Pとアイドルの奇妙な冒険(仮):更新停止 (妖怪1足りない)
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第1話 神からゲロ以下のにおいがプンプンする

「ん?」

 

気づくと俺は真っ白な空間にいた。

 

「ここは一体・・・」

 

俺はコンビニに行く途中だったはず。一体何が起きたんだ?

 

「お? 意外と冷静だね!」

 

背後から声がしたので振り向くと、そこには"神"とでっかく書かれたTシャツに、

ダメージジーンズを着た女の子がいた。

 

「あんたは一体何者だ?」

「神様だ!」

 

見た目はすごくかわいい女の子なのだが、ドヤッ!という表情と態度が非常にイラッとくる。

 

「いやあ、ごめんね~。間違って死なせちゃった。てへぺろ☆」

 

俺は無言でその神様とやらの頭に拳骨を落とした。

 

「痛あ!?」

 

神様は痛みに地面を転げ回った。

 

「ちょっと!? いきなり何するのさ! 暴力反対だよ!」

 

涙目になりながら神様は訴えてきた。

 

「まだ女だからその程度で済んだんだぞ? これが男なら、顔面に拳を叩き込んでるぞ」

 

この神様、自分がやったことがわかってるのか?

 

「で、間違って死なせちゃったというのはどういうことだ?」

 

俺の言葉に神様は目を泳がせつつ話し出した。

 

「ええと・・・私、仕事中に競馬をラジオで聞いててですね・・・、

それで、買ってた馬券が外れまして・・・、その時にラジオを怒りのままに、あなたのいた世界に投げてですね・・・」

 

「その投げたラジオが俺に当たって死んだと? そもそも仕事してる時に競馬とはどういうことだ。

とりあえず一発殴らせろ!」

 

「ごめんなさい!」

 

神様は俺の顔を見て、流れるような速さで土下座した。

しかし、神様の世界は競馬やってるのか。人間の世界と同じか?

 

「それで、俺に何の用だ?」

「ええと、それがね。あなたを間違って死なせちゃったことがばれるとね、

始末書千枚の大台に乗っちゃって、給料が千年間半分になっちゃうんだ」

 

この言葉で、この神様は駄神だと俺の心の中で確定した。

 

「だから、別の世界に転生させようかと考えてる。あ、もちろん特典もつけるよ! 今回のお詫びも兼ねて!」

「元の世界に生き返らせることはできないのか?」

「それをすると今回のことがばれちゃうので、それはできません。残念でした~! てへぺろ☆」

 

俺は無言で今度は腹を狙って殴った。

 

「お前がッ! 泣くまでッ! 殴るのをやめないッ!」

 

ボディに連打でたたき込む。

そして、神様は目から涙を流し、口から胃の内容物をリバースしてうずくまった。

 

「ひ、ひどい・・・」

「いいや、慈悲深いぞ。顔面に拳を叩き込んでないからな。それで? 別の世界とやらと特典について説明しろ」

 

神様は、よろよろと立ち上がると話を再開した。

 

「特典の要望はある? よっぽどでない限り受け付けるよ」

「ジョジョの奇妙な冒険に出てくる全スタンド及び波紋、回転の技術にしてくれ。

スタンドは一般人に視認出来たりするように、視認させるかのON・OFFが任意でできるようにしてくれ」

「え? 即答!? もう少し考えなくてもいいの?」

「ああ。それでいい」

 

ジョジョ好きの俺としては、純粋な興味として、スタンドを使ってみたい。

歴代主人公の『黄金の精神』を、俺が持てるとは思わないが。

 

「特典はジョジョの奇妙な冒険に出てくる全スタンド及び波紋、回転の技ね。

転生先だけど、二次元の世界になるよ。三次元の世界だと上司にバレるし」

 

落ち着け。この駄神の顔面に拳を叩き込みたい衝動を抑えろ。

 

「転生先はバイオハザード、サイレント・ヒル、学園黙示録、アイドルマスターのどれにする?」

「アイドルマスターの世界にしてくれ。というより、なぜその選択肢なんだ?」

「そんなとこしか空いてなかったから」

 

これはひどい。バイオハザードやサイレント・ヒルの世界になど行きたくない。

 

アイドルマスターは、プレイヤーがプロデューサーになって、女の子をトップアイドルにするゲームだったはずだ。

 

友人からの又聞きで詳しくは知らないが、少なくとも現代日本を元にしてたはずだし、他の転生先より安全だろう。

 

「一応聞いておきたいんだが、お前、いままでに何人の生命をお前のミスで死なせた?」

「君は今まで食べたパンの枚数をおぼえているの?」

 

・・・コイツはゲロ以下のにおいがプンプンする奴だッ! 今まで出会ったことが無いほどにッ!

 

「そんなことより、上司にバレる前にさっさと転生させるよ。GO!」

 

その言葉と共に目の前が真っ白になった。

 

「これで良し。さて、彼がどう生きるかちょくちょく見て楽しませ・・・もとい、暖かく見守ろうか」

 

 

気が付くと、仰向けに寝ているのか、視線の先に空が映っていた。

転生したのか?そう思い身体を動かそうとしたが、うまく動かない。

いや、俺の手こんなに小さかったか? ん? これはまさか・・・。

赤ん坊になっていないか!? あの駄神・・・!

 

「・・・赤ちゃん?」

 

影が差したかと思うと、女性が俺を覗き込んで呟いた。

 

「ん~・・・、身元がわかるようなものはないわね~。それにしても、赤ちゃんを捨てるなんてひどいわ~」

 

捨てられたんじゃなくて駄神がミスをしたのだろう。

 

「大丈夫よ~。私が育ててあげるから。家に帰りましょう」

 

そう言って俺を抱き上げてくれた女性の顔は、慈愛に満ちた表情をしていた。

助かった。本当に助かった。

 

そして、その日の晩、夢の中で駄神と会った。

 

「間違って赤ん坊からスタートさせちゃった。ごめんね~! てへぺろ☆ 

その代わりに、新しく特典つけるから。あ、今の君は赤ん坊だけど、ここでならしゃべれるよ」

 

赤ん坊の身体でなければ、この神様の顔面に拳を叩き込んでいるところだ。

 

「あの女の人が拾ってくれなかったら、死んでたかもしれないんだぞ」

「そうだね。まあ、よかったじゃん。それで、追加特典だけど一つ目はスタンドを二体同時に使える」

 

お、これはいい。戦術の幅が広がる。原作のホル・ホース&J・ガイルのように、コンビ技も使用できる。

 

「そして、追加特典の二つ目は究極生命体(アルティミット・シイング)になる。

不老不死は除外されてるから安心してね。それでも不死身に近いよ。全身が細切れになるか、

頭が吹っ飛ばされない限りは死なないし。五体がバラバラになっても、再生するから。

そして、流法(モード)も使えるよ。いやあ、私ってホントに優しい♪」

「ちょっと待って。究極生命体になるのは却下だ。俺は人間をやめたくない」

「でも断る。まあ、転生させる時に、君の身体を聖なる遺体と融合させて作ったしね。

ついでみたいなもんだよ。いやあ、聖なる遺体の処理すっかり忘れてて、

バレたら上司に怒られるからね。だから今回のことで隠ぺい出来て良かったよ。

これで話は終わりだよ。頑張ってね!」

「おい、ちょっと待て・・・!」

 

聖なる遺体とはどういうことだと言い終わる前に、目の前がまた真っ白になり、目が覚めた。

・・・死んだらあの駄神の顔面に、容赦なく拳を叩き込んでやる。



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第2話 原作? そんなことは知らない

書く→推敲→書く→推敲→書く→推敲→(以下ループ
こっちの表現の方がいいかなとか、ここは余分だから削ろうとか、
お話が出来ても色々と迷いますね。
ドツボに嵌まらないよう気を付けます。



「よし、帰るか」

 

学校の授業が終わり、他に用事もないので寄り道せずに家に帰ることにしよう。

あれから17年が経過した。拾ってくれた女性・・・お袋に名前を付けられた。

美城定守(みしろさだもり)。それがこの世界での俺の名前だ。

俺を拾って育ててくれているお袋には、本当に感謝している。

そして、特典の検証や訓練をした。

スタンドは問題なく発現。一部のスタンドはより扱いやすくなっていた。

波紋や回転、流法(モード)も問題なく使用可能。問題があるとすれば、

究極生命体(アルティミット・シイング)になったからか、それとも聖なる遺体とやらのせいなのか、

スタンド・波紋・回転・流法全てが原作より強化されてる点か。

幸いにも威力の調整は容易だった。そうでなかったら人を殺しかねない。

 

「定守、一緒に帰ろうぜ」

 

声を掛けてきたのは、柘植利益(つげとします)

俺と同じく転生者だ。最も、俺のいた世界とよく似た、別の世界だったらしい。

ちなみに対応した神様は、ちゃんと謝罪もしてくれた至極まともな性格だったそうだ。

どこぞの神・・・もとい、ゲロ以下の匂いがプンプンする名状しがたい何かとは大違いだ。

ちなみに利益は特典を決めるくじ引きの結果、オリジナルスタンドになったそうだ。

一度あることがきっかけで戦ったが、パワー・スピードが強い上、能力も厄介だった。

その後は友として信頼している男だ。

ちなみに俺と同じ歳なのに、頭がすでにかなり薄くなっている。

 

「しっかし、もうすぐ期末テストかあ。憂鬱だぜ」

 

帰り道、利益は面倒くさそうな表情で話始めた。

 

