とある投影の魔術使い〈エミヤシロウ〉 (機巧)
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御使墜し編
始まりの聖骸布Holy Shroud of beginning


 

 

 

ゾワリ、と背筋が震える感覚が走った。なんとも言えないイヤな感覚だ。

その後続いて目眩が起こる。

 

視界から色彩が抜け落ちていき、見える範囲はモノクロで、白黒だけで構成されていてーー

ーー世界が、歪む。

 

ただただ、気持ち悪い。少年が感じたことを言語化するならば、その言葉が適切であった。

とりあえず昨日から〈わだつみ〉という旅館に泊まっていたからして、事件があることは半ば予想できていたのだが、こんな影響を受けるということなど考えていなかった。

 

というか、普通の人間で、学園都市にも通っていない、つまり能力者でもなく魔術師でもない少年からして、この出来事は、感じ取ることのできないはずのものであった。

 

なのに、凄まじいまでの目眩を覚えている。

原因をいくつかあげてみるが、考えはとりとめのないまま、だんだん意識が遠くなり、何も考えられなくなっていく。

真っ白で、真っ黒で、視界が塗りつぶされてゆくのだ。

そんな朦朧とする意識の中、少年は、こんな言葉が自分の口から漏れるのを聞いた気がした。

 

 

 

 

 

 

「……投影(トレース)開始(オン)

 

 

 

 

 

 

◾︎◾︎

 

 

 

「……はっ」

 

 

どうやら少年ーー衛宮士郎という名でこの世に生を受けた少年は、いつの間にか自分が寝ていたことに気がついた。

と、言うのも揺さぶられて起きたからだ。

どうやら、旅館の待合室のソファーで眠ってしまったらしい。

 

「お客さん、何やってるんだ?こんなとこで寝るもんじゃねぇっての」

 

「あ、すみません。疲れていたみたいで……部屋に帰ります」

 

あ、これは旅館の人に迷惑ではないか……と考えて少年は寝ぼけている頭を無理やり持ち上げ、自らの宿泊している部屋に帰ろうとする。

そこで衛宮士郎はふと疑問に思った。

 

確かにこの旅館の店長は背が高くて無愛想で、一見するとちょっと怖いかもしれない。だが、その髪はあんな肩まである程の長髪で、その上真っ赤に染めていたものだったか?

ぱっと、寝ぼけていた頭が覚醒し、目が覚めて後に振り向く。

 

こちらが急な動きをした物音に反応したのか、立ち去ろうとしていた店主さんも振り返る。

Tシャツに半ズボン着に首からタオルを引っ掛けたその人物は、

 

魔術師ステイル=マグヌスさん14歳であった。

 

 

「……なっ」

 

一旦少年の頭の機能は混乱のあまり停止した。身長2メートル強、赤髪長髪の英国人は、炎を自在に操る魔術師とか言う別世界の人間だ。文字通り少年にとっては、別世界の。

 

なにかおかしい、自分がここに来たのは上条さんの知り合いになっておくためであるだけで。

つまり魔神何かがいるこの世界で生きていくためには、主人公の知り合いになってくのが1番だと思ったんだ。

 

そして、転生者なのに魔術師でも能力者でもないのは、魔神とか星さんに目つけられないようにするためだ。

特に学園都市に行くなんて正気の沙汰じゃない。あそこは、全部☆(アレイスターさんのことだ)の庭だからな。

 

滞空回線ーーアンダーラインと言われるシリコンの塊は学園都市の空気中に散布されていて、それは文字通り滞空しており、すべてを監視している。しかもそれ自体はすごく小さく、認識できないと言う、個人情報保護なんのそのというやばいものだ。

つまりあそこでは、うっかり転生とか魔術とか口にするだけで、すごくまずいことに(つまりは実験体に)なるのだ。

 

だから自分は、この世界に転生して学園都市の存在を知った時から、ごく自然な一般人風に過ごしてきた。

自分はフツーに過ごしている(転生者という事を除けば、だが)一般人で、魔術師ではない。

何でそんな自分が、御使堕しを自覚している⁈

衛宮士郎の頭は混迷を極めた。

 

 

 

 

 

 

ステイルと化したおっちゃんは、どうしたんだ? さっきのツンツン頭の少年も怪訝そうに俺を見てたんだけどなんかあるのか?とか聴いてきたが、それどころではなかった。急いで店主のすぐ近くの自らの部屋に戻り、備え付けの鏡を見る。

 

その姿はーーいつも通りの赤銅色の髪を持った自分だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◾︎◾︎

 

 

 

 

「どうすんだこれ」

 

 

一応少年はつぶやいてみるが、どうしようもない。何故なら、魔術師ですらない自分に解除できないし、そもそも「幻想殺し」でも解除できなかった現象だ。それに何でこれを防げたのか定かでない。

 

「どうしたんだ、兄ちゃん」

「いや、何でもないです」

 

慌てて戻った俺を不思議に思ったのか、店主はそう部屋の外から顔を出してきいてきたが、少年はそう言いつつ、思考を巡らせる。

 

やばいこれは犯人として殺される可能性が高い。一瞬でその結論が出た。

そもそも何でこの状況になったのかほとほと本当に疑問である。

 

ちょっと身だしなみをですねと、苦しい言い訳をしつつ店主を帰す。

 

非常にやばい状況である。他の人は体が変わっているのに、自分だけ変わっていない。本当にまずい。

何処も体に異常はないか、手を辺りに振り回したりしてみる。

 

すると、体の機能には異常はなかったが、腕に何かを巻きついているのに気付いた。

 

それは、赤い布であった。

 

それは、どこかで見たことがあるものだった。

 

 

「……ああ」

 

 

そこで少年はやっと気付いた。

名前からしておかしいとは思っていたんだ。

 

どうやら少年はーー

 

 

 

ーー 1人だけFate時空にいるらしい。

 

 

 

 

 




他の作品も頑張りたいと言っているのにこのザマです。
ベートさんも近々投稿するので、お願いいたします。
あっちはきりとさんが強くなりすぎて困るんですよ。


感想、お願いいたします。励みとなります。


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出来た投影魔術 Gradation Air

赤原礼装。

 

とある聖人の聖骸布を加工したもので聖骸布自体はエミヤが某シスター(濃い味好き。詳しくは月姫でも)から譲り受けたものだ。

Fate時空でのその効能は、「外界からの守り」。

 

 

外敵ではなく、外界。

 

 

そこが色々と重要になってくるのだが、今はどうでもいい。

衛宮士郎は、英霊エミヤの体に合うように加工される前とは言え、その聖骸布を手に巻いていた。

 

それが、自分を御使堕しから守ってしまったということのほうが重要であるのだから。

 

 

 

 

◾︎◾︎

 

 

 

Fate本編では、(最高峰の魔術師とはいえ)キャスターの魔術にまんまと引っかかってしまうほど魔術抵抗力の低い主人公衛宮士郎を英霊として遜色ない域まで魔術抵抗力を押し上げた道具でもあるその聖骸布は、カレン=オルテンシアの友人から受け取ったもので、と長い説明になってしまうから省くが。

 

 

 

 

 

 

ちなみに御使堕しというのは、『とある魔術の禁書目録』第4巻で起きた世界的規模の事件のことで、ようは、「天使の魂を天界から人間界に落とす」術式のことである。魔術的な根本に揺らぎを与えるようなことが起きるということは、各生物の位階を示すセフィロトの樹を思い浮かべて貰えば容易に想像がつくであろう。

 

ようは大企業があるとしよう。その社長が破産して、社員全員リストラされる。関係各社も東京株式市場もダメージを食らう。

 

これの社長を天使、関係各社を魔術や他の天使と考えて貰えばわかると思う。

 

 

そしてこの影響は、魔術の根幹に関することだけに関わらない。リストラされた社員を思い浮かべて見れば、今の人類の置かれている状況がわかる。

 

「社長の破産」によって「社員がリストラされる」ように、「天使が落ちる」ことによって「人間の魂と体が入れ替わっている」のだ。

 

椅子取りゲームのように、天使の魂により、もともとその体にいてはじき出されてたその魂がべつの人間の体に入り、またその人間の魂が……ということである。

 

 

ようは、御使堕しによる精神と肉体の入れ替わりは、いわば天使が降りてきた副産物である。

それによる影響が世界に波紋として広がっているのだ。直接の対人からの干渉ではなく、余波による世界からの干渉。

 

故に外界からの守りが機能したと考えるのが自然であるだろう。

 

ええ。

こんな考えは唯の逃げですよ。

うん。

 

主人公勢には聖人がいるからね。敵認定されたらほとんどの人は勝てるわけないではないか。

そんな考えで衛宮士郎は、はぁと溜息をついた。

 

取り敢えず、ここで過ごして隠れていようか、とも思うが隠れているところをミーシャや土御門とかに見つかった時の言い訳が立たない。

 

それに衛宮士郎の目的は上条当麻との接触だ。隠れていたら二度と接触の機会はないと言っていい。だって上条さんが学園都市から出てくるのっていつも事件の時で物騒であるためだ。オルソラのとき然り第3次世界大戦の時の然り。

 

うん。今しか接触のチャンスはないな。

 

 

よし、もう自分のことを魔術師と言ってしまおうと、衛宮士郎は思った。いや衛宮士郎自身は魔術師ではないのだけど。

 

でも、それで通しておけば、聖骸布を持っていた理由も一応は説明つくし、排除対象から外れるかもしれないと言うことで、これはいい案もしれない。

いや、それはーー実演しろと呼ばれるもしれないしな……そん時はやばいな……。

本当にどうしよう、と思った。

 

思考がループしている衛宮士郎だったが、本人はパニクっているので仕方がない。

 

何とは無しに近くにあった木刀(一応護身用、火野さん対策に持ってきていた)を手に持ち、衛宮士郎は、

 

 

解析(トレース)開始(オン)

 

 

と、唱えてみた。

するとーー、木刀の構造やら何やらが見えるではないか。

 

 

 

衛宮士郎は驚いた。

転生して少しした後、自らの名が衛宮士郎だと知った衛宮士郎は(言いにくいな)色々と呪文を確かめてみたが、何の効能もなかった。それが今になって何故?

 

少し考えた後、衛宮士郎は、こう考えた。

御使堕し〈エンゼルフォール〉が発動してエミヤ少年の魔術回路がオンオフできるように開いたのではないか、と。

 

それの膨大な魔力が魔術回路を押し開けたのかもしれない。

 

他にも魔術基盤のこととかはわからないことだらけだ。

 

 

 

しかし、どうやらやるしかないらしい。

 

 

 

 

◾︎◾︎

 

 

 

 

適当に衛宮士郎はぶらついて浜辺に来ていた。

風に浴びて考えをまとめるためだ。

 

あの後、衛宮士郎は色々と投影を試してみた。

最初は木刀、次は包丁、とやっていき、最終的には、宝具投影してやるかー、というテンションになり衛宮士郎といえば干将莫耶だよなーっという感じでやってみたら……出来てしまった。憑依経験付きで。

 

 

うーむ、どうやら作中で衛宮士郎が見た宝具なんかはだいたい使えるみたいだ……と衛宮士郎少年は気付く。反動が怖いものの、そのような予兆すらなく、投影実験は済んでしまった。

 

まだまだ投影の強度が足りないみたいだったが。

 

 

 

 

そんなことを考えていると、重たい衝撃が体の側面に走った。

なんとかよろめく体勢を整えて、バランスを保つ。どうやら誰かとぶつかったようだ。

おそらく衝撃の反動手間倒れたであろう人物に声をかける。

 

 

「すまない。注意力散漫だった、大丈夫か……」

 

 

そこで、言葉が止まった。いや、言葉を紡げなくなった、というのが適切か。というのも、その倒れた人物こそ、

 

 

「大丈夫……怪我はないかも……あっ、とうまを見失っちゃったんだよ!」

 

 

とある魔術の禁書目録における正ヒロイン?のインデックスであった。

 

 

 

「……どうかしたのか」

 

 

 

しばし衛宮士郎の頭はその機能を停止するも、ここで助けないとかいう選択肢は日本人としてあり得なく、話しかける。

ついでに言うと、ここで話しかけないのは不自然である、と言う理由も大きい。

 

少しして起き上がり砂を払った後、辺りを見渡して、一番近くにいた衛宮士郎に話し掛ける。

 

 

「とうまがどっちにいったかわからない?」

 

「すまん。そもそも誰だかわからない……だが、浜辺にはいなそうだし、そこのアイスクリーム屋の角を曲がったんじゃないか?」

 

 

そうして、当麻という名前を知るはずがない衛宮士郎はそう答えるしかなく、初の邂逅はこれで終わる、はずだった。

 

 

 

 

その少し後……。

 

 

「ねぇねぇ、お兄さんお兄さん、とうまがね、お前なんてインデックスじゃねーとか言ってくるんだよ。本当に失礼しちゃう」

 

 

「ああ、それはひどいな」

 

 

「でしょ、でしょ? 頭にがぶりとかぶりついて行った方がいいかもなんだよ!」

 

 

衛宮士郎は、インデックスの、話し相手にされていた……。

 

 

出会いは単純らしい。上条当麻逃げる。インデックス追いかける。衛宮士郎とインデックスぶつかる。インデックス上条当麻見失う。インデックス、「って、アイス? アイスがあるんだよ! 」ということで、奢らせれる。

 

 

 

 

「いやーー、だめ。やめたほうがいいんじゃないかなぁ。男として、禿げるのは可哀想だし」

 

 

「とうまなんて、はげちゃったほうがいいんだよ。はげちゃえはげちゃえはげちゃえ」

 

 

むしり取ろうとする動作をするインデックス。それを見て、インデックスたんを連想する衛宮士郎だった。

 

 

「お兄さんてさぁ、名前なんていうの?」

 

 

ふとインデックスがそんなことを聞いてくる。

 

 

「衛宮士郎だ。宜しく」

 

 

「じゃあしろー、愚痴聞いてくれてありがとね。アイス、ねぇ、本当にいいの? とうまみたいに実は財布落としてましたとかない?」

 

 

「ああ、大丈夫だ。ぶつかったのはこっちのせいだし、財布もここにあるしな」

 

 

インデックスは上条当麻を探しに立ち去ろうとする。それを見て、衛宮士郎はどういたしましてと言って手を振った。

 

じゃあね、と言いかけるインデックスだったが、すぐにピューと戻ってきた。

 

 

そして、こう言った。

 

 

「ね、ねえ、しろー、その布、どこで手に入れたんだよ?」

 

 

インデックスはすごく焦った様子で。とても興奮した様子で。そのように問い掛けてきた。

衛宮士郎は正直に答えるわけにもいかず、(というか自分でも知っていない)取りあえずごまかすことにした。

 

 

「なんか家が代々伝えたものでとか言ってたかな。でもなんでそんなこと聞くんだ?」

 

 

必殺、質問を質問で返してごまかす!

 

どうにかばれていませんように。

とゆうか投影品の偽物なんだから、本物と勘違いされないよねー、大丈夫だよねー、とあてにならない願望に希望を託す衛宮士郎。

こんなことなら布をおいてくればよかった。

 

 

「なんでって、それ、私が正しければ間違いなく聖骸布、なんだよ?」

 

 

 

 

……やっぱりそうきましたか。

 




……主人公は、インデックスのアイスを断ることができたはずです。
というか初対面ならそれが普通ですよねー(意味深)

感想、評価お願いいたします。


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魔術師と魔術使い Magician and Emiya

なぜ昨日投稿しなかったかって?
時間に追われていたからだよ。
主にfgoとか課題とかfgoとか他のゲームとかfgoとか。

三蔵さん始まりましたねーー。自分は前回の鬼殺し級は式の即死が一発入ったのしかクリアできませんでした……。ほんとやばかったです。しかし三蔵さんも三蔵さんでイベントのやつ集めないと次のストーリー見れないという…
この辺にしときます。

今回は説明多いので注意して下さい。(そのせいで分量が少し多いです)


「それ間違いなく聖骸布、なんだよ?」

 

 

インデックスはそういった。

予想はしていたものの、とても嫌な展開だ。

こんなところにいる魔術に関わる一品を持った人間ってだけでマジ怪しいのに、中身と外が入れ替わっていないときた。

 

とある魔術の禁書目録では御使堕し(エンゼルフォール)は、天使を現世に落としてくる術式だった。

その天使が堕ちてきた影響が、入れ替わりだ。

正直、すごい魔術師(聖人や土御門)が、ものすごい結界のなか(ウィンザー城等)に居ても、体は変わらなくても他人には入れ替わっているように見えるという具合にまでにしか軽減出来ない。

 

ましてやフツーの魔術師や一般人では対応することすら不可能だ。

そして、入れ替わらないのは術式を発動した本人しかいない。

つまり入れ替わらないと言う事は、犯人として疑われる確率がというかほとんど犯人しかいないのである。

 

そしてこの術式は世界に混乱をもたらすものである。

入れ替わりなんて起きてんのだから当然だろう。そもそも魔術体系にも影響がある。

そのため、正直どの勢力も犯人探しをしている。

 

原作では、明かされているだけでも、ロシア成教、イギリス清教が探していた。

いや、ロシア成教のミーシャは結局のところ、帰る手段を探していた天使だったのだから、違うかもしれないが。

そしてローマ正教、こいつもこの術式については後々語っている。

 

衛宮士郎の前世の少年は、この物語を最初に読んだ時は、作者描くものがなくて入れ替わり何かやったな、と言う感想であったが最後のほうにこれが関わってくるとは全く想像していなかった。

 

まぁ何を言いたいかと言うと、犯人として疑われると、少なくとも世界の最大個人戦力の1人『聖人』神裂火織、元『土御門の天才』土御門元春、『天使』ミーシャ、そしてとある魔術の禁書目録の主人公『幻想殺し』上条当麻を一気に敵に回してしまうということである。

 

しかしただいま犯人として疑われかねない状況になっている。つまり、ここでインデックスに対しての答え方を間違えると死亡フラグがビンビンに立ってしまう。それを回避するためにはどう答えたらいいか、衛宮士郎はしばし考えて、こう答えた。

 

 

 

「ーー君、魔術関係者なのか?」

 

 

ーーそう、疑われるなら疑う方になってしまいばいいじゃない、的な議論で、この問題を解決しに来た『特殊な礼装を保持する』魔術師を装うのだ。

まぁインデックスにちょっかいを出すと、上条さんがめちゃくちゃ怖いのでやめておく。この事件の事は言わないことにしておくのだ。

 

上条さんは、とある魔術の禁書目録劇中で、一貫して、この少女を事件から遠ざけるきらいがある。もし、巻き込んでしまったら、そして、その上で犯人と思われたら、愉快な現代風オブジェになること間違いなしなので、できる限りこの現象のことは伝えない方向で行こうと思った。正直あの主人公属性の塊は、敵に回したくないですはい。

 

 

そしてそう問い掛けられたインデックスは、マジで少し虚をつかれたように

 

 

「ーーじゃあ、しろーも魔術師なの?」

 

 

と問いに問いを返してきた。まぁそのこと自体が魔術関係者だと言うことを明かしているのだが。

そのことに対して衛宮士郎は

 

 

 

 

「ーーああ、魔術を扱う者としてのならそれは間違いじゃない。だけど少し違う。俺はーー魔術使いだよ」

 

 

 

 

なぜここで魔術師ではなく魔術使いと衛宮士郎は答えたか。

それは型月ととある魔術、その2つに置いて魔術師の定義が違うからだ。

 

型月では、魔術回路と呼ばれる1種の才能がある者のことを魔術師と呼ぶ。それをうまく扱えるかどうかは個人によるかとりあえずその魔術回路がなければ魔術は使えない。

 

そしてとある魔術の禁書目録では、魔術師は才能のない者で、才能あるものを目指したことを言う。

天然の能力者、つまり原石のことを才能があると考えるならばその才能のない者たちが、才能のある者たちに追いつくために編み出した術。それが魔術でありそれを使うための魔術師だ。つまり魔術師は才能のないものであり誰でもなれる。(いろいろなリスクを度外視すればだが)

 

 

