IS - イチカの法則 - (阿後回)
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第0章 物語終わりから新たな物語へと
プロローグ1


??? side

「あれから5年も経つのか。」

5年前のあの日の出会い。

 

3年前の能力者との戦い。

 

2年前の繁華界での戦い。

 

色々なことがあり、色々な人と出会い、色々なことを知った。

 

「だが、始まりはあそこからだったんだ。」...

 

another side

インフィニット・ストラトス。 通称”IS ”。

それは、宇宙進出の為に作られたマルチフォームスーツ。開発時は、注目されなかったが、なんらかの事故により、世界各国の軍事コンピュータが暴走を起こし、2341発のミサイルが、日本に向けて発射された。2341発のうちその半数以上を搭乗者等不明のIS《白騎士》が迎撃した。

後に、この事件を『白騎士事件』と呼ばれる。

ISの登場により世界は歪み、宇宙進出から、軍事方面に転用された。さらに歪みは続き、ISは女性以外乗れないことから、『男女平等』から『女尊男卑』へと移り変わっていった。

そんな世界に織斑一夏という少年がいた。

件のISの生みの親たる篠ノ之束とその友人たる織斑千冬、物事に十全に発揮できる秋一を兄に持ち、両親に捨てられたが、幸せに過ごしていた。

だが、幸せはそう続かず才能を発揮した二人と凡人だった彼は比較され、兄秋一を中心とした周囲の人間によっていじめられ、ISの登場によりさらに悪化していった。

 

Ichika side

 

〜5年前〜

 

「人間なんてみんな死ねばいいのに。」

 

俺は、人間に絶望していた。自分は、努力しているのに勝手に期待して勝手に失望して努力が実らなければ『出来損ない』扱いをし、努力が実ると『織斑千冬の弟なら当然。』と言われる。そんな毎日はとても苦痛だった。それでも俺は、努力をしていればきっと誰かが認めてくれると信じていた。ずっと、才能のある姉や双子の兄に比較され続いたとしても努力を続ければ姉や兄の隣に立てると信じていた。兄のあの言葉を聞くまでは。

『あの出来損ないくんまだ頑張っているみたいだね。そこらへん兄としてどう思うよ。 織斑くん。』

『見ていて滑稽だね。あの出来損ないが僕や姉さんの隣に立つことなんてできるわけがないのに。』

『まあ、そうだよね〜。』

 

『うん、あんなクズさっさと死ねばいいのに。』...

 

そこからは、聞いていなかった。ただただ呆然としていた。兄からは好かれていないとは思っていたが、自分がそこまで嫌われているとは思っていなかったのだ。だが後になって考えると自分に腹が立ってきた。あんなクズどもを目標にしてきた自分や、自分をいじめを行ったあのクズどもが...。だから僕は、あいつらも、ISを生んだあの人も、この腐った世界も全て許さない。

 

 

「へぇ、君は面白いことを言うんだね。」

 

 

考えごとにふけっていて気づかなかったが、人がいるのだと思い、声の方を向いてみると頭に包帯を巻いた一人の少年が立っていた。

 

「僕の名前は、ロベルト・ハイドン。君は。」

 

「一夏」

 

「イチカっていうんだね。じゃあイチカ、僕と一緒に人間を滅ぼさないかい。」

 

その日、その言葉を聞かなければ、真実を知ることはなかっただろう。だが後悔はしていない。あの日、あのとき、あの人に出会わなければ、『力』と、『理想』手に入れることができたのだから。

だから俺は、その『人』と契約した。



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プロローグ2

前回は書けませんでしたが、はじめての作品なのでよろしくお願いします。


Ichika side

この5年間いろいろなことがあった。

 

 

・自分に妹がいること。

 

 

・自分の父親が地獄人の守り人一族だったこと。

 

 

・自分に天界獣が受け継がれたこと。

 

 

・繁華界で《職能力》という特殊な能力を手に入れたこと。

 

 

そして...世界には自分を認めてくれる、信じてくれる人がたくさんいるということ。

 

〜3年前〜

 

《ボクが優勝しちゃったら、ボクは君達を滅ぼす。》

 

《天界人も...地獄人も...人間も...

 

ボクの夢のために滅んでもらう。》

 

「久しぶりだね植木君。」

 

「お前は、織斑一夏‼︎」

 

「俺の名前は、イチカ・ハイドンだ‼︎」

 

「君達は、アノンが優勝するための一番の障害だからね。君達には人間共を滅ぼすために消えてもらうよ。」

 

 

 

 

 

「君は所詮その程度なんだよ、植木君。はっきり言うとアノンは、同じ守り人一族で能力者の俺より遥かに強い。」

 

「俺にすら勝てないのに、よく『アノンを倒す』なんていうことができたね!!!」

 

「!!!」

 

「強くなりたいかい。」

 

「守り人一族は代々天界獣を守り受け継いできた。」

 

「君を十ツ星天界人にしてあげるよ。」

 

「なんでこんなことするのよ。」

 

「前回の戦い...ドラグマンションの戦い戦いで君達は、人間は弱くとも強くなれることを教えてくれた。だが、俺は人間共を信じることができなかった。でも、バロウ達との戦いを見て、少しだけ君達を...人間を信じてみたくなったんだよ。」

 

「自分だと思うが、俺が君達を信じるためにアノンに勝ってきてくれ。」

 

その後植木君達は、アノンとの戦いに勝利した。

あの戦いの後、俺はすぐに人界を去った。戦いが終了したので天界力でつくられた能力を失ったため、新しい力を求めて繁華界へと向かうことにした。

繁華界で出会ったのは、『犬』を自称する二本足で立っているしゃべる『羊』だった。その後、羊のウール(名前)をめぐり繁華界の大企業『ハピネス』との戦いに巻き込まれていった。そして、ハピネスとの戦いで、ハピネスの社長プラスが黒幕だと発覚した。プラスの野望、《すべての世界の中心として君臨する》ということだった。その後、ハピネスとの戦いは、激化していった。繁華界で仲間になったハイジとともに黒幕プラスとの戦いに勝利し、プラスの野望を未然に防ぐことができた。その後、ハピネス社の監視もかねて入社したが、プラスが改心したためか、少しずつ変わっていった。だが、能力者バトルで得た『才』の力と、希少な『職能力者』であったため、1年程で部下が持てるくらい昇進していった。ハピネス社が、人間界へと進出するために、人間界出身な俺は《選考会》に参加することとなった。選考会に参加する者達は、猛者ばかりであったが、俺達は優勝することができた。

人間界に進出したハピネスは、少しずつ経営を拡大していき、人間界でも少し名の通った会社になった。経営をしていく途中で、人間界は、女尊男卑が広がっていたため、IS産業には手を出しづらかったが

イチカには『開発の才』があったため、IS産業はイギリスやドイツに並ぶくらいにIS産業を進めることに成功したが、IS委員会の手続きや、《亡国企業》などに襲撃を受けたこともあったが守りきることに成功した。捕まえた亡国企業は能力を見られたのでハピネス監視のもと繁華界へと送ろうとしたのだが、襲撃してきたメンバーの中に妹マドカがいて、捕まえた際に再会することができた。亡国企業の襲撃を防ぐことができたことにより、いつの間にか人界部門の代表になっていた時は流石に驚いたが、繁華界のメンバーも少しずつ人界に慣れていき、平和で楽しい日々を過ごしていった。

 

「あの人に会って色々なことがあったなぁ。

.........でも、」

 

「なんでこんなことになったんだよぉぉぉぉ!!!!!」

 

イチカ・ハイドン(旧織斑一夏)

15歳冬

ハピネス社人界支部にて

インフィニットストラトス通称ISを世界で2番目に装着し、世界で2番目の男性IS操縦者になった。

 

 




誤字脱字等ありましたらよろしくお願いします。
7月10日、流石に第三世代兵器を作り上げるのは早いと思ったので変更しました。


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設定

-キャラ設定-

 

名前 イチカ・ハイドン (旧姓織斑一夏)

 

種族 地獄人の守り人の一族と人間のハーフ 十ツ星神器使い

 

性別 男

 

容姿 原作の織斑一夏が髪を白髪にして、目を鋭くなっている。いつも頭に包帯を巻き、能力を隠すために手袋をしている。

 

趣味 同じ写真を何枚も撮る事 (能力の習慣が趣味に変わった)。

 

能力 “???”

能力の内容は不明。限定条件は、過去の記憶への思いを古い順に消していくこと。

 

職能力 “アルバム”に“再《リピート》”を加える能力

能力の内容は、アルバムの中の写真を使うことで、写真の中の人物の能力を限定条件をある程度無視して発動することができる。

限定条件 ・写真を撮った事実がなくなる。

・1日に3枚しか使用できない。

・能力発動後は一度能力を使用しないと、能力変更はできない。

・限定条件は二つ以上ある場合のみどちらか一つ(数によって二つ、三つなど)を選び、そのどちらか(もしくはどれか一つ)の限定条件として満たさなければならない。

 

 

-設定-

基本的に冷静沈着、織斑だったころにロベルト達拾われ、それ以降イチカ・ハイドンと名乗っている。中学生になるまでの1年間は、マーガレットによって地獄人・守り人一族の力を十善に使いこなせるようになる。中学生の頃は、人間をロベルトのように『怖がりで弱いクズ』などと批判していた。職能力を手に入れたころはまだ人間不審が続いており、ハピネスに入社したころにようやく治り始めた。だが、《織斑》だったころの関係者に対しては冷酷で『クズ』『ゴミ』 『カス』などと思ったり口に出したりしている。

父親から守り人の能力と、天界獣受け継いでいる。能力者バトル時の能力は不明だが限定条件のおかげ(?)か織斑への感情はほとんど消え、負の感情が多少残っているだけで過去の事実から織斑を嫌っている。能力者バトルのときは、一次選考時はロベルト十団に所属してたが、二次選考以降はバロウチームに所属している。バロウチームとして、天界に滞在中に地獄界へと進入しようとしていた天界人を何人か取り込んでいる。その後、取り込んでいた天界獣を使い、十ツ星神器使いとなる。(魔王は、まだ未使用なので6回分使える)。取り込んでいた天界獣は全て逃したが、「面白そう」という理由で1匹残りそのまま繁華界へと旅に出た。

その後、繁華界を旅している途中で気紛れにハイジを助ける。その後、「筋が通らない。」という理由で、旅仲間が増えるのだが、『犬』を自称する『羊』ウールを助けることにより、ハピネスとの戦いに巻き込まれていく。戦いの後ハピネスにスカウトされ、監視も含めて入社する。入社後は、少しずつ人間不審が消えていくが仕事にミスがあると冷酷になり、容赦がなくなる(このことから、裏で黒イチカ呼ばれる)。

 

名前 マドカ・ハイドン (旧姓織斑マドカ)

 

種族 地獄人の守り人一族と人間のハーフ

 

性別 女

 

容姿 原作とほぼ同じ(髪を白髪にしている)。

 

-設定-

 

基本的に兄好きのブラコン。幼少期に両親失踪時に連れて行かれる。外国で暮らしていたらしいが、災害により孤児となる。その後、亡国企業により戦闘兵に育てられ、初任務でハピネス社をISで襲撃するが失敗する。その際に兄イチカと再会し、ともに暮らし始める。兄の指導により地獄人としての力を十善に使いこなせるようになる。織斑の事情を知り、織斑のことを気嫌いしている。

 

 

名前 ハイジ

 

種族 繁華界人

 

性別 男

 

容姿 原作と同じ

 

職能力 “洗濯機”に“撃”を加える能力

能力の内容も、原作より能力が強くなっているがほぼ同じ。

 

-設定-

植木の法則プラスのキャラ。

原作とほぼ同じで『筋』の通らないことが嫌いで、原作と違う点は、原作で植木が来る1年前に助けられたことと、ハピネス社で働きはじめたことにより、妹『ミリー』と安定した生活を送られている。

旅していたときは、イチカ達に苦労させられて、苦労人キャラになっていた。

 

名前 ハル (オリキャラ)

 

種族 天界獣

 

性別 男

 

-設定-

 

イチカへと受け継がれた天界獣の1匹。

イチカとの契約により、植木が十ツ星神器使いになった場合逃すことになっていたが、「面白そう」という理由でついてきた。ハルという名前は、イチカがその時につけたものであり、本名はイチカすら知らない。現在は、マドカについている。性格は、基本的に楽観的で楽しいことを好き。

 

 

 

名前 織斑秋一

 

種族 地獄人の守り人一族と人間のハーフ

 

性別 男

 

容姿 原作の織斑一夏

 

-設定-

 

織斑一夏の兄。

幼いころから一通りなんでもできることから周囲に『天才』『神童』などと呼ばれることとなった。そのことにより、才能を十善に発揮できなかったイチカを見下していた。だが実際には、母親の血を多く受け継ぎ、地獄人としての能力も才能も受け継がれなかった。

原作の織斑一夏と同じで、受験当日にISを起動することにより、『IS 学園』に通うことになった。

 

 

 

 

 

名前 ロベルト・ハイドン

 

種族 天界人

 

性別 男

 

容姿 原作と同じ

 

-設定-

 

イチカを連れて行った張本人。原作と同じで、人間を憎んでいた。だが、ドグラマンションでの植木との戦いの後、人間を滅ぼすことが大切なことか悩むがアノンに取り込まれてしまう。

原作後は天界に戻るがイチカが人間界へと戻った後、半年に一度は、顔をみせにくる。

 

 

 

-世界観設定-

 

4つの世界

 

人界 なんの能力も持たない民達が住む平和な世界

 

天界 “天界力”と呼ばれる力と、“神器”と呼ばれる不思議な武器が使える民達が住んでいる世界

 

地獄界 天界人のような能力はないが、“超身体能力”と呼ばれる力を持つ民達が住む世界

 

繁華界 “職能力”という道具に特殊能力を加える能力が使える民達が住む世界

 

 

 

-オリ設定-

 

《『神を決める戦い』について》

天界には『神』という立場があり、人界でいうところの王のような役職である。神になるには、先代の神から選ばれた天界人が神になるというものだったが、今代の神が『表向きは今までの神を決める行為がつまらないから』という理由で、本当の理由はとある少女に出会ったことによって、《『未来』のために生きる子供達を守り人の一族達に見せ、自分達が過去に囚われていた愚かさに気づいて貰いたかったから》というのがこの戦いを始めた理由である。

オリ設定ですが、この戦いは女尊男卑やISに深く関わりを持つ(被害者以外)人間を能力者にする事は禁じられている。また、ISとの戦いになった場合のみ、才が減ることがない。

 

 

《『才』について》

 

才とは、《うえきの法則》の神を決める戦いが行われたさいに能力者は才と呼ばれる人間が持つ才能を幾つかの突出させてもらうことが出来ます。能力者は他の能力者戦い勝つことで、相手の才を1つ手に入れることが出来ます。ですが、能力を持たない者に向かって能力を使用すると才が1つ消え、真反対の効果を発揮します(ただし、神によって歪められた者や能力者相手だと真反対の効果はなくなり、凡人程度の力は出すことができる)。神を決める戦いに優勝することができると『空白の才』というものが手に入れることができる。

 

『空白の才』

天界にあるもので、空白の中に1つだけ自分の最も欲しい才能を書くことにより、その才能を手に入れることができる。

神を決める戦いの優勝商品。

 

 

ここからオリ設定ですが、神を決める戦い後、持っている才はそのままですが、消えた才は普通の人より劣る程度で、努力すると何とかなるという設定にしています。

 

 

 

《『天界人』・『地獄人』について》

『天界人』

天界に住んでいる民。

神器と呼ばれる十の能力持つ。神器を1つ手に入れるためには最低5年修行することが必要なことから、十ツ星天界人は天界の中でも珍しい。普通の天界人は神器を同時に複数出すことは出来ない。機能は同じだが天界人によってデザインが違う。使用には天界力という力が必要で、短期間に使い続けると神器を長期間使うことが出来なくなる。

 

 

 

『地獄人』

地獄界に住んでいる民。

詳細は不明だが、超身体能力という能力を持つ。

 

 

『守り人の一族』

地獄人の一族のうちの一つ。

普通の地獄人と違い、超身体能力ともう1つ、相手を体内に取り込むことによって、取り込んだ者の能力を使うことができる。

なぜか、天界と空白の才を狙っている。

 

《繁華界のオリ設定》

イチカが介入したこと以外ほぼ原作と同じ。唯一イチカが介入せずに 原作とは違うところは、人間界などの三つの世界の時間と繁華界との時間との流れは同じことになっている。

『ハピネス』

原作では植木達によってプラスの野望は破られるが、イチカの介入によりプラスの野望はイチカによって未然に防がれる。その後、イチカやハイジを雇い人間界を含めた三つの世界と交流を深めようとするが、人間界には天界や地獄界のことは秘匿されているので、天界と地獄界と交流を深め、人間界には進出はするが繁華界については秘匿することになった。

イチカは人間界進出が決定した際、『神を決める戦い』に参加していた人間を出来るだけ集め、ハピネスに所属させていった。そのおかげか、戦い後に残った才で人間界に立ち上げたハピネス社はすぐに発展していった。

ジェラート財団と交流を深めている。

 

《メガサイトのオリ設定》

繁華界とは違い原作とほぼ同じで、四つの世界(原作では三つの世界)の100倍の時間が流れている。

原作とは違い、イチカ達は、メガサイトには入ることはなかった。

異世界と繋がっているらしい.........

 

 

 

 

 

 

 

この作品は、うえきの法則シリーズが終わりIS編からスタートする話 です。

 




うえきの法則シリーズ編は、IS編が安定してきたら書いていきたと思います。

9月16日 イチカの能力を少し変えました。

10月18日 メガサイトのオリ設定を入れました。

11月1日 設定を少し変えました。


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第1章 入学編
第1話 入学


ようやく1話投稿出来ました。
これからは、二、三日に1話のペースでなるべく投稿していきます。


Ichika side

 

「IS学園入学おめでとうございます。私はこのクラスの副担任の山田真耶です。」

目の前の小柄な女性が挨拶をしている。目の前の人物は、一般生徒より童顔で背が低いため教師には、見えないが教師ということらしい。

 

「みなさん、これから一年間よろしくお願いします。」

「「「……………………」」」

 

(なんでこんなことになったんだろう)

原因はわかっている。

(あの織斑(カス)のせいだ)

 

 

『世界初の男性IS操縦者が発見されました!!!』

 

1月前イチカは、休日の朝を楽しむためテレビの電源入れたのだが、一番最初に出てきた番組で報道しているニュースで、他番組でも同じようなニュースばかり報道されていた。特にそのニュースは、織斑 秋一(クズ)報道されていた。その後イチカは、会社に呼びだされ男性IS検査を受けることになった。特にISに興味がなく、休日を返上してきているのでイラついていたイチカは、さっさと帰って休日を楽しもうとすぐに向かった。この時イチカは最大のミスをおかした。織斑の血筋のせいなのかは知らないが、ISを起動してしまったのだ...... 。

その後は、大変だった。必要ないとISの操縦法を頭に入れ、自分の身の安全のため会社から出られないことがあった。なにより許しがたいのは、数ヶ月ぶりの休日を潰され、IS学園に通うことなったことだ。

 

(なんで俺のところに他部門の仕事が来るんだよ‼︎)

 

「イチカ君、イチカ・ハイドン君っ!」

最近ブラック企業並みに仕事を押し付けてくる他部門(馬鹿共)に怒りを覚えていたら、声の方を向くと小柄な教師が、呼んでいたようだ。

 

「 ん⁉︎」

少し考え事していたため声に気づかなかったのだろう。

「大声出してごめんね。自己紹介、次の番だったから呼んだんですけど、ダメかな?」

「すいません。少し考え事をしていたもので、すぐに自己紹介を行います。」

「イチカ・ハイドンです。ハピネス社に所属しています。世界初の男性IS操縦者が見つかったため、男性IS検査を受けたところ世界で二番目の男性IS操縦者として見つかりました。手袋をしていますが気にしないでください。好きなことは写真を撮ること。嫌いなことは、理不尽なことと女尊男卑です。これから一年間よろしくお願いします。」

 

直後、鼓膜が壊れそうになるくらいの音が聞こえてきた。

 

「男の子!男の子だよ‼︎」

「お母さん!私産んでくれてありがとう」

「Yes! Yes!! Yeeees!!!」

すぐに聞こえてくる声に耳を塞ぎ、席に戻った。

その後すぐに織斑秋一(カス)の自己紹介が始まった。

「織斑秋一です。不慮の事故でISを起動してしまいました。これから一年間よろしくお願いします。」

織斑が自己紹介を終えた際に、また女子達が騒ぎ出した。このことが起きるとイチカは予期していたので、イチカは織斑秋一の自己紹介の時に耳栓をした。そのおかげかイチカは、五月蝿い声を聞かずに済んでいた。

その後、織斑千冬が教室に入ってきた。なぜか織斑と漫才みたいなことをしていた。だが、能力者バトル時の能力のおかげか織斑千冬には何の感情も起こらなかった。

 

 

「諸君、私が担任の織斑千冬だ。諸君等を一年間で使える操縦者にするのが私の仕事だ。よく聞き、よく理解しろ。私の意見には、『はい』か『YES 』で答えろ。わかったな。」

 

考え方が変わる前のプラスみたいなことをいっているが、これくらい言わないということを聞かないだろう。いくらIS学園に入学したからといっても、ISに乗ったこともない初心者ばかりだろう。ISに関してもファションの一部や、スポーツとしてISを動かすものだと思っているものも多いはずだ。

また、女子達が騒ぎ出したのでイチカは再び耳栓をした。

 

イチカはこのクラスやっていけるか少し心配になってきた。

 

 




誤字、脱字等あればよろしくお願いします。
7月11日 手袋の描写がなかったので追加しました。


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第2話 再会

今回、妹とうえきの法則キャラを出します。


Ichika side

SHRの終了のチャイムが鳴った後、マドカが近づいてきた。

「兄さん久しぶり。1ヶ月ぶりぐらいかな。イラついていたみたいだけど大丈夫。」

「ああ、大丈夫だよ。この学園に入れられたことと、仕事以外問題無い。」

「兄さんあの『織斑』や『女尊男卑』の連中が来ても暴走しないでよ。いくら兄さんでもIS相手に他人の目の多い場所で能力や神器は使えないんだから。」

「わかったよ。その辺は理解している。もうすぐチャイムが鳴るから席についていた方がいいよ。」

その後予鈴が鳴り、マドカは自分の席に戻っていった。

マドカは亡国企業の襲撃後から一緒に暮らしていたのだが、俺にIS適正があったため離れて暮らすことになってしまった。だが、IS学園に入学することになった俺のためにプラスに『兄さんがISを上手く操縦できるようになるまで亡国企業でIS操縦者だった私が指導したいです。』と頼み込み、入学してくれたのだ。

(本当にあの姉弟とは違いよく出来た妹だよ。)

Ichika side end

 

 

Madoka side

私は兄さんが心配だ。

兄さんは私をあの地獄から救ってくれた。その後兄さんとたくさんの話をした。その時私は『なぜ織斑ではなくなっていたのか』兄さんに聞いた。兄さんは私がいなくなったあとの織斑の話をしその後、なぜ織斑ではなくなったのかを話てくれた。でも兄さんはほとんどの織斑への感情が薄れていた。その後、兄さんは人間を滅ぼため神を決める戦いに参加していた。兄さんの話によれば当時『織斑』に対して相当憎んでいたらしい。その兄さんが今織斑を殺さないのは、当時の能力による弊害だと聞かされた。だから私は兄さんが今の優しい兄さんが、織斑と関係していくことで織斑(ヤツラ)への憎しみや怒りが戻ってしまうことを恐れている。兄さんは神器を手に入れる修行時に心も身体も成長したといっていたが、それでも私は兄さんが私の知らない兄さんに変わるのがとても怖い。なぜなら能力者バトル時の限定条件でいくら感情を失ったとしても、憎しみや怒りがまだ残っているということは、当時相当憎んでいたに違いない。だから私はプラスさんやハイジさん、今いるすべての兄さんをしたっている人達を代表してきたのだ。

(もし織斑(ヤツラ)によって兄さんが変わることがあれば、私が織斑(ヤツラ)を殺してやる。)

兄さんについて考えているとハルが声をかけてきた。

(また、あいつのことを考えているのですかい?)

(そういうハルは、心配じゃないの?)

(心配じゃないね。だってあいつは俺がいなくてもいいくらいに仲間も手に入れられたからな。第一あいつはもう人間を滅ぼすことを考えていないし、それに今は何よりもあんたがあいつを支えられるのだからその辺をよく見ておいて、しっかりとあいつの手綱を握っておけば大丈夫だって。あいつは変わったからな。戻らないようにするにはあんたがあいつのことを大切にすればきっと大丈夫だよ。)

 

(......わかった。ではもう少し兄さんのことを教えて。)

授業中に私は兄さんの昔話をハルから聞いていた。

兄さんは の話を聞き終わるころには

兄さんは授業を退屈そうに受け1時間目の授業が終了した。

 

Madoka side end

 

??? side

私はあいつがなぜIS学園にいるのかわからない。あいつは2年前、神を決める戦いの後失踪していた。つい1年ほど前に今でも連絡を取っている植木耕助や他の元能力者達から戻ってきたことや性格が変わったことを聞かされていたが、やはりあそこまで人格が変わるのはおかしい。しかも、あいつが『織斑』の連中を襲わないのはすごく驚いた。

この2年でなにがあったのか私は知りたくなった。

(この授業が終了次第聞きに行こう。)

その後、授業終了のチャイムが鳴った。

 

??? side end

 

Ichika side

 

1時間目の授業が終了した。チャイム終了後マドカがやってきた。織斑は俺に近づいて声をかけようとしたが、篠ノ之に連れて行かれた。俺は、そのことを傍観した後マドカと会話をしていた。

誰かが近づいてきたようだ。

「ちょっといいかな。」

 

「ん?」

近づいてきた女子に声をかけられた。髪が茶髪のロングの女の子だ。

「久しぶりね。イチカ・ハイドン君。」

どうやら知り合いだったらしい。

(こんな知り合いいたっけなあ?)

「えっと、すみませんどなたでしょうか?。」

「はあ……まあ2年ぶりに会うから忘れてても仕方ないか。髪を束ねれば誰かわかるかな。」

(2年前、それに髪を............あ!)

「まさか!メモリー⁉︎」

「髪束ねたら思い出すって、私どれだけ印象ないのよ。」

「えっと兄さんの知り合い?」

「そちらの方は初めましてだったね、私の名前はメモリー・ルイン。2年前彼のいたチームと対立していた時に知り合ったのよ。それにしても、あんたは変わったわねハイドン君。」

「2年もあれば誰だって変わるさ。そっちだって髪型が変わっているし、雰囲気もおしとやかなったから気づかなかったよ。」

「それは、私がおしとやかではなかったみたいじゃない!!!」

「ごめんごめん......... 久しぶりだねメモリー......いや、ルインさんと呼んだ方がいいのかな?」

「あの戦いの後、他の能力者達にもメモリーと呼ばれているからメモリーでいいわよ。」

「じゃあ、こちらもイチカでいいよ。でも君がこの学園に来るなんて珍しいね、あんなにISを嫌っていたのに。」

「違うわよ!マリリンがね『敵の情報は、あればあるほどいいですわ!』なんていってね、メンバーの中で一番IS適正が高かった私が来ることになったのよ。」

「ふうん、そうなんだ。あ!もう少しでチャイムが鳴るから詳しい話は、また、放課後で......」

その後、チャイムが鳴った後織斑達が教室内に入ってきて、織斑先生の出席簿をくらっていた。

 

 

Ichika side end




うえきの法則のキャラクターは、メモリーを出しました。
メモリーは、原作では2次選考以降のキャラで植木達と対立して戦いました。ちなみに、メモリー達のオリ設定は原作では戦争で親を亡くしていましたが、今作では白騎士事件時に親を亡くしています。
次話から織斑達と関わらせていきます。


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第3話 無粋な客

織斑達やイギリスの代表候補生との邂逅とイチカのことについてです。


Ichika side

 

2時間目も終了し、マドカ達と話をしている時だった。

 

「ちょっといいかな?」

 

織斑達が声をかけてきた。

「なに?」

「いや、二人だけの男性IS操縦者だから仲良くしようと思って声をかけたんだ。」

こいつは何を言っているんだ?

