

4人の頭上を信が吹っ飛んでいった。

 

「「「信っ!!」」」

 

そのまま見えなくなるまで飛んでいってしまった。

 

「あの野郎っ!!信をっ!!」

「まあ落ち着け魔理沙。」

「だってあいつ信をっ!...て信っ!!」

「落ち着けって。」

 

さっきまで吹っ飛んでいた信が4人のところにいる。能力で戻ってきたのだろう。

 

「大丈夫?」

「なんとかな。でもこのままじゃ持たなそうだ。俺も、あいつも。」

「ボスもかっ!?」

「さっき俺に伝えてきたんだ。「殺してくれ、もう傷付けたくない。」って。」

「ボス...。」

「でも助けるんでしょう?」

「もちろん。」

「じゃあ全員でなら...」

「多分無理だな。あいつの相手をしててわかったが、交代で相手をし続けても夜明けまでは持たなそうだ。」

「じゃあどうするんだぜ?」

「まあ、俺がやるよ。」

「はあ?でもさっき全員でやっても持たないって。」

「持久戦ならな。だからすぐに終わらせる。」

「出来るの?」

「やってみせるさ。ついでに面白いもん見せてやる。」

 

不適に笑った信の笑みに、4人は不思議と安心できた。

 

「わかったわ。でももしもの時は...」

「そんなことさせないさ。そのために俺はここに居るんだからな。」

 

そう言い残し信は上昇する。他の4人もそれについていく。

 

『使うのか?』

(ああ。こういう時のための物でもあるしな。)

『何言っても止めないだろうしな。頑張ってこい!』

(おう、頑張る!!)

 

信はゆっくりと1人、化け物へと近付いていく。

 

「ウギャオオオオオオオオオオっ!!」

 

化け物は信に気付き、雄叫びをあげる。

 

「もう少しの辛抱だ。必ず助ける。」

 

そういった信は1枚のスペルカードを取り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

「『終ノ符(ついのふ)』〈無双乱武(むそうらんぶ)〉」

 

 

囁くように唱えた時、そのカードは優しい光を放っていた

 

 

 




やっと信くんの必殺技を出せました。終ノ符が先に出ちゃいましたけどこれからももっとスペルカードは出てきます。
では、次回もお楽しみに。


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第29話【解決】

「『終ノ符』〈無双乱武〉」

 

信が唱えた瞬間、そのスペルカードは優しい光を放ち、姿を変えていく。

 

『今回はそれか?』

(ああ。こいつが適任だ。)

 

そして、変化したスペルカードを改めて唱える。

 

 

「『意志(いし)』〈ぬのぼこの(けん)〉」

 

 

そのスペルカードは1つの剣に姿を変えた。

 

 

side change

 

 

「なにっ!あの光。」

「豪華絢爛かしら。」

「いや、違うぜ。」

 

信が取り出したスペルカードが急に輝きだした。

だがそれだけだ。優しい光が修まり観察してみるがこれといった変化が見当たらない

 

「なにも起こらないわね。」

「よく見てっ!スペルカードが変化してる!」

「一体信は何するつもりなんだぜ?」

 

その瞬間、そのスペルカードが姿を変えていった。

 

「なんなんだぜ...あの剣は...。」

 

月明かりに照らされたそれは、身の丈ほどの大きさのある、闇に溶け込んでしまいそうな漆黒の直剣だった。

その場にいたみんなはその剣に不気味さを覚える。だが反対に、美しく、安心してしまう。

 

「あいつ...まさか...」

 

信はその剣を振りかざし、そのまま斬りかかった。

 

「やめてくれええええ!!!」

 

自分のボスに斬りかかろうとする信を、止めようとするのは必然である。

 

「待ちなさい!」「待つんだぜ!」

 

その妖怪を魔理沙とアリスが引き止める。

 

「離してくれっ!!あいつボスをっ!!」

「大丈夫。信はあいつを助けるって言ったんだぜ?」

「彼は絶対に嘘はつかない。」

「でもっ...」

 

そうしている間に信はその刃を化け物に深々と斬り込ませた。

 

「ぐっ!」

 

とっさに妖怪は目を離してしまう。

 

「よく見なさい。やっぱり信はあいつを殺す気なんて無いみたいよ。」

「えっ?」

 

恐る恐る目を向ける。今も尚、信はその剣で化け物を切りつけ続けている。だが、その切られたところには一切の傷が見当たらない。

 

「どういうことだ?」

 

 

その答えを知るものは、信だけである。

 

 

side change

 

 

「はあっ!!ぜあっ!!!」

 

召喚した漆黒の剣で何度も何度も斬りつける。

必然に、その間も化け物は攻撃を続けている。

 

「負けるかよ」

 

だが、その猛攻は信の体にかすることもなく空を切った。

巨大な鉤爪の凪ぎを受け流し、必殺の拳をゆらりとかわす。

その動作のなかに剣撃を混ぜながら間を開けることなく更に斬りつけ続ける。

何度も。 何度も。

 

「あ...が...。」

「おいっ!!大丈夫か!!!」

 

すると、妖怪のボスが自我を取り戻した。だが依然として体は信を攻撃し続けている。

 

「どうい..うこと...だ?」

「お前の子分の依頼でな、お前のことを助けさせてもらう。」

「他...のやつ...ら..は?」

「全員無事だ。」

「よ...かった。」

「今は安心して寝てろ。必ず助ける!!」

「ウギャオオオオオオオオオオ!!」

「早いなw。でもまあゆっくり休め。お前はもう十分頑張った。」

 

これだけの巨体で暴れまわり、至るところに倒れている妖怪を1人も殺していないということを、偶然と言うには余りにできすぎている。本能に飲まれながらも必死に抵抗し続けていたのだろう。

 

「ますます助けたくなっちまうな。」

『だんだんこいつの攻撃が正確じゃ無くなってきたぞ。もう少しだ。』

「あぁ。ラストスパートだ!!」

 

 

 

 

「ウ..ギャ...ウウ。」

 

化け物の咆哮も弱々しくなってきた。

 

「はああああああああっ!!」

 

更に力を込め剣撃をあびせる。そして化け物の姿はゆっくりと、前回の姿へと戻り始めている。

 

「これで..おわりだっ!!!」

「ウ...ギャ...ア...」

 

渾身の一振りを食らった化け物は、その姿をもとの姿へと変えていき、その場に倒れ込んだ。

 

「お疲れさま。ゆっくりおやすみ。」

 

倒れた妖怪の顔は、とても安らかだった。

 

 

 

 

「ボスっ!!」

 

勝負がついた瞬間に、妖怪は自分のボスの元へ飛んできた。

 

「大丈夫、寝てるだけだよ。今はゆっくり休ましてやれ。」

「明渡 信。ありがとう。本当にありがとう。うぅ。」

 

その妖怪は涙を流しながら喜んでいる。

 

「しーーんっ!!」

「終わったぞ。」

「うん、流石ね。」

「フフン♪もっと誉めるがいい。」

「どこか怪我とかしてないの?」

「ピンピンしてる。」

「それよりも信、」

「それよりもって...」

「細かいことは気にしないんだぜ。で、あの剣はなんなんだぜ?」

「あれは『ぬのぼこの剣』。思いによってその強さや性質を変える剣だ。それでこいつの本能ってやつを切り刻んだ。細かくな。」

「でもそんなことが可能なの?」

「あれには俺の霊力のほとんどをつぎ込むんだ。だからできるけど、その後は霊力はほぼすっからかんだな。」

「だから最初から使わなかったのね。」

 

みんなの疑問に答えつつ今後のことを話す。

 

「なあ、これももしかして異変に含まれるのか?」

「そうね。」

「霊夢、今回の異変の名前はなんなんだぜ?」

 

異変が起こる度に名前は博麗の巫女がつけているらしい。

 

「...『本能異変』ね。」

「実に分かりやすい。」

「じゃあ宴会もするのか?」

「もちろんよ。」

「ボス...」

 

3人と話していると、多くの視線を感じた。

 

「お前たち...目が覚めたのか。」

「それよりもボスはっ!?」

「今は眠ってるだけだ。明渡信が助けてくれたんだ!!」

「あんたが...。」

「おう、感謝してくれ..て..も!」

 

瞬間、その場にいた妖怪たちが全員跪いた。

 

「明渡 信!ボスを救ってくれたこと、深く感謝する。」

「...お前たちのボスは本当に人望があるな。」

「あぁ、ボスは俺たち全員の命の恩人だからな。」

 

ぐうううううううううう

 

「ん?今度はなんの音だ?」

 

その瞬間跪いていた妖怪たちは全員その場に倒れ込んだ。

 

「どうしたお前らっ!!」

「は...腹が...」

「腹がどうしたんだ!!」

「腹...減った。」

「へ?」

 

どうやら緊張の糸が切れて空腹に襲われたようだ。

 

「はっはっは!ちょうどよかった。異変解決の宴会を開くんだ。霊夢、いつやる?」

「そうね...準備を手伝ってくれれば明日の昼頃にはできるわ。」

「だそうだ。お前たちも来い。」

「でも大丈夫なのぜ?」

「50人位いるけど...」

「確かに材料集めるのがちょっと厳しいかも...。」

「大丈夫だよ。霊夢、『アレ』があるだろ?」

「ん?ぁあ、『アレ』ね。どれくらい残ってるの?」

「30キロちょい。」

「そんなにあれば大丈夫ね。」

「なんの話よ。」

「さっきからアレアレってなんのことだぜ?」

「まあそれは明日の楽しみだな。ちゃんと今回は準備手伝えよ?」

「うっ!わ、わかったんだぜ。」

「アリスもな。」

「分かってるわよ。」

「それじゃあ、お前たちは明日の昼頃に博麗神社に来てくれ。ボスも連れてな。今日は解散だ。」

 

 

こうして本能異変は無事、犠牲者0で解決された。

 

 

 

 

 

 




私の場合は原作のすべての異変が終わった後も書く気なので1つの異変を3~6話で納めるつもりです。
次回も色々進みます。


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第30話【増強】

 

 

「ただいま~」

「おかえり。なんか随分疲れてるね」

 

 帰ってくると真、愛、恭助、静が居間のテーブルで勉強会をしていた。各々の得意教科と苦手教科がいい感じにかみ合っているためよく四人だけで勉強会をやっている。

 

「ちょっと異変解決してた」

「へー、えっ!?」

 

 ノートに向かってうんうんと唸っていた愛が、首をグルんと回しキラキラした目線を送ってきた。兄弟の中で東方に一番のめり込んでいるのは恭助だが、幻想郷での出来事を一番楽しみにしているのは愛なのだ。

 

「なに!?なに異変!?」

「本能異変っていうやつ」

「本能異変だあ?」

「そんなんあったっけ?」

「いや……なかったはずだけど……」

 

 そう呟き、顔を見合わせて首を傾げた。思い出そうと目をつむり、再び開けたが全員が首を振る。

 

「もしかしてゲームに登場しないのか?」

「みたいだね。でもまあ、ゲーム通りじゃないのはもうわかってることだし」

「なんか貴重な体験を独り占めしたみたいだな。で、明日その異変の後の宴会やるから1日いっぱい居ないと思う」

「信にいずるいよ。私だって参加したい!」

「「俺だって!」」

「私もです」

「お前ら絶対魔理沙に勧められたら避け飲むだろ?」

「「「「勿論(です)」」」」

 

 即答かよと心の中で思い、突っ込もうとしたところでフッと眩暈がおきた。無双乱武を使ったことによる疲れが全身に来ているのだ。

 

「悪い。今日はもう風呂入って寝るわ」

「あ、ごめん信にい。風呂に入るなら風人も一緒にいれて。あの後すぐに寝ちゃって……」

「わかった……どこだ?」

 

 と聞くと皆一斉にテーブルを指さした。下を覗き込んでみると、テーブルの下に丸くなり寝息を立てている風人がいた。

 

「ほら風人~、風呂入るぞ~」

 

丸くなっている風人の足を引っ張り、ずるずるとテーブルの下から引きずり出す。目を弱く何度もこするが全く開く気配がない、とても眠そうにしていた。

 

「……うん」

「じゃあささっと入ってくるな」

 

 

 

「おぉ~力強くなったな風人」

「うん。いつかお兄ちゃんより強くなるんだ!」

「いいや、俺の方がずっと強いな!」

「僕だって負けないよ!」

「楽しみだ。ほら、兄ちゃんのはもういいから先に温まってろ」

「はーい!」

 

 いつもは男全員で一緒に風呂に入っている為、二人きりで話す機会というのがなかなか無い。お湯を浴びて目が覚めた風人はそう言われると、湯船に飛び込み1から順番に数を数え始めた。

 背中を流してもらっている間信は自分の髪を洗っていたので、弟の声を耳にしながら丁寧に泡を流した。

 

(息子ってこんな感じなのかな?)

『気が早いよ』

 

 妄想を共に突っ込まれ苦笑する。確かに何年先の話になるか……もしかしたら出来ない可能性だってある。どっちにしろ自分の子供のことなど出来てみなければわからない。

 そうして風人の声が60に差し掛かるころだ。

 

『なあ信』

『なんだ?』

『風人の声が途切れたぞ』

「風人おおおおおおおおおおおおお!!!!!湯船で寝るなあああああああ!!!!」

 

 風呂のお湯は泡だらけになった。

 救出した後も起きる気配が無く、仕方ないので信は風呂を出た。流石に完全に眠ってしまった人一人を風呂から寝どこまで送るのは今の体にはとてもつらく、入る前より疲れが出たような気がした。

 

「じゃあおやすみ」

「「「おやすみ」」」

 

 今で勉強を見ながら髪を乾かすと流石に限界が近い。今日は四人より早く寝ることにし自室へと向かった。

 ヨタヨタとした足取りで何とかたどり着くと、先に来ていたコトが目に入る。

 

「主、その霊力はどうしたのですか……」

「ん?あぁ、向こうで人助けをな。結果こうなった」

「あまり無理をしないでください」

「でも、無理をしなきゃ助けられなかった」

「主はそういう人ですものね……ですから私がサポートします」

「どういうことだ?」

「とりあえず寝てください」

「お、おう」

 

 言われるがままにベットに横になる。それを確認すると、コトは犬どころか人間も出せない音を出し始めた。

 

「どうやってるんだ?」

「私の能力です。『癒す程度の能力』とでもいうのでしょうか。全快するには一晩かかりますが。」

「それじゃあお前は寝不足になるんじゃないか?」

「主が寝た後は近くにいるだけでいいので大丈夫です。だから早く寝てください」

「わかったよ。ありがとうな。おやすみ」

「よい夢を」

 

 コトが出す音はとても心地がいい。昔歌ってもらってた子守唄を思い出す。そしてすぐに意識が薄れ、抗うことなく夢の世界に潜り込む。

 

「さあ、話を始めようか」

「俺のことをどうするってんだ?」

 

 いつも通りの明晰夢。しかし今回は今日の他にもう一人いるのだ。ただ、人というには少し抵抗のある姿だが。

 

「一部だけ奪うってのは出来ないんじゃなかったのか?」

「ぬのぼこの剣を通じて紛れ込んだみたいなんだよなあ」

 

 そこにいたのは先程まで戦っていた本能だ。共の時と同じモヤのように漂っていて、今回は色が暗い黄色だ。

 

「あんなに細かくしてくれやがって、しかも本体と切り離されて力を集めることも出来やしねぇ。完全体に……完全体になれさえすれば……!!」

「なんか第二形態のセルみたいなセリフだな」

「で、どうするんだ?ほんとに力がないみたいだし」

「まあ、とりあえず話を聞こうか。お前はなんの妖怪なんだ?」

「……牛鬼。周りにはそう呼ばれてた」

「牛鬼か、それならあの強さも納得だ」

「クソッタレが!完全体になれればお前の体も乗っ取ってやれんのによぉ!!」

 

 黄色いモヤが多きなったり小さくなったりと、正直恐ろしさや威厳は全くと言っていい程無い。むしろクスッと来るような面白さも感じた。

 

「どうする信、ここまで言うなら完全体にしてやったらどうだ?」

「俺の能力じゃ無理だよ」

「私ならできるぞ?」

「え!?」

「『増強する程度の能力』が私の能力だ。言ってなかったっけ?」

「聞いてない!でもまあせっかくだしやってみてくれるか?」

「おう」

 

 共が牛鬼に手をかざして能力を使う。するとそのモヤの密度が増した。先程の吹けば消えるような弱々しさはどこかへ消え、大妖怪にふさわしい圧が空間に広がった。

 

「力が……グハハハハハハハハハハハ!!!馬鹿めぇ!さっきまでのナメた態度膝ついて後悔させてやらぁ!!」

 

 高笑いしながら牛鬼の本能はそのモヤを大きく広げ、信の意識と共に真っ白な夢の世界を包み込もうとした。

 

「……あれ?」

 

 まあもちろん、そんなこと出来るはずもないのだが。

 

「馬鹿めっ!!!」

「どうなってやがる!?なんで支配できない」

「まあ、それはこいつの精神力は半端じゃないからな。他人に支配されることはまずないと思うぞ?」

「なん……だと!?」

「「馬鹿めっ!!!」」

「ん?」

 

 声が重なった。この場にいるのは共と牛鬼、その二人のどちらでもない可愛らしい声だった。きょろきょろと首を振り声の主を探そうとするが、なかなか姿を視界に入れるが出来ない。

 

「上だよ」

「上?」

 

 ゆっくりと降りてきたその人物は、ファンタジーでよく見るエルフのような容姿をした美しい少女だった。

 耳はとがって横に伸びており、、うっすら碧がかった金髪は肩にかかる程度で揺れていた。

 身長は小学校低学年ほど。その割には胸がでかい。

 

「初めまして信、共。私はシルフ」

「シルフってあの?」

「そう!四大精霊、風を司るシルフだよ!よろしくね!ってなんで私がここにいるのかって顔だね?君たち前にネックレス買ったでしょ?あれさ!私はあの中にいたんだ!」

 

 なぜそんな大物がこんなところに……という顔をしていると、余程わかりやすい顔をしていたのだろう。質問する前に彼女は楽しそうな笑顔を浮かべながらそう答えた

 

「でもなんでネックレスに入ってたんだ?」

「昔人間に姿を見られちゃって……そいつ精霊を中途半端にしか見れなかったみたいで幽霊と勘違いされちゃったんだよね……。それで騒ぎになってたら力の強い人間に閉じ込められちゃったって訳」

「四大精霊なのに……」

「本当に困るよね。でも結構楽しんでたりするんだ!人間の素直な面が見れたりするし、こうして君とも会うことも出来たしね!!」

 

 クルクルと信と共の周りを飛び回り、まるで何も悩みなんて無いといった口調で話している。背中から生えている羽はキラキラと美しく、このなにも無い真っ白な空間を少しばかり色付かせた。

 

「それで相談なんだけど、今更あのネックレスに戻るのもあれだし、しばらくここに住まわせてよ」

「断る理由は無いし歓迎するぞ。明渡 信。よろしくな」

「家主がそう言うなら私も問題ない。明渡 共。名前は信からもらった。よろしく」

「やったあああ!!」

 

 天井の無い空間を嬉しさを爆発させるように飛び回っていた。何年いたかは分からないが、あのネックレスの中に一人過ごしていたのだ。誰かと過ごすことが久しく、嬉しかったのだろう。

 

「そういえば、彼はいいのかい?」

「「あ!」」

「忘れてんじゃねぇよ……」

「てか本当にどうするんだ?」

「お前はどうしたい?」

「信、俺はあんたの下に着く」

「急にどうした」

 

 先程とは180度違う願望が述べられたことで信は驚き、共は何か裏があるのではないかと警戒した。しかしそれが本心であることは表情や雰囲気から分かる為、二人の頭の中は疑問で統一される。

 

「さっき支配できなくてあんたの力を探ってみた。とても高度で、洗練されている。それに惹かれた」

「なるほど。じゃあ名前つけないとな」

「名前?」

「だってなんか牛鬼って種族みたいで名前って感じじゃないんだもん」

「はぁ」

「こういうやつなんだ」

「ん~どうしようか」

 

 しばらく考え込んだ末、

 

「よし決めたっ!魔鬼まきだ!」

「どう書くんだ?」

「魔法の魔に鬼と書いて魔鬼。戦ってみたときの強さから強そうな名前にしてみた。どうだ?」

「魔鬼か……魔鬼。気に入った」

「で、また光り始めてるけど……」

「うおっ!こいつは一体なんだ!?」

「前にもこんなことが?」

「私が名前を付けてもらった時もこんな風になってたんだ」

 

話しているうちに魔鬼の姿が変わった。

 

「やっぱりか……」

 

 その姿はボスを人間にしたらこんな感じ、という容姿だった。

 身長は信より少し高く、ごつい。肌は浅黒く、髪は短くに切られた黒髪で、額に小さな角が2つ生えている。

 

「一種の主従関係みたいなのが出来てるね。それで思念体が実態を持つみたい」

「前の宿主みたいな姿になるのは?」

「さすがにそれはわかんないなぁ。まず魂がこんなに入ってる事自体前例がないだろうし」

「そういえばシルフ、お前には名前がないのか?」

「あるよ」

「何て言うんだ?」

「『フェリーチェ』。ディーネがつけてくれたんだ」

「『幸福・幸せ』か……いい名前だな」

「でしょ!って私の名前、イタリア語なんだけど」

 

 どうしてすぐにわかるのか?の表情だ。理由は単純

 

「17歳でも色々あるんだよ」

「イタリア語を覚えることはなかなか無いと思うよ」

「間違いないな。ああ、そうだ。お前たちは能力とかもってるのか?俺の能力の性質上、借りることがあるかもしれないから教えてくれ」

「幻想郷流に言うなら『風を司る程度の能力』かな?」

「なら、俺のは『気配を司る程度の能力』ってところか」

 

 フェリーチェが魔鬼の肩に当たり前のように座りながら何の抵抗もなく教えてくれる。ネックレスを手に入れてからしばらく経過しているので、彼女も信をすでに信用しているのだ。

 その後、三人の能力で一体どんなことが出来るのか、なぜか共とフェリーチェの魔力、魔鬼とフェリーチェの妖力が信の中に流れていることが発覚し、家賃の様なものだから仕方ないといったり等今後に関わる話をしていた。

 

「信、そろそろだ」

「ん、了解。じゃあそろそろ起きないといけないから」

「うん!受け入れてくれてありがとね信!」

 

 自身の中の住人が3人に増え、賑やかになったことを喜びながら目を覚ました。なり始めた目覚ましを24時間の休憩を与え、昨日の疲れが気になったので体を伸ばし、肩を回した。

 

「おはようございます」

「おはよう。ありがとな、体がすごい軽いよ」

「それは何よりです」

「それじゃあちょっと行ってくるよ」

「朝の稽古ですか?」

「いや、その前に行くところがあるんだ。いってきます」

「……無理をし過ぎないでください」

 

 自分の行動を考え、言葉を選び心配してくれるコトの頭を撫で心配はいらないと目で示した。彼女もそれで安心してくれたようで、頭を下げ見送ってくれる。

 目の前の神狼に心の中で感謝をしながら能力を使い、ある人物の居場所へと移動した。同じ間違いを繰り返さないためにも。

 

「朝早くに悪いな。聞きたいことがあるんだ」

「スヤァ……」

 

 時刻は午前4時。もちろんその人物は寝ていた。

 

 




どんどん賑やかになりますね。キャラを出しすぎてステータスがごっちゃになることだけは避けたいです。


明渡 魔鬼 (あけど まき) 190cm 短髪で黒髪
能力:気配を司る程度の能力
妖怪・牛鬼の本能。
自分が手も足もでない人間は初めてで、信には忠誠心をもっている。だが敬語なんて使ったことがないので基本タメ口。
体格がやたらいい。額の2本の角は短いため牛より鬼のように見え、牛鬼の牛要素があまり無い。




フェリーチェ 132cm 碧がかった金色で肩より少し長い Dカップ
能力:風を司る程度の能力
4大精霊の1人:シルフ
実は結構前からネックレスから出ることはできたが、自由にゆらゆらと旅を(漂流)するのが結構気に入っていたためそのままでいた。日本に流れ着いた頃に眠ってしまい知らないうちに幻想入りしていた。
イタズラ好き。性格は愛に似ている。




~~~追記~~~


コト
能力:癒す程度の能力
歌の聞こえる範囲にいれば何人でも癒すことができる。
だが人数や怪我の酷さに関係なく回復には一晩かかる。
代わりに今に息絶えそうな人でも生きているうちに歌を聞かせ始めれば治せる。
誰かを癒している最中も能力は使えるが、きっちり一晩かかる。



明渡 共
能力:増強する程度の能力
なんでも強くしたり増やしたりできる。
フランの破壊衝動を増強させて自分の存在をアピールし続けていたが、全然気付かれなかった。
能力を使わなくてもなかにいるだけで媒体は基本的に狂気に陥る。


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第31話【喜びと現実と提案】

(俺は...何してたんだっけ...?)

 

目を覚ましてもまだ目は開けない。体が重く疲れきっている。

 

(もう少し寝よう。)

 

もう一度眠ろうとした時、不意にある映像が脳裏に浮かぶ。

 

(「お前のことを助けさせてもらう!!」)

(なんだっけ...これ...。)

 

そこに写っていたのは前にも会ったことのある明渡 信という人間だ。だが、どうやってその映像まで行き着いたのかが思い出せない。

 

(...これは...確か...。)

 

記憶の1つ1つを辿っていく。何があったのかを思い出すために。

そして1つの記憶が蘇った。

 

(...ボスッ!!)

(ッ!!!)

 

その記憶を引き金に思い出した。朦朧とする意識のなかで、自分の仲間を傷付けた事実を。

 

「あいつらはっ!!」

 

咄嗟に体を起こす。そしてそこには1つの光景が目に映った。

 

「ガフッガフッ!!」

「そんなに急いだら喉につまるぞ!」

「追加よ。」

「うめぇ...うめえよぉ。」

「肉ッ!」

「わはーっ!」

「...?」

 

そこには自分の仲間や、森で見かける妖精や妖怪、果てには人間達が一緒になにかを食べている情景がうつった。

 

「目が覚めたか?」

 

そう問い掛けてきたのは信だった。

 

「これは...一体?」

「異変解決のあとはその首謀者も含めて宴会を開くんだよ。ほらっ、お前も食え!」

「これは?」

「餅だよ。俺と俺の兄弟でついたんだ。味は保証するぞ。」

「...これはあいつらに喰わせてやってくれ。」

「馬鹿言え。さっきから腹ならし続けてるやつがなにいってるんだ。」

 

そう言われて強烈な空腹を自覚する。

 

「だが...俺はあいつらを...」

「そんなこと気にしてるとそれこそあいつらに失礼だぞ。」

「え?」

「お前が暴れてるときあいつらはお前の周りに倒れてたんだ。そんであいつらの背中には一切傷がなかった。誰もお前のことを見捨てて逃げようなんて奴はいなかったんだよ。それなのにお前が腹減らしてどうする?それにあいつらのことは殺してしまわないように本能と戦ってたんだろ?食いもんはたくさんあるんだ。今くらいたらふく食え。」

「だが...。」

「じれったい。おいお前らっ!!お前らのボスが目を覚ましたぞっ!!」

「本当かっ!?」

「ボスッ!!」

「ボス、これ食ってみてください!すげえ旨いんですよ!!」

「こっちも旨いですよ!」

「腹減ってるでしょう?いっぱい食ってください!!」

「お前たち...俺が憎くないのか?」

「何言ってるんですか?」

「ここにいる皆がそんな事思うわけ無いでしょう!」

「皆あんたに救われたんだ。そのあんたのためにならこれくらいの傷どうってこと無いですよ。」

「お前たち...。」

「さ、どうぞ。たくさん食べてください。」

「...あぁ、貰おう。」

 

子分の妖怪から餅を受け取り口に放り込む。

 

「...旨いなぁ。」

「こっちもどうぞ。」

「あぁ。...旨いなぁ...。」

「ボス、こっちも...ッ!!」

 

妖怪のボスがその大きな体で何人もの妖怪を抱きしめた。

 

「...無事でよかった...本当によかった。」

「へへっ、こっちのセリフですよ。戻ってきてくれてよかった。」

「ありがとう...。」

 

その妖怪たちは涙を流しながら互いの無事を喜んでいる。

信は空気を読んでその場から離れていた。

 

「良かったわね、助けられて。」

「あぁ、本当に。」

『今の心境はどうですか?魔鬼さん。』

『悪いことしたと思ってるよ。だからからかわないでくれ。』

『ごめんごめん。』

『でも向こうの俺はそう思ってないぞ?多分また暴れようと機会を探ってると思う。それに今回本気で暴れたからもっと力をつけて再生すると思うぞ?』

『だから朝に聞きに行ったんだよ。』

『なるほど...。でも合意するか?』

『それはあいつら次第だな。』

 

魔鬼達と話していると...

 

「信、お前も今回こそ飲むんだぜ!」

 

酒瓶と盃をもって魔理沙が押し寄せてきた。

 

「魔理沙、信は飲まないって言ってるんだから無理に飲ませる必要ないじゃないの。」

 

それをアリスが止める。だが顔を赤く染めてすでにもう出来上がっている酔っぱらい魔理沙にそんな事を言っても無駄なことだった。

 

「いやっ!今回こそ飲んでもらうんだぜ!主役が飲まないんじゃ盛り上がりに欠けるんだぜ!!」

「そんな理由で!?信、はっきり言ってあげなさいよ。」

「あぁ、貰うよ。」

「信もこう言ってるんだから魔理沙もやめな...え!?」

「本当なのぜ!?」

 

前回の発言とは180°真逆の反応をした信に対して金髪の少女2人は驚きを隠せなかった

 

「何驚いてるんだよ?」

「でもあなた前に酒は飲まないって...。」

「今回は特別なんだ。魔理沙、盃2個くれるか?」

「ああ、おう。」

 

いまだに驚きが隠せない様子で2つの盃と酒を渡してくる。

 

「ありがとな。じゃあちょっと行ってくる。」

「待つんだぜ信、やることってなんなんだぜ?」

「見てればわかるさ。」

 

はぐらかしていたがその表情は真剣だった。大事なこと、もしくは重要なことだと2人も感じ取ったのかなんとなく信の反応に納得した。

盃を受け取った信はそのまま妖怪達のもとへ向かった。

 

「やっと食ってるな。旨いか?」

「あぁ、旨いよ。それに全員でこんなにたくさん食えたのは久しぶりだ。感謝してもしたりないくらいだ」

「喜んでもらえたようで良かったよ。...そんで1つ話がある」

 

笑いながら話していた信の表情が真剣になる。それを見て妖怪達も気を引き締める。

 

「お前は恐らく、次の満月でも本能に飲み込まれる。」

「「えっ!?」」

 

驚いたのは妖怪の子分たち。

なぜそんな事になるのか。なぜそんな事がわかるのか。

 

「...ああ。」

 

2つの疑問がボスの肯定によって確信付けられた。

 

「随分聞き分けがいいな。」

「薄々気付いていたんだ。目が覚めてから俺の中で本能が暴れようとしてるのがわかる。何かのきっかけでより強くなったみたいだ。」

「そんな...。」

「まあ、手段がないわけでもないが...。」

「その方法って!?」

 

ボスの方ではなく子分の方が食い気味に聞いてくる。

 

「まず1つ目、本能と和解すること。」

「無理だな。まず本能がこちらの話を聞いてくれたことは無い。」

『話くらい聞いてやったらよかったろ。』

『あいつの中にいたときは力がすべてでそれに負けるやつの話なんか聞く必要なんて無いと思ってたんだよ。』

「2つ目は本能に負けないくらい強くなることだ。」

「それならっ!」

「それも無理だな。今まで抑えるために力をつけてきたがそれでも今回暴走してしまった。たった一ヶ月で更に強くなった本能を抑えられる程まで血からをつけられることはまず無理だろう。」

「そんな...」

「最後に前回までのように眠りにつくことだ。」

「それも無理だ。眠りにはいることで本能の力を弱めて抑えられていたが、ここまで力をつけているとそれも出来ないだろう。」

「それじゃあ、一体どうやって...。」

 

ボスは冷静に事態を受け止めているがそれでも絶望的な状況に顔を伏せている。

子分たちはそんなボスを見て動揺しまくっている。

 

「そこで1つ提案がある。」

 

妖怪達の視線が信に集まる。

そして信が放った言葉は...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前さん、俺の式にならないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最近UAを確認できる方法を知りました。
予想以上に沢山の方に見てもらえている事がわかりとても嬉しいです。


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第32話【方法】

~~~~~~~~~数時間前~~~~~~~~~

 

 

「むにゃむにゃ。」

『寝てるな。』

『寝てるぞ?。』

『どうするの?』

『ん~...一旦戻るか。流石にこんなに早く起こすのは可哀想だしな。』

 

そう言ってもう一度能力を使い家に戻ろうとした時

 

「紫様っ!!お怪我はありませんか!!」

 

部屋の障子が勢いよく開け放たれはじめて会う人物が現れた。

 

「何者だっ!!」

「怪しい者じゃないよ。俺は明渡 信。ここへ来たのはゆかりんに聞きたいことがあったんだからなんだ。」

「む、君が信か。急に怒鳴って悪かった。紫様から話は聞いているよ。」

「こっちもこんな時間に悪いな。」

「むにゃむにゃ...なによ騒々しい...。」

「おはようゆかりん。」

「あら信じゃない...。おやすみなさい。」

「いや起きたんなら話を聞いてくれよ。」

「ふわあ、分かったわよ...今何時?」

「4時。」

「...。」

 

紫がもう一度布団に戻ろうと回れ右をするがそれはすでに先程の女性によって片付けられてしまっている。

 

「よいっしょっと。では紫様、ここではなんですし移動しましょうか。」

「...そうしましょうか。」

 

 

 

 

 

場所を変えて居間のようなところにいる。TVがあったのは流石に少し驚いたが。

「どうぞ。」

「ありがとう。ズズッ。」

「挨拶がまだだったな。私は八雲 藍。紫様に遣えている。」

「よろしくな。」

「それで?話ってなにかしら。」

「ああ、昨日異変があったのは知ってるよな。」

「ええ、大活躍だったわね。」

「だろ?...でその異変の首謀者が色々事情があってな。」

「本能に飲み込まれたんでしょう?それがどうしたのよ。」

「その本能が恐らく強くなる。だから次の満月でも今回みたいなのが起きると思うんだ。」

 

それから魔鬼の事や妖怪のボスのことを話した。

 

「なるほどね。要するにその妖怪が暴れなくていい方法は無いかと。」

「そういうことだ。なにかいい方法は無いか?」

「あるわよ。」

「本当かっ!?」

「ええ、ただしその妖怪が了承してくれればの話。でもあなたが向こうの体に入って本能を黙らせた方が手っ取り早くないかしら?」

「魔鬼の話だとどんな状況であれ暴れているときはあいつの心に負荷をかけるらしいんだ。俺と本能がやったら恐らくあいつの心が持たない。」

「ふむ、分かったわ。その方法を教えましょう。」

「助かるよ。」

「その方法はその妖怪をあなたの式神にする事。」

「式神?」

「ええ。因みにここにいる藍がわたしの式神。」

「へえ~。その式神ってのになると何がいいんだ?」

「まず式になった者の力が増幅するわね。」

「他には?」

「一瞬で主の元に現れることもできるわ。それと意志も疎通できるわね。」

 

 

 

~~~~~~~~そして現在~~~~~~~~

 

 

 

「という訳だ。」

「ちょっと待つんだぜ信!人間が妖怪を式神にするなんて聞いたことがないぜ!」

 

説明を聞いていた魔理沙が抑えきれないっといった感じで問いかける。アリスも同じような意見のようだ。

 

「前例がないだけさ。それに妖怪よりも素質が上の人間って言うのもそうそういないだろうしな。」

「でもリスクは無いの?今聞いた話だとなんの見返りもなしに力を得られるみたいだけど。」

「リスクはないがデメリットがある。これが一番厄介だ。」

 

この言葉にその場にいた全員が気を引き締める。

 

「式神となったものは主には一生、何があっても逆らえない。例え『死ね』という命令も従わなければならないんだ。」

「「ッ!!」」

 

妖怪たちは動揺を隠せない。自分達の大切な人を救う唯一の方法に、その様な条件があったのだから無理はない。

 

「決めるのはお前達だ。もちろん断ったとしてもお前の本能が暴走しないように全力で協力するつもりだ。」

 

だが、その動揺はすぐに落ち着いた。

 

「ボス...。」

「多分俺はお前達と同じことを考えてるよ。」

 

妖怪のボスは信と向かい合い、片膝をついた。

 

「その提案、ありがたく承諾させていただきます。我が身をあなたに委ねましょう。」

 

覚悟の言葉だった。一切の揺らぎを感じさせない覚悟の言葉だった。

 

「いいのか?一生俺に逆らえないんだぞ?」

「ただそれだけのことしょう?」

「「「・・・・」」」

 

一生逆らえないことを、『ただそれだけのこと』と答えた。相当のことを言っているのだがその場にいるものは皆不思議と共感してしまう。

 

「お前たちはいいのか?ボスを止めなくても。今ならまだ間に合うぞ?」

 

信は子分の妖怪たちに問いかける。

 

「我々も同じ考えだ。あんたにならボスを任せられる。」

 

その言葉は1人の妖怪しか話さなかったが、他の全ての妖怪たちも全く同じことを話しているかのような気迫だった。

 

「...よしっ、分かった。」

 

その覚悟を受け取り、信は酒瓶と盃をもってその場に胡座をかく。

 

「お前も楽にしろ。」

 

そう言われて素直に従う。

 

「式神にする方法は3つあってな。媒体になる者に札を貼る方法と、体の中の力を少し交換する方法。そして盃を交わす方法がある。」

 

説明しながら2つの盃に酒を入れていく。

 

「一生を左右する儀式だ。盛大にいこう。堅苦しいのもこれから無しだ。」

 

その1つを妖怪のボスに渡す。

 

「主従の関係と言ってもそれはあくまで形だ。お前が困ったら迷わず俺を呼べ。全力で助ける。だからお前も俺が困ったときはを助けてくれ。」

「もちろんだ。」

「そうだ。お前の名前は?」

「ギン。昔、ある人間にそうつけてもらった。」

「そうか。ギン、これからよろしく頼むぞ?」

「こっちこそ。これから世話になる、信。」

 

そして2人はその大きな盃に入った酒を一気に飲み干した。

 

 

 



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第33話【式神】

前回から結構間を開けてしまいました。ごめんなさい。

吹き出しの前に名前をつけることにしました。



信「ぷはーっ!うまい!」

 

酒を飲み干した信は初めての酒の味に素直な感想を述べた。

 

信「ギン、どうだ?」

ギン「うん。別のところから力が流れ込んでくる感じだ。元々自分の力みたいに違和感がなし、これなら本能も抑えられそうだ。」

手下「本当ですかっ!」

ギン「ああ。心配かけたな。」

信『お前が俺のなかにいるからかもしれないな。』

魔鬼『元々あいつは俺だからな。』

ギン「信、誰と話しているんだ?」

信「えっ?」

ギン「あいつは俺だとか誰かと話してるだろ。」

 

はっ!と思い反射的に意思を遮断する。

 

ギン「ん?今度はなにも聞こえなくなったな。」

信(そうか。意志疎通ができるようになったから魔鬼達との会話がだだ漏れなのか。でも遮断もできる...か。)

ギン「さっきの声はなんだったんだ?」

信「...いい機会だし話しておくか。紅魔館のみんなも聞いてくれ。」

 

宴会には紅魔館のメンバーも来ていた。今はレミリアも日の光が害の無いようにしている。

 

フラン「どうしたの?お兄さま。」

信「いつかは話さなきゃいけないことだし今話しちゃおうと思ってな。今回のギンのこと、前回のフランのことで色々あった結果、今俺の中には俺以外の人格が何人かいる。」

美鈴「どういうことですか?」

信「説明すると面倒だから見せるな。」

信『共、頼む。』

共『分かった。』

咲夜「見せるって一体な..に..を...。」

先程まで信がいた場所には全く別の人物がいた。

フラン「...え?私?」

アリス「信がフランになった!?」

共「正確にいうと少し違うがな。」

レミリア「で?あなたは誰かしら。」

共「私の名前は明渡 共。元々はフランドールのなかにいた狂気だ。」

レミリア「...本当に仲良くやってたのね。」

共「信も変わったやつでな。...フランドール。」

フラン「ん?」

共「これを機に謝っておきたくてな...すまなかった。私はお前の500年を奪った張本人だ。許してくれなんて言わない。ただ、私にできることがあったら言ってほしい。」

フラン「...別にいいよ。」

共「...え?」

フラン「あなたが私の中にいたときからなんとなく分かってたの。『壊したい』っていう私の感情の他に、別の誰かがなにか訴えてるのが。私はあなたがお兄さまに移ってからやっとそれが誰なのか分かったの。狂気だったあなたが必死に自分の存在を示していたって。」

信『やっぱりフランも気付きかけてたのか。』

共『知ってたのか?』

信『なんとなくな。』

フラン「ごめんなさい!あなたに気付けなくて。」

共「謝るのはこっちだ。それでも私はあんなに長い間...」

フラン「じゃあこれでチャラ!」

共「ひゃうっ!」

突然フランが共の胸に両手をつきだした。

フラン「やっぱり私が何かしないと気が収まらないと思うの。だからこれでおしまい。」

共「...気を使わせて悪かったな。でもなんでこれなんだ?」

フラン「私が将来こうなるかもしれないと思ったら気になっちゃって。」

共「そういうことか。気が済むまでやってくれ。」

フラン「うん!」

 

 

~~~5分後~~~

 

 

フラン「・・・・・・。」

共「・・・・・・。」

 

 

~~~10分後~~~

 

 

共「...長くないか?」

フラン「ごめん、もうちょっと。」

 

 

~~~15分後~~~

 

 

フラン「ふぅ~。堪能した。」

レミリア「そんなによかったの?」

フラン「うん。できればもっと触ってたかった。」

レミリア「ふ~ん...。」

共「あの...その手は一体...。」

レミリア「いえ、私の妹がこうなるんだったら私もそうなってもおかしくないでしょ?そう思ったら気になっちゃって。」

魔理沙「そうだぜ。フランが認めるその感触はみんなで共有するべきだぜ。」

レミリアと魔理沙が手をワキワキさせながら近付いてきた。

共「いやっ、フランドールには色々あったから触らせたけど他の奴にやらせる気はないぞ?」

魔理沙「堅いこと言うんじゃないぜ。」

共「だ、誰かこの2人を説得してくれないか?」

 

そう言いながら周りに助けを求める。しかし...

 

霊夢「いいじゃない減るもんじゃあるまいし。」

アリス「それにそうなった魔理沙を止めるのは難しいからね。」

共「ぐっ...こ、紅魔館のみんなはいいのか!?主が破廉恥なことしようとしてるんだぞ!」

咲夜「お嬢様のご意志ならば仕方がありませんので。」

美鈴「止める理由もそれだけでは不十分ですしね。」

 

現実は非情だった。

 

レミリア「さ、観念しなさい。」

魔理沙「悪足掻きはよすんだぜ。」

共『助けてくれっ!!』

信『なんかいっつもこうなるな。』

共『頼むから早くしてくれ!!レミリアと魔理沙がすぐそこに!!』

信『分かったよ。それじゃあ魔鬼、次はお前の番だ。』

魔鬼『了解。』

レミリア&魔理沙「「覚悟っ!」」

2人が共の胸めがけて手をつきだした。

魔理沙「...あれ?」

レミリア「固い...。」

魔鬼「あまり共をいじめないでやってくれ。」

魔理沙「うわっ!」

華奢な美少女が突然巨体な男の姿に変わっていた。

魔鬼「明渡 魔鬼だ。共と同じく名前は信につけてもらった。」

ギン「さっき信と話してたのはお前か。」

魔鬼「ああ、俺はお前の中にいる本能の一部だ。」

ギン「やっぱりか。」

魔鬼「あんまり驚かないんだな。」

ギン「正直、信なら何があってもおかしくないと思えてきた。」

信『ひどい話だ。』

魔鬼「それは俺や共も同意見だな。お前の中の俺はどんな感じだ?」

ギン「今も暴れようとしてるよ。信のおかげで抑えられるが。」

魔鬼「やっぱりか。今のお前なら多分静かにできると思うぞ。」

ギン「別れたとはいえ自分が抑えられるのはあんまり気が進まないんじゃないか?」

魔鬼「妖怪の本能が言うことじゃないかもしれないが、誰かと接する喜びは格別だからな。それをそっちの俺にもしってほしいと思っただけだよ。」

信『完全体になれればー』

フェリーチェ『すぐ支配してやるのにー』

魔鬼「...そういうわけだからそっちの俺にもよろしく頼む。」

そういった魔鬼は姿を変えて信に戻った。

魔鬼『フェリーチェエエエエ!』

フェリーチェ『ハハッ♪』

共『やれやれ...。』

信「ま、こういうわけで俺の中はとても賑やかになってる。」

フェリーチェ『私は紹介してくれないの?』

信『お前の存在は結構でかいからな。あんまり簡単に口外しない方がいいと思う。』

魔理沙「信っ!共に代わるんだぜ!」

共『絶対ダメだからな!』

信「本人がいやがってるから勘弁してやってくれ。」

魔理沙「なら段幕ごっこだぜ。今日こそ勝ってやるんだぜ!」

信「俺用事があったんだ、そろそろ戻るよ。ギン、なんかあったらすぐに呼べよ?」

ギン「分かってるよ。色々助かった。」

信「それじゃあな。」

魔理沙「あっ!待て信逃げるんじゃないんだぜ!!」

信に向かって手を伸ばすも、そのまま空を切った。

霊夢「残念だったわね。」

魔理沙「くぅー。こうなったらとことん飲んでやるんだぜ!ギンッ!!付き合うんだぜ!」

ギン「喜んで。」

 

 

 

コトの元に移動したら玄関に着いた。どうやらペット組はお昼寝中らしい。

 

信「ふぅ、ただいま。」

コト「主っ、おかえり...な...さい。また何かやったのですか?」

信「え?別におかしいことはやってないよ。」

コト「主の力の流れがまた変化しています。絶対なにかやったでしょう!」

信「まあ、式神を契約してきたけど...。」

コト「式神ですか?」

信「ここじゃなんだし俺の部屋にいこう。移動しながら話すよ。」

 

昨日の異変の事と今日のギンのことについて話しながら自室に移動した。。

 

信「...と言うわけだ。」

コト「...るいです。」

信「ん?」

コト「ズルいです!私も主の式になりたいです!」

信「簡単に言うけどさっき説明した通り式神になったら一生逆らえないんだぞ?」

コト「? それだけでしょう?」

信「それだけって...。ギンもそうだが軽く考えすぎじゃないか?」

コト「主だからですよ。それだけで覚悟を決めるには十分です。」

 

誰もがあの場でギンの言葉に共感できてしまったのはそういうことである。誰かのために寝る間も考え、誰かのために身体を張り、誰かのために全力を尽くす。それはそう簡単にできることではない。だからこそみんなは信の事を信頼できるのである。

 

信「...そこまで言われて断ったら男じゃないな。コト、俺の式になってくれるか?」

コト「もちろんですっ!」

信「どんな方法にする?」

コト「ギンとやらと同じ方法でお願いします。」

信「じゃあもう一回向こうに行かないとな。」

コト「ここでは出来ないんですか?」

信「ギンとやったのは酒を交わす方法だったからな。コトも人型モードのほうがいいかな。」

フェリーチェ『信、君は本当に何者なんだい?よく見たらあの子は神狼じゃないか。』

信『昔拾った。』

フェリーチェ『そんな事は普通ないと思うけど...。』

信『でも拾っちゃたんだから仕方ない。あのまま放っておくなんて論外だったし。

信「しかし不便だな。いちいち身体を変化させる度に服を脱ぎ着しないといけないなんて。」

コト「仕方ないですよ。」

フェリーチェ『それなら私が入ってたネックレスを使うといいよ。』

信『これか?』

フェリーチェ『ネックレスから出ようとしていじってたら妖精とか幽霊とかだけじゃなくて物体も入るようになっちゃったんだよね。それに私がずっと入ってたせいで入り口が緩くなっちゃったから霊力とかを流せば簡単に出し入れできるはずだよ。』

コト「それでは着替えますね。」

信「コト、ちょっと待ってくれ。」

 

そう言いながら信は自分の首につけられているネックレスをコトに着けた。

 

コト「なんです?これ。」

信「ちょっとそれに霊力流してみてくれ。」

少し前にこさえたコト用の服を近付けながらそういう。

コト「?分かりました。」

 

するとコトの服が消えた。

 

コト「えっ?えっ!?」

信「おっ、本当にできたな。じゃあ次は人型になる瞬間にもう一回霊力を流してみてくれ。」

コト「あっはいっ、分かりました。」

 

言われるがままにコトは姿を変える。すると...

