心が産まれる、魂を創るRPG【テイルズオブクリエイティア】 (風見 桃李)
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キャラクター紹介&設定
ゼクナス&ユリエル


ゼクナス・ハードヴィック

 

本名ゼクナス・オリジナリア、現在の名はハードヴィック家に拾われてから。

ランク 騎士団隊長首席

戦闘スタイル 魔騎士

 

出身 テセアラ・シルヴァラント王国内の王家の狩場

所属 テセアラ・シルヴァラント王国騎士団

性別 女

年齢 23才

身長 170cm

体重 61kg

理想CV.未定

モデル テイルズオブファンタジアのダオス、テイルズオブエクシリアのミラ・マクスウェル

 

キャラクター説明

王国一強く美しいと言われる女騎士。

10年前、記憶がないところを王家の姫に拾われた、姫に対するその恩を騎士団で奉仕することにより返すことにした。

今や騎士団長 ユリエルの懐刀とされているがその関係は緩い、それはわざと彼がしているのかしていないのかは定かではない。

 

戦闘スタイル説明

戦う時は剣と魔術、使う術技や覚える術技は基本的な属性や定番技。使う共鳴術技は幅広い。

モデルor言わせたい台詞

「それでも私は君を守る、世界よりも、君をだ。」

 

使用武器 剣

サブウェポン 手甲または手袋

 

使用術技

無属性

魔人剣 衝撃波が地を這う、特技

瞬迅剣 素早く突きをする、特技

虎牙破斬 切り上げ時に前方に跳躍し切り下げに繋げる連続切り、特技

 

 

火属性

「業火爆裂」ファイアボール

火炎弾を打ち放つ魔術、回数を重ねると段数も増える。

「業火よ、焔の檻にて焼き尽くせ」イグニートプリズン

「原始灼光」エンシェントノヴァ

 

水属性

「荒れ狂う流れよ」スプラッシュ

狙った敵の上空から水流を発生させ敵に降り注ぐ魔術。

「出でよ、敵を蹴散らす激しき水塊」セイントバブル

 

風属性

「唸れ烈風!大気の刃よ、切り刻め!」タービュランス

「巻き起こる春の嵐」アリーヴェデルチ

「怒れ、吼えろ、螺旋の将軍」ハヴォックゲイル

「雷雲よ、我が刃となり敵を貫け」サンダーブレード

 

地属性

「母なる大地よ、その大いなる怒りを示せ」グランドダッシャー

 

 

 

ユリエル・ディワインド

 

ランク 騎士団長

戦闘スタイル 弓槍拳騎士

 

出身 テセアラ・シルヴァラント王国内

所属 テセアラ・シルヴァラント王国騎士団

性別 男

年齢 32才

身長 180cm

体重 70kg

理想CV.小杉十郎太→杉田智和

モデル テイルズオブヴェスペリアのアレクセイ・ディノイアとレイヴンとシュヴァーン・オルトレイン。

 

キャラクター説明

ディワインド親衛隊と王国騎士団を率いる王国一の手慣れた騎士、彼は王国全ての人間の武の象徴である。

その理由は王国では珍しく、騎士団の中より選出され国民全員からの投票から選ばれた人間であるからだ。

そんな彼もまた20年前、前王アレクセイ・リーヴァロ・ディワインドに拾われた。王国の名前は現王の家名である。爵位は公、一応貴族。

 

戦闘スタイル説明

縦横無尽に動き様々な武器を巧みに扱い戦う姿は正に動く殺戮兵器、だが本人は国を守るために着けた守りの技術と言い張る。

騎士だが分流な技を覚える、弓技が多く覚え、技数が少ないのは槍。魔術はからっきしのため何も覚える気がない。使う共鳴奥義は技の方が多く。イベント後、槍は使えなくなる。

モデルor言わせたい台詞

「俺は死んでいる、俺は…お前達の敵だ。」

使用武器 騎士剣、弓、槍、手甲

サブウェポン 小太刀

 

使用術技

 

弓の場合

時雨

土竜なり

天の閃き

舞うが如く

碧の刹那

 

 

剣の場合

双牙斬

瞬迅剣 素早く突きをする、特技

秋沙雨

爪竜連牙斬

 

 

槍の場合

瞬迅槍 素早く突きをする、特技

 

 

拳の場合

三散華

 

 

共通術技

集気功

 



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アジューカス&オズワルド

 

アジューカス・エヴェルレッテ

 

ランク 精霊博士

戦闘スタイル

所属 レーヴァリア帝国 魔素研究所

出身

身長 180cm

体重 65kg

年齢 35才

理想CV.

モデル 夢王国と眠れる100人の王子様のオズワルド、テイルズオブジアビスのジェイド・カーティス。

 

キャラクター説明

ローレライを発見し契約した者で唯一この世界で無条件で強力な回復術を使える人間。

専攻は精霊学古代科四精霊目、精霊学の七番目の精霊 ローレライの権威だがあまり知られてない。

ローレライと契約してから音楽を学んでいる、音の精霊だからと言うことらしい。

 

戦闘スタイル説明

世界で唯一無条件で強力な回復術が使えるだけあって覚える術は回復補助が主で攻撃系は光と闇が多い、技は斬打系で属性付きが多い。

 

使用武器 剣または弦楽器

サブウェポン 宝珠または演奏道具

 

戦闘スタイル

楽器が武器として売っていることは少ないため基本的には剣となる。騎士のような動きだが騎士より素早く斬りつける。手数が多い。

剣で斬撃、宝珠で打撃。楽器の場合は楽器時専用の技が増える、楽器の場合全てが打撃。

 

インスペクトアイ スペクタクルズ同様の効果を持ち相手のステータスを知る特技

三散華

襲爪雷斬 斬りつけながら真上に飛び雷を落とす雷の秘技

風雷神剣 突きのあとに落雷を発生させる、突きが当たらなければ落雷は発生しない。雷の奥義。

 

 

攻撃

 

「魔を灰塵となす激しき旋律」ジャッジメント

「破邪の天光煌めく神々の歌声」グランドクロス

 

「深淵へと歌う旋律」ナイトメア

「黒曜の槍よ 貫け」デモンズランス

「歪められし扉よ開け」ネガティブゲイト

「魔狼の咆哮よ」ブラッティハウリング

 

 

回復/補助

「活力満ちよ!」ファーストエイド

味方一人のHPを小回復(最大HPの25%)する。

「命の灯火よ」ヒール

味方一人のHPを中回復(最大HPの50%)する。

「命を育む女神の抱擁」キュア

味方一人のHPを大回復(最大HPの75%)する。

「女神の慈悲たる癒しの旋律」リザレクション

自分と周囲の味方のHPを回復(最大HPの15%×4)させる。

「穢れを浄化せよ」リカバー

味方一人の状態異常を回復する。

「(初回)紡ぎしは蘇生、訪れぬ終焉、永劫たりえる光の奇跡に名を与い、今、希望の光を宿せ/(二回目以降)死の淵に眠る者に、再び光を」レイズデット

味方一人の戦闘不能を回復し、HPを回復(最大HPの75%)する。

「壮麗たる天使の歌声」ホーリーソング

「確固たる護り手の調べ」フォースフィールド

 

 

 

オズワルド・レイヴァーン

出身 テセアラ・シルヴァラント王国 忘れられた街 ヴォルティス出身

所属

身長 163cm

体重 50kg

年齢 14才

理想CV.

