マクロスF Formula (漆黒龍)
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目覚めた世界は

はい、一話目です。
そんなに変わってないかな?


広大な宇宙、漆黒の海に輝く無数の星。

ココは地球から、太陽系から遥か遠く。

太陽系とは違う星系が連なる場所。

漂う一機のMS、その中で彼は目覚めた。

 

 

 

--------------------

 

 

 

世界は美しい。

今まさにそう感じる。

漆黒の宇宙に浮かぶ、地球を思わせる青い海の星、

火星のような赤い灼熱の星、土星のような輪が二つ付いた不思議な緑の星。

翔る彗星、流れ星。

視界いっぱいに映る、光る無限の星々。銀河の渦。

此処は何処だろうか。

なぜ、俺はこんな所にいるのだろうか。

腕を動かしてみる。

視界に映るのは何処かで見たことがある白亜の装甲に覆われた腕、黒い手、マニピュレーター。

視線を左に移す。

左肩には白亜の装甲に赤色で91の文字。右肩に視線を移せば同じく赤のFの文字。

さらに視線を動かす。

青い体、腰辺りから下は腕と同じく白亜の装甲、青いつま先。

まるで……、これではまるで、

 

ガ ン ダ ム じゃないか。

 

感覚が走る。ぼやけていた感覚と頭が急激にクリアーになる。

慌てふためきパニックになるかと思いきや、彼は至極冷静だった。

分かる。

というか、忘れかけていたモノを思い出す。

それはコイツの動かし方。……一先ず同調《リンク》解除。

一瞬の暗転、瞬きにも満たない時間で視界にはコックピットが映る。

すぐさまコックピットハッチオープン、生身のまま外に出る。

久々のこの感覚。

そのまま少し漂い、宇宙を感じる。寒い、けど……久々の宇宙は変わらず綺麗で、静かだった。

そして、今まで乗り込んでいたガンダムを見る。

白色の二対の角、ツインアイ、ガンダム特有の顔、スマートなボディ、両肩アーマーのF91の文字。

細部が若干違うが間違い無い、ガンダムF91だ。

見間違う訳が無い、俺の愛機……一番好きなガンダムだ。

だが何故だろう、ココに居ることとコイツに乗っていることに疑問を一切感じない。

不思議だ……。

と、ココで失敗に気づく。

ノーマルスーツもバックパックも無しに宇宙に出たもんだからF91に戻れない。

困った。生身AMBACで頑張るか?向こうから来てくれれば助かるのだが……。

と思うとF91のツインアイが青く光り、背部のメインスラスターから青い粒子を音も無く放ち、

手の届くところまでやって来た。

 

「マジか……」

 

宇宙空間で声を出せたのも聞こえたのもビックリだが、思っただけで動くのは衝撃だった。

そして疑問が生まれた。

スラスターから出た青い粒子のことだ。

そう思うや否や、再び乗り込み機体データを出す。

疑い半分だったが、やはり念じれば反応してくれた。

空中に数十個のデータが出てくる。

 

「動力は……G-DRIVE Ω?GNドライヴじゃなくて?それに永久機関だって!?

じゃあさっきの青い粒子は……Ω粒子?特性は……GN粒子とほぼ同じか。

なら、このF91の特性は?

……冗談だろ、フル・サイコフレームだって!?

それになんだこの装甲強度は!超合金Zじゃあるまいし……。

武装は……ん?ブレードファンネル?凄いな……ビームサーベルをファンネルにしたのか。

んで補助にバイオセンサーね。

大気圏内飛行も難なく可能、か。

……出力、センサー、変換効率……デタラメだ、それに……極めつけはコレか……」

 

次々とガンダムに対して念じ、現れるモニターを見ていく。

モニターに出る数値はどれもこれもデタラメな数値、凄まじいの一言。

そして最後に出た《UG細胞》の文字。

その意味は……

 

「完璧なメンテナンスフリー機ってことか」

 

損傷しても自動修復しさらに強固な物へと改修、エネルギーも自動回復。

理解した、外見こそガンダムF91だが中身は全くの別物。

 

「理解したはいいが……これからどうするかな。

位置を見る限り太陽系はどこだよ、って感じだしな……」

 

目の前の木星の7倍はある惑星の大きさに驚きながらデータを出しては消していく。

うーん、と唸っていると何かの声と意思が頭を駆ける。

 

「なんだ、今の……歌?

それに叫びと願いのようなのが走った?

……この星の裏側……あっちか」

 

木星っぽい目の前にあるデカイ星、今いる位置から丁度反対側で何か感じる。

ダイレクト・リンク。モーションも完璧、各機能オールグリーン。

一瞬の暗転、視点がF91のモノになる。

 

「よし、F91……発進」

 

F91はメインスラスターから青い粒子が噴出し、凄まじいスピードで宇宙を駆けていった。

 

 

 

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僅か30秒で意思の固まった所に到着、戦闘の光りが見えた。

 

「光りが見えた!

え?あれは……マクロス?」

 

全貌が見える位置で停止。

先ほどの声を頼りに来てみれば見えたのは戦闘の光りと、巨大なドーム状の大型都市船に、

それに連なる形で数十個の長方形の環境艦が連結している巨大な宇宙船。

その周りには護衛の戦艦が陣取っている。

 

「間違い無い、マクロスに出てくる超長距離移民船団の船だ。

だが……知らない、もしかしてマクロスFか?

ちぃ!よりにもよって見てないヤツか……」

 

7までしか見てないからな……、こんな事態になるんだったら見ておくべきだった。

と後悔しても時既に遅し。

だが、黙って見過ごす訳にもいかない。

それに、このガンダムだったら……バルキリーの機動に余裕で着いていける。

 

「近いな、三機の小隊が何かに追われている……?

狙えるか?いや、当ててみせる。このガンダムなら」

 

人の気配、それも尋常じゃない位に焦りと恐怖を感じる。

その後方、三人を追う複数の生物から弱いが意思のようなモノを感じる。

 

ビームライフルを構える。

少し間を空け、そこから銃身を僅かに下にずらし、トリガー。

独特の発射音と共に、青いビームが発射される。

一つ。

すぐさま小隊の元へと向かいながら再び構え、今度は右に少しずらしトリガー。

二つ。

そのまま左へずらし、三発目。

三つ。

ざらつく感覚が走る。

あの虫みたいなのの残留思念か?だが、なんだ?怒りに似たような感じが……。

そう思いながらも一旦考えるのを止め、周りに気を張らせながら小隊に並びオープンで通信を繋ぐ。

 

「そこの新統合軍のナイトメア、聞こえるか?

こちらガンダムF91、無事か!?」

 

「き、聞こえる!!貴官か?さっきのビームは!?」

 

聞こえてきたのは自分とそう年は変わらないであろう若い男の声。

震える声から焦りと恐怖、安堵が渦巻いているのがよく分かる。

 

「そうだ、俺が狙撃した。

いいか、お前達は下がれ。ココは引き継ぐ。

そんな状態じゃまともに操縦すらできんぞ」

 

「りょ、了解。感謝する!!」

 

「ありがとうございます!!」

 

「助かりました!!」

 

隊長機に続き、後続の二機からも声。

同じく男が一人、もう一人は女性、これも若い。後退を促すと涙声で即答。

すぐさま反転し、母艦がいるであろう方向へと後退していった。

えらい動きが荒かったな、新兵……か?

いや、今はそんなことより……この虫みたいな奴らをどうにかしないとな。

 

一瞬だけ青い光りが身を包む。

サイコフレームを通して感覚がさらに広がる。

 

「そんなに数は多くない、この程度なら……」

 

機体を走らせ、ビームライフルを再び虫に向け一発、僅かに遅らせ二発目。

一発目のビームを虫は高速で回避、しかし二発目が回避した場所で命中。

それを確認することも無く既に二匹目、三匹目と仕留めてすぐ。

二機の見たことのないバルキリーが目に止まる。

 

「あの二機、相当の腕前だな。

それに……追加装備が付いているな」

 

と、見ていて白い方が狙われているのに気がつく。

だが傍から見れば……

 

「無防備すぎる」

 

その言葉と同時に、ビームが虫に命中し爆散する。

それに気づいたのか、白いバルキリーがガウォーク形態で寄って来る。

 

「すまない、助かった。礼を言う」

 

男の声、なかなかに覇気のある気配漂う気がした。

 

「いえ、何せ丁度良い的だったんでね」

 

「ハハハッ!そりゃそうか、あんな所で棒立ちだもんな。

……S.M.S所属ヘンリー・ギリアム大尉だ」

 

ガラス越し、ギリアムが敬礼したのでこちらも名乗りながら機体の敬礼で返す。

 

「俺はゼノン・グレイブ……所属と階級は無い、コイツはガンダムF91」

 

一瞬、前の階級を言おうと思ったがこの世界では意味は無いと思い何も言わずに答えた。

 

「なんだ?傭兵かなんかか?」

 

「あー、まぁそんなもんだ」

 

「なるほど、しかし始めて見る機体だな」

 

「ワンオフってヤツさ」

 

「へぇ~、っと!!」

 

虫の発射した赤いビームが通り過ぎる。

悠長に話していたので案の定、狙われた。

続けて砲撃が迫る。

即座に回避、二機で虫に向かう。

 

「戦場なのに悠長に話し過ぎたみたいだな!」

 

「そのようで……、援護する」

 

「了解!!」

 

ギリアム機は弾幕を高速で避けながら虫へ突撃。

F91はその場から上昇しながら虫へ向け三発。

同時にヴェスバーをそのまま後方に発射し、迫っていた虫二匹に命中させる。

 

「オオオオッ!!」

 

ギリアムが吼える。

高速で接近しながらミサイルで撃ち漏らした虫をバトロイドに変形し、

ガンポットで撃破、即座にファイターに戻り縦横無尽に宇宙を駆ける。

 

「凄いな、あのガンダムって機体。変形機構も無いのにバルキリーの機動に余裕で付いていってる。

それにあの射撃の正確さ、恐れ入るね。負けていられねぇなあ!!」

 

バトロイドに即座に変形、無数の虫をロックオンしミサイルを一斉発射。

 

「ギリアム!」

 

「オズマ隊長!」

 

全弾命中を確認すると、離れていた別の重装備の灰色のバルキリーがギリアム機に並ぶ。

 

「あの白いのは!?」

 

「味方です。あの機体はガンダムと言うらしいです、先ほど助けて貰いました。

あと乗っているのは傭兵らしいです」

 

その白い機体の戦闘を見て、オズマは思わず声を漏らす。

 

「……凄まじいな」

 

「ええ、射撃の正確さは正に百発百中って感じですね」

 

ここで二人の目に映ったのは青く光る剣で虫、バジュラを斬り裂く姿。

 

「なっ!?」

 

「光りの剣!?ピンポイントバリアサーベルか?

いや、収束の仕方が違う……まさかビームサーベル!?」

 

「……何者なんだ、一体……」

 

爆発音が響く。

それで二人は我に返り、戦闘を再び開始した。

 

 

 

--------------------

 

 

 

戦闘が始まってからどれほど経っただろうか。

確実に数は減っているものの、減っている気がしない。

虫っぽい外見の所為もあるのだろう、どうしても数が無限に湧いているようにしか感じない。

 

「クソッ、抜けられた!!」

 

ギリアムは思わず叫ぶ。

撃ち漏らした大型が二体、中心都市への侵入を許してしまう。

 

「やらせねぇぞ!!」

 

即座にバトロイドからファイターに変形、

大気圏内ではデットウェイトになるスーパ-パックをパージし、空いた穴より都市に入る。

少し離れた所で、ゼノンに人々の意思が走る。

 

「何?抜けられたのかッ!?」

 

大型を真っ二つにし、都市の方を向く。

そこへ灰色の重装備のバルキリーが並ぶ。

 

「S.M.S所属オズマ・リーよりガンダムのゼノン・グレイブへ。応答されたし」

 

「こちらゼノン・グレイブ、何か」

 

通信機越しに聞こえたゼノンの声を聞き、オズマは疑問を持つ。

 

「(若い、ミシェルと同い年位か?)

俺はギリアムの上官だ、先ほどはギリアムを助けてくれたそうだな。感謝する」

 

「当然、それよりギリアムさん一人で都市に入っていったのを感じた。援護に向かいたい」

 

「なにッ?抜けられたのか!?

了解した、ココは引き継ぐから頼む!!」

 

「了解」

 

そう言うや否や、二機はそれぞれの戦場に向かった。

 

「ん?アイツ……なんて言った?感じたといったのか?」

 

オズマはそう疑問に思うも、赤い軌跡を残して迫るバジュラを前にそんな意識は薄れていった。

 

 

 

--------------------

 

 

 

都市船の中に入り、マクロスの広さを改めて実感する。

 

「やっぱ思った以上にデカイし広いな……」

 

その建物の中に見慣れた物もあるのに気づく。

渋谷の109、どこかで見たような中華街、アメリカを思わせる町並み、

オーストラリアのオペラ・ハウスそっくりの建物などなど。

ゼノンを圧巻させるには十分だった。

 

「凄い……。

ギリアムさん?」

 

観賞に浸っている場合ではなかった。

ゼノンはギリアムの極度の焦りを感じた。

 

「取り付かれたのか!?

