比企谷八幡のボーダー活動 (アラベスク)
しおりを挟む

ボーダー活動

殆ど思うがままに書いてます。ワールドトリガーは全巻読破済み、俺ガイルはキャラだけ借りてる感じです。


28万人が住む三門市に、ある日突然異世界への「門(ゲート)」が開いた。門からは「近界民(ネイバー)」と呼ばれる怪物が現れ、地球上の兵器が効かない怪物達に誰もが恐怖したが、謎の一団が近界民を撃退した。彼ら、界境防衛機関「ボーダー」は、近界民に対する防衛体制を整え、依然として門から近界民が出現するにも関わらず、三門市の人々は今日も普通に生活していた。

 

 

 

 

-4年後のある日-

 

 

青春とは嘘であり惡である。

青春を謳歌せし者たちは常に自己と周囲を欺き、自らを取り巻く環境のすべてを肯定的にとらえる。

彼らは青春の二文字の前ならばどんな一般的な解釈も社会通念も捻じ曲げて見せる。

彼らにかかれば嘘も秘密も罪科も失敗さえも青春のスパイスでしかないのだ。

仮に失敗することが青春のあかしであるのなら、友達作りに失敗した人間もまた青春のど真ん中でなければおかしいではないか。

しかし彼らはそれを認めないだろう。全ては彼らのご都合主義でしかない。

 

 

 

結論を言おう。青春を楽しむ愚か者ども砕け散れ!

 

 

-六穎館高等学校の生徒指導室-

 

 

「比企谷、なんだこの舐め腐った作文は?」

 

この前ふざけて書いた現国の課題を読み終えた平塚先生は頭を抱えて俺に言う。高校生活を振り替えってと言うお題にそった我ながら見事な作品であると自信を持って言えるこれを平塚先生はお気に召さないようだ。

 

まぁ自分でもやり過ぎたと思うが後悔はしていない。していたら今すぐにでも書く前の自分にバカなことは止めろと釘を刺しただろう。

 

「ダメだったですか?」

 

「ダメに決まってるだろう。もう少しまともに書けないのか?君は国語の成績は悪くないだろう?」

 

「まぁそれなりには」

 

その代わりに理数科目、特に数学だけは壊滅的なものだ。我ながらよく留年せずに進級できたものだ。

 

「ふむ、ところで君は友達はいないのかね?」

 

いきなり話の方向が変わった質問をされた。まぁあの文面からしてそんな事を聞いてきたのだろうし、普段からボッチでいる俺の生活風景から察したのだろうが生憎友達がいない訳ではない。ただ目立ちたくないからあえて学校内ではボッチでいるだけだ、ハチマンウソツカナイ

 

「居ますよ、少なからず友達と言えるだろう人が」

 

「本当か?」

 

疑り深く平塚先生は聞いてくる。いやに鋭い目付きで射ぬくように俺の目を見る。

 

「そんな腐った目付きのような奴がか?私にはいるようには見えないが」

 

「失敬な、人を見かけで判断しないでください。そんなんだから合コンに失敗するんですよ」

 

「ぐはっ!?」

 

前回の授業のとき要所要所で愚痴を溢していたのを覚えてた俺は咄嗟に反撃した。平塚先生はそのときのことを思い出したのかその場に崩れてしまった。ちょっとやり過ぎたかもしれない。メソメソ泣いてる平塚先生を他所に制服のポケットにいれてある俺の携帯(アラーム付き暇潰しアイテム)が鳴り出す。

 

「もしもし」

 

『あっ比企谷!今何処にいるの?授業終わってすぐどっか行っちゃって早くしないと始まっちゃうよ?』

 

「すまんすまん、なんか平塚先生に呼ばれて職員室にいるんだけど」

 

『平塚先生?あんた何かしたの?』

 

「いや、前回の課題に不備があってな。もう少ししたら行くから先に隊室で待っててくれ」

 

『わかった、早くしなさいさいよ。じゃねー』

 

会話も終わり携帯をポケットにしまう。どうやら平塚先生はまだダメージから立ち直れてないようだ。仕方なく俺は課題は書き直すとメモ書きを残し職員室を出た。

 

 

 

-ボーダー本部-

 

近界民の技術を独自に研究し、世界を守るために設立された民間組織であり、侵攻してくる近界民と戦うことを仕事とする。 

 

存在自体は以前からあったが、公に活動するようになったのは4年半前の近界民侵攻から。

 

 

現在の本部はその際、建設されたものである。

 

そう、俺はボーダーに所属している。あの大規模侵攻後、ボーダー達が表舞台に出てすぐに志願して入隊した。入隊するまでの経緯はいろいろあったのでここでは割愛させてもらう(※あとで書くつもりです)。

 

俺が所属する隊は3年前に結成、去年漸くA級へと昇格し勢いに乗って上位を目指す所だったが、昨年の総武高校へ入学する日の朝に俺が事故って入院してしまいしばらくの間休隊する羽目になるとは思わなかったが、今現在は復帰しランク戦に参加している。

 

俺が所属する隊の隊室前まで来た。さて、今日も俺の平和なボーダー活動が始まる。  




感想、指摘ございましたらよろしくお願いします。次は八幡の隊の紹介と隊員紹介を。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

比企谷隊

比企谷隊の隊員紹介です。


俺は隊室へと足を踏み入れる。既に隊室には俺以外全員揃っていた。

 

「わりぃ遅れた」

 

「おっそいよ!比企谷、何してたの?」

 

先程の電話の主である少女折本かおりが開口一番説教を垂れる。『ウケる!それある~』が口癖でさばさばした性格をしたヤツで我が隊のエース攻撃手でありムードメイカーの今時女子高生。

 

「平塚先生の呼び出しだったんだろ?何したんだ?」

 

ソファーでお茶を飲みながら寛いでいる少年、本牧牧人。狙撃手で俺とほぼ入隊時期が同じですぐに意気投合した寡黙で理知的、援護射撃で隊を支えるいい奴だ。

 

「どうせこの前の作文でしょ?あれほどやめろって言ったのに」

 

我が隊オペレーター、仲町千佳。折本の親友で同期。オペレーター内でも屈指の分析、支援、戦況把握力に優れ俺たちを的確にサポートするお姉さん。小さいけど万能その2である。

 

「なんか今失礼なこと思わなかった?」

 

「なんのことかな?」

 

なぜか心の中を読まれた気がするが軽く流して俺は隊室に備え付けてある冷蔵庫のもとへ。俺のボーダー活動の原動力とも呼べるソウルドリンクMAXコーヒーを手に取り一気に飲み干す。美味い、もう一杯!!と行きたいところだが折本がそれを止める。

 

「比企谷、ルールを守らないと罰金、ダメ絶対。まったくウケないよ」

 

そう、MAXコーヒーは一日一杯と冷蔵庫の戸に張り紙がしてあるのだ。ちなみに仲町が丁寧な字で一筆書いた。

 

「くっ!?いやちょっと平塚先生に呼ばれてつかれてさ」

 

「そんくらいで疲れるか?これから防衛任務だぞ」

 

そう4時から俺たちの隊は防衛任務に付く。ならその前の景気付けにもう一杯くらいいいだろに。

 

「よくそんな甘いの任務前に飲めるよね」

 

「仲町も飲むか?飲めばわかる」

 

「わかりたくないからいらないわ」

 

「なんだよつれないなぁ。いいじゃんMAXコーヒー」

 

「はいはいショボくれない。そろそろ時間だから準備して」

 

折本に先導されて渋々俺は自分の専用トリガーを起動する。すぐさま青を基調とした隊服に換装される。

 

「んじゃ行きますか」

 

「「「了解」」」

 

俺達比企谷隊の今日のボーダー活動の開始である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~比企谷隊プロフィール(簡略版)~

 

比企谷八幡

 

比企谷隊の隊長で万能型。主に弧月、アサルトライフル型のトリガーを使用。

 

折本かおり

 

比企谷隊のエース攻撃手。弧月、サブにはスコーピオンを使う異色攻撃手ナンバー5。

 

本牧牧人

 

比企谷隊の狙撃手。ライトニングとアイビスを使用。元はシューターだった。

 

仲町千佳

 

比企谷隊オペレーター。隊のお姉さん、小さいけど万能その2。三上とは通じるものがあるらしく仲がいい。

 

とりあえず今のところはこんな感じ。あとで細かいとステータスなどはBBFを元に書きたいと思います。




比企谷隊の隊服は嵐山隊のを色を青くした感じ。隊のエンブレムは狼のバックに月。(誰か書いてくれないかな)

感想、指摘ございましたらよろしくお願いいたします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

八幡の過去①

大規模侵攻直後の八幡と小町です。序盤からネガティブ満載ですのであしからず。


ある日突然異世界への「門(ゲート)」が開いた。門からは「近界民(ネイバー)」と呼ばれる怪物が現れ、地球上の兵器が効かない怪物達に誰もが恐怖したが、謎の一団が近界民を撃退した。

 

 

 

大規模侵攻から数時間後、謎の一団により近界民の撃退に成功した。今だ市民は恐怖に怯えて救助が来るのを待つもの、家族を近界民に殺され成すすべもなく崩れ動けないもの、そして、救助のために奮闘する人々で町は溢れかえっていた。

 

その中の一人、比企谷八幡少年は家は倒壊して崩れてしまったが、屋根と柱の間に挟まりあわや下敷きになるところを何とか抜け出た所だった。

 

「はぁ…はぁ…小町無事か?」

 

家が崩れるときに一緒にいた妹の小町を咄嗟に庇い抱き抱えるように命からがら脱出に成功した。腕の中で小町はどうやら気絶していたが、見たところ外傷は見当たらず一息つけた。だが、安心はしていられなかった。見渡す限り瓦礫の山で、このような光景を八幡は今だ嘗て経験したことがない。昨日までの日常は一変して地獄画図と化したのだ。

 

八幡は途方にくれた。何処を見ても何もかもが崩れた様は小学生の彼の心に傷をつけた。幸い小町は気絶したままでこのような有り様を目の当たりにしていない分まだ救われていたのかもしれない。何れはわかってしまう現実に今だけは逃避したかった。

 

しかし、八幡にはまだ小さい妹の小町がいた。兄として小町を守らなければならないプレッシャーに彼の心は消耗していくばかりで、目の前が真っ黒くなっていく。

 

 

 

そう言えば、

 

 

 