「利益、しっかりテスト勉強しておいた方がいいぞ。

ただでさえお前はケンカや改造制服を着てるせいで、学校に目を付けられているんだから」

「定守は頭良くていいよなあ。つうかお前もケンカしてるじゃねえか。

おまけに目つきも悪いし」

「ケンカはお前のように売っているわけじゃなく、向こうから売ってくるからだ。

それに目つきが悪いのは余計だ」

 

そう、俺は目つきが悪い。

例えるなら抜き身の刀といったところか。

前世ではこんな目つきはしていない。絶対に、あの駄神の仕業に違いない。

死んだらあの駄神の顔面を殴ろうと思っていたが、気が変わった。

駄神の全身に、『星の白金』(スタープラチナ)のオラオラの連打(ラッシュ)を、叩き込んでやる。

 

「いい考えが浮かんだぜ。『ヘブンズ・ドアー』で校長に、俺の改造制服がOKになるように書き込んでくれよ」

「だが断る。お前は改造制服以外にも問題があるから、学校に目を付けられているんだ。

改造制服OKにしてもしなくても意味はないだろ」

 

そう言って俺が横を歩いている利益から前方に視線を戻すと、横断歩道でトラックに轢かれる寸前の男の子が見えた。

向こうの歩道には女の子が悲鳴を上げている

 

『世界』(ザ・ワールド)!」

 

俺の声と共にそれが姿を現す。

アメコミヒーローを彷彿とさせるようないかついフォルム。

そこに存在するだけで、その溢れ出るパワーがわかる圧倒的な威圧感。

『世界』(ザ・ワールド)。原作においても最強クラスのスタンド。

そして、その能力を即座に使用する。

 

「時よ止まれ」

 

その瞬間、俺以外の世界の全ての時間が止まった。

最初はほんのわずかな時間しか止められなかったが、今の俺は20秒止められるようになった。

俺は時の止まった世界の中、男の子を横断歩道から、俺の歩いていた歩道まで移動させた。

 

「時は動き出す・・・」

 

その瞬間、今まで止まっていた世界の全ての時間が動き出した。

男の子は何が起きたかわからず呆然としてるし、向こうの歩道の女の子も同じようだ。

 

「大丈夫か? ケガはないか?」

「ひっ! は、はい・・・だ、大丈夫です!」

 

男の子は俺の顔を見て、怯えた表情をして答えた。

子供が俺の顔を見て怯えるのはいつもの事とはいえ、地味に俺の心にダメージが・・・。

とりあえず笑顔で話すことにしよう。少しはマシになるか。

 

「今度から横断歩道を歩く時は、左右を確認して渡れよ」

 

笑顔を浮かべつつ優しく話しかけると、

怯えていた男の子の表情が、さっきより落ち着いてきた。

 

「優!」

 

向こうの歩道にいた女の子が横断歩道を渡ってこちらへ向かってきた。

男の子と顔がよく似ているから、姉なのだろう。

 

「優!、大丈夫!?」

「うん! 大丈夫だよ、お姉ちゃん」

 

女の子は弟の無事を確認するとこちらに向き直った。

そして、俺の顔を見て優と呼んだ男の子を守るように、自分の背中側に隠した。

・・・ちょっと泣きたくなってきた。

 

「優を助けてくれてありがとう、お兄ちゃん。私の名前は如月千早です」

「んなっ!?」

 

後ろにいる利益が女の子の名前を聞いた瞬間、声を上げて驚いた。

何に驚いているんだ? 見たところ普通のかわいい女の子だぞ。

 

「千早か。いい名前だな。それとそこの男の子は優だったか・・・、今度から横断歩道を渡る時は、

左右を確認して渡れよ。今回は俺がいたから良かったが、事故にあったらお姉ちゃんが悲しむからな」

「はい・・・、ごめんなさい」

 

優はしょぼんとした表情をして頭を下げた。

 

 

「良し。それじゃあ、気を付けて家に帰るんだぞ」

「はい! お兄ちゃん、ありがとうございました」

「ありがとう!」

 

姉弟は今度は手をつないで、仲良く横断歩道を渡って去っていった。

 

「おいおいおい定守! お前、原作変えちまったぞ!」

 

二人の姿が見えなくなった途端、利益が慌てたように話しかけてきた。

 

「利益、どういうことだ?」

「いいか。あの如月千早って女の子は、原作のアイドルの一人なんだ。

そして、弟は小さい時に交通事故で死んだという設定なんだ。

ひょっとしたら、あの子はアイドルにならないかもしれないんだぞ!」

「利益、落ち着け。それは将来起きるかもしれない仮定の話だろ。

それに、お前がさっきの俺の立場だったら、お前は助けなかったのか?」

「そりゃあ、俺だって助けるけどよ」

「それにだ。俺は原作を知らない。仮に原作を知っていたとしても、

原作通りにして女の子が悲しむなら、原作を壊してでも助ける。それだけだ」

 

利益は俺の言葉を聞き終わると、やれやれといった感じで肩をすくめた。

 

「まあ、やっちまったもんはしゃあねえか」

「そういうことだ。気にしすぎるとお前のただでさえ薄い頭が、さらに薄くなるぞ」

「おい!? さらっと俺が気にしてること言うんじゃねえよ!」

 

 

数年後、如月姉弟と再会することになるのだが、それはまた別のお話し。

 



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第3話 異変の予兆と特攻隊長

今回のお話は大まかにできていた第4話の部分を大幅に変更し、
第3話と一つにまとめて、再構成したものです。
大まかに書いていたお話のストックはこれで尽きました。
次話はある程度お話が固まっていますが、
ある程度のストックを貯めつつ書きたいのと、仕事等の為、
更新間隔は空きます。ご了承下さい。



この世界に来て25年が経った。

俺は今、祖父が社長をしている346プロで働いている。

 

「美城さん、社長が社長室に来るようにとのことです」

「わかりました千川さん。ありがとうございます」

 

同僚の千川さんにお礼を言い、俺は社長室に向かった。

 

「お? 定守じゃねえか。お前も社長に呼ばれたのか?」

 

社長室の前で同じく346プロで働いている利益と出会った。

 

「ああ。利益は何の用か聞いているか?」

「いや。ただ、社長が呼んでることしか聞いてねえ」

「そうか。とりあえず社長室に入ろう」

 

社長室のドアをノックすると、中から返事がして入室の許可が出たので、

俺達は社長室に入った。

 

「二人共よく来たね。とりあえず、そこのソファーに座りなさい」

 

社長室に入ると、真っ黒に日焼けした肌、大柄で筋肉質な身体を誇り、

75歳を迎えてなお意気軒昂な、社長であり祖父にあたる美城貞仁(みしろさだひと)と、

細身で白い肌に優しい顔立ちと、社長とはまるで正反対だが、眼には強い意志と深い知性を湛える頭脳明晰なその息子、つまり俺から見て叔父に当たる、

常務の美城譲司(みしろじょうじ)が、応接用のソファーに座っていた。

ちなみにお袋は美城譲司の姉である。

俺達は勧められるまま、テーブルを挟んだソファーに座って、向かい合う形になった。

 

「さて、二人を呼んだのはほかでもない。

二人にはアイドル部門のプロデューサーになってもらう」

 

じいさんは単刀直入に話を切り出した。

 

「私達二人を選んだ理由は何なのです? 

少なくとも私は、プロデューサーを志望した覚えはありませんが?」

 

社内なので俺は敬語を使ってじいさんに質問した。

 

「そのことに関しては私から説明しましょう」

 

俺の質問に代わりに答えたのは、じいさんではなく、叔父の方だった。

 

「アイドル部門を拡大することになりました。

それに伴って、プロデューサーの数を増やすことになりました」

 

 

現在の美城のアイドル部門は、高垣楓、川島瑞樹、城ケ崎美嘉といった

アイドル達が活躍しているが、

アイドル部門自体は出来て日が浅く、他の部門よりも規模が小さい。

アイドル部門が軌道に乗ってきたから拡大というのはわかるが、

俺達二人をわざわざ社長室に呼び出してまで命じるのは、どういうことだろうか?

俺達の直属の上司から伝えるなりすればいいはずだ。

 

「もう一つ理由があります。むしろ二人をお呼びしたのはその為なのです」

 

ここからが重要だと言わんばかりの表情で、叔父はこちらを見てきた。

 

「現在、アイドル業界で奇妙なことが起こっています。いくつか報告が上がっていますが、

にわかには信じがたい事も、起こっているようです」

「具体的には?」

「最近、アイドル養成所の子を中心とした失踪が相次いでいます。

それも何の痕跡も残さずです。他にも不可思議な現象があるようです。

そう、お二人の力のように」

 

俺と利益はお互いの顔を見合わせた。じいさんと叔父にはとある事件で、

俺達の能力について説明している。

この世界に元々ある何らかの事象なのか、

それとも転生者が関わっているのかは不明だが、

何らかの異変が起こっているのは確かなようだ。

 

「お二人にはプロデューサーをしてもらいつつ、

アイドル部門のアイドルを守ってもらいたいのです」

「守る? それよりもその奇妙な現象を調べた方が、早いんじゃないんすか?」

 

利益が叔父に不満そうに質問した。対応が消極的だ。原因を潰すべく、

積極的に動くべきだと言わんばかりだ。

 

「可能ならば調べてください。しかし、無茶はしないでください。

原因が不明なのですから。自分の身とアイドルを第一でお願いします」

「しかし・・・」

 

利益がなおも言い募ろうとしたところで、俺が止めに入った。

 

「利益、常務は俺達のことを心配してくれているんだ。その辺をわかってやれ。

俺達の能力は強力とはいえ、無敵では決してないんだ。

ここはアイドルを守りつつ慎重に行動すべきだ」

 