場所は……あっちか!!」

 

最大加速、すぐに目視。

そこには大型に機体が捕まり、もがいている姿が目に映る。

同時に近くに人の反応。

男の荒い息遣い、女二人の恐怖の感情が走る。

 

「逃げ遅れたのがいる!?」

 

先に救出しようか一瞬迷うも再び視線を戻すと、このままではやられると判断したのか、

パワードスーツの様なものを着たギリアムはコックピットから出て銃を乱射している。

 

「ッ!?それは無謀過ぎる!!」

 

ゼノンは思わず叫ぶ。

咄嗟にビームライフルを構えようとするがある事を思い出し、ビームサーベルを手にする。

宇宙船《こういう》中でビームは駄目だ、接近戦でカタを付ける。

そして大型は銃を乱射しているギリアムをその手で掴む。

 

「棒立ちで乱射なんかしてるからッ!!」

 

思わず、苛立ちが言葉に出る。

ライフルを誰もいないであろう所に放り投げスラスターを噴かし一気に接近。

大型は気づくもこのF91のスピードの前では、もう遅い。

ギリアムを掴んでいる腕を斬り落とし、空いている方の手でキャッチ。

間髪入れずそのまま返す刃で高速で横一閃。

再びざらつく感情が頭を駆ける。

先ほども思ったのだが、この虫はほぼ同じ感情だった。

思考をしないのか?それともそういう生物なんだようか……いや、でも感情はちゃんとある……。

 

「またこの感じ……?

けど、今は!!」

 

すぐさまギリアムを拘束している手を剥がし安否を確認するため、

コックピットから降り、ギリアムの元へと向かう。

 

「ギリアムさん!無事ですか!?」

 

「う……ぁ、ゼノ、ンか。ハハ……また、助けられちまったな」

 

両腕は在らぬ方向に曲がり、口から血を垂らしながらも息絶え絶えでゼノンに話しかける。

 

「そう、ですね……。

(両腕の骨が完全に折れている、足は……一様無事だが激痛で立てるかどうか。)

おい、そこの三人!!安全な所まで行くからコッチに来い!!」

 

「あ、あぁ……」

 

ギリアムと似たようなパワードスーツのような物を着ている美男子一人、

緑の髪の小柄の女の子、ブロンドの美人が寄って来る。

さっき感じた三人か。

 

「ギリアムさん、S.M.Sの場所は何処です?」

 

「データを……渡す、すまん……少し眠、る」

 

データチップらしき物を受け取るとギリアムは激痛故に意識を手放す。

とは言っても、このデータチップは俺の機体には合わないのでどうしたものか。

 

「君、S.M.Sっていう所の場所を知っているか?」

 

「あ、あぁ分かるぞ」

 

「そうか、案内を頼む、F91の掌に乗ってくれ。君達も」

 

「……はい」

 

「え、ええ」

 

F91に念じ、右掌をを降ろさせる。

そこにギリアムを青年と共にゆっくりと乗せ、

他の者も全員乗ったのを確認するとコックピットに再び乗り込む。

F91の手に四人は少し窮屈だろうが少しの間だ、我慢してもらおう。

同調《リンク》し、F91を立たせS.M.Sに向かおうとしたその時、

自分に向けての明らかな敵意を感じた。

 

「上かッ!?」

 

右掌に乗っている四人に被害が出ぬよう優しく指を閉じて包むと同時に、

左腕のビームシールドを即座に展開し迫っていた攻撃を難なく防ぐ。

攻撃の元を見ると大型が迫るのが見える。

 

「ビームライフルを取りに行っていたんじゃ間に合わない……」

 

横目でチラリと道路の上に横たわっているビームライフルを見る。

というか、そもそもビームは使えない。

接近戦はもっと駄目だ、四人に負荷が掛かり過ぎる。

なら……

 

青い粒子が一瞬輝く。

 

「ファンネルッ!」

 

腰よりビームサーベルが二基飛び出し、不規則な機動で大型に高速で迫る。

大型はファンネルを落とそうとするもその機動に付いていけず、戸惑っている。

隙を見せた大型を上と下から貫く。

そのまま間髪入れず回転させ、大型を縦に真っ二つにする。

 

「す、すげぇ……」

 

指の間から戦闘を見ていた青年は、その凄まじさに思わず声に出してしまった。

 

「他は……いないか、よし。

君、S.M.Sまでの案内を頼む」

 

コントロールでブレードファンネルを腰部に戻し、周りに気配を感じないことを確認すると、

掌でコチラを見ている青年に声を掛ける。

 

「あぁ、S.M.Sはココからそう遠くは無い、あっちに向かってくれ」

 

と青年は北西の方角を指差す。

 

「わかった、しっかり掴まっていてくれ」

 

そう声をかけると、ゼノンはF91を北西の方角に向かわせた。

F91の手のひらに乗る民間人の三人。彼らに妙な感覚を感じながら異世界を進んだ。




更新ペースは一~二週間に一回を予定しています。
進行具合によっては色々と変わるかもしれません。


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機体設定 4/29

バイオコンピューターの説明追加。 3/31

G-DRIVE Ωについての数個項目削除と追加。 4/29


GUNDAM F91【Formula 91】

 

頭頂高 15.2m

 

全備重量 10.5t

 

出力 不明

 

推力 不明

 

主要機関 G-DRIVE Ω

 

 

 

外見の変化

 

ゼノンのパーソナルカラーである白と青に各所変更されている。

角(アンテナ)が白色になり、赤だった部分は青にカラーリング。

両肩にクロスボーンシリーズと同型のビームガン(サーベル)マウント増設。

右腕に同じくクロスボーンシリーズと同型のブランド・マーカーを設置。

左のビームシールド発生器、腰部の予備発生器もブランド・マーカーに変更。

フルドライヴ次にユニコーン程ではないが各装甲が展開する以外通常のF91と変わらず。

 

 

 

標準装備・武装・特殊兵装

 

ジー・ドライブ オメガ【G-DRIVE Ω】

本機の根幹を成す動力機関。

莫大なエネルギーとΩ粒子と呼ばれる特殊粒子を生み出す永久機関である。

G-DRIVEから放たれるΩ粒子は濃い青色であり、発射するビームも同じく濃い青色である。

Ω粒子は機体の推進力や姿勢制御に使われ、

周囲に散布する事によって電波通信やレーダー機器を妨害する効果を発揮し、

圧縮して射出する事でビーム兵器として火器にも転用できる。

ただし、マクロス世界において粒子を周囲に散布する事によって電波通信やレーダー機器を妨害する効果はOTM(Over Technology of Macross)を用いているフォールド通信誘導(フォールド航法技術を応用し電波を空間転移させる超広域通信システム)に現段階では意味は成さない。

 

ヴェスバー V.S.B.R【Variable Speed Beam Rifle】

可変速ビームライフル。

特徴はその名の通り発射するビームの収束率の調節と、射出速度の調節が出来ることである。

どちらとも連続帯域での調整が可能である。

例えを上げると、対象物の耐久力や距離に応じて高速で貫通力の高いビームから、

低速で威力を重視したビームまでを状況に応じて撃ち分けることができ、

それ故に通常の攻撃では貫通・突破不可能だったシールドを容易く貫通することが可能。

なお、デフォルトで大方のモノは簡単に貫通可能である。

本機のV.S.B.Rはチャージショットも可能である。

 

メーザー・ヴァイブレーション・ダガー MVD【Maser Vibration Dagger】

刀身を超高周波振動させ対象を切断する、小型の実体剣。

クロスボーンガンダムと同じく左右脚部の足の裏、土踏まずに各1本ずつ合計2本が装備されている。

主に奇襲攻撃用武装である。高速で射出する事もできる。

刃の部分だけ足の裏から出した状態で、敵を蹴りつけるようにして攻撃する事も可能。

形状的にはハンドガード付きのダガーナイフに似る。

 

ブレードファンネル【Blade Funnel】

その名の通り、ビームサーベルのファンネル。

従来のファンネルのような射撃攻撃によるオールレンジ攻撃ではなく、

ビームサーベルによる近接攻撃でのオールレンジ攻撃を目的とし、

「防ぎようの無い剣戟」をコンセプトに開発された武装。

操作方法はいままで通り、サイコミュによる無線誘導である。

なお操作には本武装の特性故、通常のファンネル操作以上に高い空間認識能力が必要である。

大気圏内でも使用は可能。

外見は普通のビームサーベルと変わらず、

ファンネルとしてではなく通常運用も可能である。

なお、本機に搭載されているビームサーベル×6は全てこの仕様である。

 

■■■■■■■■【■■■■■■■■■■】

極秘密武装。

切り札。

 

 

 

追加特殊機能、その他

 

全身のフレームをフル・サイコフレーム化。

フレーム発光色は青。

 

動力の変更。

それに伴う各出力上昇。

剛性強化。

エネルギー変換効率の上昇。

各種センサーの変更、強化。

バイオコンピューターの他、バイオセンサーの搭載。

オメガ・ドライブユニットの搭載。

ビームサーベルのビームザンバー化。

ビームシールド発生器をブランド・マーカーに変更、強化。

UG細胞による完璧なメンテナンスフリー化。

 

操縦方法をMTS【モビルトレースシステム】改良型に変更。

コックピット内部はMTSと似ている360℃全天周囲モニター。

機体の状況がそのまま操縦者に影響する。

文字通り、機体と一体になり、感覚も共有する。

浮いていれば体は浮き、地面に脚が着いていれば操縦者も立つことになる。

脳波のみでのコントロールも可能である。

コックピットから降りていても脳波のみで簡単な操作は可能である。

 

バイオコンピュータ

本来、F91に搭載されているバイオコンピューターはパイロットへ肉体的、精神的な負担をかけない次世代サイコミュの雛形として開発された物であるが、パイロットとしても超一流に完成し精神的にも幾多の戦場を生き残り確固たる覚悟を持ち、肉体的にもガンダムファイターにも負けない程に強靭なゼノンにとってそこいらのリミッターは邪魔にしかならない。

故に、本機に搭載されているバイオコンピューターは機体とパイロットとの同調性を高めるために特化されている。

そしてその情報をUG細胞に反映させ、文字通り人機一体へと近づける。

(ただし、ゲッターみたいに同化はしない、させない)

現時点でリミッターは武装に一つ、その制御に一つ課せられている。

 

MEPE【Metal Peel-off effect】

F91の代名詞と言っても良いこの機能。

剥離した金属片による副作用効果で作り出される質量を持った残像を作り出すものなのだが、こんな半欠陥機能は本機では排除されている。

 

フェイスガード

温度の上がった頭部のバイオコンピューターを重点的に冷却する冷却触媒を排出するための機能なのだが本機のフェイスガード・オープンはただ単に威圧目的のみの機能である。

 

UG細胞

本機の構成材であり、あらゆる環境下での活動が可能な生物的要素を備えたナノマシンで「自己進化」「自己再生」「自己増殖」の3大理論を備えた究極の機体である。

本来ならば汚染物質の分子レベルでの除去などを行うことで地球環境の浄化に大いに役立つ物であるが、本機のUG細胞は戦闘に比重を置いているため(あらゆる構成物を自身の支配下に置く等)どちらかといえばDG細胞に近いかもしれない。しかしDG細胞のように暴走は起こさないのはUG細胞のままだからだろう。

ゼノンは意図的にリミッターを掛けている。それは無作為にUG細胞が働かぬように危機的な勘からである。しかし本機のUG細胞はゼノンを絶対としているので彼の命令がない限り周囲を蹂躙したりはしないのだが、ゼノン自身は知らない。

 

 

 

武装

 

頭部バルカン砲×2

 

胸部メガマシンキャノン×2

 

肩部ビームガン(サーベル)×2

 

ヴェスバー×2

背部。

 

ビームシールド×2

両腕に各一個。ブランド・マーカーに変更。

 

予備ビームシールド×1

腰のビームランチャーマウントの下。同じくブランド・マーカーに変更。

 

MVD(メーザー・ヴァイブレーション・ダガー)×2

左右の脚部の土踏まず部分に各一個。

 

ビームサーベル×4

左右の腰に2個づつ。

 

ビームライフル×1

手持ち。腰にマウント可能。

 

ビームランチャー×1

腰のマウント。



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人物設定

基本的には追加要素等を加える予定はありませんが、もしかしたら何か加えるかも。


偽名

ゼノン・グレイブ

 

本名

■■ ■

 

性別

 

年齢

不明

 

身長

176cm

 

体重

71kg

 

黒髪のオールバック

 

黒目

 

 

 

説明・特殊能力等。

 

本作の主人公。

どっか別の世界行きたい。

と、取りあえず願ったはいいが何の予告もお告げも確認も無く世界から異世界への旅に出てしまった奴(二度目)。

純粋な日本人であり、黒髪黒目。髪型はオールバック。

性格は自分自身は普通だと思っているが、周りからの評価は少々変わった奴で通っている。

名前は本名ではなく、ゲーム等で使っていた名前を取りあえず名乗っている。

日本人なので勿論漢字で苗字が二文字、名前一文字であるが、特に隠す気はないので聞かれれば答えるつもりでいる。しかし、行く世界が宇宙時代なだけに黒髪黒目で洋名でも怪しまれていない。

一番上に着る服の腕を必ず数回捲くる癖があり、故に半袖は絶対に着ない。

夏でもYシャツを着用し、袖を捲っている。

 