モデル テイルズオブエクシリアのヴォルト

 

キャラクター説明

元は王国の城下に居たが5年前の四度に渡る魔族戦線の時に住んでた場所が壊されヴォルティスに来ることとなった。

ヴォルティスで精霊学を独学で学んでいた、その結果雷の精霊ヴォルトの式を一人で導きだし契約をした。ただヴォルトに少し精神を持っていかれ引きこもりがちになる。

町に来たゼクナス達の力により元に戻ると彼らに、着いていくことを決める。

実は魔族戦線の時にゼクナスに会っている。

 

使用武器 杖(イベント後に槍を追加)

サブウェポン 襟巻きかブローチ

 

戦闘スタイル

ヴォルトと契約をしているだけあって雷の術技が多く、マナコントロールも上手いため他属性の術も扱える。

 

 

天翔弾

ジャンプしながら杖を振り回し、空中で雷撃弾を飛ばす。雷の特技

風神招

杖を凪ぎ払い、前方に竜巻を起こさせる。風の特技

護法蓮

貫通性がある障壁を展開し前方に攻撃し、自分と周囲の味方のHPを回復(最大HPの10%)させる。

流蓮弾

杖を三回振り回し連続で水流弾を放つ。水の特技

 

「響け稲妻」ライトニング

「迅雷の剣!」サンダーブレード

「武き神が振るう 紫電の鎚よ」ヴォルト

 

秘奥義1

「天光満つる所に我は在り、黄泉の門開く所に汝有り、出でよ、神の雷!これで終わりです!」インディクネイション

 

 



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第一章
始まりの神話


昔、それは遥か昔、精霊が生まれたばかりの時代に、時の精霊と源の精霊が戦いあった。

 

理由は双方の意思。

時の精霊は時が進むが如くゆっくり人を育めと言った。

源の精霊は細胞が爆発的に出来るが如く…その世界に精霊の力を注ぎ人を育めと言った。

 

どちらも正しかったのだろう、原子の精霊も、自然の力を司る精霊達も何も言えなかった。

 

やがて時の精霊も源の精霊もその戦いで力が尽き果てそうになった。

そこで二つの精霊は妥協点として二つの力を融合させ二人の人間を作り上げた。

 

それは時の精霊寄りの力を持つ人間と無の精霊寄りの人間。

 

どちらかが世界を前進させた時、世界を統一した時、どちらかの精霊が正しかったと証明させるために。

 

 

――――――――――――――――

 

 

音歴0001(ローレライれきマルマルマルイチ)

 

新たな精霊が見付かる度、その精霊に敬意を払い、それに所縁の歴を変える世界 パラケルスス。

そんな世界で500年ぶりに音の精霊 ローレライが見つかって1年が経っていた。

 

ローレライを見付けた精霊学者のアジューカス・エヴェルレッテ博士は今日、ローレライと契約をする。

いつか、近い未来に世界に災厄が起こった時、力を貸すと…

 

「ローレライ、それは私が生きてるというか…私がちゃんと動ける、走り回れる年の間に来るんだな?」

『…そうだ、時の霊域の守護者の君にも』

「エヴェルレッテ家がその霊域の守護者だって言うのは知らない、それに私は血筋に興味がなくてねぇ。…残念だがローレライ、どちらに着くかは私が決める、いいね?…ふむ、だがローレライ、君はどちらに着いても構わない」

 

アジューカスがそういうとローレライと呼ばれた淡い光はそよ風に吹かれるように揺らいだ、アジューカスのことに納得を、理解をしていない。

『何故?』

「君と喋ってわかったことがある、君達精霊は私達より…そう、心がとても発達しているようだ。だからこうなったんだろう、我が子達の教育方針で大喧嘩、今の時代にこうなるとはねぇ…」

 

そう言うとアジューカスは呆れつつ口から笑いが零れる、まさかそんな事態に自分が巻き込まれるとは思いもしなかったからだ。

さらにそれは今ではない、いつか先の少し年を取った自分が巻き込まれる、いつかもわからない不確定なのに起こるのは絶対という確定事項。

そう考えているとローレライはボソッと呟いた、その事にアジューカスは疑問を持つ。

『我が子達の…ならば音色紡ぐ子は我の子よ』

「私が君の子?なんでそうなるんだい?」

『音色紡ぐ子よ、我と同じ音色を紡ぐ者よ。我を召喚出来者なのだ、音色紡ぐ子も我の子であろう』

 

アジューカスはその事に何か嫌なことを思い出したかのように話を終わらせる、ローレライに別の話を切り出す、それは契約の話。

「…そう、かい、つまり召喚出来れば皆我が子…か。さて、ローレライ、契約をちゃんとしようか、 そろそろ仮契約から本契約をして精霊界に帰りたいんじゃないかい?」

『我は…』

「…どちらでもいいって言わせないよう?私に託すんだろう?音の精霊 ローレライの力を。」

『…よかろう、どうか、闇無き世界に』

「闇はいくらでも生まれる。無くなりはしない、けど契約をするんだ、これは誓う。」

 

アジューカスはローレライの前に立ち声を紡ぐ、その声は堂々と、その年にしては威厳を持つ声。

「…我を意味する契約名は音色紡ぐ者なり、人成り立つ名はアジューカス・エヴェルレッテ、ローレライよ!闇を持つ者を魔の者にせん為に我は誓おう!一人でも多くの者を助けると!」

 

 

 

とある部屋に音が響く、その部屋の床には陣が形成されそこから微々たる光が集い舞い踊る。

その時ローレライは一瞬人の形になった、だがそのまま光を発し何処かへと消えた。

しかしそんな呆気ない終わりでもアジューカスには確信があった、契約は成功したと。

 

 

 

時は15年経ち、音歴0016(ローレライれきマルマルイチロク)の現在、テセアラ・シルヴァラント王国の城のとある廊下、それも日が昇る前、そこに二人の男女が歩いていた。

「ハードヴィック隊長首席、私の本日の予定は」

「はい、本日は朝食を取り次第書類に不備がない限りサインを、軍や評議会からの書類が30枚貯まっています。そのあと時間が空き次第、隊長格を集めて現在の各隊の戦力バランスや武器の不具合等、大丈夫かを隊長達に報告してもらうことになっています」

「ん、あぁ、先週俺が提案したやつかぁ」

「おい騎士団長閣下、人がいないからと言って口調の乱れはやめろください」

 

「ふっ、君が一番乱れているガッ!?ふぅヴゥゥッ!足を踏むな…!痛い…!」

 

