少年と少女はめぐりあう (メガネコ)
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比企谷八幡には、敵が多い





 

 

「あいつマジで何なの?」

「文実での偉そうな態度マジで腹立つ」

「死ねばいいのに」

 

ハッとしてベッドから飛び起きる。

嫌な夢だった。

いくら周りの人間から責められるのが慣れているといえどなかなかにくるものがある。

文実の一件以来俺の学校内での評価は、最底辺だ。

 

 

元から最底辺だろって?やめてくれ、その言葉は俺に効く…

廊下を歩いているだけでも、自分の悪口が聞こえてくる。

下駄箱の靴の中に紙くずが詰まっているなどの、いじめと言えるレベルのものまでの嫌がらせもあった。

まあ気にして抵抗すればするほどこういうのはひどくなるソースは中学時代の俺。

よって気にせずいつも通り気にしないのが一番なんだが……

 

 

「慣れているとはいえ、結構きついな・・・」

 

最近は睡眠が浅いせいか、腐った目がより一層腐っていた。

 

 

「生きるのって難しいな」

 

思わずつぶやいてしまった。

そんな中早歩きで奉仕部の部室にむかった。

 

重苦しい気持ちの中部室の扉を開ける。

「うす」

 

 

「あら、挨拶もまともに出来ないのかしらヒキガエル君」グサ

 

いつも通りの雪ノ下の馬鹿にする言葉ですら心にくる。

こいつや由比ヶ浜に悪気がないのはわかっている。

 

それでも・・・

 

「悪かったな。ずっとボッチだったからコミュ力足りないんだよ」

 

「そんなことだから、文実の時にあんな方法しか取れなかったのよ、クズ谷君」

 

今一番触れてほしくないものに、触れてくる。

唇をかみ感情を抑え込み、無言でやり過ごす。

こんな時にまともに相手をしていたら本当に泣きそうだ。

 

「やっぱり不真面目で最低だね君は。」

城廻先輩に言われた言葉が唐突に思い出される。

 

「はぁ」

ぽつりとため息が漏れてしまう。

 

 

いつもの自分の席に座りかばんの中から小説を取り出そうとする。

しかし、小説が見当たらない。

おかしい休み時間に読んでカバンの中に入れていたはずなのに・・・。

もしやクラスメイトに取られたのか?

カバンの中を見て固まっている俺を見て不思議に思ったのか、雪ノ下が声をかけてくる。

 

 

「今日は読むものを持ってくるのを忘れたの?あなたにしては珍しいわね。」

 

 

雪ノ下に余計な心配をかけるべきではないと判断した俺は、忘れたみたいだ。と答えた。

 

すると雪ノ下が読んでいた本を閉じてこちらを向き、帰るように伝えてきた。

それは奉仕部への依頼もないため由比ヶ浜は、久々に三浦達とカラオケにいって今日はいないそうだ。

また顧問の平塚先生も合コンの準備でもう帰宅しているそうなので、帰ってもよいとのこと。

雪ノ下もそれを俺に伝えるために、残っていただけなので帰るそうだ。

俺自身も特に用もないので帰ることにした。

 

「またね、比企谷君。」

 

「ああ、雪ノ下もな」

 

いつも通りの軽い挨拶を交わし雪ノ下と別れ下駄箱まで行く。

 

下駄箱の扉がへこんでいる。

おそらく誰かが殴るなりして、へこませたのだろう。

嫌な予感を持ちながら扉をあける。

 

扉を開けた途端ばらばらとちぎれた紙がたくさん落ちてきた。

 

「死ね」

 

「クズ」

幼稚な言葉がたくさん書かれていた。

 

ついていないことに下駄箱の中のおれのスニーカーはボロボロに切り刻まれていた。

そしてその中にビリビリに破かれた今日読んでいた小説が突っ込まれていた。

靴の中の紙くずを取りボロボロのスニーカーをはく。

周りからクスクスと笑っている声が聞こえる。

 

「ざまあないぜ」

 

「あれぐらいされても当然よね」

 

そんな声が聞こえる。

 

下駄箱の扉を叩きつけるように閉める。

 

「キレてる、キモイ」

 

周りの声を聴かないように、下を向き早歩きで駐輪場にむかった。

早く帰ってさっきあった出来事を忘れたい。

外の天気は雨が降っていたのだが、そんなことにも気づかなかった。

 

そこでさらに、嫌なものをみる。

自分の自転車のサドルが切り刻まれている。

チェーンが切られタイヤがパンクしている。

自分の周りがどす黒く塗りつぶされていくように感じた。

耐えていた感情が、こらえきれず洪水のようにあふれ出てきた。

 

 

「あああああああああああああ」

 

 

泣きながら、自転車をおいてただがむしゃらに走った。

なるべく早く遠く学校から離れたかった。

 

 

めぐりside

 

生徒会の仕事は文化祭が終わり、つぎの体育祭までしばらくない。

私にとって高校最後の文化祭は対外的には大きな問題もなく終わり、

最終的には成功した。と言える。

 

人一番優しい一人の少年が自分を傷つけることで。

 

「比企谷君、大丈夫なのかな?」

文実が終わって以来彼の悪名が広がっている。

なんでも女の子を泣かせたクズ野郎だの、偉そうなことをいう口だけ野郎だの。

 

相模さんたちが、必死になって嫌な噂を広げているそうだ。

いじめを受けているなどの嫌な噂を聞くようにもなった。

いくら周りのことを気にしていないといっても、大丈夫なのだろうかと不安に思う。

 

 

私自身も、彼に対してひどいことを言ってしまった。

周りの意見だけで彼を判断してしまった。

みんなが怠ける中、仕事をちゃんとこなしてくれていたし。

相模さんが責められない形で説得してきてくれたし。

自分を犠牲にするというあまり褒められたものではない形だったけれど…

 

 

「こんど会って話をしてみよう。前回のことを謝らないと…。」

と決意をした。

謝り、そして、彼が困っているなら力になりたい。

そう思いながら外に出る。

 

 

雨が降る中傘をさし帰る。

帰り道の途中の交差点でカバンも持たず傘もささずにボーっと立っている男の子を見つけた。

 

 

「大丈夫ですか…?」と声をかける。

 

 

するとゆっくり振り向き「…城…廻先…輩…?」と尋ねてきた。

よく見てみると比企谷君だった。泣いているのか声がかすれていた。

急いで彼を傘の中に入れる。

「どうしたの比企谷君!?カバンは!?傘は!?」

 

 

矢継ぎ早に尋ねる私に、彼は何も答えずただ泣きながら立ち尽くしている。

信号が変わり青になった。

私は彼をこれ以上雨にさらさないように、家に連れていくことにした。

手を引いていくとおとなしくついてくる。

しかし、それだと傘から出て彼が濡れてしまう。

私は彼に腕をからめ、濡れないように引き寄せる。

早く家に連れて行かないと…

雨はますます激しさを増していく。

 

 

 

私の家は二階建ての一軒家で、私と両親の三人家族で、両親は共働きをしている。

ちなみに今両親は出張に出ている。

自宅につき玄関の扉を開け、彼を中に連れ込む。

途中で傘も役に立たないほどの土砂降りになった。

おかげでふたりともびしょ濡れである。

 

「ちょっと待っててね、着替えと拭くもの持ってくるから!」

そう言って急いで自分の部屋に戻り軽く体を拭いて部屋着に服を着替え、彼の体を拭くためのバスタオルと着替えを持っていく。

男物の着替えはお父さんの物を使うことにした。

玄関にもどり比企谷君に着替えのシャツを持っていき手渡す。

 

 

「早く着替えないと風邪ひいちゃうよ~」

 

 

それでも彼は生返事しか返ってこない。

 

 

「しょうがないなぁ、お姉さんが着替えさせようか?」

そう言っても、彼はボーッと立ちつくしている。

 

このままでは風邪をひいてしまう。

私は比企谷君のびしょ濡れの学生服をぬがせる。

お姉さんぶってはいても、そもそも男性に告白されることはあっても付き合ったことのない私は、当然こんな近くで男の人の体を見たことなんてない。

自分でも意識してるような場合ではないと思いながら、運動部に入っていないのに意外と厚い胸板や、うっすら割れている腹筋を見て、顔が熱くなるのを感じる。

 

「じゃ、じゃあ、軽く体を拭いとくね。か、風邪ひくといけないし。」

 

さっきまでのお姉さんの雰囲気もどこにいったのか、大分どもってしまった。

は、恥ずかしい。

なるべく体を見ないように気を付けながら、タオルで拭いていく。

手早くシャツを着せ、髪の毛をワシャワシャと拭いていく。

その後足を拭きあがってもらった。

さすがにズボンを着替えさせるのはためらわれたので、着替えてもらったけれど。

彼がズボンを着替えている間に体が温まるように紅茶を用意した。

 

 

 

着替えが終わり廊下に突っ立った彼を自分の部屋に案内して紅茶を出した。

彼にクッションに座ってもらい自分はベッドに腰かける。

彼が紅茶を飲み、こわばった顔が少しずつだがほぐれてきた。

 

しばらくして落ち着いたようなので紅茶のカップを机に置き、彼に何があったのか尋ねようとした。

 

 

「学校で何かあったのかな?もし言ってくれたら、何か力になれるかもしれないから。」

 

 

真剣な表情で彼を見つめる。

すると彼の目から涙がこぼれ始めた。

そしてそのまま壊れたように泣き始めた。

 

 

私は彼を引き寄せ抱きしめる。

そうしないと彼が消えてしまうような気がした。

確か、心臓の鼓動の音を聞くと人は落ち着くというのを本で見た。

自分の胸に彼の頭を抱き、優しく彼の頭をなでる。

 

 

彼の耳元で「大丈夫だよ。私がそばにいてあげる。」とささやき頭をなでる。

 

しばらく、そうしていると彼は泣きつかれたのか、眠ってしまっていた。

彼をベッドに運び寝かせる。

腐った目と言われているのを聞いていたけど、目を閉じ眠っている彼は顔も整っている。

また、泣いていたので目の下が少し赤くなっていて、失礼かもしれないけれど可愛いとかんじてしまった。

彼に対する印象は、文実の時の一匹狼のような感じかと思っていたが、こんな風に弱っている姿を見せられると、なんか、こうキュンとくる。

よく少女漫画にある、ヒーローの弱っている姿にトキメキを感じるようなものだ。

女性のみなさんならわかってくれるはず!!

まあ、こんなことが現実にあるとは思っていなかったけれど……

 

 

 

穏やかな呼吸を繰り返す彼をみて、抱きしめた時のことを改めて思い出す。

「私ってこんなに惚れっぽい人間だったかな…」

と思わずつぶやいてしまった。

しかも、無意識のうちに彼の頭をなでていた。

それに気づき慌てて手をひっこめる。

まずい…顔がどんどん赤くなっていく。

いけないいけない、弱っている人にこんな感情を持つのは失礼なことだ。

頭をブンブン振って切り替える。

 

 

外を見ると雨は先ほどよりも弱まっているようだ。

時刻は午後六時半、比企谷君は眠ったばかりだし起こすのは忍びない…

 

 

「しょうがない、比企谷君には泊まってもらおう!」

 

そうしかたないのだ、実際学校で何かあったのは確実だし…。

今彼を一人にするのは、何となくダメな気がする。

弱っているときにこそ誰かがそばにいて、ささえないと。

 

それに心のどこかで彼のことをもっと知りたい。そういう思いが私の中に生まれてきていた。

 

 

泊まってもらうとすると、着替えが必要となってくる。

最近では下着もコンビニで売っているし、幸い近所にコンビニとスーパーもある。

季節外れの台風のせいで、ここ一週間は雨の予報が出ている。

ということは、食料品も買ってこないと。

今後のことを考えながら、玄関で靴を履き、傘を持って外に出る。

幸いにも、雨の激しさが弱まり小雨程度になっている。

外の天気の悪さと反対に、私はウキウキしながら買い物にくりだしていた。

 

 

 

 

 




とある所の八幡×めぐり作品を読み、感化されて書いてしまいました。

自分の体調があまりよくなく入院しているため、不定期な投稿になると思いますが、また見ていただけると嬉しいです。

最後に、つたない文章ではありますが、見ていただきありがとうございました。(^o^)丿


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城廻めぐりは思いに気付く

予想よりも多くの方に見ていただき、また、お気に入り登録していただきテンションが高まり書いてしまいました。

前回よりは、雰囲気が軽くなっていると思います…。

ご指摘、ご感想をいただけると幸いです。


八幡side

 

 

俺は真っ暗な中に一人ぽつりと立っている。

どこからともなく声が聞こえてくる。

 

「君は不真面目で最低だね」

 

「マジありえないんだけど、あいつ」

 

悪意ある言葉が次々と投げかけられる。

俺はその場にいることに耐えられずひたすらに、暗闇の中を走り続ける。

 

 

はっとして目が覚めた。

「嫌な夢を見たもんだ……。」

思わずつぶやいてしまった。

 

目を覚ましあたりを見渡すと、ふと疑問がうかんだ。

 

「ここは、いったいどこだ?」

 

見知らぬベッドで寝ている。というか部屋自体見たことがない。

ただ置かれている家具や小物から女性の部屋であることは想像がつく。

現状を整理するため、さっきまであったことを思い出そうとする。

 

 

自転車の惨状を見た後やみくもに走ったんだった。

今まであったことがショックだといえばそうなのだが、なぜあんなに取り乱したのだろうか……?

自分でもよくわからない。

俺自身かなりの人から悪意を向けられ、慣れているはずなのに…

帰りも、なんだか分からずに、ただがむしゃらに走って走って学校から遠くに少しでも遠くに行きたかった。

途中に城廻先輩に出会い話しかけられた気がするが、その後の記憶がさだかではない。

 

 

待てよ…じゃあここ城廻先輩の家なのか…?

 

 

なんかむずむずしてきた。

いや決して変な意味ではなくてですね。

まともに異性の部屋に上がったことのない身としては、どうすればいいのか分からなくなっている。

雪ノ下はって?あんなのノーカウント、ノーカウントだ。

 

 

ふと机の上に目がいくと、メモ帳にかわいらしい字で

 

 

[買い物に行って来るのでしばらく留守にします。

トイレは一階の玄関前の廊下を突き当たったところにあるよ~

飲み物は机の上に置いてあるポットにあるからね! めぐり]

 

 

なんて気が利くのだろうか。

もしかして城廻先輩は戸塚につぐ、天使なのではないだろうか…

 

ありがたくポットの中のお茶を飲む。

あったかくて優しい味だ。

紅茶を飲んで温まったせいか、眠気に襲われ俺はまたベッドに戻り意識を手放した。

 

 

 

 

 

めぐりside

 

 

コンビニに行き男性物の下着を買った後、スーパーにより食料品を買い込んだ。

その時に陽さんに彼の好みの食べ物を聞いておいたのは、彼には秘密にしておく。

聞く時に陽さんにさんざん問い詰められたけど……たぶん、ごまかせたはず…。

そう信じたい…切に。

 

「ごはんおいしいって食べてくれるかな…?」

料理はそれなりにしてきているけど、家族以外に食べてもらうのは初めてのことだ。

ちょっと緊張してきた…。

そんなことを考えていると、いつの間にか自宅についていた。

玄関の扉をあけ中に入る。

食料品を冷蔵庫に入れた後コンビニで買った下着をもち、二階の自分の部屋に向かう。

 

すると彼が寝苦しそうにうめいている。

嫌な夢でも見ているのだろうか。

私はベッドに近寄りかがんで彼の頭をなでる。

 

 

「大丈夫だよ。私がそばにいるからね。」

 

 

安心できるように、穏やかな声で。

すると彼の手が自分のほうにのばされる。

私は頭をなでながらごつごつした彼の手に自分の指を絡ませしっかりと手を握る。

しばらくすると落ち着きを取り戻したようで、規則正しい寝息を立てながら寝ている。

私は夕食の準備をするため、音を立てないように静かに立ち上がろうとする。

 

しかし、しっかりと手を握られているため。

離れようにも、離れられない。

どうしようか考えていると。腕が強く引っ張られる。

 

「あぅ」

 

立ち上がろうとしていた中腰の態勢なので踏ん張りがきかず、彼が寝てる上に覆いかぶさるように倒れた。

 

 

彼の顔が近くにある。

鼓動が早くなる。

軽く開いている彼の唇に目が行く。

 

 

してはいけない。

 

 

そう分かっていても、自然と目がひきつけられる。

彼の顔が徐々に近づいてくる。

違う…自分の顔が彼に近づいている。

互いの吐く息が触れ合う。

 

 

もう少しで触れる…そんな時に彼の泣いている顔を思い出す。

 

 

罪悪感が生まれる。

比企谷君や、彼の周りにいるおそらく彼に気のある雪ノ下さんや、由比ヶ浜さん

自分の勝手な欲望でこんなことをしていいはずがない。

何より弱っている人間にこんなことしていいはずがない。

 

ゆっくりと彼の顔から離れていく。

そして夕食の準備をするために、自分の部屋の扉を静かに閉じた。

 

 

 

 

夕食を作っている最中に、ずっと考え事をしていた。

 

そもそも彼に何があったのだろうか??

もし私の聞いている噂が本当だった場合、いじめが起きている可能性がとっても高い。

しかしいじめが起きていたとしても、彼は迷惑をかけないように誰も頼ろうとしないだろう。

こちらから手を差し伸べても、その手を払われたら助けようがない。

 

 

「どうしようかな…。陽さんだったらうまくやれるのかな……。」

 

 

こういう時自分の力のなさを思い知る。

文化祭も形の上では成功したといえ、成功させるために一人に犠牲を背負わせてしまった。

また、去年の文化祭を経験している人たちからは、陽乃さんの代のほうが楽しかった。

というような声も上がっている。

 

過去を悔やんでも仕方ない。

次には体育祭が控えている。

それに彼が起きてこないことには、詳しいことが分からない。

 

 

もう一つ、私は比企谷君のことをどう思っているのだろうか、ということ。

彼のことを知りたい、彼の支えになりたいという気持ちはどんどん大きくなってきている。

 

これは、彼に対して『恋』しているということなのだろうか?

 

異性のことを、好きになったことがないから自分でもこの気持ちが何なのかよくわかっていない。

それに、あんなにボロボロになっているのに好きになってもいいのだろうか?

彼にとって失礼なことなんじゃないか?

 

いろんなことが頭をめぐる。

 

 

よし!

切り替えるために、自分の両頬を叩く。

 

ぺちん。

 

 

「がんばるぞ~、おぉ~!」

 

 

そこにシューーとお味噌汁が沸騰した音がした。

慌てて火を消す。

 

「し、しまった…。考え込みすぎた。」

 

 

クスクスと笑い声が聞こえる。

後ろを見ると、比企谷君がいて、苦笑いしながら話しかけてきた。

寝起きだからかいつものように目が腐っていなくて、さわやかなイケメンに見える。

 

「城廻先輩何やってるんですか??」

 

は、恥ずかしい……

 

 

 

 

八幡side

 

 

暗闇の中に自分が立っている。

周りから嫌な声が聞こえてくる

「何キレてんの。マジきもい。」

「ざまぁww」

 

 

またこの夢か……。

嫌な出来事を、凝縮して見せてくる。

もうやめてくれ…

これ以上俺を責めるのはやめろ。やめてくれ……。

俺は自分の耳をふさぎ、しゃがみこむ。

 

 

その時耳元で優しい声が聞こえてくる。

「私がそばにいるから」

そんな言葉が聞こえた気がした。

やわらかい感触を頭に感じる。

落ち着く甘いにおいを感じ、少しずつ嫌な声が小さくなってくる。

そして暗闇がうっすら明るくなっていく。

 

 

 

目が覚めると、時計は八時を過ぎたところだった。

トイレに行きたくなって、一階に降りていく。

用を足した後、どこからか人が話しているのが聞こえた。

まあ城廻先輩以外は考えられないのだが。

いや待て今日は金曜日つまり平日……あれ親御さんとかご家族とかいるんじゃない、これ。

 

 

やばい、やばい、なんかパジャマで人のご両親に会うのはさすがに悪い。

というか、どう状況を説明すればいいの?八幡わかんない。

 

 

リビングのほうから音が聞こえてきてる。

親御さんと鉢合わせたらと恐る恐るリビングに通じる扉を開けちらりとのぞき見る。

 

 

すると城廻先輩がエプロンを着て、料理をしている。

私服のせいか普段より大人っぽい雰囲気をまとっている。

 

 

突然、シューーっという音が鳴る。

片手鍋の中のものが沸騰したようだ。

あたふたしながら城廻先輩が火を消す。

その際に近くに置いてあったさい箸が体にあたり飛んでいく。

 

普段の優しいお姉さんが、ドジッ子のようになっているのを見ると、思わず笑ってしまった。

その笑い声が聞こえたのか、顔を真っ赤にさせ、

 

 

「み、見てたの?」

と上目遣いで言ってくる。

 

 

計算されていない、あざとさは強いということを改めて感じた。

昔の俺だったら、告白をすっ飛ばしプロポーズするレベル。

そして振られるまでのワンセット。

結局ふられるのか…俺は。泣けるぜ。

 

 

そんなことを考えていると、反応しない俺を見て、

城廻先輩が心配そうに俺の顔を見てくる。

 

 

「大丈夫…?雨に濡れてたし、一応体は拭いたけれど…熱とか出てない?」

 

 

そう聞きながら自分のおでこを俺にあててくる。

 

その時夢で匂ったあまい香りがした。

心が安らぐのを感じる。

 

「熱はないみたいだね。良かった~。」

 

おでこをはなし、ほっとしたような表情で俺を見る。

その顔を見て、こんな俺を心配してくれる人もいるのかと、うれしくなった。

 

「おなか減ったでしょ?ごはん食べよ!ごはん!」

 

明るい声で俺を食卓に案内する。

四人掛けのテーブルに向かい合うように座った。

今日の夕食は、和風ハンバーグにごはん、味噌汁、サラダという健康的な食事メニューだった。

二人で、手を合わせて「「いただきます。」」

 

まずは汁物からと思い、味噌汁に手をのばす。

具材は油揚げとかぼちゃが入っていた。

一口汁を飲む。

ダシと味噌のバランスがちょうどよく、具材のかぼちゃの甘みとの相性も良い。

 

あっという間にお味噌汁を飲み終わってしまった。

 

 

「そんなにおいしかった?」と嬉しそうに聞いてきた。

 

 

「めちゃくちゃ、うまかったです。あんまりうちでは味噌汁にかぼちゃとか入れないんで、珍しかったんですけど、合うんですね。」

 

 

「お味噌がしょっぱい分ちょうどいいでしょ?おかわりあるけどいる?」

 

 

その後迷わずおかわりを選択した。

 

 

 

 

 

夕食を食べ終わりごはんを作ってもらったので、食器の片づけくらいはしたいと頼んだ

けれどお客さんだからと断られてしまった。

リビングのソファでくつろいでいると、食器洗いを終えた先輩が二人分の紅茶の入ったマグカップをもってやってきた。

 

そしておれの隣に座り、真剣な表情で言葉を発した。

 

 

「私比企谷君に謝りたいことがあるの。」

 

 

俺はどうして先輩がそんなことを言うのかわからなかったが、真剣な表情の先輩をみていると冗談ではないことが分かった。

 

 

「私は、文化祭の時ちゃんとよく君の行動について考えもせず、君のことを不真面目で最低だと言ってしまって、ごめんなさい。」

そういって、城廻先輩は俺に向かって頭を下げた。

 

 

 

「城廻先輩は、悪くないですよ。あの状況じゃどんな人が見ても、俺のほうが悪いですし、気にすr「それでも、私は君のことをちゃんと評価してあげれなかった。雪ノ下さんや陽さん、平塚先生も気づいてたのに…。だから、そのことを謝りたくて…。ごめんね。」

涙でうるんだ目で俺のことを見上げながら謝ってくる。

 

 

 

「分かりました。謝罪を受けます。だから、その、泣かないでください…。」

 

 

先輩の頭をなでながらそう言った。

しばらくなでていると、はっと気づいた。

普段のお兄ちゃんスキルが発揮されてしまった。

相手は自分より年上の人である。

そんな人の頭をなでるなんて、ばかにしてるとおもわれないだろうか……。

そんな考えが脳裏に浮かび頭の上から手をのけようとした。

すると、先輩がなでていた俺の手をつかみ、顔を赤くしながら

 

 

「もう少しだけ、こうしてくれない…?」

そうぽつりとつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

めぐりside

 

考え事をしていて、お味噌汁を沸騰させてしまった。

とめようとしていたら、菜箸を飛ばしてしまった。

なんだろうすごく頼りないよね……こんな先輩。

話しかけてもぽーっとしてる彼に不安になり、

 

「大丈夫…?雨に濡れてたし、一応体は拭いたけれど…熱とか出てない?」

そう尋ね、彼のおでこに自分のおでこをこつんとぶつける。

 

どうやら熱はないみたいだ…。

「熱はないみたいだね。よかった~。」

取り敢えずは、大丈夫そうなのでほっとする。

 

 

彼の顔を見てみるとうっすらと赤く染まっている。

それもそうだ…お互いの吐息があたるぐらい近くにいるのだから。

彼の唇が目の前にあり、思わず見つめてしまった。

 

 

そんなことがばれないように彼に食事をとるように勧める。

私は彼が口に入れるまで緊張していた。

そもそも異性に対して料理を作った経験もなく、いくら台所にそれなりにたっているといっても、雪ノ下さんたちには、かなわないだろうし。

もしおいしくないと言われたらどうしよう…といろいろ考えていた。

だけれど彼が一口食べた後顔がほころんだのを見て、うれしくなってしまった。

その後もどの料理も比企谷君の口にあったようで、おかわりをたくさんしてくれた。

 

自分の料理をあんなにおいしそうに食べてくれて、とてもうれしく、あったかい気持ちになった。

思わず食器を洗いながら鼻歌を口ずさみそうになるくらいに。

そしてやっぱり私は比企谷君のことが好きなんだと気づいてしまった。

 

 

浮かれていて忘れそうになってはいたが、比企谷君に謝らないといけないことがある。

このことを今頃謝っても、意味なんてないのかもしれない、それでも謝りたかった。

 

 

食後の紅茶を二人分作り、リビングにいる比企谷君に持っていく。

彼のそばに腰かけ、真剣な顔で彼に向かって話しかける。

「私比企谷君に謝りたいことがあるの。」

 

彼も真剣な表情で先を促してくる。

 

「私は文化祭の時ちゃんとよく君の行動について考えもせず、君のことを不真面目で最低だと言ってしまってごめんなさい。」

そういって、私は彼に向かって頭を下げた。

 

「城廻先輩は、悪くないですよ。あの状況じゃどんな人が見ても、俺のほうが悪いですし、気にすr「それでも、私は君のことをちゃんと評価してあげれなかった。雪ノ下さんや陽さん、平塚先生も気づいてたのに…。だから、そのことを謝りたくて…。ごめんね。」

 

彼のやさしい言葉を遮りながら、私は思っていたことを伝える。

 

 

「分かりました。謝罪を受けます。だから、その、泣かないでください…。」

 

 

困ったような表情で彼は私の頭をなでた。

男の人のごつごつとしているけれど、あたたかい手が自分の頭をなでていく。

だんだん気持ちが落ち着いてくる。

 

 

しばらくそうされていると、比企谷君が手を放そうとしてきた。

 

 

放してほしくない。

 

もっとこうして欲しいという思いから

思わず手をつかみ

 

「もう少しだけこうしてくれない…?」

そうつぶやいてしまった。

 

 

 




二つの視点で同じことを書くのは想像していたよりも難しかったです。
他の作者様のようにうまく書けるようになりたいです…。

めぐり先輩の癒しの雰囲気が少しでも出せていたら幸いです。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。(^o^)丿


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比企谷八幡は、意識する

UAが二日で3000を超え、お気に入り登録数も75になりうれしさのあまり病院のベットではしゃいでいたら、看護師の方に穏やかな顔でみられたメガネコです…。

前回より、文章も少なく、あまり状況は進んでいませんが、八幡に少しづつ変化が見られます。

ご指摘、ご感想があればしていただけると幸いです。


めぐりside

 

や、やってしまった…。

なで続けてほしいと思ってたけど、まさか口に出してしまうとは。

年上のお姉さんぶってたのに…これじゃあ、どっちが年上かわかんないよ…。

恥ずかしさのあまり顔から火が出そうなくらい熱い。

 

 

どうしよう…この空気。

なんだかふんわりとした雰囲気が漂っている。

 

 

この後相談にのるつもりだったのに。

 

 

一人頭の中でとまどっていると…。

そんな中彼が私の頭をゆっくりとなでてくれた。

優しくなでながら言葉をつないでいく。

 

 

「今日は、その…ありがとうございました。

嫌なことがあって、自分でもおかしいくらい取り乱してしまって…。

城廻先輩がいなかったら、俺今頃どうなってたか…。」

 

 

そう言いながら、彼は泣き出しそうな顔で笑う。

 

 

その顔を見てこのままだと彼はどこかに消えてしまうのではないか?

そう思わせる雰囲気をまとわせていた。

 

 

 

私は彼を抱きしめる。

 

 

消えてしまわないように強く。

 

 

「何があったのか話してくれない?私は比企谷君の力になりたいの。」

そう彼の耳元でつぶやく。

 

すると彼が「一つ聞いてもらってもいいですか?」尋ねてきた。

 

 

 

 

 

私は静かにうなずいた。

 

 

 

・・

・・・

・・・・

・・・・・

 

 

 

 

話で聞いただけでも、ひどいものだった。

そのことを話しているとき彼の指先は震えていた。

実際に体験している比企谷君の立場になると……

これは、もうれっきとした『いじめ』である。

自転車の件に関しては器物損壊などの犯罪ごとだ。

 

 

「そんなことがあったんだね…。話すのもつらかったよね…。

話してくれてありがとう。」

 

 

そう言いながら彼の頭を自分の胸に当てそのまま抱きしめる。

彼の体の震えが止まるまで、彼を抱きしめていた。

 

 

 

 

震えもおさまったところで、彼に入浴するように伝えた。

彼にコンビニで買ってきた下着を渡すと、

 

「何から何まで、本当にすみ「そういう時は、謝るより感謝してくれるほうがうれしいんだよ?」

 

謝る彼の言葉を遮りながら私はそういった。

 

彼は困ったように頭をかきながら

「いろいろありがとうございます。城廻先輩。」

 

顔もうっすら赤くなっていて、照れているだろうか?

 

私は何となくいじわるしてみたくなり

 

「城廻先輩じゃなくて、めぐりさんでしょ?」

とからかうと、

 

 

顔をそらし耳まで真っ赤にしながら

「感謝してます。めぐりさん。」と言ってくれた。

 

 

からかってたのは、こっちなのに私のほうが顔赤くなってるよ…。

 

 

 

 

 

彼がお風呂に入っている間に、客間に彼の布団をひく。

ほんとは傍で寝ていたほうがいいのかもしれないけれど、さすがに私も彼も年頃の男女なので、それはまずいと思い別々の部屋にした。

 

 

正直彼と同じ部屋だと私のほうが緊張して寝られないかもしれないし…。

 

 

 

布団をひきおわり、ふと彼に替えの下着は渡したけれど、彼に替えのパジャマを渡すのを忘れていたことに気付く。

脱いだら洗濯機に入れてと伝えてあるから、出て着るものがない状態だ。

 

 

彼がお風呂に入ってから十五分ほど、今なら替えの服を持っていけば間に合うはず。

急いで替えのパジャマを用意し、脱衣所にむかう。

 

 

「ごめん。替えのパジャマここにおいt……。」

 

 

ちょうどお風呂から出てきたところなのか、髪がまだ濡れている。

濡れた髪をかき上げオールバックにしているせいか、普段のだらけている感じせず、ワイルドな感じが出ている。

体を拭くときにも見た、引き締まっている筋肉質の体。

思わず目がひきつけられてしまった。

幸いにも、下半身にはバスタオルを巻きつけていたので、いろいろと隠れて見えていない。

 

 

「し、失礼しました…。」

そう言って、慌てて脱衣所から出る。

 

 

 

また、やっちゃった……。

ソファのクッションを抱きしめながら座る。

いつもはこんな事ないんだけどな…。

 

というか、比企谷君ほんとに運動とかしてないのかな?

結構引き締まってるのに。

男の子なら当たり前なのかな?

 

さっき見た光景がありありと思い浮かんでくる。

顔がまた熱くなる。

今日だけで何回こんなことになるんだろう?

 

 

「でもオールバックにした比企谷君かっこよかったなぁ」

クッションに顔をうずめながら、ぽつりとつぶやいた。

 

 

 

 

 

八幡side

 

 

いつもの城廻先輩らしくない。

こんな事決してするような方ではないはずだし。

もしかして文実での俺に言った言葉について相当気にしていたのかもしれない。

 

そう思い俺は先輩の頭をゆっくりとなでる。

なでるたびにふわふわと甘くいい匂いが漂ってくる。

髪も丁寧に扱われているのかさらさらしていて気持ちがいい。

 

 

今思えば先輩には今日さんざんお世話になっているのに、お礼の一つも言えていないことに気付き、お礼の言葉を伝えた。

 

「今日は、ありがとうございました。

嫌なことがあって、自分でもおかしいくらい取り乱してしまって…。

城廻先輩がいなかったら、俺今頃どうなってたか…。」

 

 

なるべく心配をかけないように笑顔をはりつかせて。

 

 

でも先輩には、お見通しみたいだった。

 

 

ゆっくりと俺の体が抱き寄せられる。

 

 

「何があったか、話してくれない?比企谷君の力になりたいの。」

そう俺の耳元で城廻先輩がつぶやいた。

 

 

先輩の鼓動の音と体温を身近に感じて、この人なら頼ってもいいんだ。

そう思える何かを城廻さんは持っていた。

 

 

だから「一つ聞いてもらってもいいですか?」とたずねてしまった。

 

 

先輩に文実が終わってからのこと、今日あった出来事のすべてを話した。

それを城廻先輩はただ静かに俺のことを抱きしめながら話を聞いてくれた。

 

すべてを話し終わった後、先輩は俺に

 

 

「そんなことがあったんだね…。話すのもつらかったよね…。

話してくれてありがとう。」

 

 

耳元でささやき抱きしめる力を強めた。

その言葉がさび付いていた心にスッとしみこんでいく。

 

この人に話してよかった…。

俺は心の底からそう思った。

 

 

 

 

しばらくして落ち着いた後、下着を受け取り風呂を借りた。

体を洗って、あったかい湯船に体をつけると気持ちが安らいでいく。

とある方も風呂は命の洗濯と言っていた。

これは本当に当たっていると思う。

体がきれいになることで、さっきまでの気分が多少さっぱりした。

 

 

風呂に入る前にいろいろあり先輩のことをめぐりさんと呼ぶことになった。

女子を名前で呼ぶなんて…。

 

小町以外じゃ初めてのことだから照れてしまった。

けーちゃんは小さいから名前を呼ぶのにも照れたりしないんだが。

 

 

「めぐりさん…か。」

名前を呼ぶだけで胸のあたりが温かい気持ちで満たされていく。

今までにない感覚に戸惑うが決して不快なものではない。

 

どちらかと言えば心地いいものだ。

 

 

あまり長く浸かっているのも先輩に悪いと思い普段よりも早めに出る。

ちなみに俺の平均入浴時間は30分ほどだ。

ちなみに小町はこの倍近く入っている。

よく女性の風呂は長いといわれるが、そんなに入っていて、ふやけてしまわないのだろうか??ときどき不思議に思う。

 

 

軽く体を拭いた後、腰にバスタオルを巻きつける。

その時替えの下着はもらっていたが、替えのパジャマをもらうのを忘れていた。

さっきまで着ていた服は絶賛洗濯中だ。

さすがにバスタオルだけで出るのは気が引ける…。

どうしようか?と悩んでいると、ばたばたと足音が聞こえてくる。

 

 

「ごめん。替えのパジャマここにおいt……。」

 

 

めぐりさんが、慌てて着替えを持ってきてくれたようだが、固まっている。

 

それはそうか…。

 

目の腐った全裸(腰巻装備)の男が目の前にいるんだし。

雪ノ下や由比ヶ浜あたりなら、こんな時にここぞと言ってくるんだろうけど。

そんなことを考えていると、固まっていためぐり先輩がロボットのようにぎこちない動きをしながら

 

 

「し、失礼しました…。」そう言い残しそっと脱衣所をでていった。

 

 

そんなめぐり先輩を見て笑ってしまった。

さっきまで、あんなに頼れる人って感じだったのに、たまに見せる天然なところのギャップに惹きつけられている自分がいるのを感じる。

一緒にいて雪ノ下や由比ヶ浜のいる奉仕部よりも居心地のいい場所があったなんて。

 

先輩についての気持ちが大きくなるのを感じた。

 

 

 

 

めぐりside

 

 

比企谷君がお風呂に入った後、私もお風呂にはいることにした。

何かあるわけではないが、いつもより念入りに体をあらう。

手にボディーソープをつけ泡立ててから洗う。

 

 

 

体についた泡を流し、湯船につかり今後のことを考える。

 

 

まずは比企谷君の周りの状況についてだ。

 

 

これは少しばかり考えがある。

自分の生徒会長という立場を使えば。

職権乱用しているような気がしているが…。

うまくいけば、どうにかなるはずだ。

自転車のことは監視カメラなどでやった人を当てるのは、さほど難しくない。

警察沙汰になると言っていれば、自首しに来る可能性もあるだろうし。

まあ最低でも停学となるのはみえているけれど。

 

 

後は、一番の問題は、彼自身の気持ちのことだ。

 

 

あんなことがあってすぐに学校に行けるはずもない。

しばらく休んでもらうべきなんだろうけど、今の彼を一人にはさせたくない。

幸い私、生徒会長もしたことがあり、優等生だったため推薦で大学は決まっている。

私が彼のそばにいたいというのもあるけど、彼のことを支えてあげたいそんなおもいが強くある。

 

 

「はぅ~」

 

 

湯船で思いっきり伸びをする。

ある程度の考えはまとまった。

後は私がうまくやるだけだ。

 

 

大変だろうけど、がんばらないと!

 

 

お風呂からあがりパジャマを着て、リビングにいくと比企谷君の姿が見えない。

 

客間をのぞいてみると彼はもう布団の中に入って眠っていた。

当然かな…。

今日一日でいろんなことがあったんだ。

体よりも心が疲れているのだろう。

 

 

眠っていると、年齢よりも幼く見える。

時々見える男の人の面と、幼い雰囲気との差にドキッとしてしまう私がいる。

柔らかそうなほっぺ。

 

つつきたくなり彼のほっぺをムニムニとつついてしまう。

想像していたよりも柔らかく癖になってしまう。

 

「んっ」

ほっぺを触り続けていると、彼が反応してきた。

まだ触っていたいという気持ちもあるけれど、起こしても悪いしおとなしく自分の部屋にもどることにした。

 

「おやすみ。比企谷君。」

そう小声でささやき、客間の扉を静かに閉めた。

 

 

 

 

今日は彼が嫌な夢を見ませんように

 

 

 

 




自分の予想していたものより多くの方に見ていただき、また、お気に入り登録してくださった方、評価をしてくださった方、感想をくださった方、本当にありがとうございます!

すごく励みになっています!

まだまだ、拙い点が多々あると思いますが、これからも見てくださるとありがたいです。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました(^o^)丿


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雪ノ下陽乃は、たくらんでいる

UAが三日で6800を超えました!
お気に入りも190件を超え、いつの間にか評価の所が赤く染まっていることに気付き驚愕したメガネコです…。

しかも、ルーキー日間の方で三位に入り、日間の方でもランキング入りしていたそうで、
これ本当に自分の作品なんだろうかと、疑問に思ってしまいました…。
誤字を指摘してくださった方、また、感想をくださった方、評価をしてくださった方、
そして作品を見てくださっている多くの方に感謝しております!!


今回、新たに一人話に加わってきます。


ご指摘、ご感想があればしていただけるとありがたいです。





めぐりside

 

今日一日で今まで知らなかった彼のことが、少しずつだけれどわかってきた。

そのことがうれしくて思わず鼻歌を口ずさみながら階段を上り自分の部屋へと向かう。

ちょうど部屋に入ったその瞬間を見計らったように、机の上の携帯がなりはじめる。

 

今の時刻は夜の十時半、別段遅い時間というわけではないけれど、電話をかけてくるにしては少し遅い時間な気がする。

携帯の画面をみると。

 

 

『陽さん』

 

 

と出ていた。

通話ボタンをおし電話に出る。

 

 

電話越しに明るい声が聞こえてくる。

「はろはろ~。めぐり、起きてる~?」

 

 

「起きてますよ~、陽さん。どうしたんですか?こんな時間に」

こんな時間に陽さんが電話してくるなんて珍しい。

私は少し疑問に思った。

 

 

「いやぁ、比企谷君はどうしてるかなぁとおもってね~、気になって眠れなくなりそうだったから電話したんだよ~。」

 

 

おかしい陽さんには私の家に比企谷君が泊まっていることは、言っていないはずなんだけどなぁ…。

 

夕方に電話した時も文実でお世話になった彼にお弁当を作りたいと嘘をつき、食べ物の好みを聞いたので、ばれてないと思ったんだけど…。

 

 

返事をしない私のことが気になったのか、続けて聞いてくる。

 

 

「私はね、お気に入りの子たちのことは何でも知ってるんだよ?」

なんだろう深い意味はないけれどゾクっとした。

そのせいか私は彼に何があったか、そして私がこれからしようとしていることを陽さんに話した。

 

私が話し終わった後、陽さんは黙っていた。

 

しばらくして沈黙をやぶり私に尋ねてきた。

 

 

「その方法で成功すると思う??」

 

 

私が陽さんに伝えたのは相模さんにもう一度体育祭の実行委員長になってもらい、

その時に比企谷君に謝ってもらうというものだった。

 

これが上手くいくかどうかかなり微妙だと言われてもしかたない…。

なんせ問題がいくつもあるからだ。

 

まず一つ目は、相模さんが体育祭の実行委員長をもう一度引き受けてくれること。

文実の際にあれだけ恥をかいてしまったのに、引き受けてくれるかどうか。

という点。

 

二つ目に、相模さんが彼に謝罪をするかどうか。

これは自分が比企谷君のおかげで救われたということに気付かせてあげれば、いけなくもなさそうな気がする。

しかし謝る場所は彼が悪くなかったという噂が広がらないと意味がないという点。

 

三つ目は、相模さん以外に彼に対して敵意を持っている人についてだ。

自転車のことや靴箱のことなど明らかに便乗して彼をいじめている人たちに対して注意したところで、エスカレートしてしまうかもしれないという点。

 

 

大きくこの三つが問題としてあげられる。

私個人で解決することは、かなり厳しいだろう………。

自分の力の無さは知っている。

生徒会に入った当初から陽さんと自分との持っている『モノ』の差も気づいている。

憧れて近づきたいと思っても届かない。

 

まるで水面に映る月のように。

 

 

そうだとしても…わたしは………

 

 

「それでも私は彼の…八幡くんの力になりたいんです。

だから力を貸してください、陽乃先輩。」

 

力強く宣言した。

 

 

 

 

 

陽乃side

 

午前で大学の講義が終わり自宅で暇を持て余していた私に電話がかかってきた。

 

 

高校の時生徒会の後輩だった、めぐりからである。

 

 

電話に出てみると、比企谷君の好みの食べ物について知りたいと言ってきた。

なんでそんな事聞くのかと不思議に思い尋ねてみると、文実の時のお礼としてお弁当をつくってあげたいとか。

めぐりが異性にお弁当を作るなんて…。

 

さすが比企谷君。天然ジゴロだねぇ~。

 

昔、彼の妹の小町ちゃんに聞いたことがあったので、伝え電話をきる。

 

「はぁ~、青春してるねぇ。」

 

にしても、めぐりがついに比企谷君を攻略しにきたかぁ…。

雪乃ちゃんもガハマちゃんも早くしないと、思わぬダークホースに取られちゃうよ~。

まあ理性の化け物の彼が、そう簡単に落ちるとは思えないけれど…。

でも今比企谷君は弱ってるみたいだし…。

 

どうなるかなぁ♪

 

比企谷君を取られて、落ち込む雪乃ちゃんも見られるかもしれないし…。

どっちに、転んでもたのしみだなぁ~♪

 

 

「さて、お風呂はいってこよ!」

今後のことを楽しみにしながら、私はお風呂場に向かう。

 

 

 

 

夕食を食べ終わり、リビングでリラックスしていると

珍しいことに小町ちゃんからメールが届いていた。

 

 

 

差出人:小町ちゃん

 

金曜日  22:46

件名:兄の行方が分からなくて…。

______________________________________

 

雪乃さんから連絡があって、お兄ちゃんに

学校で何かあったみたいで………。

詳しくは教えてもらっていないんですけ

ど、ひどいことがあったって。

 

家にも帰ってこないし心配で…。

もしお兄ちゃんの居場所を知っていたら、

連絡をしてください。

 

______________________________________

 

 

小町ちゃんに言えないようなぐらいひどいことか……。

これはそうとうへまをしちゃったみたいだね~比企谷君は。

 

まあおおよそだけど、彼の居場所はわかるし。

 

というか、めぐりの所にいるのは確定しているし。

 

めぐりが唐突に比企谷君の好みの食べ物について聞いてくることにも、つじつまが合うしね。

まあ、あくまで予想だし外れてることもあるだろうから確認してみよう♪

 

アドレス帳からめぐりの電話番号を選択する。

 

「はろはろ~。めぐり起きてる~?」

 

 

「起きてますよ~、陽さん。どうしたんですか?こんな時間に」

不思議そうに聞いてくる。

 

「いやぁ、比企谷君はどうしてるのかなぁと思ってね~、気になって眠れなくなりそうだったから電話したんだよ~。」

 

めぐりが沈黙してる。

このことから、めぐりの家に比企谷君がいることが確定した。

 

隠すなら、もうちょっとうまく隠さないとね~♪

 

まあ、あの子の純粋で嘘が苦手なところも気に入っているのだけど。

 

純粋で優しいから、いじめたくなる。

 

「私はね、お気に入りの子たちのことは何でも知ってるんだよ?」

慈愛に満ちているように、めぐりに話しかける。

 

すると、めぐりは素直に話し始めた。

ちょっと怖がらせちゃったかな?

