百夜茜は生き残る (さんの羊)
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百夜茜は生き残る

…文書くのへたくそです。でもがんばります。


…4年前、

 

「「警告します!!愚かな人間どもの手により致死性のウィルスが蔓延しました!!残念ながら人類は滅びます!!しかしウィルスは13歳以下の人間には感染しないことがわかっています。よって我々ー第三位始祖クルル・ツェペシ直下部隊は……これよりこの地区の子供たちの保護を始めます我々の指示に従いなさいー」」

 

…その宣言とともに私達家族の運命はほぼ決まった。

 

吸血鬼の家畜になってしまったけれど、私は家族みんなで一緒に居られればそれでいいと思っていた。

 

「茜ちゃん、みんなを起こして!この世界から逃げるぞ!」

 

…そう言って私に手を差しのべる彼は私にはとても眩しく見えた。

だから私もついていきたいと思った。

家族みんなでここから逃げ出す事ができたら…きっとなんとかなると思えた。

 

「あはぁ~」

 

…でもそれは間違いだった。

 

「待ってたよ哀れな仔羊くんたち」

 

…本当に間違いだった。

 

「逃げろ!!!みんな走れ!!逃げるんだ!!出口まで!!早く!!!走れ!!!」

 

次々と殺されていく家族、必死なみんなの叫び声、

 

「あ…」

 

…自分の体から吹き上げる血液、

 

「茜!!」

 

最後に家族に名前を呼ばれた。しかし返事をすることができない。

 

(優ちゃ…ん…ミカ…みんな…)

 

…あーあ、もっと家族と一緒に暮らしたかったなぁ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…意識が戻る。

 

「そこらへんに捨てておけ、フェリド様に危害を加えようとした哀れな人間だ。いずれヨハネの四騎士にでも喰われるだろう。」

 

そう言って私を置いていってしまう吸血鬼達。

 

「っ!?」

 

私の周りには殺された家族達の死体が横たわっていた。

何故自分だけは生き残ったのかわからない。どうしてこんなことになってしまったのか。

家族達を殺した吸血鬼達が憎い。

家族達を殺されて泣くことしかできない自分が憎い。

無力な自分が憎い。

 

こんな世界が憎い。

 

…ふいに私の視界にそれが目にはいる。

空間が歪み、ぽっかりとそれは口を開けた。

 

私は何を思ったのか無意識にそれに吸い寄せられるように近づいてゆく。

 

あ な の な か に わ た し は 飛 び 込 ん だ 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ん?」

 

男は悠然と椅子に腰かけパラパラと書類を確認していた。

 

「クソ…またか…」

 

男はこの学校の中のどこかで《道程》が開いた気配を感じ取った。

 

「今度はどんな雑魚だ…?」

 

彼はゆっくりと腰をあげ、現場に向かう。

今まで様々な化物やらが現れるのはこの学校では日常茶飯事だった。

 

「…あ?」

 

しかしいざ現場につくと、そこの《道程》は既に閉まりかけ、恐らく衰弱していると思われる女児が横たわっているだけであった。

しかし彼にとっては経験上これが明らかに他の化物が現れるよりも面倒なことになるということがわかってしまった。

 

彼は無言で制服のズボンのポケットから携帯を取りだし電話をかけた。

 

「…俺だ。《道程》を通ってきたと思われる女のガキを拾った。…それと、随分と衰弱している。一応軍の医務室に連れて行く。とりあえず何かないか調べろ」

 

彼は電話を切り、再び倒れている子供を見る。

 

「クソ…面倒くさい事になりそうだ…」

 

彼はそう呟き舌打ちをした。

 

 




更新は遅いです。


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百夜茜は手を取る


…やっとこさ更新。まだ二話ですけどね。


 

 

「…ん…」

 

しばらくして、茜は目を覚ました。

 

「…ここは…?」

 

辺りを見渡して見ると、自分はとても清潔そうなベッドの上で寝かされていたことがわかる。

 

「なに…これ…!?」

 

部屋の窓からは暖かなひざしが射しているが、それよりも茜はその外の景色に驚いた。

 

「街が…崩壊してない…!?」

 

外では普通に車が走っている。人間は楽しそうに笑いながら歩いている。

 

「これは…ゆめ…?」

 

…ふいに茜の頬に涙が伝った。平和で、吸血鬼なんてものが居ない世界、まるで悪夢を見ているかのような光景。

 

(…でも、あれ…私の家族は…)

 

 

 

 

茜が家族のことを思い出しそうになったその時、突然部屋の扉が開く音がした。

 

「気がついたか…」

 

そして、黒髪の学生服を着た男が入ってきた。

彼は茜の姿を確認すると、見定めるように睨み付けた。

 

「早速だが…お前は一体何者だ?」

 

鋭い目で質問を問われ茜は少したじろいでしまう。

 

「え、えっと…?」

 

男は舌打ちをすると、苛立った様子で、

 

「お前は自分の事さえわからないバカなのか?それとも敵か何かか?」

 

「…はっ!?てっ…敵!?」

 

突然バカ呼ばわりされ、敵なのかと問われ、茜は焦るばかりだ。

 

「お前は此処とは違う異世界から来た。…まさか自覚がないのか?」

 

「い、異世界…!?」

 

 

 

そして、彼が弱っていた茜を拾ったことや異世界から迷い混んで来たことを詳しく茜に説明した。

茜もそれを聞いて動揺したが、少しずつ自分の事や、自分が生きてきた世界や家族の事、そして吸血鬼の事なども話した。

 

 

 

「ほぉ…なるほど…お前がいたところは本当にクソみたいな世界だな。しかも東京とは…此方の世界と随分似ている世界のようだ」

 

彼は鼻で笑いながら言った。

 

 

愚かな人間どもによりウイルスがばらまかれ、世界が崩壊しかけ、吸血鬼にほぼ支配された世界。

 

 

「…それで?お前は一体どうするんだ?」

 

彼は真剣な顔で茜に問いかける。

しかし、いきなりこれからの事について問われ、茜は困惑した。

 

「お前が望むなら…戸籍をこちらで作り平和なこの世界で生きて行く協力を軍がするが…お前はどうしたいんだ?」

 

「私は…」

 

吸血鬼に家族を殺された。

しかし自分は生き残り、助かった。

そして自分だけは平和な世界で生きて行く。

 

(そんなの…ふざけてるとしか思えない…。)

 

「強くなって、吸血鬼を殺します。」

 

茜は覚悟を決め、彼に伝える。

 

「…どうやって殺す?お前が言うには吸血鬼とやらは人間よりもはるかに強くて身体能力があるらしいじゃないか。到底お前のようなただのガキにどうこうできるとは思えないが?」

 

「それは…」

 

「お前もどうせお前の家族と同じようにムダに殺されて終わりだろうな。」

 

「…それでも!強くならないといけないんです!」

 

「家族の仇…か…ふん、いいだろう。お前を俺の奴隷にしてやる。」

 

「……え?」

 

「俺の名前は紅月光だ。俺様についてこれば…お前は神をもころす事ができるようになるぞ?」

 

彼は…紅月光は不敵に笑いながら茜に手を差しのべる。

 

「…へ?」

 

(…神をも…殺せる力…!?)

 

「さぁ、百夜茜…どうする?」

 

月光の問いかけに、茜は答える。

…答えはもう、決まっていた。

 

「…っ!よろしくお願いします!!私は…あなたに…強くなれるならいくらでもついていきます!吸血鬼どもを滅ぼせるなら!!」

 

茜は月光が差し出した手を強く掴んだ。

 

 

 

そしてここから…世界の滅亡と、吸血鬼、天使、悪魔と、私の戦いが始まった。

 

 

 

 

 





…なんとかコツを掴めそう。がんばろ…。


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百夜茜は学ぶ


久しぶりです。なんとかがんばります。




 

…あれから私の修行が始まった。だけど思っていたよりも予想以上にその修行はきつかった。

 

 

最初の内は基礎体力をつける事から始まり、体力だけでなく他にも魔法の基礎まで勉強をさせられている。

 

魔法なんて存在していたというとこから驚愕したが、渡された軍の魔法の教本は思った以上に難しかった。

 

 

 

「んじゃっ!今日はこのぐらいにしとこっか!」

 

そこで魔法の教師役についてくれたのが碧泉さんだった。

 

「えっと…ありがとうございます。毎回教えていただいて…」

 

「ん~?いやーまぁ月光ぽんに頼まれちゃあこっちも断れないしねーん」

 

「は、はぁ…」

 

金髪に染めた髪に短いスカート、泉さんはチャラチャラした見た目とは違って凄く頭がよかった。

 

「それに、頑張ってる子を見ると応援したくなっちゃうよねー♪」

 

「…泉さん…。」

 

「まぁーでも肝心な私はぜーんぜん魔法使えないけどねー!あは!頭だけよくてもどーにもならないこともあるよー。」

 

「…え?」

 

「ふつーの人間じゃあどうしようもできないってことかなー?あたしなんて他の生徒会役員に比べたらびっくりする位ふっつーのかわいい女の子だからねー!」

 

「…そうなんですか?」

 

「そーそー!茜っちは月光ぽんとあたしと他は軍の人位しかまだ会ったことないっしょ?月光ぽん意外にもすっごく強い生徒会役員がいるからね!」

 

「…そんなに凄い人たちなんですか…?」

 

「おーう!もうすっごいよー!!ってかみんな人間じゃないしねーん(笑)」

 

「そ、そうなんですか…!」

 

…人間じゃない。泉さんのその一言に私は凄く動揺した。月光さんが言った「神をも殺す事が出来る」というのは本当なのだろう。

それだけの力を持った人達がこの軍という組織には集まっている。

 

「そのうち会うことになるんじゃなーい?まぁ楽しみにしてなよー♪」

 

「楽しみに…?」

 

「うん♪すっごく面白い人たちだからねー!」

 

…おもしろい人…。泉さんはそんな人間ではない存在達をその一言だけで表すのか…。

 

「じゃあねー茜っち!」

 

泉さんはそのまま立ち上がると手を振って部屋から出ていってしまった。

 

思っていたよりも私の今の立場は恵まれている。

 

「…もっとがんばらなくちゃ…!」

 

私はもっと強くならなければいけない。そのためにはまず…この分厚い教本を読み込む事からはじめよう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、次の日。

私は軍から与えられた自分の部屋で教本を黙々と読んでいると、突然部屋の扉が開き誰かが入ってきた。

 

「ふーん…あなたが月光が拾ったっていう子供?」

 

白い肌に整った顔、ラベンダー色の長い髪、赤い…瞳に、少し口から覗く…尖った…歯!?

 

上から私を見下ろす彼女はまさしく…吸血鬼の少女であった。

 

 

 






…出来るだけもっと早くしたい。


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百夜茜は魔女と出会う

続きです。もうちょっとがんばりたいです。



 

 

「きゅ、吸血鬼…!?」

 

私は思わず身構えた。

 

 

その少女はこちらを見ると、口を開いた。

 

「ふーん…この子が月光が拾った子供ね…」

 

…彼女の口から「月光」という名前が出てきた。

 

見ればみるほど吸血鬼の特徴と一致する。が、月光さんの名前を出していたってことはやはり月光さんの知り合いなのか…?

