アナゴ9時30分枠に出張する。 (寅好き)
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ブロローグ

「フグタくぅ~ん。たいへんなんだよぉ~。」クチビルがやけに部厚くそれ以外は、さほど特徴がない背広を着た男性が、叫びながら社内を走ってきた。

「いったい、どうしたんだい、アナゴ君?」

フグタと呼ばれた彼の同僚らしき人物が慌てて走ってきた、アナゴに驚きながらも、いつものことだろうと気軽に話にのった。

「実は、今部長に呼ばれて行ってきたところなんだけど、1ヶ月の出張を命じられちゃって…。」

「そうなのか、でもたった1ヶ月だろ、なんとかなるって。」

「いやぁ、問題は期間ではなくて、行き先なんだよぉ。」

「行き先?」

フグタとアナゴは海山商事という会社に勤めており、会社事態は安定している。そして、子会社や提携先に不安があるところもないというイメージからアナゴの思い過ごしだろうと、簡単にフグタは考えていた。

「なぁんとぉ、命に危険がある、海賊が蔓延る場所にいかなくてはならないんだぁ。」

「か、海賊!!」

普通の生活をしている日本人には、馴染みが全くといっていいほどない単語。しかしながら、その単語を聞いただけで嫌な予感がしてくる。

「アナゴ君まさかソマリアおきにでもいくのかい?」

「いぃや、部長が言うには、6時30分枠から9時30分枠に出張ってことらしいんだよぉ。」

「???」

「僕も言っている意味はさっぱり分からないんだけどぉ、どうも海山商事より上のところからのお達しでぇ、僕に白羽の矢がたったらしいんだよぉ。」

「それはお気の毒にアナゴ君。」

「やってられるかぁ、ってことでぇ、今日のやけ酒には付き合ってくれよぉ、フグタくぅ~ん。」

「ああ分かったよ。」

人のいいフグタはアナゴを憐れに思い、誘いを快諾する。

―――

「じゃあ、行くぞぉ、フグタくぅ~ん。」

フグタとアナゴは行き付けの店に行って飲むは、飲むはで意識を失うほど呑んで寝込んでしまうほどであった。

「お客さん。もう閉店の時間なんですが。」

店のオヤジに起こされ目を冷ますフグタ。しかし隣にはアナゴの姿はなかった。

「アナゴ君は先に帰っちゃったのか。連れないなあ。」

とフグタは会計を済ますと一人で帰途についた。

――――

「ああ、よく飲んだなぁ。あれフグタくぅ~ん?あれここはどぉこぉだぁ?」目を覚ましたアナゴは愕然とした、昨日の夜フグタと飲んでいたはずなのに、フグタはいない、その上なにやら舟の上にいるようだ。

「どぉいうこぉとぉだぁ?」

パニックに陥るアナゴ、回りを見回すとなにやら見覚えのない奇妙な果実とメモ帳がある。

〈アナゴ君、君が目を覚ました時には、もう君は海賊の世界にいるはずだ、しかしいままで平和な暮らしを日本でしてきた君には、この世界は過酷すぎる。ということで私から君に素晴らしいプレゼントをあげよう。このメモ帳の上にある果物、それを食べれば素晴らしい能力を得られ、この世界でも生きていけるだろう。では1ヶ月頑張ってくれたまえ。〉

「………。」

なにがなんだか分からない状態に置かれているが、どうしようもない。ということで怪しいが物は試しにその果物を食べてみることにした。メモ帳を見ると何やら名前が書いてある。

〈セルセルの実〉

聞いたことがない名前だが、なにかセルという響きに親近感がわくアナゴであった。

そして一口かじる。

「ぶるああ~。なんだこぉのぉ味はぁ。」

言い尽くせないほどの不味い味が口の中に広がる。我慢して飲み込むと体に異変が起こる。

「な、なんなんだぁ。このあふれかえる力はぁ。フハハハハ、素晴らしいぞ。」

体のそこから溢れだす力にうち震えるアナゴは、自分の体を見てよりショックを受けることになる。

顔は整った顔にトレードマークの唇。目元から縦に黒いメイクがなされ、体は胸の辺りが黒く光沢を持っており、他は全体的に薄緑で所々濃い緑の斑点が浮かんでいる、そして背にはかぶと虫のような羽が生えていた。歩くとシュタッ、シュタッととてもいい足音がする。アナゴは悪魔の実〈セルセルの実〉によって、海賊世界を1ヶ月間生き抜く為の力を手にいれだのだった。



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アナゴ決心する。

すみません。まだワンピースのキャラは出ません。次か次々回に出る予定です。


姿は虫人間のアナゴが浜辺で体育座りをしている。その背中には哀愁がそこはかとなく漂っている。

能力を得た時にはハイテンションになっていたのに、なぜ今はこうなってしまったのか?それは一日前のことになる。

――――

能力を得てから既に二時間ほどたち、アナゴにとって待ちわびたことが起こった。延々と海だけが続くと思われていたが、それが終わりを告げていた。大陸が見え、しかも町があるのが見えたのだ。

「やっと現状が把握できるぞぉ。はっはっ。」

喜び勇み、アナゴは進行方向の逆を向き、正拳付きを繰り返す。シュッシュッという空気を切る音と共に衝撃波が起こり、舟が町にかなりの速さで近づき上陸することができた。

「ああ、そこの御嬢さん、ここはなんという名のところですか?」

「キャー、化け物よ、虫の化け物よー。助けてー。」

アナゴが話しかけた女性はアナゴの姿を見て、悲鳴をあげて逃げていった。

「この姿ではさぁすがにまずかったな。」

と反省し姿を元に戻し、再度町に向かう。

「おお、そこの少年よぉ。ここの名前を教えてくれないかい。」

「うわー!!唇の化け物だー。助けてー。」

アナゴが呆然としているうちに、尋ねた少年は町に逃げていってしまった。

しばらくアナゴはショックで動けないでいた。すると町の方から多くの人が来るのが見える。その人々は各々手に銃や剣、斧や鍬といった武器を持っている。

「本当に化け物がいるぞ。町に近づけるな―。退治しろー。」「ま、待ってくれぇ、僕は人間だぁ―。」

「嘘つけ、お前のような人間いてたまるか。」アナゴは全力で逃げるが、追ってはすぐ後ろまできていた。

「こうなったら。」

アナゴはセル化する。すると飛躍的に伸びた身体能力により追ってを引き離すことができた。後ろから銃を撃たれた気もしたが、少し痛い程度だったので気にしないことにした。

追っ手を撒いて、乗ってきた舟で海に再び出る。またもや海かと気分は憂鬱であったが、畏怖の目で見られ、襲われるよりはましであった。

「はぁ、なんとか逃げ切れたぞぉ。」

安心して、一息ついていたアナゴであったが、アナゴの不幸はこれで終わることはなかった。ドン、ドン。

アナゴの舟の周りに何かが降り水飛沫をあげる。

アナゴが後ろを見ると、大きな軍船が大砲を撃っている。

「なんだぁ、なんなんだぁ?」「撃て、撃て。化け物だ手加減するな。」

「海軍!?」

アナゴが訪れた町の住人が海軍に連絡し、海軍が出張ってきたらしい。

「舟では逃げきれん。こうなったら、ぼくは子供の頃泳ぎの天才と呼ばれていたのだぁ。泳ぐ姿はアナゴのようだと。」

アナゴは決心して海に飛び込む。

「がぼ、がぶ、ぶべぇ、なで、泳げないんだぁ。」

アナゴは海の藻屑となった。と思われた。しかし運命のイタズラかアナゴは生きていた。無人島に流れ着いていた。

――――

ということがあり、今に至る。姿がセルなのは、無人島でどんな猛獣がいてもおかしくない状態であったからだ。

(どうしてこうなったんだ。私のどこが化け物だっていうんだ。町の人の中には私より化け物のような顔や姿をした者がいたではないか。)

頭の中で何回も何回も考えたが、答えのない疑問を解決することはできない。

アナゴはすっと立ち上がる。

「チックショー、チックショー、なんで私がこんな目にあわなくてはならないんだー。ふざけんじゃねぇー。」

激しい怒りと、悲しみからアナゴは無意識に涙を流し、叫んでいた。

その時であった、アナゴの体から黄金の炎のようなものが立ち上る。

「な、なんだ、これは?」

今まで怒りや悲しみにとらわれていたはずが、この状態になってからは感情が高ぶっていた。

(そういえば、昔このような状態のキャラが出ている漫画があったな。)

アナゴはそう考えると、足を肩幅まで広げ、腕を90度あげ、顔を腕を上げた先に向ける。

「死んでろ、べ〇ータ。なんちゃっ…」

アナゴの手のひらから目映い光弾が飛び足す。ポーピー、という聞きなれない音がし、一キロ先の島に着弾する。そのとたん凄まじい爆音と、衝撃波が巻き起こり、砂煙が立ち上っている。煙が収まる頃には、島があった場所は海と化し、島はなくなっていた。

アナゴは呆然としていたが、我に変えるとパニックなる。

「冗談のはずだったんだ。私はこんなことしようとは思わなかったんだ。しかし、これでは、器物損壊か、テロ行為で逮捕されてしまう。どうしよう。」

自分に弁解したり後悔したりで一時間程それを繰り返す。最終的に島の件は見た者がいないことからそのままにとし、自分の変化のことについて考える。

「この状態は恐ろしいから、ならないようにしよう。」

アナゴは元来臆病者であるから、黄金の炎をあげる状態になることを封印することにした(ただし、どのような状況でなるかはまだわかってはいない)それと同時にこの類いまれなる力で逮捕されない程度にここの者達、自分を迫害しようとした者達に復讐を誓ったのであった。




ということで臆病者のアナゴは超化はしません。そして前科がつかないように復讐しようとしますが…。あとは化け物ということで…。
まあここまでにしときます。


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アナゴ、スリラーバークに辿り着く。

アナゴさんは人間状態か、セル状態かで話し方はかえますので読みづらいと思いますが、よろしくお願いします。


「よし、出港だぁ。」

アナゴは無人島での1日をなんとかきりぬけ、昨日作った筏に乗り、自分の居場所探しと、復讐(いやがらせ)をしに人がいる大陸を目指していた。

ついでに言うと、この筏には水しか乗っていない。セル化すると、食べることは必要なくなり、水さえ飲んでいれば生きていけるという、とんでもなく役立つ特性を備えていたからである。

しかし、アナゴは航海をとんでもなく甘く見ていた。

(1日あればどこかにつくだろ)と甘過ぎる考えで筏に乗って飛び出したので、夜になると既に飲み水が尽き始めていた。

そんなこんなで航海を始めて丸1日、

「ああ、喉が乾いた。なんでもいいから飲みたい。ただ雨だけは勘弁してくれ、溺死するぅ。」

アナゴはけっして馬鹿ではない、なんと京都大学を出たという設定まである。しかし、それと航海とは話が違う。アナゴが干からびかけていると、どこからか樽が流れてきた。アナゴは咄嗟に起き上がり、「飲み物がありますように、飲み物がありますように。」と祈るような気持ちで樽を開ける。

運命は無情であった。開けた瞬間なにやら発光弾が飛び出し、空で弾けた。

期待をおもいっきり裏切られたアナゴは、神を怨みながら、眠りにつこうとしたが、

「喉が乾きすぎて眠れんぞぉ。」

ということで起きていた。

しばらく経つと夜にはまだ早い時間であるはずなのに、辺りが暗くなる。

「おいおい、どういうことだよぉ。」

アナゴは周りを見回す。すると驚くべきことに、今まで海しかなかったはずであるのに、目の前に島が迫っていた。

アナゴにとっとは待ちに待っていた大陸であるが、なにか怪しく嫌な感じがする。しかし、このままなにもしなくても干からびて死ぬだけであるので、それよりはましと上陸することにした。

しかし、アナゴにとっては死ぬ方がましと思うことになるとは、つゆとも思っていなかった。―――

「おいおい、暗い上になんて不気味なところなんだぁ。なんか幽霊でもでそ……。」

アナゴは固まった、言霊というのは本当にあるんだなぁと現実逃避しかけながら。

目の前には犬がいる。ただの犬ならよかったのだが、首が3つあり、大きさも体高ですらアナゴの大きさを越えている。

アナゴの頭には3つの選択肢が浮かんでいた。1 逃げる。

2 戦う。

3 ムツゴロ〇さんになる。

原作のルフィならば2と3の会わせ技という人間離れした行動をしたが、アナゴは人間離れした見た目ではあるが、普通の人間である。

つまり、迷うことなく1を選ぶ、ついでに言うと、当然セル化してだ。

「マジかよ。どうなってるんだぁ~。」

「ガウ、ガウ、コン。」

走るセルを追うケルベロス、相当シュールな現場である。

アナゴは恐怖から一匹犬ではないということにも気づかずに、チーターも真っ青な速さで駆け抜けていった。

「はぁ、はぁ、なんとか、巻けたかぁ。えっ……。」

アナゴは目を擦る、しかし現実は変わらない。目の前で人面樹とユニコーンが酒盛りをしていた。

「ぶるぁぁぁ!!」

『ヒィィィ。』

アナゴがあげる悲鳴に、人面樹とユニコーンも驚き逃げていった。

アナゴも走り続ける

「なんなんだぁ、ここは。私はもう死んでいるのか。ここは地獄かぁ。」

アナゴは周りを見回すと最悪の状況である。墓場にいた。

アナゴはもう次はどうなるか普通に予想がついたので、全力で走り抜けた。

後ろから『おい。』という声が聞こえた気がしたが、無視することにした。

「やっとまともなところに出た。」

目の前に洋館が建っている。普通は怪しく思うはずであるが、アナゴはもう普通に考えることができない状態であった。

(事情を話して休ませてもらおう。)

思い立ったが吉日(実際は大凶になりそうだが)ということでアナゴは洋館に入っていくのであった。

「ごめんくださいぃ。誰かいませんかぁ。」

生きている物の気配はしない。洋館に入るとかなり豪華な作りであり、絵画が何枚も掛けてあり、熊の毛皮、豚の剥製などが飾られてある。

アナゴは嫌な汗が止まらない。ホラー映画の主人公になった感じだ。しかも、容易に先が読める。

絵画が揺れ始め、熊の毛皮も動き出す。

「¢β*∴§」――――

「あれ?」

アナゴの周りには先程襲いかかってきた幽霊達が死屍累々と転がっていた。

どうやらアナゴは恐怖が限界を越え、発狂して幽霊達を倒したらしい。

「お前やるではないか。ガルルルル。」

目の前には、虎の顎を持った男が立っていた。



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アナゴ、ゲッコーモリアと対面する。

かなり、4怪人は原作と違った性格になっているかもしれませんがお許しください。そして、すこしばかりアナゴ無双になります。


「どうしてこのような状態になっているんだぁ?」

アナゴは闘技場のような場所で、大量の甲冑をつけ、斧や剣を持ったゾンビ、ジェネラルゾンビの群れに囲まれていた。

なぜこうなったのか、少し時間を戻ることになる。

――――

アナゴはアブサロムとあった後に、693センチメートルの巨大な男、ゲッコーモリアのもとに連れてこられていた。「キシシシシ!!アブサロムよなんだそいつは?」

「どうやら海を漂流中に間違ってここに迷いこんだようです。ただ、びっくりゾンビを一人で全滅させるほどの素晴らしい力を持った悪魔の実の能力者です。ここに来るまでに大方のことを話たところ、部下になりたいとのことなんですが。」

「ほう、なぜ部下になりたいのだ?キシシシシ。」

アナゴは、ゲッコーモリアの大きさに圧倒されながらも、土下座しながらゲッコーモリアに答える。

「僕にはぁもう行くところがないんですぅ。僕の姿を見ればぁ、誰もが化け物といって逃げ出す始末、ここならそのような心配もないですしぃ。そして、もう一つはぁ、僕は海軍に追われているんですぅ。化け物というだけで。あなた様は王下七武海でぇ、海軍から見逃してもらっているそうじゃないですかぁ。部下になったら僕も海軍に追われることもなくなるのかとぉ。」

