ACECOMBAT if ~全く違うzero~ (夕霧彼方)
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変わる世界観

1986年

ベルカ連邦B7R地区

「これは・・・・やった、やったぞ・・・大発見だ!!」

「本当か?ここの磁場で機械が死んでるんじゃないか?」

「いや・・こいつは連邦最後の望みで大枚はたいて磁場除去機を導入したんだ!99・9%間違いない!・・・・いや100%だ!!」

「本当かよ!!」

「これで・・・連邦は救われる・・。」

1986年2月14日、ベルカ連邦配下のウスティオ共和国[財政と政府は自治権があり、連邦命令でベルカ連邦の命令に従う。]に石油、鉄鉱ガスなど膨大な天然資源を発見、世界中に発表した。財政的に圧迫して、素晴らしい科学力工業力もつぶれかけたベルカ連邦は、これを機に財政難がみるみる解消する。これをベルカでは後に「女神からのバレンタイン」と呼ばれる。

1987年

ベルカ連邦パイプライン計画始動。石油、天然ガスはベルカ連邦が占有、ウスティオとサピンには自国で賄う石油と、大規模な鉄鉱資源の占有権を渡し、ベルカ連邦協調路線になる。

1989年

ベルカ連邦は君主制から民主制になる、ウスティオ、サピン、ゲベット、レクタと同盟を結び、連邦の利益を共に享受するかわりに、ベルカの軍事行動などに従事する事に決める。これをベルカ連邦集権機構[Federal centralized mechanism Berka]略して「FCMB」

1999年

完全に復活したベルカは軍隊を養成、非常に強大な軍隊を持つ。それに加え、軍事的にも補助を受けたFCMBの国家群も同時に強くなり、オーシア、ユークトバニアに匹敵する軍事力を誇る。

同年

小惑星ユリーシーズでエルジアとISAF[対エルジアで結成された。ベルカが提言]。が被害を被る。その時、時のベルカ大統領コルト・アーベルは救援物資と必要資源、ベルカ軍4個師団、ウスティオ共和国防軍で世界でも珍しい救助に特化した部隊。「国際国内救助特殊部隊」が総動員出動。これがきっかけでISAFとエルジアがベルカに対して軍事同盟を結び、同時にハイブリッド式レールガンの技術提供を受ける。

2005年

オーシアが[2010年以降もハーリング大統領は出てこない。ストーリー上出る可能性大。多分]、B7Rの資源はオーシアの極東部分にもひろがっていると断言、至急ベルカに国土割譲してB7Rを受け渡すように会議で発言、当時ベルカ新大統領で、2010年現在も大統領を務める、ヤルタ・エリクが激怒、一気に国際関係が悪化する。

2008年

オーシアはついにベルカB7Rを強制的に資源採取開始。同時にオーシア軍の領空侵犯が激増、前線のウスティオは、ベルカの力を借りて軍事増強。それと同時にサピンにまねて、傭兵航空師団、第6師団を創設する。

2010年

物語は・・・ここから始まる。



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異世界にGO

2014年

11月18日

1100hmr

浜松基地

ここでは今、大お雛祭りが開かれてる。

「さ~てみなさん!!これよりイーグルによる展示飛行です!!」

司会進行役空自隊員の言葉で兵舎側から4機のF-15Jが見事な編隊飛行で飛ぶ。ちびっこや、軍事オタクは視線を釘付ける。しかも今回はお雛様、なんとピンク色に塗っている。ダイヤモンド編隊を組んで一周周り、ブルーインパルスよりは下手だが編隊を組んでの急上昇急降下。更にブレイクした後にUターン、そのまま4機で微妙な高度差で交差して周囲を沸かせる。それを20分ぐらい続ける。

「さて、展示飛行は終了です!イーグルのみなさんお疲れさまでした!」

司会の言葉で暖かい拍手。4機のF-15Jは翼を振り、巣である百里基地に戻る。

 

1123hmr

浜松上空4000フィート

「展示飛行お疲れ様。」

「疲れました。そしてピンクは恥ずかしい。」

隊長工藤安治三等空佐の言葉に反応するのは4番機で主人公、26歳独身の結川隆登二等空尉である。若いが非常に戦闘力あるエースパイロットに限りなく近い男。

「ははは、お前らしい!」

笑うのは先輩だ。

「ええ、でも子供たちに喜んでもらってよかった。」

結川はほっとする。

「ああ。そうだな結川。さて帰投するぞ。」

「はい・・・て・・。」

「どうした。」

工藤が結川機を見た瞬間、

ボフ!!

エンジンから煙!!

「おい!結川!!」

「ぐは・・・ん・・・くそ!!」

結川は操縦桿を握りなおす。いきなり機体が煙に包まれると機体の状況を知らせるディスプレイが真っ赤になる。

「ごほごほ!!」

機体が失速してる。これは無理だ!!機体を捨てる!だけど町には!

「大丈夫か!結川!!」

隊長の言葉が遠い。結川は涙が滲む。良かった。パイロットになる時に彼女作らなくて、あれ?遺書書いたっけ?父さんと母さんの猛反対から抜け出して無理やり入ったからいいのか?変に冷静になる。

そうだ!!入間!!

入間航空基地なら・・・。

「入間に落とす!!」

結川は宣言すると針路をむりやり入間に向ける。

5分後

入間の滑走路が見える。ああ、T-4でお世話になったな。高度100m、ゼロゼロ脱出出来る機体にあってもその脱出システムは死んでいる。

「おい!!結川あきらめるな!!おい!!」

「おい!機体は消耗品だがお前の命は代えられないんだぞ!!」

「このイケメン!心もカッコよくか?」

仲間や、入間の奴ら、近くを飛ぶ自衛隊機から応援の声が聞こえる。てか俺がイケメン?あ~あ、やっぱり少し火遊びした方が良かったな?でもいいや。これで・・・

「滑走路の真ん中に落ちます!・・・隊長、今までありがとうございました。そして・・・国民を守る・・・・義務果たせず・・・申し訳ありませんでした・・・・」

「結川!!お・・・」

通信を切る。そして結川は小声で

「イーグル。頑張ったな。そしてお前を落としてごめんな。」

結川はきっ、と操縦桿を前に倒し、だれもいない所にまっすぐに落ちる。地面はあっという間に迫り。叩きつけられる。

ドーーーーン!!!

「結川ーーーーーーーーー!!!!!!」

「おい、嘘だろ!!未来のエースパイロットが・・・。」

「なんでだ・・・何で・・・戦争じゃないのに・・・。」

燃えて残骸と化す戦闘機を、全員がその姿に信じられず黙る。

 

「・・・・ん?」

「・・・・あっ・・・ここは?」

結川は目を開き、体の痛みは無く、立ちあがりながら周囲を警戒する。ここは、入間じゃない、俺は死んだはずでは・・・。てか・・・。

「ここどこ?」

警戒しながら立ち上がり・・・。

「ここは命が危ないと思う、うん、逃げよう!!」

結川がダッシュしようとすると。

「止まれーーーー!!」

日本語!

「ですよねー!!」

こんな見ず知らずの場所で勝手に動いたら怪しまれる。てかもうアウトーーーー!!何だかキャラ壊れてる自分!そして命令で止まってしまう自分が恨めしい!

「捕えろ!!」

小銃を構えた兵士に取り押さえられる。

「お前が、まさか爆弾テロ張本人だな!!」

「え・・・ちょっと待て!どうゆう・・」

「お前、ウスティオ語が達者だな。もしかしてアジア系ウスティオ人か?!」

「ウスティオ?!」

ウスティオ、現代国家にそんな名前無い。あれ、どこかで聞いた事が・・・。

「ちょっと来い!!」

ここは従った方が早い手段だ。牢獄でもなんでもバッチこーい!!

 

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「敵を捕らえました!」

「ふむ、君がか?どう見ても空軍パイロットのパイロットスーツだな。」

手錠をかけられ、俺はとある男の前に、随分締まった体つきしてる老練な人だ。

「ふむ、一応自己紹介しよう。ウスティオ国防空軍エウレノ空軍基地司令、ソウノ・カロン、階級は大佐だ。君は?」

「司令!!」

「まだこいつが犯人というわけでない。ほら所属は?」

これは言った方がいいな。

「はっ!日本航空自衛隊百里航空基地所属、結川隆登二等空尉です!」

「二等空尉?」

「あっ、こちらの国では中尉の階級です。」

「そんな不思議な階級の軍隊は知らん!やはり貴様は!!」

「ひい!!」

「やめろ!」

「はっ!!」

司令の言葉で銃を肩に戻す。

「ふむ、君のパイロットスーツ、見たことないな?というより何だ?「ニホン」とは?」

「はあ、要点をまとめると・・・。」

日本という国のがあり、多分この世界とは違うこと

自分は突如のアクシデントで殉職したこと

一応はエースパイロット候補で強かった事

司令は首を何度か頷かせる。

「あの、済みません。」

「なんだ。」

「上級士官である司令殿に聞くのはふてぶてしいと思いますが、ここはどこで、どうゆう状況なのか、そして私の処遇がどうなるのか教えて下さい。」

「ふむ、それでは・・・少し話すか。ふふ、君はこんな状況でも落ち着いてるとは。」

「いえ、お言葉ですが非常にどぎまぎしてますし、ウスティオ語ではなく日本語をしゃべってるのに通じてるのに非常に驚いています。」

「そうかそうか!!」

カロンは笑い、話す。

ベルカ連邦が栄華を極め、駄目になりかけ、また復活したこと。

「ベルカ、オーシア、ユークトバニア、ウスティオ、サピン・・・。まさか!!」

「どうした?」

「いや、なんでもありません!あの、興味本位で聞きますが、ここにはアネア大陸がありますか?」

「何で知ってる?」

カロンが首をかしげる。

「いえ!異世界物語でそんな大陸があったのを思い出しつい・・・。申し訳ありません!!」

「いいんだ!!面白い人だ!さて処遇は・・・、君はどんな飛行機に乗ってたんだ?」

「はい、F-15Jイーグルですが。」

「!!!、それはいい。君の処遇はF-15UFXのパイロットだ。」

「はい?!え、それは・・・自分、いじめられません?」

「だから今から飛んでくれ、そしてアグレッサーとしてここのパイロットと戦って、そこで勝てばOK。」

「ええ?!そんな・・。」

「心配するな!うちら空軍はわけあり傭兵専門第6航空師団を持ってるんだ、異世界から来たやつも、ここの軍ならすぐに適応して仲良くしてくれる。」

「と、言いますがこの兵士は。」

と、結川が振り向くと、

「オーシアなど敵対する軍に対抗してくれる人が増えれば嬉しいです。仲間になるならなりましょう!」

さっきまで威圧だった兵士の顔が柔らかくなる。順応性高いのレベルじゃない!!

「さて、今すぐやってこい!!リュウトユイカワ!」

司令が命令。

「了解しました!この新しい人生、踏み出します!」

結川は敬礼するとさっきの兵士の案内で格納庫に行く。

F-15UFXは、単座席のF-15FXの改良型、愛称は「ウスティオ スペリティオティ イーグル」

そして結川は4機の戦闘機を撃墜という驚異の結果により、結川は正式に正規軍中尉になり、第2航空師団第12戦術飛行中隊隊長に任命され、エウレノ空軍基地に配属になった。



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サザンクロス

2010年

2月12日

1000hmr

エウレノ空軍基地格納庫

結川は頭を抱える。これ、でまかせで異世界の物語て言ったけど、これはACECOMBATの世界じゃないか!!これまで仲良くなった同僚[本当に順応性が・・・。]から世界観を考えると。ベルカ戦争が起きず、ベルカ連邦は堅実な政治でオーシア、ユーク以外では政治的良好で、特にISAFとエルジアとも仲が良いと。そしてウスティオにはガルムのサイファーピクシーが居て、今度ISAFから交流軍事演習で伝説の女性パイロットメビウス1が・・・。

「世界がごっちゃごちゃや!!」

関西人でもないのに何故に?!

「ユイカワ、リュウトユイカワ中尉!」

「あっ、はい!」

司令が自分の名前を呼ぶ。

「よし、これが君と共に飛ぶ第2航空師団第12戦術飛行中隊だ。」

目の前には7人のパイロット。

「君の昨日の実力は凄かった。」

「いえ、それほどでも。」

昨日、10機の戦闘機と格闘して、結川は非常に鋭い攻撃で全滅させて、ウスティオ空軍上層部を驚かせた。

「このメンバーは、物語的に問題児ですか?」

結川の言葉を聞いてカロンは笑う。なんかすごく朗らかな司令だな。これも情報だが、カロン司令は第6航空師団を多く保有するあの有名なヴァレー空軍基地司令を経験してるらしい。

「そんなことは無いが、まあ、飛行時間の浅いが基本優秀で引き抜かれた者たちもいる。君の実力ならきっと輝けるだろう。」

「どうも。」

結川は言う。

「とにかく自己紹介から。それじゃ2番機から。」

「はい。」

冷静そうな茶髪の男、身長は俺と同じ175、同い年か?

「この隊の2番機であり副隊長に任じられましたホーク・チュアです。階級は中尉。あなたの昨日の飛行を見て確信しました。私はどこまでも付いていきます。よろしく。」

チュアはにこやかに手を差し出す、意外と心根は優しいな。

「よろしく。」

結川も握手する。

「それでは、おれは3番機、グラッド・ラルトだ、階級は少尉、自称ムードメーカー、そしてよく通信私用しすぎて怒られるが自重しない!!」

金髪長身がっちりタイプの男が言う。

「隊長、こいつが喋り出したら撃墜します。」

「出たよ、委員長タイプチュア!」

「・・・・。絞め殺すぞ」

「まあま、とにかくよろしく。」

「おう!接近戦なら任せておけ!」

がっちり握手する。

次は俺と同じく黒髪の男。

「4番機に任命されました、コーノ・ファルツ、階級は少尉です。口数が少ないので、忘れないで下さい。よろしくお願いします。」

「暗いぞ!元気出せ!」

結川は声をかけて握手。

今度は女性、さすがパイロットだ。無駄なく細く、身長165ぐらいの顔が整ってる。この子も黒髪。

「5番機に任命されました、アリチェ・カナーリです。アジアの小国からここに入隊しました、階級は少尉、よろしくお願いします。」

カナーリは手を差し出す。正直言おう、俺はクール系女子が好きだ。

「よ、宜しく。」

結川は握手すると、やはり女性の手は男性と違い柔らかいと感じた。

「じゃあ、次は僕たちですね。」

ん?僕達?て

「三人とも顔一緒!!」

「「はい!!」」

「えと、これは。」

「これは僕達が三つ子だからです!」

「三つ子?!そして全員パイロット?!」

「父の影響で。それでは自己紹介を。」

「6番機、ダノ・ミューン特務少尉です!」

「7番機、タルト・ミューン特務少尉です!」

「8番機、サルト・ミューン特務少尉です!」

「「よろしくお願いします!!」」

三つ子・・・混乱する。そして・・・

「特務少尉?」

「はい、僕達は、今まで別の基地で訓練を受けてる訓練生でしたが、選抜訓練生ということで実戦任務に配属されました!」

「ああ、なるほど。顔で判断しずらいから、名前間違えたらごめんね?」

「大丈夫です!慣れました!」

「悲しいな、それではよろしく。」

「「はい!!」」

全員と握手を交わすと、司令が、

「さて、ユイカワには中隊のネームを決められる。どうする?」

「そうですね・・・。」

結川が考える。ここは仕事が真面目なイタリアだから、イタリア関係・・・。

「君たちは、新人に近いのか?」

「はい、私、2、3,5、以外は本当の隊に所属してない新人で、私達もまだ浅いです。隊長は若いですが、中卒後すぐに航空学生になったと聞くので、キャリアも経歴も貴方が上です。」

「なるほど・・・じゃあ、ボロウ隊。いや、「飛翔」という意味だが何だか。ここは厨二成分少し付けてカッコよく・・。」

「厨二?」

「ああ独り言。そうか、ここの国の名物は。」

「あの・・。」

「チュア中尉、どうぞ。」

「あの、自分の故郷がヴァレーに近くて、星がきれいで、南十字星がきれいなんです。」

「南十字星・・・・。よし、うちらの隊はサザンクロス隊だ!!どうだ?」

結川が宣言。

「サザンクロス2、了解!」

「サザンクロス3、まあこんな感じもいいな。」

「サザンクロス4、分かりました。かまないようにしないと。」

「サザンクロス5、了解。楽しみです。」

「「サザンクロス6~8!了解しました!!」

「満場一致だな。それでは司令、サザンクロス隊でOK!」

「OKだ!それでは訓練を励むなりなんなり、とにかく年間80時間、最高350時間訓練しなさい。そうじゃないとイーグルドライバー剥奪されるから。」

「了解です!それじゃ全員で編隊飛行だ!新生サザンクロス隊行くぞ!」

「「了解!!」」

 

1030hmr

エウレノ市上空

8機が編隊のF-15UFXが飛ぶ。

「サザンクロス1より全機、どうだ?」

「全機良好です。」

「それじゃあ、次は一列縦隊、高度4000フィート!」

「了解!」

素早く一列縦隊、ふむ、練度は高めだ。そこまで悪くない。だけどやっぱり編隊に慣れてない三つ子と4は少し危ないな。

「よし、これからは編隊飛行で慣らす。格闘戦はまだ後でいいだろ。」

「了解しました。」

ピー、ピー、無線通信のコール。

「基地管制部からサザンクロス隊に連絡、貴隊から西に80km地点に2機の侵犯機、警告して追い返してくれ。許可あるまで発砲禁止。」

「了解した!2、3、5!俺に付いて来い!4と6から8は基地に退避!ひよっこには行かせない!」

「了解しました!」

「わかりました。4、6から8は退避します。」

4、6から8は脱出、1,2,3,5は編隊になり。

「これより敵機追い払い任務を開始する!!」

「「了解!!」」

まだこの空は平和だった。



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いきなり実戦

2月12日

1245hmr

B7R近く上空

結川率いるサザンクロス隊が到着する。

「みーつけた。」

結川は不審機2機を見つける。

「よし、俺があいつらの横に行く、2は上を押さえろ、残りは後ろからロックウイングしてくれ。」

「了解。」

全機が高度を下げて近づく。

結川はかなり近づく。

「隊長、近すぎです。異常です。」

「日本では普通だ・・・。あー管制部、不審機国籍オーシア連邦、機種F-16D。」

「了解、こいつらは深くまで侵入してる、警告は従わない場合は・・・・やれ。」

「了解。」

結川は短く返すと、こんどは国際緊急無線。

「こちらはウスティオ国防空軍だ。貴隊は既にウスティオ領空内に居る。至急領空外・・・」

ごと!

あれ?今なに落とした?増槽落とした?てことは・・・・・・

結論

相手殺る気まんまん・・・。

「全機ブレイク!!」

「ほわ!!」

F-16がブレイクする。しかも一機はホークを狙ってる。結川も操縦桿を思いっきり引く・・・。あっ、イーグルの機首急上昇、耐G訓練怠ったらマジ死ねる・・。

「2!逃げろ!」

「大丈夫です隊長!逃げ切ります!」

結川は敵に食らいつく、

「「くそ、こいつ、逃げれない。」」

「「あほか!早く逃げろ。」」

「逃がさないよ、普通に。」

結川が操縦桿を巧みに捌いて敵に食らいつく。航空自衛隊のドSの追い回しっぷりなめんな!

「「くく・・・。」」

敵と俺が水平線上。好機!

「サザンクロス1FOX1!」

手早く発射スイッチ押すと弾が波になって敵機が飲み込まれ

「「ぐわわわ!!」」

爆砕、四散する。

「「おい!くそ!」」

「貴方は油断しすぎです。」

「「え?」」

5のアリチェが後ろに、敵は背筋が凍る、ステルス機でないのに気配が・・・

「5、FOX2」

「「くそ!!」」

敵はスロットルを引き操縦桿引く、

「なっ・・。」

カナーリが敵機を追い越す。しかしアリチェはにやりと不敵の笑み。

「3!」

「了解姐さん。」

「「はっ?」」

敵は気付いた、奴は陽動、本命は接近戦のプロ、グラッド。

「FOX2、大人しく落ちな。」

AAMを一本放つ、逃げられない。敵が最後に聞いたのはミサイルアラート、そして回避不能と知らせる人工音。

「「ああ・・・。」」

ドーーーン!

戦闘機が爆破する。

「任務終了、敵殲滅。」

結川は宣言して、全員が集合するのを見る。

「すみません隊長、油断しました。」

申し訳なさそうに言うのはチュアだ。

「おいホーク、そんな声出すな!なあリュウト!」

「3、ここではコールサイン。」

「お、アリチェちゃんも委員長タイプ?」

「・・・・・。」

「なーに後ろにきてるのかなって・・・マジでロックオンしないで!!」

「おいおい、3、5、落ち着け。そして2、今回は配置がまずかっただけだ。だけど少々後ろ取られ過ぎだ。もっと鋭く行け。こいつの加速力はF-16より遥かに勝るから。」

「はい、了解しました。」

「さて、帰投するか。帰りはゆっくり帰るぞ。」

「「了解。」」

 

1305hmr

エウレノ空軍基地

サザンクロスの4機の機体がゆっくりと着陸する。そのまま格納庫前で整備士に機体を渡し、先に帰った奴のもとに行く。

「隊長!大変です!」

「どうした?そして落ち着け・・・えーと。」

「サルトです。」

「ああ、すまん、で、どうしたんだ?」

「何だか知りませんが、ベルカ連邦空軍ウスティオ防空管区にあのB7Rのエース部隊ロト隊がディレクタス基地に移籍でここで休憩してるとか。」

「ええ!」

ホークが驚く。

「どうした・・・て、そうか。ホークはロト隊隊長のデトレフ・フレイジャー少佐のファンだな。」

グラッドが言う。

「そうか、ホーク、見に行きたいなら行ってきてもいいぞ。」

「本当ですか。隊長ありがとうございます!」

ホークは走り出す。結川はあたりを見回す。心なしか女性のが居ない。やはりそっちに行ったのか。ゲームでのキャラが現実なら結構女性を惹くよな。

「カナーリはいいのか?」

「隊長。別にアリチェでいいですよ。この隊の雰囲気から姓より名前を使った方がいいです。そして私はあまり興味ありません。」

「了解した。じゃ、この隊は名前で、どうせ三つ子が居るから自然にそうなるが。」

結川が笑う。そして疑問に。あれ、確かエースコンバットの世界ではこのキャラは2005年に教授になったはずじゃ・・・。

「なあ、グラッド。」

「何だい隊長?」

「ああ、ロト隊のフレイジャー少佐って、何歳?」

「ああ、確か29歳・・・。どした。」

「いや、なんでも。」

この世界は都合よくエースをそろえてる。しかも年齢がベルカ戦争当時にするというおまけ付き。そしてメビウスが居ると考えると、無名のウォードッグも居る・・・混乱してきた。

「隊長!」

「どうしたホーク?会えたか?」

「隊長を呼んでくれと。とにかく来てください。」

「え、何で?」

結川は向かう、800m離れた所に赤いタイフーンと女性達が。そこにはフレイジャー少佐。確かに容姿端麗だ。

「初めまして、サザンクロス1、リュウトユイカワです。」

結川が敬礼すると、フレイジャーが見て。

「君が、異世界から来たというのか?」

くそ、相手は声もいい。こりゃ絶対女の取り合いは負ける気がしかしない。[まあありえないが]

「はい。信じてもらえるか分かりませんが。」

「いや、君はこの国でも、他の場所の人間の雰囲気を感じない。ユイカワ中尉もしもの時は愛国心もってウスティオを守ることが出来るか?」

フレイジャーが睨む。ゲームの設定どおり愛国心まんまん。

「ここは第2の祖国です。自衛隊時代に培った守るべき人の為なら命を惜しみません。」

結川の為らざる本心。彼は少し睨みそのあとふっと緩くなると。

「君の本心が聞けた。私もウスティオ防空管区で命をかけよう。よろしく頼む。」

彼が手を差し出す。

「邪魔にならない程度に頑張ります。」

結川がその手を握り握手する。まさかACE COMBATのキャラと握手出来るとは。なんかな~。

 

1330hmr

基地司令室

「どうしましたか司令?」

「うむ、何故か軍本部から基地都市防空任務部隊を作れと。」

「え?」

「そしてB7R防空部隊も作れと、それでここでは精鋭のファンタジア中隊を動員したい。君たち、サザンクロス隊は戦闘能力は高いと思うが、まだ未熟だ。だから君たちを防空任務部隊に回す。」

「了解しました。しかし何故今になって部隊編成を?」

「これはあくまで推論だ。近日ドでかいことが起きる。」

「確定事項ですか。」

「最近、軍事主導のB7R占領正当性を主張するオーシアアップルルース副大統領が政治力をつけ、最近は大統領のグラン・バッシュが陰に隠れてる。」

アップルルースktkr、大変だ。そしてハーリングが居ない?!これは運命づけられたのか?

「とにかく宜しく頼んだ。ここはベルカの国境近くで、激戦区B7Rに近い。国民を守る砦であることを忘れるな。」

カロン司令が真面目に話す。結川も真面目になり。

「了解しました。命をかけても守ります!」

きれいに敬礼を決める。2月14日、「血のバレンタイン」になることをまだ予測してなかった。



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こ・・・れ・・・は

2月13日

1230hmr

エウレノ空軍基地

「うまい・・・なんだこの軍隊は・・・。」

結川は震える。ここウスティオ軍の飯はウマすぎるんだ!

なんでもここに居る調理師の隊長は元高級レストランのコックとか、国の政策で軍隊には新鮮な野菜を安く買ってるとか。そしてミリ飯=まずいという、このジンクスを打ち破る美味しさ。

いつもベルカとの合同演習で、ウスティオ陸軍兵にミリ飯を交換してくれとベルカ陸軍兵が土下座するほどだ。

「隊長、なーに肩震わしてる?」

「ああ、グラッド、ここの軍の国防費の50%はこの飯か?」

「は?何言ってる?こんな飯はそんなに金かからないって!」

・・・・、やはり俺達の世界と違う。さすが飯ウマ国家・・・。

「さて、隊長、この先どう思う?」

「この先・・・とは?」

「いきなりの防空任務隊増員、首都ディレクタスの近郊空軍基地にはエース部隊を揃えてると聞く。」

「・・・・・。」

結川はグラッドを見る。こいつはムードメーカーだが、異常なまでに頭が働く、能あるパイロットだ。彼はどんな戦闘機も、基本に忠実に、すぐに戦闘機動の癖を見抜き、自分の機体としてすぐに操る、天性の才もある。

しかし欠点もある

まだ見てないが、エロいらしい。かなりの確率でセクハラ発言及び実行されてるが、基地女性隊員に総スカンされないあたり、こいつの人望があるのだろう。

無かったら不名誉除隊は目に見えている。

「異世界から来たから分からないが。ただオーシアが苛立ってるのは分かる。そしてディレクタスはオーシアの近く、ここはあのB7Rの目と鼻の先だ。どうしても・・・な。」

「まっ、そうだな。隊長、俺はあんたを信じるぜ。もしオーシアの野郎がここを荒らすならきっちり落とし前をつけてやる!」

グラッドの笑い。結川もつられて笑う。

「ああ、だがな。俺は戦争などおきてほしくないと心から願う。」

「同感だ。」

「だけど・・・。」俺らは祈るだけ、俺らは軍人、上層部の言葉を信じて飛ぶしかない。」

「それも同感だ。」

真面目顔になる二人。

「さて、明日から早期警戒任務からの地獄の哨戒任務だ。早く寝ろよ。」

「昼間から言う隊長は・・・。」

グラッドが苦笑。そして本性を表した!

「隊長?この基地でお気に入りの娘は?!」

「はい?!」

いきなり彼は分厚い本を出す。タイトル・・・。

~ドキッ!輝く女性軍人!~

「・・・・・、これってどこで?」

「陸空軍の有志達が集めた大全集、俺もここの女の子たちの情報送ってもらったのさ!!」

目を輝かすグラッド、引く結川。

「さーて、エウレノだとやっぱり、管制課のハリチェ嬢や、金髪ポニテの整備隊のユナちゃん、3サイズが完璧な女の子、誘導班のクアスの姐さん。」

「ずいぶんな・・・。」

「いやー、多分全女性隊員ならこのUSBに、ウスティオは交通の要衝であり移民国家の混血の人が多いから、カワイ子ちゃんが凄く多いんだよね。」

「へー。」

「しかし、隊長、うちらの隊は凄く幸運だよ。」

「何で?」

結川が純粋なはてなマーク。

「はあー、分かってないね。5番機のアリチェちゃんだよ。」

「アリチェ?」

「あいつの顔いいだろ、そしてあいつは隠してるつもりだが、ここに来た悪友が目測した3サイズは。これだ。」

「ん・・・え?」

Bの部分、多分結川目測の5cm以上違う。

「しかもクールながら、優しい所見せるから、ほら、この軍女性隊員ランクAランクだ。俺これ自慢して、悪友に絞殺されそうになったが。」

「その悪友の目測に間違いは?」

「今のところ280人連続間違いなし。」

「なるほど・・・。」

結川は後ろからの女性隊員の痛い視線を食らう。うう・・・。

「あと、これもある。」

「は・・・なっ!」

~乙女たちの為のウスティオ男性軍人大全集、inエウレノ~

「おい・・・。」

「いやー、女性からのかなりの好評。」

見てみると、身長体重生年月日、好きなものetc

「はー、イケメンはモテルだろな・・・。どしたグラッド?」

結川が見るとグラッドがため息。

「お前、ナニイッテルンダイ?逝きたいのかい?」

「はっ?」

「その節穴でもしっかり見やがれ!!」

ランクAのページに・・・俺?!てかここにきてまもないのにこのデータ量は?

リュウト・ユイカワ

身長172cm

体重64kg

趣味、読書、航空機眺め。

好きなもの、この国の料理

嫌いなもの、規律をとにかく破る人[但し、自分の部下には甘い。]

更に情報収集中。

「随分祭り上げな。ちなみにグラッドは?」

「ふっ聞くな、容姿は上だが性格は・・・。」

「自覚してるならやめろ。」

「自重しない!」

「おい?!」

グラッドは笑いながら歩いていく。おいおい用件済んだらそれまでか。

「たく・・・しかしやることなくなったな・・・。少し読書するか。」

結川は歩く。そしてその日は何もなかった。

 

2月14日

0530hmr

「早く眠りすぎた・・・。」

結川は格納庫にあるF-15UFXを眺める。昨日は早く寝て、早く起きてしまった。

「ん~、早朝哨戒は0600だから、あと20分まてば大丈夫だろ。」

結川は機体にもたれかかる。

「隊長?」

呼ばれて振り返るとアリチェの姿。

「おお、どうした。」

「私はいつもこんな感じに早く来るんです。そろそろ整備隊の方々も仮眠室から出ますよ。」

「そうか・・・。」

「・・・・・。」

「・・・・・。」

会話が続かない。

「そういえば、男性に人気みたいだね、どうして胸を偽装する?大きいなら強調すれば?」

結川には珍しい言葉、こんな感じの方が会話は続く、一歩踏み違えればもうオワタ。アリチェは顔を赤くし。

「いや、なんといいますが、パイロットスーツがきついので、隠してるというより押さえつけられるというか・・・。それより隊長は自分の容姿はいいと思わないんですか?」

「いや、別に、そこまで自分は・・・。」

結川は苦笑する。アリチェも。しかし、可愛いな。可愛い・・・というよりなんか雰囲気が暖かい。

なんだかほんわか雰囲気になる刹那。

ウーーーー!!

スクランブル警報、同時に管制課の隊員が来て。

「空襲ーーー!!敵性大規模航空編隊、B7R、ディレクタス、エウレノに侵入、そしてレーダー防衛網が破壊されてるので、どの位の規模か不明!防空部隊含め全機出撃!」

「「「な、なんだってーーー!!」」」

ばっと、結川の仲間達が・・・て、

「何故に隠れてた?!」

「そんなことより、行くぞ!」

動転する結川、ごまかし9割でグラッドが愛機に向かう。仮眠室から整備隊が飛び出す。たとえ熟睡状態でも警報鳴ると起きる。軍人の習性。

「そうだな、あとでじっくりきいてやる。行くぞ!」

「「「おう!!」」」

結川の号令で、機体に乗り込むサザンクロス隊、これから始まる過酷な戦争も知らず・・・。

0530hmr

オーシア連邦、そして利害一致でユークトバニア連邦宣戦布告、そして同時攻撃決行。

この同時攻撃の作戦名称は、後に「空の嵐」と呼ばれる。



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制空戦 出会い

2月14日

0525hmr

B7Rオーシア寄り

8機のSU-27戦闘機部隊が飛ぶ、尾翼にはベルカの記章。トータ・ヤム少佐だ。

「あー、コルツ隊より本部。哨戒飛行、極めて平穏なり。」

もう夜明け近いか、あと30分もすれば基地に帰れる。隊長は戦闘機を水平飛行にして、のんびりと飛ぶ。今日の任務が終わったら家に帰れる。そういえば今日は娘の10歳の誕生日だ。ベルカの騎士道精神[?]に乗っ取って、奮発してやろう。顔が自然と綻ぶ。だがそんな幸せの気持ちはアラートと共に消える。

「こちら本部よりコルツ隊へ!オーシアかが宣戦布告と同時にB7Rに大規模航空編隊!迎撃するな!ウスティオ空軍部隊とベルカ本隊と合流して迎撃せよ!」

「ああ、なんてこった。ごめん、しばらく帰れそうにない、ごめんなカルナ・・・・。全機、迎撃用意。」

ヤムは幸せの顔からこの空を飛ぶ兵士の顔に変わる。守りたい、この空を・・・。

0545hmr

エウレノ上空

「サザンクロス隊へ、こちらはAWACSオキボティだ。前方より10機を越えるB-52及び航空部隊が接近、エウレノ都市部に近づけるな、ここでしとめろ。」

「了解、防空任務部隊の名にかけてここで叩き落とす。」

結川はスロットルを高速巡航にして接近すると敵影・・・。F-16とF-14Dが中心の編隊、そして・・・・

「何でそこに居る?」

ベルカとユーク、他その同盟国しか所有しないSUシリーズ、オーシアには配備されてないはずだ。

その疑問はオキボティが答える。

「実は宣戦布告したのはオーシアだけでない。ユークもだ。」

「!!、何で・・・。」

「資源問題だ。」

「資源問題、ああ、なるほど。」

「?、3、どういうことだ?」

グラッドはすぐに気付いたみたいだ。結川は質問する。

「ユークは優れた工業、科学力を持つが、1番の強みは天然資源の豊富さだ。そしてそれのパイプラインの供給停止などの脅しを武器に強制外交を進めた面があった。しかし、ベルカが超膨大な資源を見つけ、しかも当時の大統領曰く「国益は重視させてもらうが、他国の国益も同時に重視する。」ということで、他国は安価で高品質な資源が入手しやすくなり、小国が元気になりユークの脅しに屈しなくなったんだよ。それへのやつあたりだ。」

「なるほど・・・。」

グラッドの知識は凄い・・・。

「さて、気違いヤロー共の掃討だ。全機散開、6~8は爆撃機狙え。エンゲージ!」

「「「了解!!」」」

結川はスロットルを押し倒しスピードを上げて敵と接近、敵ミサイル射程内に入ったと知らせる。

「「おい、あいつ突っ込んでくるぞ」」

「「なんなんだ、まずみせしめに・・・」」

彼の言葉は続かなかった、結川はアフターバーナーにして機関砲攻撃、まず1機。結川の目は敵しか見ない。

「「なっ、敵は出来るぞ、油断するな!」」

戦闘機が散開する。そこにまたAWACS。

「こちらオキボティ、サザンクロスへ、今エウレノの部隊が全機出動した。そして違う方向で第2陣と3陣を発見したので、済まないがこっちの足止めは貴隊しかない!」

「それは難しい。しかしやるしかないな。出来ればあと一個小隊よこしてほしい。」

「了解した。敵追撃限界点まで60マイル!」

オキボティの言葉に結川は少しの焦りを感じながら弧を描きながら反転、

「ちっ。」

後ろからSU-30が2機、戦闘爆撃機なら簡単だが後ろ取られると・・・

「隊長、後ろ始末します。」

冷たい女性の声、アリチェか。宣言通り2本の矢が突き刺さり後ろの2機が散る。

「ナイスキル5!」

「どうも、三つ子たちも頑張ってますよ。」

彼女の言葉通り、3機の戦闘機が爆撃機を落としている。なんか悲鳴あげながら戦ってるけど大丈夫だろ。

「おいおいおい~しゃれにならないよ!4機に囲まれて、女の子以外にはね~って、あんたミサイル撃つなよ!!」

3のグラッドはこの状況で軽口叩き、チャフフレアをばらまきながら回避している。

「3、お前は・・・。ミサイルよし、いくぞ4!」

「了解です。」

「お~、神は自分を見捨ててなかった!」

「神より俺達に感謝しろ!」

敵の後ろを取るのはホーク、そして敵と重なってレーダーからロストさせたように錯覚させながら近づき食らいつこうとするコーノ。このアリチェとコーノは暗殺者(アサシン)か?!

「こちら6より1へ!当空域爆撃機全滅を確認。圧勝です。」

「オキボティよりサザンクロスへ、そちらに空軍の応援機を飛ばした、しかし敵脅威率が低い今、そこまで必要なし。」

「サザンクロス1よりオキボティ、敵が翻している、追撃の必要は?」

「残燃料に注意し・・・・待て、少し遠いがB7R方面から8機!機種はF-15Eだ。一番早く到着するのは貴隊のみだ、お前らとの血族対決だ。」

「戦闘攻撃機に負けるか!と言いたいが、少々吹かしすぎた。そして遠い、戦うなら給油機を回してほしい。」

「ネガティブ。エウレノの給油機はB7Rに派遣されて、多分今頃は空だ。」

結川は僚機と編隊にを組み、向かおうとするが、正直難しい・・・。

「こちら3、そんな大事な事は早く言ってほしかった!燃料が足りない。」

「3、後で滑走路3往復。」

「あいさー!」

「さて、冗談は言ってられない、機体はまだいける。よし、迎撃点は危険承知でエウレノ都市部近く・・・」

「その必要はありません。」

「え?」

誰だ?アリチェとは違う女性の声、後ろに首を振りかえると、脇から戦闘機が通り過ぎる。これは・・・

「F-22?!」

レーダーに映らない機体、この国にはないF-22戦闘機、記章は・・・

「ISAF?!」

青のペイントにISAFの文字。

「初めまして、ISAF空軍118戦術航空隊メビウス1です。まあ、メビウスのコールサインは私だけですが・・・。サザンクロス隊のみなさんお疲れ様です、敵は私が殲滅します。」

「・・・・・。」

メビウス1って、あのメビウス1?!かなり凄い状況になったぞ。結川は我に帰り。

「こ・・こちらはサザンクロス1です、メビウス1の、貴女の腕前は聞きますが、やはり支援は・・・」

「ご安心を、この機体にはXMAAを載せてるので、貴隊は、私が逃してしまった機体の始末をお願い出来ますか?」

動じない声、彼女の声には確かの自信がこもってる。

「・・・・、了解しました。サザンクロス隊全機、メビウス1の間接支援をするぞ!メビウス1、お気を付けて。」

結川は操縦桿を横に倒して旋回、緊急迎撃地点に向かう。

「メビウス1より、サザンクロス1へ、了解しました。安心して戦います。」

彼女はスロットルを前に倒して超音速巡航を開始する。

0610hmr

エウレノ、B7R境界線

「「おい、敵が居ないぞ。」」

「「8機来る話じゃなかったか?」」

「「分からん、とにかく好都合だ、早い所ここの制空権も奪いたい、攻撃隊は失敗したが、とにかく基地は爆撃するぞ。」」

8機のF-15Eが飛ぶ、奴らは気付かない、最強の第5世代戦闘機の掌中にあることを・・。

「「とにかく・・・てミサイルアラート?!」」

ミサイルアラートが鳴り響く、だが気付いた時には遅かった。またたく間に4機が落ちる。

「「おい!3!」」

「「どこだ、敵は・・・敵はステルスだ!」」

「遅い」

後は虐殺だ、ステルスのF-22に制空戦闘機でないF-15が勝てるはずがない。3分後には静かになった。

0625hmr

エウレノ都市部

「サザンクロス1よりメビウス1!大丈夫ですか?」

「大丈夫です、少々疲れました。ISAFから飛んできて急に給油機で給油受けての戦闘でしたので。」

あのあと、結川達は何とか給油機を回してもらったので軽快に飛行している。メビウス1の隣に結川機が付く。

「お疲れ様です、このまま哨戒飛行しますので、メビウス1、貴女はエウレノで・・・」

「こちらオキボティ、サザンクロス隊も基地に帰還せよ。」

「どうしたんだ?」

オキボティの声が固い。結川は嫌な予感しかしない。

「敵がB7Rにおいて特殊弾道型散弾ミサイルが放たれた。ただいまを持ってB7Rを放棄、ミサイルは潜水艦ミサイル、艦種別は・・・シンファクシ級潜水艦。」

「うそだろ・・・。」

結川は気が遠くなる。まさかのシンファクシktkr

最悪の歯車が回る。



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説明

いきなりだった、B7Rで防空任務を行っていた俺はオーシアの攻撃を防いでた。しかし奴らは不思議な事に高度5000フィート以下にとどまっていた。増援も来てたし、潰せる自信があった。

だが奴らは怖いものを使った・・・。

やつらが一気に急上昇して、俺は高い所から迎撃しようと追撃したら突如として大きな火球が表れた、そして5000フィート以下の仲間が落ちていく。

しかもB7R放棄を命令された・・・。

ベルカの誇りが破壊されて私は茫然とした。

ベルカニュースワーク社発行

ベルカ戦争を語る

匿名希望元ベルカパイロットの証言一部抜粋

2月14日

0720hmr

エウレノ空軍基地第二小ブリーフィングルーム

「何が一体どうなってるんだ?!」

「落ち着け、それは俺も知りたい。」

グラッドが声を荒げ、ホークが制止する。突如とした遠距離攻撃で、B7Rに展開してたベルカウスティオ空軍の部隊が壊滅、ベルカに撤退した、この基地のエース部隊ファンタジア隊も8機から2機になるまでやられたらしい。

「とにかく、今は軍事本部の指令を待つしかないし、ディレクタスも気になる・・・。」

「そしてここも敵の前線ですよね。」

アリチェの冷静な言葉と、サルトの言葉で緊張が走る。残念な事に、既にベルカ側にはオーシアが大規模な陸上部隊が動員されたらしく、南ベルカ地域は戦闘状態にあるという。

「集まってるな。報告の時間だ。」

結川が部屋に入る、後ろには・・・・

「誰ですかこの美人、ランクAAA、いや、それ以上!」

長い髪をリボンで結び、そして大人びた風貌、そして胸に「ISAF」の文字。

「まさか・・・。」

グラッドが言葉に詰まる。

「初めまして、私はメビウス1こと、アイノ・リャークス、階級は大尉。よろしく。」

「と、いうことだ、彼女はこの部隊の任務の支援をして下さるそうだ。失礼の無いように!ちなみにサザンクロスに編入というわけでないからメビウス1と呼称しつづける。」

「「「はっ!」」」

全員で敬礼、彼女は微笑みながら。

「いえ、私は一匹狼状態なので、どこかについてないといけなかったので、私はこの部隊を選びました。ユイカワさん、どんどん命令下さい。」

リャークスは謙虚だ、彼女が居れば、一個航空隊は消滅する。

「あり?隊長は中尉、彼女は大尉ということは・・・。」

彼女の方に指揮権あり。

「それはこれで解決した。現在ウスティオ空軍は緊急事態に陥っており、予備兵や、航空学生を召集したりや、慢性的な佐官の数が足りないという事をここで解消するという事で、ここに居るお前ら全員一階級特進、そして俺は二階級特進で少佐だ。」

「「「おおーー。」」」

「ちなみに三つ子たちは正式に少尉、前線に遠慮なく放り出す。」

「了解です。」

「それで、敵はどんなもので攻撃したんだ?」

「ああ、そうだ、これを見てくれ。」

結川がスクリーンを操作する、そこには・・・・。

「何だこれ?!」

平べったいが非常に大きい。どこかの造船場で艤装してるような風景。

「これがユークトバニア海軍中央海軍管区所属シンファクシ級原子力潜水艦シンファクシ、全長300mオーバー、F-35艦載機20機、弾道ミサイル垂直発射20基、魚雷28、SAM8、まさにモンスター。そして2番艦リムファクシ、これはかなりの少人数化に成功した艦。2つとも戦闘能力は化け物だ。」

「こいつがB7Rに?」

「ああ、この弾道ミサイルは散弾式で、破壊力は爆心地から高度5000フィート以下、半径8km以内を破壊するミサイルだ。そしてそのうち数基は戦術核が搭載されてるとみられる。」

「隊長、対策は?」

ホークがすかさず聞く。

「・・・・・、無いに等しい、こいつは非常に高いステルス性、静粛性、最高深度の異常さ。全てにおいて高い。ベルカ海軍の対潜哨戒機を3機飛ばして3機落ちた。」

結川がため息つきながら言う。

「私達ウスティオ空軍は・・・。」

今度はアリチェ・・・。

「こちらはこちらで深刻だ。ディレクタスの部隊が何とか凌いだものの、多方面から来るオーシアユーク軍の攻勢に、陸軍は大慌て、状況は安定しない。ベルカとつなぐ、国境道122号線は封鎖された。そして最悪の話だが・・・、もしかしたらエウレノ防衛は放棄される可能性が出た。」

「どうして!」

アリチェが立ち上がる、納得いかないという顔だ。それもそのはず、ここは彼女の故郷だからだ。

「しかし納得は出来る。ここに味方を割くより、戦線縮小して部隊を整えてディレクタスを集中防衛して、敵軍の攻略隊を漸減(ぜんげん)してから奪われた都市を奪還する。大国と戦うなら、肉を切らせて骨を断つ戦法ですか・・。」

グラッドが大人しく状況分析。結川はうなずき

「そうだ、今、傭兵やエースパイロット揃えてB7Rに突貫しても潜水艦の餌食だ。そしてB7Rが奪還出来ない今、この基地の運用目的の一つが果たせない。」

「隊長、放棄するとしたら、エウレノに居る陸上部隊は・・・。」

タルトが聞く。結川は表情を渋くし

「悪いが、1個旅団ほど居残ってもらう。そうしないと完全放棄は後にどうなるか分からないからな。」

「傭兵達は?」

今度はホークだ。

「部隊は集結を完了させて、続々と最前線に送り込まれるようだ。彼らの腕は信頼できる。」

結川は息を吐き、続ける。

「さて、今はどんな展開になるか分からないが今は事態を注視してはって「発展はある。」いきなりですか。」

扉に立つのはカロン大佐。全員が敬礼。

「発展とは?司令。」

「今秘密通信が入った、こちらに今、オーシアユークから希望の積み荷が来る。」

「希望の・・・積み荷・・。」

「サザンクロス隊に伝える、今すぐ希望の積み荷の護衛を命ず!これは失敗してはならない、行け!」

「は!行くぞみんな!」

「「「了解!!」」」

8人が駆けだす。

 

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星がきれいだ(遠い目)

2月14日

0830hmr

「サザンクロス1より各機、そして・・・なぜスタークロス隊が?」

「まあー、希望の積み荷がどんなものか間近で見たいだけ!」

「欲望を忠実に言うのは感心しませんよ、スタークロス4。」

F-15UFX8機の隣に居るのは、爆撃装備中心のトーネード4機、第7航空師団第140飛行小隊「スタークロス隊」である。

スタークロス4ことジェニファー・ウィリアム少尉が言う。

「嘘言うな嘘を!あ~俺達は既に侵攻してる対空部隊がその希望の積み荷を攻撃された際の対地部隊として派遣されたんだ。」

「なるほど。」

真面目なのは、バッカス・エイムズ大尉である。

「さて、そろそろ希望の積み荷が・・・・噂をすれば、方位280、数、6か。」

「よーし、サザンクロス隊。よろしくです~[私が被弾したらあんたらの機体ばらばらだよ~]」

さらりと腹黒い事を考える天然キャラ、スタークロス3ことアンジェラ・ミルネスが言う。ちなみに整備も一級品。

「了解、機種は・・・・。F-14Dと、F-15S/MTOか。」

結川はスロットルを押しこみ戦闘態勢に入る、敵を視認、武装解除・・・・て。

「ストップストップ!交戦するな!」

「どうした隊長?」

「6機の真ん中にC-5が。」

「え、まさか積み荷が?なぜレーダーに?」

混乱してると無線から。

「撃つな撃つな!希望の積み荷の護衛だ!こちらは108戦術航空隊「ウォードッグ」隊と教官のハートブレイクとレッドバロンだ!万年大尉に嫌気さして教え子とここまで来たいわば反オーシアだ!」

「ウォードッグ?![作者よ、ご都合主義もほどほどに・・・。]」

「レッドバロンって・・・あのオーシア国防空軍エースの中のエース、レッドバロンですか!」

「そんな感じで伝わるとは栄光だ。」

「確か退役されてたのでは・・・。」

「レッドバロンとは?」

ホークとグラッドが興奮してて、混乱する結川。

「そうか、隊長は知らんかったか、この人は昔戦闘機マガジンで表紙をよく飾ったエースだよ。」

「そうですか、サザンクロス1、光栄に思います。それで希望の積み荷は?」

「ああ、ここにあるぜ、重要な情報と重要な御人がな・・・・。」

「了解しました、それでは貴隊をこのまま護衛を・・・・出来ませんね。」

「こちらオキボティ、来たぞ、地上コマンド部隊だ!」

「情報が漏れてたか、航空機部隊は落としてきたんだが。」

「こんな奥地まで、多分対空特化の部隊だ。スタークロス!」

「了解、4交戦!ねえ3、今回は爆弾に何もしなかったわよね?」

「う・・・・うん。」

「じゃあ落とす!」

「えええええええええ!!!!」

「え?Mk52ではないのか?」

ウィリアムが爆弾を落としミルネスが絶叫、結川が首をかしげる。

「ああ、そうか、サザンクロス隊は知らないか、3、彼女はマッドエンジニアなんだ・・・・。で、何の細工した?」

「ちょっと整備班長と協力して・・・スターナパーム爆弾・・・。」

「はい?」

ドゴーーン!

その瞬間、轟音と共にきれいな星型に爆炎が広がる。しかもナパーム弾、かなり燃える。

「「な、この国は自国を燃やすのか?!」」

「「ここにとどまるな!早く逃げろ!」」

「「そっちは・・・!」」

敵の生き残りの装甲車が表れる、それをエイムズが見逃さない。

「敵、発見、爆撃する。」

その瞬間レーダー誘導爆弾で全滅する。

「ヒュー、さすが対地特化(アタッカー)部隊。さすがだな。」

「さて帰投するぞ。ハートブレイク、及びオーシア各機のみなさん、地上で会いましょう。」

「OK、いくぞ。」

全機が翻っていく。



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小さき者たちの野望

2/14

0915hmr

エウレノ空軍基地

c-5輸送機から体躯のいいスーツの男が出る。基地の搭乗員、整備員、管制員、ほぼ全員が滑走路の周りに居る。スーツの男が敬礼すると全員が返礼。そう、その男

ビンセント・ハーリング議員だ。

「初めましてハーリング議員、私はソウノ・カロン、階級は大佐です。」

「初めまして司令、私達を受け入れてくれたこと、感謝いたします。」

ハーリングとカロンは握手をする。その後ろにはウォードックのルーキー部隊と、バートレット、レッドバロンこと、カイト・ブラウンが立つ。

「それで、私達を護衛してくれた、ウォードックチームは・・・。」

「ご安心を、すでに政府には通達して、あの機体は第6航空師団ペイントにして、こちらの傭兵部隊にします。」

「了解した、ありがとう。」

ハーリングとカロンは本部に向けて歩き、カロンの命令で、防空任務に戻った。

same day

0945hmr

司令室

「それで、我らに有利な情報とは?こちらも相当危険な橋渡ってるので、あまりにふざけると・・・。」

「ご安心を、我々の情報は金塊並に高い。」

ハーリングはケースからとある書類を出す。

Ultra-sensitive material[超機密資料]の文字

「これは・・・。」

「シンファクシ級潜水艦の浮上予定時刻と、その場所の資料です、他にも、侵攻部隊の軍団配置図、オーシアの特殊部隊の浸透地点などです。」

「豪勢な資料だ。」

カロンは目を丸くする、これはいい買い物をした。しかし念のために。

「この情報に嘘は?」

「奴らがこれが漏れてると気付かない限りはこれに変更はない。安心してほしい。」

「随分と協力的なんですね。あなたは平和と融和で有名な方なので。」

「ふふ、買いかぶりです、確かに平和と融和を望みますが・・・。」

少し間をおくハーリング、そして

「私は今の副大統領・・・いや、もう大統領といってもいい、アップル・ルルースのやり口が気に食わない、あいつを失脚させるそのためなら努力は惜しまん。最後は平和を勝ち取りたい。」

「同感です。」

二人は静かに笑いあう。

same day

time 1000hmr

「さーて、反省会だ、アンジェラ、特にお前だ!」

「はう!」

バッカスの言葉にアンジェラが正座しながら縮む。

「お前はな、いきなりMK52ではなくスタークロス爆弾かしらないが、それに換装して・・・くどくどくど」

「出た、隊長のくどくど攻撃・・。」

ジェ二ファが苦笑する。

「で、デブリーフィングの全体の何割はこれで消える?」

「短くて9割、長いと全部です。」

「帰っていい?」

結川があきれながら言う。

「ダメですよ少佐。」

「やれやれ。さて、今司令官殿は何を話してるんだろね。」

「たいちょ~~。」

苦笑しながら呟く結川に掛ける声

「何だ、ホーク?」

「隊長、正式にこの基地を放棄、決定しました。」

「・・・・そうか。ペイバックタイムまでの我慢か・・・・。」

「同時にこの撤退戦、最後に一華咲かせましょうで、第6航空師団と合同で近辺基地を攻撃、そのあと撤退だそうです。」

「随分凄いことを、まあ、ただただ逃げるのは性でない」

「ええ、戦ってウスティオの底力を見せましょう!」

二人がにやりと笑う。



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一矢報いる爆撃 前編

date 2/15

time 0400hmr

ざわざわとと兵士達が走り回る。

前日に決まった攻撃作戦と撤退準備に大忙しだ。ディレクタスまでの輸送機護衛のウォードック、レッドバロンを除き、エウレノの生き残りの34機の戦闘機の内、トーネード12機とF-15UFX22機、トーネードは全機完全爆装、F-15UFXは爆装と対空武装を付けた。ちなみにサザンクロスは空戦重視組になった。ただ一機を除き・・・。

「あのさ・・・。何でおれだけ一発爆弾なの?しかも平べったい・・・。」

結川の機体に付けられる爆弾、なんかマンタのように平べったくて厚みがある、しかも推進機もある?

「これはやっぱり・・・ミルネスさんですよね・・・。」

「あったりー!」

「・・・はあ。どんなスペックで?」

「目標誘導型投下爆弾、破壊力はこの目で見て下さい。自信作です![ただし恐ろしい破壊力を引き換えに機動力が死ぬんです♪]」

さらりと黒い気持ちを隠し、話す。

「それで、目標は確か・・・・。」

「ベルカ国内南ベルカに設営された大型野戦基地司令部。ベルカとここエウレノ制圧司令部です。」

「ありがとうアリチェ。分かってると思うがそこ陥落させればエウレノ放棄しなくてもいいと思うなよ、奴らは3個軍団駐留してて、一網打尽なんて不可能だ。あくまで出鼻をくじくだけだ、そして最大目標は、基地やここの市民の可能な限りの撤退活動だ。作戦開始は0600hmrだ。ここを飛び立つのは1時間とちょっと後だな。」

結川は愛機を眺める。整備員の奮闘で少ない機材で最高の状態に仕上がっている。

「隊長、現在6師が空中給油して、作戦地で集結します。」

「了解だ。」

ホークが言う6師とは、傭兵航空師団、第6航空師団だ。

「出撃前のコーンポタージュです、どうぞ。」

「ありがとう。」

恭しくコーンポタージュをジェニファーとアリチェがサザンクロス、スタークロスメンバーに渡してくれる。

「ありがとう。」

結川は啜ろうと機体に背もたれようとするとき・・・

「おーいサザンクロスの隊長、ちょっと通信だ。」

「飲ませてくれよ。」

この基地のイーグルドライバーに呼ばれて外に置かれた通信室に行く。

「だれから?」

「飛行中の人たちです。」

「?」

とりあえずヘッドフォンをかけてインカムに喋る。

「どうも、結川と申します。」

「おお、相棒、繋がったぞ。」

相棒・・・・相棒・・・・まさか!

「初めまして、ガルム1こと、サイファーです。本名は後で。サイファーと呼んでください。」

「は!初めまして、噂はかねがね。」

「俺も忘れるなよ、ガルム2のピクシーだ。」

「片羽の妖精・・・。」

随分豪勢なメンツだな!俺はびっくりが止まらない!

「今日の任務、対空戦闘お願いします。」

「いや、今日は稼げないな。ウスティオの空の騎兵は隠密襲撃が得意らしいからな。」

「いえ、自分はウスティオでなく日本の空の騎兵でしたから。隠密がどうか・・・」

「いやいや、君の噂は聞いてる。楽しみにしてるよ。」

「恐縮の極みです。」

二人のエースパイロットに、日本人の技、お辞儀をしながら喋る。周りは笑いをこらえる。

「さて、続きは現地で話そう。それでは頑張って敵を潰そう。」

「はっ!」

通信が切れる。結川は自然と敬礼する。そしてヘッドフォンを外して外に出る。まだ外は寒い。

愛機の近くに置いたコーンポタージュ、既に冷たくなっている。一気に飲み干しおかわりを入れたいと思って、周りの人間に聞こうと思ったら。

「どうぞ。」

「え・・・。」

結川が後ろを振り向くと微笑しながらコーンポタージュを手渡しするアリチェの顔。うんクールの微笑は可愛い。

「ありがとう。」

微笑を返してそれを貰う。しかもポタージュの熱さが丁度良い。わ~、これ絶対良妻だ。

「どちらからの通信で?」

「ああ、ガルム隊のコンビだ。凄いな、多分戦闘機からの通信だ。戦闘機の中なのに凄く落ち着いてる。領域が違う。」

「そうですね、彼らは凄腕傭兵で、なぜここにとどまってるのか分からないくらいです。」

「そうだな~、確かに。」

そういえばどうしてサイファーがここに居るのか。パラレルワールドでもかなり設定がきつい。調べれば分かるかな・・・・。ポタージュを飲み干し。

「ありがとう。おいしかった。」

「どういたしまして。」

また彼女の微笑、やべえ、凄くいい。いやいや考えるな。さてと・・・

「サザンクロス集合!」

結川の号令で7人が並ぶ。

「さてと、これから死地に行く。俺らは誇りあるウスティオの空軍兵だ。」

彼は軽く息を吸い・・・

「我がウスティオの空の騎兵、悪き大国に懲罰を!」

「Yaaイエス・サー!!」

サザンクロスのメンバーは歩きだす。

ちなみに・・・結川とアリチェの会話を見ての周りの反応・・・

「あれは絶対カップルだ・・・。」

特にホークは

「2番機・・・譲ろうかな・・・。」

かなり悩んでた。



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一矢報いる爆撃 中編

date 2/15

time 0550hrm

南ベルカ領空

完全武装のエウレノ部隊が空を翔る。

「オキボティよりエウレノ全機へ、作戦行動と同時に総攻撃開始、ガルム達ヴァレー組は野戦司令部の即応空軍部隊を叩く。諸君らは即応部隊でない戦闘機部隊、爆撃部隊、陸軍部隊を狙え。」

「了解オキボティ、それより・・・リャークスリーダーよりサザンクロスリーダー、大丈夫か?」

「うん、サザンクロスリーダーよりスタークロスリーダー、今度3をみっちり叱ろう。」

「了解、同志よ・・・。」

「ひえええ~~[ミサイルに不良品混ぜちゃうぞ!]」

同じ基地のイーグル部隊リャークス隊に心配される結川、無理もない、あまりの爆弾の重さにまともな飛行が出来ない。搭乗して気付いた。機動力が低い・・・。

「さて、敵さんが気付いたみたいだが・・・さすがヴァレー組、敵・・・次々落ちてる・・・。」

「本当だ・・・。」

また別のエウレノ組トーネードのパイロットの呟きでみんながレーダーを見る。そこには・・・敵の光点が点いては消えて。

「こちらヴァレーの傭兵組だ!意外と稼げるぞ!やったぞ!」

「イーーーーーヤッホーーー!!!!獲物は俺が頂き!!」

「ははは・・・」

結川が苦笑、敵は空飛ぶ金づるか・・・。

「さて、オキボティよりエウレノ部隊へ、敵基地接近!爆撃しまくれ!出し惜しみするな!」

「「「「yaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!!!」」」」

無線は了解で飽和する。そして壮絶な爆撃が始まった。

time 0600hrm

南ベルカ前線基地

サイレンがけたたましく鳴る。空襲警報。

「一体全体何があった!」

「分かりません。とりあえずウスティオ空軍機の戦闘爆撃機及び制空戦闘機が・・・」

「早く上げろ!敵に食われるぞ!」

「だめだ・・・爆弾だ!うわ!!」

走る男の目の前で滑走路から飛び立とうとしたF-16Dが機関砲で千切られ上がらず落ちる。

「くそっ!早く行くぞ!」

「はっ!」

男は更に足を早くして、格納庫に向かう、彼の名前はコム・ジャクソン、オーシア国防空軍階級大尉、そしてレッドバロンに匹敵するF-15S/MTO使いのエースパイロットである。

後のこの戦争で結川の好敵手になる男・・・。

same time

「敵基地上空だ!さあ始めろ!全機作戦開始!!」

「了解、サザンクロスエンゲージ!」

「スタークロス、エンゲージ!」

「リャークス、エンゲージ!」

「グランド、エンゲージ!」

「サーベル残党及びコウント残党、再編成の新生フィナール、エンゲージ!死んだ仲間の想い!ここにぶつける!」

「メビウス、エンゲージ」

[すまんメビウス、前話で忘れてた・・。]

ほぼ全機がエンゲージボタンを押し、武装セーフティー解除。

「よし、スタークロスリーダーより、対地爆撃したい、滑走路から上がる部隊を叩いてほしい。」

「フィナールリーダー了解した。後ろは安心しな。」

「よし、じゃあ俺らグランド隊は補給基地をだ!」

「よし、サザンクロスリーダーより各機、2、5以外はグランドの護衛をしろ。」

「「了解」」

「それじゃリャークスリーダーより各機、うちらは外部から来た奴らのお出迎えだ。サザンクロスリーダー!」

「何ですか?」

隣に付くリャークスリーダー、そして・・・

「散開の言葉をお前が言え!」

「マジですか!・・・・ふう、それでは自分でOK?」

「「「OK」」」

全員の声、結川は息を吸い。

「全機生きて帰るぞ、これは命令だ。ブレイク!!」

「「「yaaaaaaaa!!」」」

二回目の了解を言い。全機が一気に散る。結川は作戦命令通り、スタークロスに付いて行く、その後ろにはホークとアリチェ。

「サザンクロスリーダーより、2、5へ。これから敵の本陣に突入する。頼んだぞ。」

「お任せあれ隊長」

「あなたの背中は私が守ります。」

「スタークロス3からサザンクロスリーダー、今からこれを撃ち込座標をHUDに示します。あなたに撃ちこんでもらいたい場所は・・・」

レーダーとHUDに目標が加わる、これは・・・

「ベルカ工業地帯を破壊するために用意されてる爆撃団格納庫一網打尽です。」

「サザンクロスリーダー了解、目標爆撃機格納庫、行くぞ!」

結川のイーグルが砲火の渦中を翔る。



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メビウス

date 2/15

time 0605hrm

南ベルカ野戦基地司令部オーシア寄り

4機のF-15UFX戦闘機が空を翔る。そして後ろから更に5機。

「フィナール6からリャークスリーダー、戦闘機基地は1から5に任せて、我々6から10も戦闘機迎撃任務に務める。」

「リャークスリーダよりありがたい。しかし敵はいくつだろうか。オキボティ。」

「ああ、やつら化け物だ。F-14AとDで16機、F-16D8機、F-18,4機、そして・・・SU-27,8機か。」

「さすが超大国、即応、本部基地を潰しても更にそれだけ出せるとは・・・・。」

リャークスリーダー、サニット・リークス中尉が呟く。しかし泣き言は言えない。

「敵は予想以上に多い、だが我らウスティオの騎兵、一機対四機でも玉砕覚悟で守り抜く「そんな覚悟はいりません。」へっ?」

サニットの言葉の言葉に横やりが入り、間抜けた声を出す、その横にいつの間にかISAFのF-22、そして女性の声。まさか・・・

「メビウス・・・ですか。」

「そうです。私が先陣を切ります。」

「は?いやいや、そんな・・・危険ですよ!」

「大丈夫です。私は敵陣を乱すとかをします。あなたがたには支援を願いたいのですが。」

「・・・了解です。無理はしないように、我々もすぐに突入します。グッドラック。」

「ラジャー。」

言いきるとスーパークルーズであまり使われないF-22のアフターバーナーが吹き前方を翔けていく。

「さてと・・・女に先越されるな!野郎ども!」

「yaaaaaaaa!!!」

9機の鋼鉄の翼達も我先にと疾走する。

same time

エウレノ空軍基地

エウレノの後方にあるシルバン空軍基地の戦闘機、ウォードックの護衛を受け、エウレノの非戦闘要員、備品を積んだ輸送機が全機上がる。

「これより基地を破壊する・・・・発破!」

「了解、発破!」

カノンの言葉に施設工兵がスイッチを押す、その瞬間トーネード対地爆撃用の800ポンド爆弾とアンジェラとエウレノ空軍基地戦闘機第2整備班班長、ゴードン・ヘルト准尉の共犯で作られた兵器が滑走路を50m間隔で破壊する。そう簡単にオーシア・ユークに使われてたまるか!そして基地施設も爆破する。

「ああ、俺達の基地が・・・。」

輸送機から外を覗く一人の言葉が機内の全員の気持ちを代弁した。

「ここを取り戻せばまたこの基地は活気づく。歴史は取り戻せる。それまでの我慢だ。」

カロンは呟くように言う。彼もまたこの基地に何だかんだの3年間、楽しい思い出がいっぱいだった。だからここを放棄するのは嫌だった。だからこそ誓う。絶対にこの基地を取り戻す。絶対に・・。

「おお!アンジェラ少尉と作り上げたコレクションがぁぁぁぁ!!」

「「「お前のはどうでもいい!!」」」

「ひどい・・。」

アンジェラと共犯してた犯人のひとり、ゴードンの叫びで全員が唱和。そして全員が吹きだす。

「あははは!!!」

その時みんなに隠れてゴードンがカロンに向けて親指を立てる。そうか、彼はこの雰囲気を飛ばすために・・・、元からムードメーカーだが、彼自身一番愕然とし、落ち込んでいた。なぜなら彼は生まれも育ちもエウレノ、そして研修、訓練除いて、18に入隊してこの34歳の16年間エウレノ空軍基地の古株の猛者だからだ。だから本当ならそんな事言えるほど精神は安定してない、動揺してるはずだ。だからこそ彼の行動は感服する。カロンも静かに、周りに見えないよう親指を立てる。

「そういや、そろそろ使われてるかな・・・。」

「?何をだ?あのマンタ爆弾?」

「違う違う、メビウスの美しいお姉さまにねだられてね。コレクションの一番お気に入りを搭載したのさ。多少ステルスは落ちるが、彼女なら絶対に使いこなせる」

「おいおい、とうとうISAFのエースも実験台かよ?!」

「実験台とは失敬な、ただ軽く整備の時に改良してあげて、それをデータにしてる・・・」

「「「それを実験台言うんだ!!」」」

「しゅん。でもまあ今回は本気でそのお姉さまのおねだりだったので搭載したのよ、これホント。」

「おねだりの部分はもっとまともな言葉にしろ、で、なに積んだんだ。」

カロンが尋ねる。

「ええ、それは・・・。」

彼の言葉に全員が驚く。

ゴードンの言葉で驚いてる時・・・

「「敵が単機で来てる、レーダーの反応が薄い、多分・・・いや絶対F-22、メビウスだ。」」

「「あれでレッヅ隊8機がなぶり殺された。奴は最大4機破壊出来る多目的ミサイルがあるがそれが尽きればこちらのものだ!」」

「「あれは絶世の美人なんだろ?ころすより愛でてえなあ。」」

「「空のドックファイトよりベッドでか?」」

「「卑猥だなあ!あはは!」」

下卑た笑いが響く。

「「ちょっとまて・・・なんかうちらに配備されてるF-22よりかレーダーに映りすぎてないか?」」

「「それはミサイルでも積みすぎたか?」」

「「わからないが・・・」」

「貴方達には分からなくていいの。」

F-22を操るアイノは呟く、そしてリャークス、フィナールメンバーは気がつかなかったが、ミサイル格納庫におさまらなかったうっすらはみ出る黒い箱。

「貴方達はここで落ちなさい。エンゲージ!メビウスFOX3!」

彼女は宣言すると発射スイッチを押し、箱投下、その瞬間箱に入ってたミサイルが飛び出す。これがエメリア・エストバキアの戦争で使われた兵器ADMMが作動する。12本の矢は高速度で敵編隊に殺到する。

「「何だ?!あのミサイル群は?!」」

「「ブレイク!ブレイク!」」

「「ダメだ!まにあわな・・・」」

当然油断してたオーシア空軍達は避けることもままならず8機が四散する。

「「くそ!」」

「「おい!突っ込んでくる!」」

アイノはアフターバーナーで敵編隊に突入、近くの一機に思いっきり排気煙をばらまく。

「「くそ?!煙と気流で翻弄されて?!」」

視界を奪われ翻弄される機体に通信。

「視界を奪われて慌てるチキンハートのパイロットは大抵左旋回するの、貴方はどうかしら?」

アイノからの明らかな挑発。

「「舐めやがって、このクソ女(あま)!!」」

パイロットは右旋回をする。しかしそこに罠。

「「隊長!こっちに来ないで!!」」

「「え・・・うわあああああ!!」」

そう、右旋回の先には味方機、避けきれず空中衝突を起こして爆発する。それを確認した彼女は機体を反転、すかさず慌ててる一機の後ろに突く、敵は回避行動するが、メビウスというエースから逃れる術がない。

「「逃げれない!助けてくれ!!」」

ゾクリ

この男どもが喚き散らして命乞いする瞬間がたまらないぐらい好き。

「ふふ、あの世で男どもとかま掘ってなさい・・・。」

機関砲で敵機体を千切る。もはや敵編隊の勢いはどこへ、完全に統制は崩れてた。

「メビウス!俺らの獲物奪い過ぎだ!リャークス隊、フィナール隊交戦!」

「「敵だ!まだ敵だ!!」」

「「やめてくれーーー!!」」

更にリャークス、フィナールの参戦で恐慌に陥るオーシアユーク部隊。

「こちらオキボティ、敵の第二波を確認した。今度は少数、方位はこいつらと同じ方向だ。」

「リャークス、フィナールのみなさん、ここは任せます、私が行きます。」

「おいおい!こちらはリャークスリーダー俺達の活躍これ以上奪わないでくれ!貴女の同じ名字の隊名という奇妙な縁だ。一緒に行かない?!」

「フィナール6よりリャークスリーダー、下手な口説きだな。」

「うっさい!」

「ふふ・・・。」

アイノは珍しく吹きだした、嘲笑や皮肉の笑いでなく優しさのあるおもしろいという感覚から来る笑いを。

「メビウスより、分かりました、一緒に行きましょう。」

「おう!」

前線チームの心が固まった瞬間だった。

ちなみにこの一連の戦闘でメビウスの評価は変わった。

彼女は1個航空隊ではなく航空団落とす人間だ・・・と。そしてオーシア国防空軍は緊急通信を回した。

「どんなに有利な戦局でもメビウスを見かけたら回避に集中すること」



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一矢報いる爆撃 後編

date 2/15

time 0608hrm

野戦基地司令部上空

「大丈夫かな、リャークス隊達・・・」

対空砲火を切りぬけながら、外部から来る部隊の始末に出たリャークス隊の身を案じる結川。

「スタークロス3よりサザンクロスリーダー、大丈夫です、増援に行った最強の女戦士メビウスにADMMを搭載しましたから」

「おいリーダーより3、なに他国のエースに何の改造した?!」

「今回は彼女からのお願いです!!」

バッカスとアンジェラの応酬。

「で、ADMMとは?」

「はい!よくぞ聞きました!ADMMとはAll Direction Multi-purpose Missile、早い話VLS方式の小型長距離多目的情報処理ミサイルです!」

「[エーコン6・・だ・・と・・]何だか凄いな。」

「リーダーよそ見しないで!右下対空砲!」

「のわっち!」

アリチェの言葉で下から来る弾の波に気付いた結川が強引に避ける、しかし機動力がきつい。アリチェが敵を引きつけ、ホークが機関砲でしとめる。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫だ、2、5、ありがとう。」

「こちらフィナールリーダー、よそ見しないでさっさと身軽になれ!サザンクロスリーダー!」

「了解!済みません!てかこの基地は大きいんだ!」

結川は変な愚痴をこぼしながらスピードを上げる。

「スタークロス2より・・・リーダー、敵が上がる、叩く」

「了解した」

バッカスの返答でスタークロス2が急降下で爆弾投下、3機の戦闘機を巻き込む。こいつ出来る・・・しかし名前が思い出せない。済まない。

「とりあえず敵は・・・ここか。」

目の前に見え始める超大型格納庫、そしてそこにおさまらず野外に放置プレイされるB-52の集団。確かにこいつらならベルカの工業地帯の機能を簡単に奪える。

「よし、こちらスタークロス3よりサザンクロスリーダー、この爆弾は誘導型だから、そこからでも落とせます!」

「こちらスタークロスリーダーより、サザンリーダーへ、安心しろ3はこういう場面では嘘つかない」

「この![次は装甲丸裸にしてやる!!]」

「了解した、爆撃コースに入る、2、5、宜しく」

「了解!」

「背中はお任せを」

上がホークで下がアリチェ、対空砲火は少ないな。SAMがあったら死ぬ。

「それでは・・・サザンクロス1、参る!!」

アフターバーナーの加速で高度を下げ、エンゲージモードにする、HUDのターゲットシーカーが動き爆撃機の大格納庫に定まる。心地よいロックオンの電子音。

「サザンクロス1!投下!投下!」

結川は宣言と同時にマンタ爆弾を切り離す。爆弾は羽を出して目標に向かう、結川機は重たいものが消え、一気に機動力と加速力が上がり

「のぐばあああ!!」

思いっきりGを受けた。

「大丈夫ですか隊長!!」

いつも冷静なアリチェが狼狽する。

「ゴホ、ゴフ・・・何・・・とか大丈夫」

「リーダー、アフターバーナー切ってから投下しましょうよ」

「ああ、本気でミスった」

ホークの言葉に結川苦笑。そして深呼吸しながらターゲットを見ると丁度爆弾が落ちた。

ドドーーーーーーーーン!!!

「衝撃に備えろ!!」

「のわっち!」

結川の言葉でサザンクロス、スタークロス全機が衝撃に備え、空中へ反転、しかし爆風の衝撃を受ける。

「機体が揺れたな」

「爆撃機・・・全滅確認、あとでベルカからの謝礼ボーナス取らないと。[そしてそれを資金に新しい兵器を]」

「ふむ、謝礼ボーナスか、スタークロス3だけは金の管理はほかの人に頼もう」

「にゃ?!鬼!!」

アンジェラと今度はジェニファーの応酬、アンジェラは大変だなと苦笑する結川、そしてオキボティから

「こちらオキボティより全機、戦闘終了、帰投せよ。なお今回の攻撃で君たちの予想通りベルカから報酬が来るようだ。楽しみにな」

「了解した。サザンクロス、コンプリートミッションRTB」

ウスティオ空軍の鋼鉄の鳥たちはひとりも欠けることなく悠然と立ち去っていく。それを眺める男が一人いた。

それは後のお話で・・・。



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撤退戦 前編

2/15

0625hrm

南部ベルカ野戦基地司令部

「何だあいつは・・・」

コム・ジャクソンは呟く、基地の滑走路は戦闘機の残骸で埋まっており、離陸出来なかった。彼は上がれない怒りで空を忌々しく見上げると・・・目を奪われた・・

「なんだ・・あいつは」

もう一度呟く、大きすぎる爆弾を搭載して機動力が死んでるはずにも関わらず、対空砲火を切り抜けて獲物を仕留めようとするその姿。

ゾクリ

彼は震えた、今まで紛争地帯で跋扈する空軍部隊を仲裁という名目で落としてきた、だが敵のエースでもこんな興奮は覚えなかった。まして愛機と総合的には互角・・・いや、こちらの方の機体が有利で自分自身の腕にも覚えがあるのに、落とされるような気がした・・・。俺が求めてる好敵手(ライバル)はベルカでなくウスティオか・・・。

15分後、敵の最後の部隊が爆撃終了で撤退、爆撃部隊はほとんど作戦遂行能力を失い、南ベルカ爆撃作戦は見送りになった。

「おい」

「何でしょうか?」

敵作戦部隊の確認写真を撮るカメラマンにコムは尋ねる。

「あの、爆撃部隊潰したF-15はウスティオのどこの部隊だ?」

「それが・・あのF-15UFX部隊はこの前から結成された新規部隊で、確かサザンクロス中隊とか・・・」

「サザン・・・クロス・・」

「そして尾翼のエンブレムの下に01と書かれてるあたり、隊長機かと、それとそのサザンクロスの隊長ですが、あくまで噂ですが、異世界から来た人らしく・・・戦闘能力も高いと」

「そうか・・・、また会える機会があるなら撃ち落としたいものだ」

この俺を疼かせた男・・・必ず空で会って叩き潰す。そう心に誓うコムだった。

0700hrm

エウレノ市近く

激戦というより山賊のごとく奇襲して一方的に爆撃したエウレノ攻撃隊は、何とか一機も欠けずに戦い抜いた。

しかし無傷というわけでない。リャークス、スタークロス、フィナール、グランド、サザンクロス全機ところどころ穴が出来てる。結川の愛機もところどころで少し機動がおかしい。対空機関砲の攻撃もあるが、一番は・・・

「マンタ爆弾だな、やっぱ」

コンソールを弄り、ディスプレイで簡易チェック、操縦桿の反応具合を調べる。ちなみに今は何をしているのか、それは

「タンカークラウスよりサザンクロス1、給油を開始する、グローブに接続せよ」

「サザンクロスリーダーよりクラウス、了解した」

「速度400ノット、高度4000フィート、距離150ヤード」

「速度よし、高度誤差無し、距離接近中」

段々と空中給油機KC-767に近づく。

「そういや、サザンクロス3よりメビウスの姐さんは大丈夫で?」

「ええ、ウスティオの整備兵諸氏に感謝です」

「というより無傷とは・・・」

グラッツはアイノのF-22を眺める、全然傷がない・・・。

「リャークスリーダーよりサザンクロス3へ、彼女を俺達の基準で考えるのは無駄の極致だ」

「どんだけ?!」

リャークス隊も無傷でない、特にリャークス3は飛行は出来てるが多分ドック行きだ。

「クラウスよりサザンクロス、距離10ヤード・・・接続、速度を維持せよ」

「了解、速度維持」

「給油開始」

結川の愛機がクラウスのグローブにつながり、給油が始まる。そして3分ほどで終了する。

「給油完了、お疲れ様」

「サザンクロスリーダーより、サンクス、クラウス」

「これでもう終了かな、さて、エウレノ全機は今から直接ソーリス・オルトゥス市郊外に緊急設置した野戦基地に降りてくれ、そこで正式に反撃作戦を伝える」

「えっ?シルバン等の北部に配備される予定だったのでは?」

オキボティの言葉にホークがかみつく。

「信じろ、オーシアの奴らを叩き潰すための総力戦だ。幸いオーシアには今弱点がある」

「なるほどね、よし、そっちに行くか」

「それと、バートレット大尉から連絡だ、南部ベルカに駐留する部隊を潰した祝勝会とウスティオを蝕むやつらを追い出す前祝いしよう!だそうだ」

「ふむ、だがその蝕む奴らはそのバートレットの同胞だろ?」

「いや、彼が言うには、同じ国の軍人と考えたくない好戦派軍人ばっかの軍団らしい」

「ふーん」

スタークロスのバッカスは興味無しに呟く。

「まっ、酒が飲めるなら俺は歓迎だぜい!!」

「ほどほどにしなさい」

「サザンクロス5、いつからお母さんになった?」

グラッツの言葉にアリチェの注意、少し笑える。

「さて、給油機と共にかえ・・・駄目だな、お客さん、20機は居るな」

「あいつら!!」

丸腰を狙うか!

「給油機は退避しろ!俺達が行く」

「残弾チェックしろよ・・・、フィナール隊全機に告ぐ、死ぬ気で行くぞ!」

「「「おう!!」」」

「負けられるかぁ!リャークス隊もだ!遅れるな!」

「「「イエス・サー!」」」

「全機機関砲の弾あるな。弾のサーフィンくらわすぞ!スタークロス隊!爆撃部隊と侮られるなよ!」

「「「了解!!」」」

「おーと、対空戦闘とは腕がなる。こうなったら昇天命令だ!敵首都オーレッドまで突っ走るぞ!!グラント隊交戦!」

「「「隊長の意志のままに!」」」

「弾がやばいけど、うん、敵を撹乱させるわ。メビウス交戦!」

全員が国を守るために反転を開始する。それだけ愛国心と士気の高さをうかがえる。俺達の状況は最悪だ。だが悲観したら負けだ。

「サザンクロスリーダーより全機。うちらの家を土足で荒らす野郎どもにお灸を据えるぞ。行くぞ、サザンクロス交戦!!」

「「「Invia un capitano ordina(隊長の命令のままに)!!」」」

壮絶な撤退戦が始まる



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撤退戦 後編

2/15

0710hrm

ウスティオ南ベルカ国境線

今までになく気分が高揚してる自分が居る。今まで軽く躊躇ってた射撃スイッチは今は軽く感じる。守りたい者の為なら命を捨てれるのかな?

「こちらオキボティよりエウレノ攻撃隊!シルバンの部隊を回す、だから「それでもエウレノはどうなんだよ!!」っ・・・」

奴らが率いてる部隊には戦闘爆撃機と本物の爆撃機が確認した。完全に確信してる

これは報復攻撃だ・・・

シルバンの部隊や、ベルカの防空管区部隊が到着すれば確実に逃げられない、しかしエウレノへの総攻撃なら別だ、すでに対空部隊も撤退してる、エウレノを火の海にするのは防げない、火の海に出来るが占領部隊を送り込めるには山岳地帯の影響で時間がかかるし、先に書いた通り逃げれない、つまりこれは

特攻だ、憎しみをこめた

馬鹿な事だ、人間は分からない、禍々しく、黒く、エゴで、慈悲もあれば偽善もある、ある意味悪魔が居るならそいつより質が悪い。

しかしまあこれも悪くない、それがあるから俺も

遠慮なく人を殺せる

「さて、敵は戦闘機16機、戦闘爆撃機4機、そして後ろからB-52,4機、仕留めそこなった生き残りの爆撃機か・・・」

「機関砲がいかに緯大か教えてやる!オキボティ!さっさと敵情報教えろ!!」

上がバッカス、下がジェ二ファー、ジェニファーは本気になると男前だな。

「はあ、敵情報、データリンク、F-15FX8機にF-15s/MTO、4機、SU-33,4機、戦闘爆撃機にSU-30だ」

「豪勢だな、さすが物量大国、今までF-16ばかりだったから歯ごたえ違うな」

「ふふ、整備しがいある機体ばかり♪[そして空中分解!]」

グラッツが言い放ち、アリチェは壊れた発言を。

「とりあえず、ここは通さない!」

「同意です。ISAFの名にかけて・・・」

アリチェとアイノ、さすがだ。特にアリチェはエウレノ育ちだからな。敵が近付いてきた、それじゃ、俺が行こう。

「よし!サザンクロスリーダーより全機へ!先陣は頂いた!!」

「なにおう?!理由は?!」

「マンタ爆弾でのストレスでだ!2.4.5俺と突撃だ!ダンスで激しいワルツを!残りは取りこぼしをくらいつけ!」

「「「了解!!」」」

「おい!サザンクロスに負けるな!エウレノの力見せるぞ!」

「「「おう!!」」」

サニットの言葉で全員がエンゲージモード、戦闘機は散開する。

さて、激しくも美しい華麗なる空のワルツを!

「「なんだこいつら?!ミサイルが当たらないだと?!」」

「「くじけるな!奴らはミサイルがほとんどなく機関砲だけ同然なんだぞ!」」

「「あれは?!ISAFのメビウスだ!!俺らもう死んだも同然だ!!」」

「「混乱するな!爆撃機を守るんだ!」」

通信が混乱する。それは逃げると考えてた丸腰ウスティオ空軍部隊がまさかの反転攻勢、しかも先陣切ったのが爆撃機を壊滅させた機体。落とそうとしたらこちらが一機落ちた。

「こちらリャークス2!済まない、弾薬切れだ」

「済まない!フィナール7、自分もです!」

「リャークスリーダーより2、フィナール7、退避しろ!お前を守る暇はない!勝手に逃げろ!」

「了解!空の加護を!」

「済みません!先に前祝いの酒、34人分用意してます!」

リャークス2とフィナール7が離脱する。前線の空対空戦闘部隊はやはり先の戦闘で弾薬が少ない。まあしょうがないが。しかしフィナール7、面白い事言うな。34人分の酒、つまり俺ら全員生き残れと言う意味だ。

「よしゃ!一人レクティングに収めた!」

「サザンクロス3、あなたの後ろに一機・・・仕留めます」

「お!4!居たのか!」

「・・・・・[クイ]」

「調子のりました!だから見捨てないで!!」

グラッドとコーノ・・・水と油な感じそうで仲がいいな(笑)

「6!お前は左翼!8は右翼だ!挟撃するぞ!」

「ラジャ!策士のわが三つ子の7!」

2機に固まってたオーシアのF-15FXを挟撃する三つ子。

「サザンクロス2よりリーダーへ、これより爆撃機へ突貫します!FOX2!」

「「なああああ!ミサイル・・・」」

ホークは固い密集編隊の間を突き、爆撃機を落とす、危ないぞ。

「サザンクロス5よりリーダー、ミサイル尽きましたが機関砲で落とします。行きます」

「了解した。よし俺も先陣切った身分だ、精一杯撹乱させるぞ!そうだ、メビウスは?あいつはもう弾薬は無いはずだが・・・」

「彼女は追いかける機体と別の機体をぶつけて空中分解させようとしてます。弾薬無くても最強です」

「ありえねえ・・・」

そう言いながら結川は弾薬チェック、残り610発。残敵17機、未だ健在か。すでにこちらは弾薬切れで抜けに抜けて23機、いや、弾薬切れても空元気で動いてる奴らを除くと・・・こちらが圧倒的不利、さてどうする・・・。

「オキボティ!シルバンの奴らはどうした!!」

「済まない!緊急事態が発生してシルバンの初動体制が大幅に遅れた!」

「緊急事態だあ?!事故って滑走路塞いだ馬鹿でもいるのか!!」

フィナール1ことヘリス・ソーファが苛立たせながら聞く。

「違う・・・もっと最悪だ。FCMB加盟国レクタ共和国軍がベルカに侵攻開始して、同時にファト、ゲベット空軍部隊に攻撃した!」

「オーシアとユークにそそのかされたのか!くそっ!!」

ヘリスの言葉に全員の気持ちを代弁する。しかし一人違う。

「仕方ないさ、奴らは己の利権を求めて昔から騒いでたからな、レクタは数年前から軍事派閥中心の軍事国家になってFCMBを嫌ってたからな。この日の為に、武器を供給するためにベルカとつるんでたんだからな。くそ、胸糞悪いのは変わりない!」

グラットが珍しく冷静ながら非常に切れてる。しかし孤軍奮闘、四面楚歌は確実。危ないな俺ら。しかしその時・・・

「ヒャッホーー!!金づるがいっぱいだぜ!!」

「ウスティオを守るという最高のシナリオで最高の金づる。ぞくぞくするぜえ!!」

「来たか!こちらオキボティより全機へ!即応基地を制圧してそこで補給した6師が増援に来たぞ!」

「あれが・・・傭兵師団・・」

北から無数の光点、IFF反応、味方、待ちに待った増援。さすが傭兵、F-16にF-18、F-14が居ればTyhoonもと機体も違う。そして先陣を切るのは・・

「行くぞ、俺達に守るという素晴らしさを教えたウスティオを救うために」

「OK、行くぞ、相棒!」

F-15S/MTOとF-15Cを操るガルム隊だった。



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猟犬襲来

2/15

0725hrm

国境線近く

伝説のパイロット、サイファーはタッグネーム、本名、レオンハルト・ラル・ノヴォト二ーは目の前を見る。

俺達が急行してる場所、それはエウレノを火の海にしようとしてる野郎どもにお灸据える為に、オーシアの即応基地を制圧して補給を受けてこちらに来た。

空中給油だけでほとんど丸腰のウスティオ正規軍が戦ってるという事を聞いて、傭兵の俺達も燃えさせる男どもを援護しようとして急行した。

「ガルム1よりエウレノ部隊へ、ここからは俺達に稼がせてくれ」

「こちらサザンクロスリーダー、ありがたい。あとでゆっくりお話しましょう!」

「ああ、早朝に通信した異世界の人か、ああ、そうだな、まずはここの対処だ。ガルム及びヴァレー組、行くぞ!」

「「「イエス・サー!」」」

「おいおい正規の奴ら早く逃げろ!オキボティもな!」

口が荒いのは、マッドブル隊のマッドブルガイアだ。

「了解した!よっしゃ撤退開始だ!」

「ああ!」

フィナールのヘリスが言い、スタークロスのバッカスが応え、そのまま全機退避する。

「「くそ!敵が」」

「「おい・・・傭兵どもだ、まずいぞ!奴らは・・・」」

「「ガルムだと?!メビウスの次はガルムかよ!」」

「こちらオキボティ、久しいな、イーグルアイ」

「ああ、こちらは任せろ。ちゃんと整備して大反撃に備えとけ」

「ああ、健闘を祈る」

「了解した。お疲れ・・・よし、ヴァレー全機に告ぐ、エウレノの奴らの男気無駄にするなよ!」

「了解したぜAWACSの旦那!」

「そうだな!エウレノの男どもに顔向け出来るように全滅させる!」

「そうだな、相棒、行くぞ」

「ああ、ガルム1、エンゲージ!!」

丁度その時、エウレノ部隊

「ん?」

「あれ?」

「はにゃ?」

「うん?」

上からサザンクロスのアリチェ、スタークロスのアンジェラ、ジェ二ファー、メビウスのアイノが何だか呟く。

「どうした?女性陣?」

結川が聞く。

「いえ」

「なんか」

「とてつもなく」

「勘違いされてる部分があって」

「「「むかつく気分が」」」

「はあ?どうして?」

傭兵が執拗に男だけを主張したのを彼女たちは感じ取って、むかついたようだ。

また戻って傭兵部隊

「ガルム1よりイーグルアイ、敵の増援は?」

「確認できない。敵がいくら超大国でも限界値はある。」

「了解した。行くぞ、2」

「ああ、さっきまでF-16ばかりで拍子ぬけてたんだ!」

2機はアフターバーナーで正面にまわり・・・

「死ね、我が第二の故郷蹂躙した罪・・・FOX2!」

2本のAAMを放ち前衛を落とす。そしてサイファーは加速を続けたままHUDのターゲットに捉えたTGT(ターゲット)の距離が迫る

「「敵が来た!!迫ってくる!」」

敵は恐怖に囚われる。

1000・・・800・・・400

「ここだ」

「「うわああああああああああああ!!!」」

ガンレクティングに収めた瞬間にガンアタック、すれ違う時には敵は四散する。

「おらおら!またガルムの猟犬どもに金づる奪われるぞーー!!」

傭兵達18機が空を切り裂く。

「「くそ!撤退だ!これ以上は駄目だ!」」

「「くそっ!レクタの作戦決行と同時にするこの作戦はもう失敗なのか!」」

「「本部!撤退の命令を!早・・うわあああ!」」

通信途中に更に一機落ちる。

「逃がしはしないよ、ここはウスティオの空、傭兵の神聖な場所」

落としてるのは、傭兵フラッシュ・レティス中尉、レティス隊隊長だ。タックネームは「スラッシュ」

「イーグルアイより全機、ここは下に民家もない。遠慮なく落とせ」

「分かってるよ旦那・・ちっ、敵は撤退を開始してる」

ガルム2が言うと、敵が反転を開始している。

「深追いは厳禁だ、ウスティオ領空圏外までの追撃禁止だ」

「おいおい旦那!こちらマッドブル1、そりゃねーよ、徹底的にいぢめてやる」

「逃げる敵を落とすとは趣味が悪い」

「なにおう?!お前だって・・・」

「てのかかるやつらだ・・・・待て・・」

突如としてイーグルアイが言葉を止める。

「ガルム1より、どうした?」

サイファーが聞く。

「まずいぞ・・・全機高度5000・・・いや6000フィートに上がれ!弾道ミサイル警報!シンファクシだ!!」

「!!!」

「やばいな、死にたくねーから上がるぞ!おら、ついて来い!」

マッドブルの言葉で傭兵部隊が急上昇を開始する。

「敵部隊が上がらない・・・何があった?」

レティスが呟くように言う、サイファーもコックピットから見ると敵は高度を上げない・・・なぜだ?

「おいおい、味方の攻撃で死ぬ気か?あちらのAWACSは仕事してるのか?」

そういうのはピクシーだ。殺す・・・このミサイルは本当に俺達への攻撃か?

「違う・・・」

「は?相棒、何が違う?」

「敵ミサイル弾着まで10秒前・・・8・・7」

イーグルアイがカウントダウンを始める。

「違う、敵は撤退を求めて、そして撤退は出来ないと言うみせしめに・・・」

「3・・2・・1・・・弾着、今!」

「「な・・・弾道ミサイル?!」」

「「本部!どういうことだ?!」」

「「AWACSなんとかい・・・・」」

その瞬間空で火球ができ・・・・その火球の周辺に居た敵部隊残機が全て落ちた。

「・・・・敵部隊、全滅を確認・・・」

イーグルアイの言葉に全員が編隊を組み直しながら沈黙をしてる、そこにサイファーが口を開く。

「奴らは・・・多分命令を背いて撤退を開始したんだと思う。その懲罰と、命令に反した場合の見せしめだ・・・」

「仲間を簡単に落とす野郎どもとは・・・くそったれな上層部だ・・・」

「落ち着け、マッドブル、所詮はそんなものさ」

マッドブルが怒りを示し、ピクシーがなだめる。そして

「相棒・・・」

「なんだピクシー?」

「このくそったれな戦争、早く終わらせようぜ」

「・・・・ああ」

サイファーことレオンハルトも同じことを考えた。

この戦争を絶対早期終戦する。それは傭兵でも同じ考えだ。

「イーグルアイより全機へ、貴隊達も反攻作戦に参加だ。リーセンの輸送基地を緊急の戦闘基地にした、そこに着陸せよ」

「了解したイーグルアイ、ガルム1より全機、コンプリートミッションRTB」

「「「了解!」」」

一路東へ針路をとる。

same time

ベルカ領海深度600m

「オーシア懲罰成功です」

「うむ」

レーダー担当の兵からの言葉で、シンファクシ艦長のベルドフ・ウラディフィリム・キリフ少将が返す。

「しかし、弾道ミサイルで味方を攻撃しろとは・・・」

副官が呟く。

「敵前逃亡は死罪に値する。いい見せしめになったな」

ベルドフは気にせず、満足げに言う。

「次のこの艦の補給はいつだ?」

「はっ、丁度1週間後、1000です」

「分かった・・・早い所ベルカが屈する姿を見たいものだ・・・ククク・・・」

彼は静かに笑い、そして前を見る。

この戦争で我が連邦に栄華を取り戻す。

その想いを胸に秘め、誓った。



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ウスティオ軍の大反攻作戦 弱点

2/15

0900hrm

ソーリス・オルトゥス市郊外野戦基地

ただ整地された3200m滑走路が一本と、駐屯用のテントがたくさんある。

そのテントは市民や会社から徴収したものもあるので形サイズ色がばらばらである。空軍のパイロットは厚遇でブリーフィング、寝食ともにホテルである。

陸軍整備兵はテントなので恨まれた・・・。

ちなみに整備兵はエウレノのメンバーで、野戦基地司令はカノンと、エウレノとほとんど変わってない面々だ。

そしてそのブリーフィングルーム、結川達エウレノとディレクタスからはみ出た部隊のパイロット総勢50名あまりが居る。その部屋に士官制服を着た人が入る。

「全員そろってるな、初めましてと言うべきか・・・私の名前はリシャール・コニア、階級は少佐だ、コードネームはオキボティ」

「!!」

結川は驚いた、彼がオキボティとは。

「グラッド、少佐の情報はあるのか?」

席順が後ろであることをいいことに、左隣のグラッドに聞く。

「あのオキボティ・・・いや少佐殿はあまり外の人間と会わないらしいし、そもそも彼はエウレノ基地所属じゃないから、初めて顔を見た」

「そうか」

結川は再び前を見る。

「さて、我がウスティオは現在オーシア、ユークトバニアの攻撃にさらされてる状態だ。

幸いにも情報部からの情報で防御を固めてたために未だ陸軍はウスティオ国境線で踏みとどまってくれている。

しかしその国境戦闘は状況が安定していない、そしてさらに早急に対処したい事柄がこれを除いて3つある」

リシャールは少し間を置き。

「まず一つ、B7R奪還任務だ。このままやすやす敵にB7Rを渡しっぱなしも癪だ、しかし問題がある。

それが二つ目だ、今度はシンファクシだ。こいつは厄介でB7Rに侵入すれば問答無用に来るだろう。

しかし奴らが補給のために浮上するチャンスがある、その時に撃沈する、その話は決まり次第また話す。

そして三つ目は・・・レクタの裏切りだ。奴らは戦闘能力も低いのに反乱してきた。我々も連合軍を追い払い次第ファト連邦と共同で奴らを潰す。

そしてここから本題、我々ウスティオ国防軍は正式に大反撃作戦を展開する」

ルームが一瞬ざわつく。

「静かにしろ。

この反撃はちょっとやそっとじゃない、陸空軍出せる武器人員全て使った超飽和攻撃、陸軍は待機用の都市防衛軍団除いた3個軍団総動員、戦闘機は5個航空師団600機だ」

今度は驚きの声で飽和する。

「質問ですが、この作戦失敗したら・・・」

「ああ、国境道封鎖でベルカからの兵器搬入が出来ず、武器弾薬は総動員だから失敗した時点でウスティオは即時降伏する」

エウレノとは違う基地のパイロットが聞く。さらりとリシャールは返す。

「もちろん自暴自棄でない、勝つ確率はある。まず敵の地上兵力はオーシアだけで、まだユークは来てる途中だ。

そしてオーシアの奴らは世界に展開してる部隊の呼び戻しに時間がかかってるためにこんな奴らも動員してる」

そういうとスクリーンに映るのは、

「くっ・・・」

右隣に居たアリチェが咄嗟に目を閉じて下を向く、血で真っ赤に染まったオーシア兵士の写真、周りも、血の気が引いてる、ベテランパイロットや女性では唯一アイノは淡々と飄々としている。結川も目を背けたいが、それは駄目だ。

「大丈夫か・・・」

「は・・・はい」

アリチェは軽く震えながらも気丈に前を向く。強いな。

「さて、これは突撃してきた奴を射殺したんだが、こいつはオーシア陸軍兵でない。オーシア、デルト州州兵だ」

「州兵・・・て民兵か・・・」

ホークが呟く。

「オーシアはユークや世界展開してる部隊の集結の間の埋め合わせだろう。そしてウスティオは簡単に攻略出来ると考えたんだろう。馬鹿な奴らだ」

リシャールはにやりとする。

「さっきの写真といい、こいつ絶対Sだ」

グラッドが呟いた。

「さて作戦の概略を伝えよう。

まず空軍を再編成の後、5個航空師団全機をローテーションをもって敵陣に攻撃、陸軍は空の支援をうけ、ベルカの国境道血路解放と、オーシア陸軍全面撤退、そして戦闘終了後のベルカが国境側で既に待機してるウスティオ国防軍用補給物資を早急に国内に搬入して戦力を整える。

まず、この基地の部隊は全員第一波戦闘要員、つまりな話お前らが戦闘の火ぶたを切り、また陸軍の士気は空軍で左右されるは過言でない、中々重要な役目だ。

基本的に山岳地帯でない平原を中心に、対地攻撃機及び戦車部隊の撃滅を優先、イーグルパイロットもこちらの実績選考で対地特化武装(アタッカー)か対空戦特化武装(ファイター)で行く。

作戦開始の3日後、0600からこちらの武装か人材が消耗しきるか、オーシアを全面撤退停戦を結ばせるまでは徹底的に叩く。超持久戦の消耗戦だ。

犠牲者も比例して出るのは目に見えるが、そこは容赦しない。国を守る誇りがあるならやってくれ・・・質問は?」

「はい」

「はい、サザンクロス、リュウト・ユイカワ、どうぞ」

リシャールは挙手する結川を指す。

「敵の空軍部隊の規模はどの程度かと」

「ああ、言い忘れてた。オーシアは多分前線で戦った奴は分かると思うが。

空軍が出ると陸軍はほとんど出ず、逆もまたしかり、連携が取れてない。

空は空、陸は陸、海は海と完全に3つに分裂して仲が悪い、大きすぎる軍隊の悩みだ、大きい軍隊は小さい軍隊より同じ戦果でも分配すれば小さくなる。小さい軍隊はその逆だ。

つまりの話し、奴らはほかの軍の仲間は知ったこっちゃない。こちらがいかに多くの手柄を出したかを見せたがるかを考える、実益主義だ。

事実1979年、現在は停戦してるが、レサス内戦の武力介入の際、海軍が無差別艦砲射撃、空軍が陸軍に誤った偵察情報で、軍事派閥の激戦地に送ってしまい、最後は味方野戦基地を爆撃して、一個師団消滅、精鋭の空挺師団を壊滅させた事がある、だから相手の空軍の支援はあるとしても少数だ」

リシャールが断言する。怖いな、それ・・・。あれ、でもエーコン5では結構陸海空仲良さそうだったけど・・・・。

「どうしたんだ隊長?頭にクエスチョンマークが浮いてるぞ」

「いや、オーシアってそんなに戦果の奪い合いが激しいんだってね・・・」

「ああ、超好戦派のアップル・ルルースの助長もあるからな」

そうだった!副大統領なのに何故か大統領より権限強いアップル・ルルースが政治仕切ってるんだった・・・。ハーリングならあり得ない。

「それでは他に質問は・・・無いな。

ちなみに前祝いの酒は無しな、酒の勢いで喧嘩して怪我負うパイロットが万が一に出たら話にならないからな!」

「「「ええーーーー!!!」」」

全員が驚愕と同時にブーイングをかける。

「生きて帰ればうまい酒が飲める。

ちゃんと生還しろ!以上解散!」

リシャールは笑いながら、その場を去った。

全員が3日後まで酒以外何するか、グラッドはどうやって隠れて酒を飲むか考えてた。結川は苦笑する。と、それよりも

「大丈夫かアリチェ」

「あ、大丈夫です隊長、御心配おかけしました」

「いやいい、あんなのいきなり見せられたらそりゃ引くよな、でもウスティオ陸軍はあれを毎回見てるんだからすごいよ、俺はすぐに気を失う」

結川の言葉にアリチェが軽く微笑む。うん大丈夫だな。でも俺達は戦闘機を落とすために敵が機内で焦げたり肉塊になり、血は見ないが、陸軍は嫌でも見る、やはり精神的には陸が上か。

「それじゃ、今日の夜にホークとお前と俺で作戦会議、明日は全員で地図上でイメージトレーニングだな」

「了解です隊長・・・あのグラッドは・・・」

「あいつは今、酒でいっぱいだ。だから外す」

「納得です、了解しました」

本当に納得した表情で言うアリチェにまた苦笑を洩らす結川であった。

 

翌朝

「あの、司令・・・」

「どうした、ユイカワ少佐?」

「あの、うちのグラッド(バカ)を含めて格納庫で数人パイロットが吊るされ干物にされてるんですが・・・」

「ああ、あれは禁酒を破った奴らだ。陸軍兵に見つかって即干物さ」

「・・・・」

結川の口端が引きつってた。



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ウスティオ軍の大反攻作戦 出撃前夜

2/17

2200hrm

ベルカ[現オーシア占領地]ウスティオ国境線

ウスティオ国防陸軍前線統合作戦司令部

最前線から離れているのに時折砲撃の音が聞こえるここも、今は静かだ。陸軍は奮戦し消耗しながらもこの三日間何とか耐えてた。

しかしこちらには限界点が来てた。敵はいくらでも補給が来るが、こちらは人員、金、備蓄物資、全てが戦時での想定消耗量を超えていた。ウスティオ自慢の備蓄物資量もオーシア・ユークから見れば少ない。

陸軍はもう最後の決死の突撃以外血路は見出せない・・・

そんな中で一人の上級将校が満面の星空を眺めながら熱いコーヒーを飲む。

広域即応防衛軍団[第四軍団]軍団長、フェルナンド・ジーリ大将である。彼は定年退官間近の老兵で、ベルカ経済崩壊時代の今のFCMB加盟国の小競り合い仲裁の高い指揮能力で軍団長になった。今までの平和時代、彼の好々爺ぶりや、非常に甘い所から「軍一番の平和ボケ軍人」と言われてた。ふと後ろから人影。

「こんな所いらっしゃいましたか」

「満面の星空眺めるのも中々乙なものだ。平和ボケの軍人と呼ばれる私にとってはね」

「またまた御謙遜を・・・」

後ろから出たのは、軍団副将で高機動歩兵師団師団長シルヴァーノ・レリオ少将が言う。52歳という年なのにそれには見えないほどの若づくり。一見40代前半それ以下、物腰柔らかい丁寧な言葉遣いで、周囲からはもっと若く連想させてしまう。

「レリオ、私は明日は定年退官前の晴れ舞台だ」

「ええ、ちゃんと反撃して軍団長にきれいな花道を「そうじゃない」・・・え?」

シルヴァーノはフェルナンドの顔を見て背筋に寒気が走った。今までの好々爺の姿は見えず、鬼に見えた。これが本性か・・・彼の昔のあだ名・・・

「グランスラッシュ」

おとぎ話ラーズグリーズに匹敵する。神から悪魔に落ちた冥界の重罪人。確かその悪魔を擁護したベルカに似た王国を恩返し含めて守るために周辺国の人の魂を食らいつくし破壊の限りを尽くした。ベルカ擁護派で、反対派と対立してたウスティオで一番活躍した男。まさにベルカを守り、周辺国を破壊してた。

「レリオ、私が先陣を切る、遅れるな」

いつの間にか横に立っているフェルナンド、気配を感じなかった・・・・まさかこれほどとは・・・

「分かりました。全力で守らせていただきます」

「うむ」

フェルナンドは満足したように笑みを浮かべ、司令部の中に戻る。シルヴァーノはどっと汗が噴き出た・・・、笑みの中の決意とも殺意ともとれる気迫に、体は震えてた。

「さてと・・・軍団長が本気だし、やるか!!」

彼は気合いを入れ直し、司令部に戻る。

 

それより2時間前

2000hrm

ソーリス・オルトゥス市郊外野戦基地

「これをこーすれば・・・・よし、完成だ!!」

マッドサイエンティスト、第2整備班班長ゴードンが声を上げ、協力してた班員が拍手する。そこにあるのはサザンクロス隊のF-15UFX,8機である。

「なんだか俺達の戦闘機が消えてると思ったら・・・ここか何してたんだ?」

丁度良くサザンクロスメンバーが表れる。屋外の定位置ポイントから消えてたので、探してたのだ。

「グッドタイミング少佐殿!それじゃあお披露目するか・・・」

「だから何を?」

「少佐殿のサザンクロス隊の部隊章の絵柄、あれ仮でしたよね?」

「ああ、申請した翌日から戦争突入でこれがしばらく部隊章だ」

ただ、みなみじゅうじ座が書かれてるだけの仮の絵柄の部隊章、さすがに寂しいものがある。

「そこで、我が第2整備班は、秘密裏に軍本部に申請して、新しい部隊章を戦闘機尾翼に書きました!どうぞ!!」

「え・・・ああ」

8人はその部隊章を見て、驚いた。

黒い背景に、右下にみなみじゅうじ座、その左上に筆記体で一行目にSouthern二行目にCrossと筆記体で書いてある。

そして左上から右下斜めに平行線で4つの星が絵柄を囲うように2列ある。星は俺達の中隊戦闘機の数。さりげなく輪郭部分にウスティオ国旗。

部隊章の下には第2航空師団第12戦術航空中隊を表す「212」もきれいにペイントされてる。

「きれい・・・」

アリチェが感嘆を漏らす。整備班のペイント技術が意外と高い。

「そーだろーアリチェちゃん!どう?ほれ「ません」がく、ウォーーン!(泣)・・・」

一人の整備隊員の言葉をいつもの表情で返すアリチェ。整備隊員は嘘泣き、周りが笑う。

「このデザイン・・・・班長ですか?」

三つ子のダノが聞く

「おうよ!ゴードン・ヘルトの傑作だ!」

「「「意外だ」」」

「にゃろう!この三つ子?!」

また笑う。

「俺以外は知らないか、ゴードン准尉はエウレノ基地を中心に結構エンブレムとかデザインしてるんですよ。マッドサイエンティストでその評価は相殺どころかマイナスですが・・・」

「ホーーーーーーク!!!」

隊内エウレノ基地に配属では最年長のホークの言葉でゴードン発狂、周り大爆笑。意外とこの二人は親友だ。

「は・・・腹痛い・・・ホーク、楽しいな」

「黙れ干物」

「ひど?!」

グラッド涙目、彼は禁酒破りで干物にされた後、これがあだ名になった。

「ゴードン准尉、サザンクロス中隊を代表して感謝します」

結川はピシリと敬礼。ゴードンも返礼したのち

「それで少佐殿、お礼代わりに「だが断る」まだ言ってないよ?!」

「いや、あのマンタ爆弾以降、あなたの提案に条件反射で断る体質に・・・」

「ひどいですね・・・、マンタ爆弾はしょうがないです。で、今回は空対空戦闘(ファイター)担当になると聞いたんで、勝手にAAM変えました」

「ひどいのはお前だ!!事後承認かよ?!どうせなら干物の機体にしろよ!」

「隊長もそのあだ名で言うの?!」

「とりあえずもう交換は出来ないから、よろしくです少佐殿!」

「・・・・[ニコ]」

満面の笑みのゴードン、結川は何も言わず笑みを浮かべ思いっきりぶん殴る。

2200hrm

同基地使用ホテル結川部屋

「・・・・・眠れない」

結川は目が覚めてしまい、電灯を点ける。明日は総力戦、ウスティオ5個航空師団に加え、ベルカのウスティオ管区防空部隊、B7Rのエースも集まり、確か・・・

ロト、グリューン、シュネー、インディゴ、ゲルプ、あと別の基地から傭兵、ここにウォードック・・・・あれ?リアルチート?