俺の話に、利益はまだ不満そうだが、ある程度は納得したようだ。

 

「話はまとまったみたいだね。それではよろしく頼むよ。

それと担当するアイドルは、最低でも一人は自分でスカウトしてもらいたい」

 

俺達の話を今まで黙って聞いていたじいさんが、話に加わった。

 

「は? オーディションやアイドル養成所のとこからじゃあダメなんすか?」

「ああ、利益君。世の中には自分の才能に気づいていない者が多いのだよ。

それを見つけて育てるのもまた、プロデューサーの仕事の醍醐味だよ。

それにこれはプロデューサーになるための、通過儀礼のようなものなのだよ。

話はこれで以上だ」

 

その言葉を合図に会話は終了し、俺たちは社長室から退出した。

 

「で、どうするよ定守?。スカウトしてこい、つっても難しいぜ」

「どうするもこうするもやるしかないだろう。

とりあえず、前に雑誌で見た765プロの社長は、

『ティン!』と来たのがいたら、声を掛けていたそうだから、

自分の直感で判断して声を掛けよう。

そういえば利益、原作を知ってるのなら、そこからスカウトすればいいんじゃないか?」

「いや、それがな。俺が知ってる原作とこの世界、どうも違うみてえなんだ。

この世界の765プロのプロデューサーの名前が、

ゲーム・アニメ・マンガのどれとも違うんだよ。

それに俺が知ってるのは、765プロのアイドル達が活躍するアニメの途中までで、

今は時系列的にそれ以降みてえだから、原作知識は全く役に立たねえぜ」

「そうなるとなおさら、『ティン!』ときたのがいたら、声を掛けるしかないな。

街に出て探してみよう」

 

俺達は街に出て分かれて探してみることにした。

 

 

 

「結局、『ティン!』とくるのがいなかったな」

 

声を掛けようとしたら、警官に職質されるの繰り返しだったからだけどな。

声を掛けることすら出来ないのでは、スカウト以前の問題で心が折れそうだ。

 

「定守! てめえ、俺が警察官に職質されてるのを見たのに、逃げやがったな!」

「仕方ないだろう。俺も今日は職質の連続で、関わりたくなかったんだ。

警察官に事情を話してもらうよう、千川さんに連絡して誤解は解けたからいいだろう。

そもそも、デカいガタイにサングラスに髭、

どう見てもその筋の人間にしか見えないお前が悪い。

その上ハゲてるし」

「だからハゲてねえつってるだろ! 実家が寺だから坊主にしてるだけだ!」

「お前は三男だから継がないだろ。そもそも、お前のところの宗派は、

坊主にしなくてもいいところだろ」

 

この会話でわかるだろうが、利益の生え際は学生時代より・・・うん、強く生きろ。

俺達は何の成果もなかった今日一日を振り返りながら、退社後の帰り道を歩いていた。

 

「こうなったら奥の手を使うぞ定守ィ!」

「奥の手?」

「スタンドで何とかしてくれ、サダえもん!」

「俺は未来の世界から来た、青狸型ロボットじゃない!

そもそもそれは見つけ出すという『過程』を飛ばして、

スカウトしたという『結果』だけを求める行為だろう。俺としてはどうかと思うぞ?」

「いや、そこはわかってるんだけどよ。ホントに何とかしてくれよ定守ィ。

今回一回限りでいいからよ。これじゃあ明日も警察に行くことになっちまう」

 

利益は、両手を合わせて拝み込んできた。仕方ない、アレ使うか。

 

「やれやれ、『ペイズリーパーク』」

 

ため息をつきつつ、俺は全身に地図をあしらった様なデザインの、

女性型のスタンドを出した。

こいつは、進むべき方向へ導いてくれる能力を持つスタンドだ。

これでアイドルの原石へとナビゲートしてもらおう。

 

「行くぞ、利益。さっさとお前が担当するアイドルを見つけるぞ」

「すまねえ定守! 恩に着るぜ!」

 

俺達は『ペイズリーパーク』のナビに従って、歩き出した。

 

 

 

 

「『目的地二到着シマシタ』」

 

『ペイズリーパーク』のナビに従ってたどり着いたのは、人気のない大きな公園だった。

 

「ここで合ってるのかよ、定守? 夜遅くにこんなとこにいるのかよ?」

「いるな。人数は三人。・・・音から察するにケンカをしてるようだな」

「なんでそんなことがわか・・・究極生命体(アルティミット・シイング)の耳なら聞こえるか。

たまに定守が究極生命体だってこと、忘れちまうな」

「別に望んで究極生命体になったわけではないんだがな。とりあえず中に入ろう」

 

公園に入って中を進んで行くと、特攻服を着た女の子同士がケンカをしていた。

一対一で闘っており、一人は腕を組んで横から見ているだけなのから判断すると、

女の子同士の決闘で、見ている女の子は立会い人ということだろう。

 

「おい、あの女の子じゃねえか? 美人だし、胸がでけえし。

よし、決めた! スカウトするぜ!」

「少し落ち着け利益。あの三人の中だと恐らく間違いないと思うが、

ケンカが終わるまで待とう」

 

俺達が少し離れた場所から見守りつつ話していると、

胸の大きい女の子の右ストレートが相手の女の子の顔に命中。

パンチをもらった女の子は、膝から崩れ落ちた。どうやら決着がついたようだ。

立会い人の女の子が、倒れた女の子の側に寄っていく。

どうやら負けた方の女の子の意識はあるようだ。

立ち上がらせて肩を貸し、その場から立ち去って行った。

俺達は一人残った女の子に向かっていき、声を掛けた

 

「こんばんは」

「あっ? なんだテメエ等?」

 

ケンカが終わった直後のせいか、非常に気が立っているようだ。

俺は相手を刺激しないように、可能な限り丁寧かつ穏やかな口調で話すことにした。

 

「失礼。私はアイドルのプロデューサーをしている美城定守というものです。

隣にいる男は同じくアイドルのプロデューサーをしているハg・・・柘植利益です」

「おい! 今、ハゲと言いそうになったろ定守! 答えろ!」

「いやいや、私はそんなこと言いませんよ利益さん。

心の中で柘植利益(はげとります)と名前を読んでいても、私は言いませんよ」

「よし、宣戦布告とみなすぜ。掛かってこいや!」

「嫌ですよ、面倒くさい。私は事実を言っただけじゃないですか」

「オイ! テメエ等アタシのことは無視か!」

 

いかんいかん。利益をおちょくってたら女の子を怒らせてしまった。

 

「すいません。それで、私共は名前を名乗りましたので、

あなたのお名前をお教えいただけませんでしょうか?」

「アタシは向井拓海だ。それと無理して敬語で話さなくていいぜ。

素の口調でいいからよ。で、アタシに何の用だ?」

 

俺は素の口調に戻して話始める。

 

「単刀直入に言おう。アイドルにならないか?」

 

「アイドルだァ!? アタシは特攻隊長向井拓海だぞ!

それにアタシにアイドルとかチャラチャラしたのは似合わねえよ!」

「できると思うがな。というより利益、お前の担当アイドルをスカウトするのに、

なんで俺が話してるんだ。さっさと代われ」

「お前が俺をおちょくってたからだろが! そんで拓海つったか。

お前なら絶対アイドルになれる! 美人だし、そして何よりも胸が大きい!

そこが超重要だ!」

「テメエ、どこ見てやがる!」

 

拓海から放たれた渾身の右ストレートが、見事に利益の顔面に直撃した。

・・・・・・前々から思ってたが、やっぱりこいつアホだ。

まあ、俺と会話しつつも、視線はずっと拓海のたわわに実ったメロン二つを、

ガン見してたしな。

「利益がアホなことを言ってすまない。んー、どうしたものか。

俺達は拓海がアイドルになれると思うが、拓海は嫌だと。

力づくで言うこと聞かすのもな。弱いものいじめになるし」

「オイ! 誰が弱いつった?」

 

ふむ、やっぱりこの手の挑発には乗りやすいか。ならば利用させてもらおう。

 

「拓海のことだが? 俺からすればそこらにいる女の子と変わらないしな。

闘えばまず勝てるし」

「そこまで言うんだったらアタシとタイマン張れ!」

「だが断る。俺にメリット無いだろ。弱いものいじめだし、疲れるだけだ」

「テメエ・・・」

 

よしよし、カッカ来てるな。顔が怒りで真っ赤になっている。

 

「そうだな。俺が勝ったら拓海はアイドルになる。

俺が負けたら俺達は拓海をアイドルにするのをあきらめる。

この条件なら勝負してやってもいい。ああ、別に勝負を受けなくてもいいぞ。

拓海が俺と比べると弱いのは事実だしな」

 

さて、ここまで煽れば乗ってくるだろう。怒りで判断力も低下するしな

 

「上等だッ! その勝負受けて立ってやるぜッ! 