 

「…えっと…あなたは誰ですか…?」

 

おずおずとそう聞くと、少女は苛立ちを表しながらこちらをキッと睨み付けた。

 

「…はぁ?下等な人間なんかに何で私が名前を教えなくちゃならないの?」

 

威圧感を放ちながら少女は私を見下してそう言った。

…「下等な人間」その言葉はまさしく自分は人間ではなく人外と言っているようなものだった。

 

「あなたは…吸血鬼…ですか…?」

 

「吸血鬼…?私をあんな下等種族と一緒にしないで」

 

恐る恐る聞くと見た目に合わず結構な毒舌が返ってきた。

 

「…あなた、月光に拾われたんでしょう?」

 

「…え?はい、まぁ…。」

 

「ふぅん…見たところでき損ないの異物が混じり混んでいるようだけれど…」

 

少女は少しだけ興味深そうに私を見つめる。

…しかしそれよりも…「でき損ないの異物」とは一体なんの事なのだろうか。

 

「じゃ、私はもういくから、」

 

彼女は興味を失ったのかあっさりと私の前を立ち去った。

 

「…あれ?結局あの人の名前すら聞いてなかった…。」

 

どうやら私に軽く興味を持っていただけだったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

翌日、この事を泉さんに話すと、

 

「あー…それ多分ヒメちゃんだあ…。」

 

泉さんは心当たりがあるようだった。

 

「ヒメちゃん…?」

 

「そっ!サイトヒメアちゃん!私はヒメちゃんってよんでるよ~!すっごくキレイだったでしょー?」

 

「は、はい。」

 

…確かに綺麗だった。まるでこの世のものとは思えない程に。

 

「まぁ、ヒメちゃんは結構そっけない子だけどいい子なんだよー。きついこと言われたかも知んないけど多目に見てやってねー?」

 

サイトヒメアさん…というらしい。

やはり彼女は人間ではないのだろうか。

 

「最古の魔術師とかって言ってね?すっごい魔女らしいからねー!いろんな魔法知ってるよー♪もーすっごいんだから!」

 

「ま、魔女!?」

 

人間ではないと思っていたがまさか魔女だったとは…。

そう思っていたが、魔女とはあんなにも吸血鬼に似通った姿をしてるのかとそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でもってあれで恋人居るんだよー!恋人の前だともーすっごいかわいくて素直なんだよねー!」

 

…私はそれを聞いて、今日一番びっくりした。

 

しかし肝心のあの言葉が私の心に引っ掛かっていた。

「でき損ないの異物」これは一体なんの事だったのだろう…?

 

 




…出来るだけ早く続き出したいです。
文章やっぱり短いなぁ…。


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百夜茜は悪魔と出会う


こんな小説を読んでくれる人がいるのは結構うれしいです。がんばります。


 

私は一人、部屋で軍からもらった教本を読んでいた。さまざまな言語が入り乱れ専門用語が立ち並ぶ難しい本。これを理解するのに私は大分かかった。

本に集中していると、突然部屋の扉が開いた音がした。

 

「あっれー???」

 

扉を開けて小さい女の子が首をかしげていた。

この部屋にはいろいろな人が無遠慮に入ってくる時がよくある。

 

「あれれー?間違えちゃったかなー?」

 

高く大きな声でそう言いながら女の子は辺りを見渡す。

 

「…あああーっ!!ねーねー!あんたってゲッコーが拾ったっていう子ー!?」

 

そして私に気がついたのか、大声で彼女はこちらに指を指した。

 

(ゲッコー…月光…?)

「は、はい…多分…そうですけど…あなたは誰ですか…?」

 

戸惑いながらも私は彼女の問いに答える。

 

「私?私はミライだよー!」

 

「あ、ミライ…さん、ですか。よろしくお願いします…」

 

「うん!よろしくね!」

 

彼女は私の手を握り、ブンブンと振りながら握手をした。

 

 

 

「ゲッコーって優しいよねー!!」

 

彼女は溢れんばかりの笑顔で私にそう言ってくる。

 

「は、はい。とても、助かってます。私は…あの人がいなければ死んでいたかもしれないので…。」

 

彼女にそう話すと、

 

「ふーん。そうなんだ!」

 

…これだけ返って来た。随分と楽観的だ。

 

「どーして死にそうだったのー?」

 

彼女は純粋に興味を持ったのか、私にそう聞いてくる。

 

「え、それは…」

 

戸惑いながらも、私はこれまでの事を彼女に話した。

 

そしてまた返ってきた返事が、

 

「ふーん大変だったんだねー!」

 

…だった。彼女は本当にあっけらかんとしている。

そんな明るい所が彼女の魅力なのだろうか。

 

「辛かったんだねー…よしよーし。」

 

そして私は彼女に頭を強く撫でられた。

初めて、ここに来てこんな風に頭を撫でられた。

なぜだか涙がこぼれる。

 

「えとえと、よしよーし、だいじょーぶだよー!んと、まだ死んでなかったら負けじゃないって!私のママがいってたもんね!!」

 

彼女は少しだけ慌てたように私に言いながら頭を撫で続ける。

勝ち負けとかではないのだが彼女はそう受け取ったようだった。

 

「…っありがとうございます…。」

 

そう言うと、彼女は、

 

「うんっ!どういたしましてー!!」

 

またとてもまぶしい笑顔を見せてくれた。

彼女はまるで太陽のような女の子だった。

 

彼女と話しているとこちらまで元気になれそうだ。

 

もっと話をしたい。そう思ったとき、

 

~♪~♪~♪~♪

 

軽快な音楽がどこからか流れる。

その瞬間、彼女は何かを思い出したのか、急にサッと顔色が変わった。

 

「っああぁぁー!?わ、忘れてたああああああ!!」

 

彼女はスカートのポケットからケータイを取りだし、あわてて電話に出る。

 

『おい!なにやってるミライ!!』

 

電話から月光さんのものすごい怒鳴り声が聞こえる。

 

「えとね、えとね、忘れてたわけじゃなくてね、今からいこうと思っててね…!?」

 

彼女はしどろもどろに言い訳をいい始める。

 

『早く来い!!』

 

月光さんはそう怒鳴ってブチりと電話を切った。

 

「お、怒られちゃった…」

 

少しだけシュンとして彼女は落ち込む。

そして、すぐにハッとした顔になって、

 

「もういかなきゃ~!バイバーイ!!」

 

凄いスピードで彼女は部屋を出ていった。

 

(ミライさん…明るい人だったな…。)

思い返すとそういえば彼女は泉さんと同じ制服を着ていていた事に気が付いた。

 

(…もしかしてミライさんって生徒会役員なのかな…でもだったらミライさんは人間じゃないってこと…?!)

 

 

 

 

 

…後日改めて泉さんにミライさんについて聞いてみると、確かに生徒会役員らしい。

そしてそれと同時に月光さんが契約している悪魔だと聞かされた。

 

(み、ミライさんが…悪魔…!あんなにも元気なかわいい人が…!!)

 

私はその事実に頭を抱えた。

 

(生徒会役員のみんなはすごいと泉さんが言っていた意味が真の意味でわかった気がする…。)

 

私は未だ見ぬ他の生徒会役員達を少しだけ恐ろしく思った。

 

 

 






…話のストックはまぁできてるので頑張って更新はやめたいです。


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百夜茜は兄弟と出会う


…まだまだ序盤なのでいつ天キャラしかでてこれません。

セラフのキャラはもっと先になります。


 

 

「あの傍若無人な紅月光生徒会長がご執心の百夜茜ちゃんってここにいますかー!?」

 

突然部屋の扉がものすごい音を立てて開き、それと同時に男の声が大きく響いた。

 

「なっ!なんですかっ!?」

 

…突然の事に私は驚くばかりで読んでいた本も思わず落としてしまった。

すると金髪で長髪の顔が整った男の人が部屋に入り、おもむろに私が落としてしまった本を拾って渡してくれた。

 

「あ、ありがとうございます…?」

 

「いえいえ、どういたしまして♥」

 

お礼を言うと彼はニコニコとした顔で私をじっと見つめてくる。

 

「いやぁ~まさかあの月光君がロリコ…

 

彼がおもむろにそう何か言いかけた瞬間、

 

「いきなり他人の部屋に突撃する奴があるかクソ兄貴ーッ!!!!!」

 

ドカッと私の顔をガン見していた人がいきなり誰かから飛び蹴りを食らい、私の視界を横切った。

 

「!??!?」

 

突然の罵声と衝撃にわたしは思わず固まってしまった。

 

「いたいですよ~ハスガ~…いきなりお兄ちゃんに飛び蹴りはないでしょ~」

 

「うるせぇっ!!いきなり他人…しかも女の部屋に突っ込む奴があるか!!」

 

なにやら私の部屋でやけにイケメンな二人が言い争っている。どういう状況なのこれ…

 

しかし、途中で二人とも呆然としている私に気がついたのかとたんにこちらに顔を向ける。

 

「えーっと…とりあえずあなたが噂の茜ちゃんですか~?僕はセルジュといいます。以後お見知りおきを」

 

「あー…なんか兄貴が悪かったな。いきなりで、…あ、俺はハスガだ。」

 

セルジュさんとハスガさんと言うらしい。

二人とも兄弟のようだ。

 

「…えっと、大丈夫です、なれてますから。」

 

この部屋に誰かが突然入ってくるのはもはや日常になりかけている。

それでハスガさんがいろいろと何かを悟ったのか

 

「あー…なんかお前も苦労してんだな…」

 

と、同情の視線を向けられた。

 

「そりゃそうですよ~!なにせあの傍若無人な俺様生徒会長君の弟子ですよ~?逆に苦労しない人なんているんですかねぇ~?」

 

セルジュさんがヤレヤレといった様子でそう言う。

 

「あ、いやでも、月光さんはとても親切な方です。赤の他人の私にいろいろ教えて下さって…」

 

私が慌てて否定すると、

 

「いや~健気な子ですねぇ~茜ちゃんは~」

 

~♪~♪~♪~

 

セルジュさんが話している途中でその時どこからか音楽が流れてきた。

 

 

「あ…すみません、僕の携帯です。女の子からの電話が…少々失礼しますね…。…もしもし~?」

 

そのままなんと携帯で話始めた。

 

「あ、アユミちゃん?…え?今度はいとこのお姉さんが不治の病に…?わかった!僕がなんとかお金を…!!」

 

セルジュさんが何やら怪しい話を少しだけ真面目な顔でしていると、

 

「いい加減にしろォォォー!!」

 

ハスガさんがセルジュさんにまたもや怒鳴る。

 

「…ックソ!!兄貴の目を覚まさせてやる…!!えっと…茜!邪魔したな!」

 

ハスガさんがそう言うと、ズルズルとセルジュさんを引きずって私の部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

(兄弟…か、)

 

二人が出ていった後、私は少し考えてしまう。

私の頭に思わず家族の顔が思い浮かぶ。

 

…守れなかった、死んでいった家族の顔達が。

 

(ぜったいに…強くなりたい。強くなって、私は…)

 

胸に覚悟を握りしめ、もっと頑張らなくてはと思い、私は再び本を読み始めた。

 

 

 





…がんばります。


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百夜茜は新たな力を手に入れる



こっから本格的に動いていくかも…


 

修行を始めてしばらく経った頃、月光さんに夜、宮阪高校の屋上へ呼び出された。

 

「…きたか」

 

「はい、月光さん。一体なんでしょうか?」

 

わざわざ夜、人気の無い屋上に呼び出されたのだから、それなりの理由があるのだろう。

 

「お前も…ある程度は強くなった…だが、やはりお前は弱い。圧倒的に。」

 

「…は、い。」

 

私は月光さんに真実を突き付けられた。

確かに私はまだまだ未熟で、もうこの年ですでに限界を感じ始めている。

月光さんのような天才ではないただの凡才な人間が鍛えるだけではさすがに限界がある。

 

「…あまり、この手は使いたくなかったが…」

 

月光さんは苦い顔をしてそう言い出す。

 

「おい、出てこい大兎。」

 

月光さんがそう言うと、屋上の扉から誰かが入ってきた。

 

「やーっと呼ばれたか」

 

突然呼ばれた彼は、しょうがないというような顔をしながら月光さんの隣に立った。

 

「本当にいいのか?まだまだはやいんじゃね?」

 

「仕方ない。思った以上に茜は弱い。」

 

月光さんのその言葉が私の胸に深く突き刺さった。

たしかに、私は弱い。いくら修行したとしてもたかが知れている。

 

ひ弱な人間。しょせん家畜。

その事実は変わらない。

 

「…まぁ、月光がそう言うんなら俺は手伝うけどさ~…。」

 

「…あぁ、頼む。

 

…茜、最後に言っておくが、覚悟が無いなら、やめろ。それだけだ。…後はこの男に聞け。」

 

それだけ言って、月光さんは屋上から出ていった。

突然知らない人と二人にされ、私は戸惑う。

 

「…えっと…?」

 

私が戸惑っているなかで、彼はそれを察したのか私に話しかけて来る。

 

「んじゃ、茜ちゃん?だっけ?月光から聞いたんだけど…」

 

「は、はい。」

 

「俺は鉄大兎。…まぁ、好きによんでくれ。えっと…茜ちゃんの体の中に変なものが混じってるってことは月光に聞いたか?」

 

「え…?」

 

…それは、どこかで聞いた言葉だった。

以前、サイトヒメアさんが言っていた言葉。

「でき損ないの異物が混じっている」という言葉。

 

「詳しくは…聞いてないです…。」

 

私はうつむいてそう大兎さんに返事する。

…月光さんも恐らく気がついていたはずだ。しかし何故今まで月光さんはその事を私に説明しなかったのか…そんな疑惑が私の心の中に残った。

 

「え!月光のやつ説明してないのか!?…仕方ない、んじゃぁ…ちょっとそれについて俺が説明しようか…。」

 

「…え?」

 

自分の体に混じっているモノ、私はそれだけしか聞いていない。

 

「…まぁ簡単に言うと、茜ちゃんは…人体実験によって体の中になにか良くないモノを入れられたってことだ。」

 

「じ、人体実験…!?」

 

…始めて聞いた言葉にわたしは動揺を隠せなかった。

 

(いつの間にか自分の体がいじくられていたってこと…!?)

