ONE PIECEの世界へ~冥王の娘になりました。~ (打出小槌)
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プロローグ

 初めまして。打出小槌《うちでのこづち》と申します。

 これまでは、もっぱら読む側でしたが。

 書いてみたくなり。始めた次第。

 一話、1000文字~3000文字程で行きたいと思います。

 皆様に楽しんで頂けるよう頑張ります。

 どうぞ。宜しくお願いします。


 ご意見。ご感想。お待ちしております。


 何もない真っ白な空間に私はいる。

 

 一生を終えた後、私が一度は必ず戻ってくる場所。

 

 私は前世の一番最盛期の姿のまま。この空間に在る。

 

 私の前世ですか?

 

 第十四代目比古清十郎ですよ。

 

 あのリアルチート・・・。もとい父上殿。13代目の娘でしたが・・・。

 

 名前は比古 楓《ひこ・かえで》。

 

 当然、飛天御剣流免許皆伝です。

 

 歴代最強の・・・。

 

 なんせいろいろと+αがありましたから。

 

 ちなみに私。次で七回目なんですよね・・・転生するの・・・。

 

 もう転生特典。 いらなくないですか?・・・。

 

 これまでの知識と経験といろんな技能を使いこなせるスペックさえあれば。

 

『そちらはデフォルトでご用意します。ですがそれ以外にもお渡しします』

 

 え!?くれるの?

 

『ええ。今回はいろいろと変則的な要素がありますのでね』

 

 そう、意思を伝えてくるのは、見た目20歳程の青年。

 

 名前をジョウリという。私の契約神である物語の神だ。

 

『お久しぶりです。マトイ。随分と可愛らしいお姿になりましたね』

 

 ふふ。転生人生初の女性でしたが。良い一生を歩けたと思うよ。

 

『そのようですね。私も楽しみながら見させて頂きました』

 

 それはなにより。

 

『さて。話を戻します。・・・実は、ある物語の中へ5人の転生者が送られたようなのです。その世界の東西南北の海に一人づつ。あと中央に一人。また、転生時の能力特典として一人あたり3つまで、物語の世界観を潰さない程度のものを渡してあるらしいのです』

 

 ・・・ああ、そうなんだ。

 

 ん? ・・・らしいってことは君じゃないの?送ったのは・・・。

 

『ええ。私ではありませんよ。とある神々が、それぞれ別々の人間を送り込んだようです』

 

 ふう~ん。そうなんだ。で?なんで私をその世界に?・・・別にいらないんじゃ・・・・。

 

『それはそうなんですけどね。面白そうだから、飛び入り参加して来て下さい。ってことです』

 

 ・・・。はぁ~マジですか・・・。

 

『真剣《マジ》です』

 

 真剣なんですね。 分かりました。

 

 仕方がないです。逝きますよ。

 

『ありがとうございます』

 

 で?ホントのところはどうなの?・・・単純に、面白そうってだけじゃないでしょ。

 

『・・・わかります?』

 

 わからいでか・・・。

 

『まぁ、何と申しますか・・・。ご存知のように神々にもいろいろな方がおりますので。今回は己のミスで殺してしまった者を転生させたようなのですが。転生者の中にはちょっと性格に難のある方や癖のある方が含まれておりまして・・・』

 

 困ったような、それでいて呆れたような表情で言葉を濁すジョウリ。 

 

 んで。具体的に言うと・・・。

 

『ニートで引きこもり。30代後半、無職で親のすねかじり。自称、俺様最強オリ主』

 

 おい。頬が引きつった私は悪くない。

 

『強姦・窃盗・殺人の常習犯で政治家の息子、親の権力で揉み消していた20代の確信犯』

 

 ちょっと。眼を見開いた私は悪くない。

 

『苛められっ子の中学生の女の子と苛めていた側の主犯の女の子。因みに二人は元親友』

 

 えぇ~と・・・。困惑した私は悪くない。

 

『車に撥ねられそうな子供を庇って死んだ高校生。性格いたって真面目。誠実な雰囲気の子』

 

 やっとまともなのが来た。安心した私は・・・。うん。普通だな。

 

 って!! 最後以外、まとも子がいないじゃん!?

 

『そのようですね。・・・だからまぁ、貴方に監視や助力。ついでにフォローを頼みたいのです。又、あなたが必要だと判断したならば、排除していただいても構いません。』

 

 了解。出会い次第、・・・切る! 特に最初の二人。

 

『消すこと前提ですか!?』

 

 何か問題でも?(笑顔で)

 

『いえいえ。なにも問題ありませんよ。なにも・・・・』

 

 必死に首を振って否定するジョウリ。顔に浮かんだ汗は見なかったことにしてあげよう。

 

『肝心の、逝き先なんですけど・・・。ONE PIECEという名の原作漫画の世界です』

 

 ・・・今度は海賊ですか・・・。

 

 過去の記憶から引っ張ってくる。

 

 原作は58巻までしか知らないけど・・・。まぁ~、何とかなるでしょ。

 

 それにしても・・・。

 

『何か問題でも?』 

 

 いえいえ。良いですけどね~。別に・・・。

 

 たまには普通の恋愛ものとか。そういう世界でのんびりしたいかも。って考えていたからさ。

 

 だってそうじゃないですか。

 

 私ってば。行った世界で戦ってばかりなんですよ。

 

 異世界で仙人になったり。

 

 新宿でスイーパーになったり。

 

 傭兵王国で真修闘士になったり。

 

 三国志で無双したり。

 

 滅亡寸前の平衡世界で頑張ったり。

 

 さっきまでは、幕末の動乱期や明治維新でチャンバラしてましたし。

 

 ふふふふ。

 

 ふとジョウリを見れば何故か震えていらっしゃる。

 

 え?なに?