 

・・

・・・

 

 

比企谷君に起こったことを小町ちゃんに話せないことが分かった。

明らかに行き過ぎた行為があるし、犯罪行為と言えるものもあった。

こんなの家族に話せるわけもない…。

というか私のお気に入りにこんなことをしやがった奴らは、ただでは済まさない。

 

そして、めぐりの言う解決法も決定打になるかと言えば微妙すぎる。

成功したとしても彼自身の内面が治らなければ、どうしようもないし。

そんな事めぐりも知っているはずだ、それなのになぜだろう?

 

 

 

だから、私は気になった。

なんでそんな可能性の少ないことをして。

 

大変な思いを積極的にしたいと思ったのか。

めぐりらしくない。

 

「その方法で成功すると思う??」

 

しばらくの沈黙の後、帰ってきた答えは

 

 

「それでも私は彼の…八幡くんの力になりたいんです。

だから力を貸してください、陽乃先輩。」

 

しっかりとした声でそう頼んできた。

 

 

あの子から何かを頼まれるとは思わなかった。

というより、あの子はなんだかんだ言っても、私のことを頼ろうとしたことの方が少ない。

なんだか思わぬところで、変化があったようだ。

 

 

というか、八幡ねぇ。

 

 

あの理性の化け物もついに陥落したのかな…。

まあその辺は置いといて、珍しく後輩が頼ってくれたのだ。

先輩として答えるしかないね。

にしても、比企谷君に目をつけといてよかった♪

 

 

「分かったよ、めぐり。それで頼みたいことって?」

変わっていく後輩にうれしく思いながら、めぐりの言葉に耳を傾けた。

 

 

 

 

めぐりside

 

「ふぅ~。つ、疲れた…。」

 

陽さんとの会話を終えて、一息ついた。

私が口を滑らせ『八幡』といってしまったせいで、ものすごく探りを入れられた。

 

私は終始顔を赤くしたままだった。

 

 

けれどもその代わりに陽さんという強力な力を借りることが出来たので良かったのかもしれない。

 

にしても…………疲れた…。

電話開始から一時間以上経過していて、もう日付が変わろうとしている…。

もう寝よう…今日はいろいろあったし。

 

 

部屋の電気を消し、ベッドに横たわる。

横になると、比企谷君が寝ていたせいか、彼の匂いがする。

そのせいか、布団の中に入ると、彼に抱きしめられている気がする。

 

「おやすみ、八幡君。」

私は、そうつぶやき意識を手放した。

 

 

明日も彼といれる。

 

そう思うだけで胸がポカポカした。

 

 

 

 

八幡side

 

 

朝、目が覚めた。

今日はいつもみたいな悪夢を見なかった。

これが…これこそがめぐりパワーだというのか…。

 

恐るべき力だ…。

 

変な考えを浮かべながら時計を見る。

 

十一時

 

最近嫌な夢のせいで寝不足だったせいか、ぐっすり十二時間以上寝ていた。

にしてもリビングにめぐり先輩の姿が見えない…。

 

休日だからと言って昼まで寝るような人には、見えない。

昨日さんざんお世話になったのだから、朝ごはんぐらい作ろう。

かと言って、よそ様の家の冷蔵庫をあさるのはよくないだろう。

そう思い許可をもらいに、めぐり先輩の部屋へとむかった。

 

ノックを三回し、部屋に入る。

 

「あの城m・・・めぐりさん、朝は俺がつくっt…。

どうしたんですか!?」

 

 

めぐり先輩が床に倒れていた。

 

 

 




今回、初めて二人以外のキャラクターが出てきました。
ただ、他の二人に比べ陽乃さんを書くのが難しく、陽乃さんのキャラが原作と違ってきてないかと不安です…。
評価の中にも、低評価の方もいらっしゃるみたいで、自分の文章力の無さをひしひしと感じています。

まだまだ、不慣れなため不快に思われている方もおられるかもしれませんが、なるべく直していきたいと思っておりますので、これからも見てくださるとありがたいです!

最後まで見てくださり、ありがとうございました(^o^)丿


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城廻めぐりは、思い悩んでいる

UA9800を超え、お気に入り登録も250を超え、うれしさのあまり見舞いに来てくれた友人に抱き着いたところを、おばちゃんに見られ、きまずくなったメガネコです。


前回めぐりの身になにがおこったのか…!


評価、ご指摘、ご感想大変励みになっております!
材木座の、「読んでもらえてうれしかった」という言葉に共感する日々です。

ご指摘、ご感想お待ちしてます!


八幡side

 

カーテンがしまったほの暗い部屋。

 

そんな中めぐり先輩がうつぶせに床に倒れていた。

 

 

急いで彼女に近寄る。

昨日俺が寝てた後、何かあったのだろうか?

めぐり先輩を抱き起し顔をこちらに向ける。

ほっぺたが赤くなっていて、軽く開いた唇から漏れる呼吸が辛そうだ。

 

 

「ふぇ、比企谷君起きてたんだ、ちょっと待ってて今起きるから。」

 

惚けた顔でそうつぶやく。

 

めぐり先輩は立ち上がろうとしたが、力が入らなかったのかふらふらとしている。

 

 

このままだとまた倒れる…。

 

そう思った俺はめぐり先輩を、お姫様抱っこをしベッドに運ぶ。

 

「にゃ…!?」

驚いたようなかわいらしい声がめぐりさんの口から出る。

 

 

「めぐりさん、今日はゆっくりしていてください。昨日お世話になりましたし、今日は俺があなたを助ける番です。」

 

そういって先輩のおでこに手を当てる。

 

大体38度ぐらいはありそうだ。

昨日の雨でぬれたからなのだろうか風邪をひいているようだ。

先輩から冷えピタや薬の場所をきき持ってくる。

 

 

冷えピタを先輩のおでこに張り付ける。

体温計で熱を測ると、38.2と出る。

 

高熱だ。

 

先輩のベッドとマットレスの間にクッションをいれ頭の位置が高くなるようにする。

後は薬を飲むために何か食べてももらわないと。

 

 

風邪の時は消化にもよいおかゆがいいだろう。

そう思い一階におり、おかゆを作ることにした。

小町が風邪の時、我が家では両親が共働きのため、俺がよく学校を休み親の代わりに面倒を見ていた。

その時に作っていたおかゆを作る。

 

まず昨日の残りのご飯を茶碗一杯分用意する。

それを鍋に入れ水500ml程と一緒に煮立たせていく。

初めは、沸騰するまで強火で煮ていく。

 

次に、沸騰したら弱火にして   

 

塩:小さじ一杯程度

粉末ダシ:小さじ一杯

生姜:すりおろし(チューブでも可)を少々

鰹節:一つまみ

お好みで具を入れる。

 

そして十五分とろ火で煮て、火を止め十五分ほど待つ。

 

これで、茶碗二杯分のおかゆの完成だ。

お好みでお漬物なり、梅干をのせてもいける!

城廻家の冷蔵庫には浅漬けもあったので、それを小皿に乗せて持っていこう。

 

 

おあがりよ!

こんな時だけれど一度言ってみたかった…。

 

 

おかゆを茶碗一杯分用意し、薬を飲むために水をコップにいれ、おぼんに乗せ持っていく。

 

 

ノックをした後、部屋に入る。

いったん机の上に食事を置きベッドに近寄る。

まだ少し呼吸が荒れている。

 

暑さのせいか、息苦しかったのか、自分でパジャマの胸元のボタンをはずしていた。

そのせいで、由比ヶ浜や平塚先生ほどではないが、やわらかそうな丘が呼吸とともに上下しているのが見える。

熱があるため、顔も朱に染まっている。

 

端的に言おう。

なんか、こうエロいです。

ぐっと来ます。

 

 

危うく理性が持っていかれるところだった…。

 

 

いかんいかん、相手は病人。

 

邪な感情を捨てるために、頭を振る。

 

めぐりさんの肩を軽くたたき、抱きおこす。

 

「あの休んでいるところすいません。おかゆ作ってきたんで軽く食べませんか?

薬も飲まないといけないですし…。」

そういうと

 

 

「あ…うん。ごめんね。迷惑かけて……。君の方が弱っているときに…。」

そう言いながら、泣きそうな表情になっている。

 

 

「そんなことないですよ。昨日さんざんお世話になりましたしね。」

 

それでも、なにか言いたそうにしているので無理やり話を切る。

 

「病人はおとなしくしててください。はい、おかゆです。」

 

おかゆと、レンゲを先輩に手渡す。

 

それでも、先輩がシュンとしているのでレンゲを取り、おかゆをすくって先輩の口元に持っていく。

 

きょとんとしてる先輩に

「めぐりさん、口を開けてください。ほら、あーん…。」

 

めぐり先輩も素直に口を開く。

桜色の柔らかそうな唇が、小さく開きおかゆを食べる。

食べた瞬間さっきまでのシュンとした方が、どこへやら。

 

はにかみながら、小さく

 

「おいしい。」とぽつりとつぶやいていた。

 

 

人に自分の作ったものをおいしいと言って食べてもらえるのは、とてもうれしいことだということを思い出した。

風邪の時の小町もこんな風においしいって言ってくれてたっけ…。

そんなことを思っていると、服の袖をクイクイと引っ張られる。

 

「もう一口、お願いしてもいい?」

 

耳まで真っ赤にしながら上目使いで見てくる。

それは反則でしょ……先輩。

 

「え、ええ、いいですよ。あーん。」

 

 

めぐりさんが、おかゆを咀嚼し飲み込む。

細く白いのどが小さく上下に動く。

 

熱のせいか首についてた一滴の汗が服がはだけている胸元に流れていく。

前かがみに、なっているため胸元深く見えてしまう。

 

思わず目がひきつけられる。

べ、別に変な目でみてたんじゃないんだからね!勘違いしないでよね!

 

 

まずい、本格的にまずい…。

一応男子高校生なんです………いろいろあるんです。

自分の顔なんて見なくても赤くなっているのが分かる。

幸いなのは、めぐり先輩はそのことに気付いていないということだけだ。

 

・・

・・・

 

結局もう一回が何度も続き、おかゆ一杯まるまる食べさせてしまった。

ある意味地獄だった…。

 

いろいろ抑えるのが、ね?わかるよね?

 

 

おかゆを食べ終わった先輩に薬を飲ませ、部屋でゆっくりするように伝え立ち上がろうとする。

また袖をつかまれる、振り向くとめぐり先輩が小さく

 

「ありがとね、八幡君」

とつぶやいていた。

 

 

「ひゃ、はい…。」

ここで噛むなよ俺……。

あれ、いま名前で呼ばなかった…?

 

 

 

 

めぐりside

 

 

 

頭がぼーっとしている。

体が思うように動かない。

これは、風邪ひいちゃったかな…。

 

 

八…比企谷君に、朝ごはん作ってあげたかったんだけどな~。

さっき部屋に彼がきて、私をベッドまでお姫様だっこで運んでくれた。

恥ずかしいけれど、うれしかった。

重くなかったかな…。

 

手際が良かったし…。

 

他の子たちにもこういうことしてるのかな……。

そんなことを思っているうちに、まぶたが重くなり徐々に私は意識を手放した。

 

 

 

 

肩を軽くたたかれる。

彼がおかゆを作ってくれたとのこと。

うれしさもあるが、情けなさを感じてしまう…。

昨日陽さんの前であんなこと言っといて、翌日このざまなんて…。

だからか、彼の言葉にも

 

 

「あ、うん。ごめんね。迷惑かけて……。君の方が弱っているときに…。」

こう返してしまった。

 

 

「そんなことないですよ。昨日さんざんお世話になりましたしね。」

優しい言葉をかけてくれる。

逆に申し訳ない気持ちになる。

 

 

「病人はおとなしくしててください。はい、おかゆです。」

彼がお茶碗とレンゲを渡してくる。

それでも自分のふがいないところが悔しくて、なかなかおかゆを口に出来なかった。

 

そんな自分をみかねたのか

 

「めぐりさん、口を開けてください。ほら、あーん…。」

 

私は思わず口を開け、食べてしまった。

鰹節の風味とダシと塩のしょっぱさが調度よく、すぐに一口食べてしまった。

おかゆは味がほとんどなく、あまりおいしいと言うイメージはなかった。

 

予想以上のおいしさに、顔がほころぶ。

 

「おいしい。」

 

そうつぶやいてしまった。

 

 

すると彼が考え事をしてるみたいで、固まっている。

朝から何も口にしていないせいで、お腹が物凄く減っている。

でもレンゲを彼が持っているので、食べたくても食べれない…。

仕方ない、私は彼の服の袖をつかみ、ちょんちょんと引っ張る。

 

 

「もう一口、お願いしてもいい?」

 

 

そう頼むと彼は、なぜか顔を赤くし、

「え、ええ、いいですよ。あーん。」

としてくれた。

 

 

彼にそうしてもらうのがうれしくて、つい何度ももう一回と頼んでしまった。 

 

・・

・・・

 

おかゆを食べ終わり彼が持ってきたお薬をのんで、彼が私に「しっかり休むように」と言い部屋を出ていこうとする。

 

彼が純粋に私を心配してくれたのが、うれしく部屋を出ようとする彼の背中に

「ありがとね、八幡君」

そう声をかけた。

その後の彼の返事が、変だったのに少し笑ってしまった。

 

 

 

 

 

お腹もいっぱいになり、さっきまでのことを思い出す。

八幡君にあーんしてもらったり、自分からそうするように頼んだこと………。

 

 

あれ、私結構大胆なことしてなかった…?

 

 

枕に顔をうずめる。

熱で頭がぼーっとしてたせいか、してほしいことを普通に頼んでしまっていた。

しかも何気に八幡君って言ってたじゃん…。

 

「あぅ~………。」

 

声にならないうめきが出た。

枕に顔をうずめてたから、彼に声は聞こえていないはず。

彼に私の気持ちが、ばれちゃったのかな…。

 

 

いや気づいたとしても八幡君の周りには、雪ノ下さんや、由比ヶ浜さんみたいな可愛い子たちがたくさんいるしなぁ……。

あんな子たちと一緒にいたら、私のことなんて眼中にないよね…。

雪ノ下さんは美人で何でもできるし。

由比ヶ浜さんは胸が大きくかわいい、優しくもある。

2人とも異性にしてみたら惚れないはずはない。

でもでも八幡君時々私のこと見て顔赤くしてたし全く脈がないわけでもないはず…?

 

 

なんか、こんな事考えてると自分が下心で彼を助けようとしてるみたいで、なんか嫌だな。

下心が全くないわけでもないけれど…。

 

はあ、私ってこんな人だったのかな………。

こんなこと考えてたら、八幡君に嫌われないかな。

 

彼に嫌われたら…。

そう考えると胸の奥がキューとなる。

 

 

「八幡君。」

 

 

切ない気持ちになり思わず、彼の名前を呼んでしまった。

 

胸が苦しくなったのは風邪のせいだけではない気がした。

 

 

 




二人の心情を表すのがやっぱり難しいですね…。
他の作者様方のように、なかなかうまくいきません…。
はやくうまく書けるようになりたいです!

感想、評価、見てくださった方
この作品を読んでいただきありがとうございました(^o^)丿


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雪ノ下陽乃は、面倒見がよい

お気に入りが300を超え、多くの人がこの作品を見てくれていることに感謝感謝している、メガネコです!

今回は、八幡さんに変化が起きます。


ご指摘、ご感想があればしていただけると、ありがたいです。



八幡side

 

めぐり先輩の部屋から出た後、自分の昼の分を作ることにした。

おかゆはタッパに入れ冷蔵庫に保存しておき、夜に食べてもらうつもりだ。

ごはんが幸い残っているので、おにぎりを作り白菜の浅漬け、そして昨日の残りの味噌汁を食べた。

 

 

お腹にものが入り、一息ついたせいかさっきまでの出来事を思いだす。

今考えれば、とっさに食べさせてしまったと言っても、相手は先輩で小町じゃないというのに…。

やべえ、結構恥ずかしいことしてしまったな…。

でも一体なんで八幡君と名前で呼んでくれたのだろうか?

風邪でただ単に弱っていただけだと思うが。

 

 

俺は今後のことについて考える。

自分を取り巻く環境は、こうしていても変わることはない。

今までは、精神的なものが多かったが、暴力沙汰になるのもそう遠くないだろう。

一人で解決できるか…?

 

答えは否。

 

一人で解決できるなら、とっくにしてる。

 

 

誰かを頼るか?

 

 

では、誰を?

そもそも俺をたすけようとする奴なんているのか?

 

 

そこで名前が浮かんだのは、めぐり先輩だ。

あれだけ優しくしてくれて、抱きしめてくれてあの人なら頼ってもいいんじゃないか?

 

 

でも本当にそれはいいのだろうか?

きっとめぐり先輩は誰にでも優しい。

由比ヶ浜結衣のように。

誰かが、困っていたらきっと手を差し伸べる。

そんな人だ。

別に俺だから助けてくれたわけではないだろう。

 

 

心の中で謝ってくれたのを、建前なんじゃないかと疑っている自分に腹が立つ。

それでも人を信用するのは怖い。

嫌なことがたくさんあった。

信用して、頼って、そして裏切られたらそんな不安が絶えず泉のようにわいてくる。

そんな思考を振り払うために、頭を振る。

 

 

 

気晴らしにテレビでも見よう。

きっと、こんなことばかり考えても意味はない。

それに、さんざん助けてくれた先輩を疑ってしまうのは失礼だ…。

そう思いテレビをつける。

今はやりのタレントが司会をやっているものだった。

 

 

 

 

テレビをつけていても、いやな考えが頭から離れなかった。

 

 

 

 

ぼーっとテレビを見ていると、自分のカバンの中のスマホが鳴り始める。

小町が心配してかけてきたのかと思い、特に画面を確認せず電話に出る

 

 

「はろはろ~、比企谷君元気~?」

 

 

陽気な声が聞こえてくる。

 

「はぁ、なんで俺なんかに電話を?雪ノ下さん。」

 

 

「いやぁ、悩める少年を助けるのは、お姉さんとして当然のことだし~」

明るい声に、いらだつ。

 

 

「そんな建前いいですから。早く、本題を言ってくれません?」

 

急に。陽乃さんの声が、低くなる。

 

「君は、今面倒な状況にいるよね?」

 

 

「まあ、そうですね…。」

雰囲気が変わった陽乃さんに戸惑うがちゃんと答える。

 

「あの君が、泣き叫ぶくらいだからね~。」

 

 

「なんで、それを?」

 

 

「なんでも知ってるの、お気に入りの子たちのことは。」

 

「不気味っすよ。陽乃さん」

茶化すように言うが

 

 

「まあ、なんて言おうが、構わないけれど。

君は誰かに助けを求めないの?

例えば君の事を助けようとしている『めぐり』とか」

 

この人はどうしてこんなに人が悩んでいるところをあててくるのだろう…。

 

 

ドキッとした。

自分の考えを読まれているような、嫌な感じ。

 

 

「君は、おびえてるよね?過去の事、そして、今起こっていること、嫌なことばかりだしね。

人のことを頼るのがこわいのは、わかる。

だけど、昔の君と今の君は違うよ。

今は君のそばに立ち君の事を思っている人は、それなりにいるんだよ?

まあ私が言ったところで、君は聞かないと思うけど。

少なくとも、めぐりは君の事を救いたいと思い真剣に考えてる。」

 

 

図星を刺される。

 

 

「そんなの、本人じゃないあなたに何が分かるんですか?」

 

俺は思わずそう言ってしまった。

人のことをその中身を完全に理解することはできない。

だから怖い。

内心で、めぐり先輩も自分に周りの奴らが、自分に向けるように黒い感情を持ってたらどうしようと…。

 

 

「分かるよ…。あの子私の事尊敬はしてても、頼ってきたこと一度もないんだもん。

そんな子が、八幡君のことを助けたいから力を貸せって言ってきたんだよ?

だから、めぐりの気持ちは『本物』だと思う。君の嫌いな欺瞞や上辺だけの気持ちではなく。」

 

 

俺は答えることが出来なかった。

しばしの沈黙をやぶり、今度は明るい声で話しかけられる。

 

「まあ、めぐりが起きて来たら聞いてみるといいよ。

そうすればわかるし~。

あ、後、小町ちゃんには私の家にいるって言ってるから、そこのところよろしくね~♪」

言いたいことを言い終わったのか、電話が切られた。

 

 

俺は陽乃さんの言った意味を考えていた。

 

 

 

 

めぐりside

 

 

 

いつの間にか、また寝てしまったようだ。

時刻は午後六時。

近くに置いてある体温計を手に取り、熱を測る。

37:2

熱は薬のおかげである程度さがったみたいだ。

 

彼の様子が気になったので、リビングに向かう。

ちょうど、その時リビングの方で話し声が聞こえた。

リビングの扉に耳を近づけ中の音を聞こうとする。

どうやら電話をしているようだ。

 

相手は誰だろう??

ご家族の方かな、それとも他の人だろうか?

でも電話に受け答えしている、彼の声はいらだっているように聞こえた。

耳を澄まし、しばらく扉の前で立っている。

 

 

ようやく電話が終わったのか、静かになっている。

今なら入っても邪魔にならないだろう。

リビングの扉をあけ中に入る。

 

 

「比企谷君、電話誰からだったの?」

気になっていたので思わず聞いてしまった。

 

 

「陽乃さんからですよ。」

疲れたように、彼が笑う。

 

何か言われたのだろうか…?

聞いてみると、彼は素直に内容を話してくれた。

 

 

 

やっぱりまだ完全には信用されてはいないのだろう…。

そう思うのも無理もない。

周りからあれだけ悪意をむけられて、二、三日で人を信じるのは無理だろう。

陽乃さんによると中学時代にも、いろいろあったそうだし…。

 

 

私の沈黙に不安に思ったのか、彼が口を開いた。

 

「俺はまだ誰かを心の底から信用することが出来ないみたいで…。

あんだけ助けてもらったのに、どうして城廻先輩が俺を助けてくれたのか、わからなくて…。」

 

そこで一度言葉を区切りゆっくりと息を吐く。

 

「もしかしたら、あなたも俺の事周りの奴らみたいに、内心思ってるんじゃないかって不安で。

なんか、どうしても先輩のことを疑っている自分がいて…。

そんな自分が情けなくて……。すいません。」

 

 

彼はそう言って頭を下げた。

握っているこぶしが、力を入れすぎて白くなっている。

 

 

 

「顔をあげてくれない?」

 

 

彼は本音で今思っていることを私に話してくれた。

なら私も彼に対して、思っていることを素直に話そう。

 

 

 

 

「君を助けたいと思ったのは、私が君の事が好きだからだよ、八幡君。」

 

 

 

 

八幡side

 

 

電話が終わった後、めぐり先輩がリビングに入ってくる。

心配そうな顔で「比企谷君、電話誰からだったの?」

 

 

「陽乃さんからですよ。」

 

 

本当に優しい先輩だ。

だからこそ、不安になる。

表面をうまく隠しているんではないかと…。

 

 

「何か言われたの?」

 

浮かない顔をしていたのか、不安そうに聞いてくる。

陽乃さんが本人に聞くように言っていたし、素直に話してみよう。

俺は今思っていることを伝えた。

 

さんざん助けられた人に向かってすごく失礼なことを言っているのはわかってる。

それでも、知って安心したい、知らないことはひどく怖いことだから。

そう思い、頭をさげた。

 

城廻先輩が真剣な声で、顔をあげるようにいってきた。

 

顔を上げ、城廻先輩をみる。

 

「君を助けたいと思ったのは、私が君の事が好きだからだよ、八幡君。」

 

そう言われ、驚きのあまり声が出なかった。

 

そのままめぐり先輩は言葉をつなげる。

 

「この気持ちに気付いたのはつい最近なんだ。

文実の時には、文句を言いながらもしっかりやる子っていう感じのイメージでしかなかったしね。

それに相模さんの解決の仕方も、よく考えずに君に否定の言葉を言ってしまったことを後悔してた。

 

傷つけたんじゃないかって。」

 

そこで小さく息を吸う。

 

「だから、君がボロボロになってた時に、助ければ許してもらえるんじゃないかって…そう思った。

ひどいよね、自己満足で君を助けようとしてた。

でも君のいろんな面を見て、だんだん君の事を知りたいとか、傍にいたいとかおもうようになって、看病してくれた時に優しくしてくれて。」

 

 

 

「そして、私は、君の事が好きになったの。」

 

 

 

「すぐに、すべてを信用してとは言わない。

でもこういう気持ちを私が持っているということは、知ってほしい。」

 

そう言い終わった彼女は、俺に向かって微笑み。

ゆっくりと近づき、抱き寄せられる。

 

 

 

「だからさ今の君はもう一人じゃないよ。」

 

 

俺は、うれしさでも泣くことはできるということを、生まれて初めて知った。

 

 

 

めぐりside

 

 

私は、今まで感じてきたことを、そのまま素直に彼に伝えた。

 

 

すべてを伝えた後、一番彼に気付いてほしいことをいう。

 

「だからさ今の君はもう一人じゃないよ。」

 

そう言いながら、ゆっくりと彼の体を抱きしめる。

 

私の思いに気づいてくれるように強く。

一人じゃないんだと。

私がそばにいると。

 

 

彼が泣いているのを感じた。

 

 

しばらくして、彼が

「めぐりさん…頼らせてもらってもいいですか?」

おずおずと聞いてきた。

 

 

「いいよ、頼って八幡」

私はやさしく答えた。

 

 

「俺、めぐりさんのことm「さっきの返事は、君の問題が解決してからでいいよ。

そうすれば、君も私のことを疑う気持ちもなくなるでしょ?」

彼の言葉を遮りながらそういう。

 

まだ彼に疑いの気持ちがあるのは分かっている。

なら自分は信用できるんだということを証明すればいい。

単純なことだ。

 

だからそこで返事を聞こう。

じゃないと弱ってるところに付け込んだみたいでいやだしね。

 

 

「ありがとう…ございます…。」

そういう彼は、申し訳なさそうにつぶやいた。

彼は、ひねくれているけれど根は優しいんだろう。

 

気持ちに答えられない事を、気にしてるんだろう。

だったら…

 

私と彼は身長差があり、彼の顔まで少し距離がある。

私は、ゆっくりと彼の首に腕をまわす。

かかとを少し浮かせて背伸びをする。

彼の顔との距離が近くなる。

 

 

 

彼の頬にキスをした。

 

 

恥ずかしいので、すぐに腕をとき一歩離れる。

 

「君が、私のことを好きになったときまで、口はとっといてね♪」

 

そう言って私は今までの中でとびきりの笑顔を彼に向けた。

 

 

外の天気は大荒れだが家の中は不思議と温かかった。




展開がようやく動き始めました。
長かった…初めのプロットでは、7話で終わる予定だったのに、どうしてこうなった…

まあ、プロットに書いてあったのは、八幡ボロボロ、めぐり天使救済
この二言だけだったんですが…w

あと、十話ぐらいあれば、完結するかなと予想は立ててはいます。
ただ、検査などがあり、投稿スピードは今より落ちます。
それでも、夏の間には完結すると思います。というか、早く後日談の方も書きたいと思っているので…。

最後まで読んでいただきありがとうございました(^o^)丿


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雪ノ下陽乃は、決意する

久々にピアノで俺ガイルのOPを耳コピして弾けてご満悦なメガネコです。
でも、久々すぎて、腕が筋肉痛になるかもと恐怖しております…w

今回は、陽乃さんの心情メインです。



ご指摘ご感想していただけると幸いです。



陽乃side

 

小町ちゃんからのメールに返信した翌日。

台風が明日くると予報されている。

台風が周りの雲を巻き込み北上してくるため、今日も朝から大雨だ。

 

 

朝の朝食を手早くとり食後のコーヒーを飲む。

 

いつもの決まりきった動作。

 

その中で私は一つの考え事をしていた。

 

 

ありていに言えば、どちらを応援するかの話だ。

めぐりと雪乃ちゃんのどちらかを。

 

 

彼に選ばれるのは、一人だけ。

 

 

どちらも私にとっては妹のようなものだ。

やはり長い間小さい頃から一緒にいた雪乃ちゃんを応援したいという気持ちがある。

ただ私はあまりに変化のないあの子に少しだけいらだちを覚えてしまう。

 

 

「悩むなぁ~…。」

 

 

 

雪乃ちゃんを応援する気持ちもあるにはある。

だが………。

 

 

 

雪乃ちゃんでは、答えが出なかった。

なら、めぐりはどうだろう?

 

 

生徒会に入ってきたときも、いま時には珍しい人に流されず芯が強いこと。

 

また周囲の目を気にせず人を正当に評価できること、この二つもつあの子を気に入った。

 

私のことを尊敬はするものの、心酔はしない。

 

助言を求めてくることはあっても、力を求めてきたことはない。

 

 

 

私に好意を寄せるもの。

私の周りにいればいいことがあるからと利益のために近寄るもの。

 

今まで私と知り合ってきた中でそんな感じの人は初めてだった。

 

だからこそ比企谷君のことで力を貸してくれと言われた時、私はうれしかった。

言うなれば、今までわがままを言わなかった子が初めて親を頼ってきた。

そういううれしさがあった。

 

 

 

自分のお気に入りである子が変わろうとしていること応援したい。

でも実の妹の力にもなりたい。

 

 

だから私は考えた。

雪乃ちゃんが彼に対して抱いている『気持ち』を素直に言ってくれたら、私は雪乃ちゃんを応援しよう。

それは、あの子が変わろうとしているという証なのだから。

姉として応援したい。

ただ変わらず自分の感情すらはっきり口に出来ないなら………。

 

 

 

私はアドレスから自分の妹を探し当て、電話をする。

 

2コール目で出た。

 

 

「はろはろ~、雪乃ちゃん、元気~?」

 

 

「一体、朝に何の用かしら?姉さん」

不機嫌そうな声でそういってくる。

 

 

「最近比企谷君になにかあったかなって?」

 

 

「さあ……陰口を言われているというのは耳に入っているけれど…。

まだ、文実の件から日がたっていないから、何とも言えないという感じね。」

 

 

 

この様子だと、比企谷君にあった出来事をすべて知っているわけじゃないらしい…。

彼のことだから迷惑をかけたくないとか考えて隠してきたんだろう。

 

このことは、はなから予想できていたし、本題に入ろう。

 

私はさっきまでのつくった明るい声をやめ、『普段』の声を出す。

 

 

「雪乃ちゃんは、彼の事どう思ってるの?」

 

 

 

「私は、……………どうとも思っていないわ。彼は、ただの知人よ。」

少しのためらいの後そうはっきりと答えてきた。

 

 

 

はぁ、胸のうちでため息がもれた。

自分の中に生まれた小さな失望がバレないように、質問を続けた。

 

 

「もし彼が今大変な状況だとして、雪乃ちゃんは彼を自分から助ける?」

 

 

 

「……………彼が私に助けを求めてくるならば、助けるわ。」

その質問に戸惑いながらも彼女はしっかりと答える。

 

 

 

 

これではっきりした。

 

 

雪ノ下雪乃は、変わるつもりはない。

 

 

 

なら私がとるのは……………。

 

 

あきれたような声で

「そっか、雪乃ちゃんは変わらないんだね。」

 

 

 

しばらくの沈黙の後、私はこう言った。

 

 

 

「いつまで、そのままなのかな…雪乃ちゃんは。」

 

 

 

 

 

「姉さんには、関係ないわ………。」

いらだったように雪乃ちゃんが返事をする。

 

 

 

 

「そ、じゃあね、雪乃ちゃん。」

 

 

通話を終える。

 

 

「はぁ、結局変わらなかったか…。」

予想してはいたが…。

 

思わずこらえていたため息が漏れ出てしまった。

 

 

最後のチャンスだったんだよ?雪乃ちゃん。

 

 

 

そう胸のうちでつぶやいた。

 

 

 

私は、めぐりの味方をしよう。

 

一つの決意ができた。

 

・・

・・・

・・・・

・・・・・

 

彼は、まだ疑心暗鬼に陥っていることは過去の事、そして、今現在起こっていることから予想できる。

このままでは彼はめぐりを心の底から頼ることはないだろう。

 

 

人は勝手に救われるだけ、そういう人もいるそうだが、私はそう思わない。

 

 

助けてほしいという意思がない限り、人は救われることはない。

 

ならどうするか?

 

気づかせるしか方法はない。

 

目には目を、歯には歯を、本音には本音を

 

 

「正面切ってぶつかりますか。」

 

 

そうつぶやき、私はもう一度電話を取った。

 

 

「はろはろ~、比企谷君元気~?」

いつも通りの陽気な声で。

 

 

 

「はぁ、なんで俺なんかに電話を?雪ノ下さん。」

不思議そうに彼が私に聞いてくる。

 

 

 

「いやぁ、悩める少年を助けるのは、お姉さんとして当然のことだし~」

 

 

 

「そんな建前いいですから。早く、本題を言ってくれません?」

いつもより、いらだっているようだ。

 

さてと……早速本題に移りますかね。

 

声をまじめなものに変える。

 

 

「君は今面倒な状況にいるよね?」

 

 

「まあ、そうですね…。」

 

 

「あの君が、泣き叫ぶくらいだからね~。」

 

 

「なんで、それを?」

 

 

「なんでも、知ってるの、お気に入りの子たちのことは。」

 

 

「不気味っすよ。陽乃さん」

茶化すように彼が言ってくる。

 

 

「まあなんて言おうが構わないけれど。

君は誰かに助けを求めないの?

例えば君の事を助けようとしている『めぐり』とか」

 

 

電話越しで息を呑むのが聞こえた。

 

やっぱり、めぐりのことも信用しきれてなかったか…。

 

 

「君は、おびえてるよね?過去の事、そして今起こっていること、嫌なことばかりだしね。

 

人のことを頼るのがこわいのは、わかる。

こんなことばかりあって全くおびえない人間はいない。」

 

そこでゆっくりと息を吐く。

 

「だけど昔の君と今の君は違うよ。

今は君のそばに立ち君の事を思っている人は、それなりにいるんだよ?

まあ私が言ったところで、君は聞かないと思うけど。

少なくとも、めぐりは君の事を救いたいと思い真剣に考えてる。」

 

一気に思っていることを伝える。

 

 

「そんなの……本人じゃないあなたに何が分かるんですか?」

不安そうにそう訴えてくる。

 

君ならそういうと思ったよ。

なんでも理屈に当てはめようとする君なら。

でも、これで君もめぐりのことを信用しようとするはず。

 

 

「分かるよ。あの子私の事尊敬はしてても頼ってきたこと一度もないんだもん。

そんな子が八幡君のことを助けたいから力を貸せって言ってきたんだよ?

だからこそ、めぐりの気持ちは『本物』だと思う。君の嫌いな欺瞞や上辺だけの気持ちではなく。」

 

彼の呼吸する音だけが、聞こえてくる。

さてと、後はめぐりに任せよう。

 

「まあ、めぐりが起きて来たら聞いてみるといいよ。

そうすれば分かるし~。

あ、後、小町ちゃんには私の家にいるって言ってるから、そこのところよろしくね~♪」

 

 

彼との通話を終え、一息つく。

 

 

だが、ゆっくりしてる暇はない。

 

 

まだ私のお気に入りに手を出しやがった奴らに何もしていないのだから。

私は続けて電話をする。

 

 

総武高校の校長に。

人の大事なものに傷をつけたのだ。

そんな輩に、かける慈悲を私は持ち合わせていない。

 

「さて、どうしようかなぁ~♪」

今日一番の笑みを私は浮かべているだろう。

 

 

 

八幡side

 

 

状況をもう一度考えてみよう。

 

告白された。

本音言い合った。

キスされた。

どうしよう?←今ここ

 

 

 

一つ分かったことは、めぐりさんは、信用してもいいということ。

あそこまでされて、信用したいと思わない人は、いないだろう。

 

そんな中俺はまためぐりさんにおかゆを食べさせている。

 

なんだろう、さっきのことがあったせいか、意識してしまう。

桜色の柔らかそうな唇が開き、レンゲを迎え入れる。

おかゆを咀嚼し、白くて華奢なのどが上下に動く。

普通の動きなのに艶めかしさを感じる。

 

あの柔らかそうなのが自分の頬に触れていたのかと思うと、自然と顔が熱くなる。

 

 

それなのに、さすが年上というべきか、慣れているのだろうか。

あんなことをしたのに、動揺がいっさい見られない。

 

めぐりさんがおかゆを咀嚼してるのを待つ間、無意識に頬を触ってしまった。

それを見ためぐりさんは、顔を赤くしている。

訂正、やはり慣れているのではなかった。

 

 

頼りがいがあるのに、お茶目な一面がある。

その差にくすっと笑ってしまった。

 

「あ、今ちょっと小バカにしたでしょ!」

そう言い頬を膨らませる彼女は幼い子供のようだった。

思わず頭をなでると、すねたようにそっぽを向く。

 

 

しばらくそうしていると、顔を赤くしながらめぐり先輩が一つ頼んできた。

 

「私、汗かいてるんだよね。」

 

風邪をひいているし、熱も高い。汗をかくのも当然だ。

俺は無言でうなずく。

 

「熱も高いし、お風呂に入ったら倒れてるなんてことになっても危ないじゃない?」

 

確かに、熱が高い時に風呂に入るのは、やめた方がいい。

ソースは俺。

実際に風呂場で倒れたことがある。

小町がいなかったら、やばかったはずだ。

 

「まあ、そうですよね。」

 

「だけど、汗かいて気持ち悪いし、だから、体拭くの手伝ってくれない?」

そう言って先輩はいじわるっ子のように微笑んだ。

 

「ふぇ!?」

俺の思考が機能を停止した瞬間だった。

 

 

 

めぐりside

 

あの告白をした後、私はお腹も減っていたし、彼にもう一度おかゆを食べさせてもらっていた。

なるべく、顔が赤くならないようにさっきまでのことを意識しないようにした。

年上なんだし、これくらいで動揺していたら子供っぽいと馬鹿にされるかもしれない。

 

 

そう思い平静を装っていたけれど、彼が頬を触った瞬間嫌でも、意識してしまった。

顔が熱くなる。

そんな私を見て、彼は笑っていた。

 

なんとなく悔しくて、

「あ、今ちょっと小バカにしたでしょ!」

少し怒ったように声を出す。

そうすると、彼は優しく子供をあやすように、頭をなでてくれた。

 

私の方が、年上なのに……。

照れているのは、私の方が多い気がする…。

 

彼が、照れてる顔も見たい…。

こっちばかり見られているのは、不公平だ。

そう思った私は大胆なことを提案してしまう。

 

「私、汗かいてるんだよね。」

 

彼は無言でうなずく。

私はそのまま言葉をつなげる。

 

「熱も高いし、お風呂に入ったら倒れてるなんてことになっても危ないじゃない?」

 

「まあ、そうですよね。」

 

なるべく平静を装っていう。

「だけど、汗かいて気持ち悪いし、だから、体拭くの手伝ってくれない?」

そう言いながら、微笑んだ。

 

「ふぇ!?」

 

彼の変な声を聴いたのは、昨日ぶりだ。

 

 

 




いかがでしたでしょうか?
陽乃さんの心情ってこれでいいのかと疑問になりながら作りました。
難しい……。


話は変わりますが、陽乃さんって、いろんな作品で魔王のように扱われることが多いですが、絶対素直になったら可愛いと思いません??

最後まで読んでいただきありがとうございました(^o^)丿


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少年と少女の夜は更ける

UAが20000を突破しました!
たくさんの方に見ていただいて誠にありがとうございます!
感想、評価励みになっています!


今回は、ただのイチャラブ回です。


拙いですが、前回のめぐり先輩笑顔の絵をあとがきの方に入れておくので気になる方は見てください。
絵がうまくなくても、温かい目で見てくださるとありがたいです…。

ご指摘、ご感想があればしていただけると幸いです!


八幡side

 

 

 

部屋にほの暗い照明がついている。

今現在、俺はお湯で湿らせた濡れタオルを持って先輩の部屋で固まっている。

いや八幡の八幡じゃないからね!

ほんとだかんね!

 

 

目の前ではベッドの上に女の子座りになり新しいパジャマを胸に抱えて顔を真っ赤にしている。

いつもしているおさげではなく、髪をほどいているので大人っぽい雰囲気が漂っている。

一応言っておくが、めぐり先輩はすでに上を脱いでいる。

だから隠しているんだろうけれど…。

それでもやわらかそうな丘の一部が見えているし、フニフ二としている柔らかそうな白いお腹が見えている。

 

 

「背中って、自分じゃ届かないからして欲しいんだ。」

 

そう言いながら、こちらに背中を向けてくる。

その時に背中にかかっていた髪を首に流して拭きやすいようにする。

 

 

白い背中がほの暗い部屋で印象的に浮かび上がっている。

なんで照明暗くしたの!?