道具を使っても構わねえ! 来いや!」

「二人共ちょっと待て! ストップ!」

 

ちっ、さっきまで痛みで地面を転がってた利益が復活しやがった。

 

「定守、何考えてんだ! 拓海がお前に勝てるわけねえだろ!」

 

ナイスアシストだ利益。これで拓海は余計に引けなくなった。

 

「利益、ちょっと耳を貸せ」

 

俺は顔を利益に寄せ、耳元で囁く。

 

「いいか、うまいこと拓海を挑発して勝負に仕向けたんだ。

お前は黙って見ていろ。スカウト出来ないと困るのはお前だろう」

 

この言葉に利益も囁き声で返す。

 

「俺が心配してるのはそこじゃねえ。勝負自体は問題ねえが、

お前、拓海にケガさせないように手加減できんのか?」

「できるに決まってるだろ。なんでそんな心配する?」

「いや、お前が学生の時にレディースの集団潰したろ。

あの時みたいになったらと思ってよ」

 

ああ・・・うん・・・あったな。あの後、ほんのちょっぴりやりすぎたかなと思った。

利益にやったこと聞かせたら、顔が引きつった状態でどん引きされたな。

俺の封印しておきたい黒歴史の一つに触れてくれるなよ。

 

「あれはお袋がアイツ等にケガさせられて、ブチ切れ状態だったからだ。

特攻服を着てるだけであんなことはしないぞ」

「オイ! いつまでこそこそとしゃべってやがる!」

 

拓海がひそひそしゃべっている俺達にイラついて、怒鳴り声を上げた。

 

「ああ、すまない。こっちの話は終わった。

道具を使ってもいいんだったな。それなら俺はこの鉄球を使わせてもらう」

 

俺は腰のベルトのホルスターに収めてある鉄球をポンポンと叩いた。

 

「上等ッ! それじゃ行くぜッ!」

 

その言葉と共に、拓海が正面から突っ込んできた。

俺はホルスター内で鉄球を回転させ、拓海に俺の左手側の鉄球を投げる。

鉄球はこちらに突っ込んでくる拓海の手前の地面に落ちる。

 

「はっ! へたくそ!」

 

拓海は俺が拓海を狙って鉄球を投げて外したと思って、

侮蔑の笑みを浮かべる。だが・・・

 

「そこでいい。そこが最高にいい」

 

拓海の手前に落ちた鉄球が、回転の力で拓海に向かって土や砂のつぶてを飛ばす。

 

「うわっ!?」

 

下から土や砂のつぶてが飛んできたため、

顔を守るために腕を上げて防御し、足も止まった。

すかさず回転させた右手側の鉄球を、拓海に向かって投げる。

鉄球は狙い違わず、拓海の右胸部分に命中した。

 

「うわっ!?」

 

回転を続ける鉄球は特攻服を巻き込み、それに引っ張られる形で拓海は倒れた。

 

「くそっ! 動けねえ! 何なんだこの鉄球は!」

 

拓海は鉄球が原因と直感で判断したようだが、

鉄球の回転に巻き込まれた特攻服が、拘束衣の役割を果たし、

いくらもがいても動けない。

俺は地面に投げた鉄球を手元に回収し、拓海に近寄る。

 

「俺の勝ちだな。動けないだろ」

 

俺の言葉に拓海は悔しそうな目をして睨む。

 

「畜生! アタシの負けだ! それで、この鉄球は何なんだ!」

「鉄球自体はただの鉄球だ。拓海を抑え込めてるのは技術だ」

 

そう言って俺は左手に持っている鉄球を回転させ、手のひらを下にして見せる。

 

「なっ!? 鉄球が回転したまま落ちてこねえ!?」

「もう一度言う。鉄球自体はただの鉄球だ。鉄球を回転させているのは技術だ」

 

そう言った後、拓海を拘束している鉄球を手元に戻す。

 

「拓海には約束通りアイドルになってもらうぞ」

「チッ! わかったよ!」

 

拓海はやけくそ気味に返答した。不満だが約束は守るつもりのようだ。

 

「拓海。担当プロデューサーは利益だ。こいつは少々アホでハゲてるが、

やるときはやる男だ。こいつとうまくやってくれ」

「なっ・・・!? コイツがアタシの担当プロデューサーかよ!?」

「俺が少々アホなのは認める。だが、俺はハゲてねえ! 

剃ってるだけだつってるだろ! いい加減にしろよ定守!」

 

二人がギャーギャー言っているが、無視することにした。

 

これで利益の担当アイドルは決まったわけだが、俺はどうしたものか。

 



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第4話 人の出会いとは、運命で決められているのかもしれない(上)

頭の中ではお話が出来ているのに、実際に書くとなると時間が掛かる。
作者の遅筆&文才の無さのせいですが。ストックが貯まらない・・・
何とか1話完成させたので投稿。



~♪~♪

 

「ん・・・」

 

目覚まし時計の音で目を覚ます。

究極生命体だから寝なくてもいいのだが、

ずっと起きていると、余計なことを考えて精神的によろしくない。

だから、普通に寝ている。

自室のベッドから身体を起こすと、部屋の机の上に段ボール箱と、

亀の入った水槽が置いてあった。何だこれは?

水槽の中の亀を見てみると、甲羅に鍵がはまっている。

もしかしてこれは、原作5部に出てきた亀の『ココ・ジャンボ』か?

そして、段ボール箱の上に封筒が置いてあった。

差出人は・・・神!?

俺は急いで封筒を開け、中の手紙に目を通す。

 

『ハロハロ~☆ 神様だよ。元気してる~?

突然だけどそっちに『ココ・ジャンボ』と、

ジョジョの奇妙な冒険に出てきた道具で役立ちそうな物送ったよ。

道具の入った段ボール箱は、机の上に置いてあるのだけじゃなくて、、

『ココ・ジャンボ』のスタンドの部屋の中にも入れてあるよ。

中身を確認して、これから先の事に生かしてね。』

 

駄神の手紙にはこう書かれていた。

しかし、『ココ・ジャンボ』はありがたいな。

駄神もたまにはいい仕事するじゃないか。

 

俺は段ボール箱の中身を確かめる。

鉄球・・・これはジャイロのだな。これは予備用にとっておくか。

こっちはウェカピポが使ってた壊れゆく鉄球か。

これはジョセフが使ってたクラッカーか。

リサリサのマフラーもあるな。それでこの箱は・・・。

別の箱を開けてみて固まる。ジョセフの使ったトンプソン・マシンガン、

手りゅう弾、ボーガン、ミスタの拳銃・・・・・・。

俺は思わず箱を閉じた。これはダメだ。

 

「『エニグマ』」

 

人型のスタンドが姿を現す。

こいつの能力は、物質を紙の中に閉じ込める。紙の中には時間感覚が無く、

閉じ込めた物質をそのままの状態で保存できる。

人間も紙の中に閉じ込めることが可能だが、その場合はある条件が必要だ。

とりあえず危険な物は『エニグマ』で紙にして、封印しとこう。

俺は別の箱を開ける。そして、すぐに箱のふたを閉めた。

・・・・・・今、とんでもない代物が見えた気がする。

意を決して箱を再び開ける。

『石仮面』、『弓と矢』、『エイジャの赤石』が入っていた。

トンプソン・マシンガンや手りゅう弾が、

おもちゃに見えるレベルの危険物じゃないか。

これはあれか。ただ単に面倒くさいから全部放り込んで送っちゃえなのか?

それとも、ごみを捨てるかのように不用品をこっちに押し付けたのか?

とにかくこいつ等は厳重に封印して保管しよう。

そして危険な物は片っ端から『エニグマ』で紙にして片づけていく。

その後、ある程度片付いたので、一階の台所に向かった。

 

「おはよ~、定ちゃん」

「おはよう。お袋、定ちゃんはやめてくれ。もう小さい子供じゃないんだから」

「定ちゃんは定ちゃんなんだから、いいじゃない~」

 

台所に着くと、朝食の準備をしている女性に朝の挨拶をする。

のんびした口調に、ぽわぽわした感じのこの女性が美城聖愛(みしろまりあ)

俺のこの世界でのお袋だ。

いつも笑顔を絶やさない人で、名前の通り聖女のようにみんなに優しい。

俺は挨拶もそこそこに朝ご飯を食べる。

さっきの片づけに時間を取られたから、あまり時間に余裕はない。

急いで朝ご飯を食べ終わり、お袋に「いってくる」と言い、家を出た。

 

出勤後俺は自分用に与えられた個室に入る。

拓海が利益の担当アイドルになってから一週間、

そろそろ俺も焦りが出始めた。未だスカウトに成功していない為だ。

もちろん俺も何もしていないわけではない。

だが、職質という名のハードルが思った以上だった。

あれに捕まると時間を大幅に喰う。それに女の子に声を掛けても逃げられる。

この泣きそうな繰り返しが一週間だ。

根本的に何か方法を考えないとな。

もちろん、手段を選ばなければ手はある。

『ペイズリーパーク』で見つけ、問答無用で『ヘブンズドアー』を使い、書き込む。

こうすればスカウト自体は成功するだろう。

だが、それは人としてアウトだろう。

俺は黄金の精神なんてものは持ち合わせていない小市民だが、

ジョジョのラスボス達のような、吐き気を催す邪悪にはなりたくない。

そのような思いを巡らせていると、コンコンと控えめにノックされた。

 

「どうぞ」

「失礼します、美城さん」

 

ドアを開けて入ってきたのは、事務員の千川ちひろさんだ。

社内での評価ははっきりと分かれている人だ。

ある人は天使と呼び、ある人は悪魔と呼ぶ。

またある人は女神と呼び、ある人は鬼と呼ぶ。

この違いは千川さんとのお金に関する部分での差だ。

誤解の無いように言っておくが、千川さんが厳しいのは、

経費で何でも落とそうとする人であったり、

千川さんからお金を借りて返さない人に対してだ。

鬼、悪魔と陰で呼ぶ輩はこの手の人だ。

 

「美城さん? どうしましたか?」

 

俺が何も言わないので、千川さんが心配そうに尋ねてきた。

っといかん。思考の海に沈んでいたな。

 

