ネタ集 (ラビ@その他大勢)
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モンハン 1

没理由。
最初にイビルジョーを出すと後の奴が見劣りしすぎて、ストーリーを展開できなくなった。


昨夜の雨でぬかるんだ密林の大地を踏みしめる度、泥に足が取られて滑る。だが、少年はそんな環境の中でも足を止めない。少年は愛用の槍を片手で持ち、もう片方の腕では気を失っている小柄な少女を抱えながら全力で走っていた。背中にあったはずのバックパックは既に何処かへ落としてしまっており、少年は何時にも増して身軽である。

尤も、そうでなければ既に『奴』に捕まり、少年たちは腹を満たすためだけの食料となっていたのだろうが。

少年は後ろを振り向かないまま、うっそうと生い茂る木々の間をすり抜け、亀裂を飛び越え、時には邪魔な草木を槍で薙ぎ払う。勿論、走る速度を緩めることはない。後ろを向かないのは『奴』が追い掛けてきているのが気配で分かるためだ。『奴』が1歩歩くごとに靴の裏から伝わる震動、葉がその鱗を擦る乾いた音の大きさは、少年たちと『奴』の距離を示している。1度後ろを向いて少しでも速度が緩まれば、この距離はすぐに無くなって自分達は餌になる。そういう確信を、少年は持っていた。

あるいは、少年と少女の二人ともが全力を出せる状態であったのならば『奴』と戦うことも出来たのだろうが、今はそうではない。気を失っている少女を庇いながら、疲労している現在の状態で少年一人が『奴』と戦っても勝てる見込みは低い。だからこその逃亡である。

ずっと走ってばかりで彼我の距離が詰まらないのに業を煮やしたのか、『奴』が深く息を吸い込んだ。

それをブレスの前兆だと気付いた少年は、それと同時に体を一瞬だけ沈め、槍と少女を離さないように改めて両手を強く握りしめる。

そして、『奴』の龍属性を纏ったブレスが放たれると同時、少年は大きく跳躍した。

 

 

――――――

 

 

同時刻。少年たちと同じく密林を進んでいく一人の少女がいた。「暑いなぁ」と呟きながら鮮やかなショートカットの銀髪を掻き上げる動作は実にその可憐な容姿に似合っており、その姿は、異性に興味がある男が見れば殆ど確実に見とれて固まっていたであろう。

 

「……何で私がこんな暑っ苦しいだけの辺境を調査しなきゃなんないのさ。火薬は湿気るし、良いこと無いんだけど……」

 

ぶつぶつと恨めしげに呟きながら、少女は密林を突き進んでいく。その足取りに迷いはないが、特に何処を捜すという目的も持っていなかった。

ギルドから依頼された仕事はこの密林の調査。だが、先程から少女が出くわすのはジャギィやフロギィ等、常日頃から『火竜』等の大型モンスターを狩る仕事を専門としている彼女に取って余りにも呆気の無い敵だらけ。

本人としてはそろそろ切り上げたかったのだが、まだ時間的な調査ノルマを達成していない。そのため、今は時間を潰すために適当に密林を散策しているのである。

 

だが、不意に少女は歩く足を止め、軽く顔をしかめた。というのも、少女の敏感な嗅覚が風に乗って届いた、彼女にとって余り好ましくない匂いを嗅ぎとったからだ。

 

「……まさか、これのために私をこんなところに送ったっての?」

 

匂いの元はかなりの速度で何かを追っているらしい。

それがモンスターであれば良いが、もし人間なら――

少女は不愉快そうにその端正な顔を歪め、小さく舌打ちを洩らすと、出せる限りの全速力で走り出した。



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がっこうぐらし! 1

没では無い。
アニメ二期が始まれば連載するかも。


雨はそんなに嫌いじゃない。少し憂鬱な気分にはなるかもしれないが、寧ろ好きだとすら言えるだろう。

それは何故かって? 答えは簡単だ。

 

『ア゙ア゙ア゙ア゙』

 

コイツらの顔を見なくていいから。

腐敗臭の漂うコイツらは、生前の記憶が残っているのか雨に濡れるのを嫌がる性質があり、雨の日は外に出たときの危険がいつもより少なくなる。

だけれども残念ながら、今日は雨じゃない。少なくとも、買い物帰りに会いたい相手では無いのだが……等とビニール袋片手に考えていると不意に、対面している相手の顔に見覚えがある気がして、俺は微かに眉を動かす。

 

「いやはや、誰かと思いきゃ元同サークルの加藤先輩じゃないっすか。どうっす? 最近は」

『ア゙ア゙ア゙』

 

マトモに返事が返ってくるなんて思っていない。ただの俺の一人語り。向こうの噛みつきを体を軽く反らして回避し――

 

「こっちは実に最悪ですよ」

 

足を掛けて張り倒す。

 

「いや、何て言いますか? もういっそ貴方達と一緒になった方が面白いかもとすら思い込む始末ですよ。ハッ、笑っちゃいますよね」

 

倒れたソイツを足で踏みつけ、身動き出来なくしてから

 

「ま、最近はゲームとか出来るようになってきたし、彼女持ちの身なんでまだそっちに逝くつもりは無いですが……」

 

頭に向かって、懐から取り出した電動ドライバーを突き刺した。

引き金を引くと駆動音が小さく鳴り、ゴリゴリと硬質なものに刺さる感触がした。

 

「取り合えず、お疲れ様でした。ゆっくり休んでください」

 

力無く倒れ伏した彼に頭を下げると、俺はクルリと踵を返した。

向かうのは聖イシドロス大学。こうなった世界での、俺にとって唯一心安らげる場所だ。

 

 

 

 

 

校門を登り、大学へと入る。ふんふんと適当なゲームの主題歌を口ずさみながら、リノリウム製の床を歩いていく。一歩毎に乾いた音が鳴り、誰も居ない廊下を反響した。

暫く歩いていくとやがて1つの部屋に着き、俺はその部屋の扉の前で足を止めた。部屋に掛かる看板に書いてある名は、桐子。俺が所属している、サークルのリーダーだ。

2度扉をノックし「入るぞー」とだけ声を掛けると、答えを待たずに部屋へと入る。

部屋のなかでは、一人の少女が座ってテレビの画面と向かい合っていた。桐子――トーコは案の定、ピコピコと一人でゲームをしていた。いや、ポーズ画面になっているところを見ると一応声を聞いて止めてくれたらしい。

そして問題の当人は、入ってきたのが俺と見るや否や瞳を輝かせ、かなりの剣幕で身を乗り出してきた。

 

「良いゲームあった!?」

「ま、上々って所だな」

 

俺は左手に握ったビニール袋を軽く上げて見せた。この中に入っているのはゲームのカセット他諸々である。

こんな状態になっても人間は暇と電気さえあればゲームをやりたがるようだ。軽く笑うと、俺は持って帰って来たゲームの中から、特におすすめの対戦ゲームを取り出した。

 

 

 

 

何時が始まりだったかは忘れたが、ある日パンデミックが起こった。突然他の学生の様子がおかしくなったと思ったら、いつの間にか辺りは安モンのホラー映画に有りがちな大惨事になっていたのである。噛まれれば移り、そして噛まれた奴が新しい生者を噛む。次々と増えていくアイツらの事が的確に当てはまる言葉を1つ、探すとしたら――ゾンビ。これ以外は有り得ないだろう。

最初は少数だった感染人数も、瞬く間に広がった。このままでは、生者は全滅するのでは無いかとすら思われたこともあった。

 

しかし、そこに現れたのが『武闘派』というグループである。彼らは規律第一にして感染者達を片付けていき、大学の中に安全圏を作り出したのだ。だが、その規律が余りにも堅苦しいため、そこから分裂したまったりグループがある。それが、俺が現在所属しているサークル――と言うわけだ。

太陽光電池も、地下の食料庫も見付かり、何とか俺たちは必要最低限な物資は補給することが出来た。

するとある程度は余裕が出来るわけで――

 

サークルのメンバー(の一部)がゲームを始めるのに、そんなに時間は掛からなかった。

 

「ハッ、甘いなトーコ! そのコンボは既に見切った!」

「何っ!? ……とでも言うと思ったのかな?」

「そんな派生があっただとぅ!? つかそれハメだろ! 無しだろそれ!」

 

画面内では俺の操作キャラがトーコのキャラにボッコボコにやられていた。やめてあげて! もう彼のライフはとっくにゼロよ!

