駄文ですがなにも思わず読んでくれると嬉しいです!
小学一年生の時、兄に連れられてみた景色。
隣には幼馴染である影山 飛雄こと飛ちゃんがいて、私たちは二人してその光景に感嘆を漏らした。
会場中に広がる歓声、コートの端から端まで高速で進むボール。そして、それを自由自在に操る選手たち。その光景に魅入っていると側にいた兄が私たち二人の頭をクシャクシャと撫でながら言った。
「どうだ?これが…兄ちゃんがやっているスポーツだ」
「すぽーつ?」
「そうスポーツ。バレーって言うんだ」
「ばれーぇ?」
飛ちゃんと一緒に頭にハテナを浮かべながら兄を見つめる。それに兄はコートの方を指差しながら説明し始めた。
「みろ、さっきボールを受け止めたのがリベロっていうんだ。そして、そのボールを上にあげるのがセッター。最後にそのセッターがあげたボールを相手コートに叩きつける、それがアタッカーだ」
「……?わかんないけど…なんかすごいね!そう飛ちゃんも思うでしょ?」
「うん!端から端までギュンってボールが行くの!気づいたらボールが違う場所にあって!!」
「そうか。お前らもバレーの凄さが分かったか。兄ちゃんはなアタッカーをやってるんだ。いつか、お前らにカッコイイ姿を見せてやるからな!」
「「うん!!」」
これが、私と飛ちゃんが始めてバレーと出会った日。
そしてーー、バレーに興味をもった小学一年の夏だった。
◆◇◆◇◇
「飛ちゃん!!ボール打って!!」
「あのなぁ
「知ってる知ってる。さぁ、はやく!!」
「雛てめぇ、人の話を聞きやがれ!!」
飛ちゃんの話を軽くスルーしてトスを上げ始める。それに、飛ちゃんは怒るが仕方ないといった感じで高く上がったボールを目掛けて走り始めた。流石、飛ちゃん!君はやってくれると信じてたよっ!!
バンーー。
体育館中に音が響く。
ボールは反対側のコートのエンドラインへ吸い込まれるように決まった。それを見終えた後、飛ちゃんの方へ走り寄りイェーイとハイタッチ……してくれなかった。むぅ……恥ずかしがり屋なんだから!
「なんでしてくれないのさ!」
「する必要がねーだろ」
「むぅ…だから飛ちゃんに友達が出来ないんだよ!」
「雛てめぇ、もうボール打ってやらねーからな!」
「べ、別に飛ちゃんが打ってくれなくてもおにぃちゃんが打ってくれるもんねー」
「ずりぃぞ!」
今、高3の兄はあの有名な白鳥沢でなんとエースをやっているらしい。一度、試合に行ったことがあったがいつもの優しい兄とは違うと錯覚してしまうほど兄の雰囲気は違っていた。その姿に身震いし、同時に憧れた。と、言っても私はアタッカーではなくセッターをやっているのだ!それは飛ちゃんも同じで日々、交代で打ったりトスを上げたりと練習している。
「ほら、今度は雛が打てよ」
「分かってるよ!本当に飛ちゃんはうるさいなぁ」
「なんとでも言えよ。俺は一切傷つかないからな!」
「キメ顔で言われてもカッコ悪いよ」
「ひーなー?」
「あ、ほらはやくはやく!」
危ない危ない。久しぶりに飛ちゃんに怒られるところだった。今度から上手く弄らなきゃ!などと考えているとすでにトスがあげられている。飛ちゃんのトスは普通より速いため運動センスが試される。
「あっ!」
ボール目掛けて飛んだはいいものの、ボールの方が速いためスイングが間に合いそうにない。そうなればトスは反対側のコートに行くこともなく横の壁に当たって攻撃は失敗となる。…しかし、ここで失敗したら飛ちゃんになんと言われるか知れたものではない。となれば……左手で打つしかないっしょ!
ボールが掌に当たる感覚を感じながら思いっきりスイングするとそのボールは反対のコートへ入る。ふぅ、危なかった。やっぱり、飛ちゃんのトスは速いなぁ。これが男子は普通なのかな?
「スマン!少し速かった」
「飛ちゃんさぁ……なんかうざい」
「あぁ?!」
ブツブツと文句を言ってくる飛ちゃんを無視しながら、少し赤くなった左手を見つめる。そして、グッと力を込めて飛ちゃんの顔を見上げた。
「明日からまた頑張ろーね!飛ちゃん!!」
「あぁ!二人して北川第一のセッターをしよう!!」
「飛ちゃんはなれるか分からないけどねぇ?」
「あぁん?!絶対になるに決まってんだろ」
どこからそんな自信が来るのかは知らないが中学校は小学校とは違い本格的に部活ができる。その中でセッターとして活躍するのが私たち二人の今の目標だから絶対に達成しようと飛ちゃんは頑張ってるんだろーなぁ。あの
「飛ちゃんは根は優しいのにねぇ」
「俺はいつでも優しいだろーが!」
「え?勝手に人のプリン食べてたくせに何言ってんの?」
「それは今、かんけーねぇ!!」
ほんと、飛ちゃんは面白い。きっと将来はいいドMになれるよっ!
「雛?いい加減にしろよ?」
「あっはい。すみません」
ともあれ、中学校入学式前日終了。
◆◇◆◇◇
「あり、えない」
私のプレーを見た北川第一の女子バレー部、佐藤部長はそう口にした。え? そんなに凄いことした覚えはないんだけど!?