実は二度目の世界移動。

一度目はU.C.の一年戦争が始まる十年前に移動している。

そこから地球連邦軍に入隊し戦闘機のパイロットとして腕を磨き、

紆余曲折が多々あり、RX78-1のパイロットに任命される。

そして運命の年U.C.0079、サイド7にて最終演習中の所をジオンのMSザクの強襲を受ける。

必然と偶然が重なりRX78-2のパイロットとなったアムロ・レイと共に撃破。

以降は後に伝説のNT部隊と呼ばれるホワイトベース隊と行動を共にする。

そして白き流星のアムロ・レイと並び、ジオンからは青き刃として恐れられる。

そして一年戦争を終結させた後、グリプス戦役、第一次、第二次ネオ・ジオン戦争を戦い抜く。

アクシズ落下の際、サイコフレームの共鳴によって奇跡を見せたアムロの想いを受けた人々を信じ、一時パイロットを引退する。

しかし未だに争いを止めない人々に人の心の光りを思い出させようと決意しパイロットに復帰。

だが、人々は止まらなかった。

La+戦役、マフティーの動乱、オールズ・モビルズ戦役、コスモ・バビロニア建国戦争、

木星戦役、神の雷計画、ザンスカール戦争。

後世に伝えられる大きな戦争の殆どに参加し、戦い抜いている。

ザンスカール戦争が終わってから、やっと地球は一時的に平穏を取り戻し、

部屋へ戻り意識を落としたら元の世界の自身が消えた年数、時間に何故か戻っていた。

そこから五年、平穏な時を過ごすも再び世界への移動をしてしまい、現在に至っている。

 

身体能力はガンダムファイターにも引けを取らない程。射撃より格闘を好むも機体は射撃寄り。

ファンネル等の無線誘導兵器をピンポイント狙撃、斬りを可能とするほど空間認識能力も高い。

NTの資質はカミーユには及ばないが、かなり高い方である。

純粋なパイロットの腕だけ見てもアムロと並ぶ超一流の腕を持っている。

射撃ではアムロ、格闘ではゼノンが僅かに勝っている。

それ以外はほぼ拮抗していると言っても良い。

 

不老不死

世界移動の際に発現したモノ、というより奥底に眠っていた彼の本質が能力化したモノ。

故に彼は自分は戦い続ける宿命にあるのだろうと覚悟を持っている。

 

 

服装

 

黒地に細めの青、白の縦のストライプが入ったYシャツ

 

白無地Tシャツ

 

右手首に黒のリストバンド

 

黒のカーゴパンツ

 

タクティカルブーツ(ブーツインはしない)

 

 

 

持ち物

 

愛用G-SHOCK

 

青い宝石のついた指輪

 

F91のビームサーベルを人間が扱えるサイズにした物(ライトセーバーな感じ)



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S.M.S





火の手があちこちに上がり、美しかったであろう街並みは今は崩れ、荒れ、破壊されている。

ゼノンはF91でS.M.Sに向かいながらその様子を空をから悲痛な表情で眺めていた。

ふと右掌に乗っている三人の男女も眼下を見て絶望の表情を浮かべていた。

暫くし、黄色い文字に黒で縁取りされたS.M.Sの文字が書いてある建物が見えた辺りで上から熱源が一つ、

ガウォーク形態の見覚えのある灰色の重装備バルキリーが上空から接近して来た。

 

「ゼノン・グレイブ、聞こえるな?

そっちじゃなく横に見える昇降機を使ってマクロス・クォーターに来てくれ」

 

確かオズマ・リーだったか?

マクロス・クォーターが何なのかは知らないが、今はギリアムさんの状態を早急に伝える必要がある。

 

「さっきの……ギリアムさんが重症を負いました。急ぎ医療施設に行かないと危険です。

あと逃げ遅れた民間人三名を保護しました」

 

「なんだと!?ギリアムが?

わかった、クォーターの医療スタッフを昇降機の入り口前に待機させとくように言っておく」

 

「お願いします」

 

オズマ機の先導によって昇降機であっという間にマクロス・クォーターに到着する。

とは言っても、目に映ったは普通の格納庫なのだが。

振動を極力出さないようそっとF91の片膝を着き、ギリアムさん含む四人を降ろす。

それを確認するや否や待機していた医療スタッフがギリアムを運んでいく。

同時にS.M.Sの隊員が先ほど保護した三人を誘導しようとするのだが、何やら騒がしい。

金髪の美人に人が群がっているように見えるな。

とここで外部マイク越しに大声がコックピット内に響く。

 

「ランカ!!無事か!?」

 

「え?お兄ちゃん!?」

 

緑髪の小柄な子にオズマ・リーが声を掛けているのを横目に見ながら、

誘導に従いF91を空いているスペースに立たせ、コックピットから出る。

ワイヤーに足を引っ掛け、この世界に初めて自分の足で降り立つ。

 

「へぇ……オズマさんとあの子は兄妹なんだ。似てないけど面白い偶然だな」

 

そう呟やいているとコチラに気づいたのか、助けた三人が寄って来る。

 

「助かったわ、お礼に今度私のライブにタダで入れてあげる。じゃね」

 

「あ、あぁ……」

 

金髪美人はそう言って隊員に誘導して貰いながら手をヒラヒラ振り、足早に去っていった。

なんだろう、歌か何かで売れている人なんだろうか。

 

「あ、ありがとうございます、助けていただいて……」

 

「ありがとうございます、助かりました」

 

「ああ、二人とも大きな怪我が無くて良かったよ」

 

二人まとめて挨拶。

緑髪の子、確かランカって言ってたな。まだ微かに震えているな。

と思っているとお兄さん、オズマ・リーが来てまだ何か言いたそうなランカちゃんを連れて格納庫から姿を消してしまった。

こっちの青年はさっきも思ったが、相当な美男子だな。

と、ここで青年が……

 

「あの、一つ聞いていいですか」

 

「ん?なんだ、あ~……」

 

「早乙女アルトです、貴方は……」

 

「ゼノン・グレイブだ。それで?」

 

お互い名乗り、握手。

 

「ゼノンさんの機体は……始めて見るんですが新型ですか?」

 

「ん~、簡単に言えばワンオフってやつ」

 

やはり男の子だろうか、こういうことに興味があるのは。

そこはやはりどの世界でも変わらないな。

 

「凄いですね……、名前はなんて言うんですか?」

 

「ガンダム、ガンダムF91だ」

 

「ガンダム……(やっぱりバルキリーとは根本的に違うな……)」

 

空というものに憧れ、何よりも好きであるアルトはバルキリーについての知識は一般よりは持っているだろう。

故に、バルキリーのような変形機構の有無は勿論、航空力学的な方面から見てもガンダムF91は飛行には向いていないと思えた。

しかしS.M.Sに案内してもらう最中、まるで重力など無いようにフワリと浮き上がったこの機体に興味が沸いた。

無論、人口制御によって重力はここフロンティアでもキチンと発生している。

だがこのガンダムという機体はバーニアやロケットの類など使わず浮いて見せたのだ。

ガンダム、と呟きながら早乙女アルトはF91を見上げる。

 

「ガンダムにはちゃんと意味もある」

 

ゼノンはそんなアルトの様子に苦笑いしながらそう口にした。

 

「あるんですか!?」

 

どうやら無いと思っていたらしい。

それもそうか、名前だけじゃ想像も検討もつかないだろう。

 

「あるさ、バルキリーも北欧神話の戦乙女のワルキューレから来ているだろ?」

 

「ええ、そうですね」

 

「ガンダム、その意味は『戦う為の力』だ」

 

「戦う為の……力」

 

「そうだ。

そしてそれは敵に対してだけでなく自分にも、運命に対しても……」

 

「……」

 

そう言いながら、ゼノンはF91を見上げながら黙ってしまう。

その様子に、その表情に、その目にアルトは何も言えなくなってしまった。

 

「……おっと、すまない。で、満足してくれたか?」

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

そしてまた会おうと言い合い、アルトは別の隊員に誘導されて格納庫から去っていった。

完全に扉が閉まり、それを確認すると雰囲気が一変する。

背中越しに感じるピリピリとしたモノに対してゼノンは一回、大きな溜息を吐いてから振り向く。

 

「さて……オズマ、さんでいいですか?できればその銃を降ろしてほしい」

 

振り返りながらいつの間にか隊服に着替え、ハンドガンを油断無く構えているオズマ・リーに対して言う。

その後ろには同じくライフルを構えている別の隊員が四名。

その後方、よく見えないが気配で青いバルキリーの陰にスナイパーが一人。

 

「本来なら俺やギリアムを助け、民間人を保護し、

尚且つ船団防衛にも尽力してくれたお前にこんな物は向けたくはないんだが……」

 

「だが……何です?」

 

「お前は何者だ?

調べてみたが、ゼノン・グレイブという者はこの船団には居ない。

それに加えそのガンダムとかいう機体、一傭兵が用意出切る様な代物とは思えん」

 

この空間……彼、ゼノン・グレイブにとって”詰み”の状況であるのにも関わらず、オズマの心中は穏やかではなかった。

確かな腕を持つ精鋭に周囲を押さえスナイパーの配置、いざという時のためにクァドランにも未だに搭乗しておいてある。

だが……この嫌な汗はなんだ。目の前とガンダムという機体の搭乗者の青年は静かにコチラを見ている。

焦りの色など無い、むしろこの程度と思っていそうなその眼光にオズマは嫌な未来が浮かんだ。

 

「……」

 

ほう、この短時間によく調べたもんだ。ってもマクロスという一種の閉鎖空間ではそんなもんか。

しかし流石、先ほど民間と聞いたがかなり優秀な軍事会社ってことか。

 

「……わかった、話すからその銃を降ろしてくれると嬉しい」

 

一瞬、オズマはその返答に戸惑いを覚えるも表情には極力出さないよう顔面を強張らせた。

お互い睨み合いこと数秒。

少し間があり、スッとオズマが銃を降ろすと後ろの数人も銃を降ろした。

雰囲気も幾分か柔らかくなるのを感じる。

だがスナイパーだけは視線を外しそうにないな。

 

「いいだろう、だが妙な抵抗はするなよ」

 

「しませんよ」

 

「よし、着いて来い」

 

周りを囲まれ、警戒されながらオズマの後ろを着いて行く。

内装は宇宙世紀の戦艦とそう変わらないもんなんだな、と思いながら歩を進る。

暫く歩き、分厚い扉を数回潜るとブリッジと思われる場所に到着。

目の前には顔に傷と髭を蓄えている壮年の艦長らしき人物。

右にグラマーな女性二人に青髪の子供、左に眼鏡のイケメンとショタ。

正面の奥にアフロの背の大きな男、横に三人の女性。

 

「マクロス・クォーター艦長、ジェフリー・ワイルダーだ。

よろしく、ゼノン・グレイブ君」

 

「ゼノン・グレイブです。よろしく、ワイルダー艦長」

 

お互い目を見ながら、握手……悪い人じゃないな、むしろブライトさんと同類かな?

それに流石、艦長だけあって鋭い眼光だ。顔の傷から察するに、相当の兵だな。

 

「さて、ゼノン君。

オズマ君にも聞いたと思うが、君とあの機体の事を話してくれるかな?」

 

雰囲気が少し、重くなる。

どうしたものか、嘘をつくにもメリットが無い。無用な戦闘は避けたいしな。

いっそのこと正直に話すか?見たところ嫌な雰囲気の奴は居ないし……。

 

「……わかりました、その変わりココの目と耳を塞いで欲しいのですが」

 

「……いいだろう」

 

ジェフリーは首だけを後ろに動かし頷くと三人の女性の内一人がコンソロールに向かい、

ボードを数回叩き、戻ってきて敬礼をして再び元の位置へ戻った。

 

「これでこれから君の話す事は我々意外には漏れることも無い。

安心したまえ、ココにいる者達はそういう心配は無い、私が保証しよう」

 

「……わかりました」

 

再度この場に居る人物を確認。

ジェフリー艦長、オズマさん、アフロの人、三人の女性、

青髪の子供、その左右にグラマーな女性二人、眼鏡の色男、ショタ。

 

一礼して、全員に向き合い言った。

 

「では、皆さん始めまして。

異世界人です」

 

「「「「「……は?」」」」」

 

 

 

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まあ説明は省く。

 

「フム……まるでSF小説のような話だな」

 

「俺としてはこの船も十分SFですけどね」

 

それも宇宙世紀以上に発展しているからな、超ド級。

 

「それは言えているな、一昔前は宇宙に出るだけで大騒ぎだったからな」

 

「それも衛星軌道を周るだけで」

 

ハハハと艦長と笑い合う。

 

「で、信じてもらえましたか?」

 

「君のガンダムという証拠もある、信じるほかないだろう。

ルカ君」

 

「はい」

 

ルカ、と呼ばれて前にタブレットのような端末を持ったショタが出てきた。

 

「はじめまして、ゼノンさん。ルカ・アンジェローニです」

 

「はじめまして、ゼノン・グレイブだ」

 

まだ若いな、と思いながら握手。

 

「勝手ですが、機体のデータを取らせてもらいました」

 

「かまわない、わかっていたからな」

 

「ん?それはどういう事かな?」

 

勝手に、なので当然反論なり何なりが出ると思っていたのか、

分かっていたなんて言うからジェフリーが疑問に思うのは当然である。

 

「それについて説明します。

彼とあの機体、ガンダムF91と言うんですが常にリンクしているんです」

 

「ふむ……どういうことかね?」

 

「そもそも機体の操縦方法がこの世界では考えられない物です。

パイロット自身の動きをそのまま伝えるという極めて特殊な物なんです」

 

「何!?

