ゴミ箱 (ファベーラ@幽霊)
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緋弾 オリヌシモノ 1

当時、ピクでふつくしいカエル兵を見た時に書いた衝動的なモノ……


 無数の死体と血の海が足の踏み場が無い程、この部屋や他の部屋、通路を埋め尽くしている。死体の大半は野戦服と防弾プレート入りのコンバットベスト等を纏ってる所から兵士だと言うのが解る。兵士の死体以外にも白衣を来た研究者らしき死体も幾つか散乱している。
 大半の死体は胴の部分に複数の孔が防弾プレートごと穿たれていたり、頭部の三分の一程無くなって脳漿と頭皮が付着した頭蓋骨の欠片が床に飛び散ってる。
 それによって強力な貫通力を誇るライフル弾を使う銃で撃たれ、殺されたのであろう事がハッキリと解る。
 射殺死体以外にも斧や鉈の様に刃が分厚く、重みのある刃物で斬られて腕や首が胴体から離れてる物も有れば、胴を深々と刺されたり、バッサリと斬られて腸が飛び出た死体も幾つか転がっていた。
 こんな虐殺現場に一人の女性らしき人物が佇んでいる。
 顔は頭全体を被うフルフェイスタイプのヘルメットを被ってるので解らないが、漆黒のボディースーツに身を包んでる為、大きな胸やしなやかな四肢が目立ち、女性だと言う事が辛うじて解る。
 その女性の右手には肉、内臓、骨の欠片が血糊に雑じってこびり着いたマチェーテと呼ばれる鉈が、左手には銃口から硝煙が昇り立っているP90と呼ばれるベルギー製のPDWが握られて居た。
 彼女の着ているスーツは所々、紅や赤茶色で染まっている事から彼女が建物に居た多くの人間を殺し尽くした事実を物語っていた。

 そんな彼女は空になったP90の弾倉を外して床に棄てると、腿にハーネスで留めてるマガジンパウチから50発の5,7-28mm特殊徹甲弾が装弾されたプラスチック製のマガジンを取り出す。
 それをP90の上部に差し込む様に装着してコッキングハンドルを引いて初弾を装填すると、背中を小さな氷がツーっと滑り落ちた様な怖気に襲われた。

 何か居る!? 気配が無かった……
 なのに、人が居るなんて。しかも、何なの。この殺気は?

 「感覚器官が強化された奴は膨大な情報量を捌く為に脳に負荷が掛かっちまうから、気配を感じ無くなったら誰も居ないって認識してオミットしちまう。この時が一番危ないから覚えて置きなさい」

 彼女は日本刀の如く洗練され、鋭利で冷たい刃を自分の首の頚動脈部分に押し付けられた感覚を味わって居た。恐怖に晒された状態の彼女の心臓は強烈に尚且つ絶え間無く脈を刻んでいる。
 彼女は左手だけで持ったP90を殺気と声の主であろう方へ向けて引き金を引いた。P90の銃口から5,7mmの特殊高速弾が室内を反響する銃声と共に無数に吐き出される。
 だが、P90から吐き出された20発近くの銃弾は空を切り、壁を穿っただけに終わった。
 それから彼女は後ろから気配を感じると、前に飛び出して後ろに居るであろう気配の主から距離を空けようとする。同時に身体を捻ると、身体の向きを無理矢理後ろへ向けた。
 彼女のヘルメットに装備されたセンサーカメラのレンズ越しに殺気を放って来た正体が映し出された。彼女のヘルメット内のモニターに映ったのは、銃口を此方に向けた白髪混じりの黒髪を持ったサングラスを掛けた中年の男であった。彼女が引き金に掛けた指に力を込めて男を殺そうとする。
 しかし、男は既に手に持っていたサプレッサーがねじ込まれたコルトガバメントの銃口から静かな銃声と共に45口径のホローポイント弾が放たれる。彼女は P90の引き金を引いたままで横に跳んで男が放った銃弾を避けた。5秒も掛からず30発近い弾を撃ち尽くしたP90を足元に棄てると、床を染める血ごと床を思い切り蹴った。
 勢いそのままに男へ肉薄した彼女は右手に持ったマチェーテで斬り付ける。振り下ろされた刃は男の身体を灰色の都市迷彩服ごと斬り裂き、死体の仲間入りさせるだけであった。
 所が……
 男は表情変える事無く、1歩前へ踏み込む。それからは流れる様に左手を彼女の右手首に沿えてから軽く力を入れて振り下ろされる刃の軌道を外側にズラした。彼女自身、完全に力を込めて振り切って居たので何が起きたのか解らなかった。
 彼女が混乱していると、男はその隙を突いて右手のコルトを彼女の頭部に向けて何度も撃った。
 何度も発生したくぐもった銃声と共に直径45口径のチッポケな鉛と銅が何発も直撃すると、ダラリと崩れ落ちたのだった。

 「こりゃあ、思わぬ拾い物したなぁ。強化兵処置施されても恐怖を感じる事が出来る奴なんてそうは居ないもんなぁ……」



 2009年 4月上旬早朝。東京湾岸方面 東京武偵高女子寮の一室。

 部屋で目を覚ました少女は下着姿であった。
 彼女の腕や脚、腹部には鍛えられて出来たものだと、見れば解る筋肉が付いてた。そんな全身には、手術痕と思わしき傷が痛々しく残っていた。
 傷とは対照的にプラチナブロンドの髪や陶磁器の様に白い肌がブラインドの隙間から入って来る日の光に反射して輝きを見せていた。

 ──古い記憶が再生されるなんて珍しい事があるのね。

 少女は自分が寝ていたベッドの枕の下に置いていた拳銃を手に取った。
 その拳銃は長い年月使われ続けていたのか、傷が所々に有り、中には刃を受け止めた様な大きな傷もあった。そんな古めかしいコルト社のM1911A1ガバメントはよく見ると、普通のガバメントと違ってスライドリリース・レバーが延長されてグリップ近く迄伸びていたり、グリップセフティが省かれていたり、延長されたフレームと一緒に取り付けられたスパイクガード付きのコンペセイター等、普通のガバメントとは違った趣きを見せていた。
 コルトの薬室にセミジャケットのホローポイント仕様の45ACPが装填されている事をスライドを僅かに引いて確認すると、それをベッド脇のスツール上に置かれたホルスターに収めたのだった。
 それから日課のトレーニングを始める為に綺麗に洗濯されてるが、コルトの様に長い間使い込まれたオリーブ・ドラブカラーの野戦服に着替え始めた。
 着替えが終わると、野戦服の上に頑丈な防弾プレートが前後に収まったボディーアーマーを着込んでから、7,62-39mm弾が30発詰まったAK47のマガジンが2つ詰まったパウチが4つやガバメントの弾倉が6つ詰まったパウチ等と言った様々な装備が収められたチェストリグを装着した。それ以外にも腰にガバメントが収まったホルスターやキャンバス地の鞘に収められている大ぶりの刃を持ったマチェーテ(軍用の鉈。山刀とも言う)に1リットル容量の水筒が2つ付いたガンベルト等も装備した。
 チェストリグや野戦服を着た少女の姿はまるで熟練の軍人の様であった。
 少女はベッドに立て掛ける様に置いていた悪名高いAK-47突撃銃の改良型であるAKM突撃銃のカービン仕様であるAKMSを手に取るとスツールに置いたAK特有の湾曲したバナナ型の30連マガジンを叩き込み、ボルトを引いて初弾を装填した。
 AKMSのセレクターレバーが一番上にある事を確認すると、彼女は鉄板入りの重いコンバット・ブーツを履いて外へ出てトレーニングを始めるのだった。



 歩兵の最低限な装備を纏った少女は、何時ものコースを何時もの様に走り始めた。
 走る度に装備が少々暴れたり、目に汗が入ったり、体中から溢れる汗が気持ち悪かったりするが疲労による鈍い痛みが来ても、顔に出す事も無ければ、思考に入っても何をすると言う訳でも無い。ただ、只管にAKMSを持った手を下げない様に走り続ける。

 ペースを常に一定に保ち続け、ペースが落ちるであろう坂道や、工事中で舗装されてない道路であろうと彼女はコンバット・ブーツで地面を踏み締めて走る。

 1時間経っただろうか……彼女は既に自分が現在住む女子寮から20km離れた市街地に来ると、走って来た道とは別の道から女子寮へ戻ろうとする。彼女の野戦服上下は汗で身体に張り付いて来る。だが、そんな気持ち悪く感じる状態であっても呼吸を一定に保ち、表情から疲れが見える事も無く、まるで何も感じてないかの様に走る。

 だが、彼女は何も感じない訳では無い……。痛みを感じれば、疲れもする。それに不快感に対して苛立ちと嫌悪感だって感じる。
 今よりも前は特殊な環境で仕事してる為か、痛みや不快感、と言った苦痛やストレスに晒されても職業病じゃないが不感症に自らなれる様になっていた。
 その為、苦痛やストレスは脳に伝わってるが彼女はそれを頭から切り捨てたまま行動出来るし、理不尽が来ても気にする事も無く行動出来た。

 そういった理由で彼女は走り続ける。

 それから更に30~40分ぐらいたっただろうか……彼女は20kmの距離を休憩もペースダウンもする事無く往復で走り切ると、近くの小さな公園へ向かった。

 身体が冷える前に少女は、AKMSを背負ってからうつ伏せになると、左腕を後ろに組み、右手が地面に散らばる砂利や小石に植物の種子で痛みを感じながら片手だけで腕立て伏せを始めるのだった。
 右腕だけで全身の力を支えた状態で右肘を曲げて自分の胸が地面にギリギリ付くか付かないかと言う距離で姿勢を維持すると、再び肘を伸ばして自分の身体を持ち上げる。彼女はそれを何十回、いや、何百回と自分の身体を上下に動かすと言ったトレーニング休む間も作らずに続けて行く。その間、彼女の顎の下には顔を伝って流れる汗が溜まっていた。

 数分後、自分が決めた回数を終わらせると、一瞬の間に地面に着けてた右手と背中に組んでた左腕を入れ替えた。痺れや疲労が残る右腕を背中に組み、左腕でさきほど右手だけで行った様な腕立て伏せを始めた。

 腕立てを終わらせた彼女は懸垂用の鉄棒に飛び付き始める。そして、鉄棒に登って腰かけると、重心をズラして両膝を鉄棒に引っ掛けた。逆さまにぶら下がった状態で彼女は、両腕を頭の後ろにガッシリと組み、そのまま状態を起こして腹筋を鍛え始めるのだった。

 それから軍隊並みのトレーニングを終わらせた少女は、公園に設置された時計で時間を確認すると、公園の時計は5時を指していた。

 ──もう5時か。シャワー浴びて汗を流したら朝食にするか。1時間と40分で40kmだとタイムが遅くなったな……。
 調子が悪いのか、それとも何かしらの不調があるのかは解らないけども遅くなってるってのは色々不味い。
 今度はFN-MAGかMG3持ってランニングして見るか? 橿原さんなら簡単に調達してくれるだろうし。




 女子寮の自室に戻り、ブーツを玄関で脱ぎ散らかして中に消臭剤を突っ込む。そのままの状態で彼女は、汚れが目立つ装備や野戦服を歩きながら脱いで行く。パンツとシャツを脱ぎ、下着姿になると、彼女は靴下を立ったまま脱ぐ。

 そして、ブラジャーのホックに手をやり外すと、豊満な胸が露わになり、パンツを脱いで洗濯物として下着やタンクトップと行った服を洗濯機に放り込んだ。
 洗濯物が詰まった洗濯機に洗剤や柔軟剤を適量入れると、スイッチを入れて洗濯を始めてからバスルームに入った。

 ラックに引っ掛かったシャワーヘッドの下に立って蛇口を捻る。すると、温かいお湯が彼女の髪やうなじを伝って胸や背中、股関節から脚に伝わり排水口へ流れて行く。
 彼女の身体は両腕や両脚に大規模な手術の痕が醜く残って居た。他にも縫い痕や傷、火傷と言った痕がチラホラときめ細かな白い肌から目立っていた。
 石鹸を泡立て、全身に滑らせて身体を洗い、数分後に全身を洗ってから、頭へ念入りにお湯を浴びせてリンスインシャンプーを手に出す。そして、長いプラチナブロンドの髪に泡立ててゴシゴシと洗って行くのだった。
 30分くらいしてからバスルームから一糸纏わぬ生まれた状態で出た少女は、バスタオルで全身の雫を拭き取って行く。大まかに全身の雫を拭き取り、長い髪をバスタオルで包み込み水滴を吸い込ませながら、リビングへ歩く。
 リビングに置かれた抽出しからパンツとブラジャーを取り出し、パンツを穿いてから散弾や砲弾の破片を浴びせられて出来た無数の小さな傷や、AK47の7,62-39mmと銃口に取り付けられた銃剣によって爆ぜた醜い傷が目立つ豊満な胸にブラジャーのカップ部分を被せて覆うとそのまま背中に両手を回してホックを繋いでからは白いシャツを着始め、朝食の準備を行うのだった。


 お湯が沸くまでの間、少女は読み掛けの小説を読んで居た。その小説に出る悪役を想像した途端、いきなりプッと笑い出し始めた。

 ──何でだろ? この物語の悪役をイメージしたらあの人しか浮かばない。
 と言うか、あの人とこの悪役がソックリ過ぎて驚きよ。非情な所とか道化染みた口調とか……
 あの人、この物語の悪あ役に憧れてたのかな? 聞きたいけどもう話す事は出来ないんだっけな。

 昔の事を思い出した少女は小説を読むのを辞め、沸いたお湯をポットに移して濃い目に淹れたインスタント・コーヒーを飲み始める。それから昨日の晩に買ったばかりのバケットを小降りのナイフで切り分けてバターを塗った。
 もそもそとバケットを食し、コーヒーを飲んで朝食を進めつつ彼女は、切り分けたバケットにレタスやハム、チーズ等を挟んでサンドイッチを作り始めた、サンドイッチを作り終えると、それを袋で包んで知人から貰った特製のカバンに収めた。
 そして、学校の女子用制服に着替えると手帳をポケットに仕舞って東京武偵高へと向かうのだった。
 武偵手帳には英語とカタカナで名前が書かれて居た。
 Olga Kudyiawtsew オルガ・クドリャフツェフと……。



オルガ確保したのは伊藤勢版の荒野に獣慟哭すの薬師丸法山的な怪物でイカサマ師なインチキオヤヂ。ガルシアの原形なのかなぁ……

2012年頃に書いたと思われ


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緋弾 オリヌシモノ 2

オルガの続き……話が飛んでるのは、削除してデータから消えてたから


 結果を先に言うなら、オルガ・クドリャツェフの名前が殉職者リストに載る事は無かった。だが、監視対象である神崎アリアは頭部に銃弾が掠った影響で脳震盪を起こして病院に運ばれ、数人の学生がルノーから放たれた9mm弾で命を落とした。
 学校に付いたオルガは報告書を一通り纏めると、教務課に提出した。それから、人が目の前で死ぬと言う状況であったにも関わらず、淡々と授業を受けたのだった。
 そして、午前の授業が終わり、昼休みに入った所でオルガは銃撃の盾にした際、その衝撃で潰れたサンドイッチを教室で1人静かに咀嚼して居た。

 彼女は片方の手に持った小説、山月記から視線を動かす事無くサンドイッチをもう1口食べて咀嚼する。
 10分後には、包みに入ってたサンドイッチを食べ終え、魔法瓶に入ったインスタントの物をお湯で溶いたブラックコーヒーを飲むと、教室を出たのだった。




 教室を出た彼女は、廊下や教室の喧騒に溶け込みながらも、中に入る事無く廊下を歩み進む。数分程歩いた所で、図書室と札が下げられた部屋に入り、本棚へ視線を巡らせて本を探し始めた。
 本は何故かライトノベルや銃器や犯罪、車両と言ったに武偵関連の専門書と言った書籍が大量に有ったが、自分の読みたいと思える、心がそそられる書籍は見当たらなかった。
ガッカリしながらも、海外の小説を適当に手に取ると、空いてる椅子に座って読書を始めた。
 暫くの間、小説を読んでると、気配が小さな足音と共に近付いて来る。
 彼女は本に視線を固めたまま、相手が話し掛けて来るのを待った。

 「ねえねえ、何読んでんの?」

 声は明るそうな少女の声だった。オルガは声の主が誰だか、解って居た。オルガの読んでる本を脇から覗き込んで来たのは、標的リストの1人である武偵殺しこと、峰理子であった。

 「……クライブ・カッスラーの冒険小説」

 視線を本のページに移したまま読みながら、彼女は本の作者の名前を告げると、読書を続ける。静かに読書するオルガとは対象的に賑やかな雰囲気を持ったゴスロリ調の制服を着た理子は更に質問する。

 「クドちゃんてさぁ、何者? 一般高校からの転入生って割には度胸や銃の腕良いよねー?」

 「…………」

 「聞いたよぉ? UZIの掃射をカバンで受け止めたり、危険な状況にも関わらず、犯人の車を顔色1つ変える事なくクラッシュさせて、混乱を収めてもう1台の犯人の車を壊させたって……(コイツが殺し屋なら、アリアの前にりっこりこにしてやんよ……)」

 「……リンダ・ハミルトンやシガニー・ウィーバー、アンジェリーナ・ジョリーって知ってる?(邪魔したから、早速来たか。今夜のデートは監視されると、思って良いな)」

 「知ってるよー(急になんの話だ?)」

 「それと、一緒。死ぬんだったら、映画のキャラクターみたいに格好良く足掻こうって思っただけ……今、思い出すと、生きてて良かったって思う。武偵高の生徒ってこんな毎日を過ごしてるんだ。って、改めてここに来たのを後悔するハメになったわ(仕事でも武偵に関わりたくないから後悔は嘘じゃないわよ? それ以外は嘘だけど)」

 オルガは峰理子がウッスラと隠した疑惑の視線を真っ直ぐ見詰め返し、普段とは違った明るい雰囲気で答える。
 格好良いのヒロイン出る映画の様に振る舞って憧れに近付こうとしただけと……
 理子はそれを聞いた瞬間、笑い出す。

 「ウッソー、本当? だけど、理子はそうは見えなかったなー(あの時の目は生きようとする奴と言うより、人を人と思わずに殺せて、自分の命も何とも思ってない奴の目じゃねえか……)」

 「友達にも言われたんだけど、集中してる時の私ってさ……アニメの作画崩壊とレイプ目みたいなんだって、鏡見て確かめた事無いから本当かどうか解らなかったけど……」

 「その友達って上手い事言うねー(ピッタリだな、おい!)」

 理子が武偵殺しとしてホテルからルノーをコントロールしてた時、1台目がクラッシュする間際のカメラ越しに見た彼女の瞳は虚ろな物で、顔は表情と呼べる物が無く、バスに爆弾が仕掛けられ、無人の車両から銃撃を加えられて死の恐怖に直面してるにも関わらず、彼女から恐怖や焦り、と言った感情が読み取れなかった。
 だからこそ、理子は目の前に居るオルガ・クドリャツェフが自分達の命を狙う殺し屋なのかと、思いカマを掛けての確認に来たのだった。
 だが、そんな考えとは裏腹にオルガは感情豊かに恐かったと、自分の本心を吐露してるのを表情や仕草から感じ取ると、彼女が殺し屋じゃないか? と、言う疑問は間違いでは無いか? と、言う考えが生まれ始めて居た。

 「銃は前の高校で興味本位で参加したサバイバルゲームの時の友人から実銃を撃たせて貰ったから……あ、これは秘密にしてね(お互いに嘘吐きだねえ……さて、そんな嘘吐きさんはどんな言い訳するかな?)」

 オルガは本来の自分とは違う、苦笑い混じりの困った様な面持ちで秘密にしてとお願いする。並べた嘘八百を然り気なく隠すかの如く……
 それを聞いた理子は笑顔のまま

 「良いよ、良いよ。理子とクドだけの秘密ねえー(ホントかよ?)」

 と、一言残し、踵を返そうとした所でオルガが声を掛けた。

 「理子さん、だっけ?」

 「理子で良いよ。りこりんって呼んでね?」

 「じゃあ、りこりーん……バスに乗ってないのにさぁ……私の表情を何で知ってるの?」
「もしかして、武偵殺しは理子だったりして(武偵殺しがお前なのは知ってるんで、嘘の答えでも良いけど……)」

 オルガの質問に対して、理子はほんの一瞬、刹那の間だけ顔が強張る。だが、何時もの笑顔に戻ってから理子は明るく答えた。

 「理子は武偵だから、何でも知ってるんでーす。こう見えてもAランクなんだよ?(コイツ、何気に喰えねえな。)」

 「へー凄いんだ理子って……(顔に出るタイプなんだなー。まぁ、どうでも良いか)」




 それから数時間後、学校は問題無く終わった。
 寮に戻ったオルガは、太股に巻き付けていた装備を外すと、冷蔵庫の中にそのまま押し込む。それから、ワルサーのスライドを外して、スライド後部に収まった撃針を抜き取った。抜き取った撃針はベッドのマットレスとベッドの枠の間に押し込んで撃針を隠すと、冷蔵庫から別の撃針を取り出した。
 それをワルサーに組み込んでから、ワルサーを元の形に戻したオルガは装備の隣に置いた。勿論、ワルサーからマガジンを抜き、薬室に収まってた1発の32ACPを抜き取ってから……
 銃を冷蔵庫に隠すように置いたオルガは、武偵高の制服を脱いでシワが出来ない様にハンガーに吊るして窓際に掛けた。そして、クローゼットから私服のジーンズとゆったりとしたシャツをトンファやナイフが装備されたハーネスの上から着た。銃は持とうとは思わなかった。
 これからデートと言っては居るが、実際には本来の任務の1つであるイ・ウー構成員の首を取りに行く事にある。立場上、オルガはナイフやトンファ以外の武器はワルサーが1丁だけとなってる。だが、学園で支給されたワルサー以外の銃を一般人であった筈の少女が持ってれば、それだけで疑いの視線が強くなる。
 なので、彼女はワルサー以外の銃はデート相手に用意させ、作戦に移ろうとして居た。銃が無いのは不安だが、彼女としては銃を持たずに街中を歩くのは彼女の過去や現在の仕事を考えれば恐怖だ。しかし、銃を持たずにデートと言う雰囲気は嫌いでは無かった。
 銃は暴力と現代、死の象徴と言っても過言では無い。銃が出ると言う事は流血は避けられないと言っても良い。それ故に彼女は銃を持ってない時が、一番心休まるのだった。
 とは、言ってもナイフやトンファは合流迄の最低限の装備として持って行く。
 彼女は仕事上、銃を使ってる。だが、銃よりもナイフやトンファの方が得意なのもあるが、銃と違って、刃物や鈍器なら加減が効く。銃弾は老若男女問わず、命を簡単に奪える。
 それに、「銃が至高の近接武器だ」と、言った奴が居るらしいが、それは距離が3~5m以上離れてる場合に限っての事だ。拳銃なら10m以内は確実にカバー出来る。だけど、ほんの1、2mならナイフの方が早い。
 拳銃は抜く、構える(狙うも込み)、引き金を引く。って3アクションが必要だ。
 既に手に握ってたとしても、狙って、撃つ。と、2アクション掛かるだろう。
 だが、ナイフは抜いたと、同時に斬り付けるのが1アクションで可能だ。目と鼻の先ならばナイフの方が早いだろう事は明らかだろう……
 だから、彼女は銃を置いてく代わりにナイフやトンファを装備したままで、デートに向かうのだった。


 待ち合わせ場所である映画館へ向かう前に、同じ道を何周か歩いて監視の目が無いか? の確認をしてから、学園島に在る学生や教師、観光客向けの映画館へと入った。指定された映画はイラク戦争後の爆弾処理に携わる米兵を題材した作品であった。
 オルガは映画館に入り、呑気にポップコーンを口に突っ込みながら、車に仕掛けられた不発弾使用のIEDを解除してると言う緊張感に満ちたシーンを眺めるIED職人の後ろに座った。

 「おー、リアルな作りー」

 実際に米兵相手にIEDを爆発させた青年は、映画の細かな出来を眺めつつ自分が仕掛けたIEDもこうやって解除されたんだろうな、と、思いながらコーラを飲む。そんな様子に皮肉なモノを感じたオルガは周りには、聞こえず、タリクにだけ聞こえる様に囁く。

 「アンタが言うなら、相当ね。で、この後のデート予定は?」

 「あ? このまま映画鑑賞と洒落込もう。で、ホテルで1発シケ込もうぜ」

 スクリーンでは耐爆スーツを着た米下士官が部下に下がる様に言われてるにも関わらず、それを無視して工具片手に爆弾の配線をイジってる。そんなスクリーン内の緊張に観客が集中してる中、タリクは足元のカバンを足でオルガの方へ押す。

 「中に着替えと道具がある。終わる直前で着替えろ、でもって俺に尾行者が2人付いてる……」

 「数は?」

 「2人」

 「私の方は無かった。怪しいバンの姿も確認出来なかった……」

 「つーことは……ヴァージニアやモスクワ関係は来てないって事だな。アイツ等なら、1個分隊規模で見張るだろうし。武偵の可能性も……」

 「有り得る」

 「まぁ、ヒネ(警察を意味する隠語)じゃねえなら消しても問題無いな」

 行動方針が決まった所で、2人は映画の続きを見る事にした。時間を潰したかったのもあるが、映画のチケットは経費として落ちない。支給される装備以外の経費は自分達で賄わなければいけない以上、無駄にするくらいなら見た方が良いからだ。
 それに尾行者達の方にも映画で、戦争の悲惨な一面を見て貰おうとも思ってたし、嫌がらせも兼ねた有意義な時間潰しであった。それにイ・ウーの関係者が自分達を尾行してれば、
作戦行動としては成功だ。
 もう1人のイ・ウー関係者の方がガラ空きになって、もう1人の公安関係者が動きやすいだろう……事は未だ、2人以外知らない。


 映画が終わってから30分後、オルガとタリクは仲の良いカップルを演じながら街中を歩いて周り、ファーストフードの店で夕食を取ったりして時間を潰した。そして……

 一件のホテルの中へと消えた。

 ホテルの向かい側では、イ・ウーの構成員である1人の男と1人の女が向かい側のテナントのある雑居ビルから2人を監視して居た。無論、盗聴も……

 ベッドの上では男の股間に跨り、腰を上下に振って嬌声を挙げる女が居た。顔を赤らめ、満たされる淫欲と快楽で構成される恍惚の表情で祖母譲りの綺麗な銀髪を激しく揺らし男の精を貪って居る。
 肉同士が擦れる音とベッドのスプリングが振動で軋む音が掻き消されるかの様に湿り気を帯びた卑猥な音がホテルの部屋に響き渡る。
 男の方は陰茎に齎せられる女の肉の締め付けに精を放ちそうになるが、堪えながら自分も力強く腰を動かして女の肉の内壁を征服するかの如く、陰茎の先端でゴリゴリと押し付ける。
 女に締め付けられた陰茎を一気に抜く。先端から粘液が糸を引いて女の肉から離れると、今の体勢を変えるのか、女をうつ伏せになる様に押し倒す。そして、女の引き締まった腰を持って後ろから力強く突き刺した。女は急に来た強烈な刺激を感じたが、痛みが快感に変わってるせいか、痛みは感じる事は無かった。男に激しく突き刺される度に女の頭の中が真っ白に染まって行く。
 男の方も自分と同じ様に限界に達したのか、自分の中に熱いモノが流し込まれた感覚を感じながら果てたのだった。


 タリク・ウェン・ハーニーはベッドに横たわったまま煙草を吹かし、自分の傍らで寝転ぶ女、オルガ・クドリャツェフと言う偽名で学生をしてる相棒に声を掛けた。

 「傷の方は大丈夫みたいだな……」

 その声にオルガは何事も無かったかの様に答える。

 「掠っただけだし、対した事は無い」

 オルガの声は普段の無愛想なモノでは無く、普段と比べて明るいモノであった。彼女はタリクの銜える煙草を取ると、自分の口に銜えて紫煙を灰に満たして行く。深々と紫煙を吸い込んだ彼女は、それを一気に吐き出してから仕事の話をする。

 「Але виникає проблема, немає жодної проблеми в якості монітора. Якщо замовлення було зроблено, може працювати в будь-який час」
(問題が起きたけど、問題無い。オーダーが下されれば、何時でも仕事が出来る)

 日本語を使わず、ウクライナ語を使ったのは盗聴を恐れてなのか? それとも、母国語の様に喋れる言葉だからオルガは気兼ね無く使ってるのかタリクに解らなかった。だが、タリクからすればイ・ウー側の人間……遠山金一ならば、この会話を聞いてるだろう。
 自分達が尾行されてるのは、既に知ってた。相手の方も見覚えのある三つ編みだった。他にも背丈が魔剣と同じ様な女も一緒だったので2人で行動してるものだと予想が付いて居た。
 故に、自分達を囮にして本当の作戦を秘匿する古典的な手段で2人をハメる事にしたのだった。同時に此方の動向を敢えて流す事で相手側の動きを制限したり、撹乱を狙うと言う情報操作も兼ねていたりする。

 「Certainement faire un bon ajustement」
(確かに都合が良いな)

 オルガのウクライナ語に対し、フランス語で返したタリクはホテルの向かい側にある雑居ビルの空きテナントから此方を監視してるであろう3人にハッキリ見える様に裸のまま、窓際に立って中指を突き立てた。下半部の男の象徴も剥き出しで……
 オルガの方はタリクが窓際に立つ前にシャワールームに行き、性欲で熱く乱れた身体を清めるのだった。






 夜の学園島、人気の無い建設現場は不気味な気配を醸し出してる。それが、1人のロシア人とクルド人の2人が入ってから静かに時間が経てば尚更だろう。2人は自分達を尾行して来たのがイ・ウーの構成員である事は公安の情報から把握して居た。
 同時に3人の内、1人が尾行から離れて2人の構成員が建築中のビルへと入る事も知り得たお情報の内であった……

 大剣を持ち、胸の部分だけしか無い鎧と脚甲を装着したオルガの銀髪とは明るさが違う銀髪の少女、ジャンヌ・ダルク30世とカナと呼ばれるロングコートに身を包み、茶色い髪を持った少女が建設現場の中へと足を踏み入れる。2人はここに入ったまま、動きを見せない尾行対象で、公安の殺し屋であろう2人が誘ってると言う事は気付いてた。
 それ故に、ジャンヌもカナも手に愛用の武器を携えて周囲を注意深く伺いながら、足音を立てぬ様に2人を探して居たのだった。

 そんな2人へ激しい銃撃が遅い掛かる。銃声と銃弾が空気を切り裂く甲高い音が建物内に木霊する。その銃撃はカナへ向けて集中的に行われていた。音速の4倍近い速度で飛来する無数の銃弾はコンクリートの壁や地面に当たると、派手な音と共に辺りに跳ね回り始めた。
 そんな銃弾のシャワーに晒されるが、ジャンヌの作った氷の壁が銃弾を遮る。だが、氷の壁は銃弾が当たる度に氷を徐々に砕いて行く。3秒もしない内に、激しかった射撃がピタリと止む。
 が、再び銃撃が始まり、今度はジャンヌへ向けて弾幕が吐き出されたのだった。
 ジャンヌが氷の壁を作りつつ、物陰に逃げる様に隠れようとしてると、カナは愛用の武器であるコルトSAAを抜いて、己の放つ銃火で自身を照らし出す敵へ銃口を向ける。1発しか聞こえなかった銃声が響くと同時に、敵の攻撃が止んだ。

