ACE COMBAT Skies Rewritten (遠い空)
しおりを挟む

プロローグ

 2025年、環太平洋戦争(ベルカ事変)の情報が公開され5年。ラーズグリーズ戦闘機隊の事や戦争の黒幕、グランダーIG社との関係などが公開され、全世界の人々が真実を知った。

 それと同時にまだ謎の多いベルカ戦争の公開も求められた。

 

 

 そして今年の6月6日、ベルカの7つの核起爆から30年目の日にベルカ戦争について公開された。

 2005年にもOBCのドキュメンタリー番組によってベルカ戦争の一部が公開されたが、より詳細に公開されたのは今回が初めてである。

 内容はベルカの開発した超兵器シリーズ、7つの核起爆に至るまで、ベルカ戦争で猛威を振るった円卓の鬼神のより詳しい詳細、その後に起きた国境なき世界によるクーデターの動機・経緯・兵器の入手・壊滅したその後など。

 この公表はベルカ戦争停戦条約が結ばれたルーメンから全世界に中継され、各国家首脳のほか、ゲストとして円卓の鬼神の相棒であり、国境なき世界に属していたラリー・フォルク氏が呼ばれ、15時間にわたり全てが公開された。

 

 

 さらにその流れに乗じ、同年9月19日エルジア首都ファーバンティでメガリスの事を含めた大陸戦争の詳細が、同年クリスマスにはオーレリア首都グリスウォールでオーレリア戦争とレサスの凶行に至るまでの詳細が、翌年4月1日にはエメリア・エストバキア戦争とエメリアを救った英雄達の詳細が公表された。

 2026年までに数多く起きた戦争の詳細が公開され、新しい歴史が刻まれたのである。

 

 

 2027年。オーレリア戦争から国家間の戦争はなくなり、事実上平和を得る事ができた。その一方、新技術の開発競争で世界中の企業による競争が激化していた。

 特にユージア大陸ポート・エドワーズを拠点に、ベルカ人技術者とエルジア人技術者によって作られた企業ゼネラルリソースが様々な企業を飲み込み、巨大な複合企業となり始め、ユージア大陸をまるで1つの国のように飲み込み始めていた。

 これを期に国家の衰退が始まった。

 

 

 2029年。オーシア、ユークトバニアを除く国家が全てゼネラルリソースに飲み込まれ、国家の概念が本格的に崩れ始めた。

 ゼネラルリソースが2028年にエレクトロスフィアと呼ばれる画期的な電脳空間が完成したのを期に国家の衰退が高速化して行った。

 オーシア、ユークトバニアは国家の存亡をかけ互いに協力し合い戦う覚悟を決めた。

 しかし、協力したのは愛国心の高い政治家や軍人、反ゼネラルリソースの一般人によるデモ部隊だけだった。

 今や彼らは世界から見ればテロリスト同然だった。

 彼らは愛国軍と名乗り、かつてオーシアが環太平洋戦争後に友好・平和の象徴として開発したアークバードⅡを空中要塞に改造し、国家の象徴としてゼネラルリソースの防衛軍GRDFと攻防していた。

 

 アークバードⅡには環太平洋戦争で使われたレーザーシステムが装備してあり、艦載機としてグランダーIGの開発したADF-01 FALKENの改良型かつ後継機であるADF-02 FALKEN Zwei、同じくグランダーIGが開発した次世代機YR-99 Forneusの改良型かつ実戦配備型のR-100 SuperForneusが艦載されている。ちなみにR-100はグランダーIGの最高傑作と呼ばれている。

 また、グランダーIGは人工知能Z.O.E.のメインコンピュータを愛国軍に授けた。グランダーIGは愛国軍の最大の協力企業であった。

 愛国軍はアークバードⅡと、物資運搬ができるSSTOがあるバセット宇宙センター、最寄りの空軍基地であるマクネアリ空軍基地を拠点にしている。彼らが保有する兵器はゼネラルリソースが保有する兵器よりも性能が高い。

 この時代でもグランダーIGの兵器は優れていて、ゼネラルリソースですらグランダーIGを越すことができなかった。

 だが、エレクトロスフィアを手にしたゼネラルリソースは相手企業のセキュリティーをかいくぐり、企業のメインコンピュータを乗っ取り拡大していた。

 グランダーIGは兵器産業は優秀だが、情報産業は劣る。そのため同年11月、攻防し続けたものの情報産業に強いゼネラルリソースに乗っ取られてしまった。

 

 

 2030年、ユークトバニアは完全にゼネラルリソースに飲み込まれ、オーシアも愛国軍の拠点以外すべて飲み込まれた。

 2029年にゼネラルリソースがグランダーIGを吸収したのを期にミリタリーバランスが崩壊。

 ゼネラルリソースはグランダーIGの最高傑作機R-100を量産、愛国軍を一気に追い詰めてしまった。

 そして愛国軍はゼネラルリソースに最後の戦いを挑む。

 

 

 企業vs国家。

 

 

 果たして愛国軍は愛する国を守ることができるのだろうか?!

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。
続きは現在執筆中です。投稿はしばらく先になると思いますが、続きを楽しみにしてください。よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

1.現代編
パトリオット作戦『最後の決戦』(未来人サイドmission1)


[2030年3月29日1057時/旧西オーシア上空高高度/アークバードⅡ/作戦会議室]

 

 

 

 

 追い詰められた愛国軍は最後の作戦を決行しようとしていた。

 リーダーはオーシア大統領ケイン・ソンバーグとユークトバニア元首セルゲイ・オフロスキー。

 作戦会議室にはクルーや艦載機パイロット、マクネアリ空軍基地とバセット宇宙センターに映像を中継するための撮影機材が置かれていた。

 大統領、元首は愛国軍全軍に檄を振るうために衛星の役割のあるアークバードⅡに搭乗したのだ。

「オーシア大統領ソンバーグだ。我々は長い間攻防し続けたがついに追い詰められてしまった。ゼネラルリソースは強大な力を持っている。だが、祖国を守り続ける。奴らに屈してはならない。そこで昨夜オフロスキー元首と話し合った結果こうなった。説明はオフロスキー元首お願いします。」

「ユークトバニア元首オフロスキーです。ゼネラルリソースに降伏するぐらいなら、祖国とともに死んだほうがマシだ!私の祖国は表では滅びてしまったが、まだ愛国軍として、そして心の中でユークトバニアは生きている。だがこの状況で国家の復活は望めない。オーシアも同じ状況だ。ならば、最後に奴らに一矢報いよう!愛する国のために死のう!これは無駄死にではない!誇りある死だ!」

「私たち2人は覚悟を決めている。皮肉にもかつてのベルカ人の戦い方に似た結果になってしまったが許してくれ。だが無理はしなくていい。覚悟のある者は武器を持って立ち向かってくれ。作戦名は『パトリオット』だ。以上。」

 大統領らによる宣言が終わった。

 無線からマクネアリ空軍基地にいる軍人・政治家・デモ隊全員が戦うと連絡が入った。バセット宇宙センターからも同じ連絡が入った。

 ソンバーグ大統領、オフロスキー元首の前にアークバードⅡ機長ジョン・ハーバードが報告をしに来た。

「アークバードⅡ乗員全てが戦う覚悟です。無線連絡から他拠点に駐屯している愛国軍全員が戦うと意思表明しました。皆、自分たちの国を愛しています。死ぬ覚悟でいます。大統領、元首、指示をお願いします。」

 大統領が口を開く。

「作戦開始!愛する国のために戦おう!」

 続けて元首が声を張る。

「奴らに立ち向かうぞ!奴らに我々の覚悟を見せつけてやれぇぇぇぇ!」

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 アークバードⅡ内からも、無線からも愛国者達の雄叫びが響いた。

 

 

 

 

[2030年3月29日1304時/バセット宇宙センター上空高高度/アークバードⅡ/物資運搬室]

 

 

 

 

 バセット宇宙センターからSSTOによって備蓄燃料と食料、ミサイルやレーザーバッテリーなどの武器が運び込まれた。

 備蓄には余裕があったが、最終決戦により万全の状態で臨むため必要以上に持ち込んだのである。

 大統領と元首はSSTOで地上に戻り、戦うことを決意していた。

 その見送りに機長と艦載機パイロット、クルーが来ていた。

「大統領、元首、素晴らしい演説ありがとうございました。ふたりの健闘を祈ります。」

「ありがとう機長。私たちは地上に戻り武器を持って戦う。機長、そしてアークバードⅡ乗員全員の健闘を祈る。」

 ソンバーグ大統領は敬礼した後SSTOに乗り込んだ。

「私は元ユーク陸軍で環太平洋戦争に参加した経験がある。あの時はベルカの謀略で敵同士だったが、今は国を愛す仲間だ!私も武器を取り、陸軍だったあの頃のように愛する国の為に死ぬ覚悟で戦う!諸君らも愛する国の為に戦ってくれ!健闘を祈る!」

 オフロスキー元首はユークトバニア式の敬礼をしSSTOに乗り込んだ。機長らはずっと敬礼したまま、SSTOを見送った。

「ハーバード機長より各員へ。我々も最後の戦いに備えて準備する。いつでも戦闘開始できるよう持ち場についてくれ。」

「イェッサー!」

 パイロット、クルーはすぐに部屋から出て機体最終整備やパイロットスーツに着替えた。企業vs国家の最終決戦の時は刻一刻と迫っていた。

 

 

 

 

[2030年3月29日1738時/バセット宇宙センター南洋上空15000ft/アークバードⅡ/管制室]

 

 

 

 

「こちら管制室!Asatレーダーに反応あり!GRDFの戦闘機隊が接近中!機数10機!方位090!距離570マイル!」

 アークバードⅡ内に警報が鳴り響く。

「上部レーザーユニット展開!電力供給異常なし!バッテリー残量100%!システムオールグリーン!ターゲットロック!」

「パイロットは全員フォルネウスに搭乗済!射出クレーン以上なし!」

「Z.O.E.システム異常なし!ファルケン3機同時管制にセット!艦載機はいつでも射出できます!」

「機長!指示を!」

「ハーバード機長より各員へ!最後の戦いだ!我々の覚悟を示せ!戦闘開始!レーザーで先制攻撃せよ!敵を近づけるな!」

「イェッサー!レーザー照射開始!」

 レーザーのビーム音が鳴り響く。紅の空に青く光るレーザーが横切る。そしてかなり遠方にいるGRDFの戦闘機の半分以上が火を吹く。

「レーザー照射終了!電力チャージまで5秒、3、2、1、チャージ完了!第2射照射開始!」

 再びレーザーが光る。今度は全機撃墜したようだ。

「レーザー照射終了!Asatレーダーに敵性航空機なし!」

「レーダーに目を配れ!敵を近づけるな!」

 

 

 

 

[2030年3月29日1744時/グラハム空軍基地]

 

 

 

 

 旧オーシア首都オーレッド近くの海岸線に空軍基地がある。

 元はオーシア最大の空軍基地であるグラハム空軍基地。

 今はゼネラルリソース・オーシア支部のGRDFが保有する空軍基地になっている。

 また愛国軍討伐隊の前線基地となっており、その戦力は基地の規模もあってかなり大きい。

「管制塔より離陸する全機へ。アークバードに向かった先遣隊がやられた。また、他の基地から出撃した戦闘機隊も壊滅した。地上からマクネアリ空軍基地に向かった地上部隊は大半がやられた。バセット宇宙センターではオーシア大統領とユーク元首が銃を持って戦闘してると連絡が入った。今回奴らは本気のようだ。気をつけてあたれ。以上。」

「ディジョンより全機、いつもはのんびり戦闘していたが、今回奴らは本気だ。全力であたるぞ。そして、生きて帰還する。」

「こちらキース、了解した。俺は死にはしないぜ隊長!」

「パトリック、了解。必ず生きて帰る!」

「こちらジャン、了解。なぁに、やられはしないさ。」

 アビサル・ディジョン率いるGRDFの戦闘機隊が離陸する。

 ディジョンは元エルジア空軍の熟練パイロットだが、彼以外はまだルーキーである。

 彼らはアークバードⅡに向かっていた。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。書き留めた分が完成したので投稿させていただきました。たまたま今回は時間があったので投稿ペースが早かったですが、次はどうなるかわからないのでよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

覚悟(未来人サイドmission1)

[2030年3月29日1802時/マクネアリ空軍基地]

 

 

 

 

「くそ!徐々に追い詰められている!」

 当初はGRDFの地上部隊を半壊させたが、増援の到着により劣勢になっていた。

「こちら地上部隊!航空支援を求む!」

「了解!敵機に追い回されているが、こいつも巻き添えにしてやる!」

 愛国軍のR-100がGRDFのR-100に背中を取られている。

「来やがれクソ会社が!こっちは弾切れときたが、うまいことやってやる!」

 愛国軍戦闘機がGRDF地上部隊に音速で近づく。

 背後についているGRDF戦闘機がミサイルを発射する。

 しかし、愛国軍戦闘機は回避せずそのまま被弾。

 火を吹きながらも速度を落とすことなくGRDF地上部隊に特攻した。

 そしてGRDF戦闘機も回避が間に合わず地面に爆散した。

「な、なんて野郎だ…。死ぬのが怖くないのか…。狂ってやがる…。」

「まるで教科書に載っていたベルカ戦争時のベルカ人だ…。たとえ自分が傷ついても国を守ろうとする…。恐ろしい奴らだ…。」

 GRDFの隊員は愛国軍の覚悟に恐怖を感じていた。

 

 

 

 

[2030年3月29日1806時/バセット宇宙センター南洋上空15000ft/アークバードⅡ]

 

 

 

 

 レーザーシステムと6個のレーザーバッテリーを搭載しているアークバードⅡは、はじめのうちは戦況を有利にしていたが、GRDFが多数の戦闘機を用いて飽和攻撃に出たため不利になってきていた。

「Asatレーダーに反応している敵性戦闘機は114機!うち半分は3機のCFA-44でマーレボルジェを操っています!この数だと、ひとつのレーザーでは対処できません!」

「よし!下部のレーザーを起動しろ!奴らはこのレーザーの存在を知らんはずだからな!」

 胴体下部のユニットが展開し、レーザーユニットが出てきた。

「撃てぇ!」

 青い閃光を放ち、光の刃が敵機に命中する。

「なにぃ!レーザーをふたつ装備してるだと!聞いてないぞ!」

「動揺するな!マーレボルジェをうまく使って近づけ!距離を縮めればレーザーの死角に入る!」

「敵レーザーにレールガンで攻撃する!1つでも破壊すればこっちのもんだ!援護を頼む!」

 1機のCFA-44がアークバードⅡに近づく。

「敵機が一機高速で接近中!レーザーで破壊します!」

 レーザーを発射するが、CFA-44は先を読んでいたのかマーレボルジェを囮に回避する。

「あと少しで敵を目視できる…。」

 レーザーの閃光が消え、再び接近する。

「もう少し…、見えた!」

 CFA-44からレールガンが発射された。

 レールガンの弾は一瞬でアークバードⅡの上部レーザーユニットに命中する。

「上部レーザーユニット被弾!レーザーユニット機能しません!」

「くそっ!レールガン攻撃か!撃った奴を撃墜しろ!」

「下部のレーザーでは攻撃できません!上から狙い撃ちされます!」

「高度を上げつつ艦載機を射出しろ!もはやレーザーでは対処できん!味方に当たる可能性があるから下部レーザーユニットを収納せよ!」

 アークバードⅡは高度を上げると同時に全ての艦載機を射出した。

「敵母機が高度を上げてるぞ!さらにレーダーに敵機反応!艦載機を射出したのか?!」

 艦載機が射出と同時に分散した。

「アルタイル1より全機!GRDFの敵機を殲滅する!アルタイル1エンゲージ!」

「了解!アルタイル2エンゲージ!本物の軍隊を舐めるなよ!」

「アルタイル3エンゲージ!ぶっ潰してやる!」

「アルタイル4エンゲージ!貴様らも道連れだ!」

「アルタイル5エンゲージ!待ってろエレーナ。もう少しでそっちに行くからな。」

「アルタイル6エンゲージ!我が祖国に栄光あらんことを!」

「アルタイル7エンゲージ!今回はやられてもイジェクトしないぜ!」

 7機のR-100で編成された愛国軍アルタイル戦闘機隊が交戦を開始する。

 彼らは愛国心の高いオーシア空軍とユークトバニア空軍によって編成された部隊だ。

 さらに3機の赤いADF-02が人間離れした機動でレーザーやレールガンを放ちGRDFを翻弄する。

「くそっ!あの赤い機体強すぎる!俺の機体よりも機動が高すぎる!ダメだ、うわぁ!」

 Z.O.E.操るADF-02によって全てのCFA-44が墜ちる。

 それと同時にマーレボルジェが制御不能となり墜落した。

「まだ来る!まだ来るぞ!」

 数を減らしても減らしても、GRDFの戦闘機は尽きることがなかった。

 

 

 

 

[2030年3月29日1820時/バセット宇宙センター/SSTO管制室]

 

 

 

 

 バセット宇宙センターには軍人のほか、デモ隊の一般人や政治家、宇宙センターのクルーが銃を手に戦っていた。

 しかし、状況が不利になることは避けられなかった。

 次々と血を吹き倒れていく軍人や一般人。

 中には手榴弾を片手に飛び込む勇敢な一般人もいた。

「我々はたかが企業なんかに屈しない!屈してたまるものかぁぁぁ!」

 オフロスキー元首が叫ぶ。

 だが、さらに廊下から多くの敵が近づく。

 上空を飛んでいた愛国軍戦闘機は全機撃墜され、地上兵器もすべて破壊されていた。

 そして撃っていたアサルトライフルの弾が切れてしまった。

「弾が切れたか…。だが、覚悟は決めてるな?」

 ソンバーグ大統領がそう言うと生き残った皆がうなづいた。

「GRDF地上部隊より愛国軍へ!お前たちは完全に包囲されている!無駄な抵抗はやめ投降せよ!繰り返す…」

 彼らは部屋から出なかった。

「奴ら銃を撃ってきません。弾切れでしょうか?」

「おそらくそうだろうが、警戒しろ。今のあいつらは何をしでかすかわからん。」

 GRDF地上部隊が管制室に近づく。

 管制室は窓ガラスがなく、モニターで埋め尽くされている。

 生きてるモニターにはオーシアとユークトバニアの国旗が映し出されている。

 管制室にGRDF地上部隊が入る。

 そのとき、愛国軍の宇宙センタークルーがモニター下のキーボードに飛び込みスイッチを押す。

 それと同時に入り口が閉まった。

 突然の出来事にGRDFは驚きを隠せなかった。

「そんなことで動揺してたら軍人失格だよ。あっ君たちは企業の犬どもだったか。軍人ですらなかったね。ならば見せてあげよう。愛する国を守る本物の軍人の覚悟を!」

 オフロスキー元首が叫ぶと軍人、政治家、一般人、クルー関係なくポケットから手榴弾を取り出し、ピンを引っこ抜いた。

 さらに部屋を見渡すと、これでもかというほどの大量の爆発物が置いてあった。

「勝った…!」

 ソンバーグ大統領は屈することなく愛する国のために死ぬことを喜んでいた。

「よ、よせっ、やめろぉぉ!」

 GRDF地上部隊の1人が叫ぶが時すでに遅く、SSTO管制室が大爆発した。

「こ、怖ぇよ…。なんなんだよ、あいつら…」

 GRDF隊員は恐怖に震え上がっていた。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。タイムスリップはまだですので、しばらくの間は現代編をお楽しみください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

混迷の空戦(未来人サイドmission1)

[2030年3月29日1825時/バセット宇宙センター南洋20000ft上空]

 

 

 

 

 大統領らが自爆した頃、アークバードⅡとGRDFの戦闘は混迷を極めていた。

 アルタイル1操るR-100がGRDFの操るR-100を蹂躙していた。

「くそっ!機体条件は同じなのに、なんでこんなに強いんだ!」

 所詮は企業の軍隊に過ぎないGRDFはまだ創立してから年月が経っていない。パイロットはルーキーがほとんどである。

 これは、ほとんどの軍人経験者が企業の軍隊になることを嫌ったためである。

 そのため、ゼネラルリソースは新たにGRDFの募集をかけた結果、入隊1年目ばかりのルーキーばかりになったのである。

 逆にアルタイル隊はオーシア・ユークトバニアの熟練パイロットだ。

 ルーキーが到底勝てるはずのないエース部隊なのである。

 GRDFの戦闘機の背中をアルタイル1は空戦機動で簡単にとり、機銃掃射した。

 穴だらけになり、火を吹いて墜落した。

「こちらアルタイル1、敵機を撃墜した!だか、敵機が多すぎる!いずれ俺たちにも限界がくるはずだ!その時は覚悟を決めるぞ!」

「アルタイル3よりアルタイル1へ!どうやらその時がきたようだ!先にあっちの世界に行ってるぜ!」

「了解!俺たちもすぐに追いつくからな!」

 アルタイル3は複数のGRDF戦闘機に囲まれていた。

 アルタイル3はすでにミサイルを撃ち尽くし、機銃も残り僅かであったが、回避運動を続けていたため被弾はしていない。

 アルタイル3は自身を囮にGRDF戦闘機を集めていた。

「俺たちの覚悟を見せてやる!うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 コクピット内の計器をいじり、兵装を切り替える。

 そしてミサイル発射ボタンを押した。

 その瞬間、機体は爆散し、強烈な衝撃波がはしった。

 その衝撃波に多数のGRDF戦闘機が巻き込まれ墜落した。

 実はウェポンベイにXFA-33 FenrirのLSWM(長距離衝撃波弾道ミサイル)の小型化した自爆用の爆弾、SWSB(衝撃波自爆弾)を装備していた。

 小型化したため、衝撃波の威力が半減したが、それでも十分な破壊力を持つ。

 また、自爆用のため機体から切り離すことができず、兵装切り替えをしミサイル発射ボタンを押せば自爆する。

 これは特注で作ったもので、まさに愛国軍の覚悟を具現化した兵装である。

「あいつら何積んでやがんだ!迂闊に攻撃すると巻き込まれれるぞ!」

 GRDF戦闘機隊は巻き込まれるのを恐れる余り、手が出せなくなった。

 

 

 

 

[2030年3月29日1832時/バセット宇宙センター南洋20000ft上空]

 

 

 

 

 そんな混沌とした空域にディジョン達の部隊が到着した。

「ディジョンより全機へ、奴らと交戦する。気を引き締めろ!」

「こちらパトリック!任せてください!この任務終わったらオススメのバーがあるので、そこで…」

 紫のレーザーがディジョンの部隊の一機に被弾し爆散する。

「くそっ!パトリックがやられた!」

「落ち着けキース!動揺するな!全機散開!」

 ディジョンが指示を出す。

「あの赤い機体からやる!レーザーを装備しているから厄介だ!」

 Z.O.E.操るADF-02に手を出すが、人工知能相手の勝負は分が悪かった。

「あの赤い機体!よくもパトリックを!やってや…」

 今度はレールガンで撃墜された。

「ああ!ジャンがやられた!」

「落ち着けキース!とにかく落ち着け!冷静に対処しろ!」

 元エルジア空軍のディジョンは冷静に戦況を見ていた。

「あの赤いADF-02は普通だとあんな機動性は出ないはず。ということは無人機か。」

 ディジョンは無人機だということを見抜いた。ディジョン操るR-100に搭載しているECMポッドを作動させた。

 いくらECM対策をしているZ.O.E.でも、反応速度の僅かな低下は避けられない。

 僅かに鈍くなった隙を見抜きディジョンはヒット・アンド・アウェイで機銃掃射をする。

 ADF-02の1機が火を吹いて墜落する。

「なるほど、ヒット・アンド・アウェイか。そいつは閃かなかったな。俺もやってやる!」

 キースもディジョンを真似てヒット・アンド・アウェイを実行する。

「レーダーに反応!高速で接近中!アルタイル4に向かっている!」

「アルタイル4よりアルタイル2了解した!返り討ちにしてやる!」

 2機のR-100が向かい合わせになる。

 互いにミサイルを撃つが回避される。

 再び反転して次は機銃掃射をした。

 アルタイル4、キースともに被弾したが、アルタイル4はすれ違った直後自爆した。

「あんにゃろう!自爆に巻き込みやがって!機体がいかれちまった!全くついてないぜ。キース!イジェークト!」

 R-100の機首から棺桶の如くコフィンユニットが飛び出し、パラシュートが開く。

 その棺桶は海に着水した。

「キース!無事か?」

「俺は無事だぜ隊長!隊長も気を付けな!奴ら正気じゃねぇ。」

 キースは棺桶から出て空を見上げた。

「化けモンだぜ、あいつら…。」

 日の沈んだ空を眺めて呟いていた。

 

 

 ディジョンはヒット・アンド・アウェイが有効だとわかり、戦闘を続けていた。

 しかもディジョンはアルタイル1を狙っていた。

「捉えた!」

 アルタイル1に機銃掃射するが、華麗に回避する。

「狙いは俺か。いいだろう!やってやる!」

 アルタイル1もディジョンに機銃掃射するが見事に回避する。

「なかなかやるな。面白い!」

 アルタイル1とディジョンの空戦が始まろうとした時、GRDF空中管制機より無線が入った。

「オーシア支部より入電!この戦いで兵力を損失しすぎたため、撤退命令が出た。全GRDF機は直ちに撤退せよ。繰り返す…」

 さすがにゼネラルリソースも危機を感じたのか、撤退命令を出した。

「いいところだったのに…。仕方ない。撤退する。AWACS、キースの救助を要請してくれ。」

 ディジョンは渋々撤退していった。

 

 




今回は2話同時投稿です。引き続き次話をお楽しみください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

時空の門(未来人サイドmission1+)

[2030年3月29日1842時/バセット宇宙センター南洋25000ft上空/アークバードⅡ/管制室]

 

 

 

 

「Asatレーダーの反応に変化あり!奴ら撤退していきます!」

「奴らもさすがに観念したか。だが、かなり損失が出てるのに引こうとしなかった。人のことは言えないが、人間恐ろしいものだ。」

 ハーバード機長はゼネラルリソースの執念深さに恐れを感じていた。

「今生きている機は?」

「アルタイル1、2、5、6、7、ADF-02が2機です!」

「よし、着艦させろ!」

 アークバードⅡに次々と着艦する。

 生き残ったパイロットは管制室に集まった。

「皆ご苦労。少なくとも奴らに一矢報いることができた。」

「しかし、俺たちは死にきれませんでした。これからどうなさるつもりですか?」

 ハーバード機長にアルタイル1ことイワン・アレンスキー大尉が問いかける。彼は元ユークトバニア空軍の熟練パイロットだ。

「マクネアリ空軍基地の生存者は最寄りのGRDFの基地に特攻するつもりらしい。バセット宇宙センターから連絡がないということは、大統領と元首は覚悟を決めたのだろう。」

 ハーバード機長は目をつぶって一呼吸したのち、口を開いた。

「我々もここでのんびりしているわけにはいかない。そこで、GRDF最大のグラハム空軍基地にアークバードⅡごと特攻する。一旦攻撃を受けない大気圏外へ離脱し、再び大気圏に突入し、速度を維持したまま特攻する。」

 衝撃的な作戦だが、作戦を聞いていたパイロットやクルーは覚悟を決めたのか、動揺すらしていなかった。

「だが、さすがに無防備のままだと基地に特攻する前に撃墜される可能性がある。それまでにグラハム空軍基地の戦力の注意をそらしてほしい。艦載機3機、内1機はZ.O.E.で丁度いいと思うが、誰か我こそはという者はいないか?」

「ならば俺がいきます!」

「私に任せてください!」

 アルタイル2とアルタイル6が名乗り出た。

「ありがとう。勇気ある2人が作戦開始5分前にグラハム空軍基地に奇襲をかける。そして、戦力があらかた減ったところを狙って特攻する。作戦時間は0000時とする。それまでに各員決意を固め、作戦に臨んでくれ。以上だ。」

 こうして生き残ったアークバードⅡは愛国軍の最後の作戦に臨むのだった。

 

 

 

 

[2030年3月29日2300時/バーナ学園都市南洋25000ft上空/アークバードⅡ/管制室]

 

 

 

 

 アークバードⅡからアルタイル2とアルタイル6操るR-100、Z.O.E.操るADF-02が射出された。

「アルタイル2よりアルタイル6、俺たちの任務はグラハム空軍基地の戦力を減らすことだ。破壊はアークバードⅡに任せるからな。」

「アルタイル6了解。アークバードⅡには有終の美を飾ってもらわないとな。我が祖国に栄光あらんことを。」

 3機はグラハム空軍基地へと飛んでいった。

 

 

「彼らは離脱したな。アークバードⅡ高度上昇!大気圏外に出る!」

 アークバードⅡの6発の複合サイクルエンジンが青い火を噴き高度を上げる。

 しばらくすると空がさらに漆黒に染まった。

 大気圏外に出たのである。

 夜のため地球の青さを確認はできないが、代わりにオーシア大陸が光っていた。

 街の灯りである。

「オーシアが光っている。綺麗な光景だ。あの世に行く前に素晴らしい光景を観れるとはな…。」

 ハーバード機長らは、高解像度カメラで撮っている映像を管制室のモニターで見ていた。

「綺麗だ。心が拭われるようだ。」

 アレンスキー大尉が呟く。

「エレーナにも見せたかったな…。あの世で会ったらこの事を話そう。今仇をとるからね。」

 アルタイル5ことフォード・マクドネル大尉が悲しい目をしていた。

 彼は元オーシア空軍だが、実はユークトバニアにエレーナ・ダニエリという恋人がいた。

 長い年月をかけ愛が実り、オーシアで国際結婚し、エレーナはオーシアに国籍を移して夫婦仲良く生活していた。マクドネル大尉が愛国軍には入っても、エレーナは彼についてきた。

 しかし2029年12月、GRDFとの戦いに巻き込まれ死亡。

 マクドネル大尉は彼女の死に嘆き悲しんだ。

 そして、彼は国の為よりも彼女の復讐の為に戦うようになった。

「機内にいるアルタイル隊はどうする。機内に留まるか、艦載機に乗って戦うかは任せる。」

 ハーバード機長の問いにマクドネル大尉が即答する。

「もちろん艦載機に乗ります!愛する国の為にも!」

「本当は彼女の復讐なんだろう。だが、別に構わないさ。俺たちはどうせ死ぬ。死ぬのなら満足して死ぬのが一番だろう。彼女の為に戦ってこい!」

 ハーバード機長は檄を飛ばした。

「マクドネル大尉だけに行かせはしないぜ。俺もアルタイル隊隊長として出撃します!」

「俺のことを忘れんなよな!間違ってイジェクションレバー引かないように整備兵にぶっ壊してもらったぜ!」

 アルタイル7ことコウセイ・ヒヤマ(飛山鋼生)大尉は元オーシア空軍パイロットで腕はそこまで強くない。

 しかし悪運の強いパイロットで機体がボロボロの状態で帰還したり、エネミーラインでイジェクトしても必ず生きて帰るなど、ISAFの某パイロットと似ている。ちなみにそのパイロットとは別人である。

「よし、わかった。大気圏突入後、高度25000ftになった時に射出する。すぐ射出できるよう準備してくれ。」

「イェッサー!」

 アルタイル隊はすぐに格納庫へと飛び込んでいった。

 

 

 

 

[2030年3月29日2355時/グラハム空軍基地]

 

 

 

 

「レーダーに反応!3機の航空機が接近中!愛国軍です!奴ら戦闘機でこっちに向かってます!」

 グラハム空軍基地から警報が鳴り響き、戦闘機が離陸した。しかし、遠距離からADF-02のレーザーで撃墜された。

「愛国軍の奴らはどこまで懲りないんだ。ディジョン機、離陸する!」

 GRDFは戦闘機を出すが、突然の事態と先の戦いで疲弊しているため、万全の状態ではなかった。

 しかし、愛国軍側も3機しかなく、内2機は人間であるため疲労が溜まっていた。結局は五分五分といったところである。

 ただし、注意を逸らすという本来の作戦を達成してるため問題はなかった。

 

 

 

 

[2030年3月30日0000時/グラハム空軍基地上空大気圏外/アークバードⅡ/管制室]

 

 

 

 

「時間だ。作戦開始!大気圏に突入せよ!」

 アークバードⅡは突入体勢に入る。

 少しづつ高度を下げ、大気圏に突入した。周りが赤くなる。突入は順調に進んでいた。

「大気圏突入順調に推移。異常ありません。」

 だが、突入1分後に異変が起きた。

 次第に機内の揺れが大きくなりだしたのである。

「揺れが激しい!何か身近なものに掴め!」

 ハーバード機長は注意を促すと同時に疑問が横切った。

「馬鹿な!アークバードⅡは大気圏突入時にこんなに揺れないはずだ!大気圏突入は何度かやっているがこの揺れはおかしいぞ!」

「機長!モニターの映像が赤ではなく、真っ白になってます!宇宙空間の黒も白く…、全て真っ白です!」

「アークバードⅡの故障か?!」

「いえ!システムには異常は確認できません!」

「大変です!Z.O.E.システムに異常発生!奇襲部隊のADF-02とオフラインになりました!」

「全員冷静に!何が起きているかわからんが、ひとまず大気圏突入を続行する!」

 高度が下がり、大気圏内に入った。

 入ってから徐々に揺れが収まり、真っ白な空間がなくなり色が出てきた。

 しかし、待っていたのは衝撃の光景だった。

「機長…。現在時刻は0007時でよろしいのですよね…?」

「確かにそうだ…。時計は正しくセットしている…。だが…、モニターの映像はなんだ…?」

「真夜中のはずなのに…、太陽が出て…、青空が広がっています…。」

 

 

 この状況に皆絶句していた。

 

 




最後まで読んでいただき、ありがとうございます。次回からベルカ戦争編に入るのでよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2-1.ベルカ戦争編
漂流


2030年3月30日0000時、グラハム空軍基地に特攻するため大気圏に突入したアークバードⅡだが謎の現象に襲わた。無事大気圏内に入ったが、そこにはあり得ない光景が広がっていた。


[?年?月?日?時/オーレッド周辺空域上空30000ft/アークバードⅡ/管制室]

 

 

 

 