じゃああの動きをゼノンがやっていたというのか!?」

 

思わず声を上げたのはオズマ。

ココの誰にも負けない腕を持っているオズマから見ても、先ほどの動きは尋常ではなかったのである。

他の者はそれほどゼノンが”やる”ように見えなかったのか、疑惑の表情である。

 

「はい、システム面も完璧でタイムラグは無いです。

あとYF-21に搭載されていたBDIシステムに似た物も搭載されています。

BDIの方は機体に乗らないと反映されませんでしたが、

F91に搭載されている物は機体から降りていても脳波で操作ができるようです。

あと……よくわからないのですが全身のフレームがサイコ・フレームという特殊な物らしいです」

 

「サイコ・フレーム?」

 

「ええ、詳細を見ようとしたんですがこれ以上はどうやっても駄目だったんです」

 

「ルカでも駄目だったのか……」

 

と呟く眼鏡の色男。

まぁ、そうそう簡単に見せてたまるか。プロテクトは数万にも及ぶ、自己進化付きでね。

その後もF91に関する機体説明を数分。

簡単に言えば異世界の機体であると証明された。

 

「それで、艦長は俺とF91をどうするんですか?」

 

「そのことなんだが、君は迷子で無一文な訳だろ?」

 

ある程度は予想できていたが、この人の言い方は卑怯だな。

どこぞの野郎みたく、俺に構うな。とは言えない。

 

「……まぁ、そうですね」

 

「S.M.Sでその力を使ってみる気はないかね?」

 

それはそれは、願っても見ない誘いじゃないか。俺もその気だったけど。

しかし、冷静にいこう。

 

「いいのですか?」

 

「軍の方にはS.M.Sが独自に開発した新型と言えばいい。

それにココは軍とは独立している。

身寄りの無い君自身もそのほうがいいのではないかな?」

 

流石、お見通しで。軍だと最悪権力で処刑とか笑い事にもならない事態になりかねん。

容易く機体を解体させられたり処刑になる気は更々ないが俺VS船団(援軍有り)とか確実に死ねる。

観念したように一息吐き、ニヤッと笑いながら言う。

 

「流石ですね。

ではお言葉に甘えさせていただきます」

 

「よろしい、ではこれからよろしく頼むぞ、ゼノン君」

 

敬礼をしながら、改めて。

 

「了解です、艦長」

 

こちらも敬礼を返す。

そうしているとオズマさんが近づいてくる。

 

「お前の話を聞いてから、こうなるんじゃないかって思っていたら本当になっちまったな」

 

「俺もそんな気がしてましたけどね(半分は計算だが)」

 

フッと笑いあうも、スッと背筋を伸ばしオズマは改めて名乗る。

 

「S.M.Sスカル小隊リーダー、オズマ・リー少佐だ。

コールサインはスカル1(リーダー)、よろしく頼む」

 

「S.M.S所属になりましたゼノン・グレイブ、よろしくお願いします」

 

その後も立て続けに名乗りあい、全員と面識を持った。

アフロのファンキーな人はオカマだと分かったが、良い人みたいだ。

 

こうしてゼノンはS.M.Sの所属となった。

しかし、何か引っかかっていた。

あの青年。早乙女アルトとは何故かまた会うと確信めいたモノが頭から離れなかった。

 

それは後日、現実となる。

そして、二人の歌姫と共に銀河を駆ける。




今話、次話の文章量は少なめです。

ではまた次回。


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再会と夜

少々遅くなりました。
今回も少々量は少ないです。



S.M.Sに入隊してから次の日。

部屋決めや他の隊員との軽い挨拶、格納庫でのガンダムの置き場、

コールサインや施設説明やらなんやらを済ませた後の夕方。

ゼノンは前の戦闘での負傷者が多く居る病院のとある部屋の前まで来ていた。

 

「ここか…」

 

病院らしい白で統一された清楚な印象を受けるドア。

その横の表札にはヘンリー・ギリアムの文字。

4回のノック。

 

「どうぞ」

 

聞こえてきたのはギリアムの割りと元気な声。

最後に話したのは助けた時以来なので、それを聞いて自然と顔が緩む。

了承を確認すると、ドアを開ける。

 

「失礼しま……」

 

そこまで言いかけて止まってしまった。

何故かというと中にいるはずの無い人物が居たからである。

 

「早乙女……アルト?」

 

「あ、ゼノンさん。また会いましたね」

 

そう、あの時助けた青年早乙女アルトが居たのである。

 

「あ、あぁ。しかしどうしたんだ?」

 

「それは……」

 

アルトがその理由を話そうと口を開いた瞬間、背後から三者の声が重なる。

 

「それについては俺から話そう」

 

ドアの開く音と共に後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「オズマさん」

 

後ろを振り返りながらそう言うと軽く手を出して少し待て、の合図。

コツコツと規則正しい間隔で歩を進めゼノンの前を通り過ぎギリアムの前まで来る。

 

「元気そうだな、ギリアム」

 

慣れ親しんだ友同士特有の雰囲気の挨拶の中、ゼノンはオズマの揺れる瞳を見た。

安堵したような、悲しいような……そんな目でギリアムを見た気がした。

聞いた話では、オズマとギリアムはS.M.Sに入る前までは新統合軍で同じ部隊にいたそうだ。

S.M.Sでも古参らしい。

 

「ええ、腕はこんなんですが他は大丈夫です。

わざわざありがとうございます、隊長」

 

両腕にギブスを付け、天井から吊るされている腕に目配せしながらも、

二カッと歯を見せながら笑うギリアム。

 

「いいんだ。

それより、いいのか」

 

「はい、医師から完治してもバルキリーの操縦は、もう無理だと。

いい機会だと思っています。

隊長達と共に戦えないのは残念ですが、妻と子供のこともあります。

キチンと父親やって、あいつらを一番近くで守ってやりたいと思っています」

 

その話を聞き、ゼノンは嬉しいような悲しいような、微妙な気持ちになった。

確かにS.M.Sを辞めればごく普通の父親として生活できるだろう。

それにS.M.Sに勤めることは関係者以外には口外無用の守秘義務が課せられている。

さらに民間企業であるS.M.Sの被雇用者は軍人ではないため、戦闘行動中に殉職した場合も事故死の扱いとなり、

戦没者墓地への埋葬などの栄誉は与えられず、遺族にも詳細な事実が伝えられない。

家族がいるギリアムにとってそれは仕方ない事なのだが、家族から見れば意味不明だろう。

それにいざ戦いとなり家族を連れて逃げる傍ら、戦っている元同僚達を見て疼くだろう。

心苦しく、悔しい思いもイッパイになるだろう。

しかし、家族の為、子供の為。

 

「……そうか」

 

「それでなんですが、俺の機体をコイツに継いでもらいたいんですよ」

 

「なに!?」

 

顎をクイッと動かし、アルトを指す。

流石のオズマも驚いた声を上げ、ゼノンも目を見開いている。

しかしいち早く考えを巡らせたオズマは口を開く。

 

「いくらお前の頼みでもそれは無理だ。

確かにお前の後は決まってはいないが、コイツにそれができるとは思えん。

それに軍事機密を見た傍ら、コイツの……早乙女アルトの処分は我々S.M.Sがやることになっている」

 

「だからですよ、隊長だってランカちゃんを”裏”から逃がしたじゃないですか」

 

ニヤリ、と悪い笑みを浮かべるギリアム。

身内だからといって軍の最高機密を見たのだ、ただでは済まない筈なのだがそこは隊長権限。

 

「う……、だがそれとこれとは話が別だ」

 

効果音付けるならギクリ、と言ったところか。

そしてその時、ゼノンは見た。

ランカのことを言われた瞬間、オズマの汗の尋常じゃない出方を。

 

「そうでもないですぜ、隊長。

コイツと一緒に救出、保護されたシェリル・ノームだって何やかんやでお咎め無し。

ランカちゃんは隊長が裏から。

残っているのは、コイツだけ。

ちょっと理不尽じゃないですかい?」

 

「それは……そうだが……」

お、揺れているな。

俺もせっかくアルト青年を助けられたのに不相応な処分を受けたんじゃ俺も気分が悪い。

ここは俺も加わってもう一押し、ってところか。

 

「……なら、入隊テストをやってみたらどうです?」

 

「本気か、ギリアム!?こんな素人に……」

 

「オズマさん」

 

スッと会話の最中にゼノンが割り込む。

ゼノンが沈黙を貫くと思っていたのか、全員の視線がゼノンに向く。

 

「いいんじゃないですか?入隊テスト」

 

「ゼノン、お前まで……」

 

「元はと言えば俺の所為もあります。

あそこで保護せず近くのシェルターに連れて行かなかったのは俺の判断ミスです」

 

「それは……」

 

そう、重症のギリアムと共に居たのだが無理にS.M.Sを目指さなくても良かった筈。

軍人は市民を守るのが第一。ギリアムは軍人である。それだけで説明が付く。

近くのシェルターで三人を降ろし、そこからS.M.Sに向かっても良かった筈だ。

考え込むオズマ、その隙にギリアムはアルトに目配せをする。

そこでハッとしたのか、アルトは勢い良く立ち上がり声を出す。

 

「俺からも、お願いします!!」

 

そう言うと同時に頭を下げる。

その様子をオズマは厳しい視線で見る。

 

「……理由を聞こうか」

 

「俺は……目の前でギリアムさんが苦しんでいるのに叫ぶこともできなかった。

EX-ギアを着けていて飛べるのに、恐怖で何もできなかった……。

それが悔しかった。

あいつを助ける時は飛べたんだ、必死だったけど飛べて助けられたんだ。なのに……!!」

 

拳を握り締める音が室内に響く。

その様子を見たオズマは静かに口を開く。

 

「……いいだろう、早乙女アルト。ギリアムとゼノンの頼みだ。

手続きもある、明後日……二日後の午前7時にS.M.Sの前に来い」

 

「は、はいッ!!」

 

それを聞いたアルトは勢い良く返事をし、頭を下げた。

その様子を見たゼノンとギリアムはニヤリと笑い合った。

はてさて、どうなることやら。

 

その後アルトは帰り、ゼノンはオズマとギリアムと少し話し、

途中から来た奥さんと娘にお礼を言われ、なんだかむず痒い思いをした。

 

帰りの道を歩く中、ゼノンはアルトに見たイメージを思い返していた。

アルトに見たイメージは青い空。

なんでかやたらと飛ぶことが似合う奴だと思った。

何の因果か、飛ぶための翼を手に入れたがソレが戦場の空になるなんてな……。

 

不思議とゼノンはアルトと共に飛ぶイメージは明確に想像できた。

何でだろうか。

まだ入隊も決まっていないのに、変な確信めいた予感があった。

 

妙なワクワク感を潜ませながら、ゼノンは明日を待つのであった。

 

 

 

--------------------

 

 

 

夜になり、街の光りも少なくなった頃。

ゼノンは街を眺められるグリフィスパークという場所に来ていた。

 

「異世界か……」

 

そう呟きながら草を踏む独特の感触と音を楽しみながら歩く。

眺めの良いベンチを見つけたので珈琲を横に置き、座り街を眺める。

ゆっくりと深呼吸。

視線を街から上に向ける。

 

「見たこと無い星ばかりだな……

お、あれは鯛焼きに見えるな……」

 

そう呟き、改めて自分が異世界に来たのだということを実感する。

一度目は同じ異世界でも地球圏を出ることは無かった。

しかし今度は地球からは遥か遠くの宇宙。

そう思うと心に妙な寂しさが通り過ぎた。

暫く星を眺め、時たま吹き抜ける風の心地良さと揺れる草木の音を聞く。

 

「こういうところは違わないんだな」

 

地球の風と寸分変わらない自然の起こり。

僅かな違和感はあるがその技術に関心しながらも、星を見ていて何か物足りなさを感じる。

なんだろうか?と暫く考えていると、

 

「あ」

 

と自分でも面白い位な間抜けな声を出して、気がつく。

地球に居れば毎夜でもないが、必ず見ていたモノ。

夜の暗闇を照らしていてくれた優しい光。

魔の光。

 

「そうか……そうだったな。

ココには月がないんだったな」

 

妙に寂しい気持ちになりながらも、ゼノンは夜を過ごした。

 




次回は入隊テスト。
それなりに量は多くしたいと思っています。

ではまた次回。


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入隊テスト

遅くなってすいません。
所謂、リアルがかなーり忙しいというやつです。

どうにか次話は一週間後には仕上げたいと思います。


どんな物事でも、思っていると時が経つのは何かと早いものである。

約束や試験や試合、遠足やデートなど色々とその日が近づくにつれ、思うもの。

楽しみだったり、恐怖だったり、緊張だったりと、理由は人それぞれ。

まぁ、マクロスの中で言うのも何か抵抗があるが、空は快晴である。

日差しを受けて、早乙女アルトは臆すことなくS.M.Sに来た。

やってきた約束の日、早乙女アルト入隊テスト当日。

早乙女アルトは確かな意思を瞳に宿し、S.M.Sに足を踏み入れた。

 

 

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マクロス・クォーターハンガー内。

整備士がどこかめんどくさそうに、しかし愛おしそうに機体を整備している。

そんなS.M.Sでの日常的な光景の中、白い二つの機体が並ぶその下。

パイロットスーツに着替えた二人は来るその時がもうすぐだというのに、雑談をしていた。

 

「へぇ、ランカちゃんが」

 

「ああ、今頃歌っている筈だ」

 

その知らせをアルトから聞いたのは入隊試験が始まる直前……

ゼノンはいつもの服装のままだが、アルトはパイロットスーツに着替え自身の機体に乗る前の時だった。

発進まで後少しという時に、アルトが話しかけてきたのだ。

 

「ミス・マクロスか……」

 

たしか一番最初のミス・マクロスのコンテストは出来レースだったような気がしたな。

けど一般投票で番狂わせでリン・ミンメイが優勝したんだっけか。

そしてそれが物語の鍵になるなんて思いもしなかったな……。

 

「伝統なんだよ、一応な。

あ、あとゼノンにも会いたいって言ってたぞ」

 

「俺に?」

 

なんでまた?

