魔槍先生 ネギま (エール@静一閃)
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プロローグ 新たな旅立ち

初投稿 駄文 注意
正直ネギ先生の設定を盛り過ぎたと思ってる。
反省はしている。だが後悔はしていない。


 

「本当に行ってしまうのね。ネギ君」

 

「はい。セラスさん、この半年間ありがとうございました。これから魔法世界を一頻り回った後に旧世界に行きたいと思います。」

ネギと呼ばれた少年が角の生えたセラスと言われた女性に別れを告げていた。

ここはアリアドネ―騎士団総長室、この世界でもトップクラスに安全で厳重な場所と言っていい空間である。その広い空間に机を挟んでスーツに身を包み自分の身長よりも大きな杖を背負った眼鏡をかけた赤毛の少年とこれまたスーツに身を包んだ妙齢の美しい女性が話していた。

 

「ネギ君もまだ8歳なのだからまだ生き急ぐように行動しないで、ゆっくりしてもいいのに」

 

「ありがとうございます。個人的には父の背中を追いかけるには遅くなったと思っているんですけどね。それにいつまでもここにお世話になり続けるわけにもいきませんよ。あなたのおかげで僕はこの世界の魔法を少しは理解することが出来、自分の物にすることができました。」

 

「そうですか。私もこの都市もいつまでもいていいと思っているんですけどね。ふふ、半年前はその杖に乗って空を飛ぶことすらできなかったあなたが、今ではこのアリアドネーにある魔法のほぼ全てを完璧にマスターするなんてね。この才能は父親譲りね。」

 

「先生が良かったからですよ。それに物事を早く覚えざるおえない環境にずっといたのでその影響もあると思います。

でも良かったんですか?仮にもこの都市の騎士団のトップが半年もつきっきりで一人の子どもに魔法を教えるなんて」

二人の間に親しみのこもった緩やかな会話が交わされていく

 

「いいのよ。あなたのお父さんには返しきれない恩があるの。これくらいで返しきれたとは思ってはいないけれどせめて私にできることはしたいと思ってね。私自身もあなたを教導するのはとても面白かったですし。あなたの使う原初のルーンの魔術、いやあなたが生まれ変わらせた()()()()()()もとても興味深かったですしね。もっとも、結局この世界ではあなた以外使えそうにないですが

あとこれはアリアドネ―が用意できる最高の槍よ。あなたの持つ『魔槍』には及ばないけれどよければ持って行きなさい。」

 

セラスがほほ笑みながら純白の柄に二股に分かれた金の刃と柄の周りにこれまた金の装飾が施された、見るからに高価な槍を差し出した。

 

「こんな立派で高価そうなもの受け取れませんよ。只でさえ魔法の習得のほかに杖の代わりの指輪を貰ったりここまで養ってもらったりしてお世話になりっぱなしなのに」

 

「旅立つあなたへ私からのわずかながらの選別です。受け取らないと言うなら武器倉庫へ行ってしまうでしょうね。それにあなたはまだ子どもなのですから大人の好意には素直に甘えてください。」

 

「……、そこまで言われるなら受け取らないわけにはいかないですよ。」

 

セラスの押し言葉と圧力のある笑みに根負けしてネギはその槍を手に取る。

8歳の少年が持つ得物にしては格段に大きいが重さは質量操作系の魔法が掛っているのか自分の持つ魔槍とあまり変わらない。大きさはその倍以上はあるが…、そう4メートルはあるだろうか

刃に到っては斧の刃渡りと渡り合うほど広い。刃だけで1メートルはあるだろうか。

125cmのネギと歩先だけで変わらない大きさである。

その大きさに見合った重さでもこの少年は軽々と振り回すことができるのでそこまで必要な魔法でもないのではと言えばそうなのであるが魔力を温存したいのでこのギミックは地味に助かる。

 

「凄い」

 

その一言しか出てこなかった。

 

「これは雷の上位精霊ルイン・イシュクルが持つ槍を参考にして作られたと言われる巨槍『フテイレイン・エンコス』よ。魔力を込めればその魔力を雷に変換して槍自体にエンチャントしたり、魔力を貯めて雷として放ったりすることができます。まあ、雷属性の魔法が得意で魔杖雷鉾槍化(ハレバルダ・フルゴーリス)の術式が使え、その杖を雷の鉾にできるあなたにはあまり必要なギミックとは言えませんけれどね。」

ネギの持つ圧倒的な才能を思い苦笑気味にセラスが会話を続ける。

「3㎏から50㎏まで質量を魔法で変えられるのですが扱いが難しくこの都市最高の槍使いが使いこなすことができなかった代物だけど、あなたなら十分に使いこなせるでしょう。

ちなみに19年前に紅き翼(アラルブラ)夜の迷宮(ノクティス・ラビリンス)で戦ったルイン・イシュクルの槍を参考にしてガトウ・神楽・ヴァンデンハークとアルビレオ・イマが趣味で旧世界で作り、この世界で魔法のギミックをつけたした新旧世界総出で作り上げた槍よ。これほどの槍を趣味で作り出してしまう紅き翼の凄さには驚嘆するわ。」

 

槍を両手に構え、突く、払う、振り下ろす、振り上げると縦横無尽に振るうネギに向けてセラスがその武器の解説をする。

とても8歳の少年の槍捌きには思えないほど洗練された武がそこにあった。

 

「え?この槍は父さんの仲間が作ったんですか!?

それに『雷霆の槍』ですか。名前負けはして無いですね。純粋な槍としてもこれは最高クラスの性能ですよ。質量操作の魔法も自分の質量操作魔法で重さ元の重さに戻せたり今の重さのままにできたりと操作できますし、使っていて面白いです。」

一通り振り終るとネギが興奮を隠しきれずにセラスに感想を述べる。

その姿は年相応で思わず笑みがこぼれる。

 

「気に入ってもらえたようで何よりだわ。紅き翼が作った槍よ。あなたが持つにふさわしいわ。それにこちらでの戸籍も用意しておいたわ。あなたにとっては偽名になりますが向こうの世界ではあなたは死んだことになっているんですもの。それが撤回されるまで使いなさい。一応は撤回されても使えるようにしておくから、いざという時はこの戸籍を使いなさい。」

 

ネギは5年前のある事件により行方不明となり、旧世界では死んだことになっているのだ。

またセラスからメガロメセンブリアがきな臭いと聞かされているので身分を隠すために新しい名前と戸籍をセラスに用意して貰っているのだ。

一応、レイ・ライトノートと言う名前をセラスから貰い、この名前でこの半年間を過ごしている。

それはこのアリアドネ―の中だけのものかと思っていたのだが、セラスの権限を使って新旧の魔法社会全域でこの戸籍が使えるようになったのだ。これで旧世界での身分を魔法協会が責任をもって保証してくれることだろう。

 

「何から何までありがとうございます。ではそろそろ行くことにします。」

別れの言葉を口にしながら魔法陣を展開し、別の空間に雷霆の槍(フテイレイン・エンコス)を収納する。

 

「いってらっしゃい。またいつでもここに帰って来ていいですよ。あなたの『第三の故郷』としてください。また助けが必要な時はいつでも言ってください。私のできる範囲でならサポートしますから…。」

セラスが別れを惜しむように言葉を紡ぐ

 

「はい、行ってきます。」

対するネギは後ろ髪を引かれる様子などなく、その言葉とともに父から授かった杖を背中から取りだし、魔法を唱える。

すると赤い髪が金色に染まり、茶色がかった瞳が青色に変化する。目元も鋭さが上がり身長も30㎝ほど大きくなる、

まるで別人のようになり、総長室の重厚な扉に手を懸ける。

この扉をくぐり、そしてアリアドネーを出るとまだネギが見たこともない世界と出会うことになるだろう。。

重い扉を開けると若者の新たな旅立ちを祝うように外からの新しい光が室内に流れ込んでくる。

光の中に躊躇なく飛び込み、ネギ・スプリングフィールドは旅立って行った。

 

 

 




誤字脱字があったら報告して頂けると幸いです。
書きだめやストックなどはありません。気分が乗った時に書いて投稿する予定ですのでこんな駄目な作者に付き合ってくれる方がいれば気長にお待ちください。
槍の名前は千の雷の詠唱の中に登場する雷霆のルビだと思われるものを取って付けました。古典ギリシャ語に明るい方がいて、このルビが間違っているようだったら指摘してください。



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1話 運命が動き出す日

筆が乗っている内に投稿するでござる。
そういえばハーバード大学卒業のパックンは日本に向かう飛行機の中でカタガナとひらがなをマスターしたそうです。それから独学で勉強を続け2年後には日本語能力検定一級を取得したらしいです。現実でもこんな人がいるんですね。




ネギ・スプリングフィールド

 

 

その瞬間、夢から覚めた。あの旅立ちはもう9カ月も前の話だ。5月を越え9歳となったネギは現在、父の手掛かりを追い日本の東関東をさまよい歩き、野宿をしていた。

人ゴミと警察を避けるために森を歩いていたのだがそのうちに迷ってしまったのだ。

今は8月、夏なので野宿もそこまで苦にならなかった。

食べ物も師匠から教わったサバイバル技術で何とかなっているし飲み水は水の精霊の力を借りて確保しているので全くと言っていいほど困っていなかった。

余談だがネギは日本語の日常会話の本と日本をさまよい歩いているこの一週間の間に完璧に日本語をマスターしている。

 

「もう9カ月か、あれから色々あったから時間が経つのが早いような遅いような気もするな。」

 

まだ三日月が上にある時間を見れば時計の針は2時を指していた。

気配遮断のルーンを周囲に刻んで眠りに入っていたので野犬や泥棒などに襲われる心配はないのでいつもだったらぐっすり眠っているのだが、過去の夢を見たのと変な胸騒ぎがして目が覚めたのだ。

「どうしたんだ兄貴?」

「ああカモ君、起こしちゃってごめんね。」

3カ月前に故郷のウェールズで出会いった白いオコジョの妖精アルベール・カモミール、通称カモ君を起こしてしまったみたいだ。

罠にはまっていた所を助けてから慕われてこの旅に無理やり同行してきたオコジョなのだが、頭が回るし、機転も利くし、何より一人旅は寂しかったのでそのまま同行を許しているのだ。かなり親父臭いのとエロいのが玉に瑕だが…。

そのカモ君は羽織っているローブを足場に器用に肩に飛び乗る。

 

妙な魔力がこの周辺に満ちている。

「よし、ラス・テル・マ・スキル・マギステル。……何だこの魔力、感じたことが無いな。日本の固有の魔法かな?あと数も異常に多い。」

 

魔法の始動キーを唱えつつ、探索のルーンを石にに刻む。すると石が独りでに中に浮かび妙な魔力の元を探る。セラス騎士団総長から貰った指輪が光ると同時にその光が石に書いた文字をなぞる様に広がる。

魔力が行きわたり文字がネギから独立し、動き始める。

 

魔術回路を持たないネギはこのルーンの魔術を自分が使える精霊魔法に落とし込んで新しいルーンの魔法として生まれ変わらせた。

魔術回路で賄う魔力を精霊に手伝ってもらうことで解決したのだ。

口で言うのは簡単だが世界からして違う形態のもの(魔術)を自分で使える形態のもの(魔法)に作り変えたのだ。

師匠スカサハをして鬼才だと讃えられ、呆れられたその魔法の才を存分に発揮する。

皮肉にも足りない物を他から持ってくると言う魔術師的な考えからこの魔法は生まれたのだ。

魔術の深淵に直に触れ、精霊魔法の存在も理解しているネギだから生み出すことができた魔法。

精霊の助けを借りているので杖や魔法具が無いと発動できないし、発動のためには始動キーを唱えなければならないのは難点だが、向こうの世界にもこの世界にもネギ意外にこの魔法を使える人間は存在しないであろう。

そしてネギがスカサハから学んだのは北欧神話の主神オーディンが刻んだとされる原初のルーン、そこいらのルーンの文字とは隔絶した能力を持つ魔法なのだ。

なんでアイルランドのケルト神話に伝えられる影の国にいる師匠が北欧で伝えられているこの原初のルーンを使えるのかは知らないがその魔術と槍術とそのほかの秘術をネギは完璧にマスターしたのだ。

 

「そんなこともわかるのか?やっぱりすげえな兄貴の魔法」

 

「僕のはまだまだ師匠には及ばないんだけどね。よし、向かってみよう」

そう決めるや否や、野宿道具を片付け、カモ君を肩に乗せ、魔力を探知して動き出したルーン石を追って駆け出した。

 

 

***************************************

 

エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル

 

 

久しぶりに私の担当外の日に夜の警備の要請がでたので面倒くさいが気分も悪くなかったので茶々丸を連れて出てやったら何やら騒がしかった。

こういう時には私はその性質上呼ばれないとばかり思っていたので少し意外だ。

AAAからの要請により出張に行っているタカミチとイギリスのメルディアナ魔法学校に視察に行っているじじい以外の主戦力となる魔法先生と魔法生徒が世界樹の下の広場に集結していた。

平日の深夜1時だと言うのにも関わらず魔法先生だけでなく高校生の高音・D・グッドマンや中学2年生の刹那や龍宮、佐倉まで召集されていたのだから驚きだ。

ちなみに茶々ゼロは魔力不足のため留守番だ。

 

「おい、刹那何が起こっているんだ?」

とりあえず近くにいた刹那に事情を聴く。

 

「エヴァンジェリンさん、茶々丸さん、こんばんは。すみません、私も龍宮も今来た所なのでわかりません。ですがこれからガンドルフィーニ先生から何らかの説明があるみたいです。」

「そうか。」

 

その会話が終わったと同時に眼鏡をかけ厚めの唇で角刈りの髪をした黒人の男 ガンドルフィーニが階段の上に立ち口を開く。

 

「非常時ですが現在学園長も高畑先生もいないので僭越ながら今回の召集の命を出しましたガンドルフィーニです。現在、ここ麻帆良に向けて南から多数の骸骨の群れが進軍してきているという情報が入りました。骸骨兵自体はそこまで強い力を持たないのですが数が多いです。下級使い魔クラスの力とは言え1500体以上の骸骨兵が見張り部隊の目に止まりました。西洋に伝わる竜牙兵ではなく、あくまで日本の骸骨を使役しているのだと葛葉先生は分析しています。幸い深夜で森の中を通って来ているので一般人には気がつかれてはいないみたいですが早急に対処せねばならない状況に陥ってしまったので動かせる魔法生徒と魔法先生全員に招集して頂きました。まだ全員は集まっていないですが時間が無いのでまずはこのメンバーで迎撃にあたります。」

 

ガンドルフィーニがさらにたたみかけるように続ける。

 

「今、葛葉先生と神多羅木先生とそれに夏目くんが南エリアで対応しているが数が多く今は対応できていますがこのままでは対応しきれないとの応援の要請が届きました。骸骨どもが何を狙っているのかまではわかりませんが学園の敷地をまたがせるわけにはいきません。故にみなさんにはこれらの迎撃にあたってもらいます。準備はいいですか。部隊はこちらで分けます。私も前線に立って戦いますので参謀の明石教授に作戦の指示を行って頂きます。明石教授が今回の作戦の実質的なトップだと思ってください。では明石教授お願いいたします。」

 

呼びかけに応じて眼鏡をかけた黒髪の温和な顔つきをした男性が前に立つ。

 

「本作戦の参謀役を預からせて頂いた明石です。敵が向かってくるが三つの戦力に分かれて向かってくると言う情報が入ったのでこちらも戦力を3つの戦力に分け迎撃いたします。

現在南エリアに集中して敵がなだれ込んできておりますが、時間差で西エリア、東エリアにも骸骨が迫って来ているとの情報が入りました。

そこで私とガンドルフィーニ先生の独断で力、チームワークなどを加味して戦力が均等になるように部隊を組みました。

それでは指示します瀬流彦先生は神多羅木先生たちの応援に南エリアへ、シャークティー先生、弐集院先生、高音くん、佐倉君は西エリアをお願いいたします。桜咲くん、龍宮くん、絡繰くん、マクダウェルくん、そしてガンドルフィーニ先生に東エリアの守護をお願い致します。そのほかのみなさんはまずは南に加勢してください。私は作戦指示のために学園魔法生徒会の指令室にいますので何かあったら連絡してください。そのほかの応援は部隊が整い次第随時派遣致します。

まずは迎撃して頂き、戦力に余裕が出てきたら反撃に転じ戦線を押し上げます。力は弱いですが数が数なだけに今回の作戦は厳しい状況になると考えられますが、どうか皆さん、この麻帆良の地を守るために全力を尽くして頂きたい。」

明石教授がわかりやすく聞きやすい話し口調で迎撃部隊の指揮上げと部隊の配置とメンバーを口にする。

 

「高畑先生と学園長に連絡をいたしましたが、恐らくは間に合わないでしょう。最大戦力の二人がいないことはとても厳しいですがない物ねだりをしていても始まりません。逆に二人に我々の戦力でもこの程度の非常時は乗り越えられるのだと証明しようではありませんか!!」

ガンドルフィーニがまくし立てる。ここにいる魔法生徒、先生、そして恐らくは自分自身を鼓舞しているのだろう。

「では急いで持ち場に着いてください。」

 

その言葉と同時にメンバーが散開する。

茶々丸は背中に背負ったジェットパックで、刹那と龍宮は瞬動術で、私とガンドルフィーニは飛行魔法でそれぞれ現場に向かう。

いつもは学園の結界のせいで力を封印され、全く魔力を出すことができないが、今日は三日月、ほんの少しなら魔力を使って戦える。

 

別に付き合ってやる義理はないが、もしこの件で麻帆良側が負けてしまったら麻帆良が骸骨だらけの都市になってしまう。そうなったら住んでいて心地のいいものじゃないので仕方なく迎撃に付き合うことにした。

ナギもその息子もいなくなってしまった以上ここから出られないのは確定しているようなものなのだから…。

 

「またマスターも素直じゃないんですから…、皆さんが心配なら素直に言えばよろしいのに。」

最近プログラムにない自我が芽生え始めてきたボケロボットが何か見当違いな事を言っている。そのせいで少ない魔力を節約して飛んでいる調整が狂って地面に落ちそうになった。

 

「何見当違いなことを抜かしている、このボケロボが!!。この戦闘が終わったら覚えておけ、そのゼンマイ回しつくしてやる。」

 

 

「これはまた大事になったな。このミッションの給料は弾むのだろうか?」

 

上で行われている漫才をしりめに移動中の龍宮がいつもと変わらない軽口をたたく。

 

「終わった後の事を考えるより目の前の事に集中しないと足元をすくわれるぞ。龍宮。」

 

「何、骸骨兵程度にそうは遅れをとらないさ」

刹那が龍宮の軽口に真面目に反応する。

いつもコンビを組んでいるだけあって、慣れた会話のやり取りが続いていく。

力は入りすぎていないが程よい緊張感もある。そんな空気が4人の間にはあった。

 

「ところでエヴァンジェリン、力を封じられている君が戦力になるのか?」

ガンドルフィーニが緊張感のなさすぎるやり取りに呆れたのかため息をつきながら、戦力確認のためだろう、私に珍しく話しかけてくる。

 

「今の私にも自分の身を守るくらいはできるさ。だがまあ、あまり戦力としては期待しないことだな。今使える私の力は微量だが、居ないよりはましだろう。私も骸骨まみれの廃墟で暮らすのは嫌だからこうして出てやってるだけの話さ。」

 

「そうか、それならいい。危機に陥ってもこちらは助ける余裕などないだろうからな。」

それは暗にこちらが危機に陥っても助けないということを示していた。

それは当り前の事だしいちいち気にしてはいないが、この男の甘さに少し腹が立った

恐らく刹那と龍宮が危機に陥ったらこの男は魔法先生として命を投げ出してでも生徒を助けるであろう。

しかし私は多くの魔法使い達の間で悪の魔法使いとして疎まれ続けている存在だ。不老不死とはいえ結界の中なのでその中で致命傷を負うとどうなるかは見当もつかない。だが正義の魔法使いが私を助けるわけがない。

というよりこうして『正義の魔法使いに気を使われている』こと自体稀な事だろう。

放っておけばいいだろうにわざわざ声をかけるなんて、全く、この学園にはどうしてこう、甘い連中ばかりが集まるのだろうか。

 

そうこうしている内に迎撃エリアに着いた。

 

1㎞向こうに骸骨の軍勢が迫っていることが確認できる。その数は500を越えているだろう。それぞれにどこで用意したのか剣と槍と弓を装備している。

「はっ、これが全部ゾンビだったら軽いアクションホラー映画だな」

「マスター、今でも十分ホラーだと思います。」

軍勢を前にしても私達は変わらない。

 

「では、いくぞ。それぞれ油断しないように。」

ガンドルフィーニと刹那が前に出る。

戦闘布陣は拳銃とナイフと魔法を使ったCQCが得意なガンドルフィーニと魔を断つ神鳴流剣術をつかう刹那が前衛、銃火器のエキスパートである龍宮が後衛、機動力があり実弾から魔法弾を使いこなし、果ては格闘術までこなす茶々丸と空からの魔法と糸で前衛後衛をサポートできる私の二人が中衛、もしくは遊撃隊という布陣に自然となる。