「すいません千川さん。少し考え事をしていたもので。

それで何の御用でしょうか?」

「武内さんから美城さんに頼みたいことがありまして。

今、新しいプロジェクトを企画しているんですが、

その為の資料を探し出してほしいとのことです」

 

そう言って千川さんは、本のタイトルの書かれたメモを俺に渡した。

俺もスカウトしなければならないのだが・・・。

いや、気分を変えるのにはいいかもしれないな。

 

「わかりました。探しておきます」

「お願いしますね。美城さんなら何でも見つけてくれると評判ですから」

「何でもではありませんよ。買い被り過ぎです」

 

まあ、『ペイズリーパーク』や『ハーミットパープル』とかで探してるからな。

見つからないことはそんなにはない。

 

「それでは失礼します。スカウトの方も頑張ってくださいね」

 

そう言って千川さんは部屋を出ていった。

 

「さて、探すか。『ペイズリーパーク』、案内してくれ」

 

『ペイズリーパーク』を呼び出し、俺は部屋を出た。

 

 

 

『ペイズリーパーク』が案内したのは、一軒の古書店だった。

店の中に入ると、レジに女性が座っていた。

前髪で表情はよくわからないが、パッと見た感じ女子大生だろうか。

店主ではなく、アルバイトの子かなと思いつつ、その女性に尋ねる。

 

「少しお尋ねしたいのですが、このリストにある本はありますか?」

 

女性は俺の顔を見て、一瞬身体をビクッとさせたが、すぐに普通に戻った。

 

「こちらですか。・・・・・・それでしたら取ってきますので少々お待ち下さい」

 

そう言ってレジを出ると脚立に上り、本を探し始めた。

ちょうどこちらが女性を見上げる形になったので、前髪に隠れた女性の表情が見えた。

その女性の顔を見て、俺は765プロの高木社長が『ティン!』ときたというのが、

言葉ではなく心で理解した。

そうか。『ティン!』ときたというのはこういうことなのか。

そのように考えている間に、女性は本を見つけたのか脚立を降り、

こちらに本を差し出した。

 

「こちらになります」

「あ、ありがとうございます。ところでアイドルに興味はありませんか?」

「アイドル・・・・・・ですか?」

「申し遅れました。私はこういうものです」

 

そう言って俺は名刺を女性に差し出す。

そういえばスカウトで女性に名刺を渡すのは初めてだったな。

渡す前に逃げられるか、職質かの二択だったからな。

落ち着け。冷静に対処しろ。

 

「アイドルのプロデューサー・・・・・・ですか」

「そうです。あなたをアイドルとしてスカウトしたいのですが、どうでしょうか?」

「すみません・・・・・・。今一つ・・・・・・お話がよく呑み込めません」

「すいません。お話が急すぎましたね。今すぐにとは言いません。

良く考えてからお返事を聞かせてください。ご連絡お待ちしていますから。

それでは失礼します」

 

そう言って俺は店を出ることにした。

よし。返事はわからないが、やっとスカウトらしいことができたな。

そう思っていると・・・。

 

「あの・・・・・本の方はどうしましょう?」

 

店を出ようとして、女性に声を掛けられて止められた。

・・・・・・そういえば本買うの忘れてた。

少々恥ずかしい思いをしつつ本を買い、今度こそ店を出た。

 

 

「~♪~♪」

 

鼻歌を歌いながら会社からの帰り道を歩く。

今日は現時点では結果はわからないが、

スカウトが成功したかもしれないという事に気分がいい。

この調子でいいことが続けばいいな。

気分もいいし少し遠回りになるが、公園の中を通っていくか。

ここの遊歩道は春になると桜が咲き誇って綺麗なんだよな。

今はその時期ではないけど。

そう思いつつ遊歩道を歩いていると、遠くから女性がこちらに走ってくるのが見えた。

普通ならこの距離で夜間なので見えないが、究極生命体の俺の眼なら夜間も問題ない。

あれは今日スカウトを掛けた書店の女性だ。何かから逃げている?

俺は女性の後方に視線を集中する。

女性の後ろから追ってくるのは男だ。だが、顔の一部が崩れていた。

そして、このどぶ川のような腐った臭い。

まさかあれは・・・・・・

 

屍生人(ゾンビ)・・・」

 

『石仮面』によって人間をやめた姿が吸血鬼。

その吸血鬼が吸血鬼の持つエキスを生物や死者に注入すると、屍生人にすることができる。

なぜ? どうして屍生人が? いや、今はそんな場合じゃない。

原因を突き止めるのは後だ。女性を助けなくては。

俺は駆け出しつつ、鉄球を投げる準備をする。

鉄球の最大射程距離20メートルに近いが、屍生人の足止めの為に投げる。

鉄球は屍生人の足に命中。一時的に屍生人の足が止まる。

これで屍生人を倒せないのは百も承知だ。

その間に女性に近づくことができた。

 

「大丈夫か!?」

「あなたは・・・・・・」

「俺の後ろに隠れろ!」

 

女性は俺の言う通りに、俺の背後に隠れる。

その間に屍生人は立ち直り、俺達の方に向かってきた。

 

「やるしかないか」

 

俺は『波紋』を練り込み、屍生人に向かって突進する。

屍生人は突進してきた俺に向かって攻撃してきたが、

俺はそれをかわす。そして、拳を屍生人に叩き込み、

 

波紋疾走ッ(オーバードライブ)!」

 

拳から波紋を流し込む。

屍生人は耳障りな断末魔を残しつつ、塵となって消滅した。

・・・ふぅ~。まさか、屍生人と闘うなんて思ってもみなかった。

しかし、これはどういうことだ?

屍生人がいるということは、吸血鬼も存在するということか?

そう思いつつ背後の女性を見ると、地面に倒れ込むところだった。

俺は地面に倒れ込む寸前に女性を抱き止めた。

気を失ったか・・・。まあ、あんなところを見れば当然か。

まずは彼女を家に送らないと・・・しまった。

彼女の家がわからないな。そもそもスカウトの時に名前を聞いていなかった。

しかたない。俺の家に連れて行くか。

お袋に説明するのが面倒だが。

俺は彼女を背中に背負い、家に急いで帰った。

 

 

この後、俺が家に初めて女性を連れてきたことに、

お袋がはしゃいで、説明に小一時間掛かった。

・・・・・・つ、疲れた。

 



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第5話 人の出会いとは、運命で決められているのかもしれない(下)

今回の話は難産でした。文才が買える物なら、買いたいです。



「おはよう、お袋」

「おはよ~、定ちゃん」

 

俺は朝の挨拶をお袋と済ます。

屍生人との戦闘を目の当たりにして、

気を失った女性を、家に連れてきたが、

まだ、起きていないようだ。

昨日の事件は精神的なショックがあるだろうと考え、

ジョジョの小説版に出てきた、

相手の『痛み』や『悩み』を吸収して癒すことができるウサギ型のスタンド、

『ザ・キュアー』で昨日の内に癒しておいた。

 

「・・・おはようございます」

 

そう考えていると、その女性がダイニングに入ってきた。

 

「はい、おはよ~。あなたの朝ご飯も準備できてるわよ~。

私の名前は美城聖愛(みしろまりあ)、こっちが息子の定守(さだもり)よ~。

あなたの名前も教えてもらえる~」

鷺沢文香(さぎさわふみか)です。

・・・えっと聖愛さんと定守さんは親子なのですか?」

「そうよ~。どうかしたかしら~?」

「どう見ても親子には見えないほど、聖愛さんがお若いものでしたから」

「ふふふ、ありがとう~。お世辞でもうれしいわあ~」

「いえ、聖愛さんが20代後半位にしか見えませんでしたから・・・」

 

やっぱりお袋の見た目は、他人から見てもそう見えるよな。

お袋の実年齢は50歳。原作2部のリサリサと同じだ。

怖いのは何もしていないのに、この若さを保っていることだ。

『波紋』の呼吸をするでもなく、『石仮面』を被って吸血鬼になったわけでもないのに、

この若さというのは、はっきり言って謎だ。

 

「あの・・・、昨日は助けていただいてありがとうございます」

「いや、鷺沢さんが無事で何よりだ。昨日の事は後でプロダクションで話そうと思うが、

鷺沢さんは時間は大丈夫か?」

「ええ。今日は大学の授業も休みですし、問題ありません。

・・・言葉遣いが昨日とは違いますね」

「こっちが素だ。気にするな」

「それじゃあ朝ご飯を食べましょうか~」

 

お袋の言葉で俺達は朝ご飯を食べ始める。今日の朝ご飯はご飯に味噌汁、

卵焼き等の典型的な和風のメニューだ。

 

「今日は私もプロダクションに行った方がいいのよね?」

「ああ。昨日の夜に言った通り、お袋も一緒に来てくれ。

少々込み入った話になりそうだ」

「わかったわ~。私が車を運転するわね~」

 

俺とお袋が朝ご飯を食べつつ話しているのを横目に、

鷺沢さんは黙々と朝ご飯を食べていた。

何か言いたそうだが、昨日の事は後で話すと俺が言ったので、

黙っていることにしたようだ。

朝ご飯を食べ終えた俺達は、お袋が運転する車に乗り、346プロへ向かった。

 

 

 

346プロに着いた俺達は、そのまま社長室へ入る。

社長室には、社長、常務、利益の三人が既に座っていた、

昨夜の内に俺が電話を掛けて集まってもらったのだ。

 

「・・・私がここにいてもいいのでしょうか?」

 

鷺沢さんが遠慮がちに聞いてきた。

 

「昨日の事をここで説明するから構わない。鷺沢さんは当事者だしな」

 