「もう一回、トスを上げてくれない?」
「あ、はい。分かりました」
言われた通りもう一度トスをあげる。上げた先には三年生だと思われるもう一人の先輩がいる。その先輩の身長、そして体格、バネを頭の中で計算。それによって出てきた答えという名の最高到達点へボールを合わせる。
「…これは」
そのボールはジャストタイミングでアタッカーの手に当たる。それを見て部長は目を輝かせながら拍手を送ってきた。
「確か…桐原 雛って言ったよね?桐原は無意識にやってるの?」
「え?なにをですか?」
「最高到達点へボールを合わせることを」
「うーん、そうですね。なんとなく選手を見たらココだっていうのがわかるんです」
そういうことらしかった。先輩が驚いていたのは一目見ただけという選手の最高到達点へボールを合わせることが出来るという技術。まぁ、これに驚いてたら飛ちゃんにはもっと驚くだろうなぁ。なんて考えながら部長の話を聞く。
「桐原、セッターに決定ね」
「はぁ……え?他の…アタックとかは見ないんですか?」
「えぇ、これだけのものを見せられたらね。まぁ、でも他のも見ておいて損はないからやるけどね?」
「はい!……それとあの、最高到達点へボールがいっていることが部長にもわかるんですか?」
「まぁね。だって、あんなにスパイカーが輝いていたから」
「輝いて…ですか」
そんな会話をしていると肩をグルングルン回しながらさっきトスを打ってくれた先輩が近寄ってくる。
「君、凄いね!!」
「ありがとうございます」
「あんなに打ちやすいボール初めてだよ!しかも、初めてあったばかりなのにあんなドンピシャ」
「…失礼ですが、先輩ってさっきの打点で打ったのは初めてなんじゃないですか?」
「んー、まぁね。普段はもっと低いかな」
打つ時驚いていたからまさかとは思っていたけど…この先輩はバネもあるし体格もいいから打点はもっと高い。その方が先輩はもっと実力が出せる。
「よく、合わせられましたね」
「よく言うよ。君が合わせてくれたんでしょ?」
「いえ、そんなことは」
「ここでの謙遜は必要ないぞー?」
「いえ、本当です。先輩の踏切がネットから遠かったので少しネットからボールを離したまでです」
「………今年の一年生は生意気ですなー」
「何故!?」
頭をグリグリしてくる先輩にされるがままになっていると向かい側の方でしている男子バレー部にいる飛ちゃんと目が会う。そして「ダッサ」だそうだ。なんだと、こんやろー!!帰り覚えとけっ
「もう、やめなさい。桐原が困ってるでしょうが」
「はーい。部長こわーい」
「あんたねぇ」
「部長が怒ったー!!」
グリグリしていた手を離して先輩は部長からさっさと退散ー!みたいに逃げていく。まるで、嵐のような人だな。でも、いい先輩だ。頭をぐちゃぐちゃにされたけども
「はぁ……それじゃ、桐原。続けましょうか」
「分かりました」
サーブ、レシーブ、ブロック、アタックをそれぞれし終えると今日はもう帰っても良いということなので失礼することにした。男子は……うん、もう終わりそう。
「失礼します」
「はーい、気をつけて帰ってねー!」
「はい!ありがとうございました!!」
体育館にそして先輩に礼をして校門へ向かう。その途中で飛ちゃんが息を切らしながら走ってきた。
「おい、待てよ」
「えーー」
「どうだった?」
「まぁまぁだよ」
「そうか…こっちは凄い先輩がいた。俺も頑張ろうって思った」
「ふぅん。頑張れ」
「まぁ、こっちのことはいい。お前、最初…認識されたか?」
「…………いや、だからスイッチをオンにしといた」
私の影が薄いのは今に始まったことではない。最初に体育館に入った時、先輩には認識されなかったのも事実。とてつもなく悲しい。というわけでスイッチをオンにした。なんていうの、気づかれるようにオーラみたいなものを纏うみたいな?自分でもよく分かんないけど…
「相変わらずそれ、分かんないな」
「いや、自分でも分かってないからね!?」
「だいたいなんなんだ?スイッチをオンって。お前にはヤル気スイッチでもついてんのか?」
「どちらかというと悟◯が気をまとって戦闘力値が上がるってやつに近いかも」
「その例え上手いな」
「でしょ!!」
そんな馬鹿な会話をしながら中学校初日は幕を引いた。
読んでくださりありがとうございました!!
続けれるように頑張りますのでよろしくお願いします!
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EP1 及川 徹
北川第一にきてからはや、二ヶ月が過ぎた。いつもは男女別の体育館だが、今日はもう一つの体育館が使えないということなので、一つの体育館を半分にして使う形となっている。これは余談だが、最初の1日目は女子はすぐ終わるからという理由で一緒にしていた……しかし、次の日から体育館丸ごと使えていたためビックリした。やっぱり、小学校の時とは違う。
「おい!聞いてんのか?」
横を歩いていた飛ちゃんが目の前で手をおーいというように振る。それに、今は飛ちゃんと部活にいく途中だったと思い出し返事をした。
「聞いてる聞いてる」
「嘘だろ!ぜってー嘘!」
「何故にばれたし」
「逆になんでばれてないと思ってんだよ」
飛ちゃんはやっぱり鈍感だからバレてないと思った。でも、バレーをする時は鈍感じゃないんだから日常的にもそれを発揮してほしい。
「で、なんの話だっけ?」
「及川さんの話だ」
「誰?それ」
「俺んとこの先輩。ほんとに凄い人なんだ」
「へぇー、そうなんだ」