いろいろ理性を抑えるのに必死なんですけど…。

 

ぼーっとしていると、めぐり先輩が振り向き

 

「どうしたの??」

 

そう言いきょとんとしている。

 

 

「あ…いや…なんでもないです…。」

 

そう言いながら、めぐりさんの後ろに正座で座り、タオルを背中に当て拭いていく。

タオル越しに女性の柔らかな肌の感触を感じる。

なんで女性の体ってこんなに柔らかいのだろうか。

あまりにも柔らかいから力加減に気をつけながら優しく拭いていく。

背中の中央から首に向かって拭いていく。

 

「八幡君、上手だね~。慣れてるの?」

感心したようにほへーと言ってくる。

 

 

「妹が風邪の時に昔よく拭いてましたしね。」

 

 

 

「へぇ~、優しいお兄さんなんだね。」

 

この人は本当に褒めるのがうまい。

なかなか褒められることがないから照れてしまう。

 

 

「顔赤いよ~。」

からかうように、こちらを見上げてくる。

 

 

気にせず、今度は背中の中央から腰にかけて拭いていく。

背骨に沿って、タオルを這わせていく。

 

「ひゃぅ」

 

かわいらしい声が聞こえてきた。

耳が赤かったのは、きっと怒っているからだろう。

 

 

何となく…。

そう何となくもう一度あの声が聴きたくて、今度はタオルではなく指でスーッとはわせる。

 

 

「ちょっ、しゅ、しゅとっぷ!!」

慌てたようにめぐりさんが言ってくる。

 

 

なんだろう、ころころと表情が変わるのが見ていて面白く笑ってしまう。

 

 

笑っていると、怒った声でめぐりさんが

 

「こそばいから、ダメ!」

 

怒ったように、むーっと頬を膨らませながら見てくる。

 

「す、すいません。面白くてつい…。」

笑いながら、謝ると

 

 

「まあ、八幡君だしいいけどね。」

ポツリとつぶやかれた。

 

 

 

その言葉の意味と、告白のことを意識してしまい自然に顔が熱くなる

 

 

なんとか拭き終わった。

すると、めぐりさんがこっちを向き

「ありがと、おかげでさっぱりしたよ。」

お礼を言ってきた。

 

 

なるべく体を見ないように、

「喜んでいただけて、光栄ですよ。」

 

そう返し

「今日はゆっくり寝てくださいよ?」

と一応言っておく。

 

「分かってるよ、お休み~八幡君」

そういうめぐりさんの顔は微笑んでいて、こちらもなんだか温かい気持ちになる。

 

「おやすみなさい、めぐりさん」

 

そう言い立ち上がろうとする。

それなりに長い時間、正座をしていたため足がしびれていたのか、立ち上がろうとした時ふらついてしまった。

 

 

「うわっ!」

 

 

そのまま前に倒れていく。

 

 

 

 

 

目の前にめぐりさんの首がある。

ほの暗い中にうっすらと浮かび上がる白い鎖骨。

 

少し目線を下に動かすと、さっきまで隠されていたものが見えている。

由比ヶ浜や陽乃さんほどではないが、しっかりと存在を主張している白い胸。

呼吸をするたびに、そのふくらみが上下に動く。

 

そして柔らかそうなふくらみの先に、桜色の………。

 

 

そこまで行ったとき、視界がふさがれる。

めぐりさんが、手で俺の目を覆っている。

とっさに謝る。

 

 

「その、いや、本当にすいません」

 

 

「し、仕方ないよ。こっちが頼んでたし。」

 

 

気まずい雰囲気が漂う…。

 

 

「降りてくれない……?」

 

「あ、はい。」

そう言い急いでめぐりさんの上から降りる。

 

 

「お、お休み」

後ろから声をかけられる。

 

「お、おやすみなさい…。」

後ろを見ないようにしながら、足早に部屋を出る。

 

 

明日からどう話したりすればいいのだろうか…。

 

 

 

 

めぐりside

 

 

たびたび年下のように扱われているのに、反抗心をもち、彼をからかいたくなってあんなことを言ってしまった。

私らしくないと本当に思う。

 

 

パジャマのボタンを一つ一つはずしていく。

衣服がベッドの上にカサリと落ちる。

八幡君は今背中を拭くタオルを作りに行っている。

 

 

私は、その間に自分でふけるところは拭いていく。

さすがに前側を拭いてもらうのは、いろいろまずいし。

首から腕にかけて優しく拭いていく。

次に鎖骨から自分の胸へ。

 

それなりにある自分の物を柔らかくもむ。

自分の手の中で形を変えるそれを見ながら考える。

自分のスタイルに自信がないわけではないが、由比ヶ浜さんや陽さんと比べて大きいとは言えない。

基本的に男性は、大きい方が好きだということを、何かの雑誌で読んだ。

 

「八幡君も大きい方がいいのかな?」

 

思わずそうぼやく。

 

 

明るいところだと自分の体がはっきり見えてしまう。

私は一つ思いついた。

 

「そうだ、暗くすれば、見えにくくなるからお互いそんなに意識しなくていいんじゃ…。」

 

私はそう思い部屋の照明をダウンライトに変える。

オレンジ色のこの光の中なら明るくないし、かといって全く見えないわけでもないしちょうどいいだろう。

 

 

彼がノックをし部屋に入ってくる。

 

・・

・・・

・・・・

・・・・・

 

私は次に着るための衣服を胸に抱えて、ベッドの上で女の子座りをしている。

 

八幡君は入ってくるなり固まってしまっている。

どうやら彼もそんなに異性の裸に慣れているというわけではないらしい。

そのことに少しうれしさを感じている自分がいる。

 

 

「背中って自分じゃ届かないからして欲しいんだ。」

 

そう言いながら、彼に背中を向ける。

その時に背中にかかっていた髪を首に流して拭きやすいようにする。

 

 

彼から返事が返ってこず不思議に思い振り向き

「どうしたの??」

 

そう言い彼の顔を振り返りながら見る。

 

 

顔を真っ赤にしながら

「あ、いや、なんでもないです…。」

といった。

 

どうやら私のことをちゃんと意識はしてくれているようだ。

そんな彼を見て胸の中がほんのり暖かくなる。

 

 

ゆっくりと私の後ろに座りタオルを背中に当て拭き始める。

背中の中央から首に向かって。

力加減もちょうどよく、タオルの温度もあったかくて気持ちが良かった。

慣れてるんだ………他の女の子とかで経験済みなのかな…。

私は疑問に思い彼に尋ねる。

 

 

「八幡君、上手だね~。慣れてるの?」

 

 

 

「妹が風邪の時に昔よく拭いてましたしね。」

 

 

今時なかなかそんなことをしあう兄妹なんているんだと感心し

 

 

「へぇ~、優しいお兄さんなんだね。」

 

と思わず褒めてしまった。

 

 

彼からの返事が返ってこないので首をまわし後ろを向くと

頬を赤く染め照れていた。

 

 

なんとなく意地悪したくなり

「顔赤いよ~。」

からかうように、彼の顔を見つめる。

 

 

彼はこれ以上反応するとまずいと思ったのか、返事をせず今度は背中の中央から腰にかけて拭いていく。

その時背骨に沿って、タオルがはっていく。

こそばさを感じ

 

「ひゃぅ」

と声がもれる。

 

 

すると彼はそれを面白く思ったのか

今度はタオルではなく、彼の指が首から腰の方までスーッと這って行く。

 

 

私は、耐えられず

「ちょっ、しゅ、しゅとっぷ!!」

噛みながら、やめるように伝える。

 

 

彼は私の反応が面白かったのか笑っている。

彼をからかおうとしていたのは私の方なのに…。

少しムッとしてしまう。

 

 

「こそばいから、ダメ!」

と怒ったように言うと

 

 

「す、すいません。面白くてつい…。」

笑いながら謝ってくる。

 

数日前まで泣いていた彼が、今は楽しそうに笑っている。

 

 

私はそれがうれしくて

 

 

「まあ、八幡君だしいいけどね。」

思わずつぶやいた。

彼の顔が赤かったのは、気のせいではないだろう。

 

 

・・

・・・

拭き終わり、私は彼にお礼を言う。

「ありがと、おかげでさっぱりしたよ。」

 

彼は顔をこちらからそむけたまま

「喜んでいただけて、光栄ですよ。」

そう返し

「今日はゆっくり寝てくださいよ?」

と続けていってきた。

 

 

なんだかんだ言って、いろいろ気の利く優しい子なんだ。

そう思い、思わず顔がほころぶ。

この人を好きになってよかった。

そんな思いが胸の中に広がっていく。

「分かってるよ、お休み~八幡君」

 

「おやすみなさい、めぐりさん」

 

彼が立ち上がろうとする。

だが、それなりに長い時間、正座をしていたため、足がしびれていたのか、ふらついている。

次の瞬間

 

「うわっ!」

 

 

そう言いながら倒れてくる彼の下敷きになっていた。

ただついてないことに、さっきまで胸を隠していたパジャマを驚き落としてしまっていた。

彼の視線がゆっくり自分の首から降りていくのを感じ急いで手で覆う。

たぶん見えていないはず…。

 

「その、いや、本当にすいません」

彼が、すまなそうに謝る。

 

「し、仕方ないよ。こっちが頼んでたし。」

 

気まずい雰囲気が漂う…。

 

「降りてくれない……?」

 

「あ、はい。」

 

 

彼の体温が自分から離れていくのを感じ少し名残惜しさを感じた。

へ、変な意味ではなくてね!!

 

 

「お、お休み」

 

 

「お、おやすみなさい…。」

 

 

そう言い彼は足早に部屋を出ていった。

私は明日どんな顔で彼に会えばいいのだろう……?

 

 

 

 

少年と少女の夜は更けていく。

 

 

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか?


【挿絵表示】


初々しい反応の二人がかけていたらいいのですが…。
絵の方は、二期のアニメのどこかのシーンの物です。
シャーペンでささっと書いたので、うまいかと言われたら微妙です…。
ポンカン様のような絵をかけるようになりたいw

最後まで読んでくださりありがとうございました(^o^)丿


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小さな幸せ(1)

お気に入りもいつの間にか400を超えていて、本当に驚いているメガネコです。
こんな拙い作品がたくさんの人に読んでいただけるなんて…。
改めて、緊張してますw

というか、毎回他の作者様はどうやってあんなかっこいい題名をつけてるんでしょうか?
題名がもう思いつかなくて、そっちの方に困ってます…。


ご指摘、ご感想があればしていただけると幸いです!


八幡side

 

 

 

さわやかな朝にはならなかった。

これは決して、今現在台風が上陸し、激しい風雨が千葉を襲っているからだけではない。

幸いなことに嫌な夢をみたとかでもない。

いや、悪いことではない。

どちらかと言えば…言わなくとも男子高校生にとっていいことではあった。

 

 

うん、まあ、いろいろ見えちゃったんだよ………。

完全に目線が勝手に動いちゃったんだよ。

アニメなら、都合よくどこかのリOさんみたいに霧とか尻尾とかで隠れるんですけどね。

悲しいけど、これって現実なのよね。

 

 

昨日も結局、どうやって翌日顔合わせしようか、悩みに悩んで寝たのは朝の四時過ぎだ。

起きたのも、七時。

 

簡単に言うと、絶賛寝不足である。

しかも、めぐり先輩の部屋をでて脳内で数時間考えた。

結果、何の成果も得られませんでした…。

諦めなくても、試合は終了してしまっている。

さすがの安○先生もお手上げといったところ。

 

だって、見ちゃったんだもの、しかも、おそらく見えちゃいけないところも見えてること、

めぐり先輩気づいてるはずだし…。

 

「はぁ」

ため息が漏れる。

 

 

こうしていても、らちが明かない、とりあえず布団をたたみ、着替えよう。

取り敢えず、他ごとをしていれば、何か良い案が思いつくかもしれない。

 

・・

・・・

・・・・

・・・・・

めぐり先輩から借りた、黒のチノパンに白のシャツ、薄い青色のカーディガンに着替え終え、

布団を畳み、客間を出る。リビングにはだれもおらず、プリキュアも始まるには早い。

日曜朝のこの時間になると、やっているのはニュース番組か、戦隊モノかのどちらかしかない。

しかも、今は台風がちょうど上陸しているところ。

ニュースはどこも台風情報しか流れておらず、同じ内容をひたすらにみさせられると、しぜんとまぶたが重くなる。

 

「ね、眠い………。」

思わず口に出るほどだった。

リビングのソファーにコテンと横になる。

 

 

めぐり先輩が来るまで少し寝よう。

そう思い意識を手放した。

 

 

めぐりside

 

朝の八時。

少々私にしては、遅い起床だ。

かと言って、昨日特に夜更かししたわけでもない。

あくまで、風邪をひいていたし、いろいろと経験したことないことが多かったための疲れか、眠れることには、眠れてはいた。

 

 

昨日のことを思い出す。

八幡君が部屋を出て行ったあと、しばらくクッションに顔をうずめてベッドの上をゴロゴロしていた。我ながらどうなのだろうか……………。

うん、しょうがないよね。裸見られたし…。

男の子に見られたの初めてだったしね!

 

 

き、気まずい……。

彼に自分の気持ちを伝えている分、うん、気まずい…。

 

「陽さんだったらこういう経験も豊富なんだろうなぁ~」

思わず、つぶやいてしまう。

でも、陽さんが高校在学中に特定の誰かとそういう関係になったことを聞いたことはなかった。

となると、案外慣れていないのかとも考えられる。

 

 

まあ、うだうだ考えていてもしょうがない。

気楽にいけばいいさ。

熱を測ってみると、平熱に下がってはいる。

 

「昨日入れなかったし、シャワーぐらい浴びとこう。」

 

私は、着替えを持って、お風呂場に向かった。

・・

・・・

・・・・

・・・・・

 

 

シャワーを浴び終え、私服に着替える。

白のタートルネックのセーターにジーパンというラフな格好である。

あんまり薄着にしたくなかったのは、昨日のことがあったからだ。

 

リビングの扉を開け、中にはいる。

テレビがついているようだ。

ニュースキャスターが、台風の情報を伝えているようだ。

おそらく明日には通過すると考えられ、学校がある。

 

不安は絶えない………。

陽さんに協力は頼んだとは言え、まだどうなったかは聞いていない。

でも、自転車の事や、下駄箱でのことは、すぐに犯人のめぼしはつくと言っていた。

おそらく、それなりのことになるのだろう。

このことで、周りで便乗していた人たちもこのようなことはしなくなるはずだ。

彼らにとっては、日々のぶつける相手がいないストレスの矛先にちょうどよく表れた『ぶつけても良い相手』だっただけだから。

 

 

ただ、相模さんのこともある。

彼女は、周りの目から見たら被害者である。

その彼女が、彼のことを悪く言う限り、せっかく周りが落ち着いてきても、同じことが起きる可能性がある。

それを、どうにかうまくまとめるのが私の役割なのだが………。

 

 

改めて、自分に出来るか不安に思ってしまう。

 

 

そんなことを考えていると、ソファーの方からモゾモゾと物音が聞こえてくる。

近寄ってみると、彼が丸まった状態で寝ていた。

何となくソファーの端っこにチョコンと座り、彼に膝枕をする。

 

彼の寝顔を見ながら、ゆっくりと頭をなでる。

柔らかい髪質でなでると気持ちがいい。

ピョコンと跳ねているアホ毛を、つんつんとつつく。

思わず、昨日のことを思い出す。

布一枚越しに、彼の体の熱を感じてしまったことを。

近くで、見て、触れて、ますます傍にいたい、もっと彼について知りたい、

そして、私のことをもっと見てほしい。

そんな、感情が自分の中からあふれてくる。

彼のことを考えると、胸が温かくなる。

人を好きになるって、こんなに幸せなことなんだ。

 

彼の寝顔を見ていると、さっきまで悩んでいたことも何とかなりそうと思えるのだからすごい。

「私、がんばるからね。」

眠っている彼に、私は小さく約束した。

 

 

 

八幡side

 

目が覚めたら、目の前に微笑んでいるめぐり先輩がいた。

どういうことなの?

落ち着いて、見渡すと今膝枕されているということが分かった。

 

 

どうしよう、何を言えばいいのだろうか…。

結局なにも思いつかず、寝てしまった。

取り敢えず、挨拶だ。

 

「おはようございます、めぐりさん」

 

「おはよう~、寝坊助さん♪」

やけに、楽しそうに頭をなでながら話しかけてくる。

 

寝坊助???そんなに寝てたのか??

時刻は10時になろうとしている。

何やかんやで、三時間ソファーで寝ていたわけだ。

 

 

さすがに、起きないと。

体を起こし、謝ることのした。

 

「昨日は、その、すいませんでした…。」

 

すると、先輩はにこやかに

「気にしないでいいよ、わざとじゃないのは知ってるしね。」

 

「めぐりさんは、優しいんですね。」

 

「誰にでもってわけじゃないんだけどなぁ~」

いたずらっ子のような人懐っこい笑みを浮かべている。

 

その言葉の意味が分からないほど、自分は鈍感ではない。

そもそも、めぐり先輩には告白されているのだから。

 

顔が、赤くなるのを隠しながら、話題を変える。

 

 

「朝ごはんどうします?」

 

「私は食べてないよ~」

 

「なら、俺が作りますよ。居候させてもらってるし…。」

 

「そんな事言ったら、私だって君にいろいろ助けてもらってるし……そうだ、一緒に作らない?」

 

「いいですね、そうしましょう。」

 

たぶんそう答えた俺は自然に笑えていたと思う。

 

・・

・・・

・・・・

 

めぐり先輩は、淡い水色のエプロンを、俺は黒色のエプロンを着ながら、調理をすることにした。

ちなみに朝のメニューは、フレンチトーストとオムレツ、サラダとコーヒーである。

 

めぐり先輩がてきぱきと、オムレツを作る最中、俺はサラダを作っていた。

こう見えて、専業主夫志望なので、ちゃんと飯も作れる。

というか、朝は小町、夜は俺が食事作るの担当してるしね。

 

レタスをいくらかちぎって、その上にキャベツの千切りときゅうりを切ったものをのせる。

これで、サラダは完成だ。

あの赤い奴はどうしたって??聞かないでくれ…。

俺が、意外と料理慣れしていることに驚いたのか、めぐり先輩が褒めてくれた。

 

「八幡君、結構料理してるの?」

 

「まあ、両親共働きですしね。朝は妹の小町が、夜は俺がっという感じですかね。

まあ、もともと専業主夫になりたかったわけですし。」

 

すると、それを聞いた先輩は何かつぶやいていたが、聞き取れなかった。

 

二人ともなれている分早く終わり、すぐに食卓に着き、ごはんにありつけた。

 

「「いただきます。」」

 

二人とも、意図していないのに同じタイミングで言ってしまう。

お互いに顔を合わせて、微笑んでしまう。

 

そんな何気ないことが、ずっと続けばいいなと思う八幡であった。

 

 

 

めぐりside

 

 

八幡君が目を覚ましたようだ。

もう少し、頭をなでていたいという気持ちもあって少し名残惜しい…。

 

「おはようございます、めぐりさん」

 

私はからかいたくなりつい

「おはよう~、寝坊助さん♪」

と言ってしまった。

時刻は10時になろうとしている。

待って…私二時間近く彼の事眺めてたの!?

自分のしていたことに気付き、驚く。

 

そんな中、彼が謝ってきた。

「昨日は、その、すいませんでした…。」

やっぱり、優しいな八幡君は…。

なんだかんだ言って、気にしてくれている。

 

「気にしないでいいよ、わざとじゃないのは知ってるしね。」

 

「めぐりさんは、優しいんですね。」

 

少しいじわるな感じで

「誰にでもってわけじゃないんだけどなぁ~」と言った。

彼には、これぐらい積極的にいかないとダメだというのは、ここ最近分かったことだ。

 

彼も言いたいことに気付いたようで、顔をうっすら赤くしている。

話をそらそうとしているのか

 

 

「朝ごはんどうします?」

 

「私は食べてないよ~」

 

「なら、俺が作りますよ。居候させてもらってるし…。」

 

彼ならそういうと思った。でも、こちらも助けてもらってるし…。

とっさに良い考えが思いついた。

 

「そんな事言ったら、私だって君にいろいろ助けてもらってるし……そうだ、一緒に作らない?」

 

「いいですね、そうしましょう。」

彼が提案を受けてくれたことに、胸の中で小さくガッツポーズをしていたのは内緒だ。

 

 

彼に黒色のエプロンを渡す。

けれど、後ろにあるひもがうまく結べないようなので、手伝ってあげることにした。

 

「あ、ありがとうございます。」

照れ隠しなのか、頭をガシガシとかく。

相変わらずの可愛い反応だ。

 

私たちは、手分けして遅い朝食を作ることにした。

オムレツとフレンチトーストが私、サラダとコーヒーは彼の担当になった。

彼が料理できるか分からなかったのでこのようにした。

 

 

意外なことに、彼は料理に慣れているようだ。

キャベツの千切りなども慣れていないと案外同じ細さで切るのは難しいはずなのに…。

トントンと手際よく包丁の音が響いていく。

 

「八幡君、結構料理してるの?」

 

「まあ、両親共働きですしね。朝は妹の小町が、夜は俺がっという感じですかね。

まあ、もともと専業主夫になりたかったわけですし。」

 

専業主夫か…。

私が、働かないといけないなそれだと…。となると、やっぱりそれなりの所に就職しないと、

そう心の中で考えていた。

本人は、その考えが口から漏れ出ていたことなんて気づいてはいないし、相手も気づいていないのだからよいだろう。

 

手際よく調理を終え、食卓に座る。

 

「「いただきます。」」

思わず声がそろってしまい、お互い顔を見合わせ笑ってしまう。

 

好きな人と何気ない話をしながら、朝食をとる。

たったそれだけなのに、本当に幸せだと感じる。

 

願わくば、彼も同じ気持ちを持ってくれていたらいいなぁと、めぐりは思うのであった。

 

 




いかがでしたでしょうか?
二つの視点を同時進行させているので、状況がなかなか進まないですね…。

ゆったりと、状況は動いていきますが、これからも見てくださるとありがたいです。

最後まで見てくださりありがとうございました(^o^)丿


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小さな幸せ(2)

やあ(´・ω・`)
ようこそ、メガネコのバーボンハウスへ。
このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いてほしい。

うん、またなんだ。すまない。
仏の顔もっていうしね、謝って許してもらおうとも思ってもいない。

でも、この題名を見たとき、君はきっと言葉では表せない「ときめき」のようなものをk感じてくれたと思う。殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないでほしい。
そう思って、この題名をつけたんだ。

じゃあ、注文を聞こうか。


このネタ、知ってる人いるのだろうか…。
後、また作者がイラストを描きました。今回はパロディ的な絵です。
よろしければ、見てやってください。

ご指摘、ご感想あれば、していただけると幸いです。


八幡side

 

遅めの朝食を食べ終えた後は、二人で並んで食器を片付けていた。

外の天気は、大荒れだが、それに反して部屋の中の雰囲気はすごく心地いい。

今頃、めぐりさんがいなかったら自分はどうしていたのだろうか…。

あまり考えたくはないな。

 

 

うちの総武高校は、県内有数の進学校だ。

当然二年の秋に入り、俺は進路を定め始めていた。

ただ、気になったのはめぐりさんだ。

三年の秋なんて受験生にとっては、重要な時期なんじゃ……。

だが、一切気にしている様子がない。

気になったので聞いてみた。

 

「めぐりさんは、受験とかどうするんですか?」

 

「私は、推薦で県内の国立に受かっているから、気にしなくていいよ~」

 

さすが、生徒会長をしているだけあって、勉強の方もできるのか。

天は二物を与えずというけれど、二物どころか結構与えてないですかね…。

顔も良ければ、性格もよく、勉強もでき、料理もできる…あれ完璧じゃね。

雪ノ下さんより完璧なんじゃ………ほら、あの人性格あんまりよくない…というか怖いし。

 

「さすがですね、俺は文系以外てんでダメで。数学なんて、もうね…。」

 

「そっか、志望校とか決まってるの?」

 

「まあ、俺の数学の成績じゃ国立は厳しいですし、私立文系のそこそこの所に行けたらいいなっt「ダメだよ!!」

突然先輩が、話しを遮った。

 

「ど、どうしたんですか?」

突然のことに驚き、どもってしまう。

 

「今から、諦めるのはダメだよ!昔の人も言ってるでしょ?諦めたらそこで試合終了だよって!」

指をピシッとこちらに向けて言って来る。

なんだろう、すごいやる気にあふれている。

というか、スラ○ダンク読んでたんですね!?

 

「だから、私が君に数学を教えよう!!」

こちらとしては、正直ありがたい。

 

「でも、めぐr「ほら、私もう決まってるし!!それに、八幡君に教えることで、自分も勉強になるし!!」

 

うーん、でも、なんだか自分ばかり助けてもらってる気がして、気がひける。

 

悩んでる俺を見て、不安に思ったのか

少しかなしそうに、上目使いで

「その、八幡君とできるだけ一緒にいたいなぁ…って。

ごめんね、迷惑だったよね…。」

 

それは、卑怯でしょ先輩…。

そんなこと言われたら、俺数学教えてもらいたくなっちゃうじゃないか!?

 

「先輩が良ければ、お願いしたいです…。」

 

あれ、なぜかほっぺを膨らませている。

「めぐりさんでしょ!」

 

「よろしくお願いします、めぐりさん」

 

「うん、よろしくね、八幡君!」

うれしそうに笑う先輩に、見惚れてしまていったのは、ここだけの秘密だ。

 

 

めぐりside

 

 

私は、今彼と話をしながら、並んで食器洗いをしている。

なんか、新婚さんみたいだと私は思ってしまう。

でも、たぶん八幡君はそんなことを意識はしてはいないだろうけど…。

 

 

「めぐりさんは、受験とかどうするんですか?」

 

「私は、推薦で県内の国立に受かっているから、気にしなくていいよ~」

彼も、いろいろ気にしてくれているみたい。

まあ、うち進学校だしね。

私三年生だし、勉強してないところが気になったのだろう。

 

何となく、彼の行きたいところが気になった。

 

「さすがですね、俺は文系以外てんでダメで。数学なんて、もうね…。」

 

「そっか、志望校とか決まってるの?」

 

「まあ、俺の数学の成績じゃ国立は厳しいですし、私立文系のそこそこの所に行けたらいいなっt「ダメだよ!!」

私は、一つ考えついてしまった。

うまくいけば、もっと長い時間彼と一緒にいられる方法を。

 

「ど、どうしたんですか?」

私が急に叫んだのに驚いたのか、どもっている。

 

「今から、諦めるのはダメだよ!昔の人も言ってるでしょ?諦めたらそこで試合終了だよって!」

どこかの偉人の言葉だっはず。

 

 

「だから、私が君に数学を教えよう!!」

彼は、数学が出来ないから、国立を諦めると言っていた。

仮に数学が出来れば、私とおんなじ所に来てくれるかもしれない。

それに、そうじゃないとしても、勉強を教えるということで彼と長い時間一緒にいられる。

 

 

私は彼に思いは告げたけれど、雪ノ下さんや、由比ヶ浜さんと比べ一緒にいた時間も少ない。

二人にはずるい気がするけれど…私だって負けられない。

 

 

「でも、めぐr「ほら、私もう決まってるし!!それに、八幡君に教えることで、自分も勉強になるし!!」

 

彼の言葉を遮りながら、続ける。

ただ、それでも彼は悩んでいるようだ。

まあ、そうだよね…。

自分で行きたいところも決まっていて言っているんだし、自分勝手な欲望で言っても迷惑なだけだよね…。

 

申し訳なく思い、彼に謝った。

 

「その、八幡君とできるだけ一緒にいたいなぁ…って。

ごめんね、迷惑だったよね…。」

 

すると、彼は照れたように頭をかきながら

 

「先輩が良ければ、お願いしたいです…。」

 

うれしいけど……先輩って、ちゃんと名前で呼んでほしい…

そんな思いから

 

「めぐりさんでしょ!」

と言ってしまった。

 

「よろしくお願いします、めぐりさん」

 

「うん、よろしくね、八幡君!」

私は、とびきりの笑顔でそう言った。

 

 

 

 

陽乃side

 

 

比企谷君との電話をおえ、今私は校長と電話をしている。

この人は、公正な判断をすることのできるお爺さんだ。

それに、私の本質を見抜いた人だ。

だてに、校長を十年間しているわけではないのだろう。

「そのようなことがおきていたのですか…。」

唖然としているのが電話越しに伝わってくる。

 

「器物損壊、名誉棄損、刑事罰が与えられるものが、すでに起こっています。

なので、退学という処分が妥当かと。」

私は、『普段』の声でそうはなした。

この人相手に威圧は通用しない。

間違ったことを言ってくる相手に対しては、絶対に従わない。どんなことをしても。

その一方で、正しいことをしている人を、裏切るということはない。

 

「分かりました。今から、こちらでそのことがあったかどうか確認します。

そして、そのことが事実だった場合、生徒の処置を決めましょう。

そして、今その生徒は、どのような状態ですか?」

 

 

曲ったことを嫌う方だ、普通なら休日にわざわざ校長自ら出て、しかも今から確認するとは言わないだろう。

 

 

「今は、私が信頼している子が保護しています。なので、ご安心を。」

 

 

「そうですか。良かった…。では、しばらくしたら、もう一度こちらから電話をかけます。

ご連絡していただきありがとうございます。」

 

「いえ、休日にわざわざありがとうございます。それでは、失礼いたします。」

 

これで、後はしばらく待つだけだ。

これからのことを考え、私は、すっかり冷めてしまったコーヒーを口に含んだ。

・・

・・・

・・・・

・・・・・

電話が震え始める。

校長からの折り返しの電話だ。

「もしもし、雪ノ下です。どうでした?」

 

「確認しました、ボロボロになっている自転車に、下駄箱も。

監視カメラに写っていたので、顔もわかりました。」

 

こんなことをしたやつが、素直に出てくるとは思えないし、顔が特定されていて良かった。

 

「では、処罰の方は?」

ここが一番気になることだ。

下手に、停学になると、戻ってきた後逆恨みで、比企谷君がもっと危ないことになるかもしれない。

 

冷静な声で、校長は返してきた。

「このようなことをしでかした子供たちが、停学で心を入れ替えるとは思えませんし、刑事罰を科される案件なので、退学が妥当でしょう。すでに、警察の方にも連絡して、その子たちの家庭に話を聞きに行ってもらっています。」

 

 

私は、少し感心していた。

ここまで、対応が早いとは…。

それに、生徒を退学させるとなると、学校の評判も悪くなる。

そこまで、強硬に退学を押してくるとは、思っていなかった。

最悪、雪ノ下の名前を使い交渉しようとしていたのだけれど。

 

「校長は、有能ですね。」

年上に対して、なんて口をきいているのかといわれるだろう、上から目線の口調だ。

それに、校長はカラカラと笑って答えた。

 

 

「私は、君のように有能ではないよ。

ただ、曲ったことが嫌いなだけだからね。」

 

その答えに思わずこちらも微笑んだ。

・・・

・・・・・

 

校長との電話が終わり、あらかたどうにかなるだろう。

ただ、私が力を貸せるのは、ここまでだ。

 

「あとは、頼んだよ。めぐり」

私は、変わっていく後輩の姿を思い浮かべ、ポツリとつぶやいた。

 

 

 

八幡side

 

 

食器洗いを終えて、今は絶賛数学を教えてもらっている。

めぐりさん曰く、まずどこが出来て、どこが出来ないのかのテストをして、そこからできないところを埋めていくという方法になった。

 

 

まあ、テストの結果は芳しくない。

高1の内容の基礎も怪しいところが発見された。

高2の内容だって?あ、ねえよ、んなもん!

 

 

めぐりさんも、これには思わず苦笑い………してないだと…。

むしろ、嬉しそう…。

なんでなのん?

 

かくして、一年のころからの復習が始まった。

 

 

めぐりさんの教えは端的に言って分かりやすい。

基本的に必要な公式や、その分野での狙われやすいところ、定石などが入っている大学の入試問題を解き、その後にそこで使った公式をもっと簡単なもので確認するというものだ。

勉強というと、簡単から難しいというやり方が一般的かと思っていたけど、そうじゃないやり方もあるのだと、新しい発見だった。

 

めぐりさん曰く、数学は公式だけで覚えていると、二次試験なんかでどこで使えばいいか分からなくなるとか。だから、ある程度の難しさの問題の中にその分野で使われる公式や、問われる定石をやってからの方が、力が付きやすいのだと。

 

 

めぐりさんに、教えてもらっているのだから、次の数学はいい点を取ろうと。八幡は心に誓った。

 

 

 

めぐりside

 

 

 

彼に数学を教えることが決まり、まず、どの程度できるかを知るため、分野ごとにテストをした。

結果は、高1でも抜けているところはそれなりにあり、高2に至ってはほとんど抜けていた。

ただ、わからないところが多い分、長い時間彼と一緒にいられると思うと、八幡君には悪いけれど、喜んでしまった。

・・・

・・・・・

彼に一通り解き方を教えた後、基礎問題を解いてもらっている。

ちなみに、彼は飲み込みも早く、思っているよりも成績は伸びやすいタイプだろう。

本人曰く、一度わかんなくなってやらなくなってしまったみたいだ。

 

 

そんな隣で手持ちぶさたな私は、読書をしながら様子を見ていた。

集中して問題を解いている彼の横顔をちらりと見る。

整っている顔、目は濁りが薄くなってきていて、優しそうな青年の顔になっている。

柔らかそうな髪に、跳ねているアホ毛がかわいらしい。

そのまま見ていると、彼の唇に目がいってしまった。

いつかあそこにキスするときもあるのかなと思い、顔を赤くなり、とっさに持っている本で顔を隠す。

 

そのことを彼に見られ、彼がどうしたんですか?と聞いてきて、思わず答えに困ってしまう。

 

そんな穏やかな雰囲気の中、ゆっくりと時間は流れていく。

 

 




いかがでしたでしょうか?

名もない校長が出てきました。
陽乃さんの出番も次回で終わりになるかも…。


【挿絵表示】



【挿絵表示】


イラストは、めぐりssってハーメルンでどれだけあるのかを調べたら、驚愕してしまい書いてしまいました。
他のヒロインの十分の一か……………( ;∀;)

最後まで読んでくださりありがとうございました(^o^)丿



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※校長のスペックについての説明

※これは、本編ではないので、ご注意ください。
本編は近くあげる予定です。

キャラ説明が予想以上に長くなったのでこちらに投稿しました。

作者が少し校長について出したかっただけです…。
なんでもするんで許してください!



今回校長を出したら、意外と人気だったのでうまくはありませんが、校長についてのイラストと簡単なプロフィールのようなものを作ってみました!

あと、おそらくこれから出る予定の方を一人…。

 

 

 

 

熊田成平(くまだなりひら)

 

年齢:59歳

性別:男性

身長:178センチ

職場:総武高校

役職:校長

性格:温和で優しい

趣味:剣道、孫と遊ぶこと

 

好きなもの:みたらし団子、日本酒、正しいこと

嫌いなもの:曲ったこと

見た目  :髪と髭は白

 

 

【挿絵表示】

 

 

自分が、幼いころに片親で育てられたことに対してのいじめを受けていたことがあり、それ以来強くならないと、曲ったことが許せないというような感情が芽生えた。

剣道は全国大会で、二位を取るほどの腕前であり、今でも時々高校の剣道部に通っている。

 

生徒に対しても、教員に対しても平等に一人の人として話し合うため、校内で非常に人気のある人である。

特に、生徒思いの性格のため、平塚先生との仲がよく、頻繁に飲みに行っている。

そのたびに、平塚先生の愚痴をきくのが日課になりつつある。

 

 

顔のほりが深く、初対面の人には必ず怖がられるのが、悲しいところ。

休日は、家で孫と遊んだり、家事をしたりとよい夫であり、よいお爺さんであるようだ。

娘が二人いて一人は結婚していて、平塚先生と年齢が近いため、どこか娘を応援しているような気分になるそうだ。

 

 

また、雪ノ下陽乃が認める数少ない人物である。

 

城廻恵美(しろめぐりえみ)

 

年齢:秘密

性別:女性

身長:164センチ

胸 :Cカップ

仕事:大学の助教授

性格:まじめで、優しい

趣味:読書

 

 

【挿絵表示】

 

 

千葉県内のめ陽乃が通っているところで働いている助教授である。

夫は自分の上司である教授なのだが、家庭での立場は自身が上になっている。

 

娘から男の気配などが一切感じられないことを心配していたが、最近比企谷君という子の話を娘からよく聞き、初恋が結ばれるのを心待ちにしている。

また、早くめぐりの思い人に直接会って話してみたいと思っている。

今回の件については知らず、教授である夫とともに実習に行っているため、自宅に八幡が泊まっていることは知らない。

 

ちなみに、教授である夫は妻と性格は逆でちゃらんぽらんです。

 

 

 

この二人はたぶんこれから出てきます。

お母さんの方は、最後の方に、校長はちょいちょいという感じです。

二人とも、別々の作品をもとに作っています。

お母さんに至っては、髪型変えただけです………画力ないからね、しょうがないね…。

 

作者としては、渋いおじさんがかけてうれしかったです!

 

明日か、あさってには本編を更新します!たぶん……

いろいろ書き直してるので時間かかるかもしれませんが…。

 

最後まで見てくださりありがとうございました!

 

 

 

 

 



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小さな幸せ(3)

やあ(´・ω・`)
パソコンが壊れて、十八話近くのデータが吹っ飛んだメガネコです。

また、一から作り直しです………。
前回処罰に関すること書くとか言ってたのに、今回校長出てきません。
ぽわぽわ書いた後になると思われます。


ご指摘、ご感想あればしていただけると幸いです。


めぐりside

 

 

彼の勉強を見ていたら、あっという間に時間が過ぎ、五時ごろになっていた。

 

さすがに、ずーとこのままでは疲れてしまうだろう。

 

「八幡君、もうすぐご飯の準備もしないといけないし、切りのいいところで終わりにしようか。」

 

あれ、返事がない。

すごい集中している。気づいてないみたいだ。

 

指で、頬っぺたをムニムニつつく。

意外と柔らかく気持ちいい。

 

「お~い、もうご飯にするから、終わりにしよ?」

 

「すいません、集中してました。」

彼が、頬をポリポリとかきながら答える。

うっすら赤くなっているのは、照れてくれているのだろうか?

 

「いいよいいよ、気にしないで~。それより今日はご飯何がいい?」

 

彼は、口に指をあてながら少し考え、

「和食にしませんか?洋食が続いていますし。」

 

「じゃあ、魚にする?確か何かあったはず。」

 

そう言いながら冷蔵庫を確認する。

うん………見なかったことにしよう。

冷蔵庫を見て固まっていると、後ろから声が聞こえた。

 

「サンマがあるじゃないですか。塩焼きとかば焼きにします?トマト煮とか作れますけど。めぐりさんどうしてそんなに嫌そうなんですか?」

不思議そうに私の顔を見てくる。

「いや、サンマ食べれなくないけど、青臭くて苦手なの………。」

うん、恥ずかしながら苦手なんです。

鼻から抜けてくる、青臭さが苦手。でも、秋のサンマっておいしいんだよね…。

というか、食わずきらいがあるなんて、子供っぽいと思われないかな…。

 

彼は微笑みながら

「臭みの取り方なら、いくつかありますから、たぶん大丈夫だと思いますよ。

というか、めぐりさんでも苦手なものがあるんですね。」

 

「むー、私だって苦手なものぐらいあるよ!」

ほっぺを膨らませながら反論する。

 

 

すると、私の膨らんだほっぺを彼が指で優しくつつきながら

「俺にも苦手なものありますし、別に子供っぽいとか思いませんよ。」

 

彼の触れている場所から、じんわりとあったかくなるのを感じる。

顔が赤くなるのがバレないように急いで話題を変える。

 

「ど、どうやって臭みを取るの?」

 

「まあ、見ていてくださいよ!専業主夫志望の実力を!」

 

軽い感じで話せるようになってきている。

少しづつ良くなっているのかな…?

 

そう言ってサンマの下処理をしていく、彼の背中を微笑みながら見ていた。

 

・・・

・・・・・

 

彼の下準備が終わり、お味噌汁のだしを取ったり、ほうれん草のおひたしを作り終えたところで、家の電話がなる。

番号を見てみると、お母さんからだ。

 

「もしもし、お母さん?どうしたの。」

 

お母さんと言う言葉を聞いて、八幡君がビクッとして背筋を伸ばす。

その光景をみて、クスッと笑ってしまう。

 

「あらめぐり、誰かいるのかしら?」

お母さんが楽しそうに聞いてくる。

「い、いや~、誰もいないよ~。テレビで面白いのがやってて、それで笑っちゃった。あはは~」

今ばれたら、なんて言われるんだろう…。お母さん日頃からいい男の子はいないの?ってきいてくるし、お父さんは、お父さんで出来たらお話したいね~って言ってるし。

バレたら、確実にからかわれる……。

 

「ふーん、そうなんだ。

台風だからだいじょうぶかな?と思って心配してたけど、彼氏がいるなら大丈夫ね。」

 

「ま、まだ、彼氏じゃないよ!!」

思わず、反論する。

 

「あれー、お母さんの耳には、『まだ』って聞こえたけど、やっぱり男の子がいるんだー」

し、しまった。

余計な事言ってしまった。

電話の向こう側で、お父さんが椅子から落ちたような音が聞こえる。

「にゃ、にゃれもいません!!」

 

「必死になっちゃって、そうか、やっとめぐりにも男ができたか…。

まあ、大丈夫そうね。あんまり変なことはしちゃだめよ?」

 

「わ、分かってるよ。八幡君はそんなことしないよ!」

 

「へ~、八幡君っていうのね。めぐりがそういうなら大丈夫ね。

じゃあ、明日の夕方ぐらいに帰るから、おやすみ~」

 

「あっ、ちょっt」

電話が切られてしまった。

 

受話器を置きながら、思わず口からため息が出る。

確実にお父さんにもバレた………。

どうしようそう思いながら、八幡くんの方を見る。

すると、彼はこちらを向きながら顔を赤くしている。

 

 

落ち着いて考えてみると、結構なことを言っていなかったかな私…。

 

何も言わず私は、その場で頭を抱えながら座り込んだ。

 

 

その後八幡が、めぐりさんを回復させるのに時間がかかったこと、めぐりのお父さんとお母さんが、二人して赤飯を食べたことは、また別のお話。

 

 

 

 

八幡side

 

 

勉強を終了させ、食事の準備をしている。

めぐりさんにも、苦手なものがあるということを知ったり、ほっぺをつつき合ったり。

言葉にすると、結構なことしてるな………。

 

 

今は、二尾あるサンマをさばいているところだ。

 

まず、ボウルに水を入れ、大さじ1から2ぐらいの塩。片栗粉大さじ1を入れ、そこでサンマを軽く洗う。

こうすることで、魚のヌメリがとれ、臭みを取ることが出来る。

注意事項としては、洗いすぎるとうまみがにげるので、軽くにしておくこと。

 

捌くと言っても、塩焼きにするものは、内臓だけを取るだけなのだが。

ただ、内臓は焼く前に取るのは、ほんとはおススメされていないそうだ。

なんでも、内臓周りについている油がおいしく、もったいないからだそう。

 

 

もう一尾は、かば焼きにするために、三枚におろしていく。

おろした身を、それぞれ二等分にしていく。

 

「八幡君って、三枚におろせるんだ…。」

めぐりさんはと言うと、ほーっと言う感じで感心している。

誰かに、褒められるというのは素直にうれしい。

 

「ありがとうございます。取った内臓のところに大葉を入れておくのも臭み取りにいいそうですよ。」

 

ほぇと感心している。

ほんとなにしても、可愛いなこの人。

あざとさを感じない。純粋に可愛い。

うん、戸塚と同じくらい。

 

 

そんなことを考えながら、二人で料理の下ごしらえをしていく。

あらかたの下ごしらえが終わり、めぐりさんの入れてくれたコーヒーを飲みながらホットしていると、電話が鳴り始めた。

 

 

めぐりさんが、電話に出るなり

 

「もしもし、お母さん?どうしたの。」

 

お、お母さん!?

お母さんって、あのmotherの方のお母さん!?

思わず背筋が伸びる。

それを見てめぐりさんがくすっと笑っている。

うん、恥ずかしいね……。

 

 

「い、いや~、誰もいないよ~。テレビで面白いのがやってて、それで笑っちゃった。あはは~」

 

そりゃそうか、いきなり電話にでて笑っちゃったしね。

めぐりさんごめんなさい、なんでもするから、許して下さい。

 

 

「ま、まだ、彼氏じゃないよ!!」

えっ、ちょっと待って、お母さんいったい何が起きているの??

なんで、彼氏の話になっているのん?

 

めぐりさんお顔が真っ赤になってるんですけど……。

 

 

「にゃ、にゃれもいません!!」

たぶん、誰もいないということを言いたかったんだろう。

というか、さっきから、めぐりさんのキャラ崩壊がひどい……。

いや、まあ可愛いんですけどね。

 

 

「わ、分かってるよ。八幡君はそんなことしないよ!」

 

ごめんなさい、言われたことがすごく想像できるんです。

そんなことって、まあ、うん。

でも、俺ってめぐりさんのいろいろ見ちゃってね。

いかん思い出したら、まずいことになる…八幡の八幡が浮上しちゃう!