 

「ああ。お礼がキチンと言えなかったから、って」

 

「あぁ……あの時無理やりオズマ隊長に連れて行かれたからなぁ」

 

「そうだよなぁ……

隊長に連れて行かれる時ゼノンにまだ何か言いたそうだったのは覚えてるよ」

 

ハハッと笑い合っているとスピーカーからオズマの怒鳴り声が響く。

 

『お前達、何をモタモタしている!!

すぐさま発進準備だっ!!』

 

そのあまりの大音量にキーンと耳が鳴る。うるせ。

 

「おうおう、耳が潰れちまうじゃねぇか。

さてアルト、覚悟はいいか」

 

「とっくに出来てるさ」

 

互いニヤリと笑いあい、拳を合わせる。

そのまま背を向けそれぞれの機体に乗り込んだ。

 

ゼノンはコックピットに乗り込む。

開いていたハッチが閉まり、真っ暗なコックピットに立ち、目を瞑り、で呟く。

 

「リンク」

 

その呟きと同時に、体の隅々まで感覚がシャープになる。

 

「各機能オールグリーン、トレース良好……」

 

頭の中に直接状況が伝わり、腕を動かし確かな感触を確かめる。

振動が伝わり、カタパルトへの移動が開始される。

各チェックを終えると、まるでタイミングを計ったように丁度カタパルトに到着する。

目を開く。

その目はF91のモノと同じになり、視界に映るのは果て無き宇宙と無限の星々。

隣のカタパルトにはアルトが乗るスーパーパック装備のVF-25。

向こうもコチラに気づいたのか、ニヤリと笑みを浮かべながら親指を立てた。

コチラもそれに返すように親指を立て……そのまま親指を下に向けた。

それを見て、アルトは一瞬呆けるも同じく親指を下に向け不適に笑った。

ここでオペレーターから通信が繋がる。

 

「どうもゼノンさん、専属オペレーターになったラム・ホアです。聞こえますか?」

 

「ああ、良好だ。流石はフォールド通信だな」

 

そう、実は突貫でフォールド通信機をF91に組み込ませてもらったのだ。

突貫、とは言ってもUG細胞のお蔭か、

通信機器そのものをコックピット内部の何処かに接触させれば勝手に取り込んでくれるので楽でいい。

困ったのは終わった後で整備の奴らとルカからどうやったらそんな短時間でできるんだ、

と問い詰められた時はマジでやばかった。あの血走った目は尋常じゃない。

整備といえば、F91専属の整備員が付くこととなった。

ルカ・アンジェローニである。

やはり異世界の機体ということで目を光らせて俺に取り次いできたのだ。

まぁ、詳しく打ち合わせをするのはこの入隊テスト後なんだけどね。

 

「でしょ~、ゼノンさんの世界じゃその粒子のせいでまともな通信ができなかったんでしょ?」

 

「ああ、レーダーとかも高濃度に散布されるとロクに機能しなかったからな」

 

まぁ、このΩ粒子じゃなくてミノフスキー粒子だけどね。

 

「その点じゃ心配無しです。

じゃ、あんまり話すと怒られるので、発進どうぞ」

 

「了解。ガンダムF91発進」

 

カタパルトとは言ってもバルキリー用の物を使わせてもらっているので、

MSのような射出装置は無いのでその場からスラスターを噴かして発進する。

アルト機もほぼ同時に発進し、横に並ぶ。

程なくして戦闘宙域に到着。

アルトから通信が入る。

 

「相手はゼントラン三人で構成されるピクシー小隊、年はまだ若いけど腕はベテラン、か……」

 

「ピクシー小隊……妖精(ピクシー)ねえ……」

 

ゼントラーディの女性三人で構成されるピクシー小隊。

クァドラン・レアで編成されるS.M.Sの中でも腕利きの部隊である。

さて、ここでなぜこの場にゼノンがいるのか疑問に思っただろう。

今回は早乙女アルトの入隊テストじゃないのか?と。

確かに今回は早乙女アルトの入隊テストでもある。

今回のテスト、厳密に言えばアルトとゼノンの入隊テストである。

なんで?と思うのも無理はない。

ゼノンは既に入隊済みなのに何故テストを受けなければならないのか?

説明には少々時間を戻さねばならない。

それは入隊テスト前のブリーフィングの時だった。

 

「てなわけでオズマ隊長、俺はアルトと一緒にテスト受けますんでよろしく」

 

「なにがてなわけで、だ!お前は既に入隊しているからテストを受けることは認められん」

 

「なぜです?確かに俺は入隊していますが、ちょっと特殊な方法で入ったんですよ。

それに、まだ視線が少し痛いのでね……」

 

そう、当然と言えば当然なのだが隊員の視線が痛い。

確かに入隊したのだが、これは特例であり他の者達のように正規のテストを受けた訳ではない。

その者達から見ればゼノンは「なんだコイツ」てな感じで見られている。

 

「ふむ……しかしだな……」

 

上からのお達しでゼノンは既に入隊は済んでいる。

腕も自分がしっかりと皆に伝えたので問題はないはず……。

だがしかし納得していない者もいることは事実、良い機会なのか?

そう考え込むオズマに以外なところから声が掛かる。

 

「いいんじゃないですか、隊長」

 

「ミシェル……」

 

そう、眼鏡の色男ミハエル・ブランだ。

 

「俺達の殆どがゼノンの実力を知りません。

他の隊員達にとっても示しになると思います。その変わり……」

 

彼の言う通りである。

ゼノンの実力を知っているのは実際ソレを見たオズマとギリアム、

後で僅かにしか映っていないが、記録映像で見たジェフリーだけ。

確かに丁度良い機会である。

そう思っているオズマはミシェルの提案に乗ることにした。

 

「どうです?

俺もピクシーと一緒に出てアルトとゼノンのコンビを試すってのは?」

 

「……いいだろう、許可する」

 

「ありがとうございます」

 

慣れた動作で敬礼をし、ルカに声を掛け去って行く。

その去り際にゼノンにニヤリと笑いかけ、足早に去っていった。

 

その笑みにゼノンは何かあると感じた。

 

「よし、早乙女アルト、ゼノン・グレイブ両名は自機で指示があるまで待機」

 

「「了解」」

 

てな感じで回想終了。

場面は戻る。

 

 

 

--------------------

 

 

 

意思が走る。

敵意まではいかないが、それなりに自分達に向けられたモノに気づく。

 

「来るぞ、アルト……四つの意思がコチラに向かってくる」

 

ん?あれ?四つだって?

 

「あ、あぁ(意思?ゼノンは何を……?)」

 

前方を見つめるF91のツインアイがゼノンの意思に呼応するように青く光る。

 

「(この感じは……ミハエルか。なるほど。

だが姿が見えないな、気配は感じるが上手く隠れている……さすがスナイパー)

……牽制する」

 

あの時の笑みはこういうことだったのか。

そう思いながらゼノンは遥か先の光と捉える。

見えるには見えるのだが、それこそ米粒程の三つの光りの尾。

周りの星の光と一瞬見間違えてしまうのではないかというくらい小さな光。

しかしゼノンの眼にははっきりと見えている。

その場から若干上昇し、ビームライフルを二発発射。

無論、当てる気は無い。

お互い射程外ということもあり予想外だったのか、三つの光りが乱れる。

 

「いくぞアルト!!」

 

「おう!!」

 

二機は乱れた隙に一気に接近を試みる。

だが流石と言うところか、赤いクァドランの動きと指示により他の二機もすぐさま立て直す。

思ったより早いな。と考えていると別の方向から視線と迫るモノを感じる。

遠方より青いビームが迫る。

それもゼノンのみに向けられて。

だが感知していたゼノンにその程度の狙撃は脅威にはならない。

スラスターを噴かすことも無く、僅かに体を捻るだけで難なく避ける。

 

「……俺だけを狙ってきた?

いいだろうミハエル、その挑発に乗ってやろう。

アルト!!」

 

「なんだ!?今忙しい!!」

 

見ればケツに二機付かれている。確かに忙しそうだ。

 

「スナイパーを仕留めてくる。暫く任せるがいいか?」

 

「わかった、さっさと行ってこい!!」

 

そう叫びながらアルトはガウォークに変形し、迫っていたミサイル群を撃ち落とす。

さらに後方から迫るミサイルをバトロイドに変形、左右に動きながらガンポッドで撃ち落とす。

同時に二機にミサイルを放ち、ファイターに変形し錯乱のため未だ晴れない煙の中へ突っ込む。

それを見てゼノンは大丈夫そうだな、と思い方向転換したその時、再び意思が走る。

僅か遅れて、いつの間にか下に回った赤いクァドランから閃光が走る。

 

「っと」

 

その場で宙返りで避ける。

すぐさま体制を直し、迎撃しようとするがさらに別の敵意が迫る。

 

「ちぃ!」

 

スナイプ。またもミハエルの狙撃か。行動を遮る、良いタイミングで撃ってくるな。

さらにピクシー小隊隊長クラン・クラン駆る赤いクァドランが放った無数のミサイルが視界に広がる。

だがゼノンは慌てること無くF91の頭部、胸部の計四門の実弾の銃口から火を噴かし迎撃する。

二秒足らずで全ミサイルを撃墜。

爆炎と煙に紛れて、一旦体制を立て直す為に近くの無数の岩陰に隠れる。

そこで事前に聞いておいた話を思い出していた。

確か、ミハエルとクランは幼馴染だって言ってたな。byボビー情報。

なるほど、あのコンビネーションの良さも納得だ。

どうしたもんかな……。

とゼノンが考えている時、ミシェルとクランも同じく岩陰に隠れ分析していた。

 

「クソッ!!

どうなってやがる、あのタイミングで避けるなんて……!」

 

スナイパーとして己の腕に絶対の自信を持つミシェルには、

ゼノンがあのタイミングで完璧に避けられたのに対し苛立ちを感じられずにはいられなかった。

まるで背中に目が付いているような……そう思うほどである。

 

「……そうだな、タイミング・位置・状況、どれをとっても完璧な筈だったのに、避けた」

 

それはクランにも言えることだった。

そしてクランはゼノンとアルト以外で行った秘密のミーティングでのオズマの話を思い出す。

その話とはゼノンが何らかの超能力者ではないか?というものだった。

オズマ自身も確証が在る訳ではないが、思い当たる節がある程度なのだが……

それを聞いたオズマ以外の隊員は笑うを通り越して失笑モノだった。

しかし、オズマは自機とギリアム機に残っていた戦闘時のカメラの映像の中の、

先日の戦闘の様子を他の隊員達に見せると殆どの隊員達が言葉を失った。

戦闘技術は勿論凄まじいの一言。だが、それは二の次だった。

隊員、それも戦闘員はその戦闘の異常性にすぐに気がつく。

その異常性とは何か?

そう、当たらないのだ。

確実に死角からの攻撃に対し、まるで見えているかのように避けるのだ。

始めの内は単なるマグレか勘かと思ったが、違う。

確実に、そう来るのが分かっていて当たり前に避けているのだ。

誰もが確信した。

そしてそれは攻撃の際にも言えた。

誤射に思えるような射撃に、バジュラが当たりに行っているように見えたのだ。

予測して撃っているのだろうが、そう見えてしまう異常性。

たしかにある程度であれば予測して撃つことなどパイロットでなくともよくやることである。

がしかし、それはどんな熟練のパイロットであっても確実に当たるなんてことはない。

だがどうだろう。

ゼノンの駆るF91の射撃は映像で見る限り文字通り百発百中である。

牽制の射撃を抜けば、ほぼ100%と言ったところか。

 

「オズマがアイツがエスパーだって話、信じたくないが嘘じゃなさそうだな」

 

「なっ!?クラン、いくら隊長が言ったとはいえそんな話を信じるのか?」

 

「そうは言ってもミシェル……」

 

そんな話をしている時、ゼノンは彼らの直上にいた。

 

「なぁにをイチャイチャしてんだか……」

 

イチャついてる、とさすがにゼノンでもそう細かいことは分からないが、

自分に向けられていた意思が随分と弱くなっているのを感じ、来てみればコレである。

だが模擬戦……じゃなかった、入隊テストとはいえそんな隙を見逃す程甘くは無い。

とは言えこのまま撃墜など容易いの一言。

暫く考え、ピコンとアイディアを思いつき早速行動に移す。

ビームライフルを構え何時でも発射できるようにしてから、

たった一言を言う為にクランとミシェルにオープンで通信を繋げる。

 

「捉えたぞ」

 

同時にビームライフルを二発放つ。

 

「「なッ!!」」

 

あまりの驚きに二人の声が重なる。

避けるだの何だの考えるよりも先に、有無を言わさず咄嗟にスラスターを噴かす。

ここでクランのモニターに右方の駆動系、背部武器使用不可の文字が映る。

対するミシェルのモニターにはメイン武器、スナイパーライフル使用不可の文字。

さらに警告音が響く。

 

「クソッ!!」

 

「ちぃ!!」

 

ミシェルは咄嗟にバトロイドからファイターに変形して逃れようとするも、

その道を青いビームで塞がれる。

同じくクランも別の方向に逃げようとするもやはり青いビームに塞がれる。

そして……

 

「チェックだ」

 

響くゼノンの声。

見れば腕を交差させビームライフルをクラン機に、

ビームサーベルをミシェル機に向けたF91が丁度二機の間にいた。

 

「……はぁ」

 

「……負けた、か」

 

 

 

--------------------

 

 

 

通信を入れゼノンはアルトの所に向かおうとした時、ミシェルから声を掛けられる。

 

「なぁ、ゼノン」

 

「なんだ?ミハエル」

 

「あー……そのミハエルっての止してくれないか?