「生憎こちらにはあんたと仲良くなる理由がない。」

「なにを言っているんだい?二人だけのIS操縦者なんだから助け合うべきじゃないのか?」

どうやら自分のしたことを理解していないようだな。

「はあ、あんたのせいでこの学園に入学するハメになったんだ。あんたがISを起動しなければ俺は普通に暮らしていけたんだ。まずはそこから謝るべきじゃないのか?」と言うと、

「なぜ秋一が謝らなければならない。それに秋一が仲良くしようと言っているんだ!仲良くなるべきだろう!」

篠ノ之が自分勝手な意見を述べてきた。

 

(なんだこいつら。)

 

俺が文句を言おうとすると、

「随分自分勝手ですね。兄さんはあなたがISを動かさなければ、平凡な日常を過ごしていたんですよ!」

マドカが先に言ってくれた。

「なんだと!」

「もう行こう箒。この人達はオレ達と仲良くなるきはないらしい。」

織斑達はどうやら行ったようだ。

 

「ありがとうマドカ。」

「それにしてもなんなのよあいつら。一応あんたの兄なんでしょう?イチカと全く違うじゃない!」

「いいよ、メモリー。それにしてもあいつら一層性格が酷くなっていたな。あとメモリーその発言は控えてくれ、そのことは一応秘密なんだ。」

「わかったわよ、イチカ。でもあんたよくあいつらと一緒に住んで居られたわね。」

「だから耐え切れなくなって家を出たんだよ。それにしてもあいつら俺に気づかなかったみたいだな。」

「それほど兄さんのことや家族のことを知らないのでしょう。」

「もうこの話はやめよう。」

 

「ちょっとよろしくて。」

 

なんかまた誰か来たようだ。

「なんかようか?」

「まあ!何ですの、そのお返事は!私に話かけられるのも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるのではないのですかしら?」

(チッこういうタイプか。)

女尊男卑に染まったタイプの人間だ。ISが作られてから、こういう女尊男卑(ゴミ)みたいな性格の人間の女が増えてきた。

 

「はあ、俺にはあんたにそれほどの価値があるとは思えないがな。」

「まあ?この私が代表候補生ということも知らないのですか?」

「生憎、兄さんや私は礼儀も知らない人間に礼儀で返すほどお人好しではないんですよ。」

「貴女少し場の雰囲気というものを考えてくれないかしら?」

どうやらマドカ達もイラついているようだ。

(織斑達の後に続けてこんな連中がきたら普通イラつくよな。)

「そういやあんた代表候補生とかいってたな。」

「そうですわ!代表候補生です。エリートなのですわ!」

「なあマドカ、何人かうちの第三世代兵器の適正を検査しに来たんだが全員適正不足で帰った連中のことだったよな。」

うちの第三世代兵器は、作られているが元々マドカ用に作られた地獄人スペックのものだけに上手く使える特注品なのでたくさんのIS操縦者が来たが、全員適正不足で帰っていったのだ。

「はいそうです兄さん。『あれ』を使える人材が候補生どころか代表にもいなかったそうなので、今は一番適正のある私のISに取り付けられています。」

「ふうん......じゃああの程度兵器が扱えない人間だということはマドカより格下の人間なんだね。」

「何ですって!男風情が私をバカにしますの。」

「もういいよ帰って。君の顔を見ていると不愉快だ。」

「もういいですわ!もう1人の男性IS操縦者に声をかけに行きますわ!」

 

そうして金髪女は織斑のところへ行っていった。

 

「結局あの人何がしたかったんだ?」

「自分が『すごいんですよ』とでも言いたかったんじゃない?」

 

「兄さん、あの人が『禁句』を言ってもキレないでください。お願いします。」

「わかってるよ。」

「えっと『禁句』って何よ?」

「メモリーには言ってなかったが俺は自分の尊敬する人、つまり『ロベルトさん』や『マーガレットさん』、『植木君』みたいな神を決める戦いで俺に大切なことを教えてくれた人達をそのことを知らない人間が悪く言うとキレてしまうんだよ。」

 

「えっと、どれくらいキレると怖いのよ?」

 

「ピーク時、えっと神を決める戦いの1次選考時くらいにキレるかな?」

「兄さん前に1度女権団の人達が来た時にキレかけてあちらの交渉を破談して追い帰しましたからね。それに、プラスさん達も《一度キレたら山一つ壊すまで止まらない』とか言ってましたから、気をつけて下さい。」

 

「わかったわ。出来る限りあんたの『禁句』には触れないようにするわ。」

「わかったならいい。俺もわかったから、出来る限りキレないように気をつけるよ。」

その後、会話を終了し席へ戻ることになった。

 

 

 

だが俺達は知らなかった。俺がキレる機会がこんなにも早くくることを..................




今回は早めに投稿出来ました。
誤字、脱字等あればよろしくお願いします。


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第4話 禁句

今回、イチカの『禁句』に触れます。


Madoka side

 

「君みたいな生きる価値も知らない人間共(ゴミムシ)風情があの人達をバカにするだって、へぇ.........君いっぺん死んでみるかい?」

 

なんでことに......

 

Madoka side end

 

 

〜数分前〜

 

 

Ichika side

 

3時間目のチャイムが鳴り、教室に織斑千冬が入って来た。

「3時間目の授業の前にクラス対抗戦の代表者を決めなければならない。」

「クラス代表者とは、対抗戦だけでなく生徒会の会議や委員会への出席、他の学校で言うところのクラス委員だと思ってくれればいい。」

なんで、クラス対抗戦に出場するのに話し合いで決めるんだ?話し合いより受験時の実技のテストデータを元に一番強い人から順に聞いていけばいいんじゃないのか?

 

「織斑君を推薦します!」

「私も推薦します!」

女子達は織斑を推薦し始めた。俺は推薦されないように気配を消していたら、

「じゃあ私は、ハイドン君を推薦します!」

「私も!」

巻き添えをくらった。

(チッ、あいつが生贄(クラス代表)になればいいのに)

すぐに俺は自分への推薦を撤回しようと立ち上がろうとするが...

 

「納得出来ませんわ!」

さっき声をかけて来たヒステリックな女が声を上げた。

「代表候補生である私を差し置いて男がクラス代表などありませんわ!だいたい男がクラス代表などと私に!セシリア・オルコットにそのような屈辱を1年間過ごせというんですか!実力から言って私がクラス代表になることなど自明の理!珍しいという理由だけで日本などという極東の猿にされては困ります。私がこのような島国に来たのはISの修練をするためであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!いいですか⁉︎クラス代表は実力がトップの者がなるべきであり、そのトップは私ですわ!だいたい文化としても後進的な日本に暮らさなければならないのは私にとっては、耐え難い苦痛であり.........」

セシリア・オルコット(ヒステリックな女)が なにやら意味不明なことを喚き出した時.........

「イギリスだって大したお国自慢はないだろ?世界で一番マズイ料理何年覇者だよ!」

織斑も喚き出した。俺はこんなくだらないことに巻き込まれないよう気配を消して、傍観していた。

「ーーーッ‼︎あなた私の祖国を侮辱しますの⁉︎」

「先に侮辱したのはそっちだろう。」

(はあ、早くこのくだらないことが終わらないかな。)

「決闘ですわ!」

(いやなんで決闘になる?)

「おういいぜ、四の五のいうよりわかりやすい。」

(いいのかよ!)

「言っておきますけど、真剣に勝負しなかった時には奴隷にしますわよ!」

(いきなり相手に向かって奴隷宣言するなんて常識を知らないのかよ?)

「侮るなよ。真剣勝負で手を抜くほど腐っちゃいない。」

「そう、なんにせよちょうどいいですわ。イギリス代表候補生セシリア・オルコットの実力を示すまたとないチャンスですわね!」

くだらないことを言い続ける織斑達に俺は呆れていた。それ以前に素人相手にISで決闘を挑む時点で俺はどうでもよかった。

「ハンデはどれくらいつける。」

「あら、早速ハンデのお願いですか。」

「いや、俺がどれくらいハンデをつけたらいいかなぁって」

(は?バカかこいつ?地獄人の能力すら開花していないのに、代表候補生に向かってハンデだと?)

「織斑君、それ本気で言ってるの?」

「男が女に強かったのは、大昔の話だよ。」

「確かに織斑君やハイドン君はISが操縦出来るけど、それは言い過ぎだよ。」

(くだらない。ISなんて兵器(おもちゃ)なんかが、最強だと思っている時点でお前らは弱いんだよ。)

基本ISは、天界人の『神器』や地獄人の『超身体能力』より劣り、スペックの高い『職能力者』にも負けるような代物である。それに対し『IS』を最強だと思っているのは、たんに他の世界を知らないからである。

「わかった。ハンデはいい。」

「ええ、そうでしょう。むしろ私がハンデをつけなくて良いのか迷うくらいですわ。」

オルコットは、織斑に対し滑稽だと思っているようだ。

「さて、話はまとまったな。勝負は一週間後の月曜。第三アリーナで行う。織斑とオルコット、ハイドンは準備をしておくように。」

(えっと今、俺の名前が出て来た?)

「すみません、俺は辞退したいのですが。」

「自推他推問わないと言った。決定事項だ、異論は認めん!」

(なんだこいつ?さっきそんなこと言ってなかったじゃあないか⁉︎)

「あらあなた逃げますの?あなたはとんでもない臆病者ですわね。それにあなたの家族はこんな臆病者を育てたのかですから、あなたの家族もくだらない『クズ』ですわね!」

 

『ブチッ』

頭の中でそんな音が聞こえた。

(今こいつなんて言いやがった!!!)

「今なんて言った!」

俺は聞いた、そしてオルコットは......

「あなたの家族は、『クズ』だと言ったのですわ!」

(殺す!)

周囲の雰囲気は変わり俺から殺意が漏れ出した。そして俺は2年前のあの口調に戻し、オルコットに聞いた。

「へぇ、君みたいな生きる価値も知らない人間共(ゴミムシ)風情が、あの人達をバカにするだって、へぇ.........いっぺん死んでみるかい?」

俺に『禁句』を言ったことにより、俺は昔に戻っていた。

 

 

Ichika side end




次回、イチカの『禁句』に触れたセシリアを中心にイチカの怒りが爆発します。

今回は遅くなりました。ギリギリペースを守れました。
誤字脱字等あればよろしくお願いします。


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第5話 誇り

またギリギリになってしまいました。
次回から気を引き締めていきたいと思います。


Madoka side

 

兄さんは『人間界のゴミ』(『女尊男卑の女』)からの言葉の性か、私の知らない顔になっていた。

数ヶ月前の女性を相手にした時とは桁違いの殺気が周囲に発せられている。

(多分、神を決める戦いの頃の性格に戻ったのだろう。)

「あなた何なんですの!?私がどういう立場にいると思っていらっしゃるのですか?」

女尊男卑(ゴミ)が何か言っていた。

「立場?どうでもいいですね。俺はこの世界のゴミがなんと言おうと関係ありません。ゴミが1人や2人消えることになっても俺には興味ありませんから。」

「なんですって!!私をゴミ扱いするなど、男程度がしていいわけがありませんわ!」

「流石にそれはダメだろ!女性に対してそんなこと言っていいはずがない!」

兄さんに対し、ゴミ2人がなんか言って来た。

「はあ、少し静かにして欲しいですね。そんなに大声を出す必要もないでしょう?あなた方の声は耳ざわりなんですよ。そんなことに気付けないなんてやはりゴミのようですね。それに織田君でしたっけ?こんなクラスの半分以上が日本人なのに、日本に対して差別発言する女性などはっきり言いますと女性扱いしたくないのですよ俺は。あと君は、俺に謝っていませんよね?そのことに関していうことはありませんか?」

兄さんは煽りを混ぜながら的確に織斑の言葉を止めた。

「オレの名前は織斑だ!それになんでオレがお前に謝らなら無ければならない?」

兄さんはその言葉に怒りを覚え更に憤怒を撒き散らしていた.........

 

 

Madoka side end

 

 

Ichika side

「それになんでオレがお前に謝ら無ければならない?」

こいつの今言ったことに対し俺は更に怒りを覚えた。

(なんでゴミ共は相手のことを考えない?)

俺は織斑に対して最低の評価を下した。

「織斑君、さっき俺が言っていたことを覚えていますか?」

俺は織斑に聞いた。

「オレがISを起動した所為であんたがこの学園に入学することになったことだろう?それがどうしたっていうんだ?」

(本当にこいつは何も考えていないんですね。)

「織斑君、君が起動したのが確か君の受験日で、受験会場を間違えてIS学園の受験会場でISを見たので興味本意に触れてしまった所為でここにいるのですよね?」

「ああ、そうだ。でもそれがどうオレがお前に謝ることに繋がるんだ!」

(ああ織斑って、自分の犯したことについて理解していないんですね?)

俺はこいつらと血の繋がりがあるあることに関して恥ずかしくなっていた。

 

「君が考えなしに起動したおかげで俺が見つかってしまったんですよ?それは、君がもう少し頭を働かせて受験について考えていれば俺はこの学園に通う必要がなかった!もっと普通に生活いけたんですよ!君がくだらない興味本意でISなんてものを起動してしまったおかげで人生が狂ってしまったんですよ!君はどう責任を取るつもりなんですか?俺はハピネスにいましたから安全でした。でももし3人目が見つかったらどうするつもりですか?君や俺は後ろ立てがあるから安全でしょう。もし3人目が後ろ立てがなく実験体されたり、女尊主義者に殺されてしまったら君はどう責任を取るつもりですか?」

織斑は何か答えようとするだが、

「オレは「ああ、君の答えなんて聞いていません。聞いたところで意味はありませんですから。つまり君は俺以外の誰かが見つかり殺された場合、全ての責任とは言いませんが『君が殺したもの』と同じなんですよ。だからこそ俺は君はもう少し責任感を感じるべきだというのに君はそれすら微塵も感じていない!そんな人間を許すどころか仲良くなるほど、俺は優しいつもりはありませんし君に対して優しくするつもりはありません!」

 

「ですから、これからは必要最低限の接触は認めますが、もう二度と『仲よくなりたい』などという妄言は口に出さないでくださいませんか?」

 

「好き勝手言いやがって!オレだって好きでISを起動していないんだよ!」

織斑はどうやら逆ギレしてきたようだ。

 

「もういいです。君はさっきのことを考えてくれればいいのですから。それとクズ女。」

「それは私のことを言っていますの⁉︎」

クズ女はさっきの言葉に圧倒されていたようだが、俺の言葉に怒り出したようだ。

「君がどう思おうと関係ないありませんが、君は俺の家族や仲間を侮辱したんですよね?」

「ええ、そうですわ!あなたみたいな『臆病者の家族』などクズだといったのですわ!」

俺はもうこいつを許す気はない。マドカ達や先生方はどうやら俺の殺気で会話に介入出来ないらしい。だから俺は.........

「さっき決闘とかいってましたよね?」

「ええそうですわ?」

急な話題の変更にオルコットはついて来れないようだ。

「ではその決闘に参加します。」

「ようやくその「ですが参加するにあたって俺は俺の命を賭けて戦います。

君は何を賭けて戦いますか?」

マドカ達以外の先生方を含めた全員が驚いていた。

「ふざけないで下さい!私はそんな賭け「いいですよ別に賭けなくて戦っても。俺はその場合、君は『命を賭けて戦う』ということと考えますから。」

「くっ......わかりましたわ。私はISを賭けて戦います!」

 

だが、 俺はもうこいつを殺すことを確定して戦いをすることを決めている。

 

 

俺の家族を、

 

『僕と一緒に世界を滅ぼさないかい?』

 

『君は、ボク等守り人一族の一員だ。』

 

『兄さんとまた暮らしても良いんですか?』

 

仲間を、

 

『お前は全力(マックス)で倒す!』

 

『“知恵”と“力”両方を兼ね備えてこそ、真の“(おとこ)”となり得るのだ。』

 

『イチカ君、君が来ることは予想していました。予定通りです。』

 

『君と僕とは目的が違うし、君のことは理解出来ない。それでも僕等は仲間だ。』

 

友を、

 

『俺は『(スジ)を通す』ためにお前についていく!』

 

『イチカっち、ハイジっち、仲間になってくれてありがとう』

 

『イチカ君、君はもう苦しまなくていいんだよ。』

 

 

誇りをバカにした。

絶対に許す訳にはいかない!!!

 

 

 

「おっとそれは『(スジ)』が違ぇんじゃねぇか。イチカ?」

ふと教室、にそんな声が聞こえてきた。

 

Ichika side end




イチカ視点が終わりました。
次回、あのキャラが出ます!


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第6話 ハイジ

新しい男性IS 操縦者の登場です!


Memory side

 

私はイチカの変化に驚いていた。

彼がこんなに『おとなしく(・・・・・) 』怒る姿は初めて見たからだ。神を決める戦い時に彼はこんな風に怒ることはなかった。もっと荒々しく、他の全ての人間が怯え屈服するような恐ろしい殺気を常時放ち、全ての人間に対して『そこに生きていることすら許しはしない』と公言するような怒りを常に雰囲気から滲み出していた。それがこんなにもおとなしく、静かに冷静に怒りを放つ彼は『あのとき』とは全てが変わっていいた。

その後、彼が話し合いを終わりにしようとした時、

 

「おっとそれは『(スジ)』が違ぇんじゃねぇか?イチカ。」

 

教室の扉に『眼帯?』を付けた男が立っていた.........

 

Memory side end

 

Ichika side

 

俺が話し合いを終わりにしようとした時、教室のドアが突然開いた。そこにいたのは......

「おっとそれは『筋』が違ぇんじゃねぇのか?イチカ。」

普通ならここには居ないはずの人だった。

「へぇ、久しぶりだね、『ハイジ』。でもなんでハイジが『IS学園(ココ)』にいるんだい?確か、仕事のはずじゃなかったかい?」

ハイジは先週から繁華界の要人警護の仕事についていたはずだ。一ヶ月程前資料を見た時、期間が半年程だったのでハイジが、ハイジの妹の『ミリー』を鬱陶しく連れて行くと言っていたからミリーが困っていたことを覚えている。

 

「はあ、俺がここにいるのは三人目の男性IS操縦者として発見されたからだ。」

「「「「「はっ?」」」」」

 

その瞬間クラス内のハイジ以外の全員が驚いていた。

 

Ichika side end

 

 

Haiji side

 

俺は今ものすごくイラついている。

俺がIS学園に通うことになった理由は、『三人目』になったこともあるが、一番の理由はイチカの護衛とストッパーだ。イチカ達と旅をしていた頃俺達はイチカの《人間嫌い》に相当困らされていた。イチカは何が正しくて何が間違いか理解できなかった。そしてイチカは人間の中の悪事を行う者たちに対して、《容赦無く殺害》する考えにいたっていたのであった。それを治すのに少しずつ時間をかけていきハピネス戦のあと二ヶ月近くかかったが漸く考え方が間違っていることに気がつカ かせることに成功した。だが、数ヶ月前に女尊主義者がうちの会社に来た時のこと、イチカはその女尊主義者を廃人になるまで追い込んだ。運良く、プラスの弟『ナガラ』の能力によって普通の生活を送るには生きれるようになったが、ISに関係することを見たり聞いたりするとフラッシュバックが起きるらしくISには関係することができなくなっていた。マドカはその事件を知らないが、イチカが他の女尊主義者にキレかけたところを見たらしく、兄の変化に驚いていた。だが、イチカがまだ本当にキレてないことを見るとそれ程怒っていなかったのだろうと思っていた。

 

そして、一ヶ月程前に俺が繁華界の仕事で出ていた時にイチカが二番目のIS操縦者として発見されていた。だが、俺は仕事だったのでそのことを知らず、二週間程前に人間界に戻った時に知った。

俺は帰ってすぐにIS適正検査を受け、適正があることがわかった。だが俺のことは社長プラスの判断により報道されず、安全の為イチカの影に隠れ、準備を始めていた。そのおかげで家族のミリーを繁華界に送ることができた。俺はプラスの判断により、イチカのストッパーとしてIS学園に入学することになった。

 

(まあ、俺がイラついているのはミリーに会えなくなった上に、ISなんてものに乗らなくてはならなくなったからだ。)

 

俺やイチカは基本的にISが嫌いだ。

宇宙へ行く為に使われたなら俺は許すどころか好感が持てるが、女尊男卑を作ったことやIS史上主義みたいなものは筋が通らないので、許すことが出来ない。

またイチカは、ISが《兵器》として扱われているのをとても嫌っていた。理由はわからないが特にそのことに怒り、いつも

『《IS》が《兵器》として扱われるのは兵器が可哀想だ。』と、ISに関する話があると呟いていた。そんなことを考えていると教室に辿り着くことができた。そのときイチカの話が聞こえ、イチカが繁華界での怒り方に戻っていることでイチカの考えを理解し、イチカの言葉を否定した。

 

「おっとそれは『筋』が違ぇんじゃねぇか?イチカ。」

 

その後クラス内の人間は俺に驚いていたが、すぐにイチカが俺にどうしているのか?を聞き答えたらまた、クラス内が驚きに染まっていた。

そして、イチカの事実上の姉の織斑先生と話があり、話し合いの終了と同時に俺の自己紹介でその時間は終了した。

 

Haiji side end

 

 




今回ハイジを登場させました。
前回の話で5000UAを越えました。ありがとうございます!!!
誤字脱字等あればよろしくお願いします。


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第7話 命令

半月以上遅れてすみません。流石に2、3日のペースは難しかったので、これからは一週間に一度の更新するよう努力します。


Ichika side

 

織斑先生がハイジとのやりとりを終了したあと、ハイジの自己紹介が始まった。

 

「三人目の男性IS操縦者として見つかった、ハイジだ。眼帯をしているが、まあ気にしないでくれ。一年間よろしくな!」

 

(あいつ、シスコン出なければいいけどな。.......まあ出るんだろうな。)

 

俺はハイジの『発言』により少し冷静になった。

 

(だが、一番気になるのは怒りが、繁華界にいた時くらいに収まっていたことだ。怒りが収まっていたということは、あの限定条件のおかげ?みたいなものか。

とりあえず、あの程度で済んで良かったな。一次選考時まで戻っていたら確実にボッチ確定していたからな。)

 

あいつへの感謝とプラスへの怒りを思いながら授業は過ぎていった。

 

Ichika side end

 

 

Madoka side

 

また、兄さんを止められなかった。

私は兄さんの笑っているところが好きだ。

喜んでいるところが好きだ。

困っているところが好きだ。

 

でも私は、兄さんが怒っている時は嫌いだ。兄さんが怒っている時、私は兄さんのことを怖がっている。兄さんが変わってしまうことを怖がっている。

 

(私もハイジさん達みたいに止められるようになれるかな?)

 

私は心の中でそう思った。

 

 

Madoka side end

 

 

〜〜放課後〜〜

 

 

Ichika side

 

授業が終わり俺はハイジのところへ向かい、質問した。

 

「ハイジ。プラスの命令で俺をお前の隠れ蓑にしたのは本当か?」

 

少し冷静になったあとあいつの言った言葉を聞いて少し怒りが戻ったらしく、声に《ドス》がきいていた。

ハイジは焦りながら答えた。

 

「ああ、その通りだ。」

「ならすぐ「ちょっと待て⁉︎」

俺がプラスを抹殺してこようとするとハイジに止められた。

「何するんだよ!」

俺の言葉にハイジは、

「プラスからの命令で『お前は幹部から降格』。俺やマドカと共にハピネス社所属のIS操縦者になることが会議で決定した。あと今までの地位ではなくなったことによりお前への仕事はIS関連だと。」

なかなかの好条件であった為、怒りが引き驚きが勝って来た。

 

「どういうことだ!あの目的を失ったあとなぜかある意味ブラックになったあの社長が使える人材を放っておくことがない!どういう風の吹き回しだ!」

その言葉にハイジも笑って返した。

「あのおっさんが言うには、『お前らの年齢は普通学生をやっているものだ。特にお前らは学校にほとんど通わずに生きてきたんだ。休暇扱いにしてやる。存分に青春を謳歌してこい!』だそうだ。」

その言葉にちょっと呆れながらも安心したところで、

 

「ちょっといいかな?三人目の男性IS操縦者さん?」

 

織斑達が声をかけてきた。

 

「何の用だ?」

 

ハイジが返すと、

 

「オレは織斑秋一。一人目の男性IS操縦者だ。そいつはオレの誘いを無下にした挙句、オレ達を馬鹿にしてきた。だからそんな奴放って置

いて、オレ達とつるまないか?」

 

どうやらこいつは俺がさっき言った言葉を聞いていなかったようだ。

 

バキィ!!!

 

「おい、テメェ今何つった!」

 

織斑は、ハイジの殺気に体を硬直させた。

 

「貴様!なぜ秋一に危害を加えた!」

 

額に青筋を立てながらハイジが答えた。

「イチカはなあ。俺や妹を地獄から救ってくれたんだよ!そいつはまだこいつのことを何も知らないくせに馬鹿にしたんだ!友人であり恩人であるこいつを馬鹿にされて怒らない程俺の『筋』は曲っちゃいねぇ!」

俺はハイジの言葉に呆れていたが、嬉しかった。

「ハイジもう行こう。そいつ等は人の話を聞かないんだ。それより、他に紹介したい人がいるんだ。もう行こう。」

篠ノ之が何か叫んでいたが、無視してその場を離れた。

 

 

 

 

ハイジ達の顔合わせが終わり、家に帰ろうとしたが政府の対応で寮の部屋が早く空いたことを知った。

なぜかハイジ達と同じ部屋ではなかったが、そのことを気にしないで自分の部屋に向かった。その後俺はそのことを後悔することと知らずに............

 

 

「へぇ、ここが俺の部屋か。」

1035号室と表記された鍵を見ながら1035室つまり、自分の部屋のドアを開けると.........

 

「お帰りなさい。ご飯にします?お風呂にします?それとも、わ・た・し?」

目の前に裸エプロンの痴女がいた。

 

 




IS原作キャラ登場です。
お気に入り100人越えありがとうございます。
誤字脱字等あればよろしくお願いします。


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第8話 同居人

ギリギリ投稿できました。


Tatenashi side

 

私は男性IS操縦者について調べたが、一人目は情報がすぐに手に入れることができたが残る二人の男性IS操縦者についてはほぼ何も情報が出て来なかった。その情報を手に入れるために二人目と同じ部屋になり、二人目の男性IS操縦者イチカ・ハイドンを待っていた。

数分待つと、部屋にノックが響いた。

 

(どうやら来たみたいね)

 

ドアが開くと同時に、

 

「お帰りなさい。ご飯にします?お風呂にします?それとも、わ・た・し?」

その後、二人目は部屋を再確認しあっていることを確認したのち......

 

「正座しろ。」

 

「あ、いや、でも「二度も言わせるな!さっさとしろ!」

 

「は、はい!」

有無を言わさず私を正座させた.........

 

Tatenashi side end

 

 

Ichika side

 

その後俺は部屋を再確認し、自分の部屋の変態(ルームメイト)を正座させ、自己紹介(OHANASHI)を始めた......