明日の日の出、ウスティオの大反撃、俺達は南ベルカ占領空軍の足止め、及び対地攻撃部隊の護衛で、アウトバーン国境道144号線解放作戦が主力、地上には確か平和ボケ軍団長率いる第四軍団だ。早く寝ないと、とにかく体を横にしようとしたとき、不意に部屋の備え付け電話が鳴る。

「だれだ・・・」

電話を取ると

「お~!隊長!一緒にさけ・・・ばたん!「神妙にしろ!懲りねえなお前ら?!」ちょ、助けt「かちゃり」ツーツー」

即座に切る結川。

「干物が・・・、不名誉除隊だぞ。俺も始末書だ・・・報告書富士山一つ増えました~」

遠い目しながら呟くと・・・・また電話・・・逆探されたか?恐る恐る受話器を取ると

「はい、もしもし」

「あ、起こしてしまいましたか?」

「アリチェか・・・大丈夫だ、丁度眠れてなかった。どうした?」

相手が分かり安堵する結川。

「いえ・・・私も眠れなくて・・・明日の戦い、今までになく犠牲者が出ると考えてしまって、不安に」

「自滅するなよ。安心しろ、他は賄えるか分からんが、サザンクロスは全員守る。隊長として、仲間としてな・・・・」

「信頼してます。隊長の背中はお任せ下さい。1番機を落とさせわしません」

「ああ、帰ったら祝勝の酒を浴びよう。負けは考えない」

「ええ」

アリチェと話すうちに落ち着く結川。

「落ち着いたか?」

「はい、ありがとうございます。それでは明日」

「ああ、お休み」

受話器を静かに置くと、眠気が襲ってきた。そのままベットに突っ伏し

「明日はこの世界の歴史にのる戦争・・・だな」

そのまま意識は闇に沈んだ。



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首脳の苦悩

2/17

2200hrm

大統領官邸

一つの部屋で二人の男が話す。一人は頼りなさそうに見えるが、瞳の奥に熱さを持つ、ウスティオ共和国大統領、ライア・フェ二アス。そしてもう一人は大柄の老練軍人で、グラン・バッシュ元帥である。

「単刀直入に聞こう、元帥」

「何なりと」

「今回の大規模反撃作戦を立案したのは君だね?」

ライアは自分の身長より高いグランは見上げ睨む。

「そうです。このまま国境線で持久戦をするほどの戦力はこちらにありません。ユークが来れば敗北必至。我々に勝ち目は存在せず、ただオーシアの属国になるだけです」

グランは睨み返す。

「確かにウスティオ国防軍は国を守る為に命をかける者たちだ。しかし彼らはそれ以前に、政治で守るべき国民でもある。この作戦での犠牲者の数は敵もそうだが味方にも酷すぎる!」

「そうですね、確かに私の下に居る軍人たちはウスティオ国民だ。傭兵6師も人種違えどウスティオの意思に共感してくれた仲間達。それを犠牲にするのは惜しいし、私自身も悲しい」

「それならば・・」

「しかし今のオーシア、ユークには我々政府の高度な政治判断を求めても無駄です。今しかないんです。敵に反撃するのは・・・」

「・・・・。確かに私達も不甲斐ない・・・済まない・・・」

ライアは頭を下げる。

「頭をお上げ下さい大統領。守る意志は一緒です。ですから大規模反撃作戦は私達にお任せ下さい」

「勝算は?」

「5割です」

グランが言うと、ライアは息を吐き

「・・・分かった。ふっ、負けたら即時降伏出来るように用意しましょう。国民には迷惑をかけないように、オーシアとの交渉の為の練習しましょう。あなたは出来ることをして下さい」

「分かりました。そんな苦労はさせません、失礼します」

グランは頭を下げて部屋を後にする。そして早足で静かに

「絶対に、負けません」

そう言いながら・・・



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ウスティオ軍の大反攻作戦 陽が昇り我ら舞う

2/18

0600hrm

アウトバーン国境道144号線始点

全長約100kmに及ぶアウトバーン、ここから工業都市南ベルカを結ぶ唯一の高速道路。山岳地帯、電磁波多し円卓のう回路なく、ストレートに行けるウスティオベルカの生命線。

ここが解放すればウスティオの全軍の能力、国民全体の利益が回復する。

「敵はまだのんびりしているな・・・」

無線封止中の結川が呟く、仲間達がぴったりとくっつく、後ろには多数の航空部隊。そしてその右隣には・・

「まさかの赤の燕と藍色の騎士団と競演か」

ベルカとウスティオのつなぎ復活、戦闘機が多いと考えて、ロトとインディゴ隊だ。他のエース達は色んな方面で戦おうとしている。

そろそろ日が昇る、作戦行動開始は0604・・・あと少し。

下には第四軍団の高機動歩兵師団と重騎兵師団の精鋭部隊、第2重武装師団でアウトバーン、その周辺を制圧する。残りの部隊は第一、第二軍団に編入している。部隊の数で言えば2個師団満たないが、この大反撃作戦の最重要任務の一つなので、第四軍団軍団長が陣頭指揮を執る。

「あと1分・・・」

結川がディスプレイの時計を見て呟く、空は白くなってきてる。戦闘機の中は排気音以外は非常に静か、周りに仲間がいるのに孤独を感じる。グラッドの無駄口が聞きたい・・・もしこれが本当に自分だけなら・・・

孤独で発狂しそうだ。

あと30秒、下の部隊が続々とエンジンをかけて隠れてる場所から現れる。敵も熱源を確認してるだろう。

あと10秒、TNDの対地特化武装部隊が高度を落とし始める。Tyhoonが前に出始める、結川も負けじと加速する。

そして運命の時、太陽が東の山岳から下から光がこぼれた・・・

「こちらオキボティ!全機無線封止解除!アウトバーン奪還作戦始動!!」

「よし、サザンクロス隊エンゲージ!!」

結川は宣言すると素早く兵装安全装置解除、同時に対地攻撃のTND、Tyhoon、AC-130が攻撃を開始する。同時に重騎兵師団のアリエテMk2が進撃を開始する。

「ロトリーダーよりサザンクロスリーダー、我が祖国の同胞だ。ベルカの騎士道にのっとって戦おう」

「了解です。異世界から来てもこの国で仕えてる身、全身全霊戦う所存です」

「ふ、さて、目の前の金に眩む政府の狗を狩るぞ!」

「yahhhhhhhh!」

ロト隊Tyhoonは返事した途端に加速、迎撃ポイントに向かう。かなりかっこいい。

「私達も行きましょう。インディゴ隊エンゲージ、敵が無抵抗なら撃つな。向かって来たら殺せ」

「イエス・サー!」

グリペンを操る藍色の騎士団こと、インディゴ隊も前に行く、さすが騎士道に忠実な男たち・・・か、結川はふと考える。それを現実に戻す声

「お前ら、私が平和ボケ軍人だからって舐めてんのか?!ああ?!俺が先陣とはどうゆうことだ腰ぬけども!さっさと戦えよ!行けー!進めー!叩け潰せ殺せ!パンツァー・フォー!!!」

「軍団長殿が戦車長と交代して突っ走ってるぞ?!」

「あれがグランスラッシュ・・・、ぐ・・・軍団長殿に遅れるな!突撃突撃突撃!!」

「俺は初めてこの軍団に入って後悔してるよ!こんちくしょうっ!」

「な・・・何が起きてるんだ?」

「こちらオキボティより空軍作戦機全機へ・・・第四軍団長フェルナンデスが大暴走を開始した!」

「はあ?!軍団長が突出してるのか?!」

「おお!平和ボケ軍人じゃないのか!隊長、やりましょうぜ!」

「干物は黙って干されてろ!」

「ちょおおおおおおお?!?!」

結川はグラッドを黙らせて下を見る。そこには異常に突出する戦車。あれが軍団長殿。

「ありえねぇ」

結川が呟く。

「あり得なくてもこれがグランスラッシュの本性ですね」

「むかしのベルカ経済崩壊時代のベルカの守護者伝説、ここに復活」

「そうなのか・・・2・5」

結川は二人の言葉で軍団長の認識を改めた。

触らぬ神は祟りなしの典型だな・・・

変に納得して自分の興味を無理やり抑えようとしてると

「こちらオキボティよりサザンクロス!敵空軍も流石にまずいと思ったか、こちらに戦闘機が来てる、国境でお出迎えしておかえり願え。そして空のアウトバーンは高い通行料が必要と教えてやれ!」

「了解した!サザンクロス隊行ってきます!行くぞみんな!!」

「「「了解!!」」」

8機のイーグルは通行料徴収の為、空を舞う。

0620hrm

アウトバーン国境道144号線起点20km地点、ベルカ国境近く

1台の戦車がアウトバーンをひた走り、後ろから負けじと友軍が突撃する。軍団長フェルナンデスの脅しで今までの防御陣地(料金所)は勇猛果敢に突破してる。

「軍団長殿!ここから2キロ先には敵の大規模防御陣地が・・・」

「突破だ!それ以外は許さん!」

「「えええ?!」」

「戦車長・・・戻ってきてください・・・」

「あの・・・軍団長殿?我々の車長は?」

「見てただろう?小銃と防弾チョッキだけの高機動歩兵より軽装で突撃させた!」

「「しゃーーちょーーーー!!!」」

軍団長の暴走より、操縦士、射撃手は上官の戦車長の身を案じた。

「大丈夫だ!私の闘魂が注入されてる!奴は男となって生還する!」

「「その確証はどこからーーー?!」」

意外と余裕な3人組だった。

その頃身を案じられてる戦車長は・・・突破した小規模防御陣地の残党討伐で

「・・・・あの人重騎兵の車長で歩兵専門じゃないよな?」

「ああ、間違いない」

「だけどあれは・・・・」

「言うな。彼はただ取りつかれてるだけだ」

重武装歩兵隊の兵士の目の前で繰り広げられてる姿・・・

「お前らー!そのスコープはお飾りか?!その小銃の弾速は亀並に遅いのか?もっとこいよう!!」

戦車長であった男、いつもは温厚で訓練でも実戦でも部下を思い、敵がいかに傷付かず無力化出来るかと考える男、その男はフェルナンデスから与えられた小銃を持って変わった

「何だあの敵は?!」

「弾が当たらないだと?!そしてあれだけ激しく舞ってるのに超正確にうちらの足に被弾させてるだと?!」

「お前ら!そんな良い銃使って当てられないとはオーシアも落ちたな!!」

「敵はある意味残酷だ!そしてある意味敵思いすぎる?!」

車長は性格が変わっても良心キャラだが、それが逆に敵に恐怖を植え付けた

そして戻って軍団長戦車

「軍団長殿!どこから突破しますか?」

操縦士はあきらめてフェルナンデスに問う。もうどこまでも突破してやる!

「中央二列縦隊突破だ!!」

「・・・了解、120mm用意!!」

射撃手もあきらめて残弾確認、もうどんな陣地も破壊してやる!この二人もフェルナンデスの気迫に毒されてしまった。

「操縦士!あとどのくらいで敵に着く?」

「あと少しです!敵の攻撃範囲内です!」

「よし、それでは空軍の奴らに連絡しよう。赤弾撃ち上げ!!」

フェルナンデスは持ってきた指示用色つき弾を撃ち上げる、ほとんどの陸空軍は何の意味か分からない。今回の作戦で赤弾の指示内容は聞いてない。しかし一つの隊はそれに気付いた。それは空のTNDの一隊だった。

空の上

4機のトーネードがあるものを探すため全方位で見張ってる。

「ジャーダ2よりリーダー、信号弾上がりました!!」

「そうか、こちらも確認した。よし、敵防御陣地を合計八車線の真ん中二車線を中央急降下爆撃だ!全弾ぶちこめ!」

「4よりリーダー、この信号は本当ですか?」

「軍団長直々の御命令だ。撃たなかったら、戦車で撃墜されそうだ・・・冗談抜きで」

「なぜ中央でしょうか?」

「知らないよ、ジャーダ隊、行くぞ!」

「「「了解!!」」」

4機はそろって急降下を開始する。



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ウスティオ軍の大反攻作戦 全力全壊

2/18

0621hrm

大規模防御陣地上空

スタークロスside

<<こちらジャーダリーダより対地戦闘の同胞たちへ、これより軍団長殿直々の御命令で急降下爆撃を展開する。そこで敵対空火器を滅してほしい、賛同する隊はやってくれ!>>

一つの通信が入る、それはジャーダ隊からの援護要請。

「隊長、やりますか?」

「珍しいな2、お前から話しかけるなんて」

スタークロス2こと、カルト・クライシス少尉がバッカスに聞き、ジェニファーが突っ込む。

「まあな、2より4、もうちょっと女らしく振る舞え」

「な・・・この無口男の精神逆なで野郎!あとで覚悟してろよ?」

「だが断る」

「んなにー?!」

「3より2、4、戦場の空で喧嘩とは脳内平和でちゅねー[ああ、IFF改造してロックオンしたい]」

「スタークロスリーダーより、喧嘩してる暇はない。スタークロス隊はジャーダ隊の要請に則り、対空兵器優先爆撃を開始する!全機降下!!」

「「「ラジャー!」」」

スタークロス全機が、上り下り合計8車線をまたぐように塞ぐ大規模防御陣地対空火器の破壊を開始する。

しかしなぜジャーダ隊だ?バッカスはふと思う。普通なら広範囲攻撃が得意な部隊に任せて、大規模防御陣地を平等に破壊して沈黙、その隙に地上部隊の進撃で制圧がセオリーだ。しかしジャーダ隊、彼らは通称

Cacciatorpediniere~破壊神~

TNDでは普通超低空攻撃が主流だが、彼らは高高度からの急降下対地集中攻撃のスペシャリスト、広範囲攻撃より、地域限定、強固な建物、兵器の一点突破重視の部隊だ。さて、どうする

なんのことはなかった。道を作りやがった。

ジャーダside

<<スタークロス隊よりジャーダ隊へ!我々が対空火器を破壊する。>>

「ジャーダリーダーよりスタークロス、感謝する」

<<スタークロスリーダーより、お互い様だ>>

「よし、ジャーダ隊の一点攻撃の出番だ!」

「イエス・サー!!」

スタークロスが対空火器を的確に潰す、地上部隊も弾の波に襲われながらも前進している。ジャーダ隊は真ん中2車線ストレートに

「ジャーダ隊爆弾投下!投下!」

TNDから無誘導爆弾がまるで誘導弾のように的確に、きれいに一本の太い火の海が出来る。その炎の道にあったどの兵器も全て吹き飛ぶ。

<<おっしゃー!!フェルナンデスよりジャーダ隊、良くやった!おら全隊前進!!>>

<<Yeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!!!!!!!!!!!>>

その道を第四軍団の戦車、装甲車が突撃する。

「本当に勇猛果敢だな。ジャーダ隊コンプリートミッション、さっさと爆弾補充して再度出撃!敵は待ってくれないぞ!」

「「「了解!!」」」

4機のTNDは針路反転、補充用基地に戻る。

Sametime

アウトバーン大規模防御陣地

ジャーダ隊の攻撃爆風が巻上がり、防御陣地に空白地帯が出来上がる奥が見える。

「軍団長殿・・・まさかとはおもいましたが。」

「側面に注意して突破しろ!重武装と第305戦車中隊を前に、高機動、他の戦車部隊は中央突破で行くぞ!」

「「了解しました!!」」

敵の弾の波に呑まれかけながらも、操縦士は巧みに操り、突破する。

<<304戦車中隊12号車、戦車砲で被弾!駄目です!戦列から離れます!>>

<<高機動歩兵装甲車操縦不能!全員退避!>>

<<頭を出すな戦車長!撃たれるぞ!>>

<<ヘイラー、援護する!早く!!>>

<<ありがてぇ!突破する!!>>

次々と入ってくる仲間達からの被害状況。

「軍団長殿!これ、無謀じゃ!」

「全車線で戦闘したら我々の被害が増大するのは目に見えてる!痛いのは一瞬だ!耐えろ!!」

「それでも・・がぁ!!」

ドンと、戦車の一番防御力高い装甲部分にロケット弾が当たる。

「大丈夫か?!」

軍団長が即座に状況確認する。

「操縦は大丈夫ですが、速力が下がります!」

「主砲の照準装置、主砲の回転部分が損傷、戦闘火力ダウン!」

操縦士、射撃手からの情報を聞いたフェルナンデス、まさかの行動、

「ええい!奴らめ!主砲が無くてもこれがある!!」

「軍団長殿?!おやめ下さい!!」

「止めるな!ファイヤー!!」

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!!

射撃手の制止を聞かず、フェルナンデス大暴走!12.7mm重機関銃が吼える。

「粉砕殺戮大☆虐☆殺!!」

<<なんだあの敵は?!>>

<<助けてくれ!>>

<<頭を出すな!重機関銃で半身消えるぞ!>>

敵側大混乱。そして目の前が開けてきた。

「敵中央突破!突破!」

「よし!右翼左翼に展開!挟撃するぞ!空の対地部隊諸君!猛爆撃開始!!」

<<Yeahhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh!!!!!!!!!!>>

そして数分経たずに防御陣地が崩壊、結果的に全面戦闘より被害は抑えられた。そして

「あの軍団長はやばい」

という敵味方フェルナンデスへの認識を改め、恐怖を思いっきり打ちこんだ。

ちなみに戦車長は・・・

「なあ、あれは戦車ち「言うな、言ったらまけだ」ですね・・・」

戦車長、クラウス・ファンタ曹長は更に舞う。

「死ぬなよ!動きだけは止まってろ!」

「いい事いってるけどやる事は残虐?!」

更に進軍して残党を討伐する部隊、すでにクラウスの独壇場。その時

カチッ!

引き金引いても弾が出ない、つまりの弾切れ。

「・・・・・」

「・・・・・」

しばしの沈黙、そして敵は我に返ると

「「「あ・・あの悪の敵を撃てーーーーーーーー!!!!」」」

数名の兵士が小銃、機関銃を撃つ、しかしクラウスは止まらない。

「お前らー!!銃があるのになぜ当てない?!」

「華麗に避けるなよ!!」

弾の波に呑まれず、華麗に避けるクラウス、そして敵の目の前

「やっ!」

「うわ!!」

クラウスは両足飛び、そのままエビぞリで力をためて、思いっきり弾切れ小銃を振り落とす。

「がぁ!!」

オーシア兵は一撃で前にのめる

「お前ら羨ましいんだよ!!」

3kgちょっとの小銃を振り回すクラウスに周りのオーシア兵が引く、それも構わず

「お前らはM4とかいう最新小銃が早く出回って嬉しいなあ!羨ましいなぁ!」

ガンガンガン!!容赦なくオーシア兵を叩く

「俺なんて戦車兵だからって今は軍団長から頂いた新型AR-90だけど、さっきまでAR-70以前の小銃なんだよ!空軍の予算の使い過ぎでこちらが旧式になるんだよこんちくしょう!」

「やめてくれ!彼のライフはもうゼロだ!!」

たまらずオーシア兵の言葉でクラウスが止まる。

「そうだ・・・奪おう」

「「「へっ?」」」

敵味方関わらず全員が唖然の声、とその時おもむろにぐったりしてるオーシア兵の持ってたM4と弾倉を取り

「M4差し出せやオーシア兵ども!!!」

「全員撤退~~!!!」

クラウスが追いかけてオーシア兵は撤退を開始する。そして後ろに重武装隊のウスティオ兵

「さ~て、オーシアの負傷兵を回収するか、クラウス曹長は・・・大丈夫だろ」

「「「了解」」」

負傷者回収を始めてた。

0644hrm

ベルカウスティオ国境線

大規模な戦闘が繰り広げられる、ウスティオからの強力な大規模ミサイル攻撃で先制を撃ち、野戦砲、MLRSの攻撃の後、歩兵、戦車が総攻撃をする。特殊部隊の活躍で、上層部の機能が死んでいるオーシア軍は、ただの数の塊で、更にウスティオ国防陸軍の州兵集中地帯の中央突破で、混乱に陥ってる。

「軍団長殿!我が軍現在犠牲者増えながらも依然優勢!持久戦の予定時間も短縮できる可能性が!」

「油断するな!敵は我々よりも遥かに人員弾薬豊富で強大だ!敵が撤退開始して休戦申し出るその瞬間まで戦うんだ!」

「了解しました!!!」

第一軍団軍団長、ラック・スラー大将は激を飛ばす。兵士達はラックの言葉を信じて戦う。その時一人の通信官が入る。

「失礼します軍団長殿!!緊急です!シンファクシ級潜水艦から弾道ミサイル4本!こちらに来ています!」

「大丈夫だ!戦闘を続けろ!」

「はい?!軍団長殿、それは?」

「信じろ、我らには強い味方が居る。」

「・・・了解しました、しかしなんですか?その強い味方とは・・・」

「ふ、それはベルカにある塔(タワー)だ」

「はあ」

通信官は今いち腑に落ちない表情をするが、ラックはベルカ側を向いて

「頼んだぞエクスキャリバー」

そう呟いて・・・



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ウスティオ軍の大反攻作戦 狙撃

2/18

0640hrm

ベルカフラディン海、深度400m

「オーシア陸軍のアウトバーン部隊が壊滅的、ベルカ軍の協力もあり、アウトバーン死守は絶望的、国境線部隊も情報が錯綜してますが、ウスティオ特殊部隊の作戦か、軍団長、師団長が暗殺されて、戦線崩壊は時間の問題です・・・」

「もういい!!何をやってるんだオーシアの愚図どもは!そして我が栄えあるユーク陸軍はどうした!!」

「それが・・・ISAFが環太平洋で訓練の名目で我が国の陸軍部隊が上手く派遣できず・・・友好国エルジアもベルカに恩があるということで中立姿勢を・・」

「いい加減にしろ!!」

シンファクシ艦長、ベルドフは副官の報告に切れて機器のない壁に拳をぶつける。

「もう我慢の限界だ!通常SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)4本発射用意!」

「そ、それは!ダメです!ここで撃てば自分たちの場所を露呈するも同じ、事実ベルカ海軍アブグルンド級潜水艦が包囲網を形成しているんですよ!」

「構うもんか!今撃たないで何がシンファクシだ!なにが弾道ミサイルだ!SLBM水中発射用意!VLS開放準備!」

「っ・・・、VLS開放準備!SLBM4本!4番口から8番口用意!」

「レーダー封止解除!目標地点情報を調べろ!」

水中で停止してたのが一変、非常に慌ただしくなる。

「VLS4番から8番用意出来ました。」

各発射口のレバーを回し、安全装置解除、あとはパネルタッチで発射可能だ。

「分かった、我がシンファクシのSLBMの力を見せつけるぞ!発射(ロンチ)!!」

「了解!VLS開放!ロンチ!」

砲雷担当官がパネルの発射部分をタッチ、次の瞬間、VLSのふたが4門開き、4本のミサイルが水中から出て、垂直に宇宙空間に向かい、目標地点に向かう。

ベルドフは確かな確信があった。しかしそれは自惚れだったという事を思い知る。

Same day

0645hrm

ベルカ国立自然公園

「弾道ミサイル確認!弾着予定地点ウスティオベルカ国境線、現在激戦地です!」

「イージスフォローデータリンク!パトリオットレーダー作動!フェイズド・アレイレーダー正常作動!」

「電力供給正常!蓄電グリーンゾーン!いつでもいけます!」

「反射型衛星迎撃要請地点角度移動、10秒後には弾道弾真上においつきます!」

次々と管制課の迅速な働きで弾道ミサイルはすぐに補足され、そして撃ち落とすために開発したばかりのエクスキャリバーが使用される。エクスキャリバー総司令ヘラン・グワ二ト少将は満足気に見る。とうとう完成した。開発開始から10年、それが実戦投入される。絶対にウスティオに弾道ミサイルを落とすものか!

「ミサイル撃墜の確率が最も高いのはいつかね?」

「はっ!司令、42秒後発射が一番地上のダメージを最低限に抑え、かつ撃墜確率が高いかと」

「分かってると思うがまだこいつは出力が安定していない、チャンスは一度だ。期待してるぞ」

「お任せ下さい!全員ベルカの騎士の名にかけてウスティオ軍を守るぞ!」

「「「了解!!!」」」

管制課担当の兵士は各々の席に座り、モニターを見つめる。1秒でも発射タイミング早くても、遅れても、結果的な成功確率に大きな差異が出る。それだけは気をつけないといけない。

「発射まで10秒!」

発射担当の兵士が宣言、周りに緊張が走る。彼は秒読みを続ける。

「5秒前!・・3・・2・・1・・発射!!」

彼が発射ボタンを押す、次の瞬間、塔の頂上からこぼれそうだった蒼い光がこぼれ一気に宇宙空間に放出される。その光は秒速でも気が遠くなる桁違いのスピードで駆け抜け、そして反射鏡を持つ衛星の特殊反射鏡で跳ね返り、弾道ミサイルを光の奔流に呑みこむ。

3本消失!残り1!

「弾道方向に一閃振れ!」

ヘリスが言う瞬間に、衛星管理担当官が反射鏡の角度を変えて、一閃振る、そして最後の一本も消える。しばらくの沈黙が続く、レーダー担当官がモニターから振り返り、満面の笑みで

「だ・・弾道ミサイル、ぜ・・全弾消失!繰り返す弾道ミサイル全弾消失!見間違えじゃない!本当だ!!」

わああああ!!!

レーダー担当官の言葉で管制課のみならず、整備、電力、外周防衛部隊も喜ぶ、しかしヘリスは違った。

「喜ぶのはあとだ!対潜哨戒機でも潜水艦でもいい!シンファクシの場所を教えろ!奴らにも一閃お見舞いするぞ!」

ヘリスの言葉で我に返った人々は急いで次の目標、シンファクシに狙いを定める。

「アブグルンド級潜水艦の数隻からフラディン海からの攻撃を確認したとの情報が!音紋認証シンファクシに間違いありません!」

「強力なレーダー使用痕発見!場所特定中・・・」

「近くの対潜哨戒機がソナー投下に成功。座標出ます」

「良くやった。レーザー発射用意!」

「電力蓄電、70、80・・・グリーンゾーンです!」

「反射鏡衛星移動確認!発射用意全段階クリア!」

「撃破最高確率発射時間まで15秒前!!」

また緊張の時間がおとずれる。

「!!待て!、レーザー出力異常!」

レーザー担当官からのまさかのストップ

「構わん!撃て!」

「しかし・・・」

「大丈夫だ!この塔を信じろ!」

ヘリスの言葉で全員がまたモニターに向く

「了解、3・・2・・1・・発射!」

今度はさっきよりも若干不安定ながらもレーザーを放つ、レーザーは反射鏡にあたり、フラディン海に落ちる。さっき以上に沈黙が走る。潜水艦からの通信を通信担当官が受ける。そして

「敵シンファクシ、致命傷至らずも弾道弾発射機構破壊及び潜水システム大幅減少!敵が撤退します!」

よしゃああああ!!

また歓喜、トラブルに見舞われながらも高い戦果を上げ、ヘリスもやっと笑いだした。

ベルカ連邦軍超兵器№001「エクスキャリバー」

初実戦投入で4本の弾道ミサイルを落とし、シンファクシを攻撃不能に陥れる大戦果をあげた。

Same day

フラディン海

「くそ!くそくそくそ!!!」

ベルドフはかつてない屈辱を味わった。まさかSLBMが全部落とされ、我々が戦闘不能に陥るとは。直撃は免れたものの、当たってれば海の藻屑は確定だった。いや、今も衝撃波で大多数が負傷している。しかし奴らのそんな余裕はいつまで続くかな?ベルドフは思った。

「あれが・・・「ナグファルム」が実戦投入されれば・・・」

彼は呟いた。シンファクシより高性能で、リムファクシより省人員で動く世界最強の潜水艦、ナグファルム。今回のシンファクシを受け、とうとうその潜水艦が動きだす。



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ウスティオ軍の大反攻作戦 歓迎委員会

2/18

0620hrm

丁度ウスティオ陸軍一平和ボケだったはずの軍団長が大暴走してたころ。

空も大変騒がしかった。

サザンクロスside

<<オキボティより国境線迎撃組全機に告ぐ、敵は予想通り今は消極的だが、戦況を知れば大慌てで増援を送るだろう。お出迎えしておかえり願え!>>

<<<了解!!>>>

二十数機の対空戦闘部隊が国境線を越えようとする。結川がE-767のデータリンクしてレーダーをロングレンジする、すると前方から敵影、数は・・・15かな?

「2よりリーダー、どう行きますか?」

「初手で仕留める、歓迎してやろう、我ら歓迎委員会!叩き落とすぞ!」

「「「了解!!」」」

「で?歓迎員会とはどこから?」

「干物、色々あるんだ、色々と」

「了解、そしていい加減干物はやめ「司令命令だ」OKです」

そう、グラッドに言ってなかったが、しばらく司令命令で干物と呼ぶ。でもまあ

命令解除後も干物があだ名必至!

<<こちらロトリーダーより全機へ、我々は国境を越えてベルカの空で敵を食い止めたい。オキボティ、いいか?>>

<<了解した。越境を許可する。レイファー隊、メナー隊を連れてけ>>

<<協力に感謝する。レイファー、メナー両隊ついて来てくれ!>>

<<了解!>>

ウスティオのTyhoonのレイファーとメナーF-15UFXの二隊がロトに付いて行く

<<ロトリーダーより残留組各隊、特にサザンクロス、侵入許したら承知しないぞ>>

「それはこっちのセリフです。頼みます」

<<いつから君は強気に・・まあ階級は一緒だからいいか、よし、行くぞ!>>

ロト隊前線メンバーは一気に低高度に行くと、そのまま駆け抜けるように行く。それを確認した結川は

「よし、じゃあやるか、サザンクロス隊迎撃を開始する!」

「「「了解!!」」」

<<こちらインディゴリーダー、こちらが見えるか?>>

右下から横に上がる完璧にに張り付くグリペン、彼がか・・・

デリミド・ハインリッヒ中佐か

「初めまして、インディゴリーダー、自分はサザンクロスリーダーです。」

<<敵が多く来るが大丈夫か?>>

「大丈夫です、国民を守るためならこの命・・・」

「分かった。私も命をかけよう、ベルカと、藍色の騎士の名に掛けて」

<<おしゃべりは終わりだ!オキボティより全機、敵機接近、機種はF-15EとSU-27、そして・・・厄介だ、ミグの最新戦闘機2機、情報ではMIG-31Xタイプ!>>

<<まさかベルカより早く実用化してたか、気に食わん、インディゴ隊はその最新機を優先して落とす!>>

<<<了解!!>>>

グリペンが加速する、結川も負けじと加速を開始する、仲間も付いてくように速度を上げる。

接敵まであと少し、目測出来るか目を細めた時

先制はユークのMIGだった。

<<長距離ミサイル!一番脅威の敵に臨機応変に当たるタイプだ!ブレイク!>>

「ブレイク!」

戦闘機達が分散する、ミサイルは狙いやすい敵をめがけて5本が来る。

<<くそ!回避出来ない!>>

<<脱出しろ!レッタ2!>>

F-15UFXのレッタ2が脱出、その瞬間3本のミサイルが当たり散る、残りは空を彷徨い爆散する。空中には白い花一つ、逃げ切ったか、結川は安心と同時に敵に切れた。

「くそ!なんて厄介なミサイルだ!乱戦で反撃するぞ!」

「「「了解!!」」」

サザンクロスは一気に接近

<<支援する、FOX2!!>>

端的に応えるインディゴから反撃のミサイル、敵にミサイルを撃たせない、敵が分散し始める、そこが好機!

素早く入りこんだ結川は目についたSU-37に向く、推力偏向装置があろうとなかろうと落とす。

後ろに付くが敵も中々精強、ロックが定まらない。そこに

「リーダー・・・支援します」

<<後ろのF-15がやっか・・・うわっ!>>

無線が入るとその瞬間、前の機体の旋回方向側面の下から一気に急上昇する機体、SU-37は戦闘機を水平に戻してしまう。

「好機!FOX1!!」

<<しまっ・・・うわああああ?!>>

結川の機関砲で千切れて爆散。敵は・・・脱出しなかったか。

「安らかに眠れ」

呟くと急上昇した機体を見る

「リーダーより4、支援サンクス、そのステルスを学びたい」

「4よりリーダー、グッキル。あとこれは企業秘密です」

「けち、と、右から2機来たよー!!」

乱戦は続く・・・

Sametime

同場所

インディゴside

「敵はMIGの最新型、全機奴らのミサイルは危険だ。気をつけろ」

「「「了解!」」」

インディゴ隊は乱戦地から少し離れた場所で2機のMIG-31Xと交戦をしている。空気を読んだ両国は、最高の決闘場所を用意されてる。

大型機に似合わず最高の機動性を発揮する。

「インディゴ1、エンゲージ!」

軽戦闘機のグリペンが追いかける。左右旋回、急減速でよけようとする。MIGを嘲笑うようにデリミドはグリペンを巧みに操り、まるで最初から予想されてるかのようにぴたりと付く。

<<くそ!敵がひっついて離れない!>>

「一ついい事教えてやろう、戦況と敵の機動が読めれば軽戦闘機は制空戦闘機を圧倒出来るのさ、そして貴様は今は私のただの的だ」

<<ひっ!>>

デリミドのグリペンのターゲットシーカーはMIGを捉え心地よい電子音が響く。

「インディゴ1!FOX2!!」

<<あああああああああああ!!>>

グリペン1の翼下パイロンから2本のAAMが放たれる。MIGは回避も出来ず、パイロットが最後に聞いたのは回避不能の警告音。脱出も出来ずに爆ぜる。

残り一機、デリミドが敵の方向を見ると

<<よくも隊長を・・・サーブ2、FOX3!!>>

AAMを全弾発射する敵、しかも全部超高機動タイプ。噂に聞く、東洋の島国にある独自軍需産業が開発したAAM5、それの改良版がユークにあると聞いたが、それか?

ミサイルは弧を描き、インディゴ全機に向く。だが残念だな

「俊敏性のある軽戦闘機とベルカ空軍を舐めるな」

グリペンとAAMの距離を縮める、そしてぶつかる瀬戸際にエアブレーキON急減速と共に操縦桿を右に倒してロール、AAMは急激な機動に追い付かず空を彷徨う。

<<なっ・・・>>

「ミサイルに頼ったお前の負けだ、グリペン2!」

「了解!FOX2!!」

<<しまっ・・・>>

2から放たれたミサイルの2本のうち1本が翼に当たるが致命傷ではない。だが何とか飛行している程度だ。

「3よりリーダー、追いかけますか?」

「いや、いい、ここで追撃は騎士道に反する」

「了解」

グリペン全機は編隊を組む。

「よし、リーダーより全機、乱戦中の同胞たちの支援に向かうぞ!」

「了解!」

グリペンは空を舞う。騎士道の誓約を背負って。

Sametaime

ディレクタス郊外上空

メビウス・キャプディシーボside

「まさか私達の出番が本当に来るなんて」

F-22を操る、アイノが呟く、彼女の操る機体の部品がISAFからの訓練用分しかなかったため、機体の整備が進められず、不調機であるため、首都防空任務の特別隊長になっていた。ちなみに彼女はメビウスのコールサインのままである。

「キャプディシーボ1よりメビウス、出来る限りの協力します」

F-15UFX、8機の隊長が不安そうに言う。

「メビウスより大丈夫、絶対に勝てる」

「は、はい!」

キャプティシーボ1のファナー・リース少佐は幾分か明るい声で返答する。

<<こちらAWACSスカイガーディアン、B-2やF-22接近!>>

スカイガーディアンは慌てる声で言う、そう、首都に迫る危機は高い。それはオーシアが秘密裏に生産再開したB-2、4機とF-22が12機接近しているのだ。たまたま監視衛星が見つけた。アイノは正直不安を感じた。ウスティオ空軍、特に首都防空のキャプディシーボ隊は精強だ。しかし世界最強のF-22、勝てる見込みが低い、増援が来れば・・・

「こちらに増援は?」

<<スカイガーディアンよりメビウス、駄目(ネガティブ)だ、前線出撃部隊でてんやわんや・・・待て・・・>>

「どうしたの?」

<<高速で接近する戦闘機5機、SU-37が5機・・・IFF・・・味方?!そんなバカな、うちらのSU-37は全機前線基地に居るのに>>

スカイガーディアンが戸惑ったその時

<<初めまして、伝説のISAFパイロット、メビウス、アクィラ隊、通称「黄色中隊」、我が祖国エルジア軍部の命令でウスティオ防空に加わる。イエロー13、エンゲージ!>>

<<イエロー4、エンゲージ!>>

伝説の黄色中隊?!全機が驚きに包まれる。

「メビウスより黄色中隊へ、感謝します」

<<ふっ、ISAFのエースと共闘とは面白い>>

「私もです」

こうして恐ろしく最強なタッグが完成した瞬間だった。



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ウスティオ軍の大反攻作戦 とある連合の最強編隊(エアーフォーメーション)

2/18

0634hrm

ディレクタス首都地区手前25マイル地点

ゴーストside

B-2、F-22の混合航空隊がディレクタス爆撃の為に着々と飛行をしている。F-22,3機が一機のB-2爆撃機を囲うようにして飛ぶ。

<<ゴースト2より1、敵に感づかれたみたいですね>>

<<3からも、事前情報ではあのメビウスも居るとか・・・>>

<<リーダーよりより全機、確かにメビウスや敵首都防空部隊の迎撃は厄介だ。しかしメビウスを除いて練度は首都防空と遜色なしで、むしろ我々の方が数も機体の質も高い>>

<<4より1、なぜ我々は前線部隊の援護よりこんな爆撃のほ・・>>

<<言うな、それは上官反逆で軍法会議になるぞ>>

<<・・・済みません>>

隊長のジョージ・サックス大佐も4の言うことが分かる、大方空軍の方は首都爆撃したという大戦果を報告したいだけ。通常時の首都なら対空部隊、戦闘部隊が存在するが、総動員攻撃で最低限の備え以外防衛していない。つまり今はほぼガラ空きと言っていい。油断してるその証拠に、爆撃隊の爆弾は巡航ミサイルでなく、敵を攻撃してると印象づけられる無誘導爆弾、そして成功も決まってないのに空挺師団を後方に用意している。

<<何があれ我らゴースト隊12機、絶対に爆撃のヘルファイアー隊を守るぞ!全兵装安全装置解除>>

<<<了解!!>>>

<<フェニックスよりゴースト隊、緊急、敵増援確認、機種・・・SU-37?!そしてマッハ二の編隊飛行だと?!>>

いつもは冷静な管制官が珍しく狼狽する。そりゃそうだ、なんせウスティオ空軍、ベルカ空軍ウスティオ管区防空隊のSU-37は最前線に総動員されてると事前情報があり、ここに居るはずがない。

<<敵が呼び返した可能性がある。警戒さらに厳にせよ!>>

<<ゴースト1了解した。全機、このくらいで動揺するな!意地を見せろ!>>

<<<イエス・サー!!!>>>

ゴースト隊は後で知る事になる、まさかそのSU-37が

エルジア最強の部隊だということを・・・

Sametime

メビウス、キャプディシーボ、黄色side

<<スカイガーディアンより各機、衛星情報とこちらから照射する強力レーダーの微かの乱れから演算してレーダーに極力映します。しかし有視界は必至ですが・・・>>

「イエロー13より、十分だ、支援を期待する」

<<了解です!敵機射程範囲、交戦許可します>>

「イエロー隊、エンゲージ、我々が護衛機を叩く、キャプティシーボ隊は爆撃機を頼めるか?」

「お任せ下さい!キャプティシーボ隊エンゲージ!」

「メビウスエンゲージ、首都に一本も指触れさせるな!散開!」

「「「OK! Sky Goddess!(了解!空の女神様!)」」」

そして始まる最強エース達の乱舞が

初手、敵味方ほぼ同時にほとんどの機からAAMが放たれる。

「キャプディシーボ3、タリホー!爆撃機確認!」

<<くそ!ヘルファイアー2より、助けてくれ!追いかけられてる!>>

「イエロー4より13、後ろに敵、排除します」

「普通に避けられるが、ひきつけるからすぐに落とせ」

「イエス」

13の追いかけられてる機体はインメルマンターンを連続ても避けられない。

<<なんだあの黄色のSU-37は?こんな部隊がウスティオに存在するのか?!>>

「機体に頼りすぎだ、イエロー13、FOX1」

<<あああああ・・・・>>

落ち着いた声で的確に機関砲の弾を叩きこむ敵はすでに諦めて弾に呑みこまれ散っていく。

「首都を爆撃させてたまるか・・・キャプティシーボ1!FOX2!!」

<<ヘルファイアー4!くそ!もうだめだー!!>>

AAM,3本に巻き込まれて火を噴きあげて落ちていく。

普段気弱に見えるファナー・リース少佐、実戦闘力はウスティオ国防空軍の紛れもないエースパイロットで、気弱のせいで昇進できないだけで、中佐階級は普通だと言われてる。

「被弾した!操縦ふの・・・」

「主翼が!ああ・・・!」

「キャプ4、被弾、戦闘不能!離脱します!」

「キャプ7、自分もです・・・済みません」

戦闘は優勢、しかしキャプティシーボの2機が落ちていく。そして更に2機が離脱する。

「キャプティシーボ1より各機!最後の爆撃機だ、落とすぞ!」

「「「イエス・サー!!!」」」

4機のターゲットシーカーが定まる。

<<ヘルファイアー1、残念だ。もう無理だ・・・せめての一撃も出来ないのか・・・!!>>

「キャプティシーボ隊!FOX2!!」

爆撃隊パイロットの願いかなわず、10本のミサイルが殺到して瞬間で空の藻屑にする。

<<ゴースト3から・・・不調のF-22から逃げれない!メビウスは悪魔だ!>>

「ふふ、あなたは死ぬ運命、それは変わらぬ事実、さようなら」

どんな回避機動も通じず背中にぴったりと付くこの恐怖感、完全なSモードに入った。

<<逃げ切れない!!>>

「Goodbye、FOX2」

流暢なオーシア語でアイノは呟き、的確にAAMを急所に一本撃ち込み機体は空中分解。

ゴースト1、ジョージ・サックスside

残り一機、ゴースト1、ジョージ・サックスだ。彼とイエロー13が交差する、そして尾翼エンブレムで思いだす。

「思い出した・・・エルジアの黄色中隊・・!!」

<<なかなかのラプター使い・・・イエロー13より全機、私が引導を渡そう。手出し無用>>

ユークとの武器輸出などの協定で中立だったのでは?軍事大国エルジアも、隕石からの復興支援に尽力したFCMBの恩か・・・情で流れたか・・・。双方かなりの距離を取り右旋回。向き合う。

「ラン・トーヤ

スンファ・リーラ、

ホック・レンタ、

リシャール・フォア、

リニア・ユア、

ロッタ・ニャール

ダン・コニア

シルバン・ラック

ヨシュア・クラス

ゼニア・シューズ

コア・エリアニア」

ゴースト隊の部下達の名前を呟く、全員脱出出来ず空に散った唯一無二の仲間達。距離が迫る。

「一矢報いる俺に力を貸してくれ!」

<<彼にふさわしい花道を用意しよう>>

<「FOX2!!!」>

ほぼ同時にAAMが放たれる。そして2人がほぼ同時に回避行動、しかし、ジョージの方が僅かに遅かった。ゴースト1被弾・・・

「があ!!」

黒煙上げるF-22とイエロー13のSU-37がギリギリの近距離で交差する。

「ふふ・・・このまま死ぬのかな?済まない・・みんな・・・仇は<<いつまで寝てるつもりだ?>>?!」

緊急国際無線を使い混線してきた人物、多分イエロー13!

<<正直驚いている、確実に仕留めたと確信してたが・・・脱出しろ。そして生きろ、お前みたいな誇り高く部下思いのパイロットは簡単に死ぬべきでない>>

「そんなことを・・・」

<<生きて足掻け、そしてまたかかってこい、私は待っている>>

「・・・・、まさか敵に教わるとは・・・済まないみんな、まだ死ねないようだ。イエロー13、また会おう!そして次は貴様を地に落としてやる!」

ジョージは言いきると

「ゴースト1、イジェクト!!」

脱出装置を使い、愛機から脱出する。

黄色中隊side

ジョージが脱出する姿を確認する。

「そうだ、恥じる事はない・・、あなたはオーシアが誇るべきエースだ」

イエロー13、ハンス・ヨアヒム・マルセイユは惜しみない称賛を贈る。

「イエロー4より、一騎討ちお疲れ様です。」

13にぴったり付くのは、不動の二番機、アンナ・ヴェルバである。

「ああ、遠距離派遣でそのまま戦闘は流石にきつかったな、君も4も大丈夫か?」

「はい、大丈夫です」

緊張感から解放された2人の会話は柔らかい。そして二人の空間が少し甘い感じになったので、空気読んだ全機が距離を置く。

<<ふう、メビウスより、この雰囲気は苦手だわ、コンプリートミッション、キャプティシーボ隊、黙祷の時間は?>>

<<キャプティシーボ1より、大丈夫です、今は敬礼しか出来ませんが、オーシアを追い返したら、落ちた2人にミッシングマンと花をたむけます>>

<<了解した。メビウスより、コンプリートミッション、RTB>>

全機がウスティオ最大の基地、ディレクタス基地に帰投する。

0700hrm

ウスティオ空軍特別前線基地

「おら、ひよっこども、同胞を撃つかもしれないが覚悟出来てるか?」

F-15S/MTO、2機とF-14D、4機が離陸しようとする。

「覚悟無かったらここに来ません、正解でも不正解でも・・・」

「言うじゃないかブービー」

「何ですか?そのあだ名?」

ウォードック1ブレイズことクライヴ・エイミスが聞き返す。

「気にするな、これからもどのポイントでもブービーだ!」

「じゃあ自分はチョ「黙れアルヴィン・H・ダヴェンポート少尉!」ちょ!」

チョッパーは即却下だった。

「隊長達、離陸の順番です。行きましょ」

「ナガセ君は本当にお母さんタイプだね~」

ケイ・ナガセが咎めると、レッドバロンが笑う。

「大丈夫だ、出来るんだ、出来るんだ・・・」

「グリム、大丈夫、もしもの時は力合わせましょう」

「はい!ナガセ少尉!」

「「「本当にお母さんだ!」」」

「・・・・うるさいです」

「「「ごめんなさい」」」

全員が声を合わせて、ナガセが苛立つ。

「よし、本当に出撃の時間だな。我らオーシア、ハーリング直属隊、出撃!」

「イエス・サー!」

レッドバロン、ハートブレイク、ウォードック隊が第二波攻撃部隊として飛び立つ。

そしてその頃最前線では大戦乱が繰り広げられてた。



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ウスティオ軍の大反攻作戦 暴走は続くよどこまでも

2/18

0700hrm

国境線平原

フェルナンデスside

アウトバーン解放戦は残党討伐でほぼ解放されたも同然で、重要任務の一つが完遂された。しかし喜ぶ暇は無い。フェルナンデス率いる第四軍団は討伐部隊を残して後ろ横から突撃しようとしている。

「戦車は大丈夫か?」

「はい!何とか最大スピードで走ってます!」

操縦士、サーガ・コルナ伍長が応える。

「軍団長殿、やはり主砲はダウンしてて、撃てるは撃てますが、命中率は下がります!」

射撃手、ウーラ・ソウファ伍長が軍団長に言う。

「むう、それで突撃は単なる迷惑だな・・・・。ん?あれは?全軍とまれ!」

「?・・・全軍!軍団長命令!とまれ!」

戦車、装甲車が止まる、増援に来たA129マングスタはも空中待機する。

「あのタンカーは?」

「あれは・・・オーシア軍が捨てたんでしょうか?」

「済まんが重武装隊と工兵で見てくれないか?」

<<了解>>

装甲車から降りた兵士が近付く。

<<斥候より、これは・・・液化ナパームですね。火炎放射兵が居たんでしょうか?>>

「ナパーム・・・また珍しいものが、しかも液化か・・・ふふふ」

「「「やばいぞ」」」

フェルナンデスがにやりとすると2人は背筋が寒くなる。

「残量は?」

<<それが、ほぼ満タンで、多分我が軍の攻撃の混乱でオーシア兵が放棄したものかと>>

「そうか・・・サーガ君、ウーラ君」

「はい・・・何でしょう?」

「牽引しろ」

「はっ・・・?」

「しろ」

「「「り・・・了解!!」」」

2人はあまりの予想通りの軍団長を見て苦笑いした。

「あと・・・通信兵!!」

<<なんでしょう?!>>

「とある所に連絡を繋いでほしい」

<<どこでしょうか?すぐにお繋ぎします>>

フェルナンデスは少し間を置いて

「ウスティオ国防軍最高司令、グラン・バッシュ元帥閣下、そして・・・第三軍団軍団長、スワン・ディレクに」

<<はっ?>>

「至急!!」

<<了解!!>>

インカムを置いた軍団長は更に笑みを深め

「オーシアども、これでお前らはおしまいだ」

と呟く。

Sametime

アウトバーン

「あれは戦車長でなく悪魔だ。グランスラッシュの再来だ」

「同感だ」

オーシア兵たちがアウトバーンで倒れている、そして彼らにはあるものがない。

M4、M16小銃である。

「106丁!107丁!」

クラウスは小銃の山を築いている。オーシアは抵抗しない、既に逃げている。

「あれは・・・もはやラン「言うな、一人兵士のその名前はこの世界には居ない」了解」

まさしくラ○ボー・・・。

戻ってきて

0720hrs

国境線ウスティオ軍最前線

第一軍団長side

「軍団長殿!予想よりも敵が頑強で・・・」

軍団長のラックは既に焦りが見え始めていた。このまま抵抗が激しければ、押し返される。士気は未だに高く、航空支援も適切だが敵の数の暴力は予想以上だ。

後方の空挺師団も奮戦するも、状況が好転するとは言えない・・・・。第二軍団もそろそろ疲れが見え始めている。

「ぐ、軍団長殿!!」

文字通り転がりこんだ通信兵が目の前に来る。

「どうした、戦場では冷静さを失ってはならんぞ!」

「申し訳ありません、しかし本部から、第四軍団が敵後方から攻撃すると」

「それは手筈通りだ。そこまで驚かないだろ」

「い、いえ、それは作戦通りですが・・・、戦線が突破されて、降伏通達を出すまで、敵を都市部に近づけないように後方展開してた第三軍団が前進開始!最前線の増援を・・・!」

「どうゆうことだ!そんな話・・・誰の指示だ!」

ラックは席からダン!と立ち上がる

「それが・・第四軍団長が要請して、最高司令、バッシュ元帥閣下が容認したと」

「この戦況を理解していないのか!どうしてそんな、あの暴走軍団長が!」

ラックがいらつき始めると、また通信兵

「軍団「今度はなんだ!」はい!第四軍団が火炎放射を開始!突破しやすくしています!」

「は?」

ラックは間の抜けた返事をする。

「火炎放射だと・・・あそこ所属の部隊には大規模な火炎放射なんて」

「それがしてるんです!」

「どうゆうことだ・・・だが好機は間違いないんだな?」

「はい!短期決戦のキーかと・・・」

「・・・・よし、第四軍団長に電文!「あなたの行動が失敗したら怨む」と、全軍突撃!」

「了解!」

通信兵は駆け出し、周りは更に慌ただしくなる。

「神よ・・・居るならば、我らに勝利の栄光を」

ラックは呟くと、また指揮所の定位置に着くのだった。

0730hrs

国境線オーシア軍後方

フェルナンデスside

「以上が第一軍団からの電文です」

「分かってるさ!ヒャッハー!汚物は消毒だー!!」

「まさかな・・・・」

「オーシア軍、哀れ・・・・」

フェルナンデスは盗んだタンカーに、これも盗んだ高圧ガス機を接続、工兵が重武装隊の火炎放射器のホースとタンカーに繋ぎ・・・

「焼き払えー!!」

<<<イエス・サー!!>>>

三人がかりでホースを扱うほど強力な火炎放射が出来るようになった。しかもタンカーなのでかなり長い時間。

<<あんなチート兵器に勝てるか!くそ!戦線後退を!>>

<<ここで引いたら戦力分断が!>>

<<敵が軍団規模で増援が来る!助けてくれ!>>

オーシア軍は大混乱を起こし、連携のまずさが更に露呈する。

「軍団長殿!これ、国際条約違反じゃ」

「条約何それ美味しいの?(?_?)」

フェルナンデスは真顔で返す。

「ああああ、もう!分かりました!条約は無いですね!完全に理解しました!」

ウーラはもう半ばやけくそ気味になる。

「分かればよし、サーガ君!行け!」

「了解です!!もう突撃しかありませんよね!!」

サーガも毒され狂乱状態で突撃を開始する。

戦線は現在ウスティオが薄氷で優勢なり。

Sametime

ベルカ領海外

4機の翼が高度400フィートと低空すれすれを飛行している。ベルカ空軍、機種はA-10だ。

「まさか本当に艦船、しかも超ド級の潜水艦撃沈とは、軍部も中々生かしてるな!」

「全員全部撃沈だよこんにゃろ!」

「まあ厄介払いかもしれませんが、私はこの大口径砲が使えるならどこでも!」

「ふふふふふふふ、弾幕勝負なら負けないよ」

ヘル・エンジェルス、それが彼らの隊の名前。ベルカ空軍の異端児として扱われ、あまり印象が良くない隊。その隊が任された任務

エクスキャリバーで損傷負って浮上している潜水艦「シンファクシ」撃沈。

その先頭に立つのはギュンター・フォン・シェーンコップ、階級は少佐だ。

「フェルナンデスを苦しめた潜水艦は沈めるぞ!そして帰ったらベッドと女と酒だ!」

「「「一言余計な部分除いて、イエス・サー!!」」」

ギュンターの親友、フェルナンデス、あいつは我がベルカが死にかけた時に共に戦った陸の戦友。奴を苦しめようとしてる奴は潰す!

「そういえば、護衛機は?」

ユーマ・アントー二少尉が言う。確か二機の護衛機が・・・

<<遅れて申し訳ない>>

次の瞬間、後ろから2機のSU-33が、A-10より更に低い高度150フィートをマッハ1.5で通り過ぎる。通り過ぎると編隊を崩さず減速しながら、張りつめられた糸に沿って飛んでるかの錯覚に陥るぐらい完璧な右旋回で4機の右後ろに張り付く。

「またかっこいい登場だな。君たちは?」

<<護衛を任じられた空母「シーフェスティング」所属トゥルブレンツです、リムファクシ撃沈部隊、ヘル・エンジェルスですか?>>

「そうだ。そうか、君たちが曲芸飛行の部隊で夫婦ぶ・・・」

<<<夫婦ではありません!>>>

ギュンターの言葉に2人が口揃えて否定、だけどあんなに互いに守ろうと寄りそうその編隊飛行じゃ、よほど仲がよく、心通わせてるんだな。たがいが認めないけど自然カップルか。

「まあいい、あと少しで作戦開始時刻(ゼロアワー)だ」

「傷ついてる潜水艦に手間取るなよ!」

エルンスト・ガーデルマン少尉が叫ぶ、本当に操縦桿握るとガラが悪くなる。

「さて、ヘル・エンジェル隊、エンゲージ!」

「「「イエス!レッツゴー!!」」」

<<トゥルブレンツ1より、あの暴走攻撃機を守るぞ>>

<<了解、トゥルブレンツ1>>

SU-33も編隊を崩さず一気に高度を上げる。

シンファクシ撃沈作戦、スタート。



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戦場で暗躍するもの

2/18

0620hrs

オーシア陸軍前線本部

「一体何がどうしたんだ!」

「ウスティオ軍が総攻撃を仕掛けてきたんです!我々は完全に敵に翻弄されており、更に後方には敵の精鋭、空挺師団が、ヘリボーンや輸送機からパラ降下しています!」

オーシア陸軍第4軍団軍団長セピア・ツーアネス大将とウスティオ攻略方面隊ラック・スティーラー中将が早歩き早口で応える。

「ああ、軍団長!お逃げ下さい!」

後ろから要人護衛の為に選抜されたソルジャーと呼ばれる一般部隊以上特殊部隊未満オーシア兵士

「どうした、何が・・・」

「敵がこの施設制圧を、しかもその敵・・・あ・・・?」

「え?」

「ゴフ!」

いきなりソルジャーが血を吐き倒れる。背中にはナイフが左胸部分に突き刺さってる。

「ひっ!」

セピアは引きつった声を出す。

「おいおい、仮にも軍団長あろう方がこんなぐらいで悲鳴あげるとは・・・」

後ろから現れるのは、全身最新式のデジタル迷彩を纏い、顔も最低限の部分しか露出しない男が3人

「お・・・お前らは・・・」

腕には敵国ウスティオの国旗、そしてその上にはグランスラッシュの絵、混乱してるラックの頭にとある言葉が浮かぶ

「まさか・・・UESOU?」

「ふ、さすがに分かるか、情けないな方面隊長の方が分かるなんて」

ラックは足を震わせる。世界最強と呼ばれる特殊部隊に肩を並べる隠密奇襲戦隊、ウスティオ国防軍最精鋭特殊作戦隊。

「お・・・お前らなんてすぐに我が軍の精鋭に殺されてしまうんだ!」

セピアは大声を上げ虚勢を張る、しかしリーダー格の男が腰に付けてた、小型特殊無線機の音量を上げて、2人に見せる。

「こちら制圧部隊、ソルジャーと呼ばれる精鋭(苦笑)部隊は全滅、他軍団、師団長も順調に殲滅中」

「これでも助けに来てもらえるかな?」

「あ・・・ああ」

セピアは後ろずさりしようとしたら足がもつれて転げる。

「このナイフはなー」

リーダー格の男が死んでるソルジャーからナイフを抜きとる。

「ベルカ工業廠短剣部門が開発した特殊ナイフで、血を浴びて放置しても特殊加工でナイフの切れ味が落ちない」

「ひ・・・・こ・・・ここで死ぬなら、あああ!!」

ラックはべレッタを引き抜き・・・引き金は引けなかった

「があ!」

「遅い」

ブシュッ!とラックの首から血が噴きあげる。撃つ前に首をナイフで掻き切った。声もあげれず倒れるラックの首元には段々弱くなる拍動と共に血だまりが出来る。

「ひいい!」

セピスは完全に腰が抜け、震えている。

「い・・・命だけは!お願いだ!」

「軍人として情けなさすぎる。じゃあな」

容赦のない一振り、彼もまた血だまり作って死ぬ。

「隠密組織と言うには少々派手じゃないかい?中隊長・・・おっと、名前は明かしてはだめだったな」

「コードネームも言わず、中隊長でお願いします。あなたも中々怖い人だ。温厚そうな顔して」

「ハーリング上院議員の頼みならば君たちの手引きなんてお茶の子さいさい・・・家族はちゃんと保護してるんだな?」

「大丈夫です、ウスティオのディレクタスで平和に暮らせるように手筈を整えてます。もちろんあなたの保障も私達がしましょう」

後ろから来た男が、中隊長と呼ばれる男に近づく。

「まあ君たちの実力は知ってるし、頼んだよ」

「了解、Mr」

中隊長の目の前に居る男、第4軍団第12機械化歩兵師団、師団長、ガリック・ジョーンである



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side story 乱気流

読者考案キャラです。


ベルカ戦争から2年前

2008

4/14

2200hrs

エレノアside

アンファング波止場

一人の女性が千鳥足で歩く。

「何で海軍航空隊左遷だよこんちくちょー!!」

彼女の名前はエレノア・ロートシルト、彼女は千鳥足のまま満天の星空を眺めていた。

「ボス、私はどうすればいいんでしょうか?」

ケラーマン教室でお世話になった。今は居ないケラーマンに問う。彼女は旧ベルカ騎士団の末裔でそれなりのお嬢様だった。彼女はいつからか空に憧れ15の時に両親に勘当されながらもベルカ空軍に入隊、そしてケラーマンの指導の下メキメキと実力を伸ばし、ルーキーエースにまで昇り詰めた、しかし

「うう、なんで・・・・」

あけすけで感情がそのまま出る性格なので喜怒哀楽と限定的にツンデレ(?!)がある。

しかし彼女が海軍航空隊に左遷されたかというと、それは彼女にも悪い部分があるからだ。まず、彼女が最初に配属されたのはB7R外周防空隊だった。[内部防空隊はエリートが担当]その部隊で彼女は命令に反して、隊長機を執拗に追い回したり[この時から密接編隊飛行のノウハウがあった]、ルーキーでは普通できない技を次々やってのけ、防空隊内部から忌み嫌われてた。

そして事件は起こる。

B7R内部の哨戒部隊交代の時、交代部隊がの1機が機体トラブルで交代部隊が遅刻、警備が手薄になった時、オーシア空軍機数機が威嚇領空侵犯。

しかし内部防空部隊は今は居ない。即座にウスティオ空軍B7R内部防空隊に急行要請をしている間に、エレノアを始めとする新人達が暴走、上官命令無視で内部に侵入。この時は幸いにもオーシア空軍は即座に撤退した・・・が、さらなる問題はそのあとだった。

なんと防空国境線を越えて増援に来たウスティオ空軍F-15UFX6機と、新人隊達のレーダーのIFFが敵と誤認識、双方危うく同盟国で戦闘を開始寸前になり、大問題に陥る。

もちろんベルカに赤っ恥をかかせた独断パイロット達は始末書を書くことになった。そしてエレノアは普段の素行と、上層部に喧嘩売ってた事から左遷決定にはさほど時間がかからなかった。

「くうう~、何でなんで!私だけ左遷なんて!・・・あ」

彼女が見た先に居るのは、エレノアよりも落ち込んでる男、普通ならスルーだが、酒とストレスで全ての状況判断が壊れていた。

「うん、これは神さまからストレス発散ですね!分かります!」

次の瞬間はじくように走り出した彼女はそのまま

「ドッセーーーイ!!」

「がはあああ?!?!」

そのまま男は海に落ちる。

「はあーーすっきりした!さて明日から誰の配属になるんだろ?」

結構な快感でストレスが発散された。それが新しい隊長グレン・アーガイルだったとは・・・

体当たり前のグレンside

アンフェング波止場でたたずむ男、当時24のグレンはとことん落ち込んでた。

祖父の世代でオーシアからベルカに移民した、つまり俺はベルカ人でない、父も母もオーシアのオーシア系ベルカ人だ。

ベルカ空軍に入隊したのは理由はあまりない、あるとすれば空が好きだった。空に憧れてベルカ空軍に入隊した。しかし現実は違った。

ベルカの騎士とは違う人間、というくだらない理由で、かなり忌み嫌われた。階級昇格を邪魔する奴はいなかったが、しかし、上層部の腐れ共が昇格したから海軍行けと・・・直接は言ってなかったが、そう聞こえた、そう見えた。

配属されたのは、俺みたいな移民組パイロットに理解ある空母「シーフェスディス」だ。しかしこの空母で大失態をやらかす。

SU-33をついこのあいだ着艦で沈めてしまった・・・・。

既に30枚を越える始末書、減俸、譴責、しかも「溺れるトンビ」の称号・・・・。最悪だ。しかも階級降格で中尉、もう死にたい。

更に新しい隊を作るという事で、部下が空軍で規律違反しまくりのじゃじゃ馬とか・・・押しつけられた。俺のライフはもうゼロだ!!

鬱になりかけた時・・・

「ドッセーーーイ!!」

「がはあああ?!?!」

そのまま海へドーーン!今週二度目の水びたしかよ!

「はあーーすっきりした!さて明日から誰の配属になるんだろ?」

見上げると、暗闇のなか千鳥足の中々美人な人が呟くと、そのまま行ってしまう・・・おーい、助けてくれ。

助かったのは探しに来てくれた戦友が来る一時間後だった。

翌日

0900hrs

シーフェスディス甲板

「で?配属最初の言葉は何かな?」

「えーと、申し訳ありませんでした!!」

エレノアでは珍しい90度の完璧な謝罪お辞儀。そう突き落とした相手がまさかの相棒(バディ)とは・・・。エレノアは覚悟した、上官を突き落とすのはさすがにやり過ぎ、場合によっては・・・きつい譴責か、編隊紳士の上官だと・・・いちゃうふもある[実際アメリカであったらしい]。少なくとも始末書はさけられない、配属一日目ではまずい。しかし隊長は違った。

「で、ストレスは発散出来たか?」

「え・・・」

「正直に!」

「はい!結構快感でした!」

「ドあほ!」

グレンのデコピン炸裂!エレノア10のダメージ!

「痛いです!隊長!」

「始末書ないだけありがたいと思え!今度は許さんからな。まあ俺も偉そうなこと言えない事したからな・・・」

額を撫でるエレノアはグレンの顔が曇るのを見た。ああ、彼も私とおんなじ[多分違う]境遇なんだな。

「問題児バディですか?」

「そうだな、問題児だ。だから俺はお前の保護者だ!覚悟しろ問題児!」

「それはこっちのセリフです!隊長!」

2人は言いあい、そして同時に吹く。

「まあお互い生き残って戦果残そう!相棒は絶対に離れない!」

「イエス、徹底的に後ろに付きますよ!よろしく!」

双方がっちりと握手。この誓いが後の曲芸飛行につながる。

「そういえば、部隊名は?」

「ふ、既に決めてる」

グレンは少し間を置き

「問題児のコンビ、トゥルブレンツだ」

「乱気流ですか・・・ぴったりですね、それでいきましょう!」

エレノアは満面の笑みで頷く、グレンがそれでクラッときたのは一生の内緒だ。

ちなみに余談だが、2人が喧嘩する事案トップは、珈琲と紅茶のどちらかが美味しいかであった。

更に余談、このカップルと認めない夫妻レベルのこのコンビを周りはこう思う

「爆発しろリア充!」



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シンファクシ撃沈作戦

2/18

0732hrs

ベルカ領海外

トゥルブレンツside

<<ヘル・エンジェルより護衛機!その曲芸飛行で敵をひきつけてくれ!>>

「トゥルブレンツ1、了解した、行くぞ2・・・2?」

「あ・・・済みません、了解しました」

「どした?何かあったか?」

密接編隊飛行を続けながら、敵が放つ30mmAA GUN4門からの砲火を華麗に避ける。

「いえ、あの出会ったころをふと思い出して・・・ふふっ」

「おま、なにを・・、まああの時あんな初対面であんな一撃はないよ」

「それは!言わない約束でしょう?!」

「先に思い出し笑いしたお前が・・・とよっと・・・悪いだろ!」

迫って来たSAM、3発を2人とも少し回転して受け流す、そのまま編隊飛行。

「ううう。意地悪ですね~」

「ああ、紅茶党の君をいじめるのは実に楽しい」

「なっ、珈琲党のあなたに言われる筋合いありません!」

更に集中するAA GUNをもう曲芸飛行で生きろよぐらいの素晴らしい編隊を維持しながら高速度で弾の波より早く飛ぶ。

「まあ、俺が開く喫茶店は珈琲ばかりだ。・・・誰かさんが手伝いに来ない限りはな」

「はっ!ブツッ!・・・」

「おい?通信切るな!!おい!」

エレノアは通信を切り、小声で

「喫茶店開く夢、一緒に叶えますよ、トゥルブレンツ1、手伝いますよもちろん」

フッと、顔が緩むエレノアは通信をオンにする。

「おい!いきなり通信切ってどした?」

「いえ、通信不調で途絶しました」

「嘘だっ!」

「うそじゃありません!そしてどこの真似?!はう!」

次々来るSAMの波を編隊飛行しながらまるで単機のような軽快さで避けていく。

byひ○らし、そしてこいつら爆発しろ!

Sametime

ヘル・エンジェルside

「おいお前ら!全弾ぶちこめ!」

「「「Yeehuraaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!」」」

ギュンターの言葉でA-10が攻撃を開始する。

「ふふふ、シンファクシ!この巨大ライフル砲でひれ伏しなさい!」

女性パイロットユーマは言うなり、たった一つの兵装、105mmライフル砲が火を吹く、決して速射は出来ないが、一発一発の重みが違う。ちなみにこいつは、ベルカの前世代戦車「サーバル」からA-10に取り付けた。自壊防止のために、彼女の機体の下部の補強は半端ない。その分他の装甲が薄くなる。

ドーン!ドーン!

腹の底から響くこの衝撃に彼女は震える

「はあ~、このサウンド、この衝撃、これが陸上の砲撃なら更に最高・・・」

うっとりした声でユーマは感傷に浸る。最近これが自由に撃てなかった反動だ。

「たく、3は・・・お?」

ギュンターはJDAMの精密爆撃を更に精密にしようとしたら、丁度潜水艦上部からF-35とハリアー。トゥルブレンツなら瞬殺だろうけど、一人、こちらには暴走人が・・・

「ヘル4!お前のハッピートリガータイムだ!潜水艦上部、発艦部分を撃て!但し3分の1までな!」

「了解です!ヒャッはー!」

応えるのはステラ・クロファード、階級少尉。彼の特徴は、ミサイルでなく40mmガトリング砲、そのガンポッドをハードポイント全部に付けていつも飛行する。普段は大人しいが、このハッピートリガーモードになると・・・。

「ヘル・エンジェル4!殲滅開始(ジェノサイド)!」

次の瞬間、毎秒65発のガトリングが吼える

「ヒャハ・・」

ステラに笑いがこぼれる

「ハハハ・・ハハ・ハハハハハハハハハ!!!!」

弾幕は潜水艦を包み込む、そして発艦しようとしてた二機は、40mmの威力を前にして、紙が引き裂かれるように穴が開き、爆発が起こる事もなくそのまま紙くずに近い鉄クズになる。

<<なんだこの弾幕は?!>>

<<変態すぎる編隊飛行に無慈悲のこの攻撃?!このままじゃ艦がもちません!>>

<<精密爆撃でVLS一部損傷!発射不能!>>

<<大口径ライフル砲で浸水確認!A1ブロック封鎖!>>

シンファクシは多重攻撃を受けて、着実にやられてる。

「ハハハ・・・ふう、快感!」

ステラは約1000発のガトリングを放ち、航空部隊射出不能にした。しかしまだこれは全弾数の4分の1だ。

<<くそ!防御システムエラー!システム全停止を30秒間だけ欲しい>>

<<ばかいえ!このシステムで敵が近づけないようにして、敵の攻撃を最低限に防いでるんだ!ここで止めたら蹂躙される!>>

<<システムリセットしなければどのみち自滅だ!>>

<<・・・くそ、15秒で直せ!>>

<<尽力します!システム停止!>>

宣言するとシンファクシの攻撃がやむ。その瞬間をギュンターは逃さなかった。

「2!ランチャータイムだ!全兵装無力にしてやれ!」

「了解だぜ隊長!このくそみたいな弾幕で撃てなかったが今は撃てる!」

副隊長・エルンスト・ガーデルマン中尉は無防備のシンファクシの上に行く、そして、

「食らえ!Multiple bullet Purgatory(多弾煉獄)!!」

その刹那、ハードポイント全てに付けた、強力なロケットランチャー8本1筒、12セットが無誘導に、雨となってシンファクシに降り注ぐ

「炎よ!舞えよごらあ!!」

シンファクシに着弾したランチャーは表面を舐めるようにして爆ぜ、次々と対空武装が死んでいく。

そしてシンファクシでは最悪の決断が下されてた。

 

Sametime

シンファクシCIC

シンファクシside

「対空防御火器90%損失!防御火力壊滅!」

「艦長!もはや逃げ切る事は実質不能!降伏か退艦の指示を!」

「ふざけるな!」

退艦の進言した副官を艦長ベルドフが殴り飛ばす。

「こんな事になっていけないんだ!いけないんだ!」

ベルドフは既に精神錯乱状態に陥る。

「住居区浸水!ダメコン!ダメコン!」

「消火活動はもう無理だ!B3ブロックを隔離封鎖!」

「おい!そのブロックにはまだ3人居るんだ!仲間を水死させる気か?!」

「この潜水艦の延命の為にはやむを得ないんだ!許せ・・・」

次々は入ってくる潜水艦の被害状況、シンファクシは攻撃重視で、ダメコンの構造が脆弱だった。

「機関室よりシンファクシはもう持ちません!国際法に則り原子力を停止します!」

「そんな事がゆるされ「船乗りとして海を汚さないのが最後の良心だ!」・・・」

機関室長の切れた言葉にベルドフは黙る。

「もう・・・おしまいなのか・・・大戦果を残せず・・・これなら・・これなら・・・ベルカ首都ディンズマルクを破壊してこの艦の有終の美だ!VLS20番用意!!」

「はあ?!20番は駄目です!それは非人道です!それにVLSは発射までの時間が非常に長く、通常弾道でもやばいのにそんなド級・・・」

「黙れ!艦長権限で発射する!どけ!!」

「おやめ下さ・・がは!」

弾道ミサイル管制官を殴り、そして座る。そして

「多弾頭核ミサイル「コネッツ」発射!」

ユークトバニア海軍最新型最強ミサイルが発射されようとする・・・。

0745hrs

A-10が編隊を組み直して、脅威の無いシンファクシの上を飛ぶ、その近くで、いつまでもバカップルいちゃつきにしか見えない喧嘩をしながら飛んでる。完璧な密接編隊飛行。

「あ~、まだ3発の105mm残ってる。潰したい・・・うずうずする。」

「ランチャーがもうない・・・ああああ!イライラするなあ!ベルカに盾つくなら殺してえ!!」

「ガトリング・・・まだ残ってるんだ。撃たせてくれ、めちゃくちゃ撃ちたい・・・」

「おいお前ら、一応シンファクシからの降伏が来るかもしれないから待てと言われてるんだ。ここは待たないと今後暴走を許してもらえないぞ」

「「「は~い」」」

「だけどとどめは俺がさす!今日の基地の可愛いお姉ちゃんの自慢話のたねに!」

「「「おおい!!」」」

<<トゥルブレンツ1より、仲がいい部隊ですね>>

「「「貴方がた程ではありません!爆発しろバカップル!!」」」

<<トゥルブレンツ2よりバカップルってなんですか!バカップル・・・て、あれ?>>

<<2、どうした?>>

<<あの、破壊したVLSの後ろ部分、ゆっくりですがVLSみたいのがスライドして開いて・・・>>

<<・・・・まさか・・・トゥルブレンツ1よりヘル・エンジェル隊!まずいSLBM!>>

「それは分かって<<分かって無い!>>なにおう!どういうことだ若造!」

<<海軍航空隊で原子力潜水艦の奴に聞いたんだ!大抵大きいVLSは、多弾頭核だ!>>

「!!!、嘘だろ・・・」

「それはさすがに・・・」

さすがのヘル・エンジェル隊にも動揺が走る。

<<エクスキャリバーや迎撃部隊に要請する、時間稼ぎに沈めろ!>>

「いや、その心配はない!4!全弾ガトリングをVLSにぶちこめ!ミサイル沈めろ!」

「了解!ハハ・・・」

ステラが旋回すると

「ミサイルなんて弾幕に呑まれてつぶれろ!ひゃは・・・ギャハハ・・・ハハハ・・アハーッハハ!ギャハハハ!」

シンファクシに向けてガトリングを叩きこむ。その時、ミサイルが上がる

<<間にあえ!>>

「ヘル1よりトゥルブレンツ1、大丈夫だ、我々の勝ちだ!」

核弾頭の胴体が出ると

「ミサイル死ねやーーー!!」

ステラはその胴体に撃ち込む。ミサイルは引き裂かれながら飛び立つ

<<間に合わなかったの?!>>

エレノアの涙声、本当に感情が色々でてくるな

「ヘル・エンジェル1より可愛いお嬢さん、大丈夫、すでに管制装置は死んでる」

と、その瞬間、宇宙空間に飛んだミサイルが弾けた。幸い核は起動してないようだ。

<<トゥルブレンツ1りより、本部が撃沈命令出した!>>

「全弾ぶちこめ野郎ども!!ベルカでもフェルナンデスでも仲間を苦しめる奴は死ね!!」

「Yerhaaaaaaaaaaaa!」

本当に残弾を容赦なく攻撃を開始、本当の地獄(ヘル)が開いた。

0750hrs

シンファクシ艦内

シンファクシside

「沈む!シンファクシが!」

「もう駄目だ!こんな飽和攻撃に耐えられるはずがない!」

「退艦命令出た!退艦!退艦!!」

「海水が浸水・・ごばぼごご」

すさまじいスピードで沈むシンファクシ、艦長の居るCICにも水が入る。ここも数分ももたない。

「私達栄えあるユーク海軍、もはやその栄光すらも拝めないのか・・・」

ベルドフはゆっくりと椅子に背持たれる、既に退艦命令は出したが、多分助かる乗員は1割くらいで奇跡だ。副官は既に退艦する乗員を先導するように命令した。

「シンファクシ、こんな痛い思いで沈めるのは済まない。私の命を持って、代償としよう」

ベルドフはゆっくりと目をつむる。その瞬間、海水が大量浸水してベルドフを包み込み、そして沈む。

0753hrs

シンファクシ、撃沈

0800hrs

場所不明

「シンファクシ沈んだか」

「前線で勇猛に戦い散りました。しかもコネッツ無断使用も」

「ベルドフの暴走か・・・。次は私達か。ナグファルム到着まで我々は勇猛果敢に戦い、戦果をあげるぞ!」

「オオーーーーーー!!」

約200m地点で沈んでるユーク海軍最新潜水艦リムファクシがベルカに着々と向かってた。

 

Sametime

ヘル・エンジェル、トゥルブレンツside

「よし・・・よし、シンファクシ撃沈だーいせんかーー!!!ヘル・エンジェル最強!!」

「「「やっはーーー!!!!」」」

ギュンターの言葉に全員が叫ぶ。A-10、4機本当に全弾撃ち切った。

「今度は105mmの榴弾砲付けようかしら」

「ミサイルをもっと撃ちこみてえ~!!」

「ふふふ、ハッピーハッピーみんなガトリングでぐしゃぐしゃ」

ヘル・エンジェルは思い思いに喋る。

「あとは我が大先輩で大親友のフェルナンデスが勝てば」

ギュンター達は盛り上がりに上がってた。

そしてそのそばではまた別のSU-33の二機

「トゥルブレンツ1より、お疲れ2」

「お疲れ様です。今日は編隊飛行しづらい環境でしたね」

「まあな・・・クク」

「どうしました?」

「いや、あのいつも強気なお前が涙声で・・クク」

「ひど!そうゆう1だって少し動揺してましたよね?!」

「してない!」

「素直にならないとたまたま・・・たまたま貰ったラティオのベルーダの珈琲豆あげません!」

「な・・・え・・えと・・お前が買いたいな買いたいなほざいてた、サピンのクイーンスマイルの紅茶葉を友人に押しつけられて手に入れたやつをあげようと思ったが気が変わるぞ?」

「ううう~、意地悪・・」

双方貰ってない、貯金崩して秘密で買っていた。ふと言い争いをやめると、さっきまで騒がしかったヘル・エンジェル隊が黙ってる。

「トゥルブレンツ1より、あの・・・どうかしました?」

「う~ん、ヘル・エンジェル1より、君たちネ」

「そんな会話は単なる」

「恋人同士の会話で」

「それなのに認めないお前らは」

「「「爆発しろ!このリア充!」」」

「「「はい~~?!」」」

ヘル・エンジェルの皆様は食傷気味になったようだ。



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ウスティオ軍の大反攻作戦 束の間の休息

2/18

0740hrs

ソーリス・オルトゥス基地

戦闘機輸送機が飛び立っては着陸して、整備兵は過労になるくらいに走り回る。その時8機の戦闘機。

サザンクロス隊だ、彼らは第二波の部隊に後を任せ、無事に全機目標の基地に到着出来た、結川の残弾はゴートンから付けられた謎のAAM一本と、機関砲数十発だ。他の奴らも一緒だ。

きれいに着陸してハンガーの前に着くと、整備士の合図でコックピットから降りる。

「お疲れ様です!サザンクロスのみなさん!これどうぞ!」

「ああ、ありがとう」

すかさず走って来た、普段はデスクワークの事務職員が500mℓペットボトルを渡してくれる。渡しきると

「それでは!スタークロスの方にも渡しますので!」

「無茶するなよ」

「あなたがたパイロットや整備兵の方々よりかは全然大丈夫です!神の御加護を!」

職員は走る。あんなひょろい体で重たいだろ。結川は軽く心配するが、疲れでそこまで考えない。燃料ギリギリで帰還して、一時間ちょっと後にまた空の上、そして帰還してまた空の上。1,2回の出撃では済まないと見ている。そしたら・・・

「大丈夫かアリチェ」

「大丈夫です」

横を見ると、喉を湿らす程度に水を飲み、キャップを閉めてる、この隊唯一の女性隊員アリチェだ。

「これから今日数度出撃する。お前を差別するつもりは無いが、女性と男性での体力の差がある。無茶だけはするな」

「はい」

語調を強くして念を押す結川。アリチェは少ししょげながらも頷く。

「アリチェはもちろん、他の奴らも空で気絶して墜落したり、集中力が切れて撃墜されるなら、その前に申告しろ。分かったか!ホーク、副隊長としてサポートしてほしい、付いてこれるだけ来てくれ。そして干物っ!!お前は最後まで来い!罰ゲームだ!」

「「「はいっ[差別だっ]!!」」」

だれかふざけた言葉が一つ聞こえたが無視無視。

「さて、全員45分後ここに集合まで自由、それまで整備兵に迷惑かけずに休憩しろ、まあ五分前行動でよろしく。遅れたら・・・・・それでは解散!!」

「「「なに!その無言?!」」」

と、言いながらも思い思いに散っていく。

「さてと・・・お、バッカス隊長!」

「ああ、ユイカワ少佐」

結川はバッカスに近づく。

「自分には名前呼ばせてあなたは名字は困ります、名前でいいです」

「う~ん、階級が・・・」

「あなたが先輩なんですから、お願いですから」

「・・・分かった、リュウト。で、そちらの戦果は?」

「自分が3で、2,3,5は2機、三つ子は1機、4は恐ろしいくらい我々の戦果の補助してくれたので0機でも全然恥がないです」

「なるどな。さすがエースパイロット部隊」

「エースじゃない、単なる空の騎兵の端くれです」

結川が笑う。

「たく、で、やはりカナーリ中尉は置いてくか?」

バッカスの顔が真面目になる。

「いや、アリチェの意志を尊重して次も飛ばすが、三度目は・・・俺が強制的に止める予定だ。甘いかな?」

「いいや、いい判断だと思う。俺の隊も困った女性隊員二人抱えてるんでね。次の出撃が終了次第、2番機のカルトと2人だけで飛ぶつもりだ」

どうやらバッカスも同意見のようで安心した。

「そして質問続きで悪いが・・・・ゴードン見たかっ?!」

バッカスがさっきよりも真剣な表情で聞いてくる。

「い・・いや、みてないが、どした?もしかして変な爆弾しかけられたか?」

「ああ」

バッカスはため息をつき、両手を上げて

「あいつ、試作品の爆弾を勝手に搭載して・・・しかもそれ、強力閃光弾だったんだ。おかげさまで敵の動きが鈍ったが、同時に味方の前線も悶絶して・・・」

「・・・・、なあ、自分も不思議なAAM搭載されたんだが・・・」

「極力使うな!」

「だよな」

結川もため息をつき、あれは、本当に本当にまずい時に使おう。ちなみにゴードンは一度話さないと決めたら徹底する主義である。

「それじゃ、俺はゴードン探すから、リュウトもしっかり休めよ!」

「了解した」

走り去るバッカスの背中姿に軽く敬礼、そして近くの仮設談話室のベンチに座る。

「ふう、あとどのくらい戦えば勝てるんだ?」

結川は呟く、現在ウスティオ陸軍は勇猛果敢に戦い、優勢を保ってるが、そろそろオーシアが逃げ出したくなるガツンとした一発を与えないと、大国のチートで再編成完了、一気にこちらが劣勢に追い込まれるかもしれない。水を飲み、考えると、ふと瞼が重くなる。おいおい、まさか体力切れか?

そして結川は数十秒しないうちに眠りについてしまった。

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ん?ここは・・・

結川は瞼を開き、立ち上がる、何も無い、一面白い世界。

「ここは・・・?」

「すこし出るタイミング間違えたけど、でもこの時ぐらいがちょうどいいか」

「誰だ?」

結川は思わず身を構える。ここは・・・夢とは何故か感じない。

「そう警戒しないで、今正体表すから」

「なに・・・うわっ!」

ブワッ!と風が舞い、黒い紙きれみたいなものが一つに集まる、そして現れたもの

「じょ・・せい?」

黒い衣装を身にまとい、少し顔色が悪いが、その顔だちは非常に端正、そして優美だ。からだも余裕のある服で良くわからないが、多分グラマーな部類だろう。

「うふふ、あなたが地球という世界からこの「正外混沌の世界」の統合を任された人ね」

「なに?どうゆう、そしてあなたは?」

「申し遅れました、私は、今あなたが存在する並行世界の「地球」の管理と私より上級の神の世話係にして悪魔の冥界と神の神界の中継点を繋ぐ係を兼任して・・・」

「前置きいいからだからあなたは・・・」

「ごめんなさい、じゃあ単刀直入に・・・」

彼女は一泊置いて、そしてさっき感じられなかった冷たい声で

「我(わたし)の名はラーズグリーズ。漆黒の悪魔」



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箱庭世界

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冷めた声にゾクっと背筋が凍る結川。

ラーズグリーズ・・・だと?

「あなたがまさかラーズグリーズとは」

「あら、意外と怖がらないのね」

「むかしやったゲームのおかげですかね」

首を傾げるラーズグリーズ、口を緩め微笑する結川。

「そう、これかしら?」

彼女が手を前に出すと、ポウっと光があつまり、そして

「?!!、なんでこれが・・・」

結川が驚愕する、手にするもの、それは

ACE COMBAT作品だ。

「さすがにこれは驚いたみたいね。」

「どうゆう・・・」

「まずこの世界の構造を教えるわ」

ラーズグリーズはまた手をかざすとボードのようなものが出てくる。

「あなたが居た世界は宇宙空間以外には未確認生命体除いて、人類など無いとされている。しかしこれは神様の箱庭、実は神の世界、神界には幾千幾万の世界、あなた達が言う並行世界が存在する。事実今あなたが居る世界は、私が管轄する箱庭よ。ちなみに人間は記憶にないけど、他の世界の記憶も心の奥に存在して、たまたまプロジェクトエイセスの方々はここから転生された人間が多くて多分この世界のゲームが作られたんでしょうね。」

「箱庭・・・つまり世界はお前ら神様悪魔が仕切ってるんですね。」

「御名答、私の特殊能力、大地に死を降り注ぐ事、悪魔が箱庭世界を統べるのは本当は異例だけど、この世界で一番認知されて同時に英雄と称されたのが私だったので、ここを任されたの」

「なるほど、神様にいじめられません?悪魔が高位な地位になって」

「それよ!」

「え?」

彼女が指さし、結川が驚く。

「悲しい事に、私を忌み嫌う神様は少なくない、上級神は擁護派多いけど、中堅、特に悪魔の部下にされてる者は更にね。そして私が別の世界の任務を受けて、増えすぎた生物に死の呪いをかけて、魔力回復の為に眠りについてた時に・・・反乱されたの・・・」

「・・・・」

彼女は俯く、よほど悔しかったんだな。

「気付いた時には既に何もかもが遅かったの、その時には・・・世界が分裂したの。」

「それが・・・正外混沌の世界?」

無言で頷く

「この世界、あなたがゲームでした世界と違うでしょ?」

「あ、ああ、ウスティオが結構大きい・・いや、世界全体が大きくなってる。そして世界観さえ違うし、エースパイロットが多く存在してる」

「そう。その通り、これこそ外史、正統な歴史から外れたifの世界、上級神の許可を得ずに、勝手に作られた世界」

「!!、それは大罪では・・」

「私に濡れ衣着せようとしたつもりだけど、すぐにばれて、その神たちは悪魔より醜悪な姿にされて業火の炎で燃やされてるわ」

「そうか・・・、それで、分裂した世界を統率すればそれで終了じゃないのか?」

「普通ならね、ここからあなたがここに来てもらった理由になるわ」

ラーズグリーズが結川を見る。

「俺が来た理由?」

「そう、部下の神たちは、あなたにこの世界の全てを司る力を押しつけたの、つまりあなたが生きればこの世界が存続して死ねばこの世界が崩壊して、この世界の人類動物全てが死ぬ、私を世界を作っては壊す愉快犯と仕立て上げたかったのね」

「・・・それは・・随分大きすぎる責任だ、それの世界存続には達成条件があるのか?」

「察しが良くて嬉しいです。達成条件、それはこの戦争で常に前線で戦い、そして生き残る事、今戦闘機から降りる事は許されない、平和な地域に逃げたら即死ぬ仕掛けがあります」

「本当にシビアな条件だな」

「これでも上級神の力で幾分かマシになったんです。優秀な部下、チート過ぎるエース達。本当はオーシア軍に飛ばされかけたんですよ」

「ほんっとうに条件緩和したな!」

メビウスやらベルカンエースなんやら来たら本当軽く100回は死ねる。

「試練がたくさんある。あなたがそれを乗り越えて成功すれば、私が後の作業を引き受けて、世界観が安定化して、外史世界が新しい正統世界として安定化する。悔しいけど私は本当に見てるだけ・・・ごめんなさい」

ラーズグリーズは、悪魔ではありえないと感じるが、涙目になる。結川は息を吸って吐いて

「分かりました。ラーズグリーズ、安心しろ。俺に凄い運命握ってる感じがするが、必ず成功して、世界を安定化の為に奔走しましょう。もうここまで来たら最後までです」

結川は笑って、ラーズグリーズにサムズアップ。少し驚いた顔した後、彼女は微笑で

「ありがとう、私の騎士」

次の瞬間、ふわりとラーズグリーズが結川の目の前に来て彼の頬を撫でる、その手から半分の光と闇が体に入る。

「ら・・ラーズグリーズ?」

「ふふ、結構初(うぶ)なのね。これであなたの最大体力値増強+体力完全回復という光、冷静そうに見えて激情に流されやすいのを防ぐ冷静になれる闇の能力を与えたわ」

「・・・ありがとう。結構自分に必要になりそうな力だな」

「これからも呼ぶかもしれないから宜しくね。騎士様」

「了解した、結川隆登、この世界を守るため戦います!」

結川はウスティオ敬礼をする。ラーズグリーズは指を回し

「Πίσω στον πραγματικό κόσμο[現世に戻れ]」

すうっと、結川は消える。

「さて、私も可能な限りのバックアップしなくちゃね」

そう呟くと、彼女もその世界から消える。

2/18

0815hrs

基地休憩所

「てい!」

「いたっ!はっ!」

結川は突如の攻撃に目が覚める。

「本当にやるなんて驚きです~」

「いやー、こんな少佐殿のびっくり顔も中々面白く」

「え・・・えっと、起きました?」

「ああ、完全に」

結川の眉間に指を突き刺したのだ。そそのかしたのはスタークロスのアンジェラとジェニファー、実行したのは意外にもアリチェだ。

「一応上官という事忘れるな、スタークロス2人組」

「「「でも許してくれるが少佐殿~!」」」

「あとでバッカスに報告しとこう」

「「「それだけはやめて!!」」」

2人は驚く。いや、驚かれるとは、報告は当たり前だろ、てか俺も舐められすぎだな・・・。

すこし気分は落ち込んだ。

「そういえば隊長、サザンクロス隊に別任務があるという事で、呼び出しかかりました」

「一体何だ?」

「とある攻撃兵器輸送護衛任務です」

アリチェはさっきとは違い、仕事モードになる。結川もだ。

「分かった。すぐに行こう」

「はい」

結川、アリチェ2人は駆け出す。

そして後で知る。

謎のAAMが凄かった事が・・・。



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ウスティオ軍の大反攻作戦 魔改造

2/18

0915hrs

エウレノ上空

8機の戦闘機と輸送機が。

「戦場にトンボがえりかよ!」

「干物黙れ、最前線任務よか遥かに・・・は・る・か・に楽だ!」

「へい」

「しかし、司令も凄い事しますね。まさか因縁の地に」

サルトが言う、そうだ。俺達は今、シルバンからエウレノを経由して、最前線野戦空軍基地に飛んでいる、完全に最低限の防衛を除いてこの都市は放棄に等しい。地形的に敵が進撃しにくいのと、航空部隊が違う場所でフル動員しているから爆撃の心配がないという事だ。事実エウレノはまだ何とか敵が侵攻はしていない。

「しかしこの輸送機には何が入ってるんでしょうか?」

UC-2輸送機の左側を守るアリチェが言う。

「さあな、強力な反撃兵器としか聞いてない。そして俺達には更に不安な事がある。それは・・・謎のAAMが全機についてる事だ!」

そう、結川が使わなかったAAMを、補給の際にゴードンがサザンクロス全機にちゃんと付けてた。当然陸軍に頼んで後で干物にすることにしてる・・・。そういえば

「絶対にこのミサイルは射程圏内に入ったらミサイルを発射しろ。そして発射したら敵と同じ高度には居るなよ!」

そうゴードンが言ってた。どうゆうことだ?

<<こちらウセリル、こちらは丸腰だ。護衛頼んだぞ>>

「サザンクロスより、了解した」

「サザンクロス2より、あと20分で到着予定です」

「了解した。シルバン組も大変なんだな」

「そうですね」

結川の言葉でホークが肯定、レクタの暴走で常に緊張状態の北部、可働機全機スクランブル体制という。

「過剰なまでの護衛機祭りなのに戦闘状態が無いとなんか拍子抜け」

「5より3、それ問題発言です」

「申し訳ないあね・・・おお!干物言ってない!」

グラッドが感激する。

「リーダーより5、3は干物だ」

「了解」

「ちょ!隊長!ふざけるな!そして了承するな!」

グラッドが切れる。ふう、その時

<<平和な会話に失礼、こちらAWACSレリック、我が空軍の防空網抜けて国境線を越えた部隊の一部が貴隊に向かってきてる。機種はF-15s/MTO、6機、方位は貴隊から見て3時方向、高度も貴隊とほぼ同等。距離60マイル、狙いは、ウセリルの積み荷だろう。そして注意、奴らはミサイル装弾数を減らして超高機動中距離AAMを用意してる、早急の迎撃を頼む>>

「了解した。護衛班、迎撃班に分けて事態に対処する。2、4、7、8は護衛に徹しろ!残りは付いて来い!迎撃するぞ!」

「アイ・サー!!」

「サザンクロスリーダーよりウセリル!全力で逃げろ!」

<<了解した!幸運を!>>

結川たち迎撃班が針路を三時方向、レーダー出力最大で敵確認、敵のAAMが推定20マイル、急がなければ、その時・・・

ピーー。

AAM発射可能の電子音、ちょっと待て、長距離ミサイルなんていつ・・・、機体ディスプレイを見ると、8本のAAMの一番右側

「AAMX」

ゴードンが搭載したミサイル、こいつはどんな性能か分からない、信じるべきか、ここまで来たら・・・

「やるしかないだろっ!サザンクロス1!FOX3!!3,5,6!ゴードンの言葉を信じて戦闘機の速度下げろ!」

「「「ヤーー!!」」」

4機は速度を下げる、それに反比例してミサイルの速度は上がる。

<<なんだあのミサイルは?>>

<<長距離か、全機高度を下げ、回避用意>>

F-15S/MTOは高度を下げる、しかしAAMは俊敏な機動で、同高度まで追跡

<<敵AAM、中々の曲者だな、だからといってこの戦闘機なら回避は容易い>>

AAMは接近するそして敵は気付く、なぜミサイルアラートが鳴らない・・・?

<<まさか・・・全機散開!>>

隊長機が叫ぶが遅かった、スピードが速く、AAMとの接近は相対的に早かった。近接信管が作動して

<<!!?、煙幕?!>>

一気に白い幕が展開される。

<<機体が!エンジンが!>>

<<全部のシステムがダウンした!脱出する!>>

<<そうゆうことだ・・・>>

ディスプレイの機体情報のエンジン部分が真っ赤になる、目の前のガラスは粉まみれ、摩擦熱で溶けてキャラメル色に・・・これは・・・

<<砂糖?!しまっ・・うあわ!>>

隊長、ヘリク・アウラは思いだした、砂糖などはエンジン機関に侵入すると熱で溶けてはりつき、エンジンの配線などを駄目にしたりパーツが死んだりすると・・・。がくんと機体は落ちる。

<<くっ、何でこんなAAMが、あり得ないぞ・・・、脱出装置も死んだか・・・好都合だ、こんな惨めな負け方なら死んだ方がましだ。>>

ヘリクは呟き、そして地面に激突する。

同時刻

「なんだったんだ・・・」

「砂糖か、3よりリーダー」

「干物と言えよ」

「この、リーダー意外とS?てかいじめっこ?!」

「いや、俺はどちらかというとMだと思「場所考えて下さい!」スンません」

結川の言葉にアリチェが叱る。

「で、真面目な話、どうゆう仕掛け?」

「ああ、あれは多分砂糖を使用した内燃機関を壊したんだ。飛行機など乗り物のエンジンは砂糖が溶けたものがはりつくとそれだけでシステムが死ぬからな。弾頭に詰められた粉砂糖を吸気口から吸って内燃機関を破壊したんだと思う」

「なるほどな~、よし、コンプリートミッ<<済まないがそう簡単に返してくれそうにない、レリックより、敵増援、今度は8機のF-15S/MTO、しかもオーシアエースと称されるレーパー隊だ>>

「最悪だな、3より、その隊は確かユージア大陸の紛争地帯の死神だ、俺達4機だけでは完全に不利だ」

「サザンクロスリーダーより、こちらの増援は?」

<<貴隊護衛班を除いて難しい、何とかそちらに差し向け・・・来た>>

「誰が?」

<<へーい!死神とのパーティー会場はここか?>>

<<ふっ、だれが一番のF-15使いか知ってもらおう>>

<<エース達の戦いか・・・ウォードック各機、邪魔にならない程度に戦うぞ!>>

<<<イエス!>>>

現場に到着したのは、オーシアのウォードックだった。

その頃、ソーリス・オルトゥス基地では

「ゴードン准尉!勝手に最新鋭AAMに何してるんですか!」

「弾頭の不法改造で話が・・」

「あのAAMの使用で予算が!」

「助けてくれーーー!」

ゴードンは事務、警務隊、整備隊に追いかけられてた、周りの人間はこう思った。

自業自得・・・と



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ウスティオ軍の大反攻作戦 エースの舞

2/18

0920hrs

エウレノ上空4000フィート

サザンクロス・ウォードックside

「こちらサザンクロスリーダーよりウォードック、レッドバロン、ハートブレイク、増援に感謝します」

「ハイよー!全然構わねえっての!通行料が高いのを教えてやるよ!」

F-14Dを操るバートレットが応える。

「敵接近、何度も言うが俺以上のF-15使い、居たら潰す」

レッドバロンことカイト・ブラウンが言う。

「ウォードック1、ブービーよりサザンクロス、支援します」

F-14Dウォードック隊も後ろから来る。

「おお、心強い増援だ!敵接近・・・どうやら最初はご挨拶かな?サザンクロス隊!命令あるまで編隊維持!」

「イエス・サー!」

高度ほぼ同じで、連合チーム、レーパー隊が双方対峙する。加速を開始する、接敵まで10秒ない、双方の考えは一緒。

高度差ほぼなしのチキンレース

5秒前・・・4、3、2、1、・・・・

「ゼロ!ブレイク!!」

結川の号令でレーパー隊の隙間をくぐる、同時にコム率いるレーパー隊も隙間をくぐる。空中衝突機体はゼロ。

ゾク・・

ふと結川に興奮と恐怖を感じる。レーパー隊の一番機と思われる機体から発せられてるとみた。

すれ違いして、結川は・・

「サザンクロス隊エンゲージ!敵エース部隊撃滅だ!」

「Yahhhhhh!!」

「おら!ひよっこども!足手まといにならない程度に戦え!ふりかかる火の粉ぐらい弾け!」

「イエス!」

「レッドバロン、エンゲージ」

すれ違い数秒後には今度は全機展開して機体はすれ違った際に感じた倒すべき敵に向かう、俺はもちろん、さっき感じたエース。インメルマンターンで敵に機首を向けた時

<<久しいな、ハートブレイク、レッドバロン、いや、今は祖国の裏切り者達>>

「やはりか・・死神、レーパー隊のコム少佐か、師匠と呼ばれた時が懐かしい、今は祖国の裏切り者であるが、後でその呼び方変えてやる」

<<今は中佐だ。あなたがいなくなりオーシア一番のイーグル使いになったのでね>>

「ほざけ、旧世代機祭りの地域の空軍機落としてエース気取りとは、残念だな」

<<侮辱は許さんぞ、サンド島でのうのうとしてた奴に言われたくない>>

「先輩を敬わない後輩とは・・・譴責ものだな!はいよー!そこのレーパーの奴、勝手に撃たない!」

バートレットは、なんでもないように機銃をさける。

<<まあ今は貴様らに興味ない、自分が興味もつのは今はサザンクロスの異世界人だ>>

「ほう、サザンクロスリーダー、御指名だ!やれ!」

「はい?!」

まさかの俺?いつ知った?!

<<貴様がサザンクロス隊長か、南ベルカのあの一発爆弾、忘れないぞ>>

ああ~、それね。それで知ったか、怨むぞ、ゴードン。八つあたりだが関係ない。

「サザンクロスより、初めまして、ウスティオの空を守るために負けるつもりはありません。以上」

<<若造が、まあ手加減してやる。追いつけるかな?レーパー1!エンゲージ>>

次の瞬間、コムのF-15S/MTOが結川のF-15UFXの下を通りハイG機動でシャンデリア。ぴたりと後ろにつく。

<<死ね>>

「断る!」

2本のAAMが迫る、しかし結川は諦めない。エアブレーキオン、操縦桿を強引にひねり機体を急降下させる。AAMは目標を追いかけようとするが、急激な機動で空を彷徨う。

<<ほう、これでやられたら拍子抜けだが、少しはやるようだ。それではやるかな、レーパー1、エアーコンバットモード!>>

「なに・・・サザンクロス気をつけろ!奴は高機動モードになった」

「なっ?」

コムの機体の速度と、機動性が上がる、くそ、本当に様子見かよ!?結川はアフターバーナーをか吹かして後ろを取ろうとするが・・・・

「マルチロールが憎い!!」

いくら制空重視でも多目的戦闘機から改良したF-15UFX、ばりばり空戦特化の機動性化け物の機体に勝てるか!