正直、興味がない。理由は名前だけでチャラチャラしてそうだから。及川さんが凄いって話を聞かされながら歩いていくと目の前にバレー部の服を着た男子生徒が目に入る。
「ねー、あれってバレー部の人だよね?」
「ん?……及川さん!?」
「あれが及川さん?」
やっぱりチャラそう。
「行ってみよう」
「待って!あれって…女子といない?」
「…本当だ。なにしてんだろ」
「いや、完璧に告白でしょ」
「告白?」
うん、やっぱり飛ちゃんは鈍かった。まだ、行こうとする飛ちゃんの手を行かせないように引っ張っていると、向こうは告白が終わったようでクルリと此方の方へ向き……気づかれた。
「あっれー?これはこれは飛雄ちゃんじゃないか」
「どうもっす。及川さん」
「そっちの子は誰かな?もしかして飛雄ちゃんの彼女?」
「勝手に彼女にしないでください。不愉快です。そして目の前に現れないでください。不愉快です」
取り敢えず、チャライのは嫌いなので最初っから嫌っておく。こういうのって最初が肝心だから。
「なにこの言われよう!まさか!飛雄ちゃんがなにか言った?」
「チャラ川先輩。少し黙って下さい」
「ちょっ、略さないでいいから!」
「すみませんでした。チャライ及川先輩」
「そういう意味じゃなーい!」
肩を上げ下げしながらツッコミをしてくる及川先輩(笑)に飛ちゃんが「大丈夫ですか?」と近寄る。しかし、その手を払い退ける及川先輩(クズ)。
「飛雄ちゃん……俺は負けないんだからねっ!」
「はぁ…なにがですか?」
「だって、可笑しいじゃない!さっき俺、振られたばかりだよ!?なのになんなのさ!飛雄ちゃんはそんな可愛い女子連れて!!」
さっきのは告白じゃなくて振られてたのか……
「いや、こいつ…幼馴染なんで」
「おさ…ななじ、み!?そんな…可愛い子が幼馴染………」
「可愛いですかね?よくわかん……」
「飛雄ちゃん。眼科に行った方がいいよ」
飛ちゃんの肩に手を置き、可哀想な目で飛ちゃんを見る及川先輩(ナンパ野郎)。しかし、可愛いか……言われたことあったっけなぁ?悪い気はしない。まぁ、チャラ川先輩じゃなかったら最高だったかもしれない。
「もうそろそろいいですか?私、暇人と絡んでる暇はないんで」
「性格直した方が可愛いよ君」
「クズ川先輩に言われても直す気が起きません」
「ねぇ…飛雄ちゃん。この子いつもこうなの?」
「いえ……こんなに酷いのは初めて、ですかね」
「なにそれ、遠回しにかなり嫌いっていってんの?」
「私、チャライ人嫌いなんです」
「俺はチャラくないよ!!」
えーー、さっきから校舎の二階の方から「及川くーん」って、言われては笑顔で手を振っている人がチャラくない?そんな馬鹿な。あっ、また手を振ってるし……
「とにかく、失礼します」
「ちょ、ちょっと待って!!」
「なんですか?」
「メアドと名前を教えてくだーーー」
バチーン、
物凄い音を立てて飛んできたバレーボールが及川先輩(ダサい)に当たる。それにバランスを崩してしまうほどの威力。頭をさすりながらボールが飛んできた方を見る及川先輩の顔は涙目だ。
「いたぁ!?」
「クソ川!なにしてんだ!」
「ちょ、岩ちゃん!!これは痛いから止めてっていつも言ってるじゃん!!」
「そんなの知らねーな。体育館前でナンパしているクズ川がいたらボール投げるのは当たり前だろ」
「そんな当たり前俺知らない!!」
体育館から出てきたのは多分3年生の男子バレー部員。こっちの先輩はチャラくないから大丈夫そうだ。
「ねーねー、飛ちゃん。あの先輩は?」
「ん?あぁ、あの人は岩泉さんだ」
「すまんな、うちのクズ川が迷惑かけた」
「いえ私は大丈夫です。さっきのでスッキリしたので」
「ちょっ酷い!!二人して俺をイジメないで!?」
少し涙を流しながら(嘘泣き)及川先輩は岩ちゃんの肩を叩いている。岩泉先輩も大変そうだなぁ、と思いながらその光景を見ているとまたしても体育館の方からボールが飛んでくる。
「いたっ!?」
「ちょっと、及川。うちの後輩をいじめないでくれる?」
「どちらかというと俺の方がいじめられてるんだけど!?」
「ごめんね、桐原。及川のことはほっといていいから」
「はい!佐藤部長」
佐藤部長が来たので、一緒に体育館に入ろうとすると、またもや及川さんに止められた。なんなのかね?イジ川先輩(イジられ及川)。
「そうそう、桐原ちゃん。俺は飛雄ちゃんには負けないから」
「それは本人に言ったらどうです?それに、どれだけ及川さんがすごいのかは知りませんが飛ちゃんには勝てないと思います」
「……へぇ?飛ちゃんを信頼してるんだね」
「?…当たり前じゃないですか」
「でも、飛雄はまだ俺には勝てない」
初めて、及川さんの本当の姿を見た気がした。闘志を剥きだしにした目に誰にも負け無いという威圧。それにあぁ、と納得する。
間違いなくこの人は強い、と。確かに今の飛ちゃんでは勝てないと。
「はは…確かに今の飛ちゃんでは勝てそうにありませんね」
「あれ?認めてくれた?」
「えぇ、チャラ川から昇格してチャ川ですよ、先輩?」
「それ、昇格してんの!?」
この人なら飛ちゃんを任せられるな。まぁ、こんなこと言ったら飛ちゃんに「余計なお世話だ!」って怒られそうだけど。そんな事を考えながら私は体育館の中へと向かった。
◆◇◆◇◇
「ふんだ!飛雄ちゃんとかもう知らない!!」
「いや、及川さん。急になんですか?」
雛が部活に向かった後、俺は及川さんにまだ捕まっていた。岩泉さんはさっき顧問に呼ばれていたので当分戻ってこないだろう。
「なんで教えてくれなかったのさ!」
「いや、だからないがですか?」
「だ〜か〜ら!!あんなに可愛い幼馴染がいたことだよ!なんなの?知られたくなかったの?俺にとられるのが怖かったの?」