  

『これが終わったら普通の世界へ逝ってもらいますから。それでご勘弁を』

 

 ほんと? 約束だよ。 嘘ついたら、いくら君でも・・・・。

 

 ふふふふ。

 

『えぇ~と。・・・その笑顔がもの凄く怖いのですが・・・』

 

 誰のせいだと思ってやがりますか。

 

『すみません』

 

 自覚があるならいいよ。

 

 本気ですまなさそうに謝る彼に苦笑いで返す。

 

 んじゃね。また、百年後ぐらいに・・・。

 

『あのぉ~。まだ欲しいものを聞いていませんが?』

 

 やっぱりいるの?

 

 これまでの知識と経験を活かせるスペックはデフォルトで付いてくるんでしょ。

 

『これまで培ってきた者は全て貴方自身のモノですので当然、残せます・・・。』

 

 まぁ、いいでしょ。

 

 じゃあ、サイヤ人の成長力。限界突破、無限大。大猿化と尻尾はナシで。

 

 それに流派東方不敗マスターアジアの知識と経験。

 

 あと一つは保留でお願い。

 

『三大覇気や六式。悪魔の実などはいらないのですか?』

 

 いらないでしょ。ONE PIECEの世界の覇気が、原作通りなら。

 

 たぶん、普通に使えます。武装色はわかりませんが、似たようなものなら可能ですし。

 

 悪魔の実も、気の性質変化で自然系相手でも対応出来ますし。

 

 六式ですか? 元仙人であり真修闘士であった私に必要とは思えません。

 

『それもそうですね。・・・わかりました。それでは、特典はOKで。あと保留分はあちらで決まり次第、ご連絡ください。今回は特例ですので、私との回線を原作開始時期まで開けておきます。それまでの期間であれば、意識すればいつでも話せますよ』

 

 OK♪ その時は宜しく。

 

 うん。それじゃあ、ホントにもう逝くよ。

 

 またね。ジョウリ。

 

『ええ。ではまた。・・・・良い人生を』

  




 ご意見ご感想。お待ちしております。


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第一話 始まりはシャボンの島・・・・って、いきなり爆弾発言ですか!?

 ようやく更新です。

 正直、三か月以上かかるとは思いませんでした。

 
 


 第一話 始まりはシャボンの島・・・・って、いきなり爆弾発言ですか!?

 

 朝。カーテンの隙間から漏れる光りが柔らかく私の肌をなでる。

 大きめのベッドの上で身じろぎしながら、まとっていたタオルケットをはがして身を起こすと、私は強張った身体をほぐしながら伸びをした。

 

 「ふぅぁ~」

 

 漏れ出る声。眼もとに溜まった涙をぬぐいつつ眼を擦る私。

 

 むぅ~・・・。やっぱり朝は苦手だわ・・・。

 

 そう思いながらも首を振り、決して大きくない身体をずるずると引きずるように動かしながら、ベッドの端まで行き、両足を降ろす。

 足裏にヒヤリとしたサンダルの感触が伝わる。

 重心を移動させて身体をお越し立ち上がると、窓際まで行き大きなカーテンを一気に開け放った。

 肌に伝わる太陽の熱。未だ閉ざした瞼の上に感じる日の光。

 カラカラと音を立てて滑る窓を開け放ち、木製のバルコニーへと歩み出す。

 湿り気のある快い風が身体を潤してくれる。

風には海からくる塩っ気のあるいつもの独特な臭いがうっすらと混じっていた。

 全身に太陽の熱が行き渡るのを待って、ゆっくりと瞼を押し上げ目を開く。

 

 目の前に広がる景色は、巨大なマングローブの林と緑の大地。

 天高く伸びる木々ともに、染み出すように湧き出るシャボン玉・

 空にはたくさんの泡が浮かんでは消えていく。

 この世界に生まれてから早4年。

 シャボンディ諸島に私は生まれた。

 ここはREDLINE(レッドライン)新世界への入り口。

 世界一大きなマングローブの樹『ヤルキマン・マングローブ』で成り立つ島。

 全部で79本の樹に番号が振られていたりする。

 1番から29番までがだいたい無法地帯。

 そして、ここは13番GR(グローブ)

 つまり子供が育つには治安があんまりよろしくない場所なのだ。

 なにせ、海賊に、人攫いに、賞金稼ぎ。

 職業安定所という名の人間屋(ヒューマンショップ)に海軍の駐屯地まであるし。

 おまけに、世界貴族と呼ばれる天竜人もいる。

 私はまだ彼らをこの目で直接、見たことは無いけどね。

 できれば一生、関わり合いになりたくないものです。

 まっ、まず無理だろうけどね・・・。

 

「ん~~~。・・・さて、今日も一日、頑張りますかね」

 

 子供らしからぬ言葉と共に私は大きく伸びをする。

 それから身体を解しつつ部屋へと戻ると、クローゼットから服を出し、もぞもぞと寝間着を脱いで手早く着替える。

 着替えおわったら私の身長よりも大きな姿見として使える鏡の前まで移動する。

 鏡に映るその姿は、可憐な容姿の美幼女。

 綺麗なシルバーブロンドの髪に蒼い瞳の愛らしい女の子。

 それが今世の私です。

 腰までストレートに伸びた髪に青色の紐を通し、ポーニーテールに結ってゆく。

 うん。将来は確実にハンコックさんとタメをはれるぐらいの好い女になります!

 目指せ、前世の比古楓!

