俺は無個性。だからと言って弱い訳じゃない。 (憲乃郡)
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第1話―無個性の化け物―

個性、そう呼ばれる超常の力が世の中にありふれてから。もう何年の月日が経った。

人々は個性を受け入れ、自分達の生活に還元して、様々な恩恵を受けた。

 

だからこそ、力を使う悪党が現れ、それを倒すヒーローが産まれた。

 

ある者は、自分の理想の為に、ある者は、自分の快楽の為に―

 

 

そんな世の中である以上、個性を持てずして産まれた者は、どうしようも無い無力感や劣等感に苛まれるのが通説であり、日常であった―

 

 

 

 

『北斗連環組手!!』

 

夕暮れ時の路地裏に大声と共に何かを強く叩く様な音が響き渡る。

 

殴り続ける学生服の巨漢と殴られる学ランの青年達と、周囲に倒れ伏し行く学ランの青年達。

 

そして、巨漢の背後にへたりこんでいる少年。

 

他の人が見れば、一発通報の状況の中であり、巨漢の大声は辺りに届く筈の音量であった。

 

「な、何で…」

 

巨漢の後ろでへたりこむ少年が声を上げる。

 

「何で俺の個性で五感を消したのに戦えるんだよぉおおっ!?」

 

少年、ここ最近、周囲を騒がせた不良集団のリーダー格である少年は今回の狩りも何の問題も無く終わると思っていた。

 

今正に地面に倒れ伏した仲間の個性で周囲に音が漏れるのを塞ぎ、少年の個性で獲物の五感を一時的に喪失させ、慌てふためいた所を、地面を操る個性持ちの仲間が捕縛して、個性で強化された武器を持って全員で殴りかかると言う手段で様々な相手を襲い、成功させてきた。

 

その中には現役のプロヒーローすらもあり、個性を使う事も許されず敗北したプロヒーローが泣いて許しを請う様は少年達の自尊心と被虐心を多いに満足させた。

 

そんな彼等からしてみれば、大きな身体をし、自分は強い!と言わんばかりに堂々と歩く様は絶好の獲物に見えたのだろう。

 

いつも通り、引き寄せ役の催眠効果のある音を出せる個性持ちに巨漢を誘導させ、防音壁を張った後、五感を奪い、蹲ったのを捕縛しようとした所で巨漢の姿が彼等の視界から消失した。

 

思惑が外れ、 ほんの僅かの意識の硬直の直後、仲間の1人が吹き飛ばされた。

 

慌ただしくなる仲間達、少年は捕縛ができる仲間に捕縛を指示をした直後に、その仲間が吹き飛ばされた。

 

少年自分の個性で五感を失っているのに、正確に。

 

最早、自分達が狩られる側に回かねないのを感じた少年は仲間達に個性の発動を行わせ、目を瞑った状態で彼等の前に姿を現した巨漢への攻撃を命じた。

 

いくら何でも五感を失った状態で一斉に襲いかかられば対応する事はできないと思ったからである。

 

そして、その少年の考えは一瞬で崩壊する事になる。

 

 

 

 

「な、な、何なんだよぉ、お前はぁあああっ!?」

 

自分以外の全員が倒れ、巨漢の焦点が定まっていない視線が自分に向けられた時、恐怖の感情だけが少年を支配した。

 

「俺の個性で五感を消した!なんで個せ「俺は無個性だ」ハァッ!?」

 

「だが、戦いの厳しさは知っている」

 

迷う事も無く、少年の下へ歩みを進める巨漢。

 

何とか逃げようとするも、追い詰められ、

 

「こ、この化け物がぁっ!!」

 

なん何とか一矢報いようと、隠し持っていたナイフで切りかかかるが、制服の胸部を切り裂くだけで終わり、

 

「化け物上等!!!」

 

腹部への拳の一撃で、彼もまた倒れ伏す事になった。

 

意識を失う直前に少年が見たものは、拳を突き出す巨漢と切れた胸部から見える7ヶ所の傷痕であった。

 

 

 




溢れる衝動を抑えきれず書いて見ました。初書きの為、至らない事も多くあると思いますが、よろしくお願いいたします。


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