「はぁ…聞かれなかったからですけど…」
何言ってんだ。この人は…と思いながら返事を返すと及川さんは面白くないといった感じで頬を膨らませる。雛の何処を気に入ったのかは知らないが及川さんにはなんとなくもう雛と会って欲しくない。
「そんなことよりも、最後、何を話してたんです?」
「最後?…あぁ、別れ際のやつね。それは…ヒ・ミ・ツ☆」
「(カチン)」
「あれ?怒っちゃった?飛雄ちゃん怒っちゃったの?」
「怒ってないですよ!」
何を話していたか気になるが、後で雛に聞けばいいかと考え、俺は怒りを鎮めた。一回一回、及川さんに怒っていては身がもたない。
「及川さん、早く俺たちも行きましょう」
「えーー、もっと必死に聞いてきてよ。面白くないじゃん」
「いえ、後で雛に聞くんで大丈夫です」
「へぇ、幼馴染の名前雛ちゃんって言うのかー」
やべっ、やっちまった。と後悔しても時遅し。ニヤニヤと変な顔をした及川さんはスキップしながら体育館の中へと消える。その後ろ姿を見ながらーー
「はぁ……なんだ、この変な感じ」
と呟いた。
◆◇◆◇◇
「はい、それじゃあ最後に試合をしまーす。みんなそれぞれチームに分かれて!」
『はい!!』
あと練習時間が一時間を切った頃、今日は試合をするということで6人ごとのチームを作る。部員数はマネージャーを入れて14人。十分試合が出来る人数は揃っている。
「桐原ちゃん!こっちのチームに入ってくれるかな?」
「分かりました!」
嵐のような先輩、嵐山先輩(そのまんまだった)に呼ばれてコートの中に入る。セッターは私を入れて二人いるのでこれも丁度いい。
「それじゃ、始めるわよ。マネージャー、審判お願い!」
「はーい」
ピーと笛が鳴る。それが開始の合図のようですぐに試合が始まった。最初は向こう側の攻撃。サーブに備えてレシーブの態勢に入る。
「行くよー!はい!」
綺麗な弧を描いてボールは私の方へ飛んでくる。それをちゃんとレシーブして他の先輩がトスを上げそれを嵐山先輩が打つ。
「よし!!」
出だしは好調! ブロッカーをもろともせずそのボールは相手コートの中へ落ちていった。
練習試合
1対0
及川さん好きの人には申し訳ない。
一応、作者も及川さんは好きです。ですが、主人公には嫌われちゃってますね。
それでも、大丈夫なのです!
あとから、及川さんの好感度は上がっていく…いや上がらせてみせる!!と思っておりますのでこれからも見ていただけると嬉しいです!
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EP2 戦い方
試合描写はとても難しいので読みづらかったらすみません。
練習試合
Aチーム16対Bチーム13
最初の五点ぐらいまでは私たちのチームであるAチームがリードをとっていたのだが、相手は部長のいるチーム。完全にこちら側のペースに持っていく前に対策をとられ、そのままBチームへとペースを持って行かれてしまった。
なんとか、嵐山先輩を軸について行ってはいるがこれは時間の問題だろう。このままいけば間違いなく負けるーー。
「すいません、部長。少し時間を貰ってもいいですか?」
「どうぞ。でも、私たちは負けないからね?」
「それは…どうでしょうか。それはタイムアウトの使い方次第だと思います」
「ふふ、まぁ、良く考えなさい」
「はい!」
部長に許可を取ってタイムアウトをとらせてもらうとすぐさまチームの皆を集めて円になる。
うう……やっぱり、動くのやめると汗が気になる…なんて思いながら私は同じチームの先輩方にある提案をした。
「すみません。少し、やってみたいことがあるんです」
「ん?なになに?」
「これは、チームの力が必要になってくるんですが…」
「大丈夫!なんでも言って!!だって今はコートの中、君がこのチームの司令塔だからさ!」
「じゃあ……あのーー」
説明をし終えると殆どの先輩は説明は分かったけどよく意味が分からないといった感じの顔を浮かべていた。
やっぱり、やってみるのが一番かな。
「とりあえず、その通りに一度動いて貰えば大体のことはつかめると思うんで…」
「うん、分かった!やってみよう!」
おぉ、嵐山先輩…いい人だ!
「終わった?じゃあ始めましょう」
「はい!お待たせしました。佐藤部長」
円から元のポジションに散らばった後、佐藤部長の声に感謝の意を込めて挑戦的な態度を取ってみる。たとえ、練習試合でも負ける気はないのですよ〜。
最初は向こうからのサーブ。同級生である比嘉さんが打つようでとても緊張しているのがネットの反対からでも分かった。 ちなみに、今回の新入部員は四人。そのうちの三人ともいまはBチームにいる。そして前からバレーをしていたらしい。
「ふぅ……」
比嘉さんのサーブボールを先輩がレシーブする。そのボールはセッターがいるはずの場所、つまり私の方へ飛んでくる。しかしーー
「え!?……そっちにはセッターが…いないんじゃ…」
そんな声がコートの中で響いた。
相手チームそして味方のチームでさえも私の姿は認識されていないらしい。本当に悲しい。泣きそうになってくる。っていうより、泣きたい。
「本当…精神削れるよ。でも…」
目の前には私がタイムアウトの時、言った事を信じて既にアタックモーションに入っている嵐山先輩の姿が見えた。そこに、トスを合わせる。
『信じて飛んでくれる人がいるから』
バンーー。
ブロッカーさえも反応出来ていないそのボールは相手コートの中央に心地よく決まった。
試合結果
Aチーム 25
Bチーム 23
◆◇◆◇◇
「おっ!女子は試合を始めるみたいだね」
「そうですね」