 

「あー、くそ。今度こそ勝てると思ったんだがなぁ」

「ふふん」

「何こいつムカつく」

 

自慢気に笑うトーコを軽く睨む。

……と、その時。部屋のドアが開き、一人の少女がトーコの部屋に入ってきた。

 

「あ、ユウタ帰ってきてたんだ。で、シャンプーあった?」

「ん? ああ、アキが望んでるのがどれか分かんなかったから有ったの適当に選んで持ってきた」

「ありがと。そろそろ切れかけてたから助かる」

 

光里 晶――アキが申し訳なさそうに笑う。

 

「いつもごめんね? アタシたちのためにわざわざ」

「いや、最近はアイツらに見付からないような小道も見っけたから余裕余裕。武闘派除けば男子は俺一人なんだし、バンバン頼ってくれて良いんだぜ?」

「ま、男子のなかでは一番頼りにさせて貰ってるよ」

 

アキは俺の背中を軽く叩き、微笑んだ。

俺も笑い返し――

 

「はいはいまたボクの勝ちー」

「おいこらそれは無しだろ今話してただろ!」

 

トーコのキャラにボコられる俺のキャラを見て、その笑みはすぐに消え失せたのであった。

 

 

 

結局、30戦ほどして全敗した俺は、諦めてコントローラーを床に置いた。そのまま、部屋にあるふわふわのクッションに力無く倒れ込む。

 

「はぁ……。このゲームでも全然勝てないのか……」

「ボクに勝とうなんて100年早いよ」

「いつか目に物見せてやるからな……っと、あれ? ヒカは?」

 

アキに視線を向ける。すると、ずっと傍らでゲームの試合を見ていた彼女は分からないと言うように肩を竦めた。

 

「知らない。また何か修理してたりするんじゃないかな。それよりさ、一度アタシもやっていい?」

「ん? ほら」

 

体を起こし、先程置いたコントローラーを手に取るとそれをアキに渡す。

 

「じゃ、俺はヒカんとこ行ってくるわ」

 

座りっぱなしは肩が凝る。俺は軽く自分の肩を揉みながら立ち上がり、自分の交際相手であるヒカを探しに部屋を出た。



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fate 1-1

これは書くかも?


○月○日

今日から、日記を書こうと思う。

 

改めて確認しておく。

 

俺は転生者だ。死んだ覚えもないし、よくある神様に間違って殺されて特典が云々――とか会話した記憶もさらさらないが、今の俺の体が六歳児である以上認めざるを得ないだろう。俺は17歳まで普通に生活していたことはしっかり覚えてるし、俺の元の母親はもっと……その、なんだ。オバサンくさかった。こんな綺麗な人じゃなかった。

 

と言うか、訳が分からない。

何で俺が。前世では特に何もしてなかったのに。選ばれる理由がわからん。

 

まあ、この世もそれなりには楽しいし、何か分かるまで第2の人生を楽しんで見ようと思う。

 

 

○月☆日

どうやら、少し調べてみたのだが、ここは日本らしい。日本の小さな都市、冬木市とか言う名前なんだそうだ。 (何か聞いたことある気がする。気のせいか?) 日本語を使っている時点で何となく分かっては居たが、それでも異世界で有りがちな脳内で勝手に日本語へ変換されているとかじゃなかったらしい。

俺の髪が何故か赤かったのもここがファンタジー世界ではないのかと考えた根拠だ。赤毛とか純日本人じゃねえだろ。母親に聞いてみたところ、「そんなの普通でしょ? 変な子」とか言われた。いや、普通なのか? 日本人=黒髪という訳ではないらしい。

 

俺の知る普通の日本と言うには少し気になるところだ。まあ、下らないことか。

 

……あれ?

平和なのは良いけど……。俺の隠された転生特典が覚醒するとか、無いのか? 

 

 

□月△日

忙しくて日記を書けなかった。……嘘です。

 

日記を書くのを忘れていた。

 

 

時間は過ぎ行く物だ。

なんてセンチメンタルなこと(言い訳)を言ってみる。

 

現状、なのだが。今日も平和。

この一言に尽きる。

……おかしい。一年経っても異世界からの侵略者とか世界を征服しようとする敵とかは出てこないし、隠された俺の力が覚醒する兆しが全く見えない。もしかしたら、やっぱりそんなファンタジー的な事はこの世界に無いのかもしれない。

 

いや、別にファンタジー世界で血みどろの戦いをしたいと言うわけでは決してない。決してない……のだが、男としてはそう言ったものに憧れを抱いていたのもまた事実。

 

でも死にたくはないので、誰かそんな奴を用意してくれないだろうか。

身に危険はないけど、暑く燃え上がるような勝負とか。

 

 

□月※日

剣道をやってみることにした。

この前書いていたのを読み返して、そして気付いたからだ。

……いや、これはスポーツでもやるべきだろうと。

身に危険はなく、暑く燃え上がる。

そして、もしこの世界で戦いが起きたときの保険として。……そろそろそういう希望を持つのは諦めるべきかな、とも思い始めたけれども。

前世でも、少年の下らない羨望と憧れから剣道はやっていて、それなりには成績も残していた。高校生全国大会みたいなのでベスト 16だった。今でもそれなりには出来る気がする。と言うか、それを考えて剣道やろうと思ったんだし。

 

 

□月▼日

今日、剣道の見学に行ってみた。

その道場でも上手い方の人と手合いをしたのだが、何か勝っちゃった。腕はそこまで衰えていなかったようで、一安心。

結果、俺には才能があるんだと勘違いした母親は、全力で俺の補助をしてくれるんだそう。

どうせなら、前世よりもっと上を目指すのも良いかもしれない。ほら、日本一とか夢があるじゃん?

その為にも特訓するべきだと思うので、今日はここまでにしたいと思う。

 

 

●月♪日

また、書くのをすっかり忘れていた。最後に書いたのが年単位で昔で、思わず笑ってしまった。どうやら、俺は中々忘れっぽい人間らしい。

1つ前の日記が剣道についてのことなので、剣道についての話を書いておこうと思う。取り敢えず、剣道はひたすら頑張った。小学生の部で全国優勝。ぶっちゃけ小学生最強の剣士と言っても過言じゃないのではなかろうか。やだ何それ格好いい。

 

あ、そう言えば。

何か知らないが、話で聞いたところには、近くの川でよく分からない巨大生物が出没したんだと。戦闘機とか射殺死体とか色々あったらしい。家で訓練していたから見れなかったが、もしかしたら漸くファンタジー要素が出てきたのかもしれない。

ほら、異世界からの侵略とかそんな感じ?

 

 

●月◆日

街が燃えた。書きたくはないが、書かなきゃいけないと思うのでこれを記しておく。

母親も、父親も。皆が皆燃えてしまった。いや、俺が見捨てたんだ。先に行け、と言った彼女達の言う通り、俺一人だけで逃げ出した。

 

俺にとって彼女達は本当の両親ではなかったのだが、不思議と涙が止まらなかった。

 

今この日記は入院している病院で書いている。数日経った今でも瞼を閉じたらあの炎が浮かんでくる。

 

今日は疲れた。早く寝ることにする。

 

 

●月■日

俺を助けてくれたオジサンが、「孤児院に行くか知らないオジサンの所に来るか、どっちがいい?」みたいなことを言って来た。

と言うか『僕は魔法使いなんだ』とか言われても困惑するんですが。「……アッハイ」としか返せなかったよ。でも魔法(正確には魔術らしい)を使えるのは本当らしかったので、素直に憧れた。……教えてくれと頼んでみたものの、のらりくらりとかわされた。

 

話を戻そう。養子云々の話だが、特に行く場所も無かった俺は迷うことなく話を受け、俺は衛宮切嗣の養子、『衛宮士郎』になった。

 

……にしても、この名前。どっかで聞いたことあるような。

 

まあどうでもいい。今日も疲れた。昨日は嫌な夢を見てろくに眠れなかったしな。取り敢えずここで筆を置く。

 

 

★月〒日

落ち着いた。久し振りにこの日記を書くのを再開しようと思う。

養子になって、幾つか気付いたことがある。

切嗣(オヤジ)は凄く強い。

俺も弱くはないつもりだったが、コテンパンに打ちのめされた。……悔しいが、憧れる気持ちの方が強い。

退かぬ、媚びぬ、省みぬ精神で暇さえあれば突っ込んでみることにする。勝ちたい。

あと、切嗣は料理がそんなに上手くない。

男の元独り暮らしにあるまじき能力だ。仕方ないから、俺が練習してやろうと思う。今から切嗣の驚いた顔が楽しみだ。

 

 

*月〓日

イラついたから久し振りにこの日記を書く。前回再開するとか書いていたらしいが、ものの見事に忘れていた。テヘペロっ☆

 

つか、あの虎女(タイガー)め。

 

今日、何やら女性が家を訪ねてきた。気が強そうな虎女である。名は藤村大河。剣道が得意らしく、一試合やった。接戦の末に俺が勝利。『タイガーとか言う名前の癖にそんなに強くないんだなww』と煽ってやると、体格差に任せた取っ組み合いに発展。勿論負けました。こういう時ばかりは自らの小ささが恨めしい。いつもは身軽で便利なんだけどなぁ。牛乳飲んだら身長って延びるのかしらん?