「あと昼食取り次第姫様とお話を、その後剣術指導です、夕食まで」

「スルーするな…!はぁ、まーったく、何故姫様は剣術を覚えたいんだ?何を見てそんなものに興味を…」

「冒険系の小説、時の王と無の剣士 時の王編だったと思います」

「…無の剣士に憧れ?」

「無の剣士と時の王は敵の親玉です、その二つを退治にしに行く時の剣を操る時の勇者かと」

「ふーん…で?何でお前知ってんだ?やけに詳しいな」

「拾われた当初は姫様と仲良くさせてもらったので、今も仲良いですが」

「そうだったな…って!無断で姫の所に行くな!」

 

足を踏んだ彼女はゼクナス・ハードヴィック隊長首席、王国一の剣の使い手であり美貌の持ち主だと言う。

金の色をした絹のように美しい長い髪、海のように青い瞳、陶器のように傷がないと言われる白い肌に長い手足、身長が高いから取れるバランスでありその上出るところは出てる素晴らしい体型。

それであり王国ーの剣の使い手ならば、皆が良い意味でも悪い意味でも彼女を狙う。

 

そんな彼女の上司であり騎士団のトップの彼はユリエル・ディワインド騎士団長閣下。

王家を含む貴族、騎士団、そして街の皆達の投票により選ばれた騎士団の団長である。

投票と結果に時間は掛かるが二週間掛けて選ばれる実力と人望は確かなものである。

そしてこの国では珍しい白髪のような銀色の髪にルビーのような紅瞳、ちなみにルックスは下町のおばちゃん達にも貴族も公認のルックス。

 

そんな彼は魔術はからっきしだがどの武器も体術も得意気に操り一人で数百の魔物の群れを撃退させる、そんな彼は国民が誇る騎士団長である。

だがそんな団長様なのに何故かこの部下、ゼクナス・ハードヴィックには頭が上がらないようだ。

「姫様との約束です、ハードヴィック♪いつまでも仲良くいたしましょうねぇと。」

「姫様そんな喋り方じゃねぇよ!」

「そろそろ朝食の時間になります、閣下」

「え!?あー…朝食取る前に書類やりたかったのに…」

「いつまでもゆっくり歩きながら喋ってるからです、早く歩けよ」

「ふっ、うっせ!わかってるわ!」

 

そう言いながら彼らは笑っている。

今日もこの王国は平和です、そう、今は。

 

 



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魔素、出現

~王国より、旅立ち編~

 

 

時刻は午後、既に昼食を取り終わったユリエルはこの王国の姫の部屋に向かっていた。

「さて、本日は何を喋りますかな…術技?属性?いや、属性や術技について話すなら精霊からだ。そうなると自然を司る四精霊だな…よし」

 

独り言を言いながら歩いていれば既にそこは姫の部屋の前、ユリエルはノックをし敬礼を取りながら扉の向こうに居るであろう姫に語りかける。

「失礼いたします、姫様。ディワインドです、居られますか?」

「私の好きなものは?」

「…時の勇者」

「お入りなさい」

「失礼いたします」

 

部屋に入るとユリエルよりも、ゼクナスよりも背の小さい、まだ少女の姫がそこには居た。

彼女こそ次期王位第一継承権を持つ者、現テセアラ・シルヴァラント王の直系の娘、カディス・イディア・テセアラ・シルヴァラント。

「こんにちは姫様、今のは?」

「合言葉、ですわ。それにユリエル、私のことはカディスと呼んでと言っているでしょ?」

「いや、ですが姫様、それはなりません。私は騎士団の長で、貴女様は我が武器を掲げる主です」

「剣ではなく武器と称するのね。ふふ、ユリエルらしいわ」

「当たり前です。私は騎士剣のみならず、守るためならば弓も槍も、この体を武器として、盾として使い姫様を守るのですから」

 

ユリエルがそう言うとカディスは眉を潜め呟いた。そんなカディスの手を握りユリエルはカディスの目を見て言う。

「…本当に、頼もしいですわ」

「必ず、死なせは致しません。この国は貴女が、彼と同じ理想を持った貴女が必要なのだから」

「ユリエル、私は…!」

 

カディスが言うのを遮るようにユリエルは話を変える、カディスはユリエルの顔を、眼を見る。カディスは気付いている、彼の目には自分が写ってないことに。

「さっ、姫様、この話は止めにしましょう。何を思い武器を持つのかは知りませんが教えるからにはちゃんと使い方も、それに関する知識等はしっかり教えますよ」

「…わかりましたわ」

 

ユリエルはカディスの返事を聞くと微笑みで返した、しかし数分後にはその笑みは消えていた。自然を司る四精霊のことについてカディスに教えていたのだがどうやら好きな分野だったらしい、熱く語り始めていた。

「つまり四精霊が存在し、我々人間に力を貸してくれているからこそ、我々人間は魔物との戦闘の際に地水火風の術技を扱え、普段の生活でも困ることなく豊かな生活を出来ているのです。それ故に我々パラケルルスの住民は精霊に敬意を払い、新たに見付かった精霊を歓迎する意味も込めて、暦に精霊に関する名前をつけ新暦とするのです。今までの暦には歴代の大精霊の名前がありますのでまた英雄と歴史をまたお読みください。」

 

「それはわかりましたけど…ユリエル、暦の話になっていましてよ?」

 

「も、申し訳ございません!えー、つまり四精霊の火のイフリート、水のウンディーネ、風のシルフ、地のノーム。彼等は人を信じるという意味も込め契約に応じ、何万といる人間に、身近でもある力を司る彼らだからこそ力を貸してくれているのです。」

「その信頼を返すために我々はマナを大切する、精霊とその力を悪用しない。ということですわね。」

「はい、ですが残念なことにここ二十年で魔術の悪用が増加…つまりは犯罪の増加、急激なマナの減少、魔素の出現等があります。何より魔素の正体はまだ不明、少なからず人体に影響があるらしいという風の噂…うぅ、姫様の体調に影響がなければ良いのですが…」

「魔素は王国の人の居ない所に出るのでしょう?確か…ヴォルティス平原、でした?なら今は平気です、早急に解決できるように今は情報を集めましょう?」

「もうそこまで城に情報が…!騎士団とは別の情報網があるだけはあるな…ふむ、ヴォルティス平原か、昔ヴォルティスという町が近くにありましたね。住民はいないと言われています。今度、実力が中程の隊を一つ派遣しましょう」

「そうですわね、何が出るかわからない以上は強すぎても王都も城下も守りが手薄になりますし、まだ鍛練が未熟すぎる者たちでも対処できない場合もありますわ」

「まだ弱い者達は引き続き壁の外側の警備をさせましょう、王国内の街の警備はその他で」

 