龍宮も私も近接戦闘ができないわけではないが一番得意な畑で戦うのが一番だと理解しているので自然にこのような布陣となったのだ。

また時間が経つにつれて乱戦になると考えられるのでこの布陣は最初だけになるだろうし近接戦闘にもなるだろう。

 

「このミッションの給料と共に今回使う銃弾の代金も学園長に請求するかな。」

龍宮が違う空間からRPGを取りだし、軍勢の中心にぶち込んだ。

轟音とともに爆炎が上がる。

それを皮切りに刹那とガンドルフィーニが骸骨兵の軍勢に突っ込んでいった。

 

「リク・ラクラ・ラック・ライラック 魔弾の射手(サギタ・マギカ)  連弾・氷の17矢(セリエス・グラキアーキス)

それとともに私はビーカーを割り魔力を解放し魔弾の射手(サギタ・マギカ)を放つ。

茶々丸はガトリング砲で前衛をサポートする。

 

まだ夜は長い。

 

***************************************

 

ガンドルフィーニ

 

「おかしい」

戦闘が始まって30分は過ぎただろうか、そんな時にエヴァンジェリンが呟いた。

本部からの援軍が来て大分戦況は安定したがまだまだ骸骨兵はたくさんのさばっている。睨んだ通りこの兵たちは力自体は強くないが砕いても砕いても再生するのだ。

そんな中でも『戦いの歌(カントゥス・ベラークス)』の魔法で強化されている身体能力に引っ張られて呟きを聞きとれるほど聴力の性能も上がっているのだ。

奥で茶々丸君がその格闘術で骸骨を砕いている。

 

 

「何がおかしいのだ、エヴァンジェリン。」

「こいつら、数に物を言わせて波状攻撃に転じれば、最初の10分くらいでこの迎撃布陣を突破して麻帆良の中心部に進軍する兵が現れてもおかしくはない。だがわざわざ私達の相手をしているのがおかしいと言っているんだ。」

 

さすがは百戦錬磨の闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)、超絶的に弱体化して魔力も本来の1/100も使えないはずなのに冷静に戦局を分析していたのだ。

話しながらでも糸と鉄扇を器用に使って骸骨兵の攻撃をいなし、合気柔術を使って投げ飛ばしたり、少女の腕力のはずなのに相手の力を使ってその体を砕いたりしている。

とても弱体化しているとは思えない洗礼された動き、合気鉄扇術・合気柔術の極みに到っていると言ってもいいその戦いぶりに戦慄すら覚えるが今は味方、そのまま見解を聞く。

言われてみれば確かに私たちを囲い込むように動いているような気がする。

 

「こいつらの狙いは麻帆良の中心部じゃないとでもいうのか?」

 

「さてな、それは知らんよ。だいたい私は西洋の魔法使いだぞ。日本の妖怪に詳しいわけないだろう。だが特徴はつかめてきたぞ。竜牙兵や日本の一般的な式紙なら砕けたらそのまま消えるか使い魔共の住処に帰るはずだが、こいつらは砕いても骨自体が無事なら再生してくる。つまり元々ある骨を操っている感じだ。何らかの魔法か呪術で動かされていることは間違えないだろう。」

 

「なぜそう言い切れる。」

 

「刹那の方を見ろ、対魔の剣技である神鳴流で斬られた骸骨兵だけは再生が遅い。遅いということは再生していると言うことだ。この結果、この兵どもは自然発生した妖怪ではなく呪術か魔法で操られてると推測できる。普通の妖怪なら神鳴流の剣に斬られた瞬間に魔を祓われ動けなくなる。斬られてから呪術をかけなおしていると言っていいのかもしれん。つまり西洋でいうところのネクロマンサーがこいつらの主とみて間違えないだろう。」

 

「馬鹿な!そんなことはあり得ん。この数の骸骨を操り、再生呪文すらかけているのか?それこそ封印が解かれた君やサウザンドマスター、近衛木乃香くんクラスの大きい魔力を持っていないと不可能だ。」

「だから私にとっても東洋の妖怪は専門外だと言っているだろうが。まあ、考えられるとすればこの襲撃のずっと前から何日もかけてあらかじめ全部の骸骨にそういう呪文(操り呪文・再生の呪文)をかけていた。そして呪術をかけなおす媒体を用意していたと言ったところだろう。神鳴流は呪術者の天敵のはずだし、それに対する対策を整えていたというところだろうな。」

その冷静な見解は筋が通っているし的を得ていた。

600年の叡智は確かなものだと改めて感心する。

 

「くっ、計画的な犯行と言うわけか。」

日本の呪術だったら媒体に使われているのはオーソドックスな札であろう。魔力を込めた札を何千枚も作るとは、もしかしたら年単位でこの作戦のために準備していたのではないだろうか

 

「私の推論があっているとすればそういうことだな。もしかしたら、案外こうして骸骨共を迎撃している私達こそがメインターゲットなのかもな。

ちぃ、さすがにウザったい。こういう敵はタカミチに任せておけばどうと言うことはないのに。」

 

さすがに焦れて来たのかエヴァンジェリンが悪態をつく。

その前に興味深いことをいったが今はそれを詳しく聞く余裕がなくなってきつつあるのも確かだ。

ここへきて骸骨兵の勢いが増してきたのだ。

確かに高畑先生の無音拳なら少ない労力でこの骸骨兵を消し飛ばしながら排除することができるであろう。

桜咲くんも大技を打てば同じような事が出来るだろうが神鳴流の奥義は気を大量に消費するので今の桜咲くんではまだこの骸骨を一掃するほど連発できないであろう。

 

エヴァンジェリンの解説を聞いた龍宮君も手榴弾や焼夷弾など骨を直々に破壊する物に切り替えて対応しているがこの骸骨全てを破砕する銃火器などとっさの召集だった今回、用意できるはずもなかった。

また私についているマイクを通してこの推論は明石教授の元へ行くだろう。しばらくしたらその対策方法が魔法先生全員に伝えられるであろう。

 

しかしさすがにじり貧だった。こちらにも援軍は来ているとはいえ、こっちは人間で相手は疲れ知らずの化物だ。それにあまり戦場に慣れていない未熟な魔法使い達が多い。

私に限っては1時間程度の戦闘で動けなくなるということはないが私以外の、特に後から応援に来た未熟な使い手たちは違う。

もしこの子たちが倒れてしまったら戦況は一気にあちらに傾くであろう。

せめてもう一手、もう一手だけ桜咲くん、龍宮くんに匹敵する実力者の援護が欲しい。

 

とその瞬間、左側から人の身長ほどある大きな手裏剣が飛んできて複数の骸骨を砕いた。

当然再生するが次の瞬間それらすべての骸骨の額に爆符が張り付けられ骨と言う骨が爆発して燃え尽きた。

 

「どうやら助けが欲しいと見える。拙者が加勢するが不満はないでござるかな?」

 

その声とともに紫の忍者服に身を包んだ少女が現れた。

 

「楓か?」

龍宮くんが反応する。どうやらこの少女に心当たりがあるらしい。

そう言えば、魔帆良武道四天王の内の一人に長瀬楓という少女がいたはず。

つまりその少女が助太刀に来たのであろう。

 

「武芸に長けていると言っても君は一般人だろう。そのような君を巻き込むわけにはいかない」

確かにこの少女は強い。ともすれば私よりも強い可能性すらある。だが魔法先生として一般人に戦わせるというのは矜持に反することだった。

 

「楓なら心配ないですよ。ガンドルフィーニ先生。彼女はかなりのてだれの忍者ですよ。」

龍宮くんが500円硬貨を骸骨に弾きながらそう告げる。

「ええ、長瀬さんならこの戦場でも十分に活躍できるでしょう。」

桜咲くんもそれに同調する。

「これから剣をそろえて戦うのでござるから楓でいいでござるよ。刹那殿。」

「では私も呼び捨てで構いませんよ、楓。」

これが戦場じゃなくスポーツの場面であったなら実に中学生らしいやり取りであっただろう。

空気が弛緩仕掛けたがそこはどちらも戦場を弁えていて一瞬にして意識を切り替える。

 

確かに猫の手も借りたいほど切羽詰まった戦場だが一般人に戦わせるのは気が引ける。

「甲賀中忍 長瀬楓、参る」

そうこうしている内に長瀬くんが戦場に本格参戦した。

だが何より驚いたのはこの少女の名乗りだ。私は外国人だからあまり忍者には詳しくないが、それでも確か中忍というのは甲賀忍者の最高位の位だったはずだ。

少なくとも中学2年生の少女が得ていいような称号ではない。

だがその称号を証明するように長瀬くんが戦場を飛びまわる。

 

エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル、桜咲刹那、龍宮真名、長瀬楓、絡繰茶々丸、この5人の中学生を中心として東エリアの戦況は少しずつだが確実にこちらに傾いていた。

 

 

 

 




前回ネギ君に魔槍とは違うやりを持たせた理由は、やっぱりゲイボルグは切り札であって欲しいという作者の思いからです。その結果の槍も作者が悪乗りしすぎておかしな物が出来上がりましたが(笑)。

あとどれくらいの文字数で投稿していいのかわからん。今回はキリがよかったので8000文字ちょいで投稿してみた。


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2話 運命が動き出す日 その2

カモーメさん、熾火の明さん、taka82さん、1話目の誤字脱字報告、間違いの指摘ありがとうございました。

日間ランキング42位だと…。ありがとうございます。
まさかランキングに乗るとは思ってなかったのでうれしいです。




 

明石教授

 

時計の針は2時を指していた。

単純計算でもう1時間以上皆は戦い続けている状況だ。

魔法と科学の力によって絶えず麻帆良全域の戦場の情報が送られてくる指令室で全体の戦況を注意深く観察する。

 

今の私にできるのはこのデータを収集し解析して、戦場全体に伝え、少しでも戦況を有利にすることだけだ。

エヴァンジェリンくんの推測に基づいた対策を全部隊に通達する。

 

それから戦況が一気にこちら側に流れ込む。西側では高音くんが黒衣の夜想曲(ノクトゥルナ・グレーディニス)を展開し、百の影槍(ケントゥム・ランケアエ・ウンブラエ)の魔法を発動して骸骨を蹂躙している。障壁貫通能力を付与された変幻自在、高速の物理攻撃は骸骨兵に対して絶大な効果を発揮している。にらんだ通り殲滅戦に対し高音くんの魔法は圧倒的な効果を発揮している。

その高音くんを中心に陣が組まれ攻撃のパターン化がなされていた。

影の槍により破砕され動けなくなった敵が再生する前に間髪をいれずに佐倉くんや他の魔法使いの魔法で追い打ちをかける素晴らしいコンビネーション攻撃が展開され西側のエリアの戦線を上げ反撃に転じている。

 

南エリアでは神多羅木先生の風の捕縛魔法と葛葉先生の神鳴流剣術と結界術で数十体の骸骨兵を閉じ込めてそこに集中攻撃を加えて確実に数を減らして行くという骸骨が中心部に進まないと言う特性をうまく使った堅実な方法を取っている。

こちらは西エリアに比べると速くはないがそれでも確実に戦線を押し上げていた。

 

問題は東エリアだ。

戦力的には問題なく、むしろこのエリアが圧倒的に整っている。

桜咲くん、龍宮くん、長瀬くん、絡繰くんの圧倒的な個人技とエヴァンジェリンくんの魔法と糸のサポート、そして戦いながらそのほかの戦力を指揮するガンドルフィーニの存在で戦場が成り立っていた。

月が出ているとはいえ、魔力と身体能力的にエヴァンジェリンくんがいち早く脱落するだろうと考えていたのだが全く問題なく、むしろ余裕を持って戦っているようにさえ見える。

少しの魔力のはずなのにこんなにも戦えるという事実に驚愕する。

しかし、問題はこちらの戦力に合わせてきているのか骸骨の質が他のエリアに比べて圧倒的に高い。攻撃速度も再生速度もコンビネーション攻撃も攻撃の威力も他のエリアより優れているのだ。

それでも関係なしと暴れまわる中学生5人とガンドルフィーニ先生のような実力者にとってはあまり変わらないだろうが援護に回っている魔法先生や生徒にとってはたまらない事態であろう。

 

だがこれではっきりした。

この襲撃の首謀者は東エリアにいるのが確実だろう。

その事実をガンドルフィーニ先生に伝える。

彼ほどの実力者だったら戦いの最中に念話で話しかけてもそのまま戦い続けることができるだろう。

 

『ガンドルフィーニ先生、聞こえますか?作戦参謀の明石です。』

『明石教授ですか。何かわかったのですか?』

問題なく念話が繋がる。

 

『はい、恐らくですが作戦の首謀者はあなた達の東エリアに居るでしょう。その証拠に他のエリアよりも骸骨兵たちのスペックが高いです。』

 

『やはりですか。そろそろ援軍に来た子たちが危ないです。何か状況を打破できる作戦があるならばお願い致します。』

本当にギリギリなのであろう。ガンドルフィーニ先生の声には焦りの色が生まれている。

援軍の中には魔法先生のほかにまだ高校生などもいるのだ。

本来なら実力者とはいえ、学生達を戦わせることに抵抗があるのは教師として当然のことだ。

しかし彼女たちを大きな戦力として頼りにしてしまっているのも事実なのである。

偽善なのは承知の上だが援軍の子たちや奮戦している中学生達をサポートしなければという想いが強くなる。

特に東エリアの中学生はまだ自分の娘と同じ年齢、同じ学級なのだ。

自分本位な心情は否定できないが彼女たちの助けになりたい。

 

『すみません、もう少しだけ耐えて頂きたい。南と西エリアの骸骨兵の掃討がもうそろそろ完了いたしますので、まだ戦える者を援軍に向かわせます。

妙な事に西と南のエリアの敵の数の再生スピードや活動スピードが落ちてきました。

もしかしたら敵は東口から実力者を確実につぶしつつ一転突破をする腹かもしれません。』

 

『ふむ、首謀者はやはり、このエリアに居るのか?』

エヴァンジェリンが私とガンドルフィーニ先生の念話に介入してきた。

『恐らく…ですがね。なにかわかったのでしょうか?』

先ほどはこの吸血鬼の推測が不利だった戦況を打破するきっかけになったので聞いておいて損はないであろう。

『いや、ただ敵術師は高い場所にいる可能性が高いと思ってな。』

思わぬ発言が飛びこんでくる。

 

『なぜ…、そう思うのかね?』

ガンドルフィーニ先生が疑問を問いかける。

当然だ。今まで敵術者に対して何の手がかりもないのだ。

それをこの少女はこのエリアに居るという情報だけで術者のいる場所の答えになるかもしれない回答を導き出したのだ。

 

『はっ、私は仮にも人形遣い(ドールマスター)とも言われていた魔法使いだぞ。こういう操作系の術者の考えはだいたいわかる。戦況を見渡せ、直ぐに魔法をかけなおせ、障害物が少ない分すぐに魔力を通せ、戦力が地面に集中している状況では上にいた方が見つかりにくい。上にはあまり意識を向ける余裕がないからな。

だから木や丘の上、もしくは飛行呪文、浮遊呪文を使って遥か上空にいるのが最も可能性が高い。私もよく浮遊呪文を用いて宙に浮きながら人形たちを操作したものさ。

または木を隠すには森の中という言葉があるように自分が使役している軍隊の中に身を隠すという選択もあるが、骸骨ばかりの戦場に人間がいれば、逆に目立つことになるからこの選択は消える。他にも色々方法はあるがやはり敵術者がいる可能性が高いのは上だろう。

つまり高い場所を重点的に探せば術者が見つかるかもしれんぞ。』

 

私はこの封印されている少女を侮り、足手まといになるかもしれないと少し前まで考えていた自分を恥じた。

こんな姿なので忘れられがちだが大半の力が封じられているとはいえ仮にもこの吸血鬼は600年の時を生き、魔法世界を恐怖に陥れたこともある最強の魔法使いなのだ。

侮っていいわけがない。その知識と経験だけでも恐るべきものだと考えればすぐにわかる物を…。

封印されているから何とかなると言う考えは浅はか過ぎていたかもしれない。

だが的確な助言をして、我々の助けになっているのは事実だし、言葉の中に少し温かみも感じられるような気もする。

演技をしているようには見えない。

どちらにしても今は頼れる味方なのは確かである。

そして先ほどに続いて冷静かつ的確で説得力がある推測だった。

 

『だが、今はそんな余裕がない…、援軍が来てからだ。それまで持ちこたえねば…。』

 

『言っておくが大幅に弱体化されている状態の私にこれ以上の事を求めるなよ。』

そういうと念話から抜けて行った。

 

『恐ろしい知識と頭脳だ。そしてそれを当り前のように使いこなしている。弱体化している状態で念話をしていても敵を遅れ劣らないのはさすがだが私はそれがたまらなく恐ろしく感じたよ。』

ガンドルフィーニ先生が今日だけで何回目になるか、驚嘆の声を上げている。

それと同時に彼女を恐れているようにも見える。

 

『そうですね。しかし、エヴァンジェリンくんは世間で言われているよりも悪い魔法使いではないのかもしれませんね。』

私が先ほどから思っていた言葉を紡ぐ。

 

『何を言っているんですか明石教授、彼女がしてきた罪を忘れたわけではないでしょうに!!

少しばかり我らに協力をしたからと言って心を許してしまえば何かあった時に対応が遅れてしまいます。ですので彼女に対して警戒心は解いてはいけませんよ!』

油断していないと言うべきか頭が固いと言うべきか、実にガンドルフィーニ先生らしい言葉が返ってくる。

 

『わかっていますよ。ガンドルフィーニ先生。

それでは使い魔を飛ばして上空や敵術者が隠れていそうな所を探します。

西と南の戦場の殲滅がそろそろ終わります。その中で警戒のために複数人は残しますが、余裕がありそうな方をそちらの戦場に、無理そうな方でも使い魔ぐらいなら出せそうな人にも動いてもらいます。それと本部からも使い魔を出します。』

『では早急にお願い致します。』

 

そうして念話をガンドルフィーニ先生とも念話を切る。

さて、攻めに転じさせて頂きますか。

 

 

****************************************

エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル

 

戦場にさらなる応援が駆けつけた。

南と西エリアの敵が片付いたのか、そのエリアの実力者である神多羅木、葛葉、高音を中心とした援軍部隊が東エリアに到着、さらに敵術者探査部隊や使い魔共も活動を開始している。

私の予想が正しければすぐに術者も見つかるだろう。

 

「くっ、東エリアの敵の質が思っていたより高いですわね。」

影の槍で骸骨を屠りながら、砕いても、ビデオの映像を巻き戻した時のように即座に再生する骸骨兵をみて高音は絶句する。

高音の影を使った広範囲の魔法と神鳴流剣士の葛葉刀子、さらに後衛の魔法使い達が合流したおかげで先ほどよりもだいぶ楽になった。

しかしまだ敵の攻撃は続いている。

 

「いや~、きりが無いでござるな。」

途中参戦してきてこの中で一番体力が余っているであろう長瀬が口を開く。

高音と比べて声に幾分の余裕が垣間見える。

 

「ふ、もう疲れたのか楓?なんなら休んでいいぞ。」

「なんの、これしき。これくらいの戦場だったら里にいたころに受けていたジジババの修行の方が百倍はきつかったでござるよ。」

龍宮と長瀬が骸骨を迎撃しながら軽口を言い合う。

 

「しかしまさか魔法使いが実在していたとは…。世の中不思議な事がまだまだあるでござるな。拙者も人の事は言えぬでござろうが。」

「裏の世界を知らなかった楓にこれほどの実力があること自体、私には驚きなのですが。」

戦場が落ち着いたのをいいことに純粋な中学生3人が敵を叩き潰しながら口を開く。

刹那を含めたこの3人はさすがにまだまだ余裕を残していた。

 

「茶々丸、まだ動けるか?」

「問題ありませんマスター。念のため戦場に出る前に魔力を充電しておいたおかげでまだあと2時間30分以上は全力の戦闘が可能です。マスターこそ最弱に近い弱体化状態なのでご無理はなさらずに。」

「はっ、誰に言っている。自分の限界がわからぬほど愚かでは無いわ。」

 

茶々丸はまだ大丈夫だ。葉加瀬と超の技術力には恐れ入る。

私も敵の勢いが援軍によって緩和されたおかげで魔力に幾分の余裕がでてきた。

だがこれ以上続くとさすがの私もきつい物がある。

ナギの呪いが無ければ一瞬で片がつく上に、この程度の時間の戦闘など物の数にも入らぬものを…。

ナギへの愚痴が長くなりそうな時にフクロウの姿をした使い魔から明石の声が発せられた

 

『上空、800mの位置で敵術者を発見しました。我々に見つかったのを悟ったのか空から下りてきます。何をしてくるのかがわからないので気を付けてくだs。』

次の瞬間、その使い魔が何者かによって壊された。

 

「よくぞ、この戦況の中、麻呂に辿りついたでおじゃる。無能な西洋魔法使いの諸君。」

平安時代の貴族がしていたような服装、烏帽子や狩衣など俗に言う平安装束を身にまとった細見で狐目の男が上空から降りてきた。

そして地上から30m当たりの付近で止まり、我等を文字通り見下しながら発言する。

足袋から小さな翼が生えている。恐らく式神の一種でそれを使って飛行しているのだろう。

骸骨の勢いが収まり、その男に従うかのように後ろへ下がる。

 

「あの男は…。」

キリッとした目に眼鏡をかけてと白い髪とおそろいのスーツと黒いスカート、ハイヒールをはいた女性、葛葉刀子がその男を見て反応する。

 

「葛葉先生、あの男を知っているのですか?」

ガンドルフィーニが葛葉に問う。

「ええ、あの男は垂金川君麻呂(たるかねがわきみまろ)という男です。実力は確かな男でしたがかなりの過激な思想の持ち主で、西洋魔法使いを戦争してでも日本から追い出すべきと主張し、暴走しかけて10年以上前に関西呪術協会からも追放された男です。」

葛葉刀子は眼鏡を上げ、その鋭い眼光で男を睨みながら説明をする。

 

「ほほほ、由緒正しき京都神鳴流でありながら東に就いた裏切り者の恥知らずが麻呂を語ることなど本来許されるべきでないでおじゃるが、これからこの場でお主達全員が麻呂に処断される運命であるのじゃから今は不問としようかの。それに口ばかりで行動を起こさない関西の腰抜け共と麻呂は違う。」

怒りに我を忘れているのか野望が達成すると確信し自分に酔っているのか平安言葉と現代語が混じったような歪な言葉遣いをしながら、男はまくし立てる。

 

「日本には古来から続く呪術すらあればいいのじゃ。雅さに欠ける西洋魔法なんぞ必要無い。麻呂は貴様ら西洋魔法使いどもを追い出し、呪術大国日本を復活させる。そして麻呂がその『日本呪術協会』の最高位として君臨する。そのために関東魔法協会、そして麻帆良の魔法使い…つまり主らが邪魔じゃ、ここで麻呂に敗北するがいい!!」

男は怒ると同時に、ほほほと人を小馬鹿にしたような笑い声を上げるという器用な事をしながら怒鳴る。

 

「強気なのはいいが、あとその程度の兵力で我々とやりあえると思っているのか?」

寡黙だが腕は確かな神多羅木が狐目の男を挑発する。

トレードマークの伸ばした髭と黒いサングラスが相まってなかなか迫力がある。

 

この東エリアの骸骨も気が付けばあと50体もいないくらいまで数が減っていた。

 

「やはり魔法使いは愚かじゃの。何の策もなしに麻呂がここに下りてくると思うか?