「キシシシシ。そうか、だが俺は、強くて、優秀で、死なない奴しか支えさせたくねえんだ。まあ、それでもなりてえんなら試してやってもいいがな。キシシシシ。」

アナゴはゲッコーモリアの言うことに、なんとも言えない恐ろしさを感じたが、もうやるしかない、ここしか私が居られる所はないのだからと決心を決める。

「アブサロムよ、ジェネラルゾンビを集めろ。」

「はっ。」

――――

という話があり、今に至る。

「ホロホロホロホロ、あいつが新入りになりそうなやつか。まああの唇だけは可愛いかもな。」

「フォースフォスフォスフォス、わたしが作ったマリオにかなうか…〔スッ〕…ってシンドリーちゃん前に立たれると見えないから。」

ペローナ、ドクトルホグバックといった残りのメンバーも集まり、闘技場には4怪人が集結していた。

ついにアナゴの力をみせる場面が訪れた。

「やってやるぞ。」

ジェネラルゾンビに恐れを抱きながらも、セル化し、臨戦態勢に入る。

「始めろ。キシシシシ。」

ゲッコーモリアの掛け声のが響くと同時に、ジェネラルゾンビが四方八方からアナゴに襲い掛かる。

「こいってやっぱり恐いぞぉ~。ヤメテ~。」

アナゴはウソップ並みに臆病者であり、ジェネラルゾンビが一斉に襲いかかってきたのを見て心はすでに折れていた。

ただし、四方八方から襲いかかってきていたために、逃げ道はない。ということで丸くなって守りに入る。

周りから剣や斧が降り下ろされる。

武器がアナゴの背中に当たると同時に、ガキンという金属音がする。

ジェネラルゾンビの剣は悉く折れ、斧はアナゴの黒い羽に刺さっているものもある。

「少しいたかったぞぉ。」

アナゴの恐怖心は薄れていた。セル化するとなぜか気持ちが高ぶり、戦いたくなってくる。これも全てセルに含まれるサイ〇人の遺伝子のためである。

「フッフッフ、私のパーフェクトな力を見せてやる。」

アナゴは体に刺さっている斧を抜き投げ捨てる。斧によってついた傷は瞬時に塞がる。

「ほう。」

ゲッコーモリアは嬉しそうに笑うが誰も戦いに集中しておりきづいてはいなかった。

「全員で一斉にかかるんだ!」

『おう!』

「有象無象があ、消しとべえ。」

襲い掛かるジェネラルゾンビに向けて、手を向け衝撃波をとばす。

『うわー。』

吹き飛んでいくジェネラルゾンビ達を見て驚愕するものがいた。

「あれはおいらの『死者の手』と同じだ!!」

アナゴは気は使うことはできないが、セルの力はかなり使うことに慣れ始めていた。

「弱すぎる。いや、私が強くなりすぎてしまったのか。」

衝撃波によって吹き飛ばなかったゾンビや、衝撃波がくる範囲外のゾンビは、健在だが、目の前で力の差を見せつけられ、目の前の規格外の虫男に襲い掛かることすらできなくなっていた。

「もういいぞ。」

闘技場にゲッコーモリアの声が響く。アナゴは、だんだん戦意が湧いてきたところで止められたので、少し残念ではあった。

「合格だ。攻撃を受け付けない強靭な肉体、たぐいまれなる再生能力、そして言うまでもない戦闘能力。お前を部下にしてやるぞ。キシシシシ。ただ新入りであるからまずは、アブサロムかペローナのどちらかの部隊に入ってもらう。」

「ではおいらの「私の所に来い唇。ホロホロホロホロ。」っておーいペローナ。」

アブサロムが自分の所へといいかけた所にペローナの横槍が入り、アナゴはペローナの部下になった。

 




虫も動物のうち。またあの唇はびっくりだということで許してください。


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アナゴ、スリラーバークでの生活始まる

「起きろ、唇。」

端的に命令する声が聞こえ、心地よい眠りからアナゴは引き摺り起こされた。「まだ暗いじゃないか。ってここはいつも暗いんだったかぁ。おはようクマシー。今はいったい何時なんだぁ。」

まだ眠たそうに目を擦りながらアナゴはおこしにきたクマシーに尋ねる。

「今、5時。」

「5時…。まだあと一時間は寝られるだろぉ。じゃあ、お休みクマシー。」

「」

「ぶるぁぁぁ!!」

――――

「何も殴らなくてもいいだろぉ。冗談が通じないなあ。」

頭のたんこぶを撫でながらアナゴはクマシーに文句をたれる。アナゴはゲッコーモリアに認められたとはいえ、まだ一般ゾンビと同じ地位なので、他のゾンビと共に働くことになっていた。そして、アナゴの指導係ということでクマシーが当てられたのだった。

ということで、スリラーバーク一日目が朝5時から始まるのであった。

「クマシー、今から何するんだぁ?」

「ごみ捨て、そのあとペローナ様の食事作り。」

「家でしていたことと同じだなぁ。」

アナゴは仕事の内容を聞き、自分の恐妻の顔が思い起こされたという。

しばらくクマシーのあとについて歩いて行く。クマシーは常に無口というか、話すのが苦手のようなので話を交わすことはなかった。まあ、これはペローナの言い付けであることはアナゴは知るよしもなかった。

そのクマシーが突如口を開く。

「これ。」

「おいおい。メチャクチャ量が多いじゃないか?」

アナゴの目の前には山のように積まれた大量のゴミがある。

「ペローナ様の物がほとんど。」

「はあしょうがないなぁ。こりゃあこの時間からするしかないなあ。」

ゴミが多すぎるためセル化して働く。

「まさか、ゴミ運びに能力を使うことになるとはなあ。」

黙々とクマシーと働きゴミ置き場に全て運ぶのに約2時間かかった。

ゴミ置き場からの帰り道、アナゴは誰かに声をかけられた。

「おい、新入り。これも捨てておいてくれ。」

「うんあなたは?」

アナゴが振り向くとゴミ袋を持ったズングリムックリの男がいる。アナゴはこの男の名前を思い出す。

「確か、ドクトルホグバック。マッドサイエンティストだったかぁ。」

「フォースフォスフォスフォス。頼んだぞ。」

「これはぁ?」

「シンドリーちゃんが割った皿だ。」

「そうか…。」

アナゴは、妻に仕事を押し付けられていた自分を見ているようで、ホグバックに対し同士を見つけた気分になっていた。

「クマシー先に帰っていてくれぇ。ペローナ様には遅れるといっておいてくれぇ。」

とだけいいアナゴはゴミ捨て場に向かった。

「少し時間をくったなぁ。」

戻ってくるとどこからか呼ぶ声が聞こえる。

「唇~。唇はどこいった。」

「私は唇ではないぞ。ったくペローナ様か。」

ブツブツて愚痴を言いながらペローナの元に向かう。

「あー。唇、どこに行っていた。」

「ペローナ様、私はアナゴと言います。」

「名前なんてどうでもいい。どこに行っていた。」

女王様気質のペローナは全くアナゴの話を聞いていない。それにクマシーから話を聞いていないらしい。アナゴはクマシーに視線を向ける。クマシーはオドオドしながらペローナに何かを言おうとするが

「喋るな。」

とだけ言われている。アナゴはペローナの性格を悟り謝りに謝って場を乗りきった。全く日本での生活と変わりはなかった。

「お前たちはこの樽を海に流してこい。」

アナゴは食事をとり、ひかげぼっこをしていると命じられる。(また仕事かあ。)

と心の中でため息をつくが、ペローナに逆らってもまったくいいことはないために渋渋働くことになる。

「こりゃあ、私が開けた樽と同じじゃあないかあ。」

「おっ、唇はこの樽を開けたのか。じゃあここに招かれたんだな。この樽を開けたものはここに誘導されるようになっていたんだ。」

「そうだったのかあ。」

もうアナゴは周りのゾンビと打ち解けていた。見た目的にも化け物であるので全く違和感もない。アナゴはなかなかゴミュニケーション能力が高かった。

――――

「やっと終わったぞぉ。ここは労働基準法とかどうなっているんだぁ。かれこれ12時間ほど働いたぞぉ。」

アナゴの激動のスリラーバーク一日目が終わったと思われたが、それは甘かった。

「唇~。唇~。」

「おいおいどうなってるんだぁ。どうにかしてくれよぉ。」

「ここか唇。今から海賊が上陸するから捕まえてこい。」

「はい…。」

まだアナゴの1日は終わらなかった。次回アナゴ無双再び。

 

 



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アナゴ、強くて悪い海賊と出会う

「行ってこい唇。お前の強さを見せてやれ。ホロホロホロホロ。」

「時間外労働かぁ…行きますってぇ。にらまないでくださいよぉペローナ様ぁ。」

ペローナに問答無用で言いつけられ、すでに絶対服従のアナゴは海賊船へ向かっていった。

――――

「おう、アナゴお前も海賊退治に行くのか。」

「えっ。」

アナゴが声をかけられた振り向くとライオンの顎を持ったガタイのいい男アブサロムがいた。「……。」

「どうしたアナゴ。泣きそうな顔して。」

「ここに来て初めて名前で呼んでもらえたんで…。」

「お前もペローナのところで苦労しているんだな。うんうん。」

「ええまあ。アブサロム様はなんでここぇ?私と一緒で海賊を退治に?」

「ま、まあそんなところだな。」

「…」

少しいいよどんだアブサロムを見て少し怪しく思ったが、アブサロムは悪いやつではないと思っているので、気にせず向かうことにした。

クマシーとは違いアブサロムは意外と気さくであり、会話が弾んでいるうちに海賊船が見えてきた。アナゴはとっさに茂みの中に入り姿を隠す。見たところ約20人程の数で、ほぼモブキャラというか、強さを感じる者はいなかった。

「じゃあだんだん戦意が湧いてきたんでぇ、いっちょ行ってきますよぉ。あれ?」

アブサロムに行くと言ったが、すでにアブサロムの姿はそこにはなかった。

「流石はぁ4怪人。身のこなしが早い。」

アブサロムの動きに感心しながらもアナゴも心を決めて姿を出した。

「ん、なんだ。ば、化け物だ。虫男だー!!」

「またもやこの反応か。貴様ら許さんぞぉ。」

アナゴは化け物と言われたことから、以前のことを思いだし、怒りを増幅させ海賊に向かっていく。

まあ、傍目に見れば化け物であるので、そのような反応をされてもしょうがないのだが。

「突っ込んでくるぞ。撃て撃て。」

「ふん、蚊がとまったようだ。ぶるぁぁぁ!」

アナゴが腕を振ると銃を撃っていた海賊約5人が吹き飛び海に落ちていく。

「ふん、あと15人かぁ。死ねぇ。」

殺してはいけないんだが、このワンピースの世界では、余程のことをしない限り、死ぬことはないということを教えてもらっていたので、安心して力を振るっていた。

「ぶるぁぁぁ!つまらん、つまらんぞぉ。誰か強いやつはいないのか。」

剣を降ろうが、槍をつき出そうがお構いなしに前から向かっていき、叩き潰す、それはまさしく蹂躙であった。

「ヤベエ、あの化け物は強すぎる。先生お願いします。」

「おっ、もう俺の出番か。」

船の中から男の声が聞こえた。出てくる男はロン毛で、顔はいい部類に入り、背中にサーベルを携えている。

「ふん。俺の力を見せてやるかってえ~~。なんでここにセルがいるんだ!!」

男はアナゴを見ると青ざめ、茫然自失となり、金魚のように口をパクパクしている。

「先生、先生。どうしたんですか?」

「ああ、この世界で無双していい思いしようと思ったのに…なんで俺はこんなについていないんだ。しかもパーフェクトセルフだし。俺死んだな。」

男はなにかブツブツと呟いている。

「何者なんだぁ?私を知っているのか?」

「あれ?あいつ俺を忘れているのかよ。眼中になしってか。さすがに腹がたってきたぜ。一発はいれてやる。」

男は気合いを入れて構えをとり、アナゴに突っ込む。シュンッという音と共に男の姿がアナゴの視界から消えた。

「ど、どこに消えたんだぁ。」

「後ろだ。」

男の声が後ろあら聞こえた瞬間に比類ない程の痛みが背中に走る。男の拳が背中にめり込み、軋む音がアナゴ自身の耳にも届いた。

「まだまだだ。狼牙〇〇拳!!」

男がなにか技名のようなことを言うと、先程受けた以上の威力をほこる拳が、数十、数百と叩きこまれた。

「はい、はい、おー!!」

「わ、私がこんな技で…。」

前のめりになり倒れ込むアナゴ。

「こ、この俺がセルを圧倒している。この世界じゃあ。俺が神だ。ふん、ぶっ殺されたくなかったら消えろ。なんて、俺カッコイイ。」

なにか男は悦に入っている。

「しかし気があまりにも弱いと思ったが、俺が強くなりすぎたんだなあ。プー〇ルにも俺の雄姿見せてやりたかったぜ。」

男が勝ち誇ったドヤ顔でアナゴを見下ろしている。

(何故私はこんなところで地面に伏せているんだ。チクショー、チクショーチクショーチクショーー。)

「チックショー!!」

アナゴは内から沸き上がる怒りを抑えきれなくなった。突如以前の如く、金色のオーラが身を纏った。

「スーパーサ〇ヤ人だと。卑怯だぞ。だが今の俺なら勝てる気がする。それに俺には取って置きの新技もあるしな。やってやるぜ。」

「フハハハハ。この力で地に伏せさせてやるぞぉ。封印なんてくそ食らえだぁ。行くぞぉ。」

超化アナゴ対謎の男 空前絶後の戦いが始まる。




皆さんはもう誰だかは分かっているとは思いますが、ドラゴンボールキャラを投入します。やつも山賊でしたしね。山から海へです。


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アナゴ、謎の男と死闘を演じる。

金色のオーラを撒き散らしながら立っているアナゴと男が睨みあっている。「今のやつの気から考えれば、まだ俺の方が若干上だ。先手必勝逝くぜ。」

男は不吉な言い間違いをしながらも、アナゴとの睨みあいに焦れて攻め始める。先程と同じ様にシュンッという音をたて姿が消えた。ただしこれは常人の目からもしくは、超化する前のアナゴから見ればということだ。

「見えているぞお。」

アナゴの背後に現れた男に対して、アナゴは振り返ることもせず肘を打ち付ける。

「グハァー!」アナゴの肘うちがクリーンヒットした男は痛みに悶えながらも間合いを開ける。

「まさか、ここまで強くなってるなんてな。超化はとことんチートだぜ。」

と男は言うが、男の表情にはまだ余裕が感じられる。

「俺は今まで、足を折られたり、自爆されたり、腹貫かれたり、腕折られたりしたが、それに比べればたいしたことないぜ。」

男は誇るように言っているが、なにかその姿を見ていると痛々しく、涙が出そうになるほどの哀愁が漂っている。

「かわいそうなやつだあ。」

「哀れみの目で見るんじゃねえ。決めてやるぜ。カ~メ~ハ~メ~波ーー!!」

男の合わせた両手から青白い閃光とともに、高密度のエネルギーがアナゴに向かって放たれる。

「なんだこれはあ!?」

男のカメハメ波がアナゴに直撃する。耳をつんざくような爆発音がなり、巻き起こる衝撃波は木々を大きく揺らし、根ごと薙ぎ倒していく。

「ははは、やったぜ。俺はセルを倒したんだ。俺はついに悟〇を越えたぜ。」

吹き荒れる土煙が晴れると両手を失ったアナゴが、紫色の血を流しながらたっている。

「クソッ仕留めきれなかったか。早くしないと再生するな。これで終わりだ狼牙〇〇拳。」

男は油断せずに仕留めにかかる。

アナゴは両手を失いながらも、男の拳を避け続ける。その内にアナゴは男のその技の重大な欠点を見つけた。荒れ狂う暴風のような拳の連打が襲い来るが、蹴りなどの足を使った攻撃が全くなかったのだ。

「足下がお留守だぞおーー!!」

アナゴは足払いをかけると、男はバランスを崩す、すかさずバランスを崩した男を蹴りあげる。

「グワー。」

アナゴの蹴りを受けた男は悲鳴をあげながらぶっ飛んだ。

「今だ、ハアーーー。ぶるぁぁぁ!!」

アナゴは力を入れると腕の切断面から紫色の体液を撒き散らしながら両手が再生した。

「ふう。本当に便利な能力だ。」

アナゴが自分の能力に感心していると、吹き飛ばされた男がフラフラしながらも立ち上がった。

「クソッ。あと少しだったのに。恨むぜピッコ〇。」

「なぜあいつは楽器の話をしているんだ。狂ったか。まあいい。この金色状態ならあのエネルギー弾は前に出せたはずだ。やつの真似をしてみるかあ。」

アナゴは両手を合わせ、両手を引く。

「カ~メ~ハ~メ~波~!」

男が放った物とは比較にならない程の大きさの青白い光弾が男に襲いかかる。ただ狙いは安定しておらず、男の横スレスレを通過し雲を切り裂き、空を引き裂きながら天高く上っていった。