 「ジャンヌ、二手に別れましょう。私はこのまま追うから、貴女はそっちから回り込んで」

 カナは慣れた手付きでSAAのシリンダーから使用済な45ロングコルトの薬莢がシリンダーから1つずつ床へと落とす。それから、1発ずつシリンダーへ押し込みながら自分が今、遭遇した敵を追うと告げる。それに対し、ジャンヌは同意の上で納得すると、持ってた大剣を握り直して返事をする。

 「解った。気を付けろ……」

 「貴女もね」

 2人が別れる様子を伺う影が有った。その影は静かに歩み始める。その様子は獲物を見付けた獣が獲物へ静かに近付き、牙や爪を突き立てて獲物を喰らわんとする様にも見えた。


 ジャンヌがカナと別れてから1分もしない内に銃声が木霊する。銃声の殆どは先程のライフル弾を大量に吐き出せる強力な銃器によるものだが、それに混じってパパパパンと言う拳銃の銃声も混じっていた。彼女はその音からカナが先程の敵に追い付き、戦闘が始まったと悟るのだった。
 そんなジャンヌの耳に木霊する銃声に混じって暗闇から空気が抜けた様な物音が入る。そこへ視線を移すと、同時に1発の銃弾がジャンヌへ向かって飛んで来る。だが、ジャンヌは持って居た大剣を振るう。銃弾は金属同士がぶつかる甲高い音と共に地面のコンクリートを穿つだけであった。
 1発の銃弾が意味無くコンクリの地面へ埋まった同時に、連続で銃弾がジャンヌへと襲い掛かる。
 彼女は銃弾を躱しながら静かに駆け抜ける。しかし、その内の1発が斬撃をすり抜け、彼女の胸当に当たった。甲高い音と共に胸が潰される様な感触と息苦しさを感じながらも、ジャンヌが倒れる事はなかった。
 彼女は銃弾が放たれる瞬間に出来る銃火へ向けて、手をかざした。彼女の得意な氷の魔法を使う為だ……
 銃火の先では空気中の水分が固体化……つまり、凍り付き始めた。手応えが無かった事から逃げられたと察してると、上部から僅かに煙を上げるM67破片手榴弾がゆっくりと転がって来たいた。
 ジャンヌはそれに気付くと、分厚い氷の壁を作って爆風に備え様とする。氷の壁が出来上がったと、同時に、M67が爆発を起こす。静寂な闇の世界を砕く様な轟音が建物中に響き渡る。
 建物を揺らし、上から埃や細かいコンクリート片が降り注いだ。
 爆風で出来た粉塵が収まると、コンクリートの壁と床に細かくなったM67内部に収まってた殺傷用コイルが突き刺さり、爆風の熱風によって焦げ痕が出来ていた。
 ジャンヌの作った氷の壁は粉々に砕けていたものの、ジャンヌ本人は無傷で済んだ。が、ジャンヌは盾に使った氷の壁に守られていたとは言え、完全にノーダメージとは行かなかった。
 爆発は破片や爆風以外にも爆発の音によって相手を精神的に傷付ける事が出来る。狭い室内、音の反響が激しい建物の中で爆発音がすれば鼓膜を強烈に刺激し、三半規管を激しく揺らす。故に彼女は一時的か半永久的か解らないレベルの難聴を起こし、頭の中でぐわん、ぐわんと鐘楼の鐘が突かれた様な痛みにも似た感覚がジャンヌをさい悩み、足元はフラ付き、焦点が定まって無い状態だった。
 それでも彼女は戦う意志を持ってるのか、剣を杖の様にしながらも立ち上がり、意識がぼんやりとしながらも、敵を探そうとする。だが、相手はそんな彼女のガッツを嘲笑うかの様に左手に握ったサプレッサーが付いたグロック17の引き金を無言のまま静かに引き絞るのだった。
 グロック内部で、撃針が引き金を引かれた事によってメイドイン中国な9-19mm口径の銃弾の薬莢底部の雷管を突き刺す。その衝撃で雷管は起爆し、薬莢内部のちっぽけな量の炸薬が点火され、薬莢に圧入されてた銅と鉛で出来た9mmホローポイント弾が吐き出された。
 硝煙漂う薬莢が宙を舞い、燃焼ガスがサプレッサー内部で燃え尽きながら音が掻き消され、ホローポイント弾はジャンヌの方へと飛んで行く。宙を舞ってた薬莢はジュッと言う音ともに手袋越しの右手に握りこまれた。



 同時刻、ホテル『ラストダンス』では瀬田狂四郎が本来の作戦目的である夾竹桃暗殺の為にホテルへと来て居た。
 彼は夾竹桃が2年前に襲った間宮一族の生き残りでもあり、武偵高の生徒である間宮あかりを狙っての来日と言う事を知ってた。同時に間宮あかりの妹へ毒を打って脅迫してる事も知ってた。
 故に夾竹桃が死ねば、間宮あかりの妹も死ぬ事は解って居たのだが、コラテラルダメージとして黙認された。故に彼は自分が1人を殺せば、もう1人死ぬ事を理解した上で夾竹桃を殺害しようとして居たのだった。
 瀬田がホテルの周囲に仕掛けられた防犯カメラからの視覚情報をバックアップ役の仲間から聞きながら、ホテルの従業員用の出入り口から中へと入る。防犯カメラは1時間前からループ映像が流され、警備室に居る警備員は何も問題無い映像を退屈そうに眺めており、ホテルの従業員に扮した瀬田が防犯カメラを通過しても気には留めなかった。
 そんな状況で、瀬田は自然体で従業員スペースを通って夾竹桃の潜伏する部屋へ向けてゆっくりと歩を進めた。
 15分ほどで従業員用スペースから夾竹桃の部屋の前に立つと、用意してたホテルのマスターキーで部屋の鍵を開ける。反対側の手にサプレッサー付きの拳銃を持ってるが、防犯カメラも含め見ている者は誰も居なかった。故に、拳銃を持ってる彼を咎める人間も居なかった。
 そんな彼は、部屋を静かに開けて足音を立てぬ様、慎重に中へと入る。
 部屋の中は比較的片付いてたが、テーブルの上には書き掛けの漫画の原稿と栄養ドリンクの空瓶、漫画用に使うであろうペンや黒いフィルム、インク等が乱雑に置かれていた。
 それから窓辺を見ると、夾竹桃が持ち込んだであろう芥子やベラドンナ、朝鮮朝顔と言った毒草が綺麗に花を咲かせていた。
 周囲を見回し、誰も居ないのを確認すると、シャワールームから水の音が瀬田の耳に聞こえて来る。彼は持ってたSIG社の拳銃で、自衛隊も採用してるP220(指紋消して、シリアルナンバーは切削済)のグリップを握り直すとシャワールームへと向かう。シャワーの水音に扉が開くを紛らわせ、静かに入ると曇りガラスの扉の向こう側で白い肌を持った華奢な少女がシャワーを浴びてるのが見える。
 瀬田は両手にP220を構えると、ガラス越しに居る標的へ向けて引き金を引いた。プシュ、プシュと言う音と共にガラスが蜘蛛の巣状に罅が入り、穴が穿たれる。ガラスの向こう側でバタッと言う鈍い音が聞こえ、シルエットは床に倒れ込む。
 瀬田はトドメを刺すべく、扉を開けると床に倒れシャワーの水流と一緒に血を流す夾竹桃を見下ろしながら引き金を何度も引いた。シャワーの音に銃声が掻き消され、銃弾が吐き出される度に夾竹桃が短い悲鳴を挙げ、華奢な少女の身体が銃弾によって醜く喰い散らかされて行く。
 彼がP220の弾倉に入ってた9mm弾(コレもメイドイン中国北方工業公司)を撃ち尽くした頃には可愛い顔は誰だったか解らないくらいにグチャグチャなモノへと醜く変貌していたのだった。
 血がシャワーに流され、排水口へと吸い込まれる音だけが響く。彼はP220を夾竹桃の死体に投げ捨ててシャワールームを後にした。
 それからは、夾竹桃の持ってた漫画の原稿や携帯電話、パソコン、財布と言った物を全て持って借主の死んだ部屋から出たのだった。
 数分後、間宮あかりが部屋に踏み込んだ頃には……
 夾竹桃だった無残な肉塊がシャワールームに放置されてるのを発見するのだった。



 ホテルから姿を消した瀬田は、仲間の居るバンに乗り込み、岡村工務店と書かれた作業員姿へと着替え始める。バンのキャビンでは警察と武偵局が通報を受け、死体を回収したとの情報が伝わって来る。

 「心が痛みますね……」

 「どしたん、瀬田ちゃん」

 キーボードを叩きながら、ホテルの防犯カメラのループ映像を元に戻してたオペレーターの女性が瀬田のボヤキに反応する。それに瀬田は、困惑と罪悪感の混じった顔で普段の柔和な表情を崩しながらも、その後の言葉を繋ぐ。

 「幾ら任務とは言え、年端も行かない少女を殺すのがですよ……」

 「仕方無いじゃん、イ・ウーってテロリストを殺れって言うのが上の意向なんだからさぁ……そんな事言ったら、オルガちゃんなんか、10代で青春真っ盛りなのに人殺しさせてるのはどうなのさ?」
「私達は日本の国益の為にロクデナシになる事を決めたんだから……仕事に私情を挟んじゃ駄目でしょ?」

 女はあっけらかんに言うと、ディスプレイに再び向き合いキーボードを叩く作業に戻る。瀬田は自分が、殺した少女が何か(もしくは助けを乞おうとしてたのか?)を言おうとし、手を伸ばして来たのに、自分は躊躇無く引き金を引いて殺してしまった。
 その時、曇った鏡に写る自分の顔は笑顔で歪んでおり、まるで獣が獲物を喰らって喜んでた。人を殺したと言う罪悪は感じて無かった。
 だが、今では人を殺した罪悪感に際悩まされて居たのだった。自分の手に未だに残るP220の感触と心からスッと、何かが抜けた様な感覚と自分の良心やモラルが人を……二十にも満たない無抵抗の少女を殺した事を責め立て続ける。
 そんな様子に気付いた、オペレーター役の女性はクーラーボックスから冷えて水滴の着いた大きなビール缶を投げ渡す。

 「それ飲んだら、忘れなさいよ……だけど、飲み過ぎないでね? この後、あの2人を拾わなきゃイケないんだから」
「泣いてたら、タリクに笑われるわよ?」



一応、続く。尚、この時のエロ的なシーンは当時、初めて書いた。
下手くそでスマヌ


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緋弾 オリヌシモノ 3

カナとオルガの相方のイカれたクルド人のバトル。


 静寂と暗闇の中を亜麻色の髪を三つ編みにした1人の少女が歩く。手には西部劇の主役、アメリカの象徴とも言える拳銃であるコルトSAAと呼ばれるリボルバーが握られて居た。僅かに響く足音が敵の潜むコンクリートの室内に響き渡る。そんな足音の主である少女、カナが足元で倒れてる赤いカラーコーンを蹴ると、それは起きた。
 カラーコーンが動く。すると、室内へ入ろうとしたカナへ向かって、ロープで縛られた3本のアセチレンガス(燃焼性の高いガス。主に溶接で使われる)の詰まったオレンジ色の大きなボンベが横合いから殴り付ける様に襲い掛かって来たのだった。寺の鐘を衝こうとする様に天井から振り子の様に振られ、ボンベは彼女を壁に叩き付けようして来る。
 勢い良く突っ込んで来る数十kgの大きなボンベに人間が当たれば、打撲と骨折は免れない。下手すれば死んでしまうだろう。それが束で来れば尚更だ。
 そんな脅威に対し、カナは跳んで避ける。と、同時に壁にぶつかったボンベは床へ大きな音を立てて転がる。
 カナが床に足を付けると何かが切れる感触がブーツ越しに伝わる。だが、今の様な悪意と殺意に満ちた仕掛けが作動する事は無かった。今の所は……
 それを疑問に思いながらも息を切らす事も安堵する事も無く床に着地すると、周囲に視線を走らせて敵と敵の仕掛けた罠を探して行く。積み上げられた鉄パイプやセメント袋の山にに隠れてペンキで黒く塗られた緩い曲線を描いた厚みのある金属製の板が見える。
 M18……クレイモアと呼ばれる指向性地雷だ。これは、ヴェトナム戦争中に作られた地雷で、起爆すると「此方を敵に向ける事」と英語で印字された面からC4爆薬を炸薬として700発の小さな金属製のボールベアリングを吐き出し、敵を肉塊、否……
 肉片か液体状に変えると言う兵器である。
 そんな地雷が部屋の奥へと進む道筋へ向けて仕掛けられた。袋が積み上げられた山をよく見ると、月明かりを僅かに反射するテグスが見えた。カナはテグスに引っ掛かれば、仕掛けられたクレイモアが爆発し、自分を痛みを感じる事無く殺すのだろうと思い、他の道を探そうとする。
 他の道が無いか? 探してると、積み上げられた資材の脇に隣の部屋への入り口があった。そこには罠の為に使うであろうテグスは見当たらなかった。まるで、自分だけが安全に通れる様に仕掛けた者が空けた通路の様に……
 相手の作ったエアポケットを利用しようと、慎重に歩みを進めてる所で引っ掛かったテグスが効果を現す。
 ヒステリアルモードによって常人の数十倍近く強化されたカナの聴覚が部屋の中に僅かに響く小さな電子音を見逃さなかった。カナは直ぐ様、音の出所を見る。
 そこには先程、自分を圧し潰そうとした3本のアセチレンボンベが転がっていた。

 カナは慎重に進もうとせず、部屋の入り口へ急いで飛び込んだ。その時、カナがクレイモアの隠されてる資材の山に視線をやると、壁に取り付けられた茶色い包みが幾つも並んでいた。
 彼女は直ぐに立ち上がり、目の前にある別の部屋の入り口へ向けて全速力で必死に走り出す。
 同時にガスボンベに仕掛けられてた小さな爆弾がアラームと共に起爆する。カナが部屋へ向かって走ってると同時に、建物全体を揺らす衝撃が伝わり、倒れそうになる。だが、止まば間違いなく、壁をクレイモアの散弾代わりのコンクリートによって肉塊所か肉片に変えられてしまう以上、立ち止まるのは自殺と同義語と言う状態であった。
 自分の後ろでアセチレンと空気中の酸素で作り上げられた炎が吹き込んで来る。カナは自分の髪が焼ける臭いを嗅ぎながらも、足を止める事は無かった。しかし、壁に仕掛けられたセムテックスが爆発すると、建物を支える頑丈なコンクリートが無慈悲に彼女へと襲い掛かる。鉄筋交じりの大小様々なコンクリートの塊が彼女を追う様に横から飛んで来る。
 コンクリートの飛んで来る速さと威力はカナの持つSAAの銃弾や自分やジャンヌに向けてバラ撒かれた5,56mmNATO弾と比べるのがバカらしくなる程に強烈であった。
 その証拠に、カナの腹部をヘビー級ボクサーの一撃よりも強烈な衝撃が伝わると、共に彼女が来てたNTK製の防弾コートを貫き、何かが刺さった感触を得ると共に部屋へ飛び込むと、彼女は血の混じった胃液を吐き出したのだった。
 彼女は肩で息をしながらも、自分の後ろで起きた事を見る。そこには床に散らばるコンクリートの片やアセチレンと爆薬の爆発によって部屋が瓦礫で埋まって戻る事が出来なくなってた。文字通り、部屋は木っ端微塵に吹っ飛んだ結果があるだけだ……
 そんな状況で生き残った彼女は、腹部に刺さった鉄筋を引き抜き、傷口を治療しようとする。だが、こんな周到な罠を仕掛けた狡猾な男がソレを見逃す筈も無かった。
 だからこそ、カナは余計に不気味に思った。
 自分の知る相手……3年前、ローマ武偵局局長およびカラビニエリ(イタリア軍警察)をナポリのカモッラ(ナポリに本拠を持つマフィア組織)のルッソファミリーの依頼で暗殺した人物にしてはやり方が甘かった。
 武偵として留学してた頃、彼を逮捕しようと潜伏してるアジトであったファミリー所有の廃工場に踏み込むと、今みたいな罠が無数に張り巡らされてた。他にも罠で動けない相手へ銃撃を加えたり、武偵の絆を逆手に利用して息の有る武偵を惹き付ける為の餌にしたり、己の身を守る為の盾にする等の非人道的で、容赦無い行動を取れる冷酷非情な悪党である相手が、今の自分の様な負傷してる相手へ攻撃を加えない……
 今の罠で自分が殺せると思ってたから? 否。相手はそんな優しい思考を持った手合では無い。
 銃口を向けて来たのが、例え、小さな子供でも老人であろうとも簡単に引き金を引き、人を空き缶を撃つかの如く命を奪える手合だ。ならば、こそ……
 動けない自分にトドメを刺すくらいの事はしそうであった。そうなれば、自分にとっては賭けではあるが、逆転の可能性は有った。
 だが、逆転の可能性を潰す様に相手は一向に現れない……

 カナは傷口から鉄筋を抜いて、床へ静かに置きながら推理を行う。相手の動きが不可解だからだ。相手の性格や手口を知ってるからこそ、疑問や戸惑いが彼女に脳裏から離れなかった。
 だからこそ、武偵の技術である推理を利用して相手、ラシード・ハジ・ムハマド(イタリアに居た時のタリクの偽名。エジプト国籍の観光ビザ使用)が何を狙ってるのかを考え始めた所で自分と一緒に踏み込んだもう1人、ジャンヌの存在と私用で日本へ来た夾竹桃が頭の中に浮かんだ所で、ハッとなり、急に立ち上がった。

 まさか……? 狙いは夾竹桃の暗殺とジャンヌの確保!?
 私が追って来る事を見越して、敢えて誘い込んでの陽動……

 相手の狙いに気が付くと、カナは来た道を戻ろうとする。だが、部屋の出入り口は来た道は瓦礫で埋まり、闇に慣れた目にはクレイモア地雷や釘が多く詰まった鉄パイプに怪しげなドラム缶が随所に置かれてた。まるで、時間稼ぎをするかの様に




 その頃、瓦礫の山を作った張本人は1階で仲間と合流して居た。2つ有る階段の内、1つはアセチレンガスが爆発したと、同時に高性能爆薬であるセムテックスを起爆して階段を使えなくしてた。
 では、彼がどうやって階段を使わずに降りたか?
 彼は爆弾の専門家で、1Fへ移動するのに必要な爆薬と起爆雷管を持ってた。つまり、アセチレンを爆発させる前に床に仕掛けた2kgのセムテックスを爆破して床に大穴を空けると、そのまま1階へと飛び降りたのだった。
 そして、今、別行動を取ってたもう1人が何かを担いで静かに歩いてるのが見えた。

 バラクラバを被り、粉塵避けのゴーグルを装着してるタリクはジャンヌとカナへ弾幕を浴びせるのに使ったウルティマックス100と呼ばれるシンガポール製の5,56mm口径の軽機関銃を影へと向ける。胸に程よい膨らみを持ち、右肩に荷物を載せた相手の方も左手に持つサプレッサー付きのグロック17をタリクへと向けて居た。
 2人は相手が味方である事を確認すると、互いに銃口を下ろした。

 「何担いでるんだ?」

 タリクが携えたウルティマックスを構えて周囲を伺い警戒を続けてると、口元に髑髏の口を模したペイントが施されたバラクラバを被るオルガは静かに告げる。

 「ジャンヌ・ダルク30世……」

 暗闇なのと、バラクラバを被ってるせいかオルガの表情と淡々とした機械的な口調で彼女の考えも気持ちも読み取れない。だが、タリクはバラクラバの奥で普段と同じ様に無愛想な無表情ではあるが、人を殺さずに済んで良かったと、安堵してると思い言葉を告げる。

 「生きてるのか?」

 「眠らせて、魔力封じの手錠を掛けてある……暫くは起きない」

 「俺が運ぼうか?」

 「お願い」

 オルガが生きてるジャンヌ・ダルク30世の詰まった死体袋を床へ静かに下ろすと、タリクから映画館で渡されたベルギー製のアサルトライフルであるSCARのHモデルを手に取ってタリクが来た方向を警戒する。タリクは自分が持ってたウルティマックスをスリングで前に提げ、バッグからクレイモア地雷を出し、スタンドで立てる。上部の穴に雷管を差し込み、テグスをピンと張ってテグスに繋いだ雷管のピンが抜ければ通った物を肉片に変える様にする。
 地雷設置を10秒も掛けずに終わらせると、タリクはジャンヌが詰め込まれた死体袋を担ぎ上げる。生きた人間が死体袋に入れて運ぶと言う皮肉にタリクはバラクラバの中で笑うと、担いだ感想を率直に述べる。

 「意外と軽いな……お前さんよりは軽いぞ」

 「女の子の体重を言うのはマナー違反じゃない? そんな事より急いだ方が良いわ」
「どっかの誰かさんが、派手にやったせいで外野が予定よりも早く来るわ」

 そう、独立都市同然の学園島とは言え、法治国家である日本の首都で爆弾を使ったのだ。
 爆発音が学園島中に響き渡るには充分な程に。しかも、銃声もしていたのであれば、一般市民が携帯電話で警察へ通報するのは当然の結果。故にビルへ向かって警察の白黒ツートンの車両や武偵の車両がこのビルへ向かって来て居た。その証拠に緊急車両が通る時のサイレンがここ迄聞こえて来てる。
 10分もしない内に法務機関の人間が踏み込むのは目に見えてる。

 「サツが予定より早く来るのも、ポストが赤いのも、イスラムの同胞がテロリストの様に見られるのも全部、俺のせいだよ畜生!」
「つうか、お前みたいなクソ凶暴な奴を女の子の部類に入れたくねえ」

 巫山戯ながらもタリクは声を小さく叫ぶ。未だ、戦場から逃れては居ないからだ。自分が嵌めた相手はもしかすれば、既に来てるかも知れない。だからこそ、大声を出すと言う事はしなかった。出したがったが……
 オルガが先頭を走る。その後ろ姿を見てから、暗視装置をハーネスで頭部へと装備したタリクは後方の警戒を始める。自分が嵌めたカナが来るのに備えてだ。暫くすると、ある程度の距離を進んだ所で止まってタリクへ手招きをする。同じ様にオルガも暗視装置を目に装着してる。緑色に映る視界がそれを捉えると、ウルティマックスを下ろして床で眠るジャンヌを担ぎ上げた。
 1歩目を踏み出した所で、足音が聞こえる。同時にSCARを構えてACOG(低倍率のスコープ)を覗き込んでたオルガがSCARの引き金を引いた。銃口に取り付けられたサプレッサーによって気持ち程度に下げられた銃声はマヌケな音だった。そんな音と共にタリクの耳元を音速の2倍以上で飛来する7,62-51口径のライフル弾が空気を切り裂きながら横切る。

 「俺を殺す気か!?」

 耳元を強力なライフル弾が掠ると言う恐怖を味わいながらも、冷静に床へ伏せたタリクはオルガが持つSCARから放たれる銃声に負けない程の大声で叫ぶ。そんな声にオルガは返事をする代わりに銃弾を壁の裏に潜むカナへと浴びせ続ける。セミオートで撃ってるのか、銃弾は1発ずつ放たれてる。そんな中でもタリクはボディバッグの取手を左手で掴みながら地を這ってオルガへと少しずつ近付こうとする。

 「クソ! こんなヤバい匍匐前進なんて……覗き以来だぜ」

 銃弾が頭上を飛び交う中、ボヤきつつもタリクは進むのを辞めなかった。自分達の様な業界では、前へ進むのを辞めるのは死と同義語であるからだ。留れば、自体が好転する訳では無い。
 だからと言って戻る事は出来ない。が、振り返って銃弾を浴びせる事は出来る。
 オルガの居る地点まで3分1程の距離でタリクは後ろを振り返り、様子を伺う。同時にオルガがSCARの下部に取り付けられたグレネードランチャーの引き金を引き、40mm榴弾を放った。
 40mmの小さな砲弾は尾を曳きながら、放物線上にゆっくりと飛んで行く。タリクの視線にそれが映った所で、彼はジャンヌを足であろう部分を持って身体が背中をぶら下がる様にして走り出した。彼が力強く脚を踏み込む度にウルティマックスや死体袋が激しく揺れる。幾ら眠らされ、手足を縛って拘束してるとは言え、目を覚ますのは確実であった。
 その証拠に、自分の右手で暴れる細い脚の感触と腰の辺りから呻くような小さな声が聞こえ、ジタバタと暴れる死体袋にタリクは頭を抱えたくなった。が、銃撃が止んだ以上、急いで離れなければ、カナ以外にも武偵や警官を相手にしなければ行けない状況になるのは避けたかった。
 だから、彼は起き上がって銃弾に当たる危険性を自ら上げた上で、ジャンヌを担いで走るのだった。

 グレネード弾を撃ったオルガがマガジンに詰まった20発の7,62NATOを撃ち尽くし、今、SCARに詰まったマガジンを外して予備のマガジンに詰め替えようとして居た。タリクが半分まで近付いて来てる。後、数秒も有ればタリクと共にこの場から逃げ出す目処が立つ筈であった。
 だがしかし、オルガが予備の弾倉に詰めると、両手にコルトを握り締めたカナがタリクへ猛スピードで近付きつつあった。オルガがコッキングハンドルを引いて初弾を装填し、セレクターを弾く様にフルオートに切り替え、再び、構える。ACOGに刻まれたレティクルにカナは映らない。
 映ったのは両の太股に銃弾を撃ち込まれ、倒れるタリクと床へ落ちる中身入りの死体袋であった。
 タリクが床へ崩れ落ちた事でカナの姿がハッキリと見え、引き金を奥まで引き絞る。同時にカナが放った銃弾が真っ直ぐ、オルガへ向かって来る。カナの放った銃弾はオルガへと当たる前にオルガの放ったライフル弾がカナへと襲い掛かる。カナはシリンダーに残った僅かな残弾を使い、自分に命中する危険性のある銃弾を弾いて行く。だが、オルガの放ったライフル弾はカナの身体へと当たった。
 その光景にオルガは驚きと呆れを覆面の下で浮かべる。だが、ACOGには、カナの放った銃弾がスローモーションが掛かった様にゆっくりと迫る様がオルガの網膜に映った。彼女はハッとなると、直ぐにしゃがんで自分の頭上を通過した銃弾に薄ら寒いモノを感じながらも、マガジンに僅かに残った銃弾をカナへ浴びせ続けた。
 しかし、オルガの放った銃弾がカナを止める事は無く、這いずりながらも逃げる事を辞めなかったタリクの頭にコルトの銃口が向けられてしまったのだった。




 タリクは自分に向けられた殺気と銃口に気付くと、ピタリと動きを止める。それからゆっくりと仰向けになって自分に銃口を向ける相手の瞳をジッと見詰め始めた。しかし、カナを見詰めるタリクの思惑に疑問を感じながらもオルガは、弾の切れたSCARの代わりにジャンヌと戦った際に使ったグロックをカナへ向ける。すると、残弾が残ってるのか疑問視せざる負えない古めかしいSAAが彼女の方へと向けられる。

 「よぉ、撃たないのか? 撃たないんだったら銃口向けるなよ……」

 銃口を向けられ、命を相手に握られた状況だと言うのにタリクは自分のペースを崩さず、何時もの様に軽口を叩く。左手にはピンの抜けたテルミット材入りのM14焼夷手榴弾が握られてる。撃てば、M14は床へと転がり、タリクだけでは無く、カナやジャンヌが骨も残らずに焼き尽くされるのは確実だ。だから、カナは撃ちたくても、撃てずに居た。
 カナは仲間の無事を確認したいのか、真剣な表情を浮かべながらタリクへ死体袋に入ったジャンヌが無事か聞いてくる。

 「ジャンヌは生きてるの? 夾竹桃は?」

 「そんなの知るか……自分で確かめろよ、武装探偵の名が泣くぜ?」

 タリクが死体袋の方へ視線を動かし、太々しく話す。そんなタリクへ何も言わずにカナは死体袋を開ける様に無言で促す。オルガの方は照準をカナの頭部へと慎重に合わせ、何時でも殺れる体勢で見守る。

 張り詰めた空気がこの場を支配する。刹那に満たない時間が永遠にも感じられ、気持ちの悪い喉の渇きがこの場に居る者達を襲う。
 そんな状況にも関わらず、オルガとタリクから電子音が響く。

 「電話に出ても良いか?」

 スプレー缶の様なM14焼夷手榴弾を持ってない反対側の手で胸ポケットを指差し、タリクは電話に出て良いか確認する。カナが了承した所でタリクはゆっくりと携帯電話を取り出して電話に出た。

 「もしもーし」

 『現在の活動を一時中止して下さい。ジャンヌ及びカナ、リュパンに対して一切の活動を中止します』

 「…………金は払えよ」

 『そこは契約通り支払います。後、彼女に監視は引き続き続行と言って下さい』

 「なら良いわ。アイツには俺から言っとくから」

 電話を切り、タリクは痛みを堪えながら立ち上がる。立ち上がると、携帯電話を仕舞ってからカナへ自分達はこのまま消える事を告げる。

 「どう言うつもり?」

 「知るか、オタクの飼い主にでも聞けよ……俺達はこのまま帰る」

 タリクはカナへ無防備な背中を見せては居るが、左手に握られたM14は手放せば、この場を焼き尽くすには充分な状態で、オルガに至っては銃口を向けたままだ。それなりに警戒しながらも、戦う理由が無くなると、彼等は闇の中に消えたのだった。



緋弾二次ってナンダローナ(白眼


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リリカルなのは オリヌシモノ 盗掘屋

昔書いたリリカルなのはで、盗掘屋もの


 どうしたもんかね……最近、盗掘屋で話題になられておられる管理局曰く、ガジェットに囲まれましたけど。
 今の手持ちは地球で気に入って以来、使ってるブローニング・ハイパワーが1丁にAK47が1丁とM79グレネードランチャー。後は手榴弾やらチャフグレネードにスモークが幾つか……正直な意見、勝てる気がしない。

 管理局に助けを求める……これは無し。自慢じゃないけど、管理局からはよく思われて無い。なんせ非合法的に墓荒らしてるからな。オマケに指名手配も喰らってる逮捕後、裁判長いだろうな。ムショに入る頃にはヨボヨボのじいさんになっちまう。だから無し。

 俺のマイホームでもある小型のポンコツ船を留めてるポイントまで逃げる。これしか無さそうだ……犯罪者はツラいね。逆恨みする奴がたまに俺の事を殺そうとするし、管理局からは追い回されるし……良い事が無い。

 え? 真っ当な仕事じゃないんだから仕方無い? 目を逸らしたい事実を言うなよ……見なかった事にしたいんだからさ。

 とある管理世界の砂漠地帯の奥深く眠ってた地下遺跡から手に入れたお宝を確保した砂と風除けのマントを羽織り、ターバンで顔を被った盗掘屋の男は、手に携えた第97管理外世界の戦場で60年以上使われ、ベストセラーとなったAK47と呼ばれるライフルの安全装置のレバーを一番上の位置から一段階下げた。それはフルオートで弾幕を張ると言う事であった。
 左手に持った破片式の手榴弾のピンを抜くと、それを4機1組となって近づいて来るガジェットに投げ付ける。手榴弾は3秒後、爆発すると、手榴弾を中心にして半径、数メートルに爆風と破片、そして、巻き上げられた砂塵がガジェットに叩き付けられる。
 爆風に巻き込まれたガジェットから目を離さずに男はAK47のストックを右肩に押し付ける。手榴弾を持ってた左手を木製のフォア・エンドに沿えるとそのままフォア・エンドを保持する。そして、脇を締めて右頬をストックのチークピース部分に押し付けて射撃姿勢を取った男は、リアサイトと円形のフロントサイトに爆風が晴れて現れたガジェットに向けて引き金を引いた。
 独特の銃声と共に放たれる自分で火薬を調合、火薬の量を増やすと共に弾頭を変えて自作した特性の7.62×39mm弾を男は魔力弾を放とうとするガジェットに絶え間なく浴びせるのだった。

