Fallout IF (甚九郎)
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<Episode0> Prologue
壮大に何も始まりません。
ただ一つ、前もってFallout4について知っていると状況がわかりやすいです。
一体、何が起きているんだ。
私は確か、職員の指示に従って除染装置に入っていた筈だ。
しかしこれは、除染なんかじゃない。
まるで人間冷凍庫じゃないか。
ああ……寒い。
しかも酷い空腹感を感じる。
「ーー止めて!!」
あの声は、ご近所さんのノーラさんだ。
彼女も目を覚ましたのだろうか。
「息子を返して、ショーンは渡さない!!」
その時だった。
乾いた銃声が女の声を遮った。
彼は悟った。
抵抗虚しく彼女の命が刈り取られたことを。
彼は無心に目の前の扉を殴り始めた。
此処にいては駄目だ。
今度は自分が殺される。
手が血で滲み、覗き窓を赤く染めていく。
再稼働を知らせるアナウンスが流れるまで。
この物話は核戦争後の話であり、ありえたかもしれない男の人生である。
彼の名は、テツオという。
しがない近所のおっちゃんだ。
⬛︎
「ーー緊急事態発生、冷凍冬眠プロセスを停止します。」
再び辺りに無機質な音声が流れた。
テツオの入った装置も例外でなく、疲労感と共に意識を覚醒させたのだった。
息が出来ない、このままでは死ぬ!!
開いてくれ、開いてくれ!!
幸いなことに、内側からの圧力に反応したらしい。
重たそうな装置の蓋が、ゆっくりと上へ開いたのだ。
やっと出られた!!
早く此処を離れなければ。
ただ一つ気がかりだ。
何故皆んな動かないんだ?
まさか、まだ凍らされているのか。
彼のこの安直な考えは、直ぐに覆されることになる。
向かいの装置に備えられたボタンを押すと、
同様に開いた装置の中から明らかに生きていない人間が出てきたのだ。
そんな!?
まさか、皆んな死んでしまったのか!?
生きている人はいないのか!?
テツオが収容された部屋には、何一つ動く気配が無かった。
絶望、彼の精神状態を表すのにこれ以上の的確な言葉は無い。
「ああ、そんな……」
こんなことがあるなんて。
皆んな良き隣人だったのに。
一先ず、一先ずお腹を満たす物が欲しい。
何か、何かないのか……
こうして彼は歩き始めた。
だが冷凍装置室を出るとすぐに、彼は明らかに不自然な物を感じた。
妙だ、私が居た部屋の装置は開けられていなかった。
だが、隣の部屋の冷凍装置は何故か二つ開いている。
もしかしたら、まだ生きている人がいるかもしれない。
テツオはそう感じ考え、開いている装置に歩み寄り中を覗き込んだ。
しかし、装置の中には頭に穴が開いた女性の遺体があった。
さっき大声を上げていたノーラさんだったものだ。
「うっ……」
酷い嘔吐感を感じ、思わず出しそうになった胃液を飲み込む。
だが、向かいの開いた装置の中には、誰も入っていなかった。
誰かが中から出て行ったんだ。
今までずっと装置の中を確認してきたが、ノーラさんの夫のネイト君が居ない。
彼は、彼は生きているんだ。
ああ、でも……先ずは食う物を探さなければ。
こうして、また彼は歩き出す。
大きなゴキブリの死骸が転がっていたりしたが、
見るのもうっとうしくなってきた頃、テツオは食堂らしき場所に着いた。
「背に腹は代えられん、ゴキブリの足でも炙れば蟹になるだろう。」
幸い、調理器具は動きそうだ。
どうしてこんなに錆まみれなのかは、何となく察していたが……
廊下には白衣を着た白骨死体が転がっていたこと。
そしてVault内の所々が老朽化していた。
ああ、きっと長い時間眠ったままだったのだろうな。
程よくして、彼は焼けた虫の足を手に掴む。
では、心を込めて大地の恵みに感謝を。
「いただきます。」
その味は苦味がきつかったが、意外と淡泊だったらしい。
お疲れ様でした。
大丈夫です、息を抜いてください。
とても短いですが、垂れ流したらこの程度にしか成らないのです。
よっくり気ままに書いていきます。
<Fallout Guide>
[ノーラさん]
ノーラさんは、原作の主人公です。
彼女は弁護士であり、また一児の母です。
冷凍装置には赤ん坊のショーン君と入っていました。
彼女は、突然目の前に現れた覆面と男に息子を連れ去られそうになり抵抗します。
そして、夫ネイトさんの目の前で射殺されました。
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<Episode1> Escape
心を落ち着かせましょう。
食事を済ませて満たされた私は、とりあえず寝ることにした。
ネイト君のことは気になるが、時間が経ったとはいえ、ついさっきまで核爆弾から逃げていたのだ。
ノーラさん達のこともあったし、もう体力の限界だ。
ちょうど、少々臭うが、御誂え向きなベッドがある。
ここで一眠りさせて貰おう。
こうして、テツオは寝床に身を委ねた。
Vaultスーツ越しでも分かる、このマットレスは良いものだ。
柔らかな綿の弾力に感涙を覚える。
しかし彼は微睡みの中で、背中の微かな違和感に気付く。
何かがマットレスの下に挟まっている。
まさか、ゴキブリが中に入り込んでいるのか?