崩壊した家から抜け出しその場に立ち尽くして数時間、今だ小町は意識を取り戻さず眠ったまま。ふと両親は何処へ行ってしまったのだろう。日曜だと言うのに朝方から家を開けて仕事に向かった父と母は今どこでどうしているのだろうか。まさか騒ぎに巻き込まれ閉じ込められたのか、或はもう、考えが段々ネガティブになっていく。そうだ、ポケットの中に携帯をしまっていた彼は気づき、ポケットの中を確認する。

 

しかし、出てきたのは潰れて使い物ならない携帯だったものだった。これでは何処にも連絡は取れない。いやまだある。小町の首から吊り下げていた携帯が奇跡的に綺麗に残っていた。一筋の希望を胸に八幡は早速両親に連絡を入れる。

 

 

 

こんな緊急時だと言うのに電波の混線もなくすぐに両親の携帯に繋がった。

 

「もっもしもし?」

 

『………まん?………はちまんか?』

 

出たのは父だった。ノイズで聞き取り辛いが確かに父の声がした。

 

「親父?俺だよ!!八幡だよ!!」

 

『無事か?小町は?』

 

父の声がはっきりと聞こえてくる。

 

「一緒にいるよ。母さんは?無事なのか?」

 

『大丈夫だ。心配かけたな、本当は真っ先に向かうべきだったんだが、中々に手こずってしまって漸く一段落した。今何処だ?』

 

「家の外。家が、家が崩れたけどなんとか這って出れた」

 

『そうだったか。待ってろ、すぐそっちに向かうからな』

 

ようやく八幡は一息付くことが出来た。




次回八幡人生最大級のトラウマを抱える。そして八幡は力を得ることに。

八幡はSE合った方がいいですかね?そこら辺ご意見ご感想よろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

八幡の過去②

父との会話を終えた八幡は今までのプレッシャーから解放され気を緩め楽な姿勢を取った。もうすぐ助けが来る。そう思い八幡はその場で力尽き眠ってしまった。

 

 

 

暗い、視界が黒一色に包まれた何もない空間に八幡はいた。これは夢の中であるとこの時八幡は理解していた。いつの間にか眠ってしまったのか。でも親父が言うには一段落ついたと言うから安心して気が緩んだのかもしれない。早く起きないと、そう意識するとともに八幡は覚醒する。

 

 

しかし、この時起きなければ見なくて済んだかもしれない。恐怖が再び八幡と小町を襲うことになる。

 

 

 

八幡は起きて再び辺りを見渡す。見渡す限りの瓦礫の山と腕の中で未だに目を覚まさない小町。あれから何時間時間が経ったのだろう。でももう大丈夫なはず。親父が助けに来ると言ったから。あれ、でも親父はこんな瓦礫だかけの道無き道をどう進んでここまで来るんだろう。それに何処から来るにしても足場の悪い悪路を徒歩だと何時間かかるかわからない。近くにいたのか?

 

八幡が考え込んでいるとき、ふと瓦礫の山の一角が崩れだした。土煙が立ち込めて視界が悪くなる。小町はまだ起きないし、父親が来るまでここが安全と言う保証もない。八幡は小町をおぶりもう少し安全な場所へ向かおうと移動を開始ししようとした。

 

 

そんな矢先に、先程崩れた一画から音がする。また崩れたのかと八幡は崩れた先に視線寄せる。

 

 

 

 

そこにいたのは見たこともない巨大な化け物だった。

 

「ひぃっ!?」

 

八幡が見たそれはこの町を壊滅にまで及ぼした存在その物だ。化け物は一つ目をギラリと光らせ八幡の方を向いていた。

 

 

 

その射抜くような視線に圧倒され恐怖した八幡の足は震えて動くことが出来ない。化け物は八幡に気づきこちらに近づいてくる。見る限り化け物の表面はひび割れていて手負いで弱っているようだが、それでも力のさは歴然。

 

巨大な足で地面を揺らし、獲物を狙い定めて着実に仕留めようと前進してくる。

 

 

 

もはや絶体絶命、八幡はこの時死を悟った。だが、せめて小町だけでもと庇うように身を呈して守ろうと最後の勇気を振り絞り立ち向かった。

 

だが、生身の肉体では化け物に届くはずがない。それでも妹を救うには自分が犠牲になるしかない。

 

化け物は大きな口を開け八幡を飲み込もうとした。

 

「くぅっ!?」

 

 

 

 

 

 

だが、いくら待たれど痛みはない、数秒間の沈黙が続いた。八幡は閉じていた瞳を恐る恐る開けると目の前の光景に見えたものは、

 

「よう………無事か?」

 

「あぁぁ……親父?」

 

目の前には自分を庇い、右腕を化け物に噛まれた父の姿が存在していた。

 

「親父、なんで?」

 

「バカ野郎、息子を守るなんて当たり前だろ?それより、早く小町連れて逃げろ。いくら俺でも……生身じゃこいつ相手に数秒が限度だ」

 

「でも、親父は?」

 

「心配すんな、時期仲間が…………」

 

親父は何かを最後に言う前に力尽きて右腕を食い千切られ、血の海に倒れ動かなくなった。

 

八幡は父のもとへ駆け寄り体を揺するが何の反応もない。動かない父を見て八幡の心はついに砕かれてしまった。

 

 

 

薄れ行く意識の中最後に見たのは化け物が真っ二つになった姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

「おい、しっかりしろ」

 

「どうだ?生きてるのか?」

 

「息はある、まだ間に合うぞ!すぐに医療班のもとに向かわせろ。男の子と女の子二人だ」

 

「迅、比企谷さんは?」

 

「比企谷さんは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後のことは何も覚えていない。次に目が覚めたときには知らない天井が目に映っていた。

 




なんか勢いで書いたから文が適当かも(--;)


最後の会話は迅さんと忍田さんです。
ちなみに迅さんはそのあとに三輪君のもとに行ったら……と言う感じです。

化け物は生き残って瓦礫の山で機能停止してたバムスター。


果たして、八幡の父ちゃんは果たして生きてるのか?


次回、八幡ボーダーに入る。


ご指摘、ご指摘ありましたらお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

八幡の過去③

仕事の合間を縫って書きました。今回は漸くワートリ側のキャラが登場します。


大規模侵攻から数日の時が流れた。三門市を謎の侵略者はボーダーと呼ばれる一団による侵攻者の駆逐にされ町に平穏が訪れた。

 

八幡は大規模侵攻終結間際にボーダーによって救出され奇跡的に命をとりとめ、現在はボーダーのもと保護されている。

 

 

 

あの日から一週間、長い眠いから八幡は漸く覚醒した。

 

 

「知らない天井だ」

 

それが八幡の第一声だった。起き上がろうととするが、全く体に力が入らない。一週間近くもの間ベットの上で眠りについていたから無理もない。体力、筋力も落ち、何より疲労が回復しきれていないのだろう。仕方なく唯一動く首を動かし視界を動かすと、隣のソファには母が腰かけて眠っていた。

 

「かぁさん」

 

聞こえるか聞こえないかわからないくらい小さく掠れた声しか出なかったが、どうにかして起きた事を訴えるために八幡は声を振り絞り母を読んだ。

 

「ん……あら寝てしまってたみたい……はちまん?八幡!!気づいたのね」

 

「かぁさん…こ……こ…?」

 

「今は安全な場所で治療を受けてるのよ。それよりあなたが目が覚めて安心したわ。あなた一週間も眠ってたのよ?」

 

 

 

一週間?あれから一週間も経ってたのか。そう思うと何か忘れているような。その時八幡はあの場で起きた事を思い出す。確かいきなり家が崩れて命からがら小町とともに逃げ延びて救助を待っていたんだ。

 

そしたら瓦礫から見たこともない化け物が現れて……

 

「あっ……」

 

「どうしたの八幡?」

 

「母さん、こっ小町は?親父は!?俺は、いったい」

 

「八幡?」

 

「あっ…あぁぁぁ、うあぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

八幡は思い出してしまった。自分を庇って化け物に腕を食い千切られ血の海に沈んだ父の姿を。

 

「八幡落ち着いて!!」

 

母親は急に暴れ出した八幡を必死にベットに押し付ける。無我夢中で叫び苦しむ八幡の力は女性とはいえ大人の人間では太刀打ち出来ずに母親は床に放り出されてしまった。

 

「くっ…誰か!誰か来てちょうだい!!」

 

八幡の母は一人では押さえつけられないとわかり誰か大きな声で人を読んだ。すぐさま駆けつけた二名の男性によって八幡は多少強引にベットに押さえつけられたが、それでも八幡は尚暴れてがつけられない。

 

「仕方ない、迅私が押さえているから彼を殴るなりさせて気絶させてくれ。比企谷さん、よろしいですね?」

 

「えっえぇお願いするわ」

 

「悪いな少年」

 

迅と呼ばれる青年は八幡の鳩尾に拳がめり込む。

 

「ぐふっ!?」

 

その衝撃で八幡の意識は刈り取られおとなしくベットに体は吸い込まれる。

 

「ふぅ…なんとかなったな。すみません、比企谷さん大事な息子さんなのに」

 

「いえ、今のはしょうがなかったわ。ここには常駐の医師がいないし。素人が安定剤を射つのもかえって危なかったから。ありがとう、忍田さん、迅くん」

 

「いえいえ、この実力派エリートがお役に立てば幸いです」

 

 

「調子に乗るな迅」

 

迅と呼ばれる青年は得意気な顔をするのを忍田と言う男性が諌める。

 

「迅くんがいなかったら今ごろ家族は近界民によってもうこの世にいなかったかもしれません。本当にありがとうございました」

 

八幡の母は感謝の意を込め迅に向かって深く頭を下げる。それを見た迅は慌てて自分もいつも御世話になっているとお辞儀をして礼を返す。

 

「それに、俺が駆けつけたときにはもうトリオン兵は倒された後でした」

 

「どういうこと?あのトリオン兵は迅くんが倒したんじゃ」

 

「いえ、俺ではありません」

 

「ではいったい誰が?比企谷さんは片腕を失って最早戦える状況ではなかったはずだが」

 

「どうなの迅くん!!」

 

「どうなんだ迅!!」

 

「ふっ二人とも落ち着いて!?えぇ、これ言わなきゃダメなの?」

 

迅は忍田と八幡の母に問いつめられたが、何か隠したいのか言うのを躊躇った。しかし、二人の放つ重圧に根負けしてしまい仕方なく真実を話すことにした。

 

 

 

「実はあの時トリオン兵を倒したのはそこで眠ってる少年、八幡くんなんだ」

 