 ハーバード機長はグラハム空軍基地の特攻作戦を中止し、状況を確認していた。

「アルタイル1よりハーバード機長。一体何が起こったのですか?それにアークバードⅡの揺れは一体…?」

「今わかることは夜なのに昼だということだけだ。」

「夜なのに昼?わけがわかりません。どういうことです?」

「私もこの状況を理解できん。今は有事に備えて艦載機で待機してくれ。」

 アルタイル隊に待機の指示を出す。

「機長!目標のグラハム空軍基地が存在しません!奇襲部隊とは通信途絶!」

「グラハム空軍基地がないだと!?何かの間違いじゃないのか!?」

「間違いありません!地形、現在座標から判断するにグラハム空軍基地の存在していたオーレッド周辺です!」

「なんだ!?何が起きている!?」

 管制室のクルー達は理解不能な状況に頭がパンクしそうになっていた。

 ハーバード機長もパンク寸前だ。長い機長経験を通した彼でもこんな経験はしたことがないから無理もない。

「機長!奇襲部隊と通信を試み続けた結果、ラジオ放送の電波を傍受しました!」

「よくやった!とにかく今は情報だ!つないでくれ!」

「しかし、この電波は今は滅んだはずのオーシアの放送です…。しかも、ラジオ局オーシア国営放送のものです。2011年に倒産したはずの…。」

 オーシア国営放送は2010年の環太平洋戦争時にタカ派軍人が運営し、プロパカンダ放送を流していた。

 しかし、戦争の真実が表に出てからはプロパカンダ放送を流していたオーシア国営放送が国民と平和主義の政治家・軍人から叩かれるようになり、ハーリング大統領の権限により倒産した。

「何故倒産したはずのラジオ局が…?まさか…タイm…?いや、今はラジオの内容が優先だ!つないでくれ!」

 オーシア国営放送の周波数に合わせる。

 すると放送が流れてきたが、信じられない内容だった。

《3月25日、ベルカはウスティオでの天然資源発見を期に、ベルカ隣国を侵略しました。しかし、オーシア・ユークトバニア・ベルカ周辺諸国は連合を組織。正式名はまだ未定ですが、4月に入ってから反攻作戦を本格的に実施するとのことです。》

「…………ベルカ…戦争…だと…?」

 ハーバード機長の顔色が青ざめていく。

《今日のニュースは以上です。オーシア国営放送が3月30日、午後1時をおしらせします。ポッ、ポッ、ポッ、ピーン。続いては…》

「皆、今の放送を聞いたな…。」

「はい…、我々はまさか1995年に…?」

「なんとも言えないが…、可能性はあるな…。ベルカ戦争時代に…、タイムスリップしてしまったのか…?」

 しばらく沈黙が続いたのち、ハーバード機長は何かを思い出したように声を出した。

「光学迷彩を作動させろ!姿を見られてはマズイ!タイムパラドックスが起きるぞ!」

「タイムパラドックス!?りょ、了解!光学迷彩作動!」

 アークバードⅡは蜃気楼のように姿を消した。

 光学迷彩はゼネラルリソースがグランダーIGを奪取してからアンチステルス技術が進み、実戦では役に立たなかった。

 しかし、光学迷彩がこんなところで使われるなんて誰も思いもしなかった。

「機長、タイムパラドックスってなんですか?」

「例えば過去に戻って自分の親を殺す。そしたら過去が変化したから自分が生まれなくなる。要はそういうことだ。」

「ということは、我々が1995年に現れたことによって過去が変化し、我々の知る未来や我々の存在が変わるということですか?」

「ああ、そういうことだ。」

 その時、クルーのひとりが声をあげた。

「大変です!Asatレーダーに接近する航空機を補足しました。IFFは…オーシア空軍…です…。」

 管制室の空気が一気に凍りついた。

 

 

 

 

[1995年3月30日1304時/オーレッド周辺空域上空15000ft]

 

 

 

 

 アークバードⅡが出現したオーレッド周辺空域に4機のF-2Aが向かっていた。

「こちら空中管制機ストラタス。オーシアの防空レーダーが国籍不明機を捉えたが、見失ってしまった。クローバー隊各機は周辺空域を警戒せよ。」

「クローバー1了解。クローバー1から各機へ。分散して警戒行動に移る。何か見つけたら報告しろ。」

 4機のF-2Aは分散する。主に反応があった周辺を警戒していた。

 

 

 しばらく散策したが、結局何も見つからなかった。

「クローバー1よりストラタスへ。異常なし。今日もオーレッド周辺は問題なしだ。」

「了解。帰投せよ。防空レーダーの故障だろうな。あとでオーシア国防空軍本部に報告しておく。任務ご苦労。」

 4機のF-2Aは撤退していった。

 

 

 

 

[1995年3月30日1319時/オーレッド周辺空域上空30000ft/アークバードⅡ/管制室]

 

 

 

 

「オーシア空軍機の撤退を確認。ふぅ…。一時期はどうなるかと思いましたよ。」

「ひとまず、防空レーダーの故障でこの一件は片付くだろう。高解像度カメラで捉えたオーシア空軍機の解析は完了したか?」

 姿を隠し、オーシア空軍機が撤退するまでの間、高解像度カメラでオーシア空軍機を撮影し解析を行っていたのだ。

「機体、エンブレムからF-2Aのクローバーエンブレム。当時の資料を検索してみたら、この部隊は1990年から2004年まで実在しています。部隊名はオーシア国防空軍第9航空師団第132飛行隊クローバー隊で4機のF-2Aで編成されている部隊です。」

 今までの怪奇現象を総合して、ハーバード機長は間違いなくタイムスリップしたことを確信した。

「我々は本当にタイムスリップしてしまったようだな。ひとまず此処は危険だ。東へ向かいオーシア防空圏外にでる。燃料はまだあるな?」

「大丈夫です。燃料はまだ余裕があります。」

「よし、我々はこれより東へ向かい光学迷彩を解除したのち、再び大気圏外に出て大気圏に突入する。もしかすれば元いた時代に戻れるかもしれない。」

 アークバードⅡは進路を変え、東へ向かった。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。今回はタイムスリップネタのため、非常に書きやすかったので早めに投稿出来ました。次回もよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

異なる世界線

注意:今回はタイムスリップの説明中心です。ストーリーは進んでいません。


[1995年3月30日1335時/オーシア東洋スプリング海上空30000ft/アークバードⅡ/管制室]

 

 

 

 

 アークバードⅡは光学迷彩を作動させたまま、スプリング海に移動していた。

 ハーバード機長は改めて今起きている事情を説明するため、管制室にクルー、アルタイル隊を集めた。

「…というわけだ。信じられん話だが、これは現実に起きている。まず、我々はタイムパラドックスを避け、現代に戻ることを最優先とする。」

「もし、現代に戻ることができなければ、どうするんです?」

 アレンスキー大尉が不安な顔で質問をする。

「その場合は……。すまん、そこから先は私にもどうすればいいのかわからない…。」

 ハーバード機長はこの状況に対応しきれなかった。ましてやタイムスリップなんてSFの世界の話で、自分たちが経験するなんて思わなかったからだ。

 そんなハーバード機長をマクドネル大尉が気にかける。

「大丈夫ですよ。タイムスリップにも色々種類があります。特に今回の件については、我々のいた世界と繋がってない可能性があります。」

 マクドネル大尉はタイムスリップ系SFものが好きなため、タイムスリップの分野は得意中の得意だ。彼は平行世界型タイムスリップについて全員に説明した。

 

 

 平行世界型タイムスリップは現代の世界と過去の世界が繋がってないことを言う。

 例えば、ゼネラルリソースと戦っていた現代を世界線Aとするならば、アークバードⅡが出現したベルカ戦争時代は世界線Bとなる。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 世界線Aのベルカ戦争はアークバードⅡが出現せず、円卓の鬼神が活躍し、ベルカで7つの核が起爆した。

 その後ベルカは敗戦し、ベルカの技術は世界中に広がり、Z.O.E.シリーズが増え、様々な巨大航空機が誕生し、レーザー技術の飛躍的向上など、大きな影響を与えている。

 アークバードⅡの原型機アークバードは、ベルカの巨大航空機技術とレーザー技術がもたらしたものであり、ベルカの技術なしではアークバードは開発できなかったと言われている。

 

 

 世界線Bの場合、アークバードⅡの出現によって時代の流れにズレが生じる。

 すなわち、アークバードⅡが出現する前は世界線Aも世界線Bも同じ世界線だったが、アークバードⅡの出現をきっかけに世界線が枝分かれする。

 そして分かれた世界線は決して交わることがない。

 すでに世界線Bでは世界線Aとは違う歴史を歩んでいる。

 その証拠はオーシア空軍クローバー隊の行動が証明している。世界線AだとアークバードⅡが出現してないため、防空レーダーが国籍不明機の反応を捉えず、クローバー隊は出撃しなかった。

 しかし世界線Bだと本来出撃しないはずのクローバー隊が出撃し、彼らの未来に変化が生じてしまったのだ。

 

 

 バタフライエフェクトという言葉があるが、蝶が羽ばたくと僅かな気流の乱れが生じ、その乱れが長い距離を流され大きな乱れとなりスーパーセル(竜巻を発生する積乱雲)を作り竜巻を起こすことを単語にしたものである。

 要は過去に起きた些細な変化が、未来に大きな影響を与えることを意味している。

 となれば、クローバー隊の行動が未来を大きく変える可能性があるのだ。

 いくらアークバードⅡがタイムパラドックスを起こさないように努めても、クローバー隊の行動はどうしようもないから未来の変化は避けられないのである。

 

 

 さらに繋がってない最大の証拠として、アークバードⅡ自身に変化が生じていないのである。もちろん、人物にも、過去の歴史データが入っているコンピュータや書物にも。

 

 

 以上のことをマクドネル大尉はいらない紙に書いて全員に事細かに説明した。

「頭がこんがらがるぜ…。」

 ヒヤマ大尉は理解が難しいようだ。

「どういうこと?」

「意味わかんねぇ。」

「結局はタイムなんたらは起こらないから俺たちは安全ってことかい?」

 全員頭を抱えている。しかし、ハーバード機長は話を理解していた。

「なるほど、元いた世界と繋がってない。今いるこの世界は似ているが異なる世界、我々の知る歴史とは違う独自の歴史を歩むわけか。ならば我々は一体なんのためにこの時代に?」

「うーん…それは僕にもわかりません。単なる偶然なのか、それとも運命なのか…。」

 マクドネル大尉は顎に手を添えて答えた。

「どのみち我々はこの時代にいてはいけない存在だ。作戦通り、大気圏外に出たのち再突入を行う。行う場所も決めてある。セレス海に浮かぶ孤島、サンド島上空で再突入する。」

 ハーバード機長がサンド島を選んだのにはちゃんとした理由がある。

 

 

 世界線Aの2030年、すなわち現代に戻れた場合、サンド島はゼネラルリソース勢力圏外で廃空港と化しているため、安全が確保できる。

 そこで体制を整えたのちゼネラルリソースにアタックを仕掛けるつもりだ。

 

 

 世界線Bの1995年、すなわち何も変化がなかった場合、サンド島には将来起こる戦争で活躍するサンド島分遣隊が駐留している。

 オーシア本国から離れた土地であるため、情報漏洩の少なさを狙ってサンド島を選んだ。ついでにうまいこと交渉して燃料や食料を提供してもらおうと考えている。

 また、当時のサンド島にはハーバード機長の知り合いがいるのだ。それはまた次の話としよう。

 

 

 世界線Bの2030年、すなわち全くの異なる異世界の場合、自分たちの秘密を隠すためサンド島で余生を暮らすつもりだ。

 しかし、これはサンド島が廃空港の話で、まだ空軍基地として機能していれば場所を移すつもりである。

 

 

 以上がサンド島を選んだ理由だ。

 

 

 大気圏再突入で何が起きるかわからない。

 

 

 だが、ハーバード機長はその大きな賭けにかけようとしていた。

 

 

「オーシア勢力圏外に到着、Asatレーダー反応なし。光学迷彩解除、大気圏離脱シークエンスに移ります。」

 

 

 アークバードⅡは機首を上に向けた。

 

 

「離脱シークエンス開始!大気圏を離脱せよ!」

 

 

 アークバードⅡは高度を上げ、宇宙空間に向かっていった。

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。タイムスリップの説明はわかりやすく書いたつもりですが、理解できたでしょうか?
タイムスリップの分野は得意なのでわからないことがあったら質問してください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サンド島へ

[1995年3月30日1409時/宇宙空間/アークバードⅡ/管制室]

 

 

 

 

「青い地球だ…。何度見ても綺麗だ…。」

 モニターに映る地球を見て、アレンスキー大尉は感傷に浸っていた。

「でもよぉ隊長、この綺麗な星で今戦争が起こってるって思うと、なんだか悲しくなるよなぁ。」

 ヒヤマ大尉が問いかける。

「いつの時代だって人間は争うのさ。一昔前だと…いや、今から15年後に起きる戦争だとベルカの陰謀があったとはいえ、俺もヒヤマ大尉は敵同士だった。かつての敵は味方になるかもしれないし、かつての味方は敵になるかもしれない。ちょっとした価値観や思想のズレで戦争は起こる。それは人間だから避けられない。ガキの頃のケンカだって、親に反抗的な態度をとることだって、見方を変えれば戦争と同じことさ。人間はそういう宿命に縛られてるのかもな。」

「まぁ、そう言われりゃあ、俺たちもゼネラルリソースにケンカ売ってたもんな。人間ってそういうところが愚かだよなぁ。」

 二人はモニターに映る青い星を眺めながら呟いていた。

 

 

 

 

[1995年3月30日1414時/サンド島上空大気圏外/アークバードⅡ/管制室]

 

 

 

 

 アークバードⅡはサンド島上空大気圏外に到着し、大気圏突入シークエンスに移っていた。

「オーシア国営放送に周波数をセット。ラジオ放送はしっかり流れています。」

「よし、予定どおり大気圏に突入する。大気圏内に入ったら、この時代だろうと現代だろうとサンド島付近の海に着水する。サンド島分遣隊が現れた場合は争いを避けるため、彼らの指示に従う。皆いいな。」

「イェッサー!大気圏突入開始!」

 アークバードⅡが大気圏に突入する。ラジオ放送はしっかり流れている。

 皆、あの時と同じ現象が起きることを期待していた。

 

 

 だが、何も起こらなかった。

 

 

 アークバードⅡは大きな揺れにも、白い光に包まれることもなく、ラジオ放送も変化なく無事大気圏突入に成功した。いや、成功というべきなのだろうか。

 ハーバード機長は複雑な気持ちだった。

「…何も起こらなかったか…。ひとまず予定どおり、サンド島付近に着水する。」

 アークバードⅡは降下をはじめた。

 

 

 

 

[1995年3月30日1421時/サンド島]

 

 

 

 

「レーダーに反応!国籍不明機が高高度から出現!降下しています!この進路だと、サンド島近海に落ちます!」

「ウォードックをスクランブル発進させよ!武装はするが、交戦はするな!」

 サンド島基地司令官が出撃命令を出す。

 サンド島からF-14Dが4機離陸する。

 当時のオーシアは軍備増強をしていたため、環太平洋戦争時のウォードックの機体に比べれば高性能な機体が配備されている。空軍なのに海軍機なのは、海に面した土地にいるウォードックとオーシア海軍との円滑な連携を図るためである。

 ましてや、当時はユークトバニアとは連合関係であったものの、仮想敵国と認識していたため、海軍と空軍の連携が意識されたのである。

「ライトニングより各機へ、指示あるまで交戦はできない。各機はいつでも攻撃できるよう配置についてくれ。まずは国籍不明機を誘導する。そこで、俺が国籍不明機と通信を試みる。」

 ウォードックリーダー、ライトニング(電撃)ことマイク・ジョンソン大尉がウォードック隊員に指示を出す。

「国籍不明機と通信だってぇ?さすが隊長だぜ。俺にゃ人見知りの癖があるから、とてもできやしねぇ。」

 ウォードック4番機、ハートブレイクワン(失恋1号)ことジャック・バートレット中尉が呟く。

「こちらスナイパー、俺はフェニックスミサイルぶら下げて迎撃できるよう待機する。」

 ウォードック3番機、スナイパー(狙撃手)ことサム・スヴェンソン中尉が編隊から離れる。

「こちらランス、配置についた。いつでも指示をどうぞ。」

 ウォードック2番機、ランス(槍)ことダッチ・ベイカー中尉がライトニングにくっついて行く。

「こちら管制塔、IFFから国籍が特定できた。だが、驚かないで聞いてほしい…。国籍はオーシアとユークトバニアだ…。1機の国籍不明機からオーシアとユークトバニア、2つの国籍が出てきた…。」

「こちらライトニング、こっちでも同じ反応が出た。どういうことだ?意味がわからん。」

 ライトニングはIFFの反応に困惑していた。

「ひとまず通信を試み…、ん?向こうから回線を開いてきた。俺たちの周波数を知ってるのか?」

 国籍不明機側から無線が開き、通信が流れてきた。

《こちらはアークバードⅡ。我々は敵ではない。攻撃意思はない。信じられないかもしれないが、我々は未来からやってきた。だが、燃料が少ない。燃料補給を求む。繰り返す、こちらはアークバードⅡ…》

「何やら変なことほざいてる奴らだぜ。未来からとかふざけた話だなぁ。どうする隊長?」

「ブービー、これは俺たちではどうにもならん。基地司令官に通信する。」

 ブービーとは、ハートブレイクワンの当時のあだ名である。

 ライトニングは基地司令官に通信する。

「こちらでも通信を傍受していたが、彼らを受け入れる。国籍がベルカでない限りは我々の敵ではない。あとは私に任せてくれ。」

「さすがは頼りになる基地司令官です。あとはよろしくお願いします。」

 基地司令官は国籍不明機に通信した。

 

 

 

 

[1995年3月30日1425時/サンド島上空30000ft/アークバードⅡ/管制室]

 

 

 

 

「こちらはアークバードⅡ。我々は敵ではない。攻撃意思はない。信じられないかもしれないが、我々は未来からやってきた。だが、燃料が少ない。燃料補給を求む。繰り返す、こちらはアークバードⅡ…」

 ハーバード機長はサンド島基地に交信し続けていた。

 すると、サンド島側から連絡が入ってきた。

《こちらサンド島基地司令。本当に未来から来たのか?念のために聞くが、ベルカの人間ではあるまいな。いつでも攻撃の準備はできている。》

 ハーバード機長はニヤリと笑った。

「この懐かしい声、久々に聞いたなぁ。あなたは1940年3月29日生まれ、オーシアのバーナ学園都市で生まれた。1967年7月9日に息子を授かり、今その息子は傭兵としてベルカの戦地に向かっている。」

「機長は一体何を…?」

 クルーはハーバード機長の奇怪な言動に首をかしげていた。

《なっ…何故?何故、私の経歴を…。声は歳をとってるが、どこか聞き覚えのある声だった…………。まさかお前は、ジョン・ハーバードか?!》

「その通り!久々に親父の声が聞けたよ。」

「おっ…親父だってぇぇ?!」

 ヒヤマ大尉は大声をあげて驚いた。

「燃料が少ない。親父、近海に着水させてくれ。このアークバードⅡという巨大航空機には着水機能がついている。」

《信じられん…。あの馬鹿息子が未来から…。》

「親父、聞いてるか?」

《あぁ…すまん。このことはオーシア国防空軍本部には内緒にしておく。近海に着水してくれ。我々が海上から迎えに行く。色々聞きたいことがある。》

 アークバードⅡは徐々に高度を落とし、サンド島近海に着水した。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。今、用語集(人物編)を作成中です。まだ時間がかかりますが、楽しみにしてください。これからもこの小説をよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

親子の再会

[1995年3月30日1430時/サンド島近海/小型船]

 

 

 

 

 アークバードⅡは無事着水に成功し、人工衛星に見つからないように機体上部のみ光学迷彩をかけた。その後サンド島上陸のため、機体上部にある船舶格納庫から小型船を1隻出した。

 アークバードⅡ全乗員56名のうち3名が小型船に乗った。乗っているのはハーバード機長、アレンスキー大尉、マクドネル大尉の3人だ。

「どうやら私たちを迎えに来たようだな。」

 サンド島に小型船を走らせている中、サンド島側から1隻船がやってきた。

「こちらサンド島基地司令官ビリー・ハーバードだ。あなた方を迎えに来た。我々についてきてくれ。」

 船についているスピーカーからハーバード基地司令官の声が響く。

「こちらアークバードⅡ機長ジョン・ハーバード。我々を受け入れてくれたことを感謝します。」

 ハーバード機長は船内のマイクを使って応える。

 2隻の船はサンド島に向かっていった。

 

 

 

 

[1995年3月30日1441時/サンド島基地/来賓室]

 

 

 

 

「どうぞ遠慮なく座ってくれ。」

 ハーバード基地司令官はアークバードⅡから来た3人をソファーに座らせた。

「うーむ…。本当にあなたはあの馬鹿息子のジョンなんだな。見た目は私より年上の爺さんだが、顔の特徴が同じだ。特に鼻の穴がデカイからなぁ。」

「よくわかってるな。流石は親父だ。鼻の穴がデカイのは、ガキの頃に指突っ込んで鼻をほじってたからな。」

「ああ、その通りだよ。まったく、あの頃は注意しても言うこと聞かずにほじりまくっていたからな。お前がガキの頃が懐かしいよ。ところで、今は何歳なんだ。」

「我々は2030年からやってきた。私の年齢は62歳だ。親父は昨日誕生日だったんだね。55歳の誕生日おめでとう。」

「年上の息子に誕生日を祝われるのは変な気分だなぁ、はははははは!」

 見ての通り、ただの親子の楽しい会話である。

(機長はあんな人物だったんだなぁ…)

(年上の息子が、年下の父親と会うっていうシチュエーションを小説以外で観れるとはなぁ。痺れる展開だ!)

 取り残された2人はハーバード親子の会話を見ながら、心の中で呟いていた。

「そういえば、この頃の私は傭兵をやっていたんだよな。」

「ああそうだ。あの馬鹿息子は何を考えてるのか!空軍に入って上司にケンカ売って、空軍やめたと思ったら、今度は傭兵ときた!まったく理解できん!」

「あれには理由があったのさ。私はただ戦闘機で空を自由に飛びたかった。でも、傭兵になって酷い戦争や国のために戦う兵士を見て気が変わったんだ。『国を守る信念』とはなんなんだろうかってね。まぁ、そこから色々あって、私は生まれた国を守る仕事に就いたのさ。」

「お前もいろんな人生歩んだんだなぁ。じゃあ、今のあいつは自分自身と戦っているわけだ。…父親ながら、あいつのことを理解できんとは、情けない話だ。」

「親父は何も悪くないよ。今親父にできるのは、この時代の私をそっと見守るだけでいいんだよ。それだけでも嬉しいからさ。」

 親子の会話はさらに奥深くなる。取り残された2人はそろそろ限界だった。

「あのぉ…ハーバード機長、そろそろ本題に入りませんか?」

 アレンスキー大尉が感情を押し殺しながらハーバード機長に話しかける。

「あっあぁ、これはすまなかった。何年か振りに親父と会ったからつい話が弾んでしまってなぁ〜。はははははは!」

 アレンスキー大尉とマクドネル大尉はハーバード機長の無邪気な様子に呆れていた。

 

 

 

 

[1995年3月30日1441時/サンド島基地/沿岸部]

 

 

 

 

 来賓室でハーバード親子が感動の再会を果たしていた頃、サンド島沿岸部ではアークバードⅡを興味深く観ている野次馬が集まっていた。

「なーんだありゃ?アークバードとか言ってたが、あれが未来のアークバードなのか?なんか機体の上半分が蜃気楼みたいに歪んでっけど…。」

 バートレット中尉は双眼鏡でアークバードⅡを興味深く眺めていた。

「アークバードっつったら、あれだろ?オーシアが打ち上げた馬鹿でかい宇宙ステーションみたいなやつだろ?未来のアークバードは大気圏内でも行動できて、着水機能を備えつけてるのか?しかも何だ?映画で観る光学迷彩かあれ?スゲェな…。」

 ベイカー中尉がアークバードⅡの機能について驚いていた。

 というのも無理はない。

 アークバードはオーシアのSDI(戦略防衛構想)計画のもと、1980年に打ち上げられた大気機動宇宙機である。巨大航空機技術はオーシアオリジナルであるため技術的に難があり、大気機動宇宙機というよりも宇宙ステーションに近い立ち位置であった。

 本来なら武装して軍事転用するはずだったが、技術的にうまくいかず、最終的に衛星兵器SOLGを開発して軍事転用することにした。SOLGは1995年現在も開発中で、アークバードを使って宇宙空間で組み立て作業をしている。

 そのアークバードが2030年には大気機動宇宙機以上の役割を果たしているのだから驚きである。

「あいつら、未来から来たとか言ってたが、信用していいのだろうか?あいつらはこれから起こる事全てを知っている。」

 スヴェンソン中尉はアークバードⅡの存在を信用していなかった。

 今は何もしないだけで、いつか敵になると思っていたのだ。敵になってしまったら技術的に敵わないのだ。

「スヴェンソン中尉の言う通りだ。迂闊には信用できない。あんなオーバーテクノロジーの塊が敵に回ったらとんでもない話だ。とても敵う相手ではないだろう。ハーバード基地司令官は何を考えて受け入れたんだ?」

 ジョンソン大尉はハーバード基地司令官の行動が理解できなかった。

 というのも、アークバードⅡの機長とサンド島基地司令官が親子だという事をまだ知らないので無理もない。

 まだ何も知らされていないサンド島のクルーやウォードックたちは不安でならなかった。




最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
アークバードの設定をwikiで見て、1980年に打ち上げしていたことを初めて知りました。ちょっとそれで設定が狂ってしまいましたが、なんとかうまいことまとめたつもりです。
アークバードの項目を用語集に追加しておきます。
これからもよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

未来を変える

[1995年3月30日1445時/サンド島基地/来賓室]

 

 

 

 

 ハーバード機長は親子の会話から本題に切り替えた。本題はアークバードⅡの燃料と食糧の補給についてである。

「なるほど、燃料と食糧の補給か…。できない訳ではないが、ジョン達の存在がオーシア国防空軍本部に知れ渡ってしまうぞ。」

 ハーバード基地司令官は厳しい現実を伝える。

「そうなるのは承知の上さ。私達の存在がバレるのは時間の問題だ。私達の身は私達自身が守る。親父が心配する事ではないよ。」

 ハーバード機長はアークバードⅡというオーバーテクノロジーの塊を隠しきれないと諦めていた。

「しかし機長!我々の存在が本当に知られたらどうするのですか?!今のオーシアとユークトバニアが我々を嗅ぎ付けたら、血眼になってでも技術を奪おうと襲いかかってきますよ!同じ国同士で戦争を始めるつもりですか?!」

 アレンスキー大尉が声を荒げる。

 この時代のオーシア・ユークトバニアは軍備増強路線に走っていた。ベルカ戦争で占領地解放後にベルカに侵攻したのは核査察という理由もあるが、真の目的はベルカの優れた技術である。

 1995年までに実現・開発中のベルカの技術は様々ある。

 実現した技術は、オーシア・ユークトバニアでは実現すら難しかった高出力化学レーザー兵器エクスキャリバーによるレーザー兵器の実用化、同じく巨大国家2ヶ国の核弾頭よりも小型かつ強力な破壊力を持つV1核弾頭の開発成功。

 現在開発中の技術は、アークバードの巨大航空機技術を遥かに凌ぐ技術で開発中の重巡行管制機XB-O フレスベルク、世界初のレーザー兵器・大量破壊兵器搭載可能な多目的戦闘攻撃機ADFX-01 Morgun、V1のMARV化を目的としたV2ミサイルなど。

 ベルカの技術はオーシア・ユークトバニアよりも10年以上先の技術を持っており、兵器も技術者もかなり優れている。

 オーシア・ユークトバニアはこの技術を我が物にし、世界最強の国家を目指そうとしていたのである。

 その巨大国家2ヶ国が、ベルカの技術のさらに上をいく技術を持つアークバードⅡを見つけたらどうなるだろうか。

 オーバーテクノロジーの塊で、しかも未来の情報付きの宝を目にしたら、なんとしてでも手に入れたくなるだろう。

 そうなってしまえば、最悪の場合同じ国同士での殺し合いが起きてしまう。

 アレンスキー大尉はその事を危惧していたのだ。

「ジョン、彼の言う通りだ。息子と殺し合うなんてごめんだ。父親として現代のジョンも、未来のジョンも心配で心配でならないんだよ!」

 ハーバード基地司令官は心配性な性格で、ひとり息子であるジョン・ハーバードを誰よりも愛していた。それゆえに厳しい事を言ってしまうのである。

 しかし、ハーバード機長は2人の意見を聞き入れつつも自分の意見を述べた。

「私達はこの時代の人間でもなければ、この世界線の人間でもない。私達にはアークバードⅡという国がある。だから同じ国同士の人間とは言えない。だか、生まれ故郷の人間と戦うつもりはない。私にはここに来た理由について考えがある。」

 ハーバード機長は少し間を空けてから再び語り出した。

「私達がここに来た理由は未来を変えることだと思う。私達の時代は国を愛する者にとっては最悪の未来だ。どこで歴史が狂ってしまったかはわからないが、私達ができることは未来を変えることだ。この戦争は最悪の結末を辿る。そしてこの戦争を機にさらに戦争が起きる。戦争によって発展した技術による技術競争で国という概念が消え始める。私達の未来はそういう歴史を辿った未来だ。国を守るために私達は戦った。国のために死ぬ覚悟だった。死んだ仲間もたくさんいた。だが、もうそんなことはごめんだ。私は未来を変えたい。この行為は、これ以上犠牲を出さない『未来を変えるための戦い』なんだ。」

 ハーバード機長の目は本気だった。

「未来を変えるために必要な犠牲はあるだろう。その中にはオーシア・ユークトバニアの人間がいるかもしれない。だが、それを最小限に抑えるよう努める。このことはまだ3人にしか話していない。どうか理解してくれ。」

 ハーバード基地司令官、アレンスキー大尉、マクドネル大尉の3人は黙って聞いていた。

「機長のいう通りですね。1995年から2030年まで7つ大きな争いがあった。その争いの傷跡は大きい。僕の愛する嫁のエレーナも、宿っていた赤ちゃんも争いの犠牲になった。これ以上、争いで誰も犠牲にしたくありません。今はまだ誕生すらしていないエレーナの幸せを守るため、そしてより多くの人々を守るため、僕は機長についていきます!」

 マクドネル大尉はゼネラルリソースとの戦いで愛する人を失った経験からか、未来を変える意思は強かった。

「『未来を変えるための戦い』ですか。確かに、あんな未来をこの世界線で繰り返すのは嫌ですね。状況によっては同じ故郷の人間と殺し合うことになるのは辛いことだが、この戦争の末路を考えればやむを得ません。俺も機長についていきます!」

 否定的だったアレンスキー大尉も『未来を変えるための戦い』という言葉を聞いて心を入れ替えた。

「本気なんだな、ジョン。わかった。何かあったら私に相談してくれ。だが、くれぐれも無理はするなよ。食糧と燃料は任せてくれ。できる限り公にならないよう努める。」

 ハーバード基地司令官もハーバード機長の覚悟を受け入れた。

「ところで、ジョンたちはどんな未来を歩んだんだ?そもそも、タイムパラドックスについては大丈夫なのか?」

「先に親父に話すべきだったな。すまんな。マクドネル大尉、説明を頼む。」

「了解です。紙とペンありませんか?結構話が長くなるのでしばらくよろしくお願いします。」

 マクドネル大尉は長々と解説を始めた。

 

 

 

 

[1995年3月30日1433時/アークバードⅡ/管制室]

 

 

 

 

 機長らがサンド島に向かった後、アークバードⅡでは当時のインターネットに繋いで、ずれた時計の調節とアークバードⅡの存在が公になってないか確認をした。

「時間がわかったぞ!現在時刻は1995年3月30日1433時だ!時計を合わせてくれ!」

 アークバードⅡの制御コンピュータの時間設定を変更した。これで全ての部屋にある時計はこの時代の時間になった。

「俺たちの時代の時刻は2030年3月30日0145時だ。年はマイナス35年、時刻はプラス1248時のずれか。すげぇずれだなぁ…。一応この電子時計の時刻はそのままにしとくか。」

 管制室にある大きな電子時計の時刻はそのままにしておいた。

 

 

「最新バージョンのコンピュータと互換性があるとはいえ、旧式は使いづらいな。」

 2030年のインターネットは全てがタッチパネルと音声入力式である。インターネットのホームページも非常にわかりやすくできており、映像や画像が瞬時に出てくる。

 しかし、1995年のインターネットはまだ一般化されて間もないため、映像や画像は少なめで、動画投稿サイトもなく、繋がりも遅いため使いづらいのである。

「確か、時期的に一般化されて間もないから初期バージョンだよな。そりゃあ、タッチパネルと音声入力未対応だからキーボードで打つしかないよな。しっかし、キーボード使いづらいなぁ〜。」

 キーボードを使いづらそうに使いながら、検索を続けていた。

 

 

 

 

[1995年3月30日1451時/サンド島基地/来賓室]

 

 

 

 

「…以上が、タイムスリップの仕組みと、僕達が歩んだ歴史です。ご理解いただけだでしょうか?」

 マクドネル大尉が長話を終えた。

「……なかなか酷い末路を辿るんだな…。この戦争も、オーシアも…。確かにそんな未来は嫌だな。それに、私のいる世界線とジョン達の世界線は繋がっていないから、何をやってもジョン達が消滅することはないんだな?」

 ハーバード基地司令官の質問にマクドネル大尉が答える。

「世界線が別のためタイムパラドックスの影響を受けません。確証はありませんが、消滅する可能性はかなり低いと思われます。」

 

 

 ハーバード基地司令官は安心した顔になる。

 

 

「その答えが聞きたかった。タイムパラドックスで消滅する可能性は低い。ならば、思い通りに未来を変えてこい!お前達なら、ジョンならできる!」

 

 

 ハーバード基地司令官は3人に檄を与えた。

 

 

「ありがとう、親父!やってやるさ!この世界の未来を変えてやる!」

 

 

 ハーバード機長は未来を変えるために立ち上がった!