仲間なんだ、ミシェルって呼んでくれないか?」

 

「いいのか?最初は敵意剥き出しだったくせに」

 

「う……」

 

敵意、というよりは仲間として認めないオーラだったがな。

まぁそれも尤もだ。

異世界から来て、ギリアムを助け、オズマに認められ、仲間になって……。

隊員達の中には気に食わない奴もいるだろう。

それは仕方がないこと。

 

「だがお前から仲間と言ってくれて俺は安心したぞ、ミシェル」

 

「ああ。ま、これからよろしく頼むよ」

 

「素直じゃないな、ミシェル」

 

「うるさいぞ、クラン」

 

「仲良いなお前ら」

 

「「うっさい」」

 

とまあ夫婦漫才を見て楽しんでいると、自分に向けられたモノではないが明らかな敵意が走る。

この感じは憶えがある。

少し遅れて、アルトが戦闘しているであろう空域付近で赤い閃光が走る。

 

「バジュラか!」

 

「何!?」

 

「アルト達の方か!」

 

スラスターを噴かし、アルト達の下へと向かおうとした時クランから声が掛かる。

 

「ゼノン、私達の装備は全て訓練用の物だ。

バジュラには全くと言って良いほどダメージは与えられない……三人を頼む。」

 

「ああ、当然だ」

 

ココで説明しておこう。

S.M.S組の装備は全て訓練用の物である。ミサイルも訓練用の特別製である。

対するゼノンの装備は実戦と変わらない物を使っている。

それで大丈夫か?とお思いだろうがそこはご都合主義というやつだ。

簡単に言えば威力を調節しているのだ。

ビームの威力は生身の人に直に撃っても「あちっ」ていう位で済むまで絞っている。

そんな説明をしている内に到着。

ボロボロに朽ち果てたゼントラーディ艦の近く。

そこには丁度バジュラを一匹、見慣れない武器で撃墜したアルト機の姿。

お決まりのポーズをとっている最中だった。

しかし、気配を潜めたバジュラ(大)が後ろに居ることに気づかない。

だが、ココから見れば良い的である。

戦闘用に威力を切り替え、特に焦ること無く狙いを定め、トリガー。

完全に感知外の攻撃。バジュラは青い閃光に貫かれ爆散。

 

「ようアルト、一匹撃墜したからって油断し過ぎだぜ」

 

「ゼノンか……助かった」

 

若干息が荒い、当然と言えば当然か。

だが良い経験になったろう、アルトには。

 

「さて、バジュラはもう居ない。帰還するぞ~アルト」

 

「ああ、帰ろうか」

 

 

 

--------------------

 

 

 

結果から言おう。

 

合格。

 

まぁ当たり前と言っちゃあ当たり前。

何せアルトは分かれた後ピクシー小隊の二機を撃墜してのだ。

スーパーパックに被弾したものの、機体本体には攻撃は届いていなかったのもある。

その後のゼントラーディの武器を使いバジュラの撃墜も評価に入った。

あのポーズはちょっと頂けないが……。

まぁ90点と言ったところか。

ゼノンもエース格を二機撃墜(扱い)で文句無しの合格。

 

んでもって早速明日隊員としての呼び出しである。

何を言われるんだか……。





ではまた次回。


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スター・デイト?

やはり遅れてしまった……。
お待たせして申し訳ない。

ではどうぞ。


入隊テストから数日経ったある日。

アルトは知らない内に居なくなり、ミシェルとルカも出かけて特にやることも無いゼノン。

考えた結果、せっかく異世界に来たのだからと丸一日フロンティアを楽しもうとしたのだった。

『マクロスの歩き方 フロンティア編』というよくある旅行本の存在を知り、

端末でもデジタル書籍で買えるのだがせっかくなので近くの書店で実本を買う。

本を手に取り、どの世界でも紙の質感はそう変わらないものだなと思いながら散策を開始。

各国の名所を再現した建物の数々を眺め、懐かしいと思いつつも宙に浮かぶディスプレイに元の世界との違いを感じながら巡り、

昼飯をオススメのファーストフード店で特選銀河バーガーなるものを堪能し、小さな公園で休憩をしていた。

ポケットの中の端末が震えたのは、そんな時だった。

 

「そういう訳だから頼んだぞ、ゼノン!!」

 

「ちょ!?せっかく『フロンティア一日散策』を楽しんでいたのに!!」

 

ゼノンのその悲痛な叫びにオズマは無慈悲に言葉を返した。

 

「だからお前に頼むんだよ!いいか、これは隊長命令だ。

それに俺は政府に呼ばれてこれからアイランド1に行かなければならん」

 

政府に呼ばれる。

この非常時に呼ばれるってことはバジュラ関連以外は考えられない。

 

「……バジュラ関連ですね?」

 

「……ああ」

 

やはり。

となると仕方が無い、か。

 

「わかりました、ランカちゃんの捜索は任せて下さい」

 

「悪い、頼んだぞ」

 

そこでオズマからの通信が切れる。

ゼノンは手に持った携帯を閉じるとポケットに押し込んだ。

一回の溜息。

 

「とは言ったものの……まだ完全に地理を把握できてないからどうやって探したものか」

 

フロンティア船団、もといこの世界に来てから一週間も経っていない。

それも初っ端から戦闘に介入し、S.M.Sに入隊して入隊テストをやって……。

やっと何も無い日が来たと思った矢先コレである。

 

「とりあえずは高い所に登るか」

 

歩いていた大通りから脇道に入り、誰も居ないことを確認すると三角跳びの要領で跳躍。

左右のビルを蹴り、その驚異的な脚力であっという間にビルの上に到着する。

そしてこっそりと下を見る。

そこには慌てふためいている黒服の男が三人。

 

「ハハッ、慌ててる慌ててる。

悪く思うなよ、流石に気持ち悪くなってきたからな」

 

S.M.Sを出たときから尾行。

何もしないんじゃ見逃すか、と最初は思ってはいたが……

二度目とは言え異世界の、それもマクロスの超長距離移民船団に来て始めての観光?なのだ。

いつまでも尾行なんか着いて来られたんじゃ気持ち悪い。

いつ撒こうかと思っていたので、オズマ隊長からの電話はタイミングが良かった。

そこはオズマ隊長に感謝だな。

そうどうでもいい考えを捨て去り、ゼノンは視線を街に移す。

 

「さて、どこから探すかな……と、ん?」

 

首だけを左右に動かし目的のランカを探していると見慣れた奴が目に入る。

 

「アルトじゃないか、それに隣にいるのは……シェリル・ノーム!?」

 

目に入ったのはアルトと仲良さげに並んで歩く銀河の妖精シェリル・ノームの姿。

そこにはステージで歌う銀河の妖精の姿は無く……

一人の、ごく普通の……デートを楽しむ笑顔の女の子の姿があった。

 

「へぇ、アルトの用事がまさかデートだったとは……しかもあのシェリル・ノームと、か」

 

しかしあの時助けた金髪美人が銀河の妖精だったのは少々驚いた。

やけに他の隊員が騒いでたから調べてみればこの通りである。

今やリン・ミンメイやFIRE BOMBERに並ぶ歌い手だったのだからそりゃビックリしたさ。

しかし、盗み見は良くないが、見つけてしまったので仕方が無い。

暫く見ていると二人はアイランド1行きの電車に乗って行った。

それを見送るとゼノンも行動を開始した。

 

「さて、俺の方も探すかな」

 

後でからかってやろうと思い、今はその考えを奥にしまう。

そう呟くと、ビルを飛び移りながらランカを探しに跳躍した。

 

 

 

--------------------

 

 

 

ランカ捜索の電話はゼノンは勿論のこと、ルカとミハエルにも伝えられていた。

ルカはナナセに乗せられて?一緒に捜索に出かけたのだが……

しかしミシェルは探す気などサラサラ無かった。

隊長命令とは言え、ハッキリ言えば面倒だった。

しかし、そう思っているとソレが目の前で起こったり、見つけたり……するものである。

 

「どこ行くの、ランカちゃん!」

 

「どこだっていいでしょ!」

 

まるで聞く耳持たぬ、といった感じか。

走っている車間の僅かな隙を見つけ反対の道路に走って渡るランカ。

ハァと短い溜息と軽い舌打ち。

 

「これだからお子様は……。

けど見つけちまったもんなぁ」

 

見捨てる訳にもいかず、ミシェルはランカを追いかけていった。

早足で、手は握り、肩は強張り……見てすぐに怒っていると分かる歩き方。

ズンズンという効果音が聞こえてきそうな感じである。

その様子を見て、ミシェルは再び溜息を漏らした。

 

 

 

--------------------

 

 

 

暫く時間が経った時だった。

ゼノンは纏わりつく複数の視線を感じ、歩みを止めていた。

あえて誘導する動きで人気の無い路地裏に入り、背後に声を掛けていた。

 

「薄気味悪い奴らだな、何の用か知らないが姿を見せたらどうだ?」

 

そう言うとゾロゾロと全員が同じ変なコートを着たグラサンが六人現れる。

暫くの沈黙の後、ゼノンが「何者だ」と言う前に一番前の男が、

 

「貴様は何者だ」

 

と言われてしまった。

今まさに同じ言葉を言おうとしていたゼノンはなんとも言えない気分になった。

しかしソレも一瞬。

体を、思考を切り替える。

 

「それはコッチの台詞だ、揃いも揃って同じ恰好しやがって」

 

「コチラの質問に答えてもらおう」

 

硬いなぁ。

けど……どうやら俺の問いには答える気は無いらしい。

まぁ、俺も答える気は無いが。

 

「嫌だ、と言ったら?」

 

ニヤリと笑みを浮かべながらゼノンは言う。

 

「……不確定要素は排除する」

 

案の定、予想通りの答え。

その言葉と同時に、六人は一斉に動いた。

後方の四人が一斉に数歩退きながら懐から銃を取り出し、着地と同時にゼノンに向けて撃ってきた。

前方二人は両壁を走り、腕からナイフを出し高速で迫って来た。

瞬間、ゼノンは迫り来る銃弾を地を這うようにして避け、壁を走る二人を無視し、

銃弾に勝るとも劣らない速度で四人内の一人に接近。

 

「なんッ……!?」

 

一人が驚愕の声を上げようとするがそれは最後まで続かない。

その思いは全員が一緒だったのだろう、四人の動きが止まる。

その刹那の隙を、一瞬を見逃すゼノンではない。

殺しはしない威力で、とは言っても骨の二~三本は折れるであろう威力で手前の奴の肋骨辺りを殴る。

 

「グボぁ!?」

 

「「「!!」」」

 

殴られた相手は声を吐き出しながら後方に数メートルは吹っ飛んだ。

その他の奴らも驚愕の表情で吹き飛んだ奴を目で追う。

 

「ん?」

 

しかし、ゼノンは返ってきた感触に違和感を感じた。

 

「(なんだ……妙に硬い?