 

「初めまして。俺はイチカ・ハイドン。一応世界で二人目の男性IS操縦者です。それで、裸エプロンの変態である貴女は俺のルームメイトですか?」

 

「私の名前は更識楯無。学園最強の生徒会長よ!!!」

 

「はあ、裸エプロンで正座したまま言われても、説得力無いですよ。」

 

「貴方が私が着替える前に正座させたんじゃない!」

 

「自分の行動を振り返ってからそういうことを言って下さい。それともわかった上でそう言っているんですか?」

 

更識楯無(変態)は顔を赤くしていたが、俺は質問を続けた。

その後、更識という名にプラスからそういう名前の暗部のことを思い出し、更識に聞いた。

 

「確か更識は暗部だったよなぁ?その暗部が俺になんの目的で近付いた?」

「貴方が何故そのことを知っているかわからないけど、一応表向きは護衛ということになっているわよ。」

 

(表向き向きということは裏でハピネス社について調べているということか。)

 

「それよりも、貴方達ハピネスは一体何者なの?」

 

更識は変なことを聞いてきた。

 

「何故そのことを聞くんですか?日本政府から何か聞いていないんですか?」

 

一応人間界の裏の上層部では、繁華界などの他世界のことは伝えられている。それを暗部の人間が知らないのは少しおかしな話だ。

 

「更識さん、2年前のことは何か知っていますか?」

 

「2年前?特に世界各地で災害が頻発した以外は伝えられていなかったけど......」

 

2年前の神を決める戦いのことはかなり前から人間界と天界と地獄界の上層部で計画を立てられていたので知っているはずだろうと思っていたが、上層部の本当に上の者にしか伝えられていなかったようだ。

 

「もういいです。わかりました。俺からは伝えることはありません。詳しくは日本政府に聞いて下さい。」

 

「政府に聞いたけどわからなかったのよ。だから貴方に聞いたんじゃない!

貴方たちハピネスは何者なの?貴方たちは何を目的に行動しているの?」

 

「ハピネスが何者なのかは伝えることが出来ませんが、目的は決まっています。

 

ハピネス社の目的は、この世界に真実を証明することです。」

 

「ちょっとそれはど『ドンッ、ドンッ』

更識さんが聞こうとした時、ドアがノックされた。

 

『会長仕事が溜まってます。早く生徒会室に戻って来て下さい!!!』

 

その後、更識さんは生徒会の布仏先輩に連れて行かれた。

 

Ichika side end

 

 

Chifuyu side

 

今日二人目と三人目の男性IS操縦者と出会った。

二人目は、家族を両親が、色々と残していった物を処分した時に見た父親の写真にそっくりだった。

5年前、ISが発表され、私は家族を守る為に束からもらったISで仕事で忙しかった時だった。私には弟が二人いたが、その内一人が行方不明になった。その後、更識や束に調べてもらったがあまり成果が出ず、もう死んでしまったのではないかと思っていた時だった。二人目はもしかしたら5年前にいなくなった一夏なのかもしれないと思ったが、今日声をかけることができなかった。

 

(もし一夏であるならば、もう一度家族に戻りたい。)

 

私はそう思って、寮長室に入っていった。

 

 




誤字脱字等あればよろしくお願いします。
後半少し変更しました。


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第9話 能力

今回は少し短めです。


Ichika side

 

「ふぅ、ようやく行ったか。」

 

俺は更識さんが部屋を出て行ったことで、部屋の中の盗聴器探し(掃除)をすることができる。

俺は一枚の写真を取り出した。

 

『“アルバム”に“(リピート)”を加える能力』

 

一枚の写真は消え、イチカの身体が一瞬光った。

 

『“無機物”のを“生物”に変える能力』

 

部屋中に顔のついた物が沢山出来た。

 

「よしお前ら、盗聴器や監視カメラなどの機能を持つ道具の居場所を教えろ。」

 

「「「ご主人たま〜。ここにあるよ〜。」」」

 

部屋の色々な物から声が上がり、近場から盗聴器などをとっていった。

(この能力本当に使い勝手がいいなぁ。)

 

 

 

能力で探すこと数分。約20近くの盗聴器などが発見された。

 

「ご主人たま〜。これで全部だよ〜。」

 

「「「ご主人たま〜、ほめてほめて〜。」」」

 

「よく頑張ったな。お前ら。」

 

俺は頭を撫でながら、疑問を口に出した。

 

「何でこんなに盗聴器があるのかねぇ。」

 

「ご主人たま、それほどハピネスの秘密は守られているんだよ。」

 

「ありがとうお前ら。もう消えていいぞ。」

 

「「「ご主人たま。また有事には、呼んでください。」」」

 

物たちは戻り、壊れた盗聴器だけが残った。

 

 

 

 

 

荷物整理が終わったところで、急に電話がかかって来た。

 

「はい、もしもし。イチカ・ハイドンですが。

ああ『ーー』か。どうしたんだ?」

 

『ーーーー』

 

「専用機が、後もう少しで出来るのか。どれくらいで出来る?」

 

『ーーーー』

 

「いや一週間後に模擬戦をすることになってな。」

 

『ーーーー』

 

「そうか。ギリギリ間に合いそうか。じゃあ待っている。」

 

『ーーーー』

 

「えっ?汎用機も模擬戦に出して欲しいって?」

 

『ーーーー』

 

「わかった。一週間後また会おう。」

 

プチッ。プープー。

 

電話の音が鳴っていた。

 

 

 

Ichika side end

 

 

??? side

 

「ふぅ、予定通りイチカに専用機のことを伝えることが出来た。」

 

眼鏡をかけた青年が携帯電話を切り座っていた。

そこに頭がリーゼントの青年と、禿頭の大男と、コートを着た少年が現れた。

少年が問うた。

 

「イチカはどうだった?」

 

「予定が少し狂ってね。もう少し早く専用機を作らないといけなくなった。」

 

「いやそういう意味じゃなかったんだけど.........

それより大丈夫?専用機を早めに作るってどういうことだい?」

 

「どうやら、一週間後に模擬戦をすることになったみたいで、早めに作って貰いたいとイチカは言っていた。」

 

リーゼントの青年が声を上げた。

 

「大丈夫だ!お前が全力(マックス)頑張ればその程度どうにでもなる!!!」

 

その声に眼鏡の青年は呆れた。

 

「その自信はどこから来るんだい?これでもハイペースでやっているんだよ。」

 

禿頭の大男はリーゼントの青年と似たようなことを言った。

 

「大丈夫だ!お前は『(おとこ)』だ!その程度の苦難乗り越えられないことはない!!!」

 

「わかったよ。少し予定が狂ったが、イチカ達の為に完成を急がせますか。」

 

眼鏡の青年は驚いたが、少し気合いを入れて、専用機作りへと戻っていった。

 

 

 




うえきの法則キャラを出ました。いったい誰なんでしょうか?
誤字脱字等あればよろしくお願いします。


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第10話 決定戦

遅れてすみません。
先週から学校が始まったので、出来るだけペースを守るつもりですがしばらく不定期になります。


??? side

 

IS学園の校門前に眼鏡の青年が立っていた。

 

「予定通り間に合ってよかったですね。模擬戦までにISを届けないとイチカが困ってしまいますから少し急ぎましょう。」

 

そう言って青年は一人でIS学園の中に入っていった。

 

Ichika side

 

〜模擬戦当日〜

 

あれから数日がたちクラス代表決定戦が始まろうとしていた。だが俺は、ISの練習をしていない。発覚後ハピネス社にて練習に取り掛かろうとしたが、地獄人としての超身体能力と天界人としての能力『神器』の一つである九ツ星神器花鳥風月(セイクー)の使い方に慣れているのか、ハピネス以外で作った会社のISには手加減して乗ってもすぐにショートしてしまうことからISの練習をすることが出来なかった。更識先輩から練習をしないのかと言われたら能力のことを言わずに説明することが難しかった。

 

織斑達がなにやらもめているようだが、関わりたくないので無視しよう。

 

山田先生が近づいて来た。

 

「ハイドン君すみませんが、織斑君の専用機がもう少し時間がかかるので先にオルコットさんと試合をしてくれませんか?」

 

「すみません、山田先生。うちの会社が俺の専用機を持ってきてるそうなので、もう少し待ってくれませんか?」

 

俺がそういうと山田先生が驚いた。

織斑先生も近づいてきて、

「おい、ハイドン。専用機のことを何故報告しなかった。」

 

「何故と聞かれても、俺達ハピネスはどこの国にも属さない秘密主義なのは有名でしょう?それをわざわざIS学園や日本政府の要請などこちらには聞く理由はありません。」

 

ハピネスは一度女性権利団体のISや日本政府のISに襲撃されたことがあった。その時に日本政府の繁華界を知っている上層部に働きかけ、ハピネス社の立場を特殊にしてもらったのだ。

 

「貴様ッ「すみませんが、イチカ・ハイドンという方はいませんか?」

 

眼鏡の青年がこの部屋に入って来た。

 

「ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ。」

 

「ボクは関係者ですよ。ボクの名前はキルノートン。ハピネス社の開発支部に所属しています。イチカ・ハイドンの専用機を持って来ました。」

 

キルノートンの言葉にイチカ以外の此処にいる者達が驚いた。

 

「久しぶりだなキルノートン。」

 

「ええ、貴方がボクに声をかけてくるというのは予定通りです。」

 

「その口調は相変わらずだな、キルノートン。

それよりも時間がないそうだ。機体の説明をしてくれ。」

 

キルノートンは頷き、持っていたスイッチを押した。

二つのコンテナが開き、中にある二つのISが姿を現した。

其処には、機械らしさを感じられない二着の服が吊るされていた。

 

「左のISがハピネス社が開発した試作型汎用機《真実の世界(トゥルー・ワールド)》で、右にあるのが、イチカ・ハイドンの専用機《理想の才(アイデアル・アビリティ)》です。」

 

「ハイドン。織斑のISがまだ到着していない。

お前が先に試合をしろ。」

 

織斑先生がやつあたり気味にそういった。

 

「わかりました。それでは......」

 

俺が専用機《理想の才》に触ろうとした時、

 

「ハイドン君。すみませんがISスーツを着用しないのですか?」

 

「ええ、俺達はうちの会社以外ではデータを公開しないことでIS学園と契約していますからわざわざ着る意味が無いのですよ。」

 

繁華界と人間界の上層部の契約は元々繁華界の住民を隠匿する為の契約をしている。曲がりなりにも繁華界の壁外営業許可証『グリーンバッチ』を持っている俺は繁華界の住民の一人と考えられているので繁華界人への情報規制がかけられ、俺達への人間界の上層部からの圧力等はありえないので、契約を破る行為を行うのはいつも秘密を知らされていない女性権利団体やテロリストが破る行為を行う。そのおかげで、先程のようなこちらに有利な条件を飲ますことができる。

 

「では、もう行きま「ちょっと待て。」

 

俺が再び専用機に触ろうとした時キルノートンが声をかけて来た。

 

「君には先に汎用機を使用してもらう。」

 

「おい、どういうことだ!!!」

 

専用機にはフォーマットフィッティングが必要である。IS自体嫌いな俺が開発支部にいた頃に嫌でも知らなければいけないことだったので、大抵のことは知っている。その上、基礎中の基礎である作業を無視して汎用機に乗る必要が無い。

 

「先に専用機のフォーマットフィッティングする必要があるだろ!!わざわざ汎用機に乗る必要が無い。」

 

「そのことは解決しているよ。」

 

「どういうことだ⁉︎」

 

「君の専用機《理想の才》はフォーマットフィッティング中待機状態になり、その状態でフォーマットフィッティングすることになるんだよ。

さあ、君の専用機に触れてみなよ。」

 

俺は疑いながら機体に触れると、機体は手袋に変わった。

手袋は、包帯みたいなデザインに手の甲には緑色で刺繍されたような木のマークとその上に地獄人の服のデザインがついている。

 

「へえ、気に入ったよ。ありがとうキルノートン。」

 

俺が5年前に出会った兄さんや、2年前に出会った植木さんとアノンさんをイメージしてデザインされた待機状態に俺は感動していた。

 

「わかった。みんなに伝えておくことを約束しよう。

急いでたんでしょう。早く行った方がいいんじゃないかな?」

 

俺は《真実の世界》に乗りながらキルノートンを見る。

 

「じゃあ、あの女尊男卑娘をぶっ飛ばしてくるよ。」

 

「君があの女を倒すことは予定に入っている。だが、あえて言おう『頑張って来い』」

 

俺はキルノートンへ手を振って、アリーナに飛び立った。

 

 




イチカのISが登場しました!!!
《真実の世界》は、次回無双します。


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第11話 汎用機

前回の投稿からかなり遅れて申し訳ありません!!!
戦闘描写を書くのがとても難しいことがわかりました。次回かはもっと早く投稿したいと思います。


Madoka side

 

兄さんがあのクズ共と戦う(クラス代表決定戦)日が来た。

私達は織斑(クズ)と一緒の空間にいるのが嫌で、観客席から観戦している。

 

「ねえ、ハイジさん?

兄さんの機体はどんなものなのかな?」

 

「さあな?オレはハピネスが作る機体にだ。どのみちおかしな機体なのだろう。」

 

会話をしていると兄さんがピットから飛び出してきた。

 

「.........何あれ?」

 

「嘘だろッ!」

 

その光景を見て私とは固まり、ハイジさんは立ち上がった。兄さんが見る限り生身(・・)でビットから飛び出したのだ⁉︎

周囲がざわめき、見る者全てが次の光景に恐怖する。

だが、その光景は訪れることはなかった。

兄さんは服装(・・)以外何も変わらずに空を飛んで来たのだ。

 

「ねえ、ハイジさん何で「どういうことだ!!!」

 

ハイジさんに聞こうとしたらハイジさんは冷や汗をかいていた。ハイジさんにはきっと、あの服装の意味がわかっているのだ。

兄さんの今の服装は遠目からでもよくわかる全身真っ黒な『学生服』そして何より、ボタンには『火』のマークが付いていた。

 

 

Madoka side end

 

 

Haiji side

 

「どういうことだ!!!」

 

オレ達はクラス代表決定戦を見る為に観客席に来ていた。イチカのISが遅れていることから、まだ試合をしていなかった。マドカと会話していると漸くイチカがピッチから出てきた。だが其処に居たのは、繁華界に居た頃の、火野国中学の制服を着ていたイチカだった。

 

 

Haiji side end

 

 

 

Ichika side

 

 

「あら、逃げずに来ましたのね.........ってなんですの⁉︎その姿⁉︎ふざけているのですか⁉︎ちゃんと聞いてますの⁉︎」

 

俺は今最悪(最高)に気分が悪かった(良かった)

 

「ああ、聞いてますよ。それよりも、そんな駄作で試合をするなど舐めているのは其方ではないのですか?」

 

「なんですって!!!私の蒼い雫(ブルー・ティアーズ)を莫迦にするのですか⁉︎」

 

目の前にいる駄作に乗った女を見たから。

 

「ええ、そうですよ。何か疑問でも?

まさか、生身の人間(・・・・・)に負けた機体より劣った機体で挑んでくるんですから、そう言われても文句は言えないはずですが?」

 

そう目の前にあるISの後継機《サイレント・ゼフィルス》を生身で壊した人間がいるのだ。其奴は修行感覚でハピネスと契約している『とある』企業のボディーガードをしているのだが、ハピネスの情報を得る為に行動を起こした女尊男卑のグループのISを生身で破壊したのだ。その中にはイギリスも含まれていたが......

その後詳しく話を聞くと、

 

『最強の兵器と聞いていたが、修行にもならなかったある。もう一度地獄界修行巡りに行って来るである』

 

といい、休暇を取り地獄界に行ってしまった。その時の映像がISコア以外破壊されていた為、各国の上層部は女権団に対し警戒を強めたはいいが、ISコアを含めたハピネスに対する理不尽な契約します受けることになった。

 

 

 

 

-試合開始-

 

 

 

 

「もう泣いても土下座しても許しませんわ!!私の《ブルー・ティアーズ》を駄作と言った罪を思い知りなさい!!!」

 

セシリアは武器『スターライトmkilll』を撃つが、イチカは避けることすらしなかった。その一撃はイチカに命中し、イチカは煙に隠れてしまった。

 

「ふん!大口を叩くいた割には弱かったですわ!!!「おやおや、この程度ですか......この程度なら試験にもならないですね」

 

イチカは煙が消えると無傷で存在していた。

 

「くっ⁉︎さあ、踊りなさい!私、セシリア・オルコットと《ブルー・ティアーズ》の奏でる円舞曲を!!」

 

セシリアは機体に着くビット《ブルー・ティアーズ》を4基展開してイチカへと死角から発射した。

 

「これで、終わりですわ!!!」

 

だが、その弾は当たることはなかった。

 

 

”機能6”『エアシールド』

 

 

その攻撃は空気の壁によって全て防がれてしまった。

 

「この程度なら武装する必要がないですが、実験だから仕方がない。」

 

セシリアは何度も発射するが、イチカには当たることはなかった。

 

 

”機能5”『クワトロハンズ』

 

 

『エアシールド』によって防がれていた4基の《ブルー・ティアーズ》は四つの腕によって全て破壊された。イチカはセシリアの目の前まで飛ぶと

 

 

”機能2”『ビーナイフ』

 

 

手首から生えるように出たナイフが、セシリアに襲いかかった。セシリアは残り2基の《ブルー・ティアーズ》のミサイルを使い逃げようとしたが......

 

 

“機能4”『スパイダーズコート』

 

 

突如現れた網の様なコートによって捕まってしまう。

 

「なんなんですの、その機体は⁉︎」

 

セシリアは聞くが、

 

「貴方に教える必要がありません。もう終わりです!!!」

 

 

“機能3”『マシンガンバー』

 

腕に装着された砲台から十を超える数の棒が放たれた。

 

 

-試合終了-

 

墜ちたセシリア・オルコットを無視し、イチカはビットへと戻った。

 

 

 

 




イチカが今回使用したIS《真の世界(トゥルー・ワールド)》はハピネススーツを改良してIS型にしたものです。
次回、イチカの専用機《理想の才(アイデアル・アビリティ)》が空を飛びます!!!


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第12話 手心

中間テストが終わり、漸く投稿できました。
前回の予告が嘘になりました。
すみません!!!


Killnorton side

 

 

イチカがピット内に戻って来た。

僕はさっきの戦い方は珍しい事が起きたので驚いていた。

 

 

「はい、これ。これで試作機のテストが終わった。

次からは専用機を使わせて貰うぞ。」

 

「ああその事はいいんだか......珍しいな、イチカ。

あんな戦い方するなんて予定外すぎる!」

 

「あんな戦い方?」

 

「そうだ!。

ハイジから聞いていたが、今回かなり怒っていたようだったじゃないか⁉︎なのに『手心』を加えるなんて君らしくないじゃないんじゃないのか⁉︎」

 

そう今回はどこかおかしかった。

イチカはハイジが来る前に『命』を賭けると言ったのだ。『命』を賭けるとは即ち、過去のバロウの最も優先した『目的を達成するならば、他の全ての物を捨てる』という覚悟をしたことに他ならない。

じゃあなぜイチカは、あの女を徹底して倒すことがなかったのか疑問しかなかったので、僕はこの珍しい事に少し『興奮』していた。

 

(きっと何か面白い理由がある)

 

「ああ、その事か。理由は簡単だよ。

気持ち萎えた(・・・・・・)ただそれだけだよ。」

 

「えっと......もっと他にないのかい。」

 

その答えはまた計算外だった。

 

「ああ、李崩(修行オタク)に負けたISなら本気で叩き潰す気分にもならないからな。」

 

「はあ、そういえば君は李崩に能力無しで勝つ人でしたね。」

 

理由は期待外れだったが、これもまた、面白い。

試合が盛り上がってきたようだ。某人間のクズが何か言ってるようだ。

 

 

『オレは、千冬姉を......みんなを守る力を手に入れたんだ!!!』

 

織斑は随分と勝手な言葉を言っている。

イチカの方は今の言葉でイラついているようだ。

 

「はあ、君を迫害しておいて『守る力』はおかしいんじゃないかな。」

 

「あいつは自分の『力』と兵器の『力』を間違えているんだよ。だから手に入れたなんて喜んでいるんだ。

植木チーム(植木君達)みたいに甘くても力を過信せず使い工夫し、努力して十全にその上で自分の限界を何度も超えた者、もしくは兄さんやアノンさんみたいに自分の目的の為にどんな手段でも使い勝ち続ける者達、つまり自分の目標や目的の為に必要な自分の持っている全てを賭けた者こそが『強者』。

 

だがあいつは自分の力を過信して溺れている上、天才と呼ばれるポテンシャルで胡座をかき、苦渋すら味わったことが無い。

紛れも無い『弱者』だ。そんな人間に『守る力』自体に発展することは絶対にない。

苦渋を味わったことがない人間の言葉など聞くことに値しない。」

 

やはりイチカはあの戦いの時の感情を失っているらしい。昔のイチカならば、確実にピットから出て織斑に向かい『(くろがね)』か『快刀乱麻(ランマ)』を放っていただろう。

今のイチカはかなり温厚になっている。

 

(バロウ達に土産話が出来たな)

 

 

ー試合終了ー

 

 

「どうやら試合が終了したようだね。

結局勝ったのは織斑だったけど何か思うところでもありますか?」

 

「何も無い。ただ勝ったのが織斑だったというだけだ。」

 

「おい、ハイドン!!!試合の準備をしろ!!!」

 

織斑千冬が呼んでいる。

 

「じゃあ、行ってくる。」

 

イチカは仏頂面でそう言った。

 

 

Killnorton side end

 

Ichika side

 

 

反対側ピットから織斑が飛び出して来た。

 

「ハイドン!

なんであそこまでやったんだ!!!」

 

織斑はさっき戦ったクソ女と何かあったらしい。

 

「あそこまでとは?」

 

「セシリアのISはさっきの試合ビットすら使えないくらいまで痛めつけられていて、《打鉄》で戦ったんだぞ!」

 

「へぇ、そうだったんですか。

どうでもいいですね。」

 

「どうでもいいってお前、ふざけんなよ!

普通男は女の子に手をあげたらいけないのにあんなにまで痛めつけるなんて.........許せねぇ!!!」

 

はあ、くだらない。

 

「もう試合が始まります。

くだらないこと言って無いでかかって来たらどうですか?」

 

「テメェ⁉︎」

 

 

ー試合開始ー

 

 

Ichika side end

 




次回、織斑を叩き潰します。


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第13話 専用機

今回は早めに投稿できました。
次回も早めに投稿できるといいなあ…


Ichika side

 

 

ー試合開始ー

 

「ウオオオオ!!!」

 

試合開始の合図が終わると、織斑は俺に向かって真っ直ぐに突っ込んで来た。

 

「無意味ですね。」

 

俺は攻撃を躱し武装を確認する。

 

(要望通りに答えられるとは、流石キルノートン)

 

俺は突っ込んで来る織斑に“武装”『鉄』を展開した。

 

「突っ込んで来るしか能が無いなら、『キエロ』」

 

ズドンーー

 

織斑に向かって巨大な鉄の弾丸が襲い掛かる。

 

「クッ⁉︎」

 

織斑はその弾を避けるが、背後から大きな音が鳴り振り返った。音が鳴った場所から弾丸が消え、残ったのは大きなクレーターだけだった。

 

(やはり『神器』よりかなり威力が落ちている。天界力は余り込めなかったが、通常の威力よりかなり弱くなっている)

 

このISはキルノートンやハピネスの開発チームと一緒に天界力をISに流用し天界人のスペックをISで再現しようと考えられたのが、このISのきっかけだった。

このISには元々天界力は備わっていないので普通の人間には使えず、天界力を持った天界人や天界人を取り込んだ守り人一族の者は使えるが、所詮ISなので再現したとしても其れ相応に天界力を込めなければ武器としての威力を出せないのである。

 

(まあ、どのみちこのISよりも今のISの方が弱いんだから結果は変わらないよな)

 

織斑はさっきの攻撃を恐れたようで攻撃してこない。だから俺は質問をしてみた。

 

「なあ、織斑。君はそのIS()をどう使うんですか?」

 

至極単純な質問だ。

織斑は少し意味を考えると答えた。

 

「俺は.........千冬姉をみんなを守る為に使う。」

 

至極単純な質問に、とても真っ当でふざけた(・・・・)答えが返ってきた。

 

「くだらない答えだね。」

 

反射的にそう言ってしまった。

 

「どこが、くだらないんだよ⁉︎これがオレの答えなんだよ!!!」

 

その言葉に少しイラついた。

 

「くだらないんだよ。

だって、弟を学校全体で虐めていた癖にそんな綺麗事をほざくなんて『キモチワルインダヨ』」

 

俺は怒っているようだ。

 

「なんでそれを知ってるんだよ!!!」

 

ああ、心は静かに呆れているのに対し、身体が憎しみで燃えているようだ。

 

「ハピネスの情報網を甘く見ないで貰えるかな。そんなこんなぐらいすぐにわかったよ。それに不愉快だったのは、その詭弁を弟を失踪したのに言ったところかな。」

 

俺は嘘を付いた。だがこっちの方が効果的だったようだ。

 

「オレは悪くない!!!織斑の中で唯一何も出来ないあいつが悪いんだ!!!」

 

ああ、なんでこんなにもイライラするんだろう。

イチカ・ハイドン()』と『織斑一夏(あいつ)』違うのに、なんでこんなにも不愉快なのだろう。

 

織斑はさっきの言葉で怒りで自分を忘れたのだろう。織斑は無我夢中で突っ込んで来た。

俺はもうこんなにも不愉快な事はしたくなかった。

 

「ウオオオ!!!」

 

「ああもういいや。

 

『キエテナクナレ』』

 

俺は『快刀乱麻』を呼び出し、織斑が展開する雪片弐型を《零落白夜》を発動した攻撃《零落白夜》ごとぶった斬った。

そして俺は織斑を『快刀乱麻』で切り刻んだ。

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も.........

 

 

 

ー試合終了ー

 

 

 

試合終了のアナウンスが鳴り俺は漸く気づくことがができた。目の前には装甲がボロボロになり気絶している織斑だった。

俺はそれを放置し、ピット内に戻った。

 

 

Ichika side end

 

 

 

Another side

 

そこは地獄だった。

イチカ・ハイドンと織斑秋一の試合は圧倒的にイチカ・ハイドンが優っていた。ハイドンの攻撃は、織斑と何か会話したと思ったら激しさを増した。ハイドンは織斑が抵抗出来なくなるまで切って切ってからまくった。織斑は気絶し、そこに立っていたのは地獄の底の『鬼』のようだった。

 

 

Another side end

 

 

Madoka side

 

超身体能力で聞こえた内容はとても不愉快な内容だった。その詭弁に怒りで沸騰しそうになった時、兄さんの雰囲気が変わった。

兄さんの雰囲気は怒っているようで苦しんでいるようで、どこか悲しんでいた。兄さんの事情を知らない者達が何か言っているようだが、知っている者達は静かにその光景を見ているようだった。

 

試合終了後、私はとても悲しかった。

兄さんは記憶への思いを消してもまだ縛られているのだと思うととても辛く感じた。私はこんなにも愛しているのに兄さんを変えられないのだと無力に思った。

 

(ああ、兄さん。私は貴方を愛しています)

 

私は心でそう思った。

 

 

Madoka side end




誤字脱字等あればよろしくお願いします。


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第14話 感情

今回は早めに投稿できました。



Ichika side

 

(それにしても、なんであそこまでイラついたのだろう?)

 

織斑との試合終了後、俺は先の試合の中で怒りに呑まれた事を考えながら、ビットに戻った。

 

(やはり、記憶への思いが消えるのは脳だけで、体はその事を覚えているということか)

 

「よくも秋一を!!!」

 

機体から降りると、目の前に天災の残りカス(篠ノ之束の妹)が木刀で殴りかかってきた。俺は木刀を蹴りで破壊した。

 

「なぜ秋一をあそこまで痛めつけた!!!」

 

(ああ、その事を気にしているのか)

 

実にくだらなかった。

そう思っていると、織斑千冬がやってきた。

 

「やり過ぎた、ハイドン。あそこまで痛めつけて、貴重な男性IS操縦者が壊れてしまったらどうするんだ!」

 

千冬は自分の弟を心配しているようだった。

 

「くだらないんだよ。十分手加減した。腹に穴が1つも開いてないんだからそれでいいだろ。」

 

「貴様っ!」

 

「ウゼェんだよ、お前は!!!」

篠ノ之が殴りかかってきたが殴り返して昏倒させた。織斑千冬は目の前に起きた事に呆然としていた。

 

「それでは、俺はこれで。」

 

俺はその場を放置してハイジ達の元へ行った。

 

 

Ichika side end

 

 

 

Memory side

 

 

『キエロ』

 

 

 

『キモチワルインダヨ』

 

 

 

『キエテナクナレ』

 

 

 

試合中に聞いた様なその言葉。

その言葉はそこには存在する筈がない言葉だった。

私が二年前に聞いた言葉に似ているその言葉は、イチカの限定条件によりなくなる筈のものだった。

 

(少しずつ昔に戻ってきている?)