 

コト「これは!」

信「成功みたいだな。」

ちゃんと人型のコトが服を着ていた。

コト「主っ!どういうことですか?」

信「そのネックレスは特別製らしい。今みたいにすれば自由に人型になれるぞ。」

コト「主!ありがとうございます!」

 

嬉しそうに感謝したコトは人型になったり狼になったりしている。。

 

フェリーチェ『ところで彼女の服は信の趣味?』

信『どうしても家にコトにピッタリの服がなかったんだよ。だから俺がこさえるからどんなのがいい?って聞いたら〈あれがいいです。〉って。』

 

コトが着ている服は黒を中心にした上着とズボンにに白いYシャツをインナーとした服。要するにスーツである。

 

信『まあ、確かにやたら似合ってるけどな。』

 

コトの人型は女性にしては身長が高く、容姿も整っていてスタイルもいい。さらにスーツを着ているため仕事ができる女上司のようである。叱られたい。

 

信「コト、そろそろいこうか。」

コト「はい、主。」

 

 

~~~~移動~~~~

 

 

 

ケン「あっ!信さん。どうしたんですか?」

魔理沙「戻ってきたなら弾幕ごっこだぜ。」

信「悪いけど後にしてくれ。こいつが俺の式になりたいっていうから儀式やりに来たんだ。」

コト「はじめまして、コトと言います。」

霊夢「信とはどういう関係なのかしら?」

信「ん~...コト、狼モード。」

コト「了解。」

 

突如姿を変えたコトにその場の皆が驚いた。

 

信「昔この姿で弱ってたこいつを見つけてな、それからずっと一緒に暮らしてるんだ。神狼だってことは俺も最近知ったんだ。」

アリス「本当になんでもありね。」

信「それよりもう一回盃と酒貸してくれないか?」

霊夢「これでいいのかしら?」

信「ありがとう。それじゃあコト、始めるか。」

コト「はい。」

 

再び人型に戻ったコトに盃を渡し、酒を汲む。

 

コト「主、本当にあの時助けてくれてありがとうございます。」

信「どうした?急に。」

コト「主に助けられてから明渡家の皆さんとずっと過ごしてきて、私はとても幸せです。これ以上にないくらいにです。そして今は、消えてなくなるはずだった命を助けてくれた恩人に、この身をもって尽くすことができる。どの幸せも、あの時主が私を見つけてくれたからです。」

信「改めて言われると照れるな。...俺にずっとついてきてくれるか?」

コト「もちろんですっ!!」

信「これからもよろしく頼む。」

コト「こちらこそ。」

 

2人は注がれた酒をゆっくりと飲み干す。その身に染み込ませるように、ゆっくりと。

 

信「ふぅ~、うまい。」

魔理沙「すごいんだぜ。2人ともそれをイッキ飲みなんて。」

信「ん?どういうことだ?」

魔理沙「今2人が飲んだ酒はここにあるなかで一番強いんだぜ。」

信「...俺はなんともないけど...。」

コト「...ヒック...。」

信「...コト?」

コト「なんれふかあ?主。」

 

酒を飲み干したコトは顔を真っ赤に染めていた。

 

コト「らいたいなんれふか主は。かへってふるたびにぼろぼろになって。そひたらこんろはなんれふか!どほの馬の骨ともしらあいやはらをしひがみにしてふるなんて。」

 

ベロンベロンに酔ったコトは信に対して持っていた不満を惜し気もなく吐露し始めた。

 

信「お、おう。」

コト「らいらい、しひにふるならまずわらひでしょう!ろこれす?主のもうひろりの式は。」

信「ギン...ちょっと来てくれ。」

ギン「...わかった。」

コト「あんられふか、主の1人目のひきがみってのは。

ギン「はい、ギンです。」

魔鬼『なんで敬語になってるんだよ。』

コト「すぎたことはもうろうにもなりまへんから順番のほとについれはもんくは言いまへん。ですが、あなたに主の式になる覚悟が本当にあったのですか?」

ギン「もちろん!」

コト「...ならいいれふ。これはらは主の式神どうしなはよくぅ..。」

信「コトッ!」

 

最後まで話さずに倒れたコトはどこか安心したように眠っている。

 

ギン「信頼できる人だな。」

信「ああ。だけどもう酒は飲ませられないなっと。」

 

眠っていることを信は軽々と持ち上げた。

 

信「騒がせて悪かった。」

霊夢「今回の異変解決者がなに言ってるのよ。」

魔理沙「なんなら弾幕ごっこでもっと騒ぐんだぜ。」

信「それはまた今度な。」

魔理沙「大切にしてやるんだぜ?」

信「もちろんさ。じゃあみんな、またn「あのっ!」。」

 

帰ろうとする信をひきとめる人物がいた。

 

信「どうしたんだ?ケン。」

ケン「あの...そのっ...。」

慧音「ほらっ、信ならちゃんと聞いてくれるさ。」

ケン「あ、はいっ。信さんっ!お願いがあります。」

慧音に後押しされて、ケンは腹を決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケン「僕に...武術を教えてください。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




一気に2人も式神が増えましたね。
でもまだまだたくさんオリキャラは出すつもりです。
この後は日常編が続きます。ですから妖夢とかまだ出せないですね。
次回もお願いします。


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第34話【戻ってきた】

信「おーい。そろそろ行くぞー。」

 

夏休みが終わり、今日から2学期が始まる。今年の夏休みは信にとってものすごく長く感じた。

 

真「はあ~。もう新学期かぁ。」

愛「はやいもんだねぇ。」

 

もちろんそれは信だけである。

 

信「忘れ物ないか?」

恭助「大丈夫。」

静「準備万端です。」

強太「陸にいたちがまだ来てないよ。」

信「なんと!」

広美「空ねえと海ねえが今世紀最大の寝癖作ってたからね。」

高太「2人とも学校楽しみにしていつもより早く寝てたし。」

深太「なのになんで一番遅く起きたんだろ?」

空「陸早く!皆待ってる。」

海「陸早く!陸待ちだよ!」

陸「このやろう。」

急いだ様子で3人が洗面所の方から駆けてきた。

風人&華「「陸にいおそーい!」」

陸「無邪気に言われるとホントに辛い。」

信「これ全員だな。コト、留守番頼んだぞ。」

コト「任せてください。みなさんいってらっしゃい。」

一同「「「いってきます。」」」

 

出発したらまずは山を降りる。あまり整地されていないため、余計に足腰が鍛えられる。それでも学校まで約30分だ。

 

恭助「にしてもコトが神狼だったなんてな。」

 

コトや共や魔鬼のことは一昨日話した。皆最初はビックリしていたが「信にいなら仕方ない」と納得していた。

 

静「モコも狼でしたし。」

愛「そんで極めつけは式神ときた。」

真「色々ありすぎでしょ。羨ましい。」

信「受験生は勉強に集中しなさい。」

真「へーい。」

 

山を降りるとあまり坂がなくなる。そのせいか明渡兄弟の歩行スピードはやたら早くなり、ご近所さんの中では新幹線と呼ばれている。

 

信「風人、華、怪我には気を付けろよ。」

華「はーい。」

風人「いってきまーす。」

 

一番最初につくのは風人と華の保育園だ。コトの正体も明かしたし、幻想郷の寺子屋もあるし、もう保育園には行かなくていいんじゃないかとも思ったが、華も風人も友達が多いため最後まで通い続けたいらしい。

 

海「そういえば真にい。私たちはいつ幻想郷に行けるの?」

真「分かんないな、ゲーム通り異変が起こるとも限らないし。短くても2年かな。」

恭助「出てこないキャラがいるかもしれないしね。」

空「それは嫌だ。」

空&海「「信にいなんとかしてっ!」」

信「無理言うなよ。」

 

そんな話をしているうちに、三つ子と四つ子が通う小学校に着いた。

 

信「あんまり先生を困らせるんじゃないぞー。」

強太「もちろん。」

高太&深太「「適度に困らせる。」」

信「...お前たちもだぞ?」

海「もちろん。」

空「テキトーに困らせる。」

信「せめて真面目に困らせなさい。...広美、陸、頼むぞ。」

陸&広美「りょーかい。」

信「よし、楽しんでこいっ!」

「「「行ってきまーす」」」

 

7人を見送り、先生に心の中で謝りながらまた歩き始める。

 

真「先生も大変そうだな~。」

愛「でも前に海たちと楽しそうに遊んでるの見たよ?」

恭助「何気にこの地域の大人は鉄人揃いだからな。」

信「おかげで安心できるけどな。」

フェリーチェ『信っ!君の学校にはまだ着かないのかい?』

信『もうちょっと行ったらだよ。それにしても随分学校に興味あるよな。』

フェリーチェ『忍び込もうとしたらディーネとか旦那とかに止められてね。ずっと憧れだったんだよ。』

信『でもまあ、今日は始業式とテストだけだから面白いことなんにもないぞ?』

魔鬼『テストってなんなんだ?』

信『習ったことをちゃんと身につけられているかの確認みたいなものだよ。っと、そろそろ真たちの学校に着くな。』

???「「「おはようございますっ!!」」」

 

中学校の校門の前で異性のいい挨拶が聞こえた。こちらに向けられたものだ。

 

信「恭助、また舎弟増えてないか?」

恭助「舎弟じゃないよ。こいつらが勝手についてくるんだ。」

舎弟「そんなこと言わないでくださいよ~。」

共『こいつらは誰だ?』

信『恭助に懲らしめられた奴等だよ。恭助と静はよく不良の相手をするらしいんだが、たまに恭助に憧れて舎弟になりたがる奴がいるんだ。』

舎弟「ささっ、荷物お持ちします。みなさんの分も。」

恭助「持たなくていいって。」

真「んじゃお言葉に甘えて。」

愛「よろしくねぇ~。」

静「お願い。」

恭助「えっ!?」

 

断ろうとする恭助とは別に3人は簡単に荷物を渡した。

 

恭助「真にいと愛ねえはともかく静までっ!?」

静「人の好意は素直に受けとるべきよ。」

真「そうそう。」

愛「うんうん。」

舎弟「さっ!」

恭助「うっ!し、信にい...。」

信「舎弟は大事にな。」

恭助「...頼む。」

舎弟「はいっ!」

 

諦めた恭助は舎弟(仮)に荷物を渡した。

 

信「それじゃあ、いってらっしゃい。」

4人「「「「いいってきます。」」」」

舎弟「旦那、お気をつけて。」

信「おう。」

 

校門前で別れ、ついに1人になった。いつもはこの瞬間少し寂しさを覚えるのだが...

 

フェリーチェ『ついに次が信の学校なんだねっ!』

共『あとどのくらいなんだ?』

魔鬼『いざ近くなってくると緊張するな。』

 

今は常に賑やかなこのメンバーがいる。

 

(たまらなく嬉しいな。)

 

嬉しさを胸に秘めて、自分の学校に歩き出した。

 

 

 

 

 

フェリーチェ『ここかい?』

信『ああ、ようこそ我が学舎へ。』

 

約一ヶ月ぶりの学校だ。だが夏休みが濃厚すぎて何年ぶりにも思える。

 

?「よっ、信っ」

 

校門前で干渉に浸っていると突然後ろから声をかけられた。

 

信「錬っ!久しぶりだな~。」

燈「ホントだよ。夏休みの講習全部休みやがって。寂しかったぞこのヤロー!」

信「こっちにも色々あったんだよ。」

共『こいつは?』

信『こいつは燈。俺の幼馴染み兼親友だ。』

燈「早く教室にいこうぜ!皆お前に会いたがってたんだぞ。」

信「お、おいっ!」

 

 

 

 

 

燈「おいみんなっ!信が来たぞー!」

「久しぶり。」「元気してた?」「わーわー!」

 

燈に手を引かれて教室に特急で着き、席に座る暇もなくクラスメイトに囲まれた。

 

?「信っ!どこ行ってたのよ!?」

信「桜か、久しぶり。」

信『こいつは桜。春人叔父さんの娘だよ。だから俺の従兄弟だな。』

桜「え、ああ久しぶり。...じゃないわよ!夏休み入ったとたん姿を消したって騒ぎになってたんだから!」

「どういうこと?」「失踪?」

信「叔父さんにも言ったろ?ちょっと山籠りで修行してたんだよ。」

「なんだ修行かぁ~。」「信ならやりそうだな。」

フェリーチェ『普通山籠りしてたなんて信じてくれないでしょ。』

桜「え?でもそれってむぐっ!」

信「(あんまり騒ぎにしない方がいいからな。表ではそういうことにしといてくれ。)」

桜「(え、ええ。分かったわ。)」

信「そろそろ予鈴なるし、皆席に戻った方がいいんじゃないか?」

「わっ、ホントだ!」「急げ急げ!」

燈「...。」

 

皆が少し焦りながら自分の席に戻ると間もなく予鈴がなり先生が来た。

先生「おはようお前ら、元気にしてたか?早速だけど課題回収するぞー。」

 

 

 

先生「本当にお前ら優秀だな。1人くらい忘れてこいよ。」

信「先生がそんなこと言っていいのか...。」

先生「もうすぐ始業式だからな。トイレいきたい奴は今のうちに行っとけよ。」

 

課題の回収が終わり先生がそれを運んで行った。

 

燈「なあ信、やっぱり何かあったのか?」

桜「燈には話しておいた方がいいんじゃない?」

信「...ここだと人が多い。あとで話すよ。」

燈「わかった。そういえば親父さんたちいつ帰ってくるんだ?」

信「あと2年くらいかな。」

桜「急に行っちゃってビックリしたもんね。」

燈「今度組手やろうぜ。親父さんたちがいなくなってから相手がなかなかいなくてさ。」

桜「私も私も!」

信「じゃあ明日家こいよ。こっちは毎日稽古してるから。」

燈「ああ。」

桜「うん。」

先生「よーし並べお前らー。始業式だぞー。」

「はーい。」

 

 

 

 

 

フェリーチェ『あれがジャパニーズ校長。話が長いってのは本当だったのか。』

信『精霊にまでその情報流れてるんだな。』

 

始業式が終わるとみんなぐったりしている。たったまま話を聞くのに対して話が長すぎるのだ。

 

先生「すぐテストだからなー。心の準備をしておくように。」

桜「信っ!ここ教えて。どうしてもわかんないの。」

燈「そこ俺もわかんないんだ。俺にも頼む。」

 

テストの前はやはりみんな緊張する。そして最後の足掻きの時間でもある。そのためこの時間、信先生は取り合いになるのだ。...が。

 

「そこ私にも教えて!」「ワイも頼む。」

 

ぞろぞろ集まってきた。しかも今回はみんな教えてほしいところが同じらしい。

 

信「みんなもか。じゃあもう黒板使って説明するから聞きたい奴は来てくれ。」

 

全員来た。

 

信「じゃあ説明するぞ。まずこれはな...。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キーンーコーンーカーンーコーン

 

先生「はい終わりー。後ろから回収してくれ。」

燈「おわったー。」

桜「信に教わったところバッチリ出たね。」

信「ああ。ドンピシャだったな」

信『どうだった?』

フェリーチェ『今の学校ではこんなこと教えてるのか...。』

共『信が説明したとこだけはわかった。』

魔鬼『同じく。』

先生「今日はこれでもう終わりだ。それじゃあSHRめんどいな...もうかえっていいぞー、事故るなよ?それじゃっ。」

 

終わったテストを持ち先生は出ていった。やっぱり適当だ。

 

信「じゃあ帰るか。錬、歩きながら説明するよ。」

 

 

 

 

 

 

燈「ってことは異世界でファンタジーことしてたってのか!?」

信「まあ、そういうこと。」

燈&桜「「なんて羨ましい。」」

信「そうは言っても大変だったんだぞ?いきなり化け物に襲われたり。」

燈「今も異世界に行ってるのか?」

信「ああ。結構頻繁に行き来してるな。」

桜「じゃあ私たちも連れてってよ」

信「ダメだ。お前たちは向こうにでかい影響与えるかもしれない。」

燈「そうならないようにするからさ、この通りだ。」

信「ダメなものはダメだ。でもそのうち行けるようになるぞ?」

桜「いつ?」

信「最低でも2年後。」

燈「そんな~。」

?「見つけたぞっ!明渡 信っ!」

信「モブチョーじゃん。久し振り。」

共『モブチョー?日本人か?』

信『こいつは模部 忠夫。部活で部長だからみんなにモブチョーって呼ばれてるんだ。』

忠夫「久しぶりだな。今日こそは空手部に入ってもらうぞっ!」

信「何度も言ったろ?俺は部活に入る気は無いんだ。たまに見てやるからそれで勘弁してほしいって言っただろ。」

忠夫「うむ。確かに聞いた。だが、お前との稽古は俺にとっても部員たちにとっても有意義極まりない物なんだ。それに、前に言ったよな?『俺に勝てたら空手部に入ってやる』って。」

信「言ったな。」

忠夫「だから今日は決闘を申し込みに来た。」

信「よし、じゃあ今すぐやろう。ちょうど空き地あるし。」

 

都合のいいことに信たちの歩いている道の傍らには小さな空き地があった。

 

 

 

信「よし、準備完了。よろしくお願いします。」

忠夫「よろしくお願いします。」

信「いつでも来い。」

忠夫「そうするっ!」

 

その試合は一方的なものだった。忠夫が攻め、信がそれを受けて流し、かわす。信は一度も攻めに転じていないはずなのに忠夫がおされている。

 

忠夫「くっ、はあっ!」

信「雑になってきてるぞ。」

忠夫「...どうして決まらない。俺も実力には相当自信があるんだが...。」

信「確かにお前は強いし早い。だけど基本がなってない。」

忠夫「基本?」

信「ほんのちょっとだけどな。動き出す前の癖が結構ある。ほんの少しだがその癖があるから、俺は簡単に回避できる。出直してこい。」

忠夫「ぐぬぬ...次こそは入部させてやるからな!」

 

捨て台詞を残しながらモブチョーは走り去っていった。

 

燈「なんか前よりキレが増してないか?」

信「俺は常に成長する男だ。ってもうこんな時間か。悪いけど先に帰るぞ。」

桜「急ぎの用事でもあるの?でもここから信の家まで結構あるよ。」

信「ところがどっこい。異世界での経験を得た俺には距離など関係ない。」

燈「どゆこと?」

信「まあそういうことだ。くれぐれも他言無用で頼むぞ?じゃあなっ!」

 

そういった信は消えた。

 

燈&桜「「ファッ!!」」

 

・・・・・・・・・・

 

燈「親友が人外になりかけているときって。」

桜「こんな気持ちなんだね。」

燈&桜「「まあ、信なら仕方ないか。」」

 

 

 

 

 




信君なら仕方ないのです。いいね?


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~~~~キャラ紹介~~~~

今更感が凄いですね。
コトのステータスが前回記載したものと変わっています。ごめんなさい。


明渡 信 (17) O型 身長186cm 誕生日 4/2 長い髪を後ろでひとつ結いにしている。

習得している格闘技・武道:空手、柔道、剣道、弓道、合気道、サバット、護道、槍術、鎌術

能力 『共有する程度の能力』

 

趣味:料理

好きな物:努力 甘い物 激辛料理 家族

嫌いな物:ズル 殺生(自分) 

得意教科:なし

苦手教科:なし

 

明渡家14人兄弟の長男。両親、両祖父母がみんな別々の格闘技を持っていたため誰が信に教えるかケンかになりそうだったところを2歳の信が「全部やりたい。」といい放ち、解決。

10歳の時には親達からおしえられたことは全部できるようになっていた。槍術、鎌術は独学。そして、親達は家事ができないので4歳から始め5歳には万能になってしまった。疲れた親達を癒すためにマッサージも極めている。

部活には入っていないが、よく空手部などで練習の相手をお願いされる。努力すること事態が好きなので勉強もできる(全国40位くらい)。通っている学校にはファンクラブもあるが、本人は知らない。

弟や妹たちには尊敬され、親達には感謝されているのをよくわかっているので、それがうれしく余計に頑張る。負の感情にはするどいが、良の感情には鈍い。

アニメ、ゲーム、マンガは家族全体が好き。ニコニ○動画もよくみるのでネタもよくわかる。

東方は名前しか知らない。

 

 

 

 

明渡 真 (あけど まこと)(15) O型 身長172cm 誕生日 4/10 髪は少し短めに切り揃えている

会得している格闘技・武道:空手

 

趣味:スポーツ カラオケ

好きな物:和食 手品

嫌いな物:質の悪い冗談

得意教科:数学

苦手教科:社会系

 

明渡家14人兄弟の次男。双子の兄。

父親と信に空手を習っていた。信には家事も習い、5年くらい前から手伝っている。

基本的には頼れるが、パニクるとどうにもできない。

純粋でよく冗談を本気にしたりするが、悪意に敏感なため騙されることは少ない。口喧嘩に勝てない。

頭はいいが、テストで愛に勝ったことがない。

アニメもゲームもマンガもすき。東方は大好き。信にはよく進めている。

好きなキャラは美鈴

 

 

 

 

 

明渡 愛 (あけど ちか) (15) O型 身長165cm 誕生日4/10 ポニーテール Bカップ

会得している格闘技・武道:合気道

 

趣味:泳ぐ事

好きな物:イタリアン おっぱい BL

嫌いな物:お化け(怖い) 暗い所(怖い) 落雷(怖い)

得意教科:社会系

苦手教科:国語

 

明渡家14人兄弟の長女。双子の妹。真同様、頼れるが、パニクるとどうにもできない。

6年くらい前から家事を手伝っている。料理の腕は霊夢くらい。

合気道は信と母親にならった。

家事ができ、顔も整い文武両道なのでよく告白される(男女問わない)がすべて断っている。

外にいることが多いため、肌が褐色に焼けている。

活発な性格。よく真と組み手をする。

ゲームもアニメもマンガも好き。

東方は好きだがプレイは苦手。好きなキャラはアリス。

 

 

 

 

明渡 静(あけど しずか) (14) O型 身長160cm 誕生日4/8 ロングストレート Eカップ

会得している格闘技・武道:サバット

 

趣味:読書

好きな物:信が作った料理 静かな所 本

嫌いな物:落雷(怖い) 

得意教科:国語

苦手教科:理科系

 

明渡家14人兄弟の次女

サバットは母方の祖母と信から習った。そのせいか足に多くの傷痕等が残っているので夏でも黒いストッキングを着用している。

物静かで、よく恭助と喧嘩する。

学校では不良の抑止力になっているため彼女を尊敬する女子が結構いる。その女子たちからは『お姉様』と呼ばれている。図書委員長。

自制心が強く、何かあってもすぐに落ち着く。

同時に複数のことをやるのが苦手。家事は大体出来るが料理だけは出来ない。

頭はいい。わからないことは信によく聞く。

アニメやマンガはすきだが、小説の方が好き。ゲームは一人でやらない。

東方はストーリーとキャラだけしっている。どんなゲームかは知らない。

好きなキャラは妖夢とパチュリー。

 

 

 

 

 

明渡 恭助(あけど きょうすけ)(13)O型 身長169cm 誕生日3/30 10mmくらいの丸刈り

会得している格闘技・武道:空手、護道

 

趣味:野球

好きな物:豚肉 動物

嫌いな物:理不尽 初対面でビビられること

得意教科:理科系(特に化学)

苦手教科:数学 

 

明渡家14人兄弟の三男

目付きが悪く、よく静と喧嘩しているため、怖がられることが多い。静同様、学校では不良の抑止力になっているため、先生達に頼りにされている。野球部に所属。自制心が強い。

口は固く、根は優しいことを周りは知っているので、愚痴や相談の相手によくなる。

料理は信達に習いできるが、それ以外は苦手。

アニメよりもマンガが好き。明渡家で一番、東方をプレイしている。

好きなキャラは霊夢、フラン、レミリア

 

 

 

 

明渡 空 (あけど そら) (12) O型 身長148cm 誕生日4/10 セミロング Bカップ

会得している格闘技・武道:剣道

 

趣味:イタズラ

好きな物:ラーメン 

嫌いな物:納豆 虫

得意教科:美術

苦手教科:数学 理科系

 

 

明渡家14人兄弟の三女。一卵性の三つ子の一番上。

剣道は信と父方の祖父に習った。マッサージも海と一緒に信から教わった。

料理はチかに習ったから簡単なものは作れる。それ以外はまだできない。

頭はいいが、たまに天然。

最近膨らみ始めた胸を気にしている。

左側の目元にほくろがあるのが空。

東方は兄がプレイしているのをよく見ている。好きなキャラは妹紅と輝夜。

 

 

 

 

明渡 海 (あけど うみ) (12) O型 身長148cm 誕生日4/10 セミロング Aカップ

会得している格闘技・武道:剣道

 

趣味:悪戯

好きな物:ラーメン

嫌いな物:めかぶ 虫

得意教科:社会系

苦手教科:数学 理科系

 

明渡家14人兄弟の四女。一卵性の三つ子の真ん中。

弓道は信と父方の祖父に習った。空と海がマッサージした人は溶ける。

頭はいいわけではないが上の兄弟によく教わるので成績は優秀。

膨らむ気配の無い胸に不安を覚えている。

右側の目元にほくろがあるのが海。

東方は空に聞いただけでキャラしか知らない。好きなキャラは魔理沙。

 

 

 

 

明渡 陸 (あけど りく) (12) O型 身長153cm 誕生日4/10 スポーツ刈り

会得している格闘技・武道:柔道

 

趣味:

好きな物:米類 虫

嫌いな物:グロ系

得意教科:数学 理科系

苦手教科:特になし

 

明渡家14人兄弟の四男。一卵性の三つ子の一番下。

柔道は信と母方の祖父に習った。

頭は悪いため兄弟に勉強を教えてもらうことが多い。

手先が器用。空と海の髪のセットをよくやっている。

アニメ『天元突破グレンラガン』を見て男気を学んだ。

東方は名前しか知らない。

 

 

 

 

明渡 強太 (あけど きょうた) (9) O型 身長140cm 誕生日4/3 短髪

会得している格闘技・武道:無し

 

趣味:宝探し

好きな物:辛い物 遊ぶこと

嫌いな物:ゲームセンター(苦手)

得意教科:特になし

苦手教科:特になし

 

明渡家14人兄弟の五男。一卵性の四つ子の一番上。

生まれた順番をあまり気にしていない。4人とも仲がいい。

考えてるときに顎をさわるのが強太。四つ子の中で一番目がいい。

常にサングラスを所持している。

東方は真に聞いたがよくわからなかった。

 

 

 

 

 

明渡 広美 (あけど ひろみ) (9) O型 身長140cm 誕生日4/3 背中までのロング

会得している格闘技・武道:無し

 

趣味:宝探し

好きな物:出汁が効いた味噌汁 世話を焼くこと

嫌いな物:ゲテモノ

得意教科:家庭科

苦手教科:国語

 

 

明渡家14人兄弟の五女。一卵性の四つ子の二番目。

静を女性としての目標にしているため髪を伸ばしている。

四つ子のなかの抑制係り。

四つ子の中で一番舌がいい。

東方はストーリーは知っている。好きなキャラは慧音。

 

 

 

 

明渡 高太 (あけど こうた) (9) O型 身長140cm 誕生日4/3 強太と同じ

会得している格闘技・武道:無し

 

趣味:宝探し

好きな物:甘い物 遊ぶこと

嫌いな物:喫煙所 公衆トイレ

得意教科:特になし

苦手教科:数学

 

明渡家14人兄弟の六男。一卵性の四つ子の三番目。

四つ子の男3人に外見的な見分け方はない。信と保護者組だけ見分けれる。

兄弟の中で一番信を尊敬している。

考えてるときにこめかみを掻くのが高太。四つ子の中で一番鼻がいい。

常に鼻栓(水泳用)を持っている。

東方はきゃらだけ知っている。好きなキャラは咲夜、小悪魔。

 

 

 

 

 

明渡 深太 (あけど しんた) (9) O型 身長140cm 誕生日4/3 高太と同じ

会得している格闘技・武道:無し

 

趣味:宝探し

好きな物:酸っぱい物 遊ぶ事

嫌いな物:ゲームセンター(苦手) 映画館(苦手)

得意教科:特になし

苦手教科:歴史

 

 

明渡家14人兄弟の七男。一卵性の四つ子の一番下。

見分けがつかないことを利用してよくイタズラをする。本人たちもたまに間違える。

考えてるときに腕を組むのが深太。四つ子の中で一番耳がいい。

常に耳栓を持っている

東方は知らない。

 

 

 

 

明渡 華 (あけど はな) (4) O型 身長113cm 誕生日4/9 ツインテール Aカップ

会得している格闘技・武道:無し

 

好きな物:家族 遊ぶ事 信の料理

嫌いな物:怒った時の信

 

明渡家14人兄弟の六女。二卵性の双子の姉。

無邪気な体力お化け。笑顔が絶えない。甘いものが好き。

東方は知らない。

 

 

 

 

 

 

明渡 風人 (あけど かざと) (4) O型 身長112cm 誕生日4/9 真に似ている

会得している格闘技・武道:無し

 

好きな物:家族 遊ぶ事 信の料理

嫌いな物:怒った時の信

 

明渡家14人兄弟の八男。二卵性の双子の弟。

華ろ同じく無邪気な体力お化け。ご飯を美味しそうに食べる。

東方は知らない。

 

 

 

 

 

トモ ♂ (4) 雑種の黒猫。

モモ♀ (5) 雑種の白猫。

 

好きな物:餅 レーザーポインター

嫌いな物:猫じゃらし(うざい) 知らない人

 

4年前に段ボールに入っていて衰弱していたところを真と愛が連れてきた。

明渡家の人間にはなついているがなかなか他の人になつかない。

寝るときは一緒に寝ている。

 

 

モコ ♂ (3ヶ月) 普通の狼。

 

好きな物:生肉 人間 

嫌いな物:痛みや苦しみなどの身体的苦痛

 

2ヶ月半前にコトが背中に乗せてきた普通の狼。

コトの事を本当の母親のように慕っている。自分の事を追い出したら群れのことは恨んでいるわけではない。

群れからはぐれた日本狼と密輸入された灰色狼の間に生まれた狼と、逃げ出してきたホッキョクオオカミの間に生まれた。

とても人懐っこい。トモやモモとも仲がいい

 

 

コト(狼時) ♀ (8) 超白い神狼

体長195cm(鼻の先端から尾の付け根まで)

能力『癒す程度の能力』

 

趣味:鍛錬 家の見張り

好きな物:信特製ジャーキー 明渡家一家とその友人

嫌いな物:外道 

 

大分でかい。 真とか愛でも2人で余裕でのれる。

8年前に道端に倒れているところを信が小3の時に連れてきた。

正体を明かそうとしていたがタイミングがつかめず、ずっと犬として過ごしていた。

よく風人や愛が背中にのっている。

体長の問題で定員オーバーになるが、本当はもっと乗せれる。

近所の犬に尊敬されている

 

 

コト(人型時) 168cm Fカップ

髪は白く、狼時と同じく頭からは犬耳が、腰からは尻尾が生えている。

毛が多いことも原因の一つだが、狼時よりかなり縮んだように感じる。

服を着る習慣がないためどうしても服に違和感を覚える。

信がこしらえた服はしっくり来るらしい。

狼時よりも霊力の扱いがうまくなる。

 

 

 

 

 

明渡 共 (495?) 161cm フランと同じ髪型。 DよりのCカップ

能力『増強する程度の能力』

 

趣味:人間観察

好きな物:スイーツ

嫌いな物:昔の自分

 

『共』の名前がついてとき成長したフランみたいな姿になった。

姿が変わってからちゃっかり一人称を変えている。

睡眠を必要としないため、信が寝た後人知れずに何かしている。

フランの破壊衝動を増強させて自分の存在をアピールし続けていたが、全然気付かれなかった。

能力を使わなくてもなかにいるだけで媒体は基本的に狂気に陥る。

 

 

 

明渡 魔鬼 (あけど まき) 190cm 短髪で黒髪

能力『気配を司る程度の能力』

 

趣味:力比べ

好きな物:魚 自分より強い奴

嫌いな物:舐められること

 

妖怪・牛鬼の本能。

自分が手も足もでない人間は初めてで、信には忠誠心をもっている。だが敬語なんて使ったことがないので基本タメ口。

体格がやたらいい。額の2本の角は短いため牛より鬼のように見え、牛鬼の牛要素があまり無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~追記~~~

 

 

『癒す程度の能力』

歌の聞こえる範囲にいれば何人でも癒すことができる。

だが人数や怪我の酷さに関係なく回復には一晩かかる。

代わりに今に息絶えそうな人でも生きているうちに歌を聞かせ始めれば治せる。(ちぎれた腕とかも生えてくる。)

誰かを癒している最中も能力は使えるが、きっちり一晩かかる。

 

 

 

『増強する程度の能力』

なんでも強くしたり増やしたりできる。

 

 

『気配を司る程度の能力』

気配を遮断して巨体でも気づかれずに近づいたり、逆に威圧感を与えたりすることも出来る。

また、目に見えない動き等も強く感じ取る。

 

 

 

 

明渡 春人(あけど はると) (36) O型 身長180cm 誕生日6/6

会得している格闘技・武道:空手、柔道

職業:警察

趣味:新人育成

好きな物:春奈 

怖い物:東方をプレイする時、春奈に見つかること

 

前世代明渡兄弟の次男。信の親である長男が……と言うより他の兄弟が自由奔放だったためとても苦労していた。

空手は兄の稽古に付き合っていたため、柔道は警察に入ってから習得した。

高卒で警察に就職、高1から付き合っていた現在の妻と卒業と同時に結婚。

柔道は信の母親の父によく相手をさせられていた。1度も技ありすらもとれたことがない。

東方は妻に隠れながらプレイしている。好きなキャラは勇儀。

 

 

 

 

 

明渡 桜(あけど さくら) (17) O型 身長162cm 誕生日4/20 ポニーテール(腰くらい) Aカップ

会得している格闘技・武道: 空手

 

趣味:創作料理

好きな物:今の信(異性として) BL 年下の子

嫌いな物:昔の信 頼られないこと 怖い物全般(お化けとか)

得意教科:数学

苦手教科:国語 

 

従兄弟ということもあって信たちとはよく遊んでいる。その為、燈とも昔からの顔馴染みである。

信以外に年上の人がいなかったため周りを常に気かけている。しかし反射的に発言したり行動したりしてしまうこともまちまち。

信のことが好き。髪も信を真似してのばしている。着物がメッチャ似合う。

東方は知らない。

 

 

 

 

夜明 燈(よあけ あかり) (17) A型 身長178cm 誕生日4/2 少し長い

会得している格闘技・武道:空手

 

趣味:温泉でのぼせること

好きな物:今の信(親友として)

嫌いな物:昔の信(親友として)

得意教科:理科

苦手教科:英語

 

保育園にいるときに誕生日が同じということで信と仲良くなった。

空手は信の父親に信と一緒に教えてもらった。

面倒ごとに突っ込むタイプ。

髪の毛は自分で切りそろえている。

現在は父親との2人暮らし。母親は買い物に行ったきり帰ってこなかった。

東方は結構詳しい。好きなキャラは衣玖、天子。

 

 

 

 

 

模部 忠夫(もぶ ただお) (16) AB型 身長175cm 誕生日12/24 丸刈り

会得している格闘技・武道:空手

 

趣味:努力

好きな物:全力の人

嫌いな物:やる気のない人

得意教科:5教科全部

苦手教科:特になし

 

空手部部長。1年生の時から信を部活に誘っている。

空手の成績は全国3位。

八百屋の息子。あまり繁盛していないため、学費を浮かせるという意味でも空手を頑張っていた。

 

 

 

 

 

 

~~~~未登場~~~~

 

 

 

 

明渡 春奈(あけど はるな) (36) O型 身長166cm 誕生日5/6 ロングヘアー Cカップ

会得している格闘技・武道:合気道

職業:警察

 

趣味:裁縫

好きな物:春人

嫌いな物:玉ねぎ 桜の料理(怖い)

 

春人の妻、桜と椿の母親。

中学でヤンチャしていたが春人に出会って色々変わった。

気が強いが寂しがり。

体を動かしているせいかやたら若く見える。

東方は半端なプレイは許せない。好きなキャラはチルノ、大妖精。

 

 

 

 

 

明渡 椿(あけど つばき) (13) O型 身長152cm 誕生日5/8 ボブカット Bカップ

会得している格闘技・武道:無し

 

趣味:恋バナ

好きな物:出来ること

嫌いな物:出来ないこと

得意教科:英語

苦手教科:英語以外

 

自由奔放。空や海と仲がいい。その為、陸の負担が増える。

姉の桜が信を好きなことを知っており、素直に応援している。

スポーツ万能。ただ最初に上手くいかないことはすぐに投げ出してしまう癖がある。その為格闘技・武道は会得できていない。

東方はあんまり好きじゃない。




設定を考えてるうちにモブチョーが好きになってました。


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第35話【弟子とウナギと】

信「よしっ、じゃあ早速始めるか。」

ケン「お願いします!」

妖怪「「「おねがいしますっ!!」」」

 

以前ケンに武術を教えて欲しいと言われそれを引き受けることにした。今日はその記念すべき最初の回なのだが...。

 

信「っていうかなんでお前たちまでいるんだ?」

ジン「ボスがあんたの式神になって強くなったし、俺たちもどうにかして強くならないといけないと思ってな。もう守られるだけってのは嫌なんだ。」

信「なるほどな。でも条件があるぞ?」

ジン「人間はもう食わないよ。俺たちもそんなに好きじゃないし。」

信「話が早いな。そういえばギンは?」

ジン「ボスは今本能と話してる。」

信「あいつも頑張ってるわけか。」

魔鬼『あいつなら問題なと思うぞ?』

信『ギンなら平気さ。心配なんてこれっぽっちもしてない。』

信「よしっ、じゃあまずお前たちがどこから始めればいいのかを調べる。股割できるか?」

ジン「股割って?」

信「これだよ。」

足をその場で横に広げ、そのまま地面についた。

信「武道をやる際に大事なのが体が柔らかいことだ。これがないと怪我するし、動きに無駄が多くなる。」

「いでででっ!」「無理無理無理!!」

 

妖怪の股は大体が90度以上開いていない。

 

「...先ずは柔軟からだな。」

ケン「あの、信さん。」

信「どうした...ケンッ!すごいじゃないか。」

 

ケンは完璧なまでの股割をしていた。

 

ケン「昔から体だけは柔らかかったんです。」

信「お前らもケンを見習えよ(笑)。」

ジン「ぐっ!今に見てろよケンっ!グニャングニャンになってやるからな!!」

信「じゃあまず軽くアップから。」

 

そう言うと信はあるものをを取り出した。

 

ケン「それは?」

信「ラジオカセットって言うんだ。必ず最初はこれを行うこと。」

 

ポチッ

ラジオ体操第1ーー

 

ケン「わっ!」

信「俺の動きを完璧に真似するように。」

ケン「は、はいっ!」

ジン「お、おう。」

 

 

 

信「先ずはこれで体を温める。これをちゃんとやれば効率がぐんとよくなる。それじゃあ次は柔軟だ。2人1組になってくれ。出来るだけ体の大きさが同じくらいのやつで。」

 

信「じゃあ俺たちが見本を見せるから真似してくれ。説明もするからちゃんと聞くように。」

 

「いででででっ!」

信「あんまり痛すぎないようにな。やり過ぎるとかえって固くなるぞー。」

「はい。」

 

信「息止めるなよー。ちゃんと呼吸しながらやるように。」

「うす。」

 

信「よし、柔軟終わり。これからは毎日ラジオ体操と柔軟をすること。特に柔軟は毎日やらないとなかなか効果がでないからな。」

「「はいっ!」」

信「次は選択してもらう。」

ケン「選択ですか?」

信「ああ。俺が教えられるのは空手、柔道、合気道、サバット、剣術、弓道、鎌術、槍術、そして護道の9つだ。でもいきなり色々やろうとすると混乱してなにもできなくなる。だから自分にあっていると思うものを1つ選んでもらう。」

ジン「でも何がどうなのかわからんぞ。」

信「今から説明するよ。そこのでかいやつ、ちょっとこっちに来てくれ。」

「俺?」

信「そう、お前だ。ちょっと俺に殴りかかってみろ。」

「え?でも。」

信「大丈夫だ。思いっきり来い。」

 

「じ、じゃあ。ふん!!...あれ?」

 

殴りかかった妖怪の体は宙に浮いていた。いや、浮かされた。

「いたっ!」

信「ちなみに今霊力とかは使ってないからな。これが合気道。体格や力に関係なく相手を制することができる。次はお前だ。」

「は、はい。」

信「お前はとにかく踏ん張ってろ。絶対転ばされないように。」

「ああ。」

信「ほいっと。」

「えっ!?」

 

妖怪は簡単に転ばされた。それも地面に背中をつけた状態で。

 

信「柔よく剛を制す。これが柔道、他にも絞め技とか投げ技とか色々ある。そんで次は、お前だ。」

「はいっ!」

信「どんどん攻撃してこい。遠慮はいらない。」

「はいっ!!」

 

妖怪は何度も殴り、蹴りつけようとするが1つもうまく決まらない。当たっても全く手応えがない。

 

信「これが護道。相手をも傷つけることの無い技だ。次はお前だ。悪いけど今度は俺が殴るから全力で抵抗してくれ。なんなら反撃してきても構わない。」

 

そうは言っても妖怪はなにもできない。信の流れるような連打をその体に打ち込まれていく。

 

信「これが空手。打撃を基本としたスタイルだ。そして最後にサバット。」

 

信は急にスタイルを変えた。

 

信「サバットは蹴り技が主体になる。本当は靴を履くんだけど妖怪のお前たちなら大丈夫だろ。」

「はあ、はあ。」

 

そう説明したところで連打をやめる。見本となった妖怪は割とボコボコだ。

 

信「剣術、鎌術、槍術はその名前の通り剣や刀、鎌や槍を使った武術だ。この中から選んでもらう。なんとなくでいいから自分に合いそうなのを、それか気に入ったやつでいい。なんなら仲のいいやつと同じのを選んでもいい。」

 

そう言うとガヤガヤ話始めた。

 

信「ケンは何にするか決めたのか?」

ケン「いいえ、まだ。...僕には何が合うと思いますか?」

信「ケンは素直だからどれでも出来ると思うんだよな。せいぜい武器を使わないやつを選んどいた方が良いってことくらいしか俺は言えない。まだ子供のケンに武器を持たせるのは周りが止めるだろうからな。」

ケン「そうですか...。」

信「まあ、あんまり考えすぎるな。案外直感に任せた方がいいこともあるもんだぞ?」

ケン「なるほど。...決めましたっ!空手をやろうと思います。」

信「そうか。俺は厳しいからな?」

ケン「のぞむところですっ!」

ジン「信っ!こっちのやつらは大体決まったぞ。」

信「そうか、今行く。」

 

 

 

 

信「なんか予想と大分ちがったな。」

 

妖怪達のやりたい武術を集計したところ、剣術が10人、柔道が8人、合気道がなんと32人と大人気だった。

 

ジン「ボスのあの姿を見た後だからみんな合気道をやりたがったんだ。」

信「そういうことか。」

 

そしてケンの習う空手を選んだ妖怪は、ジンただ1人だった。

 

信「これも何かの縁か?」

ジン「そうかもな。ケン、よろしく。」

ケン「稽古中にパクッと来ませんよね?」

ジン「いかねーよ。」

 

とても1ヶ月前に、喰うか喰われるかの関係にあったとは思えないほど仲がよかった

 

信「じゃあやることが決まったし、次は型と動きの技術を教えるぞ。」

ケン「型ですか?」

信「ああ。いきなり対人でやっても思ったような動きができないんだ。だから各々の武術の決まった動作や歩行技術なんかを完璧に体に覚えさせてもらう。グループ別に教えるからまずは合気道組来てくれ。」

 

 

 

 

信「これで最後か。」

 

最後はケンとジンの空手組だ。その前に教えた妖怪たちは頭の上に?を出しながら教わった動きを真似ていた。

 

信「最所は分からんだろうけど俺が言ったポイントを意識しながらやるんだ。体が窮屈に感じるかもしれないけど我慢してな。」

ケン「はいっ!」

ジン「おうっ!」

信「他のみんなも今日言ったことをちゃんとやるんだぞ。」

「「「押忍っ!師匠!!」」」

信「よしっ、今日は解散!」

 

ギンの子分達はそういわれるとそれぞれ森の中へと戻っていった。

 

信「ケン、俺たちも帰ろうか。」

ケン「はい。」

 

妖怪が大体いなくなった頃にケンを人里に送った。何だかんだで結構いい時間だ。

 

信「じゃあなケン。お前はまずちゃんと食って寝てでかくなるんだぞ。」

ケン「はい、ありがとうございました!」

(さて、晩飯はどうしようか。)

 

今日は武術を教えるということで遅くなりそうだったので夕飯は真達に任せ自分の分はいらないを言ってある。どこで食べるかを考えながら森の中へと入っていく。

 

「~~♪」

信「ん?なんだ?」

 

しばらく歩いていくとなにか聞こえてきた。どうやら誰かが歌っているようだ。

 

(こんな時間にこんなところで歌ってるやつなんているのか?)

 

不思議に思いながら声のもとへ近付いく。

 

(ミスチー?なんでこんなところで歌ってんだ?)