「……」

男は青ざめ、腰を抜かしていた。

「はあはあ。かなり体力を使うな。そのために金色状態を維持できなくなるとはなあ。」

アナゴの体からは金色のオーラは消えていた。「はっ!!死ぬかと思った。こうなればあれを使うしかない。」

男は気合いをいれ立ち上がる。

「お前に俺の真の力を見せてやるぜ。お前はこれで終わりだ。」

男は先程腰を抜かしてヘタレていたことなどなかったように、指をビシッとアナゴに向けて言い放った。

「はあ。」

男の姿がみるみる内に変わっていく。

「ハハハハハ。俺は悪魔の実を食った能力者だたんだ。」

男は大きく潤んだ瞳を持った犬の姿になっていた。

男はイヌイヌの実モデルチワワの悪魔の実を食べていた。

「本当は俺は狼が良かったんだが、もう食べているヤツがいてな、妥協してこの力を手にいれた。どうだ、このいたいけで潤んだ瞳を持つ仔犬を攻撃することができるか?」

チワワになった男は胸を張って自信満々にアナゴに言い放った。

「フハハハハ。人間状態の私ならいざ知らず、この状態の私に情などといったあ、甘ったるい感情などお、ないわあーーー!!」

アナゴはチワワと化した男に拳を叩き込んだ。「ピギャー。」

チワワもとい男は哀れな叫び声をあげてぶっ飛び気絶した。

「はあはあ、さすがに今回は疲れたなあ。」

アナゴは人間の姿に戻っていた。

「この男はかなり強かったから連れていかなきゃいけないんだろうが、どうやって運べばあいいんだあ。」

非力なアナゴには気絶した男を連れていくというだけでもかなりの重労働であった。

「ガルルルルル。見事な戦いだったぞアナゴ。コイツらはオイラの手下のゾンビに運ばせるから帰ってもいいぞ。おつかれさん」

何処からともなく現れたアブサロムに驚きながらも労いの言葉と気遣いに感謝し、アナゴはペローナの元に帰っていった。

アナゴのなが~い、なが~い1日は終わりを迎えた。



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謎の男ヤムチャ、仲間入りする

今回はゲッコーモリアと謎の男との問答のみでアナゴは活躍しません。



「起きろ、唇。」

「んあ。なんだぁ。クマシーか、昨日は残業でまだ3時間ぐらいしか寝てないんだぁ。今日は有給休暇ってことで頼むわ。」

「そんなもの、ない。」ドガッ

「痛って~。」

――――

「容赦ねえなあ、クマシー隊長はぁ。でなんなんです?」

「アブサロム様、呼んでる。」

「こんな朝早くなんなんだぁ。じゃあ行ってくるよ。」

「ん。」

というやり取りがあり、アナゴはアブサロムのところに行くことになった。

まあ、アナゴにはアブサロムが呼んでいる訳はなんとなく分かっていたが、昨夜の疲れがいまだにとれておらず気分は最悪であった。

「ここの部屋がアブサロムの部屋だったかなぁ?」

アナゴは広い屋敷の中を迷っていたまだ来て約3日屋敷の内部を把握しているはずかなかった。

「……でよ、……したら女の子達が、……めて、もう……なんだよ」

「なんと……ましいヤツだ。オイラも……があったらな。」

「お前の……も魅力的じゃないか。俺も……と……したいよ。」

「フッフッフ、これだけは……の特権だ。」

ふと立ち止まった部屋の中から和気あいあいとした会話が聞こえてくる。

何を話しているかまでは分からないが、昨夜の謎の男とアブサロムが話しているということは分かった。

昨日敵同士であった者達が和気あいあいと話していることは不思議に思われたが、目的地に着いたという安堵の気持ちのほうが勝り、嫌な気分も失せ、軽やかに部屋の中に入っていった。

「ちわ~。アナゴで~す。」

何処かで聞いたことのあるようなフレーズではいる。

「おお、アナゴか、朝早くにすまんな。」

「……、アブサロム様は本当にいい怪人だなあ。」

普段からペローナにドSな対応をされているアナゴにとって、アブサロムのちょっとした気遣いも心にくるものがあった。

「今日来てもらったのは、昨夜お前が捕まえた、こいつのことだ。」

「こいつは主のところに連れていくのではないんですかぁ。」

「ああ、そうなんだが、コイツと話をしてみたらかなり面白いヤツで意気投合してしまってな。仲間にしてくださいと箴言するつもりでな。お前にもそれを言っておこうと思ってな。」

「僕は構いませんが。主は許してくれるでしょうかぁ。」

「まあ、大丈夫だろ、コイツの強さは普通ではない。戦ったお前からも言ってもらえれば。」

「分かりました。」

アナゴは了承した。サラリーマンであるアナゴにとって上司からの頼みには、「YES」と「はい」の二択しかないからである。

ということで、謎の男を連れてゲッコーモリアのところに向かった。

――――

「そういうことか、キシシシシ。」

アナゴが昨夜の戦いについてゲッコーモリアに説明し、アブサロムが続けて仲間にしたいという意見を述べたところであった。

「アブサロムの提案についてどう思う。」

モリアはその場に集まっている、ペローナとホグバックにも尋ねる。

「ホロホロホロホロ、私はどちらでもいいな。コイツは可愛くないし、私は要らないけど。」

「フォースフォスフォスフォス。この男の力はこの体があってのもの、マリオで再現することはできません。ですから仲間入りには賛成です。」

ペローナ、ホグバックはともに仲間入りに賛成ではあっても、反対することはなかった。

「そうか、だがお前には聞きたいことが2、3ある。正直に答えよ。」

「ああいいぜ。」

「お前の名前と、何処から来たのか答えよ。」

「俺の名前はヤムチャ、来たのはお前たちじゃあ分からないと思うが〈西の都〉だ。」

『???』

ヤムチャの答えに一同が疑問符を浮かべる、この世界にも、アナゴの世界にも〈西の都〉というところはないからだ。

「分からないと思うぜ。なんたって異世界なんだからな。」

ヤムチャの放った発言に皆が驚かされた、とんだいかれたヤツとも思われる発言ではあるが、この男ヤムチャはまるで嘘をついているようには思えないほど堂々と自信満々に答えていた。

「まあ、いい。では異世界であるとして、どうやってここへ来た。」

話がおかしな方向へ行きそうであったのでモリアが仕切り直す。

「神龍に〈俺でも無双できて、女の子にモテモテになる世界へ行きたい〉って願ったらここに来ていたんだ。」

『………』

もう一同頭を抱えるしかなかった。

神龍ってなに?願ったってどういうこと?荒唐無稽な話である。

「はあ。もういい。次の質問だ。」

これ以上問い詰めても無駄と判断しモリアは大きな溜め息をつきながら話を進める。

「お前の力についてだ。お前はアナゴとの戦いでレーザーみたいなのを放ったとかいう。レーザーを放てるのは〈ピカピカの実〉の能力者だけだ。そして〈ピカピカの実〉は海軍の大将黄猿が食っていて存在しねえ。どういう能力だ。」

「どう説明するか。簡単に言うと〈気〉を使ったとしか言えないが。」

「気?」

「生き物であれば誰もが持っている物だ。ある程度修行しないと得られない物だがな。まあ見せてやるのが手っ取り早いな。見せてやるから縄を解いてくれ。」

ヤムチャはそういうと縄の結び目をモリアに見せる。

「逃げはしない。仲間になりたいんだし、お前さんには戦ってもいいことは無さそうだ。」

「分かった。解いてやれ。」

モリアが言うのでヤムチャの縄が解かれた。

「あ~あ。スッキリした。じゃあ見せてやるぜ。ハアッ」

ヤムチャが手を壁に向け、掛け声を発すると、手のひらから黄色い閃光と同時に光弾が発せられ、壁に当たると同時に爆発した。壁には見事に穴が開き、回りには粉々になった瓦礫がパラパラと音をたてながら舞い散っていた。

アナゴ以外はその光景を唖然として見ていた。

「これでも抑えたんだぜ。俺の仲間だったらこの星自体を破壊できるしな。」

もう何がなんだか、と一同がカルチャーショックを受けるが、それと同時にモリアは心が踊る思いもあった。これならカイドウも倒せるのではと。

「キシシシシ。いいぞ。だが最後の問だが、これが一番心配なことだ。」

「なんだっていいぜ。」

「お前の力は聞いたことと、実際に見たことでよく分かった。だがなあ、なぜかお前を見ていると、〈噛ませ〉のように感じ、〈噛ませ臭〉がするんだが。俺は簡単に死ぬようなやつは仲間にいれたくはない。」

「……。だ、大丈夫だ。俺は今まで(天津飯に)足おられたり、(人造人間20号に)腹を貫かれたり、(セルJrに)腕おられたり、重症はおったことはあるが、俺は不死身だから死んだことはない。し、死んだらここにもいないしな。それにこんなに強い俺が死ぬはずないだろ。それと〈噛ませ臭〉ってどんな臭いだよ」

少しの間があったあと、堂々とヤムチャは宣言したので、これからの成り行きを見て判断と言うことになった。

「お前については分からないことが多すぎるが、優秀な部下になりそうだということには変わりない。仲間になれヤムチャよ。」

「おう、いいぜ。(今まであっちの世界では戦力外、ゴミクズとまで言われた俺が。俺の力を求められている。ああ、こっちの世界へ来て良かったぜ。なんか嬉しくて昇天しそうだぜ。)」

心の中と発言は全く違うが、こうしてゲッコーモリアの部下として強くて悪い海賊ヤムチャが誕生した。

果たして、ヤムチャはワンピースの世界で活躍し、ヘタレの称号を返上できるのだろうか?



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アナゴ、ヤムチャのもとで修行する

「おっ、段々目に見えて強くなってきているぞ。アナゴさんはまあ置いとくとして、アブサロムはさすがだな。」

「私を置いとくとはどぅいうことだぁ。」

「ガルルルル、おいらは天才だからな。」

「褒めるとすぐこれだ、集中しろ。」

『はい。』

今ヤムチャの前でアナゴとアブサロムが座禅を組んでいた。なぜ座禅を組んでいるのかというと

――――

「ヤムチャオイラに〈気〉というものを教えてくれ。」

ゲッコーモリアとの話が終わり、部屋につきすぐにアブサロムがヤムチャに頭を下げて頼み始めたのだ。

「どうしたんだよ、アブサロム?いきなり〈気〉を教えてくれなんて。」

「まずこれを見てほしい。」

アブサロムは手を壁に向け

「死者の手」

と言うと、アブサロムの手から何かが飛び出し、手が向いている先の壁が崩れ落ちる。

「見たところ、腕の下の所から玉が飛び出していたな。」

「一回見ただけで見抜いてしまうとは、さすがはヤムチャだな。そうオイラの〈死者の手〉は〈スケスケの実〉の能力で透明にして見えなくしたバズーカを撃つというものだ。今まではこれで満足していたが、オイラはバズーカという武器を使うのではなく、自らの力で戦いたいのだ。」

アブサロムは熱の籠った真剣な眼差しで訴えるので、ヤムチャは以前亀仙人に弟子入りを志願した時の自分を見るようであり、その真剣さにほだされて快く了承した。

「ありがとうヤムチャ。では今からすぐに頼む。」

「ああ、だがもう一人お前と一緒に修行させたいやつがいるからそいつも連れていこう。」

――――

「ぬあんだとお、私に〈気〉の使い方を教えてくれるぅだとお。しかし残念ながら見ての通り今私はペローナ様の洋服の洗濯をしているぅ、そしてぇ、トイレ掃除がまぁだ残っているのだぁ。」

アナゴはセルの姿でペローナの服と洗濯板を使って格闘しているという、とても奇妙な光景を演出している。

「じゃあしょうがな―「いいぞ、唇行ってこい、ホロホロホロホロ。」

ヤムチャが断念しようとしたとき、突然入ってきたペローナが、アナゴの修行を了承した。

「いいんですかぁ、ペローナ様ぁ。」

「ああ、いいぞ。お前が力を得れば私としても戦力が強化されて嬉しいからな。ただし、帰ってきたら残りの仕事はしてもらうがな、ホロホロホロホロ。」

「……はい。」

了承されて喜んでいた、アナゴであったがすぐに現実に引き戻され落ち込んでいた。

「苦労しているんだな。」

アブサロムはアナゴの肩に手を置いて慰めようとしたが、これ以上かける言葉が見つからなかったのでそのままにしておいた。

――――

とまあ、こんなことがありヤムチャの元で〈気〉の修行をしているのである。

「よし。もういいぞ。二人ともかなりの上達ぶりだ。これならすぐに実践にはいれるな。」

「ヤムチャよ、私もアブサロムと同じように〈気弾〉を覚えるのかぁ?」

「アナゴさんは違うぞ。アナゴさんにはもっと素晴らしい技を覚えてもらう。この技を修得すれば、誰もが恩恵を受ける。俺とアブサロムにとってはアナゴさんが神にも見えるようになる技だ。」

「その技とはぁ?」

「まあおいおいな。」

ヤムチャはかなり浮かれていた。新しい世界に来て弟子が二人もでき、しかもその内の一人は見た目だけだがあのセルであるからだ。

それから浮かれながらも、ヤムチャはしっかりと二人に〈気〉の使い方を教えこんだ。確かに二人とも飲み込みがよく、素質もあるが、如何せんまだ一日目ということで体内の気を高めることどまりであった。

「じゃあ今日はここまでにしよう。このまま続けていけば、アブサロムは後3、4日。アナゴさんは難しい技だから1~2週間ってところだろう。頑張っていこうぜ。」

『ありがとうございました、ヤムチャ師匠。』

「おう。(ああ師匠か~。なんて心地いい呼ばれかたなんだ。この世界に来て良かったぜ。)」

改めてこの世界に来て良かったと幸せを噛み締めるヤムチャであった。

心地よい疲れを感じながら帰ったアナゴを待っていたのは、ペローナの愛の仕事の山であったとさ。合掌。

 

オマケ

「ところで、アナゴさんは何歳なんだ?」

ヤムチャは疑問に思っていたことを尋ねる。見た目から言うと当然アナゴのほうが年上であると思われたので、〈さん〉付けで呼んでいたが、もしも想像以上に年上であれば、いくら弟子とはいえ、敬語を使わなくてはいけないのではないかと思ったからだ。

「僕の年かい、ふふん見た目より若いと言われるんだよ。僕の年は28才だよぉ。」

「……」

想像だにしない真実に、ヤムチャは絶句した。どう見ても40ぐらいだろ!!と突っ込みたくても突っ込めないぐらいに衝撃を受けた。

「まさか、俺のほうが年上だったとは。喜んでいいのか、悲しむべきなのか。」

34才になるヤムチャはこの時からアナゴを〈さん〉付けで呼ぶことをやめるのであった。




ヤムチャはセル編後という設定です。
あと短くてすいません。次回は新たなワンピースキャラを出し少し長くなるんじゃないかなと思います。


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アナゴ、新技を修得する

ヤムチャの修行が始まり約1週間がたった。アブサロムは気弾を修得し、〈死者の手〉を完成させ、今は威力を高め、即座に発動するということを主に視点を置いている。

アナゴは、新技の前段階で必要になる〈気〉を読むことを修得しようといている。

そして、今は実践的な修行として、アナゴとアブサロムが組み手と称した模擬戦をしている。

「いくぞ、アブサロムぅ。」

アナゴはそのように言うと同時に高速で移動し、アブサロムの視界から消える。

「おのれ、どこへいった。」

「アブサロム、目で追おうとするな。気で感じるんだ。」

「そうか。」

消えたアナゴをキョロキョロ見回し探すアブサロムをヤムチャが諌める。まだアブサロムは気で探ることには慣れてはいなかった。ただし、気の修得はヤムチャでもかなりの期間を要したことを考えると、二人の身につけるスピードはかなり早いと言えるほどであった。

「感じたぞ。ここだ。」

「よくわかったな。」

振り向き様に右ストレートを放ったアブサロムだが、その手をアナゴも悠々と受け止めた。アナゴはそのままアブサロムの腕を掴み投げる。

「くっ」

アブサロムは空中で態勢を整え、着地と同時に〈スケスケの実〉の能力で姿を消す。

「姿を消したかぁ。だが気は消しきれていない、まだあまいぞぉ、アブサロムぅぅ。」

アナゴは走りだし、何もない空間を殴ったかに見えた。しかし、アナゴのパンチは何かを捉えており、打撃音と共にアブサロムが姿を現しぶっ飛んだ。

「ガルルルル、さすがアナゴだ。じゃあオイラも新技を見せてやろう。」

アブサロムがそう宣言すると、両手をアナゴに向ける。

「死者の手、連弾、ハアアァッ。」

アブサロムの手から黄色い光弾が何発も発射され、アナゴに雨のように降り注ぐ。

光弾が降り注げば降り注ぐほどに砂煙が大きく舞い上がる。

「やったか。」

アブサロムは力の限り気弾を放ち満足げにそう言ったが、まさか連続エネルギー弾が〈死亡フラグ〉であるということは、アブサロムは知るよしもなかった。

「あ~あ。アブサロムやっちまったか、言っておけばよかったな。」

ヤムチャが言わなかったことを後悔した時には勝負は決まっていた。

砂煙が収まると、ほぼ無傷のアナゴがたっており、アブサロムが驚き戸惑っている時に

「チェックメイトだぁ。」

と背後をとられ勝負は決した。

――――

「いい勝負だったぞ、二人とも、ただアブサロムには言っておかなくてはならないことがあってな。連続エネルギー弾、つまりお前の死者の手連弾だが、自分より格上の者に使うと死亡フラグになるといった不吉な定説があるんだ。俺の住んでた世界の俺の仲間の某王子が、勝負を決めるために連弾エネルギー弾を放つと、ダメージを与えるどころか、無傷で逆に倒されるというのがお決まりだったんだ。だから、アブサロムは死者の手は連弾にするより、一発の威力を高めるほうがいいぞ。量より質だ。」