 

ISや昔の姉兄と関わり始めた事によって二年前に戻っているのだとすれば............

 

(イチカの限定条件は確かに消えた筈.........)

 

でなければイチカが、繁華界を旅した理由がない。私は考えを巡らせながら、自室へと戻った。

 

 

 

Memory side end

 

 

 

Ichika side

 

 

その後、クラス代表は織斑に決まった。最初は織斑千冬が俺を代表にしようとしたが、ハピネスの圧力によって引き下がった。

その後、俺は一人自室にいた。

 

「ああ、暇だ。」

 

《コンコン》

 

自室で写真の整理をしていると、ドアからノックをする音が聞こえた。

 

「はい?どちら様ですかって、お前かよ。」

 

ドアを開けるとセシリア・オルコットがいた。

 

 

「.........すみません、謝罪をしに来ましたの。」

 

セシリア・オルコットは本当に謝罪しに来た様だ。だが、俺には意味がない。

 

「ハイドンさん!家族のことを莫迦にしてすみませんでした!!!」

 

 

 

「なに言ってるんだ、お前は?」

 

 

「えっ?」

 

 

(本当に女尊男卑の連中(こいつら)はイライラさせるな)

 

「俺よりも先に謝る人間がいるでしょうが!!!」

 

「.........誰にでしょうか?」

 

(本当に女尊男卑の連中(こいつら)は理解力が無いな)

 

「お前は莫迦か?この数年間にお前が虐げてきた人間全てだよ!!!」

 

セシリア・オルコットは戸惑った。それもそうだ、この女が虐げてきた人間はこの女では数えることが出来ないだろう。

 

「えっでもそれではたくさんの人に⁉︎」

 

「『それでは』じゃない!お前は貴族なのだろう?それなりに重い責任がある筈だ。だがお前は女尊男卑に染まった。染まった事で高い地位でこの数年間たくさんの人間を虐げてきた筈だ。ならその中の人間には、お前のせいで人生が破滅した人間が少なくともいる筈だ!その人間達に謝罪し、許してもらうまでは少なくとも俺は許すつもりはない!!!」

 

女尊男卑の連中は男性だけでなく、男性を擁護する人間にも容赦をしない。その人間の中には許さない人間もいるだろう。それでも許されない事をしたセシリア・オルコットが悪いのだ。だから俺はただで許すつもりはない。

 

セシリア・オルコットはなにか言おうとしたが俺はドアを閉めた。

 

 

 

 

「お前にしては随分と生温い事をしたな、イチカ。」

 

 

部屋にハルがいた。

 

「はあ、どうしてお前がここに居る?」

 

「いや、随分と懐かしい雰囲気を試合中に出していたからな。マドカが悩んでるみたいだったからな、こっちに来た方が面白いと思ってな!」

 

ハルの言葉は俺を確信させた。

 

「少し、神を決める戦いの時の性格に似ていた気がする。『体』は憎しみを覚えていた様だ。」

 

「それはそうだ。『お前は(・・・)ロベルト・ハイドンに(・・・・・・・・・・)会う前の日(・・・・・)までの(・・・)記憶への感情を失ったが(・・・・・・・・・・・)』、

神を決める戦い時(・・・・・・・・)の感情(・・・)』は失っていない。その性で繁華界でも苦労したんだろうが。」

 

「そうだったな。」

 

繁華界にいた頃は、生きる目的を探して放浪していた様なものだったのだろう。人間を滅ぼす為に生きた数年間しか思いはなく、行き場の無い怒りが心に留まり続けた。ハイジ達に出会うことがなければきっと壊れていただろう。

 

 

「もう少し我慢しろイチカ。真実が証明されるまで。」

 

「わかってるよハル。後もう少しだからな。」

 

 

ハルを腕輪に戻し、一日を終えた。

 

 




入学編終了です!!!
次回はから、クラス代表編に入ります。


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15話 機体設定

IS設定を出しました。
使っていない武装は、後に追加します。


機体 《理想の才》

 

イチカやキルノートン、他神を決める戦い時のメンバーや人間界以外の他世界のメンツデ作りあげられたIS。

世代、SEなどISとしての機能は無く、イチカが神を決める戦いの二次選考時に着ていた服装をイメージされて作られた。SEなどは天界力で補っており、イチカの中にある天界力が無くなった時点で機能停止する。

主武装は天界人が使う“神器”をイメージした武器が搭載されている。だが威力が低く、通常の天界人の四ツ星レベルまでの威力しか出せない。

 

 

《武装》

 

『鉄』 ほぼ原作通りの神器“鉄”。違う点はサイズが幼少期のロベルトやバロウの“鉄”の様に小さくなっている。弾は一発で連射出来ない。弾は発射後自動的に回収される。

 

 

 

『快刀乱麻』 原作の神器“快刀乱麻”とは違い一本の刀の形状をしている。天界の特殊な鉱石を使い天界力を込めれば込めるほど切れ味が増す。

 

 

 

 

 

 

機体 《真実の世界》

 

 

ハピネスの試作型汎用機。

操縦者の最も動きやすいとされる服装を選択し、その服装へと変わる。マドカとハイジの専用機の基盤となるIS。イチカのデータ取りはその為に行われた。武装はハピネススーツを元にしており、ハピネススーツと同程度には動けるようになっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

Hall side

 

 

夜、マドカの部屋に戻り考えていた。

 

 

(やはり、イチカは忘れていたか。)

 

一夏から預かっているものを見ていた。

神を決める戦い四次選考前、イチカに渡されたものだった。その後、イチカは記憶への思いが消えた事により、イチカが人間を滅ぼす(・・・・・・)理由のき(・・・・)っかけと(・・・・)()った者(・・・)との記憶(・・・・)とイチカ自身によるその者への後悔の念により、イチカは記憶を忘れている。

 

 

(イチカが記憶を取り戻すのが、後もう少し.........)

 

後、もう少しでイチカは一夏の思いを取り戻す。

 

(それまではイチカには隠さないと。)

 

 

持っているものを隠し、長い夜を過ごした。

 

 

Hall side end

 

 

 

 

??? side

 

 

「漸く見つけた!!!」

 

「本当ですか!束様!」

 

私、篠ノ之束は5年間「織斑一夏』を、『いっくん』を探していた。一時期は姿を見せた時があったが、すぐに足跡すら残さず消えてしまう。雲を掴む様な話を頼りにいろいろな国や国家機関をハッキングしても見つからなかった。でも、少し前に世界で二番目に発見された男性IS操縦者『イチカ・ハイドン』を見た時びっくりした。見つからなかったいっくんのそっくりさんが現れたのだ。見た目は少し違うが、小さい頃、ちーちゃんの家で見たちーちゃんの父親そっくりだったのと、いっくんの面影が少し残っていた事が理由だった。

 

 

(少ししたらIS学園にイベントがあるから、その時にいっくんかどうか確かめよう!!!)

 

 

目の前の目標に向かって私はISを作り始めた。

 

 




誤字脱字等あればよろしくお願いします。


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第2章 襲撃編
16話 転校生


期末テストが終わり、漸く新章に入ることができました。
次回はもっと早く投稿できる様に努力します。


Memory side

 

 

「おいイチカ!あの試合中なぜあそこまで無意味な攻撃をした⁉︎」

 

クラス代表決定戦の次の日、私は目の前の二人とともにイチカを呼び出した。呼び出した主な理由は、クラス代表決定戦中のイチカの突然の変貌した事についてだ。マドカやハイジも私と同じようにイチカの変貌について心配したから聞きに来たのだ。

 

「そんな事は知らん!」

 

「兄さん、本当の事を言って下さい!!!」

 

イチカは溜息をついていた。

 

「知らないって事は本当だよ。」

 

「じゃあ、どうして兄さんはあの試合であそこまで傷つけたのですか?」

 

私は二人のの心配とは理由が違う。ハイジ達はハピネス社のイメージダウンとイチカ自身の学園生活の事について心配しているが、私はイチカが昔の感情がまだ残っている事についての心配だ。ハイジ達は神を決める戦い時のイチカを知らないからそのくらいの心配で済んでいるが、私は違う。人間を常時殺そうとしていたイチカに戻ったとなれば、今までとは違う昔のイチカの感情が戻ればなにをするかわからないのだ。イチカからその事を聞き次第ではイチカと対立することがあるのだ。

 

「俺自身ではわからないから知らないって答えたんだよ。戦っている間にあのカスの声や行動がなにかと被るように見えて体の中からふつふつと怒りと憎しみが湧き上がって来たんだ。」

 

「ねえ、イチカ。

あなたは神を決める戦い時に織斑に対する感情を失ったのよね?」

 

私はこの時、初めてその場で声を出した。この返答次第では今後の関係にも繋がる。

 

「ああ、失った。

だが、繁華界から人界(こっち)に戻って来てからは、そういうこと(怒りや憎しみで暴走すること)が起こりやすくなった。」

 

「それじゃああんたの中には織斑を憎んでいた頃の感情はないの⁉︎」

 

「それは違う。

俺の感情があるなら、こっちに戻って来た時にありとあらゆる方法を使って、あのカスやあのカスが住んでいた町の人間に復讐してる。」

 

イチカは呆れ半分で私を見ている。

なら、イチカにどうしてそんな感情が湧き上がってくるのかわからない。

 

「兄さん。それは大丈夫なんですか?」

 

マドカが心配そうに問う。それもそうだ。イチカの中にそんな感情があれば、普通の生活を送ることが難しくなってくる。

そんなマドカを見つめ、イチカは優しく撫でながら言った。

 

「大丈夫。この問題はもう少しで解決する。」

 

イチカはなにかを確信しているようだ。だが、イチカからはそのことについて『聞いてはならない』というような威圧を放っていた。

 

その後、私達はそれぞれの部屋に戻った。

 

 

 

Memory side end

 

 

 

Ichika side

 

 

「兄さん!隣のクラスに転校生が来るそうですよ!!!」

 

ある日の朝のホームルーム前、教室は騒がしかった。俺は先日にあった織斑との試合のおかげか、マドカ達以外とは特に用がなければ話かけられることがなくなった。

 

(まあ、裏で悪い噂等あるがどうでもいい。)

 

そのことで、マドカに話かけられる回数が増えた。きっと試合のことを気にしているのだろう。

今日もマドカに話かけられた。どうやら転校生が来るらしい。

 

「マドカ。転校生ってのは誰なんだ?」

 

「誰なのかはわかりませんが、中国の代表候補生みたいですよ!」

 

(中国か。たしか織斑だった頃にそんなことがあったような)

 

俺は織斑一夏の記憶にあった中国の『転校生』を思い出した。

 

(まあ、最悪な奴だったけどな)

 

「どうしたのですか。兄さん?」

 

織斑の頃の嫌な記憶を思い出したことで顔を歪めたことを見たのか、マドカに心配をかけてしまった。

 

「いや、なんでもない。それよりマドカ、転校生には注意しろ。」

 

「スパイの可能性ですか?」

 

元『亡国企業』なだけあってスパイなどのことを理解しているようだ。

 

「ああ、まだ入学してからそうたってないのに転校して来たことは、きっとなにかある。ハピネス社のデータが目的かもしれない。だからあまりこの学園の人間を信じない方がいい。」

 

「それはわかってます、兄さん!

それにこの学園の人間とはあまり親しくなりたくありませんから。」

 

マドカがそこまで言うとなると、この学園にはかなり女尊男卑が広まっているようだ。

 

「マドカ......ありがとう。もう少しでホームルームだから、席についておいた方が『バン』

 

 

俺の声は突然の大きな音で遮られた。その音と共に教室内に声が響いた。

 

「その情報、古いよ!」

 

『鳳鈴音』

 

織斑と会話するその女に、感情を失くした自分でも酷く不愉快な記憶が蘇った。

 

 

Ichika side end

 

 

Madoka side

 

教室に変な女が入って来てから、兄さんの雰囲気が変わった。酷く不愉快なものを見る様な目でその女を見ていた。

 

「兄さん、どうしたんですか?

あの女がなにかしたんですか?」

 

私はとりあえず話を聞く事にした。

 

「ああ少し不愉快な記憶を思い出しただけだよ。」

 

「不愉快な記憶とは?」

 

「簡単な話だよ。織斑の頃の最後の一年に転校して来たあの女が、転校して来た学校に馴染む為にイジメに加担してたんだよ。女尊男卑の所為で少しずつエスカレートしていって階段から落とされた事があったんだよ。だから、その頃の感情がなくとも不愉快な気持ちになったんだよ。」

 

酷い話だった。

大半の人間は自分の為に他人を犠牲にする。これは、もう一人のロベルト兄さんから教わったことだ。それは今回、兄さんに当てはまったことだ。兄さんはあそこにいる女の『スケープゴート』にされた上に、階段にまで落とされた。

 

(許せない!!!)

 

「駄目だよ、マドカ。」

 

「なんでですか⁉︎兄さん!」

 

「許せない気持ちはわからなくもない。だが、俺達はハピネス社の人間だ。身勝手な行動はしないようにしろ。」

 

兄さんの言葉は冷静で、少し優しげな感じがした。

 

「わかりました。」

 

「あともう少しで、ホームルームが始まるから席に座った方がいいよ。」

 

時間を見るとホームルーム開始1分前になっていた。

 

「ありがとう、兄さん。」

 

兄さんの忠告通りすぐに席についた。

その後織斑達は、織斑千冬にホームルーム開始時間までに座らなかったことで殴られていた。

 

 

Madoka side end

 




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第17話 襲撃者

今回は今までよりも長い話になっています。


Ichika side

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

 

ーー

 

 

『ーーーーーーーー』

 

子供が泣いている。

 

『ーーーーーーーーーーーー』

 

言葉は聞き取れない。

 

『ーーーーーーーーーーーーーーーーー』

 

子供は『ナニカ』を抱いていた。

 

『ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー』

 

『僕』はその『ナニカ』を知っている感じがした。

そしてそれはなにかわからなったが、とても悲しくて、とても辛い気持ちになった..................

 

 

 

 

 

ーーー

 

(また、この夢を見たのか)

 

現在、朝の5時。

この夢を見ると、自然にアラームが鳴る前に起きてしまう。この夢の始まりは、とても幸せな夢だった。だが、日が経つごとに辛く、悲しい夢へと変わるっていく。

 

(この夢を見始めたのは、人間界に戻って来たくらいから始まったんだよな)

 

最初はただの夢かと思った。だが、日が経つごとに夢の回数は増えていき、辛くて悲しい夢以外見ることがなくなった。それと同調する様に怒りと憎しみが大きくなり、暴走することが頻繁に起こる様になった。

 

 

「『理不尽だ』」

 

 

この夢を見るとこの言葉を無意識のうちに言ってしまう。とても辛くて、悲しくて、もっと言いようがある筈なのに、ただただ『理不尽だ』という言葉以外思い浮かばなかった。

 

 

 

Ichika side end

 

 

 

 

Haiji side

 

 

「イチカはまだ来ねぇのか⁉︎」

 

今日は『クラス対抗戦』当日、イチカ・ハイドンはホームルーム前になっても来ていなかった。

 

「ハイジさん!兄さんから電話です!」

 

イチカから連絡が来た様だ。

 

「おい、イチカ!今どこにいる!」

 

『もしもし、ハイジ?どうしたんだい?そんなに焦ったりして?』

 

「おまえが、ホームルーム前になっても来ないからだろうが!!!」

 

イチカの声は落ち着いており、少し雰囲気が違っていた。

 

『ああ、ハイジ。今日休む連絡をしようと思って電話したんだ。』

 

「は⁉︎なにを言って⁉︎」

 

『今の俺、かなり機嫌が悪いんだよ。だからそっち行くとなにをするかわからないから休みたいんだよ』

 

イチカの一言から、いつもと様子が違うことが理解できた。だが、今までとは違う様子に疑問が生じた。

 

「わからないな、イチカ。これはハピネス社のイメージダウンに繋がる。お前は、ハピネス社のことを私情よりも優先していたのに、なぜそんな理由で休む必要がある。」

 

その瞬間イチカの声色が変わった。

 

『俺さあ言わなかったっけ?俺はもしも今、IS肯定派の人間共(ゴミ共)見かけたら、殺しそうになりそう(・・・・・・・・・)だから言ったんだよ。だからさあ、体調でもなんでもいいから休みとってくれないとハピネスが困ることになるんだよ』

 

イチカの様子が口調が変わるほどイラついているので、たぶん言っていることは正しいのだろう。

 

「わかった。」

 

“ブチ”

 

「兄さんからはなんと?」

 

「イチカは今日、体調が悪いから休むと言われた。」

 

イチカの有無を言わさない雰囲気から、俺はマドカ達に絶対にイチカを見せられないと思い、嘘をついた。

 

「兄さんは大丈夫なんでですか⁉︎」

 

案の定、マドカはイチカの心配をする。俺は嘘をついたことに後悔した。

 

「大丈夫だ。

『少し体調が悪いだけだから、明日には治るだろう』と言っていた。」

 

「よかった。」

 

その言葉で更に罪悪感が募った。

 

(早く機嫌直してくれ、頼むから)

 

俺はイチカの機嫌が早く直るよう心から思った。

 

 

 

Haiji side end

 

 

 

 

 

 

Ichika side

 

 

ハイジとの連絡が終わり、イチカは一人で落ち着いていた。だが、2時間ほど経つと嫌なものが目に入った。

 

「不愉快な来客だな。」

 

空から計十六体のISが学園内に進入し、一体がアリーナへと行ったが、残り十五体がイチカに向かって攻撃を仕掛けてきた。

 

「まあ、機嫌の悪い俺に攻撃してきたんだ。ストレス解消に付き合ってもらうか。」

 

ISを展開し戦闘態勢に入ると同時に五体のISが切りかかってきた。俺は攻撃を躱し、攻撃を開始する。

 

唯我独尊(マッシュ)』を展開し殴りつける。

『神器』の“唯我独尊(マッシュ)”とはほど遠い、グローブの形になっているが、特殊な加工により使用者の全力の一撃を放つことができ、天界力の入れ具合で威力を上げることができる。

 

「一体目」

 

五体の内一体が先行して切りかかってきたが、一体目に一撃を入れて絶対防御を破砕し、コアごと粉々に砕く。

 

「二体目」

 

“超身体能力”でスピードを上げ、後衛の一体の四肢を捥ぐ。

 

「三体目、四体目、五体目。」

 

同時に攻撃してきた前衛の一体を蹴り飛ばし、横にいた二体ごと吹っ飛ばす。

 

「七、八、九、十ッ⁉︎」

 

今度は銃による攻撃が始まったが、全て避け四体同時に薙ぎ払うが、その隙に四体の後ろにいた一体の攻撃が通ってしまう。

 

「キエロッ!鬱陶しい!!!」

 

髪を数本切られたが、イチカに対してはイラつかせる行為にしかならず、頭部を破壊される。

 

「十一、十二、十三。」

 

二体のISが銃を牽制に使い、一体が切りかかってきた為、その場を数メートル後退し攻撃してきた一体を殴り壊す。残り二体の前まで移動して、頭部を掴み地面へとめり込ませる。

 

「後、二体.........逃げたか。」

 

残り二体が学園外に出た為、破壊することができなかった。

 

「まあ、いいか。ストレス発散することはできたから。」

 

俺は、アリーナに向かったもう一体を壊しに行った。

 

 

Ichika side end

 

 

 

 

 

 

 

Memory side

 

 

 

現在、アリーナ内は大混乱に陥っていた。

先程まで、アリーナではISでの試合(くだらないお遊び)が行われていたが、その試合中にISが侵入してきたのだ。

ISを持たない私達は学園(ここ)では職能力が使えない為、体調不良のイチカにしか頼ることができなかった。

 

「ハイジ!まだ、イチカとは連絡がつかないの⁉︎」

 

「今やろうとしているが、電波妨害されているみたいで連絡がつかない!!!」

 

イチカとは連絡がつかない為、私達は混乱していない生徒と行動する以外なかった。

 

「何なのよ!あれは!!!」

 

「なんで、開かないのよ!!!」

 

「開いてよ!!!」

 

出口の前に『我先に』と生徒達が他生徒を押し退けて出ようとするが、シャッターが降りてあり出ることができない。

 

「おいテメェら!どいてろ!!!」

 

ハイジの掛け声で、生徒達が振り向く。その瞬間にハイジは出口前の最前列、つまり人が最もいる場所へと飛ぶ。

 

『スコティッシュ29球(ニクキュウ)拳』

 

ハイジの拳はシャッターを破壊し、出口をコジ開けた。その光景を見て呆然としていた。

 

「おい!出られるようにしてやったぞっ!!!」

 

ハイジの声でハッとした生徒達は開いた出口へと走って行く。

 

「ハイジ、あんたもう少し他の所もやって来なさいよ。ここに人が集まってくるわよ!!!」

 

「メモリーは、どうするんだ。」

 

「マドカがいないから探してくる!アリーナ以外の場所で見つかったら連絡して!!!」

 

マドカは試合中に席を外してから見つからない為、私はさがすことにした。

 

 

 

 

アリーナ内の人込みが減ってきたが、マドカは見つからなかった。私はマドカがこの場はいないことを確認し、アリーナを出る筈だった。だが、中継室付近で揉め事が起きているのを見て、そこへ向かった。

 

「あんた達、早くこの場から逃げなさい!!!」

 

「でも、中に篠ノ之さんが!!!」

 

『秋一ィィィイイイイ!!!』

 

篠ノ之箒が中継室を占拠し、マイクを握っていた。

 

『男なら.........その程度の敵を勝てなくてなんとする!!!』

 

その放送は、敵の目を引くには充分だった。だが、敵の目はこちらに向き、敵の攻撃が中継室に向かって放たれた。

 

(もうダメだ!!!)

 

その時、私の目の前に五メートル程の大きな盾が現れた。

 

威風堂々(フード)

 

「間一髪で間に合ったか。」

 

声が聞こえてきた。

その方向を見ると...............そこには、私達が探していた『イチカ・ハイドン』が立っていた。

 

 

Memory side end

 

 

 

 

 

 

Ichika side

 

「間一髪で間に合ったか。」

 

到着すると、織斑達によってもう少しで最後の一体が停止しそうになっていたから安心していたが、あの篠ノ之箒(ゴミ)の所為でメモリーが危なかった。

 

「メモリー、大丈夫か?」

 

「ええ、大丈夫よ............って、あんた全然体調悪そうじゃないじゃない!!!」

 

(ああ、そうだったな。ハイジになんでもいいから休みとれって言ってたんだっけ)

 

イチカは、そんなこと(理由をつけて休んでいること)をすっかり忘れていた。

 

「そのことは後で話すよ。それよりもそこに気絶している莫迦を連れて逃げるぞ。」

 

「わかったわよ。だけど、話は後でちゃんと聞くからね!!!」

 

 

篠ノ之や中継室にいた生徒は気絶おり、そいつらを背負って俺達はアリーナを出た。

 

 

 

Ichika side end

 

 




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第18話 会議

今回はイチカside だけです。


Ichika side

 

「すまないが、先に行っててくれ。」

 

襲撃を受けてその場にいた者は会議室に集まることになった。だが俺は先程の言葉をハイジ達に言い、一人でプラスに連絡をとっていた。

俺はプラスに先程の襲撃の件をメールで送った。そして、その件を元に俺はある交渉を行う為プラスに電話をかけた。

 

「もしもし、プラス?先程の件はわかっているか?その件に関して、実は頼みたいことがあるんだ。」

 

『ーーーーーーーーーーーー』

 

「わかっているさ。ハピネスに入る条件は理解している。それを満たす為に必要なことなんだ。」

 

『ーーーーーーーーーーーーーーー』

 

「手回しはそっちでやってくれ。こっちはもう少し時間がかかるが、条件は俺の願いが達成できれば可能になる確率は上がる。」

 

『ーーーーーーーーーーーーーーーー』

 

「俺の願いをを手伝ってくれてありがとう。例の件は俺が必ず叶えてみせる。どんな手段を使ってでも...............」

 

『ーーーーーーーーーーーーーーーー』

 

「ああ、来月に休みをくれないか?一週間ほどでいい。それと、天界へと行く手段と、『神』に会うことができるか?」

 

『ーーーーーーーーーーーーーーーーーー』

 

「その日程で頼む。学園の方には先程メールで送った件で、交渉してみる。」

 

『ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー』

 

「わかった。こちらはなんとかしてみる。休みをとれ次第連絡する。」

 

“ブチ”

 

連絡が終わり、俺は学園長室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会議室では、俺やハイジ、マドカ、メモリーのハピネス社やそれに関わるメンバーと、織斑や篠ノ之、織斑千冬、その他教員などのIS学園の人間、そして学園長の轡木十蔵と生徒会長の更識さんがいた。

 

 

「さて、これで全員揃いましたね。会議を始めましょう。今回の議題は、先程の襲撃ですが更識生徒会長、お願いします。」

 

「はい、先程のクラス対抗戦に襲撃してきた謎の機体ですが、無人機であることがわかりました。コアは登録されていないものでありました。」

 

「わかりました。では、他になにか意見はありますか?」

 

学園長は今回の議題に対し、この場にいる全員に意見があるかどうか聞いた。俺は、ハピネス側の意見を通す為に手を挙げた。

 

「まず始めに、俺はこの件をハピネス社に報告しました。」

 

周囲の雰囲気が変わる。

 

「あなたなんてことをしたの!!!」

 

更識さんが叫ぶ。だが、俺には関係ない。

 

「仕事中に異常な事態が起きた場合、部下()上司(プラス)に報告するのは当然でしょう。」

 

「ハア.........だとしても、俺達になにも言わずに報告することはないだろうが!」

 

ハイジは呆れたようにそう言った。

 

「時間がなかったから.........この会議が終わったら話すつもりだった。ごめん。」

 

ハピネス社への報告は、ハイジ達には言えないことがあった。その為少し罪悪感があったのだ。

 

「ハピネス社はこの件は、一部を除き関係しないと言っています。」

 

この場の雰囲気から緊張が少し緩んだ。

 

「一部と言うのは?」

 

学園長が問う。

 

「そこのゴミ(篠ノ之箒)の行ったことについてですよ。」

 

俺は篠ノ之を見ながら言った。そのことに周囲も気づいたのだろう。

 

「貴様ァ⁉︎私がなにをしたと言うんだ!!!」

 

「なぜ中継室にいた...............周囲の行動を見ていなかったのか?ほとんどの人間が避難をしていたというのに、お前はなぜ中継室にいた?」

 

「私は苦戦していた秋一に喝を入れようとしたまでだ!それのなにが悪い!!!」

 

『人間は弱いケド強くなれるんだ!!!』

 

心が冷めていくのを感じる。植木君が言っていた言葉が嘘のように聞こえた。

 

(結局、植木君のような人間は本当に少ないんだ)

 

「やはり、ゴミはゴミだな。」

 

「箒を莫迦にするな!!!」

 

織斑が声をあげた。

 

「お前等がどう死のうが知ったことではないが、お前は周囲を見たことがあるのか?お前を止めようとした生徒がいたが、その生徒は目に入らなかったのか?」

 

「そんなつもりはない!第一他の奴らの命も生きていたんだ!それで良いではないか!!!」

 

こいつらを見ていると、朝の夢を思い出す。

夢で見た子供の泣き声が聞こえる。子供が抱いている思い出せないなにかが頭をよぎる。それを思い出す度、人間への憎悪が目の前にいる全ての『人間(ゴミ)』を殺せ(処理)しろという声が頭の中で何度も何度も響く。

 

不愉快だ。不愉快だ。不愉快だ。不愉快だ。不愉快だ。不愉快だ。不愉快だ。不愉快だ。不愉快だ。不愉快だ。不愉快だ。不愉快だ。不愉快だ。不愉快だ。

 

(殺せ)

 

(ころせ)

 

(コロセ)

 

(コンナセカイ(ニンゲン)ガアルカラアイツガシンダンダ!)