つまり、何が言いたいかというと、先ほどの実験から魔術回路があるらしい衛宮士郎は、型月風でいうと、「魔術回路という才能」を持ってしまっているのだ。

これでこちらの世界の初歩的な魔術を使ってみろ(そんなのはあるかはよく分からないが)なんて言われた日には、全身から血を吹き出して死ぬ可能性が普通にある。

 

なぜなら、魔術は才能のないもの達の技であって、才能のある物が使うと全身の血管が破裂するという自体が引き起こるからだ。

 

魔術回路というものが、こっちの世界でいう原石に当てはまるかは分からないが、リスクはできるだけ避けたい。故にこう答えたのであった。

 

 

「魔術師じゃなくて、魔術使い?」

 

 

「よくわからないなら普通とは違う魔術を使う人間と覚えてもらって構わない」

 

 

先ほども言った通りらこれなら嘘はついていない。それに完全記憶能力を持っているインデックス相手なら、間違って覚えられていることもない。つまり後から突っ込まれた時、言い訳が通りやすいのだ。

 

 

 

「じゃあ、その聖骸布って?」

 

 

「あーーすまない、俺は普通の魔術に疎くてな、君が魔術関係者とは思わなくてね。つい隠そうと思っちゃったんだ。ーー巻き込みたくないから」

 

 

「ーーしろーは良い人なんだね」

 

 

いきなりインデックスがそういった。その言葉に、どう返していいか分からず、立ち尽くす士郎。

なんとか言い訳を絞り出したのに、そのことで、いい人だねと言われてしまったからだ。

 

 

ーーいや、違うさ。と言いかけようとしたた途端、インデックスが

 

 

 

「あー、ごめんとうまがいた。しろーありがとう。また会ったら宜しくね。アイス美味しかったよ」

 

 

 

と言いつつ浜辺を宿の方へかけていった。

すっかり言うタイミングを逃してしまった衛宮士郎は少ししたのち宿の方へ帰ることにした。

 

 

 

これからは魔術師を演じるなんて胃が痛くなるなーーと思いつつ。

 

 

 

 

 

 

 

ーーああ、忘れていた。先ほどインデックスに褒められた時にすぐに答えられなかった理由がもう一つある。

 

我らが主人公、上条当麻さんの元へ連れて言ってもらおうと思ったのだ。だが、それは諦めた。何故ならインデックスを上条は避けている。

 

あの時ーーインデックスは笑いかけながら言っていた。そうそれがたとえ12歳前後だとしても美少女だったら、美少女が言っていたら様にもなっただろう。てゆうかインデックスは美少女なのだが。

 

しかーし、ただいま発動している術式を考えてみてもらいたい。体を入れ替える。つまり、インデックスは今野郎の体なんだ。青髪ピアスという名の! 野郎に屈託のない笑顔でニコニコしてやってきてみろ、うんマジ怖い。

 

 

なんで最後にこんなこと言ったかと言うと、同じことを考えた上条当麻さんがやったであろう、インデックスが浜辺に垂直に埋まる事件の惨状をぶらぶらした帰りに見てしまったからに他ならない……。




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狂信の殺人者 Murderer of fanaticism

遅れてすみません
アニメと原作ごっちゃだったので。
時間かかりました。


「うにゃーっ! カミやーん、やっと見つけたんだぜーい!」

 

 

アロハシャツの金髪サングラス、土御門元春が砂浜の向こうから、いきなり上条当麻に話しかけてきた。

土御門は、上条にとってクラスメイトである……らしい。

 

らしいというのも、上条当麻にはつい先月の終わりーー具体的に言うと7月28日以前の記憶がない。

インデックスという少女を助けてこうなったらしいのだが……。

 

そんなわけでクラスメイトの顔も、覚えていないのだ。

もっと言えば、自分の両親すら顔を覚えていなかったのだから、わかるはずもない。

ようやく再会して両親の顔が分かると思ったら、なんかこの姿形がちぐはぐになるという変な事態が起こっている始末。

海の親父がステイルで、

その息子が御坂妹で、

従姉妹の乙姫が美琴 で、

母の詩菜がインデックスで、

インデックスが青髪ピアスで。

 

 

もう訳がわからないよ。

 

 

インデックスと化した青髪ピアスは埋め立ててやったが(上条には記憶なし)、本当に何が何だかわからなかった。

 

 

しかし、それを差し置いて妙なことがあった。

学園都市の外に出るためには特別な許可が必要だ。よっぽどのことがない限り出られない。

なら何故、クラスメイトである土御門がここにいる?

 

 

「なんで学園都市の外に出れたんだ」

 

 

ひょっとして妹の舞夏も一緒なのかと問い掛ける上条。

 

 

「何気にウチの妹を勝手に呼び捨てにしないで欲しいんだが、そんなことを追求している暇もナシ。カミやん、一個確認するけど……お前は俺が土御門元春に見えてるぜよ?」

 

 

当然だ、何を言っているんだと言うばかりに肯定の意思を示す上条。それに対して土御門元春は速く逃げろと言った。

わけもわからず土御門を問い詰める上条、そこで……。

 

 

「見つけました、上条当麻……っ!」

 

 

鬼の形相をしている日本刀を持った女がそこにいた。

 

 

 

◾︎◾︎

 

 

 

 

 

上条当麻が神裂に襲われているのを見届けて、衛宮士郎はわだつみへと歩を向けた。

おそらく今頃はこの現象について説明を受けている頃かな、とおもいつつ。

 

ここで上条当麻たちに接触しない理由はただ一つだ。

 

 

 

ここがアニメ時空で無い事の確証が欲しかったのだ。

 

ここがとある魔術の禁書目録のアニメの世界ならここでわだつみに帰っても何も起こらない。

 

しかし、その可能性は今は低い。

 

何故ならミーシャと出会う前に土御門たちに上条当麻が出会ってしまったからである。

 

ここがアニメ時空ならば、ミーシャに襲われる上条当麻が土御門たちに救われ、土御門とファーストコンタクトということになるのだが

 

ここではラノベの原作通り土御門たちとミーシャに襲われる前に出会ってしまった。

 

ゆえに、ここでわだつみに帰ればアニメでは省略されてしまったあの人がいるはずであるのだ。

 

そしてその人がいれば原作準拠の世界だとわかる。

 

 

 

 

そしてわだつみにつき、一階の廊下をわざと音を立てて歩いた衛宮士郎は確かに聞いた。

 

 

「エンゼルさま、エンゼルさま」

 

 

という声を。

 

その声はいった。

 

 

「エンゼルさま、それでは今回もイケニエを捧げれば助けてくれるんですね?」

 

 

それからまた続けていった。

 

 

「エンゼルさま、エンゼルさま。それでは、イケニエはあの少年でどうでしょう」

 

 

ガリガリガリと木に何かを刻むような音が聞こえる。正直、今さっきまでただの人間であった衛宮士郎は、殺人者と対峙するのは恐ろしい。

 

たが、こうしていられるのは、型月魔術を使えるようになったという高揚感と、魔術師達に追われると言った恐怖心の結果であろう。

 

 

そしてーー

 

 

「エンゼルさま。それでは、私は今日もエンゼル様を信じます」

 

 

その言葉か衛宮士郎の耳に届くと同時、ぶつんといきなり電気の全てが消えた。

何もわかっていないものが、見たら停電かと思っただろう。

それくらい声の主は小声だった。

がさり、と。

足の下、床板の底から、木の板を軽く引っ搔くような音が聞こえた。

 

そしてその次の瞬間。

 

 

ガスん‼︎ と。三日月のようなナイフの刃が、足元の床板を貫通して突き出てきた。

 

 

それを余裕をとって回避して、衛宮士郎は、投影をする。

 

作ったのは干将莫耶。そして身体強化による身体能力向上の力を使って、床をぶち破る。

 

そして迫ってくるナイフをかわしつつ、腹の襟をつかんでわだつみの床の上と投げ飛ばす。そして衛宮士郎は自分も70センチほどの段差を登り、襲撃犯、火野神作に相対する。

 

火野は、エンゼルさま、と呟きながら衛宮士郎に突撃してくる。

 

突き出されるナイフを横になって躱し、衛宮士郎は莫耶の腹を火野のナイフを持っている手に叩きつける。

 

血を流すのはまずいと思って腹で殴ったが、それでも火野の手からゴキリ、と言う嫌な音がした。

 

 

「びゥイ‼︎」

 

 

手の骨をおられた中年男の三日月ナイフの動きが止まる。そしてそのナイフは床へと落ちた。

そして火野は慌ててそれを拾い、エンゼルさまと何度も繰り返し言った。

 

 

「エンゼルさま、どうなってんですか。エンゼルさま、あなたに従っていや間違いないはずなのに。どうなってんだよエンゼルさま、あんたを信じて28人も捧げたのに!」

 

 

そんなことを言った。

 

 

正直、衛宮士郎は、この男が恐ろしい、と思った。今の今まで、平和に暮らしてきたものだ。すぐにでも逃げ出したい。だが、湧き上がるような何かが、衛宮士郎をこの場にとどめていた。

 

 

「答えろよー」などと変なことを言っている火野。正直早く終わらせたく、このままやっていてもらちがあかないと思い、衛宮士郎は思いっきり腹にきつい一発をいれ、思いっきり足で蹴り飛ばした。

 

するとわだつみの壁にものすごい大きな穴が空いた。

 

そこから火野が飛んでいった。

 

そのあまりの威力の高さに呆然となる衛宮士郎だったらすぐに正気に戻った。

 

 

「ああ。……やべえどうしよう」

 

 

弁償かなと思って、なんとはなしにFateのガラスを直す初級呪文を唱えてみた。

 

すると、周りの床や壁は治った。

 

 

「これは……」

 

 

こーゆー現象を起こすためには、魔術刻印が必要なはずだ。

そう思った衛宮士郎は聖骸布を少しめくってみた。

 

するとそこには刻印があった。それの形はくしくも衛宮家の魔術刻印であった。

 

 

「……どうしたんですか、お客様?」

 

 

ドタドタとそのような言葉が聞こえてきたので、咄嗟に割れた皿を投影し、

すみません、皿を割ってしまって……と言い訳をした。

 

 

その後話し合いで店員さんが片付けてくれることになったので、すぐに衛宮士郎はわだつみの外に出て行った。

 

 

 

外には、倒れ伏した火野神作と、それを取り囲むように、帰ってきていた上条当麻一向、そして赤い色の者ーーミーシャ・クロイツェフがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「金髪サングラスの一一一〈ひとついはじめ〉?」
「何もんだてめえ」

ーー科学と魔術が交差する時、物語は始まる。

次回 不幸な連続



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不幸な連続 Unfortunately Continuous

すいません、先のあとがきでミスりました。
全然先の事を……詐欺ってすみません……。

ーーそれにしても、今回のイベント周回大変ですねぇ。




「うわぁっ‼︎」

 

 

と、甲高い叫び声を上条当麻があげたのも無理は無い。

 

殺されかけている途中でもの凄い速度で飛んできた人影にぶつかって吹っ飛ばされたからだ。

 

 

元はと言えば今日は散々だった。入れ替わりから始まり、ただのクラスメイトだと思っていた土御門が魔術師側からの学園都市へのスパイという事を明かされたり、ただいま世界規模の入れ替わりの術式(よくわからん)が発動中という事を知り、その中心が上条自身だと言われたり、そのせいで上条が狙われているということも告げられ、散々な目にあった。

 

 

主にその散々な目というのは、イギリスのウインザー城にいたお陰で術式の難から中途半端に逃れられてしまった、神裂とかいうボロボロのGパンきた女性が、周りの人には皆に赤い長身の神父に見られるという目にあっていたらしく、上条が、術式の中心だったせいで犯人だと疑われ、パンツをピー(自主規制)される事件のことを主に指すのだが……。

 

 

そしてその散々な目ーー神裂に脱がされた事だけに、とどまらないのが上条当麻の不幸体質と言えるのだろうか。

 

 

……空き缶を踏んづけて、滑ると犬の上で、追いかけ回されてというギャグ漫画的な展開を、さらに超えてホームランボールやどっかの乱闘騒ぎの能力の余波をもろにくらうという出来事は日常茶飯事な上条当麻の不幸ぶりは最早神のレベルとも言いたくなるのだがここでは置いておいて。

 

 

つまり、不幸はそれだけにとどまらなかったという事だ。

 

 

具体的に言うと、その後、赤い修道服の少女に殺されかけた。

 

 

 

……少女との出会いは突然だった。

神裂にあらぬ事をされて傷心の上条当麻は、わだつみへと帰りの足を向けていた。

うだっと先ほど説明されたことを考えながら。

 

 

『御使堕し』という魔術が発動した。

それは莫大な力を持つ天使を手に入れるための術式らしかった。

副作用として、世界中のみんなの中身と外見が入れ替わってしまった

その効果範囲は世界中を覆い尽くすほどあった。

 

 

その術式は未完成の発動状態で、今なら異常を治せるかもしれない。

けれど、完成してしまったらもう直せないと考えていい。

 

 

それを止めるには、術者を倒すか儀式場を壊せばいいらしい。

歪みの中心は上条当麻にあり、どうも上条は術者と間違われているらしい。

 

 

そのせいで上条は事情を知る一握りの魔術師たちに命を狙われるかもしれない。

よって、上条は術式が完成する前に真犯人を見つけ出し倒すなり、儀式場の魔方陣を探すなりしなければならない。

 

 

 

「……、うーん」

 

 

 

そうやってぼやっと歩いていると、視界の隅に赤いものが映ったような気がした。少し取り過ぎてから気になって振り向いてみる。

 

……それは赤いシスターだった。

 

緩やかにウェーブする長い金髪に太陽光に照らされる白い肌。

可愛らしい容姿の少女だったが、身に付けているもの全てが異様だった。

本来なら修道服の下に着るインナースーツの上に外套を羽織っただけ。

しかしあちこちに黒いベルトや金具が付いていて拘束衣としても使えるように作られているらしい。

さらには太い首輪から伸びたリード。腰のベルトには金属ベンチや金槌、L形のバールやノコギリなどが刺さっていた。

 

 

無数の拷問具に彩られた症状を見た上条は、

あーこいつ、多分俺の知り合いでは……?

と予想した。

 

上条は7月28日以前の記憶をなくしているので何故かはよくわからないが、上条当麻は何やら変な格好の知り合いが多い。

 

 

赤い髪の長身神父とか、なぜかシスター服を安全ピンでとめているシスターとか、奇抜な格好の日本刀女とか……。

すると予想がどんどん確信に近づいてくる。

 

 

とりあえず話しかけてみるかなぁ、と思い口を開きかけた瞬間。

その少女は腰に差してある工具の1つ、ノコギリを引き抜いて上条の首筋に押し付けた。

彼女は機械のような平坦な声で、いう。

 

 

「問一。エンゼルフォールを起こしたのは、貴方か」

 

 

上条は言葉を失った。どうやら知り合いではなく、先ほど注意された刺客の方であったらしい。

やべ、殺される、上条当麻が思った瞬間、どこからか聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

 

「ちょっと、そこ待つぜよーーっ!」

 

 

少女と上条の2人がそちらを向く。そちらから向かってきているのは土御門であった。誤解を解いてくれるのかと、思った上条は、次の瞬間横から飛んできた人影に吹っ飛ばされた。

 

 

 

「うわぁっ‼︎」

 

 

 

 

 

 

◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「どうしました?」

 

 

 

外の惨状を見て倒れているツンツン頭な少年を見つけた衛宮士郎はそう声をかけた。言わずもがな、上条当麻である。

 

 

「うわ、大変だ。大丈夫か?」

 

 

そう言ってツンツン頭の少年上条当麻に手を差し伸べる。すると上条は手を掴んで立ち上がった。

 

 

「ええ、すいませんだいじょぶです」

 

 

よかったよかった、と言いながらまわりを見渡す。すると奇妙なメンツが揃っていた。

金髪サングラスに人気俳優の顔がが被って見える。どうやら、衛宮士郎には、元の姿と今の姿が重なって見えるようだ。ミーシャが上条に対して、問いをしていたため、嘘探知の魔術を使っているかもしれないので、できる限り見た通りにいう。

 

 

「って、一一一《ひとついはじめ》さんじゃないか。なんでアロハシャツ着てサングラスなんかつけてるんですか。そちらの方も、男にポニーテールはにあいませ……成る程な」

 

 

そこまで言いかけたところで納得したふりをする。神裂の日本刀に意味深げに視線を送って。

つまりはまず魔術師だってやっと理解したと言うポーズを示すのだ。

一人一人見るように言う。

 

するとその間に土御門が衛宮士郎に向かって怒気を強めていった。

 

 

「何もんだ、てめえ。なんで俺の姿が両方見えてやがる」

 

 

その反応が欲しかった。

なぜならこの時期にかかる上では魔術師であると言うことが欠かせないからだ。

 

 

「俺か? 俺はこの現象と止めようとしてるお前らと同じ、しがない魔術使いだよ。そういう理由だ。どうやら、レジストした人は姿が重なって見えるようだがな。んで、そこのあんた」

 

 

魔術師であれば誰でもいいが気付くと、原作禁書目録の中で土御門は言っていた。

ゆえに気づいたと言う事はアピールしなければならないのだ。あくまでに魔術師であると言い張るならば。ここで魔術使いといったのは、投影なら出来ることがわかっているが、基本的な魔術のことはわからないので、そこをつかれた時に逃げ道にするためである。

 

そしてすかさず上条さんを指名したのは、疑われる間も無く、疑う方に回る作戦の続きである。

 

 

「……俺?」

 

 

キョトンとした顔で上条当麻がそう聞き返してくる。

そして俺はそれに確認と言う形で聴く。

それにはミーシャも続いた。

 

 

「一応聞いとくが、あんたは歪みの原点だ……犯人か?」

 

 

「……私も、問一を重ねて言う。この現象を起こしたのはあなたか?」

 

 

その魔術師2人(1人は偽物だが)の問い詰めに上条当麻はーー、

 

 

「いや違う。本当だ」

 

 

そう答えた。

 

 

「一応私からもイギリス清教の公式見解を述べることができますが」

 

 

神崎が丁寧にも申し出てくれた。

原作で知っていて今は知らないはずのことがあるといけないなと思い、情報をすり合わせるために、状況を聞くならばこのタイミングしかないなと思い、こう衛宮士郎はいった。

 

 

「聞こう。それであんたがイギリス清教というなら、金髪サングラスのあんたと赤いシスターのあんたもそうなのか?」

 

 

「オレっちは、そうだけどそこの赤いシスターさんは知らないにゃー」

 

 

「私はミーシャ・クロイツェフ。ロシア成教『殲滅白書』所属の魔術師だ」

 

 

そしてそれに続くように神崎が衛宮士郎に言ってくる。

 

 

「それで貴方は?」

 

 

「フリー。フリーの魔術使いの衛宮士郎だ」




感想とかお願いします。
あと、最初の方とか何か自分の文章足りないのでアドバイスとかお願いします。

……fgo星5はアルトリアの宝具レベル2と両儀さんしか持っていないのだぜ……?
そろそろ来ても良いではないか。

某英雄「これで来るか……間抜けか俺は! ? 「これで来る」を何度見せつけられればいい! 星5はガチャで出でこない……そんな幸運は訪れない……!」


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破戒すべき全ての符 Rule Breaker

やってしまった感が半端ない。


 

「フリー。フリーの魔術師の衛宮士郎だ」

 

 

こう言っておけば問題は無いだろうと思った。原作でもフリーの魔術師は少ないが、闇咲(夏休みの最終日に上条を襲ったやつのことだ)のようにいる事はいるのだから。

 

 

 

「俺も、俺も言ったほうがいい感じ? 学園都市の学生の上条当麻ですはい」

 

 

上条が空気を読んだのかそんな感じのことを言ってくる。いい加減このすっと入ってこれる人間性はすごいと思う。もっとも記憶にある限り特徴的な人にしか接していないことによる弊害かもしれないが。

 

上条当麻に続き他の2人も、

 

 

「イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』所属の神裂火織です」

 

「同じく土御門元春だ」

 

 

そして一通り自己紹介が済んだ後で。

衛宮士郎は、できる限り自分のことを話さなくていいよう、先程の神崎の言葉を復唱した。

 