ヤムチャは謝りながらそう言うと、アブサロムは気にするなと返しうまくまとまることになった。

「じゃあ今日はここまでにしよう。明日はアナゴに新技を試してもらうつもりだからゆっくり休むように。」

「ヤムチャ、無理だと思うぞ。」

「私自身も無理だということは心得ているんだぁ。」

『………』

アブサロム、アナゴの予感はまさに適中しており、アナゴはベローナの元に帰ったあとにたまった仕事をこなすことになり、ゆっくり休むことなど夢のまた夢であった。

――――

「よし今日は新技を覚えてもらうんだが、やつれているが大丈夫かアナゴ。」

「だぁいじょぅぶだぁ。」

「オイラには大丈夫なようには思えんな。ペローナ恐ろしいやつだ。」

「ああ、可愛い顔して恐ろしい。アブサロムの部下でよかったぜ。とまあ無駄話はここまでにしよう。」

ヤムチャ、アブサロムはアナゴを哀れに思ったが、どうすることもできないので話を進めることにした。

「新技なんだが、〈瞬間移動〉をアナゴには修得してもらう。」

『!!!』

まさかヤムチャが〈瞬間移動〉というとは、まったく予想だにしないことだった。

「さすがに瞬間移動は物理的にも不可能だろう。」

〈気〉のすごさを身を持って知ったアブサロムであっても不可能ではないのかとヤムチャに聞く。

「いやそうでもないんだ。俺の親友が使っていた技で、アナゴと同じ姿をしたやつが三回見ただけで覚えたし、アナゴはそいつのDNAをもっていると言っていい。なんたって俺のカメハメ涙を一回見ただけで出せたんだからな。そういうことでお前ならできると思うんだ。」

「本当に僕にできるのかい?」

「ああ、できるはずだ。セル化するんだアナゴ。」

ヤムチャに言われアナゴは半信半疑ながらセル化する。

「なんかぁ、できる気がするぞぉ。」

「その気概だ。じゃあまずは〈気〉を探るんだ。お前ならかなり広い範囲の気を感知することができると思う。まあ最初はデカイ気を探ってみろ。」

「わかったぁ。」

アナゴは一言答えると、精神を集中する。

その場に物音一つしない沈黙が訪れる。

しばらくすると、

「あったぞぉ。かなり強い気だぁ。ヤムチャと同じか、それより少し弱いかぐらいだぁ。」

「まあ俺と同等はないだろ。俺はこの世界では一番強いんだからな。まあいい。では感知できたら、人差し指と中指を眉間につけ、その感知した〈気〉に向かって移動することを意識しろ。」

「わかったぁ。」

「ああ、言っておくが、[シュン]行けそうだと思っても行くなよ。今日は感覚だけ掴めればそれでいいからな。」

「ヤ、ヤムチャよ…アナゴが消えたぞ。」

「マジかよ。こりゃあ大変なことになった。俺はアナゴを迎えに行くってくる。アブサロムはここで待機していてくれ。」

ヤムチャはそう言うとすかさず空を飛んでいった。

「そ、空を飛んだ。あれも気の力なのか。なんでもありだな…。」

アブサロムの嘆きは誰も聞く者はいなかった。

――――

「おお、なんかできた感じがするぞぉ。ここは……。」

『……。』

自分の状況を確認しようと辺りを見回す、するとその場にいた多くの人と目があった。回りが静寂に包まれる。

『うわー―。いきなりなにもないところに、怪物があらわれたぞー。』

どうやらアナゴが急に現れたことと、その姿により多くの人はパニックに襲われたようだ。

もう怪物扱いには慣れたアナゴは状況を確認する。どうやら瞬間移動に成功し、大きな〈気〉の所に移動できたということと、移動した先が船、しかも悪いことに海軍の船の上だということがわかった。

「うるせえな。静かにしろ。たしぎ何があった。」

「スモーカーさん。私にもなにがなにやら。」

「ああ?」

船の中から葉巻をくわえ、背に大きな十手を携えた、ガタイのかなり良い、スモーカーと呼ばれた男が現れた。

男が現れた瞬間に船上にはりつめた緊張感が満ちてくる。圧倒的な威圧感を持った男の登場に、本能か、野生の勘であるのかは分からないが、アナゴの頭の中には危険を告げる警報がしきりになり響いていた。




悟空の瞬間移動は気を持つ相手を想像して行うものですが、アナゴの瞬間移動は、純粋悪の魔人ブウが使った感知した気のもとにとぶというほうにさせてもらいました。こちらのほうがこれからの物語で使い勝手がよいので。あしからず。


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アナゴ、あり得ない事態に頭を抱える

(おいおいおいおい、なんだよアイツは絶対にぃかたぎじゃねぇよぉ。どうみたって極道じゃねえかぁ。この船は海軍じゃなくて、海軍って組のもんだろぉ。前までだったらあんなのに道でかち合ったら0.1秒で道開けるぞぉ。どうしたらいいんだぁ~)

アナゴはスモーカーに威圧されていた。いやスモーカーの容姿に気圧されていたといったほうがいいだろう。

「おい。お前はなにもんだ?」

「は、はい。私はアナゴと言います。」

「人間には見えねえが。」

「はい。悪魔の実の能力者です。」

アナゴはもう蛇に睨まれたカエルいや、セミであった。元々緑であったが、青ざめていた。

「スモーカーさん。あの人は以前町を襲ったという虫人間ではないですか。」

スモーカーにたしぎと呼ばれていた女性がスモーカーに伝える。

「ほう、そういやあ以前そんな話が伝わってきたな。おい、お前。本当に町を襲ったのか?」

「スモーカーさん、なに聞いているんですか。本部から伝えられたことですよ。」

「黙れたしぎ。俺はコイツに聞いているんだ。」

「私は襲ってなどいません。町の人に話しかけただけです。」

「やはりな。人間ってえ奴は自分達と違う者や、異様な見た目をするものを大勢で徒党を組んで排斥しようとする。俺もにたような経験があったからな。」

スモーカーは遠いところを見ながらポツリポツリと話している。

「しかし、本部からの命令に背くわけにはいきません。」

「なにもしてねえやつを捕まえる必要もねえだろ。俺達は麦わらの一味を追っているんだ、コイツ一匹逃がしても構わんだろ。」

真面目なたしぎはスモーカーに食い下がるが、スモーカーはそんなたしぎを簡単に流している。(お、どうやら見逃してくれそうだぞぉ。)

アナゴはいい流れになってきたことから、希望の光が見えてきた。しかし、その希望を簡単に打ち砕くことが起こった。

「アナゴ大丈夫か?海軍め食らえ操気弾。」

上空から声が聞こえると、気弾が海軍の兵士達を薙ぎ倒しながらスモーカーを襲った。

「しゃらくせえ。」

スモーカーが背にある巨大な十手を気弾に向けて振るうと、気弾が一瞬にして消え去った。

「やるじゃないか。」

颯爽とヤムチャが船に降りてきた。

「助けに来たぜアナゴ。」

アナゴに向けて爽やかな笑みをうかべながらヒーローにでもなったかのようにそう言ったが、アナゴにはその場をメチャクチャにした疫病神にしか見えなかった。ヤムチャはよかれと思ってしたことであったが、空気が読めないことこの上ないことだった。

「アナゴは下がっていろ、コイツは今のお前ではたぶん倒せないだろう。」

ヤムチャはスモーカーの方を見ると、先ほどとは違い真剣な表情をしている。

「それにな、コイツは俺と同じ臭いがする。かっこよくて、強いってな。」

「空から来るとはなんてやつだてめえはなにもんだ?俺に喧嘩売ってただで住むとは思うなよ。」

「へへ、俺の強さを見たいってか。いいぜ見せてやるぜ。」

凄みを効かせて話すスモーカーに飄々と返すヤムチャ、すでに一触即発の危険な雰囲気が流れている。

(や、ヤバすぎるぞぉ。ヤムチャのアホぅのせいで大変なこぉとぉにい…。ヤムチャに皆が気をとられている好きに瞬間移動の準備をしなくてはぁ。」

アナゴが色々と考えていると、ヤムチャが戦いの口火を切った。

「いくぜ。」

「は、はええ。」

瞬時にスモーカーの懐に入るヤムチャを見て驚きの声をあげるスモーカー、

「一撃で終わらせてやるぜ。」

ヤムチャの拳は唸りを上げてスモーカーに襲い掛かる。

アナゴもヤムチャも決まったと思った、しかし現実は甘くはなかった。ヤムチャの拳はスモーカーを突き抜けたのだった。決して体を貫いたのではない、スモーカーが煙と化しヤムチャの攻撃を無効化したのだ。

ヤムチャの背後に実体化したスモーカーが現れ十手を振るう、しかしヤムチャも並の達人ではない、スモーカーの気を感知し十手を避けた。そのような一進一退のやり取りが数分続いた。

「なんなんだよコイツは、俺の攻撃が当たらないなんて!」

「まさか俺の死角からの攻撃をことごとく避けるとは!」

ヤムチャ、スモーカーは共に同じ驚きを感じていた。

「おいヤムチャぁ、早く逃げようぜぇ。もう準備はできてるんだぁ。」

「逃がしません。」

逃げることを提案するアナゴに逃がさないとたしぎが刀を抜いて立ち塞がる。

「俺はコイツを倒すまで帰るつもりはないぜ。」

アナゴはもう一人で帰ってしまおうかと思い始めていた。

その時アナゴはある技を思い付いた。いや思い付くというよりは、思い出したといったほうがいいのかもしれない。

「こうなりゃあいくぞぉ。たぁいぃよぉうぅけぇえん。」

アナゴが声をあげるとアナゴが太陽のごとき、包み込むひかりではなく、攻撃的な閃光を放った。

「なんなんだこの光はよお。」

「目が痛い。」

「なんでアナゴが太陽拳を使えるんだよ。」

船にいる者一人を除いて全ての者が目を覆った。

「今だ。」

アナゴは一瞬でたしぎをかわし、ヤムチャを掴むと精神を集中しアブサロムの気を感知し、瞬間移動を行った。

光が収まりスモーカーとたしぎが目を開けると船上にあったはずのアナゴとヤムチャの姿はなくなっていた。

「いったいなんだったんでしょう。」

「クソッ。あいつらも麦わらの一味と同じように捕らえるぞ。」

スモーカーとの因縁ができてしまった、アナゴと(主に)ヤムチャであった。




なんとなく最近かっこよかったスモーカーがヤムチャ化してきたような気がしていたのでヤムチャと戦わせました。無理矢理の為かなりグダグタになってしまい申し訳ないです。


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新たなる人物来る

更新遅れてすいません。ゲッコーモリア達がかなり強くなってしまったので、ルフィーたちも一時的に戦力アップさせます。


とある海の上、ダーバンを巻き、白いマントをはためかせ、見るからに体調が悪そうな緑色の肌を持った人物が空中に浮かんでいる。

「クソッ。悟空のやつこの俺に雑事を押し付けるとは。」

男は見るからに憤りながら呟いている。

なぜこの男がこのワンピースの世界にいるのか、それは二時間前のことである。

――――

「ようピッコロ。」

「いきなり現れるとはどうしたんだ悟空?それにお前は死んでいるはずではないのか?」

突如姿を現した山吹色の胴着を着た男に少しもたじろぐことなく、ピッコロと呼ばれた男は返した。

「ちいっと面倒なこと界王様に頼まれちまってよ。おらは死んじまっててできないからよ、ピッコロ代わりにしてきてくれねえか。」

「ああ構わんが、で界王になにを頼まれたんだ?」

ピッコロに問われた悟空という人物は、少し戸惑い苦笑いを浮かべながら話すところによると、ヤムチャがドラゴンボールを使い異世界に行った、それはどうでもよいのだが、その異世界ではヤムチャが行くだけで世界的な均衡が崩れてしまいそうであること、そのためにヤムチャを連れ戻してほしいと頼まれたということであった。

「俺がたかがヤムチャの為に異世界へ行かなくてはならないのか?ベジータやクリリンではダメなのか?」

先ほどまで微笑を浮かべていたピッコロは話を聞くと、笑っているのは同じだが、怒りを含みひきつった笑いを浮かべながら悟空に聞く。

「いやあ、ベジータは聞くだけ無駄だと思うしよ。クリリンはなんか18号とやっとデートにこぎつけたから邪魔しねえでくれって頼まれちまってさ、ピッコロしかいなかったんだ。」

わっかの浮かぶ頭に両手を組み話す悟空という人物は悪びれることなく話した。

「ちっ本当に面倒ばかりかけるやつだ。しょうがない行ってやるか。」

「おっとピッコロわりいんだが、行った先の世界ではおめえの力は強すぎて色々影響がでちまうらしいからこれを着て力を押さえて行ってくれって界王様から渡されてんだ。」

「最初から俺を行かせるつもりだったのか…。」

ピッコロは悟空という人物から今着ているものと見た目は変わらないダーバンとマントを受け取り着用する。

「な、何?」

ピッコロは驚きの声をあげる、着用した瞬間からみるみる内に力が抑えられ、元の戦闘力の一万分の一ほどに抑えられたようである。

「おらはもう戻らなくちゃいけねえんだ。頼んだぞピッコロ。」

「ちょっと待て悟空~~~!」

――――

ということがあったのだ、それからこれまた界王が手引きしてくれナメック星のドラゴンボールを使いこの世界にやって来たのだ。また異世界の人物が現れたので某ヤサイ王子であれば、「異世界人のバーゲンセールだな。」などと言うのであろう。「ヤムチャのバカの気は感じられんな。この世界が広いのか、俺の力が弱まっているからか、もしくはヤムチャの気が弱すぎるのか。まあ後者であろうな。」

―――

「ハクション!」

「いきなりクシャミか大丈夫かヤムチャ?」

「たぶんどこかの美しい女性が俺のことを噂しているんだろうな。」

ヤムチャは恐ろしい人物が迎えに来たことも知らず暢気にアブサロムと談笑していた。

――――

「クソッどこまで俺に面倒をかければ気がすむんだあのバカは。くまなく探すのには広すぎる」

ピッコロは海上で途方にくれていた。

その時後方からある海賊船がやって来ていた。

「おい、前方になにかいるぞ?」

緑のマリモ頭の男がマストの上の部屋から船員に告げる。

「どれどれ、おマジだってえーーーっ空中に浮いてるぞ。それに緑色の化けもんだ。」

長っ鼻の男は尻餅をつきながら驚いている。

「おもしれぇ。そいつのほうに行こうぜ。前進だーフランキー。」

「ああ分かった。」

ビキニパンツの男は麦わら帽子の少年に言われ舵をとる。

「おいおいマジでいくのかよ。まあルフィは言い出したら聞かねえからな。」

金髪のグルグル眉毛がそう言うと船室から出てきた黒髪の女性は

「また面白いことがありそうね。」

と穏やかな笑みを浮かべながら後から出てきて頭を抱えている海図を持った女性と話していた。

「おーい、そこで浮かんでいる緑色ー。」

「ん?クリリンの声がしたと思ったんだが。ここにアイツがいるはずもないしな。聞き間違いか。」

「おーい、聞こえないのか。」

「ここまで近づかれるまで気づけなくなるとは、界王め洒落たものくれやがって。」

ピッコロが振り向くと、すぐ後ろまでライオンの顔が船首についた船がやって来ていた。

「俺を呼んでいたのはお前か?」

船首に立っている麦わら帽子をかぶった少年に、なにかを探るかのようにピッコロは尋ねた。

「ああ俺だ。俺はルフィ、お前は?」

「お、俺か?俺はピッコロだ。」

ピッコロは警戒していたはずであったが、いつの間にかルフィのペースに乗せられていた。

「おい、ピッコロ俺の仲間になれ。」

『ちょっと待てー。』

後ろからやって来たルフィの仲間達がルフィに待ったをかける。

「おいおい、あんな不気味な化け物みたいなやつを仲間にいれるっていうのかよ。」

長っ鼻の人物がルフィに突っ込む、

「ああそうだ、空に浮かんでるし、なんか面白そうなやつじゃねえか。もう俺は決めた。」

あとからやって来た仲間達はこうなったルフィには、なにをいっても通じないことは分かっているので、途方にくれている。

見かねた黒髪の女性が仲間達に助け船を出す。

「船長さん。あなたはいいとしても彼の意向も聞かなくてはね。」

「ロビンちゅわーんナイスアシスト。」

「ロビンよくやってくれたわ。」

グルグル眉毛と航海士であろう女性はロビンに称賛の声をあげる。

「それもそうか。ピッコロどうだ?俺の仲間にならないか?」

ルフィは屈託のない笑顔を浮かべてピッコロに問いかける。(((頼む断ってくれ)))

仲間達は必死に願っていた。こんな素性も分からない男?を仲間にするなんて考えられないと。

ピッコロは普通では即断るところであるが、この世界が分からないこと、そして、悟飯以外で自分に裏もなく好意というか、興味を抱いてくれたことに嫌な感じもしなく、また悟空に少し似た感じがしたため少し、思案した末に了承した。

「おっし、決まりだな。」

「ああ、だが俺にはすることがある。それが終わったら抜けさせてもらうが構わんか。」

「ん~ん。まあしょうがねえか。サンジ~めし~ピッコロの仲間入りだ宴会だ~。」

「悪いな俺は水しか飲まん。」

異世界人ピッコロが麦わら海賊団に加入した。



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アナゴ、大きな悩みを抱える

「ん、おお、アナゴにヤムチャ、無事に帰ってこれたか。安心したぞ。」

アナゴはアブサロムの気の元にヤムチャと共に瞬間移動をし、なんとか事なきを得た。

しかし、アナゴは地面に膝を付きなにかを呟いている。

「ついに私は犯罪者になってしまった。私自身はなにもしていないがぁ、公務執行妨害をしたヤムチャの仲間の仲間ということでアウトなんだろうなぁ。」

「大丈夫かアナゴ。俺が行かなきゃ危なかったな。まあそんなに嬉し泣きするなよな。」

ヤムチャはアナゴが感謝して嬉し泣きをしているのだろうと、勘違いしたようであったがそれがアナゴの怒りに火をつけることとなる。

「確かに、助けに来てくれたことはぁ嬉しかったがぁ、一緒に逃げればよかったのになんであんなことになったんだぁ。」

「あんなこと?」

ヤムチャの頭の中にはスモーカーと戦ったことはたいしたことではないと認識しているらしい。まあヤムチャのいた世界では戦いは日常茶飯事なのでしょうがないといえばしょうがないんだが、