 因みに、前世の容姿とスタイルはセキレイって言う漫画に出てくる和服美人の大家さん。

 浅間美哉さんにそっくりでした。

 とりあえず、あと、十年です・・・。

 十四歳までに億越えを倒せるまでには強くなる。と決めています。

 海賊になるかどうかは、今は考えていなかったりします。

 ある程度、成り行きに身を任せようかと思うのですよ。

 だってね・・・。

 (うち)の親・・・、騒動と死亡フラグ満載の有名人でしたから・・・。二人とも・・・・。

 

「おはよ~」

 

 私はトイレと洗顔を済ませてからパタパタと歩き、階下に降りた。

 そして扉を開きながら挨拶を一つ。

 

「やぁ、おはようアリス」

「おはよう。アリスちゃん、顔は洗った?ご飯、出来てるよ」

 

 朝食が用意されたカウンターには、一組の男女が待っていた。

 

「おはよ~。お父さん、シャッキー」

 

 私は二人の顔を見ながらもう一度、挨拶する。

 それから、カウンターの椅子に両手を付いてから、ぴょっんと跳び乗った。

 身長が足らないので椅子に座ると足元が宙に浮いてぶらぶらします。

 そんな私の隣の席、カウンターに腰掛けているのは長髪アゴ髭に丸メガネのダンディーな美丈夫。

 若いころは綺麗なブロンドの髪だったが、今では色落ちしてほぼ全体的にシルバーになりつつある。

 シワのある顔の右目には、縦に沿った刃傷。

 ボロボロマントに短パン素足にサンダル姿はご愛嬌。

 本人は既に隠居の身でいる気とはいえ、未だ手配書が出回っていたりする。

 額は軽く一〇億ベリーは超えているらしいんだけど・・・。よく知らない。

 原作でも語られてなかったしね・・・。

 

「どうした?アリス。父さんの顔に何か付いているかい?」

 

 私が顔を見ているのを不思議に思ったのか、首を傾げながら聞いてくるお父さん。

 元、海賊王、ゴールド・D・ロジャーの副船長で。生ける伝説、《冥王》と呼ばれる賞金首。

 名をシルバーズ・レイリー。

 それが今生(こんじょう)での私の父親なのです。

 世間的には凄い人なのでしょうが・・・私に言わせれば。

 

「うううん。何でもない・・・。今日はお酒臭くないんだな~って思っただけ」

 

 ただの飲んだくれの放蕩親父。

 放浪癖のダメ人間です!(力説)

 コーティング屋のレイさんとして巷では有名で腕のいい職人なのですが、『ちょっと出かけてくる』って言って一回出たら半年ぐらい平気で帰ってこないし、至るところに愛人がいるみたいだし・・・。

 そう言えば、だいたい一八年後?の原作でもシャッキーが『その辺に女作ってる』って言ってたし・・・。

 死ぬまで治らないみたいですね、この人・・・。

 まっ、すっごく強いのは確かだけど・・・・・。

 ニコリと微笑み、笑顔で答えた私に。

 カウンターにつっぷして落ち込んでいる姿には、威厳が欠片も無かったりする。

 

「アハハハ。そうよね~。珍しいわよね~。レイさんがお酒臭くないなんて」

 

 カウンターの内側で、背の高い丸椅子に腰かけながら笑顔で笑いつつ追い打ちをかけるのは元海賊のシャクヤクことシャッキー。

 黒髪黒目で背の高いスレンダーな美人さん。

 二〇年程前に海賊を辞めて、今じゃ堅気になった人。

 お父さんとの付き合いも古く、若いころの海軍中将ガープさんとも追いかけっこをしていたらしい。

 普通に見聞色の覇気とか使えるって教えてくれました。本人が・・・。

 時々、店に来た無法者をボコボコにしてからぼったくっているし、この人も強かったりする。

 因みに年齢は怖くて聞いていません。

 女性に年齢は禁句でタブーですよ。いや、ホント。

 それと、私は生まれた時からシャッキーのお店の二階に間借りする形で住んでいます。

 かの有名な《シャッキーのぼったくりBAR》ですよ。

 

「シャッキー、追い打ちをかけんでくれんかな。身が持たんよ」

「あら、そう?・・・そんなにやわだったかしら」

「ははは、かなわんなァ」

 

 存外、楽しそうに話す二人の様子を横目に『いただきます』ってしてから木製のコップで牛乳を飲み、大きめのパンケーキをナイフとフォークで切り分けながらパクつく私。

 好き嫌い無くサラダなどの野菜もしっかりと食べます。

 慌てずにゆっくりとよく噛んで均等に食べてゆく。

 朝食のメニューは大きめのパンケーキが三枚、五種類の湯通しした温野菜サラダ、ソーセージとチーズと目玉焼き、それに飲み物に牛乳が付いています。

 四歳児の朝食には多すぎの様にも思いますが、私はカロリーの消費量が多いのでこれぐらいで腹七分目なのです。

 

「ところで、アリス・・・。今日はどうするんだい?」

 

 ある程度、食べ終わった私にお父さんが聞いてきました。

 私は口の中の物をちゃんと飲み込んでから少し考えて答えます。

 

「いつもどおりだよ。お母さんのところ(・・・・・・・・)に行ってから、修業してくるよ。お昼に一度帰ってきて、それからまた修行。晩御飯までには帰ってくるよ。・・・何か用事ある?」

 

 三枚目のパンケーキを残り半分まで食べ終わった状態で止めながら、聞いてみる。

 

「そうかい。いや。とく用事は無いよ。・・・ただ、13番GRからは出ないようにな」

「そうね。いくらアリスちゃんでもまだ危険ね。そこいらの連中なら捕まることも無いでしょうけど・・・・・・中身はともかく見た目は子供なんだから、気を付けて行きなさい」

 

 私は二人の言葉に素直にうなずく。

 あっ、そうそう。

 この二人、私が転生者だってこと知っています。

 えっ?なんで?って?

 見聞色の覇気ですよ。

 覚醒してから不用意に思考した瞬間、速攻でバレましたよ。

 ナハハハ・・・・・・。

 まぁ、だからと言って特別に何かが変わった訳でもないのですが。

 

「ん。大丈夫。今日は登ったり飛んだりするから・・・」

 

 最近の私は、主に気力と霊力の循環とコントロールを中心においています。

 それ以外には体の柔軟と頸脈強化と舞空術の修業です。

 柔軟はバランスのいい身体を作る為。

 頸脈強化、頸脈は魔術回路の気力版。

 気の流れを制御するための路を拡張さることです。

 舞空術は、瞬動や虚空瞬動を組み合わせて行います。

 傭兵王国で培ったクルダ流交殺法と流派東方不敗を完璧に極める為の下地作りです。

 技に入るにはもう少し時間が必要かと・・・。

 その他、空いた時間には体を休めながら、これまでの経験を活用してのイメージトレーニングです。

 見聞色の覇気も制御しなくてはなりませんし・・・。

 もともと仙人時代に、ドラゴンボールみたいに気を感じて、『誰々は今、ここにいる』とか『こいつの戦闘力は○○○だ』みたいなことも出来ましたしね。

 そう。見聞色ですよ。

 いらない。って言っていたのに発現したのです。

 私の意識が完全覚醒した三歳の時に・・・・。

 制御不能で、正直寝不足になりました。

 いきなり頭の中にいろんな感情や思いが声となって制限無く入って来ましたから・・・。

 

 なんの嫌がらせだ~~!!