丁度、休憩時間。及川さんが女子の方を見てそう話しかけてくる。興味なさそうに言葉を返したが、なんと雛がでてきているので見たいという気持ちもあった。
「あれー?雛ちゃんが出てるじゃん。飛雄ちゃん、見なくてもいいのかなぁ?」
「あーもう!見ますよ!」
「よろしい。素直な子は嫌いじゃないよ!」
「………」
「ちょっとー、反応してよ!どうしよう岩ちゃん。これが反抗期ってやつなのかな?」
「及川、うるせぇ」
岩泉さんにも反抗期されて及川さんは目に見えて分かるほどにガクリと項垂れているとそこにボールが飛んでくる。何発目だよ、おい。
「…っ…またぁ!?」
「あぁ、すまん。そこで変な風に落ち込まれたから腹が立った」
「あぁ、すまん。じゃ…な、い、よ!!何回目!?ねぇ、俺の天才頭脳に当てたの何回目!?」
「……はぁ?いつお前が天才になったんだよ」
「ちょっ……いつも天才的だったでしょ!?」
どこかの漫才だな。と思いながら、女子の試合に集中する。雛は、天才だ。俺が勝てるかも分からないほどに遠くにいる。だからこそ、こういった雛の実力が観れる試合は貴重だ。
「…あの子、全て計算して合わせてる」
「分かるんですか?及川さん」
不意に、及川さんがそんな事を呟いた。
マジメスイッチでも入ったのか、いつになく真剣な顔で試合を見ており、その目には雛が映っている。やはり、同じセッターだから俺と同じように思うことがあるんだろう。
「……怖くなるよね。本当に。あんな天才がいると…」
「…はい。ですけど…俺はあいつを越します。必ず」
「ふぅん。二人揃って、君たちはムカつくね」
「なんでですか」
「いや、こっちの話〜」
そういって手をヒラヒラとさせると及川さんは女子のコートへもう一度、目を移す。今の得点は始まったばかりなので5対5と同点だ。そして、サーブが始まったところで
「おい、お前ら休憩は終わりだ。早く練習に戻れ」
とコーチから声が掛かる。それに渋々従って俺は試合から目を離した。
◆◇◆◇◇
「ちょ…さっきの何!?」
佐藤部長が私の肩を揺らしながらそう聞いてくる。ちょ…やめ…。試合が終わったあとだからかドッと疲れが出てきた途端にコレだ。あー、頭がー。となっても私はオカシクナイ。
「ぶちょー、やめてあげなよ」
「え? あっ…ごめん桐原」
「いや、大丈夫です」
そりゃ、こうなるよね。なにせ…目の前からセッターが消えたのだから。レシーブミス?とか思われた時にそこから勝手にトスが上がる。それにブロッカーも不意をつかれてブロックすることが出来ないし…
「それで?アレはなんだったの?」
「アレは……ミスディレクション的な?」
「ミス…ディレクション?」
「そうですね、例えば…先輩私の目を見てくれませんか?」
「うん」
ジーっと目を見てくる先輩。それで何秒間見つめ合いしばらくたって違う方向へ一瞬視線をズラす。すると、それにつられて先輩もその方向をほんの一瞬見る。そう、その一瞬で私がやるべきことは終わった。
「え?」
「どうかしましたか?部長?」
「いや……桐原が手に持ってたボール、どこに…」
「あぁ、それですか。それは部長の後ろにありますよ?」
私の言葉を聞いて、バッと後ろを振り向き言われた通り後ろにあったボールを部長は見つめる。
その顔はとても驚いていた。それも、そうか…だって部長にはボールが消えたように感じたはずだしね。
「これが、ミスディレクションです。視線または注意力や推理力を誘導することでおこる現象」
「じゃあ、ボールが消えたのは…」
「はい、部長が私の視線につられて視線を動かした時にボールを先輩の後ろへ転がしただけです。それも、きっと部長の死角であるところを狙って」
「じゃあ、これと同じようなことを桐原はしているというの?」
「私のは…まぁ、そうですね。多分似たようなものなんだと思います」
バレーはほとんどの時間ボールを見ている。それがセッターが消えたと錯覚させてしまった。あと、影が薄くないと出来ないので、少しミスディレクションとは違ってくる。
「部長は…いや、ほとんどの選手がバレーの時、ボールをよく見ますよね?上手くレシーブした場合、ボールがそっち側にいったからセッターが…誰かが…きっといると無意識に思ってしまう」
「確かに……」
馬鹿な人だとしても、誰もいないところにボールを返さない。誰もいないところにボールを返すやつは……バレーやめたほうがいいよ☆となるわけだ。
「でも…そこに誰もいなかったとしたらどうなります?」
「レシーブミスだと思う…」
「それです。そこで先輩方の注意力を下げる。そうすると、私は普段から影が薄いですから…余計に認識されなくなります。だから、トスが急に上がったということになるんです」
「それでも…」
「そう、それでもボールが消えるわけではないからブロッカーが反応することはできます。反応
たったコレだけのこと。さっきの試合中にしたことは。もっとやろうと思えば違うことだってできる。でも、中学生相手ならコレだけでも勝つことなら可能だ。
「そう…なのね。誰もいないからレシーブミスだと思う、確かにもしここで誰かがレシーブを上げたとしてもギリギリになっていいトスは上げることができない。ボールが落ちるかそれとも驚異ではないトスとアタックを受けるか。どのみち私たちのチームに利があった」
「その利が……注意力を落とした」
部長の言葉に続いて、一年生の比嘉さんが声を出す。その声は震えていて……同時に私を見るその目は睨んでいるようにしか見えなかった。え?どして?
自分的になんか…ダメなので、直すかもです。
もし、直したらきちんと報告させていただきます!