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。
季節も暑い夏になりましたねぇ〜。早く冬になってほしいです。
この小説、結構長くなりそうなので、冬になっても連載し続けてると思います。
これからも応援よろしくお願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一丸となる

[1995年3月30日1503時/アークバードⅡ/管制室]

 

 

 

 管制室では、インターネットにアークバードⅡのことが公になってないか調べ続けていたが、とある個人のウェブサイトに画像が載っていた。

 画像は薄っすらとだが、高高度にいるアークバードⅡが映っていた。

 ウェブサイトの管理者はアークバードが事故で大気圏に突入したのではないかと判断していた。

「インターネットが普及してからウェブサイトつくってるとはな。金持ちのボンボンか?余計なことしてくれるよ。」

「全くだよ。どのみち、俺たちのことが知られるのは厄介だ。やるには機長の許可が必要だ。連絡してくれ。」

「了解だ。久々にお前さんの出番だな。失敗すんなよ。」

「もう失敗はゴメンだぜ。」

 彼は元ユークトバニア軍のハッカー、ニコライ・ベレゾフスキー主任である。

 ハッカーと言っても、自分の利益のために働くハッカーではなく、国を守るために戦うハッカーである。

 実は環太平洋戦争の時、高校生だったベレゾフスキー主任は軍の情報を面白半分でハッキングしていた。

 その中で戦争の真実を知り、ハッキングしたため軍に逮捕されるが、逮捕される前に戦争反対派に真実を伝え、レジスタンスを創設させるきっかけを作ったのだ。

 その後、真実が公になってからは彼に対する評価は変わり、ユークトバニア軍に招待され軍に入隊。以後、ハッカーの能力を生かした任務に就くことになった。

 愛国軍に入隊してからゼネラルリソースのハッキングをしていたが、セキュリティが非常に堅牢なため、しばらく失敗続きだった。だが、今回ので汚名返上できそうなため、ベレゾフスキー主任は心の中で喜んでいた。

 

 

 

 

[1995年3月30日1505時/サンド島/来賓室]

 

 

 

「食糧・燃料の手配ができた。大丈夫、信頼できる友人に頼んでおいたから安心してくれ。」

「ありがとう、親父。助かったよ。」

「食糧・燃料の到着には時間がかかる。しばらくはここでのんびりするといい。と言っても、今戦争中だがな。私はお前たちが未来を変えると信じてるからな!」

 食糧・燃料の交渉はうまくいき、今しばらくは待つことになった。

「親父、私たちはアークバードⅡに戻るよ。手元の食糧はまだ数日分は残ってるから安心してくれ。」

 その時、ハーバード機長の携帯端末N.Phoneが鳴った。

「ハーバードだ。何かあったのか?」

《ネットのウェブサイトに我々のことが載っていました。ベレゾフスキー主任がハッキングの許可を求めています。》

「わかった、今すぐ戻る。それまで待機してくれ。」

 ハーバード機長たちは急いで小型船に向かっていった。

 

 

 

 

[1995年3月30日1512時/アークバードⅡ/管制室]

 

 

 

 

 アークバードⅡの管制室にハーバード機長が戻ってきた。

 ハーバード機長はすぐコンピュータのディスプレイに向かって、椅子に座った。

 画面を見てから複雑な表情になる。

「こいつは厄介だ…。投稿時間から考えて、他の人もそれなりに見ているだろうな…。それに、インターネットに載せないだけで他に目撃者がいるかもしれない…。」

 ハーバード機長はブツブツ呟いて考えている。

 しばらくして、ハーバード機長は椅子から立ち上がって口を開いた。

「できる限り情報漏洩は避けたい気持ちも山々だが、下手にハッキングして消せば余計怪しまれる。どのみち存在は公になる。そのままにしてくれ。」

 クルーは機長の答えに驚いていた。

「何故ですか機長!意味がわかりません!」

 ベレゾフスキー主任は反論した。他のクルーも同じだ。

「その理由は皆に話そうと思っていた。全員を管制室に集合させてくれ。」

 

 

 

 

[1995年3月30日1528時/アークバードⅡ/管制室]

 

 

 

 

 管制室にアークバードⅡ乗員56名が集まった。

 ハーバード機長はサンド島の父親たちに話した『未来を変えるための戦い』について全て話した。

 5分くらいの長話が終わった後、その中で様々意見が飛び交う。

 

 

「俺は未来を変えることには反対しないが、同国人同士での殺し合いは必要な犠牲があるとはいえ、受け入れられない。」

「未来を変えるには痛みが伴うんだよ!痛みなしで未来なんか変えられない!」

「そんなことするより、ここでひっそり暮らした方が良いんじゃないか?」

「そうだよ。もし、僕たちのテクノロジーがどこかの国に渡ったら僕たちの知る未来より酷くなるよ。」

「臆病者が!あんな未来を繰り返すのかよ!そんなの絶対ゴメンだね!」

「私たちがタイムスリップしたのも何かの運命よ。きっと意味があるわ。機長の言う通り、未来を変えることが私たちの使命なのよ。」

「彼女の言う通りだ。意味なくタイムスリップするわけないじゃないか!」

「じゃあ、何でタイムスリップしたんだよ!意味があるなら、誰かがタイムスリップを仕組んだのか?」

 

 

 議論は激しさを増す。

「静粛に!」

 ハーバード機長は大声をあげた。

 さっきまでの議論は嘘のように静りかえる。

「アークバードⅡ乗員56名全員に聞く。素直に、単純に、正直に、未来を変えたい、あんな未来を繰り返さないと思う者は、部屋に残ってくれ。」

 しばらく沈黙が続く中、ヒヤマ大尉が口を開いた。

「正直言って、オーシア人や仲間のユーク人を殺っちまうことになるのは嫌だ。でも、未来を変えたい気持ちは誰よりもあるぜ!これ以上、誰も犠牲にしたくねぇ!俺はこの話に乗るぜ!」

「プログラム関係のことは俺に任せてください!この時代のハッキングは容易いことさ。」

 ベレゾフスキー主任も賛同する。

「俺も降りる気はないね。あんな未来を繰り返したくない。整備士としてアークバードと戦闘機を守ってやるぜ!機長について行きます!」

「私は皆さんに料理作ることしかできないけど、皆さんを元気にするのが仕事だもの。私もついて行くわ!」

「正直失敗した時が怖いし、このままひっそりしていたい。けど、僕だってゼネラルリソースの戦いで家族を失ったんだ。この世界の家族を失いたくない!僕は未来を変えるため、レーダー係としての仕事を全うする!」

「俺もだ!」

「僕も参加します!」

「覚悟を決めるよ!」

「戦います!未来のために!」

 

 

 誰も逃げも隠れもしなかった。

 乗員全てがこの戦いに参加する覚悟だ。

 

 

「皆、ありがとう!私の想いに応えてくれてありがとう!今後については、食糧・燃料が到着するまでここで待機だ。作戦はその間に練る。今のうちにゆっくり休んでくれ。解散!」

 

 

 乗員56名が未来を変えるため、一丸となった瞬間である。

 

 

 戦いは幕を開けた。

 




最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
夏休みが明けたので、小説投稿を再開します。
もう暑いのは勘弁してほしいのが本音です。早く冬になってほしいなぁ…。
さて、新しくキャラクターが増えたので、用語集(2030人物編)にニコライ・ベレゾフスキーの項を追加します。
次回もよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

腐った上層部

[1995年3月31日0703時/オーシア首都オーレッド/オーシア軍総司令部/総司令室]

 

 

 

 

 オーシア首都オーレッドを拠点にオーシア軍総司令部が存在する。

 史実ならば、ベルカ占領地奪還作戦の作戦会議の真最中だ。しかし、別の問題が発生したため今はその対処に追われていた。

 それは、アークバードⅡの出現によることだった。

 はじめは防空レーダーの故障で片付いた問題だったが、防空レーダーの修理に向かった部隊から異常が見当たらないと報告がきた。

 さらに追い討ちをかけるように、防空レーダー反応区域周辺の一般人のアークバード目撃情報が相次いでやってきた。

 情報では白い影が突然現れてしばらくして消えたという。その影は航空雑誌に載っていたアークバードにそっくりだったらしい。中にはビデオカメラに録画した映像をビデオテープに写し、そのビデオテープを送りつけた人もいる。この情報に対し、一般人からは反感の声が上がっている。

 当時のアークバードの管理はオーシア空軍の管理下にあった。しかし、色々課題の多いアークバードは世論から不安を誘い、しかも軍備増強にはしるオーシア軍は平和を望む一般人にとって反感の的だった。さらにベルカ戦争開戦でさらに反感が大きくなっている状況だった。

「ああ全く、戦争のことで手一杯なのにアークバードが突然現れただと?ふざけやがって…。」

 オーシア軍総司令官チャールズ・ミラーは頭を抱えていた。

 考え込んでいると、ドアのノックがなった。

「失礼します、ミラー総司令官。当該空域を調査していた航空部隊クローバー隊を召喚しました。それと、防空レーダーに異常が発生した時刻にアークバードは宇宙空間でSOLG組み立て作業に従事していたとのことです。」

「了解した。レーダーに映ったのはアークバードではないということだな。クローバー隊から見たものを吐かせてもらわないとな。早速クローバー隊に事情聴取を行ってくれ。私も行く。」

 ミラー総司令官は部屋を後にした。

 

 

 

 

[1995年3月31日0708時/オーシア首都オーレッド/オーシア軍総司令部/取調室]

 

 

 

 

 取調室にはクローバー隊4人と、空中管制官が並んで座っていた。5人には嘘発見器が取り付けられていた。

 すると部屋に取調官が入ってきた。ミラー総司令官は隣の視聴室で様子を見ていた。

「すでに聞いていると思うが、昨日君たちが調査した空域でアークバードに類似した未確認飛行物体の目撃情報が相次いでいる。空域を調査したとき、何かを見たのか?報告では異常はなかったと聞いているが?」

 取調官がクローバー隊らに質問する。

 すると、空中管制官のユキマサ・ヨネダ管制官が答える。

「私は当空域でレーダーを確認したときは、アンノウンを捕捉できませんでした。これは事実です。信用できないなら彼らの意見を聞いてください。」

 クローバー隊隊長マイケル・ハワード大尉が続けて答える。

「我々が当空域を確認したときは、レーダーにも周囲を目視したときも異常はありませんでした。もちろん、高高度を調査したときも怪しいものは確認できませんでした。」

 クローバー隊らは事実を言ったまでだが、それを聞いていたミラー総司令官は納得できなかった。

「例の映像を見せろ。」

 ミラー総司令官が部屋にいた兵士に指示を出した。

 兵士はビデオテープを持って取調室に入り、ビデオレコーダーに挿入した。大型ブラウン管テレビにアークバードに類似した未確認飛行物体の映像が映る。

 映像はビデオカメラで拡大撮影したため解像度は低いが、色は白く、形状は尖った三角形をしているのがわかる映像だ。数分後、突然その飛行物体は姿を消した。撮影者が慌てて探して映像が荒ぶったところで映像が終わった。

「この飛行物体が君たちが調査した空域で出現した。映像は100%本物であることも確認済だ。本当に何も知らないんだな。既存の航空機で一瞬にして姿を消す航空機は存在しない。普通に考えて撮影者がただ単に見失っただけか、ベルカがアークバードに類似した姿を消す最新兵器を作ったかだ。当たり前だが、嘘の報告は処罰の対象になる。嘘なら今のうちに答えろ。処罰が重くなるよりマシだ。」

 あの飛行物体がその空域にいたのは事実である。だが、クローバー隊らがその存在を確認できなかったのもまた事実である。

「我々はこの飛行物体を確認していません!本当です!」

 ハワード大尉は事実を突き通した。

 嘘発見器には何も変化がない。

 取調官は予想外の結果に頭を抱えていた。クローバー隊らが嘘の報告をしたのだと思い込んでいたからだ。

 取調官は取調室を出て、視聴室に入りミラー総司令官に報告をした。

 ミラー総司令官も同じくクローバー隊らが嘘の報告をしたと思い込んでいた。

 ミラー総司令官は取調室に入り、嘘発見器の結果を見たが、その結果に唖然としてしまった。

「君たちが言っていることは確かに真実だ。だが、我々は戦争のことで忙しい。小さな問題は早期に解決させたくてねぇ。何か隠していることがあるんじゃないか?」

 ミラー総司令官はクローバー隊らを脅す。

「隠し事なんてとんでもありません、総司令官!そんなことしてません!我々を疑うのですか?!」

 ヨネダ管制官が怒鳴った。

 嘘発見器には何も変化がない。

「わかった、わかった。そこまで怒らなくてもいいだろ。今は思い出せないだけかもしれないからな。一旦君たちを解放する。何か思い出したら連絡しろ。同じ軍なんだから、我々に協力してくれ。」

 全員が解放され、取調室を出て行った。

「嘘発見器は故障してないのか?」

 ミラー総司令官に言われて取調官が嘘発見器を調べるが、異常は見つからなかった。

「そうか。何もなかったか。はぁ…あいつらが目撃したって話してくれれば解決したのに、本当に何も見てないとは…。全く、余計な仕事ばかり増やしやがって!」

 ミラー総司令官は怒りながら取調官を出た。

 

 

 

 

[1995年3月31日0811時/オーシア首都オーレッド/国道3号線]

 

 

 

 

 クローバー隊ら5人は自動車に乗って、クローバー隊の所属するサンダース空軍基地に向かっていた。

 

 

 サンダース空軍基地は国道3号線沿いのオーレッド郊外にあり、オーレッド防衛の要となっている。

 後に、住民の騒音問題などの苦情により、ハーリング大統領に変わった2003年からはサンダース空軍基地を撤去した。その代わりに騒音問題が少なく済むオーレッド周辺の海岸線にオーシア最大規模のグラハム空軍基地を建設し、2008年に完成した。

 サンダース空軍基地は首都防衛の要の基地であるため、当時最大規模の空軍基地だった。

 残念ながら、後にできるグラハム空軍基地に大きさは越されるも、グラハム空軍基地にはサンダース空軍基地の名残が残っているため、グラハム空軍基地はサンダース空軍基地の生まれ変わりと言ってもいいだろう。

 

 

 サンダース空軍基地に向かっている自動車の中では総司令部召喚のことの愚痴で賑やかになっていた。

「総司令部の奴ら、あの言い方からして俺たちが嘘の報告したってでっち上げて、問題解決しようとしてたじゃねえか。ふざけやがって!俺たちをなんだと思ってんだ!」

「俺らが真実言ってるってわかってガッカリしやがってよ!道具としか見てねぇのか!」

「思い出すだけでイライラするぜ。あの見下したような上から目線よ!何が戦争のことで忙しいから協力しろだ。俺たち関係ねぇだろ!」

 この頃のオーシア軍上層部はタカ派で、兵士を使い捨ての駒としか見ていない腐った軍人ばかりである。

 小さい問題は誰かに責任を被せ、問題解決することも何度か行っている。

 今回の件は大きい問題のため釈放したが、クローバー隊らに責任を被せたかったのは事実である。

「そうカッカすんな。腐った上層部のやり方はいつもああだから、愚痴ったところで何も変わらんよ。」

 ハワード大尉は運転しながら隊員を諭した。

 カーラジオからは朝のニュースが流れている。

 内容はアークバードに類似した未確認飛行物体についてだ。目撃情報が相次いだため、マスコミが情報を聞きつけ報道したのだ。

「ハワード大尉はアークバードそっくりな飛行物体についてどう思う?私は宇宙人の偵察なんじゃないかって思う。姿を消すテクノロジーなんて、いくらベルカでも厳しいんじゃないかな。」

 ヨネダ管制官が意見を述べつつ、ハワード大尉に問いかける。

「確かに、宇宙人はあり得るかもな。今の技術水準で映画のような光学迷彩はありえない。でも、俺は未来からやって来たんじゃないかって思う。アークバードにそっくりってところが最大の特徴だからな。」

 ハワード大尉が意見を述べる。

「あれは未来のアークバードってことか?そう考えればわからなくもないが、タイムスリップなんていくらなんでもあり得なさ過ぎる話だ。宇宙人の方がまだ現実的だ。」

「宇宙人の方が現実的か。言われてみればそうだな。過去に戻るなんて夢物語だ。過去を悔やんでも何も変わらないのが現実だからな。」

 ヨネダ管制官とハワード大尉が互いに意見を述べ合っている間にサンダース空軍基地が見えてきた。

「そろそろ着くぞ。色々理不尽な目に遭ったが、今日のことは忘れよう。次から戦争で忙しくなるだろうから今のうちに休んどけよ。」

 ハワード大尉がそう言って、サンダース空軍基地に自動車が入っていった。




最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回は新たにオーシア視点のシナリオを作りました。別視点のシナリオも考えています。
あと、クローバー隊の搭乗機体についてですが、勢力設定で矛盾が出たので、F-20AからF-2Aに変更します。
今回は勉学で忙しく、投稿がいつものペースより遅くなりました。しばらく、このペースだと思いますが、次回も楽しみにしてください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

頼れる友人

今回は前話より前の時系列になります。


[1995年3月30日1454時/オーシア首都オーレッド/オーシア軍総司令部/オーシア国防空軍本部/本部長室]

 

 

 

 

 オーシア軍総司令部内には海軍・陸軍・空軍の本部が全て揃っている。そのため施設自体が大きく、敵に攻撃されても総司令部がすぐ陥落しないようにオーレッド市街の地下深くに存在する。

 その中のオーシア国防空軍本部は総司令部や他の本部よりもマシな人間が多い。特に空軍本部長のウィリアム・スミス航空参謀は真面目で寛大な性格のため、彼のおかげで空軍本部はまともだと言える。

 

 

 そんな中、一本の電話がかかってきた。

「こちらはオーシア国防空軍本部です。はい、今かわります。」

 職員がアナウンスを掛ける。

 ガラス張りの本部長室にいるスミス航空参謀は卓上の受話器を取る。

「お電話かわりました、オーシア国防空軍本部長のスミスです。おお、ビリーか!どうした?お前から電話とは珍しいな。」

 相手はサンド島基地司令官ビリー・ハーバードからだった。ふたりは同い年で空軍入隊時からの信頼できる親友である。

《そりゃあ、いつもウィリアムから連絡してくるからな。それより私から電話したのは頼みがあるからだ。このことは秘密裏に行って欲しい。信用できるのはお前ぐらいしかいない。》

 ハーバード基地司令官はサンド島に未来からアークバードⅡや息子らがやってきたこと、そして彼らに食糧と燃料が必要なことを話した。

「ビリー…、何を言ってんだ?頭でも打ったか?」

 スミス航空参謀は当たり前の反応をした。

《信じられんかもしれんが、事実だよ。頼む、息子のために力を貸してくれ。》

「うーむ…。お前のことだから嘘をついてるとは思えないが…。何か証拠はあるか?」

 スミス航空参謀は半信半疑ながらもハーバード基地司令官を信じようとしていた。

 ハーバード基地司令官は嘘をつくのが下手な男である。嘘をつけば誰よりも声や挙動でバレバレである。本人もそれを自覚しているため、ほとんど嘘をつくことはない。

 スミス航空参謀も長い付き合いでそれを知っている。

 そのため、スミス航空参謀にとっては最も信頼できる親友なのである。

《証拠か…。証拠と言ってもなぁ…。》

 ハーバード基地司令官は相当悩んでいるようだ。

「そんじゃあ、これから起きる未来の出来事でもいい。未来人から聞いたんだろ?教えてくれ。」

《ああ、わかった。未来のことは聞いたから話せる。たしか、この戦争はベルカ国内で核爆発が起きて…》

 ハーバード基地司令官は聞いたことを大雑把に話す。

 スミス航空参謀は耳に受話器を当てながら黙って聞いていた。

「OK、話し方からして嘘はついてないようだな。お前がよくできた作り話が作れるわけがないからな。信じるぞ、その話。」

《作り話が作れないって失礼なヤツだな。でも本当にいいのか?こんな話を信じて?》

「お前のことはよく知ってる。だから信じるんだ。指定された量の食糧と燃料を乗せた貨物船をセントヒューレット軍港に手配する。事は秘密裏に進めるから、到着までは7、8日かかるだろう。」

《ありがとう!私の話を信じてくれて!助かったよ!やっぱ頼りになるよ!》

「気にするな。困ったことがあったらいつでも連絡してくれ。そんじゃな。」

 スミス航空参謀は受話器を下ろした。

 そのあと、また受話器を取り番号を押した。

「もしもし、オーシア国防空軍本部長のスミスです。セントヒューレット軍港の貨物運送会社でしょうか。実は食糧と燃料をサンド島に送りたいのですが…」

 スミス航空参謀は親友のために交渉を始めた。

 

 

 

 

[1995年3月30日2146時/オーシア首都オーレッド/オーシア軍総司令部/オーシア国防空軍本部/本部長室]

 

 

 

 

 交渉は無事成功し、スミス航空参謀は別の仕事をしていた。しかし、どこか悩んでいる様子だ。

 というのも、2つの報告書に食い違いがあったからだ。こういう事は稀にあるが、どちらかの勘違いで問題は片付く。

 だが、今回はそうはいかなかった。

 1つ目の報告書はオーレッド周辺空域に反応したアンノウンの調査のことだ。クローバー隊担当の空中管制官、ヨネダ管制官の報告ではレーダーには何も反応せず、クローバー隊の目視の調査でも怪しい影は見当たらないとのことだ。このことから報告書には防空レーダーの故障が原因では、という結論が書かれていた。

 2つ目の報告書は、1つ目の報告を受け防空レーダーを調査しに行った部隊からだ。しかし、調査部隊からは問題の防空レーダーに故障箇所は見当たらず、正常に作動していると報告があった。

 スミス航空参謀は報告書の真偽を確かめるため両者に連絡したが、お互い報告書に嘘はないと答えが返ってきた。

 どちらも事細かな報告書で嘘をついているとは思えないからだ。

 

 

 悩んでいる中、総司令部の人がダンボール箱を持ってやってきた。

「なんだね?このダンボール箱は?」

「一般人からの手紙とビデオテープが入っています。総司令部宛に送られてくるのですが、これは空軍担当だと思いましてね。我々はこの手紙とビデオテープを一通り見ました。必ず目を通してください。それでは失礼します。」

 スミス航空参謀はダンボールを開け、手紙とビデオテープをひとつひとつ見た。

 

 

(なるほど、そういうことか。ビリーの言ってたアークバードが例の空域に現れたから、報告書に食い違いが出たんだ。)

 スミス航空参謀は納得した様子だ。

 すぐに受話器を取り、SOLG組み立て中のアークバードに連絡した。

「国防空軍本部長のスミスだ。今日は何をしていた?……ふむ、わかった。今日一日中作業してたんだな?……了解した。作業中に突然すまんな。身体に気を付けて作業頑張ってくれ。お疲れ様。」

 受話器を下ろし、再び番号を押した。

 

 

 

 

[1995年3月30日2210時/サンド島基地/司令室]

 

 

 

 

 司令室でハーバード基地司令官が机上でコーヒーとドーナツを食べ、息抜きをしている中、電話が鳴った。

「はいもしもし、サンド島基地司令官のハーバードです。なんだウィリアムかよ。今ドーナツを味わってたのに電話しないでくれよ〜。」

《そんな事はどうでもいい。それよりも大変な事態だ。ビリーが言ってたアークバードのことだが、一般人の目撃情報が相次いでいる。》

「なっ、なんだってぇ!?」

 思わずコーヒーを噴き出す。

「それはどれくらいなんだ?!どれくらいの人が見たんだ?!」

 ハーバード基地司令官は慌てている。

《落ち着けよ。オーレッド周辺空域と考えれば100人はいってるだろうな。だが、まだアークバードの正体には一般人や総司令部も気付いていない。早く未来の息子に伝えた方がいいだろう。もし、総司令部が未来のアークバードのことを知れば何をするかわからん。ベルカの技術を手に入れるとかほざいてた連中だからな。》

 スミス航空参謀は警告する。

「わかった。ありがとな。早いとこ息子に伝えるよ。ウィリアムも気を付けるんだぞ。私のせいで知ってはならないことを知ってしまったからな。」

 ハーバード基地司令官は電話を切る。

「くそっ、マズイことになったな。ジョン達のことも私の服も…。」

 コーヒーで汚れた制服を着たまま、ハーバード機長のN.Phone宛に電話をかけた。

 

 

 

 

[1995年3月30日2213時/アークバードⅡ/機長室]

 

 

 

 

 ハーバード機長は机上でこれから作戦計画についてノートに書いて考えていた。

(まず7つの核起爆を阻止する必要がある。そのためには、核爆弾のある場所を把握しなければな。だが、エクスキャリバーの脅威があるから迂闊に近づけない。しかし、アークバードⅡの宇宙空間からのレーザー攻撃なら問題ないはず。出力はエクスキャリバーと同等かそれ以上だ。問題は、そこからどうするかだな。レーザーバッテリーの問題も…)

 考える中、机上の充電器につないでいたN.Phoneがバイブを鳴らした。

「親父からか。もしもし、どうした親父?」

《誰が電話かけたかわかるのか。流石は未来の電話だ。そんなことより大変だ。私の友人からなんだが、ジョン達が最初に現れたオーレッド周辺空域で目撃情報が相次いでいるようだ。》

「はぁ…、恐れていたことが現実になったか。こうなる事は承知の上だったが、結構早いタイミングだ。侮ってたな。」

 ハーバード機長は頭を抱える。

《大丈夫だ。目撃したってだけで、未来のアークバードということには気付いていない。だが、これも時間の問題だろう。》

「わかった。燃料と食糧の到着はしばらくかかるから、今は正体がばれないことを祈らんとな。ありがとう、親父。おやすみ。」

 ハーバード機長はタッチパネルを押して会話を終了する。

(厄介なことになったな。だが、今は動く事は出来ない。それまでに作戦を練らないと。)

 再びノートに作戦計画を書き始めた。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。
まだしばらくはベルカ戦争介入はなく、アークバードⅡ出現による別サイドの動きや介入に至るまでの流れを書きたいと思います。
ベルカ戦争介入を期待してた人には申し訳ありませんが、もうしばらくお待ちください。
次回もよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

情報収集

[1995年3月31日0758時/アークバードⅡ/食堂]

 

 

 

 

 アークバードⅡのクルーは、調理係が残った食糧で作った朝食を食べながら大型液晶テレビに注目していた。

 大型液晶テレビにはテレビ局OBCのCMが流れていた。オーシアのテレビ放送が映るようにベレゾフスキー主任がテレビ電波をジャックしたのだ。

 ハーバード機長は起床時刻の0600時に、クルー全員へ0800時前に食堂に集合しテレビを見るように連絡した。

「一体何が始まるんだ?」

「なんか嫌な予感がする。」

「時代を感じるCMだな。」

「ベルカ戦争時代のテレビは初めて見たなぁ。」

 雑談しながらテレビを見てると0800時になり、朝のニュースが始まった。

《おはようございます。朝8時になりました。ニュースをお伝えします。まず速報です。昨日13時頃、オーレッド周辺の住民からアークバードらしき飛行物体の目撃情報が相次いで起きました。》

 周りがざわつき始める。

《この映像は一般人から提供してもらったビデオカメラの映像です。この白い飛行物体がアークバードに類似しているとのことです。しかし数分後、この飛行物体は突然姿を消しました。アークバードの管轄下にあるオーシア国防空軍からは、我々のアークバードではない事は確認済みですが、この正体が何なのかはわかりません、とのことです。》

 ざわつきが大きくなる。

「皆、静粛に!私の話を聞いてくれ。」

 ハーバード機長が昨夜にハーバード基地司令官から連絡があった事を含め話し始めた。

「……という事だ。昨日の私の話の通り、いずれは我々の事が公になる。しかし、思ったよりも早いタイミングだったから私自身も困惑している。これから先は食糧・燃料が届くまでは慎重に行動する必要がある。一番重要なのはアークバードⅡの事だ。この機体だけは必ず守り通さなければならない。最悪の場合、この状態でオーシア軍と戦闘になる事を覚悟してくれ。」

 ハーバード機長は燃料・食糧が到着するまでにやるべきことを話し始めた。その内容は以下の通りである。

 

 

・ベルカ戦争介入作戦の作戦計画の練り上げ。

・残っている武装とその残弾数の確認。

・アークバードⅡの警戒態勢強化。

・オーシア軍のコンピュータをハッキングし、情報収集。

・戦闘機の整備

・機体保全や機内の清掃

 

 

「では朝食が済み次第、作業に移ってくれ。解散。」

 ハーバード機長は説明し終え、食堂を後にした。

 

 

 

 

[1995年3月31日0810時/アークバードⅡ/管制室]

 

 

 

 

 アークバードⅡの警戒態勢強化を図るため、クルーの人数を増やし、交代で異常を確認する事になった。

 Asatレーダーはこの時代に来てからずっと作動させているが、レーダー出力を最大に上げ、さらにZ.O.E.とリンクさせ索敵能力を向上させた。

 

 

 一方、ベレゾフスキー主任率いるコンピュータ管理係は、オーシア軍のコンピュータにハッキングを仕掛けていた。

「ベレゾフスキー主任、いくら古いコンピュータにハッキングを仕掛けるとはいえ、バレることはないのでしょうか。正直不安です。」

 クルーのひとりが問いかける。

「大丈夫だ。この時代のコンピュータのセキュリティはザルだ。閲覧だけならヘマしない限りバレはしない。」

 ベレゾフスキー主任は笑顔で答えた。

「こいつを誰だと思ってる?天才ハッカーのニコライ・ベレゾフスキーだぞ!まぁ、最近調子は良くないがな。」

「おい、最後一言多いぞ!」

 同僚のクルーがからかい、場が和んだ。

 からかわれながらも、ベレゾフスキー主任はハッキングに成功した。

 そこには過去の報告書データや、これから実行する計画書データなどが詰まっていた。

 ハッキングしたデータと、アークバードⅡのパーソナルコンピュータに入っている史実の過去データを照らし合せて、合致しない出来事を探すのが今回の仕事である。

(報告書一覧は過去のデータと合致。俺たちがやってくる前は何も変化がない。問題はやってきた後だが、異なるのはオーレッド周辺空域の調査報告書と防空レーダーの異常報告書、一般人の未確認飛行物体目撃情報に関する報告書だな。奴らはどこまで知っているんだ?)

 ベレゾフスキー主任はハッキングした報告書のコピーをとり、それを他のクルーに見てもらう事にした。

 その間、ベレゾフスキー主任は計画書一覧を見た。

(俺たちがやってきた後の計画書一覧は、史実と一部更新時刻にズレがあるが内容は同じだ。大きなズレはないようだな。だが、定期的に確認しないと。)

 計画書一覧は更新時刻以外、史実通りである。

「ベレゾフスキー主任、報告書を見ましたが現段階でオーシア軍は我々の正体を把握してないと思います。」

 報告書にはアークバードに類似した未確認飛行物体とだけ書いてあり、その正体までは把握してないようだ。

「了解した。いつ報告書が更新されるかわからんから、これから定期的に確認しよう。今は特にやることはなさそうだな。」

 そう言って、ベレゾフスキー主任は背伸びした。

 

 

 

 

[1995年3月31日0810時/アークバードⅡ/格納庫]

 

 

 

 

 同時刻、格納庫では戦闘機の整備と並行して、今ある武装を確認していた。武装は以下の通りである。

 

 

・R-100…3機

・ADF-02…1機

・アークバードⅡ専用下部レーザーユニット…1台

・アークバードⅡ専用AAM発射台…3台

・アークバードⅡ専用30mmバルカン砲…5台

・アークバードⅡ専用レーザーバッテリー未使用…5台

・アークバードⅡ専用レーザーバッテリー80%使用済…1台

・アークバードⅡ専用レーザーバッテリー充電器…1台

・ADF-02専用レーザーユニット…1台

・ADF-02専用レールガンユニット…2台

・ADF-02専用レーザーバッテリー充電器…3台

・ADF-02専用レールガンバッテリー充電器…6台

・SWSB(衝撃波自爆弾)…3発

・アークバードⅡ専用AAM…60発

・アークバードⅡ専用バルカン砲30mm口径弾…2000発弾帯×30本

・アークバードⅡ専用大型ECMポッド…1台

・アークバードⅡ専用クローキングデバイス(光学迷彩装置)…1台

・AOM-3 短距離空対空地艦ミサイル(通称:万能ミサイル)…20発

・AIM-120F 中距離高機動空対空ミサイル(通称:メビウスミサイル)…80発

・LRASM 長距離空対艦ミサイル(通称:音速対艦ミサイル)…20発

・SDBM(散弾ミサイル)…8発

・誘導貫通爆弾…20発

・ECMポッド…7台

・レールガン弾…400発

・R-100・ADF-02専用バルカン砲20口径弾…800発弾帯×20本

 

 

 整備士は武装リストに記入しながら武装を確認していた。

 整備士は確認し終わると、整備長に報告した。

「武装に関してはまだ余裕はあります。しかし、節約しなければ恐らく長くは持たないでしょう。」

 整備長は顎に手を置き、考えていた。

「ミサイル兵器や口径弾はこの時代の兵器で代用できる。問題はレールガン弾とバッテリーだな。どうやって充電すればいいか…。」

 ADF-02専用のレーザーバッテリー・レールガンバッテリー充電やクローキングデバイスの大容量の電力は、アークバードⅡ専用のレーザーバッテリーから供給する造りになっている。

 問題はアークバードⅡ専用のレーザーバッテリーが空っぽになれば、全ての光学兵器は使えなくなるのである。しかもレーザーバッテリーの充電には発電所レベルの施設から充電しないとすぐに充電出来ない。

 アークバードⅡ自体は搭載している最新の太陽光発電システムにより、機体の電力を担っている。レーザーバッテリーはその太陽光発電で充電出来なくもないが、アークバードⅡの使用電力をかなり抑えないとまともに充電出来ず、さらに時間もかかる。この状況で1つのレーザーバッテリーを充電しようと思えば、約1ヶ月はかかることになる。

 また、レールガン弾に関してはこの時代でも製造は容易だが、この時代で未来の兵器を作るのはリスクが大きく、製造の人間がレールガン弾の図面を見て何か閃いてしまったら、本来なら存在しない筈の何かを作って影響を与えてしまう可能性がある。

 大問題であるが、この状況ではバッテリーの充電や武器の確保が難しく、節約する手しか残っていない。

 整備長はこのことを報告書にまとめるため、コンピュータを使って報告書を作成し始めた。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。
用語集(2030年兵器編)に以下の項目を追加します。


・AOM-3
・AIM-120F AMRAAM
・LRASM
・レールガンシステム
・レールガンバッテリー
・レールガン弾
・クローキングデバイス


次回もよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

作戦会議

今回は2話同時投稿です。


[1995年3月31日0830時/アークバードⅡ/作戦会議室]

 

 

 

 

 作戦会議室にはハーバード機長とアルタイル隊の3人、ベレゾフスキー主任、その他数名のクルーが集まっていた。

 部屋の中央には円卓型の大型コンピュータが置かれている。これはマップの立体映像を映し出す機械だ。最新の衛星データにより、山脈などの起伏を正確に映し出す。このコンピュータはそのまま円卓と呼ばれている。ブリーフィングOSはグランダー社製のGASAである。

 ハーバード機長は参加者を確認してから会議を始めた。

「それでは作戦会議を始める。大体の作戦案を考えたんだが、皆の意見が欲しい。円卓の周りに集まってくれ。円卓のマップは2030年時のもので分かりづらいかもしれないが我慢してくれ。」