 

思わず恐怖で私の体が震える。

 

「…まぁ、俺もなんだけど。」

 

「…えッ!!?」

 

とんでもない言葉が大兎さんから出た。

 

「ど、どういう…!?」

 

「あぁ、俺は…軍からまぁちょっとあるものを体に入れられてな…。でも、結果的にそれはよかったとも思ってる。」

 

大兎さんがよかったと思うのは一体どういうことなのか私は疑問が強く浮かんだ。

 

「……え…?」

 

「…だって、その力のおかげで大切な仲間を守れたんだ。」

 

大兎さんの「仲間」という言葉は私の中で深く刻まれた気がした。

 

「な、かま…。」

 

「あぁ。俺の大切な生徒会の仲間だ。…まぁ、何度か暴走して仲間に迷惑かけたりすることもあったけどな。」

 

「……。」

 

私は大兎さんの言葉に思わず黙ってしまう。

 

「…だから、月光は茜ちゃんを信じてるんだよ。」

 

「…へ?」

 

月光さんが私の事を信じている…?

 

「一体…どういう事なんですか…!?」

 

「ん~俺もあんま説明得意じゃ無いからなぁ~…。」

 

大兎さんは頭をかきながら、そう言う。

 

「とりあえず…茜ちゃんの修行が第二段階に入るってこと…かな。」

 

「第二…段階ですか…?」

 

「うん。でもそれにはまず茜ちゃんに聞かなきゃいけない事があるんだ。」

 

「聞かなきゃいけない事…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…人間をやめる覚悟は…ある?」

 

 

大兎さんのその言葉に、私は頭が真っ白になった。

 

(人間をやめる…覚悟…?)

 

「こんなことあんまり言いたく無いけどさ…茜ちゃんがもっと強くなるには…人間をやめる事になるかもしれないんだ。」

 

(強くなるために人間をやめる…?)

 

「…茜ちゃんが確実に強くなる方法は手っ取り早くてこれなんだよ」

 

(え…?)

 

「でも、100%強くなれるかどうかはわからないんだ。…もしかしたら茜ちゃんはこれで本当に死ぬかもしれない。…いや、死ぬ方がマシかと思うほど苦しむかもしれない。…それでも…」

 

大兎さんが何を言っているのかよく…わからなくなってきた。

 

「覚悟はある…?」

 

大兎さんがこちらをうかがうようにそう私に聞いてきた。

 

…そして、その時ふいに月光さんの言葉を思い出した。

 

(覚悟が無いならやめろ…って…つまりは…

 

 

 

 

 

 

このことなの…?)

 

「凄く動揺するかもしれないけどさ…って、茜ちゃん…?聞いてる…?」

 

大兎さんが不安そうな顔をしているのも…

 

自分がどういう立場にいるのかも…

 

月光さんの気持ちも…

 

もう、訳がわからなくて…

 

(私はどうすればいいの…?)

 

頭が今度は真っ白になった。

 






明日もできたら続きをいれます。


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百夜茜は覚悟する


がんばります。


 

 

私はあれから一人で考えていた。

強くなるには人間をやめなければならない。

人間じゃなくなる。

 

…でもそれってどういうこと?

 

大兎さんが言っていた。

仲間を守るために人間をやめたって。

 

そこで私は気がついた。

 

(私には…復讐することしか…理由がないんだ…。守るものなんて…無い…。)

 

家族を失った私は自分には守るものが無いと今更ながらに気づいた。

 

 

夜、私が屋上で悩んでいると、サイトヒメアさんが偶然あらわれた。

 

「…あら?あなた、ここでなにをやっているの?」

 

相変わらず人間場馴れした美少女。

相も変わらず冷たい視線を私に向けてくる。

 

彼女は本当に人間ではない。最古の魔術師と呼ばれる魔女らしい。

…彼女自身は自分のことをどう思っているのだろうか?

 

…だから、私は直接聞いてみた。

 

「サイトヒメアさんは…人間じゃ、ないんですよね?」

 

「…?よく意味がわからないけれど…そうよ…?」

 

サイトヒメアさんは、何を言っているのかよくわからないといった様子でこちらを訝しげに見てくる。

 

…それから私はサイトヒメアさんに話した。自分が強くなるためには人間をやめなければならないことを。

サイトヒメアさんは私の話を聞くと、

 

「…どうでもいわね。人間か人間じゃない事になぜこだわるのかが私にはわからない。つまりは強いか弱いかってことでしょ?」

 

サイトヒメアさんは強気で私にそう言いはなった。

 

「強いか…弱いか…?」

 

「あなたは自分が強くありたいか弱くありたいかを純粋に問われている、そういう事でしょう?」

 

サイトヒメアさんのその言葉を聞いて、私は気がついた。

 

(そっか…)

 

…なにを迷うことがあったのだろう。

 

人外になると言っても吸血鬼のように私利私欲の為だけの生き物になるわけではない。

ただ強くなるか弱いままでいるかという事だけだった。

サイトヒメアさんの言葉にとたんに私の気持ちが晴れた。

 

月光さんや大兎さんは…私に強くなる覚悟があるかということを聞いていただけだったのだ。

そんなものは…。

 

(最初から…あるに決まってる…!私は強くなる…!強くなって、必ず吸血鬼を殺す…!!)

 

「ありがとうございました!サイトヒメアさん!おかげで吹っ切れました。私は…強くなります!」

 

私はヒメアさんにそう言って急いで部屋に戻って明日に向けて今自分にできる修行をすることにした。

 

(…もう、なにもこわくない、迷うことなんて、無い!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に人間って…変わってるのね…

 

サイトヒメアは、一人、屋上でそう呟いた。

 

私はあれから一人で考えていた。

 

強くなるには人間をやめなければならない。

 

人間じゃなくなる。

 

 

 

…でもそれってどういうこと?

 

大兎さんが言っていた。

仲間を守るために人間をやめたって。

 

そこで私は気がついた。

 

(私には…復讐することしか…理由がないんだ。)

 

(守るものなんて…無い…。)

 

そんな事をずっと考えてもう3日が経った。

 

 

私が夜屋上で悩んでいると、ヒメアさんが来た。

 

「…あら?あなた、ここでなにをやっているの?」

 

相変わらず人間場馴れした美少女。

 

彼女は本当に人間ではない。最古の魔術師と呼ばれる魔女らしい。

 

だから、聞いてみた。

 

「ヒメアさんは…人間じゃ…ないんですよね」

 

「…?よく意味がわからないけれど…そうよ」

 

それから私はヒメアさんに話した。自分が強くなるためには人間をやめなければならないことを。

 

「…どうでもいわね。人間か人間じゃない事になぜこだわるのかが私にはわからない。つまりは強いか弱いかってことでしょ?」

 

「強いか…弱いか…?」

 

「あなたは自分が強くありたいか弱くありたいかを純粋に問われているという事でしょう?」

 

それを聞いて私は本質に気がついた。

 

(そっか…)

 

なにを迷うことがあったのだろう。

 

人外になると言っても吸血鬼のように私利私欲の為だけの生き物になるわけではない。

 

ただ強くなるか弱いままでいるかという事だけだった。

 

月光さんや大兎さんは…私に強くなる覚悟があるかということを聞いていただけだったのだ。

そんなものは…。

 

(ハナからあるに決まってる。私は強くなる。強くなって、必ず吸血鬼を殺す…!!)

 

「ありがとうございました!ヒメアさん!おかげで吹っ切れました。私は…強くなります!」

 

私はヒメアさんにそう言って急いで部屋に戻って明日に向けて今自分にできる修行をすることにした。

 

 

 

 

 

 

「本当に人間って…変わってるのね…」

 

サイトヒメアは、ただそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は朝早くに、大兎さんに修行をつけてもらうために電話し、約束をした。

 

(…よし!これからがんばる!どんなことでも…耐えきって見せる!)

 

拳を握り、私は大兎さんとの待ち合わせの目的地である屋上へ向かう。

 

そして扉を開けると…

 

 

「大兎~❤」

 

…何故かサイトヒメアさんが大兎さんに抱きついてイチャイチャしていた。

 

「ヒメア、もうすぐ俺茜ちゃんの修行みなくちゃいけない時間だからさ、そろそろ離れて…」

 

「ええええ~?」

大兎さんのその言葉を聞くと、不満そうにサイトヒメアさんが頬を膨らませている。

 

サイトヒメアさんのその姿は、まさに恋する乙女で女の自分から見てもとても可愛いと思った。

 

 

「ねねねね、じゃあさ、ギューってして!ギューって!」

 

「ええぇ~?」

 

「ねねねね、お願い大兎~!」

 

サイトヒメアさんに見つめられ、大兎さんが諦めたように、少しサイトヒメアさんを愛しそうに見つめ、

 

「…一分だけだぞ?」

 

と、言いながら大兎さんはサイトヒメアさんを抱き締めた。

 

「あは❤大兎大好き❤」

 

…泉さんが言っていたサイトヒメアさんの恋人って…大兎さんだったのか…!!すっごく意外…!!

 

サイトヒメアさんはいつもの気高い美少女から、恋するかわいい美少女になっていた。

…恋とは恐ろしいと私は思った。

 

まさに恋は盲目とはこの事だな…とも知った。

 

(サイトヒメアさん…幸せそうだなぁ…)

 

「…あら?あなた…」

 

「…ん?あ、茜ちゃん!?えと、これはその…!」

 

サイトヒメアさんがこちらに気がついたのか私に視線を向ける。

そして、大兎さんもそれにビクッと反応した。

 

…大兎さんがサイトヒメアさんと抱き合ったまま焦ったような恥ずかしいようなまま私を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…えっと、さっきはなんか…ごめんな?」

 

「あ、いえ…」

 

…なんとなく凄く気まずい雰囲気になった。

 

「えっと…覚悟はできたんだな?」

 

大兎さんは改めて、私にそう聞いてくる。

 

「は、はい!!」

 

私はそれに勢いよく返事をした。

 

「そうか…んじゃ、頑張ろうな!俺もできるだけ精一杯協力するし!」

 

私の返事を聞いて納得したのか、大兎さんが笑顔で手を差しのべてくれた。

 

「はい!!」

 

私は大兎さんの差し出した手を掴んだ。

 

…私が、強くなるために。

 

 





…短いなぁ…。

明日もできたら続きをいれます。


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百夜茜は手段を得る

相変わらずなんというか…。


「んーと…まずは茜ちゃんになにが必要かな…」

 

大兎さんは何やら難しい顔をして悩んでいる。

 

「必要な事…?いきなり修行するんじゃ無いんですか?」

 

「んん…いきなり始めてもいいけど…おそらくそれじゃダメなんだよな…とりあえず茜ちゃんを制御するものが必要かな。」

 

「制御…ですか…?」

 

「そうだな、とりあえず…修行を始める前に茜ちゃんを制御する事が出来るように…いざというときに理性を保てるようにしないといけないから…探そうか!」

 

大兎さんは思い付いたように顔をあげる。

 

「え?探すって?」

 

大兎さんは探すというが、それは魔法とかではダメなのだろうか…?探すということは生き物…?