 

「こうして自己紹介をしてしまったが、その見解ってやつを伝えてもらおう」

 

 

そして神裂が説明を始めた。上条は魔術知識がなく、術式を発動できるとは思えないこと。超能力者が魔術を使うと肉体に負荷がかかるはずだが、それが見当たらないこと。上条が術式の影響を受けないのは異能の力ならなんでも打ち消す右手、幻想殺し(イマジンブレイカー)によるものであると、見解について語った。

 

 

「成る程な」

 

 

「問二。では先程の魔術行使は? 近傍で魔術行使があったから私は歪みの原点である彼を襲ったのだが」

 

 

げっ、と衛宮士郎は思った。それはきっと、自分の投影によるものであると、確信があったからだ。慎重に言葉を選び答える。

 

 

「あー多分それは俺だ……そこの、伸びてるやつを倒した時に俺が使った」

 

 

ここまで言ったところで衛宮士郎は戦慄を覚えていた。少しの介入とも言えない介入で、これだ。本格的に関わっていくと、どうなるか少し恐ろしく思ったが、もう既に自分がこの世に生きていること自体でバタフライエフェクトは起こっているはずだとそう考え、介入してもしなくても変わっていくのは一緒であると自分を納得させた。

 

 

「解二。了承した」

 

 

「すまなかったな」

 

 

その衛宮士郎の謝罪の言葉にミーシャは無言であった。

 

ミーシャは何かを疑問に思っているようであった。いや、事実その通りであったのだ。上条の方に向き直り、次の瞬間、こう言ったのだから。

 

 

「数価。40.9.30.7。合わせて86」

 

 

ズバン! とミーシャの背後でコンクリートの下から噴水のように水の柱が飛び出した。どうやら地下の水道管が破れたらしい。ものすごい勢いで飛び出した水は、まるで意思があるかのように空に留まり、

 

 

「照応。水よ、蛇となりて剣のように突き刺せ(メム−テト−ラメド−ザイン)

 

 

続けてミーシャが口を動かすと水の柱がマジで蛇のように鎌首をもたげた。ヒュドラやヤマタノオロチのように枝分かれした何本もの水の蛇。

 

その水龍は、上条当麻目掛けて突進した。その直線上ではわだつみがあり、たくさんの関係ない人がいる。

そこまで思い立った時衛宮士郎の体は勝手(・・)に動いていた。

そして飛び込んだ後、こう叫んだ。

 

 

破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)っ!」

 

 

ーー瞬間、紫の閃光がほとばしった。

 

水の蛇が解けた。ものすごい速さで動いていたはずの水龍が、その場に一瞬だけ留まった。その後は、魔術がかけられる前に戻ったかのように、通常の物理法則に従い、水は落下し、水飛沫を地面であげた。魔力の痕跡すら残さずして……。

 

 

「なっ」

 

 

土御門は、そんな驚きの声を上げる。神裂や上条も同様にだ。

 

 

何故なら過程は違えど、それは問わず少年の右腕と同様の効果であったかだろう。

 

 

破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)。Fate/stay nightに登場するキャスターの宝具で変わった刀身をした短刀だ。

 

能力は 刃で突いた対象のあらゆる魔力による契約や魔力によって生み出された生命体の魔力を前の状態にリセットすること。

簡単に言えば魔力を打ち消す事である。

 

故に、魔術に限って言えば、上条の持つ異能を全て打ち消す右手、幻想殺し(イマジンブレイカー)と同じような現象を引き起こすであろう。

 

故に上条たちは驚いたのだ。幻想殺しが希少なものであり、唯一無二のものである例外であると思っていたから。

 

だが、その幻想殺しを知らないミーシャは全くと言っていいほど驚かない。それどころか、無表情のまま、先程の自身への妨害行為について、

 

 

「問3。何をする。あなたは私の敵か」

 

 

そう問うてきた。

衛宮士郎は勿論、敵対する気は無いので、できる限り妨害した理由を先に伝えることで、衝突の回避を試みる。

 

 

「そんなんじゃない。もしこの少年に力がなかったら、後ろの旅館はどうなる。やるなら他の場所でやれ」

 

 

「了承。あなたの言葉には、一定の根拠があったと納得した。では、場所を移そう」

 

 

衛宮士郎はホッとした。なんとか自分の意図が伝わったからだ。ここで天使の魂の入っているミーシャと戦うとか、冗談では無い。

 

だが、ここでの戦いは回避できたものの、危険な行為をしようとしているのに変わりはないのでどうにか止められないかと思って思考を巡らせると、胸元に重さを感じ、気付いた。

 

 

「また物騒なことをするつもりか。それだったらこっちのほうがいいんじゃないか」

 

 

そう言って衛宮士郎はさっき実験したときに投影して懐にしまっておいた、常時魔術的性質を持つとある効果のある剣を取り出す。

 

 

「魔術的要素があることを確認してくれ。それでこれが魔術的要素をもっていて、上条当麻だっけ?彼の右手で触って貰えばいい。だろ?」

 

 

「了承。正当な申し出であると判断した」

 

 

そう言ってミーシャに手渡す。するとミーシャはその剣を手に取りまじまじと見た。

 

 

「確認。この剣が魔術的要素を持っているという事が分かった」

 

 

その言葉に衛宮士郎は再びホッとした。第二関門、突破である。この世界の魔術的要素と、自分の使う魔術の要素が共通していることがわかったからである。

 

もっとも、そうだからと言って、とあるの魔術を使って血管が破裂しないなんて確証はないわけではあるが。

 

ひとまず、自分の投影に疑問を持たれても、魔術体系が、少し違うという言い訳ができるのはありがたかった。

 

 

「では、上条、この剣を触ってみてくれ」

 

 

「……おう」

 

 

目の前でいろんなことが起こりすぎてびっくりしている上条は、衛宮士郎にそう言われて、再起動した。

 

 

「ちょっと待つんだにゃあ」

 

 

「なんだ?土御門」

 

 

いきなり呼び止められて、何か怪しいと思われたのかと思い、緊張する衛宮。なにを言われるのだろうと思ったが、その疑問は上条が聞いてくれた。

 

 

「ちょっとそれこっちで確かめされてもらっていいか?」

 

 

「ああ、いいぞ」

 

 

と、とりあえず、衛宮士郎は剣を渡し、土御門はその剣を手に取る。

その横でその様子を見る神裂は。

 

 

「どうですか。土御門」

 

 

「ふーむ。やはりいわゆるアゾット剣。儀式用の補助礼装……つまりは、杖のようなものかにゃーー」

 

 

「そうですか」

 

 

「調べ終わったので、返すにゃ。エミヤん、それずいぶん高いものだと思うのだが、壊れてもいいのか? 真面目に壊れるぞ、こいつの右腕に触れると。あとさっきのあれは何だ?」

 

 

そして土御門は、再びそのアゾット剣を衛宮士郎に手渡した。

 

衛宮士郎は理解する。先程土御門は衛宮士郎が上条に渡そうとした剣が、高いものだとわかり、それをみすみす捨てるような真似をしたことに疑問を持ったのだろう。

 

また、先程の破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)のこともあってか、その凄みをきかせた土御門の問いに、衛宮士郎は何とか冷静さを保ち、少し飄々とした声で答えた。

 

 

「まぁたくさんあるからな。まぁさっきのは企業秘密だが、まぁその少年の右手の劣化版みたいなものだよ。あの剣は、魔力しか打ち消せない」

 

 

上条、触ってみてくれ、ともう一度言い、かなり遠回りしてしまったが、上条がそのアゾット剣の柄を手にとる。すると刹那もかからず剣はパリンと割れた。

跡形もなく。

砕け散った。

それを見たロシア正教所属という、彼女は。

 

 

「正当。イギリス清教の見解と今の実験結果には符合するものがある。この解を容疑撤回の証明手段として認める。少年、誤った解のために刃を向けたことをここに謝罪する」

 

 

「俺もその少年の右手を認めよう」

 

 

ここでようやく、命の危機がなくなった上条は少し息を吐く。ずっと気を張りつめていたから仕方はないであろう。しかしその安堵感を満喫できないうちに。

 

 

「問4。しかしあなたが犯人でないならば、エンゼルフォールは誰が実行したものなのか。騒動の中心は確かにここなのだが、犯人に心当たりはあるか」

 

 

「あー、……」

 

 

ここで、衛宮士郎が手をあげた。

なぜなら先ほど蹴ったのは、その1番怪しい奴なのだから。接触したという理由として、そして原作から離れないためにも、バタフライエフェクトを考えても、一応疑いはむけておいた方がいいと思い、

 

 

 

 

 

「俺が、さっき蹴り飛ばしたやつ、多分入れ替わってないと思うぜ」

 

 

 

瞬間、その場にいた誰もが息をのんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




うん。最初は衛宮士郎が、剣を渡して上条が剣を割るって言うだけの話だったんだよ?

いつの間にかやらこんなことに。


あと、破戒すべき全ての符の投影をして前に出たのではなく、体を張って前に出てから投影をしたことについて、なんででしょうね?



感想お願いいたします。


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狂人の目覚め Awakening of a madman

遅れてすみません
また説明です。
次回で多分戦闘入りますので、ご了承下さい。


7狂人の目覚め

Awakening of A Madman

 

 

 

 

入れ替わっていない男、火野神作。

 

その男のことについて、朝方に放送されていたニュースから、今日の出来事までをまとめて言う。

 

 

「つまりはこの男は殺人犯でな、『エンゼルさま』と言う謎の言葉を唱えて殺人をしていたらしい。なんか儀式殺人、とかニュースでは言ってたっけ。いうまでもなく、エンゼルってのは天使(ANGEL)だ。そして先程もそう言っていた。この状況で、入れ替わってなくて、天使ってこととなると偶然の一致とは」

 

 

「ーー考えにくい。そういうことですね」

 

 

 

今までの話を総括した衛宮に、神裂が言葉を続ける。ひとまず、説明はし終わった。みんな納得しているようだ。

 

ずっと話していた気疲れと、聖人やマジカル八極拳の如き殺人拳の使い手、天使を前にした緊張感もあり、衛宮士郎はふう、と息を吐く。

 

ただ、納得顔の中、ただ1人浮かない顔の人物がいた。不幸少年上条当麻である。

 

 

「カミやーん、何浮かない顔してるんだにゃー?」

 

 

「いや、土御門の話だと幻想殺しを持っている俺を除けば、『距離』と『結界』がないと防げないって事だったろ? ウインザー城とかだっけ? の結界で時間を稼いだんだろ? じゃあミーシャと衛宮はどうやって回避したんだろうなって」

 

 

「否定。ロシア成教の秘密に触れるので解答を拒否する」

 

 

ミーシャはそう回避した方法を黙秘した。あくまで冷静なまでに。

 

それも、至極当然なことだ。土御門や神崎の所属するのはイギリス清教でミーシャの所属するロシア成教という違いがある、

 

 

「カミやん、ロシア成教と俺たちイギリス清教はいわば十字教という宗教の中の違う派閥なんだにゃーー」

 

 

「そもそも魔術師としては自分の魔術は秘匿するものですから」

 

 

土御門と神裂がご説明に入る。

と言ってもこれは魔術師として当然のことだ。

というのもーー。

 

例えばジークフリートを模した魔術を使う魔術師がいたとしよう。

悪竜ファフニールを倒した英雄ジークフリートは、その竜の血を全身に浴びた。

そのことによって不死身の肉体を得た。ただ一枚の木の葉に遮られて血を浴びなかった背中を除いては。

そのことからジークフリートは背中が弱点である。

 

そしてそのジークフリートを模した魔術を使う魔術師の弱点も背中となる。

つまり、弱点がわかってしまうのだ。

 

 

本来敵対すべき二つの派閥が協力しているのは、この天使を堕とす術式のせいであり、この事件が解決できたら再び対立派閥であるので弱点はあまり晒せない、とのことだった。

 

ちなみに土御門たちがウインザー城の事を出したのは、それで防いだことがわかったからと言って、どう防いだかはわからないからである。

 

と、いつまでたってもわからない不幸な少年に土御門は説明をする。ようやく疑問符だらけだった上条当麻がよくわかったようだ。

 

その話の流れで、

 

 

「じゃあ、衛宮も、聞くのは無理か……」

 

 

と言った。しかし、防いだ原因(?)は自分から晒しているし、インデックスがそれを見たという証拠もある。故にここで言っておいた方がいいと思い、

 

 

「うん? 俺のは別にいいぞ? 別に隠すもんじゃないしな。 と言っても答えは晒しているけどな」

 

 

そのように答えた。すると上条当麻は困惑した顔で案の定、

 

 

「はぁ?」

 

 

と疑問符を頭の上に浮かべた。

その様子を見て衛宮士郎は少し苦笑しつつ、

 

 

「これだよ。この左手に巻いてるやつ」

 

 

そう言って衛宮士郎は、左腕を見せる。そこには先程と同じ、赤い布が巻かれていた。

と、言っても魔術に関しては何もわからない上条当麻には何が何だかわからなそうなので、説明する。

 

 

 

「こいつは、とある聖人の聖骸布でな、効能は外界からの守りだ。外敵じゃなく外界な」

 

 

「……外界と、外敵?何が違うんだ?」

 

 

「敵じゃなく、世界からの干渉を軽減する、ということだな」

 

 

そう、Fateで、第五次アーチャーがこの聖骸布をつけていたのは主に固有結界という世界を侵食する大禁呪に対する世界からの修正を少しでも軽減する効果である。もっとも守護者となった彼にはもはや必要のないものであったかもしれないが。

 

 

 

そして上条への説明に入る。

 

 

 

術式が発動したときには、衛宮士郎は確かに日本にいた。

強力な聖骸布でも、自分は距離が近すぎたせいで完全には回避できなかったこと。

これは、この聖骸布をつけていても、アーチャーの肌が浅黒くなったのが完全には防げないことを示している。

 

 

そのため、衛宮士郎には、入れ替わる前の姿と入れ替わった後の姿が重なって見えている。

これは、これこそは完全に回避できなかった事実である。

そして伝える。そんな自分にとってもこの男は、何も重なっていない火野に見え、先ほども「エンゼルさま」をいっていたと言うことを。

 

一応上条にも、火野神作に見えるかどうか確かめてもらったら、見えるとの事だった。

まぁこれで警察に、殺人犯として突き出すことが確定したのだが、術式の犯人だとしたら突き出す前に確認しなくてはならない。

 

 

 

「まぁそういうことです。赤髪のーーじゃなくて神裂さん」

 

 

 

全てを説明し終えた衛宮士郎はそう言う。もちろんアーチャー云々のことは隠したが。

ここで言う事は、何一つ嘘などないので安心して話せる。

まあ、赤髪と間違えて言ったせいか、神裂がギロッと睨んでくるという事はあったが。

 

 

……聖人の殺意って物凄いですね。

 

 

そんな場違い……じゃなくて正しいけれど正しく思えないような殺意の満ちる空間での感想は、上条当麻の空気の読めない一言によって終わった。

 

 

「そう言えば、何だが」

 

 

「また質問なんだけど、さっきの剣弁償とかされませんですよね」

 

 

「いや、大丈夫だって……」

 

 

そんな上条の家の心配の種の宥めをしている間に、みんなが気持ち無沙汰にしていたが。神裂と土御門が静かに、と言った。そして神崎は腰の刀に手をやる。

その理由は簡単だ。

 

 

 

 

「うっ……」

 

 

ついに、火野神作が、目覚めた。

 

 

 

 

 




むしろ新約の方が構想が進んでいると言うわけのわからない事態に……。


まぁそんなことは置いといて、師匠ピックアップの時に、2回も槍で金が出たんですよ。
あーこれは来た、よっしゃ。と思ってたら両方ともエリザと言う悲しい事態でした。


感想評価お願いいたします。また質問がございましたら、バシバシ感想欄でお願いします。


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翌日 next day

更新遅れてすいません。
いろいろ忙しかったもので。
今回なんかちょっと意味の薄っぺらい回になりましたが、お許しを。
また感想でご指摘いただいたので、言っておきます。
感想欄にはネタバレが含まれております。見たくない人は、見ないようにしてください。


今の状況をかんけつにせつめいしよう。(あえてひらがな)

 

今、土御門というストッパーがない中、神裂さんに問い詰められていて、めちゃくちゃ怖いです。

 

 

 

 

 

 

この状況を説明するにはやはり時系列順がいいだろうから、そのまま言ってみることにする。

 

あのあと後起きた展開といえば、一言で言うと原作と同じであった。

 

二重人格と気づき、犯人ではないと分かり、火野さんは警察に土御門さんにご丁重に届けに行ってもらった。

 

 

まあそういう訳で、手がかりがなくなってしまった上条達は、取り敢えず寝た。

 

 

途中、夜中上条とミーシャが外に出ていて何かしていたが、原作にもあるシーンであるのだから、と思って放っておいた。

 

そしてその翌日、つまり今日になった訳だが、どうやら上条詩奈(当麻の母。インデックスの姿)が家の鍵をかけ忘れたと言って、戻っていった。……つーかこれで火野の立てこもりを許したんじゃないか……と原作とアニメとの共通点を見つけ、衛宮は呆れた。

 

そこで、衛宮士郎はあれ、と思った。

 

なんか、今起きてるのって、アニメ展開じゃね?と。

 

 

案の定、アニメの通りに、

 

上条は自分の考えを話し始める。

 

「御使落しはどんな記録にもない、新しい術式だと言ったよな。だけどミーシャは、それが未完成だと言った。まるで、その意味を知っているかのように」

 

そしてその上、ミーシャは、自分の右腕に触ろうとしなかった、という。

それはすなわちーー

 

「御使堕しを打ち消されたくなかった……?」

 

 

ーーこのことを意味する。

 

「上やん! 行くぞ!」

 

ミーシャが犯人でないかと疑った上条と土御門は、顔を青ざめさせながらミーシャの向かった上条宅へ向かっていった。

 

 

……この後姫神の姿のトラックの運ちゃんに乗せられていくのだろう。

 

 

そんなほのぼのとした想像は長くは続かなかった。

もっとも状況は緊迫している訳ではあるが、そう意味ではなく。

衛宮士郎は命の危機が迫るのは天使が来てからだと思っていたんだ。

 

 

 

 

それはお昼過ぎのことだ。

ロシア成教に連絡を取り合っていたはずの、神裂から話しかけられた。

 

「……話があります」

 

「何だ? サーシャについてあらってんじゃなかったのか?」

 

「いえ、そうなのですが、あの、別件で。……貴方の聖骸布はこの魔術から身を守れるそうですね……少し貸していただけませんか?」

 

沈黙。

その変な発言に思わず周りがシーンとなった。

そんななか、テレビのニュースだけが響く。

 

『な、何と火野神作が見つかったとの情報が入ってきました。どうやら善意の一般人によりーー』

 

2人の視線がそちらの方を向く。

そして再び沈黙。

 

そして衛宮士郎の出した答えは肯定だった。

 

 

 

 

 

その後。

 

「かかる直前からならまだしもかかった後じゃダメだと思うけどな」

 

聖骸布の効能を消さないように魔術的要素に従って、赤い布を切っていく衛宮。

そして出来上がったので。

 

「いいぞ」

 

「有難うございます 」

 

神裂に聖骸布を渡す。

そして先ほどのロシア成教の成果を聞く。

 

 

「そうか、それで……」

 

「そういうことです」

 

そのように話しているうちに、宿屋の親父がこっちに向かってくるのが見えた。

 

「ま、待ってください。何で逃げるのですか?」

 

急いで逃げようとする衛宮に、そんなことを聞く神裂。

 

決まっている。

 

「あれ? 赤髪の兄ちゃん何してるんだい?」

 

そしてやはり宿主はそういった。

そのことが意味することはつまりーー。

 

 

 

「防げていないじゃありませんか!」

 

 

 

これからずっと聖人に追いかけられました。

 

 

 

 

あたりを飛ぶ7のワイヤー。

一つ一つが直撃すれば重症は免れないだろう。

それをブンブンと放ってくるため逃げるしか方法は無い。

 

それから何分経っただろうか。

いよいよ疲れてきた衛宮は、がくん、と膝が折れてしまった。

 

ーーああやばい。これしぬ。

 

そんな一瞬の中、こんな声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

ーー刻印を使え。お前ならできるはずだ。もとよりその体は◾︎◾︎だけに特化した魔術回路であるが、その刻印を使いこなせないと言うわけではない。

 

 

 

 

 

 

そして叫ぶ。

 

 

「ーー固有時制御(タイムアルター)二倍速(ダブルアクセル)

 

 

その瞬間、衛宮士郎の体は2倍の速さで動いた。余裕でワイヤーを回避する。

 

「ふー、危なかった……」

 

そんなふうに一息ついていると、後から、さすがにやり過ぎだと思ったのか神裂が刀を仕舞って向かってきた。

 

 

「すみまーー」

 

「親父はどこだ⁉︎」

 

 

神裂のことばをさえぎるように上条が飛び込んできた。

そしてそのままキョトンとしたまま、先ほど海辺に行ったと伝える。そして再び上条当麻はかけて行った。

 

そして入れ替わるように土御門がやってくる。

いったいどうしたのだと聞く。

すると、土御門は説明してくれた。上条の新居には、魔術的なものがあり、この術式の魔方陣になっていたと言う事。

そして上条の父が、入れ替わっていないと言うこと。

決定的な事実を土御門は告げる。

 

 

「つまりは、上条当夜が犯人ってことだ」

 

 

 

夕焼けで赤く染まる海辺。

 

「……父さん」

 

 上条の悲痛さえして思わせる呼び掛けに、歩いていた刀夜は振り向いた。

 上条は父親と話し始める。

 

 

「……何で、だよ?」

 

「当麻? 何を――」

 

「何でオカルトになんか手を出したんだよ!」

 

 




誤字報告、感想評価お待ちしております。少しだけ次の投稿が早くなるかもしれません。


……雷光きたのだぜ?