 

 

「あっ、ちょっt」

めぐりさんが、何か言い終わる前に電話が切れてしまったようだ。

「はぁ」とため息をついている。

 

そして、こちらを向き顔を赤くしながらその場でうずくまってしまった。

ご家族にばれてしまったみたいですね…。なんか、すいません。

俺としては、普段見れそうにないめぐりさんのいろいろな顔を見れたからよかったんだけどね。

 

 

そう思いながら、めぐりさんの背中をさすりながら、励まし続けた八幡であった。

 




いつもより短くなりました。
うん、心も折れそうです………。
八万字近く消えたのは、きつい……。

めぐりん私を癒してくれ……(;´Д`)
サキサキでも全然いいよ。←作者がめぐりんの次に好きなだけ。

それでは、最後まで見てくださりありがとうございました(^o^)丿


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小さな幸せ(4)

久々にガンダムOOをみて、ロシア人のお義姉さんと抱き合いながら、「アニューぅうう」と言いながら病室で泣いていたメガネコです(´・ω・`)
いや、まさか泣くとは思わなかった…。

データに関する励ましのメッセージ、感想ありがたやありがたやm(__)m
ちゃんと書ききるつもりなのでご安心ください!

次回で一応序盤が終わる予定です。


ー追記ー
お気に入りが600を超えました!
読んでくださったすべての方に感謝感謝です!
誤字指摘をしてくださった tar様、袖野霧亜様、zakojima様ありがとうございました!


めぐりside

 

お母さんの突然の電話があった後、夕食を食べ終え、今八幡君が先にお風呂に入っている。

私はというとソファーでテレビを見ながらコテンと横になっている。

ただテレビの内容は、頭の中に入ってこない。

食事をする前の出来事を思い出してしまったからだ。

 

 

お母さんの彼氏発言のせいだ。

でも実際付き合うとしたらどうなるんだろう?

悔しいけど私より料理の腕も知識もある。

ごはんもおいしかったし、八幡君には、専業主夫があっているのかもしれない。

となると、私が働くことになるのかな…?

となると、今の大学卒業後大手の企業に就職しないといけなくなる。

でも、一度仕事から帰ってきた八幡君に、ごはんにする?お風呂にする?それとも……

いけない、お母さんに茶化されてからいろんな事考えちゃう…

 

 

と言うか、お母さんの言ってた変なことって、そういうことだよね…。

思わずそんなことをしている自分を想像してしまう。

 

ベットに自分が組み伏せられる。

彼のごつごつした手でゆっくりと服を脱がされていく。

普段隠れていた部分が空気に触れ、そのことに体が反応してしまう。

そして、彼の手が自分の大切な場所に伸びていき……。

 

そこまで考えソファーのクッションを抱きかかえたままゴロゴロしてしまう。

「う~」

何とも情けない声が出てしまった。

前まではこんなことなかったのに………。

でも、そんな自分の変化を嫌ってはいない。

むしろ今の自分は好きだ。

 

そんなことを考えていると、突然携帯が鳴る。

「うわっ!」

驚いて、ソファーからコロンと落ちてしまった。

 

「あいたたた、誰からだろう?」

お尻をさすりながら、画面を見てみる。

 

陽さんからだった。

通話ボタンを押す。

すると、いつもの元気な陽さんの声が聞こえてきた。

 

「はろはろ~、めぐり。今時間良い?」

 

「こんばんは、陽さん。大丈夫ですよ~、八幡くんもお風呂に入ってますし。」

 

「んじゃ、早速だけど、校長と電話したんだよね~。」

 

私の頭の中が一瞬でさっきまでの呆けた感じが消える。

最近のニュースでは、隠蔽などの嫌な噂を聞く。

もし、校長がそんなことをすると選択してしまったら………

嫌な想像をしてしまい、返事がこわばってしまった。

「あ、あのそれで校長はなんと?」

 

すると、私を安心させるかのように普段使わない優しい声で

「大丈夫、その子たちは退学になるそうよ。」

 

私は、その言葉を聞いて驚いてしまった。

この短期間で、そうまで早く決断することが出来たことに驚いてしまう。

「こんなに早く決断なされたんですか!?」

 

「確定と言うわけではないけれど、ほぼ確実よ。」

動揺してる私に対して、陽さんはすごく冷静だ。

「その確定ではないというのはどういう…?」

 

「簡単に言えば比企谷君の人柄を知りたいそうよ。もし、彼に問題がありこんなことになってしまったならば、退学と言う形ではなく停学になるそうよ。」

 

「そ、そんな八幡君は悪い子じゃありません!自分を犠牲にしてでも、仕事をまっとうしようとしたり、熱を出している私を看病してくれたり、そr「分かってるよ、私やめぐりはね」

 

そう言って私の言葉を陽さんは遮った。

 

「めぐりだって、あの時すぐに比企谷君のしてたことを評価できなかったでしょ?」

それを言われると、本当に彼に申し訳なくなる。

陽さんに人を正しく評価する力があると言われながら、彼にひどいことを言ってしまった。

 

「それは………そうですけど。」

返事が弱弱しいものになってしまう。

 

「まして、彼は今学校中で悪いうわさが流されている。そんな生徒がまともな子かどうかなんてのは、直接話してからじゃないとわからないでしょ?だから、直接話したいんだって。」

 

 

校長の人柄は知ってはいる。

何度か話す機会があったし、立場に関係なく平等に接することが出来る人。

それでも、不安だ。

 

私の沈黙を心配したのか、

「大丈夫、熊田校長は私が認めた数少ない人間だよ?あんな人今時なかなかいないぐらいすごい人だから。」

 

「はい…。」

 

「心配なら、めぐりも話してみる校長と?」

 

「お願いしてもいいですか……?」

彼は少しづつ落ち着いてきてはいるけれど、それでも校長に誤解されるようなことはあってはいけない。

 

「分かったよ、頼んどく。めぐりは変わったね?」

 

 

「やっぱりそう思います?」

 

「昔はこんなに積極的じゃなかったし、いやぁ、恋する乙女はすごいねぇ~」

からかうように陽さんが言ってくる。

 

「う~ん、そうなんですよね、最近自分らしくないこと考えちゃうんですよね…」

お母さんに言われたようなこととか…。

 

 

「へぇ~、何をかんがえているのかなぁ~、お姉さんすごく気になるなぁ~」

 

し、しまった、お母さんと言いこの人と言い人のいじりに慣れている。

 

この後根掘り葉掘り聞かれてしまいソファーの上で顔を真っ赤にさせる女の子がいたのは、また別のお話し。

 

 

 

 

陽乃side

 

 

 

めぐりとの電話を終え、紅茶を入れるために、お湯を沸かす。

電気ケトルのスイッチを押し、私は物思いにふける。

めぐりの話はとても普段まじめなあの子らしくない純粋に恋する女の子のものだった。

と言うか、あの子の体を拭いたなんて………。

しかも、告白してキスしちゃったのか……………。

 

こういうことに奥手な子だと思ってたんだけどなぁ…。

「比企谷君は、本当になんでも変えちゃうんだね…。」

ぽしょりと言葉が口から洩れる。

 

 

電気ケトルがカチッという音がして、お湯が沸いたことを知らせる。

一度考え込むのをやめ、紅茶を入れる。

・・・

・・・・・

 

カップに紅茶を入れ、一口含む。

口の中に香りが広がる。

その香りを楽しみながら、また考える。

 

さっきの電話の様子だと、もうガハマちゃんや、雪乃ちゃんに勝ち目はほとんどないだろう。

ガハマちゃんは確実に彼のことが好きなはず、雪乃ちゃんだってそうだと思う。

 

 

自分のした選択に後悔はない。

雪乃ちゃんにも、チャンスはあげたんだから。

それでも、やっぱり自分の妹だから、どうしてもひいきしてしまう。

もし、雪乃ちゃんが素直になっていて自分の気持ちに素直になっていたら…。

「もし」なんてことを考えても仕方ないか、過去に戻れるわけでもないし。

私はめぐりの味方をすると決めたんだから。

 

「雪乃ちゃんは、いつになったら素直になるんだろうね………」

思わずつぶやいてしまった。

 

それでも、『もし』誰でも救ってしまう、変えてしまう彼なら、雪ノ下家の長女としてではなく、雪ノ下陽乃として素のままの私をみて、大事にしてくれるのだろうか?

 

 

少しめぐりがうらやましい、そう思ってしまう。

紅茶をまた一口飲む。

紅茶はいつの間にか、冷めてしまっていたようだ。

・・・

・・・・・

 

ゴロゴロと雷が落ちた音がする。

 

そう言えば、めぐり雷苦手じゃなかったっけ?

これはこれは………

八幡君も大変だ♪

いじりのネタが増えそうな予感にワクワクしている陽乃であった。

 

 

 

八幡side

 

 

 

めぐりさんとの食事を終え、今ゆっくりと風呂に入っている。

明日のことを考えると憂鬱になる。

めぐりさんが任せるように言ってはいたけれど、いったいどうなるのだろうか?

というか、俺の自転車どうなったんだろう?

さすがにボロボロだから返してもらっても意味はないけれど………。

 

 

お湯をすくって顔にかける。

「ふぅ」

ごちゃごちゃ考えても仕方ないよな………。

めぐりさんだけでなく、はるのさんもいるみたいだし、何とかなるのかもしれない。

それに信じてと言われているしな。

 

 

なんだかんだ言って俺はめぐり先輩のことを信じてるんだな。

エリートボッチだとか言ってたくせに…。

 

 

でも、今めぐりさんと一緒にいるのは心地いい。

人を信じて心の底から頼れる人を見つけられると人は変わってくんだな………

雪ノ下も、誰か信じれる人を見つければ、変われるんじゃないか?

陽乃さんとか結構頼りがいがあると思うんだが…。

 

・・・

・・・・・

風呂をあがり、今はめぐりさんが風呂に入っている。

そんな俺は何をしているかというと、日曜○劇場を見ている。

題名は『L●on』

 

ニューヨークに住む殺し屋レオン。

マフィアのボスの「トニー」に依頼された仕事を完璧にこなす孤独な日々をおくる。

 

ある朝、彼の住むアパートの隣人、ランドー一家が何者かに襲撃され惨殺される。

一家の少女マチルダはレオンと顔なじみ。その日もお使いを頼まれていたため難を逃れることができた。普段から父や姉に虐待されていた彼女ですが、心の支えだった四歳の弟も犠牲になったことを知り復讐を誓う。

 

「殺し方を教えて」そう頼む彼女を、最初は疎ましく思うレオンですが、マチルダは交換条件として英語の読み書きができない彼に読み書きを教えることを提案。

こうして、二人は徐々にきずながめばえ始めた。

 

そんなある日、マチルダは家族を襲撃した犯人を突き止める。

彼女はレオンに置手紙をし、単身で麻薬捜査官の顔を持つ男のもとに乗り込んでいき……

 

あらすじとしてはこんな話だ。

1994年に公開という昔の映画だが、いい映画だと思う。

主役のレオン役の、ジャ●レノがまたいいんだ。

なんでか、今はドラ●もんやってるけどな…。

 

思わぬところで好みの映画に出会えて、夢中になっていた俺は背後から近づく何者かに気付かなかった!

 

 

 

めぐりside

 

 

 

八幡君が、お風呂に入り、その後私もお風呂に入った。

お風呂にはいり、さっきまでの陽さんとの電話で消耗した力を回復した。

ドライヤーで、頭を乾かした後、リビングに戻る。

 

八幡君はリビングのソファーでテレビを見ながらくつろいでいる。

彼はまだ気づいていないようだ。

そうだ、ひとつ思いついた。

 

こっそり彼の後ろに近づいていく。

ちょんちょんと肩をつつく。

 

振り向きながら

「どうしたんですk」

むにゅっと指で彼の頬っぺたをつつく。

 

「ひっかかった♪」

彼の頬がうすく朱に染まる。

 

「めぐりさんもそんなことするんですね。子供っp」

すこしむかついたので、また指で頬っぺたをつつく。

 

「むー、一応君より年上なんだけど……」

そう頬っぺたを膨らませながら、彼に怒ったような口調でいう。

 

すると、彼の手が伸びてきて、そのまま頭をなでてくる。

「すいません、別にけなしてる意味じゃなくてですね…。」

 

そうされるだけで、さっきまでの怒っていた気持ちがどこへやら。

なんだか、胸の中がほっこりしてくる。

しばらくそうされていると、恥ずかしくなったのか彼が慌てて手をひっこめる。

少し残念な気はするけれど、彼の見ている映画について気になったので聞いてみた。

 

「なんの映画なの?」

 

「殺し屋の男が、少女を育て上げるていう話ですね。

見てみたらわかりますよ。」

 

私は、彼の隣に腰かける。

 

「あの、少し近くないですか……?」

 

確かに三人掛け用のソファーで確かにスペースは余っている。

そんな中彼と肩が触れ合う距離で、座っている。

 

「いや…かな…?」

不安になって聞いてみる。

 

「そ、そういうわけじゃないですけど……。」

ポリポリと頭をかいている。

これは、彼が照れるときの癖だと知っている。

なんだかうれしくなって、彼の肩に頭をのせる。

「ちょっと!?めぐりさん!?」

 

「嫌じゃないんでしょ?」

そうすました顔で言う。

 

・・・

・・・・・

 

そんなことをしていたせいで、あまり映画の内容を覚えてはいない…。

肩がしっかりしてるなぁとか、いい匂いがするなぁとか彼の事しか考えられなかった。

映画もクライマックスとなってきている。

 

そんな時雷が落ちる。

外がピカッと光った後、ゴロゴロとなる。

近くに落ちたようだ。

「ひゃっ」

私は思わず近くにいた彼にしがみついてしまう。

 

彼は突然しがみついた私にびっくりしたのか、

 

「ど、どうかしたんですか?」

 

「私、雷苦手でさ…。小さいころ一人で留守番しているときに、雷が落ちてきて停電して以来。」

 

そう言っている間にも雷が落ちてきている。

ゴロゴロと言う音が鳴り響く。

彼の腕により強くしがみついてしまう。

 

そして、しばらくして部屋の電気が落ちた。

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか?

今回作中で出てきた、映画は私が好きな映画です!
古いけど気になった方は見て見てください!
この映画の主題歌もいいのでぜひ聞いてみてね!

※作者は別にシネマのまわし者ではありません。
なにか面白い作品があったら教えてくれてもいいんやで(/ω・\)チラッ


最後まで見てくださりありがとうございました(^o^)丿


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小さな幸せ(5)

やあ(´・ω・`)
夢の中で、めぐり先輩にあったメガネコです。
目覚めなければよかったのに…(血涙)

今回の話でようやく序盤がおわる予定です。
前に要望にあった、同じ時間の二つ視点を試しに片方にしてみました。


ご指摘ご感想があればしていただけるとありがたいです。



八幡side

 

 

 

スタンスフ●ールドが、「えぇぶりわぁん!!」

と叫んだところで、めぐりさんが抱き着いてきた。

 

「ど、どうしたんですか?」

さっきのシーン確かに声が大きいからびっくりする要素があったかもしれないけれど…。

そんなに驚くものなんだろうか?

あと、先輩柔らかい何かが腕に押し付けられてるんですが…。

風呂上りは、胸部装甲をつけないのは知っているけれど、これはまずい。

なるべく、腕以外に意識をまわさないと………。

 

「私、雷苦手でさ…。小さいころ一人で留守番しているときに、雷が落ちてきて停電して以来。」

 

確かに小さいころのトラウマか…俺もあるな、主に交友関係で。

そんなことを考えていると、雷が落ちてきた。

その時、部屋の電気が落ちた。

 

「ひぅ」

小さく悲鳴を上げ、腕に抱き着くめぐりさんの力が増す。

座ったまま腕に抱き着かれているので、めぐりさんの内ももが手の甲に当たっている。

柔らかい感触と、甘い匂い。

どんどん理性が溶けていく。

 

 

い、いかん。

八幡の八幡急速潜航ようい!!

出来ません!このままでは浮上します!!

 

脳内で妖精さんたちが急いで会議をしている。

 

だが、冷静になって考えれば、暗闇なんだから多少浮上してもばれないよな…。

というか、まずはブレーカを復旧しなければ、周りが見えないことにはどうしようもない。

ついてないことに、ケータイは客間で充電している。

 

「めぐりさん、ブレーカーの場所どこか分かりますか?」

 

「え、えっと確か玄関の下駄箱の棚の上の方にあるはず。」

 

玄関なら幸い近いし、どうにかなるだろう。

「なにか明かりになるものありますか?」

 

すると、めぐりさんがもぞもぞしはじめ、携帯を手渡してきた。

「携帯はあるよ。」

 

「じゃあ、一人で行ってきますんで、ここにいてください。」

 

立ち上がろうとするが、腕からめぐりさんが離れない。

 

「あのめぐりさん、離れてもらわないと動けないんですが…。」

 

涙目になりながら、無言で首をふるふる。

また雷が落ちる。遠くでなっただけだが、それでも体をこわばらせている。

 

しょうがない

「一緒に行きます?」

無言で首を縦に振る。

 

なんか小動物みたいで可愛いな………。

 

携帯の明かりをもとに、二人して慎重に玄関まで向かう。

外はすごい大雨のようで、雨が地面や壁にたたきつけられる音が鳴り響いている。

 

 

「そこのところの上だよ。」

そう言って俺の肩をつつき、携帯の光を向けてくれる。

 

少し高いところにあるため、棚をよじ登らないといけないようだ。

 

「めぐりさん、棚上るんで手を放してください。」

 

そう言うとしばらく悩んだのち、ゆっくりと腕から離れた。

 

棚に足をかけてよじ登っていく、配電盤のふたをあけ、ブレーカーのスイッチが下がっているのを上げる。

 

すると、ブツンと言う音がしてしばらくすると、部屋の明かりがついた。

映画の音が聞こえてくる。

主題歌が流れているということは、もう終わっちゃったのか…。

最後の手りゅう弾のt…おっとネタバレになるところだった。

 

めぐりさんも一安心したようで、ほっとしているのが顔に出ている。

その後顔を真っ赤にしながら、

「ごめんね、本当に苦手で……。」

ぽしょりとつぶやいた。

 

「気にしないでいいですよ、俺も苦手なものありますし。

トマトとか出ようものなら、発狂しちゃうまである。」

ととぼけたように言うと

 

「優しいんだね、八幡君は」

素直に褒められるのに慣れていなくて、何も言うことが出来ず、頭をかくことしかできなかった。

 

 

めぐりside

 

 

ベットの上で丸まりながら、さっきまでのことを考えていた。

 

ブレーカを八幡君が直してくれた。

怖がってる私を見ても、気にしないようにとフォローしてくれたし。

彼は本当に優しい男の子なんだと改めて思う。

 

 

ただ、雷はいまだに怖い。

小さいころに、風邪で寝込んでいて、両親も仕事で遅くなったとき。

部屋で寝ていたら近くに雷が落ちて、家が停電したことがあった。

外は雲が多いため昼なのに暗く、近くで雨が壁や窓をたたきつける音が激しくなり、

怖くなりベットの上で泣きながら、両親が返ってくるのを待っていた。

 

それ以来私は雷が極端に苦手だ。

生徒会にいたときに、陽さんと二人で居残り作業をしていた時に大雨になり、その時思わず陽さんにしがみついて以来、からかわれるネタになった。

 

 

また、遠くで雷が鳴る。

正直に言うと一人でいるのは、怖い。

たくさんの人がいるところなら、そうでもないのだけれど…。

今度は、近くに落ちた。

 

ドンと言う衝撃が走ったのを感じる。

 

こ、こわいよぉ………。

そんな中私は一つひらめいた。

・・・

・・・・・

 

 

 

私は今客間の前にいる。

 

「は、八幡君、まだ起きてる?」

扉越しに彼に話しかける。

 

「はい、起きてますけど…?何かありました?」

 

「………その入っていい?」

遠慮がちに聞いてみる。

 

 

「どうぞ。」

不思議そうな声が返ってきた。

 

 

扉を開け、中に入る。

 

 

「どうかしたんですか?」

 

 

今から言い出すことは、すごく恥ずかしいことだ。

だけど、怖いしそれに彼とこうやって過ごせる最後の日なんだから。

小さく息を吸い気持ちを落ち着ける。

 

「今日、一緒に寝ちゃダメ…かな…?」

 

「は、はい!?」

 

彼が固まっている。

それもそうか、先輩が一緒に寝ようなんて言ったら、戸惑うよね…。

そう思いながらも、おずおずと言葉をつないでいく。

「私雷苦手って言ってたよね……。その…一人でいるのが怖くて…。

だから誰か人がいたりしたら、安心できて眠れると思うんだ……。」

 

 

「いや、でもめぐりさん、俺も男なんですよ…?

何かあったらどうするんですか!」

薄暗い中でもわかるくらい顔を赤くさせながら言ってくる。

 

嫌ではないみたい…。

それに彼は私のことを無理やり襲ったりしないだろう。

理性の化け物と陽さんに認められるぐらいだし。

それに何より、彼は優しい。

 

「大丈夫!私八幡君のこと信じてるから!」

 

その言葉を聞き、急に彼の顔がこわばっていく。

そして、小さくため息をついた後

 

「いいですよ、俺が床で寝るんで、ベッt「二人でねよ!」

 

「いや、だからですね、s「私八幡君の事信じてるから。」

 

「はい……。」

 

断念したように、がっくりと肩を落とす。

そんなに私といるのがいやなのかな………。

 

ベットはシングルサイズのベットで八幡君が壁側である。

彼が布団の端を持ち上げその中に入る。

彼が入っていたせいか、温かい。

彼の方に向き、お互い顔を向け合う形になる。

お互いの吐息が顔に触れるぐらい近くにある。

自然と頬が熱を持つのを感じる。

 

 

その時ピカッとカーテンがひかり、雷が落ちる。

びっくりし、彼にくっついてしまう。

彼の腰に手をまわし、首元に顔を押し付けるような形で。

彼の体温を感じれるぐらい近くに。

 

 

ほのかにいい匂いがする。

同じシャンプーやボディソープを使っているはずなのに、私とは違うにおい。

温かいお日様のような安心する香り。

くんくんと彼の匂いを嗅いでしまう。

 

「八幡君いい匂いだね。なんかお日様の匂いみたいなのがする!」

 

「そうですか?あんまり自分ではわかんないです。」

そう言いながら、自分の袖の匂いを嗅いでいる彼の頬は赤かった。

 

良かった、一緒にいることが嫌がられてなかったんだ。

ほっとして、彼に抱き着く力をほんの少し強くする。

 

「あ、あのめぐりさん…?近すぎないですか……?」

彼は耳まで真っ赤にしながら、そう言ってきた。

 

「いや…かな…?」

こういうと彼は絶対に断れない。

「そ、そうじゃないですけど……。」

 

「じゃあ、もっとギューッとするね。」

そういいいたずらっ子みたいに笑う。

 

いいじゃないか、こんなことできるのは今日だけだし。

それに、雷ので散々情けない姿を見せちゃってるし、こうしないと釣り合わない。

 

そう思い、彼の体と触れる面積がなるべく広がるように、足を絡ませぴったりとくっつく。

腰に回した手を、背中の方に持ち上げていく。

 

彼の鼓動がすごく早くなっている。

私がこうすることで、照れてくれていると思うといとおしさが胸の中に広がってくる。

こういうのは、きっとずるいことなんだろう。

彼のことを思っている由比ヶ浜さんや雪ノ下さんに申し訳ない気がする。

でも、二人には負けたくない。

 

 

だから私は……………

 

 

「おやすみなさい、八幡君。」

大好きの気持ちを込めて、彼の首元にそっとキスをした。

 

 

 

 




これにて、序盤完結です!
これ以上続けると後日談の時のイチャイチャがなくなりますしね…。
試しに、最後の視点は八幡sideを書かなかったのですが、いかがでしたでしょうか?

自分がその立場だとすると?と考えて興奮…もとい感情移入していただけたら幸いです。

次回やっと校長の出番やで!
雪ノ下、由比ヶ浜、相模視点も出てきます!

今日は七月七日の118時ですよね!
ハルノン誕生日おめでとう!忘れてたわけじゃないよ!!!

最後まで読んでくださりありがとうございました(^o^)丿


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少年は少しづつ変わっていく

やあ(´・ω・`)
LIAR LIAR見ました。面白くそれでいて何か気持ちがあったかくなる面白い映画でした!!
紹介してくださった方ありがとうございます!
他にも、こんなのあるよと言う方がいれば教えてくださるとありがたいです!
今後のネタに使いたいですし!

今回はいかつい人が出てきます!

あと感想が50を超えたときに出そうと思っていたサキサキのイラストをあとがきに載せときます。
よければ、どうぞ。

ご指摘ご感想があればしていただけると幸いです。



八幡side

 

 

昨晩はお楽しみでしたね………。

そう言われそうな状況だったなか、俺は自身の持っている理性を最大限に発揮し、(めぐりさんの)貞操を死守した。

本当に死守した。

もう一度言う死守した。

もう一d

 

 

 

 

いよいよ今日は学校への登校だ。

先ほど、めぐり印の朝ごはんを食べ、今は制服を着て、学校に行く準備をしている。

陽乃さんが小町には、陽乃さんの家にお邪魔しているということにしたらしいし、小町からの連絡が、陽乃さんにまで行っているとすると、確実に由比ヶ浜や、雪ノ下にも伝わっているだろう。

あいつらには、心配をかけたくはないんだが…。

まあ、何とかごまかすか。

めぐりさんが、今日校長と話すことになるだろうと言っていた。

話したことない人とまともに会話できるのだろうか………。

しかも、学校側なんてのは、こういうことを隠蔽させようとするのが常だ。

そのトップとなると………平塚先生ならまだしも、この手のことに優しく対応するような人なんて学校側にいるのか?

 

 

こういう風に嫌なことを考えていると、めぐりさんが手をそっと握ってくる。

 

「八幡君、手震えてるよ。大丈夫……?行くのやめとく?」

 

そう言いながら、心配そうに俺を見つめてくる。

正直に言うと、行きたくない。

でも、行かなかったところで状況は好転しない。

それに、めぐりさんがいる。

もう俺は一人じゃない。

信じられて、頼りになる人がいる。

 

だったら

 

「めぐりさんが俺の味方でいるんでしょ?なら大丈夫ですよ。

だって、あなたは俺が一番頼りにしてる人なんですから。」

心から思っていることを、彼女に伝える。

 

そうすると、彼女はにっこりと笑い。

 

小さくはない胸を張って

 

「任せて!これでも、頼りになるお姉さんだからね!私の八幡君には指一本触れさせないよ!」

 

エッヘンと言う感じで。

 

そして、俺の手を引き玄関に向かう。

 

二人して靴を履き、扉を開け外に出る。

 

二人そろって「「いってきます!」」

 

そう言った後、俺は「三日間お世話になりました。」とめぐりさんに聞こえない声でつぶやいた。

 

 

天気は、からりと晴れていた。

 

・・・

・・・・・

 

めぐりさんとの登校の後、俺は遅刻ギリギリで教室に入った。

周りの奴らが、まるで腫物をさわるかのように、ちらりちらりと見てくる。

普段なら、ところどころで俺に対する悪口なりなんなりが聞こえてくるのだが…。

そう疑問に思っていると、目の前に天使が現れた。

そう戸塚だ。

 

「おはよう、八幡………何かあったみたいだね………。ごめんね、力になれなくて…。」

 

涙目になりながらこちらに謝ってくる。

戸塚は、毎日朝練や昼休み、部活と必死にテニスをしているし、そもそも俺があまりにもひどいところは隠してきた。

だから、戸塚に謝られる理由はないんだが…。

 

「こっちこそ悪い。彩加を…友達を頼ろうと信じようとしなかったわけだしな…。

これから、頼らせてもらってもいいか……良ければなんだが…。」

そう言い片手を差し出す。

 

本音を言うのは、照れくさくまた拒否されるのが少し怖かったが、そう伝えれて、少しづつ

変わっていく自分にうれしさを感じた。

 

彩香は嬉しそうに笑いながら、俺の手を握り。

 

「ありがとう、八幡。僕は頼りないかもしれないけど、全力で力になるから!」

そう言って俺の手を力強く握ってくる。

 

そんな場面の中、小さく「さいはち!」と言い鼻血を出す海老名さんが俺の視界に入った。

今いいところなんですがね……………。

 

戸塚が席に戻った後、後ろから、誰かに背中をつつかれる。

振り向くと、川崎だった。

 

「どうした、川崎?」

 

「いや、あんたなんかあったんでしょ?小町が慌てて大志に連絡してくるぐらいだし。

なんか、やばくなったらいつでも頼んな。あんたには借りがあるし……。

それに………」

そういい川崎は言いよどむ。

徐々に顔が赤くなる。今日そんな暑いか?

まあきっとこいつなりに何かしようと考えているのだろう。

「ありがとな、サキサキ!少し頼ることになるかもしれないが、そん時はよろしくな。」

そう笑顔で伝えた。

 

「サキサキ言うな……。あんた変わったよね、いい方に…。昔のあんたより今のあんたの方が私は好きだよ。困ったらいつでも、頼んな。」

そう笑いながら自分の席に歩いていく。

なんだよ、あんなふうにあいつは笑うのか。普段からあの顔だったらボッチにはならないだろうに…。

 

 

でも俺は本当に恵まれているな…。

二人のおかげで、少し気持ちが落ち着き楽になった。

 

そうして授業開始のチャイムが鳴る。

・・・

・・・・・

 

俺に対する悪口がささやかれることがなく。

なんだか、不思議な気分ではある。

あっという間に昼になり、いつものベストプレイスでめぐりん印のお弁当で英気を養う。

その後の午後の授業も、何事もなく進み今現在奉仕部の前にいる。

 

 

話し声が聞こえてこないことから、誰もいないか雪ノ下だけなのであろう。

 

俺は扉を開け中に入り、部室にいた人物に声をかける。

「よう、雪ノ下。」

 

「その……こんにちは、比企谷君。休日は姉さんの所にいたようだけど……。」

こいつにしては珍しく歯切れが悪い。

 

「まあ、いろいろあって取り乱してな…。心配をかけたなら、謝る。」

 

すると雪ノ下はすました顔で、

「べ、別に、あなたの事なんて心配していないけれど…。でも、何かあったなら、その…話してくれて、構わないわ。」

 

心配していないか………まあ、そうだろな。

雪ノ下は、俺と大して仲のいいわけではないからな………。

それでも、そう言われると少し傷ついている自分がいる。

 

「安心してくれ、お前に言うほどでもない。どうにかするさ」

苦笑しながら俺は言った。

 

雪ノ下が、驚いたように

「あなたが、突然いなk

 

そこまで言ったときに、扉が開いた。

と同時に由比ヶ浜が、入ってくる。

 

「ヒッキー………その……あのね…

 

何か由比ヶ浜が言う前に、扉がノックされる。

俺と由比ヶ浜が固まっている内に、雪ノ下がどうぞと答える。

 

入ってきた人は、顔の彫が深く、いかにもその業界の人と言われれば納得のいく姿をしていた。

 

「校長の熊田成平という。比企谷君だね。少し校長室で話がある。一緒に来てくれないか。」

低くしかし不思議な安心感のある声でこう言ってきた。

 

「はい…。分かりました。」

 

俺もたどたどしいがそれに答え、校長の後ろについていく。

奉仕部の二人は何が起きたか把握できず固まっていた。

 

 

 

熊田成平(校長)side

 

時刻は午前十時半

 

私は、現在総武高校で校長をしている。

今現在、一つの無視することのできない問題が起きている。

いじめと言うものだ。

 

実際に起きていることを知ったのは、数日前だ。

元教え子の陽乃くんから聞いたことで起きていることが判明した。

元生徒に教えられることでしか気づくことが出来なかった自分にいらだちを感じる。

しかも、器物損壊という犯罪行為にまで手を染めたものまでいた。

 

 

思わずため息が出る。

校長室にある椅子に深く腰掛ける。

懐からスモーキ○ジョーのフルフレーバーを取り出し火をつける。

口にくわえ、軽く煙を吸い込み、吐き出す。

禁煙していたというのに、案件が案件だから仕方がないと言えばそうなのだが。

 

 

犯罪行為をした生徒には退学処分を言い渡すつもりだ。

何人かの教員は反対する者もいたが、私や平塚先生がなんとか説得することが出来た。

だが、その前に私はその少年のことが気になった。

いじめられるというのには、理由が伴う場合が存在する。

その子がなにか悪いことをしていたとか。

平塚先生がそんな子ではないとは言っていたが、私は自分で彼の人柄を判断したかった。

それに、いじめられる側も変わらなければ、いじめはまた起こる。

いじめをしてくる相手が変わるだけで。

だからこそ、私は彼と直接話したい。

 

 

その前に、陽乃君が今の生徒会長の城廻君に会ってほしいと言っていたな。

確か彼を助けてくれたとか。

彼女に聞きに行くために、私は煙草の火を消し校長室を出る。

 

 

 

今の時期うちの高校では三年生の大半の授業が終わっており、今は入試の問題を練習するようになっている。

彼女のクラスにノックをしてはいる。

クラスメイトが何事かと見てくる。

そんななか私は

 

「城廻君、生徒会のことで話がある。少し校長室に来てくれないか?」

授業担任には連絡してあるし、彼女にも陽乃君から連絡がいっている。

 

そのため城廻君も

「はい、わかりました。」

と戸惑いも見せずに返事をし、私の後ろについてくる。

 

 

 

校長室に入り、来客用のソファーに座るように促す。

彼女はどこかぎこちない動きで座る。

緊張しているのであろうか、背筋が伸びきっている。

 

なるべく優しい声で

「肩の力を抜きなさい。別に彼に対してなにか悪いことをするわけではないから。

お茶は緑茶でいいかな?」

 

そう言いながら私は、ポットから急須にお湯をいれしばらく蒸らす。

 

「私は、君の事を信頼している。

現生徒会長である君の事は、いろんなところでよく聞くからね。」

 

「そう言っていただけると、ありがたいのですが…。

まだ前会長の陽乃さんには遠く及びません。」

こわばった表情で、そう返事をする。

 

「確かに、前会長の陽乃君はすごかった。

だが君は、それとは違う方向ですごいと私は思うよ。

細かなところに気が付き、丁寧に物事を解決していく。

人を正当に評価することのできる人だと私は思っているんだ。」

 

 

 

 

そういって、急須からお茶を湯飲みに入れ彼女の前に出す。

 

私も自分の物を用意し、一口口に含んだ。

それを見て彼女もゆっくりとお茶を飲んでいく。

そのことで肩の力が抜けたことを確認し、私は本題に切り出した。

 

「君からみて比企谷君とは、どのような人間かな?」

 

 

彼女は少し考え

「私は、ひねくれていてそれでも、周りのことを考え自分が犠牲になったとしてもそれが求められていることなら、こなしてしまうある意味では強い人だと思います。」

 

平塚先生の言っていた印象とほとんど大差はない。

 

「ですが、自分の価値をよくわかっていないのではないかと感じてしまいます。」

 

「自己犠牲がすぎるということかね?」

 

「はい、今回の件でも、相模さんに対してそれを行ったことが、ここまでいじめが悪化した原因なのでは?と私は考えています。」

 

これが、いじめられた原因と言うわけか………。

彼のことを良く見ている人間ならそのことに気付くのであろうが、普通人をそこまで考えてみる人間は少ない。

まして、彼に友人と言えるものがあまりいないということを聞いている。

 

 

「ただ、そうだとしてもここまでひどいことをされる理由にはなりません……。」

彼女は必死に唇を噛み、涙をこらえている。

 

 

私は、そっとハンカチを差し出す。

 

私は、微笑みながら

「これを、使いなさい。君からみた彼については分かった。

君からの意見をもとにして、私は彼のことを判断しよう。

悪いようには絶対にしない。」

しっかりと彼女の顔を見てそういった。

 

 

「……よろしくお願いします…。」

やっと心からほっとできたのだろう。

安堵したように、顔のこわばりが消えていく。

 

 

「こんな子にここまで思われているなんて、彼は幸せ者だ。」

 

「そうだったらうれしいです…。」

さっきまでの、悲しそうな顔がぱっと変わり、照れたように微笑んだ。

 

 

「君は、彼のことが好きなのかな?」

何となく気になりそう聞いてしまった。

 

顔を赤くしたまま固まっている彼女は口で言うよりも明白に気持ちを表していた。

 

「そこまで、顔に出ていると答えが分かってしまうよ?」

とおどけたように言う。

 

「校長は、見た目と違って、その優しい方なんですね。もっと怖い方かと思っていました。」

戸惑いながらそう言ってきたその言葉に思わず苦笑してしまう。

 

 

「見た目は彫が深くてな、よく危ない人間と思われる。孫たちにも怖がられてしまうことがあってね。まあ、今ではなついてくれているんだが。」

 

 

「いや、そんな怖いだなんて!」

慌てて言う彼女に

 

「気にしないでくれ。さあ、もう時間だ。教室に戻りなさい。

今日はわざわざありがとう。また何かあったら連絡すると思う。」

そう穏やかに言い。彼女に退室するように促す。

 

部屋を出る前に、彼女は

「八幡君の事よろしくお願いします。」

丁寧に頭を下げてきた。

 

 

私はその気持ちに答えるべく。

「任せなさい。」

一言だけ返事をした。

 

 

 

 

部屋をでた彼女をみて、煙草を取り出しゆっくりとした動作で火をつけ口にくわえる。

煙を吐きながら、陽乃君や城廻君がここまで言う相手に対して純粋に興味がわいてきた。

午後からは、彼との面談だ。

授業中に呼び出しては、目立ちすぎるし、今の彼にとって下手に目立つのは避けたいことだろう。

 

煙草の煙がゆらゆらと上り空気に混じっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか?
校長めぐりんまでしか、いけませんでした…。
展開が遅いと言われているのですが、なかなか難しいです…。
一応亀展開のタグをつけておきました。


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次回は、雪ノ下視点と校長と八幡編です。
相模視点ものちに出てきます。

最後まで見てくださりありがとうございました(^o^)丿


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熊田成平は決意する

やあ(´・ω・`)
相変わらずの一本指打法でキーボードをたたくメガネコです。


今回は校長と雪乃視点です。
ようやく雪乃と結衣がでたよ…。


あと今回から挿絵を一話ごとに二枚ぐらい入れていく予定です。



ご指摘ご感想があればしていただけると幸いです。


雪乃side

 

 

 

 

 

今日は祝日明けの月曜日、いつも通りに起き、シャワーを浴び、朝食をとる。

ただの決まりきった作業。

そんな中でも、いつもとは違うことがあった。

週末に比企谷君が、よりにもよって姉さんの家にいたということだ。

なんでも、悪質な行為を受けてしまったとか…。

 

 

なぜ私に頼ってくれなかったのだろうか?

言ってくれれば、私も由比ヶ浜さんも何か行動を起こせたのに…。

まあ、彼のことだから、きっと周りに迷惑をかけないようにとか考えたのだろうけれど。

納得がいかなかった。

彼が頼れる人は少ない……。

友人が少ないというか,、戸塚君以外そんなものは存在しないはず。

「なんで、姉さんなんかに………」

黒々とした嫌な感情が自分の中から湧き上がる。

これは、なんだろう………。

 

 

 

「そっか、雪乃ちゃんは変わらないんだね。」

 

 

「いつまで、そのままなのかな…雪乃ちゃんは。」

 

 

姉さんの言った言葉を思い出し少しいらだつ。

変わっていないと言われたが、彼とは少しづつではあるが関係は深くなっている。

自分の気持ちに素直になれていないということ?

前にも言われた言葉だ。

『素直じゃないと相手からちゃんと見てもらえない。』

………分からない、自分の彼に対して抱いている感情が。

 

 

そんなことを考えている内に、もう登校しなければならない時間だ。

ため息をつき、カバンを手に取り私は雲一つない空を見上げながら扉を閉めた。

 

 

学校につくと、クラスがいつもよりざわついている。

何があったのだろうか……。

 

他のクラスと違いJ組は女子の率が高くまた、比較的おとなしいクラスである。

そんなにざわつくことがあるのだろうか…?

 

 

私は自分の席に座り、耳を傾けていた。

 

「何人か警察に事情聴取されたみたいだよ!」

「えっ、てことは犯罪者がいるってこと?」

「退学ものじゃん……。べーわ。」

 

 

何か事件があったということ?

ここ最近で心当たりのあるのが比企谷君の件。

姉さんの突然の電話

 

 

彼が犯罪に巻き込まれている可能性がある。

頭に嫌な考えが浮かぶ。

とにかく放課後になれば嫌でも彼が来ているか分かるはずだ。

動悸がやけに激しく感じた。

・・・

・・・・・

放課後になり部室に入り、いつもの席に座る。

彼と由比ヶ浜さんを待つ。

時刻を逐一確認するが、時計の針はゆっくりと時を刻む。

 

昔は一人が普通だった。

最近になって一人でいることが減りつつある。

由比ヶ浜さんがいて、比企谷君がいて、そんな場所を心地いいと感じている自分がいる。

 

 

そうか、私はこの場所で彼らといることが大切なものになっているのだ。

だから、彼に頼ってほしいのだ。

 

私は朝のあの感情に無理やりそう結論づけ、私は読書をすることにした。

彼が来たら、話を聞こう。

 

 

しばらくすると扉が開く音がする。

彼が入ってきた。

そんなことにほっとし顔がほころぶ。

よかった…。

 

「よう、雪ノ下。」

いつもの声だ。だけれど、何か違う…。

目が前ほど濁っていない。

それに何か、雰囲気が変わっているのだ。

変化に気付き返事に戸惑ってしまう。

 

 

「その……こんにちは、比企谷君。休日は姉さんの所にいたようだけど……。」

 

 

「まあ、いろいろあって取り乱してな…。心配をかけたなら、謝る。」

 

 

 

やっぱり私や由比ヶ浜さんに心配をかけさせないために……。

素直に、心配していた、何かあったなら言ってほしい、そう言えばよかった。

でも、私の中のちっぽけなプライドが邪魔をする。

 

「べ、別に、あなたの事なんて心配していないけれど…。でも、何かあったなら、その…話してくれて、構わないわ。」

 

 

 

 

それを聞いた彼は悲しそうに苦笑しながら

「安心してくれ、お前に言うほどでもない。どうにかするさ」

 

 

違うそうじゃなくて…。私はあなたの力に……。

さっきの言葉を取り消すために、あわてて言葉をつむぐ。

「あなたが、突然いなk

 

 

突然扉が勢いよく開いた。

そこには、由比ヶ浜さんの姿があった。

彼女も小町さんから連絡がきて心配していたようだ。

 

「ヒッキー………その……あのね…

 

 

彼女が何か言うより早く扉がノックされる。

平塚先生ならノックはしないはずだ、では誰が?

入ってこれるように入室を促す。

 

 

入ってきた人物を私は知っていた。

「校長の熊田成平という。比企谷君だね。少し校長室で話がある。一緒に来てくれないか。」

おだやかな声でそう答える。

 

 

「はい…。分かりました。」

彼はこわばった顔でそう答え、部室を出ていった。

 

 

 

彼が出て行ったあと、私と由比ヶ浜さんの二人がこの部屋に残された。

 

「ねぇ、ゆきのん。聞きたいことがあるんだけど…」

おもむろに由比ヶ浜さんが口を開く。

 

「何かしら?」

 

 

「ヒッキーの事心配してないって、本当?」

 

私はその質問に………

 

 

 

 

 

 

熊田成平(校長)side

 

 

 

 

放課後となり、私は彼に会うために、奉仕部があるという部屋に向かっている。

彼についてのことは、大方城廻君と平塚先生、陽乃君に聞いて予想はできた。

後は、本人に会ってからだな…。

目当ての教室まであと少しと言うところで、扉の前にたたずんでいる女子生徒がいた。

お団子状に髪を結び、明るい髪の毛をしている今風の若い子だ。

なかでの会話でも聞いているのだろうか…?