 って思いましたよ。いや、ホント。

 発現した理由は血筋の影響だそうです。

 

 今の私の強さは全盛期の亀仙人。といったところでしょうか。

 とりあえず強さの目標はセルゲームの時の悟飯君ですね。

 実際に起こるかどうかはわかりませんが、頂上決戦時にはそのくらいの強さになって起きたいものです。

 

「アリス。少し、いいかな?」

 

 半分に減ったパンケーキもあと一欠片。というところで、お父さんが聞いてきます。

 

「これは、本来ならばアリスがもう少し大人になってから教えようと考えていたことなのだがね・・・」

 

 そこで言葉を区切るお父さん。

 前振りにしては意味深な発言です。

 いつになく真剣な眼差しと、重みのある声で。

 なにやら大切なお話を私にして伝えるようです。

 お父さんがゆっくりと言葉を紡ぐ間に、私は最後の欠片を口に含み、咀嚼してから残りの牛乳を飲み干します。

 

「アリスの精神があるていど成熟した大人であると判断した上で、伝えておくよ」

「なに?どうしたの?改まって・・・・」

 

 私は首を傾げながら訪ねます。

 何やら至極、真面目なご様子なので・・・。

 フォークとナイフをお皿に置いてから、ちゃんと膝ごと向き合います。

 

「私が、なんの為に強くなるのか?そう聞いた時。君は『これからの先の時代を生き抜く為に強くなる』そう言っていたね」

 

 私は、こくり。と再度頷く。

 確かに。私が以前、修業すると伝えた時に、聞かれたのでそう答えました。

 その後、いろんな話をして最終的に認めてもらえたはずですが。

 

「その考えは間違いではないよ。・・・ただ、それだけで渡れる程。今の世は甘くはない。そのことは、アリスもちゃんと理解出来ていると思う」

 

 お父さんは念を押すように再度、私に確認してきます。

 正直、この先は聞きたくありません。

 そう言いたくなりました。

 しかし、そういう訳にもいかないのでしょう。

 私はぐっと堪えて言葉を呑みます。

 

「アリス。君には生まれながらに、背負わなければならないものがある」

 

「アリスは私の娘だ。それだけで、十分に世界政府や海軍の敵と言えるだろう」

 

 まぁ~確かに・・・。

 ばれたらかなり危ないのは間違いありません。

 海賊になることも無く、一般人として何もせずに暮らして行く。

 そんな選択肢が無いわけでは無いけれども、私にかかわる全てのことが裏目に出る。

 なんてこともあり得ますし。

 周囲の人間と関わりを絶つなんてことも出来ませんし、する気もありません。

 ならば、背負った上で強くなるしかありません。

 その為の下地はあるのですから。

 

「そして、君のお母さん。エイワス・D・ルナマリア」

 

「彼女が私と同じロジャー海賊団のクルーであり《殲滅姫》ルナマリアと呼ばれていたというのは、以前にも話したと思う。・・・覚えているかい?」

 

 勿論。忘れる訳がない。

 父親が冥王だと知った時の衝撃と同じく。

 面倒事に巻き込まれるフラグ満載なのは『ジョウリ!あんたの仕業か!?』と思わず問い詰めてしまったものだ。 

 

「ただ。正直それは大して問題ではないのだよ」

 

 えっ!?

 それは、どういうことでしょうか・・・・。

 十二分に大きなことだと思うのですが・・・。

 

 まさか、それ以上の問題が、他にもある?

 

「・・・まぁ、私とルナが夫婦で、アリスが私達の娘だということを知っているのは、私とシャッキー。それと信頼のおける、ごくわずかな者達だけだからね。・・・彼らの口から語られることはまずないから安心しておきなさい」

 

 ん。お父さんがそう言うなら、本当に問題はないのでしょう。

 でも・・・、だったら・・・・。

 

「エイワスの名も彼女の母方の名前から貰ったものだし。二つ名はともかく、実名は世間にもあまり知られていないからね。アリスがその名を乗るのに問題はないよ」

 

「ただ、問題なのはその血筋なのだよ。彼女の父親の方。つまりはアリスのお祖父ちゃんだね」 

 

「アリス。よく聞きなさい」

 

 

 

「君の母、ルナマリアの父親であり君の祖父の名は・・・・」

 

 

 

「エドワード・ニューゲート」

 

 

 

「・・・・四皇。《白髭》と呼ばれている男なのだよ」




 次話。 もう少し早めに上げるように頑張ります。

 見捨てずに読んでいただけると嬉しいです。


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第二話 無意識って怖いよね。・・・あっ、1人目発見かもです。

 随分と間が空きましたが。
 
 第二話です。

 駄文ですが、懲りずに読んで頂けると嬉しいです。


 第二話 無意識って怖いよね。・・・あっ、1人目発見かもです。

 

Side レイリー

 

 

「・・・・四皇。《白髭》と呼ばれている男なのだよ」

 

 私は娘に伝える。

 己が誰の血を受け継いでいるのか・・・。

 彼女は知らなくてはならない。

 これから先、背負わなくてはならない、過酷な運命を・・・。

 

 

「すまないね。・・・さすがに、驚かせてしまったかい?」

 

 眼を見開いたのちに俯き、身を震わせる娘に、出来る限り優しく問いかける。

 彼女の中では今、様々な葛藤があるのだろう。

 受け止めよう。彼女がどのような決断をしても。

 受け止めよう。彼女がどのような人生を歩んだとしても。

 そして、私が、生きている限り。この子を守ろう。

 