仕方ない、引きずり出してやろう。
テツオはマットレスの中に手を突っ込み、違和感の正体を引きずり出す。
だが彼の手には生物ではなく、無機物、まだ動きそうな小さな機械が握られていた。
腕時計の要領で腕に装着する携帯型個人用ターミナル。
質量保存の法則に喧嘩を売る実在する四次元ポケット。
身体情報をスキャンし、個人のパラメータを数値化、そして個人の持つ能力を引き出す人類の秘密兵器。
Pip-Boyだ。
何故こんなところに?
不思議に思った彼は、このベッドを少し調べてみた。
マットレスを引っぺがされた寝台に、全ての答えがあった。
小さな白骨死体、片手に拳銃を、もう片方には熊の人形が握られている。
この機械の持ち主は、ベッドに挟まったまま亡くなったようだ。
「ああ、可哀想に……南無阿弥陀無。」
だが、このPip-Boyさえあれば、あらゆる困難に立ち向かう術として活躍してくれるに違いない。
最早、この子の為に置いていくという選択肢はない。
「君のこれは貰っていくよ、安らかに眠ってくれ。」
軍用の物は、神経に直接つながるため、痺れるような痛みを伴うと聞いたことがある。
だがこれは、そういった接続機器らしきものは付いていない。
どうやら、民間用に作られたものらしい。
テツオは、左手にPip-Boyを取り付けた。
すると、沈黙していたディスプレイに文字が浮かび上がる。
<初期化中……完了>
<身体データスキャン中……完了>
<ステータスをS.P.E.C.I.A.Lに反映>
Level : 15
Name : Tetuo Tanaka
Strength : 4
Perception : 6
Endurance : 5
Charisma : 5
Intelligence : 8
Agility : 3
Luck : 10
<取得可能なPerk(2)があります>
<Perkメニューから取得してください>
成る程、自分はとても運の良い人間らしい。
生き残れたうえに、このPip-Boyを見つけ出せたのも頷ける。
Perkとは、Pip-Boyの機能を最大限に活かし、個人の持つ能力を開花させる機能のことだ。
人のあらゆる体験を数値化したもの、いわゆる経験値に基づき、持ち主に新しい力を与えてくれる。
その機会を今、得ているのだ。
彼は目に付いたPerkを取ってみることにした。
<Luck10>
・Goddess of favor(Rank.1)
・貴方は女神様の寵愛を受けている!巡りの良い出会いに恵まれる!
<Intelligence8>
・Secret service(Rank.1)
・貴方は組織の庇護対象になった。Vats攻撃時、スナイパーが召喚される。
Pip-Boyが僅かに振るえ、持ち主に新たな力を授ける!