衝撃の事実に二人は固まってしまった。そんな二人を他所に八幡はまた深い眠りについてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 




ご指摘、ご意見、感想お待ちしております。もしかしたら加筆、修正するかもしれません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

未来が動く時

すいません、漸く書きあがりました。


大規模侵攻終幕、迅悠一は逃げ遅れ救助を待つ市民の救出に奔走していた。一通り自分の持ち場の巡回も終わり、仲間達が待つアジトへ帰還するだけだったが一本の通信が入った。

 

 

 

『迅くん聞こえる?』

 

「どうかしましたか?俺の方はもう見回り終わりましたが」

 

通信の相手は比企谷八幡の母からだった。比企谷夫妻はボーダー結成時の初期メンバーで迅にとっては普段から世話になっていて頭の上がらない存在だ。何やら緊迫した声色に迅の額から冷や汗が流れる。

 

迅には人にはない特別な力がある。高いトリオン能力を持つ人間の場合、トリオンが脳や感覚器官に影響を及ぼして稀に超感覚を発現することがあり、それらの超感覚を総称して「副作用(サイドエフェクト)」と呼ぶ。 迅が持つサイドエフェクトは目の前の人間の少し先の未来を見ることができる未来視だ。

 

大規模侵攻が起こる前にボーダー隊員の行く末を見た迅は最悪の未来に近づけないように各隊員に警戒を促した。しかし、いくら迅のサイドエフェクトとて万能ではない。数ある内の未来を見たからと行って必ずしもいい結果となることはない。それでも迅は見てしまった最悪の結果にならぬように、日々裏で暗躍に勤めていた。

 

だが、今回起きた大規模侵攻で迅はある人物に関しての未来が読めなかった。何故かはわからないがこんなことは初めてだった。その人物とは比企谷と呼ばれるボーダー結成当初からの最古参のメンバーの一人で、夫婦でボーダーに所属する選りすぐりの人物だ。迅は出撃前に比企谷にこう述べた。

 

 

 

『比企谷さん』

 

『ん、どうかしたか迅?怖い顔してお前らしくないぞ。いつものヘラヘラした顔はどうした?』

 

『茶化さないでください』

 

『悪い。緊張してるのは皆同じだな。大方サイドエフェクトで嫌な未来でも見たか?』

 

『あぁ、比企谷さんの未来だけは読めなかった』

 

『お前でもそんなことがあるのか。まぁ先の未来なんてどう転ぶかわかんねーからな』

 

『だから、気休めにしかならないですけど。無理はしないでください』

 

『わかった。肝に命じとく。家族が待ってるからな』

 

『それ死亡フラグだよ』

 

皮肉った笑顔で迅は比企谷を送り出した。彼の笑顔を見るのがそれを最後と知らずに。

 

 

 

『迅くん?』

 

「すいません、ちょっと考え事してました」

 

『大丈夫?無理しないでとは言えないんだけれど、主人からの通信が途絶えたままなの。何か胸騒ぎして』

 

「やっぱりか」

 

『視えてたの?』

 

「すいません、今すぐ比企谷さんの所に向かいます」

 

『お願いするわ。気を付けて』

 

迅は通信を切る。粗方終結した戦いの後、息子と娘を迎えにいくと行ったから自宅の方へ向かうと行っていたのを迅は思いだし、直ぐ様比企谷の元へ急行した。

 

 

 

迅が現場に現着したとき、既に最悪の事態となっていた。片腕を引きちぎられ血の海に沈む比企谷の姿を見た迅は動揺を隠しきれない恐怖した顔をした。比企谷をやったトリオン兵は既に虫の息だったがまだ活動をしていた。すぐ側には比企谷の子供と思われる少年と倒れて気を失った少女が今にも教われる瞬間であった。

 

 

『………!?おいおいマジかよ』

 

 

 

だが、迅は動けなかった。親しい友人の無惨な姿を目の当たりし気負されたからではない。瞬間的に迅のサイドエフェクトが発動し未来が動いたからだった。迅が見た未来とは別の未来。最初に見た光景とは打って変わって、一筋の希望に溢れた世界が今迅の目の前で繰り広げられようとしたからだ。

 

もう大丈夫だ。だが、念のためトリガーで武装したまま迅は行く末を見守った。

 

 

 

迅が見た光景は少年がトリガーを起動し、襲い来るトリオン兵を果敢にも倒した所だった。あれはたぶん比企谷の所持していたトリガーだろう。少年は転がってきたトリガーを咄嗟の判断で起動したのだ。普通なら考えられない、見たこともないものを手にしてあの緊迫した状況下で冷静に対処したのだ。

 

 

 

トリオン兵が倒され機能停止したのを確認して迅は少年の元へ駆けつけた。気が抜けたのか力なく少年は倒れるのを寸での差で受け止め迅は一息ついてまた直ぐに倒れた比企谷の元へ行く。出血は酷いが比企谷にはまだ息のあった。直ぐ様来ていたジャケットの袖を引きちぎり止血をして迅は比企谷を抱える。少年達の安全も大事だが、彼らよりも重度の傷を負った比企谷の方を優先し、少年達の救助には別の隊員に任せこの場を後にした。

 

 

 

 

 

 

全てを話終えた迅はその場にあった椅子にもたれ掛かり疲れたと深い息を吐いて胸を撫で下ろした。

 

「これが俺が見たことだよ」

 

「そうだったの。ありがとうね迅くん」

 

「いえ、俺に出来ることありませんでしたから」

 

「って言うと思ったかしら?「えっ?」」

 

比企谷夫人の顔は笑っていた。ただその笑顔は狂喜に満ちた笑みであった。迅の顔はみるみるうちに青くなり、震えだした。ヤバイ、地雷を踏んだと迅のサイドエフェクトがそう言っている。

 

「あなたって人は!!人様の大事な子供の一大事だってのに駆けつけもせず、ただ見守っていたですって?冗談じゃないわよ

!!もし、もし万が一八幡が殺られていたらどうするっていうのよ!!俺のサイドエフェクトがそう言ってるからって普通そこはすぐに助けにいくのが常識でしょうが!!普段から裏でこそこそ動いて暗躍だがなんだか知らないけれど家の子達に何かあってからじゃ遅いのよ!!!この腐れエリート風情が!!!トリガー起動!!」

 

比企谷夫人がトリガーを起動させる。その顔は修羅と化していた。

 

「あっあぁ……忍田さぁぁん!?っていねぇぇぇ!?」

 

「悪い迅、私はこの人には逆らえないんだ」

 

鬼気迫る迅を他所に既に忍田は病室から退出済みだった。

 

「覚悟は出来てるわよね?」

 

「はっはひ」

 

その後、迅の行方を知るものは誰もいなかった(嘘)。

 




ちなみに迅さん(トリオン体の)は比企谷母に弧月で一刀両断されたのちメテオラで粉砕!玉砕!大喝采!!されました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

八幡、ボーダーへ①

大規模侵攻から数週間、漸く三門市に平穏が訪れ復旧が急ピッチで行われていた。それと同時に大規模侵攻で姿を公にさらした界境防衛機関、通称ボーダーが本格的な活動を始めだす。メディアを通し、一連で起きた事件の真相を露にしたボーダーは三門市に本部を立ち上げることにし、ここを最終防衛地点と定め、三門市の治安、近界からの侵略者達から危険から守ると約束した。

 

 

そうした中、傷を癒した八幡は今日退院を迎える。

 

「もう大丈夫なのね」

 

「ずっと寝ていたから体が鈍ってしかたないけど、そうも言ってられないからな」

 

「本当になるのね?」

 

「あぁ、小町のためだ。けっ決して親父のタメじゃないんだからね」

 

「はいはい捻デレ乙」

 

茶化されて赤くなる八幡を母は久しぶりに笑ったように思えた。

 

 

大規模侵攻で人生が変わった。あの日、八幡に降りかかった恐怖により八幡の目に光が消えた。元々目付きが鋭かったが、まだ無垢だった八幡の目は酷く濁ってしまった。

 

それから八幡が目覚めて知った事実だが、まず母親から八幡に内緒にしていたことを明かされた。

 

 

 

父と母があの大規模侵攻からの侵略者を撃退した組織の一員であることだ。普段から家を空けがちで両親が何の職についているか知らず、妹の小町を一人面倒を見てきた八幡にとってそれは衝撃的だった。

 

それと同時に心に怒りと悲しみが沸き上がった。怒りは子供蔑ろにされていたと思っていたことと、あの日父にトリオン兵から自らを身代わりにし、身を呈して守られた事に本当は家族のことを心から心配していたことを知り、今まで燻っていた怒りは何だったのだろうと言うものだった。母は誰よりも家族を愛している、父もそうだよと言われ嬉しさと寂しさから八幡は大いに泣いた。泣いて泣いて、泣きつかれてからふと八幡は気づく。

 

 

病室には母の他に忍田と迅も居たことを。

 

「うがぁぁぁぁぁぁぁあ!?」モギャー

 

八幡はあまりの恥ずかしさにベッドに顔を埋めて足をじたばたさせる。悶える八幡を見て笑う母と、何と声をかけるか悩む二人。

 

「あぁ、あれだ少年。ドンマイ?」

 

迅のフォローは何のフォローにもならなかった。もういっそ殺してほしいくらい、悶え苦しんだ。

 

 

「何気にすることはない。聞けばまだ小学生だと言うじゃないか。親に甘えたい年頃なんだろう」

 

更に忍田の追い討ちが八幡に襲いかかり、止めを刺された八幡はピクリとも動かなくなった。

 

「普段は大人びた子ですけどまだまだ尻の青い坊主ですよ。まぁ母さん達が全然かまってあげられなかったからその反動でしょう」

 

 

 

こうして、八幡の黒歴史に新たな1ページが刻まれる。後にこの事は八幡のイジリネタにされ八幡は迅に頭が上がらない事となった。

 

 

 

-閑話休題-

 

 

 

さて、話を戻す。

 

 

 

大規模侵攻で比企谷家に降りかかった不幸はまだあった。父親である七曜(シチヨウ)の右腕切断による身体の欠損によりボーダー隊員の生命を断たれたこと、さらに八幡の妹の小町は今だ目を覚まさないままだった。

 

 

「そうか、もう戦えないのか」

 

利き腕を失ったが、瀕死の重症からの生還に七曜は安堵したとともに右腕の無い喪失感に心が沈んでいた。

 

「命あっての物種って言えば聞こえはいいがな。まぁ家族を守れたなら本望だよ。だが、まだ諦めた訳じゃねぇ」

 