 肩に強烈な反動を受けながらも男は、引き金に掛けた指を離さずにバナナ型のマガジン内の弾を撃ち尽くし、目の前の無人兵器が動きを留めるまで銃弾を浴びせた。
 銃弾を浴びたガジェットは手榴弾によるダメージも有ってか、装甲の耐久性や強度が下がり銃弾に貫通してしまう。数秒後、内部の駆動部が銃弾によって破壊されると小さな爆発を起こして停止する機も有れば、AIを搭載してる箇所が破壊されて砂漠の上に落ちた物等が残骸となっていった。

 「ザマァ見ろ、ガラクタ……あ、ヤベ……」

 男は空になったAKのマガジンをポケットに突っ込み、未だに硝煙が立ち昇る30発の散らばる空薬莢を踏み、蹴ったりして砂漠の砂に埋めながら視界に写ったガジェットの増援から逃げるのだった。
 背中のバックパックに仕舞い込んだレリックと呼ばれるロストロギアを背負ったまま男はガジェットとの鬼ごっこを遺跡の残骸の陰に隠れる迄、続ける。
 遺跡の陰に隠れた男は、逃げた拍子に詰め損ねたAK47のリブが入った金属製のバナナ型マガジンをマガジンハウジングへ乱暴に詰めると、ボルトを乱暴に引いて薬室に初弾を装填した。初弾を装填したAKを撃つかと思いきや、男は古そうな銃……M79グレネードランチャーを手に取り、銃身の上部に装着された折り畳み式のサイトを展開する。
 そして、M79グレネードランチャーを先程のAK47を構えたのと同じ要領で構えると、サイトに刻印された数字をガジェットが近付く距離に合わせて仰角を取ってから引き金を引いた。
 重い低音とシャンパンの栓が弾ける音を足して2で割った様な銃声と共に40mm榴弾が放物線を描いて飛んで行く。放物線を描いた榴弾は、男が狙った位置から数十センチ程ズレた位置に着弾して砂漠の砂を巻き上げる……ガジェットにはダメージはそれなりに与えるが、効果は今一つの様であった。
 榴弾を放ったと同時に、男は遺跡の残骸に隠れて、M79の銃身兼薬室を固定するラッチに指を掛ける。男はラッチを解除して銃身下部のフォア・エンドを下げて中から薬莢の底部が現れると、未だに熱を持った薬莢を化学繊維製の手袋越しに摘んで地面に捨てた。
 そして、地面を映す薬室にベルトに挿んでた多目的榴弾を装填し、折れたM79を元に戻した……

 「何なんだよ……? コイツ等はお宝が欲しいのか? だったら……代わりに弾丸をプレゼントしてやんよ!!タンと受け取れ、ガラクタ!」

 男は近付いて来るガジェットへ向けてAKの弾幕を浴びせつつ、手榴弾を投げた。

 魔法を使いたくても、使えない……参ったぞ。もしかすると、コイツ等はAMFを展開してるのか!? だとすれば……コイツ等から距離を取らないとヤバい!!
 念の為に質量兵器を用意しといて良かった……遺跡の中には魔法を妨害する特殊な環境が有る上に、警備システムの無人兵器がお宝と一緒に眠ってるのよ……だから、質量兵器も体力も必要なんよね。墓荒らしは本当に地獄だぜ。
 なんて、アホ臭い事を考えるのは辞めて……現実を見るかな。目を逸らしたいけど……

 多分、管理局は近付いてきてる……これ以上、戦闘を長引かせたら、もれなく管理局武装隊や執務官が来る。その前に監視チームが監視してるかも知れない……否、既に来てる。

 男は耳に装着したインカムから、時空管理局が使ってる念話の周波数チャンネルから執務官とオペレーターの会話が途切れ途切れに聴こえて来る事に舌打ちする。

 クソッ! 来るのが早過ぎる!! 何時もはもっとチンタラとしてるのによ……
 あー……どうする? 顔はターバンで隠してる。服も現地のを着てる。だから、サーチャーに見られても問題無い筈。一応、遺跡や薬莢に指紋は残してない筈だから……捕まらなければ俺は逮捕される事は無い。
 捕まった場合……地球産の質量兵器を複数所持。しかも、フルオートと対物兵器持ち。
 オマケに……銃弾は持ってるだけで実刑を確実に喰らうであろう『魔導士殺し』 だ。

 『魔導士殺し』 と、犯罪者や管理局魔導士、軍事関係者から呼ばれる銃弾がこの世に存在する……
 これは銃弾の材質に魔力結合を切り離して魔力効果を減衰させながら、シールドや貫き、バリアジャケットを貫通する効果を持った特殊な銃弾なのだ。
 古代ベルカ時代に当時のベルカと紛争を行ってた国の軍隊が開発、生産に成功した特殊な軍用銃弾である。これの製造方法が記載されたデータを見付けた時空管理局員と言う名の盗掘者が最近見付け、厳重に保管されていた。しかし、常に頭の悪い管理局員と言うのがこの世に存在しており、この悪い管理局員の手によってこの銃弾の製造方法は様々な人間に広がった。
 これによって管理局魔導士と非魔導士の犯罪者とのアドバンテージの開きが狭くなってしまった。
 更にこれを秘密裏に管理外世界で大量に生産した武器商人が利益の為、管理局を良しとしない非魔導士が大半の軍事組織や犯罪組織へ試供品として大量に流した。それによって管理局員の殉職者や負傷者、犯罪に巻き込まれた市民の被害が増えて行った。
 そんな事から、この盗掘者が使ってる『魔導士殺し』 と呼ばれる銃弾はミッドチルダでは、所持してるだけでも裁判の判決で実刑を受ける代物で管理局が否とする、危険物なのである。
 因みに……そんな銃弾は、材質自体の硬度がタングステンカーバイド並みな上に、粘りも有るので、200m離れた箇所から地球での防弾レベル3の防弾装備を施した肉塊と化した豚に撃つと……
 腹部の防弾プレートから表面の革、内部の肉や骨を砕き、損傷を与えながら背中の防弾プレートに掛けて貫通させる事が可能だったりするのだったりする……


 閑話休題


 せめて、砂嵐でも来てくれれば……砂嵐に乗じて逃げれるし、痕跡は砂の中に隠れる。残留魔力は魔力を使わなければ発生しない。それにここの砂嵐は、磁気を含んでる事もあれば魔力素に対して強い影響力を発揮して自然のAMFになるのにな……

 盗掘屋は八方塞がりの脱出は神任せと言った状態に頭痛を覚えながらもガジェットを破壊して行く。
 5分もしない内に男は、この周辺に集まってたガジェットを全て破壊すると、この遺跡に来る時に使ったSUVに乗り込んだ。それから、イグニッションキーを回し、エンジンが掛かると、サイドブレーキを下ろし、シフトギアを叩き込んでアクセルを一気に奥まで蹴り込む。すると、4つタイヤが砂を噛みながら回転し出し、砂を巻き上げながら遺跡から離れて行くのだった。


 その頃……盗掘者ガジェットの戦闘を監視してた観測班は戦闘の様子を全て記録して居た。

 「ガジェット全滅確認!! 対象は車両に乗って逃走を開始しました!! 方向は東に向かってます!」

 観測班はサーチャー越しに映る盗掘屋の男が移動してる方向を現場に急行してるフェイト・テスタロッサ執務官と彼女が率いる武装隊に念話通信で伝える。

 『他に生命反応は有りますか?』

 「いいえ、有りません……現場に残ってるのはガジェットの残骸だけです。尚、容疑者は質量兵器で武装してると思われます!」

 報告者はフェイト執務官へ簡潔に報告を述べる。

 『ありがとう……(質量兵器を使ってたからAMF圏内に入っててもガジェットを破壊出来たんだ……取り敢えず、ガジェットに襲われてた人が無事で良かった。けど、犯罪は見過ごせない!)』

 フェイト・テスタロッサ・ハラオウンは現場から逃亡した盗掘者を追跡する為に飛行速度を上げる事を伝えると、武装隊の面々は了解の意を表して同じ様に飛行速度を上げるのだった。

 砂漠の柔らかい砂をSUVに装着された太くて黒いタイヤが巻き上げ、船が海の水や波を掻き分けるかの様にSUVは地面に敷き詰められた砂を掻き分けて突き進んで行く。SUVのエンジンは空の上から照り付ける日光と日光で温められた空気、そして、エンジン自体が発生させる高熱によってエンジンブロック内部のシリンダーとピストンが悲鳴を挙げる。だが、盗掘者は、そんな悲鳴を気にする事無くSUVが限界を迎えようとして壊れる事よりも自分が管理局員に逮捕、送検され、刑務所に行くと言う事の方を恐れていた。
 やはり。と言うべきか……チラッと天井とフロントガラスに取り付けられたバックミラーに目を遣ると、管理局の制服を着た空戦魔導士がミラーに僅かに移ると同時に、拡声器で増幅された様な叫び声が聴こえて来た。

 『そこの車両!! 止まりなさい!!』

 『こちらは時空管理局です! 速やかに車を止めて、こちらの指示に従いなさい!! 繰り返します!! こちらは時空管理局です。速やかに車を止めて、こちらの指示に従いなさい!! 』

 「止まるか!! バーァアカ!!!」

 走る度に舞い上がる砂が、防塵対策してる筈のSUVのフィルターの目よりも細かい砂粒がエンジン内部、ラジエターにエアタンク等の重要なパーツに詰まりつつある。そんな車内で投降の呼び掛けに答えるかの様に彼は車内に響く叫び声を挙げると、シフトギアを操作して加速させる為に適した回転域のギアと噛み合わせたり、砂で出来た丘を登る為にシフトをダウンさせ、ギア比を上げて、加速スピードを域を下げる代わりにトルクを上昇させて力強い走りで管理局員から逃げようとするのだった。
 走る度に、フロントガラスのコーティングがサンドブラスターかグラインダーに掛けられたかの様にザーと言う感じに剥げて行くかと、思えば、ガラス本体を傷付けて行く。そんな状況もあってか、彼は視界を確保出来なくなってしまった……

 男は視界を確保する為に、右腰に装着したホルスターからブローニングを抜くと、それのセフティを解除し、撃鉄が起こして、正面のフロントガラスに向ける。そして、そのまま何度も引き金を引いた。
 引き金を引く度に車内に外の砂の如く乾いた様な銃声が響き渡り、ターバン越しの耳に入って来る。同時に燃え残った火薬カスが小さな炎となって砂で目詰まりしたクーラーによって汗だくの男を更に熱くして行く。それに熱せられた薬莢が車内を跳ね回って手に当たった時は熱さのあまり、ブローニングを落とす所であったのは愛嬌だ。
 そんな状態でも、運転を辞める事も無ければ、失敗する事も無いが、管理局員と言う追跡者達を引き離せると言う事だけ出来て無かった。足元に6発の空薬莢が散らばると同時に、砂の中に小石でも混じってたのか砂と共に巻き上がると、ガラスを砕いてしまった。
 破片は幸い、男に当たる事もタイヤに刺さる事も無かった……

 「頼むよ……気が向いたら出頭するかもしれないから、見逃してくれよ……」

 『そこの車両止まりなさい!! これは最後の警告です!! 停まらなければ、強制的に停車させます!!』

 「どっちにしろ、そんな簡単に停まれるかってんだ!! 此方はクソ砂漠のお陰で苛ついてんだ! ぶっ殺すぞ、管理局!!」

 横に並ぶ様に滑空する執務官であろう制服を着た空戦魔導士の女性を見ると、ウィンドウを開けて右手に握ったブローニングを女性執務官……フェイト・テスタロッサに向けると苛立ちと勝手な怒りを指に込めてるのか、乱暴に何度も引き金を引いて行く。
 だが、残ってた7発の9mm弾は奇跡的にトラブルを起こす事無く、執務官に向かって飛んで行く。しかし、銃弾は1発も彼女に当たる事は無かった。

 『抵抗を確認! これより攻撃を開始します!!』

 執務官とは分かれて飛んでた空戦魔導士達は、綺羅綺羅と光る円形や三角形と言った形の魔方陣を展開して行く。同時に魔方陣を中心に光る球体が幾つも集まって行く。それを一定の数になった時に管理局の魔導士は、男の乗るSUVに向けて発射しようとした。
 だが犯人の乗るSUVは、ボンネットから盛大に白煙や水蒸気をまき散らしたかと思えば、エンジンブロック中央からは独特の匂いを持つ燃えたディーゼルオイルの黒煙を巻き上げて突如、停まった……

 『車両を包囲して下さい……犯人は質量兵器で武装してます。一定の距離を取って待機でお願いします』

 「了解!」




 畜生!!
 こんな時にオーバーヒートとエンジンブローかよ!?
 こうなりゃ、仕方無い……あの鉄くずどもと同じ結末を向かえて貰うか……



 盗掘者は、後ろの座席に置いたレリック入りのバックパックを背負い、食料や医療道具の詰まったエマージェンシーパックを取って腰に装着する。助手席に置いたAK47とM79に弾が装填されてる事を確認すると、バッテリーが無事である事を確認する。
 無事だと知ると、ダッシュボードを開けて中に収められたボール紙に包まれ、白い粘土状の爆薬に刺さったコードに繋がった端末を操作する。

 時間は3分って所か……? 何せ、3kgの爆薬だし、逃げる時間が無かったら爆風か車の破片に巻き込まれるしな。

 盗掘屋は、爆薬の起爆タイマーを1分後にセットすると、そのままエンジンが大破したSUVから降りて芝居する準備に入った。

 ターバンの布地の隙間にある自身の顔に冷たくて心地良い風を受けると、口元に笑みを浮かべた。それから、砂漠の表面を風と砂で作られる紋様を眺めると、自分にとって最高の事が起きる前兆で有ると言う事に内心喜んだ。
 そして、嵌めていた砂塵と強烈な太陽光から目を保護するゴーグルを改めて着け直した。ゴーグルを嵌め直し、そのままグレネードパウチから4つのスモークグレネードの内、2つを出してピンを抜いて外に投げる。砂に沈む様に放られたスモークグレネードは砂に落ちたと同時に煙幕を勢いよくモクモクと吐き出して周囲を白濁色の煙幕で包み込んで行く。
 それから、男はAKを携えて、M79を脇に提げて脱出を試みるのだった。

 『!? 犯人が逃走しました!! …………』

 モクモクと焚かれる煙幕で犯人の姿が見えなくなると同時に、空から細かな金属片が細かな雪の様に降り注いで来る。念話通信が繋がらなくなった事にフェイトは焦りを感じながら、犯人を確保しようとソニックムーヴを使って高速域の速度で犯人が向かってであろう方向に先回りをしようとする。
 囲む様に上空を飛んでた魔導士達は、サーチャーが使えなくなると同時に、視界が確保出来無くなった事に驚きながらも徐々に近付いて行くが……
 数秒後には、突如、SUVが爆発を起こした。爆発は彼等の鼓膜を酷く痛め付け、同時に爆発の衝撃が球状に広がって彼等を叩き付けて地面に無理矢理引き摺り下ろした上に、彼等へ襲いかかる様にSUVの破片が空から降り注いで来る。

 そんな混乱の中、再び爆発が起こり、SUVとは違った破片がまき散らされてから、絶え間ない銃声が砂漠に響き渡り、彼等の手や脚、胴体を穿って行く。撃たれる度に彼等は何故、バリアジャケットを貫通して自分たちの身体が銃弾に喰い千切られてる事に疑問と恐怖を浮かべながら悲鳴を挙げる。そんな彼等が、苦悶の表情を浮かべ、血を流して砂漠に吸わせてる事に対して何の罪悪感を持つ事無く、砂を蹴って走り出した。

 妙に脆いな……実戦に慣れてないのか? まぁ、良い。
 これで4人無力化した。コイツ等を後方に搬送してくれれば、俺は逃げる余裕が出来るしな……

 10分ほど走っただろうか……自分がここに来る時に使った次元航行艦に直接戻れる転送ポイントの目印としてしてる使われなくなってから古い枯れ井戸が視界に映る。だが、そんな井戸の上空では白い執務官服を纏ったフェイト・テスタロッサが待ち構えて居た。
 そんな彼女を見た彼は、男はミネラルを補給する為に塩の錠剤や各種ビタミン剤を水無しでそのまま飲み込む。錠剤を飲み込んだ男はマントの中で左手を腰のベルトに装着した水筒カバーに伸ばす。カバーのボタンを外してから水筒を掴んでキャップを捻って開けた。そのまま水筒に口を付けて中の水を飲んで渇きを癒すと、未だ飲みたい衝動を堪えながら水筒のキャップを締めて、ベルトに戻した。

 「時空管理局のフェイト・テスタロッサです……武器を棄てて投降して下さい。今なら罪は軽くなります。」


 読まれてた訳か……
 さて、どうしたものかな? やっぱ、殺っちまうか。と、言いたいけど……
 向こうさん、相当ランク高いな……戦法は多分、一撃離脱の強襲って所か?
 デバイスは使える。AKに弾も残ってるし、M79の方も3発残ってる。さて、どうしたもんかな……

 「……セットアップ」

 バリアジャケットとデバイス展開のキーワードを呟く。すると、ゆったりとした砂漠地域の民族服の下にバリアジャケットが展開されて行く。民族服の下は地球の軍隊が装備する様なボディーアーマーが胴に、脚にはレガースと呼ばれる金属質の脚甲が装着される。腕には武骨なガントレットが装備されて居た。
 刹那にも満たない時間でセットアップされると同時に、彼はAKの引き金を引き、フェイトは自分の愛機である戦斧『バルディッシュ』 を振るい彼の目の前に現れ、斬り掛かって来る。
 いきなり、目の前に現れた事に驚きながらも、彼は熱せられたAK47の銃身を握って鈍器の様にバルディッシュを握るフェイトの手を狙ってスイングする。だが、それが空を打った事で大きな隙になると、彼女はそこへ空かさず魔力弾を形成して射出して来る。
 彼は避けきれずに全弾命中して砂の上に倒れる。だが、彼は何も無かったかの様に立ち上がると、雷タイプの魔力弾で灼かれて使えなくなったAK47を彼女に投げ付けると同時に、咄嗟に右腕で庇ったM79を彼女に向けて引き金を引いた。40mm口径の砲身から吐き出された卵の様な形の不細工な砲弾がゆったりと放物線を描いて飛んで行く。
 彼女はそれを魔力弾で撃ち落とすと、それは爆発した。それによって榴弾は爆発して砂を巻き上げて彼女の視界を一時的に奪うと、黒い魔力光と共にライフルと呼ばれる質量兵器以上の速度で飛んでくる魔力弾が、砂のカーテン越しにシャワーの様に彼女を包むみたいに彼女に襲い掛かって来る。そんな魔力弾による弾幕が収まると、フェイトの頭上に空高く浮遊する地球の兵士の様な姿になった盗掘屋が大きな魔力光を撃ち込んだ。
 それは、通常の砲撃魔法の様に持続する魔力の奔流では無く、フェイトに落ちてくると共に段々と小さくなって行くと言う謎の自体が起きた……
 そして、フェイトが難なく、避けて彼を追撃しようとソニックムーヴによる高速移動を行おうとした瞬間、彼は一気に急降下しながら先程の高速で飛来する魔力弾をA10攻撃機の如くバラ撒いて地面の形を変えて行く。だが、彼女はそれを何発か受けながらも、彼に魔力弾を撃ち反撃しようとする。だが、彼はフェイトに接触する直前に向きを変えて逃走を始めた。
 同時にフェイトを上から押し潰さんとする衝撃が彼女に襲い掛かって来た……

 盗掘者の彼が行ったのは、地球ではサーモバリック爆弾、または、燃料気化爆弾とも呼ばれる衝撃波を上から叩き付けて敵を殺傷、兵器を破壊する一種の砲撃魔法である。
 巨大な魔力球が落ちて行く度に、それを構成する魔力素が空気中に撒き散らされて行き、空気と混じり合って行き、一定時間後、爆発によって発生する衝撃波によって一定範囲内に対称を押し潰してしまうと言う強力な攻撃であった。

 そんな攻撃を行った張本人は、枯れ井戸の中に入ると、同時に井戸を魔力弾で破壊して誰も通れない様にしてから暗闇の中を滑空し、軌道上で待機してる船へ戻る為の転送陣をセットしたポイントまで飛んで行くのだった。



何も言うまい


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リリカルなのは オリヌシモノ 盗掘屋2

 先日、砂漠で遺跡を盗掘し、ガジェットと呼ばれる無人兵器を壊し、管理局の武装隊から逃げる事に成功した若い男……カール・ジョーンズは盗掘(強奪でも可) した第一級捜索指定ロストロギア『レリック』 と、時空管理局に名付けられた高濃縮エネルギー結晶体を収めたケースを自分が所有、運用する小型で旧式な次元航行艦『ルサルカ』 のリビング兼ダイニングルームに置かれたテーブルの上に置くと、アルミカップに注いだ湯気が立ち昇るインスタントコーヒーを飲みながら、紙巻き煙草を吸って居た。

 「やっぱり、レリックに関した文献は存在しないわよ……」

 彼がコーヒーの入ったカップをレリックが収められたケースの前に置き、煙草の紫煙を肺に満たして全身を血管を通して巡るニコチンとタールによる酩酊感を味わい、生きてる実感を確認してると、若い女性の声が聞こえて来る。

 「そりゃあ、管理局や大学には無いだろうなぁ……」

 カールは聞かずとも、既に解ってた様な様子でボヤくと、彼女はそれを問う。

 「どう言う事?」

 「コレ、見てみろよ……ルサルカ」

 彼はデバイスに収めてた画像データを彼女に送る。すると、黒い軍服を模した服を着た赤い髪の少女の立体画像が現れ、手近な箇所にカールが送った画像データを映し出した。
 再生された画像データは、上部に『リサイクル・ソルジャー計画』 と題名が書かれた研究所の職員が書いたであろう企画書であった。
 ルサルカはそれを目を凝らして読んで行く。そして、数分後にはそのデータを消して頭を抱え始め、悶絶する。同時にコレが管理局のデータベースや大学の研究論文に乗らない事も理解したのだった。

 「何よコレ!? これを考えた奴、頭がイカレてるんじゃないの?」

 「人間はリンカーコアの有無に関わらず、主要な内臓器官と全身の筋肉を生体電気パルスによる信号で動かしてく。乱暴だろうが、それを動かす電気エネルギーと筋肉や皮膚、内臓機能を可動させる為にリンカーコアに高濃縮エネルギー結晶体を直接的に接続してそれをエネルギー源として使い潰す……手や足を失ったら機械で補う。理論上、原型を留めた兵士の死体も利用する事が可能」

 「まさにリサイクル兵士って訳ね……戦争中に考えたのかしら? この研究者は」

 「知らね。あーあ……折角、古代ムハンマドの遺物が手に入ると思ったらこんな物騒なブツだったって何だよ!? ヤバ過ぎて金にならねえよ……畜生!!」

 カールはレリックの詰まったケースを蹴り飛ばし、騒々しい物音と共に床に転がったケースに目も繰れず、短くなった煙草を銜えたままソファーに寝そべった。そんな様子にルサルカは笑みを浮かべた表情で、カールを茶化して行く。

 「息巻いて仕事したら、ガジェットと管理局に帰りを邪魔されて、執務官にはAK47を駄目にされた上に、アンタは腹部で破裂した榴弾を含めた弾薬が弾けて肋骨折ってるのにね、ご愁傷さまね」

 「ウルセエ! このポンコツ!!」

 カールは枕代わりにしてたクッションをルサルカに投げ付けると不貞寝を始めるのだった。良く見ると、カールが着てるシャツの下からは包帯が覘いており、包帯は腹部から胸部に掛けて隙間無く巻かれてる。
 実は執務官との戦闘で雷系統の射出魔法を腹部に受けた時、残ったAK47の予備マガジンが2つあり、それが電気が持つ性質の熱によって弾倉内部に詰め込まれた弾に封入されてる無縁火薬や雷管に作用して弾け飛んだのだった。幸い、ボディアーマーを着込んでた上に、バリアジャケットによって重傷にはならなかったが、衝撃で肋骨が数本折れてしまった……
 その為、彼は呼吸する度に鈍い痛みに襲われてるのだ。しかし、当の本人は、そんな痛みを無視して煙草と言う健康に物凄く有害で、死期を早める悪魔を味わってたのだった。

 煙草がフィルター近くまで燃えてる事に気付いたカールは、煙草をテーブルに放置されたビールの空き缶に突っ込むと、そのまま目を瞑って完全に眠る態勢に入った。


 彼が眠って数時間が経っただろうか……
 船に搭載してる『ルサルカ』 と、呼ばれる少女の姿をしたAIにして動力源とは別の艦の中枢を形成するサーバーに一件のメールが送られて来る。彼女は、メールを精査し、ウィルスが無い事や発信地の特定を行う。
 ウィルスは無く、メールは文章だけと言う簡素な物であったが、発信地は様々な管理世界の通信施設をアトランダムに転々としてる状態であったので特定する事は出来なかった。
 そんなメールを怪しみながらも、ルサルカは、そのメールを一通り読んでからカールのデバイスに並列化による自分の分身を送って彼宛に送られた文書を送る。同時に、デバイス内臓のスピーカーで出せる音量レベルを最大にしてから、叫び声を挙げた。

 「起きろー!! 管理局の手入れだぁぁ!!」

 「何だと!?」

 カールがガバッと勢いよく起きた瞬間、ルサルカは笑い声を上げてカールの慌てぶりをデバイスのセンサー越しに観測して居た。ルサルカの笑い声で、悪戯だと気付いた瞬間……
 カールは起き上がったと、同時に腰のホルスターから抜いて、右手に握ったブローニングハイパワーMk3の銃口をデバイスに向けた。ブローニングのセフティは解除されており、薬室に9mm弾は装填済みで、撃鉄は起きてる。

 「何か、嫌な事ばっかりでムシャクシャするんだ……お前のサーバーを的にしてプリンキングってのはどうだ?」

 「冗談じゃないのー、本気にしないでよ? それより、メールが来てるわよ……」

 「差出人は? 解らないとか抜かしたら、テルミットで焼いてやる」

 彼はデバイスに送られたメールを空間に投影し、内容を読んで行く。

 「あの厄介なブツを買い取ってくれるって話みたいよ……」

 「そんなのは、読んで解ったわ。昨日の今日で、俺が遺跡から手に入れた事を知ってるのは俺とお前しか居ない筈だ……これは?」

 カールは送られて来たメールに対して頭を抱え始めた。
 何故ならば、自分があの遺跡に盗掘した事は誰も知らない筈なのだ……
 それなのに、このメールの送り主であるJSと名乗る人物はピンポイントで送って来た。しかも、メールアドレスは定期的に変更して傍受されない様にしてるのにだ。
 カールは頭の中に保存されてるであろう『J・S』 と言う名前を脳内の検索エンジンを稼働させて探して行く。
 数分後……
 彼は記憶の中に『J・S』 なる人物が居ない事を知り、溜め息を吐く。ポケットから煙草が詰まった箱を出して1本抜き取って咥えると、火を点して紫煙を燻らせる。吐き出された煙は、天井へと立ち昇って溜まって行く。そんな状態にルサルカは、室内の換気装置を稼働させた。

 「どうするの?」

 「呪いのブツを引き取ってくれるなら大歓迎だ。と、言いたいけど胡散臭すぎる……」
「けど、金の方が大事だから売ると伝えろ。取引場所は此方から指定すると返信してくれ」

 「解ったわ……でも、管理局の罠だったらどうするの?」

 「そりゃ、逃げるに決まってんじゃないか。」


 数日後、第97管理外世界『地球』 南アジア方面に位置する国パキスタン・イスラム共和国。

 現在、この国では、アルカイダと呼ばれるイスラム原理主義と反米、反シオニズム(イスラエル国家による、パレスチナへのユダヤ人入植によるイスラム世界への侵食に対して反対する主義) を唱える組織の指導者であるオサマ・ビィン・ラーディンがアメリカ軍所属の特殊部隊によって射殺された事によってアルカイダと有効的で、パキスタン政府が数十年前に作り上げたとも言われる組織『タリバーン』 等の勢力が政府に対して武力闘争を繰り広げてる。
 なので、このカールが指定した街『クエッタ』 を始め、首都のイスラマ・バードと言った大都市では、車に爆薬を仕掛けて爆破させる爆弾テロが政府関係者や米国関係者を標的にして行われて来てるのだった。

 まぁ、他にも隣国のインドとは水資源と領土を巡って局所的な紛争も起きてたりするし、アフガニスタンと隣接してる地域ではアフガン産の麻薬『アヘン』 や『ヘロイン』 の密輸が多く、麻薬患者の数も鰻上りだと言われてる。これは、観光客も含めてである。
 そんな物騒な街でも、逞しくも外から訪れる客人を手厚く持て成す優しい人々とそれのお世話になってる観光客やバックパッカーで賑わう脇では、荷台に鉄板と重機関銃を装備したパキスタン軍のテクニカル仕様のピックアップトラックが巡回パトロールをしていた。他にも交通整理や麻薬を道端で売る売人を小突いて小金を巻き上げる警官、ライセンス生産したG3バトルライフルやRPG7対戦車ロケット砲等を持ったパキスタン陸軍兵士が彷徨いてるのは愛嬌だ。
 そんな物騒な取り引き場所に指定したカールは、地元で生活するパシュトゥーン人を中心に、バローチ人や当時のロシア軍によるアフガニスタン侵攻や今の政情と治安が不安定な故郷、アフガニスタンから避難して来たハザラ人で形成されたクエッタのバザール……の郊外でアフガニスタン国境に比較的近くて通ずる幹線道路の近くに建てられた廃材と干し煉瓦で作られた様な店で、彼は煙草を吸いながらチャイが淹れられるのを待って居た。

 「お兄さん、この写真買わない?」

 「コレって要らねえよ……それより、煙草は売ってないのか?」

 カールは咥え煙草のまま、物売りの10代にも満たないであろう日の光で褐色に肌が焼けた小さな子供に煙草は無いのか質問する。すると、子供は薄いプラスチックの籠をゴソゴソと弄り、カールが求めた煙草の紙箱を出した。

 「コレで良い?」

 「おー……ラッキーストライクじゃん。これ一つくれや」

 「毎度アリ」

 カールはルピー紙幣を子供に渡すと、子供はそれを受け取ってからその場を離れた。流暢なウルドゥー語で話してから吸ってる間に短くなった煙草を地面に落として靴で踏み消すと、チャイが入ったのか、ヒゲを蓄えた逞しい身体つきな店のオヤジが湯気の立つチャイの注がれたカップを置いた。同時に、さっきまでは無かった筈の、ペプシの空き缶で作ったであろう青いアルミ製の灰皿が置かれていた事に気がつかなかったカールは、店のオヤジに驚きながらも買ったばかりのラッキーストライクのフィルムと銀紙を破き、叩くように1本抜き取って咥えた。
 ジーンズのポケットから、オイルライターを取り出して煙草に火を点すと、彼は呑気に紫煙を燻らせ、チャイを一口飲んだ。
 チャイに含まれる茶葉やシナモンと言った香辛料の香りと煙草の臭いの組み合わせを楽しんでると、彼の前に1人の男が座り込んで来る。
 男は痩せ型で、室内での作業が中心であまり外に出ないのであろうか、肌が色白で生気が乏しかった。そんな彼に、カールはチャイを追加で注文した。