気付いたのだが、どうやらあやつにタイガーという呼び名は禁句らしい。知るか。今度からもタイガーって呼んでやる。

 

料理の練習は上々。それなりのものなら作れるようになった。

 

 

*月∞日

今日は雪が降った。積もった。戦争(雪合戦)が起きた。

切嗣が大人の癖に容赦なかったんだが。ちょっとアレはどうかと思う。体が冷えきって、明日は風邪を引くんじゃなかろうか。ちべたいちべたい。

 

 

*月%日

暇さえあれば俺が切嗣に挑み、暇さえあればタイガーが俺へと挑みかかってくる。最近、衛宮家は争い(試合)が絶えない。タイガーめ、最初に負けたのがそんなに悔しいのか。……現在は俺が勝率5割5分、タイガーの勝率4割5分と言ったところ。「私が勝ち越すまでやる」だそうで。

そんなに俺は暇じゃねーんだよ。早く諦めろ。

 

 

(´・ω・`)月(*´ω`*)日

切嗣が何処かへ出掛けて1ヶ月が過ぎた。

生憎、タイガーと試合ばかりやっている俺は寂しいと感じなかったが(感じる暇が無かったとも言う)、最近タイガーに負けることが増えてきた。……不味い、もう少し頑張らなきゃ。

タイガーは今日も家に泊まるらしい。おいこらそれでいいのか保護者。まあ、料理を美味しく食べてくれる人というのはありがたいので文句を言うつもりは無いが。

 

 

(´;ω;`)月( ; ゜Д゜)日

切嗣から魔術のイロハを教えてもらった。

2年間ひたすら頼みまくって流石の切嗣も根負けしたのだ。魔術回路を作ることとか、簡単な強化魔術の説明とか。初めての事ばかりで凄く面白い。

今日は魔術回路を作る練習をした。……何というか、もう少しくらい楽に出来ないのか、と思うくらいしんどかった。下手したら死にそう、コレ。

 

 

◇月(ФωФ)日

3か月ぶりくらいにこの日記に手を付ける。魔術回路の作成にも少しだけ慣れてきた。……というより、安定してきたと言うべきかもしれない。

今日の昼、切嗣に隠れて『魔術回路の定着』を試してみた。逐一魔術回路を作り直すのは非効率的だと思ったからだ。『考えたことは、なるべく実行してみればいい』と、剣道で負けた際にアドバイスとして貰ったしな。

結果としては無理だったが、暫く特訓すれば出来なくもなさそうな気がする。感覚的には、開きっぱなしにした方が効率が良さそう。……でもそれ疲れそうだよなぁ。

 

 

◇月§日

あれから5ヶ月。……さすがに自分の忘れっぽさに草不可避なのですが。

あ、そうそう。魔術回路の定着が出来るようになった。今のところ、開けるのは5、6本だけだけど。

あと、強化した竹刀で石を砕けた。強化すげぇ。

タイガーも強くなってきて、最近は割合的に負けが多くなってきている。もっと頑張んなきゃ。

あ、後思うに定着させるより電源みたいにオンオフ切り替えられる方が効率良さそう。定着させると魔力が微妙に暴走気味になるしな。

 

 

┫月┳日

魔術回路の使える数も増えた。オンオフの切り替えもそれなりに出来るようになった。

そのお陰か、強化の効率も上がった。

それを見た切嗣に、苦い顔で『もう魔術を教えるのは終わりだ』と修行を打ち切られた。……なにゆえ。

 

ならばと切嗣に剣道で挑んでみたところ、初めて一本取れた。諸手を挙げて喜んだのは言うまでもないことだろう。……まあその後にボコボコにされたけどね。

 

おいらボコだぜ! なんちて。

 

 

≦月≧日

切嗣が死んだ。最後に交わした会話は、不思議な物で1ヶ月経った今でも鮮明に残っている。一応忘れないように記しておく。

 

『僕はね、正義の味方になりたかったんだ』

 

過去形だったことが気になって、「諦めたのか?」と聞いてみると、切嗣は『正義の味方は子供の時にしかなれない』なんてことを言っていた。

なら――

なんて、俺は1つ答えていた。

 

「俺が代わりになってやるよ、正義の味方」

 

自分でも、バカみたいだ、とは思ったのだが、不思議と嫌な気持ちはしなかった。

単純に、切嗣みたいになれるのが嬉しかったのかもしれない。

そんな俺に、切嗣は『安心した』と言い残し、目を閉じてそのまま帰らぬ人となった。

 

葬式でタイガーはボロ泣きしていたが、俺は何故か泣けなかった。切嗣から受け取ったものがあるから寂しくない、とでも思ったのか。両親が死んだときは滅茶苦茶泣いたのに――我ながら、不思議なものだ。

 

良い機会だから、剣道はやめて他のことに力を入れてみようと思っている。

 

あ、そうそう。あれからも、タイガーは家に入り浸っている。てっきり切嗣だけが目的だと思っていたのだが『士郎一人だけじゃ心配でしょ』と、珍しく頼れる大人な感じで言った通り、未だに家へと来てくれる。

 

……ホントに、ありがたいもんだ。



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fate 1-2

≫月≪日

中学生に上がり暫く経った。今俺は色々な物に手を出してみている。

『出来ないかどうかじゃなくてやるんだ』的な精神で様々な事に突撃。取り敢えず諦めない心は培えてるんじゃないだろうか。やっぱり、そう言うのも大事だしな。

 

魔術の特訓は勿論一日たりとも休んではいない。魔術回路の定着数を増やしている。今のところ20本くらいだろうか。オンオフは即座に切り替えられるようになったし、特訓を始めてからは総合的な魔力量も心無しか上がってる気がしないでもない。

使えば使うほど体が鍛えられるのと同じく、使えば使うほど熟練度みたいなのが上がっていったりするのだろうか。

 

 

ゞ月ヾ日

強化の魔術が安定して成功するようになった。

ふと思ったんだけど掴んだ砂の一粒一粒を強化して投げれば散弾擬きになるのでは無かろうか。強そう。

よし、今度やってみよう。

後は投影魔術にも少し力を入れてみてる。今のところ、俺が未熟だからか中身が空っぽな贋作しかろくに出来てないけど。

 

 

ゞ月ヽ日

簡潔に結果を言おう。

出 来 る わ け な か っ た 。

あ、勿論前回の日記に書いてた、『砂を強化して散弾化』のことですよ?

一つ一つに魔力込めるも、砂じゃ容量が小さすぎてろくに魔力通さないわ、挙げ句の果てには注ぎすぎて弾け飛ぶわ、散々でしたよコレ。やっぱりこれは無理かなぁ。

これなら投影の方がまだ楽かも。

どうせなら武器っぽいのの投影を練習してみるか。

神槍グングニルとか聖剣エクスキャリバーとか、そういう強いのを投影すれば――魔力が足りませんね分かります。

 

 

ゞ月ゝ日

剣の投影が割りとしっかり成功した。驚くぐらいアッサリと。槍とか斧とかそう言うのはろくに投影できなかったのに。剣の方がイメージしやすい……とか、そんな理由なのだろうか? それなら、再び剣道を始めるのも吝かでは無いのだが。

……いや、まあ剣の特訓は再開するとしても、剣道はやらないけどな。切嗣が死んだときにそれは決めたし。

イメージは本当に大事だと思う。と言うか使えない武器を投影したところで使えるわけ無いんだから、投影するだけ無駄だしな。

 

 

ゞ月〃日

投影したバッタもんとは言え剣は剣。切れ味もそれなりに有るし、感触も鉄のソレだ。勿論感覚は竹刀や木刀と全然違う。剣を使いこなすのは、中々時間が掛かりそうだが――まあ、それも良いだろう。時間はたっぷり有る筈だし。

と、こんなことを書いててふと思い出した。……いや、普通に二度目の人生を謳歌しまくってますが、これで良いのか? 異世界転生って主人公が特殊な能力を持ってその世界を救うとか頻繁じゃん。俺、まだ何もしてませんが。

火事に会い、家族を失い、拾われ、剣に没頭する。←今ココ

……あ、魔術は存在してるし、一応ファンタジー世界な可能性もあるのか? ……でも、魔術師は魔術を隠すもの的な常識感も有るから、元の世界でも魔術はあったけど、俺が単純に知らなかっただけ?

 

よく分からないから、考えるのをやめる。

 

 

♂月♀日

剣の特訓と言えど、そんなに頻繁に出来るもんじゃない。冷静に考えると普通に銃刀法違反だし、自らを高めるのに最も大切であろう切り合いが出来る相手(ライバル)もいない。

敵が居なければ、一定以上の実力は身に付かない。

まあ、実剣なんて危なくて試合も出来ないし、諦めるしかないか。

ただ、ひたすらに。何千回、何万回と繰り返して体に剣技を覚え込ませるしかない。

そう。ただ、ひたすらに。

 

 

∴月¢日

 

正義の味方とは何だろうか。

切嗣の夢を継いでから、よく想う。

切嗣が憧れたのは、『全てを救う正義の味方』だったのだろう。それを考えれば、俺がなるべきなのもソレになるのだろうか。

随分前、切嗣は言っていた。

 

『正義の味方が救えるのは、救うと決めた人だけ』

 

一体、俺はこれを聞いたときにどう思ったのだったか。

 

 

¥月$日

 

剣技とは水のようなものだと我想ふ。

 

流れれば止める術は至って少なく、まず流すのを止めるしか対処は出来ない。一対一の戦いにおいて、それは大事だと思う。強大な相手だろうと、流れるように続く剣技に挟めるものは殆ど無い。つまり、俺のような弱者が求めるべきは勝つための剣術ではなく――

 

相手を仕留めるための剣技。

それだけだ。

 

 

@月θ日

 

魔術回路の数は、恐らく最大まで増えている。投影魔術は剣のみだがかなりの業物を投影できるし、それを強化することで尚強化できる……はず。

だが、投影した物に強化を掛けると言うことは存外に難しい。現在も試行錯誤中だ。

投影というものは、自分の思い描く通りに物体を作ること。つまり、自分の気付ける弱点なんて無いはずだし、あってはならない。

対して、強化というものは、既に完成している物に『自分の主観で』手を加える魔術。

 

まあ、纏めると。

 

投影を自分の主観でやっている限り、強化など出来ようも無い、ということだ。

 

自分の主観で無い投影をするならば、本物を見て、それをそのまま写すしかない。それならば俺の主観が入る余地は生まれる。……だが、問題は『そんな剣が簡単には見つからない』のである。

試しに名剣とやらの展示を見に行ってみたけどあんまりピンと来なかったし。

 

難しいもんだなぁ。



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fate 1-3

細かい時系列はそこまで考えてません


Б月B日

気付いたらもう高校が始まっていた。時の流れは残酷ナリ。高校はタイガーが教師をしている所に入った。地元で徒歩圏内にあるし、色々と便利だからだ。

そう言えば、元同じ中学で今年同じクラスになった友人一号ワカメくん(髪型が印象的すぎて名前忘れてた)と寺の坊主(雰囲気が印象的すぎて名前忘れた)のキャラが濃い。

 

部活は多分タイガーから噂を聞いたのだろう剣道部から熱心に誘われたけど普通に断った。ええいタイガーの奴め。俺のことをイチイチ自慢してんじゃねぇ。

 

部活に入らないってのも案外難しい雰囲気になってきてる。何より俺を狙う剣道部の目つきやばい。俺にはわかる。アレは獲物を狙う獣の目だね。

 

 

Б月C日

タイガーが顧問をしている弓道部へと逃げるように入部しました。俺は悪くない。タイガーが悪い。平然と家に入り浸って来てるのも謎だ。教師と生徒があまり懇意にするのはいい事では無いだろうに。

 

と言うか案外弓難しい。剣道と近しいところも無いではないが、俺には余り合わない気がしてならない。しかし何としても習得せねば。

やめたら剣道部に入らねばならなくなっちゃうからね!