 ハーバード機長はベルカ公国とノースオーシア州周辺を拡大した。バルトライヒ山脈が立体映像としてはっきり映る。

「私は、まずベルカの核兵器を封印することが第一と考えた。核を封印すれば7つの核起爆を阻止し、犠牲者になってしまう多くの人を救うことができるからだ。」

 バルトライヒ山脈付近の7つの町にキノコ雲の立体エフェクトが出る。

「核を封印するにはベルカ国内に侵入する必要がある。その中で最大の脅威はレーザー兵器エクスキャリバーの存在だ。ベルカの制空権内に入った途端、航空機は全部焼き鳥になってしまう。」

 ベルカ中央部のエクスキャリバー跡地であるタウブルグ丘陵にTGTのアイコンが出る。

「そこで、先にエクスキャリバーを叩く。まずはハッキングでベルカの防空システムを麻痺させる。次にアークバードⅡの大気圏外からのレーザー攻撃でエクスキャリバーを真っ二つにする。そうすればベルカの防空能力は著しく低下することになる。」

 立体映像の高高度にアークバードⅡが現れ、レーザーのエフェクトでTGTアイコンにバツ印をつける。

「その後アークバードⅡは大気圏に突入し、ベルカ上空に到着次第、すぐにアルタイル隊とZ.O.E.を射出し光学迷彩をかける。アルタイル隊とZ.O.E.には核の貯蔵庫に向かってもらい、核が二度と掘り起こされないように封印する。」

 立体映像のアークバードⅡが高度を下げ、立体映像の戦闘機のリボンが表示され、ベルカ国内に分散する。

「当時の資料から核が封印されているのは、イエリング鉱山、アヴァロンダムだ。資料だけでは情報が少ないから、ベレゾフスキー主任にベルカのコンピュータにハッキングしてもらう。」

 バルトライヒ山脈近くのイエリング鉱山とベルカ北部のアヴァロンにTGTのアイコンが表示される。

「無事封印に成功したらアークバードⅡに帰還する。防空システムを無力化しているとはいえ、追っ手はやってくるだろう。ここで死ぬわけには行かないし、ベルカ人にも犠牲は出したくない。うまいこと振り切って帰還して欲しい。もし帰還が難しいと判断したら、やむを得ないが追っ手と交戦してくれ。」

 TGTアイコンにバツ印がついたあと、分散した戦闘機のリボンがアークバードⅡに戻っていく。

「艦載機格納後は光学迷彩を維持したまま北極に移動し、一旦着水する。そこで世界の情勢を観察し、次の作戦を考える。」

 マップが縮小され、アークバードⅡの立体映像は北極に向かって止まる。

「以上が私の考えだ。皆の意見が聞きたい。質問ある者はいるか?」

 アレンスキー大尉が質問した。

「今回の作戦は鬼神やラーズグリーズに先駆けてエクスキャリバーや核封印を行うわけですが、いきなりそんな目立った行動をするのはリスクが大きいのではと思いました。」

 鋭い質問にハーバード機長は答える。

「確かにリスクは大きい。ここまで行動すれば我々の知るベルカ戦争とは異なる戦争になるだろうし、我々の存在がさらに世間に広まることになるだろう。だが、誰かが自分を犠牲にしてやらなければならないこともある。何かを変えるには痛みを伴うのだ。私は未来を変えるためにはやむを得ないことだと思う。」

 ヒヤマ大尉が続けて質問する。

「核を封印するなら、わざわざ艦載機を使わなくても、アークバードⅡのレーザーだけで充分じゃありませんか?」

「確かにアークバードⅡのレーザーを使えれば楽なのだが、レーザーの威力はかなり強力だ。エクスキャリバーと同じか、それ以上だ。下手すれば貯蔵施設の入り口だけでなく、施設そのものを破壊してしまう。そうなってしまえば元も子もないだろう。」

「それじゃあ、何で封印するんですか?」

 ハーバード機長は整備長が作成した報告書を円卓に平面映像で映し出した。

「整備長がまとめた報告書だが、この中には誘導貫通爆弾とファルケン専用のレーザーがある。爆弾の中では効果範囲が狭く、なおかつ威力が高い。頑丈な岩盤で覆われているイエリング鉱山の核封印には使える。」

 再びマップが表示され、アヴァロンダムの立体映像が出る。映像は2030年のもで観光地のため、観光施設も映っている。

「アヴァロンダムの場合は、ダム内部に貯蔵している。現段階では核の存在を隠蔽するため水を張っている可能性がある。それに関してはファルケンのレーザーでダムを決壊させ水を放出、その後はダム内部施設入口をレーザーで破壊し内部に侵入、貯蔵庫入口を誘導貫通爆弾で破壊する。もし、ダムの決壊が難しければリスクは高いがアークバードⅡのレーザーを使う。」

 アヴァロンダムに爆発エフェクトが入り、その後戦闘機のリボンがアヴァロンダム内部にめり込み、爆発エフェクトが出る。

「機長、イエリング鉱山を攻撃するなら、ベルカの重巡航管制機XB-Oも破壊してもいいのではないでしょうか?確かイエリング鉱山に隣接する空軍基地で組み立て作業中ですから破壊した方がいいと思います。」

 マクドネル大尉が質問する。

「そうか、XB-Oもあったか。確かに、先のことを考えれば破壊した方がいい。しかし、鉱山を崩落させてからだと武装がなくなる可能性もある。こればかりはアークバードⅡのレーザー攻撃のほうがいいかもしれない。」

 ハーバード機長は新たにXB-O破壊も作戦に入れることにした。

「この作戦が成功したら、もう後戻りはできない。鬼神が抜くはずだったタウブルグの剣を抜き、XB-Oを破壊し、アヴァロンを陥落させ、ラーズグリーズが封印するはずだった鉱山を封印し、完全に我々の知る史実とは別になる。だが我々がやらなければ、我々の望む未来にはならない。今日の作戦会議は終了する。皆の意見は参考になった。次は修正した作戦内容を全員に報告しようと思う。それでは解散。」

 クルーやパイロット達はあいさつをして部屋を出て行った。ハーバード機長は円卓の電源を落とし、書類を片付け部屋をあとにした。

 

 

 

 

[1995年3月31日0845時/アークバードⅡ/機長室]

 

 

 

 

(作戦の大まかな流れはこのままでいいな。新たにXB-O破壊を入れるからアークバードⅡを戦闘に入れるが、安全圏から攻撃すれば大丈夫だろう。)

 ハーバード機長は作戦を練り直していた。しかし修正箇所は少なかったため、早めに終わった。ハーバード機長はコーヒーを入れ、椅子に座り、コーヒーをすすりながら机の写真立てを見ていた。

(撮影日は今日の15:04か。懐かしい写真だ。ヴァレー空軍基地で傭兵達と撮った写真か。鬼神、片羽、ラグテンコ、ナガセ、懐かしいメンツだ。もう1人の私は今ヴァレー空軍基地にいるな。明日からヴァレー空軍基地の傭兵達は反攻作戦にでる。まさか、懐かしい出来事があと数時間後にまた繰り返されるとは妙な気分だ。また戦闘機パイロットに戻りたいものだ。)

 機長はこれから起こる懐かしい出来事を思い出していた。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。
2話同時投稿ですので次も楽しみにしてください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

真の目的

この話はウスティオ傭兵サイドです。


[1995年3月31日1454時/ヴァレー空軍基地/格納庫]

 

 

 

 

 場所は離れ、サンド島より遥か北東に位置するウスティオ共和国。

 ベルカ戦争開戦により真っ先に侵攻され、5日足らずで領土の90%を占領された。

 ベルカ軍のほとんどは戦闘に長けた熟練部隊で、武器の性能も他国よりも優れていた。

 ベルカの電撃的侵攻により、ウスティオ軍は対処できず大半以上が壊滅し、ウスティオ軍総司令部はノルデンナヴィクにある世界最大の傭兵派遣会社、マクミラン・マーセナリー社から傭兵を雇うことにした。

 この雪山の中に位置するヴァレー空軍基地はウスティオ軍最後の砦であり、傭兵達を集わせ守りを固めていた。

 

 

 格納庫にひとりのパイロットが自分の愛機F/A-18Eを眺めていた。

 このパイロットこそ、スカーフェイス隊2番機、スラッシュのコールサインを持つ、若き傭兵時代のジョン・ハーバードである。階級は少尉だ。

「ハーバード、機体を眺めてどうした?スパホが気に入ったか?」

 そこに顔に傷のついたパイロットがやってきた。彼は自分の顔を部隊名にしたパイロットだ。

 彼こそ、ユージアクーデターでユージアを守ったパイロット、スカーフェイス隊隊長フェニックスのコールサインを持つソロモン・ラグテンコだ。階級は少尉である。ハーバード少尉と同い年で、傭兵になってからの付き合いである。

「俺にとっては思い入れのある機体だ。オーシア空軍時代に愛用した機体だからな。傭兵になってからいろんな国の機体に乗ったが、スパホが一番だ。」

 ハーバード少尉は愛機について語る。

「初めて乗った機体には思い入れが強いからな。俺もこのフランカーが愛機だ。ユークの奴らが新しいフランカーを開発中らしいが、俺はこのフランカーがいい。性能よりも戦闘機に対する愛が重要だ。」

 ラグテンコ少尉はF/A-18Eの隣に並んでいた青紫迷彩のSu-35に手を添えた。

「こいつの魅力はこの独特のエアインテークだ。この形状は他の戦闘機ではまず目にしない。MiG-29も似たようなもんだが、フランカーと比べたらフランカーが上だ。それに何よりカナードがあるのがいい。カナードがあることによってよりスマートに、よりカッコよく見える。それから…」

 ラグテンコ少尉はフランカー愛好家であり、特にSu-35のこととなると話が止まらなくなってしまう。

「ラグテンコ、語りすぎだぞ。お前はフランカーのことになると止まらなくなるから途中で止めないと大変なことになっちまう。」

 ハーバード少尉がラグテンコ少尉の長話を止めさせる。

「別にいいじゃねぇか。好きな時に好きな愛機について語ってもよ。」

「語るのはいいが、できるだけ短くまとめろよ。聞いてる方が飽きてくるぜ。」

 するとひとりの女性パイロットがやってきた。

「あんたら何騒いでんの?そろそろ撮影の時間だよ。エプロンに来ないと戦死扱いするわよ。」

 彼女はスカーフェイス隊3番機、エッジのコールサインを持つ女性パイロット、ケイ・ナガセだ。彼女も階級が少尉だ。清楚な外観とは裏腹にかなり男勝りな性格である。彼女もハーバード少尉と同い年で傭兵になってからの付き合いである。当たり前だが、のちのウォードック隊2番機とは別人である。

「ったく、きついジョークだぜ。今行くぜお嬢さん。」

 ハーバード少尉がジョークで返す。

「今度お嬢さんって言ってみなさい。あんたのたまたま蹴り飛ばすわよ。」

 ナガセ少尉はニンマリしてさらにきついジョークで返す。

「それだけは勘弁だぜ!本当に死んじまうよ!」

 ハーバード少尉は股間を手で隠しながらヘタレた声で怖気付く。それを見てナガセ少尉はクスクス笑う。

「おっかねぇ、ナガセにゃあかなわねぇな。」

 ラグテンコ少尉は顔を青ざめる。

「ん、なんか言った?ラグテンコが隊長だからって容赦しないわよ。」

 ラグテンコを見てニンマリする。

「いやぁ…、何も言ってねぇよ。(見た目はかわいいのに、中身はバケモンだな)」

 3人は楽しく雑談しながらエプロンに向かった。

 

 

 

 

[1995年3月31日1500時/ヴァレー空軍基地/エプロン]

 

 

 

 

 今日はマクミラン・マーセナリー社の傭兵達が全員ヴァレー空軍基地に到着したので、作戦前の集合撮影を行うことにした。

 単純に記念撮影でもあるが、戦場で必ず全員生き残るという意思をブレさせないための撮影である。

 傭兵は軍人と違い、捨て駒のような扱いをされている。今回ヴァレー空軍基地に集まった傭兵達も御多分にもれず、上からはそう見られている。だが、彼らは捨て駒のような扱いを嫌っていた。己を超える敵と戦いたい奴もいれば、金だけに執着する奴、単純に破壊が好きな奴など様々いるが、共通するのは必ず生き残るというモットーを持っていることだ。死んでしまえば自分の望む目的が達成されないからだ。

 彼らは毎回戦地に赴けば集合写真を撮り、生き残る意思を固め、すべての任務が完了すれば最後に生き残った者だけで撮影する。

 残念ながら毎回戦地に赴くたび戦死者は必ず出てしまう。最後の撮影では半分以上の傭兵が撮影現場にいないのが現実だ。

 史実のベルカ戦争でも、まともに生き残ったのはスカーフェイス隊3人を含め数名だけである。ちなみにベルカ戦争最後の撮影日は国境なき世界壊滅後の1996年1月1日に撮影されたものである。

 なぜベルカ戦争終戦後ではないかというと、ほぼ壊滅したウスティオ空軍の支援のため、契約期間が1995年いっぱいまでになっていたからである。

 そのため、国境なき世界のクーデター壊滅作戦に円卓の鬼神ら傭兵が参加できたのである。もちろん、スカーフェイス隊も参加した。

 

 

 エプロンにぞろぞろ傭兵達が集まる。背景にはマクミラン・マーセナリー社のロゴが描かれた幕が張っていた。

「あんたがガルム1か?俺は新しくガルム隊2番機に配属されたラリー・フォルクだ。作戦中はピクシーと呼んでくれ。」

 F-15Cで片羽を失った状態で帰還したパイロット、片羽の妖精ことラリー・フォルク少尉がひとりの男に話しかけていた。

 この男こそ、ベルカ戦争でベルカ人に畏怖を、連合軍に敬意を受け、のちに円卓の鬼神と呼ばれることになるガルム隊隊長エドガー・アイザック少尉だ。とにかく寡黙な男で、基本的には何も喋らない。

「…そうか、俺の隊の2番機だな…。こちらこそよろしく頼む。好きに呼んで構わん…。」

 アイザック少尉は無愛想に答える。

「おっ、おう…。そんじゃあ、あんたのことは相棒と呼ばせてもらうよ。こっちこそよろしくな、相棒。」

 フォルク少尉は無愛想な返答に戸惑ったが、呼び名を決めて返事を返した。

 アイザック少尉は一言返事し、空を眺めていた。

「今日は綺麗な青空だ。雪景色と西日が合わさっていっそう眺めがいいな。」

 フォルク少尉が空を眺めて呟くが、アイザック少尉は黙って空を眺めていた。

「皆さん、並んでください!集合写真を撮ります!」

 カメラマンが集合をかける。

 マクミラン・マーセナリー社の傭兵全員が2列に並ぶ。

 全員が並び、カメラマンが合図をして写真を撮った。

 

 

 この写真には傭兵達の生き残るという意思が込められている。

 

 

 ハーバード機長が写真立てに入れていた写真もこの写真だ。

 

 

 ハーバード機長の目的には未来を変える他にも、仲間の傭兵達を全員生き残らせるという目的も入っている。

 

 

 このことはハーバード機長以外誰も知らない。

 

 

 これが、ハーバード機長の真の目的である。

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回はウスティオの傭兵サイドのシナリオを書きました。次も内容的には傭兵サイドになると思います。そろそろ説明文的な内容で飽きているところだと思いますので、戦闘シーンがあるシナリオにしたいと思います。
次回もいつになるかわかりませんが、よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2-2.反撃作戦編
シーサーペント作戦『反撃』(クローバーサイドmission1)


お詫び

前回のあとがきで、次も傭兵サイドにすると言ってましたが、ストーリーの時系列的にクローバーサイドにした方がいいと判断し、今回はクローバーサイドにしました。
傭兵サイドを期待していた方には申し訳ありません。
流れ的には次回を傭兵サイドにしようと考えています。
今回はクローバーサイドをお楽しみください。


[1995年4月1日0946時/サンダース空軍基地/作戦会議室]

 

 

 

 

 オーシア・ユークトバニア・ベルカ東方諸国の決議のもと、ついに反撃作戦が幕を開けた。

 突然の宣戦布告で混乱していた各国軍隊は落ち着きを戻し、万全の体制で戦闘に臨んだ。

 空陸共にベルカ軍に反撃をし、残念ながら全滅した部隊もいれば、占領地奪還に成功した部隊もいた。

 そして、オーシア首都オーレッド郊外のサンダース空軍基地に駐屯するクローバー隊も反撃作戦に参加ことになった。

 

 

「それでは、これからブリーフィングを始める。この作戦はベルカに対する反撃作戦であり、占領地奪還作戦でもある。よく話を聞き、作戦に臨んでほしい。」

 プロジェクターからブリーフィングマップ映し出された。ブリーフィングOSはオーシアの軍事企業サウスロップ・グランダー社が開発したものである。この企業はのちに南ベルカ国営兵器産業廠を買い取って、ノースオーシア・グランダーIGとなる。

「諸君の任務は、オーシア第3艦隊の援護及びベルカ艦隊の殲滅だ。このベルカ艦隊は占領地付近のオーレッド湾に停泊しており、艦対地攻撃により、オーシア地上部隊に影響が出ている。」

 オーレッド湾北西部が拡大され、ベルカ艦隊のアイコンが表示される。そこにオーシア第3艦隊のアイコンと護衛戦闘機のアイコンが表示される。

「第3艦隊も攻撃に参加する。この作戦が達成されたら、第3艦隊は味方地上部隊に援護を開始する。その任務も完了すれば、フトゥーロ運河に侵攻する。第3艦隊のフトゥーロ運河侵攻の流れは戦況にもよるから、そこに至るまで一ヶ月近くはかかると推測する。それまで、諸君には一ヶ月近く第3艦隊の援護に付き合ってもらう。」

 ベルカ艦隊にバツ印が付き、第3艦隊の援護エフェクトで地上部隊を支援し、占領地の赤色がオーシア領の青色になる。あらかた青色になったところで、第3艦隊はフトゥーロ運河に向かっていく。

「クローバー隊諸君は第3艦隊を援護し、ベルカ艦隊を殲滅せよ。作戦時刻は1100時だ。今回の任務はフトゥーロ運河侵攻作戦の第一段階だ。この作戦の成否で今後の作戦に大きな影響が出る。作戦名はシーサーペントだ、以上。」

 ブリーフィングが終わり、クローバー隊は作戦会議室を出て更衣室へ向かった。

 

 

 

 

[1995年4月1日0953時/サンダース空軍基地/更衣室]

 

 

 

 

「今日の任務は対空攻撃と対艦攻撃の両方だな。空に2機、海に2機でいく。俺は空で行くぞ。」

 クローバー隊隊長のハワード大尉はパイロットスーツに着替えながら指示を出した。

「俺は空で行くぜ!空戦は得意分野だ!」

 クローバー隊4番機、マナブ・ヒロセ大尉は名乗り出た。

「それじゃあ、俺は海で行くぜ!」

 クローバー隊2番機、シロウ・バーネット大尉は艦隊戦に名乗り出た。

「そうなっと、俺は自動的に海になっちまうな。まぁ、どっちでもかまわねぇ。」

 クローバー隊3番機、レオン・ヤマグチ大尉の任務は自動的に海になった。

「ベルカとの初の戦いだ。戦闘機の性能もパイロットの技量も上だ。しかも、ベルカ騎士団に感化されてる連中が多い。そう簡単には引かないだろう。もしケツを取られて、振り切れない、反撃が難しいと判断したらベイルアウトしろ。自分の命が優先だ。」

 ハワード大尉はベルカの戦闘機隊には敵わないと判断し、自分の命を優先するよう命令した。

「空戦に自信はあるぜ!ベルカ騎士団がなんだ、俺がやってやるぜ!」

 ヒロセ大尉はやる気満々である。

「ヒロセ大尉、ベルカ戦闘機隊を侮るなよ。死んだら元も子もないんだから。」

 ハワード大尉が注意する。

「まっ、手っ取り早く艦隊を壊滅させれば奴らも撤退するはずだ。味方艦隊や他の戦闘機隊も協力するからよ、損害が出ないうちに終わらせよう。」

 バーネット大尉はヤマグチ大尉に言った。

「そうだな。いくらベルカの艦隊とはいえ、対艦ミサイル積んだ戦闘機の攻撃にゃ無力だ。お互い楽するためにもちゃっちゃと片付けよう。」

 着替えが終わり、ヘルメットを持って4人は格納庫へ向かった。

 

 

 

 

[1995年4月1日1058時/オーレッド湾北西部5000ft上空]

 

 

 

 

 空にはクローバー隊のF-2Aの他に、3部隊ほどの戦闘機隊が参加していた。

 海にはオーシア第3艦隊が空母ケストレルを旗艦とし集結していた。駆逐艦が5隻、フリーゲート艦4隻、イージス艦フューチャーで編成されている。

 空母ケストレルは公試運転中であるが、戦力不足を補うため止むを得ず実戦投入した。実はまだ公式には就役してないのである。

《こちら空母ケストレル艦長のウィーカーだ。戦闘機隊諸君、航空支援をよろしく頼む。》

 ケストレル艦長、ダグラス・ウィーカー艦長の無線が入る。

《こちらイージス艦フューチャー艦長のウメタだ。航空支援に来てくれた戦闘機隊に先に感謝の意を述べる。艦隊の盾として、我々も奮戦する所存だ。全艦隊へ、戦闘機隊に負けず戦うぞ!》

 フューチャー艦長のコウジ・ウメタ艦長から士気を上げる無線が入る。

「やれやれ、海軍は好戦的だな。」

 ハワード大尉は半分呆れていた。

 

 

 

 

[1995年4月1日1101時/オーレッド湾北西部5000ft上空]

 

 

 

 

《こちら空中管制機ストラタス。レーダーにベルカ艦隊及び戦闘機隊を補足した。全機交戦を許可する。第3艦隊を援護しつつベルカ艦隊を壊滅せよ。》

 ヨネダ管制官の指示が流れる。

「了解した。作戦通り、俺とクローバー4は空に、クローバー2、3は海を頼む。特にクローバー4、自信満々だったが油断するなよ。クローバー1、交戦。」

「クローバー2了解。行くぞクローバー3。クローバー2、交戦。」

「クローバー3、交戦。対艦ミサイルをお見舞いしてやるぜ!」

「クローバー4、交戦。ベルカ騎士団とほざいてる奴らなんざ大したことねぇよ!空は任せな!」

 クローバー隊及び他の戦闘機隊が分散する。

 クローバー4の正面に対艦ミサイルを装備したベルカのSu-37が接近する。

 クローバー4はミサイルを撃つが、Su-37はひらりとかわし背後をとる。

「なんだよ!あの機動は!?」

 Su-37はミサイルを撃つが、クローバー4はフレアをばら撒きミサイルを回避し、急旋回をする。

 途中で兵装をQAAMに変更し背後をとろうとするも、機動性とパイロットセンスの差でなかなか背後を取れない。

「よし…一か八か…!」

 クローバー4はF-2Aを急減速させる。クローバー4はオーバーシュートを狙おうとしていた。

 しかし、Su-37のパイロットには動きを読まれていた。

「馬鹿な奴だな!動きがわかるんだよ!」

 Su-37はクルビットをし、オーバーシュートを回避する。

「ちくしょう!読まれてたか!」

 その時、背後からクローバー1が現れ、Su-37に向けミサイルを発射した。

「しまった!?奴に気を取られていた!クソッ、イジェクト!」

 間一髪、Su-37のパイロットはベイルアウトした。その後Su-37は木っ端微塵になる。

「助かったぜ、クローバー1!」

「無茶するなよクローバー4。たまたま俺が近くにいたから良かったが、助けがなければ死んでたぞ!ベルカの戦闘機隊を侮るなと言っただろう!」

「悪かったな、クローバー1。」

 クローバー4は少し不機嫌になる。

「ベルカの戦闘機隊の強さがわかっただろう。機体性能でもパイロットセンスでも敵わん。単機で相手はしないことだな。2機で1機を仕留めよう。」

「クローバー4、了解。」

 

 

 その頃、海ではすでにオーシア第3艦隊とベルカ艦隊の戦闘が始まっていた。

「クローバー2、対艦ミサイル発射!」

「クローバー3、対艦ミサイル発射!」

 2機のF-2Aから対艦ミサイルが発射される。対艦ミサイルは見事ベルカの駆逐艦とイージス艦に被弾した。

「空の方は苦戦してるようだが、艦隊は思ったより強くないな。海に恵まれない国だからか?」

「クローバー2よりクローバー3へ、確かにそうだな。だが、これは好機ととらせてもらおう。さっさと片付けて、空の方を楽にさせないとな。」

 クローバー2、3は再び対艦ミサイルを発射した。

 

 

 

 

[1995年4月1日1107時/オーレッド湾北西部/イージス艦フューチャー/CIC]

 

 

 

 

 一方、イージス艦フューチャーでもベルカ艦隊の強さに疑問を抱いていた。

「ウメタ艦長、私の思っていたよりベルカ艦隊が弱いです。あのまま上手くいけば壊滅は時間の問題かと思います。逆に護衛の戦闘機隊が無線で聞くところ、かなり苦戦しているようです。」

 マサヒロ・キクタニ三等海佐はウメタ艦長に現状を報告する。

「うむ、ならば戦闘機隊をシースパローで援護しよう。こちらからも恩返しをしないとな。」

 ウメタ艦長は戦闘機隊を援護するよう指示を出した。

 

 

 イージス艦フューチャーからシースパローが発射され、ベルカの護衛機F-15S/MTDを撃墜した。さらに他の船舶からも艦対空ミサイルが発射され、Su-37、F-16XL、MiG-1.44が撃墜された。

《クローバー1より全艦隊へ、ミサイルによる援護感謝する!》

 上空のクローバー1から無線が入る。

「なに、気にすることでない。航空支援のおかげでもう少しでベルカ艦隊は壊滅する。こちらこそ、援護に感謝する。」

 お互いお礼返しをした。

「SPYレーダーよりベルカ艦隊の全滅を確認。やりましたね、艦長。」

 やりとりしている内にベルカ艦隊は壊滅し、ベルカ戦闘機隊は撤退していった。

 史実通り、この作戦は成功した。

 

 

 史実ではシーサーペント作戦以後、4月12日のシードラゴン作戦、4月17日のシーホース作戦を挟み、4月24日にフトゥーロ運河に無事到着する。ちょうどこの時にオーシア・ユークトバニア・ベルカ東方諸国は『連合軍』と正式命名し、『戦域攻勢作戦計画4101号』を実行する。

 しかし、その間に損害は出てしまう。戦闘機隊はクローバー隊は全機健在だが、他の部隊の半数はやられてしまう。第3艦隊の被害はベルカの戦闘機隊の攻撃でイージス艦フューチャーがやられてしまう。

 

 

 果たして、第3艦隊の運命は史実通りに進むのか?

 

 

 それとも別の未来を辿るのか?

 

 

 戦争はまだ始まったばかりである。




最後まで読んいただき、ありがとうございます。
そろそろ1995年の人物がまとまってきたので、新しく用語集を作ろうと思います。
用語集の投稿はまだ書留をしてないので未定ですが、これからもよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

クロスボウ作戦『凍土の猟犬と傷顔』(傭兵サイドmission1)

[1995年4月2日1227時/ヴァレー空軍基地/作戦会議室]

 

 

 

 反撃作戦が始まってから2日目。

 まだベルカに対抗する戦力は揃っておらず、各地では一進一退が繰り返されている。

 しかし、ベルカは数は少ないが個々の強さで攻めるのに対し、オーシアやユークトバニア、ベルカ東方諸国は個々の強さはベルカより劣るが、複数国が参加しているため物量で攻めることができる。

 この調子でいけば、ベルカは疲弊し撤退を余儀なくされるのが目に見えている。

 史実でベルカが追い詰められたのは正にこの戦略が原因で、疲弊したベルカ軍はこれ以上の進軍を阻止するため、1995年6月6日にバルトライヒ山脈に沿って7つの核を起爆させたのである。

 

 

 このまま何もなければ、そんな残酷な未来がやってくるとは知らず、ヴァレー空軍基地では反撃作戦のブリーフィングが始まっていた。プロジェクターからウスティオの軍事企業アックス・アンド・ハンマー社のブリーフィング画面が映っている。

「諸君、よく集まってくれた。早速だが緊急出撃任務だ。我々が先に攻撃を仕掛ける前に、ベルカがヴァレー空軍基地に爆撃機を送り込んだと情報が入った。事実、ウスティオの防空レーダーが多数の爆撃機編隊を補足した。」

 ブリーフィング画面はヴァレー空軍基地から北西の山岳地帯を示しており、そこに爆撃機編隊のアイコンが表示される。爆撃機編隊から太い矢印が表示され、ヴァレー空軍基地方面に向かっていることを表していた。

「諸君にはこの爆撃機編隊を撃墜し、ヴァレー空軍基地を守ってもらいたい。今回の作戦の成否で今後の作戦を左右することになるだろう。作戦名はクロスボウ作戦で、作戦開始時刻は1300時とする。」

 味方戦闘機隊のアイコンが表示され、爆撃機に向かって太い矢印が表示された。

「諸君らは傭兵だ。無事に生きて帰ってきたら撃墜数に応じて報酬をやる。ただし、作戦は成功させることが条件だ。作戦に失敗したらこの基地は破壊され、報酬どころではなくなるからな。誰が何を撃墜したかは基地のレーダーで確認できる。要はズルはできないってことだ。そこのところを肝に銘じて作戦に臨んでほしい。なお、今回はオーシアから派遣されるAWACSが到着してないため、基地司令塔から管制する、以上。」

 ブリーフィングが終了し、傭兵たちは部屋を出た。

 

 

 

 

[1995年4月2日1231時/ヴァレー空軍基地/更衣室]

 

 

 

 

 ヴァレー空軍基地に集結し、写真撮影に参加した傭兵部隊は、ガルム隊2人、スカーフェイス隊3人、その他3部隊の8人の計13人である。

 今回の作戦は全員参加のため、男性更衣室は

 12人の男共でむさ苦しい状況になっていた。

「まったく、男ばかりで華がねぇな。ハーバード、ナガセつれてきてくれよ。」

 ラグテンコ少尉が着替えながらジョークを飛ばす。

「なに馬鹿なこと言ってんだよ。んなことすりゃあ、俺の大事なところが消し飛んじまうぜ。」

 ハーバード少尉は着替えながらジョークで返す。

「あんたのところのナガセとかいう女性はそんな怖い奴なのか?」

 フォルク少尉は着替えながらナガセについて質問する。

「はじめはいい子だったんだぜ。それがどうしたことか、俺らと付き合ってる内に悪魔みてぇな性格になっちまった。見た目はかわいいのに、おぉぉぉぅ怖い!」

 ハーバード少尉はジョークを交えて答える。

「話したときはいい子な印象があったんだけどなぁ…。」

 フォルク少尉はナガセのギャップに軽くショックを受けてるようだ。

「この前なんて耳は引っ張られるし、ケツは蹴られるし、たまたまも蹴られそうになってよぉ〜、そりゃぁもぉ…」

 ハーバード少尉が喋ってると隣の女性更衣室から大声が聞こえてきた。

「あんたら丸聞こえよ!特にハーバード!変なこと吹き込むんじゃないよ!ただじゃおかないからね!」

 ナガセの怒鳴り声が壁から聞こえてきた。

「何も言ってないぜ!聞き間違いじゃないか?」

 ハーバード少尉はジョークで返す。

「おふたりさん、仲良いな。カップルか?」

 フォルク少尉がまさかのジョークを飛ばす。

「なっ何言ってんだよ!俺には別の彼女がいるんだぜ!誰があんな漢女好きになるかよ!あんたクールな感じだと思ったけど、意外に鋭いジョーク言うなぁ。」

 ハーバード少尉は驚いた顔をしてフォルク少尉を見る。

「俺だって多少はジョーク言えるぜ。けど、俺の相棒はジョークなんか通じなさそうな雰囲気をいつもだしている。なかなかあいつには馴染めないな。」

 フォルク少尉は後半小声で話す。

 サイファーことアイザック少尉は集団から離れ黙って着替えていた。

「なんだか俺が話を振るのに特に興味のない素振りをして話は続かないし、おまけにジョークも通じない。軽くジョーク振っただけで怖い形相されたぜ。あいつの噂は会社でいろいろ聞いていたが、まるでロボットみたいな奴だ。容赦なく敵を破壊する男らしいからな。」

 フォルク少尉はハーバード少尉に小声で愚痴る。

「まぁ、そういう奴もいるって。アイザック少尉はプライベートよりも戦場で絆を深めやすいタイプなんじゃないか。もしそうなら、今日の作戦で仲良くなればいいじゃないか。」

 ハーバード少尉が励ます。

「そうかもな。なんだか悪いな、俺の愚痴を聞いてくれて。ありがとよ。」

 フォルク少尉は礼を言う。

「気にすんなって。俺たちは仲間だろ。仲間の愚痴ぐらい聞くのは当たり前だ。」

 ハーバード少尉は笑顔で応える。

「ハーバード、着替えたか?早く格納庫に行くぞ。ナガセに痛いの食らう前にな。」

 ラグテンコ少尉はジョークを交えて指示を出す。

「OK、早いとこ行こうぜ。あいつはおっかねぇからよ。」

 ラグテンコ少尉とハーバード少尉は部屋を出た。

「さて、着替え終わったな。相棒、行こうぜ。……ってアレ?」

 フォルク少尉はアイザック少尉を呼んだが、すでに部屋にはいなかった。

(俺が愚痴ってる時に部屋を出たのか?まったく、連れない奴だ。)

 フォルク少尉はひとり部屋を出た。

 

 

 

 

[1995年4月2日1300時/ヴァレー空軍基地北西山岳地帯]

 

 

 

 

 天気は晴れているが、雪が降り始めていた。

 標高の高いウスティオ山岳地帯は夏でも寒い環境である。4月でも平地の冬並みに寒い。いくら近くにヴァレー空軍基地があるとはいえ、ここでベイルアウトすれば体力的に辛いものである。