 

 

そう思っていると、突然彼女が中に入る。

何か中であったのかと思い私も慌てて後に続く。

扉の前でノックをする。

 

 

しばらくの沈黙の後、中から女性の声がして入室を促された。

 

怖がらせないようになるべく穏やかな声で

 

「校長の熊田成平という。比企谷君だね。少し校長室で話がある。一緒に来てくれないか。」

と男子生徒に言う。

 

 

話に聞いていた男子生徒と少し印象が違う。

目が腐っていると平塚先生が言っていたが、そんなことはなく顔も整っている。

雰囲気も想像しているようなとんがっているような感じもなく、優男と言う感じだ。

 

 

 

ただいきなり校長から呼び出しをくらったせいか、彼の表情は硬い。

「はい…。分かりました。」

それでも、拒否せずに素直についてくる。

 

 

彼がゆっくりと教室の扉を閉めた。

 

・・・

・・・・・

 

校長室に入り、城廻君にしたようにお茶を出し、ソファーに腰かけてもらう。

お茶を飲んでもなかなか彼の緊張は解けないようだ。

彼の眼には疑いの色が濃く見える。

あの時と同じだ。

昔の平塚君と。

 

 

 

「安心してくれ、今回の件を隠蔽するようなことはしないよ。」

そう言うと彼は驚いたように

「なんで、俺がそういうことを考えていると………?」

 

 

「長年の勘………と言うのは冗談さ。最近そういう出来事を隠蔽するようなことが増えているからね。いじめを受けていた側の君がそんなことを考えないわけはないからね。」

 

 

そこまで言うと彼は少し驚いたように

 

「校長も冗談とかいうんですね。」

 

 

「見た目がいかついからな、どこの組の人間かと疑われることもあった。

ならば、せめて態度だけでも柔らかくしようと思ってね。」

私はおどけたように言う。

 

 

それを聞き、彼はくすっと笑い張りつめていた顔が和らいだ。

 

 

さて、今なら彼も思ったことを素直に言ってくれるだろう。

人は安心したときに本性を見せやすい。

悪いが、きみの人柄の事を少し調べさせてもらうよ。

 

「今回の件だが、私は君が悪いとは思っていない。どちらかと言えば、平塚先生や城廻君に責任があると思っている。実際相模君の変化には平塚先生も気づいていたようだし、それは城廻君も同様だ。

ならば、その時に手を打っておかなかった、彼女たちに問d」

 

そこまで、言ったところで彼が

「そんなことありません。」

静にしかし、怒りを含んだ口調で話し始める。

 

「今回の責任は、時間が無かったからとは言え、相模をあの方法でしか解決させることが出来なかった自分にあります。

そもそも、めぐりさんや、平塚先生は他にも担当がいくつもあったし、今回のことで対応を取ることが出来たのは自分一人です。

彼女たちに責任は一切ありません。それに、あの二人は、自分のしたことを周りに流されずちゃんと判断してくれました。

それに、二人がいなかったら、俺はこれからも変わらずこういうことを続けていってたと思います。」

 

堰を切ったかのように彼は話し続ける。

彼は予想通りの人間のようだ。

 

「先生の言葉とめぐりさんの行動のおかげで、俺は今のままではだめだと感じて変わろうと思えるようになったんです。だから、二人を悪く言うのはやめていただけませんか。」

 

そう言い私をにらんでくる。

私の中で一つの決意が固まった。

 

 

ふっと、私は顔をほころばせた。

 

そんな私に疑問に思ったのか、

「何かおかしいことでもありましたか?」

と尋ねてくる。

 

 

「いや、すまない。君の事を少し試させてもらったよ。

彼女たちのことをそこまでかばうということは、君自身は問題のことをちゃんと把握しているということ。

また、人の評価を下げてまで自分が助かろうとはしないところを見ると、他人に対しての優しさと言うのもちゃんと持ち合わせているということ。

何より君は変わろうとしているといった。

いじめと言うのは、されている側にも原因がある場合がある。」

 

彼はきょとんとしながら私の話を聞いている。

 

「その原因を直そうとその子が努力しなければ結局はイタチごっこになってしまう。

いじめる相手が変わるだけでね。

私はそれが心配だった。変わろうという意思のないもの、原因を理解していないものそれを助けることは無理だからね。」

 

そこまで言って、私は一口お茶を飲み、舌の渇きをいやす。

 

「私は、君の人柄が知りたかった。

助けるべき人かどうか見極めたかった、直接自分の目でね。

そして、今君と話していて私は君を助けるべきだと私は考えた。

君に対して、直接悪意を働いてきた人物は、退学をさせよう。」

 

 

そこまで言うと、彼は驚いたように

「いいんですか…?その退学させるのって結構大変なんじゃ…。」

 

 

「もう根回しは終わっているよ。後は私の判断だけだ。」

 

彼の肩から力が抜ける。

「なんか、陽乃さんみたいです……。

掌で転がされている感じで。」

 

 

「陽乃君ほどではないさ。」

そう言い笑いながら、煙草を取り出し、火をつける。

 

すると彼が

「平塚先生と同じ銘柄なんですね。煙草。」

 

 

「ああ、平塚君とは昔いろいろあってね。」

 

そう言いながら、ゆっくりと煙を吐き出す。

それと会話の中で少し気になったのが、彼は城廻君のことを名前で呼んでいた。

両想いだといいんだが…。

 

 

「もう部室に戻って構わないよ。私からの話は以上だ。

ながながとすまなかった。もう気付いていると思うが、君の周りには君の事を大切に思ってくれている人がいる。そのことを忘れてはいけないよ。」

 

 

それを聞き彼は深く頭を下げ、

「ありがとうございました。」

一言だけ発して、校長室を出て行った。

 

 

若いというのはいい。

いくらでも変わっていける。

 

「出てきていいですよ、平塚先生。」

彼には見えない位置に隠れていた彼女に出てくるように促す。

彼女は彼が私に変な印象を持たれないか心配で隠れて話を聞かせてほしいと言っていた。

 

「あなたの教え子は変わろうとしていますよ。」

 

「私は、彼になにもしt……。」

そう言い泣きそうになっている。

彼のことを教員の中で一番気にしていたくせに、ここまで事態を悪化させてしまったことに責任を感じているようだ。

 

「起きてしまったことを嘆いても仕方ありません。これからのことを考えましょう。」

 

そう言って、一本煙草を彼女に手渡す。

涙を拭いた後、受け取った煙草に火をつける。

 

二本の紫煙が、ゆっくりと上っていく。

 

 

 




いかがでしたでしょうか?

次回は今回の雪乃の答えを由比ヶ浜視点でするつもりです。


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あと、後日談で使う予定の八めぐの子供達の絵が出来たので活動報告の方に後ほど載せておきます。その際、こんな性格だとか、趣味や好物はこんなのがいいとか意見を募集します。
作者がネタ切れとかそんなことはないんだからね!
なので、できればしていただくとありがたいです!


最後まで見てくださりありがとうございました(^o^)丿


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少女たちは変わっていく

やぁ(´・ω・`)
久々のFGOで頼光があたって早速種付けして70までしたメガネコです。
頼光さんかっこいいです。

本当はお気に入りが721を突破したときに投稿しようとしてたのに……失敗した…。
多くの方が見てくださっているようで、ありがたいです!

今回もめぐりんが出てきません…。
でも誰かは分からないけど二人が変化します。


ご指摘ご感想があればしていただければ幸いです。


結衣side

 

 

 

小町ちゃんからヒッキーが行方不明になったと聞いて、あたしは後悔した

ヒッキーは何を言われても平気だって言って、自分からは頼らないって分かってたくせに。

あたしは………

サブレのことだってもっと早く言えたはずなのに……。

 

 

だから、今度こそは変わるんだ。

遅いかもしれないけど、でも謝って、力になるって。

だって、あたしはヒッキーのこと…

 

 

そう考えながら奉仕部に足早に向かう。

そして奉仕部の扉の前に立つ。

中にはゆきのんやヒッキーが先にいるようで、何か話している。

 

 

「べ、別に、あなたの事なんて心配していないけれど…。でも、何かあったなら、その…話してくれて、構わないわ。」

 

嘘だ、そんなはずない。

ゆきのんは、小町ちゃんから連絡が来た後すぐにあたしに連絡を取ってきたじゃん。

あんなに慌ててたじゃん……。

 

 

 

あたし知ってるんだよ。

ゆきのんが、ヒッキーに何か特別な気持ち持ってるの……。

 

 

 

「安心してくれ、お前に言うほどでもない。どうにかするさ」

 

いけない、ヒッキーが誤解したままじゃ。

ゆきのんもあたしも心配してたって、力になりたいんだって。

今言わないと手遅れになる。

 

 

私は勢いよく扉を開け、入る。

二人とも驚いたように固まっている。

 

「ヒッキー………その……あのね…

言いたいことが、ここにきてうまく口に出ない。

しどろもどろになりながら、それでも必死に伝えようとした。

 

 

けれど、その時に校長先生が入ってきて、ヒッキーを連れて行ってしまった。

戻っては来るだろうけど、その前にゆきのんに言わなきゃ。

嫌われるかもしれないけど…なんで素直にならないの?って。

 

 

あたしは、小さく息を吐く。

よし「ねぇ、ゆきのん。聞きたいことがあるんだけど…」

 

 

「何かしら?」

すこし戸惑ったように答える。

 

 

「ヒッキーの事心配してないって、本当?」

そう言ったときゆきのんの顔がこわばる。

 

 

ゆっくりとゆきのんに向かって近づいていく。

「なんで、あんなこと言ったの?あんなに焦って電話してきたのに。」

 

 

「そ、それは………」

おびえたように、下を向いてしまう。

 

「ゆきのん、私たちそろそろ変わらないといけないと思うんだ。

ゆきのんの素直じゃないところも、あたしの周りの顔色ばかりうかがうところも。」

 

ゆきのんをぎゅっと抱きしめる。

「一緒に変わろうよ。ゆきのん。」

やさしく耳元で言う。

 

するとゆきのんは今までためていた思いを吐き出すように、

「わ、私は、由比ヶ浜さんと比企谷君のことが好きで、二人といる時間が楽しくて。

でも、二人が楽しそうに笑って話していると、胸の中に嫌な気持ちがわいてくるの。

姉さんの家に比企谷君がいたって聞いた時も、同じ気持ちがわいてきて。

もっと私のことを頼ってほしいって思って……それなのに素直になれなくて…。

この気持ちが何なのか分からなくて……。」

泣きながら言ってきた。

 

 

でもあたしは、すこし笑ってしまった。

ゆきのんにもわかんないことがあるっていう当たり前のことに。

だって、もうほとんどヒッキーのことが好きだって言っているようなものだから。

涙目できょとんとしているゆきのんの頭をなでながら言う。

 

 

「ゆきのんは、ヒッキーのことが好きなんだね。」

 

涙目で顔を赤らめながら

「そ、そうなのかしら。」

とこちらを見上げながらいってきた。

 

 

「ヒッキーの事誰かにとられたくないなって思ったんでしょ?

ヒッキーといて楽しいんでしょ?そのもやもやは嫉妬だと思うな。

あたしもヒッキーのこと好きだから、ゆきのんとヒッキーが話してると嫉妬しちゃうもん!」

 

 

納得がいかないようで、うーんと言う顔をしている。

 

「ゆきのんは難しく考えすぎなんだよ。もっと簡単に考えたら?」

 

 

そういうとゆきのんはくすりと笑いながら、

「由比ヶ浜さんがそれを言うとなんだかね…。」

 

 

むー、あたしが何も考えてないということが言いたいのだろうか…。

悔しいけど反論できない…。

 

あたしがほっぺたをふくらませてると

ゆきのんが優しくあたしのほっぺに手を当てながら

 

「でも、ありがとう。由比ヶ浜さんのおかげで自分の思いに気付いたわ。」

そういって微笑んだ。

 

 

うれしくなったけど、それでさっきの仕打ちを忘れるあたしではない。

 

「ゆきのん、由比ヶ浜さんじゃなくて、結衣でしょ?」

 

 

するとゆきのんはおどおどしながら

「ゆ、結衣さん……」

 

うーん、まあいっか!

 

するとゆきのんは頬を赤くしながら

「私のこともゆきのんじゃなくて、雪乃とよんでくれないかしら?

その、三浦さんにはあだ名じゃなくて名前で読んでいるから……」

 

ゆきのんが優美子に嫉妬してるなんて、昔じゃ考えられない。

か、かわいい…。

普段もそれくらいだったら今頃ヒッキーも堕ちているのに。

私はたまらなくなり

ゆきのんに思いっきり抱き着く。

「雪乃、これからよろしくね!あたし負けないからね!」

 

 

ゆっくりと雪乃が腕をまわしてきて、

「結衣だからと言って、ひかないわよ?でも、こちらこそよろしく。」

 

 

やっと本当の意味で雪乃と仲良くなれた気がする。

帰ってきたら、ヒッキーにちゃんと言おう。

あたし一人だとどうにもならないかもしれないけれど、雪乃もいればどうにかなるはず!

二人いれば…?三人いればもんじゃの知恵だもんね!!

 

 

コンコンと扉がノックされる。

ヒッキーかと思って「いいよ~」と言う。

 

「ああ、さっきは何をいいk………」

 

 

 

あらためて自分たちの様子を見てみる。

静かな教室に女の子が二人。

しかも、抱き合っている。

片方は涙目。

 

 

 

 

あ、あれ、変な誤解されちゃう??

 

「そ、その悪かったな…。邪魔したみたいで……か、帰るわ」

そう言ってヒッキーがそっと扉を閉めようとする。

 

 

「ちょっと待って!そういうのじゃないから!!!」

あたしの叫び声が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡side

 

 

校長が予想外にいい人だったということ。

あと陽乃さんと仲いいとかマジか…。

取り敢えず由比ヶ浜も何か言おうとしていたみたいだし、一度奉仕部に行くか。

 

 

 

そんな事を考えながら俺は、奉仕部の扉の前に立つ。

中から何やら物音は聞こえてくるので誰かいるのだろう。

コンコンとノックをする。

 

中から返事が返ってきたので、扉を開け入る。

 

 

そう言って俺は固まってしまった。

なんだろう…その…すごい場面に出会ってしまった。

二人ともが互いの体に手をまわし、抱きしめながら見つめ合っている。

雪ノ下の目はうるんでいて頬はうっすらと朱にそまり、それを由比ヶ浜が優しい目で見ている。

二人の顔は、かなり近い距離にある。

 

 

これは、まずい場面にあったかもしれない。

俺だって百合と言うものの存在は知っているし、実際由比ヶ浜の雪ノ下への過剰なスキンシップは今までさんざん見てきた。

でも…そのなんというか…二人とも美少女だし、表情がその…艶めかしい。

 

 

 

とりあえず今はこの場を離れないと…気まずいし。

二人も邪魔されて怒っているかもしれないからな。

 

「そ、その悪かったな…。邪魔したみたいで……か、帰るわ」

クールに去るぜ…。

 

「ちょっと待って!そういうのじゃないから!!!」

そこに由比ヶ浜の悲鳴が上がった。

 

 

 

 

その後俺は、二人に今見たことは誤解だということと。

雪ノ下からは、陽乃さんには言わないでくれといわれた。

まあ陽乃さんがしったらすごくいじりそうだ。

というか雪ノ下が妙にしおらしい。

でも二人が昔以上に仲良くなったと知ったら、きっと喜ぶと思うんだけどな…。

 

 

「あのね、ヒッキー私謝りたいことがあるの。」

そう由比ヶ浜が口を開く。

 

 

なにかこいつは俺に悪いことをしたのだろうか?

「どうかしたのか?由比ヶ浜。」

 

 

「その…ヒッキーが大変なことになっているのに、何もしなかったから……。

だから、謝りたくて。ごめんね…ヒッキー。」

そう言ってこちらに頭を下げてくる。

 

 

「ま、待ってくれ!別に由比ヶ浜が悪いわけではないk「それでも、謝りたいの。」

 

 

続いて、雪ノ下も

「私もさっき言ったことを謝らせてほしいわ。

あなたのことを心配していたのだけれど………。その…素直になれなくて…。

あんなことを言ってしまって、ごめんなさい。」

頭を下げてくる。

 

 

 

別にこの二人が悪いわけではないと思うんだが…。

そんな事を言ったってきっと二人は頭を上げてくれないだろう。

「頼むから頭を上げてくれ…。俺だって、二人を頼ろうとしなかったし。

だから、そのお互い様ってことにしないか?」

 

 

 

「許してくれるの…?」

由比ヶ浜がそう言ってくる。

 

 

「許すも何もないが、許すよ。

俺のことも許してくれるか?」

 

 

すると雪ノ下が

「別にあなたは悪くないわ。

謝る必要なんてないじゃない。」

と言う。

 

 

「そんなこと言ったら、お前らだって…

「いや、それでも、あたしが……

「いや、一番悪いのは私なのだし…

 

 

結局三人が三人とも謝り始め、堂々巡りになってしまった。

そんな状況に俺はおかしく思い、クスッと笑ってしまう。

すると由比ヶ浜や雪ノ下もつられて笑う。

 

 

そして、ひとしきり笑った後、雪ノ下が

 

「私にあなたの問題を解決するのを手伝わせてほしいの。

あなたや結衣は私にとって大切な人だから。ダメかしら…?」

そう言い上目遣いで見てくる。

 

由比ヶ浜も

「あたしも、手伝いたいの!

あたしは二人ともが好きだから……!」

 

 

ここまで、二人が言ってくれたことにうれしく思う。

俺は本当に恵まれているな…。

 

「そのありがとな…。頼ってもいいか?

それとこれからも、よろしく頼む。」

 

そう言って、手を出す。

それを由比ヶ浜がしっかりと握り、雪ノ下はそれをやさしく包む。

 

 

 

日がゆっくりと傾いていく。

 




いかがでしたでしょうか?




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新婚の有名なごはんにする?の奴に答える八幡です。

奉仕部が強くなりました。
今回は加筆修正をするかもしれないです…。加えたいシーンを入れるか悩んでいるので…。

最後まで見てくださりありがとうございました(^o^)丿


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忘れられない一日

やぁ(´・ω・`)
UAがそろそろ文字数に追いつきそうで焦っているメガネコです。
UA数なんかに絶対負けないんだからね!!


二話ぶりのめぐりん登場です。

後次女の絵が出来ました。

多くの方に見ていただき感謝です。

ご意見ご感想があれば幸いです。


めぐりside

 

 

 

私は今日ずっと八幡君のことを考えていた。 

クラスで何か言われてないかな?

校長の前で何か失敗したりしてないかな?

私のお弁当ちゃんと食べてくれたかな?

おいしかったかな?

 

 

そんなことを考えながら、わたしは奉仕部の前にいる。

奉仕部に来たのは、今後のことを雪ノ下さんや由比ヶ浜さんに話すためだ。

八幡君も校長との話が終わるころを見計らってここに来た。

 

すると中から男性と女性の声が聞こえてくる。

八幡君達がいることが分かって中に入ろうとすると

 

 

「わかったよ、結衣、雪乃」

 

 

八幡君の声が聞こえた。

 

今なんと言っていたのだろうか……?

名前で呼んでいたよね?

そ、そっか、そうだよね!

陽さんが連絡してくれてるよね…。

奉仕部のつながりが強くなれば今回の件に関して有利に働くことしかない。

八幡君が助かる可能性が上がるならばよいことのはずだ。

それを喜ぶのが当然のはずなのに……なんだろうこの感じは。

 

粘着質のような嫌な感情を持ってしまう。

 

 

「ならうちに来ない?せっかくだし三人で泊まってみない?」

雪ノ下さんがそんなことを言っている。

きっと三人で話でもあるのだろう……。

 

聞いていられなくなり、私は奉仕部の前を後にする。

中がよさそうな三人の声を聴き『あの中に自分は入れない』直感的にそう感じ取ってしまったから。

なるべく早く、声を聞かないように。

 

 

私は誰もいない生徒会室にいる。

部屋の電気もつけず、ほの暗い中私は椅子に座り落ち着こうとした。

 

 

奉仕部のみんなは私が八幡君とかかわるより多くの時間を一緒にしてきている。

それが今回を気に仲良くなった。

それだけのことのはずだ。

 

 

「なんで、こんな嫌な奴になっちゃったんだろう……。」

 

 

祝福しなければならないのに、素直に喜べない…。

なんで後から気づいたくせに……そう思っている自分に嫌気がさす。

 

 

「はぁ…」

思わずため息が漏れる。

 

でも、あの雪ノ下さんと由比ヶ浜さんが八幡君のことを助けようとするのなら、私はもうあの三人にとって邪魔なだけなのかもしれない。

 

 

嫌な考えを忘れるために首をプルプルとふる。

でも際限なくそんな考えがわいてくる。

 

 

 

私はwolk manをつけ、イヤホンを耳にさし机に突っ伏した。

曲はlink○n parkの not alone だ。

基本的にこの人たちは激しい歌を歌うが、この曲はハイチで震災があったときに支援ソングとして作られた曲だ。

この曲で得た利益はすべてハイチに寄付されている。

 

私がつらいことにあったときによく聞く曲だ。

どんなにつらいことがあっても、あなたは一人じゃない。

そういう意味の歌だ。

 

 

私はこの曲を聞きながら、まぶたを閉じる。

 

・・・

・・・・・

 

気付くと、もうとっくに下校時間を過ぎている。

夜の7時だ。

 

「しまった…。寝ちゃってた…。」

 

八幡君と一緒に帰ろうと約束してたのに…。

今から行っても間に合わないだろう。

待ち合わせの時間から一時間以上遅れている。

 

 

「いるはずないよね…。」

そうぽしょりと言葉がもれる。

そもそも奉仕部の二人とお泊りするみたいだし…。

 

 

暗い気持ちでゆっくりと帰宅のために、生徒会室にカギを閉め職員室によってカギを返す。

 

トボトボと校門をでて帰っていると後ろから肩をつつかれる。

私はこんな時に誰だと思い、少しいらだちながら後ろを向く。

 

 

「誰なんでs」

むにゅっと頬っぺたが押される。

 

 

「ひっかかりましたね、めぐりさん」

 

八幡君だった。

さっきまでの暗い気持ちが跡形もなく消えてしまう。

 

 

顔をほころばせながら

「八幡君だ!てっきりもう帰ってるものかと思ってたよ!」

と言うと

 

 

「俺は約束を破るような人じゃないですよ。それにめぐりさんと帰りたかったですし。」

穏やかに微笑みながらいってくる。

 

一時間も待ってくれていた。

しかも、わたしと一緒に帰りたいと言ってくれた…。

あの二人より自分を選んでくれたようで思わずうれしくなり、彼の腕に抱き着く。

 

 

「ちょっ、めぐりさん!?」

 

彼が驚いたように叫ぶが、私は聞く耳を持たない。

君のせいであんなに不安になったんだから、これぐらい許されるはずだ。

それに驚いてはいるが、振りほどこうとはしてこないし。

もう離したくない、そう思いギューッとくっつく。

わたしの家はそんなに遠くないし、送ってくれるというので喜んでその申し出を受ける。

 

 

 

家の前まで送ってもらった。

駐車場に車がないってことは、まだ両親たちは帰ってきていない。

それならもう少し一緒にいたい。

 

 

「お茶だすから、上がっていかない?」

ためらいがちに彼に聞いてみる。

 

 

「………少しなら構いませんよ。」

ポリポリと頭をかきながら、彼が言ってくれる。

 

 

二人で腕をくんだまま家に入る。

 

私のこの選択が波乱を生むことをこの時の私は気づいていなかった。

 

 

 

 

 

八幡side

 

 

俺たちはしばらく手を取り合っていた。

 

雪ノ下がもじもじと

「その…比企谷君名前で呼んでもいいかしら…?結衣もなまえでよんでいるし。」

 

すると由比ヶ浜も

「あたしも名前で呼んでいいかな?あたしのことも名前で呼んでよ!」

 

まあ二人とも仲良くなったし、別にそのぐらいかまわないだろう。

「わかったよ、結衣、雪乃」

 

結衣が元気よく

「あらためてよろしくだね!八幡」

 

 

雪乃も少し照れながら

「は、八幡…。」

と言っている。

 

 

そうしていると下校のチャイムが鳴る。

「あ、もうこんな時間か……まだ三人で一緒にいたかったな…。」

結衣が残念そうにぽしょりとつぶやく。

 

雪乃が「ならうちに来ない?せっかくだし三人で泊まってみない?」

と突拍子もないことを言う。

 

「いやいや、一人男混ざってるんだが…?なにかあったらどうする?」

 

すると雪乃は微笑み

「八幡はそんなことしないわ、だって優しいから。」

と言ってくる。

 

 

そう言われてもなぁ…。

というか、今日はめぐりさんと帰る約束をしているし、家に帰って小町にも会わなくてはいけない。

 

 

俺はそのことを二人に伝えた。

 

 

雪乃が驚いたように

「城廻先輩の所にいたのね……。でも、なんで姉さんの所にいるなんて嘘を…?」

 

 

それに結衣が

「たぶん心配かけないようにじゃないかな?あんまり城廻先輩と私たちかかわりがなかったからさ。」

 

 

雪乃はなにか少し考えているようだ。

陽乃さんと何かあったのだろうか?

 

しばらくして口を開き

「そうね、では今日はやめときましょう。

いつでもできるのだし、それに八幡がお世話になったのだからその人との約束を断ってまでするものではないでしょう。」

 

 

すると結衣が「じゃあ、今日は二人でお泊りだね!少し話したいことが出来たし…。」

と楽しそうに提案する。

 

うん?話したいこと?

まあ、いいか。

 

「俺がカギを返しに行って来るから、お前ら先帰ってていいぞ?」

 

 

そういうと

雪乃が「お言葉に甘えさせてもらうわね。また明日、八幡」

結衣も「じゃあね、八幡!」

といってきたので

 

「ああ、また明日な、雪乃、結衣」

そう言って俺は職員室に向かう。

 

 

 

 

カギを返すために職員室に行くと、平塚先生に声をかけられる。

 

「その…比企谷。良かったら今からラーメン食いに行かないか?その話したいこともあるしな。」

 

いつもの平塚先生のいきの良さが感じられなかった。

おそらく合コンが不作だったのだろう…誰かもらってあげて!!

 

「すいません、今日は約束があって、他の日なら構いませんよ。」

 

 

すると、先生がうなだれて「そ、そうか…。すまなかった。また今度誘うとするよ。」

 

俺何かしてしまったのだろうか?

 

 

 

 

校門の前でめぐりさんを待つことはや一時間。

めぐりさんは現れない。

何かあったんだろうか?

そう思い携帯に手を伸ばしたとき。

めぐりさんがうつむきながら校門から出ていくのが見えた。

 

「めぐりさん!」

と声をかけてみるが返事がない。動いているのだから屍ではないのだが。

 

 

そうだ、以前めぐりさんにやられたことをやり返そう。

 

 

そーっと後ろに近づき肩をつつく。

そしてつついた方の肩に指を置く。

 

 

ゆっくりとめぐりさんが話しながら振り向いてくる。

むにゅっと頬に指がしずむ。

柔らかいな…癖になりそう。

 

「八幡君だ!てっきりもう帰ってるものかと思ってたよ!」

と言ってきたので

 

「俺は約束を破るような人じゃないですよ。それにめぐりさんと帰りたかったですし。」

 

と言ってしまう。

なんだか最近思ったことをすぐ口に出してしまうようだ。

以前なら恥ずかしくて言えないどころか、言った後気持ち悪がられ絶交されるまである。

 

 

そんなことを考えていると、二つの肉まんを腕に感じる。

まだ秋なので服装は夏と同じで半そでとうすい。

その腕に確かに柔らかさを感じる。

めぐりさんが腕に抱き着いてきたからだ。

うん、ごちそうさまです!

 

 

 

そんなことをしながら城廻家につき、少しお茶をごちそうになっていると。

玄関の方で何やらガチャガチャと言う音がなっている。

 

めぐりさんの顔が固まり、あわあわしている。

しばらくすると、「「ただいま~」」という男女の声が聞こえてくる。

あら親御さんが帰ってきたのか…あれこれって大丈夫なのだろうか…?

 

 

リビングの扉があく。

 

めぐりさんのお母さんだろうか、目元がきりっとしていて秘書でもして良そうな真面目そうな美人な女性がいた。

お父さんの方は、ひょうひょうとした雰囲気のある渋い感じの男性だ。

二人ともの中間がめぐりさんと言うわけか…

 

 

めぐりさんのお母さんが「あらあら、それが噂の男の子ねぇ」とめぐりさんをからかうように言っている。

めぐりさんは顔を赤くしながら何も言えずに手を前でワタワタ振っている。

 

「はじめまして、めぐりさんにお世話になっています、比企谷というものです。」

と言い、頭を下げる。

 

すると「こちらこそ、めぐりがお世話になってます。母の恵美と言います。こっちは夫の」

 

にこやかに男性が口を開く

「僕は、春樹(はるき)というんだよろしくねぇ~」

 

 

性格はお父さんになのかな?

 

 

すると

「にしても、めぐりが男の子を連れてくるなんてねぇ~。

初めてじゃなかったかなぁ、恵美?」

 

ニヤニヤとお母さんが

「そうねぇ、ちょうど君と話してみたかったんだ。少しお話しない?」

 

 

さすがに年上の方にそう頼まれると断れず

「少しぐらいなら構いませんよ。」

 

 

 

このせいで俺は根ほり葉ほり二人に聞かれた。

俺が答えるたびにめぐりさんの顔色が変わり、それを二人とも楽しそうに眺めている。

そして時間がきて、めぐり家を後にするときにまた次来る約束を取り付けられた。

どうやら二人ともに気に入られたらしい。

 

 

 

玄関前でめぐりさんと二人になる。

 

めぐりさんが

「ごめんね、あの二人のせいで時間遅くなって…。」

 

とすまなそうに口を開く。

 

 

俺としてはいじられるめぐりさんと言う珍しいものも見れたので良かったのだが。

「いえいえ、俺も楽しかったですし。また来たいです。」

 

「そっか、それならよかった…。あ、あれなんだろ?」

そう言い俺の斜め後ろをみる。

 

つられて俺も見てみると

頬に柔らかい感触を感じる。

それがめぐりさんの唇だとわかるのに、そんなに時間はかからなかった。

おどろいたように俺がめぐりさんの方を向くと

 

 

「それじゃあ、また明日ね、八幡君!」

めぐりさんがとびきりの笑顔で答える。

 

 

俺もそれに

「はい、また明日です、めぐりさん。」

と言いめぐり家をあとにする。

 

 

 

今日のことは忘れそうにないなと心の中でつぶやく。

 

 

この後頬にキスをするところをちゃっかり両親に見られていためぐりが、さんざんいじられたのはまた別のお話し。

 




いかがでしたでしょうか?

今回はめぐりすねるという一文が一つの話になりました…。
いや、めぐりさんだってすねるし、嫉妬するよね!
と言う考えのもと膨らみ膨らみ出来ちゃっいました。


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次回あたり相模だしたいと思います。

最後まで見てくださりありがとうございました(^o^)丿


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相模南は後悔する

やあ(´・ω・`)
久々に自宅に帰ったら、水底が似合だと言われたメガネコです。
どこのランク一位なんですかね…?


今回は嫌なシーン(暴力)があるので見る人は少し注意してください。
あとめぐりんが出てきません。
最近めぐりんの登場しなささにびっくりしてます。



ご指摘ご感想があればしていただけると幸いです。


八幡side

 

 

めぐり家から自宅に帰ってきた。

 

カギを開けると同時に小町が俺の所にダイブしてきた。

それからは大変だった。

小町をなだめ続けて、何があったかをしっかりと報告した。

陽乃さんの家にいっていなく、代わりにめぐりさんの家に行っていたということも教えた。

そして、結衣と雪乃とより仲良くなったことを伝えた。

めぐりさんの存在を伝えると、新しいお姉ちゃん候補!?と驚き、結衣と雪乃のことは、

修羅場…といい喜びながらも微妙な顔をしていた。

 

なんでなのん?修羅場になりようがないと思うんだが…。

仲いい三人組じゃないのん?

 

 

めぐりさんについて根ほり葉ほり聞かれた。

まあさすがに裸を見ただの、キスされただの、告白されただのは言えなかったが…。

それからめぐりさんと寝る前に電話をしてその日は眠りについた。

 

 

うれしいことに、週明けから数日たっても俺に対する嫌がらせをするような奴は現れなかった。

めぐりん印のお弁当を食べながら俺はそう思った。

ちなみに最近朝はめぐりさんと一緒に登校している。

お弁当も毎日作ってきてもらっているので、少し申し訳ない気持ちになる。

 

このまま穏やかに過ぎていけばいいのに…。

 

 

ただ、そうはいかないようだ。

数日の間、相模にはいろいろあったようだ。

まずあいつの周りにいた取り巻きがいなくなっている。

正確には、あいつをのけ者にしているということだ。

 

 

クラスの中でも他のクラスの文実から聞いたのか、働いていなかったことが徐々に広まっていく。

そして、俺についての悪評を広めたことが噂になっている。

 

 

正直相模についてどう思っているかと言われると微妙だ。

確かに俺に対し悪評をばらまいたのは事実だ。

それで被害をこうむるのは自業自得としか言えない。

 

 

だが別段恨みがあるのかと言えばそうでもない…。

複雑だが、あの手段を取ったとしての結果なんてのは一応予測はしていた。

まあ予測を超えて悪くなったが…。

 

 

それに相模は雪乃のように強くはない。

どちらかと言えば弱い人間だ。

見た目ではなく、心がだ。

だから、あの手段を取った。

弱いあいつだからこそ、通じやすい手段を。

 

 

雪乃クラスの精神の強さがあるやつがたくさんいればそれはそれで怖いのだが…。

いや彼女は精神が強いというよりは、意志がつよいだろうか?

だからなんだかんだ言って俺は相模のことが嫌いと言うわけではなかった。

一番人間らしい奴だと思っている。

 

 

 

ただ俺がむかつくのは、周りの人間は別にストレスを発散する場所は誰でもいいかのように考えていることだ。

俺が悪く言われているときは俺を。

俺がいじめられたという事実を知りながら無視してきたくせに、被害者の立場に変わった途端に「かわいそう」「つらかったよね」「相模マジゆるせねえ」だの。

直接俺には言ってこず、遠巻きにいってくる。

まるで自分はいい人みたいに。

驚きの手のひら返しだ。

お前らの関節はガン○ラかなんかか?

思わずそう言いたくなる。

 

そして今度は相模が悪く言われているから相模を。

 

 

俺はそんな奴らの方に怒りを持っている。

自分が悪く言われてそいつに怒りを持つのは分かる。

だが自分に全く関係のない奴らが、他人に気まぐれに怒りをぶつける。

そんな奴らが俺は大嫌いだ。

 

 

そんなことを考えていると、川崎が俺の肩をたたいてきた。

 

「あんた怖い顔してるよ。」

 

「あ、あぁ、悪い。ちょっと考え事してた。」

 

「相模の事?」

 

「いや、あいつと言うよりは、周りがな…。」

 

「ん、分かった。でも、あんたが動くんじゃないよ?今あんたが相模を守るような事すれば、よりめんどくさいことになるからさ。」

 

「分かってるが、でも…。」

 

「あんたは優しいよね、このお人よし…。」

そう良いデコピンをしてくる。

 

痛いようで、痛くない…

というか、こいつめっちゃいい匂いするな…。

 

「まあ、あたしの方で何とかしてみるさ。」

 

「いいのか?川崎」

なんとなく申し訳なく感じている俺がいる。

「言ったでしょ、あんたには借りがあるって。それにあんたは…。まあいいや。」

 

「おい、そりゃないぜサキサキ…!気になるんだが。」

 

「だから、サキサキいうな。あたしは沙希っていうの。」

 

「いや、知ってるけど…?」

 

「名前で呼んでよ。彩加だって名前で呼んでるんだからさ…。」

そう言えば、川崎と戸塚は仲がよかったよな。

時々話しているのも見るし…。

もしや、こいつ戸塚を…!?

お父さんは許しませんからね!!!

 

「聞いてんの?おーい」

顔の前で手をひらひら振っている。

 

「聞いてるよ、それじゃあ…沙希よろしく頼む。」

 

「任されたよ、八幡。じゃあ」

そう言って俺の肩を軽くたたき、自分の席へ戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、めぐりさんに奉仕部に行くように言われた。

 

体育祭が近づくにつれ少しづつ事態は動き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相模side

 

 

 

 

うちは、今クラスで微妙な雰囲気に立たされている。

休日が開けてしばらくたった後、うちに対するみんなの視線が怖くなった。

 

「あいつのせいで、山岡は退学になったんだって…」

「え、マジ?あの使えない文実の委員長そんなクズだったのかよ!?」

「チョーうけるw!」

「ほら今も一人で寝てるしw」

「みじめすぎワロス」

 

 

 

朝からずっとこの調子…。

自分の席で寝たふりをしながら小さくため息をつく。

うちだって、自分が悪いことをしたのは分かってる。

でも、あいつのなんでも分かっているみたいな態度にむかついて、いらだって…そしてあいつのうわさを流した。

 

文実の時にさんざんひどいことを言われたと。

泣いていたのはあいつのせいだと。

 

 

だけど、噂は広がりすぎうちの収集がつかないところまで行ってしまった。

あいつが一切仕事をしてないだの。

他にもひどいことを裏ではやっていただの。

煙草をすっているのを見た

もはや言っていない事すらも、どんどん広がっていった。

 

 

うちがそんなことはないと言って止めれればよかった。

早い段階にそこまでしていない、うちも悪かった。

たぶんそういっていればよかったんだろう。

でも、うちは言えなかった。

自分が悪いということに薄々気付きながら、何もせずただ見ていた。

うちには、もう止める力はなかった。

 

いや、止めるのが怖かっただけだ……。

 

 

だって悲劇のヒロインはみんなにちやほやされるから。

それは被害者だからもてはやされるだけであって、仮に被害者でなくなった時どうなるかなんて想像するのも怖かった。

違う、比企谷に向けられている悪意が自分に向けられるとなると本当に怖かった。

同じようにされたら……そう思うと

 

 

そんな自分勝手な理由で、ただうち一人だけを守るためにしたことがここまで大きくさせてしまった。

比企谷にも罪悪感はある。

でも今頃謝りに行ったって何様なんだ?そう言われるのがおちだ。

うちのせいで………。

 

 

そして今うちは独りぼっちになってしまった。

あんなに仲良さそうにしていたクラスの友人も周りの雰囲気をみて近寄りすらもしなくなった。

 

 

でも結局は自業自得だ。

 

 

うちは教室をでて、そのまま屋上に向かう。

今日は授業に出たくない。

と言うよりあの空気にいるのに耐えられなかった。

 

 

あいつはこれよりひどい中長い間耐えてきたんだ………。

そう思うとうちは、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

 

 

屋上にでて、うちは弱くて情けない自分を恨んだ。

ただひたすらに泣き続けた。

 

 

 

 

 

屋上でどのくらいの時間がたっただろうか、かなりの時間がたっているように思えた。

下に降りようとする。

 

 

すると上級生だろうか、髪色が明るく見るからに不良だ。

進学校でも不良はいるにはいる。

不良の数は少ないけれど。

 

 

「あ、あんた、今はぶられている奴じゃん」

目の前の金髪がいってくる。

獲物を見つけた肉食動物のように楽しそうに嗤いながら。

 

 

その通りだけど…

そう言いたい気持ちを押し込める。

相手の数は5人。

下手に言い返せば確実に負ける…。

足が震えてくる。

うちは元々喧嘩なんかしたことない。

運動だって平均並だ。

 

無言でそのまま帰ろうとする。

 

 

「っつ」

肩を思いっ切りつかまれる。

 

「何無視してんだよ」

今度は茶髪の長髪が、どすの利いた声で脅してくる。

 

「こいつ調子に乗ってるんじゃない?シメない?」

 

「いいねぇ、ほらこっちきな」

そう言い髪を思いっ切り引っ張られる。

 

「痛いっ…」

思わず目から涙がこぼれる。

でも自業自得だ。

今回は誰も助けてくれない。

比企谷も葉山君も、だってうちの味方なんてもういないんだから………。

 

 

髪を引っ張られ屋上の真ん中あたりまで連れていかれる。

 

「あんた前から気にくわなかったんだよね。」

 

「あたしも~」

 

「じゃあ、どこからする?」

 

 

「てか、こいつの服脱がせて写メ取るとかどう?」

 

「いいねぇ、それ面白そう。」

 

どうやらもう終わりみたいだ。

うちは抵抗する力が抜けていくのを感じた。

全部自業自得なんだから………

 

 

ペタンと座り込む。

 

「あら、抵抗しないんだ…つまんないの~」

 

「じゃあ、ささっと脱がしてさらそ?」

 

「「「賛成!」」」

 

一人がうちの制服に手をかけた。

 

その時

 

「何してんのあんたら?」

女性の声だがどこかで聞いたことのある声だ。

 

そちらの方を向くと、青みがかった髪をひとくくりにし長身の女の子がいた。

 

「川崎さん……?」

なんでこんなところにこの人がいるんだろう。

 

 

「よってたかってとは、情けないね。」

うちの周りの人たちに挑発をしている。

 

 

「あぁ?なんだお前は?」

 

「邪魔すんなら、お前からさらすぞ?」

金髪の取り巻きがドスを効かせながら喚き散らす。

 

「子犬じゃないんだから、そんな喚かなくても…。

うるさいし、やれるもんならやってみれば?」

あきれたように返事を返す。

 

 

 

周りの連中の怒りが完全に川崎さんに向く。

まずい。

川崎さんはなんにも関係ない。

いくら身長で勝っているとは言っても、数の差が圧倒的にある。

関係ない彼女を巻き込むわけには、いかない。

うちがひどいことになるのはいいけど、関係ない人まで巻き込みたくはない。

 

 

 

一人の取り巻きが、川崎さんの方に行こうとする。

うちは思いっきり足を引っ張る。

 

引っ張られた相手は勢いよくこける。

 

「いったぁ」

 

「ちっ、なめやがって。」

金髪がうちを立ち上がらせ、思いっきり顔をビンタする。

バチンという鈍い音がする。

鼻の奥があつくなる。きっと血が出ているのだろう。

 

 

「うちはいいけど、関係ない子まで巻き込むな!」

泣きながらそう叫び、思いっきりにらむ。

 

「くそが!調子にのんなっていってんだよ!」

そう言って手を振りかぶる。

今度は握りこぶしだ…。

さっきのよりももっと痛いんだろうな……。

うちは目をつむって歯を食いしばる。

 

 

 

しかし、しばらくたってもいまだ衝撃が来ない。

 

恐る恐る目を開けると、目の前に川崎さんがいた。

殴ってくる腕を途中でうけとめていた。

 

そして、こちらに振り向きながら「あんた意外と根性あるじゃん。」

そう言って微笑んでくる。

 

 

そして、相手の腕をひねりあげる。

 

「くっ、離せ、このクソガキ!」

暴れているが川崎さんは平然としながら、そのまま相手を取り巻きの方に押し出す。

押された相手はつんのめりながら、支えられる。

 

「てm

 

 

「あぁ?」

何かを言う前に川崎さんが、周りを威圧する。

さっきの連中の比じゃないくらいに。

 

「うせろ、くそが…」

ドスの利いた声で周りの連中に言う。

固まっている相手に

 

「やろうってなら、相手になるけどね。次は容赦しないよ…。」

 

 

そう言ってにらみつける。

 

「ちっ、覚えてろよ。ゴリラ女。」

 

 

 

捨て台詞を吐きながら、屋上から去っていった。

 

あいつらが去っていったので気が抜けたのか、へなへなと座り込む。

 

 

川崎さんが

「ん」

と言ってポケットティッシュを渡してくる。

「鼻血出てるから、これで止めな」

 

 

「あ、ありがと……。」

 

「じゃあ、あたしは帰るから。」

そう言ってさっさっと帰ろうとする。

 

 

 

早くお礼を伝えないといけないのに

「あ、あのさっきはなんで助けてくれたの………?」

思わず気になったことを聞いてしまう。

 

 

川崎さんはうちがどんなことをしてきたか知っているはずだ……それなのになぜ?