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天使と聖人と魔術使いと Angels & Saints & magician

今回挿絵あります。
適当に書いたもので短時間クオリティなので、
見たくない人は見ないで下さい。


「何を、言ってるんだ、当麻。それより―――」

 

 

当夜は、目をそらしつつ、そういった。

その不自然な間の取り方に、上条は突っ込む。

 

 

「シラを切ってんじゃねぇ! どうして魔法使いの真似事なんかしたんだって言ってんだ!」

 

 

上条は、怒鳴った。記憶を失っているとしても、上条にとって当夜は、父であった。

そう、どうしようもなく、父であったのだ。

そして、父だからこそ、その行いが許せなかった。

 

 

 

「あんな方法で願いを叶えようとは……馬鹿なことだとは、私自身も思っていたのだがな」

 

 

静かに当夜は語り出した。

 

 

「なあ、当麻。お前は幼稚園を卒業するとすぐに、学園都市に送られてしまったから覚えていないのかもしれないが……お前がこちらにいた頃。周りの人達から何と呼ばれていたかを、覚えているかい?」

「……、?」

 

 

上条はわからなかった。

なぜそんな話をするかということが。

 

上条はわからなかった。

7月28日以前の記憶をうしなっていたから。

 

上条はわからなかった。

父が魔術を使ったその理由が。

 

 

その答えはすぐに当夜から話された。

 

 

 

「『疫病神』、さ」

 

 

そう言った。

言い切った。

それに繋げて言った。

 

 

「分かるかい、当麻。お前は確かに生まれ持ち『不幸』な人間だった。だから、そんな呼び方をされたんだろう。しかし、それは子供たちの遊びの延長のような、怖い話を聞くときのような好奇心では終わらなかった。大の大人までもが、そんな名でお前を呼んだんだっ! お前はただ『不幸』だからというだけで、そんな名で呼ばれていた! さらに、その範囲にもとどまらなかった! お前が『不幸』をもたらすという考えに縛られた大人がある日、当麻を襲ったんだ!」

 

当夜の、半ば叫びだった。

 

「あの事件で決心を固めた。オカルトなんか信じる人のいない、科学の街に当麻を送ろうと。その街でなら、当麻も襲われることなく暮らせるはずだと。だが、常識など通じず、科学の最先端手法も効果はなし。だから、私はオカルトに手を染める事にした。当麻を『不幸』から救い出したかった」

 

そう語った。

 

「私は、お前の不幸を完全に取り除きたかった。『不幸』とは無縁の、人並みの『幸運』がある生活を送って欲しかった」

 

 

 

そう、当夜が上条にとってどうしようもなく父親であったように、

上条当麻は当夜にとってどうしようもなく息子であった、それだけの話だった。

 

上条が当夜を許せなかったように、

当夜は不幸を許せなかったのだ。

 

 

「だから私は、オカルトに頼る事にしたんだ」

 

 

こうして、父の話は終わった。

 

だけど……。

 

上条は当夜の気持ちも分かったけれど、

 

 

 

「……馬鹿野郎」

 

「あぁそうだ。確かに俺は『不幸』だったよ、この夏休みだけで何度も死に掛けたし、おまけに右腕まで一度は切断されたよ!」

 

㷔剣に襲われ、錬金術師と対峙し、学園都市最強まで相手にした。

それはとても大変で、大変で……

 

でも、

 

「それで俺が、一度でも『後悔』してるなんて言ったかよ!」

 

 

ーーだからこそ、どうしても、当夜が許せなかった。

 

 

「……当麻?」

 

 

何を、言っているのか、当夜にはわからなかった。

 

 

「確かに俺は『不幸』だよ。だけど、そのおかげで、この『不幸』のおかげで出会うことができた人だっている。どれだけ俺が『不幸』だとしても、その人たちと出会うことができたことは間違いなく『幸運』なんだ!!」

 

 

これが、上条の答えだった。

これだけは、間違いなんかではなかった。

決して、いろんな人に会えたことは、決して間違いなんかでは。

 

 

 

 

なかったのだ。

 

 

 

 

そんな、そんな、そんな、そんな上条の告白に、当夜は、決定的な、一言を放った。

 

「……お前、幸せだったのか、最初から……はは、馬鹿だな私は……あんな意味も無い『お土産』ばかり集めて」

 

 

『意味のないお土産』……。

 

その言葉が、上条に衝撃を与えた。

 

 

「ああ。全く、馬鹿な父親だろ。あんな何の効果も無いオカルトグッズで息子の不幸を取り除けると、確かに心から信じてた訳じゃなかったが、それでも買い集めていたのだから」

 

 

今まで上条はあのお土産は当夜が術式のために集めたものだと思っていた。

だが、勘違いしていた。

いま、意味のないお土産、と当夜は言った。

それは、意図して集めたものでないということを意味する。

 

 

「おい、これって――」

 

 

そして降ってきた殺気。

唐突もなく、それは膨れ上がった。

 

 

 

 

◼︎◼︎

 

 

殺気の方向を、

そちらの方向を、上条当麻は隠れていた衛宮士郎は向く。

 

 そこにいたのは。

 ミーシャ=クロイツェフ。

 

天使の、少女だった。

 

 

「ッ……ま、待てミーシャ! 何かがおかしい。父さんは犯人じゃっ!?」

 

 

上条はそういったがミーシャは、聞こうともしない。

その時、衛宮士郎は何だか以前のことを思い出した。

 

 感じられるのは、流れだった。

英雄の持つ濃密な魔力のような、莫大な。

おそらくこれがーー天使の力。テレズマ、と呼ばれるもの。

 

 

「忘れたのですか。なぜこの術式が御使落し(エンゼルフォール)と呼ばれているのかを。……土御門、刀夜氏をつれて、一刻も早くこの場を離れてください」

 

 

「ちょ、まて、なんだってんだ?」

 

「ロシア正教に問い合わせたところ、確認できたのはサーシャ=クロイツェフ。ミーシャ=クロイツェフという魔術師はいないそうです。そもそも名前とは、彼らにとっては神によってつくられた目的そのもの。簡単に交換できるはずがありません」

 

 

 

つまるところ、ミーシャの精神は、天使だったのだ。

それに上条が気付いた時、夕焼け空が暗くなり、月が青く光った。

 

 

 天体制御。

 

……本当に、すごいものだった。たぶん、彼女の鞘に匹敵するほどの。

 

 

「自身の属性強化のためですか……!」

 

神裂は、呟いた。

 ミーシャの背中から水翼が生える。

 

「水の象徴にして青を司り、月の守護者にして後方を加護する者。その名は……」

 

 神の力……ガブリエル。

 

それがミーシャの精神に宿った天使の名前だった。

 

 大天使はその手に持ったバールを頭上へと持ち上げた。するとその直後、頭上で青く輝く月を中心に、魔方陣を形成していく。

三十分程度であの術式が発動する、らしい。

 

 

 

 

 それに対して神裂火織は。

 

 己の身と心と魂に刻みつけた、もう1つの名、魔法名を唱えた。

 

 

 

 

 

「―――『Salvare000(救われぬものに救いの手を)』」

 

 

そして、神崎が突撃しようとした時、

 

 

 

 

 

 

 

ーー青い閃光が天使に突き刺さった。

 

 

「……っ。何を?」

 

 

神裂にはよく分からなかった。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「何って援護だよ。これくらいいだろ?」

 

「貴方は……っ! 相手は天使です。大人しく聖人の私に任せてください!」

 

「いや、そんなこと言ったって……」

 

「引っ込んでろ、このど素人がッ!!!」

 

 

神裂はこう言った。

それに衛宮士郎はこう答えた。

 

 

「引っ込んでなんかいられないさ。だって、ここで天使に立ち向かうという行為に間違いなんてあるはずもないんだからな」

 

「……ですが、」

 

「俺はやるぞ」

 

「私くらいしかコレには対処できないのです。だから大人しく……」

 

 

そのように神裂はいう。

天使とは上位の存在。

故に、人間の上位の存在である、聖人くらいしか届かないのだ。

 

だが、衛宮士郎は頑として聞き入れなかった。

 

 

「いや、そんなことないと思うぞ、俺の効いてるみたいだし?」

 

「そんな馬鹿な……」

 

驚く神裂。本来、天使に人間の魔術師程度の力ではホコリすらつけられない。

しかし、実際に羽根の何本かは消えていたし、動きも鈍くなっていた。

 

 

ーー『宝具』。

 

 

これが、英雄の持っていた武器の宝の一端であった。

 

 

ここに、天使との戦闘は開始された。

天使が一筋の光を撃ってきたのだ。




イヤー、マシュの見ました?
星4ですよ、星4。
あのステでコスト0とか神じゃないですか……。
聖杯11個、使い道に悩みますなぁ。


次回こそ、本当の戦いです。お楽しみに。

感想とか、お願いします。挿絵はやめたほうがいいとか…。
(感想欄ネタバレ多し、気をつけて。)


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果てなき荒野 Endless wilderness

……夏だ、カルデアに夏が来た。


もう言うことはあるまい。


衛宮士郎は気がつくと果てなき荒野に立っていた。

 

風が頬に当たる。何もないところだというのに、どこかこれがすべてであるような気がする場所だった。

 

見上げるとそこには回るものが少し雲に隠れていた。

それがなんだかは、よくわからなかった。少し霞んでいたからだ。

 

その雲の流れてくるほうを辿ると、朝焼けが見えた。

雲が流れ続け、朝焼けの荒野が広がる。ここは少しだけ霞んでいた。

 

冷たいものが当たった気がして振り向いた。

そこに回るものはすでになかった。

 

そこにはーー

 

 

 

 

 

 

I am the bone of my sword.

体は剣で出来ている。

 

Steel is my body, and fire is my blood.

血潮は鉄で、心は硝子。

 

I have created over a thousand blades.

幾たびの戦場を越えて不敗。

 

Unaware of begining.

たった一度の敗走もなく、

 

Nor aware of the end.

たった一度の勝利もなし。

 

Stood pain with inconsitent weapons.

遺子はまた独り

 

My hands will never hold anything.

剣の丘で細氷を砕く

 

――――yet,

けれど、

 

my flame never ends.

この生涯はいまだ果てず

 

My whole body was

偽りの体は、

 

still

それでも

 

“unlimited blade works”

剣で出来ていた

 

 

 

 

ーー星ひとつ存在しない明かりすら無き闇夜。

そして、無限の剣が突き立つ永久凍土の雪原が広がっていた。

 

 

 

どこからか、詠唱が、聞こえた。

 

 

だがその声も、その風景も、徐々に遠ざかっていく。

霞んでいく。

 

 

最後に見えたのは、黄金色のーーーー

 

 

 

 

 

◼︎◼︎

 

 

 

 

 

「なっ、人間の魔術師の攻撃が何故……当たっても無効化されるはずっ!」

 

「ああ、これが普通の攻撃で当たったのが普通の武器だったらそうだろうな」

 

納得いかない、という表情の神裂に衛宮士郎は答える。

 

確かに天使に普通の攻撃は効かない。何故なら天使という存在は人間の上位の存在であるからだ。

そのことは魔術の世界ではセフィラの木の理論によって厳密に定められているからだ。

上位の存在には並大抵のことでは、ホコリすらつけられない。

それこそ、神様の奇跡すら打ち消す右手でも無ければ……。

しかしそれを持つ上条当麻の動きでは、右手を持っていても当てられない。

故に、神裂が残ったのだ。神の子の性質を持つ聖人ならば、足止めくらいならばできるだろうから。

しかし、衛宮士郎はダメージを与えた。

それに神裂は驚きを隠せなかったのだ。

 

その問いに、衛宮士郎はーー

ーー普通の武器であったのなら、と。

 

 

その言葉に神裂はこう考えた。

 

「そういえば貴方のあの剣は、魔剣や聖剣と呼ばれる類のものでした。……ですが、そんなものが数本……」

 

そう。

聖剣や魔剣と呼ばれる類の剣は、見つからない。

ほとんどが伝説上のものであり、また歴史も積み重ねられている。

故に、持っているものは隠してずっと保管してあるし、もし新しく発掘されたとしても科学サイドの博物館行きだ。

そもそもない、という聖剣さえある。

 

故に、聖剣などは持っていてもあんな風に多くは持てないものなのだ。

個人で所有する量など1本、あっても3本がせいぜい。

しかし、先ほどの青い光は(・・・・・・・・)幾筋であったか(・・・・・・・)

 

神裂は天使の攻撃をかわしつつ、疑問を衛宮士郎にぶつける。

 

 

「なぜ、そんなに聖剣などを持っているのですっ⁈」

 

 

その答えは衛宮士郎にとって決まっていた。

 

投影しました〜〜なんて言ったらどっかの女狐や、どっかの☆さんに睨まれることになるからだ。

無限に聖剣とか作れると知られたらなあ……。

 

ここで断っておくが、士郎の元の目標はこの世界を無事に生き抜くことだ。上条の仲間になっていれば死ぬ確率が減ると思っているだけで、自殺願望などない。元はと言えば、転生してなんの力も持っていなかったんだからそうしようという結論だったはずなのだが、なぜこんなことになっているのか。

まあ、世界の人命がかかっているのだから仕方ないとは思うが。

 

話を戻すが、いろんなところに目をつけられたくないのだから、答える言葉はこれだけしかない。

 

 

「俺が作ったからな」

 

「……っ⁈」

 

 

神裂は息を飲む。天使に攻撃を加えられるような剣を現代の魔術師が作れるだなんて、思いもよらない。

作れたとするならば、……。と考えたところで、この少年はとんでもない聖骸布を所持していたことを思い出す。

そういう家系ならば、持っていてもおかしくは無いだろう、と。

 

 

 

 

「まさか、貴方はーー魔剣鍛治師であるのですか?」

 

 

「あ〜〜、うん、そんなもんだ。自分の使う魔術はあんまりいいたく無いんだがな」

 

 

 

 

いい方向で神裂が勘違いをしてくれた。それを肯定しつつも、そう付け加えていう士郎。

魔術の世界では他人の魔術を詮索するのはご法度だ。

それを言っとけば、心根の優しい神裂は後ろめたさを感じてあまり言いふらさないだろう。

 

……すこし心は痛むが嘘は言ってない、嘘は。

 

衛宮士郎はもともと鍛治師のようなものだし。

 

 

 

 

 

と、その時、神裂を援護するように合間を見て放たれていた剣群が、すこし弾かれた。そしてそのうちの1つが、神裂の方へ向かっていった。神裂は聖人と言われるだけあって、とっさに逃れたが、天使の攻撃を受け、日本刀が遥か彼方へ弾かれてしまった。

 

「くっ、しまった!」

 

神裂は歯を噛む。

天使とは聖人である神裂にとってもかなり格上の存在。

そんな相手に得物なしで挑むのはいささか分が悪すぎる。

 

続く天使の追撃を余裕を持って回避する。

 

大きく天使の体勢が崩れるが、天使はすぐに神裂に攻撃を加えてくる。

このままでは、天使をこの場に止めておけない、と神裂が思った瞬間、

 

 

「おい、神裂っ!」

 

 

その声とともに海の彼方に吹っ飛んでいった愛剣が、士郎から投げ渡された。




読んでくださりありがとうございます。
出来れば感想等をお願いします。



ちょっとした補足

固有結界〉あの風景、なんなんですかね?
聖剣と魔剣〉士郎は今のところなのある名剣は作っていません。
神裂の剣〉おーい、アンパン◯ーン、新しい◯よ?


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御使堕し、終幕。Ending of First

まずは一言。
更新遅れてすみませんでした。
テストやら何やらでほんとに忙しかったのです。
今回は雑で、文字数も少ないですが、どうか。
終わりそうもないと思ったので、4巻部分は閉めさせていただきました。
本格的な戦闘シーンを見たかった皆様には申し訳ないです。


その後おきた事は原作通りだった。

衛宮士郎と、神裂が戦っているその間に、土御門と上条が殴りあったりして、最後は土御門が魔術を行使して、上条の家を破壊して終わった。

 

その後事故処理とかいろいろあったが、無事に終了した。その間上条と仲良くなったりしたので、携帯のアドレスを交換した。

 

 

 

「ようやく上条さんの電話帳に新しい人が追加されたのですよ」

「……とうま、友達いないの?」

「ち、違うんです! 上条さんは携帯をなくしただけですよー。正確には踏み潰したみたいなんだけどどうもこうも」

「そこをはっきり言わないとはやっぱりいないんだね。しろー、とうま仲良くしてあげて」

「……お、おう」

「上条さんが友達いないとかそーゆー言い方やめてくれませんかてかそれで決定してるんですか? はあ、不幸だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

 

 

 

そんな一悶着があったりしたが、いろいろと無事に帰った。

そして上条とインデックスが学園都市に帰った後、わだつみで待機していた士郎は土御門と神裂に呼び出された。何やら色々と目を付けられているようだったので、なんとかお茶を濁した。

 

とりあえずその場でいくらでもAUの武器を複製できると分かられてはいろいろとやばいと思うので、士郎はただ呼び寄せているだけだと、そーゆーふうな魔術を使うのだと言っておいた。1回神裂の刀の件があったのでそこのところはすぐに疑いもなく受け入れられた。

あの時渡した方がそうやって召喚して渡したのだと思われていたのは僥倖だった。

 

あと、途中できた、ロシア成教のサーシャの目付役の人が来て、サーシャを引き取っていく時に、サーシャには特別な魔力殺しのアミュレットを渡しておいた。できれば、天使を宿した副作用があれで少しでも改善されるといいなと思った。さすがに天使に関する物を見たりするとすぐに体が言うことをきかなくなるという副作用は重たいからな。

 

 

 

 

 

まぁそんなこんなで日常に戻った俺は、少しずつ鍛錬をしている。

 

さすがに士郎のやっていた、魔術回路を1から生成すると言う事はしていない。1回やろうと思ったらすぐに暴走しかけたのでやめた。むしろあの1回でどこも暴発しなかったのが奇跡な位だ。

 

投影品は魔力が余裕がある時に作りだめをしている。新約に入って世界規模のグレムリンとの戦いになったら、その場その場で作っているだけで追いつかなくなる時がきっと来ると思ったからだ。

 

この点において半永久的に持続する士郎の投影はチートだと思う。比較的魔力を使わなくて済む低ランクの宝具でもたくさんあれば壊れた幻想をたくさんできたりするのだ。

 

 

 

 

 

 

そして、そんな日常を送っていた士郎にある連絡が入った。

かけてきたものは上条。

曰く

 

 

「インデックスが攫われた」

 




重大なお知らせがあります。
今の所、今まで投稿した御使堕し編の全面改訂を計画しています。
理由はクオリティです。私の作品は、感想の方から言われたように、甘いところがあります。
ここをしっかりしないといけないと思ったので、変えさせていただきます。読んでいる時と書いている時はやはり違くて、思っていたクオリティよりもずいぶん下のものとなってしまったことは本当に申し訳ないと思います。
また、その間、御使墜し編の内容は取り下げをするかもしれません。その場合は簡単なあらすじを載せさせていただく予定です。
勿論、その間も、この次の章の更新はしていきますので、今後ともよろしくお願いします。



ーーーーーーーー

インデックスが攫われたと言う上条の言葉を聞き、学園都市周辺まで急ぐ衛宮士郎。
法の書の解読に成功したらしいオルソラというシスター。
彼女をめぐりローマ教会にて自らの正義を守るため、天草式が出陣する。



次章 第2戦場 漆黒教会ローマ正教



「つまりは、迷っちゃったって訳よ」
「……はぁ、案内するよ」

「……とうま、しろーのシュークリーム、美味しいよ?」
「そうだな、インデックス」
「……何幸せそうに士郎のシュークリームを食ってやがる、バーコード神父っ!」

「……天草式の建宮だな?」
「いかにも」


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法の書編
衛宮士郎 prologue


投稿だ。エミヤ超強化記念でな。
1日2回投稿なので気をつけて下さい。


衛宮士郎は転生者である。

 

いわゆるサブカルチャーで良くあるあれである。漫画の世界とかに行ってしまうやつ。

よくあったりするだろう?