しかし、直ぐ様心を切り替え今後ボーダーが組織として大きくなるのを見据え、戦闘員教官として後進の育成に従事していく決意を固めた。

 

「八幡、お前ボーダーに入る気あるか?」

 

病室に訪れ無事を知らせての第一声がそれだった。

 

「何言ってんだ親父?腕無くなって乱心しやがったか?」

 

「阿呆真面目な話だ。お前あの時とっさに俺のトリガー起動してトリオン兵を倒したそうじゃないか」

 

「あれは、なんつーかアレがアレでアレだったんだよ」

 

八幡の言葉は支離滅裂だったが、七曜には何が言いたかったかわかった。あの時はもう無我夢中で何をしたのかもわからなかったのだろうと。だが、あの時トリガーを起動できたと言うことは八幡のトリオン能力はボーダーとして相応しいものなのだろう。ましてや、七曜専用にカスタマイズしたトリガーをだ。臨時接続にはリスクが伴うし、適合するかは運だった。

 

「まぁお前がどうするかはお前が決めることだから強制はしない。ただ、俺はこんなんになっちまって戦えなくなった。母さんもボーダー隊員だが戦闘員ではない。ましてや小町が今だ目を覚まさないしな。誰かが家族を守らなきゃならねぇ。今後また奴等が攻めてこないとも限らない」

 

そう、大規模侵攻後もゲートが開き近界民の侵攻は顕著であるが、それでも無くなったわけではなかった。

 

「親父は、俺に期待してるのか?」

 

「客観的にはな。主観としては息子を戦場に送り出したくない思いもある」

 

「矛盾してるじゃねーか」

 

「悩んだけど、お前ならやってくれると思って打診した」

 

「わかったよ」

 

「本当か?」

 

「言っておくが親父にお願いされたからじゃねーからな!小町の為に、あいつを守るためだからな!!」

 

「ふっ素直じゃないな」

 

「うっせぇ」

 

 

 

素直じゃないのはお互い様だろ?

 

 

 

 




こうして、八幡はボーダーへ入ることを決意。

あといつまでも呼称が父、母ではと思い名前をつけることにしました。

父→比企谷七曜(ヒキガヤシチヨウ)

母→比企谷元町(ヒキガヤモトマチ)

次はいよいよ八幡ボーダー入隊します。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

八幡、ボーダーへ②

短いですが、投稿します。今回は玉狛支部のメンバーが出てきます。そしてもう一人、今後の未来に隊を組む相棒の登場です。



あとがきに小ネタを入れました。たまにはラブコメも必要だよね?



大規模侵攻から数週間後、界境防衛機関『ボーダー』が活動を公にし、世間に認知され三門市での防衛開始が政府との間で締結された。

 

 

 

それと同時に人員を募集も口コミや、現隊員からの推薦などを含め着々と増えていった。また大規模侵攻で壊滅的に被害に遇い、復旧が困難となり放棄された区画に新たにボーダーの本部を設立し、組織として起動に乗ろうとしていた。

 

 

 

比企谷八幡は今父親に連れられてボーダーが活動をしている仮の事務所として扱われている場所に来ている。本部着工も始まり突貫工事(安全第一)で進められているが、まだ出来上がるのも当分先の事だ。

 

「お前以外にも数十名ボーダーに志願した奴等も来ている。仲良くしろよ」

 

しかし、八幡は極度の人見知り+コミュ症だ。入院中もたまにお見舞いに来る迅や忍田とのやり取りもぎこちなく、おどおどするほどだ。それが数十名単位となるとどうなることか。だが、八幡は影が薄い方で逆に埋没されて認識されないまであるかもしれない。正直不安だ。

 

「大丈夫か?」

 

「なっ何ぎゃっ?」

 

「安心しろ、迅や忍田だっているし。お前は弄られて可愛がられるだろうからな」

 

親父のどや顔にムカっと来ていると、どうやら事務所のところまでついたようだ。

 

「よう、来たぞ」

 

ドアを開け威勢よく親父が入っていく背中に隠れて八幡も部屋に入る。見知った顔以上に知らない顔が多くて緊張していた。

 

「比企谷さんお疲れー」

 

出迎えたのはサングラスを首にかけた茶髪の青年迅悠一だ。迅は笑顔で七曜と八幡を向かい入れる。司令室ぽいところの備え付けの二人掛けの椅子に案内され八幡はおどおどしながらそこに腰を下ろす。

 

「何こいつ?これが比企谷さんの息子なわけ?」

 

「そうだ小南。八幡って言うんだ、よろしく頼むぞ」

 

小南と呼ばれる対面に座る鳥のようなアホ毛が飛び出た明るい茶髪と、緑色の目の少女に品定めされるように上から下までなめ回すように見られた。

 

「なんかパッとしないわね。弱そうだし、目が濁ってるし」

 

「あんまりキツく言うな小南。悪いなこいつ言いたいことは口にしないと気がすまないタイプだから。俺は木崎レイジだ」

 

小南の隣に座る厳つくてでも優しそうな筋肉こと木崎レイジが小南を嗜める。

 

「あれ、林道まだ来てないのか?」

 

「ボスなら陽太郎を迎えに行ってるわよ」

 

「ほーん。あとそっちの少年がレイジが連れてきたって言う子か」

 

「はい、こいつは本牧牧人。うちの近所に住んでてトリオン能力が高そうだったから連れてきました」

 

レイジの隣には八幡と同年代と思われる少年が座っていた。

 

 

「本牧牧人です。レイジさんに憧れてボーダーに入ることにしました」

 

しっかりした挨拶にお前も見習って自己紹介くらいしろと七曜は八幡の背中を叩く。

 

「ひっ比企谷八幡です」

 

か細い声で自己紹介する八幡にまぁ仕方ないかと七曜はため息をつく。

 

 

 

それから30分後、小さな子供を抱き抱えた髭眼鏡の男が現れた。

 

「おー皆もう集まってたか。悪いねぇ待たせちまって」

 

「ボスーおかえりー。陽太郎は…寝ちゃってるわね」

 

ボスと呼ばれた髭眼鏡の男の名は林藤匠。ボーダー最初期メンバーの一人でこの事務所の所有者である。林道の腕には彼の息子陽太郎が抱き抱えられていた。まだ幼いがトリオン能力が高く、迅と同じくサイドエフェクトを持つものと思われている。

 

 

 

「あともう一人来ている」

 

「もう一人?」

 

林藤が言うもう一人とは誰なのか皆がその言葉に注目していると、のっそりと毛むくじゃらの物体が部屋に入ってくる。

 

「何こいつ、カピバラ?」

 

「そう、我々の新たな仲間カピバラの雷神丸だ」

 

「「「はぁ~!?」」」

 

 

 

こうして新たにボーダーに一匹の戦士が加わった。

 




本牧くんはレイジさんの家の近所に住んでいて、大規模侵攻の際にはレイジさんに助け出され、筋肉の洗礼を受けました。

あと加筆して雷神丸もこうしてボーダー入りしてもらいました。




-小ネタ-


『緊急脱出後の設定~親方!空から女の子が落ちてきた!!~』



宇佐美「ベイルアウトした後ってさぁ、作戦室のベッドに落下する設定だよね」

仲町「そうだね」

宇佐美「あれ弄らない」

仲町「はぁ?」



そしてランク戦、宇佐美により緊急脱出後の転送位置をずらされているとも知らずに八幡達はランク戦に挑むのだが、

『トリオン供給機関破損、緊急脱出』

現在、A級ランク戦にて太刀川隊と三輪隊、そして我らが比企谷隊の三つ巴の試合が繰り広げられていたが、真っ先に隊長である八幡が出水の合成弾の餌食に遇い泣く泣く緊急脱出してしまう。

「うぐっ!?っくしょー出水の弾バカが、あんなんどうやって避けろってんだよ」

折本と合流したはいいが、出水の力業に咄嗟に折本庇って落とされた。折本もかなり被弾したからもうすぐ緊急脱出しそうだな。すると、弱ったに追い討ちをかけたのは三輪隊の奈良坂だった。トリオン漏出過多によるトリオン切れで折本が落ちた。

「はぁ、本牧一人で大丈夫かな?」

呑気にベッドの上で最後の一人の心配をしていたら緊急脱出した折本が帰ってきた。







八幡の上に

「は?」

「うぇぇっ!?」

何故か頭上より折本が降ってきた。

「うぐぅぅぅ、何故に折本が」

「きゃあっちょっ比企谷どこ触ってんのよ!!」

「ぐへぇぇっ!?」

宇佐美『やったぜハッチ~♪ラブコメゲットだぜ』

仲町『って宇佐美は思ってるんだろな。はぁ何やってんだか』



本牧「これ無理ゲーだろ?」

その頃、八幡とかおりがくんずほずれずラブコメってる所など知らず、一人孤独に戦場を逃げ回る本牧の姿が見られたとか。


今日も比企谷隊は平和です。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

八幡、ボーダーへ③

今回は少し3巻のオマージュが入ります。


カピバラの雷神丸がボーダーに入隊した。何故動物がと言われればそこまでなのだが、なんでも林藤の子である陽太郎は動物と意思疏通が出来るサイドエフェクトを持っているらしい。まだ1歳くらいの小さな子供が意思疏通とは大したものだが、端から見ればじゃれあっているようにしか見えなくて微笑ましい限りである。

 

 

 

さて、こうして漸く面子も揃った。ここに来たのは他でもない八幡の適正を調べるのと今後、近界らの侵攻に備えて戦い方を学ぶためだ。

 

 

「ねぇ、比企谷さん」

 

「どうした小南?」

 

「本当にこいつトリガー起動してトリオン兵を倒したって言うの?どうみたって素人くさいし、なんか弱そう」

 

「そうだな。八幡はまだまだ何も知らないガキンチョだからな。小南が色々教えてやってくれ」

 

「まぁ、比企谷さんに頼まれたなら仕方ないわね。でも言っとくけど私弱い奴は嫌いなのよ。私が教えるんだから強くなりなさいよね」

 

いきなり師匠面する同年代の少女にただただオロオロするばかりの八幡は、控えめによろしくと答えた。ただはっきりしない態度に小南はイライラしていたが、世話になっている比企谷の頼みだし、八幡の性格を察してやる方向で鍛えることにした。

 

「そういえばこいつトリガー持ってるの?」

 

「一応俺のを渡してあるぞ。もう俺には必要ないからな」

 

「そっか、その右腕じゃ……」

 