 

「別に、比企谷があんたの事気にしてるみたいだったから、助けただけ。」

 

 

その答えにうちは驚いた。

「ひ、比企谷が!?」

完全に恨まれていると思ったから…。

 

「あぁ、そんな気がしたってだけ。別にあんたを助けたいと思ったわけじゃないし。」

 

 

「川崎さんはうちが嫌いじゃないの?」

 

 

「まあ、比企谷のことで多少は嫌な奴と思ってたけどさ。

さっきの態度見てたら、あんたがそんなに悪い奴に見えないし。

昔のあんたは嫌いだったけど、今のあんたはあたしは好きだね。」

 

 

 

そう言われて、なぜだか温かい気持ちになってうちは泣いてしまった。

表向きの言葉じゃなくて、思ったことを素直に言ってくれてそれがすっと心にしみていく。

 

 

うちは座り込みながら、子供のようになきじゃくった。

それを川崎さんが抱きしめてくれる。

 

 

日がすでに傾き始めていた。

 

 




いかがでしたでしょうか?

今回相模視点2,3回書き直してます。
というか投稿遅れたのは、他の作品を考えてたからなんですが…。
八幡が殺し屋になっていたり、奉仕部でワンナイト人狼してたり、原始人のTRPGしてたり、
ガイルに出てくるキャラの性別を総入れ替えしたりと、まあ投稿はしないんでしょうがw


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次回はめぐりんが出るといいなぁ…。

最後まで見てくださりありがとうございました(^o^)丿


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少女たちは話し合う(1)

やあ(´・ω・`)
好きな俳優は竹野○豊、好きな女優は真木よ○子のメガネコです。
最近前書きに書くことがなくなってきた…。

あと感想が100件超えました!
始めた当初は、感想なんて一件来るかこないかだろうなぁと思っていたのが、その百倍…。
本当に見てくださっている方々には感謝しています!
感想があると作品を作るペースも早くなりますしw本当に励みになってます(*ノωノ)


今回は少し短いです。
でもめぐりさんは出てきます!


ご指摘ご感想があればしていただけると幸いです。


めぐりside

 

 

 

 

休み明けてからの数日は八幡君にとっては平和だったようだ。

私としては毎日登下校一緒に出来ているし、お弁当も好き嫌いなく食べてくれているし、

何も言うことはない。

と言うか、逆にうまくいきすぎて不安になるくらいだ。

 

 

しかも今日は生徒会室を使って八幡君と二人でのお弁当だ。

ルンルン気分で生徒会室に向かっていく。

 

入り口に一人の男の子がいた。

私はその姿をみて思わずうれしくなって手を振りながら近寄る。

 

「八幡君、待った?」

 

「いえ、さっき来たところですよ。」

 

なんかこの会話は付き合っている恋人同士の会話みたいだ。

そう思ってしまい、急に恥ずかしさがわいてくる。

 

固まってしまった私を心配してくれたのか

「顔が赤いですよ?熱でもあるんですか?」

そう言いながら彼が優しく私のおでこに触れる。

 

 

「そんなに熱くないですけど……今日は早く寝てくださいね?」

 

「う、うん…。」

こういうことを平然とやってくるんだから、この人は…。

自分以外の人に、特に女の子にはこんなことやってほしくはないなぁ……。

優しいのはいいことだけどさ…。

 

 

 

そんなことを考えながら生徒会室の扉を開け、中に入る。

 

長机に弁当を置き、彼の隣に座る。

そして持ってきた紅茶を紙コップに注ぎ彼に渡す。

 

「いつもありがとうございます。めぐりさん」

彼はそう言いながら受け取る。

 

「別にいいよ~。私がしたくてしてるんだからさ。」

そう言って微笑む。

 

 

「「いただきます」」

 

・・・

・・・・・

 

 

二人とも弁当を食べ終わり、食後のゆっくりとした時間を楽しんでいる。

 

「昨日何かあった?」

私がそう聞くと

 

 

「………何もなかったわけではないです…。」

彼が少しためらいがちに言ってくる。

 

もしかして、また何か言われ始めたのだろうか?

 

「何があったの?」

真剣な表情で聞き返す。

 

 

「いや、俺の事ではないんですが…。相模って覚えてますか?」

 

急に相模さんのことが出てきて私は思わず顔をしかめる。

彼の悪口を広めている人であり、今回のことで一番どうにかしなければならない人だ。

その彼女に何が……。

 

「うん…覚えているけど…。」

 

「相模が今クラスで孤立しているんです。そのこと自体は何も思わなかったんですが、沙希が危ない場面にあっていたということを昨日聞いて、気になっているんです。」

 

 

ん?今沙希って言わなかった…?

また女の子……………。

少し暗い気持ちが芽生えてしまう。

 

 

「あ、あの…めぐりさん…?なんでムッとしてるんですか?」

彼は戸惑ったように聞いてくる。

 

ジト目で彼を見ながら

「沙希ちゃん?だっけ。八幡君のお友達…?」

と聞いてみる。

 

「え、ええ、そうですけど………。それが何か…?」

 

 

 

ボッチって何なんだろう…。

あんなにかわいい子たちがいて、女友達がいるのにボッチなんだろうか…?

またライバルが増えたことに小さくため息をつく。

 

「また、女の子か……」

ぽしょりと口から洩れてしまう。

 

まあ、しょうがない。

もともと二人強力なライバルがいたんだ。

今頃一人増えても変わらないだろう。

それに私はひく気はないし…。

 

 

 

 

首をプルプル振って気持ちを切り替える。

「でも相模さんが責められているのって、ひどい言い方かもしれないけど自業自得じゃないかな…。」

私は素直に思っていることを言う。

悪口を広めて、そのせいで責められる。

正直何も言えない…。

 

 

「そのことに関しては、俺も自業自得だと思うんですよ。

でも、俺は周りの人が気にくわないんです…。」

 

 

彼はゆっくりと言葉を紡いでいく。

 

「一人の奴が何かを言われていたら、周囲にのって自分もそいつのことを悪く言う。

そいつがかわいそうだと言われ始めたら、さも自分は心配してましたよ、みたいな顔でみんなでそいつのことを心配してたみたいに言う。」

 

「そんなくだらない連中のせいで被害が大きくなることが許せないんです。

例えば、相模のことで俺が文句を言うのは分かります。

でも、関係ない上級生に顔を殴られることは本当に相模のせいなんでしょうか?」

 

「その上級生と相模には何の関係もないのに……。

今嫌われ者だからって、一方的に因縁つけられて。」

 

 

「沙希があの場にいなかったら、もっとひどい事になっていたかもしれない…。」

 

 

「俺のわがままですが、相模を助けるのに手を貸してくれませんか?

お願いします。」

 

 

そう言って彼は私に頭を下げる。

 

ずるいなぁ………八幡君は。

そう言われたら断れるわけないじゃない。

本当に優しい人。

普通は自分の事悪く言っている人がどうなろうと気にしないのに…。

 

 

でも、そういう優しい君だから私は好きになったんだけどね。

 

 

 

「分かったよ、お姉さんに任せなさい!」

私は胸を張ってそう答えた。

 

 

 

そして私はいくつかのことを彼に頼んだ。

 

・・・

・・・・・

 

 

放課後奉仕部に行く。

隣には八幡君がいる。

 

 

まずは四人で話し合いがしたい。

と言うより八幡君のいう相模さんを助けたいというのはおそらく私が言っても二人は納得しないだろう。

特に雪ノ下さんは…。

ノックをし、部室に入る。

 

由比ヶ浜さんが

「八幡!と城廻先輩…?」

私の方を向いてきょとんとしている。

 

雪ノ下さんには話をしていたので、人数分のお茶が用意されている。

「どうぞ、先輩。八幡も。」

 

彼と私は由比ヶ浜さんと雪乃さんの対面に並んで座る。

 

「今回は、八幡君のことを解決するために手伝いをお願いしたいの。」

私は彼女たちに真剣な声で話しかける。

 

「それは全然いいですよ!ね、雪乃!」

元気に由比ヶ浜さんが答え。

 

「ええ、もちろん。では、私たちはどのようにすればいいでしょうか?」

雪ノ下さんも快諾してくれた。

 

「二人ともありがとな…。」

嬉しそうに彼が彼女たちに微笑む。

 

彼女たちも

「頼ってほしいと言ったのはこちらだから。」

「あたしも頼ってほしいって言ったから、頼ってくれてうれしいし」

 

と照れながら答えている。

 

三人の世界にいるようで、私は少し寂しさを感じてしまう。

でも今はそんな事より大事なことがある。

 

 

「私が考えているのはね………」

 

まず、一つ目は、相模さんが体育祭の実行委員長をもう一度引き受けてくれること。

引き受けることで、大きな場で彼に謝ってもらう。

皆がいる場所で謝ることで、彼の悪いイメージを少しでも減らそうというのが目的だ。

 

もう一つの理由としては、相模さんが失敗してしまった文化祭でのことを体育祭で塗り返すということが目的である。

これで相模さんも助けることが出来るのではないかと私は考えた。

 

これにはいろいろな問題がある。

相模さんが引き受けてくれるかどうか。

今の状態の相模さんが指揮をとったことで、おそらく統率しにくくなるということ。

相模さんが大勢の前で謝ってくれるかと言うこと。

 

二つ目のは、私一人ではどうしようもないので、奉仕部の二人の力を借りたい。

相模さんの説得は私がどうにかしなければならない。

 

 

このことを二人に伝えると、予想通り渋い反応が返ってきた。

 

「私達が出来る範囲でのサポートはします。ですけど…相模さんを助けるというのは?」

相模さんを助けることに関して、雪ノ下さんはあまり乗り気ではないようだ。

 

「うーん、さがみん引き受けてくれるかな…。」

由比ヶ浜さんもあまり納得していないように見える。

 

 

私はそれにこう答えた。

「今の相模さんなら引き受けてくれる可能性はあると思う。」

八幡君から昨日の出来事を聞き、今なら彼女を説得することが可能だろう。

 

 

「でも、相模さんを助けるっていうのは……。」

雪ノ下さんは納得していないようだ。

 

 

「俺からのお願いなんだ…。俺は相模を助けたいんだ。

これ以上誰かが知らない人にまで悪意を向けられるのを見たくないんだ。

実際に体験したからさ…。わがままを言っているのは分かっている。それでもお願いできないか?」

彼が真剣な声で、二人に頼む。

 

 

そこで二人はあきれたように笑みを浮かべ。

「あなたがそういうなら相模さんを助けましょう。」

雪ノ下さんがそう答える。

 

「ヒッキーは優しいよね…、そこがいいところなんだけどさ!

あたしも何ができるかわかんないけど頑張るよ!」

由比ヶ浜さんもそう答える。

 

 

二人が協力してくれるのはうれしい。

それでも、三人が仲良く話しているのを見るともやっとした気持ちを抱いてしまう。

これが嫉妬なんだろうか?

 

 

そんなことを考えていると

 

「八幡、今日は先に帰ってくれないかしら。城廻先輩と話したいことがあるの。」

雪ノ下さんがそう言っている。

 

「あ、ああ、分かった。じゃあ、三人ともまた明日。」

何かを察したのか彼は部屋を出ていく。

私たち三人もそれぞれ挨拶を返す。

 

 

 

そして、三人だけになった時、雪ノ下さんがゆっくりと口を開いた。

 

「先輩は八幡のことをどう思っているんですか?」

 

 

 




いかがでしたでしょうか?

友人に書いてできたものを見せたら、いつの間にかサキサキssに変わってるやん!と怒られ書き直したものです。
しょうがないね…サキサキ二番目に好きだもの…。
三番目は平塚先生、はるのん。四番目は、バンブーファイトのお姉さん、ガハママ。

私は、年上好きなのだろうか…(; ・`д・´)
最近自分に疑問に思う日々。

次回は、めぐりんが二人に思いを…

最後まで見てくださりありがとうございました(^o^)丿


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少女たちは話し合う(2)

やあ(´・ω・`)
前回の感想で修羅場修羅場、無双と多く書かれていたのでみなさモノ求めていらっしゃる八めぐを書いてみました。


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修羅とは北斗の隠語、無双とは強さの事すなわち筋肉。
私の灰色の脳みそがこれが求められていると導き出しました。
このイラストを描いているところを看護婦の方に見られ腐っていると誤解され、新たな友情が芽生えました(白目)

今回も短めです。

あと前回の時点で文字数がUAに追い越されました!
多くの人が見てくださっているようで感謝感謝です(*'ω'*)

ご指摘ご感想があればしていただけると幸いです。


めぐりside

 

 

 

やっぱりか…。

この三人と会うことを決めていた時点で、こうなることは予想はしていた。

今の状況で嘘をつくのはよくないだろう…。

それに嘘をついては二人に失礼だ。

 

 

私は小さく息を吐き

「私は八幡君のことが好きだよ。」

そうはっきりと伝える。

 

 

すると由比ヶ浜さんが

「そ、その………もしかして、二人は付き合ってます…?

先輩の家に泊まったって聞いて、それに八幡の顔が赤くなってたから…。」

もじもじと聞いてきた。

 

「告白はしたよ」

 

さっと二人の顔がこわばる。

それもそうだ、自分の好きな人が他の異性の家に泊まり、しかも告白されていたなんて。

 

 

「返事はまだもらってないけれどね。まだ何も解決してないし…。これが終わったら答えてもらうつもりなんだ。」

 

続けて言った言葉にホッとしたのか、顔が緩んでいる。

 

「二人はどう思ってるのかな…?八幡君のこと」

 

もう二人の顔や言葉で予想はついてはいるが、直接本人たちの口から聞きたかった。

 

「あ、あたしは八幡のこと好きです!」

顔を赤くしながら由比ヶ浜さんが言う。

 

「私も…その好きです、八幡のことが。」

雪ノ下さんが少し頬をそめ、小さくだけれどしっかり答えた。

 

 

雪ノ下さんが照れるというところを私は初めて見た。

そもそも姉の陽さんとしか関わりが多くなかったため、大人びたイメージを持っていたのだが、それは違ったようだ。

 

ただ気の強いだけの女の子。

好きな人との距離の取り方がわからず、からかったりしてしまう。

そんな普通の女の子だった。

 

なんだか可愛らしいものを見たようで顔がほころぶ。

 

 

そんな私を見て不思議に思ったのか、雪ノ下さんが

「あ、あの何か…?」

きょとんとしながら聞いてくる。

由比ヶ浜さんも不思議に思っているようだ。

 

「ごめん、ただ雪ノ下さんがそんな可愛いらしく照れるなんてと思ってね!」

 

 

「い、いえ照れてなんていません!」

慌てて答えているのを見て

 

「雪乃はなんだかんだ言って可愛いもんね!」

そう由比ヶ浜さんが言って雪ノ下さんに抱き着いている。

 

「ちょっ……由比ヶ浜さんちk

 

「結衣でしょ?」

いたずらっ子の笑みを浮かべながら、指を雪ノ下さんの唇に当てている。

由比ヶ浜さんにとっては普通のスキンシップなのだろうが、雪ノ下さんは慣れていないのか

 

「そ、その………結衣………。」

 

顔を赤くしながら言っている。

二人ともはたから見たら確実にそっちの人たちにしか見えない。

普段は大人びている雪ノ下さんもこうなっては由比ヶ浜さんに手も足も出ないようだ。

 

 

「城廻先輩も八幡のことが好きでも、あたし負けませんから!

出遅れていても、ちゃんと振り向いてもらいます…。」

由比ヶ浜さんが私にそうしっかりと伝えてきた。

 

 

「わ、私も、まだ何をすれば彼に彼女として見てもらえるかよく分からないですけど…。

それでも引く気はありません!」

雪ノ下さんも私の目をしっかり見ながら伝えてくる。

 

 

「もちろん私も引く気はないよ!」

私も胸を張ってそう答える。

 

初めてできた好きな人なんだから、負けるにしても全力で行かなければ後悔する。

私はそんなことはしたくはない。

 

「私たちはライバルと言うことですね」

雪ノ下さんが私達二人を見渡しながら、そう口にした。

 

 

「でも、このことが解決するまではお互い協力しないとね。」

 

私がそう答える。

 

「そうですね、城廻先輩!」

元気よく由比ヶ浜さんが答える。

 

「先輩とかかしこまらなくていいよ、ライバルでしょ?

めぐりでいいよ。私も結衣ちゃんって呼ぶから!」

 

「じゃあ、めぐりさんで!改めてよろしくお願いします!」

 

「こちらこそ、結衣ちゃん!」

そう言って握手する。

 

「わ、私もめぐりさんと呼んでもいいでしょうか………?」

ためらいがちに雪ノ下さんがぽしょりとつぶやく。

 

「全然いいよ!雪乃ちゃんもこれからよろしくね!」

 

そう言って手を差し伸べると、ゆっくりと手をそっと握ってくる。

 

「こちらこそ、めぐりさん。」

そういって微笑む彼女はとてもきれいだった。

・・・・・

・・・・・・・・・・

 

 

「それはそうとめぐりさん、一つ聞きたいことがあるのですが。」

雪乃ちゃんがそう言ってくる。

 

「いいよ!なんでも聞いて!」

私は元気よく答える。

 

 

「本当に八幡が家に泊まった時、告白しただけなんですか?」

 

そう聞かれて、いろいろなことを思い出した。

彼の体を拭いたこと。

彼にキスしたこと。

彼に体を拭いてもらったこと。

 

 

あれ、私って結構大胆なことをしていなかった?

思い出すと顔が熱くなるのを感じた。

でもさすがに恥ずかしくて言えない。

 

「な、なにもなかったよ!うん、全然!」

 

私がそういうと

 

「めぐりさんって嘘つくの苦手ですよね…。」

結衣ちゃんがジト目でこちらを見てくる。

 

「ぜひともお話を聞きたいです。城廻先輩」

雪乃ちゃんがにこりと笑う。

 

 

ただ先ほどのようなかわいらしさを感じさせない威圧的な笑みだ。

 

「あ、あはは……。」

 

 

その後私は洗いざらい二人にはくことになり、聞いていた二人が顔を赤くしていたのはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

沙希side

 

 

あたしは今自分の家に戻っている。

今家にはあたし以外に一人いる。

居間にちょこんと正座をして座っている女の子だ。

その子にお茶を出す。

 

「麦茶だからこれでも飲みな。」

そう言ってお茶をちゃぶ台に置く。

 

「あ、あのありがと…。」

ぽしょりと下を向きながらだが、そう答えた。

 

 

その様子を見ながらあたしはさっきまで起きたことを思い返していた。

 

 

 

 

相模が授業が終わっても戻ってこず、次の授業まじかになっても帰ってこない。

あたしは気になって授業をさぼり、相模を探すことにした。

 

 

相模は前回屋上にいたそうだから屋上に向かう。

階段を上りもう少しと言うところで、ガラの悪そうな連中が何人か入っていくのが見えた。

 

 

あたしは急いで階段を駆け上がると、先ほどの連中が五人相模を囲み何やらののしっていた。

 

 

あたしはこういう大勢で弱いものいじめをするのが大嫌いだ。

反吐が出る。

 

あたしが挑発すると一人、周りを囲んでいた奴らが向かってくる。

そしてこける。

 

あたしは何が起こったか分からなかった。

どうやら相模が足を思いっ切り引っ張ったようだ。

 

 

「うちはいいけど、関係ない子まで巻き込むな!」

 

正直意外だった。

相模はそんな事気にしない子だと思っていたのに。

 

 

今までの相模なら助けるのも自分からではなく八幡のために。

でも今は少し違う。

 

あたしは自分から相模を助けようと考えた。

 

 

あいつらを追い払った後泣き続ける相模をなだめてはいた。

このままクラスに戻るのも相模にはつらいと思い、あたしは一つ提案をした。

 

「うちに来るかい?」

 

 

 

そして今に至る。

 

 

「別にお礼なんていいよ…。」

なんだが率直にお礼を言われると恥かしい。

 

「あんた今八幡のことをどう思ってんの?」

あたしは今一番気になることを聞いてみた。

 

「え、えっと八幡?って比企谷の事?」

 

そうか、普通の人にとっては八幡は名前知られていないのか…。

まあ名前を呼ぶだけなら名字だけ知っていれば十分だしね。

 

そう思いあたしはうなずいた。

 

「うちは、今は比企谷のことは悪いと思ってる…。」

相模はそう小さくつぶやいた後、ポツリポツリと思っていることを話し始めた。

自分が八幡の悪口を言ったこと。

言ってもいないことがどんどん広がっていったこと。

止めようと思ったけれど怖くて止めれなかったこと。

許してもらえないかもしれないが、八幡に謝りたいとのこと。

 

 

それをいいながら相模は涙を流していた。

 

あたしは相模のことを良く知らなかったが、てっきり高飛車な女かと思っていた。

どうやら違ったようだ。

 

気の弱い普通の女の子だ。

人を傷つけてしまったことを後悔する普通の子だ。

 

 

「よく話してくれたね…。」

そう言って彼女をやさしく抱きしめる。

 

 

彼女が泣き止むまであたしは、抱きしめていた。

 

 

 

 

しばらくそうしていると日が落ち、夜になってしまった。

 

 

「う、うちもう帰るね…。今日は本当にありがとう、川崎さん」

 

ぺこりと頭を下げてきた。

 

 

その時あたしは一つひらめいた。

 

「あんた、今日うちに泊まっていかない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか?

次回で一区切り付きます、たぶん。
サキサキ目線を出す予定はなかったんですが、出したくて出しました!

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前回イラスト乗っけるの忘れてたので多めに出してます。
八幡の女の子バージョンは次女に使おうかなと考えています。

最後まで見てくださりありがとうございました!


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相模南は踏み出す

見てくださっている皆さんにお願いしたいことがあります。
多くの方が見てくださるようになった事はうれしいのですが、タグやあらすじを確認せず読む方がそれなりに見られます。

アンチへイトが不快だった。八○以外でがっかりした。
このキャラクターがメインで使われていない。
話数が増えるたびに、そういうメッセージや低評価がくるのが増えてきています…。

一応タグにもアンチヘイトと入っていますし、八メグがメインの作品であることも書いてあります。
すでに来たメッセージにはそのように書いて対応しています。
申し訳ありませんが、作者にはこれ以上対応することが出来ません。

それでも構わない、そんな方は見てください。


長々となりましたが作者からのお願いです。




南side

 

うちは今川崎さんの家のお風呂にいる。

ゆったりと湯船につかり今日の出来事を考える。

 

川崎さんに助けられた後、自宅に行きとめてもらっている。

どうせ家に帰ってもすることなんてないし…今は誰かのそばにいたかった。

 

 

川崎家のご両親は今日は帰ってこないそうだ。

高校生をしながら家庭のことをしている川崎さんには本当に尊敬する。

 

うちってそういえば高校入って手伝いとかしたことあったっけ?

そういえばない気がする…。今度手伝ってみようか…。

 

兄弟の子たちもかわいらしい。

幼稚園の京華ちゃんとその一つ下の篤志くん、中学三年生の大志君。

みんないい子たちだ。

特にちっちゃい子たちには「みーちゃん」と呼ばれ、なついてくれたのがうれしかった。

兄弟がいたら毎日にぎやかなんだろうか…?

 

 

「川崎さんと友達になりたいな…。」

今までのような子じゃなく、本当に本音が言える相手がほしい。

ぼんやりとだがそう思った。

 

 

 

 

 

お風呂から上がり、川崎さんに次にはいるように声をかける。

 

 

何やら手芸をしているようだ。

普段あげている髪をおろしていて、眼鏡をかけている。

 

「お風呂お先に入らせてもらいました。」

 

 

「ん、じゃあ、あたしも入るかね。というかいつまで敬語なのさ?」

少し不思議そうにそういってくる。

 

「だって、迷惑かけてるし…。」

いきなり人の家に泊まるなんて迷惑ではないのだろうか…?

いくら親御さんがいなくても。

 

 

「ふふ、あんたもそういうこと気にするんだね。」

そういってくすりと笑っている。

 

ちょっと結衣ちゃんみたいにあほの子じゃないのに!!

ちゃんと常識ぐらいうちにだってあるし!!

 

「うちそこまであほの子じゃないし!!」

 

そういうと

「そうそう、そんな感じ。普段のあんたが一番だよ。

それに泊めたのはこっちが頼んだことでしょ?気にしないの。」

そういってデコピンをしてくる。

 

なんだかくすぐったい。

胸の奥がほんわかしていく。

 

「じゃあ、あたしお風呂行くから。ゆっくりしてな。」

川崎さんはそういってお風呂場へと向かった。

 

 

 

「……ありがと…。」

小さくぽしょりと言葉が漏れた。

 

 

 

 

 

川崎さんを待ちながら、けーちゃんとあーくんの二人とおままごとをしている。

 

けーちゃんが

「みーちゃんはね、おかあさんね!けーちゃんもおかあさん!あーくんがおとうさんね!」

あれあれお母さん2人って修羅場じゃないかな……。

 

「お母さん二人いるけどいいの?」

けーちゃんに目線を合わせながら聞いてみる。

 

「あれ?ほんとうだ!みーちゃんあたまいいね!!」

うれしそうにそういってくるけーちゃんを見て顔がほころぶ。

 

 

「かわいいなぁ~、二人とも!お持ち帰りしたい~!」

そういって二人を抱きしめる。

キャッキャッと三人ではしゃいでいる。

 

 

 

「打ち解けてるじゃない。けーちゃん、あーくんそろそろおねむの時間だよ。」

 

そういってお風呂上がりの川崎さんが現れる。

何だろう、ブラをしていないはずなのにあの大きさ…。

パッドとか入れてなかったんだ…。

雪ノ下さんあたりならヌーブラとか入れてそうだけど…。

 

うちのも小さくはないと思うんだけどな…。

もにゅもにゅと自分の物をもむ。

結衣ちゃんのも大きいし、川崎さんはおそらくそれと同じくらい、もしくは上かもしれない。

 

 

「あんたはどこで寝る?居間?」

 

 

「川崎さんの部屋じゃダメかな…?」

 

 

川崎さんはきょとんとしている。

 

 

 

川崎さんの部屋は意外と女の子女の子していて、ぬいぐるみやおそらく趣味の手芸で作ったものがいくつも見られた。

 

「らしくないかい?」

そう川崎さんが聞いてくる。

 

「そんなことないよ!川崎さん凛々しい感じだからこういうのがあるとギャップを感じるけど似合わないことないよ!」

私は思わず力説してしまう。

 

 

「そ、布団引くの手伝って。」

そっけない返事とともに布団を引く準備をし始める。

それでもその顔がほんの少し赤くなっていたのを私は見逃さなかった。

 

 

・・・・・

・・・・・・・・・・

 

布団を引き終わり雑談をして過ごしているとあっという間に23時を過ぎてもう日が変わろうとしている。

小さな豆電球の光だけが部屋を照らしている。

 

うちはたぶん今までの人生の中で一番勇気を使って川崎さんに頼みごとをした。

 

 

 

「うちと友達になってください!」

 

 

 

すると川崎さんはきょとんとして固まっている。

やっぱりだめなのかと思うと少しすねたように

「あたしは、もうとっくにそのつもりだったんだけど…。」

そうぽしょりとつぶやいていた。

 

「……いいの?うちと友達になって?

うち今クラスで嫌われ者だし、きっと川崎さんにもめいわくかけるかもしれないし。

それに」

 

そこまで続けたあと川崎さんが

「あたしはそんなこと気にしないし、そもそもボッチだったからね。

そんなの関係ないさ。あといつまで『川崎さん』なんだい?沙希でいいよ。」

真剣な表情でそういってくれる。

 

うちはうれしくなって思わず抱き着いてしまった。

 

「うちと友達になってくれてありがと!沙希!」

 

「ちょっ、苦しいよ。相模!」

思いっきり抱き着いたので少し苦しそうだった。

でも相模はないんじゃないだろうか…?

自分は名前で呼んでって言ったくせに……。

 

「南。うちは相模南って言うの!南って呼ぶように!」

抱き着くのをやめ、ピシッと指を沙希のほうにむける。

 

「わかったよ。………み、南…。」

そっぽを向きながら照れているのを隠そうとしたのだろう。

その様子がかわいくて

 

「サキサキ!」

また抱き着いてしまった。

 

「一緒の布団で寝よ!!」

勢いに任せてやりたいことを言っていく。

 

 

「いや、さっき布団引いた意味がなくなるし!!」

 

「沙希口調変わってるよ~!」

ウリウリと頬に指をあてる。

 

「ちょっ、南!分かったからストップストップ!!」

クールな人が慌てるのを見るのは本当に楽しい。

 

 

「沙希っておっぱい大きいよね?何食べたらこうなるの?」

そういいながらもにゅもにゅと揉む。

 

「南、あんたどこ触って!」

沙希の顔がいっそう赤くなる。

なんとなくいけない気持ちがわいてくる。

服越しではあるが張りのある弾力、圧倒的な質量、そして柔らかさ。

芯の硬さを感じないことから成熟した胸だとわかる。

 

「うらやましい……。少しちょうだいよ、沙希…。」

 

もにゅもにゅと触り続ける。

こうやって触っていたら自分のも大きくなるかもしれないし…。

 

 

「なら揉むのをやめ………んっ」

さっきちょっと硬くなってるところを触ったのかぴくんと体が跳ねる。

 

 

「ご、ごめん、沙希。ちょっと調子に乗っちゃった…。」

慌てて手を離す。

 

「みぃなぁみぃい!」

胸の前を手で隠しながら顔を真っ赤にして涙目でこちらを見てくる。

 

 

「あ、あはは…………沙希どこ触ってんの!?」

うちの胸に沙希が手を伸ばし、揉みしだく。

 

「仕返しだよ!人の散々もんだくせに!」

 

 

乱暴にではなく優しく確かめるように触ってくる。

白くて長い指が先端に触れる

「だから謝って……にゃっ………」

 

 

 

「人のを大きいとかいうけどあんたもそれなりにあるじゃん。」

 

「沙希の変態!色魔!」

「それを言うなら先にやってきたのはあんたでしょ!」

 

こうして少女たちの夜は更けていく。

 

 

 

朝起きると昨日抱き着いていた抱き枕がいない。

時刻はまだ六時半。

うちはいつもこの一時間後に起きている。

 

 

居間のほうに向かうと沙希がお弁当を作っていた。

けーちゃんとあーくんと沙希のぶんあと一人は誰だろう?

大志君は中学生だから給食だろうし…。ご両親とか?

 

「沙希おはよう~。」

寝ぼけ眼で挨拶をする。

 

「おはよう…ってあんたあほみたいな顔してるよ?」

 

失礼なことを言ってくる。

「女の子にそういうことを言うのはどうかと思うけど…。」

 

 

「ほらあんたのお弁当。」

ぶっきらぼうに沙希が渡してくる。

 

「い、いいの?」

友達にお弁当を作ってもらったことがないので一瞬戸惑う。

 

「いらないなら別にいいけど…。」

少し悲しそうに沙希がうつむく。

 

 

「いるいる!!沙希の料理おいしいし!!ありがとう!!」

 

「…そう…。ならいいけど…。」

顔を背けながらそっけない返事をする。

これが照れてるときの動作だということをうちは知ってる。

 

 

うちはいい人を友達に持ったな…。

朝から何となくほんわかしてこの喜びを伝えたくて沙希に抱き着く。

 

「あんたは、本当に………」

沙希のあきれた声と、けーちゃんの「なかいいね~!」

という声が川崎家に響いた。

 

・・・

・・・・・・

 

うちはぽわぽわした感じの城廻先輩に生徒会室に呼び出されている。

文実の際にお世話になった人だ。

最近比企谷とよくいるのを見る。

 

 

ということはきっとうちは嫌われているはずだ。

正直緊張している。

 

 

「相模さん?大丈夫?」

ふんわりと微笑みながらこちらに聞いてくる。

 

「………えっと大丈夫です…。」

ガチガチの返答になってしまう。

この人は素でこういう感じの雰囲気の人なのか、それとも作っているのかわからない…。

 

「はい。紅茶をどうぞ~。熱いから気をつけてね。」

そういってカップに入ったお茶を差し出してくる。

 

 

「ど、どうも…。」

 

 

「緊張しなくていいよ~。何かに怒っているわけじゃないしさ。」

そういってカップのお茶を一口飲む。

 

うちも一口飲む。

お茶の香りが口に広がり、少し気が楽になる。

 

「おいしい…。」思わずぽしょりとつぶやく。

 

 

「そういってもらえてよかった!」

うちの顔からこわばりが消えたのを見て安堵したようだ。

 

 

 

「あのね、今日呼んだのは体育祭の実行委員長を引き受けてほしいんだ。」

今のうちが体育祭の実行委員をしたらそれこそ大荒れになる気がする…。

そんなことが分からない人ではないだろう。

 

「それと八幡君…比企谷君に謝ってほしいというのがあるんだ。多くの人の前で。」

真剣な表情でそういってくる。

おそらくこちらが本命だろう。

 

 

「すぐにとは言わないけれど、いい返事をもらえるとうれしいな…。」

こちらが受けるとは思ってはいないのだろう。

 

 

うちが相手の立場でもそう思うだろう。

すぐにでも引き受けたいのはやまやまだが、いきなり言っても信用してくれはしないだろう。

 

うちがそう考えていると、

「でもこれは相模さんを助けるためでもあるんだ。

相模さんがみんなの前で謝ることで相模さんを責める理由がなくなるでしょ?」

 

そう比企谷が許してくれれば、うちが責められる理由を周りの人はなくしてしまう。

 

ただ責める理由が一時的になくなるだけ…。

これには大きな問題があるのが、うちでもわかる。

前回の悪評が残っている人間にそこまでうまく集団をまとめられるか?

そもそもうちにはカリスマ性なんてものはない。

 

 

仮に何かあったときに真っ先に責められるのはうちになる。

前のことがあるから………。

 

「先輩はいくつか言ってないことがありますよね?」

 

驚いたように目を少しだけ見開く。

でも動揺は一瞬ですぐに平静を取り戻す。

「どういうことかな?」

微笑みながら聞いてくる。

でもその微笑みに温かさを感じない。

 

 

 

「確かに一時的に責める理由がなくなるだけでしょ…?」

 

核心をつく。

 

うぐと言った顔をしている。

 

 

「うちの事を信用してないのは知ってます……。」

 

城廻先輩が真剣に私の目をみて続きを促してくる。

 

「うちは実際逃げました、比企谷のせいにして…。

うちが噂をしたせいでそれがあることないこと広がっていったことも知ってます。」

 

 

「うちも実際止めようと思ったけど怖くなって知らないふりをしてました…。」

ここで小さく息を吸う。

 

 

「だからうちは自分のしたことの責任を取ります。

取らせてください。許してもらえないかもしれないけれど謝りたいんです。」

 

 

そこまで言い切る。

うちの思っていることは伝えた。

 

城廻先輩はゆっくりと息をはいて

「良かった…。」

ただ一言ぽしょりとつぶやく。

 

「相模さんごめんね、だますようなことをして。」

 

申し訳なさそうにこちらに謝ってくる。

 

「いいんです…。もとはうちのせいですから。」

 

 

「本当は引き受けてもらえないと思ってて、だましてでも無理やりさせようかなって思ってたんだ…。」

 

城廻先輩らしくない発言だった。

 

「そしたらだました私の事を責めるようになって比企谷君の事を責めるのをやめてくれるかなって思ったんだ。」

 

あの時の比企谷と同じような解決方法をしようとしてたのか…。

 

 

「でもそんな心配する必要なかったんだね…。相模さんはちゃんと分かってくれてたみたいだし。引き受けてくれるんだよね?」

 

 

うちはそれに

「はい。」

そうしっかりと答えた。

 

「体育祭が成功するように私もできる限りサポートするからこれからよろしくね!相模さん!」

 

 

「こちらこそよろしくお願いします。城廻先輩。」

ぺこりと頭を下げる。

 

 

「そんなに堅苦しくなくていいのに…。」

そう先輩がぼやく。

 

 

「先輩はうちの事嫌いじゃないんですか…?」

 

「今の相模さんは嫌いじゃないし、むしろ好きだよ!」

元気よくそう答える。

 

どこかでも同じような言葉を聞いた気がする。

 

「昔のあんたは嫌いだったけど、今のあんたはあたしは好きだね。」

 

沙希の言葉と同じだ…。

 

うちは少しづつでもいいほうに変われているのかな?

 

変われてたらいいなぁ…。

でもまず今日の事沙希に連絡しなきゃ!

 

 

 

沙希のおかげで踏み出せた

 

 

そう初めての友達にお礼をしようと心に決めた。

 




これで体育祭前の一区切りがつきました。
今回はイラストを用意できず申し訳ありません。

また未完と書いてある作品については、しばらくの間更新を止めようと思います。
作者の個人的な都合でこうなってしまい申し訳ありません。

つたない作品ですが、今まで見てくださりありがとうございました!



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会議(1)

お久しぶりです(´・ω・`)
普段予約投稿してるので作者としては二週間ぶりに投稿してます。
リアルでこの国にいなかったからねしょうがないね。
携帯からだと感想に返信するのはできても、作品を書くことは難しいしね!

とりあえず予定では後六話?ぐらいでエンドです。
というか先に最終回は書いちゃったので、ヒロインズにチャンスあげる回をかけれたらいいんだけどね…。

後お気に入りが急に伸びていてびっくりです。
普通ものすごい勢いで減ると考えていたのに…。
新しく評価してくださった方、登録してくださった方、読んでくださる方に感謝感謝です!



ご指摘ご感想あればしていただけると幸いです。


めぐりside

 

 

 

体育祭の準備がいよいよ本格的に始まった。

今日から実行委員会が開始される。

 

一応奉仕部と私と南ちゃんで打ち合わせはしてきている。

その時に雪乃ちゃんも結衣ちゃんの二人とも南ちゃんと和解は済んだようだ。

今から頑張らなきゃいけない時に内輪もめなんてしてたら意味がないし…。

 

 

 

 

三年の他の生徒会役員も手伝いたいとは言っていたがさすがに受験が近くなっていることもあり、推薦などで終わっている人のみ手伝ってもらうようにした。

南ちゃんも引き受けてはくれたけれど、ここからが本番といっていい。

 

 

信用を失っている人間がリーダーをすることはかなり大変だ。

人の信用を得るのは大変だが、信用を失うのは一瞬。

ここからが踏ん張り時である。

 

 

奉仕部の三人も手伝ってくれるし私一人ではない。

たぶん行けるはず。

 

 

「めぐりさんどうしたんですか?」

そういいながら隣の男性が声をかけてくる。

八幡君だ。

今は彼のお気に入りのベストプレイスにて、私が作ってきたお弁当を食べている。

ちなみに今日のメニューはオムライスである。

 

 

「考え事かな?」

あいまいにぼやかす。

私が不安になっていたら、彼まで不安になる。

頼られているのにそれでは情けない。

 

 

「ケチャップついてますよ。ほら」

柔らかく笑いながらティッシュでぬぐってくれる。

なんだかお子様扱いされている気がするが気のせいだろう。

 

 

「八幡君ってトマトは嫌いなのにケチャップは大丈夫なんだ…?」

 

 

「なんかトマトってグチュッとするじゃないですか。あれがなんかダメなんですよね…。」

そういって苦笑いする。

 

 

「じゃあ今度うんとトマト入れてあげるね!」

にやりと意地悪気に笑みを浮かべる。

 

 

「そ、それはちょっとご勘弁を…。」

アワアワしている彼を見ると楽しい。

自分はS気があったのだろうか?

 

 

「八幡。」

そういって後ろのほうから声がかかる。

見た目はきつそうだが、スタイルの良い青みがかった髪の美人な子がいた。

また女の子……。

しかも名前呼びか……………。

どんな仲なんだろう?

 

 

「ああ、沙希か。相模の件ありがとな。」

こちらも名前で返している。

 

むむむ………。

 

 

「別に気にしないでいいさ。あんたとあたしの仲だろ?」

そういって照れくさそうに笑っている。

 

 

「にしても相模と仲良くなったよな?お前。」

八幡君もなんだか照れているのか、頬がうっすらと赤い。

思わずムッとする。

 

 

「いろいろあったんだよ。じゃあ南待たせてるし。」

そういって沙希ちゃん?は颯爽と帰っていく。

悔しいけどかっこいい女性とはああいう子のことを言うんだろう。

 

 

「おう、またな。」

軽く手を振る八幡君

 

 

沙希ちゃん?は南ちゃんのお友達のようだ。

そして八幡君の何なんだろう?

結構仲がよさそうだけれど…。

 

 

「さっきの子とはどんな仲なの…?」

 

私は恐る恐る聞いてみる。

 

「ただの友達ですよ?」

照れくさそうに笑いながら言う彼は嘘をついていない。

 

 

でも相手の子はそうじゃない。

友達以外の感情を持ち合わせている。

そう女の勘が告げている。

 

 

「はぁ…先は見えないなぁ…。」

思わずぽしょりと言葉が漏れる。

 

 

頭に?をつけている八幡君は放っておくとして…。

新たなライバルに意識がいく。

 

 

基本的に男性は大きな胸の子が好きだというのは聞いたことがある。

小さい子が好きという人もいるそうだけど、そういう人は小さいことを恥ずかしがっているのが好きな人のほうが多いらしいし、実際に小さいのが好きな人は少ないそうだ。

となると

 

 

八幡君はやっぱりおっぱいが大きい子が好きなのかな?」

 

 

「め、めぐりさん?何言っているんですか?」

八幡君がアワアワしている。

どうやら声が漏れていたようだ。

この際だから聞いてみる。

 

 

「大きい子が好きなんじゃないの?結衣ちゃんや沙希?ちゃんみたいな。」

少しすねたような声になってしまう。

私だってあそこまで大きくはないがちゃんとDあるし……C寄りだけど…。

 

 

「いや…別にそういうわけでは…。」

完全に目が泳いでいる。

 

 

思わず顔がムッとしてしまう。

隠さなくてもいいのに…。

 

 

「胸の大きさよりも俺はうなじとかの人なんで……。」

顔を染めながらそう言ってくる。

だから言いにくそうにしてたのか…。

そういうことを言うのって恥ずかしいしね…。

 

 

「めぐりさんきれいですし、そんなこと気にしなくてもいいんじゃないですか?」

 

 

そ、そっか!