信『...魔鬼、お前の能力借りていいか?』

魔鬼『いいが、なにするんだ?』

信『もうちょっと近くで聞こうと思ってな。』

 

魔鬼の能力を共有し、自分の気配を完全に消す。その状態でミスティアのもとに近づくが、全く気付く様子はない。

 

 

ミス「夜の鳥ぃ、夜の歌ぁ♪ 人は暗夜に灯(てい)を消せぇ♪永い夜に謡う

夜の夢ぇ、夜の紅ぁ♪ 人は暗夜に礫を喰らえぇ♪

生水飲むと~おなかを壊す~♪ 湖飲むと~三途河~♪」

 

しばらくの間ミスティアは熱唱し、それを信は木の上で聞いていた。

 

信「いい声だな。」

ミス「えっ!?えっ!?」

信「後ろだ。」

ミス「キャッ!し、信さん!」

信「よう、ミスチー。なんでまたこんなところで歌ってんだ?」

ミス「い、いえ...特に理由は...。そうだっ!信さんお腹すいてませんか?」

信「ちょうど晩飯どこで食べるか考えてたところだ。」

ミス「なら私の屋台で食べていきませんか?今日はいい八目鰻が取れたんですよ。」

信「鰻か。そういえば今年はまだ食ってないな。...じゃあご馳走になろうかな。」

ミス「本当ですか?じゃあついてきてください、近くに屋台があるので。」

信「ミスチー、あんまり俺から離れないでくれ。」

ミス「えっ!?そ、それはどういう...」

信「さっきから目が暗さに慣れなくてな。全然視界が良くないんだ。」

ミス「あ、ああそういうことですか。なら丁度いいですね、八目鰻は目にいいんですよ。」

信「へえ、それはありがたい。」

 

~~~移動~~~

 

ミス「これが私の屋台です。」

信「おお、こういう屋台は初めてだな。」

ミス「さ、どうぞ座ってくださいな。」

信「ああ。」

 

そういった後ミスティアは準備にかかった。炭火はすでにおこしているようですぐに鰻を焼き始めた。その匂いが食欲をそ剃る。

 

ミス「信さん、お酒はどうしますか?」

信「遠慮するよ。本当は俺酒は飲んじゃいけない歳だからな。」

ミス「え?ちなみにおいくつで?」

信「17だ。」

ミス「17!?」

信「やっぱりそういう反応するか。鰻焦げるぞ。」

ミス「はっ!」

信「調理中は何があっても平常心だぞ。」

ミス「...はい。」

信「そういえばミスチーはなんで鰻なんだ?他にも色々あるだろうに。」

ミス「焼き鳥が許せないんです。」

信「鳥の妖怪だからか?」

ミス「はい、目標は焼き鳥屋の撲滅です!」

信「でもこれはいいのか?」

 

そういいんがら指を指した先にはおでんの卵があった。

 

信「その理屈だとこれは...。」

ミス「無精卵だから問題ないです。...さ、焼けました。召し上がってください。」

信「待ってました。」

 

出された鰻は湯気を昇らせ、まだ火に当てられているように脂を踊らせていた。それだけで口のなかが唾液で溢れる。

 

信「いただきます。」

 

焼きたて熱々を口に含む。

 

信「八目鰻は初めて食べるが変わった味だな。」

ミス「鰻って言っても全く鰻じゃないですからね。」

信「むぐむぐ...癖は強いけど好きな味だな。酒とも合いそうだ。」

ミス「追加で焼きますか?」

信「頼む。それとおでんもくれ。」

ミス「はいっ。」

 

 

信「ふぅ~食った食った。ごちそうさま。」

ミス「本当に食べましたね。まさか仕入れた鰻を全部食べるなんて。」

信「旨かったからな。さて、代金は置いとくよ。あんまり人を鳥目にしすぎるんじゃないぞ?」

ミス「ありがとうございました。...え、気付いてたんですか?」

信「まあな。それじゃあまた来るよ。」

 

そのまま信は消えてしまった。

 

ミス「...いっちゃった。………『また来る』か。」

 

信がいなくなりセミの声が響く森の中、ミスティアは1人呟いた。

 

「次はいつ来てくれるかな。」

 

いつも慣れない夜の暗闇も、今日はなんだか明るく感じた。




ジンは最初にケンに止めを刺そうとし、異変の時に博霊神社にケンと一緒に来た妖怪です。


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第36話【何度でも VS魔理沙】

信「体重のかけ方も意識するんだ。バランスは崩すなよ。」

「「「押忍っ!!」」」

 

妖怪達とケンの稽古をしている。今日は学校が休みだから午前中からやっている。

 

「おーい、しーーん!」

信「ようっ魔理沙。」

魔理沙「うわっ、本当に妖怪達に武道を教えてるのか?」

信「人を食わないことを条件にな。で、なにか用か?」

魔理沙「そうだったぜ。弾幕ごっこだぜ信。今日こそ勝ってやる!」

信「今はちょっとキツいんだよな。こいつらに教えてる最中だし。」

魔理沙「そう言ってずっとやってくれないじゃないか。今すぐやるんだぜ!」

信「ん~~。」

ジン「行ってこいよ信。俺たちはちゃんとやってるから。」

信「そうか、じゃあ行ってくるよ。すぐ戻る。」

魔理沙「よしっ!それじゃあ向こうでやるんだぜ。」

信「はいはい。」

 

~~~~移動~~~~

 

信「今日のルールはどうする?」

魔理沙「今日は連続して3発以上くらった方が負けなんだぜ。」

信「わかった。今日も勝たせてもらう。」

魔理沙「いいや、今日こそ私が勝つんだぜ!」

 

信「『運任』〈ドキドキわくわく抽選会〉!」

魔理沙「やっぱり最所はそれなのか。」

信「もちろんこれだ。」

信がスペルを唱えた瞬間何枚ものスペルカードが信を中心に円状に並ぶ。そしてそのうち1枚が燃え、1枚が赤い光を帯び、他のカードと一緒にゆっくりと消えた。

信「今回はこれか。じゃあ行くぞ!」

 

大量の弾幕を魔理沙に向かって放つ。

 

魔理沙「待ちくたびれたんだぜ!」

 

それに対して魔理沙も弾幕を展開し応戦する。お互いの弾幕がぶつかり合い、消滅する。

 

信「こっちから行かせてもらうぞ!『迷惑』〈刃の舞〉!」

魔理沙「それにはもう引っ掛からないんだぜ!」

信「『光符』〈豪華絢爛〉!」

魔理沙「うっ!これはまずいんだぜ。」

信「さあ、無数の刃が襲ってくるイタッ!」

魔理沙「お前もくらってんじゃないか!」

信「見えないんだから仕方ないだろ!『束縛(そくばく)』〈黒棺(くろひつぎ)〉!」

魔理沙「このタイミングでそのスペルは!」

 

その瞬間魔理沙が霊力によって作られた赤い箱のようなものに閉じ込められた。その箱の中にはいくつもの手裏剣が共に閉じ込められている。

 

フェリーチェ『赤いじゃん。』

信『気のせいだ。』

魔理沙「マスタースパーーーーーーク!!!」

信「『怪符』〈破壊光線〉!」

 

黒棺から出てきたマスタースパークを相殺する。

 

信「今のは仕留めるつもりでやったんだけどな。さすがはパワー主義の第一人者だ。」

魔理沙「そう思うなら無双乱武を使うんだぜ!」

信「そう簡単に使うわけにはいかなねえよ。『花符(かふ)』〈千本桜(せんぼんざくら)〉!」

 

何本もの桜の木が現れる。だがそれは霊力で作られており、花びらだけでなく木そのものが薄いピンク色の柔らかい光を放っている。

 

魔理沙「相変わらず綺麗なんだぜ。でも今そのスペルを使ってもなにも意味はないはずだぜ?」

 

このスペルは何本も生えた桜の木そのものが花びらに変わりながら散っていくというものだ。つまり飛んでいる相手にたいして全くと言っていいほど効果がない。

 

信「いつもならな。でもドキドキわくわく抽選会で選ばれたこいつは一味違うぞ!」

 

信は右手を魔理沙に向かって振り払うように動かした。それに合わせるように花びらは魔理沙の元に向かっていく。

 

魔理沙「な、まさか...。」

信「そのまさかさ。強化された千本桜は操作可能。さらに追加だ!『迷走(めいそう)亡霊達(ぼうれいたち)(あゆみ)〉。」

 

信を中心にして大量に弾幕が放たれる。すべて不規則に動いているように見えるが...。

 

魔理沙「さすがに多すぎるんだぜ。」

信「わかってると思うが亡霊達の歩は相手もしくは弾幕に当たるまで消えないぞ?」

魔理沙「しかも千本桜が操作可能だから信の弾幕同士がぶつかり合うことはない...か。少しエグくないのぜ?」

信「こっちはそれなりに戦略を考えてるんだ。そう簡単に負けられないよ。」

魔理沙「くそっ!『魔符』〈スターダストレヴァリエ〉!」

魔理沙もこのまま負けまいとスペルを使う。だが...

信「少し遅すぎたな。」

 

魔理沙のスペルを千本桜で相殺する。だが魔理沙の弾幕が全て無くなってもまだまだ弾幕は大量にある。

 

魔理沙「くっ...『魔符』〈ミルキーウェイ〉!!」

苦し紛れにはなったスペルは亡霊達の歩によってほぼ全てが相殺される。

信「これで...」

 

右手で千本桜を操作して魔理沙の囲むように配置する。

 

信「おしまいだ。」

 

それらを魔理沙に向けて集束させる。

 

魔理沙「うっ!」

 

そのまま無数の花びらが魔理沙を襲い、勝敗が決した。

 

 

 

(ああ...また負けちまったのぜ。)

 

千本桜を食らった魔理沙はそのままじめんにむかって落ちていた。

 

(一体どうやったらあいつに勝てるんだ?)

 

信は魔理沙と弾幕ごっこをする度に戦略を変えている。今回のようにスペルカードをいくつも使う場合もあれば1つしか使わない場合もある。

 

魔理沙「やっぱりもっとはやく動いて撹乱すれば...。」

信「よっと。」

魔理沙「え!?え、えっ!?」

信「いつ体勢を立て直すかと思ったらそのまま落ちてくんだもんな。結構焦ったぞ。」

魔理沙「え?あ、ああ。」

 

そういわれて下を見てみるともうそこには地面があった。

 

信「前にも言ったがもっと自分を大事にしたらどうなんだ?」

魔理沙「す、すまないんだぜ。...!!」

 

信に諭され冷静になると、あることに気がつく。今自分は高所から落ちてきて信に受け止められた。信は一体どうやって受け止めたのか。簡単だ。年頃の女子なら誰もが夢見て、意中の相手に1度でもやってほしいと思うもの。それは...

 

(お姫様だっこおおおおおっ!?)

魔理沙「信っ、下ろすんだぜ。」

信「うおっ!どうした急に。」

魔理沙「いいから早く下ろすんだぜ!!」

 

そう言いながら無理矢理地面に降りた。

 

魔理沙「覚えとくんだぜ信。つ、次こそは私が勝つんだからな。」

 

そのまま逃げるように立ち去る。突然のことに心臓は鼓動を大きくしていた。

 

(まったく...心臓がもたないんだぜ。)

 

顔赤くして全速力で逃げるなか、どうしても考えてしまう。

 

(...明日もここに来れば会えるのかな?)と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第37話【新たな精霊】

信「こーりん、遊びに来たぞ。」

霖「やあ信、珍しいね。」

 

時は流れて現在は12月。すでに雪が降り積もりまくっている。

 

信「しばらくこっちに来られなくなるからみんなに挨拶して回ってるんだよ。」

 

これから本格的に真と愛の受験勉強を見るためしばらく幻想郷には来られないのだ。他にも年末年始の準備や親戚に挨拶やらなにやらでとても忙しくなる。

 

霖「他のみんなにはもう話したのかい?」

信「こーりんで最後さ。さっき紅魔館のみんなに話したらフランに行かないでって背骨折られかけたよ。」

霖「吸血鬼の妹にか。そりゃあ大変だったね。」

信「本当だよ。そんなわけだから最後にここでなんか買っていこうと思ってな。」

霖「本当かい?それなら大歓迎さ。ぼくのお気に入りは売れないが好きなものを買ってくれ。」

 

店の中に入ってみると相変わらず散らかっている。商品が商品の影にかくれてどこに何があるのかわかりずらい。

 

(やっぱり買うの止めようかな...。)

フェリーチェ『信っ!!あの刀!』

 

そんなことを思っていると突然フェリーチェにあるものを指名された。

 

信『あの刀がどうしたんだ?』

フェリーチェ『いいから手に取ってみて!!』

信「こーりん、この刀は?」

霖「それは少し前に魔理沙が拾ってきたんだよ。不思議な力を感じるんだけど錆びてるのか全く抜けなくてね。それにかなり古いものみたいだし。結局なんなのか分からないんだ。」

信「これもらってもいいか?」

霖「構わないけど。」

信「いくらだ?」

霖「まあ、これくらいかな。」

信「安っ!」

霖「僕にとって全く意味のない代物だったからね。」

信「(ゴソゴソ)はい。」

霖「まいど。」

フェリーチェ『信っ!早く早く!』

信『そんなに慌てるなって。』

 

代金を支払い刀を手に取ってみる。他に比べて少し思いくらいだ。

 

フェリーチェ『抜いてみて。』

信『ふんっ...。抜けないぞ?』

 

力を込めて抜こうとしてみるがびくともしない。やはり錆びているようだ。

 

フェリーチェ『魔力と妖力を流し込みながら抜いてみて。』

信『?』

 

言われたままにやってみる。

 

ジャリジャリシャキンッ!

 

少し不快な音をたてながら刀が抜けた。

 

霖「おお。」

信「本当に抜けた...。」

信『でもこれが何かあるのか?』

フェリーチェ『やっぱり...。』

信『ん?』

フェリーチェ『やっぱり君だったんだね。ノーム。』

『...むぅ?』

信『ノーム?...ノームッ!?』

魔鬼『また新しい奴が入ってきたが、こいつがノームってのか?ノームってのは一体何者だ?』

信『フェリーチェと同じ四大精霊の1人だよ!』

共『なんでまたここに。』

ノーム『やーフェリーチェ。久しぶりだね~。』

フェリーチェ『300年ぶりだよノーム。全然変わってないね。』

ノーム『こっちの人たちは~?』

フェリーチェ『こっちが明渡 共。でこっちが明渡 魔鬼。それで彼が明渡 信だ。』

ノーム『共、魔鬼、信ね。よろしく~。』

信『よろしくな。ところでノーム、この刀って鍛え直すことはできないのか?』

ノーム『む?』

信『結構な業物みたいだから出来れば使ってみたいと思ってな。ノームって鍛冶が得意なんだろ?』

ノーム『せめて旦那が居ないと無理だな~。元々その刀は旦那の炎とディーネの水を使ってボクが打ったものだし。』

信『そうか。少し残念だな。』

ノーム『そういえば信、なにか変わったことない?』

信『? 別になにもないぞ。』

ノーム『ならいーや~。それじゃあおやすみ~。僕はまた眠らせてもらうよ。』

スピー スピー

信『本当に寝ちゃったな。精霊も寝る必要があるのか?』

フェリーチェ『そこまで重要じゃないんだけどノームは寝ること自体を気に入ってるんだよね。それとノームはノームを自分の名前として気に入ってるから。』

信『なんだと...。』

共『やっぱりつける気だったのか。』

霖「信、大丈夫かい?」

信「あ、ああ大丈夫。じゃあこれはもらっていくな。」

霖「うん。」

信「また来年。いいお年を。」

霖「いいお年を。」

 

軽い挨拶を済ませ、香霖堂を後にする。

 

信『しっかしノームまであそこにいるとは...。』

共『そういえばフェリーチェがいたのも香霖堂だったな。』

信『そのうちサラマンダーとウンディーネも香霖堂にくるんじゃないか。』

魔鬼『4大精霊ってのはそんなに適当なもんなのか?』

フェリーチェ『旦那とディーネがしっかり者だからそういうことはないと思うけど。』

信『本当かな?』

 

ちょっとした驚きと疑問を残しつつ、今年最後の幻想郷を後にした。




今回ちょっと雑になっちゃいました。そしてあと1話挟んでついにはあの異変が始まります。
まあその前にオリキャラ2人も出すんですけどねw





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第38話【2人の来客】

信「やっと終わったか。」

 

時はさらに流れて今日は始業式。ついに俺たちも3年生だ。

そんな中錬と桜と一緒に下校していた。

 

錬「もう3年生か。」

桜「受験怖い。」

信「まだ時間はあるんだから勉強しろよ。なんなら教えてやるから。」

桜「うん。」

錬「そういえば今日いきなり先生に呼び出された1年生が2人もいるらしいぞ。」

信「マジかよ。」

錬「それにその2人双子らしいんだよな。」

(ん?)

桜「それも男女の。」

錬&桜「「ニヤニヤ。」」

信「...あいつら何したんだよ。」

錬「まあ真と愛ちゃんのことだし。」

桜「心配する程のことじゃないでしょ。」

信「だといいんだけど。」

 

不安を残し、家族の待つ我が家へと足を運ぶ。

 

 

キングクリムゾンッ!!

 

 

信「ただいま~。」

コト「主、おかえりなさい。」

モコ「ワンッ!」

信「ああ、ただいま。お前本当にでかくなったな。」

 

まだ1年たっていないというのにモコの体はコトと同じくらいの大きさになっていた。

 

モコ「ガウッ!」

信「真たちはもう帰ってきてるか?」

コト「はい。御二人ともなにやら深刻そうな顔をしてました。」

信「そうか。2人は居間か?」

コト「はい。」

コトに教えてもらった通り2人は居間にいた。なにか話していたようだ。

信「ただいま。」

愛「あっ、信にい。」

真「おかえり。」

信「...今日先生に呼び出されたらしいな。」

真&愛「「うん。」」

信「なにがあったんだ?」

真「ちょっと相談を持ちかけられたんだよね。」

愛「しかもそこそこ重大な。」

信「高校生になりたてホヤホヤのお前たちにか?」

真「俺たちにって言うか...。」

愛「信にいにだね。」

信「俺に?」

真「うん。留学生のことは知ってるでしょ?」

信「ああ。そういえば噂になってたな。」

 

今年の1年生には2人の留学生がいると学校の中で噂になっていた。

 

愛「その留学生はホームステイする予定だったらしいんだよね。」

信「ほうほう。」

真「ただその途中で手違いがあったらしくて。」

愛「本来のホームステイ先だと色々大変らしいんだよね。」

信「その手違いってのは?」

真「どこの国から来るのかが間違って伝わってたみたい。」

信「大変らしいって言うのは...」

愛「2人とも日本語をほとんど話せないらしいんだよね。」

信「...2人の母国は?」

愛「フランス。」

真「ロシア。」

信「...相談ってのが?」

真&愛「「信にいに日本語を教えてほしいって」」

信「Oh...。」

真「先生は信にいがフランス語もロシア語も話せるからって」

愛「それを私たちから頼んでほしいって。」

信「確かに話せるけど……。まあいいか。それで?俺はその二人にいつ教えにいけばいいんだ?」

真「まあ……ね?」

愛「今その2人はアパートに部屋を借りてるらしいんだけどね...」

真「本当はその部屋別の人が使う予定だったらしくて。」

 

嫌な予感がしてきた。

 

信「質問を変えよう。その2人は『今日』、どこで寝泊まりする気だ?」

 

すると2人は無言目を逸らしながら真下を指差した。

 

真「先生が言うには……」

愛「学校以外でも出来るだけ教えてほしいって」

信「おいおい。」

 

ピンポーン

 

コト『主、来客ですがどうやら日本人ではないようです。』

信『ああ、なんとなく予想はできた。』

信「来ちゃったぞ。」

真「だね。」

愛「どうするの?」

信「...追い返すわけにもいかないか。」

 

覚悟を決めて玄関の扉を開ける。

1人は身長はそれほどでもなく、風に揺らされた肩くらいまで伸ばした金髪と、青い瞳が特徴的だった。

1人は人型時のコト程の身長で、腰まで伸ばした長い銀髪を風になびかせ、高身長のわりには童顔だが落ち着いた雰囲気を醸し出していた。

どちらも漫画に出てくるような美少女だ。

 

?「Bonjour (はじめまして).Mon nom est Emma(私はエマ).」

?「Здравствуйте!(はじめまして). Меня зовут Алиса(アリサといいます。).」

 

もちろんその口から日本語が出てくることはなかった。

 

(金髪がエマで銀髪がアリサか。)

エマ「...もしかしてフランス語伝わらない?(仏)」

アリサ「え...まさか言葉通じてません?(露)」

信「Can you speak English?(英語は話せる?)

 

エマとアリサは指を摘まむような仕草をしながら首を横にふった。その顔はひどく焦っている。

 

(これはキツいな。)

信「俺は信。立ち話もなんだし取り合えず中に入ろうか。(仏)&(露)」

アリサ「ダー!」

エマ「ウィー!」

 

安心したような表情と共に元気な返事をした。

 

(大変になりそうだ。)

 

 

 

信「取り合えず2人には紹介しとくな。」

真&愛「「うん。」」

信「エマ、こっちが妹の愛だ。アリス、こっちが弟の真。お前達のクラスメイトだ。(英)」

 

ゆっくりはっきりした発音で2人に伝える。

それにエマとアリサは頷いて答えた。

 

(これくらいなら分かるのか。)

信「お前たちも挨拶しろ。」

愛「ぼ、ボンジュール」

真「ズドラズドヴィチェ?」

信「こういうわけで、フランス語とロシア語を話せるのは俺だけだから2人には英語で話してくれ。単語だけで伝わると思うから。(仏)&(露)」

真「信にいが3ヶ国語使い分けてる。」

愛「なんか格好いい。」

エマ&アリサ「ナイストゥミートゥマコト、チカ」

愛&真「ナイストゥミートゥトゥ!」

 

4人はお互いに握手を交わしている。

 

信「でも授業とかどうするんだ?2人とも同じクラスなんだろ?」

愛「そう言えばそうだね。」

真「俺たちは聞いてないよ。」

信「授業の時どうしろとか先生から聞いてるか?(仏)&(露)」

エマ「聞いてるよ!(仏)」

信「なんて?」

アリサ「大体のことは信に任せるって。(露)」

信「Oh...。」

愛「なんだって?」

信「...2人のことは俺に任せるそうだ。」

真「え、ってことは...。」

信「...もうヤケだっ!(日) アリサ!、エマ!、日本のおもてなし精神を見せてやる!!(仏)&(露)」

エマ&アリス「ジャパニーズ O・MO・TE・NA・SHI!!」

真「信にいがやけくそになった。」

愛「まあ、仕方ないよね。」

 

ネガティブなことは考えないようにした信は、もう今日の夕飯のことしか頭になかった。

 

 




エマ (15) B型 身長159cm 誕生日8/10 セミロング Cカップ
金髪碧眼のフランス人。
幼少の頃から美しい容貌が評判で、拉致されそうになったことがある。
性格は活発でフレンドリー。だが日本語は話せない。
実はアリサと幼馴染み。
日本食と犬が大好き。
常にイヤリングをつけている。



アリサ (15) B型 身長168cm 誕生日7/10 ロング Gカップ(日本基準)
銀髪のロシア人。
落ち着いた雰囲気を感じるが実際はそんなに落ち着いていない。
自分の意思はしっかりもつタイプで周りに流されることは少ない。
動物はなんでも好き。
実はエマと幼馴染み。
常に指輪をつけている。


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第39話【季節外れの】

やっとあの異変が始まります。


「はぁ……」

「お疲れ。ほい、奢りだ」

「サンキュ」

 

 新学期の慌ただしさも落ち着いた頃、信、桜、燈、真、愛の五人は一緒に下校していた。その中でもひときわ疲れが目立つ親友に、燈は近くの自販機で買った缶コーヒーを渡す。それを一息で飲み干し、ゆっくり深く息を吐きながらグッと体を伸ばした。

 

「まさか1年生のクラスに通訳しに行くなんて思わなかったよ」

「私達もビックリしたんだよ!最初のクラスの自己紹介の時とかも普通にいるんだもん」

「俺もそこまで任されるとは思わなかった」

 

 そう。なぜ彼がここまで疲れているのかというと、新学期が始まってから約一ヶ月。つまり今日まで学校内でのエマとアリサの通訳を一人で担当していたのだ。初日の朝のSHR終了後に先生に『Let's go信!』と言われた時は皆が耳を疑った。その上自分の勉強を疎かにするわけにはいかないのでこれほど疲れが出ていたのだ。

 

「しかも家ではエマちゃんとアリサちゃんに日本語教えてるんだろ?」

「ああ。2人とも真面目に頑張ってるし覚えもいいから今日限りで授業中の通訳は終わりだ。でもたまに変なときがあるからフォローしてやってくれよ?愛、真」

「うい」

「了解。そういえばまた1年生で信兄のファン増えたよ」

「なんでまた」

「そりゃ、授業を2人の留学生に別々の言語で同時に通訳し続けるなんてそうそう出来るやつ居ないだろ。『そんなハイスペックでスタイリッシュな信先輩ステキー』って言う声が絶えなかったらしい」

「それくらいでモテたら苦労しないっての」

 

 何てことを信はほざいている。他の人であったら嫌味でしかないだろうが彼は本気の本心でそう思っているのだ。だから余計に質が悪い。

 

「そう言えば信って他に何語話せるの?」

 

 そう聞かれると、指を折りながらカウントしていく。イタリア語、ドイツ語、スペイン語、中国語、ギリシャ語、英語。英語についてはアメリカ英語の方だと補足を付け加えた。

 指が一つ折られる毎に英語が嫌いな燈は頭を抱え、それが終わるとため息をつく。

 

「……いつ覚えたんだよ」

「ほら、俺小さいときに空手とかで行き詰まると別の何かに没頭してただろ?」

「ああ、そんなこともあったな」

「そう言えば昔、たまに部屋からぶつぶつなんか聞こえてたね」

 

 真の言葉に購買で買ったパンを頬張りながら愛がうなずく。

 

「その時にやればやるだけ身に付く他国の言葉に惹かれたんだよ」

「何歳で完璧になったの?」

「確か中学入る前にはマスターしてたな」

「何て野郎だ」

「私達の兄がハイスペック過ぎる件について」

「なんなら教えてやるが?」

「勉強なんてしたくねーーー!!!」

「聞きたくなーーーい!!」

 

 今年大学受験の二人は耳を抑えながら走り出す。学校でも家でも勉強のことを言われるのに、全く使われない言葉なんぞ覚えてる暇があるか!

 

「待てよ!スペイン語とか発音面白いんだぞ!」

「「やめろ(て)ーー!」」

 

 受験生の苦悩は続く。 

 

 

 

 

「「ただいまー」」

「お三方、おかえりなさい」

「ガウッ!!」

 

 玄関から入るといつも通りコトとモコが出迎えてくれる。いつも通りの光景だ。ただ、この1年でかなり変わったところもある。

 

「……なあ、コト」

「はい?なんですか?」

「さすがにでかくなりすぎじゃないか?」

「そうですか?」

「ワウ?」

 

 この家に住むもう一匹の狼、モコだ。この1年ですくすくと成長していたモコは、十分大きいはずのコトを軽く凌駕する大きさになっていた。正確にいうと体長200cm。

 

「別にいいじゃん。モコは頭いいんだし問題は起こさないよ」

「それにお兄ちゃん、名前の通りこんなにモコモコなんだよ?」

「ワウッ♪」

 

 愛が毛並みに顔を埋めワシャワシャと撫でまわすと、モコも嬉しそうにお腹を出す。

 

「……それもそうだな。モコ、ちゃんと他の犬と遊ぶときは加減するんだぞ?」

「ワンッ!!」

「そんじゃあ晩飯の準備するか」

「そう言えば信兄、幻想郷にまだ行ってないの?」

「……言われてみれば行ってないな。もう5ヶ月になるのか」

「明日ちょうど休みだし行ってみたら?エマとアリサの勉強は私たちに任せて」

「ん~……お言葉に甘えようかな。明日は頼むよ」

「はーい。それでお兄ちゃん。今日は久々にがっつり肉食べたい」

「ここ最近はあんまりお肉食べてなかったからな~」

「おっと、ここぞとばかりにおねだりして来やがったな?」

 

 夕食の話をしながらリビングの扉を開けると、今の話を聞いていたようで目をキラキラと輝かせた悪戯三太が扉のすぐ近くでこちらを見上げていた。

 

「信兄!今日焼肉なの?ハラミある!?」

「俺牛タン食べたい!」

「俺カルビ!!」

「豚トロあるといいな~」

 

 三太に続いて広美も願望を提案してくる。

 

「「我ら、マルチョウを所望する」」

「……出来れば味噌味の奴も……追加で」

 

 部屋の隅でまた何か不都合なことを言ったのか、陸が空と海の二人に三ヵ所の関節を固められている。そんな状況でも肉の注文をしているので、割りと余裕があるのだと周りは認識した。

 

「「おにくっ!!」」

「ワンッ!!」

 

 更に玄関からちょうど今帰宅した元気な末っ子組の声が響く。呼応するようにモコが一度吠え、生肉が食べたいのだとコトが通訳を入れてくれる。

 今夜は焼肉だと思い皆テンションが上がっているのだ。そして夕飯の決定権を握っている信に期待の眼差しを向けている。

 

「お前ら……よしっ!代わりに準備手伝ってもらうからな。今日は焼き肉パーリーだっ!!」

「「「おー!!」」」

 

「これが日本の焼き肉……豪華絢爛ね」

「早く食べまショウ!お腹すきまシタ!」

 

 明渡家の焼き肉はいくつかの七輪を使う。準備と後始末は大変だがその分、熱々で炭の香りが程よく乗ったの旨い肉を食べることが出来る。そして全員の期待に応えるために様々な種類の赤々しい肉がテーブルの上に広げられている。

 

「味は保証するから楽しんでくれ。それじゃあ皆さん手を合わせて」

「いただきまーす。」

 

 網の上で焼かれる肉は脂を踊らせ、滴り落ちると炭から煙を上げさせる。何とも言えない食欲をそそる香りが空間を満たす。

 各々で焼き好きなタイミングで食べるというスタイルに慣れていないエマとアリサはやはり出遅れてしまっている。それを見かねた真と愛は二人の取り皿を信に渡し、信は一瞬で様々な種類の肉が美しく盛られて返還された。

 

「熱いから気を付けてね」

「ハ、ハイ!ありがとうございマス」

「早く食べないと私が食べちゃうよ~」

「酒池肉林……じゃなくて、電光石火でだべるわ」

 

 二人は自分の皿に置かれたまだパチパチと水分が焼ける音が鳴る肉を眺めていた。目と耳、次に鼻で楽しみ、ついに我慢しきれなくなったのか一つの肉を口に運んだ。

 

「柔らかい……なのに噛めば歯を押し返してくるこの心地いい弾力。美酒佳肴」

「そして熱々な肉汁の甘味と旨味が何とも言えない幸福感を感じさせてくれマス」

 

 最初に口に入れた肉を胃に納めると、火薬に火をつけたような勢いで新たな肉を食べ始める。それを見て安心できたのか真と愛も自分の食べたいものを焼き始め、焼肉パーリーは賑やかに進んでいった。

 

 

 

 

 

 

「よし、そろそろ行こうかな」

 

 昨日真や愛に言われた通り、今日は幻想郷に行ってくることにした。

 

「ん、兄貴そろそろ行くのか?」

「お土産よろしくね」

「そっちもエマやアリサのことは頼んだぞ?」

「分かってるって」

「そんじゃ、行ってきます」

 

 久しぶりに能力を使い、その場から一瞬で姿を消した。

 

「……やはりこの時期と言ったら、アレでしょうか?」

「だろうな」

「やっぱり信にいって……」

「厄介事に巻き込まれるよね」

「主、どうか無理をなさらないでください。」

 

 家族の心配とは裏腹に、今日も彼は無理をする。

 

 

side change

 

 

(みんなに会うの久々だな。あいつらちゃんと稽古してるかな...まあ、ジンもいるし俺が居ないからってサボるようなやつらでもないか)

 

 久しぶりの幻想郷のためやりたいことや会いたい人物などいくらでも浮かんでくる。

 

(宴好きのみんなだから今頃花見とかやってるのかな)

 

「よっ!久しぶりだな霊夢って、何やってるんだお前?」

 

てっきり花見の宴会会場にいるものだと思っていた信はその光景に驚きを隠せない。

 

「あら、久しぶりね信。何って見れば分かるでしょ?コタツでぬくぬくしてるのよ」

「なんで?」

「寒いから」

「もう春なんだからそんなのに入ってたら季節感が狂っちまうぞ」

 

 温かくなり始めたこの時期にすべての出入り口が締め切られていた。だから温かい風を入れるためにも、彼は一つ窓をあけ放つ。

 

「……雪?」

 

 開け放たれた障子の先には美しい銀世界が広がっていた。

 5月に、辺り一面、銀世界である。

 

「雪いいいいいっ!!??」

 

 そしてもちろん、外からは冬特有の肌を刺すような冷気が流れ込んでくる。

 

「あの……霊夢さん。俺もこたつに入っていいですか?」

「いいわよ」

「恩にきります」

 

 季節外れのこたつでぬくみ、明渡 信の3度目となる異変解決が、今 始まった。

 

 




こたつってどんな感じなんですかね。私は雪国出身なので逆に入ったことがないんですよね。
という訳で春雪異変の始まりです。ゆっくり楽しんでください。


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第40話【友人の式神の式神の思い】

「幻想郷ってこんなに冬が長いのか?」

 

そういうのも現在はすでに5月。本来なら雪ではなく桜の花びらが降るはずの季節である。

 

「いえ、紫が言うには外界とほとんど同じらしいわ。こんなに長いのは初めて。」

 

霊夢に答えられると「だよな」と答える。季節は外界とあまり変わらないということはこの雪は異常事態。つまり幻想郷で言うところの

 

「...ってことはこれも異h「霊夢ううっ!」」

 

勢いのある声と共に先程信が開けた障子が再び勢いよく開けられた。

 

「久しぶりだな、魔理沙」

「信じゃないか、久しぶりなんだぜ。ってか霊夢!なにやってるんだ、異変だぜ!」

「やっぱりか」

「2人ともこたつに入ってぬくぬくしやがって。けしからんのぜ」

 

開けられた障子から入ってきた魔理沙は、説教じみたことをいいながらこたつに入ってきた。ごそごそといい感じのポジションに収まったのかホッコリした表情でそのまま落ち着いた。

 

「お前も入るんかい!」

「こんな寒い中で目の前にこたつがあるんだぜ?入らないわけないだろ」

「それもそうだな。んでこの異変のことだけd「お邪魔するわね」」

 

再び信の言葉を遮ったのは突然現れた紅魔館のメイド。十六夜咲夜だ。突然現れたのは持ち前の能力によるものだろう。

 

「咲夜、人の家に勝手に入るなんて失礼なんじゃないか?」

「そうだそうだ!」

「あんたたちが言うの?」

「ってか久しぶりだな咲夜。元気そうだな」

「久しぶりね、信」

「フランたちも元気にしてたか?」

「あなたが居なくなってから大変だったのよ。妹様が『お兄さまに会いたい!!』って暴れなさるんだから。お陰で美鈴がボロボロよ。」

「そうか……後でちゃんと行かないとな。.……そう言えば咲夜はなにしに来たんだ?」

「その前に私も入っていいかしら」

 

よく見ると咲夜の頭には雪が積もっていた。まだ極寒の冬である幻想郷をあの短いスカートで歩いていたせいか体も小刻みに震えていた。それでもなお冷静を装い続ける様は流石だ。

 

「どうぞどうぞ。」

「ありがとう。(ゴソゴソ) お嬢様にこの異変の解決に協力してきなさいと言われてね。」

「レミリアに?」

「それはまたどういった心境の変化なんだぜ?」

 

魔理沙がそう思っても不思議ではない。レミリアはカリスマ溢れプライドの高い吸血鬼。進んで人助けなんかをするような質ではないからだ。きっとなにか深い事情があるに違いない。

 

「こんなに寒い季節がそう長く続いてほしくないそうよ」

「なる」

 

……まあ自分の気持ちに素直でもある。

 

「霊夢、どこに黒幕がいるとか分かるか?」

「...とりあえず地上に居ないってことは確かね」

「地上に居ない?」

 

霊夢以外の3人が首を傾げる。地上ではないとはいったい?

 

「ええ。今はそれくらい」

「どうする?ゆかりんにでも聞いてみるか?」

「あいつは多分冬眠中よ」

「そうか~。じゃあまずは情報収集か」

「情報なら文のが一番早いぞ?」

「どうやら私が必要とされているようですね~」

 

といつの間にか勝手に上がり込んでいる烏天狗。

彼女もまた、頭や背中の翼に雪をのせブルブルと震えている。鼻や頬、耳までもが真っ赤に染まっていて誰がどうみても寒そうにしていた

 

「おお、相変わらず唐突だな。」

「で?ここに来たからには何か情報があるんだろうな。」

「わ、私はこ、こここの異変にたたた対して、解決者たちがど、どどうどう対処するのか記事にしようとおもおもも思いいましてね。...ま、まさか仲良くこたつに入ってるとは思いませんでしたけど(ブルブル)」

「...入るか?」

「か、感謝します」

 

雪を払いこたつに入ると「ほふぅ~」という声を漏らしながら安心していた。

 

「で、本当に何もないの?」

「精々ここに来る途中でスキマ妖怪の式神の式神が居たことくらいですね」

「橙にか?...ちょっとつれてくるか」

「私もいくわ」

「いいよ。俺なら一瞬だし。じゃあいってくる」

 