 上空に翼端を青く塗装したF-15Cが飛んでいる。

 それを追うように右翼を赤く塗装したF-15Cがやってきた。

「降ってきたな。」

 ガルム2ことピクシーが呟く。

《こちら基地司令部、全機上がったようだな。ガルム隊、スカーフェイス隊、その他の部隊は現在の方位を維持せよ。》

 基地司令部から無線が入る。

「ガルム1、了解。」

「こちらガルム2、了解した。」

「スカーフェイス1、了解。さっさと片付けてホット・ラムにするぞ。」

「スカーフェイス2、了解。俺はホット・ウイスキーがいいなぁ。」

「スカーフェイス3、了解。何言ってんのよ。そこはホット・ワインでしょ。」

 スカーフェイス隊は帰還した時に飲む酒の話をしていた。

《方位315よりベルカ軍の爆撃機編隊が接近!》

 基地司令部より敵出現の報が入る。

「雪山でのベイルアウトは悲惨だ。頼むぜ、一番機。」

 ピクシーがガルム1ことサイファーに無線を送る。

「おう。」

 サイファーが一言応える。

《各機、迎撃態勢をとれ。》

「報酬はきっちり用意しておけ。」

《全員が無事であればだ。》

「お財布握りしめて待ってろよ!」

 基地司令部とピクシーのやり取りが終わり、2機のF-15Cは真っ直ぐ爆撃機編隊のいる方向に飛び立っていった。

「ガルムの奴ら、スピード上げて向かっていったな。俺たちも行くぞ!報酬を取られる前にな!」

 青紫迷彩のSu-35に乗ったフェニックスが指示を出し、速度を上げる。

「ガルムに負けてたまるかよ!行くぜ!」

 グレー迷彩のF/A-18Eに乗ったスラッシュが闘志を剥き出しにする。

「スピードなら、私の機体が上よ!」

 砂漠迷彩のMir-2000に乗ったエッジはフェニックスを追い抜いた。

 スカーフェイス隊の機体は所々に改造を施してあり、Su-35は装甲を軽くする代わりに機動性とスピードを向上させ、F/A-18Eはウェポンベイの増量や堅い装甲を取り入れ空戦のできるアタッカーに、Mir-2000はより高出力のジェットエンジンに換装したことでMiG-31に近い加速度と最高速度を実現した。

「先に失礼するわよ!スカーフェイス3、FOX1!」

 エッジはガルム隊も追い抜いて、SAAMで攻撃を開始した。

 爆撃機編隊を護衛していたベルカのF-5EにSAAMが命中し墜落する。

「あっけなく墜ちたな。奴ら余裕こいてガバガバの護衛してるな。機体も古い機体だ。」

 ピクシーが敵機を見てサイファーに無線で喋る。

「ほう。ベルカのエースではないようだな。つまらん戦いになりそうだ。だが、報酬のために墜とさせてもらう。ガルム1、FOX3。」

 サイファーの冷徹さが漂う返答をしながらXMAAを発射し、4機の爆撃機に命中し墜落した。

「クソ!ウスティオの奴らが傭兵を雇ったってのは本当のようだな。余裕こいて護衛を疎かにしていた。」

 ベルカの爆撃機パイロットはこの現状にしっかり準備していなかったことを後悔していた。

「ガルムばかりにとられてたまるかよ!スカーフェイス1、FOX3!」

 Su-35から大型のXLAAが切り離され点火し、物凄い速さで爆撃機2機に向かって飛翔し命中した。

「ったく、みんなスピードが速いんだよ。俺の獲物を残してくれよ!スカーフェイス2、FOX1!」

 遅れてスラッシュが到着し、SAAMで護衛のJ35Jを撃墜した。

「おっと、手応えありそうな敵機がいるな。こいつは貰うぜ。ガルム2、FOX1!」

 ピクシーは護衛のF-20AにQAAMを発射し、撃墜した。

 その後、別のF-20Aの背中を取りAAMで撃墜した。

 するとサイファーもF-20Aの編隊に突っ込み、機銃で瞬く間に3機撃墜した。

「機銃だけで3機撃墜か…。さすがだな、相棒。」

 ピクシーはサイファーの実力に感服していた。

「チクショウ、相手が悪い!逃げるぞ!」

 1機のB-52が空域を離脱しようとしていた。

「馬鹿野郎!ここまで来て逃げるのか!ベルカの誇りは貴様らにないのか!」

 別のBM-335から罵声の無線が飛ぶ。

「誇りなんて糞食らえだ!俺らは死にたかねぇんだよ!」

 離脱しようとする爆撃機からヘタレた無線が入る。

「あら?爆撃機が1機離脱してくわ。」

 エッジがその様子に気付く。

「ここまで来て離脱?!奴ららしくない。」

 ピクシーはベルカの行動に驚いていた。

「爆撃機が離脱か。流石に逃亡機は墜とす気はないね。」

 フェニックスは逃亡機をほっといて、別の敵機を相手にしていた。

「あのベルカも逃げるんだな。ん?ガルム1は何をしようとしてるんだ?」

 スラッシュはサイファーの行動に疑問を抱いた。

 サイファーは逃亡しようとしているB-52を追尾してるのだ。

「背後に敵機!速度を上げろ!フレアをありったけばら撒け!」

 B-52からフレアが大量に出る。

「無駄だ。」

 サイファーは機銃で的確にB-52のエンジン全て破壊し、B-52を撃墜した。

「容赦ねぇ奴だな、あんたのところの一番機は…。」

 フェニックスは自分の考えと真逆の行動をしたサイファーに驚いていた。

「噂だとあいつは獲物を逃がさない性分らしいぜ。」

 ピクシーはサイファーの特徴を簡単に説明した。

「あいつとは、話が合いそうにないな。」

 フェニックスはそう言って、残りの爆撃機に攻撃を開始した。

 フェニックスこと、ラグテンコは弱い者には興味がない性格で、戦意のない相手には手を出さない。むしろ、強い相手には興味を示し、全力で相手と戦う。

 後のユージアクーデターでも、クーデター軍のエースと熱い戦いを繰り広げた。たとえ、相手が人工知能Z.O.E.でも。

 彼は相手が誰であろうと、自分以上の実力を持つ者と戦い、己の能力を上げたいのである。

「あの傭兵、戦意がない奴にも手を出すぞ!あいつは人間か!」

 ベルカの戦闘機パイロットはサイファーに恐怖を抱いていた。

「最後の爆撃機はいただくぜ!スカーフェイス2、FOX2!」

 F/A-18Eから1発のAAMが発射されBM-335に命中した。しかし、それでもしぶとく飛んでいたため、機銃掃射し撃墜した。

「敵爆撃機撃墜!イーヤッホー!」

 スラッシュが喜んでいたら、墜落していくBM-335の後方機銃がF/A-18Eの左翼とエンジン近くの胴体に命中した。

「いててて、あんにゃろう!墜ちながら機銃攻撃なんて、しぶとい奴だぜ。」

 幸いにも装甲を強化していたため、飛行に支障はないが、普通のF/A-18Eなら飛行が困難になっていただろう。

「ハーバード、大丈夫?あんたもドジよねぇ。墜としても油断しないことよ。」

 エッジがグサリとくることを無線で伝える。

「うっ…、なかなかキツイこというな、ハハハ…。」

 エッジの言葉が的確すぎてスラッシュは反論できなかった。

「まぁ、何より今はスカーフェイス隊は全機健在ってことでいいじゃないか。帰ったら一杯やろうぜ。酒は後でジャンケンで決めよう。」

 フェニックスはスカーフェイス隊が全機健在していることを素直に喜んでいた。

《こちら基地司令部、全機撃墜したようだな。当該空域に敵性航空機ゼロ。爆撃機を全機落とせとは言ったが、護衛や逃亡機も全機落とせとは言ってないぞ。相当金に飢えた番犬がいるようだな、サイファー。》

「ふん。俺の眼に入った奴は全て墜とすだけだ。」

 基地司令部の無線にサイファーが返答した。

《まさに、冷酷なハンターだな…。よし、全機帰還せよ。》

 基地司令部はサイファーの言動に驚きながらも、帰還命令を出した。

「お互い無事で何よりだ。お前の行動は少し理解できないところもあるが、戦闘ではうまくやれそうだ。これからもよろしくな、相棒。」

 ピクシーはサイファーに今の気持ちを伝えた。

「ああ、こちらこそよろしく。」

 サイファーは無愛想ながらも応えてくれた。




最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
最近試験等が重なりまして、1ヶ月近く投稿できませんでした。

この約1ヶ月間いろんなニュースがありましたが、やはりエースコンバット7のニュースが一番嬉しかったです。世界観はエスコン5の10年後の世界らしいです。イーグルにレーザーやスパホにレールガン、軌道エレベーターや恒例の巨大航空機などエスコン3の世界観に近づいている反面、ストーンヘンジなど従来のエスコン要素も感じられます。
話が長くなりましたが、エスコン7が待ち遠しいです。

この小説は結構続きそうな感じですが、エスコン7の世界観が公開されても、この小説の世界観設定はエスコン7の設定を除いた設定とさせていただきます。

これからもよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

機内の案内 前編

[1995年4月2日1500時/アークバートⅡ内部]

 

 

 

 

 3月31日以降、アークバートⅡの保全や清掃はすでに完了し、ベルカ戦争介入作戦の話し合いも何度か行われ、作戦プランは完成に近づいていた。

 そして今回、ハーバード基地司令官がアークバートⅡを詳しく見たいとのことで、ハーバード機長に招待された。

 ただし、ウォードック隊員が護衛として付き添っている。

 実はウォードック隊員もアークバートⅡや未来のことについて興味があり、ハーバード基地司令官の護衛も兼ねて付き添ってきたのである。

 ハーバード機長はマクドネル大尉と共にハーバード基地司令官らを引率し、廊下を歩き案内していた。

「しかし、デカイな。外観だけじゃなく、こんなに広いとは…、いやはやいやはや…。」

 ハーバード基地司令官は迷宮のような廊下を歩きながら呟いていた。

「艦載機や船舶を格納する都合上、この時代のアークバートより約1.5倍の大きさを誇る。さらにエンジンやレーザーユニットの小型化によって内部が広くなって、部屋数が増えたり燃料格納スペースが増えたことによって航続距離も伸びた。まぁ、航続距離はエンジンの燃費効率の向上が大きく影響しているがな。」

 ハーバード機長はざっと説明する。

「こりゃあ、空飛ぶ要塞だな。レーザーなんて物騒なものつけて、戦闘機も出せるってビックリだぜ!そんでもって中はまるで迷路だ。ドアもなんだ?全部自動ドアじゃねえか!」

 バートレット中尉が大声を挙げて驚いていた。

「ブービー、驚いて声が大きくなるのはわかるが少しは静かにしろ!」

 ジョンソン大尉がバートレット中尉に注意する。

「航空機が要塞の役割を果たすのか。未来だとこのアークバートのような空中要塞が当たり前のように空を飛んでいるのですか?」

 ベイカー中尉がハーバード機長に質問する。

「当たり前と言ったら嘘になるが、いくつか開発されて空を飛んだのは事実だ。技術大国はベルカ戦争以後アークバートとは目的が違えど空中要塞を開発した。某国では空中要塞を中心に巨大航空機による空中艦隊を編成したり、空中要塞に光学迷彩や広範囲戦術弾道ミサイルを搭載したものも開発された。しかし、ほとんどは戦争のために造られた。空中要塞はその戦争の戦闘機パイロット達に撃墜されている。このアークバートⅡも空中要塞ではなく宇宙開発や平和利用のため開発されたが、結局は戦争の代物になってしまった…。」

 ハーバード機長は歩きながら質問に答える。

「それは悲しいことですね。もしかすると巨大航空機は戦争の道具になってしまう運命なのかもしれませんね。」

 ハーバード機長の話を聞いてベイカー中尉は答える。

 

 

 話しながら歩いていると、艦載機格納庫に到着した。格納庫にはアームで固定されているR-100とADF-02があった。

「見たことのない戦闘機だ。赤いのはカクカクしてるが、白いのは滑らかな形状をしているな。胴体をアームで固定しているのか。だからランディングギアを出さずに格納しているのか。それに機首にキャノピーが見当たらない。どういうことだ?」

 スヴェンソン中尉は未来の戦闘機を見て驚いていた。

「コクピットにはエアロコフィンシステムというものを採用しています。このシステムを搭載した機体はエアロコフィン機とも呼ばれています。簡単に説明すれば、従来のキャノピーが存在するところに多数の高解像度の小型カメラを設置、カメラからリアルタイムでモニタリングしています。エアロコフィン内部は一面モニターで埋め尽くされていて従来のキャノピーと同じ感覚で扱えるほか、モニターはタッチパネル式で視界を暗視モードや熱探知モードに切り替えることもでき、HMDの機能もモニターそのものに搭載し、様々な任務に対応できるシステムです。ちなみに、このシステムを採用したことにより、コクピットが分厚い棺桶型になったため耐G性に優れ、コクピットに被弾してもパイロットに影響が出にくいほか、ベイルアウト時は棺桶型のコクピットがそのまま射出するため身体を外にさらけ出すことなくベイルアウトできます。」

 マクドネル大尉はエアロコフィンについて詳しく説明した。

「すごいシステムなんですね。未来だとほとんどの戦闘機にこのシステムが付いているのですか?」

 スヴェンソン中尉はエアロコフィンに関心した上で質問する。

「基本的には最新鋭機に付けられています。ほとんどというわけではありませんが、僕たちのいた未来が平和だった頃は約6割がエアロコフィン機でした。」

 マクドネル大尉が答える。スヴェンソン中尉は納得すると同時にある疑問が生まれた。

「未来が平和だった頃ってことは未来で何かあったのですか?」

 スヴェンソン中尉が鋭い質問をする。

「それは…。機長、言うべきでしょうか?」

 マクドネル大尉は答えるべきか躊躇った。前に定年に近いハーバード基地司令官に未来の事を話したが、まだ若い世代の人間に話すべきか迷ったからである。

「スヴェンソン中尉、それは聞かないでおこう。俺も未来に興味はあるが、俺たちの未来を知ったところで辛くなるだけだ。隊員が失礼な質問をしてすまなかった。」

 ジョンソン大尉がマクドネル大尉に謝る。

「いえいえ、気にしないでください。僕が少し喋りすぎたところもありますので。」

 マクドネル大尉は気を遣って答える。

「それじゃあ、そろそろ次のところに行こう。」

 ハーバード機長が指示を出すと、彼らはハーバード機長に付いていった。機長らは格納庫を後にして次の場所へ案内しに行った。

 

 

 

 

[1995年4月2日1711時/アークバートⅡ/管制室]

 

 

 

 

 その頃、ベレゾフスキー主任らコンピュータ管理係は定期的にハッキングを行い、情勢を確認していた。

 オーシアの報告書は新たに更新されており、シーサーペント作戦のことが書かれていた。

 以下、シーサーペント作戦の報告書の内容である。

 

 

 シーサーペント作戦

【シーサーペント作戦は無事成功、ベルカ騎士団の末裔であるベルカ空軍は噂通り強力で、我がオーシア空軍を苦戦させた。しかし、想定外だったのはベルカ艦隊が我々の予想よりも弱かったことである。そのおかげか作戦はスムーズに進んだが、あのベルカのことだから罠の可能性がある。今後慎重に作戦を進める必要がある。さらに空軍が苦戦したため、新たな増援部隊を求む。できれば増援部隊は艦隊防空戦に向いた戦闘機部隊であれば嬉しい。】

 

 

「報告書は史実通りだな。」

 ベレゾフスキー主任は呟く。

「確かこの増援部隊はこのサンド島基地にいるウォードックでしたよね?」

 同じ報告書を見ていた部下が質問する。

「ああ、そうだ。そろそろサンド島に動きがあるんじゃないか?それはさておき、ベルカはどうなってるんだろうな。」

 事前にベルカのコンピュータにハッキングをしたページを開いた。そこにはシーサーペント作戦の報告書とクロスボウ作戦の報告書が書かれていた。

 ベルカではシーサーペント作戦はOperation Merman(マーマン作戦)、クロスボウ作戦はOperation Schachmatt(チェックメイト作戦)と呼ばれていた。

 以下、それぞれの報告書である。

 

 

 Operation Merman

【Operation Meerjungfrau(マーメイド作戦)準備のためのオーシア軍の足止めに成功した。偉大なる我が祖国のために犠牲になったベルカ艦隊には哀悼の意を表する。この作戦は足止めと同時にわざとオーシア軍に隙を与えるための作戦であり、おそらくオーシア軍はベルカ海軍はそこまで脅威の対象ではないと思い込んでいるはずである。Operation Meerjungfrauで決着をつける下準備はできたと言えよう。オーシアはOperation Meerjungfrauのことは知らない。たとえオーシアが衛星を使って偵察しようにも、ベルカ本国及びベルカ占領地は対衛星用のジャミングを出しているので、覗かれる心配はない。】

 

 

 この報告書から、ベルカの罠であることがわかる。この作戦は言わば囮作戦であり、オーシア軍に『ベルカ海軍は弱い』という印象を与えることにも成功した。

 プライドの高いベルカ人なら許されざる行為だが、そもそもプライドの高いベルカ人はベルカ騎士団の末裔が中心で、その末裔は空軍に集中している。そのためベルカ空軍は本気で正面から戦い、オーシア空軍を苦戦させたのである。

 逆にベルカ海軍は末裔は少なく、ありとあらゆる戦略を使って攻略する戦略家が多い。ベルカ艦隊がそこまで脅威でなかったのも作戦の内なのである。

 しかし、ベルカ軍はここ最近戦況が有利であるため油断している節も伺える。このことに関してはOperation Schachmattの報告書に書かれていた。

 

 

 Operation Schachmatt

【ヴァレー空軍基地爆撃作戦は失敗に終わった。ウスティオが傭兵を雇ったとは聞いていたが、これほどとは思えなかった。しかも生還者なしで全滅とは傭兵の中には相当の手練れがいるようだ。これは戦況が有利に進んでいたが故の気の緩みによって引き起こされたものである。以後、戦場に散らばるベルカ軍には改めて気を引き締めるよう伝達しなければならない。】

 

 

「これも史実通りっと。このまま史実通りなら、俺たちのファーストアタックはやりやすくなるな。ん?これは…」

 ベレゾフスキー主任は呟きながら両作戦の撃墜記録を見ていると、史実データと食い違いを見つけた。

 それはOperation Mermanにて、墜落者リストが史実と比べて少なかったのである。

(どういうことだ?シーサーペント作戦のページも見よう。)

 改めてシーサーペント作戦のページを開き、撃墜記録を見るとやはり少なかった。そして作戦参加した部隊リストを見ると、クローバー隊の名前があった。

(クローバー隊、たしかタイムスリップしてはじめに遭遇した部隊か。俺たちの偵察に向かってから何かあったんだな。それがまさか撃墜記録に影響が出るとは…。なるほど、これがマクドネル大尉が言っていたバタフライなんたらか。)

 ベレゾフスキー主任は険しい表情になる。

「どうしたんだ?険しい表情して?」

 同僚が心配になって声をかける。

「シーサーペント作戦の撃墜記録が史実より少ないんだ。ってことは本来墜落して負傷または戦死する奴が生きてるってことになる。これは俺たちの作戦に影響が出ないか?」

「ん〜、微妙なところじゃないか。俺たちの作戦区域はベルカ国内だろ。最前線の兵士が生きた死んだくらいで変わるものかなぁ。一応機長やこういうことに詳しいマクドネル大尉に聞いてみたほうがいいだろう。」

 同僚は機長やマクドネル大尉に相談することを勧めた。

「そうだな。機長は電話に出れない状況だ。メールしよう。」

 ベレゾフスキー主任はN.Phoneを取り出し、メールを打った。




最後まで読んでいただきありがとうございます。
本当はひとまとめにして投稿するつもりだったのですが、文字数がかなりの量になったので分けて投稿します。
後編は半分以上書き留めができているので早いうちに投稿します。
これからもよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

機内の案内 後編

[1995年4月2日1723時/アークバートⅡ/機長室]

 

 

 

 

 一方、一通り案内が終わった機長らは雑談をしていた。

 食堂ではウォードック隊員たちはアルタイル隊隊員と、機長室ではハーバード親子が自分たちの活動や昔話など、色々長話をしていた。

「いきなりぶっ飛んだ作戦だなぁ。まぁ、確かにベルカの反撃手段を奪ういい作戦だ。」

 ハーバード基地司令官はハーバード機長の立案した作戦内容を聞き感心していた。

「この作戦はクルーの主要メンバーと何度も話し合いを重ねて考えた作戦だ。まだいくらか修正箇所は残っている。なかなか難しいところだよ。」

 ハーバード機長は作戦の立案にかなり苦労した様子だ。

「ところで物資とかはどうなったんだ?」

 ハーバード機長が尋ねる。

「ああ、友人からの情報だと積み込み作業は完了したそうだ。秘密裏に進めるから今日の深夜にセントヒューレット軍港を出るらしい。あと4日くらいはかかるんじゃないかな。」

「そうか、それは良かった。戻ったら皆んなに知らせ…ん、メールか?」

 ハーバード機長は胸ポケットからN.Phoneを取り出す。

「その薄っぺらい四角い電話にはメールもついてるのか?便利だなぁ。」

「それだけじゃないぜ。カメラで撮影、インターネットに接続してサイトの閲覧やテレビ電話、さらにはこうやって立体映像を出すこともできる。」

 ハーバード機長は実演する。

「ほっほぉ〜、こりゃ凄い!未来の電話はここまで進化するのか!」

 ハーバード基地司令官はN.Phoneに驚いていた。

 ハーバード機長は立体出力された状態でメールを開いた。

「ふむ、少し面倒なことになったな。」

「どうしたんだ?怖い顔して。撃墜リストに誤差が出たとか聞いてあるが?」

「私たちがやってきたことによる史実とのズレが表面化してきたようだ。作戦に影響が出なければいいが…。」

 ハーバード機長は顎に手を添える。

「その様子だと、私たちは帰った方がいいかもな。」

 ハーバード基地司令官は息子を気遣った。

「いや、気にしないでくれ。せっかく来てくれたんだから、もう少しのんびりしていって大丈夫だよ。」

「そう言うわけにはいかない。厄介な問題が発生したんだろう?だったら今はその事を優先しなさい。」

 息子の返事に対し、ハーバード基地司令官は問題を優先するよう答える。

「すまないな親父。それじゃあ、ウォードック隊員たちを呼んで船舶格納庫に向かおう。」

 ハーバード機長らは機長室を出て食堂へ向かった。

 

 

 

 

[1995年4月2日1724時/アークバートⅡ/食堂]

 

 

 

 

 その頃、食堂ではウォードック隊員4人とアルタイル隊員3人が戦闘機パイロットの経験談を語っていた。

「俺はテロリストがうじゃうじゃいる戦場でベイルアウトしてな、そこが敵地のど真ん中ってわけよ。俺は手持ちの拳銃と座席に付けられていたアサルトライフルを手に敵に見つからないように隠れながら敵地の脱出を計ったんだよ。途中で敵に見つかって怪我しながらもなんとか戦線に辿り着いたんだ。あん時は死ぬかと思ったぜ。」

 ヒヤマ大尉は過去の経験談を話していた。

「ちなみにこいつは何度もこんな目にあってるんです。パイロットとしての腕は怪しいですが、強運の持ち主です。何があっても必ず帰還する男です。」

 アレンスキー大尉がヒヤマ大尉について付け加える。

「隊長!一言余計なことが多いぜ!」

 ヒヤマ大尉がツッコむ。

「しかし、あんたスゲェんだな。何があっても必ず帰還するって惚れちまうぜ。」

 バートレット中尉がヒヤマ大尉に感心する。

「ブービー、だからと言って機体をボロボロになって帰還するなよ。確かに『機体は消耗品、パイロットが生還すれば大勝利』って教えたけど、コストがかかるんだからな。こいつは訓練でも任務でもいつも機体をボロボロに帰ってくるんです。俺としてもこれから先が心配で心配で…。」

 ジョンソン大尉がバートレット中尉についての苦労話を話す。

「大丈夫だって隊長!俺は必ず生きて帰還するって!」

 バートレット中尉はジョンソン大尉を励ます。

「ブービーがそう言ってくれると嬉しいが、くれぐれも墜ちるなよ。特に機体を少しは大切に扱うこと!」

「あいよ!」

 ジョンソン大尉は注意し、バートレット中尉が返事をする。

「どの時代も隊長務めは苦労しますね。」

 アレンスキー大尉がジョンソン大尉の苦労に共感する。

 楽しく話していると、食堂の自動ドアが開きハーバード親子が現れる。

「ウォードック諸君、そろそろ帰るぞ。」

「アルタイル諸君も付いてきてくれ。見送りに行こう。」

 ハーバード親子が指示を出すと、ウォードック・アルタイル両隊員は食堂を後にし船舶格納庫へ向かった。

 

 

 

 

[1995年4月2日1730時/アークバートⅡ/船舶格納庫]

 

 

 

 

「今日は私のワガママを聞いてくれてありがとう。貴重な経験になった。」

「アルタイル隊の皆さん、パイロットとしての経験談を聞けて嬉しかったです。今後の訓練や任務にも参考にさせてもらいます。」

 ハーバード基地司令官とジョンソン大尉は今回の体験について礼を言った。

「どういたしまして。これからも元気でいてくれよ親父。」

「いえいえ、こちらこそ先輩方の話を聞けて光栄でした。これからの訓練・任務を頑張ってください。」

 ハーバード機長とアレンスキー大尉も礼を返した。

 最後は船に乗って出発するところを敬礼し見送った。

「行っちゃったな。もう少し話聞きたかったな。」

 マクドネル大尉が呟く。

「ああ、行っちまったな。あの人が話に聞いてたラーズグリーズ育ての親、ジャック・バートレットさんなんだな。スゲェ話しやすかった。」

 ヒヤマ大尉も便乗して呟く。

 ジャック・バートレットは環太平洋戦争以後、軍には戻らず平穏な暮らしをしていたが、彼は2020年の環太平洋戦争公開以後ラーズグリーズの育ての親として名前だけ公開され広く知れ渡り、彼がラーズグリーズに教えたことは教科書に載るほどである。

 特に『機体は消耗品、パイロットが生還すれば大勝利』という教えはパイロットを尊重する教えとしてパイロット育成に一躍買った。

 ちなみにこの教えをバートレット中尉に教えたのはジョンソン大尉である。ジョンソン大尉も以前のウォードック隊隊長から教わっていることから本来はウォードックの教訓だったのである。

「さてと。マクドネル大尉、管制室に向かおう。少し厄介なことになってしまってな。」

 ハーバード機長がベレゾフスキー主任のメールについて話す。

「了解です。確かに早く解決させたほうがいいでしょう。」

 ハーバード機長とマクドネル大尉は管制室に向かった。

「タイムスリップ関係の話だろ。俺にゃサッパリわからねぇ話だよ。」

 ヒヤマ大尉は愚痴る。

「まったくだ。さて、俺たちもやることやるか。」

 アレンスキー大尉はそう言ってヒヤマ大尉と格納庫を出た。

 

 

 

 

[1995年4月2日1737時/アークバートⅡ/管制室]

 

 

 

 

 ベレゾフスキー主任が改めてハーバード機長とマクドネル大尉に詳しく問題点を説明した。

「なるほど、確かに厄介なことですね。本来は墜落する運命の人が生きているとなれば、史実より戦力が大きくなることは避けられないでしょう。ましてや元々実力の高いベルカ空軍ならなおさらでしょう。Z.O.E.が操縦するADF-02ならともかく、人間が操縦するR-100は大軍戦や長期戦に持ち込まれたら厄介です。今回のバタフライエフェクトの影響はこれからもっと大きくなるはずです。」

 マクドネル大尉は意見を述べる。

「ちなみに、ベルカ空軍生還者について調べたのか?」

 ハーバード機長がベレゾフスキー主任に問いかける。

「生還者についてはこの時代のベルカ空軍データベースの情報と史実のデータを照らし合わせて調べました。ほとんどは長らくベルカ海軍防空任務に就いていますが、一部は戦力増強のためベルカ内陸から派遣された部隊がいます。流れからしてしばらくは内陸に戻らなそうですが、どうでしょうか?」

 ベレゾフスキー主任が生還者について説明する。

「我々の作戦に影響はない可能性が高いかもしれないな。しかし、何が起こるかわからない。派遣された部隊以外にも何らかの事情で内陸に派遣される部隊もいるだろうな。それを考慮して少し作戦を修正しよう。物資・燃料は親j、いやサンド島基地司令官から4月7日に到着するだろうと言われた。作戦は到着のズレや準備があることを見込んで4月10日に実行しようと思う。ベレゾフスキー主任は史実の4月10日のベルカ空軍の動きやイエリング鉱山とアヴァロンダムの情報について調べてくれ。」

 ハーバード機長はベレゾフスキー主任に任務を与えた。

「了解しました!徹底的に調べます。」

 ベレゾフスキー主任は同僚や部下に指示を出しコンピュータにのめり込んだ。

「さて、私たちも作戦について考えよう。」

 ハーバード機長はそう言ってマクドネル大尉と部屋を後にした。

 

 

 

 

[1995年4月3日0103時/セントヒューレット軍港/貨物船ドック]

 

 

 

 

 セントヒューレット軍港はオーシア海軍が所有する軍港が存在し、さらに大きな工業地帯が日夜問わずフル稼働している。

 深夜のセントヒューレット軍港は工業地帯がライトアップされ、工業地帯マニアからは人気の名所となっている。

 そのセントヒューレット軍港の中に『西オーシア海上運輸株式会社』という海上運輸会社が存在する。セレス海側の大手海上運輸会社だ。

 主に石油燃料や貨物の運輸が中心で、外国の運輸以外にもサンド島の燃料供給を担当している。

 立地的にサンド島から海上による燃料供給や物資供給ができるのはセントヒューレット軍港が一番近い。さらにサンド島を担当しているため、この会社はオーシア空軍との繋がりも深い。

 サンド島の燃料供給はこの会社のタンカーによって運搬するが、物資供給は基本オーシア空軍から輸送機で運搬することが多い。

 今回は秘密裏に事を進めるため、燃料・物資共にタンカーで深夜に運搬することになったのである。

 貨物ドックには今回2隻のタンカーを運航する担当者40人と社長が集まって出港前のブリーフィングをしていた。

「いつも通り、サンド島に石油タンカーで燃料を運搬するが、今回は貨物タンカーを使って物資の運搬も行う。それと理由はよくわからないが、オーシア空軍のお偉いさんから今回の運搬は秘密裏に行ってほしいと言われた。サンド島に何かあるみたいだが、それは軍の機密らしいから見たとしても口外しないでほしい。口外すれば処罰の対象になるし、最悪会社が潰れる恐れがある。慎重に行ってくれ。質問のある者は?」

 質問は特になく、解散して担当者は担当のタンカーに乗った。

「今から出港すれば、4日でサンド島に到着する。貨物タンカーは石油タンカーの後に付いてくれ。」

 石油タンカーの船長は貨物タンカーの船長に無線で連絡する。

 貨物ドックから2隻のタンカーが出港する。軍港付近は深夜でも輝き、工業地帯は美しくライトアップされ、金属工場は赤く染まっている。

 セントヒューレット軍港の象徴であるセントヒューレット大橋の下をくぐると、夜の黒いセレス海が広がり空には星が輝いている。

 月齢は上弦の三日月のため、月はなく周りは星の光以外宇宙空間のように真っ暗である。

 2隻のタンカーは闇夜の中、サンド島へと向かって行った。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。
用語集を更新しました。

用語集(2030年 兵器編)
《N.Phone》
《エアロコフィンシステム》
《Z.O.E.(ベルカ戦争後)》

用語集(1995年 兵器編)
《コフィンシステム》
《Z.O.E.(ベルカ戦争以前)》

以上を更新しました。
これからも応援よろしくお願いします。




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

平和を望む者達

[1995年4月2日2000時/サンド島基地/作戦会議室]

 

 

 

 

「みんな飯は食べたな。では、話を聞いてくれ。」

 ハーバード基地司令官は壇上に立って、ウォードック隊員に国防空軍本部からの通達を伝える。

 内容は、シーサーペント作戦でオーシア空軍の前線戦力に損害が出たため、その補充の話だった。しかも、艦隊防衛戦に特化した部隊が欲しいとのことだった。

 その戦闘に特化した部隊はウォードックということを、空軍本部長のスミス航空参謀は知っていたためウォードックに通達したのだった。

「なるほど。東海岸に異動というわけだな。で、どこに行けばいいのですか?」

 ジョンソン大尉がハーバード基地司令官に質問する。

「目的地はオーシア第3艦隊の空母ケストレルだ。君たちのF-14Dで空中給油を繰り返して移動してくれ。着替えなど個人的なものは基地にあるC-2艦上輸送機を使って移動する。」

 ハーバード基地司令官は目的地と移動手段を伝える。

「C-2は早めに出発する予定だ。とは言え、速度的には君たちの方が早く空母に到着するだろう。C-2は明日の0700時には出発する。君たちは明日の0900時に出発してくれ。」

 ハーバード基地司令官は出発時刻を伝える。

「了解しました。それでは、私たちは荷造りをしたいので失礼します。」

 ジョンソン大尉はそう言ってウォードック隊員と共に部屋を出た。

 

 

 

 

[1995年4月2日2010時/サンド島基地/共同部屋]

 

 

 

 

 二段ベッドと机、ロッカーがある共同部屋は2人1部屋という使い方をしている。

 この部屋はジョンソン大尉とバートレット中尉が共同で使用していた。

 なぜこの2人なのか?それにはちゃんとした理由があり、問題児であるバートレット中尉の監視をジョンソン大尉がしているためである。

「異動なんて滅多にないのに、東海岸に異動だなんてビックリだなぁ、隊長!」

 バートレット中尉が荷造りしながら喋る。

「あぁ、そうだな。だが、それほどヤバイ状況ってことだろうな。ベルカ空軍はかなりの強者と聞いたし。」

 ジョンソン大尉はバートレット中尉の話に応える。

「なぁにがベルカ空軍だ!そんな奴ら、1機ずつ俺たち4人で叩けば楽な話じゃねぇか!」

 バートレット中尉はポジティブに応える。

 ちなみに、バートレット中尉が隊長であるジョンソン大尉にタメ口なのは、別に深い意味があるわけではない。

 かつて、ジョンソン大尉はこのことを指摘したが、本人は治すつもりはないらしく、ジョンソン大尉は仕方なく大目に見ていたのだ。

「フッ、ブービーの話を聞いてると、真面目に考えるのが馬鹿らしくなってくる。お前のそういうところ、悪くないぜ。」

 ジョンソン大尉は少しホッとした気持ちになった。

「へっへっへ〜、そんな褒めないでくれよ〜。」

 バートレット中尉は喜ぶ。

「馬鹿野郎、褒めたわけじゃないぞ。あと、あっちについて問題行動起こすなよ。前なんか、喧嘩沙汰になって大変だったんだからな。」

 ジョンソン大尉はバートレット中尉に注意する。

「あいよ、わかってるって!」

 バートレット中尉は元気に応える。

 

 