 

「何がいいかな?契約内容にもよるし…」

 

「け、契約ってなんですか…!?」

(はじめて聞く単語だ…!!)

 

「え~と…契約ってのはなぁ…」

 

大兎さんがなんとか説明しようと考え込んでいるが、

 

「えっともう見てもらった方がはやいか…?…おい、ニャン吉出てこいよ。」

 

大兎さんがそう呼び掛けると、大兎さんの体から猫が出てくる。

 

「これがニャン吉。俺が契約してる魔獣でいろいろまぁ役に立つ奴なんだ。えっと…ニャン吉ってのは本当は俺がつけた名前で…ニャン吉、お前本名なんだっけ…?」

 

「ヴィショウブ・エレランカだに…いい加減おぼえるだに、このダメ主人!」

 

猫が…しゃべった。

よくみるとしっぽが二本あるし…やっぱり普通の生き物じゃないんだ…。

 

「なんかお前の名前長いしかみそうで言いづらいし覚えにくいんだよなぁ…。」

 

大兎さんが苦笑いでそんな事を言う。

 

「えっとまぁ…俺は毎日血液5リットルあげてる代わりにコイツと契約してるんだ。契約してるかわりに特殊な魔法が使えたり俺の力が暴走しそうになったとき制御してくれたりな。」

 

なるほど、だから契約…。

つまり私の力を制御する生き物を探さなければならないのか…。

 

「…というか、血液5リットル!?いくら人外でも死んじゃうじゃ無いですか!?た、大兎さん大丈夫なんですか!?」

 

毎日血液5リットル…ただの人間だったらとっくに死んでいる量だ。

 

「…あれ?言ってなかったっけ…?俺、不死身なんだけど…」

 

今頃知る衝撃の事実。

不死身ってどういうこと!??

 

「ふ、不死身なんですか…!?」

 

「ああ、うん。俺ヒメアの呪いの力で15分に7回殺されない限り死ねない体なんだよ。」

 

ふ、複雑な呪いだ…てかサイトヒメアさん大兎さんになんて呪いかけんの…!!

 

「だから1日一回くらい死んでも平気だぞ?」

 

…あっさり笑顔で大兎さんは言うが私は結構複雑な気持ちだった。

 

「…で、とりあえず茜ちゃんは何かと契約する必要がある。修行はそれからかな。」

 

「そうですか…。でも契約なんてどうすれば…。」

 

「んん~…契約にもいろいろあるしなあ…。とりあえず何と契約するかはだいたい決めといた方がいいかもな…」

 

「わ、私が決めるんですか?」

 

「ああ、だって…契約ってことはこれからの自分のパートナーを決めるってことだぜ?一緒に戦ってく仲間だ。」

 

「仲間…」

 

「自分を助けてくれるやつをこれから決めるんだ。当たり前だろ?それにたぶん俺が決めるより茜ちゃん自身が選んだ方がきっとしっくり来るし。」

 

「でも…契約するって…例えば何とですか?」

 

「んん~…一番よく聞くのは悪魔だろ?月光とかも悪魔と契約してるし…テンペロン?クローリーだっけか?そんな名前の他の組織の魔女達も契約してるって言うし…」

 

「悪魔…ですか…」

 

「悪魔の場合自分の一番大切なものと引き換えに契約するって前にヒメアに聞いたな。」

 

「一番…大切なもの…」

 

私が一番大切なものって…なんだろう…

 

「やっぱり悪魔、魔獣辺りかな…?」

 

「悪魔…魔獣…」

 

「でも契約するのはほとんど代償によるからな…そこら辺しっかり考えないと間違って死んじまうし…とりあえず茜ちゃんは聖地使ってなんとか契約する悪魔か魔獣を探さなきゃいけないんだ。」

 

…と、いわれてもどうすればいいのかわからない。

 

「月光とかに聞いてみるか?あいつ詳しいし。」

 

大兎さんが思い付いたように言う。

 

「月光さんに…?」

 

「ああ。ちょっとはいろいろわかるかもしれないぜ?」

 

 

 

 

 

 

 

…そして、私は月光さんに聞くことにした。

 

「…だから俺に聞きたいという訳か。」

 

「は、はい!」

 

「俺はそんな事に構ってる暇なんて無いのだが…ふむ…いいだろう、少し考えてやる。」

 

「ほ、本当ですか!!ありがとうございます!!」

 

するとそこで、大きな音を立てて扉が開く音がする。

 

「ゲッコーゲッコー!!おかし買うからおこづかいちょうだーい!!」

 

ミライさんが来た。

 

「ミライ…お前には昨日こづかいあげたばっかりだろうが!!」

 

「えぇえぇー!?だってだってー!!」

 

「うるさい!!だまれ!!」

 

…何故か二人がケンカ始めた。

 

「今は取り込み中だ!!」

 

「ええぇえー!?」

 

「ああ!うるさい!!もうわかったから黙れ!」

 

「え!?おこづかいくれるの!?やったー!!」

 

なんかミライさんがすっごい喜んでいるがそれとは対照的な月光さんはひどく消耗している。

 

(月光さん…大変だなぁ…。

 

)




…これを打ち込んでいると、何故か凄く眠くなってしまう


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百夜茜は契約する

これからもがんばります。


「…とりあえずお前の話は後だ。先に茜と話をする。」

 

「ほいほーい!」

 

…月光さんが疲れているのに対してミライさんはとても元気だった。

 

「それで…契約する相手について聞きに来たということだろ?…ふむ…」

 

月光さんが考えていると、

 

「ねーねー!ゲッコー!」

 

ミライさんが月光さんにさっそく話しかけていた。

 

「ミライ、お前との話は後だとさっき言っただろう」

 

「えとえと、でもね?茜ちゃんが契約するって話でしょ?」

 

「ああ、そうだが…」

 

「ならさならさ、ママはどお?」

 

「…アンドゥのスクラルドか…。」

 

ミライさんの提案に月光さんが深く考え込む。

 

「えっと…ミライさんのお母さんってことですか?」

 

「うん!そうだよー!!もうね、ママってばすっごく強いんだよー!!」

 

ミライさんはとても誇らしげにそう私に語る。

 

「え!?でも、凄い悪魔なんですよね!?私がそんな凄い悪魔と契約なんて…!!」

 

しかし月光さんは、

 

「いいんじゃないか?お前の力は弱いがお前の意志だけは目をみはるものがある。契約に挑戦してみたらどうだ?まぁ、契約してもらえるかは別だがな。」

 

「私の…意志…。」

 

覚悟を決める事はできた。だから…

 

「やってみます!!」

 

私のその言葉を聞いて、月光さんがニヤリと笑い、

 

「いいだろう。道程をあけてやる。」

 

そう言って月光さんは壁に手をやり、

 

「「開け」」

 

壁が歪み、異世界へと繋がった。

 

「この先は魔界だ。スクラルドの近くに繋いでおいた。行ってこい、茜!」

 

「えっ!?」

 

(い、いきなり!?今からですか!?展開早すぎません!?)

 

でも…私はもう覚悟を決めた。

 

(準備は…今できた!!だから!!)

 

「行ってきます!!」

 

私は異世界へ飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが…魔界…」

 

初めて来た異世界の景色に目を奪われ辺りを眺めていると、背後でとてつもない大きさの雷が鳴る。

 

「っ!?!!」

 

ビックリして後ろを向くと、雷をまとった全裸のとんでもない美女がいた。

 

「あなた…だぁれ?ただの人間とかちょっと珍しいなぁ~!」

 

私はすぐに理解した。

彼女こそがミライの母、スクラルドだということを。

 

「あっ!あの!スクラルドさんですよね!!」

 

若干緊張しながら私は彼女に問う。

 

「ん~?そだよ~?人間が私に何か用?」

 

「えっと…私、月光さんから紹介された者でしてですね…」

 

「んん?月光…紅月光?」

 

「は、はい!そうです!」

 

「そっかぁ~…それで?何の用があって来たの?…えっとぉ…」

 

「あ、茜です!百夜茜!」

 

「茜ちゃんは私に何の用があって来たのかな~?」

 

「契約しに来ました!!」

 

「私と?契約?」

 

「は、はい!」

 

「へぇ~…この私と…契約ねぇ…」

 

「はい!」

 

「私も随分とナメられたもんだなぁ~雷の眷属の王にこんなガキと契約しろと?ふざけてんのかな~?見たところ優れた魔女でもなさそうだし…」

 

彼女の態度ががらりと変わる。

威圧的なまさに王と呼べるべき風格を露にする。

 

(や、やっぱりただ者じゃないよ~!!なんか雷の王とか言ってるし絶対無理でしょこれ!…でも…もう……後には引けないなぁ…)

 

私は覚悟を決めると、大きく息を吸い込んだ。

 

「私は!弱いです!」

 

大きな声で私はそう宣言した。

 

「私は!大切な家族を守れず、自分のことさえ守れなかった弱者です!弱いから、私は強いあなたに力を借りに来ました!私が…弱い私が強くなるために!あなたと契約しに来ました!だから…私と契約してください!よろしくお願いします!!」

 

茜は言い切るとバッと頭を下げた。

 

「あはははははは!!」

 

…スクラルドは大爆笑だった。

「あはは!こんな人間もいるんだぁ!!」

 

「え…?」

 

「だーって私に契約頼んでくる奴ってみんな上から目線とか態度がでかい奴とか自信家ばっかなんだもん!!自分は弱者ですなんて言ってくる子とかはじめて!」

 

「そ、そうなんですか…」

 

「あはは!いいよ!面白そうだから契約してあげる!」

 

「えぇっ!?い、いいんですか!?」

 

「うん。それなりの代価はもらうけどね。それに…こーんなちっさい子なのに逃げずにこの私に契約を頼み込むなんて度胸があるねぇ~!