Fateの人類最古の英雄王ギルガメッシュに転生して「王の財宝」無双とか、ナルトのサスケに転生して「写輪眼!」とか、伝勇伝のライナに転生して「存在を解析、解除」とか。

まぁ誰でも一度くらいはそういうことを夢想すると思う。

だが、昔の偉い人が言った人間の想像し得るものは全て実現可能であるとはよく言ったもので。

衛宮士郎はその一握りに入ってしまったのである。

 

衛宮士郎は、Fateという作品の主人公で、同作品のアーチャーと言う英雄は衛宮士郎の未来の可能性である。

特別な方法とはいえ、つまりは衛宮士郎は英雄となる素質がある訳であるから、転生したと気付いた時には狂喜した。

だってアンリミテッドブレードワークス、無限の剣製だよ? 鶴翼三連だよ? ローアイアス熾天覆う七つの円環だよ?

厨二こごろが暴走するものばかりではないかっ!

 

しかし、その高揚も長くは続かなかった。

住んでいるところが冬木ではないのだ。いや、それはそれで困るけど。聖杯戦争なんて死亡フラグ突破できる自信ないし。とにかく、調べてみたら冬木市自体がなく、代わりにあったものがあった。

 

 

学園都市。

人口230万人が暮らす超能力者の街。

 

 

『とある』かよ!と思わずツッコミを入れてしまった俺は許してほしい。とあるはとあるである意味型月世界よりもやばいのだ。

 

主にグリムレンとかアレイスターとか女狐とか魔神とか。

ふざけるな。ふざけるな。馬鹿野郎ーーっ!て、切嗣のあの顔で言いたくなったね。

 

元の世界に帰りたいと思ったが、帰る方法がわからん。

そして俺はとあるでは間違えて関わってしまうとある程度の力がないとすぐ死ぬと思ったので、鍛えようとした。型月の魔術、主に投影使いたいからそちら方面で。だが。

 

 

 

……切嗣いないじゃん。

キリツグいなかったら魔術回路の開き方教えてくれる人いないじゃん。魔術回路にスイッチを作らないといけないということを知っていたとして、どこにスイッチを作ればいいのか分からなかったら起動もできないじゃん。

 

型月魔術、使えず。

 

 

 

ではとあるの魔術ならどうだ?

 

魔術回路って一種の才能である。そしてとあるでは才能を持っている人がとあるの魔術を使うと内側から血管という血管が破れる。

……そんな目にあいたくねえ。

 

とあるの魔術、使えず。

 

 

 

では、超能力。

 

もしかしたら、二重能力者になれるかも? ぱっと見、これがいいと思った。しかし、魔術側のインフレについていけないし、そもそもとしてあの都市にはラスボスと目されるアレイスターさんがいる。そして街中に滞空回線という監視網が作られている。そんなところで変なこと言ったら、プランがどうのこうのにされるに決まっている。死にたくない。

 

 

超能力、却下。

 

 

 

何も力がねえ。

どうしようもねえ。

もうこれしかないのか、そう思った。

が、ここで思いついた。ものすごーくメタ的な元の世界に帰るまで無事でいる方法を。

もともととあるは、上条さんという主人公を中心とした物語だ。そして、その中で、味方で死んだ人はほとんどいない。

つまり……。

 

 

上条さんの味方になればいいんだ。

 

 

と言う考え方に陥ってしまうのも仕方がないだろう。だが、これ以上いい案が浮かばなかったので、この計画を進めることとした。

 

学園都市の中には入りたくないので、仲良くなるには上条さんが、学園都市の外に出てきた時しかチャンスはない。そして記憶喪失前の上条さんにあっても忘れ去られるだけ。

つまり、仲良くなるには、第4巻。エンゼルフォールの時だ!

 

すまない前条さん、生き残るためだ。本当にすまない。自分がいたって足手まといだし結果は変わらないと思うから、見捨てさせてくれ。すまない。

 

どっかの龍殺しの文句をたくさん言いつつ、日々を過ごした。学園のブラウニーとも言われることもなく、弓道部の後輩が家に来ることもなく。あ、ちなみに弓道部入りました。目だけは良くて、なんかアーチャーできるんじゃ?と思ったので。ちなみに実力は中の上くらい。神はいなかった。

 

そんなことをしているうちに、俺はこの世界に慣れていった。時間とは残酷である。それなりに仲の良い友達もできたし、顔見知りも前の世界以上になり、原作衛宮士郎のようにたまに人助けもしてみたりしていた。そして、この世界から離れようという気持ちもだんだん薄れてきた。だってとても平和なんだもん。普通にしてたら魔術師なんかあわないし、超能力者もまた然り。

特異なものは特異なものを引き寄せるという理論で巻き込まれることもなく、ただ普通に過ごしていた。

 

そんな7月のある日、学園都市の記事を見つけた。

それは学園都市に七人しかいないレベル5の常盤台中学2年の御坂美琴のインタビュー記事であった。

常盤台中学2年。

美琴が2年生ということは、原作の年に入ったということである。

今の所は平和だが、グリムレンの侵攻とかですぐ死ぬのがこの世界のモブだ。

モブのままではいけない。

 

そう思った俺は前々から調べていた旅館、わだつみの予約をとった。

 

そして上条さんが来る日に合わせて泊まりに行った。もともと夏休みであり、切嗣がいなく一人暮らしであったので、余計な手間はかからなかった。

そして、上条さんがわだつみに到着したのを確認して、眠った。

それが運命だったのだ。

 

 

 

ーーこの日、俺という少年は、運命と出会った。

 

なんて言ってみたり。

だって仕方がないじゃない?

 

俺が目覚めた時、なぜか腕には赤い布が巻かれ、体が入れ替わっていなかったのだから。

 

その後は、ご存知の通りだ。

俺は体が入れ替わっていないことを、他の者に知られることを恐れた。だってイギリスのウィンザー城の結界を簡単に破り、世界中に影響を及ぼせる魔術の使い手なんて誤認された日には、衛宮士郎は終わりだ。

 

危険分子と判断されて即刻処罰されるだろう。というかミーシャという天使の標的にされて、一巻の終わりだ。

 

だが、絶望の中にも希望はあるというべきか、エンゼルフォールという大魔術の影響を受けたためか、魔術回路のスイッチの入れ方がわかったのだ。

 

ただ名前と顔が衛宮士郎と同じだけで、魔術は使えないものだともう思いかけていたのだが。

 

とにかくその時、魔術回路の開き方がわかったのか、投影が使えるようになった。

要は、宝石を飲んだようなものだろう。あれは宝石に込められた魔力を取り込む事で魔術回路のスイッチをつくる。今回の場合、大魔術のという魔力の塊をぶつけられたから、スイッチを認識できたのではないだろうか。

 

そして、隠れていようとも思ったのだが、聖骸布をインデックスに見られたこと。火野に襲われたところに上条さんたちが駆けつけてきて見られたので、隠れるという手は使えなくなった。

 

そもそも隠れていたところを見つかったら隠れている理由を説明できず、犯人にされてお陀仏という可能性も高かったからなんとも言えないのだが。

 

 

そして成り行きで天使と戦い、神裂の吹っ飛んでしまった刀の代わりに投影物を渡したりして勝利した。

 

……そういえばあの刀、大丈夫かなぁ。

神裂はそのまま持って行っちゃったけど、戦ったりして下手に欠損したりすると投影品は幻想を保てなくなって消失してしまうからなぁ。

 

アックアと戦うまでには回収しておかないと。でも刀はどうしよう? あのあと何日間か捜索したけど見つからなかったんだよなぁ。海の中潜ったりしたのだけど。

 

まぁ今度魔刀をあげるという名目で、交換すればいいかなぁ。魔剣は欠損が酷いと世界に還元されるとかなんとか理由をつけておけば問題はない。要は神裂の刀が消えてしまうことが問題なわけだから。そうすれば神裂の戦力増強、こちらの魔術を知られることなし。

両方得だな。

 

 

あと、当初の目的であった上条さんと仲良くなるは成功した気がする。

……会って見るととても不幸でいい人だったよ。

 

……。

 

……。

 

すまない。前条さん、本当にすまない。

 

 

そんな感じで御使墜しの一件は終幕となった。そして、俺こと衛宮士郎は、元の高校生活へと戻っていた。

 

尤も、完全に同じというわけではない。

魔術の鍛錬などが日課に入ったからだ。

毎日一本Bランク宝具投影は良いぞ。全く消滅しないから倉庫に溜まる一方だ。すでにBランク宝具真名開帳を連続で50回くらいできるくらいにはたまった。

 

また、何故か腕についていた魔術刻印の使い方もだいぶわかってきた。それで銃刀法に引っかからないように認識阻害とかの結界を家に貼っている。一人暮らしなので迷惑はかけないのが、とても良い。

 

……でもこんだけしてもまだ足りないんだよなぁ。魔神とかチート臭いよなあ。本当に、世界を塗り替えることができるんだから。

 

そうそう、世界を塗り替えると言うと固有結界があるが、『無限の剣製』は何故か使えていない。いや、アーチャーや士郎とは心象が変わりすぎているからだということはわかっているのだが。

 

だがかなり変わっているプリズマ★イリヤの美遊兄でも雪原のやつ発動できたのだからいいだろーがーーっ!

はぁ、無限の剣製が使えないということでエキサイトしてしまった。

 

そういえばプリズマ★イリヤの作者が言ってたな、この作品はスピンオフで設定が本編から輸入されることはあっても逆はないと。

 

まあ、そんなこんなでただいま、衛宮士郎は日常を過ごしている。

 

 

 

ヒュっ! バシュン!

 

「おー、衛宮。調子良いじゃないか、最近腕を上げたな。夏休み中、こっそり修行でもしていたな?」

「いや、そこまではしてないよ、主将」

 

放課後の部活タイム。今日は午前授業で始まりが早い。

弓道場で、俺は弓道場の主将に話しかけられた。そう、何もしていない。

夏休みの間わだつみに行ったりして、なんも修行していないのに何故か。

 

元の俺の弓の実力は中の上くらいであった、といった。しかしなんかわからないけど飛躍的に上がっているのだ。どのくらいかというと……

「衛宮先輩百発百中なんじゃね?」

「先輩凄いよねーー」

と、言われてしまうくらいには。

 

伸び代がやばい。何故だ。

まあ、そう言っても考えられる理由など1つしかないが。魔術回路の起動のせいだろう。

 

あの事件のあと、魔術回路で修行をしたりしていると、ものすごく集中できる時がある。この時の感覚は投影をしている時にはうまく集中できることは少ないが、弓道だと本当に簡単に集中ができる。

 

まだ原作で衛宮士郎が言っていた、当てるのではない、すでに当たっている、という感覚は全然わからないが、狙いは本当に正確になっているのだ。

 

「これにて、本日の部活動を終了する」

「「「「「「「「「「「ありがとうごさいました」」」」」」」」」」」

 

こうして、今日の部活は終わった。

これからは家に帰って自炊をして、魔術の鍛錬だ。早めに着替えて荷物をまとめ、帰ろうとする。すると、まだ弓道着の主将に呼び止められた。

 

「おい、衛宮。本当に何があったんだ?教えてくれよ。弓道のこと」

「いや、俺が教えることなんて何もないよ」

「謙遜しやがってこいつ」

 

主将は不機嫌そうな顔でこちらに目を向けてきた。俺ははあ、と息を吐き、

 

「そんなつもりはないんだけどなあ。……じゃあな」

「ああ、便利屋、じゃあな」

「便利屋ってなんだよ」

「最近人助けなんか増えてるだろう?そのせいで言う人多いぞ」

「いや、あれくらい普通だろ? 」

「そうか」

 

そう言って、納得したように主将は弓道場の中へと帰って行った。

その後、俺は家への帰り道を歩いていた。午前授業からの部活だったので、今ではまだお日様は上のほうにある。

 

ブルルルル、ブルルルル。

 

そこで電話がかかってきた。携帯が鳴っている。携帯を開くと、相手は上条だった。

何が起きているのだろう、と思う。

オルソラの件は明日のはずだ。

今日かかってくる意味がわからない。

取り敢えず電話に出る。

 

『おい、衛宮か? 大変だ』

「おう、当麻、どうしたんだ?」

『インデックスが、攫われた……っ』

 

……ああ、そんなことがあったなぁ。オルソラの前にステイル−マグヌスさん14歳がインデックスさんをさらうのでしたっけ?

 

『学園都市の外の可能性もある、頼む、来てくれないか?こっちは学園都市から自由に出られないんだ!』

「いや、ここから新幹線で1時間くらいか? それでも良いなら」

『わかった。お金なら俺が後で補填……補填してやるからっ!……もやしご飯で切り詰めて……。早くきてくれ、たのむ』

 

そんなわけで、俺は学園都市の近くまで来ることとなった。ステイルさんの可能性が高いが、そうでない可能性もあるからな。

そうこう2時間くらいで探していると、上条さんから再び電話があった。

どうやらステイルだったらしい。

現場に向かってくれ、ひとまずインデックスは安心、と言われた。

 

そして現場への途中。

 

そして、俺が学園都市近郊で見つけたのは……困っている金髪の女性だった。取り敢えず困っているようだったので声をかけてみるか、と思った。

ただ、それはオルソラではなかった。

 

 

 

「うう、どうしてこんなことになってる訳よっ!」

 

 

 

ーーえ、なんでアイテムの1人がこんなところにいるの?

 

 

俺の前にいるのは、アイテムのもうすぐで死んでしまう、フレンダ・セイヴェルンだった。

……やべ、死亡フラグじゃん。

 

 




ー補足ー
前条……ドラゴンブレスで記憶を失う前の上条さんのこと。
竜殺し……ジークフリート。すまないと言いすぎて、Fateファンからはすまないさんと言われる。FateGOではとても不遇されている。
なんでアイテムの1人がこんなところにいるの?……「しろー、お金ください」「お金いるの?」カニファンより。

ーーーーーーーーーーーーーーー
祝、fgoエミヤ超強化。
これやばくないですか?やばいですよね!
鷹の目からの投影魔術からの、クイック宝具アーツで星生成40前後。
次ターン、次次ターンまでクリティカル威力超アップ。
すげえ。


感想評価、お願いいたします。


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フレンダ・セイヴェルン "A girl of items"

かなり遅れてすみません。
挿絵があります。見たくない人は非表示設定でお願いします。


「うう、このまま箱に圧迫されて跡なんて付いた日にゃ自慢の脚線美が台無しって訳よ!」

 

 

そう叫ぶのは大小様々、色取り取りの箱の山に埋もれる金髪ウエーブの少女。

 

まるでギャグパートの1シーンのように顔だけその箱の山から出している。カタツムリ、という表現が正しいであろう。

 

そして、彼女の発言から見るに、彼女の上には丁度大きい青色包装の箱が乗っかっており、その周りの箱の配置などが作用して脱出不能になっているようだ。

 

それを見た衛宮士郎の言葉というと、

 

 

「その、……大丈夫か?」

 

 

そんな、月並みなセリフだった。

 

 

「そう見える訳?ねぇ、ちょっと助けてくれるつもりがあるんだったら、ここんとこの箱を持ち上げてくれないかなぁ……って」

 

 

その少女の懇願に、断る理由もなく、衛宮士郎は「よし来た」と言って、箱を1つづつ持ち上げて、近くのベンチの脇に壊さないように運んでいく。

 

そして彼女の上に乗っかっている大きな箱の順番まで来た時、沈黙しておとなしくしていた彼女は急に声をあげて、

 

 

「……そして現れる私の脚線美っ!!」

 

 

美少女などと言った者に慣れていないため、目をそらしていた衛宮士郎は、話題をそらすために、勤めて平坦な声で言った。

 

 

「そんなこと言ってる間に自分で抜け出したらどうだ?」

 

 

「あれっ?」

 

 

何かしらの反応が返ってくると思っていたのか、スルーされた現状に、そんな間抜けな声をあげる彼女。

 

うぬぬ、というかのように、暫しその金髪の彼女ーーフレンダ・セイヴェルンは沈黙した。

 

 

 

 

 

 

 

◾︎◾︎

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、貴方も男だというのなら、この私の! この私の脚線美に見惚れるべきだわ!」

 

 

ツン、と済ましたような顔で得意げに話す金髪の少女(フレンダ)は、先程からそのように悪態をつきながら、その自慢の脚線美を見せつけるためか、ベンチに脚を組んで座っていた。

 

ちなみに、まだ箱はベンチの周りに運び終わっていない。自分の物を自分で運ぼうとしないフレンダを見て、衛宮士郎は、

 

 

「自分でも運んだらどうなんだ?」

 

 

「あーー痛いさっき圧迫され続けたのがダメだったのかもしれない訳よ」

 

 

凄く棒読みなセリフを吐きつつ、自分の足をさするフレンダ。自慢の脚線美をスルーされたのがよっぽどショックだったのだろうか(先ほども言った通り、衛宮士郎は目をそらしていry)、又しても脚を強調するようにさすっている。

 

どう見ても運びたくない、働きたくない人のセリフなので、衛宮士郎はそれをバサッと切って捨てた。

 

 

「嘘だろ」

 

 

「バレたか」

 

 

てへっ、と言わんばかりに舌を少し出し、右手をコツン、と頭に当てるフレンダ。ここ数分でスルースキルが格段に上がっている衛宮士郎は、黙々と作業を行っているため、後数個の箱だけが、先ほどの場所に残っていた。

 

 

「まあいいよ、もうすぐて積み上がるし、ああ、そういえばーー」

 

 

そこで、出てくる前に作っていたシュークリームを思い出す衛宮士郎。衛宮士郎となった衛宮士郎は衛宮士郎といえば料理だよな、ということで、幼い頃から料理には励んでいたため、一定の自信はある。

 

もともとインデックスに取り入っておくために用意していた物だったのだが、フレンダの機嫌が悪いことを見て、ここで出してもいいかと思い、箱をベンチの脇に置いたついでにベンチに置いてあった自分の荷物からシュークリームを取り出す。

 

 

「まあ、このシュークリーム、ーー食うか?……余計に作りすぎてな」

 

 

そう言ってシュークリームをフレンダに渡す衛宮士郎。それを受け取ったフレンダはといえば。

 

 

「ふうん、どうせなら鯖缶出せって訳よ、鯖缶を!」

 

 

 

 

 

 