「ところで隊長、未来人の連中と色々話をして思ったことなんだけどよ、あいつら信用してもいい感じだと思わねぇか?」

 バートレット中尉がランニングを畳んでいるジョンソン大尉に未来人について話す。

「俺もそう思う。彼らと話して悪い奴らとは感じなかった。未来で何があったか知らないが、未来を変えたいという意思が伝わった。」

 ジョンソン大尉は畳んだランニングをバックに入れ、バートレット中尉の顔を見て再び話す。

「しかし、彼らに逆らわない方がいいだろう。オーシア人とユーク人の混成組織のようだが、俺たちが敵になっても容赦しないだろうな。」

「なんでそう思うんだよ?いい奴らばっかじゃねえか。」

 バートレット中尉はジョンソン大尉の発言に疑問に思っているようだ。

「未来を変えるためには、たとえ祖国だとしても手を出すってことさ。今のオーシア軍部はタカ派の連中ばかりだ。平和を乱す政治家どもが多いってことだよ。」

 ジョンソン大尉が理由を話す。

「なるほどな…。そりゃあ、納得いくぜ。でもよ、あいつらがクソみてぇな政治家どもに手を出してくれりゃあ、俺は嬉しいぜ。好戦的な考えは嫌いなんだ。俺だったら、軍部の命令なんか無視して、未来人に加勢するぜ。」

 バートレット中尉は納得しつつも自分の意見を話す。

「なかなか凄いことを言うな。でも、今は軍部の命令に嫌でも従わないといけない。あくまで今はな。」

 ジョンソン大尉は表面上は軍に忠誠を尽くしている。

 しかし本心は今の軍のやり方、特に兵士は使い捨ての道具、戦争から利益を求めようとする考えに反対している。

 しかし反旗を起こすことはできないため、今はこうしているのだ。

「隊長が軍のやり方に反対してるのはわかってるぜ。でも、未来人がいるんだからよ、いっそのこと仲間になりゃあいいんじゃねえか?」

「馬鹿かお前は!彼らはオーシア軍部に反旗を起こすという意思があるかどうかがわからん。ましてやオーシア軍部に反旗を起こすキッカケがない。今は気が熟すのを待つしかないんだ。」

 ジョンソン大尉はバートレット中尉に注意しつつ、反旗を起こすことについて慎重に考えていることを話す。

「隊長がそう言うんなら、そうなんだろうな。俺は考えるよりも行動する方がいいと思うけどな。」

 バートレット中尉は若干不機嫌になる。

「明日は早い。シャワーに入って今日は休むぞ。」

 ジョンソン大尉はそう言って、シャワールームへ向かった。

 

 

 

 

[1995年4月3日0910時/アークバードⅡ/作戦会議室]

 

 

 

 

「サンド島からトムキャットが飛んだな。ベレゾフスキー主任の言ってた通り、今は史実通りか。」

 ハーバード機長は作戦会議室にあるモニターから離陸するウォードックのF-14Dを見ていた。

「マイクの準備ができました。録音はいつでもできます。」

 クルーが録音機材の準備ができたことを報告する。

「ご苦労。では始めようか。」

 アークバードⅡがベルカ戦争に介入することは、はじめから決めていたことだった。

 しかし、彼らの行動を世界に示すか否かは当初どっちつかずだった。

 話し合いの結果、世界に意思を表明することによって、ベルカ戦争に対する抑止力になるのではということになり、表明することにした。

 今日は、その表明内容の録音をする予定だ。

 録音音声は、もちろん何者かわからないようにするため、音声を変えて編集するつもりである。

 ハーバード機長はマイクを取り、要点だけ書かれた紙を持ちながら、演説を始めた。

 

 

 

 

 我々は『愛国軍』。

 

 

 その名の通り、国を愛する者達で編成された数十年後の未来からやってきた部隊だ。

 

 

 先ほどベルカに攻撃を行ったのは我々だ。

 

 

 ベルカは我々の強さを思い知ったと思うが、ベルカのみならず、連合軍に対抗できる武力を保有している。

 

 

 これ以上、戦争行為を長期化するのであれば、我々はベルカ及び連合軍に武力介入を行う。

 

 

 我々の目的は、悲惨な未来を繰り返さないこと。

 

 

 そのために、まずはベルカ戦争の早期終結のために行動する。

 

 

 もう一度いうが戦争行為の長期化、特にベルカ侵略などと言った行為を行おうとすれば、我々はベルカのみならず、連合軍にも武力介入を行う。

 

 

 オーシア・ユークトバニアの政治家、軍人どもが考えていることは我々はわかっているぞ。

 

 

 次に小惑星ユリシーズの完全破壊だ。

 

 

 ユリシーズは様々な形で未来に災厄をもたらした。

 

 

 それを阻止するためにも、今は利益の為に争う時ではないのだ。

 

 

 世界は一つにならなければならない。

 

 

 明るい未来を創るか、暗い未来を創るか、そこはよく考えて、行動してほしい。

 

 

 以上で、我々『愛国軍』の声明を終わる。

 

 

 

 

 ハーバード機長の話した内容は録音され、おかしなところがないか確認のため再生された。

「お疲れ様です機長。ちゃんと録音できました。内容も特におかしな点はありません。あとで音声を編集しておきます。しかし、一度も噛まずに話すとは凄いですね。」

 クルーは一度も噛まずに話なした機長に驚く。

「なぁに、人前で話すことには慣れている。演説なんて慣れだよ。」

 ハーバード機長はクールに話しながらも嬉しい顔をしていた。




最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
就職活動も終わり、ひと段落したので投稿させていただきます。
活動報告で改めて報告しますが、長い間待たせて申し訳ありません。
これから月1回のペースを目処に投稿しようと思います。
改めてこれからもよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

到着

[1995年4月3日1512時/オーレッド湾北西部海上/空母ケストレル/甲板]

 

 

 

 

 シーサーペント作戦からオーシア第3艦隊はオーレッド湾北西部からベルカ方面に移動しつつ、オーシア陸軍の支援要請を行なっていた。

 空母ケストレルにはF-14AやF-14D、F/A-18C/D、F/A-18E/F、E/A-18G、E-2Cなどのスタンダードな艦載機をはじめ、当時の最新鋭ステルス艦載機F-35Cが艦載されていた。

 艦載機は常に哨戒を行なっているが、前の戦いで、攻撃能力を持った艦載機は半分以上失っていた。

 さらに戦死者も出たため、パイロットが不足していた。

 現在ケストレルに艦載機されている機体は以下の通りである。

 

 

・F-14A…2機

・F-14D…1機

・F/A-18C…2機

・F/A-18D…2機

・F/A-18E…1機

・F/A-18F…1機

・E/A-18G…5機

・F-35C…1機

・E-2C…3機

・EA-6B…6機

・SH-60…3機

・HH-9B…3機

 

 

《ウォードックリーダー、ライトニングより空母ケストレルへ。空軍本部の命令通り第3艦隊の支援に来た。着艦を求む。》

「こちら空母ケストレル。着艦を許可する。遠方からの航空支援に感謝する。」

 ウォードック隊の4機のF-14Dがランディングギアを展開し着艦態勢に入る。

 先頭のF-14Dが減速し高度を下げつつケストレルに接近する。

 主脚がケストレル甲板に接触したと同時に着艦フックがワイヤーに引っかかる。

 そのまま前進しつつ、前脚が甲板に接触し減速、そして停止する。

 ケストレルのクルーに誘導され機体を移動し、続けて2番機が着艦。

 同じ流れで残りの機体が全機着艦に成功した。

 

 

「ふう、久々の空母だ。甲板の海風は気持ちいいなぁ〜。」

 機体から降りたベイカー中尉が呟く。

「でもよ、これからここの艦長にこき使われるだろうぜ。」

 スヴェンソン中尉が応える。

「わかるぜ!大体艦長ってのは人はいいが、人使い荒いからな!はっはっはっはっ!」

 バートレット中尉が大声で話す。

「馬鹿!失礼なことを大声で話すな!お前らもお喋りは後にして艦長に挨拶しに行くぞ。」

 ジョンソン大尉は引き連れている隊員に注意して、ケストレルの中に入って行った。

 

 

 

 

[1995年4月3日1512時/オーレッド湾北西部海上/空母ケストレル/艦長室]

 

 

 

 

 艦長室に頭の禿げた黒髭の男が、書類に印を押していた。

 この男こそ、空母ケストレル艦長のダグラス・ウィーカーである。

 彼は急遽、公試運転のケストレルの艦長を任せられた。

 しかし、かつては別の空母を始め、イージス艦など様々な軍用艦の艦長を経験した素晴らしい経歴を持つ人物である。

 そのためケストレルの艦長になってからも、上手く統率が取れていた。

 

 

 ドアからノックが鳴る。

「入れ。」

 ウィーカー艦長が入室許可を出すとドアが開き、ウォードック隊員4人が入ってきた。

 彼らは横一列に綺麗に整列した。

「オーシア国防空軍第108戦術戦闘飛行隊、サンド島分遣隊ウォードック、只今を持ってオーシア第3艦隊の艦隊防衛任務に着任します。」

 ジョンソン大尉が敬礼をしながらハキハキとした口調で着任宣言をする。

「はるばる遠方からご苦労。よく来てくれた。君たちの艦隊防衛能力の高さは聞いている。これからよろしく頼む。」

 ウィーカー艦長は労いの挨拶をする。

「聞いての通り、ベルカ空軍は非常に強力だ。搭乗機体、パイロットセンス、これらはオーシア空軍以上の戦闘能力だ。先の戦いではこの差で何人もが戦死した。心して任務に取り組んでほしい。」

 ウィーカー艦長はベルカ空軍の脅威を伝えた。

「了解しました。ベルカ空軍の恐ろしさは承知の上です。我々はその覚悟でケストレルへ参りました。必ずや、オーシア第3艦隊を守り抜きます!」

 ジョンソン大尉はウォードック隊の意思を伝えた。

「頼もしいな。期待してるぞ。今後の作戦は今のところは未定だが、近々上から連絡が来るだろう。その間はゆっくり羽を伸ばしてくれ。私からは以上だ。退室してよし。」

 ウィーカー艦長がそういうと、ウォードック隊員は一礼して部屋を出た。

 

 

 

 

[1995年4月3日1547時/オーレッド湾北西部海上/空母ケストレル/休憩室]

 

 

 

 

 ジョンソン大尉は休憩室の窓から水平線を眺めていた。

「今日は薄っすらと曇っていますね。海もやや荒れていますし。」

 ベイカー中尉が話しかける。

「ああ、そうだな。予報だと明日からしばらく天気が悪いらしい。作戦に影響が出なければいいが…。」

 ジョンソン大尉は水平線を眺めながら応える。

「僕は正直不安です。ベルカ空軍がどれほどの強さなのか想像できません。僕も覚悟の上で参加しましたが怖いです。」

 ベイカー中尉は自分が不安に思っていることを話す。

「俺もそうだよ。確かに怖いさ。でもな、みんなで助け合えばいいさ。俺たちは個性豊かなチームだからな。まぁ、正直ブービーに助けられたところもあるけどな。」

 ジョンソン大尉はベイカー中尉を見て話す。

「えっ、バートレットにですか?」

 ベイカー中尉は驚く。

「あいつは馬鹿だ。でも、裏を返せばポジティブなんだ。俺がベルカ空軍のことで不安になった時に、ベルカ空軍なんざボコボコにすればいいって言った。あいつのおかげで固く考えてた俺の気持ちが和らいださ。」

 ジョンソン大尉は話しながらバートレット中尉の方を向く。

 バートレット中尉はスヴェンソン中尉と談笑しているようだ。

「まっ、俺も人のことは言えんが、要するに固くなんなってことだよ。」

 ジョンソン大尉は笑顔で応える。

「ありがとうございます!これからのことを前向きに考えたいと思います。あっ、あれはC-2ですね。着艦態勢に入ったみたいです。」

 ベイカー中尉が礼を言った時、C-2が着艦態勢に入った様子が窓から見えていた。

「わかった。ようし、C-2が到着した。荷物を取りに行くぞ。」

 ジョンソン大尉が隊員に伝えると、全員空母甲板に向かって行った。

 

 

 

 

[1995年4月7日1921時/サンド島近海/アークバードⅡ/物資搬入口]

 

 

 

 

 サンド島からウォードックが飛び立ってから4日後、セントヒューレット軍港から出港したタンカーが到着した。

 セントヒューレット軍港から出港したのは2隻で、うち1隻はサンド島の物資を積んだタンカーのため、サンド島に向かった。

 アークバードⅡの物資を積んだタンカーは、ハーバード機長の無線指示によって、指定のポイントに停泊し、積み下ろし作業が始まっていた。

「こんな夜遅くにご苦労様です。おかげで助かりました。物資と燃料の輸送ありがとうございます。」

 ハーバード機長はタンカーの艦長にお礼の挨拶をした。

「いえいえ、どういたしまして。あと、輸送した物資のリスト用紙です。問題がなければその紙はあげますので、大切に保管してください。秘密裏の輸送のため、我々が持っていると要らぬ証拠になってしまいますので。」

 ハーバード機長は用紙の内容を見た。

 以下、輸送した物資リストである。(物資の具体的な量は省略しています。)

 

 

・ジェット燃料(アークバードⅡ+艦載機)…約4週間分

・ロケット燃料…約2週間分

・生活用水…約1ヶ月分

・食料…約1ヶ月分

・その他生活必需品…約1ヶ月分

・AIM-9 サイドワインダー(予備)…8発

・AGM-65 マーベリック(予備)…8発

・AIM-120D AMRAAM(予備)…16発

・20mm口径弾(予備)…800発弾帯×8本

・その他アークバードⅡ、艦載機整備機材(予備)

 

 

「ふむ、確かに希望した物資を受け取りました。」

 ハーバード機長は用紙を折りたたんで胸ポケットに入れた。

「燃料は今の積み下ろし作業が終了次第、タンカーを移動させて作業させて頂きます。どこに移動すればよろしいでしょうか?」

 タンカーの艦長はハーバード機長に尋ねる。

「翼の中と一部胴体が燃料タンクになっています。アークバードⅡの側面に給油口があるので、整備士に案内させます。給油はタンカーから直接できるように設計されていますので、整備士の指示に従ってください。」

 ハーバード機長はN.PhoneでアークバードⅡのモデルを立体表示し説明した。

「わかりました。しかし、その謎の端末といい、このアークバードに似た機体といい、あなたたちは何者ですか?」

 タンカーの艦長はここに来てから疑問に思っていたことをぶつける。

「信じられないことかもしれませんが、何らかの現象により未来から今の時代に漂流してしまったのです。何故こんな事になったのか、よくわかりません。しかし、私たちはこの時代でやるべき事を見つけました。」

 ハーバード機長は質問に答えた。

「未来人…なのですか?その…やるべき事とは?」

 タンカーの艦長は彼らが未来から来た存在である事に動揺していた。

「まぁ、簡単に言えば未来を変えると言ったところでしょうが、詳しくは言えません。恐らく後々わかるかと。」

 ハーバード機長は大雑把に答えた。

「は…はぁ。と、とりあえず、私はタンカーに戻ります。」

 タンカーの艦長は冷静になるため、ひとりタンカーの船橋に向かった。

 

 

 

 

[1995年4月7日2301時/アークバードⅡ/作戦会議室]

 

 

 

 

 物資・燃料の補給は無事完了し、タンカーも何事もなく帰って行った。

 その後、今後の予定の説明のためクルー全員を作戦会議室に集めた。

「皆の協力のおかげで無事に補給作業は終了した。ありがとう。」

 ハーバード機長は初めに礼を述べた。

「さて、今後の予定だが、何回か話している通り介入作戦は予定通り4月10日に行う。」

 ブリーフィングシステムGASAが内蔵されている円卓が起動する。

「4月9日の2300時にサンド島近海から大気圏を離脱し、2350時にベルカ防空システムにハッキングを仕掛け、防空網を麻痺させる。」

 円卓の立体映像に地球と大気圏を離脱するアークバードⅡのモデルが映る。

「その後は4月10日0000時に作戦を開始。エクスキャリバーにレーザー攻撃を行った後、大気圏に突入しベルカ領空内に侵入。艦載機を射出し、イエリング鉱山とアヴァロンダムにある核貯蔵施設の核搬入口を破壊。核を完全に封印する。また、イエリング鉱山で組み立て作業中のXB-Oも破壊する。」

 アークバードⅡのモデルはレーザーのエフェクトを出しエクスキャリバーのモデルを破壊。大気圏に突入し、艦載機を示した矢印が分散する。

「その後は艦載機を回収し大気圏を離脱。事前に録画した声明をマスコミにリークし、我々は北極付近で大気圏に突入する。その後は光学迷彩を作動させ着水し、世界の様子を伺う。」

 アークバードⅡのモデルは大気圏を離脱し、北極付近で大気圏に突入する。

「当日になったらまた同じ事を話すが、とりあえず頭の中によく焼き付けてほしい。何か質問はあるか?」

 ハーバード機長はクルー全員に尋ねる。

 するとマクドネル大尉が手を挙げ返事をした。

「作戦とは関係ない質問ですが、タンカーの船員たち結構いましたし、不思議そうな目で見ていましたが、彼らは僕たちが行動する前に情報をバラさないでしょうか。」

 マクドネル大尉は不安そうにハーバード機長に質問する。

「大丈夫だと信じるしかないさ。サンド島基地司令官の友人はオーシア国防空軍の航空参謀だ。かつて私も会ったことはあるが、あの人の元ならそういう事をさせないような措置を執るだろう。」

「それは初耳でした。この時代ですからスミス航空参謀の事ですよね。優れた人格者だと聞いています。確かに安心できますね。」

 ハーバード機長の答えにマクドネル大尉は安心したようだ。

「私としたことが皆に言い忘れていたな。すまない。極秘にだがオーシア国防空軍の航空参謀が味方に付いている。あの人は裏切ることはないし、信用できる人だ。今回の件はその航空参謀の管轄下にあるから安心してほしい。」

 ハーバード機長はスミス航空参謀が味方についていること、そして信頼できる人である事を話した。

 他のクルーもとりあえず安心した様子だった。

「他に質問がなければ解散するが…。誰も居なさそうだな。今日は皆ご苦労様。ゆっくり休んでくれ。解散。」

 ハーバード機長は解散の指示を出した。

 作戦会議室からクルーが出て行き、最後に残ったハーバード機長は円卓の電源を落とし、電気を消して部屋を出て行った。

 騒がしかった作戦会議室は夜の沈黙につつまれた。

 




最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
3ヶ月も期間を空けて申し訳ありませんでした。
以後気をつけます。


さて、今回はシナリオの進行速度を少し上げてみました。そのため、細かなところは前と比較して省略しています。特に問題がなければ次回もこのシナリオペースで執筆したいと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む



[1995年4月9日1507時/ベルカ公国占領地/ハイエルラーク空軍基地/作戦会議室]

 

 

 

 

 ハイエルラーク空軍基地は元はオーシアの空軍基地で今はベルカ軍によって西部戦線の最前基地になっている。

 しかし、この地はベルカ連邦時代はベルカのものであり、元ベルカ人の多くが住んでいる。

 ハイエルラーク空軍基地はベルカ連邦時代に当時のベルカ軍が建設したものである。ベルカ軍にとっては、解体されてオーシアに奪われた土地を奪還したに過ぎないのだ。

 

 

 ハイエルラーク空軍基地にベルカの戦闘機隊が着陸態勢に入る。FB-22、S-32、MiG-1.44、F-15 ACTIVEに紛れて場違いなMiG-21bisが一緒にいた。

 この部隊の機体は白を基調とした色に灰色の斑点が入った迷彩が施されているため、ヴァイス(ベルカ語で白を意味する)隊と呼ばれている。

 ヴァイス隊のMiG-21bisはベルカの最新技術による性能向上のほか、パイロットの要望で最新鋭機の機動性についていけるように装甲を犠牲にして軽量化が図られている。

 しかし、驚くのはこの機体のパイロットである。

 そのパイロットは『凶鳥フッケバイン』の呼び名で恐れられていたベルカのエースパイロット、ウォルフガング・ブフナー大佐である。パイロットセンスだけでなく、指揮能力も高く、彼が戦場に赴けば戦況が大きく変わるほどである。その功績は他の国にも知れ渡るほどである。ベルカの貴族ブフナー家の長男であり、しっかりとした教育を受けたため良き人格者である。そのためベルカの若手パイロットからは憧れ、そして慕われている。

 後にV1核ミサイルによるベルカ都市部に向けた攻撃命令に猛反発し、ベルカ空軍の追撃を受け、B7Rで墜落しバートレット中尉と出会う。バートレット中尉は彼を自分の部隊の編隊員と偽って保護し、亡命の手助けをする。そして彼はオーシア国内でピーター・N・ビーグルと名乗り、未来のウォードック隊員たちから『おやじさん』と呼ばれ慕われるのである。

 

 

 着陸した後、パイロット達はデブリーフィングのため作戦会議室に集合する。

「任務ご苦労様だった。とりあえず作戦は成功だ大佐。あなたのおかげで友軍の士気は上がり、オーシア軍の侵攻を防ぐことができた。これからもその調子で頼む。」

 基地司令官は作戦の成功と労いの言葉を伝える。

「お言葉ですが、基地司令官。今回の作戦は戦線の維持がやっとでした。オーシア軍は主に物量で攻めてきています。いくら個々のパイロットセンスや指揮能力が高かろうといずれは限界がきます。」

 ブフナー大佐は今日の作戦について話す。

 今回の作戦はオーシア軍に押されている部隊の援護、および突破された戦線からオーシア軍を追い出し、領地を拡大するのが任務だった。しかし、前の戦いで惨敗したオーシア軍は物量作戦に出たため、徐々に押され始めたのである。結局のところ、味方部隊の援護だけで精一杯だったため、前線を維持することしかできなかった。

 ブフナー大佐はパイロットの能力だけでは物量相手では限界がくることを察したのである。

「私たちは人間だ。いつ限界がきて、いつ戦線が崩壊してもおかしくない。新しくハイエルラークに部隊を送り込んで欲しいです。基地司令官やベルカ司令部に期待されていることは嬉しいですが、私たちがいればどうにかなるという考えは改めていただきたいです。これは、ベルカの存続に関わる問題です。」

 ブフナー大佐は今の気持ちを伝えた。

 彼の部隊の若手パイロットたちも同じ気持ちだった。

「なるほど。しかし大佐、あなたはブフナー家の末裔。ブフナー家といえばベルカ騎士団の名門のひとつ。あなたがそんなことを言ってどうする。ベルカ騎士団としての誇りはないのか!大佐が言ったことは所詮言い訳に過ぎない!ベルカ騎士団の騎士道精神を胸にして物量で攻めてくる騎士道のカケラもない卑怯なオーシアどもを叩き潰せ!次の任務は言い訳は許さん。わかったな。」

 基地司令官はブフナー大佐の言葉には耳を貸さず、ベルカの精神論を交えて叱った。

 ベルカの騎士道精神は、

 

 

・タイマンで全力で臨む。

・己を犠牲にしても敬愛するものに忠を尽くす。

・弱き者を守り、強き者には敬意を払う。

 

 

 といったものである。

 普通に見ればカッコイイことかもしれないが、戦場はこんなことは全く役に立たない、殺らなければ殺られる世界である。ベルカはその精神に縛られていたが故に、ベルカ戦争に敗北したのである。

 ブフナー大佐はベルカの最悪の末路が薄々見えていたため、思い切って話したのだが、基地司令官はそれを受け入れてくれなかった。

 ブフナー大佐は内心憤りを感じていたが、表に出さず返事をした。若手パイロット達も渋々返事をした。

 

 

 

 

[1995年4月9日1519時/ベルカ公国占領地/ハイエルラーク空軍基地/大佐の自室]

 

 

 

 

 ハイエルラーク空軍基地はベルカ北西部国境付近、ハイエルラーク町郊外の山間部にある。ハイエルラーク町の北西にはオーリック海があり、季節に関係なく北極の冷たい北風が吹く。そのため夏でも雪が溶けずに残っているほど寒い土地なのである。

 今日の外は曇り空で、粉雪が降り始めた。

 ブフナー大佐は外の景色が映っている窓を背景に椅子に座り、石油ストーブを囲んで椅子に座っている4人の隊員と話をしていた。

「ベルカ幹部の精神論にはうんざりだ。君たちの身を案じて支援要請の話をしたが、やはり話が通じる相手ではない。」

 ブフナー大佐はデブリーフィングのことを話す。

「大佐、気遣いありがとうございます。しかし、心配しないでください。俺は誇り高きベルカ人です。こんな程度でへこたれません。」

 ヴァイス隊2番機、FB-22のパイロットであるアーブラハム・コンツェン大尉が精神論を交えて話す。

「コンツェン、私が一番心配なのは君なんだ。君はベルカを愛しているが故、自らの命も投げ出そうとした。今回の任務の時もそうだろう。命はひとつしかない。家族を悲しませるな。」

 彼は今回の防衛戦で、大群で攻めてきた地上部隊相手に、対空機銃攻撃を避けるため低空で高速飛行しながらBDSP(小弾頭ディスペンサー)を散布し、見事に撃破した。しかし、戦闘区域がやや歪んだ地形で対空機銃攻撃も激しく、少しの操作ミスが命取りになる危ない戦法であった。

「大佐の言う通りだコンツェン。命は無駄にしてはいけない。精神論だけでどうにかなると思ったら大間違いだ。戦場ではそれが通用しないことはお前もわかってるだろ?」

 ヴァイス隊3番機、S-32のパイロットであるライムント・シュトルツェ大尉が注意する。

「わかってるさ、そんなこと。わかってるよ。でも俺たちはベルカに忠誠を誓ったし、ベルカの地と家族を愛している。オーシアどもに俺たちの国を明け渡すってのか?そんなわけないだろ。確かに右寄りの政治家や軍人どものやり方には腹が立つが、喧嘩を売った以上、俺たちが危険を冒してまで守る必要があるだろ?大佐、あなたはベルカを守る為に戦わないのですか?」

 コンツェン大尉は精神論が通用しないことを認めつつも反論する。

「うむ。私も生まれ故郷のベルカを愛しているし、守る為に戦っている。しかし、危険を冒して守ろうとして己自身が壊れてしまっては守るものも守れないだろう。違うか?」

 ブフナー大佐は正論を言う。

「そ、それは……。確かに大佐の言う通りです。」

 コンツェン大尉は下を向く。

「しかし大佐、基地司令官が話を聞き入れなかったことは悔しいですが、このままこの基地で何もせず軍の命令に従うのですか?」

 ヴァイス隊4番機、MiG-1.44のパイロットであるゲルティ・ハーケンベルグ大尉が今後について問う。

「うむ。たぶん基地司令官は聞き入れないだろうが、ハイエルラーク基地からの撤退を具申しようと思う。オーシア軍の状況からして、ハイエルラークが奪還されるのも時間の問題だ。その前に少しでも同志たちの犠牲を食い止める為に撤退するのが最善策だ。今回の侵略戦争は兵力的に無理がありすぎるからな。私は基地司令官が聞き入れるまで諦めるつもりはない。」

 ブフナー大佐は既に次の策を考えていた。

「流石です大佐!では早速基地司令官の元に行きましょう!」

 ヴァイス隊5番機、F-15 ACTIVEのパイロットであるヨーゼフ・ユルゲンス大尉が威勢良く立ち上がる。

「まぁ待ちなさい。今日は基地司令官に話しても無駄だと思う。あんなことを言った私とは話したくないはずだ。明日の地上部隊防衛戦前に話そうと思う。うまくいけば、基地司令官の権限で前線の部隊を撤退させることができるかもしれない。」

 ブフナー大佐はユルゲンス大尉を座らせ、明日話すことを宣言する。

 

 

 史実だと、ブフナー大佐のしつこい具申により基地司令官を納得させ前線部隊を撤退、ハイエルラーク空軍基地から基地司令官もろとも撤退した。もちろんベルカ軍幹部が黙るわけもなく、ブフナー大佐を首都ディンズマルクにあるベルカ総司令部に召喚し尋問した。

 しかし、ブフナー大佐のかつての功績と同志の犠牲を未然に防いだこと、そして今後の戦力に必要不可欠な存在のため今回の件は特別に不問とされたが、次はないということをベルカ軍幹部から脅されたのである。

 

 

 だが、その流れが変わろうとしている。

 

 

 

 

[1995年4月9日2036時/サンド島基地/来賓室]

 

 

 

 

「今まで世話になったな親父。何から何までありがとう。」

 ハーバード機長は世話になった父親であるハーバード基地司令官に挨拶しにサンド島基地に来ていた。

「いやいや、あくまで父親としてできることをしたまでだよ。作戦はいよいよ始まるということか。平和な世界を作ってきてくれ!頑張れよ!」

 ハーバード基地司令官は年上の息子に檄を送る。

「ジョン、もしかすれば会うのも最後かもしれないから聞きたいことがあるが、私はあと何年生きるんだね?」

 ハーバード基地司令官は自分の寿命について尋ねる。

「えっ、急にどうしたんだよ?」

 ハーバード機長は突然の問いに驚く。

「お前に会った時から思っていたことだ。私と初めて顔を合わせた時、まるで幽霊でも見たような顔だった。それでなんとなく感じたんだが、お前のいた未来では私は死んだのか?正直に話してくれ。」

 ハーバード基地司令官は真剣に話す。

「……ああ、その通りだよ。親父は78歳の時、2018年の5月9日に突然クモ膜下出血で亡くなった。あいにく私はアークバードⅡの機長着任式の最中で最後を見届けることができなかった。しかも、最後に会ったのが親父と些細なことで喧嘩した時で、そのことを謝る前に逝っちまった…。ごめんな…、親父…、ごめん……。」

 ハーバード機長から薄っすらと涙がこぼれる。

「全く、馬鹿息子であることは変わりないんだな。ほら、涙をふけ。」

 ハーバード基地司令官はハンカチを渡す。

「だが、おかげでこの世界の馬鹿息子の運命は変えることができるな。安心しろ、こっちのジョンには後悔はさせないさ。お前は未来を変えることだけ考えて過去の後悔は洗い流せ。自分の過去を悔やんだところで自分の中の過去そのものは変えることはできないからな。」

 年下の親父はハーバード機長を慰める。

「ありがとう、親父。いい歳したジジイが泣くなんて情けないもんだよ。」

 ハーバード機長はハンカチを返す。

「ははははっ!全くだ!」

 ハーバード基地司令官はハンカチを受け取って笑う。

「ジョン、未来を変えるからには最後まで未来を変える信念を貫き通せよ。それまで命を大切にな。死ぬなよ!」

 年下の親父は手を出す。

「わかったよ親父。親父も長生きしろよ!」

 年上の息子は父親の手に固い握手をしハグをする。

 

 

 ハグを終えると

 

 

「そんじゃ、行ってくる。」

 

 

 と、ハーバード機長は言って来賓室を出た。




最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
日付が変わって約束の19日ではなく20日に投稿して申し訳ありません。以後、気を付けます。

また、今回は改行の使い方を少し変えてみました。
改行や段落について調べたのですが、カメラワークが変わる時に使うものらしいです。そう考えると改行を使いすぎている節があったので改行を減らしました。次回もこんな感じで執筆したいと思います。

ちなみに次回は人物が増えてきたので用語集を投稿しようと思います。投稿予定日は1月19日(金)です。
これからもよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

以下付録
用語集(2030年兵器編)


用語が増え次第更新します。わからない用語があったら教えてください。その用語について更新します。


《アークバードⅡ オーシア仕様》

 

 

 環太平洋戦争終戦後にハーリング大統領の監視のもと、新生グランダーIGが開発したアークバードの改良型。2018年に運用開始。最大搭乗人数100人。

 アークバードに比べ、大気圏突入時の衝撃が小さく、フラッペロンを改良したことにより進路変更にかかる手間が減った。特に大気摩擦を利用した軌道変更の時間短縮は大きく、戦闘機による攻撃の隙が減った。また、強力なECM防御システムを搭載しておりミサイルの誘導性能を狂わせることが可能。ただし、機銃やレーザー、レールガンは無効である。事実、2023年にベルカ残党のテロ部隊によって大気摩擦の軌道変更中に戦闘機の攻撃を受けたが、ECMでミサイルを狂わせ、迅速な軌道変更によって最悪の状況から免れた。この事件以降、より安全性を高めるためグレイプニルの光学迷彩を搭載した。しかも、グレイプニルの光学迷彩が解析されたことにより、隠密度が高くなっている。

 機体着陸方法はアイガイオンの着水技術を用いた胴体着水、大型の空軍基地ならVTOLを用いて着陸ができる。

 武装は基本なく、ユリシーズの破片や宇宙ゴミを破壊するため胴体上部にレーザーを装備している。このレーザーは実戦でも絶大な破壊力を持つが、破片の破壊にしか使用していない。また、破片を捕らえるために高性能レーダーであるAsatレーダーを装備している。

 主な役割は中継衛星のほか、ユリシーズの破片や宇宙ゴミの破壊、また平和と友好の象徴としてアークバードⅡ内でサミットを開催したり、施設の一部を一般公開するなどハーリング大統領の意思を引き継いだ平和政策が役割である。

 

 

《アークバードⅡ 愛国軍仕様》

 

 

 2028年、グランダーIGがアークバードⅡ を空中要塞に改造したもの。ゼネラルリソースがユージア大陸を飲み込んだのを機に、ソンバーグ大統領が国家の存亡を危惧し急遽改造した。

 改造箇所は、対空兵器の追加、艦載機能の追加、運動性能のさらなる向上である。これにより空中要塞でありながら高い運動性の確保に成功した。

 また艦載機能については、従来の航空母艦のカタパルト式やスキージャンプ式と異なり、クレーンアームを使った艦載方法になっている。着艦はアークバードⅡ下胴体後方から空中給油する時と同じく速度を同調させ、クレーンアームで艦載機胴体を固定しアークバードⅡに格納する。格納すると同時に艦載機エンジンを止める必要がある。発艦する時はアークバードⅡ下胴体前方からクレーンアームをカタパルトとして射出する。なお、同時に2機ずつ離着艦が可能である。艦載機はクレーンアームで固定し艦載するため、ランディングギアを展開する必要がない。のちにこの離着艦機能は、2040年に起きるウロボロスクーデター軍の空中要塞スフィルナに採用される。最大艦載数は10機。2028年に作られたものなので、ADF-02とR-100以外の艦載機は艦載できない。

 アークバードⅡにはオーシアとユークトバニアの国旗のエンブレムが付けられており、IFFもオーシアとユークトバニアのものとなっている。まさに空飛ぶ愛国軍の最後の国と言えるだろう。

 

 

《ADF-02 FALKEN Zwei》

 

 

 グランダーIGが開発したZ.O.E.シリーズ最新鋭機。2022年運用開始。ADF-01と見た目はほぼ同じだが艦載機能を付けたため、X-02 Wyvernのように羽を折りたたむことができる。愛称はFALKEN Zwei。Z.O.E.を搭載して無人機としても、パイロットが乗って有人機としても運用できる。主にZ.O.E.を搭載しての運用で、人間には困難な任務を主目的としている。