やることが一つ決まるとカディスはふと思い出した。

「あら、お仕事の話になって仕舞いましたわね」

「しまった…すみません、話がどんどん離れてしまいました」

「ワーカーホリック、ですわよ?」

「どこでまたそんなことを…どうせゼクナスでしょう?お止めください姫様、あの者と姫様はもう立場上のものがあります、会うことを」

「止めませんわ、家族ですもの!このお話もお仕事のお話ももう終わりにしましょう」

「ですが!」

「これは命令ですわよ」

「ぐっ…御意…」

「精霊の話は私も本でまた読みますわ、次は術技ですわ」

「そうですね、それは私が言うよりも良いでしょう。姫様はすぐに覚えてそこからまた自分で考えなさいますから。」

「そうです?もしそうだとしても術技は出来ませんから…演習場に行きましょう?」

 

カディスがそう言うとユリエルはカディスの手を取る、それを少し見てからカディスは立ち上がった。ユリエルとカディスは歩き出そうとすると扉にノックがされる、そのノックは激しくした者は焦っているのがわかる。

「姫様!閣下!どちらか居られますか!」

「静かにノックをしたまえ!姫様の部屋だ、静かに開けろ」

「はっ、申し訳ございません!失礼します!」

「何かあったのか?」

「城下町に魔素が出たと…!」

「なっ!魔素だと!?」

「はい!前触れもなく!それと魔物もいつもより気性が荒くなっていると言うことです!」

「ゼクナスに向かわせろ、他の部隊の指揮は私がやろう」

「そ、それが…ゼクナス隊長は既に向かっているらしくどこにいるかは…」

 

隊員がゼクナスの件について話すとユリエルは拳を握り震えた、どうやら毎回自己判断で向かっているらしい。

「あぁんのやつは~っ!!よし、わかった、ゼクナスの隊と君のいる隊で鎮圧に向かう、私はここに親衛隊を配置した後そちらに向かおう。」

「はっ!ゼクナス様の隊は先程向かうのが見えましたので私は隊長に報告し向かいます!」

 

隊員はそう言うと部屋から出た、それに続きユリエルも部屋を出る前に扉の前で立ち止まった。

「姫様、ここと扉の前にディワインド親衛隊を配置します。実技はまた後日。」

「わかりましたわ。…ユリエル、どうか気を付けて、我々にとっては魔素はまだ未知のモノですから」

「承りました」

 

そう言うと部屋からユリエルは出ていった、カディスは部屋の窓を見て魔素があると思う方向を見る。

「…ゼクナス、あなたもね…」

 

 

――――――――

 

 

【城下町 商人のイフリート地区イフリート街】

 

ゼクナス隊、正式名称イフリート隊の隊長であるゼクナス・ハードヴィッグは熱気ある商人のいる地区、イフリート地区の中心部、イフリート街にいた。

イフリート街はイフリート隊の巡回地区の一つである、隊長である彼女もまた仕事で来ていた。

「さぁさぁ!そこの旦那!このグリフォンの肉は良い肉だよー!」

「このウオントはサプライズエンカウントの珍しい魚肉だよぉぉ!」

 

見渡す限り人、ヒト、ひと。

沢山の商人が自分の持ってきた、買い取った様々な商品を売ろうと声を出し合っている。

誰もが自信を持ち声を張る。

「流石商人街だな、ここからまた王国全土の街に行き、それぞれの店に並ぶのか。…しかし、うまそうな鶏肉だな、んぐっ、これは夕飯は唐揚げも良いな」

「お?その真紅の騎士服…ハードヴィッグ隊のじゃないか。そこの金髪のねぇちゃん、腹が減ったのか?」

「ん?あぁ、鶏肉を見てたら確かに腹が減ってきたな、唐揚げにすると美味そうと思っていた」

「これは砂漠のグリフォンの肉だよ、身が締まってるから唐揚げよりもソテーがおすすめだよ」

「なるほど、砂漠からなら脂身が少ないな、肉の弾力が良さそうだ…すまないが金は払うから置いて置いてくれないか?私の巡回が終われば取りに来たいのだが」

「ハードヴィッグ隊には世話になってるからね!良いよ良いよ、ねぇちゃん名前は?」

「そのハードヴィッグ隊の隊長だ、肉は七切れで頼む」

 

そう言いゼクナスはお金を起き去っていった、それを聞いた店主は不自然に固まっていたのを店主の妻が叩いてもとに戻す。

「なにやってんだよ!あんた!ほら!仕事しな!」

「あぁ、あ、あれが!あれが!絶世の美女!?綺麗だが…ガハハ!とんだ食いしん坊じゃねぇか!」

 

その日よりゼクナスは麗しの大食らいと呼ばれるようになったとか。

そして数時間後、ゼクナスはイフリート街の少し外れにいた、ここを回ればゼクナスの巡回は終わる。

「晴天だった筈、何故、此方に行くに連れて黒い霧が…ゲホッ…まさか…魔素か」

 

黒い霧、普通ではあり得ない色をした霧。

魔素は普段から見掛けないがここ数ヵ月、日に日に騎士隊では見掛けることが増えていた。

ゼクナスは急いで外れから離れ、イフリート街の中心よりも近くの下町の騎士小隊に向かった。

扉を叩くことなく走ったそのまま扉に向かって蹴りを入れる、外も中も音とその行為で驚いている。

「イフリート隊、隊長のハードヴィックだ、至急城に2名で連絡をいれろ。」

「ハードヴィック!?城の騎士がな「驚くな、騒がしい。イフリート街の少し外れ、それも住居地域に魔素が出現、至急兵を動かせ。残りで民を逃がせ、最初は中心部で良い、騎士は通るなら中心部から少し離れて動け、以上だ、行け!」んだって!ロナルドは城のハードヴィック隊!エゼルフは閣下へ連絡しろ!全力疾走だ!」

「「了解した!/はい!」」

「私は先に向かう!火か何かの魔術を着き次第空に放つ!それで大体を把握しろ!」

 

そう言うとゼクナスは先程居た黒い霧に覆われた住居地域に戻るため走っていった。

「む、無茶苦茶な最後だな!総員住民を逃がせー!」

 

 

――――――――――――

 

 

【黒い霧に覆われた住居地域 イフリート街の外れ】

城の方から城下の外れは一般の騎士からすれば走っても一時間未満は掛かる、しかし現在のユリエルは戦闘スタイルを機敏で素早い拳闘士と弓取りを交互に使い分け約三十分で住居地域に着いた。

ユリエルが着いたときには既にここは無人となっていた、その代わりなのか魔物の死体がたくさん倒れていた。ユリエルは魔物の死体をマナ化、完全に消滅させながら進んでいく。

「…いないな、奥か?」

 

無人となった扉の開いている家や入れそうな小道を入ったり、真っ直ぐ通りを歩いたりした、そしてもっとも奥の、イフリート街の外れであり国を守る壁に近い所まで来ていた。

そこには大きな見たこともない魔物と剣を構え戦闘寸前のゼクナスが居た。

「ゼクナス!?」

「遅い」

「すまないな!今弓取りで援護する!」

 

 

そして魔物との戦闘が始まった。

 

 