……だがコレは肉の硬さじゃない、コレは……金属の硬さ)」

 

その明らかな違いにゼノンはある推測を立て、吹き飛ばした相手を見る。

吹き飛ばした相手は何とも無く立ち上がるも、

ゼノンに殴られた腹の部分からは通常では出る筈の無いコードと煙が出ている。

それを見てゼノンは「やはりか」と呟く。

会った時から感じた妙な違和感、それと同時に殴られた瞬間こそ声を上げたものの、

腹からコードと煙を出しているにも関わらず、

無表情でコチラに歩いてくる奴を見てココに居る六人全員同じサイボーグだと確信する。

そして、これ以上追われぬ為に六人を破壊する覚悟をする。

 

「そうか、身も心も命令通りにしか動かない機械と成り果てちまったのか。

抵抗も抗いもせずに……ならば人として最後の情け、

僅かに残っている感情に免じて苦しまず……殺してやる」

 

そう言いながらゼノンは腰の革製のホルダーに入れてある、

F91のビームサーベルをそのまま人間が使えるサイズに縮めた物を右手に持つ。

そして意思を籠めるとソコから青い粒子の刃が煌く。

 

「「「!!」」」

 

ソレを見ると六人の刺客は驚愕するも、すぐさま戦闘体勢を取る。

ゼノンはビームサーベルを手首を回して一回転させ、

腰を少し沈め、右脚を前に出し体をやや前屈みにし、止まる。

一回の呼吸。

そして始まりの言葉を放った。

 

「いくぞ」

 

同時にゼノンは地を蹴った。僅かに遅れてその衝撃で地面が砕ける。

だが……この戦闘が彼らを通じて見られていることなど知りもしなかった。

ゼノンが感じた複数の視線、ソレをゼノンはこの六人”だけ”のものと思った。

しかし実際は違う。

本来なら、ゼノンのNT能力なら気づける筈の完全な悪意。

彼らの裏にある完全な悪意を気づけなかったのは、目の前で、自身にその命を次々と絶たれてゆく者達の、

僅かに残った渦巻く最後の感情を流すこと無く受け止めていたから……。

 

 

 

--------------------

 

 

 

ゼノンがアイランド1に入ったのはソレから暫く経った時。

何かと気分が楽しくなる、シェリル・ノームとはまた違った生気に満ちた歌につられて。

それと同時にココ、ゼントラーディのショッピングモールの巨大さに目と心を奪われる。

食品、衣類、食器、家庭用品、電気製品、目に入る物全てが巨大。

ズシンズシンと地響きを起こしながら歩いているゼントラーディの人々を眺めながら、

人々の意思が集まっている所に歩を進める。

歌が聞こえる。

 

『---♪~♪~♪---』

 

「あれは……ランカちゃん?」

 

歌の主を見れば、本日探していたランカ・リーではないか。

思わず声が漏れる。

 

「お、ゼノンか」

 

その声を聞き、思わぬ人物がから声がかかる。

 

「ミシェルか」

 

まさかミシェルがいるとは。

一番居なさそうな奴が居るとはちょっと意外だな。

そう思っていると、自称気味にミシェルが呟く。

 

「まったく、お子様だと思っていたが……

俺の言葉はランカちゃんの背中を押しただけだったぜ」

 

「ん?なんの話だ?」

 

「気にすんな、只の独り言だ」

 

「けどまぁ……」

 

「ん?」

 

『---♪~♪~♪---』

 

「良い顔じゃないか、ランカちゃんは」

 

「……ああ」

 

自然と周りも笑顔になる。

そんな力が聴いていて湧いてくる。

ランカ・リーの歌にはそんなモノが籠められているような気がする。

FIRE BOMBERの熱気バサラの熱さとは違う。

銀河の妖精シェリル・ノームとも違う。

非常に女の子らしい、キラキラという言葉が似合っている。

そんな気がする。

そんな事を考えていると、陽は傾き、空は茜に染まる。

ランカちゃんの歌は終わり、聞き入っていた人々も去っていた。

ゼノンはランカちゃんに近づき、声をかける。

 

「やあ、ランカちゃん。久々」

 

片手を挙げ、挨拶。

 

「あ、ゼノン……さん」

 

「硬くならないでいいよ、歳も大して違わないんだしさ」

 

表面上は、だけど。

 

「あ、じゃあ……ゼノン、君」

 

”君”と言われた瞬間、ゼノンの背中がゾクッと震える。

 

「君付けか……背中がムズムズする」

 

そうボソッと呟くとそれが聞こえたのか、ランカが心配そうな顔で尋ねる。

 

「あ、あの……嫌でしたか?」

 

その表情を見てゼノンは内心若干慌てるも、冷静に返す。

 

「違う違う、君付けで呼ばれたのが久々だったんでね。

どうもむず痒くて……」

 

「え、そうなんですか?

でも私男の子は皆君付けで呼んでるし……どうしよう」

 

そう言いながらランカは顔を伏せる。

 

「ああ、そんな真剣に悩むようなことじゃないって。

別に君付けでも大丈夫だって、その内慣れるから……多分」

 

そう言い終わると同時にランカは伏せていた顔を風切り音が聞こえる程勢い良く上げ、

 

「ほんとっ?

じゃあこれかよろしくね、ゼノン君っ」

 

さっきまでの雰囲気が嘘のようにニコニコしながらゼノンに向けて言った。

 

「あ、ああ。

(あれ?ハメられた?)」

 

何か言おうとしたが、ゼノンはランカの笑顔の前に変な威圧感を感じ、何も言えなかった。

 

「それはそうとランカちゃん、良い声だね」

 

「ほんとっ!?」

 

「ああ、気持ちも篭ってて。

何より歌っているランカちゃんはなんて言うかこう……キラキラしてた」

 

ゼノンがそう感想を述べると、若干恥ずかしいそうにしながらも極上の笑みを浮かべ、

ゼノンにお礼を言った。

 

「嬉しい……ありがとう、ゼノン君!」

 

そこから他愛の無い会話を広げている途中、

少し離れた所で会話をするアルトとシェリルを見つける。

否、見つけてしまった。

アルトの頬にキスをするシェリルの姿を。

 

「ッ!!」

 

息を飲む音が聞こえ、ゼノンは目だけを動かし隣を見る。

隣ではランカが顔を赤くして驚いている。

ゼノンはちょっぴり刺激的だったかな?と思うがランカを見てその考えを即座に捨てる。

 

「(違う、これは……恋をしている、アルトに。

それと……ライバル出現で覚悟を決めた、って顔だな)」

 

このゼノンの考えは”ほぼ”合っている。

だが、コレばかしは本人の心の奥で考えているモノなので分かる筈がない。

ランカの揺れ動く心。

アルトだけに傾いていた心は突然現れたもう異世界の旅人との間でゆらゆらと揺れる。

ゆらゆらグラグラ。

揺れ始める。

再び巡り会ったその瞬間から。

そしてそれは、別のところでも既に起こっていた。

言うなれば、運命の出会い。

会うべくして会い、起こるべくして起こる。

これはそういうモノなのかもしれない。

 

その後、ゼノンはランカと再び会う約束を交わし別れた。

 

そんなこんなで、この日は終わりを迎えたのであった。





あと二話くらいは日常的な話の予定です。

ではまた次回。


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束の間の平和と訓練と悪ノリ

ああ……結局こんな間が開いてしまった……。
申し訳ないです。

では、どぞ。


その日、S.M.Sは休日ということもあり当直以外の隊員は街へ買出しやら家族との緩やかなひと時を楽しんでいる中、

ゼノンはボビーとマクロスクォーター内のラウンジに設置してあるビリヤードを楽しんでいた時だった。

ボビーとの白熱戦を終え、バーカウンターで一杯やっていると携帯が鳴った。

 

《着信 早乙女アルト》

 

「着信?ゼノン」

 

「ああ、アルトからだ」

 

「あらいやだ、ゼノンてもしかしてアルトちゃんと……!」

 

「んな訳あるかい、俺はいたってノーマルよ」

 

しかしなんだろうか?時間を考えると丁度学校帰りてところだが。

そう思いながらも電話に出ると、予想外の知らせが飛び込んできた。

 

「スカウトォ!?」

 

『ーーッあぁもう!声がでけぇよバカッ!!電話越しなのを考えろよ!』

 

「あ、ああ、すまん。しかしスカウトかぁ……」

 

『ああ、それで今からシルバームーンでお祝いをしようってことになったんだ。

で、連絡した訳さ』

 

「なる。丁度ランカちゃんとはまた会おうって約束してたからな、良いタイミングだ」

 

『そっか、んじゃ待ってるぜ』

 

会話が終わるとピッという電子音と共に通話を終了させる。

即座に携帯をポケットにしまい、ボビーに別れを告げラウンジを足早に去る。

実を言うとカフェ・シルバームーンはS.M.Sから少しばかり遠い。

アルト達が通う美星学園からは近いのだが、S.M.Sから向かうとなれば移動手段が欲しい所だ。

自室に立ち寄りS.M.Sの制服を素早く脱ぎ、私服に着替えてから車庫を目指す。

足早に歩き、車庫の扉がある角に差し掛かった時、後ろから声が掛かる。

 

「あれ?ゼノンさん、どこかに行くんですか?」

 

聞き覚えのあるその声にゼノンはピタッと止まり、振り返る。

 

「ラムか、どうしたんだ?こんな所で」

 

そこには先日専属のオペレーターになったラム・ホアの姿。

よくラウンジで一緒に遊ぶのでその時に歳を聞いたらなんと同い年。

背やその他が小っこかったのでアルト達と同い年辺りかと思ったが予想が外れた。

そう考えながらもラムの恰好を見て違和感を覚える。

S.M.S内であるにも関わらず隊服ではなく私服である。

トレードマークであるカタツムリの髪留めはいつも通りだが。

ゼノンの様子に気づいたのか、ラムは問いかける前に答えてくれた。

 

「私はこれから出かけるところです」

 

ああ、どおりで。

 

「んじゃ一緒だな、俺も今からシルバームーンに向かうんだ」

 

「ちょっと遠いですね、何で行くんですか?」

 

「バイク。無理言って俺専用のヤツを作って貰ったんだ、その試運転も兼ねて」

 

ルカに言ってちょっと無理やり。

いいだろう、アイツ御曹司っぽいし。

良くはねぇけど。

 

「ふぅ~ん……じゃあ、後ろに乗っていきます」

 

口に人差し指を当てて少し考える仕草をし、ラムは当たり前のようにそう言ったのだ。

 

「は?」

 

思わず間抜けな声が出てしまう。

 

「後ろに乗ります、安全運転でお願いします」

 

「いや、だって行く場所違うだろ?」

 

「いえ、そもそも私は何処に行くか言ってませんし」

 

そう言えば聞いてないな、とゼノンは思った。

 

「じゃ何処行くんだよ?」

 

そう聞くと、

 

「決めてません」

 

「……ん?」

 

平然と決まっていないと答えた。

 

「何処に行くかなんて決めてませんよ。

何処に行こうかなぁ~と思っていたらゼノンさんが来たので。

わざわざ電車に乗らずに済みました」

 

その答えを聞くとゼノンは妙に納得してしまった。

何処かに行く、など特に決めないで外に出てブラブラすることはゼノンはよくやっていた。

目的が無いからこそ気の向くままに歩き、街を周り何かを新発見したりしなかったり、

只単にのんびりと歩いたりと、寧ろゼノンは休日はこうあるべきだと思っている。

その考えがあるからこそ、ラムの気持ちが良く分かった。

 

「……そうかい」

 

そう言うとゼノンは車庫に歩を進める。

 

「あ、ちょっと!」

 

ゼノンの素っ気ない態度を見て、ラムは断られたと思ったがゼノンから帰ってきた言葉でその心配は消え去る。

 

「さっさと行くぞ、ラム」

 

背中越しに、そう言ってきた。

その言葉を聞き、ラムは思わずニヤける顔をどうにか抑えながら後に付いていった。

 

 

 

--------------------

 

 

 

車庫の一角、数台の見たことの無いデザインのバイクが数台並んでいる一番端。

シートの掛かっている一台にゼノンとラムはバイクに近づく。

 

「これですか?」

 

「ああ、コイツだ」

 

と言いながらシートに手を掛け、一気に剥がす。

 

「おおー、カッコイイじゃないですか!」

 

姿を見せたのはこの世界に来る前のゼノンの愛車を模した物。

その独特のボディの形から、ゼノンが生まれた数十年程前に作られたにも関わらず今でも愛されているバイク。

名を刀 KATANAと言う。

元となるのは参型と呼ばれる刀で、今では見ないリトラライト式の車種である。

Ⅰ・Ⅱ型とは違い少々特殊なデザインのためか、あまり人気が無かった車種なのだがゼノンはこれを気に入っている。

無論エンジンなどの各パーツは、マクロスの技術でコッチの世界とは比べ物にならない物に仕上がっている。

ついでに言えば、エネルギーはガソリンではなくエコな物に変わっている。

元愛車同様、ボディは黒に青いラインが入り、フレームは黒。

二本出しのマフラーはサテンシルバーに塗装されている。

何処か懐かしそうに、そして新しい玩具を手に入れた子供のようにゆっくりとキーを回す。

エンジンが重低音を響かせる。

音は流石に元とは違うが、この音も嫌いじゃないな。と思いながら跨る。

エコな物に変わっているにも関わらず、体に伝わる振動はそう変わらない。

それを体感すると自分の心が興奮しているのが分かる。

まるで子供のようだ、と思いながらもアルト達との約束を思い出しヘルメットを被る。

ラムにもヘルメットを渡し、ラムはそれを被ると軽い身のこなしでゼノンの後部に乗る。

 

「よし、しっかり掴まってろよラム」

 

「はい」

 

そう言うとラムの手が腹辺りで組まれ、背中に女性特有の柔らかい感触を感じる。

それを感じた瞬間、体が硬直してしまった。

実のところ、ゼノンは女性と付き合ったことが一度も無い。

そしてゼノン自身、誰かを好きになるなんてことが無かった。

そもそも、友達と言える存在が居ない。

小、中、高、大学と進んできたゼノンには友達も居なければ親友なんて呼べる存在も居なかった。

だがクラスメートと仲が悪かった訳でもない。

自分に恋愛経験など無いのに何故かよく男女問わず相談(主に恋愛)を受けたり、

学校帰りに遊んだり、飲み会に行ったり、家飲みもした。

学校行事には一緒に笑い、泣き合った。

しかし不思議と誰からも連絡など来ないしコチラからもしなかった。

携帯電話という最高の連絡手段が有ったにも関わらず。

遊園地の類などは誘われないし、誘おうともしない。お祭りも必ず一人。

寂しいとは思わなかった。悲しくもなければ、なぜ?とも思わなかった。

前置きは長くなったが、要するに背中から抱きつかれるなど慣れていないのである。

泣いた女子を落ち着かせるために抱きしめたことはあるのだが……。

しかし、環境が変われば人も変わるもんだなと思う今日この頃。

UCの世界に居た時には確かに有った感情。なんだろうな、と。

共に笑い合い、泣き合うのはそう変わらない筈なのに……。

大人数よりも一人で。の思いが変わった。

アルト達と共に居る方が心が充実している。

一人の時とは気分も何か違う。

心が許せる相手が居るだけでこうも違うものかと実感している。

同時に、居なくなった時の寂しさと悪感が脳裏に浮かぶ。

そんな想いを思い出した。

 

「ゼノンさん?どうしたんですか?」

 

「ん?なんでもない、やっぱバイクは良いなと思っていただけさ」

 

しかし、何処ぞのギャルゲの主人公みたいな変なリアクションなど起こさない。

良いのか悪いのか、ゼノンは即座に頭を「別に」切り替えられる。

 

「んじゃ、行くぜ~」

 

「は~い」

 

そう確認すると、ゼノンは刀を発進させた。

 

 

 

--------------------

 

 

 

「「「おめでと~、ランカちゃん!!」」」

 

ミシェル、ルカ、ナナセからの祝いの言葉にランカは笑顔で応える。

 

「ありがとう、皆のおかげだよ」

 

「ランカさん、これで夢に一歩近づいたんです!

