アストルティア生き返し御一行 (ミンデムース)
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1話
ラギ雪原...そこは一面が雪に覆われ、一年中大地を見せる事の無い極寒の地。
人が余り近寄らないこの地の奥地で、気まぐれな小さい雪崩が発生した。
崩れゆく雪の中から角が生え、尻尾の有る赤い皮膚をしたオーガと呼ばれる種族があらわとなる。
しかし反応は無い。
恐らく凍死したであろうその遺体に、どこからともなく流れてきた魂が入り込んでいく。
(寒い...。)
「う...ここは...?」
辺りは雪に覆われ、他にめぼしい人影は居ない。
身体を動かそうとするのだが、動けない。
まるで金縛りにでもあったかのようだ。
こうなるまでに至った経緯を思い出そうとするが、思い出せない。
それどころか自分が何者なのか、家族や生まれも歳すらも思い出せない。
(酷い記憶喪失だな。でも、こうやって考える事が出来るという事は、思い出せないだけかも知れないな。)
雪が降り始め、辺りは更に寒くなってくる。
(此処にずっと居れば、凍死するだろう…。早く何処か暖かい所に移動しなければ!でも身体が動かない…どうすれば…?)
何とか動かない身体で合図を出す方法を考えてみるが、周りに有るのは木と雪で、動かない身体で出来る合図が出てこない。
寒さで思考も麻痺してくる。
誰でも良いから助けに来ないかと願っていると、遠くから機械のようなモンスターが此方に向かってくる。
右手にサーベル剣、左手にクロスボウを付けたそれはどうみても友好的には見えない。
(くそっ!不味い不味い不味い!自分が何故ここに居るのか分からないが、不味い事だけははっきり分かる!どうにかしないと!)
反対側から足音が聞こえてくる。
仲間が助けに来てくれたのかと期待し振り向くが、その期待は見事に打ち砕かれる。
白い体に灰色のしましま模様、頭に二本の角、鼻な上にそれより小さな角の生えた2足歩行の竜。
現代人から見れば白いティラノサウルスの様なモンスターが此方に向かって来る。
(死んだ...。殺されるか喰われる未来しか見えない。どう足掻いても無理だ。)
足の早さは白い竜の方が早い、あっという間に目の前迄たどり着くと数度臭いを嗅ぎ、体をくわえ運び始めた。
(歯が当たって痛い...。何処かで食べるつもりか?何処に.....。)
寒さで意識が薄れていく。
粘ればもう少し意識を保てたかもしれないが。
(もうどうでも良いかな...。意識失ってる間に死んだ方が苦しく無いだろう。)
そんな考えが頭をよぎり、残っていた僅かな意識も手放していく...。
ここで物語は終わりです。
すいません嘘です。まだ続きます。
ドラクエ10内のフレンドが小説を書き始めたので、それに釣られた形です。
更新はやる気次第で早かったり遅かったり、止まったり←
個人的なお気に入りのゲームの中身を入れたりするので、あれこいつアレじゃね?とか思ったりしたら、暖かい目で見守ってあげてください。
コンゴトモヨロシク
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2話
「あーあ…。此処どこだよ…。」
ランガーオ山地の川辺の近くで焚き火にあたりながら頭を抱える鎧を着た男の人間が居た。
(俺、ゲームしてただけのハズなんだけどなぁ…。)
「はぁ…。」
溜息が止まらない。
朝野 孝一
26歳
無職
会社の経営難によりリストラされ、当てもなく3ヶ月ひたすらゲームをして遊んでいたある日、突然胸が苦しくなって意識を失ったのだ。
(心筋梗塞とかかな…、もしかして俺死んじゃった?)