「大丈夫ですか隊長!」

「5!心配するなら前の敵と対峙しろ!」

アリチェだ、コム以外のレーパー隊の奴らと対峙していて、戦闘は何とか戦ってる感じだ。

「でも・・・」

「こちら3!リーダー、さっさと倒してこいよ!ほら5!お前が居ないと俺らがすぐにやられる!」

「6より!エースと戦うなんて聞いてません!2機来たーー!!」

グラッド、ダノの声。

「リーダーより、早く行ってやれ、2が居ない今、干物より役立つお前がこの戦闘に必要なんだ、行けッ!!」

「・・・・了解です。死なないで下さい」

「ああ、祝勝会の酒は飲みたいからな!あまり飲めないけど!」

「はい!」

アリチェは思う、絶対に死なないで・・・と、その時

「レッドバロンよりお嬢さん、彼はやられないよ」

「え?」

巧みな機動で2機の戦闘機を追い込むカイトが割り込む。

「彼は結構な機動してるのに、息が切れてない。つまりまだ本気じゃないのさ。同じイーグル使いの直感だけど」

「レッドバロンの旦那、隊長はどうすると見るんだ?」

グラッドも入る。

「多分彼は・・・」

彼が言う言葉に2人は驚愕する。

結川に戻って・・

<<おしゃべりするなっ!>>

コムの追撃、インメル、スプリットSとかの初歩で避けれる奴じゃない。結川はとある考えに出る。空自時代、F-15J同士の模擬戦で、西部のベテランパイロットと戦った時、あれを使って勝利したが上官に怒られたし、体も大変だった。元から鋭利なナイフのように鋭い一撃離脱方式が得意な結川を更に鋭くさせる行動。

<<ちょこまか避けるがそんなものか!ああ?>>

「ああ、俺はお前に対して本気を出さないといけないと見た」

<<なに?>>

後ろから離れないコム、こいつを引き離すなら。これしかない・・・。空自では禁止されたがここはウスティオ・・・やってやる!素早くコンソールを叩き、ディスプレイに文字が浮かぶ。そして画面の「YES」にタッチする。次の瞬間、電子音と共に、文字が出る。

「De limiter[制限装置解除]」

「覚悟しろ!」

結川は声を上げると

<<!!?>>

コブラ機動にも見える急上昇を見せる。コムもさすがに動揺した。そう結川は、機動力を抑えるリミッターを解除したのだ。普通ならどんなにしても、搭乗員を考えて8G限界でも10Gまでの機動だが、解除した瞬間から、10Gを楽に越える。しかし体と、機体は悲鳴を上げるのを代償にだ。

「くっ・・」

結川も例外なく体にハーネスが食い込む、体がきしむ、しかし負けられるか!

機体を縦に一周すると、コムは追撃を諦めて、真向かいに来る。

「今度はすれ違いなしだ!サザンクロスFOX2!!」

<<同意見だな、レーパー1FOX2!>>

ほぼ同時にAAMを放つ。そして同時に回避機動360°バンクでほぼ同時に回避する。双方のAAMはまた空を彷徨う。

<<まだだ!FOX3!>>

コムは素早く反転、AAM]を放つ。特殊兵装ということは今度は完全に落とす狙いだ。

「くそ・・・あれを使うか」

また自由落下を決める。今度は制限解除だから非常にきつい。

「ぐうう・・・」

AAMはしつこく迫る。コムも仕留めるのを見ようばかりに高度を下げる。高機動タイプは嫌いだ!

高度計の数字はどんどん減って、あっというまに3ケタになる。そして・・・

「・・・・今だ!」

<<くっ・・・>>

急上昇反転、高度200から一気に高度を稼ぐ。

「があああ、ああああああ!!!!」

ギギギギ!!!

機体が悲鳴を上げる。結川も痛みで叫ぶが後半からは気合いの叫び。歯を食いしばりブラックアウト寸前な体に鞭入れる。コムは意外な行動に初動が遅れてる。慢心は事故の元だ!

成功するか分からない。しかし体と愛機の限界点を考えれば・・・ラストチャンス!

「らああああああああああああ!!!!!」

射程圏外からでも機銃を放つ。距離が縮まる。意外と機銃の弾でコムの進路を阻む。

<<死にぞこないが!>>

「悪いが部下と約束してねぇ、簡単には死ねねえんだよお!!」

ラーズグリーズから貰った冷静になる魔法が効いても、今の興奮状態は抑えられないようだ。そして

ガガガガ!!

<<なっ・・!?>>

「よしっ!」

20mmの機銃の弾が数発コムのF-15S/MTOに穴をあける。

<<くそっ!主翼がやられてシステムがやられたか・・・、くく、面白い!満身創痍な機体同士で更にやるか?>>

「じょ・・・ガハっ!冗談じゃないよ・・・」

体が言う利かない。こんな状態で・・・。その時アウトレンジから味方のAAM、コムは避ける、まさか

<<調子に乗るなオーシアの狗が、こちらロトリーダー、お前らを滅する>>

<<こちら第4航空師団所属、メナー、お前らを倒す>>

<<同じくレイファー隊、攻撃受けてベイルアウトした3の弔い合戦だ!>>

次々と増援がなだれ込む、レーパー隊も2機がもう戦闘不能だ。ウォードック隊はが追い詰めて更に一機・・・今度は落ちた。さすがラーズグリーズ。

<<ちっ、興ざめだ、レーパー隊、撤退!>>

<<<イエス・サー!!>>>

レーパー全機が去っていく。助かった・・・。

「ハー、ハー・・・。」

呼吸しか出来ない、目が回る。機体もマンタ爆弾の時以上にひどい。こりゃ次の出撃は予備機か?

「隊長!大丈夫ですか!?」

「予想してたが、予想以上だ。良く空中分解しなかったな」

「・・・大丈夫だ・・。帰ろう・・・」

結川は基地へ針路を取る。

そして更に任務は続く・・・。



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ウスティオ軍の大反攻作戦 やがて・・・

2/18

0945hrs

ソーリス・オルトゥス基地

レーパーと戦い終えた戦闘機群が次々に着陸する。戦闘機は誘導路に着くと整備兵に囲まれて、さっきのように愛機は整備に回される。

「やっと着いた・・・うっ!」

何とか戦闘機から降りた結川は地面に足が着いた瞬間に膝から崩れる。体力上げてもらったのに、すぐに使いきったのかよ?!

「隊長!」

先に帰ってたホークに支えられ、他のメンバーも集まる。

「隊長!しっかりしてください」

「おいおい、完全にへばってるよ・・・無理ないが」

「大丈夫かユイカワ君、君は無茶しすぎだ」

上から、アリチェ、グラッド、カイトだ。

「大丈夫だ・・・少々無理した」

「隊長は休んだ方がいいで「それは無理だ」はい?!」

後ろを振り向くと、カロン司令の姿、表情は険しい。

「どうゆうことですか・・・」

アリチェは珍しくキッと睨む。カロンは動じず。

「陸軍作戦司令本部から直接要請があった。反撃兵器で正式生産が決まったF-15UFX通称「マンタ爆弾」制式形式「XBBOM」を搭載した戦闘機10機で後方の補給倉庫、重要施設爆撃作戦が決まった。そして我らは対地特化のF-15UFXエースパイロットを用意した。そして経験者の君は絶対参加になった」

「おいおい司令さんよ~、この坊主の戦闘力は計り知れない、こんな危険な状態で死んだら、ウスティオ空軍の損害は大きいぞ」

「それは知ってる、だから生きて帰ってこい」

「だから、んなむちゃな・・・!!」

バートレットは言いかけて口をつぐむ、カロンの纏う空気が変わる。これが荒くれ6師の巣窟、ヴァレーまとめた司令。

「申し訳ないが、命令は命令だ、特別攻撃隊長として頼む。もちろんサザンクロス始め、優秀な護衛部隊を用意しよう」

カロンは結川を見る、結川の答えは一つだった。

「了解です。すぐですか?」

「隊長!」

「落ち着けアリチェ、やるしかない。最前線の陸軍の進撃維持の為なら戦える」

「約束破りだぞ隊長!」

「黙れ干物・・というわけで、どの機体で?」

「もう準備してある・・・・よろしく頼む」

カロンが頭を下げる、結川は踵を揃え

「了解しました!司令殿!」

精一杯の敬礼をする。

1010hrs

南ベルカウスティオ国境激戦地10000フィート

特別攻撃隊サイド

既にウスティオは前代未聞の全軍総力戦が展開されていた。

<<弾が尽きた?!弾が無いなら貰えばいい!敵から現地調達だ!>>

<<アリエテが防御陣地を潰した!GOGOGO!>>

<<第四軍団!焼き払え薙ぎ払え!今だ!第19歩兵連隊全力進軍!このまま空挺師団と合流するぞ!!>>

第一軍団は中央突破を敢行、第二第三軍団は前衛戦車部隊、歩兵部隊の小競り合い。第四軍団は・・・・横から凄まじい勢いで突っ込んでる・・・。なんかもう防御陣地なんて前菜にもなってない・・・。

そして俺達空軍も空が戦闘機とAAMと機銃弾と地対空ミサイルで飽和している。

<<ふう、敵も必死だが甘いな、ウスティオ空軍舐めんな~!!>>

<<ハイ・ロウ・ミックスコンセプトでなくオールハイコンセプトの空軍にロウコンセプト戦闘機の飽和攻撃は効かん!>>

<<全機、そこの防御陣地が厚い、集中砲火だ!>>

<<B7Rより熱いぞ!熱いぞウスティオ!>>

<<暑いぞ熊○のパクリ駄目!!>>

なんか懐かしいフレーズがあったが気にしない。ともかく現在、陸空共に一応優勢だな。陸はいつ劣勢になってもおかしくないが・・・。

「さてと、全機居るか?」

「大丈夫です、レイピア1よりサザンクロス、大丈夫か?」

「大丈夫だ、お前ら全員落ちるなよ、ここで落ちたら空軍の損害は大きい」

「「「[あなたが落ちたら一番損害が大きいですが・・・・]イエス・サー!」」」

爆撃部隊は返事をする。彼らは本当にウスティオの中ではトップクラス、隊長格ばかりの人間達、一人でも落ちれば士気に関わる。それ以上に結川は士気に関わってた。

異世界から来た鷲使い

どこからともなく出てきた噂は戦場で瞬く間に広がり、事実、彼の部隊はもちろん、関わったメンバーは被害が少なく、運に恵まれてる事から、神に祈るよりも彼を信仰すれば勝てるという確信に変わってた。極限の状態に立つ人間は全てを神と思う事がある。士気の原動力である彼が陸軍の為に爆撃してくれる+成功してオーシアが混乱する。という事態になれば、陸軍の士気は大いに上がり、この戦闘に勝てると上層部は見込んでるからだ。

逆だとどこまで下がるか予想も出来ない。だから上層部はサザンクロスが落ちたという情報が陸の兵士に入らないように徹底的にシャットアウトするだろう。

「さ~て、今日もお仕事の時間だ!カロンのおやっさんに干物にされないようにやるか~!」

「おお、その声は同志バッカス隊!」

「おお、やはりいたなサザン3!」

「おい、干物、護衛部隊と知り合いか?」

「おお、バッカス隊、女性以外全員干物にされた同志だ!」

グラッドが胸を張るように言う。ちなみに冗談言うのはコールサイン、グリニョリーノことオリビエ・ヴィスコンティ少佐だ。

「そうか、今度からはバッカス隊は干物隊か、完全に理解した」

「おいおいサザンクロス隊の隊長さん!冗談は俺だけに・・・マジ?」

「ご希望あらば」

「Sだ!絶対サザンクロスリーダーはSだ!」

人懐っこそうなはしゃぐ女性の声はコールサイン、シェリーのエレナ・ディートリッヒ少尉だ。

Tyhoon使いのお酒大好き隊か・・・・。しかし編隊飛行を見ると完璧だ。

「とりあえず、敵の攻撃が激しくなる。護衛を頼む!特別攻撃隊ゼロアワー!!花火に突っ込むぞ!」

「「「ラジャー!」」」

全機が花火に突っ込む。

<<高高度から敵機20機以上!迎撃機急げ>>

<<最優先迎撃目標だっ!理由?奴らは悪魔の兵器を腹に抱えてるんだよ!>>

<<SAM用意!高高度タイプだぞ!目標は機動力が無いF-15UFXだッ!>>

<<Tyhoonにだけ構うな!そいつらを突破しろ!そして爆弾野郎を潰せ!>>

F-16やF-15シリーズ、F/A-18などオールスターズだ。

「行かせはしない!攻撃隊が成功するその瞬間まで!」

「やる気あるね~、サザンクロスの姐さん」

「同志よ、それはな意中のひ「ゴホン!!」察して?」

「了解した(笑)」

「・・・・?」

アリチェがグラッドの言葉を妨げオリビエが察する、結川は不思議がる。

「よし、ウイスキー!GO!」

「ラジャー!グリニョリーノ!」

ウイスキーことロバート・ボイントン中尉が応えるとアフターバーナーをしかける。

<<敵が来た!>>

<<対多数なのに来た!勇猛果敢の度合いが違う!>>

F-16、3機が接近する。

「はっ!遅い!!」

AAMと機銃を放つ。

<<なああ?!>>

主翼がもぎとられたり火を吹いた。一機が避ける。

「ふふ、私の射程範囲です」

<<??!!>>

アップルジャックことアリス・フッドホップ中尉が柔和な感じで残酷に機銃で切りきり舞いにする。

「さ~てお仕事の時間だ!爆撃投下ポイント接近!高度4000、JDAMマンタ爆弾用意!ナウ!」

「「「イエス!ファイアータイム!」」」

10機の爆撃航空隊が一気に下る。

ピー、ピー、ピー!

「SAM接近!注意!注意!」

「分かってるよ!こんちくしょうッ!」

20発を越えるホークミサイル。なんたるチート!来たら避ける来なくても別のAAMが来る。

「オーシアのチートめ!くそっ!」

攻撃隊の一人が叫ぶ、結川も叫びたい、やっぱり機動が駄目だ!

「あと少しだ!耐えろ!」

「耐えてやるよ若造!」

「異世界人に負けるな!生粋ウスティオ人魂見せろー!!」

「「「Advance Fight[進め戦え]! !」」」

「いっくよ~!シェリーと!」

「アップルジャックで・・・」

「「FOX3!!」」

Tyhoon2機が対地ミサイルを放ちSAMを正確に潰す。

「姉妹みたいだ。よし、全機攻撃用意!」

ターゲットをデータリンクして、HUD上にターゲットが映る。シーカーがせわしなく動く

「フー・・・」

一度息を吐き爆撃軌道に入る。

<<敵は無防備だ!やれ!>>

<<駄目です!勇猛果敢な陸軍が・・・ぎゃああ!>>

<<てめえら!俺らの救いの神を傷つけたら殺すぞ!第四軍団!総員射撃開始!!>>

<<<エーーイム、ファイアーーー!!>>>

<<<Yehhhahurrr!!!!>>>

第四軍団各連隊が弾を出し惜しみせずに狂ったように射撃する。SAMが減った。そして

ピーーー

シーカーがターゲットに合わさる。

「ロックオン!投下!投下!」

翼を開き、またマンタ爆弾はF-15UFXから切り離される。今度は前みたいにアフターバーナーはしていない。

「二度はさすがにしませんか」

「サザン2、さすがに自分も学習機能がある。ちなみにやったら?」

「笑います」

「その即答、喧嘩を売ったとみなす。あとで覚悟してろ」

「・・・・[サーー]」

ホークは少し腹黒かった。しかし結川のSには[本人Mと言う]勝てなかった。

<<爆弾を落とせ!>>

<<無理です!そんな技術、ここには皆無です!>>

<<く・・・来るぞ!うわ・・・わわわ!>>

そして10発のマンタは目標にそれぞれ弾着する。

ドドドドドーーーーン!!!

何発も連続して火を噴きあげるその姿はまさに地獄の修羅の蓋をあけたようだった。

「後方補給施設の破壊、及び部隊指揮所システム沈黙、これで数の暴力の後ろ盾も消えた」

結川が呟いた。あそこで何人の人間が死んだかはかりしれない。しかし冷静でいられるのは魔法だけでない。

殺し慣れたのだ。ただそれだけだ。

ウスティオ軍の士気は最高潮に高まった。

<<全軍、聞けッ!恐れる者は何もない!弾を全弾開放!!!弾の無い奴は銃剣着剣!!突撃開始っ!!>>

<<<<<ウスティオに勝利あり!!>>>>>>

軍楽隊は我先にと飛び出し銃戦の中で精一杯に太鼓をたたき、ラッパを吹く。続いて突撃歩兵が開戦時から作ってた塹壕から飛び出て突撃を開始する。

逆にオーシアの士気は最低限にまで下がった。

<<敵が来たぞ!弾は・・・弾はどうした?!>>

<<横から前から後ろから!わわ・・・わわ!!>>

更に状況は悪化する。

<<み・・・南ベルカ方面軍から緊急連絡!ベルカ陸軍が呼応して南進を開始!規模にして2個軍団!南ベルカの生き残りで士気が高い!各戦線突破されてる!!>>

<<この状況をどうしろと!降伏をしたい!白い布あるか?!ハンカチでもいい!>>

その時・・・ウスティオ、ベルカ、オーシア全軍に無線が入る。

<<国境戦争に携わるウスティオ、ベルカ、オーシア将兵!全軍撃ち方をやめてくれ!オーシア陸軍第12機械化歩兵師団師団長の名を持って停戦を提案したい!空軍陸軍全軍射撃をやめてくれ!!>>

突如として通信が入る。敵の師団長?

<<軍団長殿!そうしますか?!>>

<<・・・まずは敵の親玉の言い分を聞こう。第四軍団撃ち方やめ!撃ち方やめろ!!>>

第四軍団始め、鼓膜を破かんばかりの射撃音はやがて落ち着いていき、双方射撃を停止する。

<<話を聞いてくれる寛容さがあり感謝する。改めて自分の名前はガリック・ジョーン、第12機械化歩兵師団師団長にして、特殊部隊の奇襲攻撃による師団長以上の階級者生き残りは自分だけで現段階オーシア連邦法に則りベルカウスティオ派遣軍最高司令を務めさせて頂く。私からの提案は、独断だが、ベルカ、ウスティオからオーシア陸空軍即時撤退と安全保障だ。降伏などは、政府が判断するため、ここでは出来ないが、停戦措置は出来る。そして、ウスティオ、ベルカ両軍の監視のもと、我が軍の全面撤退、捕虜を出さないでほしい。もちろん、この停戦に反する者達が出た場合は容赦しなくて良い。むしろ身内が反乱したら、身内で対処してくれ。我が軍の指揮系統は既に死んでいる。勝手極まりないが、どうか、頼まれて欲しい・・・。>>

ガリックという軍人は、通信を通して切実に話す。本当ならそんな条件呑めないと思う。さあどう出るか?その時

<<こちらウスティオ国防軍最高指揮官、グラン・バッシュだ、本当ならそんな条件などのみたくないが、口惜しい事に備蓄が底を尽いている。貴官の条件を受けたいと思う>>

<<こちらベルカ陸軍、南ベルカ進撃軍最高指揮官、スワン・フーリック。盟友ウスティオが条件を受けるなら、我が軍も承諾をしよう。>>

予想外にも、二つの軍から承諾の声。予想してたのか?結川は邪推する。

<<両軍の寛大なる承諾、恩に着ます。オーシア全軍に告げる。連隊規模以下の勝手な行動をせず、なるべく集団で故郷に帰れ。私は・・・政府の命令に背いた罰を受ける前にこの世に別れを告げたい。さらばだ、諸君>>

ターーン!

次の瞬間、無線越しに銃撃の音が聞こえると、倒れた音が聞こえる。そして

<<・・・こちら、ウスティオ陸軍最精鋭特殊作戦隊より・・・、師団長は自らの手で頭を射ぬいた。以上>>

沈黙が走る。そして

<<グラン・バッシュより全軍・・・我がウスティオは守られた!超大国の魔の手を防いだぞ!!!>>

<<<<<Yeahuaaa!!!ウスティオ!ウスティオ!>>>>>

勝利宣言で陸軍はウスティオコールで無線を飽和した。

呆気ない最後を迎えた事に、結川は力が抜けに抜けた。緊張感が続く任務でもうまともな思考が出来ない。てか飛行するのも精一杯だ。

「終わったのか?」

グラッドが呆けたような声を出す。

「ああ、多数の犠牲者を出したが、確かにウスティオの地は守られた」

「呆気なかったな」

「ああ」

オリビエの言葉も呆けてて、結川の言葉も上の空のようだ。

「・・・・」

「大丈夫か2?」

「はい、何とか・・・・。無事で良かった。」

「はは、とある部下と約束したからね[あと悪魔とも]。死ねないよ、お疲れ様」

「はい、リーダーもお疲れ様です」

何だか甘い雰囲気に・・・

「シェリーより!私も甘い言葉がほしいです!」

「・・・私も・・・かな?」

「グリニョリーノより、お前らには甘い言葉より甘くて良く効く酒をおごるぞ!」

「「やったー!」」

「本当にお酒好きな部隊だな」

バッカス隊の会話にホークを始め、サザンクロスメンバーは苦笑した。

こうしてオーシアとの戦争は一区切りがついたが、未だにオーシア政府はこちらの円卓を狙っている。

そしてレクタの反乱の鎮圧、ユークと命令を聞かないオーシア空軍との円卓での戦闘があるだろう。

しかし今はこの、やっと戻って来た、脆く甘い平和に包まれたかった。

ウスティオ軍の大反攻作戦~fin~



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政治家の暗躍

戦争は一部の上位階級で動かされるゲームだ。

オーシア陸軍環太平洋軍最高指揮官の言葉から抜粋

2/18

1115hrs

オーシア軍前線最高指令室

「もう死んだふりはやめたらどうだ。通信機は自動OFFモードで電源が切れた」

「そうか。それでは起きるとしよう」

ガリック・ジョーンは起き上がる。

「ふう、これで少しはオーシア、ウスティオ軍の犠牲者は減ったかな?」

「ええ、効果はてきめんですね」

最精鋭特殊作戦隊、中隊長と名乗る男は言う。実際にこの停戦演説で、長引く戦争も早く終止符が打てた。

「私は一応空砲を鳴らして死んだ事になっている。万が一ばれることは?」

「空砲や、倒れ方の不自然さは今の両軍の疲弊した兵士には分かりませんし、ばれる可能性は皆無。そして我々が完全に新しい戸籍でウスティオ人になるんですから、あなたは安心してもいい。約束は破りません」

「そうか、信じて良かったよ。ハーリングは目の付けどころがいい。さて余生はゆっくり隠居生活だ。さらば軍隊よ・・・・」

「敵でしたが、一応言わせて下さい・・・お疲れ様です」

「ありがとう」

ガリックはそういうと、新しい生活の第一歩の為に扉を開く。

2/18

1130hrs

大統領官邸

「大統領閣下、私はあなたに恐怖心を感じます」

「そんな事言うな、私もここまで上手くいくとは嬉しい誤算だ」

ウスティオ軍最高指揮官グラン・バッシュと大統領、ライア・フェ二アスが言う。

「たくさんの貴重で優秀な将兵を失う代償は大きい、しかし代価の領土案泰も大きい」

「本当に戦争は上位階級者によって動かされてるんですね・・・」

「ああ、ハーリング上院議員からこの謀略を聞いた時は驚いたが、本当に上手くいってなによりだ・・・グラン君、既に準備は?」

「出来てます、あとは大統領のお言葉と財務省の円卓で稼いだ国家準備金を開放して下されば」

「よろしい、記者会見の調整、予備兵、志願兵徴集、まだまだ仕事はあるぞ、いくぞ!」

「イエッサー!」

これからの戦争の為に、政治家の暗躍も始まる・・・・。



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祝勝会1

 

 

レクタ鎮圧後のウスティオ国防軍行動予定[極秘]

ウスティオ国防軍は、レクタ侵攻、円卓制圧任務を同時に行い、任務遂行後は速やかに国内に大量備蓄、未だ抗戦訴えるオーシアをFCMB連合国総力をもって攻撃する。

また今回から、ベルカ、サピンの極秘会談でサピン王国軍参戦も決定している。

今後の任務、サピン王国対岸に存在するオーシア首都オーレッド直接攻撃作戦を計画する。

作戦概略は、敵都市の市民にプレッシャーと混乱を与えた後、大規模な上陸作戦、爆撃作戦を展開、対空部隊撃滅作戦終了後は、ベルカの空挺猟兵師団、ウスティオ、ファトの空挺師団総力をもって主要機能部分を破壊、占領をする。作戦名は未定。

今回の報告は以上。

ウスティオ国防軍情報部から大統領官邸行き

 

 

 

 

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報告書から現在に戻る。

2/20

1955hrs

ソーリス・オルトゥス野戦基地、パーティー会場

陸軍工兵中隊総力を挙げて作ったパーティー会場、約千人にのぼる、空軍兵士が集う。

「はいはい!酒を用意してるんだ!邪魔するな!」

「ご飯マダー[チンチン]」

「パクリらめー!!」

猛者たちは腹をすかして暴走寸前だ。ちなみに陸軍は大平原の国境線で、弔いの意味も込めて、思いっきり飲んでいる。撤退監視任務に就いてる悲惨な部隊を除いて・・。

「酒が飲めるぞー!」

「禁酒破った奴に酒飲める権利あると思ったか干物!」

「えええ?!」

「冗談だ」

「おお神さ「ただし一本滑走路一周」悪魔!!」

結川とグラッドの漫才が始まる。周りは笑う。

「そろそろ始まりますよ」

ホークがいさめる、その時、臨時の演説台に人が上がる。彼は・・・ゴードンか。

「さーて皆様!お勤めご苦労様です!」

ヤクザ?

「では私のありがた・・・駄目ですね。」

ゴードンが周りを見渡すと、臨戦態勢の男たち女たち。目がぎらついてる。

「空軍で失った兵士を弔いつつも、今は飲むぞ!!全要員ゼロアワー!ベイルアウト[吐く]は外でしろ!以上」

「「「Yeahhhhhhurrrrrrrr!!!!」」」

戦果の火ぶたは今、切って落とされた。

2030hrs

「飯だー!食うぞー!!」

「国のおごりだ!食え飲め!」

「なあなあ、ベルカのヴィスマルク1987ものって美味しいの?」

「・・・・おい、それ、俺らの年収で買えるもんじゃないヴィンテージだぞ、どこにあったーー!!!」

「す・・・済みませ・・・」

「ベイルアウトは外でしろ!運び出せ!!」

既にカオスと化した戦場という名のパーティー、下戸の者はベイルアウト、猛者は酒に溺れて暴走してる。酒に溺れた者達は・・・

「このがりがり事務員が!激務で鍛えた管制業務なめんなよ!」

「はっ!インキャラ管制課が!書類で鍛えた事務員がハッタリ野郎に負けるか!」

いきなり上半身裸、取っ組み合い。男同士の絡み合い。見たくない・・・。

しかし・・・あっちは・・・

「ねぇ~、ミルネス・・・きゃわいい~、キスしよ?」

「へっ・・・にゃっ!ん!!~~~っ!!」

エレナが積極的にスタークロスのミルネスにキスを開始。

「オリビエ・・・あれは?」

「ああリュウト、エレナはキス魔で、男女構わずなんだ・・・そして男女ともに十中八九・・・ディープなんだ・・・」

「はっ?」

「ん・・・ん」

「ふ・・ふみゅ」

「ぷは・・・抵抗した割には乗ってきてるね~」

「そ・・そんな・・」

「嘘つく人はお仕置き~♪」

「むにゅう!ん!・・・んn!」

更に絡んでる・・・美女同士でも度が過ぎると怖い・・・。

「アップルシェリ!脱ぎます!」

アリスは酒で脱ぎ始める。

「脱ぐな!!」

走る常識ある同期の整備隊たち

「撮り押さえろ!」

「活字間違ってね?!でも了解!」

広報班が撮影に入る・・・。多分次に来るのは・・・

「てめーら!女性に恥かかせるな!」

キター!我らが警務隊!日本もウスティオも意外と厳しいのね。なんでもウスティオ国防軍兵士は暴走すると止まらない。だからウスティオでの常識人の陸軍から選抜してるらしい。

「なあリュウト、お前も一夜の相手ぐらい探しとけ!」

「はっ?そんな・・・」

「堅いな、飲んで柔らかくなれ!」

「ちょっ、やめ!らあああ!!」

「ゴフ!!」

結川の一撃!オリビエ撃沈!

「警務隊!」

「了解した!連行する!」

警務隊がオリビエを連行する。彼らは真面目人間すぎる。結川は度数の低い果実酒をちびちび飲んでると。

「あなたが・・・ユイカワ少佐?」

「そうだが・・君は?」

同い年に見える精悍な隊員、細マッチョだな。胸見ると犬のエンブレム。

「もしかして、ウォードック?」

「そうです、ブレイズ・・・今はバートレット大尉でブービーにさせられた。ジューン・シュバルツ少尉です。ブービーでもジューンでもどちらでも」

「そうか、俺もリュウトでいいよ」

「そ・・少佐と少尉で・・・」

「隊長格は一緒だからいいじゃないか。お前は酒を飲まないのか?」

「チョッパーに任せます。お調子者だからベイルアウトまでそう時間はかからないはずです」

「おいおい、そういえばアリチェみかけないな」

ホークは真面目の反動で酔ってカラオケしてるし、グラッドは酒を飲んで、ファルツは影のように酒を飲んでるように見えて・・・

「ねえ~、ファルツ君って良く見ると可愛いよね~!」

「ねえねえ、彼女居る?」

「あの・・・済みません、そういう話は・・」

「つれないな~、ツンデレ?」

「いえ・・・だから・・」

女に囲まれてうらやまげふんげふん、バカな状態に。

三つ子は・・・

「だからダノが右にギューン!と行かないから俺がとどめ刺せられないんだ!」

「そうゆうサルトが上にグイッと行って、そのままギューンしないから!」

「だからタルトが外へビューンしないから(ry」

三つ子たちは酒の勢いで論議・・・で、そんな擬音で分かるのか?

「そういえばうちのナガセも見ないな」

「探しに行くか?議論交えて」

「了解です。



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祝勝会の裏側

2/20

1100hrs

ウスティオ国防省総指揮官室

「お呼びですか?元帥閣下」

部屋に居るのは、第四軍団軍団長、フェルナンデス・ジーリ、向かい合うのはグラン・バッシュだ。

「相も変わらず平時は時間きっかり規律正しい平和爺さんになるな」

「ふふ、激動の時代、平穏な私的時間はこうゆっくりと、部下にも優しく出来るような司令を目指してたので」

「それが素だと自分は思うがな・・・。まあ本題に入ろう、軍拡と・・・そしてレクタへの攻撃が決定した。侵攻日時はベルカ、ウスティオ国内の弾薬、兵士再編成次第決まる。それまでは国内防衛だ。」

「そうですか・・・陸軍はたくさんの優秀な人材を失ったが、未だ平和得られず・・・ですか」

フェルナンデスはため息をつく。

「私を呼んだのは予備兵達の訓練司令ですか?」

「それで君は納得するか?」

「しません」

グランの言葉にフェルナンデスは即答。

「定年退官前で、平時なら引き受けますが、今この状態で私が部下見捨てて最前線から退けますか!」

「そういうと思った」

グランは少し顔の頬を緩めて笑うと、すぐに締まり

「フェルナンド・ジーリ大将!!」

「はっ!」

フルネーム階級を呼ばれ、フェルナンデスは姿勢を正し、軍靴の踵を揃える。

「貴官を今現時点を以て第四軍団軍団長の任を解く・・・そして新たに元帥の階級を持ち、レクタ派遣軍最前線総指揮官に任命す!貴官の最後の花道だ」

「・・・・。私みたいな突撃歩兵脳な自分に最高階級が与えられる日が来るとは・・・」

「君みたいな指揮官が居なければ、我が国の優秀な兵士は更に減ってしまう。頼めるか?」

「私は、1972年、士官学校卒業し、軍に入隊したその日から、この命、忠義をウスティオ国防軍、国民に誓ってました。自分はもう引きません。フェルナンド・ジーリ、元帥の階級拝命します!」

フェルナンドはグランに向けて最敬礼をする。この日、伝説の軍団長は、伝説の総指揮官にクラスアップした。

余談

「そうそう、君の定年退官元帥階級で5年伸びたから、平和になったら一応これからも存続予定の第五軍団の軍団長をやってもらおう」

「・・・鬼ですね」

「よろしく!」

彼はまだまだ軍に居る。

 

2/20

1130hrs

シーフェスディス艦長室

1988年の円卓の膨大な資源発見のおかげで、戦闘機32機航空機全般あわせて48機を有する空母を6隻作り上げる事に成功した。

そして、現在90機の大型原子力空母を建造開始をしている。

「・・・・今・・・なんと言いました?」

艦長であり、シーフェスディス率いる第4艦隊司令、ファーバー・スロー中将だ。絶句してるのはトゥルブレンツのグレンだ。

「聞こえなかったか?我がベルカ海軍は第2、第4艦隊及び、北方戦闘艦隊の総動員で、海上封鎖をしようとしてるオーシア国防海軍第2艦隊を撃滅する」

「・・・・・ははは・・・本気ですか?!」

グレンが机を叩く、ファーバーは見据えて、

「本気も本気、敵艦隊空母、ヒューバード、バーベットを撃沈し、海軍士気も落とす。そして、そのままオーシア制海権を奪う」

「・・・、戦力差は・・・」

「戦闘艦の数はこちらが上だ、しかしイージス、空母、新鋭駆逐艦が揃っていて曲者だ。最新現代戦略では例にない、飽和対艦ミサイル戦だ」

「恐ろしい事を。勝率は?」

ため息交じりで聞くグレン

「3割あれば・・・いいかな?」

ファーバーはおどけ口調で言う。

「しかし、我が海軍の力を見せる時、絶対に勝たねば戦いだ、そして君には仕事がある」

「なんでしょう?」

ファーバーは少し間をあけ

「君を制空隊長に任命する。トゥルブレンツ隊を実質艦載部隊リーダーにする」

「はい?!「溺れるトンビ」と「問題貴族」の2人組をですか?!」

「自己評価ひど「貴方がたが言ってたんですよ?」そうだった」

グレンはジト目、ファーバーは相も変わらず悪びれない。

「と、いうわけで、私の権限で君を大尉に昇格する、拒否権なし、場合によっては佐官も狙えるな」

「・・・。はあ~、本当に自分は振り回されますね・・・。いいんですか?自分オーシア系ベルカ人、ベルカで今この上なく嫌われてる人種ですよ?」

「だからだ、君の祖先の生まれた地の国の部隊を倒せば、君はベルカに認められる」

「試験ですか?」

「そうだ」

ファーバーは真面目な顔で頷く。グレンは少し考え

「分かりました。自分はオーシアで育った事はないので、いくらでもいけそうです。大尉の階級拝命したします!」

「それと、エレノア君も中尉に昇格だから、それも伝えてくれ」

「はっ、それでは失礼します」

背中を向けて部屋から出ようとするとファーバーが見送る。出て行ったあと、彼は呟く

「問題児コンビの真骨頂が見れるな」

微笑しながら、話してて放置してた冷たくなった珈琲をあおった。

「うん、流石グレン君が見立てた珈琲だ冷めても美味い」

1140hrs

艦長室から出たグレン、横を見ると

「なぜ居る?」

「たまたまです」

エレノアが立っている。

「今回も大変ですか?」

「ああ、シンファクシよりもたち悪い」

「・・・・・・」

エレノアは心配そうな顔をする。グレンは笑いながらエレノアの髪をくしゃりと撫で

「安心しろ、俺達は簡単に死なない。まずは作戦会議だ。早くしないと珈琲をお前の分を淹れる」

「ちょ!紅茶が先です!」

グレンが走りだし、エレノアも走り出す。



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祝勝会2

2/20

2050hrs

ソーリス・オルトゥスパーティー会場

「おい!第二班どうした!」

「そいつらは事務管制のオイルまみれのモンゴル相撲を止めに入ってる!」

「ベイルアウトしなかったバカが!!」

「ほっておけ!」

「第三班はバニーガールになった女性整備隊を止めろ!あのままじゃ危険だ!」

「無理だ!くそっ、空の野郎どもが強行的に!増援を!」

「第六班はどうした!」

警務隊は奮戦してた、しかし酒に溺れた猛者どもを止めるにはあまりにも無力だった。

そして最強の女も居た・・・・

「こちら第六班!助けてくれ!キス魔が・・・!」

「そんな奴早く黙らせろ!キスぐらいでおびえ「そのキスで第六班の7人中4人骨抜きにされた!!」なに?!」

そう、それはシェリーことエレナの暴走だ。アンジェラは顔を赤くして息しか出来ない。完全に骨抜きにされた・・・。

「ぐ・・・うう!」

「一丁あがりっ!警務隊さんは~、レンジャー資格持っててすごーく強くても、すごーくうぶさんですねっ!」

今第六班で5人目がやられた。エレナがひとりに夢中になってる間に気絶させようとしたのだが、離れない、そして頑丈。骨抜きされてはターゲットを変えての繰り返しで第六班は壊滅した。

「おいおい君!お酒飲みすぎだよ!」

「おいバカ!」

駆け寄ったのは警務隊配属新米のショール・クライヤ伍長である。年齢は22ながら実力は高く、シティレンジャー[都市内戦闘]、フィールドレンジャー[施設制圧]、サバイバルレンジャー[野戦制圧]など最強の三大レンジャー資格を持ち、空挺師団も配属有望なのに、親が警務隊という素晴らしい理由でここに来た。空挺師団長は発狂、警務隊総指揮は嬉しさで発狂した。

人にやさしく、どんな事でも負けるのだけは嫌い。

「ふにゃ?おにいちゃんチューしよっ♪!」

え?これなんのエロゲ?と自分の学校の部長と同じ感想口走った方出てきて下さい、フェルナンデスと一緒に逝ってらっしゃい。

「えっ、ふぐっ!!」

彼の自慢の反射神経もものともせず、キスが開始される。

[ぐっ、まだしたことないのに・・・くそ、なんかむかつく、これも勝負か・・・勝負なのか!]

その瞬間

「んん?!」

「くっんにゅ・・・」

「おい、あいつ・・・反撃しやがってる!」

「クライヤなんてうら・・・バカな行動に出る!」

「おい、攻守逆転してるぞ・・・今だ!第七と第六残党で叩け!」

「イエス・サー!!」

一人の女にレンジャー徽章をつけてる精鋭警務隊が全力を挙げる。

 

同時刻

「それで?ユイカワ少佐殿とはうまくいってんのー?」

「えっと、あの・・・」

酔ったジェニファーがアリチェに絡む。アリチェもワインを飲んでてほんのり頬が桜色になっている。

「教えてくれなきゃ私が告白します!善は急げ!」

女性整備員が走り出そうとする。

「ダメです!!・・・あ」

「さ~て、なんで駄目か聞かせてもらおうか?」

「ううう~」

その時・・・

「この娘も隊長ラブだよ~!」

「ちょっと・・・なに?!」

「獲物一丁上がりー!!」

女性事務員に強制的に連れてこられたのは、ウスティオのパイロットスーツでなく、オーシア。そして凛とした精悍な顔つきと、細身ながら非常にしなやかな筋肉が付いているクールビューティー。

「あなたは・・・」

「・・・初めまして、元オーシア空軍、現ウスティオ空軍特別編成第108航空隊2番機、ケイ・ナガセ、階級は少尉です」

「ああー!あのF-14D飛ばしてたパイロット!」

そう、ウォードック隊の紅一点、ケイ・ナガセだ。

「いや~、エウレノの男どもは美人だと聞いたけど、本当だったんだね~。1番機の隊長さんは羨ましいね!」

「違います・・・私はただ1番機を落とさせはしないと思ってるだけで、そんな・・・」

「語るに落ちるはそういう事ね・・・。素直じゃないんだから~!」

ジェニファーはナガセに絡む。彼女にも意中の人は居るが、ここでは明かさない。

女性隊員たちのトークが終焉を見せ始めた時、

「おお、こんな所に居たのか」

「なんだ、ナガセもしっかり馴染めてるんだな」

「「隊長!」」

結川とジューンである。

「「「隊長達!!」」」

「「なんでしょう?!」」

いきなりくらいついてくる女性陣、おののく2人。

「「「ずばり部隊の紅一点をどう思う?!」」」

「どうって・・・」

ジューンは考えてる。結川も考える。

アリチェのこと・・・最初は部隊のアイドルや、自分の好みの対象と思ってたけど・・・今は・・・。

その時体の中の血がカッと熱くなる感じがした

「あらら~?少佐殿、心当たりありって感じですね!」

「やめてくれ!」

そしてその時・・・。

「はーい!そこのカップル二人組!来て下さい!」

「「「はい?」」」

なんとバニー姿の事務員4人と、仮装した男たち4人。

「早く早く!カップル対抗カラオケ大会参加しなさい!」

「ちょっ、おいおい!」

ジューン、ナガセ、結川、アリチェが両脇を持って連行される。

「ちょっと!まだ話終わってないわよ!」

女性陣が追いかける。しかし一人はおいかけなかった、ジェニファーである。

「はあ」

手に持つ、あまり度の強くないお果実酒を飲む。ちなみに、ジェニファーが度の強い酒を多量に飲んだら・・・。

「君みたいな気が強くとも美しい女性に惚れない男は居ないよ」

「え?」

振り向くとコールサインロゼことウルリカ・シュテルンブルグ少尉である。

「ウルリカ少尉?」

「意中の人は・・・隊長のバッカスはあいつ隠してるけど可愛い幼馴染いるから・・・クライシスか!」

「!!!」

「やはりな・・・影の薄い2番機か」

ジェニファー動揺、ウルリカはにやりとする。

「でもまあ、今宵はそんな鬱な気分にならず、まあ一杯」

赤いワインがジェニファーの目の前で注がれる。彼女もワインがほしくなってきた。

「さあ、一杯」

「・・・ええ、頂くわ」

彼女は彼から受け取ったワインをあおる・・・・

そして祝勝会の修羅の蓋が開かれた・・・・

そのころ・・・

オーシア国防軍統合司令本部大会議室

「侵攻失敗から丸二日、なぜ再侵攻の準備が整わない!」

ドンっ!と机を思い切り叩くのは大統領より力あるアップルルルース副大統領だ。ちなみに本物の大統領はもう力なく消えてるも同然だ。

「残念ながら陸軍は師団長以上の要人全滅と、全州州兵撤退命令、さらに統率不能で脱走兵が数えきれないほど出てる今、再侵攻どころか国土防衛も・・・」

言葉一つ一つに失望を交えて話すのは、陸軍総指揮、タール・シュア元帥

「空軍は円卓の制空権が復活したベルカ空軍の猛攻でジリジリと・・・」

言葉少なめ冷静なのは空軍総指揮、ニルチェ・スーン元帥、史上初の女性元帥だ。

「我ら海軍、第二艦隊とベルカ海軍連合艦隊の戦いが始まりそうです。どうなるかは・・・・」

普段は豪快でも今は弱気になる、海軍総指揮、ラファー・レック元帥だ。

「・・・・貴様ら、世界最強の軍隊の自覚はないのか・・・」

ルルースは怒りに震える。

「しかし、世界中から兵士をかきあつめられない今、このまま再侵攻は・・・」

「黙れシュア元帥!貴様・・・そこまで弱気になるのか!」

「違います!!あなたは現実を見てません!前線兵士に指揮官が居ないのにどうやって戦うんですか!」

「退役軍人からかきあつめろ、戦うんだ!そして円卓を奪うんだ」

「副大統領、あなたは兵士をどう思うんですか?」

スーンが静かに聞く。

「・・・・駒だ」

「「「・・・・」」」

3人の指揮官が思った。

最悪な奴だ・・・と。



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祝勝会3

ありのままを話すぜ!

そう、あの時俺達は祝勝会でかなり精神的にきつい戦いからの反動からでいつも以上に暴れてたんだ!

警務隊の存在も形骸化してきて祭りもそろそろお開きムード、最後のカラオケ大会とオイルまみれのモンゴル相撲が終了したらもうおしまいと思った時、事件は起きたんだ・・・。

2/20

2110hrs

「なん・・・だと、あいつ、あんなに歌が上手いなんて・・・」

「アリチェちゃんとデュエットするなあ~!この変態隊長!!」

歌えと言われて歌ったのに散々ないわれようだ。結川はアリチェと2曲ほど歌う。内容的には落ち着いた曲だ。

しかしさらに驚かされたのは・・・・・・・

「ノリの割にはあのウォードックの奴ら上手く歌いやがる。しかも普段オーシア語なのにウスティオの「郷土歌」を歌うなんて・・・・・・」

「奴ら本当は昔からこっちに住んでたんじゃないのか?イントネーションが完璧だ」

ジューンとナガセが歌うのは、ウスティオの郷愁を思わせる歌で、1番歌の「芽吹きの街ディレクタス」と3番歌の「ヴァレーの流星」、全て日本語に聞こえる自分だが、ナガセはいい声だ。

「本当に上手いな、どう思うアリチェ?」

「はい、意外と知られてませんが実はあの曲はベルカ公国と連邦になり、ベルカ語をウスティオ国民に第一言語に鳴った時ウスティオの言葉を忘れぬようにという事から子供にウスティオ語を覚えさせる曲なんです」

「子供にか・・・じゃあアリチェもベルカ語喋れるのか?」

「独立少し後生まれなので確かにベルカ語を赤ちゃんのころから聞いてますし、郷土歌を歌ってウスティオ語も覚えています。なのでベルカ語も話せる事は話せます、今は完全にウスティオ語ですけど」

「そういう事か。覚えやすく学びやすい曲だから完璧に出来るんだな」

「はい、それにしても隊長は本当に・・・異世界人かと思うくらいイントネーションが」

「全て日本語に聞こえるんだ、これがね」

多分ラーズグリーズがこの設定を加えたんだと思う。

「そうですか、あれ・・・」

「どした?」

「いや・・・あのジェニファー少尉が・・」

「ん?」

遠目で見ると・・・何だかさっきからまれた場所で女の子座りしている女性が・・・確かにジェニファーだ、だけど様子がおかしい。横で倒れてるのは・・ウルリカ?!

「あんなにワインの瓶が転がってる。やばいです・・・」

「やばいって?」

「ジェニファー少尉・・・あの人酒乱なんです!!」

「はい?!」

スタークロス、サザンクロス隊メンバーが集まる。

「大丈夫か?ジェニファー」

一番早く駆けつけたのはクライシスだった。そして見た時、胸が高鳴った。

そこには一人の少女が居た。

いつもの強気な吊り目でなく、トロンとした目、口周りもふにゃっとして猫みたいな可愛らしい少女だ。

「飲み過ぎだな、リュウトはどうしたらいいと思う?」

「そりゃバッカスさん、さっさと部屋に運んだ方がいいと思います」

結川とバッカスはそう言いあう。クライシスは

「おい、酒に呑まれるな・・・」

「それは・・・仲間としての心配?」

「あ・・・ああ」

クライシスは本音に反して無神経極まりない言葉をかける。それは彼女が切れるのには時間がかからなかった。

「私は・・・なのに」

「はっ?」

「私はお前みたいな無口野郎でも好きなのに!!」

「はいっ!?」

「「「「おおおおおう!!!」」」」

周りの野次馬どもはまさかの告白に一気に沸き立つ。早期警戒機並の傍受能力だな!

「おい録音機用意!国防機関紙「DEFENDER」に載せるぞ!!」

「音響班!急いでマイク用意!」

「はっ、え・・・」

クライシスは無口と違って動揺する。

「私はねえ!何だかしんないけどあんたみたいな神経逆撫で野郎なのに何だか・・・何だか・・・・、確かに私は口悪くて男みたいだけどスタイルには自信あるんだ・・・振り向いてほしいんだよ・・・。」

ちなみにジェニファー顔は上レベル、スタイルは特上レベルだ。

「「「「おおおう!」」」」

野次馬更に盛り上がる、今この場面を間近で見てるのは結川とバッカスだ。

「スタイルが分からないなら脱いでやる!見せてやるよ!」

「なぜそうな「「「「「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおう!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」外野うるさい!」

クライシスは動揺と野次馬の歓声に珍しく声を荒げる。

そしてジェニファーはパイロットスーツのチャックに手をかけ・・・・おろした。

「「「なああああああああああああ?!?!」」」

サザンとスターの両隊メンバーが叫ぶ、幸いツナギタイプなので、チャックは上半身で止まるが・・・下半身の下着も・・・

「なあバッカスさん・・・白だな」

「白だなリュウト・・・」

「コーノ!!」

「はっ!」

酒の席でもててたコーノ・ファルツを結川が呼ぶ。

「作戦A失敗、下・・・さらにその下の露呈をさせれば戦時中でも不名誉除隊だ!ジャケットで隠せ!」

「了解!!」

そしてコーノが走りジェニファーの後ろに回るのに4秒、結川から渡されたジャケットをはおらせるのに1秒、任務成功かと思われた・・・しかし

「なに隠そうとしてるのよ・・・・ていやああ!!」

「なっ・・・」

ジェニファーの見事な回し蹴りでコーノが野次馬の波に飛んで行くまで3秒、命の危機を感じるまで・・・数える暇ない!!

「全員ブレイク!ブレイク!」

「ジェニファーが暴れ出した!AWACS、管制!早く退避路を教えろ!!」

「そっちはオイル地帯!」

「bゃvdじゃsjjsけss?!」

一人一人が生きるために全力脱出をはかる。

2140hrs

「なんで俺が・・・」

「しかたありません、スタークロス隊は報告書があるので」

結川とアリチェが仮設建物の女性棟に向かう、背中には今まで暴れてたと思えないジェニファーの姿。静かな寝息で・・・強気を抜くと本当に可愛いな。そしてクライシスはどんな返答するんだろうな・・・

今回の戦闘で5人が彼女の攻撃に散り、1人はオイルで既にやられ、もう1人は逃げ切れた安心感からこけて負傷した。

極度の混乱の管制のミスで合計7人が倒れた。彼女の責任ではない、酒に溺れさせた奴と、酒のせいだ。

「それより隊長・・・ジェニファーさんの・・・見たんですか?」

「なんのことかな?」

「ごまかさないでください」

アリチェがジト目結川が目を背ける。

「まあ・・・事故だ」

「・・・・変態にはならないで下さいね?」

「ならないよ?!」

まだ寒い満天の星の夜空の下、平和な会話が続く・・・が、

「ううーーん・・・ガブっ」

「いっっってえええええ!!!!」

ジェニファーに思い切り首をかまれ、夜空の下、結川が思い切り叫ぶ。

 

2200hrs

サピン王宮

「本気でございますか・・・」

「悲しいですけど、平和な国づくりの維持は難しいようです」

サピンの国防大臣が悲しそうな顔をする女性に問う。女性の名前はアシリア・ラン・エリーザ2世、サピン王国女王だ。

「調整を頼めますか、詳しくはベルカとウスティオの受け入れを内密に急いで、そして運河に艦隊展開を」

「了解です。ただちに・・・」

国防大臣は恭しく頭を下げて一つの書類も貰う、そして

「アシリア・ラン・エリーザの名において、サピン政府の一丸の意志としてここに宣言する」

女王は息を吸い

「サピン王国はオーシアに宣戦布告をする」

 

2210hrs

オーシアアーラス海、空母バーベット

70隻を越える艦隊がベルカに向かう、オーシア国防海軍第二艦隊だ。

「総司令、国防海軍本部から打電です」

「もう内容は分かっている」

通信兵の言葉に返答するのはバーベット艦長にして、艦隊総司令、フラバー・アーネス中将である。

「ベルカ海軍、2流海軍に負けるのは許されない。決戦日は3日後・・・絶対に潰すぞ」

フラバーは戦いのために艦隊が動く。



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因縁を越えた現代海戦1

2/23

1000hrs

ウスティオディレクタス上空

スタークロス隊が編隊飛行をしながら都市部を飛ぶ。しかしいつものTNDでない。

「うーん、難しいな」

「TNDが生産をもうしたくないからって・・・でも機動力が高い」

四苦八苦するバッカス、分析するクライシス。

空を翔るのは海洋迷彩の機体、ノースポイントに卸す予定だった機体を急遽ウスティオに転売した、その名は・・・F-2

「しっかり練習しろ。明日からはレクタ爆撃任務に就く、もう進撃を開始している」

「了解したよ、よし、徹底的に爆撃してやる!なあ2!」

「あ・・・ああ」

「?[あれ・・いつもなら男言葉とか使うな言うのに]」

「ふふ[にやにや]」

「クク」

ミルネス、バッカスが笑いをこらえる

あの祝勝会の後、全く覚えていないジェニファーにあえて告白事件の話をしていない。基地の全員から生暖かい目で見られている。あと、ジェニファーの恐怖を知った猛者たちは、会うたびに敬礼している。もうひとつ、キス魔事件を引き起こしたシェリーは全く覚えておらず、仲良くしたがるシェリーが迫り、ミルネスが全力回避の毎日がある。

「とにかく、なんでもレクタの南部軍閥の防御力が高く、手ごわいそうだ。いいか、南部を思いっきり崩すぞ!」

「「「yes sir!」」」

4機の蒼い迷彩の機体が飛ぶ。

1000hrs

レクタ南部

再編成した第四軍団第三重騎兵准師団を中心に前線が展開する。その更に先頭にアリエテMk2。

「しかし、士気と練度が低いと噂される割に防御線が堅いな、なあウーラ[シュッ、シュッ]」

「ああサーガ、南部軍閥は防御戦、北部が最新鋭少数火力攻撃他は低練度[シュッ、シュッ]、西部が本当の人海戦術、東部が空軍重視らしい[シュッ、シュッ]」

毎度おなじみ、暴走しまくるサーガとウーラ、そして車長はもちろん

「元帥閣下、なにしているんですか?」

「ん?塹壕が堅いと聞くからシャベルを磨いて鋭利にしているだけだ。塹壕戦は上からシャベルが一番」

「「・・・・・」」

さっきまで少し塗装がはげかけ、錆が浮いてたシャベルがピッカピカに・・・怖い。

ちなみにクラウス曹長は中尉に昇格、同じく第五重武装師団中隊長に、しかし今のところ付いてこれる部下は居ない・・・が、良心ある優しさがあり、離反者が居ない。ある意味凄い。

「まあ今はまだ嵐の前の静けさだ。始まったら敵首都乗り込むまで2個軍団で突破するからな、しかし空軍は大変だな。燃料も武器もまだ余裕がないのに」

オーシア軍の再編成、ユーク陸軍の到着で、国境線でじわじわと脅威を再び表し始めた。といってもまだ士気も低く、準備がなってないが、レクタ、円卓など内部の憂いを早く排除したいFCMB連合軍は早急の内部事情解決に専念するため、予想よりも早くレクタ進撃開始が決まった。陸軍は何とか前線に足る弾薬類は用意出来たが、空軍はミサイルなど一発一発が高いため、未だに弾薬類が充実していない。更に、航空燃料も不足で、F-2で猛特訓が必要な部隊以外は任務以外の訓練は極力禁止、空軍士官学校パイロット生の使用予定の燃料も徴集したので、生徒は現在地上で基礎訓練している。

「そういえば、元帥閣下、もうこの戦車に乗ってるのは突っ込まないとして、上層部と会議は?」

「どうせ今は防御線やら兵站やらが大変だから進撃どうするの会議だろ?私はもう明日にも進撃出来る自信があると言った。さて防錆塗装」

「「・・・・」」

呆れの目をする2人。

「ふっ、絶対生き残るぞ、そうじゃないと足が無くなる。君たちはこの戦争では相棒みたいなものだから」

「「・・・・」」

元帥のまさかの言葉に心温まる2人だった。

「そういえば・・・ベルカ総力戦・・・始まったか」

「元帥閣下、どうなされました?」

「いんや、独り言さ」

フェルナンデスが静かに呟く

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2/23

0955hrs

オーシアアーラス海ベルカフラディン海

オーシアベルカ外務省が定めた、双方国家の軍艦船平時対立禁止の為暫定国境線から東西20キロの中立領海が存在する。それよりもはるかに離れ、東西150キロで双方大艦隊が展開する。

ベルカ海軍

第二艦隊旗艦空母ニヨルド

イージス2隻

巡洋艦4

駆逐艦8隻

他8隻

第四艦隊

旗艦空母シーフェスディス

第二艦隊と同じ

北方戦闘艦隊

旗艦大型イージス ポセイドン

駆逐艦・巡洋艦4隻ずつ

他6隻

ベルカは連合艦隊で現れる。絶対にオーシアを潰すため、総指揮官は海軍総指揮、レン・グーファ元帥で、シーフェスディスに

オーシア海軍

第二国防艦隊

旗艦 空母バーベット

副旗艦 空母ヒューバード

イージス8隻

防空巡洋艦8隻

駆逐艦18隻

最新鋭ステルス駆逐艦4隻

他16隻

第二国防艦隊は最強の布陣で展開する。完全に舐めており、総指揮は中将だ。既に双方1000からの戦闘開始と通牒している。

「カタパルト80・・・グリーンゾーン、トゥルブレンツ、発艦せよ」

「了解、1発艦」

「2、発艦」

2本のカタパルトからほぼ同時にSU-33が飛ぶ。空母甲板から飛び立つとほぼ同時に急上昇。射出要員は帽子を振りながら

「なあ、あいつら制空部隊だよな?」

「ああ、それが?」

「いや・・・「幹を断ってこそ制空だ」とか言って補給科分隊に無理言ってASM積んでった」

「なんで!?」

「知らんよ」

そして時間が近づき、ファーバー中将の隣にレン。

「中将、少し犠牲覚悟で我々の迎撃技術を見せろ」

「はっ!AWACSと全艦に連絡!迎撃だけに専念せよ!攻撃は後攻だが、先攻以上に戦果をあげるぞ!!」

「「「Yes sir!!!」」」

レンは静かに手を挙げる。

そしてアナログ時計は短針10、長針が12を向く。

1000hrs

戦闘開始

「戦闘許可!全艦VLS開放!第一陣の発射役割は決められた通りだ!」

フラバー中将は手を横一閃、戦闘開始の合図だ。

全艦合わせて112、同時に戦闘機からASM48本。途中誤動作で16本消失。

「オーシアからの攻撃確認!!」

「ベルカ連合艦隊!意地を持って撃滅せよ!」

「「「yeahhhhhhhhh!!!!!!!!」」」

レンは挙げてた手を振りおろし、命令を下す。

<<マジック22から、ミサイルは144、データリンク!>>

<<イージスシステム作動!SAM用意!>>

ベルカ海軍からSAM192本発射、途中8発消失、ミサイルの誤作動消失率は圧倒的にベルカが低い。

イージス、E-3、4機E-767、2機が飛んでいる。

射程範囲内でミサイル同士命中、明るいのに多数の花火のようなものが散る。残り14発。

「撃ち漏らしたか・・・CIWS用意!近距離SAMも用意!!」

「了解!」

同時に前衛の駆逐艦がCIWS、後方から短距離SAMが連射。

「弾幕を展開!」

<<駄目です!うわああ!!・・・・>>

「あ・・・駆逐艦ファーダー大破!」

「駆逐艦モーウェ、中破、ダメコン成功すれば戦闘続行可能!」

しかし一人の通信官は暗い顔をする。

「巡洋艦ウイトゥエ、轟沈・・生存者・・・皆無・・」

「・・・・・・、ウイトゥエ・・・、彼女[ウイトゥエ]とその艦員の仇を討て、そして道連れろ!!全艦容赦するな!攻撃!!」

「元帥閣下より命令!攻撃!攻撃!」

全艦合わせて144、戦闘機からはASM30本、そして2機。

「げ・・・元帥閣下!ハープーン低高度ミサイルの中に混じってSU-33、2機!!」

「どこのどいつだ!」

「所属は・・・トゥルブレンツ!」

「じゃあ安心だ」

「え?」

「・・・」

通信官は素っ頓狂声、レンは黙る。ファーバーは言葉をつづける

「彼らは乱気流、どんな戦場でも波乱を起こし、余裕を見せてる奴らは吹き飛ばされる、どんなASM、ハープーンより戦果をあげられる」

ファーバーは自信を籠った声で言う。

「・・・そうか・・・、遠距離様子見は終わりだ!!ベルカの艦隊、艦数多く、艦員練度もこちらが上と思うが、艦の性能は悔しいがあちらが上だ。全艦、密集陣形で防空重視!守りかためて勝つぞ!!」

「「「<<YES SIR!!>>」」」

「全艦主砲真上放て!乱気流達の応援込めた戦場(ウォー)の叫び(クライ)だ!!」

レンの号令で大口径主砲持つ艦は一発が速射主砲艦は数発放つ。そして艦員の士気は最高潮に高まった。

 

1007hrs

海上200フィート

ミサイル群にまみれて、主砲の応援を受けSU-33が飛ぶ。

「隊長・・・」

「幹を断つぞ。死にたくないなら離脱してもいい。俺だけ「離脱するなんて誰が言いました?」済まない」

どんな時でもエレノアだけは失いたくない部下として・・・として

「よし、ミサイル群から離れて、敵艦隊の横っ腹を狙う、奴らは広範囲から四方八方攻撃をしようとしている。抜け道が多い。我らの目標は前衛防御が薄い地帯に居る、空母ヒューバードだ!」

海戦は始まったばかりだ。



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因縁を超えた現代海戦2

黒鷹様のご意見を頂いたキャラ。主人公格をガンガン奪ってきます。


2/23

1000hrs

ベルカディスマルク空軍基地

「支援爆撃・・・ウスティオレクタ派遣軍ですか」

ヘル・エンジェル隊長、ギュンターが言う。目の前には基地司令フォア・シーガ少将が頷く。

「そうだ。レクタへの侵攻への動員機が足りないウスティオは正式に爆撃に長けた部隊を要請してきた。レクタの防御線が予想以上に高く、またとある理由で君たちを更に推薦してきた」

「推薦?」

「そうだ、きみが経済崩壊時代・・・いや、同郷の大先輩、フェルナンデス元帥からの推薦だ」

「!!!」

ギュンターは驚きで目が一杯に見開く。フォアは続ける。

「彼からのメッセージを頂戴した。「またあの時のように暴れようぜ」だと」

「・・・・フェルナンデス・・・いや「兄貴」・・・」

ふとギュンターは昔の呼び方をする。

「ふっ・・・ヘル・エンジェル隊、命令を受領いたします!」

「よし、それじゃ、護衛部隊を紹介するか・・・入れ」

「はっ!」

入って来たのは

「ヒュウ、天性の美女軍団か・・・」

金に赤が混じった髪色で身長は戦闘機パイロットでは不適格寸前の巨体の美女。ベルカでも試作機と少しの量産機しかない希少なSU-47を操る隊、ヴァルキューレ隊隊長、ジャスミン・ミリディアナ少佐だ。

「話は分かってるな?」

「イエス、大まかな事は中から聞こえました。私はこの地獄部隊を引き連れればいいのですか?」

ジャスミンは少しつまらなそうな声をする。戦いが無いに等しいのに私達を出すなと言ってる感じだ。フォアは苦笑、ギュンターは、おっかねえ姐さんと認識して少し離れる。

「いんや、まだ任務はある。君たちはもう復旧しているエウレノ空軍基地に着陸後、再補給を受けて、ウスティオ空軍、防空管区に居るベルカンエースと共に円卓の完全な制空権を獲得しろ。敵が入り込むなんて考えが出来ないくらい、完璧にな」

フォアの言葉でジャスミンはにやりとする。

「了解、ヴァルキューレ隊、完全に円卓を奪還する」

B7R制空戦、勃発近し

 

2/23

1010hrs

オーシア艦隊側

「敵艦隊からのミサイル!SAMの迎撃で残り20!!」

「CIWSと短SAM、速射砲連射!防げ!!」

<<来たぞ!弾幕を厚くしろ!>>

<<迎撃成功!ざまあみろ!ベルカの二流海軍が!>>

<<くそ!間に合わない!総員退艦!!>>

「損害報告、巡洋艦フォーナー撃沈、駆逐艦レッタ大破、高速駆逐艦スミス・アラン航行不能」

「さらに報告!敵艦隊、前進を開始!」

「予想より損害が少ない。さすがだ。そして・・・ふむ、敵は距離を縮める事で更に対艦弾の命中率上げに専念するか、距離が近くなれば、迎撃率も下がる諸刃の剣だが・・・よかろう、こうなったら迎撃最高精度まで高めて行くぞ!全艦拡散艦隊方式で全力戦速で向かえ!10分後に再度攻撃!今度は様子見でなく、誘導弾をたんまりお見舞いするぞ!!」

「「「<<<YES SIR!!!!>>>」」」」

双方の艦隊は速度を上げて、接敵に入る。

空母ヒューバード艦橋

F/A-18、EA-18、そして最近導入されたF-35が次々と甲板から飛び出す。既に半数。バーベットとヒューバードから半数ずつ前線に派遣されている。

「艦長、イージス、フェニックから緊急連絡、2機のSU-33が低空飛行で接近を探知」

「なんだと?どこに居る?」

通信官の報告を受けて、艦長である、ソナー・ラフ二ア大佐がレーダーを見る。艦隊の目の前で横切ってる2機の戦闘機。こいつらは・・・

「至急空に居る艦載機の迎撃部隊に連絡。落としてこい」

「了解、シナー隊、こちら空母ヒューバード管制(コントロール)至急の迎撃をしてもらいたい、場所は・・・」

通信官の命令で3機のF/A-18、1機のEA-1で構成されるシナー隊が迎撃に向かう。レーダー上には4対2の姿。ソナーはこれは勝ったと思い、耳を傾けると。

<<こちらシナー1、FOX2・・・なっ!>>

「どうしたシナー隊?」

<<なんだ奴ら!早いぞ!くそ、なっ曲芸飛行だと?!そんな馬鹿な・・・ああああああ!!・・・・・>>

「し・・・シナー隊4機、レーダーロスト!敵健在!シナー隊!応答しろシナー隊!!」

慌てる通信官、ソナーは背中に嫌な汗が流れる。

「これが・・・ベルカ空軍並に精強な海軍航空隊の真髄・・・名分も無いただの戦争をしただけの航空部隊と、伝統と騎士道精神を守り抜いた航空部隊の差か・・・」

彼らはまだ過小評価をしていた。これ以上に最強な事をする乱気流コンビを・・・。

1014hrs

トゥルブレンツside

「なんだ?さっきの奴らは?」

「さあ?最初の一機叩き落として全て落ちました」

グレンとエレノアはスピードを上げながら密接編隊飛行をする。さっきの戦闘で、シナー隊がしかけた瞬間、AAMで隊長機撃墜、同時にグレンとエレノアが音速でシナー残党すれすれですれ違い、気流を乱して機体をコントロール不能に、叩き落とした。

「さて、そろそろ艦隊の花火の中に突っ込むぞ!行くぞ!」

「アイサー!!」

左へ旋回をして艦隊真正面、空母の敵艦隊から見て左舷側から突っ込んでいく。

マッハ1.7、アフターバーナーを入れる。

<<敵機接近!対艦ミサイルぶらさげてるぞ!>>

<<全艦接近警報!>>

<<短SAM用意!弾幕働け!>>

低高度で艦隊の隙間という隙間を潜り抜ける。

「目の前!駆逐艦だ!ブレイク!」

「Xで行きましょう!」

「ふっ、同意だ!」

<<戦闘機がきたあ!!>>

目の前に急速に接近するオーシア駆逐艦ブラット、その瞬間、

<<!!X飛行?!>>

グレンとエレノアは高速度で翼を傾け、艦の前ギリギリで交差、艦の流線形沿って飛ぶ、そして艦の後方に出るとまた交差、そして編隊を組み直す。

<<なっ・・・・>>

ブラット艦員はただ絶句をするだけだった。

そして左側に空母が見えてきた。

「よし!突貫するぞ!2!来い!」

「言われなくても!」

SU-33は機敏に空母の左舷がわを捉える。

<<?!敵は空母狙いだ!撃て!落とせ!>>

<<多少の損害を気にするな!弾幕を張れ!>>

「いまさら遅い・・・カウント!3(ドライ),2(ツヴァイ),1(アイン)・・・0(ヌル)!!」

「FOX3!!」

2機から合計6発放たれるASM。翼から離れたミサイルは速度を上げて目標に向かう。途中で弾幕にやられて残りの4発、

<<弾幕が利きません!総員衝撃に備え・・・>>

刹那、激しい爆音とともに4発のASMは空母ヒューバードに命中する。トゥルブレンツはコブラ機動を使い上空退避、そして・・・

「もういっかい!少ないが30mm機銃を味わえ!ボロ盾が!」

<<!!イージス、セニア!逃げろ!隊長格が来た!>>

<<無理だ!>>

グレンはあっというまにガンレクティングにセニアを収め、150発の機銃の弾を全て放つ、そしてピンポイントに・・・

<<ああくそ!SPYレーダーがやられた!!これじゃたたの船だ!!>>

イージスの要のレーダーを破壊する。

<<奴らを生きてかえすな!!ヒューバード配下艦隊!全艦撃ち方始め!!>>

<<<<YEahhhhhh!!!>>>>>

次々とあげられていくSAM群

「ここで死ぬわけにはいかないんだ!2!チャフタイム!」

「了解!!」

搭載できるだけ搭載したチャフフレアをばらまきながら2機は空へ急上昇する。チャフが丁度切れたころに、何とかSAMをしのげた。

「ふう、ギリギリだったな」

「無茶しすぎです!」

「済まない、どうしても目に入ってな」

グレンは笑う、しかし、これからが本番だ、艦載機部隊が大挙して来たら、こちらの負けは確実だ・・・どうしようか。

<<空母撃沈良くやった。こちらは海軍総司令、レン・グーファだ>>

「!!?、どうして閣下御自ら・・・」

<<ふ、乱気流部隊か。面白い・・・これからそちらに増援を送る、生きて帰って来い>>

「ありがとうございます!2!突破するぞ!」

「はい!隊長に一生連いていきます!」

2機のSU-33、乱気流部隊は、今後オーシア海軍で語られる三大エースパイロットになる。

1020hrs

空母ヒューバード

「ダメコン失敗!もう駄目です!戦闘機を飛ばす蒸気カタパルトも浸水で機関部が死にました!」

「・・・総員退艦せよ・・・以上だ」

「了解!」

ソナーは被弾した瞬間、膝から崩れおちた。全て終わった・・・。これから軍法会議にかけられるだろう・・・ああ。

「愛しの海は!神は!なぜ自分を見捨てる!ハハハ・・・アハハハハ!!!」

「艦長?!」

「ああ・・・もういい、もういい!ああ!!」

発狂したソナーは、そのまま艦橋で一番やわいガラス部分を突き破り、甲板に落ちて自殺した・・・・。

1025hrs

両艦隊side

「予定変更だ!ベルカ海軍!全艦5~10発ずつ放て!遠慮するな!」

「全艦!ふざけた作戦を展開するベルカに鉄槌を下せ!中距離戦前の総力戦だ!!」

「「「「「YES SIR」」」」」

上がレンで下がフラバーだ。そして艦員の返答はほぼ同時だ。

「対艦戦闘用意!!敵に二流海軍と侮らせた事を後悔させろ!!」

「対艦戦闘用意!!二流海軍に教育的指導をしろ!!」

そしてほぼ同時に・・・

「「VLS開放!放て!!!」」

ほぼ同時に超大規模、濃密なミサイル群が発射される。これが後に歴史書にのる大規模戦となる・・・。



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因縁を超えた現代海戦3

2/23

1040hrs

ベルカ海軍

全艦から110本

戦闘機ASM60本

誤動作消失17本

オーシア海軍

全艦から118本

戦闘機ASM72本

誤動作消失32本

ベルカ海軍side

<<こちらマジック33!ダメだ数が多すぎて処理不能だ!>>

<<イージス、ポセイドンより脅威判定が間に合わない!イージス、AWACS!分担して判定しよう!>>

<<SAM全弾発射!後の事を気にするな!ここで手を抜いたら前衛が全滅だ!>>

<<盾(イージス)の役割を果たす!!>>

「全艦!あとの事を考えてSAMを調整せよ!CIWS!主砲はフルだ!!」

レンも動き、艦隊に飛来するミサイル群のSAM調整を行う。密集陣形から繰り出される濃密対空攻撃が展開される。

レーダー上はめまぐるしくミサイルが消えたり残ったりと変動していき、イージスなど高い処理能力も間に合わない。

「前衛から・・・来ます!!」

空で花火のように誘爆、または艦に当たり炎上する。

<<艦橋がやられた!艦長は?!>>

<<CIC直撃!この艦は使い物にならない!総員退艦!退艦!!>>

<<弾薬庫だ・・・ああ終わっ・・・>>

「前衛から艦隊が壊滅!現状では駆逐艦4隻巡洋艦3隻撃沈!他総計5隻大破!2隻中破!総戦力25%損失!」

「ぐずぐずするな!救助艇を緊急出動!助けられる限り助けろ!収容艦は空母とSAMの少ない艦!防空が難しい艦を後衛に回せ!前衛を厚くしろ!低速前進!」

「「「<<<Yeahhhhh!!!>>>」」」

「敵艦損害報告!敵艦隊は集中砲火で対艦ミサイルを落としてましたが、広範囲散開で防空間に合わずこちらより4隻損害多し!」

「・・・まだだ、ファーバー君」

「どうしましたか元帥閣下?」

ファーバーがレンを見る。

「私はいつも殉職した艦員達の名前をノートに書いて忘れないようにするんだ」

「は、はあ」

確かにレンは総指揮官では珍しく、ただの一兵卒の殉職の葬式でも出席する人だ。

「それをファーバー君に託したいと思うんだ」

「は?・・・て、それは!」

ファーバーは少し呆けて、そして真意に気付く。

「無茶な作戦を押したのは私だ、焦り過ぎが仇になり、今は均衡、少々優勢でもここまで犠牲者出した。この戦闘が終了したら私は軍服を脱ぐ」

「私は反対します」

ファーバーの即答

「なぜそんな事言う?」

「少なくともこの空母の艦員の意志と思うからです。よし!救助者は後衛組に任せろ!戦速上げっ!!」

「Yes sir!」

ファーバーの言葉で艦員は動く。

オーシアside

艦隊は被弾者が多く、再編成をはかっている。

「くそ!我が艦隊の損害が大きいとは・・・」

フラバーは膝から崩れ落ちそうになるのを何とか立つ。世界最強の海軍の艦隊が大陸国家の見せかけ遠洋艦隊に負ける。これ以上に屈辱は無い。

「空母がこちらの艦だけなので回転率が・・・」

「分かってる!くそっ!!」

空母が一隻になった今、この空母は約130機の戦闘機を回転させなければならない。さらにベルカの部隊は最強、彼らよりも多く飛ばさなければ突破される。いや、もう戦闘が開始されてるが劣勢だ。

「これもあれも乱気流部隊が・・・」

「どうしましょう・・・」

フラバーは顎にてをつける。今はもう救出作業で艦隊戦出来ない。だけど絶対にトゥルブレンツは落としたい・・・。最終手段か。

「第2番格納庫・・・」

「はい?」

「第2番格納庫リフトオン!反撃の手段だ!」

「そ・・・それは海軍本部にれんら「そんな暇があるか!!緊急開放!!」了解!!」

第2番格納庫に整備員が集まる。そこにあるのは、まだ実用化したとは言われてない特殊戦機・・・その名もX-47、無人高機動戦闘機だ。

1055hrs

中立領海

ベルカ海軍航空隊side

「1対3はやめてくれ!」

「ふう、甘く見過ぎだ。貴様ら」

「一気に3機ーー!!」

<<くそ!奴らは化け物か?!>>

<<AWACSより悪い情報だ、すでにオーシア海軍航空隊35%損耗!>>

<<良い情報もってこいよ馬鹿野郎!!>>

ベルカ圧倒的優勢、オーシアは数で勝ったが質では劣ってる。そもそも戦闘機の特殊機動の多いSUシリーズを積極採用するベルカの機動についていけないオーシアが今の最大の劣勢の理由だ。

「トゥルブレンツは帰還成功した!現在制空隊長として準備してい!持ちこたえろ!」

AWACSからの通信

「ふん、そんなの我々だけで十分だ。既に空母撃沈の功績がある」

「トゥルが居なくても俺らがやれる。いやトゥルのおかげで俺らがこうやれるのか・・・」

「言うな!」

ベルカ海軍航空隊はトゥルブレンツの戦闘で称賛が巻き上がり、これの恩返しとばかりに奮戦する。空中では最初オーシア70機、ベルカ39機、しかし今はオーシア46機、ベルカは32機、そしてオーシアは帰還機はほとんどいない。空中で散ってるからだ。その時

「マジック56、ガーダーから緊急!高速で接近機!数5、高度2000、飛行形式番号・・・該当なし?!」

「なるほど、多分極秘機か・・・スファー1より全機!トゥル制空隊長が来るまでここで押しとどめるぞ!」

<<ピピ・・目標発見・・・座標確認、高度確認・・・殲滅を開始する・・・>>

白く、B-2に似た高機動機が接近する。

ちょうどそのころ

エウレノ空軍基地

工兵隊の手によってようやく復活したエウレノの基地。元基地要員は全員復帰、そのままB7R奪還のための前線基地になる。そしてそこでは・・・

「また逃げてるのか?」

「まああいつはまだやってないからな」

B棟2階休憩室で整備隊が笑う、その近くを

「おい!お前はまだ報告書書いてないだろ!捕まれ!!」

「いやだ!馬鹿(グラッド)の報告書で十分だ!」

色んな報告書を持つ、事務員、整備員が追いかける。きっかけはカロン司令の一言。大量に滞納した部隊全体報告書の書類、もちろん戦闘機パイロットが書くが、全員やりたがらない。そしてカロンは爆弾を投げかけた。

「そうだ・・・おにごっこしよう」

と言ってこうした、事務員達と鬼ごっこ、隊長が捕まったらその隊はその担当者が持つ報告書をまとめる。

そうだ京都に行こうのノリでとんでもない事言ってくれやがりましたこんにゃろう。

そして、結川は唯一の生き残りだった。

「「「待てやーー!!」」」

「待てと言って待つ馬鹿いるか!!」

結川は全力で逃げる。緊急出撃(スクランブル)で鍛えた足を舐めるな!しかし目の前は窓という突き当り!

<<階段を押さえた!>>

「ナイスだ!」

「ちっ!」

結川は舌うち、段々と陸軍顔負けの室内攻略、包囲網が完成されてる!そういえば・・・第一狂ってる・・ゲフン・・空挺団の友人から教わったな。身が軽い自信はあるが、いけるか・・・・

「坊っちゃんの主人公は腰が抜けただけだ!!」

「おい・・・まさか!待て!!」

「アイ・キャン・フライ!!!」

結川は窓を開けて飛び立つ。重力任せて一気に落下!!そのまま地上にドーン!

ドサリ!

「なっ・・・大丈夫か!」

近くを歩く誘導班員が走ってくる。だが、

「おーいてて、よし!2階からは大丈夫だな!心配ありがとう!じゃっ!」

結川はすくっと立ち上がり、走り去る。

みんなはただ呆然とするばかりだった。



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因縁を超えた現代海戦4

2/23

1115hrs

エウレノ空軍基地B格納庫

「あう・・・」

「災難だな!少佐殿!」

「うう、まさか走った先にも別動隊が居たなんて・・・」

結川は両手いっぱいの希望・・・でなく書類にため息をつき、ゴードンがちゃかす。そう、まさかの目の前に、別の隊の隊長を取り逃した集団が居たなんて・・・。

「まあまあ落ち込むなって!いざとなればグラッド中尉をつか「ああ!!」どした?」

ゴードンの言葉で結川が立ちあがる、書類が数枚落ちる。

「その手があった・・・あいつにゃ管理不行き届きの始末書を何枚も書かせられたからな・・・キリキリ働いてもらうか」

意地の悪い笑みを浮かべる結川「おっかねーなー」と苦笑するゴードン。その時

「そうだ、ゴードン、何で俺らの隊のF-15しばらく飛べないんだ?」

「ああ、それはかいしゅ・・・やめ!睨まないで少佐殿!これ上層部の指令マジ本当!!」

結川は警戒感から睨む、ゴードンめ!愛機に何かしたら殺すぞ!

「いやいや、そうか聞いてなかったか、今度円卓制空戦に飛びますよね?」

「ああ」

昨日聞かされて、今エース部隊がここエウレノに集結中だ。

「で、本当は戦時中じゃなかったら、1年半での計画だったんですが、F-15UFXで開発が遅れてた、本来搭載予定の新型エンジン換装と、それと、ファルツ中尉の機体を電子戦機に改修するんです」

「聞いてないぞそれ!」

「こちらも昨日聞いたんです!で、多分今日の午後あたりでも言われる予定じゃなかったんですかね」

結川はゴードンの顔を見て、本当なんだなと思う。

「それじゃ、電子戦機ということは、WSOが来るのか?」

「ええそうらしいですよ。ベルカ空軍電子戦機課程を卒業して、ベルカ空軍に在籍してたウスティオ人が来るという整備隊だけの噂が」

「ふーん、それで新しいエンジンとは?」

「ああ、それは、これです」

ゴードンが指さす先に、第二整備班の面々がエンジンを見ている、これが新型エンジン・・・どっかで見た覚えが・・・確か嘉手納へ自費研修に行った時・・・

「あれはベルカ兵器工業廠の新型エンジン、F-22エンジンとほぼ同じ性能を有してます」

そうか!あの独特の排気口、確かにF-22だ!だけど・・・

「F-22って、ベルカじゃ作ってないよね?」

「そうです、ゼネラル・リソース及びライセンス生産企業だけですが、ベルカの科学力で、本家と負けず劣らずのコピーが出来ました。もちろんアフターバーナー無しの超音速巡航(スーパー・クルーズ)も出来ます。これで対空戦闘が更に強化されますね」

ゴードンの言葉で結川はまだ改修されてない愛機を見て、こいつの強くなる姿に興奮を覚えた。

F-15に希望が見えた時、ベルカは絶望にさいなまれた。

1110hrs

中立海

「くそ!やつらめ!」

「ペガサスがここまで現実的になってたとは・・・」

ベルカはさっきまでの優勢を失い劣勢に立たされていた。

X-47B型ペガサス

オーシア次期航空母艦搭載予定の無人戦闘機、奴らの武装は通称電子レンジ。レーザー、高出力マイクロ波がある。その威力は・・・

「くそ!マイクロ波を受けた!レーダー機能不全!」

「また一機・・・これで5機目だ!」

レーザー落とされて、マイクロ波ではシステムを破壊、または電子レンジのごとく、内部の兵士をチンとしてしまう。

<<いいぞ!このまま攻め落とすぞ!>>

<<行け!俺らも倒すぞ!>>

オーシアの艦載機部隊が盛り返し始める、増援が到着したらまずい・・・。

「まずい、オーシアのクソ野郎どもを調子づかせるな!そして電子の固まりのAWACSや艦に近づけるな!」

「分かってるよ馬鹿野郎!」

距離を取ってAAMを放っても遠すぎて常識外れの高機動、それとレーザー迎撃、近いと電子レンジ。

「このままじゃ全滅だ!!どうしたらいいと思う?」

「そりゃ操ってる本体潰せばOKだが・・・情報艦はまだ解析できないのか!」

「やってるよ!だけど情報を色んな艦に回して、てか基本自律行動だから本体(空母)潰さないで勝てるか!」

「道理だ!早く空母潰せ!」

「既に第三射発射体制に入っている!持ちこたえてくれ!」

「了解した!しかし・・・奴らなにか探している感じがしないか?」

乱戦の中でX-47は何かを探すように飛ぶ、何を探しているんだ?

「管制より前線部隊、今トゥルブレンツが上がった!高速接近中!」

「そうか・・・今は誇りうんぬん言ってる暇無いな・・・。制空隊長が到着するまでとどまるぞ!そして反攻だ!」

「「「Yeahhh!!!」」」

ベルカの騎士たちは諦めない、しかしその時、X-47に変化が起きた。

<<ピピ・・・目標発見、確認トゥルブレンツ、迎撃地点良し、殲滅す>>

5機が一斉にベルカ艦隊側に向かう。

「??!、奴らめ!どこに逃げるんだ!」

「もしかしたら・・・AWACS!ペガサスの高度と同じでヘッドオンしている僚機は居るか!」

「は・・・ああ、ペガサスが向かっているのは・・・トゥル、トゥルブレンツだ!」

「やっぱり!」

「どういう事だ!!」

X-47が戦域から離れ始めたので、戦闘をしながら再集結、編隊を取り始めながら聞く。

「ペガサスはトゥルブレンツを狙ってたんだ!多分空母撃沈の復讐だ!!」

「!!、ロクシェ1よりトゥルブレンツ聞こえるか!奴らはお前らを狙っている!」

「そうみたいだな・・・トゥル1より・・・俺らが囮になって落としてくれと言いたいが・・・戦線維持が必要だ・・・艦でも航空機でも増援ないのか?」

「管制よりトゥルブレンツ、ネガティブ、今は航空機も艦隊も増援はきつい。あと10分!」

「「「無理だ!!」」」

全員が叫ぶ、しかしグレンは違った。

「よし、よけきってやる!何が無人機だ!逃げてやる!!そして落とす!2行けるな?」

「YES!隊長が言うならそうします!」

2機のSU-33は華麗な舞いを始める、X-47も必死の追撃を開始。

「ふっ、それなら話が早い・・・艦隊!早く敵に攻撃しろ!そして俺らも奮戦しようぜ!!」

「「「Yeahhh!!」」」

<<くそ!またベルカの野郎どもが復活し始めた!>>

<<さっさとおとすぞ!>>

<<そうはいくかな?>>

<<混線?どこか・・・長距離AAM警報!どこから?!>>

いきなりの混線、向かってくるAAM、避けきれず数機が散る。ベルカ艦隊の後ろからの攻撃、そして通信

<<遅くなって申し訳ない、空母戦略機動艦隊総指揮、ナノ・レータ、階級は大将だ>>

「なんだと・・・」

「ファト連邦海軍の虎の子空母艦隊!!」

レンが言葉に詰まり、ファーバーが驚きの声をあげる。

ファト海軍中型空母、サーシャ、ベルカ海軍がFCMBの条約で格安で売却したファト海軍唯一の空母。周りには9隻の巡洋艦、駆逐艦。さらに艦載機のラファールMとF-14改の混成部隊。

<<ふふ、大規模戦を聞きつけて、僭越ながら参上させてもらった、こちらはもう攻撃用意、艦載機部隊も準備は完璧だ、いつでもいけるぞ>>

「こちら海軍総司令レン・グーファだ。感謝する。いま航空隊の部下の2機が狙われてる。そちらの精鋭部隊を貸してほしい」

<<了解した。こちらのとっておきの部隊を用意しよう。我が空軍引き抜き海軍航空隊のトップエースを回そう、トランプ隊、征け!!>>

<<了解した、トランプ隊、トゥルブレンツの増援をする>>

「さて、オーシアに目に物見せてやるぞ!!ファトベルカの連合の力を見せるぞ!!発射!!」

<<ファト海軍!発射!発射!>>

戦いは最終局面に移る



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お酒で集う仲間たち

2008

4/1

0930hrs

シルバーマーク空軍基地

「緊急事態(エマー・ジェンシー)緊急事態、フライトプラン無しの国籍不明機が侵入、スクランブル機はただちに離陸せよ」

警報が鳴り響く、アラートハンガーから2機のF-15UFXが飛び立つ。また来たか・・・。ポケットに手をつっこみ、上がる仲間達を見守る男がひとり。

オリビエ・ヴィスコンティ大尉、4機のTyhoon部隊「バッカス」隊長だ。

最近国籍不明機の領空侵犯が激増した。国籍不明機というが、こんなちょっかい出せる国は一つしかない。

オーシア連邦だ。

きっかけは3年前のFCMBとオーシアの国際議会の発言だ。

「B7R、通称円卓の鉱山資源はFCMB、特にベルカ、ウスティオが不正占拠している地域はオーシア極東地域であり、即時国土割譲を求める」

ふざけた発言をしたのは、当時オーシア大統領のシム・トラットである。この発言をきっかけにベルカ筆頭にオーシアと冷戦状態に陥る。

さらに今年になって、いきなり南ベルカ地域円卓の資源のはみだし部分に強制採掘を開始、同時に今までよりも更に挑発的になるオーシアはベルカ、サピン、ウスティオに領空侵犯をする。本当に勝手きままな国だ。

そしてここは円卓に近い北部エウレノと同等に警戒度が高い、ベルカを挟み、最もオーシアに近く、不法採掘場の南部のシルバーマークだ。常に8機もアラートハンガーを置くという超厳戒態勢。俺らも明日の午前中は詰所だ、しかし

「司令も何の呼び出しだ?」

そう、明日は午前中バッカス隊がアラートハンガーだが、何故か残り4機分が空白だ。いつもならTyhoonのハーバー隊とか、SU-37のスナー隊が良くバディになるが・・・。

そして司令室の前、着崩した制服を着直して、扉をノック

「オリビエ・ヴィスコンティ入ります!」

「どうぞ」

扉を開けると、この基地の雰囲気と同じような厳格な女史、ミナー・フラッチェ大佐だ。年はよんじゅ・・・いや、言わないでおこう。しかし全体的に引き締まってて、顔も実年齢より若く見える。ここでは厳しいが、家には2人の愛息子と愛娘、そして夫は普通の会社員だが、もうメロメロらしい、デレらしい。まあそれは置いといて。

「何か自分に用ですか?」

「ああ、君は6師計画は知ってるな」

「ええ、知らないはずがありませんよ」

6師計画、激増する領空侵犯、もしかしたら来るかもしれないオーシア連邦の攻撃を防ぐために、大量のパイロットが必要。しかし急にウスティオ正規兵パイロットを増やしても経験浅いパイロットばかり用意しても意味がない。ならば戦場経験者を集め、正規兵に刺激を与えようと、傭兵専門航空師団を設立。それが第6航空師団だ。

「実質上の軍拡だ、それでうちの国は少々面倒な法律があったんだ」

「面倒?」

「国防法第7条3項目、空軍部隊数上限の法、空軍戦闘機部隊は中隊、小隊の上限を定める・・・で、今の空軍はその上限になってしまってるんだ」

苦い顔をするミナー。オリビエは察する

「もしかして、6師増備のために・・・」

「そうだ、これを受けて正規兵部隊は2機部隊は4機になど、部隊統合する事が決定した。全く、そんな統合するなら法律改正すればいいんだが、どれも面倒、まあ一部隊を大きくして運用効率を上げるという名目あるので強くは言えないが、そこで、君は少佐に昇格、8機中隊の隊長をやってもらう」

「いきなりですか・・・それはいいですが、はあ、理想のお酒部隊もこれで終了ですか」

今の所、部下のイワン、ガルシア、ウルリカ、もうお酒が大好き部隊だ。給料の20%が酒に消えていると言われている。事実だろう。

「いや、それはない」

「はっ?」

ミナーが断言して、オリビエが間の抜けた声を出す。

「今度君たちに来る部隊は、本当は1個小隊4機そのまま統合する予定だったが、お酒大好き部隊という事で、2個小隊から2機ずつ、計4機やってくる。どれもお酒好きらしい、そして問題児ばっかりだ」

「ふむ、独立してきたのか、まあお酒に自制がない問題児が多いのが我が隊のデフォ」

「自制しろ、貴様」

オリビエのジョークに睨むミナー。おお怖い。

「まあいい、それで、今日の1700に到着する。明日から新生バッカス中隊として頑張ってアラートハンガー行きだ」

「・・・・マジですか?」

「本気だ。さっさと酒飲んで仲良くなっとけ。最後に、階級章は明日授与で、アラートハンガー行きの前日は本当は禁酒だが特別に明日に響かない程度に飲酒をきょ「イーーーーヤッホーーー!!!失礼しました!!」おい!たく、酒を許可したらすぐこれか、28になる男があんなにはしゃいで・・ふふ」

ミナーが厳格そうな顔から少し緩んだ顔になり、オリビエが出て行った扉を眺めてた。

1650hrs

基地1番滑走路

2本の滑走路の内、短い2300m型の方に、バッカスメンバーが集まる。

「もうそろそろで来るな」

「どんな奴らが来るんだ?」

オリビエの言葉にウルリカが反応

「さあな?ただ片方の隊の2機は女性パイロットだそうだ。共に24歳」

「そうか・・・歳だけじゃだめだ!スリーサイズと好きなお酒と花を!」

「そうそうそ・・・うじゃないだろっ!なに口説こうと考えてる!」

「いや、隊長はするでしょ?」

「うん」

あっさり頷くオリビエにウルリカ苦笑。

「隊長、ウルリカ、騒ぐな、来たぞ」

「ありがとう!バッカスの常識辞典!」

ユーク系ウスティオ人のイワン・コーネフが突っ込む。

近づいてくる4機のTyhoon、きれいな2機編隊ずつ着陸していく。

「ヒュー、随分とレベルが高いじゃねえか」

オリビエが着陸を見て、練度を判断する。そのまま誘導路で止まり、コックピットが開く、そして

「おお!ここが最前線か!平和なシルバンと違うな!」

「先輩!いきなり大声出し過ぎです!」

先に降りてきたのは男チームか、そして

「へえ、ディレクタスと同じ感じね」

「わあ、アラートハンガー大きい!」

「そこに注目するの?」

あきれ顔する女性と無邪気な女性・・・わあ眼福。

全員が降り立ち、まずオリビエから

「お疲れ様です、ようこそ、第4航空師団第32戦術航空中隊、新生バッカス隊へ!自分が隊長に任命されたオリビエ・ヴィスコンティ、階級は少佐だ」

「イワン・コーネフ・・・階級は中尉だ」

「ガルシア・ディートリッヒ・ヴィルケです、階級は大尉、一応副隊長だが、実質イワンに押しつけている」

「ウルリカ・シュテルンブルグ、階級は少尉、初めまして」

全員が敬礼をする。

そして相手側

「元ピッケル隊ロバート・ボイントンだ!階級は中尉!バッカス隊の噂は聞いてたぜ!」

「同じく、アルフレッド・マラン、階級は少尉です。お願いします」

2人は敬礼をする。

「アリス・フッドホップ・・階級は中尉です・・・あの、胸への視線が痛いのですが・・」

あまりの胸の大きさに、全員の目が向く。

「わたしはー、エレナ・ディートリッヒ、階級は少尉です!未熟者ですがお願いします!」

うん、癒し系だな。全員の思考が収束した瞬間だった。

「さて、みんながバッカス隊と馴染んでもらうため、酒の許可が出た!よし!まだ早いが飲みにいくぞ!」

「「「おおーー!」」」

この時はオリビエの号令で、全員が大声を出す。

そしてそれが悪夢の引き金になるとは・・・

2000hrs

基地内バー

バッカス隊は荒れていた。

「いつも通りだ」

と見ているのはオリビエ

「うう・・・俺はどうせ無口の気が小さい男だ」

常識人のイワンは泣き上戸になる。

「ふはははは!ガンガン酒をもってこい!!」

暴走するガルシア

「素敵なお嬢さん、どうか私のもとにお帰り」

「お断りします♪」

「ガクッ」

あたりかまわず女性にアタックするウルリカ、てかその女性は人妻だ。

「おれはなあ!傭兵で100機の第五世代戦闘機をなぎ倒し・・」

「妄想するな!」

ピッケル隊の2人、ロバートがボケで、アルフレッドがつっこみの漫才になっている。

そしてとどめが・・・

「熱いです・・・脱ぎます!!」

「「「おおおおう!!」」」

アリスがパイロットスーツを脱ぎ始めようとする。周りははしゃぐ、警務隊が来るぞ。

「キスしよ?」

「いきなり何をいってふぐ!!」

エレナがまったく関係のない整備員にキスを開始、しかもディープだ・・。

暴走していくバッカス隊、前回比300%にパワーアップしてます、どうも。

そして翌日暴走の代償として、全員二日酔い、司令のお怒りを受けて、SU-37のスナー隊とF-15UFXのゴラン隊が急遽アラートに詰める事になり、そのメンバー達の恨みを買った。

まあ問題児の多い部隊だが、基本的に酒が動力の最高最強のTyhoon部隊です!



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因縁を超えた現代海戦終

2/23

1120hrs

中立海

オーシア海軍side

ベルカ・ファト連合海軍

全艦200本

戦闘機ASM67本

誤動作消失44本

ファト海軍の対艦ミサイルは旧世代が多いため、途中消失が多い。

「全艦!防空網を高めろ!所詮2流3流の烏合の衆!叩き落とせ!!全艦ハルマゲドンモード移行!!」

「イ・・・イエス!!」

ハルマゲドンモード、全艦から遠慮容赦ないSAMシステムが働き、ミサイルを落とす。ただしこれをすれば無計画に弾が消えていく。

「発射発射発射!!!」

「CIWS作動!主砲作動!SAMが切れたら回避行動を優先せよ!!」

次々と放たれるSAMの雨、対艦ミサイルは火花をあげて消えていく。防空網が完璧に働く。そして前衛から弾着が始まる。

「コーク大破!」

「シーナンス中破!ホーター航行不能!さらにイージスミニット撃沈判定!」

次々と友軍艦からの情報が来る。

「よし、それでは我々から「て・・・敵から第二射!!」なっ・・・」

フラバーは言葉に詰まる。絶望の時が迫る。

1122hrs

ベルカ・ファト海軍連合side

「敵艦に間もなくあたります!」

「よし全艦間髪入れるな!第二射!ファトも全弾放て!」

「元帥閣下!」

「奴らはハルマゲドンをしている、SAMが不足する今ならやれば間に合う!叩きのめせ!一流海軍の醜態を見せろ!」

「そのあとは!!」

ファーバーが焦るように言う、レンはにやりとして

「ふっ、1905年オーシアベルカ海戦以来の主砲の肉弾戦だ!ミサイルなら奴らは一流かもしれないが近接ならこちらが一流だ!突撃だ!!!」

「「「「YES SIR!!!!!」」」」

ベルカの本気、ここに来たり。

1125hrs

トゥルブレンツside

2機のSU-33を5機のX-47が追いかける。

「ああ~、やっぱり無茶だったかな?」

「しょうがないじゃないですか、何をいまさら・・・私が囮になります。落として下さい」

「いいや、お前が落とせ」

「じゃあ俺達が落とす」

「「誰?」」

グレン、エレノアとX-47の更に後ろにラファール4機。

「ふっ、トランプ隊コールサイン、キング、このラブラブ部隊が・・・二度目だが、俺らが落とす」

厳つい声、相当の修羅場を潜ってる・・・しかもトランプ隊か。海軍航空隊所属なら知らない者は居ない。ファトのエースか。

「トゥルブレンツ1より、噂はかねがね、援護頼みます。自分たちも反撃します!」

「海猫夫妻の噂よりは狭いよ」

キングことアルマン・ドゥ・シレーグ・キング中佐が笑いを噛み殺して言う。

「・・・、さて神よ、我らに道を示し給え・・・」

クイーンことアラミス・ルネ・ダラミツ・クイーン小佐は神に祈る。戦闘機乗りで聖職者なのである。

「よし、クイーンの祈りも終わったし、散開!」

「「Yes sir!!」」

ラファールが散開する、

<<敵、増援確認、散開・・・>

X-47が散開する。3機がトゥル、2機がトランプだ。

トランプ隊は2機で1機を仕留めるように戦うスタイルらしい。恐ろしく連携が取れている。

さて、こちらも・・・

「買いかぶりすぎというか・・・過剰攻撃だな」

「敵のレーザーやマイクロ波が肉眼では捉えられません、距離を詰められれば一瞬です」

「なんだか俺は実弾を発射しない、訓練時の空戦の追いかけられ役をさせられてるみたいだ」

弾筋とかないし、敵のロックに知らずに入ってたら即撃墜判定だからな・・・。

X-47はじりじりとこちらを追いつめてくる。固まってたら確実に共倒れ・・・エレノアだけは生きて返したい。

「30秒時間くれ、死ぬなよ・・・トゥルブレンツブレイク!」

「Yes sir!」

2機のSU-33が左右に散開する。敵は自律行動をしている。そして推測だが敵の人工知能は高く、練度の高い部隊の連携並の攻撃が可能だ。

「試すか・・」

グレンはエアーブレーキオン、一気に速度を下げる。

<<TGT[ターゲット]ブレーキオン、3、撃墜要請>

<<了解・・・>

X-47が追い越す、よし、いけ・・・!!

追い越したX-47をターゲットシーカーで捉えようとするが、すぐ後ろからもう一機が俊敏にバックを取って来た。回避行動を取るが、

「やべっ」

「隊長!!」

敵の高出力マイクロ波を少し浴びて、刑期が、ディスプレイが乱れる。

「損傷軽微だ!2!時間延長だ!回避に専念しろ!」

「っ・・・了解」

エレノアは今すぐにでもグレンを助けに行きたいのを抑えて、狙ってくる一機を彼に向けないように敢えて離れる。

<<敵機ロスト・・・レーダー認識、座標確認・・・方向修正を開始・・・>

グレンを追い越したX-47が旋回する、その時、彼は気付く、そしてひとつの仮定をたてる

奴らの自律行動は完璧じゃない・・・。敵は俺の急減速に対応して増援はしたが、自機から見て敵機の方向を確認するのはデータリンクしてないのか、方向修正が有人より時間がかかった。ならば奴らから見て素早く後ろを取る戦術を取れば・・・しかしどうやれば・・・急減速は子供だましだ。奴らがもっと慌てさせる方法・・・。

SU-33を高機動で右へ左へ、とにかくバックにつかせない、Gで脳に血が回らず、なにか思い出せそうで思い出せない・・・

「そうだ・・・2!集合号令!」

「Yes!なにか思いつきましたか?」

「ああ、敵のバックに急に入れば隙をつける・・・時に2、SU-33って、特殊機動K出来るよな?」

「え・・ええ、SU-27の艦載機型なので・・・」

「先代偉人パラト・リカニル大佐殿のMIG-29改のダブル出来るかな?」

「はっ?あれは翼全般大抑角で完全失速しますが・・・」

エレノアが編隊を取り始める、X-47も集まる、

「高度とタイミング取れば大丈夫だよな?」

「・・・はあ、分かりました、急上昇しましょう」

「OK、シザーズで急上昇!上昇中もバックを取らせるな!」

「YES SIR!!」

SU-33が急上昇を開始、左右不規則回避法にシザーズを繰り返す。しかもグレンエレノアが左右交差しながら上がるので、その後友軍からは「仲良し二竜」敵から「破壊の竜神」と呼ばれる。

高度を2万フィートに達すると水平に戻す。あえて減速してマッハ1。敵機はまだしがみついてくる、そして迫ってくる。

2機のX-47を落としたトランプ隊は上を眺め

「さあ、どうでるか・・・」

「そろそろまずいです」

「まだだ・・・3,2,1,ナウ!!」

<<・・・敵機ロスト・・・僚機も同様確認できず。>

「おお、あれが伝説の・・」

「きれいです・・・」

アルマンとアラミスは思わず見とれる技、グレン、エレノア揃って、推力偏システムが無いと出来ない技、本場クルビットをする。しかしそれは縦に高機動で一回転の技

<<おおお!>

<<クルビットか・・・>

<<しかしあれでは背後は取れないぞ・・・>

ベルカ海軍航空隊の何とか捻出した応援部隊が呟く、機体を一回転しても機首はX-47と反対側を向いている。あれでは攻撃出来ない、しかし彼らは違った。

<<<!!!!>>

まさかの光景に目をむく、SU-33がもう一回転したのだ・・・

<<あれは・・・伝説の・・・>

<<ああ、ダブルクルビットだ!>

5年前のパラト大佐が見せた技、継承者はだれも居なかったが、まさかあの技術曲芸部隊・・・ぶっつけか?!