私全力で応援します、目指せ銀河の歌姫!打倒シェリルですッ!!」

 

拳を握り締め、力説するナナセ。

その横で、誰にも気づかれない一瞬、ランカは微妙な表情をしていた。

打倒シェリルの言葉を聞いた瞬間、何とも言えない感情が巡っていた。

 

「俺も、応援するよランカちゃん。あんな素敵な歌を聞かされちゃあね。

つまり、ファン一号ってことで」

 

そんな感情を巡らせているランカの表情に、

珍しく気がづかずにミシェルが肩に手を回してファン一号宣言をする。

しかし、その宣言にナナセが食いつく。

 

「駄目です、一号は私です!」

 

「じゃあ二号」

 

そこは別に拘ってないのでミシェルは右手でピースを作りながら言う。

 

「僕は三号になります!」

 

続いてルカも三号の宣言。

それを聞いて少々恥ずかしかったのか、ランカは顔を赤くし伏せてしまう。

同時に全員が期待の籠もった目でアルトを見る。

少し遅れてアルトのことを思い出したランカも顔を上げ期待の眼差しでアルトを見る。

 

「わ、わかってる。俺も勿論応援するさ。

ランカにも最初に言ったろ?」

 

その眼差しに少々気圧されたのか、僅かな焦りを含みながらアルトは同じく宣言した。

それを聞き満足したのか、全員がニヤける。

と、そこで後ろから声がかかる。

 

「んじゃ俺は五号かな」

 

全員が振り返る中、アルトは軽く溜息を吐きながら背後の人物に声を掛ける。

 

「やっと来たな。遅いぞ、ゼノン」

 

「悪いな、少し迷った」

 

そこには、苦笑いを浮かべたゼノンの姿。

 

「ランカちゃん、改めておめでとう」

 

向き直り、ゼノンは改めてランカに伝える。

 

「ゼノン君!

……うん、ありがとう」

 

ランカは嬉し恥ずかしそうに顔を赤に染めながら笑顔で返す。

ゼノンも笑顔で返す。

その後ゼノンはナナセに軽く自己紹介をし、ランカ・リーファンクラブ入りを果たす。

名物コーヒーを飲みながら話に花を咲かせ、気づけば夜。

再び会おうと約束し、その日は終わった。

 

そこから少し、時は進む。

 

 

 

--------------------

 

 

 

宇宙に尾を引く閃光が二筋。

高速で自在にその二つは駆け巡っていた。

 

アルトが駆るVF-25が漆黒の宇宙を駆ける。

しかし、ソレを上回る速度でゼノンのF91が迫る。

 

「チィッ!」

 

背後に迫るプレッシャーにアルトは軽く舌打ちし、マイクロミサイルを後方に放つ。

二十程のミサイルが迫る。

迎撃する隙を狙おうとその場からバトロイドに変形しながら上昇し、ガンポッドを構える。

しかし予想外の事が起こる。

なんとゼノンはミサイルとミサイルとの間、

僅かな隙間に一気に潜り込むと同時にビームサーベルで手近な物を斬り捨て誘爆させる。

そしてさらにスラスターから青い粒子を放ち、一気にアルト機に肉迫する。

 

「なッんだとッ!?」

 

「とった」

 

その声と共にモニターに映るのは撃墜の文字。

それが目に入ると同時にアルトは悔しさの余り、声にならない声を上げる。

 

「ーーーッ!!」

 

プシューと空気の抜ける音がし、光が差し込み背後の扉が開く。

 

「15回目の撃墜お疲れ、アルト姫」

 

「ミシェル……その呼び方は止めろ」

 

アルトは扉から顔を出したミシェルを睨みながらシュミレーターを出る。

 

「クソッ!手も足も出ないなんて!!」

 

「そう怒鳴るな、アルト。

隊長ですら墜とされたんだ、アレだけ保っただけでも十分さ」

 

そのれを聞くな否や、アルトは信じられないという表情でミシェルに聞く。

 

「冗談だろ!?オズマ隊長まで?」

 

「マジだよ。

途中まではいい勝負だったんだが、

ゼノンがあのファンネルとかいうのを使い始めたらあっという間に墜とされたんだよ」

 

「ファンネルってたしか……」

 

「ファンネルはF91に搭載されている、

サイコミュと呼ばれる特殊な脳波コントロールで操作する無線誘導兵器です」

 

言いかけたアルトの背後から声が掛かる。

 

「ルカか、お疲れ」

 

「お疲れ様です、アルト先輩」

 

挨拶を交わすアルトとルカ、それが終えるのを待ってミシェルが疑問を抱く。

 

「ルカ、アレは自動じゃなくて脳波コントロールでやってたのか?しかも戦闘中」

 

「はい、通常の攻撃を行いながら脳波で全く別の敵、それも複数に攻撃をして墜としています。

多少の自動操作も入っているっぽいんですが、ゼノンさんはあまり切り替えてないみたいですね」

 

「すさまじいな……」

 

自分ではまず無理だな、と思うミシェル。

スナイパーのという立場上、単独行動が多い。

いちいち味方に着いて行くのではなく敵の視覚外、感知外からの攻撃の為、

少し離れた身を隠せる場所で敵を一発で沈めるために、神経を極限まで研ぎ澄まさなければならない。

そういった状況では良く言えば集中している、悪く言えばし過ぎている為周りが見えにくい。

もし、ファンネルが自動ならそういった状況で後ろを取られないと考えたのである。

 

「……て考えていたろ、ミシェル」

 

「ゼノン、人の頭の中でも見えているのか?」

 

溜息を吐きながら、頭の中の考えをそのまま言われたミシェルはゼノンを睨む。

 

「そう睨むなよ、俺はどこぞの超能力者じゃないんだから」

 

「似たようなモンだろ?」

 

「……どうだろうな。自分でもよくは分からんさ。

それよりもだ、お前にぴったしの武装があるんだが……聞くか?」

 

「へぇ、是非お願いしたいね」

 

武装の話題にピクリと反応したルカも興味津々だ。

 

「ファンネルとは違って有線なんだが、インコムという武装がある。

平たい円柱形をしててな、内部に誘導用のワイヤーが巻かれてて、

これを繰り出しつつ内蔵推進器によるパルス状のロケット推進を行う事で空間に展開するんだ。

ああ、ワイヤーは弛みが発生しない様に常に一定の張力が掛けられていて、

方向変換の際にはリレーインコム……だっけな、

それが中継器をワイヤー上に射出して、本体のベクトル変更をするんだ。

あ、回収はワイヤーの巻取りな。

んでこいつは、パイロットの特別な空間認識能力に依存する事が無い。

ファンネルと同じオールレンジ攻撃に近い戦法を実現が可能となっているんだ。

けどコンピュータによるアシストがあってもファンネルほどの複雑な攻撃は不可能だからな」

 

と、説明する。

 

「なるほど、有線ですか……けど高速で動くバルキリーには向かないですね」

 

至極最も。

 

「ああ、だからこそスナイパーであるミシェルに話したんだ」

 

「ふむ……魅力的な武装だが、悪いなゼノン。止めとくよ」

 

「そうか。ま、それだけ仲間を信頼しているんならいいんじゃないか」

 

それを聞いたミシェルは少し驚いた顔をしたが、すぐに笑い、ゼノンも笑い返す。

 

「さてアルト、休憩は済んだ。

次はバジュラ戦十本だ、気張れよ」

 

「マジかよ!?

せめてもう少し……」

 

「駄々捏ねてるとEX-ギアで格納庫十週追加だぞ。

あ、撃墜されたら二十週だ」

 

「クソッ!!ミシェル……憶えてろよ!!」

 

そう言いながらアルトは再びシュミレーターに入っていった。

 

 

 

--------------------

 

 

 

その頃、ランカはというと所謂下済みの真っ最中である。

 

デパ地下で世にも珍しい納豆のコスチュームを着て、

商品の宣伝歌を歌ったり……

 

『---♪~♪~♪---』

 

工事現場で水着で歌ったり……

 

『---♪~♪~♪---』

 

深・秋葉原。読みはディープ・アキハバラ。

フロンティア船団の地下に広がっている日本の電気街、秋葉原を再現した街である。

分かっていると思うが、基になっている秋葉原と同じくオタクの聖地でもある。

そんな中でランカは子供の心を持った大人達に相手に、

大人気のダイナム超合金の歌をバルキリーコスを着て店頭で歌ったり……

 

『---♪~♪~♪---』

 

その可愛らしい容姿と歌、一生懸命にこなす姿勢が評価され、

達磨ゼミナールというフロンティア船団内では評判のゼミの歌を歌ったり……

 

『---♪~♪~♪---』

 

ランカは少しずつではあるが、確実に、一歩一歩スターへの道を登っている。

 

 

 

--------------------

 

 

 

「ぬぐぐ……!!」

 

ガシャン、と格納庫にアルトの踏ん張る声と重い金属音が響く。

あの後のバジュラ戦十本で惜しくも九戦目で撃墜してしまい、今現在に至っている。

EX-ギアの主電源を入れずに歩行。

電源が入っていれば羽のように軽く動かせるのだが、

それが入っていないため数十kgの重さが体全体に重く圧し掛かる。

筋トレ、体力上昇、根性を鍛えるのにはもってこいなのだが……

 

「うおおわッ!?」

 

叫びと大きな音と共に、アルトは床に倒れる。

そう、一度倒れるとその重さ故なかなか起き上がれないのが難点である。

 

「ぐ、おおぉ……」

 

重い手足をどうにか動かし、起き上がろうとするが突如背中から押さえつけられる。

 

「くッ……足を退けろ、ミシェル!」

 

「まぁそう言うなよ。かなり辛いが俺も経験済みだから安心しな」

 

「クソッ!うおおぉ……!!」

 

そう言われてはアルトも文句は言えない。

渾身の力を込めてどうにか起き上がる。

それだけで息は絶え絶えだ。

 

「まだまだだな、アルト。

ほらゼノンを見てみろ、お前と同じ条件でバク宙してるぞ」

 

指差された方向にアルトは目を向けると思わず自分の目を疑った。

 

「嘘だろ……」

 

そこには自分と同じく電源を入れていない状態のEX-ギアを纏いながら、

汗一つかかずにピョンピョンと飛び跳ねるゼノンの姿。

 

「フッ!ハッ!ハアアァァァッ!!!」

 

そして思いっきり飛び跳ね、空中で見事な三回転捻りを行い華麗に着地した。

それを脇で見ていたボビーとオペ三人娘からは10.0の得点が上がる。

 

「す、凄いですぜノンさん!」

 

「フハハ……まだまだいけるぜ?」

 

とルカとやり取りをしている。

それを見てアルトとミシェルはただ溜息しか出なかった。

 

「ならば……見ろおおおぉぉぉッ!!」

 

ゼノンはある構えを取った。

 

「「あ、あれはっ!!」」

 

「アルト君、ルカ君、あれが何の構えか知ってるの?」

 

露骨な反応を見せたアルトとルカにラムが思わず聞く。

 

「ええ、あれはある動物の猛々しい姿を模した構えです」

 

「動物?」

 

「そう、大空の覇者……鷹を模している。

その難しさから今ではその構えを取ることすら出来ない幻の構え。

その名も……」

 

「「荒ぶる鷹のポーズッ!!!」」

 

後ろに雷が落っこちそうなカットだろうか。

雰囲気的に。

 

「そ、そんなに凄い構えなんだ……あれ」

 

「ええ、まさか別世界のゼノンさんが知っていて出来るとは思いませんでした」

 

そう話しているとゼノンが次の行動に移る。

 

「超級ッ!覇王ッ!!電影だあああぁぁんッ!!!」

 

顔はそのまま体だけ回転させ、物凄い勢いでスクラップを粉砕した。

 

「「「えええぇぇぇ!!!」」」

 

そして原理は分からないがそのまま空中へ上昇し、

 

「爆発ッ!!」

 

空中でまた別の構えと共にそう叫ぶと、スクラップが爆発した。

 

「「「す、すげえええぇぇぇ!!!」」」

 

そんな訓練?の日々の一コマ。

 

ちなみに……

格納庫で謎の爆発騒ぎを聞きつけ艦長まで出てきて少々騒ぎになり、

ゼノンにその技の禁止令が出たのはまた別の話。

 




日常編はこれで一旦終わりです。
少し薄いかなぁ、描写内容……。

次回から少し進みます。

感想、アドバイス、その他諸々お待ちしています。


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