咲夜が申し出るが自分だけでやった方が効率がよいと判断した。

 

~~~3秒後~~~

 

「連れてきたぞ」

「は~な~せ~!」

「本当に一瞬でしたね」

 

帰って来た信の腕には橙が抱えられていた。そしてその様子はまるで人見知りの飼い猫を無理矢理抱き上げたようだった。

信の腕の中で腕も足も上半身も下半身もブンブンと暴れさせている。

 

「は、博麗の巫女!」

「本当に何か知ってるみたいね」

「ら、藍様に何も話すなって言われてるんだ~!」

「確定ね」

「ここで惚けとけばすぐ戻れただろうに」

「はっ!」

 

しまったと言うような表情とともに自らの手で口を押さえた。だが、もう遅い。

 

「さ、何を知ってるのか話すんだぜ」

「な、何があっても口を割るもんか!」

「はなすんだぜ!!」

「絶対にお断りだ!!!」

 

橙はドジであったりやらかしたりすることもあるが基本的には藍や紫の言うことをちゃんと聞く。気を引き締めたかのじょから

 

「出来ればお前も実行させたくないんだろ?」

「うぐっ!」

「どういうこと?」

「ちょっと感情を共有したらこいつもなんか乗り気じゃないみたいなんだよ」

「なら話せばいいじゃない」

「でっでも、話したら解決しにいくでしょ?」

「そりゃあな。」

「や、やっぱり話せない。」

「こいつからは無理そうなんだぜ」

「...悪いけど無理矢理聞くか。橙、この異変の首謀者はどこにいる?」

「...」

 

沈黙して答えることを拒否する橙。答えるか答えないかは今関係ない。

 

「冥界だそうだ」

「なっ!」

「冥界?」

「どこにあるんだぜ?」

「どっかに結界がありそうね。……空ね」

 

霊夢が得意の勘を働かせて調べる場所が判明した。

 

「なら決まりだぜ」

「空のどっかに結界があるからそれを探す」

「まあ、霊夢の勘を頼りにすればすぐ見つかるだろ」

「それじゃあ出発しましょうか」

「悪いな橙。いきなり連れてきて情報を無理矢理引き出して」

「……この異変は紫様のご友人が発生させたんだ」

「ん?」

「本当は紫様も藍様も嫌なんだ。そのはずなんだ、でも……。……あの人たちを止めてほしい。藍様のや紫様の悲しむ顔を見たくない」

 

静かな……というよりも暗い声で橙は話た。その話し方や声の暗さ、重さから主人の命令に背いている罪悪感が感じ取れる。

 

「...よく話してくれたな」

「どうやら今回は少々規模が大きいようですね」

 

幻想郷の賢者とその友人が首謀者の異変だ。1筋縄ではいかないだろう。

 

「それじゃあ、行きましょうか」

「こんな話を聞かされたからには絶対解決してやるんだぜ!」

「主君を思う気持ちは私にもよく分かるわ」

「ああ。任せろ橙。俺たちがゆかりん達を止めてやるからな」

 

橙の秘めた思いを胸に納め、幻想郷の異変解決者たちは冥界へと向かった。



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第41話【始まらない】

霊夢「あれみたいね。」

 

異変を解決するため出発した4人は霊夢の勘を頼りに空にあるという結界を探していた。(文は置いてきた。)その結界は結構簡単に見つかったのだが...

 

信「誰かいるぞ?なんか楽器持ってるけど。」

?「人間?なんでこんなところに。」

咲夜「それはあなたたちもでしょう。」

ル「それもそう。ではまず自己紹介、私はルナサ・プリズムリバー。」

メ「その妹のメルラン・プリズムリバー。」

リ「更にその妹のリリカ・プリズムリバー。」

信「俺は明渡 信。それからこっちが巫女の霊夢、魔法使いの魔理沙、メイドの咲夜だ。お前さんたちはなんでこんなところに?」

リ「私たちは3姉妹で音楽隊をやってるんだよ。」

メ「春は花見で宴会が定番よね。」

ル「だから私たちの演奏を披露しようとした。けど...」

信「春が来なくて花見もないと」

ル「その時春を集めてる人がここに入っていくのを見た。」

咲夜「春を...集める?」

メ「そう。でも結界があるからは入れなかったのよね。」

魔理沙「そこに私たちが来たのぜ?」

リ「そういうこと。」

信「じゃあここが冥界への入り口ってことで間違いないみたいだな。結界あるし、どうやって入ろうか。」

・・・・・・・・・・・・

 

霊夢「破る。」

魔理沙「越える。」

咲夜「くぐる。」

信「壊す。」

霊夢「2対1対1で決定ね。」

咲夜「でも結界を破ったりなんかしたら気付かれるんじゃない?」

信「気付かれても気付かれなくてもあんまり変わんないだろ」

咲夜「どうして?」

信「春を集めたやつはここに入って行った。それなのにまだ何も起きてないっって事は多分集めなきゃいけない春が足りないんだろ。だったら全員で突撃してササッと解決するのがいいってわけ」

魔理沙「なるほど。」

咲夜「そういうことなら異論はないわ。」

霊夢「じゃあ破るわよ。」

 

そういって霊夢はいとも簡単に結界を破った。

 

信「俺もやりたかった...。」

霊夢「はいはい。早く終わらせましょう。」

信「うい。またな、3姉妹。これ終わったら演奏聞かせてくれよ。」

3姉妹「喜んで。」

 

プリズムリバー3姉妹と別れ、破った結界の中へと進んでいった。

 

 

 

 

信「ここが冥界か。なんかあったかいな。」

霊夢「幻想郷の春を集めてるからでしょ。」

魔理沙「だから桜もこんなに咲いてるのか。」

 

冥界のそこらには沢山の桜が生えており、そのどれもが満開になっていた。

 

信「どうする?なんならここで花見するか?」

咲夜「それもいいわね。」

?「どうして人間がここに?」

 

声が聞こえた瞬間、4人は即座に自分の武器を取り出して戦闘体制に入る。

声の主は真っ白の髪に黒い大きなリボンをつけた少女だった。あまりにも大きな刀とそれより小さい刀を携えている。

 

信「ちょっと異変を解決しにな。」

?「なるほど。では斬らせていただきます!」

信「『武刃』〈秋水〉!」

 

離れていた少女から放たれたのは斬撃。それを信は即座に斬り落とす。

刀の振るい方から相当の実力をもつのだと信は察知する。

 

信「いきなり斬ろうとするなんてマナーがなってないんじゃないか?」

?「幽々子様に来たものは斬れと言われたもので。」

信「なあ、ここは俺に任せてくれないか?」

魔理沙「なにいってるんだ信、私もやりたいんだぜ。」

信「他にやりたいやつは?」

咲夜「・・・・・。」

霊夢「・・・・・。」

 

2人が沈黙してこれを拒否した。

 

信&魔理沙「...じゃんけんぽんっ!!」

信「よっしゃあ!」

魔理沙「くうう……」

 

それを確認した瞬間信がパーを、魔理沙がグーを出し、誰が切り裂き魔を相手にするのかを一瞬にして決めた。

 

信「決まりだな。それじゃあここは俺に任せてもらおう。3人は先に行ってくれ。」

霊夢「はあ。ちゃんと追い付きなさいよ?」

魔理沙「絶対負けるんじゃないぞ!」

信「ああ、分かってるって。」

?「行かせませんっ!」

 

勿論そのまま魔理沙達を通してくれる程彼女は甘くない。迎撃しようと腰の長刀に手をかけてまたあの斬撃を飛ばそうとしていた。

 

信「『束縛』〈黒棺〉」

 

霊夢たちに向かって弾幕を放とうとした少女をスペカで閉じ込める。

 

信「ボスは任せたぞ。」

 

先に行った2人を見送って黒棺を解除する。

 

?「してやられました。」

信「悪く思うなよ?これが1番効率がいいからな。」

咲夜「確かに元凶を早く倒した方がいいわね。」

信「そうそう。...なんでまだいるの?」

咲夜「ダメだったかしら?」

信「駄目ってことはないけど...俺のこと信用してない?」

咲夜「万が一のためよ。もしかしたら彼女以外にも別の戦力が来るかも知れないでしょ?」

信「それもそうか。」

?「もういいですか。」

信「ああ悪い悪い。...名は?」

妖夢「白玉楼剣術指南役兼庭師、魂魄 妖夢。あなたは?」

信「明渡家14人兄弟長男、明渡 信。さあ、始めよう。」

妖夢「2人ともここは通しません。妖怪が鍛えたこの楼観剣に斬れぬものなど、あんまり無い!」

信「この異変っ、解決させてもらうっ!」

 

2人の剣士が名乗りをあげ、互いの思いをかけた戦いが今、始まらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

信&妖夢&咲夜「え?」

 

始まらなかった。




やらせねぇ!


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第42話【始まった】

「「「え?」」」

 

今始まると思われた戦いが始まらなかった。その理由は信がその空間から姿を消したからだ。

そして今信がいる空間は……

 

「ここは……ゆかりんのスキマか?」

 

四方八方に目があるこの空間をそうそう忘れることはないだろう。

 

「どうしてここへ来たのかしら……」

「ゆかりん……なんのつもりだ?」

「自分の目的を邪魔する人物を妨害してなにかいけないことでも?」

「そうじゃないタイミングだっ!見てみろ妖夢の顔。決め台詞言ったのに向けた相手が急にいなくなって(゜ロ゜)としてるぞ!」

「え?……ぶふっ!」

 

別のスキマを即座に開けて確認する。せっかくシリアスな入りだったというのに思いっきり吹いていた。

それを治めるように何度も深呼吸をし、やっと落ち着いたところで真面目に切り出す。

 

「……で?俺を戻す気はないんだろ?」

「もちろんよ。」

「はあ……。やっぱりか……。」

 

ため息を漏らしながらイヤホン型の通信機を使うように耳に手を当てる。こんなことをしなくても能力は使えるがまあ、そこは気分の問題だ。

 

『咲夜。』

『信!よかった……。平気なの?』

『ああ、こっちは問題ない。』

『今どこにいるの?』

『今ゆかりんの妨害を受けてな。多分そっちに戻れない。』

『そう……、やっぱり私が残って正解だったでしょ?』

『ぐっ……なんか負けた気分だな。...そっちは任せたぞ?』

『ええ。』

『今は面白い顔をしてるけど相当の手練れだ。気を付けろよ?』

『ええ、そっちも気を付けて。……妖怪が鍛えたこの楼観剣に斬れぬものなど、あんまり無い!』

『うぐっ!』

『止めたげて。』

「もういいかしら。」

「ああ。それで?俺を倒すのか?」

「そういう訳じゃないわ。」

「なら、今回の異変のことについて教えてくれないか?」

「ええ、いいわよ。」

 

驚くほど素直に了承した。てっきり何もしないでここに色とでもいうと思っていたのだが……

 

「今回の首謀者は私の友人、西行寺幽々子。目的はこの西行妖を咲かせることよ。」

 

スキマには立派な桜の木が映っている。咲いたとしたらさぞ美しい桜だろう。

 

「この西行妖は咲くとどうなるんだ?」

「出来れば私口からは言いたくないわ。あなたの能力で知ってちょうだい。」

「?わかった。」

 

どうしてそんなにまどろっこしいことをするのかと疑問に思う。だが、その疑問もすぐに晴れた。

 

「……マジかよ。」

「マジよ。」

「もしこれが咲いたらゆかりんの友達は……」

「ええ、完全に消滅してしまうでしょうね。」

「……いいのか?」

「友のやりたいことを手伝ってなにかいけないの?」

「いいか悪いかじゃない!ゆかりんは本当にそうしたいのかって聞いてるんだ!」

「したいわよ!!」

「嘘だな。そんなこと誰でもわかる。」

「だって……。だって仕方ないじゃない!」

 

初めて見る紫の焦りと怒りの表情だった。

 

「あの子は……幽々子は私や妖夢が止めても自分だけでもそれを実行する。それは幽々子の最後の望みになる。だったら……だったら私が友として最後にできるのはそれを手伝うこと!自分の考えで、思いでそう決めたの!」

 

紫の顔は伏せられて見えない。そして彼女の手は力強く握られている。

 

「妖夢はこのことを知ってるのか?」

「……いいえ。教えられるわけ無いでしょ?教えたら彼女はどっちにしろ苦しんで、後悔することになる。そんなの……」

「……なら最後に1つ。どうして俺をここに移したんだ?目的のためだけだったら霊夢や魔理沙、咲夜でもよかったろ。」

「……簡単よ」

 

伏せていた顔をあげて、紫は言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたがここの……幻想郷の住人じゃないからよ。」

 

 

美しいその顔は、涙によって赤く染められ、悔しさと悲しみがこもっていた。

 

 

 

 

「……私は霊夢達のことも止めなきゃいけない。あなたも邪魔をするなら全力で排除するわ。」

「……。」

 

言い残した紫は空間から出ていった。霊夢と魔理沙を止めに行ったのだろうか……。

 

「『俺がここの住人じゃないから』か。……そんなに寂しいこと言うなよ。」

『信、どうするんだ?』

『……決まってるさ。』

 

決まっている。あんな顔をされたら、あんな見え見えの嘘をつかれたら。

 

「あんな悲しい思いをしなきゃ叶わない願いなら、そんなの全力で邪魔してやるよ!」

『『『それでこそ信だ!』』』

(ゆかりんの座標と空間を共有するっ!!)

 

瞬間、信の体はその空間から消え、やるべきことがある場所へと移動した。

 

「……やっぱり来たのね。」

「あんな顔されたら来ずにはいられないだろ。」

「…藍。」

「ここに。」

「彼を足止めしてちょうだい。貴方なら問題ないはずよ。」

「御意。」

 

藍を残して紫は再びスキマへと入って行った。

 

「あんたはいいのか?」

「主人の言うことは絶対。私に意見する資格はない。」

「橙はあんたたちを止めてくれって言ってたぞ。」

「……私だってそうしたいさ。紫様のあんな表情は見たことがない。」

「なら、」

「でもダメなんだ!紫様は自信の意思で、確固たる決意で幽々子様を手伝おうとしておられる。私はそれを...止められない。」

「……だから俺はここにいるんだ。あいつを止めるために。」

『コトッ、来てくれ!』

「はいっ!」

「神狼か……」

「藍のことを止めててくれ。俺はゆかりんを止めにいく。」

「了解しました。」

「藍はこの幻想郷でも相当の力をもった妖怪だ。気を抜くなよ。」

「はい。」

 

コトが人型に変化し、戦闘態勢にはいる。

 

「信……紫様を頼む。」

「おうっ!!」

(ゆかりんの座標と空間を共有するっ!!!!)

「藍はどうしたのかしら。」

「俺の式神に足止めしてもらってる。あいつなら藍には引けをとらないさ。」

「そう。やっぱりあなたは私自身で潰さなきゃならないようねっ!」

「っ!」

『すごいな……。私たち以外にもこんな力をもった妖怪がいたなんて。』

『紫は本気で来るぞ。手加減なんかしてたら一瞬で終わるだろうな。』

『俺達の力も使え。そうしたら楽に勝てるはずだ。』

『……いや、使わない。』

『はあっ?どうしてだよ。』

『ゆかりんは俺に助けを求めてたんだ。だからおれ自身の力だけで止めてやりたい。』

『……はあ。こうなった信はてこでも動かないぞ。』

『ふっ、それくらいわかるさ。』

『なら、私たちが言えるのは1つだけだね。』

 

『『『頑張ってこい!!』』』

『おうっ!!頑張るっ!!!!』

 

「…あなたを全力で排除するわ。」

 

「あんたを全力で邪魔する。」

 

外界の異変解決者と幻想郷の賢者、2人の強者の己の意地をかけた戦いが今、始まった。

 

 

 

 



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第43話【お人好し】

信「『運任』〈ドキドキわくわく抽選会〉!」

 

信の周りにカードが、円形に並ぶ。そしてその1枚が燃え、1枚が赤い光を纏った。

 

信「今回はこいつか...。よしっ。」

紫「なにかいいものを引き当てたのかしらっ!」

信「ああっ!これならゆかりんも相当手こずるんじゃないかなっ!!」

 

両者の弾幕が激しく衝突する。幻想郷でも上位の力をもったもの同士だ。その弾幕の量も計り知れない。

 

紫「『結界』〈夢と現の呪〉!」

信「っ!!」

 

いくつも放たれたその弾幕は分裂して信に襲いかかる。

 

信「『武刃』〈秋水〉!!」

 

避けきるのは神経を削ると判断した信は即座に秋水を用いてそれらを斬り落とした。

 

信「さすが幻想郷の管理者だな。」

紫「そう思うならひいてくれないかしら。」

信「そういうわけにはいかないなっ!!『迷走』〈亡霊達の歩〉!」

 

紫のスペルをブレイクしたと同時に唱える。

 

紫「ぐっ!」

 

不規則な動きの弾幕のためどうしても次の動作にワンテンポの遅れが出る。その瞬間を信は見逃さない。

 

信「はあっ!!」

 

正確に紫をとらえた弾幕が放たれる。だが……

 

紫「『結界』〈光と闇の網目〉!」

信「なっ!」

 

それを見越していたかのように紫が新たなスペルを唱えた。

そのスペルは信が放った弾幕もろとも亡霊達の歩も消し去っていく。

 

(やっぱりこの弱点はきついな。)

 

亡霊達の歩はその不規則な動きを作り出すために密度を薄くしている。その為他の弾幕と比べとても脆いのだ。

 

信「ヤバイっ!」

 

それがすべて消し去られても紫のスペルは無くならない。消滅しなかったものはもれなく信に襲いかかった。

 

信「『一刀』〈陰鉄〉!!」

 

もうひとつの装備型スペルも使いそれに対処する。だが紫の猛攻は止まらない。

 

紫「『罔両』〈ストレートとカーブの夢郷〉!」

(使うならここか。)

信「『迷惑』〈刃の舞〉!!」

紫「厄介なのが来たわね……。」

信「ところがどっこい。今回のこいつは今まで以上に厄介だぞ!」

 

放たれた手裏剣状の弾幕は紫の弾幕に衝突し、反射しながら分裂する。更にぶつかり合い量がどんどん増えていく。

 

信「強化された刃の舞は無限増殖。俺がやられるまでは消えないぞ?」

紫「ぐっ…。」

 

紫も自分に向かってきたそれに自分の弾幕をあて対処しようとする。だが、一部の刃の舞に対処してもすぐに別のものが紫を襲う。しかも信に向かっていったものは秋水と陰鉄によって、もれなく数を増やしながら正確に紫をとらえる。

そしていつのまにか空間は至るところに刃の舞が飛び交っている。

 

(俺もそろそろ危ないな。)

信「『舞踏』〈暗黒盆踊り〉!!」

紫「っ!!」

 

そして紫は異変に気づく。本来単純な動きをするはずの刃の舞のすべてが自分に向かってきているということを。

 

(これで終わってくれ!)

 

だが、終わるわけがない。今まで信が最も考えていなかったこと。いや、考えないようにしていたこと。それは紫が強大な力をもつ『境界を操る程度の能力』を使用してくること。

開かれたスキマに、正確に紫の元へと向かっていった刃の舞は吸い込まれるように消えていく。最後の1つがはいりこみ、紫はスキマを閉じた。

 

信「……それはずるくないか?」

紫「言ったでしょ?あなたと全力で排除するって!!『罔両』〈禅寺に棲む妖蝶〉!」

信「『束縛』〈黒棺〉!!」

 

紫のスペルに対抗するために唱えたそれは、信自身を囲んでいく。

 

(防御としても使うのは初めてだけど成功みたいだな。)

 

激しく叩きつける音が消え、黒棺はゆっくり消えた。

 

信「そろそろ諦めてくれないか?」

紫「それはこっちの台詞よ。『結界』〈動と静の均衡〉。」

(やっぱりそういうわけにはいかないか。)

 

辺りに魔方陣のようなものが現れ、それから弾幕が放たれる。

 

信「『花符』〈千本桜〉!!」

 

一瞬で現れた桜の木は、花びらへとかわり散っていく。その1枚1枚が魔方陣から放たれた弾幕と相殺し合う。辺りは桜の花びらが舞う美しい光景になっていたが、突っ込んでこようものならすぐさまその餌食になるだろう。

 

紫「『罔両』〈八雲紫の神隠し〉。」

 

だが、幻想郷の賢者にはそのような小細工は通用しない。

 

信「ッ!!」

紫「……おしまいよ。」

 

突然間近に現れた紫に反応できず、ゼロ距離で放たれたいくつもの弾幕を直に受ける。

砂が舞い上がり辺りを包み込む。

 

紫「・・・・・。」

 

信の姿は確認できないが確信はできる。あれほどの弾幕に耐えられる人間はいない。例えそれが霊夢や魔理沙であっても無事ではすまないだろう。

 

紫「……やっぱりあなたでも………。」

 

胸に大きな穴が空いたような感覚を感じながら勝利を確信してその場を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……するはずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『終ノ符』〈無双乱武〉」

 

聞こえるはずのないその声と共に、優しい光が紫の背中を照らした。

 

紫「っ!!」

 

『耐えられるはずがない』。そう思っていた。だが背後から聞こえたその声は間違いなく彼の声。

 

紫「……どうして。」

 

疑問はいくらでもある。どうして立っていられるのか。どうやってあれを凌いだのか。どうしてそこまでして自分を止めようとするのか。だが、口からでた疑問はそのどれでもなかった。

 

紫「どうして……笑ってるの?」

 

肌は裂け、血が流れ出ている。服の至るところが破れてそこから生々しい傷が目に入る。とても立っていられるような状態ではない。

 

信「単純。ゆかりんが悲しい顔をしてるからさ。だから俺は笑ってゆかりんを止める」

 

力強く、優しいその笑みは他の誰でもない。自分に向けられている。

 

紫「どうして……あなたはそこまで……。」

信「1人の女の子が苦しんでるんだ。体はって限界ぐらい超えてやるさ。」

 

覚悟の言葉を発しながら信は構える。

 

 

信「『必中(ひっちゅう)』〈フェイルノート〉」

 

 

唱えた瞬間、そのカードはとても質素な1つの弓へと姿を変えた。

 

信「もう一度言おう。俺は全力でゆかりんを邪魔する。」

 

紫「……本当に、迷惑なくらいお人好しね。」

 

迷惑がっている紫の瞳は、何故かとても潤んでいた。

 

 

 



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第44話【決着】

(全身が熱い。こりゃあまたコトに怒られるな...。)

 

1度はやられかけたものの、意地と精神力のみで今信は立っている。

 

(……絶対に止めてやる。)

 

だが、そんなことは関係ない。

どうしてボロボロになってまでそうするのか。

簡単。今、目の前に苦しんでいる女の子がいる。ただそれだけで彼にとって体をはるのに十分すぎる理由なのだ。

 

「いくぞ、ゆかりん。」

「……ええ。」

 

最初の構えはゆっくりとしたものだった。弓を左手に持ち、その弦に右手を添えるようにしながら頭上に運び、それをゆっくりと弦を引きながら下ろしていく。その動作には一切のブレが見られず、幾度となる反復練習の産物であることがわかった

そして突如、弦をつまんでいた指に青い発光体の矢のようなものが出現した。

 

(あれは……魔力っ!!)

「『睡魔(すいま)』〈ディープショット〉。」

 

そして放たれた。その速度は普通の弓矢のそれとは全く違った。普通の人間ならば射たれたことも気づかずに受けているだろう。

 

(はやいっ!!)

 

だが、相手は大妖怪の紫だ。その速度に驚きながら間一髪でそれを回避する。

 

「ッ!!」

 

そして突如、睡魔に襲われた。こんな状況で、こんなタイミングで。そしてもうひとつ、

 

「……確かに避けたはず」

 

自分の肩に先程放たれた矢が刺さっている。ギリギリだが完璧に避けきったはずの矢が、今自分の肩に。だが痛みは全く感じない。

 

「避けられないよ、この矢は。」

「どういうことかしら。」

 

頭を振り眠気を覚ましながら疑問を投げつける。

 

「『フェイルノート』神話にも登場する弓に名前だ。その別名は『無駄なしの弓』。詰まるところ回避不可能の弓だ。」

「っ!」

 

疑問はいくらかある。だが今すぐにわかり実行しなければならないことはわかる。

 

(あの矢をくらい続けたらまずい!)

「『睡魔』〈ディープショット〉。」

(弱点が割れる前に決めなきゃな。)

 

先程のゆっくりとした構えとはうってかわり、その弓を射つ早さと連射性はは凄まじかった。具体的に言うと0.5秒に3発である。

 

「くっ」

 

この時紫は観察することのした。避けたはずの矢がどうやって自分の体に当たるのか。それを解明できれば回避できるかもしれないという可能性を感じて。

 

「っ!!」

 

ほぼ同時と思える速度の3本の矢を的確に回避していく。そして見る。ここからどうやって当たるのかを。

 

「なっ…!!」

 

しれっと、当たり前のように全て当たっている。気づいたら当たっていたというのが生ぬるく思え、既に当たっていたかのように錯覚してしまう。

 

「くっ!」

 

そして覚悟していたこと。さっきの3倍の睡魔だ。落ちかける意識のなかで紫が見たものは……

 

 

「おやすみ、ゆかりん。」

 

 

優しく微笑む信だった。

そして持っている弓から最後となる矢を放った。

 

「っ...」

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「あっ!!」

「はっ!」

 

目の前の光景によって紫は目を覚ました。自分に新たな睡魔が襲ってくることもなかった。

紫が最後の悪足掻きとしてやったことは1つ。たった1発の弾幕を信に向けて放った。そしてそのあとの光景によって目が冴えた。

 

「……なるほどね。」

「ちょっとバレるのが早いと思うんだけど……。」

「わかったわ。その弓の弱点。」

「っ!」

 

急いで次の矢を放つ。だがそれは紫に確信を得させてしまう悪手だ。

 

「・・・・・。」

紫は避けようとせず、ただ1つの弾幕をその矢の射線上に放った。

 

相殺。放たれた矢と弾幕は相殺して消え去った。

 

「ご名答。フェイルノートの強みは回避不可能なこと。そして弱点は、『防げる』こと。」

「だけど、そう簡単にいかせてくれないのでしょう?」

「もちろんだ。」

「〈人間と妖怪の境界〉!」

「ぐっ!」

 

紫の反撃はスペルカードで始まった。それを回避しようとするも全身に激痛が走る。

 

「っらあ゛!!」

 

重い体を無理矢理動かしスペルによる弾幕を避け続けていく。

 

「『睡魔』〈ディープショット〉!!」

 

反撃と言わんばかりに矢を放つ。動きながらも全くブレない技術はさすがである。だが、その矢は簡単に防がれてしまった。

 

「くっ……。」

「『魍魎』〈二重黒死蝶〉。」

 

そしてダメ出しのように新たなスペルを紫は使用した。

 

「はあ、はあ 、ぐっ!」

 

防戦一方。このスペルの最中も避けきれずにいくつか受けてしまっている。先程の発言ははったりで信に逆転のための手段は最早残されていない。

 

「『紫奥義』〈弾幕結界〉!」

 

そう判断した紫は仕留めにかかる。

自分のために自らをかけてくれた信に敬意をはらいながら、ねぎらいの意味も込めてその弾幕を放った。

 

(ありがとう、ここまで戦ってくれて。)

 

これで終わる。

 

これで決心がつけられる。

 

これで迷わずに霊夢たちと戦える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼が並大抵の精神の持ち主だったなら、その攻撃が最後だったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

「『多望(たぼう)』〈ミリオンレイン〉!!」

 

 

 

最後かに思われたその弾幕は、一瞬で放たれた数多の矢によって全て相殺された。

 

「なっ!」

「はあ…はあ、……まだまだだ。言ったろ?限界ぐらい超えてやるって。」

「『結界』〈生と死の境界〉!」

 

すかさずスペルを唱える。この時紫は焦っていた。自分のスペルカードの中でも強力な部類にはいる弾幕結界が一瞬で破られたのだ。

そして信は新たに唱えられたスペルを今までにない速さで回避していく。

 

(ここだ!)

 

突然振り向くと弦のみを持ちフェイルノートを素早く回転させた。

そして強く握りなおすとそのまま大きく弦を引いた。

 

「『貫通(かんつう)』〈スパイラルアロー〉!!」

 

放たれた矢は1本。だがその矢は紫の弾幕全てを撃ち落としていく。そして全ての弾幕を貫いたところでその矢は消滅した。

そして構える。今までの比ではない程の力を込めて。

 

(これで…決めるッ!!)

「『一閃(いっせん)』〈(ひかり)()〉」

 

矢は美しい光を纏い、正確に紫をとらえ放たれた。

 

「『境界』〈永夜四重結界〉!!」

「なっ!」

 

フェイルノートの中で最高の速度と貫通力をもつ光の矢。殺傷力は現在なくしているが、何者をも貫き、何者にも捉えられない筈の矢。それが目の前で完璧に防がれ驚きを隠せなかった。

 

「予測してたのか!!」

 

すぐさま次の矢を構え直す。そして狙いを定める。体を走る激痛によってその動作1つ1つに遅れが生じ、信の視界にあるものがはいった。

 

 

「……………ありがとう、信。でも勝たせてもらうわ。」

 

 

それは笑顔

不敵でもなく、ふざけているわけでもない。

ただひたすら、まっすぐで優しい微笑みだった。

 

「っ!!……へへっ。」

「『深弾幕結界 』〈-夢幻泡影-〉。」

 

優しく唱えられたそれはすぐさま信に襲いかかった。

 

「俺も、ここまで来てそう簡単にはやられねえよ!」

「分かってたわよ。あなたがこれでも仕留めきれないってことぐらい。」

 

そして紫が最後にスキマを開いた。少し大きめのものを。

 

「げっ!!」

 

思い出してみよう。このスキマに入ったものはなんだったか。そしてそれがどんな性質を持っていたかを。

 

「……本当に、我ながら『迷惑』なスペルだ。」

 

 

覚悟を決める。理由は簡単。それはとても痛いだろうから。

 

 

「YOU WINNER!!」

 

 

目の前のスキマから出てきた兆を超える刃の舞と、信とスキマを囲むように襲ってきた紫の最高の弾幕によって、その勝負は終わりを迎えた。

 




congratulation



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第45話【賢者の夢】

敗れた少年は地面に寝そべり、勝利を勝ち取った賢者はそれを見下ろす形になっていた。

 

「……いってぇ。」

「痛いじゃ普通すまないと思うのだけど。」

 

刃の舞によって切り裂かれ、夢幻泡影による衝撃からなのか肌がところどころ変色している。

 

「だったら最後に手加減してくれてもいいんじゃないか?」

「そんなことしたらあなたあの状況でも切り抜けちゃうでしょ?……それに全力でやっても大丈夫だって信じてたから。」

「で、どうするんだ?俺には勝ったし霊夢達の所にいくんじゃないのか?」

「もうスッカラカンよ。あなたに放ったスペルが本当の最後の力。……悔しいけれどあなたの思い通りになっちゃったわね。」

「全然悔しそうじゃないぞ?」

「うるさいわよ。」

 

照れ隠しに軽く蹴る。

 

「いでっ!…てか俺は勝つつもりでやってたんだ。全然思い通りじゃなくて悔しいよ。」

「全然悔しそうな最後じゃなかったわよ?」

「あれは…その……勢いってやつで……。」

「フフッ、なによそれ。……幽々子負けてしまったみたいね。おめでとう、異変解決よ。」

「そりゃどうも。ちょっと立つの手伝ってくれないか?身体中が痛くてしかたない。」

「分かったわよ。……はい。」

 

中腰の状態で紫は信に手をのばした。

 

『魔鬼、ちょっと力借りるぞ?

『えっ?あっ、おう。』

 

妖力を体に流して身体能力を強化する。

そして紫の手を力強く引っ張った。

 

「キャッ!」

 

予想以上の力で引っ張られた紫はバランスを崩してそのまま倒れこんだ。

 

「なにするn「人間ってさあ」」

 

文句を言おうとした紫だったが信に遮られてしまった。

 

「人間って、いつ自分を抑え込むことを覚えるんだろうな。」

「妖怪の私に聞いても意味ないんじゃない?」

「感情を持ってれば妖怪とか人間とかあんまり変わりないだろ。で、いつだと思う?」

「……知らないわよ。あなたは知ってるの?」

「俺もわかんねえ。ずっと自分の思ってることを隠し続けてる奴もいれば、思ったことを全部正直に話しちゃう奴もいる。本当、知能をもった生物ってのは分かんないことばっかりだ。」

「……何が言いたいの?」

「なに、ただの小僧の戯言だと思ってくれてもいい。俺が言いたいのは溜め込み過ぎたら誰もがなにもできなくなるってことだ。」

「・・・・・。」

「全部自分だけで抱えようとすると、結構簡単に壊れるもんだ。肉体的にも、精神的にも。」

「・・・・・。」

「たまには全部吐き出してもいいんじゃないか?」

 

信の手が紫の頭と背中を優しく包み込んだ。

 

「……ぐすっ。」

「さすがに藍とかの前じゃあ気がひけるだろうからな。泣きたくなったらいつでも来いよ。」

「……うん。」

「なんなら今吐き出してもいいんだぞ?」

「………辛かったわよ。」

「ああ。」

「幽々子がまたいなくなる……それに今度は永久に。そんなの嫌だったわよ!」

「ああ。」

「本当は西行妖を咲かせることなんて手伝いたくなかった!!彼女に消えてなんてほしくなかったわよっ!!」

「ああ。」

「誰かに止めてほしかった!でも……出来なかった。彼女を裏切ってしまうような気がして。」

「ああ。」

「どうすればいいのか分からなかった。誰にも相談できなくて、誰にも知られたくなくて。」

「ああ。」

「……ありがとう、信。私を止めてくれて。」

「よく頑張ったな。お疲れ様。」

「ありがとう、本当に。……ぐすっ。」

『コト、そっちは平気か?』

『はい。そちらの方は……。』

『ああ、負けちまったよ。』

『そうですか……。』

『藍は一緒か?』

『ええ。』

『それじゃあ紫のところにはしばらく来ないでって伝えてくれ。』

『……はい。』

『悪いな。』

『あまり女性を泣かせてはいけませんよ。できれば泣き顔なんて見せたくはないんですから。』

『お、おう。それじゃあ頼むぞ。』

「ぐすっ……。」

 

泣き続けている紫は本当に女の子のようだった。その頭を優しく撫でながら落ち着かせる。

この状況で初めて2人に会う人物ならば100%信が年上だと思ってしまうだろう。

言っておくが歳の差約1000である。

 

『で、どうするんだ信。』

 

魔鬼が訪ねる。信の胸に顔を押し付けて泣き始めた紫のことを指しているのだろう。

 

『まあ、ゆかりんが落ち着くまでこのままだな』

『どれくらいかかりそうだ?』

『分かんないな。相当悩み続けてたみたいだから短くすむことはないと思うけど』

『約1000歳上の女性を泣かせる高校生の図』

『やめてくれ』

 

フェリーチェにからかわれながらも泣き続けている少女の頭を撫で、落ち着くのをゆっくり待つことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スゥー……。」

 

溜め込んだものを吐き出していくように泣き続けた紫は、そのまま泣き疲れたのか寝てしまった。

 

「こうしてみるとうちの妹たちと何ら変わらないな。」

『コト。』

『なんでしょうか。』

『藍は今どこにいる?』

『準備があるとかで住みかに戻っていきました。』

『そうか。なら好都合だな。』

 

起こさないようにゆっくりと立ち上がりながら紫を抱き抱える。

 

(藍との座標を共有する。)

 

「藍。」

「やっぱり来てくれたか信……ってそんなに傷だらk」

「しー。(紫が起きちまう。)」

「(す、すまない。)」

「(布団を用意してくれるか?)」

「(もう用意してある。)」

「(用意って布団のことか?)」

「(まあな。)」

 

そのまま寝室に紫を運び、布団に寝かせた。

 

「紫様のこんなに安心しきった寝顔は久しぶりだ。」

「ああ。本当、体を張った甲斐があるよ。」

「では傷の手当てを……。」

「いや、コトが治してくれるからいいよ。ってか殺してでも治そうとするだろうし。」

『聞いてますよ。分かってるなら早く戻ってきてください。』

『悪い悪い。』

「じゃ、そういうわけだから失礼するよ。」

「信!」

「ん?」

「紫様が世話になった。君には感謝してもしきれないくらいだ。後日改めてお礼を。」

「そんなの気にすんなよ。」

「だが、それでは気が済まない。」

「ん~。それなら頼みがある。」

「本当か!何でも言ってくれ。」

「ん?今なんでもって言ったよね。」

「あ、ああ。」

「あんまりそういうことを言うもんじゃないぞ?」

「なんだ?信は私になにかいかがわしい事でもさせるのか?」

「……藍は美人だからそれもありかもな。」

「なっ!?」

『主っ!!』

「もちろん冗談だ。」

「そ、そうか。」

「それで頼みなんだけど………………てほしいんだ。」

「それでいいのか?」

「ああ。」

「分かった。必ず遂行しよう。」

「じゃあ頼むぞ?またな。」

 

「……本当に彼は人間なのか?神狼を従え、紫様と互角にやりあい、あの重症でもピンピンしている……。ただの人間とは到底思えんな」

「…ら……ん。」

「っ!!」

「もう……食べられないわよ。」

「フッ、本当に幸せそうなお顔をなさって。」

「………幽々子…。」

「一体、どんな夢を見なさっているんだか。」

「……し………ん。」

「っ!……本当に、どんな夢を見なさっているんだか。……さて、遅くなってしまったが夕飯の支度をしなくてはな。今日は紫様の好物にしよう。……紫様、お疲れ様でした。」

「…えへへ。」

 

 

その日紫がどんな夢を見たのかは紫にしかわからない。だが、幸福な夢であるということはその寝顔を見たものなら誰でも分かるだろう。

 

 

疲れきった心を癒すかのように、幻想郷の賢者はゆっくりと眠った。

 

 




まだ続きます。


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第46話【悲しきかな】

今回はちょっと長くなってしまいました


コト「全くなんですか主は。そんなにボロボロになって。もっと軽傷で済ませられなかったんですか。」

 

藍と約束したあとコトのところに戻った。何度目となるお説教だ。

 

信「悪かったよ。ほら、ジャーキーやるから。」

コト「ジャーキーなんかに釣られませんよ。早く戻って寝ましょう。」

 

そういいながらしっかりジャーキーはもらっている。

 

信「そういえば藍とやってどっちが勝ったんだ?」

コト「私が勝ちました。」

信「ほう、すごいじゃないか。」

コト「ふふーん。……って誉めてもダメです!」

信「ははっ。じゃあ戻ろうか。」

コト「むぅ。」

 

コトは人型から犬型へと戻った。

 

信『モコ、ちょっ辺りを見渡してくれ。』

モコ『ワウ。』

 

幼少に魔力を使った影響なのかモコは人間の言葉を完璧に理解していた。だからこういう時誰にも見られていないかをモコやコトの視界を共有してから瞬間移動する。

 

信「大丈夫そうだな。コト、戻るぞ。」

コト「はーい。」

 

 

ガラガラッガコンッ

 

信「ただいまー。」

モコ「ワンッ!!」

信「悪いなモコ。」

モコ「クウン。」

愛「信にいおかえりーってどうしたのその傷っ!!グロいよ!!」

信「触るんじゃないぞ。割と本気で痛いからな。」

エマ「信っ!その傷一体どうしたのよ!!」

信「帰ってくる途中で忍者に教われてな。」

エマ&アリサ「「忍者!!」」

エマ「でも学校のみんなはそんなのいないって……。」

信「やべっ!これ言っちゃいけないんだった。……内緒で頼む。」

エマ「ふふーん♪」

アリサ「わかりました、内緒です♪」

 

ご機嫌な様子で2人は今へと戻っていった。

 

愛「あの子達絶対に言いふらすよ。」

静「ですね。」

信「まあ、うまく誤魔化せたからいいだろ。飯はもう食ったか?」

愛「うん。で、今真たちがお風呂に入ってる。」

静「私たちももう入りました。」

信「そうか。飯、俺の分ある?」

愛「もち。」

静「温め直すので待っててください。」

 

そう言った2人は台所へと向かっていった。

 

そのあとは傷を心配されながら食事をとり、激痛に耐えながら風呂に入った。面白がって傷をさわってきた強太の弁当には今度生のピーマンたっぷり入れてやることにした。

 

コト「さ、主早く寝てください。本当なら病院レベルですよっ!」

信「わかったって。……なあコト。」

コト「なんですか?」

信「今日は助かった。お前が藍を足止めしてくれなきゃもっと大変だったと思う。ありがとな

。」

コト「……主も。今日初めて私を頼ってくれました。……嬉しかったです。」

信「そうか。」

コト「それと傷のことは別です。早く寝てください。」

信「はいはい。」

 

そしてコトは不思議な音を奏で始める。落ち着く、ゆったりとした音を。そしてそのまま、信は夢の中へと沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜3時

静まり返った闇のなかでその2人はいた。

 

?「(本当にやるの?)」

?「(やるよ。そのために来たんだから。)」

?「(でも彼はそんな悪い人には見えないよ。)」

?「(でも、『あれ』を持っているのは事実。あなたも感じてたでしょ?)」

?「(うん。)」

?「(大丈夫。『あれ』さえ無くせればいいの。彼を殺す訳じゃない。それに彼は今すごい弱ってるからね。忍者に感謝しなきゃ。)」

?「(そうだよね。うん。)」

?「(じゃあ、行くよ。)」

 

ターゲットの部屋へとその2人は忍び込んだ。全く音を出さずに、ひっそりと。

 

?「(あそこね。)」

 

部屋の奥に『彼』が眠っているのを発見する。

静に、なにも感じさせない動きで近づく。

 

?「(……よし。)」

 

ついにターゲットの横に着いた。

 

?「(さあ、やるよ。)」

?「(待って、これって……)」

 

信「奥手の日本人男子に夜這いってのはあまりお勧めしないな。」

 

?&?「っ!!」

信「さて、これは一体どういうつもりだ?エマ、アリサ。」

エマ「……どうして気づいたの?」

信「一応警戒はしてたんだ。2人とも普段の動きがなにかしら訓練を受けた動きだったからな。」

コト『ウガア゛ッ』

アリサ「あっあの、出来れば話だけでも聞いてくれませんか?」

信「ああ、落ち着けコト。」

コト『しかし主、こいつら。』

信『落ち着け。』

コト『……はい。』

信「もう夜遅いし外で話そう。弟たちを起こしたくない。」

 

 

~~~~~移動中~~~~~

 

 

信「さて、話を聞こうか。」

エマ「私たちはコトがつけてるそのネックレスを探してきたの。」

信「これをか?ってことは……」

アリサ「知ってるみたいですね。私たちのご先祖は昔、その優れた力で悪霊を封じ込めました。」

信『お前まだ悪霊だと思われてるぞ。』

フェリーチェ『みたいだね。』

ノーム『フェリーチェ急にいなくなったと思ったら人間に封じ込められてたんだね。』

フェリーチェ『うん。』

エマ「その封じ込めた悪霊に関する文献が最近見つかったの。その悪霊は世界に影響を与えるほどの力を持ってるって。」

フェリーチェ『まあ、間違ってはいないね。』

アリサ「ネックレスを探すために急遽留学することになって一時はどうなるかと思いましたが幸運でした。まさかたらい回しにされ行き着いたところに目当てのネックレスがあったのですから。」

信「たらい回しなんて難しい言葉よく覚えたな。」

アリサ「エヘヘ。」

エマ「アリサッ!……でも見つけたネックレスに悪霊の力は感じなかった。でもすぐに見つかったわ。」

信「それが俺か。」

エマ「そういうこと。」

アリサ「悪霊さえ滅せれればそれでいいんです。大人しくしてもらえませんか?」

信「ん~。」

信『どうする?フェリーチェ差し出すか?』

魔鬼『よし、やろう。』

フェリーチェ『嫌だよ。』

ノーム『同じ四大精霊としてはあまりやってほしくないな~。』

フェリーチェ『もっと強くいってよノーム!』

共『魔鬼はここぞとばかりに仕返しするな。』

信「すまんがその悪霊とは仲良くやってるんだ。見逃してくれないか?」

エマ「そう……。なら仕方ないね。」

アリサ「ほ、本当にダメなんですか?」

信「本人も嫌だって言ってるしな。」

アリサ「……それならやむを得ません。」

2人の体に霊力が流れていくのを感じる。そこそこ大きい。

共『どうするんだ?』

信『まあ、事情を説明すればわかってくれるだろう。でも俺の霊力は今ほとんどスッカラカンだしなぁ。』

フェリーチェ『なら私の力を使ってよ。なんか悪霊だって言われてたらムカついてきた。』

信『じゃあ借りるぞ。』

 

霊力の代わりにフェリーチェの妖力を体に流す。どうやら霊力で身体能力をあげるよりも効果が高いらしい。

 

エマ「っ!?なにその力。」

信「え?」

アリサ「一体何人いるんですか?」

(まさか...。)

信『共、ちょっと力借りるぞ。』

魔鬼『なんか嫌な予感がしてきたんだが……』

信「悪霊ってのはこいつか?」

共の魔力を流し込みながら質問する。

エマ「違う。」

アリサ「違います。」

信『……魔鬼。』

魔鬼『やってくれ。』

 

そして魔鬼の妖力を流す。

 

エマ&アリサ「それっ!」

フェリーチェ『ははははっ!』

共『ぐふっ!』

魔鬼『なんだよ共まで!!』

共『すwまwwない。でもwwwこwれwwはwww。』

魔鬼『やめろっ!もうしゃべるなっ!!』

信「くくっ………。」

エマ「……信?」

アリサ「どうしたのですか?」

信『いや、何でもない。』

 

もう一度フェリーチェの妖力を体に流す。

 

信「さ、早く来いよ。悪霊を滅するんだろ?」

フェリーチェ『悪ww霊w。』

エマ「じゃあ、行くよ。」

アリサ「手加減はしません。」

信「おう。どんとこい!」

 

瞬間、2人は同時に駆け出した。その速度はおおよそ15、6歳の少女の出せるものではない。

 

(ま、戦う気は全くないんだがな。)

 

信は右手を仰向けの状態で前につきだし、優しく振り上げた。

 

アリサ「きゃっ!」

エマ「なに……これ……。」

 

突然舞い上がった突風によって2人は浮かび上がってしまう。それにどう対処したらわからないといった表情だ。

 

信「ん?2人は自分で飛べないのか?」

 

地上から10mほど離れたところで話を進める。

 

エマ「人間が飛べるわけないでしょ!」

信「それだと俺は人間じゃなくなるんだが……。」

アリサ「人間じゃなかったんですか!?」

信「人間だよ。……まずは色々誤解を解かないとな。話を聞いてくれるな?」

エマ「降ろしてよ。」

信「……出来ればもう少し見てたいんだが。」

エマ「信の変態!」

アリサ「これが日本のHENTAI……」

信「眼福眼福。」

 

ふざけながら2人の体を地面に近づけていく。すると2人共地に足をつけて着地したからやはりなにか高度な訓練を受けていたようだ。

 

信「じゃあまず、さっき2人がいってた悪霊の力だけどな、あれはネックレスの中にはいってた奴じゃないぞ。」

エマ「え!?」

アリサ「本当ですか?」

信「ああ。そいつは生まれも育ちも日本だから間違いないな。それともう1つ、根本的に違うのはネックレスに封じ込められてたのは悪霊じゃないってことだ。」

エマ&アリサ「じゃあなんなの(ですか)?」

信『いっちゃっても言いかな。』

フェリーチェ『私は隠す気は元々無いよ。』

信「四大精霊って知ってるか?」

エマ「うん。」

アリサ「サラマンダー、ウンディーネ、シルフ、ノームのことですよね。」

信「ネックレスに封じ込められてたのはそのシルフだ。」

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

エマ&アリサ「えええええええええっ!!」

信「コントみたいな反応だな。」

エマ「え、ちょっと待って。悪霊は精霊で、悪い力は悪霊じゃなくて……」

アリサ「ってことは私たちのご先祖は四大精霊を悪霊と間違えて封じ込めたんですか!?」

信「うん。」

エマ「証拠見せてよっ!」

(混乱して頭が追い付かなくなってきたな。)

信「まあいっか。2名様ご案な~い。」

エマ&アリサ「っ!!」

 

2人が見せられたのは信の中の住人が集う場所。つまり信の魂だ。

 

共「明度 共だ。」

ノーム「僕はノーム。よろしくね~。」

フェリーチェ「それで私が君達のご先祖に封じ込められたシルフのフェリーチェだよ~。」

エマ&アリサ「・・・・・。」

2人はとても信じられないといった表情でビックリしている。無理もない。

ノーム「ん?」

エマ「そっちの人は……。」

魔鬼「お前たちに悪霊に間違えられた明度 魔鬼だよっこの野郎っ!!!」

エマ&アリサ「ひっ!」

信「まあ見てわかる通り俺の中はとても賑やかだ。これで信じてくれたか?」

エマ「……うん。」

アリサ「すごいです。」

 

能力を解除する。

 

信「とまあ魔鬼はとても不機嫌になっちゃったわけだけど、これで全部の誤解はとけたな。」

ノーム『信。』

信『どうしたノーム。』

ノーム『彼女たちがつけてるイヤリングと指輪、僕が作ったのだ。』

 

エマはイヤリングを、アリサは指輪を常に身につけていた。

 

信『……え、マジ?ってことは……』

ノーム『うん、たぶん入ってると思う。』

信『でもフェリーチェはなんにも感じないんだろ?』

フェリーチェ『うん。でも2人は真面目だからね、多分ちゃんと自分の力を抑え込んでるんだと思う。』

信『見習ったらどうなんだ?』

フェリーチェ『それより信っ!早く確かめようよ。』

信『わかったよ。』

信「エマ、アリサ。俺をこんな時間に興したお詫びとして頼みがあるんだけど。」

エマ「私たちに乱暴する気でしょ!」

アリサ「エロ同人みたいに!!」

(ホントにどこでそんな言葉よく覚えてくるんだ?)

信「違くて、お前達のイヤリングと指輪をちょっと貸して欲しいんだ。」

エマ「これを?」

アリサ「いいですけど…。」

 

2人は不思議な顔をしながら渡してくれた。

 

信「ありがとう、すぐ返すから。」

信『魔力と妖力を一緒に流せばいいんだよな。』

ノーム『ちょっと違うんだよね~。』

信『ん?』

ノーム『霊力と魔力と妖力を一緒に流し込んでみて。』

信『3つをか?』

言われた通りに流し込んでみる。すると、2つの中で、なにかが外れた感覚を覚える。

?『ついに我を納められるものが現れたか。』

?『長かった。やっと外の世界を見られる。』

信『マジで居やがったな。』

フェリーチェ『旦那!、ディーネ!!』

ノーム『やっぱりまだいたね。』

旦那『我はサラマンダー。四大精霊の1人、火を司りし大精霊d……ん?旦那?』

ディーネ『フェリーチェ!ノームッ!』

フェリーチェ『ディーネッ!!』

ディーネ『どこへ行っていたのですか。……心配したのですよ。』

フェリーチェ『うん。ごめんね。』

旦那『ディーネまでいるのか!?』

ディーネ『旦那!……お久しぶりです。』

旦那『なんということか。四大精霊がまた1つに集まれるとは……。』

フェリーチェ『うん!あえて嬉しいよ!!』

ノーム『フェリーチェ、紹介しなくていいの?』

フェリーチェ『そうだった!まずは金髪の彼女から。』

共『私からか。』

フェリーチェ『彼女は明度 共。元々はある子の狂気だったんだけどここではその本質が抑えられてるんだ。』

共『よろしく。』

フェリーチェ『そして彼が明度 魔鬼。彼は牛鬼っていう妖怪の本能で』

ディーネ『牛鬼っ!!』

旦那『離れろっ!こいつは危険だ。』

ノーム『知ってるの?』

旦那『極東では悪名高いことで有名な妖怪だ。なぜこんなところに。』

フェリーチェ『待って待って、彼は確かに元は嫌なやつだったけど今は大丈夫だよ。』

魔鬼『この宿主についていくと決めてからはな。明度 魔鬼だ。安心してくれて大丈夫だ。』

旦那『そうか……いきなり無礼をはたらいてしまったな。すまなかった。』

魔鬼『いいよ、実際俺は色々悪いことやってたんだし。これからよろしく頼む。』

フェリーチェ『それで今いるこの体が明度 信だよ。』

信『そういうわけだ。自己紹介はあとでそっちにいくからちょっと待っててくれ。』

エマ「信、なにかわかったの?」

信「色々な。これは返すよ。ありがとう。」

アリサ「説明してくれますか?」

信「またあとでな。今日は遅いから寝よう。」

エマ「私たちを追い出さないの?」

信「別に何かあった訳じゃないしな。睡眠時間削られて傷は治せなかったけどな。」

アリサ「ごめんなさい。」

信「気にすんなって、誰にでも間違いくらいある。だから早く寝よう。」

 

今はディーネや旦那に聞きたい話がたくさんある。だからそのために早く寝たい。

 

信「それじゃあお休み。」

コト「お休みなさい。」

 

エマとアリサと別れ自分の部屋で寝ようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジリリリリリリリリリリリリッ!!!!

 

 

 

なんの音か。決まっている。現時刻は午前4時。起床時間だ。

 

コト「お、おはようございます?」

信「……おはよう。」

信『すまないけど、話はまた後日ということで。』

旦那『あ、ああ構わない。』

フェリーチェ『信、頑張って。』

 

精霊に鼓舞され、痛みの走るからだを我慢して動かし、兄弟たちが集う道場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 




新キャラの設定は後々公開します。


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第47話【吹っ切れた】

おはこんばんにちは、さまりとです。
めっちゃ間が開きました。ごめんなさい。データが3回くらい消えたせいでやるきを完全に無くしました。
そのお詫びとして今回は少し長めです。
では、ゆっくりどうぞ






コト「主、そろそろいきましょう。」

信「そうだな。風人、華、いくぞー。」

風&華「はーいっ!」

愛「今度こそお土産よろしくね。」

真「出来れば八目鰻食べてみたいな。」

恭助「俺も食べたい。」

静「怪我には気をつけてくださいね。」

信「心配してくれるのは静だけかよ。お兄ちゃん少し悲しいぞ。」

真「俺たちを残して先に逝っちゃうなんてことはしないでしょ?」

信「まあな。それじゃ、行ってきます。」

風&華「きまーすっ!」

一同「いってらっしゃい!」

 

なにも話は聞いていないがきっとやるに決まっている。なにせ昨日コトと合流した頃にはもう幻想郷の雪がほとんど溶けてしまっていたのだ。

 

信「よう、きたぞ。」

風&華「こんにちわー!」

霊「こんにちわ。やっぱり来てくれたわね。」

信「おう。」

魔「やっと来たか……ってなんなんだぜその傷は!!」

信「本気の紫を相手にしたらこうなった。」

ア「大丈夫なの?」

信「これくらいはどうってことないさ。それより準備するんだろ?」

霊「ええ、今回もよろしく。」

 

そう、長い冬が終わり春が来たのだ。春といったら何をするか。幻想郷ではもう決まっているようなものだ。

 

信「異変解決お疲れ。」

霊「そっちも1人で紫を相手にしてたじゃない。」

信「でも負けちまったからな~。……もしかして咲夜も勝ってたりする?」

魔「引き分けだったらしいのぜ。最後まで勝負がつかないまま。」

信「やっぱり負けたのは俺だけか~。てか咲夜は準備手伝ってくれないのか?」

ア「向こうは向こうで準備をするらしいわ。」

信「そうか。」

霊「それと藍が相当感謝してたわ。お礼がそれだそうよ。」

 

指差した先にはでかい鹿がいた。ご臨終してるやつ。

 

風「でっかいしかーっ!」

信「立派な鹿だな。身も締まってる。でもこれを藍が?」

ア「それと彼女から伝言。『例の約束は少し難しいかもしれない』だそうよ。なんの約束したの?」

信「ちょっとな。まあとりあえず準備を進めよう。お前たちは鹿捌けるか?」

霊「無理よ。」

魔「できないぜ。」

ア「できないわよ。」

信「じゃあ俺がやるよ。時間はいつも通り少ないし急ごう。」

 

~~~~少年少女奮闘中~~~~

 

魔「やっと終わったぜ。」

ア「早く運びましょう。華ちゃんと風人君も手伝ってくれる?」

風&華「やるっ!!」

 

~~~~少年少女運搬中~~~~

 

信「おお、みんな~!久しぶりだな。」

料理を持っていくと久しぶりの顔がたくさん見られた。

美「しんさ~ん!」

 

それと同時に美鈴の声も聞こえた。ということは紅魔館のメンバーが来たということだ。

 

(ん?ってこいことは……。)

フ「お兄いい様ああああああああ!!!」

信「フラごふっ!」

チ「しいいいいいいいいんっ!!!」

信「この声はチルノがふっ!」

 

正面からフランが突っ込んでき、その直後チルノが後ろから後頭部に抱きついてきたため信の体はくの字になりながら吹っ飛んだ。

 

信「ふ、フラン、チルノ、久しぶりだな。」

フ「お兄様だっ!やっと会えた!!」

チ「本当に信だっ!!」

美「大丈夫ですか?」

大「チルノちゃん、いきなり飛び付くのじゃ危ないって。」

信「大ちゃんも美鈴も久しぶりだな。……早速で悪いんだがフランを離すの手伝ってくれ。このままだと俺の背骨がまずい。」

 

力一杯ハグをされている信のからだからはメシメシと不気味な音をたてている。

 

美「わわわっ。フラン様、力を抜いてください。」

フ「ヤダッ!お兄様はもうどこにもいかせない!!」

信「行かないから!行っても2日以内に戻ってくるから!」

フ「……本当?」

信「最悪連絡は入れるから、な?」

フ「……うん。」

華「フランちゃん、チルノちゃん、大ちゃん。久しぶりっ!」

フ「風人、華っ!」

風「今日はいっぱいあそぼっ!!」

フ「うんっ!!」

 

2人に気づき笑顔になったフラン達は他の皆がいるところへと遊びにいった。

 

信「ふう。」

 

自分の背骨が正常であることを確認して1つ息をつく。

 

美「だ、大丈夫ですか?」

信「大丈夫大丈夫。久しぶりだな、元気にしてたか?」

美「はいっ!…と言いたいところですけどフラン様の相手をしていてもうくたくたですよ。」

信「フランにはもう少し落ち着きをもってほしいな。」

美「共さんがいなくなってからは大分落ち着いた方なんですが、信さんが絡むとどうしても……。」

信「兄貴分としては嬉しいような、心配なような……複雑だな。」

 

そうしていると背後から聞きなれた声が聞こえた。

 

ジ「久しぶりに顔を見せたと思ったらもう人の心配か?」

ギ「我が主ながら心配になるな。」

信「ギン!ジン!なんだ元気にしてたかお前ら!稽古はサボってないだろうな。」

ジ「全員皆勤賞だよ。」

ギ「俺が本能と話し合ってるときにお前らはずっと稽古だもんな。」

ジ「ボスの近くにいるためにはそれくらいはやんないとって、あいつらとの相談の結果だよ。」

美「?」

信「そういえば美鈴は知らなかったな。ケンだけじゃなくてギンの子分全員に稽古つけてやってるんだ。」

美「マジですか!?」

信「ああ。なんならたまに相手してやってくれ。……ジン、そういえばケンは?」

ジ「あいつはなんか家の用事が色々あって来れないかもって言ってたぞ?」

信「そうか……。まあ仕方ないか。今日は幻想郷初の花見だ、全力で楽しむぞ!!」

一同「おおおおっ!!!」

 

その掛け声と共に宴会が始まった。お預けされていた反動なのかその花見は異様な盛り上がりを見せていた。

 

文「あややややや。出遅れてしまったようですね。」

信「文か、ずいぶん遅かったな。」

文「妖怪の山でちょっと揉め事がありましてね。それでは信さん、早速取材させていただきます。あのときは置いていかれてしまいましたが今回はそういきませんよ。」

信「今回はなにも話す気はないぞ?」

文「あややっ!!どうして、前回は快く受けてくれたじゃないですか!!」

信「俺は今回いいとこ無しだったからな。他のやつらに頼んでくれ。」

文「……そうですか。でも次回はちゃんとお話を聞かせていただきますからね。」

信「いいとこがあったら取材受けてやるよ。」

(あんまりゆかりんのことは口外したくないしな。……ん?んん゛!?)

 

ふと目をやった先には恐ろしいスピードで料理を平らげていく女性がいて思わず二度見してしまった。その料理の入れ換えをやっている人物は会ったことがある。

 

信「昨日ぶりだな、妖夢。その人が幽々子か?」

妖「あなたはっ!」

幽「あら、あなたが信でいいのかしら?」

信「明度 信。信って呼んでほしい。」

幽「私は西行寺 幽々子。聞いたわよ、あなたが紫の相手をしたんですって?」

信「まあ負けちゃったけどな。……あんまりゆかりんを心配させない方がいい。」

幽「……ええ。」

信「それにしてもあんた良い食べっぷりだな。どんだけ食べるんだ?」

幽「この鹿肉の料理とか美味しいんだもの。やめられないわ♪」

信「気に入ってもらえたなら何よりだ。」

妖「これはあなたが作ったんですか!?」

信「藍が差し入れてくれたんだ。いやー大変だったよ。すげえ立派な鹿だったからな。」

妖「……。」

信「ん?どした?」

幽「この子ったらこの料理は誰が作ったのか気になってたみたいなのよ。『私のより美味しい』って。」

信「ほほう。」

妖「幽子様っ!大体、あなたが急にいなくなったせいであのメイドにすごいおちょくられたんですよ!!」

信&咲「「斬れぬものなど、あんまり無い!」」

幽「似てるわ~。」

妖「似てませんよっ!!ってあなたまでっ!」

信「グッドタイミングだ咲夜。」

咲「それほどでも。」

なにかを成し遂げたようなハイタッチを交わした。

妖「斬りますっ!」

咲「無理よ。彼、私の5倍は強いのよ?」

妖「そんなことは自分で確かめます!師匠が教えてくれました。真実は斬って知るものだと。」

信「絶対お前意味履き違えてるだろ!」

妖「問答無用っ!」

 

 

キィイイイン

 

 

藍「もう少し自制心を磨くべきではないか?」

 

振り下ろされた剣撃を受け止めたのは突然現れた藍だった。その方には橙も一緒にいる。

 

信「よう、藍。」

妖「しかしっ!!」

幽「妖夢、藍の言うとおりよ。もう少し落ち着きなさい。」

妖「……みょん。」

信「約束の件はどうだった?」

藍「やはり駄目だった。布団から出てきてくれないんだ。」

橙「どうしてもいきたくないって。」

信「……そうか。ま、多分来てるけどな。」

藍「どういうことだ?」

信「こういうことさっ!」

妖「っ!それは紫様のっ!」

 

突然信はスキマを開いてそのなかに入っていった。

 

「や……り…た。」

「なっ、………てわか………。」

妖「なかで一体何が……。」

 

なにやら言い争っているように聞こえる。

そして信がある人物の手をひいて出てきた。

 

信「スキマの中でずっと覗いてたみたいだぞ。」

藍「紫様っ!」

紫「………。」

信「ま、これでやっと全員集合な訳だ。それじゃっ、もっと盛り上がっていくぞおおっ!!」

一同「おおおおっ!!!」

信「プリズムリバー3姉妹、よろしくっ!!」

リ「待ってました!」

メ「いよいよね、姉さん。」

ル「うん。いくよ、2人とも。」」

 

それからはもうどんちゃん騒ぎ。

宴会が好きな幻想郷の住民はただでさえ大騒ぎなのに、3姉妹の演奏によってより盛り上がった。

 

紫「・・・・・。」

 

周りが馬鹿騒ぎしているなかで、八雲紫は1人静かに飲んでいた。

 

幽「紫がこういうのに来たくないっていうのも珍しい話よね。……何かあったの?」

紫「別になにもないわよ。」

幽「ふ~ん。……今回は大分迷惑をかけたみたいね。」

紫「藍から聞いたの?」

幽「ええ。……ごめんなさいね。」

紫「気にすることじゃないわよ。私は自分の意思で幽々子に協力するって決めたんだから。」

幽「ありがとう。……それで?紫は信のことをどう思ってるの?」

紫「ブフッ!!い、いきなり何をっ!」

幽「あら~?やっぱりそうなのね~(ニヤニヤ)。」

紫「そんなわけないでしょう!どうして私が人間の信をs「俺がどうかしたか?」ひゃうっ!」

 

必死で弁解する紫の背後に信が現れた。能力で飛んできたのだろう。

 

紫「な、なっなんでもないわよっ!」

信「なんでそんなに必死なんだ?……楽しんでるか?」

紫「まあ、ぼちぼちね。」

信「やっぱりどっか悪いのか?前の宴会の時と全然テンションが違うじゃないか。」

紫「私にだってそういうときくらいあるわよ。」

 

心配する信に紫は顔を向けようとしない。むしろ信が合わせようとするとそれにあわせて逸らしている。

 

信「なにもないならいいけど……。」

魔「おーい。信もこっちに来るんだぜー!!」

信「おう!……無理矢理連れてきておいてなんだけど、あんまり無理するなよ?昨日も色々あったんだから。」

紫「ええ。」

 

紫を心配しながらも信は魔理沙達の元へと行った。

 

紫「はぁあああああ。」

 

そして信が離れると同時に溜め込んでいたものを吐き出すように深く息をついた。

 

(目を会わせるどころか顔も見れないっ!!これじゃあ本当に私が信のことを………はっ!)

 

幽「ニヤニヤ」

紫「………。」

幽「ニヤニヤ」

紫「………。」

幽「ニヤニヤ」

紫「分かったわよっ!!」

幽「私はなにも言ってないわよ~♪」

紫「あの顔をしてよくもそんなことを……。」

幽「フフッ♪それで、何が分かったのかしら?」

紫「言わせるの?」

幽「ちゃんと言ってくれないと私わかんな~い。」

紫「………私は/////」

幽「え!?」

紫「私はっ/////!!」

 

幽々子に話すことで少しは胸の高鳴りがマシになると思った。幽々子はまさかここまで顔を真っ赤にして必死になると思っていなかったので逆に驚いている。そして、紫は顔を真っ赤にしながら言いはなった。

 

紫「私はかれg「信さああああああんっ!!」!?」

 

まあ、そんなこと本人の聞いてないところでさせるわけないのだが。

 

 

side change

 

 

信『ゆかりん、大丈夫かな?』

フェ『大丈夫って言うか…ねえ?』

ディ『本当に彼は分かっていないのですか?』

鬼『残念ながら分かってない。』

旦『そんなはずないだろう。』

ノ『ここまで来ると疑いたくなる気持ちも分かるけどねぇ~。』

信『分かるとか分かんないとかなに言ってんだ?』

フェ『なんでもないよ。』

 

不思議に思う信だったが、なにも分からないと悟り、考えるのをやめた。

 

魔「さあ、信!お前も飲むんだぜっ!!」

 

そして魔理沙達がいたところまで来た。そこには魔理沙の他に、霊夢、アリス、咲夜、レミリア、美鈴、そして妖夢がいた。

 

信「飲まないよ。」

魔「なんでだぜっ!!前回は飲んでたじゃないか!!」

信「あれは特例だよ。あくまで俺は未成年の外来人。そうポンポン規則を破ってちゃ弟達に示しがつかない。」

霊「諦めなさい魔理沙。」

ア「よっぽどじゃない限り信が決めたことを破らないことはわかってるでしょ?」

咲「意見の押し付けは嫌われる道の第一歩よ?」

レ「女たるもの、落ち着きがなくてわね。」

魔「くうううっ!」

妖「祝いの場で酒が飲めないとは……。やはり斬りますっ!」

美「二人とも落ち着いてください!」

信「『斬れぬものなど、あんまり無い!』」

妖「斬りますっ !!」

「信さあああああああん!」

 

今まさに信に斬りかかろうとしたところで声が聞こえた。

その声の主はなにかを抱き抱えるようにして信達のもとへと向かってくる。

 

信「ケンッ!来れたのか。」

ケ「はいっ!お母さんが信さんに挨拶してきなさいって。」

信「そうか。……もしかしてその子って」

 

ケンの腕には白い布でくるまれた小さな赤ん坊がいた。産まれてから半年もたっていないだろう。

 

ケ「僕の妹です。」

信「無事に産まれたみたいだな。」

ケ「はいっ!あの、この子を抱っこしてあげてくれませんか?」

信「俺にか?」

ケ「ええ。お母さんが信さんに抱っこしてもらったら縁起がいいからって。」

信「縁起がいいって…。俺ってなんかしたか?」

ケ「ギンさんの一味ですよ。約50の妖怪を従え、更にその妖怪には人里の手伝いをやらせてる。おかげで里は良くなったて皆感謝してますよ。」

信「………ん?俺が?」

ジ「悪いけど勝手に名前を使わせてもらった。」

ケ「稽古中に里の人に見つかりまして……。とっさに信さんの名前を出したら信じてもらえました。」

信「そんで安全な妖怪には村を守ってもらおうと。」

ジ「そのお陰で俺たちも飢えずにすんでるわけだ。給料がわりに食い物をもらってるからな。」

信「ちゃっかりしてるな。でもまあいい感じに収まってくれて嬉しいよ。」

ケ「では信さん。お願いします。」

信「ああ、喜んで。」

 

ケンから赤ん坊を受け取り優しく抱き抱える。その巨体もあって赤ん坊はより小さく見えた。

 

信「よしよし。元気に育つんでちゅよ~。」

霊「し、信っ!?」

信「赤ちゃん言葉ってのは結構馬鹿にできないんだぞ。使うか使わないかで赤ちゃんが言葉を話せるようになる速さが違う。」

ケ「そうなんですか。」

信「ああ。」

「キャハッ アー」

信「おっ、笑った。」

美「わ、私にも見せてほしいんだぜっ!」

ア「私にもっ!」

 

そういった感じでその場のみんなは赤ん坊を囲むように位置した。

 

美「可愛いですね~。」

レ「フランも昔はこうだったわね。懐かしいわ。」

妖「すごい。」

信「そういえばこの子の名前は何て言うんだ?」

ケ「サヤって言います。僕がつけたんですよ。」

信「サヤちゃんか。よしよ~し。」

咲「ねえ、ケン。私も抱いてみてもいいかしら?」

ケ「是非お願いします!色んな人に触れあってほしいですし。」

咲「ありがとう。信、いいかしら?」

信「ああ。首がまだ座ってないから気を…」

 

咲夜にサヤを預けようとしていた手が止まる。何かに気づいたかのように。

 

咲「信?」

信「すまん咲夜。やっぱりもうちょっと待ってくれるか?」

咲「え?あっ!」

 

咲夜の答えも聞かないまま信はその場から消えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫「きゃっ!」

信「なるほど。」

 

信が移動した先は紫のもと。さっきは紫の視線に気付いていたのである。

 

紫「はわ、あわわわわ。」

信「今日は調子が悪いんだと思ってたんだがそういうことか。」

(ばっ、バレたっ!?)

信「ゆかりんも抱っこしてみたいんだろ?」

紫「へっ?」

信「サヤちゃんが産まれるのは知ってたみたいだし、俺を通してできると思ってたのか。なのに肝心のケンとサヤがいないから心配してたと。」

幽「紫がそんなこと「ええ、そうよ!」」

 

幽々子の弁解を遮るように紫は答えた。少々必死すぎるようにもにも感じられるが。

 

紫「一度気になったら目が話せなくてね。」

信「やっぱりそうか。それじゃあ、ほら。」

紫「え、ええ。」

 

信からサヤを預り抱き抱えようとする。どうして自分がこんなことをしなければとも思っていたが今は仕方ないと割りきった。

 

ガクンッ!

 

紫「へっ?」

 

余計なことを考えていると腕に違和感を感じた。赤ん坊の重さが急に片寄ったような……

 

信「まだ首が座ってないから気を付けろよ。」

紫「遅いわよっ!」

「オギャアッ!ア゛ア゛!!!」

紫「ああっ!よしよし。」

「オギャアッ!ア゛ア゛!!!!!」

紫「幽々子、どうしたら…」

幽「知らないわよ。」

「オギャアッ!ア゛ア゛!!!!!!!」

信「ははっ!ゆかりんもそんなに焦ったりするんだな。」

紫「どうしたらいいのよっ!」

信「体にサヤをピッタリ引き寄せればいいさ。心臓の音が聞こえるようにな。」

紫「こ、こうかしら?」

「ア゛ア゛!!!アァ? キャハッ」

 

信に言われたままぎこちない手つきでやってみるとすぐに泣き止んだ。すると今度は笑って紫に手を伸ばしてきた。

 

信「指だしてみな。」

紫「え、ええ。」

 

伸ばされた手に指をだすとそのまま握られた。幼く弱い力だったが紫には力強く感じられた。

 

紫「フフッ♪」

信「可愛いもんだろ?」

紫「ええ、そうね。」

 

もうこのときには紫のなかに『仕方ない』という気持ちは無くなっていた。愛らしく、思わずほほが緩む。何とも言えない幸福感に満たされていた。

 

信「そろそろ戻んないと。いいか?」

紫「ええ。」

 

紫が信にサヤを預けるとそのまま信は消えた。咲夜達の元へと戻ったのが目にはいる。

 

幽「それにしても紫があんなに焦るなんてね~。」

紫「ねえ、幽々子。私、信が好き。」

幽「!?」

紫「あなたのその顔も滑稽ね。見せてあげたいわ。」

幽「むう。それにしても急に吹っ切れたわね。」

紫「隠すのも馬鹿らしくなってしまってね。それにこの気持ちがなんだか誇らしく思えるの。どうしてかしら。」

 

信がいる方向に顔を向けながらそう話す。その横顔はとても美しかった。

 

幽「応援するわ。」

紫「ありがとう。」

 

異変の首謀者である二人は、初めてその宴の場で酒を酌み交わした。




これにて春雪異変は終了です。
少しネタバレをしますと、今回を除いて信が負ける予定はないです。
信に唯一勝てたのが八雲 紫である。という事実で初登場時のあれを払拭したかったんですよね。
次回はあの人たちの事情が明らかに。
では、次回もゆっくりお願いします。





































タイトルで某動画を連想した人出てきなさい。
さまりと先生怒んないから。


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第48話【OUT OF HUMAN】

コ「もう準備できましたね。早く寝ましょう。さあっ!、さあっ!!」

信「分かったから落ち着けって」

 

宴会から帰ってきた真達に土産を渡してなんやかんやあってもう寝る時間だ。コトは傷を早く完治してほしくてものすごい早口になっている。

 

信「ふぅ~。それじゃあ頼む」

コ「良い夢を」

 

コトが心地よい音を奏で始めるとすぐに睡魔が襲ってきた。それに抗う理由もないのでそのまま夢の世界に入っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今いるのは夢の中。そうは言っても真っ白いだけの空間だ。そしてそこにはいつものメンバーに2人加え、総勢7人になった

 

信「さ、では改めて自己紹介を」

旦「では私から。我はサラマンダー。四大精霊の1人、火を司りし大精霊である。周りからは旦那と呼ばれている」

ディ「私はウンディーネ、水を司る精霊です。ディーネとお呼びください」

信「明渡 信だ。普通の人間。それじゃあ早速本題に入ろうか」

旦「我々がどうしてあのような道具のなかには言っていたことでいいのか?」

信「ああ」

ディ「事の発端は300年前。突然フェリーチェが姿を消しました」

フェ「………」

ディ「そしてそれは、世界の危機であることも意味していました。我々四大精霊は各々の力を使い、調和させて世界の均衡を保ち続けていました。ですがその均衡は、フェリーチェ無しでは簡単に崩れてしまいます。私達も出来るだけ探しましたが見つけることはできませんでした」

旦「そこで我々はその状況を打開すべく、修行を始めた」

(ふむふむ………ん?)

旦「フェリーチェがいなくとも世界が崩れないようにと。我々だけで世界の均衡を保てないかと。それをするためには莫大な力が必要だったんだ」

ノ「それで皆が力をつけて世界の均衡は保たれましたとさ」

信「めでたしめでたしってなるか!ノーム絶対適当に締めただろ!」

ノ「えへへ~」

鬼「なぜ照れる」

ディ「まあ、それが一番良かったというのも事実なのですが……」

信「それで?世界の均衡を保たなきゃいけない四大精霊がどうしてイヤリングやら刀の中なんかにいたんだ?」

旦「………我々は力をつけた。時間は少なく、正直焦っていた」

ノ「僕も相当頑張ったんだよ~。あんなに頑張るのはもう嫌だけど。」

ディ「そして皆、ギリギリまで必死にも力をつけ続けていました。その結果………なんですが………」

信「力をつけすぎた?」

旦「……いかにも」

ノ「これじゃあ逆に世界が危ないってなって僕たちはあの道具のなかに自分達を封じ込めたんだよ~。僕たちを宿しても平気な生命体が現れるのを信じてね」

信「………四大精霊ってのはドジなのか?」

ディ「うぐっ!」

旦「そういわれても無理はない」

信「フェリーチェは悪霊と間違えられて封じ込められたわけだし……」

旦&ディ「今なんと?」

信「ん?フェリーチェが悪霊とと間違えられて封じ込められたって」

 

ディーネと旦那の顔から光が消えた

 

ディ「フェリーチェ?」

フェ「はっ、はいっ!!」

旦「今の話は本当か?」

フェ「えっと、まあ、はい...」

ディ「少し話をしましょうか。信殿、少し場所を提供していただけませんか?」

信「ああ」

 

信がなにもない空間に手をかざすと現れた

 

信「その中なら外には絶対聞こえないぞ」

ディ「有難うございます」

 

旦那の表情は明らかに起こっていることがわかる。だが、ディーネは笑顔のままその表情が全く動かない。逆に恐い

 

旦「っと、逃げるんじゃないフェリーチェ。話したいことはたくさんある」

 

その場から全力で離れようとしたフェリーチェの首根っこを旦那は掴んだ。捕まったフェリーチェは必死に抵抗する

 

フェ「ノームッ!!助けてっ!」

ノ「助けたら後が怖いから嫌だな~」

フェ「魔鬼っ!!」

鬼「………」

フェ「せめて反応してよっ!!共っ!君なら!!」

共「諦めて怒られるんだな。」

フェ「信っ!お願い、なんでもするから」

 

信にお決まりの言葉と共に最後の助けを求める。その表情は焦りと恐怖そのものだ

だが……

 

信「安らかに」

 

フェリーチェに向けて合掌していた

 

フェ「しいいいいいいいいいいいいん!!!」

ディ「早くいきましょう。話したいことがたくさんあります」

旦「うむ。それではしばらく失礼する」

フェ「嫌だああああ!!」

 

3人は(1人は無理矢理)扉のなかに入っていった

 

信「そんなにあの2人は恐いのか?」

ノ「とんでもないくらいにね」

共「………信、体は平気なのか?」

信「ん?ああ、なんともないぞ。どうした?」

共「いや、世界に影響するほどの力を持った精霊を4人も宿して大丈夫なのかと」

信「…………はっ!!」

鬼「まさか本当に気付いてなかったのか」

ノ「僕も不思議だったんだよね~。フェリーチェも修行してたみたいで僕たちと殆ど差がなかったし」

信「初めてあったとき体の調子を聞いてきたのはそういうことか。」

ノ「でも信が紫と戦ってるところを見て納得できたよ~。君にはそれ相応の力があるってだけだったし」

信「それでいいのか?」

鬼「信なら仕方ないだろ」

共「信なら仕方ないな」

信「それでいいのか……」

ノ「ふわぁ~。それじゃあ僕は寝るよ」

信「そういえばどうやって寝てるんだ?」

ノ「向こうの空間で雑魚寝してる」

信「ベッドとか要らないのか?」

ノ「欲しいけど……無い物ねだりはするなって旦那達に言われてるしね」

信「俺の魂の世界だから簡単に出せると思うぞ」

ノ「本当に!?」

信「一回向こうに移動するか」

 

もう一度信が手をかざすとまた扉が現れた。扉の上には『魂』と文字が浮かんでいる。

扉を開けて潜ってみると、そこには何もない真っ白い空間が広がっている。今はまだ明晰ルー夢となんら変わりはない

 

信「ん~。住人も増えてきたしもっと生活感がほしいな」

 

そう言った信はその場に座り込んで目をつむった。

 

信「ここには……いやでもこっちの方が……でも6人もいるし……」

ノ「ね、ねえ信?。なにをぶつぶつ……」

共「まあ待てノーム。多分面白いことになるぞ」

ノ「面白いこと?」

 

 

 

旦「やはり全員こちらにいたか」

共「もういいのか?」

ディ「ええ。信殿は何をなさっているのですか?」

鬼「信は今ちょっと取り込み中だ」

ノ「ねえ、面白いことって……」

信「よしっ!決めたっ!」

 

パチンッ!

 

ブツブツ何かを呟いていた信が突然立ち上がると、指を1つ鳴らした

 

ノ&フェ「「うわぁ」」

信「うん。大体こんな感じかな……。シェアハウスをイメージしてみんだが……どうだ?」

ノ&フェ「「うわああ!!」」

鬼「いいんじゃないか?」

共「にしても本当になんでもありだな。魂の世界に家建てちまうなんて」

 

信が指を鳴らした瞬間、真っ白い空間は1つの部屋に変わった。

今はリビングのような所に皆がいる。内装は大きめのテーブルに7個のイスが添えられていて、それとは別にちゃぶ台がありそれを挟むように3人くらいが座れそうなソファが2つ。テレビや電話もそれらしい所に置かれていて、空間の奥の方にはキッチンがあり、壁には1つの扉がつけられていた。

 

信「正確に言うと魂その物をこの家の形に変えたんだけどな。」

旦「人間にそんなことが………」

信「キッチンとかは実際に使えるぞ。まあ、俺の記憶のから産み出した物だから食べたりしてもなにもないが」

フェ「味もしないの?」

信「味はするけど食べる前となにも変わらないってのが正しいな」

ディ「それでは料理もできるのですか!?」

信「できるけど……」

旦「ディーネは前から人間がする料理とやらに興味があったのだ。なにぶん、我々精霊は食事を必要としないので機会もなくてな」

信「そういうことか。やりたいときは冷蔵庫の中に食材が入ってるから自由に使ってくれ」

ディ「ありがとうございます!」

信「さ、まだまだ紹介したいところは残ってるんだ」

 

そう言いながら壁にある扉を開いて行った。扉の先には普通に廊下があり、出てすぐ左の廊下の壁にはいくつもの扉があり、その上には『共』や『魔鬼』などとそれぞれ名前が書かれていた。そして、右側には突き当たりに他とは違うデザインの扉が2つ取り付けられている。

 

信「全員分の部屋も用意したからな。自由に使ってくれ」

ノ「これ僕の部屋!?」

信「ああ」

 

信の後に廊下に出たノームは、すぐさま自分の名前が書かれた扉に駆け寄った

 

ノ「わぁああ!」

 

1人で寝るには十分すぎる大きさのベッドと勉強机があるだけの非常にシンプルな部屋だ

 

ノ「ベッドだあああっ!!ふかふかだぁ」

 

ベッドが目にはいった瞬間ノームはそれにダイブし、掛け布団を抱き寄せてゴロゴロしている

 

信「今は全部同じ様な部屋だけどこの後変えれるから自分の部屋をどうするのか決めておいてくれ。広くしたりも出来るし、なんなら他の誰かとおんなじ部屋にするってのもできるぞ」

フェ「本当!?ディーネ!一緒の部屋にしよっ!」

ディ「いいですよ。信殿、そのようにしていただいてよろしいですか?」

信「おk、2人の部屋は一緒にしておく。ああ、それともう1つ。あの扉についてなんだけど……」

 

信が指を差した方の扉にはそれぞれ左は『明晰ルー夢』、右は『外』と書かれている

 

信「何となくわかるだろうけど、左は向こうの空間にいく扉、右は外の世界に出る扉だ。共と魔鬼は実態がなくて出れないから気を付けろよ」

共鬼「「分かった」」

信「これで全部だ。それじゃ、朝が来るまでみんなの部屋の模様替えといこうか」

 

 

 

Let's before after

 

 

 

フェ「終わっっったああ!!」

共「たまにはこういうのも悪くないな」

ディ「ええ。新鮮で楽しかったです」

信「お、タイミングよく朝が来たな」

 

全員の要望に答えながら部屋の模様替えを行い、全員が終わったところで丁度朝になった

といっても午前4時の外はまだ暗い

 

信「そろそろ起きるな。また何かあったら言ってくれ」

「ああ」「おう!」「うん!」「スヤァ」「ええ」「うむ」

 

 

 

挨拶を済ませて目を覚ます

ジリッ…と目覚ましがなると同時に停止させて体を起こした

 

信「………ちゃんと治ってるな」

 

からだの感触を確かめながら傷が完治したことを確認する。やはり寝る前までの違和感が完璧になくなっている。

 

コ「ふわぁ…。おはようございます主。相変わらず早…起き……で…す……ね」

信「ああ、おはようk「今度はいったい何をしでかしたのですかっ!!」」

 

信の挨拶を遮りながらコトは驚愕する。何に驚いているのか信には分かっていないため驚きを返している

 

信「しでかしたってなにもやってないよ」

コ「嘘ですっ!また主の力が変になってます!なんですかその妖怪のような力はっ!?」

信「よ、妖怪?」

 

妖力の流れを感じてみると確かに自分のなかに流れている

 

信「一体どうなってんだ?」

ディ『あの~…信殿?その事についてなんですが……』

信『ディーネ?なにか知ってるのか?』

ディ『その…ですね……私達四大精霊が貴方の体にいる状態で傷を急速に治したため、……傷を治す際に私達や魔鬼殿の妖力が吸収されたようで……』

信『ってことはこれは皆の力の借り物でいいのか?』

ディ『それが……信殿の体が妖力が流れ込んだのに反応してそれを生成する器官を作ってしまったようです』

信『……つまり?』

ディ『それは正真正銘、貴方の力になります』

信「……マジかよ」

 

妖力が生成する力が手に入り、驚きながらあることを思った

 

 

 

 

 

 

 

共『ようこそ。人外のせかいへ。』

信「『やめろおおおおっ!!』」

 

一歩、人間の道から外れた。と

 

思わずあげた叫び声は、まだ暗い明渡家に大きく響き渡った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ちなみに妖力も霊力や魔力と同等の量になっています。

人外人外♪


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~~~キャラ紹介その2~~~

色々考えた結果、フェリーチェのsizが結構変わりました





ケン(現在) (12) O型 身長145cm 誕生日10/10 少し長い

空手を習っている

 

趣味:家事全般

好きな物:里の人

嫌いな物:ぐじぐじねちっこいこと

得意教科:歴史

苦手教科:特になし

 

幻想郷での第1村人。

真面目で素直な性格。ただたまに自分だけで何とかしようとしてしまう。

体がメッチャ柔らかい。ちなみに両親はそうでもない。

切り替えが結構早い。自分を食べようとしてた妖怪ともすぐ仲良くなった。

 

 

 

 

 

サヤ (約3ヶ月) (産まれたとき)3200g

ケンの妹

まだ首が座っていない。

夜泣きをあまりせず、手の掛からない子と両親は少し残念がっている。

名前を呼ぶとすでに反応を示す。今後の成長に期待

 

 

 

 

 

ギン 身長404cm

能力『馬鹿力な程度の能力』

種族:牛鬼

 

趣味:肉弾戦

好きな物:人間 子分

嫌いな物:弾幕ごっこ(苦手)

 

ある時1人の虚しさを感じ、自分の本能を抑えて今の状態になった。ギンと本能の位置付けはピッコロ大魔王と神様みたいな感じ。

本能を抑えた後に仲良くなった人間に名前をつけてもらった。

馬鹿力。とんでもないほど馬鹿力。半径2m位の木を片手で軽く引っこ抜ける。

 

 

 

ジン 身長177cm

空手を習っている

 

趣味:釣り

好きな物:ギン

嫌いな物:暴走ギン(怖い) 中途半端

 

ケンに止めを刺そうとし、本能異変で信に頼み込んだ妖怪。

最初にギンに保護された。だからか準ボスみたいになっている。

人間は食べるけどそんなに好きじゃない。ケンを襲ってたときノリノリだったのはそっちの方が喰われる人間のためでもあると思ったから。

人里の人間を襲ったのはケンが初めて。(他のギンの子分も含む。)

ギン程ではないが妖力が結構ある

 

 

 

 

ギンの子分達

全員ギンに保護された妖怪。長い間一緒にいるため連携が凄い。

人間を食べる妖怪もいるが、ギンに止められて食べていなかった。

しかしあまりにも食糧難が続いたため人間を襲うことにした。

現在はゲンやギンを中心に大分でかい畑を作っったり、人里で働いたり等で生活している

信に武術を習ってはいる。何だかんだ真面目に取り組んでいるため上達が早い

 

 

 

 

エマ (15) B型 身長159cm 誕生日8/10 セミロング Cカップ

金髪碧眼のフランス人。

 

趣味:犬と触れ合うこと

好きな物:和食 犬

嫌いな物:変態

得意教科:理科 数学

苦手教科:国語(日本語)

 

幼少の頃から美しい容貌が評判で、拉致されそうになったことがある。

性格は活発でフレンドリー。だが日本語は話せない。

実はアリサと親戚の為、ロシア語も話せる。

モコやコトが狼だったのは初めて見たときから分かっていた。

日本の四字熟語が好きで、よく会話に用いている

常につけているイヤリングは先祖代々受け継がれてたもの。

気が強い

 

 

 

 

アリサ (15) B型 身長168cm 誕生日7/10 ロング Gカップ(日本基準)

銀髪のロシア人。

 

趣味:動物と触れ合うこと

好きな物:動物 

嫌いな物:虫 受け手な人(苦手)

得意教科:国語(特に古文)

苦手教科:英語

 

落ち着いた雰囲気を感じるが実際はそんなに落ち着いていない。

気が弱いが、自分の意思はしっかりもつタイプで周りに流されることは少ない

動物はなんでも好き。トモやモモになかなかなつかれず、逃げられる度に(´・ω・)ショボンとしている

実はエマと親戚。その為フランス語も話せる

常につけている指輪は、先祖代々受け継がれてきたもの

 

 

 

 

 

フェリーチェ 132cm 碧がかった金色で肩より少し長い Dカップ

能力『風を司る程度の能力』

種族:シルフ

 

趣味:悪戯 遊ぶ事

好きな物:パフェ

嫌いな物:コーヒー 

 

実は結構前からネックレスから出ることはできたが、自由にゆらゆらと旅を(漂流)するのが結構気に入っていたためそのままでいた。日本に流れ着いた頃に眠ってしまい知らないうちに幻想入りしていた。

イタズラ好き。性格は愛に似ている。

ロリ巨乳だぞ。喜べよ

 

 

 

 

ノーム 156cm 暗い金髪

能力『大地を司る程度の能力』

種族:ノーム

 

趣味:睡眠

好きな物:睡眠

嫌いな物:起床(苦手)

 

世界のために修行した結果、力をつけすぎたため旦那とディーネと協力して打った刀に自らを封印していた

のんびりした性格で寝ることが好き(本来は必要ない)

鍛冶を得意としていて彼が打った刀等は非常に良い出来になる。ただ、やる気が起きることが少ないのでノームの武器はあまり出回っていない。

ショタフェイス

 

 

 

 

旦那 191cm 暗めの赤

能力『炎を司る程度の能力』

種族:サラマンダー

 

趣味:人間の勉強

好きな物:鍛錬 精霊(特にディーネ) 人間

嫌いな物:怠け

 

 

世界のために修行した結果、力をつけすぎたためノームとディーネと協力して作った指輪に自らを封印していた

本当は刀の方が良かったのだが、ノームとのじゃんけんに負けて指輪に入ることになった

四大精霊の大黒柱。生真面目な性格で自分に厳しい

でもまあ優しいので他の精霊からも慕われていた

見た目はSAOのユージーン将軍と白猫プロジェクトのゲオルグを足して2で割ったイメージ

ディーネと一緒にいると完全に夫婦。それを指摘すると(にやけるのを我慢するため)しばらく喋らなくなる

 

 

 

 

 

ディーネ 167cm 明るい水色のロングヘアー Dカップ

能力『水を司る程度の能力』

種族:ウンディーネ

 

趣味:料理 

好きな物:世界 精霊(特に旦那)

嫌いな物:別れ 孤独

 

世界のために修行した結果、力をつけすぎたため旦那とノームと協力して作ったイヤリングにに自らを封印していた

四大精霊の包容力担当。でも怒ると恐い

料理は興味があったが、やる機会も道具もなかったのでやったことはない。

自分のやること大体に善意を持っているため、悪い結果が起きたとき周りがそれを伝えにくい

旦那と一緒にいると完全に夫婦。それを指摘すると普通に照れる。可愛い

美人











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第49話【既に】

「忙しいな」

 

信は今博霊神社の台所で色々作っている。どうしてそんなことをしているかと言うと……

 

「しーんっ!まだ飯が足りないのぜっ!」

「おうっ!もうちょっと待ってろっ!」

「やっぱり宴会には信の料理が必須なんだぜ」

 

そう、宴会だ。最初で最後の花見から3日おきに人や妖怪がドンチャン騒ぎしているのだ。妖怪の方が圧倒的に多いが…

ほぼ毎日幻想郷に通っている信は、必然的にその準備を手伝うことになっている

 

「しっかしこう頻繁に宴会が開いて誰もなにも言わないなんて……。さすが幻想郷ってところだな」

「信、もうできた?」

「アリスか。丁度今色々仕上げたところだから持ってくの手伝ってくれ」

「ええ。……大変じゃない?やっぱり私も手伝った方が……」

「いんや。これも修行の1つみたいに思ってるんだ。出来れば任せてほしい」

「そう。ならまだまだ作ってもらわないとね。皆あなたの料理を取り合うくらい楽しみにしてるんだから」

「そいつは嬉しい限りだ」

 

アリスと協力して料理を運びながら嬉しい情報を聞いた。料理を作る者として、美味いと言われて悪い気のする者はいないだろう

 

「おまたせー」

「持ってきたぞ。今度は魚系にしてみた。酒にも合うぞ」

「おっ!美味そうなんだぜ」

 

魔理沙は言うまでもなく、持ってきたとたんに皆がその料理に集まる

 

「美味いっ!」「たまんねえ!」「太っちゃう!」

「どうひてこんなに美味しいんれふか?」

「妖夢……またそんなに酔っ払って……」

「酔ってまへん!それよりどうひて……やはり斬らなければ!」

「通り魔じゃねえか!……あんまり飲みすぎるなよ?」

 

ここ数日で妖夢ともある程度打ち解けてきた。まあ、酔っぱらっているときに限るのだが…

そんなことを思いながらまた台所に戻る

 

「それにしてもよくこんな同時に作れるわね」

「どうした咲夜?もう料理無くなったのか?」

「いえ、1人であの量を作るなんて何か仕掛けがあるんじゃないかと思ってね」

「残念ながらそんなものは無いな」

「それにそんなに作り続けて疲れない?料理って結構体力いるでしょ?」

「こっちは育ち盛りの弟妹10人以上を毎日相手にしてるんだ。これくらいできなきゃ困る。それに毎日鍛えてるしな」

「そう…。もう少し見てていい?」

「もちろん」

 

流れるような作業で次々と料理を仕上げていく。その姿に思わず咲夜は見とれてしまう

 

「うし。これで全部完成っと。咲夜、運ぶの手伝ってくれるか?」

「え?あ、ええ。もちろんよ」

「それじゃあ頼む」

 

再び運んだ料理もすぐに箸がのばされる。こんなにすぐに無くなると逆に面白くなってくる

 

「霊夢?」

 

だがその料理を食べながらも霊夢は難しそうな顔をしている

 

「口に合わなかったか?」

「美味しいわよ。……ねえ、信は何か感じない?」

「……この妖霧のことか?」

「ええ。害はあんまり無いみたいだけど……。それに3日おきに宴会なんて流石に異常だし」

「これも異変か?」

「多分ね」

「検討はついてるのか?」

「全然よ。だから明日から本格的に調べるつもりよ。次の宴会まで3日しかないし……」

「そんな霊夢のために酒にぴったりのおつまみを作ってきました!」

「気が利くじゃない。ありがとう」

「どういたしまして。頑張れよ」

 

霊夢につまみを渡して料理をつくりにいく

 

 

 

 

「よう。楽しんでるか?」

 

しばらく料理を作り続け一段落したところで信はある人物に話しかけた。その人物も信の料理を美味そうに頬張りながら酒を楽しんでいる

 

「おうよっ!ごくっごくっ……ぷはーっ!!信の料理は本当に酒に合うねぇ~」

「それは良かった。……で」

 

今更だが描写しよう。信が話しかけた人物は、見た目は幼く、頭部の両サイドから特徴的な角を生やしている。両手には鎖がつけられていて、その先には鉄球がつけられている

さて、勘のいい人ならもうお分かりだろう。

 

「いつまで宴会をさせ続けるつもりだ?萃香」

「そいつを聞くのは野暮じゃないかい?」

 

名を伊吹 萃香。今回の異変の首謀者である

 

「ん~~~誰かが止めに来たらね。ま、止めれたらの話だけど」

「俺が止めようか?」

「遠慮してほしいね。にしてもよく一瞬で気づいたね?他はまだ何にもわかってないって言うのに」

「妖霧が出て、誰も出してるように思えなかったから妖霧その物が本体なのかと思ったら当たってただけさ。萃香の姿は何となく見えてはいたし」

「紫以外にも私を見ることができるやついたのか」

「ここにいたな。ま、明日以降いろんなやつが異変解決を目指してくるぞ。退治されないように気を付けろよ」

「私は鬼だよ?簡単に負けないさ」

「俺には負けたじゃないか」

「言わないでよ。」

「悪い悪い。でも気を付けろよ。解決者達は強いぞ」

「グビッグビッぷはーっ!!そうかい。誰が最初に来るか楽しみだねぇ」

 

 

 





次回からは戦闘パートが多くなります。いろんな人とやりますよ


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第50話【黙秘権を行使する!】

今回から戦闘が多くなるといったな。あれは嘘だ

という訳でついに50話です。ここまで来れたのも皆様おかげです。
まだまだ長くなるとは思いますが、これからも東方家族録をよろしくお願いしたします


「真、愛、悪いんだけど3日向こうに泊まり込むことになった」

「本当に急だね」

「もしかしてまた異変?」

「異変っちゃあ異変なんだが、今回は皆の動きを見てみたいと思ってな」

「そうなんだ。こっちのことは任せてよ」

「いってらっしゃ~い」

「いってきます」

 

座標と空間を霊夢と共有して博霊神社に瞬間移動する。聞き込みや調査をするためと霊夢に留守を頼まれたのだ

 

「霊夢、来たぞ」

「ナイスタイミングね。それじゃあ早速お願い」

「おう」

 

返事をすると霊夢はすぐに出発した

 

「んぐっ、ぷはー。やっぱし私に気づかないか~」

 

異変の元凶に背を向けて

 

「気づけるもんなのか?」

「信は気付けたじゃないか」

「そうそう。他の皆は見えてすらいないっていうのにねぇ」

「ゆかりん来たのか。とりあえずなかに入ろう」

 

外で立ち話を続けるのもなんだか変なので2人と一緒に博霊神社になかに入っていった

 

「ほい、お茶。熱いから気をつけろよ」

「ありがとう」

「信~。おつまみ作って~」

「昼飯まで我慢しろ。ってかそんなに酒ばっかり飲んでたら体に悪いぞ」

「鬼の酒好きを舐めないでおくれよ~。んぐっんぐっぷはーっ!!」

「そういえばどんだけ入ってるんだよその瓢箪。補充してるとこ見たことないぞ」

「そういう道具なのよ。無限にお酒が出るらしいわ」

「なにそれ便利」

「でも鬼用のお酒だから相当きついわよ」

「飲んでみたい……」

「別にいいぞ~」

「嬉しいけど遠慮するよ。なにか無い限りあと2年は飲まないって決めてるんだ」

「ここは幻想郷なのだからそんなこと気にしなくてもいいのに」

「なにせ俺は『幻想郷の住民じゃない』からな~」

「ぐふっ!」

「わっ!どうした紫!?」

「信……今更それを出さなくてもいいじゃない……」

「いやー。言われたときは寂しかったな~」

「ひぐっ!」

『もうやめてっ!紫のライフはもうゼロよっ!』

「こんなに狼狽える紫は初めてだな」

「おーい霊夢いるかーっ?」

 

紫を弄りながら話していると威勢の良い声が聞こえる

 

「なんだ魔理沙か。霊夢ならもう出掛けたぞ」

「なんだとはなんだぜ。信は今回の異変は手を出さないのか?」

「ああ。今回はみんなに任せるよ」

「そうか……。この妖気について何か知らないのか?」

「知ってるよ」

「そうか。やっぱり知ってるのか…………ん?」

 

魔理沙は信と自分の言葉に違和感を感じ一度思考を整理する

 

「……知ってるのぜ?」

「ああ、知ってるよ」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「じゃあ教えるんだぜっ!!」

「嫌だよ。面白くないじゃん」

「……どこまで知ってるんだぜ?」

「異変を起こした犯人はもう知ってる」

「それも教えてくれないのか?」

「もちろん」

「そうか……なら、」

 

魔理沙は帽子を脱ぎそのなかに入っていたミニ八卦炉を信に向けた!

 

「なら、力ずくで聞き出してやるんだぜっ!!」

「やれるもんならやってみろ!全力で黙秘してやるっ!」

 

こうして奇怪な異変の第1戦の火蓋が切って落とされた

 

 

 

 

 




記念すべき第1戦はVS魔理沙です
勝負の結果は次回のお楽しみです


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第51話【新たな力で】

さあ、魔理沙と信の弾幕ごっこです
短いですが、ゆっくりどうぞ。


「『運任』〈ドキドキわくわく抽選会〉!」

「やっぱりそれなのか!」

「もちろんこれだ!今回はこれだな……」

「油断大敵なんだぜっ!『魔符』〈スターダストレヴァリエ〉」

 

信が強化されたカードを手にとった瞬間、魔理沙が先制といわんばかりにスペカを唱えた

 

「なんの!『花符』〈千本桜〉!」

 

一瞬にして生えた桜の木がその身を散らし、花びらへと変えていく。その美しい弾幕によって魔理沙の攻撃は完璧に相殺された

 

「ったく。何度見ても綺麗な弾幕なんだぜ!!」

「お褒めに預かり光栄ですっ!」

 

言い合いながら弾幕を飛ばす。もちろん魔理沙も打ち返してきているのでぶつかり、相殺され、避けられる。そう簡単にはいかない

 

「ならこいつはどうだ?『迷走』〈亡霊達の歩〉!」

「はっ!残念だがそのスペカの弱点はもう割れてるんだぜっ!『恋符』〈ノンディレクショナルレーザー〉!」

「やっぱり知ってたか。だが……」

 

密度が低く、その一つ一つが脆いためレーザー系の弾幕を弱点としている『亡霊達の歩』だが。今回は違った

 

「毎回おんなじ性能とは限んないぞっ!」

「なっ!」

 

レーザーは多くの弾幕をとらえようとしていたが、それぞれ最初にぶつかったところで相殺してしまう

 

「今回の強化カードはこれなんだよ!因みに暗黒盆踊りが今回の除外カードだ」

「ぐっ!そんなことバラしちまっていいのかっっって本っ当に避けにくいんだぜ!」

「続けていくぞっ!『迷惑』〈刃の舞〉」

 

大量の手裏剣が放たれ、『亡霊達の歩』にぶつかり、増殖する。限りなく回避不可能な状況になってしまった

 

「『恋符』〈マスタースパーク〉!!」

 

その状況を打開するために魔理沙は大技を放つ。だが、それは信にとって格好の餌食だ

 

「また俺の勝ちだな」

 

一瞬にして距離を積めた信は、勝利を確信しながら1発の霊力弾を魔理沙に直接撃ち込んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かかったな♪」

「なっ!」

 

撃ち込めなかった!!