 「この店で合ってるかな? 管理外世界の言葉には疎くてね……」

 「さぁな……アンタがJ・Sで間違いないか?」

 カールはさっきまで使ってたウルドゥー語からミッドチルダを始とした管理世界の公用語に切り替えると、目の前の男と取り引きを始めたのだった。

 「ああ、そうだ。君の方こそカール・ジョーンズで間違い無いかな?」

 「かもな……さて、お互い自己紹介が済んだ所で早速、金を見せて貰いたい。後、ガジェットの展開と魔法の使用は辞めておいた方が良い……」

 カールは煙草を灰が積もったままで灰皿に置いてチャイを一口飲み、目の前に居る日除けのサングラスと帽子を被った細身の男に金は持って来たかと質問する。同時に、魔法を使えば途轍もなくややこしい自体が起きると言う事を暗に示唆して牽制する。

 魔法を管理外世界で使えば、管理局の本局……海と呼ばれる連中のセンサーに反応する。それに多くの人、特にほど良く緊張感が高くて軍隊関係者がうろついた街で行う事は自殺行為だ。しかも、情報工学が程よく進み、自分が見たモノをインターネット……電脳世界を通じて全世界に放送できる事が個人で可能ならば尚更だ。

 そんな彼の言葉に謎の男『J・S』 は嫌な笑いを浮かべる。

 「君は、私が取り引きを御破算にして強奪する。と、でも言うのかい?」

 何を馬鹿な……と、言う男に対してカールは表情を変える事無くチャイを半分程飲む。そんな所に店のオヤジが『J・S』 の前にチャイの注がれたカップを置いて話をなるべく聞かない様にそそくさと離れ、店の奥に引っ込んで行く。
 そんなオヤジを見る事無く、『J・S』 はチャイを一口飲んだ。

 「意外と美味い紅茶だね……後で店の主から淹れ方を教えて貰うかな」

 『既に作り方は調べて置きましたDr…… それと、彼の艦にはレリックは発見出来ませんでした』

 念話通信で自分の秘書にして作品でもある戦闘機人『ウーノ』 からの通信でレリックの確保失敗の報告を聞くも、表情を変える事無く目の前の『取るに当たらない盗掘屋』 が所持してる事を予想しながら、チャイの香りを楽しみ、程よい甘さとシナモンとの調和を楽しむのだった。

 「『そうか……ご苦労、ウーノ。と、言う事はレリックを始とした件の品物は彼が持ってると言う事かな……』」

 『J・S』 が念話通信してる間、カールも同じ様に通信を開いてた。無論、相手はルサルカで、内容は泥棒に入られてると言う事であった。そんな内容を聞くも、目の前の男と同じ様に表情を変える事無く、ラッキーストライクを吸う。

 『どうするの? 私はタダのAIだから何にも出来ないわよ……あ、カールの本が破けた』

 「『何だと、ザケやがって……その様子、撮影しておけ。後で管理局に流す』」

 ルサルカに撮影を念話で頼んでから、彼は『J・S』 に話し掛ける。事はせずに席を立とうとする。

 「何処へ行くのかね?」

 少しばかり慌てた『J・S』 に対してカールは短くなった煙草で新たに咥えた煙草に火を点してから、地面に捨てて答えた。

 「最初から支払う気の無い奴に商品を売る気は無い……見た感じ、アンタは金を持って無さそうだしな」

 カールはにべも無く行ってから踵を返して完全に去ろうとする。だが、数歩歩いただけで、彼は急に足を止めた。
 そんな様子を満足げに見た『J・S』 は背を向けてる彼に話し掛ける。

 「どうしたのかね? 席について取り引きを再開するのかな?」

 「よく言うぜ、後ろから透明な状態で魔力刃突き付けやがって……気配丸分かりだっての。しかも、アクティブソナー(音響センサー) の反響具合から言って女だ。しかも、胸がそれなりに大きい」

 「無駄口叩いたら、このまま処理しますわよ? 」

 カールが胸が大きいと、言った途端、彼の首に刃が強く押し付けられ、耳元に吐息を感じながら透明な胸の大きい女性の声を聞く。そんな状況でも、カールは気が付かれない様に日差し避けのゆったりとしたジャケットの胸ポケットに仕込んだペン型の銃を、煙草の箱を仕舞うかの如く見せ掛けて抜いた。そして、それを何時でも撃てる様に撃鉄となる金属突起に指を掛けた状態で席に座った。

 「君のデバイスの性能にも驚いたよ……後で拝見させて貰っても良いかな?」

 「金をキッチリ払えばな……で、支払うのか? 支払わないのか?」

 「君が品物を持ってるならば、支払うよ……だが、今の君は品物を持ってない。それでは私も君の提示する金額を支払う気にはなれないよ」

 「それもそうだ……おい、巨乳女とミスター。場所を変えるぞ……冷房が効いた高級ホテルなら邪魔も入らないだろう」

 彼等は、徒歩でカールが案内するホテルへ向かうのだった。
 取り引きは未だ始まったばかりである……

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オリジナル スナイパー娘

オリジナルの第二次大戦くらいの技術レベルの地球とは異なる魔法も存在する世界。
イメージ的には戦ヴァルみたいな感じ。魔力存在する




 その国では戦争が起きていた。幾つもの小国を呑み込み領土を拡げる帝国とその帝国からの併合を良しとしない小国を叩き潰す為、帝国は周辺諸国に軍を配置し、包囲していたのであった。
 そんな幾つも戦線に別れた中、山岳地域が目立つ東部戦線では一人の少女が兵士達に混じって戦って居た……





 帝国軍の砲撃によって廃墟と化した町の入口では、帝国から独立と平和を護る為に小国の軍が塹壕が掘って戦線を構築していた。

 「帝国の連中、諦めたりはしねぇのかね……」

 機関銃座で若い兵士が煙草を吸うと、ボヤいてしまう。戦いが長く続いたせいか、疲れが見て取れる。特に軍服が汚れ、ヨレヨレの皺だらけになってるせいで余計、そう見えた。

 「しないな。してるんだったら、戦争は起きやしねぇよ……」

 一回り年上の無精髭を生やした兵士は若い兵士が吸ってた煙草を受け取ると、旨そうに吸い、隣の兵士へと渡す。兵士が受け取ろうとすると、銃声が木霊した。

 「何だ!?」

 配属されて1日しか経ってない補充兵であろう綺麗な軍服姿の青年が驚きの声を挙げる。が、ヨレヨレの皺だらけ、汚れまみれの軍服を纏う戦い慣れた兵士達は気にした風でも無く言った。

 「気にすんなよ、ウチの子が敵を撃ち殺した音だ……」

 「おー、スゲェぞ600m先の奴を撃ち殺したみてぇだ……」

 機関銃座から頭を出し、双眼鏡で撃たれた相手を見た兵士が答える。

 「だ、誰が撃ったんですか?」

 再び、銃声が響く。

 「何だ、知らないのか? 帝国から"臆病者"とか"見えない悪魔"とかって呼ばれてる……」

 軍曹の階級を着けた男は、一際目立つ崩れ掛けた鐘楼を指して答える。

 「ウチの部隊の守護天使をよ……」




 未だ白い光が見える。偵察班なのかな?

 鐘楼では、独りの少女が横たわって居た。自分のボルトアクション式のライフルに頬を床尾へと着け、そのまま小さな金属で作られた照門を覗き込んで構える。
 少女が見据える先は、仄かに白く光るモノであった。
 ボヤけて見えて居た銃口の上部に立つ照星がクッキリと見えて来る。
 少女は引き金を引いた。ターンと言う乾いた銃声が鐘の代わりに音を響かせ、人の命を奪った。
 ボルトを引いて硝煙が立ち上る薬莢を吐き出させると、脇に置いていたクリップで纏められた5発のライフル弾を押し込み、ボルトを押して閉じた。

 「よう、交代だ」

 急に声が掛けられる。ビックリしながらも声の主を見ると、仲間の兵士であった。

 「脅かさないでよ……」

 少女は銃身と床尾を切り落とした狩猟用の散弾銃を下ろすと、ホッと一息吐いた。兵士は謝ると、少女と場所を入れ替わる様に横たわった。

 自分のライフルを背負い、少女は梯子を静かに下りて行くのであった。




 鐘楼から下り、指揮所となってる天幕へと歩いて行く。中に入ると、ここの指揮官である大尉である初老の男が民間人らしき若い男と話をして居た。

 ブンヤ(新聞記者)? こんな所に来るなんて物好きね……

 小綺麗な格好で、カメラを首から提げる男を見ると、大尉が気付いたのか、少女の方を見た。

 「ティアナ、さっきの銃声はやはり、お前か……」

 「はい、敵の偵察隊らしき動きが有ったので射殺しました」

 「その様だな……確認に行かせた部隊から、お前が狩った奴等が偵察隊と解った。こりゃ、近い内に攻撃が来ると思って良いな」

 大尉は民間人の、新聞記者を前にしながらもボヤく。ここ数日、この地の帝国軍は攻めあぐねて居た。だからこそ、無数に広がる前線の1つで、最も帝国軍と近いこの地を突破して進軍の足掛かりとしたかった。そう、大尉は考えた。

 「大尉、何も無ければ失礼しても宜しいでしょうか?」

 大尉からティアナと呼ばれた少女は、面倒臭そうに聞く。

 「あー、済まないな一等兵……ゆっくり、休め」

 「それでは失礼します大尉」

 ティアナが敬礼すると、大尉は簡単に答礼した。天幕を出ると、後ろから足音が近付いて来る。

 「ねぇ、君ってもしかしてティアナ・カーネスト一等兵かい? 帝国から悪魔って呼ばれて、賞金も掛けられてる……」

 呼び止めて来たのは、新聞記者だった。ティアナは面倒臭そうにしながら、無視をした。ティアナは悪魔と呼ばれるのが嫌いであった。同時に守護天使と呼ばれるのもだ……

 「頼むよ、君を取材させてくれないかな!」

 ティアナはそんな新聞記者にウンザリしながらも、自分のライフルを分解し始めた。

 やっぱり、汚れてる。皸や変な傷や深いのは無い……

 分解したライフルの部品を並べ、手に取って眺めて行き、異常が無いのを確認するとティアナは慣れた手付きで部品を専用のオイルに濡らしたウェスで府議上げて行く。
 銃身の中を覗き、日の光で中を見ると、銃口の先で目が合った。

 「ねぇ、少しで良いから話をしてくれないかな?」

 覗き込んで来たのは、新聞記者であった。怪訝そうにするティアナをカメラに収めると、ニンマリと笑って告げる。

 「私なんか取材したってつまらないわよ……」

 ウンザリする様に言うと、銃身の中にオイルを流し込む。それから、先に布の切れ端を付けた細い棒で何度も銃身の中を往復させ、磨いて行く。

 「それでも構わないよ。質問するから答えてくれ……君が入隊した切っ掛けは?」

 「孤児院に居たら、徴兵された。魔力が有るかなんかで……」

 「へぇ、君は魔兵の様に魔法が使えるのかい?」

 好奇心に満ちた目で、新聞記者が聴いてくる。ティアナは銃身を磨き終えると、ライフルを組み立てながら答えた。

 「使えない。ただ、"視える"だけよ……人の命がね」

 「そうなんだ……所でさ、君はウェルス人の様だけどさ、この国で迫害された民族の君が、この国の為に闘う事はどう思う?」

 新聞記者は少数民族で、迫害された歴史の有るウェルス人特有の青い髪を見てティアナがその民族であると気付いた。だからこそ、そんな少女が兵士として国の為に闘う事に興味が沸いていた。

 「そんなのは知らない。ただ、死にたくないから戦ってるだけ……」

 それはティアナの本心であった。両親を喪い、独りボッチになって孤児院に収用され、戦争が起きた。その1年後には、戦況が悪化の一途を辿った事でティアナの様に魔力が有る子供も国は徴兵したのであった。

 「そうか、参考になったよ。此れは取材受けてくれたお礼だ……」

 新聞記者はそう言うと、ティアナに包みに収まったチョコレートを渡し、その場を後にした。

 このチョコレート……

 ティアナにとって新聞記者がくれたチョコレートは思い出深かった。父親がよく食べてて、自分にもくれた銘柄故に……
 包みを空けて一片だけ割ると、それを口に運んだ。

 甘い。パパの味だ……

 父親がクセルス人であったからか、母親がウェルス人であっても比較的恵まれた環境にあったからこそ、チョコレートの味を知っていた。が、両親を疎ましく思って居た民族主義者に両親を殺された事も思い出すと、ティアナはチョコレートを吐き出してしまった。

 「ゲホッゲホッ!? ハァハァ……」

 ティアナはソレを忘れる為、ポケットに残ってた煙草を手にすると、口に挟み火を点した。
 最初の一口目を吐き出してから、深々と吸って肺を満たすと、一気に吐き出して紫煙を燻らせるのであった……



民族の迫害や魔法が無いとか差別酷い世界。主人公の女の子はハーフと言うこともあり、どっちにも居場所が無い。
魔力適正ある、劣等人種の血を引いてる。なら、死んで祖国の役に立てと戦場へ投げ込まれた。皮肉にも戦場は両親が死んでからの人生で最も恵まれてたと言う最低な心境。


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デストロ246見た時に浮かんだネタ

1人の少女が居ました。その少女が産まれた国では、民族的な理由や宗教的な理由等の理由から独立を願う人々が居ました。
 少女が5歳に成る頃には、独立派の人々の不満が限界に達し、とうとう戦争が始まりました。少女の父親は政府軍の兵士として従軍し、彼女は母親と共に戦火に包まれようとしてる街から脱出を試みようとしましたが、途中で独立派の勢力に見付かってしまい連行される事になりました。
 そして……少女と母親は同じ街に住む人々が集められた森の中では、独立派の兵士達は携えたライフルから無数の銃弾を浴びせる作業を行った。少女の胴や脚、腕等が抉れ、周りに居た人々も銃弾で肉を抉られて死に絶えた。その後、少女を初めとした街の人々は独立派の兵士達の手で森に埋められて逝きました。
 当時、彼女の祖国では民族紛争が激しくなっており、虐殺と強姦と言った方法で民族浄化呼ばれる行為が横行してたのでした……
 数時間後、少女は土の中から這い出ると、母親の姿を探し続ける。自分や街の人々の血と泥に塗れながら独立派の兵士が埋めた母親を見付けますが、母親は既に息絶えておりました。
 森の中に少女の鳴き声が響きました。戦争の悲しさに泣くかの様に。
 一通り泣いた少女は、森の中をフラフラと歩き出し始めます……このままじっとしてたら死んでしまうと、少女は本能的に理解したからです。
 しかし……少女は数百m歩いた時点で地面に崩れ落ちてしまいました。この後、少女を見た者は居ないそうです。




 10年後、フランス南部マルセイユの高級住宅地。

 「Mr.サエキ。アンタも物好きだね……そのガキに100万ドルも支払うなんて」
 コルシカ系の実業家……裏の顔はフランス国内最大の人身と麻薬を売買するマフィアのトップは前の席に居る日本人が購入した”商品”を見ながら下品に言う。そして、葉巻を深々と吸うと、煙の塊を客にぶつけた。
 「私が何を買おうと構わないでしょう。Mr.ベナール」
 冴木はベナールが吹き付けた紫煙を気にせずにフランス語で素っ気なく返すと、後ろに控えてる”商品”に日本語で話し掛ける。
 「君は日本語、喋れるか?」
 「はい。喋れます冴木様」
 後ろに控えて居た”商品”であるフレンチメイドの姿をした金髪の少女はうやうやしく頭を下げると日本語で返事をする。東欧訛りのある日本語だったが、冴木から見ると問題無いものであった。
 「なら良かった……」
 冴木は商品が日本語を使える事に喜んでると、ベナールが”商品”の説明をする。
 「そのガキはセックスは出来ないが、それでも良いのか?」 (”言葉”を言ったら飼い主以外を殺す狂犬に変わっちまうんだ。教える気にはなれないな)
 「構わない。私は妻に操を立ててるんでね……」
 腹黒いベナールから確認を受ける冴木はコーヒーを飲んでから言う。彼の指には結婚指輪が煌めいていた。
 マイルドセブンを銜えると、後ろに控えていたメイドが丁寧な手つきでライターを点火し、炎を近付ける。冴木が煙草に火を着けると静かに後ろへ下がり、そのまま控えた。
 メイドが静かに控えてると、冴木は彼女に質問をする。
 「この中に居る人間を片付けるのにどれくらい掛かる?」
 「10分程です」
 メイドは表情を変えずに日本語で返す。だが日本語が解らないベナールは怒鳴り声を挙げる。 
 「日本語で話すんじゃねえ!!」
 そんな裏社会の大物の怒りを気にした様子も無く冴木は買ったばかりの商品を使う事にした。
 「宜しい殲滅しろ! マリーア・コルサコフ」

 名前が出た途端、メイド姿の少女は動いた。

 太ももに巻き付けたホルスターからグロック17と投げナイフ数本を携えて疾走する。疾走する時、彼女のスカートが翻り太ももが露出する。
 彼女は笑みを浮かべて元雇い主のマフィア頭目の頭に銃を向けて引き金を引き絞った。細い指から僅かな力で引き金を引くと、9mmの銃弾が頭目の頭を穿ち革張りのソファを赤く染める。
 たった今、少女は狂犬へと変貌する。そして、べナールのボディーガードへナイフを投げ、首や胴に突き刺した。
 2人のボディーガードの死体からG36Cと呼ばれるドイツ製のライフルカービンを拾い上げると、部屋の入口へ群がって来たマフィア構成員へ向けて引き金を引く。絶え間無い銃声と共に吐き出される高速弾は1人1人切り裂いて行き命を奪っていった。

 (良い買い物したな……)
 彼女を買った冴木は暢気にマイルドセブンを吹かしながら殺戮を眺めて居た。
 たった1人の少女に為す術も無く屈強なマフィアの男達が死体に変わって行く様は圧巻だった。
 街では強大な力を持った組織のトップが目の前で死ぬ様を見た時、彼は何が起きたのか分からなかった……
 少女は自分の下した命令を実行してるに過ぎない。この惨状を創り出した事に罪悪感は無かった。
 何故なら、今は亡き妻を殺した連中と今、死んで逝く者達は同じだからだ。
 自分は安全な処から命令を下して人殺しをすると決めた時に罪悪感や後悔はしないと決めた……それが原因で逮捕されるか殺されるかしてもそれは自分で決めた事なのだから。

 マイルドセブンがフィルターの根元まで燃えた頃には銃声と悲鳴が聞こえなくなっていた。

 「終わりましたご主人様」
 自分の手に入れた犬が命令通りに殺戮を終えて帰って来る。
 彼女のメイド服は血で赤く染まっていた。顔にも帰り血が飛びっ散っていた。だが、少女はそんな状態でも気にせず未だ硝煙が立ち上り熱を帯びた銃を携えたまま笑顔で頭を下げてお辞儀をするのだった。



よんだまんま……デストロの最初。
翠ちゃん、藍ちゃんが超ストライクゾーンだったのでオマージュもといパクった話。

このあと、飼い主様の命令で裏稼業人狩りする事に……

アサルトカービン、対物ライフル、爆薬にロケット、マシンピストル、ナイフに鉈、何でも無節操に使うおんにゃのこ

出自はバルカン半島の戦災孤児。ロクデナシに拾われ、金持ち向けペットとして調教された結果……人喰いワン娘に


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傭兵モノ オリジナル1

リアル系傭兵モノ書いてみたくて書いた奴



 コロンビア人の青年……ガルシア・ファン・ラバルはアフリカのとある小国で、反政府軍の傭兵として内戦に参加して居た。
 この国は東西冷戦で、当時のアメリカとソビエト連邦……今のロシアと言った大国間の資源や政治的思想と言った思惑で代理戦争の舞台ともなっていた。
 しかし、冷戦が終わってからも争いが絶えず、一人の権力者が政権を獲ったかと思えば、それを良しとしない多数がソレに反対して反対勢力と化す。
 時には、民族紛争へと発展する。と、言った内戦が2000年代に入ってからも続けられていた。
 ガルシアはそんな戦場の反政府軍の支配区域の密林を走る古いトラックの荷台で煙草を吸い、作戦区域へと向かって居た。

 「ガル……俺にも煙草貰えるか?」

 緊張感が充たされる荷台の中、ガルシアに声を掛けて来たのはチェン・デグラーク。と、言う自分よりも歳上の南アフリカ人の傭兵であった。

 「ほらよ……」

 ガルシアは自分の吸ってる煙草をチェンに渡した。それから、自分の銃でソ連から供給されて来たと思われるAKMの弾倉を外すや、点検を始める。

 「ありがとよ……」

 デグラークが満足感を露に紫煙を燻らせると、20人もの雑多な兵士が詰め込まれる荷台に煙草の臭いが蔓延する。
 荷台に詰め込まれた兵士の中には、ガルシアとチェンの様に煙草を吸う者も居れば、乗り込む前に徹底的に点検した自分の銃を何度も点検したり、他の兵士と他愛も無い話をして緊張感を紛らせる者も居る。中には、緊張感の余り沈黙を保ち続ける者も居た。
 ガルシアがAKMや装具の点検を終わらせると、チェンが吸うガルシアの煙草は半分近く迄燃え、荷台に灰が落ちていた。

 「あ……なぁ、もう少し」

 そんな煙草を横から取ったガルシアにチェンが物欲しげに見詰めて来るが、ガルシアはソレを気にする事無く、自分の煙草を吸う。暫くして、煙草がフィルターの根元近く迄燃えると、下に落とした。
 そして、ソレをコンバットブーツで踏み潰すとガルシアは、そのまま目を閉じ、トラックに揺られながら眠りに着くのであった。




 トラックが止まる。ガクンとリーフが撓み、大きく揺れた所でガルシアは目を覚ました。それから程無くして、バタンバタンとドアが閉まる音がトラックの幌越しに聞こえて来る。
 足音がトラックの後ろで止まると、後板が開けられてダランと下げられた。すると、後部に近い者達は各々の銃と装具を携えてトラックから降車し始める。

 「さて、この後は山歩きか……嫌んなるぜ」

 チェンはそうボヤくと、バックパックを背負い、RPG7と呼ばれる対戦車ロケット砲を肩に担いだ。その隣に居たガルシアも同様に自分のAKMとバックパックを携えて降車した。
 トラックから降りると、外では反政府軍の兵士達が周囲で膝立ちし、銃を外周に向けて緊張感を露に警戒して居る。
 何時、敵に襲撃されて死ぬかも知れない言い様の無い緊張感の中、傭兵達は一列縦隊で並んで順番に木々が生い茂る山の中へと足を踏み入れるのであった。
 彼等は任務の為に国境を超え、山岳地域を進んで敵支配区域後方へと目指して居た。
 彼等の任務は、数十㎞の道なき道程を進み、敵の補給部隊が通る場所へと先回りしての待ち伏せ攻撃であった。それによって、雇い主を初め、自分達に向けられる銃や弾を台無しにすると言うのが司令部の目的なのだ。

 彼等は周辺に銃を手に周辺に目を光らせながらも、前を歩く戦友の後に続いて歩いて行く。足音をなるべく立てず、枝や地面から出る木の根を踏まない様に慎重に歩みを進める。暑い陽射しは密林の深い木々が遮ってくれ、標高があるお陰で然程暑くは無く、寧ろ、涼しいくらいであった。
 険しい山道をどれくらい進んだのだろうか……
 幾ら風が涼しいとは言っても、自動小銃を抱え、背中には着替えや食糧等の荷物がタップリ詰まったバックパックを背負って休み無く歩き続ければ疲労は溜まるし、足に鈍い痛みが起こる事もある。
 何れくらい歩いたのか、ガルシアは右の手首に着けた時計に目をやった。

 今は1623だから……3時間歩いたって事は、国境越えたな……

 3時間程進んだ事が解った時、ガルシアの前の兵士が握り拳を作り、手の甲を後ろへ向ける様に挙げて来た。
 自分から3mか4m先を進む兵士がソレをしたのを見ると、ガルシアも前の兵士と同様に拳を挙げる。
 そうして、ガルシアを含めた兵士達の行軍する脚は止まった。




 「10分間小休止。各自、周辺警戒を怠るな」

 アレから30分ぐらいすると、指揮官であるフランス陸軍に居たと言う中年の男の判断で、10分程の休息が取られる事となった。
 兵士達が荷物を下ろす中、ガルシアは周辺を見回すと、皆と同様にバックパックを肩から下ろし、地面へと置いた。ガルシアを含め、大半の兵士もとい傭兵達は自分の手元から銃を手放す事はしない。
 だが、ガルシアの目の前に居る東洋人の男は違った。

 コイツ……日本人か……?

 ガルシアは銃口を上にする様に手近にあった木に立て掛ける様に置くのを見ると、彼は日本人なのか?
 そんな仮定が浮かんでしまった。

 自衛隊ってのは、基本的に銃に弾は込めないし、休憩とかだと何処か一ヶ所に集積するか、邪魔にならん所に置くから直ぐ解る。

 ガルシアは今まで見て来た元自衛官の傭兵で、特に傭兵に成り立てのルーキーが直ぐに解る様になっていた。無論、後ろから近付いてガルシアの横に並んだチェンも同様であった。

 「日本人って言うのは傭兵なんかと程遠い人種だと思うんだがな……」

 「知るかよ。他人の過去なんざ知りたくねぇっての……」

 二人はそんな日本人であろう傭兵を後目に、木々が生い茂るブッシュへと踏み込もうとした。目的は単純に小便をする為だ……
 すると、後ろから訛りの強い英語で話し掛けられた。

 「なぁ、トイレ行くんだったら俺も良いか?」

 声の主は日本人であった。チェンは、彼が銃を持って居ない事に表情を歪ませたが、ガルシアはジェスチャーを交えて日本人に言った。

 「ライフル。ライフルを持って来い」

 ガルシアが首からスリングベルトで提げたAKMを手で軽く叩きながら言うと、言葉が通じたのか日本人は取って返して自分の銃を取りに戻った。

 「俺は先にしてるぜ……」

 そんな彼の後ろ姿に呆れたチェンは、ボヤく様に言って先に小便へと出掛けた。その間、ガルシアはベルトに取り付けた水筒を手に取ると、キャップを開けて中の水を一口飲んだ。

 「悪い。待たせた」

 頭を下げ、謝る日本人にガルシアは再び指摘をした。

 「何で、弾倉を入れてねぇんだよ……バカか?」

 今居るのは、隣国との緩衝地帯で、時には政府軍がパトロールして戦闘に入る可能性が高い危険地域であった。
 そう、折り畳み式の銃剣が特徴的な彼の五六式歩槍と呼ばれる中国製のAK47には、弾倉が取り付けられて居なかった。

 「けど……」

 「暴発や自衛隊ではとか言うなよ……此処は日本じゃない」

 彼が明らかに自分よりも歳上に見えても、ガルシアは物怖じせずにズケズケと言い放った。ガルシアにとって、彼が死んでも気には障らない。それに、どうでも良い存在だ。
 しかし、自分が仲間が武器を持ってなかったと言うだけで死ぬのは我慢が出来なかった。だから、常に銃を持ってろと歳上で、軍歴をキチンと持つ彼に言ったのだ。
 それから程無くして、彼が五六式に弾倉を入れてコッキングハンドルを引いたのを見ると、安全装置を掛けさせて小便へと赴く。



このガルシアは凡人引金等とは無縁のコロンビア人の青年だす


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傭兵モノ オリジナル2

 物資集積所とも言える駐屯地から5台の幌付きの大型トラックと荷台に兵士と機関銃を乗せた4台のピックアップトラックが前線近くの陣地へ向け、出発してから3時間が過ぎた。
 政府軍の兵士である黒人の子供は、TOYOTAとフロントにエンブレムされた古ぼけたピックアップトラックの荷台に立ち、錆の浮かぶM2ブローニング重機関銃に取り付いて道の脇を睨む様に視線を走らせる。
政府軍の兵士には、彼以外にも子供は幾人も居り、中には未だ10にも満たない子供も居る。
 無論、子供の兵士は反政 府軍も同様に居り、兵士……と、言うよりは備品と言った感じ、体の良い消耗品として使われているのが此処も含めた戦場の現実であった。
 それは、人類の負債や戦争の真の被害者とも言っても過言では無かった。
 そんな少年は、左に動き、M2の銃口を切り立った斜面の上へと向け様とする。それと同時に、前を行く車両がカーブに差し掛かかろうとした所で、スピードを緩め始めた。
 しかし、輸送車両部隊は自分達を200m程離れた斜面から見詰め、銃口を向ける16人の兵士達に気付く事は無かった。


 「目標正面のコンボイ。各自の目の前に居る奴等を叩け」

 木々が生い茂る斜面では左右の両端にPKMとFN-MAGと呼ばれる強力な機関銃が合わせて4丁……並んでおり、機関銃手達は車列の護 衛するテクニカルに照準を合わせて居た。
 そんな機関銃手に挟まれる様にAK等の自動小銃で武装する傭兵が何人も配置され、中央には4丁のRPG7があった。
 そんな木々に身を隠す彼等は各々、リアサイト越しにフロントサイトと重なって映る車両を獲物を狩らんとする狩人の様に見詰めて行く。
 2日近く掛けて数十㎞もの道無き道を踏破し、敵に見付からないか? 敵が来ないのでは無いか? そんな恐怖や不安が少しだけ報われる瞬間を今か、今かと傭兵達は待ちわびて居た。

 「攻撃開始!!」

 双眼鏡で輸送車両部隊を見ながら指揮官であるエドモン・フィリップは、声を張り上げた。その瞬間、待ってましたと言わんばかりに総勢16もの銃口から喧しい銃声がすると共に、硝煙が立ち込め始めるのであった。



カーブに入ると、4発のHEATロケット弾がトラック目掛けて勢い良く飛んで来た。 トラックの荷台にロケット弾が当たった。すると、炎の奔流が荷台に積まれた弾薬に引火し、爆竹の様にパパパパパンと軽快に破裂し、弾があちこちに飛び散って行く。他にもロケット弾や砲弾を乗せてたトラックは爆発すると、道路を崩して炎上しながら谷へとまっ逆さまに落ちた。

 「敵襲!!」

 そんな中でも少年はそう、怒鳴る様に叫び、M2重機関銃を向け様とする。が、少年の体に何発もの銃弾が叩き込まれた。
 それだけでは無い。他の無事な車両から混乱した兵士が降り、逃げ出す。
 しかし、彼等は斜面に居る傭兵達の射界に入った瞬間、銃声と同時に銃弾のシャワーを浴びせられてバタバタと倒れて逝った。
 そうして、暫くの間、機関銃や自動小銃の銃声が絶え間無く木霊し、その度に人が死に、車両に無数の銃痕が穿たれ、其処は処刑場と化したのであった。