気に入っちゃった!」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

なんとか契約を許され、私はひとまず安堵することが、できたのだった。

 




…これを打ち込んでいると、何故か凄く眠くなってしまいます。

ぶっちゃけ今も凄く眠くて眠くて仕方がないです。(-_-;)


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百夜茜は対価をはらう


…ちょい、百合っぽい。それだけをいっておこうと思います。


 

「…んじゃ、さっそく契約しよっか!茜ちゃんの一番大切なものってなーにー?」

 

茜はそう聞かれたが、すぐに答える事ができなかった。

 

「あの、えっと…一番大切なものって…何かわかんないんですけど…」

 

「んーと…じゃあ、ちょっと胸貸してね~」

 

「ななな何をッ!??」

 

そう言うと、スクラルドは茜の胸を触り、茜の契約情報を読み取る。

もちろん、そんなことを知らない茜は顔を赤くして戸惑うだけだが…

 

「ふむふむ…んー…茜ちゃん…あなたの大切なものって全部まちまちだねぇ…」

 

「…え?」

 

「茜ちゃんにとって一番大切なものは家族ってなってるけど…もう死んじゃってるし…奪いようがない。思い出とかとっちゃうと…茜ちゃんが私と契約する意味が無くなっちゃうし…他の大切なものってなると…どれもまちまちだしねぇ…どうしよっかぁ…」

 

「は、はぁ…」

 

「これじゃあ契約が成り立たないから…私との契約は無理かなぁ…」

 

「え、えええぇ~!?なんとかならないんですか!?」

 

「んー…あ?」

 

スクラルドが何かを見つけたように声をあげる。

 

「一個だけ…でもこれは…」

 

「な、なんですか!?」

 

「いーもの見ーつけた♥…これは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

茜ちゃんの…百夜ミカエラへの恋心」

 

「…ミカへの…恋心…?」

 

茜は一瞬スクラルドのその言葉にドキリとしたが、すぐに冷静になった。

 

「ふふ…これなら代価として認めてあげる。…どうする?茜ちゃん。」

 

スクラルドは妖しく茜を見つめながら笑う。

 

「…契約しましょう。今私が必要なものは…吸血鬼を滅ぼすための力ですから。」

 

「ふふ…りょーかい!じゃあ、契約するねぇー!」

 

「でも…どうやって契約するんですか…?」

 

茜がそう疑問に思っていると…

 

「月光君になーんにもも教えられて無いんだね、茜ちゃんってば…こーするの!」

 

「!??!!」

 

スクラルドは突然茜に深く噛みつくような口づけをした。

 

「はい!これで契約完了!!」

 

「えっ!?今、き、きすを…!?」

 

「これが契約の仕方だよ、茜ちゃん❤」

 

茜が顔を真っ赤にし、うろたえているのに対して、スクラルドはそんな茜をからかうように笑う。

 

(知らなかった…契約の仕方がキスなんて…!というかファーストキスが悪魔の上に女性って…!!)

 

「改めて、雷の末裔…アンドゥのスクラルド。この神鳴りの世界を統べる者兼、ミライの母親でーす!これからよろしくね!茜ちゃん❤」

 

「よ、よろしくお願いします…」

 

 

こうして、なんとか茜は無事に契約を済ませる事ができたのだった。




今回短いです。ちょっと話を区切りたかったので…



…がんばります。


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百夜茜は本気の意味を知る



ちょっとひさしぶりです。



 

 

「ぶ、無事に契約することができました!!」

 

私は生徒会室に戻り、さっそく月光さんに報告した。

 

「そうか。よくやった。」

 

月光さんはそれだけを言ってくれた。

 

 

 

「へぇ~!!すげーじゃん!!やったな茜ちゃん!!」

 

大兎さんは、そう誉めて、私の頭を撫でてくれた。

 

「これで…修行を始められるな!」

 

「はい!よろしくお願いします!!」

 

こうして、改めて本格的に大兎さんとの修行が始まった。

 

「とりあえず、ここじゃ危険だからどっか広いところいこうか。」

 

道程を開けられ、大兎さんに辺り一面野原の何もない異世界につれてかれた。

 

「よし!やってみるか!」

 

大兎さんはそう言って、拳を構えた。

 

「い、いきなりバトルですか!?」

 

「いや~まずは茜ちゃんの力を開放させないと意味が無いから…じゃ、いくぞッ!!」

 

大兎さんがものすごいスピードで、私に拳を繰り出す。

 

「ほぁあッ!?」

 

あわててなんとか避けるが、それでも大兎さんの攻撃は止まない。

 

次々に足や拳が自分にとんでくる。

とんでもないスピードて繰り出される攻撃に私はただ逃げる事だけしか考えられない。

 

「…よっと!茜ちゃん…もうちょっと挑戦しような?」

 

「いやいやいや、無理ですって!!大兎さんどんだけ攻撃はやいと思ってるんですか!!」

 

「…え~?はやかったか?結構これでもゆっくり茜ちゃんに合わせてるんだけど…」

 

(ええええええええええ!?)

 

大兎さんはどうしようかという顔をして頭を掻いている。

 

というか私自身、超手加減されていたということに若干ショックを受けている。

 

「んん~…でも、ギリギリ避けられてるしもう少しスピードあげてやってみようか?」

 

「はッ!?」

 

「茜ちゃんは…強くなりたいんだろ…?」

 

 

 

その時、大兎さんから凄い気迫が発せられた。

 

(これが…大兎さんの本気の覚悟…!?)

 

「弱くちゃ何も守る事ができないし自分が惨めな思いをするだけだ。俺はそんな弱かった自分を…ヒメアを守れなかった自分を呪った。」

 

「た、いと…さん…。」

 

大兎さんはほんの少しだけ苦い顔をした。

 

「…だから強くなるために必死だった。男のくせに俺はヒメアに守られてばっかで情けなかった。ヒメアを守るために俺は強くなる為なら何でもした。…俺はそんな惨めな思いを2度と茜ちゃんにしてほしくないんだ。」

 

大兎さんはまた構え直した。

 

「じゃ、いくよ、茜ちゃん。」

 

大兎さんが私を強く見つめ、大地を蹴った。

大兎さんの攻撃が私に直撃する。

 

「茜ちゃん、立てる?」

 

大兎さんは、変わらず強い目で私を見つめたままだ。

 

「は、い…立て、ます。」

 

体を起こし、大兎さんと同じように私も大兎さんに強い目を向けた。

大兎さんはそんな私の反応に、何かを覚悟したように拳を握った。

 

そして、大兎さんの片目が黒く染まり、その黒は急激に首から左肩へ侵食して行く。頭から耳のようなものが突き出し、確実に人間から異形の化け物と化してゆく。

 

 

 

「茜ちゃん、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ちょっと一回、限りなく死に近づいてもらう。」

 

大兎さんの黒く染まった腕が、私の胸を突き刺した。

 

「…え?」

 

 

…私は目の前が真っ暗になった。

 

 

 






…がんばります。できるだけはやく続きを入れます。


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百夜茜は暴走する


久しぶりすぎた…。


 

「…え?」

 

気がつくと、辺りは一面見渡す限り白い世界に包まれていた。

 

 

 

「どこだろ…ここ…」

 

気がつくと白く、モヤがかかった世界だった。

なぜ自分はこんなところにいるのだろう…??

 

「あれ…?私は確か…大兎さんと…修行を…」

 

すると突然、白い世界に光がさした。

上を見上げると、何かが空を飛んでいる。

 

「あれは…天使…?」

 

そして、白い世界にラッパの音が大きく響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…っは!!」

 

…私は目を覚ました。

 

辺りを見渡すとそれは白い世界ではなく、異世界の野原だった。

しかし私の回りは地面がえぐれ、すでに野原ではなかった。

 

「いったい…な…にが…?」

 

「おっ!茜ちゃん!気がついたか!!」

 

声のする方を見てみると、大兎さんが疲れた様子で座っていた。

 

よくみると私の服も大兎さんの服も汚れてボロボロになっている。

 

「茜ちゃん、さっきあったこと、覚えてる?」

 

「さっき…あったこと…?」

 

そんな私の様子を見て、大兎さんは、覚えてないかぁ~…と、頭を抱えている。

 

「えっ…とな、茜ちゃん今の今まで力を暴走させちゃっててさ、俺と戦ってたんだぜ?」

 

「え、!?」

 

「もーすっげー大変だったんだぞ?あそこまで力開放させたの俺久しぶり…」

 

大兎さんは、がっくりとうなだれた様子で疲弊していた。

 

「…全っ然覚えて無いです。…そんなにすごかったんですか…?」

 

「まーね…あー疲れた…。とりあえず今日は修行これくらいにしとくか~!」

 

「…あ、はい。」

 

何がなにやらよくわからないがとりあえず修行の時間は終わりだそうだ。

 

「えっと…とりあえず軍の医務室で一応何か無いか調べてもらってね、じゃあ解散!!」

 

「あっ!ありがとうございました!!」

 

勢いよく大兎さんに私は頭を下げる。

 

 

 

そして、医務室で体を軽く診察してもらい、自分の部屋でゆっくりくつろぐ。

 

「全く覚えて無い…一体何があったんだろ…?」

 

首をかしげながらも、明日の修行に向けて、さっさと寝ることにした。

 

 

 

 

 

…その頃、軍ではかなり茜のことについて話題になっていた。

かなりの力を体に組み込まれていた事に皆、驚きが隠せなかった。

 

月光もその報告書を見て呟く。

 

「フン、やはり俺の勘は当たるな…。めんどくさい事になりそうだ…。」

 

月光は舌打ちをし、報告書を机に雑に放り投げると再び仕事に戻った。

 

 

 

…あれから私は大兎さんと再び修行をしていた。

 

「じゃあ前回茜ちゃんと戦っていろいろ俺なりに考えた事があるから、とりあえず同じように戦おうか。」

 

「は、はい!」

 

 

それからしばらくして大兎さんとの修行で、ある程度は攻撃が見えるようになった。

 

例えば大兎さんの戦いかたのベースが空手だったりとかだったり、大兎さんは決してそこまで技術にこだわって無いことがわかった。

 

(そっか…大兎さんは攻撃の技術とかじゃ無くて…純粋にいろいろ体の機能やら性能が規格外なだけなんだ…。)

 

しかし、それでもやはりかなわないことはわかっていた。

そもそも彼はほぼ不死身なのであって、自分の体が傷ついても気にせず攻撃できるのが強みの一つだった。

 

(絶対に…勝ちたい!!強くなりたい!!今度こそ、吸血鬼を倒すだけの力が欲しい!!)

 

茜がそう強く思えば思うほど、いつの間にか時間が飛んでボロボロになって倒れていることが多い。

 

茜はただただ疑問を浮かべるばかりだった。

 

(私…一体どうしたんだろ…?)

 

それから、また翌日同じように修行を始める。

 

いつもどうり今回も記憶が飛ぶんだろうと思っていた茜だったが、今回は違った。

 

(また…この景色…)

 

何もない、白い世界。

 

向こうには、光に照らされたラッパが一つ転がっている。

 

自分はいつもそれが欲しくなって、手を伸ばし、そこで記憶が途絶えていた。

 

今回もいつもどうりそのラッパが欲しくなり、手を伸ばすと、ガシリと誰かに腕を捕まれた。

 

「駄目だよ、茜ちゃん。」

 

(え…?)

 

「毎回それに何も考えず手を出してばっかりじゃどうしようもできないよ。」

 

「なんで…スクラルドさんがここに…?」

 

「茜ちゃんは何の為に私と契約したのかな?」

 

「あっ…私の力を…制御するため…?」

 

「そう!せーかい!それとね、茜ちゃん。茜ちゃんはあれを使うたびに人間じゃ無くなっているんだよ。わかってる?」

 

「え…?」

 

「茜ちゃん、茜ちゃんはあの力を制御しなきゃいけないんだ。だから私はここにいる。手を貸す為にね。」

 

「でも…どうやってスクラルドさんはここに…?というか、ここはどこなんですか…?」

 

「茜ちゃん、ここは茜ちゃんの精神の中だ。私は茜ちゃんと契約しているからここに居られるだけ。ま、この私は本体じゃ無くて精神を雷で電波みたいにとばしてるだけだけどね。」

 

「精神の…中…。」

 

「さあ、茜ちゃん。あの気持ち悪い天使を屈服させるよ。」

 

スクラルドさんは私に手を差し出し、そう言った。

 

「…はい!」

 

私はスクラルドさんの手を握った。

 

 

 





…できるだけ早く次出します。


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百夜茜は制御する


…なんか、すいません。はい。
こんなクソ素人の小説?を見てくれている人がいることに大分感動しています。


 

不意に意識が現実に戻る。

天使の誘惑に抗い、いまだに暴走している体。

 

「…っ!!」

 

体がいうことをきかない。

今ははっきりと自分が暴走しているという感覚がある。

意識だけが恐ろしく静かで自分じゃない誰かが体を動かしている感覚。

 

目の前では大兎さんが私を押さえている。

 

大兎さんもすでに自分の力を解放しており、私が放った攻撃を次々に黒く塗りつぶし無効化している。

 

私はただ、叫んで、暴れて、もう抑えがきかなかった。

気持ちがぐちゃぐちゃでわけがわからないし、苦しい。

 

助けて!助けて!助けて!