 

 

Б月G日

家に黒光りしてカサカサ動くG──即ちゴキブリ出現。めちゃくちゃショックだ。掃除をサボっていた覚えはないのだが、広いこの家のことだ。掃除し損ねていた場所もあるかもしれない。一匹見つけたら三十匹は居るらしいし⋯⋯

 

帰りのホームセンターで買った俺のゴキキラーが火を吹くぜ!

 

 

Ж月D日

弓を思った所に当てられるようになってきた。と言っても当たる確率は3割弱くらい。ただ慣れてきただけだと思うわこれ。

六割くらい外れてるわけだしな。

ゴキブリとの戦いは今なお熾烈を極めている。奴ら殺しても殺しても出てくるからキリがない。

 

 

Ы 月Φ日

ゴキブリとの公平なる戦を諦め、最終奥義『業者さん』に来ていただいた結果ゴキブリを見事家から全滅させることに成功した。

タイガー(藤村組)との共闘よりも効率的だった事に今更気づいた辺り⋯⋯なんだかなぁ。

長い戦いだった。

 

 

ю月M日

軽い修理のようなものをよく頼まれるようになった。

こないだ機械いじりが趣味だなんて口を滑らせてしまったからだ。一応楽しいからよしとする。

と言うか他の雑用とかもやらされるようになり始めた。

俺は用務員じゃないんだぞ。人の役に立てるの嬉しいからやるけども。

 

 

£月T日

一成の奴が嬉嬉としてこき使ってくる。雑用仕事何でもござれ? 俺は万屋じゃねぇんだよって何度言えばアイツに通じるんだろうか。

まぁ人の役に立てるのは嬉しいからやるんだけども。

⋯⋯ダメだ俺将来ブラック会社に勤めたりして死にそうな気がする。

外国には過労死っていう概念が存在しないから過労死はそのままで英単語になってるらしいなんていうどうでもいい豆知識を思い出した。

 

 

‰月U日

中学校時代からずっとやっているアルバイト以外にもバイトを増やした。最近、大学進学をしたりする可能性も含めると現在のバイト代だけでは貯金が心許ない気がしたからだ。

バイトと部活とで、てんやわんやの毎日。と言っても、増やしたのは日雇いのアルバイトだけだから日程の調整はそこそこ出来る。

 

 

∬月W日

日雇いのバイトで左肩を火傷した。慌てて病院へ連れていかれたが、怪我自体は骨折しただけ、と大したことなかったそうだ。だが火傷の痕が残ってしまった⋯⋯と言ってもそう目に晒す場所でも無いので、気にすることはないだろう。

 

 

∬月Z日

部活をやめた。慎二に言われるまで気付かなかったのだが、確かに肩の火傷の痕を晒しながら礼射をするのは見苦しいかもしれない。気にすることはないだろうとか言ってた過去の自分を殴りたい。周りのことを考えられてない証拠だ。

バイトも忙しくなってきたしいい機会だ。

ま、弓もそこそこ上達してきた矢先の出来事だったので残念ではあるのだが。

 

 

∬月S日

慎二の妹が家の前にいた。俺が帰ってくるまでずっと待っていたんだそうだった。わざわざそこまでしてくれなくとも、とは思ったのだが、取り敢えず話があるらしかったので聞いてあげた。

お手伝いをさせて欲しい、とのこと。

流石に友人の妹をこき使うのも色々とアレなので断っておいた。そんなに気にすることないのに。

 

 

∬月M日

桜ちゃんってこんなに頑固な子だったか⋯⋯?

断っても断ってもうちに来るんだけど。

いや、別に彼女が苦手とかそういうわけじゃないんだが本当に申し訳ないんだってば色々と。

 

 

∬月G日

桜ちゃんが家に来ることになった。度重なる訪問と懇願の末、俺が根負けしたのだ。

取り敢えず俺の怪我が治るまではうちのお手伝いをしたいんだそうだ。

と言うか料理やった事ないらしいんだが大丈夫なのかそれ。まあ、折角の機会だし、『衛宮士郎の 分かりやすい! 料理教室 〜今日から君も主夫の一員〜』でもやってやるか。

あ? 主夫じゃなくて主婦?

 

 

⌒月♡日

桜も家に馴染んできた。来るようになった初めの方から比べれば、かなり笑顔を見せるようになった。そうそう。可愛い女の子は笑顔でいないとな。

家に来るまでやったことなかったらしい料理もかなり上手くなってきた。結構付きっきりで教えた甲斐があったんだと思う。初めてうちに来た時、サラダ油の存在すら知らなかったことは驚愕の至りだったが⋯⋯何でそんなので手伝いをしに来ようと思ったんだか。

 

 

¶月灬日

桜がすっかり家に馴染んで、もう家族の一員だ。

俺も学校で雑用が板についてきた。

タイガーは相も変わらず家に来て俺と桜の手作り料理に舌鼓を打つ毎日。

お前も料理練習しろ。

 

平凡な日常がずっと続いている。こういうかけがえの無い日々がずっと続いていけばいいのになんてセンチメンタルなことを考える衛宮士郎君であった。まる。

もう異世界からの侵略者とか選ばれし勇者とかそういうのはいいや。

 

 

▒月▦日

二年になってもう2ヶ月。担任になったタイガーが学校で『タイガーって呼ぶなーーーーー!』と叫ぶのももうお約束のレベルになりつつある。

衛宮家ではもう言ってこないが、最近学校ではタイガーと言うとキレる。怒髪天を衝くと言うか怒れる虎咆哮せしと言うかそんな感じ。

という訳で学校ではタイガーの呼び名を藤村センセへと変更しておいた。

うーん⋯⋯中々新鮮。

 

 

▪月♠日

思わず慎二を殴ってしまった。虐待見逃しちゃダメ、絶対。

あいつ根はいいやつの筈なのに何で桜を虐めたりするんだ。あれから慎二とは微妙に疎遠になりつつある。

桜に迷惑がかかるかもとやんわりと『もう来ない方が良い』みたいなことを言ってみたんだが、泣きそうな顔で『私、迷惑ですか⋯⋯?』なんて聞かれたらこんなの頷けるわけない。将来あの子悪女になりそうで怖い。

⋯⋯いや、きっと桜はいいお嫁さんになる筈だ、うん。

料理も上手いし家事も出来るし。でも桜の夫さんは苦労しそうだなぁ⋯⋯なむなむ。

 

 

◀月▶日

久方ぶりに魔術についての事を日記に書く。

最近気づき始めたんだが、アレだ。投影魔術ってのは素材すらも再現してみせる3Dプリンターみたいなもんだ。

中身さえ確りと理解出来てれば基本的にどんなものでも作って動かすのが可能になる。

 

それが分かってからは電化製品を幾つか分解して構造を把握し、全て同じように再現出来た。と言っても今のところ出来てるのは至って簡単なものだけなんだけど。

 

銃なんかも投影できると便利かもしれない。構造とかが分かんないから今の俺じゃ無理だけど。

例えば──そうだな。二丁拳銃なんてロマンあるじゃない?



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デレマス1-1

大分前に書いた奴

いつかは分からないですけど二話も投稿します


 プロデューサー。それは、アイドル達のマネージメントから何から、担当アイドルに関するほぼ全てに責任を持つ役職である。担当アイドルが多いほどそのプロデューサーの腕が高いことの証左となり、その分仕事も増える。……そう、増えるのです。

 

 はてさて、あるプロダクションのビルのなかの、とある一室。

 ソコには、実にどんよりとした空気が流れていた。

 それもそのはず、その部屋にいる二人とも、仮眠を除けばほぼ丸二日寝ていないからだ。

 

 

――――――――――

 

 

 月月火水木金金。

 これが何を示すかお分かりだろうか。

 そう、言わずもがな――

 

 今週の俺の一週間だよコンチクショウ!

 休みなんて無かった、いいね?