改めて自分の装備を見てみる。
着ている鎧は鉄の様な鋼の様で、その鎧には古びてボロボロではあるが後ろに紋章が入った高貴そうなマントが付いていた。
右手には物干し竿と呼ばれる身の丈以上はある長い刀、左手には少し大きめの盾を持っていた、更に腰には短剣とベルの様な物を装備している。更に地面にはもう1つの物干し竿が転がっていた。
(ゲームのまんまの装備だよな?これ。)
意識を失う前にゲームの中でしていた装備と見た目全く一緒なのだ。
そして、そのゲームでキャラクタークリエイトした顔と全く一緒である事も…。
「はぁ…。」
(こんな事になるならイケメンにでも作っとくんだった。)
西洋風と言ったらおっさんだよな!などと狂った考えから生まれた顔は、40代辺りのちょっと白髪が混じった渋い顔だった。
周りを見渡すと、白い帽子を被った豚がのんびり歩き、白いウサギがぴょんぴょん跳ねている。そんなモンスターともいえる存在が至る所に居た。
(こいつらとこの風景、どっかで見た事あったんだよな〜。何処だったかな…。)
うーむ…などと首を傾げつつ、自分が装備している物干し竿に目をやる。
向こうのゲームの世界では耐久力というものが有って、使いすぎると壊れてしまったのだ。
特にこの物干し竿は細長い刀という事で、耐久力は他と比べて低かった。
(試し切りしたいけどもし耐久力が有るなら無駄切りは避けたい。だが周りのモンスターの強さも気になる。)
もしモンスターが自分より強かったら、のんびり此処でくつろいでる訳にもいかなくなる。
腰に付けた短剣であれば耐久力もそれなりに有るし問題ないだろう。
手頃なサイズの石つぶてを拾う。
(敵は一体ずつ誘き寄せるべしっと。)
寝ているウサギ辺りが良いだろう。
しっかり狙いを定める。
流石に寝ている敵には当てられるはずだ。
力を込め…投げる!
思った以上の豪速球が繰り出される!
(うおおおお!はええええええ!)
豪速球はウサギに直撃し、血飛沫が飛び出しそのまま横になり動かない。
(え…?死んだ…?)
そっと近寄り足で突ついてみるが反応は無い。
(よええええええ!そして俺つええええええ!)
(俺、この世界で強い方?)
など考えながら、倒したウサギはそのままにして満足げに焚き火に戻っていく。
しかし戻っている最中に、焚き火の向こう遠くから白いティラノサウルスの様なモンスターがやってくる。
しかも体格もそれなりに良い角の生えた生き物を口に咥えている。
(うわあああああ!調子乗ってすいませんでした!)
全力で逃げ出し岩陰に隠れるのだが、恐らくバレているだろう。
しかし真っ直ぐ向かって来ず、焚き火に近づき咥えていた生き物を側に落とすと、此方をチラ見して去って行った。
(案外友好的なモンスターかな?)
追いかけるか迷うが、置いていった者も気になる。
深追いは危険。
そう判断し、置いていった生き物をまじまじと観察する。
(待てよ…こいつってもしかして…。)
周りの雪の風景と生き物が頭の中で結びついていく。
(此処は…此処は、ドラゴンクエストⅩの世界だ!!)
そして目の前に転がっている種族はオーガ。
確か他にまだ色々な種族が居たはずだ。
とんでもない所に来たな。
でも、これからが楽しみだ。
と、2つの感情が渦巻く孝一であった。
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3話
嵐の中、大切な友と別れる様な夢を見た。その友が誰だったか迄は思い出せない。
ゆっくりと意識が現実に戻されていく。
いつの間にか身体は温まっていた。
それでもまだ重い様な気がする身体を起こす。
「よお、目が覚めたか?」
声のする方を振り返る。
そこには白髪混じりの歳もそれなりであろう男性が焚き火にあたりながら座っていた。
「俺は孝一って言うんだ、種族は見ての通り人間。あんたの種族はオーガだよな?名前を聞いてもいいかい?」
「オーガ…?」
何のことだ…?種族?