 機体性能はADF-01 FALKENと変わらないが、Z.O.E.搭載を考慮した設計であるため、Z.O.E.を搭載すれば人間離れした運動性能を発揮する。兵装は従来のレーザー以外にもCFA-44 Nosferatuのレールガンの改良型、ADA-01 AdlerのSDBMを同時搭載できる。単純火力を見れば最強の火力を誇る機体である。Z.O.E.を搭載すればレーザー・レールガンは百発百中、SDBMは効果範囲を計算して適切な場所に向け発射し大群を殲滅することができる。

 しかし、裏を返せば人間が使いこなすには相当技量がなくては使いこなすことができない。人間が使用する場合は重量による運動性能低下のため1つの兵装しか装備できない。そのため、グランダーIGを吸収したゼネラルリソースは人間には扱い辛いADF-02を切り捨て、R-100を主力戦闘機にしたのである。

 愛国軍にはグランダーIGから授かったZ.O.E.のメインコンピュータがあるため、ADF-02とともに最後の切り札として温存している。愛国軍の保有数はアークバードⅡの艦載機搭載量の都合上、3機のみ。Z.O.E.は最大30機の戦闘機を管制できるため3機同時運用は簡単だが、保有数が少ないため1機ずつ運用している。1995年当時だと機体性能・兵装がオーバーテクノロジーなので人間が搭乗しても単機で大群を殲滅することができる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

【挿絵表示】

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

《R-100 SuperForneus または Delphinus#0》

 

 

 グランダーIGが開発した機体。2026年運用開始。YR-99の実戦配備型と言ってもいいだろう。愛称はSuperForneus 。RはRadical(革新的)の意味で、グランダーIGが革新的な傑作機を作ることを目的として開発し、見事傑作機となった。だが、そのグランダーIGは2029年にゼネラルリソースに吸収され、のちにニューコムを設立する技術者によって改良型のR-101 Delphinus#1が開発された。そのため、ゼネラルリソースや後に誕生するニューコムからはR-100はDelphinus#0とも呼ばれている。

 形状はYR-99とR-101の中間的デザインで、機首・主翼はR-101、垂直尾翼・エンジンはYR-99の形状となっている。また、最新の複合材料が使用されているため、既存機に比べかなり頑丈なくせにさらなる軽量化を実現した。コクピットは従来のコフィンシステムを改良し、Gの軽減やHUDの見易さを考慮したエアロコフィンを採用。エアロの由来はまるで痛みを感じず空を飛んでいると評されたことから名付けられた。Z.O.E.シリーズとは異なり、レーザーやレールガン、SDBMなど強力な兵装は装備できないが、機体性能は空力特性を考慮した形状だけあって2030年の既存機に比べ、全ての性能が優れている。特に有人機でありながらZ.O.E.搭載機と同等の運動性能を発揮できるのが特徴である。

 所持している軍隊は愛国軍とGRDF。ゼネラルリソースはグランダーIG吸収から数日後には量産体制に入り、今やGRDF主力戦闘機となっている。さらにR-100の構造・システムを解析し、後にF-16XFやF-15S/MTなど、旧世代機にエアロコフィンの搭載や空力特性を考慮した曲線形状などを付け、R-100と同等の性能を持つ機体の開発に成功した。

 一方、愛国軍はアークバードⅡの艦載機搭載量の都合上、7機しか保有してないため、GRDFにはパイロットの腕でカバーするしかない。しかし1995年当時だとオーバーテクノロジーそのものなので、ベルカのエース部隊や円卓の鬼神相手でも互角以上の戦いが可能である。

 

 

【挿絵表示】

 

 

【挿絵表示】

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 総合比較

 

【挿絵表示】

 

 

 

《Z.O.E.シリーズ》

 

 

 ADFX-01 Morgunから始まった人工知能Z.O.E.の搭乗機のことである。機体リストは以下の通り。

 

 

 ・ADFX-01 Morgun

 ・ADF-01Z(エースコンバット2の機体)

 ・ADF-01 FALKEN

 ・ADA-01 Adler

 ・ADF-02 FALKEN Zwie

 

 

《Asatレーダー》

 

 

 アークバードⅡに搭載してある索敵レーダー。イージス艦に搭載しているSPYレーダーよりも倍の索敵範囲を持つ。最大索敵距離600マイル(約1000km)。最大同時追尾目標数400。

 

 

《レーザーシステム》

 

 

 Z.O.E.シリーズの戦闘機やアークバードなどの巨大兵器に採用された光学兵器。1980年代にベルカが防衛構想のもと、化学レーザー兵器エクスキャリバーを開発したのがレーザー兵器の誕生である。レーザーは出力によって色が変わり、赤<紫<青の順で出力が高くなる。エクスキャリバーは青いレーザーで高出力だが、その分バッテリーが大型化し、複数ないと照射を維持できないので巨大化してしまった。その後南ベルカ国営兵器産業廠がADFX-01用に小型レーザーを開発。しかし小型にした分低出力になり、小型とはいえ機体のエンジンユニットぐらいの大きさがあり、バッテリーの問題があり短時間しか照射できず、機体に無理矢理つけたため使い勝手は良くない。

 ベルカ戦争終戦後グランダーIGになってからはレーザーシステムの改良をし、2010年までに高出力・小型化に成功しアークバード・ADF-01に採用された。ちなみに出力はアークバードが青、ADF-01が紫である。

 

 

《レーザーバッテリー》

 

 

 レーザー照射に必要なバッテリー。エクスキャリバーの場合、大型バッテリーが複数と発電所が必要だったので巨大化してしまった。

 Z.O.E.シリーズのレーザーバッテリーはレーザーシステムに組み込まれているが、その分バッテリーが小さいので出力と照射時間・連続照射数に難がある。

 改良がすすめられ、2030年時点で最終的に1つの小型バッテリーで高出力レーザーを30分間連続照射できるようになった。アークバードIIにはアークバードのレーザーシステムと小型バッテリーを採用している。小型バッテリーは最大6個格納でき、専用の充電器があれば充電可能。充電は地上で行う。大容量の電力が必要なので発電所から直接電力を供給してもらう。

 ADF-02のレーザーシステムはADF-01と同じだが、バッテリーのさらなる小型化によりバッテリーを2個組み込むことが可能となったため、連続照射数は倍になった。

 

 

《AOM-3》

 

 

 短距離空対空地艦ミサイル。通称、万能ミサイルである。AOMはAir to Omnipotent Missile(訳すると万能ミサイル)の略である。エスコンシリーズでいう通常ミサイル。

 元はベルカの多目的ミサイル構想のもと、ベルカ戦争以前から設計が始まっていた。のちにその設計データはオーシア・ユークトバニアに渡り、2005年にセミアクティブ式長距離万能ミサイルとしてAOM-1として完成。その後、改良を繰り返し2015年にパッシブ式中距離万能ミサイルとしてAOM-2が、2025年にパッシブ式短距離万能ミサイルAOM-3が完成した。

 AOM-3の見た目はAIM-9と似ている。AOM-1、AOM-2はAIM-54のような大型ミサイルになっている。

 

 

《AIM-120F AMRAAM》

 

 

 中距離高機動空対空ミサイル。AIM-120シリーズの最新型。普通はアムラームと呼ばれている。エスコンシリーズでいうXMAAシリーズ。

 特に誘導性能が強化され、一度発射するとミサイル推進剤が切れるまで誘導し続ける。簡単に言えばエスコン04のQAAM並の誘導性能である。しかも、R-100やADF-02など最新鋭高性能アビオニクスを搭載した機体なら最大8機の目標に同時攻撃できる。

 コクピットでマルチロック目標数を調整でき、単発でQAAMのような仕様で運用できれば、XMA2からXMA8まで、必要に応じてマルチロックし、多数の航空機相手に同時攻撃可能である。その性能から、単機で一個師団に匹敵するISAF空軍のエース、メビウス1のコールサインをとり、メビウスミサイルと呼ばれている。

 見た目は最大装備数が8発と増えたため、他のAIM-120シリーズより小型化している。

 誕生経緯はCFA-44の12連マイクロミサイルADMMと開発競争の結果、オーシアが2017年に誕生した。

 ADMMはCFA-44専用で最大12の空地艦の目標をマルチロックできるのに対し、AIM-120Fは対空目標に限り最大8機までマルチロックだが、その分一発当たりの誘導性能が高く、旧世代機から最新鋭機まで搭載可能なため需要が高い。

 ADMMとAIM-120Fのコンセプトは共通して単機で大軍を制圧することであり、これもメビウス1のコールサインをとり、メビウス構想と呼ばれている。

 

 

《LRASM》

 

 

 長距離空対艦ミサイル。通称、音速対艦ミサイル。ハープーン長距離空対艦ミサイルの後継ミサイルとして開発された。現実世界でも、アメリカ軍がハープーンの後継ミサイルとして開発中である。

 飛翔速度が特に強化され、音速で飛翔する。そのため、従来の空対艦ミサイルと比べ迎撃が困難であり、速度が速いため破壊力も大きくなっている。

 ハープーンの後継ミサイル構想としてはベルカ戦争時からオーシアが考えていたが、ベルカ戦争の後処理やユリシーズのゴタゴタで開発が遅れ、設計は2005年から入り、最終的に2020年に運用が開始された。

 

 

《レールガンシステム》

 

 

 ストーンヘンジやシャンデリア、CFA-44、ADF-02に採用された電磁兵器。これはベルカも開発していたが、一足先に開発に成功したのは電磁兵器開発に長けたエルジアである。エルジアの技術はベルカの技術より劣るが、それでも他国より5年先の技術を持っている。特に電磁兵器だけはベルカより優れている。

 ユリシーズ対策のこともあり、兵器技術に閉鎖的だったエルジアは止むを得ず他国にレールガンの技術を教えた。当初はレールガンバッテリーの問題もあり、レールガン自体がかなり大型化してしまった。2015年までにエストバキアがベルカの技術を用いてCFA-44用に小型化に成功するも、まだ課題が多かった。

 2022年までに改良が進み、レールガンバッテリーのさらなる小型化によりスペースが広くなり、レールガン弾の最大装填数や冷却装置の装備数が増え、より安定した性能になった。

 

 

《レールガンバッテリー》

 

 

 レールガンに内蔵してあるバッテリー。レーザーバッテリーと比べ、必要な電力は少ない。しかし、あくまでレーザーバッテリーと比べてなので、発電所レベルの施設から充電する必要がある。

 レールガン完成当初はバッテリーが不安定なため、かなり大型化してしまい、レールガン自体も大型化してしまった。

 戦闘機用のレールガンはレールガン本体に内蔵する形態にしたため、CFA-44のレールガンバッテリーは小型化が難しく、一部のバッテリーはCFA-44機体下部のウェポンベイに取り付けられている。ADF-02のレールガンバッテリーは技術が向上したこともあり、レールガン本体に完全内蔵している。

 

 

《レールガン弾》

 

 

 レールガンで攻撃するのに必要な弾体。この弾体は鋭い円錐状であり、レールガンでマッハ7以上の速度が出る。構造自体は銃弾より単純なため、1995年でも容易に量産できる。

 

 

《クローキングデバイス》

 

 

 光学迷彩発生装置である。グレイプニルのクローキングデバイスと比べ、透過性が向上し隠密性が高くなっている。

 さらに、機体全部に光学迷彩をかける以外にも、機体上面・機体下面だけにかけることができ、電力の節約もできる。消費電力はそこまで高くなく、レーザーバッテリー1個あれば1ヶ月近くはもつ。

 

 

《N.Phone》

 

 

 オーシアの電子機器企業オレンジが2028年に開発した携帯端末である。ちなみにロゴは皮が剥きかけのオレンジである。この会社も2029年にゼネラルリソースに飲み込まれてしまった。

 N.PhoneのNはNetwork、NextGeneration、Nationalを意味する。

 電話機能やメール機能、インターネット機能、カメラ機能の他に、アプリケーションをダウンロードしてゲームや動画、通話ツールや電子書籍の利用など様々なものを取り組んだ便利な端末である。

 最大の特徴は、タッチパネル式でワンタッチで画面を画面上表示と立体表示にすることが可能なことである。立体表示機能は、端末を倒したまま動画を閲覧できる他、立体表示を扱ったゲームや機械・土木設計職でいつでも手軽に設計できるようになったなど、高い評価を得ている。

 また、かなり極薄な端末で紙のように折りたたんで収納することができる。

 モデルはもちろん、アメリカのアップル社のiPhoneである。イメージとしてはやや大きめのiPhone7がより極薄になり、しかも紙のように折りたたんで収納でき、立体表示機能がついたようなものである。

 

 

《エアロコフィンシステム》

 

 

 コフィンシステムについては用語集(1995年 兵器編)のコフィンシステムの項を参照。

 コフィンシステムの改良型の最新鋭コフィンシステムである。

 具体的な改良点は以下の通り。

 

 

 ・耐G性能の向上による乗り心地の良さとパイロットスーツの軽量化。

 ・モニターのタッチパネル化、小型カメラに暗視モードや熱探知モードを搭載し多目的性の向上。

 ・HMDの機能をモニターに反映したことによってヘルメットのコストを削減。

 ・モニターに機体耐久値やミサイル・機銃弾数、速度、高度、上昇角度、方位を可視化したことにより見易さを向上(エスコン3のHUDに近い)。

 ・モニターを一部座席の下に表示させ、ワイドロックオン・マルチロックオン性を向上。

 ・コンピュータの処理能力を向上させ、Z.O.E.と戦闘機の同調性を向上。

 

 

 このように様々な部分が改良され、パイロットからも高く評価された。そのため、痛みを感じず空を飛んでいると評されたことからエアロコフィンと名付けられた。

 エアロコフィンシステムは当時名称は決まっておらず、次世代コフィンシステムと呼ばれていた。

 次世代コフィンシステム開発は新生グランダーIGが2012年から開始した。この時グランダーIGは次世代コフィンシステムを開発中の実験機に取り付ける事を考えていた。その実験機がXR-45 Cariburnである。

 XR-45は有人機でも無人機のような運動性能を発揮できるか証明するための実験機であり、次世代コフィンシステムの性能を証明するための機体であった。

 2017年に実験が開始されたが、道のりは厳しくテストパイロットがGによる重傷を患って帰還することが多かった。しかし、この実験から得られたデータはどれも有用なもので、従来のコフィンシステムのアップデートに一躍買った。

 ちなみに、アップデートしたコフィンシステムによって、YR-302 Fregata、YR-99 Forneusの試作機体の開発に成功し、性能実験のため、オーレリア戦争時にオーレリア軍に2機とともに改良された次世代コフィンシステムを搭載したXR-45を提供した。

 結果として、3機に搭乗したオーレリア軍のエース、グリフィス1からは改良された次世代コフィンシステムは乗り心地がいいと評価され、彼がこのシステムをエアロコフィンと命名したことによって名前が決まった。これによりエアロコフィンシステム開発はほぼ完成したと言えたのである。

 また、3機の中でYR-99が操縦しやすかったとの評価を受けて、グランダーIGはYR-99をベースとしたエアロコフィン搭載次世代戦闘機の開発に着手した。これが後にR-100となるのである。

 エアロコフィンシステムは2021年8月に完成し、早速ADF-01をはじめとするコフィンシステム搭載機に搭載した。その結果、パイロットから高い評価を受け正式に採用する流れとなった。

 また、2022年に配備したZ.O.E.専用機ADF-02に搭載したことにより、高い同調性が確認されZ.O.E.による任務にも使用された。

 2026年にR-100が配備されたことにより、オーシア空軍の保有するエアロコフィン機は約6割となった。

 2029年以降はグランダーIGがゼネラルリソースに飲み込まれたことにより全世界の航空機のエアロコフィン化が進み、2033年頃にはキャノピー式航空機は退役し、全ての航空機がエアロコフィン搭載機になったのである。

 

 

《Z.O.E.(ベルカ戦争後)》

 

 

 ベルカ戦争以前のZ.O.E.は用語集(1995年 兵器編)のZ.O.E.(ベルカ戦争以前)の項を参照。

 ベルカ戦争終戦後、南ベルカ国営兵器産業厰はノースオーシア・グランダーIGになり、Z.O.E.の開発は再開した。

 ベルカがZ.O.E.を持って逃亡し、再び運用するためか実戦データはそのまま残っていた。しかし、逃亡は失敗し連合軍に回収されたため、グランダーIGにしてみればデータが残っている素晴らしい宝物を手に入れたようなものだった。

 実験は戦場で行うことが効果的だと判断し、戦争を起こすようにユージア諸国のストーンヘンジ開発に不満を持つ軍隊に灰色の男たちと協力しクーデターをそそのかした。しかもベルカの技術を提供する事を条件としたため、エルジアが開発中だったXB-10やドラゴネット級潜水艦の開発がペースを上げ、クーデターに実戦投入するまでに至った。

 1997年にユージアでクーデターが勃発すると、早速実験のため実戦投入をする。この時はZ.O.E.専用機ADF-01Zが開発中だったため、真っ赤に塗装したF-14Dを実戦投入させた。

 クーデターの中で、スカーフェイス1と出会ったことにより撃墜頻度が上がるようになった。しかし、学習能力に少し改良を加えたため以前よりも成長が早く、スカーフェイス1のマニューバをコピーし、フランカー以外の機体で無理やり擬似コブラを再現するなど無茶苦茶な事をした。

 クーデター最終決戦ではADF-01Zが完成したこともあり、実戦投入した。完成したコフィンシステムとの相性は良好で、コクピットの小型カメラが目の役割を、コクピットに内蔵された集音器により耳の役割を果たし、キャノピー機よりも高い戦闘能力を発揮した。

 しかし、スカーフェイス1には一歩叶わず大金をかけて開発したADF-01Zは撃墜されてしまったが、実験は成功し今後のコフィンシステムやZ.O.E.シリーズの開発に貢献することになった。

 その後も本体の小型化や学習能力の改良、さらにはZOEICを複数の戦闘機に搭載し同時に運用するなど改良が進められた。

 しかも実験は灰色の男たちの手を借り、大陸戦争や環太平洋戦争にも秘密裏に参戦した。

 しかし、環太平洋戦争で灰色の男たちの関与がばれ、グランダーIGはZ.O.E.開発を中止せざるを得なくなった。

 新生グランダーIGの組織後、戦争を引き起こす道具としてしばらく封印されていたが、別の面で役に立てないかと思い2012年に新しい戦闘機の実験にZ.O.E.の無人制御で、機体が空中分解する限度を調べる人間にはできない実験に使用されることになった。

 さらにZOEICの改良により、戦闘機や攻撃機以外にも全てのジェット飛行機が操縦できるようになった。そのため、旅客機の性能実験やパイロットが急遽不在になった時の旅客機操縦などに使用される機会が増えた。キャノピー機は移動するだけの戦闘を考慮しない機体の場合は有人機と同様に安定した操縦が可能なため、旅客機の操縦ができたのである

 しかし2015年以降、ベルカ人によるテロが頻発し、平和政策でオーシア軍の能力が低下しつつあったため、再びZ.O.E.を戦場に送ることになった。この時はADF-01を専用機とし、レーザーを使ってテロと戦っていた。その様子はテロリストたちに『赤い怪物』と呼ばれ恐れられていた。

 その後もテロ鎮圧作戦と機体の性能実験や旅客機操縦などで活躍し、2022年にADF-02が開発されるとレーザー以外にもレールガンやSDBMを使ってテロリストを懲らしめ続けた。

 しかし2028年以降、ゼネラルリソースが蝕み始めるとグランダーIGは国の存在を守るためアークバートⅡ改造とZ.O.E.本体を愛国軍に託し、愛国軍の戦力として戦闘に参戦した。

 この時のスペックは、本体のサイズがXBOX360ぐらいの大きさで、最大同時制御機体数30機、戦闘能力は交戦経験が多かったスカーフェイス1の能力をベースに様々なパイロットの能力を取り込み、それでいてある程度の未来予測ができ無誘導ミサイルでも敵機を撃墜できる。そのため、対地ミサイルで戦闘機を撃墜という無茶も可能。

 もはや無敵と言える強さを誇っていた。

 後にグランダーIGを乗っ取ったゼネラルリソースはZ.O.E.に関する資料や設計図を回収する。

 その資料や設計図は想い人のヨーコをゼネラルリソースの工作活動で殺され、電脳化したために生き残ったディジョンに逆恨みしたサイモンの手に渡り、ディジョンを抹殺するための人工知能NEMOの開発に使われることになる。

 ある意味Z.O.E.とNEMOは腹違いの兄弟のような関係なのである。

 

 

《SDBM》

 

 

 2010年にADA-01が運用されるのに合わせて開発された散弾ミサイル。

 ADFX-01/02に搭載されていたMPBMの発展型で、ADA-01に搭載されていたSDBMと同じ効果のミサイルである。

 シンファクシ級潜水空母に搭載されていた散弾ミサイルをそのまま小型化したもので、シンファクシ級のそれよりは劣るものの、MPBMを凌駕する効果範囲と破壊力を持つ。

 しかし、それでもMPBMを上回る大きさと重量で、運用に難があった。

 そのため、ADA-01の機首のウェポンベイ(ADF-01のレーザー用のウェポンベイ)に1発だけしか搭載できなかった。

 2020年頃には技術の進歩により、効果範囲と破壊力はさらに大きくなり、AIM-54レベルの大きさまで小型化に成功。

 そのため、ステルス性が犠牲になるが、ADF-02の左右主翼に搭載可能で、通常は2発、最大で4発運用できるようになった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

用語集(2030年人物編)

一部エースコンバット3のネタバレが含まれるので注意してください。


《ジョン・ハーバード》

 

 

 1967年7月9日生まれ、62歳男性、出身国オーシア。

 アークバードⅡの機長を務める白髪のヒゲ白人。愛国軍になる前もアークバードⅡ完成から機長を務め、ユリシーズの破片の破壊などの駆除作業や、アークバードⅡで行われたサミットの準備など、様々な業務を務めた。2028年になり、国家と企業の戦いが熾烈化しアークバードⅡが実戦投入され、国やアークバードⅡのため愛国軍に加わる。かつて軍人と傭兵であった経験から、戦闘指揮能力は優れている。

 1986年4月、18歳の時にオーシア空軍に入隊。戦闘機パイロットとして腕を上げるも、上司と意見の食い違いから、1990年8月、23歳の時に退役。

 しかし、戦闘機パイロットの経験が忘れられず1991年4月、23歳の時に世界で最大の規模を誇る、ノルデンナヴィクにある傭兵派遣会社『マクミラン・マーセナリー社』に入社。それからは傭兵として1995年のベルカ戦争や1997年のユージアクーデターに参加する。ちなみに、その会社にはサイファー、スカーフェイス1がいた。しかし戦争経験を通し、戦争の残酷さを目の当たりにしたことと、国を守るために戦う軍人を見て、『国を守る信念』ということが気がかりになり、ユリシーズ衝突後の2000年2月、32歳の時に退社しオーシアに戻る。退社を期に、今まで付き合っていた女性と結婚し、子供を授かる。

『国を守る信念』の答えを見つけるため、オーシアをユリシーズの破片から守るアークバードの宇宙飛行士を目指し、2006年8月、39歳の時に宇宙飛行士になる。その後、戦闘機パイロット経験から、アークバードの操縦を任せられる。1年間の訓練の元、無事アークバードのパイロットになる。

 2010年10月、43歳の時、環太平洋戦争によってアークバードが実戦投入される。ユークトバニア潜水空母シンファクシにレーザーによる支援攻撃でオーシア軍の突破口を開くことに成功する。この時は『国を守る信念』というものがまだはっきりしていなかったが、ベルカ残党団『灰色の男たち』によるアークバード占拠で、その答えが見え始める。ほとんどの乗員は口止めのためベルカ人に始末されてしまうが、ジョン・ハーバード含む3人はアークバードの操縦やレーザーの扱い方を教えるため、生かされていた。しかも、アークバードによるユークトバニア、オクチャスブルク核攻撃や、失敗した時の第二次作戦オーシア核攻撃、SOLG再稼働準備などの情報を得る。ジョン・ハーバードはなんとかしてベルカの陰謀を阻止するため行動する。そしてアークバード、オクチャスブルク核攻撃の日に隙を得て敵を倒し、アークバードの操縦系統に細工を仕掛ける。そして他の仲間を助け脱出カプセルで脱出した。彼がこのように行動したのは核兵器使用を阻止するためである。特に、オーシアには家族がいる。大切な人を死なせないためにも、国を守るため行動したのである。このことから、彼は答えを見つけることができたのである。

 2011年2月、43歳の時、その功績が称えられ、戦争の真実が公になってないことから、ハーリング大統領に秘密裏に愛国者の授与式が行われた。

 それからは、宇宙飛行士として働き続け、2018年5月、50歳の時、アークバードⅡが完成し、ハーリング大統領の薦めで機長に任命される。それからは、ずっとアークバードⅡの機長を務める続けたのである。

 

 

《イワン・アレンスキー》

 

 

 1994年9月23日生まれ、35歳男性、出身国ユークトバニア。

 アークバードⅡの艦載機部隊『アルタイル』の1番機でアルタイル隊の隊長を務める茶髪白人。

 元はユークトバニア空軍のエースパイロットだったが、ユークトバニアが崩壊してからソンバーグ大統領らが創設した愛国軍に入る。

 戦闘機の操縦技術はアルタイル隊の中でも随一で、かつてSu-35BM単機でADF-01レーザー搭載の5機編隊を撃墜した記録を持つ。(エスコンゲーム設定だと単機で50機撃墜とかなりそうなぐらいの実力)

 静かな性格だが、国や人を愛する気持ちは誰よりも高く、みんなから慕われている。

 戦闘では冷静に判断し、確実に敵機を撃墜する。彼の生きている時代には珍しく、タイマンでの正々堂々としたフェアプレイを望む。特に、自分以上の実力を持つ者との戦いを望んでいるが、今のところ叶っていない。

 

 

《フォード・マクドネル》

 

 

 1996年11月18日生まれ、33歳男性、出身国オーシア。

 アークバードⅡの艦載機部隊『アルタイル』の5番機を務める金髪白人。

 元はオーシア空軍のエースパイロットだったが、ソンバーグ大統領らが創設してからは愛国軍に入る。

 エレーナ・ダニエリというユークトバニア人の愛する嫁がいたが、ゼネラルリソースの戦いに巻き込まれ死亡。以降、彼はオーシアの為というよりも、彼女の復讐のために戦うようになった。

 実力はアレンスキーより劣るが、並以上の強さを持つ。特に視野が広く、状況に応じた臨機応変な戦闘が優れている。

 SF小説好きで、特にタイムスリップ小説が好みらしく、アークバードⅡがタイムスリップした時には誰よりも冷静に行動し、ジョン・ハーバードにアドバイスをした。

 

 

《コウセイ・ヒヤマ(飛山鋼生)》

 

 

 1995年4月9日生まれ、34歳男性、出身国オーシア。

 アークバードⅡの艦載機部隊『アルタイル』の5番機を務める丸坊主日系人のガチムチ。

 元はオーシア空軍のパイロットだったが、ソンバーグ大統領らが創設してからは愛国軍に入る。

 実力はいたって普通のパイロットだが、悪運だけは非常に強く、機体がボロボロの状態で帰還したり、エネミーラインにイジェクトしても必ず生きて帰るなど、あのオメガ11を翻弄とさせる男。しかし別人である。

 豪快な性格で、難しいことは考えずゴリ押しで解決するなど、脳筋である。

 仲間思いで自分が犠牲になっても仲間を助ける。けど、何かと生きて帰る。

 生まれもオーシア、育ちもオーシア、オーシアから離れるとホームシックになるなど、オーシアを愛している。

 これは、かつてエネミーラインでイジェクトし、逃げている中、自分の故郷がどれだけ素晴らしいところから理解したからである。ゆえに愛国心は誰よりも大きいと言えよう。

 ちなみに名前はイジェクトマスターの特徴を考え、戦闘機から『山』のように高く『飛』び、『鋼』のような肉体で必ず『生』きて帰ることからつけました。

 

 

《ケイン・ソンバーグ》

 

 

 1972年10月1日生まれ、57歳男性、出身国オーシア。

 2021年に就任したオーシア連邦第49代、オーシア初の黒人大統領。オーシア連邦第48代大統領ビンセント・バーリングの意思を引き継いで、ユークトバニアと友好を築き、平和活動に取り組んでいた。

 しかし、ゼネラルリソースの拡大によりオーシアの存亡が脅かされる中、オーシアを守るために戦う意思を表明した。

 ユークトバニアが滅亡してからは正式にユークトバニアも仲間に加わり、愛国軍と正式に命名。以降、ゼネラルリソースと戦いを繰り広げることになる。

 愛国軍では、オフロスキー元首と軍のリーダーを務める。冷静な性格だが、かつてオーシア陸軍だったため、戦いになると熱くなる。その性格の故に、優しそうな見た目に反しているため、たまに周りから引かれる。

 

 

《セルゲイ・オフロスキー》

 

 

 1972年5月5日生まれ、57歳男性、出身国ユークトバニア。

 ユークトバニア国家元首であり、政府首相の白人元首。オーシア同様、ニカノール元首の意思を引き継いでオーシアと友好を築き、平和活動に取り組んでいた。

 ゼネラルリソースの拡大により、ユークトバニアを守るため、オーシアよりも先に戦いを挑んだ。しかし、ゼネラルリソースから最大の脅威と判断され、ユークトバニアが先に滅亡する。

 それからはソンバーグ大統領と共に愛国軍を編成し、ゼネラルリソースと戦い続ける。

 ソンバーグ大統領同様、愛国軍ではリーダーを務める。かつてユークトバニア陸軍だったため、愛国軍に入ってからは平和主義な印象から好戦的な印象に変わる。その変貌っぷりに、はじめは引かれまくりだが、しばらくすると頼れる軍事参謀となる。

 

 

《アビサル・ディジョン》

 

 

 1997年10月10日生まれ、32歳男性、出身国エルジア。

 元エルジア空軍の金髪白人。エルジア空軍時代はエルジアのエースパイロットとして腕を上げいた。

 大陸戦争により、エルジア空軍だった父親を失う。ちなみに彼の父親は当時のエルジア空軍エースの黄色中隊初期メンバーの3番機だった。

 父親はエルジアの進める戦争行為に反対したため、エルジア軍の謀略により殺された。それを知ったのは、父親に憧れてエルジア空軍に入ってからのことである。

 このことから、父親を殺したエルジアを憎む。その後、エルジアはゼネラルリソースに飲み込まれるが、彼はそのことを喜んでいた。ゼネラルリソースの支配下になってからは自らGRDFに入隊、GRDFで数少ないエースパイロットとなる。

 のちに、彼はゼネラルリソースの科学者マーサ・ヨーコ・イノウエと出会い恋愛関係になる。そして彼女の電脳実験により、人類初の電脳化した人間となるが、実験を危険視したゼネラルリソース保守派により工作活動が行われ、肉体を失う。

 それからは誰もいないエレクトロスフィア内で精神が荒んでいき、クーデター軍『ウロボロス』を組織し、全人類電脳化という凶行に出る。

 しかし、ニューコムのサイモン・オレステス・コーエン博士の開発した人工知能NEMOにより、彼は完全な死を遂げるのである。

 

 

《エレーナ・ダニエリ》

 

 

 1997年12月24日生まれ、32歳女性、出身国ユークトバニア。

 マクドネルの妻である赤毛の白人。おっとりした性格で、相手の心を癒す優しさと抱擁力を持つ。

 旅行先のオーシアで道に迷っていたところ、たまたま休暇中で散歩していたマクドネルに道を教えてもらったのが出会いの始まり。お互いSF小説好きということがあって意気投合。オーシアで観光名所を見るはずが、マクドネルとのSF小説トークで時間を費やしてしまう。しかし、これを期に小説友達となり、度々連絡し合うようになる。

 気が付けばかなり親密な関係になり、マクドネルから告白を受け、これを承諾し恋愛関係になる。

 それから彼女はオーシアに引っ越し、休暇の少ないオーシア空軍のマクドネルと少ない休暇を使って2人の時間を大切に過ごす。そしてマクドネルのプロポーズを受け、2人は結婚する。国籍をオーシアに移し、幸せに満ちた夫婦生活を過ごす。マクドネルが愛国軍に入隊してからも彼女は彼に尽くした。

 2人の愛は実り子供を宿すが、2029年12月にGRDFの攻撃に巻き込まれお腹の中の新しい命と共に死亡する。

 彼女の死は大きく、マクドネルをどん底に陥れてしまった。しかし、彼女はマクドネルの記憶の中で今も彼に大切にされながら生き続けている。

 

 

《ニコライ・ベレゾフスキー》

 

 

 1994年4月20日生まれ、35歳男性、出身国ユークトバニア。

 アークバードⅡのコンピュータ管理主任を務める赤毛白人。コンピュータの仕組みやプログラミングに長け、若くして主任を務める。実は8歳の頃からコンピュータに興味を持ち始め、11歳の頃にはコンピュータを組み上げ、プログラミングも理解していた。14歳の頃からハッキングに目覚め、ハッカーとなる。

 ハッキングがバレないようなところしかハッキングしていなかったが、環太平洋戦争時の16歳の時、面白半分でユークトバニア軍のコンピュータにハッキングする。その中で、グランダー社の兵器運搬を裏付ける極秘文書や、ニカノール元首幽閉の報告書を発見し、戦争の影に気付く。彼は文書のコピーを取り、戦争反対派の友人の大学生に渡した。これをきっかけにユークトバニア工科大学生によるレジスタンスが創設された。

 さすがに軍のコンピュータにハッキングしたため、軍に気付き逮捕される。しかし、真実が公になり、レジスタンス創設の一役者であることが判明し、レジスタンスと共に評価が変わった。

 一応、軍のコンピュータにハッキングしたため留置所入りだった。しかし20歳の時、釈放を条件にユークトバニア軍にスカウトされた。理由はコンピュータの扱いに長けた人材が不足していたからだったが、彼は自分の能力を生かせるならと思い入隊する。

 その後はユークトバニア軍の情報管理職に就き、仕事によってはテロリストのコンピュータにハッキングを仕掛けたりもした。

 ユークトバニアがゼネラルリソースに飲み込まれてからは、人生を変えてくれたユークトバニア軍と愛国軍に入隊し、ゼネラルリソースの戦いに参加した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

用語集(1995年兵器編)

用語が増え次第更新します。


《アークバード(ユリシーズ衝突前)》

 

 

 1980年にオーシア連邦がSDI(戦略防衛構想)計画のもと、1980年に打ち上げられた大気機動宇宙機である。1970年代、オーシアとユークトバニアは冷戦状態で、互いを仮想敵国としていた。ユークトバニアが巨大潜水空母の弾道ミサイルによる防衛構想を企てていることを耳に入れたオーシアは、従来の兵器では対処できないと判断し、大気圏外から攻撃可能な衛星兵器構想が生まれた。それで生まれたのが、大気機動宇宙機アークバードと戦略衛星兵器SOLGである。