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EP3 すれ違い
「あんたがいるから!!」
知ってる。もう、聞き飽きた。
「先輩にも媚び売っちゃって!」
それも聞き飽きた。
「なにか言ってみなさいよ!」
このパターンも知ってる。もう…『飽きた』。この会話に私の意見は必要ない。だから、今もなお聞こえてくる自分を罵倒する声を聞きながらこんなことを考えていた。
『あぁ、なんでこんなことになったのだろう』と。
◆◇◆◇◇
「なー、…… 今日は何時に女バレは終わるんだ?」
「んーー、男バレと同じくらいの時間かなぁ」
部活に行く途中、急に飛ちゃんに質問されたのでそれにすんなり答える。最近は眠たすぎて上の空ということが多い私だが飛ちゃんが目を覚ましてくれたのでこうして部活へ遅れずに行くことが出来ていた。まさに、飛ちゃんさまさまだ。さまさま〜。
「ふっ………」
「おい、今…笑っただろ!」
「マサカー。私の席に来た時に何もないところで転んだことを思い出して笑ってた訳じゃないよ」
「ワザとやってるだろ!素直に言えよ!!」
「ぷぷ〜……影山くんは最高です」
「ひ〜な〜?覚悟は?」
出来てるわけないじゃないですか。
少しの恥ずかしさからか顔を赤くして怒ってくる飛ちゃんから逃げていると二つの体育館が見えてくる。そこで、いったん急停止して私は飛ちゃんがいる方へ振り返った。
「じゃ!今日もがんばろ〜!」
「あぁ」
この会話を最後にそれぞれの体育館へと分かれる。いつもなら、このまま体育館へついて終わりなのだが…今日はそうではないようで、体育館の扉の前に同級生三人が立っていた。その顔は私を敵と見なしているように見える。もちろん、なにかした覚えはない。
「ちょっと……来いよ」
「なんで?…私、部活したいんだけど」
「いいから」
そう言って手を掴んで引っ張っていく比嘉さん他二人。やめろ、離せ。って言っても言うことを聞いてくれなさそうなので大人しくついていくことにした。やっぱり面倒ごとはさけなきゃね。
「あの〜こんな人気のない場所連れてきてなんの話かな?」
「……ちっ」
何故に舌打ち!?
「桐原自身の方がよく分かってるんじゃない?」
「いや…言ってくれないと分からないんだけど…」
「……桐原さぁ、最近調子乗り過ぎ」
「調子に乗りすぎとは?」
「いくら、バレーが上手いからってふざけてんの?」
そう言って三人して私を囲むように移動する。しゅ…集団リンチってやつ。少し、ビクビクしながら三人の行動を伺う。私はセッターだからいろんな事を観察しないといけない。という日頃のクセが出てきたのだろう。
「ねぇ、知ってた?私がセッター志望だったこと」
「知ってた」
「!?……なら、なんで!!」
「だって、先輩が決めることでしょ。比嘉さんはセッターよりミドルブロッカーの方が向いてました。それだけの事だよ」
「なっ…!?」
そんな驚いた顔をしてもねぇ。
それに、比嘉さんが元セッターっていうのは見ていたらすぐに分かった。アンダーでボールをとるよりもオーバーでボールをとる方が上手かったというのとミドルブロッカーをやっている割にはアタックに慣れていない感じがあったから。
「はは…やっぱり、私、桐原のことうざくてうざくて仕方がないわ」
「………」
「なんで、なんで、なんで、なんで!!…………」
悲鳴にも似た声を出しながら私の色んな所を殴ってくる比嘉さん。他の二人はその様子をただ、ただ、面白そうに見ているだけ。
「…いっ」
痛い。
その感覚だけが自分の思考を奪う。それでも、ただ殴られ続ける私はかなりのドMだな。とか考えながら私は殴るのが止まるのを待った。ここで、問題を起こしたら大会どころじゃなくなる。それだけの理由で…必死に耐える。
「あんたなんか…いなければよかったのよ」
冷たく響いたその言葉は私の脳に強く刻まれた。
◆◇◆◇◇
「ランランララーン♪」
鼻歌をしながら体育館に向かう途中。「及川くーん!」という声が聞こえては手を振るの繰り返しでなんとなくルンルン気分だった俺の耳に嫌な言葉が聞こえた。
『あんたなんか…いなければよかったのよ』
という存在を否定する言葉。それに少しだけさっきまでの良い気分が下がり「はぁ…」とため息をついた。
「俺…こういうの嫌いなんだよね」
頑張るんだ及川 徹!!などと自分を励ましながらさっきの声が聞こえた方へと歩き出す。チラッと見ただけでは分からないだろう。そんな建物の影にうまく隠れている女子四人組。その内の一人は三人に囲まれるようになっていた。
「うーん。これがイジメってやつだよねぇ」
イジメられている子は明らかに中央にいる女子だろう。しかし、その顔は隠れてよく見えない。が……俺は全ての女子の味方なのだから助けなきゃね☆という気持ちでテクテクと女子四人組に向かって歩いていく。
「ねぇ。なにしてるの?」
「…!?」
着いて、声をかけるとイジメをしている女子三人の動きが止まった。まるで、ロボットのようなので笑えてくる。あっ…やばいかも。
「…ふぅー。俺、こういうの関心しないなぁ。女の子はさ…優しいに限ると思うよ!こんなことしてたら可愛い顔が勿体無い」
「え?…あぁー。えっと、、」
「(ど、どうする?」
「(どうしようもなにも一旦離れるしか…」
ボソボソと話して内容が決まったのか女子三人はぺこりとお辞儀して去っていった。それを見届けてから今度はイジメられていた女子の様子を見る。そこにいたのは…
色んな箇所に傷をつくって所々青アザができているそんなボロボロな姿をした子だった。
「ねぇ、君…大丈夫?」
「………」
「おーい!」
反応がないので顔を覗くようにして呼んでみる。ん?…て、あれ?