オンキリキリ、オンキリキリ」

 

真っ赤な札を取りだし呪術の呪文を唱える。

すると赤い札に塵に等しい白いかけらが麻帆良の西と南、そしてここ東から集まってくる。

それは再生できなくなるほど砕いた骨の欠片だった。

 

「させるか、ディク・ディル・ディリック・ヴォルホール、」

「神鳴流奥義 斬空閃」

神多羅木と葛葉をはじめとした魔法や気の使い手が呪文と技を、ガンドルフィーニ、龍宮などの銃火器使いが麻酔弾を垂金川に放つが下で待機していた50体の骸骨が飛びはね、盾となりそれらを防いだ。

 

砕かられたそれらは再生せずにそのまま赤い札に集まっている。

まずそれだけで8m以上はある大きな骸骨の掌が出現する。

その掌も垂金川を守るようにしているので攻撃が全く通らない

「よくぞここまで、麻呂の骸骨兵を壊してくれたでおじゃる。それだけは感心に値するの。

じゃが、お主らの最大戦力が不在、神鳴流と言っても青山宗家の神鳴流剣士でない使い手がいる程度のお主らに勝ち目はないぞよ。」

狐目の男が尊大な態度を取りこちらを挑発してくる。

もう勝ちを確信しているようだ。

こちらは技後膠着、弾切れで動けず追い打ちができない。

 

そうしている間にも白い光が次々と集まり腕が、肩が、胴体、足が、そして頭蓋骨が瞬く間に構築していく。

そして50mはあろうかという巨大な骸骨が出現した。

 

 

「まほネットにアクセス、検索完了、敵術者使役妖怪を餓者髑髏(かしゃどくろ)と呼ばれる日本の妖怪だと断定。その巨体に恥じない攻撃力と巨体に見合わない素早さを持っています。また本来の餓者髑髏よりも二周り程度巨大です。皆さん、気を付けてください。」

茶々丸がいち早く動き、敵妖怪の名前を看破した。

 

「貴様こそ勉強不足だな、呪術師よ。この学園でそのような巨大な戦闘力を持つ魔物は活動できないのだよ。」

ガンドルフィーニが勝ち誇ったようにいう。

 

うん?()()()()では?どういうことだ?

ガンドルフィーニの言い分を信じるのなら私が封じられているのはどうやらナギの呪いだけでないらしい。

そのことは後でじじいを問い詰めるとして、この場では置いておこう。

 

だが垂金川は余裕の表情を崩さない。

 

「ほほほ、麻呂を甘く見たな魔法使い。この学園にはどういう原理かはわからんが特殊な結界が張ってあることは確認済みでおじゃる。そしてこの術はお主ら麻帆良の魔法使い共を蹂躙するためだけに麻呂が10年かけて作った呪術じゃ。麻呂は定期的に使い魔と召喚魔を放ってこの結界の情報収集を続けていた故、その結界は麻呂の餓者髑髏には通用しないぞよ。」

ほほほと笑う。

 

垂金川が餓者髑髏の上に浮遊する。

そしてその言葉通り餓者髑髏の巨大な体が動いた。

拳を振り上げ、我々に向けて振り下ろしたのだ。

その強大な一撃を我々は散開してかわす。

地響きとともに地面にはクレーターができていた。

その質量による攻撃はもはやミサイルや中上級魔法と変わらない

 

戦況を決めかねない一体がここに降臨した。

 

「馬鹿な、なぜ動けるのだ…!! それに弱体化した様子もない!!」

結界の効力を知っている魔法先生達が驚愕の声を上げる。

 

「この麻帆良全域に張られてある結界はある程度以上の戦闘力を持つ妖怪の能力を封じ込める能力が付与されておる。じゃが、麻呂の長年の研究によりその判定を()()()()ことに成功したのでおじゃる。学園の結界はこの餓者髑髏を先ほどお主らが壊し尽くした骸骨兵の軍団としてしか認識できないでいるのでおじゃる。それらを元にしてこの妖怪を形成しておるしの。個にして群、群にして個、それがこの餓者髑髏の正体でおじゃる。

また嫌がらせも兼ねているでおじゃるがの。どうやってこの巨大なかしゃどくろと戦闘音を無かったことにするのかの?ほほほ。」

余程自信があるのか垂金川は自慢げにこのかしゃどくろの解説と挑発を行う。

今頃、明石を始めとした参謀チームと情報操作チームは必死になってこのかしゃどくろの情報隠蔽を行っていることであろう。

 

まあ、知ったことではないが…。

 

「なるほどな。私もこの学園の結界については初耳だが、そのかしゃどくろの戦闘力は一個体としてではなく、その妖怪を形成する骨の一欠けらの大群として判断されるわけだな。だから弱体化もしなければ、止まるわけでもないと言うわけだ。

はっ、まさに塵も積もれば山となると言うやつだな」

 

つまり一個体で圧倒的な力を誇る私は力を封じられ、雑魚共がより集まって形成されているあのでかい妖怪は通常通り動けると言うわけだ。

言っていてさらに腹が立ってきた。とりあえずナギとじじいはぶん殴る。

結界の穴をついた見事な呪法と言えるであろう。

無論簡単な術式じゃないはずだ。ただ戦闘力の足し算をするだけでこの学園の結界は破られるほど甘くはないだろう。

私ですら苦戦しているのだ。この学園の結界の優秀さは身をもって体験している。

 

そしてこの男の10年にわたる妄執が形となった結果があのでかい妖怪なのだろう。

 

「ほう、幼い少女の癖になかなか物分かりがいいでおじゃるな、西洋人。その通りじゃ。これで麻帆良自慢の結界は攻略したでおじゃる。近衛近右衛門、高畑・T・タカミチがいない今の麻帆良の戦力で麻呂のかしゃどくろをどう倒すでおじゃるか見せてもらうとするかの。

ほほほ、あやつらが意気揚々と外国から戻って来た時には帰る場所が無くなっていると考えると想像するだけで笑いが止まらないでおじゃる。」

 

その言葉とともにかしゃどくろの肩に降り立つ。

すると垂金川を守るように骨が隆起する。

まるで檻を思わせるような防御壁が展開される。

 

なるほど、この麻帆良を占領したらわざと情報を海外の魔法協会に流し、情報隠蔽の失敗の責任をじじいとタカミチに押しつけて最大戦力と戦わないで日本の協会から追放させるつもりだな。つまり戦わないで勝つということか。

 

 

「くっ、未熟な魔法使いたちを下がらせろ、下手をすれば死人が出るぞ。」

ガンドルフィーニがこの戦いについていけそうにない魔法使い達を下がらせる。

 

それと同時に反撃を行う。

16人に分身にした長瀬が撹乱し、高音の影と龍宮の銃で援護、そして隙をついて刹那と葛葉の神鳴流で攻撃を行うコンビネーションが取られていた。

私も魔弾の射手(サギタ・マギカ)で援護を行うが大した効果は無いであろう。

 

刹那の攻撃と龍宮のRPG、茶々丸のガトリング銃により相手の骨の一部が欠ける。が次の瞬間、時間が巻き戻るようにかけた骨がかしゃどくろの体の一部へと戻る。

規模は違うが先ほどの骸骨兵と同じ呪術がこいつにもかけられていると言っていいだろう。

やっかいな…。

 

純粋な戦闘力は魔法を使わない竜種以上で比較的弱い質の悪い鬼神兵と同等以下と言ったところか。

それだけならこの戦力でもなんとかなりそうではあるが、再生能力が邪魔すぎる。

そして無駄に機動力が高い。

慣れてきたのか中級魔法やRPGなどの中距離・遠距離攻撃も対応し始め回避しているほどだ。

 

攻撃力も高く蚊を払うような腕の一振りで凄まじい風圧が起こり、威力の弱い私の魔法や拳銃程度なら簡単に弾き飛ばされてしまっている。

振り下ろす拳は一撃一撃が小型のミサイル並みの威力だ。

それが地響きを立てて歩きながら学園に向かってきているのだ。

 

じり貧だった。

詠春が使う神鳴流の弐の太刀であれば、骨の防御壁を無視してあの狐目を屠れるし、タカミチの七条大槍無音拳や千条閃鏃無音拳並みの火力を安定して出せてそれを叩き込めれば、そう手ごわい敵ではないであろう。

というか私の凍結魔法なら再生も許さず一瞬で片が付く相手だ。

ええい、忌々しい。相手に結界が聞いていないのだからさっさと結界を解いて私に戦わせればいい物を!!

 

後退しながら少しでも足止めをしつつ、攻撃をすることしかできないでいる。

 

かれこれもう1時間30分以上戦い続けていて体力()精神力(魔力)尽きてきている魔法生徒、魔法先生が増えてきている。

 

影の魔法で殲滅戦では大活躍した高音も疲労困憊の様子で、パートナーで中学1年生の佐倉愛衣も同じような状態である。

さらに後から応援に来た二集院も日頃の運動不足が祟ってか息が切れてしまっている。

ガンドルフィーニも魔力が足りなくなってきたのか後衛の魔法使い達の指揮に集中している。

 

今も変わらずに戦えているのは、刹那、龍宮、長瀬、茶々丸の中学生4人衆と神多羅木、葛葉ぐらいであろう。

 

魔法先生達は巨大な魔法陣で敵の動きを止めることも考えたみたいだがこのメンバーの火力では決めきれるか不安なので魔力を節約するために使わないようだ。

 

かくいう私も魔力が切れてきて前線に立って戦えるのか怪しくなってきたので、中衛に下がりつつサポートを行う。

これだけの質量差のある敵が相手だと糸も全く効き目がないし、合気柔術も全く意味をなさない。

魔力も少ないので、かしゃどくろが動くたびに私は狐目男に氷の魔弾の射手(サギタ・マギカ)を1,2本放ち、視界を封じることで妨害に徹している。

 

「ほほほ、無駄でおじゃる、無駄でおじゃる。その程度の火力では足止めにすらならんぞよ。」

肩の防御壁の中で扇子を開き自分を扇ぎながら垂金川は馬鹿みたいに笑っている。

 

「餓者髑髏とやらも厄介だがあのしゃべり口調も腹が立つな。」

 

「確かに随分とけったいな喋り方をする御仁でござるな。逆に話し辛そうに思うのでござるが…。」

龍宮と長瀬が軽口をたたき合う。

 

「世の中には無意識に人の感情を逆なでる天才がいると言うことだ。」

アルビレオ・イマとのやり取りでいくらか耐性が付いている私でさえも、うざいと感じる話し方だ。

 

「マスター、そろそろ実弾も魔法弾も弾切れしそうです。それとマスターの煽り耐性は元々高くないと思われますが。」

「む、そうか。じゃあ、後ろに下がって銃弾を節約しながら私と同じように奴本体を狙え。効果は薄いだろうが多少の妨害にはなるだろう。それと心を読むな。」

「了解しました。」

無理もない、格闘術も交えて戦ってあまり無駄弾を消費しないように戦っていたのだがもう1時間半以上戦っているのだ。むしろ今回の急な召集で良く持ったといっていいであろう。

 

「戯れにも飽いたの。そろそろお主らを本気で突破させてもらうでおじゃる。」

扇子をパシリと音を立てて閉じると、空洞だったかしゃどくろの目の部分に赤い光が灯る。

 

「刹那、少しでも長く足止めをするために機動力を奪います。足に向けて雷光剣を。」

「はい、刀子さん。」

『雷光剣!!』

刹那と葛葉刀子が同時に両足に向けて神鳴流の奥義を繰り出す。

気を雷に変え、雷光にして剣から放つその技は神鳴流の中でもかなりの威力を誇っている。

そのまま、足に当たるかと思った瞬間、かしゃどくろの姿が消えた。

 

空中に跳躍して回避したのである。

「ほほほ、このまま学園に行かせてもらうとするかの」

高さにして5m程度の跳躍だが、まさかあの巨体が中を舞うとは思っておらず、思考外の事が起こったことにより多くの魔法使いが硬直する。

 

「隙ありにござるよ。楓忍法 爆鎖爆炎陣!!」

その中でも常識的な思考に捕らわれず動けるものはいた。

虚空瞬動も浮遊魔法も使えないにも関わらず、足止めをかわし一気に麻帆良に進軍しようとした浅はかな考えで空中に飛び出し、身動きが取れないかしゃどくろに向けて長瀬が分身しながら鎖と大量の爆符付きの手裏剣を複数投擲し、かしゃどくろ全体を包囲するように鎖で包み込む。

「な、何でおじゃるか?」

 

「ナウマク・サマンダ・ヴァジュラダン・カーン」

不動明王の真言とともに爆符が炸裂した。

 

「今日はこれが最後のRPGだ。くらって逝け。」

さらに追い打ちと言わんばかりに龍宮がRPGを撃ち込む。

 

「神鳴流奥義 剣風華爆焔壁!!」

技後硬直が終わった刹那も空かさず剣技と気で作った風と爆炎の嵐でできた壁を餓者髑髏に叩きこむ。

 

爆発が連鎖し、大爆発を引き起こす。

大きな地響きを引き起こし、かしゃどくろは地面に落下する。

爆炎と砂ぼこりにあたり一面包まれる。

「やったのか?」

ガンドルフィーニが呟く。

 

煙の中で赤色の2つの光が揺らめいた気がした。

 

 




こんなにこの戦いが長くなる予定はなかったんや…
この話で蹴りがつく予定やったんや。
筆が無駄に乗った結果こんな感じになってしまったんや。

かしゃどくろの戦闘力はラカン風に言えばイージス艦と同程度の1500です。
麻帆良に居る高位魔法使いの平均は300と言われていますが、(この内の小説の場合、ガンドルフィーニや神多羅木、明石あたりの戦闘力がこれに当たる)
楓や真名や神鳴流剣士二人は300以上の戦闘力を確実に持っているだろうと作者が独断で判断しています。ですのでそれらが合わされば何とかなりそうじゃねとエヴァに言わせています。
あと作者的にエヴァちゃん視点書きやすいからこれからも増えるかも…。
(こんなのエヴァじゃないと言われればそこまでですが(笑))


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3話 運命が動き出す日 その3

佐倉愛衣ちゃんの実績については作者が捏造しています。
もし明らかになっていて間違っていたらご指摘いただけると助かります。
回りくどい文調を直してもっと読みやすい文を作りたい(願望)。
あと最初の予定は遥か彼方に投げ捨てた。もうライブ感で進めていくことにする。




龍宮真名

 

 

 

甲賀忍法によって生み出された爆発と銃火器による爆発、そして剣気による爆焰が連鎖的に合わさり凄まじい破壊力を誇る大爆発が轟音とともに炸裂した。

爆発の中心にいる餓者髑髏はもちろん、肩に乗っていた垂金川も無事では済まないかもしれない。

その破壊力は凄まじく爆炎と砂ぼこりがまだあの大きい餓者髑髏を覆い尽くしていた。

 

「終わったのですか…」

佐倉愛衣が全身の力が抜けたように地面に座り込む。

無理もない、いくら小学6年生の時にアメリカのジョンソン魔法学校の留学し、その魔法演習でオールAを取った秀才だからと言ってもまだ実戦経験の少ない中学1年生なのだ。

これだけの時間戦い抜き、最後にあのような巨大な妖怪と対峙したのだ。

全ての体力と精神力を使い果たしてもしょうがないであろう。

むしろここまで戦い抜くことができたこと自体、彼女の非凡な才能が見て取れるであろう。

 

「ほら、愛衣、しっかりなさい。」

「すみません、お姉さま。」

そんな佐倉を見かねたのか、心配してなのか仮契約主の高音が声をかけ手を引っ張って起こす。

こちらも息が切れている。

佐倉のように座り込まないのはここにいる前線の魔法生徒の中で一番の年長者であるというプライド故だろう。

見ると後衛で援護に回っていた戦場慣れしていない魔法使い達も疲れ果てていた。

 

この破壊力を見る限り敵はただでは済まないであろう。

だがまだ油断はできない。

何しろ一人でこの麻帆良に乗りこんできた猛者なのだ。

次の行動で何をしてくるのかわからない。

その二人と動けずにいる魔法使いを庇うかのように楓と刹那が前に立つ。

それは私も同じだった。

 

「熱源反応確認、垂金川君麻呂はまだ動けています。戦闘可能かどうかは判断が付きません。皆さんも油断しないようお願い致します。」

「はっ、日本文化を馬鹿にした話し方をしている割になかなかしぶといじゃないか。」

 

超鈴音と葉加瀬聡美と言う麻帆良が誇る2大頭脳と600年を生きる不死の魔法使い(マガ・ノスフエラトウ) エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルが合作し、魔法と科学を融合させて作り出した明らかにオーバーテクノロジーなロボット娘が煙の中の熱源を捉えていた。

餓者髑髏は見てわかるように骨なので熱源を感知することができないが生きている人間であるならばこの絡繰茶々丸の感知能力からは逃れることは難しいであろう。

 

術者が無事であるなら何をしてくるかわからない。

別空間から全身の神経を麻痺させる毒付きの麻酔弾を弾薬にしているアサルトカービンのコルトM727を取りだして構える。

フルオートとセミオートに切り替え可能でその確かな威力の連射は比較的広い範囲での相手の攻撃に対して対応できるであろう。

本当はボルトアクションのライフル銃のレミントンM700やデザートイーグルの方が使いなれているのだが狙撃ができる戦力が前線に整ってない+敵が巨大過ぎてマグナムでも対応しきれないので状況を判断して中距離から連射で打ち込むことができるこの銃を選択したのだ。

 

「奴が動く前にたたく。援護を頼めるか龍宮」

「了解した。しくじるなよ、刹那。」

「拙者も陽動をしつつ、本丸を狙うでござるよ。」

「熱源反応未だ目立った動きなし。ですが何か呪文を唱えているかもしれません。」

「この長い戦闘にもうんざりだ。とっとと終わらせて帰るぞ、茶々丸。」

動けるものが口を開き、次々と追い打ちの準備に移る。

楓が16体に分身をして一斉にジャンプで上に飛び上がり複数に分かれて飛びだす

 