「海軍に喧嘩うったことだよぉ、ヤムチャの仲間の私もあれでは犯罪者になったはずだぁ。」

「なんだ、そんなことか。」

「そんなことだとぉ。私は今まで清く正しく生きてきたんだ。確かに賭け麻雀はしていたが、前科がつくようなことはしていないのに、出張先で犯罪者になるなんてぇ。」

アナゴは堰をきったようにヤムチャに詰め寄り文句を言っている。

「話を聞いていると海軍に喧嘩をうったみたいだが、モリア様の部下だから大丈夫だとおもうぞ。」

最初はなにを言い争っているか分からなかったために黙って聞いていたアブサロムだったが、話を聞いているうちにどういうことがあったのか、アナゴはなにに憤っているのか分かったので、アナゴの悩みを解決し、ヤムチャを助けるためにこのように発言した。

「え、そうなのか?」

「ああ、大丈夫だ。安心していいぞ。」

「そうかぁ。」アナゴはやっと落ち着きを取り戻した。

「ふぅ、アナゴも落ち着いたみたいだし、よかったよかった。」

『お前が原因だろ!!』

ヤムチャはやはりなぜアナゴが怒っていたのかわかっていなかったようだ。

「アナゴは瞬間移動のこつは掴めたようだし、あとは精度を高めれば、俺たちの望みもかないそうだ。あと1週間ぐらい練習すればいけるようになるだろう、がんばろうぜ。じゃあ今日は解散だ。」

ということで解散となった。

「あと1週間か、1週間後には残り5日か、私はどうなるんだろうなぁ。」

アナゴの呟きはとても弱々しいものであり、誰にも聞かれることはなかった。

アナゴにとっていろいろなことがありすぎ、体力的にも精神的にも満身創痍であったが、帰った先ではペローナの仕事が恐ろしいほどの量が待っていたのであった。本当に御愁傷様である。

――――

ところ変わって麦わらの一味のサウザンドサニー号

「なあピッコロ、どうやって宙に浮いてたんだ。」

「ああ、あれは舞空術といい空を飛ぶ技だ。」

「おおーすっげえ。俺にも教えてくれ。」

「ああ、時間があるときにな。」

ピッコロとルフィーはもう打ち解けていたが、他の仲間たちは遠巻きに見ていた。

ただピッコロに1人マリモ頭の剣豪、ゾロが近づいてきた。

「お前はかなり強そうだが、強さを試させて欲しいんだが。」

「ああ、いいぞ。」

麦わらの一味のなかでも戦闘狂であるゾロがピッコロをただ者ではないと見抜いて力試しをしたいと望みピッコロは断ろうとも思ったが、この世界の戦士の力を見極めるのにちょうどよい機会だと思い受けてたつことにした。

「ちょっと待て、お前達が戦ったら、サニー号が大変なことになるぞ。」

長鼻の男ウソップがそういうとそれもそうだなとゾロが頷き戦いには至らなかった。しかし、麦わらの一味は海軍や世界政府にまで喧嘩をうっているので、力を見たいというのはゾロ以外のメンバーも思っていた。

ピッコロは聡明であり、仲間たちの考えも読み取ったためにどうしようかと考えていたが、ピッコロはその時ちょうどよい大きさの気を感じとった。

「俺の力を見せてやる。そこで見ていろ。」

とだけ言うとピッコロは船から飛び出し宙を舞う。

しばらくたつと、海から巨大な蛇がピッコロをひと飲みにしようと襲いかかる。

「ふん止まって見えるぞ。」

ピッコロは最小限の動きでそれを避けると蛇の尻尾を掴み、上空に投げあげる。

「死ね。」

ピッコロの口から強烈な閃光が辺りを照らした時には上空からバラバラに砕け散った蛇の肉片が雨のように降っていた。

ピッコロはかなり力を抑えたつもりであったが、ルフィー達が茫然としていたためやり過ぎたと後悔していた。

しかしそれで恐れを抱く麦わらの一味ではなかった。

「すっげぇー。どうやったんだピッコロ。」

「ますます戦いたくなったぜ。」

「今日の料理は蛇料理だな。」

ということで、戦闘の化け物三人組には認められたようであった。

ただし、他のメンバーには警戒心を深められる結果となった。



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アナゴ、恐怖の依頼〈前編〉

「この世界に来て初めて、いやこれからも体験することはないのではないかとも思われる恐怖を、いや狂気の体現をまさか僕が体験いや、自分の視覚にとらえることになろうとは…。元の世界にいるときはもちろんのこと、こちらに来て何度となく危ないことにあった今になっても、あれほどのことは想像することも、創作することさえももできないはずだ。ただし、ヤムチャ曰くセルという能力の素晴らしい有用性を改めて認識することになったことだけはよかったのかも知れないが。

本当であればこのようなトラウマになり、引きこもりになってもしょうがないほどの恐怖体験は、思い出すだけでも背筋に冷たいものがはしることなんだが、ここに来てから毎日必ずつけようと決心した日記であるからこそ、このことを記し残そうと思う。

あれはこの世界に来て20日目のことである。

――――

「モリア様、僕とぉ、ヤムチャがこんなにぃ朝早くぅ呼ばれるとはぁなにかあったんですかあ?」

アナゴとヤムチャは朝早くにモリアに呼び出され、モリアの私室に眠たさを堪えながら訪れていた。まさかこれから一生の内で初めて体験することになる恐怖の依頼を言い渡されるとも知らずに。

「よく来た、アナゴにヤムチャよ。お前らを呼んだのは、お前たちにしかできないことをしてもらおうと思ったからだ。」

「俺達にしかできないか、いいじゃねえかやってやるぜ。」

ヤムチャはなにか喜んでいるが、アナゴには悪い予感がしていた。虫の知らせともいうのだろうか、野生の勘といえばいいのであろうかは分からないが。

「今回してもらいたいことは、新しいゾンビ兵を作るための、素体の回収だ、キーッシッシッシッシ。」

「素体?」

「ああ、ホグバックがいうマリオのことだ。」

アナゴは日本人の宗教感によるものか、人間の本来から持つ倫理観からくるものかは分からないが、ゾンビ兵は、死体の冒涜になると思っており、あまりよくは思っていなかった。ただし、自分の恩人であり、だんだんスリラーバークの仲間に親近感や親愛の情を抱き出していたので、嫌悪感を顔に出すことなく、依頼を聞いくことにした。

「前から目をつけていた海賊なんだが、今回海軍に粛正されるらしい。そこでアナゴお前が覚えたという瞬間移動で、その海賊の死体でもいいし、生きたままでもいいから捕まえてこいということだ。」

「なんだ俺達には簡単なことじゃないか。」

ヤムチャがきざな笑いを浮かべて感想を述べれば、アナゴも同様の感想を持っていた。次のモリアの注意点を聞くまでは。

「ああ、ここまでのことならそう思うのも当然だが、ここからが問題なんだ。海軍が粛正するために送り込むのは海軍大将の赤犬と呼ばれる男で、コイツの強さと能力がとんでもないやつなんだ。」

「俺より強いやつがいるとは思えんが。」

ヤムチャは強がるが、ヤムチャの強さをモリアも知っていながら言っていることなので、アナゴも神妙な面持ちで聞く。

「強さで言えば、この世界でも5本の指に入るんじゃねえかと思う。で能力なんだが、悪魔の実〈マグマグの実〉を食ったマグマ人間だ。

コイツと戦った奴は死体も残ることはない。死んだあとは炭になるか、消し炭になるかだからな。ということでお前たちは赤犬が目的の海賊を消し飛ばす前に、四肢が万全の体を持ち帰ってもらいたいんだ。ただ俺は王下七武海だから、俺の部下と知られずにしろということだ。キーッシッシッシッシ。」

「ほう。久しぶりに腕がなるぜ。今まで退屈していたんだ。」

ヤムチャは腕を回しながら自信満々でいるが、海軍大佐であるスモーカーでさえあれほどの強さであったことを考えると、まったく楽観できることでないことは、火を見るより明らかなことであった。

「安心しろ、俺に叶うやつなんかいないんだからな。」

ヤムチャの気遣いを嬉しく思う反面、なぜか安心することができないアナゴであった。

「では頼むぞお前達、吉報を待っているぞキーッシッシッシッシ。」

「ああ希望に答えてやるぜ。」

「できるだけぇ、頑張りますぅ。」

自信満々のヤムチャと自信なさげなアナゴという両極端のコンビがここに結成された。

「じゃあ一時間後に広間に集合な。」

「ああ。」

口数少なく準備に戻るアナゴであった。

しかしながら、アナゴ自身も何故ここまで気落ちしているのかは、理解できていなかった。

戦場につくことで改めて気づくことになるのであった。

――――

「ええっとぉ、この麻袋に死体もしくは生きた海賊を入れればいいのかぁ、でこの手配書がその海賊の写真かぁ。一億五千万ベリーかぁ。高いのだけはわかるなぁ。」

「唇~。」

アナゴが手配書を見ていると後ろからペローナに呼ばれる声が聞こえた。聞こえた声にはなにか悲壮感が感じられる声であった。

「唇、お前海軍の赤犬とやりあうんだってな。大丈夫なのか?」

「瞬間移動でいって戦うことなくすぐに帰って来るんでぇ大丈夫ですよ。」

普段のペローナとはまったく違った悲壮感漂う表情で聞いてくるペローナに、心配をかけないように、弱々しいながらも今できる最高の笑顔で答える。

「絶対無事に帰ってこいよ。死んだら許さないからな。」

「…わかりましたぁ。」

アナゴは一言だけ返し、ヤムチャとの待ち合わせの広間に向かった。

――――

広間について10分経ってやっとヤムチャがやって来た。

「悪いな。アブサロムに引き留められてな。かなり心配した様子だったからなだめていたら、遅れちまった。」

「ペローナ様もぉ、同じような感じだったんでえよく分かるよぉ。」

二人できょうかんしあう。

「まあ、俺は修羅場は何回も潜り抜けている、強敵も、女関係もな、安心して俺に任せろ。じゃあセルになれアナゴ。」

「わかったぁ。ハアッ。」

アナゴはセルになると気を探り出す。三日前とは段違いの感知能力になっていた。

「でヤムチャ、赤犬の気はとんな気なんだぁ。」

至極真っ当な疑問である。

「まあ、大きい気を感知して、そこから少し離れた気のところに飛べばいいぜ。」

「そうか、いきなり戦闘だけはぁ、勘弁して欲しいからなぁ。…………!!!あったが、なんだこの気はぁっ、化け物じゃないかぁ。」

青ざめるアナゴにヤムチャも心配し、探ってみる。

「……!!!アナゴお前の感知した気はあっちの方向のじゃないか?」

「…ああ、そうだがぁ。」

「あれは違う安心しろ、多分赤犬という奴の気は反対方向だ。多くの気と大きい気が感じられる…。」

ヤムチャの真剣な顔を久々に見て少し驚いたが、再び集中しヤムチャが言った方向を探る。

「……!!あった、こちらもかなり強い。私達より上なのは確かだ。すぐにいってぇ帰って来ればぁ大丈夫かぁ。じゃあヤムチャ私につかまれえ。ヤムチャ?」

「ああ、悪い」

大きな気を感じてから心ここにあらずのヤムチャを連れ瞬間移動を行い、戦場に赴く二人であった。



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アナゴ、恐怖の依頼〈中編〉

赤犬の口調の広島弁が上手くいかないということで、違和感があるかも知れませんが勘弁してください。


『…………』

瞬間移動でやって来た所は、地獄絵といってもよいような凄惨な光景が拡がっていた。

辺り一面に黒焦げた跡や、何かが降り注いだ跡、戦慄を感じたものはそれらではなく、そこらじゅうに転がっている、焼死体である。もう炭になっており元が人間であったとは、到底思えないものがほとんどである。

さらにそれだけでなく、海軍の軍人であろう死体も転がっている。この死体は焼け焦げてはいないが、腕がなかったり、頭が無かったりと焼死体以上にインパクトがある光景である。

また、人間が焼けた臭いや、鉄臭い臭いなどが漂っていると五感に感じられるもの全てが地獄を感じさせていた。

「うぇ。」

その光景と臭気に耐えられなくなりアナゴが吐きそうになっている。

目を逸らそうにも、至る所にその光景が拡がっているので、そらしようがないのが現状である。

「…酷いな。アナゴ、お前はこういう光景は慣れていないと思うから、目を瞑っていたほうがいい。歩く時には俺の気に沿って歩けばいい。まあこの光景は俺でも嫌悪感を感じるものだぜ。早く仕事を済ませて帰ろうぜ。」

ヤムチャも辺りの光景に顔をしかめながらも、アナゴを気遣っている。

アナゴもヤムチャの気遣いにより少しは落ち着いたようであるが、目を閉じてもその光景が消えることはなかった。

――――

「うわー。」

「ギャーー。」

ヤムチャとアナゴが少し歩くと前方から叫び声が聞こえてくる。

ヤムチャが見てみると、どうやら少し先で戦いが行われているらしい。

「さあ、さっさとここからおさらばするためにも、やることやっちまおうぜ。たぶん目的のやつもあっちにいると思うぜ。お前も感じていると思うが、とてつもなくデカイ気と、まあまあデカイ気があるからな。行くぜついてきな。」

ヤムチャはそう言うと走りだす。アナゴも以前目を閉じたままヤムチャの気を頼りについていく。

「い、命だけは助けてくれ。」

ヤムチャが戦いの場に着くとその場は、戦いと呼ぶことすらできない、殺戮の様相を呈していた。

そして目の前には命乞いをする目的の男と、それを狂気の眼差しで見つめる正義と書かれた上着と、海軍のトレードマークがついた帽子を被る男がいる。

海軍の男は命乞いをする男に対しゆっくりと口を開く。

「人間正しくなきゃ生きる価値なし」

死刑宣告であった。ヤムチャとアナゴの目の前で男の腕が海賊の男の腹を突き破った。

「まずい。」

ヤムチャが飛び出す。

「往生せいや。」

男がそう告げると目の前の男が燃え上がるはずだった。。

「!!」

「セーフ、なんとか目的の体だけは守りきったぜ。」

驚く男から約10メートルほど離れた所に腹に穴が開いた男を抱えたヤムチャがいた。

ヤムチャは男が炭になる前に海軍の男の腕から奪い取ることに成功したのだった。

ヤムチャは懐から何か小さなカプセル状の物を取り出すと、ぼたんを押し転がす。

ぼんと音を立てると、転がしたカプセル状のものが棺に変わっていた。

ヤムチャは徐に男の遺体を棺に納め、棺にあるぼたんを押すと、小さなカプセルに戻っていた。

その光景に少し唖然としていたが、すぐに頭を切り換えてアナゴは叫んだ。

「ヤムチャ逃げるぞぉ。早くこちらにくるんだあ。」

「俺にはすることができた。少し待っていてくれ。」

ヤムチャからでた言葉はアナゴを驚かせる。すでに仕事は終わったはずであり、この場に留まれば、命の危機があるのは明白なはずなのに。ヤムチャは何かすることができたと決意の眼差しを海軍の男に向ける。

「おんどれはなにもんじゃ。」

「おいおい、名前を聞きたければ、お前から名乗るのが礼儀ってもんじゃないか?」

ヤムチャは口元は笑みを浮かべてはいるが、目は全く笑ってはいなかった。

「悪に名のる名なぞないわ。」

「フッ、ハハハハハハ。」

「何が可笑しい。」

いきなり声をあげて笑うヤムチャに男は苛立ちながら問う。

「笑わせんなよオッサン。俺が悪だって。まあそれは真実だからしょうがねえが。お前に言われるとは思わなかったぜ。」

笑いながらヤムチャが言うが次の瞬間表情は一変していた。

「俺から見ればお前のほうが酷い悪党だよ。確かにそこら辺に転がっている海賊は悪党だろう、生きている価値のないやつも大勢いるだろう。だがな、それを虫けらのように殺したり、命乞いをするものを躊躇せずに殺すのは、悪党のすることじゃないのかい。ええ海軍さんよ。」

ヤムチャがいい放った瞬間場の雰囲気、いや男の持つ雰囲気がガラリと変わった。

「わしが、悪党じゃと。」

「ああ、そう言ったんだが聞こえなかったか。悪党だと言ったんだ。」

「このわしを悪党と言うか。正義を貫くわしを。わしを悪党呼ばわりし、わしの邪魔をするもの、生きる価値なし、死にさらせ、往生せいや!!」

男がヤムチャに赤く燃え上がる拳を振り上げ襲い掛かる。

「どうやら地雷を踏んじまったようだな。まあいいぜ、俺も一発お前をぶん殴るために残ったんだからな。来いよ。」

ヤムチャもそう叫ぶと男に向かって走り出した。




善悪の判断は人それぞれなので今回のヤムチャの言い分に納得出来ない人も結構いると思います。いたら少し意見をお願いします。少し内容を変更したいと思いますので。


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アナゴ、恐怖の依頼〈後編〉

「あっち~~!!」

ヤムチャは瞬時に海軍の男の懐に潜り込むと腹に一撃を入れようと拳を突き出した。しかし、ヤムチャの拳が海軍の男にヒットすることはなかった。ヤムチャはうなりをあげて海軍の男に振り抜いた拳を当たる前に引っ込めたからだ。あまりの熱さに危険を感じ。