 「撃ち方辞めッ!!」

 もうもうと硝煙が立ち込めて銃声が耳をつんざく中、指揮官であるエドモン・フィリップは双眼鏡越しに映る輸送車両部隊の全滅する様を満足気味に見ると、攻撃終了の号令を掛ける。
 時間にすれば僅か数分で、9台の車両全てを破壊し、原形を留める者の無い死体が幾つも狭い道路に転がして道を塞ぐのに成功したのだ。
 すると、両側面を警戒して居た傭兵達を除く輸送車両部隊を攻撃したガルシアやチェンを含めた傭兵達は、嘘の様にピタリと引き金から指を離したのであった。
 4丁のRPG7とロシアのPKMとベルギーのFN-MAGと言った強力な軽機関銃4丁、数丁の自動小銃がそうして沈黙したのであった。

 「奴等はくたばった! 後は俺達も撤退するぞ!! ガス、マイク! 前進して斥候だ!!」

 フィリップの言葉に国境に近い右側面を警戒して居た2人の傭兵は、先頭を進む。彼等の先導で傭兵達は、敵の支配区域であるこの場所から味方の支配区域へと逃げるのだ。
 来る時は、静かにコソコソとして居たが、帰る時は違う……
 1分、1秒でも早く味方の支配区域へと逃げなければならない。敵は襲撃された時点で、追跡部隊を彼等の居る所へと既に派遣してるのだ。

 『敵は少数だ! 良いか!? 奴等は前線の方へ逃げる筈だ!! そちらへ追い込んでやれ!!』

 敵の通信を傍受する無線特技が担ぐ中国製の軍用無線機から、敵の声が聴こえて来る。フィリップはそれを聞き、敵がどの様に動こうとするのか? そんな大事な疑問の答えを知ると、フィリップはニンマリと笑った。

 「このまま南へ抜けるぞ! 奴等は東と北から来る!! 西には敵が待ち構えてるからな!!」

 「了解!!」

 フィリップの言葉に皆が返事する。敵の動きが読めたが故に、彼等は南に向かって再び国境を超える事となった。
 彼等がこの様に隣国を越える事が出来るのは、反政府軍に隣国の政府が秘密裏に援助しているからに他ならない。
 隣国の政府は反政府軍のテリトリーで地下から水を汲み上げ、それを自身の領土へとパイプラインを通おして送っているのだ。
 そうする事で汚染されていない天然の地下水を得て、領土内の飲料水の問題を一時しのぎ的な手段で隣国の政府は解決した。
 その水不足問題に貢献した見返りに反政府軍は、武器弾薬、食糧に医薬品を提供する事で御互いにwin-winの関係となっているのだ。
 そんな反政府軍から金を得ている傭兵達が森の中を駆けて居ると、空からブオォォォンと言った不気味な音が響き渡る。
 それを聞いた瞬間、傭兵達は脚を止めて木々に身を潜ませるや、息を殺してジッとし始めた。
 深い木々に付いた枝葉がトリプルキャノピーとなったお陰で、空の上からでは20人の傭兵達の姿を見えなかった。

 「ヤベェ……マジかよ。いきなし、戦闘機とかふざけんじゃねぇよクソ」

 フィリップがボヤくと、ガルシアを含めた傭兵達は心の中で同意した。政府軍は反政府軍の攻撃で何度も補給部隊を叩かれ続け、被害がこれ以上拡大させない為に一気に蹴りを着けようと、戦闘機を差し向けたのだ。
 上空を飛ぶ戦闘機のシルエットが木々の間からの木漏れ日で解った。それは、大戦後に作られた英国の機体で旧型のジェット戦闘機ホーカー・ハンターであった。
 ハンターは地を這う傭兵と言う鼠を狩らんとする猛禽の如く密林の上空を嘗める様に飛ぶ。
 一年はその機体を図鑑で見た事があった。そして、それが採用された年数も……

 「あれって50年くらい前の戦闘機だよな? 金の無い所だと未だ現役なんだな」

 だからこそ、一年は呆れた様に暢気にボヤく。すると、そんな言葉に他の傭兵が咎める様に言った。

 「けどな、俺達みてぇなのを殺すには充分過ぎる。腹には30㎜砲が4門。翼にはロケットポッドと爆弾吊ってる……あの大きさだと1000ポンド
約454㎏
か?」

 「おいおい、マジかよ……1発で即あの世じゃねぇか!?」

 一年の言葉に反応した傭兵が言うと、チェンはげんなりとして吐き捨てた。
 半世紀も前の古い戦闘機とは言え、火力は下手な戦車や戦闘ヘリよりも有り、機動力もヘリより数段上なのだ。
 オマケに、傭兵達には有効な対空兵器が無い。米軍の様に世の軍隊は恵まれた軍隊と言う訳じゃ無いのだ。
 だから、上空を旋回して自分達を探す鋼鉄の猛禽
ハンター
が燃料補給か他の場所へ消える迄、静かに堪え忍ぶかと思った。
 しかし、フィリップは暫く考えてから決断すると、部下に指示を下した。

 「このまま直進する! 敵は我々を未だ発見してない!! なら、直ぐにこの場を急いで離れるぞ!!」

 皆はエドモン・フィリップの決断に賛同すると、再びジャングルの中を駆けずり回る事となるのであった。




 ハンターを駈る政府軍のパイロットは、操縦管を左に傾けて、フットバーを蹴った。すると、機体が反応して左へと傾きながら旋回飛行を始めた。
 丸みを帯びた透明なキャノピー越しに緑色に広がる密林をパイロットは眺める。が、木々が深く生い茂っているせいで地表を見る事は出来なかった。

 「HQ、HQ。此方、DT
デルタタンゴ
……敵の姿は見えない。繰り返す、敵の姿はジャングルで見えない」

 何度も旋回し、目を見開いて地面を血眼になって眺めるが、人の動きは見れなかった。

 『HQ了解。DT、飛行可能時間を送れ』

 司令部からの指示でパイロットは、燃料計に視線をやる。燃料計の針は未だに動いておらず、長時間は飛行出来る量であった。

 「長くて後……」

 パイロットは計器類からキャノピーへ、視線を戻しながら答え様とした。が、彼の口は唐突に沈黙する。

 『どうしたDT?』

 「敵歩兵と思わしき影を確認。攻撃許可を求む」

 パイロットはコントロールパネルに手をやると、幾つもある火器管制システムのスイッチを押して行く。そうして、ハンターに搭載された兵器の安全装置が解除され、スイッチ1つ、ボタン1つで2発の1000ポンド爆弾と40発の80㎜ロケット弾……
 そして、1門に付き150発の砲弾が装填された4門の30㎜アデン機関砲が筆舌し難い暴力を震える状態となった。

 『DT。攻撃を許可する……奴等を皆殺しにしろ』

 「DT了解!!」

 その言葉を聞いた瞬間、パイロットは操縦管を操作し、フットペダルでラダーを調整して機体を水平にした。それから、操縦管を後ろへと下げて機体の鼻先を天へと向ける。
 ハンターは高度を上げ始めた。
 パイロットは高度を上げながらコントロールパネルのトグルスイッチを2つ……パチッと押し上げた。
 そうして兵器を止めるパイロンと呼ばれるレールのロックが解除され、後は操縦管を握った親指近くのボタンを押すだけとなった。

 「ここら辺で良いな……」

 そんな呟きとも知れぬ言葉と共に操縦管を前へと押し込んだ。すると、ハンターの鼻先が段々と地面へと向いて行く。
 ハンターの鼻先が地面と一直線の向きになると、機体はそのまま高度を下げ始めた。
 ハンターは段々と加速し、地面へと近付いて行く。 高度計を見やり、キャノピー越しに移る緑色の景色が一致した所でパイロットは、ボタンがカチッと鳴らした。
 すると、機体の主翼の根元近くのパイロンから吊り提げられた2発の1000ポンド爆弾が切り離された。
 2発の爆弾は先端の小さなプロペラを回し、ピューと口笛の様に甲高く鳴り響く風切り音と共に地面へと落下する。
 そして、ほんの2、3秒で木々に突っ込んで地面に激突しそうな所で2発の1000ポンド爆弾が破裂した、

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IS 試作品

サブタイまんま。空戦初めて書いた気がする


 10台のT90戦車に数台の随伴歩兵が乗ったトラック。荷台にZU-23-2 23㎜対空連装機関砲を載せたテクニカルと言った大部隊が砂漠の中、作戦地域へと向かうのだろうか?
 砂塵を巻き上げ自走してる。そんな戦車の内の1台では、ハッチから身を乗り出し外を伺って居た車長が居た。
 彼は煙草に火を点した。紫煙が風に乗り、後ろへと流れて行く。
 それでも周りを見回し、敵が居ないか? 確認する。
 そんな時……空からドラムを絶え間無く殴る様な音がした。
 それにほんの刹那遅れて風を切る音が、鼓膜や頭を護るタンクキャップ越しにも聴こえる。だが、その瞬間……
 そのT90は後部のエンジンや燃料タンクから火を噴き、砲塔にも幾つもの孔が穿たれた。煙草を吸って居た車長も滅茶苦茶になってる。

 「上空より敵機!! 回避せよ! 回避せよ!!」

 T90の戦車隊内で蜂の巣を突いた騒ぎとなった。纏まって居たのが、全滅を避ける為にバラバラと動き出す。
 再びドラムが鳴り響けば、また1台炎上して爆発した。中から燃え盛る戦車兵達が出て来る。
 彼等はもがき苦しみ、悲鳴を挙げながら砂の上でのたうち回って居た。そんな様子を見た上空の狩人は、溜め息を吐いてボヤく。

 「うわぁ……イヤーな死に方」

 ボヤいた後、通信を開いて無愛想に告げる。

 「ポイント3ー42で敵機甲部隊を確認。私の獲物よ……誰も手を出すな」

 上空を飛ぶ肩幅が1m以上あり、高さが3mある背中から武骨な羽根を持つ角張った全身を積層装甲で覆われた巨人は、地面へと一気に降下する。まっ逆さまに落ちれば、今度は生き残った戦車達の砲塔上にあるKord重機関銃やテクニカルの23㎜連装機関砲が火を噴いた。
 だが、放たれた百発近くの50口径弾や23㎜砲弾は巨人の目の前で見えない壁に阻まれる。
 巨人の腰にある左右の翼に取り付けられたフラップが左右で対照的に上下に動き出すや、横へ旋回する。それから腕を視界の先に右腕を突き出した。
 右腕には武骨で大きな銃が取り付けられて居た。其れは砲声を挙げる。
 ほんの一瞬で有るにも関わらず、砲声は絶え間無く響いた。1秒にも満たないと言うのに放たれた1()2()()()3()0()()()()は、300m先に居たT90の装甲をブチ抜いて爆発させる。
 しかし、巨人もとい狩人は先程迄の様に空へと逃げずに高度を300以内に保ったまま、戦車やトラックの上を飛んで砲弾を叩き付け始めた。
 トラックに至っては一番酷くヤられた。装甲の無い幌が被せられただけの荷台に居る随伴の歩兵達は、30㎜砲弾によってミンチにされて血飛沫に肉、ハラワタをブチ巻けながら死ぬ。テクニカルも同様だ。
 空から30㎜砲弾を浴びせられれば、大抵の陸上兵器は死ぬ。人間や単なるトラックなんか紙屑同然なのだから……
 そして、燃料タンクが爆発して鉄屑と肉片は燃やされ、火葬される。逃げ惑う者達を鋼鉄の狩人は、容赦無く狩る。
 数分後、砲声が止んだ。

 「此方、イズ……ポイント3ー42の敵機甲部隊殲滅。此より、帰還する」

 巨人の中に居る少女は通信を再び、開いて自分の属する基地へ報告する。だが、応答は無かった。

 「相変わらず、聴いてるのか、聴いてないのか解らないわね……」

 基地の管制塔のいい加減な仕事に呆れを漏らす。
 そんな時だ。巨人のAIがアラームを鳴らした。
 少女は直ぐにレーダー代わりのハイパーセンサーを展開する。すると、ヘルメットのバイザーに50㎞先からミサイルを放つ4機のSu35が、映った。
 狂った様に警告音が鳴る。それよりも速く、少女は身体を前へ傾けた。そのまま、逆さまになって地上へ頭を向けてスラスターを最大出力で吹かし、突っ込む。
 時速1300㎞……約マッハ1の速度で地上へ降下すれば、瞬く間に高度計の数値は減って行く。その間にも放たれたR77空対空ミサイルは、巨人を喰らおうと追尾を辞めない。
 その内にミサイルが巨人を捉えるや、追い掛け始める。命懸けの鬼ごっこしてる間も4機のロシア製戦闘機は、安全に近付いて次の攻撃準備をして居た。
 高度計は4桁から3桁に変わる。後ろには8発のミサイルがマッハ2から3のスピードで追い掛けて来てる。
 段々と近付きつつあるミサイルに「クソッ!」 と、悪態を吐いた少女は視線を動かし、ヘルメット内の網膜センサーで指示を飛ばす。
 すると、巨人の背から多数の火の玉(フレア)が、勢い良く吐き出された。火の玉が曳く白い尾がまるで天使の羽にも見える。
 それと同時にジャミング信号を放って居たからか、8発のミサイルの内、5発は火の玉の方へと行って爆発した。爆発の衝撃が巨人を揺らし、少女へと襲い掛かる。

 クソッ、シールド削られてる。

 だが、危機を達してなど居ないからか、少女は身を翻して残った3発のミサイルへ30㎜機関砲を向けた。
 引き金が引かれる。発射速度が2000近いからか、弾薬計の数字が一気に減ると共に砲口から目映い砲火が放たれた

 2秒近く撃っただけだと言うのに50発近くの砲弾がばら蒔かれれば、ミサイルに何発か当たって爆発する。
 誘爆したのか、残りのミサイルも爆発した。そして、無数の破片を巨人に浴びせられる。
 また、アラームが鳴り響いた。見れば、シールドエネルギーゲージが30%を切ってる。
 そんな状況の巨人へ向け、再びミサイルが放たれる。

 「ふざけんな、クソ!!」

 何度も悪態を吐いてしまう。機甲部隊を殲滅する前に敵の物資集積所を破壊したからか、シールドエネルギーもミサイルも無いに等しかった。
 それ故、鋼鉄の猛禽類たる戦闘機は10年前に現れた巨人もといIS……INFINITE・STRATOSと呼ばれる世界最強とされる兵器に勝てる場を味方の犠牲でもって作り出し、本格的に狩ろうとして居た。
 そうしてる内にサンドブラウン一色の地表が見えて来た。高度計も数百程度しか表示せず、遮蔽物も存在しない。
 そして、上をミサイルを6発、翼に吊ってる4機のSu35に取られて的にされてる状況だ。
 そんな時、1機のSu35が爆発する。
 少女もSu35のパイロット達も何が起きたのか? 解らなかった。

 「イズ、聴こえるか?」

 通信機から男の声がした。同時に残ったSu35が散開し、何処からか現れた敵への警戒を始める。
 ISのハイパーセンサーが、声の主が操るF16の存在を報せて来る。

 「俺が奴等を引き受けてやる……お前は、その間にミサイルを……」

 地表から100mの所で急制動し、()()()()()()()()()()()ミサイルを()()()()()()()()()少女を見ると、救援に来たパイロットは呆れる。

 「ミサイル、全部ブチ込んで。その間に奴等を叩き落として来る」

 「任せろ」

 その言葉と共にF16の翼に提げられたサイドワインダーやスパローミサイルが放たれる。その瞬間、残ったSu35がフレアをばら蒔いたのか、遠くでチカチカと光った。
 その間に少女はISを最大出力でカッ飛ばし、Su35の下から近付いて行く。
 1機のハグれた機体が居た。コクピットではアラートが鳴り響いてる。

 「一ぉぉぉつ!」

 だが、其れを聴くよりも速く、下から10発の30㎜砲弾が叩き込まれる。
 ジュラルミン装甲をブチ抜き、コクピットブロックまで貫通した砲弾はパイロットのフットバーに掛かった脚、コントロールバーを握る手。そして、胴体を食い散らかしてキャノピーを真っ赤に染め、砕く。
 ほんの一瞬の出来事であった。コントロールを喪い、機体は堕ちて行けばミサイルが命中して爆発する。
 燃え盛る残骸と入れ替わる様にして上を飛び、体勢を変えて残ったミサイルから逃げ切れた2機に頭を向ける。

 「二ぁぁぁつ!!」

 何度目かの急降下だ。2機目に数秒で近付き、上から砲弾を浴びせる。ボディからコクピットへ撃ち込まれ、炎が挙がった。
 パイロットは此方を見るよりも前に、砲弾でミンチにされる。

 「ラストぉぉぉ!!」

 そして、最後の1機はコクピットに横から飛び蹴りした。
 マッハ1近い速度で突っ込んで来る重さ6トンの巨人による蹴りを打ち込まれ、コクピットブロックが潰れて千切れたSu35は、地面へと落ちる。

 「相変わらずデタラメだな、ISてな」

 元米軍の戦闘機乗りは、少女の戦いに呆れるしか無かった。だが、少女にしてみれば自分を助けてくれたパイロットの方がデタラメだ。

 「そんな私を訓練で撃ち落とすアンタは何なのよ?」

 「アレは運が良かっただけだ……それより、さっさと逃げようぜ」

 その言葉と共に2機は、全速力で基地へと飛んだ。




 「お、帰って来たな……」

 カマボコ型の倉庫の前で空を見上げて居た中年の男は、F16とISのシルエットを見て呟いた。そんな言葉に水色の髪をした少女が男の方を見る。
 F16は前と胴体下部から脚を出し、減速しながら滑走路へと下って行く。ISの方は、中年の男が手にした誘導灯を見て段々と降下して近付いて来た。
 鋼鉄の巨人は、見た目と重さから削ぐ和ぬ程に静かに着地する。

 「おー、生きとったか」

 「どうしたのよ? 管制がオッサンの方へ降りろとか言うから、来たけどさ……」

 「追加請求なら断るわよ?」 と、言って巨人の閉じられた装甲が展開される。中から現れたのは、丸い明るい茶色の猫と青いラッコが頭部に描かれたヘルメットを被り、顔には酸素マスクを装着し、耐Gスーツを纏った少女であった。
 装甲を展開し、ヘルメットに酸素マスク姿の少女へ男は要件を告げる。

 「お前さんに客だ」

 そんな言葉と共に、目に刺さる砂漠の日射し避けに帽子とサングラス。長袖のユッタリとした服を着た少女が前に出た。

 「初めまして……」

 「話は後にして良い? 機体の整備と報告書の提出とか有るから」

 だが、少女は言葉を遮って断る。それから、言った様に片付ける仕事を進める為、歩みを進める。水色の髪をし、手に扇子で扇いでる少女も後を追う様に歩き出す。
 少しすると整備員が「此方だ」 と、声を掛けて来た。
 少女は指示に従い整備用ハンガーへ入り、指定された場所に立った。
 それから、直ぐに巨人の中に収まってた腕を抜いて酸素マスクを外し、上にあるハンドルを掴んで両脚を抜いて整備員が押してきたタラップへと乗り移る。

 「悪いけど、オーバーホールと補給頼める? 後、機関砲の交換もお願いします」

 「今夜の作戦に間に合う様にはするよ……駄目だったら、中佐に俺達の方から言っておく」

 「ありがとう」 と、感謝をすると整備員達が集まり、作業を始める。その間に少女はヘルメットを脱いで髪を振り上げ、耐Gスーツのジッパーを少し下ろし、窮屈な状態の胸を解放させて一息吐いた。
 それから、自身のISに記録された戦闘データの収まったディスクをケースに納め、歩き出す。

 「アヤ……敵、補給基地の破壊は御苦労だったな」

 「中佐」

 刈り上げた黒い髪に眉目秀麗と言う言葉の合うイケメンの士官服姿の男は労いの言葉を少女……アヤへと与える。

 「もしかして、今夜の作戦に関して?」

 目の前に居る基地司令が、こんな時間に外を歩くと言う事態にアヤは即座に予想を口にした。

 「行けるかね?」

 どうやら合っていた様だ。どんな作戦かは空いた人員を集め、ブリーフィング時に話すのだろう。
 今は部外者が居る故に……

 「機体次第……行けるなら行く」

 「そうか……では、戦闘データを私に渡して、Mis.更識と話をしたまえ」

 そう言われてディスクを中佐へと渡す。
 更識と呼ばれた少女は、基地司令である中佐に対するアヤの態度を始めとして、日本とは違う様相に戸惑いを覚えて居た。

 「で、更識さんだっけ? 此処は熱いから中に入らない?」





 数分後、アヤの自室へと案内された更識は、適当に座ってと言われてベッドに座る。アヤは買ってくると言って、部屋を後にして居た。
 部屋の中は壁に貼られた過ぎた日が黒のマジックで×印が書かれたカレンダー。
 喧しく動くエアコンに粗末なベッド、着替えの収まってるだろうロッカーと机に椅子。そんな机の上に置かれた何冊かの本と此処とは別の戦場で撮られたであろう、歩兵達が集まった記念写真の収まった写真立てが有るだけの殺風景な部屋であった。

 「お待たせ、アイスティーで良いかしら?」

 「ありがとう」

 投げ渡されたアイスティーのプルトップを開け、軽く口を着けた更識を壁を背に眺める。そうしながら、生きて帰って来た時の細やかな楽しみであるコーラを一口飲んで渇きを癒した所で、自己紹介を始めた。

 「多分、知ってるだろうけど私はアヤ。結城綾よ……貴女は?」

 「IS学園の生徒会長してる更識楯無よ。宜しくね結城さん」

 「アヤで良いわ」 と、言うと、太股に取り付けられたホルスターに収まった自衛用の拳銃であるグロック19を留めるストラップを外す。その瞬間、空気が冷え込んだ。
 だが、更識は平然と「生徒会長」 と達筆に書かれた扇で口元を隠すだけだ。

 「で、私に何の用?」

 「単刀直入に言うと、貴女を雇いたいのよ」

 そんな言葉に対し、同胞と言えど目の前の少女に呆れてしまう。

 「アンタ、アホ?」

 それ故、無礼な言葉を投げ付けてしまった。

 「貴女にはロシア軍からのISであるアバローナの窃盗と戦争利用。並びに虐殺、武器の密輸に密売と多数の容疑が掛かってるわ……特にロシア軍は、貴女を殺したがってる。当然よね?」

 「ついさっき、そのロシア軍所属の戦闘機を叩き落としたばかりよ」

 急に現れた戦闘機編隊がロシア軍からのサプライズと知り、辟易した。ISは世界中に約430程度と数が限られている。
 ロシア軍は政治力から7、80機の機体を保有してる。因みにアメリカ、中国も同様に保有してる。
 EUは各国で10機ずつと言う所だ。 

 「で、私は貴女のロシア軍からの指名手配を無かった事に出来る」

 「その代わり、機体返却とアンタの狗になれって話? なら、無理」

 そう言って、アヤは机のマジックを取るとカレンダーの前に立ち、今日の日付に斜線を引くと胸ポケットに戻した。
 後ろに立った更識へ見せる様にカレンダーを手に取って捲る。

 「どうせ、知ってるんでしょうけど此処は3年契約の傭兵が配属される基地で、私は未だ契約期間中なの……」

 「で、後……6ヶ月、半年残ってるのね?」

 更識の問いに「そうよ」 と、答えて机に置いたコーラを再び手にし、一口飲む。
 更識も同じ様にアイスティーを飲むと、話を続けた。

 「だけど、その契約に例外はあるでしょ?」

 「えぇ……150万ドル(約1億5千万円)を違約金として支払えばね」

 この国の外人部隊……即ち、傭兵には契約として3年間この国の為に戦う。
 違約金として150万ドルを支払えば、契約解除。
 他にも作戦に正当な理由も無く拒否する場合、罰金を払え。金が無いなら死んでこい。
 そう言った契約がアヤが結んでる傭兵契約であった。

 「アンタが肩代わりしてくれる訳? 脱走は即座に銃殺だし、基本的に機体は基地で厳重に保管されるから、無理よー」

 「なら、ターゲットチップカードに幾ら有るのかしら?」

 ターゲットチップカード……参加した作戦の成功報酬、破壊した敵兵器に応じて支払われる報酬等を記録するキャッシュカードの様な物だ。それは、今までの殺して来た者達の屍の記録でもある。
 そして、そんな血塗られた金の額を聴いて来た瞬間、目に見えぬ速さで袖口から6インチの細いダガーナイフの刃を更識の首へ当てた。
 刃を向けられたと言うのに、涼しい顔を向けたまま更識は告げる。

 「恐いわ、アヤちゃん……お姉さんとしてはナイフを突き付けられるとは思わなかったから」

 「そっちも恐い」

 そんな言葉を放てば、更識はアヤの()()()()()()()()を戻し、御互いに笑い出す。
 御互いに悪戯した子供の様に……
 一頻り笑った所で、アヤはダガーナイフを袖口のシース()へ戻した。

 「少し考えさせて貰える? シャワー浴びてサッパリしたいし、スーツも洗いたい。後、今夜の作戦にも参加したいし……」

 「私は明日の1300迄しか滞在出来ない。答えは速めに御願いね」 そう、言い残して更識はアヤの部屋を後にする。
 更識の背を見送った後、ロッカーから下着とジーンズとタックトップを出すとベッドに投げた。
 用意した着替えの脇に座ると、ブーツを脱ぎ、靴下を脱いだ。
 サンダルに履き替えると、着替えとバスタオルを持ってシャワー室へと向かう。


 降り注ぐ心地よい湯をしなやかに鍛えられた四肢に張りのある胸に浴び、汗や汚れを流しながらアヤは考える。否、思い出そうとして居た。

 日本に帰れる。人生をやり直せる。と、言われても記憶が無いせいか、何とも言えない。
 日本に居た記憶が無いから、私が本当に日本人なのかすら怪しい。
 まぁ、良い。そんな、大した事じゃ無さそうだし……

 昔の記憶が無いせいか、アヤは更識の日本に帰れる。と、言う誘い文句をどうでも良く感じて居る。
 結城綾と言う名前も、当時の持って居たパスポートから解った名前だから、名乗ってるだけだ。彼女に有る記憶は、今日の戦闘、人殺し、ISの操縦を含めた日常生活には何の役にも立たない技術と知識。
 それに、ここ4年半年の傭兵として生きてる事程度だ。
 考えるのも無駄と思ったからか、アヤはベタつく髪を洗い、身体を洗って泡を流してバルブを閉める。そらから、バスタオルで水滴が滴り落ちる身体を拭き取って、着替えを済ませてシャワー室を後にした。 

 「おう、アヤ生きてたか」 

 「パトロール?」

 「そうだよ、どっかの小娘の為に獲物を探して遣ろうと思ってな」

 「お陰様でね……Good Luck」

 耐Gスーツ姿のパイロットから声を掛けられると、アヤは「幸運を」 といえば「ありがとうよ」 と、返される。
 御互いに生きて帰って来れるか? 解らない故に……
 ランドリーに着替えを投げ込んでから部屋に戻ると、サングラスと麦わら帽子を用意して外へと出た。
 外は相変わらずのウザい程に照り付ける太陽、そんな太陽に当てられて反射熱が立ち上るアスファルトにコンクリート。
 それに、グダグダとオスプレイどうこう抜かすクズが居ないからか、鼓膜と腹に喧しく響くジェット機のエキゾーストは自重せず響いてる。
 そんな中を麦わら帽子にジーンズ、シャツ姿で呑気に歩く様は場違いにも程があった。だが、指摘する奴は居ない。
 そうして、着陸した倉庫の方へと歩き、中へと入る。

 「オッサン居る?」

 「何だ、アヤか……あの客はどうした?」

 「明日の正午まで居るってさ……それより、頼んでた物は?」

 「ちょっと待ってろ」 そう言って奥へと戻った 。待ってる間、アヤはボンヤリと周りを見回す。
 2、3分ほどすると、
 男はこの基地に於ける補給を担う武器商人であった。たまに不発弾を売り付けて来るクソ野郎であるが、金さえ出せばティッシュから核弾頭まで何でも仕入れる腕の良い商人で、アヤのアバローナの為にISの整備マニュアルや電子部品を初めとした予備部品に特殊積層装甲板等、一般的には手に入らないブツを仕入れてくれる。

 「ホレ、お前さんが頼んでた最新刊」

 無論、こうしたシャバの小説も仕入れてくれる。
 アヤは「ありがとう」 と、感謝の言葉を子供みたいに告げてカードを渡すと、男はスキャナーに読み込ませて代金を受け取った。

 「そういや、あの楯無て奴から何か言われてのか?」

 「私の罪状を無かった事にするから飼われろって……」

 注文した本を流し読み、遣る気無さそうに答える。男はそんな態度に呆れると、思い出した様に茶色のファイルを差し出す。

 「あー、テスト?」

 本業とは別にアヤは武器商人が仕入れるIS用の兵器のテストもして居た。
 男が渡したのは、テストして貰いたい兵器の概要データの写しであった。
 だが、其れを受け取ったアヤは困った表情を浮かべる。 

 「機体、オーバーホール中だから直ぐには出来ないわよ?」

 「そんなん、解ってる。今夜の作戦には間に合うそうだ」

 自分の機体が今夜の作戦に間に合うと聞いても「ふーん」 と、返すだけであった。
 心ここに有らずのアヤは本を仕入れてくれた事に改めて感謝し、テスト予定の兵器の概略データを持って倉庫を出る。

 



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凡人引金でBurn Notice

ふと、浮かんだんだ。冒頭の触り程度だがね


とある管理世界の都市郊外にある倉庫で一人の少女は煙草を吸い、紫煙を燻らせるとテーブルの灰皿へフィルターレスの煙草を置く。それから、灰皿の近くに置かれた品に手を掛けた。

「ウォーリアー突撃銃だ。機構は地球のAK47と一緒で、頑丈。壊れにくい。戦士の銃としても持ってこい……しかも、ソイツは新品だ」

男のセールストークを聞き流す少女もといミシェル・バクスはセレクターレバーを動かし始めた。動かす度にカチカチと鳴らず、スルスルと滑らかに上下に動く。

何が、新品よ……セレクターがカチカチ鳴らねぇって事は、中古確定じゃない。

ウォーリアー突撃銃のAK47の物と似た安全装置を兼ねたセレクターレバーは、新品であればカチカチと動く。だが、ミシェルの持つウォーリアーは音がせず、滑らかに動いていた。
中で部品が磨耗し、角が落ちてなければこうはならない。それを知るからか、少女は心の中で商人の言葉が嘘まみれだとウンザリした。

「で、アンタはコイツを300欲しいって話だけどよ……何するつもりだい?」

チャージングハンドルを引いてはトリガーを絞って動作を確認するミシェルへ、男は問い掛けて来る。だが、ミシェルは返す事無くレシーバーを開けて中の点検をするだけだ。
そうして、一頻りどころか念入りに点検をしたミシェルは漸く口を開く。

「やっぱり……コレの何処が新品? グリスやオイルでベッタベタにして誤魔化してるけど、中身ガラクタの鉄屑じゃない」

吐き出されたのは辛辣な言葉ばかりであった。実際、ミシェルの眼から見ても、このウォーリアーは工場から出荷されたての品とは思えなかった。
表面に打刻される筈の製造番号や製造工場を示す刻印がグラインダーで削られていれば、ボディーとも言えるレシーバー本体の表面全体も同様に削られている。
打刻を削り取ってアシが着かなくするのは理解出来る。しかし、傷を隠す為にグラインダーで全体を削るのは頂けなかった。
だからだろう、ミシェルの言葉は未だ終わらない。