だが次の瞬間、想定外の事が起こった。

煙の中から腕だけが物凄い勢いで飛び出して来たのだ

餓者髑髏の左腕だ。

爆発によってできた煙幕を貫き出てきたそれは餓者髑髏の白い腕で、その技は俗に言うロケットパンチそのものだ。

それだけで十数mはあるそれが凄まじい速度でこちらに向かって放たれた。

その速度と質量のせいで並みの攻撃では弾くこともできないであろう。

 

避けることもできたが後ろには佐倉をはじめとした疲れ果てた魔法使い達がいる。

我々と違って避けきれずに当たってしまうかもしれない。

 

最初に迎撃に動いたのは追撃のために気を溜めきっていた刹那だった。

「神鳴流奥義 雷光剣!!」

雷の骨だけの左腕に叩きこまれる。

鉄すら斬り裂く雷の斬撃を餓者髑髏の左腕は弾き飛ばしながら進む。

 

「ちぃ、世話の焼ける。氷盾(レフレクシオー)

次にエヴァンジェリンが氷でできた盾を展開するが魔力不足だと言うことが見てわかる。これはそこまで当てにできないであろう。

その予想通りで硝子を金槌でたたき割るように簡単に氷の盾が砕け散る。

エヴァンジェリンの立場からしてみれば防がずに我々を見捨てて避けてもいい物を…、とっさの事で魔法を展開したのか、それとも弱者を見捨てられない性格なのかは分からないが防御することを選択したようだ。

かくいう私も迎撃という手段を体が勝手に取ってしまっていた。

気が付けば指がトリガーにかかり骨の左拳に連射していた。

 

「私もまだまだ甘いな」

さっきみた佐倉と高音のやり取りにかつての自分とコウキ(パートナー)を無意識のうちに重ねてしまって見捨てると言うことが一瞬のうちに選択肢から外れてしまったのだ。

この銃もあの迫りくる左腕からしてみたら豆鉄砲レベルですらないであろうがないよりマシだろう。

隣では後輩たちを守るために高音が影の魔法を展開している。

茶々丸も持っている銃火器で迎撃している。

主が逃げないでいるので従者である茶々丸も当然そこに留まっている。

 

だが次々と破られてしまっている。

しかしそのお陰もあり少しは減速したがまだまだ威力は死んでいない。

何かに当たるまで止まらない呪術でも仕掛けられているのだろう、普通ならその重さに耐えかねて墜落してもおかしくないものを。

 

葛葉教諭と神多羅木教諭、そしてガンドルフィーニ教諭が生徒たちを守るように前に立つ。

 

葛葉教諭は神鳴流の対魔法結界を最大にして受け止め、神多羅木教諭とガンドルフィーニ教諭は魔法障壁を全開にして前に立つ。

だが質量が違い過ぎて抑え込めずに拳に物凄い勢いで押し戻されてしまっている。

結界も魔法障壁にも簡単にひびが入る。

圧倒的な質量に速度まで加わっているのだ。

いくら優秀で高位な魔法使いと言えど防ぐことは簡単ではない。

しかしそこに人の背丈ほどもある風魔手裏剣を盾のようにして構え、気を全開にした楓が加わる。

虚空瞬動で減速した骨塊を追い越し防御に回り込んだのだ

恐らく土煙りに動きがあった瞬間には虚空瞬動を発動し、方向転換して戻ってきたのであろう。

急に戻ってきたということもあり、本来の力を出し切れていないように見えるがそれでも楓が加わったことは大きい。

凄まじい速度と判断力だった。

 

今ここで戦える者全員の力を合わせて、餓者髑髏の左腕食いとめていた。

その甲斐あって左腕の勢いが止まる。

 

この攻撃を防ぐだけで皆、かなりの体力が持っていかれてしまい、特に教師3人はこの一撃の防御で全部の気と魔力を使い果たしたのか倒れ伏してしまっている。

 

そして左腕は当然のように餓者髑髏の元に戻っていく。

ロケットパンチの威力で煙幕が晴れたのであろう。

再生しかけの餓者髑髏が姿を現していた。

垂金川もその肩にはっきり姿が見える。頭から血を流していて、火傷もしていることだろう

「もう許さないでおじゃる。日本国内から追い出すだけにとどめようと思っていたでおじゃるが、麻呂が甘かった。貴様ら全員捻り潰してくれるわ」

 

怒り狂った垂金川の声とともに呪符を投げ飛ばす。

その符が大きな火球になり襲いかかる。

 

「リク・ラクラ・ラック・ライラック 来たれ氷精、爆ぜよ風精 『氷爆(ニウィス・カースス)

エヴァンジェリンがフラスコを割り魔法を唱えて迎撃する。

冷気と爆風で敵を攻撃する呪文だが、エヴァンジェリンの魔力不足のためか人一人を簡単に呑みこむ様な火球に比べて氷の爆風は圧倒的に小規模で頼りないものであった。

それでも火球は冷気の爆風に当たると破裂し、氷と炎がぶつかり凄まじい爆発を生み出した。

その衝撃を近くでまともに食らったエヴァンジェリンが吹き飛ばされる。

「マスター!!」

茶々丸がエヴァンジェリンを追い、飛び立とうとするが敵の攻撃は終わらない。

主が守ろうとした物を守るために動けない。

 

「これで仕舞いじゃ、魔法使い共」

その声とともに右腕がさっきの左腕と同じ要領で分離した。

しかもさっきと違って高速で回転しており、貫通力と破壊力をましたそれが呪術の魔法陣とともに向かってくる。

さっき以上の破壊力を携えたそれに対応できるものはもういないであろう。

 

先ほどの攻撃を防ぐために密集隊形のままでいたことが完全に仇となっており、このままでは一網打尽になってしまうだろう。

さらに先ほどの爆風の余波を受け動けない魔法使いがさらに増えたのだ。

動けない魔法使いに囲まれこのままでは私も危ないであろう。

 

仕方がない。コウキの夢を引き継いだのにそれを果たせずにここで死ぬのはごめんだし、不本意だが4年ぶりに切り札を切ろう。

刹那も同じことを考えていたのであろう、何をするのかは分からないが体の周りに気が高まっている。

 

今まさに魔力を解き放とうとした瞬間、新しい影が私達と迫りくる右腕の間に躍り出た。

 

迫りくる右腕に背を向けて我々を方を向き、守るように立ちふさがった。

白いローブを纏い、少し長い金色の髪をまとめた、鋭い目をしているが私より少し年下ぐらいの少年だった。

カジュアルなチノパンにローブの下から黒いTシャツが見える。

肩にはローブと同じ色の真っ白いオコジョを乗せている。

そしてその腕には先ほど吹き飛ばされてしまったエヴァンジェリンを抱きかかえている

 

「き、君、危ないから下がりたまえ」

息も絶え絶えのガンドルフィーニが地面に倒れ伏しながら叫ぶ。

 

「プラ・クテ・ビギナル 風花(フランス)風障壁(バリエース・アエリア―リス)

少年はガンドルフィーニの言葉に笑顔で応じると、呟くように魔法を発動させる。

まだ声変わりすらしていない幼い子どものような声だった。

その言葉とともに子どもや初心者が使う始動キーが紡がれ、10tトラックの衝突すら防ぎきる風の障壁が展開される。

だがあの迫りくる右腕の衝撃は10tトラックなど軽々越える一撃だった。

ミサイルに匹敵、もしくは凌駕するほどの威力だ。

動けずにいる誰もがあの餓者髑髏の腕がその障壁を貫通して少年ごと我々全員を押しつぶすと考えていた。

その少年がただの未熟で命知らずの魔法使いだったら障壁を簡単に突破されて我々全員とともに押しつぶされてしまっていただろう。

 

しかしその少年は只者ではなかった。

 

圧倒的な魔力によって強化されたその風の障壁は我々の予測に反し、簡単に餓者髑髏の右腕を防ぎ、逆に弾き飛ばしてしまった。

 

「貴様ァ、何者じゃ!!」

 

「レイ、レイ・ライトノート。」

垂金川の怒り狂った声に反してあまりにも冷静な声で少年は名を名乗った。

 

 

****************************************

ネギ・スプリングフィールド

 

 

探査の効力を持つ〈ベルカナ〉のルーンが中に浮かび、ネギの移動速度に合わせて道案内をするように動く。

魔力の元を辿り、森をしばらく走っていると戦闘音が鳴り響いてきていた。

 

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル」

念のため変装の魔法をかけ、気配遮断のルーンを自分の周りの空間に刻む。

ネギの姿が変化する。

体が一回り大きくなり、赤い髪が金色になり、丸い目も鋭く変化する。瞳の色も茶から蒼に染まる。

それと同時にルーンの文字が自分の周りを一回転したかと思うとネギの周りの空間に溶け込んでいった。

気配遮断のルーン 〈スリザス〉だ。

これで攻撃に移るか魔法を解くかしない限り気配を感じ取られることはないだろう。

 

セラス騎士団総長から今の段階でメガロ・メセンブリアの元老院に見つかると英雄の息子として政治の道具にされてしまう可能性が高いので、そうなりたくなければセラスの他にも複数強力な後ろ盾が見つかるまでネギ・スプリングフィールドとしてあまり派手に行動するなと口を酸っぱくして言われているのだ。

戦闘が行われているのであれば、ここからはレイ・ライトノートとして行動しなければ…。

 

「兄貴ぃ、その変装をいつまで続けるんだ? 一応、メルディアナの校長には話してあるんだろ?」

「う~ん、あともう一人くらい強力な後ろ盾が見つかるまでかな。おじいちゃんにもネカネお姉ちゃんとアーニャに変装がばれたから仕方なく話しただけで、迷惑掛けたくないから本当はまだ黙っているつもりだったんだけどね。」

カモ君は僕にこの変装を解いて、ネギ・スプリングフィールドとして行動して欲しいみたいだった。

まあ、自分の命の恩人が変装して、こそこそ動いているのを見て良く思わない気持ちもわからなくはないが慎重に行動をしておいた方がいいであろう。

 

師匠も昔、弟子のクー・フーリンを睡眠薬で眠らせて戦場に出さないようにしようとしたことがあったらしいが、その薬が効かず結局は戦場に出てきて大暴れしたことがあるらしいし…。

 

自分がこれで大丈夫だと思っても足をすくわれることはたくさんある。師匠はその弟子の行動に救われたらしいが、今回は僕の人生のこれからにも関わってくることなので念には念を入れて慎重に行動しているのだ。

自分を政治の道具にしようとしている人たちに救われるとはまずないと考えて行動した方がいいであろう。

 

よし、との掛け声とともに木を駆け登り周囲を見回すと、視界の中に50mはありそうな巨大な骸骨が飛びこんできた。

 

「カモ君、あれなに?」

「さ、さあ、この国の使い魔かもしれないぜ。」

「あんなのが跋扈していたら魔法なんて直ぐにばれそうなものだけどなぁ。」

「って、言ってる場合じゃねえよ兄貴。良く見たらあの骸骨と女の子達が戦ってるぜ。」

現実逃避もそこそこにカモ君の言葉で我に帰る。

見るとたくさんの魔法使い達がその骸骨と戦っていた。

前線では中学生くらいの女の子達が積極的に戦っている。

あの巨大な骸骨に劣勢に追い込まれているように見える。

 

「じゃあ、助けに行こうか!!」

 

木から飛び降りて骸骨がいる方向に駆け出して少し経つと凄まじい爆音が聞こえた。

「なんかやばそうだぜ。兄貴」

「そうみたいだね、急ごうか。」

〈ベルカナ〉のルーンとともに自身にも両足に〈早駆け〉のルーンを刻みスピードを上げた。

 

全力で駆け抜けると開けた部分に出る。

〈ベルカナ〉のルーンの効果が消え、媒体にしていたルーンの文字を刻んだ小石がことりと言う音を立てて地に落ちる。

森を抜けた瞬間、一番先に目に入ったのは10歳くらいの大きさの金髪の女の子が吹き飛ばされている場面だった。

目に入った瞬間、無意識のうちに飛行魔法を発動させ、女の子を空中で抱きとめる。

 

「ナ…ギ…?」

僕を見て女の子が驚いたような顔をしてそうつぶやいた気がする。

なぜこんな小さな少女が父の名前を呟いたのか気になるが今はそれどころじゃないようだ。

 

たくさんの魔法使いが倒れ伏しているその先に巨大な骨の腕が放たれている。

銃を持った長身で長い髪の褐色の女の子とこの国の長い剣を持った女の子が何かをしようとしているが間に合わないであろう。

 

すかさず、女の子を抱きかかえたまま、魔法使い達の前に降り立つ。

 

「き、君、危ないから下がりたまえ。」

僕を見た眼鏡をかけた厚い唇の黒人男性が必死に声を出して逃げるように促す。

見た所、自分も魔力切れと怪我で辛いだろうにこの大ピンチの場面で他人を気にかけるとは、これが『正義の魔法使い』なのだろう。

 

その男にほほ笑みかけ、魔法を発動させる。

「プラ・クテ・ビギナル」

 

魔法を放つためには始動するために精霊に語りかける合図、もしくはパスワード的なものが必要になる。それが始動キーだ。

そしてこの始動キーは初心者が使う始動キーにあたる。

自分の始動キーは完成しているが人前では使わない。

始動キーは人によって千差万別、世界に一つだけと言うこともあり得る。

始動キーから身元が特定される場合もあるであろう。

誰も信用できず、どこで誰が聞いているかわからない今、オリジナルの始動キーは使わない方がいい。

そしてこの始動キーは魔法使いであるなら()()()使()()()()()()()()()()なので始動キーから身元がばれると言う心配が皆無なのだ。

 

風花(フランス)風障壁(バリエール・アエリアーレス)

10tトラックの衝突すら耐えるこの呪文にさらに力ずくに無理やり魔力を加え防御力を高める。

これならちょっとやそっとの攻撃なら耐えられるだろう。

この魔法のデメリットは一瞬しか出せず、さらに連続して展開できないことだが、少ない詠唱で大きな衝撃に耐える障壁を展開できるというメリットもある。

右腕と障壁が衝突する。

 

激しい衝撃音と共に面白いように巨大な骸骨の右腕が風の壁に弾き飛ばされた。

思ったよりも簡単に防ぎきることができた。

 

「貴様ァ、何者じゃ!!」

余程自信があった攻撃なのだろう。この国の伝統衣装に身を包んだ細身の男が怒鳴りつける。

その声には怒りのほかに僅かに怯えたような声色を孕んでいるような気がする。

 

そして名前を問われた。

もう、こうして偽の名前を名乗るのは何回目になるだろうか。

落ち着いた口調で偽名を告げる。

 

「レイ、レイ・ライトノート」

 

その言葉だけでこの空間を支配したような気がした。

 

 

「おのれェ、麻帆良側の援軍か?」

「いや、ただの通りすがりの魔法使いですよ。」

女の子を落とさないように片手で支えながらローブを脱ぐとそれを地面に敷き、抱きかかえた女の子を静かに優しくローブに下ろし、怒り狂った男と会話を交わす。

女の子はかわいらしく目をパチクリさせながら、されるがままだった。

というより魔力不足で何もできないでいるというのが正しいのかな

 

「ならば、なぜで麻呂の計画を邪魔するのでおじゃる!!」

「僕がそうしたいと思ったからですね。それ以外に理由はないですよ。それに女の子を簡単に傷つけるような人を見逃せるわけがないじゃないですか。」

 

振り向きながら男の質問に答える。

今紡いだ言葉は間違いなく僕の本心だ。

確かに関わらなくていいことなのかもしれない。

正義の魔法使いや立派な魔法使い(マギステル・マギ)なんて、今は父を捜すので手いっぱいなので目指すにしても片手間になってしまっている。

そして無理をしてでもなろうとも思ってはいない。

しかしそれでもできる範囲で自分のやりたいことはやろうと思って行動している。

そしてこれは僕のできる範囲の事だ。なら介入しよう。

自分の心に従った結果の行動だ。後悔なんて欠片もしていない。

 

「ならば、貴様ごと麻帆良を潰すまでじゃ!! しゃしゃり出てきた事を後悔するがいいの! 行くのじゃ餓者髑髏、一撃でダメなら直接何発もお見舞いしてやるのでおじゃる!!」

男の言葉に従って餓者髑髏と言われた大きな骸骨が動き出す。

右腕もこの会話の間に骸骨本体に戻っている。

だがそのまま餓者髑髏をいいようにさせておくほど僕はお人好しじゃない。

 

「プラ・クテ・ビギナル 風の精霊1001人(ミッレ・ウーヌス・アエリアーレス) 鎖縛となりて(ウィンクルム・ファクティ) 敵を捕まえろ(イニクプトム・カプテント) 『魔弾の射手(サギタ・マギカ) 戒めの風矢(アエール・カプトゥーラエ)』」

迫りくる餓者髑髏と呼ばれた怪物に向けて風の魔弾を放つ。

数えるのも馬鹿らしい数の風の魔弾が餓者髑髏に纏わりつくとそれらが全て帯状に変化し、餓者髑髏に巻きついて拘束していく。

見た所、魔法障壁の類は餓者髑髏に付与されていない。つまりは抵抗すらできない。

あっという間に餓者髑髏は風の帯に捕えられてしまった。

これならしばらくは動くことはできないであろう。

やりすぎた気もしないでもないが戦場では念には念を重ねておいて損は無い。

 

「なんじゃ、これは!!!」

男が戸惑いの声を上げる。

自身の最強の使い魔がこうも簡単に捕縛されてしまっているのだ。

うろたえる気持ちもわからなくはない。

 

うろたえる男を無視してさらに呪文を続ける。

「プラ・クテ・ビギナル |影の地統べるスカサハの《ロコース・ウンブラエ・レーグナンス・スカータク》、我が手に授けん(イン・マヌム・メアム・デット)、|三十の棘を持つ愛しき槍を《ヤクルム・ダエモニウム・クム・スピーニス・トリーギンタ》『雷の投擲(ヤクラーティオー・フルゴーリス)』 

手の中に自分の身長の3倍はある雷で造られた投擲槍が出現した。

通常は宙に浮かせたまま相手に魔力で槍を操って投げるそれを、あろうことか無理やり掴み取った。

槍を持つと投げ槍の要領で、骨の檻に守られる男に向かって文字通り投擲した。

軽く投擲したように見えるのに雷の弾頭は簡単に音速を越え、骨の檻を容易にぶち破り、男を餓者髑髏の肩から連れ去ると100m先の地面に男を磔にした。

これまで何千、何万と繰り返してきたその投擲は狙った獲物を逃さない。

動けない対象なら、ネギは目を瞑っていても絶対に外さない。

磔にした地面にその勢いと魔法の威力でクレーターができる。

『雷の投擲』が消えるまで男はその場から動けないだろう。

 

「なんと恐ろしい小童じゃ。じゃが麻呂を餓者髑髏から離した所で終わるわけではないぞよ。」

死なないように手加減したとはいえ、地面に磔にされながらも僕に向かって悪態をつけるのはさすがだ。

しかしその悪態もむなしく、餓者髑髏も男も動けないでいる。

『雷の投擲』よって破砕された骨の檻が元通りに戻る。

どうやら強力な再生魔法が付与されているようだ。

欠片も残さず消滅させるか、再生が追いつかないほどの大きな威力の攻撃を連発しまくらない限り、再生し続けるであろう。

 

「兄貴、面倒くさそうな妖怪だけど、どうするんだ? 大技でドカンとやっちまうか?」

肩のカモ君が聞いてくる。

 

千の雷は…だめだ、範囲も威力も大きすぎる。周囲数百m以上を焦土に化すそれは隠蔽にも手間と迷惑がかかるし、何より動けないでいる魔法使いを巻き込みかねない。

雷の暴風も却下、餓者髑髏の真後ろ、魔法の射線上に居る男を巻き込んで殺してしまいかねない。

 

仕方がない、手間はかかるが確実な方法を取ろう。

 

「カモ君、しっかり掴まっていてね。プラ・クテ・ビギナル |逆巻け夏の嵐《ウェルタートゥル・テンペスタース・アエスティーウァ》、 |彼の者等に竜巻く牢獄を《イーリス・カルカレム・キルクムウェルテンテム》 『|風花旋風風牢壁《フランス・カルカル・ウェンティ・ウェルテンティス》』

周囲の風が集まると強力な竜巻をドーム状に発生させ、餓者髑髏を覆い隠しその中に閉じ込める。

『戒めの風矢』で動けない上に風の牢獄に閉じ込められてしまった餓者髑髏に最早為す術は無かった。

さらに同時に後ろにいる魔法使い達に見えないように虚空の空間にルーンの文字を刻む。

刻んだルーンは火のルーン〈アンサズ〉。文字が光輝くとともにたちまちルーンから炎が発現した。

後ろの魔法使いからは光だけが見え、何をしているのか見えないであろう。

光が風にぶつかると凄まじい勢いで風の牢獄に燃え広がり、竜巻でできた牢獄ごと中身全てを焼き払った。

原初のルーンとなると大きな古城を焼き尽くしてもあまりある火力を誇るルーンだ。

50mほどの餓者髑髏を焼き尽くすのはわけ無かった。

 