 

 手元のスタドリを一気に煽り、何とか眠気を吹き飛ばす。

 

「ああ、休日が恋しいです」

「……お疲れ様です。もう少しで一段落しそうですね。何か買ってきましょうか?」

 

 そうボヤいた俺に死んだような瞳で微笑みかけるのは、千川ちひろさん。事務所の先輩であり、一応俺の同僚に当たる人だ。彼女も限界が近そう――もとい通り越しているまである。

 ゆっくりと首を振り、力なく笑う。

 

「……いえ、ちひろさんに……買い物行かせるわけにもいきませんし……自分が行きます」

「えっと……大丈夫ですか? 喋り方が文香さんみたいになっちゃってますけど」

無問題(モウマンタイ)デス!!」

「テンションとかその他諸々おかしいですけど本当に大丈夫ですか?」

 

 (大丈夫なわけ)無いです。

 一週間丸々、1日の内半分以上をデスクワークにて過ごすと言うのは実に辛いものだ。そろそろ、我が身の勤勉さに皆はひれ伏すべきではありませんですかね。

 せめて自分の担当アイドルの現場仕事ならば救いはあるのだ。頑張っている彼女達を見ていると、自分も頑張ろうと言う気になるし、何より彼女達の笑顔は何よりの癒しになる。

 でもデスクワークは――

 

 室内にいる俺以外の唯一の人間であるちひろさんに視線を向ける。今週は特に徹夜が増えているせいだろう、目の下に酷いクマを作っていた。

 

「これだしなぁ」

「なに考えているかは何となく分かりますが。失礼じゃないですか?」

 

 小声で呟いていたのが聞こえていたのか、ちひろさんは底冷えのする笑顔を浮かべた。もちろん、こんな笑顔に癒し要素はありません。あるのは恐怖だけ。

 

「じゃ、じゃあ俺今日の夜食買ってきますね」

 

逃げるように顔を背け、席を立つ。長い間座りっぱなしだったせいで腰が痛い。腰を握りこぶしでトントン、と叩きながら急ぎ足で部屋を出た。

 

 

 

 最近の日本は便利だ。何処にでもコンビニがある。

 この前、50mも離れてない場所に同じ名前のコンビニがあるのを見たときは正気を疑ったが。あれって本当に何でなのかしらん。

 

 

 

 コンビニで買ってきた弁当をちひろさんと二人黙々と食す。あれ、おかしいな。美人と一緒にご飯食べているのにちっともそんな雰囲気じゃないぞ?

 ちひろさんだから仕方ないね。

 

 少し仮眠を取り、再びデスクワークに戻る。

 だが、今日の午後は担当アイドル達のリハーサルへの付き添いだ。デスクワークも後少しで終わることが出来る。そう考えると、頑張れた。……と言うか、このライブのせいでこんなハードワークだってところもあるんだけど。

 

 

 

 朝が来た。時計を見ると、七時半。やべぇ仮眠とってから五時間くらい働きづめだぞ。誰か俺に休みを下さい。

 

「おはようございます! プロデュー……サー……さんって、ええっ!? ど、どうしたんですか!?」

「……ああ……美波か……。今日も絶好調で何よりだ……」

 

 ドアを開けて部屋に入ってきたのは、俺の担当アイドルの一人である、新田美波。穏和な顔立ちに、柔らかな表情。長い茶髪をツインテールに纏めた、しっかり者の現役大学生である。

 美波は机に突っ伏す俺を見て目を見開いた。そう言えば、美波はここ一週間は大事なテストが近いとかで学業に専念するために大事な仕事以外は減らしてたんだっけか。

 俺のこの状態を見るのは、もしかしたら初めてかもしれない。

 

「プロデューサーさん、大丈夫ですか……? クマが酷いです。しっかり休まないとダメですよ?」

「あー、うん。分かってる分かってる。大丈夫だって、一応限界はまだ来てない……気がする」

「限界が来てからじゃ遅いんですってば!」

 

 もう、私が居なくてもちゃんと休まなきゃダメなんですから。

 そんなことを言いながら、美波は何だかんだ嬉しそうに頬を緩ませる。

 

「プロデューサーさん、お仕事って何時からでしたっけ」

「あー……っと。午前中は10時半からの美波のグラビア撮影だけかな。昼からは、体調崩しちゃったらしい加蓮の見舞いと……あ、文香のレコーディングもか。あとはリハーサルだけ」

「結構多いんですね……。……じゃあ、9時過ぎまで寝ていて大丈夫ですよ。私が起こしますから」

「……え? いや、まだやることが……」

「ダメです」

 

 有無を言わさない様子で俺を休ませようとする美波。心配してくれているらしい。……まぁ、俺も似たような境遇の人を見たら心配するが。

 お言葉に甘えるべきだろうか。室内にいるもう一人の死体(ちひろさん)に確認を取ってみる。死体さん――もといちひろさんは、欠伸混じりにこう答えた。

 

「ええ、大丈夫ですよ。……ふぁあ。やっと一段落しましたし、私も少し休みましょうかね」

「お疲れ様です」

「いえいえ、プロデューサーさんも。入社してからそう長く経っていないのに、本当に異常なほど頑張らせてしまっちゃってますね。……せめて少しくらいは、休んでください」

 

 ちひろさんも許可してくれたので、俺に断る理由はない。……休みたかったしな、実際。

 事務所のソファに寝転がり、目をつぶる。すると、案の定――すぐに強烈な眠気が訪れ、俺はそれに体を委ねた――

 

 

 

 

「――さん」

 

「プロ――さん」

 

「プロデューサーさん、起きてください」

 

 体を小さく揺さぶられ、目が覚めた。どうやら、もう時間らしい。一時間半も寝れた――いや待てその基準はおかしい。

 

「……っと、時間か」

 

そう呟くと、美波はもうちょっと寝させてあげられれば良かったんですけど、と苦笑した。

……まあ、俺の体なんかより我が担当アイドル達の仕事の方が大事だから、何の問題もないけどな。

 

ソファで寝たせいでシワが出来てしまったスーツを着替えた後、俺と美波は事務所を出た。



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ONE PEACE 1

天才海兵の勘違いものにしようかなと思ってました


その男は、年齢は若干20歳と、若くして海軍本部中将だった。

生まれた頃から知覚が過敏で、それが『見聞色の覇気』だと言うことに周囲が気付いたのが10歳の頃。

その頃から既に武装色の覇気の使用についても片鱗を見せていた。どれだけ強くなろうとも特訓に力は抜かず、ひたすらに自らを邁進する毎日。

剣の腕前は超一流だが、剣だけに頼らず徒手空拳も織り交ぜる自由な戦法を得意としていた。

13歳で海軍に入ってからは、その頭角を現しメキメキと昇格。部下の怪我を良しとせず、常に前線で体を張った戦闘を繰り返していた結果、多く戦果を挙げ、ここまでの地位についた。

その能力を買われ、彼は現在《新世界》にて基本的には制約なく行動している。

 

それが、彼──アス中将の周りからの認識であった。

しかし、彼の一番の部下であり、彼が最も信頼しているリネット准将以外、誰が知りえただろうか。それは、常に彼が責任を取りたくないがゆえの行動だった、ということを。

 

 

 

 

「アスさん! 前方に海賊の船が!」

「⋯⋯承知した。海賊旗の確認を急げ」

 

船で海を適当に渡っていれば、このご時世、少なくとも1ヶ月に1度は海賊船と出会う。それは平穏を求めるアスにとって喜ばしいことではなかった。だが、出会ってしまえば捕まえなければならない。四皇レベルの海賊ならともかく、ただの有象無象の海賊をみすみす逃してしまったとあれば、中将としての信用問題に関わるからだ。

だから、なるべく強くない海賊団であればあるほど良い。⋯⋯と常日頃から思っているのだが、それが叶ったことは過去一度としてない。

 

「懸賞金1億超えが2人いる《弓の海賊団》です!」

「1億超え2人か⋯⋯よし、そっちは任せろ。⋯⋯お前ら、いつも言ってるとは思うが」

「自らの安全を最優先に考慮しろ!」

「⋯⋯分かってるならいい」

 

死者や怪我人が出れば、責任問題が発生する。そう言った七面倒臭い事に関わるのはゴメンだ。だから彼は部下の安全を最優先にし、自ら前線へと立ち続ける。そんな彼だからこそ、海軍本部の中でも昇格し、尚更責任が重い重役へとついているというのだから、皮肉なものである。

 

『⋯⋯えー、海軍本部中将からの降伏勧告。1度きりしか言わないからよく聞け。そこの船の海賊たち、武器を下ろし速やかに投降しなさい』

 

拡声器を使った、自分でも無意味だと分かっている降伏勧告。こんな勧告で降伏してくるような海賊は、そもそも新世界に来るまでに潰れていることを既に知っているからである。だが、一縷の希望を掛け、彼は戦闘前には常にこの儀式を行っていた。

 

──だが実際、弓の海賊団の船はアス達が乗っている船へと挨拶替わりの砲弾を撃ってきた。

 

「まぁ、こうなるわな」

 

青年は達観した表情で小さく呟き、腰に帯びていた日本刀を音も無く抜き放った。

 

 

 

戦闘後、アスは軍艦の自室にリネットを呼び出していた。肩甲骨の辺りまで伸ばした茶髪をポニーテールのように括っている、傍から見ても相当に美しい女性だ。彼女もアス程とは行かないまでも期待の星であり、まだ20代半ばに見えるが実年齢は35。アスから見れば相当に年の離れた姉──という感覚であった。

リネットは纏めて抱えていた大量の書類をアスの机の上に置くと、小さく息をついた。

 