 

「グッ」

 

「おい、やめろ⁉︎イチカ!!!」

 

ハイジの声でハッとし、ゴミの首から手を離す。いつの間にかゴミの首を締めていた。周囲の人間は俺の殺気で動けないようだった。

 

「すまない、ハイジ.........少しカッとなってしまった。」

 

周囲の人間は、ハピネス社のメンバーと、更識さん、学園長を残し、全員が気絶していた。

 

「すみません、皆さん。ですが、ここからが本題です......学園長。」

 

「本題とは?」

 

学園長も少し怯えた声で聞いてきた。だが、俺の目的の為にやらなければならない。

 

「実は、先程の機体には俺も襲撃に遭いましたね............俺に襲撃してきたISのコアを渡しますので、ハピネス社の要求を聞いてくれませんか?」

 

俺の《理想の才》から取り出されたコアの数は五つ。倒した十三体のISの中で破損しておらず、まともに起動出来そうな五つを取り出した。

 

「ねえ?襲撃されたと言ったけど、レーダーには反応がなかったはずよ。もし襲われたのならば、何体の機体に襲われたのかしら?」

 

「確か、十五体のISを相手にして二体逃げ出して残りの八体はコアごと破砕したので、これが全部です。」

 

「兄さん⁉︎十五体のIS相手にしたのですか⁉︎どうして、私達に連絡をくれなかったのですか?」

 

「ジャミング受けてて、連絡手段がなかったんだよ。」

 

「それでも、兄さんになにかあったらどうするんですか!」

 

マドカの心配する姿に心が痛んだ。

 

「どうしようもない場合は会場に向かって逃げて、マドカ達に助けを求めたから安心しろ。」

 

俺の答えが不服だったのかマドカが不機嫌そうになるが、俺は交渉へと戻った。

 

「他になにか質問はありませんか?」

 

更識さんが手を挙げた。

 

「十五体のISに襲われたと言ったけど、あなたは本当に戦ったのかしら?」

 

 

「中庭に戦闘を行った跡があります。そこを調べれば良いんじゃないでしょうか?」

 

「わかりました。更識さん、中庭も調べましょう。」

 

更識さんは納得していない様子だったが、学園長の一言で了解したようだった。

 

「それで、要求とは?」

 

「ハピネス社の要求は、次のイベント............『学年別トーナメント』の初日から最終日の前日まで一週間にハピネス社員と、メモリーの休みを頂けませんか?」

 

学園長の雰囲気が軽くなった。要求が予想していたものよりも、

 

「なぜ、でしょうか?」

 

「ハピネス社のISが急遽データを取らないといけなくなりまして、メモリーの方はこの学園は先程の襲撃が起きた場合、契約している会社に迷惑がかかりますから。」

 

プラスから教えられた理由を述べる。

 

「わかりました。要求を飲みましょう。学年別トーナメントの初日から一週間休み学園から休みを取って下さい。」

 

 

そうして俺の願いに一歩近付いた。

 

 

 

Ichika side end

 




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第19話 理由

今回で襲撃編終了です。


Madoka side

 

時刻は夕方、私達はハイジさんとメモリーさんの部屋に集まっていた。

私達は先程の襲撃の会議の終了後、会議中に兄さんの説明にあった『学年別トーナメント』のメモリーを含めたハピネスに関連する者の休みについて、兄さんからの説明を受けていた。

 

「なあ、イチカ。本当にハピネスの新しい『IS』を俺達が着ることになるのか?それにメモリーの休みなんて訳も分からない命令聞いてないぞ⁉︎」

 

「そうよ!なんでハピネス社員じゃない私が、なんでハピネス社の要求の中に入っているの⁉︎」

 

ハイジさんの言葉は正論だった。兄さんはプラスさんからの報告を逐一しているが、ISを持っている私以外聞いたことがなかった。特に、今回のハピネスの命令は異常だ。ハピネスに関係しているが、社員ではないメモリーさんにこの要求の範囲内にいることは普通の事態ではなかった筈だ。今回の件については、この件を除いても兄さん対して、私も疑問がたくさんある。

 

「今回の命令には二つの理由がある。」

 

兄さんは疲れたように話す。私は心配になったが、ハピネスの今回の行動は異常だったのでその思いを押し殺し、説明を聞いた。

 

「まず一つ目は俺以外のISのデータ取得が目的だ。」

 

「データ取得ぅ?そんなもん次のイベントの『学年別トーナメント』に参加すればいいじゃないか?この前見たいにIS同士で戦わせてさぁ?」

 

「いいや、ハピネスのISはハピネスとハピネスに関係する会社以外の人間に見せることを許していない。前回は『ファーストシフト』が目的だった。しかし、今回は新たなISを作る準備をする為のデータ取得だ。その場合、他の会社や学園内で行えばハピネスの技術について隠蔽がしにくくなる。だから学園などでは行なわず、ハピネスで行った方が良いとプラスが判断したからだ。」

 

兄さんは真剣にそう言った。その姿に少し違和感を覚えた。だが、メモリーさんについての理由があると言葉を飲み込んだ。

 

「そして二つ目は、護衛だ。」

 

「「護衛?」」

 

メモリーさんとハイジさんが疑問を浮かべた。

 

「ああ、護衛だ。メモリーは一応うちの会社が契約している会社(ところ)の部下だ。その会社の部下にもし俺達の留守に危険が及んだ場合不利益を生じる可能性がある。ハピネス社としてもそれを望んでいない為理由を作り、休みを取ったんだよ。」

 

「ちょっと待って⁉︎それって、会社同士で決められたことなの⁉︎」

 

メモリーさんにとっては重要なことだった。

 

「そのことだけど、さっきメールで連絡したら『ハピネス社のIS支部でISについて調べるのであれば大丈夫』と君の会社の社長(マリリン)の御達しがきた。後でメモリーの方にも連絡されるらしいから大丈夫だと思う。」

 

「わかったわよ。」

 

メモリーさんは溜め息をつく。それでも兄さんの説明を理解した様だった。

 

「じゃあ、お前は休む理由がねぇじゃねえか⁉︎」

 

ハイジさんの言葉に兄さんが顔を顰める(・・・・・)

 

「俺はその日から一週間、天界で仕事があるんだよ。その一週間は俺が帰って来れないから、メモリーの護衛の依頼を来たんじゃあないか。」

 

その後、他愛の無い会話を続けた。兄さんの説明に納得した二人。だが、私には違和感が拭えない。兄さんが顔を顰める理由がなかったからだ。

 

(兄さんは、なにか隠している?)

 

それに気付いたのか、兄さんは哀しそうな笑顔を私に向けた。

 

 

 

結局、私は何も聞かなかった。

 

 

 

 

Madoka side end

 

 

 

??? side

 

 

 

その場所には一人の繁華界人がいた。モニターが置かれ、天界人と地獄人が一人ずつ映されていた。

 

 

『天界の件ですが、こちらの方はよろしいですよ。元々、先代が約束していたことがありましたから』

 

モニターに映る帽子を被っている天界人が言った。

 

『でも、よろしいですか?彼は『ソレ』でかなり傷ついたと聞きましたが?』

 

もう一つのモニターに映る短髪の地獄人が言う。

 

「ええ、それでも彼は取り戻すことを決意しました。たとえ、どんなに苦しんだとしてもいいと............」

 

仮面の繁華界人が言う。

 

『そうですか..................それは良かった。僕達は結果的に彼に対して、酷いことを行いましたから』

 

『そうか............その頃は儂の親の世代じゃったから手は出せなかったが、もう少し親父が考えたらこんなことにはならなかったがの』

 

『それでもです!僕達は彼の人生を棒に振ったと同じようなことを彼に強いたのだから、彼には申し訳がたちません』

 

「そうだろう。特に、私が行ったことの尻拭い(・・・・・・・・・・・)を例え条件でも彼に押し付けてしまったのだから。」

 

『暗い話はやめだ。それで例の計画はどうなっている』

 

地獄人の少年はその場にあった暗い話を、新しい話に無理矢理切り替えた。

 

『例の計画は順調に進んでいます。《亡国企業》は夏に動き出すことがわかりました。それを利用することができれば、計画は進むでしょう。ですが、問題は彼等(・・)です。まだ、計画のことを伝えていないのですが、彼等が敵となって動き出すと『友人』としても厄介です』

 

天界人の青年が困った様に言った。

 

「彼等については心配しなくていい。私の部下が彼等に詳細を伝えに行っている。彼等には私達の計画に手を出さないよう伝えて、繁華界で保護しようと思う。」

 

『それは良いな!!!彼等の活躍は地獄界でも轟いておる。敵になった場合、計画を邪魔されるのは厄介だ』

 

『ええ、僕もその案に賛成です。無闇に計画を引っ掻き回されると厄介ですから』

 

モニターの二人が繁華人に合意した。

 

そこからあったのは、『計画』の詳細の話だった。殆どの人間に知られず、この『計画』は進むのだった。

 

 

 

 

??? side end

 

 

 

 

 

 



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第3章 帰郷編
第二十話 暗躍


すみません。オリキャラとサブタイトルを考えているうちに投稿がかなり遅くなりました。他のサブタイトルもじきに変更します!
次はできるだけ早く投稿できるように努力します!!!


Chifuyu side

 

 

 

(私はどこで間違えたのか?)

 

春が近づいた冬の夜、私が仕事から帰宅した時、秋一が玄関まで走ってきた。秋一は焦っており、いつもと様子がおかしかった。

 

『一夏がいない!!!』

 

その時、秋一が焦っている意味を理解した。その後、秋一とともに街中を探しに行き、警察やIS関連で日本政府を経由して知り合った暗部『更識』にも頼ったが、何ヶ月経とうとも結局見つからなかった。捜索が中断された日から一週間、秋一はなにかに取り憑かれた様に一夏を探し続けた。

 

(あの時、なぜ一夏の異変に気づかなかったのか!)

 

今思えば、一夏は人一倍努力をしていた。だが私は、一夏に対しなに一つ大切にせず秋一と一夏を比べ、秋一ばかり褒めていた気がする。むしろ、一夏を褒めた記憶すらなかった。ずっと一夏に向けていた言葉は、

 

 

 

『もっと努力しろ!』

 

 

 

『なぜこんなことができない!秋一を見習え!!!』

 

 

 

『私の弟ならば、当然だ!!!』

 

 

 

私は不器用だから、こんなことしか言えなかった。

『なぜ一夏(あいつ)の変化に気づかなかったのか』

『なぜもっと優しくしなかったのか』

『なぜ褒めてあげなかったのか』

なんどもなんども頭の中でああすれば良かったこうすれば良かった考えてしまい、自己嫌悪につながった。後悔だけが残った。

 

電話が鳴った。

 

「もしもし束か?」

 

『もしもしちーちゃん?久しぶりだね!元気にしてた?』

 

明るい声にイラついたが、私の頼んでいたことを聞く。

 

「束............『イチカ・ハイドン』が『織斑一夏』である可能性はあるか?」

 

この数年で、なに一つ情報が出てこなかった二人目のに、私達を捨てた父親にそっくりな少年に私は一縷の望みをかけた。

 

『.............いっくんである可能性は高いと思う。でもね、ちーちゃん。ちーちゃんはいっくんに会ってどうしたいの?』

「どう言う意味だ。」

 

束の言葉に私は動揺した。

 

『たぶんいっくんはちーちゃん達の事恨んでいるよ。それでもいっくんに会ってやりたい事があるの?』

 

「それでも.........それでも私はもう一度会って、謝りたい!そしてもう一度『家族』に戻って欲しいと一夏に言いたい!!!」

 

それは紛れもなく私自身の中にある本心だった。

 

『.....................わかったよ、ちーちゃん。でも可能性でしかないから別人かもしれない。だからね、ちーちゃん。私が確認して、本物のいっくんであったならどんな事をしてでも連れて来る。それまで待っててくれないかな?』

 

「どうせお前の事だ。私がダメだと言ってもやるんだろう。」

 

『ありがとう、ちーちゃん。またね』

 

束がなにかをこらえる様にそう言うと、電話の通話が切れる音がした。

 

「すまない、束。」

 

私は束に嘘を吐いた。

 

(それでも私は)

 

一夏である可能性があるなら、自分自身の力で確かめたかった。

 

Chifuyu side end

 

 

Madoka side

 

襲撃から数週間経ち、学園内の雰囲気も落ち着きを取り戻し始めた頃、学園に再び転校生が来た。

 

「転校生のシャルル・デュノアです。フランスから転校してきました。この国では不慣れなことが多いと思いますが、よろしくお願いします。」

 

三人目が現れた事でクラス内の落ち着いて来た雰囲気が崩れた。

だが.........

 

(どう見ても、女性の体つきなんですよね)

 

「嘘っ⁉︎三人目の男性IS操縦者⁉︎」

 

「はい。僕と同じ境遇の人がいると聞いてこの国にーーーー」

 

「「「キャーーーーーーー」」」

 

「四人目の男子生徒!!!」

 

「しかも金髪の美少年!!!」

 

騒ぎが大きくなる。

 

『バンッ』

 

織斑千冬が出席簿で教卓を叩き、その音で騒ぎを止める。転校生がそれに驚くが、私にはどうでもよかった。兄さんの方を向くが、兄さんは考えごとをする様に溜息をつきながら教卓に向いていた。

 

(兄さん.........)

 

あれから私達は、兄さんと上手く話せていない。兄さんは会議中のあの行動の意味を問おうとも、兄さんは決してそのことを言わず、はぐらかすだけだった。その後、ハルは兄さんについて行く様になった。

 

(兄さんにはハルがついているなら問題は無さそうだけど............もう少し私達を頼ってくれるとありがたいのになぁ.........)

 

二人目の自己紹介に移った。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。」

 

二人目の少女は簡潔にそう述べると一歩後ろに下がった。クラス内は静まり返り、山田先生が困った様子で二人目を見ていた。その後、織斑千冬によって席に着くよう言われたが、織斑秋一を殴り倒し一言大きな声で宣戦布告していた。

 

(そういえば、この後どうしようかな?)

 

ハピネスの社員はデータをIS学園に渡すことを基本的に禁じられているので、ISの実技の授業中は自習になっている。だが、IS学園は人員は不足しており、実質的には休みの時間とほぼ変わらない時間になっている。

 

(最近やってなかった修行の続きでもしようかな)

 

時間をどう潰すか考えてた時、

 

「マドカ。ちょっといいか?」

 

兄さんが声をかけてきた。

 

 

Madoka side end

 

 

 

 

 

 

 

Ichika side

 

 

 

 

(とは言ったものの.........)

 

 

 

俺もマドカを連れて、中庭まで来ていた。

結局、あの会議中の暴走の件を根掘り葉掘り聞かれそうになった俺は、その事を適当に誤魔化し続けた。

 

(さて、どう切り出そうかな)

 

もうそろそろ、マドカ達も限界に近いだろう。実力行使して来ないとも限らない。だけど、どう切り出せばいいかわからなかった。

 

「それで、兄さんは私になんの用があるんですか?」

 

その事を察したのかマドカが切り出してくれた。その事に心の中で感謝をして、話を切り出した。

 

「この前の件を俺が話すまで聞かないで欲しい。」

 

「この前の件とは?」

 

マドカは確認するように俺に聞いた。

 

「会議中の行動についてだ。」

 

「なんでですか?」

 

マドカは納得出来ないと言うように顔を顰めた。まあ、俺だって逆の立場ならば、あんな行動を起こした理由を聞けないのは納得出来ない。身近でしかも自分がよく知っていると思う人間ならば、なおさらだ。だが、それでも俺は秘密にしたい。

 

「頼む。俺から話すまで聞かないで欲しい!!!」

 

頭を下げて誠心誠意お願いをする。

 

「私は理由を聞いているんです!ちゃんと理由を話してください!!!」

 

マドカは激昂し、その秘密を聞こうとした。その姿に心を痛めるが、それでも俺は聞かないでくれと言うしか出来ない。

 

「やっている事は、間違いだとわかっている。だが、お願いだ!その事について俺が話すまで、聞かないでくれ!!!」

 

「兄さんはいつもそうです!いつも私達に何も言わないで行動を起こす!!!いつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも!!!」

 

マドカは泣きながらそう言い始めた。

 

「もっと私に話してください!もっと私に聞いて下さい!もっと私に頼って下さい!私は何の為に兄さんについているんですか⁉︎」

 

マドカは泣きながらそう言うが、俺にはどうしても言えなかった。

 

「答えて下さい!」

 

言えない。

 

「答えて下さい!」

 

言えない。

 

「答えて下さいよ!!!」

 

言えない。

 

「なんで答えてくれないんですか⁉︎なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!!!」

 

それでも俺は言えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、授業のチャイムがなるまでマドカは泣きながら問い続けた。

 

 

「マドカ、ごめん。話す時が来たら必ず話す。」

 

俺は泣き止んだマドカの頭を撫でるとそう言った。

 

「兄さんはいつもそうです。だから私は兄さんが話すまで待ちます。ずっと待ちますから、必ず答えて下さい。」

 

マドカは涙を拭きながら呆れたようにそう言った。

 

 

 

 

Ichika side end

 

 

 

 

 

 

??? side

 

 

二人で歩く少年と少女がいた。

 

「急がないと!!!」

 

「そう急ぐ必要はない。あと一ヶ月もある。この日本で最後だ。」

 

少女は焦ったようにしているが、少年は落ちいて歩いている。

 

「あと一ヶ月しかないのよ⁉︎それにあんたら、ハピネスが私の弟や他の子にやった事を覚えているの⁉︎」

 

少女は少年のその態度に怒り出すが、少年は少し顔を顰めた後無表情に戻った。

 

「だから我々ハピネスが行動を起こし、君の護衛と君の職能力(・・・)の手助けをしているのではないか。それに被害を最小限にとどめた()責任を持って救う(・・・・・・・・)と言ったんだ。その下準備(・・・)をするのが私達の仕事だろう?」

 

今度は少女が顔を顰めた。

 

「そんな事わかっているのよ!それよりも植木耕助の家はこの近くで合っているんでしょうね⁉︎」

 

少女は無理矢理話を切り替え、仕事の話に変えた。

 

「ああ、合ってるよ。その代わり粗相しないように。私達の仕事は下準備と交渉なのだから。」

 

「わかってるわよ!そのくらい............待ってなさい。後もう少しでお姉ちゃんが助けてあげるから............」

 

そう言って、少女達はマンションの中に入っていった。

 

 

 

??? side end

 




『威風堂々』
全長5メートル程の大きな盾。だが、実際は盾ではなく数枚の大きなシールドビットが重なって盾のような形をしている。分離することもできるが、分離していなくても盾として使う事ができる。


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第21話 問い

すぐに出すと言って遅れて出してすみません!!!
次回、帰郷編最終話です。


Ichika side

 

 

あのマドカとの会話から数日後、学年別トーナメントを明日に控え、クラスのテンションが最高潮まで秒読みになった。その頃俺達は、学年別トーナメントには参加しないものの表向きは、ハピネスの仕事で学園から一時去ることになっているので荷造りに奔走し、俺とハイジはハイジの荷造りにを終え、俺の部屋に向かっていた。

 

 

「ーーーーーーーーーー。」

 

 

「なあ、ハイジ?何か聞こえてこないか?」

 

「いや、俺には何も聞こえないが?」

 

何か音が聞こえ、ハイジに確認するがハイジは聞こえなかったようだ。

 

「ーーーーーーーーーーーーですか⁉︎」

 

 

 

「またっ⁉︎」

 

先にある角を曲がった所から声が聞こえてきた。

 

「今度は俺にも聞こえたぞ、イチカ。察するになんかの言い争いか?」

 

どうやらハイジにも聞こえたようだ。角まで歩くと転校生の銀髪と織斑千冬が言い争いをしていた。

 

「このような極東の地でなんの役目があると言うのですか!教官我がドイツでもう一度ご指導をお願いします!ここでは教官の能力を半分も活かしきれません!!!」

 

「ほう」

 

「大体、この学園には教官に教えを請う資格のある人間はほんの一握りしかいません!」

 

「なぜだ。」

 

「意識が甘く、危機感に疎く、ISをファッションは何かだと勘違いをしている。ISは兵器です。それを理解出来ないような者達を教官が教えるにたるとは思えません!」

 

「そこまでにしておけよ、小娘。少し見ないうちに随分と偉くなったな、15歳でもう選ばれた人間気取りとは恐れ入る。」

 

「わ......私は......」

 

「私はまだ忙しい、お前もとっとと自分の部屋に戻れ。」

 

あんな会話をしている所にわざわざ出て行くなんてことはできず、会話が終わるまで待つと、会話が終わりボーデヴィヒが帰っていった。

 

「そこに隠れている男子、盗み聞きか?」

 

どうやら気づかれていたらしいが、別に気配を消していたわけでもないので出て行く。

 

「あんなに大声で会話をしていれば聞きたくなくとも聞こえますよ。」

 

「それに俺達は廊下を通りたかっただけだ。あんたの会話の邪魔になることをしたかったわけではないしな。織斑先生、それでは。」

 

俺とハイジだったのが予想外だったのか、織斑千冬が目を見開いていた。俺達は無視して横を通ろうとする。

 

「待て!お前に聞きたいことがある。」

 

だが、織斑千冬がそれを止めた。本当に何なのだろうか?

 

「何ですか?織斑先生?」

 

 

 

 

 

「お前は.........一夏ではないのか?」

 

「どういうことですか?意味がわからないのですが?」

 

俺は俺の正体がバレたのかと思った。

 

「いきなり......こんなことを言ってしまってすまないが、お前は私の弟の織斑一夏によく似ているんだ。だから、お前は一夏ではないのか?」

 

(確信はしていない?)

 

様子を見る限りでは確信している様子もなく、ただ疑問を問いかけているように見えた。

 

「俺は一夏ではありませんよ、織斑先生。それでは俺達は明日の準備をしなければならないので、部屋に戻ります。行こうハイジ。」

 

「おい、少し待て!」

 

後ろから声が聞こえるが、面倒ごとにならないうちに、そう言って俺達は俺の部屋に向かった。

 

 

 

Ichika side end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Haiji side

 

 

「なんで嘘を吐いたんだ。イチカ?」

 

イチカの部屋に到着して数時間後、荷造りも終わり、イチカは紅茶をいれていた。俺思わずは先程の会話について聞いてしまった。

 

「嘘とは?」

 

「お前の正体は『織斑一夏』だろ。なんで嘘を吐いたんだって聞いてんだよ。」

 

俺はイチカが『織斑一夏』だと知っている。なのになぜあんなにはっきりと言えたのか知りたかった。

 

「俺が『イチカ・ハイドン(・・・・・・・・)』であって、『織斑一夏(・・・・)』ではないからだよ。」

 

(イチカは何を言ってるんだ?)

 

意味がわからない。イチカ(自分)一夏(自身)を否定している。俺にはそれがわからなかった。

 

「何を言ってるんだって顔だね。」

 

イチカは話を続ける。

 

「理由は二つ。

一つ目は、俺には生まれてから10歳までの思い出への感情がない。全て能力の限定条件に使ってしまったからだ。だから、『織斑一夏』本人の記憶に対しての感情は殆ど失っている。そんな人間が、『織斑一夏』であるはずがない。俺は織斑一夏ではなく、織斑一夏の抜け殻のようなものだからだ。

二つ目は、織斑一夏だった頃、彼は自分の名前を捨てているからだ。人間への強い憎しみと怒りで自分自身にある母親の血まで嫌っていた。だから俺は、もう二度と『織斑一夏』とは名乗らないようにしているんだ。」

 

 

だから家族を否定したのか。でもここで疑問が残る。

 

「じゃあなんで

 

『ドンドンドンドンドンドン』

 

部屋の外からノックの音が鳴り響く。

 

『ハイドン、ハイドンはいるか⁉︎』

 

「悪い、ハイジ。話の途中に馬鹿が来た。」

 

『オレだ。織斑だ!緊急事態だ。今すぐ、俺の部屋に来てくれ!!!』

 

「話はまた別の日にでもしようか?適当な時間になったら帰ってくれ。」

 

俺の疑問を残したまま、そう言ってイチカは部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

(なんで(マドカ)を引き取ったのだろうか?)

 

 

 

 

 

俺はそれが聞きたかった。

 

Haiji side end

 

 

 

Ichika side

 

 

「で、何の用だ?」

 

織斑の部屋に来たが、そこには転校生が男装をしていなかった。

 

「シャルをハピネスで雇ってくれないか?」

 

織斑がくだらないことを言いやがった。

 

「なんでそんなことをしなければならない?」

 

そう言うと織斑は『転校生』シャルル・デュノアが『スパイ』であり、それに至る経緯を説明してきた。

 

「俺は、シャルを救いたいんだ。だから、IS関連でIS委員会にも口利きができるハピネス社ならシャルを安全に保護できると思って。」

 

織斑が嬉々としてそんなことを言う。

なぜ、ハピネスがそんなことをしなければならないのか。

 

「くだらない。」

 

「なんだと!今シャルがどんな状況かわかっていっているのか!!!」

 

本当にくだらない。目の前の女は自分が世界で一番不幸であるような顔をしていた。だが、織斑が自身の話をした途端、顔色を変えやがった。

 

(ああ、本当にイライラする)

 

このクズは自身が同情され、救われると思って顔色を変えたのだろう。

 

「わかっているから言ってるんだよ。」

 

織斑一夏だった時、能力者達の嘆き(見た光景)を思い出す。

 

「お前等は見たことがあるか?

女尊男卑によって家族を傷つけられる者達を。」

 

傷つけられた奴らはたくさんいた。メモリー達や『十団』のメンバーはIS関連で傷つけられていた。きっと他の能力者にもいたはずだ。

 

「見たことがあるか?

信じていた者達に裏切られた者の末路を。」

 

ロベルト兄さんのことだ。綺麗事ばかり言い、結局人間は裏切った。

 

「見たことがあるか?

自身にとって平和だった居場所が、ISによって危険な空間に変わる絶望を。」

 

能力者達は一部を除いて、地区に住んでいない者達だった。(彼奴)と違い、ISがなければ平和に過ごせていたはずだった。だが、ISの所為で苦しんだ者達がたくさんいた。

 

(ナノニ、コイツラハ、ナニヲイッテイル)

 

目の前の女は自身が世界で一番不幸であると勘違いしている。ボク(・・)等よりも平和な時間を過ごしてきた癖に。

 

ボク(・・)はこの女を見て言う。

 

ボク(・・)は聞いてきた。見てきた。感じてきた。

 

 

『嘆き』を。

 

 

『悲劇』を。

 

 

『殺意』を。

 

 

『憎悪』を。

 

 

そして、

 

 

 

 

 

 

 

地獄(世界)』を。

 

 

 

なのに、お前はスパイ(・・・)の癖に、救われたいと願うのか?何も悪事をしていなかった奴らがこんな『IS(・・)』なんてゴミクズを崇めている世界.........いや、世界という名の『地獄(・・)』にいるというのに、お前みたいな『人間(ゴミ)』と同価値な存在を救えと。」

 

 

 

「嗤わせるな!!!」

 

 

 

人間(ゴミ)が一つボクの言いように腹を立てている。

 

「同じ人間だろうが!なんで救ってやらねぇんだよ!!!」

 

先程の人間(ゴミ)が喚く。隣の人間(ゴミ)が絶望したような顔をした。

 

「だから?」

 

「だからってのなんだよ⁉︎

女の子を救うのは当然のことじゃねぇか!!!」

 

(当然.........当然ダト⁉︎

フザケルナ!