「お父さん・・・・」

 

 顔を上げ真っ直ぐに私の眼を見詰める娘の瞳は、強くしっかりとした意志のこもった光を放つ。

 

 そして、一言。

 

「・・・・・よく。・・・・よく、今まで、殺されずに生きてたね」

 

 なっ!?――――。

 

「ぶはッ!?・・・ふふふふ。本当に、そうよね~。よく生きていたものよね~」

 

 カウンターの向こう側で噴出したシャッキーが、手首を口元にやり、笑っている。

 そのような姿の彼女を見る機会は相当ない。実に珍しいことなのだが・・・。

 

 いやいや、そうではなく。

 私は眼を見開き驚く。

 私の予想を裏切る返答が帰ってきたことにもだが、娘にまるで動じた様子が一切無いことにだ。

 彼女は別に表面的なものだけで取り繕っている訳ではない。

 それは、私のこれまで積み上げた経験と見聞色がそうだと言っている。

 

 しかし、その哀愁を浮かべた同情するような視線はなんだい?

 可笑しい。私は君を心配して言ったのだが、逆に私が心配されているとは!?

 

「あぁ~・・・・アリスは不安ではないのかい?」

 

 私は尋ねる。しかし、帰ってきた返事が更に斜め上を行く回答だった。

 

「え?不安も何も、今更でしょ?・・・・。さっきも言ったよ。お父さんの娘ってだけでこれから先、苦労すること間違いない訳だし・・・・。それより、お爺ちゃん?って、お父さんと同年代だよね?つまり、その娘に手を出して子供産ませたってことだよね?――――しかも,お爺ちゃんからしてみれば、相手は命がけで戦ったライバルの船の副船長。私がお爺ちゃんで、それを知ったら、いくら娘の旦那でも、とりあえず。――――確実に息の根を止めに行くと思うよ」

 

 ウンウンと腕を組み頷いている我が娘。

 

 君は本当に四歳児かい?―――いや、違ったか。

 この子には、数百年。いや、もしかするとそれ以上の年月、積み重ねた経験があるのだった。

 

 まったく、この子には本当に驚かせられる。

 

 『え!?何で!?嘘でしょ!?――――シルバース・レイリー!!!!!・・・・・え?お父さんなの?うそ!?私ってば産まれた時からフラグ付きっ!?』

 

 彼女を初めて抱き上げた時。まだ、彼女が生まれて来て間もない頃だったか。

 未だ、産後の経過が芳(かんば)しくなく、ベッド上にて横になるルナマリアの側に居た時だ。

 突然聞こえてきた声に私は耳を疑ったものだ。

 全く、あれ程驚いたことは、本当に久しぶりだった。

 

 まぁ、その時はその場で問い詰めることはせずに、ルナがいなくなった後。

 しばらくしてから、話をしたのだが・・・・・。

 

 私にはルナと、彼女と交わした約束もあるしな。

 

「お父さん?」

 

 娘の声にふと、我に返る。

 どうやら、懐かしい思い出と共に思考に嵌まってしまっていたようだ。

 

「ああ、すまない。正直、予想外の返答だったのでね。ハハハハ」

 

 とりあえず、笑って何事も無かったかのように切り替える。

 一応、私にも父親としての矜持(きょうじ)があるからね。

 そこのところ、察してくれるとありがたいものだ。

 

 そんな思いを抱きつつ、首を傾げてこちらを見詰めるアリスに対し、私は真正面から向き直り視線を合わす。

 

「――――さて、それではアリス。君はそれを聞いて、これからどうしたいのかな?」

 

 

 Side アリス

 

「――――さて、それではアリス。君はそれを聞いて、これからどうしたいのかな?」

 

 うわぁ~。サラっとスルーしたよこの人・・・・・。

 私のツッコミはスルーですかそうですか。

 いいよ。いつか白髭のお爺ちゃんに会ったら言ってやろう。うん。そうしよう。

 

 まぁ~、それなりの事情もあるんでしょ。察しますよ。触れないでおいて上げるよ。 全く・・・・。

 それから、シャッキー。

 そんなに微笑ましいものを見る目で見ないでぇー!―――恥ずかしいから。

 

 不安になった訳じゃない。それはホント。ただ、この世界。

 半端な気持ちで生きていくには世知辛い。

 理不尽と不条理のオンパレードな世界なのだから――――。

 

「どうしたい?そんなの決まってるよ。改めて言うけど、力を付けて強くなる。今の私は精々、億越えに手が届く程度だし。なら、修業するしかないでしょ?――――まずは覇気を全て覚えて制御下に置く。お父さんが冥王でお爺ちゃんが白髭なら。私にも覇王色、武装色、見聞色を使える才がある筈だし。戦いの経験はある程度ある、身体能力の鍛え方も分かってる。海王類や悪魔の実の能力者との戦闘経験はないけど、人外や化け物、獣の類なら経験あるし。あとは実践かな・・・・。旅をするのもいいね。他には航海術とか、海で必要になる知識。海軍、王下七武海、四皇、世界政府、世界貴族、革命軍。ポーネグリフや古代文字の知識も欲しいかな~って考えているんだけど、どうかな?」

 

 そう一気に話し切った私に、お父さんやシャッキーは少々難しそうな表情を浮かべる。

 以前は、ここまで深く話したことはない。

 ただ、『これからの先の時代を生き抜く為に強くなる』という言葉に嘘はない。

 

「なるほど。どうしたいのかは分かったよ。しかしな。ポートグリフや古代文字。あれはね、アリス。君が想像している以上に、知っているというだけでも相当に危険なシロモノなのだよ」

 

 アルコールの入っていないスカッシュが入ったグラスを傾け、カラン、と澄んだ氷の音が耳に響く。

 目を細め、ゆっくりとした口調で話すそうお父さん。

 

「そうね~、アリスちゃんなら知っているかと思うけどオハラの件もあるから、手を出すなら慎重にしなさいね」

 