「アスくん、今日も無茶な戦いしてたのね。⋯⋯二人いる片方の相手くらい、私に頼ってくれても良いのに」

「⋯⋯それはそうなんだが、万に一つもリネットさんに怪我されたら困る」

「あら。私はそんなに信用無いかしら」

「万に一つも、だ。聞き間違えないでくれ。リネットさんの実力は俺が一番よく分かってる」

 

アスは少し拗ねたようなリネットの言葉に、苦虫をかみ潰したような表情を浮かべる。実際、今日戦った海賊達は、船長でさえ1対1ではとてもリネットに敵わないような海賊ばかりだった。

 

「分かってるなら良いのよ。⋯⋯怪我はない?」

「大丈夫だ。1億2人にやられるほど俺もやわじゃない」

 

少し冷めてしまった珈琲を啜り、机の上に置かれた書類に目を通していく。

リネットは部屋に置いてある来客用の椅子に座ると、テーブルの上に設置されているポットを手に取り、コップへと紅茶を注いだ。礼儀正しく一口飲んで曰く

 

「温いわ」

「⋯⋯冷やかしなら帰ってくれ」

「あら冷たい」

 

ふふっ、とリネットは穏やかに微笑む。アスはガリガリと頭を掻き、不満そうに眉を寄せるも、それ以上何か言う事は無かった。

リネットも一口目以外は紅茶についてのコメントをせず、ただニコニコと笑みを浮かべたままアスを見つめるだけだった。



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クロス ラブライブ×がっこうぐらし

移植


そう──ある日突然、その異変は起きた。

私たちを引き裂くような、あんな出来事が⋯⋯

 

 

もしかしたら、朝のニュースからその前触れはあったのかもしれない。妹の雪穂に起こされ、1階で朝食を食べながらテレビをつけていると、こんなニュースが流れていた。

 

『駅にて暴徒多数』

 

載っていた地域の名前がそう遠くない場所だったため、お母さんと最近は物騒だ、なんていう話をしたのを覚えている。

 

 

登校してからは、特に何か異常があった覚えはない。

いや、朝からことりちゃんの様子が少しおかしかったような気もする。

授業を終えた後、いつも通り部室へ向かい、屋上で次のライブのための練習を重ねる。

今日はことりちゃんが休みだった。理事長であるお母さんから何か用事を言いつけられたらしい。

 

 

しかし、本当の異常は私達が練習を終えて元の制服に着替え始めていた時に起こったのだ。

 

「────ッ!!」

 

窓の外から聞こえた甲高い悲鳴。みんな慌てて窓から外を見る。

 

「なに──あれ」

 

そう洩らしたのは、誰だったか。

そこにあったのはまさに地獄絵図と呼ぶべき有様だった。先ほどまで笑い声や部活に励む掛け声が響いていた場所には、転々と見える人の倒れた姿と、それに群がる私たちと同じ制服を着た生徒達。

それはまるで、倒れている女の子の肉体を、貪り喰らっているようで。女子生徒達の口元は、人間のものだろう血液で紅く染まっていた。

ひッ、と掠れた声を出して花陽ちゃんが後ずさる。私たちの全員が、眼下に広がる異常事態に呑まれていた。

 

喰われて死んだように動かなかった生徒達が、暫く経つとひとりでに起き上がり、鈍重な動きで辺りを徘徊し始めたのを見て、私はこみあがってきた吐き気を堪えるために口に手を当てて強く目を閉じた。

それと同時に、ドアが強い力で叩かれる、ドンドンという音が部室に響いた。部室にいる全員が息を呑む。

このドアが開いてしまえば恐らく、先ほど窓の外で起こった事が自分たちに降り掛かることになるのだ、と分かった。

 

そこからは必死だった。部室に置いてあった机や重い物をバリケード代わりに積み立て、みんなでそれを押さえる。

ドンドン、ドンドン。

ドアを叩く音は一向に弱くならず、寧ろ叩く人数が増えたのか増していくばかり。窓が割れ、誰かの赤黒く変色した手が伸びる。

花陽ちゃんが耳を抑えて蹲った。でも、誰もそれを気にする余裕なんて無かった。自分たちも蹲ってこの意味が分からない現実から逃避したい。しかしそれをすれば、自分たちが先ほどの女の子のように動く屍になりかねないということが分かっていたからだ。もう私たちの心はぐちゃぐちゃだった。

 

やがて、ドアを叩く音と力がなくなったのは日が暮れてしばらく経ってからだった。

それでもドアを押さえている机を退ける気持ちにはならず、出口のない部室の中、私たちの間には重苦しい沈黙が横たわっていた。

ふと、海未ちゃんが体育座りのままボソリと呟いた。

 

「何が──起きてるんでしょうか」

 

それに対して、明確な答えを持っている人間は、今この部室の中にいなかった。

 

「ことりちゃん、大丈夫なのかな⋯⋯」

 

そう洩らしたのは、凛ちゃんだった。

 

「そうだ、雪穂!」

 

頭を殴られたような感覚があった。まだ自分たちの事しか考えれていなかったが、雪穂達もこの異常に巻き込まれているかもしれないんだ。

 

そう考えると、いてもたってもいられなくなった。

慌ててスマホを起動し、家へと電話を掛ける。

数コールの後、電話は留守電へと繋がってしまう。

諦めずに掛け直す。留守電。

それならばと雪穂やお母さん、お父さんのスマホへと手当り次第に電話を掛ける。

 

繋がることは、無かった。

 

 

私の周りでも皆同じような状況らしく、何とか電話が繋がったのは花陽ちゃんのお兄さんと凛ちゃんのお母さんくらいのものだった。

雪穂と亜里沙ちゃんには、繋がらなかった。

それが指し示していることは

つまり、二人はもう──

 

いや、そんな事を考えてはいけない。皆無事だって、そう思わないと。私は嫌な予感を振り払うために頭を強く振った。



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わすゆ 1-1

続きが書けないことを確信したのでこちらへ移行


ある日、母親が感極まったように泣きながら「大事なお役目に任じられた」と私に言った。

家が家だし、とても重要なお役目らしいので、私も嬉しかった。誇らしかった。

怖くない、なんて言ったら嘘になる。だって、お役目の途中で死ぬかもしれないと教わったから。何てったって相手はウイルスから生まれた得体の知れない超変異生命体だ。

 

でも、頑張る。

 

だって私は──勇者になったんだから。

 

 

 

*ㅤ*ㅤ*

 

 

 

「それじゃ、いってきまーす!」

 

朝。私──高嶋小春はいつものごとくお手伝いさん数人に見送られて家を出た。私の家は大赦の中でも2、3を争う程の力を持った家、高嶋家である。当然のようにうちは沢山のお手伝いさん達を雇っていたし、私が物心つく前からのお手伝いさんも複数人いるので、既に彼女達は私にとって家族みたいなものだった。

 

ランドセルを揺らしながら、通学路を1人進んでいく。お手伝いさんに頼めば車で送迎してもらえるし、実際、人によってはそうやって来ている者もいるが、私は普通に自分の足で歩いて登校するのが好きだった。

 

いつも一緒に登校している友人達を見つけ、声をかけて合流する。昨日何をした、だの、今日は何をする、だの今日の授業は何々があるから苦手だ、だの数時間後にはすっかり忘れてしまっているような取り留めのないことを話している内に、すぐに私が通っている学校が見えてきた。

おはようございます、と入口にたっている警備員さんに頭を下げると、相手もにこやかに返してきた。少しそこらを見渡せば、あちらこちらに警備員さんや監視カメラが設置してある。この学校のセキュリティは万全なのだ。

 

私の通う神樹館は、世界の全てである神樹様の名前を冠するだけあって、四国内随一のお嬢様学校。しかし、お嬢様、と言ってもやはり小学校で、そんなにお固い感じではない。私は、そんな学校の雰囲気が大好きだった。

 

自分の教室──六年一組へと入り、自分の座席へと向かう。椅子に座り、ランドセルの中に入れておいた教科書を取り出して机の中にしまった。右隣の席の友人はまだ来ていないようだったので、他の友達と会話を楽しむ。

 

 

 

「はわわっ! お母さんごめんなさい!」

 

突然の大声。クラス中の視線が今しがた寝ぼけて立ち上がった少女──乃木園子へと向かう。当の本人はと言えば「はれ? 家じゃない」と辺りをキョロキョロと見回し、周りの視線に気付いたのだろう、照れてまた、座り直す。

私と彼女は家柄の関係で昔からある程度の面識はある。いろんな意味で彼女らしい行動に、私はクスリと微笑んだ。

 

「乃木さん、ここは教室で、朝の学活前よ」

 

そんな園子にそう冷静に突っ込んだのは、鷲尾須美。私や園子と同じお役目についている、少し生真面目な女の子。

 

⋯⋯実を言うと、私は彼女が少し苦手だ。彼女が、というより、真面目な雰囲気が、と言った方が正しいだろうか。基本的に私がフリーダム気質なため、真面目な彼女にしばしば注意される事があったことも、その理由に含まれている。

だが、最近は合同練習も近付いていることもあって、私からも頑張って鷲尾さんへと話しかけてみている。結果はあまり芳しくはないけれど。とほほ。

 

私が少し途方に暮れていると、授業の開始を知らせるチャイムが鳴り、担任の安芸先生が教室へと入ってきた。

⋯⋯と、思った途端に、ドタバタと廊下を走る音。

 

「はざーっす! ま、間に合ったぁ⋯⋯」

「三ノ輪銀さん。間に合ってません」

 