コンナゴミクズガスクワレテナンデ『アノヒト(・・・・)』ガスクワレナカッタ!!!)

 

記憶が変化する。自分が自分でないような感じがする。人間界(この世界)にいるとおかしかったものが、さらにおかしくなった気がする。

 

 

 

 

 

 

『貴方は此処にいても良いんですよ』

 

 

 

 

(ナンダコレハ⁉︎)

 

頭の中に何かが映った。

 

ボゴッ!!!

 

自身を殴り、頭を冷静にする。目の前の織斑達は俺の突然の行動に驚く。

 

「いきなり何を⁉︎」

 

予想以上に威力が高かったのかよろめく。

 

「大丈夫か!」

 

一刻も早く帰らなければならないと思った。

 

「大丈夫だ。俺の意見は変わらない。だから、何度言っても無駄だ。自室に帰らせてもらう。」

 

「おい、待て!!!」

 

その後、織斑の制止を振り切り、自室で体を休ませた。

 

 

 

 

半日後...............

 

 

「漸く見つけたよ。いっくん。」

 

 

(なぜ、こうなった)

 

 

 

Ichika side end



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第22話 帰郷

投稿が遅なってすみません。
今回は帰郷編の最後ですので、いつもより長くなっております。
後、UA3万ありがとうございます。



Haiji side

 

午前6時。

俺達ハピネス組と、メモリー、そして織斑千冬含む何名かの教員が学園から少し離れた駅に到着した。

駅前に二台の車が止まる。二台からそれぞれ一人ずつ見た目が少年のくらい男と、高校に入ったばかりくらいの少女が降りてきた。どちらもハピネスにいた頃に見たメンバーだ。

 

「お待たせ致しました。ハイジ様、マドカ様、メモリー様はこちらの車へ。イチカ様はそちらの車へご乗車ください。」

 

少年が言う。

俺達はその言葉に誘われるように車に乗ろうとする。

「待て、なぜ同じ車に乗車しない。貴様等は同じ所へ向かっているのだろう。ならば、なぜ別れて乗る必要がある?」

 

それを織斑千冬がそれを止めた。

わかっていた。その質問をされることが。だが、誰も言われるまで言うことはなく、俺もそのつもりがなかった。

 

「織斑先生、貴方には関係ないはずですが。」

 

イチカの言葉はいつも以上に棘があった。

 

「すまない。私は

 

 

「ハイジ、それじゃあ。俺はもう行くよ。」

 

織斑千冬の言葉まで遮り、イチカの様子がいつにも増しておかしかった。何か焦っているそんな感じがする。

 

(昨日、何かあったのか?)

 

昨日の夜に織斑に呼ばれた後、すぐに俺は自分の部屋に戻ったが、その時にに何かあったのかもしれない。

 

「おい待て、イチカ。お前さっきからおかしいんじゃないか?

なんでそんなに焦っているんだ。」

 

近づき異変を伝えるが、イチカからの返答がない。俺はさらに近づきイチカをこちら向けた。

 

「おい、イチカ。どうしたんだよ⁉︎」

 

笑っていたが、目に光は無く、殺意だけが滲みでていた。

 

「要件はそれだけかい。なら『()』は行くよ。」

 

イチカは笑顔でそう言ったが、やはり口調が変わるくらい不機嫌になっている。

 

「兄さん!」

 

「何かな、マドカ?」

 

隣にいるマドカが声をかけたが、イチカはその嗤いをやめない。マドカはその様子に驚きながらも一言、

 

「兄さん、いってらっしゃい。」

 

と告げた。

その一言にイチカは嗤い(・・)をやめ、少し微笑み(・・・)

 

「いってきます。」

 

と告げ、一人俺達とは違う車に入っていった。

 

「なあ、マドカ。あれでよかったのか?」

 

「いいんですよ。

兄さんは『ちゃんと』話してくれると言ってましたから。」

 

笑顔でそう言われ、少し言葉が止まった。

 

「何やってるの?さっさと乗りなさい。」

 

メモリーは俺とイチカの会話中に車に乗ったらしい。

 

「俺達も行くか。」

 

その後、俺達も車に乗り、IS学園を出発した。

 

だが、その時は、まだ知らなかった。

イチカのこの一週間が、一ヶ月後に起こる世界全てを巻き込んだ喜劇とも悲劇とも取れる騒動のきっかけになるだなんて。

 

 

Haiji side end

 

 

 

 

??? side

 

「よかったのですか?」

 

私、白石美桜は、まだぎこちない敬語を使い、後部座席の上司に聞いた。

 

「何を.........かな?」

 

上司のイチカ・ハイドンは質問の意図を理解していて、その上でくだらないというように笑った。

 

「貴方は、何故家族に何も言わないのですか?」

 

私はもう一度意図を確かめるようにはっきりと言った。だが、上司の変わらない雰囲気に『家族を取り(・・・・・)戻したい(・・・・)』私には、その怒りが(・・・・・)不当なもの(・・・・・)だとしても、思わずにはいられなかった。

 

「何故、家族に言わないだって。笑わせないでくれるかな。言ったところで無駄だよ。」

 

その表情に希望は無く、ただ一つの自嘲した笑みだった。

 

「無駄ってなんでですか⁉︎」

 

その表情が私をイラつかせた。

 

「無駄だよ。もう時間切れだ(・・・・・・・)。もう少しで人間界に騒動が起きる。その瞬間を見極めた結果、時間切れだと『()が判断した(・・・・・)。よかったでしょ、君にとっては。()が救われるんだから。」

 

ふざけるなと言いたかった。でも言えなかった。

私はこの人に約二年間部下としてついて来た。きっと私は、喜んでいたのだろう。怒っていたのだろう。哀しんでいたのだろう。苦しんでいたのだろう。色々な感情がめまぐるしく心で揺れる。

 

「もういいでしょう。僕も少し疲れました。少し眠らせていただきます。到着したらまた起こしてください。」

 

そう言って、彼は眠った。私の様子を見て、呆れたのだろうか?

やはり、私にはこの人が理解できない。

 

 

Mio side end

 

 

 

Ichika side

 

昨日は結局眠れなかった。

織斑の言葉はイラだち、あの(ゴミ)は俺を腹立たせた。だが、最後に聞こえたあの言葉はなんだったのだろうか?あの言葉聞いたら戻れなくなる(・・・・・・)ような気がした。わからないことに苛立ちを憶え、不愉快な気持ちになった。

その結果、友人や部下に当たりさらに自己嫌悪に陥った。そんなことを考えて、もう少しで救われると思い直したところで、睡魔に襲われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浮かぶ光景はいつもより少年が成長していた。

一人の少年が修行をして、いやそれはただの修行ではなかった。少年はただ力を求め続ける。

 

『さっさと(覚醒臓器)に入らせてくれないか』

 

天界獣が口を開け、その地獄人(・・・)の少年を体内に放り込む。

そこからは圧巻だった。目の前の少年は三番目の試験を受け、穴から飛び出してくる槍の雨を避け続けた。それはきっと何時間も続いたのだろう。少年が目標を殺し外に出る頃には日が暮れ、少年も倒れ込んでいた。

少年は何日も何日も、覚醒臓器に入り修行した。普通では考えられない怪我もしていた。だが、少年は治療獣を使い、何度も直し、そしてまた覚醒臓器に入っていった。

天界獣は、それをただ黙って見ているだけだった。その姿は、僕にはとても苦しそうに見えた。

 

ある日、男が現れた。

 

『君に能力を与えよう』

 

その男は自分が『ーーーーーー』の部下だといい、少年に能力を与えようとしてきた。

 

『じゃあ僕は、“ーーーー”を“ーーーーーー”変える能力にします』

 

男はその能力を聞き説得しようとしたが、少年にはその後能力が与えられた。

 

 

 

 

 

『ズドンッ』と音がなり、光景が消え去っていく。

 

「おい、どうした⁉︎」

 

運転していた部下の美桜に聞く。

 

「到着したはいいんですが、目の前に大きな人参が⁉︎」

 

その言葉で前を見ると、目の前の人参から『不思議の国のアリス』を彷彿とさせる格好をした女と、銀髪の少女が人参の中から出てきた。

 

「久しぶりだね。いっくん!」

 

女、『篠ノ之束』は確信したようにそう言った。

 

(何故こうなった)

 

 

 

Ichika side end

 

 

 

 

 

 

 

Tabane side

 

 

今から数年前、いっくんはどこかにいなくなってしまった。

いっくん対しての暴行は知っていたが、いっくん自体あまり気にしていなさそうだったから、放っておいた。

そしたらいっくんは、いつの間にかいなくなってしまった。

それからいっくんの周りの人は後悔して、私に頼み混んできた。

私には理解できなかった。何故こうなった原因達が私に頼ってくることが。だけど、いっくんは好きだったから探した。

でも、何年も探しても見つからなかった。

 

悔しかった。

 

私にはできないことがなかったから、悔しくてたまらなかった。

ずっとずっと探して探して探し続けた。

けど見つからなかった。

 

きっかけはほんの些細な事だった。

二年前、私はいっくんはもう死んでいる(・・・・・・・)と仮定して、女尊男卑によって起こされた事件(・・・・・・・)を洗い直して見た時にとある(・・・)事件(・・)』を見つけた。いっくんが消えてから一年くらい経った後に発生した事件だ。とても凄惨な事件(・・・・・)で隠蔽できてるのがおかしいくらいだったけど、上手く隠蔽されていて、殆ど知ることができなかったけど、いっくんらしき人物がその事件の行方不明者リストに載っていた。

 

この事件でいっくんはもう死んでいると思っていた。

ハピネスのとある発表を聞くまでは.........

 

ハピネスが男性IS操縦者を見つけた。その写真には、学生時代にちーちゃんの両親の写真を片付けていた時に見た、ちーちゃんの父親にそっくりだった。

私は急いで調べた。でも、ハピネスのガードは固くて調べることができなかった。

 

だから、急いで次の行動へと移した。

 

IS学園で、クラス対抗戦なるイベントがあることを知った。そして、その時に、『ISをたくさん送っていっくんかどうか確認しよう』と考えた訳だ。でも、ISのほとんどを壊されてしまった。唯一遠隔操作していた二機のISでなんとか髪の毛(・・・・)を採取し、逃走できた。

 

 

調べた結果、イチカ・ハイドンがいっくんの遺伝子と合致した。

 

 

このことをちーちゃんに伝えたかった。でも、いっくんのことを考えると、とてもじゃないがそんなことは言えなかった。伝えたくても伝えられなくて、ぼかしながらいっくんであるってちーちゃんに伝えた。

ちーちゃんは私の言うことを聞かずに、イチカ・ハイドンに話しかけた。ちーちゃんは気づかなかったが、イチカ・ハイドンに動揺しているのを、ちーちゃんに取り付けられている監視カメラで見えた。

そのおかげで、イチカ・ハイドンがいっくんだって確信した。だから私は、いっくんに会いに行く機会を待った。

 

チャンスはすぐに訪れた。

私はいっくんがIS学園を、少しの間出て行くことを知った。その日程を確認し、当日すぐに追いかけて行った。

私はいっくんにどう話そうかくーちゃんと話ながら会いに来た。

 

「久しぶりだね。いっくん!」

 

そして私は人参のロケットから飛び降りた。

 

 

Tabane side end

 

 

 

Ichika side

 

 

目の前の存在に、つい溜息をついてしまいそうだった。

 

(後、もう少しだったのに(・・・・・・・・・).........)

 

目の前にいる篠ノ之束は俺を『織斑一夏』だと言った。

 

(確信しているな.........どうする?とりあえず、いつも言っていることを言っておくか)

 

「俺は織斑一夏ではありませんよ。篠ノ之束博士。」

 

確信している篠ノ之束を見て、俺はもう殆ど諦めているが、いつも言っている言葉を言う。

 

「いや、いっくんだよ。だって、IS学園の時にとったいっくん遺伝子が一緒だったのに、いっくんじゃあないなんておかしいよ!!!」

 

(あの時か⁉︎)

 

半信半疑だが、IS学園を襲撃された時に髪の毛を切られた。その時に採取されたのだろう。

 

(仕方ない)

 

諦める。

目の前にどんな人間であろうと、遺伝子まで調べられたらどうしようもない。だが、()は織斑一夏とは違うことを証明しなければならない。

 

「俺は一応『織斑一夏』ですよ。」

 

「やっぱりそうじゃん!!!

急いでちーちゃんに伝えないと!!!」

 

目の前の女性が喜ぶ。それはどうしても俺は辛かった。

 

「ちょっと待って下さい。」

 

「何かな、いっくん?」

 

俺はハイジにも言った真実を告げる。

 

「俺は『織斑一夏』であって、『織斑一夏』ではないんだよ。」

 

「ちょっといいんですか⁉︎」

 

美桜が言う。もうどうしようもなかった。

 

「いいんだよ。」

 

目の前の女性が止まる。

 

「どう言うこと?」

 

(ああ嫌だ)

 

あの話をするのが嫌だ。

 

「少し話を聞いてくれませんか?」

 

だが、俺は話さなければならない。だってそれは、大切なことだから。

 

 

 

俺は俺の過去とハイジにした話を彼女伝えた。

 

「嘘だ!!!」

 

(この顔だ)

 

女性がヒステリックに叫ぶ。

織斑一夏()を仲間だと慕ってくれる奴等と同じ反応だ。俺が限定条件を言った時と同じ反応をしていた。

 

嘘だと言って信じなかった人。今の(イチカ・ハイドン)を認めなかった人。俺を受け入れてくれた人。様々な人がいた。

 

それを見て俺は、どうしようもなく辛くなった。

 

その後は兄さんを筆頭に俺に対し、きっちりと面倒を見てくれた。それでもきっと今でも俺を仲間だと認めない奴等もいると思う。だから、もう二度と見ないように未練(・・)をなくしに来たんだ。

もう二度と見ないと思っていた表情()を見るのは苦痛だ。この顔を見たくないから、言いたくなかった。

 

「嘘だと言ってよ、いっくん。

そんなオカルトなことありえないんだよ。

だから嘘をと言ってよいっくん。」

 

泣きながら縋る女性を見て居た堪れなくなる。女性の背後にいる少女は話を聞いて驚き、楽しんでいたが目の前にいる篠ノ之束を見て居た堪れなくなったらしい。

背後から大きな影が降りて来た。

 

「お迎えにあがりました。イチカ・ハイドン様。おっとその二人は?」

 

目の前に神補佐の背の小さな男性が降りてくる。

 

「少し待ってくれませんか?」

 

「よろしいですよ。時間はまだありますから。」

 

神補佐に断りを入れ、目の前の女性に今回の目的(天界に行く理由)を伝えようとする。

 

「事実は小説よりも奇なりって言うけど、本当だったんだね。」

 

泣いた顔でそう言う。

 

「私はいっくんの頃の大切な感情を戻せるように機械を作るよ!

きっと上手くいくから待ってて!!!」

 

飛び立とうとするのを止める。

 

「待って下さい篠ノ之束さん。

俺と一緒に天界に行きませんか?」

 

伝えなければならないから。

 

「何かな、私は急いで作らなきゃいけないんだ。天界に行く余裕なんてないんだよ。」

 

目的は一緒だから。

 

「今回天界に行く理由は『織斑一夏だった頃の記憶(・・・・・・・・・・・)の感情を取り戻すこと(・・・・・・・・・・)』です。だから一緒に行きませんか?」

 

篠ノ之束の表情が驚きへと変わる。

 

「できるの?」

 

「出来ます。織斑一夏だった頃の自分に何を言われるかわかりませんが、それでもいいならついて来てくれますか?」

 

きっとこの女性にも『織斑一夏』だった頃の自分は辛く当たるだろう。けど、俺は『織斑一夏』に対して泣いた女性を連れて行きたかった。

 

「いいよ、それでも。

いっくんにもう一度会えるなら、ついて行ってあげる。

いいよね、くーちゃん?」

 

「私は束様の意思に従います。」

 

後ろのくーちゃんという少女の了解を得た。

 

「すみませんが、二人乗ることってできますか?」

 

「大丈夫です。貴方の部下として乗ることで大丈夫なら、天界のことを余り言いふらしたりしなければ大丈夫ですよ。」

 

神補佐も話を今回の件を知っているのか、話が早かった。

 

「大丈夫だよ!束さんは絶対に言いふらしたりなんかしないよ!!!くーちゃんも大丈夫だよね。」

 

「はい、大丈夫です。私も絶対に言いふらしたりしません!!!」

 

二人は大きな声でそう言った。

 

「美咲もいいか?」

 

最後に美桜に聞く。

 

「仕事としては駄目と言いたいですが、神補佐にも大丈夫と言われたなら仕方ありません。私も連れて行ってあげたいですから。」

 

美桜は呆れているが、それを受け入れていれてくれた。

 

「わかりました。四名様、傘に乗ってください。天界に行きます。」

 

俺達は大きな傘に乗って、天界へと向かって飛んで行った。

 

 

Ichika side end

 

 

 

 

??? side

 

もうすぐイチカが帰ってくる。

もう少しでこの大切な日々が終わりを告げる。

いつか来ると思っていたが、このいつかが来るなんて思いたくなかった。信じたくないと思うと同時に嬉しくもある。きっと心のどこかで苦しくもあったのだろう。贖罪は終わりを告げよう。きっとそれは大切なことだから。

 

 

??? side end

 

 

 




次回、記憶編突入


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記憶編
第23話 ルナ


遅くなってすみません。
今回から記憶編スタートです。


Robert side

 

ハピネスからの連絡で今日、イチカが帰ってくる。

イチカの知人達やこの後すぐに行われることを知っている人物達は此処に集まって来ている。その中には元神様までいる。

 

「本当にすぐでよかったのかのう?」

 

「イチカが決めたことです。ボク達が口を出してはいけないとボクは思います。」

 

「そうじゃな。奴も覚悟して願って来たのじゃ。オレ達が口を出しては奴の覚悟を揺るがしてしまうじゃろう。」

 

正直に言えばボクは覚悟すらできていない。

ボクは変わったから(・・・・・・・・・・)

でも、一夏(・・)が変わるか(・・・・・)はわからない(・・・・・・)

ただ一つ言えるのは『ボクと過ごした時間が幸せであってほしいと願っていること』.........それを知ってほしい。

 

門が大きな音を立てて開いた。それはイチカ達が帰って来たことを告げた。

数人の男女がそこから現れる。

 

「ただいま、兄さん。」

 

「おかえり、イチカ。」

 

ボクは笑顔でそう言った。

 

 

Robert side end

 

 

 

Ichika side

 

「本当にやるのか?」

 

俺達は神を決める戦いの三次選考中にも使われた宿泊用ホテル“プリンス螢”に来ていた。

今日の為にこのホテルを貸切にして機材を搬入した。

 

「やるよ。

これは自分にとって、きっと大切なことだから。」

 

俺は頭に機材をつけて、兄さんのに覚悟を告げる。

 

「わかった。それじゃあ始める。」

 

兄さんは機材を動かして、カウントを始める。

 

 

「3」

 

 

 

 

 

 

「2」

 

 

 

 

 

 

「1」

 

 

 

 

 

 

 

「スタート」

 

 

電源が入れられる。

 

 

 

「があああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!」

 

頭に膨大な量のノイズが入る。

頭に大量の情報が無理矢理押し込められるように頭痛が始まる。

 

『おいーー大丈ーーーか?』

 

痛みで聞こえる声がどんどん遠くなっていく。

体が何度も発作を起こしている。

 

まるで、感情(情報)を取り戻すことを許さないように。

 

 

 

何回、何十回、発作し続けるのだろう。

体力も限界に近づき、意識が朦朧としても発作で起こされる。そんな苦痛(時間)が後何分続くかわからなくなって来た時、

 

記憶の奥底で花を見つけた。

 

 

 

 

その瞬間自分の中にある記憶と感情が(・・・・・・)戻って来た(・・・・・)

 

 

 

 

「ね......え............さん?」

 

 

 

頰に涙が流れる。

 

 

 

大切だった。

 

 

とても大切だった。

 

 

今でも、とても大切で............忘れがたくて............決して忘れてはいけない、いや忘れてはいけなかった始まり記憶(とても大切な人)が蘇ってくる。

 

夢は間違いじゃなかった(・・・・・・・・・・・)

 

決して(・・・)誰にも譲れないものを忘れていた(・・・・・・・・・・・・・)

なぜ僕が『こんなにも世界を憎悪している(・・・・・・・・・・・・・・)』のかがわかった。

 

 

頰に涙が溢れでてくる。

泣いているんだ。

感情を失っても、記憶を書き換えられても、夢にまで出て来た大切な人。

 

嬉しくて、楽しくて、幸せで、

この世に生まれて来て良かったって言えるくらいに幸福な日々を。

 

その日々を壊した人間(ゴミ共)を。

 

元々好きではなかった存在が、この世から消えて欲しいと願うほどのものに変わって。

 

 

恨んで、憎んで、呪って、

こんな自分(人間)が『あの人』のそばにいたことすら許せなくって。

 

 

 

幸せが不幸に変わって。

笑えなくて、苦しくて、助けて欲しくて、

 

 

 

でも、許したくなくて、

 

 

不幸にした人間(ゴミ)を壊したかった。

 

 

僕を不幸にした存在(人間)が幸福な日常を過ごしているのが許せなかった。

 

 

そんな僕を救ってくれた人とその経緯の記憶があって。

 

 

 

それでも(・・・・)救われなかっ(・・・・・・)た俺がいた(・・・・・)

 

 

そんな少年を救ってくれた人達の記憶。

 

最初の救いはロベルトさん(・・・・・・)だった。

 

だけれど、僕を救った『あの人』との日々が、

 

 

 

僕自身を変える転機になった。

 

 

地獄人『ルナ』との出会いが.........

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜五年前〜

 

 

二月

 

ロベルトさんに助けられた数日後、ロベルトさんの父親の『マーガレットさん』に連れられて海外の『ーーー国』にある国境近くの山頂付近に来ていた。

山頂に辿り着くと小さな山小屋があった。

 

「ここに何があるんですか?」

 

「君にはここで二年後の神を決める戦いまでに、地獄人としての能力を取り戻してもらう。」

 

 

「なんでこんなところで修行しなければならないんですか?」

 

この場所で修行する理由がなく、その頃の僕は戸惑うだけだった。

 

「その理由はもうすぐわかる。」

 

「入りますよ。」

 

マーガレットさんがドアを開けると、

 

そこには一人の少女がいた。

 

 

「お久しぶりですね。師匠。

彼が、イチカですか?」

 

「久しぶりですね、『ルナ』。

この子がイチカです。」

 

マーガレットさんと楽しそうに会話する彼女に警戒心を抱いた。

そんな俺に少女は笑顔を向ける。

 

「紹介しましょう。こちらは『ルナ』。

貴方の姉弟子にあたる人です。今日から貴方にはこの人に修行を見て貰って下さい。」

 

「初めまして、私は地獄人の『ルナ』。これからよろしくお願いしますね。イチカ!」

 

青い髪を揺らしながら満面の笑みで、姉弟子は僕にそう言った。

その笑顔がどうしてもその時の僕には受け入れられなくて、

 

「あんたとよろしくするつもりはない。」

 

その時の僕はそう言った。

それでも彼女は笑みを絶やさなかった。

 

 

これが地獄人『ルナ』との出会いだった。

 

 

その日からの修行は苛烈を極めた。

戦闘訓練はなく、練習はずっと基礎練習をしているだけだったが、山の中を走り込みや筋トレを徹底して、毎日倒れるまでやりつづけた。

 

その日々は自分を一日ごとに昇華させていき、自分の中にある織斑千冬(最強の存在)ルナ(覆せる存在)が目の前にいることを把握できるようになった。

そのことに、気がついた時この人に憧れを抱いた。

 

だが、俺はこの人に心を許すことはなかった。

自身以外に対し、心を許すことを僕は拒絶していた。

 

そんな日々にルナへの想い変わる転機が訪れたのは、一ヶ月後の自身にとって一番嫌いな日(・・・・・・)であった。

 

 

 

三月二十五日

 

 

 

俺は朝登校すると、誕生日の日にいつも書かれている文字を見つけた。

 

 

『産まれて来なければ良かったのに』

 

一年でたった一回だけ机に落書きされる日。

その言葉は俺の机に赤い大きな字でそう書かれている。

町中、クラス問わず俺の陰口で始まり、家に帰っても誰にも祝われない。

 

机の落書きを見て吐き気を覚え、陰口には反吐がでて、家では心が苦しくなった。

そんな自分に失望して、その日も自身が料理して、掃除を行い、夜になったら一人で食事して風呂入って寝る。

 

『勝手に期待して、勝手に裏切られる』

 

そんな日は決まっていた。

 

 

三月二十五日 『織斑一夏(・・・・)の誕生日(・・・・)

 

 

 

 

 

 

「寝覚めの悪い朝だ。」

 

夢から覚める。

窓の隙間からでる光が鬱陶しく、その日が晴れていることに気がついた。嫌な夢の原因がわかっているが、その頃の僕にはどうしようもなく、ただイラつく朝を迎えることになった。

 

 

 

「今日はここで終わりにします。」

 

ルナのその人言で修行は終わった。

だが、僕は修行を続けた。

 

 

 

 

いつもよりも多く。いつもより激しく。

 

 

 

 

疲れて

 

 

 

 

 

倒れて

 

 

 

 

 

そのまま地面で倒れ伏した。

 

 

 

気づくと夜中になっていた。

倒れた体を起こして、一人小屋に帰る。

一人で小屋で待つルナに対し、罪悪感が増して来て急いで帰ると小屋はすでに暗く灯は消えていた。

 

(今年もいつもと同じか.........)