きれいか………。

顔がにやけていくのが分かる。

 

「あ、ありがと…。」

 

新しいライバルの出現なんてどうでもよくなってしまうぐらいうれしくなる。

好きな人の一言でこうなるなんて…私は意外と単純なのかもしれない。

 

 

ぽかぽかとした昼下がりの中二人で過ごすのは思いのほか楽しい。

 

 

・・・・・

・・・・・・・・・・・

 

 

 

放課後になりいよいよ実行委員会が始まる。

教室に長机をロの字に並べホワイトボードのある側に実行委員の首脳部が座り、周りには各クラスや部活の部長たちなどが集まっている。

奉仕部の結衣ちゃんと八幡君、先生方からは校長と平塚先生もこの部屋にいる。

校長を呼んだのは表向きに文句を言う人間を減らすためである。

 

 

 

私と雪乃ちゃんが入っていくときは特に何もざわざわとはしなかったが、相模さんが前に立つとやはり周りがざわめき始める。

そこで私がすかさずその流れを切る。

手をパンパンと叩いて

 

 

「今から体育祭実行委員会での会議を始めます。私は現生徒会長の城廻といいます。

今回も文化祭に続いてサポートをしていきます。」

 

周囲の人は皆ちゃんと聞いている。

よしっ

 

「それでは役員の紹介をします。

今回の副委員長は雪ノ下雪乃さんです。

そして委員長は相模南さんです。」

 

 

そういって二人の紹介をする。

案の定南ちゃんのところでのざわつきが多い。

 

 

まあそんなことは元から予測できていた。

だから予定していた通りに行動するだけでいい。

 

 

「文化祭の件では多くの人に迷惑をかけてすいませんでした…。」

そういって南ちゃんが前に出て深々と頭を下げる。

 

 

集団の中では謝ったという事実が大事だ。

今回のような件では特にだ。

 

 

謝ることで責める人間の頭数を減らす。

これは奉仕部の三人と南ちゃん、私で話し合った計画だ。

今回の件では八幡くんや南ちゃんと直接関わりのない人が彼らの悪口を言っている。

ノリで他人について悪く言うという人たちだ。

この人たちは放置しておいても増え続ける場合多い。

 

 

逆に彼らにとってはその人物が誰かよりも、怒りをぶつけていい対象なのかどうかのほうが重要なのだ。

 

こいつは多くの人間に悪く言われているから、何をしようが構わない。

 

まずはそういう人たちの責めてくる理由をなくす。

これで大分被害は減るし、これからの悪口も減るはず。

 

 

「それとこの場をかりて、比企谷さんあの時はすいませんでした。」

八幡君のほうを向いて深々と謝る。

 

 

これには周りの人間も驚いている。

それはそうだろう。悪評を広めていた人間がそれを本人にこんな大勢の前で謝るなんて…。

普通ならありえないことだ。

 

 

そこに八幡君も

「…別に気にしなくてもいい。俺もあんなやり方しかできなくてすまない…。」

そう謝り返す。

 

聞いている人たちの中で何人か口を開こうとしている人間がいる。

 

まずいなぁ…ここで乱されると少し面倒だ。

私がそう考えていると、校長が

 

 

「何があったかは分からないが…。過ちは誰にでもある。

それを認めて次の糧にすればいい。

それができるのが若い人たちの特権だよ。」

 

 

そう優しく二人に話しかける。

校長がそういってくれたおかげで、口を開こうとした人たちも何も言わなくなった。

正直何も頼んでいなかったのに、ここまで生徒の反応を見てしてくれるなんて…。

心の中でお辞儀をする。

 

 

「話を遮ってしまったね。相模君それでは続きをよろしく頼むよ。」

そういってこちらに主導権を渡してくれる。

 

 

「はい。ではまず各クラスに対する準備の割り当てを決めていきたいと思います。」

 

会議のスタートはうまく切れたみたいだ。

ほっと一息つくと、雪乃ちゃんも安心したかのようにこちらを見て微笑んでいる。

 

「なんとか出だしはうまくいきましたね、めぐりさん。」

 

 

 

「そうだね…。あとは南ちゃんをうまくサポートしないとね!」

 

 

 

「ええ、まだ始まったばかりで気は抜けないですけどね…。」

少し不安そうに言う。

 

そうまだ序盤も序盤。

これからが正念場である。

 

南ちゃんのほうをちらりと見るが足は少し震えている。

それでもしっかりと事前に決めていたことなどを発表していく。

何人かからの質問にもちゃんと答えれているし、今のところは大丈夫そうだ。

 

・・・・・

・・・・・・・・・・

 

 

一日目は何もなく終わる。

まあやったことはといえば、次の会議までに体育祭の種目の案を出してくることと、それぞれのクラスに担当を周知することなので話し合いというよりは、こちらから頼むだけ頼んだという形だ。

 

それでも問題が起きなくてよかったというのはある。

 

 

「めぐりさん、お疲れ様です。」

八幡君がそういって声をかけてくれる。

 

 

「私は何もしてないよ…。相模さんの方が少し気になるかな…。」

なんだかんだ言っても足は震えていたし。

 

「たぶん大丈夫ですよ…。ほら。」

 

沙希ちゃんが南ちゃんの迎えに来ていた。

 

 

「川崎のおかげであいつは大丈夫だとは思いますよ。」

 

 

 

「そっか…。ならいいんだけれど…。」

私はまだ不安をぬぐいきれなかった。

 

まだ初日始まったばかり。

 

そして会議は荒れ始める。

 




次回 めぐりキレる

校長についてはスペック説明のところの話数に書いてあるのでそちらをごらんになってください。

今回はおっぱい回でしたね。え?違う?
この話を作る際に男女の友人たちで二時間近くおっぱい会議をしてました。
思わず中学生男子かよと思いましたよ…。

結果めぐぱいは、C寄りのDになりました。
私はDよりのCだと思うんですがね。
服の膨らみ方からして、D以上は絶対ないですし、かといってBだと小さすぎる…。
Dなら揉んでる感も出るし、ちょうどいいよね。とかそんな感じです。

完全には、はさめないけれど。
作者は純粋なのでナニを挟むのかはわからないんですがね?
本当ですよ?心は澄んでいますから。


【挿絵表示】

元ネタ知っている人いるのかな…?
女性ならわかるのかな…?

最後まで読んでくださりありがとうございました('ω')ノ


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会議(2)

やあ(´・ω・`)
久しぶりの連続投稿です。

UAが10万行きました!
お気に入り登録も900超えてなんか不思議な気持ちです…。
今月中になんとか完結させたいです!

あと数話ですがお付き合いくださると幸いです。

今回はめぐりんがおこりんになります。


ご指摘ご感想があればしていただけると幸いです。



八幡side

 

 

まずいことになったなぁ…。

今会議は絶賛荒れ模様である。

 

 

種目決めで決まったのが

「棒倒し」…各チームの色の棒を倒したら終わりというものである。

「千葉戦」…騎馬戦のようなもので大将騎には鎧のコスチュームを着なければならない。

 

「男子総勢での綱引き」…そのまんまである。

 

「障害物競走」…ネットの中をくぐったり、小麦粉の中から飴玉を探したり定番といえば定番だ。

 

他にもあったが大体この四つになった。

だがここで問題が発生した。

 

やたらと反対意見が出るのだ。

 

やれ予算がどうのだ。

けがをしたらどうする。

部活の大会が近い。

 

 

通年このぐらいなのかと聞くとそうではないようだ。

 

 

やはり相模の件か…。

簡単に言うと皆リーダーが気に食わないというのがあるのだろう。

 

そう簡単に払しょく出来はしないだろうが、ここまでとは…。

 

 

相模や雪乃、めぐりさんが答えてはいるが、なかなかうまくいかない。

 

 

まあこの状態ではどうしようもないだろう。

 

あいつが嫌いだから。

 

これがおそらく批判している奴らの原動力だ

 

世の中にはそんな理由だけですべてを否定する人間なんてたくさんいる。

OO人だから、何となく気に食わないから。

そいつ自身が言っていることが正しいとか正しくないとかは関係ない。

はじめからそんなもので判断してないからだ。

 

 

 

「てか、第一なんでお前が実行委員長なんてやってんだよ。」

 

「そうよ。逃げてたくせに。」

 

「一回謝ったくらいで調子のんなよ。」

 

 

もう体育祭のことは関係なくなってしまった。

ただの相模をつるす会になっている。

 

相模自身も手が震えている。

実際に相手の言っていることが間違いではない。

逃げたのも事実だ。

間違いではないのだが…。

 

 

だがそれでもカチンとくる。

今回の意見のうち大半は相模が考えてきたものだ。

 

他の人間はほとんど何も考えてこなかったくせに、反論だけは一丁前にしてくる。

しかもその反論の理由がついには小学生レベルにまでなっている。

 

 

まずいな…俺がなんか言って気を引くしかないのか?

俺が行動を起こそうと動こうとした瞬間。

 

 

 

 

ばしんという音が響く。

誰かが机をたたいたのであろう。

 

 

 

「ここは競技について話す場なんだけど。」

 

 

めぐりさんだ。

珍しく怒気をはらんだ声でそういった。

 

 

「今相模さんがしてきたことがいったい体育祭と何の関係があるのかしら?」

めぐりさんが周囲を見渡す。

誰も先ほどのように野次を飛ばさなくなる。

 

 

めぐりさんの言っていることが正論だからだ。

何も間違っていない正論は立派な武器として役立つ。

 

「この中の競技の大半を考えてきたのは相模さんだし、彼女は今ちゃんと仕事をしている。

それなのに反対意見しか出さず、碌な理由もないのに提案者が気に食わないからという理由の人はいないよね?小学生じゃないんだから。」

 

 

ここまで言った後ゆっくりと息を吐き雪乃と相模に

 

「二人とも今日はもうお開きにしよう。このままじゃ時間の無駄だし。」

 

雪乃と相模もオズオズとだがうなずく。

 

「それでは今日は解散します。明日までに反対意見があるなら理由を考えてくること。

高校生らしい理由をね?」

 

 

そしてめぐりさんの手をたたく合図で全員が戸惑いながらも帰り支度をし始める。

そんな中いっさい話し声が聞こえない。

 

 

「すごいな…。めぐりさんは…。」

思わずそうつぶやいてしまう。

 

 

前年度の生徒会長があの陽乃さんだったことで、よくだめだめだと言っているがそんなことはないと思う。

十分集団の扱いが分かっている。

こういう時にちゃんと道を正せるというのはすごいことだ。

自分に火の粉が降りかかるかもしれないのに…。

 

 

奉仕部の面々とめぐりさん、そして相模だけが残っている。

 

 

「めぐりさんが怒るなんてびっくりした……。」

結衣が改めて驚いたようにそういう。

 

「怖かったかな…?」

めぐりさんが結衣に聞くと

 

 

「ちょっと…でも正しいことだったからそんなに怖くはなかったです!」

 

 

「ええ、めぐりさんがいなかったらあのままでしたでしょうしね。」

そういって雪乃も結衣と同意見のようだ。

 

「その…ありがとうございます…。めぐり先輩。」

相模がおずおずとお礼を言う。

 

 

「気にしなくていいよ~。だってむかつくんだもん!!」

ぷんぷんと明るい雰囲気を出しているが、立っている足は少し震えている。

 

 

雪乃はそれに気づいたのか

「結衣、南さんちょっと先に帰るわよ。」

そういって二人に帰宅準備を促す。

 

「うちは沙希が来るまd……ちょっと雪乃さん!?」

 

「どうしたの雪乃!?」

そういってカバンを持った二人の腕をつかみ教室の外に引っ張っていく。

 

 

雪乃が教室を出るときに、ちらっと俺に目配せをしてくる。

俺はしっかりとうなずき、それにこたえる

 

「八幡、めぐりさん、また明日ね!!」

 

「比企谷もめぐり先輩もさよなら!!」

結衣と相模が元気よく答えながら教室を出ていった。

 

 

 

「どうしたのかな?雪乃ちゃん。」

不思議そうにきょとんとしている。

 

「めぐりさん、足震えてますよ?」

俺は静かにそういう。

 

 

「あはは……。ばれちゃったか。実を言うと少し怖かったんだ………。」

ぽしょりと言うめぐりさんは、さっきまでの生徒会長ではなく普通の女子生徒になっていた。

 

「情けないよね…。ごめんね、こんな姿見せちゃって…。」

そう言いうつむく彼女を見て

 

 

やさしくめぐりさんの背中に手を回す。

俺との身長差ならちょうどめぐりさんの頭が胸の位置に来る。

ゆっくりと抱きしめる。

 

「え…ちょっと、八幡君…?」

突然の俺の行動に戸惑ったのか、めぐりさんが腕の中でもぞもぞ動いている。

 

「めぐりさん、俺がよく不安だったときとかにこうしてくれたでしょ?

そのお返しです。」

 

そういうとめぐりさんはもぞもぞ動くのをやめて、ゆっくりと俺の背中に腕を回してくる。

 

「それに情けないって言ってましたけどそんなことはないですよ。

頼りがいのある先輩です。」

 

 

「そっか…。」

安心したように俺の胸に頭を押し付けてくる。

 

そして

「………頭…なでて……。」

めぐりさんがそうねだってくる。

 

「今日私頑張ったから…そのご褒美ぐらいくれてもいいんじゃない?」

上目づかいでこちらを見てくる。

 

反則だよ…それは…。

そんなことされて断れる人はいないでしょ…。

 

片方の腕を背中から頭に回し、優しくなでる。

柔らかい髪をなでると甘いにおいがふんわりと香る。

しばらくそのままでいた。

 

 

 

咳払いの音が聞こえる。

驚いて二人でそちらのほうを見ると校長がそこにいた。

 

「いや、あのでしゅね……。」

めぐりさんも突然のことに動揺しているのか言葉がうまく出てこない。

 

「そういうことは家でしなさい。ここだと誰かに見られてしまうよ?私のように」

そういって快活に笑いながら教室を後にする。

 

 

「か、帰りましょうか…。めぐりさん」

そういう俺の提案に

 

「う、うん、帰ろっか。」

めぐりさんも賛成してくれる。

 

 

ゆっくりと日が沈む中、俺とめぐりさんは一緒に帰ることにした。

 

 

雪乃side

 

 

めぐりさんの足が震えているのを気付いたのは、おそらく私と比企谷君だけだろう。

だから八幡君にめぐりさんのことを任せたのだ。

めぐりさんは八幡のことが好きだから…。

 

 

自分だって八幡のことが好きだが、この問題を解決するまでは協力すると他の二人にも約束した。

ただ少しうらやましいと感じてしまうが…。

 

 

途中で川崎さんと出会い南さんとは別れて帰ろうとしたが、南さんと結衣がカフェに寄りたいといってきたので、四人で向かうこととなった。

 

なんだかんだ言ってコミュニケーション能力の塊みたいな結衣は南さんが八幡の前で謝ってくれて以来仲が良い。

少し結衣を取られているようで嫉妬してしまうが、そこは大人の対応をする。

そうなるとカフェまでの道のり川崎さんと話さなければならなくなる。

 

 

だが私はおそらく彼女に嫌われている。

スカラシップのことで相手の立場を考えず言ってしまったからだ。

それにお互い話すのが苦手な人間である。

自然と会話なんてものは発生しない。

前を歩く二人とは対照的に気まずい空気が漂っている。

 

 

「あのさ、雪ノ下…。スカラシップの件ありがと…。」

唐突にそういってくる。

 

「別に私が何かをしたわけではないのだけれど…。」

正直戸惑ってしまう。

いくら八幡たちと仲良くなったとはいえ、素直に褒められるのにはまだ慣れていない。

 

 

「それにあん時あんたに失礼なこと言ったじゃない…。それを謝っとこうと思って…。

ごめん。」

 

 

「別に気にしていないわ。こちらが先に言ってしまったのだから悪いのはこちらよ。

そのごめんなさい。」

 

そういって素直に彼女に謝ることが出来た。

昔の私ならこうはすんなりいかなかっただろう。

彼のおかげか…。

胸の内に一人の少年の顔が浮かぶ。

たったそれだけであったかい気持ちになるのだから私も単純になったものだ。

 

「あんたが謝ってくれるとは思わなかったよ…。」

少し驚いたようにそういう彼女に

 

「失礼ね…。私だって謝ることはあるのだけれど…。」

むかついたのでむすっとしたような表情になる。

 

 

「悪かったって…、そんな怒らないでよ。」

 

「怒ってないわ、もともとこんな顔よ。」

 

 

すまし顔でいうと川崎さんが笑いながら

 

「やっぱりあんた変わったよ。」

 

と言ってくる。

 

「ちょっと雪乃さん!うちの沙希を取らんといてくれる?」

そういって南さんが川崎さんの腕に抱き着く。

 

「だれがあんたのだ。」

そういってデコピンで南さんをあしらっている川崎さん。

 

あなたも十分変わったわよ…。

そう思わずにはいられなかった。

 

「ねえ、雪乃。私ってネーミングセンスないのかな…?」

結衣が腕に抱き着きながらそう聞いてくる。

 

「どうしたのかしら?急に」

 

「なんか南と話してたらさ、猫に名前なんてつける?って聞かれたから

エリザベス二世って答えたら笑われたの…。」

真剣な顔で聞いてくる内容が内容だったので思わずクスリと来てしまう。

 

「ああ、雪乃もあたしの事ネーミングセンスないと思ってる!!

サキサキ!頼れるのはサキサキだけだよ!!」

 

「ごめん由比ヶ浜、あたしもその名前はどうかと思う…。」

 

 

「えぇ……みんなひどいよ…!!」

 

 

 

結衣の悲鳴が夕焼けにこだまする。

 

 

 

 

 

「ちなみに南はなんてつけるの?」

 

「アンデルセン」

 

南さんもネーミングセンスがないことが今日判明した。

 




最近めぐりんのイチャイチャが少ないからね無理やりねじ込みました。


もうひと波乱ふた波乱くらい起こそうか真剣に悩んでます。
前回だしたモブ女たちとか、また出そうかな…。
ただこれ以上波を立たせても、ダレルだけのような気もしますしね。

今回のイラストはいずれ書きたいと思っていたオリキャラです。


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でも書いてたらありきたりなのになるんですよね…(´・ω・`)

オリキャラで書いている人たちはすごいですよね。
どうやったら他にないネタとか思いつくのでしょうか?


最後まで見てくださりありがとうございました('ω')ノ









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会議(3)

やあ(´・ω・`)
シン・ゴジラのBGMを聞きながら書いているメガネコです。

最近一話からちょくちょく修正してます。
いらないところを削っているはずなのに文章量は増える。
なんだかんだと付け足しちゃっているからなんですけどね…。


今回で会議最終回です。


ご指摘ご感想あればしていただけると幸いです。


めぐりside

 

 

お昼休みにお弁当を食べながらの対策会議である。

今ここにいるのは私と奉仕部の三人と南ちゃんだ。

 

「でも結局どうすればいいんだろうね…?」

雪乃ちゃんが出してきた紅茶を飲みながら、結衣ちゃんが話を切り出す。

 

「もとはといえばうちのせいだし…。うちがみんなの前でもう一度謝るとか?」

南さんがサンドイッチを食べながらそういってくる。

 

 

「あまり意味はないと思うけれど…。それに前回すでに謝罪したことをもう一度言ってもね。」

雪乃ちゃんが悩ましげに言う。

 

「できることは全部やっているっていうアピールが必要だから、対策とかをちゃんとすることぐらいかな…。」

私が言うと

 

「実際そのぐらいなんですよね…。」

八幡君が唐揚げを食べながらそう言ってくる。

 

 

「救護班を作るとか?」

 

はいはいと元気よく結衣ちゃんが考えを出す。

 

「あとはルールをしっかり作って監視員をつけるとかも?」

南ちゃんも意見を出す。

 

「あとは地元の消防とかに協力してもらうとか?」

八幡君の言葉だ。

 

「それは学校側からお願いするしかないかな。できるかはわからないけど…。」

体育祭で消防が動いてくれるのかという問題は残っているが、やれることはやっていこう。

 

「あとはルールをより多くの人に知ってもらうとか、でしょうか?」

雪乃ちゃんも意見を出す。

 

 

「これぐらいだよね…。」

南ちゃんも困りながら言ってくる。

 

「千葉戦の衣装とかはどうしようか?」

と結衣ちゃんが卵焼きを頬張りながら聞いてみる。

 

確かに衣装の件について何も聞いていない。

 

 

「それは沙希がやってくれるみたいだぞ?海老名さんとかと協力して。」

と八幡君

 

「道理で沙希が楽しそうにしてたわけだ…。」

と南ちゃん

 

この会話からやっぱりライバルが増えたことを確認してしまう私。

雪乃ちゃんも少しジト目で彼を見ている。

そんなことに彼が気付くわけはないが………鋭いのか…鈍感なのか。

 

 

「サキサキなら大丈夫だね!姫奈もいるし!」

おにぎりを頬張っている結衣ちゃん。

ほっぺたを膨らませてハムスターみたいだ。

 

「結衣、ご飯粒。」

雪乃ちゃんがほっぺについたのを取っている。

ここは親子かな?

ほほえましいなぁ…。

妹とかいたらこんな感じなのかな?

 

「衣装のデザインは海老名さんがしてくれるみたいだし、明日にはどうにかなるだろ?

日にちだってそれなりに残っているし。」

八幡君がそういう。

 

「まあ今日も頑張ろうか!」

私がそういうと、みんなしっかりとうなずいてくれる。

 

・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

会議は三日目に突入する。

 

 

前回の私の注意を聞いてくれたのか、それなりの人間が自分なりに案だったりを考えてきてくれている。

その数は全体の半分近く。

 

 

『パン食い競争』……文字通りパンを食べる。

 

『借り物競争』……実行委員が適当に持ってくるものを書き、それを選手に取ってきてもらう。

 

『部活動対抗リレー』……部活動ごとの特色を生かしながら行うリレー。サッカーならドリブル。テニスならラケットで球をつきながら。 

 

 

前回の物に加えてこれだけの意見が出た。

少しずつだがいい方向に流れを持ってきている。

 

 

「では、この中からメインとなる種目を二つ決めます。皆さんがいいと思うものに二回手を挙げてください。」

 

南ちゃんが仕切る。

なんだかんだで三回目なので緊張せずにしっかり言えている。

 

 

 

 

集計した結果は

 

 

『千葉戦』……男子と女子で分かれてする。

 

当初女子限定だった『千葉戦』に男子もやってみたいというのが入った。

そのため千葉戦は男子、女子の二回行われるということで決定した。

 

 

     

大将騎を三騎用意し、ほかの人たちはそれを守るというもの。

一試合五分で二試合する。

大将騎を一人打ち倒すごとに10点入る。

 

この際に紅組の総大将は葉山君に。

青組の総大将は戸塚君にお願いすることになった。

2人とも快く引き受けてくれた。

 

そしてその二人以外の四人は、紅組からは戸部君と大和君が、青組からは八幡君とバスケ部の部長の桜木君が出ることになった。

八幡君ははじめ出たがっていなかったけれど戸塚君が説得することで出てくれるようになった。

 

女子の青組総大将は私、紅組総大将は三浦さんという子がしてくれる。

他のメンバーは青組は結衣ちゃんと雪乃ちゃん。

紅組からは海老名さんと沙希ちゃん。

に決定した。

 

 

そこで千葉戦をするとなるとケガが気になるという人たちが多くいる。

大半はやっぱり秋にある大会だったりコンクールだったりのことを気にしているようだ。体育祭は楽しみたいがもちろん部活だって大事だ。

 

 

そういう子たちのためにしっかりと説明する。

 

 

まずルールを厳格に決めること。

暴力行為などの禁止。

この競技を行う人にはルールをちゃんと知ってもらうこと。

 

競技を行う際の監視員の目を増やすこと。

 

救護班を保健の先生のもと保健委員を中心に作ること。

万一大けがをしても対応できるように消防にはあらかじめ協力を仰いでいること。

 

以上のことを報告する。

多くの生徒はそれで納得したようだが…。

 

少数の人達はいまだ不満そうな表情をしている。

しかし声に出して不満を言ってこない。

 

今は多くの人たちが体育祭に乗り気だからだ。

でも何か対策たてないとな…。

 

 

「千葉戦なんですけど、男子と女子の衣装を変えてみるのはどうです?」

そんな中、一人の生徒から案が上がる。

 

「例えば男子は西洋風、女子は和風のような感じで」

おおと周りから声が出る。

 

 

提案してくれたのは手芸部の部長をしている私の友人の佐藤千尋(さとうちひろ)だ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

こちらにウインクしてくる。

空気を読んで提案してくれたのだろう。

小さく手を合わせ感謝した。

 

 

「じゃあ、衣装案が出来たらそちらにお願いしてもいいですか?」

南ちゃんがそう頼むと快く引き受けてくれた。

 

「入場門とかかっこよくしたいです!」

 

「音楽とかどうします?」

 

「いやさすがにそれは……。」

 

「それある!」

 

 

 

徐々ににぎやかになっていく。

まるで去年の活気が戻ってきたかのように。

 

なんとなくうれしい。

自分の代でそういう風景が戻ってきて。

 

 

着々と割り振りが決まっていく。

救護班は保健委員の子たちが中心になり決め始め。

運動部は種目の道具などを作る人たちを集め。

文化部は手芸部を中心として衣装がきた時ように人数を割り振る。

 

皆が生き生きしている。

 

この日の会議はそれで幕を閉じた。

 

 

 

翌日から本格的に道具作りが始まった。

 

衣装のデザインは海老名さんという子と沙希ちゃんがしてくれたらしい。

 

男子の甲冑のデザインと女子のデザインはやはり派手だと思う。

 

総大将は他よりも目立っていて、

葉山君用、戸塚君用の二つが特別に用意されている。

 

葉山君のはいかついデザインでいかにも強そうな感じ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

戸塚君のは見習い剣士のような感じで、装甲も全体的に丸みがあるものが多い。

 

 

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八幡君たちの物はいかにも王様を守る騎士という感じでシンプルなデザインになっている。

 

 

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入場門は日本の城の入り口を元にデザインしてくれたらしい。

 

 

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材料は根元のほうに木の廃材を用い重くし、基本は発砲スチロールや厚紙などで装飾するらしい。

入場する際の大将騎は男子は西洋風の剣、女子はなぎなたをモチーフにした物を持ちながら入場する。

これはもちろん偽物だ。

その辺のおもちゃ屋で販売している模造刀でどうにかなる。

女子のも壊れている箒の柄の部分の先に発砲スチロールでそれっぽい刃を作ることで決まった。

 

意外と本格的だが、準備期間がそれなりにあるためうまくいくだろう。

 

 

 

沙希ちゃんが

「八幡サイズ測るからこっち来て。」

クイクイと手招きしている。

 

葉山君は海老名さんが、戸塚君は千尋がサイズを測っている。

 

海老名さんと千尋は趣味が合うらしく和気あいあいとした感じで話している。

 

「戸塚君は受けだよね、やっぱり。」

 

「いえいえ千尋先輩、案外攻めかもしれませんよ?」

 

「強気な王様に対して見習い剣士がこうグイッと行く感じね…。」

 

「そうそう一見ひ弱そうに見えて結構強気な感じで。」

 

「いいねぇ…。君とはいい友人になれそうだよ。」

 

「こちらこそです!先輩」

 

 

何やら受けだの攻めだの専門用語のようなものを使っている。

まあ楽しそうだし別にいっか!

 

にしても戸塚君かわいなぁ…。

あれで男の子なんだもんね。

手芸部の子たちのテンションが上がるのもわかる。

 

 

今は南ちゃんと雪乃ちゃんは保健委員の子たちと話し合っている。

結衣ちゃんも海老名さんと千尋のほうで話している。

 

絶賛暇な私はどうしようか?

 

八幡君のところにいこうかな?

そう思い周りを見渡すと、沙希ちゃんが八幡君とお話ししている。

 

「あんた意外と鍛えてるんだね…。」

そういってペタペタとさわっている。

少しだけ…ほんの少しだけうらやましい。

 

「そうか?大志だって運動しているからこれぐらいあるだろ?」

 

「いや、まだまだだよ。あんたこそ運動部でもないのになんで?なんかしてるの?」

 

「まあもともとボッチだったし、一人で何でもしなくちゃいけなかったからな。」

 

 

「今は違うみたいだしね。」

沙希ちゃんが、からかうようにそういっている。

 

「お前や彩加とかたくさん大事なのができたからな……。」

照れくさそうにしながら沙希ちゃんのほうに向かって伝えている。

 

「そ、そうだね…。」

顔を赤く染めた沙希ちゃんがいる。

 

その後も二人は家族の話などで盛り上がっている。

 

 

何だろう。

彼のことをよく知っていると思っていたのに…。

 

 

2人が仲良く楽しそうに話しているのを見るのは少しつらい。

 

彼はつらいことがたくさんあったんだ。

だから、お友達と楽しそうに話すのは喜ばなきゃいけないのに。

 

 

それなのに………

 

 

 

 

 

もっと私のほうを見てほしいな

 

 

 

 

 

そんな子供のわがままなような感情がわいてくる。

………嫌な女だな私。

 

 

頭からその考えをなくすように頭をプルプルと振る。

 

そんな時ちょうど南ちゃんが声をかけてくる。

 

「めぐりさん、消防の件で保健の先生がお話があるそうです。」

 

 

「うん、わかった。すぐ行くね。」

さっきまでの感情をなかったことにして、私は二人の待つところに向かった。

 

 

 

 

 

準備は滞りなく進み、ついに体育祭当日になる。

そこで一つの問題が起こる。

 

 




いかがでしたでしょうか?

夏に終わらせるために週3、4投稿しないと間に合わないことに気付いて焦っています…。
秋になったらソロキャンにいきたいなぁ…。

今回の鎧は女子用のがないのは、原作に出ているからです!
決して思いつかなかったとかじゃないです…。

後次回以降もう出てこないであろうオリキャラを出しました。


次回は体育祭本番です。
さすがに準備を伸ばしてもダレルだけだしね…。

最後まで見てくださりありがとうございました!


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体育祭  前編

やあ(´・ω・`)
お久しぶりの、メガネコです!
前回より時間が空き申し訳ない…。
FGOしてたわけではないです!本当です!!


それはともかく、今回から体育祭です。
中途半端に長くなったので前後編に分けてます。


ご指摘ご感想があればしていただけると幸いです。




 

めぐりside

 

 

 

いよいよ体育祭当日。

天気は快晴。

雲一つない秋晴れの空。

 

そんな天気なのに実行委員の表情は曇っている。

 

今グラウンドの方で何かあったという報告が来て、実行委員全員が向かっている。

 

聞いていた場所につく。

 

 

「うわっ……。」

結衣ちゃんがそう声を漏らす。

 

私も固まってしまう。

 

 

当日メイン種目やほかの種目で使われるはずだった入場門が壊れている。

 

正確に言うと倒れてしまっている。

おそらく倒れた時の衝撃で屋根の部分が折れてしまったのだろう。

この入場門は根元の部分は木材を使っているし、屋根の部分がいくら発砲スチロールといえど相当な風でも吹かない限り倒れないはずだ。

 

 

 

誰かが倒した。

 

 

 

これしか考えられない。

門を作るのを担当していた子たちは朝来ていた時には倒れていたと言っている。

一体誰が…?

 

 

 

「ど、どうしましょう……。」

入場門の製作の班長の子がアワアワしながら聞いてくる。

ご丁寧に紅組と青組それぞれの門が壊されている。

どの門も作るのには、かなりの時間がかかった。

 

 

「今から直せる………訳はないか…。」

ぽつりと言葉が出る。

 

 

今から直せるわけはない。

材料もこんなに大きく壊れてしまっていては、おそらく足りない。

 

かといって門がないというのも…。

 

 

「どうしたんですか?この騒ぎ。」

 

 

この子は確か…。葉山君か。

朝から運動部の子にはテントなどを立てるのを手伝ってもらう予定だった。

 

 

「葉山君か。入場門が壊れちゃってて…。朝誰か見てない?」

 

 

少し考えるそぶりをして

「いえ、誰も見てないです…。力になれずすいません。」

すまなそうにこちらに言ってくる。

 

 

 

「誰だよ、くそっ!」

「ふざけんなよ…。」

「せっかく作ったのに…。」

「やったやつ探そうぜ!」

 

 

徐々に騒ぎが大きくなる。

 

「みんな落ち着いてください!」

南ちゃんや雪乃ちゃんがそれぞれ押しとどめようとする。

 

 

「じゃあ、どうすんだよ。」

 

 

いろんなところからそういう声が広がり始める。

 

 

 

体育祭の開会式が始まるまで後一時間。

 

 

騒ぎがこれ以上大きくなる前に他の解決案を出さないと…。

 

 

 

 

八幡side

 

 

 

「まずいな……。」

思わずひとりごちる。

 

 

入場門が壊されている。

 

 

やった人間に関してはめぼしはついていない。

というか多くの人間が乗り気になっている状態のこのタイミングでこんなことをする意味は?

 

 

普通なら周囲にけんかを吹っ掛けるようなものだ。

 

 

それなのにした。

 

 

よりによって当日に。

 

 

 

となると今回の件で何か個人的な恨みがあるやつ。

 

 

俺か?

はたまた相模か?

 

 

 

まあ今考えても仕方ない。

入場開始まで一時間。

今のところめぐりさんをはじめとする実行委員が周囲を押しとどめているが時間の問題だ。

 

 

 

せっかくのめぐりさん最後の体育祭。

 

 

なんとか成功させたい。

 

 

 

そう考えて俺は門をもう一度見る。

屋根の部分はボロボロだが、柱部分は壊れていない。

柱だけなら使えるか?

 

 

 

よし。

 

 

 

俺は柱の製作をしていた班長の人に

「壊れた柱と屋根の部分の断面を塗るのだったらどれくらい時間がいりますか?」

そう聞いてみる。

 

 

戸惑いながらも

「え、えっと断面を塗るぐらいならすぐできるけど…。」

すぐに答えてくれる。

 

 

「ならお願いしても構いませんか?せっかくの作品ですし、このまま処分はもったいない。

使えるところは使いましょう。」

 

 

そう提案する。

 

 

「そうですね。わかりました!みんなにも伝えてきます。」

快く承諾してくれた。

班長さんが製作の人たちをまとめてくれる。

 

 

 

残りは今来たばかりの連中か。

 

 

「皆さん、後は実行委員の方で処理させていただきます。なので今は持ち場に戻ってください。」

俺は声を張り上げていう。

 

 

「でも…。」

「せっかく作ったのに…。」

 

 

まあ、そりゃそうだよな…。

俺は知名度が高いわけではないし、カリスマがあるわけでもない。

なかなかすぐに、はいそうですか、とは言ってくれないだろう。

 

 

「でも、今は彼らに任せてみないかい?ここで僕らが騒いでいてもほかの作業の子の邪魔になるし。」

 

 

そういって現れたのは葉山だった。

正直こいつのことはそんなに好きではないが、今は助かる。

 

 

「葉山君がそういうなら…。」

 

 

葉山が説得を重ねるにつれて、少しづつだがギャラリーが戻っていく。

 

そんな葉山にめぐりさんが

 

「ありがとう!葉山君助かったよ!」

 

 

嬉しそうにそうお礼を言っている。

 

 

それに笑顔で葉山が答えている。

 

 

 

なんか無性に悔しい。

こういうのを嫉妬というのだろうか?

なんだかもやもやする……。

 

 

 

 

 

だが実際葉山がいなかったらもっと手こずっていたのは確実だ。

 

 

仕方ない………礼ぐらいは言っておくか。

 

 

そう考え俺は葉山に近づく

 

 

「あんがとな…。お前のおかげで助かったよ。」

 

 

葉山が驚いたような顔でこちらを見てくる。

 

 

なんでそんなに驚くんだよ…。

 

 

「あれか?何か俺の顔についているのか?」

不機嫌そうな声が出る。

 

 

「いや、君からお礼を言われるとは思わなかっただけだよ。だから言われて少し驚いた。」

苦笑しながらそういってくる。

 

 

「おいおい、俺はそういうことはちゃんとするタイプだぞ?」

おどけながらそう返す。

 

 

「昔の君ならそういうことはしないさ。特に僕にはね。」

 

 

「それは否定しないがな…。」

まあそうだけど…。

 

 

俺は薄っぺらいこいつをあまり好きではない。

 

 

そんなやり取りをしていると

「そこの二人少し手伝って!」

そう呼ばれる。

門の修理に人手がいるみたいだ。

 

 

「「すぐ行きます!」」

俺たちは同時に返事を返す。

 

・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・

 

ついてないことに葉山の隣で作業をすることになった。

まあ二人同時に呼ばれたのだから当然といえば当然だ。

作業といっても屋根との断面のところにスプレーを吹きかけ、きれいに見せるだけなのだが。

 

しばらくの無言のあと

 

「君は変わったな…。文化祭の時からそんなに経っていないというのに。」

小さくそう葉山がつぶやく。

 

 

「いろいろあったんだよ。」

ぶっきらぼうに答える。

実際にめぐりさんにいろいろ助けられたしな。

 

 

「変わろうとしなかった君がそこまで変われたのか?」

真面目な表情でこちらにむいて言ってくる。

普段の穏やかだけれど、どこかうすい言葉ではなかった。

 

 

こいつもこいつで思うところでもあるのだろう。

 

 

いつもみんなの葉山隼人として演じているのだから。

 

 

案外今の自分を変えたいとか思っているんだろうか?

 

 

「文化祭の件で懲りたんだよ…。」

とぼけたようにそう返す。

 

 

「それだけではないんだろ?」

そんな俺に構わず真面目に聞いてくる。

 

 

こんなことを言うのは俺のキャラじゃないんだが…。

 

いつになく真面目なこいつに影響されたのか、素直に答えてしまう。

 

「一番の大きな理由は、『心の底から信じてもいい頼ってもいい』そう思える人に助けてもらえたことかな。」

 

 

葉山は小さくうなずき先を促す。

 

 

「そこでやっと心から人を信用したりできるようになった。

それに変わりたいと思ったんだ。」

 

 

自分で言っててとても恥ずかしい。

なんだろう後でもだえるくらいには恥ずかしい。

 

 

「………そうか。」

 

 

何か葉山は考えた後、こちらに手を差し出してくる。

 

 

「俺と友達になってくれないか?」

 

 

 

俺はその手を取らない。

 

 

「遠慮する。」

 

きっぱりとそう告げる。

うすっぺらい面をかぶっている今のこいつとは、そんな仲になれるはずがない。

 

 

「そうだよな…。そういうと思った。」

苦笑いしながらこちらを向いてくる。

そういうと思った、というように。

 

 

「今はな。」

 

 

「えっ……。」

葉山が驚いたように固まる。

 

 

「今のお前とはそんな関係になるつもりはない。

ただ少しでも変わったら考えないでもない………。」

 

 

本当にらしくない。

 

「変われると思うか、俺は?」

 

 

 

「俺でも変われたんだ。

お前の周りにも、ちゃんとお前を見てくれる奴はいるだろ?

後は変わろうと自分で思えるか。それだけだ。」

 

顔を背けながらそう答える。

 

 

「まさか、君にそんなことを言われる日が来るとはな…。

かなわないな…本当に…。素直に君に嫉妬するよ。」

 

そういって笑う葉山の顔はどこかすっきりとしている。

 

 

嫉妬か…。

普段よりはずいぶん人間臭いことを言うようになったな。

 

 

 

「そうかい。お前にそういうことを言えるぐらいには俺も変われたってことさ。」

 

 

おどけたように返す。

 

 

「まあ、いいさ。城廻先輩とのことを応援してるよ。」

そう笑いながら俺に向かって言い、塗り終わったのか立ち去っていく。

 

 

ん?

 

 

もしかしてバレた……。

畜生……なんか悔しい……。

 

してやったと思ったんだが、さすがリア充の王。

 

 

「あいつとだけは友達になりたかねえな…。」

苦笑いしながら思わずそうつぶやく。

 

 

 

校庭には海老名さんの「はやはち!」の声が響いていた。

 

 

 

あの人ほんと抜け目ないな…。

 

 




葉山が難しい…。
まあ葉山の意識を変えてやるというのもこの作品でしたかったことなのでやれてよかったという感じです!

FGOガチャ今回は課金しようかと真剣に悩みました…。
アルトリアさんと玉藻さんが来て宝2になったけれど、清姫とマルタのほうがホシカッタ。
期間限定か………。


次回は途中までできているのでこんなに遅くなりません!(予定)


最後まで見てくださりありがとうございました!


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体育祭  後編

やあ(´・ω・`)

退院してから仕事に復帰したんですが、なかなかきついですね…。
体力の落ちが激しい…。帰宅してからSS書く力がほとんどないです。

そんなこんなで投稿スピード落ち気味ですいません。


今回で体育祭終了です。

ご指摘ご感想があればしていただけると幸いです。
 
※お気に入りが四桁行きました!
たくさんの人に読んでいただけているようでうれしい限りです!




入場門は柱だけを利用し、その代わりに女子が入場するときは男子の大将格が、男子の入場の時は女子の大将格が、それぞれ門番のように立つことが決まった。

 

 

まあ衣装のクオリティは、なかなかのものだし見栄えするからとっさにしては良い意見だ。

 

今は青組、紅組ともに接戦である。

取っては取られ、またとって。

 

紅組145点

 

青組138点

 

わずかにこちらが負けてはいるが、それでもまだ逆転できる点差である。

 

 

そして最後のメインの千葉戦が始まる。

 

 

 

俺は衣装に着替え彩加やバスケ部の桜木と門の前でハルバードを構えて待っている。

 

何度も着せられては調節しを繰り返してきたので恥ずかしさというのがなくなってきている。

彩加は依然もじもじと恥ずかしそうだってが…。

 

アナウンスでは次に行われる千葉戦のルールなどを紹介している。

 

 

総大将の鉢巻きを取ると15点

大将騎は10点

一般の馬は1点

の得点となっている。

試合時間は男女3分づつ。

先に女性陣が試合をし、最後に男性陣が試合をする。

騎馬から落ちたりした場合は、安全のため試合を途中で抜ける。

 

などなど。

 

紅組青組の総勢で行うためかなりの数の馬が出ることになるので当然と言えば当然だ。

 

 

 

女性陣は今音頭をとっている最中である。

大将騎以外はそれぞれの組の色のTシャツを着ている。

終わった後にはそれに記念にみんなで寄せ書きとかをするそうだ。

 

こちらの女性の総大将はめぐりさん。

大将騎に結衣と雪乃の二人がいる。

 

 

ちらりとめぐりさんの方を見る。

女子の衣装は和風の衣装であり、巫女服の下のスカート状のものを短くしたようなものを着ている。

ニーハイで足を隠しているといえ、絶対領域が存在する。

 

 

まあ平たく言えばごちそうさまです。

 

 

音頭が終わった後、入場門に整列し始める。

 

めぐりさんが近くに来た時にこちらに向かって親指を立てサムズアップしてくる。

こちらもそれにこたえる。

 

 

平塚先生が台に上りほら貝をふく。

顔がものすごく生き生きしている。

 

 

ぶぉおおおおおおお

 

 

ほら貝がなり、入場が始まる。

でも言っちゃ悪いがとんでもない顔をしている。

お嫁にいけなくなるんじゃないだろうか…?

 

 

こら!そこ!そんなことしなくても結婚できないとかいうんじゃない!

 

 

こちらを少しにらんでいるように感じたが気のせいだろう…。

 

 

グラウンドに整列し始める両軍。

衣装がしっかりしているのと、数の多さでなかなか迫力のある構図となっている。

 

 

校長が台の上に立ち

 

「両組、お互いに礼!」

 

剣道をしているだけあって、マイクなしでも声がよく響いている。

 

「それでは、始めっ!」

 

それに合わせて平塚先生がほら貝をふく。

 

ぶぉおおおおおおおおおおおおおおお

 

先ほどの物より長い。

 

 

ここでアナウンスの実況がつく。

葉山取り巻きの三人組だ。

 

「両軍の戦いの火ぶたが今切って落とされたぁああ!!」

戸部の威勢のいい声が会場に響く。

 

 

そんな実況を聞きながら両軍を見てみる。

 

紅組はなかなか動きが速い。

群れで動くというよりは、個々で動くといった感じだ。

 

 

我々の間には、チームプレーなどという都合のよい言い訳は存在せん。 有るとすればスタンドプレーから生じる、チームワークだけだ。

 

 

どこかのお偉いさんもそういっていた。

 

対してこちら青組。

5騎で一組という感じでうまく相手から鉢巻きを奪っている。

 

連携して取っている分青組が押している。

 

お客さんはそんな様子に声を大きくして応援している。

 

 

そんな中大将騎同士の戦いが行われていた。

 

結衣vs海老名さん

 

「結衣~。遊びましょ~」

 

にやりと笑いながら結衣の方へ近づいていく。

何だろう不気味だ…。

 

「ちょっ…雰囲気いつもと違うし!!」

アワアワとしながらも声のする方に向きいつ来てもいいように態勢を整える。

 

 

「あ、あれ!!UFO!」

そういって見当違いの方を指さす。

 

いやいや!今どきそんなことに引っかかる子いませんよ!!

 

「えっ、どこ!?」

 

 

いましたね。すいません。

純粋だしな…。結衣は。

 

 

「ちょっといないy……。って、あぶな!?」

もうちょっとのところで気付いた結衣が上体をそらして回避する。

 

「くっ、もうちょっとだったのに…。」

悔しそうな海老名さん。

 

「ズルはなしでしょ!!」

 

 

こちらはしばらく膠着しそうだ。

 

 

ふと目をやると三浦がものすごい勢いで鉢巻きを取っている。

 

三國○双の呂布かよ!

 

思わずそう突っ込んでしまうぐらい強い。

目の前から二騎同時に来た時も一人目をかわし、二人目の鉢巻きを先に取り、後ろを向いている一人目の鉢巻きを取る。

 

紅組から歓声が上がる。

 

 

「あーし、最強なんで。」

自慢するでもなくこともなげに言い、髪をなびかせる。

 

 

でもね、あーしさん。

照れているのか少し顔が赤いですよ?

 

その声に押されていた青組が盛り返し始める。

 

そんな中一人の騎馬が正面に立つ。

 

「最強なら私の相手をしてもらえるかしら?」

凛々しくそう言い放ったのは雪乃。

その手にはこちらもたくさんの鉢巻き。

 

 

関羽なのん?

三○無双の関羽なのん?