「バレルもライフリングが磨耗してるわ、傷あるわ、火薬カスの焼け跡がある。ボルトもグリスで解りにくいけど、よく見れば焦げあと。他にもあるけど聴く?」

その瞬間、周りの空気が冷え込んだ。同時に男の護衛であろう屈強な者達から殺気が溢れる。
しかし、ミシェルは平然と男に詰め寄る。その瞬間、護衛達は銃を抜いて向けて来る。

「落ち着きなさいよ……銃ならアンタ達に預けてあんじゃないの……」

魔力スフィアを浮かばせ、睨み付ける摩導師を見ても銃口を向けられてもマイペースのミシェルは、男に一方的に告げる。

「客を騙そうとする奴は商人じゃない……単なる詐欺師よ。商人名乗るなバカ」

そして、バラしたAKを押し付けた。二度と話す事もない。
そう言わんばかりに男へ背 を向けた。
すると、男は手を叩いて笑顔になった。

「合格だ。ミシェルさん……」

背を向けたまま、男の言葉にミシェルは耳を傾ける。
見れば、護衛達の殺気は無くなって銃もスフィアも消えて居た。

「最近は此方を騙そうとする奴等が多くてね……」

振り替えると申し訳無さそうな表情で、ミシェルに対して釈明を始める。
男が言うにはここ最近、自分を騙そうと客の振りをした管理局員が現行犯で捕まえようとして来るそうだ。
出来る事ならそれの選別もしたいし、相手がどんなレベルか見る為にも男はポンコツのウォーリアーを鑑定させる事にして居たのであった。

「私を試して居たって事は、信用して無かった訳? 傷付くわ」

「いや、アンタが本当にあのミシェル・バクスかと信じられなかったんだよ……世界の果てみたいなジャングルで、悪魔や不死身って言われる伝説が俺みてぇなチンケな商人の所に来るなんて疑いたくもなるだろう?」

男の言葉にゲンナリとしてしまう。実際、あのジャングルでやって来た事は正直な話、思い出すだけでも嫌になる。
特に、裏切られて頬を吹き飛ばされて目を無くしたり、何人もの奴等にレイプされたり、病気で死にかけながら二つの勢力の頭と幹部を殺したり、戦友を殺してれば尚更、嫌であろう……

「けど、アンタは顔を撃たれたって言うのに、傷が無いのは何でだ?」

「稼いだカネを全部投げて治して貰ったのよ……伝染病でボロクソになった身体を治す序でにね」

「成る程」 そんな納得の言葉と共に男が顎をしゃくれば、部下が樹脂製の1m半有るケースを持って来た。
ミシェルは其れを見ても気にせず、灰皿の煙草を取って紫煙を燻らせる。

「今度は正真正銘、工場から出荷されたばかりのブツだ」

ケースを開けると中にはウォーリアーはウォーリアーでも、最新型のモダナイズドされたモデルがあった。
それには思わずミシェルも口笛を吹いてしまう。が、手に取って動作を確認する。
最新型とは言え、見た目で判断するのは痛い目を見る。そう、身を以て学んでるが故に気を抜く事は無かった。

「OK……今度はマトモね」

暫くの間、念入りに調べると不機嫌な表情が消えて居た。
だが、無愛想な表情は変わらない。

「それはアンタにプレゼントするよ。試しに撃ってみるか?」

そんな言葉と共にミシェルへ男はバナナの様に湾曲した樹脂製の弾倉を投げようとする。が、部下から耳打ちされると手が止まる。
同時にミシェルの携帯電話が鳴った。
御互いに楽しくなりつつあにあった会話を遮られた形になり、邪魔者への相手を余儀無くされる。

「任務は中止。君はクビだ」

その一言であった。何を言ってるのか聞き直そうとする前に、電話は切られる。
そして、今度は洒落にならない殺気が周りから漂い始める。
見れば、護衛たちは手に銃を持って魔導師に至ってはバリアジャケットにデバイス展開し、スフィアを幾つも浮かばせて居る。
どう見ても臨戦態勢の中、男は口を開いた。

「何がミシェル・バクスだ! 狗め!!」

「ちょっと待ちなさいよ!? 私は正真正銘本物よ!!」

「惚けるな! ()()()()()()()()()()!! 貴様が管理局の人間だと言うのは、調べが着いてるんだ!!」

自分の本当の名前を聴くと、ミシェル……否、ティアナは表情に出てしまった。
その瞬間、ミシェル・バクスは居なくなってティアナになると、両手を挙げて諦めの表情を浮かべて口を開いた。

「命乞いのつもりか?」

「そうよ……管理局員だけど、私は低ランクで質量兵器が無いと雑魚なのよ」

その瞬間、バインドで手足を縛られ、地面に転がされる。無論、護衛もティアナの手足をインシュロックで縛り、拘束してから銃を向けて居た。
そんな様子に勝利を確信したのか、男は満足感を露に優越感で良い気持ちであった。

「ねぇ、私が管理局員だって何で解ったの?」

鉄骨の梁に取り付けられたチェーンブロックに吊るされ、肩に痛みを感じながらも笑みを崩さずに問い掛ける。

「タレコミがあったのさ……で、管理局に居るダチに頼んで照会させたらビンゴ。お前は管理局のスパイだってな」

勝者の笑みを向け、男は答える。
其れを聴くと、ティアナは溜め息を吐いてしまった。

「まさか、売られるとは思わなかったわ……ねぇ、管理局にそんな忠義立てする気も無いから助けてくれない?」

「駄目だ。ミシェル・バクスは雇い主の勢力を裏切って皆殺しにするクソアマだ。そんな人喰い鮫なんか雇えるか!?」

ミシェル・バクスを調べたからか、男は客として扱う。だが、飼い犬にするつもりは毛頭無かった。
実際、ティアナも過去の自分がヤラかした両勢力のトップ並びに幹部殺害を振り替えると、他人事の様に雇う奴は居ない。と、納得出来た。

「なら、此れなら? さっさと外さねぇと、テメェ等全員殺すぞ?」

故に最も得意な分野……暴力で解決する事にする。
負け惜しみにも、負け犬の遠吠えにも似たざれ言に皆は笑いだした。その瞬間、吊るされて居たティアナが光の粒子を霧散させて消える。
床に手足を縛って居たインシュロックが落ち、小さな音を立てれば皆は驚愕するしかなかった。
そして……

「はい、動くな……」

男の後頭部に銃口が向けられる。その瞬間、ティアナに対して護衛たちの銃口が向いた。
だが、ティアナは平然としたまま告げる。

「お前等の給料払う奴が死んでも良いなら、撃ちなさいな……さて、私はアンタを殺せ!?」

即座に察したティアナは男を盾にし、放たれた銃弾と魔力弾を防ぐ。男はスーツの下にボディーアーマーを着ていたとは言え、魔力弾を喰らわされればブチ抜かれてズタズタになり、血飛沫や肉片をブチまけた。
そんな赤に染まりながらもティアナは出鱈目に撃ち返して隙を無理矢理作ると、即座にオプティカルハイドを展開して逃げ出すのであった。




翌日の1037時。管理世界某所のホテルで目を覚ましたティアナは、痛む頭を振って状況確認を始める。

昨日は唐突に首宣告喰らって(バーン・ノーティス)、オマケに売られて連中と鬼ごっこ。
その後、次元港に逃げて貨物船に飛び込んで、目が醒めたら此処て……まるで、ハングオーバーだ。

何が何だかサッパリであった。首になる理由が解らないし、ボスのメスゴリラは自分は「目を離せば何ヤラかすか解らない危険物。だから、管理する」 と、言ってるのに首にするとは考えられなかった。
だからだろう、ティアナは着の身着のままにベッドから起きて部屋を後にする。
それから、フロントに行けば支払い済みでチェックアウトの手続きも済んでいた。

「あー、昨日の記憶が無いんだけどさ……私が一人でやったの?手続き込みで」

「はい、私はそう窺っております」

これ以上聴いても無駄だと感じたのか、ティアナは感謝してからホテルを後にする。
辺りを見ると、ティアナは思わず乾いた笑いを浮かべてしまう。

「何よ……ここ、ミッドチルダじゃない」

ある意味で世界の中心とも言える第一管理世界ミッドチルダであった。
久しぶりのミッドチルダの街中を歩くと、ティアナ・ランスターは昔の最も楽しかった記憶と街並みと一致する事に戸惑いを覚えた。同時に息が荒くなり、身体が震えだして地面にしゃがみ混んでしまう。

「貴女、大丈夫?」

見るとティアナを心配したのか、ウェーブの掛かった金髪の女性が声を掛けて来た。ティアナは深呼吸すると立ち上がり「大丈夫です」 と、返す。

「貴女、顔色悪いわよ」

だが、彼女はティアナの肩を掴んで止める。実際、ティアナの顔色は悪かった。
まるで、死人の様にも思える。

「ホントに大丈夫ですから!」

普段のティアナから考えられない乱暴な態度で腕を振り払うと、早足で去った。
つっけんどんに自分の手を振り払い、逃げる様に去った少女に溜め息を吐いてると、後ろから今の少女よりも幼げな声がした。

「ドゥーエ お姉様……どうかなさいましたか?」

眼鏡にブラウンの髪を密編みにした妹が相変わらずの調子で問い掛けて来る。ドゥーエと呼ばれた女は「何でも無いわ、クアットロ……」 と、返して雑踏の中に消えるのであった。




銀行口座どころか金が消えてる。オマケに私の隠し持ってる口座も犯罪の証拠名目で全部パァ……キャッシュカードは無価値になった。
更に管理局は、私の隠れ家(セイフハウス)を押さえて使えなくしてくれた。

住む場所も金も無くなったティアナは途方に暮れて居た。
今までの仕事で稼いだ金は取り上げられ、住み処を燃やされた。車に偽装した武器庫は持ってかれたりと……
自分に関するモノは、消し去られて居た。
そんな状況に流石のティアナも笑うしかない。

「この年で無職ホームレスかぁ……職歴も実質、懲戒免職の自主退職にさせられてるだろうし。就職も困難ね」

職歴に関して言えば、表沙汰に出来ない綺麗事では片付かぬ管理局の闇を知って居る以上、ティアナの職歴は一般的な二等陸士と変わらない状態にされ、重大な服務規程違反を犯して実質首の自主退職と言う記録が残されている。
それも察して居たティアナは益々、頭を抱えてしまうしか無かった。
その上で隠れ家ばかりか、隠していた新たな人生用の偽造IDや現金と言った物すら奪われて居れば、笑うしか出来ないだろう。
因みに元職場に電話はした。何度もしたが、門前払いであったりする。

「良し、先ずはモージーの所に行こう……アインにも逢いたいし」

しかし、何時までも絶望したり、クヨクヨしても始まらない。故に一握の望みを託して古くからの顔馴染みの所へと向かうのであった。



FARCRYの時にバッテリーでは無く、ダイヤを選んで怪我の治療と病気治療で半年。リハビリ二ヶ月と過ごして生身のまま生還した世界線(笑)

で、復帰してから数ヶ月後に武器商人釣る潜入してたら、首宣告。
オマケに名前売られて、慌てて逃げ出したらミッドチルダへ……
職歴は二等陸士がヤラかして首で終わり、銀行口座の貯金凍結つうかパァ、隠れ家はガサ入れされて権利も全て持ってかれてる。
金無し、家無し、職も無し。

後はマイケル・ウェスティンみたいにショボい仕事でも食い付く人生に……
復帰出来るとイイネ


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供養 没ネタ 異世界ファンタジー、クラス転移モノ そのよん 書きかけ


 皆が寝静まった頃、涼介は奇妙な姿になって居た。
 灰色のツナギの上から、幾つものウェビングや水筒。それに拳銃が差し込まれたホルスターにククリナイフが取り付けられたガンベルトを巻き付け、手には手の甲にプロテクターが内蔵された黒い手袋。
 靴も学校の上靴などではなく戦闘用と、一目で解るコンバットブーツを履いている。
 まるで、戦争に参加する様な出で立ちであった。
 そんな姿の涼介は学校のワイシャツとズボンを畳み、上履きと一緒にバックパックへと突っ込むと、脇に置いてあるフック付きのロープを手にして蝋燭の火を吹き消した。
 部屋は静寂な闇に包まれ、仄かな月明かりだけを頼りに窓辺へと赴く。
 窓の脇から静かに外を伺う。外は真っ暗で、何も見えなかった。

 灯りは無い。まぁ、見上げたとしても、雲で月が隠れたから直ぐには気付かれねぇな……

 昨日の夜、外を眺めて巡回の兵士達を観察し、彼等が夜の巡回で灯りを手に歩き回るのを知って居た涼介は、窓を開けて枠にフックを引っ掛け、ロープを静かに地面へと垂らした。
 それが終わると何故か、囁くよりも小さな声で数を数え始める。

 「1……2……3……4……5……」

 5秒数えた涼介は深々と鼻から息を吸い始めたら。これ以上吸えないくらいに吸ってから息を止める。
 今度は頭の中であるが、再び、5秒数えた。息を吸った時と同じように5秒後、口から息をゆっくりと吐き出した。
 10秒ばかりかけて深呼吸して頭の中に酸素を送れば、意識が鮮明になって目の前の事への集中する。
 ロープを掴んで窓の外へと出るや両脚にロープを絡め、滑る様に降りて行く。
 夜風に晒され、月明かりに照らされながら、寒さと共に揺らされつつ地面へと近づきつつあった。そうして、地面に降り立つと涼介はロープを大きく振るう。
 すると、フックが窓枠から外れ、シュルシュルと音を立てながら落ちて来る。其れを危なげなくキャッチした涼介はロープを巻いて縛り、バックパックのサブポケットへと戻した。

 さて、行きますか……

 月明かりに照らされ歩みだす。昨日と今日を使って頭に叩き込んだ道順に従って進む。
 途中でランプの灯りを見ると、建物の陰へ向かって静かに走り、伏せる。少しすると、手にランプとフィアナが持っていたのより一回り小さなハルバートを携え、寒そうに身を震わせながら周りを見回す二人の騎士の姿があった。

 「クソ寒いぜ……何だってこんな日に見張りになるんだ」

 「全くだ。さっさと終わらせて、火酒呑んで寝ようぜ」

 王家の紋章が大きくデカデカと載った白い外套を纏って風を遮っても、隙間から入る夜の風の冷たさは辛い。甲冑と鎖帷子……二つの金属を纏ってるならば、尚更だ。
 二人の会話の内容には、地面に伏せて冷やされる涼介も心の中で同意する。

さっさと行け、ボケが……

 寒さが身を震わせ、歯を打ち鳴らしそうになる。
 歯を食い縛り、寒さと地面の冷たさを堪え、我慢すると緊張で絶え間無く脈動する心臓の鼓動が段々と大きくなった。

 「……何か聞こえなかったか?」

 その一言で涼介はビクッと驚いてしまう。それと同時に"緊急措置"の為に袖口に仕込んだ薄くて細長い金属の板を留めるストラップを音を立てぬ様、静かにコッソリと外して手に持った。

 狙うなら顔面か?

 騎士の姿を思い出すと、静かな溜め息が漏れた。
 城の兵士達は鎖帷子を下に着込み、その上から甲冑(プレートメイル)を纏って居た。
 金属の板を叩で造られた甲冑と細かい鎖を編み上げて造られた鎖帷子が、涼介が手にした金属の板……スローイングナイフを投げられても貫かれる事は、あり得ない。
 甲冑と鎖帷子の組み合わせは、腰のホルスターに差し込まれたホローポイント仕様の357マグナムが6発装填された3インチバレルのリボルバーであっても、貫くのは難しい。涼介は、そう思えた。
 そうした要素を鑑みて考慮すれば自然と狙う所は暗闇であるが故に、視界確保の為、開かれたフェイスガードから露出された顔しか無いのは明らかであった。
 涼介がどうするか? 刹那にも満たない間に考えてる時にも兵士達は、夜の闇に覆われる所を灯りで照らし、何度も見渡す。
 すると、金属同士が当たり、擦れる音の混じった足音が近付いて来た。
 緊張感が一気に増す。
 「近付いて来た奴を見付かる前に殺せ」 と、焦りが騒ぎ立てて来る。必死に自制心で焦りを抑え込みながら殺せる様、ソッとククリナイフに手を伸ばした。
 その間も騎士は歩みを止める事無く聞き耳を立てながら周りを見回す。そう時間も掛からず、涼介の間近まで来た。その瞬間……
 いきなりバタン! と、大きな物音がした。

 「何だ!?」

 騎士がビクンと音に驚くと、もう一人やって来た。ククリナイフとスローイングナイフを手に様子を伺い、機会を図ろうとする。
 今度はギィィと擦れる音がして、また、バタンと叩き付ける音がした。
 二人は音のする方に向く。

 「脅かしやがって……」

 向こう側の一人が馬鹿馬鹿しい。と、言わんばかりに言う。それには手前の一人も、同意する様な溜め息を吐いた。

 「侍女の誰かが閉め忘れたんだろ……何も無かったから良いじゃねぇか」

 音の正体は雨戸であった。兵士の言う通り、恐らくだが誰かが閉め忘れたのだろう……
 それが解ると、二人は再び巡回に戻った。灯りと足音が遠退き、見えなくなった所で涼介は大きく嘆息を漏らし、小声でボヤく。

 「危なかったぁ……つうかヤバい、身体が冷える」

 ナイフを静かに納めると、また5秒数えてから息を大きく吸う。で、また5秒したらゆっくりと息を吐いた。すると、うっすらとした仄かな明かりが上から射しと来る。
 見ると、ランプを手に開ききった雨戸を閉めようとするメイドの姿があった。メイドは錆びた金具を喧しく鳴らし、雨戸を閉める。
 それを見ると、涼介は静かに進みだしたのであった。





 夜、自室でワインを一口飲み、寛ぎながらクヌートは窓の外を眺めてから破かれたメモ用紙を眺めて居た。
 後ろにはメイド達を束ねる婦長だけでなく、河原で涼介と話をして居た()()、それに井戸でメモ用紙を受け取った()()()が虚ろな目をして何故か控えて居る。

 「3日か4日って話だけどさ……」

 婦長の提案をクヌートは苦笑いする。
 強大な力が自分達へ向けられないよう、召喚した時に暗示を掛け、更に呪いも掛けて自分達の命令に従うようにした。
 だが、独りだけ呪いが掛からなかった。
 魔力の無い無力な者であるから気にする必要は無い。
 念のため、召喚した日に涼介の親しい者達を見付け、こうして秘密裏に何を考えて居るのか? 聞き出したのであった。

 「メイドから聴いたが、眠る時も奴は湾刀を手離してない。多分、寝込みを襲おうとしたら手痛い反撃を受けるだろう……」

 一度だけだが、刃を交えたからこそ解る実力からクヌートは、独りを殺す為に無駄な死者が出るのを恐れていた。
 それを聞くと、婦長が提案を述べる。

 「ならば、あの者にとって大事な者に殺らせるのは?」

 「……確かに油断を誘うには良さそうだけど……」

 婦長の提案を反芻する様に考えると、扉が叩かれる。
 「入れ」 と、返せば「失礼します」 との言葉と共に一人のメイドが入って来た。

 「奴が動き出しました。現在、外に向かってるとの事です」

 事務的な報告を聞くと、クヌートは婦長に命じる。

 「婦長、すまないが彼の大事な女性を連れて来てくれ……彼の願いを叶えてやろう」

 人の良い笑みを浮かべると、杯に残ったワインを飲み干して立ち上がった。



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供養 没ネタ 異世界ファンタジー、クラス転移モノ そのご


 地下道は一片の明かりの無い暗闇であった。カビや湿気、それに微かに残る腐敗臭漂う濁った空気に間違えようのない懐かしさを感じながらも涼介は手にはリボルバーを握り、頭に取り付けたのスイッチを入れる。
 文字通りのヘッドライトとして周りを照らし、観察しながら歩き始める。

 コンクリート? それに、配管が通ってる……
 地上とは時代レベルがまるで違う……

 ふと、頭の中で荒れ果てた世界に居た時の記憶が甦る。
 暗闇と言う原初の恐怖や足元に転がる白骨死体を見ても懐かしさを感じてしまうあたり、自分は何処か可笑しいのだと自虐的に笑ってしまった。
 だが、獣の唸り声を耳にすればそんな懐古の気持ちも消え、即座に警戒心が跳ね上がる。
 足音が近付いて来る。音が壁や天井に反響し、段々と大きくなると、撃鉄を起こしたリボルバーを握る手に自然と力が入る。
 すると、明かりに照らされて足音の姿が露となる。
 20m程先に居たのは、生気の感じられない青白い肌。餓鬼の様にポッコリと膨れた腹をした、細くて小さい触手を何本も生やし、嫌悪感をもたらす顔をした二足歩行する子供ぐらいの背の獣であった。
 だが、獣は明かりが眩しいからか、悲鳴にも似た咆哮を挙げると涼介の方へ手を伸ばして背けた顔を隠した。

 「お前かよ!? クソッタレ!!」

  その獣を知っていた涼介は怒鳴るように悪態を吐くや、リボルバーを両手で構えたと同時に引き金を引いた。
 銃火が周りを一瞬だけ照らし、銃声が通路中に反響し、鼓膜が殴られたような痛みと共に耳鳴りがする。それと同時に獣の胸にホローポイント弾が当たり、花が咲いて散ったかのように血が飛び散った。
 カン高い悲鳴が獣から上がり、押し倒されるように地面に倒れ込むと、涼介は駆け出す。その途中で、獣が胸から血を流しながら立ち上がろうとすれば、足を止めた。
 立ち上がったとほぼ同等のタイミングで獣の顔面へ照準を合わせ、引き金が引かれる。銃声と共に弾は鼻の上に当たりれば獣の頭は弾け、倒れた。

 何だって、アンダーウォーカーが居るんだ!?

 アンダーウォーカー……それが初めての異世界での獣に対する呼び名であった。

 奴等は一匹で行動しねぇ……確実に近くに仲間が居る。

 アンダーウォーカーは群れで行動する。獲物を襲う時も、仲間と狩りをするのだ。
 その証拠に幾つもの足音がする。
 涼介は未だ姿が見えない間にリボルバーのシリンダーを開け、撃鉄を叩き付けられた跡残る空薬莢を捨てて2発の357マグナムを詰めて臨戦態勢になる。
 すると、今度は3匹現れた。

 弾は残り53発。撃ったら終わり。
 後は、ククリだけだが……

 「来るなら来やがれ!! 俺は只じゃ死なねぇぞ!!」

 まるで恐怖を払おうと鼓舞し、空元気を見せるかのように怒鳴り散らす。すると、三匹が駆け出した。

 先ずはお前だ。

 右膝を立ててしゃがむと光を一匹目に当てる。
 元々こうした光の無い地下や地底に住み、暗闇を見通せる目を彼等には光は目潰しとなるのだ。それ故、耐え難い苦痛を感じて動きを止めてしまう。
 その間に狙いを定め、引金が二回連続で引かれる。腹と胸に当たり、後ろへと倒れた。
 銃声の余韻が残る間、隣を走る二匹目に銃口をスライドさせ、再び撃った。
 バンバンと銃声がすると二匹目の腹が爆ぜ、血を撒き散らしながら倒れる。しかし、二匹目を仕留めたのもつかの間。
 三匹目が飛び上がり鋭い牙や爪で食い付こうとして来た。
 涼介は即座に後ろへ倒れる。牙と爪が空を切ると、右足を振り上げ三匹目の腹を蹴ると同時に顎下から銃口を押し当て、引金を引いた。
 血飛沫が顔に掛かり、獣はグッタリと倒れ込むように涼介へもたれ掛かる。

 「くせぇんだよ、テメェ!!」

 罵声を物言わぬ屍に浴びせてからアンダーウォーカーを脇に退かして立ち上がると、大きな溜め息を吐いた。
 生き残った喜び甘受するより、顔に浴びた血を拭うよりも前に次に備える為、空薬莢を地面に落として弾を新たに装填する。
 次に備えると漸く顔の血を手で拭い、口に入った獣の血を唾と共に吐き捨て、耳に指を入れてボヤき始めた。

 「クッソ、耳痛い……バックパックがクッションになってくれなかったら背中痛めてたなこりゃ」

 サラトガスーツと呼ばれる上下一体の戦闘服の埃を払わず、先へと進む為に歩み出した。




 地下道はアンダーウォーカーや鎧を纏った白骨死体 で溢れていた。
 途中、死体の脚の骨を拾い上げ、鎧を剥ぎ取り下にあるボロボロの服を破って骨に巻き付けた。ライターで火を点せば、腐敗した際に染み込んだ死体の脂が燃料となって燃え上がって松明になる。
 炎の灯りとライトで周りを照らしながら進むと、何度かアンダーウォーカーに襲われた。
 松明と一緒に手に入れた錆びだらけのメイスで殴り殺した。炎と灯りで怯ませ、メイスを振るって頭を殴り潰せばアンダーウォーカーも簡単に殺せる。
 少し重いが、命には代えられない。
 そうして野蛮に探索しながら暫く歩くとライトの明かりが弱まりつつあった。

 涼介は松明を放り投げて棄て、地面に座ると壁に寄りかかる。バックパックを下ろし、中から玲奈に貸した充電器を取り出した。
 充電器のコードをライトに繋ぐと、ハンドルを握り始める。
 ハンドルが握られる度に中のダイナモが回り、電圧計の針が動いて弱まっていたライトの明かりが最初の時みたいに改善される。
 針がフルを示すと充電器をバックパックの中へと戻し、大きな欠伸をした。

 「疲れた……眠い」

 夜に寝ていた所を叩き起こされ、城から追い出された事もあって眠気が酷かった。だが、こんな所で眠れば獣に食い殺される以外の未来はない。
 故に落ち着いて眠る事は出来ない。が、休憩することは出来た。

 「しっかし、妙だな……アンダーウォーカーごとき、兵隊揃えて狩れば簡単なのに何でやらない?」

 途中で見掛けた騎士団の一員であろう兵士の白骨死体を見ると、奇妙に感じた。
 確かにアンダーウォーカーは暗闇に紛れ、優れた俊敏性や筋力でもって獲物を群れで狩る。だが、灯りとクロスボウや槍があるならば、何人かの犠牲が出るだろうが殺せなくはない。
 時間と人手を掛ければ、この地下道を万一の際に於ける脱出路として使える様にするのも可能なのだ。しかし、其れをしなかった。
 しなかったからには、理由があるのは明らかだ。
 だからこそ、その理由に涼介は疑問を感じて居た。

 確かに壁は地上の造りとは違う。どう見ても、コンクリートだ。それに配管が通っていた……
 確か……連中、此処を暗黒時代だの、古代に作られただの言ってたな。

 そう、今いる場所は明らかに地上の城と造りが違った。地上の造りが中世ヨーロッパだとするなら、この地下道は現代の地下鉄と言うべきだろう。
 だからなのか、ふと変な予想が頭に浮かんだ。

 此処は実はあの世界だったりしてな……
 滅亡一歩手前まで人類が死にまくったからあの世界と言うか、惑星の自浄作用が進んで、数百年たって自然は元に戻った。
 文明は逆行して生態系も一新されて、魔族やら獣人やらが産まれた。無論、人類も何とかしぶとく生き残ってファンタジー世界に……

 「無いな。眠気が酷いし、疲れてるんだ……じゃなきゃ、こんな妄想する訳が無い」

 自分で想像して「コレは無いわぁ」 と、ボヤくとポケットからミントのガムを出して口に放り込んで噛み始めた。
 ミントの爽快感が喉の渇きを癒し、眠気を僅かだが和らげてくれた。それから立ち上がってバックパックを背負い、血濡れのメイスと松明を持って再び歩き出す。
 景色の変わらぬ暗闇の中を歩いてる途中、小さな部屋を見付けた。出入口は鉄製の扉で固く閉ざされており、押しても開かなかった。引かなかったのはドアノブの様な取っ手が無かったからだ。
 扉に耳を当て、向こう側の音に耳を澄ませる。

 足音は無し。会話つうか音がしないな……

 扉の向こう側から音がせず、足音の反響も無かったからか、涼介は扉の鍵穴を照らす。

 お、向こう側見えるけど……よくわからんな。何だ?

 鍵穴から僅かに射し込むLEDの灯りに、照らされた何かが動く。涼介は即座にライトを消し、リボルバーを手にして脇の壁へと摺り足の要領で移動した。

 「……け……」

 鍵穴からか細い声がした。更に耳へ神経を集中させて聞き取ろうとするが、声は聞き取れない。
 静かに深呼吸した涼介は慎重に扉へ近付き、鍵穴にくっ付ける形で耳を押し当てた。

 「たす……け……」

 それは子供の声であった。しかも、女の子だ。
 だが、涼介は見棄てようとした。扉一枚隔てた向こうで、泣きじゃくる様に助け求める女の子を助けようと思わなかった。

 今の段階で誰かを助ける余裕は無い。

 「どうせ、殺すんだろ?」

 男の声がハッキリと聞こえた。涼介は暗闇の中を見回す。だが、気配は無かった。
 細かな砂利や小石、白骨死体の欠片を踏むような足音も無い。
 リボルバーの撃鉄を起こすと、ふいに後ろから足音がする。銃口と共に振り替えると、髪をバンダナで纏め、顔に大きな傷のある血走った目をした20台後半から30台半ばだろう男の姿があった。

 「俺の時みたいによ?」

 にこりと不気味に笑みを溢す目の前に居る男に涼介は、ウンザリとした表情を思わず浮かべてしまう。
 男はそんな涼介へお構い無しに語りかけ、歩みを進めた。

 「お前に関わる奴等、何人も何人も死んでるよな? お前と関わった為に殺されちまったり、見殺しにされたり、お前が殺した(・・・・・・)り……」

 涼介の肩に手を置くと、言葉が続けて紡がれる。

 「どうせ、扉の向こうに居るガキも俺みてぇにころ……」

 その瞬間、男の顔面目掛けて左(フック)が叩き付けられようとした。だが、左拳は空を切る。
 男の姿は無かった。ライトで周りを照らし、見回しても姿は無い。影も形も、足音に臭いすらなかった。
 まるで、幽霊か幻のようであった。

 「疲れてんだ。じゃなきゃ、幻聴とか幻覚とか殺したダチなんて見ねぇよな……」

 それは自分に言い聞かせるようであった。だが、実際に自分の手で殺した仲間を見て、その相手から心を見透かした様に語りかけられる。
 そんな体験をすれば、疲れて幻聴と幻覚を経験してる。
 そう思わざるえなかった。
 それ故、休む場所として目の前にある部屋が使えないか?
 考え、扉を破る為に改めて観察を始める。

 この扉なら行けるな。

 松明を投げ、メイスを落としてからバックパックを下ろし、ライトで照らしながら出したのはバールであった。
 両手で持つと深々と息を吸う。

 「今から扉を破る! 変な真似したらブッ殺すからな!!」

 向こう側に聴こえるようにする為なのか、大声で叫ぶ。折れ曲がって無い方の端を両手で持つとバッティングの要領で振りかぶって構え、腰を入れてスイングした。
 耳障りな音がすれば、隙間にL字に曲がった方のバールの刃先が突き刺さる。手を離しても、深く刺さっているからか落ちなかった。
 そうして手を離した涼介は立ち位置を変えた所で両手で握ってた部分を掴み、後ろへ倒れ込む様に体重を掛けて引いた。
 すると、扉と扉を囲う枠組みの金属が嫌な音を立てて大きくひしゃげる。それを見ると満足した表情になって喋った。

 「支点、力点、作用点。テコの原理は扉を破るに便利だよなぁ……」

 小、中学生の頃に学んだ原理を実践した涼介は、バールをバックパックに戻すと扉の前に立つや思い切り蹴り付けた。
 何度も蹴ると、固く閉ざされていた筈の扉がバン! と、言う大きな音と共に意図も容易く開いてしまった。涼介は右手だけでリボルバーを構え、反対の手に握り締めたLEDの懐中電灯のスイッチを入れる。
 中が照らされる。部屋を見ると壁と床、それに天井と部屋全体に何かの彫刻が施されていた。そんな部屋を不気味に思いながら、怪しいモノが無いか?
 更に周りを照らす。部屋の中央には、床の鎖に両手と首を拘束する大きな板枷で繋がれた、くすんだ長い銀髪の小さな少女の姿があった。

 「ま、まぶしい」

 声の主である少女は、強い明かりを浴びせられて小さな手で光を遮ろうとする。
 だが、そんな姿を見ても気にせずに明かりを当てたまま、唐突に自己紹介を始めた。

 「俺は榊原涼介……呼びにくいなら、サカキで良い。君の名は?」

 穏やかな口調だが撃鉄の起きた銃口を向け、引金に掛かった人指し指に力を軽く込める。たった、それだけで目の前に居る少女を殺せるようにして居た。
 そんな涼介の様子に気付いてか、気付かずか……
 少女は無愛想に答える。

 「…………名前なんか無い」 

 「なら、なんて呼べば良い?」

 「……好きに呼べばいい」

 淡々と無感情に答える少女に対し、何か良い呼び名でも無いか? 考え始めた。

 まさか、吸血鬼ってオチはベタベタ過ぎて無いよな?