フレンダにシュークリームを渡して少しした後、衛宮士郎は全ての荷物をベンチの横に運び終わった。

 

荷物を全て運び終わったために、衛宮士郎はフレンダが座っているベンチの横に腰かけた。

 

先程、荷物を運んでいるうちに一通りの説明を受けた衛宮士郎は、視線を横に向けないようにしつつ、確認のため、少女から聞いた言葉をまとめる。

 

 

「つまり君は、学園都市の学生だが、友達のためにプレゼントを学園都市の外に買いにきたが、買いすぎて持てなくなった、そういうわけでいいのか?」

 

 

「……」

 

 

しかし、フレンダに返事はなく、不審に思った衛宮士郎は、そこでようやくフレンダのほうに目をやった。

 

 

「……(ぱあああ)」

 

 

フレンダは、硬直していた。衛宮士郎は、一瞬フレンダの周りに花が舞っているかのように幻視した。その表情に一瞬見惚れ、同様に固まってしまう精神は一般人な衛宮士郎。

 

しかしなんとか再起動し、フレンダの肩を掴み前後に少し揺する。

 

 

「おおーい?」

 

 

そこで、なんとか再起動したフレンダは、手の中にある空になったシュークリームを包装していた紙をじっと見つめ、

 

 

「……鯖缶の次くらいには認めてあげてもいいわ……」

 

 

と、のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、何って訳よ?」

 

 

ようやく最初の話題に戻ったことに衛宮士郎は安堵の息を漏らす。

 

 

「……はぁ、これ全部プレゼントということか?」

 

 

そう言って、衛宮士郎はベンチを囲む壁のように積み上がっている箱の軍団を見渡した。本当に多かった。

 

それにフレンダは得意げに答える。

 

 

「多少違うのも入ってるけど、率直に言えばそういう訳よ」

 

 

「で、なんで持てなくなるまで買った?」

 

 

これは衛宮士郎の純粋な疑問である。

そもそもとして、そのプレゼントは概算にして三十を超えている。積み上げると軽くタワーだ。

 

これでは持とうにもすぐに崩れ落ちてしまうだろう、ましてや女の子ならなおさらだ、と考えたところで、フレンダは近接戦闘も得意だったことを思い出す。

 

……それならギリギリ、運べていたことにも納得だ。

 

それにしても、こまめに買えばいいのに、と思った。

 

 

「ほら、私って友達多い訳よ。今回のプレゼントを保管しておく部屋まで借りたんだけど、それをいっその事埋め尽くしてやろーーって訳」

 

 

「あぁ、それはまた……ものすごいことで」

 

 

その言葉を聞いた衛宮士郎は、なんとも言えない気持ちになった。

 

1つは部屋を埋めるとか実際に聞くとやばいなということ。

 

もう1つは、……藍花悦……。

 

うう、これら全てが遺品になってしまうとは考えていなかったんだろうなぁ、ということ。

 

……この件についてはあまり考えないことにしようと、衛宮士郎は決めた。

 

できる限りフレンダの所属してある学園都市の暗部なんぞには関わりたくないと思っていたから。

 

だから、フレンダにもあまり深く関わりたくはないのだ。

 

先程助けたのは学園都市の外だったということも大きいし、あそこで見捨てるのもなんか悪かったからだ。

 

 

だから、少し話して、別れるつもりだった。

 

 

「うぅ、どうしよう」

 

 

少し涙目になり、目を潤ませるフレンダを見てしまう前までは。

 

 

向かいのバス停にバスが止まったのか、少しだけフレンダの髪が揺れる。

 

 

そこで、衛宮士郎はようやくはっきりと、フレンダ・セイヴェルンの顔をしっかりと見た。

 

暗色系のベレー帽と服によく映える大きく波のように揺れる金髪。そして水で満たされたかのような青い瞳。

 

そしてそれが、フレンダのことを想起させる。

 

 

 

 

『とある魔術の禁書目録』において、フレンダ・セイヴェルンは学園都市暗部組織『アイテム』のメンバーである。

 

そして、暗部組織の抗争の際、捕まって情報を漏らしてしまい、アイテムのリーダー、学園都市Level5第4位『原子崩し(メルトダウナー)』麦野により、粛清され、上半身と下半身が分かれて死んでしまうのだ。

 

その後、彼女の死は様々なところに波紋を与えていくのだが……。

 

 

『……ああ、私に殺されるために生まれてきたんだって!』

 

そんなセリフが思い浮かぶ。結局、彼女は、性格はいいとは決して言えない。何せ、裏仕事の暗部組織の一員だ。普通なら関わりたくないであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ、最後に衛宮士郎がなぜか思い出したのは、先程自分の作ったシュークリームを幸せそうに頬張った後のフレンダの顔だった。

 

それを思い出した時、なぜだかは分からないが、目の前で困っているフレンダを、衛宮士郎はどうしても見捨てられなかった。

 

当初の目的であったインデックスの誘拐は、虚言誘拐であることを知っている。

 

ならば、と。

 

衛宮士郎は、ベンチの横にある荷物の3分2ほどを抱えて、

 

 

 

 

「で、どこに行くんだ?」

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 




感想、評価をお願いします。

ちなみに道路の反対側では、オルソラと上条さんが押し問答をしていたとさ。


次回、

「え、なんで学園都市の外だっていうのに物騒なもの持ち歩いてる集団がいる訳ーーーーーーーっ!」

とか言いつつショッピングするだけになりそう……(あれ、それってほぼデーt)





そして挿絵。……すまない、オルソラは難しすぎたんだ……。


……FGO、土方さん3枚目……新撰組だァ!


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フレンダ・セイヴェルン2 Canned mackerel and cream puff

なんか、自分、だいたい3000書いたら投稿してるんですけど、7000余裕で超えた件について。


荷物を持って歩き出した瞬間に、涙がすぐに止まったフレンダを見て、衛宮士郎は、戦慄を覚えた。と言うのは、荷物持ちをする選択をしたのは早まってしまったかと、そう言うことだ。

 

(……まさか嘘泣きだった……だと?)

 

つまりは都合の良い荷物持ちになりそうな衛宮が目の前にいたから、フレンダは嘘泣きして衛宮を荷物持ちにしようと画策して、まんまと衛宮はそれにはまってしまったと言うことだった。

 

流石は美少女で暗部ということか、人を乗せるのに手馴れてる感が半端ない。

 

多少ぐんなりとしてタワーのように積まれた荷物の隙間から、前をズイズイと進んでいくフレンダを見て、追いかける。

 

 

そして、衛宮もよく聞くブランド店を数軒梯子した後、フレンダは汗を拭いつつ、ようやくのことこう言った。

 

 

「ふぅ、結局、私にかかればプレゼント買うのなんてこうやって、すぐ終わる訳よ」

 

 

「ここに、すごい功労者がいると思うのだが」

 

 

まるで自分だけでことを成し遂げたというような口調でいうフレンダに、両手で箱のバランスを保ちながら衛宮はツッコミを入れる。

 

既にフレンダが持つものと衛宮士郎が持つもので40を超えた箱が持ち運ばれていた。そのうちの30個ほどが衛宮士郎によって運ばれているといえば、衛宮の苦労はわかってもらえるだろう。

 

 

「はいはい、とても感謝してるわ」

 

 

「こいつ流しやがった」

 

 

「何?」

 

 

「何でもない」

 

 

ボソッと出た本音は、フレンダには聞こえなかったのか、聞き返してくるものの、衛宮はそれをごまかす。

 

それで納得したかは分からないが、少し不思議そうな顔をしたフレンダは、何かに気づいたように顔を少し上げた。

 

そして少し言いにくそうにフレンダは、

 

 

「えーっと、名前まだ聞いてなかったわね。私の名前はフレンダ・セイヴェルン。学園都市に住む女子高生だって訳よ」

 

 

そこで衛宮はまだ自己紹介をしていなかったことに気づいた。

 

最初に箱に埋もれているところから救出し、ベンチで少し話した後、そのままここまで歩いてくると言う一連の流れがスムーズに行きすぎたので、互いのことはあまり話していなかったのであった。

 

要は入学式とかで、初対面の同年代の人とゲームのことで話して盛り上がったものの、そちらを話しすぎて、互いの名前は聞かなかったと言う状況に近い。

 

 

「衛宮士郎。学園都市の外に住んでる、ちょっと変わった高校生だ」

 

 

正直に言うと、先程も言った通り、暗部組織にはあまり関わりたくはないので、衛宮は適当な偽名を名乗ろうかとも思ったのだが、すぐに見抜かれて終わりだと思ったので、やめた。

 

衛宮のイメージ的に、暗部組織の人間は、嘘を見抜く能力に長けている気がしたからだ。

 

また、共に少し過ごして考えが変わったところもあった。

 

フレンダは友達が千人以上いて、その人たちが暗部に関わってはいないのだから、別に大丈夫だろうと。

 

実際、佐天さんなどは、(攫われたりしたものの)暗部入りなどはしていない。

 

そんな思考に囚われている衛宮に、それを遮るかのようにフレンダは言った。

 

 

「じゃあ、士郎、これで最後! 郵便局に行くわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園都市の外では有名な某郵便局。

 

そこにたどり着いた二人は、すでに疲労困憊であったが、なんとか郵便局の中に大量の荷物を運び込み、フレンダは大量の宛先の紙を書き殴り、衛宮はその少し横にぐったりと座っていたのだった。

 

ちなみに、衛宮が衛宮士郎となった時から、筋トレは欠かしていなかったにもかかわらず、衛宮が疲労困憊であるのは、荷物のバランスをとりつつの移動であったためだ。

 

向かいからやってくる人に荷物が当たらないように、気をつけながら、荷物自体が崩れないようにも気を配ると言った作業は、歩いた距離や、荷物の重さ以上に衛宮を追い詰めていた。

 

例を挙げると数学の問題のようなものだろう。数式として出されれば、簡単な問題でも、文章題となり、それを『読み解く』と言う余計な一手間が加わるだけで、正答率がグッと下がる。

 

この場合、衛宮にとってのその余計な一手間が、二手間もあったのだった。具体的に言うと『周囲を警戒』しつつ『バランスを保つ』と言う手間まである。

 

そんな疲れた衛宮士郎の横で、フレンダはせっせと住所を描き殴り続けていた。

 

先程からその様子を見ていた衛宮だったが、外界から隔離された学園都市に運び込む荷物だと言うのに、さほど検査もされず運び込めることに違和感を覚えた。

 

 

「学園都市行きの荷物ってこんなに簡単に通るんだな」

 

 

その疑問にフレンダは書きなぐり続けたまま答える。

 

 

「そうね。人も物も中から外へはかなり制限されてるけど、外から中は割と楽かも、

結局、技術流失とかが一番怖いって訳よ」

 

 

「成る程なあ、……じゃあ君もここにいるってことは手続きとか大変だったのか」

 

 

「私の場合は多少のズルはしたから割と楽だったけど、普通に出ようとしたら複雑な手続きが必要らしいわ」

 

 

そのズルってなんだろうと思う衛宮だったが、突っ込むとやぶ蛇にしかならなそうなのでスルーすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フレンダが十数枚にも及ぶ宛先を書き終わり、二人はほとんど手ぶらの状態で、外に出てきていた。

 

もっとも手ぶらといっても衛宮はシュークリームの入ったクーラーボックスを肩にかけているのだが。

 

辺りはというと、既に日は傾き、もう少ししたら西の空は赤く染まるだろうと言うところまできていた。

 

軽くなった肩を軽く回したあと、フレンダは凝り固まった筋肉をほぐすように背伸びをした。

 

 

「うーん。疲れたーー」

 

 

「疲れたのはこっちだ」

 

 

すかさずツッコミを入れる衛宮。この半日で先程のスルースキルに加え、ツッコミの早さも地味に上がっている実感が彼自身存在した。

 

 

「そりゃ当たり前な訳よ。こんな真夏日に長袖なんて着てるんだから」

 

 

そう。衛宮ははたから見れば、長袖の服を着ているような見える。はたから見れば。

 

というのも、聖骸布に理由がある。誰かに魔術を掛けられた時などに備え、防御手段として聖骸布は常につけておきたい。

 

しかし、赤い布を腕に巻き付けているのは、はたから見ればとても変だ。と言うか、そんなことをしていたら、学校で先生に注意されることが常態化していただろう。なので、魔術を使い、長袖を着ているように見せかせているのだ。

 

つまりは、衛宮は右腕の聖骸布を除けば、実質半袖であるのだ。

 

それを直接言うわけにもいかず、半袖に近い通気性の服であると言う説明をする。

 

 

「これは素材が薄くて換気性がいいものなんだよ。別に半袖とは変わらない。疲れたのは荷物の方だよ」

 

 

それを聞いたフレンダは自分のせいと言われていると思ってムッとしたのか、すかさず髪の毛を背中の方に払いながら、こう言う。

 

 

「でもまぁ、こんな美少女と、一緒に時間を過ごせたんだから良かったんじゃないって訳よ」

 

 

「自分で言うのな」

 

 

その髪の毛を払いつつもキメ顔をキメるフレンダは、確かに美少女といっても過言ではないが、発言はどうかと思う衛宮。

 

 

「それとも私、美少女じゃない?」

 

 

「はいはい、認めます。美少女ですよー」

 

 

不安げそうに瞳に涙を潤ませながら言うフレンダに、衛宮はこう言うしかなかった。

 

いくら衛宮士郎という名前で、衛宮士郎の外観で、衛宮士郎の能力を持っていても、精神は一般人。前世があるといっても、普通の高校生(『とある』基準の普通の高校生ではなく、世間一般でいう普通の高校生)の記憶しかない。

 

芸能人のような容姿の人とは直接あったことはないし、ましてや、そのような容姿に対する耐性など、皆無に等しかった。

 

美少女であると認めたことにより、フレンダはうんうんと頷きながら、

 

 

「それでいいって訳よ」

 

 

フレンダは満足したようにそう言った。

 

レベルアップしたスルースキルを存分に発揮し、なんとか話題をそらそうと、画策する衛宮。このままだとズルズルと浜面ポジションに入ってしまう感が否めなかった。

 

 

「で、フレンダはこれからどうすんだ。ちょっと夜にはやることあるからずっと構ってはられないぞ」

 

 

言外に、そろそろ用事あるんで、ということを忍ばせた言葉を送る衛宮。

 

それに対してフレンダは、衛宮の袖(正確には聖骸布)を掴み、

 

 

「あ、ちょっと待って、お礼と言っては何だけど、ファミレス寄らないかなーって訳よ。もちろん、私の奢りよ。尤も、スーパーに先に寄らせてもらう訳だけど」

 

 

と言った。

なんとまあ、奢りという落差。常時金欠の高校生(上条によって補填される約束ではあるが、新幹線できたことによって残りは心許ない)にとって、救いであった。今まで小悪魔だと思っていたフレンダが、一気に救いの女神に見えてしまうほどには。

 

男としては同年代の女性に奢られるのはどうなのかと思うが、そこに思い至らないのが、彼女いない歴=年齢プラスαの衛宮なのであった。

 

それにしても最後に、気になることが1つあった。

 

 

「スーパー?なんでだ?」

 

 

その衛宮の問いかけに、フレンダはニヒルな笑みとサムズアップをして、こう言った。

 

 

 

 

「結局、鯖缶買わないと私のファミレスは始まらないって訳よ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鯖缶も買ったし、ファミレスにも着いたし、私のファミレス人生はここから始まるって訳よ!」

 

 

学園都市の中とも提携があるファミレスに入った二人。

 

世間一般の夕飯のタイミングより少し早かったためか、二人はすんなりと席に案内された。席の場所は窓際で、フレンダの容姿から考えて、どこぞで聞いた、『容姿のいい人が来たら店の外から見えやすい場所に案内する』という眉唾だと思っていた話は、本当なのかもしれないと思い直した。

 

そんな衛宮に再び気になる単語が。

 

 

「ファミレス人生ってなんだよ」

 

 

「そんなのその場のノリで流すのが常識って訳よ!」

 

 

「……」

 

 

 

 

理不尽な常識(幻想)ってやつを衛宮はぶち殺したくなった。

 

 

 

 

そんな衝動にかられる衛宮であったが、近くにサーバーが来たことで邪念が振り払われた。

 

 

「ご注文の品です」

 

 

そうやって目の前に出された白色の品を見て、ナイフとスプーンを両手に持ったフレンダがテンションを上げる。

 

 

「キタキタキタキターーッ!美味しそうなグラタンが来たって訳よ!結局、グラタンは鯖缶の最高の付け合わせって訳!」

 

 

「グラタンのほうが付け合わせなんだな」

 

 

少し引いた声で衛宮は率直な感想を述べる。

 

もっとも、フレンダは既に食べ物に夢中なのか、そんな衛宮の言葉を気にすることなく、スカートの中から取り出した缶詰開けでフレンダは先程スーパーで買った鯖缶を開ける準備を整えていたが。

 

そしてフレンダが金属の棒を缶詰の蓋の端に差し込んだとたん、プシュッ!!という音とともに中の液体が棒と蓋の隙間から勢いよく飛び出て来た。

 

 

「わ、わっ」

 

 

驚いて鯖缶を手から離してしまうフレンダ。重力に従い綺麗な放物線を描き続けて落ちていく鯖缶は、

 

 

「おっと」

 

 

衛宮によって床に落ちる寸前でキャッチされた。先程まで、事あるごとに些細なミスをするフレンダをフォローしていたのが生きた形だ。そして、とった鯖缶をフレンダに差し出す。

 

 

「ほら、気を付けろ。食べ物を粗末にするな」

 

 

「ぁ……ぅ……ありがと」

 

 

なんとか鯖缶は無事ですみ残りの蓋をなんとか開けるフレンダ。自らの頼んだ品が来るまで机の上を紙で拭く衛宮。

 

そんな衛宮を尻目に、今の出来事をなかったことにしたいのか、フレンダは何事もなかったように食べ始めた。

 

もっとも、先程までとは違い、調子に乗らず、無言であったが。

 

まあ、しかしそんな殊勝な態度は、鯖缶が進むまでだった。鯖缶が進むとか、何言っているのかわからないとは思うが、事実を一番よく表しているのがこの言葉だろう。

 

フレンダは、まるでお酒のように鯖缶をちびちびと食べる合間にグラタンを食べているのだから。

 

 

「ん〜〜!美味し〜〜って訳よ」

 

 

さっきの落ち込みようはどうしただとか色々言いたいことはあったものの、この笑顔を見れただけでも労働の甲斐はあったかなと、不覚にも思ってしまう衛宮だった。

 

 

 

 

そして、衛宮の、頼んだ品が届いてからも時間が経ち、もう直ぐでフレンダは食べ終わると言ったところで、思い出したようにフレンダはこう切り出した。

 

 

「そういえば士郎、あのシュークリーム買ったお店に頼んでたまにこの住所に送ってくれるよう頼んでくれない?」

 

 

「すまん、無理だ」

 

 

衛宮の即答を聞いて、少し残念そうな顔をしつつ、落ち着かなそうに髪の毛を指先でくるくると弄りながら、フレンダは続ける。

 

 

「なんでって訳よ。数量限定販売とか店頭のみとかそういうやつって訳?あの美味しさならそれもわかる気がするわ」

 

 

「――そうじゃなく」

 

 

「結局、どう言うことって訳よ」

 

 

自分の考えが否定されたのがムッとしたのか、個数限定でもないのに無理と即答されたことにムッと来たのかはわからないが、フレンダは少し不機嫌そうな顔で衛宮に尋ねた。

 

それに衛宮はすぐに答える。

 

 

「端的に言うと、俺が作った」

 

 

「……………………………………………………………………………………………………えっ」

 

 

しばしの沈黙。

 

衛宮のした回答が予想外だったため、一瞬止まり、ゆっくりとその言葉を噛み締めて理解するまでに時間がかかったのだった。

 

あまりにも止まっているために、衛宮は反応のないフレンダの目の前で手を振りながら、フレンダに問いかける。

 

 

「大丈夫か」

 

 

「…………………………………………………………………………………………………本当に?さっき食べたの普通に紙とかで包装されてたんだけど?」

 