 

「『天儀』〈オーレリーズサン〉!」

「ヤバイっ!」

 

咄嗟に距離を取った信だが流石に近すぎた。魔理沙の回りを周回する球体から放たれる弾幕に加えて魔理沙は大量の魔力弾を放っている。避けきるのはあまりに非現実的だ

 

「『武刃』〈秋水〉!」

 

慌ててジャパニーズライトセイバーを召喚してその猛攻に対処した。だが、魔理沙は既に次の攻撃を準備している

八卦炉を構え、信に向ける

 

「『魔砲』〈ファイナルスパーク〉ッ!!!!!!!」

「まずっ!」

 

放たれた渾身の一撃は自らが放った弾幕もろとも信を呑み込んだ

 

「………」

 

 

 

直撃を確信した魔理沙は両の拳を思いきり握り、天に向けて突き上げた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝っt「油断大敵。『怪符』〈破壊光線〉」」

 

背後から声が聞こえたときにはもう遅かった

強い衝撃が背中を襲い、それが勝敗を決める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何でなんだぜ……確実に捉えたはず…」

「俺が妖力を使えるようになったことを忘れちゃいけないぞ~」

「あっ!!」

「まだまだ詰めが甘いな。」

「ぐぅううっ!!悔しいんだぜっ!!絶対勝ったと思ったのに!!!」

「はっはっは!また俺の勝ちだ」

「ぬぅううっ!!!」

「はっはっはっは!」

 

地面に倒れ込みながら悔しがる魔理沙を見て、信は高らかに笑った

こうしてこの異変の最初の弾幕ごっこは明渡信の勝利で幕を閉じた

 

 

 

 

 



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第52話【あの時の】

「ぬぅうう」

 

敗けが決まった魔理沙は悔しそうにしながら服についた汚れを払っている

 

「ま、異変の元凶は自分で見つけるんだな」

(すぐそこにいるけど……)

 

「へっぶしっ!!」

「汚なっ!」

 

「ちょっとだけヒントをやると、元凶はずっと宴会に参加してたぞ」

「本当か?」

「ああ。隠れもせずに堂々とな」

「そういわれると余計わかんなくなってきたんだぜ!……元凶を突き止めてるんならどうしてぶっ飛ばさないんだぜ?」

「本人に悪意がないからな。それに宴会で俺の料理の食ってもらえるし」

「そんなことでかっ!?」

「俺にとっては大事なことなんだぞ。それに今回の異変は害が無いじゃないか。魔理沙こそどうしてそんなに解決したがるんだ?」

「……どうして…か。………決まってるぜ」

 

 

 

 

 

「それが『異変』だからだぜ。悪意がなくても、害がなくても、それは本来起こっちゃいけないことだ。だから私は解決するんだぜ。たとえ誰が立ち塞がろうともな」

 

聞き返された魔理沙は力強く、信をまっすぐ見ながら答えた

 

「そうか。それがお前の覚悟なんだな」

「おう!だから信、今回の異変を解決したらまた弾幕ごっこをやるんだぜ!今度こそ勝ってやる」

「ああ。いつでも相手になるぞ」

「それじゃあ私はまた聞き込みに行っtぐぅうううううううう」

「そういえばそろそろ昼飯だな。食っていくか?」

「悪い、頼むんだぜ」

 

魔理沙の腹の虫も聞こえたので皆でご飯にすることにした

 

「あら、終わったの?」

「げっ!」

「げっ!って何よ、失礼ね」

「これからも飯作るけどゆかりんも食うか?」

「遠慮しようかしら。藍が待ってるだろうし」

「もう準備できてるのか?」

「………いえ、これかららしいわ」

「なら藍も呼んで一緒に食べないか?皆で食った方が美味いし」

「ならお願いしようかしら」

「信~早く作ってくれよ~。お腹へった~」

「よっしゃ。じゃあこっちでは珍しいのを作ろうかな。期待して待っててくれ」

 

 

 

「ふんふんふん♪」

「随分機嫌がいいのだな」

「どうした?もしかして待ちきれないのか藍」

「いや、『信が珍しいものを作る』と紫様が仰っていたので作り方を見ておこうと思ってな。紫様が気に入るかもしれないからな」

「そういうことか。ならゆっくり見ててくれ」

 

 

cooking now

 

 

「信」

「ん?どした?」

「その調味料はなんだ?あまり見かけないものだが……」

「さっき向こうから持ってきたんだよ。ナンp「たのもおおおっ!!!」っていうんだ」

「すまない。もう一度言ってくれないか?」

「これはn「たのもおおおおおっ!!!」ーっていうんだ」

「………」

「藍。悪いけどご飯の様子を見ててくれないか?」

「あ、ああ。承知した」

 

2度も言葉を遮った人物に『ちょっと空気読めよ』と思いながら信は台所を藍に任せて後にした

 

「何か用か?」

「なっ!明渡信っ!」

「なんだその猫が逆立ちしたのを見たような顔は」

「そんな顔してませんっ!」

「それで?何か用があるんじゃないか?妖夢」

「そうでした。霊夢はいませんか?この妖気について色々聞きたいのですが……」

「今調査に出払ってるぞ。いつ帰ってくるかはわからないなぁ」

「そうですか。……あなたは何か知らないのですか?」

「元凶は知ってるぞ」

「やはり知りませんか………………えっ!?知ってるんですか!?」

「おう」

「なら教えてください」

「自分で見つけなさい。俺は今皆の料理作んのに忙しいんだ」

「そんなものは言い訳になりません!!」

「はぁ。どうしてもって言うならかかってこい。真実は斬って確かめるんだろ?」

「ええ、参りましょう。あのときの決着もいい加減つけたいと思っていたところですしね」

「偶然だな。俺もだよ。『武刃』〈秋水〉」

 

信は秋水を召喚し、それと同時に妖夢が楼観剣を鞘から抜いた

 

「早く戻らないといけないんだ。すぐに終わらせてやる」

「ええ。あなたの敗北で簡単に終わるでしょうね」

 

両者が己の剣を構え、1度は妨害された2人の剣士の勝負の火蓋がきって落とされた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






記念すべき第2戦目は妖夢となりました



ネタバレ:刀を使う方が勝つ。

次回もゆっくりお願いします


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第53話【本気は出さなきゃ損をする】

今回仕掛けたのは珍しいことに信であった。美鈴の時のように長い時間相手の出方を伺っていては、米が炊けるのに間に合わないと判断したためであった

これに対して妖夢。その場で受けようとするのではなく、遅れたものの自らも攻めにいく。相手のペースにするのは出来るだけ避けたく、少々無理矢理にでも攻めるべきと判断したためだ。

両者が高速で間を詰め、妖夢は上段に、信は下段に構えた自分の剣を完璧なタイミングで相手にむけて振り切った

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~。腹へったんだぜ…」

「まったく妖夢にも困ったものね。それに何か無理しているようにも見えるし」

「無理?何か悩んでるようには見えなかったけどなぁ」

「精神的にじゃなくて肉体的によ」

「そういうことか。…おっ!信と妖夢がやるみたいだぜ。紫はどっちが勝つと思うんだぜ?」

「どちらが勝つか……ね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガキンッ!!という金属音を響かせながら両者の剣は交わった

 

「ぐっ……やりますね…。これでも力には自信があったんですが」

「そのなりでこんだけ出来るなら十分だろ。こっちは吹っ飛ばすつもりでやったっていうのに」

「普通の人間はこれで今ので吹っ飛ばせますよ」

「俺が普通じゃないみたいなこと言うなよ」

「普通じゃないですっ!!」

 

鍔迫り合いをの最中言葉を交わすと、妖夢は腕を突きだして信を吹き飛ばした。

 

「はぁあああっ!!!」

 

勢いのある掛け声と共にすぐさま追撃に向かう。

まずは最短で突きを放った。が、信はこれをサイドステップで軽くかわす。かわされた瞬間そのまま横に振り払いうが、今度はバックステップで避けられてしまった。

だが、妖夢はこれを予測していたらしく、振り払うと同時に地面を蹴り、そのまま弧を描くようにしながら楼観剣を振り上げた

 

ガキンッ!!という音が再び響き、両者は力を込めながら相手の出方を伺いあう

 

「……今ので仕留めるつもりだったんですが」

「そんな簡単にいったら長男なんて務まんねえよ」

 

そしてまた妖夢が仕掛ける。振り払い、返し、突き、切り上げ、降り下ろす。息のつく暇もないほどの速さで攻めるが当たらない。先ほどは剣を使っていたのに現在はそれすらもやっていない

 

「なんなら2本目も使ったらどうだ?全力が出せないうちに負けるなんて嫌だろ?」

「随分余裕ですねっ!!」

 

楼観剣を右手のみで降りきりながら左手で白楼剣を抜き、抜き様に信に斬りかかった

 

「ふっ!」

「おっと」

 

それを軽々かわした信はバックステップで距離をとる。だが妖夢はこれを許さない。前の勢いを利用してそのままラッシュを仕掛けた

2本の剣を使う妖夢にたいしてさすがの信も秋水を用いながらの対応となった

切り上げ、払い、返し、突く。2つの剣の流れるような動作に対応が徐々に遅れていく

 

「あなたも2本目を使ったらどうですかっ!」

「そんじゃあ使わせてもらうか。『一刀』〈陰鉄〉」

(ここだっ!)

「はあっ!!」

 

信が陰鉄を手に取った瞬間を狙って妖夢は仕掛けた。完璧な踏み込み。完璧な軌道。完璧なタイミング。どう足掻いても逃げようがない完璧は2太刀は信の首にまっすぐ向かっていった

 

(とったっ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「十中八九 信でしょうね。弾幕ごっこでも、剣術でも」

「剣でもか?妖夢は剣術なら相当やるって聞いたぞ」

「それはそうなんだけどね…。昔から妖夢の稽古を見てるけど……」

「あっ(察し)」

「それに信やったとき彼の剣捌きをみたのだけどね。……恐らく妖夢は手も足も出ないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガカキンッ!!!という連なった金属音と共に妖夢の2太刀は防がれた。しかもただ防がれただけではなく楼観剣も白楼剣も手から弾き飛ばされてしまった

 

「なっ!(誘い込まれたっ!!)」

「逃がさん」

 

妖夢はすぐさま距離をとろうとするが、信は陰鉄を消滅させるとその距離を一気に詰めた

 

「ていっ!」

 

妖夢は牽制のつもりで軽いジャブを信の顔面めがけて放った。体重も乗っていないほとんど威力の無い突きを

信はそれを軽くかわしながら腕を横からつかんで自分の方向に思いきり引っ張った

それに気づいた妖夢はすぐさま後ろに体重をのせて掴んでいる腕から逃れようとする。しかし、ここで信は手をパッと離した

 

「なっ!」

 

倒れそうになった妖夢は足を引いて体制を戻そうとするが、信がその足を自分の足に引っ掛けてそれを阻止する

そのまま倒れていく妖夢の体を信は片手で支え、秋水を妖夢の喉元に突きつけ、お約束の言葉も妖夢に言い放った

 

「俺の勝ちだな」

「………」

 

いたずらな笑みを浮かべた信を見て、妖夢は不思議と悔しさも怒りも沸いてこなかった

 

 




完全にSAOのあのシーンですねw


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第54話【マナーを守って楽しくご飯】

「じゃあ俺は戻るからな。おーいっ!ご飯はどんな感じだ?」

「もう炊き上がってる。仕方ないから勝手にほぐしておいたぞ」

「ああ、悪いな」

「あのっ!」

「ん?」

「あの……その……なんですか……」

「聞かれても困るんだが」

「そ、そうですよね」

(どうして…。聞きたいことがたくさんあるのに言葉が出ない……)

 

ぐぅううっ

 

「っ////!!」

「なんだ。腹減ってたのか」

「いやっえっと……これは……」

「昼飯まだなのか?」

「幽々子様のお昼ご飯を作っていたら材料が無くなってしまって……私はまだ……」

「じゃあ一緒に食べようぜ。丁度多目に作っておいたし」

「わ、悪いですよ。私は昼食の準備を邪魔したんですし……」

「それくらい家じゃあ日常茶飯事だったさ。遠慮しないで食ってけ」

「で、ですが……」

 

ぐぅううっ

 

失礼を働いてしまった為遠慮しようとした妖夢だったが、彼女の体はゴーサインを遠慮なく出し続ける

 

「お、お願いします////」

「おう。準備は結構すぐさま終わると思うから皆と待っててくれ」

「皆?」

「おーい、しーん。早くしてほしいんだぜ」

「あ……」

「わかったわかった」

 

「ゆっ、紫様っ!!」

 

妖夢をつれて神社のなかにはいると紫達の存在に気づいていなかったのか驚いた表情を見せた

 

「あら、ずっと気付かなかったの?それに随分無理なしてたようね」

「むりなんかしてまsぐぅううっ////」

「何かを成し遂げるために体調を万全にしておくのも大切なことよ。そんな状態で力がでるわけ無いじゃない」

「……みょん」

「でも腹減っててあんなに出来るなんて思わなかったよ。しかも女の子なのに」

「みょんっ!?」

「し、信。早く頼むんだぜ……。お腹と背中がくっつきそうなんだぜ」

「悪い悪い」

 

 

 

「戻ってきたか」

「結構遅くなっちまったな。悪いけど手伝い頼めるか?」

「何をすればいいい?」

「卵を人数分+3個揚げ焼きにしといてくれ」

「?了解した」

 

 

cooking now

 

 

「信、出来たぞ」

「じゃあ皿に移しておいてくれ。ついでにご飯もよそっておいてくれないか?」

「わかった。……そういえば結局それはなんなんだ?」

「ナンプラーっていうんだ。日本の調味料じゃないから知らなくても無理ないな」

「というこはいま作ってるのも……」

「ご名答。よし、出来た」

 

出来た品を盛り付けて皆のところへ持っていった

 

「おまたせ」

「や、やっと食えるんだぜ」

「始めて見る料理です。これは外界の?」

「私も始めてみるわね。『外国』の料理かしら」

「ああ。外界のタイっていう国の料理。『ガパオライス』だ。召し上がれ」

 

みな初めての料理に少し困惑するが、彩り鮮やかなその見た目と空腹に直接作用してくるその堪らない匂いによってそれを口に運んだ

 

「うっ」

「どうだ?」

「うまーーーいっ!!!」

「美味しいです。初めて食べる味なのに全然抵抗がありません」

「本当に美味しいわね。藍、家でもこれたまに作ってちょうだい」

「おっしゃると思いましたよ」

「うみゃー!」

「信っ!おかわりっ!!」

「はえーな。もっと落ち着いて食え」

「あんだけ腹が減ってた上にこんな旨いもんをを出されたら掻き込まずにはいられないんだぜ!!」

「そっかそっか。そいつはよかった。じゃあちょっと待ってろ」

「あ、あの……」

「ん?…ってお前もか」

 

弱々しく信に声をかけた妖夢の器を見ると綺麗に完食されている

 

「すみません」

「はっはっは。2人ともいまと同じくらいでいいか?」

「おうっ!」「ええ」

 

2人の分と一緒に、ちゃっかり完食していた自分の分を盛り付ける。藍に目玉焼きの予備を作ってもらっておいたのはこれを読んでいたためだ

 

「もってきたぞ」

「ありがとうございます」

「サンキューなんだぜ……ってお前ももう食べ終わってるじゃないか!」

「まあ、俺はもう2人も相手にしたわけだからな。これくらい良いだろ」

「答えになってないんだぜ!」

「食わないのか?」

「食うぜ!」

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「ご馳走さまでした」」」」」」」

 

「ありがとう信。楽しませてもらったわ」

「今度他の料理を教えてくれないか?外界の料理になんだが興味が湧いてきた」

「ああ。都合はついたら連絡するよ」

「腹もふくれたし私はまた調査にいくんだぜ。美味かったぜ、信」

「わ、私も調理の邪魔をしたのにご一緒させてもらって……」

「気にすんな気にすんな。こっちは好きでやったんだからな。それにあの食べっぷりみてると嬉しくもなるさ」

「あっ、ありがとうございましたっ!」

「私たちは家に戻るわね」

「失礼する」

「おう。明後日の宴会には来いよ」

 

紫と藍はスキマの中へと入っていった

 

「私も行くんだぜ。またな、信」

「ああ。食いたくなったら何時でも来い」

 

体を軽く伸ばしながら魔理沙は箒に乗ってそのまま行ってしまった

 

「………………」

「妖夢は行かないのか?」

「いえっ、あっはい!」

「どっちだよ。何か言いたいことでもあるのか?」

「その……ですね」

 

何かを伝えたがっているようだが、分かりやすくもじもじして妖夢は中々話そうとしない

正確に言うと話せないのだが……

 

(何か言わなきゃ何か言わなきゃ何か言わなきゃ何か言わなきゃ何か言わなきゃ何か言わなきゃ何か言わなきゃ何か言わなきゃ何か言わなきゃ何か言わなきゃ何か言わなきゃ何か言わなきゃ!!)

 

内心こんなことになっていた

 

(でも何を言えばいいんですか藍の様に料理についてでも今までの諸行でいきなりそんなことを聞くなんて失礼でしかありませんし……助けてください幽々子様あっ!)

「妖夢」

「はっはいっ!!」

「今度また手合わせしてくれるか?」

 

そう言われたとき、妖夢は自分の中の何かが崩れ去るような音がした

 

(そっか。この人は……)

「はいっ!!是非お願いします!!!」

「そのうちそっちに行くからな」

「はい、それでは私はこれで……」

 

信に深く礼をして妖夢は飛んでいった

 

(あの人は本当にいい人なんだ)

 

鼓動を大きくさせ、信に対するイメージを180°回転させながら妖夢は次の容疑者の元へと飛んでいった

 

「さて、片付けるか」

「信~。おつまみ~」

「あ、すまん忘れてた」

「ひどいっ!」

「嘘だよ。ほい、さっきので使わなかった鶏皮の焼鳥だ。半分は油で揚げてカリカリにしてある」

「やっほーい!!ハグッ。ンッンップハー!!堪らないねー」

「口に合うようでよかったよ。俺は奥で片付けしてるから誰か来たら知らせてくれ」

「ふぁ~い」

 

やはりご飯は皆で食べるに限ると思いながら萃香に神社番を任せて食器を洗い始めた

 



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第55話【1日目の終わり】

「ただいま~」

 

太陽が完全に沈み、薄気味悪い薄暗さが感じられる頃に霊夢は帰ってきた。その表情と姿勢からは疲れと今日の成果がなんとなく読み取れる

 

「おかえり霊夢。ご飯にする?お風呂にする?それとも寝る?」

「ご飯にするわ」

「…おk。じゃあすぐ準備するからちょっと待っててくれ」

 

 

~~~~準備中~~~~

 

 

「「いただきます」」

「なにか収穫あったか?」

「全然よ。手当たり次第に探したけど全部検討外れ」

「ははは…。」

(そりゃあ元凶はここにいるし……)

「ングッングッ、プハー♪」

「そっちはどうだったの?誰か来た?」

「来たぞ。魔理沙と妖夢とゆかりんと藍が。そんで皆で昼飯食った。霊夢は今日、誰の所に行ってたんだ?」

「まずは人里の慧音と妹紅、それとジン達にも聞いたわ。次はアリスのところ。それで最後は冥界よ。誰もなにも知らないなんておかしいと思わない?」

「そういうこともあるさ」

「そういえば来た奴らはなにか情報持ってた?」

「誰も。…いや、ゆかりんは知ってたな」

「紫が?やっぱりあいつが一番怪しいわね。」

「酷い扱いだな。それで?明日はどうするんだ?」

「紅魔館にいこうと思ってるわ。レミリアや咲夜ならなにか知ってるかもしれないし……もしかしたらあいつらの仕業かもしれないし」

「ま、今回俺は何もしないつもりだから頑張ってくれ」

「貴方が協力してくれればもっと楽だろうに」

「はは、みんなにも言われたよ」

 

 

「「ごちそうさまでした」」

 

 

「片付けはしとくから先に風呂入ってこいよ。疲れてるだろ?」

「それじゃあお言葉にあまえて」

 

疲れたようすで霊夢は風呂に向かった。それを見送り信は食器をまとめ、台所へと持っていった

 

「萃香、本当に何で見えないんだ?」

「今の私は境界を操れる紫以外には見えないはずなんだよ」

「成る程な。だから俺にも見えるのか」

「どゆこと?」

「前に俺はゆかりんの能力を使って境界を弄ったことがあるんだよ。多分その影響じゃないか?」

「紫のっ!?」

「そういえば言ってなかったな。俺の能力は『共有する程度の能力』。やろうと思えば鬼にでもなれたりするぞ」

「何だかずるくさい能力だね」

「だな。でも基本的に弾幕ごっことかには使わないからな。もちろん萃香とやったときも使ってないぞ」

「うへー。あれでまだ全力じゃないのか」

「ドヤァッ………誰か来たみたいだな」

 

萃香がキョトンとしているがそれを気にせず信は玄関へと向かった

 

「訪問するならもうちょっと早い方が色々ありがたいんだけどな、レミリア」

 

レミリアはコウモリのような翼をひろげ、夜をやさしく照らす月を背負いながら信に面と向かっていた。月明かりが彼女の銀髪を美しく光らせているのもあり、その姿はまさにカリスマそのものであった

「私たち吸血鬼は太陽が天敵。夜に活動するのが道理じゃないかしら」

「……それもそうだな。それで?レミリアは何しに来たんだ?」

「情報収集よ。今回の異変のね」

「今回はレミリアも異変解決に協力するのか?それまたどうして……」

「今回の異変は気にくわないのよ。夜の王であるこの私が誰かの手の上で踊らされているようでね」

「そうか。悪いけど霊夢は今風呂なんだ。それに疲れてるみたいだしまた今度にしてくれないか?霊夢も明日紅魔館に行くみたいだし」

「あら、私は貴方に用があってきたのだけど」

「俺にか?」

「あの魔理沙が昼間に紅魔館に来て言ってたらしいのよ。あなたが今回の異変の元凶を知っていると」

「うん。知ってるよ」

「教えてくれないかしら?」

「それは無理な話だ。今回俺は傍観者でいるつもりなんだ。異変解決に直接関係することは出来るだけしない」

「そう。……なら仕方ないわね。あなたにはフランの時の恩があるから痛い目に会わせたく無かったのだけど」

「痛い目見るのはそっちかもしれんぞ?」

「私が勝ったら貴方の持ってる情報を貰うわ」

「俺が勝ったら明日のレミリアの夕飯のデザート貰うからな」

「えっ!?そ、それは……」

「なんだ?自信ないのか?」

「そんなこと無いわよっ!でも明日は……。いいわ、絶対に負けないから」

「絶対にデザート貰ってやる」

「あげないわよっ!」

 

夜の王と長髪の武道家。月明かりに照らされた2人のプリンをかけた戦い火蓋が切って落とされた

 

 

 

 

 

 

 

 




第3戦目はレミリアとなりました
一体プリンはどちらの手に!?
プリンの運命や如何に!?


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第56話【手にした者は】

「『運任』〈ドキドキわくわく抽選会〉!」

 

毎度お馴染みのドキドキわくわく抽選会。何枚ものカードが信を中心にして円を描く様にしてならび、そのうち1枚が燃え去り、1枚が赤い光を帯びた

 

「今回はこいつなのか」

「いいカードは引けたかしら?」

「まあな。そっちはいいのか?準備ができるまで待ってくれたみたいだが」

「相手の全力を受け止めるのが王たる者の務め。不意打ちでじゃないと勝てないなんて3流のやることよ」

「そうかい。なら、全力で行かせてもらうぞっ!!お前のデザートは俺のもんだっ!!!」

「貴方の全力を受け止めた上で貴方に勝ってみせるわ。私のプリンは絶対に渡さないっ!!!」

 

 

 

~~~~一方その頃~~~~

 

 

 

 

「はぁ~。生き返るわ。信ったら湯加減完璧じゃない」

 

疲れた体を癒すために湯船に浸かった霊夢はその湯加減の良さに感激していた

 

「それにしても今回の異変は一体なんなのかしら……。起こしたやつの意図も分からなければ何か起きるわけでもない。……何が狙いなの?」

(………ん~やめやめ。今考えたって何もわかりゃしないのに考えるなんて損だわ。今は信が用意してくれたこのお風呂を堪能しなきゃね)

 

ひとつ伸びをして頭の中を空っぽにする。今はこの静かな入浴を楽しむことにした

すると……

 

『ホントにいい女だと思ってな』

『しかも全員可愛いときた』

 

「ッ/////」

 

1年ほど前に信に言われた言葉が脳裏に蘇ってきた。この場には1人だけだというのに、恥ずかしさを隠そうと顔を真っ赤にしながら、バシャンッ という音をたてて霊夢は頭のてっぺんまで湯に浸からせた

 

『なんか夫婦みたいだな。』

 

最後に思い出したのがこの言葉。唯一、霊夢のみに向けられたこの言葉を何度も脳内で再生させ、ゆっくりと顔を湯船から浮かべた。それでも顔の半分はまだ水中だ

 

(夫婦か……。どんな感じなのかしら)

 

1人妄想を膨らませる霊夢の耳に、外の騒音が聞こえることはなかった

 

 

 

 

 

 

「『迷惑』〈刃の舞〉!!」

「鬱陶しいわね!最初からガツンッ!と来なさいガツンッと」

「鬱陶しいのもこのスペルの長所だよ。これくらいも受け止めれないのか?夜の王様さんよお」

「これくらい余裕よっ!!」

 

次々に増えていく手裏剣を無駄の無く最短の距離でかわしていく。しかもそれは恐ろしいスピードで行われており、流石は吸血鬼と言ったところだろう

 

「『紅符』〈スカーレットシュート〉!」

 

手裏剣の多くが自分の背後になったことを確認出来た瞬間レミリアは初めてスペルを唱えた

1つの大きな弾幕の後ろに小さく何十もある弾幕が追うように放たれる。そしてそれがいくつも連続して信にむけて同時に放たれる

 

「うは~」

「これくらいは対処できなきゃプリンへの道は程遠いわよ」

「じゃあ全部避けさせてもらうぞ」

 

大量に放たれた弾幕の僅かな隙間を信は掻い潜っていく。今回は弾幕に弾幕をぶつけるのではなく、回避することにしたらしい。どちらにするのかは信の気分次第である

 

「……やるじゃない」

「それほどでも」

「でもプリンは私の物よっ!!『神罰』〈幼きデーモンロード〉!」

 

再びレミリアがスペルを唱える。レーザーと弾幕が入り交じり、信に襲いかかってくる。

正確に。精密に。

しかしこれも信は完璧に回避しきってしまう。

 

「『神槍』〈スピア・ザ・グングニル〉!!」

 

深紅の巨大な槍を手にしたレミリアは凄まじい速度で距離を詰めた。常人なら反応するどころか目の前から消えたようにも思える速度で。

 

「『武刃』〈秋水〉」

 

静かに唱えた信は、高速で突っ込んでくるレミリアを当たり前のように受け止めた。両者は一歩も引かずにた互いに秋水とグングニルを ギリリ という鳴らしながら力を均衡させている

 

「あなた本当に人間なのかしら?吸血鬼の速度についてくるなんて」

「本当に人間だよ。そこだけは変わらない事実だ。でもまあ、最近妖力を使えるようになったりしたけど……」

「それはもう人間じゃないでしょ?」

「に、ににに人間だよ!!」

 

自分でいってて不安になったので、全力で反論しながらレミリアを押し返す。一瞬体制を崩したが、すぐさま立て直して再度信に突っ込んできた。

 

「『聖槍(せいそう)』〈ゲイボルグ〉」

「ッ!!」

 

秋水を消滅させたと同時に手にした物は槍。黒くの長い持ち手の先に赤い光の刃がついているだけのなんの味気の無い槍だ。何か違うとすればその槍全体が薄い金色のオーラに包まれているくらいで

 

「初公開のスペカだ!槍には槍で対抗させてもらう」

「面白いじゃない。私が身体能力だけだと思ったら大間違いよっ!」

 

信とレミリア。2人の槍がその身を交えさせた瞬間、絶大な衝撃波が地面を走った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごぽごぽごぽごぽ……。そろそろ上がろうかしら」

 

心を落ち着けて平常心を取り戻した霊夢は湯船からでると体についた水滴を拭き取ろうとした………が

 

「っ!!!!」

 

開けていた小窓から突風がなだれ込んできた。それは風呂場にある物を生きているかのように暴れさせ、気を抜いていた霊夢をよろめかす。

 

「魔力に妖力っ!まさか異変の元凶がっ!!」

 

慌てて体を拭き、新しい巫女服に体を通すと急いで玄関に向かった。そして誰よりも、何よりも最初に思い浮かんだことは……

 

(信っ!!)

 

心で叫びながら全速力で外に向かう。そこで霊夢が目にしたものは………

 

「はっはっはっはっはっはっは!!」

「うー☆」

「…………」

 

高笑いしている信と、頭を抱えているレミリアの姿だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の勝ちだな」

「くっ。人間にまた負けてしまうなんてね。私も鈍ったのかしら」

「そうだとしても俺の勝ちは変わんないからな」

「ぐぐぐ……」

 

地面に寝そべり悔しそうししていたレミリアは、体についた土汚れを落としながら立ち上がった

 

「はぁ……ええ。今回は敗けを認めて大人しく引き下がるとしましょう。またやりましょうね、信。今度は弾幕ごっこなんかではなく本気のやつをね」

「ああ」

 

静かに次の約束を交わしてレミリアは信に背を向け、そこに生えた翼を広げた

 

「またね、信」

 

そう言い残し広げた翼をはばたかせレミリアは飛び立っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はずだった。

 

「明日のプリン、楽しみにしてるぞ」

 

その言葉が発せられた瞬間、ピタッ とレミリアの動きが止まった。そしてゆっくりと振り返り、一瞬にして信の足に抱きついた

 

「お願い信っ!!それだけは。それだけは見逃してちょうだい」

「ちょっと何言ってるか分かんないな~」

 

レミリアと目を合わせようとせずとぼけようとする信。

そんな彼を動揺させたのはレミリアが放ったたった1言

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お願い信お兄ちゃん。どうしても食べたいの」

「ぐっ!」

 

足に抱きついたままレミリアは信の顔を目だけ(・・・・・)で見る

するとどうだろうか。自分の愛する弟妹くらいの容姿の少女が上目遣いで懇願してくる

効果はバツグンだ(さまりとにも)

 

(やはり……信はこういう手に弱い。この姿を利用するのは少し癪だけど仕方ないわ)

「お願い。信お兄ちゃん」

「………分かったよ」

「本当っ!!」

「ああ。……お前のプリンは俺が責任をもって味わい尽くす」

「なっ!!」

 

現実は。もとい信は非情だった

 

「お願いよ。咲夜の作るプリンは1週間に1度の楽しみなの!」

「へえ~。そんなに美味いのか」

「美味いなんてもんじゃないわ。至福。いえ、希望よ!!!あの子のプリンは世界を救える。そう思えるほどの物なの!だから……」

「明日が待ち遠しいな」

「なっ!……じゃ、じゃあ咲夜にもうひとつ作らせるからそれで……」

「俺は情報の引き換えに何がほしいって言ったっけ?」

「ゆ、夕飯のデザート」

「ちょっと違う。俺はレミリアの(・・・・・・・・・)夕飯のデザートが欲しいって言ったんだ」

「し、信?」

「咲夜にもうひとつ作ってもらう。大いに結構」

 

 

 

 

 

「俺が二つ食べるがなっ!!!!」

 

とびっきりゲッッッスい顔をして信は宣言した

 

信の足に抱きついていたレミリアの腕から力が抜けていく。頭を抱えこみその場にしゃがみこんだ

 

「う、」

「ん?」

「うー☆」

「はっはっはっはっはっはっはっは!!」

 

希望のプリンを食べる権利を手にいれた勝者の笑いは、静かな夜に響き続けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なに笑ってるのよ馬鹿っ!!」

止められた

「いだっ!!な、なにするんだよ霊夢!」

「何をですって……。周りを見たあとにもう一度同じことが言えるかしら?」

「周り?……あ」

 

それは悲惨。それ以外の言葉では表せなかった。

神社の障子はすべて破れいくつかは外れ、吹っ飛ばされている

更に神社内もちゃぶ台はひっくり返り、それ以外の家具も本来の場所とは全く別の所に移動してしまっている

それだけではない。敷地内には大きなクレーターがいくつも出来上がっており、桜の木は折れこそしていないものの根が見えてしまっている

これは酷い

 

「あ、えっと……これはですね」

「……そういえばさっきは何を笑っていたのかしら?」

「れ、レミリアに勝ったので明日のプリンは俺が食べれるってことに……」

「ふぅ~ん。プリンね~。ふぅ~ん」

「れ、霊夢さん?」

「これをやったことに責任は感じてる?」

「もちろんですっ!!」

「そう。なら、そのお詫びとしてはなんだけど……」

「れ、霊夢さん!?」

「貴方の明日のプリン、私が頂くわね」

「ど、どうかそれだけは……」

「問答無用っ!!」

「ぐっ!」

 

 

手にしたのは勝利

 

 

突きつけられたのは現実

 

 

奪われたのは希望

 

 

この3つが示す答えとは

 

 

 

「「うー☆」」

 

レミリア・スカーレットに次ぐ明渡 信のカリスマブレイクであった

 




書いてたらめっちゃプリンが食べたくなった


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第57話【夕日に照らされて】

次でこの異変中の弾幕ごっこは最後になります。
果たしてだれとやるんでしょうかねえ。



「それじゃあ行ってくるから。……ちゃんと片付けときなさいよ?」

「イエスッマムッ!!」

 

 肯定の言葉を全力で放たれたのを確認すると、霊夢はどこかに向かって飛び立った。

 昨日のレミリアとの戦いの後始末を今日中に全てやれたらプリンを食べる権利を返上してくれるというので気合いが入っている。

 

「にゃはははっ!」

「笑うなよ萃香。こっちはプリンがかかってるんだ」

「まったく、そんなにプリンが大事か?」

「レミリアが希望とまで言ったプリンだ。自分の舌で確認しなきゃ気がすまない」

「ふ~ん」

「それに甘いもんは大好きだからな」

「……手伝おうか?」

「いや、あくまで条件は俺1人で片付けることだからな。ズルはしたくない」

「真面目だねえ」

「そうか?んじゃまあ、頑張りますかねぇ」

 

 やることは建物内の掃除、家具の整理、障子の張り替え、桜の木の植え直し、クレーターの処理だ。後半2つは本来一人でやるのはおかしいかもしれないがそれでもやるしかない。

 

「絶対にプリンは食ってやるからな!」

 

 明渡信のプリンをかけた孤独な戦いが今始まる!

 

 

 

 

 

-------------作業中----------------

 

 

 

 

 

「よっと。これで内装は終わりだな」

 

現在は午前11時半。障子や家具の整理が3時間かけてやっと終わった

 

「随分手際いいね。障子は向こうではあんまり使われてないって紫に聞いてたけど?」

「障子は家でも使ってるんだ。でも弟たちがよく破るんだよな~。それ直してたら慣れちゃった」

「誰かいるかー?」

「ん?」

 

聞き覚えのある声が神社の正面から聞こえた。行ってみるといつもの魔法使いコンビが手を振っていた

 

「よっ!信」

「よう、魔理沙、アリス」

「お邪魔するわね」

「今日は2人揃って来たんだな。異変の情報は渡さないぞ」

「今日はそれじゃないんだ」

「私は昨日魔理沙に疑われたけどね」

「だって信が堂々と宴会にいたって言うから……」

「はっはっは。まあ立ち話もなんだから上がってけよ。お茶出すから」

「なんなら昼飯も出してくれてもいいんだぞ?」

「それが目的か……。アリスも食うか?」

「お願いしていいかしら」

「うし。じゃあ準備するからちょっと待っててくれ」

「信。他に誰かいるの?」

「ん?どうしてだ?」

「さっき誰かと話してるように聞こえたんだけど……」

「私もだぜ」

「……どうだろうな」

「あっ!なんか隠してるんだぜっ」

「そんなことなくなくなくなくなくなくなくなくなくなくなくなくなくなくなくない」

「どっちだぜっ!?」

「待ってる間に数えてろー」

「ええ゛!!えっと。1、2……」

「フフッ」

 

指を折りながら四苦八苦している魔理沙とそれを見てクスクスと笑っているアリスを背にして台所に向かった

 

 

 

 

 

「ほい、お茶」

「ありがとう」

「7、8、偶数は肯定……あれ?否定だっけ?」

「辛いの大丈夫か?」

「あまり得意ではないわね」

「魔理沙は?」

「おお。大丈夫なんだぜ。4、5……」

「了解。すぐ作るからな」

 

 

 

 

 

「またタイってところの飯作るのか?」

「いんや。今日は中華だ。中国って国のやつなんだがこれがまた美味いんだよ。そういえばこっちに無い調味料使うんだった。ちょっと持ってくるよ」

「いってらー。私のは少し辛めで頼むよー」

 

昨日の様に一時帰宅。幻想郷は食材の質が良いけどやっぱり種類が少ない。そのためいちいち戻ってこないといけない。

 

(そのうちゆかりんに用意してもらおうかな……)

「あっ!信にい。あっちに泊まり込むんじゃなかったの?」

「愛か。あっちでアリス達に飯作ろうとしたんだけど調味料がな。ちょっと取りに来たんだ」

「何使うの?」

「豆板醤と甜麺醤。それとトウチも向こうに無いからな~」

「ん?あれ作るの?」

「ああ」

「ならついでにこっちの分も作ってよ。こっちもこれからだからさ」

「おk。それじゃあエマとアリサに……」

「信さん?」

「私たちがどうしたのよ」

「丁度よかった。お前たち辛いのどれくらいいける?」

「「大好きよ(です)」」

「そうか。じゃ、ささっと作るかな。愛も手伝ってくれ」

「あいよー」

 

 

 

 

 

 

 

「うし。出来た」

「相変わらず美味しそう。……じゅるり」

「これは……中華ですか?初めて食べます」

「早く持って行こうよっ!」

「待て待て。それじゃあこっちが甘口、こっちはピリ辛、こっちは中辛、こっちは辛口、こっちは激辛。間違えるなよ~。強太達に激辛食わせたら失神するからな」

「はいはい。ってか早く向こうに行った方がいいんじゃない?みんな待たせてるんでしょ?」

「そうだった。じゃあ行ってくるよ」

「「「いってらっしゃい(です)」」」

 

「肯定、否定、肯定、否t「お待たせっ!」」

「うわっ!ビックリさせるなよ。肯定……あれ?」

「随分静かだったけどなに作ってたの?」

「色々あって向こうで作ってた」

「「いいから早くっ!」」

「ヘイヘイ。今回は中華の定番、麻婆豆腐でございます。アリスのはピリ辛、魔理沙のは辛口で作っておいた」

(萃香のは中辛な)

「早く食うんだぜっ!」

「それでは皆さん御唱和ください」

 

「「「「いただきます」」」」

 

「美味しいわ。辛さも丁度どいいし。それに食べたことがない味がする」

「幻想郷には無いやつを使ってるからな」

「うみゃーっ!グピッグピッ!ぷはっ!くぅー、堪らないねー!!」

 

美味そうに酒を飲んでいる萃香だがその目元には涙が浮かんでいる。中辛でも少し辛すぎたのだろう

 

「口にあったようで何よりだ。魔理沙はどうだ?」

「かっ、」

「ん?」

「辛ええええええっ!!」

「はっはっはっはっはっは!!」

「は、はいっ水!」

「んぐっんぐっっ……はぁあ」

「そんなに辛いの?」

「辛いんだぜ」

「大袈裟だなあ。ムグムグ」

「絶対に辛いんだぜ!……でもどうしてだ。止められないんだぜ……」

「そういう料理だからな。辛さはあるけどその中にしっかりとした旨味がある。だから止められない」

「そういう信のはどれくらいの辛さなのかな!?」

 

そのまま魔理沙は信の分の麻婆豆腐をパクっと食べてしまった

 

「あっ!馬鹿っ!!」

「えっ?どうしt「辛えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」」

「だっ大丈夫魔理沙!?」

「俺のは魔理沙のやつの10倍辛いんだぞ」

「水ううううううううううううううううううっ!!!!!!」

 

 

~~~同時刻、明渡宅にて~~~

 

 

eauuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuu(水ううううううううううううううううう)!!!!!」

водаaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa(水ううううううううううううううううう)!!!!!!」

「愛!何で2人に刺激物(信にいレベル)を食べさせたのっ!?」

「面白いかなって」

「大惨事だよ!!!」

「エマちゃんもアリサちゃんも火吹いてるーww」

「これもまたよし」

「良くないでしょ……。どうするの真にい。2人とも霊力暴走してるっぽいけど」

「押さえつけろっ!!」

 

こっちでも大変なことになっていた

 

 

 

 

 

 

「「「「ご馳走さまでした」」」」

「一時は死ぬかと思ったんだぜ」

「でも美味かっただろ?」

「だから怖いんだぜ……」

「信、今度珍しい料理教えてくれない?外界の料理に興味が出てきたわ」

「いいぞ。そのうち連絡する。それじゃあ異変解決頑張れよ」

「おうっ!絶対今回は私が解決してやるんだぜっ!!」

 

2人は一緒に飛び立っていった。恐らく紅魔館に行ったのだろう

 

「さ、あとはクレーターと木だけだ。頑張るかな」

 

腹もふくれ十分に笑った。あとはプリンのために頑張るだけだ

体を伸ばしてその場で軽く跳ねた信は本腰をいれて復興作業に取りかかった

 

 

 

 

 

 

 

「だあああああああ!!終わったあ」

 

時刻は午後5時半。作業を始めたのは1時なので4時間半かかったことになる

 

「人間があれを1人で出来るのはおかしいと思うんだけど……人間?」

「身も心も人間だよただちょっと霊力と魔力と妖力が多いだけで」

『それを人は人外と言う』

『こらっ!フェリーチェ。本当にそうだとしても言ってはいけません!!』

『フォローになってないよ。(;´д`)とほほ……』

「まあこれで、プリンゲットだ」

 

内側と外側から精神攻撃を受けながら復興作業の達成感に浸る。日も落ち始めているのでそろそろ夕飯の準備をしなければと思っていた

 

「今日はなんにしようか……ん?」

 

寝そべっていると突然夕焼けの日差しが遮られ、顔のところに日陰が出来た。体を起こしてみると結構いた

 

「おかえり、霊夢」

「……ただいま」

「それにどうしたみんなも一緒で」

 

そこには霊夢だけではなく魔理沙、アリス、咲夜、レミリア、妖夢の計6人がいた

 

「片付け終わったぞ。これでプリンは俺が食ってもいいんだよな」

「……」

「霊夢?」

「異変の元凶を知ってるって言うのは本当?」

「魔理沙達から聞いたのか?」

「質問に答えて」

「知ってるよ。なんなら一緒に飯食ったし」

「どうして教えてくれなかったの?」

「聞かれなかったからな」

「そう……」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「教えて」

「断る」

 

一瞬の沈黙。だがそれは簡単に破られ両者の意見がぶつかった

 

「なら、力ずくでいくわよ!」

「ああ。受けてたつ」

 

 立ち上がりながら汚れを落とした信と共に霊夢は上空に飛び立った。

 幻想郷最強の異変解決者と強い意思をもった外来人。

 2人の強者の戦いの火蓋が今、切って落とされた




何回火蓋が切っておとされるんだよ……
語彙力がないって悲しいですね
そういえばこれは余談なんですがこの回を書き終えて一番最初に思ったのが
「あれ?なんで霊夢とやることになってるんだ?」でした。やる予定すら無かったんですよね
そんなわけで霊夢対信。主人公対決の決着は次の更新で
次回もゆっくりお願いします





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第58話【VS霊夢】

「『運任』〈ドキドキわくわく抽選会〉」

 

以下略

 

「準備は出来た?」

「おう。いつでも来い」

「それじゃあ遠慮なく!」

 

本当に遠慮なく霊夢は信にむけて札を投げつけた

 

「ホーミング性あるのか……。『武刃』〈秋水〉」

 

逃げても着いてくることを確認し、回避できないとわかると容赦なくそれらを斬り落とす。

 

「はあっ!」

「ふっ!」

 

するとお祓い棒を構えて突進してきた。だがそれを難なく受け止める。

 

「本当に馬鹿力ね」

「そりゃあ毎日鍛えてるからな。霊夢も一緒にどうだ?」

「私が修行嫌いなの知ってるでしょ?」

「おっと、こいつは失礼。じゃあ明日からどうだ?『迷惑』〈刃の舞〉」

「やらないって言ってるでしょっ!『霊符』〈夢想妙珠〉」

「なんの!『迷走』〈亡霊達の歩〉」

 

刃の舞は全てかわし、切り抜けたところで反撃のスペカを唱えた。それに対して信ももう1枚のスペカで対抗する。互いのスペルがぶつかり合い、相殺される。全てが無くなった後、2人の間には静かな時間が流れた

 

「そういえばなんだかんだで霊夢とやるのは初めてだな」

「そういえばそうね。どうして私とは戦らなかったのよ」

「魔理沙とかチルノとかが毎日来るからな。あんまり気にならなかった」

「なんだか負けた気分ね……」

「まあいいじゃないか。今こうして霊夢と戦ってるんだからさ」

「それもそうね」

「それじゃあ仕切り直しといこうか。俺が勝ったら霊夢は巫女としての修行にきちんと取り組むこと」

「仕方ないわね……。私が勝ったら異変の元凶の情報、そしてプリンを貰うわ。覚悟しなさい」

「もう負けるのはこりごりなんだ。だから……」

「私も博麗の巫女として異変を解決しなくちゃいけない。だから……」

 

 

 

「「この勝負は俺(私)が勝たせてもらう(わ)っ!!」」

「『一刀』〈陰鉄〉!」

「『霊符』〈夢想封印〉!」

 

 

 

 

side change

 

 

 

 

「霊夢も珍しいわね。あんなにムキになるなんて」

「そうなんですか?」

「霊夢は基本、何事にも無関心。あんな風に感情を剥き出しにして弾幕ごっこをやるなんてのは中々見ないわね。やっぱりこれも」

「あいつのせいだろうな」

「それよりも。さっきとは随分雰囲気が違うわね。端からみてたら怒っているように見えたのだけれど?」

「そんなこと無いぜ」

「あら?その口ぶりだとなにか知ってるようね」

「その通りだぜレミリア。ずっと霊夢は信と戦りたがってたんだぜ」

「霊夢が?」

「ああ。ずっとな」

「今まで戦ったことなかったんですか?」

「それが適当に理由つけて戦ろうとしたらしいんだが、毎回恥ずかしくなって実行できなかったらしいぜ」

「「へぇ~」」

 

その場のみんなが霊夢の意外にも乙女な部分に興味を持つ。そしてアリスが納得した様子で答えた

 

「そんな中で今の異変。霊夢にとって好都合だったわけね」

「ああ。それに、霊夢は最初っから信が異変の元凶を知ってることが分かってたらしいぜ」

「じゃあ昨日はどうして私たちの所に来たんですかね?」

「信には自分の全てをぶつけたかったそうだ。そのためのイメージを固めるための予行練習ってところらしいのぜ」

「ってことは……霊夢は『あれ』を使うの?」

「かもしれないな」

「『あれ』とは一体何かしら?」

「レミリア達は知らないか。簡単に言うと霊夢の切り札だな。私も一回だけ使わせたことがあるんだが……正直反則過ぎるんだぜ」

「まったくね」

「魔理沙にそこまで言わせるってことは相当のものでしょう?」

「ああ。もし、霊夢があれを使うとしたら………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「信が勝つことは絶対ありえないんだぜ」

 

 

 

side change

 

 

 

「『霊符』〈夢想封印 散〉!」

「そういうやり方もあるのか……。勉強になるな」

「余計なことを考えてると痛い目に遇うわよ」

「余計じゃないさ。弾幕ごっこのエキスパートのスペカだからな。その技術を盗まない手はない」

「そ、そう?」

「余計なこと考えてると痛い目に遇うぞっ!『光符』〈豪華絢爛〉!!」

「うっ!」

「さあ、『迷惑』なやつらが帰ってくるぞ?」

「しまっ」

 

信の言葉に反応して咄嗟に防御の体制をとる。その瞬間、何十もの斬撃のような衝撃が体に叩き込まれた

 

「やられたわ……」

「どんどん行くからな」

 

そういった信は大量の弾幕を展開する。感覚が狭く、人1人が通れればいいくらいの間隔だ。

 

「くっ。『霊符』〈夢想封印 集〉!」

 

苦し紛れのスペカで対抗するも簡単にそれは斬り捨てられてしまう

 

「『斬撃(ざんげき)』〈月牙天衝(げつがてんしょう)〉」

 

陰鉄を一度鞘に戻し、両手で秋水を握り、振り払った

くり出したのはその名の通り、斬撃を模した弾幕だ。同じようなことを妖夢もやっていた。

だが、その大きさは桁違い。

 

「まずっ!」

 

必死に信の弾幕を避けていた霊夢だったが、その絶大な大きさをもつ斬撃に成す術もなく飲み込まれていった

凄まじい衝撃波と轟音と共に砂埃が舞い上がり、何も見えなくなってしまう

 

『うはー。随分派手にやったね』

『あんな思いっきりやって大丈夫だったのか?』

「霊夢のことだから心配ないさ。それに……」

『それに?』

「あいつ……月牙天衝にのまれる前になんか唱えてたん……だ…よ……な?」

 

風が吹き、視界がクリアになる

そこには信の予想通り消耗しながらもその足で立っている霊夢の姿があった

だが、信は霊夢の違和感にすぐに気付いた

 

"無傷"

 

仕留めたつもりはなかったが確実に当てた手応えを感じていたのだ。更に月牙天衝は信の中でもそこそこの大技。無傷でいるなどあり得ないと思っていた

 

「あれをかわしたのか?」

「いいえ、直撃よ」

「なら……どうして?」

「これが私の切り札。悪いけど信。あなたには負けてもらうわ」

 

八つの陰陽玉を従えた霊夢は静かに宣言した

 

 

 

side change

 

 

 

「霊夢が追い詰められてるわね」

「まあ、さすがの霊夢でも豪華絢爛からのコンボをかわしきるのは難しいでしょうしね」

「……霊夢……。使うんだな」

「先程の『あれ』のことかしら?」

「ああ。やっぱり信に出し惜s「あれ、不味くないですか?」」

 

魔理沙の言葉を遮った妖夢の言葉に全員が反応する。いや、反応せざるを得なかった

秋水のみを握った信から異様な量の霊力が感じられる。あんなものが放たれ、考えたくもないが直撃したらどうなるか。

 

そして握られた秋水の霊力で型どられた赤い刀身が白く変化し、それを振り払った

 

刹那

 

ドオ゛ーーーン

という轟音と共に衝撃波に乗った小石や砂ぼこりが観戦していた者達を襲った

 

「いでででっ!信のやろう……こんなの隠し持ってやがったのか」

「それどころじゃないでしょう!どう見たって霊夢に今のは直撃したわ」

「まあ慌てるな咲夜。霊夢なら大丈夫だ。ギリギリだったみたいだが、ちゃんと『あれ』を使ってたんだぜ」

「そろそろ教えてくれないですか?反則とまで言う『あれ』とはなんなのか」

「ああ。まずあれの名前だg「ぐおおおおおおおおっ!」」

 

いざ説明しようとした魔理沙の言葉を切ったのはこの場に居なかった、たった今吹っ飛ばされてきた信である

 

 

~~~数秒前~~~

 

 

 

「『花符』〈千本桜 (ちゅう)〉!」

 

空中に大量の桜が生え、その全てが散っていく。最高速で接近してくる霊夢を寄せ付けないためだ。だが…

 

「悪いけど、そんなものはもう効かないわ」

 

細かく、大量に散っていく花びらの弾幕を霊夢は避けることなく真っ直ぐ突っ込んできた。当たるはずの軌道にのっていた花びらは霊夢の体にダメージを与えることなく、すり抜ける

 

「なっ!『怪符』〈破壊光線〉!!」

 

運任によって強化された破壊光線を放つ。だがそれすらも当たることはなく、霊夢を止めることはできなかった

 

「こいつはまずいな……」

「ええ。終わりよ」

 

ある程度近付いたところで陰陽玉から大量のお札が放たれた

 

「うおっ!!」

 

至近距離で不意を突かれその身に大量に弾幕を受けてしまった信はそのまま吹っ飛ばされてしまった

 

(あれは手動か?……一か八か!)