小南は七曜の垂れ下がった右袖を見ると痛ましい気持ちになる。あの時トリオン切れさえしなければ今もそこにあったかもしれない右腕。そして、彼のような優秀な隊員の損失。だが、その穴を埋めるべくまずは彼の息子を使い物くらいには鍛えてやると小南はここで決意した。

 

 

 

小南に連れられて来たのはこの基地にあるトレーニングルームだ。とても広い空間でトリガーを使って作られているので広さを調節など可能らしいが、そこら辺の事を聞くと小南はよくわからないから私に聞くなと一蹴されてしまう。

 

「はっきり言ってあたし感覚派だから他人を鍛えるの苦手なの。まぁ比企谷さんの頼みを無下には出来ないから精々頑張って」

 

「はぁ…よろしく」

 

「とりあえずトリガー起動して、ボコボコにしてあげるからなんで負けたかあとでゆっくり考えるといいわ」

 

「わかった。トリガー起動」

 

八幡はポケットから父七曜から受け継いだトリガーを起動して戦闘体へと換装する。青を基調としたジャージータイプの戦闘服に身を包み、右手に武器であるブレード型のトリガー『弧月』を手に取る。

 

(戦闘体になったら目付きが変わった?こいつは中々やるかもしれないわね)

 

小南は少しだけ興味を抱くと自分も戦闘体へと換装した。

 

「さーて、どっからでも掛かってきなさい!」

 

「いくぞ!!」

 

 

 

 

 

2時間後、長い訓練で八幡はボコボコにされ魂が抜けたかのようにぶっ倒された。しかし、その中で八幡は最後の最後で1勝

だけを辛くももぎ取ったと言う。

 

「小南、八幡のやつどうだった?」

 

「今のところはまだまだってところね。まぁセンスだけは比企谷さんの息子って事で買ってあげるわ」

 

「ほう、あの桐絵お嬢ちゃんからお墨付きを貰えるとは、八幡も大したもんだな」

 

「んな!?お嬢ちゃんって私を子供扱いするなぁ!!」モギャアアア

 

「ははははっまだまだ俺から見たらお嬢ちゃんだよ」

 

七曜は逐一八幡と小南の訓練風景をモニター越しに見ていた。まだまだ青臭くて動きに無駄がある。つい最近まで何も知らない、スポーツや格闘技すらしていない小学生だった八幡だか最後の最後に意地で見せた勝ち星に七曜は及第点を与えた。だが、それでも足りない。近界と戦うにはまだ八幡は早すぎる。大規模侵攻の時のような死と隣り合わせのような緊迫したような展開を除いて八幡にはまだ覚悟と度胸が足りていない。精神的にも肉体的にも幼い八幡だが、今後の鍛練で身に付けて一人前になれば、父親を越える逸材にもなりうるかも知れない。

 

「まぁ俺の代わりに精々頑張ってくれよ」

 

ぶっ倒されて床にねっ転がる八幡に毛布をかけて未来に希望を託す七曜は煙草を吸うために外に出た。

 

 

 

基地の屋上で七曜は煙草を吸っていた。そこに林藤も現れ自分もと胸ポケットから煙草を取り出して火を着ける。

 

「いやー八幡くんボコボコにされてましたね」

 

「当たり前だろ、あいつ運動は出来ても戦いははじめてだからな。まぁ今後に期待だな」

 

「それはごもっとも。しかし、最後の動き。あれには驚いた。モニター越しなのに殺気がビンビン伝わって冷や汗が出ちまいましたよ。あの歳の子が見せるような目付きじゃなかった。最後だけは狩る側が狩られる側に転じてた。正しく窮鼠猫を噛むでしたな」

 

「あいつがああなっちまったのは俺のせいだ。あの時もう少し早くたどり着いてたらって思うと、胸が痛む。息子を死地に送る気分だ胸くそ悪い。俺がこんなばかりあいつに負担をかけにゃならないのが歯痒いよ」

 

「お気持ち察しますよ。俺ももうすぐトリオン器官が限界を迎える。そうなった時次に託すのは俺らより一回りも若い連中に戦いを任せなきゃならくなる」

 

「そうだな。俺は先に引退させてもらうが、あいつらを無理しないように支えてやるのが大人の勤めだろ?」

 

「そうですね」

 

 

 

 




そういや陽太郎って林藤支部長の息子って明言されてましたっけ?とりあえず名字も一緒だし、ヒロシで准将似だから父親ってことで。



-小ネタ-


『八幡は隠れ名人』


宇佐美「ハッチ―って妙に索敵上手いよね」

小南「そういえば昔からかくれんぼは上手かったわね。見つけるの早いし、それでいて見つからなくてよく忘れらてたわね」


折本「何それウケるwww」

本牧「それで帰った後に気づいて比企谷迎えに行ったんだけどそれでも見つからなかった時もあったからな」

比企谷「その時は流石に泣いたわ」

宇佐美「うむ、これはもしや認識を阻害するサイドエフェクトだったりして」

小南「ないない。こいつの影の薄さはデフォルトだから」

折本「まぁ今はボッチじゃないからちゃんと見つけてあげるよ隊長」

本牧「そうだぞ隊長」

比企谷「ふん」アリガトヨ



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

結成!比企谷隊①

とりあえず目標週1投稿。なんとか間に合いました。


八幡がボーダーへ入隊して半年の月日が過ぎた。漸くと言うか急ピッチで進められたボーダー本部の工事も終了し、ようやくボーダーが組織として公に認められ起動に乗り出した。その間に隊員や職員の募集も進められていく中で、八幡は隊員として今日も任務、また訓練に勤しんでいた。

 

 

 

「ようやく1勝か」

 

模擬戦のブースから出て八幡が呟いた。今日は防衛任務がなく非番なため本部で訓練しようと来たら、そこには同期入隊し、現在防衛隊員の中で一番の有望株と呼ばれている男と遭遇してしまった。

 

「はぁ、はぁキツすぎ」

 

「なんだなんだ、まだまだこれからだろ比企谷?あと50戦くらい余裕だろ?」

 

「あんたみたいに元気じゃねーんすよ」

 

肩で息をしている八幡をよそに涼しい顔でブースから出てきた男の名は太刀川慶。忍田に見いだされてボーダーに入隊し弟子入りして瞬く間に頭角を表した期待のエースアタッカーである。

 

「比企谷、大丈夫か?」

 

「これが大丈夫に見えるのか、本牧?」

 

八幡に付き合う形でボーダー本部に来た本牧は模擬戦の観戦をしていた。本牧はタオルと八幡の元気の源とも呼ぶべきMAXコーヒーを手渡す。

 

「よう本牧、お前も模擬戦すっか?」

 

「遠慮しておきます」

 

なんだ連れないと太刀川は辺りを見渡して他に暇そうな隊員を見つけると無理矢理引っ張って模擬戦を強要し回っていった。あれがなければいい人なんだが、如何せん彼の強引で自分勝手な性分に逆らう勇気や度胸がない。八幡は本来本牧と軽めに打ち合うくらいの気持ちでブースに来たはずなのに、太刀川に目をつけられた瞬間にドナドナよろしく引っ張られて模擬戦をさせられてしまった。彼を諌めるような人が生憎今日に限って防衛任務についていたのが運のつきだったのかもしれない。

 

「どうする?本来の目的だった訓練するか?」

 

「いや、今日はもう無理」

 

近場の椅子に横たわってギブアップ宣言する八幡に同情する。あと、太刀川に無理矢理連れてかれた名も無き隊員に合唱する本牧だった。

 

 

 

 

 

 

太刀川慶の襲撃から一週間後のことだ。俺と本牧は防衛任務についていた。今回の防衛任務に参加しているのは俺と本牧、そさて先日俺を恐怖に陥れた太刀川さんに、そのお目付け役として太刀川さんが頭が上がらない風間蒼也さん。小柄だが歳は俺らより4つ年上だと聞いたときは驚いて開いた口が塞がらなかったのを物理的に塞がれた。それ以来風間さんには頭が上がらない。と言うより、ボーダーに入った同期の同年代が少ないから年上ばかりと言うのもあるし、八幡自信がコミュ症で慣れるまでに時間がかかるのも理由のひとつだ。

 

『皆、警戒して門が開くわ。エリア西4-2』

 

「了解、月見サポート頼む。太刀川と比企谷は前衛、本牧は援護に迎え」

 

「「「了解」」」

 

今日の防衛任務の指揮は年功序列で風間さん。オペレーターには八幡の母の元町が本部で後身育成中のなか月見蓮が担当することとなった。これで幾度になるかもう数えるのをやめた防衛回数。何時ものようにボーダーが門の誘導を警戒区画に限定しているため市街には被害はほぼ出なくなった。

 

「比企谷、状況報告を」

 

「こちら比企谷、現在出現したトリオン兵を全機撃破。太刀川さんの方もそろそろ終わると思います」

 

「よし、粗方片付いたな。帰還するぞ」

 

本日の防衛任務も無事終了、

 

『待って!まだ門が開く、嘘……』

 

「どうした月見?」

 

『警戒区画内だけど市街地よりに門発生!!』

 

「なんだと?すぐ現場に急行する。近くにいる他の隊員にも通達を」

 

『了解。北東部よ』

 

「比企谷、本牧は先行しろ。お前らならグラスホッパーですぐに向かえるだろ」

 

「「了解」」

 

八幡と本牧のトリガーにはオプショントリガーのグラスホッパーが備わっている。空中に足場を作り移動を補助すし、高速移動に適し、現場に急行するにはもってこいだった。

 

「本牧、補助頼む」

 

「わかった。先にいくつか展開する」

 

本牧はたまたまサブトリガーにもグラスホッパーを設定していたので複数の足場を展開できる。ものの数分で八幡と本牧は現着することが出来た。

 

「比企谷、本牧現着した」

 

『了解、トリオン兵は5体、バムスター3、イルガ―2よ』

 

「了解、あれは……月見さん!!」

 

『どうしたの比企谷君?』

 

「どういうわけか一般人、学生がいる。まずい、トリオン兵が一般人に気づいた」

 

「比企谷、お前は一般人の救出に迎え。援護は任せろ」

 

「わかった!」

 

八幡は駆け出すと一般人の救出に向かう。本牧はアステロイドでトリオン兵に牽制し意識をこちらに向けさせ太刀川達が来るまでの足止めをした。

 

『本牧、あと1分耐えろ』

 

風間と太刀川があと少しで現着する、1分たえるのはまだ訓練して半年の本牧では耐えるだけで精一杯なのかもしれない。しかし、そんな窮地に一人の隊員が上空から舞い降りた。