 腕を組みタバコを咥えながら、私に忠告してくるシャッキー。

 今の私の前では決してタバコに火を付けようとはしない彼女。

 内心、『ゴメンね。気にかけてくれて』と謝る私。

 『いいわよ』と私の思いを察してウィンクを返してくるシャッキー。

 

「まぁ~、その辺はね。しっかりやるよ。ニコ・ロビンみたいに手配されたくはないし。正直、今すぐにでも助けに行ってあげたいけど。今のわたしじゃ足手まといだし。何所に居るのかも知らないから」

 

 そう、残念そうに言う私。

 

「あら、彼女の事も知っているのね。―――でも、彼女のことなら大丈夫よ」

 

「ああ。そうだな。彼女には、彼女を守る騎士(ナイト)がいるからね」

 

「ふぇ?」

 

 なにやら二人して私の知らないことを話している。

 どうやら、二人にとっても共通の知り合いがいるのだろう。

 さっき言ったニコ・ロビンの側に・・・・。

 

「騎士って―――何?」

 

「おや、アリスは知らないのかい?」

 

「彼女を守る守護者(ガーディアン)とも言うべき彼。『悪魔の子の守護者』『黒衣の騎士』そう呼ばれている子がいるのよ」

 

 そういって差し出され、テーブルの上に乗る一枚の手配書。

 それを手に取り、マジマジとみる。

 見た目は・・・・。うん。SAOのキリト君を少し幼くした感じ?

 ああ、SAOはね新宿に居た頃に出されたとあるライトノベルの主人公なんだよ。

 

 写真は横顔。黒髪黒目で少し女の子っぽい容姿。背中を向けていた時に撮られたようだ。

 襟と丈の長い黒色のロングコート。その上からベルトを通し、背中には大層な剣を一本背負っている。

 

「デュバル・A・ランスロット。懸賞金、一億BR(ベリー)」

 

「身に着けた在りとあらゆる武器を自由自在に操るんだ。歳は確かアリスよりも6歳程上かな。さらに、彼はその歳で見聞色に武装色も、力に振り回されることなく使いこなしている。覇王色に関してはまだまだ使いこなせてはいないが、素質はあるようだ。それでも、大したものだよ、彼は」

 

「そうね。歳の割には大人びているかな?今年、10歳になるロビンちゃんを守る12歳の騎士様ね。かっこいいわよ~。あれは、将来的にもいい男になること間違いないわね」

 

 シャッキーがいい男って言うからには外れではなのでしょう。

 たぶん、その子。正統派オリ主君ですね。わかります。

 二人の会話や手配書の写真。そして、その分かり易いその名前と容姿。

 そこから裏の事情を察する。

 

 一番まともだと聞いていた彼が一番最初に手配書になるとは・・・・。

 まぁ、そのおかげで1人目の行方が分かったのだけれども。

 

 オハラに生まれたんだね~。最初から滅亡フラグって私以上にハードみたいだし。

 仕方ない。何かあったら助けてあげよう。

 

 そう、密やかに決心する私なのでした。

 

「ん?―――アリス。どうかしたのかい?」

 

「どうしたの?手配書をじっと見て、彼に一目惚れでもした?」

 

 手配書を握りしめてジッと見詰めていた私に二人して聞いてくる。

 いやいや、そんなわけないでしょ。と思いつつ。

 

「違うよ。いい子だったらいいな~とか、友達になれるかな~。って思っただけだよ」

 

 そう適当に返す私。

 別に、同類かもしれないって言ってもいいのだけれども、まだ、確証ないし。

 

「いい子ね~・・・・」

 

 おや?その微妙な笑いは何なのでしょう?

 

「確かに。―――いい子。ではあるのだがね・・・」

 

「そうね~、いろいろと中身、残念な子だから・・・彼」

 

 ふふふと不敵に笑うシャッキー。

 

「ああ、確かに。残念で愉快な男だよ。彼は」

 

 苦笑でもって返すお父さん。

 

 えぇ~と、どういうことでせう?

 

「とある夢を盛大にかつ、自信満々に宣言していたものね」

 

「ああ。宣言した後、これまた派手に彼女に殴られていたがね」

 

「「ハーレム王に俺はなるっ!ってね。(とね)」」

 

 うん。私の勘違いだったみたいだね。

 

 正統派オリ主君ではなく踏み台君の方でしたか・・・・。

 

 うん?―――というより、正統派な踏み台的転生者?

 

 改心しましたー!的な人?ま、いいや。

 

「あぁー。つまり、お馬鹿ってことでよい?」

 

 首を傾げる私。

 ん?なんか変なこと言った?

 

 どっかの乳龍帝君みたいな感じの子って思っておけばいいんでしょ?

 

「ふふふ。そうね。確かに馬鹿な子ね。でも、大丈夫。いいお馬鹿さんだから、お友達にだってなれるわよ」

 

「そうだな。確かに。まぁー、彼女の尻に敷かれているうちは大丈夫だろう・・・・」

 

 それは、俺の娘に手を出すな的なノリですか?お父さん。

 眼鏡の奥の瞳が一瞬、鈍く光った気がするのは気のせい?

 

「ふふふ。そう言えば・・・・。彼曰く、『二次元と現実は別物だと悟ったのです』ということらしいのだけれども。―――分かる?アリスちゃん」

 

 あい。わかった。解ってしまった・・・・・。

 

 考えても見るがよい。

 ぶっちゃけ、二次元でないリアルONE-PIECEなのです。

 実写版。ガチモードですよ~。

 

 リアリティーあり過ぎて、二次元主義者には世知辛い世の中に見えるんだろうね~。

 特撮系大好きな人ならまだましだったんだろうけど。

 彼には酷だったようです。

 

 想像してみて。主人公のルフィー君。ゴムゴムの実を食べたゴム人間だよ。

 身体中が伸びたり縮んだりするんだよ。

 

 赤っ鼻のバギー君はバラバラ人間。

 切断面って、どうなってるんだろうね~?

 まんま人間のリアル断面図だったら?

 

 ―――映画【バイオハザードの】一場面を思い出すのは私だけだろうか?