<<敵、後方、機動方法不明・・狙われてる・・・機動不明・・敵後方・・・エラー>

X-47は完全に狂って、ブレイクという選択肢が見当たらない。

「所詮は機械だ・・・落ちろ!トゥルブレンツ1」

「トゥルブレンツ2・・」

「「FOX2!!」」

<<AAM確認・・回避・・・不可・・・>

ターゲットシーカーに確実に捉えられたX-47は回避はもう不可能だった。SU-33から放たれるAAMは敵にかみつき、そして爆ぜて砕けた。

「よしっ!」

「やった!」

グレンはガッツポーズ、エレノアは満面の笑みになる。

<<やったのか・・・あの化け物を・・>

<<認めるしかない・・・我らの海軍航空隊最強エースはトゥルブレンツしかないと!>

<<Yehuarrr!!>

<<しかし・・・トゥル1の機体・・・何だかおかしいぞ?>

その時、グレンのSU-33は緊急事態に陥っていた。

「やっべ・・・マイクロ波か?」

翼の制御システムが死んだのだ、主翼、尾翼、他機体制御に必要な部分がばらばらに働き、直進以外満足にコントロールが出来ない。機体ディスプレイは翼全般に警告の赤マークで塗りつぶされる。

多分マイクロ波の計器異常がここにきて・・・

「た・・・隊長!!」

「機体はやばいが滑空で何とか戦闘空域から逃げる、イジェクションシステムは生きてるから脱出できる。決着着いたら救出をよろしく頼む、2・・・増援部隊と一緒に艦隊戦の増援任務に就け」

「そんな、そんなこ「エレノアッ!!」・・・・!!」

涙声のエレノアの言葉をグレンが思いっきり遮る。名前で呼んだのは無意識で気づいていない。

「我々の任務は墜落しかけの戦闘機の護衛ではない、艦隊の護衛だ、勘違いするな・・・俺は生きて帰る。分かったな?」

「・・・Yes・・・sir・・生きて・・・帰って下さい・・・」

「ああ」

グレンは高度を少しずつ下げながら、オーシア領土側戦闘空域外方向に向かう。

「・・・・・・・・・・」

<<こちらAWACSターニャ!増援部隊、戻ってきてくれ!艦隊肉弾戦が始まった!航空部隊もまた来ようとしている、撃退を要請!>

<<トゥル2・・・戦いは続いている。行くぞ>

「・・・了解、トゥル2、戦闘続行します!」

彼女は何かを振り切るように、速度を上げて急降下、花火に突っ込む。

5分後、グレンの操るSU-33から発信信号が途絶える。

グレン・アーガイル大尉、中立海において行方不明。

少し遡り

1125hrs

中立海

オーシアside

ベルカ・ファト海軍の数えきれない対艦ミサイルが雨となって降りかかる。

「ハルマゲドンを続行せよ!」

フラバーに焦りが見えていた。これ以上の損失はオーシア北海全域の防御を失い、ベルカに制海権を奪われる。弾を撃ち続ける。

「SAMがもうないです!艦隊の防空火力は低下の一方です!」

「言い訳は聞かん!!さっさと撃ち落とせ!」

「もう駄目です!!」

次の瞬間次々と艦船から火花が上がる。

「被害甚大!戦力45%ダウン!もはや艦隊維持も出来ません!」

「くっ・・・」

「降伏を・・・」

フラバーは自信という言葉が消え、代わりに完全敗北の言葉を知る。さらに追い打ちが・・

「敵艦隊主砲攻撃!砲弾の雨が・・・」

「・・・敵艦隊に打電・・降伏を・・・」

「Yes sir・・」

副将が頭を下げてCDC[戦闘指揮所]に向かう。フラバーは帽子を脱ぎ・・

「もはや私の時代は終わりか・・・」

呟いて、席に座ると、死んだようにうなだれた。

ここに一人の海軍の鬼が消えた。

ベルカファトside

「敵艦隊からの降伏の合図が来ない限り撃って撃って撃ちまくるんだ!!」

「「「「YES SIR!!!!」」」」

前衛艦から速射砲などの主砲を撃ち続ける。分速数十発の速射砲の雨は敵前衛艦隊を容赦なく破壊する。命中率が低くてもいい、敵に反撃させなければいい、奴らはもう降伏は目に見えている。

「元帥閣下、もうこの艦隊の使った弾薬費用って・・・」

「気にするなファーバー君!」

「オーシア敵艦隊から打電!降伏を受け入れるようです!」

「撃ち方やめ!聞け全艦!一流海軍は二流海軍に屈した!これで我々はオーシアに・・・1905年以来、オーシアに海戦で勝利したぞ!!」

レンの言葉で、生き残りたちは全員が喜びの歓声を上げる。

そしてその時、X-47の撃墜の報と、トゥルブレンツ1ことグレンの行方不明が報告された。

1155hrs

中立海名無し(ネームレス)海岸オーシア寄り

外務省の揉めあいで名前が消えた海岸に一人の男がパラシュートで舞い降りる。

「ああ~、何とか生きて帰れた」

目論見通り、無事海岸にたどり着いたグレンは、パラシュートを外し、立ち上がる。しかし目の前に・・・

「貴様は・・・ウスティオ兵か!手を頭に置いて無抵抗の意志を示せ!!」

まさかのオーシア陸軍か・・・多分艦隊戦の状況確認部隊だろう。くそ、

「分かった」

言うとおりにうつぶせになり、頭に手を置く。捕虜になるのか・・・この先を案じ、ため息覚えるグレンだった。

1200hrs

マスドライバー発射基地

「なっ・・・くそ!」

「オーシアの空軍どもめ・・・」

「マスドライバーが発射された・・・ベルカ空軍の一生の恥・・・」

「既にベルカその戦力70%ダウン!撤退も出来ない、阻止も出来ない・・・」

ベルカ空軍強襲部隊はオーシアマスドライバーを攻撃を開始した。しかしオーシアエース、レーパー隊コムを筆頭の部隊が迎撃。ベルカは壊滅した。

そしてマスドライバーは白い鳥にレーザーを受け渡す。

1230hrs

レクタホール空軍基地

「南部軍閥の状況は?」

「はっ、ウスティオの総攻撃前、準備を進めてます!」

「そうか」

部下の言葉に頷くのは東部軍閥実質№1、リック・カー大佐である。

「我々は最強の武器を手に入れた。南部に負けず、ウスティオをなぶり殺せ」

「はっ!!」

部下は走る。リックはオーシアから供給された、B-1B、F-15、AH-64Dを眺め、口端をゆがめた。

レクタ侵攻開始まであと一日足らず。



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レクタ派遣軍

2/24

0830hrs

レクタ南部戦線

ウスティオ国防陸軍side

「全軍各連隊準備が完了したか!作戦開始10分前から進軍開始!遅刻は許さんぞ!」

「「「YES SIR!!」」」

準備は完了し、全軍攻撃開始の用意をする。0850hrsでベルカ・ウスティオ連合空軍の対地爆撃、0900hrsに堅い防御陣地を破壊作戦を開始する。

「元帥閣下、操縦系統の整備完了しました」

「同じく主砲、機関銃弾薬満載、整備も完了です」

「分かった、よろしく頼むぞ」

「「はい!」」

サーガとウーラコンビが報告をする。フェルナンデスは頷く。

「よし、それでは攻撃開始は予定どお「元帥閣下!」どうした!」

伝令がフェルナンデスの所に走ってくる。

「大変です!レクタ軍の東部軍閥の空軍部隊が接近中!対地ミサイル抱える爆撃機も・・・」

その刹那、いきなりウスティオ陣営から火柱が上がる。

「状況報告!第1重武装師団第8連隊に直撃!死傷者多数!」

「何で今まで分からかなかったんだ!!」

「それが・・・偵察衛星によると、オーシアの新鋭機、B-1Bが数機接近で、低空侵入でレーダーにひっかからず・・」

「くそっ・・・機械化歩兵の対空連隊!対空警戒厳にせよ!敵の攻撃を食らうな!」

「どうします元帥閣下?」

「サーガ君!エンジン起動!もう作戦なんて知るか!3倍にして返す!全軍突撃!突撃!それと空軍の奴らに緊急連絡しろ!至急護衛機と爆撃機で道作れと!」

「はっ!」

サーガとウーラは素早く乗り込むとエンジンを起動する。

「レクタ派遣軍全軍に通達する!これより敵陣に切り込みかかる!遅れるな!」

「元帥閣下に続け!」

「「「YES SIR!!」」」

レクタ派遣軍、進撃開始。

 

0840hrs

レクタ南部戦線から60マイル地点上空1200フィート

「敵陣営に着弾確認!おい!対地攻撃まだか爆撃部隊!」

「まあまて、JDAM攻撃可能地点まであと20マイルだ。そこから敵陣営に思いっきり爆弾を落とす」

「拍子抜けだな、ウスティオ空軍が弱体化の情報は本当だったんだな」

B-1B8機、F-15E、F-16D、更にオーシア空軍でも導入開始したばかりのF-15SE数機も参戦している。

「油断するな、仮にもベルカの実践豊富な右腕的存在のウスティオだ。何を仕掛けてくるのかは分からない」

「はっ、対地爆撃部隊しか敵さんが用意してないという情報があるんだからそんなこ・・・」

「どうした?」

レクタでもF-15SEを操るエースパイロットの言葉が不意に止まる。その上の隊長格が問う。

「いや・・・なにかレーダーが乱れ「全機!二時下から戦闘機!ブレイク!」!!」

その刹那、一機の戦闘機が下から上へ一機のB-1Bに一閃、尾翼が吹き飛ぶ。SU-47の前進翼をナイフにして体当たりした。

「ああ!こちらセーナ1!!尾翼が吹き飛んだ!戦闘不能・・落ちる!」

「無線封止解除・・・ウスティオが来るまでここで遊んであげるわよ」

「「「Yes Mam」」」

その隊こそ、破壊の女王、コールサインブリュンヒルデこと、ジャスミン・ミリディアナ少佐率いる、ヴァルキューレ隊だ。彼女の部下、荘銀姫・荘錦姫少尉操るSU-47電子戦機のECMで隠れながら突撃してきたのだ。

更に数本のAAM

「なっうわあああ!」

「メーデー!メーデー!」

「B-1B!全速力で目標の地点へ向かえ!」

「可変翼を撃ち抜かれた!どこから!?」

「右だ!右!」

「見えないぞ・・・幽霊か!」

「・・・・・」

無言でレクタの陣営を崩すのは、黒い幽霊こと、コールサイン、シュヴェルトラウテ、アイーシャ・クリシュナム中尉である。

「くっ・・・」

ヴァルキューレ隊の常識人、コールサインロスヴァイセこと、ソーフィヤ・パブロヴナ・カルチェンコ中尉が回避行動を取る。F-15Eに後ろを取られたからだ。

「ハイアー2より後ろを取った、撃墜す・・・あ?」

「2が火を噴いた!!」

「私の目が黒いうちに仲間の後ろを取ることは許さない・・・絶対に・・・」

「ありがとう、オルトリンデ」

オルトリンデこと、ステラ・シュテルンブルク・ヴラディレーナ大尉が援護する。

「ふふ!そこの爆撃機落ちなさい!」

「なっ・・・敵が撃墜機に突っ込むぞ!」

コールサイン、グリムゲルデことマリア・カラス少尉が火を噴きながら落ちる爆撃機と戦闘機の隙間ギリギリ潜り抜けるという、恐ろしい空間認識能力の持ち主だ。

<<こちらウスティオ空軍、ベーター隊、フィナール隊だ。遅れて申し訳ない!加勢する!>

「こちらヴァルキューレ隊ブリュンヒルデ、増援感謝します・・ですけど・・・」

<<ですけど?>

「私達が全部弄んで撃墜する予定なのでよろしくお願いします」

<<<・・・・・・>>

ウスティオ空軍サイドは戦慄を覚えた。別の意味で・・・・。

 

0849hrs

レクタ南部戦線

ウスティオレクタ派遣軍サイド

「ああああ!うざったい!ウーラ君!主砲で狙え!」

「無理です!12.7mm重機関銃も奴では貫けません!」

派遣軍の上を悠々飛び回るのは、アパッチAH-64Dである。

「くそ!歩兵連隊がロケット攻撃で!」

「あのうるさいヘリ黙らせろよ対空部隊!」

「やりたくてもロケット攻撃が降り注いでまともに撃たせてくれねえんだ!」

「役立たず!!くそ!」

「こうなったら・・・」

「何をしますか?!元帥閣下?!」

その時、フェルナンデスはハッチからグレネードを取りだす。

「てか・・・どこから持って来たんですか?」

「気にするなサーガ君!行け!」

「ラジャー!!」

アリエテMk2はスピードを上げる。

<<奴だ!あの戦車が最高指揮官のせてる!>

<<殺せ!殺すんだ!>

AH-64Dから容赦ない攻撃・・しかし当たらない。

<<なっ・・・>

「落ちろ、カス」

にやりとしたフェルナンデスはグレネードを放つ、空に舞ったグレネードはAH-64Dのメインローター部分に近づき、時間きっかりに爆発した。

<<ぐわあああ!!!>

メインローターが破損したAG-64Dはふらふらしながら、逃げようとする。

「逃がすかーー!この携帯対戦車ライフルを喰らえ!!」

「「だからどこからっ!!」」

反転して、もう一つのローターに、対戦車ライフルが当たる。

<<ローター全壊!!ダメだ!落ちる!>

AH-64Dが陸上兵器で撃墜された瞬間だった。

「・・・・・元帥閣下」

「どうした?」

「「あなたはどんなびっくり超人ですか!!」」

サーガとウーラは口をそろえて言った。

 

0900hrs

エウレノ空軍基地

サザンクロス部隊全員が小ブリーフィングルームに集まる。

今日、電子戦機に改造するコーノの相棒となる人が来る日だ。

「さーて、どんな人が来るんだ?」

「干物、落ち着け、開きにするぞ」

「さりげなくグロイぞ!隊長!!」

「・・・・・」

「コーノ、大丈夫?」

「ええ、アリチェさん、大丈夫です。未だに情報が来ないのは怖いですが」

「「「大丈夫だ!コーノ中尉!」」」

「三つ子のはもりが凄い!」

相も変わらずグダグダな会話が続く。その時、カロンが入ってくる。反射的にサザンクロスメンバーが敬礼する。

「ふむ、楽にしたまえ、さて、ウスティオ空軍から選抜派遣されて、ベルカの電子戦機課程を卒業、若手ながらエースレベルのWSOを配属する。入れ」

「はっ!」

ん?女性の声?アリチェ+女性。そして部屋に入る女性、きれいな茶髪。厳しそうな目をする、アリチェ以上の男女。しかし細くて女性らしさがあり、そこそこ顔もいい。その時、コーノが・・・震えている?!

「姉さん」

「「「はっ?」」」

「久しぶりね、コーノ・・・今度よりサザンクロス4で、電子戦機WSO、エリーゼ・ファルツ、階級は中尉です」

微笑しながら敬礼するエリーゼ、うん、メビウスタイプか。

「初めまして、サザンクロス隊リーダー、リュウト・ユイカワです。階級は少佐です」

「初めまして、あと・・・」

「?」

エリーザは咳払いして

「そこに居る弟、コーノは私の宝物。傷つけたら殺しますので」

「「「は・・・・はあああああああああああ?!?!」」」

エリーゼは実は完全なブラコンだった。

こうしてサザンクロス部隊は全員がそろった。

 

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突破口

2/24

0845hrs

レクタ南部戦線

レクタ派遣軍side

茶褐色の土の上を、幾千幾万の兵士が走る。

「19歩兵連隊と11重武装連隊はその場で1分待機!18歩兵連隊は224機甲中隊に続いて進軍!他の部隊は航空攻撃来るまで、頭伏せて着実に進軍をしろ!」

「「「YES SIR!!」」」

フェルナンデスが戦車の通信から放たれる命令で、ウスティオ軍は着実な進軍を開始する。予想よりも航空爆撃は未然に防がれ激しくなかったが、上を飛ぶアパッチ部隊がわずらわしい。

「こちら野戦中隊・・・くそ、後方森林の森林迷彩がばれた・・・アパッチの集中砲火を受けてる!援護を!」

「うちらの戦闘ヘリはどうした!」

「こちら陸軍戦闘ヘリ航空隊、敵さんのアパッチのAAMの洗礼を受けてます!」

「くそ・・・MLRS!生きてるか!」

「はい!こちら誘導野戦大隊、まだ気づかれてませんが・・・」

間もなく非常に堅い防御線に着く、しかし航空爆撃はまだ来てない・・・フェルナンデスは迷う・・・しかし目の前の事に対して後方は必要!

「申し訳ないが、前線の兵士はまもなく塹壕にたどり着く、援護射撃用意!」

堅い所に野戦部隊の火力は必要、だけど多分アパッチにはばれる。彼らの命も危うい。

「・・・・・・、了解です。命が惜しいとか言ってられません!野戦大隊!MLRS用意!」

「「「YES S「その必要はないぞ!」!?」」」

その時、いきなり割り込む声、フェルナンデスには聞き覚えがあった。そして上空に4機のA-10が飛来する。

「待ってたぞ!弟!!」

<<ああ!兄貴!ヘル・エンジェル隊!レクタの堅い(笑)防御陣地を潰す!>

<<<Yes sir!!!>>

「えっと元帥閣下・・・ヘル・エンジェル隊とは?」

サーガが聞く。

「まあ同郷のよしみでな。ベルカ経済崩壊時代の相棒だ!」

「「どんな人脈ですか?!」」

またまたコンビの大声が聞こえた。

<<さーて、3!ロケット!>

<<あいよ!今回は対人用のロケット花火を喰らえ!>

今回は大型でなく、一発一発が小型のロケット、そのため、ハードポイントに一筒、18発×11の198発のロケットの雨。エルンストは宣言と同時にトリガースイッチを押す。

パシュシュシュシュシュシュシュ!!

数秒後、ロケットは次々火柱上がる。

<<なっ!>

<<上からの攻撃は対応してないぞ!空軍はどうした!>

「「なんという雨!」」

サーガとウーラがつっこむ

<<4!ハッピートリガーだ!>

<<Yahurrr!!ヒャハハハハハハ!!!>

40mmガトリングの猛者、ステラが毎秒65発でガトリングを続ける。

<<今度は鉛の雨だ!>

<<隣の奴の上半身が消えた?!>

<<臆するな!対空部隊は?>

<<さっきと今の雨で壊滅したよ!こんちくしょう!>

「「なんでそんなに弾幕出来るんだ?!」」

サーガとウーラがつっこむ

<<2!速射砲!>

<<Yes sir!あなたたち!この105mmで吹き飛びなさい!>

ユーマの前世代戦車サーバル105mmライフル砲が火を噴く

<<ちょっと待て!なんだあの大砲は?!>

<<塹壕内で広がらない爆風で被害が増えている!>

<<3番塹壕!おい3番塹壕!くそ、通信兵がやられたか?>

<<いや、とどめさされて全滅だ>

「「あれってベルカのサーバルだよね?!なんで空に?!」」

サーガとウーラ[以下略]

<<それじゃ俺は元帥の兄貴の道しるべに・・・喰らえ!!>

ギュンターの無誘導爆弾が、精密爆弾かのように、塹壕、防御陣地に入り、爆発する。

<<なんだ!あの精密攻撃は?!>

<<7番トーチカが沈黙した!くそ、防御線に穴が空くぞ!>

「「なんかすごいの見すぎて普通に見える?!」」

上記同文

<<こちらウスティオ、スタークロス、地獄天使が破壊した地域を中心に穴開けます!地上部隊のみなさんよろしくお願いします!>

「分かった、私からの命令だ!前衛に居る部隊は突撃開始!塹壕に飛び込め!」

「「「YES SIR!!!」」」

突撃が開始される。

その頃、元帥よりも早く突撃を始めた中隊があった。クラウスである。

「隊長・・・そのシャベルは・・・」

「元帥閣下からの頂き物だ!副隊長!」

「はいっ?!」

「俺の小銃持っててくれ」

「はい・・・はっ?」

副隊長は小銃を受け取ってから不審に気付く。

「よし!我が中隊最強なり!行くぞ!うおおおおおおおおおおお!!!」

「・・・・はっ、ちゅ・・中隊長に続け!」

「は・・はい!」

我に返った副隊長の号令で先に行くクラウスを追いかける。

「なんだあの敵は・・・シャベル?!」

「死ぬなーーー!気絶だけしとけ!」

「なんか優しそうで怖いーーーー?!?!」

クラウスは攻撃を受けず、逆にシャベルで叩く殴る、時には防刃チョッキのうえから刺して、衝撃で気絶させた。

「「「・・・・・・」」」

「ん、まあ、なんか出番ないから、レクタ兵の保護するか・・・」

「「「Y・・Yes sir」」」

副隊長達は捕虜と治療に専念していた。

そしてその時、本物の捕虜のがオーシアの牢屋に居た。

0900hrs

オーシア軍アーラスク基地地下2階、捕虜用牢屋

地下の世界、音は時折来る看守と飯番、とある人の飯を食べる時の音だけ。そのとある人とは

「ふう、もうやんなるな、これ」

一人呟くのは、まさしくグレンである。

「しかももう今日みたいな取り調べは嫌だ・・・」

朝の6時から今まで取り調べ、しかもオーシア語しか分からない馬鹿な、どこぞの坊っちゃん士官だ。それ以外は意外と、田舎なのか、優しいオーシア兵が多い。次回は奴以外で頼む。

しかし、この基地は、田舎の基地にしては大きい、陸空合同基地らしい。今の選択肢は、脱走手段を考えるか、寝るか・・・

「・・・・!!」

ふとその時、エレノアの顔を思い浮かべてしまった。

[何を考えてるんだ俺は?!落ちつけ!ストリートチルドレン時代を思い出せ!そうだ!素数を数えるんだ!1,2,3,4・・・もう終わった!!]

と、一人で混乱していると・・・

ガチャン!

「ん?」

牢屋入口の鉄の門の開く音、看守が来たか?

「---、---」

「---、--」

2人の足音、一人の方は・・・女性の声?そして近づき

「しかし少佐殿、どうしてここに・・・」

「捕虜のベルカ人があちらではエースパイロットと聞いたからね、本部に帰る前の報告手土産に」

「お疲れ様です」

「ありがとう・・・はあ、この手土産で陸からの艦隊戦敗戦報告の上層部のぎくしゃくが少しでも収まればいいけど・・・ここね」

[自分に用か?そして上級士官?]

その時、牢屋ドアの隣の、面接窓が開く。その先には、かなり美人・・・艶やかなお姉さんが・・・て軍にこんなエロテロリストが居ていいのか?

「こんにちわ、あなたがトゥルブレンツ・・ね」

オーシア語で聞いてくる。

「ああ、そうだが?」

ぶっきらぼうに返すグレン。さっさと帰ってくれ。

「ねえ君」

「なんでしょう、ファン少佐」

ファンという苗字か・・・。

「ここの気候は寒いわ。ここにあるベッドの毛布じゃ足らないわ。私の命令でいいから、どこからかもう一個毛布持ってきなさい」

「は・・はい!」

牢屋番が、生真面目に敬礼して走り去る。

「ふふ、地元の真面目な青年、ここの基地は、オーシアの総本部と違って平和でいいわ・・・あ、私の名前はベニー・ファン、階級は少佐よ」

「どうも」

ベニーは笑顔で言い、グレンはまたオーシア語でぶっきらぼう。

「つれないわね・・・まあ本題、あなたの愛しの部下はちゃんと空母に戻れて無事よ」

「!!」

「顔をそのままにして!音は入ってないけど、一応監視カメラ作動いているから、行動がばれる!」

「あ・・・あんたは」

いきなりベルカ語になった彼女は真剣な表情になる。グレンもはやる気持ちを抑えつつ自然な動作で彼女の方に顔を向ける。

「私は・・・オーシア軍戦場観測隊、調査室の一員よ。だから先の艦隊戦の戦闘は逐一海岸から観察していた。しかしそれは表の顔、裏はね、私はベルカ軍秘密情報部、外国諜報課、オーシア潜入室の一員よ」

「!!?」

驚きで顔が無意識にこわばる。ベルカの強みは航空戦と並んで言われたのは諜報戦、特にオーシアには多数のベルカスパイが、軍や、主要関係会社に潜入していると聞いたが・・本当だったとは・・

「しかし・・・オーシア人にしか見えない」

グレンはベルカ語に戻して聞く。

「ああ、それはね、オーシア人の純血だから、私達一族は特殊で先祖代々おじいちゃんの代まで、フリーのスパイ・・・高度な情報屋で、その噂を聞きつけて、当時のベルカがスカウトして、オーシアに居ながら、ベルカの情報部に居るの、オーシア生まれのオーシア育ち、正真正銘オーシア国籍の人間よ、で、士官学校入って、私もスパイになったの。中々楽しそうだったからね」

「・・・・」

「さて、無駄話しすぎたわ、一回しか言わないから良く聞いてね。明日の午前9時に、ゼネラル・リソースから試作機が格納庫から出て、試験飛行をする、それがどうもSUシリーズのパクリらしいのよ」

「!!、どうゆう・・」

「情報を漏らしたのはスホーイ設計局から逃げた人間で、そいつの始末はすんだわ。そして彼が持ってきた情報も全て消したわ。しかし試作機があれば、それを基に量産化が進んでしまう。そこで本部が決断を下したの。その試作機は艦載機型で、新型装備が増えてるけど、基本的にSU操縦者にはすぐ慣れる操縦形態。なのであなたに頼む事は一つ。その試作機強奪して、シーフェスディスまで持っていってほしいの」

「!!、そんな事・・・第一牢屋からは・・・」

その時彼女が帽子を取り髪から髪ピンを取り、グレンを見ながら片手で器用に扉の鍵穴に差し込みカチャカチャとすると

「よし、旧式の基地だから、ドアも古いわね、これで頑丈な扉もドアノブ捻って思いっきり押し込めば、扉は開くから、見た目もドアノブを普通にひねっても開かないからバレないはずよ。監視カメラの死角でさりげなくやったからばれないはずよ」

「・・・・、さすが・・」

「ありがとう・・・、それでは逃走経路は・・・一回で覚えられる?」

「もちろん」

「よし、それじゃあ、8時45分になったら、まず外に出て、牢屋入口と反対側に行く、突き当りに、要人逃亡用の隠し扉があるの、あなたの身長の丁度胸あたりで、真ん中より少し右側を押し込めば、扉が開き地下に行く。階段降りたらそのまま突き進んで2個目の分岐を左、突き当りの丁字路を右で、走り続いたら梯子がある。その梯子の真上のマンホールを開けると、丁度点検完了の試作機が目の前よ。そこは私が工作して、試作機に乗れるようにするから安心して。OK?」

「ああ、大丈夫だ」

その時、牢屋の入口が開く音が聞こえ、看守が歩いてくる。

「少佐さん、毛布探してきました」

「お疲れ様です。私も取材が終わったので帰ります。お仕事頑張って下さい」

「はい!もったいないお言葉です!」

毛布を持った兵士は笑顔で応じる、人気あるんだな、そして彼女がさりげなく紙片を面接口からこちらに放り込む。看守が毛布を面接口から放り込んでから帰ったのを確認してから、紙片を見ると、

「Viel Glück[健闘を祈ります]」

と書いてある。グレンは静かに笑う。帰ってやる、絶対に、そして乱気流の復活を目指して!



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電話

2/23

2200hrs

ヴァレ―空軍基地

未だ雪山に囲まれ、寒さ続くヴァレ―基地、傭兵、正規達はバ―や自分の部屋に戻り、消灯でガランと静まり返っている休憩室、自販機の光が煌々ときらめく。そこに備えられている衛星電話をかけている男が1人、ラリー・フォルクだ。

《決心はついたか?片羽》

「……いや、まだだ」

電話の向こう側の人間はラリーの言葉にふむと唸る。

《今はお互い討つべき相手だが、結託すれば、我々の野望は前進する》

「………」

《取り立てるようにせかすのは申し訳ないが、私達にも時間は惜しいのだ》

「それは分かっている。ZEROの計画、しかしそれは有効なのか?」

《君も意外とクドいな。少なくとも、今の馬鹿げているこの戦争よりか遥かに崇高だ》

「そうか……」

《残念な事に、私の……いや正確には、「世界」の掴んだ情報によれば、現在進行形で、双方最悪な戦争が展開されるだろう》

「よもや確定事項か」

《ああ、それを見てから判断させるのもいいかもしれない……》

「随分だな…分かった、早く決めると上には伝えてくれ」

《…分かった、黄金にはそう伝えよう。それではな、片羽》

「ああ…魔術師」

ラリーは受話器を置くと、休憩室のソファーにへたりこむ。

俺は一応でもウスティオ国防空軍のパイロット、しかしそれでは真の平和は掴めない。支えてくれた人間、ウスティオを捨てて、あちらに行けば、崇高な計画の歯車になれる。しかし裏切りは裏切り……特に相棒、サイファを捨てる、あいつは絶対にこっちに来る人間ではない……。

「どうすればいいんだ……」

ラリーは頭を抱え、葛藤する。しかし後日、彼の悩みを吹き飛ばす作戦が伝えられ、ラリーは変わっていく。

運命の歯車は止まらない……。



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大進撃

2/24

0900hrs

レクタ南部戦線

フェルナンデス戦車side

「サーガ君!ウーラ君!状況は!」

「「うちらが完全にトップです!」」

前線進軍全戦車部隊、80両の内、完全に独走をしている。

「おい!この玉無し戦車野郎ども!最下位はオーレッドまで走れ!死んでも走れ!ちなみに俺は本気だぞ!」

<<YES SIR!!!>

戦車部隊の速度が平均5キロ以上上がる。フェルナンデスが満足そうに前を向いた瞬間

「元帥!頭伏せて!」

ウーラの言葉に機敏に反応するフェルナンデスが頭を下げる、その瞬間、装甲、等に弾が当たる。

「どこからだ?!」

「・・・224戦中[戦車中隊]の11号車からデータ!塹壕からの機関銃!」

C4Iシステムでウーラが報告する。他からも多数の機関銃

<<くそ!装甲車が貫かれた!負傷者が!>

<<歩兵部隊!進むな!やられる!退がれ退がれ!!>

<<ウスティオの足が止まった!このまま押し返せ!>

<<防御線の能力を維持!>

<<戦車部隊!意地見せろよ!>

更にレクタのAMX-30戦車が火を吹き、戦車部隊の足も止まりそうになる。しかしフェルナンデスは違った

「てめーら!第二世代に負けるなよ!3.5世代の戦車購入してもらってダメとかふざけてるだろ!ウスティオ陸軍戦車部隊!歩兵の盾になり、主砲を放て!C4Iのデータリンクを活用しろ!」

<<YES SIR!!!>

フェルナンデスを中心に右翼左翼に戦車部隊が広がり、全体に広がる。そして塹壕に近づき

「戦車とまれ!!」

フェルナンデスの号令でほぼ一列に止まる。戦車砲、機関銃が乱舞するが、気にしない!

「撃ちー方始め!」

「撃ちー方始め!」

ウーラを始め、射撃手は一斉に射撃ボタンを押す。狙ってない。しかし威嚇は十分。レクタの砲火が一時やむ。

「戦車を乗り越え!塹壕を鹵獲しろ!歩兵突撃!」

<<YES SIR!!!>

撤退をしなかった勇猛果敢な重武装、機械化歩兵部隊が戦車の隙間から頭を下げ次々と塹壕へ飛び込む。

<<こちら第22大隊1小隊!塹壕を制圧した!>

<<工兵か手先の器用な奴!通信聞こえてるんなら機関銃の設置を移したい!頼む。>

<<負傷兵は塹壕で休ませながらゆっくり後ろに運べ!タグはしっかり付けろ!>

敵の防御線にほころびが出来始める。そしてその上から

<<こちらスタークロスを中心としたウスティオ航空爆撃隊より地上部隊!乱戦と野戦部隊の攻撃で攻撃目標が分かりずらい、随時支援爆撃要請してくれ!>

F-2、トーネード合わせて16機が防御線上空を飛び回る。本当なら勝手に爆撃してるが、予想以上の進撃で、どこに落とせば分からない。

「こちら総司令フェルナンデスだ!至急目標の地点の爆撃を要請する!」

<<はっ!なんなりと!>

「うむ、良い返事だ、それでは言おう。ばらまけ」

<<・・・・は?いや、お言葉ですが・・・>

「ずべこべ言わずに信号弾から先200m地点を徹底爆撃しろ!戦車砲で落とされたいか!!」

<<イ・・Yes sir!!全機聞いた通りだ!>

スタークロスバッカスは戦慄を覚えながらも指示に従う。

「それではこの信号弾で!」

黒い筒を取りだし、信号弾を詰める。そして

「発射!」

ポシュッという軽い音だが、確実に上がり、赤い信号弾が炸裂する。

<<信号弾座標確認!下の部隊頭下げろ!!>

<<塹壕に戻れ!頭下げーー!!>

<<通信から頭下げー!下げろ下げろ!!>

<<ウスティオの奴らが戻ってる・・>

<<!!・・・まずい!レクタの同志!頭を下げろ!爆撃が・・・>

通信兵が言いきる前に、16機の爆撃隊の攻撃が始まる。

レクタ陸軍南部の戦車や兵士が吹き飛ぶ、

「あんな爆撃が・・・」

停車した戦車のハッチから頭を出して、呟く

「完全に制空権を奪った今だから出来る攻撃だ。どの戦争も有利になればああなる」

「・・・・」

<<スタークロスリーダー、爆撃隊より地上部隊、爆撃を完了した、進撃開始出来ます!>

「了解した!御苦労!他適宜支援要請に応えろ!」

<<Yes sir!!>

「よし!フェルナンデスより全部隊!もう一押しだ!このまま首都に行く勢いで叩け!」

<<<<YES SIR!!!!>>>

「よし!サーガ君!ウーラ君!行くぞ!私の妻の誕生日が近い!それまでにレクタを落としたい!」

「「ちょっ、初耳!てか私情が強い?!」

サーガとウーラが叫んだ。

ちなみにフェルナンデスは戦場で鼓舞の演説とかはあまりしない、その代わり、突撃という行動意志で、味方の吶喊などを助長し、士気を大いに上げた。

0930hrs

エウレノ空軍基地ブリーフィングルーム

「それじゃあ、一部の人間の現状を無視して、ちゃっちゃと説明しますか!」

ゴードンが苦笑しながらサザンクロス隊を見る、彼らもまた苦笑している。なぜなら

「姉さん・・・頼むから、少し離れて」

「嫌よ、いきなりWSOでベルカに派遣されて4年、あなたに会えなくて発狂しそうだったの、ここで無理に離すと暴走するわよ」

「・・・・」

クールな口調、真顔で、エリーゼ・ファルツは、弟コーノ・ファルツの背中に抱きつく。

エリーゼ曰く、もともとはパイロット志望だったが、F-15電子戦機計画で、ベルカのWSOの入学試験で優秀な成績を収め、半ば強制にベルカ空軍に転籍したらしい。

コーノがアイコンタクトで結川に助けを求める。しかし結果は非情だ

[済まない、彼女は駄目だ!]

結川は首を振り、他は視線を逸らす。コーノは諦めた表情になり、姉に抱かれたままゴードンの話が始まる。

「じゃあまず、F-15UFXの改修計画。換装は3日後に終わり、新しいソースコードを入れて完了で、戦時の特別措置で、テスト飛行は、訓練と併用します。まあエンジンとかは欠陥は無いと言う自信しかないので、安心して下さい」

「ゴードン聞いてもいいか?」

「ホークか、何だ?」

ホークは立ち上がり、

「その戦闘機はF-15UFXからどう変わったんだ?」

「おお、大きく変わった点は、まず超音速巡航(スーパークルーズ)、ソースコードを変更して、戦闘攻撃機から多用途長距離制空戦闘機、対地攻撃機、電子戦機のはっきりとしたカテゴリに分かれる。もちろん元は戦闘攻撃機だから、制空でも対地攻撃は可能だ。

さらにレーダー探知能力も上げて、160マイル先まで分かるようにした。

次に電子戦機は、いわゆる隊の司令塔として活動できるよう改造する、主力のECMを搭載して、レーダー制限、武器の使用の禁止の間は、完全に敵さんからはレーダー上見えなくなる。近づきすぎるとレーダー障害でばれる可能性は高いが、基本低空で侵入した場合は有効だ。これはエリーゼ中尉の判断力が必要だ」

「大丈夫、弟が大事なくらい、部隊に対しても最大限のサポートはするわ」

エリーゼが自信をもって強く頷く。結川は信頼してもいいと直感で思う。

「よし、それで、航続距離とかだが、最新エンジンの為、フェリー、増槽無しで3600km、増槽ありで4800km、CFT装着すれば、一応6000kmは達すると計算されている」

「凄い航続距離・・・」

アリチェが感嘆を漏らす。

「まあ、実感するのは乗ってからのお楽しみで、この戦闘機はF-15UFXから新名称に変わる」

「どんな名前ですか?」

三つ子の一人、サルトが少し興奮気味で言う

「まあ焦るな。新型戦闘機の名前、それは・・・F-15RAIDEAGLE。通称F-15RE、更に後ろに、対空戦闘のAirのAタイプ、対地戦闘のGroundのGタイプ、電子戦機のECMのEタイプが登場する。

サザンクロス隊は、F-15REAとF-15REEだ」

「RAIDEAGLE・・・「遊撃の鷲」、「侵入の鷲」、「急襲の鷲」・・・確かに意味を捉えると多用途だ!」

結川は想像以上の進化に興奮しながら、喋る。

「確かにな・・・最強の鷲、再誕か・・・」

グラッドが呟く。

猛禽のF-22に世界最強の称号を奪われた鷲。再び力をつけて舞い戻る時が来る・・・。



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フェーズ2

2/24

1000hrs

サピン王国グラン・ギルド空軍基地

ブリーフィングルームに2人のパイロット。

ゼラム・クラッチ中佐とダン・ラーク少佐、ステルス攻撃機F-117を操る凄腕エースだ。

「来てくれたな、作戦を説明する」

基地司令、デービス・シュラッタ中将が目の前に居る。

「基地司令自らとは・・・凄い任務だろうな」

「娘の誕生日が近いんだ。お手柔らかに」

上がクラッチ、下はラーク。

「クラッチ、ラーク、この任務は陛下からの勅命だ」

「「!!」」

2人の姿勢が反射で直る。神に等しく陛下を崇めろという教えられてた時代の人々の王族信仰率は未だ高く。

その時代真っ只中の2人は王族の言葉は神に近い。

「それで、任務とは?」

「途端に聞く気になるとは・・・まあいい。知っての通り我が王国軍もオーシア参戦が決定。

敵国首都最前線国として戦う。これを知り、アップル・ルルースが首都防衛を宣言した。

オーレッドは防空最強説が強く、市民、陸軍の士気が高い。なので、ちょっと出鼻挫く」

「それは・・・敵首都乗り込んで爆撃ですか?」

ラークが聞く、シュラッタが頷き

「そうだ、戦略的に爆撃、オーレッド市民に徐々に出てる厭戦気分をはっきりさせ、短期決戦に持ち込む」

「もちろん人的被害は?」

クラッチは鋭く目を光らせる。都市爆撃で、市民を傷つけるのは時代遅れだ。

「それはしっかりしている。攻撃日は一週間後深夜、目標は現在軍事兵器搬入で一般通行禁止のオーレッド最大の橋。オーレッド橋だ、そこを破壊しろ」

シュラッタの言葉で、橋撃滅のタイムリミットが動く。

1030hrs

レクタ南部戦線

「なんだかんだで敵に白旗上げさせた」

「「何という割愛現象!」」

フェルナンデスとサーガ、ウーラのお決まりつっこみ、レクタ南部防御線は、一部を破壊すると、戦線全体が崩壊、あっというまに占領した。

現在は追撃深追いはやめて、慎重に部隊編成をする。

こちらの人的被害は最小限にとどめたが、最初の空爆で死傷者が多数、前線の病院は戦場である。

「・・・戦争すれば人は死ぬ・・・悲しいものだ」

フェルナンデスは呟く。しかしここで止まってはならない、守る国、国民が居る限り我々は銃を持って敵を滅さないといけない。

フェルナンデスは戦車のインカムを取る。

「フェルナンデスより機械化歩兵の斥候本部」

<<斥候本部より元帥閣下、どうなさいましたか?>

「撤退した敵部隊の逃走経路を調べろ。斥候小隊を派遣しろ、それと追撃出来そうな戦闘部隊から順次再編成、休憩終了したら随時敵首都に行くぞ!」

<<Yes sir!!すでに派遣してますが、増派します>

「よろしく頼んだ、それと何かあっても深くは負うなと通達しろ!」

<<了解!>

インカムを置くと、右100mからバイクが4台、偵察車、戦闘歩兵車が走る。

「全員無事帰還しろよ」

フェルナンデスはまた呟いた。

1035hrs

レクタ共和国ヘッター平原

茶褐色の地平線から、草木の多い地帯に逃げ込むレクタ兵達、その後ろから2台のバイクが追う。

偵察小隊バイク機動員、コナン・シーター伍長とフェナー・シーメンス二等兵である。

フィナーは斥候では珍しく、女性隊員だ。本当は野戦志望だったが、何の手違いかここに配属になった。

入隊一年目新人フェナーは気付いてないが、バイク技術はベテラン斥候、精鋭クラスだ。

コナンはベルカからウスティオへの移民、入隊から12年間斥候一筋のベテランだ。

彼らの関係は教官と生徒だった。

「敵はどこに逃げているのでしょう?」

インカムを通じてフェナーはコナンに聞く。平原を外れて、森林湿地に入る。2人はバイクが転倒しないよう注意して進む。

「敵は広い戦線から何個の集団に集結している。フェナーはどう考える?」

コナンはヒントを与えてか、フェナーに聞く。10年に一人の逸材、それを育てるために、良く問題を出す。

「・・・・どこかに基地がある・・・いえ・・何か守るものがある・・・ですか?」

「正解とも不正解とも取れるな・・・まあいい、これは推測だが、もしかしたら奴ら、何か反撃兵器を持ってると見た」

「反撃兵器・・・」

「多分それは、ウスティオ、ベルカ、ファトの攻撃で戦線崩壊した場合の第2フェーズかもしれない、ここか」

レクタ兵の集結場所が近いのか、気配が多い。エンジンを停止してバイクを倒し、注意深く聞く。

何かの駆動音、戦車や装甲車の類ではない。遠いのに良く音が響く。

「教官」

「教官じゃない、今は部下と上官だ・・・それより、ここからは歩きだな、右方向に行けば、少し高い所だ、俺が行く。お前はここで待機していろ」

「それは・・!私も行きます」

「ダメだ」

小声でフェナーを圧する。

「状況が分かったらインカムでお前に伝える、お前は通信機で本部に伝えろ。新米はそれが任務だ。」

「・・・了解しました、御無事で」

「ああ、斥候兵として任務を果たしてくる」

コナンは訓練、実戦時では見せない笑顔を見せて、走り出す。

「本当に・・無事で」

フェナーは呟く、彼の後姿が妙に遠かった。嫌な胸騒ぎがした。

1045hrs

高台

「あれは・・・!!」

高台からコナンは双眼鏡で覗くと、最悪な光景。

地上発射型巡航ミサイルが十数発。オーシアのトマホークに見える。

「絶対にこれ、オーシアの横流し・・・てか空撮部隊はこれを見つけられなかったのか!」

コナンは吐き捨てるように言う。しかし考えてみれば、こんな森林地帯だから見つけにくいか・・・。

さらに良く見ると、ミサイル周りの兵士は防護服を着ている。コナンは嫌な予感がした・・・まさか!

「やっぱり・・・」

ミサイルの側面、弾頭部分に「Dirty bomb」の文字。

核汚染物質搭載爆弾だ!核汚染をばらまき、敵の都市を破壊する。しかし核兵器との決定的違いは、除染か雨でも降れば、簡単に汚染が安全レベルまで下がる。最初に核汚染をばらまき、短期で都市制圧、安全レベルになったらそのまま自分の国として使用する。

こんなの数発撃ちこまれたら一番近くのシルバンが壊滅する。さらに最悪なのはミサイルの方角、南、西、北・・・ウスティオ、ベルカ、ファトに向いている!

丁度巡航ミサイルの準備が完了しつつある。

即座にインカムを取り。

「シーメンス聞こえるか?こちらシーターだ」

「御無事でしたか・・・良かった」

インカム越しからフェナーの安堵の声。

「安心してるな、早く本部に伝えろ。敵はダーティーボム搭載の巡航ミサイルをウスティオ、ベルカ、ファトに撃とうとしている!至急発射前に制圧、または空爆のよう・・!」

突如の銃撃、コナンは素早く避ける。被弾無し。

「貴様!何をしてる!止まれぇ!」

背後からレクタ兵、くそっ!不覚だ!コナンはダッシュで来た道戻る。

「教官!」

「とにかく早く伝えろ!エンジンを暖めておいてくれ!」

「はっ、はい!」

気丈にしてるが、フェナーは涙声だった。さーて逃げるぞ!ハンドガンを撃っては逃げる。レクタ兵はフラッシュから見て5、班クラスか。

合流まであと50m、その時

ビシっ!

「グッ!」

左腕に弾が被弾する。貫通した!しかし興奮作用で何とか痛みは低い。

「教官!伏せて下さい!」

フェナーの大声で咄嗟に伏せるコナン、次の瞬間、フェナーのAR-90を1マガジン分を横一閃に撃ちきる。

「ぐあっ!」

「伏せろっ!!」

レクタ兵は怯んだり被弾したりする。

「教官!」

「だから・・・教官じゃねえ・・たく、本部には?」

「伝えました!左腕・・・」

「ああ、やられた、止血の時間は無い、バイクは・・・無理だな、シーメンス!お前は早く撤退しろ!」

「嫌です!」

フェナーははっきり主張すると、コナンが言う前に肩を持つ。

「お前!」

「後ろに乗って下さい!私が運びます!」

フェナーは有無を言わせずコナンをバイクの後ろに乗せ、彼女もバイクに跨ぐ。

「安全地点まで全速力で逃げます!行きますよ!」

フェナーの後ろ姿を見て、大きく感じた。

[頼りになる背中だ]

コナンは微笑すると

「ああ、頼む」

彼女の細い腰に腕を回す。フェナーはドキリとする。コナンもだ。

「了解です!」

全速力でバイクを走らせる。

「おい!止まれぇ!」

「撃て!殺せ!」

集まったレクタ兵がアサルトライフルを構え撃つ。

「くそ!ちょこまかしい!フェナー!止まれ俺の右腕が敵方向に向けるように止まれ!」

「はいっ?!」

「安心しろ・・・反撃するだけだ!」

フェナーは何をするかと思いながら、言うとおり右に曲がって横になりバイクを止める。

「俺の左腕の代償だ!」

べレッタを抜いて、コナンは意識が強く持ちながら彼の捨てたバイクに向けて連射する。レクタ兵は一応銃撃やめて避けるが、バイクに当てて混乱している。

「何をしてるんだウスティオ人?」

「・・・まずい!逃げ・・」

バイクのタンクに穴をあけて、さらに跳弾した弾の火花で燃料に火がつき、爆発した。レクタ兵が吹き飛ぶ。

「よしっ!」

「・・・・」

コナンがガッツポーズ、フェナーは驚きで絶句する。

「よし・・・逃げろ」

「無茶しすぎです・・・了解!」

フェナーはまたバイクを走らせる。

 

1052hrs

レクタ南部戦線

「さっさと準備しろ!敵は3地点から合計40発は発射する用意がある!空軍に連絡しろ!」

<<YES SIR!!!>

フェルナンデスは怒鳴る。国家の危機、レクタ兵が最悪の決断を下す前に・・・!

 

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それぞれの役割

2/23

1700hrs

オ―シア連邦

ノヴェンバ―市ノヴェンバ―スタジアム

約7万の人間が観客として収容出来るスタジアム、そこにはノヴェンバ―市民で埋め尽くされ、真ん中の試合会場はステージがあり、多数のオ―シア将校、さらに現在実質大統領のアップル・ルル―スの姿。

スタジアムには大音量のクラシックが流れ、上空を展示飛行で呼ばれたル―パ―隊の姿。

今、クラシックの終了と共に、美しいダイヤモンド編隊でスタジアム上空を駆け抜ける。

平和な空ならここで拍手と歓声に包まれるが、今の状況ではノヴェンバ―市民はあまり喜ばない。

何故なら戦争の泥沼化の厭戦気分が、少しずつ少しずつ増加してるからだ。彼らがここに来たのは副大統領の演説は聞きたくないのに、半強制的に連れて来られたからだ。

しかし副大統領は市民より、ル―パ―隊の素晴らしい飛行に私の演説演出を自画自賛してたため気付いていない。

そして演説が始まる。ちなみにこれはOBCを通じて全国生中継である。

「オ―シア国民の皆様!そして今日この場に集まって下さったノヴェンバ―市民の皆様!どうか私の言葉を聞いて下さい!」

スタジアムは無言の空気が流れる。

それが白けとは知らずにルル―スは続ける。

「我が祖国は、何十年との間、国の大事な資源地帯を憎きベルカ、ウスティオ、他FCMB連合国に搾取されていました!

我がオ―シア軍、議会はこれを怒り、何度も抗議して警告しました!

しかし彼らは私達を見くびり、あまつさえ軍事強化して我が国を脅してきました!

我々の我慢はここまで!遂に我がオ―シア軍は国民の怒りの意志を汲み、戦争を決意しました!

しかし!我が軍は情けなく南ベルカ侵攻軍の゛一部゛の部隊が降伏するなど、超大国の恥さらしをして、ベルカ他連合国に押されてしまいました!

しかしオ―シア軍の本気はこれからです!

この間から既にユ―クトバニアと結託!既にまた敵連合国を貫く矛が出来ようとしています!

さらに、サピン王国の宣戦布告を受け、首都オ―レッドに軍を集結、ネズミ一匹も侵入出来ない絶対国防を約束し!国内絶対安全、憎きベルカ共を北の谷へ閉じ込めてみせましょう!

そこでオ―シア国民の皆様にお願いがあります!

憎きベルカ他連合国に対して勇ましく戦うオ―シア・ユ―ク将兵を勇気づけて欲しい!

ますばノヴェンバ―市民の諸君!ここにいる将校、更には前線の将兵の為に惜しみない声援を!!!」

アップル・ルル―スは自分のスピーチは満点とばかりに笑顔になる。

しかし、南ベルカ侵攻軍の壊滅、国防海軍第2艦隊敗走、更にはレクタを利用してFCMB内部を混乱させてるのを隠蔽した嘘で塗り固められた演説に誰の心にも響かない。一部右翼を除きほとんどの人が黙る。

その時…

「The journey begins,Starts from…」

一人の小学校低学年の男の子が声を張り上げて歌う。

最初は驚いたその子の家族も歌い出す。

それは伝播して周りに広がる。

「「「The song of the bird…」」」

遂には右翼の者達を黙らせ、スタジアム全体はその歌声に包まれる。

「皆様…その曲は…止めなさい!今すぐ止めなさい!!」

アップル・ルル―スは止めにかかるが止まる筈がない。

男の子が歌った曲、平和を願い、反戦の曲。

The journey home

その曲は結局最後まで歌われ、アップル・ルル―スは絶望感から既に会場から消えていた。

結局、この顛末は、録画放送予定だったオ―レッド以外には流れる寸前で即座の報道規制が取られたが、生中継のぶつ切りの不信感から流出は時間の問題だろう。

一応他国には流れてない事になってるが、ある所からは既に漏れていた。

2/24

1100hrs

ウスティオ共和国某所

「という事がありまして、今やアップル・ルル―スの政権支持率は限りなく失墜の一途です」

「とうとうボロが出ましたか…、それで今日の話は何ですか?」

とあるビルの一室、口の堅いウスティオ国防陸軍機動隊員によって完全警備の部屋に二人の人。

ハ―リングとオ―シア空軍総司令、ニルチェ・ス―ン元帥だ。

「単刀直入に申し上げます。我々オ―シア陸海空軍総司令はハ―リング上院議員の大統領進出の為に、近く必ず起きるFCMB連合国のオ―レッド侵攻に乗じて、臨時大統領にします」

ニルチェの言葉にハ―リングは唸る。

「う―ん、出来れば戦いは避けたいが…、それに賛同してる人は?」

「首都防衛部隊の約4割は掌握、残りは混乱に乗じて黙らせます」

ニルチェは淀みなく応える。

「しかしオ―レッドは…」

「遅かれ早かれ、どちらにしても、あなたが大統領にならなければ、アップル・ルル―スは止まりません、そして首都侵攻も…」

「……」

ハ―リングは目を閉じて思案する、そして目を開き

「もし私が大統領になれば、軍縮を必ず行うだろう。君たちにとっては不快に見えるが」

オ―シアは世界の警察と自負する伝統のもと、常に超大国の大軍事力を有していた。

正直ハ―リングは驚いていた。ウォ―ドッグなどの平和を愛し、付いてきてくれた部隊も居るが、必ずしもそうでない。

しかしニルチェは怒りもせず、女性特有の微笑を浮かべ

「私は国を守りたくて軍に入りました、あえて戦争に行くのは私は嫌いです。他の総司令も同意見でそれ以上でもそれ以下でもありません、ただ国が独立していられる軍事力があれば、軍縮は賛成です」

まさかの総司令クラスからの賛同、ハ―リングはまた目を閉じて…今度はすぐ開き、

「それでは…私達オ―シアが誇り高く、理想に近づく国の改革に協力してくれるかな?」

「ええ…もちろんです!」

ニルチェとハ―リングは握手を交わす。

これでハ―リングは強力な関係を結び、アップル・ルル―スは孤独になっていった……。

 

1100hrs

ベルカ国防省空軍総司令室

「連合特殊航空団計画…ですか」

大きなデスクの椅子に座る、ベルカ空軍総司令、ナッツ・リニ―ク元帥の目の前の男が言う。

「そうだ、我々FCMB連合国軍は極秘電話会議で昨夜、国境越えて空軍、海軍航空隊選りすぐりの精鋭部隊を集結させ、各地の戦場を転戦、味方を即応で支援する計画だ。これが厳しい実績選考で採用された部隊だ」

ナッツから書類を受け取る。男は目を通す。

「第一戦隊が、ベルカンエ―ス、ロトやシュネ―、グリュ―ン、ヴァルキュ―レなどで、第二戦隊はFCMB及び海軍からで、レイピア、サザンクロス、バッカス、トゥルブレンツ、トランプ他なん部隊かで、第三戦隊は外国人部隊、メビウス、イエロー、ガルム…よりどりみどりもここに極まりですな」

男は驚き、笑みを浮かべる。

「さらに君を筆頭に各隊隊長を選抜、隊長だけの最精鋭部隊、精鋭特殊戦術航空隊を設立、絶対不利の戦場をひっくり返す部隊として用意する」

「それはそれは…もうチ―トを超えてますね」

「ああ」

男は呆れてナッツはニヤリとする。

「しかし私はもう引退の身、全盛の15年前は比べれば役立てれるか…」

男の不安にナッツは笑い飛ばし

「安心しろ!お前なら回復は遅くても実力は最高だ。頼めるか?」

ナッツの言葉に男は意を決して

「分かりました、私がひよっこを引っ張りましょう」

「良く言った!それでは君を今日付けで大佐から少将に昇進、航空団の総司令に任命する。頼むぞ、凶鳥」

「懐かしい愛称だ…了解しました!」

凶鳥フッケバインと呼ばれた伝説のパイロット、ピ―タ―・N・ピ―グルが敬礼する。



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雨の中で

2/24

1105hrs

シルバン空軍基地

普段はレクタの国境監視だけのウスティオの中ではのんびりな方の空軍基地に警報が鳴り響く。

「緊急事態《エマ―ジェンシ―》緊急事態《エマ―ジェンシ―》、レクタ国内において環境汚染の存在を確認、全機緊急出撃《スクランブル》!繰り返す全機緊急出撃《スクランブル》!」

管制塔からの大音量の放送で危機を悟ったシルバンの各要員は素早く機体整備、ナパ―ム搭載のト―ネ―ドを優先出撃、一本しかない滑走路から10秒も間を空けずに次々飛び立つ。

過密出撃でも滑走路事故が起きないのは、管制塔、地上誘導員の練度の高さからだ。

とにかく、ウスティオ空軍は通報から僅か15分でシルバンの大部分の出撃可能部隊の出撃に成功した。

しかし問題点があった。

シルバンに集められた部隊は、レクタの空軍戦力を甘く見て、ト―ネ―ドの対地部隊が大半で、F-15UFXなど対空部隊が少なく、さらに、周辺基地のF-15はF-15REへの改修作業で飛べないという状態だった。

だが、ウスティオはまだ楽観視があった、それはベルカヴァルキュ―レ隊他ウスティオの航空部隊が、レクタ南部の支援部隊を撃破したからだ。

奴らにあれ以上の航空隊は出せない、そう見越しての出撃をしていた。

しかし、その驕りが、いきなり曇天になる空が暗示するように、シルバン航空隊を絶望へと突き落とす……。

 

その頃

レクタ共和国

ヘッタ―平原

平原の中でたまたま見つけた大人が無理すれば4〜5人入れる穴に2人の姿。

コナンとフェナ―だ。コナンは土壁にもたれかかり、フェナ―はハンドガンを持ってちらちら地上を監視する。

「済まない……」

「何で謝るのですか?教官のせいではありません、むしろ私が早く止血してたら……」

コナンの迷惑かけるの謝罪を止めるフェナ―、コナンの左腕は血まみれで、止血の包帯も赤く染まっている。

コナンのバイクを爆破し、レクタの追ってを撒くことは出来たが、彼の出血は予想以上に酷く、フェナ―の腰に巻き付けてた腕に力が入らず転倒寸前になり、察知した彼女はこれ以上のバイク走行は不可と考え、本部にコナンの緊急事態を告げると、救助発信機を持ち早々に近くにあったこの穴に逃げこんで今に至る。

この穴は、穴の土壁に貼られたボロボロの作戦遂行書からレクタの軍閥内戦時に使われた小塹壕と分かった。

フェナ―の自虐的発言に、コナンは無理して首を横に振り。

「いや…、戦略撤退を優先して行ったお前の判断は間違ってない、私の誇りだ…」

今までのような覇気のある声では無く、弱い声ながらもはっきりと言うコナン。

フェナ―は涙目になりながらも、これ以上教官を心配させてはダメだ!の一心から涙ゆ零さないように上を向く、

その時

ポタッ…

彼女の頬に一筋の水の跡が出来る。

これは…私の涙じゃない……、その時、フェナ―は涙で曇った視界を拭い、空を見ると、今までの晴れ模様は嘘かのように、曇天で覆われ、更に通り雨まで降り始めていた。

「雨……マズイ!」

「ん?……何がマズいんだ」

フェナ―の言葉にコナンは力無く聞き返す。

彼女の頭の中で応急手当ての講習を思い出す。

人間は通常時、長時間は例外だが、多少の雨に濡れても基本的に大丈夫か、風邪など大事には至らない軽微の病気程度だ。

しかし、出血多量の人間はただでさえ血が抜かれて低体温になるのに、更に雨が加われば体温を急激に奪われて簡単に致命的ダメージになる。

私達の着ている迷彩服は寒冷地対応型でも完全防水でもない、雨で濡れれば完全アウトだ。

雨足は状況を反して強くなる。コナンにも降りかかり顔が青くなり始めていた。

フェナ―はどうしようかと頭で考えるよりも早く、突飛の行動に出た。

「教官、失礼します」

「何がある……!!?」

言うや否や彼女はコナンを覆うように抱きしめる。

「お……おい…」

「雨からの教官防護の緊急措置と考えて下さい」

フェナ―は実行してから後悔した。他にも考えれば色んな方法があったが、考えるのを放棄した。

「30になる男に…抱きつく女が居るか…」

大人になったばかりの女に抱き締められて、普通だったら崩壊するぞ!

「教官だからです」

フェナ―はまた恥ずかしい発言して、コナンは戸惑い、本人は口を本気で破壊したくなってた。

「……、そうだ、シ―メンス、ハンドガンは無事か?」

「………あ…」

彼女が振り返ると、雨ざらしになるハンドガン。彼女の使用してたのは、扱いやすいが、雨など特殊環境では簡単に使用能力が落ちるやつだった。

ここ数年で、空軍戦力拡充のため、陸軍に予算が回らず、仕方なく女性隊員は制式採用のベレッタと違い、耐久性、貫通性が低いガンを代用していた。

「機転が良いのか悪いのか…あわてんぼう…だな」

「……[かああ…]」

フェナ―は無言でしかし顔が赤くなる。

コナンは声をあげず苦笑の顔すると

「そうだ……俺のベレッタの弾倉変えてくれ…」

「?り、了解」

彼女は素早く彼の右足のポ―チからベレッタの弾を入れ換える。

フェナ―の持つハンドガンよりも遥かに使い込まれた銃、物質的重さ以上を感じる。

「そのガンは、入隊時に支給された12年物だ……慣れるまで反動が…きついが、きっとお前なら使いこなしてくれる。シ―メンス…いや、フェナ―」

「はっ、はい」

初めて名前を呼んでもらい、フェナ―の体温が上がる。

「君は俺が教えた中で最高の……誇りある隊員だ…君の成績と将来を称え我が愛銃を捧げる……」

コナンが顔が青く、呼吸が早まってるのに笑みを浮かべる。フェナ―はベレッタを取り敬礼して

「謹んでお受けします…」

フェナ―が笑みを浮かべた時…

「動くな…」

振り向くと穴上からAK-74をこちらに向けるレクタ兵、反射でフェナ―は授かったばかりのベレッタを左手で向ける。右腕でコナンを抱える。

「お前らは知りすぎた、貴様が撃っても相討ちになる」

「ちっ!」

油断の怒りから彼女は舌打ちする。

しかしコナンは違った。

「フェナ―も貴様も気配感知はまだまだだな」

「なに……」

その瞬間、レクタ兵の頭が吹き飛ぶ。後から

「大丈夫か?!」

三角三色の国旗パッチを付けた。ウスティオ陸軍の兵士。

「おせえんだよ…、フェナ―をたの…」

「教官?!」

コナンはぐったりする。フェナ―は取り乱す。

穴に入る友軍は

「こちら負傷者発見した!一人は無傷!しかしコナン・シ―タ―伍長が重体!ステージは…」

報告する兵士はコナンを見る、ステージ?なら後方で緊急治療…?だったら…モルヒネで楽にさせられる。フェナ―は祈る。

お願い…?で…!!

「……、後方輸送のCH-47の第3便に乗せてくれ!あと装甲車回せ!」

《了解!》

兵士は通信を切ると、フェナ―は

「ありがとうございます…」

「お礼は愛しの人が助かってから!さっさと運んで!!」

「はいっ!」

ツンデレ兵士の対応にフェナ―は心から感謝した。

 

その頃上空では絶望が始まってた

1112hrs

ヘッタ―平原上空

20機近い戦闘機が飛ぶ。三点の発射点なのでそろそろ三方に分かれる。その時

「フォ―タ―3より…あまりにも静かじゃないですか?」

ト―ネ―ドを操るフォ―タ―隊、

「リ―ダ―より3、それは言うんじゃない」

「済みません…」

みんなが不安に思う事、敵が不安なくらい感じない。このまま反撃兵器を見捨てるのか?

その時…

ピ―――、ピッ、ピッ

「ミサイル警報?!」

「AWACSリンより全機ブレイク!ブレイク!」

「ダメだ!間に合わな…」

20を越えるAAMがウスティオ航空隊を捉え、喰らった。

ト―ネ―ド4、F-15UFX3機が落ちる。

「AWACS!何故気付かなかった!」

「それよりも再編成急げ!対空警戒怠るな!!」

生き残りの部隊は各隊距離を離して編隊を組み直す。

「こちらリンより各機聞け!敵はオ―シアで採用が始まったB-1Rを使用した模様!あれは対空に改造したB-1ランサ―にAIM-120Cを20発以上同時に放つ、航空機爆撃機だ!更に後ろから2機確認!」

「レクタは何考えてんだ?!」

B-1R[※現在アメリカで開発継続してるのか分からないので知ってる方は教えて下さい]に搭載するAAMは一発およそ35万オ―シアドル、それを大量発射するのは大国でも惜しいのに、ましてこんな経済弱者国がする技でない。

「くそっ!あんなチ―ト機なんて聞いてねぇ!」

「フォ―タ―リ―ダ―よりリン!増援は?」

「今要請して周辺基地のスクランブル待機部隊が来てくれる!あと10分!」

航空隊には確実に動揺でまとまりがない。このまま第2射が来れば、壊滅は免れない。更に最悪が…

《敵は動揺している!このまま叩き落とせ!》

《YES SIR!!!》

「!!?、レクタ空軍の航空隊確認!数は8!機種F-15!」

「あああもう!!一体全体レクタは何なんだ?!」

一人のパイロットが叫ぶ。それが全員の意見だった。

絶望に満ち足りた世界になったその時…

「国を守るのでなくプライドを守る最悪の兵に鉄槌を…」

「?、誰だ?」

その時、背後から高速で接近する5機のSU-37、しかしそれはウスティオのどの部隊でもない。

「円卓前の前菜にもならない戦いだが、3分で落とす。イエロー、エンゲ―ジ!」

「「「Yes sir!!」」」

「おいおい、まじかよ」

「最強の黄色中隊が来たぞ!」

それは、エウレノに向かってたハンス率いる黄色中隊だった。

 

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阻止

2/24

1110hrs

エウレノ空軍基地格納庫

多数の戦闘機が整備されてる中、

「少佐殿!あれはおかしいです!なんで前進翼が後退翼になりかけなんですか?!あれはおかしいです!」

「あなたも中々うるさいわね…私達の専属整備士は黙々としてたわよ」

「それはそれでこれはこれです!弾節約で体当たりって…機体の強度を!」

「もちろん考えたわ、だから三回のところ一回にしたの」

「その事実に驚愕です?!」

格納庫で言い合うのはヴァルキュ―レ隊隊長、ジャスミン・ミリディアナである。長身の彼女を見上げながら抗議するのは突然この隊の整備命令を言われた、ゴ―ドンの後輩、セアラ・ハラ―ス軍曹である。身長が162、中性的顔立ちで名前が女に見えるが男である。

ベルカ機の整備経験があるため、ジャスミン機専属になった。

論点はジャスミンの体当たりについて、SU-47の前進翼が軽く後ろにひしゃげてる

ちなみにヴァルキュ―レメンバーはあまりの人気で現在握手会をしている。

女性はロト隊に夢中になり男性はヴァルキュ―レ隊に夢中になるという話は伊達でない

「とにかく、SU-47での体当たりは駄目です!」

「で、あの改修の機体は噂のF-15RE?」

「話を聞いて下さい〜!!」

セアラが叫ぶ。ジャスミンは少しにやりとする。

[ふふ、暇つぶしのおもちゃに決定]

彼女の元々の専属整備士も抗議したかったが出来ない原因は一つ。

余計に話せば少佐のおもちゃにされる!

そしてセアラはたった今おもちゃに認定されてしまった。

「あああもう!そうです、あれはサザンクロス隊の改修中の機体で、完了すれば猛禽のF-22越えと聞いています」

セアラは律儀に答える。

「なるほどね……、ああそれと、体当たりはやめないからよろしくね、ウスティオの若き整備士さん」

「ちゃんときいてたのですね……て、あっさり拒否はやめて下さい!」

ジャスミンはクスクスと笑い、セアラは後ろから追いかけながら説得を続ける。

一般人から見れば微笑ましい光景、しかし整備士仲間からは、大変だなの同情の視線と苦笑が送られてた。

 

1110hrs

レクタ共和国ヘッタ―平原上空

黄色サイド

「ウスティオ全機、俺たちが気を引く、予定通り叩け」

《り、了解した!神の御加護を!》

生き残りの部隊が散開する。

TND二機一組で各地に散らばろうとした時

《くそ!奴らが散開する!もう一回見舞え!》

《ネガティブ!あそこまで散開されたら命中率が…》

《ならばあの黄色を狙え!あの悪魔を野放せば俺らが狩られる!》

《Yes sir!!狙いは黄色中隊!》

レクタB-1Rパイロットはセ―フ解除、ディスプレイに発射出来るAAMが表示される。

《囲い込むように設定しろ!》

《了解!シュ―ト!》

AAM要員が宣言同時にタッチパネルを押し、全弾が死角無く放つ。

《!!、リンより黄色中隊!来た、数は24!ブレイク!ブレイクッ!!》

「負けはしない、ブレイク」

ハンスの言葉で一気にSU-37の5機が花開くように散開しフレアを撒く。

その姿は華麗にして可憐、平和な空なら見とれるだろう。

素早い散開にAAMがくらいつこうとして、フレアに邪魔され空を切る。

近接信管が作動していくつもの火球が出来る。

そして24のAAMが無くなると

「敵の切り札が再発前に全力を持って仕留めろ、これは後ろの罪無き市民を守る行動だ。以上」

「「「YESSIR!!!」」」

《ぜ…全弾回避だと?!》

《なにをぼさっとしてる!迎撃してB-1退避を優先しろ!》

《ジック隊、エンゲ―ジ!二機で一機仕留めろ!》

F-15改を操るジック隊が黄色中隊を止めにかかる。

しかし

「そんな程度で戦えると思うのか?舐められたものだ…」

《後ろをと…え?》

ハンスはコブラをかけ急減速、ジック隊の一機が前に出る。

《ひっ…》

「落ちろ、イエロー13FOX1!」

何の躊躇いもなくガンアタック。一機が砕け散る。

《あいつだ!あの13を落とせ!》

《急減速してる今がチャンスだ!》

二機のF-15改がハンスに向かい猪突猛進、既にタ―ゲットシ―カ―に収め

《《ジックFOX……》》

彼らがAAMを放つその前に、二機がAAMで爆砕する。

「グッキル4、しかし不意打ちも戦術の一つだがあまり多用するな、空の上でも真正面から挑め」

「イエス、マスター」

隊長ハンスの言葉に4アンナは素直に返事をする。

彼女にとって教官であり好きな人であり、命に代えてでも守るべき人物だからである。

その時、近くの森から火柱が細長く立つ、ウスティオ部隊のナパ―ム投下が始まった

《ああ!反撃兵器が……》

《防空司令部よりジック隊!B-1は既に安全空域まで撤退した!長居無用!反転して撤退せよ!》

《ちっ、ジック隊撤退だ!黄色の悪魔に食われるな!》

《Yes sir!!》

生き残りの4機のF-15改が逃げる。

「深追いはするな、我々は目的地移動分の燃料しか持ってない、戦闘機部隊壊滅で丁度いい」

「「「Yes sir」」」

《TGT(タ―ゲット)残り1!》

リンの言葉で戦いは成功に等しいと思われたその時…

《!!!、一発取り逃した!シルバンに行く!!》

《このアホ!ドアホ!アホンタラ!何のTNDだよくそ野郎!》

《リンが切れた?!》

AWACSリンは冷静とおよそかけ離れて切れる。

《す…済まない》

《謝るのは後だ!デ―タリンク!弾着地点と予想時間を表示する!さっさと追いかけろ!》

切れてるのを裏腹に適切にデ―タアップをする。

ほとんどのパイロットが慌てる時、

「安心しろ」

《何をだ?!》

ハンスは冷静ににやりとする。

「念には念をだ…そうだろ?メビウス」

「ええ…FOX2!」

ダ―ティボム搭載巡航ミサイルがF-22を操るアイノがAAMを放つ。

それは音速を越えて、小さい目標へ吸い込まれ、爆ぜる。

一つの大きな火球が出来、やがて消える。

《放射能は確認出来ない…成功だ!繰り返す!成功だ!!》

《《YEAhhh!!メビウス万歳!黄色万歳!》》

航空隊メンバーの士気が上がる。

《何という仕掛け……リンより黄色、メビウス、タンカ―を回すかそれともシルバンに止まりますか?》

「ああ、タンカ―を回してくれ、すぐにエウレノに行く」

《了解、要請する》

リンは手際よくタンカ―要請する。

「エルジアにもあんな有能なAWACSが欲しいな…」

《それはISAFも同じよ》

リンが二大エ―スに認められる瞬間だった

1120hrs

ヘッタ―平原

陸軍が到着した時には既に戦闘は終了しかけており、フェルナンデスは空を見上げていた。

「元帥閣下、重傷の斥候を回収しました」

「そうか…、タバコあるか?」

「は?自分は吸わないので…」

「自分持ってます。どうぞ」

「ありがとう」

ウ―ラからタバコをもらい火を点ける。フェルナンデスは深く吸い、煙を吐く。

「はあ、旨い…」

「元帥閣下、タバコお吸いになりますか?」

「ああ、昔にやめたけど時折吸いたくなる…大抵タバコが吸いたくなる時は面倒な予兆……」

「嫌な事言わないで下さいよ」

「だよな」

サ―ガウ―ラとフェルナンデスが笑い合った時

「元帥閣下!緊急伝達です!」

「なんだ?」

伝令の伍長が駆け寄る。

「西部を突破したベルカ連邦陸軍第2軍分遣団が合流と今後の進撃プラン打診の要請を!」

「「………」」

「なっ、言った通りだろ?さ―てお偉いさんの面眺め…機嫌取りに行くか」

ウ―ラが差し出した携帯灰皿にフェルナンデスはタバコを捨てて、歩き出す。

2/24

1130hrs

オ―シア連邦ア―ラスカ基地特別戦時部観測課捕虜管理室

室長の呼集で観測員、捕虜管理員が集まる。

「みんな集まってもらって申し訳ない、グレン・ア―ガイルについてだ」

ベニ―・ファンは少し頬が強ばるが、絶対に見せない。

彼に何がある?

「知ってると思うが、明日にベルカの最新鋭機体の機動改良版、SU-50が届く。で、まさかと思うが、万が一、万が一の為に明日8時半から聴取開始、試験飛行の時には監視を徹底しよう」

室長の言葉にベニ―はショックを受ける。このままでは計画は水の泡、グレンも逃がせないし、試験が成功してましまう……。「それでは、聴取担当は……シザ―、よろしく」

「了解です」

坊ちゃんで軍隊にあるまじき若太りの中尉がにやりとする。ベニ―はこの基地の人が好きだが、彼だけは好かない

「よし、じゃあ解散!」

全員が解散する。ベニ―は室長を呼び止める。

「あの……済みません」

「どうしたファン少佐」

「あの…聴取担当を私に代えるのは…」

「それはいくら少佐でも本部観測の人間、それは無理だな」

室長は眉を下げて言う。彼は年上でも階級は中尉、控え目に言う。

「そうですか…、済みません」

ベニ―は素直に下がる。しかし頭の中は違う。

絶対に機体を強奪せよ、手段は問わない。

本部の命令は絶対、室長は清廉潔白なので潰すのはできればしたくない、ならばあいつから潰すか。

ベニ―は悪女のような笑みを浮かべながら歩き出す。



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卓上の対峙

2/24

1145hrs

ヘッタ―平原ベルカ軍事司令部テント

テント内ではキビキビとした動きでベルカ兵が装置や地図を用意する。

「元帥閣下殿、コ―ヒ―はいかがしましょうか?」

女性隊員が遠慮がちに聞く。

「ああ、砂糖少なめ、ミルクをたっぷりくれ、直感では面倒な司令と思うから」

「あ…あはは…」

フェルナンデスの言葉に隊員が苦笑する。

「ずばりここの司令は一言で?安心しなさい、ばらしたりしない」

「ええと…独裁者?」

「分かった、ありがとう」

その時テントの中に高級士官の男が入る。

「それではコ―ヒ―頼むよ」

「了解いたしました」

隊員は敬礼すると素早く立ち去る、代わりに

「初めまして、ベルカ連邦陸軍第2軍分遣団司令ゼッタ―・ハルナン、階級は大将だ」

「ウスティオ国防陸軍レクタ派遣軍司令、フェルナンデス・ジ―リ、階級は元帥だ」

握手を交わすが、絶対に協調路線でない

論破されても恨むなよ

「さて、何から話しましょうか?」

「単刀直入に言えば我々ベルカ陸軍は早急決着を求む。既に万全の態勢のもと、進軍可能だ」

「それは同意見だ、しかし貴国は万全でもこちらはまだ戦いに次ぐ戦いで補給も編成もまばらだ、猶予が欲しい」

フェルナンデスは毅然と言い放つ。ゼッタ―は鼻で笑い

「猛将と呼ばれし人物もお年には勝てませんかな?」

「はっ、私が動いても下が駄目なら私は動かない」

「甘いことを」

「貴国が動かないからこちらが大変だったんだ、そのくらい目を瞑れよ」

フェルナンデスは本気の雰囲気を出す。しかしゼッタ―は鈍感なのか馬鹿なのか動じない。

「これは共同戦線は難しそうですね」

「ああ、そうだな…」

フェルナンデスとゼッタ―の机上の戦いは始まったばかりだ

「え…え―と…」

フェルナンデスのコ―ヒ―を持ってきた女性隊員がただならぬ雰囲気でおろおろしてた。

 

2/24

1215hrs

エウレノ空軍基地

ヴァルキュ―レ隊1無口にしてヘビースモーカーのアイ―シャは握手会をせず、愛機の格納庫の柱にもたれかかり、火の点いたタバコをくわえ、腕組みをしている。黒髪でショ―トがあわせて、かっこいい男性にも見える。

彼女は遠目からジャスミンとセアラが話しあう

「分かりました、譲歩して円卓とか重要作戦ではやめて下さいよ?」

「ふふ、じゃあ耐久力低い機体2機体当たりだけに譲歩してあげる」

「ぜんっぜん変わりませんね!」

セアラが絶叫する。アイ―シャは少し驚く。

あんなに隊長に食い下がる男は見た事が無い。

そして長い付き合いで分かる。隊長は確実にセアラの言葉に従い始めている。

本当に心配している彼の言葉に動かされ始めてた。

羨ましいな……

冷静で無口、幽霊と呼ばれる彼女でも少しは男性に構ってもらいたい。ファンとかそうゆうのでなく本気で…

「タバコはここで吸うのは原則禁止ですよ」

いきなりくわえてたタバコを取り上げられる。茶髪のウスティオ空軍の男

「タバコはパイロットにとってはきついからやめた方がいいですよ、アイ―シャ中尉」

「……」

いきなりタバコを取られ怒りより驚いた。そして何より

「なぜ…名前を知ってる?」

彼女が静かに言う。その男は笑い

「単なるお節介焼きです、名前はあなた方がここに来たら嫌でも分かりますよ」

彼女は少し見とれる……あれ…

「お―い、さっさと来い!」

「はい!ただいま!それでは中尉、これからは喫煙所でお願いします。案内必要ならファンクラブの皆様を利用して下さい」

「あっ…」

こんな時口が動かない自分が恨めしい。しかし、彼を呼んでた人物に見覚えがある。あとで聞きに回るか。

それにしても

「彼を調べるのも悪くない」

静かに呟く。

これがアイ―シャとホ―クの出会いだった。



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ネメシス

2/24

1300hrs

ヘッタ―平原ウスティオ国防陸軍駐留地

後発部隊も合流し、一大集結地点が出来る。サ―ガウ―ラが操るアリエテも一地点にまとめて並べている。

そこにフェルナンデスが帰って来る、整備や休憩していた隊員が直立不動で敬礼する。

「楽にしていい」

彼の一言で全員戻す。

「会談は……」

「今から総合作戦指揮所で緊急会議だ…奴らは、ベルカは現時点聞く耳持たない。明日から再度進撃の可能性が出た」

「「!!!」」

ウスティオの一時停止を聞かずに進撃、完全にレクタを舐め、ウスティオを考えていない。

相手は予想以上の新型兵器で固める東部軍閥、足並み揃わずで勝てる確率は低い。

「手柄に急ぐゼッタ―を押さえられない私の力不足だ…済まない」

一同が黙る。しかし2人は違った

「元帥閣下、お言葉ですが、我々レクタ派遣軍、いやこの戦争始まってから超絶任務を遂行してきました。我々に怖いものなどありません!」

「ベルカ司令が何だろうと、我々勇猛なウスティオ兵士の力をお見せしましょう!!」

既にフェルナンデスに毒されたサ―ガとウ―ラだ。他も苦笑する。

「………、そうか…、じゃあ気にしない!この際レクタ首都まで中央突破だ!」

「「「いやいや少しは気にして下さいよ?!」」」

周りは笑う。フェルナンデスも笑う。

ウスティオ国防陸軍今日も精強なり。

1245hrs

ア―ラスカ基地廊下

「シザ―中尉!」

「ああ、何でしょうベニ―さん」

ベニ―は笑顔ながら背筋に寒いものが流れこむ。

こいつ、ナルシストだ…!

しかもここ地元では有力の上院議員の息子、階級上の人に敬意を払わなくても咎めないし咎められない。

「あの、私明日のア―ガイル大尉の聴取をしたいのですが…」

「それはそれは!別に構いませんが、代価というものがあるでしょう?」

こいつ!!

確かに諜報した情報で、こいつは金や相手を脅して女を喰らうと聞いていたが……、ここまで露骨に来るとは…

「そ……それは…」

「おやおや?そういえばなぜ私と聴取担当交代したいのですか?理由が無いのにそれは出来ないな――」

くそ!足下見やがった!しかしここは我慢して…やるか。

「分かりました、代価は払いましょう」

ベニ―はシザ―の体に密着する。逃げたいが我慢我慢…てかこんなに逃げたい感じがするのは初めてだ。

シザ―は満足そうに頷き

「それじゃあ夜の11時に僕の部屋に来てね。分かったね子猫ちゃん」

今なら愛銃でこいつの顔を消し飛ばせる自信しかない。

「分かりました」

「よろしい、それじゃあ変更の手続きをしてくる。アディオス」

シザ―は軽やかな足取りでその場を離れる。数十秒後

「あいつ、どうします?少佐殿」

同じ観測員でベルカ秘密諜報課の軍曹がベニ―に聞く。

「あとであいつに強力な睡眠薬を盛っといて、あと、あいつとその親父のスキャンダル、秘密諜報課の全力でお願い」

「了解、軽く越権に見えますが、私もあいつだけは好かないのでやっちゃいます」

「お願いね。さて、第一段階完了」

ベニ―は静かに呟く。

1300hrs

シ―フェスディス

艦隊総力戦が終了し、損傷が少ない艦が空母随伴、自力航行が不可能に近い艦はドッグまで大型艦が曳航、負傷がまあまあで、人員収容出来れば、撃沈艦から回収された船員が乗る。

戦闘海域はあの戦闘が嘘かのように静まり返り、ベルカ海軍空母グラッチェを旗艦に第5艦隊が海域監視をしている。

戦果は最高だった。

オ―シア第2国防艦隊が消滅した事によって、しばらくの制海権は掌握したも同じで、これから反撃の名の下でオ―シア侵攻がしやすくなった。

まあベルカ海軍も戦力完全回復まで10年かかると言うが、それに見合う報酬だ。

そして医務室で眠る一人の女性、

エレノア・ロ―トシルト中尉である。彼女はグレンが居なくなった後、悪魔が乗り移ったかのように猛々しく戦い、着艦した瞬間に気を失い今に至る。

初老男性軍医、ジップ・ラフトが艦内の怪我人と具合の報告書をまとめる音しか鳴らないるなか

「ん……」

エレノアの目がうっすら開く。

「おや、気付いたかい?」

ジップは優しい雰囲気を出しながら彼女に近付く

「ここ…は?」

まだ覚醒しきって無いのか、少し舌足らずだ。

「ここは医務室だ、君は昨日から今まで寝てたんだよ。と、それじゃあ早速だけど質問いいかい?」

「はい…」

ジップは吐き気や頭痛が無いか質問する。エレノアも徐々にはっきりした口調で返答する。あとは瞳孔や口にくわえるタイプの体温計で体温を計る。

「うん、特に異常は無さそうだね、高機動の体の負担からくる疲れかな?それ「あの…」なんだい?」

ジップは落ち着いて聞く。彼女は遠慮がちに

「あの…、隊長は大丈夫ですか?」

「!!?」

ジップの顔が強ばる。

この子、覚えてないのか?いや有り得ない話でもない。

悪魔が乗り移ったかのような戦闘の後の長い眠り……心理学はやらないが推測するにこれは一種の記憶封鎖か?

「あ……ええと…」

「?どうしたんですか?」

エレノアが心配そうに聞く。ジップはどうしようかと思案を巡らせた時

「君の隊長はオ―シア軍の攻撃で撃墜され、救援信号無し。行方不明だ」

「えっ……」

「なっ!」

ジップの振り返った先、海軍総司令レンが真顔ではっきりと宣告した。

「う…そ…、嘘ですよね」

「嘘を言って何の得がある」

「ああ……」

ジップは頭が白くなる。こりゃまずい

「〜〜〜〜!」

ベッドから飛び出し走り出すエレノア。

どこの小説だよ!

「総司令!」

「彼女を追いかけるぞ、多分彼女はまず馴染みの部屋を探してから、最悪……」

レンの言葉にジップが固まる。

1315hrs

エレノアは希望を持って、最後の馴染み部屋、休憩給湯室にもグレンが居ない事に、彼女はようやく現実を受け止め、膝から崩れ落ちる。

「おい!大丈夫か?」

休憩給湯室で休んでいた整備士とパイロットが近付く。

「………」

「?、おい…」

「………ですよね…」

「はっ?……!!」

彼女の纏うオ―ラが明らかに変わる。

今までが眩しいくらいの純白が、どこまでも深く絶望に満ちた黒に変わる。

「隊長を落としたのはオ―シア軍?」

「あ…ああ」

威圧で大の男2人含め周りの人間が固まる。

「落とす…」

「ちょ!おい!」

暗いオ―ラを纏う彼女が走り出す。

「間に合わなかった!」

「ジップさん!彼女は?」

肩で息をしているジップは素早く内線を取り

「整備隊に緊急事態発生だ!至急エレノア・ロ―トシルト中尉の機体を差し止めとロ―トシルト中尉の確保を急げ!」

《はい?!どうして…》

「理由なんて後付けだ!今言えるのは、彼女に今機体を乗せたらどんなに妨害しても絶対に発艦するぞ!急げ!!」

《ア、アイサ―!》

「中尉はどうしたんだ?!」

近くのパイロットがエレノアを追いかけ始めたジップに聞く

「彼女はグレン大尉の撃墜の記憶を喪失してたが、元帥があっさり戻して、その衝動から…」

ジップは一言間をおき

「純白の女神から復讐の女神になった…」

1325hrs

シ―フェスディス甲板

「乗せなさい!私を出撃させて!」

「落ち着け中尉!今のお前に機体は乗せられない!」

「ロ―トシルト!お前の気持ちは痛い程分かるが、今は我慢の時だ!」

「君が今これに乗ってもカタパルトは動かない!諦めろ!」

エレノアは機体手前で近くに居た男性3人に抑えられてるが、華奢な体からは想像出来ないな恐ろしい力がかかる。

「そこまでだ、中尉」

静かに…しかしエレノアの邪悪とまた違う、周りを威圧する声。

レン元帥である。

「エレノア中尉を放せ」

「「はっ!」」

3人は素早くエレノアから離れ、整列する。それに倣い周りの隊員も口を噤み手を止め、そちらを見る。

「エレノア・ロ―トシルト中尉」

「はい」

切れながらも、何とかある自制心でレンに向く。

「君は機体に搭乗してどうするつもりだった?」

「私の手でオ―シア軍の部隊を潰すだけです」

「それは許可出来ない」

「……」

「人を恨んで、殺してそれで大切な人は戻るのか?それはない、更に言えば、君の暴君で死んだ人を大切に思う人を悲しませ、その人の恨みのスパイラルだ」

「………」

エレノアは俯き震える

「戦争で軍人は血を被り、恨みを被る職業、しかし傭兵や乱射魔は例外として無用な争い恨みを生まない生ませないのが普通だ。それは君も例外じゃない…」

「…分かります……」

俯いていたエレノアが小さい声でポツリと言う。

「総司令のおっしゃる事は分かります…私が戦っても隊長は帰ってきません…敵を私情で乱射すれば隊長が悲しむ事も分かります……でも、でも、隊長はいつも私を庇ってくれたのに、私は隊長を援護も何も出来なかった!」

エレノアは捲くしたてるように言う。レン他周りの人は何も言えない。

「私の無力で全てが壊れたのです…これじゃあ国も国民も友軍も救えません…もうどうなってもいい「甘ったれんな!!」」

エレノアは気付いた時には青い空が広がり、左頬は焼けるように熱くて痛い。

レンの強力な平手打ち、周りはどよめくが動けない。容赦なくエレノアの襟を掴み、

「過小評価もいい加減しろよ!そして簡単に守護の誇りを簡単に捨てるなよ馬鹿野郎!!分からないなら何度でも殴る!」

「………」

「守りたいなら強くなれ!戦場ではいつも誰かが死に、誰かが生きる。その定義は絶対に揺るがない。

グレン大尉は確かに現在行方不明で残念な結果もあるかもしれない…しかしな!それですぐに自棄になり誇りや護るものを捨てるな!」

「あ……」

初めて彼女の中で何かが燃え上がり同時にこみ上げる。

「誇りを持て、グレン大尉の分君は戦うべき場所がある。ネメシスではなく、誇り高き制空騎士だ」

「うあぁ…」

エレノアの目から涙が零れる。それは止まらず

「うわあああん!!!」

「泣くな!と言いたいが、今は泣け。そして明日からまた戦え!グレン大尉も諦めるなよ!」

「イエズザ―…」

空母の甲板で彼女の泣き声が響く。

周りの隊員もやっと雰囲気が白くなり、安心が広がった。



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通達

2/24

1400hrs

エウレノ空軍基地ミ―ティングル―ム

「一体何度目の会議だよ」

「ぼやくな干物、会議に重要でないものは無い」

グラッドの呟きに結川が圧する。ちなみにグラッドは干物を咎めるのは諦めた。

「そりゃ会議は重要なのは分かるさ、しかしな〜、相手はベルカ空軍の参謀本部大佐シナ・ティート、内容は円卓関連……名前知らないが見下し感MAXに一票」

「じゃあ俺も」

「みんな何を言ってるんだと言いたいが一票」

「私も一票」

「……自分も一票…」

「弟がそうなら私も」

「「「我々も一票合計3票!」」」

全員同意見で笑い合った時

「お―い、会議始めていいかい?」

ウスティオ空軍参謀中尉が苦笑い、おおっと後ろにはベルカの大佐殿が…!

「この方はベルカ空軍第二情報部参謀、シナ・ティート大佐、自分はヒラン・チア、大佐殿補佐だ。それでは大佐殿」

「うむ」

シナはサザンクロスの前に立つ。

「今回君たちに伝えたい事がある」

《おや?これは全員の予想外れか?》

《黙ってろ!干物が!》

グラッドの小言をホ―クが咎める。シナは苦笑して

「自分は電子戦機WSO引退後の叩き上げだ。だからウスティオとか差別しないし、守るためなら何でも協力する主義だ。そうだろう?エリ―ゼ・ファルツ少尉…いや中尉か」

「お久しぶりです大佐」

「「「えええ〜〜!!知ってたの?!!?」」」

エリ―ゼはけろりと言って、皆は驚く。

「姉さん、知ってたの?」

「ええ、私の恩師で電子技術のいろはを叩きこませてくれた人」

「エリ―ゼ君は私の弟子だ。優秀すぎてウスティオに手放したくなかった。というか寂しかったな、私をダメな方に投票するとは」

「弟が選ぶのが私の意志。絶対不変」

「ああ、いつも携帯で弟の待ち受け、機体にも写真を飾り、操縦桿握るパ―トナ―は弟話で精神圧迫で私に直訴にきたり」

シナ苦笑、全員も苦笑。そこまでブラコンなのか……。

「それで、君たちに伝えたいのは、今度我が連合軍は新しい部隊を創設する事が決定した。広範囲戦線、重要局面で絶対に敵を打ち勝つ国境無き最強部隊、特殊戦術航空団、君たちサザンクロス隊はその候補生に選ばれた」

「候補生…とは、選抜とかあるのですか?」

ホ―クが素早く質問する。

「急ぐな急ぐな、確かに選抜試験はある。そう、一週間後、円卓制空戦だ。候補生は先陣の第一波、ニ波で出動、そこで情報収集して隊全体総合点で選抜する」

「随分派手な試験会場だ」

呟くグラッド

「あの…それはより敵機を落とすとかですか?」

心配そうに尋ねるアリチェ、確かに敵をより多く落として殺す競技ならそんなのは御免だ。

「いや、それは違う。確かにより多くの敵を落とすのはもちろんだが、我々が求めているのは、それ以上に少数でも屈しない高い戦闘力と戦略性、相手を最小の戦いで最大の恐怖を与え、エ―スを叩き落とせる実力者を集めたい。

つまり、自分より格下のパイロットばかりの虐殺は減点、エ―スを落とし、敵の士気を落として戦闘を優位にするのは加点になる。

更に言えば、友軍との協力、電子戦機の適切な支援も加点だ。

理解したか?」

「はい…良かった……」

アリチェは小声で安堵を漏らす

「まあ大半は確定してるも同然で、これは形式的な試験だが、気を抜いたら死を持って失格と思え」

シナの真面目な口調にサザンクロスは威圧される。

「了解しました大佐殿、御期待に沿えるよう奮戦…いや、ウスティオを守るためならどんな事もしますよ!」

結川はシナに敬礼しながらはっきり言う。他も彼に倣い敬礼する。

「うむ、円卓でオ―シアユ―ク相手に舞う姿を期待している。時に、隊長のユイカワ君」

シナが来い来いと手招く

「?、はっ」

結川はシナの横まで歩くと彼は結川の耳元で

「私の実の愛娘には劣るが、弟子は大切な息子、娘だ。悪い虫付いたら……殺すよ?」

「…………[コクコクコク]」

シナの本気の殺気交じった忠告に結川は高速赤べこのように首を縦に振りまくった。

シナは満足そうに頷くと

「それでは決戦は7日後、2/21、1000だ。各員我が連合の領土を巣くう醜き大国に鉄槌を、ウスティオの空の騎士に期待する」

敬礼をする。

「シナ大佐に返礼!」

サザンクロスも全員返礼を返す。

「よし、それじゃ円卓制空戦の詳しい話は後日の総ミ―ティングで話すから。じゃっ」

シナが去るとヒランも後からついていく。完全に見えなくなると、一同ほっと溜め息をつく。

「そういや隊長、さっきあの大佐殿に何吹きこまれたんだ?」

グラッドが聞く。結川はふっと遠い目で

「エリ―ゼがいつまでもブラコンで無いと俺の命が無くなる可能性かな?」

「一体何の話だよ!」

「取りあえず食堂でゆっくり話そう。行くぞ!」

「「「yes sir!」」

サザンクロスが食堂に向う、その食堂で事件が起こってるとは誰も思わない…

1415hrs

エウレノ空軍基地食堂

定食を注文してカウンターで待つスタークロス隊の隊長、バッカスが居る。任務を終えて、遅い昼食を取りにきた。

ウスティオの飯のクォリティーは未だに落ちないので、兵站の本気ここにあり。

しかし食料は大丈夫でも、燃料弾薬がきつい。ベルカと繋ぐ主要ルート144号線を解放しても未だに全軍に潤いがない。

俺ら爆撃隊も大変だ…その時

「隊長、ここに居ましたか」

バッカスが振り返ると、二番機のクライシス、

「お前も遅い昼食か?」

「いえ…あの」

「なんだ?仕事か?」

クライシスが口ごもる、バッカスは定食のおぼんを持ち催促する

「あの…20日…て、隊長?!」

バッカスのおぼんの持つ手が震えまくる。

そうだ…忘れてた…あれを…大変だ

「大変だ!」

バッカスはこれまでになく慌てる。

「今からやれば間に合うのでは?」

クライシスが至極当然の問いに

「ダメだ…忘れた時は危険だ…」

彼が慌てる理由、それは彼の幼なじみにして彼女[一説には入籍してない夫婦]の女性に毎月20日に電話をすること、しかしそれを忘れると……なんたって彼女は…

「バッカス・エイムズ中尉、カリサ・マルタイナさんから面会が…エイムズ中尉?!」

伝令の言葉でおぼんを手から滑り落ちる。

「それで…今…彼女は…」

「え…えと…」

「私を忘れるなんてひどい…」

バッカスの背後から腰に抱きつく。

「カ…カリサ」

「私とあなたを繋ぐ電話が無くて心配で…殺しますよ?」

「「「は?」」」

何だか物騒なキ―ワ―ドが、バッカスは震えている。

「いや、忘れてたわけでない…ただ連戦で…」

「嘘よ…浮気したから出来なかった」

「いやいやいや!んなわけない!戦争の激しさを考えれば…」

「はい」

彼女から差し出された書類を見る。

「なっ……!」

開戦時から今までのバッカスのタイムテーブル、ここまで調べるとは!!

ていうか当たり前だ。彼女は民間探偵会社の一員だ。

ここでお気づきになる人は多いだろう。彼女は独占欲が異常なヤンデレだ。

「20日は自由行動が多いです。私を捨てるなんて…、やっぱり私の心の中で安らかに」

「死なないよ!?」

周りの女性陣は察してくれて周りから離れる。賢明だ、なぜなら。

「やっぱりあなたを世から心より、浮気相手を…」

「居ないから!居たとしてもやめてね!お前がそんなことするのは嫌だから!」

「本当に?」

「あ…ああ、カリサが一番大事だよ!!」

バッカスやけくそ、周りの女性陣が色めき立つ。真実だけど口に出すのは初めてだ。

「本当に?」

「クドい!本当だ!」

「嬉しい…」

カリサは更にきつく抱きしめる。

やっとこ収まったその時…

「あれ〜?なんかバッカス隊長さんがラブラブしてる〜!」

空気読めなさMAXのバッカス隊エレナ少尉の言葉、てか今名前呼び捨てしたら…

「この女、誰?」

黒いオ―ラがまたカリサにまとわりつく。

「殺さなきゃ…」

「えっ、ちょ…おい!!」

「ふぇ―?迫ってきた〜!」

「しゃ――!!」

「警務隊取り押さえろ――!」

「「「Yes sir!!」」」

ギャ―ギャ―ワ―ワ―叫ぶ中

「これは〜一体全体何事?」

「分かりません」

取り残されるサザンクロスのメンバーだった。



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予言

2/24

2000hrs

レクタ派遣軍指揮官級ミ―ティングテント

大きめのテントに数十人の派遣軍の指揮官が集まる。

元帥にして総指揮のフェルナンデス始め

機械化歩兵、重騎兵、重武装師団師団長ら

兵站部門総責任者

各師団所属航空隊総責任者

本部から貸し出された特殊部隊、ウスティオ強襲作戦隊隊長

堂々としたメンバーである。

彼らは弾薬や燃料の話、来る東部軍閥との決戦について話している。

そして最後の大問題、ベルカとの共闘だ。

ファト、ベルカ、ウスティオが各戦線から協力して雪崩れ込めば簡単にとはいかないが、東部軍閥は壊滅する。しかし、ベルカは意見が合わない、ファトに至っては合流も出来てないという、足並み壊滅状態。

「さて、どうしたらいいものか…」

フェルナンデスは周りに問いかける。周りも唸るか沈黙だ。

「私はベルカと今の状態で進軍すれば確実に隙間をつかれて敗走が見える、東部は陸も新鋭だからな…」

言うのは第4機械化歩兵師団師団長、ハマ―・ライゼンだ。

東部軍閥は積極的にオ―シアに媚びてたようで、ほとんどがオ―シア軍並みの戦闘力を持ち、更に自動迎撃システムなどで、今までにないくらいに堅牢な防御線が展開されている。

「しかし彼らは我々が参戦しないのは反対している。これをどう切り返すか…だ」

今度は高機動歩兵師団師団長、セリナル・ソフだ。

「斥候本部長、何か最小限で最大の支援効果があり、かつベルカが納得する対象はないか?」

ハマ―が聞き、派遣軍斥候本部長のシガレット・サマンサがゆっくり立つ。

「あるには…あります、しかし…「言え」はっ!」

シガレットはフェルナンデスの催促にすかさず返す。そして語り出す

「我々斥候部隊は精鋭で編成した浸透部隊を戦線を越えて投入しました」

「おい、そんな危険な行為、ただでさえ浸透部隊員は貴重な人材だぞ」

第三軍団軍団長、ラクティア・ピックが糾弾する。

「そこは御安心を、敵の戦線は見た目厚く、実力も最強ですが、そこを抜ければ防御線が無いに等しい状態でした。さすがに多額の予算の使いすぎで第2フェ―ズは確認出来ません、と、それで、私達斥候からの情報で、最小限で最大の支援効果作戦はあるにはあります。これをご覧下さい」

シガレットは端末を叩き、スクリーンに現段階勢力図を映す。

師団、旅団の記号が入った凸型が多数ある。赤のベルカは突出隊形、青のウスティオは防御の密集隊形、レクタは横長線で示してある。

「まず先に述べた通り、敵はこの防御線がそう簡単には突破されない自信があるのか予算不足か知りませんが、第一陣しか用意されてません。

事実非常に堅い防御線ですが、最大の弱点があります。それは兵站と備蓄場所です」

「兵站と備蓄場所だと?」

「はい、これをご覧下さい」

端末操作でスクリーンには防御線の更に後ろにある三つの■を映す

「まず兵站ですが、敵の兵站線は非常に長く、大量に弾薬を使うとすぐ息切れます。

そしてそのような事態に陥らない為に、この■の所、ここがまさしく備蓄場所、補給基地です。

この補給基地から戦線維持に必要な物質供給が行われてるのを確認してます。ここを叩けば、兵站線が長くなり、戦線維持不能に貶める事が可能です」

シガレットの言葉に周りがざわめく、一筋の希望が見え始めたからだ。

しかしフェルナンデスは違った

「斥候本部長、それを先に提案しなかったのは理由があるのかい?」

「は、それが…左翼の補給基地は空爆で、右翼の補給基地は地下にありますが、ウスティオ強襲作戦隊の制圧能力があれば簡単に制圧出来ます。

しかし…、中央の補給基地は人口3000人の町の中にあり、そこの町の民は軍の脅しでそこに留まっており、、空爆で下手に弾薬庫を爆破すれば無関係な罪無き人々も巻き込み、ヘリボ―ンにしても、密集した対空兵器で蜂の巣で手出しが出来ないのです。

更にこの中央の補給基地だけで最低限戦線維持が可能なので、二つ壊してここを放置したらまた何個か補給基地が再建されてしまい、結局は堂々巡りか兵士突撃の消耗戦かのどちらかになるので提案はしませんでした」

「ふむ、それは提案出来ないな」

同意するセリナル

「無関係な人々を盾にするとは、国の防人ではない!」

激昂するハマ―

「中央放置は駄目ですけど…一般人を巻き込むのも…各個撃破は?」

「不可能に近いです、素早く三方向からの同時攻撃が必要です」

「強襲作戦隊を中央に回すのは」

「基地内なら問題は無いですが、基地外で戦闘して一般人を巻き込んでまで何をするのですか?空が使えれば話は別ですが…」

希望の光は大分狭まる、しかし一人の男は違った。

「私は予言しよう」

「「「はっ?」」」

フェルナンデスが静かに言う、会議に参加する者全員が間の抜けた声を出す。

「予言…とは?いつから占い師に…」

セリナルが言うと

「まあ落ち着け、私は予言する。中央の補給基地に民間人に扮して潜入する人が出て、そのまま基地に潜入、基地内対空兵器だけを破壊される気がする。

これを好機として、ウスティオは三つの補給基地を迅速に制圧する気がする、もちろん中央は戦闘機の護衛でヘリボ―ン、一般人犠牲者ゼロだ」

「「「………」」」

フェルナンデスの予言に今度はみな絶句している。

「……ほ、本気でおっしゃっているのですか?それは国際条約違反じゃ…!」

予言という名のこの作戦の最大の問題点、それは民間人に扮しての潜入。

これが横行すれば民間人が常に危機に晒され、場合には虐殺の危険性があり国際条約で禁止されてるタブーな戦法だ。テロリストの常套手段を我々、軍が使えば世界は黙っていない。

「そうだ、タブーの戦法では間違いない。だが、我々の真の敵はレクタでない、オ―シアだ。ここでこれ以上の犠牲は出したくない、だから決断してもらいたい、この予言を的中させるか外させるか」

予言についてのざわつきもフェルナンデスの言葉で静まり返る。

「バレたら我々上層部に責任がくる、だがバレなければいい、バレても覚悟があるなら必ず指名した部下は信頼してやってくれる。

みんな、全責任を負ってでもウスティオを守る覚悟があるか?

私にはある。最後まで国民や部下の安全及び敵にも最大の敬意を払おう」

「………ハァ〜」

一同フェルナンデスの言葉に固まる中で、ハマ―は額に手を当てて上を見上げ溜め息つく。

「分かりました、私とて国を守る一兵士だ、先に条約破ったのは奴らの方だ、ここは絶対に語られぬウスティオの真髄を見せようじゃないか!」

「出たよ熱血馬鹿、だけど面白い、戦場でも面白い事は大切だ」

「敵さんの驚く顔が拝めそうだ」

「あ〜、ここはそういう所でしたね、これなら最初から提案すれば良かった」

次々と賛同の声と自信でテント内を埋める。

「決まりだな、それではベルカとの協調路線は無し!我々は我々独自の作戦で進む!」

全員から力強く頷かれる。

「元帥閣下、戦線突破及び潜入の先導は浸透部隊が担当しますが、中央への実行部隊は誰が…」

シガレットが質問をする、フェルナンデスは

「それは考えてある、我が軍最強の一般兵、クラウスを使用する」

「まさかのアサルトライフルを打撃に使う彼ですか、それと軍の記録は」

「一切残らん、この作戦は味方にも完全秘匿、記録にも記憶にも残らない派遣軍オリジナル非合法部隊だ」

フェルナンデスはにやりとする。

こうして華々しい戦争劇の水面下、掟破りの裏が始まる…。

そしてここから、後に救国の光の連合空軍の下で、影のように暗躍し舞った部隊が創設される。

そのコ―ドネ―ムは

Nessun record[記録なし]



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舞い戻る乱気流

2/25

0905hrs

アーラスク基地

けたたましいアラートが鳴り響き兵士が駆けまわる。

「緊急事態(エマージェンシー)、緊急事態(エマージェンシー)!捕虜兵士一名が士官を人質に逃亡!警備に当たってる部隊は即時厳戒体勢!場合によっては射殺も許可する!」

「おい!そこの捕虜兵!即時武装解除しろ!」

オーシア兵士がM4で威嚇する。その先には

「あのー、大丈夫でしょうか・・・自分」

「私に被弾したら大問題、それと格納庫の方も手を回して無人にした、だから大丈夫、あともう少し締め上げないと不審に思われるから遠慮なく」

逃げてるのはグレン、そしてこめかみに銃で押しつけられて脅されて人質になってるのはベニーだ。

「いや・・・階級が上でしかも女性・・・気にしますよ」

「優しいのね・・・でも男はもっと支配欲あった方がいいわよ」

「・・・Mですか?」

「試してみる?」

「丁重にお断り申し上げます」

「そう・・・ああ次の角は右ね」

「Yes sir」

彼女の先導でグレンが動く、目的地はもちろん新型機の場所。オーシア兵士は中々手を出せない、うまい具合に彼女を盾にしてるからだ。

俺、あとで最低な人間のレッテル貼られるな・・・グレンは心の中で苦笑する。

こういう展開になるのは今から数十分前に遡る・・・。

0840hrs

グレンは取り調べ室で静かに慌てていた。まさかこのタイミングで取り調べとは・・・・これじゃ計画は水の泡、さらにあの士官が聴取担当だったら今すぐGo to hevenしたい・・・。

「聴取官が入るぞ」

グレンの行動監視担当が言う、だれが来るんだ?開いた扉に入ってくる人物を見ると・・・

「・・・・」

「どうも、本日聴取担当になりましたベニー・ファンです。早速始めるわよ」

入って来たのは脱走を持ちかけた張本人、ベニーだ。彼女はすまし顔で席に着き、

「ああ、ここに居るみなさん、私の部下だから知ってるけど、ボールペンを机に叩くクセがあるから、うるさかったらごめんなさい」

周りの彼らはベニーの観測隊の部下か。

「さて、始めましょうか、まずグレン・アーガイル、ベルカ海軍シーフェスディス所属トゥルブレンツ隊1番機で間違い無いですね」

「ああ」

彼女は資料に目を通しながら、ボールペンを叩きだす

コンコンコン・・・

「さて、まず貴方に聞きたいのは、ベルカ軍の情報、何か喋らない?」

またそれか・・・

「私は一兵士で機密情報なんか知らない、あっても何されても同胞の弱点を喋るか」

「そう・・・黙秘権ね、悪いけどそんなの無いの、これは命令」

コンコンコン・・・

「まさか拷問でもするのか?」

「いいえ、そんなあからさまな事したら大変だから、このまま交代制で48時間ぐらい聴取してもいいのよ」

「おいおい・・・」

コン・・コンコン・・コン、シュッ

時折ボールペンを机で横に擦る。しかも何だかリズムが付いてきた・・・グレンがこの音にイラついてくるとふと・・・何かの音に聞こえる。これ・・・どこかで・・

「で・・・何か喋らない?私も荒事は嫌いなの、貴方が早く喋ってくれれば楽だけどね」

コン・・・コンコン・・コン、シュッ

さっきから繰り返されるこのリズム・・・これ・・・グレンの脳内から一つの結論が導きだされる。

コン・・コンコン・・コン、シュッ[応答せよ]

これは・・・ベルカ海軍モールス信号!