 

「よう、本牧」

 

「迅さん!」

 

迅悠一が風間の通信を聞いていち速く現場に駆けつけてくれた。

 

「いやー間に合ってよかった。もう大丈夫だ。俺のサイドエフェクトがそう言ってる。お前は八幡の援護に向かえ、俺が風間さん達が来るまで凌いでやるよ」

 

迅は弧月を抜いて近くにいたイルガ―に一閃。急所である目を真っ二つにしてこれを撃破し、比企谷へと通じる道を作ってくれた。

 

「さぁて、やりますかね」

 

一方、八幡は襲われそうになっていた一般人の学生の元へ向かっていた。幸いトリオン兵からは遠く先に八幡の方がついた。それと同時に迅も現れてひと安心した。

 

「立てるか?」

 

トリオン兵に襲われそうになっていたのは二人の女子中学生だった。制服から察するに八幡と同じ学校の生徒だが、何故こんな所にいたのかはまず置いといて、今は彼女らの身の安全が最優先だった。八幡は手を差しのべると彼女らは手を取り立ち上がる。

 

「嘘、比企谷?なんで比企谷がこんなところに?」

 

「お前は、折本かおりか?」

 

折本かおり、この先の未来で彼女らとチームを組むことになるとは今の八幡は知るよしもない、運命の出会いであった。




-小ネタ-


「八幡のあだ名」


空閑「王子隊長に変なあだ名つけられたな、オッサム」

修「よしてくれ、恥ずかしいじゃないか」

八幡「お前だって変なあだ名だろ。クーガーとか仮面ライダーかと思えばアイコンはポンデライオンだし」

空閑「そう言うハチマン先輩はなんて呼ばれてるの?」

八幡「いや俺はだな」

王子「あれ、オッサムにクーガー、それにハッチマン珍しいじゃないか」

「「ハッチマン?」」

八幡「だぁぁぁぁあ!?だから嫌だったんだ!なんだよハッチマンって、チャッカマンの親戚かよ!!」



たぶん王子隊長ならこう呼ぶはず。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

結成!比企谷隊②

二人の少年と一人の少女がトラウマを抱えつつも、それを克服するために戦いに身を投じる。



私はあの日、彼に一生消えない傷を負わせてしまった。



私があの時助けられさえしなければ、彼の瞳から光が消えることがなかったのかもしれない。



私は一生償っても償いきれない罪を犯したのだ。







私が比企谷八幡を知ったのは小学生の頃だ。家が近くて学区も同じだったから小学校は一緒だったけど、クラスが同じになることは一度もなく、接点は特になかった。そんな私が比企谷と本格的に交流し出したのは中学に上がってからだ。

 

 

 

大規模侵攻がなければ私と比企谷を結びつけることはたぶんなかったのかもしれない。私が今こうして生きているのは比企谷がいたからこそである。

 

 

 

 

 

その日、私と友達の仲町千佳は放課後三門市の街を練り歩いていた。少し感傷に浸りながら、警戒区域の外から大規模侵攻での爪痕が未だ残る放棄された住宅街を見て感慨に浸っていた。そんな矢先に、市街地付近で門が開いた。私たちがいるすぐ目の前に近界からの化け物が門を通じてやって来た。私と千佳は逃げた。しかし、化け物達は私たちに気づき直ぐ様私たち目掛けてその鋭く光る牙を向けて襲いかかってくる。

 

 

 

私と千佳はもうダメだと目を閉じて身構える。しかし、一向に待てど痛みと衝撃は訪れることがなかった。恐る恐る目を開けるとそこには化け物と対峙している少年がいた。後ろ姿だが、すぐに少年が誰かわかった。私達と同じ中学校にいる比企谷八幡。

 

 

 

学校ではいつも一人でいて、根暗で無口。あまり人と関わりを持とうとせず、話しかけても返事くらいしか返ってこない変わったやつ。それは中学に入ってからも変わらない。私も何か用がなければ話しかけようとも思わなかった。いや、本当を言えば話しかけようとした。でも彼が纏う干渉を一切拒むような雰囲気に誰も彼に声を掛けられないでいた。

 

 

 

大規模侵攻後、久しぶりに見た彼は変わり果てていた。同じ年の子供が見せる活気に満ちた目が比企谷のその瞳にはなく、あるのは全てを拒む研ぎ澄まされた野生の獣のような鋭く射殺すような殺気に包まれた目であった。初対面なら気圧されて裸足で逃げたくなるような、寂しい瞳。でも彼がそうなってしまった一端は私にある。

 

 

 

「どうしてこんなところに?」

 

「えっ?」

 

「ちっ、今はそんな場合じゃなかったな。お前ら、そこの瓦礫に身を隠してじっとしてろ」

 

「わっわかった」

 

私は千佳の手を引いて瓦礫に身を潜めた。比企谷は私達に危害がないよう庇うように背を向けて化け物に応戦する。私達はその姿を瓦礫の隙間から隠れて様子を伺っていたが、相手は2体もいて比企谷は素人の私から見ても分かるくらい劣性だった。何故なら防戦一方で攻めに出れないからだ。私達を庇うあまりうまく踏み込めない。なんとか凌いでいる状態が続き、比企谷の動きはどんどん鈍くなるも、なんとか全ての攻撃をいなし防いでいる。

 

「早く、早く来てくれ」

 

どうやら比企谷は仲間の援護を待っているようだ。300メートルくらい先で、他の隊員が違う化け物と応戦しているのが見える。しかし、一人の隊員が複数を相手にあちらもなんとか耐えるのに必死であった。

 

「ぐあぁっ!?」

 

「比企谷!!」

 

比企谷の持つ武器が弾かれてしまった。

 

そこに出来た隙を逃さず、鋭い爪が比企谷を襲う。絶体絶命のピンチ、だがそこに一筋の斬撃が走った。

 

「旋空弧月!!」

 

衝撃が走る。何かよくわからないけど化け物が真っ二つに切られたのだ。

 

「はぁはぁ、太刀川さんナイスタイミング」

 

「おぉ、比企谷よく耐えたな」

 

「ありがとう、ごさいます」

 

比企谷は疲れはてたのかフラッと倒れてしまう。私は瓦礫から走って比企谷の元へ駆け寄った。比企谷はただ緊張が抜けただけで意識はあった。私は安心して胸を撫で下ろす。

 

「本部、トリオン兵全機機能停止、残敵なし。民間人2名の無事を確認。これより保護する、回収班を回してくれ」

 

『了解、お疲れさま。比企谷君は大丈夫?』

 

「あぁ、別に問題ない。気が抜けて倒れただけだ。意識はあるからそのまま帰還できる」

 

『わかりました。引き続き警戒してください』

 

「了解した。比企谷、お前は回収班と一緒に帰還しろ。よく耐えたな」

 

「風間さん……比企谷了解」

 

 

 

こうして、私と友達の千佳は無事ボーダーに保護された。

 

 

 

そして、あれから半年後、私達はボーダーに入隊する。

 

 

 

 

 




日を追う事に当初予定していた話とはかけ離れていきそうです。当初はほのぼのボーダーライフにしようとしたのに、今ではキャラクター一人一人にトラウマを抱えさせようとする始末。



次回、折本かおりと仲町千佳がボーダー入隊!!比企谷隊誕生秘話?いやなんかもう明るく進めたい!!


あっちなみに本牧君にサイドエフェクトつけます。サイドエフェクト持ちはつらい過去や心の闇を抱えている。彼もその闇と戦うためボーダーに入った、と言う風にします。まぁ半分はレイジさんの筋肉の洗礼を受けたからによるものなんですけどねwww


それではまた次回


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

結成!比企谷隊③

すいません、目標週一投稿が二週間も日が空いてしまいました。


折本かおりをネイバーから救出してから半年経った。この日はボーダーが設立して丁度1年である。

 

今日、1年間の活動をしてきた我々ボーダーに新たな仲間が加わる。新入隊員の入隊式が行われるのだ。この1年でボーダーは日本各地から入隊希望者や職員、技術者のスカウトを行い、数多くの人員確保に結びつけた。人手不足で今だ防衛任務も今いる人数で賄いきれない所もあったが、これでいくらか改善できる。とは言っても彼らはまだ実践すら経験していないひよっ子達ばかりだ。入隊して即戦力になれるものなど数はしれてる。当分は新人育成が主だろう。

 

 

 

さてそんな中、中学生である比企谷八幡は学校内を一人でいた。人見知りで、日頃かは極力他人との接触を控える自称ボッチである八幡にとって一人の時間は一日の大半をしめるだろう。両親はボーダー勤務で本部で顔を合わせるが、休日以外はほとんど家にいない。まぁそんな休日もボーダーでせっせと訓練やら防衛任務やらで忙しい。

 

一人の時間を満喫出来るのは学校だけだった。しかし、そんな一人大好き人間の八幡に転機が訪れた。

 

半年前の防衛任務で救出した一般人の折本かおりは同じ中学校に通っている。当時、次の日に学校に来てみたらお祭り騒ぎで、八幡達(主に本牧)はクラスメートからその功績を称えらたのだ。それはクラスの垣根を越えて学校中に知れ渡り、

いつしかヒーロー扱いを受ける始末だ(主に本牧)。

 

 

 

「すごいねぇ本牧くん」

 

「大したもんだ」

 

休み時間になる度にクラスではボーダーの話題で持ちきりだ。本牧の回りには人の壁が出来ていた。それはもう溢れんばかりに。ちなみに本牧の前の席は八幡が座っていて、八幡の席の回りにはお察し程度に人が集まる。しかし、彼らは本牧を求めてやって来ただけで八幡目当てにいるわけではない。単に本牧の周りに人がいすぎてあぶれただけだ。八幡にとっては鬱陶しいだけである。

 

身動きが取れず、逃げるに逃げられない八幡は仕方なく寝たふりをしてその場をやり過ごすことにした。

 

「いや、俺はただ援護してただけだよ。実際倒したのは先輩ボーダーだし、比企谷の方が凄いよ」

 

おい、なんで俺に話をふるんだと寝たふりをしていた八幡のアホ毛が本牧を威嚇する。

 

「比企谷は一人でネイバーの攻撃を凌いで市民を守ったんだよ」

 

「へぇー」

 

「比企谷ねぇ」

 

「つか誰?」

 

「そんなやついるの?」

 

わかってましたよ。ボッチで目立つことを嫌う八幡はクラスメートにすら認知されてない事を。本牧は苦笑いして前の席で寝ているのがその比企谷だよと皆の前で暴露する。

 

「えっ!こいつが?」

 

「つかいたのかよ!?」

 

いやいましたよ。普通に、入学当初からずっと席も変わらずいましたよ。ようやく認知されたが、本牧の余計な一言で一斉に八幡に視線が刺さる。

 

「そう、そこの比企谷が私たちを助けてくれたの、ねっ千佳」

 

「そうそう、一見頼りなさそうだけど。かおりったら比企谷くん比企谷くんって最近煩いんだから」

 

「ちょっと千佳、私そんなうるさくないよ」

 

「そう?なんかずっと比企谷くんの事ばっか話してたよ」

 

そうなん?八幡もしかして人気者になっちゃうのん?いやいやそんな俺の平和的日常を脅かすとは。折本、恐ろしい子……あっボーダーでネイバーと戦ってるから平和もくそもないわ、てへペロ☆

 

 

 

じゃーねよ!?どうしてくれるんだよ!!本牧さん!!!