 

自分の所為だといえ、今年も一人で過ごす誕生日に虚無感を覚える。

ルナはもう寝ていると思い、ゆっくりドアを開けた瞬間、

 

 

「誕生日おめでとう!!!」

 

パァンと音が鳴って、暗かった部屋が明るくなった。

 

「お帰りなさい。」「随分遅かったですね。」「遅かったので少し心配しました。」「料理はもう冷え切っていますが、温め直せばいいだけです。」「さあ、貴方の誕生を祝いましょう!!!」

 

自分の目をこすって確かめた。

自分には途切れ途切れに聞こえる声は優しくて、いつもの笑顔はいつもよりずっと暖かくて、部屋から出る料理の匂いは僕の心を満たした。

 

「なんで、泣いているんですか?」

 

「えっ?」

 

気づくと涙が流れてた。

泣いていることに気づいたら、さらに涙がでてくる。でも、久しぶりの涙はそれほど不快ではない。むしろ心を満たしていく。

 

「私何か悪いことをしましたか?」

 

彼女は心配そうにそう言った。

俺は首を振る。

 

「どこか痛いんですか?」

 

彼女の言葉にまた俺は首を振る。

 

「では、どうしたんですか。イチカ?」

 

 

 

「俺の話を聞いてくれますか?」

 

 

俺は話した。

今までのことをルナに話した。

両親が小さい頃にいなくなったこと。家族が織斑千冬だということ。父親の封印は自分だけで、他の姉兄にはされなくて、自分だけが自分の家族の落ちこぼれだったこと。そのことで周囲の人間に虐められたこと。

 

そして、誕生日になると『産まれて来なければ良かったのに』と書かれていること。誕生日は兄は祝福されるが、自分はされないこと。

 

家族に愛されていなかったこと。

 

今までのことを全部彼女に話した。

どんなに拙くても、彼女は静かに聞いてくれて、今までのことを話すのがとても話しやすかった。

 

「だから、俺は産まれて来なければ良かったんだ。」

 

その言葉は俺の心を落ち着かせた。

最後に言った言葉は俺の心を表しているようだった。

不意に暖かい温もりが体を包んだ。

抱きしめられたことがわかった。

 

「貴方は此処にいても良いんですよ。」

 

「え?」

 

「貴方は此処にいても良いんですよ。」

 

 

ルナは何度も何度もそう言った。

その言葉を言うたびに、彼女は泣いた。

その言葉を聞くたびに、俺も泣いた。

 

その日は二人とも泣き疲れてしまいそのままそこで二人とも眠ってしまった。結局料理は食べられなかったものの、その日はとても大切な日になった。

 

 

その日初めて僕は『幸せ』を知った。

 

 

 

 

 

 

 

 



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第24話 変化

 

Ichika side

 

 

あの日をきっかけに、僕と『ーーー(ルナ)』の仲は少しずつ変化していった。

 

記憶を失っても、心の奥底に染み付いた大切な『想い』。

 

 

 

あの日、初めて『幸せ』を知った。

 

それだけで世界が変わったように見えた。

 

それだけで僕自身が変わる理由になった。

 

その日々はとても綺麗な思い出をたくさん作った。

 

 

 

綺麗な思い出が蘇る。

 

彼女は『()』という口調になるように矯正しようとしたきっかけはこの頃だったから、鮮明に覚えてる。

 

 

 

その日は誕生日から、一月と少したった五月始めに体験した。

 

初めて理由の無い『優しさ』を知る記憶。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜五月一日〜

 

「今日の訓練はここまでにしましょう。」

 

月の始めを含め一月の間の何日かは訓練を早めに切り上げる。

この小屋で生活する為に、山を降りて生活必需品を買いに行くからだ。この小屋は山の中にある。山で暮らす為に必要な物や足りない物が増えてくる。住んでいるのは二人だけだが、月の始めに買いに行かなければならない。

この小屋はある山は『ーーー国』の中にあるが、『○○○国』との国境近くにあり、『○○○国』側の山麓にある街から『○○○国』になっている。

『ーーー国』は天界が『神を決める戦い』の為一時的に女尊男卑が入らないよう管理しており、『○○○国』は女尊男卑の風潮が漂っている。その為二つの国は冷戦状態で、天界の管理とアラスカ条約がなければすぐに戦争を起こしそうな程国家間が荒れている。

山を降りたらどちらの国側にも街があり、世界が女尊男卑の風潮にある為に『ーーー国』側の町より『○○○国』側の町の方が発展している。

その為、先月は女であるルナが『○○○国』側の町に行った。

俺の誕生日に早めに切り上げたのも、料理などを少しでも豪華にする為にわざわざ下山して行っていたと知ったのもついこの前の話である。

 

「わかった。これから今月も買い出しに行くんだろ。だったら俺は、自主訓練でもしてるよ。」

 

女尊男卑の風潮がある『○○○国』側の町に男の俺が行ける訳も無く、先月は修行をしていた。

 

「いえ、今度はイチカが買い出しに行って下さい。」

 

「えっ?」

 

俺はその言葉に耳を疑った。

 

「えっともう一度言ってもらって良いかな?」

 

「だから、イチカが行くんですよ。」

 

俺は聞き間違いだと思いもう一度聞いてみると彼女は呆れたようにそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ、何でこんなことに......」

 

街は活気付き、俺は足りなくなった日用品を買っていた。

 

『私は女尊男卑の強い『○○○国』に行けとは言いません。ですが、貴方は演技力以前に、コミュニケーション能力が足りません。そんなことでは、神を決める戦いには勝利できませんよ。だからまずは、『ーーー国』側の街に行って買い物をして来てください』

 

「そんなこと言われたって.........」

 

ルナに言われたことも一理ある。

この世界は女性が優先される世の中だ。そんな世界に俺みたいな『化物』が暮らせる場所など殆どないようなものだ。

 

(買い物ってあんまり好きじゃないんだよな)

 

元姉兄の料理を作っていたが、買い物をするのも自分でやっていた。その上、買い物をしている間に暴力を振るってくるものもいたものだ。思い出すだけで腹がたつ。

 

 

「くだらないな。」

 

 

「何が、くだらないんだい。そこの坊ちゃん?

うちの店の前でそんなこと言わないでくれよ。」

 

俺が声に反応し誰かが声をかけてきた。声のする方を見ると四十代後半の女性が屋台で果物を売っていた。

 

「へえ、あんたは何で俺みたいな男にそんな風に言うんだよ。今の時代の普通ならもっと威張って俺に難癖付けてきたりするはずだろう。」

 

 

「は?へえ、あんたそう言うこと。こりゃバカらしい。ふはははははははははははははは!!!」

 

俺の言葉に女性は一瞬驚き、その後突然笑い出した。

 

「何がおかしい!!!」

 

「いや〜悪かったね。あんたがこの街の人間じゃないことに驚いてね。私も珍しかったんだよ。あんたみたいな人間がこの街以外にいるのがさ。」

 

女性は済まなそうに俺に謝った。

 

「私の名前は『トゥバ』。ここで店屋やってる。それで、あんたの名前は?」

 

「俺はイチカ。こっちは買い物途中でな。用があったらまたくるよ。」

 

「ちょっと待ちな。」

 

俺は買い物に戻ろうとしたが、トゥバに呼び止められた。後ろを振り向くと赤い何かを投げてきた。

 

「それ持ってきな。果物を買うんだったら私のところに来な。安く売ってやる。」

 

赤いリンゴだった。

 

「ありがとう。」

 

そして俺は買い物袋背負ってスーパーに向かった。

 

 

 

 

「ただいま、ルナ。料理、今日が俺が作るよ。」

 

(いつもの場所)ではなく、台所に向かう。

 

「お帰りなさい、イチカ。今日は何だかご機嫌ですね。」

 

「何が?」

 

「貴方が進んで料理をしようなどと言ったのは初めてですから。」

(そう言えばここで料理を作るのは初めてだったな)

 

料理を作るのは正直あまり好きではないが、今日はなぜかやりたいと思っていた。

 

「そうだったな。

料理をするのは久しぶりだから上手くいくかわからないが、やってみるさ。」

 

「ええ、期待してます。」

 

 

その日の食卓は自分の作ったものなのにとても温かい優しい味がした。

 

 

 

 

 

 

 

その日から僕は『ーさー(ルナ)』に言われて買い物をするようになる。

 

ルナに作った料理はきっと味に違いはなかったが、それは自身が『優しさ』に触れて変わった結果のだろう。

 

『幸福』

 

それは僕が与えられていたものだ。

 

あの日々はきっと僕にとって人生の中で一番幸福だっただろう。

 

 

 

今度は僕が『幸福』を与える記憶。

 

自信はないが、彼女はその日『幸福』だったに違いない。

 

無知な僕が時間がなくて、拙くても成功させようとした記憶。

 

笑って、怒って、泣いて、楽しんで、でも最後には笑って。

 

 

きっとこの『幸福』な記憶で自分が最も彼女について考えたのはこの記憶だろう.........

 

 

 

 

〜十月四日〜

 

 

「はあ⁉︎明日!!!」

 

ふと、自分の誕生日を思い出し、今度の誕生日は俺がルナに祝おうと意気込んで聞いてみたが、ルナの誕生日は十月五日だった。

 

「もう私も十六歳。流石に祝われる年齢ではありませんよ。」

 

自重するように言ったその言葉は何故か寂しげだった。

 

「それに貴方、まだ口調が直っていませんね。ロベルトさんみたいに、ちゃんと『僕』とか『です』、『ます』を使いなさい。

私の誕生日どうこうよりそれをさきに直してから言ってください。」

 

コミュニケーション能力が上がってきたせいか、最近になって口調まで直そうとしてくる。今の世の中、口調を間違えるだけで男は批難を受ける。それを心配してそう言っているのであろうが、今の彼女自分の誕生日の話題を無理矢理変えようとしているようにしか見えない。

俺はその姿に腹が立った。

「もういい!今日の訓練は無しにして、明日の買い物に行ってくる!!!」

 

「ちょっと待ちなさい⁉︎イチカ!!!」

 

 

ルナの制止を振り切り、俺は山を降りた。

 

 

 

 

 

 

「トゥバいるか!!!」

 

俺はトゥバの店にきた。

この店には果物を買う以外にとある理由(・・・・・)でよくきている。

 

「何だい、そんなに急いで?

まだ私の店は開店してないよ。」

 

「今回はレシピを買って欲しいんだ!」

 

「おお!レシピか!!!

最近売っているメニューは特にに人気でな、新しいレシピを売ってくれるならありがたいからな。」

 

俺はトゥバにレシピを売っている。

レシピは俺が昔に作っていた料理を少しアレンジしていたもので、それを売って以降、トゥバの店は果物の売買のほかその果物を使ったパイやケーキなどが、人気になっていった。

今ではもう果物屋とは言えなくなっているが.........

 

「ふむ、これなら人気になりそうだ。

代金ならこれくらいでいいか?」

 

トゥバの集計が終わったらしい。

 

「ありがとう!じゃあなトゥバ!!!」

 

「おい、ちょっと......」

 

代金を受け取ったらトゥバの店をすぐに出た。

急いでルナへのプレゼントを買いに行く。

 

 

 

 

 

 

「わからない.........」

 

夕方になり辺りが暗くなってきた。

一通り街のアクセサリーを売っている店を調べたが、この街自体男性の方が人口が多く、男性用のアクセサリーばかり売っている。

 

(ルナの好きなものをもう少し知っていればよかったな)

 

今更なが後悔していた。

 

「明日、もう一度探しにくるか.........」

 

そろそろ帰ろうかと思い始めたときだった。

街の外れ一件の屋台が小物を売っていた。

 

「いらっしゃい。何にしますかお客さん?」

 

その店で売られているものは女性用のアクセサリーが売られていた。

宝石がはめられた腕輪がいくつか目に入る。

 

ひとつ眼を見張るものがあった。

赤い斑点がある艶やかな宝石を中心にシンプルな造形をしている腕輪。

 

「これは?」

 

「おおっと、これは『ブラッドストーン』のブレスレットですな。少しお高いですが、これくらいでよろしいでしょうか?」

 

(『ブラッドストーン』の宝石言葉は......)

 

日本円で計算すると数千円はする。

自身の年齢が買うには高すぎる値段だ。まだ他の店があるかもしれない。だが、それ以上に彼女に最も似合う宝石言葉だと思う。

今日のレシピ代より低い値段なので十分払える値段だ。

 

「これに決めた。このブレスレットをくれ。」

 

「ちょうどいただきますね。ありがとうございます!!!」

 

 

 

家路へと急いで戻る。

すでに太陽は沈み、空には満天の星空が見える。しかし、山道は暗く染まり道は殆ど見えない。

山小屋の明かりを頼りに走り、1時間ほどで漸く山頂にたどり着いた。

 

「ただいま!!!」

 

「どこ行っていたんですか!!!」

 

彼女は玄関で怒って立っていた。

 

「えっと、街で少し買い物に.........」

 

「これのどこが少しですか!もう夜の9時ですよ!!!

今の時間帯ならもうお風呂も上がり終えています。しかしイチカは全然帰って来ません。貴方が帰って来なくて私がどれだけ心配したかわかりませんか⁉︎」

 

目に少し涙が見えて、俺は動揺する。

 

「あんたの誕生日プレゼントを買っていたんだが、思いの外手間取って、こんな時間帯になっていた。」

 

手に持った袋を渡す。

 

「えっ?」

 

「あんたの誕生日プレゼントだ。」

 

「開けてもいいかな?」

 

彼女は驚いた後、少し恥ずかしそうにそう言った。

俺は首を縦に降る。

彼女は袋の中にある箱を開ける。

 

「ブレスレット?」

 

「その宝石は『ブラッドストーン』。宝石言葉は、『救済』。

俺はあんたに救われた。だから、あんたに最も似合う宝石を選んだつもりだ。」

 

「そんな......私が......」

 

彼女は涙をこぼし始めた。

 

「おい⁉︎大丈夫か?」

 

ガシッ!!!

 

ルナは俺に突然抱きついた。

 

「ありがとう.........本当に、ありがとう......」

 

彼女の感謝の言葉は俺に『幸福』与えても、与えられても素晴らしいものだと教えてくれた。

 

 

 

 

 



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第25話 たった一つの愚かな間違い

大変遅れて申し訳ございません。
今回、『鬱展開』、『グロテスク』な描写があります。


Ichika side

 

 

 

この世界は壊れている(・・・・・・・・・・)

 

 

 

全ては間違いだった。

 

この世界はこんなにも暖かく無い。

 

 

 

ある時、一人の『子供』は『玩具』になった。

 

ある時、『玩具』はこの世界を呪い、それを見た『怪物』は『玩具』に問いかけた。

 

『僕と一緒に人間を滅ぼさないかい?』

 

『玩具』はそれに応じた。

 

満足した『怪物』は『玩具』を掬い、『玩具』から一人の『人間』に作り変えた。

 

『人間』は『怪物』に連れられ、『化物』と出会った。

 

『化物』は『人間』に平穏を教えた。

 

『人間』は決意が揺らぐ程の温もりを知った。

 

決意はいずれ願望に変わった。

 

普通の物語ならばハッピーエンド(そこで終わり)だっただろう。

 

だが、『人間』は愚かだ。

 

願望に変われば、人は許容できる。

 

許容できれば、諦めることだってできる。

 

諦めることは間違いだった。

 

結果、『人間()』という個人は消え去った。

 

 

 

(残った願い)』は恨み続ける。

 

この世界を.........そして『人間』を。

 

 

 

 

 

 

 

〜十一月十五日〜

 

 

 

日本ではもう冬に近く寒さだというのに、この地域はまだ暖かい。

そして、自身の修行も未だ格闘訓練に辿りつくことはない。何故ならば、俺の肉体は未だに人間レベルを超えることができず、対天界人・神器用の格闘訓練を行う程地獄人らしい身体が作れていないからだ。

 

「ふぅ〜、漸く終わりましたね。」

 

ルナは最近編み物に嵌っている。

完成したら見せると言っていたが、未だ基礎訓練を脱していない俺には興味が持てない。

 

「まあ、後半年もある。それまでに基礎が完成して、戦闘で経験を積めば良いだろ。」

 

山の中腹で基礎訓練に勤しむ。

 

 

〜二時間後〜

 

「なんだ、あれ?」

 

空で何かが物凄い速さで飛んだのを見た。

 

 

ドオンッ

 

 

次の瞬間、山頂から途轍も無い大きな音と振動が鳴り響いた。

 

「何が起きた!!!」

 

俺は急いで山頂を目指す。

山は燃え、山頂に近づくにつれて木が無くなり始めた。

 

(何処だ、ルナ!!!)

 

頂上の小屋は半壊しており、近くにはクレーターの様な穴が沢山空いている。

 

クレーターの中心にルナがいた。

 

「ルナ!?」

 

「来てはいけません、イチカッ!!!」

 

その瞬間、ルナの腹に穴が空いた。

 

「えっ?」

 

「当ったリィ!!!」

 

そんな声が聞こえた。

 

だが、今はどうでもよかった。

俺は、今までより遥かに速くルナの元へと走る。

 

「イチカ.......逃げて。」

 

そう言ったルナを抱いて、山を降りる。

声なんて関係ない。自身の今までの全力を......いやそれ以上の力を振り絞って山を降りる。道なき道を通り、障害物を跳ね除け、破壊して山を降りる。

 

漸く着いた。

だが、無意味な事だった。

 

「嘘だッ!!!」

 

街は燃えていた。

周りから死の匂いが充満する。

 

「ねえ、イチカ?」

 

抱いているルナが声を出す。

死力を尽くす声に俺は言葉が出ない。

 

「私......ここに居ても.........良かったのでしょうか?」

 

その言葉はあの時の言葉だった。

 

「居ていいに決まってるだろうが!!!」

 

唐突に出た言葉だった。

 

 

「あんたにどれだけ救われたと思ってる。俺がこうやって生きたいと思えるのも、あんたのおかげだ!!!

だから、喋るな。またすぐに隣の街まで行って......」

 

自分を言い聞かせる様に俺は言う。

 

「もう......いいんですよ。」

 

その言葉で現実が見えた。

抱いているルナの温度は少しずつ下がり始める。

 

 

「私は幸せ者です。」

 

彼女は笑顔だった。

 

ズドンッ

 

「ーーーーーーーーーーーーーー」

 

近くの建物で爆発が起きた。

触れている手は既に脈は無く、聞こえなかった言葉が最後の言葉だった。

 

そして、その手の熱は少しずつ下がっていく。

地獄人だからこそそれがわかってしまった。

 

「ハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!

いや〜面白い茶番だったぜ。」

 

背後からさっきルナが撃たれた時に聞こえた女の声だった。

空に飛んでいる『人間(ソイツ)』は笑いながら侮辱する。

 

「本当はIS実験でこの街を壊す予定だったが、こんな面白い茶番が見れたんだ。」

 

(コイツガヤッタノカ)

 

「こんな男を放って逃げれば、逃がしてやったのにな。」

 

(オレガイタカラシンダノカ)

 

目の前の『人間』と自身の行動を思い出す。

 

「まあ、結局男は殺すんだかな。ハハハハハハハハハ」

 

(コロス?)

 

目の前の『ゴミ』が言った言葉の意味を考える。

 

(ナニヲ?)

 

(オレヲ)

 

(コイツガ?)

 

(オレヲ?)

 

(コンナ『人間(ゴミ)』ガオレヲ?

ルナヲコロシタコイツガオレモコロスダト。

オレカラスベテヲウバウダト。

フザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケルナフザケるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな)

 

目の前の存在に対する認識が変わった。

今まで己がどれだけ愚かだったことを思い出した。

 

『まあ、後半年もある。それまでに基礎が完成して、戦闘で経験を積めば良いだろ』

 

(俺は間違えていた。後半年ではない。もう半年なのに気づいていなかった。)

 

時間が刻一刻と近づいているのを目をそらし、このまま平穏を享受し続けようとしてしまった。

 

「充分楽しんだからそろそろ死ねぇ!!!」

 

「堕ちろ」

 

女が銃を構えた瞬間、頭に踵落としを打ち込む。

その一撃は、地獄人の一撃以上の威力を出す。

 

「こんなに簡単なことだったんだな。」

 

女は気絶し、シールドエネルギーを完全に消費させた。

 

「俺.........いや、僕は途轍もなくあまかった。

人間(ゴミ)』はちゃんと『あの世(ゴミ箱)』入れなきゃいけなかったんだ。

ルナ、もう少し待っていて下さい。

この世界から『ゴミ』を消し去りますから。」

 

ルナを抱こうして、ふと思いつく。

 

「カヒヒヒヒヒヒヒヒ......カハハハハハハハハハハ。そうだ、いい事を思いつきました。」

 

先程倒した『ゴミ』を捕まえる。

首を掴み上げ、丁度頭一つ分くらいの高さまで持ち上げる。

 

「貴女には、役に立って貰いましょう。

 

 

 

 

 

 

 

イタダキマス。」

 

 

 

 

 

 

〜◯◯◯国 首都 女性権利団体◯◯◯国支部〜

 

大きな部屋に二人の女性がいた。

一人は椅子に座って、一人は立っている。

その者達は、試験を言い渡した者を待っていた。

 

「もう少しで、彼女が報告しに来ます。

だからそんなに、焦らなくても宜しいのではないでしょうか?」

 

「だが、目障りな国に漸く戦線布告する事が出来たのだからな。」

 

座っている女性は『ーーー国』に戦線布告した者達の主犯であり、この『◯◯◯国』のトップに立っている人間であった。

 

ノック音がなる。

 

「クックック、漸く来たか、入れ。」

 

「それじゃあ、失礼しっまっす!!!」

 

ドンゴキュ

 

ドアが女の真横を通り過ぎ立っている女を潰した。

 

「へえ、今までよりもやはり身体能力が上がっていますね。」

 

「男、なんで此処にいる!!!誰か......誰かいないのか⁉︎」

 

少年はドアを蹴破った様に足を下ろして、女に歩いて来る。

 

「男、なんで此処にいる!!!誰か......誰かいないのか⁉︎」

 

ドアが乱暴な方法で破られたにも関わらず、人どころか警報すらなることがない。

 

「なんで、なんで誰も来ない!!!

それ以前になんで男が此処に進入している。」

 

少年は嗤いながら、女の頭を掴みこう言った。

 

「おかしな事を言いますね。此処にいた人間は僕が全員殺していなかったら、僕は此処にいませんよ。」

 

「そんなことありえないわ!!!

それにどうやって此処まで侵入して来れたのよ!!!

 

女は喚きながらも、『この世界』では当たり前の事を言った。

 

「簡単な事ですよ。だって」

 

少年は顏に手を当てると、

 

「こうする事だってできるんですから。」

 

襲撃を任せた女の顏に変わった。

 

「あ...ああ...ああああ。」

 

「初めて行いましたが、これは便利ですね。

こんなにも簡単に『人間』を騙せるのですから。」

 

「ば......化け物。」

 

女は恐怖で漏らしていた。

化け物はその様子にニヤリと嗤った。

 

「滑稽なものですがね.........そろそろ死んでください。」

 

小さな瓶から五角形の何かを取り出して、女に埋め込んだ。

 

その時、女の体は五角形の何かに血を吸い取られ始めた。

 

「これは、『デスペンタゴン』。

とある場所に生息しているノミです。

デスペンタゴンは一度寄生した生物の血を全身隈無く吸い取るのが........っともう聞こえませんか。」

 

そこには、一人の少年と真っ黒な丸い物体、そしてミイラしかありませんでした。

 

 

 

〜二日後〜

 

「もしもし、お久しぶりですね。

マーガレットさん。」

 

僕は嗤いを堪えながら、電話している。

 

『済まないが、君は誰だ。

少なくとも、私が知っている君はそんなふうに嗤っていなかった筈だが』

 

「それは、僕が変わったって事ですよ。

そんな事よりも、テレビ見ていますか?面白い事になっていますよ。」

 

『テレビだと⁉︎少々待ってくれ』

 

電話越しに聞こえるテレビの音は自身が今見ているものと同様だと理解する。

 

『どういう事だ?』

 

テレビには、たった一人の女が(・・・・・・・・)処刑台に(・・・・)登らさせ(・・・・)られるところだ(・・・・・・)

だが、おかしいところが一つある。

これが世界中(・・・・・・)で放送されて(・・・・・・)いるところだ(・・・・・)

 

「ねえ、面白い放送でしょう?」

 

処刑台で女は《自分はやってない》、《あのガキがやったんだ》などと供述しているが、監視カメラや生き証人達が『IS』を使って殺したところを見られている。

 

『まさか、イチカ......』

 

「ええ、そうですよ。

あの『ゴミ』が僕の姉さん(・・・・・)を殺したから、ただ僕が味わった苦しみを十倍にして返してあげただけですよ。」

 

電話越しに絶句する様子が見える。

 

『姉さん?とは一体誰だ』

 

「ルナ姉さんの事ですよ。」

 

『ルナはお前の姉ではないだろう。お前の姉は.........』

 

「いえ、僕の姉は『ルナ』ただ一人です。

人間(あんなの)は家族ではありません。だって人間(ゴミ)じゃないですか。僕は地獄人ですよ。誰でもなく、自分自身がそう思っています。

 

そして僕の家族はルナただ一人。

この世でたった一人、僕自身を見ていてくれたのだから。」

 

その言葉で電話を切る。

半壊した家に一人の地獄人と、一人の亡骸がいる。

亡骸に少年は語りかけた。

 

「唯一、貴女だけが、僕を愛してくれました。

僕自身も貴女を愛しています。だからこそ、此処に誓う。

 

僕はこの世界を滅ぼし尽くす。」

 

その少年は掴んだ手を忘れないだろう。

その手はあの暖かい手ではない。既に、冷たく硬い手であった。

少年は忘れないだろう。

今この手のにある温度、歪な硬さ、そしてあのとき抱いてくれた優しく暖かい手の感触を。

 

 

 

 

〜半年後・日本〜

 

草原で大きな獣が一人の少年を吐き出した。

 

「十ッ星試練クリアだ。夏月(カヅキ)

急がなくていいのか?あと数時間で入学式だぞ。」

 

「ええ、大丈夫ですよ。準備はもうできています。

すぐに着替えた後、墓参りに行きますよ、ハル。」

 

ハルと呼ばれた獣の大きかった体は縮み、腕輪になった。

 

『また、行くのか?

昨日も一昨日も行っただろう』

 

歌からダルそうな声が聞こえてくる。

 

「行きますよ。決意を忘れない為に......もう二度と愚かな真似をしないように。」

 

 

 

 

 

 

入学式が終わり、クラス内で自己紹介の時間が執り行われる。

 

「それじゃあ、次の奴出てこい。」

 

眼鏡を掛けた天界人が夏月の番を告げる。

 

一喰夏月(いちぐいかづき)です。

好きなものは、リンゴと家族です。一年間よろしくお願いします。」

 

 

 

 

 

 



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第26話 想いを形に......





Ichika side

 

とても大きな音が鳴り響く。

 

「神器を渡した甲斐があった。

漸くアノンを倒せたんだね。植木君。」

 

(フェイク)”の後、アノンに対し“魔王”の想い(重い)一撃がはいったところが見えた。

 

なくなる意識の中で、能力(ちから)のカケラが消えてなくなるのが見えた。

 

 

 

 

〜半日前〜

 

 

 

 

 

『植木、バロウ両チームの四次選考進出決定です!!!!』

 

「わかっている。」

 

(わかっている筈だった)

 

 

橋の上にただ傍観することしかできない自身を思い出す。

人間(ゴミ)』が『天界人(怪物)』に勝利した。その場にいた自身は、選ばれなかった。

ただ、それだけで敗北した理由すら理解したくない(・・・・・・・)それだけで自身に対し、怒りが湧いてくる筈だった。

 

能力(ちから)なんか使えなくたって使えなくたって...私も戦う!!!!』

 

『でも...もしあそこで逃げちまったら、オレは、オレ自身をお前らの仲間だなんて言えねえと思ったんだよ!!!』

 

『コレは.....親友からもろた大切な能力(ちから)なんや.........せやから...誰にも.........クズなんて言わせへん!!!』

 

『私はもう二度と負けたくない!!!!』

 

『佐野はオレを信じてくれた...オレを信じてお前の能力(ちから)を命がけで暴いてくれたんだ。

届かねえわけ...............ねえだろ...!!!

 

必死で伝えようとしてくれた言葉が、伝わらねえわけねえだろ!!!!』

 

「綺麗事......」

 

綺麗事

 

たったそれだけの言葉で片付けられるそれは、沢山の人を変え過ぎた。

自身を掬ってくれた人もその中にいる。

 

血反吐を吐いた。

 

生まれてきたことを呪った。

 

恩を仇で返すような仕打ちすら今もしている。

 

それでも成し遂げなければいけないことがある。

 

 

「その仮面、バロウチームの『イチカ・ルナ』だな。」

 

「テメェらが、植木チームなんかに敗北したせいでオレらは大損こいた!!!

これだけの人数ならテメェ一人ぐらいわけねえ。とっととくたばったまいなあ!!!」

 

 

背後から近づいてきたそれらに気づかなかった訳ではない。

 

(やはり僕にはこっちの方が性に合っている.....それに、もうそろそろ(・・・・・・)必要だと思っ(・・・・・・)ていましたし(・・・・・)........)

 

 

 

戦闘は呆気なく終わった。

散らばった天界人(ゴミ)らを体内(ゴミ箱)に片付ける。

顔に仮面をつけ直す。

 

「とうとう正体を表しおったな、イチカ・ルナ......いや、守人の末裔よ。」

 

一人派手な服装をした男性が橋の反対側から来た。

 

(神に見られていたのか。気づかなかった......)