 

 ロビンちゃんはハナハナの実。人の身体や、いろんな場所から手をたくさん出せる。

 リアル千手観音とか出来るんだよ。

 慣れたら一度にいろんなことが出来て便利だろうけど・・・・・。

 

 まぁ~、実際に見たことないからわかんないけど。

 

 悪魔の実の能力者とか、知識の無い人から見れば、確かに化け物にみえるよね~。

 

 私自身。興味はあるけど食べたいとは思わない。今後、食べる気も無い。

 だって、泳げなくなるのは嫌だし、そこまでの価値を求めていなかったりする。

 

 

 でも、まぁ~。私。

 リアルでハーレム作ろうってんだから、正直、根性あると思うんだ、その子。

 

 だってさ、1人でも大変なんだよ。女の子と付き合うの・・・・。

 

 それなのに。全員に分け隔てなく接して、フォローして、夜のお付き合いも行って、ちゃ~んと全員を満足させてあげなきゃいけないんだよ?

 

 身体も心も、保った上でね。

 

 それがリアルで出来るのは、アラブの王族ぐらいなんじゃないかな?って思うんだ。

 

 それにね。

 

 私には男として生きた前世が5つほどあるのです。

 

 ハーレムとやらは既にすべからく体験済みという経験が、知識として残っている私には、『まっ、頑張って・・・・』と生暖かい目で見つめてあげるしかないのです。

 

「・・・アリスちゃん」

 

 おお!? シャッキーの声に、現実に立ち戻る私。

 

「あ~。ゴメンゴメン。――――うん。取り合えず、彼が何を言いたいかは理解した。まぁ~、いろいろと考えたんだと思うよ。彼的に」

 

 考えた先が『ハーレム王』ってのが、本当に残念というか、正直といか・・・・・。

 

 

 ロビンと、そのランスロット君の路に、幸多くあらんことを願うばかりである――――。(丸)

 

 

「さてと」

 

 一つ大きく背を伸ばし、私は椅子からぴょんと跳び下りる。

 腕を伸ばしてカウンターの上。空の食器を載せたプレートを取り、カウンターの内側へ。

 洗い場にの前に置かれた、私専用の踏み台に上り、食器を洗う。

 

 因みに食器もプレートも全部、特殊加工された木製だったりする。

 

 洗い終えるとタオルの上に置いておく。

 両手からしっかりと水分を拭き取る。

 

 それからカウンター横の壁に懸けた、私専用に作った修業用の刀棚から一本。

 手に取って感触を確かめる。

 これには前世の知識と経験が活かしてあった。

 修業用として、刃挽きの刀に鉛を入れたり、打ち直したりと、重さとバランスを考えながら自分で作りました。

 

 私の今の身長よりも長いそれは、腰のちょうど良い位置に設置した腰縄にそのまま挿すと地面を引き摺ることになるので、踵を切り落とした高下駄に履き替え、嵩上(かさあ)げを行う。

 そうしてから心持ち水平になるようにバランスよく刀を腰に配置する。

 

 これで準備は整いました。

 

 因みに、私が高下駄を履く理由なのですが。

 古流剣術や武術には踵を切り落とした草履を使うことで体幹を鍛えるとともに。立つ。歩く。走る。といった基本動作を、重心を常に一定に保ち、姿勢を正し、効率よく身体を使う修業があるのですが、これはその強化版です。

 

 常に爪先に力を入れ続けながらバランスをとり続けなきゃならないってことですね~。

 

 余談ですが、この高下駄にも重りを仕込んであるのです。

 

「それじゃ~。お父さん、シャッキー、行ってくるね~」

 

 私はお店の出入り口のの前に立ち、一度振り返りる。

 

「ああ、行っておいで」

 

「気を付けて行ってらっしゃいな。晩御飯までには帰って来なさいね」

 

「は~い。了解。――――行ってきまーす」

 

 二人の笑顔に笑顔で返し、私は扉を開け放つ。

眩しい光が、まるで私の今日という日を祝福してくれるかのように降り注ぐ。

 

「うん。今日もいい日だ」

 

 日差しを片手で遮りながら、私は今日も、一歩、踏み出した。

 




 今後も、不定期ではありますが、根気よく投稿していきたいと思います。

 


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第三話 考察と友達と、賑やかな客達。

 短いですがとりあえず、繋ぎで一本入れます。
 大変遅くなり、申し訳ありません。
 


 あれから二週間が経ちました。

 え?あの後、どうしたかって?

 お母さんのお墓に行ってお花手向けて、修業しただけですよ。

 いつも通りでしたね.

 

 

 さて、今日も今日とて、修業の日。

 私は今。マングローブ林の中。

 人気のない一角に人払いの札を張って結界を構築。気の練成を行う。

 高下駄の裏に気を張り巡らし、マングローブに対して垂直に(・・・)空に向かって立つ私。

 その状態を維持しながら構え、鞘当、抜刀、納刀。これら一連の動作を繰り返す。

 ひたすらに、ただ実直に・・・・。

 

 この世界にも、気という概念は存在する。

 本来、気とは、生物。無機、有機に限らず、全ての息とし生けるものとともにある。

 大地や太陽、海や空にも満ちている。そういうものだ。

 

 その際、『外気と内気の合成』を常に意識して行います。

 これは、頸脈強化の一環です。

 この状態で息をする。日常動作をする。その状態で生活する。

 これが出来るようになると、ほぼ無尽蔵に仙術による技が出せます。

 それを頸息と言うのですが、詳しくは長くなるので割愛します。

 

 ただ、内気は己の内側ですが、外気は外から取り込む力なので、良い悪いを判断し、選んで取り込まなくてはなりません。

 

 例えば、太陽から何も考えずに気を取り込んだ場合、確実に燃えます。

 燃え尽きて灰になり、即死とかありえますし――――。

 生前、嘗ての修業で死にかけたことがありますから間違いありません!