「雛ちゃん!?」
「…おい、かわ…せん、ぱ、い?」
「ちょ…大丈夫なの!?」
「ええ…大丈夫、です。少し…痛いだけ、で」
口も少し切っているのだろう。血を流しながら彼女は笑った。その姿にどこか尊敬を覚え同時に腹が立つ。
(くそ……俺がもう少し、早く来ていれば…)
「おい、かわせ、んぱい。おね、がいが…」
「ん?何?」
「このことは…内緒に…おねが、い…ケホッ、します」
「……いや、でも」
「………」
「はぁ…分かった。女の子の願いは聞いてあげなきゃね。でも、これだけは言っておく。頼る時は頼りなさい!」
「ふっ……なんですか、それ」
やっと、笑った雛ちゃんを見て少し安心しそして、少し恥ずかしくなって部活に行こうと背を向けて歩き出す。
「あの……飛ちゃんは、頼られたら…めいわく、だと、感じると思い、ますか?」
「いや、感じないと思うよ。だって、可愛い幼馴染のお願いだからねっ!」
か弱い、不安げな言葉に笑って答えて今度こそ体育館へ向かって歩き出した。
◆◇◆◇◇
最近は、飛ちゃんに会っていない。いや、会ってはいるけどその先はなにもない。うん、よく分からん。
イジメられ続けてはや二週間が過ぎた。その二週間ほとんど会っていないのだから向こうも心配なのだろう。よく、授業中とかで飛ちゃんと目が合う。しかし、話したりすることはない。理由は簡単、私が一方的に避けているから。
「はぁ……」
盛大にため息をついてもなにも変わることはない。最近になって、よく考えることは"飛ちゃんと話したい"という事だけ。と言っても話したら余計なことまで話してしまいそうで…怖い。それに…泣いちゃうかもしれないから。
「あっ、いた!おい!桐原。ちょっと」
最近になって、さらに昼休憩中の呼び出しが多くなった。きっと…『私が及川先輩を振った』っていう嘘の噂が流れ出したからだろう。くそ、誰だ。こんな噂を流したのは…。
まぁ、そんなことより、早く行かないと何されるか分からないので、席を立ち歩き出す。そして、呼んできた三年の先輩の方に行くとさっきとは違ったとても冷たい声で「早くしろよ」と一言。もう、いつものことすぎて慣れてしまった。
「あんたさぁ……及川振ったくせに、なに仲良くしてんのよ」
「……仲がいいってわけでは…」
「そういうのいらない。とにかく、今度仲良くしている所見つけたらただじゃおかないから」
そう一言いうと先輩は去っていった。それを見送ってから教室に入ろうと振り返るとすぐ目の前に飛ちゃんがいた。飛ちゃんが機嫌が悪そうに此方を睨んでくるのでなんとなく下を向く。でも…下を向くのは後ろめたい事があるからだ。
「おい…今の誰だ?」
「三年の先輩だよ…」
「じゃあ、その三年の先輩とお前は何してた?」
「……少し話を」
「なんの?」
「……部活」
「本当のこと話せよ!!」
ガチで怒っていらっしゃる!? そりゃ、私も悪いけどさ……。本気で怒ってくる飛ちゃんを前に黙っていると急に腕を引っ張られる。
「ちょっと、来い」
「………え?」
あっこれ、死んだな。そう思いながら飛ちゃんの後をついていった。
なんの物語かって?
ちゃ、ちゃんとハイキューですよ(震え)
こ、これから…が、がんばるんですよ。
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EP4 思わぬ来客
今回もバレー要素なしです。はい、すみません。
ーーなんて、酷い有様なのだろうか。
自分の顔を見てはニカッと笑ってみる。その笑顔すら汚れて見えて…私は、合わせる顔がないと思ってしまったのかもしれない。
二回目だ。これで、二回目。だからこそ…飛ちゃんには頼れないと、そう無意識に感じてしまっていた。
だからーーごめんなさい。
そう、謝ったら…飛ちゃんは許してくれるだろうか?
◆◇◆◇◇
「…及川さん、ちょっと話が……」
「いやだ。あっかんべーっだ!!」
子供かっ!
「お願いです。聞いてください」
「…いやだ、いやだ、いーやーだー!」
耳に手を当てて「聞こえませーん」という風にシャットアウトする及川さんにめげず声を掛け続ける俺。その光景に部室ではシーンとした空気が漂っていた。
「……お願いします」
「…はぁ、、だが断る!!」
うざっ!!
「おい!クソ川!!一年をイジメんじゃねー!!!」
「…いてっ。ちょ、岩ちゃん!?溝内蹴るの止めてくれない!?」
「テメーが悪いんだろうが」
重いっきり溝内を蹴られた及川さんは手で溝内の方を押さえながらうずくまる。だが、すぐになにごともなかったかのように立ち上がりため息を一つ。おいコラ、ため息をつきたいのはコッチだ。
「はぁ……分かったよ。飛雄ちょっと来な」
「あ、ありがとうございます!!」
部室から出て行く及川さんの背中を追いながら外に出る。すでに外では陽が落ちかけていて辺りは暗い。そんな中をしばらく歩いていると及川さんの足が止まった。
「で…なんの用?」
「約二週間経ちました……」
「なにが」
「雛に避けられ続けて…です」
「ふぅん……忙しいだけかもよ?」
「いえ、こういうこと…前にもあったんで……」
小学5年の時だっただろうか…
小学5年になると子供はさらにもの心がついてある一種の感情を理解する。ソレがあの場合『嫉妬』というものだった。まだ、小学生なのでやることは高校生とかから見たらきっと笑ってしまうようなものだったけども。その時の雛は『人形』のようで、嫌われないように…尚且つ目立たないように…と人の顔色を伺い、あることにしか返答しない。まるで、それ自体が……普通であるかのように。
「前にも…あった?」
「はい」
「あぁ…だからか」
「何がですか?」
「いーや!なんでも〜」
だからウザい。
「まぁ、いいです。…それで、及川さんはなにか知っているんじゃないですか?」
「飛雄ちゃんを避けている理由を?それは…知らないよ。というより知ってても言わない」
「なっ!?」
「え?だって……飛雄ちゃんに言いたくないから雛ちゃんも言ってないわけで、それなら俺が言うのはおかしいでしょ」
ちっ…正論を言っているだけにイラつく。……あいつが…雛が俺を頼るわけねーだろ! それに、及川さんは絶対に理由を知っている。…どうすればいい。どうすれば……
「はぁ…飛雄ちゃんに一つ教えといてあげるよ」
色々と考えている時、不意にそんな言葉が発せられた。及川さんの目を見てみるとその目は笑っていないが、顔は笑っている。それは、よく試合前に見せる顔のソレと似ていた。
「なんですか?」
「彼女が飛雄ちゃんを避けるぐらい何かに悩んでいるなら…それは飛雄ちゃんのせいなんじゃない?」
「はぁ?なんでそうなるんですか?」
「ただのカン、さ」
「………それ、楽しいですか」
「うん!飛雄ちゃんの反応を見るのは楽しいよ♪」
「及川さんってドMとドSどっちなんだ?」
そんな俺の呟きに今度は明らさまにはぶてたような雰囲気を出す及川さん。そして一言。
「ひどい!!」
そう言って喚いた後に、及川さんはブツブツと文句をいいながら去っていく。その姿を最後まで見つめ続け、背中が見えなくなってから俺も校門の方へ歩き出した。
ーー絶対に明日雛に聞く!!