今しがた教室へと駆け込んできた少女──三ノ輪銀が出席簿で頭を軽く叩かれる。時代が時代ならこれも体罰問題へと発展したかもしれないが、神世紀298年現在、体罰は軽度のものであればそう咎められるものではなくなっている。

叩かれてわざとらしく痛がった後、銀は私の隣の机へとランドセルを置くと、ふう、と一息ついて椅子に座った。

 

「おはよー、銀ちゃん。今日はどうしたの?」

「おう、おはよ。ま、六年生にもなると、色々あるんさー」

「あはは、何それー」

 

お互いに軽く笑い合い、授業の用意を始めようとランドセルを開けたところで──

 

「⋯⋯教科書忘れた」

 

自分のランドセルが空っぽであることを見た銀が情けない声でそう呟いた。私は軽く肩をすくめる。

 

「しょうがないなぁ、銀ちゃんは。私の教科書、見せてあげるから」

「おー! サンキュー」

「いえいえ」

 

そんな会話をしながら私も一時間目の授業で使う教科書を机の中から──

 

「あれ⋯⋯? これ去年のだ」

「おい」

 

5年の教科書を取り出し、そして再び何事も無かったように片付ける。

 

「隣の人に見せてもらおっか!」

「そんな満面の笑顔で言われてもなぁ⋯⋯」

 

銀はそう呟いて苦笑した。

 

 

 

日直の挨拶が終われば、学校の授業が始まる。

一時間目の授業こそ私も銀も教科書を隣の人に見せてもらわなければならなかったが、二時間目からは私が持ってきた六年の教科書を2人で共有し、授業を受けることでなんとか乗り切った。

お昼ご飯を食べ終わり、長い昼休みに入ると、私と銀はいつものように広いグラウンドへと向かって走り出した。

お嬢様学校とは言え遊び盛りの小学生だ。当然、グラウンドで遊ぶ子も沢山いる。

 

しかし、私と銀がいると、普通の鬼ごっこは余りすることがない。来るべきお役目のために訓練している私たちは、まず他の友人達とも基礎体力が全然違い、誰も私たちをタッチすることが出来ないからだ。

だから私たちがするのは、専ら球技だ。と言っても、私も銀もかなり強い方ではあるので、大体が別チームに振り分けられるのだが。

 

今日の遊びはサッカー。私と銀をリーダーにして、五対五に分かれている。今の点数は、二対三。私たちのチームがリードされていた。

しかし、丁度得点のチャンスが到来した。ゴール前にいる私へのマークを上手く振り切れたのだ。パスルートもガラ空きで、これで三対三のイーブンに戻せる──

 

と思っていたの、だが。

 

いつまで経ってもボールが来ない。不審に思って視線を上げると、私へと蹴られたボールは空中で停止していた。それどころか、さっきまで一緒に遊んでいた友人達もピタリと動きを止めている。

唯一この時の止まった世界で動いているのは──私と銀、だけ。

 

「これは⋯⋯っ」

 

まだ神託で告げられたその時より相当早いが⋯⋯まさか。

 

私と銀は顔を見合わせ、どちらからともなく頷きあった。

お役目を果たす時が来たんだ、とお互い何も言わずとも察した。ひとまず教室へと向かい、動けているはずのもう2人と合流しなくてはいけない、と。



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わすゆ 1-2

「ねぇねぇこれ敵がきたんじゃないの!?」

 

私と銀が血相を変えて教室へと駆け込むと、やはりと言うべきか、須美と園子はこの止まった時間の中でも動けていた。⋯⋯園子は机に顔を伏せてピクリとも動かないが、多分止まってない。動けている。動けている⋯⋯はずだ。

少し私が困惑していると、須美は私たちが動けることに尚更現状への理解を深めたようで、

 

「三ノ輪さん、高嶋さん⋯⋯2人とも動けるんだ」

「うん、鷲尾さんも動けるんだ。小春、やっぱりこれって⋯⋯」

 

銀が私に問いかける。私は小さく、だが確かにコクンと頷いた。

 

「うん、お役目の時間だ」

 

そう──時間停止は、お役目開始の合図。私たちは安芸先生からそう教わっていた。⋯⋯と、その時、つい今まで机に突っ伏して快適な睡眠ライフを過ごしていた惰眠を貪っていた園子が身体を起こした。

 

「ふぁーあ⋯⋯。あれ、また寝ちゃってたぁ⋯⋯?

 

あれ? あれあれあれ?」

 

そしてあたりを見回し、ただならぬ雰囲気を感じとったのだろう、幾度か目を瞬かせると──

 

「夢かぁ」

 

また顔を伏せた。あやとりの天才である某小学生もかくやの寝付きの良さで、すぐにすやすやと規則正しい寝息を立て始める。

 

「「「寝るなー!」」」

 

3人息の合った総ツッコミ。「はぅあ!?」と間の抜けた声を出し、園子が夢の世界から帰ってきた。

須美が小さく咳払いをし、緩み始めた空気を再び引き締める。気を取り直し、私たちは現状を整理した。

時間が止まった後に起こることは、確か

 

「神樹様によって結界が張られるんだよね。えっと、何だったっけ⋯⋯"神樹化"?」

 

うろ覚えの知識を私が披露すると、須美は頭痛がするように頭を抑えた。その反応を見て察する。どうやら、私の知識は間違っていたらしい。

 

「神樹様になってどうするのよ⋯⋯。神樹様による、大地の"樹海化"、よ。もう何回も教わったでしょう?」

「アタシたちが勇者になって、やってくる敵を追い返せばいいんだよな」

 

銀が小さく呟いて、袖を捲る。

そして、それとほぼ同時に世界を白い光が包み、そして塗り替えた。

 

 

 

数秒間が経ち、光が収まると、私たちの前には"樹海化"した四国が広がっていた。家屋も学校もほとんど全てが樹木に変わり、その原型を留めていなかった。言うなれば、樹木の国である。

銀が周囲を見回して、呟く。

 

「うーん、もはやどこがどこなのかさっぱり分かんないね、全部木だ⋯⋯。ねぇ、鷲尾さん、イネスどこかな」

「こんな時にイネスの心配しなくても」

 

須美は呆れながらも律儀につっこみ、軽いやりとりを幾つか交わした。

イネスとは、昔から駅前にある巨大なショッピングモールの事だ。色んな店があり、基本的に何でも買うことが出来る。銀はそんなイネスが大のお気に入りで、自らをイネスマスターと呼ぶほど通いつめていた。

 

「あ、ねぇ。大橋は、完全に樹海化しきってないよ〜」

 

とても大きな橋を園子が指さし、全員がそちらを向いた。なるほど、確かに軽く根が張っている程度で、大部分は原型が残っていた。私たちのお役目は、あの橋の向こう側からやって来る敵を撃退することであるため、その位置が分かるのはありがたいことであった。

 

「じゃ、そろそろ⋯⋯!」

 

銀が懐から、携帯端末を取り出した。須美、園子、小春も後に続く。お役目を果たすために4人にだけ配信されているアプリを起動させ、その姿を勇者のそれへと変換させる。

 

銀は、赤を基調とした衣装に、本来なら両手で持つほど大きな斧を二刀。

須美は、青を基調とした衣装に、弓。

園子は、濃紫を基調とした衣装に、普通の物よりも刃が多めについた槍。

私は、濃いめの桃を基調とした衣装に、小柄な体型には似合わない巨大な戦槌。

 

皆の姿をぐるりと見回し、園子がのんきに呟く。

 

「わー、皆の衣装初めて見たけど、可愛い〜」

「そう言えば合同訓練まだだったもんねー。お互いに初めてのお披露目か。園ちーのも可愛いね」

 

私が笑うと、須美は真面目な表情で頷いた。

 

「敵がご神託よりも早く出現してしまったから⋯⋯」

「まあ、大丈夫だろ」

 

銀は自信満々にそう言うと、大橋へと向かって大きく跳躍した。神の力を纏った少女達の基礎能力は、元々の状態と比べても大きく跳ね上がっている。数十メートルを跳躍することも容易であった。

突出気味に大橋へと向かった銀を追って、私、園子、須美も順に後に続く。

 

 

それは、橋の向こう側から出現した。例えられる物がこの地球上には無い程に異質な、とても巨大なバケモノ。

十メートルはあろうそのバケモノは、"バーテックス"と呼ばれる存在だ。

人を襲い、この世界全ての恵みである神樹様の破壊を目的とする、人類の敵。通常の兵器はほぼ効果がなく、神の力を宿す勇者にしか対抗できない。

 

「よしっ、じゃあやろっか!」

「おうっ!」

 

銀と顔を見合わせて頷くと、私たちは地面を蹴った。

バーテックスの撃退に長い時間が掛かれば掛かるほど、現実世界に悪影響が出る。その被害を軽減するためだ。

 

「駄目! 先に牽制して、手の内を見ないと⋯⋯!」

 

須美が慌てて援護射撃をする前に、バーテックス側が動きを見せた。頭の先端部分から生成した液体の数多の塊を、私たちへと放ってきたのだ。

 

「えっ、ちょっと、待っ⋯⋯あうっ!」

 

私の武器では小回りが効かず、複数個は弾いたものの数に押し切られて吹き飛ばされた。地面に激突し、激しい衝撃を受けた。

 

「うわ⋯⋯っとと! 何だこれ!」

 

銀は何とか器用に避けていたものの、やはり数に呑まれ、吹き飛ばされる。

 