 

 とりあえず。

 気の修業に関しては、五つの段階があるのです。

 

 第一段階が『気の認識』、第二段階が『体術』。

 第三段階が『方術』、そして第四段階が『道術』。

 最終 第五段階『仙術』。といった具合に・・・・。

 

 私には嘗て仙人として生きた知識と経験が二千数百年ほどありますし、マスターアジアの経験も参考に、今の身体が耐えれるほど仙術から開始しています。

 

 三種の覇気。これらもそれらに通じるものだと、私は認識しているし、それらはお父さんに確認したところ、あながち間違ってはいないらしい。

 あとは、イメージ。如何にその存在を信じられるか。なのだとか・・・・。

 

 生命帰還とか、ある種、仙術の領域ですよ。

 心臓の位置を変えるとか、髪の毛の先まで意思を持って動かすとか・・・・。

 悪魔の実の覚醒も、ある種それに近いのではないのかと、わたしは推測しています。

 

 まぁ~、ともかく・・・・。

 

 身体全体に万遍なく気を行き渡らせ、想像する。

 かつての自分を・・・・。

 

 そして―――――。

 

 飛天御剣流 二連抜刀術『龍追閃』!

 

 一刀目で切り、二刀目で鞘の追撃を行う。

 

 一刀、一刀足に今の全力を込める。

 昨日の自分より今日の自分を。先の一刀よりも今の一刀を・・・・。

 それを幾度となく繰り返す。

 意識することを怠らず、真摯に向き合いながらの一刀は、次への成長へと繋がります。

 焦らず、騒がず、落ち着いて。且、迅速にことを為す。

 

 

 その後は走る。走る。とにかく走る。

 地面を、木々を、時に空を足場に。縦横無尽に駆ける。

 重心を低く安定させ。ぶれずに、頭の位置を一定に・・・・。

 イメージするのは背中に背負った一本の杭。

 

 そして私は分割思考で肉体を制御しつつ、別のことも考える。

 

 今は原作開始の17年前。

 ってことは、来年にはフィシャー・タイガーがマリージョアから脱走して、再来年に壁を登って聖地を襲撃、奴隷解放を行うということです。

 その時にハンコック達、ゴルゴン三姉妹が来るんだよね?ここに・・・。

 これまで会ったことがある原作キャラはお父さんとシャッキー以外だと、タコの魚人ハチことはっちゃん。

 はっちゃんが連れて来てくれた。アオザメの人魚シャーリーとタコの女魚人オクトパ子。

 この三人は私のお友達である。

 はっちゃんとシャーリーはすぐに仲良くなれたんだけど、オクトパ子には警戒されていた。

 人間は怖い。そう教えられてきたらしいから仕方がないけど、今じゃ、仲よしさんである。

 

 そろそろ、東の海では主人公のルフィー君が産まれているころかも知れないね。

 

 ん?ちょいまち。ゴルゴン三姉妹が人間屋(ヒューマンショップ)売られるのって今年!?

 

 先に救う?救える?・・・・まだ、間に合う?

 

「たしか、先代の船に勝手に潜り込んで、戦闘中にはぐれて船から海に落ちるんだったっけ?」

 

 だめだ、転生生活が始まる前だし、あまりにも昔過ぎてすぐに出てきません。

 しかたがないので・・・。

 

「お父さんに確認してもらおうか」

 

 ついで、私が女ヶ島に行けばいいんだ。

 元女帝シャッキーの義娘だし大丈夫だよね?

 それにトラウマ、当然、無い方がいいよね?

 そう思い、修業を切り上げ、家へ向かうが・・・・。

 その場合、ルフィ君とハンコックのフラグが立たない。女ヶ島についてもインペルダウんまで送ってもらえない。

 そもそも、捕まらなかったら妹達のヘビヘビの実もメロメロの実も無理矢理食べさせられることもない。

 奴隷になったことからこそ、必死に努力して強くなって七部海になったなら、原作より弱くなる?

 

 むむむ・・・・。

 

 其処まで考えたところで――――。

 ポンッ と一つ両手を打つ。

 

「私が鍛えて、悪魔の実が無くても負けないよう三人を強くすればいいじゃん!? 女ヶ島入れるし!」

 

 うし! そうしよ~~~♪♪♪

 

 そうと決まればさっそく。縮地で動く。

 一瞬で到達する、お店前。

 

「ただいまぁ~~~。お父さんいる~~?」

 

 間延びした声を上げながら、扉を開けて入って行く。

 まぁ~、気配でいるのは解っているんだけど・・・・。

 

 ん?他にもいくつかの気がある? 独特の気が――――。

 

「あら。アリスちゃん、お帰り。今日は随分と早かったわね?」

 

「ん?どうしたんだいアリス?わたしに用事かな?」

 

 カウンター内でグラスを磨きながら此方(こちら)を見るシャッキー。

 いつも通り椅子に座り背中越しに振り向き、こちらを見るお父さん。

 

 そして・・・・・。

 

「あん?レイさんの知り合いか?この嬢ちゃん」

 

 眉をひそめ、こちらを見る、麦わら帽子の赤髪の男。

 マントを翻し、だぼついたズボンに草履を履き、カタール剣?らしきものを腰に提げたやつ。

 お父さんと向かい合いながら、ジョッキを片手に、うさん臭そうな表情を隠すことなくこちらへ向けてくる。

 

 うん。リアルに出会えばこう来るか・・・・。

 赤髪シャンクスとその主要クルー御一行様。

 

「いやいや、船長・・・・」

 

「さっきお父さんって・・・(汗)」

 

「ん?ああ、アリスは私とルナマリアの娘だよ」

 

「「「「「「「なにぁぃーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」

 

 やかましい合唱、ありがとうございまぁ~す。

 

 あっ、今の。

 

 アニメ的に見れば。家が膨れて震えたんじゃないかな?

 




 ようやく新しい仕事も落ち着いてきましたので。
 ネタ話。チラシの裏に投稿中の話。その後、次話、投稿します。
 
 感想への返信。できなくてすみません。
 ちゃんと読ませて頂いております。

 考えすぎちゃうと前に進めなくなる性質でして。
 ホント申し訳ないです。


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