「『幻符』〈かくれんぼ〉!『包囲(ほうい)』〈四面楚歌(しめんそか)〉!!」

 

姿が見えなくなり、霊夢の周りに大量の気配が生み出された

その姿無き気配にむけて、陰陽玉はただひたすらに弾幕を放っていた

 

 

~~~そして現在~~~

 

 

「いってぇ~。なんとかなったな。でもこれからどうしたものか……」

「何やってるんだぜ信」

「おお、魔理沙。話を遮ったみたいだったな。悪かった」

「信はあれがなんなのかわかったのぜ?」

「ん~。まあ、なんとなくな」

「一体なんなんですか?霊夢の切り札の正体は」

「ああ。あれの名前は『夢想天生』。霊夢の『主に空を飛ぶ程度の能力』の本質とも言える技だぜ」

「霊夢の能力って飛べるだけじゃないのか?」

「ちっちっち。あいつの能力は空を飛ぶこと、つまり無重力。

地球の重力も、如何なる重圧も、力による脅しも、霊夢には全く意味が無いんだぜ。相手がどんなに強大だとしても、霊夢の前では意味をなさない。つまり夢想天生ってのは」

「「「「無敵……」」」」

 

初めて夢想天生を知った4人が声を揃えて呟いた

 

「ああ。完全に無敵になるんだ!」

「えぐぅ……」

「じゃ、じゃあどうやって勝つんですか!?」

「幸いこれは弾幕ごっこだ。時間制限があるからそれまで逃げまくればいい。ま、そんなことさせてくれるほど霊夢は甘くないんだがな」

「ん~~よっしゃ!決めたっ!」

「覚悟を決めたのか?」

「ああ。夢想天生を打ち破る覚悟をな」

「はっ!?」

「見つけたわ」

 

色々話しているうちに霊夢が直ぐ真上まで接近していた。そして少し苛立ちの表情が伺えた

 

「なにもないところに攻撃しまくってる姿は可愛かったぞ」

「なっ!」

(((((羨ましい……)))))

「それよりっ!もう敗けを認めたら?勝ち目がないのは魔理沙から聞いたでしょう?」

「ああ。勝つための方法がわかった!サンキューな魔理沙」

「えっ?あ、おう」

「逃げまくるつもり?そんなことさせないわ」

「そんなことしないよ。夢想天生、打ち破ってやるさ!!」

 

高らかに宣言した信は1枚のスペカを取り出した

 

「『終ノ符』〈無双乱武〉」

 

それは優しい光を放ちながら姿を変えた。1度は暴走した妖怪を助けた時の物と同じように

 

「『意思』〈ぬのぼこの剣〉」

 

その直剣は漆黒。どんなものにも染まること無い黒

その場にいたものは自分が飲み込まれるような感覚に畏怖し、同時に何かに守られているような安心感に包まれた

 

「試してみるか?」

「望むところよっ!」

 

瞬間、大量の御札が信を襲った。しかし、今回はきっちりそれに対処し霊夢との距離を詰めていく

 

「近付いたら餌食になるって分からなかったのかしら?」

「そんなことはないさ。ただ、霊夢も忘れてるんじゃないか?」

「なんのこと?」

「この剣の性質をさ。『跳躍(ちょうやく)』〈グラスホッパー〉」

 

瞬間、信の足元に妖力で作られた板のようなものが現れた。それを踏み込んだ瞬間、

 

「なっ!」

「その顔が見たかった」

 

一瞬にして霊夢の直ぐ目の前に移動した。そしてその勢いのまま力強く握ったぬのぼこの剣で霊夢の腹を思いきり斬りつけた

 

「……当たらないって聞かなかったの?」

「聞いたさ。だから、これで終わりだ」

 

放ったのは普通の弾幕。恐ろしく速いわけでもなければ威力が高いわけでもない普通の魔力弾。それは霊夢の体をしっかりと捉えていた

 

だがそんなことは関係ない。今の霊夢はいかなる攻撃も効きはしない

 

だから避けようとしなかった。当たるはずがないのだから

 

なにも気にせず、なにも疑わず、ただそのまま霊夢は信に向かって突っ込んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが敗因になるなんて微塵も考えずに

 

「なっ!!」

「慢心に加えて油断もしたな。『足止(あしどめ)』〈草結(くさむすび)〉」

 

地面から何らかの植物が生え、それが霊夢の足に巻き付き地に足をつけさせた。

 

「ど、どうして……」

「前に説明したろ?ぬのぼこの剣は思いによって斬るものと強さが変わるって」

 

剣を肩に担ぎながら新しい弾幕を全方位に放った。それは誰に当たるわけでもなく、等間隔に広がっていきある程度離れたところで止まった

 

「夢想天生の『無敵と言う概念』を斬らせてもらった。残念だが今、霊夢は無敵でもなんでもない」

 

そして信は、右手をゆっくりとあげ、不敵に笑った。

 

「『集結(しゅうけつ)』〈魔空包囲弾(まくうほういだん)〉」

 

パチンッ と指をならすと辺りを囲んでいた弾幕が飛ぶことも、避けることも、逃げることも出来なくなった霊夢を容赦なく襲った

その場に倒れこんだ霊夢を見下ろし、ある人物に頼まれていたことを実行する

 

「才能だけで勝てると思うなよ?努力があって才能は輝きを増す。……説教はここまでにして決め台詞といこう。妖夢、お前の言葉ちょっと借りるぞ」

「は、はい」

 

目の前の状況を処理しきれずポカン(゜ロ゜)としている妖夢に許可をもらい、高らかに宣言する

 

「俺の思いを込めたこの『ぬのぼこの剣』に、斬れない物など無い!」

 

こうして、2人の強者の弾幕ごっこは夕日が沈むと同時に決着した

 

 

 




前々からお伝えしていたようにこの回をもって一度、投稿を休ませていただきます
それでは約5ヶ月後にお会いしましょう


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第59話【思惑】

「それでは……」

 

 霊夢との弾幕ごっこの後、早速プリンをご馳走になりに来た。その前にレミリアのご厚意で夕飯をご馳走になって今に至る

 そして今まさに勝者のみが手にすることを許された『咲夜の特性プリン』を食べるのだ。

 因みにフランはまだ遊びに行ってから帰ってきておらず、美鈴は自分の分を食べ終えたらすぐさま仕事に戻った。なぜか信を見た瞬間顔を赤らめていたが、何かあったのだろうか……

 だが、今はそれよりも……

 

「いただきます」

「召し上がれ」

 

 咲夜特製のプリンを楽しむことにした。

 

「はわわわ」

 

 狼狽えまくっていいるレミリアを気にせず集中する。側面を上から2:3に内分した辺りでスプーンをプリンの身に入れ、そのまま緩やかに登らせてカラメルと共に掬い上げた。

 

(重い……それになんて滑らかさだ。スプーンに全く抵抗を感じなかった……)

 

 ただ掬っただけ。それだけで彼は今目の前にあるプリンのクオリティの高さを理解した。今まで食べたことの無い極上の舌触り、そして甘さであることを認識してゴクリと唾を飲み込んだ

 

(いざっ!!)

 

 意を決してそのプリンを口に含んだ。そしてそのまま彼は動かなくなってしまった

 

「ど、どうかしら?」

「………い」

「え?」

「うまい。すげえうまい!堪らなくうまい!!とんでもなくうまい!!!何だこのうまさは!?何でこんなに濃厚で甘いのにクドくないんだ!?」

「はわわわわ」

「これは本当に咲夜が作ったのか?」

「え、ええ」

「ありがたや~」

「えっ!?ちょっと!やめてよ」

「拝まずにはいられない。レミリアが希望とまで言った理由がやっと理解できた」

「そ、そう?」

「でしょっ!?なら私に一口くらい……」

「さて、残りを堪能させてもらうかな」

 

 ゆっくり楽しみながら。だが、当たり前の事だがその姿はどんどん小さくなっていき、ついに最後の一口となってしまった

 

「もう無くなっちまった」

「はわわわわ!」

「……食べるか?」

「嘘っ!!」

「嘘じゃないって。流石にそこまで見られ続けたら気の毒になってきた」

 

 そういいながら最後の一口を掬ってレミリアに突き出した。

 

「ほれ、あ~ん」

「あ、あ~~ん♪」

 

 差し出されたスプーンに対する疑いよりもプリンの醸し出している魅力に引かれレミリアはその最後の1口に向かっていく。

 

「あ~~ん♪」

 

 ゆっくり。ゆっくりと運ばれ、

 

「あ~~ん♪」

 

 突如スプーンの先に紫がスタンバっているスキマが現れた。

 

「「あ~~ん♪」」

「!!!」

「……」

「きゃうっ!」

 

 信はスプーンを持っている手ではない逆の手を使ってそのスキマを無理矢理閉じた。その為か紫が少し後ろに弾かれてしまったのだ。

 

「はむっ!ん~~~♪」

 

 なにも知らずにプリンを口に含んだレミリアはその美味しさにほっぺたが落ちないかのように両手を自分の頬に押し付けて喜んでいる。

 

パシャッ

 

「ん~……~ん?今の音は?」

「いや。ちょっと珍しいもんが見れたんでな。記念に取っておこうと思って」

 

 信の手に握られていたのは薄い長方形の箱。レミリアの目にはそう写った。

 

「夜の帝王様がこんなに可愛い顔するなんて思わなかったからな」

「わ……わたし?」

 

 返されたそれにはカリスマ性も威厳も感じられないレミリアの可愛らしい顔が写っていた。信は自信のスマホでレミリアを写メったのだ。

 

「な……」

「こうしてみると華や風人となんら変わりないな。こんな幸せそうにプリンを食べて」

「ななななな」

「お味はどうでしたか?レミリアちゃん」

「うー!」

 

 恥ずかしさのあまりか頭を抱えてしゃがみこんでしまった。

 

「HAHAHA」

「うっさいっ!!!」

「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか夢想天生が破られるなんて思ってもみなかったんだぜ」

「はあ……」

「全く信の強さには驚いてばかりね。ぬのぼこの剣。あれどう考えたって反則でしょう?」

「とんでもなくうまい!!!」

「……あのプリンってそんなに美味しいんでしょうか……」

 

 妖夢の言葉にみなが視線を向けた。そうすると頭の上で手を合わせて咲夜を拝んでいる信、恥ずかしがっている咲夜、あたふたしているレミリアが目に写った。

 

「信があそこまで言うのか……。今度私もつくってもらお」

「魔理沙、今はプリンじゃなくて作戦会議でしょう?」

 

「そんなこと言ってアリスも食べたいんじゃないのか?」

「………」

「黙秘はずるいんだぜ!」

「はあ……」

「でも本当にどうするんですか?もう信さんから異変の黒幕を聞くのは無理だと思いますよ」

「ん~……」

 

 頭を抱えながら魔理沙は座っている椅子の背もたれに体重を掛けてゆらゆらと揺れた。

 

「はあ………」

「おい霊夢。さっきからそんなにため息ついてどうしたんだぜ?」

「はあ……」

「ずっとこの調子ね」

「なにがそんなに嫌なんですか?霊夢さんほどの実力だったら修行だってとんとん拍子で進むんじゃ……」

「……私がただの修行でこんなに嫌がると思う?」

 

 そう言われ魔理沙とアリスがハッとした。霊夢は確かにめんどくさがりだが、やりたくないことをずっとやらないタイプではなく、さっさと終わらせてしまい後はゆっくりするというタイプだ。

 

「はあ……。先々代の巫女の話を聞いたことがある?」

「先々代って言うと……真面目で正義感が強いってよく聞いたな。霊夢みたく異変にも遅刻したりしないから里の奴等にも信頼が厚かったとか。でも結構最近突然居なくなったんだよな?」

「まあ、そんな感じ」

「その先々代がどうか?」

「その先々代が修行から逃げ出すほどなのよ。博麗の巫女の修行は」

「そう言われても……いまいちピンとこないわね」

 

 アリスが首をかしげると他2人も同じような思いのようだ。

 それもそうだろう。会ったこともない人物を基準にされても納得できない。もっと細かい情報はないのかと3人が霊夢に目を向けると……

 

「じゃあ紫がいるでしょ?」

「ああ」「うん」「ええ」

「あいつがふざけず真面目に本気で鍛えに来るのよ」

「げえっ!」「ああ……」「うわあ……」

 

 すぐさま理解。最早言葉はいらなかった。ただ3人は黙って霊夢を見つめ、静かにうなずいた。

 

「またあの地獄が始まるなんてため息しか出ないわよ……はあ……」

「げ、元気出せよ霊夢。なんかきっと他にいいことがあるって……ほらっ、見てみろよ」

「うー!」

「ああしてみるとレミリアが本当の幼女に見えるよな。可愛いもんじゃないか」

 

「ほれ、あ~ん」

 

 ガタッ と魔理沙、アリス、妖夢、そして、ずっとうなだれていた霊夢もその声がすると同時に立ち上がった。視線の先はみな同じ。信の持っているスプーンだ。

 

「(ななな何してるんだぜあいつは!?)」

「(どう見たって「あ~ん」ですよ!)」

「(レミリアの奴なんてうらやま……じゃなくて、なんて羨ましいの……)」

「(言い換える必要あったのか?なあアリス……アリス?)」

 

 魔理沙が問いかけてみるもアリスは返事をしない。さらに付け加えると魔理沙の顔も見ようとしない。

 まるで何かを隠すように。

 

「(お前……まさか!?)……アリス?」

 

 突然慣れてもいない爽やかな笑顔を魔理沙は作った。そしてその顔のまま自慢のスピードを駆使し、アリスの表情を確認するために高速で回り込んだ。

 魔理沙のその動きに合わせて完璧なタイミングで首をグリンと首をひねり表情を見せない

 

「おいアリス、顔を見せろ」

「もう少し待って」

 

 問いかけに対して顔を向けずに答えるアリス。その声は少し震えている。

 

 瞬間、少女たちの戦いが始まった。

 

 高速で回り込み続ける魔理沙。そして高速で首をひねり続けるアリス。普段は仲の良い友人の二人が一歩も譲らない。そして徐々に魔理沙が疲労の表情を浮かばせてきた。

 そもそもこの勝負結果は目に見えていた。いくらスピードが自慢といっても全身を回り込ませなければいけない魔理沙に対し、顔だけを動かせばいいアリスとの勝負の結果はやらなくとも歴然としているだろう。

 

「な!?」

 

 だがそれは、1対1の場合だけである。

 

「ねえアリス?顔を見せて?」

 

 アリスの敵は魔理沙だけではない。この場にはもう一人、博麗霊夢という少女(戦士)がいた。

 

「待って!もうちょっと、もうちょっとで治まるから!!」

 必死に首をひねろうとするが霊夢がアリスの頭を両腕でプレスするようにがっちりホールドしているため頭を動かすことができない。

 

「観念するんしろアリス!さっさとその憎たらしい顔を見せる…ん……だぜ……ッ!!」

 

 いつの間にか爽やかな笑顔が悪意のこもった笑顔に変わってた魔理沙の声が、だんだんと小さくなった。アリスの頭部をがっちりホールドしている霊夢と、魔理沙とアリスの攻防を見守っていた妖夢が?と首をかしげて声をかけた。

 

「どうしたのよ魔理沙」

「どうしたんですか?」

 

 2人の問いかけに魔理沙は答えない。霊夢の代わりにアリスの頭をホールドしたと思うと、「ん」と首を振ってをアリスの頭を顎で指した。

 うつむいて目元は見えていないが「見ればわかる」と訴えているのが彼女には分かった。

 

「何なの……(どんな顔してるってのよ)悪いけど自業自得だ……ぜ……ッ!!」

「えっと……(でも気になりますし…)ごめんなさい。ちょっと失礼しま……す……ッ!!」

 

 それを見た2人は言葉を失った。

 さらさらと揺れ、きらきらと輝いているように錯覚するほどの美しい金髪。

 うるうるとした青い瞳は合わせた相手に心臓を掴まれたように思わせるだろう。

 そして、耳まで真っ赤に染まり不安そうに「あわわ」という口をした顔は、髪や瞳との相乗効果により一度でも見てしまえば一瞬にして釘付けになってしまうだろう。

 霊夢が言葉を失った理由。それは実に簡単。

 アリスが今までしたこともないような可愛い顔をしていたのである。

 

「「「…………」」」

「み、見ないで!」

 

 ホールドを振りほどき……というよりも解放されて、かわいらしい顔を自らの両手で即座に隠した

 

「違うの……違うのよお」

 

 と顔を隠しながら必死に弁解し続けている。

 

「いつなの?」

 

 何がいつなのかというのは言わずもがな。

 

「……紅霧異変の前よ」

「だああ!!そんなに早くかよ!!」

「紅霧異変って去年の夏ですよね……。あって一週間で!?」

「違うの。あの時は仕方なくて……」

「仕方なかったとしても手が早すぎるだろお」

「違うのよお!」

 

 頭を抱え悔しがる魔理沙。驚きおどおどとしている妖夢、そして今だに「違うの……」と弁解を続けているアリス。

 

「……………………」

 

 騒がしくなってく周りとは逆に何もしゃべらずにいる霊夢。それは何故か。彼女はこの2日いろいろあった。

 まずは昨日、異変を解決するために人里へ冥界へ右往左往。何の情報も得られなかったところで最高のお風呂。思い出に浸り明日も頑張ろうと思ったところで神社は滅茶苦茶になっていた。

 続けて今日、滅茶苦茶の神社で目を覚まし、朝から機嫌悪く異変の情報を集めているととても有力なものが手に入った。その情報とは異変の黒幕を知っている人物のものだった。

 その人物とは、2日前から神社の番をしており、神社を滅茶苦茶にした上に上機嫌に高笑いし、先ほどの弾幕ごっこによって大嫌いな修行をやらせることにした少年。

 

「HAHAHA」

 

 そして何より、自分のいるところでもいないところでも他の異性と交流し続けている少年(野郎)

 彼女は今、生きてきた中で一番イライラしていた。

 

「うっさい!!!」

 

 そしてそのイライラは、野郎の高笑いによって爆発した。

 

「ど、どうしたんだよ霊夢?そんなにイライラして……」

「イライラなんかしてない!!魔理沙!アリス!妖夢!今から博麗神社で作戦会議よ!」

「お、おう」

「今からですか!?」

「違うのよぉ……」

「あんたもいつまでもメソメソしてないで!早くしなさい」

 

 イライラからかいつもよりせっかちになった霊夢に他の3人がついていく。と、食堂から出てい時ふいに立ち止まった。

 

「信、あんた、今日は神社出禁だから」

「えっ?ちょっまっ!」

 

 信の制止も聴かずにつかつかと出て行ってしまった。魔理沙、妖夢もその微妙な空気の場に残りたくなかったのか霊夢にぴったりついてそのまま出て行ってしまった。

 

「……」

 

 扉はバタンと占められ、少年は唖然としていた。

 

「まったく……嫌われたもんだ」

「霊夢も年頃の女の子ってことよ」

 

 そう答えるのは先程無理やり閉じられたスキマから顔を出す八雲紫だった。

 

「いったい何の用だ?スキマ妖怪」

 

 いつの間にやらカリスマブレイクから復活していたレミリアが鋭い目つきで紫を睨みつける。プリンを食べられたりいじられたりで機嫌が悪いようだ

 

「別に?ただちょっと信に用があっただけよ、レミリアちゃん♪」

「夜の帝王をちゃん呼びなんて……どうやら痛い目にあいたいようだな?スキマ妖怪」

「夜の帝王様はプリンがお好きだったそうねえ?」

「なっ!!」

 

 口元を扇子で隠しながらもう一つのスキマを紫は開いた。そこには信が持っていたスマホと同じようなものがあった。そしてその画面にも先程のレミリアの幸せそうな顔が写っていた。

 

「な……な……」

「美味しそうだったものねぇ。わざわざ信からあ~んしてもらって。ねえレミリアちゃん?」

「うー!」

「お嬢様……」

「フフ♪」

 

 三度頭を抱えしゃがみ込んだレミリアを心配そうに見つめる咲夜。それを紫は愉快そうに微笑みながらながら見ている。

 

「人のものを横取りするのはあんまり感心しないぞ?ゆかりん」

「あなたがあまりに美味しそうにするのがいけないのよ。あ、L〇NE交換しましょ?」

「おk」

 

 スマホを振るとそれぞれの画面に【明渡 信】と【ゆかりん】と表示された。

 

(やったあああああ!!信の連絡先ゲット!!自然だったわよね!?自然だったわよね!!!?これでいつでも信と話ができるのよね!?意味もなくグダグダとお話したり出来るのよね!?早速今夜から……)

 

 内心ガッツポーズをとりながら大喜びしている紫とは別に淡々とスマホを操作する信。そうすると紫の画面に【*******@***.***】と【***-****-****】と出た。

 

「?これは……」

「俺のメアドと番号。一応教えとくぞ」

「……」

 

 そういわれ真顔になった状態で画面をじっと見ている。どうしてそんな態度なのかというと、まあ……お察しの通りだ。

 

「で、依頼はちゃんと達成したからな」

「あ、ええ」

「なんで顔ひきつってるんだよ……」

「ん?依頼?」

「ああ。今日の昼頃にな。ゆかりんが神社にきてな………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~数時間前~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで家具は元通りだな」

 

 時刻は魔理沙達が昼食を取りに来る前に戻る。せっせと働き内装の約半分を終わらせたところだ。

 

「随分とまあ派手にやったわね」

 

 とスキマから顔を出した紫がいつものように突然話しかけた。

 

「楽しくてやった……今は反省してる」

「なにその軽犯罪者みたいな言い方」

「で、何の用だ?今回は何の用事もないわけじゃないんだろ?」

「……」

 

 この時紫は少なからず驚いた。自分はうさん臭く、理由もなく行動することが多いことは自覚している。だからこそ彼がなぜ今回自分が何かしらの理由を持ってきているのかが分かったのかが分からなかった。

 

(これも彼の能力?)

「残念。ただの観察眼だ」

「……人の心をコンビニに行く感覚で読まないでくれるかしら」

「いや失敬失敬。…で、依頼はなんだ?」

「霊夢を弾幕ごっこで負かしてほしいのよ。出来る?」

「まあ……楽勝だな。けどなんでまたそんな事を?」

「ん~理由はいくつかあるけれど……一番の理由はあなたね」

「俺か?」

 

 流石にその理由までは分からなかったようで紫に首をかしげながら問いかける。

 

「ええ。貴方みたいにアホみたいに強い外来人、今まで居なかった訳じゃ無かったんだけど……」

「アホとか言うなや」

「博麗の巫女は幻想郷の秩序を守ることが仕事の一つ。もし貴方みたいなのが悪意を持って幻想郷に訪れたら今の霊夢じゃ確実に何もできないのよ。なのに霊夢ったら巫女としての修行をやろうとしないのよ。「そんなことあるわけないじゃない」ってね……」

「それは随分な自身だな。最後に幻想郷が危なかったのはいつなんだ?」

「大体20年前くらいね」

「20年!?かなり最近じゃないか」

「ええ。その時も偶然来てた外来人にも協力してもらって何とかなったのだけれど……。もし今の霊夢が20年前にいたとしたらなす術もなく、何も守れず命を落としていたでしょうね」

 

 そう答える紫の表情は険しい。20年前の事件はそれほど危険なものだったのだろう。

 

「話がそれたわね。お願いできるかしら?」

「おk、わかった。霊夢を近いうちに負かしてやるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか今日負かすことになるとは思わなかったけどな」

「勝つことは前提条件なのね……」

「そりゃあな。幻想郷の中だと一番霊夢とやるのが負ける気がしないな」

「弾幕ごっこでは負けなしだった霊夢も、信の中ではこの評価。幻想郷の管理人としては改善しなくてはいけない課題の一つだったのよね」

「あの霊夢がそんな低評価されていたなんて……。もしかして『無双乱武』?を使わなくても勝てたの?」

「うん。余裕」

 

 咲夜の問いに何の迷いも不信感も持たずに答える。彼女の中では『』信の次に強いのは霊夢なのではないか?』という考えを完全にひっくり返されて驚きを隠せない。

 

「今回は今後の幻想郷にもかかわる問題だったからな。霊夢が恐らく絶対的に信用している『夢想転生』を破って霊夢が言い訳できないようにした」

「へ、へえ」

 

 さらりと超高難易度のことを話され感心を通り越してもはや呆れてくる。なんだか頭の中で(信なら仕方ない)という幻聴が聞こえたが、頭をふるいいつもの冷静な思考に切り替える。

 

「ふわぁ……。なんだか眠くなってきたわ。今日はもう帰らせてもらうわね」

「おうゆかりん。また明日な」

 

 目を細くさせてスキマへと戻っていった紫に軽く手を振りながら別れを告げる。

体を反転させて咲夜に面と向かうと彼はこう切り出した。

 

「紅魔館に泊めてくれないか?」

「え?ああ。神社に出禁になったから今日寝床がないのね。まあそれはお嬢様次第だけどね」

「……」

 

 レミリアに目を向けると目尻をうっすら赤く染め、それを必死に払拭するように優雅に紅茶を飲んでいた。

 完全に泣いたことを誤魔化そうとしている幼女である。カリスマ性ある夜の帝王なんて彼女を見て誰が信じようか。

 

「レミリア、今日泊めてもらっていいか?」

「構わないけど……さっきの奴は消してもらうからね」

「おk。ちゃんと消しとくよ」

「咲夜彼を部屋に案内してあげなさい」

「はい。信、こっちよ」

「おう」

 

 咲夜に招かれ食堂を出てついていく。しばらく歩くと部屋がいくつも並んだ廊下へとたどり着き、そのうちの一つの扉の前で立ち止まる。そして一度ちらりと見た後にドアノブに手をかけてそのまま押し開いた。

 

「ここよ」

「おお……」

 

 開かれた扉の先の部屋を視界に入れ思わず感嘆の声を漏らした。

 

「これ客間か?すげえ広いな」

「紅魔館じゃこれが普通よ」

「ふっかふっかだな」

 

 と恐ろしい速度で別途に駆け上がりポヨンポヨンと跳躍する。得意げに話した自分が少し恥ずかしくなるのを咲夜は感じた。

 

「シャワーとトイレは部屋についてるから好きに使って」

「おう。サンキュな」

「お兄様ああああああ!!」

 

 咲夜が用を済ませ出ていこうとした瞬間、先ほど入ってきた扉がバタン!!!と大きな音を立てながら勢いよく開け放たれた。それと同時に恐ろしいスピードのフランが部屋へと突っ込んできた。向かう先は……

 

「待てフラン!!そんなスピード出来たらああああああああああああああ!!!」

 

 もちろん信の腹である。いつも会うたびにフランが突っ込んでくるのか?そんなことが出来るのが信くらいだからだと後のレミリアが語った。

 もちろん吸血鬼の全力突進に耐えられる素材などあるわけもなく、信の背が壁に衝突した瞬間脆く儚く壁は粉になった。衝撃がでかすぎるのだ。

 

「ゴホッゴホッ……信、生きてる?」

 

 砂埃を手で払いながら一応確かめる。

 

「お、おう。大丈夫大丈夫」

 

 もちろん無事だ。会うたびに繰り返されるこの光景。信ならば避けることも容易いのでは?と思わなくもないが聞くだけ野暮な話なのだろう。

 

「フラン……。お前はゆっくり挨拶とかできないのか?」

「だってお兄様なら平気じゃん!」

「いやまあ平気っちゃあ平気だけど……」

「それよりもお兄様!!今日紅魔館(ここ)に泊まるんでしょ?だったら弾幕ごっこやろ!」

 

 いつも以上もニコニコとした純粋な笑顔でねだる。なんだかんだで今まで信は紅魔館に泊まる事が無かったためテンションが上がっているのだろう。

 

「やるのはいいけど飯食ったのか?」

「ご飯なんか後でいいよ。それより早く」

「だめだ。ちゃんと食べてから来なさい。咲夜ここは俺が直しとくからフランに飯用意してやってくれ」

「あなたはお客様なのよ?部屋は別のところを用意するから」

「最近魔力の使い方探してたらいろいろ試したいことが出来たんだよ。で、これはその試したいことにうってつけなわけ。だからここは任せてくれ。ほらフラン、早く飯食ってこい」

「ブーブー」

 

 ブーブー言いながらもフランは扉に向かって歩き始める。なんだかんだで言うことを聞くあたりが本当の兄妹のようで微笑ましかった。

 

「そういうことならお願いするわ」

「おう」

「咲夜~、早く来てよ。さっさと食べてお兄様と戦りたいんだから」

「はい、すぐに準備します」

 

 フランが食堂へと向かい2人だけとなった空間。

 咲夜はこの時あることを迷っていた。

 

「さぁて、まず壁からやるか」

「ねえ……信……」

 

 2人きりの今が絶好のチャンス。信はいつも誰かといる。

 

「何だ?」

 

 本当に今でいいのか?もう少し待ってから……

 

「その……ね」

 

 彼女は今、生きてきた中で最も頭を回していた。どうしてか?単純。大切なものと大切になりうるものを天秤に掛けているのだ。

 誰だって慎重になるし誰だって臆病になる。

 

「…………」

 

 いや、今しかない!

 

 そして彼女は、大切になりうる物の為に勇気を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢様の写真……後で私にもくれないかしら?」

 

 レミリアの写真(大切に成りうる物)の為にレミリアのプライド(大切な物)を犠牲にする勇気を出した。

 

 彼女の勇気のこもった一言を聞き、信はしばらく黙った後、ニヤリと、ただただ邪悪に笑った。

 

「……お主も悪よのぉ」

「お代寛さまほどでは」

「その内現像しといてやるよ」

「ありがたき幸せ」

 

 深々と頭を下げ、その普段は絶対にしない嬉しさが滲み出たニヤケ顔を見せぬよう、咲夜はその場から姿を消した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさま!行ってきます!!」

 

 早食いとも言えずかといって普通でもない素晴らしい速度で夕飯を完食したフランは一目散に部屋を出て行った。

 

「フランったら忙しないわね」

「信と弾幕ごっこをすると約束していましたのでそれが原因かと」

 

 食器を片付けながらことの要因を話すと「そういうこと」と納得した。先程カリスマブレイクしてうーうー言っていたのが無かった事のように優雅にティーカップを傾けている。

 

「ねえ咲夜」

「何でしょうか?」

 

 何気なく答えるいつもの呼び掛け。妹思いの彼女の事だからフランが信にばかりなつくことを愚痴りでもするのだろうと思っていた。

 

「夜這いは仕掛けるのよね?」

 

ガシャン! と食器が何枚も連続して床へ衝突して砕けていく。

 

「なんの音ですか!?」

 

 音を聞きつけ妖精メイドが慌てて食堂に入ってきた。

 

「わあ!今片付けます」

「大丈夫。私がやるから」

「ですがメイド長……」

「私がやるから」

「は、はい……」

 

 咲夜の謎の気迫を感じてすぐさま食堂を出て行った。

 能力を使うことも忘れ動き続ける時間の中で割れた食器を片付ける咲夜を見て、レミリアはもう一度口を開いた。

 

「夜這いは仕掛けるのよね?」

 

ガシャン! と再び

 

「メイド長!大丈夫ですか!?」

 

 と再び

 

「大丈夫だから」

 

 と再び

 

 更にバラバラになった食器をもう一度集めたところで

 

「夜這いは……」

「聞こえてますから!!」

「フフッ♪ごめんなさいね。でもそんなに慌てふためくあなたを見るのは久しぶりなんだもの」

「お戯れを……。しかし何故急にそんなことを」

「貴方、それは本気で言ってるのかしら?」

 

 穏やかに笑っていたレミリアの雰囲気が突然変わった。イスに肘をつきながらでも感じるそれは、まさに帝王の威圧感。普段はどれだけ砕けていても、誰にいじられようと、彼女は夜の帝王。その事実だけは変わらない。長年彼女に仕えていた咲夜だからこそ、彼女のその威圧感は怒りと呆れから来ていることが分かった。

 

「お嬢様、お静まりになってください。メイド達が逃げ出してしまいます。」

「……それもそうか」

 

 威圧感がぱっと消える。それと同時に廊下からバタバタと何かが倒れるような音がしたが今はそんなことを気にしていられる状況じゃなかった。

 

「もう一度聞くわ。貴方それは本気で言ってるの?」

「なんの事か……」

「はあ……貴方、信を落とす難易度を少し見誤ってないかしら?」

 

 空になったティーカップを手で遊ばせながら疑問を投げかけた。が、咲夜は急に何を言っているのかわからないといった表情でキョトンとしている。

 

「そうか……あなたは今までそういうことには無縁だったものね。……彼が初めて幻想郷に来た時、しばらくの間どこで寝泊まりしていたのかは知ってるわよね?」

「博麗神社……ですよね?」

「ええ。そこには誰がいて、誰が頻繁に出入りしているかしら?」

「霊夢が暮らしていて……魔理沙とアリスがよく顔を出してますが……」

「それよ」

「?」

 

 急な指摘に驚きながらも必死に考えるが自分の主が何を言おうとしているのか全く分からない。それとはいったい何なのか。

 

「まるで分っていないようね……。信はあの3人と約一週間ずっと一緒にいたのよ?」

「……ッ!私はあの3人に遅れを取っている……と言うことでs「違あああああう!!!」」

 

 咲夜の言葉を遮りながら突然飛び上がりテーブルの上で腕を組み仁王立ちする。

 

「咲夜!あなたは何も分って無いわ。まったくと言ってもいい程にね。いい?信はあの3人と一週間ずっといたのよ?幻想郷の中でも美少女に分類される容姿のあの3人にね。年頃の健全な男が本来あの3人に囲まれて生活してたらどうなるか分かってる?」

「えっと……」

「性欲にブーストがかかるのよ!!」

「性欲にブースト!?」

 

 今まで聞いたこともない言葉の組み合わせに困惑するしかなかった。そもそも自分の主人とはこんな性格だったかと自らの記憶と照らし合わせていくが全く当てはまらない。

 それもそのはず。今までレミリアはこのような自分を誰にも見せた事は無かった。いや、見せる事が出来なかった。

 彼女は単純に、恋バナをする相手がいなかったのだ。

 本来であれば彼女は今日のこのことを後々公開することに成ったはずだ。なんてったって初めての恋バナで「性欲にブーストがかかる」などというトンデモワードを作り出してしまったのだから。

 

「それなのに彼は何も起こさなかった。つまり!これは私の考えだけど、彼は他の男どもに比べて恐ろしい程に性欲が少ない。だから彼を落とすには受け手じゃダメ。自分から攻めるしかないのよ!!」

 

 そして、レミリアの怒涛のマシンガントークに困惑するばかりだった咲夜が初めて、自分から自分の意見を述べるために口を開いた。

 

「流石です!お嬢様!」

 

 時を止めてペンとメモ帳を用意してレミリアが述べたことを一字一句逃さずメモをした。

 何を隠そう、レミリアがこの日を悔やむことなく、むしろ誇るようになったのは純真な乙女だった彼女の本心からの尊敬が原因であった。

 

「いい?確かに少しは後れを取ってるかもしれないけどそれはあくまで友人として。異性としてスタートラインはみんな一緒。だったら今、ライバルに差をつけるには夜這いでも既成事実でも妊娠でもとにかく攻めるのみよ!恐らくこの戦いは、最初にアプローチしたものに流れが来る。お母様のようにね」

「ふむふむ……………ん?」

 

 うんうんと頷きながらメモを取っていた咲夜の手が止まる。

 

「お、お嬢様……今なんと仰いましたか?」

「ん?だから夜這いでもなんでも」

「もっと後です」

「最初にアプローチ」

「もう少し」

「お母様のように」

 

 その言葉とともに咲夜の体が凍り付いた。レミリアに両親がおり、会う機会こそは無かったが話は何度も聞いたことがある。

 如何なる者にも屈する事は無く、その肉体のみで他の吸血鬼たちを屈服させ、ヴァンパイアロードまで上り詰めたとされる【夜の覇王】

 たとえどんな重罪を犯していようとも、たとえどんな醜い姿をしていようとも受け入れ、吸血鬼や妖怪。果てには人間にまでもその存在を信仰されていたとされる【昼の聖母】

 

「【昼の聖母】が【夜の覇王】に……夜這いを……仕掛けた?」

「ええ。その時出来たのが私。ってそんな事はどうでもいいのよ!」

「どうでもいいって……」

「咲夜!!」

 

 再び真剣な顔をして咲夜をまっすぐ見つめるレミリアに態度を改める。

 

「この紅魔館に住まわせてるって事はね、あなたも美鈴も、血は繋がっていなくとも私の家族よ。だから、2人のどちらかだけをひいきすることはできないわ。けど、私がお母様から受け継いだ全てをあなたたちに教えるわ。悔いの無いよう……いえ。勝ち取ってきなさい!!」

「……はい!」

 

 彼女はこの時、シンプルに感動していた。主人が自分たちの為にここまで考えてくれているのだと、ここまで自身の経験を差し出してくれるのだと。

 

「決行はできるだけ早い方がいいわ。けど焦る必要はないのよ?あくまであなたのペース。貴方の心の準備ができしだいでいいの」

「お嬢様……」

「考える時間が必要よね。今日はもう妖精メイド達に残りの仕事を任せてじっくり考えなさい。いつ、どこで、どうやって仕掛けるのかを」

「はい……失礼します」

 

 咲夜の姿が消え、満足そうにイスに深く腰掛けた。ふーっと深く息をつき咲夜が去り際に入れていった新しい紅茶を口にする。

 

「さて……この『運命』。一体どんな形に収まるのかしらね。見てしまうのは簡単だけど……それでは面白くない。成功しようが失敗しようが、必ずあなた達の糧になるわ。全力でぶつかってきなさい。咲夜、美鈴」

 

 誰もいない。何も聞こえない。そんな静かな空間でたった一人、夜の帝王は二人の家族の幸せを願った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~数時間後~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レミリアのご享受から約3時間後。咲夜は自分の部屋であることをしていた。

 

「よし、これね」

 

 鏡の前でとある決心をし、そこからいろいろ準備をして自室を出る。向かう場所はもう決まっている。

 

(でも本当に今でいいのかしら……いえ、今こそが絶好のチャンス)

 

 一瞬不安がよぎり立ち止まりそうになるが、強い決心は簡単には折れない。

 何かというと、信に夜這いを仕掛ける際の下着選びだ。実際今来ているものは下着にバスローブを一枚羽織っただけでほぼ半裸だ。こんな状態を誰かに見られたら中々恥ずかしいだろうが、いまの彼女にそんなことは関係なかった。

 

(私は今日、彼を落とす)

 

 心の中で決心を改める。それのおかげなのか、未だかなり残っている羞恥心がある程度薄れるような気がした。

 そして、もうすぐ信の部屋へと着く。

 

(最初が大事よ。十六夜咲夜)

 

 大事なことの最終確認を脳内で行いながら着々と歩を進める。

 

(大丈夫。きっとうまくいくわ。なんだってお嬢様の……)

 

 突然、咲夜の志向が完全に停止する。

 信の部屋に行くための通路の最後の曲がり角を曲がった瞬間ある人物と目が合った。

 

 髪は赤く、腰まで伸ばしたストレートヘアー。側頭部を編み上げてリボンを付けて垂らしている。

 服装はいつものチャイナ服とは違い、バスローブをで体を包み込ませており、自分にはない体の凹凸が直接見えずとも強調されている。

 そして、赤く染まってはいるが、何か決心のついたような表情だった。

 そう、この紅魔館の門番を務めている紅美鈴である。

 彼女がちょうど目的地を挟んだ咲夜とは反対側の曲がり角を曲がり、目が合った。

 

「「…………」」

 

 2人は無言のまま来た道を戻る。そしてもう一度角を曲がると、再び同じような服装の2人の目と目が合う。

 

「め、美鈴?ど、どうしてここに?ま、ままだ勤務時間のはずでしょ?」

「さ、さ、咲夜さんこそ……」

「私はすでにお嬢様から許可をいただいていて……」

「私もお嬢様が今日は好きなタイミングで切り上げていいと……」

 

 焦燥と困惑。2つの感情が入り混じった2人は、思考の回転を鈍くしながらもとりあえず目的地に歩を進める。

 そして当たり前のことだが、同じ部屋の前で立ち止まり、同じドアノブに手を伸ばす。が、直前のところで両者の手が触れ三度目と目が合う。

 

「まさかこうも2人とも……」

「同じ日に同じタイミングになるなんてね」

 

 2人の間に妙な空気が流れる。ほぼ半裸で目を合わせ同じ部屋へのドアノブに手を伸ばすこの状況。シュール以外の他でもない。

 

「「フフッ」」

 

だがそんな状況だからこそ、決心はしたがどうしても気が休まなかった2人の緊張をほぐした。

 

「「ハハハ」」

「こんなこともあるのですね」

「そうね。こんな人生に1回位しかないことが完璧にかぶるなんて……」

 

 緊張から解放された2人は声を潜めながらも笑いあった。

 

「正々堂々」

「恨みっこなし」

 

 長年同じ主に仕えてきた二人だ。こんな状況だろうとも互いの尊敬の姿勢は忘れたりはしない。

 そして、互いに頷きあい、もう一度2人で目的の扉を開く。

 

 ガチャリと開けられた先は、ただ暗かった。音は空気が流れる音だけで他には何も聞こえない。いや、よく耳を澄ましてみるとスーという空気が狭い出口から押し出されるような音が聞こえる。

 そう……つまり……

 

「「(寝るの早!!)」」

 

 2人は信の就寝の速さに普通にびっくりした。普段常に余裕を持った態度で過ごし、常に兄のような安心感を与えてくれる人物がこんなに早く寝ているとは思っていなかったのだ。

 

「(まだ10時ですよ!?どうするんですか咲夜さん!これじゃあ夜這いは仕掛けられないですよ!)」

「(どうするかって……どうしようもないわよ!まさかこんなに早く寝てるな思ってなかったもの……)」

「(あああ!このままじゃせっかくお嬢様に教えてもらった夜這いの知識が無駄に……あ)」

 

 その時美鈴に電流が走る。レミリアに教えてもらったことは確かに自分の知らないことばかりだったためそのまま受け入れていた。だがしかし、レミリアからはある大事なことを聞いていなかった。

 

「(咲夜さん咲夜さん)」

「(ん?)」

「(夜這いってどうやるんでしょうか?)」

「(ちょっと美鈴それはお嬢様がしっかりと……)」

 

 咲夜も言われて気づいた。レミリアに教えられたことは信の特性であったりタイミングの重要性であったり今夜、夜這いを仕掛ける際には非常に大事なことばかりだ。しかし、あることを聞いていない。

 

「(夜這いって……どうやるの?)」

 

 そう。乙女な2人はそもそも夜這いをどのようなシチュエーションでやるのか分かっていないのだ。何もわからないであろう2人にどうしてカリスマモードのレミリアがそれを教えるのを忘れたのか。実に簡単。

 500歳児がそんなこと知ってるわけないやん。

 

「(……ここはいったん引き返して)」

「(待って美鈴。このままいきましょう)」

「(え!無理ですよ咲夜さん!私たちはそもそも夜這いの夜の字も知らないんですよ?いったいどうやって……)」

「(そもそも夜這いって何故夜這いというんだと思う?)」

「(え、それ……夜にやるか……ら?)」

「(それはもちろんそうだけど、じゃあ『這う』を使うのはなぜ?)」

「(ええと……それは……わかりません)」

 

 こめかみに両手の人差し指を押し付け思考を巡らせる美鈴だったが結局何も思い浮かばなかった。

 

「(そもそも這うっていう行動はね、物音を立てないようにするための自然界の知恵なのよ)」

 

 ネコ科の動物を想像してみてほしい。彼らは獲物を狙う際姿勢を低くして物音を立てずに忍び寄る。猫の足音はネズミにも気付けないほど静かなことで有名だ。

 

「(どうして音を立てないようにするか……どうして夜に行うか……)」

「(も、もしかして……)」

「(そう。『夜這い』とは『夜』に『這い』、寝ている相手気付かれない様にする行為だと思われるわ)」

「(さ!流石咲夜さん!!)」

「(ええ。だからこのまま……)」

 

 スルりとバスローブを咲夜は脱ぎ捨て、あられもない下着姿になる。

 すでに覚悟は決まっており、目的も方法もはっきりしている。だから今の彼女は迷いがなかった。

 

「(……はい)」

 

 そしてそれは美鈴も同じこと。同じくバスローブをその場に脱ぎ捨て下着のみになる。