「はるるん! ミノさん!」

 

園子の心配の声に私は手を挙げて無事を伝えた。私と銀の戦闘衣装は、近接用にタフな作りになっている。これぐらいでは、何の問題も無い。

 

「大丈夫! でもちょっとこれ面倒だな⋯⋯」

 

私の武器は当てられれば大ダメージを与えられるはずではあるものの、近付くまでがまず難しい。

銀も私と比べればマシながらも同じ様子だった。

 

「あぁー、もう!」

 

銀が苛立たしげに叫んだその時、須美の放った矢がバーテックスの表面に突き刺さった。爆発を起こし、表層の部分が割れる。

しかし、ぐにゃりとその部分が歪んだかと思うと、次の瞬間には元の通りに戻っていた。言うなれば、まさに"超再生"である。バーテックスの特性の一つで、私たち撃退する側からすればご勘弁願いたいくらい面倒な能力だ。

 

「む、むむぅ⋯⋯」

 

私は思わず腕を組んで唸った。

須美の矢では火力が足りず、私と銀では近付けない。

残るは園子なのだが⋯⋯と、私が園子の方を見たその時。

 

「あっ! ぴっかーんと閃いた!」

 

園子がそう言い放った。



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わすゆ 1-3

「おぉ、まるで電車ごっこみたいだ」

「⋯⋯本当にこれで行けるのかしら」

 

はしゃぐ銀と、心配そうに呟く須美。

私達4人は、園子の閃いた案のとおり電車ごっこのごとく縦1列に並んでいた。最前列が園子、続いて銀、私、須美である。

園子の作戦は、要約すると『何とかして火力のある私か銀を敵の元へと送り届ける』というもの。

 

「まあまあ、やってみるだけの価値はあるだろ?」

「確かにこのままじゃジリ貧だしねー」

「それはそうなのだけれど」

 

私達がそう言うと、むぅ、と須美は納得行かなげに唇を尖らせた。確かに、傍から見れば幼稚園児の遊びとも見えるほど滑稽なこれは、真面目な須美には理解できないのかもしれない。

因みに私にはこれが作戦として妥当かすら分かっていない。でも幼心に戻れるからこれはこれでありかなと。

 

「じゃあ、行くよ〜」

 

園子が槍を構える。私たちも各々の武器を握り直した。そして、すぐに走り出した園子の後へと続く。

当然、水球が私たちを迎撃するが、そもそも1列なので、私たちへと直撃するルートに入っている水球の量は少ない。そして、数少ないそれも華麗な園子の槍捌きと的確な須美の射撃によって見事に撃ち落とされていた。

 

「おぉ、鷲尾さん達やるぅ!」

 

銀が感心したように言う。私達のところには水球は一切来ず、先程と比べ随分楽な状態であった。

 

(このまま⋯⋯行ける!)

 

私がそう考えると同時、バーテックスもこのままでは近付かれ、攻撃を受けるだけだと考えたのだろう、別の行動を起こした。

 

「こっち来た!?」

 

傍らに付けている二つの大きな水球を、私達に押し付けようと突進してきたのである。園子の槍ではどうあっても捌けられるサイズではない。だが、接近戦ならば私と銀の土俵でもある。私は銀とアイコンタクトを取ると、下がった園子と入れ替わるように前へと大きく跳躍した。

 

「だぁぁぁぁあ!!!」

 

目の前へと突き出された水球を大槌で弾き飛ばし、そのままの勢いでバーテックスの側面を殴りつける。

大きく吹き飛ばされ、動きを止めたバーテックスへと、2丁の斧を構えた銀が駆ける。

 

咆哮と共に繰り出される乱舞。私達も後に続き、ひたすらバーテックスへと攻撃を重ねた。

土地神の力を宿した少女達4人の猛攻。

それを受けて敵は大きく後退するも、即座にダメージ部分が再生していく。

 

「うわぁキリがないけど⋯⋯負けない〜!」

「もう! さっさと出ていって!」

 

しかし4人は絶対にバーテックスを通すまいと、攻撃を続けていく。やがて──

 

その巨大な敵は、くるりと進行ルートを変え、来た道を引き返していった。

 

 

 

「やった────!!!!」

 

敵が視界から消え、結界の外へと出ていったのを確認した私たちは、思わず4人で抱き合った。

今までなすすべもなく敗北していた人間の歴史からすれば、とても大きな功績である。いつもは大人な須美も、無邪気にはしゃいでいた。

それぞれが不安をカミングアウトし、改めて勝利の余韻を噛み締めた。

 

 

 

 

 

戦闘終了後。すっかり元の姿を取り戻した学校の保健室で軽い検査を受け、異常なしと判断された私たちは校門までの道を歩きながら今日の戦いについて語り合っていた。

 

「みんな強くてビックリしたよ〜」

「それを言うなら園ちーだって。敵の遠距離攻撃も綺麗に捌いてたし」

「鷲尾さんの射撃も的確だったよなー」

「⋯⋯」

 

歩いている最中、相槌を打つばかりで自分からは一言も発していなかった須美が、不意に立ち止まった。どうしたのか、と私達も立ち止まり、俯いている須美を見つめる。

 

「ねぇ、みんな⋯⋯。よければ、その⋯⋯今日は、栄えあるお役目も果たせた事だし、祝勝会でもどうかしら⋯⋯?」

 

私たちは顔を見合わせると──

一斉に顔を輝かせた。

 

「うんっ、いこういこう!」

「まさか鷲尾さんから声掛けてくれるとは思わなかったなー」

「じゃあ、イネスいこうよイネス!」

 

イネス大好き人間の銀が両手を上げる。誰も反論することはなく、第1回勇者会議(ネーミング適当)の会場はイネスに決まったのだった。

 

 

 

 

「どう、どう? ここのジェラート、めっさ美味しいでしょ! イネスマニアのアタシ、イチオシだからね」

 

瞳を輝かせ熱く語る銀に、園子は目に涙を浮かべながら頷いていた。何やら話をしている銀と園子とは別に、難しい顔をしてジェラートを見つめる須美に、私はなるべく笑顔を心がけながら話しかける。

穏便に、穏便に⋯⋯。

 

「須美ちゃんにはジェラート合わなかった?」

「ううん、そんなことは無いの。合わないどころか⋯⋯とても美味しくて」

「宇治金時も美味しいよねー。私はもっぱらイチゴだけど」

 

そう呟いて、私は手に持ったイチゴ味のジェラートを齧った。口の中いっぱいに広がる冷たく甘い味を、余韻ごと味わう。

そんな私の隣では、園子が身を乗り出して須美の食べている宇治金時味のジェラートを見詰めていた。

 

「何だか、スミスケの食べっぷりを見たら宇治金時味も美味しそう⋯⋯」

「す、スミスケ⋯⋯?」

 

珍妙なあだ名で呼ばれた須美は、額に汗を流す。園子のあだ名のセンスは色々な意味で歪んでいる。だが、そんなことお構い無しに園子は大きく口を開けた。そう、それはまさに餌を待つ雛鳥のように。

 

「あーん」

「!? え、えーっと⋯⋯」

「だから、あーん」

 

初めての「あーん」に、しばし硬直していた須美だったが、やがて観念したのか、スプーンで掬ったジェラートを恐る恐る園子の口へと運んだ。

 

 

そんなこんなで初々しい恋人のようなやり取りを交わす2人を見守ったり冷やかしたりしていた銀だったが、ついに我慢しきれなくなったのだろう、自らの持つしょうゆ味のジェラートを高々と掲げる。

 

「ふふん、確かにイチゴ味も宇治金時もメロン味も全部超素敵な味だけど⋯⋯。でもねお二人さん、このフードコート最強は、アタシが食べてるしょうゆ味のジェラート。コレ。ガチでナンバー1」

 

私的にはしょうゆ味よりイチゴ味なのだけれど。

前食べさせてもらったジェラートの味を思い出し、軽く首を傾げる。あれは何というか⋯⋯わざわざジェラートにしてまで食べたいと思う程のものではないかと。

そんな私を置いて、銀はスプーンで掬ったジェラートを須美と園子の口の中にねじ込んだ。

 

──しかし、案の定2人からは不評であった。

 

「あっれぇー?」

 

 

***

 

 

大赦の訓練場で、須美は怒っていた。

理由は明白である。銀の遅刻だ。

 

「ごめんごめん、お待たせ!」

「銀。今日はどうして遅れたのかしら」

「ええと⋯⋯や、何を言おうが遅れたのは自分のミスだし⋯⋯ごめん、気を付けるよ!」

 

須美の説教タイムが始まった。

 

須美から銀への実に30分にも渡る長いお説教が終わり、尚更遅れてしまった訓練の後──須美はその事を「説教が長引いてしまってごめんなさい」とわざわざ私と園子に謝りに来ていた──私と銀は一緒に帰りながら今日の事について話していた。

 

「銀も何ていうか損な性格してるよね」

「ん?」

 

帰り道で買った缶ジュースに口を付けながら、二歩前を歩いていた銀は顔だけを振り向かせる。私は軽く肩を竦めると、

 

「いや、あのこと言えば須美ちゃんだって取り敢えず納得はしてくれそうなのに、と思ってさ」

「や、でも他人のせいにしてるみたいで何だかなって思ってさ」

「真面目というかなんというか⋯⋯」

 

私はガシガシと強く頭を掻いた。

──須美による銀の遅刻の真実を突き止めようと誘われたのは、その次の日の午後の事だった



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