 

 

お互い静かに見合っている。

 

その様子を周りにいる騎馬は息をのみながら見ている。

 

 

そして両方が動く。

 

三浦が驚きの声を上げる。

 

「ッ!?」

 

 

雪乃と近づいたときに伸びてきた腕の速さに驚いたのだろう。

 

「あーしじゃなかったらやられてた。」

のちにそう語っている。

 

 

なんとか交わした三浦に冷静に追撃をかける雪乃。

三浦はそれを防ぐためにがっつりと雪乃の手を握る。

 

つかみあった状態になれば力が弱い雪乃に勝てると踏んだのだろう。

 

にやりと口角を上げ笑う三浦。

「あーしの勝ちだね。雪ノ下さん。」

 

 

そんな声に静かに返す雪乃。

 

「戦場で油断は禁物よ?三浦さん。」

にっこりと微笑み返す。

 

 

すると次の瞬間三浦が騎馬から落ちていた。

 

そして頭に着けていた鉢巻きを雪乃が持っている。

 

「え………。」

三浦は固まってしまっている。

 

 

合気道か…?

あまりのことにわからなかったがきっとそうだろう。

 

「あなたは弱くはなかったわ。私が強かっただけ。」

そう三浦に語り掛ける。

 

 

そうだ。この人負けず嫌いだった。

 

青組側から歓声が上がる。

 

 

そんな中紅い着物姿がスーッと雪乃の背後に動いていく。

混戦の中誰も気づいておらず、また雪乃も安堵しているのか気付かない。

 

 

沙希だ。

 

 

持ち前の静かさと個人プレーの強さでこっそりと近寄っていく。

 

あと少しというところで、青組の総大将めぐりさんに止められる。

 

「私は誰にも負ける気はないからね?沙希ちゃん!」

元気よくめぐりさんが言う。

 

 

「あたしも引く気はないですよ?めぐり先輩。」

それにフッと答える沙希。

 

 

 

めぐりさんは周りに指示を出して、複数で沙希を倒すようだ。

確かにズルいと言われるかもしれないが、集団戦においてその利を生かすのは重要なことだ。

 

 

めぐりさんと同時に二騎が動く。

 

一騎目が正面、二騎目が左側面から同時に鉢巻きを取ろうとする。

 

難なく沙希はこれに対応する。

そしてめぐりさんとの一騎打ち。

 

沙希とめぐりさんでは運動の得意さが違う。

徐々に追い込まれるめぐりさん。

 

「この勝負はあたしの勝ちですね!」

そういってめぐりさんの鉢巻きを取ろうとする。

 

しかし、めぐりさんはにっこり笑って

「負けは沙希ちゃんだよ!」

 

そういうと沙希の頭から鉢巻きが消えている。

 

 

後ろには雪乃。

そうめぐりさんは自分をおとりに使ったのだ。

 

雪乃とめぐりさんがハイタッチをしている。

 

その時終了のほら貝が鳴る。

 

獲得した得点

 

紅組:大将騎 1騎

  :一般兵 46騎

合計得点 56点

 

青組:総大将騎 1騎

  :大将騎  1騎

  :一般兵  39騎 

合計得点  64点

 

 

こちらが一点巻き返した。

 

 

「ごめん……あたしが負けてなければ…。」

結衣がすまなそうに言う。

 

「それでも勝ったのだから上出来よ。」

雪乃は肩で息をしながらそう励ましている。

 

「巻き返したんだし、気にしない気にしない!」

ポフポフと結衣の頭をめぐりさんがなでている。

 

 

「後は頼んだわ。八幡。」

雪乃がこちらに向かってそういう。

 

「ファイトだよ!八幡!」

結衣が元気よくそういう。

 

「ケガしないようにね!八幡君!」

めぐりさんも笑顔でそういってくる。

 

 

「了解っす。」

 

さて頑張りますかね。

 

 

 

先ほどと同じように一回目のほら貝でグラウンドに並ぶ。

 

こちらの作戦としてはなるべく点を取らせない。

これに尽きる。

彩加をディフェンスに定評のある大将騎:桜木に任せ、俺が大体半分を引き連れ突撃する。

二つの大きな集団を作り対応するということだ。

 

 

彩加が俺と桜木の方を向いて

「頑張ろうね!二人とも!!」

 

 

「「おう」」

と二人そろって元気良く返す。

 

 

その時二回目のほら貝がなる。

 

 

決戦の始まりだ。

 

 

 

 

俺と半分くらいの騎馬が青組に向かって突撃する。

 

だがさすが葉山というべきか、即座に対応する。

さすが普段からチームプレイが慣れているだけあってうまい。

 

 

せめてくる大将騎が一人と知ると自分の大将騎二騎と三分の二を青組にせめるように指示をしている。

 

 

どちらも膠着状態。

攻めているはずのこちらはなかなか攻めきれず。

あちらもうちのディフェンスの前でうまく攻めれない。

 

 

 

一般兵を五人ほど倒したがなかなかキリがない。

早く総大将を落とさなければ…。

 

 

「八幡よ!我に任せろ!!」

 

 

「材木座!?」

 

 

材木座が上にのっている騎馬がそう答える。

なぜ材木座が上にのっているかというと下の連中が相撲部だからである。

 

 

ガタイの良さならおそらくこの学校一の人たちだ。

 

そんな奴らが集団に突っ込む。

必死に葉山を守ろうとしているが、いかんせん力が違う。

 

 

「我こそは剣豪将軍なりぃいいい!」

次々と鉢巻きを奪っていく材木座。

 

だがそんな猛攻も数の前では無意味である。

徐々に押されしまいには、鉢巻きを取られていた。

 

 

材木座はやられたが、おかげで道ができた。

 

 

「このまま突っ込むぞ。」

 

周りの騎馬にそう言い突撃する。

 

 

 

そして葉山に向かう。

 

鉢巻きを取ろうと手を伸ばすが、その手を握られる。

「君にだけは負けたくないな…。比企谷君。」

 

そういって押してくる。

 

 

「お前にだけは俺も負けたくないね。」

 

俺も押し返す。

 

運動部じゃないとはいえこちらだって鍛えている。

そう簡単に負けるか…。

 

 

 

 

なかなか決まらない。

もう10秒ほどで試合が終わる。

 

 

 

そんな中葉山の馬をしている一人がつまずく。

葉山が落ちそうになる。

 

「くっ…。」

 

バランスを崩し葉山が倒れる。

 

こいつには秋の大会がある。

葉山はサッカー部のエースだ。

こいつが出れなければうちの学校は勝ち抜くのに貴重な戦力を失う。

 

 

とっさに体が動き、葉山をかばう。

 

 

 

 

「いてて………。」

そういいながら目を開ける。

 

 

肘を擦りむいたが大した傷は負っていない。

 

上にのっている葉山も特にケガはしていないようだ。

そして葉山の手には俺の鉢巻き。

おそらくたまたま取れたのだろう。

本人が一番驚いているしな。

 

 

 

「僕の負けだよ…。比企谷君。」

そういい葉山が苦笑する。

 

 

終了のほら貝が鳴り、拍手が送られる。

 

・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

葉山をかばってケガをしたので俺はめぐりさんに連れられ保健室にいる。

大したケガではなく擦りむいた程度だったので遠慮したのだが、めぐりんパワーに押されてきてしまう。

 

夕日がさす保健室に人は見られない。

他の人たちはテントやその他の道具をかたづけなどで、グラウンドをせかせかと動いているのが見える。

 

 

俺が椅子に座ると

「はい、ケガした肘を見せて。」

そういってめぐりさんが消毒液片手にこちらにやってくる。

 

 

そして俺の前に椅子を置き、向かい合うように座る。

慣れたような手つきでシュッシュッと消毒液を傷口に塗る。

そのたびに多少しみるがここは我慢。

 

 

そんな中俺は一つ気にしていることを謝った。

 

 

「最後の最後で負けてしまってすいません…。」

 

 

今回めぐりさんは最後の体育祭だったのだ。

それを負けにしてしまった原因は俺にある。

 

 

「気にしなくていいよ!私は今回の体育祭今までで一番楽しめたから!」

 

 

満足そうにこちらに笑いかける彼女に嘘は見られない。

 

 

「でも…………。」

俺が気にして言葉をつづけようとした時。

突然ひじに痛みが走る。

思いっきりケガしたところに強く消毒液をあてられる。

 

「っ…!」

 

その痛みに顔をしかめていると、ぽさりと頭に手が置かれ、よしよしとなでられる。

 

 

「八幡君のおかげでここまで成功したんだよ?感謝しかしてないよ。」

穏やかに微笑みながらそういってくれる。

 

 

「そんな別に俺だけのおかげでもないですよ…?」

未だに素直に褒められているのに慣れていない俺はそう返してしまう。

 

 

少しめぐりさんがこちらに近づいてくる。

そっと俺の背に手を回し、抱きしめてくれる。

 

 

「それでも君はよく頑張った。大変な時にありがと。」

 

 

耳元で小さいけどしっかりと言ってくれた。

 

 

俺もゆっくりと華奢な腰に腕を回す。

「俺からもいろいろとありがとうございます、めぐりさん。」

 

優しい匂いが鼻をくすぐる。

服越しでも柔らかさを感じる。

 

 

 

ずっとこうしていたい。

 

 

そんな気持ちがふと胸に浮かんだ。

 

が、そんな中急に腕の中でめぐりさんがモゾモゾと動き始める。

疑問に思っていると

 

 

めぐりさんが

「その………今私………汗かいてるから…。」

そういって顔を赤くしながらこちらを見上げてくる。

 

 

「汗のにおいなんて感じないですよ?」

くんくんとうなじの辺りをかぐが甘い匂いしかしない。

 

 

「ちょっと………!?」

目を潤ませながらイヤイヤと抵抗するめぐりさん。

 

 

 

そんな至福の時間を邪魔するものが、扉を開けてこちらに入ってくる。

 

 

「おーい!比企谷と城廻いるんだったr……………?」

 

独神(平塚先生)だ。

見事にこちらを向きながら固まっている。

 

 

「ま、まあ…私が学生の時もこんなことあったし…。全然悔しくないし………。」

そういいながらゆっくりと後ろを向き、トボトボと帰っていく。

 

 

 

そのすすけた後ろ姿を見て、誰かもらってあげてと切実に考える八幡であった。

 

 

平塚side

 

 

「変わったな…比企谷は…。」

 

私は思わず、そうつぶやいてしまう。

一人の生徒が良い方向に変わっていく。

 

そんな場面を自分が見ることが出来たのをうれしく思う。

 

 

「君もずいぶん変わったよ…。平塚君。」

熊田校長がそういってくる。

 

この人は自分が高校時代の時担任だった人だ。

恩師ということになる。

 

「不良だった君が、教師をしているんだからね。」

にこやかに笑いながらそういってくる。

 

「ぐっ………昔の事ですよ…。」

あれは自分の黒歴史だ。

 

これ以上話していてはまた何か言われる。

そう思った私は近くにいた由比ヶ浜に話しかけ

 

「城廻と比企谷はどこにいる?」

と聞く。

 

 

「えっと……保健室だと思います。」

 

「なら呼んできてくれないか?打ち上げの件で話がある。」

 

 

「わかりました!」

元気に返事をし、由比ヶ浜が呼びに行く。

 

・・・・

・・・・・・・

 

 

校長との昔話が終わり、まだ帰ってこない由比ヶ浜に疑問に思い保健室に向かう。

 

 

由比ヶ浜は保健室の前で立っている。

 

「おい、由比ヶ浜?二人はいt」

言い終わる前に、由比ヶ浜が

 

「い、います。そ、それじゃ、あたし片づけに戻ります。」

 

そういって走り去る由比ヶ浜の声は涙ぐんでいた。

 

 

 

ますます疑問に思い保健室の扉を開ける。

 

 

2人が抱き合っている。

 

 

 

そんな保健室を後にしながら思わず言葉が出る。

 

 

「大丈夫だとは思うが………。」

 

由比ヶ浜が泣いていたのは『そういうこと』だからだろう

 

自分の独身に悲しみを覚えるとともに、奉仕部の若い三人の関係を少し案じてしまう。

 

「どうなることやら…。」

小さなぼやきが人がいない廊下に響く。

 

 

 

 




平塚過去 
【挿絵表示】



次回からは2人のヒロインとのデートになります。
ただそのデートに向かう気持ちなどに大きく差が出てきます。

また一人の姉御肌ヒロインは二人と違った形で結果が出ます。
四人とも状況がバラバラで結末もそれぞれ異なったものになります。

残り四話ですが、最後まで付き合ってくださると幸いです。


最後まで見てくださりありがとうございました('ω')ノ


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28話

お久しぶりです(´・ω・`)
誰だよ?と思った方もいるかもしれないけど、メガネコです。
バイクの免許取ったり、キャンプしたりといろいろしてました。


というか、雪乃さん書くの難しいです…。


あと投稿してない間に、評価をしてくださった方、お気に入り登録してくださった方、感謝感謝です(*'ω'*)


ご指摘ご感想があれば、してくださるとありがたいです。




雪乃side

 

 

体育祭が終わった後、私と結衣、めぐりさんの三人で話し合った。

 

何を話し合ったかというと八幡の事だ。

三人とも狙っている相手が同じ。

せっかく仲良くなったのに、こういうことで争って疎遠になるのはつまらない。

だから三人で決めた。

 

 

「お互い後悔しないようにしよう」と

 

 

私と結衣さんは彼と二人で過ごしたことがめぐりさん程ない。

長い時間ともにいたはずなのに…。

 

 

だから私たちは機会をもらった。

 

 

彼に振り向いてもらうための機会を。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

時刻はお昼を少し過ぎたところ。

体育祭の終わった後の休日。

天気は秋晴れで、穏やかな風が時々ふく。

出かけるにはちょうど良い日だ。

 

 

私は部員?親しい人?の八幡とのデ、デートの日だ。

待ち合わせの時間よりも少し早い。

 

 

といっても彼と単純に猫カフェに行くだけなのだが…。

前日はいろいろそわそわして寝付くのが遅くなった。

らしくもなく緊張している自分に思わず苦笑い。

 

 

いつもと恰好が違う。

というか気合を入れている。

 

 

姉さんが進めてくれたプラン通りに今日は、デートを行う予定だ。

相手がデートと思ってくれているかは、わからないけれど…。

そもそもあの男は自分のことになると、とことん鈍くなる。

結衣のことなんてはたから見れば、わかりそうなものだけれど…。

 

 

 

まあ、そういう人に惚れているんだけれどね。

 

 

 

今日は珍しくうっすら化粧をしている。

服装も秋らしいおとなしめの服装。

化粧なんてしたことなんてなかったけれど、姉さんに頼んで教えてもらった。

 

 

電話越しでの姉さんの普段聞けない驚いた声を聴くことが出来たのは少しうれしかった。

普段さんざん驚かされているのだから、たまには驚かすのも悪くない。

 

 

「へっ!?雪乃ちゃんなの!?雪乃ちゃんなんだよね!?あの頃の図々しい雪乃ちゃんを返して!!」

 

 

ただなぜなのだろうか、馬鹿にされている気がするのは気のせいだろうか…?

まあ昔は確かに素直でなかったけれど…。

 

 

驚きながらも今日ちゃんと来てくれて化粧をしてくれた。

あれだけ楽しそうな姉さんを初めて見た。

鼻歌まで歌い、小躍りしていた。

 

 

 

まあ普段よりも元気よく絡んでくるのが、多少うっとうしかったのだが…。

 

 

それでも、感謝はしないではないこともないこともないわね。

 

 

お土産とか買った方がいいのかしら?

でもよくよく考えれば姉さんの好みってよく知らないのよね…。

猫は好きなのかしら…?

犬が好きと言っていたけれど…。

 

 

理由は従順だから。

 

 

 

 

犬はなしね。

 

 

 

私は静かにそう結論づけたときに彼がちょうど来た。

 

 

時刻は待ち合わせの五分前。

時間前にちゃんと来てくれるというのは昔から。

根のいいところは変わっていないことに気付く。

 

 

「すまん、雪乃。待ったか?」

申し訳なさそうにそういってくる。

 

「いいえ、いまさっき来たところよ。」

嘘は嫌いだが、こういう嘘ならいいだろう。

 

 

というかさっきの言葉恋人同士で使うような感じになってしまったわね…。

彼と恋人…。私の初恋の人と。

 

 

そう考えただけでほんのりと顔が熱くなる。

 

 

「どうかしたのか雪乃?」

そんな私に不思議そうに顔を覗き込みながら聞いてくる。

 

 

彼の顔が近くにある。

「べ、別に………何もないわ。」

 

務めて平静に答えることが出来たはずだ。

おそらく………。

こんなところを姉さんに見られなくてよかった。

見られていたら……、考えるのはやめよう。

 

 

 

「じゃあ、行きましょうか?」

そういって彼に手を差し出す。

 

彼は少しきょとんとしている。

しばらく見つめあう。

 

 

じれったくなって言い出そうとするが少し恥ずかしい。

私は小さく息をすい。

 

「そ、そのはぐれたらいけないから手を握ってほしいのだけれど…。」

そっぽを向きながらだがちゃんと言えた。

 

 

 

だけれどきっと顔は赤い。

自分でも鏡を見なくてもわかるくらいには…。

 

 

「お、おう。すまなかった。」

そういって彼はそっと握り返してくる。

 

 

ちらりと見た彼の顔も赤く染まっている。

 

 

「その…。なんだ、その服似合ってる。」

彼が少しどもりながらそう伝えてくる。

 

 

私にもまだチャンスはあるのかもしれない。

そう思うと少し気持ちが明るくなる。

 

 

「じゃあ、改めて行きましょうか?八幡」

私はきっと飛び切りの笑顔で彼にそう言えたはずだ。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「いい?雪乃ちゃんの場合は素材は最高クラスなの。ただそれを素直に出せていないことが問題だったわけ。

だから今日は気取らない雪乃ちゃんを見せることで彼を落とすの!」

 

「そういうのは、色気で落とせ、と言われるかと思ったわ…。」

 

「雪乃ちゃんには色気は無理かなぁ……。」

 

「姉さん…どこを見ているのかしら…。」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

姉さんからのアドバイスを思い出そうとしたけれど、あまり役には立たなそうね…。

 

 

そんなことをしている間に、目的の猫カフェについた。

最近の猫カフェは動物愛護のために猫ごとに休暇があったり、健康診断があったりする。

この店は午後十時に閉店する。

また利用するときには基本的に時間単位でお金がかかる。

今回は開店から閉店までのフリーパックを予約している。

 

 

店内は猫が動きやすいようにカーペットが引いてあり、遊ぶためのキャットタワーが置いてある。

適当な席に二人で座る。

今日は他のお客さんがまだいないので猫たちが集まってくる。

この店には子猫からお年寄りの猫まで総勢10匹ほどいる。

 

 

「そういえば猫カフェは来たことなかったな。」

そう近寄ってくる猫をなでながら彼がつぶやく。

猫を飼っているだけあって撫で方がうまいのだろうか?

撫でられている猫が気持ちよさそうな声を上げている。

 

 

 

「家で猫を飼っていればこういう場所に来る機会はないわよね。」

私も小さな子猫を抱えながらそう答える。

 

 

この子は最近生まれたらしくまだまだ小さい。

クリッとした目と愛くるしい表情でこちらを見てくる。

 

 

「にぃ~」

子猫が小さくなく。

 

 

思わず私はいつもの癖で

「にゃー」

と小さく返してしまう。

 

 

子猫のあごを指でなでる。

気持ちいいのか、指に顎を押し当ててくる。

自然と頬が緩むのを感じる。

 

 

かわいい

 

 

猫の気持ちが分かってお互いに意思疎通できたらいいのだけれど…。

それか生まれ変わるなら猫になりたいわね。

 

 

 

そう思いながら抱き上げ、猫との会話?を楽しむ。

 

 

 

 

うちで猫を飼えたらいいのだけれど…。

学校に行っている間に世話ができないし、まずあの堅物の両親が許すと思えない。

 

 

どうしたものだろうか。

 

 

猫の利点なら腐るほどあげられるのだけれど…。

 

 

そんなことを考えていると、彼がこちらを向いて顔をうっすらと赤くしている。

何でだろうか?

不思議に思い聞いてみる。

 

 

「どうかしたのかしら?」

 

子猫の前足をいじりながら、聞いてみる。

 

 

「普段と違って、なんというか…その…かわいらしいなと…。」

 

 

 

「そ、そ、そんなことはあるはね。」

 

何を言っているんだろうか?

 

彼の顔にも?浮かんでいる。

 

 

いけない一度落ち着かないと。

 

 

「にゃ…何でもないわ。」

平静を装えなかった…。

 

恥ずかしさのあまりに現実逃避に走る。

子猫に頬ずりする。

猫の毛はウサギみたいに柔らかくはないけど、少し硬い毛が程よい気持ちよさだ。

 

良し、私は平静に戻った。

 

 

「なんでもないわ。」

 

よしっ!決まったわね。

小さく心の中でガッツポーズをする。

 

 

 

クスクスと彼に楽しそうに笑われている。

「猫が絡むと変になるよな。」

 

 

 

別に猫だけというわけではないのだけれど…。

 

 

 

そう否定しようとしたが、彼の楽しそうな顔を見るとそんなこと、どうでもいいように感じる。

 

「いいじゃない。たまには……。」

少しだけ頬を膨らませながらそう反論する。

 

 

猫もそれに同意しているように鳴き声を上げる。

 

 

「前のお前とだとこんな風に一緒にどこかに行くことはなかったんだろうな。」

感慨深そうにそういってくる。

 

 

 

「誰かさんのお蔭ね。」

そう本当に誰かさんのお蔭。

 

 

 

そこからしばらくの間、猫カフェに滞在し他愛ない話をしながら盛り上がる。

この後は映画を予定していたので、近くのショッピングモールへと向かう。

 

 

 

私に合わせてゆっくりと歩幅を合わせ歩いてくれること。

さり気なく車道側を歩いてくれること。

自分だけが特別優しくされていると誤解してしまいそうになる。

 

 

 

「ほんとずるい男ね…。」

思わず小さく言葉が漏れる。

隣を歩く彼が

 

「何か言ったか?」

 

 

首をかしげながら聞いてくる。

 

 

「何でもないわ。」

 

「いやなんか言ったよね?聞こえてたからね?」

 

「聞こえてたならわかるでしょ?」

意地悪な口調になるが、しょうがない。

このトウヘンボクが悪いのだから。

 

 

「くっ、相変わらず口がうまいことで…。」

 

 

「あら、おほめに預かり光栄よ。」

 

「ドヤ顔……お前もするんだな。」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

映画館につき、薄暗い中チケットと飲み物を買い、上映時間まで座席に座りながら待っている。

 

今日見る映画は、外国で放映されている人気のあるものだ。

 

「500日のサマー」

 

恋愛もので、評価も高い作品らしい。

 

「異性とこういう映画を見ることで生まれることがあるんだよ♪」

 

なぜ姉さんがこれを選択したのかはわからないけれど、何か嫌な予感がするんだけれど…。

 

そんなことを考えながら、彼と話していると映画が上映される。

 

LAで、グリーティングカード会社で働いているトムは、地味で冴えない毎日を送る青年。

ロマンティックな出会いを期待するも、大学で建築を学んでいた彼にはグリーティングカード会社での仕事はつまらなくて、職場にはおばさんばかり。

そんな彼はある日、秘書として職場にやってきたサマーに一目惚れしてしまう。

そこから物語は始まった。

 

どうやら基本的には男性の空想と、女性のサマーとの実際の関係を絡めていくものらしい。

一目ぼれをしながら、なかなか本心を伝えられない主人公。

少し自分に重ねてしまう。私の場合は一目ぼれではないのだけれど…。

確かに相手に好意をつたえるのは難しい。

自分が拒絶されることを考えると、どうにもふみだせない。

 

 

物語は進み、会社のパーティーの帰りがけに、トムはサマーに好意を寄せていることを告白するのだが、サマーは「友達になりましょう」と言うだけであった。

映画も中盤となり、二人の関係が少しづつ近くなっていく。

そしてもしかしたらあるかもと考えていた、そういうシーンがあった。

 

すごく気まずい…。

そもそもそういう関係でないのに、こういうのを見るなんて…。

目をそらしていても、声が聞こえてくるし、なんか粘着質な音も聞こえてくる。

流石に耳をふさぐのも、意識しているようで変だし…。

 

 

 

自分も恋人になれたら、そういうことを彼とするようになるのだろうか?

 

 

耳元でささやかれたり、キスをしたり。

その先のことも…。

 

 

な、なにを考えているのかしら…。

違う、決してそういうことをしたいわけではない。

いや、したくないとか、そうじゃなくて、興味はあるのだけれど…。

ち、違う!やっぱりなし!

頬が熱くなる。

こんなところを彼に見られたら、どうしよう…。

 

 

落ち着かないと…。というか、八幡は平然としているようだ。

そういうことをしたことがあるのだろうか?

 

 

ちらりと横目で見てみると、寝ている。

 

 

なんだか慌てていた自分が馬鹿らしくなってくる。

 

 

というか、仮にも異性とのデートで寝るというのは、どういうことなのだろうか?

こちらに少し傾いている彼の頭。アホ毛は相変わらずのようだ。

普段はあまりじっくり見ることのできない、彼の顔を見つめる。

 

 

 

意外とまつげが長いこと。

肌もきれいなこと。

薄い唇。

 

 

 

触れてみたい。

少しだけなら、寝ているようだしばれないかもしれない。

 

 

頬っぺたをツンツンとつつく。

意外と柔らかい。

男性の肌は女性より柔らかくないと聞いていたのだけれど、そうでもないみたい。

 

 

ゆっくりと唇の方へ、指を伸ばす。

少し自分のと比べて硬い気がする。

 

 

 

 

今なら寝ているから、してもバレないのでは?

彼の顔を両手ではさみ、ゆっくりと自分の方へと向ける。

眠っているせいか、そういうことを受け入れてくれているかのように思ってしまう。

 

 

少しづつ、少しづつ。

 

 

起こさないように、ゆっくりと。

 

 

 

自分の鼓動が早鐘を鳴らし、相手にその音が伝わってしまうのではないか、ひやひやする。

 

 

薄く開いた彼の唇から洩れる吐息が、自分の唇に触れる.

 

 

 

もう触れるといったところで、映画の効果音が大きくなる。

突然のことに驚き、私は彼の頬を思いっきりつねってしまう。

 

 

「ちょっ!痛いんですけど…。」

ジト目で彼がにらんでくるが、とっさの言いわけが出来ない。

 

 

「あ、あなたが、寝ているのが悪いのでしょ?」

 

「ウッ、いや、まあそうなんですけど…。」

 

なんとかごまかせたようだ。

 

 

ただその後、映画にあまり集中できなかったことは言うまでもない…。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

帰り道二人で並んで帰っている。

 

人混みが多い時は彼の服の裾をつまんで、そうでない時は離して。

 

「その、なんというか…眠ってて悪かったな…。」

 

 

「別にいいけれど…。体育祭の疲れが残っていたのでしょ?」

 

 

「いや、まあ…。悪い。」

気まずそうに謝ってくる。

 

 

まあこちらとしては、別に彼と二人でいられたのだから文句はないのだけれど。

普段見ることのできない姿を見ることが出来たし…。

というか、私自身も普段しないようなことしていたし………。

 

あれは、映画に当てられただけ…。私は悪くない…。

 

 

でも、彼はまだ納得いってないようだ。

変なところで律儀なんだから。

 

良い事を思いついた。

 

 

「それなら、また二人でどこかに行きましょう。それで許してあげる。」

 

 

 

「そんなのでいいのか?いくらでも付き合うが…。」

戸惑ったように聞いてくる。

 

 

 

「なら決まりね。私はこっちだから。今日は付き合ってくれてありがとう。」

断られる前に話をくぎる。

 

 

「ん。まあ俺でよければ、付き合うよ。楽しかったしな。」

 

 

 

「楽しかったのに、寝てしまったのね?」

 

 

 

「いや、それは…。」

おどおどし始める彼に

 

 

「嘘よ。少しからかっただけ。私もあなたといれて楽しかったわ。」

くすりと笑ってしまう。

不思議なほどに思ったことを言えている。

 

 

「俺もだ。じゃあ、気をつけて帰れよ?」

そういって手を振ってくる。

 

 

「ええ。あなたもね。」

手を小さく振り、彼の後ろ姿が見えなくなるまで見送る。

 

 

 

今日はいろいろとあったけれど、なかなか楽しかった。

多少は女性として意識してくれたのだろうか?

 

「難しいわね、ほんと。」

そういいながらも、私の顔はどこか緩んでいる。

 

 

 

また二人で会うことが出来る。

 

 

それが決まっただけでもうれしい。

 

 

 

「今日の夕食は何にしようかしら?」

 

そうつぶやき、鼻歌を口ずさみながら、私は軽い足取りで自宅へと向かった。

 

 




いかがでしたでしょうか?


雪乃さんは保健室でのことを見ていないので、終始楽しそうな感じで終わりました。
結衣さんは……。
沙希さんは……………。

めぐりさんしか選ばれないからね。仕方ないね。


ここから下の部分には陽乃さんが、どうしてこの映画を選んだか?という解説(?)のようなものを書きます。映画のネタバレがあるので、興味がある方だけご覧ください。


最後まで読んでくださり、ありがとうございました('ω')ノ



陽乃さんが「500日のサマー」を選んだ理由。

この映画は、主人公は結局報われるか?と言われると微妙です。
簡潔に映画のあらすじを紹介すると「主人公のトムが『愛なんか信じていない』『誰かの恋人でいるなんて居心地が悪い』と公言するかわいい女の子、サマーとセフレ関係になり、正式な恋人として付き合ってもらおうと奮闘するも、サマーは前言を撤回せず恋人関係にはなれないと突っぱね続け、ついに関係が破綻して満身創痍のトムの前にスピード結婚を決めたサマーが表れ『運命はあったわ』『トム、あなたが正しかったの』とニコニコ言い放つ」という地獄のような展開です。
地獄のようなと書きましたが、映画の最後にトムへの救いがあって、ハッピーエンディングと言えると思います。


これだけ見ると、相手の女性が態度急変して悪い人!みたいになっているようですが、実際は女性はずっと「あなたとは恋人にはなれない」と一貫した態度を貫いています。
主人公は、何度も恋人扱いじゃなくてもいいのか?と聞かれ、「それでもかまわない。」と自分の気持ちに嘘をつき続けます。
そして耐えきれなくなり、自分でその関係に深い傷を与えてしまう。


これが簡単なあらすじと、映画の内容です。


陽乃さんは私の作品では「めぐり」の味方です。
それでも妹である雪乃のことも当然好きです。
なのでもし振られることを考えて、告白しなければ一番ダメな結果になるよ!
という意味で、告白への背中を押す意味でこの映画を見せました。
陽乃さん自身は、八幡の気持ちが動かないだろうという事は理解していますしね。
なのでなおさら、奉仕部の三人がギスギスしないように手を打った感じです。

なるべく原作の陽乃さんに寄せたいと思って言るので…。
アニメではいろいろとカットされていて、ただのいやなお姉さんになっているからね!
思慮深く優しい人というイメージで書きました。

ただ思ったより雪乃ちゃんが素直になっているので、無駄骨感が満載ですけどね(´・ω・`)


「500日のサマー」は泣けるし笑えるし感動できるし、何より誰かと一生懸命恋愛をしたことのある人ならドップリ感情移入できる素晴らしい作品です。
一度見てみては、いかがでしょうか?


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番外編
番外編1


やぁ(´・ω・`)
ハロウィン過ぎたけど、ハロウィンネタだよ。


この話は読まなくても本編関係ないので、読みたい人だけ読んでください。
ただのイチャイチャ回です。

※すでに二人はくっついた後です。

というか本編でめぐりさんがイチャイチャしていないので、書いてしまっただけです……。

ご指摘ご感想あればしてくださるとありがたいです。


まどろみながら、ゆっくりと体を起こす。

昨日寝る前にした多少の運動が、体に疲れとして残っているようだ。

そろりとダブルベッドから出て、服を着替える。

隣に寝ているめぐりさんを起こさないように、そっと。

 

 

 

今日は日曜日。

そしてハロウィンである。

気持ち的には大学4年になっているので、ほとんど授業もなく毎日が休日に近くはなっているのだが……。

今の俺はめぐりさんと同棲している。

ちょうど俺が4年に進学した際に、めぐりさんが就職。

 

めぐりさんは大学で外国語を専攻していたため、翻訳系の道へ。

実際に7ヵ国語話すことが出来る。

英語、ロシア、中国、フランス、スペインにポルトガル。

才色兼備を地で行く人だ。

 

 

俺は英語ぐらいしか話せないから尊敬する。

まあ経済学部だから……(震え声)

中国語は授業で習ったが、正直簡単な筆談くらいしかできないだろう。

 

 

話を戻すが、千葉郊外のマンションの2LDKを借りそこで同棲している。

別にヒモというわけではない。

もう一度言うヒモじゃない。

 

 

本当だよ!

ちゃんと家事してるから!

それに卒業したら地元の銀行に就職決まってるからね!

まあ大学時代も半同棲状態だったから、あんまり変わらないけどな。

 

 

 

慣れた手つきで朝食を作る。

サラダに、フレンチトースト、コンソメスープを2人分作る。

後はめぐりさんを起こすだけなんだけど……。

基本的に仕事終わりだと、情緒不安定になっているんだよね。

 

 

翻訳の仕事は多岐にわたるらしい。

ドラマ、映画の日本語への字幕、吹替。書籍の翻訳。通訳としての仕事。

また企業の通訳をする場合、ある程度仕事に関する専門用語を知っていなければならない。

 

 

めぐりさんの今回の仕事は、先輩翻訳家の人の補佐での映画の翻訳。

台本の文章だったり映像を見て、自然な日本語にするものだそうだ。

相手がベテランのお婆ちゃんらしく、厳しく丁寧に指導してくれるらしい。

 

 

どうしても翻訳した日本語が硬くなるらしく、最近は台本とにらめっこの日々が続いていた。

やっとの思いで昨日採用してもらえたらしい。

なので昨日はテンションが大分高かった。

 

 

「昨日激しかったし、まだ寝かせといた方がいいのかな?」

 

 

 

でも時刻は9時過ぎ。

そろそろ起こさないと生活習慣が崩れる方が問題だろう。

それに飯は冷めないほうがうまい。

 

 

そう思い寝室へと向かう。

 

ドアを開けると、ベッドの上に毛布にくるまり、丸まって寝ているめぐりさんがいる。

 

「起きてください。もう九時過ぎてますよ~。」

優しく肩をゆする。

 

 

めぐりさんが眠そうに眼をグシグシとこすりながら、体を起こす。

体にかかっていた毛布がずり落ち、だらしない恰好が目に入る。

上半身は淡いピンクのルームウェアに、下半身にはピンクのショーツだけ。

ルームウェアは、はだけて肩が見えてしまっている。

 

 

「もうそんな時間なんだ……」

そういって小さくあくびをしている。

 

 

「眠いでしょうけど、ご飯作ったので着替えて起きてきてください。」

 

「ちゅーは?」

きょとんとしながら、こちらに聞いてくるのはなかなか威力がある。

仕事が終わった後だからか、完全に甘えん坊になっている。

 

 

おでこにすると不満げに頬を膨らませる。

しかし、それも一瞬で治り、のそのそと動き始める。

 

 

めぐりさんが活動をし始めたのを確認して、リビングに戻りテーブルに朝食を並べる。

しばらくした後、部屋着の上にカーディガン、ジーンズを着ためぐりさんが現れる。

 

 

2人して席について、朝食を向かいあって食べる。

 

 

他愛ない話。

大学での出来事、仕事について、ニュースの事。

なんの脈絡もなく話があっちこっちへ。

それが楽しいんだが。

 

 

 

食事も終わり、めぐりさんが食器を片付けるのを手伝おうとするのを、やんわりと断る。

 

 

「疲れているんでしょ?休んどいてください。」

 

「いいの?家事は分担って……。」

 

 

「眠そうな中、食器割られるよりはましです。」

実際ケガでもされたらいやだしな。

 

「嫌みみたいなこと言ってなんだかんだ、優しいのは変わらないよねぇ」

ニコニコしながらそういってくる。

 

 

何となく恥ずかしくなり、

「………ほら、はやくこたつに入ってなさい。」

という。

ほら昔の事ってなんか恥ずかしくない?

 

 

「照れなくてm……ちょっ、おでこぺちぺちしないでよ!」

これ以上からかわれる前に、おでこをペチペチと叩き話題をそらす。

なんかちょうどいい位置にあるんですよね。

 

「ハイハイ。」

「もう……こたつで丸くなっとく」

そういってこたつにモゾモゾと入っていく。

いじけたふりとは……。

この年になっても自然とそういうことが出来るのはすごいと思う。

年齢より幼い印象を持つのもしょうがない気がする。

 

 

でも似合ってるのが悔しい。

大学の後輩の一色もこんな感じだが、天然ものではないしな。

 

 

そんなことを考えながら、食器洗いを手早く済ませ、熱い緑茶を2人分用意し炬燵(こたつ)へ向かう。

我が家のこたつは、そこまで大きくない正方形型の物である。

めぐりさんは何かの本を読んでいる。

 

 

めぐりさんと違う場所に入る。

一つの辺に対して一人入るのがちょうどいい。

めぐりさんの方へお茶を渡す。

自分のところにお茶を置き、テレビを見る。

 

 

外でのコスプレイヤーの様子が、流れている。

すると何か自分の前の布がモゾモゾと動き、めぐりさんが現れる。

 

 

「来ちゃった!」

そういってこたつの中から顔を出して、俺の上に座る。

ちょうど俺は胡坐をかいているので、俺の背を背もたれにし、めぐりさんが本を読み始める。

 

 

「ちょっとテレビが見えにくいんですが……。」

おれとめぐりさんの身長は、俺の方が高いがそんなに差があるわけではない。

ちょうど目のすぐ下あたりにめぐりさんの頭が来ているのだから、テレビが見えそうで見えない。

しかもちょっと姿勢をよくして、見えにくくしている。

 

 

めぐりさんはそんな俺の文句を聞こえているはずなのに、無視して読書を楽しんでいる。

軽く頭をつつくが無視される。

かといって別に嫌なわけではないし、どちらかと言えば好きなのでどけようとも思わない。

だがテレビ見たい。

今ちょうどハロウィン特集でウォーキングデットがやっているのだ。

日本語字幕版なので、字幕をみないと内容が分かりにくい。

そろそろ農場から出ていくというシナリオの節目なんだ。

 

 

なので、いい位置にあるめぐりさんの肩に顎を乗っけて、後ろからめぐりさんに腕を回し、抱き枕にする。

 

 

「ちょっと!?」

めぐりさんがアワアワし始めるが、気にしない。

散々無視されたので、こちらも好きにさせてもらう。

 

 

やっぱりダリルはいい人だな。

登場してるキャラの中で一番好きだわ。

兄貴結局生きてんのかな?

そんなことを考えながら、しゃべる抱き枕(めぐりさん)と共に見ている。

 

 

「もう……」

文句をいっても聞かない俺にふてくされたのか、読書に戻っている。

顔が少し赤いのはご愛敬だろう。

ここでいじったら夜が大変だしね。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

安直なゾンビ撃ち殺しゲーみたいになってなくて、この人間同士の心情の変化が面白いよなぁ……。

続きは明日の午後か。

 

 

テレビを見終わり、リモコンで電源を切るとスースーと寝息が聞こえる。

どうやらめぐりさんは眠ってしまったようだ。

起こさないように、そっとこたつから抜け出し、めぐりさんの頭の下にクッションをひいて置く。

 

 

そして俺は準備を始める

今日はハロウィンである。

もう一度言うハロウィンだ。

 

 

なら仮装しなくてはならない。

これは法律だ。

かぼちゃを使ったモンブランを買ってくるついでに、ドゥンキにいってゾンビのマスクを買ってきた。

まあ寝起きドッキリですね。

ゾンビ単機でも敗率はほとんどありません。

 

 

さて、後は驚かすだけ。

どんな反応するんだろうか?

普段驚いているところとか見ないし、少し楽しみだ。

今の俺の顔は、たぶん悪ガキみたいな顔をしているだろう。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

俺は正座をしている。

かれこれ一時間近くだ。

 

おかしい。

 

どうしてこうなった?

 

まあめぐりさんに怒られているからなんですがね。

HAHAHAHA

足が痺れてきた。

 

 

失敗だったかな……?

 

・・・・・・・・・・・

めぐりさんがモゾモゾと動き始めたので、俺はめぐりさんの肩をつつき起こす。

当然マスクをかぶったままだ。

 

 

目をぐしぐしとかいた後、めぐりさんと目があう。

 

 

きょとんとしたまま固まっている。

 

 

しばらく見つめあった後、まためぐりさんが目をぐしぐしとかいて俺を見つめる。

 

あれ?失敗したのかな?

そう思って俺は、うめき声を出してみる。

 

 

「UUGUUU……」

 

 

するとめぐりさんの顔色が面白いぐらい変わり、

 

 

「きゃぁあああ…………ぃたい……。」

と叫んだ後飛び起きようとする。

だがこたつの中なので、足の指をぶつけてしまう。

涙目になりながら、小さくうなっている。

こちらを見つめる目が、涙で潤んでいる。

 

 

涙目になっているので、さすがにやりすぎたかと思い、マスクを脱いで謝る。

 

 

「そ、そのすいません……。でもハロウィンですし、ほら、ね?」

必死に言い訳を考えるが、なにも出てこない。

 

 

めぐりさんが涙目になりながら、こちらに一言。

 

 

「比企谷くん………正座。」

 

 

・・・・・・・・・・・

 

「反省した?」

少し冷ややかな声でこちらを見てくる。

 

 

「はい……。」

 

 

「めぐりさんは寛大なので、許してあげます。」

 

 

「ありg「条件があります。」

 

おうふ。

それは寛大なのだろうか?

 

「何でも言うこと聞くよね?」

 

 

「え………?」

 

「何でも言うこと聞くよね?」

 

「いや、なんでもとは?」

 

「何でも言うこと聞くよね?」

 

「あ、あの……」

 

「何でも言うこと聞くよね?」

「ハイ。」

 

 

そう返事をすると、正座をといていいといわれる。

だが案の定正座を解くと、足が痺れて立ち上がれない。

さすがにカーペットの上とはいえ、一時間はきつかったか……。

 

 

足が痺れて立ち上がれない俺に、めぐりさんが近づいてくる。

そして俺の頭に腕を回し、そのままキスをしてくる。

 

 

柔らかい唇がふれ、心地よさを感じる。

そのままめぐりさんが、俺の唇をなまめかしくなめてくる。

普段しない事に動揺した俺は、唇が少し開いてしまう。

ヌルリとめぐりさんの舌が入り込み、柔らかく俺の舌に絡みつく。

 

 

互いの唾液が絡みあい、ぴちゃりぴちゃりと水音を立てる。

めぐりさんの甘い匂いと、なまめかしく絡みつく舌に徐々に自分の理性が解けていく。

されるがままだったが自分から舌を絡めに行く。

 

 

もっと欲しい。

 

 

そう思って。

 

 

だがこちらが舌を絡めにいこうとすると、ゆっくりと唇が離れていく。

 

 

「えっ……………。」

 

 

我ながら情けない声が漏れてしまう。

その様子を見て満足したのか、めぐりさんはつややかに微笑んで。

 

 

「今日一日は、私の言いなりね?」

 

 

 

そう俺の耳元で囁いた。

 

 

 

 

 

この後めちゃくちゃ………。




頑張ってキスの描写を書こうとしたんですが、難しすぎる……。
あんなのどうやって文章にすればいいんだ……?
というか水音を書こうとしたけど、書いている途中に何やってるんだろう?と真顔になってしまったので書いてないです(´・ω・`)

なんだろう、うん。
私には向かないようだ……。
南と沙希のレズを書いている時もこんな感じになりましたからね……。

絵は前回レヴィ、レヴィと言われたので、かわいらしい平塚を自分なりに書いてみたつもりです。
片方はピュア陽さんです。



【挿絵表示】



【挿絵表示】


めぐりさんは、ふざけて書いていたら北斗になってしまった……。


最後まで見てくださりありがとうございました!


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