 アニメの様な設定が浮かび、思わず「お前、吸血鬼だったりする?」 そんな冗談半分の問いを投げ掛ければ、少女はビクッと反応した。
 少女の態度に「マジかぁ……」 と、ボヤいた所で、バックパックを背負い直し、部屋の中へ足を踏み入れる。
 慎重に歩みを進め、脅威が無い事を確認してから、少女にまた銃口を向けた。だが、近付いて少女の様子を見た涼介は銃口を下ろした。
 懐中電灯のスイッチを切ってポケットに戻すと、ヘッドライトのスイッチを点ける。

 物語とかだと「封印されてる」 そんなパターンだよな、コレは……
 コイツが何やらかしたか知らんけど、ヒッデェ有り様だ。

 この部屋の臭いは酷かった。恐らくだが、意識がハッキリとした状態であるが故に生物としての生理現象だろう……
 しかし、そんな状態の少女へ気にせず近付き、くすんだ白くて細い腕に取り付けられた不似合いの板枷を照らして見ると、不可解な気持ちになった。

 鍵穴が潰されてない?
 封印なら、鍵穴埋めて開かない様にすんだろ?
 それをしないって言う事は……コイツに何かしらの利用価値が有る。って、事か?

 テキトーに考えながら鍵穴に細いピンを突っ込み、ガチャガチャとピッキングする。少しすると、嘘の様に枷を閉じる鍵が外れた。
 驚く少女を他所に脚の鉄枷の鍵もピッキングする。
 10分もすれば、少女の戒めていた枷が外された。

 「どうして?」

 怪訝な表情で少女は、問い掛けて来る。しかし、涼介は答えない。
 しゃがんだまま、バックパックを下ろすだけだ。
 中から茶色い血の跡が残るワイシャツを出すと、少女へと差し出す。

 「取り敢えず、コイツを着ろや……で、俺は寝る」

 そう言って立ち上がり、部屋の奥へ行くとバックパックを投げる様に地面に置く。その後、直ぐに部屋の外へ出た。
 数分後、腰のベルトにメイスを差し、ボロボロの布を手にアンダーウォーカーの死体を引き摺って戻って来た。

 「……何をするの?」

 少女はワイシャツを手にしたまま、恐る恐る尋ねる。

 「灯りの確保だ」

 そう言うと、涼介は拾い集めて来た死体の服だった布を松明の炎で燃やした。
 部屋の中が炎で赤く照らされる。明かりを確保すると、涼介はククリナイフを抜いた。

 「な!?」

 首を傾げて居た少女は驚きの声を挙げた。彼女の目の前で涼介は、アンダーウォーカーの首元へ刃を縦に突き入れ、腹部の方へと切り裂く。
 床に血が滴り落ちる。少女の畏怖の混じった視線、嫌悪感に動じる事も無く慣れた手付きで肌を一通り切り裂いた。

 「さて、皮剥ぐかね」

 切れ目に指を入れて肌を掴むと、子供の服を脱がせるかの様にスルスルと皮が剥がされる。
 少女は思わず目を背けてしまった。その間にも、涼介は鼻歌混じりに皮を剥ぐとククリナイフを器用に扱って白い物……脂肪を子削ぎ取る。

 「上手に剥げました」

 そんな言葉と共にククリナイフの刃にこびり着いた脂肪を炎の中へ落とした。
 脂肪を呑み込んだ炎は大きくなる。そうして、更に明るくした所で涼介が少女の方へと歩み寄って来る。
 少女は思わず身構えてしまう。だが、炎で不気味に照らされる涼介は少女の脇を通り過ぎた。

 「干からびたウンコも燃料になるんだ」

 笑って言うと、地面に落ちていたそれ等を足でかき集め、炎の中へと入れた。

 「着ないなら返せ」

 バックパックを脇に置いて座った涼介は、得体の知れない自分に警戒する少女へ、手を伸ばして言う。すると、少女はワイシャツを素肌の上から羽織り、ボタンを留めてく。

 「さて、君が何者かは知らない。それにどうでも良い……」

 穏やかだが、冷たく言い放つ。少女の腹からグーっと音が鳴る。
 そんな音を聴いても涼介は気にせず、メイスを脇に置いて水筒の水を飲んでいた。

 「飲むか? 血じゃないけど」

 水の入ったカップが差し出される。少女はそれを手に取ると、喉の渇きを潤して行く。
 カップの水を飲み干すと返して来た。受け取った涼介は水筒の下部に重ねてから、腰のカバーへと戻す。
 そして、横になるやらホルスターに戻していたリボルバーを顔の近くに置き、目を瞑った。
 そんな様子に戸惑い続ける少女へ、声が掛けられる。

 「あ、何処か行くなら扉は閉めてくれるか?」

 「…………行く所無い」

 「そんなの知らん」

 枷を外した張本人は、無責任かつ身勝手にも少女を突き放す。
 涼介は少女を助けようとした訳じゃなかった。ただ、休息の為に眠れる場所が欲しかっただけで、少女の事は心の底からどうでも良かった。
 ワイシャツを羽織った少女は、出入口まで歩いた。
 このまま、足を踏み出せば自由になれる。にも関わらず、少女は踏み出そうとしなかった。
 扉を閉め、地面に横たわる。
 何時もと違い、鎖の耳障りな音も、枷の固く冷たい感触も無かった。
 そんな解放感のお陰で、少女は安らかに眠る事が出来た。



考えてたんは、銀髪ロリを拾う話。
テンプレで封印されてる娘でまぁ、ロリババアだ。のじゃロリにしようかと思ったけど……
とりあえず、獲物の皮剥いで、脂身を削って淡々と解体する主人公にドン引きしてる。とりま、何でこんなの書いたんだろう(遠い目


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IS 試作品 その2?

書けたから投げた。特に意味は無い


 トルコ、アンカラ郊外のオープンカフェは観光客や地元民達で賑わっていた。
 そんなカフェの席でサングラスを掛け、頭には麦わら帽子を被って白のサファリジャケットにジーンズと言う姿の綾が静かにトルココーヒーを飲み、本を読んで居た。すると、前の席に白の帽子に女物の薄い水色のワンピースを着た少女が座る。

 「久し振りね」

 その少女は「三ヶ月ぶり」 書かれた扇子で口許を隠し、声を掛けて来た。綾は本から視線を外さず生返事の如く返す。

 「仕事なら断った筈よ」

 「でも、今の綾ちゃんに仕事はあるのかしら?」

 本を捲る音が止まる。周りは人々で賑わっていると言うのに何故か、静寂が場を支配する。
 そんな静寂を破るかの様に少女もとい更識楯無は話を更に続けた。

 「聴いたわよ? 政府軍が負けて、綾ちゃんに指名手配が掛かった事……」

 中東某国での内戦はロシア軍の働きもあり、政府軍の敗北で幕を閉じていた。それ故、政府軍側で戦って居た綾を初めとした傭兵達は罪を着せられ、テロリストの烙印を押され大半が処刑された。
 幸い、あの中佐は逃げろと言って皆を解雇。其々の戦闘機に乗って傭兵達は逃走を図ったが、大半がロシアと反政府合同の空軍戦力に撃墜された。
 この時、綾もISで多数の戦闘機を叩き落とし、ロシア軍のISにも追跡され死闘を繰り広げた。そして、何とか生き延びてトルコに潜伏していたのであった。

 「私に雇われるなら、ロシアからの指名手配は無くせる」

 そんな綾へ見返りを並べ始めた。
 更識の言う雇用された際の見返りは、ロシア軍から奪った件やテロリストとしての指名手配を消す。他にも、関与した武器密輸に虐殺の件を司法取引と言う形で減刑すると言う話であった。

 「無論、雇用期間の間は給料を支払うし、衣食住の保障もするわよ?」

 「断ったら?」

 「私は何もしないわ。ただ、恐いオジサン達が貴女を大使館に連れ込んで乱暴するでしょうね」

 チラッと後ろを見れば黒塗りのベンツが路上に停まっていた。
 ベンツのウィンドウが開く。中から刈り上げた金髪にサングラスのスーツを纏った男が此方を見て来た。

 「…………FSB?」

 「ご想像にお任せするわ」

 断れば、スペツナズ上がりの紳士達がロシア大使館へ招待し、治外法権の大使館で丁重かつ熱烈な()()をしてくれるのは明らかであった。
 溜め息を吐くと、綾は胸ポケットに入れていた銀色のシガレットホルダーを出し、テーブルに置いた。中に詰まってたマルボロのメンソールを手に取り、くわえると火を点して紫煙を吐き出す。
 更識がメンソール混じりの煙にウンザリしてるが、綾は何処吹く風と言わんばかりに紫煙を燻らせ、コーヒーを飲む。

 「で、どうするのかしら?」

 この時の更識の表情は、殴りたくなる程の笑顔であった。




 清潔感よりも無味乾燥。未来的だが、人間味の感じられないIS整備用のハンガーでツナギ姿の綾は脚立に乗って目の前に佇む愛機アバローナの点検を行っていた。
 アバローナは普段の様な重装甲は全て取り外されており、綾は頭に付けたヘッドランプでアクチュエーターを照らしながら工具と測定機材を手に作業をする。
 そんな綾の様子を見ると、更識は呆れ気味に声を掛けて来た。

 「うちのスタッフを信用してないのね」

 「命預けてるからね、点検は大事よ」

 顔はアクチュエーターに向けたまま、作業を続けながら返す。幾つもの戦場をアバローナと共に潜り抜けて来た綾にすれば、これは日課みたいなものだ。
 幾ら、絶対防御でパイロットの命が守られてる。絶対に壊れないと言われるISであっても、整備不良は起こるのだ。
 実際、綾も整備不良で命を落とし掛けた事がある。それ以来、綾は整備が行われる時は可能な限り立ち会うし、こうして点検する様にしてるのだ。

 「右側は良し」

 右側の上腕、前腕、それにゴツゴツとした手の点検を終わらせると、綾は機材一式をダンプバッグに納め、脚立から降りた。
 それから、脚立を持ち上げると左側へと赴く。そして、先程までと同じように点検を続ける。

 「ねぇ」

 「何かしら?」

 「何だって、私みたいな一山幾らの傭兵を雇おうとしたの?」

 それは初めて出会った時からの疑問でもあった。
 わざわざ、日本から遠く離れた中東までやって来て雇いたい。
 待遇もそれなりに良くする。
 たかが傭兵を雇うには破格過ぎる条件を揃える更識を綾は怪しんでいた。

 「言っちゃなんだけど、私は超絶厄ネタよ? 国際指名手配も喰らってるし」

 「だから、良いのよ……人殺しをしても平気な程度に暴力に長けて、裏にもそれなりに明るい。何より、死んでも気にせずに済むじゃない」

 更識は『使い捨て』 と、書かれた扇子を広げて見せて笑顔で告げる。それを見ると、綾は苦笑いを浮かべてしまった。
 だが、基本的に傭兵は使い捨てが当然なのをよく理解してるからか、綾は気にしなかった。

 「正直に言うわねぇ……嫌いじゃないわ」

 「それは良かった。貴女、嫌いな奴を暗殺しそうだし」

 「そんな事しないわよ……嫌がらせ程度に、盗んだ車で轢き逃げする程度よ」

 そう返すと、更識は苦笑いしてしまった。それから、暫くすると、アバローナの点検が終わり、全身を鎧う戦車にも使われる複合装甲が取り付けられる。
 そして、メインアームである天井から伸びるウィンチに吊るされた30㎜ガンポッドを右腕に取り付けようとした所で、更識から声が掛けられた。

 「あ、それは無しよ」

 「……何で?」

 「一応、ここは学校だからね? 悪いけど、チャフやフレア、スモークも禁止よ」

 「なにそれ? 何のジョーク? 50口径オーバーの銃弾使うのに?」

 スポーツ用と名を打っているが、ISが使用する機関銃は今尚使用されるM2ブローニングやDshkと言った50口径よりも口径が大きく、対空機関銃であるZPUシリーズとも威力が遜色無い機関銃ばかりなのだ。人間に撃てばB級スプラッター映画の如くグチャグチャなグロテスクな死体拵える事が出来る。
 更に言うならば、小型とは言え、ミサイルや砲も使用する。同時にそれらは、戦場で使用される一部のISが人に向けて放たれている。同時にそうした兵器で人殺しをした綾だからこそ、雇い主からとは言え、そんな馬鹿げた命令を聞き入れる気は毛頭無かった。
 だからだろう……

 「グリンゴ、イワン、フロッギー、ボッシュにジョンブル、チノ、ジャップにジューが兵器転用しなくなったら考えるわ」

 侮蔑込めた物言いをにこやかな表情で告げると、そのままリモコンを操作し、吊り下げた30㎜ガンポッドの高さを合わせ、右腕に取り付ける。各ジョイント部分をレンチで締め、先程まで使ってたレンチと同じ径のソケットとエクステンションをキャスター式の大型工具箱から取ると、トラックの大きなボルト締めに使われる大型のエアインパクトレンチにセットした。

 「うん、良い感じ……」

 エアインパクトレンチのトリガーを引く度、コンプレッサーから送られる圧縮空気によってソケット部が目にも止まらぬ早さでギュンギュン回る。そんな工具に満面の笑みを浮かべると、ジョイント部のボルトに突っ込んでエアインパクトレンチのトリガーを引いた。
 ガンガン喧しく鳴る度、ジョイント部分のボルトが締まって行く。少しすると、エアインパクトレンチは停止する。
 だが、作業の手は止まらない。綾は慣れた手付きでボルトを締めると、エアインパクトレンチを作業台に置いた。

 「次はトルクレンチ?」

 「流石、一人でIS組み立てた生徒会長さん」

 にこやかに肯定すると、エアインパクトレンチに取り付けていたソケットとエクステンションをトルクレンチにセットし、グリップの底、ダイヤルになってる部分を回し始めた。
 規定のトルクで締め込んでると、暇をもて余したのか更識が問い掛けて来る。

 「ねぇ、自分の両親を調べようとは思わなかったの?」

 「思わなかった。と、言えば嘘になるわ……」

 ガチンとトルクレンチを鳴らし、ジョイントを締め込みながら綾は返す。

 「で、調べたけど私の名前自体偽名でさー、存在しねぇでやんの。指紋を検索したら中国のパスポート名で犯歴登録されてるし、その名前も偽名。手掛かりは何一つ無いからねー、両親が何者かすら解らんしねー」

 他人事にも似た笑い話の様に言ってるが、内容はブッ飛んでいた。
 記憶が無い故に両親の顔が思い出せない。そればかりか、自分の本当の名前さえ解らないのだ。

 「それでも、捜そうとは思わなかったの?」

 「そんな暇も金も無いわ……ポリに指名手配されて、戦場で毎度殺し合い。カネ稼いでも、コイツの整備や生活費、口止め料とかで飛
ぶからシカタナイネ」

 世知辛い生活を理由を答える。綾は嘘は吐いてなかったのは、更識でも理解出来た。
 だが、世知辛い理由とは裏腹の笑顔の裏に哀しい感情が少しだけ覗いているのを見逃さなかった。

 「契約期間終了した際のボーナスとして、貴女の本当の名前を捜してあげましょうか?」

 「……名前なんて無くても、幸せよ? 私は名前の無い怪物ですもの」

 チェコで読んだ古い絵本を思い出し、綾は引用して返すと整備に使用した工具を拭き清めて片付け、整備ハンガーを後にするのであった。
 



名前のない怪物。MONSTERから引用……
実際、偽名多数のジェイソン・ボーンみたいなスパイも基本的に"名前の無い怪物"だよな?え?違う?

まぁ、良い。

連載はしてる体裁だけど、書いては投げる程度だからね。しゃあないね……
本格的に書きたくなったら、此処じゃなくて新規に投稿するけん。

機体はボロボロだったけど、学園でレストア。ロシアはファングクェイクやラファール、中国軍のISや英国軍の機体、その他諸々の機体に各国通常兵器とやり合った時のデータ収集して貰ったも同然状態。
後、綾ちゃん的にコイツは死んでどうぞな犯罪者やテロリストのネタをゲット出来て諜報のテーブルでの取引材料も確保。
更識の交渉によって、学園で最新機のデータ収集出来るよの名目で貸し出し許可。持ち逃げしたら、埋め込んだマイクロチップなボムで殺される綾ちゃん。

まぁ、学園的には綺麗事抜きに荒事出来る暴力要員欲しかったのもあって、学園に。
ifで亡国に雇われるコースもスンゴクあり得る(笑)

あ、感想くださーい


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キクリン

何か出来てしまった。



 「い、イヤ……ガクト!?」

 目の前で鼻と唇にピアスをした金髪の20代くらいの男は、手に真っ赤に染まる刃を手にヘラヘラとした笑みを少女に向ける。そんな彼の足元では少女と同い年くらいだが、鍛えられて屈強な身体付きのガクトと呼ばれた青年が手を伸ばし、血を吐きながら叫ぶ。

 「逃げろ! 千花!!」

 だが、千花と呼ばれた少女は恐怖で腰を抜かしたまま動く事が出来なかった。
 男は笑みを崩さず手にした拳銃……トカレフを千花に向ける。

 「おい! そこで何をしてる!?」

 そんな時、別の男の叫び声がする。男は舌打ちすると、千花の方へと賭けだして街の雑踏の中へと消えるのであった。




 12時になると昼休みになり、皆は其々で思い思いの昼食を取っていた。校内の食堂で友人達と昼食を取る者、独り静かに取る者。
 それと同じように教室で昼食を取る者達も居る。持参した弁当を食べる者、購買で買った弁当やパンを食べる者達も居る。
 鏡高菊代もその内の一人であった。彼女は自分の席で静かに口と箸を動かし、静かな昼食を楽しんで居た。
 そんな菊代の前に後ろにメイドを控えさせる金色のスーツを纏う、額の十字傷が目立つ青年が立った。だが、菊代はそんな気にせず食事を続ける。
 出汁の効いた厚焼き卵を箸で切って、小さくしてから口に含むと青年……九鬼英雄が口を開く。

 「鏡高よ、話がある」

 そんな言葉を掛けられた菊代は、口の中の租借された物を呑み込んで箸をソッと静かに置き、お茶で流し込んでから口周りを上品に拭いた。
 それから程無くして菊代の顔が上がり、英雄の目を見据えて答える。

 「九鬼さん、後にして貰えますか?」

 その言葉に後ろに居るメイドが睨み付けて来る。
 極道(ヤクザ)である菊代が、主である英雄へ慇懃無礼に返すのが不機嫌の原因なのは明らかであった。だが、菊代は涼しい顔でコップから上がる緑茶の香りを楽しみ、一頻り堪能してから飲む。

 「相変わらずだな、貴様は……」

 英雄が言うと、メイド……忍足あずみが封筒を取り出し、静かに差し出して来た。菊代はソレに一瞬だけ視線を走らせてから、再び、英雄を見上げる。

 「この者達を知ってるな?」

 英雄の言葉に怪訝な表情を浮かべてしまった。英雄から渡された封筒を手に取り、中身を取り出す。
 それはアジア系の若いと派手なジャージを着た若者達が写った写真であった。アングルから察するに、望遠レンズ越しに盗撮されたモノだろう……
 静かに写真を眺める菊代へ伝える様に、英雄は言う。

 「その者達は……」

 「チャイマと半グレでしょ……」

 菊代は写真の者達を知っていた。それ故、何の為に英雄が食事の邪魔をして来たか?
 直ぐに理解出来た。

 「こんな奴等の為に私の食事を邪魔したのかしら? 暇なんですね、九鬼の若君様は……」

 だが、食事が邪魔される事、平和でノンビリとした学生の時間に煩わしい"裏"の話を"表"の素人から聴かされるのは、非常に不愉快であった。
 慇懃無礼に皮肉を放ち、メイドを苛立たせる。が、英雄は笑い声を挙げるだけであった。

 「貴様の領分だろう? 何とかしろ」

 言い放つと英雄は踵を返した。終始無礼な態度を取って居たからか、メイドは殺気を込めて睨んで来る。
 そんな様子に菊代は溜め息を吐いて、呆れると食事の続きをするのであった。
 それと同じ頃……親不孝通りにある無人の雑居ビルでは仕事が行われて居た。


 無精髭を生やし、髪を整えずに伸ばす薄汚ごれた格好をした見るからにだらしない姿の中年男は、硝煙立ち上るサプレッサーが捩じ込まれたノーリンコの77式を倒れた若者へ向け、引き金を何度も引く。
 プシュ、プシュと空気が抜ける音と共に肉が弾け、床に血溜まりが出来る。周りを見れば、この部屋にある死体は6つあり、その何れもが銃で撃ち殺されていた。

 「先ずは死体片付けて、次に掃除かな」

 たった今、6人の人間を殺したばかりだと言うのに、男は冷静に次やる事を呟くと、死体を大きなビニールシートにくるみ始める。
 ビニールに包まれた死体はまるで春巻の様にも見えた。そんな死体をキャスター付きの大きなトランクやボックスに詰め込むと、男はズルズルと引き摺る。
 そうして、外に路上駐車された1トン半のコンテナ車に死体を投げ込むと、鍵を閉めてボヤく。

 「後、三回往復して掃除せんとアカンとか、しんどいのぉ……」

 痛む腰を叩き、背伸びをすると電話が鳴り響く。男はポケットに入っている携帯電話を取り、通話ボタンを押した。

 「私よ」

 「私よ。って……良いんですか、こんな時間に?」

 それは男の主である少女からの電話であった。時計を見れば、12時を20分過ぎた時間。
 通りでお腹が空く。と、思うと同時に、少女は何故、電話してきたのか? 疑問を覚えた。

 「()()()()は片付いた?」

 「えぇ、今汚れた所を掃除してますわ」

 「助かるわ。引き続きお願い」 そう言って主……菊代の電話は切れた。男は携帯電話をしまうと空にしたトランクとボックスを引き摺って廃墟へと戻る。
 残った死体をヒーコラ言いながら冷凍車のコンテナに詰め込むと、モップや雑巾、犯行現場清掃に使われる洗剤と言った清掃道具で反抗現場の清掃を始めるのであった。


 川神はカネの成る木だ。
 薬を密輸するにも、盗難車を流す港として都合が良い。その上、ミカジメで潤う。お陰で私は()()()()()()()()になれた。

 鏡高菊代がチャイニーズマフィア、ロシアンンマフィアと提携してるのは、ひとえに麻薬ビジネスの為であった。確かに中国とロシアの売春婦や労働者の口入れ、中古車と盗難車並びに工事用機材の輸出等でも儲けている。
 だが、麻薬は更に儲かった。1グラム、1粒数百円から千円と少し程度の仕入値が、売りに出せば5倍から10倍で売れる。
 そして、売人を抱える組織は小数点以下の量を倍の値段で売り、金を得るのだ。
 コレこそが、何時だったかの抗争で菊代が獲た川神利権の恩恵であった。
 都内を初めとして、関東でのメタンフェタミン(覚醒剤)、ヘロインにコカイン、MDMAと言った麻薬の何割かは菊代が握っている。
 即ち、鏡高菊代こそ麻薬汚染の根元の一つであった。そんな彼女は写真を眺め、仕立ての良いスーツを着た中国人を眺める。

 コイツ、藍幇の人間だったな……九鬼にも目を付けられる間抜けなら、さっさと始末した方が良いわね。

 仮にも提携してる組織の幹部だと言うのに、菊代は牧田と川神を任せてる組頭にメールを打って命じると、お茶を飲んで静かに読書を始めた。
 小説のページを捲る音だけが耳に入る。すると、教室の扉が開けられる音がした。何故か、 賑やかな空気が静まる。
 だが、菊代の気にする事では無かった。しかし、足音は菊代の前で止まる。

 「鏡高さん、少し良いかな?」

 ひねくれた雰囲気の青年が問い掛けるが、菊代はページから目線を外さず本を読むだけであった。
 静かで、何とも重苦しい空気が醸し出され、それを小柄で艶のある黒い髪をポニーテールにした少女が見かね、声を掛けようとする。
 だが、菊代は顔を見上げて相手……直江大和を見るや苛立ち混じりに言い放つ。

 「失せろ」

 「そんな言い方は……」
 「義経、口を挟まない。当事者同士の問題よ、コレは……」

 素直で仔犬みたいな雰囲気の少女もとい源義経に穏やか克つ丁寧な言い回しで「黙れ」 そう遮った菊代は弁慶に拝む様に「御免なさい」 と、ジェスチャーで謝罪とお願いしてから大和を再び見て、言う。

 「御免なさい。言い方が悪かったわね……今直ぐに消え失せて下さい」

 「鏡高、話ぐらい聴いてあげなよ」

 パーマが掛かった様な髪をする眠たげな表情をする大柄な少女……弁慶に言われると、溜め息を吐いて大和へ改めて顔を向ける。

 「クラスメイトの頼みだから、話は聴いてあげる。でも、アンタ……未だビルのカネは払ってない事を忘れるな」





 「成る程ねー、ポン中の売人から護ろうとガクト君は撃たれて入院したから、私に情報を求めたいと……」

 「身勝手な頼みなのは解ってる。御願いだ、鏡高さん……その男と売人達に関して、知ってる事を教えて欲しいんだ」

 大和からあらましを聴くと、昨晩訪れたマルボウ(四課)マトリ(厚生省)、昼に来た英雄の訳が合っていた事に呆れてしまう。
 大和は菊代を真剣に見詰め、言葉を待って居た。

 「警察と武偵の仕事だ。セイガクが首突っ込むな……」

 しかし、放たれた答えは大和……否、生徒指導室に居る川神百代と一子の姉妹、モロにキャップ、まゆっちやクリス達と言った風間ファミリーが求めるモノでは無かった。

 「貴様には正義は無いのか!?」

 「ふん、私に正義を問う方が間違ってるのよ」

 クリスの言葉に涼しげな表情で返すと、菊代は更に続けて言い放つ。

 「人助けをしたいのは勝手だけど、他人の力を頼って『僕たち人助けを頑張りました』 って? ふざけるな……本当に人助けがしたいなら、墓まで一緒に入るぐらいの覚悟でヤりな」

 生徒指導室を出ようとすると、百代が扉の前に立った。

 「すいません先輩、通れないんですが……」

 百代が鏡高の声に耳を貸す事は無かった。
 それに対し菊代は僅かだが苛立ちを覚えて居ると、大和が声を挙げる。

 「鏡高さん、俺は鏡高さんに決闘を挑む」

 「はぁ!?」

 そんな言葉と共に学章のワッペンが生徒指導室の机に置かれた。菊代の苛立ちが更に募る。
 しかし、()()()()()()()()()()()瞬間、暴行で警察に被害届を出された瞬間、警察に逮捕される。例え、組員が代わりにヤったとしても使用者責任法……俗に言う暴対法で組長である菊代は矢張、逮捕されるのだ。

 「断る」

 それ故、答えはNOであった。

 「何故だい? 俺みたいな奴が怖いのかい?」

 その言葉を放った瞬間、菊代から濃厚な殺気と怒気が一気に噴き出す。
 皆は菊代を見るが、表情は穏やかでにこやかな笑みを浮かべて居る。だが、握られた拳は爪が皮膚を突き破らんばかりに強く握られていた。

 「すぅぅぅぅはぁぁぁぁ……OK、私の答えは此れだ」

 1台の携帯電話が取り出される。菊代は慣れた手付きで短縮ダイヤルを押し、目的の人物へと掛けた。
 目的の相手……司法の敵、頭のイカれた強盗達の首魁は、直ぐに出た。

 「おい、なんのつもりだ?」

 「アンタの土建屋って、建造物の解体出来る? 高層ビルなんだけどさ……」

 答えは返って来る事は無かった。菊代は皆に聴こえる様、ハッキリとした口調で用件を述べる。

 「私の持ちビルを一件、解体して貰いたい。前金で言い値の報酬全額、経費は全てウチが持つし、役所関係の書類もクリアしておく」

 「保険金狙いか?」

 「それと、高層ビルがゴジラに蹴飛ばされたみたいに倒壊する様が見たい」

 その言葉の意味を気付いたからか、皆はハッとした表情を浮かべ、即座に怒りに包まれた。
 しかし、菊代は素知らぬ顔で相手の返答を待った。

 「此方も忙しい……直ぐには無理だぞ?」

 「御免なさい、詳しい話は夕方にするわ」

 其処で電話を切ると周りを見回し、ニッコリ笑って問う。

 「これ以上、話す事は無いわね?」



風間ファミリー、特に大和は逆鱗にふれた模様。
多分、ガスマスク巨乳のワンワンオちゃんが超喜んで作業するでー

実は緋弾PAYDAYでは言わなかったけど、キクリンってば麻薬の元締めやねん
ヘロイン、覚醒剤、MDMA等を輸入する水源。末端の売人の一番上……他所のヤクザに麻薬を売り捌く卸売り業者。後、マランダンディが奪ったヤクも商品だったりする。売り付けて、奪わせての二重取りと言うアコギなシノギ。外道

尚、自分の組自体は売人集めて、市民に売る事はしない。けど、シマの中で売る奴はコロス。キクリンってば外道


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対魔忍しろよ(

試作品。ブッチャケ、チラ裏以下の出来……

文字通りのゴミ箱逝き



 その日の朝……
 入口に準備中の札が提げられたLONESTEAR SALOONと呼ばれる酒場の奥では、バーテン服を着た中年の男がブランドもののスーツを来た身形の良い30代ぐらいの男の写真を差し出し、男に関する事を話していた。

 「コイツが今回のターゲットだ。名前は矢神是政……」

それを聞くのは、10代後半から20代ぐらいの少女であった。
 少女は矢神是政と呼ばれた男の顔をジッと見詰めると、バーテンは話を続ける。

 「コイツは表向きは貿易とクラブ、レストランに小さな運送屋を経営するビジネスマンて事になってるが、裏じゃ、麻薬と銃、それに、魔族絡みのビジネスをしてるマフィアみてぇな野郎だ」