 そしてしばらくドアの前で止まっていた二人の足は再び動き始める。

 足音は無い。聞こえるのは彼の呼吸音と、自分の高鳴っていく鼓動のみ。

 

「「……………」」

 

 そして、ベッドを挟む位置で二人は立ち止まり、今一度目的の人物に目を向ける。

 安らかに眠るその顔は、この世のすべてに希望を見出している少年のような。逆に日々の激務から解放されひと時の安息を堪能している様な。

 そんな、言葉では表せないような愛らしさを二人は覚えた。

 

「「……」」

 

 無言で頷き合い、彼を守っている布団へ手を伸ばす。あと数分で、あと数秒で自分たちは一線を越えるのかと頭に浮かび顔に熱を帯びる。が、それでも伸ばす手を止める事は無い。

 無い……はずだった。

 

「んん……」

 

 伸ばした手が触れる前に布団が動いた。普通なら信が寝返りをうったのでもと思うだろう。が、その声は彼のものとは思えないほど……高かった。

 

「ッ!!」

 

 めくれた布団の下には、本来この部屋にいるはずのないフランドールが信の巨体の上で心地よさそうに眠っていた。

 とっさに二人は自分の口を手で押さえ声を漏らさないようにする。今この状況で信ならまだしもフランに起きられるのはかなりまずい。そのため二人は物音を立てぬよう即座に出口へと体を向けた。

 フランドール存在の為、作戦(寝取り)失敗である。

 

「んあ?」

 

 だがしかし、その声を聴いた瞬間二人は動きを止めて息をひそめた。

 今の新たな目標はこの部屋から誰からも気づかれずに出ることである。しかし信が起きてしまった場合、急いで逃げ、気配を立てるよりも、その場で待機して気配を殺し暗闇に溶け込むことが最適解。

 

「ん……?……なんだ?……お前ら?」

 

 ミッション失敗である。そりゃそうだよめっちゃ近いもん。

 冷や汗をだらだらと流しながらも二人はその場から動かない。いや、動けない。異常事態の連続で頭が今の状況を処理しきれていないのだ。

 

「また雷でも落ちたのか?愛、静」

「「え?」」

「ほら、はあく来い」

 

 突然腕を掴まみ二人をグイッと引き寄せ、慣れた手つきで自分の両サイドに美女二人を収めた。

 

「「(ええええええええええええええ!!!!)」」

 

 もちろんこの不測の事態に二人は動揺しまくりである。

 とっさに逃げ出そうとするが、信に腕を掴まれている+フランがすぐそばで眠っていることからその動作を中断する。そしてこれまた慣れた手つきで他三人に動きが分からないよう、かつ全員に均等に乗せられるように掛け布団を戻した。

 逃げる難易度は増すばかりである。

 

「スゥー……」

 

 そんなこと知りもしないといった様子で再び深い眠りに落ちる信。もちろん半裸の二人は眠れるような心情ではない。

 

「(ど、どうしましょうか……)」

「(どうするって……私が聞きたいのだけど……。彼、寝ぼけてるみたいだし)」

 

 混乱する思考とは別に布団の中はぬくぬくと心地よい。加えて信の近くにいるため謎の安心感に包まれていた。

 

「「ッ!!」」

 

 なんだかんだで居心地も寝心地もよかった二人。が、一切の眠気を持たなかったのは信が真横で寝ていること。不測の事態が連臆したことの他にもう一つ理由があった。

 枕がない。単純に頭が低い位置にあるせいで寝るには少々苦しい体制だったのだ。そんな二人の頭の下に何かが潜り込んできた。と同時に、今まで自分を拘束していたものがなくなったのも感じた。

 そう、潜り込んだのは信の腕。つまり腕枕である。

 

((はわわわわわわわわわ……))

 

 意中の相手と同じ布団で寝、更にはその相手にがっつり密着している。覚悟していたならともかく、数時間前まで何も知らなかった二人にはあまりに刺激が強すぎた。

 

「くぅー……」

「え……」

 

 が、美鈴は信の持つ不思議な安心感と持ち前の寝つきの良さにより、物の数秒にして夢の中に直行した。何も問題がないときは常に寝ている様なイメージがあった美鈴だが、この状況でこの一瞬で寝入ったことに咲夜は思わず声が出た。

 

「(ちょ、ちょっと美鈴!)」

「くぅー……」

 

 最早起きる様子はない。

 

「めっ、なっ…………はあ。スゥー……フゥ……」

 

 この状況で誰に何を言おうとも意味はない。だって全員寝てるから。

 今から何かできるわけでもなく、まだ早いが慣れない思考を回したせいで余計に疲れた。

 

「私も早く寝よう……」

 

 そのまま寝ることにした。だが眠気はすぐに襲ってくるもののなかなか寝付くことが出来ない。なぜなら現在彼女は仰向けの状態。だがいつもは右半身を下にして横向きに寝ているのだ。その体制を今とるとちょうど信の方向を向くことになる。

 だが、今更そんなことにためらうことなく、彼女は信の方向に体を向けた。そして一番頭にフィットするポジションを探り始めるがなかなか見つからない。

 

(ここね……)

 

 少しずつ移動してベストなポジションを見つける。その時、彼女は気づいた。

 

(近っ!)

 

 彼女のベストポジションは信の肘の少し内側。そのため彼女の体は彼の体の目と鼻の先にあった。

 

(まあ……これ位は……ね)

 

 今更怖気づくこともなく、全身をそのまま密着させる。

 全身から自分以外の体温が伝わっていくのを感じていた。こんなこと生まれて初めてのはず。

 

(この感じ……どこかで……)

 

 そして、咲夜は眠りについた。

 不思議な安心感と少しの羞恥心と共に。あと一つの感情……彼女はそれを今まで感じた事が無かった。

 が、確かに。はっきりと。()()()()を感じて彼女は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………パパ……ママ」

 

 すでに落ちた意識の中で、呟くように口にしたその言葉は、誰の記憶にも残る事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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第60話【思惑(裏)】

おはこんばんにちは。さまりとです
UAがなんと10000を突破しました。読んでくださっている皆さんには感謝の言葉しかありません。
それでは今回も、ゆっくりどうぞ。


「フラン、まだまだ能力の使い方がなっちゃいないな」

「むう……もう一回!」

「もうおしまい。20回もやったんだから十分だろ」

「ぶーぶー」

 

 夕食を食べ終えたフランとの弾幕ごっこ。もちろんフランは自分の能力である『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』を使用して様々な攻撃を仕掛けようとしたが、能力に関しては目を潰す寸前に毎回妨害されすべて不発に終わり、スペルカードはすべて完璧に対処されった。20回の弾幕ごっこはすべて信の完封勝利となった。

 

「くぁあ……。俺はもう寝るからな。フランも自分の部屋に戻りなさい」

「ぶーぶー……お兄様、まだ9時だよ?」

「ああ、もう9時だ。フランも早く寝ろ」

「いーやーだー!もっとお兄様と戦りたい!」

「早く寝ないとでっかくなれないぞ?」

「ぶーぶー。じゃあお兄様と一緒に寝る!」

「なら着替えてきなさい」

「はーい」

 

 嬉しそうに返事をしたと思ったら、恐ろしいスピードで部屋を出て行った。もちろん扉は跡形もなく壊れている。

 

「あちゃー……」

『信!』

『ん?なんだフェリーチェ』

 

 フランが出て行ったのと同時に突然フェリーチェがいつもより高いテンションで語りかけてきた。こういう時は大体何かに付き合うことになる。

 

『寝たらクトゥルフ神話TRPGやろう!!』

 

 少し前に何か面白い遊びがないかと聞かれ、HDDが何もないためいろいろ都合のいいクトゥルフ神話TRPGを勧めた。結果としてフェリーチェと共が特にドハマりして最近は寝た後、明晰ルー夢でいつもメンバーは変わるがセッションをしている。

 

『お前ほんと最近そればっかりだよな。毎回発狂するのに』

『面白い物は何があっても面白いの!それと今日は全員参加するって』

『KPは?』

『信!』

『はいはい。じゃあ今日は6人もいるから……大スケールのヒューマンドラマが楽しめるシナリオにしてやろう。キャラシは作っておいてくれ』

『やった!じゃあまた寝た後でね!』

 

 と言って連絡を切った。寝たあとでと言うのは少し変かもしれないが……そこはご愛敬。

 そなこんなでパジャマに着替え、寝る準備を進める。

 

「出来た!!」

 

 といつもの勢いで戻ってきたフランは寝巻きに着替え、右手には最近のお気に入りのぬいぐるみを抱き抱えている。

 きちんと部屋に入りきったところで扉を直し始める。直した瞬間にぶっ壊されたんじゃなんか嫌なのだ。

 

「よし……寝よう。そろそろ俺が限界だ……」

 

 体力には自信のある信ではあるが、明らかに目が細くなっている。何分、今日は無双乱武を使ってはいるためその時点で一旦体力を使い切っている様なものなのだ。加えてフランとの20連戦の弾幕ごっこだ。疲れ具合で言うと全力でシャトランをやった後、100mダッシュを20本。それを朝昼晩やったようなものだと思ってほしい。

 電気を消しベッドに倒れこむ。それに続けてフランも潜り込みもぞもぞと信の体の上に収まった。

 

「そこに寝んのか?」

「うん。ここがいい」

「そうか。お休みフラン」

「お休みなさい。お兄様」

 

 電気を消し一度深く呼吸をし完全に眠ろうとする。

 

「ねえ、お兄様」

 

 そこでいつものテンションの高い声とは違い、何かを考え込んでいる様なフランの声が彼の就寝を中断させた。

 

「ん?」

「あの……ありがとね」

「何だ急に改まって」

 

 突然のことにキョトンとした顔で頭を起こした。共のことならすでに一度お礼は言われたし、その後フランだけに何か特別なことをやった覚えもない。

 

「ちゃんとお礼言っておかなきゃって……ずっと思ってたの。あの時、私と一緒に来てくれたこと」

「あの時?レミリアを説得しに行った時か?」

「うん。たぶんあの時、私一人だったら結局お姉様のところに言ってなかったと思うの。あの時はまだどうしても怖かったし……」

「……」

「あと、外に出るキッカケをくれたことも」

「外は楽しいか?」

「うん!あの日からね?どんどん楽しみが増えていくの!」

「ほお……例えばどんな?」

「例えばチルノはどんなに惨敗しても私を怖がったりしないの。いっつも『弾幕ごっこよ!アタイがサイ……信の次にサイキョーだってこと今日こそ証明するんだから』って言って。そしたら大ちゃんが『それって最強って言わないんじゃ』って冷静に突っ込んだり」

「うんうん」

「あとね、慧音先生はたくさん初めてのこと教えてくれるの。でも先生の頭突きはもう食らいたくないなあ。すっごい石頭なんっだもん」

「確かにあれは痛いな」

「紅魔館のみんなとも前と全然違ってね、パチュリーは図書館のいろんな本を見せてくれて魔法も教えてくれるし、美鈴はいつも私の相手をしてくれて……近接だとすごい強いのに離れたら何もできなかったり。咲夜も今は私に色んな事を話してくれるの。何が食べたいか?とかね。それに…お姉様も。たまに皆に弄られて半泣きになるくせに、私たちの事をずっと考えてくれてるのも分かる。……本当に……本当に私は今まで何も知らなかったんだ。って思ったの」

 

「それとね。今みたいになれたのはやっぱりお兄様のお陰なんだって、皆言ってる。前の私じゃどうしても身構えちゃうって……」

 

 残酷ではあるが、誰もが少し前のフランを知っていたらYESと答える事だろう。生きるものとしての当然の考えだ。それほどに前のフランは危険だった。

 

「それでね?やっぱりちゃんと改めて言うべきだって、私が思ったの。だから……」

 

 伏せていた顔をあげ、まっすぐ目を見て彼女は言った。

 

「ありがとうお兄様。私今、スッゴい幸せ」

 

 その顔は、ただただひたすらに純粋な笑顔だった。見るものすべてに好奇心を抱き、明日に希望を見ている様な。

 

「そいつは良かった」

 

 正直な話、彼はずっと心配だったのだ。外に連れ出したのは事はフランのストレスになっているのではないか?共を抜き取ったことで今と前の自分にギャップを感じて苦しんでいたりしないか?などと。ずっとかかっていた肩の荷が下りたような気がして、彼は安心できた。

 

「ねえ、お兄様」

「どした?」

「私……いつか共ちゃんを受け入れられるかな」

「……それは分からないな。どうなるかはお前次第だ」

「うん。……やっぱりそうだよね」

「でも、だ。お前がいつか共を受け入れたいって気持ちがあるんだったらきっと大丈夫だよ。人生は長い。ゆっく頑張っていけばいいさ」

「うん。……ありがと」

 

 分からない。そう口では言ったが、心の中では確信していた。どれだけ時間がかかろうと、どれだけ困難に見舞われようとも、フランは共を受け入れることが出来ると。また一つ、フランの思いを聞いたおかげで肩が軽くなったような気がした。

 

「さあ、早く寝よう」

「ねえ、お兄様。お願いしてもいい?」

「ん?」

 

 今度はなにかと思い再び顔を上げる。正直かなり眠いがフランが自分に妹として信頼を寄せてくれているのだ。寝不足になってでも願いを聞こう。

 

「子守歌……歌ってくれない?やっぱりまだ眠くないや」

「お安い御用………………♪♪♪」

 

 その歌声は……どう説明しようか。もし聞いたとしたならいい歌声だとは思わないだろう。はっきり言ってうまくはない。綺麗というわけでもない。ましてや聞き入るようなものでもない。

 だが、彼女は心地よかった。川などにに行けば必ず聞こえる水の流れる音のように。外に出れば必ず聞こえる動物達の話声のように。耳を塞いだ時の静寂のように。常にこの空間に存在している空気の流れる音のように。

 何の違和感も感じず、何も考えず、何も思わず、ただ、その歌を聞き流していた。ただ、ふわふわとした心地よさを感じていた。

 そして、眠った。信が醸し出す安心感と、彼の歌の心地よさを全身に感じながら、彼女は眠った。恐らく自分でもいつ眠ったのか分からないだろう。

 

「……zZZ」

 

 そして、信も寝落ちした。恐らく自分でもいつ眠ったのか分からないだろう。フランが寝たことを確認したのか……または感じ取ったのか。

 歌が止まり、その部屋は静寂に包まれた。その何もない空間で、ただぐっすりと、二人の兄妹は眠り続けた。

 一時間後、二人の来客が訪れるその時まで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~約一時間後~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フッフー。今日こそは発狂しないで信のシナリオを攻略して見せるぞ」

 

 と、リビングのテーブルの上にキャラシ、ダイス、ジュース、お菓子を準備したフェリーチェがムフフと浮かれまくっている。

 

「随分と張り切っているな、フェリーチェ」

「旦那も知ってるでしょ?信が作るシナリオはいちいち面白いからね。だから張り切りすぎるくらいでちょうどいいんだよ!」

「それもそうですよ旦那。……そういえば信殿、今日はずいぶん遅いですね。もうそろそろ22:00ですが」

「あれ?ホントだ」

「まあ見てみればわかるでしょ~」

 

 と、ノームはテーブルの上に置かれたリモコンTVを付ける。もちろん何かの番組が映るわけではなく、信を客観的に映したリアルタイムの映像が流れるようになっている。それを付けてみるが…… 

 

「真っ暗じゃねえか……ん?」

「信……もしかして……ノーム、暗視モードに切り替えてくれ」

「おっけー。ポチっとな」

 

 リモコンに置かれている一つのスイッチを押すと画面が切り替わる。そうすると、見づらくはあるがしっかり目視できるくらいの映像が画面に映し出だされる。

 

「ん?寝て……るね」

 

 そこに移ったのはベッドの上で気持ちよさそうに熟睡している信の姿だった。一定のリズムで深く行われる呼吸から、彼の睡眠状態は安眠の一言に尽きるだろう。

 

「あっちゃ。やっぱりか」

「やっぱり?共、何か知っているのですか?」

「ああ。たぶん信は寝落ちしたんだ」

「寝落ち……とは?」

 

 ディーネの言葉とともに今日以外の面々は首をかしげる。妖精や妖怪がそうそう見る事でもないだろうし。

 

「人間って疲れがたまってたりだとか、ふと気を抜いた時だとか自分の意志に関係なく寝ちゃうことがあるんだよ。それが寝落ちだ」

「で、さっきのやっぱりってのはなんなんだよ?寝落ちしたらなんかあんのか?』

「信はな、寝落ちしたらこっちに来れないんだよ。こっちとは別の空間で普通に夢を見て、朝を迎える。毎回、寝落ちしたときは六時間半ぴったり寝るんだ。それまで起きることはそうそうない」

「って、ことは……」

「今日、信はKP出来ないな」

「ええ!ちょっと信!!起きてよ!」

 

 ガタガタとTVを乱暴に揺さぶりながら画面に向かって叫び続ける。が、信の表情は安眠のまま変わる事は無い。すやすやと気持ちよさそうに寝ているばかりである。

 

「起ーきーてーよー!!!」

「あ?誰か来たみてえだぞ?フェリーチェ、どけ」

 

 人の気配を誰よりも敏感に感じ取ることが出来る魔鬼が何かを感じたようで、彼の言葉に渋々画面から離れ、ソファにズボンと無駄に勢いをつけて座りこんだ。ほほを膨らまし分かりやすく不機嫌になっていた。

 

「この方々は……咲夜さんと美鈴さんですね。何か言い争っている?ようですが……」

「それに何なんだろうね二人の恰好。お風呂上りなのかな~」

 

 画面に映る二人のバスローブ姿の少女は、部屋に入ったあたりで何か言い合いをしたかと思うと、美鈴は急にそのまま出ていこうとした。

 

「何を話しているかわからんな」

「じゃあ音量あげるよ~」

 

『(そう。『夜這い』とは『夜』に『這い』、寝ている相手気付かれない様にする行為だと思われるわ)』

『(さ!流石咲夜さん!!)』

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 あげた音量から聞こえたとんでも発言が、その場の全員を固めた。

 

「この娘たちは何を言っておるのだ……」

「こんな格好してるし、大方夜這いでも仕掛けに来たんだろ?レミリアに焚きつけられたってところだと思うが」

「冷静に分析してる場合かよ」

 

 そんなこんな言っていると、咲夜がバスローブをするりとその場に落とした。もう彼女の身につけられているものは下着のみとなった。

 

「うわめっちゃエロい下着つけてる!!」

「スタイルもすごくいいですね」

「ふむ。無駄に痩せすぎてるわけでもなく肉が付きすぎてるわけでもない」

「普段からちゃんと食べてちゃんと動いてる証拠だね~」 

 

 と四大精霊は各々の咲夜のプロモーションに関する自分の見解を述べていく。フェリーチェはどこから取り出したのか、【93】と書かれた札を掲示していた。

 

「揃いも揃って何してんだよ……」

「評価……だが?」

「真面目な顔して答えんじゃねえよ!」

「フェリーチェ、その数字は?」

「咲夜の体の点数。非の打ち所がないほぼ完璧なプロモーションと言っても過言ではないね」

「なんかデジャブを感じるが……」

 

 そうしている内に今度は美鈴がバスローブを脱ぎ捨てた。四大精霊(審査員)の評価は……

 

「でかいな」

「でかいね~」

「でかいですね」

「【でかい】」

 

 満場一致ででかいの一言だった。何がとは言わないがでかいの一言だった。フェリーチェの得点版も【でかい】とだけ書かれており何も言わない。

 

「「……」」

 

 なんだか取り残される感じのした魔鬼と共。精霊とはこんな奴等ばかりなのかと呆れながらも、確かに思うところがある。

 

「でかい」

「でけえな」

 

 何がとは言わないが、二人も精霊たちと同じ感想だった。

 

「ですがこのままだと本当に信殿は寝取られてしまいますが……止めなくてもいいのですか?彼今、起きないのでしょう?」

 

 皆の表情が少し変わる。責任感の強い信のことだろうから、このままだと明日の朝、起きた瞬間から心情になるか大体わかるだろう。

 

「まあ、その辺は大丈夫だ」

 

と共は断言する。今のところ大丈夫そうな条件は一つもないが……

 

「なんで?信って今何をしても起きないんでしょ?」

「それはこっちからの話。外側からの刺激だったらいつも通り結構敏感だぞ。それに……」

 

 二人の乙女が信の体に触れようとした瞬間、掛けられていた布団がめくれ上がる。

 

「今はフランが一緒にに寝てるからな」

「ああ……ダブってた気配はフランのだったか」

 

 わかりやすく画面の中で慌てふためいている。なんというかタイミングが悪かったというか運が悪かったというか。

 

「でもまだ起きないね~」

「まあ今日は無双乱武使ったからな。いつもと疲れのレベルが違うから仕方ないさ」

『んあ?』

「っと、お目覚めのようだ」

 

 皆画面を同時に見ると、うっすらとだが確かに目が開いているのが分かった。

 

「しーん!!起ーきーてー!!!」

「残念ながら寝ぼけててもこっちの声は聞こえないからな。目と口以外は寝てるようなもんだから」

「器用なものだ」

『また雷でも落ちたのか?愛、静』

『『え?』』

『ほら、はあく来い』

 

 二人の半裸の美女を自分の眠るベッドに連れ込む映像が画面に映し出される。字面はひどいが……まあ……寝てるからセーフでしょ。

 

「おーきーて!!」

 

 先程より強く連続でTVをガタガタガッタン!と揺らしまくる。そんな健闘が報われる事は無く……

 

『スゥー……』

「一瞬で寝やがった……」

「まあ、もう朝まで起きる事は無いな」

「しいいいいいいいん!!」

 

 その場に崩れ落ちた。今日のセッションを誰よりも楽しみにしていたフェリーチェだ。見た目のコミカルさとは裏腹に内心かなりショックを受けていることだろう。

 

「まあまあ、今日は私がかわりにKPをやるから気を落とすな」

「ホント!?やった!」

 

 先程のリアクションはいったい何だったのかと言いたくなるような態度の目まぐるしい変化。まあドハマりしてるしね。仕方ないね。

 

「そういえば共がKPというのは初めてだな」

「まあ今までディーネや旦那が進んでやってくれてたからな。そのせいで自作シナリオが26個もあるぞ」

 

 何気にTRPG歴がこの六人の中で最も長い共だ。去年の夏、信にTRPGを教えてもらった時から完全にハマり、睡眠も必要としないため暇なときはずっとシナリオを描いていたのだ。

 

「じゃあ皆もうPCは出来てるわけだし、シナリオ名【絶望の先に】早速始めていこう」

「「「「「よろしくお願いします」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、最終決戦直前の最後のSAN値チェックだ。今まで少しずつ削るようにやってたが最後ということで思いっきりやらせてもらうぞ。1D6/1D20。それでは最後の運命の分かれ道。各々ダイスロールどうぞ」

 

 祈るように、狙うように、思うように、挑むように、各々の形で覚悟を決めてダイスを振った。絶望に落とされた中で、やっと見つけることのできた一筋の光。ここで発狂してしまったら間違いなく、全ての苦労が水の泡となることをPL達は直感していた。

 

「よし!成功!2の減少だ」

 

 まずは魔鬼が成功。最もSAN値が低かった彼が成功したため皆が少し安堵した。

 

「私も成功です。4減少」

 

 続いてディーネもセーフ。ギリギリではあるが見事発狂を回避。

 

「っく……失敗だ。13減少」

 

 が、ここで旦那が失敗。不定の狂気一歩手前まで一気に減らされる。

 

「あ、僕も失敗……でも1しか減んなかったや」

「なんで1D6より低い数値出してるんだ」

「ダイスの女神さまは僕の味方みたいだね~」

 

 こんなちょっとした奇跡を楽しむのもTRPGの魅力だ。

 そして最後のSAN値チェック。ある意味魔鬼よりも危ないフェリーチェのロールだ。

 

「行くよ……」

 

 全員が息をするのも忘れ、ダイスの行く先を見守る。コロコロと転がりダイスが示した数字は……

 

「…………成…功?やった成功だ!!」

「よかった……」

 

 皆が安堵の息をつく。気が抜けたフェリーチェはそのままの勢いで6面ダイスを振った。だが、TRPGを嗜む者は忘れてはいけない。

 

「あ、6減った」 

 

 ダイスの女神さまは気まぐれだということを。

 一気に全員の顔色が青ざめていくのが分かった。なぜなら皆体験したことがあるからだ。この流れはまずい。

 

「では、旦那とフェリーチェ。アイディアロールだ。成功したら一時的狂気に陥るぞ」

 

 KPの共が目で訴えていた。ここで二人が発狂したら絶望的だと。

 そして、二人はダイスに願いを込め、同時に振った。

 

「1クリ!」「100ファン」

 

 極端!!まあCoCでは稀によくある事。

 

「旦那は正気度が減ったが理解することを本能的に止め、発狂する事は無かった。じゃあフェリーチェ。2D10だ。最初に期間、後に内容な」

「3。だから7ラウンドか。狂気の内容は……6。6ってなんだっけ?」

 

 全員の顔が青ざめた。一時的狂気の6。それは間違いなく、その場に危険をもたらす。

 

「殺人癖、もしくは自殺癖だな。どっちになるかはダイスだ。……殺人癖だな」

「やっべえ……」

「待て、KP、この瞬間から誰が狂気に陥ったか確認できてもいいか?」

「それは幸運だ……と言いたいところだが、全員一度狂気に陥った人物を目の前で見ていることだし気づけていいぞ」

「よし、なら大丈夫だ。今回は精神分析持ちが2人いる。魔鬼、ディーネ頼む」

「「失敗!!」」

「ファ!?」

 

 二人の精神分析はそれぞれ85ある。それが同時に、それも連続して失敗するというかなり予定外の事態に見舞われ、普段絶対出ないような声が旦那から漏れる。

 

「KP、マーシャルアーツ+キック」

「待って旦那!!殺さないで!!!」

「もちろん。KP、ノックアウト宣言だ」

「ロールどうぞ」

「両方成功。ダメージは……16」

「「「えっぐぅ……」」」

 

 現在のフェリーチェの耐久値は12。つまり70の確率でノックアウトは出来るのだ。決して安心できる数値ではないが、ショットガンを所持している殺人フェリーチェが7割で気絶してくれるのなら十分すぎるほど幸運だ。

 

「ノックアウトが出来たか判定を……あ」

「え……」

 

 ノックアウト攻撃というのは現実ではかなり高度な技だ。相手の体の強さと自分の攻撃力がかみ合って初めて気絶させることが出来る。今回は7割で成功だが。しかし、経験者の方々は知っていることだろう。

 

 CoCにおいて7割なんて信用できないことを。

 

出た目は71。CoC名物【妖怪1足りない】の出現である。CoCにおいてはこれもまた、稀によくある事。

 

「待て待て。ノックアウト宣言をしているからダメージは1/3になるはずだ」

「ああよかった。まだ生きてる……」

「旦那、フェリーチェ……それは成功した場合だよ」

「「へ?」」

 

つまり……だ。

 

「旦那のはなった蹴りは、正気度をこの場の誰よりも多く減らしたことが原因だったのだろう。気絶させるつもりだったフェリーチェをその足で、一蹴し、絶命させた。フェリーチェは耐久値-4だ」

「いやああああああああああああ!!!」

「応急手当+医学します!!」

「ロールどうぞ」

「成功……5回復!」

 

 ディーネが焦ったように振ったダイスは、その必死さが女神に伝わったのか見事蘇生することに成功した。そのギリギリの攻防に思わず全員の力が抜けた。

 

「生きてる……私生きてるよ……」

 

 自分の分身である探索者の生存に感動すら覚えていた。だがしかし、忘れてはいけない。

 

「あれ?でもこれって~……」

「自動気絶だな。フェリーチェはギリギリ息を吹き返したが、目を覚ます事は無いぞ。それに攻撃を受けた回数は1回だけだからもう回復もできない」

 

これはあくまで最終決戦前のSAN値チェックであることを。

 

 

「って、ことは……」

「さあ、最終決戦だ」

 

 フェリーチェの疑問を遮るように共は宣言した。さすがにちょっと気の毒だった。

 

「え?」

 

 誰よりも楽しみにしていたフェリーチェの探索者は、最終決戦を前に何もできなくなってしまったのだ。

 

「え?」

 

 他の全員は行動を始める。目の前の脅威を取り除くために

 

「え?」

 

 その後、シナリオ【絶望の先に】は無事ハッピーエンドを迎えた。戦闘やトラップが少し多かったにもかかわらずロストなしでだ。

 しかし、最終決戦を前に……最終決戦のみに全く参加できなかったフェリーチェは、この不完全燃焼をモヤモヤを全部信に八当てることを心に誓った。

 

 

 

 




CoC楽しいよ。みんなやろう



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第61話【楽しみ】

「ん……」

 

 日が昇り始める頃、少年は目を覚ました。時刻は午前4時。いつも通り起きているのは動物達だけで、それ以外の声や音は聞こえない……そんな朝。

 そして少年は、目を覚ますと同時にある異変に気付く。

 

「腕の感覚がねえ……しかも両方……」

 

 皆さんも試しにやってみてほしい。寝る前、枕の下に自分の片方の腕を潜り込ませ、腕に頭が乗った状態で就寝する。するとびっくり!次の朝には自分の腕の感覚が全く無くなっています。それが今朝、自分の両腕に起こっていることに彼は気が付いた。

 

『信、起きたか?』

『ん……ああ。おはよう共。フェリーチェが旦那をぶっ殺して大変だったな。いやー笑った笑った』

『お前寝落ちしてたぞ?』

『……マジ?』

 

 というのも普段明晰夢を見ている彼だが、普通の夢の中での記憶はぼんやりとしており、明晰夢との区別をつけられないのだ。

 

『ってことはすっぽかしちゃったのか。みんなに謝っておかなきゃな』

『まあ、みんなお前が疲れてるから何も気負う必要はないって言ってたぞ。それに昨日、セッションは予定通りやったしな。私の初KPだ』

『マジかよ……俺もやりたかったな』

『それはまた今度だ。そっれよりもだ、信』

『昨晩お楽しみでしたね』

 

 なかなか聞くことが少ない共の丁寧語。それは基本的に何か共にとって面白いことが起こったことを示す。

 その直後、自分の体の腕以外にも違和感を覚えた。それは左半身だ。何かがもたれかかっている様な重量感と、何かを押し付けられている様な圧迫感。それらが目を覚ました信には感じ取れた。最初はフランかと思ったが、彼女はこんなに重くないし、そもそもちゃんと腹部にしっかりと収まっている。

 だったらこの違和感の正体は何なのか。そう考えながら首を左へと傾ける。

 

「は?」

 

 そこにいたのは、心地よさそうに眠る咲夜だった。自分の体を抱き枕のように抱え、安心しきった顔で寝ている。しかも着ているのは下着のみのようだ。

 そうして左腕の違和感を確認するためにも首を180°反転させる。今度彼の目に映ったのは美鈴だった。長く美しい髪に見事な寝癖をつけ、自分の腕を枕にしてぐっすり寝ている。しかも着ているのは下着のみのようだ。

  

「俺が寝てる間に何があったんだよ……」

『二人をベッドに連れ込んだのはお前本人だからな?』

『……また寝ぼけてたか』

『ご名答』

 

 愉快そうに答えるその声は非常にご機嫌なものだ。恐らく昨晩のセッションの初キーパリングがうまくいったのだろうと思う。

 

「さて、どうしようか。どうやっても起こしちゃうよな」

 

 三人同時に自身の体を基礎に寝ているため、さすがにこのまま誰も起こすことなく自分だけが部屋から出ていくことは不可能なんじゃないか……?と感じた。いろいろ考えた結果

 

「……zZZ」

 

 彼はもう一度、夢の世界に意識を沈めた。

 

「よう、色男」

「何が色男だよ」

 

 明晰ルー夢を経由して魂のシェアハウスに入ると、愉快そうにモーニングコーヒーを飲んでいる共だけがリビングにいた。

 

「他のみんなは?」

「セッションが終わった後、フェリーチェは不貞腐れて、旦那とディーネはシナリオを作るから、魔鬼とノームは疲れたからってみんな自室に戻った」

「そうか。で、初めてKPをやった感想は?」

「あれだ。個人的にPL以上に神経使う。が、非常に楽しめたな」

 

 と、コーヒーに口をつけながら笑った。あまり笑わない彼女が健やかに笑う。昨日のフランの件もあって、なぜかちょっと泣きそうになっていた。

 

「それは良かった」

「ああ、そういえば、だ」

 

 とってつけたような思い出し方だ。さっきの丁寧語のように、共のこういう口調は大抵何かがある。

 

「さっき、みんなが気負わなくていいって言ってたと言ったな?」

 

 ドドドドドドドドドドドドドド!!!!と廊下につながる扉の向こうから聞こえる。

 

「あれは嘘だ」

「うがあああああ!!!!!」

 

 扉がバタン!と開け放たれ、大砲のようにフェリーチェがダイブしてきた。その表情は、泣きべそをかいた近所の小学生のようである。 

 

「しいいいいいんんんんんんん!!!!!!!!!」

「いでででででで!!!!!!」

 

 飛び出してきたフェリーチェは、信の長い髪を両手でかっちり掴み、まるでロデオのようにして直立している彼の体に座り込んだ。

 

「信!!信!!!信!!!!信!!!!!信!!!!!!」

「ば!フェリーチェ!!髪はやめろって!痛いから!それかなり痛いから!!おい共!なんでフェリーチェこんなことにで!!やめろフェリーチェ!リズミカルに引っ張るんじゃねえ!!」

「まあ、セッションを一番楽しみにしてたってのに、最終局面で自分だけ気絶してたからな。ちょっといじけてるんだ」

「ちょっとってレベルじゃでえ!!抜けるから!抜けるから!!……はっ!!」 

「ふぎゅっ……」

 

その猛攻から逃れるために信は意識を覚醒させた。勿論体重全部を信にかけていたフェリーチェはその場に落ち、間抜けな声を漏らしている。そんな二人のやり取りを見て共は爆笑するのを堪えていた。

 

「はあ……。これで夢に逃げることは出来なくなった訳か……」

 

問題が元通りとなる。全員を起こして部屋から出るというのも手のひとつだが、三人とも気持ち良さそうに寝ているため出来ればそれはやりたくない。かといってこんな状況どうすればいいのかと悩んでいると。

 

「美鈴と俺を入れ替えれればなあ……」

『出来るだろ?』

『どうやって?こっちはガッチリホールドされてるんだぞ?』

『お前瞬間移動出来るだろ』

『それを今やったら三人とも起きるから困ってるんだ』

『いや、美鈴をお前のところに瞬間移動させればいいだろ?』

「………ああ。成る程」

 

信は自分の能力を普段はDBの瞬間移動のようにしか考えていない。自分のいる座標を誰かの座標に『共有』させることでそれは実現する。だが、彼の能力は『共有する』だけではなく『共有させる』事も出来るのだ。つまり……

 

美鈴と俺。お互いの座標を……同時に……

 

ポンッ と二人の位置が入れ替わった。

 

『お、出来た』

『だろ?』

 

得意そうにしている共と裏腹に、自分以外の2つの重さが突然加わった美鈴はとても寝苦しそうにしていた。まあ咲夜とフランは心地よさそうにしてるから問題ない。そう割りきり、そろりとベッドから抜け出した。

 

「(おやすみ~)」

 

 まだ寝ている三人が起きないように挨拶をして出ていく。

 その隣の部屋で身支度を整えこの後どうするかを口に出しながら整理していく。

 

「さて、と。美鈴はまだ寝てるし……久々に一人でやるか」

 

 やるというのは朝稽古である。紅魔館には美鈴がいるため、彼女が起きていれば一緒にやろうと考えていたのだが、寝ている彼女を無理やり起こすのも気が引けるため一人でやることにする。

 と、その時彼の頭の中でドドドドドドドドドドドドッ!!!という今日二度目となる音を耳にした。

 

「(しいいいいいいいいんんんんん!!!!)」

「(いでででででで!!!)」

 

 第二回 人間ロデオが始まった。

 その後、フェリーチェに卓をすっぽかしたことを許してもらうために違う種類のパフェを10個準備する約束をした事で、彼女の癇癪は治まった。

 

「大体信は人間なのにいろいろ出来過ぎるんだよ!」

「別にいいだろ。何も出来ないよりは何でも出来る方が絶対いいんだし」

 

出てきたフェリーチェをそのまま肩車し、玄関から外に出て門の前につく。流石に人様の家内でやるのは気が引けたので門の前でやることにした。

 

「ほら、準備できたからそろそろ戻れ」

「今日こそは信のシナリオやるんだからね!寝落ちしないでよ!?」

「はいはい」

 

 絶対だからね?と最後に念押ししてフェリーチェは戻っていった。その直後、「んんんんん!!♡」とうれしそうな声が聞こえたから機嫌はもう大丈夫そうだと思った。

 一つの問題がひと段落したところで日課を始める。いつも通りの柔軟から始まり、型の見直し、相手をイメージしたシャドーボクシングならぬシャドー組手と淡々と進めていく。

 

「そういえば最近あいつらの稽古見てやれてないな。近いうちに顔出すか」

 

なんだかんだで真面目な集団であるため心配はいらないと思うが、教えるといっておいて放ったらかしすぎるのは責任感がない。

いつ行くかの見当を頭のなかでつけながら、彼は朝の稽古を終えた。

 

「さて、咲夜もたぶんまだ寝てるだろうし……泊めてもらってる代わりに朝飯でも作るかな……って、幻想郷でも俺やってること変わんねえな」

 

 いつも通りの朝稽古にいつも通り朝食の準備。あまりに変わらない自分の生活リズムにちょっとした面白さを感じながら、彼は食堂へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

~~~数時間後~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 静寂に包まれ、閉じられたカーテンの隙間からこぼれる朝日が強くなり始めた客室。本来は信のみが使う予定だったこの客室に本人は居らず、代わりに三人の少女が同じベッドで眠っていた。

 

「これは……一体……」

 

 意外にも、一番早く目を覚ましたのは居眠り門番こと紅美鈴であった。その理由は実に単純。寝苦しかったのである。体の左半身は現在も熟睡中の咲夜に占領されており、腹部ではフランが気持ちよさそうに寝息を立てている。

 

「確か昨日は……夜這いにきて……信さんに引き込まれて……/////////」

 

 どうしてこうなったかを自分の記憶から推測しようとすると、一瞬恥ずかしさでどうしようもなく二度寝したくなった。意中の男性に夜這いを仕掛けにきて、そのまま何事もなく就寝する。美鈴は珍しく自分の寝つきの良さを呪った。

 

「しかしどうしましょうか。もう朝ですし咲夜さん起こした方がいいですよね?……でもこんなに気持ちよさそうに寝てる咲夜さんを起こすのもなんだか気が引けますし……」

 

 毎日門の前に立っているだけの自分と違い、少ない睡眠時間で激務をこなし続けている彼女の安眠を邪魔するのはどうしても気が引けた。間違いなく今起こさなければ後で怒られるだろうが、それでもいいからせめて今だけでもゆっくり眠ってほしい。そう彼女は思った。

 

「でも信さんはどこに行ったんでしょうか?朝早くから居なかったようですし……咲夜さんがまだ起きてないから朝食を待っているわけでも……ないで…しょう……し!?」

 

 朝食という単語で彼女は気づいてしまった。信は宴会が開かれるたびに料理を担当し、その腕の良さは幻想郷全域で有名になるほどだ。そして彼自身は料理自体が非常に好きであることも。そして彼の性格上、自分だけが何かをしてもらうだけでは気が済まないことも十分にあり得ると。

 

「まずい!信さんにアレを見せては……すいません咲夜さん、フラン様、少し強引に行きます!」

 

 美鈴は自分の『気を操る程度の能力』を用いて一時的に、少しくらい自分が動いても二人が起きないようフランと咲夜の眠りを深くした。そうして細心の注意を払いながらベッドから抜け出し、二人の眠る体制を楽になるよう整えた。

 そして俊敏にその部屋から厨房へと向かった。

 

「間に合え!間に合え!!間に合え!!!」

 

 自分がこんなにも必死になるのはいつ振りか。そんなこと考える余裕もなかった。アレを見せてしまえば人間である信はこの紅魔館に今後一切近づかないことだって十分にあり得る。彼女はそれが恐ろしく、とても嫌だった。

 必死に寝起きの体を動かし、厨房の扉を視界にとらえた。

 

「信さん!!」

「お、起きたか美鈴。おはよう」

 

 そのまま普段なら絶対にやらない扉バーンで厨房に突入した。そこで目に入ったのはトマトやレタスなどの野菜を扱っている信の姿だった。

 

「おはようございます!」

 

 勢いのまま挨拶をし、アレのある場所に目を移す。それは紅魔館内でも重要な部類の物の為他とは違い厳重に保管されている。あれがある扉にはまだ、南京錠が付けられている。つまるところ……

 

「ま、間に合った……」

 

 安心と安堵。その二つが一気に押し寄せて美鈴はその場にへたり込んだ。その美鈴の姿を目にして信はなんとなく彼女の心情を理解した。

 

「ああ、その扉の先はもう見たぞ」

「え?」

 

 咄嗟に扉の南京錠を再確認する。すると確かについてはいるが、鍵をかけられた状態の時よりも少し下がっているのが分かった。つまり、南京錠は扉に引っかかっているだけで閉められていない。

 

「え……あの……その……」

 

 言葉が出なかった。どう話せば彼に納得してくれるのか。それが彼女には分からなかった。説明したところで簡単に割り切れるものではない。そんな人間の視点からすると凄惨な光景が扉の先には広がっている。

 

「咲夜ー、朝食はいつになる……かしら」

「おはようレミリア」

 

 そんなことを話しているとこの館の主が少し寝ぼけた様子で厨房を覗いてきた。未だにパジャマを着ていることから少しだらしないイメージを受けるが、それもまだ咲夜が寝ているためなのだろう。

 そんな彼女が信の姿を確認した瞬間、眠気が覚めたように顔つきが変わる。

 

「見られました」

 

 その短い言葉を発しただけであるが、彼女も美鈴のように理解した。どう説明したものかと困った表情で頭をグシグシとかき、考えがまとまらない様子でいた。

 

「俺は別に気にしないから安心しろ。ショッキングと言えばショッキングだったけど覚悟はしてたからな」

 

 その言葉で二人は面を食らった。自分たちの検討が全く外れたのだから仕方ないだろう。

 

「それより二人とも着替えてきたらどうなんだ?美鈴もいくら最近暑くなってきたからってそんな恰好でウロウロするもんじゃないぞ」

 

 そしてその言葉で美鈴は思い出した。自分が今どんな服装であるかを。いや、もはや服とは言えないものしか身に着けていないのだ。一度自分の体を確認し、次に信に目をやった後、再び自分の体に目をやる。

 

「し!失礼しまああああああす!!!」

 

 その瞬間、顔を真っ赤に染め上げて脱兎のごとく部屋から出て行った。「ははは」と笑う信にやれやれといった表情で未だ曇った表情をするレミリアがこの場に残った。

 

「レミリアも着替えてきたらどうだ?」

「咲夜が来ないから髪のセットが出来ないのよ」

「ああ。じゃあやってやるからちょっと待ってろ」

 

 そう言うと慣れた手つきで調理を進め、ひと段落したところで二人が別室へと移動し、鏡の前で鎮座したレミリアの髪をとかし始める。

 

「フ~ンフフンフフ~ン♪」

「随分とご機嫌ね」

「まあな。人の髪いじるなんて妹たち以来だから」

 

 ご機嫌な様子でそのまま目の前の幼女の髪をいつもの状態にセットし始める。

 

「見たのでしょう?あの扉の先を」

 

 その言葉を聞いた瞬間、信の手の動きが鈍くなる。だが止まることは決してなく、徐々に元のスピードに戻ってい