「くらえ!」

海軍の男は懐に潜り込んだヤムチャの素早さに驚きながらもすぐに反撃に転じ、マグマと化した腕がヤムチャを襲う。

「当たればヤバイが十分避けられるレベルだな。」

ヤムチャは海軍の男の怒濤の攻撃をすらすらとかわしていく。

「へったいしたことないな。」

ヤムチャは今まで自分より圧倒的にレベルが上の敵とばかり相手をしており、いつも相手の攻撃を避けることすらできなかった。しかし今回は違う、強敵のはずの海軍の男の攻撃を簡単に避けられているのだ。ということで調子に乗り出していた。

それが悲劇を呼び寄せることになるとは思いもせずに。

 

「おのれ、大噴火!!」

男の腕が膨張すると同時に、マグマの拳がヤムチャに向かっていく。

ヤムチャは拳が届かないギリギリの所で避けていた為に突如襲い掛かるマグマの拳に対処しきれない。

「くっ、はあっ」

ヤムチャは避けることを諦め気弾で相殺をねらう。

放たれた巨大なマグマの拳とヤムチャの気弾がぶつかり合い、大きさの違いから相殺は出来ないが破壊することはかろうじて成功する。破片はヤムチャを襲い至るところに火傷を負うことにはなったが。

「まさかあんな遠距離攻撃があるとは。しかも体までマグマ化するなら殴ることすらできないな。どうするかな。」

ヤムチャは海軍の男から距離をとり、今までの戦いに頭を巡らせると良い考えが浮かぶ。

「いい方法があったぜ。」

ヤムチャは得意の狼牙風々拳の構えをとる。

そして、その場で狼牙風々拳を繰り出す。

「はい、はい、おー。」

ヤムチャの拳が空を切る度に、拳の衝撃波が海軍の男に降りかかる。

かなりの数の衝撃波がヤムチャの拳から放たれる。

「やったか?」

巻き上がる土煙が晴れると、無傷の男がたっていた。

「わしにそんな小手先の攻撃なぞ効かんわ。」

「おいおい、あの煙のおっさんと同じじゃねえか。」

ヤムチャは顔をしかめるが、その顔には何故か楽しそうな笑みもうっすらと浮かんでいる。

武道家の本能として自分の力と近い強者との戦いを楽しんでいたのだ。

「まあしょうがねえな。本当は自分の拳でダメージを与えてやりたかったんだが。」

ヤムチャはそう呟くと、手のひらを男に向ける。

「はあっ。」

ヤムチャが先ほどより大きな気弾を放つ。

「一度見た技など効かんわ。大噴火!」

ヤムチャの気弾と男の大噴火がぶつかり爆発が巻き起こる。

ぶつかり合った場所を中心に爆風が巻き起こりなにもかも吹き飛ばす。

爆風が止み、視界が晴れる。

「ふう。時間稼ぎにはなったな。」

「時間稼ぎだと。」

ヤムチャの手のひらの上にサッカーボール大の気弾が浮いていた。

「食らえ、操気弾。」

ヤムチャが気弾を投げる。

「ふん、この程度。」

男は苦もなくかわす。

「たいしたことないのお。今度はこちらからいくぞ。」

男が地面を蹴った時であった。

「かかった。」「なに!!」

地中から突如現れた気弾が男の腹をとらえ、男の体を宙に舞わせた。

「へっ。ざまあみろ。」

ヤムチャはガッツポーズで喜びを表している。

「マズイ。」

その戦いを少し離れた所で見ていたアナゴは離れていたからこそ、見えていたことがあった。

ヤムチャの気弾が男をとらえていたことは確かであったが、当たる直前に男は自分からジャンプし、ダメージを極力小さくしたのだった。

宙を舞った男は宙返りをし、地面に着地したと同時に地面を蹴りヤムチャに急接近した。

「なに!」

ヤムチャは構えをとることすらできていなかった。

「冥狗」

「グハッ。」

男の掌呈が腹にめり込み、体内に到達する。

「往生せいや。」

男は口元に歪んだ笑みを浮かべいい放つ。

体内にあるマグマの拳が膨張し、生き物のように体内を駆け巡り体内を焼き尽くす。

「ーーーー」

その痛みは想像を絶するものであり、言葉すら発することは出来ない。体はこのまま痛みを享受することは危険と判断し、意識をたとうとするが、

(このまま意識がなくなればアイツまで殺されてしまう)という強い思いからかろうじて意識は手放さなかった。

男が腕を引き抜くが一滴の血液さえも出ることはなかった。

ヤムチャは何が起こったか頭で処理しきれていなかった。

目の前に立ちはだかったアナゴが、スローモーションでも見ているかのようにゆっくり倒れていくのを呆然と見ていた時は。

「おい、なんでなんだよ。なんで俺なんかを庇ったんだよ。」

ヤムチャの悲痛な嘆きが場にこだまする。

「…ヤムチャを…死なせる訳には…いかないからなあ。」

「だからってお前。お前が死んだら俺は皆になんて言えばいいんだよ。」

ヤムチャは涙を流しながらアナゴに訴えかける。

「ヤムチャ…悪いが…私を起こしてくれ…ないか。このままじゃ…力が入らない。」

「なにを言って、そうか。待ってろすぐに。」

ヤムチャはアナゴの頼みに最初は難色を示したが、何かに気づくとすぐにアナゴの体を起こした。

「ありがとう。ハアアァァアッ。」

アナゴは力一杯叫ぶと、腹に空いた穴が緑色の体液を撒き散らしながら再生した。

「なに!!」

その様を唖然とした表情で男は見ていた。

「ふう、体内の焼き尽くされた部分も再生できたぞぉ。ヤムチャが受けていたら絶対に死んでいたがあ、私なら大丈夫だからできたことなんだぁ。まあ体が勝手に動いていたってこともあるんだが。」

「ああ助かったぜ。ありがとな。」

ヤムチャは安心した顔で感謝を述べた。

「安心するのは早いぞぉ。まだ命の危機にはかわりないんだからなあ。そこで、ここから逃げる為にあれを撃って、少しでいいから時間を稼いでくれえ。」

「分かった。」

既に阿吽の呼吸であった。

「おんどれらはなにもんじゃ。」

我に返った男は問いかける。

「だから、お前が名乗れよ。」ヤムチャは余裕を取り戻しており、飄々と言い返す。

「ワシはサカズキじゃ。おんどれらをあの世に送る男じゃ。」

「俺はヤムチャだ。今回はお前から華麗に死体を奪って逃げ去る男だ。」

ヤムチャは楽しそうにいい放つ。

「させるか。」

「か~め~は~め~波ー。」

ヤムチャは合わせた両手をつきだすと、合わさった手のひらをから、青白い閃光と共に、レーザーもしくはビームのような光がサカズキに向かって空を裂きながら突き進む。

「ぬああぁぁあ。」

サカズキはマグマと化した両手で受け止めているが、マグマを撒き散らしながら後退させられる。

「アナゴ、今だ。気が残り少ない俺じゃもう限界だー。」

「十分だぁ。」

アナゴはヤムチャの肩を掴むと瞬間移動を敢行する。

サカズキが閃光が消えたことにより、前を向くと既にアナゴとヤムチャの姿はそこにはなかった。

――――

ということがあった。

サカズキという男の底知れぬ力だけでなく、あの異常なまでの正義への追求は恐ろしさしか感じられなかった。もう絶対に会いたくはない相手だ。

 



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ピッコロ仲間と打ち解ける

アナゴさんは今回はでません。サカズキ戦の疲れにより。
注意)ピッコロの性格が違う物になっています(断言)それでも構わなければ読んでください。




「どうしたルフィそれがお前の全力か?」

「まだだ、ギアセカンド!!」

「ほう、確かに強くなったがまだまだだな。ハアッ。」

―――

「ピッコロお前ほんとに強いな。」

「そうか。」

ピッコロとルフィは割れた岩の横で向き合って話している。

「ルフィなぜ急に腕相撲を?」

「なんかピッコロの声聞いていたらエースのこと思い出してな、急に腕相撲したくなったんだよ。」

「エース?」

聞き慣れない言葉が出たことによりなにのことかわからないので、ピッコロは聞き返す。

「ああ、エースってのは、俺の兄ちゃんだ。ピッコロに声が似ているんだ。」

「兄か。」

ピッコロには兄と呼べるものはいなかった。 先代のピッコロに産み落とされたことを考えると、タンバリンやドラムなどがいたが、ピッコロには全く面識がないのでいないと言っても過言ではなかった。

ということで、ピッコロは興味深く感じ話を続ける。

「ほうそのエースという兄と俺の声はそんなに似ているのか。」

「ああ、もんのすごく似ているぞ。」

(ルフィとクリリンが似ているようなものか)

ピッコロはルフィと声が瓜二つの男を思い出す。

「そのエースという男は強いのか。」

「そりゃあ俺の兄ちゃんだから強いさ。」

ルフィは自慢気にエースのことを嬉しそうに話す。

「そうか、一回合って、手合わせ願いたいものだな。」

「ああ海賊やってれば合えるさ。」

「これはエースに合うまで帰る訳にはいかなくなったな。」

ピッコロはするべきことが増えた訳だが、笑みを浮かべながら話していた。

「ピッコロ、気の訓練を頼む。」

ルフィとの話を終え瞑想中の所へゾロがやってくる。

以前から少し訓練をつけているためだ。

「いいぞじゃあ―「ピッコロすまんが頼みがあるんだが。」んサンジか?」

「おいグルグルコック、邪魔をするな。俺が先だ。」

「ああ、そんなの知るかマリモ。」

「ああやるのか。」

途中から来たサンジとゾロが喧嘩を始める。

これもいつものことであるが、どうしたものかとピッコロが悩んでいると、

「あんたら止めなさいよ。ピッコロさん困ってるでしょ。」

「すまんナミ助かった。」

ピッコロは喧嘩を止めてくれた、声の主のナミに感謝を述べる。

「いいのよ、で~ピッコロさんに頼みがあるんだけどお。」

「お前もか!」

「自分の意思を通すナミさん最高です」

ナミがゾロの突っ込みと、サンジの賛辞の声を無視しながら、猫なで声でやってくる。

「う、うむ」

三人に囲まれ悩むピッコロ、それだけでは終わらない。

「ピッコロ~。前見せて貰った豆についてもっと教えてほしいことがあるんだけど。」

その輪に加わるチョッパー。

「俺が一番最初にだなー。」

「うるせえぞマリモ。」

「ピッコロさん困ってるでしょ私から。」

「俺も少しピッコロと話が…。」

三者三様の意見いや四者四様とでもいうのか、ピッコロが言い合っている仲間に頭を悩ませていると、

「フフフ、人気者ね。」

「ロビン笑ってないで助けてくれ。」

にこやかな笑みを浮かべながらロビンがピッコロに話しかける。

「もう少しあなたが四苦八苦しているのを見ていたい気もするんだけど、いいわ。」

少しSいや、黒い面があるが、一番頼りになるロビンを味方につけその場は終息した。

どういうことだと思われるだろう。以前はピッコロを皆が不審の目で見ていたのになぜかと。それは少し日を遡ることになる。

――――

仲間入り後

「ルフィ俺は本当に仲間になっていいのか?誰にも歓迎されていないのは明白なんだが。」

「そうか?みんな照れてるんだろ。」

ルフィはけろっとして言っている。

以前のピッコロならば仲間なぞいらんと一人で行動していたが、分からない世界であること、仲間の大切さを知ったピッコロは関係をよくしておいたほうがよいだろうと思い行動を起こす。

「まずは、ナミとかいう航海士からいくか。」

まずはナミに目をつける。サンジ的な理由ではない。

ピッコロは以前修行中悟空の家で世話になっていたことがあった。その時に最強の男悟空よりも妻のチチのほうが遥かに次元を越えた力を持っているのを見た。ピッコロですら逆らえずに自動車教習所にいくということになったということまであった。

また誇り高きベジータですらブルマの尻に敷かれているということから、どのような集団においても女性が一番の権力を持っているということを知った上での判断である。

ピッコロが気を探り部屋の前にやって来ると中から声が聞こえる。

「ねえロビンこの服なんていいと思わない?」

「ええ、貴女によく似合うと思うわ。」

「ありがとう。これなんかロビンにあうと思うわ。早く町で買いたいわね。」

中ではナミという女性とロビンという女性が話しているらしく、楽しそうな雰囲気である。

「い、行くか。」

戦闘でも緊張することのないピッコロが少々緊張しながら船室に入る。

「え、あなたは。いきなりなに?」

いきなりキツい言葉をかけられる。

見てみると、机の上に雑誌があり、服が載っている。それを見て話していたのだということが分かった。

「お前はこれが欲しいのか。」

「そうだけど、あなたには関係ないでしょ。」

明らかに出ていけというような感じである。

ピッコロはナミの睨み付けるような視線を流し、指を指す。

「な、なに?なにする気。」

「黙って見ていろ。」

ピッコロの強い口調に静まる船内、ピッコロの指が光ると同時に雑誌に載っている服が現れる。

「え、え、ええ!?どういうこと。」

「なにをしたのかしら?」

驚き方に違いはあるものの、ナミとロビンは明らかに驚いていた。

「俺はどんなものかイメージさえできれば、服を瞬時に作り出すことができるのだ。それは挨拶がわりだお前にやる。」

「え、いいの?」

先ほどとは違い敵意は消え去っている。ピッコロはここぞと追撃をかける。

「ああ、これからも欲しい服があったら俺に言え、イメージ出来るものさえあれば作ってやる。」

ピッコロはそれだけいうと返事も聞かず部屋を後にした。

「ねえ、ロビン。あの人いい人ね。」

「ええそうね。(ナミをもので落とすなんて私と似たやり方をするなんて、やるわね。)」

ナミに取り入ることができた。

「次はあのサンジとかいうコックにしておくか。」

ピッコロは再び気をたよりに動く。

「しまった。ナミさんとロビンちゃんにアップルパイを作ろうと思ったのにリンゴがない。俺としたことが。」

ピッコロが部屋に入ると頭を抱えて落ち込んでいるコックがいた。かなりデカイ声だったのでまる聞こえである。

「リンゴがないみたいだな。これを使え。」

「えっ。なんでお前がリンゴを持っているんだ?」

「ああ、果物であればなんでもだせるんでな。」

ピッコロはリンゴを渡しながらさも当然のように言う。

「すげえな。でも助かったぜありがとな。」

「気にするな。果物であればいつでも出してやる。」

そう一言いうと再び返事を聞かずに出ていった。

「あいついいやつみたいだな。このリンゴなんてかなり新鮮でうまそうだしな。」

サンジにも近づくことに成功した。

 

「次はあのトナカイにしておくか。船医らしいからこれがあれば。この部屋にいるみたいだな。」

ピッコロは今回はノックをし入る。

「誰だ?あー緑のおれはうまくないぞ。」

チョッパーはピッコロを一目見ると怯え物影に隠れる。

「(ハァ、思った通りの反応だ。)お前は優秀な船医のようだから見せたいものがあってな。」

「俺が優秀だって。嬉しくないぞコノヤロウ。」

あからさまに喜んでいるチョッパーを見て御しやすそうだと見ていると、

「俺に見せたいものってなんだ?」

少し緊張がとけたようで聞いてきたのでとっておきの物を出す。

「この豆なんだが。仙豆といってどんな怪我でも一瞬で治してしまうものだ。優秀な船医のお前に見せておきたくてな。」

「嘘だろ。そんなものがあったら医者なんかいらないじゃないか。」言葉ではそのように言っているが、かなり興味深そうに見ているので畳み掛ける。

「怪我だけで、病は治せんが。医者であれば興味があるかと思ってな。まだ手元にはあと二粒あるからそれはお前にやる。信じるも信じないもお前しだいだ。」

と仙豆を机に置き出ていった。

等々を発端にして少しずつ良好な関係を築きあげたため結果として、仲間たち打ち解けることができたのであった。



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ヤムチャ、祝賞金首に

最終話に入る前の戯れです。
色々と問題があると思いますがお遊びですから大目に見てください。


『頼むアナゴ様。』

アナゴの前でアブサロムとヤムチャが土下座をしている。それもかなり必死の形相で。

「私にはペローナ様に言い渡されたあ仕事がああるんだが。」

「ペローナには了解を得た、だから頼むお前の瞬間移動で町まで連れていってくれ。」

アブサロムはしっかりと裏(ペローナ)へも手を回しており少しずつアナゴの外堀を埋めていく。

「しかし、私は町にはいい思い出があないうえ、町に行ったら襲われるとお思うんだが。」

「それなら大丈夫だ。これがある。クマシー専用デカイマスクー。」

タタタタッタターという効果音付きで今度はヤムチャがクマシーから拝領したマスクを出す。

「安心しろアナゴ。これさえあれば誰にも恐れられることはない。装備するんだ!持っているだけでは意味がないぞ!」

「しょうがないなあ。」

ヤムチャの勢いに押されしぶしぶマスクを装備するアナゴ。

「……」

「(しくったか。しかしここで諦める訳にはいかない。)に、似合っていると思うぞ。な、アブサロム。」

なにやらアイコンタクトを送るヤムチャ。

「(わかったぞヤムチャ。バトンは受け取った。)ああおいらもよく似合っていると思うぞ。」

アブサロムは爽やかな笑顔で言いきった。

「全く見えないが気で感知するための修行だと思えば大丈夫かあ。分かった行こうかあ。」

『よし善は急げって言うからな、早く行こう。』

顔全体をマスクが覆いながらも唇のみがはみでるといった頭隠して尻隠さん状態のなんとも奇っ怪でおぞましい姿のアナゴを急かし、ヤムチャとアブサロムは瞬間移動をアナゴにさせ大きな町にたどり着いた。