全員が椅子に座ったのを確認し、俺は、昨日の屍生人(ゾンビ)や、

それに関連する『石仮面』や『吸血鬼』について話し始めた。

俺の話を聞いて、社長、常務、利益の三人は険しい表情を浮かべた。

 

「つまり、屍生人がこの先も出現する可能性があるということですか・・・」

 

常務・・・叔父さんがまず口を開いた。

 

「その可能性は高いと俺は判断しています。俺が屍生人を倒したことで、

屍生人を倒せる何者かがいると思い、自分の身を守るために屍生人を増やすでしょう」

「定守はどうするべきだと思いますか?」

「叔父さん。通常通りに業務は行いましょう。

後は、若い女性が襲われる事件が相次いでいるので、夜間は一人で行動しない。

人通りの多いところを歩くといった注意喚起をするしかないかと」

「そうだ! 定守。お前の『ハーミットパープル』なら、誰が吸血鬼かわかるんじゃねえか?」

「利益! お前ッ・・・!」

「あっ・・・」

「『ハーミットパープル』・・・隠者の紫・・・ですか。

何ですかそれは?」

 

俺は頭を抱えたくなった。利益の奴、余計なことを。

俺はため息を吐きつつ、鷺沢さんに答える。

 

「鷺沢さん。それについて答える前に言っておくことがある。

今から『ハーミットパープル』・・・いや、『スタンド』について説明する。

それを聞いた後で、鷺沢さんがアイドルになるか、ならないかを聞かせてくれ」

「それは・・・・・・」

「よく考えて決断してほしいと、昨日言ったばかりなのに、すまないとは思う。

だが、スタンドが何かに関しては、あまり教えたくないんだ。

スタンドについて知っているのは、鷺沢さんを除いたこの部屋にいる人間だけの秘密だ。

教えたのはやむ負えない事情もあるが、この秘密を知れば鷺沢さんは俺に対する態度を変えるかもしれない。

だから、スタンドを見た後で答えを聞かせてくれ」

「・・・わかりました」

「じゃあ、出すぞ。『ハーミットパープル』」

 

その言葉と同時に、俺の右手に茨の像を持つスタンドが出現する。

 

「? 何も変わりませんが?」

「スタンドは原則として、一般人には見えないからな。

今から見えるようにする」

 

転生特典のスタンドが一般人に視認出来る機能をONにする。

 

「これは・・・!?」

「見えるだろ。生命エネルギーが作り出す、

パワーを持った(ヴィジョン)。これがスタンドだ。

そして、このスタンドの名前が、『ハーミットパープル』だ」

「触ってみても大丈夫でしょうか?」

「無理だ。スタンドに触ることができるのは、スタンドだけだ。

スタンドを使える人間でも、触ることは出来ない。見ることは出来るがな。

話を続けるぞ。この『ハーミットパープル』は、念写や読心術等が出来る能力がある」

「念写・・・そんなことが・・・」

「出来る。スタンドとは、超能力を形にしたものと言える。

だから、世間一般の分類で言えば、俺は超能力者となる。

論より証拠だ。やってみよう」

 

俺はスーツのポケットから、『エニグマ』でカメラを収納しておいた紙を取り出し、

テーブルの上で広げて、カメラを出した。

 

「カメラが紙から出て・・・これも『ハーミットパープル』の能力なのですか?」

「いや。これは別のスタンドの能力だ。本来はスタンドは原則として、

一人につき一体なんだが、俺は例外で複数種類のスタンドを持っているんだ。

話を戻すぞ。このカメラを、『ハーミットパープル』で叩く!」

 

右手に『ハーミットパープル』を纏わせたまま、カメラを叩く。

カメラが破壊されたと同時に、一枚の写真が出てくる。

 

「これが『ハーミットパープル』の念写の方法だ。いちいちカメラを壊す必要があるけどな」

「いきなりカメラを壊したのでびっくりしました。・・・それで、何を念写したのですか?」

「見ればわかるさ」

 

俺は『ハーミットパープル』で念写した写真を、鷺沢さんに渡す。

 

「部屋ですね・・・この読書机は私の物に似て・・・まさかっ!?」

「そのまさかだ。鷺沢さんの部屋を念写した。

これで信じてもらえたかな?」

「・・・信じられないことですが、実際に見ると信じざるを得ません」

「それでさっき利益が言った『吸血鬼』がわかるかだが、現状では無理だ。

念写しようにも対象がわからないからな。別の物が写る可能性が高い。

さて、スタンドに関してはもっと色々あるんだが、大体はこんなとこだ。

それで、鷺沢さんは俺をどう見る?」

「どう・・・とは?」

「俺が怖いとか、恐ろしいとかだ。人は自分と違うものを受け入れない傾向があるからな」

「・・・一つ、質問させて下さい。定守さんは私をアイドルにしたいのですか?

それとも、したくないのですか?」

「俺は、鷺沢さんをアイドルにしたい。

鷺沢さんならトップアイドルになれる可能性があると思う。

だが、今見せたスタンドという、人とは違う力を持つ人間を、

鷺沢さんが受け入れられるかは、また、別の問題だ。

俺が恐ろしいが、アイドルにはなりたいのなら、別のプロデューサーを紹介する。

だから、この場で決めてほしい」

 

鷺沢さんはしばらく考え込んだ後、意を決したように話し始めた。

 

「・・・・・・昨日、定守さんにスカウトされた直後は断ろうと考えていました。

ですが・・・」

 

一呼吸置いて、鷺沢さんは話を続ける。

 

「昨夜の事件と今日の定守さんとの会話で考えが変わりました。

屍生人に立ち向かう勇気、そして、スタンドのことを正直に教えてくれました。

スタンドのことは正直驚きましたが、それで定守さんを怖がったりはしません。

昨夜のようなことは怖いですが・・・私は定守さんを信じたいと思います。

・・・これからよろしくお願いします」

 

そう言って鷺沢さんは俺に軽く頭を下げた。

 

「ありがとう。そこまで言ってくれるなら、俺は全力でその信頼に答える。

こちらこそ、これからよろしく頼む」

「おお! 定守ィ、まるで愛の告白みてえじゃねえか」

 

・・・また、利益が余計な事を言った。鷺沢さんが困ってるだろ。

 

「い・・・いえ、・・・その、・・・告白とかじゃ・・・」

「鷺沢さん、俺を信頼してくれたお礼と言ってはなんだが、

別のスタンドを見せよう。『スタープラチナ』!」

 

俺は『スタープラチナ』を出して、鷺沢さんに見せる。

 

「紹介しよう。人型のスタンド『スタープラチナ』。俺の保有するスタンドの中でも、

強力なスタンドだ。これから利益で、どの程度強力かを実演しよう」

「えっ? ちょっと待・・・」

 

利益のせいでスタンドがバレたわけだし、お仕置きしておこう。

俺は自分でも悪魔のような笑みを浮かべていると自覚しつつ、利益に聞く。

 

「利益。今からお前を右と左どちらで殴ると思う?」

「み、右・・・?」

「NO! NO! NO!」

「ひ、左・・・?」

「NO! NO! NO!」

「り、両方ですかあ?」

「YES! YES! YES!」

「もしかしてオラオラですかあ!?」

「YES! YES! YES! ぶちかませてもらうぞ!」

「殴られてたまるかあ!」

 

利益がスタンドを出そうとするが、その前に・・・

 

「『スタープラチナ・ザ・ワールド』!」

 

時を止めるに決まってるだろ!

 

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァーーッ!』

 

『スタープラチナ』のパンチの連打(ラッシュ)だ。そして・・・

 

「時は動き出す」

「ギャアアアアアアァーッ!」

 

悲鳴を上げつつ、隣の部屋へ利益が、壁をぶち破って吹っ飛んだ。

やれやれだ。

 



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第6話 クスリ、ダメ、ゼッタイ

お話を作る時に悩むことの一つが、登場人物の話し方です。
今回のような、話し方に特徴がある場合は特に。
熊本弁やハピ語どうしよう・・・

このお話での巴の実家は、
オリジナル設定として、極道となっています。
公式はヤクザのヤの字も出していません。
父親が仕込み杖持ってたり、
若い衆がよく、ワゴンに乗って山に行ってもです。いいね?



トレーニングルーム

 

「今日はとりあえず、軽めのメニューからいきますね」

 

トレーナーさんの指示に従いつつ、文香は身体を動かす。

今日は文香の初レッスンだ。

俺は邪魔にならないように、壁に背を預けて、

レッスンの様子を見守っている。

さて、文香は体力がどの程度あるかな?

 

一時間後・・・

 

「文香、スポーツドリンクだ。飲めるか?」

「」

 

返事が無い、屍の様だ。

文香は、息も絶え絶えで、床に横たわっている。

いくら初めてとはいえ、ちょっと体力が無いなこれは。

 

「美城さん、ちょっといいですか?」

「何でしょう? トレーナーさん」

「鷺沢さんですが、当面は基礎体力を付けることを中心に、トレーニングします。

流石に現状の体力では、不安が大きいので」

「そうしましょう。幸い、急いでいるわけではないですし」

 

当面の方針はそれでいいとして・・・

 

「文香、そろそろ動けそうか?」

「何とか・・・。覚悟はしていましたが、これほどとは・・・」

「まあ、文香は見た感じ、運動は得意じゃなさそうだし、

あんまり身体を動かしてなかっただろ?