「思った以上に、あっけないものだな。」
しかし、彼は実感する。
温かなオーラを先ほどから感じるのだ。
そして、彼はベッドに横たわる仏さまに向き直る。
「この拳銃も貰っていこう。大切に使わせてもらう。」
だが、肝心の弾丸が何処にも見当たらない。
こんな丸腰の状態で、何が起きているか分からない外に出るわけには行かない。
何か武器になるものはないか。
■
そして、監督官の部屋で、彼は大きな銃器を発見する。
「これは、使えそうだが……」
机の上のターミナルを見て分かったが、これが監督官の「楽しい玩具」なのだろう。
あらゆる有機物を一瞬にして氷結させる強力な兵器。
クライオレーターという名前らしい。
ーー欲しい
不思議な魅力がある。
あの銃口を見てみろ、脚線美が素晴らしい。
全体の図太く見えてこじんまりとした、若大将の様な出で立ちだ。
銃身から溢れ出る冷気の湯気が、溢れ出るエネルギーを押さえつけようと奮闘する超次元的な存在の様にも、今すぐにでも獲物に噛みつきたいと吠える狼の様にも見える。
ああ、今すぐにでも手にとってやりたいのだが……
それを分厚いガラスケースが拒むのだ。
どうにかしようにも、鍵なんて見当たらない。
ピッキングをしようにも、日常生活でする機会があるはずもなく、そんな技術は私に無い。
とりあえず、使えるものはないかPip-Boyのインベントリを調べて見る。
すると、「サーシャへ」というホロテープを見つける。
ホロテープ、使い勝手の良い記録メモリーだ。
どうやら、音声データが中に入っているらしい。
<再生中>
(男の声)「サーシャ、このテープを聴いているということは、すでに僕は死んでいることだろう。Vaultの統率は絶望的だ。人々は食料を求め、争いあっている。それどころか、親しかった隣人を食べる者まで現れ始めた。サーシャ、いいかい……今から父さんは、君に酷いことを言う。どんなことをしても生き残ってくれ。Vaultから脱出するんだ。君の大きさなら、食堂のダクトから監督官室に行くことができるはずだ。父さんのターミナルを使えば、外に出られるようになる。だから、人の気配がなくなるまで、ベッドの下に隠れていてくれ。大丈夫、ブギーマンはいないよ。子グマのティミーも一緒だ。愛してる、サーシャ。」
<再生終了>
話の内容からすると、これはこのVaultの監督官から娘に宛てたメッセージのようだ。
おそらく、このPip-Boyの持ち主だった子が、サーシャだったのだろう。
しかし、彼女は言いつけを守ったまま、マットレスの下で息を引き取ったらしい。
Pip-Boyのインベントリに、大量のゴミが入っていた。
レトルトのステーキの箱、ファンシーラッドケーキの箱……
中にはまだ食べられる物がいくつか入っていたが、殆どが食料品の空箱。
彼女はずっと、ずっと、時を待っていたのだ。
ーーダクトか
辺りを見渡すと、ロッカーの足元に、少し大きめの通風口があった。
蓋は、簡単に外しことができた。
中を覗き込むと、ダクトの中に小さな封筒が置いてあった。
「『よく頑張ったね、これは父さんからの贈り物だよ。あの大きな銃をPip-Boyにお入れ。きっと役に立つ日が来るだろう』……私は、本当にこれを持って行っていいのだろうか。彼らが残した物を、娘への愛を、私は冒涜しているのではないだろうか。」
封筒の中身は、鍵だった。
ああ、きっと、これは最低な行いだ。
先ほどまでの「欲しい!」という衝動は、いつの間にか消えていた。
だが、このまま彼の無念をないがしろには自分はできない。
「貴方達の死は、無駄にはしない。」
そうだ、私は鍵を回す手に力を込める。
がちゃりと、歯車の回る音が聞こえ、蓋が開く。
ずっしりと、その銃身の重みを腕に感じ、Pip-Boyのインベントリにクライオレーターを収めた。
「そういや、一睡も出来なかったなあ」
■
テツオは今、大きなエレベーターの中にいる。
ゆっくりと、それは地上に向かっており、頭上のシャッターが開いた。
そして、目の前の光景に涙を流す。
サンクチュアリ・ヒルズ、彼が住んでいた街。
それはもう、昔の面影を残してはいなかった。
緑が失われた、黄色い地獄。
だが、遠方からでも分かった。
「人が住んでいる……のか?」
彼は堪らず、坂を滑り降りた。
<Fallout Guide>
[Perk]
Pip-Boyが与える特殊な能力、または技能のことです。
本作では、個人の潜在能力を最大限に引き出したものと解釈されているため、テツオの持つ取得可能Perkには、原作に無かったものがあり、またPerkの取得可能条件がネイトさんと違ったりしています。
また、ネイトさんが当たり前にできることができなかったりします。
[Perk紹介]
<Strength1>
・Dream catcher(Rank.1)
・貴方はダーツの達人だ!投擲武器の命中率が上がる。
<Perception1>
・Analyzer(Rank.1)
・敵の気配を感じる?敵対している生物の方向がマップに表示されるようになる。
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