竜巻が消えると灰になった餓者髑髏が姿を現す。

竜巻とは違う夜の静かな風に乗ってサラサラと音を立てて骸骨のオブジェは崩れ落ち、風の中に消えて行った。

 

ネギはその場から動くこと無く餓者髑髏を消滅させてしまったのだ。

「すげえ…、さすが兄貴だぜ。」

その光景を見て肩のカモ君が呟く。

 

「ひぃっ!!」

その光景を見た男は磔にされたまま札を取りし、地面にばら撒くと地面から50体くらいの骸骨兵が現れた。

 

それと同時に別空間から巨大な槍「雷霆の槍(フテイレイン・エンコス)」を取りだす。

向かってくる骸骨兵に魔力を通し雷をエンチャントした槍を真横に薙ぎ払うように一振りすると雷の斬撃が飛び、巨大な槍の範囲外にいる骸骨も含めて、全ての骸骨が吹き飛び、電撃を浴びて炭化して地面に返った。

 

「な、なんなのじゃ、貴様は…。」

男はその圧倒的な力の差に抵抗する気力を無くしたのかさっきまでの尊大な態度が鳴りを潜め、弱弱しく口を開く。

何年もかけて計画してきた計画を後一歩と言う所で一人の見た目中学生くらいの少年に圧倒的な力で阻まれ、真っ向から捩じ伏せられてしまったのだ。

その喪失感も男の胸中にはあるのかもしれない。

 

だが所詮は敵対者だ。哀れな姿を見て同情してしまいそうな心を押さえつける。

 

『お前の才能はこれまで何千、何万人と育ててきた弟子の中でも最高クラスで、クー・フーリン、コンラ、フェルディアに並ぶほどだが、如何せん甘すぎる。その優しさは平時では美徳だが戦場では足をすくわれる元になる。戦場に立つからにはどんな相手にも容赦はするな。殺す時は必ず殺せ、それが戦場を生き抜くために必要な事だ。』

 

師匠の言葉が胸を過る。

その言葉を思い出し、まだまだ甘い自分を思い心の中で苦笑する。

 

「見ての通り、通りすがりのただの子どもだよ。」

 

男の胸中など無視して、「雷霆の槍」を地面に立てて片手で支えながら隙なく油断なく男に向けて言い放った。

 

 




型月のルーンまじでわからん。
型月のルーンの魔術を勉強するためにFate(S/Nとアタラクシア)と魔法使いの夜をやり直して、空の境界やプリヤも読み直していたんだけど、逆に混乱したでござる。

何で〈アンサズ〉が炎なんや、何で〈ベルカナ〉が探索なんや、何で〈トゥール(テワイズ)〉が防御なんや、何で〈エイワズ〉が解呪なんや…、
全部きのこ独自の解釈なのかと思ったら、〈ソウェル〉がまほよで対象を包み込むように燃やしとる、つまり元々の意味の太陽に近い運用をしているし…、それとも別に太陽のルーンも登場しているし、わけがわからないよ。
教えてくれきのこ…、俺はどうやってこの魔術を扱えばいいのだ…。

まあ、ぶっちゃけルーンは使用者の解釈によって効果が変わるときのこ大先生が言ってたから私なりにやらせてもらうことにする。
もともとのルーンも本人の解釈によるところもあるし。
空の境界、Fateシリーズ、まほよなどで出たルーンはそのままの効果で、そのほかのルーンを扱う場合はこの小説オリジナルの効果になると思います。
もちろん、型月で違う意味になっていたら頑張って修正します。
もし作者の想像力が付きたり、頭が足りなかったりしたら一つのルーンに複数の効果を持たせちゃうかもしれないです。てかルーンの名前を出さないかも(笑)。
型月作品でも〈早駆け〉のルーンや〈硬化〉のルーン、〈太陽〉のルーンなど使われているルーンの名前が明らかになって無い魔術もたくさんあるし…。
もうやりたいようにやるわ。

あと18の原初のルーンの詳細を知りたいでござる。
ルーン自体24、空白も含めれば25文字もあると言うのに…。
橙子さん、兄貴のほかに、スカサハ師匠、ブリュンヒルデ、シグルドとルーン使いも増えてきたし、そろそろ頼みますよ。

それとルーンの魔法、もとい魔術が割と少し万能過ぎて、ネギまの魔法と師匠の槍捌きや投擲技術、跳躍技術等などが合わさるとうちのネギ坊主、マギア・エレベア何ぞ無くても全く困らないくらいの戦闘力を持っとるwww
当初はルーンも使えたら便利じゃね?と、めっちゃ軽く考えていたけど、ゲームをやり直していく内にこれ、実は割と軽くチートじゃね?という真理到ってしまったんや。
まあ、当初の野望の雷速ゲイボルクを達成するためにテコ入れはすると思いますが…。
軽い気持ちでルーンの魔術を扱うんじゃなかった。


〈スリザス〉⇒単体では型月にはまだ登場していない?(見逃しているかも)一応アンリミテッドコードのランサーのレッドブランチという技のバリエーションの中にこのルーンが確認できる。
スリザスには『計画的な足止め、慎重さを要する、危機の回避』という解釈例があるってどこかのサイトで見たのでこの中で慎重さを要すると危機の回避を合わせ、これをFateの作中でクー・フーリンが諜報活動で用いている、または神出鬼没に現れる要因として使われている『気配遮断のルーン』と勝手に解釈してそのように扱う。
ルーン自体の意味としては巨人、トゲ、助言などがあるがこれらは一旦置いておく。
なおハーメルンにある某小説にも影響を受けている模様。パクリ死ねと言われたら変えるかも…。まあ、そうなったら完全にルーンの名前を出さなくするわ。



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4話 運命《ネギ・スプリングフィールド》が始まる日 その1

お久しぶりです。暇を見つけてちまちま書いていました。
いつも以上に見直ししてないので、いつも以上に誤字脱字が多分多いです。
あと作品の雰囲気もいつもと違う感じがする。
そして重大な事に気がついてしまった。
俺、ラブコメ書けない…。恋愛もギャグも書いたこと無い…。
どうしよう。
なんでラブコメがメインコンテンツのひとつと言っていいネギまという題材を選んでしまったのだろうかwww



 

 

エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル

 

「見ての通り、通りすがりのただの子どもだよ」

 

私をお姫様だっこという屈辱的な抱え方で助けた少年が垂金川に向かってそうつぶやく。

なんで私はあの金髪の少年とナギが重なって見えたのだろうか。

性格もその容姿も似ても似つかないというのに。

すこし見とれてしまった自分も不覚だ。

 

それにただの子どもと言い張っているがそれにしては戦闘力がありすぎる。

その場から一歩も動かずにあの餓者髑髏と呪術師を無効化するとは、中学生くらいの年にして一般的な魔法使いより遥かな高みにいることは間違いないであろう。

あのでかい槍を振るった時でさえ足を前に出して槍を振るっただけで実質その場から動いていないのだ。

力の底が全く見えない。下手をすると封印を解かれた私とも互角に渡り合えるかもしれない。

それにしてもあの巨大な槍、どこかで見覚えがあるような…。

 

「誰か、この人を拘束してくれませんか?」

戦意喪失している垂金川を見ても一瞬たりとも油断せず、戦闘態勢を保っているその様は既に歴戦の戦士に見える。

「麻呂の10年が…ああ…。」

『雷の投擲』が消える。しかし垂金川が動く気配がなかった

ただ茫然と目の前の現実を受け入れきれずにあおむけに倒れたまま動かない

瀬流彦と神多羅木がその両腕を魔法で取り押さえる。

 

「待ってください、私はこの学園で教師をしている明石と申します。君は何者ですか?」

空から明石が下りてきて少年に語りかけた。

本部から箒に乗って急いで駆け付けたのだろう。若干息が乱れている。

そうだ、この少年はまだ敵か味方か判断がつかないのだ。

今この場でまともに戦える戦力は明石、刹那、龍宮、長瀬、茶々丸だけだろう。

それらが苦戦した餓者髑髏を一瞬で倒した少年と相対するには戦力的に不安すぎる。

まずはあの少年が敵なのか味方なのか判断しなければな。

 

「僕の名前は、レイ・ライトノートと申します。アリアドネー騎士団候補学校を卒業して、今はフリーの魔法使いとして活動しております。」

少年が人好きのする笑顔で自分の身分を明かした。

そうかセラスのところにいたのか。それならあの魔法の熟練度は納得だ。

いや、もしかしたらセラスすらも超えているかもしれん。

あそこは比較的魔法世界出身者が多いイメージがあるが、そういえばあの都市のコンセプトが学ぶ意思があるなら犯罪者でも悪魔でも受け入れる都市だったな。

なら見た所、旧世界人であるあの少年を受け入れないわけがないか…。

 

「レイ・ライトノート…、本国の知り合いから聞いたことがあります。半年前から魔法世界、旧世界両方をまたにかけて活躍する新進気鋭の魔法使いだと…。魔法世界の紛争に介入して死者を出さずにその紛争を一時的にとはいえ止めたり、イギリスにある魔法保管庫から奪われた魔法具を強盗から奪い返したりしたと聞いております。それだけじゃなく、迷子の子猫捜索や探し物の捜索などの小さい依頼も受け負っていると聞きました。2か月くらい前に欧州で目撃情報が途絶えたと聞いておりますが、これほどの力を持っているとは…。」

ガンドルフィーニが自分の知っている情報をみなに共有する。

 

「なんでそんなこと知ってるんですか?情報社会って怖いですね。」

少年が年相応の表情で驚いている。

あどけない表情からは想像もつかないが、実績からもかなりできるようだな。

正義の魔法使いか?

しかしそれにしてはそのあり方に違和感を感じる。

 

「君の素性はわかりました。ではなぜこの麻帆良へと足を踏み入れようとしているのですか?」

「さっきも思ったんですけど、ここって麻帆良だったんですね

探し物の情報の手がかりが日本にあると聞いてそれを求めて適当に歩いていたのですよ。埼玉に着いていたのはわかってはいたのですが、ここが世界でも有名な魔法学園都市麻帆良ですか。いつの間にか迷い込んでしまったみたいです。迷惑でしたら今すぐにでも出て行きますよ。またきちんとアポイントメントを取ってから来ます。」

 

少年は笑顔を絶やさずにここへ来た経緯を話す。

嘘は言っていないみたいだな。

それにしても迷子とは…この少年実はどこか抜けているのかもしれない。

 

「いえ、こちらは助けられた側の人間なので迷惑だとは思っていませんが…。すみません君という人物を判断するためにいくつか質問をしてもよろしいですか?」

「いいですよ、僕に答えられることなら、ですが…。」

 

「では、なぜそれほどの力を持っているのにどこの組織にも所属していないんですか?

アリアドネー騎士団候補学校を卒業したなら騎士団にはいるなり、美術品を奪い返したりしたならどこかの組織、例えば「悠久の風」などに所属して力を振るって人々を助けたりできるはずじゃないですか。それに君が探している物の情報も入手しやすくなるんじゃないですか?」

 

「ああ、そのことですか。事件に巻き込まれる度に色々な人に聞かれてちょっとうんざりしているんですか、そのことならいいですよ。

さっきも言ったように僕は今、探し物をしています。それはもう誰も信じていない物なので組織にいても情報は望めないかなって思うのと、こういうのって自分の手で探したほうが面白いじゃないですか。だからですかね。

あと何かをメインでしながらそのついでに人を助けるなんてすごく傲慢で失礼な事じゃないですかね?

僕は今、その探し物を見つけることで手いっぱいです。そんな片手間な状況で助けられるほど人の困り事や命は軽くないと考えてるんですよ。だから自分のできる範囲で人を助けるということはしてきましたが、それを仕事にするなんて考えたこともないんですよね。

まあ、正義の魔法使いとして行動するとしたら最低でもこの探し物が終わってからですかね。」

 

「なんだと、それだけの力を持っていれば助けられる命はたくさんあるだろうに…。それをそのような自分本位な理由で人を助けられるその力を腐らせていくのか!?」

 

ガンドルフィーニがレイと呼ばれた少年の思想に反発する。

餓者髑髏戦で何もできなかった自分に対する失望感や虚無感、この少年が現れなければ麻帆良が落とされていたと言う事実とレイの自分とは違う価値観を持つ言い分がガンドルフィーニの心に火をつけたのだろう。

今にも掴み掛っていきそうな雰囲気さえある。

助けられた方の人物、そしてとても教師が年下の子ども、それも自分の教え子と同じような年齢の少年にぶつけていい類の物ではないのは傍目から見てもわかる。

 

私としてはレイの思想の方が筋は通っていると思うが、しかし思想的にまっとうな正義の魔法使いの思想じゃないな。

世の中の時流に流されず確固とした自分を持っている…。なかなか見どころのあるガキじゃないか。

 

「いや、まあ、そんなこと言われても困りますよ。

僕は年齢的にいえば中学生ぐらいですし、正直に言って自分の手が届く範囲の物を守るのに精一杯なんですよね。

それに中学生に頼らなきゃならないほど魔法使いは人材不足ではないでしょう?」

 

「ぐぅ…。」

レイは大の大人からの大人げない感情の奔流をぶつけられながらも全く動じず、むしろどちらが年上かはわからないような大人な対応を取っている。

そしてその中学生を戦場に引っ張り出さざる負えなくなった今回の事態を顧みてガンドルフィーニは悔しさを滲ませながらぐうの音も出ずにいる。

 

「やい、お前ら、それが命の恩人に対する態度か?

兄貴がいなかったらここがどうなっていたかわからないわけないだろう。

それなのに、ここの人間は恩知らずの集まりなのか?」

「まあまあ、カモ君、彼らにも立場と守るべきものがあるんだから仕方がないって。僕たちが不審人物なのは事実だしここは押さえて。」

少年の肩に乗っている真っ白なオコジョが疑いばかりの明石の言い分とガンドルフィーニの一方的な言い分に不満をぶつける。

それを少年が苦笑しながら押さえている

 

「待ちなさい、正義の魔法使いとしてこの都市の恩人を手ぶらで返すわけにはいきません。学園長の許可が無いので君ほどの実力者を無許可で学園の敷地内に招待するわけにはいきませんが、君が探している物の助けくらいの情報なら提供できるかもしれません。」

 

ガンドルフィーニの非礼と白いオコジョの言い分に感化されたのか明石が報酬の条件を提示する。

少年は全く気にしていないみたいだがそこで引いてしまっては正義の魔法使いの名が廃ると言うことだろうか…。

 

「いえ、多分情報は見込めないだろうと思います。なぜなら僕が探し求めている物は『ナギ・スプリングフィールドの居場所』ですからね。」

 

時間が止まった。

 

当然だ。ナギは10年も前から行方不明でずいぶん前から死亡説が流れている。

メガロメセンブリアやアリアドネー、ヘラス帝国などの魔法世界の国の諜報部隊はもちろん、旧世界の魔法使いたちも英雄の行方を捜し続け、そしてついに見つからなかったのだ。

 

それ以前に存命している『紅き翼(アラルブラ)』のメンバー自体、タカミチと詠春以外の所在が知れないでいるのだ。

私もアルビレオ・イマを探してはいるが手掛かりは一向に見つからない。

 

ラカンは魔法世界の剣闘士の大会のスポンサーをしているとの噂が流れているし、アルビレオ・イマは不死身だし、魔法書なのでどこにでも姿を隠すことができる。

だがナギに関しては全く噂すらも流れない。ナギは無敵だが不老不死であるというわけではない。戦闘力・魔力ともに反則じみたバグみたいな存在だがただの人間だ

あれほどの人間が生きていれば噂の一つや二つ立つはずだ。噂すら全くないのは不自然すぎる。

10年前にトルコのイスタンブールで死んだと言う噂が流れて以来、音沙汰がないのだ。

なので、もうナギはこの世にはいないモノとみなされているのだ。

ネギという息子がいたらしいが、それも5・6年前に悪魔に村を襲われ行方知れずになっているという。

おそらくその時に悪魔どもに殺されてしまったのであろう。

 

純粋なスプリングフィールドの血は途絶えたとも言われているのだ。

いまだに探し続けているのは私のような馬鹿くらいであろう。

その私ももうその生存を諦めかけているのだ。

それをまっすぐ、光を帯びた視線で、生きていると信じきった言葉で語るレイという少年がとてもまぶしく思えた。

 

「何を…。大英雄ナギ・スプリングフィールドは10年前から行方不明で、もう死んだとも言われているんだぞ。そんな生きていると言う確証のない人物をなぜ探し続けているのだ?」

「まあ、単純ですよ。僕は彼の大ファンで直接会ってみたいと思っているんです。ただそれだけですよ。彼の活躍を聞いて、会ってみたい…。そう思ってしまったんですよ。僕は基本やりたいことをやっているだけなんで、そう思ってしまった以上、動かないわけにはいかなくなってしまったんですよ。」

 

理由になっていない行動理由を聞いて魔法先生はおろか、その場にいた魔法生徒達も絶句している。

そのために中学にもいかず、かといって立派な魔法使い(マギステル・マギ)になるための修練もせず、彼からしてみたらこんなに遠くの見知らぬ国まで来たのだ。

 

「くくく、アハハハハハハ!! お前は馬鹿だなぁ。好奇心と行動力の塊で無駄に戦闘力があるところが手に付けられないが、お前のような馬鹿は私は好きだよ。」

「マスター?」

笑いがこみあげてくる。茶々丸が戸惑いの声をあげるがそれでも笑いが止まらない。

考えなしでお人好しで、自分の芯は譲らず、無駄に頭が回るのにそのベクトルは馬鹿で…、まるでナギみたいだ。

さっきナギとこの少年の姿が重なった理由がわかった気がする。

賢そうな話し方や考え方、容姿も似ても似つかないがそのあり方はナギそっくりだ。

 

「あ、はい。ありがとうございます。え~っとあなたは?」

 

「私は吸血鬼(ヴァンパイア)エヴァンジェリン、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル、「闇の福音(ダークエヴァンジェル)」とも言われる最強無敵の悪の魔法使いだよ」

「あなたが…チ、ナギに倒されたと言われる最強の魔法使いですか。なるほどあなたほどの人物に褒められるのは素直にうれしいです。」

 

「む、信じるのか、魔力も全然感じられないだろうに…。」

「はい、その人物を少し見れば、大まかですが実力はわかります。あと会話の最中にここにいる全員の力を探らせてもらいました。長い刀を持っているサイドテールの女の子とジャパニーズ忍者な女の子と黒髪で銃を構えている女の子はまだまだ実力を隠してますね。緑の髪の毛の女の子の実力は少しわからないですが…。僕の助力も下手をすればいらなかったかもしれませんね。

それにあなたは表面的な魔力は感じられませんが封じられている魔力はかなりの物だとわかります。大方ナギ・スプリングフィールドに封印されてしまったと言うところでしょう。」

「ぐ、抜け目ない上に正確な推論だな。そうさ、私は間抜けな罠にはまってナギに封印されてしまったのだよ。それにしても魔法を発動した痕跡もないのによく正確に力を探ることができたな」

「企業秘密ですよ。」

ウィンクしながら人差し指を立てる。

 

警戒されているのを理解したうえで力を探っているのを明かすとは大した度胸だ

巨大な槍を別空間に移動させ、私に向かって手を差し出す。

「すみませんが羽織っているローブを返していただけないでしょうか? そのローブはアリアドネーの騎士団総長(グランドマスター)セラスさんから頂いた物なので、返しても貰いたいのですが。」

 

「む、軽い変装魔法、軽い魔法隠蔽魔法に汚れを落とす機能に軽い魔法だったら跳ね返す反射魔法が掛かっているな。あとついでに気配を薄くする魔法も掛っている。セラスの奴、少し過保護すぎやしないか?」

ローブにかかっている魔法を解析し、軽口をかわしながらローブを手渡す。

 

「ははは、僕もそう思います。ありがたいことですが。」

「だが、すまないな。助けられたのにお前が欲している物を私は提供できそうにない。なんせ私はもう15年ここから動けずにいるのだからな。」

 

「そのようですね。残念ながら皆さんの表情を見る限り、やっぱり情報を得られそうにはなさそうですね。」

私の言葉と周囲にいる魔法先生の顔を見てレイはそのように判断を下したようだ

 

「まあ、別に何か代償が欲しくてあなた達を助けたわけじゃないですし、別に気にもしてないんですが。僕は自分がしたいことをしただけですし。では僕はこの辺で次に向かいたいと思います。」

 

そうこうしている間に垂金川が神多羅木と瀬流彦によって麻帆良の地下牢へと運ばれていく。

意識を失っていないのに完全に戦意喪失している。

なすがまま、されるがままに拘束されて運ばれていく。

 

そしてレイはローブを羽織ると麻帆良に背を向け歩き始めた。

 

「どこへ行くというんだい?」

「麻帆良の魔法使いは見れましたし、情報もなかったんで、京都の近衛詠春さんのところへ向かおうかなと思っています。紅き翼(アラルブラ)の彼なら何か情報を知っているかもしれませんし、また何かあれば麻帆良にも足を運ぶかもしれません。」

明石の質問に馬鹿正直に次の行き先を答える。

 

「ま、待ちなさい。垂金川が麻帆良に反乱を起こした今、西洋の魔法使いが西に向かうのは危険です。日本の魔法社会の新たな争いの火種になりかねません。控えなさい。」

葛葉刀子がレイの行き先を聞いた途端、顔色を変えて制止する。

 

「無駄だな。あの手の馬鹿は一度決めたことはそうそう変えん。何を言っても無駄だろうな」

 

「はい、エヴァンジェリンさんの言う通りですね。全世界を巻き込むならまだしも、この国の裏情勢なんて知ったことじゃないですし、立ちふさがる者がいたら力ずくで捩じ伏せて前に進むだけです。あなたの指図は受けません。

僕は色々ごちゃごちゃ考える癖はありますが、最終的には前に進むことしかできないんですよ。考えているだけで動かないと何も始まらないと槍の師匠にも言われましたし。」

頬笑みながらそう口にする。

確かに頭よさそうな話し方や考え方をするのに極端に馬鹿な行動を取っているな。

いや、自分の思ったことに正直に行動しているだけなのか?