体力は身体を動かしていけば、少しずつついてくるさ」

「はい・・・」

「とりあえず、今日のレッスンは終わりだから、着替えてきてくれ。

車で家まで送っていくから。着替え終わったら、正面玄関まで来てくれ」

「わかりました」

 

文香は更衣室へ、俺は正面玄関へと向かった。

文香と別れ、正面玄関へと向かう途中で、廊下の向こうから赤髪の少女と、

黒服を来た男二人の、三人組が正面から歩いてきた。

俺と三人組との距離が徐々に縮まると、

男二人の方から、ある匂いがした。オイオイ、こいつは・・・。

また、厄介ごとかと、心の中でため息をつきつつ、

俺の横を通り過ぎる前に、赤髪の少女に話しかけた。

 

「ちょっとすいません。私はこの事務所に勤めている者ですが、

この事務所を訪れた御用件は何でしょうか?」

「なんじゃあ!? 鉄砲玉かっ!?」

 

少女の言葉に、背後の黒服の男達が、すぐに反応するが・・・

 

「探し物はこれか? 物騒なおもちゃを、事務所に持ち込んでもらっては困るな」

 

俺は、男達が隠し持っていた拳銃を、手に持ち尋ねる。

まあ、『世界』(ザ・ワールド)で時を止めて、

その間に拳銃を男達から奪っただけだが。

男達から火薬の匂いと、スーツの胸部分に不自然な膨らみがあったから、

もしやと思ったが、やはりか。

 

「なっ!?」

 

男達は自分の拳銃をいつの間にか奪われて、ひどく動揺している。

俺は、男達から奪った拳銃を構えて尋ねる。

 

「さて、色々と聞きたいことがある。そこの空いている部屋に入ってもらおうか?

ちなみに、拒否権はない。抵抗はするなよ?」

「お嬢! 逃げておくんなせえ!」

 

黒服の男達の一人が、少女との間に立ち塞がり、少女を逃がそうとする。

少女は一瞬ためらった後、逃げようとするが、

 

「逃げられるとでも思ったか?」

 

俺は、時を止めて少女の正面に回り込み、少女の額に拳銃を突きつける。

少女は、何が起こったかわからないという、表情をしていた。

 

「無駄な抵抗はやめろ。次は容赦なく撃つ」

「・・・あんた、何者じゃ?」

「この事務所に勤めているプロデューサーだ。そこの空いている部屋に入れ。

話はそれからだ」

 

少女はおとなしく部屋に入っていく。

少女に銃口が突きつけられているためか、黒服の男達も、渋々ながら部屋に入った。

 

「さて、君に質問する。何の目的でこの事務所に来た?」

「アイドルのオーディション受けにじゃ。うちはアイドルに興味はないんじゃが、

親父がどうしても受けてこいゆうけぇ、親父の顔立てて、受けに来たんじゃ」

「後ろの黒服の男達とはどういう関係だ?」

「家の若い衆じゃ。親父が心配して、ここまでついてこさせたんじゃ」

「・・・ちなみに君のお父さんのご職業は?」

「・・・土建屋じゃ」

「ほほう? 最近の土建屋はずいぶんと物騒だな。

こんなおもちゃが必要とは。まあ、これは没収な」

 

俺は、人型のスタンド『ザ・ハンド』を呼び出し、拳銃を上に放り投げる。

 

ガオンッ!

 

『ザ・ハンド』の右手が拳銃に当たり、拳銃が消える。

『ザ・ハンド』の能力は、右手であらゆる物を空間ごと削り取ることが出来る、

極めて危険な能力だ。

 

「!? 拳銃(チャカ)が消えたじゃと!?」

「さて、今のを見た上で正直に答えてもらおうか?

君のお父さんの職業はなんだ? 今度は正直に答えろ。

嘘をつけば、次は君がこの世から消えるぞ」

 

「お嬢・・・」

「正直に答えるしかないじゃろ。こいつの目えは本気じゃ。

こいつには、やるといったらやるという、『凄み』がある」

「それで? 返答は?」

「・・・極道じゃ。親父には家の事は隠しとけ言われとったんじゃ。

それがわかったら、門前払いされる言われてのぉ。

それで、うちはオーディションは受けられんちゅうことか?」

「いや。親の職業は関係ない。

俺が問題と考えているのは、君の家が事務所にちょっかいを出すことと、

さっきのような危険物を事務所に持ち込まれることだ。

うちの事務所の人間に危害を加える者は・・・俺が排除する」

 

俺は、少女と黒服の男達を睨みつける。

少女は気圧されながらも、反論する。

 

「大丈夫じゃ、うちの家は堅気には手をださん。若い衆は、こ

の事務所には今度から出入りさせん。これでええじゃろ?」

「それならいい。ところで君の家は、麻薬(くすり)を扱っているのか?」

「うちの家は、仁義を重んじているんじゃ。そこらのヤクザと一緒にしようるな。

麻薬(くすり)売春(おんな)は扱っておらん」

「じゃあ、後ろの前歯の欠けた黒服の男から、麻薬(くすり)の匂いがするのは、なぜなんだろうな?」

 

火薬の匂いの他に、この男から大麻や危険ドラッグの匂いがしているからな。

俺の言葉に前歯の欠けた黒服の男はギョッっとし、少女ともう一人の黒服の男は、

前歯の欠けた黒服の男を睨みつけた。

 

「サブ、本当なんか! 答えろ!」

「お嬢、落ち着いて下せえ! あっしはやってませんぜ!」

「ところで三人とも、麻薬(くすり)をやっている人間には、

ある特徴が出るのを知っているか?」

「特徴?」

 

少女は訝しげな目で俺を見る。

 

麻薬(くすり)をやっている人間はな、鼻の頭に血管が浮かぶ」

「なっ!?」

「えっ!?」

「嘘じゃろ!?」

「ああ、嘘だ。だが、マヌケは見つかったようだな」

 

そう。サブと呼ばれていた男は、手で鼻の頭を触っていた。

 

「サブ・・・!!」

「畜生ォ!」

 

サブは一言吐き捨てると、懐から刃物を取り出した。

チッ! まだ、武器を持っていたか!

サブは刃物を振り回しながら、部屋から逃げようとする。

逃がす気はないがな。

 

「鉄球を喰らえッ!」

 

 

グシャッ!

俺の投げた鉄球が、サブの顔面に命中する。

 

「もいっぱあああああああつッ!!」

「うわああああああ!」

 

ドグシャアッ!

 

二発目の鉄球も顔面に命中し、完全に撃沈した。

やれやれ。部屋の外に出られたら、大騒ぎになるところだった。

 

「サブ・・・馬鹿者が。麻薬(くすり)なんぞに手を出しおって」

「お騒がせいたしやした。こいつの処分はこちらに任せてくだせえ」

「そうしてくれ。それでだ、君、オーディションはどうする?」

「受けるつもりじゃが、どうしてそんなこと聞くんじゃ?」

「君が仮に受かったとして、さっきのような事態になった時、

堅気の人間が、対処できると思うか?」

「それは・・・」

「無理だろう? だから、対処可能なプロデューサーを紹介する。

そいつの目にかなえば、アイドルになれる。どうだ?」

「わかった。堅気に迷惑は掛けられんしのぉ」

「それじゃあ、連絡する。ちょっと待ってくれ」

 

俺は携帯から利益に電話した。

 

『おう、定守か。何の用だ?』

「アイドル志望の子が来てるんだが、訳ありでな。

俺としては、アイドルの素質はあると思うんだが、

会って話を聞いた上で採用するか決めてくれ」

『それは俺の担当アイドルってことになるのか?

定守んとこじゃダメなのか?』

「ああ。文香とはタイプが違うからな。

拓海の方がタイプ的に近いから、拓海と気が合うと思う」

『OK。で、どこに行けばいい?』

「お前の部屋に行かせるから、そこで待っててくれ。

赤い髪で広島弁の女の子だから」

『わかった。部屋で待ってるぜ』

 

電話を切って、少女に利益がいる部屋を教える。

 

「そういうことだから、頑張れよ」

「そいつは荒事に対処できるんか?」

「そこのところは俺が保証する。ただ単なる刃物や拳銃じゃ、

勝負にならない位には強いからな」

 

スタンド使い。それも近接パワー型だしな。

よっぽど油断してなければ、普通の人間は勝てない。

 

「それじゃあ、俺は用事があるから行かせてもらう」

「そういえば、あんたの名前聞いとらんかったのぅ」

「美城定守だ。君の名前は?」

「村上巴じゃ」

「村上巴か。覚えておこう。じゃあな」

 

俺は文香と合流すべく、正面玄関へと向かった。

この後、村上巴は合格。アイドルとして活動を始めることとなった。

 



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第7話 天才科学者の家に行こう

「では、その時間で予約をお願いします」

 

カメラスタジオとの電話を切る。

 

「・・・これで文香の宣材写真の撮影予約は良しと」

 

ドガアーンッ!

 

凄い勢いで部屋のドアが開き、拓海が入ってきた。

特攻服に木刀を持ち、顔が鬼の形相である。

 

「利益の馬鹿はここに来てるか!」

「落ち着け。利益がどうかしたのか?」

「アイツ、新商品のお茶の試飲キャンペーンの仕事を持ってきたんだ!

飲み物を配る簡単なお仕事だと言ってやがったのに、

現場に行ってみたら、水着で配ることになってたんだ!

現場の担当者に聞いたら、

『そういう契約で、そちらのプロデューサーと合意しました』だ!