「アナゴはこの段ボールを被ってここで待っていてくれ。行こうアブサロム。」

「悪いなアナゴ、少しの辛抱だ。」

「なぜ似合っているのに段ボールで姿を隠さなくてはいけないんだあ。」

疑問を感じながらも指示通り段ボールを被ってアナゴは待つことにした。

――――

「ヤムチャよまずはどうするのだ、ハァハァ。」

「少し落ち着けアブサロム。まずは極上の逸品を探さなくては。ハァハァ。」

なぜか興奮して、何かを物色中の二人であるが、その姿を視界に捉えられる者はいなかった。

「おい、ヤムチャ、あれはどうだ?」

「ダメだあれは、着色剤を使いすぎだ。」

二人は料理の話をしているのだろうか?サンジが喜びそうな。いや違うしかし、サンジが同じ場所にいたら間違いなく同志となったであろうことをしようとしている。

「おっあれはどうだかなりのもんだぞ!!」

「確かにかなりの逸品だ。行くぞアブサロム!」

 

―1時間後―

「…すごかったなヤムチャ。」

「ああ…すごかった。だがお前を殺しともその能力が欲しくなったのも現実だ。」

「は、早まるなヤムチャ。お前もオイラの力の恩恵を受けただろうが。」

「ああ悪い。桃源郷を見せてくれて感謝している。」

二人は致死量に達するのではないかというほどの鼻血を蛇口が壊れた水道のように足らしながら話している。以前としてその姿は見えないが。

「おい、ヤムチャ。今までにないほどの掘り出しもんがいるぞ。」

アブサロムが焦りながら指をさす。

「ああ確かにかなりのもんだがどこかで見たような。まあいい。見てろアブサロム、今回は俺が斬り込み隊長だ。」

ヤムチャはそうアブサロムに告げると、能力を発動し、チワワとなる、

「キャンキャン(俺の愛らしい姿で魅了してやるぜ。)」

ヤムチャは走り出した。獲物に襲いかかる狼のように。

「もう。スモーカーさんはどこに行ってしまったのだろう。―「キャンキャン」―あカワイイ迷子の仔犬かな。きっと飼い主が探しているだろうから探してあげよう。」

女性はそういうとチワワ(けだもののヤムチャ)を抱き上げる。

「クゥゥン。(この弾力た、たまらん。天にも昇りそうだ。」

「おのれヤムチャめ。」

最高のコンビに嫉妬という感情から亀裂が入った瞬間であった。

―2時間後―

「お前の飼い主いないわね。置いていくわけにもいかないし、今日だけは連れていこう。」

ヤムチャを連れ女性は帰っていった。

「ワン。(ま、マジかよ。ここって。)」

女性はチワワ(ヤムチャ)を連れやってきたのは海軍の隊舎であった。そこでヤムチャはやっと気づいたのであった。その女性はたしぎと呼ばれていたスモーカーの部下であったことを。

「クンクン。(マズイ、しかし俺とバレてはいない。騙しきって隙をみて逃げるしかない。)」

「あなたは結構汚れているわね。一緒にお風呂え入りましょう。」

「ワンワン(マジかよこれを味わわないてはないな。」

ヤムチャは知らなかった悪魔の実の最大の欠点を……

そして思った通りのことが起きた。

「え、え、え、キャーーー!!」

「ヤベェ力が抜けたと思ったら姿が元に戻っちまった。逃げないと。」

その場には裸の男と女が、どちらも気が動転しているがいち早く気づいたヤムチャが逃げ出す、しかし

『たしぎちゃんどうしたんだ。』

駆けつける海兵と裸で鉢合わせするヤムチャ。そして後方からはバスタオルを体に巻き追ってくるたしぎ。

『き、貴様、俺達のアイドルたしぎちゃんになにしやがったーーー。」

前門の虎、後門の狼。まさに逃げ場なし。しかし我らがヤムチャは諦めない。

「いくぜ。太陽拳。」

目の前に突然太陽が現れたように、苛烈なまでの閃光が辺りを照らし尽くす。まさに逃げることに特化した技を成功させ、ヤムチャは逃げることに成功し、急いでアブサロムと合流し、アナゴと共にスリラーバークに帰っていった。

その後海軍の調べにより覗きが多発していたことと、それが同一人物と判明し、また男性海兵の多くを怒り狂わせた人物としてヤムチャに懸賞金がかけられた。

『のぞキングヤムチャ懸賞金1000ベリー』

オマケ

「おお、唇帰ってきたか。で私が頼んでおいた物を早くよこしな。」

「?」

「どうした。もしかして忘れたのか。アブサロムがお前に伝えたはずだぞ。」

「え!?」

「ゆるさ~ん。」

「すいませ~ん。」

その後アナゴはペローナの逆鱗に触れ、凄まじい量の仕事をこなすことになった。




次回から最終話に入ります。あと2、3話でスリラーバーク編が完結しますのでお付き合いお願いします。


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遂に来る麦わら海賊団

「ふう、新しく目覚めた技と、瞬間移動で仕事が楽になったなあ。しかしまあまさか本当に休みがない、月月火水木金金だとはあ思わなかったなあ。」

アナゴは町から帰ってきた日から無休で働き続けてきた。

ただし、働いている内に新たに技を覚えることができていたので、悪いことばかりではなかった。

「唇、モリア様呼んでる。……!!お前あれすべて片付けたのか。」

「ああ、最後の御奉公としてなあ。じゃあ行ってくるよぉ。」

ゴミの山が跡形もなく片付けられていることに呆然としているクマシーを残し、アナゴは召集をかけたモリアの元に向かった。

――――

アナゴがモリアの部屋に着いた時にはもうすでにアブサロム、ペローナ、ホグバックそしてヤムチャが集まっていた。

「遅いぞアナゴ。」「何してたんだ?」アブサロムとヤムチャの問いに対して「仕事をしてて遅れましたあ。(瞬間移動すればよかった。)」

とアナゴは謝罪しながら後悔もし、部屋に入る。

「キーッシッシッシ。やっと集まったか。じゃあお前らに集まってもらった理由を話す。」

モリアが話を始めたことにより、部屋に静寂が訪れる。

「あと1、2時間後にトータルバウンティー6億越えの麦わら海賊団がこのスリラーバークにやってくる。奴らの影を手に入れることが今回の目的だ。特に3億越えの船長の麦わらはスペシャルゾンビに使うから必ず手に入れなくてはならない。キーッシッシッシ。」

『3億越えだと!』

3億越えということを聞きアブサロム達は驚きを隠せないでいた。

「ヤムチャお前の賞金はいくらだったっけか?」

「……1000ベリーだよ。」

そんな中でアナゴとヤムチャがそのような会話をしていたが、気に止める者はいなかった。

「これから大仕事になる。お前らはしっかり準備をしておけ。キーッシッシッシ。」

ということで会議はお開きとなった。

「麦わら海賊団の人数分マリオを用意せねば。」

「ヤムチャ、今からどのように迎え撃つか話あいをしよう。」

「久しぶりの実践だぜ。分かったしっかり作戦を立てよう。まあ俺1人で十分だと思うがな。」

「唇、クマシー行くぞ。お前たちは準備をしておくだけでいい。もうすでにネガティブホローが奴らを捕捉しているからな。って唇聞いているのか。」

「…えっ。はい大丈夫です。(あとでクマシーに聞くか。)」

ホグバック、アブサロム、ヤムチャはそれぞれ自分の持ち回りの仕事をこなすべく自分の部屋に戻り、アナゴはペローナの後をついて戻っていくのだった。

これからスリラーバークを揺るがす程の戦いが起こるというのにアナゴには別の不安が付きまとっていた。

それはアナゴがこの世界について今日の朝で31日目であったということである。

アナゴが言い渡された出張の期間が1ヶ月、明日でその1ヶ月が終わるのである。

どのように戻るのか、ということよりも、こんな大事な時に戻ってもいいのだろうか?ということがアナゴの頭を悩ましていた。

だが、アナゴは頭を切り替え、この戦いで恩を返すと強く決心し、戦いに挑むことにした。

――――

ところ変わって麦わら海賊団のサウザンドサニー号

「急に薄暗くなったと思ったら骸骨はどっかに行くわ、島がとつぜん現れるわ、偵察にいったナミ、ウソップ、チョッパーはかえってこないわ、どうなってやがるんだ?」

今までの経緯を誰かに語るように話すフランキー、ありがとう。

「クソッ、ナミさんを放っておけるか。」

「待て。俺が行ってくる。気になる気もあるからな。」

今にも飛び出していこうとするサンジを止め、ピッコロが行くとだけ言い残して舞空術でスリラーバークに向かっていった。

「確かにピッコロは強いが嫌な感じがしやがるな。」

「イヤー。」

ゾロが思ったことをいったとたんに、ロビンの叫び声が船内にこだまする。

皆が振り向くと、ロビンが変わった格好で身をよじり、何かから逃れようとしている。

「ロビンちゃんどうしたんだ?」

「何かが私に、イヤーッ。」

何かがロビンをなぞったと思われた時にはロビンは動けるようになっていた。

「何かがいるぞ。」

ゾロの声で皆が構えを取るが、何も目視することができない。

「そこだ。」

そんな中でゾロが動く、何もないと思われる宙を切る。

「チッ、こいつおいらが見えるのか、一端ここは退くか。」

「逃がすか。」

「ハアッ」

姿を現したアブサロムに追撃を掛けようとしたゾロであったが、アブサロムの放った気弾によってあえなく失敗する。

「何だ今の。ゾロお前よく今の見えたなあ。」

ルフィが今のやり取りを驚きの表情で見て、率直な感想をもらす。

「あれか、俺も見えたわけじゃねえよ。ピッコロに気の使い方を習っていたから出来たことだ。まあそれはさておき、これで俺達もあの島に行かなくちゃいけなくなったな。」

『ああ』

皆はピッコロのすごさを改めて知り、そして島に上陸することにした。

おあつらえ向きにサウザンドサニー号も海流にのりスリラーバークに向かっていた。

 




これから暫くは所々変わりますが、概ね原作に添って進みます。ただ戦闘はアナゴ、ヤムチャ、ピッコロの介入及びアブサロムの気での強化によりだいぶ変わります。


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ピッコロの不覚またしてもあの技に

原作に沿うと言っていましたが少し変わります。


「アナゴ少し顔を貸せ、オイラの花嫁になるであろう女を見せてやる。」

アナゴが来る麦わら海賊団との決戦に向けて準備をしていた時に、ヤムチャと作戦をたてているはずのアブサロムがやって来ていい放った。

「おいおいこの惨状見ればわかるだろお。この緊急時に出掛けたらあとでペローナ様にどんな目にあわされるかあ。考えるだけでもおぞましいぃ。」

今までアブサロムに付き合ってはペローナのお仕置きを味わうといったことがテンプレになっていたのでなんとかその惨事を避けるためにアナゴは断った。

「惜しいな。ペローナのお仕置きを恐れて男にとっての天国を覗くいや、目の当たりにするのを諦めるとは、ああ情けない。」

「……いいだろう。そこまで言うならいってやろうじゃないかあ。ペローナ様がなんだあ。」

アナゴは元来友人を悪い道に引っ張っていく方である。ということで、強いおしと誘惑に弱かった。ということで仕事をほっぽってアブサロムとともに部屋を出ていった。

「クマシー。唇はどこだ?」

入れ違いでやって来るペローナ。

「唇は「喋るな。ジェスチャーで説明しろ。」…」

クマシーに対してムチャぶりである。ペローナに伝わるまで10分を要した。

そこまででイライラが溜まっていたペローナは鬼の形相でアナゴへのお仕置きを考え始めたという。合掌

「でヤムチャと一緒にどこへ行くと言うんだあ?」

「黙ってついてこい。ヤムチャを見ろ、真剣な顔でいるだろ。」

アナゴがヤムチャを見ると真剣な顔ではあるが、なぜか鼻血が垂れている、その姿を見て改めてアナゴは、ここに来て良かったのだろうかと再度考えさせられたという。

「ここだ。お前たちオイラに掴まれ、透明化する。」

「頼んだぞ。」

(コイツらのしたいことは大体分かったなあ。まあここまで来たんだ付き合おう。)

なんだかんだ言いながらアナゴは悪友たちと楽しむことにした。

――――

「チッなんなんだここは、ゾンビだらけじゃねえか。たいして強くはないが、アイツらが心配だ。…それに一瞬だけ気になる気が感じられた。あの屋敷からだな。」

ナミ達を追いピッコロが後れ馳せながらもモリアの屋敷に辿り着いた。

ドアを開けると豪華な調度品や絵画、剥製、動物の毛皮といったものがところ狭しと飾られている。

「フン、先ほどのゾンビ達と同じか。気を持った調度品とはな。姿を現せ化け物ども。」

ピッコロがいい放った瞬間、調度品達が動きだし、ピッコロに襲い掛かった。

結果はいうまでもないだろう。

死屍累々と地に横たわる化け物達。ピッコロはその中の1つに尋問中である。

「この屋敷に人間が三人来たはずだ。どこにいる言え。」

「へっそんなことが言えるかよ。」

熊の敷物は悪態をつく。

「まあいい。お前の他に聞けばいいことだ。死ね。」

「ま、ま、ま、待ってくれ。言うから、言いますから。」

ピッコロが向けた手のひらから感じられる、避けることができない死を感じ取った熊は全てのことを嘘偽りなく喋った。

「そうか、分かった。」

ピッコロは全てを聞き、熊の敷物を放り投げ、目にも止まらぬ早さで部屋をあとにした。

「界王が寄越したこの拘束具のせいで気を感じられる範囲が極端に狭くなっている。なんてもんを渡しやがる。」

走りながらピッコロは愚痴を溢しながら目的地に向かっていた。

――――

「はあ、いい湯ね。」

ナミがここまでの精神的な疲れと身体的な疲れを風呂場で癒していた。

『……』

その後ろで不埒ものどもが見学していることに気づくこともなく。

(やめろアブサロム。いくらなんでもそれはするな。)

(止めるなヤムチャ。据え膳食わぬは男の恥だ。)

(そうは言うが、あの女はそれを望んではいない。)

「何か聞こえたような。」

(…………)

「気のせいか。」

ヤムチャとアブサロムが何かについて議論を交わしている傍らで、アナゴはただの傍観者になっていた。何を見ていたかは言うまでもないが。

(もう我慢ならん。)

(おい。)

アブサロムがヤムチャの制止を振り切りナミを拘束した。

「え、なに、あんたたちは何者、ウソップ……」

見えぬ者に動きを拘束され、いきなり姿を現したヤムチャとアナゴを見て取り乱しながらも助けを呼ぼうとするがそれも妨害される。

(誰か助けて)

ナミが心のなかで届かぬ願いを懇願していた。

「ピッコロいきなりどうしたんだ。そこはナミが。」

「うるさい。どけ。」

ウソップの声とピッコロの声が響いた瞬間に、風呂のドアが弾けとんだ。

「んんんん~~~」

「待っていろナミすぐに助けてやる。」

ピッコロがナミに声を掛けすぐさま姿が消える。

「ワター。」

「グハァ。」

ピッコロが空を殴る。なにもないはずの空間が揺らめきそれと同時にアブサロムが姿を現し壁に突っ込んでいった。

一撃で壁にめり込んだアブサロムは意識がとんでいた。

「やはり前に感じた巨大な気はピッコロだったか。なんのようだ。」

「なんのようとはご挨拶だな。お前を連れ戻しに来たんだよ。」

いきなりヤムチャとピッコロが話始める。後ろでは助けられたナミがウソップとチョッパーにバスタオルをかけられている。

「俺は帰るつもりはない。」

「ならば力ずくで連れて帰る。」

ピッコロが宣言すると、ピッコロを中心に突風が巻き起こる。

(や、ヤバイ。以前よりはかなり弱い気だがそれでも俺の数倍はあるぞ。どうすれば……そうだ。)