グレンは推測があってるか、靴のつま先と床で叩いてベルカ海軍モールス信号で

コン・・コンコン・・コン、シュッ[応答する]

その瞬間彼女はすこし微笑してまた真面目な顔になり

「自分から話す事は何もない」

「そう・・・司法取引って言葉知ってる?」

モールスは続いている。

ここで作者の勝手な都合だが、モールスのコン、シュッは省かせてもらう。

[ここに居るのは全員諜報員、仲間、安心せよ]

「司法取引は知ってるが、使う意志はない」

グレンは言いながら、ボールペンから発する音、動きに注目する。しかしここに居るのは全員味方って・・・どんだけスパイに緩いんだ、オーシアは

「へえ~、男らしいわね、でもその強引さが命取りになるの」

[今から作戦伝達す、了解か?]

「死んだら国際問題だ」

[了解]

「減らず口ね、正直言ってむかつくわ」

[今から私を襲え、ズボン、右ポケットに手錠のカギあり]

「気分が悪いのはこちらだ」

[・・・・・]

「そう、本気であなたを殺したいわ、もう少し自分の立場考えたら?」

[後に私を盾にし、格納庫まで行く、拒否権無し]

「・・・・」

グレンは絶句する、もちろんモールスでの会話の部分でだ。つまり彼女を人質にして逃げる?んなこと・・・

[拒否権なし]

ベニーからの催促・・・それしか方法が無いのか?まあやるなら派手に・・・か

「いい加減にしろよ・・」

[手荒に行く]

「え?」

最後に了解の意を持つコン!と力強く叩くと、今まで彼女にあった警戒心が全て解かれる、その瞬間

「やっ!」

「きゃっ!」

グレンは素早く立ち上がり、ベニーの背後に回り手荒に席から立たせて近くの壁に押し付ける、そして押さえつつ素早く彼女の右ポケットから鍵を奪い、手錠を外す。監視の兵士は驚いて動作に遅れたふりをする。

「くっ!あなたこんなことしてただで済むと思うの!」

「はっ!ここで精神苦痛にあうよかましだ!」

心の中で謝罪しつつ、ベニーのハンドガンを奪い、彼女のこめかみにつける。

「動くな!動けば貴様らの士官が死ぬ!」

取調室に緊迫した空気が流れる。兵士は声を出せないふりをする。

「じゃあな!」

グレンは後は頼むというアイコンタクトをすると、全員の靴から了承の音が聞こえた。

そして今に至る。

0910hrs

グレンがベニーを人質にして逃げている

「もうすぐ格納庫よ」

「了解した。大丈夫ですか?」

「・・・本当に取調室の時の怖さと今の優しいあなた、どっちが本当なのか分からないわ」

「まあ、どっちも本当ですね。ストリートチルドレン時代がありますから」

「あ・・・」

グレンの演技に見えないあの暴言、制圧は本当に見事で、ふりをしていた監視の兵も、実は本当にまずいんじゃないかと一瞬思ったほど、彼には深い所があるのね・・・・

「ごめんなさい」

「?、別に少佐殿に謝ってもらう事はありません。むしろこちらが精一杯の謝罪と感謝を送りたいですよ」

「まったく・・・面白い人なんだから、あっ、ここです」

本部棟を出て、そして格納庫の扉を開く、そこは緊急事態で

「おお・・・」

グレンは思わず声が出る。

F-22に似て似てない平たく、丸みのある機体、しかしそれに堂々とした威厳を感じる機体。

まさしく、SU-50そのものだ・・・。

「よし、ちゃんと整備されてるわね、さあ乗って!」

「ああ、と、そういえば追手が来たらどうする?見た限り武装してないが・・・」

「うん、それは私の魔法で一瞬だから、信じて」

彼女の真剣なまなざしで、グレンは頷かざる得ない

「分かった、短い間でしたが、ありがとうございます」

「ふふ、中々スリルだった、こちらからも御武運を」

グレンはベニーを離す、その時

「今なら間に合うわね」

「はっ?」

「神頼みより効くおまじない」

次の瞬間、グレンの頬に柔らかいものがあたる、それがベニーの仕業と気付くまで数秒かかった

「はっ・・えっ?」

彼は壊れたロボットになる。彼女は微笑して

「はい、おまじない、本格的なものがほしかったら、空母で待つ彼女でね。行ってらっしゃい!」

「はは・・・行ってきますよ!」

グレンは片手をあげて機内に乗り込む。

機内はデジタルづくし、さらにヘルメットにHUDが映る。こりゃあ凄い機体だ。確かF-22に匹敵するんだったな・・・。

格納庫の扉は試験機を上げるために既に開いている。エンジンも快調、ベニーの方を向くと、泣きながら兵士に保護されている。演技力高いな・・・。その時通信が

<<試験機X-2を操縦する捕虜に告ぐ!ただちに機体から降りて投降せよ!しなければ射殺する!離陸しても武装無しの機体ではこの基地の追撃部隊で落ちるだけだ。無駄なあがきはやめろ!>

「・・・・はっ、こんな所に居るよか遥かにましだ!全力で行かせてもらう!!」

<<なっ?!>

グレンと管制塔が喧嘩している時、泣いたふりをしていたベニー、

[ふふ、グレン大尉を逃がすために・・・ドーン!]

ズボンに縫ってた見えにくいスイッチを押すと、

ドドーーン!

スクランブル待機で人的被害が出そうな戦闘機以外の、整備士もパイロットも居ない格納庫が爆発する。ちなみに人的被害の出そうな格納庫はわざわざ部品を壊した。つまり全機離陸不可。

そしてそれを見たグレンは

「・・・・、おいおいおい、彼女疑われないのか?いや、彼女なら絶対に切り抜けられるな」

「機内の敵だけ狙撃しろ!機体に当てるな!」

「あれは唯一無二の機体だ!下手して燃やしたら俺らが軍法会議だ!」

ほほう、敵兵は完全に新型機に被弾しないか怯えとる。まあ彼女の言葉だとスホイ設計局の裏切り者は殺されたみたいだし。そして誘導路から滑走路に向かう。

「離陸させるな!道をふさげ!」

「今から滑走路押さえても遅いよ!トゥルブレンツ1!テイク・オフ!」

キィィィィィンと甲高い音と共に、機体はアフターバーナーで凄まじい加速力を見せる。てか久しぶりの地上離陸、癖で発艦時の特別呼吸法してた・・・。

そして十分速度がつくと、操縦桿を引き、ふわりと上がる。

<<くそ!追撃部隊は?!>

<<駄目です!全滅です!>

<<くそぉぉぉぉ!!!増援を要請しろ!あいつを叩き落とせ!あれにはオーシアの秘匿技術も入れてるんだ!>

<<Yes sir!!>

SU-50が飛び立った後、ベニーは格納庫から出て、空を見上げ

「無事にね・・」

と、無事を祈った。

0950hrs

シーフェスディスCDC

男たちが詰まってる戦闘指揮所、今のところ静かで機械音しか聞こえない、その時

「ん?」

「どうした?」

「あっ、総指揮、レーダー上にIFF不明一機と・・・オーシア空軍数機接近中!」

大型のレーダー上に空軍機が数機接近している。レンはふむと頷き、そしてにやりと笑い、

「よし!その不明機のIFFを味方に変えろ!そして助けろ!」

「はい・・・え?ちょ・・」

「そしてエレノア・ロートシルト中尉を甲板上で待たせてろ」

「うん?え、はっ?」

「返事!」

「Yes sir!!」

素早く迎撃態勢に入る。

「たく、馬鹿男、早く相棒を安心させてやれ」

今朝緊急通信で情報部から既に知らされてるレンはにやにやしながら言う。

その時グレンは・・・

ピーピーピー・・・

さっきから接近警報が鳴りやまない、敵部隊め・・・

グレンの操る機体の後方には2機のF-22と4機のF-15s/MTOだ。どの機体の主翼にも試験塗装がされてるので、この機体のテストの対戦部隊と護衛部隊と見た。

ピーー

「また来たよ!」

AAM接近警報、素早く操縦桿を前に倒してチャフを放つ。敵はステルスが効きにくい赤外線できやがった・・・。

「チャフフレアが持たねえ・・・」

敵は一本一本丁寧に放ってくれるものだから、チャフフレアの減りが激しい、後2回・・・いやそれももたないか?

<<こちらオーシア空軍より脱走兵に告ぐ、これ以上の無駄な抵抗は状況知らずだ。即刻の投降を求める>

こちらを見透いたように上から目線で言うオーシアパイロット、しかしなー、投降するのは癪だし・・・

「こちら脱走兵・・・いやトゥルよりオーシア空軍、お前らごときにやられるほどやわじゃない、最後までダンスをしてみせよう」

<<・・・あんたは最後通牒を断った・・・死ね>

<<死ぬのはあんたらだ>

同時にAAMが当たり、戦闘機が爆ぜる。グレンの後ろの部隊が・・・だ

<<こちらベルカ海軍航空隊、シーフェスディス直掩隊ダッド隊だ、総指揮の勅命より貴機を護衛する>

SU-33、4機が後方部隊を強襲する。

<<くっ!なぜだ!なぜあいつを護衛する?!>

<<た・・退却!退却!くそ!>

強襲で混乱した敵部隊は撤退していく。そして安定した時、4機がグレンを囲む。

<<ダッド隊より、貴機は我が軍のSU-50に酷似している。貴機の所属は?>

助かったよ・・・グレンは

「こちら捕虜になってたベルカ海軍航空隊シーフェスディス所属、トゥルブレンツ隊グレン・アーガイル大尉だ」

<<はっ?>

「地獄の底からただいまだ」

<<<はああああああ?!!!>>

無線が驚きで飽和した。

1005hrs

シーフェスディス甲板

「おい!まじかよ!」

「ああ!オーシアから新型機ぶんどって逃げてきたらしい!」

「たく!二番機の美人を口説くチャンスが!」

「「「どちらにしろ失敗する無様を晒すから逆に良かったじゃない」」」

「くそおおおお!!」

甲板上には仕事が無い、または放棄してきた人間で着陸地以外埋まっている。そして一機のSU-50が着艦ワイヤーに引っ掛かり、急停止する。そしてキャノピーが開き、ヘルメットを脱ぐと・・・

「「「「おおおおおおおおおお!!!」」」」

甲板を揺らすほどの大声、間違いなくこの前の海戦で一番の戦功を立てた部隊の隊長、グレンのその姿、彼が機体から甲板に降りるとワッと人が集まり

「おいおい!英雄が帰ってきたよ!」

「最強の2人が復活だーー!!」

「のわわわわ!」

グレンはもみくちゃにされる、その時

「隊長!」

女性の透き通った声が響く、その声に沈黙が出来る。そして彼の周りに居る人間はにやにやしながらわっと引く、そしてそこには一番会いたかった人物。

「エレノア・・・」

「・・・ッ!」

エレノアは周りを見ずにグレンに抱きつく、

「お・・おい」

「馬鹿な隊長への恥さらしです」

「いや、自分も相当恥ずかしいだろ・・・」

くしゃくしゃの子どもみたいな泣きそうな顔のエレノアにグレンは微笑する。

ああ、本当にこいつの事が好きなんだな・・・。

「ただいま、エレノア、なにすれば許す?」

「・・・・紅茶では許しません、ここで恥ずかしい事して下さい」

「そうか・・・じゃあ、好きだ」

「ふぇ・・・」

エレノアは完全に言葉が出ない、いや出せない、なぜなら公衆の面前でのキスだ。時間にして数十秒、完全に空母に沈黙が走る。ちなみに作業で行けない人のために、たまたま同乗してた広報班の人間のビデオ生中継で、艦内全体にも映っている。やがてそれも終わり

「これで許してくれるか?」

「あわわわ・・・はい・・・」

泣きそうな顔から今度は完全に真っ赤になったエレノアは顔をグレンに押し付けて隠そうとする。

か・・・可愛い・・

そして周りも爆発した

「「「「キターーーーーーーーーーーー!!!!!」」」」

しばらくの間甲板は祝福と、エレノアファンからの怒声と、グレンの隠れファンの女性達の発狂でしばらく着艦不能となった。

その頃ダッド隊は・・・

「おい、そろそろ燃料がやばい、着艦させてくれ」

<<交通整理は自前で頼む>

「OK、把握した、機銃掃射する」

<<なぜに?!>

応酬が始まってた。

その頃グレンの士官室と隣室の下士官の皆さんは

「・・・今日は俺ら食堂で寝るな」

「「「そうだな」」」

「良く眠れないよ、全く」

「いや、自室で耳ふさいで寝るより楽だ」

「それもそうだな」

全力回避の話し合いをしていた。

そして数日後、アーラスカ基地

「こ・・・これは・・・」

監視カメラの映像を見る男が呟く、

「これが事実なら・・・彼女は・・ベルカの・・・」

男は震える。これが本当なら、捕虜が新型機を奪ったのもうなずける。これは早く告発しなければ、脅しのネタとかそういうレベルじゃない!男が軍法会議の本部にメールを入れようとした時

「ふふ、まさかあなたに気付かれるとは思いませんでした、シザー中尉?」

「え・・・?」

シザーと呼ばれた男が振り返ると、ベニー・ファン少佐の姿が、

「全く、ようやく私が無実になったのに、面倒な事増やさないで頂けますか?」

いつもの微笑が絶えない彼女はそこに居ない、全てを狩り、どんなものも食い殺す目だ。

「お前の事は分かっている!あ・・あとはエンターキーを押せばおしまいだ!」

「お終いなのはどちらでしょう?」

「はっ?」

彼女は書類を手に取り

「シザー・グランテン、入隊時から士官越権及び外圧で基地掌握、さらに数十名にのぼる女性隊員への弱みを握った性的暴行、それにとどまらず、差別民族とされてる先住民への強姦も数件確認、これは組織ぐるみの行動ですね・・・。ふふ、全員叩き潰すわ。あと・・お父様のほうもだーいぶ黒いですね。もう失脚の報道してますよ」

「・・・・ああ・・ああ」

シザーはへたれこむ、彼女は微笑しながら

「ああ、それとそのパソコン、もう回線切断しましたからもう動きません」

「!!」

シザーが画面を見ると、Errorの文字。完全に望みが断たれた。

「続きは軍法会議と行きたいですが・・・変な事口走られると面倒なの、祈りなさい」

「ふ・・・ふざ・・」

シザーが言いきる前にベニーの強烈な顔面蹴りが入る。鼻血がほとばしる。そのまま感情のない目で彼女はシザーの襟をつかみ

「祈れ、祈ってあの世へ逝け、地獄の業火でも少しでも優しい所に入れれば嬉しいですね」

ベニーはサイレンサー付きのハンドガンの先をを額につけて

「ひっ・・ひいい!」

「さようなら」

チュン!と静かな射撃音が一回、カランと薬莢が弾けるのが一回、どさりと倒れる音が一回、そして、シザーの額に一穴。

「ふう」

「お見事です、少佐」

「全く、髪にもこいつの血で汚れるなんて・・・落とすの大変だわ」

返り血を浴びたベニーは何にも感じない目で冷たく見下ろす。

「後始末お願い、私はシャワーを浴びる」

「Yes sir」

側近は敬礼する。ベニーは

「complete mission」

と静かに呟く。



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コイントス

2/24

2200hrs

ベルカ連邦、五大湖方面オーシア前線

闇夜の中、第11機甲師団、義勇歩兵師団第4,12師団が監視をしている。

五大湖方面のオーシア軍は完全に戦意喪失して、現在督戦隊も追いつかないほどの脱走兵が出ているため、このような現状である。

そこで歩哨する2人の義勇兵、

「暇だな、眠い」

「おい!しっかりしろよ!いつ襲ってくるか・・」

「はいはい、お前は真面目だねー、たく、相手のオーシアは現在機能不全に陥っているのに、何を悲しくここまでやるのか」

「ユークも居るんだよ?たく、お前本当に志願兵か?」

「志願兵だよ~、ただ給料がいいから志願したの!」

「あほ、それで命がけの仕事に就くのか・・・」

「まあね」

2人の義勇兵が話してた時、

「あれ?」

「ん?どした?」

真面目な方が呟き、不良が聞き返す。

「今、空が蒼く光ったような・・・」

「んな馬鹿・・・な・・・」

キィィィィィィィン!

空が蒼く光り、地面に叩く、次の瞬間火の手が上がる。

「あれは!あそこは地下通信基地だ!」

「はあ?!エクスキャリバーの暴走か?!」

「それにしては噂より細い・・・まさか・・・噂のアークバード・・宇宙空間狙撃!」

「んな空想じみた「空想じゃないよ!俺の趣味で買ってる本に載ってたし本部上官も言ってたろ!」・・・」

そして更に通信が入り、

「緊急通信!特殊散弾弾道弾確認!緊急回避!!」

「!!、潜水艦かよ!塹壕に逃げこめ!」

「分かってるよ!」

2人がほぼ同時に塹壕に滑り込む、次の瞬間

ドドーーン!

空が真っ白な火球が出来る。爆風で押しつけられるのを我慢する、それが収まり

「大丈夫か?!」

「ああ!悪運だけは恵まれてる!」

2人が無事を確認しあうと

<<こちら本部!ユーク部隊を確認!全力で迎撃せよ!後ろの都市を死守せよ!通信は現在復旧中!復旧次第増援求める!頼む!>

「・・・・、はあ、予想が当たるとは・・・、悪運借りるぞ!」

「おうよ!喜んで!生き残ろうぜ、相棒!」

「ああ!!」

G-3を塹壕から外に構え、接近してくるユーク陸軍第16師団を迎撃開始する。

2/25

1100hrs

ウスティオベニー空軍基地

ウスティオ空軍でも機密性が高いとされ、本部ディレクタス以上の秘密基地、ここには通常部隊が表に、裏には秘密亡命者や、非公式の傭兵が駐屯している。

そしてこのミーティングルームで、数人の姿、ウォードックメンバー、バートレット、レッドバロンのカイト、そして目の前にはハーリング議員。

「集まったな、君たちに任務がある、オーシアユークの超兵器の始末だ」

ハーリングは言う、

「そいつは中々どうして穏やかじゃないな」

チョッパーが陽気に言う

「事態は君たちが考えるより重い、昨夜に北部ベルカの守備軍の40%がやられた。アークバードのレーザー狙撃で通信基地破壊、さらにリムファクシの弾道弾で中心部部隊が壊滅だ」

「「「!!」」」

全員が息を飲む。

「幸い何とか撃退できたが、超兵器の存在はあってはならない、そのため、君たちの隊に、攻撃命令が下った。理由は・・・分かるよな?」

「忠誠・・・ですか?」

ナガセが聞く、未だに信頼されてないウォードックに直接元同胞を倒せ、そうゆう話か

「まあそうゆうところだ」

「もしかして両方やるのですか?」

ジューンが聞く、バートレットが笑い

「馬鹿かブービー、お前は少し頭が堅いな、同時攻撃だろ」

「それじゃあ・・」

「片方は俺らとベルカ軍、もう片方はガルム傭兵部隊が仕留めてくれるらしい」

「ほほう、それで、俺らは白い鳥?怪獣クジラ?どっちだ?」

チョッパーが聞く、バートレットがにやりとして、一セント硬貨を出す、チョッパーは苦々しい顔で

「おいおいおい、まさか・・・」

「そう、コイントスだ」

「「「え~~~~!!!」」」

「よし、やるぞ!表は鳥!裏はクジラ!」

「早い!?」

ジューンが言うと、既にチーンという金属の音と共に光るコインが宙を舞う、かなり長い時間に感じるが、バートレットは器用に手の甲に隠し

「さて・・・どちらかな?」

バートレットはゆっくり押さえてた手を上げる・・・。

1セント硬貨は表、つまり

「よし!お前らは鳥落としに決定した!」

バートレットは笑いながら言う。まさかの高高度でのドッグファイトか!

「それでは、作戦はリムファクシが補給で浮上し、アークバードが一度軌道変更で大気圏に入る瞬間がある三日後だ。各員、円卓前の景気づけ、真の一番槍、勤め上げてくれ」

ハーリングが敬礼をすると、周りも一斉に返礼。

こうして敵超兵器破壊作戦「チートブレイカー」が始まる。

 

そしてその2時間前

0900hrs

レクタ派遣軍、最高指揮官詰所

2人の人が話している。

「話は分かりました。これが・・・新しい部隊」

書類を手渡されて見るのは、クラウド、前に座るわフェルナンデスだ。

「そうだ、この部隊は、後方撹乱支隊第1猟兵遊撃隊、名前は大層だがはっきり言おう、汚れ役で第2以降はもちろん存在しないし今後もない、集めた人員は戦闘32名、浸透潜入4名、他12名の48名、決して記録にも記憶にも残らない部隊だ」

「・・・・」

「残念だが君には拒否権は無い。そしてこの部隊は急ごしらえで、まあ、戦闘に関しては一流、他はの奴も居る。それを巧みに操り先導出来ると思っての推薦だ。頼む」

フェルナンデスは頭を下げる。

「元帥・・・ええ、やりましょう。私は元帥に頭下げられるほど大層な人間ではありません。拝命いたします。私はどんな部隊に居たか、貴方だけが知ってるのなら私は十分です」

「ありがとう」

「それで・・・24時間以内で補給基地破壊は分かりましたが、他にも・・・あるんでしょう?」

クラウスが聞く。

「ああ、分かってしまうか・・・。君たちには更に48時間、合計72時間以内に、レクタ後方の、サードユラ駐屯地から人質救助をしてもらいたい」

「人質・・とは」

「この子だ」

写真に写るわ、小さい可愛らしい女の子と、その子のお母さんと思しき人物。

「うちらが独自で調査と、南部の捕虜からの話で、これは南部の守備の鬼と謳われし、ダーター・ズラーヌの孫、ミニアちゃんだ。この子を人質にダーター、そして守備の鬼を越える逸材ともいわれる、ゴーラン・ズラーヌを強制的に東部のこの守備戦に呼んだらしい

彼らは最強の統率力を持つ。もしこの親子が南部にいたら簡単には突破できなかっただろう」

「それで・・・もしかして」

「ああ、東部の上層部はこの子の命を引き換えに守備に徹するように命令している・・・外道な奴らだ」

フェルナンデスは隠しきれない怒りを見せる。当然クラウスもだ。

「それで・・・この子を・・・」

「そうだ、母親とセットで救出をしろ。そうすると、南部のレクタ兵の統率が戻る」

「戻るって・・・元帥閣下・・・もしや・・」

「南部の兵士達はダーダーさんを連れ戻したら一緒に戦うと約束した。これは絶好の好機だ。頼むぞ」

「はっ!」

クラウドは敬礼してから

「そういえば・・・そんな堅い防御陣にベルカは突撃しましたけど!」

「ああ、もう手遅れだ・・・」

フェルナンデスが呟いた時、ベルカ軍レクタ派遣分遣軍団は突撃に失敗。前線部隊を孤立させるなど、瓦解が起きていた。

ウスティオ陸軍の陽動作戦、後方からの野戦攻撃で退路を作るも、命令系統が混乱。全く用をなさず、

0925hrs

ベルカ軍前線部隊降伏・・・・



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白い鳥Ⅰ

閑話[読み飛ばし可!]

再開の翌日

エレノアside

感動的なトゥルコンビの再開の翌日のシーフェスディス甲板上整備員

「そういえば、トゥル、グレンの隣室は?」

「隣の隣の部屋まで食堂に退避や、夜にシフト変更してもらったらしい」

「で、諜報班の報告は?」

「終始甘い声が聞こえて、30分した時には一人が色んな意味で昇天したらしい、他もHP(平常心ポイント)がガリガリ削られたとか」

「残念だったな・・・」

今は飛ぶ予定の飛行機が無いので、のんびりと会話をしながら、エレノアの愛機を整備している。

「そういや、その隊長は?」

「さあ、少佐に階級アップしての拝命式の後はどこに行ったか俺も知らん」

そう、グレンは海軍史上最速のスピードで少佐に昇進したのだ。エレノアは年齢が年齢で中尉保留だが、大尉昇進はすぐ目の前にあると噂される、そしてそこに

「あっ、整備お疲れ様です」

「噂の相手が来たよ」

「?」

常時パイロットスーツを着て、緊急出撃に備えるエレノアが、整備兵に言葉を掛ける。心なしか内股になっているのは突っ込まない事にしよう。

「ああ、エレノア中尉、機体の方は準備ば・・・」

「?、どうしました?」

整備兵が言葉に詰まり、彼女が聞く。すぐにして

「中尉、今すぐ即刻速やかにパイロットスーツのチャックを全部上げて下さい」

「へっ?何で?戦闘なら別だけど、今首まで絞めるのは嫌ですよ」

「・・・、失礼、お耳を拝借」

「ふぇ?」

整備兵は素早くエレノアに耳打ちする。時間は数秒、そして彼女の顔がゆでダコになるのも数秒

「勘のいい人は気付きます。まあ、うん」

「・・・、ありがとうございますっ!」

ゆでダコのエレノアは素早くチャックを上げると、そそくさと逃げてしまう。彼女が去って数秒後

「何を耳打ちした?」

「・・・、な~に」

耳打ちした整備兵は工具を持ちながら

「首のまわりにイパーイ付いてたうっ血痕を指摘しただけだ」

「・・・・、ああ!了解」

何もかも悟った2人は作業に戻る。

その頃グレンは・・・

「おい、グレン少佐殿?上官が部下の安眠邪魔して良かったの?」

「仲の良い事で、で、もちろん何か代償はありますよね?」

「「「ねえ、ねえ、ねえ!!」」」

「・・・うわーー」

安眠の妨害を受けた下士官からの恨みごとの処理をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

とある人が言ったんだ

白い鳥は平和の鳥、華麗に舞って地上の星を眺めると

しかし今は違うんだ。

ただただ蒼き光線で星を潰す凶鳥だと

私は願う、

既に黒くなり、望まぬ目的に使用される鳥が早く楽になるのを・・・

アークバード開発プロジェクト研究員の秘密日記から抜粋

2/28

1000hrs

北ベルカ海上空26000フィート

5機のF-14D、1機のF-15S/MTOが高高度を舞う。目的はただ一つ。目の前に居る白い鳥だ。

F-14Dは既に改修されて、速度も、燃費も飛躍的に良くなったエンジンを使用して、さっき空中給油を受けて、長い時間たたかえるよう万全である。

「しっかしな~!あんなでかい鳥、どうやって撃ち落とすんだか・・・なあナガセ」

「・・・・」

チョッパーの軽口に応えられないナガセ

「お~い」

「え、なに?」

「おいおい、大丈夫か・・・やっぱり・・」

「大丈夫よ・・・大丈夫」

ナガセの声はやはり少し小さくなる。無理もない、あれは彼女が望んでた平和の鳥、聞いた所によると、あれが飛行を始めたと知ってサンド島で一番喜んでたのが彼女と言って過言でない。

「ナガセ、作戦行動に支障があるなら・・・・」

「大丈夫です隊長、私の覚悟は出来ました。確かに今も撃つというのには躊躇いがありますが、平和になればまたこの鳥の2番機が出来る」

「そうだナガセ、そしてブービー!お前は部下を甘やかすな!」

「はっ・・済みません・・」

ジューンはバートレットに無線越しで怒られる。チョッパーとグリム、レッドバロンの笑い声が聞こえる。レッドバロンはともかく、あの二人あとで絞める!と心に誓うジューン。

しかしナガセも覚悟はできてるみたいだし、大丈夫か。

「しかし、増援の部隊・・・遅いですね」

「ああ、そろそろ集合時間だぞ!」

グリムが呟き、チョッパーが援護する。

<<済まない!遅れた!>

「?・・・うあっわあ?!」

グリムが驚き声を上げる。無理もない、突如急上昇してきた戦闘機2機が素早く同高度になり、グリムの後ろに張り付いてきたのである。

1機はSU-33、そしてもう一つは・・・

「驚いたな、まさか実験機のSU-50が拝めるなんて」

バートレットが言う。F-22に似てて似てない機体、ベルカが開発中のSU-50である。

<<まあ色々あって使っています。遅れて申し訳ありません、ベルカ海軍航空隊、シーフェスディス所属、トゥルブレンツです>

「へえ、乱気流か」

<<状況は平静ですね・・・間に合って良かった>

「ほへ~、2番機は女の子かい!しかし驚くな、あんな急上昇を耐えられる女性は少ない」

<<あ・・ありがとうございます>

チョッパーの感心声にエレノアがぎこちなく返す。

「おしゃべり小僧!他国の人まで何してるんだ!」

「うわぉ!」

バートレットの叱責にチョッパーは奇声を上げる。

「・・・どこまでここは平和なの・・」

「レッドバロンよりナガセ君、クールな声で苛立たないの、それよりトゥルブレンツのお二人」

<<<何でしょう?>>

「君たち随分と編隊技術が高い、普通の仲ではないね?ABCのどれだい?」

<<<「ちょっ!」>>

ジューンとグレン、エレノアが同時に突っ込む、レッドバロンも中々の曲者だった!

「そうか、Cかな?しかも最近だ」

<<・・・・・>

「あれ?ビンゴ?」

レッドバロンはどんぴしゃり言い当ててしまう。

「レッドバロンさん!」

ナガセの堪忍袋の緒が切れた?!と

「お~い、そろそろお遊びもここまでだ、敵接近、攻撃態勢を取れ」

「「「おお!そうだった!」」」

「・・・お前ら・・・」

ジューンが呆れてたその時

「あれ・・・白い鳥から!」

「ん?」

アークバードから白い玉のような物が落とされる。

「あれは・・・脱出カプセルか?一体なん「アークバードが急降下!軌道変更とかのレベルじゃありません!」!」

チョッパーの言葉をグリムが遮る。確かに降下のレベルが違う。

<<ああ、多分それはベルカの対外諜報部の人間の仕業です。脱出したのはその仲間かと・・・>

「まさか!」

<<そのまさかなんですよ>

ジューンの言葉に、身をもって知っているグレンがやんわり言う。

「おい!無駄話をしてるな!とにかく奴が宇宙に帰る前に落とす!ハートブレイク、交戦!」

「そうですね!ウォードック、エンゲージ!各機エンジン部を狙え!」

「「「Yes sir!!」」」

<<俺達も行くか、トゥルブレンツ、エンゲージ!>

<<ラジャー!>

<<くそ!なんでこんなに高度が落ちるんだ!>

<<ブースター点火急げ!落とされるぞ!>

アークバード内は混乱に満ちる。

「ナガセ!どこを優先しては破壊する?」

「エンジンの、突出したブースター部です!これを破壊すれば、この飛行機は二度と宇宙に戻れない」

「了解した!各機レーザーにちゅう・・うわ!」

横一閃に裂くように光る蒼いレーザー、これに当たれば最後、生きる確率など0だ。

<<くっ!無人機を出せ!絶対にブースターを死守するんだ!>

<<Yes sir>

次々と下腹部から飛び立つ無人機、

「くそ!意外と難敵な野郎だ!」

<<俺達が引きつける、その隙にブースターを!>

トゥルブレンツは高い機動力と編隊飛行で無人機をひきつける。

「彼らの努力は無にしない・・・ブービーFOX2!」

AAMを2本発射、命中するも、装甲が頑丈でラチがあかない。

「くそ!ブースター予測点火時間まであと3分!どうする?」

レッドバロンの声にも少し焦りが出始める。しかしその時

「やりました!右ブースター装甲破壊!」

「よし!俺に任せろ!でりゃーーー!」

グリムの攻撃とチョッパーの機関砲射撃で、ブースター一基破壊!

「ダメよ!設計上片方でも十分私達の届かない高度に行ってしまうわ!」

「くそ!明らかに弾薬が足りないぞ!」

「絶体絶命とはこのことだな!ブービー!ざっくり増援呼んで来い!」

「無理です!」

バートレットの注文にジューンが即答したその時

「ふ、ベルカの空から加勢だ・・・落ちろ凶鳥」

その時、遠距離から8本のAAMがブースター部に突き刺さり、残りのブースターを装甲ごと引きちぎる。

<<なっ?!>

<<ブースター沈黙!ダメです!稼働しません!>

「おいおい、まさかのここでか」

「貴隊の所属は?」

<<ふ>

無線越しから男の声、後ろからはSU-47

<<ベルカ空軍、東部方面防空隊所属、オブニル、グラーバク連合航空隊だ>

まさかの増援、全員が喜ぶ

「ラッキーだなおい!」

「頼みます!」

<<了解した。自分もベルカの空の騎士だ・・負けはしない!>

そしてここから白い鳥への総攻撃が始まる。



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白い鳥Ⅱ

2/28

1000hrs

エウレノ空軍基地

ハンガーから出た場所に、8機の機体が布かかっている。周りには整備兵、そして

「とうとう完成したか」

結川は布かかる機体を見て呟く。やっと戦闘機の改修が済み、今日がお披露目の日だ

「こんな高揚感は初めてだ」

グラッドも言う。この機体が登場すれば、世界最強の名が廃れ始めた鷹がまた最強の座に舞い戻る。

「・・・・」

アリチェは黙っている。しかし何かに期待してるのは顔で分かる。

「こんな事で新しい改修機にお目にかかるとは」

ホークは改修機への期待と、やっぱり平和の空の方が良かったと複雑な念を囚われてた。

「「「どんな事でも新しい機体はやっぱり良い!」」」

三つ子が、あえてポジティブに言う。

「どんな電子戦機だろう・・・」

「どんなものでも完璧にこなす」

コーノが静かに言い、エリーゼは自信たくさんに言う。そして

「よーーし!みんな来たな!それじゃ、ちゃっちゃとお披露目しますか!オープンザセサミー!」

「ネタが懐かしい?!」

ゴードンの呼びかけで布が脱がされる。そして現れた機体

「「「おおおお!」」」

周りの野次馬含めて声を上げる。エンジンが変わり、主翼も少々改造された機体は、F-15UFXよりスマートな印象を受ける。F-15REEはCFTにさらに機械みたいなポッドが付いている。これがECMか?

「今回の改修で機体は最強になった!そして俺からのプレゼント、機体の背中をみな!」

ゴードンの言葉で、機体の背中を見ると、

「まさかな・・」

「これはすごいや」

サザンクロスメンバーは口々に言う。

黒い機体背中には、南十字星、そして右下にはTACネームの絵、ホークは弩、グラッドはナイフ、コーノはグレーで影を表現、アリチェは太陽で光、三つ子は全員団結で、剣、盾、弓が描かれている。そして結川は・・・

「これは・・・」

「あんたの異世界での風流なんだろ?」

異世界という絵が描けなかったので、なんと桜の花びらだ。

「こりゃ・・・何だか早く散ってしまいそうだ」

「隊長は散らないさ。長くきれいに咲く」

結川がおどけて言い、ゴードンが断言する。

「それとTACネームもSAKURA(サクラ)に変わるから」

「それも凄いな!」

サザンクロスが新しい機体に変わったイーグルを眺めているその時、ベルカの空の上は戦っていた。

 

1020hrs

北ベルカ海上空24400フィート

白い鳥が煙を吹きながらゆっくりと速度を落として行く。宇宙に上がれない鳥はもはや下がるしかない。

<<ブースター再起動は?!>

<<不能です!他エンジン駆動機関のシステム低下!>

<<コントロールは生きている・・・白い鳥より作戦本部、我々の支援狙撃はもはや不可能、このまま鳥が落ちるなら・・・せめて最後にベルカを潰す!全身全霊を持って突撃せよ!!>

「アークバード反転します!」

「あん?何をするつもりだ?」

グリムの言葉にチョッパーが反応する。

<<こちらベルカ空軍AWACSドーン、別作戦行動中だったが、アークバードから無線を傍受した!奴らは首都のディンズマルクに落ちようとしている!>

「なっ・・・、どういう事だ!」

ドーンの報告にレッドバロンが声を荒げて答える。

<<もし落ちた場合の被害は甚大!平和の鳥が世界最悪の大罪の一つになるぞ!>

「そんなことはさせない!」

「同意だよ、ナガセ、そりゃ!全員追いかけろ!」

「「「Yes sir!!」」」

バートレットの言葉で全員が応える。全機が反転してアークバードを取り囲む。

「ナガセ!どうすれば敵に有効的なダメージを与えられる?」

「隊長ほかみなさん!アークバードの航法管制機関と、レーザー設備は集中してる部分があります、レーザーを破壊すればアークバードの飛行機能は失います」

<<了解した、下腹部レーザーを狙う!2!付いて来い!>

<<五生七生どこまでも!>

トゥルブレンツSU部隊が一気に加速をかける。

<<SU部隊が接近!>

<<レーザーで叩き落とせ!>

<<アイサー!>

<<来る!>

青白いレーザーが放たれる。その瞬間

「ほう」

「すげ」

「なっ」

「ふーん」

<<見事だ>

各々が驚嘆な声、オブニル隊隊長、ディーチ・スロウは冷静な声を出す。

2機は見事に、高度もあまり下げず、速度も距離も離さず。冷静に機体をロールさせて受け流す。

レーザーは空を切り、横に流れる。

<<なあぁ?!>

<<白い鳥に断罪の鉄槌を!>

<<乱気流で羽もげろ!>

<<<FOX2!!!>>

グレンのSU-50、エレノアのSU-33から2本ずつAAMが解き放たれ、殺到する。敵はそこまで動かない、近接信管も使われず、AAMは吸い込まれるようにレーザー設備に向かい、やがて爆ぜた。

空気の薄い空間でもレーザーの蓄電池などが暴走、誘発してブースター燃料にも着火、空気を震わせる爆発が起きる。

<<エンジンとレーザーがやられました!>

<<航法慣性機機関に異常!>

<<システム異常!ゆうは・・・うあわああ!!>

<<被害甚大・・・鳥はもう・・・>

<<ええい!何やってる!非常用ブースター起動準備!上部自衛レーザー準備!>

アークバードは速度を落として一気に高度を落とす。

「白い鳥が沈んでいく・・・」

「やっと・・・終わったか?」

ナガセとジューンが呟いた時

<<まだだ・・・ブレイク!>

<<「!!?」>

グラーバグ隊の言葉に全機が回避、その時に上部の加速器で弾丸のように射出するレーザー弾を乱射する。

さらに高度7000フィート以下になると、一気に後方部の第三のブースターが起動する。

「こいつら!まだやろうってか?!」

「連中はそれだけ戦いたいのと野望を果たしたいみたいだ!それおしゃべり小僧!ちゃっちゃっと働け!」

「だああわーぁたよ!」

バートレットの命令にチョッパーは応える。

「全機これがとどめの戦いだ!AAM全弾開放!ウォードック隊GO!」

「「「Yes sir!!」」」

全機から惜しみのないAAMが放たれる。レーザーは最初は隙が無い攻撃だったが、アークバードの急速な電力低下と中枢故障で動作不良に陥り、5分で破壊される。

ブースターは緊急脱出用のため、2基のブースターより更に堅い。

しかし、着実に、確実に装甲は剥されていくそして・・・

「ブービーFOX2!!」」

ジューンの宣言と共にAAM発射、そしてブースターの装甲はついに壊れる。

「よし!あと一撃だ!」

「隊長!」

「どうした?ナガセ」

ナガセの言葉にジューンはとどめの一撃を中止する。

「最後の一撃を私にやらせて下さい・・」

「・・・・自分はいいが、全員は?」

ジューンはターゲットシーカーを外してナガセを先頭に立たせる。

「しょーがねーなー、グリム、下がるぞ」

「分かってます」

「お嬢さん、最後の一撃をあなたに」

「ナガセー!外したら後で譴責だぁ!」

<<それじゃ、脇役は下がるか>

<<アイサー!>

<<美味しいところだが、我慢しよう、全機、いつでも援護出来るようにしてろ>

周りは全員いつでも攻撃可能な位置について、ナガセへ道を譲る。

「ありがとうございます」

そして彼女はターゲットシーカーを睨みつつ。

「私が憧れた白い鳥、あなたの役目はもう終わり。落ちなさい・・・・エッジFOX2!!」

ナガセの宣言で残りのAAMを放つ。そして・・・白い鳥のブースターに命中した。

<<ブースターがやられた!高度が保てません!>

<<全機能レッド、リカバー不能・・・落ちます・・・>

<<ああ・・・あああ、アークバード、やはり貴様はここで終わると言うのか・・・>

リーダーと思しき人物が言葉を言い終わると、アークバードはその巨体を自由落下させ、海に落ち、そして海の藻屑となった・・・。

一同に沈黙が訪れる。それは色んな意味をこめての白い鳥への黙祷をしたからだった・・・。

1040hrs

アークバード、撃墜

1042hrs

リムファクシ撃沈

ちなみにリムファクシでは、ヘル・エンジェル隊とガルム隊、そして・・・

「こちらオメガ11、祖国ISAFから派遣され・・・イジェーークト!!」

「オメガ11が撃墜された!あれじゃたすから・・・脱出した?!」

「奴を殺そうとしている弾幕を華麗に避けてる?!」

「ははははは!ISAF一個師団持っても倒せない私に勝てるかね?」

「「「・・・・・・・・」」」

一同に白けが起きた・・・。



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円卓決戦

3/3

1000hrs

オーシア絶対防空圏、B7R、通称「円卓」付近

「なーーんの因果かおれが飛ばされた日に円卓初陣とは・・・」

「なんの事だ隊長?」

「んー、一人話」

結川は雛祭りの後にこの世界に飛ばされたのを懐かしく思う。あまりにもこの半月が濃すぎだ・・・。

結川率いる新生サザンクロス隊は、低高度を維持しつつ円卓に超音速巡航(スーパークルーズ)で迫る。既にヴァルキューレ隊もここから東に10マイル地点で飛んでいる。

サザン、ヴァルキューレ両隊はこの直径400kmの円卓の空の制空の為の先遣部隊、撹乱部隊として飛ぶ、なぜそうなったか、その理由は、両隊に各々有する。その電子戦機を用いて円卓に可能な限り潜入、さらに円卓中心部を陣取る円卓だけの空中管制機、空中給油機を仕留め後は思いっきり暴れる寸法だ。

しかし言うがやすし、簡単では無い。相手はオーシア、ユークでも練度の高い航空部隊が20機以上、敵味方両本隊が急行すればこの空なんて簡単に狭くなる。

しかしそんな狭い空でもなんでも隊が全員生き残り、勝利を収めればそれでよし。

眼下ギリギリ、円卓特有の赤土に吸い込まれそうになりながら結川は

「よし、ここからは無線封止だ、4、頼んだよ」

「お任せ下さい隊長、それではECM、レーダー妨害システム起動、無線封止開始・・・」

通信が切れるそれと同時にレーダーにジャミングが入る。対空部隊が設置出来ないくらいの地上の電磁波+ECMで敵から確認される確率は限りなく低くなる。

「また・・・静かだな」

あのウスティオの一大反攻作戦の前の時みたいだ、やっぱり息苦しく感じる。聞こえるのは自分の呼吸、心拍の音、そして低く唸る戦闘機の排気音。

「この戦いで全てが決まるのかなーーー」

結川の独り言が続く、しかしこのゲームはやっている、ここで終わるはずがない、ここから更に、激しく、残酷な戦いが待っていると思うがそんなの関係ない、ただ第二の故郷ウスティオに尽くすのみ。

1005を持ってあちらの隊のヘルムヴィーゲこと荘錦姫少尉とこちらのエリーゼの同時解除で戦闘が開始される。

作戦開始残り2分になった時

「ちっ」

結川は上を見上げて舌打ちする、敵に見つかった、機種は不明、編隊3機。相手はこちらがレーダーに映らないのを不思議に思ってる、同時に警戒してこちらの出方を窺ってる・・・ヴァルキューレ隊には悪いが・・・打って出るか!

結川は素早く増槽を切り離し、作戦開始を告げる、エリーゼは即座に察知してECMを解除、ついでに無線もだ

「隊長!やっちゃっていいのか?!」

「うちらは撹乱部隊だ!先制してデメリットは無い!サザンクロス隊エンゲージ!目標は空中管制機E-767!ヴァルキューレ隊にはお詫びに彼女達の担当の空中給油機も叩きのめせ!」

「「「Yes sir!!」」」

一気に急上昇をかけて敵に急接近をかける。

<<敵がこんな所に!>

<<エマージェンシー!早急に敵部隊を排除しろ!>

<<機種は敵の新しい機体か・・・なっ、あのエンブレム!>

<<どうした!>

<<こちらサマーサ2!奴らはサザンクロス・・・ウスティオの南十字星だ!>

敵部隊に動揺が走る、しかし伊達に円卓を飛ぶ戦士たちではない、素早く状況をのみ込み迎撃態勢を取る。

「敵部隊が追いかけてきたぞ!」

グラッドが結川に向かい言う。

「分かってる、しかし今は構ってる暇は無い!まずは空中管制機、ついでに火の粉を振り払え!サザンクロス隊、アフターバーナー全力突破」

スロットルを一気に押し込む、推力はA/Bと表示され一気に速度は急上昇する。後方のF-16部隊を引き離す。

「リーダー、E-767を捕捉しました、あと10秒で撃墜可能射程範囲内」

「了解した、AAMセーフ解除、レーダー解放ロック開始」

HUDにはターゲットシーカーが表れて、目標を捉えようと動く。

<<奴ら・・空中管制機を狙ってるぞ!>

<<早く守備部隊を!>

<<間に合わない・・・!>

結川機のレーダーの探知音はE-767のターゲットシーカーが捉えてロックオンの心地よい電子音に変わる。

「サザンクロス1、FOX2」

結川は宣言と2本のAAMを放つ。一瞬の自由落下の後、一気に空を疾駆するAAMはE-767に急接近する。E-767から大量のチャフフレアが投下されるが絶対撃墜可能範囲では到底間に合わなかった。

<<よけきれない・・くそおおおおおおお!!!!>

機長からの悲痛な叫びと共に横腹と主翼に1発ずつ当たり、砕け爆ぜ、やがて空中四散をする。

「敵機撃墜、次行くぞ!」

「隊長容赦ねえ・・・」

速度を落として反転をする、ホークは結川の行動に少し慄く。その時

「よくも先走って下さいましたね」

通信に入る、冷たい声・・・ああ

「申し訳ありませんブリュンヒルデ、お詫びは?」

結川はヴァルキューレ隊隊長ジャスミン少佐、うわお、冷たい声で怒ってるよ。

「サクラでしたっけ、それじゃあ私達を追いかけてる隊を落として下さい」

「機種は?」

「F-22、8機です」

「うん、いきなり猛禽はすこしきつ「最強の鷲でしょ?やってみなさい」了解ですよ!各機目標変更!猛禽を食いちぎれ!」

「「「YES SIR」」」

「舞台のお膳立ては必要ね、ヴァルキューレ各機、後方のF-22以外仕留めなさい」

「「「Yes Mam」」」

SU-47が華麗な編隊を解き、空中給油機だけは守ろうとする戦闘機に殺到する。

「女性部隊に負けるな!4と5は免除でも他は死ぬ気で落とせ!死んでも落とせ!」

「「「ひどい!隊長!!」」」

サザンクロスはまだ軽口を叩いてるが、正直きつい、レーダーにかすかにしか映らない・・・

「4、敵をあぶり出せるか?」

「ネガティブ、何とかターゲットには出来るけど・・・これが限界です」

敵部隊はやっぱり本場のステルス・・・ああ、アメリカ軍との合同演習でF-22用いられてぼこぼこにされたF-15の気持ちが分かる・・・が

「何度も何度も他国のピンポンダッシュ(領空侵犯)されて追いかけっこしてた空自の目視力舐めんなよーー!!」

結川は目で確認出来る限り確認を行う。空自時代に自然に鍛え上げられた結川の視力は3.0、それをフルに使う。そして

「見つけた・・・2!3時方向高度1200上!追いかけろ!」

「了解!」

「3は前から来るやつをよろしく!3機居るけどガンバ!」

「りょうええええええええ?!外道!」

グラッド何か叫んでる・・・仕方ない

「4、5、3の援護をしてやれ、それと三つ子は今下から来る奴らの迎撃!俺は後ろに居る隊長格と遊んできてやる!それと3は上官反逆で滑走路ダッシュの刑!」

「「「了解!「えええええ?!」」」」

また何か叫んでるのが聞こえたが、無視無視、それじゃスーパークルーズをかけて隊長機を狙う。

<<敵が来てる・・・あれが隊長・・異世界から来た鷲使い・・・いいだろう!受けて立つ!エリョージョン1、エンゲージ>

オーシア空軍環太平洋地域航空隊所属の猛禽使い、エドワード・セルミック大尉、腕前はオーシア空軍でもトップクラスに入る。

推力偏向ノズルを巧みに操りまずは様子見をけける。双方バックを取らせる気はさらさらない。

「うっわー、バリバリのエースやんけ・・・て、ラプター乗りが弱いはず無いか・・」

結川は嘆息をつきながら頭の中で素早く比較する。

速度と機動力なら負ないが、ステルスと装備はあちらが上、きついぜ・・・

何周も追いかけてたが、やっとこバックが取り始めた、よし・・・ターゲットシーカー早く収めろよ!結川は少し慌てた

<<ふん、やはり甘い>

エドワードは機体を使い、コブラを使い急減速をかけるやばっ!

結川は素早くエルロンロールを使う、が速度が速過ぎる!しょうがない・・・一気にスロットルを引く、速度が下がり機体が震える。

<<ふっ、速度を落としたって遅い・・・落ちろ>

ターゲットシーカーが重なり赤くなる瞬間に・・・目の前のF-15REAが消えた

<<?!!消えっ!>

結川は速度を最大限まで下げて失速して、自由落下させる。しかし一瞬で補助装置ON、エンジンをスロットルを全開にする。

<<くっ!>

「舐めんなーー!」

エドワードもアフターバーナーをかけて、回避機動を取る。

「よし!行くぞ!」

急上昇かけてハイ・ヨーヨー、空気中の水蒸気が機体の摩擦熱で白い軌跡を作る。平和な空ならだれでも見惚れる二機の戦い、しかしそれも終わりを告げる・・・。

「ステルス機も目視とターゲットシーカーに収められたらお終いなんだよ」

<<くうう!>

完全に油断したエドワードはすでに結川の射程範囲内だった。

「俺の機体にゃ機関砲の弾がたくさん積まれている!落ちろ!FOX1FOX1!!」

毎秒数十発の機関砲が猛禽を飲みこみ食いちぎる

<<旧世代の鷲にまけるはずがーーー!!>

エドワードからの通信が途切れる。

「いーーやっほーー!こちら3!1機撃墜!」

「4より、猛禽は3機損失、こちらは無傷・・・時間です、我々の勝利ですね」

エリーゼはメットの下で微笑する。結川も

「ああ、時間だ」

<<隊長がやられた・・逃げろ!>

<<待て・・・円卓に多数の敵部隊!四方八方からやってくるぞ!>

ヴァルキューレ隊が空中給油機を落とした瞬間、色んな方面からウスティオ、ベルカ、サピン、ファトのエース部隊の機体が侵入してくる。これで円卓の制空権はFCMB側優勢になり、後に来るオーシア、ユーク本隊の勢いをそぐと言う戦法だ。

しかし制空権が連合優勢になっても勝利したわけでない。

本当の円卓での制空決戦が始まる・・・。

 

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夜鷹

エピソード1、円卓決戦 ガルム

3/3

1045hrs

円卓上空

白煙を上げて乱れ飛ぶミサイル

赤い火線が飛び交う機銃の弾

赤く膨れて四散する戦闘機体

この空の世界に逃亡は許されない、ただ突撃するのみ、戦うのみ、それから逃げれば・・・

この赤土の一部になる。その体の中身をもって・・・

<<なんだよこの敵のチート物資量!>

<<先に制空権取ったのにまた取り返そうで怖いよまったく!>

<<増援の要請まだか?!>

FCMB連合空軍は予想以上の苦戦を強いられていた。オーシア空軍、ユークトバニア空軍は双方の本隊は国境方面に多数用意されてた。それだけの円卓には潤沢な資源が埋蔵されている。まさに魔性の土地だ。

FCMBは押されてはいないが、物資量の差が大きく円卓から補給で脱出する部隊も出ている。そしてそのバランスの崩壊から部隊の連携に綻びが出来ている。

「くっそーー、燃料が少しやばくなってきた」

結川が盛大な舌打ちをする。いくら航続力、スーパークルーズでも燃料の消耗は避けられない、更に現代戦闘とはおおよそ思えないレーダー上に一杯に埋め尽くす戦闘機群。

「おいおい、隊長、俺達やばくない?近隣基地まで到達出来なくならない?」

「隊長、状況は分かりますが、自分たちも危険です。撤退の許可を!」

グラッドとアリチェからの言葉、

「くっ・・・、増援が来れば!ここでこれ以上部隊離脱が進めば・・・」

<<敵連合空軍さらに増援が!一体どこまで出てくるんだ?!>

「「「!!?」」」

アウトレンジからまた部隊が確認される。

「4より、私達は電子戦機でもはや限界です!これ以上円卓で飛行しましたら私達はイジェクトします!」

エリーゼからの声、もはや限界か・・・

「こちらサザンクロス隊、もう限界だ、全機撤退、申し訳ないが残りのみなさん頼みます!」

結川からの決断の声、その時友軍は軽い絶望感を覚えた、なぜなら異世界からの鷲使い、ウスティオ空軍の英雄の1人の撤退は焦りが生まれた。

しかし

<<パーティー会場に間に合った!>

<<獲物が一杯だ!今日はふもとで酒池肉林じゃー!>

突如ウスティオ方面からの大規模航空編隊、しかし機種はばらばらだ。そこにAWACSの声

<<来たぞ!我ら連合空軍で最強のウスティオ傭兵航空隊、ヴァレーの猟犬部隊、ガルム隊達だ!>

「嘘だろ・・・」

<<拝金主義者部隊が円卓にまで進出してきたぜやっはー!>

各部隊沈みかけた士気が一気に高まる。まあベルカ空軍は騎士精神があるためあまり良く思われない。しかし来てくれればそれはそれ、あれはあれだ。

<<敵がうじゃうじゃ居るな、稼ぎが甲斐がありそうだな。相棒、花火に突っ込むぞ!>

<<ああ!>

F-15s/MTO、F-15Cの二機が円卓に突っ込んで行く。

 

1050hrs

「おらーー正規軍ども!さっさと補給に行って来い!無駄にわらわら居たらお前らも叩き落とすぞ!」

「んなことしたら報酬減額だよ。まあいいや、ウスティオの正規軍まがいの傭兵組到着、今から殲滅開始する」

<<気をつけろ!奴らはベルカの野郎とは別の意味で厄介だ!>

<<ガルムだ!敵はガルムを連れてきやがった!>

傭兵航空隊の乱入で、味方は編隊を直したり、離脱がスムーズになる。

傭兵航空隊の数は18機+満身創痍の連合航空隊12機、相手は44機、直径400km、さらに狭い戦闘空域はカオスになる。

「相棒、敵は千ガロンの血を流してでも守ろうとしてるぞ?どうする?」

ピクシーがサイファーに聞く

「言うまでもない、潜水艦時同様粛々と敵を落としてウスティオから報酬ゲットだ」

「了解だ、いつものように役立とう」

言わなくても分かる2人は一気に散開、F-15S/MTO4機、EA-18、1機連合航空隊に食らいつく

<<ガルム航空隊がやってきた!>

<<奴らと同機種で、数がこちらが上だ!仕留めろ!>

<<二人一組で一気に狩れ!>

「舐められたものだ・・・」

サイファーが呟いた刹那・・・

<<??!!>

「そんな機動でその機体を操るとは・・・イーグルドライバーの風上に置けない」

一瞬・・・いや一瞬と感じるほどの高機動で真正面にいたサイファー機は敵の後ろに回っていた。

「ガルム1、FOX1!」

間合いを詰めてガンアタック、一機が吹き飛びもう一機のF-15S/MTOが回避をする。

<<くそ!奴らはばけも・・・>

逃げた一機の言葉は続かず、空中で爆ぜる。

「ピクシー、獲物を横取りするな」

「今日はここで稼ぎたいからな、悪いな相棒、横取りはデフォだ」

ピクシーのF-15Cがすかさず追撃でガンアタック、ガルム両機体の能力は潜在含めて最大限に活用されている。

<<くそ!なんだあいつらは!>

<<片羽は第3世代の戦闘機だぞ!どうしてだ・・・>

<<あのガルムの1番も化け物だ!F-22もレーダーで見てるように正確な・・>

<<それよりも傭兵部隊が・・・戦線が維持が出来ない!助けてくれ!>

10機以上の戦力差の航空部隊で完全に円卓をひっくり返す。

「状況はこちらが優勢だな、よし!ガルム隊より全機、TGT(ターゲット)は全部頂く」

「「「それはさせない!!」」」

「なんなんだあいつら・・・」

「あれが・・・ウスティオ傭兵部隊・・」

正規部隊は言葉を失う。この激戦の地、いつ死ぬか分からない魔性の地でここまで軽口が叩けて報酬を気にする精神が恐ろしかった。

 

円卓決戦・・・

FCMB連合軍の奇襲作戦から始まったこの戦闘は、最後は双方合計100機を軽く超える戦闘に発展。

当初制空権を保有してたオーシア・ユーク連合軍の隙をついたため、FCMBが完全優勢となる。

国境に用意してたオーシア側本隊の物量作戦で練度重視で部隊機数を用意してなかったFCMBは次第と押される。

しかし、ウスティオが用意していたガルム筆頭、ヴァレー基地所属傭兵部隊の活躍により、円卓は解放される。

翌日、大規模な資源採掘生産ラインが稼働開始、FCMBの一番憂慮すべき、資源を確保に成功する。

そして帰還したサザンクロス隊、ヴァルキューレ隊などのエース部隊は即日、円卓解放の功績に略式に勲章が授与され、さらに特殊戦術航空団設立が公に発表されそこに異動が決まった。

特殊戦術航空団昇格に伴い、選抜されたメンバーは全員一階級特進、結川は少佐から中佐に昇格した。

サザンクロス隊、特殊戦術航空団第2航空戦隊3中隊になる。

だが・・・この解放された円卓の一部で、とある反乱分子の組織が資源の搾取の開始、着実にレアアースを密輸出して外貨、部品調達をしてたのはその時気付いていなかった・・・。

その時、気付いた時には、戦争は行くところまで行き、各国は炎で包まれた・・・。

エピソード2、オーレッドに舞う夜鷹(ナイトホーク)

<<AWACSダッチよりクロウ、トランスパレンス、間もなく無線封鎖及び高度制限エリアに突入する。貴隊らの奮闘をここから願う>

「クロウよりありがとさん、きっちり橋は壊してくるからよ」

「トランスパレンスよりも、ありがとさん」

クロウことゼラム・クラッチ中佐、トランスパレンスことダン・ラーク少佐の2機のF-117は高度制限1000フィート以下のレーダー上の防空網の穴を通って進む。

陛下からの勅命であり、FCMB連合軍の先手となるため、慎重かつ大胆に行く・・・。

ゼラムはレーダー上の緑の円の隙間をくぐりながら行くが・・・随分と穴が大きい。

これが世界最強の国の防空体制、よほど他国を馬鹿にしたいのか、すかすかだ・・・。ゼラムはため息をつく。これならラティオ革命戦線と政府軍の戦争でラティオ革命戦線を爆撃してた時の方がよほど緊張する。

橋まではあと10分・・・

ふと横を見ると、編隊を組んでいるダンがハンドサインをする。

[88.1MHz、周波数変更せよ、面白いぞ]

面白い?何があるんだ?無線の受信だけで周波数変更すると

<<ガーー・・・我々オーシア軍は、未だ融和と平和を受け入れない強情なFCMB加盟諸国に対して鉄槌を下し、国民が豊かゆるぎなき世界最強の国を堅持していきます!>

なんだと思ったらオーシア中央政府の軍事放送かよ。

<<我がオーシア軍は今までベルカの独裁騎士から奪われてた資源の宝庫、通称円卓を奪還し・・・>

奪還されたのを聞いてないのか?いや、そんなの言ったら元の子もない・・・。

しかしダンはノリノリで聞いている・・・。まさか・・・周波数変更してると激しいロック調

「フェイス・オブ・コイン・・・あいつ!」

ゼラムがダンを睨むとその視線に気づいたダンは手刀を切って謝る。くそ・・・この後輩

ダンはゼラムの後輩であり、相棒に近い。だがいじられ率で言えば、何故かゼラムの方が多い。

「たく・・・」

ゼラムが悪態をついたとき、いきなり雑音が走る・・・。

「?、壊れたか」

ダンの方にハンドサインでラジオの調子を聞くと、同様に雑音がという答えが・・・。これは・・・その時

<<オーシア国民の皆様、初めまして、ベルカ連邦大統領、ヤルタ・エリクです>

・・・は?ゼラムはどの周波数を変更してもヤルタの声、まさかベルカ大統領の声。嘘だろ・・・まさかの首都に爆弾投下?

<<我々FCMB連合軍は本日11時を持って円卓を奪還し、さらにすでにオーシア領内に侵攻準備が準備されつつあります>

本気で爆弾投下しやがった!

<<オーシア、ユークトバニア連合軍の徹底抗戦をいつまでも言っているみたいだが、既に我が連合は貴国を炎に沈める用意がある>

大統領はさらりと非道な言葉を述べる。完全に舐め切っているが、事実でもある

<<ここで我が連合のエース部隊達を派遣した、オーシア国民の常識ある諸君は絶対にオーシア連合軍の信用が出来ないことを証明しよう>

まさかの・・・防空網を抜けて、高度300フィートで海面を滑るように飛ぶ。あと少しで誘導対地投下弾の安全装置を外す。

<<オーシア、オーレッドの象徴が消えるだろう。それを見て確認したまえ>

完全にばらしやがった・・・!!その瞬間、

「時間だ・・・」

ゼラムは一度深呼吸してダンを見る。ダンもまさかの放送で唖然としてたが、いつでもいけるとサイン。

ゼラムは指3本を立ててふり、そして指を折ってカウントダウン

[3.2.1・・・投下]

スイッチを押して爆弾を全弾投下する。

しばらく自由落下して、レーダーで位置修正し、やがて、オーレッド橋の橋脚、ワイヤー部分に全弾命中、橋を纏ってたきれいなライトと、航空障害灯の代わりに赤い火球が膨れ上がり、橋は真っ二つに折れる。軍事用に一般車両封鎖の橋なので、市民に被害は無いが、あの放送と、これの視覚でのショックは大きいだろう。

「コンプリートミッション、RTB」

ゼラムはそういうと、素早く反転、来た道をひたすら戻る。

帰りは防空網外で待機してたサピン空軍が威嚇してくれたために、何とか脱出、F-117のオーレッド橋攻撃作戦は見事に成功した。

そしてこれからオーレッドが混迷と焔に包まれるのは一部の人間しか知らない・・・。

宴は始まったのだ・・・。

内部の問題の章~fin~

混迷と焔の章に続く・・・



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side story 女王の正義と微笑

ベルカ空軍情報部航空士人事課からベルカ空軍ウスティオ防空管区総司令殿

ジャスミン・ミリディアナ個人データ

概略経歴

1998年、ジュニアハイスクール卒業

同年ベルカ軍技術学校入隊

2000年

4月、技術学校卒業、伍長として空軍戦闘機管理部門技術職に配属

7月、たまたまの地上シュミレーター訓練での非常に高い撃墜結果を出す。

9月、技術長からの推薦でベルカ空軍航空学校異例の編入

2004年

4月、SU-27ズヌーズ隊配属

※ここで隊長命令違反で始末書

6月、ベルカ内部防空隊SU-27、ハック隊配属

※目視で資源採掘地攻撃を仕掛けようとした4機の不明機を撃墜(後に試験機のオーシアF-35と判明)

ここで功績で1等双翼栄華勲章を授与、中尉昇格

2005年

6月、隊長からの直訴で上官反逆で軍法会議

7月、逆転無罪、隊長機の指揮能力不足で大尉から一階級降格処分

新配属、西部国境防空隊ニック隊2機編隊、SU-47

9月、オーシア国境を突破、領空侵入で軍法会議

11月、4カ月飛行禁止処分、階級降格はなし

2006年特筆事項無し

2007年

2月ニック隊隊長大尉が病気で引退、ヴァルキューレに改称、単機行動になる。

6月オーシア空軍の西部国境を突破を確認、迅速な行動で増援が来るまで都市に部隊を近づけない。

※この成果で3等双翼栄華勲章を授与する

2008年

6月、領空侵入機無断撃墜事変発生

※概略下記記載

10月、少佐へ2階級特進、ヴァルキューレ8機編隊改編

2009年

4月、配置転換、ベルカ内部防空隊行き

5月、攻撃部隊強制着陸、円卓情報を聞きだす

※この功績で特殊情報取得功績勲章を授与する。

2010年

1月、現配属、首都防空航空戦隊、第18中隊になる。

 

特筆事項

領空侵入機無断撃墜事変[非常に大きい事件の為、上層だけの機密事項にする]

西部国境から威嚇侵入で交戦意思のない3機のオーシア空軍F-15Eを撃墜した事件

ミリディアナ少佐の証言

敵は増槽を捨てず、交戦の意思なしと見られたが、翼下バイロンの長距離対地ミサイルの安全装置が外れたと見て、市民安全確保優先の為に撃墜をした。

当初は妄言として軍法会議員は見なかったが、後に敵機のレコーダー、たまたまあった傍受通信から、西の町、村、資源銑鉄施設爆撃意思があったと確認。

事件発生から4カ月後、無罪確定、始末書全て取り消し、

そして市民を守る為に自分の名誉を顧みず、このような事態になると想定しても戦った勇敢さをたたえて、騎士十字勲章を授与する

後にこれを受けて一部では「ベルカンジャンヌ」と呼ばれる

最後に

ジャスミン・ミリディアナは整備士、上官との折り合いが悪い場合は悪い。

事実上記概略に記すほどに無しでも無数の軍規違反、上官反逆を行うが、同時に高い国防意識を持つ。

国民、財産、領土を守るための意識は、ベルカの騎士のどれの部隊よりも高い。

毅然として国民を守る彼女を評価して、円卓奪還、ウスティオ防衛に回す。

注意

癖として戦闘になると主翼破損が毎度起きるが、もはや気にしない事項である。

 

3/4

2200hrs

エウレノ空軍基地

「むむむむむむむ・・・」

設計図をじっと眺めてペンを口にくわえるセアラが悩んでいる。またやってくれたよ少佐殿で、案の定円卓でも衝動で翼カッターをやって右翼がひしゃげてる。

「なにを眺めてるの?」

「ええ、これを操る人がまたやってくれちゃったんで補強けいか・・てうわっ?!少佐殿?!」

セアラの真後ろには棒付きキャンディを咥えるジャスミン少佐ご本人。セアラは驚きで固まる。

「これはSU-47の設計図と補強した場合の機体重量増加の克服、揚力確保方法・・・、綿密ね」

「ええ、ええ、どこかの人の為に説得諦めて翼の耐久力増加の加工を検討してるんですよ、まあ衝動が落ち着くまでずっと反対意見を申しますが」

「・・・・・」

ジャスミンは驚いた。確かに口で反対して結局は黙認してた整備士と違い、セアラは改造で補強しようとしてる。そして反対意見を続けようとしてる。

「こんな機体を壊してただ戦いを求めてる人の機体に随分熱中ね」

セアラは少し考えてからフッと笑って

「ただ自壊させる人なら女性でもエースでも関係なく手抜きでもして落としますが、国民を守る優しき女王なら喜んで整備しますよ。ベルカンジャンヌ殿」

「?!、なぜそれを?」

ジャスミンが睨む。セアラは

「SUシリーズ整備の一連を習得するためにベルカに出向した時に、酔った中佐から聞いたんですよ。ニック隊の元隊長、カルヌ・メッカー中佐から、もの凄く暴走と破壊をする女王だが、誇れる部下だと・・・まあ最初担当になっていきなり主翼が本気でひしゃげてるのは驚きましたが」

「そう・・・」

ジャスミンが唯一尊敬する上官、西部で一緒に飛んだ隊長。心臓を悪くしてからは地上で事務兼訓練教官隊長を務めてると聞いていた。まさかここで聞くとは

「なので、しょうがないから直して補強してるんです」

セアラは笑ってると、ジャスミンは

「クス・・・」

セアラは笑うのが止まった。ジャスミンの微笑、氷の女王の微笑は本当に・・・暖かい?

「まあ頑張りなさい、糖分補給」

「むぐ・・」

彼女が咥えてたキャンディをセアラに咥えさせる。そして

「私もこれでも技術下士官出身なの、今から部下と酒飲みの約束しちゃったから無理だけど、明日から補強の計画をやらせてくれない?」

「・・・ええ、少しでも機体を保持させるために、少佐殿の生存を高めるために」

セアラは敬礼する。ジャスミンは微笑して去る。

去ったあとセアラは機体に向かって撫でながら

「あの隊長はああいう性格だけど許してやってな。しばらくだけど俺が直すから」

その時・・・機体が光る

「は?」

セアラは間抜けた声を出す。その光はやがて人の形を作り、美少女が・・・

「は・・・?あんたは・・?」

「嬉しい・・・やっと見つけてもらえた」

「????」

少女はゆっくりセアラに近付き、

「私の名はヴィジュエント・スラミス、ジャスミンの機体の飛魂」

「はあいいい?!」

セアラは説明を受けるまで本気で混乱した。

 

ちなみに、

翌日、内容は聞こえなくとも、話してた二人をねたんだジャスミンファンからセアラが血祭りになったのは言うまでもない。



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side story 兄弟

3/3

2100hrs

シルバーマーク空軍基地

ウスティオからベルカ空軍派遣部隊に貸されたオフィスで報告書をまとめるのは

「なあ、俺そろそろ女性とのや「逃がしませんよ?」はい」

ヘル・エンジェル隊隊長ギュンターは、本当なら円卓奪還で規則が緩みまくってる隙に基地の外泊許可を取って夜の歓楽街に繰り出す予定が、重装備改造でたんまりと隊長がサイン、またはまとめないといけない武器受領、及び使用武器報告書をたんまりツケてたため。さすがにウスティオ軍からの武器供与分は報告せよと厳命されて、只今土下座して道連れにした部下のユーマと必死に書いている。

「それにしても本当にこんなにため込むなんて・・・隊長、もうちょっと早く言ってもらえません?」

「申し訳ない」

「そして道連れるなら全員巻き込んで下さいね」

「本当に(ry」

他のエルンスト、ステラは夜の歓楽街で美味しい酒かあわよくば女性お持ち帰り中だ。ユーマもウスティオの屋台街を覗きたかったのにこうなってしまい少々不機嫌だ。46の少佐が25の少尉に怒られてショボーンする姿を見る人はここには居ない。すでに全員どこかに行ってるからだ。

ユーマも含めてヘル・エンジェルの結束は固い方だが、面倒事の押し付け合いは一流だ。そして最後はユーマがやられるにもデフォ、もう慣れた。

「そういえば、隊長、ひとつ聞いてもよろしいですか?」

「ん?なんだ?」

お互いのデスクでやってた仕事の手を止め、ユーマがギュンターに聞く。ギュンターも聞き返す

「あの、隊長がいつも持ってるその写真の、子供の方は隊長と分かるのですが、隣の青年が気になりまして・・・」

「写真?ああ、これか?」

ギュンターは胸元から取り出した写真を見せる。古ぼけた写真、色褪せで、よく笑ってる5歳くらいの少年の姿は判別できるが、背の高い青年の方の顔は判別が難しくなってる。

「それです、その人が誰なのかなと、常々気になって」

「そうか・・・そういえばお前に見せたんだっけ」

「そうです、「尊敬する兄貴だー!」て、配属初日にいきなり」

ユーマが苦笑い、ギュンターもつられて苦笑い、そう、ヘル・エンジェル隊で最初の配属は、野戦志望から何故か書類ミスで空軍、しかもパイロットで来て、空軍内で押し付けあいで、たまたま改造機を愛用する問題児、ギュンターの部下にしたのだ。なので一番若い彼女がこの隊での部下では古参である。

「それ以上言わなかったけ?」

「聞いたら秘密だとで・・・」

「ん、分かった、じゃあ答え、これはウスティオのフェルナンデス元帥」

「???!、なんでウスティオ軍の猛者と」

「ん~、まあ・・・聞きたい?」

「このサービス残業の残業代を多く取られたくないなら教えた方がいいですよ?」

彼女はにっこりと笑う。このまえは本気でサーバル105mmを残業代に請求されて、めちゃくちゃ苦労した・・・て、なぜ俺は彼女の為に奔走するんだ?

「・・・・了解した、それじゃ俺の十八番よりもお宝の思い出話の始まりだ」

ギュンターはにやりと笑い、そしてオフィスから見える月を眺めながら

「まあ、話は俺が生まれたころ、ベルカ経済の崩壊が本格化したころだ・・・」

year1964

12/16

0723hrs

ベルカ連邦、リーガル

ここに新しい命が生まれた。その子は大きな、元気な泣き声で両親親類は崩壊して憂う未来しかない中で久々の笑顔になる、そしてその場所に

「フェルナンデス、あなたが待ち望んだ弟よ」

「弟・・・、ふふ、血は繋がらないけど凄い親近感がわきます」

中学生ぐらいの少年と、その母親が微笑む、それこそが、兄貴と呼ばれる、フェルナンデス・ジーリである。

フェルナンデスの父親は、ウスティオ国防省に所属しており、ベルカ国内に居るウスティオ人の安全確保の任務を担当している、ウスティオ大使館駐在武官として働いて、そしてまだ平和なリーガルに家族を住まわせてた。

そして一般市民であるが、家が近いという事で付き合いが深かった、ジーリ家とシェーンコップ家は、ギュンターの誕生に心から喜んだ。

しかし、ベルカ連邦とオーシア連邦のGDPが1:1.8なのにむりやり国防費、インフラ整備にお金をかけて意地を張ったために、ただオーシアの物流をしやすくしてしまって、ベルカはさらに苦しくなるという皮肉なスパイラルに陥った。

これがベルカ経済崩壊を進めた。

経済が苦しくなり、財政赤字は年5%上昇、GDPはどんどんとマイナス成長を続けてた。しかしそこでくじけないのがたくましいベルカ国民、最後の最後まで、国が崩壊してもこの地を離れない覚悟を持っていた。しかし、そんな国民の健気な姿を、騎士道精神をただ説くだけの政府はそんな事に見向きをしなかった。

彼らは国土保全の名目上、武力を以て、属国に近いレクタ、ファトなど現FCMB加盟国に対して離反の動きありなら即刻排除を起こした。ひどい時期は、1年、1万の生命が亡くなる。

そんな苦しい中でも経営が傾き早々に見切りをつけて会社を辞めてリーガルで小さな商店を作ったギュンターの親父は、彼の二つ下の弟と、家族4人が生活できる程度の収入があり、貧しいながらも幸せに暮らした。

そしてギュンターは物ごころ・・・いや、記憶には無くても、体に染み付くぐらい慕った兄貴分、フェルナンデスとよく遊んだり、パーティーに誘ったり誘われたりでその関係も以前にまして絆が深まった。

「元帥とそんな事が・・・それは良い兄貴だったんですか?」

「ああ、学校から帰って来た兄貴を捕まえては遊んでもらって、やりすぎた時はベランダからひもでつるされたりつるされたりつるされたり・・・」

「あはは・・・」

ギュンターが軽くトラウマモードに入り、ユーマが笑う。そして立ち直った彼が

「話を戻そうか、そして・・・俺が7歳・・・うんそうだ、突然彼らは居なくなった」

「・・・え?」

「レクタ憂国戦線連続テロ事件、知ってるか?」

「え・・・確か、レクタ国内最大の武装勢力で西部軍閥主導と後に分かった組織で、それがベルカ各都市で爆破テロ起こした事件ですよね?」

「ん、まあそのくらい知ってればいいか、それじゃ本編戻るか」

この時ウスティオ政府は、国家事業か公務員以外の邦人のベルカ渡航禁止と、強制執行でウスティオ国民を避難させたんだ。その中に兄貴達もいた、最初は国防省駐在武官の家族として、そしてみすみすベルカ人を見捨ててまだ治安のよい地域に行けるかと猛反発したそうだが、やはりお上の決定には逆らえなかった・・・

最初は何も言わずに消えたとして、小さい子供の考えながら、本気で恨んだよ、しかし数年後に母親からちゃんとした真実と、届く確率が低い兄貴からの国際郵便を見て本気で昔の自分を殴りたかった。

そして兄貴は、父親の影響で、今度は最前線で戦いたいと、戦場の真実、本当に守るものを見極めるために、士官学校に入学して卒業したのも知った。

そこから自分も、兄貴や、他の人を助けたい、ベルカ空軍に入って騎士道精神その幻想をぶち壊す!中学卒業後と意気揚々と航空学校及び空軍入隊志願書にサインしたのさ。

「それが空軍入隊のきっかけなんですか?」

「そう、まあそれからが大変だったんだ」

現実入ってみれば、そこは安定した職を目指してとにかく這い上がろうとする猛者たちの集まりだった。騎士道精神というより、ハングリー精神の方が遥かに高かったな。うん

とにかく入隊してから暴れる事は無かった・・・・というより出来なかった。

騎士道精神にただ頷くだけの生活、出来なければ不名誉除隊、そしてその時親父が倒れて、弟が商店を引き継いで、治療に専念したけど、病が肝臓の長期入院で多額の治療費が必要と分かり、給料の良いパイロットコースは絶対になり、上官の言葉は首を縦に振らないといけない現状になっていた。

「あの・・・そのお父さんは」

ギュンターは女の話をしても他に関してしないから、家族事情もユーマ含めてほとんどの人は知らない。恐る恐る聞いてみる

「2年前にな、肝臓じゃなく今度は心臓を悪くして・・・な・・・」

「・・・申し訳ありません、立ちいったこと聞いてしまって」

「いやいいさ、君たちに話さなかっただけだし、まあ葬儀も家族だけで秘密で出してたからな、まあいいや、話、戻すか?」

「お願いします」

航空学校は、対地試験で首席卒業で、配属はノーマルのA-10を扱う部隊だった。その時は19歳だった。

その翌年、1984年、突如ノーマークだったラティオで大規模な軍事作戦が行われた。

「知ってます、確かラティオ事変、レクタの支援でしたよね?」

「そうだ、それでベルカの右腕的存在、ウスティオがまさかの進軍に蜂の巣つついたように上から下まで大騒ぎ、そして一つの機甲大隊がラティオ狙撃師団に包囲されたのを救援要請が来て俺の所属してた部隊が行ったんだ。そして最前線で戦ってたのは、当時中佐になりたての、アリエテ前世代戦車、べリヌウスを扱って大隊長だった、兄貴だった」

「!、戦場の再会・・・ですか」

「そうだ、その時はな・・・」

その時は、驚きと、嬉しさと、助けなければならないな!という使命感の色んなものがごちゃまぜでとにかく対地に攻撃をした。

そして当時「ウスティオの最高突撃兵」と呼ばれてた兄貴との最初の軍事交信は

「助けに来たぜ!兄貴!」

「ありがとうな、弟」

だった。本当に助かって心の底から安心した。そして後に知ったが、自分の身を顧みず携帯SAMを持った兵士から順に倒して、空の俺達に間接支援してた事実を知ってなおさら尊敬の念が深まった。

そしてなによりうれしかったのは、彼からの指名で、俺は常に兄貴の上を飛んで支援爆撃専属部隊になれた事だった。俺は嬉しくて、しばらくは騎士道精神をぶち壊すじゃなく、本気で守りたい人を守ることに専念した。

「それはすごい話ですね、でも同性だと・・・」

「そこで引くなら続きは話さないぞ?」

「大丈夫です、友情ですね、理解しました」

「ったく、まあそのラティオの軍事行動も沈静化してから、兄貴と飲む機会があったんだ」

俺が所属してる基地に、ウスティオベルカ共同使用の重要物資をここに大量に置くという事で、急遽前線から配置転換された兄貴が、基地警備の歩兵と戦車部隊を一手に指揮することになって、たまたま貴重な休暇が重なり、一緒に基地の酒屋で飲んだんだ。

兄貴は、ベルカから急に離れた事を謝り、そして俺達家族の事は片時も忘れなかったと言ってくれた。俺も同じだった。

兄貴の父親は無事駐在武官の任を全うして定年退官、母親は無駄に元気に出稼ぎしてる母親から子供を預かってたりして忙しいという。

共にこれからベルカ、ウスティオはまだまだ暗中模索の戦いが続くけど、必ず晴れる日は来ると信じて、戦い、国を守り、国民を守ろうと誓い合った。

「それで、どのくらい一緒に戦ったんですか?」

「佐官なのに突撃兵フェルナンデスのお付き人と言われるまで戦場では一緒だった。空と地、片方が来ればセットでもう一人だ」

「それはそれは・・・変な噂たちません?」

「立つ前に全力を以て潰した」

「・・・・・」

ユーマの顔が思わず引きつる。なんとなく想像が出来る・・・。

「そして1988年、世界を震撼させたバレンタインが届いた」

ギュンターはその意に介さず続ける。

1988年、円卓と呼ばれる地域から、膨大な、膨大な資源が発見される。これを受けて、ベルカなどFCMB諸国は生き返った。

GDP成長率28%を達した異常事態に、皆が沸き立った。そして自分も階級は大尉だし、魔がさしたてか、幻想をぶち壊す計画がスタートした!

「で、今がこの改造機集団を作り上げたわけだ」

「そうなんで・・・ん?隊長、その当時大尉って・・・」

「まあな、オイタのしすぎで勤続年数制限で強制不名誉除隊を避けるためにしぶしぶ少佐に昇進なったが、これから上がる事はないだろうな」

「・・・・・・」

かなりもったいないことしてないか?この人という怪訝な表情をする彼女を置いてけぼりにして、ギュンターは

「そうしてあんなこんなでこんな地獄気質の天使部隊を作ったわけだ。おしまい、と」

彼がしめくくると、ユーマは拍手をする。そして

「今も元帥とは?」

「文通程度だな、もうそこまで執着しない・・・とは言えないが、まあ本気の危機が来たら駆けつけるよ」

その真剣な目で、ユーマは圧倒される。本気すぎるよ

「さて、話しこんだわけだが、仕事が一つも終わっていないな」

「え?私終わりましたよ」

「うそぉ?!」

ユーマは聞きながらもしっかり書類を書いてて、ギュンターは熱く語りすぎて手がお留守だった。

「さすがに置いてけぼりはないな~・・・」

「うっ・・・・」

ギュンターは中年とは思えないほどの子どもの様なショボーンの仕方で、ユーマはため息をつき

「分かりましたよ、隊長、半分下さい」

「ありがとう!任せた!」

「・・・・・」

半分・・・確かに半分ですよね?この量、明らかにさぼってたのが丸見えだ。

「隊長・・・はあ、これは徹夜ですね・・・もう」

「済まないユーマ、あとで何かおごるから?」

「はいはい、終わってから口説いて下さいね」

「そんな事言わないでよ、あ~、熱くなってきた、少し、窓開けるよ」

「寒いですよそれ」

熱く語りすぎたギュンターは酸素を求めてふらふらオフィスの窓際に向かう、ユーマは少し口元を綻ばせて、残業の同情で報告に来た整備士が置いてった未開封の缶のプルタブを上げて、少しぬるくて刺激の強いコーラを飲む。

隊長の秘密を知った優越感と、どこかのふっきれた清々しさを感じ、そして窓からは綺麗な月、ギュンターが開けた窓から風が入って彼女の肌に少し冷たく、気持良く感じる。

彼女は彼に見えないようにクスリと微笑み、

まあ、こんな夜もありかな?

と思っていた・・・。



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特殊戦術航空団 乱南酒

3/4

0900hrs

オーシア連、特に首都オーレッドに激震が走る。

オーレッド橋崩壊?!敵の航空爆撃か?

突如TV、ラジオのジャックの大統領、専門家調べで音紋一致、完全にオーレッドはベルカにジャックされてた!

ほとんどの新聞、週刊誌、月刊誌、ゴシップからOBCまでオーレッド橋爆撃のニュースで一色だ。

既に報道統制がしかれているが、もう遅い。逆に報道をブツリと切ればどうなるか分からない。

そして一番混乱に陥ったには国民だ。

ずっとずっと空は安全だ、首都に揚陸、侵略されることは絶対ない。そうアップル・ルルース始めて高官が電波に乗せて放送していたが、昨夜の行動で、一瞬にして安全神話は崩れた。

800万人を越える市民が一斉に疎開などや、買いだめ、混乱が深まり、警察が威嚇射撃しても止まらない状態に陥っていた。

オーシア連邦、ホワイトハウス

「・・・・・」

「副大統領・・・もう、限界です・・・」

オーレッドタイムズの一面を見て固まるアップル・ルルース、そして目の前には陸海空全総司令官、代表して空軍のニルチェが言う。

「・・・まれ」

「え?」

「黙れ黙れ黙れ黙れ!!!ふざけるな!陸軍はどうした?空軍は?お前らは無能か?さっさとオーシアの軍を総動員してベルカの草木全てを燃やしつくせ!」

「「「・・・・・」」」

三人の総司令官は冷ややかな視線を送る。そして

「我々、守りたいのは軍のプライドではありません、そんなもの守るぐらいなら・・・!」

陸軍総指揮、タールが封筒を投げつける。

「こ・・・これは?」

「我がオーシア軍、離反者の督戦不要と士官辞任者、及び一般兵の自由退職許可をしました」

「そんなふざけたこと・・・お前ら!」

「だから私達も覚悟しました・・・目先の利益で世界を破滅させる軍の総指揮なんてクソくらえだ!!」

怒りに燃える海軍元帥ラファーが階級章をたたきつける。

「我々3人はこれ以上の軍務を行うのは不可能と判断!この自由退職者と共に私達も一線を退きます!」

「・・・あ・・・本気なのか・・・本気なのか?」

ルルースは壊れた機械のように言う。3人は冷たい目で見下しながら

「あなたに付いて行くのはもうここりごりだ。それでは・・・・」

3人は同時に軍の敬礼を行い、そして退出していく。3人が退出して数分後

「・・・くく・・くふふ、あは・・・あはは・・あーーはははっひゃひゃひゃひゃ!!」

「愉快な所失礼します、閣下」

ルルースが狂ったように笑いだす。そして同時に入室するのは、オーシア軍少佐。

「おお、来てくれたか、ああ、愉快だ、あいつら、オーシア軍が馬鹿正直もので出来てると思っていたのか?」

「まああの3人はある意味出世は奇跡でしたしね、しかし、自由離反でかなりの兵士は離反しますが」

「そんな弱虫は要らない、そうだな、傭兵でも勝利を望む好戦派を首都に用意しろ・・・それと、ユークに連絡して、ベルカに扮してアーラスカを爆撃してくれ、その恨みで兵士を強制的に士気を上げさせろ」

「了解です」

部下はルルースを見て、にやりと口角を上げる。

「君の祖国が滅びるが、悪いね~」

「いえいえ、私はもっと高みがありますので・・・」

「そうか・・・頼むぞ、ハミルトン少佐」

「はっ!」

男は直立不動で敬礼する。その男の名前はアルト・C・ハミルトン・・・

 

3/5

1000hrs

ウスティオサピン国境近く

「ここまで来ると壮観だな」

F-15REAを操る結川達サザンクロス隊、しかしその周りには・・・・

名目上護衛をすることになった。B-52、3機、C-17、4機、そして他にもウスティオもちろん、ベルカ、ファト、そしてレクタの精鋭航空隊。

特殊戦術航空団の部隊も含めて戦闘機130機、輸送機爆撃機、60機を越える。

しかしこれは一部、FCMBは本気だ、オーシアを首都と北部、両方から一斉に攻撃、オーシアの中枢、北部の膨大な石油、五大湖の鉱山地帯を制圧、完全にオーシアの攻撃能力を奪う。

<<連合よりこちらサピンAWACSサイドウインダー、これから割り振りとかするとかしたがってくれ>

レーダーを見ると、ここから二時方向にE-3が居る。各隊指示を受けて次々と集団行動から各基地に飛んでいく。

<<よお、南十字星、よくも今日まで生きてたな~>

「ああ、酒飲み日干し部隊、開きにされてなかった・・・」

<<なぜ残念がる?!>

護衛対象の部隊の少し上にタイフーン8機、オリビエのバッカス隊だ。てか俺が死んだらこの外史世界は崩壊する。忘れちゃやだよこの設定

<<お前ウスティオで最年少中佐昇進だって?本当にすごいな>

「偶然が重なっただけです。何だか重責が大きくなるばかりです」

<<俺もだ、ウイスキー4フィンガー6杯とスピリット2杯からウイスキーだけになったよ・・・>

「うん、自重しろ」

結川はあっさり言う、オリビエはええーと言う。

<<サイドウインダーより、サザンクロス、バッカス、特殊戦術航空団の人たち、前線のレピナース空軍基地に行ってください>

「了解したが、他に航空隊は?」

<<ああ、この基地は元から輸送基地だから、サザンクロス、バッカス、そして・・・先に到着しているトゥルブレンツ、これは海軍航空隊だな>

「へえ・・・しかし・・・寂しいな、何だか特殊部隊勢ぞろいを期待したんだが・・・」

<<あまりにも優秀がゆえにだよ、ちなみに俺は酒の飲み過ぎダメ・絶対、で悪影響防止だってさ>

「うんバッカス1、とりあえず干されようぜ!」

<<さわやかに残酷な事言うな?!>

隊員からは笑いが聞こえる。輸送部隊からもだ。しかしトゥルブレンツ・・・一体どんな部隊だ・・・

 

1020hrs

レピナース空軍基地

「何だよ・・・あれ・・・」

「いや~、全てにおいて最強だな」

結川とオリビエが遠い目をする。他の隊員もだ

「隊長、やはりここはこの愛称の無い戦闘機に名前をつけるべきです!」

「ん~、そうだな、しかしな~」

「なんです?」

「いや・・・それならお前に愛称付けないで先にこっちはな・・・」

「~~~!からかってます?」

「ん?わりと本気だが?」

「~~~~~!!!」

指を絡めながらグレンとエレノアが居る。

「・・・・なあオリビエ中佐?」

「なんだいリュウト中佐?」

「俺、めちゃくちゃあいつをぶん殴りたい・・・」

「うん、その前に副隊長の気持ちに気付かないリュウトが殴られろ!」

「んにゃあああ?!」

オリビエの一撃に結川が吹き飛ぶ。

しかしそんなやり取りもあの二人には届かない・・・。完全ピンク・・・半径20mは圏外です。

そしてそこから200m離れた所に・・・

「この光景は・・・なんだ?」

「さあ?」

整備士や輸送機パイロットが周りで苦笑いする。

約200名、完全整列している屈強の男ども、腕にはバラとドクロのいかついマーク。

通常部隊では最強と言われる、ウスティオ陸軍空挺師団第226大隊。

200名で大隊なのは、それはこの部隊は元から懲罰部隊で、戦闘力は最強でも軍紀は最悪の部隊だった。しかし彼らは変わった、1人の女性で・・・

「お前ら!私の敵は?」

「「「我々の敵です!!!」」」

「私にたてつくものは?」

「「「殲滅あるのみ!」」」

「よしっ!私を立てるために死んでこい!」

「「「YaHHHHHAAAAA!!!!!!」」」

空挺隊員が一斉に沸き立つ。その女性、ハート・ルナテッド少佐、名前に反して超ドS、僅か1週間で大隊全員を女王様と崇めさせた。

「これでいいのかな?」

「いいんじゃない?彼らが幸せなら・・・」

「そうかもね」

周りの苦笑いは更に深まった。

1100hrs

「てて、さすがに強すぎませんか?」

「すまん、しかしお前が悪い」

「・・・・」

結川は殴られた頬をさすり、オリビエは手刀を切って謝る。しかし本気で詫びてない。結川はちらりとアリチェの方を見る。視線に気づいたアリチェは微笑を返して結川は体温が一瞬にして上がる。

何だ、この感じ・・・24年彼女無しの空恋人の男、初心である。そしてその時

「よー、元気か?酒飲み隊」

「・・・・この声は?!」

その瞬間、バッカス隊一同が震え始める。ここはサピンで暑い所なのになぜ寒いのかな~?そこには引き締まった女性、しかし顔立ちは綺麗だ・・・て、ウスティオ空軍の制服・・・大佐?!バッカスサザンクロス全員で敬礼をする。

「フ・・・フラッチェ大佐殿?どのような御用件で?」

「あん?貴様らが酒で暴れると困るからシルバーマークからこの基地の特殊戦術航空団所属の3隊の直轄上司になったのよ、覚悟しなさい」

微笑して言うミナー、基地司令からバッカス隊が心配でわざわざ志願したのだ。あまりにも親バカである。

「・・・おおお・・・」

「さて、君が結川中佐か?私は元シルバーマーク空軍基地司令ミナー・フラッチェだ、バッカスが馬鹿するかもしれないがよろしくな」

「はっ!大丈夫です!ただ干物ですから!」

「ん、よし、遠慮なくしてくれ!」

「「「ちょおおお?!」」」

結川の言葉にバッカス隊全員とグラッドがガタガタブルブルする。

「まあ、これから最強にきつい任務が待っている。そこでだ、今日と明日は軍の移動なので君たちに主な任務は無い、君たちに外泊許可を出す。酒をいくら飲んでもいいぞ!」

「・・・・・」

「ん?嬉しくないのか?」

ミナーが首をかしげる、年齢の割に可愛い・・・て失礼!バッカス隊は固まる

「本気ですか?司令・・・熱でも出ましたか?」

「そんなつもりはないが・・・・嫌なら別にかま「いえいえいえありがたく頂戴いたします!リュウト中佐!トゥルも誘おう!」」

「お・・、おお」

「よーし、バッカス隊、自由行動開始だ!今こそリミッターブレイクだ!!」

「「「おおおおおうう!!」」」

「サザンとトゥルを拉致れ!ついでに司令も行きましょう!」

「ん・・・ちょおおひっぱらないで~!!」

オリビエの号令で各員が一気に拉致を開始する。そんなバッカス隊の後ろ姿を見て、ミナーは微笑して

「たく、元気な部隊だな・・・」

そのあとを付いて行く。ちなみに、バッカス隊先導で全員を翌日撃沈させたのは言うまでもない。



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急展開

3/6

0608hrs

レピナース空軍基地ブリーフィングルーム

ブリーフィング開始時刻が過ぎている。さっきから基地内の将校は慌ただしい。

首都攻勢は招集などでまだ時間があるのに、早朝からこの基地の、特殊航空団が勢揃いだ。最初はバカップルのトゥルブレンツも、この不可思議な状況に真剣な表情、さすがベルカ海軍航空隊、非常に場慣れが早い。

「隊長、これって・・・」

「緊急事態他無いだろな・・・」

アリチェの言葉に結川が返す。昨日まで哨戒任務しかしてなかった近くの空軍基地では早朝から大規模な空軍演習、さらに哨戒部隊が2倍になった。その時

「集まってくれたな、遅れて済まない」

ミナーが入室する。その顔には疲れと緊張の顔だ。全員起立して敬礼。

「大佐、どうして急な召集を?まさかオーシアがまたぼうそ「そのまさかだ」・・・」

オリビエの初手は肯定を以て砕かれる。

「昨夜から早朝にかけて事態は急転をしている、単刀直入に言おう、オーレッド沿海、サピンまでの海峡に第一国防艦隊、ユージア艦隊他、海軍全戦力30%が集結している。これはサピン海軍の2倍戦力だ、さらに言えば、アピート市の国際空港をはじめ、ほとんどの民間空港に全世界に展開してた好戦派戦闘航空団を集結中との情報が入った」

「「「!!?」」」

ミナーの言葉に全員は一瞬反応出来なかった。

「て、どんな連携ですか?今までに比べモノにならないくらいの集結力・・・」

エレノアが聞く、トゥル、特にエレノアは先の超大規模海戦で、艦隊撤退支援の空軍と海軍航空隊の連携が凄く悪く、追撃が楽だった・・・らしい、彼女はグレンを落とされてキレてたから覚えてない

「簡単に言おう、正式に3軍の総司令が辞任、さらに今まで反戦してた兵士がやめて、そこにカリスマ性ある好戦派が登用されて、今までになくオーシア軍の機動性が上がってる・・・皮肉だがな・・」

「どこからそんな大艦隊が?」

グレンが聞く、大艦隊を運ぶなら世界に情報が走るはずだ。伊達に海軍航空隊を長くやっていない

「本当ならISAF海軍が監視航行してるため、情報が入るはずだが、世界の海軍の圧力で、他国の経済水域、領海を通って来たらしい。精査してないから、推測の域だが。さらに質問が来る前に言うが、陸軍も当然増強されて、事態は悪化のしている。そのため、我が連合軍は先手の総攻撃を決定した」

「総攻撃?その心は?」

「ベルカ、ウスティオ空挺師団を総動員、アピート市、オーレッド各主要地を制圧する。数は・・・8000から12000ぐらいだ」

「ちょっ・・・!」

結川が言いかける、その数を運ぶなんて・・・!

「もちろん状況はひっ迫してるが無策ではない、大演劇下克上作戦」

「下克上?どういうことですか~?」

エレナはいつもどおりにのんびりに見えて・・・のんびりだな・・・。

「簡単な話、今ウスティオに居るハーリング議員をホワイトハウスに置いて、全面的にオーシア降伏、ハーリング議員を大統領にして、未来FCMBとオーシア融和を目指す」

「「「???!!」」」

みなさらに驚きに包まれる。

「それの成功確率が分からなきゃ、うんとは言わせませんぜ姐さん」

珍しく・・・珍しくグラッドの真剣モード。

「そうだな、現在、アップル・ルルース他上層部は、学園都市に退避して、そこから指揮を取っている。今回の制圧作戦は市民被害を最小限に抑えるよう厳命して、無人のホワイトハウスを制圧、国の象徴を占拠されたオーシア国民は反感感情爆発、この瞬間を狙い、ハーリング大統領を立たせて、降伏させる。幸い次期大統領と国民から圧倒的支持を受ける議員なので、かなりの確率で成功すると思われる。さらにうちらの空挺師団を甘く見るな、奴らの猛者具合は、オーシアの首都防衛軍と比肩も出来ない」

ミナーがにやりとする。

「それじゃ、君たちの3隊はアピート国際空港及び、226大隊の輸送機護衛、及び、空港攻撃部隊護衛、極めはアピート市全域の制圧の主役だ」

「・・・・ん?ものすごーーく仕事が多いのですが?」

オリビエが苦笑しながら聞く。

「しょうがない、特殊戦術航空団、圧倒的不利な戦況を覆す部隊なのだから」

「「「「・・・・・ああ~」」」

納得した声しか聞こえない。本気かよ・・・

「そ・・・それで、作戦決行時刻は?」

「今日の1000hrs」

「「「・・・・・・・」」」

今度こそ本気で絶句する。

「それじゃ、作戦は開始される。腹は括っておけ。それでは作戦開始前、8時までは自由行動にする。以上、解散!!」

「「「YES SIR!!!」」」

文句はあってもミナーの圧のある号令には逆らえない。これぞ軍隊効果・・・。いや、見えない上下関係?

ミナーががブリーフィングルームから出ると

「さ~て、交流の時間は与えた。これからどうしていくんだろうね・・・若き精鋭たち」

彼女は微笑しながらそのまま去っていく。残されたメンバーは

「・・・、いきなりすぎると思ったやつ、手ぇ挙げて」

オリビエの言葉に全員が挙げる

「だよね!やっぱりね!」

彼はそのままグターとなる。

「しかしまあ、こんな場所でぐだるならやはり空だろ!」

「そうです!今こそベルカ海軍航空隊とウスティオ空軍の乱舞の時!」

ロバートとエレノアが同時に言う。

「それじゃ、どんな方針かは、安全生存率100%に近い男、リュウト中佐に決めてもらいますか」

グレンがにやりとしながら結川の方を向く。

「へっ?いやいやいや!それならキャリアの長いそちらで決めるのが・・・」

「ん~、俺は一回落ちてしまってるし・・・」

「俺は酒しか考えられないので」

「「てなわけで!」」

両隊隊長から言われて、他の部下たちも少し笑いを含みながらこちらを向いてくる。くそ、こうなったら

「わかりましたよ、俺の作戦は・・・ガンガン進む!罠や護衛対象が危なくなってから考える!そしてトゥルブレンツは戦場でのバカップル禁止!」

「「「おう!!!」」」

「「?」」

全員が応え、そしてトゥルバカップルは双方何を言ってるのか首をかしげて、みなをズーンとさせた。

そして時間は早く過ぎ・・・

0920hrs

<<コントロールよりサザンクロス、L36から離陸せよ>

<<サザンクロス隊、L36から離陸を開始する>

<<復唱オーライ、方位140、風速4m、後続があるため短距離離陸で頼みます>

<<了解、誘導サンクス>

<<コントロールより、うちらの連合エースのエスコートが出来て光栄だ。グッドラック、サザンクロス>

コントロールからの通信を切り、滑走路に進む結川ほかサザン部隊、他の部隊も後続して、2本の滑走路は完全にてんてこ舞い。しかし疲れを見せず頑張って誘導する管制官に脱帽だ・・・。

さて、それじゃあ

「サザンクロス中隊、これより離陸を開始する!」

地上誘導員が発進合図を確認すると、スロットルを押し込み一気にアフターバーナー、最低離陸速度で機体を浮上させて一気に垂直上昇をはかる。

そして始まる地獄の門、結川の崩壊も始まる・・・。

おまけ、ハートの秘密

ハートには秘密がある。それは深刻な物でなく、この荒くれ部隊をまとめた理由。

ウスティオ空軍主力大型輸送機、UC-2、2機に分乗して、空挺師団226大隊が居る。特殊戦術航空団、サザン他3隊に囲まれてる機体の中で

「私達が、首都でなく、防衛の薄いアピート市・・・うう・・」

[[き・・来てしまった!]]

ハートには目に涙をためて、空挺隊員は一様慌て戸惑う、そして崩壊

「なんでわたしに首都で戦わせないのよ~!なんで後方補給線?!なんでなんでなんでぇ~~!!」

わっと泣き出すハート、そして周りは

「隊長のせいじゃありません!悪いのはベルカの降下猟兵の馬鹿どもが仕事を回さないからですよ!」

「隊長のせいじゃありません!悪いのは俺達です!俺達が不甲斐ないからです!」

「「「隊長は女王様!女神さま!俺達は下僕です!ウジ虫です!国でなく貴方様のために命を喜んで捨てれる奴隷どもです!」」」

空挺隊員は何とかして慰める

「本当に?」

ハートはグスグスと目を腫らして聞く、凄く可愛い

「「「本当ですとも!!!」」」

空挺隊員大唱和。しかも通信機通じて、分乗で分かれた隊員からも唱和・・・馬鹿である。そしてハートは俯き

「ふ・・・ふふ、そうよね、私のせいじゃありませんね。貴様ら!何でアピート市になったか分かるか?!」

「「「我々が不甲斐ないからです!!」」」

「いいだろう、アピートからオーレッドに直行!もし市民に不必要に危害を加えたら・・・もぐぞ」

「「「「YAHHHHHHHH!!!!」」」」

ハート復活!

さて、ここで説明しよう[ここの説明はこの小説オリジナルです。真に受けないでね!]

ハート少佐の秘密・・・それは声である。

f分の1のゆらぎというのをご存じだろうか?

人が心地よく、リラックスできる、人間の特殊音波である。例でいえば、美○ひばりや、ジャパネット社長さん。歌手でもなんでも売れてる人の中に多数存在する。まあ実際全人類の何万分の1だが。

さて、彼女はこの女王様モードのとき、この時彼女の周波数は、男性の脳内刺激ホルモンは興奮作用を覚え、自ずと彼女に従いたくなる。いわゆる潜在的マゾの部分を最大限に増幅させる。

逆に彼女が泣いて甘える時、男性でも女性でも関係なく、赤ちゃんに癒される、または構いたくなる母性本能を最大増幅させる効果がある。

つまり、彼女は自然に先天的なこの素質で、隊員のM部分を最大限増幅させて、女王様の鞭と、泣いた時の母性で構って同時にかなり癒される飴の効果で、全ての隊員の身心全てを彼女漬けにさせたのである。

しかし実力も軍トップクラスなので、どちらにしろ226大隊をまとめ上げただろう・・・。



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崩壊の前

3/6

0845hrs

ウスティオ

ディレクタス空軍基地

2本の4000m、1本の2800m滑走路は、既に戦地から遠く離れた基地として、今までの所属部隊も前線に向かって、哨戒部隊以外静かになり、のんびりとした雰囲気さえ感じてしまう。

この基地は何度かの戦火の危機に瀕したが、どれも要撃機で全て迎撃したため無傷で、ある意味参戦国の中で一番幸運な基地かもしれない。

しかし、そんな基地内で不穏なメールが来る・・・。

「どういう事だ・・・これは?」

ディレクタス基地で開かれた基地司令会議に出席してた、今回准将に昇進したカロンが、あてがわれた部屋で自分のノートパソコンを見て絶句する。

アドレスはたしかコピー絶対不可のベルカ情報部私設情報部Z情報課[ザンナル直轄諜報課]からの秘密コードでエルジア、ISAF経由で届いてきたメール添付のPDFファイル。

ザンナルとは空軍対地演習で司令階級で共に国防を論じた陸軍軍人だ。ベルカに居ながら騎士道とは少し違う上級大将からのメール内容

「君の部下サザンクロスが危ない、全体的にオーレッド侵攻は仕組まれた罠だ、すぐにサピンレピナースに飛んでくれ。ウスティオや他の事の原因解明は私の指示した人物に任せる。頼む」

たった一文、カロンはPDFのアイコンをクリックして、昔友情の証に教えてもらった特殊パスワードを打ち込んでエンターキーを押す。情報が解凍されて、そして出てくる資料、右上に最高機密の判、見たことのないマーク、どこの部隊章だ?