どっちにしても育った環境が原因だと見える。?

 

「あなたは危険だ。確かにあなたが関西に向かった所で大した問題にはならないかもしれません。しかし少しでも関西が、そして日本の魔法社会が混乱する可能性がある以上、ここで止めさせていただきます。」

息も絶え絶えで今にも崩れ落ちそうだが、葛葉は剣を取った。

自分とレイとの力量差がわからないほど愚かでは無いだろうが、日本の魔法社会を混乱から守ると言う使命感からであろう。

葛葉に感化されたのであろう、ガンドルフィーニや明石も戦闘の構えを取る。

 

「自分の意思を通すために力を振るいますか。うん、嫌いじゃないですよ。そういうのは。ただ僕も押し通らせて貰います。」

右の人差し指にはまっている指輪が光る。

膨大な魔力が発生し、その魔力でレイの周りに風が渦巻き、別空間から再びあの巨大な槍が現れる。

それを体の一部のように振り回し構える。

「ちょ、兄貴、やりあうのか?まずいんじゃないか?」

肩のオコジョが止めようとしているが全く止まる気配がない。膨大な魔力がこの空間を包み込む。

「カモ君、振り落とされないようにしっかり掴まっててね。」

ただもう止まる様子はないと見ればわかる。

 

そして思い出した。

あの槍は『雷霆の槍(フテイレイン・エンコス)』、アルビレオ・イマとガトウが作った欠陥品の槍だ。途中からナギも参加してた気がするが。

魔法使いしか十二分に力を発揮できないのに筋力もある程度必要、戦闘中の緻密な重力魔法の魔法操作、何より槍を使いこなすだけの技量が必要という、魔法使い専用に作られているのに魔法使いの従者向けの槍に仕上がった考えなしの欠陥品だ。

呪文なしでも魔力を込めるだけで雷属性魔法に変換して撃てるのは魅力的だがデメリットの方がはるかにでかい。

ナギは魔法とステゴロ中心で槍を持つ必要が無い。

本来はラカンに使わせるつもりだったらしいが奴は魔力ではなく、気を中心に戦っているし、『|千の顔を持つ英雄《ホ・へーロース・メタ・キーリオーン・プロソボーン》』のお陰で全く必要が無いことを作り終ってから気がつくという馬鹿っぷりを披露したこの一品は中立都市であるアリアドネーの魔法倉庫に放り込まれていた気がするが…。

セラスめ、こんなものも渡すとは過保護が過ぎるどころの話じゃないだろ。よほどこの少年がかわいいと見える。

 

それにしてもあれを使う馬鹿がいたとは…。

見た所使いこなしてはいそうだ。

まあ、私は日本の裏事情がどうなろうが知ったことはないし、正義の魔法使いがどうなろうと知ったことじゃないので見学に回らせてもらおう。あのぼーやもまさか命までは奪わないだろうし。

「茶々丸、手は出すなよ。私の護衛に専念しろ。」

「はい、マスター。了解しました。」

とりあえず茶々丸は止めておく。下手に参戦して壊されたらシャレにならん。

 

「拙者は参戦するでござるかな。これほどの使い手の御仁と相対する経験なんて滅多にないでござろうし。」

「西が乱れれば、お嬢様にも危害が加わるかもしれん。勝てないかもしれないが、私もやるべきことをやろう。」

「私はパスだ。金にならん。関西がどうなろうと知ったことではないしな。」

刹那と長瀬は参戦するみたいだ。

まあ、自分より遥かに上の力量を持つ相手と戦うことは自分の成長につながるであろう。

龍宮はぶれない。自分の基準を曲げずにいる。

これも重要な事だ。

龍宮はそのまま私と茶々丸の横に並ぶ。どうやら見学自体はするみたいだ。

 

「君たちは下がっていなさい。あの槍とやりあうのですよ。下手をすれば怪我では済まないかもしれない。」

明石が参戦しようとしている2人をいさめようとする。

「お嬢様の安寧を思えば怪我なんて恐れずに足りません。それにだからこそ接近戦の手札が必要です。」

「陽動もそうでござるよ。この場で戦力を下げるのは得策ではないでござる。」

 

2人が梃子でも動かないと察すると説得を諦めて明石もレイと相対する。

レイは笑みを絶やさず、自分が負けるとは欠片も思っていないようだ。

だが慢心はしておらず、その証拠にあのように巨大な槍を持っているのにも関わらず隙が全く見受けられない。年齢に見合わずその構えと雰囲気は達人のそれである。

 

 

緊張が高まる。

片方が剣を取り、クナイに指をかけ、杖を構える。

もう片方は巨大な槍を体の一部のように器用に振り回し、構えなおす。

それだけで風が巻き起こる。魔法の発動媒体である指輪も輝き、いつでも魔法を発現できる状態だ。

どうやらレイは迎え撃つことを選択したようだ。

 

麻帆良側は気と魔力を最高潮まで高め短期決戦の構えを取っている。

気での強化と「戦いの歌(カントゥス・ベラークス)による魔法での強化がかけられる。

そうだ、麻帆良側は先の戦いで体力も魔力もほぼ使い切ってしまっている。長期戦は不利だと言うことが子どもでもわかる。

それに対してレイの周囲の風を弱め、その中にいるレイ自身の魔力も穏やかになっている。

これから戦うとは思えないほど静かだ。

だが目を見れば闘志は静かに秘められているのが見て取れる。

 

落とした針の音すら聞こえそうな静寂がこの空間を支配する。

 

 

「双方待つのじゃ。」

今まさに麻帆良側の5人が飛び出そうとしたその時ひょうひょうとした老人の声がその勢いを遮った。

横を向くとフォフォフォと笑いながらその長い髭をなでているまるで日本の妖怪のぬらりひょんのような頭をした老人が立っていた。

 

「が、学園長。」

ガンドルフィーニの安堵した声が漏れる。

それもそのはずだ。そこにいるジジイはただの老人ではないのだ。

麻帆良最強、極東最強と謳われし、日本最強クラスの魔法使いなのだ。

 

現在、イギリスのメルディアナ魔法学校にいるはずの麻帆良学園学園長 近衛近右衛門が静かにレイを見据えながら立っていた。

 

 

 




雷速ゲイボルクはおろか、通常のゲイボルクの真名解放すらしてないうちに失踪なんぞできるかぁ(挨拶)

長い間お待たせしてしまってすみません。

久しぶりすぎてキャラに違和感ある書き方をしてしまったり、展開が無理やりだったりしていますがそこのところは多めに見てください。
特に主人公が…(おい)
自分でも投稿できたことが不思議に思うほど忙しかったので…。
この場に戻ってこれたのは皆さんの応援によるものが大きかったと思います。
本当は文体に違和感しか感じなかったのですがこれ以上皆さんをお待たせするのもどうかと思い、思い切って投稿してみました(いいわけ)

でも前の話のカモ君と言い、収集がつかなくなったらリメイクすることも視野に入れるかも

ここ最近、リアルが忙しすぎて、この小説の休止や凍結も考えたのですが、そうしてしまうとまたここに戻ってこれないかもしれないと思ったので凍結はしませんでした。
これからも時間はかかるかもしれないですがこのまま投稿していこうと考えております。
まあ、意思は強い方ではないので逃げ道をなくした方が続けられるんじゃね?という安易な考えです。

あと、もしかしたらラブコメの練習作品をチラシの裏か外部の投稿サイトに投稿するかもしれません。
マジでラブもコメも書いたこと無いので…。
そんな暇あるなら早く、最新話を投稿しろよとの声もあると思いますがこのままラブコメに移行して言って書けるのか?
またラブコメもバトルも同時に書いていくことができるのかなどの不安とどっちも書きたいと言う作者の我儘が溢れて来ていて止められそうにないのでまずは練習しようと決めました。
こんな我儘な作者ですがお付き合い頂けると幸いです。
まあ、練習作品は投稿しない可能性もありますが。

そしてついに兄貴のエクステラでのモーションが公開されましたね。
あのモーションやゲイボルクも参考にしていけたらと考えております。
枝分かれしてて投げボルクかっちょいい。
あとマテリアルでルーン全開放すると対城宝具も放てることが判明しましたね。
常時開放宝具封印、ステータスダウン、敵バフ解除と威力のほかにもやりたい放題で草生えますよ。さらにまだ制限かけられてる可能性があるとかwww
さらにキャスニキはルーンで影の国再現できるとかなんでもありじゃねえか。
やっぱりチートじゃねえか。
マテリアルは入手していませんが入手し次第、公開された設定をこの小説にも生かしていけたらなぁと考えています。(ネットで少しは情報を拾っていることは内緒)

言い忘れておりましたFata/goの夏イベントで割と好き勝手やってたことが記憶に新しいスカサハ師匠ですが、この小説内では少々性格が変わるかもしれません。
本格的に登場するのはしばらく先ですが、その時にスカサハ師匠じゃねえと思うことがあると思いますが付き合って頂けると幸いです。

兄貴に剣才が無いから槍一本に絞ったという設定だとか、相手に死の運命が無いとゲイボルクはどこかにすっ飛んで行くというFate/goで判明したマイナス設定はこの小説ではなかったことになっております。
ご了承ください。




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5話 運命《ネギ・スプリングフィールド》が始まる日 その2

次の投稿はいつになるかわかりません。マジで
速くできるかもしれないし、前回と同じくらいお待たせしてしまうかもしれません。
それに今回はいつも以上にかなりご都合主義です。というより無理やり感が半端ねえ…。
作者の力量不足やね。
あとラブコメ練習用にエミヤさんがギルガメッシュの若返りの秘薬を飲まされて士郎になってカルデアで災難?な目に遭うというネタを考えていたのですが、それと似たようなネタをハーメルンで私とは比較にならないほどの人気作家さんが投稿されていたのでほぼネタかぶりになるので封印いたしたいと思います。幸いまだ1000文字くらいしか書いてないし。
開き直ってあげようかなと一瞬マジで考えましたが辞めておきます。




ネギ・スプリングフィールド

 

目の前に同じ人間とは思えない頭をしていて立派な髭を生やした白髪白ひげの小柄な老人が立っていた。

この老人が只者ではないことが魔力から伺える、

そして麻帆良側5人の戦いの空気が弛緩していく。

それだけこの老人が皆に信頼されていることがわかる。

 

「学園長、イギリスのメルディアナ魔法学校に視察に行っていたのではなかったのですか?」

眼鏡をかけた優男、確か明石さんと言ったか、が老人の帰還を喜びながらも疑問を呈す。

 

「うむ、麻帆良がピンチじゃと君から連絡があったのでの。メルディアナの校長室にから転移魔法で戻ってきたのじゃよ。これが終わったらまたメルディアナに帰って正式に飛行機で戻ってくるがの。」

「そうだったのですか。助かりました。」

 

この老人が日本最強の魔法使いである近衛近右衛門か。

 

どうするかな。対応次第では戦うことになるかもしれないし、警戒をしておいて損はないかな。

それよりもおじいちゃんのところへ行っているのか…。

おじいちゃんの事は信頼していないわけではないけど、なんか嫌な予感しかしないな。

 

「いきなり現れてなんですか? 皆さんの代わりに戦うのでしたら相手になりますが…。」

「なっ!!」

実力的にはメルディアナのおじいちゃんと同じくらいか少し上なくらいかな? 

この魔法社会においても高い実力だがやりようはある

僕の放った言葉に黒人の男性が信じられないという反応をするが気にしない。

 

「フォフォッフォ、そう警戒せんでくれ、ワシは戦いに来たわけではない。まずは麻帆良を救って頂き、感謝する。ワシはこの通り間に合わなかったのでの。」

「いえ、僕は僕がやりたいように行動しただけなので別にお礼を言われる筋合いはありませんよ。というかこの状況を見て良く僕が手を貸したとわかりますね。」

頭を下げる老人に僕は僕の思っていることを伝える。

 

「それでもじゃ、礼は受け取っておいて損は無いぞい。

後者に関しては明石君から餓者髑髏が麻帆良を襲っているとの報告が入っていての、それらが見受けられず、ワシとタカミチくんがいない今、あの妖怪をどうにかできるのは外部からの助っ人に他ならないであろう。見た所君は西洋魔法使いだし、助けたのはお主しかおらんじゃろう。」

 

「いえ、僕がいなかったらいなかったで、どうとでもなったでしょうけど。それよりそんなことだけで僕を呼びとめたのでしたらさっさと京都に向かいたいのですが。」

「ふぉっふぉっふぉ、そう焦るでない。まずはワシから謝礼をしたいのじゃが、どうじゃ、今夜はこの麻帆良に泊まるというのは…。夏休みで帰省しておる生徒もおるが、君がいたアリアドネーにも負けない素晴らしい学園都市だと自負しておるぞ。」

「は、はあ。」

のらりくらりとかわされている気がする。やりずらいお爺さんだな。

 

「学園長、正気ですか? この者は得体の知れない上に何を考えているのかわかりません。そのような人物を夏休みでいつもよりも人が少ないとはいえ、生徒が大勢いるこの都市に招くなんて!!」

黒人の男性が近衛さんに反発する。

まあ、敵対しかけてたわけだし、これが普通の反応だよね。

僕のような不審人物を守るべき生徒がいる都市に案内するって発想がまず普通じゃないし。

 

「兄貴、なんか妙な事になったな。俺としちゃあ、ことを構えなくて良かったと思っているんだが。」

「そうだねカモ君。まあ、争い事は無い方がいいのは確かだよね。僕が好戦的なのは認めるけど…」

カモ君と内緒話をするが、それとは別に向こうは向こうで話が進んでいる。

当人である僕を置き去りにして。

 

「じゃが、この学園を守ってくれたのも事実じゃ。もう夜も遅いしの、そのような恩人に対し何もしないでこの夜の中追い返すと言うのはワシら、正義の魔法使いの矜持に反することじゃ。」

 

「しかし学園長!!」

「責任はワシがとる。」

 

その言葉を最高責任者に出されれば引くしかないだろう。

どうやらむこうの話はまとまったようだけど…。

 

「あの~、僕が学園に泊るとは一言も言ってないんですが…。」

 

「ふぉっふぉっふぉ、お主が勝手にワシらを助けたように、ワシらも勝手にお主に恩を返したいのじゃよ。まあ、麻帆良が滅びるか滅びないかの瀬戸際から救ってくれたにしてはこの礼は恩返しにすら含まれないようなちっぽけなものじゃがの」

 

「は、はあ、僕は先を急ぎたいのですが、思い立ったら吉日というこの国の言葉もありますし。別にお礼が欲しくてあなた達を助けたわけでもないですし。」

 

「急いでも京都は逃げやせんよ。立ち止まって周りを見る時間というのも案外大切な事なんじゃよ? それに今日はもう遅い。お主みたいな子どもはもう少し大人を頼るべきじゃよ。」

 

「その言葉、セラスさんにも言われましたが、僕にも僕のかなえたい願いがあるので立ち止まるより突っ走っていきたいって言うのが本音なんですけども…。」

 

「フォッフォッフォ、そういう向こう見ずな所は父親そっくりじゃの。」

 

心臓が異常に大きく跳ねた。時間が止まった気がした。

そしてこの人がおじいちゃんに会っていたと聞いた時から感じていた嫌な予感が確信へと変わった。

 

「学園長、彼の父親を知っているのですか?」

「良く知っておるよ。25年前にこの子の父親が初めて日本に来た時からの知り合いじゃ。」

 

間違いない、この老人は僕の正体に気が付いている。

父親であるナギ・スプリングフィールドは日本を気に入り、たびたびこの日本を訪れているという。

おそらくその時にこの老人、近衛近右衛門と知り合っている可能性は十分ある。

 

「フッー、おじいちゃんの仕業ですね。だから極力誰にも話したくなんて無かったのに…。」

原因がわかり、口からため息とともに愚痴が勝手に出てきた。

 

「ふぉっふぉっふぉ、彼を責めないでやってくれんかの?彼は彼なりに君のことを思ってワシに君のことを話したんじゃからの。」

「僕はあまり僕のことであまり周りに迷惑をかけたくはなかったんですけどね。ですので見逃して頂けると助かるのですが…。」

 

「それこそ余計な気配りと言うものじゃよ。君はまだ子どもなのじゃからもっと周りの大人を頼るべきじゃ。君も君として生きるときが来たのじゃよ。この麻帆良は本国の手が届きにくい場所じゃし、ここでしばらく過ごしてみるのもありかもしれんぞ」

 

「おい、爺、何そこのぼーやと二人だけでわかりあっているんだ。私たちにもわかるように説明しろ。」

エヴァンジェリンさんが僕と学園長以外のメンバーを代表して疑問を呈す。

 

老人が口を開こうとする。

口封じにこの老人に攻撃を仕掛けてもいいのかもしれないが、この老人の本当の実力がわからない以上、迂闊な行動は危険かもしれない。

しかもここは麻帆良という近衛近右衛門のテリトリーの中なのだ。実力以上の力を発揮してくるであろうということは容易に想像がつく。

それにこの老人は魔法社会の中でも大きな力を持っているのが想像できるし、そこまでして敵対してメリットが得られるとは思えない。

レイ・ライトノートとしても生きづらくなるし、それどころか後ろ盾が完全じゃないまま、僕の正体を公表されるかもしれない。

逆にその権力を味方につけることができればさっきカモ君に言っていたセラスさん、おじいちゃんに続き三人目の権力者の後ろ盾ができる。

いよいよ僕も覚悟を決める時が来たのかもしれない。

レイ・ライトノートという名を封印し、ネギ・スプリングフィールドとして生きるための覚悟を…。

おそらく、この老人は僕を引きとめに掛るであろう。

引きとめたうえで僕の身分を魔法社会に公表して、立派な魔法使い(マギステル・マギ)としての修練を積ませて、英雄の息子を育て上げたという実績が欲しいと言うことが手に取るようにわかる。

だが果たしてそれでいいのだろうか。僕は僕としての人生を生きたい。

誰かに操られるような、誰かの思い通りに生きるような人生なんてまっぴらごめんだ。

それでは政治の玩具にされているのと何ら変わりない。

考えているうちにも近衛近右衛門が話を進めて行く。

 

「ふぉっふぉっふぉ、この子の親は少しばかり有名での、じゃからこの子自身、身分を隠して行動しているんじゃよ。まあ、最もその身分もアリアドネーの騎士団総長(グランドマスター)が直々に用意した物であるからちゃんとした身分として証明されているんじゃがの。」

「ずっと思っていたんだが、セラスの奴、この少年に肩入れし過ぎなんじゃないのか? ここまで過保護だと何か理由があると勘繰って…、まさか!!」

「フォッフォッフォ、そのまさかじゃよ。」

 

どうやらエヴァンジェリンさんにもばれてしまったようだ。

拳に力が入る。もうここまで動いてしまった以上、今更殴りかかって止めるなんてことは無意味であろう。

 

「どういうことですか?エヴァンジェリンさん。」

「何かわかったのかね。エヴァンジェリン。」

長い刀を持つサイドテールの女の子と黒人の男がエヴァンジェリンさんに尋ねる。

 

「私はセラスとはちょっとした知り合いでな。私の予想が正しければ、おそらくここまでやってもセラスの奴は、まだまだこのぼーやの父親から受けた恩を返しきれたとは思っていまい。いや、このぼーやに自分ができる全ての事をしたとしてもまだまだ全然足りないと思っているだろうな。」

「なんだと、そこまでの人物なんて…、いやまてよ、この少年が探している人物は確か…、まさか!!」

 

ここまでいえば誰にでも、例えば少し後ろで魔力切れによって座り込んでいる魔法生徒達にだって僕の正体はわかってしまうであろう。

そしてなぜ、僕が強大な魔力を持っているのか、なぜナギ・スプリングフィールドをこんな無茶をしてでも探そうとしているのか、全て辻褄が合ってしまうのだ。

 

「うむ、想像の通りじゃ。のう、ネギ・スプリングフィールド君。」

 

この場にいる人物全てが驚きの声を上げた。

「兄貴、ばれちまったな。」

「そうだね、カモ君、いずれはばれるかなとは思ってたけど、こんなに早くばれるなんて思ってもみなかったよ。」

 

「なん…だと…、彼は6年程前に行方不明になっているはず。それに仮に生きていたとしてもまだ9歳くらいのはずだ!!