 

八幡の心のライフはゼロよ!!と言わんばかりに八幡は恥ずかしさでプルプル震えていた。

 

「まぁ、こいつ人見知りだから皆あまり弄らないでやってくれ」

 

いやそれフラグだからね?弄ってあげてって言うフラグだよ本牧くん?天然なの?あっ筋肉でしたね。

 

 

 

「そうだ、比企谷!!」

 

「ぐわっ!?んだよ折本!!」

 

「私、ボーダー入りたいんだけど?」

 

「はぁ!?」

 

 

 

こうして、折本かおりの爆弾発言がとんでもないことになるとはまだ八幡は知るよしもなかった。







そう言えば、小町どうしよ?

小町「小町まだ寝たままなの?」

八幡「いや俺にもわからん」

かおり「冬眠?ウケるwww」

八幡 小町『いやウケないから』



マジで小町どうしよ?寝たまま?起こす?


ちょうどテイルズやってるんでスヤァzzZにしときますか(すっとぼけ)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

結成!比企谷隊④

ちょっと前半はギャグです。書いててたのしかった




『私、ボーダー入りたいんだけど?』

 

 

 

折本かおりが八幡にボーダー入隊を志願して早一週間が経とうとしていた。なぜ俺に?身近なボーダーなら俺の他にも本牧だっているだろうに。

 

しつこく食いついてくる折本を巻くのに必死に逃げ回るのだが、どういうわけか折本に先回りされて見つかってばかりだった。

 

そして、

 

「ねぇ聞いてる?」

 

「あぁ」

 

「そろそろ観念しない?」

 

「………」

 

どういうわけだか今現在俺は折本に壁ドンされていた。

 

 

 

どうしてこうなった?

 

 

 

今は放課後の教室、ホームルームも終わって部活に行く者や、教室内でクラスメートとたべっている者がいる中、俺は折本に壁ドンされた。そう今だ教室内にはクラスメートがいる中でだ。

 

「ねぇ?」

 

(何この色気0の展開…俺がいったい何したっての?)

 

この異様な光景に教室内にいる生徒の視線が集中する。滅茶苦茶恥ずかしいんですけど何なの?なんか恨みを買うようなことした……したな。

 

「まぁ落ち着けよ折本、とりあえずどいてくれない?帰れないんだけど?」

 

「今日は帰さないわよ」

 

やだ、折本さん目がマジなんですけど、意味深な発言につかクラス中がヒートアップしとりますよ。言ってて恥ずかしくないの?

 

「やるなぁヒキタニくん、マジぱねーしょ」

 

「さすがヒキタニ」

 

「それな」

 

 

 

何だかあっちの方からイラっとするような発言が聞こえてきたするけどあえてスルーしよう。よし、とりあえずこの状況を打破するにはどうすればいいか。

 

①説得する

 

②助けを呼ぶ

 

③折れる

 

④逆に壁ドンして隙を作って逃げる

 

この中でまず④はないな、そんな度胸ないし。とりあえず②を実行しよう。俺に頼れる仲間?は一人しかいない。後ろの席の本牧、お前だけが頼りだ。俺は横目で本牧の方を見ると、やつは目で無理と合図を送ってきやがった。テメェ!今仲間がピンチなのに助けようとしないって言うか面白がって見てやがるだと?

 

「比企谷、聞いてるの?ねぇ?」

 

なんか折本の目からハイライトが消えかかってるように見えるんですが?これが俗に言うヤンデレと言うやつですか?

 

いやデレてないからただの病んでるだったわ。ちょっと可愛いかななんて微塵も思ってない。ハチマンウソツカナイ///

 

はぁーと大きなため息をついてこれはもう降参するしか俺の助かる道はないのだろうか。いい加減羞恥プレイも耐えれないし仕方なく俺は折れることにした。

 

「わかったわかった。話は聞くからとりあえずどいてくれよ」

 

「こないだそう言って逃げたよね、今回は逃げない?」

 

「逃げねぇよ」

 

「わかった」

 

ようやく壁ドンから解放された俺は大きなため息をついてその場にしゃがみこんだ。恥ずかしさで赤くなった顔を腕で隠して俺は心の中で叫んだ。

 

『青春のばか野郎!!! 』

 

 

 

余談だが、折本から香る仄かな甘い香りにちょっとときめいてしまったのはここだけの話だ。

 

 

 

さて、ようやく解放されたのもつかの間、体の自由は保証されど行動は拘束されたまま俺と折本、さらに何故か本牧と折本の友人の仲町の四人で現在サイゼリアで談笑中である。これが普通の中学生なら放課後町へ繰り出し遊びに行こうぜ的ノリなのだろうが生憎と俺は違う。

 

「んでボーダーだっけ?」

 

「そう!どうしたら入れるの?」

 

「いや、普通にボーダー本部の人事課に行って入隊願書出せばいいじゃん」

 

「まぁ、入隊願書を出せば入れる訳じゃないよ。一応筆記試験とか、面接あるけどね。他にも色々あるけどまだボーダーに入ってないからここまでかな」

 

一応本牧が補足を入れる。

 

「あとはスカウトかな。ボーダー隊員の適正があればスカウトで入ることもある。俺と比企谷がそれに該当するな。筆記試験も面接もパスで入れる」

 

「へぇーそうなんだ。じゃあ二人はエリートなんだ」

 

「いや、エリートは本牧だけで俺は平凡だよ」

 

そう、俺は本牧のような才能がない、普通の一般兵レベルだ。実質親父のコネで入ったようなものだからな。

 

「ボーダーは弱肉強食、強者は生き残り敗者は去る。実力主義の世界だ。現に訓練はきついし、防衛任務では命の危険だってある。この平和の国と謳われる日本じゃありえない事をやっている。常在戦場の世界にお前はどんな覚悟で挑むんだ?」

 

そう、入ると言うからには折本自信の覚悟を聞かねばならない。生半可な気持ちで入隊していざ入ってみたら現実を突きつけられて止めていく隊員を俺は実際見てきた。厳しい世界にいったいどういった気持ちで入り込もうとする気なのか。折本の覚悟とは?

 

「覚悟はある。私も大規模侵攻を経験して生き残った。私はあのときボーダーの人に助けられた」

 

「大規模侵攻?」

 

確か大規模侵攻の時、折本の家と俺の家は近かった。ボーダーの人に助けられた?まさか、いやわからない。他の隊員だった可能性もある。考えすぎか。

 

「その時、私は私を救ってくれた人たちにいつか恩返しがしたい。そう思って私は今ボーダーに入ってたくさんの人を救いたいの。あの人の代わりに」

 

「あの人?まさかおまえ」

 

「そうだよ、比企谷のお父さんに私は助けられたの」

 

 

 

 

 

 




ワールドトリガー14巻見ていて思ったこと。




綾辻さんまんじゅう食い過ぎじゃね?



確か、どら焼きも食ったし。加古さんからバレンタインのチョコもらった時も嬉しそうだった(可愛い///)


これは何かのネタになりそうだと思いました。これをネタにあとがき欄でなんか短いのを書いてみます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

結成!比企谷隊⑤

-Attention-


迅さんの『ぼんち揚げ食う?』はアニメに会わせて『揚げ煎食う?』にしてます。私的にはそっちの響きのが好きなんで。


では本編スタート






半年前のあの日、私の人生の転換期。いつものように平和な休日の朝は一変して地獄と化した。

 

 

 

折本かおりの告白に動揺を隠せない八幡の表情は固かった。何せあの日の出来事を思い出してしまったからだ。折本はあの日親父に助けられ、その後親父は右腕を犠牲に死ぬ気で八幡を守ったのだから。

 

「あの日、比企谷のお父さんがいなかったら私たち家族は今はもうこの世にはいなかった」

 

「親父が…」

 

八幡の父、七曜が八幡の元へ駆けつける前に折本一家はトリオン兵の残党に襲われそこをたまたま通りがかった七曜の助けにより難を逃れたのか。そしてその時にトリオンが切れて換装が解けたか。

 

 

あの日の情景が一瞬頭を過った。それを思いだした八幡の体は震えていた。

 

「比企谷?」

 

顔色が悪くなり様子がおかしいと思い折本は八幡に声をかけるが返事が返ってこない。

 

「折本さん、どうやら比企谷の体調が悪くなったから話はまた今度にしないか?」

 

「えっ?そっそうだね。ごめんね、急に変なこと言い出して」

 

「大丈夫だよ。俺もこいつも大規模侵攻経験してるし、そう言った話には慣れなきゃならないから」

 

本牧も何処と無く顔が苦しそうであるが、平気だと言って八幡を連れて店を出た。

 

 

 

「かおり、あんた地雷踏んだんじゃない?」

 

「いや~こんな風になるなんて、ごめん。私明日ちゃんと比企谷に謝る」

 

「そうしなよ。さっ私達も出よ」

 

かおりと千佳は頼んでいた紅茶を飲み終え店から出た。

 

 

 

一方、体調不良から先に出た八幡と本牧はボーダー本部へ向かっていた。今日は非番なので訓練がてら来てみたと言うのもあるが、先程の会話に二人とも思うところがあるだろうから、気分転換と言う意味もあってきた。

 

「はぁ、さっきは取り乱して悪かった」

 

「気にするな。お互い様だろ」

 

「お前の場合は俺よりきついだろ。あまり顔に出てなかったっぽいけど」

 

「まぁ俺は慣れたから。そうじゃなきゃこんなサイドエフェクトと付き合ってられないよ」

 