 少女は話を興味無さげではあるが、男の話には確りと耳を傾けていた。

 「コイツにバックと言うバックは存在しねぇ……ただ、ノマドや米連、中華。それに日本政府の高官と言った大きい所に媚売って、ゴマ擦って立場を得てる。まぁ、蝙蝠みてぇなもんだな……そのせいで、対魔忍側からもマークされてる」

 対魔忍。その言葉を聞くと、ソフトドリンクの注がれたグラスに伸ばそうとする少女の手が止まった。
 それに気付いたバーテン服の男は、やれやれと言わんばかりに話を続ける。

 「対魔忍としては魔族と結託してるわ、酒池肉林でバカにした高官連中から吸い取ったネタをノマドや米連、中華に売り捌いたり、麻薬やら何やらの汚染源になってるコイツが気に入らんて所だろう……」

 対魔忍は矢神是政と言う、ゲスな売国奴を始末しろ。そう、雇い主もとい日本政府の高官から指示が下ったんだろう事はバーテンの話から明らかであった。
 そんな話を聴いても、終始、無言で興味無いと言わんばかりの少女にバーテン服の男はファイルを差し出す。

 「それは周り(護衛)と奴のオフィスが入ったビルの青写真。警備システムはハッキリ言って鉄壁。でも、お前なら簡単に忍び込めるだろ?」

 その言葉に資料に目を通していた少女は顔を上げ、怪訝な表情を浮かべて言う。

 「……殺すだけなら、忍び込む必要は無い」

  「面倒な事にな、奴のPCからデータ引っこ抜けって話なんだ。で、奴のPCからサーバー内にアクセス出来るって具合だからよ……手始めにデータ盗んで来てくれや」

 依頼者は矢神是政と言う悪党を殺して貰うついでに、商売含めた財産や情報を奪おうと言う魂胆なのであった。
 それを聴いた少女は納得すると、ビルの見取図と眺めながら尋ねる。

 「屋上……警備会社の人間は、どんなローテーションで来るの?」

 「そこの資料にある通り、10分毎に警備員が見に来る。どのフロアの出入口にも監視カメラとIR(赤外線)センサーがある……でも、対魔忍だった」

 過去を言われた瞬間、バーテンの頬を鋭い何かが掠める。後ろを見ると、壁に1本のクナイが突き刺さっていた。

 「私は対魔忍じゃない」

 目の前に居る少女は忌々しいと言わんばかりに吐き捨てると、バーテンは謝った。

 「悪かった。で、今の所、用意しておく道具はなんだ?」

 その言葉と共にメモ書きがバーテンに渡された。いつの間にか少女が書き記した必要な道具を見ると、缶のコーラの封を開けて一口飲んでから口を開く。 

 「クロスボウだが、コンパウンドで250ポンド(約113㎏)クラスがある……コイツで良いか?」

 「そこまで強力な奴じゃなくても良い。と、言うか……コンパウンドは組み立てが大変だし、嵩張るからリカーヴタイプのクロスボウが良い」

 「手配しよう。で、矢の方もリクエスト通りの奴を直ぐに手に入れとく……で、後はデトコード(導爆線)とC4が2㎏か? これなら、12時間もあれば簡単に集まるぞ」

 「次いでに、帰りの足とハリもお願い」

 そう言って、コンクリートの壁に突き刺さるクナイを取り、ジャケットの裏に納めた少女はLONESTER SALOONを後にする。
 LONESTER SALOONの外は平和そのものであった。スーツ姿のサラリーマンやOLが道を行き交い、ドカヘルにツナギ姿の作業員が道路工事したりとよくある日常の風景を見ると、少女は溜め息を漏らしてしまう。
 だが、嘆いた所で何か変わる訳でも無い。少女は諦めにも似た表情をすると、そんな日常の中へと姿を消すのであった。




  その2日後の昼過ぎ……少女は双眼鏡を手に八神是政のオフィスが入った高層ビルを、別の高層ビルから眺めるとバーテンが用意したクロスボウを手にする。それから、鏃に有るワイヤーを通すリングにデトコード(導爆線)を結び付けると、黒く長い髪で隠れたインカムから声がする。。

 「"パパ"は恐いおじさんと、ご飯食べに出掛けたぞ」

 その言葉に返事する代わりに、インカムのマイクを指で叩くと、ビルの屋上を見下ろす様に眺める。少しすると、警備員が現れて屋上を見回り始めた。
 数分後、警備員が異常無しと判断してビルの中へ消えた瞬間、矢を装填したクロスボウを構えるや、トリガーを引いた。
 デトコード(導爆線)の繋がった矢が放たれ、瞬く間に屋上より高く飛び越え、その更に向こうにあるビルの壁に突き刺さる。すると、少女の居るビルと矢の間に1本の細い線を繋がった。

 「クロスボウは片付けといて」

 「おう……今、ウチの者に向かわせてる」

 その言葉を聞くと、クロスボウを脇に置いて少女は()()()()()()()()()()()。細い紐同然のデトコードの上を少女は地面を駆ける様に走る。
 そのまま、ビルの屋上まで駆け抜けるや、飛び降りてビルの屋上に着地すると少女が居たビルに作業服姿の男が現れ、杭に縛り付けられていたデトコードにライターで火を点けた。

 「おわ!?」

 デトコードは瞬く間に燃え、完全にこの世から姿を消した。残ったのは、向こうのビル壁に突き刺さった1本の矢と目の前にある杭。そして、放置されたクロスボウであった。
 男はクロスボウを分解すると、少女が背負って来たバックパックに納めてその場を後にした。
 その後の展開は速かった。
 パンツスーツに伊達眼鏡と言った変装していた少女は、中の雰囲気に溶け込んで監視カメラと職員、それに警備員の前を堂々と通って八神是政の執務室でもある社長室に侵入し、PCにマルウェアを仕込んだ。
 その上、マルウェアを介して専門家が八神是政のPCをハッキングしている間に金庫を見付けると、知らない筈の金庫のパスワードを入力し、中にあったデータディスク等を全て盗み出した。
 そして、2㎏のC4爆薬をデスクの中に仕掛け、時限装置を起動させる。
 社長室を後にすると、表玄関までエレベーターで降り、人混みに紛れてタクシーに偽装した迎えの車に乗り、姿を消した。
 それは僅か15分足らずの犯行であった。その1時間後、昼食から戻った八神是政は怒り狂ったまま、C4でビルのフロアごと木っ端微塵に吹き飛んだ。




 「例え、魔界医療で不死身に近い身体を持っていたとしても……2㎏の高性能爆薬の爆発を至近距離から喰らえば、再生追い付かずに死ぬわな……」

 「そう言う事……再生のコントロールを司る脳味噌を破壊しても殺せるけど、たまに脳味噌の位置をズラしてる奴も居るから、全部引っ括めて吹っ飛ばした方が手っ取り早いのよね」

 夕方のニュースで謎の爆発騒ぎの報道をテレビ越しに眺める少女にバーテンは、呆れた表情を浮かべる。

 「だけど、遣り過ぎだバカタレ!」

 ニュースでは謎のテロか? と、マスコミが騒ぎ立て消防士達が瓦礫と化したフロアから死傷者救出に奔走する姿を眺める少女は、言い訳がましく返す。

 「証拠隠滅も兼ねたかったのよ……ほら、PCや空っぽにした金庫とかフロアごと吹き飛ばしちゃえば、私に繋がる線は全て無くなるでしょ?」

 そんな答えを聞くと、バーテンは諦めにも似た表情を浮かべてしまう。

 「まぁ、良い……奴の関わってる非合法ビジネスの全て、それに裏帳簿や商品の保管場所、顧客情報に沢山の弱味……これだけでも、上手く使えば一財産稼げるな」

 バーテンは気分が良かった。八神是政のサーバーにあった情報は全て、金儲けに持ってこいな内容ばかりであった。
 直ぐにカネに変えられる違法な薬物の保管場所。日本政府や日本国内で活動する米連と中華のスパイと協力者、それに日本政府高官含めたスキャンダルのリストも有った。
 それを聞くと、少女は興味無さげにソフトドリンクを飲む。

 「今回の代金が入ったら、諸経費差し引いたカネを送る」

 「因みに幾らぐらい?」

 報酬を尋ねると、バーテンは右手の親指を立てて少女に見せた。

 「意外と多いわね……何で?」

 「気にすんな……どうせ、アブク銭だ。それに、依頼人が何者か? 気にしてねぇだろ?」

 「まぁね……じゃあ、仕事が有ったら呼んで……お金無かったり、気が向いたら引き受けるから」





 「山本長官……矢神是政の死が確認されました」

 井河アサギは、執務室でもある五車学園の学園長室で対魔忍達の後ろ楯とも言える男と電話会談していた。

 「まさか、あの爆破は君達の……じゃないな。君は無関係な人間の被害を容認する性格はしてない」

 「担当した者の報告では、サーバー内のデータは全て抜き出された上で削除されていたと……申し訳ございません」

 アサギは苦虫を噛み潰した表情を浮かべてしまう。
 犯人の手掛かりは掴めず、潜入した者達は爆発に巻き込まれて負傷。幸い、身柄の保護は山本長官の手引きで出来た。

 「君達が無事で良かった。さて、矢神に関して此方でも進展が有ったら、情報をそちらに提供する……」




書きたくなって書いたけど、全然駄目だわ(マジレス

依頼されたから、闇社会の大物クラスな住人のシノギやカネの帳簿的なのハッキングで盗ませたお
ついでにターゲットだから大物を2kgのC4で爆殺したお(
対魔忍、巻き込んだっぽいけどシラネー 頭悪いの一言に尽きる

アサギは、オコ。

設定としては、少女はアンネローゼの"リー・メイフォン"の妹。
元対魔忍なのは言うまでも無い。とりま、フリーランスの稼業人で泥棒と殺し、たまにボディーガードつか用心棒兼ねた傭兵する女の子。
術は使えない。が、特殊な能力はある……続き書くか解らんのでバラす。
能力は"遠山(土方?)遥"と同レベルのソレ。+身体能力 対魔忍(

LONESTER SALOONは七月先生の雁の巣並に信頼出来る対魔忍世界では非常に珍しいかつ、聖人て呼ばれそうなバーテンが経営するBARで、フリーランスの犯罪者達の溜まり場。
何処の勢力にも与しない中立。ただ、依頼人が居て、カネが払われるなら、勢力にカネの分は荷担するビジネスライクなスタンス

だから、対魔忍だろうと、魔族だろうと、愛国者でも、売国奴であろうと、中華だろうと、犯罪者だろうと、御館様でも関係無くカネ出す奴を客として扱う


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IS試作品のif

試作品ので、本格連載するなら此方の設定



 「良い様だな……」

 屈強な身体をスーツに押し込める、ブロンドの髪をオールバックにする30後半ぐらいの白人の男は、目の前に居る虚ろな目をした少女へサングラス越しに鋭い眼差しを向けていた。
 少女……否、結城綾は何も答えない。否、寧ろ、答えられなかった。
 綾は一糸纏わぬ、産まれたままの姿で、身体中に男の精液がコビリ付いている。そう、彼女は多くの男達からレイプされたばかりであった。
 最後の戦いで敗北した綾は、政府軍のテロリストや政治犯や戦犯等を収監する監獄の地下に囚われた。そして、こうして、無惨な目に会わされている。
 恐らくだが、死ぬまで悪趣味な看守達の性欲を満たす慰み物になるのだろう……

 「我が国の財産(アバローナ)は回収させて貰った。貴様のお陰で多数の実戦データや各国のISのデータが手に入った事には感謝する……その礼とは言っては何だが、トドメは要るかね?」

 だからこそ、ロシア政府の関係者は懐からギュルザピストルを抜き、綾に向けて「楽になるか?」 と、問う。
 しかし、彼女は虚空を向いたまま、答えようとしない。そんな時、男の後ろで扉が開いた。
 部屋に入って来たのは黒い髪の男より10ぐらい歳上であろうスーツの白人女であった。屈強な部下を引き連れ、現れた彼女を見ると男は拳銃を即座にしまうや、踵を揃えてビシッと敬礼する。
 女は右手を上げ、返礼すると綾を見下ろしながら尋ねる。

 「我が国(ロシア)の設計思想が優秀なのか、ISが凄いのか……良く、生きてるものだ」

 呆れた様に綾が生きている事に女が感心していると、AKを手にした部下達は綾を取り囲む様に配置に着き、銃口を向ける。それは何か不審な行動を取れば、即座に射殺する意気に満ちていた。
 女は見下ろしたまま、綾に語りかける。

 「本来なら、ここの連中に貴様が弄ばれる人生で終わらせてやりたい所だが……」

 其処で言葉を切ると、女は懐からシガレットケースを取り出して中から吸い口が金色の黒い煙草(トレジャラー・ブラック)抜き取り、くわえる。すると、さっきの男が恭しく火を差し出した。
 煙草から紫煙を立ち上らせる女は、部下に手配せした。すると、ピストル型の注射器を持った部下が綾の前に赴いて屈む。
 それから程なくして、部下は綾の首筋、動脈に注射器を押し付けてトリガーを引いた。


 「ウッ!?」

 呻き声と共に虚空を見上げていた綾は、死んだように頭を垂れて動かなくなった。それから、直ぐに他の部下達は綾の両手首と足首を戒める枷を外し、担架に載せてストラップで固定すると、外へと運び出した。
 そんな光景を目の当たりにした男は思わず、女に問い掛けてしまう。

 「大佐……アレをどうするつもりですか?」

 「大尉、君は昨日のニュースを見たかね?」

 「いいえ……」

 「昨日、日本でISに適応した青年が現れた。名前はイチカ・オリムラ……かのブリュンヒルデの弟だ」

 それを聞いた大尉は、大佐が言わんとしている事が何となくではあるが、理解する。

 「つまり、世界初の男性適応者がIS学園への潜入要員としてチョールト(ロシア軍の綾への呼び名)を潜入させると?」

 「不服か、大尉?」

 「いいえ。ただ……」

 「ただ?」

 「奴が裏切った際、私の手で殺せぬものかと……」

 「なら、貴様が奴の監視役を兼ねたバックアップに付け」

 「了解しました、大佐殿」




 私が目を醒ますと、あの暗くて臭い地下牢とは正反対の綺麗で清潔な病院の中だった。腕を見ると、注射を打たれた跡や点滴を受けている。
 それでも、股関と尻、それに口が気持ち悪い。まぁ、10人くらい居て、ねちっこく何回もヤりやがった訳だし、当然と言えば当然か……

 「性病の検査なら、陰性だから安心しろ……」

 スーツの中年女。私はこのオバハンをよーく、知ってる。

 「カーミラ・パヴリチェンコ大佐……SVRの大佐殿が何の用で?」

 SVR……ロシア対外情報部。多分、CIAよりヤバい、モサド並みかもしんないロシアの諜報機関、私を追い掛けていたザスローンのキーロフ大尉より、断然スンゴク上のヤバいオバハン。
 ISで女尊男卑の風潮が広まる以前から諜報機関で辣腕を振るっている女帝は、嫌な笑顔を浮かべている。大方、私を虐め散らかす算段を考えているんだろう……

 「貴様の人生を彼処で終わらせるのが、勿体無い。そう、想ってな……利用する事にした」

 「それって、コレと関係ある?」

 目の前に置かれた新聞の切り抜きを手に綾は、カーミラに尋ねる。だが、彼女は静かに見詰めるだけであった。
 そんな様子を不気味に感じながら、綾は切り抜きを読む。

 「へぇー、あの()()()()()がIS起動させたんだ……この分だと、身辺保護と研究兼ねてIS学園に身柄捩じ込むんでしょうね」

 切り抜きから、情報を簡単に分析した綾の言葉に間違いは無かった。
 ロシア政府を含め各国は、IS台頭の切欠となった白騎士事件の主犯はブリュンヒルデ……織村千冬であると判断。更に言うならば、あの事件に使われた機体『白騎士』は、開発者で現在消息不明であるしのの束の手元には無く、日本国内にあると予測されている。
 それは綾も情報として、知っていた。それ故、諜報機関の幹部である目の前に居る女が何をさせたいか?
 それも何となくではあるが、理解出来た。

 「もしかして、私に学生として潜り込めて言わないわよね?」

 「よく解ったな」

 「嫌だ! と、言いたいけど……何か特典ある?」

 「前科や経歴の抹消と綺麗な経歴含む新しい人生でどうだ?」

 忠誠を誓えば自分が死亡したと言う事にして、過去はオサラバ。新たな人生をロシア政府が用意してくれる。
 そんなスパイ映画みたいな報酬は、綾からしたら魅力的な提案であった。

 「何なら、今日からお前を代表候補生として、登録してやるのも悪くない」

 「うわー、真面目に代表目指してる奴が聞いたらキレそう」

 茶化す綾であったが、カーミラは何処吹く風で魔法瓶に注いだ紅茶を飲む。それを見ると、綾は手を伸ばして来た。
 薫り立ち上る紙コップを受け取り、嗅いでから一口飲んだ綾にカーミラは問い掛ける。

 「遣るのか? 遣らないのか?」

 「引き受ければ、クレムリンのアセット……拒否したら?」

 「そうだな……あの監獄より酷い所に送って、()()()()()()()()()て質問され続ける人生が待ってる」

 つまり、引き受けないなら人生は終わり。そう、言われた綾は降参した。
 その答えに満足すると、切り抜きのあった所にファイルが置かれる。

 「そうだ、我が国の財産であるアバローナだが……代表候補生専用機の名目で暫くの間、貸してやる。技術将校に感謝すんだな」



試作品の1で、"お姉ちゃん"来ない、最後の出撃で脱出失敗した場合、現地の政府軍のおもてなし受けてから、礼儀正しい皆様に保護されるルート

ロシア軍ルートになると、大佐指揮下の監視はザスローンの大尉殿で学園に潜入。
基本はワンサマーの監視。ついでに誘拐するなら?の偵察と施設内の調査
でもって、各国の新型専用機のデータ収集。技術将校的に此方を優先して欲しい感だけど、ワンサマーのデータや白騎士探し出せが優先でもあるので悩みまくり

大佐的にISによる女尊男卑はくそ食らえ。女でも実力……運も何もかも引っ括めたソレが有れば、誰でも上に上がれるて考え
ヴィンペルだか、空挺に居た過去あるから余計に

つか、ロシアでの女尊男卑は有ってないもの……ロシアだから。で、基本的にISは軍が管理してて、パイロット=軍人。でもって、若くて20代後半と各国と比べて年上なのはISパイロットになる為には空挺資格とか無いと駄目だから。
なので、ロシアのISパイロットはスペツナズみたいなもので大概がメスゴリラでアマゾネス。
だって、軍の作戦で場合によっては敵後方にHALOしてからのIS展開とか言う不意討ちかます必要あるし、パイロットの生存率や能力向上欠かせぬから


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試し書き 主人公はロウのままで(

試し書きの書き散らし



 無数の手が男に纏わりつく。一筋の光明も無い闇から声がする。

 「痛いよ……」 「何で?」
 「お前のせいだ」 「人殺し」
 「熱い、熱い……」 「痛い」

 それらは全て苦しみ、憎しみに絶望。そう言った負の感情に充ちていた。
 そんな声と共に手に掴まれた男は必死に足掻き、手から逃れようとする。だが、手から逃れる事は出来なかった。
 男は闇の中に男を引き摺り込まれる。必死な形相で暴れ、足掻いていると、男を捕まえていない残りの手達は闇から何かを取り出した。
 それを見た瞬間、男は更なる恐怖に襲われた。そんな彼に粗製の単発拳銃やマスケットからしっかりとした作りのオートマチックやリボルバー等の雑多な銃が向けられる。

 「お前も味わえ」

 その一言と共に無数の銃声が重なり合う。男は断末魔の声を上げ、血飛沫と共に肉や皮膚も飛び散り、酷い有り様になった。
 最後に見慣れた自分のリボルバーを持つ女の手が男の顔に向けられる。撃鉄が起こされ、トリガーに力が込められようとした瞬間……
 男の意識は其処で途切れた。



 「ハァ、ハァ、ハァ……」

 全身を汗で濡らし、肩で荒く息をする青年は周りを何度も見回す。周りには小さなテレビやゲーム機、パソコンに整頓された本棚やクローゼット等があった。
 それを確認すると、大きく深呼吸する。

 「こりゃ、呪いだな……たまには夢を見ないか、良い夢を見たい」

 だが、それが無理な事を青年……榊原涼介は理解していた。首の後ろにある小さな痣をなぞり、再び、大きな溜め息を漏らすとゆっくりとベッドから立ち上がる。
 ヨレヨレのパジャマを脱いだ涼介は脇に置いていた靴下を履き、ジャージに着替え始めた。それから、見るからにボロボロで修繕を繰り返したであろう年期の入った大きなバックパックを背負う。
 ズシリと重い、バックパックのストラップの当たり具合を確認すると、汗だくのパジャマを水を張った洗濯機に投げ込んだ。それから、玄関まで赴いてランニングシューズを履き、扉に手を掛けて部屋を後にする。
 外は薄暗く、日は未だ登っていなかった。
 涼介は、そんな暗い朝に起きてしまった事に辟易している。と、言うよりは今もこの時間に目を覚ます事に呆れていた。

 「習慣てのは抜けないもんなんだな……」

 ボヤきと共に呆れと自虐の籠った溜め息を吐き出してしまう。
 運動部に属すスポーツスマンでは無いのにも関わらず、早朝……午前4時30分にに目を覚まし、運動着に着替える。背中には80㎏分の土が入った土嚢を詰め込んだパックパックを背負っている事自体、普通に生活するならば、必要無い事と言えるだろう……
 しかし、涼介は習慣を辞められず、今も続けていた。
 先ずは、軽いランニングもといジョギング。背中に重みを感じながらも、安定した息遣いで黙々と走る。
 肌寒さを感じる冷たい空気や風が、身体を冷やそうとする。だが、走ってる間に熱くなった涼介の身体には、心地良く感じていた。
 10㎞のマラソンコースのジョギングが終わると、ペースを上げた。周りでも同様に走り込む人々を何人か抜きつつ、黙々と走り続ける。
 コースを1周、2周、3周と走れば、涼介の身体は炎の様に熱くなっていた。玉の様な汗で全身を濡らしながら、クールダウンの為にペースを徐々に落としてマラソンコースを少し走ると、家の近所にある公園へと駆け足で向かう。
 全身に程好い怠さを感じながら腕立て伏せ。両腕で200回ばかりやったら、片腕で100回ずつやる。
 その時も背負っている80㎏の重りを外す事は無かった。
 腕立て伏せが終わると、今度は鉄棒の方へと赴く。
 自分の背よりも高い鉄棒に飛び付き、掴むと耳障りな金属の軋む音がする。涼介は重り(80㎏)込みで自分の身体を持ち上げ、懸垂を始めたのだ。
 2分で20回ばかりやっても、持ち上げる腕を止めずに更に3分続けた。全部で50回やり、両腕が鈍い痛みを訴えると共に鉛の様に重くなると鉄棒から右手を離す。
 そして、左手だけの片手懸垂を始める。左腕だけで25回終われば、今度は右腕で同じ回数をこなした。
 懸垂が終わると腹筋と背筋を300ずつ黙々とこなして行く。そうして、一通りのトレーニングが終わると再び、腕立て伏せから始めた。
 腕立て伏せ、懸垂、腹筋に背筋と……さっきと同じサイクルを同じ回数こなし、トレーニングを終わらせた頃には日が登り、外は明るくなり初めていた。
 トレーニングを終わらせた涼介はストレッチをして柔軟体操すると、公園の水道で口の中を濯ぎ、熱くなった頭に水を被り始める。滴をポタポタと垂らしながら、バックパックの中に入れていたタオルで汗と滴を拭き取り、公園を後にした。




 「おかえり……よー、遣るわねー」

 家に帰ると長い茶色い髪の中年の女が、涼介に呆れながらも声を掛けて来た。

 「ただいま、母さん……もしかして、起こしちゃった?」

 「ついさっき、起きた所よ……とっとと汗臭いジャージ洗濯機に入れて、シャワー入んなさい」

 バックパックを玄関の土間の邪魔にならない所に置いた涼介は、ランニングシューズを脱いで上に上がった。それから、バスルームに入ると汗だくのジャージと下着を洗濯機の中へと入れる。
 裸になると、シャワーで汗を流し始める。ゴツゴツとした岩の如く固く、ゴムみたいに弾力のある身体をシャワーで流していると女の声がした。

 「戦いに備える事は無いのに、何で、鍛え続けるんだい?」

 女のハスキーボイスを聴いても涼介は答えず、頭をシャワーのお湯で流して聴こえない振りをする。そんな様子に女は「僕の事、そんなに嫌いなのかい?」 と、問い掛ける。
 しかし、涼介は沈黙を保ったまま、頭にシャンプーで念入りに泡立てて洗い続けた。

 「まぁ……君が僕の事を嫌うのも当然だけど、少しは話し相手になってくれても良いじゃん」

 女の声と共に涼介の背中に柔らかく、程好い弾力が伝わって来た。
 涼介の背後には、一糸纏わぬ二十代後半ぐらいの白く、絹の様にきめ細かな肌に大きな胸を持つ美女がいた。
 美女は官能的な雰囲気と魅力と共に胸を押し当て、抱き締めて来る。だが、涼介は頭の泡を黙々と流すだけであった。

 「つれないなぁ……こんな良い女がプッ!?」

 女の顔面に最大温度の熱い湯(約90℃)がシャワーでブチ撒けられる。女が顔を抑え、呻き声を上げると涼介は、ボディタオルに石鹸を包んだ。
 即席のブラックジャックを作るや涼介は女の頭、目掛け、思い切り叩き付ける。
 鈍い殴打音がシャワーの水音に混じり、何度も、何度も響いた。女の頭から深紅の液体が滴り、シャワーで流される。
 ピクリと動かなくなった女を気にせず、涼介はシャワーの温度を戻した。それから、湯船のお湯をプラスチックの手桶で汲むとタオルにこびり着いた血を洗い落とし始める。
 それが終わると、タオルで石鹸を泡立てて身体を洗う。鍛え抜かれた巌の様にゴツゴツとし、日本刀の様に無駄のない身体をゴシゴシと泡立てたタオルで入念に擦っていると、倒れていた女が起き上がった。

 「容赦無いなぁ……顔面に熱湯掛けて、死ぬまで殴るなんてさー」

 頭に有るべき筈の割られた時の傷がなくなっていた。そればかりか、排水口に流され、引っ掛かっていた頭皮の欠片や脳味噌や頭蓋骨の破片。
 そして、壁に跳ねた鮮血も消えていた。
 何事も無かったかの様に再び、涼介に抱き付いた女は耳元に唇を近付け、吐息と共に言葉を紡ぐ。

 「でも、そう言う感情的なのは嫌いじゃないよ……ロウ君」

 女の言葉に涼介は憤怒に満ちた眼差しを向ける。それに興奮し、涼介の首筋にある痣を舐め、股間に手を伸ばしてまさぐりながら女は、更に続けて言う。

 「ねぇ、コレを僕の中に突っ込んでイカせてよ……良いだろう? 時間は有るんだしさぁ」

 悪戯っぽく、媚びる様な蠱惑的な笑みを見せ、官能的な声を浴びせて来る女に涼介はニッコリと笑う。

 「テメェに突っ込むくらいなら、自分でシゴく方がマシだ……さっさと、消え失せろクソアマ」

 「君が死んだ時が愉しみだよ……その時は、()()()()()()()()()()()からさ」

 そんな言葉と共に笑みを浮かべたまま、目の前に居る女は姿を消した。涼介は大きな溜め息を漏らすと、身体を洗い直す。
 身体を洗い終え、バスルームから出た涼介はバスタオルで全身を入念に拭って行く。汗や水滴を全て拭い去ると、何時の間にか置かれていた下着に着替えるとバスタオルを洗濯機に突っ込み、バスルームを後にした。
 リビングまで行くと髪をオールバックに固め、ブランドものの眼鏡に清潔間溢れる白いワイシャツに上品なグレーのズボン姿の中年男が新聞から顔を上げ、気品のある声を掛けて来る。

 「おはよう、涼」 

 「おはよう、父さん」

 「ほら、さっさと朝御飯食べなさい」

 淹れたてのコーヒー片手に父親に涼介が挨拶すると、母親にせっつかれた。
 2枚のトーストにサラダ、目玉焼きとカリカリに焼けた3枚のベーコン等が並ぶテーブルを見ると、涼介は父親の前にある椅子に座った。
 先ずは乾いた身体を潤したかったからか、コップに注がれた牛乳を一気に飲み干す。あの世界では、考えられなかった贅沢を楽しむと今度は、フォークで刻まれたレタスと千切りのキャベツを突き刺し、それを口に突っ込んでモシャモシャとサラダを食べた。
 それから、トーストをかじりつつ、焼けたベーコンと目玉焼きを喰らうとオレンジジュースを飲み、コーヒーを飲む。

 「アンタ、異世界に行ってからよく喰うようになったわねぇ」

 「体が資本だったからね……体力つか、健康が一番貴重だったよ」

 母親は息子の健啖ぶりに呆れながらも、感心していた。少食で、あまり好き嫌いの多かった息子が今では好き嫌い無く喰らい、健康的なのは親としては嬉しいのだろう。
 朝食を食べ終わった涼介はリビングを後にすると、自身の部屋へと駆け出す。
 部屋に戻った涼介はクローゼットの前に立った。
 クローゼットを開け、ワイシャツを手に取った涼介は、それに袖を通す。ボタンを留め、制服のズボンを履いた所で、ネクタイを締めた涼介は上着のブレザーに袖を通さず、何故か枕の下に隠していたリボルバーを手に取った。

 「あのクソアマが姿を見せるって事は、何か厄介事を叩き付けて来やがるって事だよな」

 そんなボヤきを漏らすと、シリンダーを開いてホローポイント弾頭収まる38マグナム弾が6発、装填されている事を確認する。リボルバーをホルスターにしまってズボンのベルト、腰にセットすると、。
 他にも……1振りのコンバットナイフと6本のスローイングナイフ、スチレット2本にフラグ(破片手榴弾)が4発。それに、強烈な催涙ガスが詰まったガスグレネードとサーマイト(焼夷手榴弾)を2つずつとリボルバーの弾を36発用意する。
 それ等を学校に通うには必要の無い物をブレザーに仕込むと、今度は口径が5.5㎜の細く小さな弾が詰まった箱をポケットに突っ込む。それから、グリップが一体になった黒いライフルストックを背中に仕込んだ。
 最後に様々な道具の納まったガンベルトの雑嚢を通学用の大きなリュックサックにセットする。
 涼介にとって、バスルームに現れた"クソアマ"は、自分を地獄に叩き落とした"災い"そのものなのだ。
 それ故、備える。
 これから起こるかもしれない、災いから生き延びる為に……



なろうとかで書いてる世紀末の主人公くんで次の作品書くならーの導入的な試し書き

ストックは中に『チャールズ・カルスロップ』仕様な小口径のサプレッサー後付け小型ボルトアクションライフルのパーツが格納されている。
世紀末で良い腕の職人に作って貰った逸品。
耳の穴や目を狙えばスパミュも撃ち殺せる亜音速な炸裂弾が沢山、人間含む鳥や小動物を狩るにも最適(


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