そのような姿でこのような力を持っているなんて考えられません。」

明石が驚きの声を上げる。

 

「それをいうならナギは10歳のころには麻帆良武道会で優勝しておるよ。ネギ君、君の本当の姿を見せてくれんかの?」

「いいですけど、あなたは僕をこの学園に引き入れて、立派な魔法使い(マギステル・マギ)になるための修練をこの学園で積ませたいと考えていると言うことは容易に想像がつきます。

でも、生憎ですが、僕はメガロ・メセンブリアの元老院に下手をしたら命を狙われている可能性すらあります。理由はわからないですが。そのような厄介な人物を守るべき生徒がたくさんいる学園都市に招き入れるのはあなた方にとってリスクしかないと思うのですが。」

 

セラスさんは事あるごとに暈して政治の道具になると言っていましたが、それにしてはMM元老院に対して注意し過ぎている。それ以上の事もあると考えておいて損はない。

 

 

「この学園は本国の手が届きにくいと言っておるじゃろう。この学園でそのような狼藉を働く者をワシは許さんしの。

それに君の言い分も確かじゃが、君の自分自身のための夢をこの学園で見つけて欲しいのじゃ。それを見つけてから父親を探すのも悪くはないじゃろう。」

 

「僕自身の夢、ですか?。 父を捜すと言う当面の目的があるのでそんなの考えたことが無かったな。簡単に探すことができるとは考えたこともなかったし、もしかしたら一生を賭けてでも無理な場合すらも想定していましたし。」

 

「ふむ、なら聞くがの、仮にナギを探しだして見つけた後、君はどうするんじゃ?

君はなんのために生きるのじゃ?

願いをか叶え終わってから探すというのもありかもしれないがの、君は正義の魔法使いにも、立派な魔法使い(マギステル・マギ)にも無理をしてなる気はないと言っているみたいじゃし、君が目的を果たした後、どのような事をそれからの指針にして生きようと考えているのかね?その答えをこの学園で見つけて欲しいのじゃよ。」

多分、その言い分は本当に近衛さんが思っていることであろう。しかし僕には止まれないもう一つの理由がある。

 

「僕が旅をしている理由のもう一つに永久石化(アイオニオーン・ペトローシス)に掛ってしまった村のみんなを治癒することができる強力な治癒魔法使いを探すという目的があるんです。一刻も早く見つけてみんなの石化を解いてあげたいんですが。この学園にそのような魔法使いはいないですよね?」

 

「うむ、残念ながらそのような強力な魔法使いは世界を探しても数人もいないであろうな…。君がこの学園で治癒できるような物すごい魔法使いに成長するという手段もあるんじゃがの。」

やはりどうしても僕をこの学園に引きとめたいのであろう。

周りの魔法先生達も僕の正体を知って反対するものがいなくなっているのか、静かに状況を見守っている。

 

「そうですか。だとしたらなおさらここで足を止めてる暇はないんですが。修業は旅をしながらでも出来ますし。」

 

「では君が村人たちの石化の呪文を解いたとして、自分たちの治癒のために将来を捨てて君が石化を治してくれたと石化している村人たちが知ってしまったらどのように思うのかの?

欲張りかもしれんがの、自分の夢を目指しつつ、村の人々の石化を治す、という道を取っても罰は当たらないと思うのじゃよ。」

「…ッ」

 

その質問はずるかった。

いつも父の悪愚痴ばかり言っていたスタンおじいちゃんも父とは別の人生を歩んで欲しかったから言っていたのだろうし、アーニャのおかあさんもきっと僕自身の人生を歩んで欲しいと思っているだろう。父をしたって集まってきた村のみんなも…。

口には出さなかったけどネカネお姉ちゃんだって僕に自分の人生を歩んで欲しいと考えているのは明白だったし。

そんな僕の事を考えてくれていた人々が自分たちのせいで僕の生きる未来を制限してしまったと考えてしまったら傷つくに違いない。

そう考えると近衛近右衛門の言い分に何も言い返せなかった。

 

僕のためを思っての発言も確かにあるだろうが、このようなきれいごとを言いつつも僕を自分たちの思うように育てたいと言う意図が見え隠れしている。

完全にこの人たちを完全に信頼しきるのは危険だとわかっている。

でもこの場で足を止めてもう一度自分の未来について考えてみるのも悪くはないと思う自分も確かにいるのだ。

 

「最後に一つだけ、なんでそこまでして僕をこの麻帆良に引きとめようとしているのですか? 満足のいく回答が得られなかったら、この場にいる全ての人の記憶を消して、コンピューター関連も全て壊して僕は去ります。逆に納得のいく回答であれば、あなたの口車にのって麻帆良にしばらくは滞在しようと思います。」

 

緊張が再び周囲を支配する。それもそのはずであろう。

僕はこの世界屈指の実力者である近衛近右衛門と封印されているとはいえこちらも実力は最強と言っていい実力を誇るエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルがいる前で全員記憶を消すと豪語したのだ。そして僕にはその手段がある。

 

「うむ、ここは魔法世界のよりよい未来のためという建前は捨ておいてワシの本心を話した方がよさそうじゃの。ワシはお主の父親が10歳のころから知っている。ワシの義理の息子も君の父君の戦友にして親友じゃ。もはや、ナギはワシの息子の一人と言ってもいいとワシは勝手に思っとる。その息子の子どもが幼い身でありながら自分のために生きていないのを見てそのまま見過ごせるほど、ワシは人間ができておらんのじゃ。ここにいる皆には申し訳ない、自分本位な話なんじゃがの。お節介をやきたくなってしまうのじゃよ。」

それは紛れもない本心だった。こちらの目を見返し、目をそらすこともなく瞳にはなつかしむような感情すら浮かんでいる。

 

「ははは、そのためにメガロメセンブリアの元老院に目をつけられても構わないと言うのですか?」

 

「うむ、本国の連中が何を言ってきても構わんよ。学園の皆はワシが守って見せる。無論ネギ君、君もじゃ。」

「そうやって、甘い言葉で誘い込み、僕を自分好みに育て上げようとしてるんじゃないですか?」

「否定はせんよ。それにこの事をしれば、魔法に携わる者じゃったら、君によりよい道を進んで行ってもらいたいと皆が考えてお節介をやいてくるであろう。自分のために君の力を狙って口八丁に君を騙そうとする輩も大勢出てくるじゃろう。

じゃが、今の時点でお主はそこまではっきりとした自我と自分の考えを持っておるのじゃからそのような甘言などに惑わされずに君は自分の道をいけるとワシは確信しておるよ。」

 

「なるほど、あなたの思いはわかりました。うん、少しの間ならここで休憩するのも悪くないかもしれませんね。まあ、他の皆さんが良ければですがね。」

「うむ、それでは。」

 

返答の代わりに魔法を解く。

この世界の一般的な変装魔法とルーンの魔法を組み合わせたオリジナルの魔法である。

ある程度の衝撃ならこの魔法は解けないし、おそらく誰も見抜けないであろう。

まあ、ルーンの魔法を追加したのはネカネお姉ちゃんとアーニャに変装がばれてからなんだけど。

 

人差し指の指輪が光、次に全身が輝きを放つ。

金髪ではなくなり赤と黒が混ざった髪になり、鋭さが消え丸くなった目、青から茶色に変わる瞳、身長も手も一回り程小さくなった。

レイ・ライトノートとしてではなく、ネギ・スプリングフィールドとしてこの世界で初めて大勢の人前に姿を現した。

 

周りの魔法先生、魔法生徒全てが声を出せずにいる。

 

「それがお主の本当の姿か…。ナギそっくりじゃの。年齢詐称薬の類も使わずよくあそこまでの変装ができるの。」

「その言葉を言われたのはセラスさん以来です。まあ、変装術に関しては企業秘密ですね。」

 

「皆の衆、ネギ・スプリングフィールド君を学園に招き入れるが良いかの?」

「彼の父への思い、村人への思いを聞いてそれでもとどまると言ってくれたのだ。手のひら返しになってしまいますが、ここで断ってしまえばそれこそ正義の魔法使いの恥ですよ。」

先ほどまで反発していた黒人の男が一転、穏やかな表情で意見を放つ。

どうやら反対の意見もないようだ。頷いて同調している者すらいる。

僕が言うのもおかしい話ですし、なんか単純すぎる気もしますが…、それでいいのか麻帆良学園。

 

「今日はもう遅いし、ここらで解散するとしようかの。皆、麻帆良の守護をするために長時間戦ってくれて御苦労じゃった。謝礼は後で君たちの口座に振り込もう。それでネギ君の寝床を決めたいのじゃが。宿直室か学園長室あたりになるが良いかの?」

 

「僕としては寝られればどこでもいいですよ。今日もさっきまで森で野宿していましたし。」

「くくく、案外野性児だな、ぼーや。おい爺。このぼーやがこの学園にいる時の寝床なら私の家に案内するぞ。ぼーやが寝るスペースくらい確保できる。」

エヴァンジェリンさんが名乗りを上げた。

 

「ふむ、エヴァか…。では任せてよいかの?」

 

「え? いいんですか?あと僕としては女の子に部屋にいきなりお邪魔するのは少し心苦しいのですが…。」

「気にするな、先ほど助けられた礼だ。いいだろう?茶々丸?」

「はい、マスターが決めたことならば…。」

緑の女の子もエヴァンジェリンさんに同意する。

それにしてもこの子少し、周りの女の子と違うような…。

 

「学園長!! 仮にも英雄の息子ですよ。それにエヴァンジェリンはナギに封印されたのでしょう?息子であるネギ君に何かするかもしれません。同室させるのは危険なのでは?」

黒人の男が学園長に食ってかかる。

「フォフォフォ、エヴァなら大丈夫じゃって。余計なまねはせんじゃろうて。ワシとしては孫のこのかと一緒の部屋に住んでもらって機を見てお見合いをしてもらいたいんじゃが…。」

「学園長、最近それのしすぎでお嬢様に嫌われ気味なの気が付いています?」

「ひょ!?」

先ほど剣を交えようとした眼鏡をかけ白い髪、白いスーツに身を包んだ刀を持った女性が学園長に衝撃(笑劇)の事実を伝える。

 

「ふ、そのような騙し打ちは小物がすることよ。悪の魔法使いにも悪の魔法使いなりの美学がある。まあ、家賃として血を少し頂くかもしれないがな。くっくっく。」

「なっ、やはり危険のではないでしょうか?」

 

エヴァンジェリンさんが意地の悪い発言をし、黒人の男性が律儀にもそれに乗っかる。

それを見かねて僕も自分の主観を述べる。

「大丈夫ですよ。少しだけの時間しか話してはいませんが、それだけでエヴァンジェリンさんが優しくていい人なのは何となくわかりますよ。」

 

「ええ、そうですね。マスターはなかなか素直になれないだけで本当は心優しいお方です。」

「クス、同室の人がそういうなら大丈夫ですね。」

エヴァンジェリンさんの従者であるらしい緑の髪の女の子が僕の言葉に同調する。

 

「こら、貴様ら、私の人格を勝手に決めるな!! 私は「闇の福音」と呼ばれた悪の魔法使いだぞ!! そのような年頃の少女みたいな性格だと判断するんじゃない!!」

「ではネギさん、案内いたします。こちらです。」

僕たちは麻帆良に向かって歩き出す。

 

「あ、はい。お願いいたします。あなたのお名前は?」

「すみません、絡繰茶々丸と申します。ガイノイドです。よろしくお願いいたします。」

「よろしくお願いします。」

「こらあああ、無視するな!!」

ガイノイドってなんだ?まあ、時間はあることだし、気になったら聞くことにしよう。

エヴァンジェリンさんの怒りの声をBGMにしながら麻帆良学園へと向かう。

 

「まさか、闇の福音にこのような一面があろうとはな」

くっくっくっと笑い声を上げながら後ろで先ほどまで銃を持っていた褐色で長身の女の子が笑っている。

「そうでござるな。あのように話していればくらすめーとともすぐに仲良くなれるでござるのに。」

「まあ、あの人なりに考えがあるのでは?」

それに続くように忍者な女の子と刀を無ってる女の子が続いている。

 

「それよりも、ネギ殿といったか、お主はしばらくここに滞在するのでござろう?」

不意に後ろから続く女の子3人組から声をかけられた。

 

「あ、はい。そのつもりですが…。」

「拙者よりも遥か高みの腕前と見たでござる。もしよければ、暇を見つけて手合わせしてを欲しいのでござるが…。」

「はい、いいですよ。」

「あ、あの、私とも手合わせをして頂きたいのですが…。」

「大丈夫ですよ。僕はしばらくエヴァンジェリンさんの家か、有名な図書館島という所にいると思いますので、いつでも声をかけてください。それよりお名前を教えて頂きたいのですが。」

あれよあれよと言う内に忍者の子とサムライガールと手合わせする約束を取り付けられてしまった。

 

「失礼しました。私は桜咲刹那と申します。京都神鳴流という流派の剣術を使います。」

「拙者は長瀬楓と言うでござる。甲賀忍法を自己流にあれんじした楓忍法を使うでござる。」

「私は龍宮真名だ。傭兵で主に銃を使う。私はこいつらみたいに手合わせは望まないが何か依頼や頼み事があれば承ろう。もちろん有料だがな。」

「ははは、個性豊かなメンバーですね。」

「お前も人の事を言えないけどな。」

この世界でネギとして初めて自然体で会話をしたように思える。

 

「おっと、僕の自己紹介ですね。僕はネギ・スプリングフィールドです。まあ、知っていると思いますが、ナギ・スプリングフィールドという魔法世界では有名人の息子です。主に槍術と魔法を使います。

魔法剣士です。いや、槍をメインにして戦っているので魔法槍士ですかね。よろしくお願い致します。

こっちのオコジョはアルベール・カモミール、通称カモくんと言って僕の友達です。」

「おう、よろしくな。お譲ちゃん達。」

「エロいから注意してください。何か粗相を起こしたらその場で裁いて貰っても構いませんよ。」

「ちょ、そりゃねえよ、兄貴!!」

 

笑いが起こる。その瞬間、ネギとして初めてこの世界に認められたような気がした。

 

不安や懸念点はたくさんあるけど、とりあえずは、僕の、ネギ・スプリングフィールドとしての人生がここから始まっていくのだ。

 




まほよで橙子さんが青子にかっていた魔術を解呪するときに使用したエイワズの原初のルーンなら永久石化(アイオニオーン・ペトローシス)を多分解くことができるのではないかと作者は考えております。UQホルダーでは石化解除専用のアプリもありますし…。
しかし村のみんなは地系最強の呪文と言われている永久石化をくらって何年も経っています。
もともと魔法の形態が違う裏ワザ的な物で無理に解いてしまうと、新しい問題に直面する可能性も考えられなくはないので、ネギは大事を取ってこの世界の魔法で正式に解呪しようと考えている次第です。
また相変わらずノリと勢いで書き進めているのでおそらく矛盾点や突っ込み所が多々出てきていると思いますがよろしくお願いいたします。

ノリでエヴァ・茶々丸と同居することにしたけど、アスナとの関係やあの部屋だから起きたイベントなどどうして行こう…。
他にも超にネギ君のスペックが筒抜けじゃね?とか刹那、手合わせなんかしてるより、きちんとお嬢様を護衛しろとか他にも色々突っ込みどころ満載ですね。
まあ、何とかなりますよね!!(自分で自分の首を絞めていくスタイル)


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6話 部屋と対策と修行

作者はあまり頭がよくないから天才キャラを天才っぽく書けません。ご了承ください。
またUQHOLDER連載再開までにはこの小説も定期的に投稿したいとか抜かしておりましたが目処が立ちません。すみません
プロローグ以来の3人称もどき。読みにくかったらすみません。




エヴァンジェリンの家に向かう道中、カモミールが小声でネギに話しかけた。

「おい兄貴、大丈夫なのか?あのエヴァンジェリンの家で暮らすなんてよ」

「なんで?」

「何で?じゃねえよ、あの闇の福音だぞ。何されるかわかったもんじゃないぜ?」

「大丈夫だよ。話して見ていい人だなと思ったからね。まあ、仮にそこで何かあっても僕に見る目が無かっただけだと笑って受け入れるさ。」

「兄貴がそれでいいならいいけどよ。」

「おい、聞こえているぞ小動物。それにしてもぼーや、お前は本当に9歳か?先程も思ったが子供にしては達観し過ぎているぞ。」

「まあ、育った環境が環境でしたからね。それにエヴァンジェリンさんの家ならカモくんも下手に悪さできないでしょうし…。」

そのネギの毒舌を受けてカモミールが兄貴〜と情けない声を出すが皆にスルーされる。憐れだ

「ほう、私を利用するか…。ますます気に入ったぞ、ぼーや!!」

「まあ、利用するなんて大層な事ではないですけどね。」

エヴァンジェリンの物言いに苦笑しながら返す

 

 

そうこうしている内に学生街のはずれの森の中にあるログハウスに連れてこられた。

 

「ここが私の家だ。そこそこ広いからぼーや1人くらいなら住むに困ることはないだろう。」

「物語に出て来そうな素敵なお家ですね。」

「ははは〜、そうだろう。」

 

家を褒められてエヴァンジェリンが上機嫌に胸を張る。

 

「では、どうぞ」

 

茶々丸に導かれてログハウスの中に入る。

リビングは中々に片付いていてやっぱり女の子が住む家なんだなと実感させられる。

 

「で、ぼーやが住む部屋だが…、そうだな。その突き当たり右の部屋が物置になってるから、そこを片付けて使うがいい。今日はもう遅い、シャワーはまた明日だな。」

「はい、わかりました。」

 

ドアを開けると目の前に女性型の人形が大小所狭しと乱雑に置かれていた。

これだけ人形があると可愛いというよりも不気味という印象が先に出てくる。

さすがはドールマスターといったところか…。

ネギが感心していると後ろで会話が続けられる。

「マスター、この部屋はマスターの人形置き場になっている部屋ですが、よろしいのでしょうか?」

 

「かまわん、ぼーや。好きに使え」

「はい、整理整頓は慣れてます。部屋を貸していただきありがとうございます。」

「ほう、この光景に物怖じしないのは流石だな。それに片づけに慣れているとは子どもなのに偉いことだな。」

「いえ、僕の師匠がこういうのをやれば出来るのに全然やらない性格でして、それで僕が変わりに片付けていたので自然に慣れてしまったんですよ。」

 

「ほう、セラスはこういうことが得意な方だと思ったのだが…。」

 

「いえ、槍の師匠の方です。まあ、女性ということは共通していますが。」

 

「ほう、それは気になるな。私の知る中でぼーやのような手練れを育てられるような、そんな女傑は私の知る限りいなかったと思うのだが」

 

「それはまた後ほど機会があればお話しますよ。まずはこの人形を片付けないと」

 

一体目の小型の人形を手に取る。その瞬間、その人形がしゃべり出した。

「ン?オ前ハ誰ダ?」

「あ、今日からこの家に暮らすことになったネギ・スプリングフィールドです。あなたは?」

「茶々ゼロダ。俺ノ姿ヲ見テモ動ジナイトハ、ナカナカ見所ガアルガキジャネエカ。」

「はぁ、ありがとうございます。」

まあ、この程度の事で驚いていたら生きていけないような環境にいたから動じなかっただけであるが。

「あ〜、そういえば一昨日、生意気な口を聞いたからこの部屋に閉じ込めて頭を冷ますように言っていたのを忘れていたぞ茶々ゼロ。」

どうやらやはり、このホラーチックな人形はエヴァンジェリンさんの所有物であるようだった。

 

「ヒデェゼ、御主人、俺ヲ忘レルナンテ。」

「だったら主に対して生意気な言動を避けるべきだな?」

 

「オウヨ、ワカッタゼ。ソレニシテモ、家ニ男ヲ連レ込ムナンテヤルジャネェカ御主人。」

 

「ほう、まだ反省が足りてないと見える。ちっ、まあいい茶々丸、茶々ゼロを連れてこっちに来い。」

「了解しました。姉さん、こちらへ。」

「今日はもう遅い。これからの方針などの話はまた明日だな。」

 