と心に決めて。
◆◇◆◇◇
さてさて、これはヤヴァイってやつなんじゃなかろーか。なんて心の中で焦っている自分。飛ちゃんにつれられて来た場所はなんと屋上。よくありがちな展開☆なんて、ふざけとる場合ちゃいます。
「なぁ…さっきのはなんだ?」
「いや、アレは……はぁ、飛ちゃんには関係ない」
「そんだな。確かに俺には関係ない。だけど…お前が辛いんなら俺にも関係あるだろ!!」
「…なんで?これは私の問題だよ。それに…飛ちゃんには迷惑かけられない」
私の言葉に、さらに飛ちゃんは機嫌を悪くしたのか下を向いて拳に力を入れる。しかし、それでも私は話すことが出来ない。
「迷惑なんて…思ったことねーよ。俺らは幼馴染だろーが!!古いダチが困ってんのに…なにもできねーなんて、そっちの方が問題アリアリだろーが!!」
「……それでもっ!!ダメだよ。だって…飛ちゃんは男子だから」
「あぁ?男子だからって、なんか関係あんのかよ」
「飛ちゃんだって……彼女できなかったら困るでしょ!!」
「は?かの、じょ?」
うんうん、やっぱり彼女さんは大切だよね。もし、私に飛ちゃんが関わったら嫌われる確率がグンっと上がる。それだけは見ていて辛い。私のせいで飛ちゃんの将来がなくなるなんて…そんなこと考えられない。
「はぁぁぁああ?なに言ってやがる!!そんなものいらねーよ!!」
「ダメだよ、飛ちゃん。男の子がそんなこと言ったら」
「うっせ!!…お前が苦しんでるのに一人彼女作って遊べるかっ!!考えろ、ボゲェ!!」
肩で息をしながらこちらを睨んでくる飛ちゃん。そんなに、見ないでぇ……なんて言ってる暇はないな。
「ちょっと!!あんたらうるさい!!」
「いてっ!」
「よっ…と」
危ないぃぃいい!!
突然の声と同時に弾丸の如く飛んできたのは小さな二つの石。一つの石は飛ちゃんの横腹にクリティカルヒット。そしてもう一つの石は私の頬を掠めていった。あのまま、避けなかったら顔面にクリティカルヒット。死ぬところだった。
「テメェ!あぶねぇだろ!!ちゃんと、見てから投げろよ!!」
そこぉぉ!?
「は?避けないあんたが悪いでしょ」
つっこめよぉぉ!!
二人でバチバチと電撃が見えるほど睨み合っている。一人は怒って。もう一人は冷静に。どちらが怒っているのかは言うまでもない。
「あのぉ…貴方は…?」
「……!!(かわい、い!!」
「あの…!!」
「あっ、ごめん。えっと、私は及川 姫華。お前は?」
「私は…桐原 雛だよ。よろしく!姫ちゃん!!」
「あぁ…////」
何処か、姫ちゃんの顔が赤い気がするのだが…気のせいだろうか。なんて観察しながら、今もなお威嚇している飛ちゃんの方を見る。
「おい!雛!!気をつけろよ。石投げてきたやつだからな。何してくるかわかんねぇぞ!!」
「あぁ!!なんだって?」
あっこれ、馬が合わないやつだ。ギャーギャーうるさい飛ちゃんは放っておこう。と心に決めて、姫ちゃんの方を向いた。
「あっ、そうだ。さっきまでなにか話してたようだけど……なんかあったのか?」
「…あー、うん。まぁね」
「それって…『及川 徹』を振ったってやつと関係してる?」
「…!? 」
「やっぱりかぁ…名前を聞いて思い出したんだ。それで…イジメられているってな」
「…姫ちゃんは頭の回転が速いんだね」
『及川 徹』を振った。という噂とさっきまでの会話。それだけで状況を掴んだ。並以上の状況整理能力。
「まぁ、別に自慢する程じゃないけどな」
「そうかなぁ…私としてはすごいと思うけど…」
「そ、そうか?」
「うん!!」
照れているのか、顔をソッポに向けながら頬をかく姫ちゃん。とそこで、昼休憩終了のチャイムが鳴った。
「あっ…やばい。行くぞ、雛!」
「う、うん。姫ちゃんは?」
「…行こうかな」
「じゃあ、はやくしないとね!!」
「うぇ?…う、うん!」
私は姫ちゃんの手をとって、前を走る飛ちゃんの背中を追いかけた。途中で、「廊下を走るなー!!」という声が聞こえたり聞こえなかったり。
次回は、必ず…バレー要素を入れる!!
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