 

「見られてしまいましたか......はい、僕は『イチカ・ルナ』ですよ。」

 

「やはり......か......」

 

仮面を取った瞬間に少しの動揺と、確信めいた言葉を口に出した。

 

「やはり......ですか。まるで僕の正体を知っている様な口振りですね.........」

 

少しの同情と、覚悟が混ざったその目はさらに僕を苛立たせる。

 

「半年程前に、人間界で『デス・ペンタゴン』の仕業とおぼしき死体が、とある国家で発見された。そこからその近辺に暮らしていた人間の経歴を探していると......天界が保有している土地に二人の少年少女が住んでいることが発覚した。

そして、少年の名前と、少年がその土地に来る数週間に似た様な失踪者を探していたところ、天界側に虐待を受けた少年を保護した(・・・・・・・)とマーガレットが報告したのを思い出してな。保護対象が住んでいた町を中心に調べると驚く事がわかった。

『追放された地獄人』、『地獄人と人間のハーフ』、『生まれた子に対して親が行なった仕打ち』、『人間界でのその子供の立場』、そして.........半年程前に人間界で起こった『IS操縦者による大虐殺とその主犯の全世界公開処刑』の真相。

 

オレにとって驚くべきことばかりであった。

なあ『織斑一夏』よ。」

 

「へえ、よくそこまで調べましたね。

ええ、僕が織斑一夏だった者です。流石歴代の神の中でも最高峰の智略家と謳われるコトだけはありますね。」

 

僕はそのことを肯定した。

彼の顔には苦痛に歪み、自身への同情を隠そうとしなかった。

 

「じゃがな、まったくもってわからんのは、なぜそこまでして天界を狙う?」

 

「は? 何を勘違いしているのかわかりませんが、僕は天界を狙っていませんよ。」

 

「えっ⁉︎」

 

同情から一変、神が驚きの声を上げ漫画でよくある様に転ぶ。

 

(同時に歴代の神の中でも最高峰のお調子者と謳われるだけのこともある)

 

「まさか......お前は天界乗っ取る為にこの戦いに参加したのではないのか。」

 

地面についた体をあげながら言う姿勢に随分滑稽に思えるが、内容としては割とシリアスだ。

 

「ええ、僕の願いはロベルトさんと同じく『人間を滅ぼす』ことですよ。」

 

「人間を滅ぼすじゃと?お前の復讐対象はもう死んでいる筈じゃがなぜ人間を滅ぼそうとする。」

 

「ふふ......ふはははは面白い冗談ですね。

僕は元々、人間を滅ぼす為にロベルト・ハイドンと手を組んだ。だが、あの事件で随分自分が腐っていたことに気付かされましたね......例え、何が起ころうとも自分の目的を変えないぐらいの覚悟をして来ました。だから、ロベルトさんが人間を滅ぼすことをどうするか悩んでアノンに裏切られたときでも、僕は見捨てた。

僕は人間を滅ぼすことを辞めない。その為に、ここまでどんな手段でも使ってきた。仲間を裏切り、友を騙し、それでも成し遂げてみせるとあのとき、他の誰でもないあの人に誓ったんだ!!!!」

 

僕は演じる。

迷いがあろうが、後悔しようが、辞めてしまったら、またいつかあの光景が自身の目の前に起こってしまうから。

神は覚悟を決めて立ち上がる。

 

「誓った......か。

どうやらお前も他の守人のに末裔の様に過去に囚われているようじゃな。」

 

「“(くろがね)”」

 

「“快刀乱麻(ランマ)”」

激情に任せて撃った“鉄”。

神の“快刀乱麻”によって防がれる。

 

「なぜお前が神器を見使える⁉︎

お前が天界人を取り込んだのはついさっきであろう!!!」

 

そうなのだ。僕自身も普通に使えることに驚いている。

理由は理解できているが。

 

「簡単なことですよ。天界人以外が『覚醒臓器』を使うとどうなるか知っていますか?」

 

訝しげな表情をしながら神は答える。

 

「そんなもの神器が得られないに決まっておるじゃろう。」

 

それはとても滑稽見えた。

 

「ええ、得られないですね。

ですが、神器以外にも得られるものが確かにあるんですよ。」

 

「なんじゃと⁉︎」

 

神でも知らないことがあるのはちょっと可笑しく思える。

そして、天才と呼ばれた神が知らないことを知っていたことに優越感を覚える。

 

 

「天界獣の覚醒臓器は7回使うと、天界人は七つの神器を得て、天界獣は死んでしまいます。ですがそれは、天界人に限ったことであり、他の種族が使えば神器を得ることはありません。ですが、天界人は七つ星を上げると七つの神器を得ることができます。

しかし、神器のはそれぞれ『テーマ』があります。

 

(くろがね)”であれば『自覚』。

 

威風堂々(フード)”であれば『忍耐』。

 

快刀乱麻(ランマ)”であれば『不惑』。

 

唯我独尊(マッシュ)”であれば『渾身』。

 

百鬼夜行(ピック)”であれば『集中』。

 

電光石火(ライカ)”であれば『先読み』。

 

旅人(ガリバー)”であれば『持続』。

 

波花(なみはな)”であれば『把握』。

 

花鳥風月(セイクー)”であれば『バランス』。

 

魔王(まおう)”であれば『本質』。

 

神器を得る為にはこの『テーマ』をクリアしなければなりません。」

 

「では、なぜこの『テーマ』が必要だと考えると、神器を覚醒させる為にはこの『テーマ』が必要であり、それを実行させるものが覚醒臓器だというわけです。

しかし、天界人が五年かけて『テーマ』をクリアしても神器を得られるとは限りません。ですが、覚醒臓器では神器を確実に得られます。

それは天界獣の覚醒臓器が(・・・・・)天界人に対し、()を7回(・・・)上げてしまう(・・・・・・)からです。

ですが、神器を与えるには天界人でなければなりません。神器を発生させることにエネルギーを使う必要があり、他の種族に対して天界獣は神器に干渉(・・)することができません。ですが、干渉することにエネルギーを使う必要がありますが、『テーマ』を学ぶにはそのエネルギーを受け取る必要はありません。

 

僕は『テーマ(・・・)理解する目的(・・・・・・)の為に、何度も同じ(・・・・・)試練を受け(・・・・・)続けました(・・・・・)。」

 

「まさか......⁉︎」

 

「ええ、僕は『テーマ』を理解することで天界獣の生命エネルギーを消費しないまま、神器を会得することができました。」

 

神が驚いた顔をする。

 

「なんて無茶なことをしたんじゃ!!!

あんな試練を受け続けることなど天界人ですら二度とやりたくないと言う者もおるというに、お前はそんな無茶を何度もしてきたと言うのか!!!」

 

「ええ、何度も血反吐を吐いたり、何度も諦めようとしました。

でもね、その度に思い出すんですよ。

あの日、『ルナ姉さん』が救ってくれて、助けてくれて、優しくしてくれて、望んでくれて、笑ってくれて、怒ってくれて、泣いてくれて、

 

そして『ここに居ても良い』と言ってくれた!!!

幸せだったんだよ(・・・・・・・・)

 

人間(ゴミ)』どもが姉さんを殺すまではな!!!!

 

笑って、泣いて、怒って、そしてそんな日々が途轍もなく大切に思えたんだ。

それを壊した『人間(ゴミ)』を決して許してたまるものか!!!

 

僕は『人間ども(あいつら)』の幸せを全てぶち壊して、僕と姉さんが幸せ(・・・・・・・・)に暮らせた筈の(・・・・・・・)世界を作(・・・・)り変えてやる(・・・・・・)!!!!」

 

そう言って戦闘体制をとる僕に、神は溜息をつき、頭を掻いた。

 

「オレはお前に聞きたいことがある。

 

お前はそれで幸せになれるのか(・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

 

「もう黙れよ。」

 

全身から天界力を溢れ出せる。

僕は神へ向かい走り出し、神もまた僕に向かい走り出す。

 

「「“百鬼夜行(ピック)”」」

 

二人の“百鬼夜行”が破壊されるのと同時に、神の接近により顔面に一発貰い、神も同時に僕の蹴りを喰らう。

だが、次の攻撃へと二人は移行する。

 

「“(くろがね)”」

 

「“唯我独尊(マッシュ)”」

 

神の棘がついた鉄を歯が尖っている僕の唯我独尊が挟み込む。

 

「ならこちらは、“波花(なみはな)”じゃ!」

 

「なら僕も、“波花(なみはな)”」

 

神の波花が唯我独尊を壊すも僕の波花で神の波花ごと神を吹き飛ばす。

 

「“旅人(ガリバー)”そんでもって“快刀乱麻(ランマ)”」

 

快刀乱麻で壊された空間から旅人の外へと飛び出す。

しかし、不意打ち気味に旅人入れられたことにより快刀乱麻によってマントを切り裂かれる。

その後、接近戦に戻り二人で殴り合う。

 

数発、数十発殴り合ったと、同時に二人に重い一撃が入り二人とも衝撃によって吹き飛ぶが、体制を立て直す。

 

「オレは昔、ある娘から“未来”の大切さを教えられた.....」

 

神の独白が始まった。なにかと思えばくだらないごとだ。

 

「へえ...そいつは未来を夢見て幸せに暮らしていると言うわけですか......だから僕にもそんなふうに生きろと.........」

 

「いや。」

 

 

「...............死んだよ。 十二年前......事故でな......」

 

一瞬、思考が止まった。

神からでる言葉一言ずつ重みが増していく。

 

「だが、あいつにとって三十年弱じゃったが、きっと幸せな人生であったとオレは思う。」

 

「それはあいつが......“未来”を見つめて生きていたからじゃ。」

 

「お前にだってできるはずじゃ!!

“今”を生きるために必要なのは“過去”じゃない。

“未来”なんじゃ!!!!」

 

重み・実感のあり、本音で語るその姿勢こそ、彼を神たらしめた要因なのかもしれない。

その一言で、自身の中で一番不愉快な感情が蠢きだす。

それを抑え込み、表面上での笑みを作り出す。

 

「そうですか。なんとも気持ち悪い生き方ですね。

半年前の自分なら、その意見に対し賛成の意を評していたかもしれませんが、今の僕とあなたの生き方は対照的だったようですね......」

 

「やはり......言っても無駄か。」

 

「カハハ......無駄ですよ。」

 

「ならば仕方あるまい。

未来のために生きてきたオレと過去のために生きてきたお前......どちらの生き方が正しかったのか、

 

今、ここでハッキリさせるしかないのぉ!!!!」

 

「しかし、埒があかんのお。

ここは“魔王(まおう)”を使って一気に片付けさせて貰う!!!」

 

 

神が“魔王”を使い始めてから激戦から、神の優勢な場面が増えた。なぜならば、僕は“魔王”一回も使っていなかったからだ。いくら理解したとはいえ、“魔王”の力は使い手の想い(・・・・・・)による部分が大きい。今の僕に、即興で神に勝てる程の想いを込めることができるかわからなかったからだ。

能力、才、神器、天界力、超身体能力、全てを使い、“魔王”を防ぎ、かわし、反撃に入る。

“魔王”の弾切れを待ち、弾切れになると同時に、形振り構わずに全力で仕留めにかかる。

 

 

 

日は既に落ちて、全身傷だらけになろうとも僕と神は立っていた。

 

「......フフ...どうやら.........お互い、ここまでのようじゃな......」

 

「オレは弾切れ、お前はなぜか打たなかったということは事情でもあったようじゃのぉ.........」

 

「まだ......だ。まだ、終わってない!!!」

 

激戦の中で蠢く感情は増大していった。

神にまたがり何度も何度も殴り続ける。

 

「未来なんて大嫌いだ!!!

 

自身の望んだ未来には、彼らはいなかった。

でも、一人、また一人と毎日のように苦しんで、悲しんで、それでもロベルト・ハイドンについていったあいつらを見てきたんだ。

 

それでも、見捨ててしまったんだよ!!!

みんな、望んだ未来が欲しかったんだ。

 

笑って過ごして欲しかったんだ。

 

平和に......誰一人欠けることなく楽しく過ごして欲しかったんだ。

 

それを、過去に囚われているだと!!!

ふざけるな!

こんな気持ち悪い世界をつくった人間(元凶)が身近にいたんだよ。周りを苦しめた元凶を知っていたんだ。

 

こんな未来を夢見てつくった織斑千冬(元凶)が許せなくて仕方ないんだよ!!!

 

こんな未来なんて消えて無くなってしまえ!!!.........

 

“魔王”」

 

神器は能力に吸(・・・・・・・)い込まれた(・・・・・)。それに気づいた瞬間に、能力をすぐ(・・・・・)に剣に変化させて(・・・・・・・・)神を頭を貫こうとした。

 

一瞬の浮遊感。

その一撃は神の頭を避け、真横の地面をを貫き、まるで巨大隕石が落ちてきたようなクレーターを作り出し、地面に突き刺さった。

 

「.........わかってるんだよ。」

 

頰をつたう涙とともに、黒に染まった剣に少しずつ白いヒビがはいっていく。

 

「望んだって、願ったって、今さらなことぐらい。」

 

()』は、『想い(・・)』は、もう既に理解していた。

 

「全てが今さらだったんだよ。

どんなに後悔したって、植木君達(・・・・)が正しいのは理解しているんだよ。」

 

それでも、どうしても成し遂げたい願いだった。

 

「僕の願いが、間違いだったなんて言うつもりはない。

そう望んだ人達は沢山見てきた。腐ったゴミ(生きる価値のない人間)も沢山見てきた。

僕の大切な姉さんも殺されたんだ。」

 

揺らいでしまった。

未来()に進む植木君達を見て......

 

「迷ってしまった。悩んでしまったんだ!

どうしても、成し遂げたかったのに......どうしても揺らいでしまったんだ!!!」

 

彼らは命を賭けていた。

全てにおいて、どんなときでも、一生懸命に戦っていた。

 

「植木君達だけじゃない!!!

黒影や白影、アレッシオ、ドン、マルコ、ベッキー、鬼、太郎、ユンパオ、カバラ、カルパッチョ、みんなそれぞれに辛い想いを持っていたんだよ。

それでも、どうしても叶えたい願いがあったからロベルトさんについていこうと決意していたんだ。」

 

みんな『未来()』を見据えていたんだ。

 

「みんな夢があったんだ。

ルナ(・・)』を殺された世界で希望を持っていたんだ。

しかし、復讐《そんなふう》に生きていたそのときの僕には到底理解できなかった。」

 

百聞は一見にしかずという言葉がある。

百回聞こうが、千回聞こうが到底理解し難いものだった。

だが、この三次選考で見てしまったから。

 

「この三次選考を見て変わったんだ。」

 

能力(ちから)も使えないのに戦う森さん。

 

自身の弱さを認めてそれでも仲間を救った宗谷ヒデヨシ。

 

能力(ちから)を卑下されても、必死に頑張ってレベル2に成り、勝利した佐野清一郎。

 

なにもできず負けてしまった故に、決して負けないと覚悟を決めた鈴子・ジェラード。

 

自身の正義のため、命すら賭けて戦った植木君。

 

「漸く気づけたんだ。そういう人間もいるんだって。」

 

「気づいたとしても、理解したくなかった。

今までの人生でそんな人間がいなかったから。」

 

織斑家の人間とその関係者、学校の面々、『ルナ』を殺した人間に、街を傲慢に歩く女ども、それを恐れている男ども。

 

誰一人として、誰かを想い、優しくする人間は存在しなかった。

 

「僕はは、今までの生き方が間違いだって思わない。

“過去”があるから“現在”があるのだから。」

 

神の上から立ち上がり離れる。

 

「だけど、楽しく(・・・)生きるためには、“未来(それ)”も必要なのかもしれませんね。」

 

神が笑った。

きっと四次選考を安心したのだろう。

 

 

「それは、違うよイチカ。

生きるために必要なのは“力”さ。」

 

「神様......四次選考はボクが引き継ぐよ。」

 

 

突然現れたアノンは神を“快刀乱麻”で切り裂き、神を取り込んだ。

望んだ力を手に入れたアノンは自身の願いのために神の“亜神器”を使い、新たな四次選考を開始した。

僕は傷ついた体を無理矢理動かしてとある人物(・・・・・)に会うために走り出した。

 

 

「お前は......夏月か⁉︎」

 

森の中で漸く植木君達がアノンの元へと向かうところを見つけた。

 

「植木!!まさか夏月君がこんなとこにいるわけないでしょ......ってなんでいるの⁉︎........まさかその服.........?」

 

「ええ、僕が『バロウチーム』最後の一人。イチカ・ルナですよ。」

 

植木君達が戦闘態勢に入る。

 

「何しに来た!!!」

 

「僕はとある目的があって君に会いに来た。」

 

「だから、僕の目的の為に君をここで倒させてもらう!!!」

 

植木君を倒さなければ始まらない。

 

「まずは、森さんから倒させてもらう!!!」

 

「やめろォッ!!!!」

 

放たれた“百鬼夜行”を避けて植木君を蹴り飛ばす。

 

「“快刀乱麻(ランマ)”」

 

「植木!!!」

 

本題はここからだ。

 

「僕は元々、地獄人の守人の一族とのハーフでね。

最近(・・)、天界人を取り込んで神器を得たんだ。今では、十ツ星まで使えるが、君に十ツ星まで使う必要がないぐらいに僕は強い。」

 

「植木君に言っておくけど、今の僕はアノンよりも圧倒的に弱い。

それで、よくアノンに勝てるなどとほざいたな!!!!」

 

植木君の顔に絶望が浮かぶ。

 

「アノンを倒さなければ......“未来”は無い。」

 

「バロウ達が自力で六ツ星や八ツ星でなったとでも君達は思っているのか?」

 

植木君達に疑問符が浮かぶ。

 

「短期間で星をあげる手段は、ただ一つだよ。」

 

「まさか!!!」

 

「でも、覚醒臓器のある天界獣はテンコ以外ずっと昔にいなくなったんじゃ......」

 

「それでも手段があるから僕は言っているんだよ。

僕はとある条件(・・・・・)を呑むのならば、君に覚醒臓器を使わせてあげるよ。」

 

「条件......?」

 

「ダメよ、植木!!!

たとえ、クラスメイトだったとしても敵よ。天界獣なんか使わせずに、酷い条件をつけてくるに違いないわ!!!」

 

森さんの言うこともご最もである。

だが、僕にはもう襲うつもりはない。その姿に笑えてくる。

 

「これなら理解できるだろう。僕が信用たることを。」

 

自身の腕だけを天界獣に変容させる。

 

「これで信用できるな、森。

条件を言ってくれ、時間がない。」

 

「ちょっと、植木⁉︎」

 

隣で森さんが心配そうに騒いでいる。

 

僕の願いのためには、彼が強くならなければならない。

だけど......それでも、あのときの記憶が蘇る。

 

だから条件がいる。

 

「条件は、僕のレベル2を受けること。

たぶん君ならば危険性はない。きっと乗り越えられるはずだ。」

 

自身の上半身に着ていた黒いマントを剣に変質させる。

 

「僕の能力(ちから)は『“想いを形に変える能力(ちから)』。

この能力(ちから)は自身の過去に実体験した事柄から、想いを形に変えて、精神と共に肉体に影響を与える能力(ちから)。」

 

自身が過去にこの能力(ちから)を選んだのは運命だったのかもしれない。

 

「そんな危ない能力(ちから)植木に使わせる訳ないじゃない!!!」

 

「まだ、話は終わっていません。」

 

この能力(ちから)をつくった者は、よほどこの能力(ちから)を使う人間を理解していたらしい。

 

まさか、こんなレベル2だとは誰も思いつきはしないだろう。

僕は植木君に近づき、植木君の胸に(ちから)を突き刺すと同時に、レベル2を発動させる。

 

「植木!!!」

 

「僕のレベル2は『繋ぐ能力(ちから)

突き刺した者と自身の過去をそれぞれの第三者として追体験させる能力(ちから)。」

 

僕と植木君の周囲から光が溢れる。

 

それは、とても幸せな日々であった。

 

この戦いに臨んだ者のほとんどが望む光景があった。

 

追体験した事柄は、僕が欲してやまなかった

本当(・・)の絆(・・)で結ばれた(・・・・・)家族と(・・・)暮らす(・・・)平穏(・・)な日常(・・・)

 

剣にヒビが大きく広がる。

 

想い(本質)まで自分に否定されたんだ。

 

もう限界だろう。

 

光がおさまると同時にガラスに割れた音に似た音が鳴り響く。

 

「夏月......どう言っていいのかわからないが、

 

よく頑張ったな。」

 

笑いながら言ったその言葉には、いつか学校で見た彼の当たり前が存在していた。

 

「さあ......時間も少ない。覚醒臓器を使って早く、向かってやってくれ。君達の仲間が待っているよ。」

 

残った力を振り絞って、天界獣へと変化する。

 

「そうだな、早く始めよう。」

 

 

 

 

たった六時間で彼は試練を二つクリアした。

 

「これで、アノンと戦えるようになるんだな。」

 

植木君はそう言って“花鳥風月”をひろげる。

 

「でも、急いだ方が良いよ。

あと、5時間程度しか時間がないからね。」

 

「わかった。じゃあ.......」

 

植木君は飛び立つ前に顔を掻きながら恥ずかしそうに顔を赤らめた。

 

「ありがとな!!!」

 

彼はそう言って飛び立つ。

その姿はまるで、童話に出てくる天使のようだった。

 

 

 

 

 

 





“想いを形に変える能力(ちから)

・形は自由自在に変化させることができ、肉体と精神を選んで攻撃がすることができる。
・想いは込めれば込める程、威力が増し、量も増える。

レベル2

自身、もしくは相手の過去を追体験する(させる)ことができる。

限定条件
古い順番にしか過去の想いを形に変えることができない。
解除以外の方法で能力に異常をきたす場合、つくられた想いの持ち主になんらかの影響が残る。






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第27話 懺悔と想い

たくさんの自分(ひと)が一人の少年(ぼく)を取り囲む。

 

 

『復讐をしろ』

 

『見殺しにするのか』

 

『裏切るのか』

 

『庇うのか』

 

『また人間に大切な者を殺される』

 

『おまえの怠惰で殺される』

 

『無意味な感情に呑まれた結果が、これなんだよ』

 

場面が変わり、少女の死ぬ映像が繰り返される。

 

「いやだ...やめろ、僕は......ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい........うわあああああああああ!!!」

 

 

 

彼女の声は未だ、聞こえない。

 

 

 

Robert side

 

 

あの日ボクが奪った居場所は今日消え去った......

 

 

〜三年前〜

 

 

「いやだ...やめろ、僕は......ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい.........うわあああああああああ!!!」

 

植木君が人間界に帰って一週間目の夜。

ボクとイチカは先代の神に身元を預けられている。

 

イチカの姿は少しずつ変わっていく。

イチカは起きている間は心のなくなったように、動かないどころか一言も喋らず、寝ている間は毎日魘され発狂して起きる。それを一週間前に倒れているところを発見されてから繰り返しているようだった。

 

一週間前はストレスによって髪は白髪が混じっている程度だったが、今では全て白髪に変わってしまった。

先代の神は能力(ちから)の反動がでてしまい、想い(こころ)が壊れてしまったのではないか......というのが見解であった。

天界の上層部は能力(ちから)の影響を考慮して、

 

『これ以上は本人どころか取り込まれた天界人にも何か影響があるかもしれない』

 

という意見が発せられた。

天界の技術の中に先日の戦いを隠蔽するための装置が作られていた。それを使い、精神が安定するまでの時間、記憶を書き換えることになった。

 

「これは...,...!!!!」

 

能力(ちから)は記憶の大部分(・・・)に影響を与え、どの感情がどの記憶と繋がっているのかが、曖昧になっていた。

 

その『大部分』とは......『ルナ』と呼ばれる少女が関係している記憶が殆ど.........いや『大部分』の記憶全てが関係している。

 

「クッ.........」

 

最終手段をとる以外方法はなかった。

 

(わかっている......わかっていたんだ!!!)

 

記憶の書き換えを行う.........曖昧な部分も含めて。

 

イチカが戻ってくるように。

 

その一心を込めて書き換える。

彼にとってとても大切な記憶(ルナとの繋がり)を書き換えた。

 

偽物の記憶(ロベルト・ハイドンとの繋がり)へと......

 

 

次の日の朝、イチカは笑っていた。

ただただ、苦しそうに笑っていた。

 

 

〜現在〜

 

目の前でイチカが叫んでいる。

痛みに悶え、苦しみ、それでも手に入れようと必死にもがいて。

 

「ね......え............さん?」

 

あの日ボクが奪った居場所は今日消え去った......

 

彼女から奪った居場所はなくなった。

 

笑って、泣いて、怒って、喜んで、知って、忘れて、選んで、見て、体験して、学んで、信じて、そして.........生きて

 

ボクが欲しかった(もの)がそこにあった。

 

とてもとても楽しかった。

 

だが、イチカに会うその度に罪悪感が募って苦しかった。

 

それから何度も墓参りに行った。

彼女の墓を手入れするのはボクの役目になった。

 

だって、イチカはもう.........覚えていなかったから。

 

 

イチカは起き上がる。

 

「あの?ロベルトさん......少し外に行きませんか?」

 

 

 

ボク達は天界の森の中......イチカが倒れた場所に来ていた。

 

「ロベルトさん......僕は、ずっとずっと苦しんで生きてきました」

 

イチカは独白するようにそう言った。

 

「僕には『家族』はいませんでした。

『形』はありましたが、そこに『愛情』は存在していませんでした。いつも、秋一(ゴミクズ)を中心にイジメられていて、住んでいる場所(ゴミダメ)帰り(もどり)、料理や洗濯などの家事をやらされ、そんななかで帰ってくる織斑の人間(ハイエナ)に用意した食事(エサ)を与えていました。

そんな日常に僕の精神は少しずつ疲労していったのです。」

 

笑ってそう言ったイチカは、どうにも辛そうだった。

 

「その後、『IS』が登場すると同時に『女尊男卑』が始まり、そのせいで疲労を溜めるスピードが早くなり、僕はあの『掃き溜め』から逃げ出しました。

 

そこで、僕はロベルトさんに救ってもらいました。

 

そのおかげで『ルナ姉さん』に会えました。」

 

本人から彼女の名前を聞かされ罪悪感が増す。

 

「あの日々はとても楽しかったです。

 

僕が初めて『人』として生きた時間でした。

 

その時間も、たった一年足らずで終わりましたが......」

 

表情には寂しげな感情が滲み出ている。

それほどまで大切にしていたのかと、己の行動を恥じた。

 

「僕はその後、復讐を始めました。

まあ.........結局、失敗しましたけど。」

 

「その後、苦しみ続けました。

苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて.........」

 

「ボクはーーー」

 

「でも、救われました。」

 

「え?」

 

罵倒の言葉がくると思った。

その表情は晴れやかなあたり先ほどの言葉に嘘はないだろう。

 

「僕はとても楽しかったんです。

決して忘れてはならなかったはずなのに、とても楽しかったんですよ。

 

ロベルトさんは僕の『(かぞく)』を一所懸命にやってくれました。」

 

「違う!!!」

 

罪悪感に耐えきれずボクは叫んでいた。

 

「違うんだ!!!

ボクはそんなことはしていない!ボクはただ、目的が欲しかっただけだ!!!

あの頃のボクは生きる意味を持っていなかった。だけど、タイミングよくイチカが苦しんで、その苦しみにつけ込んでルナさんの立場を奪い取ったんだ!!!」

 

口から感情に任せた言葉が出てくる。

伝えたいことがあるのに感情が制御できずに漏れでてしまう。

 

「ボクは......ボクは......ただ、そんな日々が楽しくて......奪っているのを知っていて、それでも黙ってて......酷いことをしているのはわかっていたんだっ!!!でも......でも.........」

 

「それでも、僕は救われたんです。

第一にあの頃の僕もそうやって、マドカを引き取っていますしお互い様ですよ。」

 

そこには、寂しさも、狂気も、欠けたような感じも無い、まっさらな道を進んできた少年のような笑みを浮かべる。

 

「それじゃあ、僕は行きます。

三年ぶりに姉さんに会いに行きます。」

 

だから、ボクは.........

 

 

「ちょっと待ってくれないか?

伝えたいことが、君に渡したいものがあるんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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