アイツ、一言もそんなこと言ってねえぞ!」

「ああ、なるほど。利益のやつ、わかってて拓海に黙ってたか。

利益なら、有休を取って京都へ行ったぞ。うまいお茶を飲みに行くとか言ってたな」

「畜生! 逃げやがったか!」

 

そう言うと、拓海は部屋を出て行った。

利益・・・ケガはクレイジー・(ダイヤモンド)で直してやるからな。

・・・・・・死なない限りは。

さてと、今日はこの後、池袋晶葉(いけぶくろあきは)と会う約束だったな。

池袋晶葉。346プロ所属アイドルであり、天才科学者でもある女の子だ。

今日、会うことになったのは、吸血鬼・屍生人(ゾンビ)対策の為に、ある物を作ってもらう為だ。

俺は、池袋さんに会うために、車で池袋さんの家へ向かった。

 

「ここか・・・」

 

俺は、池袋さんの家の前に着いた。

池袋さんの家は、研究所も兼ねている為か、敷地も家も普通の家より大きかった。

まあ、発明の特許収入を考えれば、小さい気もするな。

そう思いつつ、インターホンを押す。

 

「はいウサ」

 

ウサ? 池袋さんの声じゃないみたいだし、お手伝いさんか?

 

「面会の予約をした、美城定守ですが」

「玄関のドアは開いてるウサ。どうぞウサ」

 

さっきから相手の語尾にウサが付いてるが、何なのだろう?

とりあえず、作ってもらいたい物の参考資料の入った、段ボール箱を抱え、

玄関のドアを開けた。すると・・・

 

「ウサ!」

 

そこにはウサギ型ロボがいた。全体の色はピンクで、顔の部分は昔懐かしいテレビデオ。

ウサ耳を付け、二足の足で立っている。

・・・・・・なんだこれは?

 

「池袋邸に、ようこそお越し下さいましたウサ!」

 

しゃべった!? いや、落ち着け。犬のお父さんのCMでお馴染みの会社も、

しゃべるロボ売ってるじゃないか。これもそれに近いのだろう。

 

「こんにちは。池袋晶葉さんの所へ、案内してもらえますか?」

「わかったウサ。その荷物も持っていくウサか?」

「ええ」

「わかったウサ。その荷物は3号が持つウサ」

「3号?」

 

俺が疑問に思っていると、廊下の奥から目の前のロボと同じ形のロボが、

こちらに向かってきた。

 

「ウサ!」

「この3号に荷物を預けるウサ」

「あ、ああ」

 

ロボに言われるまま、3号と呼ばれたロボに荷物を預ける。

 

「それじゃあ、案内するウサ。2号の後に続くウサ」

 

そう言うと、そのロボ(2号)は廊下を進んで行く。

俺はその後に続き、後ろに3号がついてくる。

廊下を進むと、廊下の突き当りにエレベーターがあった。

 

「博士は地下10Fにいるウサ。エレベーターに乗るウサ」

 

・・・ここ、個人の家だよな? 何かおかしくないか?

ロボに言われるままに、ロボ達と一緒にエレベーターに乗り、

地下へと降りていく。

そう思っていると、エレベーターは最深部の地下10Fに着いた。

エレベーターの扉が開き、そこに広がる光景に絶句した。

そこには様々な機械が置いてあり、そのフロアの中を武装したロボ達が歩いている。

ハリウッドのSF映画に出てくる様な、非現実的な光景だ。

 

「こっちウサ」

 

ロボがその中を進んでいくので、俺も慌てて後をついていく。

しかし、見た限りこのフロアは、明らかに地上部分より広い。

なるほど。地下深くなら、より広いスペースがとれるということか。

しばらく歩いて行くと、ドアの前にたどり着いた。

ロボは、ドアの横のインターホンを押した。

 

「博士。お客様を連れてきましたウサ」

「ああ。部屋に入れてくれ」

 

ロボが部屋のドアを開けると、様々な機械や部品が雑然と置かれた部屋の中に、

白衣を着た池袋さんが、何かの機械の前で作業をしていた。

そして、池袋さんは工具を置いてこちらを向いた。

 

「ようこそ、私の家兼研究所へ。私が池袋晶葉だ」

「美城定守です。よろしくお願いします」

「とりあえず、そこのイスに座りたまえ」

 

俺は勧められるままに、空いていたイスに座った。

そして、目の前の机にお茶の入った湯呑が置かれた

 

「ありがとうござ・・・」

 

お茶を出してきた相手を見て、固まる。

そこには、お盆を持ったウサギ型ロボがいた。

もしかして、このロボがお茶を淹れたのか?

ここのロボは、明らかに世間一般のロボを超えてないか?

池袋さんに、ここに来てからの疑問をぶつけた。

 

「池袋さん、このウサギ型ロボは一体?」

「ウサちゃんロボだ。人工知能を備えていてな。

自我も持っているぞ」

 

なん・・・・・・だと・・・・・・

つまり、未来の世界から来た青狸型ロボットや、

百万馬力のパワーを持つ、面白い髪形をしたロボットと同じということか?

 

「それで、私に頼みたいこととは、なんだ?」

 

と、いけないいけない。本来の目的を忘れるところだった。

俺は、ウサちゃんロボ3号から、段ボール箱を受け取り、中身を取り出す。

 

「これを小型化したものを、作れないでしょうか?」

「何だこれは?」

「紫外線照射装置です」

 

俺が持って来たのは、原作第2部に出てきた紫外線照射装置だ。

原作では、これで吸血鬼達を倒している。

これを、カバンの中で持ち運び出来る位に、小型化してもらい、

文香達に、護身用に持たせようと思っているのだ。

 

「ふむ・・・ところで、何のために作るのだ?」

「それは・・・」

 

俺は池袋さんに、吸血鬼と屍生人について説明した。

 

「それは、ずいぶんと非科学的な話だな」

 

池袋さんは、にわかには信じがたいという表情で答えた。

 

「ですが、事実です。それで出来ますか?」

「可能だとも。形としては懐中電灯型にしよう。

懐中電灯としても使えるようにしておこう」

「お願いします。ところで、ここでは何を研究しているのですか?」

 

ピーピー!

 

いきなり机のパソコンから、電子音が鳴った。

 

「むっ? プロデューサーからだ。もしもし、こちら晶葉」

「晶葉、パワードスーツの性能試験は終了した。これより帰投する」

「了解した。データの受信を確認完了。研究所に戻ってきてくれ」

 

池袋さんは、通信を終了すると、こちらに身体を向き直した。

 

「すまん。私のプロデューサーからの連絡だった」

「いえ、構いません。ところで、パワードスーツというのは?」

「ああ。私が作った物でな。こんな物だ」

 

そう言って、池袋さんはパソコンの画面を操作し、パワードスーツの画像を表示した。

・・・・・・某アメコミヒーローの、戦う社長が身に着けるパワードスーツじゃないか!

 

「・・・ちなみに、どんな装備が?」

「ボディの素材は金とチタン合金。武装は胸の熱可塑性レンズから発射するユニ・ビーム、

両肩にホーミング式マイクロミサイル、腕部に小型ミサイル、ガントレットの掌に光線兵器だ。

空も飛べるぞ」

 

凄い装備だな。どこぞのテロリストとでも戦うつもりか?

 

「そうそう。ここで何を研究しているかだが、

他にはそうだな・・・今は、多次元世界移動装置を作っているところだ。

簡単に言えば、並行世界に移動することが出来る装置だな」

 

スタンドも月までぶっ飛ぶ、衝撃の回答!

本当に池袋さんの頭脳は、どうなってるんだ?

 

「並行世界ですか? そんな装置出来るんですか?」

「可能だ。君は、並行世界の存在を信じるか?」

「ええ」

 

信じるも何も、『D4C』で並行世界を自由に移動できるしな。

 

「そうか。作っている理由は、並行世界の存在を証明する為だ。

並行世界へ行って、並行世界の自分に会ったりするのも、面白いと思ってな」

 

池袋さんは笑顔を見せる。

おいおい。並行世界の自分に触れたら対消滅が起きるぞ。

 

「池袋さん、移動装置が出来たら教えて下さい」

「お? 君も興味があるのか?」

「ええ、まあ」

 

今、『D4C』のことを教える必要はないだろう。

まだ、装置は完成もしてないしな。

 

「わかった。完成したら教えよう。

紫外線照射装置の方は、完成次第連絡する」

 

池袋さんと話していると、部屋のドアが開き、

パワードスーツを身に着けた男が、部屋に入ってきた。

 

「晶葉、戻ったぞ」

「ご苦労。紹介しよう。私の担当プロデューサーだ」

 

池袋さんの担当プロデューサーは、黙ったままこちらに少し頭を下げて挨拶した。

謹厳実直な印象を受けるな。

 

「同じ事務所のプロデューサーの、美城定守です。

しかし、池袋さんの作ったパワードスーツは、強そうですね」

 

すると、池袋さんのプロデューサーは表情を変え、大きな声で叫びだした。

 

「ブァカ者がァアアアア!! 晶葉の科学力は世界一イイイイ!!

当たり前のことォオオオオ!! 抜かすなァアアアア!!」

「うるさい! 助手よ、黙れ!」

「あ、すいません。ハイ・・・」

 

あれ? 池袋さんのプロデューサー、もしかして結構ヤバい人じゃないか?

しかも、完全に池袋さんの尻に敷かれているし。

 

「美城さん、すまん。助手は普段はまともなのだが、

私が絡むと性格が変わるのでな」

「いえ、大丈夫です。それではそろそろ失礼します」

「ああ、ウサちゃんロボ2号に、地上まで送らせよう。

地下エリアの警備システムに、引っかかるといけないからな」

「ありがとうございます」

 

俺はその後、ウサちゃんロボに地上まで案内され、

池袋さんの家を後にした。

 

数日後、346プロの敷地内の木に、

利益が簀巻き(すま)にされて、吊るされていたのは余談である。

 

 



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