「はい、ありがとうございます。」

「ふん、私を悪の魔法使いだと言う事を忘れない事だな。礼を言うのは早いかもしれないぞ。」

「気にしないでください。マスターはお礼を言われ慣れていないので照れているだけです。」

「兄貴、俺も大丈夫な気がしてきた。」

「でしょ?」

「お前らなぁ、あまり私を馬鹿にすると家から追い出すぞ。」

「ではネギさん、おやすみなさい。」

「はい、茶々丸さん。エヴァンジェリンさん。おやすみなさい。」

「こら、離せ茶々丸!まだ話は終わってないぞ。」

「マスター、夏休みとはいえ夜更かしをし過ぎました。寝た方が良いと忠告致します。」

茶々丸が茶々ゼロを頭に乗せ、エヴァンジェリンを抱きかかえながら器用に片手で扉を閉めて物置部屋兼今日からネギの寝床を後にする。

「なあ、兄貴。吸血鬼って夜行性じゃなかったか?」

「多分、魔力の殆どを父さんに封じられたせいで普通の女の子と変わらない体質になってしまったんだと思うよ。」

「なるほど…。もしかしたらそれを解く手伝いをさせられるかもしれないぜ?」

「何もしないで厄介になり続けるのも気が引けるし、それが家賃の変わりになるなら安いものだよ。」

「そんな事したら麻帆良にいるほぼ全ての魔法使いを敵に回すんじゃねえか?まあ、兄貴がそれでいいなら俺っちはついて行くだけだけどよ。」

「まあ、そこら編は詳しい話を聞いてから決める事にするよ。何もないとは考えられないしね。心配してくれてありがとう、カモくん。あと魔力の大半が封じられてるとはいえ、何かしらの武芸を納めた感じの隙のない歩き方をしてるから悪さはしない方がいいよ。」

「マジでか?」

カモミールが図星を疲れたのか固まり、ネギから告げられた事実に身を震わせる。恐らくは何も知らないで下着泥棒をしていたらどんな罰が待っているのかという事を考えているのだろう。

「いやいやいや、ここに来る道中結構転びかけてたぜ?」

「まあ、信じないならそれでもいいけど、何かあっても助けないからね」

「お、おうよ。相変わらず兄貴は厳しいぜ。」

カモミールが大げさに肩を落とす。

ネギはその姿に苦笑する

 

「今日は遅いし、もう寝ようか」

 

こうして長い夜は終わりを告げるのであった。

 

 

 

*****************************

 

所変わって麻帆良学園某所

 

「あれは何の魔法ネ、私のご先祖様があんな魔法を使えるなんて聞いてないネ」

お団子三つ編みとほっぺの丸印が印象的なチャイナ服に身を包んだ少女=超鈴音(チャオ・リンシェン)がパソコンに同機されたスクリーンに映る赤毛の少年を見て頭を抱えて呟いていた。

この少女は実は未来人であり、ある目的を果たすために過去へと渡ってきたのである。

また自らも才女で中学生にして麻帆良最強の頭脳とも言われ、北派少林拳も嗜む、文武ともに天才的で極大魔法すらも使いこなす魔法使いでもあり、ついでに言うとモニターに映ってる赤毛の少年の子孫に当たる人物である。

麻帆良に攻めてきた敵を利用して、それを迎撃する魔法先生や生徒の戦力を分析するために飛行可能な超小型カメラを飛ばし麻帆良各地を監視していたのだがその敵をあっさり倒した少年=ネギ・スプリングフィールドを見て絶句していたのだ。

 

「大体、ネギ・スプリングフィールドは行方不明というのもおかしいことネ。でも私が生きていることから死んでないことはわかっていたがこれほどの力を持っているとは…、これは敵対するより味方につけた方が利口な相手ネ。」

未来の知識ではこの時期のネギは魔力は圧倒的だが技術は一般魔法使いよりも少し高い程度の力量だったはずなのである。本来なら敵対しても抑え込める相手だったのである。

だがしかし実際に見ると魔力も技術も圧倒的で、ネギが本来使えるはずのないわけのわからない未知の魔法すら操っているのである。

 

(私が過去に来た事によって過去に起こるはずだった出来事が大幅に変わっているのか…?)

もう少なくともネギに関しての未来の知識は通用しないであろう。

心の中でそうつぶやくと背後に見知った気配を感じた。

「ふむ、超をしてそこまで言わせるとはな…。あの少年の実力はそこまで卓越しているということか…」

先ほどまでその少年と敵を迎撃していた龍宮が超に話しかけた。

「龍宮サン、お疲れ様ネ。うむ、計算外の力を持ってるヨ。戦闘のプロである龍宮さんから見てこのネギ少年の力はどう映るヨ?」

「ふむ、難しいな。おそらくだがこの少年は1割の力も出してないだろうな。その場から一歩も動いていないし、あの大槍も本来の武器ではないだろう。」

「なぜそう思ったヨ?十分使いこなしているように見えたし、あの武器もエヴァンジェリンさんの言うことが事実だとしたらとんでもない武器ネ」

龍宮の言葉に疑問があるのか、情報を多く収集するためなのか、龍宮に質問する。

「うまく説明できないんだが、槍を振るう動きにかすかな違和感を感じたのと、武器に対する愛着みたいなものが少ないと感じたんだ。刹那が刀に向けるそれとはまた違った意識を向けている気がする。」

「そうか…。味方にするにしても無効化するにしてもかなり大がかりな対策が必要になりそうネ。」

「まあ、まだ時間はある。焦らずに計画を進めればいいんじゃないか。それにしても何にそんなに驚いているんだ?あの炎の魔法は確かに脅威だがあの程度、科学にしても魔法にしてもお前には容易く出来る程度だろ?」

龍宮にしてみれば至極当然な疑問だった。滅多に使うことはないが炎の魔法を得意とし、茶々丸を作ったその魔力と技術力があれば再現不可能な程のものではないと思うのは当然、なぜその超がネギが炎の魔法を使ったシーンを見て頭を抱えて考えているのかの方が疑問なのだ。

「スナイパーで目がよく、さらに元魔法使いの従者であった龍宮さんにも気がつかせないとは…恐ろしい程の腕ネ。そしてなんと隙の無い魔法ヨ」

「ふむ、というと。」

龍宮が続きを促す。自分が気が付けなかったと超が言った。それは自分の力が至らなかったということだがこの年にして数多くの戦場を越えてきた龍宮はそのことに心揺れたりしない。むしろ至らない所を改善し、次の戦場に活かす意気込みで続きを促す。

大人でもほとんどの人が自分の力量を否定されれば憤るものだが龍宮はこの年にしてその境地はとうに超えているのだ。

別アングルからの映像がスクリーンに映る

「この映像をよく見るヨ、ネギ少年は宙に文字を書いているだけ、それも詠唱なしでそこから膨大な熱量の炎の魔法を発動しているネ。こんな魔法聞いたことも見たこともないネ。しかもそのことにエヴァンジェリンを含めたその場にいた一流の魔法使いたちや従者が気付いてないと言うことも異常ネ。」

「確かにそう言われると凄まじい技量だな。これは私が敵対したとして何分足止めできるやら…」

そして恐らくであるがネギ・スプリングフィールドはこの小型監視カメラに気が付いている。

他の魔法使いも万全であれば気が付くであろう程度の隠蔽しか出来なかったのだ、あれほどの実力者が気がつかないわけがない。

その上でこの魔法を発動させたのだ。つまりあまり見せたくはないが見られても大しては困らないという自信の現れと見て取れる。

あの場でカメラの存在に気づいているのは茶々丸とネギと龍宮くらいであろう。

力と技術に裏打ちされた慢心の無い自信程厄介なものはない。

味方に引き入れるにしても無効化するにしても情報が必要だ。

つまりは仲良くなって損はないだろう。それに自分のご先祖様がどんな性格をしてどんなことを考えながら生活しているのかにも興味があった。自慢の肉まんも食べて貰いたいとも考えていた。

 

焦りと好奇心がないまぜになった心情を胸に超はネギを味方に引き入れる為に龍宮を交えて作戦を考えるのであった。

そうして深い夜はさらに更けて行った

 

 

*****************************

 

翌日の昼

 

麻帆良学園から少し離れた川が流れる森の開けた所でネギは昨日助けた楓と刹那と対峙していた。

何回も何十回も挑みかかってはネギに吹き飛ばされているので、もう二人は息も切れ切れでボロボロだった。

馬鹿レンジャーと呼ばれる楓の夏の補講が終わるのを待って、昨日約束を取り付けていた手合わせを早速することになったのだ。

ネギは木でできた棒を持って構え、楓と刹那はそれぞれ自分の獲物を手にしていた。

龍宮とエヴァンジェリンと茶々姉妹、カモミールがその様子を見ている。

もう何十回目の立ちあいになるだろうか…。もう何回地面にたたきつけられただろうか…、それでも二人は意地を見せ立ちあがる。

 

そして楓が16体に分身して8方向から2体ずつ同時に襲いかかる。

次の瞬間、ネギが視界から消え去ると同時に分身の2体がやられ、気が付いたら楓本体を含めた分身全員が空中を舞っていた。

 

その瞬間、ネギは動じず、手前の2体を刺突で一瞬のうちに迎撃すると自身をとらえきれていない本体の楓の姿を確認し、1歩のバックステップで14体の包囲網を振り切った。

そして着地と同時に手に持つ棒を高速で回転させながら今度は逆に楓の群れに突っ込み、残りの14体を殲滅したのだ。

作戦の成功を確信した思考の隙をついた見事な動きだった。

そして何より思考の回転と基礎動作の素早さの差がつぶさに出たのだ。

たった2歩で甲賀忍者の頂点の中忍に位置する楓を吹き飛ばしたのだからその選択の精確さと実行速度は凄まじいものだとわかるであろう。

 

「動きはいいですが集中力がまだまだ甘いです。人数を活かして取り囲み、常に敵の死角を取るまでは悪くない作戦ですけど、だとしたら囲み続けないと意味がないですよ。囲んだ時点で安心しないでください。忍者の足は確かに脅威です。思考の速さも悪くないです。ですけどかすかに思考や集中力に隙があります。もっと研ぎ澄ました状態を維持したまま戦いに臨まないと格下が相手でも足元を掬われかねませんよ。」

楓を吹き飛ばしながらアドバイスを与える。このようなことがもう何十回も行われているのだ。

そこに雷を野太刀に纏わせてサイドポニーテイルの少女 刹那が突っ込んできた。

楓を迎撃した直後の隙をついての雷鳴剣による攻撃、スピードもパワーもキレもタイミングも申し分ない一撃を刀の腹を横から高速で薙ぎ払うことで防いだ。

そして逆に技を防がれ、かすかに動揺した刹那の腹を前蹴りで蹴り飛ばした。

「いい攻撃です。しかし思考を止めるのは頂けません。戦場では何が起こるかわかりません。そのたびに思考を止めていたら生きていけませんよ。常に思考を止めないで思考を纏うようなイメージを持って行動してください。」

 

麻帆良でも屈指の実力を持つ楓と刹那が魔法剣士タイプの魔法使いとはいえ、魔法を使わない魔法使いに傷一つ付けられずに一方的に弄ばれているのだ。

それも明らかに手を抜かれていると言うのがわかる。

 

力の差を改めて感じながら楓と刹那は立ちあがり、再びネギに向かって走り出した。

 

「改めてみるとぼーやの技量は半端ないな。動き一つ一つに全くの隙を感じない。近接戦じゃ万全状態の私でも勝てるかわからんぞ。」

「本当なら一歩も動かなくても倒せるくらい差があるんじゃないか?それなのにあえて動いて自身の欠点を見つめさせているのか?」

「本来ナラ一瞬デ細切レニ出来ルクライノ実力差ガアルナコリャ。」

「いや、あの二人も十分凄い実力だろ…兄貴相手にここまで立っていられるんだもんよ。」

「お二人とも大丈夫でしょうか?(オロオロ)」

5人がそれぞれの反応を見せる。

するとまた二人が吹き飛んでいた。

 

「ひとまずはここまでにしておきましょう。」

ネギの合図で休憩を取る。

ネギは呼吸一つ乱しておらず、汗もあまりかいてはいない。

対する刹那と楓は息も絶え絶えでボロボロで同じ組手をしていたとは思えないほどの差が出ている。そしてボロボロなのに大きな怪我はしていない。

それほどまでに実力に差が開いているのだ。

 

「ふふふ、わかっていたがここまで差があるとは…、それに自分の至らなさが次々とわかって、これまで積み上げてきた自信が崩れてしまいそうです。」

「そうでござるな~。世界は広いということなんでござろう。しかしこの手合わせで拙者たちはもっと上にいけるでござるよ。そのように考えるとそう悲観するのもではないでござる。」

「ああ、そうだな。」

「お二人とも筋は悪くないですよ。現段階でも一般的な上級魔法使いくらいならあっさり倒せてしまうくらいの実力は持っていますね。このまま成長すれば世界でも屈指の使い手になれる素質はあると思います。」

落ち込み気味の二人を励ますようにネギが声をかける。そしてこの言葉にウソはない。

 

「ふっ、刹那も楓も見事に昨日の戦闘よりボロボロだな。こんなお前達を見るのは初めてだよ。」

龍宮がからかうように話しかける。

「面目ないでござる。しかし地面に倒れ伏して起き上がるごとに成長できている気がするでござるよ。」

楓が充実した表情を浮かべながら龍宮に言い返す。

「ネギさんはどのような修業を積んでその実力に至ったのですか?」

刹那がネギに問いかける。

「僕ですか…。」

 

次の瞬間、修業の風景がネギの頭を過っていた。

 

**********************************

 

 

「よいかネギよ、今から一呼吸の内に10撃、ほぼ同時に刺突を放つ…。防がないと死ぬから心せよ。」

「ちょっと待ってください、師匠」

「問答無用だ。ではいくぞ」

「うわああああああああああああああああ」

 

 

 

「ネギよ、ルーンの魔術を全部覚えたみたいだな。」

「はい、師匠。」

「では今からこのゲイボルクをお前に向けて全力で投げる。18の原初のルーン全てを使い、この一撃を防いで見せよ。完全にマスターしていたら苦も無く防げるはずだ。」

「ちょ、待っ、うわああああああああああああああああああ」

 

 

 

「師匠、城の外に出て何をするんですか? え?、跳ね橋あげちゃうんですか?」

「今からお前に鮭飛びの跳躍術を授ける。この城壁をジャンプで昇れ。特殊な結界もあるが頑張ってすり抜けてこい。杖は没収してあるから魔法は使えんぞ」

そういうと師匠は跳躍して城壁の上に飛び乗った。

凄まじい跳躍だがそれだけではない。影に国に救う化け物達を一切いれない結界を簡単にすりぬけて着地したのだ。その跳躍にはスカサハの持つ技術の粋が詰まっていた。

「この通りだ。時間が経つと今のお前では倒せないような猛獣共や神のなりそこないの連中が来るから早く昇るか飛び越えるかしてこい。」

「ちょ、師匠、せめてコツくらいは教えてください。待ってえええええええ」

 

 

 

「ネギよ、オガム文字を覚えたみたいだな。」

「はい、師匠。嫌な予感がしますが覚えました。」

「ふむ、では音と姿を消す術式を使い、神のなりそこないが無断占拠している廃城からある宝を奪ってこい。宝を持ってくるまで戻ってくるなよ」

「師匠、ちなみにその神様の実力は?」

「今のお前では相手にしない方が得策であろうな。」

「やっぱり…」

 

 

 

「ネギよ。あそこにいるのは低級だが竜種の一体だ。この槍を投擲して急所を突き一撃で仕留めて見せよ」

「師匠、それ普通の槍ですよね?どうやって鱗の堅い竜を倒すんですか?」

「クー・フーリンはあの程度のドラゴンは素手で心臓をわし掴みにして一撃で倒すぞ。武器を使ってるんだからお前にも出来る。ちなみに不意打ちの一撃で仕留め切れなければ今のお前では逆立ちしても勝てないレベルの実力だからしくじるなよ。手は貸さんからな」

「ちょ、師匠。根拠はどこ、せめて話を聞いてください師匠おおおおおお」

 

 

 

「あれはこの前お前が宝を奪った神のなりそこないだな…、ふむ、宝を取り返しに来たと見える。

あれはルーンをくらうイノシシだな…、なかなかに育っているいい猪ではないか。

あれはこの前お前が槍で殺した竜が所属していた群れのボスだな。ほう、なかなか強そうだ。本来であれば私が戦いたいが今回はお前に譲ってやろう。

あれはもう死んでいるのに死に場所を求めて彷徨っている亡霊の群れだな。全身呪いみたいなものだが…

よしネギよ、あれ全部と戦ってこい。何、今のお前の実力なら大丈夫だろう」

「うわああああああああああああああああああ」

 

 

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「地獄のような修業でした…。気を抜けば一瞬で死ねる修業と実戦の中で、生き残るために必死で槍を振ってたら自然に身に就いていたという感じです。」

一瞬でこれまでの修業の一部を思い返し、ネギがいい笑顔を見せながら明るく何事でもないように語る。

その明るさが逆に不気味だった。

 

「ま、また壮絶そうな修業を経たようだな」

エヴァがどのような修業内容かはわからないがそのハードさを察しつつ少し引き気味な笑みを浮かべながら突っ込む。

 

「まあ、それを他の人に強要したりはしませんよ。」

 

ネギの言葉に楓と刹那はほっとしたような、残念がるような何とも言えない表情を浮かべる。

 

「でも鍛えるのなら、中途半端は嫌ですし、修行不足が原因で死んでほしくないですからビシビシ行きますよ。それに教えることで僕自身、何か見えてくることもあると思いますし、真剣にやらせて頂きます。」

「お願いします(するでござる)」

 

数十分後、また麻帆良の森に剣戟音が響き渡っていた。

その音は日が暮れるまで続くのであった。

 




修業解説
・一呼吸で10撃…敏捷Cのアーチャーが音速での戦闘が可能だと言われております。ランサーはそのアーチャーが目で追えないほどの速度で刺突を繰り出しています。てか体すらも捉えきれてなかった。
ですのでその入門編みたいな感じでこのような修業をしているのではないかという妄想

・18のルーンでゲイボルクを防ぐ…HFのハサン戦で兄貴が泥を防ぐために張ったルーンの結界、泥には難なく破られたがあれは例外。自分のB+ランクの宝具はもちろん、エクストラのドラマCDではAランク対城宝具である呂布の宝具を防ぐ程のスペックを持つ破格の結界。そして師匠だったらこれくらいの無茶ぶりはしそうだと勝手に妄想

・鮭飛びの跳躍術…影の国でクー・フーリンが習得したと言う跳躍術。スカサハの住む城に入るために必須な技術らしい。型月の影の国は原典以上に修羅の国っぽいのでオリジナル設定で化け物どもを城内に入れないために城壁に結界がはってある設定を勝手に追加
これがあるのでネギは飛翔魔法が使えなかった頃からある程度の空中戦は可能だった。
またこの小説では瞬動術の一種であるとセラスは分析しているがこちらの方がはるかに速い。(一般的な瞬動術は音速以下であることがUQHOLDERで判明したので。ただ完全体の楓が縮地で宇宙をまたにかけて活動したり、雷速瞬動時のネギと互角にやり合うフェイトやラカンみたいな化け物もいたりするので一概には音速以下とは言えない。)


・音と姿を消すオガム文字…クー・フーリンは戦車にこのオガム文字を刻んで無音不可視の戦車を操り、敵の軍勢を蹂躙・殲滅したことがあるエピソードに従って、ちなみにマントに刻んでクー・フーリン自体がその効果を得たこともある模様。
型月ではスカサハもクー・フーリンも使えるか不明だがこの小説内では使えることとする。
ちなみに師匠はルーンの方が実戦向きなのでそっちを好むとマテリアルにあった気がするので使えないことはないと思う。
ルーンの魔術と合わせてさらにチートになる模様(作者は馬鹿だから後先考えてない)

・竜種相手に修業…クー・フーリンは飛んでいる竜を相手に素手で心臓を鷲摑みにして余裕で打ち取ったエピソードから、ちなみに腐っても型月における幻想種の頂点なのでその当時のネギが真正面から戦って勝てる可能性は一切ないがFateは相性ゲーな部分も大きいので策を巡らせた不意打ちなら何とかなるとしている。それでハサン先生が遥か格上のアルトリアと兄貴を撃ちとってるのでありかなとの甘い考え(Fate/goでは主人公パーティーがホイホイ倒してるけどあれはカウントしないこととする。てかgoの竜種の扱い雑すぎぃ!!ちなみにネギまでも古龍種はエヴァと並んで最強格だが普通の竜は神鳴流5人掛りで倒されたり、修業中の楓に目隠しありで倒されたり、魔法騎士学校を卒業してない未熟な4人の魔法使いに一杯食わされたり、ラカンの表で結構下位いたりするので差が激しい。てかその古龍も実は扱いは雑、同等の力らしいラカンにWパンチでぶっ飛ばされたり、エヴァに一瞬で凍結されてりして散々な扱い。)


また超はこの時点では並行世界の分岐を理解していないので行方不明だったネギが生きているということを信じ切っていました。

麻帆良祭編までの1部の構想を練ろうとしていたはずなのになぜか2部の魔法世界編の構想ばかり先に浮かんでしまう…
1部の方が好きなのに2部の方が個人的に書きやすそうな気がする。
書いてて思ったけど展開遅すぎる…。もっとサクサク時系列を進めないと本編に入れないぞこれ…。
そして結局、ギャグと恋愛の描写の苦手さは克服できていない模様。


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