 

ようやく再起動したフレンダは、まだ信じられないようで、そのように聞いてくる。まるで再起動した後にパスワードを聞いてくる携帯みたいだな、とそんな的外れなことを考えつつ、もちろん嘘などはついていないので、衛宮は、

 

 

「嘘をついてどうする。紙は食べにくいだろうから付けた」

 

 

「確かにここで嘘をつくメリットがないって訳よ……と言うか、あなたコック志望? あんなに美味しいシュークリーム食べたことがなかったんだけど! まあ、結局鯖缶の方が上だけど!」

 

 

「コック志望じゃない、趣味だ」

 

 

断言する衛宮に戦慄するフレンダ。

 

衛宮は衛宮士郎に憧れて料理をやっているわけであるから、「今日のご飯」のように創作料理を作れない自分のことをまだまだだと思っていたが、今回のシュークリームは、衛宮自身にもともと基礎があったのに加え、憑依経験まで使ったものであるから、勘違いするのも無理はなかった。

 

 

「(……本当に嘘を言っているようには見えないって訳よ)じゃあ、お金は払うから、作って送ってもらうことって、出来るかなーって」

 

 

「いいぞ」

 

 

「えっ」

 

 

衛宮の言葉を聞いて嘘を言っていないと確信し、駄目元でそう聞いてみるフレンダであったが、意外と簡単に許可されたことに驚いた。

 

快く許可したのに疑問をなぜか唱えられてムッとする衛宮。

 

 

「えっ、とはなんだ、えっ、とは」

 

 

「いや、失礼な事しちゃってた訳だし、断られるかなあ、って」

 

 

そう頭をコツンと叩きながらいうフレンダに、衛宮ははぁ、と息を大きく吐いた後に、言った。

 

 

「失礼な事してた、という自覚はあるのな」

 

 

「ぎくっ」

 

 

少し焦った感じで、今日び聞かない擬音をわざわざ言葉に出していうフレンダに、衛宮はこれ以上問い詰めるのも可哀想だなと思い、追求は取りやめる。

 

 

「まぁ、いいよ。なんで許可したのかって言うと、君が俺のシュークリームを美味しそうに食べてくれたからな。料理人冥理につきるってわけだ。それにまだ未熟で趣味の域だからな。材料費くれればそれでいいよ」

 

 

「やった、これも結局、私の日頃の行いって訳よ!」

 

 

先程の不機嫌顔や、フリーズは何処へやら。フレンダは、ガッツポーズを浮かべながら言ったのであった。

 

その喜びようをみて衛宮も思わず微笑んでしまう。笑いの本質はつられて笑うことであるとどこぞで聞いたが、少なくとも、この場ではそれは正しい事実であった。

 

結局、気分を良くした衛宮はさらにこう言ってしまう。

 

 

「鯖缶好きそうだから、なんとか鯖缶とシュークリーム合わせてみるけどどうする?」

 

 

その言葉に対し、残りの一口を食べようとする手を止めて、手をバンッ!!と机についたフレンダは、我慢ならないと言わんばかりに、

 

 

「ダメよ! ダメダメ! そんなの不味くなるに決まってるじゃない! 鯖缶をカレーに入れるなんていう人もいるけど、結局、邪道って訳!そのままの鯖缶がサイコーって訳よ!」

 

 

と自らの主張を展開した。その圧倒的気迫を前に、衛宮は確かにシュークリームと鯖缶はないな、と先程までの自らの変な思考を反省する。

 

もしかしたら鯖に酔っていたのかもしれない。

 

 

「了解。シュークリームはシュークリームそのままとして作るよ」

 

 

その言葉を聞き、フレンダは再びのガッツポーズ。

 

 

「よっしゃって訳よ!」

 

 

そう言って鯖缶最後の一口を一気に呑み込んだフレンダに、横にあるクーラーボックスを引き寄せながら、衛宮は一言。

 

 

「あと、このクーラーボックスにまだ入ってるんだが、食うか?」

 

 

「いただきっ!」

 

 

この後結局全額奢られて、男としてはどうなのだろうと思うが、シュークリームで相殺だろと思う、彼女いないれ以下略、衛宮士郎なのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

完全に太陽は西の空に傾き、空全体が赤から黒へと移り変わろうとする時間帯。徐々に昼の間の熱帯もかくやというほどの暑さが和らいで来た頃。

 

ほとんど誰もいない通りで、フレンダはリズムよく器用に共に並んで歩いていた衛宮の前に出ていく。

 

履いているのはかなりヒールの高い靴だというのにそのような真似ができることには衛宮も舌を巻く。

 

そして完全に衛宮と向かい合ったフレンダは、

 

 

「じゃあ士郎、今日はありがとう。とっても助かったって訳よ」

 

 

それに対して衛宮は少し言葉を考えてみるが、なかなか良い言葉が見つからない。

 

結局、衛宮の口から出たのは、ありきたりな言葉だった。

 

 

「どういたしまして」

 

 

そして、それを受けて、フレンダは、お別れの挨拶をした。

 

 

「じゃあ、またね、士郎」

 

 

正直、今日1日は大変だったが、妙に充実感がある。普通だったら今日はソコソコいい日であったと、気持ちよくこのまま寝たいくらいだ。

 

正直、この子に死んでほしくない、そういう気持ちが衛宮の中には燻っていた。

 

 

結局、衛宮士郎は嬉しかったのだ。

自分のシュークリームを美味しいと言ってくれたことが。

 

衛宮は、衛宮士郎を目指して料理の腕を磨いて来た。『目指す』ことが目的であったから、他人に振る舞うなんていうこともなかった。だが、今日、初めて自分の料理を食べて美味しいと、満面の笑顔で言ってくれる人に出会った。

 

結局、それが衛宮士郎にはたまらなく嬉しかったのだ。

 

だが、死んでしまうと伝えたからと言って、どうなるのであろうか。そんな衛宮の思考を置き去りに、別れの時間はすぐに過ぎ去っていく。

 

 

「ああ、またな、フレンダ」

 

 

そう言葉を絞り出し、後ろを向くフレンダに手を振ろうと手を挙げかけた衛宮に、フレンダが再び衛宮の方を向いて、近づき、話しかけて来た。

 

何やらいうべきことがあったらしい。

 

 

 

 

 

「あっ、そうだ……ねぇ、士郎……」

 

 

 

 

 

夕日に照らされる金髪がキラキラと揺れている。そして、顔を夕日で赤く染めたフレンダはーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーそこで、焔が向かい合う二人の真横の塀から立ち上った。

 

なにやら男の声も聞こえてくる。

 

 

 

『ーー、我が手に断罪、ーーーーーー』

 

 

 

 

「えっ、何が起こってる訳?爆弾の焔の出方じゃないわよね?発火能力者(パイキロシスト)?」

 

 

「とりあえず行ってみよう!」

 

 

 

そう言って、駆け出す衛宮。それになんだかわからないフレンダも続く。

 

そして、塀の周りを一周。先程いた壁とは反対側に出た衛宮とフレンダが見たものといえば。

 

 

「え、何で学園都市の近くだってのにこんな聖職者率半端ない訳ーーッ!」

 

 

 

 

 

 

そして、相手の方のツンツン頭の高校生と白い修道服の少女も呟く。

 

 

「……衛宮?」

 

 

「……しろー?」

 

 

 




本編とは関係ない余談。

ファミレスのサーバー視点だと、一人が話しかけては気恥ずかしくなって黙るという風に見えてる。あれ、食い気の話しかしてないのに不思議だなあ。


感想、評価お願いします。変な部分等あったら教えてくださると嬉しいです。




今回は多少、文体変えてみました。少しかまちーに寄せてみた感じです。
結果、むずい。このまま続けて徐々に変えて言った方がいいのだろうか。



次の更新は今回書きすぎたので、少し遅れると思います。(さすがに2年はないと思う)

さて、ステイル視点にするか、当麻視点にするかは決めかねてます。


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ステイル・マグヌスじゅうよんさい Fortis931

今回は時は少し戻り、ステイル視点
日刊26位と出てて、初めてのランキング入りで嬉しさのあまり書いてしまった。


聖ジョージ。こと、ラテン語でゲオルギウスと呼ばれる彼の名を模した建物はロンドンに溢れている。

 

ゲオルギウス、聖ジョルジュ、国によって様々な呼ばれ方をする彼のなした偉業の一つとして、もっとも有名なのは、『竜殺し』の伝説だろう。

 

もっとも、その伝承は16世紀末にとある作家が作ってしまった『聖剣の物語』であり、魔術的には嘘もいいところ、嘘っぱちの物語であるのだが、そんなことは民衆には関係ない。魔術的に正しかろうが、間違っていようが、それを確かめる術など持ってはいないのだから。実際、ヨーロッパのものなら3つになるような子供でも諳んじられるくらい有名である。

 

さらに、イギリスでは『聖ジョージ』は国旗にも関わるほど有名なため、その首都であるロンドンには、その名を冠する建物は腐るほどある。教会はもちろん、デパートやレストラン、ブティックに学校など、その名の用途は多岐にわたる。

 

 

 

 

そのうちの1つ、聖ジョージ大聖堂。

 

 

 

大聖堂と名のつくものの、その正体はロンドンの中心街にある、たくさんの教会の一つにすぎない。そこそこ大きな建物なのだが、ウェストミンスター寺院、聖ポール大聖堂など世界的観光地と比べると格段に小さくみえる。無論、イギリス清教始まりの場所とも言えるカンタベリー寺院などとは比較にならない。

 

そもそも、先ほども言った通り、ロンドンには『聖ジョージ』と名のつく建物はいくらでもある。もっと言うのなら、『聖ジョージ大聖堂』でも10以上はあるかもしれない。

 

 

 

その(..)聖ジョージ大聖堂は、元々『必要悪の教会(ネセサリウス)』の本拠地だった。

 

これは良い意味ではない。教会の信徒のくせに汚れた魔術を使い、中世には魔女を狩り、近世にはイギリスの魔術結社に所属する魔術師を殲滅する『必要悪の教会(ネセサリウス)』の面々は、イギリス清教の中では鼻つまみ者であったため、総本山のカンタベリー寺院から、この聖ジョージ大聖堂を左遷させられる形で与えられたのだった。

 

 

 

しかし。

 

 

 

逆境に追い詰められるほど力だ湧き出てくるというものが、人間であって。教会所属といえども、必要悪の教会(ネセサリウス)の人間は、その傾向が強かったとも言えるだろう。

 

 

魔術師である以上何かしらの目的もしくは悲願のために、普通の人生を捧げた彼らは、窓際の一部者であったにも関わらず、ひたすら黙々と成果を上げ続け、今やイギリス清教の正式な心臓部はカンタベリー寺院だが、実質的な頭脳部は聖ジョージ大聖堂である、という事態を招いていた。

 

 

 

そういう事情もあって、英国首都中心部からやや外れたここが、イギリス清教の核となっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロンドンにて、神父はそう珍しくもない。というのも、ロンドンには聖ジョージ大聖堂が10個以上あるかもしれないとは言ったが、普通の教会はそれ以上にあるからだ。日本でいう、公園くらいの感覚で教会が存在するのだから、さほど珍しくもない、と言っても分かるだろう。

 

そんな一人、赤い髪の神父、ステイル=マグヌスは朝日が昇ったばかりのロンドンを歩きながら困惑していた。

 

街の景色自体にも、天候にも異常はない。

 

築300年を軽く超す石造りのアパートに囲まれたランベスの道路沿いには、歴史の新旧が入り混じる景色がいつも通りにそこにあって。

 

そのアパートの合間に見える青空には、雨が降る様子など微塵もない。強いていえば四時間も続かない夏場の崩れやすい天気が、フェーン現象などが多発する近年、問題ではあるが、そんな欠点も含めて、ステイル達はこの町に住んでいるのだから、困惑する要因にはなり得ない。

 

 

ステイルの頭を悩ませているのは、自らの上司である少女であった。

イギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会』<最大主教(アークビショップ)>。

 

聖職者が使える色は、白、赤、黒、緑、紫の五色と装飾用の金糸のみという規律を真っ向からこっそり違反する、簡素なベージュの修道服に身を包んだ十八歳くらいの少女の名は、ローラ=スチュアート。

 

特徴的なのは、その髪の長さ。真っ直ぐ伸びた髪をくるぶしの辺りで一度折り返し、頭の後ろにある大きな銀の髪留めを使って固定した後に、さらにもう一度折り返して腰の辺りまで届いてしまう、ざっと身長の2.5倍ほどの長さがあった。

 

朝のランベスという世界的に騒々しい混雑具合の中でも、彼女の周囲だけはまるでガラス越しに音を聞いているかのように、閑散としていた。

 

彼女の最大主教としての役割は、『普段は多忙なイギリス清教のトップである国王に代わって、イギリス清教の指揮を執る』こと。

 

もっともこれは書類上の話で、先程言ったカンタベリーと聖ジョージのような形で、実質的に彼女がイギリス清教を支配していると言っても良かった。

 

実際、ステイルは学園都市にて仕事を幾度かしたが、その時の交渉を学園都市の代表としたのはこの少女だった。

 

そんな絶大な権力を持つ最大主教は、ステイルの他には他に護衛もなく、トコトコと聖ジョージ大聖堂へと足を向けていた。本来であるのなら、ローラは大聖堂で待っているはずなのだが。

 

 

「まさか年がら年中あんな古めき聖堂の中になど取り籠らないわ」

 

 

変な頭痛がして頭を抑える素振りを見せるステイル。そんなステイルを見ているのか見ていないのか、ローラは続ける。

 

「歩みつつも語れるのだし、時の掠りといこうじゃない」

 

ステイルは少しだけ難しい顔をした後、

 

 

 

「まぁ、構いませんけど。しかし、わざわざ大聖堂に呼び出すほどの要件なら、周りに聞かれたくない話なのでは?」

 

「気にしてるの?小さし男なのね。なら、きゅっきゅーっと♩」

 

 

 

ローラは胸元からメモ用紙を2枚と黒マジックを取り出すと、まるで授業中にノートの端に落書きをする少女のように、何かしらの文様を書き始めた。

 

ステイルはタバコをくわえつつ、まずかに眉をひそめる。

 

 

「……、あの、一応確認しますけど、何やってるんですか」

 

「ほんの少しき配慮なのよ、ほら」

 

 

ローラは書き終えた二枚のうち、片方をステイルの手に押し付ける。

 

 

 

『あっあー。音聴きはできとうかしらー?』

 

 

 

と、ステイルの頭の中に直接、声のようなものが聞こえてきた。見ると、ローラの口は動いていない。

 

 

「……通信用の護符、ですか」

 

 

ステイルの進言に対応してくれたのか、どうやらこれで話をするらしい。

 

 

『ごほんっ!では始めたるわよ、ステイル。貴方は「法の書」の名と、例の「魔剣鍛治師」については知り足るわね』

 

『前者は魔道書の名で、筆者はエドワード=アレクサンダーだと思いましたが。後者はこの前神裂と土御門があったとかいう……』

 

 

そう言って、ローラの出した話題に関連する事項をステイルはつらつらと挙げる。それを聞いて、彼女は、

 

 

『その通りでありなるのよ。まずは「法の書」の方から話したるわ』

 

 

 

 

「法の書」。

 

著者はエドワード=アレキサンダー、別名をクロウリーともいう20世紀最高とも、20世紀最低とも言われる伝説の魔術師。アレイスター本人の凄まじさゆえに、その死と同時に世界中の緊張の糸が一致に緩んだとされているほどである。

 

そんな絶大な力を持つ彼の著作ということもあり、様々な学説が存在する。

曰く、彼が召喚した守護天使エイワスから伝え聞いた、人間には使えない“天使の術式”を書き記したものである。

曰く、「法の書」が開かれると同時に十字教の時代が終わり、全く新しい次の時代が訪れる。

 

そして、その特徴は

 

『誰にも内容が解読できない、ということでしたね』

 

 

実際、『禁書目録』は早々に解読を諦め、そっくりそのまま暗号文章を丸暗記することしかできなく、暗号解読の専門家であるシェリーも匙を投げた。

 

そこまでの前提があった上で、

 

 

 

『その何人たりとも読めん<法の書>を解読できる人間が現れんとしたら、どうする?』

 

『……、なんですって?』

 

 

 

ステイルはローラの顔を改めて見た。彼女が冗談を言っているようには見えない。

 

 

『その者はローマ正教の修道女で、オルソラ=アクィナスと言うさうよ。あくまで解読法を知りけるだけで、今だ本文に目を通しとらんようなの』

 

 

『どういう事ですか』

 

 

『件のオルソラは部分的な写本を参考に解読法を探さんとしたそうなの。日本の序文の数ページだけしか手元になかったのよ』

 

 

無理もない。魔道書の原本といえば、厳重に、誰も立ち入れない場所に封印して、保管するのが普通だ。だからこその魔道図書館なのである。

 

それに見れたからって、無事に読めるとは限らない。その魔道図書館ですら何十回にも及ぶ一歩間違えれば人間としての機能を失う精神調整による防壁がなければ文字通り侵食されていたろう。普通の人間ならなおさらである。

 

 

『ローマ正教は勢力争いの手札が不足していますからね……となると、「法の書」による巻き返しを図ろうとしているんですか』

 

 

ローマ正教、世界最大の十字教宗派。

 

とは言っても、少し前に最大戦力である3000人にも及ぶグレゴリオの聖歌隊がとある錬金術師に殲滅されてからというもの、その力の衰えは噂されている。

 

故に、その力の代わりとなる「法の書」を求めたのかもしれないとステイルは考えた。だが、

 

 

『その心配はなきことでありけるのよ。ローマ正教は「法の書」を勢力争いの争いの道具にすることができないのでありけるのだから』

 

 

 

ローラはやけに自信たっぷりにそう言うが、何か根拠があるのかとステイルは眉をひそめる。

 

イギリス清教とローマ正教の間で<法の書>使用禁止の条約でも結んであるのかとも思ったが、

 

(ならば、何故、ローマ正教はオルソラを使って<法の書>の解読を行う必要がある?)