ヤムチャはピッコロの気に気圧されて動けないアナゴに「変身しろ」と言い、戸惑いながらも能力を発動させたアナゴを前に出した。

それと同時に突風が止み、ピッコロが驚愕の声をあげる。

「セ、セルがなぜここに。」

「形勢逆転だな。俺達にはパーフェクトセルがついているのだ。」

先ほどの弱気はどこにいったという感じでヤムチャが強気でいい放った。

当事者であるアナゴは状況についていけずぼ~としているが。

だがその余裕もすぐについえることとなる。

「ん」

ピッコロがなにか違和感に気づいた。

しげしげとアナゴを見つめるピッコロ。

照れるアナゴ。「ヤムチャよ。よくも俺を謀ってくれたな。やつはセルではないな。」

「いややつはセルだ。」

冷や汗を流し、声を裏がわせながら反論するヤムチャ。

ピッコロはフッと勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

「あの唇はなんだ。」

「なんと。」

ピッコロが突いた唯一の違いにヤムチャは急所を突かれ、地面に崩れ落ちた。

「帰るぞ、ヤムチャ。」

ピッコロが歩みよったその時だった。

「太陽拳。」

「し、しまった。」ヤムチャの危機にすかさずアナゴが太陽拳を発動した。強烈な光が風呂場に溢れた。

「ヤムチャ、アブサロム行くぞ。」

アナゴは二人を抱え瞬間移動で逃げ去った。

「く、くそう。またしても太陽拳とは。セルじゃないからと油断した。すぐに追いかけるか。お前たちはすぐにルフィと合流しろ、もうそこまで来ているはずだ。」

ピッコロはすぐにとびだそうとするができなかった。

『行かないでピッコロさ~ん』

とナミ、ウソップ、チョッパーがマントに泣きながらしがみついていたからだ。

三人はなんとしてもピッコロを行かせてはならないと火事場のバカ力を発揮した。

「ハァしかたない。ルフィの所まで一緒に行くぞ。」

『ありがとうピッコロさん』

溜め息をつくピッコロを横目に目を輝かせた三人であった。

 

 



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アナゴ、ルフィ達との初顔合わせ

「待て~。虫人間~。フランキーそっちいったぞー。」

「任せとけ、こっちのコーラはあーまいぞ、さあこい。」

「なんなんだあ~コイツらは~。」

鬱蒼と茂る広大な森の中で、セル化しているアナゴを、虫人間と呼び網を持って追いかけるルフィとコーラで釣ろうとフランキーが追いかけていた。確かにコーラを使った罠でカブトムシを捕まえることはあるらしいが……。

ゾロとサンジは呆れて見ており、ロビンは楽しそうに笑みを浮かべ見ている。ロビンの傍らには捕まったケルベロスが温かい目で追われるアナゴを見ていた。

アナゴが終われるようになった理由は、ピッコロの魔の手?から放心状態のヤムチャと、気絶したアブサロムを連れて瞬間移動をして逃げきり、アブサロムの拠点に二人を置いてきた。そこまでは問題なかった。次の瞬間待ち構えたようにそこにいたクマシーに追われ、急場凌ぎに近くにあった気に瞬間移動したのが運の尽きであった。

急に現れたアナゴに興味をもったルフィとフランキーに追われることになったのだ。

「な~か~ま~にな~れ~。」

『あほか!』

いつも通りの通常運転のルフィはアナゴを捕まえて仲間にするつもりらしい。それが分かったゾロとサンジがつっこみが入るがルフィは収まるはずがない。

「ペローナ様~。ごめんなさい~。た~す~け~て~く~だ~さ~い~。」

「ホロホロホロホロ、唇も反省しているみたいだしな助けてやるか。行けネガティブホロウ。」

アナゴが自分の主に対し泣きながら謝罪をすると、どこからかペローナの声がしたかと思うと、ペローナが作り出したネガティブホロウがどこからともなく現れ、ルフィとフランキーを貫く。

二人は膝を付きなにかを謝りだしている。

アナゴはなにがあったのか分からずに二人の変わりようを眺めていると、またもや聴こえてきたペローナの声。

「唇、そこにいる二人をここへ連れてこい。そうすれば仕事をサボったことは水に流してやる、ホロホロホロホロ。」

「ほんとうですかあペローナ様~。」

ペローナのお仕置きを恐れており暗くなっていたアナゴは喜び勇んで二人に近づく。

しかし、簡単にはいかなかった。

「そうはさせるか、七十二煩悩鳳」

聴こえてきた声と共に斬激が木々を切り裂きながら向かってきた。

「ペローナ様に許してもらえるんだあ。邪魔をすぅるなあ~。」

アナゴは飛んでくる斬激を片手で難なく弾く。

「太陽拳。」

そしてお得意の目眩ましであった。

もともと周辺が暗いスリラーバークのために太陽拳はいつにもまして、攻撃的な光を撒き散らし、その場のアナゴ以外の目を眩ました。

「なんなんだこの光は。」

「くそ、前が見えない。」

「くっ。」

しばらくたち光がやみ、視力が戻った三人の前にはアナゴだけではなく、ルフィもフランキーもいなくなっていた。

――――

「ナミ、どこへ行くつもりだ?ルフィの元へと俺はいったはずだが…」

「あんな目にあったのに泣き寝入りなんて出来ないでしょ。それにピッコロさんがいれば何も恐くないし。」二人の会話からも分かるようにピッコロ、ナミ、ウソップ、チョッパーはルフィの元ではなく、スリラーバークの宝物庫を目指して歩き回っていた。

「ピッコロ諦めたほうがいい。あの目をしたナミは止められん。」

ウソップがピッコロに同情するように言うので、ピッコロがナミを見てみると、ナミの目は$となっているので、ウソップの言うように諦めた。

「ヨホホホホ、皆さんは何処へ行くつもりですか。」

後ろからナミ達に声がかけられる。

ナミ達が振り返るとそこには、着流しを着て、刀を腰に挿したゾンビが立っていた。

「お嬢さん、パンツを見せてくれませんか。」

「見せるかー。あれ?」

皆がデジャブを見ているような気がする。

「おい、今のやり取りブルックの時と同じじゃないか。」

「ああ、それにやつからおかしなことにブルックの気が感じられる。半分だがな。それに奴は強いな。」

ピッコロの言葉に三人は戦慄する。ピッコロが強いと言うならば間違いなくピッコロ以外の三人は歯が立たないからだ。

「ヨホホホホ、鼻唄三丁矢は「遅い。」―!!」

何が起こっているのかは二人にしか分かっていなかった。

侍ゾンビが飛び出した、そこまでしか三人には分からなかった。

しかし今目の前では抜き身の黒い刀身を晒した刀をピッコロが素手で掴んでいた。

侍ゾンビは目が無いため表情からは分からないが、声からは焦りの色が感じられる。

「まさか途中で止められるとは。」

「すまんな。あまりにノンビリしていたんで咄嗟に掴んじまった。ナミ、ウソップ、チョッパー、先に行っていろ、戦いに巻き込まれて怪我でもされたらルフィに合わせる顔がないからな。まあそんなことにはならんとは思うが念のためにな。」

「え、でも…「分かった。行くぞナミ、チョッパー。」

ナミは行きたくなさそうであったがウソップはピッコロの思いを汲みナミとチョッパーを連れ長い廊下を走っていく。

「なあウソップ、ピッコロは大丈夫かな?」

「当たり前だろ。アイツの強さは俺たちが一番知っているだろ。」

「そうだな。」チョッパーはウソップの自信に溢れた言葉に表情が明るくなる。

だが長い廊下を抜け広場に出ると三人の表情が絶望に染まるのは次の話である。

 



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ピッコロVSリューマ+戦慄するアナゴ。

「ただいま、帰りました。」

「ホロホロホロホロ、お帰り唇。」

アナゴが土下座姿で、ルフィとフランキーを連れてペローナの元に突然現れた。

ペローナは突然現れたことなど意にも介さず柔らかい微笑みを浮かべて出迎えた。

「ひぃっ。」

一般人が見れば見惚れてしまうであろうペローナの微笑みであったが、アナゴはその笑みを見た瞬間に身の毛もよだつような戦慄を覚えた。

「あのぅ、ペローナ様、麦わらのルフィとフランキーとかいう機械男を連れてきたんですが。許してくださるんですよねぇ。」

アナゴは恐る恐る自分の手柄を述べながら、探り探りペローナに聞く。

「ご苦労。許すってなんのことだ?」

ペローナの熱の籠らない冷えきった言葉がアナゴの心を氷つかせる。回りで見ているアニマルゾンビ達も背筋に冷たい物を感じながら、少しも物音をたてず成り行きを見守っている。

「ぺ、ペローナ様は、麦わらのルフィを連れてきたらサボりを許してくださるとおっしゃっていらっしゃったと思われたのですが。」

あまりの恐怖におかしな敬語になりながらも僅かな望みにかける。

「ホロホロホロホロ、私はそんなこと言っていないぞ、なあクマシー。」

ペローナの急な問いかけに普段であれば必ず声を出すクマシーであるが、空気をしっかりと呼んでブンブンと音がするほど首を縦にふり続けた。

クマシーが首をふる度に中から「ぅゎ」とか「どこ触ってるのよ」などがしていたことには誰も気付くものはいなかった。

「だそうだ。後で裁きを申し渡す。」

アナゴのいちるの望みも簡単に打ち砕かれて、アナゴは崩れ落ちた。

「で唇。お前の力があれば麦わらともいい戦いができたはずではないのか。」

「私は終われるのに慣れてなくてぇ、あとなぜか網を見たら怖くなりましてぇ。」

アナゴはなんとか体勢を立て直して、後頭部を掻きながら話す。

「ほう、いいことを聞いたぞ。」

ペローナは何かに閃き、いたずらっ子のような笑みを浮かべ、それを見たアナゴはしまったと後悔したが、後の祭であった。「では麦わらを連れてモリア様の所へ行くぞ。麦わらと機械人間を縛って連れてこい。クマシー、唇。」

「は…「喋るな」

「はい。」

クマシーは喋ることを止められ、唇の声だけが響いていた。

――――

モリアの部屋に行くために石造りの長い階段を昇っていると、同じくモリアの部屋に向かうアブサロムとヤムチャに出会った。

「お、アナゴじゃないか。さっきは危なかった所を助けてくれたみたいだな。ありがとう。」

「俺もピッコロから助けてくれてありがとな。」

アブサロムとヤムチャから真摯に頭を下げられて改めて勇気を振り絞り助けて良かったと思いながらも、ペローナのお仕置きを受ける原因となった二人を恨む気持ちもあったのは言うまでもない。

そんなこんなでモリアの部屋まで談笑しながら向かって行った。

――――

「夜明歌·クー·ドロア」

「ふっ」

リューマが黒刀秋水をフェンシングのような構えで前に付きだし加速をつけてピッコロに迫る、しかしピッコロは白いマントを翻し簡単に避けると同時にがら空きになったリューマの背中に裏拳をいれる。

「グッ」

リューマはうめき声をあげながら遥か後方に吹き飛ぶ。

しかしながら長い廊下を転がりながらも見事に受け身をとり、刀を構え

「酒樽舞曲·ルミーズ」

と呟きピッコロに衝撃波を飛ばした。

だがそれも当然のようにピッコロに掌で払われた。

「お強いですな。驚きで目が飛び出そうですよ。ゾンビですから目はないですがね。ヨホホホホ」

リューマはピッコロの強さを実際に身を持って感じ、敵ながら素直に称賛した。

「お前もなかなかの強さだ。ただ威力は十分だが、全ての技が直線的すぎる。光の早さを遥かに越えても簡単に避けることができるぞ。」

「これはお厳しい。おやまだ戦いは終わっていませんよ。」

ピッコロは素直に感想を述べ、背を向け去ろうとしており、リューマがそれについて問いただす。

「なに、俺がお前を倒してもいいんだが、倒したら倒したで、俺は仲間に恨まれることになる。それにな、お前も同じ剣士とやりあいたいだろうなと思ってな。もうちょっとそこで待っていろ、お前も満足できる剣士がここにやって来るからな。」

そうリューマに対してピッコロは呟くと後ろを振り向くことなく、去っていった。

(ナミ達がどうもおかしなことになっていそうだ、少し急ぐか。)

ピッコロは赤い絨毯がひかれた長い廊下を一蹴りで抜けて行った。

――――

「俺についてこい。」

「あら行き止まりよ。」

ピッコロの話に出た剣士ゾロはいつも通り屋敷のなかで迷子になっていた。

「どうなってるんだ、そういえばロビングルグルコックはどこに言った。」

「あれ居ないわね。」

「ちっ迷子かよ。まあいい行くぞ。」

「いいのかしら。」

二人はサンジのことだから大丈夫だろうということでそのままスルーしてルフィを探しに行った。いつになったら着くのだろうか。



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復活するオーズ

「……」

アナゴは今目の前で起こっていることが本当に現実のことなのかを疑わざるをえないことが起こっていた。

アナゴの主ペローナのそのまた主のモリアがルフィの影をペリペリと剥がし、巨大なハサミで切りはなそうとしているのだ。

影の剥がれる音は好きだななどと思っていたのは今は昔である。

モリアは

「三億の影はもらった。キーッシッシッシ。」と言うや否やルフィの影を切り離した。

それと同時にルフィも力なく人形のように動かなくなった。

モリアは手の中でもがくルフィの影を見てほくそ笑み、

「こいつを今からスペシャルゾンビにいれに行くぞ、お前達ついてこい。」

と言い、部屋を出ていく。

アナゴ達もそれに続いて出ていく。

しばらくモリアについていくと金庫の扉のような重厚な扉の前につく。

「なんか、銀行の金庫みたいだな。」

アナゴがそう呟いているうちに扉がギィーといかにも重いぞというような音をたて開かれた。

「寒ぅ!」

中から靄のように冷気が溢れだし、ついそんな言葉をもらす。

「当然だ。ここはスペシャルゾンビが納められている巨大な冷凍庫なのだからな。フォースフォスフォスフォス。」

ホグバックがその理由を述べ笑いだした。なにやらとてつもないものがありそうだなと思いながらアナゴはモリアやペローナに続いて入っていった。

(セルってどんな環境でも生きられるフリーザの血も流れてるんじゃなかったか?)とヤムチャは考えていたが、アナゴはそんなことは知るよしもなかった。

「こ、これは。」

「マジかよ。」

アナゴとヤムチャは息を飲んだ。寒さも感じられないほどの驚きであった。

冷凍庫の先にとてつもなく大きな凍りついたゾンビがあったからだ。

「どうだこれがスペシャルゾンビのオーズだ。さあオーズの復活だ。」

モリアは見るからに嬉しそうにオーズに歩み寄り、手に持つルフィの影を押し付ける。

みるみるうちに影はオーズに吸い込まれるように入っていき、ついにオーズが目を覚ました。

モリアは目を見開いて喜び、ホグバックはさも当然だといったように誇らしげに笑っている。アブサロムとペローナはアナゴやヤムチャと同じように驚愕に染まった顔をしていた。

皆が動けなかった時だった。

突然クマシーの背中からウソップ、チョッパー、ナミが飛び出し一目散に逃げていった。

呆気にとられた面々であったが、すぐに立ち直ったのはもちろんアブサロムであった。

「オイラの花嫁だ。待てーっ。」

といいそれを追い走っていく。

「あーあ。アブサロム行っちゃったよ。私達は行かなくていいんですか?」

アナゴはペローナに聞くがペローナは全く慌てることなく答えた。

「構わん。もとの部屋には私のアニマルゾンビがいるからなホロホロホロホロ。」

――――

「おいどういうことだよ。」

あれから30分程たつ。

アニマルゾンビをやっとの思いで振り切ったと思っていたら、急にナミの姿が消えたのだ。目の前になにもなかったかのように。

「花嫁は頂いていくぞ。」

「ウソップ、チョッパー助けてー。」

アブサロムの勝ち誇ったような声とナミの叫び声だけが部屋中に響いていた。

「俺のせいだ。俺がもっと警戒していれば。」

ウソップは膝をついて懺悔でもしているかのようにボソボソとそう呟いている。

「ウソップ、アイツらが来るよ立ってよ。」

先程まいたはずのアニマルゾンビが迫っているおりチョッパーが指摘するが、ウソップはピクリとも動こうとしない。

「居たぞ。もう逃がさん。」

アニマルゾンビの群れがウソップとチョッパーに襲いかかる。その数約2~30。非戦闘員の二人ではまず相手にできない数だ。

「ウワーっ。」

チョッパーが飛びかかってくるゾンビを見て悲鳴をあげる。

「チョッパー、ウソップかがめっ!!」

後ろから聞こえた声に全ての望みをかけ屈む。屈んだ頭のスレスレのところを猛烈な、もう爆風と言っても過言でない風が過ぎていきアニマルゾンビを全て壁にめり込ませていた。

「お前たち大丈夫か?何があったんだ。」

いつの間にかすぐ後ろに現れたピッコロが心配そうに覗きこむ。

「ピッコロさーん。」

チョッパーは感極まり泣きながら飛び付く。

「なんだかわからんが泣くなチョッパー。事情を話せ。」

「うん、実は………

「そうかそんなことが起こっていたのか。お前たちは直ぐに船に戻れ。何故かルフィとフランキーの気が船に向かっている。俺もロビンとゾロを連れて一端戻るそこでこれからのことを話し合うぞ。」

「分かったよ。直ぐに戻ってきてね。」

「ああ。」

チョッパーはウソップを連れて走っていった。

「ロビンとゾロの所に面白そうなやつがいるな。話を聞かせてもらうか。」

ピッコロはそう言うと気弾で壁を破壊しながら飛翔していった。

 



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