「ゼクナス、戦い方は覚えているな?」

「当たり前だ」

「最初は通常攻撃だ、その後に特技、秘技、奥義と技を繋ぐ。お前は騎士だ、騎士団で習った通り戦え、良いな?」

「私は騎士団で習ってないが」

「…なら道具をまず使えよ!アイテムはインスペクタクルズ!お前のポーチにある筈だから!」

「忘れていたのか、まぁいい、了解」

 

ゼクナスは敵の正体をわかるようにするため道具を使う、それを邪魔させないようにユリエルは連続して弓を放つと地面に爆発する罠を仕掛ける。

「邪魔はさせないぜ!ついでに土竜なり!」

「インスペクタクルズ!正体を見せろ!敵は…人間、だとっ!?」

「なんだと!?」

「魔防御、物理防御共に脆い!体力も低いが侮るな!」

「それは俺が言う言葉!こいつの動きは遅い!改めて戦闘の仕方を思い出せ!」

「何故だ、適当にやってれば勝てるだろう」

「それは相手が自分より弱ければな!戦闘の基本だ、通常攻撃をしたあと相手の攻撃が素早ければ瞬時にガードするか攻撃前にガードをして構えとけ。」

「ガード」

「魔術も使えれば遠くから魔術も良いだろう、しかし当然近接攻撃してくる奴もいる。ガードは覚えていて損はない、ちなみにガードは二つあるがそれ今度な!」

「損はない、了解。しかし今は倒す」

「俺の説明の意味!」

 

会話をしているとゆっくりとだが敵は向かっていた。

ユリエルの仕掛けた土竜なりに敵が引っ掛かるとそれに続いてゼクナスは流れるような剣技を出す、次に地を這う衝撃波、それを繋ぐようにユリエルは幾度か矢を放ち、天に弓を放つ。

「天の閃き!ゼクナス!魔術の準備!」

「了解!」

「舞うが如く!」

 

喋りながら指示を出し技の繋ぎを無くさないようにユリエルは回転しながら変形式脇差と変形式騎士剣で体を捻りながら駒のようにとはいかないが二回転して斬り付ける、その間にゼクナスは一番短い術式を組み上げる。

「業火爆裂!」

「今だ落ちろ矢!」

「ファイアーボール!」

「ギィギャァァァァァァッ!」

 

敵に二つの攻撃が同時に当たると爆風が起きた、周囲に突風が吹くと魔素は消え、倒した敵が居たところからマナが現れる。

敵を跡形もなく倒した証拠だ。

「今ので魔素が吹っ飛んだか?」

「可能性はあるな。魔素がどうなったか騎士団に一度国内全域に確認の伝令を飛ばした方が良いのでないか?」

「あぁ、そうだな、先程の魔物化した人間も吹っ飛んだ魔素も気になる…てかゼクナス、お前は大丈夫か?魔素を吸ったろ?」

「私なら大丈夫だ、それよりも魔素を隣国まで調べに行きたいのだが」

「魔素を隣国まで?どうやって?魔素はまだ隣国に出てないかも知れないだろ?どの国も情報規制されているのにわざわざ情報を流しに行くのか?首跳ねるぞ?」

「帝国の精霊学者、そいつならこれを持っていけば解析をしてくれる。精霊と契約してるらしい、契約者は人類の損になるようなことはしない筈だ」

 

そう言ってゼクナスの出したのは黒い瓶二つ、否、中身が黒い何かの瓶二つだった。

まるでダークボトルのように禍々しいものだ。

「おいおいそれって…まさか魔素?」

「魔素だ、特別濃度が濃い所があった、透明な瓶に術式を組み込んでマナを逃がさないようにした。一つはコルク止め、もう一つは直接口の部分を溶かし止めた。」

「俺の出来ないことを平然とやるなぁ…まぁ、一つわかったことがあるな」

「魔素はマナ、と言うことだな。生きててよかった」

「ホント無茶する…この件は俺が素早く書き置きと姫に報告をする。それは城に持ち込むな」

「わかった」

「それと帝国…行くんだろ?俺も行く、ついでだ、平和の使者にもなれないか聞いてくる」

「ついでにやるものではないだろう。それにしても二人か、簡素な使節団だな」

「うるせぇな、二人でもこの国の騎士団長と騎士団首席!お前立場わかってんの?てかわかってくれ!それに魔物がすごくてあちらこちら復興に忙しいんだ!金もなくなる!それに金があるのは帝国ぐらいだ、大分差を出して王国が二番だろうけどな。さて、明日の昼までには何とかするから旅の準備をしとけ、怪我も治せよ?」

「これを持って街に行くのは「駄目だ」…鶏肉、買ったんだが…」

「…俺が貰っておく」

「グリフォンの肉、七切れだ、よろしく。私は人気の少ないサランダの兵舎にいる、迎えに来てくれ」

 

そう言うとゼクナスはゆっくり歩いてサランダへと向かった、ユリエルは後ろが少し見えなくなるまで見ると色んな所を飛び上がり屋根に向かう。そうして屋根伝いで城へと帰っていった。

 

 




おまけ
ユリエルに怒られたのがエゼルフ、ハードヴィック隊に行ったのがロナルド。

エゼルフ・ロラン
下町に常駐する騎士隊の一員、魔術と素早い攻撃が得意。騎士剣よりレイピア等の二刀流にいつかなる。

ロナルド・マヤラ
下町に常駐する騎士隊の一員、ユリエルに憧れて入った、騎士と拳闘士の戦闘スタイルを混ぜて戦う(予定の)騎士。全身がバネのような体、成長すれば強くなる。


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王国より、旅立ち

夜も更けきった姫の寝室の前に一人の騎士がいた。

 

 

彼は静かにノックをするとそれもまた声静かに、声を掛け部屋に静かに入る。姫は本を読んでいたらしく、栞を挟んでから閉じると入ってきた者が誰かを確認した。

「ユリエル?どうしましたの?夜も随分とふけ始めてますのに…」

「夜分遅くに申し訳ありません、至急意見と指示を欲しく参りました。それと遅くなりましたが昼間の魔素について報告なのですが…」

「昼間の魔素のことですか?明日では良くなくて?」

「いえ、意見と指示は報告を聞いてもらわなければ決められないことなので…。実はゼクナスが空きビンに魔素を詰めたらしいのです、術式はマナを封じ込めるものとのこと。まず一つ、魔素はマナ、と確定ではありませんが可能性は十分高いと確認できました。」

「魔素がマナ、ですか。やはり、穢れたマナは魔素なのでしょうか…それにマナの浄化が出来てないのですね…」

「マナの、浄化?穢れたマナ?」

 

ユリエルがそう聞くとカディスは先程手にとっていた本とは違う本を取り出し、本を撫でながら、思い出すように説明をする。

「マナの浄化は世界樹の神子とマナの宝女、世に二人必ず現れ、穢れたマナを浄化する、です。本に、書いてありました。それぞれ太古の王国、帝国の地の者として生まれるらしいのです、その役割はマナを蓄えられる、マナを使い穢れたマナを浄化する。精霊達は、その二人を待ち続ける…英雄を止めるために…」