誰か私を止めて!!

苦しい!!誰か私を助けて!!

 

醜く暴れる自分をもう見ていられなかった。

 

しかしそんなふうに暴れている私を押さえて、大兎さんが言った。

 

 

 

 

 

「だ い じょ う ぶ だ よ 。」

 

 

 

 

 

 

こんなに状況なのに、大兎さんは私を押さえて苦しそうにしながらも笑ってそう言った。

 

苦しくて、つらいのに、何故かその言葉で安心して私の瞳から涙が溢れる。

 

「茜ちゃん!!戻ってこい!!茜ちゃんなら、戻ってこれる!!」

 

必死に大兎さんが私に向けて叫んでいる。

私はなんとか押さえようとして叫ぶ。

 

 

叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ。

 

 

「あ゛あ゛あ゛あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ゛ああ゛あああ゛あ゛!!!!!!!」

 

叫んで、叫んで、もがいて、苦しんで、私は…

 

 

 

 

 

「あ゛ああ…あ、た、いと…さん…!」

 

「!!茜ちゃん!!」

 

少しずつ、私の体が自由になってゆく。

 

少しずつ、少しずつ精神が落ち着いて、

 

「た、いとさん!」

 

私の何かが収まってゆく。

 

「あ…」

 

力を出しきって体から不意に力が抜けてふらつく。

 

「茜ちゃん!」

 

大兎さんがとっさに力尽きた私を抱きとめる。

 

「大兎さん…私…」

 

「ああ、よくやったな。」

 

大兎さんの安心した顔を見て、私も安心して意識がゆっくり遠退いてゆく。

 

「茜ちゃん…今はゆっくり休んでいい。俺が運んでやるから。」

 

「は、い……。」

 

私は、そのまま意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は目を覚ました。

 

「あれ…?ここは…」

 

私は軍の医務室のベッドで横になっていた。

 

「軍の…医務室…」

 

まだ頭がぼーっとしている。体は節々が痛くてしびれている感覚。

その時、部屋の扉が開いた。

 

「気がついたか。」

 

そこには月光さんがいた。

 

「…あ、私、大兎さんと修行してて…!!」

 

「ああ。そしてお前は気を失った。」

 

「…は、はい。」

 

なんだか少し申し訳なくてへこむ。

 

「…しかし、お前は力の制御に成功したのだろう?あの雑魚から聞いた。」

 

少しため息混じりで月光さんは言った。恐らく月光さんの言う雑魚とは大兎さんのことだろうか…?

 

「…制御…できたのでしょうか…?」

 

「ん?できなかったのか?」

 

「わ、わかりません。」

 

「そうか、お前は自分の事もわからないアホなんだな。」

 

「あ、アホ…。」

 

いつもどうり、月光さんがきつい言葉を私に言う。だけど何故かそんな月光さんのいつもどうりの落ち着いた態度に私は安心した。

 

「えっと…月光さん。」

 

「なんだ。」

 

「ありがとうございます。」

 

「なにがだ?」

 

「えと、いろいろ…。」

 

「ふむ。」

 

「あの、私…もっと強くなりたいと思います。強くなって、吸血鬼を殺します。」

 

「…そうか。」

 

「月光さん、」

 

「ん?」

 

「これからも…よろしくお願いします。」

 

「…ああ。」

 

月光さんはそれだけ言うとその場から立ち去った。

 

私は、強くなりたい。月光さんみたいに。

だから、これからもっと頑張らなくてはいけない。

 

どんなに辛くても、苦しくても、頑張らなくてはいけない。

 

…ただ一つ、私の野望の為に。





…頑張ります。


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百夜茜は成長する


少し空いてる時間が長かった分頑張ります。


 

 

あれから私は大兎さんと何度も何度も同じ修行を繰り返した。

 

暴走しそうになって、またそれを抑えて、それの繰り返し。

でも徐々に正気を取り戻す事ができるようになってゆく。

 

「うん、茜ちゃんも大分なれてきたね。」

 

「は、はい!」

 

後で聞いたが、私が初めて正気を取り戻せたあの時、スクラルドさんが私の意識に干渉できたのは大兎さんのおかげだった。

 

「実はな、俺が茜ちゃんに攻撃した時、毎回俺の力を少しずつ入れてたんだ。それで俺の力で茜ちゃんがある程度保てるように力を消して抑えてたんだよ。」

 

前に大兎さんが思い付いた事とはこれだった。

 

私もある程度自分の中の力を解放して暴走しずに使えるようになった。

あれからいろいろな人にいろんな事を教えてもらい、力をつけた。

 

自分が強くなっていく事が少しずつではあるが実感できるようになった。

 

さまざまな鍛練をし、戦い方を模索したりといろいろ大変だった。

 

沢山の人たちにお世話になったし、その分私も成長した。

 

他にも…この世界が崩壊するという危機にもなったが、やはり月光さん達は凄かった。

 

私はただこの世界が崩壊すると聞いて、何も出来なかった。

 

それでも、月光さんやミライさん、泉さん、セルジュさんハスガさん、ヒメアさん、そして大兎さんは最後まで抗い、世界は未来へと好転した。

 

希望が満ち溢れ、世界を救ったそんな生徒会役員達がとてもとても私の憧れになった。

 

いつか、こんなふうに凄い人たちになりたい。

 

いろいろなことがあって、今、私はこの地に、この場所に立っている。

私が月光さんに拾われて、あれから4年後。

 

 

正式に、私は宮阪高校に入学した。そして…

 

 

「…おい、あれが今年の新しい生徒会長だってよ!」

 

「は?まだ一年だろ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、第十四代目宮阪高校生徒会長になった。

 

私は月光さんに憧れて月光さんと同じように一年生で宮阪高校の生徒会長になり、今活動している。

 

 

…かつての月光さんに少しは近づいた気がします。

 

 

でも、私はずっと考えていた。

月光さん達にいろいろな事を教えてもらい、その結果、私はある程度強くなった。

 

いつかは元の世界へ帰って、吸血鬼に…特にあのフェリドとか言う吸血鬼の貴族に復讐しなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

「せ、生徒会長!!道程が開きました!!生徒の被害者が5人出ています!」

 

生徒会役室の扉が勢いよくがらりと開き、副会長が駆け込んできた。

 

「わかりました。今行きます!」

 

高校に侵入してくる化け物達を倒し、学校の平和を守る生活。

 

この宮阪高校がとても特殊だということをこの4年間で知った。

 

表向きは普通の高校。真実を知っているのはごく一部で、学校の地下にいる軍と生徒会役員だけだ。

 

そんな理由で、普通の生徒では対応しきれないからこそ、ある程度鍛えた私が生徒会長に抜擢されたのだと思う。

 

でも…。

 

 

 

 

 

 

化け物を倒し、学校の裏庭で一息ついていると、

 

「おや、これはこれは、百夜茜さんじゃないですか。」

 

「へ?」

 

月光さんにとても似ている男性が私に声をかけてきた。

 

「あ、あなたは…!!」

 

「やあ、久しぶりだね。」

 

彼はにこやかに私に笑いかける。

紅日向、紅月光の実の弟であり、軍のトップに君臨している人だ。

 

「な、なぜここにあなたがいるんですか!?」

 

「なぜって…散歩ですよ、ただの。」

 

あっさりとした顔で当然のように彼は答える。

 

「さ、散歩!?仕事とか大丈夫なんですか!?」

 

「ええ、まあ。兄さんが少しうるさいぐらいですから。それに…」

 

「それに?」

 

「君が何か重いことを悩んでいたようなので。」

 

「え…?」

 

 

彼は私の全てを見透かしたように静かに笑いかけた。

 

 






よしよし、頑張ろう…。


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百夜茜は前に進む



…ほんと今日は頑張ります。


 

 

「実は…」

 

私は静かに日向さんに悩みを打ち明けた。

 

「ふむ、なるほど…つまりはこのまま生徒会長を続けるか元の世界へ帰って復讐をはかるかを悩んでいる訳ですね。」

 

「は、はい。」

 

「じゃあ、まずあなたは実際どうしたいんですか?」

 

「それは…」

 

わからない。

 

「わからない…ですか…自分が本当に行くべき道がどちらなのか…」

 

「そう、ですね。」

 

日向さんが私を見下ろして笑う。

 

「あなたは他の生徒会役員を心配しているんでしょう?…今ここで生徒会長のあなたが抜ければ確実に対応はできなくなるでしょうね。」

 

「それは…!」

 

「今年の生徒会役員は例年に比べて少し力が劣っている。それに、あなたは生徒会長という座に一度はついてしまった責任がある。それはわかってますよね?」

 

「は、はい…。」

 

日向さんに言われて愕然とした。

責任もあるのにそれを放り出すなんて無責任すぎる。

 

「…しかし、それでも譲れない物はあります。…かつての僕がそうだったように。」

 

「日向さん…?」

 

「あなたは随分と立派になった。復讐の為に、あなたはなりふりかまわず強さを求め、成長し結果、ある程度力を持った人間になった。」

 

「…!!!」

 

「もう一度問いましょう、あなたはどうしたいんですか?あなたが強くなった理由は…なんですか?」

 

「私の…強くなった理由は…!!」

 

 

 

 

…どうして、忘れていられたのだろう。

 

あんなにも苦しい思いをしたのに。

 

あんなにも憎しみが胸の中を渦巻いていたのに。

 

あんな後悔が、悲しみが、無力さが一瞬でも忘れられたのが信じられない。

 

自分が強くなった本当の理由。

 

それは…

 

「吸血鬼に…復讐するためです!!」

 

私の胸に強く強くその想いがよみがえる。

 

「そうですか…それならば…百夜茜さん、あなたは自分の道を進むべきです。」

 

「日向さん…!!」

 

「後の事は任せなさい。君が選んだ道なら、僕は文句など言いません。」

 

「は、はい…!!」

 

心にあたたかいものが込み上げる。

 

私は認められたんだ。

 

後は、自分の道を進むだけだ。

 

私は前に…進むと決めた。

 

「月光さん。私は元の世界へ帰って、本来の目的を果たしに行きます!」

 

月光さんに私は強く宣言する。

 

「ふむ、やっとか」

 

「へ…?」

 

月光さんは私がいつか元の世界に帰るのをわかっていたらしい。

 

「俺は、お前が初めて強くなると俺に決意した時、あの憎しみに染まった目を見たとき、自分に重ねたんだ。」

 

「へ…?」

 

「俺がまだガキだった頃、目の前で俺は弟の日向に両親を殺された。」

 

「へっ!?」

 

あの…日向さんが…!?

 

「俺はそれから死に怯えながら復讐だけを考えてお前と同じように強さを求めて生きた。」

 

「月光さん…」

 

「あの頃の俺に…お前はよくにていた。だからこそ、俺は自分とお前を重ねて…助けようと思ったんだ。…まぁ、日向も…予言に怯え俺を助けようとして…絶望してああなってしまったと後から知ったがな。」

 

月光さんはフッと笑い、昔の事のように思い出す。

 

「お前の道は、お前が決めるべきだ、茜。」

 

「…っ!!はい!!!」

 

月光さんが、私の事をそんなふうに思っていたなんて知らなかった。思わず涙が溢れた。

 

 

 

 

それから翌日、私は元の世界へ帰る準備を済ませた。

 

他の…今までいろいろサポートしてくれていた生徒会役員達に私は心の中で謝る。

 

(ごめんね、みんな。私は行かなきゃ)

 

私は、生徒会室に道程を開く。

 

 

 

「…いくのか。」

 

「…っ!げっ月光さん!!」

 

いつの間にか月光さんが、見送りに来ていた。

 

「月光さん…今まで、本当にありがとうございましたっ!!」

 

「ああ、行ってこい。お前の…野望を果たせ。」

 

「はいっ!!いってきます!!」

 

私は、ついに、元の世界へと飛び込んだ。

 

あの、世界が崩壊し、吸血鬼がはびこる絶望に溢れる世界へ。

 

(…まってて、みんな…!!)