本牧牧人はサイドエフェクトを持っている。彼のサイドエフェクトは『完全記憶能力』。簡単に言えば見たものを瞬時に記憶し一生忘れず記憶として蓄積していく能力だが、一見万能そうに見えて欠点がある。

 

 

それは見たもの全てを鮮明に記憶として蓄積してしまうこと。極端な話それはどれだけ悲惨な惨状すら記憶として一生忘れないと言うことだ。彼は大規模侵攻の際に祖父を目の前で亡くしている。祖父は家に潰され見るも無惨な死に様だったと言う。

 

彼にとって記憶することはどんなに辛く忘れたい過去すら忘れられない事がトラウマとなって記憶され続けていくのだ。一時はその忌まわしい記憶がフラッシュバックしてパニック症状を起こしていたが、ボーダーに入ってサイドエフェクトと向き合うことで徐々に克服していった。

 

それにこのサイドエフェクトは何も悪いことだけではない。記憶する事が常人の何倍も優れているため、色々な経験を覚えることが早い。

 

だがただ早いだけでは意味がなく、その理を理解する力がなければ意味がない(例えばだが、数学の問題の答えを丸暗記しても数式を解く理解力がなければテストでは何の意味を成さない)。

 

彼の場合は真面目な性格のお陰で理解しようと更に勉学に励むため日常生活では大いに役立てていると言う。

 

 

それを聞いた八幡は以前にそれなんてチート?と揶揄されたほど、本牧のサイドエフェクトは優れている。

 

「相変わらずチートだよな」

 

「ならなってみるか?代われるものなら代わってほしいんだがな」

 

「いや丁重にお断りする」

 

「言うと思ったよ。んで気晴らしに模擬戦でもする?太刀川さんいるけど」

 

「いや、絡まれたくないから他いこうぜ」

 

ブース内では既に太刀川が模擬戦をやっていた。既に何人か絡まれて屍?の山が築き上げられている。変なのに絡まれたくない二人はブースを出ようとした。

 

入り口かはサングラスをかけた胡散臭い青年が二人の前に現れてこう言った。

 

「揚げ煎食う?」

 

「「うわっ迅さん!?」」

 

二人は驚いて後ろに下がった。急に現れては何か場をかき回すこの青年は迅悠一。未来視のサイドエフェクトを持つ自称実力派エリートを名乗るボーダーの古株だ。

 

「よお比企谷、なんかいい出会いでもあったのか?青春だな」

 

「迅さん、あんた視えてたのか。お袋に言って仕返してもらおうかな」

 

「ちょっとちょっと!!俺は何もやってないよ!?ただちょっと先が見えただけだから」

 

「その言い方が益々胡散臭い。あとで天罰でも下ればいいのに」

 

「ひっひどい!?」

 

八幡が迅に当たりが強いのはボーダーに入る前ならいじり倒されていたからだ。その度に色々羞恥な目に合わされていたため八幡は迅が苦手である。まぁ根は優しく親切なので憎むに憎みきれないからお返しに辛辣な態度を取っているのだ。

 

「んで迅さん何しに来たんすか?」

 

「いや、ちょっと野暮用」

 

「どうせ暗躍でしょ。そうだ、今なら太刀川さんいますんで相手してあげたら?」

 

「うーん、それはまた今度にしようかな。太刀川さんと模擬戦すると日が暮れても帰してくれないから」

 

それは違いない。八幡もいつだったか一日中付き合わされた。それでまったく疲れた色を見せないから質が悪い。あの人本当に戦うこと以外はダメ人間まっしぐらだからな。そのせいで風間さんがいつも頭を痛めては太刀川さんの横暴を止めている。

 

「んじゃまたな」

 

手をヒラヒラふってヘラヘラ顔して迅は二人のもとから去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

-???-

 

 

「お前の言っていた未来とはこのことだったのか?」

 

「まぁそんな感じですかね。あの日に視た未来のその先の分岐点が今動き出しそうなんすよ」

 

「そうか、俺の右腕一本でどうにかなれば安いもんだ。あの日からあいつには辛い思いしかさせてなかったからな」

 

「貴方がいなければ彼は今この世にはいません。それにあの少女も」

 

「本当にボーダーに入るのか?」

 

「彼女が入ることでこの先さらに未来は変わっていく。でもそれは必要なことなんです。彼のためにも、彼女のためにも」

 

「わかった。なら俺はその行く末を見守ろう。俺に出来るのはそれくらいしかないからな」

 

「父親ってそう言うものなんですか?俺、母しかいなかったし、母さんはもういないから。父親ってどう言うものなのかよくわからないんですよね」

 

「お前の師匠と似たようなもんさ。親ってのは子が何より愛しいのさ」

 

「それ、八幡に言ってやってくださいよ」

 

「今さら恥ずかしくて言えるか。そう言うのは母親の務めだ。男親は不器用なくらいの接し方がちょうどいいさ」

 

「はぁ、あの人八幡のこと好きすぎでしょ。変にからかうとお礼参りの如くトリガーで報復されるんすよ」

 

「母さんはボーダー最強の女だからな、下手に逆らうと後がこわい」

 

「比企谷さん見たまんま奥さんには尻に敷かれるタイプですもんね」

 

「うるせぇ、お前も家庭を持てばわかるようになるさ。まぁお前が結婚するなんて想像できないがな」

 

「あぁなんか侵害だな。この実力派エリートはボーダー内外でもモッテモテなんすから」

 

「嵐山のやつよりか?」

 

「いやありゃ別格です」

 

「まぁ何にせよ楽しみだな」

 

 

 

彼女の入隊まであと一ヶ月…

 

 

 







-Dangerの系譜-


八幡「由比ヶ浜、お前『danger』これなんて読むかわかるか?」

由比ヶ浜「ちょっとヒッキー超失礼だよ!これくらい私だって読めるよ!!えっと、えっと」



「だっダンガー?」

八幡「」

雪ノ下「」

本牧「」

仲町「」

折本「ぶっ!ダンガーwwwウケるwww」

由比ヶ浜「ふぇ?あっあれ、違ったかな?」




たぶん由比ヶ浜ならダンガーって読むだろうな。






目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

閑話「牧ちゃんと千佳」

ちょっとだけ息抜き程度に書きました。


翌日、ちょっといつもよりけだるげにだが八幡は登校するとすでに折本は教室にいた。俺が教室に入ると一斉にクラスの連中の視線がこっちを向く。やめろ、熱い視線を送るな。おい今いい男って思ったやつ地獄に落ちろ、俺はノンケだ。

 

さて、とうの折本はと言えばクラスの仲のいい女子と談笑している。まぁいつもの光景だ。俺は何食わぬ顔で自分の席に座り机に伏せてホームルームまで眠ることにした。

 

 

 

結論から言うと、折本は絡んでこなかった。何かこれはこれで不気味である。今まで頑なになって絡んできたのに拍子抜けと言うか調子を崩されたと言うか。いや構ってほしい訳じゃない。寂しいなんて思ってないよ。だって俺は生粋のボッ…

 

「ちょっといい?」

 

あれー?逃げ切れたと思って油断して帰ろうと教室を出ようとしたらいきなりエンカウントしましたよ?なんで?フェイント?

 

「あのさ、昨日はごめん!!」

 

「へっ?」

 

いきなり謝られた。昨日のあれは確かにちょっと感傷的になってたけど、今教室内でクラスの連中の視線が一気に集まった。

 

 

 

「いや、別に気にしてねーよ」

 

「でも、私が」

 

「あぁもう、とりあえずここじゃ目立つから昨日の喫茶店でいいか?」

 

「あっちょっと!」

 

俺は急いでこの場を離れるために折本をつれてそそくさと教室を出た。

 

 

 

折本の手を握りながら。

 

 

 

 

ところ変わって本牧牧人も同じ頃、折本かおりの親友仲町千佳と昨日の喫茶店にて話していた。

 

「まぁ牧ちゃんがボーダーで頑張ってるのは知ってたけど、ちょっとくらい話題の出したってよくないかな?」

 

千佳に牧ちゃんと呼ばれるのは久しぶりだった。二人は所謂幼馴染みであったが、ここ暫くは牧人がボーダーに入って何かと忙しくて二人きりで話すのはいつぶりだろうと言うくらい、二人の交遊は薄れていた。しかし、先日の防衛任務でボーダーで防衛隊員として近民と戦う姿を目の当たりにした千佳が幼馴染みを心配に思い久しぶりに声をかけたのだった。

 

「千佳はボーダーでの俺の話を聞いて楽しいか?」

 

「楽しいとか楽しくないかじゃないの。牧ちゃんいっつもそう。私は牧ちゃんが心配だから聞いたの。昨日の話比企谷君のことで牧ちゃんまでなんか辛そうな顔するかさ」

 

「悪い、千佳は俺のこと心配だったんだな。安心した、なんか最近あんまり話しかけてこないから嫌いになったのかと思ったよ」

 

「私が牧ちゃんを嫌う訳ないでしょ。何年幼馴染みしてると思ってるのよ」

 

「ありがとう。まぁ俺もボーダーで忙しくて中々構ってやれなかったからな、千佳には悪いとは思ってるけど。俺今が楽しいからさ」

 

牧人は頼んでいたコーヒーを一口啜るように飲む。そんなとき後ろの席から知った顔が現れた。

 

「あれ、本牧しゃねーか。何、デート?」

 

今一番会いたくない人ナンバーワンの太刀川慶がいたのだ。そして向かいにはボーダー内でも有能美人で有名なオペレーターの月見蓮がいる。

 

「げっ太刀川さん。月見さんまでなんでここに」

 

「あぁ今日防衛任務が5時からなんでな。時間潰しにたまにはと蓮に誘われてきた。つかここの餅うめぇな」

 

太刀川の手には彼の大好物の餅が握られていた。なんで喫茶店で餅なんか取り扱ってるんだ?

 

「そうだ本牧、暇なら今から模擬戦しねぇ?」

 

「すいません、デート中なんで」

 

「まったく、慶は二人の邪魔しないの。ごめんなさいね、デート中にほらいきましょう」

 

そう言うと月見は太刀川を連れて店を出ていった。

 

「何だったんだろうな今の。千佳、顔赤いけどどうかしたんか?」

 

「何でもないよ!!」

 

 

 




本牧君と仲町さんを幼馴染みと言う設定でボーダーの幼馴染みの太刀川、月見ペア見守る話でした(主に月見さんが)。



さて、比企谷隊結成も残り2話くらいで終わらして新キャラ出したいですね


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。