「それは、物語の方ではなく…精霊誕生歴と言われる…」

「時の源元年、精霊戦争は終戦する、人類は二分の一以上消失す。その後、地水火風闇光の力司る者、世に現れる。その者等、英霊の姿をし超人なる力を持つ。月日経ち、新たに時と源、原子の精霊現れる、です。」

「ひ、姫様、待ってください。最初の話…それはつまり、精霊には、大精霊様にはマナの浄化は出来ないのですか?大精霊様はそれが出来ると…!」

 

そう、この世界、パラケルルスでは、大精霊及び四精と言われる地水火風の精霊はマナの浄化ができると言われ、それぞれの精霊の居ると言われてる所や奉る場所等は清んだマナがあると言われている。

 

この国、テセアラ・シルヴァラント王国は現王になってからそれぞれの精霊を奉る正式で立派な場所もある、マナは空気も当然、生活の一部、だからこそ国民は現王が例え少し無茶をしても文句を言わない。

だが王家や騎士の上層部は知らないが実のところ現王では無く国民はユリエル・ディワインドが騎士団長であるから文句を言わないのであるがそれはまた別の話である。

 

つまりそれが精霊信仰にも繋がるのだがその精霊たちがマナの浄化ができないと知ると、世界の常識は覆ってしまうのだ。

「マナの浄化は大精霊達の本来の役割ではないです。現時点では世界樹の神子が居ない、です。大精霊の力も弱くなり、精霊や微精霊達で私達の生活は補われているらしいのです。」

「最近魔術が弱いと言われているのは…」

「大精霊の力が及んでいないのです。その理由が大精霊達がマナの浄化をしているから、しかしその浄化は穢れたマナの量に対し追い付かない程。これは各国の王家や精霊学者の一部しか知りません」

「何故、それを私目に…?」

 

カディスは立ち上がり、ユリエルの目の前に立つと手を取った。

ユリエルはそうされると思っていなかったらしく少し驚いた表情を見せ、少し後退る。

「ゼクナスと共に、行くのでしょう。早急に報告する理由は…明日にでも出ないといけない。私に許可を求めないといけませんもの…」

 

ユリエルはそう聞くと姫の手を優しく外すと姫に聞いた。

「…姫様、もうひとつ、情報を下さいませんか?」

「はい、なんでしょうか?」

「魔素は、世界中に出ておりますか?騎士団の長として、不思議に思ってました、耳に入らないのです。」

「…魔素は、少しずつ世界に広まってますわ。海の向こうまで…。ごめんなさい、私がユリエルに情報を行かないようにしていたの…」

「姫様のことですから、仕事を増やさないように…と思ったのでしょう」

「ごめんなさい…聞いたときには魔素の被害はそこまで酷くなかったの…」

「今だって一部の国民にしか現実味はありません。ですが今後、何かあればお教えください。情報も知識も大切なものです、知らなければいけない時もある、知らなければ守れないものも、あります。」

「えぇ、わかりましたわ…いいえ、分かっていたいたのに、ですね。何かあればなるべく言うようにします」

「そう、お願いしますね。(さて、これでゼクナスの打ち首は消えたな)では姫様、このユリエル・ディワインド奴と、ゼクナス・ハードヴィックに魔素に関する御命令を…」

 

そう言うとユリエルはカディス姫の前に跪く、それに答えカディスもまた、ふんわりした雰囲気から緊張した面持ちで声に出す。

「魔素はマナ、と言うことがわかりましたが、確定ではありません。」

「はい」

 

「魔素はマナ、と言うことについて確固たる証拠を作りなさい、魔素がマナと分かれば、浄化の道が出来るでしょう。よってレーヴァリア帝国に向かい、どうか帝王にも…この事を伝えてください」

「それは…、和平を結ぶ、と言うことですね?」

「…はい、私は、和平を結びたいのです。ユリエル、お父様…いえ、国王に、全ての許可を貰いに。和平の権限は私にはありませんから。」

「それが、貴女様の命とあれば、私めには拒否権などありません」

 

カディスはユリエルを連れ、深夜の城の廊下を歩く。

その重々しい雰囲気に城内を警備している騎士、明日の支度をしているメイドや執事達は道を開ける、そして数十分もしないうちに王の寝室へと着くと中の灯りが扉越しから少し見える、どうやらまだ起きているようだ。

扉の前の警護をしている騎士は扉の前から少し退くとカディスはノックする、王は返事をした、誰だ、と。

寝巻きの姿ではなく、まだ王の服装をする彼こそ、カディスの父親であり壮年の君主 ヴェルトーナ・ヴェン・テセアラ・シルヴァラント王である。

「カディスか、夜更けにどうかしたか、何かあったのか?」

「はい。昼間の、魔素がイフリート街に出現したことについてお話に来ました」

「…ふむ、魔素がついに街まで…大臣等が言っていたのは本当だったのか」

「イフリート街はイフリート隊の管轄、イフリート隊のハードヴィック隊長が魔素を瓶に詰めて現在保管をしているそうです」

「魔素が瓶に?」

 

ヴェルトーナ王は魔素が瓶に保管されていると言う、前代未聞のことにシワを寄せる、魔素が正体不明だと言うのにどういうことなのだと表情をした。

そこで当事者であるユリエルが説明をする。

昼間に突如魔素が現れ、そこに魔物が現れたと。人間のような魔物の事は証拠もなく跡形もなくなったので謎の魔物が居たと言うことにした、倒したあとゼクナスが瓶にマナを封じ込める術式で魔素を積めていたことを知ったと報告した。

 

ユリエルから話を聞いたあとヴェルトーナ王は少し考えた後、魔素についてユリエルに問う。

「ふむ、謎の魔物が…ディワインド君、魔素は騎士団でも認知はされているな?」

「はい、既に下町配置の騎士達にも認知はされてきています。騎士皆が知るのは時間の問題かと」

「そうか。…ディワインド君、最初、魔素が現れたところは覚えているかね?」

「シルフ側…だったと聞いておりますが」

「そう、シルフ側、正確にはシルフ街側なのだが、そちらの壁の外だ。最初から、いや、最近で思うのは魔素はどうにも外に現れる」

「国の外…魔素…」

「国外は精霊の加護が少ない」

「国の外が穢れていると…?」

「いや、外は魔物がいるがむしろ外の方が綺麗だろう。私は思うのだ、魔素は我々が、人間が生み出しているのではないかと」

「御父様は、何か知っているのですか?」

「全て憶測だ、カディス。魔素は穢れたマナ、精霊はもう我々に加護はしないのでは…全て憶測だ。その憶測を含め、考えて…私は国を守らなければならん。それはわかるな?カディス、ディワインド君。」

「はい、わかっております、御父様」

「はい、わかっています、王様」

 