 アークバードは1980年にバセット宇宙センターで打ち上げに成功した。打ち上げはロケットを打ち上げるのと同じやり方で、垂直状態でロケットブースターを大量に取り付け打ち上げられた。しかし、打ち上げに成功したとはいえ課題が山積みだった。

 まず、アークバードの建造はオーシアオリジナルの巨大航空機技術が使われたため、ベルカの巨大航空機技術と比べ不安要素が多かった。具体的に大気機動宇宙機という割に機体の方向転換に時間がかかる、武装スペースよりエンジンやアクチュエータなどにスペースをとったため武装が限られる、大気圏内では行動できないなど。

 そのため、大気機動宇宙機というよりは馬鹿でかい宇宙ステーションと皮肉られていた。課題を解決するため、スペースシャトルによる宇宙空間でのアークバード改良作業を行っていたが技術的に無理難題が多く、作業は捗らなかった。結果、アークバードは宇宙ステーションという役割となり、SDI構想を受け継いだのは戦略衛星兵器SOLGとなった。

 その後アークバードはSOLG建造の要所となり、パーツが送り込まれればアークバードにいる技術者が宇宙空間で組み立てるという流れになっていた。

 ベルカ戦争が開戦してからも、SOLG建造に従事し、終戦後はSOLG建造中止になった事から役目は終わり、地球に帰還した。しかし、技術的な面で不安定な機体であったため、大気圏突入時にアークバードの一部が損傷してしまった。幸いにも大事に至らなかったが、世界中でアークバードの帰還が報道されていたため、巨大国家オーシアの技術の限界を世界中に晒されてしまったのである。

 オーシアは巨大国家としての誇りを傷つけられ、しかも戦争に勝利したとはいえ7つの核起爆を目の当たりにしたため、以降は軍縮の道を進む事になる。

 オーシアの誇りを傷つけたアークバードは封印され、本来なら再び表舞台に姿を表すことはなかったが…。

 

 

《アークバード(ユリシーズ衝突後)》

 

 

 1999年、小惑星ユリシーズの衝突により世界は混乱していた。ユリシーズはサンサルバシオン領のユージア大陸中央に位置する隕石迎撃レールガン兵器ストーンヘンジの活躍により分散し、地球滅亡は避けられたが世界中に大きな傷跡を残した。

 特に被害の酷かったユージア大陸西部の軍事国家エルジア、アネア大陸東部のエストバキアであり、後に大陸戦争やエメリア・エストバキア戦争を引き起こすきっかけになってしまった。

 軍縮により和平の道を歩んでいたオーシアは、同じ道を歩んでいたユークトバニアと友好関係を順調に築いていた。ユリシーズ衝突前に巨大国家2ヶ国が共同でユリシーズ破片撤去作業に従事することになっていた。このことはユリシーズ衝突前の世界7ヶ国によるG7会議ですでに決められていたことである。

 ユリシーズ破片撤去作業には、宇宙空間で自由な行動ができ、破片破壊用の兵器を搭載できる機体が必要だった。

 そこで選ばれたのがアークバードである。運用当時は課題が山積みだったアークバードも、ベルカの技術が公になった後では課題は全て解決してしまった。この計画は1997年から始まり、オーシア・ユークトバニア共同でベルカの巨大航空機技術を元に、ベルカ人技術者の手を借りながらアークバード改良を進め、2001年にアークバードは完全な大気機動宇宙機として完成した。また、破片破壊用の兵器にはベルカのレーザー技術を応用したビーム砲を採用し、アークバード上部に取り付けられた。レーザーではなくビーム砲を採用したのは、まだ出力制御やレーザーバッテリーの課題が大きかったレーザーの採用は安全性に欠けると判断し、安定性と安全性を確保できるビーム砲が採用されたのだ。

 SDI構想のもと開発された軍事兵器は、ユリシーズ破片撤去の他に、オーシアとユークトバニアの友好と平和の象徴として蘇ったのだ。

 しかし、2010年に起きた環太平洋戦争により、ユークトバニアの開発した潜水空母シンファクシに対抗するため、アークバードの実戦投入を決定し、出力制御やレーザーバッテリーが改良されたレーザー兵器を搭載し、サンド島分遣隊ウォードックと共同でシンファクシを撃沈した。皮肉にもこんな形で本来の軍事兵器アークバードに戻ってしまうことは、ほとんどの人々は望んではいなかった。だが、これは『灰色の男たち』と呼ばれるベルカ残党団による工作活動であり、この戦争もかれによって引き起こされたものである。灰色の男たちのメンバーはSSTOによるアークバードの物資運搬に偽装してユークトバニア製の爆弾を乗せ起爆し、レーザーを使用不可にした。これによりオーシアとユークトバニアの関係はさらに悪化し、戦争は泥沼化していった。さらに、物資の中に紛れ込んでいたベルカ人によりアークバードは占拠され、レーザーの修理やUAVフォーゲルの搭載、核ミサイル搭載、SOLG修復作業などに使われた。

 しかし、アークバードによるオクチャスブルク核攻撃を実行しようとしたところ、ラーズグリーズ戦闘機隊に発見され、ジョン・ハーバードの機体制御工作によって制御不能になり、セレス海に墜落し海の藻屑となった。

 その後はハーリング大統領により、アークバードのデータを元にアークバードⅡを建造し、再び友好と平和の象徴となったのだった。

 

 

《コフィンシステム》

 

 

 キャノピー式コクピットに代わる新しいコクピットシステム。特徴はコクピットのキャノピー部分を装甲で完全に覆い隠し、その周りに小型カメラを多数配置し、小型カメラから出力された映像をコクピット内のモニターに投影するものである。

 この見た目が棺桶(オーシア語訳:the coffin)に似ているからコフィンシステムと呼ばれている。

 元は1994年に南ベルカ国営兵器産業厰が企画した次世代コクピットシステムがベースである。当時この企画はSARG(ベルカ語で棺桶の意味)企画と呼ばれていた。

 このシステムを採用してパイロットの安全性の確保とコンピュータによるパイロットの支援、さらにZ.O.E.と戦闘機の同調を円滑にすることが目的だった。

 しかし、ベルカの政権交代による財政難とベルカ戦争の開戦によって思ったように開発が進まず、結局は設計図だけが完成した段階であった。

 ベルカ戦争後、南ベルカ国営兵器産業厰はオーシアの航空企業サウスロップ・グランダー社が買収し、ノースオーシア・グランダーIGとなった。当時のグランダーIGの社長は豊富な知識が必要なため元南ベルカ国営兵器産業厰社長のベルカ人で、まずはSARG企画の完成を目的とした。そしてこのシステムをコフィンシステムと命名した。

 そして1996年11月にコフィンシステムは完成。ADFX-01をコフィンシステム搭載のZ.O.E.専用機に改造し、1997年10月にADF-01Zとして完成した。

 性能実験をするため、グランダーIGは当時勃発していたユージアクーデターのクーデター軍上層部と秘密裏に癒着し、Z.O.E.とともに実戦投入した。というのもクーデター軍はベルカ人が絡んでいて接触しやすいため、最新兵器の提供を見返りに癒着したのである。

 結果としてはコフィンシステムを搭載したADF-01Zはスカーフェイス1に撃墜されてしまうが、ADF-01ZとZ.O.E.の同調性はコフィンシステムを介して高くすることができたため、実験は成功した。

 その後はコフィンシステムの改良も進み、有人・無人の両方で操縦可能なコフィンシステム搭載戦闘機ADF-01 FALKENの開発に成功した。

 しかし、この機体はオーシア・ユークトバニアの各工場で灰色の男たち絡みで秘密裏に造られたものであり、公になったのは環太平洋戦争以後である。しかも、グランダーIGの灰色の男たち及びユージアクーデター軍との癒着が発覚し、社内で様々な処理が行われた。

 処理後、新生グランダーIGになってからしばらくはコフィンシステムの開発は停滞していた。

 

 

《Z.O.E.(ベルカ戦争以前)》

 

 

 元は南ベルカ国営兵器産業厰が開発した戦闘機・攻撃機専用の人工知能である。

 Z.O.E.とはZone der endlosen(無限の空域)の略称で場所を問わず何処でも完璧に任務をこなす事を目的として開発された。

 これはベルカ防衛構想『ペンドラゴン計画』のレーザー兵器・巨大航空機・大量破壊兵器・人工知能・次世代戦闘攻撃機の項目に含まれる重要な開発である。

 開発は1981年から行われ、1987年にZ.O.E.本体が完成した。しかし、本体のサイズは食卓のテーブルを全て占める大きさで部屋を圧迫した。しかも命令は専用のプログラムを入力しないと実行せず、課題が多かった。

 戦闘機・攻撃機の運用方法はアビオニクスに専用のICチップ『ZOEIC』を入れ、本体から衛星を介して遠隔操作する。

 学習能力機能も搭載し、プログラム入力等に難があったが結果的に人工知能の開発に成功した。

 しかし、性能実験で学習能力が災いし人間の感情までも理解し暴走してしまう。幸いにも本体を強制停止したため事なきを得たが、実験に協力し被害を受けた空軍からは開発停止するよう非難を浴びる。だが、ペンドラゴン計画の一部のため開発を止めるわけにはいかなく、学習能力にリミッターをつけ、さらに簡単なプログラムで命令できるように改良版を開発し、空軍を納得させ開発を続行した。

 Z.O.E.は区別のため、真っ赤に塗装された機体が性能実験に使われた。性能実験ではベルカのエース部隊も協力し、はじめは弱かったものの実験を繰り返すごとに強くなっていった。

 1991年には本体の小型化に成功し、3分の2の大きさまで小型化できた。さらにZ.O.E.と同時開発していた次世代戦闘攻撃機ADFX-01が試験飛行を始めたことから、Z.O.E.を搭載して実験を開始した。

 1993年にはADFX-01でのレーザー攻撃実験に立ち会い、出力・照射時間不足や機体重量増加のデメリットを見事にカバーし、最高の成績を収めた。

 しかし、Z.O.E.と戦闘機の相性の限界が出始めた。Z.O.E.はシステムの都合上、目や耳になる部分は海洋哺乳類が音波を使うようにレーダー照射で高度や方位、距離、目標の位置、爆発などの衝撃を確認していた。

 このシステムの最大の問題は直接的にモノを見聞きしないため、活動範囲が制限されるのである。

 例えばジャミング下の状況だと何もできず、ステルス機相手だと感度をかなり高めているためレーダーで捉えるステルス機以外の小さなターゲット(鳥や機体の破片)などを敵と判断し攻撃してしまう、大軍戦となればレーダーで捉えるあまりの情報量に対応できずに最悪本体がフリーズしてしまうなどがある。

 そのため、従来のキャノピー式コクピットでは厳しいと判断し、1994年に後のコフィンシステムに繋がるSARG企画を立案した。

 しかし、財政難により思ったように企画が進まず、1995年に問題が解決しないままZ.O.E.を実戦投入した。

 ちなみにこの時は存在を連合軍から隠すため、特徴的な真っ赤な塗装ではなく、いたって普通のカラーで参戦した。サイファーとは交戦していないものの、戦場で高い戦績を誇った。

 特に攻撃機で戦闘機を撃墜できるかという実験目的である任務に空戦向けに改造したA-10Aで出撃し、敵の目を常識的な意味で欺き、3機撃墜した。

 また、人間が操縦するにはピーキーなS-32による純粋な空戦では、劣悪な安定性を逆手に取り、多くの戦闘機を撃墜した。

 さらにTND-GR.4による地上攻撃で対地攻撃能力の高さも証明された。

 しかし、戦況が悪化してくると連合軍が頻繁に電子支援機やステルス機や人海戦術を使用してくるようになり、Z.O.E.が不利な状況になった。

 そして6月6日、核起爆による連合軍の混乱をうまく利用しZ.O.E.本体をトラックに運び逃亡するものの、運悪く連合軍に捕らえられZ.O.E.を回収されてしまう。

 それから数日後に南ベルカ国営兵器産業厰は占拠され、完全に連合軍の所有物となってしまったのである。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

用語集(1995年人物編、傭兵サイド)

年齢は1995年4月1日を基準に計算しています。世界線A(正史)で起きた出来事について解説します。


《ジョン・ハーバード》

 

 

 1967年7月9日生まれ、27歳男性、出身国オーシア。

 スカーフェイス隊2番機、コールサイン『スラッシュ(深傷)』を務める、茶髪白人男性。若かりし頃のジョン・ハーバード機長である。

 傭兵時代の彼はジョークが好きな、仲間想いの性格で、誰にでもジョークを飛ばす。そして、いちいち反応するため、特にケイ・ナガセにいつもいじられている。しかし、ケイ・ナガセとはあくまで戦友という関係で、彼女は別に存在し遠距離ながら付き合っている。

 その後の彼については、用語集(2030年 人物編)のジョン・ハーバードの項を参照。

 彼の愛機はF/A-18E。ウェポンベイの増加と、硬い装甲を採用したことにより、運動性能は劣るが対地攻撃能力はスカーフェイス隊の中で最も高い。しかし元がF/A-18Eのため、運動性能は並の戦闘機レベルはある。そのため、機動性特化していない戦闘機相手ならドックファイトも可能。大量の爆弾やAGMを搭載し、敵地上物に大きな深傷を負わせる。さらに、空戦もできるため敵機にも深傷を負わせる。また彼はオーシア空軍時代からF/A-18Eを使っており、扱いに関しては誰よりも優れている。そのため、対地攻撃においては絶対的な強さを誇る。まさに、空戦のできるアタッカーといえよう。

 

 

《ソロモン・ラグテンコ》

 

 

 1967年5月27日生まれ、27歳男性、2020年11月24日没、享年53歳、出身国ユークトバニア。

 エースコンバット2の主人公で、スカーフェイス隊1番機、コールサイン『フェニックス(不死鳥)』を務める、黒茶髪白人男性。右頰に切り傷が付いている。これは子供のころに喧嘩して付いたものである。

 自分の実力に自信があるが、さらに上を目指そうとする努力家。しかし、真面目ではあるが意外と柔らかい性格で、ジョン・ハーバードほどではないがジョークが好きである。騎士道精神の持ち主で、強敵と認めた敵とは正面から正々堂々と戦う。

 彼の愛機はSu-27にカナード翼を取り付けた、旧式のSu-35。装甲の軽量化する代わりにスピード・機動性に特化されている。ベースが機動性特化のSu-35のため、驚異的な機動性を誇る。また、より高い機動性を出すため、わざと安定性を悪くするように改造してあり、パイロットセンスも合わさってSu-37やSu-47を凌ぐ格闘能力を持つ。機銃ですら被弾すれば即安定性を失い、墜落するくらい脆い機体だが、元の機動性とパイロットセンスによる回避能力により、一度も被弾したことはない。そのため一度も墜落したこともなく、どんな任務も不死鳥の如く必ず生還する。

 元ユークトバニア空軍で、当時からSu-35を愛機としていた。というのも、彼は大のフランカーマニアで、空軍に入隊した理由もただ単にフランカーに乗りたかったからである。はじめはフランカーに乗れたことを喜んでいたため空軍を楽しんでいた。しかし任務を繰り返すうちに実力が上がり、相対的に強い実力者と勝負ができなくなり、ジョン・ハーバードと同じくして1990年8月、23歳の時に退役。その後、強さを求めるため傭兵に志願し、ジョン・ハーバードと同じ時期にマクミラン・マーセナリー社に入社する。そこで、ジョン・ハーバードやケイ・ナガセと出会い部隊を編成することになる。部隊名は彼の顔の傷からとって、『スカーフェイス』と命名する。

 その後は様々な戦場で腕を上げ、ベルカ戦争ではサイファーことエドガー・アイザックに次ぐ撃墜数保持者である。因みにベルカのエース部隊も撃墜しており、彼と性質が似ているインディゴ隊とズィルバー隊と交戦し撃墜した。

 その2年後の1997年29歳の時、ユージアクーデターの際はさらに実力を上げており、スカーフェイス隊だけでクーデター軍を鎮圧した。この時にクーデター軍の様々な敵エースと交戦していたが、特に人工知能Z.O.E.との交戦は気に入っていた。この時のZ.O.E.はグランダーIG社がクーデター軍に癒着し性能実験を行っていた。そもそもクーデター自体もベルカ人絡みのため、XB-10やドラゴネット級潜水艦もベルカの技術のひとつである。Z.O.E.は交戦した敵のマニューバをコピーし、学習していく。スカーフェイス1との交戦頻度が多かったためか、まるでスカーフェイス1に近いマニューバをするようになった。彼としても自分に似たマニューバをする敵機に親近感がわき、人工知能でありながらライバルとして認めていた。

 クーデター鎮圧後、ジョン・ハーバードとケイ・ナガセはそれぞれの人生を歩むためスカーフェイス隊は解散となる。しかし、彼は強者を求めるため会社に残り、スカーフェイス隊を改名し、フェニックス隊を編成する。フェニックス隊は基本ラグテンコひとりだが、任務に応じ仲間を雇うやり方に変更した。エンブレムも真っ赤な不死鳥エンブレム(エスコン2エンブレム)から赤紫の不死鳥エンブレム(エスコン初代エンブレム)に変更し、Su-35も派手なエスコン初代カラーに変更した。

 その後も傭兵として大陸戦争、環太平洋戦争、エメリア・エストバキア戦争、オーレリア戦争に介入。しかし、オーレリア戦争時にオーレリア軍の作戦に参加していたが、歳の影響もあり身体がいうことを利かず、ミサイル回避に失敗し墜落死してしまった。

 2020年11月24日、享年53歳、戦死。

 

 

《ケイ・ナガセ(永瀬ケイ)》

 

 

 1968年2月14日生まれ、27歳女性、出身国ノースポイント。

 スカーフェイス隊3番機、コールサイン『エッジ(刃)』を務める、黒髪ショートの日系人女性。

 男勝りでSよりな性格。本人はジョン・ハーバードの反応が面白いという理由でいじりまくっている。しかし、本当は周囲の気遣いができ、相手を時には優しく、時には厳しく想いやることができる姉御肌を持った、可愛いくも頼りになる女性である。

 彼女の愛機はMirage-2000。高出力エンジンを採用し、MiG-31に近い加速度と最高速度を持つ高速戦闘用ファイターに改造している。

 その機体性能の通り、速度を生かしたヒット・アンド・アウェイを得意とし、刃の如く鋭く接近し、すれ違いざまに敵機を撃墜する。

 元はノースポイント空軍に属していたが、比較的平穏なノースポイントでは戦闘が少なく、不満を抱いていた。彼女自身は好戦的で、本格的な空戦を望んでいた。偶然にもノルデンナヴィクにあるマクミラン・マーセナリー社の存在を知り、ジョン・ハーバードとソロモン・ラグテンコと時を同じく傭兵に志願する。

 後のユージアクーデターの反撃作戦にも参加する。しかし、ベルカ戦争やユージアクーデターの有様を見てきたため、次第に平穏な生活を望むようになる。

 ユージアクーデター後、彼女は退社し生まれ故郷のノースポイントに帰省する。しかし、空に対する想いが強かったため、ノースポイントの大手空輸会社NAL(North point Air Line)に就職。ユリシーズのゴタゴタがあったため当初はまともなフライトができなかったが、次第に仕事も増え、副機長になり、やりがいを持つ。

 大陸戦争時には開戦時にサンサルバシオンのサンプロフェッタ空港にいたため、しばらくは占領下のユージア大陸内でエルジア軍の監視のもと、仕事をする。

 だが2005年3月14日、38歳の時にストーンヘンジ開発に携わった技術者が亡命。亡命した技術者が偶然にも彼女が操縦しているエアイクシオン701便と、もう1つの702便に搭乗していたため、エルジア軍に追われる羽目になる。

 この時護衛に来たISAFの戦闘機が、あの伝説のエースパイロット『メビウス1』であり、彼女は傭兵時代を思い出しつつも、戦闘機動に魅せられていた。その後、ISAF司令部のあるロスカナスの空港に無事に着陸し、NALに1年以上振りに戻る。

 大陸戦争後はNALで仕事を続け、2023年、55歳に肉体的限界のためパイロットの仕事に終止符を打つ。その後はゼネラルリソースがユージアを乗っ取り、国が崩壊するなど大きな出来事が起こるが、故郷のノースポイントでひっそりと暮らしている。

 ちなみに、ウォードック隊2番機のケイ・ナガセ(長瀬ケイ)と、ディジョンが起こすウロボロスクーデター軍のメンバーのケイ・ナガセ(名賀瀬ケイ)とは別人で、苗字の読みは同じだが、漢字が異なる。

 

 

《エドガー・アイザック》

 

 

 1962年10月15日生まれ、32歳男性、ベルカ戦争以後生死不明、出身国不明。

 エースコンバットZEROの主人公であり、ガルム隊1番機、コールサイン『サイファー(ゼロ)』を務める黒髪白人男性。ベルカ戦争中盤で『円卓の鬼神』と呼ばれ、畏怖と敬意の狭間で生きたエースパイロット。

 性格は無機質。感情を表に出すことはまずない。狙った獲物は逃さない性分で、なんの躊躇もなく敵機を撃墜する。例え相手が戦意喪失していようと、かつての同僚であっても関係ない。彼が戦場に現れ数分もすれば敵性反応はゼロになる。このことから敵からは恐れられ、味方からは敬意を払われた。

 1990年頃にはすでに会社におり、ただならぬ存在感を出していた。彼は部隊を組むのが性に合わず、ベルカ戦争前は単独で行動していた。しかしベルカ戦争の際は、戦争の規模の大きさがあるためか上からの命令により、渋々部隊を編成する。この部隊がガルム隊である。そして、そこで2番機のラリー・フォルクや後の2番機のパトリック・ジェームズ・ベケットと出会うのである。

 彼自身が自分のことを語らないためか、彼の人間性に関しては全く不明で謎に包まれている存在である。2005年のOBCドキュメンタリー番組でも、2025年のベルカ戦争の情報開示でも、謎のままである。

 また、ベルカ戦争後に愛機のF-15Cと共に謎の失踪を遂げている。方向からしてユージア方面に向かったため捜索したものの、墜落した跡もなく、ユージア諸国に亡命した報告も無かった。

 また、大陸戦争でメビウス1の活躍ぶりが円卓の鬼神と共通点が多いことから同一人物説が挙がったが、サイファーの元2番機のラリー・フォルクがメビウス1本人に会った時に別人であることが判明した。

 このことから様々な憶測が飛んだが、結局は謎に包まれたままである。

 

 

《ラリー・フォルク》

 

 

 1966年6月6日生まれ、28歳男性、2028年11月29日没、享年62歳、出身国ベルカ。

 ガルム隊2番機、コールサイン『ピクシー(妖精)』を務める茶髪白人男性。

 元はベルカ空軍出身だが、ベルカの情勢は悪化していく一方だったため、1990年8月、24歳の時に軍を退役しマクミラン・マーセナリー社に入社した。

 ベルカ戦争開戦までの間、戦場で実力を上げ続けた。その結果、ラグテンコより劣るもののかなりの実力者になった。また、右翼を失ったまま帰還した記録を持つことから、『片羽の妖精』と呼ばれ広く知れ渡ることになった。

 性格は基本クールだが、たまにジョークを言う。仲間想いであり、無機質な性格のアイザックに対しても積極的にコミュニケーションをとっていた。ベルカの情勢に嫌気を差していたが、内心は祖国であるベルカの都市や大地を愛していた。彼は理想主義者であるが数々の人生経験から、理想ばかり見ていては痛い目にあうことを理解しており、現実を見る生き方をしようと努めている。しかし、そうとわかっていても理想に囚われる節がある。

 ベルカ戦争が開戦すると、傭兵としてウスティオに派遣された。この時、会社側からの部隊編成でアイザックが所属するガルム隊に編入することになった。

 当初は右翼派ベルカ人による侵略戦争だったため、元から右翼派のやり方を嫌っていた彼にとっては連合軍の反撃作戦には意欲的だった。しかし、戦況が進むにつれ核査察と称した連合軍のベルカ侵攻作戦が始まった。これに対して彼は、自分の生まれた国であり、罪のないベルカ人に手を出す連合軍のやり方に憤りを感じていた。

 この頃、連合軍の侵攻作戦に同じく反感を抱いていたオーシア空軍のウィザード隊1番機ジョシュア・ブリストーと知り合いになり、ジョシュアが提唱した『国境なき世界』によるクーデター計画の話を聞かされる。

 当初は彼にとっては過激な内容だったため、興味はあるものの迷いがあったため勧誘を断っていたが、ベルカ工業都市ホフヌングにてオーシア爆撃機部隊による精密爆撃と称した無差別爆撃を目の当たりにして、『国境なき世界』の参加を決断する。

 そして1995年6月6日の7つの核起爆の日、シューティア城北東にてベルカ爆撃機編隊と交戦中に核が起爆。この時の混乱を上手く利用し、ジョシュアの誘導もあって無事『国境なき世界』に参加する。悲しいことに、この日は29歳の誕生日でもあった。

 クーデター実行までの間、XB-OやADFX-01の奪取作戦を担当。着々と準備を進め、1995年12月25日にベルカ戦争の停戦条約を結んだ都市ルーメンにXB-Oによる爆撃を実行する。これをもって『国境なき世界』はクーデターを開始する。

 しかし、かつての相棒アイザックこと円卓の鬼神サイファーの活躍によって『国境なき世界』は追い詰められていく。終いにはアヴァロンダム突破を許しV2制御システムを破壊されてしまう。

 最後は切り札として、ラリーの操るV2発射装置を備え付けたADFX-02を出撃させ、アイザックの操るF-15Cとの決闘を繰り広げた。パイロットセンスと機体性能で互角の闘いを繰り広げていたが、一騎打ちの際に被弾し墜落する。

 幸いにもベイルアウトに成功し、冬の山岳地帯に着地する。その後数日かけて山を降り、長い道を歩いて核の爆心地に到着する。無惨にも破壊された街を見て、彼は涙を流した。悲しいことにその街は彼の生まれ故郷だったのである。『国境なき世界』に参加して、世界の国境を消し、戦争のない新たな秩序の理想の世界を作るはずが、全て失敗に終わった。皮肉にも彼は現実を見るよう意識していたのに、また理想を見てしまっていた。

 しかし、その姿を見ていた街の生き残りの住民に助けられ、しばらくの間住民と暮らすことになる。当初は精神的なショックから寝たきりだったが、辛くとも強く生きる住民を見て彼は元気付けられ、『国境なき世界』という理想を捨て再び前を向いて住民と生活を協力し合うようになった。

 1996年1月24日、廃墟の街に新生ベルカ軍が『国境なき世界』に参加していた彼を捜索しにやってくる。彼は自分自身の罪を償うため、自ら姿を見せ逮捕された。ベルカ北部の極寒の山岳地帯にある刑務所に収容され、そこで国境の意味について考え始める。戦犯処理などで数々の取り調べを受け、刑務所から出所を許されたのは2003年8月9日、37歳の時だった。

 その後、国境の意味を確かめるため2005年4月16日、38歳の時に自ら大陸戦争の真っ只中のユージア大陸の小国デラルーシに赴き、デラルーシの義勇軍に参加しエルジア軍と地上で戦った。

 大陸戦争が終結すると、エルジア軍残党団との戦いが中心となりISAF軍も本格的にサポートに入ることになる。このとき彼はメビウス1の正体はアイザックではないかと睨んでいた。丁度作戦を共にする機会があったため挨拶しにいったものの、全くの別人であることが判明した。

 同年11月25日には戦いの合間を縫って、OBCドキュメンタリー番組のインタビューに応じた。OBCドキュメンタリー番組は『ベルカ戦争の隠された真実と鬼と呼ばれたひとりの傭兵』についてインタビューしており、アイザックに関することを色々と聞かされた。世間でもメビウス1の正体は円卓の鬼神ではないかと噂されていたが、このことについて質問されたとき彼はメビウス1に直接会い別人であることを確認したことを伝えた。

 その後も国境の意味を求め、小国の紛争地帯に便利屋として赴く。そして、数々の争いを見ていくうちに、国境とは『生きて帰るべき場所』を表していることに気付く。国のために戦う者が国境を越え戦い、戦いが終わると国境を越え自分の国に帰る。このときの戦った戦士たちの顔は安心した顔をしていた。これこそが国境の意味で、国境がなければ戦争なんて起きないかもしれないが、境目がなければどこまでが自分たちの居場所なのかがわからなくなってしまう。

 国境の意味を知った彼は2014年7月6日、48歳の時に生まれ故郷のベルカに帰って紛争とは無縁の便利屋を開き、ベルカ国民のために働いた。小さな便利屋のため大きな影響力を与えるほどではなかったが、ベルカ国民からは賞賛と感謝の声が多く上がっていた。

 時は流れ2025年6月6日、59歳の誕生日の日にベルカ戦争のより詳しい真実がルーメンより全世界に中継された。このときゲストとして彼が招待され、円卓の鬼神の人間性やその強さ、ベルカ出身者でありながら傭兵としてベルカと戦ったこと、『国境なき世界』参加の動機や目的など、全てを話した。この中継により彼は有名になり、それからも様々な番組からオファーを受けた。

 2027年、ゼネラルリソースが様々な企業を吸収して拡大し、次第に国境が意味をなさなくなり始めた。国境の意味を知った彼は、国境の重要性を番組を通じて訴えた。しかし、それに反してゼネラルリソースは拡大を続け、2028年にはベルカも飲み込まれてしまった。彼は反ゼネラルリソース派として活動するものの、ゼネラルリソースがGRDFを組織し始めたのを機に、反ゼネラルリソース派の鎮圧が始まった。彼もそのひとりで、最後まで国境の重要性を説きながらGRDFに逮捕され、かつて収容されていた旧ベルカ北部山岳地帯の刑務所に収容され、そこでも国境の重要性の他に独裁的なやり方のゼネラルリソースは将来報いを受けることを忠告していた。

 そして2028年11月29日、雪の降る寒い日の中、彼は反ゼネラルリソース派の中心人物のひとりとして処刑された。享年62歳。

 のちに彼の忠告通り、ゼネラルリソースは保守派と改革派で意見が割れ、改革派はニューコムとして独立する。そして冷戦状態に入り、2040年に企業戦争が幕を開けてしまうのである。そしてウロボロスによるクーデターにより、双方とも大きな傷を背負うことになるのである。




今回は時間がなく、投稿する余裕がありませんでした。しばらくは不定期投稿になると思います。
用語集は1995年の人物が多いため、種類別に分けようと思います。
本編の方はまだ書き留めていませんが、これからもよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

勢力ごとの兵器の流れについて

タイトルのまんまです。この設定を付け加えた方が読む上でわかりやすいかと思い作成しました。
まずはオーシア・ユークトバニア・ベルカの勢力のみ作りましたが、要望やこれから別勢力が必要だと感じたら追加します。
これは公式設定ではなく、僕の考えた独自設定なので食い違いがあると思いますが、ご了承ください。


 エスコン世界の兵器基準は現実世界より約15年先の技術である。そのため、エスコン暦1995年でも、西暦2010年水準の技術を持つ。

 

 

《オーシア》

 

 

 1995年頃

 

 

 現実世界のアメリカ・日本製兵器が主力。

 戦闘機については、F-22やF-35が運用されてから間もない頃である。現在の主力戦闘機はF-14シリーズ、F-15シリーズ、F-16シリーズ、F/A-18シリーズ。

 

 

 2010年頃

 

 

 F-22やF-35が主力になった他、グランダー社がエルジアの航空会社からライセンス生産しているX-02を運用し、F-14シリーズは退役させるか否かで議論が繰り広がれている。ADF-01 FALKENはまだ実験機の段階。

 

 

 2025年頃

 

 

 F-22やF-35、X-02の他にADF-01 FALKENやADF-02 FALKEN Zwieが主力になる。F-14シリーズは退役した他、F-15シリーズ、F-16シリーズ、F/A-18シリーズの退役も検討されている。

 R-100は完成間近の段階。

 

 

《ユークトバニア》

 

 

 1995年頃

 

 

 現実世界のロシア・ヨーロッパ諸国製兵器が主力。

 戦闘機については、Su-35BMやT-50は開発途中の段階である。現在の主力戦闘機はフランカーシリーズ、ファルクラムシリーズ、MiG-31、Typhoon、Rafale、JAS-39。

 

 

 2010年頃

 

 

 Su-35BMやT-50が主力になり、オーシア同様X-02も主力である。しかし、X-02は一部グランダー社製のため、環太平洋戦争以前から癒着していた。

 

 

 2025年頃

 

 

 Su-35BMやT-50、X-02が主力の他にCFA-44をエストバキアからライセンス生産している。

 フランカーシリーズ、MiG-31、完全マルチロール化したTyphoonを除き、他の戦闘機は退役した。

 

 

《ベルカ》

 

 

 1995年頃

 

 

 現実世界でいう東西勢力兵器・実験兵器・試作兵器・架空兵器が主力。

 これはベルカ政権が右翼派に掌握される前、一部の兵器はオーシアまたはユークトバニアと共同で開発していたため、両国の兵器を所有している。しかも、その兵器を改良して、現実世界でいう実験兵器・試作兵器・架空兵器を開発し運用している。

 戦闘機については、旧式のF-4シリーズやMiG-21から、最新鋭機YF-23やSu-47、開発中の戦闘機ADFX-01と幅広い。

 これは他国の同一戦闘機に比べ、性能が高いからである。例えばユークトバニア製のSu-27とベルカ製のSu-27を比較しても差は大きい。その理由はベルカが当時最新の南ベルカ国営兵器産業廠製の複合材・エンジン・アビオニクスを採用していたことである。この技術はベルカしか持っていない、当時の最新技術である。この技術を採用した戦闘機は従来の+20%の性能を発揮する。

 現在の主力戦闘機はオーシア・ユークトバニアの主力戦闘機のに加え、F-15S/MTD、YF-23、Su-37、Su-47である。

 

 

 2010年頃

 

 

 ベルカ戦争で敗北したため、兵器生産能力が低下し、オーシアの一方的な終戦条約により、新型戦闘機を開発できない状態である。優秀なベルカ人技術者は世界各国に出し抜かれ、戦闘機の開発だけでもADF-01シリーズ、CFA-44、XFA-33、デルフィナスシリーズの開発に貢献している。

 主力戦闘機は1995年頃と変化がない。ADFX-01は終戦条約と設計データをオーシアに奪われたため、国内で量産できない。

 

 

 2025年頃

 

 

 主力戦闘機に変化はなく、完全に時代遅れになる。

 その事実を受け入れられない右翼派ベルカ人は似た境遇の右翼派エルジア人と密かに結託し、ユージア大陸のポート・エドワーズに会社を立ち上げる。その会社こそがゼネラルリソースであり、後の国家崩壊・企業戦争の元凶である。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。