そしてそこの載ってる内容は・・・

「なっ・・・」

カロンは完全に固まる。内容を頭に入れるだけで精一杯だ。

オーレッド侵攻の真の作戦内容、第3勢力、国境無き世界の中でも異端の戦争拡大派の戦争プラン。

そして絶対確信となったレピナース空軍基地司令ダッケ・べナー准将が完全な国境無き世界の協力者だという事。

「ちっ・・・、これは行くという選択しかないな!」

口調が穏やかでなく、若いころに自然に戻る。確か作戦にはまだ期日がある、今なら働きかければ[オーレッド作戦が早まったのを知らない]・・・手近にあるコピー機でコピーして資料を完全軍機密用ケースに厳重にしまい、すぐに基地内での手伝い役の伍長を呼ぶ

「何でしょうか?准将」

「俺は今から急用ができた。今日の会議はキャンセルの旨を伝えといてくれ!」

「えっ?ちょちょ!」

伍長の制止を振りほどき、格納庫へ向かう。しかしこんな資料見せられた後に、調達する部隊に悩む。

足が長い戦闘機で、そこそこ空戦が出来る部隊・・・・居た。

エウレノが円卓最前線基地指定になり、配属地決定までディレクタス防空に回された部隊が・・・

格納庫でなく、誘導路で談笑しているメンバーに向かう

「バッカス他スタークロス隊!」

「あれ?司令?どうしたんですか早朝から」

スタークロス隊、バッカス大尉が笑顔で言う。彼はまだ尉官だが、それで不満は無い。むしろ責任が軽いから良いと言っている。

「武装と燃料は?!」

「え?ええと、哨戒任務で燃料は増槽付きで満タン、短AAM2本と中AAM2本ですが・・・」

「今すぐサピンのレピナース空軍基地へむかえ!」

「はっ?言葉の意味が分かりません」

「そうですそうです!いくら同盟国でもウスティオ軍機が勝手に入れませんよー![撃墜されたらどうするんだこのネジゆるみ司令!]」

バッカスとアンジェラが抗議をする。しかしカロンは真面目顔で

「今は議論してる暇は無い・・・この戦争が拡大するだけだ!」

「「「?!!」」」

カロンの言葉に隊員全員が驚きの表情をする。そしてバッカスはため息をつき

「理由は・・・話せませんよね」

「済まないがな・・・今はとにかく行きたいんだ」

「・・・了解です、スタークロス隊!出撃準備急げ!」

「隊長!」

バッカスの言葉にクライシスが挟む

「隊長、それは危険な賭けですよ・・・」

「賭けでもなんでも俺はこの戦争を早期終結したい、もしこれに陰謀があるなら、司令をエスコートして活躍も・・・悪くないだろ?」

「そうだな、サザンやバッカス隊なんて部隊に活躍が奪われてんだ!今こそこの部隊が空を翔る時じゃないか?」

ジェニファーがバッカスを援護射撃、そしてクライシスは諦めた表情で

「任務を受けるたびに。これが最後の任務でありたいと願ってました・・・分かりました。再就職先探す覚悟で行きます」

「う~~、分かりましたよ[再就職はベルカ工業廠かニュートラル社がいいな]」

「決まりだな・・・司令、俺達の再就職先と軍法会議で擁護してくださいね」

「ありがとう」

ただ一言言うと、背中を向けたバッカスが手を振る。

精鋭の中で対地爆撃という地味ながら活躍している部隊の隊員の背中はどの部隊よりも誇りにあふれてると思った・・・。

1015hrs

レピナース空軍基地

「おい!ウスティオ軍機の到着なんて聞いてるか?」

「部隊№233照合・・・出ました!F-2航空隊スタークロス隊だ!」

「何で今まで気付かなかったんだ!」

「恐ろしいまえの熟練された低空飛行にレーダーが引っ掛からなかったんだ!」

基地の管制塔は、大規模出撃の仕事が一段落して、落ち着きが戻った時に、まさかの同盟国からの領空侵犯、混乱してるその時

<<こちらスタークロス隊よりコントロール!燃料がない!強制着陸する!>

有無を言わさず、強制着陸を決行する。滑走路上に居た誘導員が全員退避する。

完全に停止すると、コックピットからカロンが降り立つ。

「・・・おい!ここはウスティオじゃなくサピンだぞ!拘束させっ・・・准将?!」

基地警備兵はカロンを見て固まる。そしてカロンは何も言わずに強行突破する。

「よ~し、燃料再補給して帰らせて!とは言えないね・・・」

「とりあえずお前らだけでも来い!」

「へいへい、よ~し、サピン基地見学だぞ~」

「「「おーー!」」」

完全に気が抜けてるスタークロス隊は警備兵に連行される。しかし後悔は無い・・・はず。

「何で准将がここに来てるんです?!司令会議は?」

ウスティオの准将の襲来を聞きつけ、同じ国のミナーがカロンの元にやってくる。司令会議で何度か顔合わせた美人司令、しかしそんな事を考えてる暇は無い

「なぜここまで基地が静かなんだ?!」

「え・・聞いてないんですか?敵の集結が予想以上に早く、作戦は前倒しで発令されましたが・・・」

「ちいぃ!!間に合わなかったか!!」

盛大な舌打ちとともに歩きだす。

「え?一体全体何が?」

「フラッチェ大佐、これは罠だ・・・俺達は今掌の上で踊らされているんだ!付いてきてくれ!」

尋常でない事態とだけは感じたが、それ以上の詳しい説明がないまま、ミナーはカロンの後を付いて行く。

「どういう事ですか?ここから先は司令の部屋ですが・・」

「構わない、簡潔かつ的確に言うならば、作戦自体が全ての爆弾だ」

「はい?!」

ミナーはとにかく行ってみる事にした。

「そうだ、その前に・・・」

「何をしているんですか?」

カロンは突然歩くのをやめて、基地廊下各所にある内線電話に近づく、これはもしもの時には、基地全体へのマイクにもなる

「もしもの為の保険だ」

「保険?」

カロンは素早く内線を取り、端末に細工をするそれが終わるとまた歩き出し、そしてカロンはノックもせずに

「失礼します」

司令室に入る。司令のダッケは笑顔で

「おやおや、どうしてここにウスティオの准将が?」

「いやあね、その笑顔爺さんの裏の顔を暴きに来たんですよ、ダッケ・ベナー准将殿?」

2人ともにこやかだが、雰囲気は明らかに異質だ。

「いやー驚きました、とある所の情報ですが・・・単刀直入に窺いましょう。どこまで国境無き世界と関わってる?」

カロンがいきなりの先制、ダッケは笑顔を崩さない

「随分と切り込みが早いですね~、というより、それはどんな組織でしょうか?」

「ボケるのには年がいささか早くないか?貴方がベルカ国内の使用されるはずのない電話に何度も通話記録が残っており、さらに今回のオーレッド侵攻作戦・・・実はアピート市は攻撃対象外だったのを、あなたが作戦書決定前日に無理やり入れたというネタも上がっています」

「・・・・はははは!随分と面白い事を言うじゃないか!それはアピート市の国際空港が、もしかしたら軍事転用されるのを恐れて今回のさ「航空燃料60000ガロン」!!」

ダッケの言葉を立ち切るように、カロンは静かに言う。それを聞いたダッケの饒舌が止まる。

「航空燃料は、ここ3年、ベルカからの安定供給などで価格変動はほとんど起きてなかった。しかしな准将殿、あなたがここに着任したこの2年間、輸送機基地としても多すぎる備蓄燃料予算、毎月少しずつ上昇してる購入費、これはどうでしょうか?」

ダッケの机にケースから取り出した資料を叩きつける。たまたまひらりと飛んできた一枚の資料に目を通したミナーが

「なに・・・これ、ウスティオとサピン空軍は絶対に航空燃料費は一緒になるのに、私の基地の購入費より1ガロンあたりが明らかに高い!!」

「さらに、最近は備蓄庫も満杯で、本当なら不要分の購入費が、またどこかに消えている。さすがにあなた1人が横領するには明らかに多いお金が消えてるんですよね」

「ふざけるな!でたらめを言って!貴様はこの国では不法侵入者なんだぞ!私の権限があればお前なんか潰すなんて容易いんだ!」

「ふざけるのをやめろと言いたいのはこっちだ!!!」

「ぐうぅっ!?」

カロンが場を圧する大声を出す

「貴様の履歴は見させてもらったさ!貴様は軍需企業と手を結び、戦争という最高の特需を長引かせる事を見返りに多額の報酬を貰ってるという事例を既にベルカ経済崩壊時代に行われてた形跡がある!その時は部下になすりつけたみたいだがな・・・今度は違う!今度はちゃんとした証拠もある!大人しく認めやがれ!」

「ちがう・・・」

カロンが言い切ると、ダッケは少し緩んだ表情で

「ちがう・・ちがうんだ!私はこの国を守るために・・・守るために国境なき世界から守るた「戯言もいい加減にしろぉ!!!!」ひぃぃ!」

本気の怒声、ミナーはあの穏やかなカロンがどこに行ったのか固まっている。

「お前が守りたいのはなんだ!国か?違う!己だ!貴様がすでにこの案件がこんな状況で明るみになった場合を除いてばれたら、天下り先も用意して、秘密を知った者を排除して、さらに悠々自適に生きようとしてるんなんざお見通しなんだよ!軍が守るものはなんだ!己でない!国土、財産、そしてそこに住み、私達金食い虫を有事では信頼してくれる国民!!これを守らないで軍人なんてぬかすんじゃねえ!お前みたいな血税を横流して、オーシアとFCMBの間の憎悪を膨らませ、守るべきものを荒廃させる奴はなあ!売国奴って言うんだよ!!さらに言えば、罪なき市民を無用に巻き込む虐殺者ともいうんだ!!」

「罪なき市民?それはどうゆう・・・」

「こいつらはな、既に金で操ってるか、国境無き世界の戦争拡大派が既に動いていて、オーレッド無差別爆撃の用意も出来ている」

「??!」

作戦と全く違う内容で、ミナーは愕然とする。

「さあさっさと作戦中止命令を出せ!今なら間に合う!」

「ははっ・・・もう遅いよ」

「なに?」

カロンが聞き返すと、むかつくほどに晴れやかな表情でダッケが

「もう遅いんですよ、既に作戦は展開された、大下克上作戦(笑)はね。もう止められない」

「ふざけるな!!」

「ふざけるわけないでしょうははっ!しかし不法侵入したので、これの証拠能力は犯罪者の持ち物として限りなく低くなりますが、野放しだと貴方達は面倒です。ここでは拘束されて、そして消えてもらいましょう・・・」

「随分悪役らしいセリフですね。しかしそれは必ず負ける合言葉なんだよクソ野郎!別に俺達が証人じゃねえよ!ただ部下が聞いたらどうなるだろうなぁ?なあお前たち!」

「司令!今までの話し本当なのかで緊急逮捕をします!」

扉をけ破って入ってきたのは、この基地の警備兵、全員アサルトライフルかハンドガンを構える。

「な・・・なぜだ!お前ら!捕まえるのは奴らのほうだ!はやく「観念するんだな」貴様どうやって・・・」

カロンがにやりとして、ダッケが慌てる。

「最近のマイクというのは、実に小さく、高集音なんですよね」

カロンは軍服の襟の内側からマイクらしきものを取りだす。

「これは無線式で近くの内線電話に仕掛けた受信機、そしてそこから内線電話を介して、全てのスピーカーからね・・・」

「ま・・・まさか最初から?」

「ええ、最初から最後まで、一言一句残さず全部ダダ漏れ!」

「ああ・・・あああ」

「ダッケ・ベナー、国家反逆罪で緊急逮捕します!」

すぐに元味方に囲まれるダッケ、彼は

「助けてくれ~!ウスティオのみなさん!不法侵入取り消しますから!今までの暴言を撤回しますから!」

「見苦しいな、言い訳は冷たい空気漂う軍法会議で聞きましょう。連れて行け!」

「はっ!!ほら歩け!貴様みたいが司令とは反吐が出る!」

元から嫌われてたのか、警備兵に罵倒されながらダッケは叫びながら連れ去られていく。これで一段落か・・・その時、カロンはミナーを見ると

「申し訳ありません、カロン准将、私は・・・」

「いやいや、君はこの事件に全く関わっていない。それよりも早く現在進んでしまってる作戦を止める事をしよう」

「はいっ!」

カロンとミナーは、この基地の作戦指揮室に行く

1040hrs

作戦指揮室

「おい!この作戦担当者は!すぐに作戦中止させろ!他の基地にも連絡しろ!理由は俺が話す!」

カロンが入るなり、宣言する。しかしその前からすでに仕組まれた戦争としてみなが作戦中止に奔走している。その光景を見てた時

「ああ、准将殿!大佐殿!大変です!」

「どうしたの?」

パソコンを覗いてた隊員が大声で呼ぶ、2人は駆け寄り

「さっきから情報部隊としてオーシア軍などの国防省ホームページを観察してたのですが、ここに、アピート市が・・・」

「・・・なっ?!」

「どうゆうこと?これ?!」

パソコン上に載ってた衝撃

アピート市空襲など有事発生時避難場所

アピート国際空港滑走路

最大の危機がアピート市民に迫ってた。そして特殊戦術航空団は、緊迫の戦いを繰り広げていた・・・。

 

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守れ!

3/6

0955hrs

アピート湾、周辺

空襲警報が鳴り響く。市民の大半は、何が起きたか分からない。ただこの警報と共に、オーレッド大橋墜落を思い出し混乱が一気に広がる。

オーレッド、アピート同時攻撃、予想していたオーシア軍防衛隊は一気呵成に飛び立つ。しかし・・・

迎撃する部隊が強すぎた・・・特殊戦術航空団、他、精強なる空軍の攻勢は我先に自尊心の固まりで散発的に急行するオーシア空軍機を食いちぎる。

そして警戒の薄かったアピート市も

F-15REA航空隊、サザンクロス隊は空を駆け抜ける。

「しかし意外だったな、対空攻撃なく意外と快適だったな」

ホークが安心したように言う。

「そうだな、空母は他部隊はう回路には少なかったからな・・・」

結川は応じながら一抹の不安を覚える・・・何だかはめられたような感覚。

現在、戦闘機18機、戦闘爆撃機8機、輸送機2機の編成。特徴的にはサザンはしっかりV字、バッカスはほぼ一列縦隊、そしてトゥルは曲芸飛行部隊びっくりの密集編成。

「状況報告、オーレッド市方面から多数の航空部隊を確認、機種は多様ですが・・・ステルスは今のところ認められませ・・・追撃でF-35と思われる機影を確認、状況黄、対空火器の状況を鑑みれば、空挺作戦延期をし<<グダグダ言うんじゃねえ!!>ん~?」

エリーゼの報告に、輸送機UC-2に乗る女性が反論する。

「私達空挺師団は対空兵器を切り抜けてなんぼじゃ!こちとら覚悟決めてんだ!ちゃっちゃと飛ばせろ!」

「し・・・しかし」

「こちらサザンクロスリーダーより、了解した」

「隊長!」

「そちらの女性隊長はやりたいと言ってるんだ。俺達が守れば問題ない」

「支援に感謝します」

ハートは通信を通じて感謝の意を示す。しかし後ろ、女王様うるさい!

<<まもなく降下地点だが・・・大丈夫か?>

<<大丈夫よ、問題ない・・・貴様ら!今から空へ飛ぶぞ!対空火器が怖いか!>

<<ハート様の泣顔以上の恐怖を感じた事がありません!!!>

<<下の名前を呼ぶんじゃねええええ!!!>

<<(ゴスバキドゴォ!!!)ありがとうございますっ!!!>

「「「<<<・・・・・・・・・・>>」」」

<<味方をむやみに殴っちゃだみだよ~>

<<何で殴られて感謝してるんですか?>

エレナとエレノアが言う。グレンは嘆息ついて

<<人にはな、色んな趣味というものがあるんだ>

<<へえ~、でも私は隊長を殴るという趣味は無いんですけど・・・>

<<それが無い方が俺は安心でき、サザンリーダーコブラしてどうし・・・狙うなああ!>

結川がグレンのバックについてレーダー照射

「ごめん、むかついた、反省も後悔もしていない」

<<え~~・・・>

という、こんな状況になってるが・・・

「敵部隊加速してます!降下するなら迅速に!」

「おいおい、下は密集したビル群だ!バラけるぞ!」

エリーゼ催促、グラッドは警告する。

<<ふふっ、私達を舐めんなっていってるでしょう?おい下僕ども!私と同じ通りに着地出来なかったら今度から罵倒も何もしないぞ!>

<<<そんなのは嫌だ!!!>>

彼らは変態なのか?いやド変態である。

<<それじゃ行くぞ!>

<<<<YAHRRRRRRRRR!!!!>>>

2機のUC-2からわらわらと人が出ていく。通常の空挺スピードの約2倍だ・・・。

<<敵が来たぞ!20mmで粉砕しろ!>

<<なっ・・駄目だ!何だかAAGUNがおかしい!>

<<報告!上から降ってくる兵士の声に負けて発狂する者が続出!督戦めいれ・・・>

下のオーシア対空部隊は、ハートを先頭とした空挺部隊の見えないオーラに包まれて恐怖のどん底に突き落とされる。しかも対空火器の調子まで狂わせてる

「なんつーか・・・化け物だな」

グラッドが間の抜けた声を出す。

「慣れてしまいました」

アリチェが冷静に言う

「「「ウスティオは最強です」」」

三つ子はなんか達観した声で言う。

「貴方達!レーダ照射受けてるわよ!まず後方F-35C、4機!前方からF-16、F-15他18機接近!」

「全機作戦開始!味方の上には落とすなよ!それと国際空港は俺と酒飲み隊長、サザン4で行くからな!それと空挺部隊の最初の目標、OBC中継塔周辺を掃討してくれ!」

<<了解したサザンリーダー!>

編隊が解かれ各自の獲物に向かう。そして結川とオリビエは国際空港に向かう。

オリビエのタイフーンは小さく、機動力が高いのに定評だ。実際横を飛んでるのを見ると、綺麗だな~という簡単ながら、それしか表現できないものになる。

<<さて、ちゃちゃっと偵察しちゃいますか!>

「その前に・・面倒だが敵だ・・・来る!」

結川の言葉の途端にミサイル警報、白煙をあげるAAM

<<ダイナミックに行くか?>

「スマートに突破だ」

機体の機首を少し下げてロール、AAMは近接信管を作動させるが、加速しながら避けた為に、少しの爆風しか浴びせれなかった。

「はっ、ぬるい!」

こんな敵にAAMは要らない。超音速巡航で

<<おい!早く回避しろ!>

<<駄目だ!凶星が!く・・・あああああああああああああああああああああ!!>

ガンアタックで沈める。

<<くそ!こいつめ!>

<<のろいな~>

F-15S/MTOのターゲットシーカーから常にひらりひらりと避けるオリビエ。

<<くそ!貴様!おちょくりやがって!!>

<<チャーンス>

敵が加速した瞬間、オリビエはタイフーンのエアブレーキを最大にする。

<<バーイ>

遺言も聞かずにガンアタック。

「敵さん、随分足並み揃ってないな」

<<ああ、何だか先手の取り合いだな。一番槍が戦場で味方を鼓舞するどころか落ちてちゃ意味ないのにな>

「さーて、国際空港・・・前にF-16が展開している・・・」

<<負けたら俺はお前に酒をおごって、お前が負けたら2番機に告白ね>

「ん?ちょっと待て!グリニョリーノ!今なんつ<<はいスタート!>人の話を聞けえ!!」

結川とオリビエの戦いが始まる。

一方地上では・・・

「60m先、センサー式時限爆弾、それと狙撃手確認!排除する!」

「警戒!援護す!ポイントB-1CHブラボーGO!」

「支援分隊の射撃が開始した!チームブラボーGOGOGOGO!!」

「チームキロからフックラック、2番通り制圧を要請する!」

「了解した!」

アピート市の4車線道路に着地した226大隊は素早く展開、中継塔、商業センター、市庁舎など中枢地帯制圧の為、幹線道路から小道まで幅広く展開して大声、ハンドサイン、全てを駆使して掃討しながら前進する。

「あの女を殺せ!」

「駄目だ!なんだあの射撃能力?!」

「ふん!これがオーシアの陸軍か・・・ぬるい!」

ハートは自腹で購入した、SIG550に5倍スコープを付けて、軽やかなステップを刻みながら次々と淡々と狙撃していく。

<<状況赤!これ以上の戦線は維持できない!>

<<これ以上の後退は市民に影響が!>

<<構うか!これ以上の防御線の綻びは許されない!>

オーシア好戦派は市民が逃げ惑う幹線道路に集結、防衛線を再構築する。ハートは舌打ちして

「くそっ!このままじゃ市民が居て撃てない・・・」

「人間の盾作戦ですね」

「んなの分かってるよ!」

「そうですよね!隊長が知らないはずがありません!下衆な自分の馬鹿野郎!!」

彼らはド変態・・・いや、超越した・・・。

その時、前を走る斥候兵が物陰に隠れてハンドサイン

[20m先、両方ビル、狙撃手あり、警戒せよ]

ハートは確認すると

[敵の居る階にめがけ手榴弾を投げろ。まっすぐ]

ハンドサインを返す。戸惑った斥候だが、ハートのオーラを感じ、考えずに、すぐさま手榴弾を詰めたグレネードを2発、狙撃が確認された階の高さに撃ちあげる。

「そこね」

ハートは大体の階を読み取り、SIGが2発放たれる。その弾は、手榴弾を弾いてビルの中に入り・・・爆発した

狙撃手戦闘不能

「おい!私を使ったからには戦うんでしょうねえ?!」

「「「「もちろんサーーーー!!!」」」」

<<敵は突入してきたぞ!>

<<おい!奴らは素手で来るぞ!ガチは難しいぞ!>

<<敵の狙撃が正確すぎておちおち左右確認でき・・・>

<<くそ!通信兵の額に穴が開いたよ!>

完全に流れはウスティオになっていた。しかし・・・

「この市民・・・どこに流れてるの?」

「地図をどうぞ!」

「ふん、下僕にしては気が利くじゃない、感謝してあげるわ・・・」

「なんというもったいなきお言葉!末代までのかほ「さっさと見せろぉ!!」サーーーー!!」

地図を地面で読む、止まっていても、周りの兵士が盾になり矛になるからハートが居れば、そこは絶対安全地帯に様変わり。

「今3番通りを制圧しながら、湾口方面に沿って中継塔に向かってる・・・市民の流れはその線から少し西・・・まさか・・・」

「どうしたんでしょう?」

「今すぐ通信兵を呼べ!!もしかしたらこの波、国際空港方面だ!!早く空軍の奴とコンタクトしろ!」

「い・・・YES SIR!!!」

彼女に今までにない焦りを感じる。この感じ、嫌な予感しかしないわ・・・。

1030hrs

あらかたの敵を掃討した空を駆け抜ける3機。そして彼らは国際空港で不思議な光景を目撃する

「なんだ・・この空港・・」

「見た所、輸送機と補給機ばかりですね・・・」

「こりゃあれだ、きっと祝杯のういす「「ありえません」」シュン」

オリビエの言葉に総突っ込み。

ちなみに先ほどの叩き落とし大会は、3対3の同点だった。

話し戻して、空港には、戦闘機はおらず、C-5輸送機が4機、KC-135,767が合わせて9機も居る。

「しかも密集してる・・・こんな誘爆したら洒落にならねえぞ・・」

「ここは戦闘爆撃機難しいか?」

結川とオリビエで検討していると・・・

<<がが・・やっと繋がったか!おい!空軍の隊長格!誰でもいいから回線を開いてくれ!>

いきなり国際緊急無線周波数で応答される。結川が回線を開き

「こちらサザンクロス1、その声は下の部隊の隊長か?」

<<ええそうよ、時間がないから手短に言う、今すぐ空港爆撃計画を中止なさい!!>

「?、質問の意図がつかめない、どういう「た・・隊長!下を・・・空港の滑走路周辺を見て下さい!!」」

エリーゼが珍しく、悲鳴に近い声を出す。

「下・・・!!!!!」

結川、オリビエが絶句する。下にある光景、それは・・・空港ターミナル他、色んな場所から湧き出る、人人人・・・アピートの一般市民?!

<<確認したようね、何故だか知らないけど、国際空港に人が集まっている。ここで攻撃をしたら国際問題の騒ぎじゃない、さらに激しい戦争になる>

「ああ、理解した。完全に理解した・・・しかしなぜ・・・」

「隊長達、分かりました!誰かがオーシア国防省をハッキング、緊急避難指定区域に国際空港になってます!」

「面倒な奴らだ!大規模な人間の盾作戦か?!」

エリーゼの言葉に、心底苛立ってるオリビエが吐き捨てるように言う。

「くそ!作戦に関わる全機に通達!通達!アピート国際空港に一般市民が大量に侵入した!これは人道上、戦争の数少ない掟に基づき作戦を独断で放棄する!繰り返す、独断で放棄せよ!これは命令だ!一切の反論は許さない!」

「サザンリーダーの言葉通りだ!バッカス隊は、現時点をもって、アピート国際空港を飛行禁止区域に設定する!無断侵入はたとえ味方であっても容赦はしない!!」

<<こちらトゥル、了解した!>

<<爆撃隊、バーンジア隊ほか計8機も了解の意を表す!>

全機から了解の意が示された時・・・

「た・・・大変です!多数方面から巡航ミサイル接近!目標・・・アピート国際空港!」

「「「はあああああ?!」」」

理解が追いつかない、一体だれが

「誰なんだよ!!」

結川もとうとう我慢の限界だった。

「姉さん、落ち着いて、姉さんの指示が僕達の道しるべだから」

コーノは発狂寸前の姉、エリーゼに声をかける。深呼吸の音が数回聞こえてから

「申し訳ありませんでした。ミサイルは、艦船2、地上発射が10ほど、推定第4波まで来る可能性が・・・」

「場所は?」

「今レーダーに予測点を出しました。この航跡の先に、発射地点が・・・」

「よし・・・サザン他航空要撃部隊全機に告ぐ。アピート国際空港に指一本ふれさせるな!!いいな!」

「「「「YES SIR!!!!」」」

「艦船なら我々乱気流に任せろ!2、分担して潰すぞ!」

「はいっ!」

「サザンクロスリーダー!お前は4番機を守ってやれ、ミサイルは俺達に任せろ!」

「ああ、頼んだ、酒飲み部隊!!」

「約束されました!」

オリビエは言うと、発射地点の一つに急行する。間に合え・・・それが今の状況だった・・・。



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混迷と焔 序章

3/6

1040hrs

アピート国際空港上空

アピート市の空は、戦闘機の代わりに、数十発の巡航ミサイルになり変わっていた。

「隊長!作戦本部から「作戦はアピート市壊滅の裏の意図あり、作戦を中止せよ」と」

エリーゼからの本部から電文

「どの道もう遅いけどな、こう返せ!「時すでに遅し、こちらは全力を以て迎撃を開始する。もう知るか!」と一言一句、悪口付加なら尚可!」

「了解です」

空はミサイルで埋め尽くされる。

「第二波接近!第三波射出準備と思われます!」

「こちらアップルジャックよりサザンリーダー、見つけました。国籍不明、タイプは・・・ニュートラル社地上発射型タイプ!オーシア、FCMBほか北オーシア大陸の軍事大国では一般採用兵器です!」

「こちらサザン6よりリーダー!こちらはベルカ工業廠の地上発射タイプ、しかし型は同じでも、識別には全く一致しません!」

「こちらトゥルより、厄介だな、こりゃサピンが採用しているビッナー型対地攻撃ミサイル艇だ」

「こちらはオーシア沿岸警備隊採用のジューク級特殊戦術艇の巡航ミサイル搭載改造型です」

「どうゆう多国籍軍だよ?!」

「ここで手を取り合って平和でなくアピートフルボっこかよ!」

オリビエ絶叫、ガルシアが突っ込む。

「俺達どっちの味方だろうな?」

ホークが問いかけ

「んなの決まってるだろ!ふざけた行動を取る軍隊が敵!無罪な市民の味方だ!まあそんな綺麗ごと言えない手だけどな」

グラッドが最後は自嘲気味に言う。

「とにもかくにも守りましょう!それだけです!」

「こっちも本体見つけたよ~、私達の偽善を見せつけてボッコボコにしちゃいましょ!」

エレノアとエレナが言う。全く・・・こいつらは・・・

「それじゃ、これより敵を攻撃を開始する!」

「待て!こちらAWACSフェクチャー!目標外攻撃は命令違反だぞ!」

いきなり遮るのは、保守で有名なAWACS

「はあ?!現在アピート国際空港は混乱に陥っており、ここで巡航ミサイルが打ち込まれれば作戦はおろか、国際人道問題は必至だ!」

「貴隊はアピート国際空港破壊支援であって、防衛ではないぞ!分かってるか!これは命令違反だ!第一波撃破は見逃すが、第二からはな・・・」

「いいじゃねえか!作戦は放棄した!軍法でもなんでも来い!ここまで来たらどこまでも偽善を押しつけてやる!全機攻撃開始!」

通信を切ると、その瞬間、目の前まで来てた巡航ミサイル群が消滅する。

「こちら対地攻撃隊、目標、発射兵器!」

対地攻撃隊の仲間達も腹を括って、攻撃を開始する。

<<おい!空港に群がる野郎ども!さっさと別に行きやがれ!行かないと・・・行かないと~・・・>

<<女王がお泣きになる前に貴様ら散れーーー!!>

<<了解です王女様ーーー!!!!>

滑走路に突入した空挺部隊が、避難所へ誘導する。正義感ある懲罰部隊だな・・・。てか避難者もハート洗脳しやがった?!?!

巡航ミサイルは目に見えて減っていく。混線が聞こえる

<<どういう事だ?!何で作戦が・・・>

<<われわ・・せい・・絶対むくわ・・>

<<来た!捨てご・・・御苦労だった!・・これで・・・る>

「エリーゼ!敵の無線拾えないか?!」

「駄目です、暗号コードがどれにも引っかからない・・・こんな高性能、見たことが・・・敵!機影薄い・・・完全ステルスです!」

「こちら対地攻撃、ニット2!目視確認!F-35C、5機編隊!」

「追加情報!サピンから来た部隊で、射程30kmでマッハ4で飛翔するAGM-X搭載機,5機が居なくなったと!さらにオーシア、ユーク空軍増援も接近中!」

エリーゼの情報に思い切り結川は機体を殴りつける。悪いと思っても衝動は止められない。

「くそ!残対空兵装報告!」

結川の号令で、報告するが、あまりにも足りない。結川も空港にまで上手くすりぬけてきたミサイルをAAMで落としてたので、残り2だ。さらに悪いのは、燃料も底を尽いている。このままじゃ・・・

「くそ!敵射程までは?!」

「あと2ふ・・・え?」

「どうした?」

エリーゼが詰まり、結川の苛立ちがさらにつのる。

「いえ、IFFアンノウン8機、これもステルス?」

その時F-35の背後には最大最強の部隊が居た。

1050hrs

「イーグルアイより、メビウス中隊、状況を」

「メビウス2、スタンバイ」

「メビウス3から7スタンバイ」

「メビウス8スタンバイ」

8機のF-22、ISAF最強の部隊、

「メビウスリーダー、スタンバイ・・狩りの時間よ、矢を放ちなさい!」

完璧な編隊から超長距離特殊AAMが放たれる。

あっというまにF-35に吸い込まれ

<<おい!これはどうゆう・・・>

5機は全く反撃出来ずに散る。

「こちらサザンクロスリーダー!これは?!」

「あらごきげんよう中佐、ベルカ軍の良識ある方の根回しで、ISAFから追加派遣、各国に散っていた私の元部下を再集結してこちらには空中給油4回して突破してきました」

「なんという無茶苦茶・・・」

結川は苦笑いしか出来ない

「すでに空中給油機を要請しています。無理せず給油していて下さい。このくらいの奴ら、簡単です」

メビウスリーダー、アイノはバイザー越しで妖艶な笑みを浮かべて上唇を舐める。

「・・・了解した、武運を」

「ええ、全機に告ぐ、アピート市に敵を侵入させるな、以上」

「「「了解」」」

編隊が解かれた瞬間、今度はちゃんと要撃体制を取ってる敵部隊を囲む。

<<奴らはISAFのエースどもだ!>

<<もう駄目だ!>

<<怯えるな!敵はたったの8・・・>

<<隊長が落ちた!>

メビウス中隊とオーシア、ユークの戦いの結末なんて、聞かなくても分かるよね?

その時、オーレッド市も大変な事態に陥ってた

1055hrs

「どういうことだ相棒・・」

「俺に聞くな・・」

F-15を操る、ガルム隊は第二波部隊として来た。既に戦闘はほぼ終了して、ハーリングも間もなく空挺部隊の先導でホワイトハウス到着目前だ。

しかし

「おい!爆撃機!既に作戦は最終に入ってる!これ以上の攻撃は許さんぞ!!」

「爆薬は余ってるんだ!俺達の国を徹底的にやろうとした民族だぞ!この鬼畜を生かしておくか!!」

恨みを爆発させた爆撃部隊が独断で市街地爆撃を行う。アピート国際空港の危機、そしてこの暴走。これは偶発的にしても、アピートはさすがにおかしい

F-15Cで敵地上空ながら脅威が無く悠々とフライングパスするピクシーは

「戦争は人格を歪める。予想通りか・・」

むかし魔術師と電話した事を思い出す。これからの悪夢・・・これだけに・・・いや・・・。

「おい、ガルム2、相棒、どうした?」

サイファーから心配の声

「あ、ああ済まない、因果な世界だな・・・」

その言葉は一時的にも取れた、しかし、そのあとがなければ・・・。

オーシア、ハーリング上院議員はホワイトハウスに到着すると、現在までの中央政府を操っていたアップル・ルルースを正式に不信任、暫定政権確立と、全軍に軍備放棄宣言。降伏を促した。

こうして首都の戦闘は終結した。

しかし、北部の軍は、恨みがルルース主導を宣言、攻撃続行をするといい。未だ戦争が続く事が決定した、そしてその決定で

7つの太陽が・・・

オーシア学園都市

ここはハーリングが大統領宣言でアップル・ルルースの圧政にたまりにたまった鬱憤を晴らそうと、そのルルース立てこもる臨時政府に数万の学生、市民が押し掛ける。

正門はもはや限界、というより警察は既に諦めて交通整理くらいだ。

「チャーリー7より、こりゃもう交通整理は無理だ・・・て11?お前なにしてる?!」

「チャーリー11より、これは対戦車ライフルだよ、正門突破に・・・」

わあああああああ!!!

「こりゃ要らないや、正門突破した」

そして数万の民衆は臨時政府の正門を突破、政府内が血まみれになるには時間がかからなかった。

アップル・ルルースは海兵隊のCH-53で既に逃亡をしていた。

「こんなはずじゃ・・・こんなはずじゃ・・・」

ルルースはさっきから繰り返してそんな言葉しか吐かない。政治生命は完全に断たれた、もはや・・・

「ルルースさん!まだチャンスはあります!」

「そうです!我々駐留南オーシア軍はまだ戦えます!」

好戦派は未だにルルースに声をかける。しかし

「え・・・エンジンエラー!システム異常?!」

「どういうこと・・・うわああああああああああ!!!」

CH-53はいきなりエンジンが停止して、そしてローターが吹き飛び、そして落ちた。

アップル・ルルースはあっけなく、学園都市を流れる川に沈んだ・・・。

それを眺めてたのは

「ふふ、成功」

ベニーは双眼鏡を覗きながら言う。すでにアップル・ルルースは処分対象だったので、諜報課は暗殺を決定してた。ベニーはころ合いを見て、スイッチを押す役目だった。

「少佐、お疲れ様です」

「ええ、疲れたわ、北部から首都まで強行進軍だもの・・・」

側近軍曹が少しにやつき

「それと、あなたが救った乱気流隊長、無事任務を終了したらしいですよ」

「ぶっ!」

ベニーは少し戸惑う。まあ仕方ない。彼に好意を持ってるからだ。しかし彼女は

「まあ、とにかく無事で良かった。私はもう入り込める隙は無いわ、遠くから応援して・・・また堕ちたら救ってあげるわよ」

彼女は最後は微笑んで立ち去る。

「素直じゃないですね」

側近たちも笑いながら付いて行く。

こうして序章は幕を閉じた・・・。

 

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混迷と焔 歯車が回りだす

オーシアは長い暗黒期がはじまっていた。

まず、絶対勝利を信じていたオーシア軍が、まさかの侵攻失敗、さらに首都まで爆撃を受けての降伏をした。

オーシアの歴史上、奴隷解放などの南西戦争以外では初の外敵攻撃だった。

オーシアの経済はまず、北部の綻びから崩壊が始まっている。北部にある、世界三大自動車メーカーが集結する地域は、爆撃や、オーシア軍の接収で相次いで閉鎖、これにより自動車生産は大打撃を受け、失業者数がウナギ昇りになった。

また首都オーレッドでは、降伏により隠された情報が全て流れ、デモ行進が始まっている。さらに、迫害を続けていた北オーシア大陸西部に済む原住民オーシア人が蜂起して一部小競り合いが勃発。

そしてこれが一番の問題だが、オーシア海軍強硬派が無理やりオーレッド湾に艦隊を集結させて、しかもFCMBの攻撃で多数浅瀬地帯に沈み、掃海しないと、大型船が通れない地域が多数発見される。

とどめは賠償金である。この戦争はオーシアが始めて、オーシアが負けて終わる、完全にオーシアが悪い戦争になっている。ここでは弁解の余地も無く、オーシア連邦はFCMB加盟国に対して、復興費用肩代わりで、推定、年間国防予算2年分を払う事になると言われている。

オーシア連邦議会は未だ機能不全だが、今日の午後にはハーリング大統領の演説で

連邦警察及び警察行政の予算を削減

オーシア全軍合わせて、2万の将校、20万の下士官兵士を解雇、今後6年間、新兵器開発全面凍結、新入隊希望者例年の30分の1に削減

オーシア連邦海軍で損失した空母補填はせず、今後は世界各地の部隊を引き下げを決定、地球全9軍に分けてた組織編成は世界3軍、最終的には総軍として一個にまとめる。

殉職者の軍人恩給一時見送り、旧式武器を全面開放、今後導入する兵器全面キャンセル。

他公共事業、非公式の公的資金凍結、特殊部隊削減方針を打ちたてた。

しかしそれでも、証券会社も混乱で休業、経済が停滞、連邦準備銀行は買いオペレーションを続けるが、長期融資の申請殺到で処理が間に合わず、当面の失業率、インフレ率が急上昇は確定していた。

FCMB諸国も次々と声明を発表する。

ウスティオは、未だ抗戦を唱えるユーク軍、オーシア北部軍との完全決着後、オーシアとは円卓永久不可侵条約締結と5年計画で軍縮を進めると発表した。

具体的には、予備機含め700機以上有してた戦闘機部隊を高齢パイロットのジョブチェンジ推奨と傭兵航空隊縮小で予備機含め450機体制にする。

陸軍は、5個軍団体制を方面軍に改称、准師団、旅団を増加して、今までの兵員の約20%削減を目指す。さらに、機甲部隊はアリエテ次世代のMK3または新世代戦車導入で削減する。

オーシアとの軍事緊張が解けた結果、だいぶ軍事縮小をしたが、今も警戒は解けず、今後も資源輸出の大規模な資金で国力以上の戦力を有する。

サピン王国は、アリシア・ラン。エリーゼの号令で、軍隊は縮小も拡大もせず、戦時前の戦力を今後も維持する事を決定。

オーシア湾の壊滅は、同じ対岸のサピンも早急に対処しないと、海運に影響を及ぼすので、オーシアと共同で掃海を開始する予定である。

今回の開戦が遅かったため、サピンの被害は極小だった。

レクタ、ファトは、ベルカ連邦の国家事業を受け入れ、協調体制に、特にレクタはこの5年間で、GDPは2倍になると試算される。

ファトは、潜在の先進工業力を使用して、急成長を始めている。

最後はベルカ連邦、

ベルカ連邦は大規模な軍事力を世界に派遣、オーシアの代わりの世界の警察になろうとしている。

そして、海軍国家ではないが、大型空母艤装中の1隻から追加で2隻、空母戦闘打撃群構想を発表する。

この増強計画は事実上、FCMB加盟国も自分の国の配下という目論見もある。

ちなみに、5年後のFCMB加盟国が発表する軍備構造は、オーシアを越える軍事力になり世界トップになるとみられる。

3/7

2358hrs

ヴァレー空軍基地

基地内はまた哨戒の部隊以外、完全に静寂になっている。

他はオーシア降伏で、ひとまずの危機が去った反動、またはオーレッドで見た無差別爆撃を忘れたいかのように酒を煽って寝ていた。

1人の男が公衆電話の横で腕組んで待つ。彼はラリー・フォルク

コインを持って、時間を待つ。そして秒針短針長針全て重なった時

「よし」

彼は呟くと、素早くコインを10枚入れて、国際電話、そして1分以内に少し長めの電話番号を打ち込む。これによりある場所に繋がり、そして記録が残らない。

コール音は1回、すぐに繋がる。

「はい、ニストラクチャー、推進事業部です」

無機質な女性の声、ラリーはすぐに

「天は開かれた、今こそ世界に線を無に、片羽だ」

「・・・・、ようこそ、少々お待ち下さい」

女性は少し和らいだ声で電話に待機のコールが鳴る。

しばらく流れてたら、

「ようこそ、部長のブンナーだ」

「茶番はよせ、魔術師、俺は早く済ませたい」

「まあまあ・・・とにかくオーレッドは御苦労だった」

「ちっ、あんな腐った作戦、俺は大嫌いだ」

ラリーは心から嫌悪感を吐きだす。

「それで・・決心したか?」

「ああ、今すぐアジトを教えろ、行ってやる」

「それは駄目だ」

魔術師は即答

「君は少し焦り過ぎだ・・・これからの作戦行動中に君を絶対に迎えに行く。だから待て」

「・・・信頼していいのか?」

「ああ」

ラリーは怒りを我慢して冷静に言う。とにかくもう失望した。

「・・・・分かった。出来るだけ早く来てくれ、魔術師」

「了解した。これからもわが社を御贔屓に、それでは」

魔術師は電話を切る。最後までしらじらしい奴だ。

ラリーは受話器を置くと、ため息をついて

「ふっ!」

ごっ!壁を殴りつける。

「今は我慢だ・・・国境を消すまでの我慢だ・・・」

ラリーは静かに呟く。

3/8

2415hrs

北オーシア大陸、ベーリング海深度400m

超深い海の中、月の光も入らず、変温もとっくに過ぎた冷たい海の中。そこに無音航行をする超巨大潜水艦。

シンファクシ、リムファクシを遥かに上回る大きさ、しかし人員は、通常動力潜水艦並の人数の世界最強の第3番艦、ナグファルム

この艦は、複雑に見えて、非常に簡素である。ソナー、操舵、VLSからの弾道ミサイル巡航ミサイル、人工衛星と通信する装置、それだけだ。本当に照準は人工衛星任せの超大型潜水武器庫である。

その中で、艦長、グリス・メナット少将が発令所に座る。そこに

「艦長」

「なんだ?」

副長がナグファルムの解読装置以外では読めないメモリーを渡す。

「ユーク中央海軍本部からの緊急らしいです」

「どういうことだ?」

グリスはメモリーを解読装置に入れてロードする。そして、グリスしか読めない暗号文が浮かぶ。

「・・・・!」

グリスの顔が少し驚く。

「艦長、なんと書いてあるのですか?」

「ふむ・・・君にも見せるか」

指紋認証で、ユークの文字に代わる。

「これは・・・この命令は?!」

「もうオーシアは死にかけてる。北オーシア軍も、続けようにも兵士が動かない・・・これをカンフルに最後の突撃敢行をさせるつもりだな、我々もオーシアが動けず、資源二大産出国の片割れが倒せないなら、最後ぐらいトラウマを植え付けようというわけだ」

「しかし・・・ばれませんか?」

「うちの武器はこいつみたいにステルスの高い奴だ、まあやるしかない」

グリスは伝令通信機を持つ

「発令所より、我が艦はこれより北オーシアにカンフル剤を打ち込む。全クルーに告げる。これは最大にして最悪の作戦になるだろう。しかし我ら誇り高きユーク海軍、中央の命令を完遂することを誓う。同志よ付いてきたまえ!以上!」

グリスは通信を置くと

「さて・・・忙しくなるか・・・」

これからの作戦に戸惑い少し、興味を沢山心に秘めて、発令所から出る。

時を巻き戻して・・・

3/8

0900hrs

エウレノ空軍基地

中隊規模のハンガーには、2人の姿

「だから~!これじゃ強化の意味ないじゃないですか?!」

「揚力と機動性が確保できない前進翼を提供するつもり?」

「今世紀最大の技術革新レベルと断言しても遜色ない仕上がりを?!」

「まだよ・・・あなたは詰めが甘いわ・・・」

敬語と暴言が混じってるセアラに軽く返すジャスミン。

彼女の愛機、SU-47で議論は白熱をしている。

元は技術職だったため、セアラは気を抜けばすぐにジャスミンに論破されるので、必死の攻防が繰り広げられていた。

とは言っても、明日にはベルカ西部国境線、北オーシア軍最前線に投入されるために、今日には改修を済ませないといけない。ジャスミンはこの4日間、話続けて、楽しいと実は思っている。なので・・・

「とにかく今日までには片を付けませんとね!」

「別に今日までじゃなくていいのよ?」

「はい?」

セアラが傾げる。そして思いっきり嫌な予感しかしない

「私が申請して・・・ほら」

ジャスミンが出してきたのは、IDカード、しかしただのIDカードでない。なぜベルカ空軍紋章?

「あなたは正式に、北オーシア鎮圧の期間中、私の専属整備士になるのよ」

「・・・・・、はい?えっ?ちょぉお」

「光栄に思いなさい、私があなたをいじめてあげるから・・・」

ジャスミンが妖艶な笑みを浮かべ、高い身長から低身長のセアラを見下し

「理不尽だーーー!!!!」

セアラは叫んでいた。

さらに、この専属という話を聞いた、紳士さんがた暴走、セアラはさらに理不尽な目に遭ったという・・・。

1000hrs

サピンウスティオ国境線、シルバーマーク基地方面

空には、武装を最低限にしかしていない、平和そうに見えて大編隊が飛ぶ。

アピート市を吹き飛ばそうとするのを防いだ前代未聞の航空部隊、特殊戦術航空団所属の、サザン、トゥル、バッカス、メビウス、そして226大隊を運ぶ輸送機だ。

彼らは祝勝会を開く暇がなかった。

帰還した直後には、アピート市での事を朝から晩まで延々と話して、終わったら、すぐに北の守りに投入されることが決定していた。

巡航ミサイルとアピート国際空港に用意されてた、大量の空中給油機、中には航空燃料でなく、特殊揮発性のいわゆる燃料気化爆弾系統の材料が詰まっていたと判明した。もしそれに着火すれば、空港はおろか、市街の7割が爆風で崩壊する試算が出た。

調査中言われているが、実際にはどこまで調査が出来るか分からない。

これはカロン司令から教えてもらったが、この多国籍軍は、国境をなくし、全ての国を統一、融和させようとする、国境無き世界の仕業と推測される。そしてそのクーデター組織は強大で、今回の戦争の張本人、アップル・ルルースをそそのかしてから始まり、多数の国の上層部を操作したと言われている。

そして北オーシア軍も、最近は活動が活発になり、ハーリング政権の軍事凍結制裁を受けてないレベルにまで軍隊の再編成が出来てると聞いている。しかしまだ士気が高いわけでないので、なんらかのカンフルが必要だが・・・。

そのため、ベルカを中心に特殊戦術航空団は全機北オーシア警戒、及び国境無き世界に柔軟に対応する即応命令が発令された。

俺達は特別に南部のシルバーマーク待機、場合によって重要物資運搬護衛や哨戒飛行が決定している。

「「はあ~・・・」」

ため息ついてるのはトゥルの2人、相も変わらずの密集編隊。

グレンのSU-50の愛称がエレンシルフィード。

こいつの機体のエレンの部分、皆様、おわかりだろうか?ヒントはエレノアの愛称・・・・とりあえずどうしようもない・・・。査問会の合間も愛を育んでたらしいので・・・たまたま呼びに行かせたホークが扉前で骨抜きになっていた。

「祝勝会!戦勝会!慰労会!どの口実が一番OKかな?サザンリーダー?!」

「ん~、とりあえず、特殊戦術航空団に来た今、どの口実も即却下の可能性しか感じないが・・・」

厳戒体勢だし・・・。

「それじゃあ航空団初戦果会!」

「この戦いは緘口令敷かれてるぞ!」

「くぅぅぅ・・・」

オリビエは引かない・・・その時

「おい、バッカスリーダー、これ以上の発言はゆ・る・さ・ん」

言葉の一語一語に力をこめる女性、ミナー司令

「え・・・いやあの!」

「言いわけ聞かんぞ?最後通牒だ」

「サーーイエッサー!平和になるまで禁酒します!!」

オリビエ即座に変更した?!

「たく・・・まあしばらくは査問会続きだったから・・・慰労程度は・・な」

「はい・・・、てことは?!」

「ああ、いいだろう。しかしこれ以上口出しは厳禁だぞ!」

ミナーさんはやはりツンデレだった!バッカス隊全員無線封鎖して喜んでるよ。こんなの無線で流したらパンクする。

結川が笑った時

「メビウスよりサザン、バッカス・・上」

アイノから冷静な声、無線を止めて聞こえないオリビエに向けてハンドサインで上を向かせる。

「なんだ・・・あれは?」

バッカスの声が真剣に戻る。どの機体でもない、見たことがない特殊な機体・・・いや、F-15にも見えなくもない機体が俺達の上を飛んでいる・・・。

「レーダー感知なし・・・4、どうだ?」

「・・・駄目です、高性能なECMか・・・それともなにかの撹乱システム?」

「というよりいつの間に来てたんだ?!」

「知るか、サザンリーダーより、各リーダーはあの航空機を囲むぞ、他は広範囲警戒と輸送機護衛だ、UC-2部隊!緊急!高度を2000フィートまで下げろ!」

<<了解した>

「護衛に回ります!」

次々と散開していく部隊、そして高度を上昇させる隊長機たち、全員エース、最精鋭特殊戦術航空隊の仮結成だ。

高度12000フィート

かなり高い高度にそいつはいた。

「マークは?」

「確認できない、国籍不明・・・場合によっての交戦許可は?」

「ウスティオ領内侵入であとでシルバーマークにごり押しすれば行ける。なので必然的に俺か、バッカスリーダーが攻撃開始する、緊急無線オープン」

結川は機体を眺める。・・・これ、エースコンバットのどこかのステージで・・・とにかく

「こちらウスティオ空軍である、ウスティオ他FCMB空軍なら貴機の所属、階級を答えよ、そうでなければ相応の処置を取らせてもらう」

相手からは無言、後ろにつく結川とオリビエはレーダー照射を開始する・・・刹那

「ん?HUDがおかしい?」

いきなり目の前のHUDが歪む。

「・・・!特殊妨害電波!ブレイク!ブレイク!」

「「っ・・・!」」

増援に来たエリーゼの言葉に、囲ってた4機が一気に散る。

「危なかった・・・あれはX-47でも使用されてる特殊マイクロ波に似ています!」

「あんにゃろう!」

グレンが切れる。確かX-47のさっきの攻撃でやられやんだっけ。

「敵逃げます!」

「ちっ・・・サザンリーダー!ウスティオ領内緊急撃墜対象発見をみなしこれを排撃する!セーフティーアウト!FOX2!!」

結川が宣言すると、2本のAAMが空を翔る・・・しかし

「なっ・・・」

信じられない光景だった。AAMが完全にどっかの方向に行く・・・てか

「サザン!1本地上に行った!」

「自爆させるぞ!」

緊急自爆ボタンで爆散させる。

「くそ!追撃を許可してくれ!叩きおと「やめろやめろやめろ!!!交戦中の部隊に告ぐ!今すぐ戦闘を中止しろ!」??!」

いきなり警戒レーダーサイト群からの緊急無線、グレンがすかさず

「しかしあれは国籍不明の奴だ!敵ならどうする!」

「ベルカから緊急入電が入ったんだ!試験機をそちらに飛ばしてると!対IFF反応、レーダー反応極小隠密装置の試験飛行だと!」

「んな話聞いてるかぁ!!落とされかけたんだぞ?!」

「俺達も聞いてねえよ!!しかしな!これはベルカ政府からの直々の通達だ!今の攻撃は、不明機に対する立派な処置として水に流すが、これ以上は法廷に行くぞ!完全ベルカ有利のな!」

管制官は冷静をなくしてまくしたてる。

「・・・・くっ・・了解した・・・通常に戻る・・・」

「理解に感謝する」

通信が切れる。

「トゥルリーダー・・・落ち着いたか?」

アイノが聞く。彼女は落ち着きすぎだと思うんだ。

「ああ・・・バッカスリーダー、今日は呑むぞ!!」

「待ってたその言葉!この怒りは今は酒で沈めて、あとであの機体を沈める!サザンももちろん?」

「参加するよ・・・俺も今最高に腹が立ってる」

結川は言いながら、あの機体はなんなんだ・・・と去っていく際残した敵の飛行機雲を眺めて考えた・・・。



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負け続けの老将

3/4

1200hrs

北オーシア大陸北方、ファト連邦経済水域25マイル手前

ファト経済水域手前で漂流する艦

オーシア海軍第3国防艦隊、戦時特別編成、北オーシア東方哨戒地域担当旗艦、空母「ケストレル」

この艦はベルカ、ファト連合軍が北オーシア大陸を東に回り、オーレッドに回る首都東廻船ルートの海上封鎖の為に派遣された。

しかし、開戦後西廻船ルートに居た第2国防艦隊壊滅から始まり、徐々に補給や増援が減少、さらに西廻船ルートの封鎖の為に第3国防艦隊はかなり広範囲に人員が割かれ、現在ではこの艦隊も開戦時12隻あったが、現在では、激しい空戦での消耗で既に箱と化した空母、情報収集船「アンドロメダ」、そして警護の駆逐艦、ネベロサーニ級駆逐艦「ダッチャー」、「サーニバル」、コロニー級高速ミサイル艦「ピック」、そして虎の子イージス駆逐艦、ゴンゾーナ級「シークラル」、最後はベルカからどこに密輸するか分からない、戦闘機のパーツを大量搭載した拿捕した大型貨物船、既に中身のほとんど、乗員ははケストレルに移送が完了しているので、放棄可能だ。

そしてそのケストレル艦内

「艦長・・・海軍本部からファト通行同時にベルカへ制圧攻撃作戦を始めろと・・・」

副官のバック・ヒィアー中佐が言う。艦橋で外を眺めていた退官間近の老練な男性、彼は帽子を脱ぎ、綺麗にオールバックで整えられた白髪を撫でながら振り返る。

ケストレルを今まで激戦の中、無傷に導き、圧倒的統率力で例え仲間が空で、海で散って、沈んでも、次の戦いまでには士気を戻して、どんな不利の状況でも戦って来た人。

ケストレル艦長、ニコラス・A・アンダーセン大佐

「負け続けの我々に何を期待してるのかね?そしてここまでの損害を出して労いの言葉無しとは・・・悲しくなる軍隊だな」

決して大声でない、しかし誰もがその言葉に重く感じる。

アンダーセンはどんな時も部下を見守り、オーシアを今も愛している。しかしあまりにも報われない。今ではこの艦での生き残りパイロットは、対潜哨戒機、早期警戒機、そして戦闘機はソーズマンこと、スノー大尉他数人のパイロットだけだった。

「こう電文を返せ、我々はもはや箱の船、飛行機の内空母はただの船です。そんな船は昼寝をしていますと・・・」

遠回しにはっきりと命令拒否、ヒィアーは何も反論せず、ただ

「了解いたしました」

と敬礼して立ち去る。既に戦力が無に等しいのは本部も分かっている。ただ更に上層部がうるさく言ってるので渋々打電をしている。でなければこの4回目の命令拒否はさすがに艦長更迭かそれに類する処罰が下るはずだ・・・。まあ、この艦長の真の実力を知らない者は、ただの腑抜け老人としか見ているのかもしれない。

「さて、我々は本当に昼寝をしていた方がよろしいのかな?」

アンダーセンは艦長席に座る。クルーのほとんどはこの動かない船の為に体を休めている。本当に昼寝をしてしまいそうだ・・・と、うとうとし始めようとしたその時

「艦長!」

「何だね?今度は本当にやらねばならないのか?」

ヒィアーが文字通り転がりこんでくる。アンダーセンは席から立ち上がり聞く。しかし彼の表情は真剣で

「打電です・・・ベルカのザンナル上級大将、及びハーリング上院議員からです!アンドロメダに非常に高度な暗号文で送られてきました」

「敵国から?そして行方不明のハーリングからか・・・」

アンダーセンは驚きながら、打電文を受け取る。打電の内容は艦長級の者にしか教えられてない通称コードEという暗号文。文字を目で追いかけ、理解していくと・・・

「・・・、なるほど・・・、負け続けの我々にも、勝機の気が見えてきたようだな」

「・・・え?」

アンダーセンは艦橋にある通信機の通話口を持つ。ここに居る友軍艦全クルーに聞こえるように通信転送もして用意する。そして

「ケストレル艦長にして、この艦隊司令より命令を発す、その前に・・・特殊無線であるため、ブラックを止めろ」

この言葉にクルーがざわつく、特殊無線でブラックを停止とは、非常に高度な、友軍にも漏えい絶対防止の超絶対命令、ブラックボックスの停止をして、作戦記録すらも残さない。同時にその艦に関して、その時の発令いかんに関しても本国が察知してないという完全自己責任というシステム。

全艦からブラック停止の報を受けると

「今から伝える任務は、君たちがいかなる状況下におかれたとしても、絶対に他言してはならない命令である。それを心してから聞いてくれ」

アンダーセンは間を置いてから

「アンドロメダに秘密通信が入った。発信はハーリング上院議員、そしてベルカ陸軍地域軍長、ザンナル上級大将からだ」

クルーのほとんどが驚きに包まれる。

「通信内容はこうだ、今より我が艦隊はオーシア海軍より離脱、北オーシア大陸に接近する、ユークトバニア海軍ナグファルム撃沈、及び、国境無き世界に拉致をされている、ニカノール元首首相を救出する秘密部隊を支援する。具体的にはベルカ経済水域内で待機、秘密部隊が救出成功次第、その部隊も回収する。

ベルカ領域内では、ザンナル上級大将の圧力で、そして絶対に近い未来、オーシアは降伏をする作戦は展開を開始している。危険性は大分低くなるが国境無き世界、ナグファルム、そしてユーク軍・・・負け続けの私だが、それでも信じてきてくれる戦士たちよ・・・どうか、私に力をくれないか?」

アンダーセンが言い切る。通信機からはだれからも無言だ。しばらくの沈黙が続き、3分たったころ

ギュオオオ・・・

重低音なガスタービンエンジンが轟く。最初に動いたいのは、一番機動力あるピック、そしてその後ろから次々と動き始め、ケストレルを囲いこむように、デフコン1レベルの重装甲体制に移る。つまり、全員参戦・・・。

アンダーセンは目を閉じ、そして通信機を持ち

「ありがとう、君たちの働きは後世に語り継がれることは無いかもしれない、しかし歴史の一部に、縁の下での活躍は絶対に残るだろう」

通信を置くと

「全要員に告ぐ、我々は今より作戦を開始する。針路2-8-5!速力20ノット、ファト領海を迂回しつつ、対空警戒、そしてベルカに入る、以上」

「針路2-8-5!速力20ノット!対空警戒~!」

「対空警戒~!!」

「船起動開始せよ~!!」

クルーが一斉に動き出す。生き残り5000名あまりが目の輝きを取り戻して、働き始める。

「艦長、こんな放送したら・・・」

「ふむ、そろそろだろう」

ヒィアーは声を出し、アンダーセンがにやりとする。

その時、艦橋の梯子、廊下から走る音、そして

「「どうしてそうなったーーー?!?!」」

「おお、ジャスト」

突入してきたのは、海軍航空隊、マーカス・スノー大尉、そして、サンド島取材の対象、ジャック・バートレットが行方不明で、急遽ケストレル従軍取材に変わった、アルベール・ジュネットだった・・・。

私はいくつかの激しい戦いをケストレル甲板から見た。艦は12隻の内、撃沈2、中破、航行不能2、曳航兼護衛帰還担当で2、残りは6隻、そして戦闘機は10機も満たない数字になっている。

従軍取材を通して、私はこの戦争の見えない部分をたくさん知る。

そして忘れられない3月4日、アンダーセン大佐の言葉で、作戦は始まる。

私にとって忘れられない、絶対に世間に出ない、一代スキャンダルの軌跡、ここに記す。

オーシアタイムズ、非常勤契約フリージャーナリスト

アルベール・ジュネット



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飲んで飲まれるな

3/8

2300hrs

シルバーマーク空軍基地内酒屋「フェスタ」

俺の名前は結川、最近、個性豊かな・・・豊かすぎるメンバーに存在消されやすい主人公だ・・・てか一時、主人公消失(ヒーローロスト)やってるのでもう突っ込まない・・。

よし、現在の状況を冷静に分析しよう。

現在、シルバーマークに降り立った俺達は、形式的に査問を受けて、ベルカ試作機と言う名の不明機との戦闘に関しての報告書を書いたのち、ミナー、カロン両司令の計らいで、2日後から哨戒任務にあたらせてくれるという事で今日は祝勝+痛飲会とあいなった。

最初は今回参加した、サザン、バッカス、トゥルのメンバーだけだったが、噂を聞きつけた、シルバー残留組のヘルエンジェル、そして後から査問を終えて、途中給油で来たスタークロスを巻き添えにして、さらに、たまたま新人パイロット部隊も来ていて、特殊戦術航空団パイロットから話を聞きたいと言う真面目な人が集結。

それに同調して、深夜から明日までのスクランブル要員、管制官を決めるじゃんけん大会を行い、要員にならなかったメンバーがただ酒が飲めると結集。

極めつけは226大隊も、本拠地帰還を明日に延ばし参戦。

酒屋フェスタは今までにない盛り上がり・・・というか、収まりきらず、食堂椅子、デスク、基地のベンチなどあらゆる備品を総動員してオープン酒場、ビアガーデン状態になった・・・てか、行動力ありすぎだろ・・・。

酒屋も、シルバーマーク基地外の夜の街同盟に援護を要請、色んな制服を身にまとった酒屋スタッフと、これもまた外部から持ち込んだ大量の酒と食料をむさぼり食う。

酒屋の店主が「あとで給料から天引きしよう」という小声が聞こえたのは気にしない・・・。とりあえずただ酒狙いだった安月給部門の皆様、残念!

ちなみに俺にも給料が入って、確か日本円にして空自時代の約1.5倍、特殊戦術航空団手当だそうだ。万歳!

まあ、色々な状況になってます。

「ビールなんて酔えねえ・・・酔うならテキーラ、スピリット!」

「隊長!ここにテキーラが!」

「でかした!1人一本行くぜ!」

「「「さあ、一気!一気!一気!」」」

テキーラ一気飲み大会をするバッカス隊男性陣・・・死にますよ

「隊長?私、今凄ーーーく胸の奥から熱いものがあるんですが?」

「それは・・・恋かな?」

「そーだったらいいですね?休日出勤させてまでどこまでも仕事させる無能上司に怒りを感じてるんですよ!」

「申し訳ない!!」

「本当に見捨てたらどうなるか分かりませんかやってますけど、本当なら、もっとこの基地に輸送機搬送で来ているアリエテを見たかったんですよ?!」

「本当に悪かったーー!!」

度重なる隠れてた書類整理を道連れにされるユーマが激怒、土下座するギュンター、ねえ、階級差っておいしいの?てか、噂に聞いたけど、あのギュンター少佐は、経済崩壊時代からの猛者で、ベルカ軍トップクラスで、機体改造とか違法しなければ将軍にもなれる有能者と聞いたんだけど?!

「シュワッちゃーーー!!!ヘル&ヘブン?!」

「「「誰かあいつを止めろ?!てか意味わかんね~?!」」」

「・・・俺はお前が居るだけで嬉しいが・・・」

「・・・プしゅ~」

「「「声出して気絶した?!てか、クライシス!お前はさらりと何言う?!」」」

スタークロスのジェニファ暴走、クライシスの言葉で一発終了!てか、今日は脱がないので心なしか残念がってる人が多い?!それとドMの皆様、あからさまに攻撃を受けようとするには引きますよ・・・。

「隊長・・・」

「なんだ?エレノア?」

「暑いです・・・」

「まあそりゃあ、ここまで密着してるからな~・・・」

「離れた方がいいと思いますが?」

「全く逆のことしてる君に言われたくないよ?」

エレノアの細い腰をグレンの腕が回り、エレノアはコップ片手にしっかりと持ち、片手はグレンを抱いて密着している。

あら~?周りになんか持って不思議な笑いを漏らしてる方々が一杯・・・。なんか雰囲気は、デッドorデッド・・・。しかし彼らのピンクな空気にそんな黒い想いは通じない!

そして我がサザンクロス隊、とりあえず、普通と言いたいが、干物は調子に乗ってさっき俺にウォッカを頭からかけようとしたからとりあえず干物にしよう、カラッ、パリッになるまで・・・。

「姉さん・・・何してるの?」

「愛しい弟が潰れたら介抱しようと・・・」

「その手に・・・あるのは?」

「空気をたくさん含んで口当たりまろやかの、さらりとアルコール度40%のオレンジ味のきついお酒、ウスティオ名産カクテル、クラッチェよ、お酒に弱いあなたが弱い果実酒しか飲まないから混ぜようと・・・」

「・・・・・、じゃあ、今俺が飲んだ酒は?」

「まさしくこれ」

「・・・・」

「・・・・」

「・・・・、バタッ!」

「倒れたようね、弟が沈んだので私が介抱します」

冷静な表情で口元緩みまくりのエリーゼが、潰れたコーノを拉致する。・・・姉弟の一線が危ういな・・・。

「だあらギューーん!て!ギューん!」

「ババババっと撃って、ふしゃーちゃるんじゃ?!」

「わけわかんね~!でも、バーーと、ギュウウ!だよ!」

うん、三つ子たち、この前の祝勝会より更にひどくなってるな!

「それでそれで!その国境会戦ではどんな事例が!」

「んー、確か航空部隊の一部隊が・・・」

「「「おーー!!」」」

ホークは新人パイロットの質問攻勢を一括で受け止めている。

しかし元来、初対面とはあまり話さない性格か、新人の貪欲さに引いたのか、さっきから救援要請のアイコンタクトがされてるが、要請を受けた人は全員親指を立ててグッドラックと、完全にホーク任せだ。

そして俺だ。

少し前まで、俺は研修で行ったドイツビールに似た味の黒ビールをちびちび飲んでいたんだ。

そんなさびしい男の腕に猫が一匹・・いや、本当は1人。どういう事か?

ここで作者のとてつもなく無駄な豆知識

人間というのは、普段は人づきあいなどで心の真の部分を晒さないためにも、素面の時は大部分の人間が本性を隠し、疑似の心で人と接する。

しかし、お酒という魔力は強力で、今まで、脳の自制や、心の鍵を麻痺させ溶かしてぶち破るという力がある。

これが発揮されると、よくある事例「普段温厚で優しい人が酒が入ると短気になる」これは偶然でも何でもなく、ただその人の本性がお酒で露わになっているのである。

本性を見破るなら、お酒を飲ませるのが一番なのである。

さて、本題に戻ろう、

俺の腕に抱きつく人・・・それは

「にゃーにゃーにゃー」

酒で完全に甘えん坊になっているハート少佐。ちょっと待てと思うだろ?俺もその意見に激しく賛同の意を表したい。

聞いた話だが、元から軍に入隊前から純粋な子だったらしい。さらに言うと、この荒くれ大隊にも死んでこいとは言うが、実際の戦死率は開戦から1.5%以内と、ウスティオ陸軍の最大にして総動員の解放作戦「南ベルカ国境会戦」での動員された部隊では一番少ない率だった。

「ふみゃーんにゅー」

完全に酒に溺れて、上目遣いしたのちに結川の腕に顔を擦りつける。まさしく猫だ。

さらにだ!あの特殊音声で只今絶賛頭を撫でたい衝動に駆られてるんだが?!既に空いてる左手は今まで持ってたコップを置き、ついハートの頭に手を置きそうだ・・・

[我慢です、離さない・・・]

その瞬間、またトロンとした表情で上目遣い・・・もう無理だ・・・。しかし辛うじて撫でないのは理由がある。それは背後から、226大隊の皆様が俺を監視してるんです。にっこりと、鈍器を持ちながら・・・。

いくらスクランブルで鍛えた足も、彼らから逃げるのは不可能・・・てか、現在進行形でハートさんの攻撃で力が抜ける。

もはや限界が近かった。俺は航空学生時代から、女性経験は無いに等しい、これ以上の攻撃は、理性という防御線は決壊寸前だ・・・。つい手を頭に近づけた瞬間

「にゃん♪」

素早く左手に頭を擦りつけてみるハートさん、俺はもう・・・無理だ!ええいままよ!!撫で始めた瞬間、女性特有の柔らかい髪が妙に心地が良い。

ホワ~として、背後の226大隊の皆様が「はい私刑~」のごとく近づき始めた時

スコーーーン!!

鉄製灰皿が結川の頭を直撃する。見事なまでのストライク、226の皆様は歓喜の声をあげる。一体だれが?それは・・・

「隊長!いくら甘えられてもセクハラは駄目だと思います!」

憤慨した表情でアリチェが近付く。結川は

「セクハラじゃない!この状況なら逆だと思うが?!」

「にやにやしながら、触るなら私にして下さい!」

「はいっ?!」

部下に手を出せるか?!ドキッとしたのは内緒だが!

「酔ってるのかアリチェ?」

「酔っていますよ!お酒飲んでるんですから!」

アリチェは今までにないくらい大声で、捲し立てる。

「ハート少佐!隊長から離れて下さい!」

「にゃー!中佐さんはいい人だから離れるつもりはにゃいよ!アリチェ・カナーリ大尉!」

「・・・・」

「・・・・」

えっ・・・なにこの沈黙・・てかハート少佐、喋れたの?!そして・・・

「「りゃああああ!!!」」

2人が取っ組み合いを始める。本場空挺で仕込まれた少佐の圧倒的優勢だが、アリチェも引いてない。周りから歓声とどっちが勝つか賭けている。

結川が唖然としていると

「隊長~!あんたはもてるね~!」

酒瓶片手にグラッドが絡んで来た!

「うるせえ干物!吊るされろ!」

「はうっ?!」

結川が手刀を入れて、グラッドを気絶させる。

「よし、後でつるそう」

結川は2人の取っ組み合いを眺めた。

のちに、結川は「2人の美人に自分を取り合わせた人物」として、同世代独身隊員からうらまれたという・・・。

おまけ

「ちょっ!何でまた吊るされてんだおれ?!」

翌日、グラッドは格納庫でまた吊るされて干物にされてのは言うまでもない・・・。



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亡国

3/9

0700hrs

シルバーマーク空軍基地オフィス

酒に強く、宴の犠牲者の中では回復が早かったギュンターがオフィスを素早くかける。

今日は宴以前から決まっていた完全に軍務が解かれる一日。しかし彼は決定的なミスを犯していた・・・。

書類の数枚・・・しかもかなり書く間違いなく3時間コースの書類をうっかり忘れていたのだ・・・。この休暇が終わると、明日からは超ハードミッション、南部のベルカ領内採掘場に未だとどまる、北オーシア軍並にうざいオーシア残党軍に連続空爆任務が待っている。

「よーーし、だれも居ないな・・」

彼の任務はただ一つ。素早く事務処理能力ピカイチのユーマの[ギュンターの手伝いでそんじょそこらの商社の社員よりも能力が高くなった]デスクに書類を置く!彼女なら文句言いながらも1時間で終わらせるだろう!!

超他人になすりつけ主義の隊の隊長、文句を言ってもやってくれるユーマに完全に依存している。

さて書類書類と・・・無い?!

ギュンターにあてがわれたデスクには書類が見つからない、その時

「はい、これを探してましたか?」

「お!そうそうこれだこれだ!ありが・・・」

ギュンターは振り返り笑顔が凍る。そこには笑顔のユーマさん。

「あれ~?結構お酒強かったけ?」

「まあまだ少し頭は痛いですが、直感で起きたので・・・で?これは何ですか?」

「ん~?未提出書類?今日提出だよ~」

「ふざけた事は言う隊長は・・・」

「ん~・・・ちょっ!マジやめ!しまるしまって・・・」

少尉が少佐の首を締めあげる図。階級差はログアウトしました・・・。

「・・・たく、しょうがりませんね。まあ今から始めてどんなに遅くても事務が始まる時間までには終わりますね」

「へ?」

「私が7やりますから隊長は3して下さい。キリキリと働いて下さい」

「ありがとう!ユーマ!」

「感謝は終わってから!それと、今日は今までの残業代、きっちり請求させていただきます」

「・・・・へ?」

ギュンターに冷や汗が垂れる。まずいぞ~、次はなんだ?!

「えええい!ままよ!なんだ!言ってみろ少尉!!」

ギュンターが壊れた!ユーマは一冊の本を出し

「あの・・・このカフェの・・・おススメだそうでのすで、隊長のおごりで行きませんか?」

差し出されたのは、そこそこ良い値段で雰囲気がよさそうなカフェの特集記事。見れば基地から近い。

「え・・あー、別に構わないけど、だけど、そこは大丈夫なのか?」

「大丈夫です、既にあのカップル、トゥル隊のエレノアさんが、昔、そこの紅茶を飲んでかなり美味しい部類だったと」

「そうか・・・うん、分かった。仕事が終わったらおごらせていただきます」

「はい!」

どんな無茶請求が来るかと思ったら、ギュンターは思う・・・これはもしかしての・・・いや、こんなに仕事を押し付けてたから絶対にそれ以上に金が消えるだろう。

完全にネガティブ思考モードに入る。ユーマの想い、隊長に通じず・・・。

「それではまず仕事を終えましょう!」

「はいよユーマさん!」

さて、どちらが立場が上だ?

仕事を始めようとした時、あっ、と声を出してからユーマは

「そういえば隊長は聞きましたか?なんでも州営空港をベルカ軍拠点基地に一時するという話?」

「いや、知らん、どこがだ?」

「えーと、ウエストベルカ州空港だと聞きました。あそこは開戦前から今までずっとベルカ軍の受け入れ拒否をしてたのにって・・・隊長?」

彼女の言葉にギュンターが動かし始めたボールペンを止める。そして思案顔になりながら

「ウエストベルカ・・・間違いないか?」

「ええ、どうかしましたか?」

「いや・・・少し昔の事を思い出してね・・・亡国ユネーストが協力しただと・・・」

「ユネースト?どこですか?」

首をかしげるユーマ

「そうか、小国すぎてベルカとは近くて遠くて、ベルカの黒歴史だから教科書には載らなくてユーマは知らないし、親の世代でも名前は知ってても歴史の真実を知る者も少なく、なおかつ俺達は未だに緘口令が敷かれて喋れないから知らないか・・・」

「緘口令?どうしてそんなものが・・・」

「ユーマ、俺から言える事は無いが一つだけ教えてやろう。俺の推測が当たるなら・・・多分、ベルカから近い未来、独立国が出るだろう」

「え・・・?どうゆう事ですか?」

「さーあね、まあ頑張って答えを見つけてみな」

ギュンターは笑い、ユーマはムーと膨れ顔になる。しかしギュンターは笑顔ながら裏は違った・・・。

ユネースト・・・か・・・

経済崩壊時代、自分が最初に飛んだ空・・・それが亡国ユネースト共和国威力偵察任務だった。

 

 

3/9

1000hrs

ベルカ連邦

ウエストベルカ州営空港兼州軍基地

この州営空港総責任者にして、ウエストベルカ州軍航空隊№3、テータ・ニロク少佐は飛行場を眺めて驚きが隠せない。

この空港は、長らく大きさに反して、設備が無かった。せっかく3本ある滑走路も、ベルカ公国本国の空港に飛行機が流れる為現在は1本、この州に観光に来る人も、直接ここには来ずわざわざ迂回をしてくる。

今は国内線と州軍航空隊のF-4などが20機程度が時折飛んで、本国からの助成金で成り立ってる田舎空港の一つだった。

それが今はどうだろう。

いきなり州知事から、ベルカ空軍が来ると言う報告を受けたのは3日前、何だと思ったら、北オーシア残党軍攻略の最前線重要基地の一つとして使用決定。あれよあれよという間に最先端のレーダーシステム、管制システムが整い、滑走路整備が出来たと思ったら、今日からFCMB空軍約70機が次々降り立って、てんてこ舞いだ。

テータはこの国の生まれだ。

なぜ州で無く国と言うか、それは言いたくないが、とにかく彼はベルカの国からは嫌われている。その理由は右目の横の刺青に理由があるからだ。

そして彼もベルカ人を嫌っている。尊敬する父親を殺されたも同然だからだ・・・。

FCMB空軍・・・といっても10割ベルカ空軍所属なので、彼らに話しかけるつもりもないし、奴らも自分を嫌い話かけないので好都合だ。

はあ、交換条件があれでなければ絶対に反対したが、仕方がない・・・州の未来の為だ。そんな事を考えていると・・・

「貴官がここの司令でしょうか?」

女性の声に振り返ると・・・まず、大きい、自分の身長と同等の180cmレベルだ・・・。ベルカ空軍のパイロットスーツを着る彼女は微笑しながら近づく。隣の小柄の青年は・・・整備員だが・・・なぜウスティオ空軍?

「ああ、まあこの空港の総責任者だが・・・」

「初めまして、ベルカ空軍特殊戦術航空団、第2戦術航空中隊、ヴァルキューレ隊隊長、ジャスミン・ミリディアナ、階級は中佐です」

彼女の敬礼を筆頭に後ろの部下と思われる女性たちも一斉に敬礼する。

「ご丁寧に・・・テータ・ニロク・・階級は少佐です。こんな小さい州のベルカ空軍の規定では大尉の自分に敬礼はやめて下さい、この刺青が見えないんですか?」

「いいえ、この基地の使用権はそちらウエストベルカ・・・いえ、ユネースト配下にあります。その責任者に敬意を払うのは当たり前かと・・・」

テータに衝撃が走る。なぜこの若い女性がこの国の名前を・・・この30代の前半までなら名前なんて知らないはず・・・。ジャスミンは微笑を浮かべながら

「私の親が刺青入りだったんです。ですから」

「!!?」

「それでは」

もう一度彼女が敬礼してからテータの元から去る。彼女も同胞の血が流れてたとは・・・

 

この州に関する歴史は闇に近い・・・

完全冷戦のさなか、ベルカ公国、オーシア連邦の国境に位置してた、ウエストベルカ州の前の名前、ユネースト共和国。

人口100万も満たない小国だったが、北ベルカ、北オーシア工業地帯の唯一の中立にして中継交易都市国家として存在していた。

1955年、ベルカが傾きの兆しを見せ始めた時、元々国土の北、年間を通じて雪が多く雄大な自然を利用したウインタースポーツ産業、高原では酪農産業を始め、様々な潜在的能力を引き出して、交易の頼りでなく、観光立国を目指した。

1960年、1人あたりGDPは世界の小国の中では群を抜き、そしてこの現ウエストベルカ州営空港、旧中央ユネースト空港を開港。世界から観光客を集め始める。

滑走路は2400m×2、3200m×1、世界最大級の空港で、ユネースト軍航空隊の本拠地になった。

しかし時はベルカ経済崩壊が極まった1980年代・・・

オーシアはどんどんとベルカに向けて領土侵略が始まる。

ユネーストも、オーシア、ベルカの狭間でどちらかに従わなければ理不尽な領土侵略は目に見えていた。

そして史実では、ベルカ陣営にユネーストは自発的に属国併合したと言われているが、実際は違う・・・。

共和国軍の約30倍のベルカ軍勢を国境に配置して、いつでも侵略を可能とした。

領土を焦土にされて、挙句に潤沢な資金を全て搾取されるか・・・

ある程度の自治権を残して、無血併合か・・・

軍は地の利を利用して、最後の最後まで徹底抗戦を表明した、確かにこの国の軍人を主に占めるのは、北の閉ざされた地域を拠点とする戦闘民族、リーフレイン族が大半を占めており、兵士の質は通常の国ではレンジャーレベルと評されていた。

しかし相手は経済崩壊しても軍事大国、勝てる見込みなど無いと断言出来る。

時の大統領は、是非も無しと、国民の命、国の資金を死守するため、1984年、併合を決定した。しかし約束は守られず、一時は公国直轄領という名の搾取指定区域になった・・・。

完全崩壊、資金が枯渇し始めた、旧ユネースト共和国に厳しい課税をかける本国。

幾度となくリーフレイン義勇隊とベルカ軍の戦闘が行われ、このいつまで続くか分からない暗黒時代は4年後の資源発見まで続く。

ちなみに刺青の理由はテータの親はリーフレイン族の軍人で、反逆思想があったため、その家族として、当時17だった彼ら家族にも刺青が彫られたのだ。

1990年、遂にベルカの経済は完全復活宣言、同時に禍根渦巻く因縁の直轄領は特別州に指定され、このウエストベルカ州も実質ユネースト共和国と同じ国土、主権を維持している。

ちなみに、ギュンターの推測通り、この戦争が終了したら、ベルカの監視下FCMB同盟締結を今までの賠償分を含めて、工業豊かな一部ベルカ国土割譲、ユネースト共和国復帰を大統領、州知事で締結している。

「・・・・、その・・お父さんて・・・」

セアラが知らなかったユネーストの歴史を聞いて愕然としている。

「私は元々ならベルカ、ユネーストのリーフレイン人のハーフ。まあ私の父は刺青入れられたのはたまたま帰省した時に刺青入れられて、私はベルカ人として登録されてたので刺青が無いの。どう?驚いた?」

「驚いたというより・・・なんか追いつきません」

「そうね」

ジャスミンはフフっと笑う。セアラと会ってから笑顔が増えているのに、後ろから日増しに強くなっていく視線をセアラは感じる。

それは・・・

「気に食わないわね・・・」

「「「はい」」」

ステラ筆頭のヴァキューレ隊のメンツ、彼女たちこそ真のジャスミンファンクラブ筆頭と言っても差し支えない信奉者が多いからだった・・・。

 

さて時を動かして

1100hrs

ウスティオ共和国

FCMB共同野戦飛行場「B7B」

円卓のオーシア国境側に作られた野戦飛行場、名前は無く、電磁波も円卓内では微弱でも通常の地帯ではまだ高いので強力なレーダサイトで管制されてる飛行場。

ここからも北オーシア残党軍討伐部隊を出す。

そしてその飛行場のブリーフィングルームには

「集まったな、ガルム、クロウ両隊、早速だがブリーフィングを始める」

基地の参謀が作戦内容を伝え始める。

内容は至極簡単

明日の昼前に頑強に作られた敵防衛線の空爆部隊との合流と護衛任務

「簡単そうな任務ですね!」

「そうだな、PJ、お前に彼女が出来る確率よか成功率があるのは間違いないな!」

「ちょ、先輩?!それに自分彼女居ますよ?!」

「「「意外だ・・・」」」

「えええええ?!」

「そこうるさい!」

クロウ隊が騒ぎ出し、参謀が叱責する。サイファー苦笑、そしてピクシーは

「お前ら、作戦ぐらいちゃんと聞いとけ」

「分かってますよ先輩・・・」

全員は薄々感じていた、最近彼の様子がおかしくなったことが、そして明日の任務が運命の日とはまだ知らない。

「質問は・・・ないようだな、それでは明日の戦闘、健闘を祈る」

参謀の敬礼に全員が一応返礼する。

その空気は静かで、妙に重かった・・・。



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地獄の蓋が開かれる

3/10

0955hrs

某所某施設

「フットワークの軽い猟兵遊撃隊はベルカに釘付け、戦争早期終結を望んだハーリング直轄のラーズグリーズ部隊、ケストレル艦隊はナグファルムからの核射出を防ぐために奮戦、特殊戦術航空団も各地に散り散り、完全に計画通りです」

「そうか・・・」

薄気味悪く笑う男が言い、眼鏡のひょろい男が返す。

「ベルカ軍は今朝から石油地区に向けて進軍を開始、北オーシア守備軍は、世界最強の名誉を捨てて逃げ惑うばかり、全く・・・情けない」

薄気味悪く笑う男は頭を振り憂鬱そうな表情を向ける。

「しょうがあるまい、既に本国本隊は撤退を支持、ハーリングの妄言で腑抜けになりつつあるのだから・・・」

眼鏡の男は言う。

「首尾は?」

「ポイントA,B,D,Eは既に地下水路に設置完了、C,F,Gはチームヴァルチャーでの投下は時間通り、1000に完了です」

チームヴァルチャー、オーシア空軍唯一B-2専門の統合爆撃団直轄第111戦術爆撃航空団の7チームの内の3機チームの名称。

「ベルカ軍の侵攻は止まらない、オーシア軍の撤退は止まらない・・・ここまでくれば、我々の権益は失い、そして世界の警察の権威は失墜するだろう・・・私達が動かねば北オーシアは蹂躙されて汚されて、ベルカに全て奪われる。だから立ち上がる」

眼鏡の男が続ける。

「たく、我々がこうもしないといけないとは・・・まあそれで人間のカンフル作用とベルカの新型V2がどのくらいの威力か分かる」

白衣を着た男が言う。

「おいおい、どこでそんな物騒な物を用意したんだ?」

「ふん、まあ色々さ・・・」

無機質な部屋で、乾いた笑い声が妙に響く。

「さて、時間だ・・・ヴァルチャー、状況を報告せよ」

眼鏡の男が通信機を持つ

<<こちらヴァルチャー、状況は全て青、予定通り1000、投下完了します>

部屋のスピーカーから言われ、全員がしっかり頷く。そして

「さて、やるか」

眼鏡の男が目の前にある赤いスイッチを見やる。これを押せば、幾万の命が消えるか、憎悪に呑まれ狂乱するだろう。それでもこのオーシアを守るため、オーシアの兵士の戦闘本能を目覚めさせる為・・・

電波時計は短針10、長針12、そして秒針も12になった瞬間・・・眼鏡の男はスイッチを・・・押した。

しばしの沈黙、成功すれば爆撃部隊とはしばらく通信が出来ない、確信する方法は・・・スピーカーから

「偏西風とは違う大気の流れを観測・・・成功です」

無機質の女性の声が響いた瞬間、周りはわっと沸く。眼鏡の男は

「これで・・・これでオーシアが救われる・・・」

自己満足から来る悦に浸っていた。

10時丁度、オーシア7つの街が、7発の核によって消しとんだ。

そして北オーシアは地獄の蓋が開かれた・・・。



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裏切り

悪夢が始まる数十分前・・・

ヘルエンジェル&トゥルブレンツ隊

「あー、こちらヘルエンジェル隊、まもなく作戦空域に到着する。座標は?」

<<現在転送している・・・おかしいな・・敵の姿が見えない・・>

ギュンターの機体に敵情報を回しているAWACSが首を捻る。

「ステルスがそこらで舌なめずりされてる気分だ・・」

トゥルのグレンがため息つきながら言うが

<<それは無いはずだ、すでに降伏中立部隊をオーシアから提供されている。見る限り残存部隊はF-16と好戦派海軍航空隊から派遣されたF-18の合計20機も満たない編成しか無いはずだ>

「既にオーシア本国から見放されて、停戦調停も始まろうとしてるのに!何を守ろうとしてるの?」

今日から外務省大臣クラスの停戦と国境線をはっきりさせる調停がベルカで行われる。

「ふふっ、乱気流の可愛いお嬢さん、彼らが守るものは何も無い、そこにある資源地帯以上に守ってると思っている正義、強さ、名誉、周りを見下す力・・・全て失ったのに守ろうとしているんだ・・・ああ言うのは悪あがきって言うんだ。だから全てから見放される」

エレノアの言葉にギュンターが淡々と言う、経済崩壊時代、いろんな暗黒面を見て、緘口令をされまくった時代を生きた軍人の言葉の重みが違う。

「さて、暗い話はやめやめ、なあ乱気流の二番機さんよ?どう?今夜は・・・おーーっと」

余計な一言加えたギュンターの後ろにグレンがぴったり張り付く

「少佐、私はあなたのことを尊敬していますが、少々度が過ぎませんか?」

「ふっ、可愛いお嬢さんがいたらとりあえず誘うのがマナーだと思うが?」

「へえ~、隊長はそんな事言うのですか?」

「あっれ~、ヘルエンジェル2、何をするのかね?」

ギュンターの横にいたユーマが穏やかな声で後ろに付く。

「やっぱり気づいてもらえないなら一度落としましょうか?」

ユーマは少し涙声、あまりにも報われず少しずつ黒くなっている。主にヤンデレの方で・・・。

「あれれ~?」

ギュンター超困惑状態

そして彼ら以外の一同は思った

[[[鈍感・・・]]]

次の一言で冗談抜きで撃墜スコアが出るかもと思った瞬間・・・

「いや[ガガッ・・]と・・・」

「じょう・・な・・?!」

「A・・な・・た!」

爆撃、護衛部隊の無線が一時的通信障害を起こす。ノイズは一気に高まったあと、落ち着くと

<<こちらAWACSフランチェ、一時的な通信障害だ!全機機器のチェ・・なんだ!今忙しい・・・なっ・・>

「こちらトゥル1!何があった?」

グレンがAWACSに問う。いやな予感しかしない・・・。そしてしばしの沈黙の後

<<全機作戦中止!繰り返す!全機作戦中止!今すぐ機首を基地に転換しろ!>

「どうゆうことだ?」

今までちゃらちゃらしてた感を出してたギュンターは一転真面目な声になる。

<<全機、心して聞いてくれ・・・北オーシア領内で核が起爆された、繰り返す、核が起爆された・・全ての電子機器が不能、被害状況、部隊位置、そして戦闘機部隊派遣不可能など、異常事態が連発している。全機撤退せ・・・おい、聞いているの、うわっ・・何をおい!ああああ!!>

ガッ!と非常に大きな音を響かせてから通信が途絶する。

「おい!AWACS!どうしたんだ!おい!」

「ウスティオのE-767の機影が消えた・・・」

「おい護衛!何やってる・・・?!」

突如のミサイルアラームが鳴り響く、一体何がどうなってこうなってるんだ?!

グレンは混乱しながらも必死で回避する。

「こちらヘルエンジェル2、近くの管制部隊!聞こえないの?!」

「3より、諦めろ2、既に結界よろしくすばらしい妨害電波が流れてますよ」

穏やかに、しかし怒りがこもってるエルンストが言う。

<<お前らは絶対に落とす・・・それが計画を成功させるための全て・・・>

「あ~あ、もう嫌になる・・・どこから来たか知らんが所属不明の部隊、10機、前から裏切りのAWACS護衛のウスティオ軍機6機」

「AWACS無し、増援無し、あるのは愛と勇気とJDAMだけか?」

「隊長!!」

ギュンターの冗談にさすがに切れるユーマ

「さすがに笑えないか?・・・とりあえず敵さんは俺たちを食いたくてたまらないらしい、乱気流部隊!俺たちは俺たちで切り抜ける。きつい灸を据えてやりな」

「し・・・しか「しかしもかかしもねえ!やってこい!」了解しました・・・行くぞ2!」

「もう何を信じていいのかわかりませんが・・・私はあなたを信じます!」

エレノアは味方の裏切りに動揺は隠せないが、グレンを信じて付いていく。ただそれだけに徹した。

「さーて、お前ら、生き残りたかったら俺に付いてきな」

ギュンターは真剣モードに変わる。それと同時に

「2、さっきは冗談でも済まなかった」

「え・・・べ・・別にいつも通りなのでもういいです。あとそういうのはこの戦いが終わってからです!」

「あいよ、それじゃ崩壊時代にやりまくった対地兵器の空戦技術を教えてやる!」

たく、ギュンターは思った。

別に彼女の気持ちに完全に気づいてないわけでない、むしろ昨日のデートまがいの行動でさりげなくとしてると思えるがかなり強引にペアルックのおしゃれ指輪を買ったし、そこで確信に至った。

しかし年の差考えろよ、自分とユーマは、親子レベルで離れてるんだぞ。

そして冗談言ってないと本気で・・・

「本気で部下と思えなくなる・・・」

「隊長何か言いました?」

「んにゃなにも?前に集中しろ」

「・・・了解」

すばやく察知するユーマを突き放す。少ししょげる。

まあ、全て終わったら・・・そこから考えよう。

割り切った関係以外では女性関係に弱いギュンターは後延ばしにした・・・。

それを察知したヘルエンジェル残りの二人は

[[へたれ!!]]

罵っていた。



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最高傑作の破門生

上級の神々はこの分離した外史を正史に併合、または平和的に穏便にクーデター、核無しでの正統世界の正史に変更不可能として、強制的に正史世界のデータをこの外史に組み込んで正史にしたわ・・・

世界観は正史と同じに進む・・・核もクーデターも運命として起きる。酷だけどこの空間の決まりだからそれを教えとくわ。

あなたは異世界の人間、外史の運命を握る任務を終えたらあなたの意志で異世界残留か帰還かの選択肢を用意する予定だったけどそれも無くなってしまったの。

あなたはこの戦争がすべて終わり次第強制帰還。この真実は誰にも話してはいけない。話したらあなたの魂はどこの世界にもいけず無に還す。

残酷だけど、あなたがこの世界で幸せになっても最後は不幸だから・・・。

結川がラーズグリーズから受けた宣告の翌日・・・核が起爆された。

 

 

3/10

1010hrs

シルバーマーク空軍基地

核起爆から数分で、FCMB本部は状況把握を第一優先に第一種非常臨戦呼集・・・つまりデフコン1へと移行した。

電子機器の塊である飛行部隊全部隊はフライトプラン全面取り消し、やっとこ戦争も終結に向かい復帰しつつあった国内外線民間航空はまた飛行禁止に逆戻りになった。

事実起爆と同時、またはこの10分間で、何機もの軍飛行部隊、民間航空機がレーダーロストをしている。

機体はたとえ1000kmちかく離れてる基地でも、即格納庫+あるだけの防護カバーをかけていく、それだけ対策が重要なのだ。

状況が把握できず、ただ「核が起爆された、各基地のガイドラインにしたがって対策せよ」と、

当然こんな事態のガイドラインなんて存在しないので皆さん右往左往、そして特殊戦術航空団も・・

「一体全体何があったんだよ!」

「核が起爆された、しかもオーシア国内でだ!」

「それは知ってるけどさ!」

出撃直前だった愛機を格納するバッカス隊のオリビエにグラッドが噛み付く、バッカス隊は経験も軍歴も長いので意外とみな動揺をうまく隠し淡々としているが、サザンクロスはエリーゼ、グラッド、結川以外は動揺を隠し切れない。

「グラッド、あなた少し熱くなりすぎよ、違う隊の隊長に噛み付かない!」

エリーゼが宥める。彼女も少し顔色悪いが弟の前だから虚勢を張っている。

「しかしなぁ!何で停戦が決まったばかりに・・なあ隊長!」

「干物・・・少し黙れ」

多分・・・いやこの隊で一番正義感の強いグラッドにとっては衝撃的のニュースで取り乱して、逆に結川は下がるところまで下がって冷静なのか感情がないのかわからない。

「と言っても隊長よ!何でそんなれいせ「黙れ」・・・」

「おーおー、いつ熟練の隊長がなしえる技術習得したの」

小声でオリビエが呟く、結川はたった一言、たった一言で状況を鎮める。

「干物・・・お前がわめきちったって状況が変わると思うのか?」

「くっ・・・」

結川は淡々とした表情に・・・凄い憎悪が内包されているのは誰から見ても分かる。しかもそのオーラは誰に対しても無く結川自身に見える。

「隊長・・・隊長も落ち着いて下さい」

グラッドが押し黙った代わりに、今度はアリチェが呟くようにしかし結川の腕をしっかり掴む。

「落ち着いて下さい・・・」

「・・・済まない・・少し頭を冷やしてくる」

結川は言うなりアリチェのから離れてどっかに行ってしまう。

「隊長・・・」

「やめときな、今は何を言っても無駄よ、あれは身内より外の隊で理解してくれる人に頼みましょう」

「?」

エリーゼがにやりとして、涙目のアリチェが首をかしげる。その近くで

「世話が焼けるんだから・・・」

走る女性の姿が結川の方へ行った。

そして

「そういえば、さっきから気になったが・・・トゥルのバカップル他攻撃隊は?」

オリビエが呟いてた時

空では記録されてない空戦が繰り広げられていた。

1012hrs

作戦上空

ヘルエンジェル隊は・・・超低空を飛んでいた。

「あの!さっきから高度上昇の警告が!」

「んなの無視してこそ精密爆撃のモットー!!」

「いやいやいや!隊長!逃げるのに何で弾薬投棄しないんですか?」

「俺達にとってラッキーなこの土地に聞け!」

部下の言葉に曖昧に返すギュンター、しかし声は楽しそうだ。ここらへんの土地はウスティオ国内では不思議な形状の渓谷みたいな形をした回廊に飛び込むヘルエンジェル

背後からは国籍不明のSU-27,3機とF-15Cが2機。

<<奴らを生かして帰すな>

<<しかし・・くそ、シーカーが定まらない・・>

追いかける部隊は曲がりくねった渓谷に四苦八苦する。ターゲットシーカーはせわしなく動くが捉えられない。

「俺がなあ、まだ実戦投入されたばかりの頃に、レクタでこういう風に追いかけられた事があってな、後ろからは対空戦闘に特化したF-5とF-4がわらわら、でな、隊長が制空戦闘機要請が出来ないからと言ってな・・・」

ギュンターが語ってると、目の前は更にすぼまった地形。刹那

「今だ!あのすぼまった地形の両際にに全弾叩き込め!撃ちこみきれなかったら弾薬投棄!」

「ちょ!え?!」

「やれーーーー!!!」

「「「サーー!!」」」

全機全ての弾を叩きこみ、ガンは全て投棄する。崩落する渓谷、一瞬にして目の前が奪われる頑丈で既に崩落から抜けきっているA-10は無事だが、後ろは

<<うわああああああ!!>

<<よけきれない!>

崩落の岩に巻き込まれるか、粉塵がエアインテークから吸気され内燃機関が焼けついて暴走して吹き飛ぶ。

「つ・・追撃機の確認出来ず・・」

「よし!勝った!しかし渓谷の川塞いじまった!」

「た~いちょ?」

ギュンターが陽気に言ったらユーマの冷ややかな声。既に予測している。

「とりあえず地上に降りたら殴ります」

「・・え?冗談?本気?」

「こう見えて陸軍機甲か野砲じゃなくても大丈夫のように強襲兵科の近接格闘は一通りマスターしています」

さらりと言うユーマにギュンターの体温は一気に下がる。

「ま・・まあ、今は逃げよう。どうせ俺達は役立たずだ、後は乱気流どもに自主避難してもらおう」

[[[はぐらかした]]]

全員が思う。しかし本当に階級差があるのかなと思うくらいユーマ天下なので一応合わせておく。

「しかし、彼らは大丈夫でしょうか?」

エルンストが聞く。

「少なくとも俺らが居ない分逃げやすい。そしてそんな心配は杞憂のようだ」

「?」

「うちの作戦地域の近くに「先生」が居るのさ」

「・・・それって・・」

「まああの美人さんは慌てるだろうな、そして真実もしるぜ」

「何の?」

「秘密だ!」

ギュンターが笑ってる頃、空では講義が繰り広げられていた・・・。

1008hrs

「予想よりも食いつかない・・・」

「大丈夫でしょうか、ヘルエンジェルは」

エレノアが心配そうな声を出す。

「あの歴戦の隊長は最強だ。それよりも俺達の心配しようぜ!」

ギュンター達は上手く超低空に逃げたが、自分達は囮も引き受けてたので完全に囲まれた。残り11機、ウスティオTyhoonやSU、そしてMIG-31までいる。

「ウスティオ軍機め!貴様ら!」

<<我々は自由の意志でここに入った、FCMBもオーシアもユークも関係ない、完全無欠の自由な世界、融和の世界を手に入れるため、大義の為に貴様らはここで散るのだ!!>

「狂ってやがる・・・」

<<くく、何とでも言うがいい、溺れのトンビとケラーマンの面汚し>

「「!!?」」

2人は固まる。こいつら・・・国籍のマークは全く見たことないものだが、ベルカ出身か

<<特にその二番機は有名だな、ケラーマン中佐の下でしごかれた奴なのに自我が強く、暴走して結局不名誉な海軍航空隊行きになった、中佐の経歴を汚した奴だと!>

皆からの笑い声がする。グレンは既に海軍航空隊に誇りを持っているので、ギリリと歯を食いしばるが・・・エレノアは黙ってしまう。ボスの話は実は完全に弱い所だった。

ケラーマンアカデミーは騎士道と空軍の中核になる為のエリート養成の部隊。しかし彼女は初めての海軍左遷組、最初の頃は深く考えてなかったが、いつしかその噂を聞いて、中佐の下のパイロット達が開く同窓会もどきにも参加していない。

「・・・」

<<ククっ>

敵は不敵の笑みを浮かべる、彼女がそれに弱いのは織り込み済み、実に狡猾な技だ。

それじゃ、ゆっくりと・・・

「くっそ!エレノア!!」

グレンが叫ぶが明らかに機動が緩んでいる。今なら機銃でも致命傷、

<<死ね・・>

敵は油断なく十分な距離からAAM用意、しかし・・・

<<弱き者を守り主君をエスコートし、強きものを挫きそしてこのような狂信者と裏切りの郎党に死の制裁を・・・>

<<なっ?!どこか・・・>

一機が爆砕する。

「・・・この声は・・・」

<<方位340から航空機多数!中心は・・・F-4?!>

F-4を中心にF-16Cの4機が随伴している。

「この声・・・ボス?!」

<<このじゃじゃ馬が!顔を見せず、しかもこんな場所で勝手に意気消沈するとは情けない・・・後で譴責ものだな>

「ふえ・・・」

違う意味でガタブルするエレノア。

<<ボス、この戦線は敵が非常に優勢ですが>

<<こんな状況を切り抜けられなければ私の指導不足だ、そうじゃないと信じたい。これを卒業試験にしよう。とりあえずこの馬鹿弟子を救ってやれ>

<<<イエス・ボス>>

きれいな散開を決めるF-16部隊、ツーマンセルを守り、基礎に完全忠実ながらそれゆえに敵が応用技を使用しても追いついて後ろを取らせない。

「よし、航空支配率が上がった、ありがとうございます。ズィルバー隊」

「申し訳ありません、ボス」

キレは大分戻ったがエレノアはしおれきっている。まさかのケラーマン中佐本人登場とは

<<ふん、お前が迷惑なのは昔からだ、そしてお前を卒業と認めた事はない>

「・・・え?」

「ん?」

トゥル2人で拍子抜けた声を出す。ケラーマンは難なくTyhoonを撃墜しながら

<<確かに君の実力は私の最初にして最高傑作の一期生と互角かそれを上回る実力を持ち、独自の戦況判断が出来る優秀なパイロットだ。私の育てた生徒はツーマンを基本としすぎて、どうも部下として最高だが、隊長職に就任しずらいらしいが、隊長の器はベルカの伝統からいくらでも自然に学べる。しかし君は伝統を学ばず、根拠のない自信で卒業試験も相方を置いてけぼりにした。私は確信したよ。君は絶対に素質だけの空虚なパイロットになると・・・まあその驕りは見事に海軍送りになったがな。私は卒業は認めてない、だから君がどこに行こうが私の経歴に汚点は無い、はっきり言おう・・私は君を破門してたのだ>

「・・・ッ」

ケラーマンの言葉にエレノアは詰まる。完全に浮かれてたあの時、B7Rの内部防空隊に負けない実力はあったが、あの浮かれ足で実際戦ってたら多分・・・。

唇を噛む、最初からうまくいってなかった事実に涙が出る。

後で自主提出の経歴にケラーマンアカデミー卒業の文字を消そう・・・。絶望に包まれ、グレンも何も言えなくなった時

<<しかし私もついに汚名をかぶるときが来たようだ>

「・・・・、どうゆうことでしょう・・・」

生徒でないし卒業生で無いのでエレノアはボスと呼ばない

<<君はどうも海軍航空隊で公私を共に信頼出来るパートナーが出来たみたいだな。空軍でも有名だぞ、海猫夫妻>

ケラーマンの少し笑みの含んだ声が聞こえる。生徒とエレノアが驚愕する。

笑わない鬼教官が笑った。

<<私は独走して、相方を顧みず、伝統を学ばない石には興味は無いし消えてほしいと思う。しかし優秀で、どんな場所でも相方を信頼し、優しさと元来ある誇りと空への愛情があるものに私は次世代の防人として、ベルカの空の騎士として評価したい>

「・・・ボス?」

<<海軍で学んだ事、君の歩いた道とこれからの道、全てを見届けよう。いけ、エレノア・ロートシルト生徒、これをもって卒業試験とする。切りぬけろ>

「・・・・はっ!教鞭ありがとうございます!エレノア・ロートシルト、いきます!!隊長!」

「あいよ!敵さんこちらだ!」

グレンは猛然と加速をすると、ステルスなのに、敵に目視されやすく挑発的に近付く

<<なめやがって・・・こいつ!>

ウスティオの裏切りのTyhoonが食らいついた時、瞬時後ろに

「トゥル2・・・FOX1」

<<なっ・・いつのまに・・・ああああ!!>

エレノアは無駄弾が無く見事に燃料タンクを撃ち抜き、自動消火の前に機体が燃える。

<<予想以上の技術だ>

「あ~あ、これじゃもう俺を簡単に抜かしちまったな」

ケラーマンが満足したように言い、グレンは嘆息した言葉を言うが、嬉しさを含んでて全然意味になっていない。

<<す・・・凄い・・>

<<あれが最高傑作の破門生・・・>

F-16の生徒たちが口々に言う。

<<無駄話の暇があるのかな?>

<<も・・・申し訳ありませんボス!よし!あの人に負けるな!>

<<<YES SIR!!>>

<<こちら国境無き世界抹殺任務大隊!駄目です、大義を果たせません・・・>

<<撤退は許されない・・・戦え!>

敵は引かずに戦いにかかるが、能力を真の開花を果たした彼女には無意味だった。

全ての戦闘機動が華やかで、戦場であっても見とれてしまい、気付いたら地獄、まさに天使の格好をした悪魔であり、正々堂々戦う騎士でもある。

今まで苦戦したのが嘘かのように、結局は、ものの数分で終わってしまい、気付いた時には妨害電波を出してた機体まで落としていた。

戦いが終わり、エレノアは静かに、適度な距離でF-4に付随する。

「ボス・・・」

<<ふむ・・・5分で3機撃墜・・・隊長の挑発にのった敵から倒したのには評価が出来る。しかしまだ暴走癖はあるな>

「はっ・・・」

通信越しの偉大な教官の言葉を一言一句聞き逃さない。

<<この成績で再教育とは言えないな・・・エレノア・ロートシルト、お前は今日から海軍でアカデミー卒業を胸張って言え。それと第3期生、お前たちも合格だ。以上!>

ケラーマンの言葉に、少しの沈黙のあと、割れんばかりの通信飽和の大声が聞こえる。

「良かったな・・・」

「はい」

グレンの優しい問いかけにエレノアはつい甘えた声になる。しかし・・・

<<ほう?私の前で、戦場にしてその感じか・・・いい度胸だこの夫妻、降りたら譴責だな>

「「え?」」

ケラーマンの言葉に固まる2人、卒業生は笑いをこらえるのに必死だった。

このウスティオと元ベルカと思われるパイロット達の裏切りは、後の軍事体制崩壊の序章に過ぎなかった。

そして地上では別のドラマも行われていた。



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優しさ

3/10

1020hrs

シルバーマ―ク空軍基地D格納庫脇

練習機用格納庫の周りには人間は居ない。全員本部待機か戦闘機格納庫前に集合しているので元から人が少なく主たる練習生と整備士も行ってしまい完全に人気が無い。

そんな中で格納庫にもたれかかる男が一人、結川だ。

彼は絶望というより、先に起こる未来を知りながら、口に出そうとすれば頭に軋みみたいな痛みを感じ、口は動かず、結局何も出来ない自分にむなしさを感じて状況を傍観していた。

北オ―シア核起爆…さっきからその単語がぐるぐると回っては苛立たせていた。

「くそ…くそっ!」

ガンっ!と壁を殴る。痛みを感じて拳からは僅かに血が流れるが構わずに殴り続ける。八つ当たりか痛みで気を紛らわせたいのか分からなくなり始めた頃に

「そこまで」

冷静な女性の声が聞こえたと思ったら、さっきまで叩きつけてた腕を凄い力で抑える。

「商売道具の腕をどうするつもりかしら?」

「ハ―ト少佐…」

振り返ると居るのはハ―ト、彼女はにっこりしてから

「まずは…制裁!」

ハ―トは結川の両肩に手を置き腹に思い切り膝蹴り。

顔だと腫れてしまうと面倒、腕は商売道具だから捻れない。だから膝蹴り

「ごふぅ!」

結川は鍛え上げた筋肉を通して衝撃を受けて目の前がぐるぐるしながら膝をついて咳き込む。

憂鬱から朝から何も食べていなかったので苦い胃液もあまり出ず、逆に何も出せなくて悶えた。

ハ―トは片膝ついて視線を真っ直ぐ、絶対に逸むけさせない眼力で圧して

「何があったが知らないが隊長がそんなんじゃ先が真っ暗なんだよ!何にいらついているか分からないが部下を安心させられないほどに心中ざわめつかすな!!」

彼女の言葉に結川は今度は心が揺れる。

確かに隊長がしっかりしなければならない……でも

結川が俯くと、ハ―トはふぅ、と息を吐いてから

「でもまぁ、いきなり立ち直って謝ってこいよりも、順序は逆になりましたが…あなたは今何に悩んでいるの?」

さっきとは打って変わった優しき声、見上げるとこれも変わって穏やかな笑顔。

「私は陸でも隊長は隊長、何か相談にのれるかもしれないし、愚痴も今なら何も咎めないしその人に漏らさない。約束する」

「………」

結川にとっては何か分からないが昔に何か似たようなものを感じる。

しかし何か固かった口が突如柔らかくなり

「この未来…昨日の内に分かったんです…でも何も出来なかった…何も…分かっているの出来ない、どんな事があっても起きてほしくない事が…」

そこまで言うとまた口が固まる。もう喋るのは許してくれないみたいだ。

彼女はそれを聞くと

「そう…そしてあなたは苦悩した」

彼女の言葉にこくんと頷く。またため息ついた後

「中佐、はっきり言ってそれは自惚れであって抱え込み過ぎた大きすぎる罪悪感です。1日で何とかなるなら私も部下も総動員で駆逐に奔走します」

ハ―トは結川が気にする言葉をぐさりと突き刺す。確かに自分は無謀と分かっても未来が見えたから何とかしたいと思っている。そして彼女はさらに

「そしてあなたはその罪悪感から自分許したくない」

その言葉に結川はピクリと反応する。

「図星ですね。確かに許せなくてやるせない、私も同じ立場なら…ううん軽々しくは言えない、でも、中佐自身が許せなくても、有り得ないと思いますが戦友が、周りも許さなくても、私は許します」

「えっ――」

刹那、結川は腕を引かれてそのまま抱き止められる。完全に彼の頭はハ―トの胸の部分に置かれる。

「許せないならそれでいい、私や部下も味方になります。でもそれ以上自分を責めない、そしてそれ以上にやらなければならない事を見失いで」

状況を把握した結川は赤面して反射で逃げようとしたが、がっちりと左腕で止められ、やがて彼女の穏やかな声で抵抗が止まる。

「あなたは戦場において逃げるだけの無力な民間人ですか?いえ、それを守るべき盾になる存在でしょ?今は気落ちしてもこれから過酷で、熾烈な試練が起こる可能性は大です。ここで切り替えて中佐は守れなかった分を取り返しましょう」

優しい声を掛け続ける。結川にとっては何か救われる。そしてこの懐かしい感じがやっと分かる。

昔の昔、小学生の頃に友達の愚行を誰にも言えず、起きてしまい非難を受けた時に近所に住んでいた姉と慕っていた人に励まされ抱きしめられた時の安心感だ。

軍人の迷彩服で決してさわり心地の良い繊維の服でないのに、女性特有の甘い匂いや暖かさに結川は身を任せて、大分落ち着いてきた。

「もう大丈夫です」

「そう?お役に立てた?」

「十二分に…ありがとうございます、おかげさまで立ち直れました。それよりも凄く慣れていますね」

ハ―トは微笑しながら

「ふふ、私には悪ガキだけど憎めなくて可愛くて無邪気な弟妹分達がたくさん周りに居ましたから」

結川も大分調子が戻って、小さく笑い。

「あと、失礼な質問ですが、何故あなたが?」

「とある人との同盟…とだけ言っておきます」

更に意味深な笑みを浮かべる彼女、これ以上は教えてくれないか。でもとにかく

「本当にありがとうございました。これから隊のみなの方に行ってきます」

「いってらっしゃい、ちゃんとキレてた分はフォローしてきなさい」

「はっ!失礼します」

階級は上でも恩人になったハ―トに敬礼する結川、彼女も返礼する。

結川が去ってから、ハ―トは腰に手をあて、

「ふぅ、人の恥ずかしい姿を隠し見は良くないと思いますよ、エリ―ゼ大尉?」

「ふふ、あなたが同盟をちゃんと遂行したかの確認ですよ」

物陰からエリ―ゼが出てくる。

「とりあえず、今までの話は聞かない事にして、隊長はどうですか?」

「死人の目の一歩手前ってところね」

戦場では一人で抱え込みすぎると、使命を更に重く感じて、最終的には死人の目になり、戦死する。結川はまさに死人の目に浸蝕されはじめ、さっきの事変で急速に進んでしまった。

「しかし少佐の素晴らしい母性力というなの抗生物質で大分和らいだみたいですし、あとは私達が…」

「ええ、部下のあなた達も早くユイカワ中佐が信頼おいて安心させるように精進なさい。まあそれよりも早いワクチンは彼女の想いに気付く事だけど…どう?」

ハ―トが聞いてエリ―ゼは

「正直な話、彼女の片思いでなく、隊長も潜在的には好意を抱いていますが、気付かないというか、気付きたくないのか…特に今日はそれがはっきりしてまし、彼女自身も死人の目の隊長を包み込めなかったあたりまだまだワクチンどころか抗生物質にも…」

「あと一押しか否か…どうなるのかしら」

2人前途多難な結川アリチェくっつけ作戦にため息を吐いた。



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臨界点

FCMB連合作戦発令第11525号

北オ―シア、南オ―シアに於ける我が連合の脅威残党を排除、駆逐する。

今作戦らオ―シア政府の支持あり、越境、陸空全兵器使用を許可する。

民間人への無差別攻撃、必要外の石油地帯爆撃及び工場破壊はいかなる理由でも断罪に処す。

作戦名は「クリ―クエンデ」[ベルカ語で戦争の終わり]

今作戦の名前通り、任務完了を以て真の戦争終結とする。

各員、奮闘せよ。

発令、FCMB作戦司令、各国国防大臣、大統領

 

3/10

0930hrs

北オ―シア作戦空域

北オ―シアからベルカに侵攻していたオ―シア、ユ―ク残党があと少し西に進んだ所で強固な防御対空陣地と再編成の済んだ軍が居る。

墜落事故と見せかけた暗殺で死んだアップル・リリースの後任としてハ―リング暫定大統領は降伏と全軍即時武装放棄を命令した。

しかし北オ―シアは元々はユ―ク管轄の司令とオ―シア好戦派が多く、国土解放とベルカが奪う可能性がある北オ―シアの原油採掘、石油精製地域死守をスローガンに徹底抗戦を叫んでいる。

更に性質が悪いのは未だにユ―クの方は上から下まで[下はこのまま祖国に帰ったらどんな目にあうか分からない]士気旺盛、オ―シア軍の脱走兵や武器放棄を叫ぶ人物の粛清に督戦隊を作り、燃料は現地の精製施設から総動員、直せるものは直して、人数は一個旅団程度だがオ―シアを凌ぐほどの脅威となっていた。

全体的には士気は数の多いオ―シアの影響で低いが、脅威は脅威、FCMBはハ―リングの声明拒絶の反乱軍として正当防衛の越境排除対象の声明を採択し、オ―シアにおけるFCMB正式な鎮圧作戦をハ―リングに承認。

そして今日、西ベルカやウスティオ方面から空軍出動、防御対空陣地を空爆して機能を奪い、早期降伏ならそれでよし、もし空軍陸軍総動員ならこちらもデジタル最新に更新したB-335、TU-160、B-2と特殊戦術航空団、勇猛な陸軍で徹底的に潰す。

閑話休題

ウスティオから派遣されたのは傭兵のトップエ―スのガルムと普通の部隊のクロウの6機を先遣し、苦戦するならば翌日からはト―ネ―ド、F-2の空爆部隊を派遣する。

まあ、ベルカンエ―ス部隊も揃って護衛を受ける空爆部隊が失敗するはずもない…

自分達はテケト―に飛んで小遣い稼ぎに増援やSAMを叩き潰せばいい

そんな楽観した空気が流れている。

「おい、そういや基地の彼女に飽きたらず他の女性にも手をだし…」

「そんなデマどこから?!」

4機のF-16Cのクロウ隊隊長はPJをからかう。

本当に気が抜けてるのか、地上と同じくらい陽気だ。いや、彼らが空で真剣でシリアスモードになるのも少ないが、それでも抜けきっている。

F-15S/MTOを操るガルム隊の隊長、サイファ―ことレオンハルトも彼らののんびり通信をラジオにして穏やかな気持ちで飛ぶ。

しかし不安の種もある。

「ガルム2、1から離れているぞ、編隊を維持せよ」

「…ああ、悪い」

「?、機体不調か?」

「いや…ただ、悲しいだけだ」

F-15Cを操る、片羽の妖精ことピクシ―、本名ラリー・フォルクはイ―グルアイの言葉に気が抜けた返事。さっきから異常に遅い。

彼が妙に静かというか、オ―レッド市街地空爆を行った部隊を見てから大分変わり、更にその部隊の罪が不問になってからは彼を中心に半径数mが寒くなり、ヴァレ―の陽気な奴らが思わず引くほどだ。

前から傭兵にしては戦争に関して皮肉を述べるのは多かったが、最近は特に無言の拒絶と何かの望みをひしひしと感じるようになった。

相棒はどうしたんだ?