 






やっとここまで来た…


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百夜茜は東京に向かう



頑張ります!頑張ります!!


 

 

ついに、私は元の世界へと戻ってきた。

 

辺りはボロボロで既に街として機能していない世界。

 

「やっと…帰って来たんだ…」

 

私の…希望と絶望の世界。

 

「絶対に…復讐を果たしてみせるよ…待っててね…みんな…。」

 

私は覚悟を決めて、拳を握りしめる。

 

 

 

 

私の背後から、何かが向かってくる音がする。

 

「私はこの世界で…すべてをやり直すっ!!」

 

勢いをつけて振り向き様に拳を後ろの物体へぶつける。

 

「もう私はっ!!弱くない!!」

 

吹っ飛ばされる巨大な化け物、ヨハネの四騎手。

私はもう、弱くない!!

 

 

「サングィネム…」

 

かつて私が孤児院の家族と共に囚われていた場所。

…そこはたしか京都だった筈だ。

 

「そこへ行けば…京都へ行けば、あいつがいる?」

 

あの…私からすべてを奪った吸血鬼…フェリド・バートリー…

 

「絶対に…殺す…!!」

 

私は強く拳を握りしめる。

 

でも、そのためにまずは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここどこ…?」

 

現在地の確認が先だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず…現在地の確認と…この世界の情報を集めなきゃ…。」

 

まずは行動あるのみ。

 

「えっと…まずここは…岐阜県か…情報はどうやって集めよう…?まぁ、そこら辺にある広告とか…あ、いっそのこと吸血鬼に直接聞いちゃう?…いやそれは無理かな…あいつらとことん人間を家畜としか見てないし…人間はいるのかな?」

 

吸血鬼は人間のことを家畜としか見ていない。そう考えるとやけに腹が立ってきた。

 

(…あいつらにとったら豚がブヒブヒ言っているようにしかきこえないんじゃ…あ!意志疎通のできる豚か…!)

 

そんなどうでもいい事をかんがえながらできるだけ街の方へ歩きながらこれからどうすればいいかを考える。

 

「ってか歩いて探すのはちょっと無理があるよね?でも車なんて運転できないしなぁ…月光さんは高校生でバイクも車も運転できてたらしいけど…」

 

ふと目についたのはヨハネの四騎手。

 

「あ、」

 

あれに乗って行けば…早いよね?あれ車より速そうだし…。

 

「よし!」

 

そうと決まればあいつを捕まえないと!!

まずは行動あるのみ!!

 

私はヨハネの四騎手に使って走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

それから私は、ヨハネの四騎手を捕まえて軍から教えてもらった服従の魔法を使い、ヨハネの四騎手に乗った。

 

「おー!速い!!やっぱりこの手段で正解だったね!!」

 

今、私は高速をヨハネの四騎手に乗って移動している。

…多少ドスドスと音はうるさいがまぁまぁ早い。

 

「目指せ!!京都!!」

 

私は京都を目指して行動を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ところで、京都ってこっちであってるよね?

 

 





もっと頑張ります。


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百夜茜は再び出会う


休みなんで…はい。更新します。


 

 

「なんだよこれ、人間は気味の悪いバケモノをつくるなぁ」

 

暴走した優一郎を見て、フェリドはグレンの首を掴みながら言う。

 

 

「でもちょっとやばいか、フェリド君どうする?」

 

クローリーに聞かれ、フェリドは悩んでいると、

 

「ん~」

 

フェリドがグレンにあのバケモノについて問おうとした瞬間、何かが頭上を飛び越して行く。

 

「…!?」

 

それはヨハネの四騎手だった。

 

(こんなところにどうして…?)

 

フェリドが疑問に思っていると、よく見るとヨハネの四騎手の上に、誰かが乗っている事がわかった。

 

鮮やかなセーラー服を着た少女。

 

そのまま暴走した優一郎に刺されそうになっていたシノアの前にドカンと着地し、優一郎に向き合う。

 

 

 

シノアside

 

暴走した優さんがこちらに向かってくる。

自分はどうすればいいのかわからない。

 

優さんは敵意をこちらに向け、剣を握っている。

このままでは……!!

 

しかしその時、

 

何故かヨハネの四騎手がこちらに突っ込んできた。

 

「えっ!?」

 

よく見るとヨハネの四騎手の上に、誰かが乗っている。

ヨハネの四騎手は人間を襲う存在の筈だ。しかし意図してこちらに突っ込んできたとなると…

 

(もしかして…ヨハネの四騎手を操っている…!?)

 

それは自分と同じ位の年頃の女の子だった。

鮮やかな色のセーラー服を着ている。

 

とても場違いな女の子。

 

 

 

ミカエラside

 

その子は今でも覚えている。

まだ自分が弱く幼い人間の子供だった頃の、

百夜孤児院の、同い年の女の子。

 

カレーを作るのが上手くて、

僕の大事な家族の一人。

 

 

フェリドに殺された…女の子。

 

「あ…茜…ちゃん…?」

 

死んだはずの、女の子。

 

 

茜side

 

強い天使の力を感じて向かえば、そこには吸血鬼と人間が戦っていた。しかしそれよりも…

 

天使の力を暴走させている彼を見つめる。

それは、私の家族の一人。

 

「ゆ…優ちゃん…!?」

 

大事な家族が生きていた。

凄く嬉しい。涙が出てくる。

私の…復讐以外の生きる目的が見つかった。

 

 

「生きていたんだ…嬉しいな…」

 

 

けれど今は…

 

「優ちゃん…今、助けるからね。」

 

涙をぬぐって月光さんからもらった剣を取り出した。

 

「私が受け止めるから…安心してね。」

 

大兎さんに私が助けられたように、今度は私が助ける番だ。

 

 

ミカエラside

 

茜ちゃんが生きていた…?

 

…茜ちゃんは死んだはずだ。弱い自分のせいで。

 

しかし、昔と変わらずみつ編みを肩に垂らしている姿はまさに茜ちゃんそのもの。

背も伸びて成長した姿だが、やはり昔と変わらない顔立ち。

いつも笑顔で家族達と笑いあっていた彼女と全く同じだ。

 

彼女は暴走した優ちゃんと向き合い、剣を抜く。

 

茜ちゃんはそのまま優ちゃんに飛びかかった。

 

 

フェリドside

 

「んんん~?こんどは何かなぁ?また人間が一人入ってきたぞ??」

 

静かに彼女を観察する。

帝鬼軍の制服でもなく、明らかに一般人の学校の制服。

 

「一体何者かなぁ?」

 

ヨハネの四騎手に乗って来た事といい、あのバケモノと化した人間に正面から向き合えるなんて普通じゃない。

 

「でも…楽しくなりそうだ♪」

 

フェリドは茜を見てニヤリと笑った。

 





まだ入れます。


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百夜茜は元凶に笑う

続きです。


 

どうにかして優ちゃんに正気を取り戻させないといけない。

 

「とりあえず…ちょっと痛いかもしれないけど…ごめんねっ!優ちゃん!!」

 

ほんの少し力を解放して思い切り優ちゃんに斬りかかる。

 

(暴走しててやっぱりなかなか強いな…でも…)

 

「私よりはまだ弱いっ!!」

 

 

シノアside

 

刀を打ち合うだけで周りにクレーターができるほどの衝撃。

 

凄まじい戦いが目の前で繰り広げられていた。

しかもあの暴走した優さんと渡り合っている。

 

…よく見ると彼女の片目が優さんと同じように黒く染まっている。

 

(もしかして…!?)

 

 

ミカエラside

 

茜ちゃんが優ちゃんと戦っている。

茜ちゃんは優ちゃんと戦うのが心苦しいようだ。

自分にはどうすることもできない。

 

…ただただ無力な自分が歯がゆい。

 

吸血鬼にまでなって力を手に入れたというのに、また、自分は大切な家族を守れないのか。

 

…何故自分の家族と家族が戦っているのだろうか。

 

茜ちゃんはどうにかして優ちゃんを取り戻そうとしている。…茜ちゃんは恐らくどちらの勢力にも属していない。

 

(優ちゃんも…茜ちゃんも取り戻さないといけない…。)

 

ミカエラは二人の戦いを見守ることしかできなかった。

 

 

茜side

 

優ちゃんが私と戦ってる最中に、横から男の声が掛かる。

 

「優に抱きつけシノア!!今の優ならきっと戻ってこられる!!」

 

すると、後ろからシノアと呼ばれた少女が走り、私の横をすり抜け優ちゃんに抱きついた。

優ちゃんはもがき苦しみながらうめき声をあげている。

それを彼女は必死に押さえようとしている。

 

(…!!優ちゃんの力が急激に落ち着いてゆく…!?それに彼女のこの感じは…!!)

 

ふいにチラリと男の声が掛かった方を見ると、私はその姿にもう正気を保てなかった。

 

 

 

 

 

「フ ェ リ ド ? ? ?」

 

 

 

 

 

私の家族の仇。

 

私すべてを奪った吸血鬼。

 

絶望に私をおとしいれた張本人。

 

…今でも鮮明に思い出す事ができる。家族が血だらけで倒れている姿を。

憎しみやら悲しみやらで私の中は埋め尽くされる。

 

…気がついたら既に体が動いていた。

 

 

 

フェリドside

 

目の前でボロボロになり、首を掴まれながらもへらへら笑っている顔の人間を見る。

 

「派手な演出だろう?あれが俺の切り札だよ」

 

「でも結果はなんにも出なかったじゃない」

 

「いや出たね俺たちはなんせ…」

 

人間がしゃべりかけてる途中、とんでもない殺気を横から感じた。

 

「ッ!!!」

 

咄嗟に掴んでいた人間を放り出し、剣で攻撃を受けとめる。

 

 

 

「み つ け た」

 

 

 

 

あの暴走したバケモノと戦っていた少女がとんでもなく血走った目で自分に言った。

 

「はは…いいね、吸血鬼って年をとらないからさぁ…見た瞬間すぐにわかってよかったよ。」

 

少女は薄く笑いを浮かべていた。

 

「んん~?君は誰かな??」

 

「覚えてないならいいよ、そのまま死ねば?」

 

少女は確実に自分を殺そうとしている。

 

全く少女が誰なのかさっぱりわからないが少女に相当自分は恨まれているらしい。

 

「お前を殺して…私はすべてをやり直すからさ、大人しく私にやられて死んだ方がいいよ。」

 

少女はニコリと笑いを浮かべ言う。しかし目が笑っていない。

 

笑いながら同時に少女は涙を流す。

 

「お前に会えて死ぬほど嬉し過ぎて涙が出てくるよ…!!」

 

少女は泣きながらも怒りやら歓喜やら憎しみやらごちゃごちゃに笑い、自分に切りつけて来る。

感情失禁を起こし、半分理性が飛んでいるのがわかる。

 

とんでもなくその剣さばきは速く、そして重い。相当な実力者だということがよくわかった。

 

しかしその時、大勢の人間の気配をふと感じた。

 

「おっとっと、これはこれは…」

 

…日本帝鬼軍。

 

「これはちょっとお開きかな~ごめんね、誰だかわかんないけどさ。」

 

少女はすさまじく動かしていた剣をビタッととめる。

 

「ははっ…逃がすわけないでしょ?……と、言いたい所なんだけど…仕方ない、私も優ちゃんの方が気にかかってたし。…覚えてろよ、私はまたお前を殺しにいくぞ…フェリド」

 

少女は仕方がないというようにため息をついて剣をしまう。…最後に睨みを聞かせて。

 

少女がこちらを見る目はまるで豚を見ているかのようだった。

 

ああ、これからもっともっともっと!楽しくなりそうだ…♪




頑張った。うん。


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百夜茜は選ぶ


休みも今日でおわりですね…


 

 

フェリドを今すぐにでも殺したいが、今はそれどころではない。

優ちゃんの元へ行かなければ!