 

ローラはそんなステイルの心の内を察したように、

 

 

『それに、ひらさらローマ正教が何かをたくらんだ所で今のままじゃ実行は不可能なのだから』

 

 

どうして? とステイルが問う前に、

 

 

 

『<法の書>とオルソラ=アクィナス、この2つが一緒に盗まれたそうだから』

 

 

 

「そんな……誰に⁈」

 

 

ステイルは思わず声に出していた。

 

 

ローラ曰く、犯人は特定されており、それは日本の天草式十字凄教であるそうだ。現在はステイルの同僚である神裂火織が以前、女教皇を務めていた宗派。

 

犯行理由の目星としては、神裂が抜け、小さな力のない組織となった彼らが、代わりの力として国際展示会の為、バチカン図書館の最深部から日本の博物館に移送中だった<法の書>を欲したということであろう。

 

プライドからか、自分たちだけで解決すると言ったローマ正教にほとほと呆れるステイルであったが、困ったことがここで1つ。本来ならば、協力する意味などないのだが、

 

 

『何か?』

 

『神裂火織と連絡が取れんのよ』

 

 

先ほども言った通り、神裂は元・天草式のトップ。そんな彼女が元部下たちが20億人の信徒を抱えるローマ正教とことを構えると聞いたらどんなことをしでかすのか、わかったものではない。『聖人』である神裂は個人の戦闘能力が、核兵器に等しい意味を持つのである。

 

 

『神裂が下手を打つ前に、落を付けて欲しいのよ。それが最優先。方法はいずれでも構わないわ』

 

 

実質的に方法は3つ。

「法の書」とオルソラを救出すること。

交渉で天草式を降伏させること。

そしてーー神裂ごと天草式を壊滅させること。

 

 

『あの神裂と、戦えですって』

 

 

『そこで、あの魔剣鍛治師なのよ』

 

 

さらりとローラは言った。

 

 

『どういうことですか』

 

 

『どうやら件の魔剣鍛治師は天使と戦う神裂に援護ができけるらしいのよ』

 

 

『……、っ!』

 

 

 

『聖人』と『天使』の戦いに援護として参加。これの凄まじさが分かるものがどれだけいるであろうか。

 

普通、戦闘において、戦闘能力が離れすぎている場合、共闘しても互いに邪魔になることがほとんどである。ステイルも焔という、周りに危害が及ぶ魔術を使っているから分かるが、周りのレベルが低いと、余波に巻き込まないか、いちいち気を使い、戦闘しなくてはならない。

 

 

つまり。

 

 

神裂が援護を引きずってでも止めなかったということは、その鍛治師には、聖人の能力に追随はできずとも、対応はできる、ということを示しているのである。

 

 

『つまり、もしもの場合は、その魔剣鍛治師とやらを神裂の当て馬にしろということですか。そもそも、魔剣という時点で胡散臭いですが。大丈夫なんですか』

 

 

『そういうことになりけるのよ。もっとも、見定めるのもあなたの役目になりけるのよ、ステイル。まあ、その話はまた少し後でするつもりなのだけども。とりあえず魔剣鍛治師の方はこれで話を終わりにして、貴方は別働隊として、始めに学園都市と接触して頂戴ね』

 

 

ステイルは疑問を出すように、タバコの煙を吐く。

 

疑問は単体行動という点ではない。

 

何故なら、魔術師ステイル=マグネスは団体行動に向いていない。使用する魔術が炎に特化している為、下手に全力を出すと周りを巻き込む可能性があるのだ。

 

彼の扱う<魔女狩りの王(イノケンティウス)>は展開するカードの枚数によって強さが極端に変動するという不安定な一面を持っているもののその名に恥じぬ実力を誇る。

 

摂氏3000度の炎の塊が自在に踊って、鋼鉄の壁すら軽々と溶かして敵へ襲いかかるその姿は相手から見ればまさしく死神そのものだろう。

 

何せ、とある右手という例外を除けば、如何なる術を用いてもその進撃を止める事は出来ないのだから。

 

数多の魔術結社をたった1人で焼き払ったその戦績は壮絶の一言に尽きる。

 

 

 だから、問題はそこではなく、

 

 

『これは教会諸勢力の問題でしょう。そこで、何故、科学側の手がいるんです?』

 

 

対するローラの答えはたった一言だった。

 

 

『<禁書目録>』

 

 

人名……というより、道具名をローラは言った。

 

 

『魔道書の原典となれば専門家は必須になりけるでしょ。条件の1つとして『管理人』を同伴させる事になっているけどね』

 

 

苦虫を噛み潰したような酸味がステイルの口の中に広がるが、ステイルはそれをなんとか無視して、『……管理人というのは、例の<幻想殺し>の事ですか』

 

 

『ええ。せいぜい有効に使うといいわ。あ、弑ては駄目よ。あっちは借り物なんだから』

 

 

『学園都市所属の人間を、魔術師同士の争いに巻き込んでしまっても大丈夫なのですか?』

 

 

『其の方は色々と小細工を為せば大丈夫よ。というより、先方の交換条件につき外せんわね。いちいち交渉を長引かせている時間はないのよ』

 

 

『そう、ですか』

 

 

『それに管理人の方は魔剣鍛治師との連絡を頻繁に取り合っているそうだから。一石二鳥ということでありけるのよ。魔剣鍛治師の性格的に、知り合いに何か事件が起きたら飛び込んでく系のものになりけるようだから、そこらへんは考えてやることなりよ』

 

 

『そこまで調査が進んでいるのですか』

 

 

 

学園都市のトップも、そして隣を歩くローラも、いまいち考えている事が分からない。

 

水面下のやりとりがあるであろうから、ステイルが口を出す問題ではないのかもしれない。

 

 

 

『それからステイル。これを持ちておいて』

 

 

ローラはその規則を無視した修道服の袖の中から小さな十字架の付いたネックレスを取り出すと、それを無造作にステイルへと放り投げた。

 

彼は信仰の象徴を片手で受け取りながら、

 

 

 

『霊装の一種ですか? 見た所、それらしき加工は見当たりませんが』

 

 

『件のオルソラ=アクィナスへのささやかなる贈り物という所かしら。その者に出会いし機会があらば適当に渡しといてね』

 

 

 

 そう言って、ローラは口を開くのを止めた。いわば黙っていうことを聞けということだろう。

 

ピタリ、と2人の足が止まる。

 

聖ジョージ大聖堂。

 

魔女狩りと宗教裁判の黒い歴史が凝縮された、かのジャンヌダルクが火刑になった暗黒の聖域。

 

そこで、ローラはドアノブに手をかけ、ガチャリ、という音とともに、そのドアを開けた。

 

「さて」

 

そこでくるりと反転した最大主教は神父を中へ向かい入れる。

 

 

 

 

「くわしき話は、中で掛け合いましょうか」

 

 

 

 




感想欄で、鯖シューの話が8割を占めているのだが……

なんか予想外の反響である鯖シュー。本編に出すべきなのだろうか。


あと、今作、ステイルさん多めに出ると思います。好きなキャラなので。
ボスラッシュにステイルさんを出してあげるのが、今の私の目標です。(新訳10巻とか遠すぎる)

ところで、エンデュミオン編やれよとともに言われたのですが、構想になかったものなので、入れるか迷い中。どう思います?

感想、高評価お願いします。


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上条当麻 Misery of fire

遅れてすみません。


1

 

 

 

「大覇星祭、か……」

 

 

うだるような空気の暑さに、アスファルトに反射して襲いかかる熱波。そもそも、眩しいほどの日光。

 

その全てに加え、ただいましている資材運びに、気力が根こそぎ奪われ、死んだ魚のような目で辺りを見渡す、どこにでもいる普通の高校生、上条当麻。

 

先ほど上条が呟いたのは、学園都市で間も無く開催される、運動会の名前である。そして、上条をたったいま、憂鬱な気分にさせている原因でもあった。

 

 

そう、大覇星祭。

 

 

一言で言うと、9/19から9/25の一週間、学園都市に所属する全学校が合同で行う超大規模な運動会である。

そして、上条はとある出来事によって記憶を失っているため、上条主観で初めての参加となるこの運動会とやらは、1つ、他の運動会と一線を画す要素が存在する。

 

それは、『能力の使用が可能』ということだ。

 

学園都市は百万人単位の学生を抱えており、その全ての学校が参加すると言うとスケールがわかるかもしれない。しかも、全ての学生が、強弱はあるにしろ、なんらかの力に覚醒した超能力者なのである。

 

そしてこの日は、能力の使用が可能と言うだけでない。担任の先生とかから聞く限り、「能力者同士の大規模干渉のデータを収集する目的もあるみたいですよー」とのことで、能力の使用はむしろ推奨されていたりするらしい。

 

つまり、消える魔球、燃える魔球、凍る魔球その他諸々はザラである……らしい。

 

 

「うだー」

 

 

確かに、絵面だけ見れば楽しそうではあるだろう。絵面だけ見れば。

 

しかしよく考えて見てほしい。スポーツの皮を被ったバトル漫画に、普通にスポーツやっている人が挑んで果たして無事で済むだろうか。

 

そんなものは銃弾飛び交う戦場に、エプロンをつけて鍋片手に突っ込んでいくようなものである。

 

もちろん、『武器(能力)』があればその限りではないのだが、生憎と上条は『Level0』、つまりは無能力者であるからして、結局は生身で突っ込んでいく事になりそうなのであった。

 

上条はとある理由により、余程の能力者でなければ、なんとか逃げることは出来ると思っているが、そんなものは所詮一対一での話である。

 

四方八方から攻撃されたらそのままお陀仏ではあるし、そもそも運動会であるから、多数対多数。最早上条の出る幕はないどころか、上条にとっての修羅場だった。

 

さっきも言った通り、能力の使用は原則自由……どころか、積極的に使わないと救護班のお世話になるぞ、というのが、上条がここ一週間で聞いた大覇星祭だった。事と次第では、騎馬戦で、雷撃、斬撃、爆発、真空波が乱舞するらしい。

 

そのせいで能力者同士が能力をぶつけ合った結果できる幻の金属である『不在金属』とか、その他諸々の都市伝説があるくらいだ。

 

そんな能力が飛び交うところに生身で突撃したくはない。しかも、上条は何をしているのだっかか。

 

冒頭に行ったと思うが、資材運びである。

 

……大覇星祭の。

 

(……なんでまた自分が修羅場になるようなイベントのためにヘトヘトになるまで働かなくちゃならないんだ……)

 

つい先程なんて、校庭でテントを組み上げたところで『ごっめーん♩ やっぱテントいらないじゃん』で片付けた後からの『あーっ!何やってるんですか上条ちゃん!テントはやっぱりいるって連絡はありませんでしたかー?』とか怒られる始末である。不幸の一言で済ますのもなんか釈然としない。

 

 

(まあ、だけど、親父や母さん、衛宮も来れると考えれば、まぁいいのかもな。その点に関してだけはだけど)

 

 

大覇星祭は学園都市の数少ない一般公開日だ。生徒の関係者やただの一般客も開催中は学園都市に入る事ができ、 応援・観戦等で開放区域を自由に移動する事ができるらしい。

 

そんなわけで、両親も大覇星祭の際、学園都市に来るらしいのだ。この前、新しいマイホームがなんらかの事件によって爆破されていたため、元のアパートに住んでいるという2人のことは、心配であったため、こうして顔を合わす気概があるというのは良いものだ。

 

上条自身には記憶はないが、この前の事件で、とても愛されていた……いや、愛されていることはひしひしと実感していた。

 

もっとも、今となっては神裂(外見男)が風呂に入っているところに親父が衛宮を連れてきて、神裂に追いかけ回されたのも今となってはいい思い出だ(大嘘)。

 

ちなみに衛宮は花火を観に来るとのことだった。スポーツの方はいいのかとか、学校はいいのかと思う上条であったが、校長が大覇星祭の大ファンで、休みにしたらしい。それでいいのか私立学校、と猛烈にツッコミを入れたくなったが、それは良しとしよう。

 

 

つらつらとそんなことを考えている上条は、考えている間も無く、反射的に、右手を掲げた。

 

甲高い音が響き、それと共に飛んできていた炎が文字通り打ち消される(・・・・・・)

 

 

「うわっ!」

 

 

どうやら、何かしらの能力での火であったらしい。しかし、打ち消したと行っても、予測していたわけではなかったので、もちろん驚く。驚いた上条はよろめきつつ、なんでこんな日に炎なんか使っているのだろう、とそんなことを考えた。

 

 

 

 

2

 

 

等々力(とどろき)は学園都市に住む高校生だ。ちなみに所属は羽場跳高校である。

学園都市に行けば手に入るとかいう、超能力に惹かれ、7歳の時に親元を離れ、それ以来、学園都市に住んでいる。

無論親はそんな年齢で一人暮らしさせる事には反対したが、最後には等々力の熱意を受け入れて、快く送り出してくれたのだ。そんな親に等々力はとても感謝をしていた。

 

だから、年に一回親が自分の成果を見にきてくれるこの大覇星祭というイベントを等々力は心待ちにしているのだった。

 

しかも、とある競技で同走があの常盤台のエース、御坂美琴ときた。

 

普通なら同走がLevel5(御坂美琴)と聞いたら、そこで諦めてしまうようなものが一定数いるのだが、あいにくと、彼と競技のパートナーである、彼の友達である網目はその内に入らなかった。

 

むしろ、Level5を食ってやるくらいの気持ちで2人は練習していたのだ。

 

 

彼らが出る競技で、御坂美琴と闘う種目はは『二人三脚』。

 

すでに足を巻きつけても、阿吽の呼吸で動けるようになったし、勝つための必殺技も用意している。故に、気合が空回りしてしまうのも無理はなった。

 

それは、必殺技の練習をしていた時だった。

網目の「短時間だか触れたものの摩擦係数をいじる」能力と、等々力の「手のひらで空気中の水分を集め、分解・燃焼させる」能力を組み合わせて爆鳴気による文字通り爆発的な加速力を得る作戦だ。

 

少し噴出角度がずれ、爆発が、先程人影があった方の塀を越えた道路の方向に飛んで行ってしまった。

 

慌てて等々力と網目は道路に出て、

 

 

「すみません!大覇星祭に向けての練習でして、炎が飛んで行ってしまいました!」

 

 

と言ったが、等々力の前には変わりない道路があっただけだった。人1人いない。

 

 

「あれ?おかしいな」

 

 

そう思う等々力と網目だったが、先程の人影はかなり早く移動していたので、爆発が起きた時には既にここにいなかったのだ、と理解し、今度は安全に気をつけて練習に戻った。もっとも、ここであともう少し安全に配慮していたら、もう少しましな未来があったかもしれないが、ここでは関係ない。

 

 

結局彼らはその道路の片隅のマンホールの蓋(・・・・・・・)が開いていたことに、そしてその中から物音がしていたことに気づくことはなかった。

 

 






言い訳をしますと、作者自身が、設定自体を忘れていたことにつきます。2年放置したため、ここどうなんだっけというところや、この設定矛盾してね?と知識が増えたことによるものがあったので、組み上げ直すのに時間がかかりました。

申し訳ありません。fgo のイベント回っていたというわけではないです(大嘘)

感想、お気に入り登録などしてくださると、やる気が出ます。よろしくお願いします。


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6上条当麻2

 

 

3

 

 

 

 

「ふ、不幸だ……」

 

 

 

 

 

上条当麻は予定より早く下校していた。というのも、先程何かしらの能力による炎を受けて、よろけてしまい、偶然にも空いていたマンホールに落ちたのだ。

 

マンホールがそれほど深いものでないことが幸いして、大事な怪我はなさそうである。

そして自らの右手を見つめた。

先程、炎を打ち消したのは、その右手に宿る、ある力によるものだった。

 

 

 

『幻想殺し』

 

 

 

それが、上条の右手に宿る力の名前だった。異能の力であれば、魔術でも超能力でもことごとく打ち消してしまうが、物理攻撃には意味はない。

 

そんな能力があれば、能力の嵐の中にも突っ込んでいけるだろうと思うかもしれないが、そんなことはない。能力が作用するのは右手首から先の短い間にとどまっているからして、複数の攻撃にとても弱いのだ。

 

 

そして、大覇星祭とは、なんだったのか。それを思い浮かべて貰えばわかると思う。

 

 

しかも、この右手とやら、神様のご加護やら、運命の赤い糸的なものまで打ち消してしまっているそうで。……おかげかはわからないが、上条は先ほどのように不幸が多発する体質なのだった。

 

 

 

 

 

ちなみに今帰っているのは、マンホールから出たら担任の先生に『上条ちゃん大変なのですよー。これじゃあもう今日は無理ですね、帰った帰った』と言われてしまい、下校に至ったというわけだ。

 

 

自らを修羅場に追い込むための準備をしなくてもいいという点においては望んだ通りの結果なのだが、本当に、釈然としない。

 

 

「インデックスに風呂沸かしを頼まないと……」

 

 

泥のついたまま帰っているうちに、そんなことを考えながら、おもむろに携帯電話を取り出す。

 

 

あの完全記憶能力を持っているくせに、機械の使い方を覚えられない腹ペコシスターに行っても無駄かもしれないが、言わないよりはマシなのである。

 

 

 

そうして、携帯の電源をつけた上条の目に飛び込んで来たのは、大量のメール着信履歴。送り主はインデックスからだった。

 

 

(あーあー、ここまで来たらこの上条さんだって今後の展開はわかりますことよ! どうせ冷蔵庫の中身を全部食い荒らしでもしたインデックスが、腹ペコのまま寮で待っていて、帰った途端噛みつきだろ!)

 

 

 

「ふ、不幸だ」

 

 

 

上条は、今後の展開を予測して、再びその言葉を口にしたのだった。

 

憂鬱な気分で、暇つぶしでもして帰るかとも思うが、泥がついた状況ではそんなこともままならない。そうであるならばできる限りゆっくりと歩こうかな、と思い始めた瞬間。

 

 

携帯の着信音がなったのだった。

恐る恐る画面を見る上条。現実は非情にも、相手はインデックスだった。

 

 

(ええい! こうなったらどうとでもなれ!)

 

 

一大決心をして、携帯の通話ボタンを押す上条。だが、その携帯から聞こえて来た言葉は、意外なもので、相手もまた、予想のしない人物であった。

 

 

 

『た、大変だーーっ!上条当麻っ』

 

 

「……舞夏? インデックスはどうしたよ」

 

 

『い、インデックスちゃんが、攫われちゃったのだ!』

 

 

 

聞いて見ると、土御門の妹である舞夏曰く、

 

 

 

1つ、インデックスがさらわれた

 

1つ、警察にはいうな

 

1つ、上条当麻と衛宮士郎を呼び出せ

 

1つ、渡した紙を読め

 

 

 

とのことだった。魔導書の原典を大量に脳内に保持するインデックスを攫う目的などいくらでも考えられるが、

 

 

 

「……何今日不幸すぎだろ! すぐ行く!」

 

 

 

そう言って、上条当麻はその紙とやらを読むために、走り出したのだった。その間に、衛宮へと、連絡することも忘れずに。

 

 

 

 

 

 

4

 

 

 

 

 

「ふ、不幸だ」

 

 

この上条の言葉にはいくつかの意味が含まれていた。

 

学園都市の外。かなり時間のかかる学園都市の外に出るための手続きを終え、再びうだるような夏の日差しの中に戻った上条。これにかかった時間と、暑さが第一、第二の不幸。

 

とりあえず出てきたはいいけど、来いと言われた薄明座なる劇場なんて携帯の地図にない。第三の不幸。

 

コンビニで、古い地図を見つけ、ようやくその場所を見つけたものの、地図が読めないし、覚えてられるわけもない。地図を撮影しようとしても、デジタル盗撮とならになるようで、それも不能。第四の不幸。

 

 

それに。

 

 

(なんで、狂言誘拐と分かっているのに、こんな目に会わなくちゃいけないんだ……)

 

 

そう。上条にはこれが狂言誘拐だと分かっていた。というのも、先程学生寮にて、舞夏に犯人の特徴を聞いたら、赤髪長髪バーコード神父であったというのだ。もはや、誰だか一目瞭然である。

 

 

あの神父の性格諸々からして、インデックスを傷つけることはないと理解している上条は、この狂言誘拐からして、憂鬱さマックスフルパワーなのである。

 

 

 

そんな現実にため息の濁流をぶち当てている上条は、とあるものが目に入った。

 

 

それは、反対側の車線。大きな箱が積まれているのだ。様々な色で包装されているその箱は置かれているのかと思ったが、どうやら違うようだ。箱の隙間から、チラチラと金色の髪が見える。

 

 

 

(……落し物かなんかじゃないなら、まぁいいか)

 

 

 

そんなことを反対側の車線を見ながら考えていた上条は、目の前の女性から話しかけられてようやく、思考がこちら側に戻って来た。

 

 

 

 

 

「そこのお方。学園都市行きのバスはどこから乗れば良いのでしょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5

 

 

 

その話しかけて来た修道服の女性は、オルソラというらしい。

 

なんでも追われているとかで、外部の宗教的な勢力の影響がないと言われる学園都市に逃げ込もうとしていたようだ。

 

……そして、ここまで聞き出すのに、何度も会話が戻ったりするのが、オルソラという女性だった。そんなわけで、より一層、ぐだーとした感じの上条は、ただいまオルソラと一緒にステイルとインデックスの元へと向かっていた。

 

とりあえず服装から魔術関係であろうことは予想がつくし、そのスペシャリストの意見を聞いてからでも遅くはないと思ったからだ。

 

だが、ここで上条は一つ見落としをしていた。それは、上条が狂言誘拐であるとわかっていないと思っているインデックスが、女性を連れている上条を見てどう思うか、ということである。

 

簡単に言うと、同居人が誘拐されていると言うのに、それを知りつつも女性とデートしていた、と勘違いされるという不幸である。

 

 

無論、上条はインデックスに噛み付かれた。

 

 

 

「あーもーっ!不幸だぁあああああああああああああああああっ!」

 

 

 

 

 




不幸連発

次回も不幸は続き、時間軸が元に戻ります。ここまで長かった……でもこの章はステイルさんが重要なので削るわけにはいかなかったのです。


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