自分の姿を確認する。皮膚は赤黒く、筋肉は盛り上がりを見せるほどしっかり付いており、頭に2本肩に1本づつ角の様な物が、そして腰から尻尾が生えている。
しかし、その自分の姿を見ても自分が何者なのか思い出せない。
目の前のコウイチという人間が不思議そうな顔をしている。
黙っているのは失礼だろう。
「それが…気が付いたら雪の中で倒れていた事しか覚えてなくて…。」
コウイチが驚いた顔をし、口を開く。
「あんたの事、角の生えた白い恐竜が運んで来たけど知り合いかなんかか?」
「白い…角が生えた…?」
そこまで言いかけ思い出す。
「そう言えば、雪の中で白い二本足の龍に咬まれて運ばれていました…。私はてっきり、貴方が倒してくれたのかと思いました。」
コウイチは口を開き何か言おうとしたが、言い出さずに口を閉じる。
少し考える様に目を伏せた後、口を開く。
「いや、俺じゃないよ。俺は運ばれてきたあんたが目を覚ますまで此処に居ただけだよ。」
(そうか、この人が起こした焚き火で身体が温まったのか…。)
「あの…。目を覚ますまで待って頂きありがとうございました!」
そう言い、深々を頭を下げる。
「ああ、いいよいいよ。俺も考え事をする時間が欲しかったからさ。」
コウイチは続け様に口を開く。
「なあ、あんた…日本って国を知ってるかい?」
「ニホン?……いや、申し訳ないが分からない。」
思い出そうとするが出てこない。
コウイチは、同じ様にゲームして死んだんじゃないのか?日本人じゃないだけか…?海外の人…?など意味の分からない言葉をブツブツと呟いている。
「あの…。」
大丈夫ですか?
そう声をかけようとした時…。
「えっと…じゃあアメリカとかロシア…いや、地球というのは知らないか?」
若干焦る様にコウイチが尋ねてくる。
もう一度記憶を辿るが、やはり分からない。
首を横に振る。
「そっか…。」
そう言うとコウイチは少し残念そうな顔をした。
「実は俺も気が付いたら此処に居たんだ。此処が大雑把では有るが何処か、此処にくる前の記憶も有るんだが、あんたも仲間かと思ったんだ。変な事を聞いてすまなかった。」
なるほど。
考え事とはこの事だったのか…。
「いや、私の方こそ何も分からなくて申し訳ない。」
身体も温まり、動きに支障はない。
「あの…。助けて頂きありがとうございました!」
再度深く礼をして立ち上がる。
これ以上この人に迷惑をかける訳にはいかないだろう。
「ああ、待ってくれ!」
コウイチが引き止める。
「なあ、良かったら一緒に行動しないか?俺も此処に来たばかりでどう行動するべきか迷ってるんだ。それに1人より2人行動の方が生存率は上がると思うんだ。」
なるほど…一理あるし、自分もこれから何処に行くか決めて居なかった。
場所も全く分からないので、コウイチさんと共に行動出来るなら頼もしい事この上ない。
彼の装備はしっかりしているし、その顔からは歴戦の猛者の風格を感じる。
対して自分の装備は爬虫類の鱗か魚の鱗を貼り付けたような装備でとても強そうには見えない。
「コウイチさんが一緒であればとても心強いです。是非ともお願いします!」
「いやいや、思ってるほど強くないと思うよ。」
と、コウイチは照れ臭そうに話した。
「そう言えば名前…分からないんだっけ?」
「はい…。」
「名前が無いのはこれから困るから、とりあえずでも決めた方がいい。」
「雪原だから、ゲンとかどう?」
「それでも良いと思います!それではこれからゲンとして宜しくお願いします!」
「え…?本当に良いの?」
「はい!」
「そう…。」
「それじゃあ、ゲンさんこれから宜しく頼むよ。」
「コウイチさん、此方こそ宜しくお願いします!」
日は高く昇り天候も安定している。
2人は焚き火を消し、ゆっくりと歩き始めた。
これで2人の出会い編は終わりです。
次からいよいよ冒険?が始まります!
出会い編だけで3話になるとは思ってなかったですw
長かった〜w
読みにくかったかもですが、此処まで読んでいただきありがとうございますm(_ _)m
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