 

「待って!茜ちゃん!!」

 

突然呼び止められ振り向くとそこには、

 

「ミカ…!!」

 

優ちゃんと同じ位大切な家族のミカだった。

 

「茜ちゃん…生きていたんだ…!!」

 

ミカは私に駆け寄り、抱き締めた。

 

「ミカこそ…!!生きててよかった…!!」

 

再び涙がこぼれる。

私もミカを抱き締め返した。

 

生き別れて…4年がたった。

 

抱き締めていて、あれからミカは大分成長して体が大きくなった事がわかる。

顔つきも大人っぽくなった。

 

…けれど、昔と全然中身が変わってない事がわかる。

やっぱりミカは家族思いで、優しい。

 

百夜孤児院の…一番のお兄ちゃんだ。

 

「茜ちゃん!!茜ちゃんもはやく一緒に逃げよう!!薄汚い人間共に捕まってしまう!」

 

「ミカ…?何を…言ってるの…!?」

 

よく見るとミカは優ちゃんとは対照的な白い格好をしている。

優ちゃんと敵対する組織ということは…

 

「もしかして…ミカは…吸血鬼なの…!?」

 

「ッ…!!」

 

ミカは急に黙ってしまった。

 

「そ、そんな…!!」

 

すると横から、

 

「感動の再会の所悪いけど…そろそろ行くよ~?ミカくーん…♪」

 

フェリドがそう言ってミカを呼ぶ。

 

「お前…!!」

 

「あ!その茜ちゃんっていう子もつれてこればいいじゃないか~!ミカくん、そうだろう?」

 

フェリドはヘラヘラと笑い、そう提案してくる。

その態度はどうも神経を逆撫でするような態度だ。

 

「ッ!!優ちゃんも連れて来ないと!!」

 

ミカは、ハッと気がついたように優ちゃんの方を慌てて確認する。

 

「ダメだよ~ミカくん、連れて行けるのはその茜ちゃんだけだ。気持ちはわかるけど今はムリムリ、ほら、見てよ。人間どもの欲望があんなにも強く優ちゃんに絡み付いてる」

 

フェリドは変わらず笑ったままだ。

 

「くそ…人間どもが……!!」

 

ミカは、その光景を見て悔しそうに歯をくいしばる。

 

「じゃあせめて茜ちゃんだけでも…!!行こう!!茜ちゃん!!」

 

ミカは私の方を向いて手を差しのべてそう言ってくる。

 

しかし…

 

「ごめん、ミカ…私…優ちゃんの事ほっとけない。今は優ちゃんの方についていくよ。」

 

「茜ちゃん!?」

 

「ごめんね!!本当にごめん!!ミカ…!!また今度いつか会いにいくから…!!」

 

そう言って私はミカを押し退けて、優ちゃんの方へ向かった。

 

 

 

「待って!私も優ちゃんと一緒に連れてって!!」

 

優ちゃんの仲間らしき人たちの方へ私は向かった。

 

私は優ちゃんとその仲間たちについて行き、保護という形で帝鬼軍に連行された。

 

そして、あれから私は一般人という名目で、生き残った人間達が住む壁の中へ入ることになった。

 

 

 

フェリドside

 

(百夜茜、ねぇ…)

 

思い出した…あの時の百夜孤児院の生き残りか…

 

(あの時死体は全部回収したと思っていたけどなぁ……一人だけ逃がしていたのか…)

 

 

 

茜side

 

「優ちゃん…」

 

そして私は今、優ちゃんが眠っている 病院にお見舞いに来ている。

 

何故、ミカが帝鬼軍をあんなにも敵視しているのかがなんとなくわかった。

 

優ちゃんが暴走したのも、帝鬼軍のせいらしい。

帝鬼軍は、優ちゃんを利用しようとしている。

 

「もう5日もたつのにな…」

 

その時、病室の扉が開く。

 

「あ、茜ちゃんも来てたんだ。」

 

早乙女与一君だ。

 

とても親切で、優しい人。

そして、優ちゃんの友達らしい。

 

「優くんは…まだ目が覚めないみたいだね…。」

 

「…はい。」

 

「茜ちゃんは…優くんの家族なんでしょ?やっぱり心配だよね…。」

 

「心配だけど…大丈夫です。優ちゃんは必ず起きますよ。」

 

「…へ?」

 

「私も…そうだったので。」

 

「それはどういう…」

 

与一君が私に聞こうとした時、また扉が開いた。

 

「…あ、与一も来てたのか。えっと…茜、も。」

 

君月志方君だ。

 

「えっと…うん。」

 

「目は覚ましそうか?」

 

「いや…まだみたいだね。」

 

「そうか…。」

 

…私は気まずくなって、帰る事にした。

 

「えっと…じゃあ私、帰るね。」

 

「おう。」

 

「うん。」

 

静かに私は病室の外に出て、ミカの事がふと気にかかった。

 

「ミカ…今どうしてるだろな…」

 

私はもう一人の家族を置いていってしまった。

それが凄く心に残っている。

 

「私…これからどうなるんだろ…。」

 

もとはといえば、家族を皆殺しにしたあの吸血鬼を殺すために私は強くなって、この世界に戻ってきた。

 

そこに生き残っていた二人の家族。

 

(結構…私って無計画なんだな…。)

 

フェリドを殺した後、どうするべきなのか私はさっぱりわからなかった。

 





よし、頑張ろう。


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百夜茜は組織を嫌う

…こんなのがランキングに入ってるとか何かの間違いじゃ…?なんか凄いな、いろんな意味で。


私のところに、ある一通の手紙が届いた。

 

「日本帝鬼軍…?」

 

…どうやらあの日本帝鬼軍から直々のお呼びだしらしい。

 

「大方…尋問でもされるのかな…。」

 

私は手紙に従い素直に行く事にした。

 

 

 

 

 

「ここか…はは、立派な建物だなぁ…。」

 

私は建物を見上げてその立派さに吐き気を覚えた。

 

(そりゃこんな大きなな建物ならさぞかし沢山のお偉いさんが上でふんぞり返っているだろうよ…)

 

そう思っていたその時、突然後ろから声がかかった。

 

「あれ?茜!?」

 

「えっ!?ゆ、優ちゃん!!」

 

何故かそこには優ちゃんも来ていた。

 

「どうして優ちゃんが…?」

 

「どうしたもこうしたもねぇよ!!茜!!俺が目覚めたときからなんにも聞いてねぇんだけど!?つか何でお前もここに…!!」

 

実は優ちゃんが目覚めてから、私は一度だけまたお見舞いに行った。

その時は再会を喜んだだけで詳しくわたしの事を説明していなかったのだ。

 

「えっと…とりあえず事情は後で説明するから…!…えっと、私がここにいるのは呼び出されたからだよ。もしかして優ちゃんも…?」

 

「お、おう。」

 

「そっか、じゃあとりあえず一緒に行こうか。」

 

私は優ちゃんと目的の部屋へと歩き出した。

 

 

「…ん?」

 

部屋の前まで行くと、既に誰かがいた。

 

(確か…三宮三葉さんだったっけ…?)

 

「茜、俺ちょっと三葉と話してから行くから先に行っててくれ。」

 

「ん?うん。わかった。」

 

優ちゃんは私に先に行くように言い、私は一足はやく呼ばれた部屋に入る事にした。

 

「失礼しまーす…。」

 

ノックをして部屋に入ると、部屋の奥には三人の軍服を着た偉そうな帝鬼軍らしき人がいた。

 

「お前が、百夜茜か?」

 

一際威圧感を放つ真ん中の男が言った。

 

「そうですけど…あなたは誰ですか…?」

 

「日本帝鬼軍中将、柊暮人だ。」

 

「はあ、…。」

 

「とりあえず、今回はお前が知っている限りの事を一通り全て話してもらう。」

 

「…わかりました。」

 

かなりの上から目線の物言いだった。

どうやら三人の中でも制服や態度からして一番偉い人のようだ。

 

「ふん…一般人の女にしては…ずいぶんと肝が座っているな。」

 

「…そうですか」

 

…当たり前だ。私がこれまでどんな人や化け物と戦ってきたと思ってるんだ。少なくとも…ただの人間には負けるつもりはない。

 

「ではまず聞く。…お前は人間か?」

 

「…人間ですけど…。」

 

警戒しながらも私はそう男に答える。

 

「そうかそうか…お前は人間か…。ヨハネの四騎手に乗り、戦場に突っ込んだお前が…ただの人間だと…そう言いたい訳か…。」

 

( わ す れ て た ! ! )

 

…とたんに今までやった事の数々が思い浮かび冷や汗が流れる。

 

「ええ、まぁ…。」

 

…男は私を見て少し笑った。

 

「ふっ…面白い。」

 

暮人とか言う人は、そう言うと腰から剣を抜いた。

そしてそのまま何も言わず私に切りつけて来たので、私も持っていた剣で咄嗟に受け止めた。

 

「ほう…やるな。俺の攻撃を受けとめる事ができるただの一般人…ますます面白い。」

 

「そうですか…。」

(これってもしかしてやばいかも…?)

 

「憑依しろ、雷鳴鬼」

 

男ははどうやら力を解放したようだ。

 

「ッ!!」

 

雷が纏った剣が私を襲う。

だが全然怖くなかった。

 

(雷…ね、)

 

「えーと…暮人さん…だっけ?あなたの雷って…この程度、ですか…?」

 

純粋に、疑問を持って私は問う。

 

「ほう…俺の雷鳴鬼が弱いと言っているのか…?」

 

「…弱いというか…まぁこの程度なのか、と」

 

「…そうか…ならばお前の力を見せてみろ、百夜茜。」

 

ほんのすこし、ほんのすこしだけ、彼の顔が歪んだ。

 

「……我が身を纏え、雷。」

 

私は膨大な量の雷を纏った。

 

そして、ただ剣を握った右手を軽く振りかざす。

 

それだけで雷が地面をえぐり、彼に雷が向かって行く。

 

「ッ!!!」

 

彼はギリギリのところで、私が放った雷を避ける。

 

「…お前…なんだ?この力は…鬼呪ではないな…?」

 

「…教えるわけないじゃないですか。ましてや、危険な人体実験を繰り返している胡散臭い組織の人間なんかに…」

 

「ほう…?そんな事まで知っているのか…面白い。…それにこの力、ますますただの一般人だとは思えんな。」

 

「情報なんて…少し考えて探ればいくらでも出てきます。…そして、私はこれからもただの一般人として勝手に行動させてもらいます。」

 

「ふっ…ただの一般人にしておくにはおしい人材だな…どうだ?帝鬼軍に入って俺の下につく気はないか…?」

 

「お断りですね。私にそんな気はありません。」

 

この男の下につくなんてまっぴらごめんだ。

 

「そうか…まぁいい。これで尋問は終わりだ。帰ってもいいぞ。」

 

「え…?」

 

…いろいろ覚悟して来たがあっさりと返されることになった。拍子抜けだな。

 

「話されなくとも大体わかった。もういい。…だがもしも気が向いたら帝鬼軍に来い。いつでも歓迎しよう。」

 

「…それでは失礼します。」

 

私は部屋の外に出て、一安心。

 

「あー…疲れた…。堅っ苦しい所からさっさと帰ろ…」

 

今日は一日で大分濃い一日を送った。

 

「まためんどくさい組織に目をつけられたなぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…百夜茜をそのままにしておいてもよろしいのですか?暮人様。」

 

「…いい。それにいずれ嫌でもこちらに協力してもらう時が来るだろう。…その時は葵、お前に任せる。」

 

「……わかりました。」

 




頑張った。…これからはもっと頑張ろうかな…。


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