「イ―グルアイより各機、FCMB作戦本部より緊急入電……なっ?!」

「どうした?何かあったか?」

イ―グルアイの言葉で思考が現実に引き戻される。そして次いだ言葉が

「緊急、当空域に爆撃航空隊と護衛機が接近種別不明…しかし良く聞け、奴らは核武装の可能性あり、繰り返す、核武装の可能性あり、目標ウスティオ都市と思われる!」

「なんだって?!」

「ちっ、オ―シアの野郎め」

クロウのPJと1が叫ぶ

レ―ダ―を見ると白い光点が多数接近してるのが分かる。

「撃墜した機体に万が一核があったら?」

撃墜して核が起動したら本末転倒だ

「安全装置で起爆の可能性は無いに等しいから安心しろ!全機考える暇は無い、迎撃せよ、一機たりとも逃がすな、都市に近づけるな」

「「「Yes sir!」」」

全機が加速していく。下に民家は無いので超音速をも躊躇わない。

「…見えた、B-52?」

「戦闘機も多い」

PJは高い視力で発見する。レオンハルトも確認する

「高度は同じくらい…行ける」

「先手必勝だ、ガルム1、エンゲ―ジ」

先手はレオンハルトが放った多目標誘導ミサイルが4本、シ―カ―に収まっている爆撃機、戦闘機に向かって飛来する。

僅か数秒で吸い込まれていき…4機が吹き飛ぶ。

《やられたか…》

《怯むな、片羽の同志以外は殺せ》

全機散開を開始する。爆撃機は直進する

「B-52は直進で突っ込んできた!」

「イ―グルアイより、なら楽だ!爆撃機を中心に叩け!」

「イ―グルアイも無茶言う、周りからもわらわら戦闘機来ているのに」

「よし!自称リア充のPJ!!逝け!」

「何かニュアンスが気になる?!てか自称じゃない!」

クロウ隊は賑やかすぎる…。

「さて、やるか…戦闘機を落とすぞ」

「………」

無言で敵を叩きに始める。

こいつ…あとで絞める。

しかし絞めるチャンスが永遠に無いとは思わなかった。

「しかし、敵が多い…ベルカかウスティオからの増援ある?」

「既にベルカは作戦地域に入り距離があってタイムラグが大きい、実質無いと思え」

「「「報酬二倍じゃ―!!」」」

叫びながらも着実に攻め落とす。

レオンハルトも敵の集団をすり抜けて回り込み。

「とりあえず無駄弾は使わない、ガルム1FOX1」

正確無比に爆撃機のエンジンを破壊する。

《ちくしょう!エンジンが4基喪失!操縦系統も動かない!》

片方の推力を完全に失った機体はしばらくもう片方で周りながら滑空するが、やがて切れたように急速に錐揉みになり落ちていく。

もう一機狙おうとするが

ピ―――

ミサイル警報

「ちっ!ブレイク!」

素早く機体を左に倒して機動回避しながらフレアをまく。

背後のミサイルはフレアの方で爆発する。

「くそっ!多勢に無勢とはこの事か」

「クロウ1よりガルム1、そちらに護衛を回す。爆撃機撃墜に専念してくれ」

「済まないな」

「なあに、戦闘機の方が小遣いは多いし、何より鬼神を守った名声はオイシイ」

「ははっ」

こんな状況でも計算するクロウ1に苦笑しか返せない。

しかしそれよりも

「敵の戦闘機が豪華すぎる…イ―グルアイ、敵の残党軍はF-15を持つ程豊富なのか?」

「なに?イ―グルアイより、そんな話は聞いてない、事前情報には今日で決着つく予定の南オ―シアの残党[ヘルエンジェル、トゥルブレンツが向かっていた作戦]には居たが、こちら北オ―シアは陸軍重視で空はパイロットは居ても機体はF-16ばかりで地上に居ると聞いていたが…どういうことだ?」

「残党軍の隠しの切り札?それとも、更なる裏切り?」

レオンハルトの頭の中で疑問が深まるばかりだ。

「それよりも何でこんな特攻まがいな作戦をするんだ?もう戦争は終わりに近いのに」

「お前は馬鹿か、PJ」

今まで黙っていたラリーが口を開く。彼は機関砲で兄弟機のF-15Eを仕留めてから。

「俺達がしてきた事を思い返せ、確かに最初は国境を越えて敵は侵入してきたが、最終的には正義の名の下や部隊の暴走でオ―レッド市街地を爆撃して、多数の民間人の死傷者を出した」

「しかし…」

「どんな事があろうとその事実は不変する事はない。それの報復に核を持ち込むのも行ったきりの特攻あり得る。たく、国境によって起きた戦争の悲しい現実だ」

「……」

「おい、いい加減にしろ。戦争談義と士気を落とす話は後にしろ。今はウスティオを守るのが第一だ」

「…、了解だ、正義感の強い相棒」

さすがに我慢の限界に来ているレオンハルトに軽く返すラリー。

話ながらも爆撃機を落としていき、最後の一機

「お前はAAMに焼かれて落ちろ」

一本を放つ、そして近接信管が働き爆発する。B-52は火を吹き機体は落ちていく

《くそ、もう駄目か…同志よ、後は頼んだ。片羽と共に…国境をゼロに…》

《了解した、爆撃部隊の核武装の特攻に見せかけた片羽をグランドゼロに行かせない足止めの演技は素晴らしかった。安心して逝ってくれ、もう地獄の蓋は開く》

《ああ……良かった…これで…大国同士崩壊する…》

B-52は爆砕する。

《陽動部隊より、爆撃部隊が全滅したので撤退する。後は任せた、魔法使い…全機撤退》

《了解》

部隊は撤退していく。

「よしっ!最後の一機をしとめた。良くやったガルム1、敵は引いている」

「やった…守れた…」

「ああ、とにかく良かった」

PJを皮きりにクロウ隊の面々が言う。安堵感に包まれている。

「追撃は…駄目だな、弾が無い、更に言えば燃料も…ガルム1よりイ―グルアイ、補給がしたいが…」

「分かった、今着陸可能な基地を調べる。ベルカにも作戦中止すると連絡しておく」

「了解した」

レオンハルトもやっと重責から解放されて、シ―トに身を委ねる。

しかし疑問の多い戦いだった。

残党に無い戦闘機、無謀な爆撃機…どうぞ落として下さいと言わんばかりの直進性…あれはどういう…

「ん?光?」

誰かが呟く。レオンハルトも見ると西方向の空が明るい…夜明け?

いや違う!

今は午前10時になったばかり、空は曇りで覆われている。

何故だ……

思考する前に光の奔流は迫り、やがて

「なっ?!」

「はっ…?!」

目の前は真っ白になり、衝撃が機体を揺さぶった。

核が起爆された瞬間だった…。



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別れ

光の奔流をまともに受けたあと、次に来たのは衝撃波。

機体は大きく揺さぶられレオンハルトも体が上下左右に行く。ハ―ネスが無ければコックピット突き破って空に飛ぶ自信もある。

サンバイザ―を通り抜けた強烈な光で視神経がやられたか前が眩んでいる。

異常警報と誤動作のミサイル警報が混ざって雑音とも言える不快な音楽になる。

体は無意識に確認ボタンを押し警報を止める。

前が大分見えてくると、まず見えたのが

「機械がやられてる…」

目の前のHUDが乱れて、高度計が正確か怪しい。

レ―ダ―は左下近くにいるクロウ隊の一機の位置が反転して右下に居る事になっている。

磁場が突如発生?いや、電磁パルス…そしてあの光は…

最悪の予感…もしそれが当たれば…

「こち…アイ、全機おうと…せよ」

雑音まみれの通信に生真面目な声、応答する

「こちらガルム1!レ―ダ―電子系統がやられたが何とか飛べている!聞こえるか?」

「了解、全機せいぞ…きょうは把握した……何てこ…だ…緊急じ…発生!…オ―シアにて…が起爆された。繰り返す!北オ―シアで核が起爆された!」

最後のやけにクリアに聞こえたイ―グルアイの言葉に背筋に冷たいものが走る。

「…だと!」

「くそ…オ―シアは早まっ…」

機器は死んだが、直接の操縦系統は生きている。全員が一番強いレオンハルトに自然に集まるが…

「さあプリンセス…かぼちゃのば…上がりました」

「戯れ言を魔法…こ…見せたいも…のか?」

「ああ…これ…の生んだ悲劇だ」

「ガ…2、だれとは…している」

まったく知らない声の主とラリーが話す。

そして……

「相棒…俺は戦う理由を見つけた…」

「は…、!!!」

レオンハルトが声を出した刹那、ミサイル警報。

誤動作の可能性もあるが、本能が思いっきり警告を示して高機動回避をする。寸ででAAMが飛びさる。電磁の影響でアクティブが作動しなかったのが幸いだ。

「ガルム2!味…を攻撃す…血迷った…?!」

「おい!何をする?!」

「相棒…お前みたい…流される奴に…ない、全てをリセ…す…」

「時間だ…行こう」

「ああ」

レーダ―から二つの光点が離れていく。

「何がどうなっ……くそっ!」

「わけがわから…なってきた」

上がイ―グルアイ、下はPJだ。

レオンハルトは肩を震わせ、サンバイザ―を上げ顔を覆ってから

「くそ…」

ただ呟く事しか出来なかった。

そしてガルム隊は核の使用による電磁により、この作戦記録は全く残されてなかった。

 

そして3時間後

別の地域でも核の多大な被害を受けていた。

3/10

1300hrs

西ベルカ州営空港

現在は北オ―シア討伐の最前線の基地だった場所。今は戦闘機の墓場に様変わりしている。

北オ―シアの防御陣地に向けた空爆作戦は順調に、被害もほぼ皆無だった。

しかし悪夢の10時丁度、突如として起きた核爆発により状況は一変する。

不幸な事に、最前線を飛んでいた部隊の大半はコントロールを失い墜落、更に強烈な光で失明したパイロットは全く状況が掴めずこれも墜落した。

電磁でAWACSとも連絡がつかず、各々基地に撤退するが、機器の不調が重なりベイルアウトする者も出た。

基地に着陸出来た機の生き残りは出撃時のわずか3割も居なかった。

そしてその被害を受けた部隊の中にはヴァルキュ―レ隊も居た。

「ふぅ…」

戦闘機を降りた途端に女性の臨時除染隊によってごしごしと洗われたり、医者の素早い治療を受けたりと珍しく疲れきり、休憩室のソファーに座るのは、ヴァルキュ―レ隊隊長、ジャスミンである。

彼女たちの隊は幸運にも作戦地域では後方で待機していたのでまだ何とかなった方だった。

と言っても愛機の不調は酷く、ここまでたどり着くまでどう操縦したか覚えていない。

ただ記憶にあるのは、電子戦機で隊の司令塔だった荘姉妹が基地手前でベイルアウトした事だ。

通常の機体よりも精密機器の塊である機体はほとんどのシステムが生きておらず、とにかく騙し騙し飛ばした後に、基地には着陸出来る程力が残ってないから、迷惑かけるくらいならと基地手前の絶対味方防衛圏内に入ると、彼女たちは民家が無く、広い土地に迷わず機体を捨ててベイルアウトした。

さっき救助部隊から連絡があり、パイロットの銀姫は核の衝撃波による打撲、WSOの錦姫はベイルアウト時の無茶で意識は朦朧としているが命には別状は無いとの報告を受け体の力が抜けきった。

他の部下達も、大なり小なりと怪我は負ったが、骨折などの重傷は居なかった。

ジャスミンは部下が全員生存した喜び以上のショックも受けていた。

今でも目の前で起きた事が現実でなく夢であってほしい。そう願わずにはいられない。現に眠気で目を瞑れば途端にあの光景が浮かんで目を開く。不眠症になりそうだ

強烈な光から目が慣れた瞬間、網膜に捉えたのはいくつもの大きな紅蓮の球体…いやキノコにも見えたそれは下にあった緑や民家、そこに住む生命を根絶やしにしたのだ。

あれはオ―シアなのか、あってほしくないがベルカなのかはこの際どうでもいい。ただこんな恐怖しか連想させず、軍人以外も巻き込む非道な兵器を使用し、特に部下をここまで追い込んだ時点でジャスミンのデッドラインは十二分に越えた。

「こんな馬鹿げた作戦を断行した首謀者、絶対に殺す」

外は氷でも中は半端じゃない程熱い人を静かに覚醒した。

と言っても機体があれじゃね…

別の事で苦笑した時

「ここに居ましたか、探しましたよ」

「あら、私を探す口実にサボった?」

「んな事したら即刻ベルカ整備士に殺されます!連絡事項があったので」

ジャスミンの目の前には一人の男性、直接ウスティオから引っ張ってきたセアラである。

彼女が専属を要望するのは普段なら有り得ない事だが、彼には愛機整備を信頼出来た。

それ以上の気持ちにはまだ気付いていないが…。

「あなた結構疲れてる?」

「ええ…まあさっき滑走路上で機能停止した戦闘機を引っ張ったり走ったりしてましたから」

「じゃあ座りながら話しなさい」

「いやいや、それはちょおおお!!」

問答無用でソファーに座らせる。セアラはまさかの展開に驚き、結構近いジャスミンのいたずらめいた微笑に不覚を取られる。

「それで、連絡とは?」

彼女は構わずに聞く。

「あ、ヴァルキュ―レ隊の機体についてですが……」

「予備機パ―ツに再利用くらいは出来るかしら?」

「………気付いてましたか」

「愛機の調子は分かるわ」

セアラが言いたい事を先に言われる。もう分かっているなら躊躇わず。

「はっきりと申しますと、全滅です。簡易ですが内部調査したら良くここまでたどり着いたとまで言える程に中はただれて機器破損を起こしていました。パ―ツ再利用も、核の至近起爆の放射能の影響は免れないと、廃棄命令が出ました。それと後継機は作戦本部からSU-47以外の機体が支給されるそうです」

「……、そう」

ジャスミンはふうっと息を吐き、天井を見上げる。

何があっても四年間ずっと一緒だった機体を失うのは、気付かない内に結構依存していたのね…。

「それと…信じるかは自由ですが…」

「?、なに?」

セアラがまた気まずそうな顔をしながら

「え〜、あなたの機体から、「あなたが次に使う機体は体当たりしないでね」と「国を絶対に守って、仲間達をここまでにした敵を見つけろよ」だそうです」

セアラは息も絶え絶えの飛魂、ヴィジュエントからの遺言を伝える。彼にとっても短い間に色々交流あったので、別れに辛いものがあった。

笑うかどうか、身を構えていると

「飛行機から…分かったわ。伝言ありがとう」

「えっ…」

信じた事に驚きを感じていると、彼女は立ち上がり微笑しながら

「直感かな、あなたの伝言には私にとっては信じられる説得力ある言葉に聞こえたわ。だから信じるの」

「そうなんですか、意外と純粋で可愛いところもあ…」

ビシィ!!と言い掛けのセアラの額に強烈なデコピン

「言葉は選ぶように、それじゃ、仮眠取るから、機体でも何でもあったら遠慮なく呼んで頂戴」

「あい…」

セアラ自身も調子にのった節があるが報復が痛すぎる。

結構痛いが、額をさするのを我慢してセアラは敬礼して見送る。

ジャスミンを見送ってから、セアラが敬礼を止めた時、

「随分と仲良くなりましたね」

少し癖のあるイントネ―ションのベルカ語が背後から聞こえ、振り返ると

「荘中尉?」

「そですね」

「見れば分かりますよね〜」

上は銀姫、下は錦姫、双子で性格は楽天的だが、比較すると銀姫は穏やかな方で錦姫は少し毒舌感もある。

銀姫は右腕が包帯で巻かれていて、他にも2人共通して小さい怪我を多数している。

「あなたも中々どうして凄いですね」

「へっ…どうゆう」

「自分の幸せ具合が分からないセアラ少尉は不幸ですね、鈍感!」

「……」

錦姫の言葉が凄くきついが、何が鈍いんだ?

2人は本気のため息を吐く。

ジャスミンが去った廊下の反対側の廊下で立ち聞きした彼女の言葉に衝撃を受けた。

ジャスミンは実働時間を増やすために短い睡眠で体力を回復する、その短い時間を非常に大切にするため、特に戦時からは空襲などの緊急以外で起こされるのを嫌い、例えヴァルキュ―レメンバーでも嫌な顔をして出来れば起きてからにしてと注意する。

しかしセアラにはどうだ、遠慮なく起こせと言うのはジャスミンの性格からは考えられない。彼に呼び起こされるのは嫌ではないと言っているものだ。

更に確信に至ったのは、荘姉妹は見逃さなかった決定的瞬間、ジャスミンがセアラの天然の言葉にデコピンをかました時のあの照れ隠しに似た表情が見えたのだ。

これで勘違いとは言わせない。

だから姉妹は決めたのだ、非常にシャクだが、既に芽生え始めてる隊長の恋心を応援するとしよう。まだこの男は気付いてないみたいだが、すぐに気付くだろう。いや気付かなかったら一思いに殺す。

「まあ、無事生還の報告はあとにしようか、錦」

「うん、銀姉」

「ん?今なら間に合うん「「あなたの優遇は私達には無いの、分かった?」」え…はい」

姉妹の凄みに負けて頷くしかないセアラであった。

 

 

この時、陸軍、特に北オ―シアと国境接する防衛部隊はどの地獄にも劣らない血で血を洗う戦争が始まっていた。

北オ―シア残党軍に出回ったもの

核を使用したのはベルカである。

これが演説された瞬間、今まで戦う気がなかった兵士が全員奮起し、作戦もへったくれもない玉砕覚悟で数日数波の超波状の総力戦を仕掛けた。

これはのちにこの世界の21世紀最悪の戦闘の一つに数えられ、一部では地獄戦争、デスマ―チと呼ばれた。

更にユ―クの最終兵器、シンファクシ改級一番艦ナグファルムも投入され地獄は更に煉獄となる…

混迷の焔〜fin〜

煉獄の戦場の章に続く…



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ブラッディーライン 前編

核が起爆された後、十分たたずに北オ―シア全域に一斉にラジオ放送が流れた。

北オ―シアに七発の核が起爆された、犯人はもちろん敵連合で唯一核保有国ベルカの仕業である。

罪無き市民を殺す鬼畜ベルカを許せるか?否、我々は報復すべきである。

ベルカを許すな、同じ苦しみを与えろ、銃を取れ、手段を選ぶな、殺せ、踏みにじれ、蹂躙せよ。

綺麗事を叫ぶな、考えるな、ただ殺せ。

諸君らの奮戦に期待する。

全く事実と異なり、オ―シアの自作自演は歪曲され、ベルカのせいになる。

しかしこのおかげで北オ―シア残党軍、及び州兵、自衛用に小銃を持つ市民はラジオ放送が真実と信じ、負傷した兵士は殺し、銃が持てるなら前線に立ち、約4万の混成軍[軍と呼べる程命令系統も作戦もない]が怒号を上げて北オ―シアベルカ国境線で人海戦術で3日間に渡り突撃が敢行された。

少ない所は3日間で5波、多い所は大小あわせて30波を越えた。

対してベルカもFCMB諸国から将軍を召喚する。

機甲を率い、兵士を命知らずの馬鹿者にする事が出来るウスティオの猛将フェルナンデス元帥

防衛戦と兵站術の指揮に関しては世界に比肩する者は居なく、後進国にもったいないレクタの智将ダ―ダ元帥兼暫定大統領

精鋭無比で薫陶を受けた部隊はどんな不利な状況においても作戦を成功する化け物にして、世界に通ずる直轄情報部を保有、実質陸軍元帥のベルカの名将ザンナル上級大将

以上の3人の指揮は完璧で、全戦線に渡り急場凌ぎの防御ラインにも関わらず3日間の猛攻を耐え抜いた。

そしてそれ以上に戦ったのは、上の指示を聞いて手足のように戦った兵士達である。

これは3日間で三大激戦と称された場所の兵士達の奮戦と苦悩である…。

 

 

 

3/12

1005hrs

ベルカオ―シア国境線

「敵襲―――!!!」

臨時で作られた物見櫓から監視兵が叫ぶ、やっと朝飯を胃に収められた奴らはまた地面に献上決定の瞬間でもある。

そう言う自分も飯は食べれても、睡眠不足体は疲弊して、もう何波目か分からない敵の攻撃に頭はボ―っとしながらも手にはG-3を持ち、足は持ち場に駆け出している。

俺の名前はシクリア・サルス、階級は上等兵、高校卒業後就職先が無く、仕方なくベルカ陸軍で18から3年間任期軍人を二期経験ののちに予備役登録除隊。その後はここから真逆のファト連邦に近い街の百貨店の正社員で販売営業をしていた。

しかし先月から始まったこの戦争にベルカは任期二期経験以上の予備役全投入を決定したので、戦場にただいまだ。

目の前にはついこないだ戦争とは全く関係なく先週、上流で起きた土砂災害で川がせき止められてしまい、深さ1.5m川幅120mの川は完全に干上がった。

支流には対処能力はあるが、雨が降れば増水で支流か、最悪本流決壊の鉄砲水可能性は高い。

既に工兵部隊が開通作業をしているが、まだ時間がかかりそうだ。

渡河も難しいので今まで自然の防衛線となっていたが、今はそれが無いから目の前に敵がわらわら。

緊急事態の為に、戦線が長いが、一応はとシクリアが所属する連隊がここの防衛にまわされた。

背後には数個の村と人口10万の街が一つ。

だから死守をせねば街の人間が蹂躙される。

今はその激励だけでこの連隊だけでは戦線が長すぎる地域でも、吐こうが仲間が死のうが戦っている。

「規模は中隊規模だ!」

「戦車は無いな…対戦車兵器は使うな」

「なにそのきつい縛り、また小銃だけか!」

「悲しいけどそうみたい!」

敵が迫る、監視所から全員が土嚢の陰に隠れて待つ。

「300m…200m…」

監視員の声に一同が覚悟する。そして

「川の土手を越えた!射程圏!」

「構え!!てぇ――!!!」

「Yheraaa!!!」

一斉に土嚢から体を出し、G-3を構えて引き金を引く。

幾重もの火線が敵を引き裂き、時には急所にあたり即死し、またはいくつもの穴を作っても突撃しようとする奴もいる。

敵からも走りながら乱射してくる

「くそっ!ジンがやられた!穴の分頼む!」

「おい!なに銃を空に向けて……死んでるのかよおい!」

「ラァァァ!!!」

1人のオ―シア兵が駆け上がり、土嚢の前に来ると

「怨むなよ!!!」

シクリアは銃床で思いっきりそいつの顔に一撃を食らわす。

嫌な骨の砕ける感触を感じたあとに、敵は来た道をズルズルと滑り落ちる。

20分程度であっけなく敵は全滅した。

こちらの損耗は犠牲者3、後方へ搬送が1、他は引き金引けるからここで治療する。

しかし随分と数を減らした。

監視所のテント群中央の集会場で水筒の水を少し飲み

「次は保つか……」

「悩むな〜、禿げるぞ〜」

「……、なあ、お前のその気楽さ、いくらで売っている?」

「天性という名の至高なものさ!非売品だ!」

「……そうか」

若干引く答えをするシクリアと同じ連隊に所属し、戦時緊急徴集の民兵にしては肝が据わっている男、ホルシア・ネックである。

まあどの戦線でも同じ所を担当してるので、軽口叩き合える仲でもある。

「まあ未来の分隊長は大変ですな?」

「……いつ知った?」

「結構有名だぞ?」

シクリアが視線を集会場に移すと、全員が目を背ける。

おい…お前ら…

「まあ教えたのは俺…が!」

「よ〜し、死ね、一度ならず二度死ね」

「ちょっ!おい!シクリア!ホルシア締まってる締まってる!」

「当たり前だ!本気だからな!」

「シクリア分隊長ご乱心だ〜ホルシア助けるぞ〜(棒)」

「お〜(笑)」

「よ〜し、お前ら覚悟しろぉ!!」

シクリアはこの戦争終結後、正式に軍に入隊して分隊長の後に小隊長候補にならないかと誘われている。

彼は特別知略に優れたり、または特殊部隊レベルの特技は無いが、彼に関わった兵士は基本士気が維持され、発狂しないで、こんな漫才に笑えるのである。

これは凄い事であり、他の兵士は吐いたり、自殺か脱走したいと思っている中でなのだから。

しかしシクリアは断ろうと思っている。それをする柄ではないし。

この戦争が終わったら軍人恩給貰って平和に暮らすんだ…と死亡フラグ立ちまくりの考えをしている。

しかし、こんな逸材を失いたくないベルカも結構粘り強く交渉に来る。

そんなじゃれあいをやっていたら

「お―い、ちょっと聞け―」

間延びした感じの声は、この監視迎撃地域の隊長で直属の中隊長、パリセル・キッカ―である。

全員一時争いをやめ[ホルシアダウン]そちらを向く。

「隊長自らとは…どうしましたか?」

「うん、悪い知らせと最悪な知らせと死にたくなる知らせがある」

「「「…………」」」

どれに転がっても絶望じゃないか…

「じゃあ軽い方から」

「よし、悪い知らせは、やはりヘリ部隊も地上補給部隊も、核の影響や他の激戦地域に回されて、まだ余裕のある私達は後回しになった」

「ああ…」

弾薬は確かにかき集めればそれなりにあるが、食料が無い。補給が無いのは正直辛いが仕方ない。

「次、最悪な知らせは工兵部隊が攻撃受けて、さらに野戦攻撃で決壊寸前のこの川上流が明日にも決壊して鉄砲水が来る」

「「「………」」」

鉄砲水が来れば、近くの村の人は既に街に逃げているので大丈夫だが俺達が大丈夫じゃない…。

「戦線を後退して新しい防御陣地の構築は?」

1人が言う。

確かにそうだ、鉄砲水が来るなら、盤石な体制を放棄するのはきついが、後方に陣地を置く方が…

そしたら中隊長は…

「そして死にたくなる知らせは、この監視地域から真っ直ぐ15km先に一個大隊と野戦部隊、そして戦車数両が接近中、明日会敵予定だからこの防御陣地を捨てて新しいのにしたら自殺行為、だから本部は鉄砲水が来るギリギリまで戦え!!」

「「「………………………」」

言葉に出来ない…。



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ブラッディーライン 後編

3/13

0600hrs

ベルカオーシア国境線

「はあ~・・・」

「どうした?もはや絶望感満載か?」

「まあな、否定はしない」

G-3を構えるのは予備役中心の中隊の中で分隊長を務めるシクリア、そして隣には戦友のホルシア。

昨日伝達を受けた敵大隊は進軍速度で出した予想よりも遅く、遂に姿を見せなかった。おそらく再編成や、行軍の休憩をしてたのだろう。

我々も出来れば急襲したかったが、目の前の大きな川の上流にとどまった大量の水がいつこちらに襲ってきて撤退不能などで自滅したくなかったので、敵の準備時間を利用してこちらも防御力を上げる。

「しかし、うちの連隊長も気が利くね~」

「まあこれぐらいしなきゃな、いくら経験年数がある予備役が多くても、職業軍人にはかなわない」

今日の深夜に入った、悪い知らせから少し希望あるニュースに変わったのは、川の下流方面のバリバリ現役軍人を直轄の上司である連隊長の粋な計らいでこちらに派遣してくれたことだ。

彼らは戦場では堂々としていて、ベルカ陸軍正規兵の大半に導入されたG-36を持ち、工兵はクレイモアや何やらを設置している。

とはいえ敵は本気であり容赦なく、最悪な状況は依然変わらずだ。こちらも完全な防御陣形で臨まなければ確実に食いちぎられる。

「そういえば、分隊長」

「うん?なんだ?」

うちの隊で一番若い奴、てか教育実習中に戦線に引っ張られた可哀そうな奴が聞いてくる、シクリアは顔を向けると

「敵の野戦部隊も来るって聞いてますが、榴弾とかが来るのですよね?」

「あ~、そうかもな・・・あれってさ、遠くからも聞こえてくるんだこう・・・」

ドーーン、ドーーン・・・ドンドンドン

「てね・・・て、あれ?」

「おい、お前はいつからそんなリアルな音声再現が出来るようになった?」

ホルシアが乾いた笑いを浮かべる、そしてシクリアは

「あ~・・・とりあえず、伏せろ!!!」

「空から降ってくるのは女の子だけでいい!マジで!」

シクリアと、女性にもてず二次元に逃げてるオタクが伏せながら叫ぶ。

刹那

ドドン!!!

榴弾が着弾する。砂煙が巻き起こり、悲鳴も聞こえる。野戦部隊の攻撃が終わると、即座に

「被害報告!!」

「前線負傷者多数!」

「後方、補給拠点には被害軽微、しかしテントの奴らが甚大な被害なり」

「監視塔より、エイブラムス戦車6両、接近、さらに後続部隊も装甲車から降車中!」

戦線に一気に通信が飽和する。

そして川の先の地平線からは最大速度で突っ込んでくる戦車と装甲車群。

さらに

「戦車が停車・・・まさか・・・」

「注意!奴らは主砲をぶっ放・・」

瞬間、監視塔が爆発して崩壊する。エイブラムスの主砲だ。

「奴らには血も涙もないのか」

「ひぃぃ!!」

無慈悲な野戦砲と戦車主砲、そして迫りくる怒号を上げて狂戦士たち、ベルカ軍の前線は恐怖に支配される。

しかし、恐怖するものも居れば、何か吹っ切れる者たちも居るわけで・・・

「だぁああああ!!!オーシアの野郎ども!確かに同情はするがここまでやれって言ってないだろ!!お返しじゃごらああ!!!」

「同感だホルシア!どこぞの国の漫画が書いてたな、全員の合言葉!」

「「「ベルカ軍人はうろたえない!!!!」」」

「弾をばらまけ!今ならどこかに当たる・・・かも!」

「オオオオオ!!」

シクリア分隊長以下12名の分隊員全員が防御用の土嚢の上に立ち、G-3を迫りくる敵に向けてばらまく。

射程圏外の為に弾はほとんど当たらないが・・・

「誰だ!あんな命知らずの馬鹿ども!」

「予備役の前線部隊だ!あいつらに負ける?騎士の名に廃る!!」

「対戦車戦闘用意!鉄クズに変えてやれ!」

「ATM用意!エーーーイム・・・ファイヤー!」

ベルカ対戦車部隊が一斉に撃ちあげる。

しばらく高度を上げると、エイブラムス真上で垂直降下、そして12発の内、8発が当たる。

「どうだ?」

「3両は炎上・・・しかし残りは・・・撃ってきたああ!!」

「だあぁぁ!無駄に重くて無駄に堅くて、エイブラムスは大嫌いだ!」

「対戦車部隊が弱音吐いてどうすんだ馬鹿野郎!!早く弾込めろや!!」

「敵歩兵部隊第一陣が150m手前、射程圏内です」

「撃て撃て撃て!」

「よし!全員戻れ!」

わああ、と陣地の土嚢の影で、タコつぼに隠れるシクリア達。

「よっしゃあ!弾倉交換したら次だ次!」

敵が150mを切ると、次はMINIMIなど軽機関銃も火を吹く。

既に全面武装解除で弾薬を気にしない、気にしたら負けだ!

「第一陣!まもなく乗り込んできます!」

「突破されるな!突き返せ!」

「敵が撃ってきたぁぁ!」

「当たり前だろ馬鹿野郎!」

「俺が引きつける!お前はグレネードを敵に叩きこめ!」

無線は飽和する、しかし聞く暇なんて存在しない。

「ホルシア!おれが撃つ!お前が叩け」

「了解だ」

這い上がってくる者どもに容赦なく銃弾を浴びせる叩くそして

「お前らにはこれがお似合いだーー!!」

余っている土嚢を投げてしまう。まさに外道!

「俺達の故郷を潰したクソどもがーーーー!!」

「ふざけるな!しらねえ言っているだろ!!」

乗り越えてきた奴と怒鳴りあう・・・て

「乗り込まれた?!シクリア分隊より本部!敵に乗り越えてきた・・・本部?くそっ!輻輳[パンク寸前]している!」

0625、ついにオーシア軍部隊が防衛線に侵入、銃撃戦は激化の一途を辿る・・・

いや、逆に銃撃戦は減り、白兵戦や銃床での殴り合い、究極は素手の殴り合いに発展する。

小銃から機関銃、迫撃砲から対戦車誘導弾(ATM)、更にはクレイモア、使えるものは使う・・・しかし

「限界が近いなーー・・・」

中隊長パルセルは呟く、既に左翼方面から穴が開き始め、そこからオーシアが雪崩れ込む。

押し返そうと奮戦するが、負傷者の増大で思うようにいっていない。

更に右翼方面は戦線が広く、度重なる攻勢で脆くなり、中央はエイブラムスをやっと退治出来たが、それだけで限界に近づいている。

「もはや手段を選ばずか・・・通信!」

「はっ!何でしょう!」

通信兵はパルセルの方に顔を向け、耳を傾ける。

「我が戦線維持に非常に困難なり・・・ブロークンアロー・・・ブロークンアローだ!」

「・・・はっ!西部戦線B-12地区、状況劣勢、ブロークンアロー、ブロークンアロー!!」

通信兵は素早く通信を開始する。

ブロークンアロー・・・それはFCMB地上軍が戦線突破を許しそうになった時、敵を食い止めるために敵味方無差別に叩く最強の切り札であり、無慈悲の行動・・・

通信は20km手前・・・

0630hrs

戦線より手前20km陣地

前線の先制支援攻撃が間に合わない代わりに、戦線を突破する敵部隊を殲滅する役割を持っていた砲兵部隊、ベルカ陸軍第12砲兵中隊のFH70榴弾砲6門が並ぶ。

「ブロークンアローがきました!」

「マジか・・・しかし・・味方を極力巻き込ませるな!」

「測距が電磁で機能しませんが・・」

若い兵士が言うと、ベテラン曹長が

「貴様ら!機械に頼るようじゃまだまだだな!機械は補助だ!俺達の勘を信じろ!」

「仰角よーし・・・距離よーし・・・今だ・・ってぇーー!!!」

「撃てえええ!」

復唱と同時に6門が同時に火を吹く。

「次だ次!持続射撃の限界を越えろ!」

「俺達最強!!」

そして戻って前線

「味方榴弾砲が飛んでくるぞーー!!」

「はっ?!」

乱戦の中、連絡兵が声を張り上げて警告するのを聞いてシクリア達は混乱する・・・榴弾砲をここに飛ばしたら・・・

考える暇無く上を見上げれば明けてくる空に不似合いな流れ星・・・てか榴弾砲!!

「全員伏せー!」

乱戦をやめて伏せをする。オーシア達は好機と流れこもうとするが、それが命取りとなった。

大きな川跡やその周辺に榴弾砲の弾が次々と弾着する。

さっきは敵のが味方を吹き飛ばしてたが、今はベルカの榴弾でオーシアが吹きとぶ、同時に破片でベルカ側も負傷者が出る。

しかしそれ以上にオーシアの進撃が・・・止まる。榴弾はまだ降っている、だがシクリアがこれを見逃すはずがない

「今だぁああああああああ!!!!」

声を張り上げる。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

呼応するように動ける者から銃剣を着剣して走り出す。

「また予備役の奴が筆頭に立ってるぞ!」

「くそっ!玉無しの騎士と馬鹿にされたくなかったら走れえ!!」

「漏らすなら終わってからにしろ!今は目の前で死ぬ気で戦え!てかここに墓標を建てろ!!」

 

止まるつもりなんてない、ベルカの騎士たちは恐怖の限界を越えて今、狂戦士となる。

オーシア兵は最初の怒声はどこへやら、最終的には撤退を開始した。

「生きてるな~、俺達・・・」

「ああ・・・少し痛いが・・」

シクリアとホルシアが怪我を負った仲間に肩を貸しながら戦線から離れる。間もなく川の上流が決壊すると警告が来たからだ。

勝利だが、ベルカ兵は士気を上げる雄たけびもあげられず。黙々と撤退をする。生き残りの装甲車とトラックは全て重篤者の後方搬送に使われ、手を貸せば動ける者含めて残りの兵士は徒歩だ。

「川が・・・水があふれるぞ!!」

誰かの言葉で後ろを振り向くと、遂に決壊した川の大量の水が、川幅を大きくオーバーして流れていく。

人の血が染み込んだ土を侵食して、戦死した兵士を流していく。

「目標の為に殉じた敵味方、水に包まれて安らかに眠れ」

地元が自然を神として捉える独自文化があるシクリアは黙祷しながら唱える。目を開けると、ホルシアが固まっている。

「ん?なんだ?」

「いんや・・・聖職者ぽいことするんだな~て」

「悪いか?」

「悪くないさ、いいんじゃないか」

ホルシアが笑顔を浮かべ、シクリアも笑う。しかし次の瞬間

「同時に我々に良いネタを提供してくれました!」

取り出すのはICレコーダー、シクリアは首をかしげて

「ナニコレ?」

「ん?お前、時々恥ずかしい事をさらりと言うタイプだから、こういうの録音して皆で笑ったり・・・ああ、もちろんこれはさすがに不謹慎だから後で消すけど。いやー、いいもんだ」

お前、顔整ってるから女性兵士にも需要があるんだよ~となんかのたまっているが、

「・・・ちょっとごめんね、ホルシア、その負傷兵を丁寧に降ろせ」

「ん?」

ホルシアが負傷者を降ろした瞬間

「貴様も戦死者の後に続けや!」

「おわっち!!死ぬ!し・・」

「殺す!殺してやる!!」

「小隊長がご乱心だ~、ホルシアを助けるぞ~(棒)」

「お~(笑)」

「お前ら~!!て、俺は小隊長じゃ「君は小隊長だよ」はっ?」

やって来たのはいつも通りのパルセル中隊長。彼はにこやかに

「今回の戦闘において、士官が壊滅的で、直属の連隊長が師団長に推薦して君正規軍の小隊長決定、3日後に少尉の階級章届くから」

「はい?」

「それと部下達の満場一致だから終戦後も希望すれば現役少尉でいられるから・・・とりあえず小隊長おめでとう!」

「・・・・う・・・」

「う?」

「嘘だぁあああああああああああ!!!」

シクリアの悲鳴が響き、戦友の笑い声が響いた。

そしてこの激戦地は、後に血の線、ブラッディーラインと呼ばれる・・・。



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3/13

1100hrs

ベルカ経済水域水深45m

ユークトバニア海軍の最強、シンファクシ級シリーズ最高傑作、ナグファルムが無音推進していた。

艦形はシンファクシより一回り大きく、中の機関は一回り小さくても強力。

ミサイル誘導は人工衛星とミサイル自体につけられた周囲確認システムで外れることはない。

「艦長」

「なんだ?」

艦長、グリス・メナットは声のした方、副長の方に体を向ける。

「我が同志達より通達、ベルカ方面全戦線においてベルカの反攻作戦の可能性あり、可及的速やかに「槍」を発射せよと」

「うむ・・・我が方の槍の状態は?」

「オールグリーン、いつでも放てます」

「よろしい」

まもなくこの艦に搭載される武器の真価が発揮される。核兵器とは違う精密な火力兵器・・・

「艦長より全員に告ぐ、「フィルフィーリエ」発射用意!目標は同志たちが奮戦するベルカ戦線」

「了解!フィルフィーリエ発射用意!」

「VLS開放用意!目標座標入力完了」

中央の指令要員が命令を復唱しながらスムーズに用意。ほかの区画の人間も慌ただしく準備する。そして

「全段階完了。あとは発射だけです」

「よろしい・・・」

艦長が周りを見渡すと、全員の目が輝いているので思わず微笑む。そうだよな、シンファクシ、リムファクシは戦場を駆けている間、我々はずっと外から眺めるだけだった。しかしそれも終わり。これからは私たちの時代だ。

「シンファクシ、リムファクシで成し遂げられなかった夢を我々がすべてかなえる。「フィルフィーリエ」発射!!」

「発射!」

砲雷要員がタッチパネルを叩く。次の瞬間、VLSが開放され、中に眠っていた箱が吐き出され、それが海面に出ると、今度はミサイルが現れそれが火を吹いて一度上空に上がり、今度は低空飛行を巡航ミサイルより高速度で飛んでいく。

「我々の歴史はこれからだ」

グリスのつぶやきは艦員全員の思いであった。

1時間後、多数の戦線でベルカ陸軍の被害報告を受ける。

3/13

1300hrs

ベルカ国防省全軍指揮作戦センター

早歩きで廊下を歩くのは、ベリー・ロット大尉、ベルカ軍中央情報本部コントロール要員

「この情報でいいんだな?」

「はい、間違いありません。声明も確認しています。というよりもう三度目です」

「落ち着かないからな・・・失敗でもしたら・・・」

「心中お察しします」

同情してくれる部下の軍曹に何度も何度も確認する。

士官学校卒業してから12年、幾度か大きな会議での発表は経験したことがある。しかしこれは・・・

廊下の突き当たりの「会議室」と簡素に書かれた扉の手前で立ち止まり深呼吸をする。そして

「行くぞ」

「はい!」

ベリーが扉を開くと

「おお、やっと来たか。待ちくたびれたぞ!」

「そういうな、彼だって責務を果たしてる人間だ。ねぎらうべきだろう?」

「やはりその大器、ベルカにほしいものですな」

入るなり口々に言い合う御仁たち、彼らこそ現在FCMB陸軍の全権を担ってる三人、ウスティオのフェルナンデス、レクタのダーダ、そしてベルカのザンナル。

どれもこれも大物過ぎてベリーは冷や汗をかく。

核起爆から起こった国境線での激しい防衛戦のせいで、参謀や情報部の上層部は根こそぎ現地派遣や情報収集に回されたので、今回の緊急事態の説明係が居なくなっていたので、センターはそれなりに有能で一人引き抜いても問題ない部署人間にやらせようということになり、白羽の矢が彼にたってしまったのだ。

と、早く報告を開始せねば!

「では、緊急の用件ですので、手短に説明します。本日1120から40の間に現在国境で戦闘中のベルカ・ウスティオ混成陸軍に大規模攻撃が確認されました。現在被害状況を精査していますが、おそらく甚大な被害かと・・・」

「甚大というと?」

ザンナルが聞いてくる

「おそらく・・・反攻作戦部隊を投入しなければならない戦線もあります」

「予想以上だな・・・」

本当ならオーシア・ユーク混成軍の拠点撃破のために各戦線とレクタ、オーレッド方面から後方からトンボ帰りした部隊による進撃作戦が企図されていたが・・・

「これじゃ作戦は頓挫だな!全く、最近の軍人共は、もう少し気合を見せなければ」

「「いや、あなたみたいな人間はまずいません」」

フェルナンデスの言葉に二人が同時に突っ込む。な・・なんだこの落ち着いた雰囲気は・・。

「話を進めます。敵の攻撃は目撃証言と、衛星、レーダーがとらえた不審飛翔体から判断して、巡航ミサイルと推測されます・・・しかし」

「しかし・・・どうした?」

「巡航ミサイルにしては被害が大きいのです。弾着したのは推定25から30ですが、その一発の範囲が広範囲。さらに言えばこのミサイルの推測発射点周辺は海上、さらに不審艦影が確認できないところによると潜水艦と推測されます。しかしオーシア海軍は少数の監視船を除いて全軍撤退したのはこちらで確認しています。なので30発同時射撃で高速巡航ミサイル搭載潜水艦、それだけの威力あのある潜水艦は、我が軍の情報部では把握できていません」

ベリーが正直にいうと

「オーシア以外に一つあるじゃないですか・・・化け物じみた艦を作った国が」

「はっ?」

ザンナルがまるでなぞなぞを出すような感じでいう。ベリーは間抜けた声を出してしまう。

「ど・・・どこにあるんですか?」

「簡単だよ、オーシアと同盟を結び」

「大型潜水艦と弾道ミサイルをもって空に脅威をもたらした」

「少し怖い超大国、ユークだよ」

「た・・・確かにユークにはシンファクシ級がありましたが、それは2隻、さらに弾道ミサイル搭載艦じゃ・・・」

「あるんですよ・・凍結されてた禁断の兵器が」

「えっ?」

ベリーは第三者の声に驚くそして声した方は会議室スクリーン脇のスピーカー、そしてスクリーンにプロジェクターの光が当たると

「なっ・・・」

「やっと来たか、遅いぞ!」

「君が仕込んだんですか?フェルナンデス君」

「全く、面白いことをしたがる」

ベリーの驚愕を横目に、フェルナンデスは叫び、ザンナルはなだめ、ダーダは微笑する。スクリーンに映るのは

「改めまして皆様初めまして、ユークトバニア元首首相、ニカノールです。そこの君、司会進行を頼みます」

三人の名将に国家元首・・・俺をどうするつもりだ!!

心の中で叫ぶベリーであった。



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存在しない艦

3/13

1700hrs

ベルカ国防省全軍指揮作戦センター会議室

「い、一体全体・・・どうゆう?!」

「驚かせて申し訳ない、色々と事情がありましてね。現在は空母ケストレルにお世話になっています。フェルナンデス元帥、配慮に感謝したい」

「もったいなきお言葉です、閣下。同時にこの場での情報提供、一同を代表して感謝します」

フェルナンデスを筆頭にザンナル、ダーダも恭しく頭を下げる。

「いやいや、君たちが派遣してくれた・・・おっと、これは秘密だったな」

「ええ、できれば墓場まで他言無用で」

ユーク元首首相、ニカノールが笑い、三人もつられて笑う。

「ケストレル・・・てオーシア空母の・・で、ユーク元首・・・でFCMB本部と交信・・ええ?!」

全く追いつかないベリーはただただ首を左右に振り狼狽する。

「ど・・・どうゆう」

「まあ追いつかないのはわかるよ。簡単に説明しよう。今回の戦争、ニカノール首相閣下は全く関与していない。そのまえに書記長クラスの好戦派に幽閉されたからな」

「はいぃ?!」

立場を忘れて叫ぶベリー、はっとして口を閉ざす。ザンナルは笑いながら

「いやいや驚かない方がおかしいものだ。さてベリー君、司会進行を再開したまえ」

「は・・・はっ!」

すぐさま通常モードに戻るように努める。

「そ・・・それでは、潜水艦について、閣下の情報を頂戴したいのですが」

「うむ分かった・・・といいたいところだが、詳しい説明は彼女がしてくれる。頼んだぞ」

「はっ、閣下」

画面上からニカノールの姿が消えて、代わりに出てきたのは妖艶な女性。寒いのかコートを羽織っている。

そのコートはユークの佐官官給品、バッジやワッペンの特徴、首相と共に居るところを見ると情報部政府高官付の少佐か中佐・・・これでも情報本部士官、このくらいの特徴は見抜けなければ失格だ。

しかし、サングラスを外した彼女からあふれる魅力は正直怖いものがある。

「なんとお呼びすれば」

「謎の女一号で結構よ。ベルカの情報士官さん」

「はっ・・・はい」

さらに謎が深まったよ・・・まあそんな私用はどうでもいいとして。

「では謎の女さん、改めまして、此度の潜水艦についてを」

「ええ、いいわ。その前に閣下たちに一つお願いがあります」

「なんだ?」

ダーダが代表して聞く。

「私たち同胞の汚点は私たちとケストレルに同乗する協力者達で片付けさせてください」

「つまりは手出し無用と」

「はい」

ザンナルの問いかけに彼女は即答する。

「どうする?」

そのまま彼はフェルナンデスに問いかける。

彼はしばらく黙ってから

「俺たちは反攻作戦を頓挫させられ、同胞を千人単位で死傷した。ケストレル、確かに貴艦艦長及び周りの艦も優秀だ。しかし私がつかむ限り、白い鳥も居ないし、エクスカリバーを頼りにしないなら圧倒的に火力が足りない、更に有能でも情報艦はアンドロメダ一隻だけだ。それなら我がFCMB軍の総力の方が遥かに強く探索力も高い、多くの将兵を納得させられる。違うか?」

「・・・おっしゃられることはもっともです閣下。しかし、私たちは私たちで既に位置をある程度つかみ、作戦も完成しつつあります。どうか、我々にチャンスを」

「・・・・・」

スクリーン越しでしばらくにらみ合い、やがて

「くそ、女とにらみ合うのは趣味じゃない!たく、じゃあこちらから特殊航空団一部隊を派遣、これを受け入れるのならば後はお前らの好きにやってくれ」

「配慮、感謝します」

彼女は頭を下げる。

「ああ~、なんか物足りん!」

「おい、どこ行く?」

「少し遊びにいってくる、勝手にやっててくれ」

「ああ、行ってらっしゃい」

「えっ?!どこに?」

フェルナンデスを二人は見送り、またベリーだけ取り残される。

「まあ気にしない、それじゃ本題に行くよ」

「えぁ、はい![俺ってここに居る意味あるのか?]」

段々と意気消沈するベリーであった。

「では本題ですが、単刀直入に言いますと、あの潜水艦は「存在すらしてはいけない」代物です」

「・・・簡潔に説明してくれ」

「はい、時代は1980年代にまでさかのぼります。当時、ユーク政府は核搭載B-52を常時飛ばすオーシアの威嚇に対して、策を練っていました。結論は空がオーシアなら海と、超弩級核搭載潜水艦による超報復構想にたどり着きました」

「それは軍の教本にらら当たり前に載ってるな」

確か1982年に計画がスタートしたはずだ。

「ええ、そして建造4年を費やし、遂にシンファクシ級原点シンファクシ、更に3年後リムファクシが完成しました。しかし完成時にはすでに冷戦、共和国と名のつく独裁体制が同時に崩壊、オーシアと合意のもと核軍縮も始まり、同時に軍事で傾いてた我が国の経済援助の密約でシンファクシ級追加建造、改修を禁止をこの潜水艦構想は潰えたと周りは思っていました」

「と・・・いうと?」

「大体の開発者は研究を放棄しましたが、一部の好戦派、それと研究者により艤装手前で封印された超大型潜水艦を核ではなく巡航ミサイルタイプで開発を再開していたのです。それが今回の艦、コードネームは「ナグファルム」、文句なしの世界最大、最強、原潜内なら一番の静粛性を誇る潜水艦です」

「確かに密約上、「存在してはいけない艦」だな。歴史はもういい、どんな性能だ」

ザンナルが催促する。

「簡単に言いますと、自衛は最少、ただ我が国で、これも研究中止とされてたはずの、燃料気化爆弾より広範囲でナパームよりも性質の悪い特殊固形爆薬搭載の巡航ミサイルをこれでもかというぐらい搭載してる艦です。目標設定は人工衛星ですが、それがなくても、おそらくはFCMB領内の主要データマップはインストールされているはずなので、独断でも目標座標にある程度正確に投射出来ます」

「ちなみに・・・残りは」

ベリーも聞く

「どこまで生産できたかはわかりませんが、もし100発以上残ってるなら簡単に一つ、二つの都市・・・いや国家機能奪うくらいなら簡単にできます。もちろん前線軍にも大打撃です」

「そこまで・・・」

彼女の言葉に言葉を失う。

「とにかく敵は静粛性が高く、ソナー吸収も完備、自衛は最少と言いましたが、場合によってはこのミサイルを海上で爆破すれば、今の最新鋭艦、航空機は簡単に目潰しされます」

「それならばお手上げじゃないのか?」

「いいえ、幽閉されても私は折れない主義ですので。人脈は大事ですね」

「ああ」

彼女が強気な理由がわかった。確かにFCMBで血眼になって探すより、本国の事情通にノックして聞けばいい。

「しかし場所がわかっても海上に出さなければいけない。秘策があるようだが」

ダーダが問いかけると、彼女は微笑みながら

「目には目を、歯には歯を・・・です。ともかく、私たちは二日後に作戦決行を予定しています。増援を寄越すなら早めに決定をお願いします」

「わかった。すぐに返信をする」

「了解しました、それでは、私はこれで失礼します」

「うむ、ご苦労だった。それでは私の方からも話すことはないので失礼させてもらうよ」

「はっ!有益な情報ありがとうございました!」

スクリーン越しで敬礼する謎の女とニカノール首相閣下、ベリーを先頭にザンナル、ダーダも返礼する。

そしてスクリーンの映像が途切れる。

「さて、私たちは情報もらっても仕事がなくなったので防衛戦に集中しますか。ああ、ベリー君、君は特殊航空団にパイロット選定を申請してきてくれ」

「了解しました。それで・・・あの」

「ん?なんだね?」

「あの、失礼は承知でお聞きしますが、フェルナンデス閣下は・・・」

「「ああ~」」

二人は笑いあってから

「「彼はね・・・」」

 

 

3/14

0600hrs

国境最前線

多数の戦車が一糸乱れぬスピードで平地を駆け、その後ろには装甲車、トラックととにかく載せれるだけの兵士を乗せている。

その最前線、ベルカ最新鋭サーバル3A2の戦車長席を占領する御仁、通信機を強く握り息を吸い

「貴様らああ!騎士道とは!」

「「「誇りを持つもの心得!!」」」

「自国民を」

「「「愛し!」」」

「弱者は」

「「「救済し!!」」」

「強者を」

「「「粉砕する!!」」」

「貴様らあ!国際法に反するものを許すか?」

「「「否!!」」」

「人間の心を忘れ、同胞を捲き込み凄惨な殺し合いを進める無法の動きをするものを許せるか?」

「「「否!!」」」

「雑魚にわき目振らず、憎しみにかられず、ただまっすぐ突き進められるか?」

「「「応!!!!!」」」

ひときわ大きい声に満足すると

「よろしい、ならば電撃戦だ!補給を考えるな!ただ走れ!こんなバカげたことをする者たちに我らの怒りを浴びせろ!!我慢しなくていい、行け!誰になんと言われようと正義は我らにあり!」

「「「「「「YAHAAAAAAAA!!!!!!」」」」」

4時間後、フェルナンデス元帥によって率いられた一個旅団は野砲の支援射撃も追いつかない怒涛の攻勢により憎しみを作るオーシア、ユーク残党司令部を総攻撃、これを見事に壊滅、ただでさえ足並み揃わぬ残党軍はさらに烏合の衆と化す。

そしてこの日、有史史上最も華麗に成功した電撃戦としてのちに教本に記録されることになる。



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真逆の道 同じ思い

3/13

1730hrs

オーシア空母ケストレル通信室

「ふうっ・・・」

「3名将に対してずいぶん無茶な要求したじゃねえか、ナスターシャ」

「あら、黙ってた聞いてたの?人が悪い」

謎の女一号こと、ナスターシャ・ヴァシーリエヴナ・オベルタスは後ろに居た、ジャック・バートレットを見る。心なしか先ほどの会見、そして通常時よりも砕けた感じのしゃべり方だ。

「人が悪いのはお前だろう、ナグファルムを倒す作戦なんて聞いてないぞ」

「そりゃ言わないわよ、なんてったてまだ策は練られてないんだから」

「はあっ?!そんなんで支援不要と喧嘩売ったのか?!バカなのか?」

「どうどう、少佐に対してなんて口のきき方よ。私は策はまだ無いと言っても、作戦に必要な用意はしているわ、短絡的なのは昔から変わらないわね」

「このケストレルでは階級なんざ無効だよ、それにこちらは実戦部隊、そんな不安なことを先に言われたら誰でもなるだろう」

バートレットの言葉にナスターシャはくすくすと笑い

「あらら、私の知るバートレットは猪突猛進で、空では怖いもの知らずのお人よしという矛盾しながらも面白い人間だったはずなのに、平和が続いて牙が抜けたのかしら?」

「・・・・、昔とは立場が違うんだ、立場が」

そういうと、拗ねたようにそっぽを向くバートレット。40過ぎたおっさんのするこ行動かしらと、ナスターシャは面白そうに、そして変わってないなと同時に心の中で思う。

彼は絶対に失敗を許さない、それは自分の身ではなく、もうひよっこという称号からとうに抜け出し、十分にエースの資格あるウォードッグ・・・いや、今はハーリング大統領直轄部隊、ラーズグリーズ隊の心配をしているのだ。

余計なお世話でも一度ついた親心とはそう簡単に取れないものなのだろう。人にものを教えたり、手塩に育てた部下を持たない自分でも、その感情くらいは分かる。

ベルカの資源発見の時、ベルカとオーシアの対立は深まり、逆に冷戦下であったオーシア、ユークは徐々にベルカの暴走時、もといベルカの暴走予見しての先制攻撃のために、即時同盟のために水面下で将校の交換、技術、経済に関しての融和政策が行われていた。

といっても、冷戦状態は変わらずだし、ユークはいろいろベルカに利権を売ったり、技術を貰ったりの相互協定でうまみがあったので、当時はこの戦争中ほど深くなく、表面上の付き合いの部分も多かったが・・・。

まあ戻って、その時、新任だった私がオーシアに派遣されたとき、当時本部のエリートパイロット彼に出会った。

彼はとても勇敢なバカで、ベルカに対しての強行偵察に真っ向から反対したり、逆に領空侵犯あれば、即座に飛び立とうとする。

頭で考えるよりも脊髄で行動するタイプ。あきれたけど同時に惹かれた。

情報部で鍛えられたはずの無の感情を一気にぶち壊してくれた時はもう自分にあきれた。でも面白かった。

しかし、出会いあれば別れあり、バートレットは突撃しすぎてサンド島へ島流し、私も本国への帰還が命じられた。

結局は国が違って、成立するはずのない恋、体は拒絶してる感じはしたが、案外頭の中は冷静で、自然消滅する前にきっちりするためにはっきりと振った。

そして今、なんだかんだでバートレットと再会している自分に高揚感を感じてないというのは嘘だ。

全く、おとなしく忘れて、本国で見合いを申し込んできた人と結婚すればよかったのに、この期に及んでまだ危険な方を選択するみたいだ。

「まあ安心して、作戦をうまく行くための布石は打った。あとは花が咲くかどうか・・・」

「どうゆう・・」

刹那、艦内に警報が鳴り響く

「緊急事態発生!緊急事態発生!ユーク、オーシア連合艦隊の接近を探知・・・・え?あ・・・いや、えええ!?」

艦内放送担当が混乱している。

「いったい緊急なのかどうなのかはっきりしろ!!」

「どっちかしら・・・」

おそらく、艦内、いや、艦隊全体の人間が次の言葉に注視している。すると混乱してる人の声が途切れ、次に聞こえたのは

「アンダーセンだ、艦内諸君に通達する。好戦派の艦隊の中から、ニカノール首相の言葉とハーリング大統領の説得で心動いて、ナグファルム撃滅に協力する仲間が本体から逃げてきた。勇気あ彼らを守れ、戦闘機発進、第一種戦闘配置につけ、以上」

アンダーセン提督の言葉で皆が一斉に動き出す。バートレットは数秒固まってから

「まさか・・お前」

「ふふっ、早く新しい仲間を助けてください。それがナグファルム撃滅の鍵であり、ひいてはオーシア、ユークの融和に必要な人たちです」

「わかってるさ!たく、こんな大胆なことをしやがって、あとで覚悟してろよ」

「ええ、楽しみにしてるわ、ご武運を」

いうが早く、ナスターシャは素早くバートレットの前に出て、頬に口づけする。

「・・・くそっ・・・、一度別れたんじゃないのか?」

「時の流れが変わればその時よ」

彼女の言葉にバートレットはまた固まり、そして

「たく・・本当にかなわねえな・・・今度は離すつもりはないぞ?いい加減ハートブレイクワンは飽きたからな」

「ふふ、どこまで食いつけるか楽しみにしてるわ・・・いってらっしゃい」

「ああ・・・」

ようやくバートレットは格納庫に向けて走り出す。そしてナスターシャは

「さ、早いところアンドロメダと連絡取らなきゃ」

外は彼の専門、内は私の専門。

己の役割を果たすべく、真逆の道を歩く。



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混迷の海 序章

3/13

1340hrs

ケストレル艦橋

「敵、ユーク本部艦隊及びオーシア国防第一艦隊分遣部隊、どちらも降伏指示に従わない艦隊ばかりです」

「オーシア距離30マイル、数9隻、ユーク・・・距離15マイル、18隻、我が艦隊の前方を防ぐ形で布陣、オーシアに関しては横に居ます」

「左舷と前方に護衛部隊を!戦闘部署発令用意!」

「ふむ、戦力差がきついが・・・」

アンダーセンは顎を撫でながらいう。そして後ろを見て

「本当に成功しますかな?」

「私を信じてください、艦長」

そこに立っている国家元首、ニカノールそしてアンダーセンは頷いてからマイクを渡す、通信場所はもちろんユーク海軍

ニカノールは一泊おいてから

「ユーク艦隊の諸君 私は君たちの政府を代表する国家首相ニカノールだこの… 」

ニカノールはマイクを外し、小声でアンダーセンに

「ケストレルか?」

「イエス、ケストレル」

「このオーシア空母ケストレル艦上に居る、そして私はこの戦争に完全な終止符を打ち、友情を取り戻すためだ。我々は再び・・・「艦隊各艦に告ぐ」」

突然無線は遮られる、そして耳障りな声が響く

「ユークトバニアとFCMBの間には憎悪しか存在しない元首ニカノールは敵についたこれを敵と認め敵艦もろとも海中へ没セシメヨ」

・・・失敗か?ケストレル他味方艦が絶望したとき

「しかし司令官、仮にも元首のお言葉です我々だって理不尽な戦いは御免なのです戦闘の中止を!」

艦隊左翼に布陣していたフリゲート、「ピトムニク」が艦隊の進路をふさぐように出る。

やはり好戦派の中には嫌でも司令や上層部の命令で来たものが居るのか!しかし、現実は・・・

「我に従う艦は艦隊の前を邪魔するフリゲート艦『ピトムニク』を撃沈せよ」

「なっ・・・」

「まずい・・・だが、間に合わない」

ニカノールは絶句し、アンダーセンが険しい顔をする。

130mmの主砲が数門ピトムニクに向く

「撃ち方始め!」

「待てっ!!」

ニカノールがいうが間に合わないし聞かない。

友軍であった駆逐艦、フリゲート2隻から主砲が発射、一発はよけるが、二発目は命中、更に命中・・・しかも当たり所が悪かったのだろう。ピトムニクは瞬く間に轟沈していく。

双方しばしの無言・・・ニカノールは唇をかむ。交渉は決裂した、そう思ったとき、希望の通信は来た

「こちら栄えあるユーク海軍ミサイル駆逐艦グムラク、同僚の撃沈を命じる艦隊司令官とは 行動をともに出来ない、我々はニカノール首相を護る同意する艦は我に従え」

グムラムという艦が前に出た瞬間、2隻が追従していく。

「旗艦に従わぬ艦は攻撃する!!」

しかしもう彼らには聞こえない。

そしてオーシアからも

「こちらオーシアミサイル巡洋艦シバリー他2隻、ユークニカノール首相の言葉を聞いて風向きが変わったのを知った。もう戦争なんて御免だ。今から合流する。掩護を頼む!」

「勇気ある彼らを守れ!戦闘機発進!」

アンダーセンの言葉と共に空母要員は一斉に動き出す。

「おお・・・これは・・・」

ニカノールが声を漏らす。

「元首、あなたの言葉に賛同した者たちです。一隻は残念でしたが、その者たちの無念は我々が晴らします。元首、あなたは艦を発ってください」

「しかし」

「あなたには重大な仕事があります。元首と我らの大統領、そしてFCMBと手を取り合うのです。これ以上の悲しみが増える前に」

「・・・・わかった」

ニカノールはうなずくと艦橋から出る。そしてアンダーセンは

「我々もラーズグリーズの援護に回る。行くぞ!諸君!」

「了解!!」

敵が味方になり味方が敵になる。混迷の海は今火ぶたを切った。



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混迷の海 歌に集いし

連投に反省し、心機一転のこの一話。

混迷の海を大幅アレンジ相成りました。5要素詰めまくりました。
詰めないと多分不完全燃焼になると思ったので。
次回混迷の海終了



3/13

1800hrs

ユーク艦、グムラクCIC

「戦闘部署発令!!全速力でケストレルに行けっ!」

「敵の主砲が来る!ミサイルも来るぞ!!」

「ここで死んでたまるか!総員何が何でも防げーーー!!」

CICにまで響く音・・いつ自分の艦に着弾するか気が気でないが、目標が出来た今はそんなことに囚われる暇などない。

現在超近距離戦ゆえ、対艦ミサイルも対空ミサイルもまともに動かせず、主砲で勝敗決める数十年前の戦闘になっている。無線はパンク状態、敵味方寝返り艦が入り乱れてまさに混迷という言葉が似合う。

「我が艦の攻撃に怯まずに敵は主砲と進路を塞ごうとしています」

「ノーガードの殴り合いか・・・」

副官の言葉に呟く人物はグラス・カチャン、階級は中佐でこのグムラク艦長。

彼はこの戦争には疑問を持っていた。融和主義の首相ではなく、バリバリタカ派の第一書記実権を握ってた時から気づくべきだった。

「艦長!追撃の艦が!前の艦が!囲まれます!」

「離反友軍艦から支援要請!」

「落ち着け!!」

CIC内はあまりの情報量でパンク寸前になっているところにグラスの大声。CICは静まり返る。

「我々は今は不利だ・・・しかし空を見ろ・・・俺たちには何が付いている?あのラーズグリーズだ・・・白い鳥を落としたラーズグリーズだ!」

白い鳥・・・潜水艦のヘル・エンジェルに鳥のラーズグリーズ、特に後者はオーシアからウスティオに寝返り、撃墜記録と制空重視機のくせに対地で地上兵器をスクラップしまくったことと、寝返りで正式な部隊名が無かったことから、眠りから目覚めて死を降り注がせるラーズグリーズと呼ばれ、これが正式な部隊名となった。その彼らがケストレルに居ることはさっきケストレルの司令部から来た。

「後ろの敵は彼らに任せろ!前進だけを・・・前だけを見るんだ!前方ユーク艦ギルト・・・これを敵と認識して全力で排除しろ!!」

「了解!!」

艦内は周りに囚われずただ一点を見つめる。

グラスは天井を見上げる。CICからは彼らの活躍は直接見えない・・・しかし

「レーダーから活躍を見せてもらうぞ・・・死神たちよ・・!」

彼は静かに呟いた

 

同時刻

上空

「和平の芽を潰させるな!!ラーズグリーズ・・・エンゲージ!」

<<了解!!>>

空を駆けるのはジューン・シュバルツ率いるラーズグリーズ隊5機。

ゲーム世界と違い、チョッパーは戦死していない。そして彼らの操る機体はF-14にほぼ同じだが中身は全く違う。

F-14S スーパートムキャット21

スーパークルーズにステルス性を付与に単座型、更にこのオーシアバージョンでは可変翼を従来より大きくし戦闘機動を効率的にし、元から大きいタンクを維持し、更にチタンと炭素繊維などを使用して軽量化を図り最悪燃費から最高燃費に、そして目玉であったフェニックス長距離ミサイルによる空母艦隊護衛構想を捨てて、近距離、中距離での要撃任務も可能にし、場合によっては対艦ミサイルと対空ミサイルを大量搭載可能にした戦闘機。これはオーシア軍の中の可動戦闘機で最強に分類される。

しかし先進技術の使い過ぎと元からの整備の難しさ、すでにスーパーホーネットの制式採用で少数の配備に留まったが、この戦闘機をハーリング大統領からの特別輸送でケストレルで組み立てられて配備された。

そして今。実戦の時である。

<<ブービー!おいこら!俺らだけでこの艦隊相手するのか>>

「仕方ないだろ。それに俺たちだけでない。下にも味方がいるんだ!彼らを信用しろ!まずはユーク「味方」艦の後方につく奴らを攻撃する!数が多い、戦闘不能にして弾は少なめにしろ!」

<<了解です・・隊長、私は貴方を守ります>>

<<いちゃつきは後でだ!今は敵に目を向けろ!>>

スノーの言葉に全員が前を向く。

敵のミサイルが来る。超近距離戦、一瞬の油断がアウトだ。

まず素早く全機散開、ジューン、スノー、ナガセがユーク、チョッパーとグリムはオーシアの艦隊に向かう。皆が目標に目をつける。ジューンが目をつけたのは目の前の駆逐艦!

「兵装解除!ラーズグリーズ1フォックス3!」

敵のミサイルの隙間を縫って低空飛行に入って狙いを定めると、一発の対艦ミサイルを放つ。そのまま反転離脱。対空ミサイルも30mm機関砲の迎撃も間に合わず駆逐艦の腹部に命中、火を噴きあげる。

<<ユーク駆逐艦ヤヌーク戦闘不能確認!ラーズグリーズリーダーが1番だ!>>

<<オーシア駆逐艦ファネット撃沈判定!若造もやるぞ>>

<<おいグリム!俺の獲物を・・・>>

<<先輩には負けられません>>

<<可愛くねえ!!後輩が可愛くねえよぉ!>>

次に戦果を出したのはグリムである。彼は最初の頃は頼りなかったのに今では対地対艦に関してはこの部隊のトップ、ジューンと張り合っている。

チョッパーも悔しそうにするが、本当に悔しくなく、むしろ頼りにしているのが分かる。

<<敵の艦載機や増援機が上がってくる・・・注意しろ!>>

目をレーダーに向けると多方面から敵機・・・

「ナガセ、スノーさん!俺が奴らを引き付ける。対艦戦闘を出来るだけやってくれ!」

<<隊長!無茶です!>>

「無茶もあるか!今は平和の芽を摘ませない・・・自分たちのベストを尽くすんだ!」

<<・・・承服しかねます。敵艦を沈黙させ次第すぐに私も増援します>>

<<やいブービー!自己犠牲をきれいにするんじゃねえ!待ってろー、ソッコーで叩き潰して駆けつけてやるっ!>>

<<先輩・・・まずは目の前の敵からです。こちらの空母も発艦しようとしています。合流する前にせめて甲板を壊さないと>>

<<ということだ、海軍パイロットである俺が艦隊を引き付けてもいいぞ>>

<<こちらオーシア艦シバリー、これでもイージスでな!ちょっと待ってな、今からそっちで無双してやる>>

<<ユークよりまずは合流だ!ラーズグリーズに手間かけさせんな・・・まあ体制整ったら暴れよう>>

<<了解だ!>>

自分で言うのもなんだが・・・やはり

「この部隊は自分ら含めて周りもやかましいな!!分かったから早く倒して助けてくれっ!!」

<<<了解!!>>>

正直この戦力差、ひっくり返せないし、増援は絶望的と分かってもうれしいものだ

隊の結束が強まったとき、突如無線に何かをひっかく音が聞こえる。そして次に聞こえてきたのは・・・

「音楽?」

女性の透き通るような美しき声

<<なんだこれは?!>>

<<JorneyHomeか・・・いい曲だ>>

<<敵の音楽だ!早く止めろ!>>

敵味方全員が困惑する。音楽の発生源は・・・

「艦長か・・・ケストレル艦長が流してるぞ!」

あの人は・・・この海戦が希望の一歩だからか・・・

<<本当にいい曲だ、俺たちにも手伝わせてくれ>>

「どこからの無線だ?」

聞いたことない声にジューンが聞き返す。ケストレル司令部から

<<!?、方位040、ユーク戦闘機部隊・・・え?>>

<<どうした?>>

<<ゆ・・・ユークとベルカが並んで・・ベルカの所属は・・・シーフェスディス!シーフェスディス海軍航空隊だ!>>

ユークとベルカが並んできている?!そしてやってくるのは、ユークのSU-35にベルカのSU-33

<<こちらユーク731航空隊、元首の言葉で風向きが変わったことを知った。俺たちも加えさせてくれ!海軍も今こちらに来て対艦ミサイルの準備中だ!>>

<<空母シーフェスディス航空隊だ。あのバカ夫婦以外にも精鋭が多い部隊だと知らしめる!>>

そして後方からもレーダー反応、F-15EにSU-27とF-18の混成部隊

<<オーシア空軍第12航空団と海軍航空隊、それにユーク47航空隊ただいま参上!言うこと聞かない奴らにお灸据えるために遥々飛んできたぞ!ちょっと基地司令監禁して飛んで来たから背後から追討部隊が来ているが・・・まあ気にするな!空中管制機も連れてきた!>>

<<ララーラーラーラ、我々の美声を聞きたまえ。こちらはユーク空中管制機、オーカニエーバ、君たちで言う「空の目」スカイアイという意味だ。僕以外のも来ているぞ>>

<<ケストレル派諸君に告ぐ。オーシア空中管制サンダー<<<あああああああああ?!>>>>やかましい連中だ。私語を慎め>>

ラーズグリーズの面々で無線が飽和する。この無駄な美声は・・・

<<サンダー石頭ヘッド野郎?!!>>

<<相も変わらずだな・・・私語を慎めと何度言えば分かる>>

彼はサンダーヘッド、ホーン・マクワイア少佐である。見ての通りチョッパーとは犬猿の仲である。

<<ケストレル、私たちが来たからには空の交通誘導は任せろ。貴艦は予定通り新しい仲間と合流してくれ>>

<<了解した!かたじけない!>>

<<というわけだ、ただ今をもって指揮権は我々に委譲された。各機全力を尽くせ。空母を守れ>>

<<了解!>>

この環境は・・・

<<隊長!>>

「ああ、壮観だな」

ナガセは感極まって珍しく声が潤んでいる。自分もなりそうだ

<<それでは歌で集いし諸君、敵の増援さらに確認、戦力差はまだあちらが上だが練度と正義はこちらにある戦ってこい!エンゲージ!>>

オーカニエーバの一言で各機が散開する。さて自分も

「改めて・・・ラーズグリーズ1、エンゲージ!」

愛機のエンジンを吹かす。

 

歌で集った軍隊は正義無き部隊に最後を告げさせる。



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混迷の海に乱気流

最終局面の引き伸ばしになってしまいました。でも後悔はしていません。←おい




3/13

1820hrs

空母ケストレル甲板

季節的には日が沈むのが早いが、この海域は高緯度でまだ夕日は完全に没してない。その上を乱舞する戦闘機たち。

夕日に照らされる戦闘機、これが平和な空での曲技飛行ならどんなにきれいで美しいことか・・・

そんな数十機の戦闘機の爆音に負けない勢いでまくし立てる男が一人。

<<それは本当かジュネット!!本当だったら歴史の転換点、間違いだったら三流ゴシップ以下だぞ!>>

「間違いありません!現にいろんな戦闘機が独特の爆音轟かせて飛んでいます!ユーク、オーシア好戦派にFCMB、オーシア、ユークの融和派軍が交戦しています!データ送ります!!」

甲板のギリギリで、衛星電話を片手に愛用のハンディカメラ、そして高性能の一眼レフカメラを連写するのはオーシアのフリージャーナリスト、アルベール・ジュネットだ。

彼はラーズグリーズの前身、ウォードッグを取材途中にハーリング亡命計画を知ってしまい、このまま拉致されて現在に至っている。

<<画像は届いた・・・しかしこれでは戦闘機が遠い!もっと迫力ある写真は出来ないか?!これじゃあ独占のうま味が半減だ!>>

「バカ言わないでください!これ以上は甲板がないので海に落ちる!ニカノール首相の救助についてのレポートもあれば記事は完成しますよね?!」

<<いやしかし・・・これでは敵か味方かの区別が・・・>>

我がまま編集部め!!フリーだからって無茶な要求をするな!

金には執着しないが、ここまで写真や記事をけなされるのはイラッとくる。ならば奴らを驚かせる方法・・・その時

「おおい!ジュネット!」

聞きなれた声、振り返ると

「ガルト大尉!どうされたんですか?」

このケストレルの救難部隊である、シー・ゴブリンの1番機機長のガルト・ケッセナル大尉。取材を快く引き受けてくれる人物で、南国を味わいたいとここに来たが、初っ端から寒い地方で任務や、海上での行動ばかりと愚痴る面白い人だ。

「いやね、艦長のご命令でベイルアウトした奴らの救助任務に行こうとしたら君が叫んでたからね。状況は聞こえたよ」

「恥ずかしいかぎりで・・・て、これから救助ですか?!」

ジュネットが驚きの声を上げる。ガルトは笑いながら

「当たり前だろ!そろそろ日没、戦闘終了までベイルアウトした仲間を海に放っといたらあっという間に体温奪われて死んじまう。空戦の最前線がなんだ!むしろうちらの本番はここからだろ」

ガルトが笑顔で言い切る。その言葉には確かな実力と自信を裏付ける.

「そこでだ、ジュネット、今飛び出す命知らずは先行偵察1機に救助用ヘリ2機の合計3機だ。そして先行偵察機は救助任務はしない、命が惜しくなければ扉を開けて身を乗り出してもいいぞ、あとは言わなくてもわかるな?」

直接言えばまずいからガルトは遠回しな感じではっきり語ってくる。

「いいんですか?一般人を乗せるのは・・・」

「君の度胸はこの艦の奴らが知ってるし、もう仲間だ!生存の保証はできないが、君が従軍して、俺たちの仕事、そしてこの歴史の転換点をレンズに収めてほしい。これは俺だけでなく皆の願いだ」

ガルトのいつもとは違う真剣な言葉にジュネットは圧倒される。そして腹は括った。

「自分とみなさんのために是非とも従軍させてください!」

「ほいきた!お客さん一人追加だ!」

おう!と後ろで準備するシー・ゴブリンメンバーが声を上げる。

「じゃあ早く乗る準備しろ!」

「了解です!」

<<おーい、一体何がどうなってんだ~?>>

編集部の電話を完全に忘れて彼は走り出す。

 

同時刻

洋上

両陣営の戦闘機が狭い空間に数十機、所狭しと乱舞して戦闘する。

最初は12対4が今では24対20さらに増えている。数はこちらが少ないが、実力は上だ。

そして敵味方で少なくない損害が出始めている。ベイルアウトした仲間を救出するためにケストレル

<<てなわけで救難ヘリを飛ばす!全機護衛も頑張ってくれ!>>

<<ちょま・・おい!その仕事は大きすぎるだろ!やっと戦力差が均衡になったのによう!>>

<<私語は慎め、状況はわかるが墜落した仲間を救出するのは大事なことだ>>

<<わかってるさ!おいらだってそのくらいわかるさ!>>

<<だが実際問題この空間では厳しい>>

チョッパーとスカイアイが安全確保を主張する。紳士協定で相手の国の救助部隊、およびベイルアウトした敵に対して施しはしても危害を加えることはご法度しているが、この乱戦下ではそんな悠長なことは言ってられない。

既に重たい対艦ミサイルが1発しかないジューンは決断した

「ラーズグリーズ1より、俺がヘリの護衛をする!」

<<ネガティブ!あんたは悪い意味で注目の的だ。ヘリに向かえば巻き添えが出る!>>

仲間の指摘通り実際今も敵はジューンに集中している。ジューンは人並より視野が広いが、ここまで敵に集中するとさすがに無理か・・・。

<<ラーズグリーズ1!後ろ!!>>

思案していたら死角から敵!

「やば・・・」

回避が間に合うか分からない、被弾を覚悟した瞬間

<<間に合えええええええ!!>>

通信の声と共にミサイルが一発、敵に命中して四散する。

誰が?周りを見渡した時、一機の見たことない独特なフォルム・・・強いて言えばユーク、ベルカに多い戦闘機のデザインにステルス性を重視しした戦闘機・・・あれは?!

<<こちらトゥルブレンツ1、エンゲージ!ラーズグリーズを救えて光栄!>>

「なんで乱気流がここに居るんだ?!」

<<ワケあってこの空母に戻されてたんだよ!>>

<<おおおおい!!そのワケで出てくんなって言われてただろう?!!何で出てきた?!盗んだ機体で飛んでくるんじゃねえよ!!>>

<<盗んでない!ただ戦争が終わるまで借りてるんだ!文句あっか!>>

<<<大アリだよ!!>>>

トゥル1ことグレンが愛機T-50で突破をかけようとする。周りのベルカ友軍が総ツッコミ。

理由は彼の機体だ。

この機体は捕虜収容所から脱出の際に一緒に盗んできたきたシロモノ、それもオーシア、ユークの最高機密機

この機体であまりにも活躍してしまった為に、「ユークの最大の敵」と認識され、敵からはサザンの結川と並んで真っ先に落とせと命令されているのだ。

今までは混乱に乗じてや、オーシア戦で使っていたが、オーシア、ユークとの和平、そして特にユーク好戦派の前には出してはならないとして、空母シーフェスディスに原隊復帰し、出撃禁止を受けたのだ。

それがユークのバリバリの好戦派の目の前に出てきてしまったのは最大の誤算であるが・・・。

<<おい・・・あの機体・・>>

<<あれは・・・乱気流だ!我々の最大の敵が現れたぞ!>>

<<落とせ!何が何でも落とすんだ!!>>

目ざとく気付いたユークの増援のMIG-31と35の3機が迫る。

<<フォックス1>>

<<なっ・・・>>

敵は気取られたのもあるが、それ以上に敵の死角から滑り込み失速ギリギリで強引に機体を敵に向けるこの技量が高すぎた。そして掃射

一機が四散、他は散らばり、統制が利かなくなると間もなく友軍が攻撃する。

<<隊長!危ないマネはやめて下さい!>>

耳にやさしい声で怒りながら素早くその機は体勢を立て直してT-50の後ろにピッタリ付く。敵方から動揺の声が漏れる

それは何の変哲もないノーマルなSU-33、しかし中身は違う、操るのはトゥル2のエレノア、覚醒しベルカ最強のパイロットにしてグレン至上主義、彼の居る場所に彼女あり。彼女の通る場所に敵は(物理で)なし

<<ふっ、お前とコーヒー屋開いてのんびり生活するまで俺は死なないさ!>>

<<同じ願いなら尚更です!>>

<<<空で痴話げんかするな!>>>

<<なんなんだ彼らは・・・ベルカは>>

<<へへ、空の騎士様方も雑談好きと見た・・・サンダー・ヘッド、これは止められないよな?>>

<<各機私語は慎め、とくにダヴェンポート、少し黙れ>>

<<やっぱりぶれねぇなぁ!>>

<<チョッパー、いい加減黙りなさい>>

<<先輩しゃべりすぎです!敵が来てます!>>

<<オカンが多すぎる!!>>

チョッパーの叫びにトゥルの乱入により戦場の雰囲気はいい意味で砕けて士気高揚する。

「ラーズグリーズリーダーより、トゥルブレンツ、貴隊の支援に感謝したい。そしてこれからどうしますか?」

<<トゥルでいいさ、ラーズグリーズ。状況は聞いている。俺と2は残念ながら海軍に所属しながら対艦はからっきしだ。代わりに味方艦と救助ヘリには一歩も近づけさせねえ、対艦はうちの空母のメンバーを貴隊配下に入れさせる。>>

<<こちらオーシア航空隊、艦爆装備を持っている奴をオーシア空母に向かわせる。身内の恥はここできっちり仕留める>>

<<ユークより、こちらもユーク好戦派を仕留める。特にあの重巡洋航空艦、いや空母は強化されて簡単には沈まないが、最大の弱点の背骨がある!そこに誘導する!>>

<<こちらユーク、グムラク間もなくケストレルと合流できる、合流次第我々も盛大に援護してやる!!>>

各部隊から聞こえる自信に満ち溢れた声、対艦ミサイルは残り一発だが、何とかなりそうだ。ジューンは息を吸い、

「了解した。それでは各機、これが我々の最後の戦闘になると願って・・・散開!」

ジューンの号令で戦闘は最終局面に移る

 

 




ずいぶん前にリクエストがあったにで・・・

戦闘機パイロットオリジナルキャラのみで戦闘力比較
3位、バッカス1、オリビエ・ヴィスコンティ
部隊の統率力の高さは随一。タイフーンの高機動を意のままに操れる体は耐Gスーツが優秀だからの一言で片付けられない。
2位、サザン1結川
個人戦闘技量においてはトップクラス。ただし人に甘えられない仲間が居るのに孤独
同率2位 ヴァルキューレ1、ジャスミン・ミリディアナ
そもそもヴァルキューレ隊自体が全体的に高いが、その中でずば抜けて高い技術を持つ。また人を頼るのもうまい[これが部下たちがやる気に変えて結果高い統率と忠誠がある]

圧倒的1位
トゥルブレンツ2、エレノア・ロートシルト
最強・・・これ以上の言葉で表せるなら教えてほしい。
ちなみに撃墜機数は覚醒した後のこの短期間で12機撃墜。覚醒前を含めたらえらい事に。


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混迷の海 決着

次回は名場面少々、次回の布石と、ヴァルキューレ隊の新機体紹介予定

なろう時代から国家モデルを改定しました、直接に影響はありませんが、最初の方の話から見ると違和感が出ます。

ベルカ→ドイツ
ウスティオ→チェコ、スロバキアを合わせて一回り大きく。そして国民性はまじめなイタリア人風
資源からウクライナ説もありますが、自分はチェコ、イタリアモデル派です。

サピン→スペイン
オーシア→アメリカ
ユーク→民主化ソ連、またはロシア



3/13

1830hrs

 

混迷の海は終盤に入る。

「で、どこに当てれば奴を沈黙させることが出来るんだ?」

<<今弱点をデータリンクさせている!奴は本当に硬いんだな・・・>>

ミサイルにデータ入力してくれる士官が呟く。

ジューンは対艦ミサイルが正常に作動する距離まで離れる為に一旦戦域を離脱しようとする。

敵もしぶとく来ようとしていたが、エレノアとグレンが敵のリーダー格を的確に攻めて命令系統を混乱にきたさせている為に足並みがそろわない。

<<敵は重巡洋艦を称した空母だが、ユークの主義を良く表す奴でな、戦闘機の格納を犠牲にする代わりに重武装と多数の水密扉、普通の空母でも簡単に沈まないのにこいつはさらに沈みにくい>>

<<面倒だなぁ・・・ふつう何発ぶち込めば沈む?>>

<<発艦不能までに5発かな>>

<<面倒すぎる!!>>

随伴艦艦爆要員のユークとベルカのパイロットが口々に言う。そんな通信を聞き流していると

<<やばっ!くそ!テータ2より!助けてくれ!ミサイルが重くて敵から逃げれ・・・>>

勇敢に突っ込んでいった友軍の通信が途切れた、恐らく・・・落ちた

<<テータ2!おい大丈夫か!友軍機!助けてやれ!>>

<<もう遅い!データリンク早くしてくれ!>>

対艦ミサイルは総じて重い、その重さは戦闘機の機動力を大きく奪う。そして

<<艦爆隊に良い知らせと悪い知らせだ。良い知らせは離反して友軍となった艦と合流に成功した。悪い知らせは合流して組織的反撃可能になった艦隊よりも艦爆隊を積極的に狙う輩が増えたということだ!>>

「最悪だな。まだ終わらないか!」

ジューンが流石にいらついて珍しく声を荒げる。

<<もう少し・・・あと少し・・・よしっ、出来た!今から座標を示す!そこからASMを可能な限り低高度で飛ばしてくれ!>>

示された座標は・・・

<<おいこりゃ敵のど真ん中じゃないか!ラーズグリーズでも無茶だろう?!>>

「いえ・・・行きます!」

既に空は暗くなり、海との距離感はレーダー任せに近くなっている。だがしかし、ここで臆したら負けだ!!

 

ここで一つ

ジューンがエースパイロットであるかと言われれば周りの人間もエースばかりで実はパッとしない存在だったりする。

しかし、メビウスにもガルムにもない彼の特技、それは圧倒的な視野と夜目と勘によるレーダーより正確な高度調整と抜け道探し、そして追撃である。

事実、彼は空のエースでありながら、有視界戦闘も多い陸攻撃においても高い実績を誇っている。

 

そんなポテンシャルと共に

<<よっしゃあ!敵を引き付けるぞ!2>>

<<了解です!>>

トゥルの二人が思いっきり暴れる。

<<ラーズグリーズ様のお通りだぁ!>>

<<火力を集中してやるぜ!>>

友軍からの援護射撃

<<ブービーがやるぜ、俺たちもオーシア空母何ぼのもんじゃい!!>>

<<先輩いいい!!>>

<<二人とも!・・・援護してくれる人手を貸して!>>

仲間たちは別の空母に向かう

<<くそ!敵は何を・・・>>

<<空母を狙ってるにきまってる!>>

<<だがどいつが?!>>

敵の動きが乱れた。ジューンはそれを見逃さない、そして道筋が・・・見えた

 

「ここっ・・・だぁあああ!!」

無理やり機体をひねり込む。エンジンを大きく回してるのに抵抗が大きいので速度が上がらず、可変翼は微調整を越えてさっきから嫌な音放ちながら動いている。

さあ耐えてくれよ!

<<あいつか!あの黒い機体だ!>>

<<ラーズグリーズだぞ!早く!!>>

<<無理だ!早い!>>

<<うちの艦は堅い!信じろ!>>

敵ユーク航空隊の面々は悲鳴と同じように叫ぶ。

高度、体勢、場所、全てよし!

「ラーズグリーズリーダー、フォックス3!!」

発射した瞬間、機体が軽くなる。

また捻って離脱

解き放たれたミサイルはジェットエンジンにより急加速

<<なっ・・・我が艦に近づく!>>

<<30mm、弾幕展開!!チャフ!!>>

<<だめです!衝撃来るぞ!なんか掴まれ!!>>

そして・・・航空重巡洋艦ブレーチェに直撃

<<・・・航空重巡洋艦ブレーチェ、奴の動きの停止を確認!確実に機能喪失に追い込んだぞ!>>

おお!!

仲間からの歓声と、敵の絶望の声が入り混じる。

<<続報!オーシア空母を発艦不能!ラーズグリーズがやったぞ!>>

<<どんなのもんじゃい!ブービーばかりにいい面させるか!>>

<<ダヴェンポート黙れ>>

<<酷い!!>>

サンダーヘッドとチョッパーの漫才に爆笑する。

流れは完全にこちらになった。

<<空母が・・・奴らを・・・ラーズグリーズをおと・・・>>

 

敵航空部隊の隊長の声が途切れる。

そして敵味方の前で、夕日が沈む直前の日に照らされ鈍く輝く漆黒の翼

対艦ミサイルを吐き捨てたジューンは身軽になった、そして

「改めて・・・ラーズグリーズリーダー、エンゲージ!」

 

敵の絶望への第2章が始まった。

 

その頃

空戦空域海上

一機の偵察ヘリから身を乗り出すカメラマン。彼ははっきり捉えていた。ジューンのひねり込み、そして交戦宣言の時の舞を間近で

「どうですか!もうダメとは言わせませんよ!」

ジュネットは興奮気味で電話相手、オーシアタイムズの編集者に詰め寄る。

<<あ・・・ああ、完璧だ・・・完璧だ!すぐに新聞に出せるか問いただせ!家にいる?!叩き起せ!!>>

相手も興奮気味で仕事に戻ったのか電話が切れなかった。しかしそれが自分が認められた証。

「いよっし!!」

ジュネットはこぶしを高く突き上げ喜びを示した。

 

そして混迷の海はその後15分せずに終結し、こちらにも多少の損害が出たが、結果として15隻近い混成大艦隊となる。

 

そして、ナグファルムとの決戦が近づく。

 



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新しき平和?

3/13

2200hrs

その日その時間、オーシア国内、いや、世界中の全ての人間が歴史的瞬間を見ようと、テレビに、ラジオにすべてにくらいついていた。

「オーシア、ユーク、そしてFCMBの将兵の皆さん、銃を置いて聞いて下さい」

オーシアの暫定大統領、ハーリングが切り出す。

「我々オーシア、ユークは、一部の人間の暴走により、大陸に、世界を巻き込んで戦争を起こし、核を自爆させてしまった・・・」

ハーリングは淡々と事実を述べていく。

「我々は過ちを犯し、正しいことも述べられない状態になっていた。しかし、素晴らしい友人と理解ある勇敢な者たちの協力により、今、こうして皆様の前に姿を現し、そして・・ユークのニカノール首相、FCMB代表でベルカのヤルタ大統領に来ていただいています、私と、彼らが手を取り合う姿を見て下さい」

ニカノール、ヤルタ、そしてハーリングが手を取り合う姿を見て、更にフラッシュの焚く量が増える。

「オーシアは、北オーシアで抵抗する野戦軍全軍の武装解除を命令します」

「FCMBは直ちに戦闘解除を命令、自衛以外の攻撃は一切許されない」

「ユーク首相より、直ちに全軍の武装解除、戦闘停止を命令する。これ以上攻撃を続ける狼藉は・・・平和と融和の前にひれ伏したまえ!!」

ニカノールのしめの言葉により、全ての国民が沸きたった。

 

ベルカ戦争は未だ軍事政権の息かかったナグファルムの撃沈をしていないので正確には終結していないが、近いうちに完全に終結すると確信している。

 

 

しかし、これから外交の場で戦いが始まり・・・その前に事件が発生し、魔の数か月が始まる。

偽りの平和が始まった・・・。

 

 

3/14

0730hrs

<<エマージェンシー!エマージェンシーだ!どこかの部隊応答してくれ!>>

なんだ・・こちらは停戦監視で徹夜なんだぞ・・・、心の中で管制官はぼやく。

「こちら空中管制、ヘイジン、所属を応えよ、どうした?」

その無線は急に来た、哨戒任務からの帰投の途中であった、E-3が傍受をする。

<<こちらベルカ空軍第226戦術航空隊、ネルター1!緊急通報を受けてイエリング鉱山空軍基地に急行、基地が燃えているのを確認している!>>

「なっ・・・」

管制官の眠気が吹き飛ぶ、そして同時に最悪なものを想定する。

「フレスベルクは?フレスベルクは確認できるか?!」

<<それが・・・妨害電波を飛ばしていた無人機を叩き落として地上の奴らと交信したら、武装勢力に3時間前に奪われたと・・・あと>>

「他にもあるのか?!」

管制官がまくし立てる。ネルターのパイロットは震えた声で

<<鉱山の・・・「ゆりかご」の封印が解けているのが確認できた・・・>>

「・・・その・・その情報は間違いないか?」

<<はい>>

パイロットの確信ある声に、管制官は目の前が真っ暗になりかけた。

イエリング鉱山特別保管庫、通称ゆりかご・・・1980年代の困窮した冷戦時期に開発された戦術核V2の保管場所の一つである。E-3機内はお通夜の雰囲気になる、しかしそこで思考停止してはいけない。

「ネルター1!ただちに空域を禁止空域にする。また、これはベルカ上層部報告まで連合含め緘口れ<<おいこりゃどうゆう事態だ!!>>!!?」

割入る無線、それは

<<こちらファト所属、ブレファーより、緊急通報受けたら、なんでこんな領内奥地が燃えているんだ?!早く通報を!>>

若いパイロットの声、他国の奴にばれた!