ヴェルトーナは二人を見て、机に目を向けた。引き出しを引くとヴェルトーナは一枚の手紙を出した。

「ユリエル・ディワインド君、テセアラ・シルヴァラント王国は精霊に依存してしまっている。不甲斐ないが、魔素は我々には何一つ、分析も解析も出来んだろう。出来るのは予測ぐらいだ。故に山を越え、帝国に向かってほしい。」

「や、山越えですか?」

「あぁ、魔導国家にも用があるのだ。ディワインド君、これを。」

 

ヴェルトーナは懐から一つの透明で紫色の石を出した。ユリエルは受け取り色んな方向から石を見た、怪しいところはなさそうだ。

「魔導国家は山と一体化しているから必ず通るだろう、その石をリージョンステラウスの魔導師にそれを渡してくれ。」

「王様、魔導師とは…所謂ここで言う王様、ですよね?」

「あぁ、お前なら会えるだろう」

「忍び込めと!?いくら同盟国といえ!」

「馬鹿なことを言うな、同盟国だ、正々堂々前から行ける。」

「…それは私に騎士で向かえと言うことですか…」

「ユリエル、何で行くつもりだったんです?」

「旅人ですよ、姫様。普通の旅人、帝国に行く旅人等に紛れ込めればと思ったんですが…」

「しっかり準備をして行くんだ、騎士団長ディワインド、わかったな?」

 

ヴェルトーナはにっこりと笑ってそういうとユリエルは力なく御意と言った。それを見たカディスは苦笑をした。

「ではまずは魔導国家リージョンステラウスの魔導師様にその石を、その次にレーヴァリア帝国に和平の手紙と魔素の瓶を。このユリエル・ディワインド、そして部下ゼクナス・ハードヴィックを連れ任務を遂行いたします。イフリート隊は通常の任務、マクスウェル隊とディワインド隊は城の警護に当てさせます。他の隊にも書き置きも残してあるので平気だと思います。」

「わかった」

「それでは行って参ります、王様、カディス様」

 

そう言うとユリエルは近くの開いてる窓に向かった、なんと窓枠に乗りそこから背を後ろにゆっくりと飛び降りた。カディスとヴェルトーナは窓に向かう、そこには既にユリエルの姿は見えなかった。

「ユリエルっ!?…もう居ませんわ」

「何故国民は彼を好いているんだ…私にはわからない。何故ドアから出なかったんだ…」

「変な所格好良くしたいみたいですから、ユリエルは。民はそういう所が良いのかもしれませんね。」

「はぁ、少しは落ち着かんか…」

 

 

――――――――――――

 

【イフリート街 サランダ宿舎】

もう鳥が鳴き始める早朝、ゼクナスは馬小屋の近くで寝ていた。

「んっ、うぅん…ん?朝か。」

 

起きたゼクナスはゆっくりと立ち上がり魔素を積めた瓶があることを確認してから装備を確認した。剣も防具も、回復アイテムもある、手持ちのお金は少ないがそれは魔物を倒せば手に入る、身軽ですぐにでも帝国に向かえる。だがまだ行けない、まだ騎士団長が来てないのだ。

しばらく待ったが何故か来そうにない、そんなこんなで待っていたら既に騎士達の起床時間を過ぎて出勤時間で宿舎から騎士達がちらほら出てきた。

「…一時間、経った気がする。」

「あぁっ!ゼクナス様!おはようございます!」

「隊長!?おはようございます!」

「あぁ、おはよう、ヴルド、マリク。しばらく私はいないが各々の小隊長がいる。気を抜かずに国民たちを守れ。」

「な、名前を覚えてくれらっしゃる!」

「イフリート隊の隊員だけで何人いるって言うんだよ…三小隊はあるって言うのに…」

「イフリート隊は少ない、三小隊ぐらいだったら覚えられる。ガズアール小隊のヴルド、レグリア小隊のマリク」

 

二人がどこの隊かを言うと二人は歓喜の表情を見せた。そうすると宿舎の影から声か突如聞こえ三人は身構えたがその声は騎士団長のユリエル・ディワインドだった、左手には袋を持っていた。(ゼクナスに頼まれていたグリフォンのモモ肉七切れが入っているため切れそう)

 

格好はちゃんと腰に剣、手に手甲、足にレガースがあり服装からしても騎士とわかる、だがどこか浮いているのはユリエルの出す雰囲気が騎士っぽくないためだろう。

「ゼクナスは俺と違って部下同僚思いだからなぁ、ちゃーんとイフリート隊の顔と名前覚えてるんだろうな。」

「もう公務の時間だ、口調に気を付けろ、閣下」

「おや?それはこちらの台詞ですね、ゼクナス隊長」

 

「あ、あれがユリエル・ディワインド様…この国の騎士団長…すごく強そうですね、マリク先輩」

「ヴルド、俺団長の顔と声覚えてないみたいだ。俺の手見てみろ、声聞こえたときに手に柄握ってそのまんまだから」

「イフリート隊レグリア小隊のマリク・レイセス、ガズアール小隊のヴルド・ノース、しっかり私の顔を覚えておきなさい。もし次にその刃を向けるようなことがあるのなら…」

「そもそも刃を向けていないが。」

「おい!遮るなよ!」

「茶番に付き合わして申し訳ないな。行くぞ、ユリエル」

「上司の襟を持つな!引っ張るな引きずるなー!」

 

ゼクナスはユリエルを引きずるように何処かへと立ち去った。それを見た二人は仲が良いのか悪いのかと思ったが何だかんだ団長の顔は嫌がってないので仲が良いと判断した。

「…今日も頑張るか、ヴルド」

「はい!マリク先輩!」

 

 

 

そして何処かへと立ち去ったゼクナス達はウンディーネ地区の近くまで来ていた。

「お前いつまで引きずるの?」

「む、すまない」

「さらにウンディーネって…俺達行くのノーム地区な、王様からこれ届けてほしいと言われてな。和平はそ・の・あ・と!」

 

ユリエルは立ち上がり懐から紫色の石を出した、ユリエルの手からゼクナスは石を色んな方向から見る。何やら思うようがあるらしく石から離れると腕を組み、小さく唸り始めた。

「ふむ…」

「この石を同盟国リージョンステラウスの魔導師に届けなきゃならないんだ。山越えするからな」

「ん?あ、あぁ、了解した」

「ボヤボヤすんなよー?そんじゃっ、ウンディーネ地区からノームに行こう。」

 

二人はノーム地区に向かうべく歩くがここはウンディーネ地区。ウンディーネ地区は貴族や王族の末端、重臣や金持ちが住む地区、貴族出でもイフリート地区に居るゼクナスは少し浮いていた。

「…ふぅ」

「居心地悪い?」

「少し、な。私は平民の暮らしが似合っているな」

「畏まらなくていいからなぁ」

「ユリエルはどこに住んで居るんだ?前はこの地区にいたのだろう?」

「今?城に籠ってるよ、いつ何が起きても良いようにな。私物も今は減らしてる」

「生活感のない部屋になるぞ」

「…良いんだよ、それで。」

 

雑談を幾度繰り返すと突如美しい花が見えてきた、武具職人等が住むノーム地区が見えてきた。ノーム地区は自然が豊かな地区、地も豊かでシルフ地区のほうから農民が田を耕しにも来る人の出入りが多く、雰囲気がイフリート地区に似ているようでゼクナスは少し明るくなった。

「機嫌がよくなったなー、ここで一旦装備でも確認するか。ろくに準備してないからなぁ」

「剣と防具で平気じゃないか?肉もある」

「お前…肉七切れでどう山越えすんだよ…小エネルギー過ぎる体か?」

「…何か、見とくか」

「当たり前だー、バホー」

「バホー?」

「気にすんな、まぁ、国の外にも小さな町やら自治区があるけどな。リージョンステラウスの方だったら確か…山の近くにギルドかレジスタンスが守ってる所があったな…」

「レジスタンス?ギルド?」

「あぁ、お前は国外のこと興味持たないから知らないよな。ギルドはレーヴァリア帝国公認の民間の何でも屋とか傭兵とかの集まりって言えばいいかな。ギルド事にやることが違うんだがまぁ魔物討伐から商品の運搬に赤子の子守、何でもござれ~ってな」

「ほう…ん、ではイフリート地区にいる商人の中には」

「あぁ、居るんじゃないか?商人ギルド、民間の何でも屋だからな、厳しくは規制はしてないよ。傭兵とか武器扱ってる所とか怪しいやつは身分証を必ず掲示してもらってるけど」

「私達とは別の戦いをしているのだな…」

「そーゆこと。そんでレジスタンスはまぁ、奇襲攻撃してきたり、目的のためなら手段を選ばない軍団だな。本来はレーヴァリアの権力やレーヴァリアを侵攻してくる侵略者や魔物に逆らう奴等だったんだが…変わっちまった。今やどこへでも攻撃してくるよ、色んな国の人間がいる」

「危険思想の持ち主達か」

「違う違う、ただ何か探してるらしいってのは確かだよ。一般市民には優しいから俺達が出くわしたら…まぁ、全力で逃げるか全力で戦う、だな。まぁ、こんなもんかな、そんでどうする?ここで装備を整えるか?もう行く?」

 

ユリエルから説明を聞き終わり、次にどうするかを聞かれゼクナスは装備を整えることにした。

「少し回復アイテムが少ない気がしてな」

「スペクタクルズも必要だな、相手のことがわかっていると倒しやすいだろ?」

「そうだな、それとガードだったか。」

「国の外出たらまた戦闘に教えてやるよ。護衛時の戦闘のことばかりしか教えてなかったからな、一人で戦う分には申し分ないだろうが団体になるわけだからなぁ…。団体戦について次は教えよう」

「あぁ、ご教授よろしくお願いする」

「ふっふっふー、畏まりました、ゼクナス嬢」

「やめろ、気色悪い」

「酷い!」

 

そう言いながらもユリエルはゼクナスを見ると二人は少し笑う、少しすると歩き武具店へと向かう。

「ゼクナスに残念なお知らせ」

「なんだ」

「俺、昨日の装備置いていかなきゃならんことになってさ」

「また弓の点検日忘れたのか」

「そうそう、だから今あるのは自分で点検出きる短刀と手甲とレガースしかないわけ、だから近距離しかないわけよ」

「…弓ぐらいなら買うぞ?」

「じゃあ、そのお金、今からパーティ資金な、俺も足すから。ほら!」

 

ゼクナスは1000ガルド、ユリエルは5000ガルド、二人で合計6000ガルドを持っていた。既に武具店に着いているので武具店で変形弓を探していた。

「中々無いな…」

「まあな、変形弓は魔族戦線前の武器だし使い手も少ないからな…流石に武具職人の地区でもないか…」

 

ボソッと言った言葉がどうやら小さな店で聞こえたらしい、店主の職人が腕めくりしながらカウンターを乗り出しながらユリエルに向かって喋りかけた。

「おっと、騎士様、武具職人の地区をナメんなよ!おらたちは騎士剣から刀まで造る職人達よ!変形弓ぐらい今作ってやる!好きな弓と剣を持ってきな!」

「おー、すっげぇな、煽るつもりじゃなかったんだが…じゃあこのロングソードとスモールボウで」

「あいよ!へへ、まかせな!」

「長いのと短いので元通りか」

「ロングな所短くするからどうかなぁ」

「ほら、出来たぜにいちゃん」

 

それは早業であった、出来た変形弓 ソードボウを持ち本当に出来てるかを確認するとユリエルは驚きの表情をする。見たところ不備がないのだ。

「えっ、早い…俺驚き」

「既製品の改造だからな、ほら、余った部品もやるよ。あとこれ、持ってきな」

「これは…地属性の紋章の板?」

「見たことあるぞ、武具店に持っていくと出きる範囲の改造をしてくれんじゃないか?」

「そうだ、それは武具職人が認めた客にしか渡さん証よ。それがあれば世界どこでも同じサービスが受けれる優れものよ!まぁ、出来の良いものが出きるかは職人の腕にもよるがな」

「ほう、便利だな。ありがとうな、おっさん」

「良いってことよ、騎士様にはもっと職人達を認めてほしいからな」

「はは、は…すまないな…」

「騎士様のえれぇやつに会ったら騎士様ヨロシクな!」

 

武具店から出るとユリエルは明らか落ち込んでいた、別に認めない訳ではないのだが確かにあまり良くしてない認識があったのだろう。任務が終わり次第何かしようと決めたのであった。

そして数分後、道具屋に寄り道具を整え壁の付近の扉前に着いた。

「騎士団長!」

「任務で国を出る、極秘なのでな、あまり知らされてないが後日不在が伝わるだろう。それまで私と彼女が居ないのは誰にも喋るな。」

「了解しました!御武運を!閣下!主席殿!」

 

二人の騎士がゆっくり扉が開くとそこにはどこまでも広大な平原、ガノス平原が広がっていた。その奥には少し間で見える霊峰 アマデトワールが見える。その上のほうが少し光って見えるのは国があるからだろう。

「さぁて、そこそこ長い旅になる。気を抜くなよ?」

「それはこちらの台詞だ」

「そんじゃ…行くか」

 

 

テセアラ・シルヴァラント王国より、騎士団長ユリエル・ディワインド及びイフリート隊 隊長ゼクナス・ハードウィック出国。




ガズアール小隊のマリク・レイセス
騎士歴五年のそこそこの手慣れ、騎士団長にあまり興味がないから覚えてなかった。少し大きな騎士剣を使うパワータイプの騎士。イフリート地区出身。

レグリア小隊のヴルド・ノース
騎士歴二年のまだ弱い騎士、騎士団長と家の近くの騎士だったマリクに憧れて騎士になった。騎士剣を使う。マリクに憧れて力を付けてる最中。そこからさらに上を目指そうとしている向上心ある騎士。イフリート地区出身。




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