「もう・・どーにでもなれ!!」

管制官はヤケになって手元の書類は空を舞った。

 

同日

1000hrs

ベルカルーメン空軍基地

この空軍基地は、元は対オーシアの為の国境基地として用意されていたが、更に前線の基地が出来てからは任務の重要性の低下と同時に、戦闘機の爆音に対して寛容[補助金狙いともいう]な地域のため、戦闘機パイロットの高等教育部隊、そして選抜されたパイロットによる実験戦闘団なども在籍する。

その基地で離れた格納庫に歩く二人の姿。

「いやしかし、君も随分と有名になったものだ・・・いや、前から色々と有名だったか」

「どういう意味ですか」

一人はヴァルキューレ隊のジャスミンである。そしてもう一人が、ジャスミンが唯一尊敬する上官であり、SU-47に乗り方を叩き込んでくれた、カルヌ・メッカー中佐である。

この猛者ぞろいの訓練教官をいなす隊長にして、アカデミーに負けぬエリートパイロットを輩出してきた有名な教官である。

彼の前ではジャスミンでも敬語になる。今回は見せたいものがあると聞いて、後送される途中で下車した。

ヴァルキューレ隊は今回での戦闘機全喪失により、別の機体受領と、休暇になった。まあ、昨晩の内に停戦の合意がなされ、ベルカとユークの兵士が握手したり、抵抗する残党軍が、核の真実を徐々に受け入れて瓦解と降伏、停戦しているとして、大分前線は静かになっている。

ナグファルムに関しては、オーシアユーク、FCMB連合艦隊、空軍によって撃滅作戦を展開するという話は聞いている。この協同作戦は融和の良い宣伝になるだろう。

「それで・・・見せたいものとは・・・基地の随分端ですが」

「まあな~、前線にも出さない予定だったから・・・着いたよ」

N-4格納庫と称される小さい格納庫、カルヌがそのシャッターを開ける、そこには・・・

「これは・・・」

「どう?驚いた?」

ジャスミンはその光景に言葉を失う。

 

独特の前身翼、細長く、けがれなく輝くその機体

X-02ワイバーン

「なぜ海軍の航空機・・・以前にこれはエルジアでは」

「先のユリシーズの救援と同時に結んだ相互条約で青写真をもらい、南ベルカ工廠が作っていたらしい。ただし、これは艦上戦闘用でなく、空軍仕様に改造されている奴で、足回り軽量と、翼の工夫で弱点である戦闘行動半径を伸ばした要撃タイプだであり、2機の予算で3機買える・・ただ整備性と脆弱性に難がありだが」

それにマルチロール主流の時勢なのにな・・・とカルヌは苦笑する。そしてジャスミンは気付く

「もしかしてこれを・・・」

「ああ、君たちの隊なら使いこなせる。そういう上層部の判断だ。残念ながら制式導入は見送りになったが、ここで不良在庫になるなら君たちのような腕の良い人に扱ってもらいたい」

カルヌの言葉に彼女は微笑み

「是非とも・・・我がヴァルキューレ隊が使いこなせてみせましょう」

自信を持って言う。彼もその言葉に満足して頷き

「そういってくれると嬉しいものだ・・・時にジャスミン君」

「なんでしょう?」

上官であるカルヌの問いかけに反応しつつも、ジャスミンは嫌な予感がした。彼の特有のからかおうとしている笑みだ・・・。

「君、随分優しい顔が出来るようになったが・・・男でも出来たか?」

「なっ・・・ま、まさか」

「図星だな」

カルヌに自信を持って言われてしまう。ジャスミンは珍しく狼狽しながら

「あ・・いえ、まあ」

「どっち?」

「気に入ってるやつは・・・」

尊敬する元上官の前では彼女も形無しである。ほほう・・・と呟くカルヌ

「どれ、その話、もう少し「お話中失礼します!」ん?」

格納庫に飛び込んできたのは、若いパイロット訓練生

「なんだ、人がせっかく楽しい話を・・・」

「申し訳ありません、しかし、特殊戦術のジャスミン中佐殿、および教官隊長殿に緊急招集が・・・」

二人は顔を見合わせる。なにが起きたのか

「とりあえず行くしかないか。ジャスミン君、続きはまた今度な」

「できれば掘り返されたくありませんが・・・」

苦笑をうかべるジャスミンに、色々成長した部下を嬉しく思うカルヌ、この時はその緊急招集の重みを知らなかった。

 

そしてこの時より、堂々としたパイロットの脱走事件が相次ぐようになり、戦術核V2を巡り外交は混乱することになる・・・。

 



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とある街にて・・・

まとまった時間と上手く着任出来たので最近艦これ始めました。←小説完成させろよ

名取さん可愛いです。
川内さん早く出てきなさい。那珂ちゃん・・・うん
とりあえず若葉さんを改にしたいです。

興味本位で戦艦レシピ回したら長門さん出ましたが、某超大国のデフォルトプロレスが可愛く見えるほど破綻しました・・・。


3/14

0800hrs

ベルカ最西端の街

この街の名前は、シールンシティともベネスティコとも呼ばれる。

理由は1907年のベルカ・オーシア事変によりオーシアにわたり、20年にベルカが奪還、更に43年に住民投票でオーシアに寝返り、66年に圧政でまた寝返り、そして74年のベルカの最貧困期の国土割譲によりオーシアへ、そして88年の資源発見をきっかけに92年ベルカに帰属した。

そんな激動の歴史を受けてきた為に、この地域のオーシア人、ベルカ人の割合は半分半分であり、また、戦争中であってもこの町では交流があった。

そしてこの特殊な地勢から、オーシア・ベルカを始めとした諜報員たちの密会の場所、駐在武官の公に認められてはいないが黙認されたスパイの街である。

 

その中の一つの貸しオフィス、一見すれば築うん十年の建物だが、その一室は、電子ロックで部屋は広く、そして完全防音のその部屋は明らかに異質である。

そう、この部屋こそが、対オーシアの為に作られたベルカの情報部分遣室である。

 

「国境なき世界?」

「そうだ、今回の戦争で大きくなった組織だ、そいつらの動きが大きくなっている」

「しかし奴らはベルカの若手将校の秘密団体、勢力は極めて脆弱では・・・」

「それが違うんだ。いや、正確にはこの戦争が大きくそれを変えてしまった」

その室の事実上のトップ2、ベニー・ファンは室長である、グレイス・ハイドリッヒに聞く。

歳は48の大佐であり、情報将官を望める優秀な工作員であるが、現場の空気が良いと、あえて最前線のここにきている。まあ今回はベルカ戦争に勃発にあたり、ここの有用性がさらに認められ、なおかつベニー、グレイス、以下部下の奮闘により情報戦で大きく勝利した。

「ときに、灰色の男たちも知っているだろう?」

「当然です」

グレイスの問いに少しムッとした感じでベニーが答える。彼は怒るなよと言いながら・・・

「奴らが今回の戦争を手引きした可能性がある・・・いや、確定的な部分がある」

「?!!」

灰色の男たち、戦争前のベルカの情勢は、オーシア、ユークの大国にはFCMB連合としては一応対抗できるが、単体ではまだまだ未熟で、FCMBに頼らず一国で大きな経済力、軍事力を有するべきと主張する、官民超越した結社である。

主な人物は、南ベルカ工廠の重鎮、国防総省長官、そしてベルカ軍の一部将校、民間軍需企業及び世界に知られるベルカ企業の役員などである。

「軍事政権となったユーク、その好戦派書記長の下にいた人物が、灰色の男たちの子飼いの奴で、また、オーシアのアップル・ルルースをコントロールしたと思われるのが・・・こいつだ」

写真が置かれる。ベニーには見覚えあるオーシア空軍の士官制服、そして映る男は中々端正な顔立ちの男

「サンド島空軍基地から異例の中央出世をした男、アレン・C・ハミルトン、こいつはベルカのアグレッサーに属し、灰色の男たちの伝手を頼り経歴を誤魔化し、辺境の基地に行った男だ」

「!!」

思わず顔に驚きの表情を浮かべる。なぜオーシアに簡単に入隊出来たんだ?

「なんで入隊できたかは調査中だが、とにかく、相当この2国の好戦派に浸食をしていたみたいだ・・・これが外交の場で露見するのは痛い」

「そうですね・・・なるべく情報漏えいは潰してみます」

「頼む」

戦勝国であるのに、引き金引いた遠因は自分たちにある・・・灰色の男たちめ面倒な事を・・・それより

「灰色の男たちと国境なき世界の関連は?」

「ああ、そうだった。でだ、国境なき世界は灰色の男たちの行動を見て、更に悲惨な戦争をしたために各国に一気に勢力が広まっちまった」

「なんてこと・・・」

元から灰色の男たち以上に過激な思想を持つ国境なき世界であったが、それが力を持つとは・・・

「というわけで、これから国境なき世界は人材の引き抜きや、各国のスパイを強化すると思われる、これからの方針は「失礼します!!緊急事態です!!」なに」

ベルカの情報本部の伝令の情報士官が文字通り転がり込んでくる。その表情は鬼気迫るものを感じる。

「どうした、情報員があわててはならないぞ」

「いえ、しかし、ついさきほど、イエリングに眠る「巨鳥」と「ゆりかご」の中身を奪われたと・・・それが、国境なき世界の可能性が高い・・・それと将校の失踪が同時期に相次いでいると・・・」

「・・・」

グレイスとベニーは顔を見合わせてから頷き

「直ちにオーシア、ベルカを結ぶすべての道路、空輸、海運・・・獣道でもいいから軍関係者が動いたら一報を入れられるように」

「外務省に至急パイプを、あと、オーシア入って直ちに外交でややこしくならないように手回し入れるわよ」

「「「了解です!!」」」

 

やっと重要な任務から解放されたと思っていた面々はまた動き出す。

 



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天上議会

次回ナグファルム作戦編です!


3/18

1400hrs

エウレノ空軍基地

ウスティオの対オーシア前線の一つである戦闘機基地、オーシア・ベルカ戦争開戦の同時攻撃などにより放棄が決定され、基地約1100名のパイロット、整備士、補給部隊、事務員は己の任務を全うできず歯がゆい思いをした。

しかしその悔しさは他の基地で、キャンプ地で、空で、陸で、そして海の方にも遠征し、全力を尽くし、そして・・・多少の犠牲を払い戻ってきた。

エウレノ奪還作戦においては、結川などの特殊戦術組を除いて殆どの隊員が志願したという。

現在はまだ滑走路復旧途中であり、また、落ちた仲間もいて格納庫は寂しい状態があるが、徐々に活気は取り戻していた・・・が。ここで不可解なことが起きた。

 

全軍作戦待機命令

 

徴収された予備兵と、戦時志願兵の軍務の解除が急速に進められているが、正規軍、特に空軍に関しては徹底的な外出禁止令を出している。

「あ~あ・・・行きつけの所行こうと思ったらこれだ・・・」

「まあまあ、とりあえず奪還した場所でのんびりしようぜ」

「それは1日で飽きた」

「早いなおい」

エウレノに長く在籍するベテランの整備士が嘆息をつき、同期が苦笑する。

戦闘機の整備や、何かしらのアクションがあればまだマシだが、今回は何もなく、担当の戦闘機の整備もし尽くしている。

この整備士だけでない、やっとのことで戦争から戦い抜き、家族、両親、愛する人、もしくは行きつけのバーやお姉さんに会いに行けると思ったら、奪還した喜びよりもガッカリ感が強いのは当たり前だろう。

「たく、こんな面倒なこと誰が指示したんだ・・・」

「FCMB主要全軍だろ・・・それなら上しかない」

一人が人差し指を上に向けて言う。

「上?FCMB軍統合参謀司令部か?」

軍の中枢で思いつくのはここである。片方がそうだなあと呟やいたあと、冗談めいた声で

「そこかもしれんし、もしかしたら・・・FCMB常任理事会・・・とかな?」

「なんでそんな大物が・・・」

「さあ、想像だから、1整備軍曹が分かるわけない」

「なんだそれ」

一しきり笑いあったあと

「まあ・・・何かありそうだよな・・」

「うん・・・整備、しなおすか」

「そうだな」

二人は分からない何かのために整備に全力を尽くす。それしかなかった。

 

しかし彼らが想像する遥か上では物事が進んでいた

 

1500hrs

FCMB特別総会、通称「円卓」

このFCMBには死守せねばならないと同時に、最重要なものが、B7R通称「円卓」そこから取られた、会議メンバーで最上級な秘密議決機関。

その円状に席が並び、中央には説明係や、巨大スクリーンが・・・

今ここに、統合参謀総長である、ベルカ軍参謀総長、ベルク・ルナセール上級大将、統合副参謀長であり、ウスティオ最高司令グラン・バッシュ元帥、ベルカ軍参謀次長ザンナル上級大将、以下20名の各国軍の重鎮。

さらに各国外務大臣、特任大使に外交官長に外交官。

極めつけはFCMB諸国元首と、軍、外交、国務の最高決定機関のメンバーがそろい踏みである。

だが、円卓は重要と恩恵と同時に、常に権力者を虜にし、国民が左右される「厄介」なもの。この会議を知る護衛メンバーは主に後者の方の意味・・・厄介で怖い奴でもあると言っている。

 

「さて、今回この場を設けさせていただいたのは、国境なき世界とその仲間とみられる将兵の脱走についてだ」

「事態は急を要するが・・・随分遅いじゃないか」

その言葉に、国務、外務関係者の目が光る。言葉の主は

「おっと、失言をした・・申し訳ない」

と言いつつも全く反省しない。彼の名はネガル・センチュ、ベルカ初の外国登用将官である。

「ネガル、口が過ぎるぞ」

「・・・」

ザンナルの冷静な窘めに、ネガルは一転不機嫌ながらも口を閉ざし一応反抗的な姿勢は解く。

しかし、彼だって納得はできていない。

 

本来、この議題は早急に対処すべき特A級カテゴリの事案。しかし、軍の不手際を槍玉に上げた国務と外務は独断を禁止、ここに文民統制という最強の矛を持ってここに持ち込んだのだ。

それをするために各国軍に圧力をかけて無意味な作戦待機命令も出した。

既に主力はもちろん、かなりが脱走し、むしろ面倒が多い作戦待機命令は無関係な将兵を苛立たせている。

まあ、軍の不手際が起こしたのは確実だが、オーシア・ユークでも国境なき世界が大きく侵食しているのはこちらが原因ではない。

 

実際、現在戦勝国の我々がする外交は外道だ。そして敵であったオーシア・ユークもだ。

 

核に侵されたオーシア北部地域を賠償としてベルカに差し出しつつ、軍人恩給の停止と国民を見捨てる姿勢のオーシア

いくら大量の石油があろうとも、不良債権でしかない土地を拒みつつ、侵食していた円卓に加え、オーシアで貴重な健在な重工業都市を賠償金と一緒に大きく割譲しようとするベルカ

融和を叫びながらも軍事政権と化した国家の奪還のために、ろくな後片付けもせず次の戦争に向かうユーク

最小限の兵力ながら、変に大きな実績を残し、それを元手に資源地帯からの輸送量の大幅なコストダウン、海峡の制限撤廃を要請するサピン

そんなことどうでもいいから、さっさと経済支援しろと叫ぶベルカ属国の弱小国

 

そして一番面倒なのが、FCMB構成国でベルカの右腕のウスティオ。

彼らの実績は連合の中で群を抜いてであり、さらに今回の戦争により大幅な発言力の向上を手に入れた。

内陸の至宝と呼ばれる資源国でありながら、元から手先の器用さから、ネジから精密機械まで、ニューコム社などの中堅軍需企業も持つ、知る人ぞ知るベルカとは違う世界有数の立派な工業国でもある。

今までは8割独立、2割構成国という名のベルカの管区に置かれ、これが円卓の資源をベルカが有効利用できたのである。

しかし、今回の戦争によりウスティオは資源の管理を共同管理とし、事実上実権をこちらに渡せと言っているのだ。

もちろん不可能だが、しかし、ウスティオはFCMBの構成国、ベルカの半属国から、サピンと同じ対等な独立国となり、円卓の管理権限の多くを移譲するのは時間の問題だ。そして、ベルカ混乱時代、同じく国境線で割かれ民族紛争をしていたウスティオとゲベートそして同じ民族が統治する数カ国、しかし領土とさらなる人的資源獲得を狙うウスティオと経済支援と独立してベルカと対等になりたいゲベート諸国が和解交渉を決行。

将来、人口が4000万を超えるウスティオ連邦、または併合され強大な共和国が誕生するかもしれない。

 

話が盛大に脱線したので戻そう

 

このように戦勝国の大義名分、敗北した国の醜き外交は、あの三国元首が手を取り合った「歴史の転換」とも呼ばれる演説の最中でも世界で繰り広げられ、中ではFCMB内でも戦いが起きていた。

悲しいが、それが国境なき世界がさらに大きくなる格好の名目になるとは予想もせず・・・。

 

そのような経緯から、嫌気の差した軍の上層部の一部はこの会議をボイコットしている。ネガルはその中ではよく耐えているほうだ。

 

議長に任命されている、ベルカの国務長官、ソーラは軽く咳払いし続ける。

「さて、国境なき世界についてはあらかじめ資料に目を通しているだろう。現状、我々がやるべきことは・・・国境なき世界が世界に露見する前に撃滅の必要があるということだ」

「そんなことはわかっている。だが奴らの本拠地が掴めない」

「軍では情があるかもしれんのでここは・・・」

「異議あり。議長始めなぜ我々の意見を聞かない」

 

このあとの流れではほとんどが、自分たちの流れにしようとする会議になったので割愛をする。

しかし、何とか決まった要件もある。

 

1.軍の作戦待機命令の解除

2.重要人物と思しきもの、またはスパイを発見次第拘束する。この場合疑わしきものは全員を監視対象とする。

 

一見すれば何を今更だが、次の要件は軍が大いに揉めた。

 

3.軍の統制に関し、期限付きで国務長官以上のサイン、及び議会の審議、国防省の許可がない限り戦闘の許可は出来ない[突発的な正当防衛を除く]

 

しかもこの期限は無期である。

軍の制服組主体であったのを気に食わないと思う幹部が、この失態を槍玉にあげ、更なる文民統制をかけたのだ。この時期になってもこのような行動をするのは、無謀とも言えるが、それが彼らの考えた嫌がらせなのだろう。

こうして、軍の行動に制限がかけられたのが、後に大きな悲劇をもたらす・・・。

 

そして、このような醜い会議を水面下に沈める、英雄の正義の戦闘、ナグファルム撃滅作戦が実施される・・・。

 



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ナグファルム撃滅作戦 ~敵の意地~

前置きが長い


3/17

0900hrs

ユーク連邦首都 オクチャブルスク郊外

まだ春の芽吹きの前の寒さが残る首都近郊の町ポクマ、そこは戦場となっていた。

<<くそっ!こちら第346機械化狙撃大隊!包囲された・・・突破は困難・・・我々は最後の覚悟を決めた。最後まで我らは書記長の盾となる。書記長万歳!!>>

<<こちら西門守備隊、手のひら返したニカノールの手先どもの突破を許しそうです!早く退避を!!>>

ポクマは昔から軍、政治家要人の別荘であり、首都にはない別の司令システムも簡素ながら作ってある。

ニカノールの拉致を始めとした、静かなクーデターを起こした張本人であるユーク書記長、タック・ブルヌ・ゴランは、この町を気に入り、将来の政治場所は首都よりここで行いたいと機能を強化していた。

しかし、予想以上に早く、ベルカに負け、更にニカノールの始末に失敗したことから、ユーク全軍130万の兵力のその大多数が寝返り、更にその機能強化は未だグランを敬愛する兵士達の断末魔と命令を求める声で飽和するという無残な結果になった。

そして町は、ニカノール派2個師団1万人[人数が少ないのは充足率90%師団は軒並みベルカに行き、50%ほどの書類上の未熟な師団しか居ないから]、ダック派または好戦派軍4000名で血で血を洗う争いとなったが、それももう終わる。

「書記長閣下・・・散々予算をせびった挙句に寝返った恩知らずどもがまもなくここに来ます・・・。早く撤退を」

中佐階級章を付けた側近、ヘルンが息を切らして部屋に入る。既に銃声が間近に聞こえ、更に奴らは榴弾まで持ち出してこの町でゲリラする好戦派軍を無慈悲に一掃している。

「・・・・・」

「ダック閣下!!」

「同志ヘルン」

「なんでしょうか?」

「私は、ここから去ってから、どこに逃げれば良いのかな?」

「それは・・・」

ダックの静かな問いかけに、ヘルンは口ごもる。実際、ここ以外に逃げ場所がない。局地戦のほとんどは我が方の劣勢、勝利している地域も、ベルカから引き揚げた主力部隊の攻勢に耐えられるわけがない。

「時に同志ヘルン、FCMB天上議会への情報は?」

「はっ!既にナグファルム艦長に情報を渡しています・・・が、作戦命令は出していません」

口惜しそうに言う。ナグファルム最強の槍は、書記長の命令とそれに合わせた機密コードの符号が合わなければ発射出来ない、核兵器並に保管は厳重であり、貴重な制圧兵器である。だがダックは特に失望した表情も見せず

「だが、彼の艦長は優秀ではないのか?」

「優秀です。艦長である同志グリスは平時で海軍最年少将官昇進を拝命し、将来ユーク最大の北方艦隊長官、または潜水艦隊総司令参謀長の有力候補であった男です」

「ならば・・・優秀な彼なら危険も承知で既に作戦の為に動いているな」

「恐らくは」

グランの淡々とした問にヘルンは疑問符を浮かべながら答える。

「確かに兵器は私の裁量がなければ撃てないが、それは上級司令部が機能しているだけで、機能していないなら勝手に撃てばいいと訓示したことがある。特に私など上の者が死んだときな」

「ま・・まさか、それだけはお考え直し下さい!同志!!」

察したヘルンはダックを止めようとする。しかし

「ニカノールの部下は恐らく融和と称して意気揚々と私の死亡と共に降伏文書でも送るだろう。それが私の最後の合図だ。そこからは降伏でも抗戦でも構わん。ただ、一騎当千のナグファルム乗員は必ず抗戦の方を選び、どこか重要な・・・出来れば天上議会かニカノールを抹殺してくれると信じている。私の死は無意味な死ではない、今までベルカの地で無意味に果てた兵への弔いの為の有意義な死へと昇華する」

そんな事をのたまったダックはニヤリとし

「それでは、私はここで天命を待たず、打って出ようではないか。静かなクーデターの黒幕にして最大の悪としてな」

「同志書記長」

「なんだ?」

扉のノブに手をかけたダックにヘルンが声を掛ける。彼は意を決した表情で

「私も同行いたします。ニカノールの軍門にも、これから恥のある生涯なぞごめんです」

「・・・そうか」

ダックはそう呟き、そして

「それでは行こう、同志ヘルン、地獄への道へ」

「お供しましょう閣下!!」

双方笑顔で部屋を出て行く。そして数分後

激戦の中、生け捕りにしようと試みた潜入部隊をダック率いる直近の護衛で襲撃、相打ちにして、ダックはその生涯を閉じる。

 

狙い通り、ニカノール派は意気揚々と反乱分子の親玉を討ち取ったとして降伏勧告をした。

しかしそれが逆にダック派の生き残りに火を点け、更にクルイーク要塞内部でもダックを心酔する司令とその部下が反乱が発生、ほぼ無傷で奪取。ダック派生き残り本隊がそこに移り、後継の書記長が生まれる。

ベルカからの引き上げが間に合わず指揮統制回復、そしてクルイーク要塞という首都に程よく近く、地方にも十分脅威を与える基地を拠点化、ここに内戦を泥沼化が確定となり、この大失態を後にクルイーク事変と呼ばれる事になる・・・。

 

それが起きたのは19日のこと、その前日、その事変を知らない海の男たちは叩きに命を賭した・・。

 

3/18

1300hrs

深度200m

 

大陸棚クラスの海底にひっそりと佇むのは、世界最大最強の艦、ナグファルム、彼らは新たな命令を待っている。

「同志艦長・・・」

「なんだ?」

ナグファルム艦長、グリスの元に駆け寄るは通信士官、その顔は非常に暗い。

「どうした・・・早く読み上げろ」

「ニカノール派からの電文・・・・、我が・・・我が同志書記長が・・・ニカノールの手先による凶弾で・・・相果てました」

「そうか。負けたか」

士官は言葉に詰まりながらも言い切る。無理もない、彼は赤の中でもかなりの信奉者、書記長は神の存在であった。そして私もだ。

ちなみに書記長が最高指揮になったのは、ユーク元首はニカノールで、首相中心であることから、最高会議長という役職ができず、書記長に留まったという経緯がある。

 

戦争は統制の失った混成軍とユーク軍が茶番とも言える元首の演説により武装解除をした。そしてユーク本国では好戦派の書記長とニカノールを信奉する軍により衝突が起こり、そして今、ニカノール派が勝利を収め、今まで正義だったはずの好戦派政権軍は残党となった。[クルイーク要塞事変は知らない]

そしてこの艦は国に帰る事も、他国に寄港することも出来ぬ、機密という空虚に包まれた逆賊となった。

我々の時代が始まる前に終わってしまった・・・。少将として、栄誉ある北方艦隊提督、または中央栄転の道を捨て、この艦の艦長を選んだ末路がこれである。

「もう一通・・・ニカノールが降伏の文書を寄越してきました」

士官は口惜しそうに言う。同時に

「同志艦長!敵の艦隊、及び哨戒ヘリの吊り下げソノブイを確認。恐らくは秘密通信傍受と、ニカノール派の情報網でここが特定された可能性が」

「所属、規模は?」

「は、先遣にあの第2海軍管区中央艦隊から離反したミサイル巡洋艦グムラクと同じ推進音を探知、これを察するに中央艦隊を撃滅した、オーシア空母ヒューバード級ケストレル旗艦の連合艦隊と思われます!規模として駆逐艦、巡洋艦10隻以上、情報艦1隻、空母1隻以上、潜水艦も含めた大規模艦隊です!」

「・・・・・」

まさかこの場所がバレるとは・・・まあ、書記長閣下の通信はいつもよりセキュリティーが手薄だったのは知っていたので覚悟はしていたが、予想以上に優秀な敵であり味方だった軍であり、物凄くにくたらしい。

あの融和しか叫ばず、国内の情勢を、ベルカの存在を見過ごすユークの癌、ニカノールの下に降ったとしても、軍人としての一生の恥であり、さらにここの部下は命を保証されてのうのう生きるのはごめんという人間が多い。だからといって、オーシア艦隊を相手取るのには・・・

既に衛星データリンクシステムは遮断され、相手の艦隊に槍を打ち込むのはより精確な情報が必要だが、高精度探知機能を削除したこの潜水艦にそんな手段はない。

しかし、希望はある。

なぜ我々がここに来たか、それはとある所の射程内だからだ。

書記長直轄の情報部からもたらされたFCMB要人のみで構成された天上議会、これがまさに行われている場所を特定していたのだ。

最後の命令は出ていない、しかし、書記長は訓示で言った。上が動けないなら勝手に撃て・・・今復讐できず、いつするのか!

 

「副長」

「はっ!」

「マイクを貸せ」

「了解しました。どうぞ」

副長はすぐに艦内マイクを差し出す。それを受け取ったグリスは

「艦内全要員に告ぐ。今から作戦行動を忘れ、私の言葉に対して全力で答えろ。地上でバカ騒ぎするみたいにな」

副長以下全員はグリスの言葉を素直に飲み込めない。作戦行動中、特に敵に見つかるか分からない静粛性を求める中で騒げと?

「我らにこのシンファクシ、リムファクシ以上の、最高の艦に乗せて下さった敬愛すべき同志書記長が凶弾に倒れ・・・亡くなった」

その瞬間艦内はざわめく、あまりの衝撃的な話に、まだ知らなかったエリート思想で固めた若き士官が呆然とし、気を取り直した先任伍長が再起動させる。

「私は・・・、改革の志半ばで散った書記長が無念で仕方ない!だが、ここで自暴自棄する暇はあるか?否、このいつ敵に見つかるか分からない状況、我々に残された時間はあまりに少ない。そこで諸君らに聞きたい。ここで降伏してニカノールのクソッタレの靴を舐める犬畜生になるか、それとも、この絶望した海域から可能性低くとも逃げ出すか・・・それとも、ここで沈められる覚悟で奴ら、FCMBの主要人物が終結する議会を、その街を壊して殺して、書記長と共に地獄を歩むか。さあ選べ!」

グリスの問いに艦内はしばし沈黙する。しかし・・・

「やってやる・・・」

「やってやろうじゃないか!」

若き士官が叫び始める。それは下士官に兵に先任伍長に伝播しそして参謀や政治委員も同様に騒ぎ始める

「やってやる!」

「ユークの潜水艦乗りをを・・・ダック閣下への忠誠心を舐めるな!」

「やるぞ!殺してやるぞ!」

「機関なら任せろ!」

「操舵、敵の攻撃なんぞ任務完遂するまで避けきってやりますぜ!!」

「ミサイル部署!我らの日頃のミサイル技術を舐めるな!FCMB!オーシア共!」

「航空部署!何かあったら我ら無人機、有人機部隊総動員を持って戦います!!」

それは異様な、海の中の潜水艦乗りでは有り得ない行動

「同志諸君!改めて聞こう!FCMBは憎いか!」

「ダー!」

「書記長を殺した祖国が憎いか!」

「ダー!」

「我々の持てる限りの力を尽くし、祖国の未だ残党になっても戦う同胞に恥じぬ破壊を見せたいか!」

「ダー!!!」

「よし、ならば我がナグファルム一世一代の大戦争だ!各員、任務完遂を持って死ぬことを許可する!フィルフィーリエ発射用意!!深度20!」

「「「「ナグファルムУрааааа!!!!!!」」」」」

 

 

同時刻

海上、ケストレル所属シーホーク

 

正直な話、FCMBに頼らず、独自でナグファルムを探すのは困難であった。しかしユークのニカノール首相に味方する部隊がダット書記長を倒し、その上秘密情報であった天上議会への攻撃計画、そしてたまたまオーシア海軍の哨戒機が大型の潜水艦と思われる音を探知しこちらに通報、そしてアンドロメダの高度な情報処理によりこの海域に潜んでいると確信し追いかけてきたのだ。

天上議会まで時間がないが、敵に動きがない、もしかしたら黒幕の喪失で逃げたか・・・そんな不安がよぎった時。

「・・・・」

「どうしたんだ?敵を見つけたか?」

ソノブイの音を聞き分ける水測員の顔色が悪い。

「見つけました・・・ただ」

「!!・・・じゃあ早く報告だ!しかしなぜ今見つかった?」

「・・・地獄だ」

「はっ?」

機長が怪訝そうに聞き返す。水測員は

「こう・・・さっきまで無音でしたのに・・・何か地獄のような業火の音が・・・ここまで聞こえる人間の声・・それが」

「おいしっかりしろ!とにかく連絡だ!」

機長はその時彼の言い分を真に受けなかった。

しかし、それは追い詰められた男たちの魂の叫びである恐怖と気づくのは、本格的な戦闘になってからだった。



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星が落ちる

明けましておめでとうございます。
旧年は筆を折っていてまともな更新が出来ませんでした。
今年でこの作品打ち切りも視野に入れての突貫作業で書く予定。

次回でナグファルム編終了!
そして一気に時間を進めます。

やっと最終章になります。3年以上もこの小説に時間かけるとか・・・マジ笑えん。
すみません皆様。


3/18

1304hrs

サンサルバシア ストーンヘンジ

 

「謎の女一号より緊急!!「亡霊艦」の大体の所在を掴んだそうです!!」

中央コントロールに飛び込む情報に全員がおお・・と叫ぶ。

そしてその真ん中にいる指揮官、ISAF所属中将、ブレッド・ゴレアは静かに目を瞑り、そして

「遂に来たか・・・ストーンヘンジ、タイプ5発射用意!!」

「ストーンヘンジ発射用意!五番砲だぞ!さっさと準備しろ!!」

「「「了解!!!」」」

指令室は活気に満ちる、これはいつ以来か・・・と言われれば約10年ぶり・・・そう、あの小惑星の破片以来である。

 

1999年から2000年はユージアは最悪な・・・まさに世紀末を迎えていた。

隕石の衝突、ストーンヘンジは一応の能力は果たしたが、精密にあてられる射程が限定的であり、カバー出来ない地域、特に西部大国にして最強のエルジアは首都が水没したり、大量の難民発生、そしてISAFでもストーンヘンジの能力を信じていただけに失望も強かった。

しかし、革命的V字回復を果たしたベルカ始めのFCMB諸国による救援活動により、エルジアの将校暴走、大陸戦争などの最悪の展開は免れた。

その代り、サンサルバシア、ISAFは復活した強国エルジアに揺すられ、ISAF管理であったストーンヘンジを共同管理の下、機能の分割をした。

また、FCMBにも情報を譲渡することとなった。

世界にストーンヘンジの情報が洩れていく。しかし、まだ負けていない・・・結果は何であれこの国は隕石と戦った誇りがある。そのオリジナルがコピーに負けるわけがない。

そんな中、ユークからエルジア経由でもたらされた情報、ナグファルムの攻撃依頼。

これはチャンスだ・・・世界へ、軍需産業・・・見てろよ

「これが・・・ストーンヘンジだ・・・!!」

 

隕石の破片により破壊され機能不全だった五番砲、それは改良に改良を重ね、改良されたスーパーコンピュータ数百台、安定して秒8000兆回の計算、120cmから140cmへ砲の大きさ変更、精密での命中距離2400km、範囲攻撃、ある程度の地点射撃なら7500kmも可能であるストーンヘンジタイプ5、それが今発射される。

 

「充電中・・・60・・・70・・・80・・・グリーンゾーン!!」

「まだだ・・・」

「了解です!」

他の砲に回さない分、こいつに全電力を集中。更に初速を爆発的に向上させる特殊な爆薬は規程範囲ギリギリに詰めている。

まだいける、こいつならまだいける。

「これじゃあ少ない来年度の予算は全てこいつの修復に消えそうだ」

「いいじゃないか、金食い虫の本領発揮、是非とも見せてやろうじゃないの」

技官がため息つくが、その言葉から楽しさで一杯だ。更にお金に厳しい主計もにやついている。

こいつは、隕石の為に作られ、それが終わればすぐにポイ捨てされた挙句に結果が残せなかったせいで嫌われ者だが、ここにいる数千人の技官、関係者、ISAFもエルジアも関係なく愛している。

「間もなくレッドゾーン!これ以上は暴発します!!」

「・・・・よし・・・司令より全要員、五番砲、発射カウント始め!」

「発射カウント始め、30秒前!」

「発射手順により封鎖始め!これは訓練じゃないぞ!!」

その瞬間、基地全域に警報が鳴り響く。既に発射の為、そとの要員は室内に退避しているが、そんな準備でも大変なほどの衝撃が来る可能性がある。この30秒で通路を隔壁で包み、内部の安全を高める。

 

発射に関しては、ブレッドの持つ鍵により安全装置は全解除、そして発射までのカウントなどの責任は発射士官である中佐、そして最終的なスイッチはまたブレッドである。

「10秒前!内部オールグリーン!電力許容範囲!」

全てのコントロールからもたらされる情報を総括して中佐が叫ぶ。

「5秒・・・3.2.1・・・発射!」

「亡霊、地獄に堕ちろ!!」

ブレッドが力強くスイッチを押す、瞬間・・・

 

ゴウ

 

「うわっち!」

「おお・・・!」

 

地底から響くような振動、ここは地下であり、防音処理がなされているのに内部にまで響く音。

そしてコントロールの画面に映る画像は大いに乱れ、さっきまでうるさかった外部の通信も乱れる。

 

音が止み、振動も収まった数十秒後。通信が回復すると

 

<<・・・こちら観測班!聞こえますか!発射成功!繰り返す、発射成功!五番砲異常なく発射成功!!>>

何度も繰り返される言葉、その言葉を聞いたコントロールは

「「「「よっしゃああああああああ!!!!」」」」

いつもは冷静な士官、そして管理している下士官達が一斉に書類を乱舞させて喜びを爆発させる。

「よし・・・」

ブレッドは静かに、そして最高の満足感を得ていた。

 

後に五番砲は、冷却システムが自分たちの発射で自壊するという珍事が発生し、重要機器も多くが壊れた。しかし、予想以上のデータが取れたことに全員が気にせず、また出資元のISAF、エルジアも強くは言わず金を出してくれた。

 

理由は、主要国家にホットラインで事前通告していたのが、それでもがめついFCMB始めとした国は偵察衛星を始めフル装備でストーンヘンジの追跡調査を行った。

しかし、五番砲が発射されてから、あまりにもスピード、そしてミサイルとは違う弾道により衛星が追い付かず、さらに攻撃先までが超超長距離射程だったので、発射が分かっていても弾着までどこにいくか予測不能な兵器として恐怖したり、ますます興味を持って出資する国が増えたからだ。

ともかく、これがきっかけでストーンヘンジ開発は進み、そして巡航ミサイルを発射する技術も開発し始める。

それが数年後、エメリアという国が苦しむことを知らずに・・・

 

また、こ余談であるが、事情を知らない隕石学者が確認し、これを「星が落ちてくる」ということで一部地域では騒ぎになったという。

 

そして発射された弾は、ナグファルムに向けて飛んでいく・・・。

 

1310hrs

 

おいおい、敵を見つけたのに俺たちじゃどうしようも出来ないぞ」

これには戦闘機部隊も動揺は隠せない。しかし早くしなければ敵は広範囲攻撃のミサイルを放ってしまう。

だが、見つけた場所が予測よりも駆逐艦隊から離れていた。また、哨戒ヘリの乗組員らが不気味というほど士気高揚しているらしい。

「これはどうするべきか・・・」

「心配はありません」

「ん?」

アンダーセンが謎の女一号ことナスターシャを見る。

「心配ないとは?」

「こちらの伝手で・・・星が落ちてきます。今すぐ潜水艦近くにいる部隊を一時撤収させてください」

「・・・・分かった」

アンダーセンが目配せすると、察した艦長以下メンバーが一斉に支配下の部隊に撤収を命令する。そして彼はナスターシャの方を向き

「して・・・星とは?」

「・・・10年前、流れ星でない隕石を潰すために作られ役立たなかった悲運の子、それが活躍します。あのように」

彼女が指差した瞬間、空が光る。

 

アークバードやエクスカリバーの青白いレーザーと違い、一閃の・・・ゆうなれば流れ星、それが海面に落ち

 

ドォォォォォォ・・・・・

 

ゆうに数百mはあるであろう水柱、そしてどこぞの神話に出そうな海が干潮でないのに割れ、そして全周囲に大きな波として襲いかかる。

 

「おお・・・!」

「敵から数kmは離しました、最後に仕留めるのが我々の仕事ですので」

 

「て・・・敵潜水艦がバラスト操作中!浮上します!!」

 

通信員の言葉を受け、やがて静かに戻りつつ水平線を眺めていたアンダーセンは、息を吸ってから

「ただ今よりナグファルム撃滅作戦を展開する。全機、やれ!」

「イエス・サー!!」

 

そして戦闘機部隊が投入される。

デカいクジラ三体目、今、激闘が始まる。

 

 



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地獄天使

もうちょっと続きます。
途中でパソコンフリーズ&データ飛びで心折れそう


空には多国籍の空軍、彼らの向かう先で何かが落ちた。

 

「おいおいおい、おれっちは夢でも見てるのか?またアークバードでも目覚めちゃったかな?」

「そんなはずはないのだが・・・」

チョッパーの言葉に自分も頷きたくなる。しかし、青白いレーザーと違い、かの奴は一閃のようなものを感じた。

ナガセに至っては

「え・・・・なんで・・・」

「まるで隕石みたいな流れ星のような」

「どういうことなんだ?」

ああ、俺含めてこの部隊はやはり若輩者集団だな。ジューンがそんなことを考えていると

「ああ・・・なるほど」

そんな中でひとり呟くのが、ヘルエンジェル隊隊長にしてここの最年長、ギュンターが察する。

「なにか分かるのですか?」

<<ああ、こりゃ流れ星だ。地上から放たれるストーンヘンジともいう>>

「?!!!なぜユージアの兵器が?!」

<<知らんよ、まあ恐らくはあのユークの妖艶な姉ちゃんの差し金と言った所か・・・言うだろ?ユージアとユークは三度の飯より火力馬鹿って>>

「それは知りませんが」

<<全機私語を慎め!ブレイズお前が喋ってどうする>>

「すみません」

調子に乗りすぎた・・・。それを見過ごすわけないチョッパーが

「おっ、ついにブービーも仲間か?」

「死んでも御免だ」

<<ラーズグリーズ3、貴様は譴責な>>

「おいおまっ・・・てかサンダーヘッド、それは重すぎだろう!!」

チョッパーの言葉に全員が爆笑する。

現在この空にいるのは約25機、陸海のあらゆる場所から飛んできた連合部隊。もっと出したかったが、前回の戦闘で大分疲弊してしまった。その代り一機一機丁寧に万全の状態にし、質は最高の状態だ。

今、戦闘が始まる。

 

<<全機聞け、敵の浮上音を確認・・・間もなく上がる。君たちの距離から約55マイルだ>>

サンダーヘッドの言葉に全員がさっきと打って変わり真剣になる。

<<浮上と同時に敵を仕留める。奴らは前二つの艦とは段違いと聞く>>

<<俺たちに任せろ!>>

そう言うと一気に低空飛行に入る対艦攻撃隊。彼らの操るSU-33、ラファールなどには対艦ミサイルが満載である。

この一撃で敵の対空システムを潰しつつ、ヘルエンジェルによって猛攻を加える。

しかし・・・

<<まて、味方の哨戒ヘリが・・・・・全機退避!>>

「え・・・・」

流れるはミサイル警報、それも凄まじい数だ。

<<敵はなんてもん出してきた!>>

<<これは・・・避けるな!>>

<<は、殺す気か?!>>

<<違う、これは嵌められた>>

だが遅かった、敵は戦闘機を補足していなかった。全ては時間稼ぎのため、そして防空体制を万全にするため・・・

「全方位対空ミサイルとは・・・」

<<言ったろ?だからユークは火力馬鹿。投射量が違うんですよ>>

<<のんきなこと言っている場合ですか!>>

ギュンターの豪快な決め台詞にユーマが即座に突っ込む。

<<敵が完全に浮上したみたいだ・・・何機もの航空機をレーダーで捕捉!艦船データから有人機と無人機の混合編成だ!>>

<<リムファクシは全部無人機だったぞ>>

<<秘密裏に作っていたから無人機の製造が間に合わなかったのかもしれないな・・・それよりも敵の迎撃がくるぞ!>>

 

ギュンター視点

敵の攻撃が止まない。

それどことか一気に接近を仕掛けてくる無人機に右往左往の状態だ。

<<くっそ、あがらねえ・・>>

<<レイジア隊、無茶だ!ミサイル捨てろ!>>

低空を飛ぶレイジア隊のSU-33は明らかに上昇が遅い、非常に重い対艦ミサイルをフルで背負ったままで戦闘に突入するのは至難・・・いや、無謀だ。

高度を稼いだのちに一気に突進を仕掛ける無人機集団。

「ああ、こりゃ無理・・・と思ったけど・・・」

ギュンターは独り言を呟く、その瞬間

無人機とレイジア隊の間に挟んで一気に短射程AAMを放つF-14、間違いなくラーズグリーズの機体だ。

<<早く上がれ!>>

<<ラーズグリーズ・・・申し訳ない!>>

<<さあどうする?!敵さんから一杯来たぞ>>

皆が皆奮戦する・・・しかし急速に迫る無人機、それに劣るが確実にこちらを落とそうとするユーク選りすぐりのパイロットで構成された有人部隊。

ベルカ・ファト・オーシア連合部隊なら優勢を取り、そして時間はかかるが確実に倒すだろう。しかしこんな所で時間を食っているわけにもいかない。敵は完全に槍が発射されるまでの事実上の肉壁だ、全力で戦い、そして対艦部隊を優先的に妨害、撃墜しようとする。

<<くそったれめ!敵の奴らここで死ぬつもりだ!!>>

<<さあどうする?どうしたらいいんだい?>>

<<俺に聞くな!AWACS応えろ!!>>

<<サンダーヘッドより・・・これは・・・難しいな>>

<<か~、つっかえねえ!!>>

ノースポイントの方だかでのことわざ、三人寄れば文殊の何チャラというが、この場合においては戦闘機脳の奴らが数人集まっても駄目みたいだ。

さて、この僅かな時間、ミサイルは飛ばせない、敵は特攻、味方は大混乱。

こんな時はどうするかって?そりゃもちろん

「俺たちが戦うのはいつ?!今だろ!!」

言い切った瞬間にギュンターはぐんと愛機を加速させる。後方に居たのにあっという間に最前線だ。

<<ちょっ・・おい!>>

<<ヘル・エンジェル!何をやってる>>

「うるせえ!てめえらがグダグダしてるの見かねて突っ込んでんだよ!見て分からねえか!俺が全力で突撃してやる!地獄の天使、ここで本領発揮だ!!」

目の前から迫る敵部隊をすり抜ける。対艦部隊に張り付いていた無人機たちは一瞬理解に遅れながらも艦内でコントロールするパイロットはやがて気付き急反転、有人機部隊は迎撃しようとする。

しかし、一度発破をかければこちらのもの

<<うちらは特攻する味方を見捨てろと言われているか?!>>

<<<否!!>>>

珍しく大声なジューンの掛け声に全員が反応する。

<<ならば突破するのみよ!全機鬨を鳴らせ!!!>>

<<<おう!!>>>

<<ありゃりゃ、うちの隊長が目覚めちゃったみたいだ、こりゃうかうかできねーな!グリムよ!>>

<<そうですね、先輩!>>

<<私は一番機そしてヘルエンジェルを守るのみ>>

ラーズグリーズが反転する無人機を叩きにかかる。

<<トゥルより、いつ以来かまた貴隊の護衛が出来ることに光栄を感じる。そして全力を以て血路を開く。2!>>

<<了解です!叩いてみせますこのくらい!>>

トゥルブレンツの2機が先行して無謀の中に躊躇いなく飛び込む。多数の敵と互角以上にやりあう。

<<こちらレイジア隊、すまないが対艦ミサイルを積み過ぎてAAMが少ないんだ、だが最後まで見届けさせてもらおう。作戦変更、全機投棄!>>

レイジア隊は対艦ミサイルを捨て身軽になり、少ないAAMを以て突進する。

そして後ろを見れば

<<隊長、地獄なら一緒に行きますよ>>

<<敵の弾幕に・・・自分の弾幕は効くのかな?ふふっ>>

付いてくる部下たち、彼らに怖いものなどない。だが

「てめえらはそこで待ってろ!」

<<しかし>>

「これは・・・命令だ」

全員が聞いたことのないギュンターの本気の声、彼らは一瞬にして彼から離れる。しかし一機は

<<隊長!いくらなんでも無茶です!>>

ユーマだ、まったく、こいつと来たら

「お前は来るな」

<<隊長!>>

「帰れ」

端的に命令する。彼女は、僅かに間を置いた後静かに了解と呟き、離れる。

そう、それでいい、部下に手柄は取られたくない。そう死ぬ覚悟の手柄を

 

足の震えとかない、心臓はこれからの攻撃に対しての機体に高鳴らせ、そして脳はこの弾幕はいつ以来か考える。

ああ、自分、今まで以上にハイになっている。そして

「今からぶち込みにいくんだから大人しく待ってろ!!」

完全に昔の自分に戻っている。ユネースト、ラティオにウスティオ、ベルカ国境でも、凍土や砂漠、山岳に平野に渓谷に幾度となく死線に投じられ、整備もままならない、頑丈さだけを信じ、敵の対空砲火に晒されながらも爆撃したり掃射したりしていた日々を。

正直、この機体は時代遅れである。今でも歩兵の特火点としての有用性はある。しかし敵の歩兵、戦車を倒す費用と被弾して修理する費用の効果、空軍にかかる負担、更に時代はマルチロールに進み、制空、攻撃を使い分けてた戦術空軍気質のベルカから、マルチロールの戦略空軍となり、海軍増強をきっかけに兵站強化と戦闘機減勢を始めようとしている。

今回の戦争でもA-10は活躍したが、同時に空軍のお荷物となった。

どうせ、時代はもうこいつを必要としなくなる。その前に

「最後の敵はお前にしてやる!!大人しく・・・死ね!!」

高度を上げる。

上げてから敵の真上、大きすぎるクジラの全容を視認する。

「おーおー、敵さん大きいなぁ、いったいどれくらいするんだい?」

潜水艦とは思えない弾幕がギュンターに集中する。

とにかく凄まじい弾に当たり、機体が悲鳴を上げる。

「まだだ、まだだよ・・・」

遂に機体の翼が取れ、操縦系統に著しいエラーを示す警報が木霊する。

潜水艦内部は読み取れないが、恐らく俺に対して恐怖を抱いてんじゃねえか?

全く、見えないのが残念だが・・・

「全員、仲良く海に沈みなっ!!」

咆哮一発、ギュンターは爆弾を投下、同時に自慢の30mmガトリング「アヴェンジャー」を起動させ掃射する。

ナグファルムに当たった爆弾は爆発、そして掃射を受けて一気に機能を失う。

<<隊長!!!>>

おお・・・この声は・・・

「泣いてんじゃ・・・ねーよ、この位は我らA-10乗りなら普通だぞ?むしろ、25年前の方が歯ごたえあったぜ」

<<そんなの昔で今は今です!>>

ユーマの嗚咽交じりの声に、ギュンターは苦笑して、痛みを覚える・・・ああ

「やべえ、脚・・・被弾してる」

パイロットスーツがズタズタな足の部分は真っ赤に染まり、肉が見える・・・こりゃもう使い物になんねーな。

だが、この勝利の代償なら・・・安いものだ。そんなことより部下のケアだ

「そう言うなよ・・・やりきったんだから・・・。あとは任せたぜ。」

<<ええ・・・やりきってみせます。だから隊長・・・少しの間待っててください。必ず助けます・・・そして、私は伝えないといけないことがあるんですからっ!!>>

<<<おおおっ!!!>>>

一転して自信に満ちた声、そして後半の乙女の声に、しばし激戦を忘れて全員がはやし立てる。

「おう・・・期待してるぞ」

被弾した機体はやがて上手く着水する。

くそ、いい女だよ。いい女だからこそ俺に惚れた理由が分からねえ、しかし

「今は生き残ることが先決だ」

血を流しすぎて朦朧とし始める意識の中、ギュンターは止血の道具を取り出す。

 

必ず生き残る。そして愛する部下の言葉を聞いてやる。

それが男の目的となった。

 

そして対空火器の大半を失ったナグファルムにA-10が迫る・・・。

 



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ミサイルを追え!

「浸水警報!!」

「応急修復部署を挙げろ!浸水区画を最小限に!」

ナグファルムの全員が艦を最後まで持たせようと努力する。しかし敵の猛攻迫る寸前、このような行為は無意味に近い。

だが、その無意味に意味を持たせるとしたらただ一つ、ここの最大の武器を出し切ることだ。

「艦長!」

「応急要員はミサイル、操舵要員除いて全力であたれ、安心しろ、我々の勝利だ」

グリスがにやりとし、命令を受ける艦員が笑顔になる。

「それでは、発射できるのですね!」

「ああ、奴らが炙り出してくれたおかげで、やりやすくなった。さらに特攻をしかけた攻撃機君は最大の失態を犯した」

ストーンヘンジという超兵器により海面に引きずり出され、A-10の改造ガトリングにより穴だらけの上に乗員の半数は原型を留めず、無事ではない・・・が、命と引き換えに、海面に出たことで周辺の情報と天上議会の行われている都市までのデータ入力が早くに完了したうえ、ミサイルたちは生き残ったのだ。

「少し冷や冷やものだったが、これで我らの願いは叶った。それでは行こう」

グリスは躊躇わずに、フィルフィーリエの解除のカギは既にすべて差し込んである。あとはスイッチを押すだけ。

「我らの・・・勝利だ!」

グリスは喜びと共にスイッチを押す。そして、ミサイルハッチは一気に開き、そして轟音を上げて飛んでいく数十発のミサイル群が飛んでいく。それを確認すると、全員がまるで戦勝したように雄たけびを上げる。

グリスの隣にいる副長もその厳つい顔に似合わず歓喜で涙目になる。それを見たグリスはこう問う。

「副長、君はこれに喜んでいるように見えるが、本心はユークの土を踏みたかったのでは?」

「何を言うのですか」

副長は即答する。

「潜水艦乗りは深海こそ真の死場。最後に敵の咢を食いちぎる戦果を持って死ねるならなお本望!」

「ああ・・・同じ気持ちだ」

瞬間、彼らの世界は、情け容赦ない爆弾とミサイルの嵐によって白く飽和され、そして赤く、そして深海のように黒く染まった。

 

 

達成感を味わいながら逝ったナグファルムに代わり、慌てるのは空の精鋭。

<<どーいうこった!奴らミサイル撃ったぞ!>>

<<見りゃ分かるよ!迎撃は?!>>

空の精鋭たちは慌てるが、どうしようもないのが現状だ。

一気に跡形もなく轟沈させた潜水艦は、最期の力を振り絞り、22発のミサイルを放ったのだ。燃料気化爆弾よりも広範囲で、ナパームより性質悪いミサイルを・・・

 

<<慌てるな!弾道ミサイルじゃなきゃ何とかなる・・・はず!>>

<<楽観的思考はありがたいが、今は確証が欲しいんじゃい!>>

そう、弾道ミサイルなら絶望的だが、奴らは巡航ミサイル、レーダーに映りにくいが止められないことはないはず・・・

「早く防衛部隊と狙われてる地域に連絡を!」

<<・・・あ~、後方の防衛部隊は大丈夫だが、街はダメだな>>

「何でだ?!」

ジューンが叫ぶ、オペレーターは至極落ち着いた声で言う

<<奴らの目標は天上議会・・・簡単に言えばFCMBの全権を握る者たちが集う街に打ち込んだからだ、文官たちは開戦からの軍の独断を嫌い、避難警報が出て・・・更に街にミサイルが落ちれば間違いなく議会にダメージを負う、同時に軍、政治に大ダメージと軍への不信感も大きくなる>>

<<全くもってすべてがダメじゃねえか?!>>

チョッパーが叫ぶ。

<<そうだ・・・だから本当に後ろの奴らに賭けるしかない>>

オペレーターは悔しさを隠しながら冷静に言い放つ。結局勝ったか負けたか分からない。

<<ド阿呆!>>

次の瞬間、大きな声が無線越しに全員の耳に入る。

<<隊長!>>

そう、ナグファルム撃沈に大きく貢献したギュンターの怒声。ユーマが声を掛ける。

<<俺らは俺らの仕事をしたんだ・・・それに、うちらの軍を甘く見ないでくれるかなっ?!>>

<<おい、あんた大丈夫なのか?>>

<<あっ?脚が一本吹き飛んだくらいだよ、命よりか安いだろ>>

チョッパーの言葉にギュンターは当たり前だろと言わんばかりの答えをする。

<<十分やばいよ!>>

全員が突っ込む。

<<逆に考えるんだよ・・・俺らの働きで100発ほどあったミサイルの5分の4は消滅させたとな・・・ああ、悲観的なこと考える奴が多いから死にそうだ>>

<<死なせるかあぁ!!こちらシー・ゴブリン、あと5分で到着する!とりあえず突っ込むから周辺警戒頼む>>

そうだ、今はこの窮地を救った英雄を助ける事しか出来ない

そのやきもきした気持ちは晴れることがない・・・やはり自分たちは・・・

 

「負け続けの私の連敗記録は伸びるか」

ケストレル艦長アンダーセンは帽子をかぶり直し静かに呟く

「・・・」

作戦指揮を執っていたナスターシャも黙る。

「空の戦士たちにも満足な結果も与えられず・・・そして君の行動も無駄にさせた」

「無駄ではありません。我々は結果は出ています」

「いや・・・負けだ」

オーシアをとにかく愛し、空母という貴重で失ってはいけないものをほぼ無傷で守り、幾重の海戦、不利な事態でもこの指揮を全うし、ひいては艦隊を勝利と栄光へ導いた人間。

しかし彼は口癖のように負け続けという言葉を使う。いったい彼の勝利とは・・・

「不愉快になったら謝るよ」

「いえ・・・若輩者の私ですが、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「うん、なんなりと」

アンダーセンは穏やかにナスターシャの方を向く。20以上離れる老兵に・・・畏怖と尊敬を持って、改めて聞く

「艦長・・・貴方の勝利とは?」

ナスターシャの言葉に、アンダーセンはふっと微笑し

「勝利が次の戦争にならないとき、それが私の勝利だ」

失礼するよ、彼はそう呟いて艦橋から降りていく、彼の言葉にナスターシャはああ、と呟く

あの人はどこまでも現実を知りながら理想を夢見る軍人なんだ。

老兵の背中を見て納得する。

 

廊下を歩きながらアンダーセンはため息を吐く。

また、負けてしまった。もしかしたらやっとつかめるかもしれないと思っただけに残念は大きい。

アンダーセン、彼は実を言えばラーズグリーズ隊の大先輩にあたる御仁である。

何が先輩かというと、彼はF-14を操り、オーシア3大艦隊と呼ばれる国防艦隊で活躍し、特に、本土守護、決戦の第一、世界即応の第三とは毛色が全く違う先陣を切る猛者の集まり、戦陣の第二こと第二オーシア国防艦隊、その中の最精鋭第4空母航空団18海上航空隊でパイロット、先任、更に隊長と長年在籍し、戦場では「流星」の異名を持つ猪突猛進と見せて冷静な、引退まで12機の撃墜スコアを持つエースであり、また対地ミッションにおいての戦果もトップクラスであった。

だが彼らの航空隊は実力があっても平和の使者にはなれなかった。

勝利は常に敵の恨みを買い、次の戦闘を誘発させ、だからといって負ければ味方が危険な目に陥っていく。

平和を愛し、海軍に入隊した彼に待ち受けた洗礼は、平和を作ることの出来ない現実だった。特に最前線部隊に長く居て、時代は冷戦の代理戦争が良く勃発していた時代、歪んだ思いは更に大きく歪んだ。

そして今も彼は探している。戦争のない世界を、本当の抑止力以上の、平和が次の戦争にならない英雄の翼を・・・理想かもしれない、だが彼は少しそれを掴みそうだとも思っている。

死を降り注ぐ黒い亡霊、だがその死を降らせながらも平和を作る力もあると感じている。

まだだ・・・私はまだ見守らなければならない。真の平和の鳥たちが飛ぶ姿を。私を常に真の勝利へと導いてくれる、私が出来なかった英雄を・・・。

 

 

ナグファルムの最期の攻撃から5分後

弾着まであと39分

安定翼を出したミサイルはマッハ1近くの速さを持って天上議会が開かれるベルカの街に突っ込んでいく。

「てめえら準備しろ!迎撃準備だ!!」

「なんですか?穴掘るお仕事じゃないんですか?!」

「本業は違うだろ馬鹿野郎!」

作戦待機命令で防空線の秘匿陣地に展開したまま動けないでいた対空部隊が警報と同時に動き出す。

ベルカ中距離対空ミサイルT-12、射程45kmのベルカ版簡易パトリオットとも呼ばれる。

指揮を執るは対空ミサイル大隊の少佐ベリック、8基64発のミサイルが一斉にくる方向へと指向する。

「ミサイルレーダに捉えました!数は・・・15、報告より少ない」

「妨害波か・・・一応聞くがこれは民間機で無いな?」

「どこの国に高度1000フィート未満で編隊組む航空機がありますか!」

「だよな、発射用意!目標はユークの槍だ!こいつは仲間を多く殺した兵器だ、俺たちが潰す!」

「おうっ!!」

レーダ装置から情報が伝達され、それを人の手で情報解析、狙いをつける。

「隊長、先頭のミサイルが妨害波で盾になるとの情報もありますし、こいつは近接タイプ、本場のヒットトゥキル方式でない・・・ここからでは恐らく初弾10発狙って7発が最も良いかと」

冷静な情報士官の言葉にベリックは苦笑しつつ

「現実言うなって・・・まあ、我ら本土守護せし119対空大隊、んなこと言ってる場合じゃない!イヴレア山顔負けの防空を見せてやれ!」

「各発射班用意!目標変わらずこちらに突っ込む」

「間もなく敵のミサイル射程に入る。全基気を抜くな!あと随伴歩兵はさっさと退避しろ!」

警報が鳴り響き、護衛の歩兵たちは逃げていく。

相手方のミサイルは生存戦略も前世代のもの、対するこっちは2004年採用兵器、負けてたまるか!

「5秒前・・・3秒・・・発射!」

「うてっ!!」

8基の発射機からミサイルが2本ずつ計16本飛んでいく。

「ミサイル敵の巡航ミサイルに迫る、インターセプトまであと30秒」

時間が長く感じる。こいつが外れれば、次のミサイルは更に距離が狭く当てにくい・・・。

「ミサイル同高度、間もなく当たる・・・・。5秒前・・・3秒・・マークインターセプト・・・なっ」

「どうしたぁ!!」

レーダー担当士官の歯切れの悪さに、嫌な気配を感じたベリックが大声で聞く。

「・・・、わが方のミサイル的に翻弄され撃墜数3、繰り返す撃墜数3!」

「くそったれ、奴らの編隊が崩れているうちに次弾叩き込め!高射機関砲部隊!てめえらも進路上にミサイル来たら撃て!」

「撃っていいんですか?!」

「構わん!やれ!」

「イエッサー!」

機関砲部隊は通信を切ると射撃体勢に入る。

矢継ぎ早に次弾へ移るが、正直焦りと不安しかない

「くそったれめ、精密より飽和のユークのくせに良いジャミング使いやがって・・・・ミサイル迎撃からデータ回収にも全力で当たれ!奴ら、カタログスペック越えた奴飛ばしてるぞ!」

「アイサー!」

データ回収担当がレーダ士官と相談を始める。

「後方にはなんと」

副官がベリックに問う。ベリックは悔しそうに

「後は頼む・・・それだけうっとけ」

「・・・了解です」

副官は追及せずに素直に聞く。

情報を素早く後ろに回すのも任務の一つ、しかし

「やはり納得いかん!陸軍の意地見せろ!全発射班用意!」

ベリックは気を取り直して次の迎撃弾を指示する。

 

弾着まで30分

ベルカ北東部スレニア国際空港管制塔

FCMB空軍が所属する官民両用の空港であり、ついこの間までは軍事基地としていたが、やっとこ民間機の利用も許可された矢先であったが・・・

「スレニアコントロールよりベルカン122便!離陸の中止を!」

「オールウスティオ244便高度4500フィートアラウンドゴーを願います!」

管制塔ほか民間航空機を誘導する者たちは慌てている。なぜなら

「何でやっと平和になった空に戦闘機飛ばすんだ?!」

「分からないが上からのお言葉だ、やるしかない」

「空港運営全要員に告ぐ。空軍用はもちろん民間機用滑走路も現在緊急で空軍の利用が決定した。航空発着の全ては空軍航空部隊を上位にせよ」

「了解!!」

一方滑走路から即応するのはベルカ第11戦闘航空団分遣隊のSU-27、2機、そしてウスティオ第117戦術航空小隊SU-37の2機

そして

「なんだあのオンボロ?」

「知らんか若造」

管制塔の最年少が疑問を口にし、50を越えるベテランが突っ込む。

「ありゃMIG-21、俺とほぼ同い年生まれでつい最近まで生産されてていた傑作機だ、まあベルカではもうほとんど居ないが」

4機の新鋭の機体に負けぬ威圧感を出すMIG-21、ユークで開発され世界でライセンス含めて1万機以上生産されたベストセラー戦闘爆撃機。それの最新世代だが、それでも25年ランナーだ。

「あれが役に立つんですか?」

若い方の疑問はもっともだ、そしてベテランは

「あ?てめーはもう少し勉強してからコントロールに入れ、確かに見劣りはするが、中身は違う・・・世界最強のフィッシュヘッドだ」

そして戦闘機たちは上がっていく。この新鋭4機はあくまで補助、メインはこのMIG-21、この機体がすべてを変える。

 

 

弾着まで20分

ベルカ北西部渓谷

「あーー、くそっ!敵のミサイルを捉えられない」

<<あと・・・あと7発・・・>>

迎撃するベルカ空軍、サピン空軍のパイロットはこらえきれず叫ぶ。SU-27、F-16、F-15Sの計12機をもってしてもだ。

最初は順調に落としていたが、ベルカ公国の北西部は山岳、渓谷が入り乱れた地帯、そこを低高度で縫って飛ぶミサイルを追いかけるのが難儀なのだ。必死に食らいつくも、対空ミサイルが中々打ち込めない。更に言えばもっと増援が欲しいのに来てくれない。

理由としては、天上議会に察知されない程度で、尚且つ国境なき世界、灰色の男たちとのつながりが薄く、命令に忠実な人間を選抜するとこれでも頑張ったほうなのだ。

だがそんなこと知る由しない現場のパイロットにとっては苛立ちの対象でしかない。

<<敵のミサイルが渓谷を抜けたらまずいぞ・・・>>

<<ああ・・人口密集地域だ>>

今までのルートは人口の密集も少なく、撃墜もまだ出来たが、あと少しで都市部に入る。そうなれば戦闘機の音速に近い行動を低高度では行えず、かつ、攻撃がバレレば天上議会にも察せられる。

状況が最悪すぎる。

そんなこと考えている時間がない

<<こちらマクロマジックより対応中全機!あと75秒で厳戒ラインだ!>>

<<・・・越えたら・・・>>

<<間違いなく平和が崩れる・・・>>

弾着で一発でも受ければ最悪の事態・・・だが回避したとしてもラインを越えれば確実にばれて戦争の再燃、憎悪の連鎖それどころかFCMBの内部もこじれる。

「・・・よし」

ベルカ空軍中尉であるガルド・アーベルは決心した。いや、覚悟した。

<<何をする気だ!>>

「クラップ3より、ちょっとミサイル掃討してきます!」

一気に低高度に速度を上げて突っ込んでいく。

<<馬鹿やろう!!・・・>>

<<・・・?!>>

隊長や同僚の言葉は聞こえなくなる。高度は3500から一気に1000ほどに、渓谷の中へと吸い込まれる。

自分の腕に慢心や、過剰な自信があるわけでなく、ケラーマンのアカデミー出身やB7Rを担当する防空の精鋭でなく、ベルカの中で最も平凡な人間であり、そしてこれが自殺行為だと分かっている。ただ教官を唸らせたことある空間認識能力と、渓谷地域は自分の所属基地の担当防空地域、ここを踏み荒らされて黙ってられるほど誇りがないわけでなかった。

渓谷の中は人が立ち入れない、愛機のSU-27の機動性を信じ、ひたすらに追っていく。

そして最後尾が・・・

「一つ・・!」

短AAMを放つと一本目の巡航ミサイルに当たり、爆ぜる。

次、二本目は少し先にあるミサイル、妨害波を出す先頭から少し離れているからこれもAAMで落とす。

「ふた・・・」

もう宣言の暇なく次々流れる谷間を縫って追いかける。

あと45秒

ハーネスが食い込み息が出来なくなるが、既に脳は考えることをやめて生存に集中している。

目下の綺麗な川は戦闘機の音速によって波立ち、ここが一般人も容易に入る事が出来る場所で、人が居たら間違いなく吹っ飛ぶ。

そして食らいついたミサイルは次は機関砲を使う。

25mm機関砲を約1秒、70発叩き込み更に一発・・・

次は・・・?!

目の前にいきなり壁とミサイルが迫る。

やっべ・・・ミサイル落として壁に激突してのあっけない戦死か、ミサイル諦めて上昇するか・・・

しかし、考えよりも体は生存を希望した。一気に操縦桿を引き高度を取る。

「ハッ、ハッ、ハッ・・・」

<<馬鹿野郎!!地上に降りたら殴ってやる!>>

<<落ち着いてください、リーダー!それより、ミサイルあと3発・・・>>

隊長たちの声が聞こえた時、既に20秒を切っている。苦しい決断が来た

<<仕方ない、渓谷を抜け次第げき<<そこまでいらんよ>>?!>>

穏やかな声が無線を支配する。

瞬間・・・本当に瞬間である

小型の戦闘機が一気に細い渓谷へと吸い込まれていく。

「なっ・・・」

<<馬鹿な・・・あれは!>>

一瞬止めようとした管制官はやめて歓喜の声を上げる。

<<我らの英雄にして敵の悪夢・・・凶鳥フッケバイン・・!!>>

MIG-21という旧時代で機動性を追い求めるあまり安定性が無い機体、それをためらいなく渓谷へと滑らせる。

並みの・・いやそこらのエースパイロットでさえ天地がひっくり返り、状況掴めず墜落確実な機体の動作、場所での行動で彼は全くぶれず、一本の糸によって導かれるように突き進む。

残り10秒に一発

8秒に機関砲でまとめて2発

そして

<<最後まで飛んで辛かったろう。さあ、仲間の元へ行くんだ>>

50越えての年齢で激しい機動を難なくこなしたうえ、最後のミサイルに穏やかに、そして残酷に語りかける余裕すら持つ。味方でさえもぞっとする。

 

これが・・・これがベルカ騎士の末裔。キルレート合計47機の実力・・・。

そして人口密集地まであと3秒、ミサイルは撃墜された。

 

<<ふう、随分楽になったものだ・・・時に、渓谷に突っ込んだのはどなたかな?>>

「は・・・自分であります!」

自分とは4階級上のトップエースに話しかけられ緊張する。フッケバインことウォルフガング・ブフナーは、少し間をおいて

<<君は自分の実力はあるようだが、まだ未熟だ・・・例を挙げればきりがない>>

いきなり駄目出し。そりゃそうだ

<<私が君にさずける言葉があるとするなら・・・>>

また少し間を置いて

<<強くなれ・・・私なんかの老いぼれに負けぬほどにね>>

たった一言、しかしそれが全てを教えてくれる。まだ自分はこの空を守る義務がある・・・一人の英雄に頼らない・・・そんな自分を

「はい!」

力強く返答すると、ウォルガンフはよしと呟いた。

<<たく、何か怒る気失せた>>

蚊帳の外の隊長は消沈し、仲間たちはそれに苦笑する。

 

ともかく、天上議会、そして多くの国民の目に触れる前にミサイルは始末出来た・・・と思われた。

一部を除いて。

 

「よし・・・この写真はいい材料になる」

望遠レンズを使い、写真を撮った男。そいつはFCMB軍の制服を着ているが・・・

巡航ミサイルと撃墜の写真、これは後日軍から優秀なパイロット共に脱走した人間のリーダーと思われる人間によって扇動の為に使われると判明する。

未だFCMB軍の人材流出は止まらない・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




フッケバインはZERO時代の名前を使用。


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新しい日々

2010年

4月10日

 

慌ただしい日々が終わり世界は安定の道を少しずつ、しかし確実に歩んでいた。

あの数十の鉄の鳥たちも今は役目を終えて基地という巣の中で静かに眠る。

外交という薄暗い話は置いとけば大陸内での動乱、戦後の収束は急速に始まり、国民も統制された社会から自由を手に入れて活動的になってきた。

ユークトバニアでは未だ内戦が続いているが、それは別の世界とクールになっている。

 

そしてウスティオの首都、ディレクタスも例外でない。

直接の戦災はほぼ回避されたが、開戦直後からの厳しい統制と物価上昇、そして内陸で農業に適するとは言い難い地勢上、人に必要な塩を始めとした物が手に入らず、困窮が起きていた。

しかし物資輸送が本格的に回復すれば、小規模ながら活気溢れるいつもの風景に戻りつつある。

そして戦争から解放された人間はここにもいる。

「ああ・・・暇だ」

住民区画で最も活気ある市場を巡るのは、結川である。彼は戦争から解放されたあと所属の基地に戻るつもりだったが、溜まりに溜まった報告書や何やらで部隊ごとディレクタスに強制送還されたのだ。

本来ならネットで送ればいいのだが、もう一つある。それは結川が大統領から聖十字白鷲大勲章なる戦時最高勲章と、国防殊勲賞がもらえる事が決定したのだ。

聖はウスティオの正教から、白鷲はウスティオの国鳥に近い名誉で、ベルカ連邦一部の黒鷲をモチーフにした構成自治州と昔の馴染みの対比、そして十字はベルカの騎士鉄十字[空軍は双翼]勲章の名残。

他にも部下たちも各々勲章があり、ベルカに帰ったヴァルキューレ隊も、ジャスミンが剣ダイヤモンド付双翼騎士鉄十字勲章という、ベルカではおよそ50年以上ぶりの戦時の高位勲章が授けられることが決定し、トゥルブレンツは溺れトンビとケラーマンの落ちこぼれの汚名を返上し、二人仲よく空軍に対抗して特別に作られた、海軍航空騎士特別十字戦功勲章が決定した。

なおお酒大好きバッカス隊は勲章よりも酒を要求。困った上層部はとりあえず勲章受け取ったら歴史上最高傑作といわれるウィスキーを与えるとしてやっとこ決着が着いた。

 

この戦争が特殊すぎて、ウスティオ建国から今まで渡された勲章の数の約8倍の数が今回製作、受勲される。

 

さて、暇だが地理感覚なくてどこに行けばいいのかさっぱり分からん。

薄情な部下たちはいたいけな自分を残してどっか行くし、わけも分からず妙にニヤニヤしていた上司から「見学してこい!」と言われるし・・・しかも外泊だし・・・

とりあえずショッピングなどが出来る区画にきたものだが、ブランドが分からんし、どれが似合うか分からんし、そもそもここの国の人ら平均身長高くて自分が低すぎるし、黒髪が少ない環境とか・・・米軍との交流会でこれは元から慣れていたつもりだったが、シャバでは予想以上に寂しさが増す!

「あ~、とりあえず仲良かった奴を誘えば・・・あ」

「あ・・・」

「ああ・・・隊長さん」

目の前に現れたのは女性三人組、うちのシスコンエリーゼ、空挺女傑のハート、そして部下のアリチェ。三人は何かしらで接点が多く、仲よくなったみたいだ。仲良いことはいいことだ

「やあ、偶然だな」

結川は何の気なしに話かける、瞬間・・・

「あ・・・うぇ・・・ふぇ・・ええ?!」

・・・おい、アリチェそんなに俺に会うの嫌なのか?地味にショックだぞ。しかし私服姿の彼女を見るのはいいものだ。

「いや~、偶然ですね。偶然おめかししたばかりのアリチェに会えるなんて」

ハートはにやりとしながら口を開く。

「女たちだけでショッピングして、まあ良く似合ってたのでアリチェだけ先に着せたんですよ。偶然ね」

「二人とも?」

アリチェがひどく狼狽する。そんなに嫌か?!

「まあ私たちはまだ決めかねてるので別の所行こうと思ってたのですが、隊長が寂しそうですし誰か観光案内させないとね、ねぇアリチェ」

「そうだな、男っぽいものが欲しい私なんか時間かかるしな。じゃあ案内やっておけよ。仮にも直属の上司だろ?」

「ハートさん?!エリーゼ?!!」

「「グッド・ラック」」

軽い敬礼をしてから足早に去る二人、去り際、ハートに肩叩かれ

「ちなみにアリチェも外泊だ。グッド・ラック」

「はいっ?!ちょっ!」

だがそんな結川の声空しくすぐに雑踏の中に溶け込んでいく。追いかけようにもアリチェ居るし

「あ・・・あ~、いや、どうしようか?」

もうどうしようもなく提案を求める男・・・最低である・・・が、彼女は違った、うつむいていたが、やがて吹っ切れて

「隊長!いえユイカワさん」

「はい」

突如の大声で背筋を正す結川

「デートしましょう!」

「はい・・・はい?」

思わず聞き返す、周りで口笛吹く人間もいる。そして真っ赤になったアリチェは

「お膳立てがされてるなら食べましょう!嫌ですか」

「んなわけない!喜んで」

即答する結川、それを聞いて一気に喜びをあらわにするアリチェ、可愛い

「では行きましょう!案内します」

そのまま腕を掴まれる結川、兎角混乱しているが、とりあえず付いていくしかない。死線を乗り越えた彼女に・・・

 

「で・・・偶然なの?」

「偶然はいくつか重なると必然になるって誰かがいってました」

「なるほど」

ハートとエリーゼが少し歩いた裏路地で話す。

「二人は相当気が合ってたのに奥ゆかしいというか周りが見てイラつくレベルだったので、もういっそのことくっつけようと。くっつく要素出来れば簡単に行くから」

上司を丸め込み、ハートの部下を使い偵察させ、偶然のために休暇日と遊ぶ日を結川の休暇日に合わせ、そして時間制限を作らせないために外泊取らせてアリチェが好みそうな服装とショップを選定してちゃちゃっと着させる。

上手く成功すればあとはあちらさん次第だ。

「随分うちの隊長にお熱ね」

「まぁな、あれ以上壊れたら本当に見てられないから・・・」

ハートが悲しそうな目で言う。彼は一応の立て直しを見せたが、核の直後から明らかにおかしくなっていた。しかし彼には壊れてほしくなかった・・・なぜなら彼が戦争のキーになると直感だが、そう思えるのだ。

異世界から来た鷲使い、その異名の如く戦場を駆け巡った男は、その余りある戦力と、能力、そして撃墜撃破スコアをもって君臨した。

平和となったと見せかけたこの現在、しかし彼が居る限り何かあると感じている。

エリーゼもハートから聞いた時は半信半疑であったが、やがて府が落ちた。

核使用直後、ハートの叱咤で何とか立て直したが、だからといって油断できない。だからこそ、更にアリチェには頑張ってもらわないといけない。

「残酷で最低ですね・・・人の恋で隊長を正常な歯車に戻そうなんて」

「ま、仕方ない。上手くいくことを願うさ・・・あ」

ハートがはっとする。エリーゼがいぶしげな顔でどうしたんですと聞くと

「グローブ渡すの忘れてた」

「ホンッと最低ですね」

引きつくエリーゼにハートは笑い

「まあ大丈夫だろ。さて、ショッピングを続けよう」

「はぁ・・はいはい。付き合いますよ」

もう何も言いませんという表情を浮かべながらエリーゼは先に行くハートを追う。

 

 

 

 




グローブ・・・ゴム


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病室にて

4月11日

ベルカ国軍中央病院

病室

「ユーマ!飯をよこせ!飯!肉を!」

「けが人がそこまでがっつくんじゃありません!」

子どものように駄々をこねるギュンターに、お母さんのユーマが諌める。階級は本当にどこに行ったのだろう。

「足を失って死にかけて魘された人間がここで無茶なことすれば大変ですよ」

「大丈夫だ!ストゥーカを操った某閣下はすぐに前線に飛んでった!」

「隊長は人間です!人外を例に出さないでください!」

本当に何度脱走したか分からないこの男に何を言い聞かせても無駄だと思うが、とりあえず言わなきゃならない。

こんなうるさい人間は看護師に任せた方がいいが[実はもう医者も看護師も匙をぶん投げているが]、ユーマは律儀に休暇日には一時間以上はここに居る。彼が右足を切断して魘されていた時はずっと・・・

「とりあえず言う事聞きなさい!」

「そうだよギュンター君」

「お前は昔っから馬鹿だよな・・・いい女そばに置いといて」

二人の男の声に反応するユーマ、背筋がぞっとする。

「ああ、ザンナルのおやっさんに、兄貴」

そこに立つのはベルカ軍のザンナル上級大将にウスティオのフェルナンデス元帥、共に軍のトップクラスに居る人間、ユーマは即座に立ち上がり最敬礼をする。

「君はギュンター君の部下で・・・」

「ベルカ空軍航空爆撃団所属、ヘルエンジェル隊ユーマ・アントーニ、階級は少尉、軍所属№018763113であります!」

一気にまくし立てて最敬礼を続ける。自分の実力じゃ数十年後昇進してもお顔を拝見するのがやっとなレベルの階級の重鎮二人を目の前で礼装をしていない自分など論外である。

てか、隊長!

「なぜ平然と?!」

「兄貴に元上司、気兼ねの必要がない」

はっきりとおっしゃられる・・・。

「ああ~、逢引の途中で申し訳ないが、少し席を外してくれないかな?」

「はっ、失礼いたします!」

ユーマは即座に病室から出ていく。早い

走っていく足音が遠くなる。彼女は扉の前で無く、空気を読んでかなり遠いところまで行ったようだ。

「本当、忠実で惚れてる部下を持つなんて、てめぇはどんだけ幸せものなんだと」

フェルナンデスが呆れて言う。ギュンターも笑い

「ああ、本当に勿体ない」

そして二人を見る。

「お二人さんで来るという事は、俺に何か通知あるんだろ?」

さぁ言えよと目で示す。彼は考えていた。右足を失った使い物にならない前線兵士、通知されるは・・・除隊と今後の部下たちの方針、そのはずだった・・・。

「ああ、貴様には6月に辞令が下りる、大佐昇進の上、バレット空軍基地FCMB新戦術航空実験団の戦闘爆撃部門部長を任じる」

目を見開くギュンター口開く前にフェルナンデスが

「これは伊達や酔狂でもなんちゃって二階級特進でもない。未来の攻撃、爆撃部隊の育成に力を貸してほしい」

「・・・く・・くく、はは、そりゃすごいことだ・・・マジでどうゆうことだ。俺はA-10しか乗ってきてない男だぞ、空軍大学も卒業してない万年少佐だぞ?」

「質問に答えよう。その空軍大学卒業したエリートが国境なき世界に加担したため綱紀粛清して人材不足、それと・・・A-10は2014年度を持ち全部隊解散が決定された」

ザンナルの言葉に衝撃が走る。

一つ目のエリートの粛清、彼らは戦争を味わってから、カリスマのある男たちに惹かれた、それが国境なき世界に行ってしまい、上層部は大惨事となっている。

なので経験豊富で裏切りそうにないギュンターが一時的にだが白刃の矢が立ったのだ。

そしてもう一つ、A-10の全機廃棄・・・

A-10はその戦闘力は歩兵の神とされたが、戦術空軍から戦略空軍のマルチロールに移行したベルカでは一つの仕事しか出来ない兵器はうっとおしいと思う人間が増えたのだ。更に言えば、狂った集団により対空砲火に晒されまくるA-10は修繕費と戦果の費用対効果が合わず、先日の天上議会においては軍が改めて強力なシビリアンコントロールに置かれた手前、A-10擁護派の将校の意見を政治家が弾圧し、新たな戦闘爆撃機導入を強力に推進している。背景にはもはやベルカの一大利益集団となっているベルカ国営兵器産業廠が強力な圧力をかけている面もある。

依然として陸軍は猛反対しているが、空軍もコストのかかる機体よりもやはり今は政治家のご機嫌を取らねば予算が最近熱が帯びる海軍に奪われる可能性が高いので従順になりつつある。

「本当にか?」

「ああ、もう少し働いてもらってから君には退官してもらう。それと君の二階級特進はただのお願いでは済まされてない」

「どういうことだ・・・まさか」

そう、不思議だったのだ。二つのことならザンナルかもしくは空軍将校が言えばいい、なぜ他国の、既に見舞いには来ていたこの人が来ているのだ?

「私が退官する代わりに君の二階級昇進を認めさせた。今日でこの制服とはおさらばなのだよ」

「~~、兄貴っ!!」

足の痛みはなくなり思いっ切り殴りかかろうとするが、正常な体で無い今はそれも叶わぬ話である。

フェルナンデスは笑いながら、そしてまじめな表情に戻り

「私はもう60を過ぎた男だ、これ以上軍に残っても無駄が多いし、何よりももう疲れた・・・。お前ならどんなことがあろうとも私の意志を継いでくれる。FCMBとしてひいてはウスティオ空軍の発展のため、お前には絶対に残ってもらいたかった・・・それだけだ」

為らざる本心。いや、少し違う。

フェルナンデスはもっと軍に残りたかった、無責任に任を放棄せず、国境なき世界という脅威の行く末を・・しかし、戦争が終わってから政治家の圧力は自分にも向いてきた。

人事的に政治家お気に入りの将校を上げてこなかったのが原因と分かっている。だがあいつらを上げれば軍は腐る。そう考えていたからだ。だが、既に自分が考えていた以上に正義感の強い人間も多い、もう自分は要らないのではないか?そう考えれば最後に可愛い弟分に権力の限りを尽くして新たな世代育成の道を作らせなければならないんじゃないか。そう考えた瞬間、すぐに退官の届け出の筆はよく進んだ。

「今まで世話になったな、ギュンター。これが最後の兄貴分として我がままとして聞いてくれ」

「・・・最後まで、本当に振り回してくれる野郎だよ・・・くそ・・・辞令が出たら従うさ・・その前に少し考えさせてくれ」

「分かってるさ」

俯くギュンターに、二人はそれじゃと退室する。

「大丈夫かあいつ?」

「大丈夫だ」

問うザンナルにフェルナンデス返す。

「サプライズにしては重いが慣れちまえば大丈夫だ。あいつなら、それにあいつはパートナー居るみたいだし・・・なんであんな若い子に・・・」

「そうか・・・それならいいが」

フェルナンデスの面白い言葉に引き気味に返すザンナル。そんな掛け合いをしていた遥か後ろ

帰ることを確認したユーマは、何だかんだ言いながら近くの店で買って無断で持ち込んだチキンを持って。

「失礼します。お話はおわ・・・何で泣いているんです?!」

ユーマが突っ込む。常に笑うか狂人かの二択しかない男が泣いている。それだけで衝撃的なのに、ギュンターは作り笑いしつつ

「ちょっとな・・・ちょっと面白い話と悲しい話を聞かされてな・・・すまんな」

「いいえ」

ユーマは自然と体が動いた、尊敬し敬愛する彼は明らかに無理をしている。ならば、彼女はゆっくりとギュンターを抱きしめる。

「お・・・おい」

「無理しなくていいです。自分は隊長の全てを受け入れて好きですから」

「・・・・」

余りの唐突な告白に困るギュンター、しかし今はその優しい言葉に身を委ねるしか・・・

 

「なっ、心配ないだろ」

「どうだな、しかしいい風景をみたものだ。いじるネタが出来た」

病室の扉の隙間からニヤニヤしてみるザンナルとフェルナンデスの二人、彼らは今、上級将官で無くただのおっさんとなっていた。



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諜報戦 1

皆が平和をむさぼっている間に水面下ではゆっくりと、しかし着実に事は起き、それを起こすもの、防ぐものの静かな攻防は続く。

 

一人の、ラフな格好をする男が廊下を歩く。

この場所は非常に人が少ないが、その分精鋭揃いである。彼らの主な仕事は「聞きだし」と「スカウト」である。

 

「オルネ班長!探しましたよ!」

機密性確保のため無駄に広く、内線も限定的なこの場所では緊急警報以外は自分の足でお目当ての人物を探すしかない。

「どうした、新しいおもちゃを見つけたか?」

「いえ・・・、今回はおもちゃはまだです」

部下の答えに心底うざそうに舌打ちをするオルネと呼ばれた男。しかし部下は気にしない。

「しかし、面白い男・・・スカウト要員は見つけました」

「ほう」

オルネは怪しく口角を上げる。

「それはそれは興味深い。いったい誰かな?」

「こいつです」

資料が手渡され、それを数枚めくり・・・

「おい、情報が少ないぞ・・・ああ、なるほど」

合点がいったオルネはさらに笑みを凶悪にする。常人なら耐えられない程に

しかし部下はおくびも出さない。出せば死ぬ。

「奴は何かこの世界についても知っている面白い奴です。少し難題でありますが・・・スカウトでもおもちゃでも・・・」

部下の言葉にうんうんと何度もうなずくオルネ

「人質条件としても中々うま味あるな・・・よし。こいつ拉致しろ」

「はっ!」

敬礼した部下はそのまま駆け足で廊下を去っていく。

なるほど・・・本当に面白そうだ。

そのまま笑みを浮かべたまま、また廊下を歩く。そして目的地には

無数のやつれたり筆舌に尽くしがたい状況になっている人、人、人、それらは全員FCMBに忠義を誓い、脱落しても、ここに収容され一部はスカウトされても毅然に拒絶した、自分たちにとって頭数にも、情報にもならない、捕虜でも戦死者にもカウントされていないオルネの嗜虐を満たす「おもちゃ」たち

「さあ、お時間だよ」

それは笑みというより、心から嗜虐に対する愉悦を伴った壮絶なものであった。

決して殺さず、しかし絶対に逃れられない程に傷める・・・

 

 

現在国境なき世界所属、元最凶と称される王室直轄サピン王国特別諜報部隊、その中でも爪はじきにされた最悪の尋問拷問官、オルネ・ラリオットの遊びが始まる。

 

「さて、動き出したぞ奴ら」

「ああ、だが誰を拉致するかは分からねえな・・・」

少しの音も集音する超高性能レーザマイクを使い、中での音声を聞き出した。誰かを狙い、そしてここで残虐非道な拷問が行われている。

二人の男が会話する。

「見つけたと思ったら想像以上にひでぇことしやがる・・・」

「任務が最優先だ・・・とりあえず上に報告上げるぞ」

それは同じくサピン王国の特別諜報部隊、オルネの元の所属する人間たち。優秀な諜報力を持って、スカウトの屋敷にたどり着いた。

彼らとて元の人間が身内を傷つけるのを見過ごせないが、まずは生きて情報を持ち帰ることが先決だ。

「さぁ、人材流出やおもちゃのように愚弄するあいつらもこれで終いにしてやる」

女王陛下より厚き信頼を得ている我らが絶対にこいつだけは殺す。そう胸に誓い、二人は施設近くの林の奥へと消えていく



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悲劇

6/17

1300hrs

サピン王国危機管理センター

「納得がいきません!是非、是非にご再考を!!」

「ならんと言っているのが聞こえないのか?」

言い争うは二人の中年、しかし片方は服の上からも分かる引き締まった体、片方は寸胴というべき体形。

前者はサピン情報部、特別諜報課長、ガルタ・ネゼット大佐、後者はサピン情報部長、プロパス・ウェンディ少将である。

二人が言い争うは諜報によって見つけた国境なき世界の捕虜収容所にして拷問所。それに関してFCMBでの情報共有をせず、事実上の隠ぺいを行うと言ったのだ。

「では貴様は我々の失態が明るみになったときの対策をどう考えているのかね?」

「我々だけの事案ではないのです、事によっては他国の将兵も危機に晒されている現状で政治の話を置きましょう!」

比較的清廉な軍人たちの嫌な予感は当たった。政府の文民統制が強くなったあとサピンも例外なく政治派将校の台頭しはじめた。

元々女王陛下にお仕え命の将官が減ってきた昨今、バランスは崩れていたが、ここまで政治に媚びうる人間も少なかった。

三割陛下押し、六割で政治派閥、軍派閥で争う流れが素晴らしかったが、今じゃそれが危険な方向に向かっている。逆の軍派閥台頭も非常に危険だが・・・。

「何度だって進言させて頂きますが、これは国境なき世界を叩き潰すチャンスも含まれているのです。我々が見つけた証拠と、軍主導で向かえば多少の汚名も流れるものです」

ガルタの言葉にプロパスは鼻で笑う・

「笑止だな。国境なき世界なぞ組織すぐに一ひねりだわ。そんなのは成果にもならんし、万が一にも長期戦になったときの費用対効果、同時にこの前の戦争で我々は少ない被害で多大な活躍をした分を別で無駄遣いなど断じてならない。もう一つ、聞けば主犯格はここの情報部所属の人間だったそうじゃないか。それこそ重大な問題だ」

ガルタは顔がこわばりそうになるが、何とか抑える。情報部は奴に身内がその施設のリーダーとはあえて言っていない。そんなこと言えばこうなるからだ。だが既にばれている。

この少将は政治派閥にあり、軍情報部と違う、政府情報局外国諜報課と通じていると聞いていたが、本当だったか・・・。

確信に至り、失言したことに気付かず得意調子なプロパスは続ける。

「君がしつこいのに一喝しないのは、私の方が正しいからだ。それが現在の軍の、政府の意志なのだ。まあ心配するな、外交筋がひと段落したら特殊部隊を派遣して制圧、捕虜の救助はしとこう。君たちは引き続き監視と、これが外国政府に漏れないことに気を付けるのだな」

「・・・・・はっ」

「素直で結構」

高笑いしながら去っていくプロパス。政治圧力とはいえ、全軍上200番以内に入る男にこれ以上は追撃出来ない。

 

「・・・いかがいたしますか?」

後ろから息を潜めていた側近の大尉が近づく。プロパスは息を吐き。

「とりあえず正攻法はなしだ。一応政治派閥のお坊ちゃまだから真っ直ぐしてみたが・・・駄目だね」

「では、引いてみますか。いつもの自分たちらしく」

大尉が不気味に笑い、プロパスも凶悪な笑みを浮かべ

「素人少将殿に悪いが、うちらはうちらなりの方針があるんでね。さぁ、始めるか、我々が使える手段で・・・」

サピン王国を愛するならば、国益を考えるのは一番だ。しかし、これは国益うんぬんの事態で無い。そう確信できた。

そして彼らの狙う人間は実は絞り込めてした。次狙う相手は他国でもFCMBでも重要な人物であった。

異世界の鷲使い、結川であるということ・。

 

しかし結局は秘密裏で動いても間に合わず、表向きで動かなかったことから、政治上、大きな失態として大きな黒歴史になることをまだ知らない。

 

6/18

2200hrs

ディレクタス空軍基地

この基地は今は静けさに満ちている。

フェルナンデス元帥の退陣で空軍のお偉いさんも出払ったり、勲章授与で盛り上がったメンバーによる酒盛りが行われ、一部を除いて警戒が薄くなっていた。

関係ないメンバーも酒が飲めると聞いて集まり熱狂的になっているが、その主役といって過言でない結川はその場を離れて静かな滑走路近くを歩いていた。

本日に限りスクランブル要員も少なく、滑走路から飛び立つ飛行機もいない。首都の基地としては本当に静かなものだ。代わりにエウレノとかの前線や、レーダー基地は修羅場だが仕方ない。

結川は胸に付けてある勲章を持つ。

十字は鉄であるが、白鷲はプラチナをふんだんに使用した超高級な勲章。大統領閣下自らつけられたとき、今までこまごま貰った勲章が全て吹き飛ぶその重厚さと素晴らしい意匠に度肝が抜かれた。

また、酒の関席では居残りの将官殿や、ゲベート政府から来た人間から次は首都の守護神や、ベルカに派遣して恩を売ろうではないかと持ちかけられていた。まあそれが嫌で抜け出したのだ。

 

なぜゲベートの人間がウスティオに来ているか?それは二週間前に発表された案件がある。

 

ウスティオ・ゲベート連合化計画、事実上、ゲベートを州単位に再編成のちにウスティオの連邦にする。同時にB7R「円卓」の管理をウスティオ主導にするというのだ。

 

ゲベートは経済政策は人口にありと人口増加政策を推し進めたが失敗し、むしろ増えた人口はウスティオに流れてしまっていた。

ウスティオは資源が発見される前はその国土の半分をゲベートに割譲予定であったが、1988年から約20年ちょっと、立場が逆転したのだ。

ゲベート側はこの発表に賛成派が多く、反対派はテロの構えも見せたが、事前に掃討していたため治安悪化はそこまでひどくなく、ウスティオ側も既にゲベートには民族的に近いものとして有償の支援をしていたことも含めてこちら主導ならと平和的に併合の構えを見せている。

しかし、根強く反発する各国野党、自治州があり、これの為に与党は余裕の構えで各国裁判所及び国民投票の判断を仰ぐことにした。

 

なお、これが実現すれば首都ディレクタスの人口40万あまり[ゲーム世界と違い経済発展で人口流入が多い]に対して地方都市の人口多い、約4200万のサピンと互角の地域大国は間違いなしである。

 

まあそんな政治話も聞かされると嫌になってしまって抜け出して今に至るわけだ。

 

夏も近づき始めて、暑さは日に日に増すが、日本と違い空気が乾いてて不快指数は上がらず、むしろ夜はまだ少し寒さも感じる。

 

「なんでこんなことになったのだろうか」

一人呟く。

ゲームの世界に飛んできて、ウスティオ空軍の一員として歴史の変わったオーシアと戦争して生き残って、しかし自分の持ってる知識では何も出来なくて・・・。

せっかくお膳立てしてくれたアリチェにも手を出してはいない。視線が痛かったが、どうしてもそうなれない。

好意はある・・・うん、だが、国境なき世界を倒せば自分は元の世界にいきなり戻るかもしれないし、戻れないかもしれないし・・・とりあえず、ラーズグリーズなどの神々が作りし箱庭の並行世界をどう立ち振る舞えばいいのか良く分からなくなっていた。

背負うものが多くなりすぎた気がする。

仮初ながら平和になり、考えたくないことも考えるようになってしまった・・・どうしよう・・・

鬱のスパイラルにはまりつつあると。

「こんばんは」

結川は声のする方向を見る、格納庫の近くの暗闇から街灯の下に現れるのはウスティオ空軍の制服を着た、大尉の階級章を付ける男、しかし違和感を感じる。

「・・・所属と階級を答えろ」

結川は睨む。男は

「おお、怖い怖い、中佐殿といったっていきなり睨み付けることはないでしょうに」

「しらばっくれんな、戦術輸送隊のマークつけてるが、見たことない顔だな」

結川の言葉に男はくすくす笑い

「警衛の兵卒君にはばれなかったんだけどな、当たりですよ。初めまして、国境なき世界ウスティオスカウト担当のガルーダです。ああ、名前はコードネームで許して下さい」

一層警戒感が高まる。なぜ悠長に挨拶してくるんだ?

「一体何の用だ?」

「言ってるじゃないですか、スカウト担当だと。あなたをスカウトしに来たのです。まあ早い話こちらに付きませんか?」

「断る。貴様らなんかに魂売ってたまるか」

結川は半歩後ろに下げる。いつになっても逃げられるように・・・

「・・・そうですかぁ、ですが登場して一か月で撃墜スコア16稼いだ人間を簡単に逃がすわけないでしょ」

瞬間、結川は羽交い絞めにされる。いつの間に?!そう、結川はガルーダと自称する男にいつの間にか釘付けにされて、集中していたはずの警戒が散漫になっていたのだ

「本当なら腕の一本おって戦意喪失させたいですが、室長はおもちゃを先に壊されるのは嫌な人でしてね、とりあえず眠っててください」

羽交い絞めかける男はボンベを取り出して、そしてボンベの先端にあるマスクを結川につける。これは・・・

必死に吸わないようにするが、だんだんと意識が遠のき始める・・これじゃ・・・

「おい、何やってんだ!」

そこに現れたのは全く関係のない警備兵、しかし平和であるため小銃は肩に掛けたまま・・・

「おや、目障りですね」

直感で感じた、このガルーダって奴、対象以外には容赦ない。やばい!

だが遅かった。ガルーダはハンドガンを取り出し、容赦なく警備兵を撃つ。

「ガ・・・お?」

「~~~~~!」

胸に穴をあけられた兵士は何も言えずに膝から崩れ落ちていく・・・

「ちょっ、ガルーダさん」

羽交い絞めの男が少し緩んだ気がした。その瞬間、怒りと、自分の不甲斐なさと、殺意が混じり、結川は落ちかけた意識が覚醒する。

両腕を一気に広げる形を取りつつ体を一気に前に倒す。羽交い絞めいている男は体勢を崩す。ボンベを落とし宙を彷徨う右手を掴みそのまま体(たい)捻り、足を180度すり足で回転させる。

「しねやぁああああああ!!!!」

防衛大学校時代、友人に教わった武術

合気道、四方投げ、それがこの技の名前

普段なら相手の肩を考えて壊さないように投げるが、既に意識が覚醒状態でも力が抜け、肩の駆動できない部分に相手の手を動かし、一気に体重かけて下に落とす!

肩、肘の部分から聞こえてはならない破壊音と共に男の肩は脱臼して関節部分はあらぬ方向に曲がっていく、同時に受け身も取れない状態でそのまま地面に叩きつけておまけで手首も砕く!

「あぎゃあああああああ!」

大の大人がつんざくような悲鳴を上げてのたうち回るが、既に砕けている腕がぶらぶら動き、さらに無限の苦悶を与える。

そのままビクビクと跳ねた後、意識が現実を逃避して飛んでいく。

「いやー、やばいね。なに、今の格闘術?」

だが余裕をもっていたのは一瞬だった。倒れた警備兵は血を吐きながら最後の力で笛を吹く。その大音響の笛はやがて警備兵をたくさん集める。

「ちっ、しぶとい奴め・・・しょうがない、ユイカワ中佐殿、また今度お礼も込めてお会いしましょう」

ガルーダはそのまま仲間を見捨てて暗闇の道を走っていく。

「中佐殿!大丈夫ですか!」

「早く追いかけろ!国境なき世界だ!」

「!、了解!!」

酒を飲んでない警備兵はその暗闇の道を笛を吹きながら後を追っていく。結川は彼らに任せたのちに、倒れている兵の元に向かう

「おい!しっかりしろ!」

抱え上げるが、既に虫の息・・・どう見ても笛で最後の力を使ったようだ

「はぁ・・・中佐殿・・・ご無事ですか」

「何も言うな、今医官が来る」

結川は言うが、兵士は悟ったように笑みをむけ

「無様ながら最期に鷲使いを守れたことに・・・栄光を・・・」

はうっ、と一回大きく息を吐き、そのまま事切れる。蘇生も出来ないだろう。

「おい・・・おい・・・」

結川は震える。そっと床に置き、後から来たベテランの軍曹に問う

「この・・・警備兵の名前は分かるか?」

「ディレクタス警備隊第4小隊所属、タレス・マッキーニ上等兵です・・・伍長昇格間近でした」

「そうか・・・」

結川は何も言わず敬礼する。そして手をぶらりと下げ

「クソッタれめ・・・クソッタレめぇ!!」

暗闇の空に向けて咆哮する。しかし夜空は何も答えてはくれなかった・・・。

 

後にサピンはこの結川を狙っていたことを掴んでいながら報告をしなかったことで、大きく外交上不利になり、プロパスもまた、大きな代償を払わされることになる。

また、サピンは地域大国と、国土と国境から半包囲になるウスティオ連邦化計画に反対であったが、結川という重要人物拉致未遂、及び警備兵の殉職を楯に、サピン側に反対一辺倒では出来ないように圧力をかけていく政治材料にした。

FCMBはどんどんと歪んでいく・・・。

 

 

 




アイキドー!


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100

6/18

2230hrs

ディレクタス近郊高速道路

高速道路の最低限の街灯の下、黒塗りセダンが170km以上のスピードで走っていく。

「いやー、失敗失敗、まさか空軍の警備隊があんなに勇敢だとは」

「笑い事じゃないですよ、これで何人目ですか・・・部下潰しが」

助手席に座るガルーダとそれをツっこむはガルーダの部下。ベルカ空軍特別輸送隊所属、ガーネスト・フレッチャー二等軍曹である。

「んー、忘れた」

「はぁ、俺もこの人から離れたい」

「君の運転は手放せないからね。それに行くあてないじゃん。僕の下で頑張りなさい」

「ああああああぁ」

将官、国賓、果ては国家の重要人物の空輸に携わる、日本の政府専用機に当たる部隊の選抜された警備職兼空港から目的地のドライバーを任されていたガーネストの腕前は超一級品である。

本来なら有能でエースパイロットであるが、階級で言えば下の方の人間に当たるガルーダのものではない、だが、彼は目的に賛同したのではない・・・彼は国境なき世界の捕虜である。

核兵器が使用された日、行方不明になった輸送機のパイロット達が賛同者で全く知らずたまたま便乗してしまったためにベルカに帰れなかったのだ。

拷問されたくなかったためになびいたが信用されず、こうしてガルーダの元に使わされている。

なお、ガルーダは全くこちらに興味なく付き合うガーネストを知りながら面白いという理由で見逃し、こうしてこき使っている。

ガーネストはガルーダのおかげで生かされているのを知り、更になびいた手前軍に戻ることも出来ない。そして裏切ったら確実に殺される。そのくらい国境なき世界の組織は根深く、そして大きな軍事組織となっているのである。

「ねえ、いくらここらへん取締りザルだからと飛ばし過ぎだよね?」

ストレートに続く高速道路だが、さっきから周りの車をどんどん追い抜いて行く。メーターは安定して170から下回らない。

「いやー、早く帰りたいですし、追手居たら面倒ですし、ウスティオの首都警察ザルですし、追いかけられても逃げ切自信しかないです」

「・・・面白い奴だよ」

こいつはやっぱりこっちの人間だ。口には出さないがガルーダにとっては気に入る人間である。

「しかし・・・どうしてあいつを拉致しなかったんですか?貴方なら単体でも骨の一本折って人質にでもするでしょうに」

ガーネストは疑問を持って問いかける。

「んー?自分で考えてみれば?」

「高校もまともに行かず軍人になった自分には難問です!」

「諦め早いね」

ガーネストの言葉にガルーダは苦笑し・・・しばらく間をおいてから

「彼はね・・・恐らく国境なき世界の行ったら使い物にならない・・・恐らくこれからウスティオに残ってもね・・・」

助手席から外を眺めつつ言うガルーダに、ガーネストは次の言葉を待つ。

「エースのスランプじゃない・・・壊れるんだ。ただ壊れて使い物にならなくなるんだ。督戦隊のように無差別に楽しく殺してない、またはベルカのように絶対的忠誠心で動いていない、誰かと依存したり信頼して戦闘していない、純粋に空を好きでなくなっている。そのくせに使命感と無駄に良いスコアを出して若輩者が不相応の階級に祭り上げられて屍の上の王様に立った時・・・どうしたらよいか分からなくなるんだ・・・異世界出身か何かしらないがとにかく「覚悟」が足りない」

「覚悟・・・ですか」

ガルーダは自嘲気味に笑い

「いや訂正しよう。単体の、軍人としての覚悟はあるだろう。証拠に殺人に躊躇いないし・・・よっぽど恵まれたところで育ったのか少し平和ぼけな感じはするがね・・・ただ、仲間や部下を生きて帰そう、失いたくない、信頼して「死んで来い」という言葉もかけられない、何かあれば自分を責め、隊長としては失格だ。まあ単体にしてももう遅いし、単体なら単体でまた面倒な奴になりそうだが」

しばらく車内が静まり返る。ガーネストが聞く

「もし、もしですよ。その男・・・ユイカワが何かしらで吹っ切れたら・・」

「いやー、その時はもう、ベルカ最強のエレノア大尉顔負けの狂犬になるんじゃね?」

ガルーダはにやりとしながら答える。実に楽しそうに

「ヤバイじゃないですか!」

「いやいや、そこが面白いだろ?」

助手席を倒しながらガルーダが言う

「目の前で兵卒君が死んだ。ここで壊れるか、一気に目覚めるか・・・単純にこちらに引き込むより数段楽しいことではないか」

「いやしかし・・・あっ」

「ん~?どしたの?」

瞬間、青と赤のランプが交互に照らされ、一気に間を詰める車が接近する。間違いなく警察である。しかも普通のパトカーより排気量が大きいスポーツタイプ三台である。

「あ~、ウスティオ首都警察特別交通隊の奴らだ・・・さすがに最近飛ばし過ぎてついに来ましたか」

「ハハッ・・・面白いじゃないの。捕まりたくないから逃げなよ?逃げれるんだろ?」

「あー、そうっすね・・・逃げなきゃならんですよね、よっしゃ逃げますよ!」

「うーい、寝てるから逃げ切れたら教えてね」

了解ですの言葉と共にガーネストは一気にアクセルを踏む、速度は軽く220を越える。

ガルーダは目を瞑りながら、本当に面白い奴だよと呟き、相棒を信じてそのまま寝る。

 

パトカーとのカーチェイスは最終的にガーネストが山道思いっきり走って無事逃げ切ることに成功するが、それが首都警察を復讐鬼とし交通部隊が大幅に強化されるのは別のお話。

 

6/22

1300hrs

ウスティオ某地方墓場

三人の礼装を着た下士官軍人の綺麗な儀仗。老練の叩き上げ中尉がウスティオ空軍の礼式の旗を持ちゆっくりと歩く。

中尉の向かう先には一個の棺。

先日殉職したタレス・マッキーニ上等兵・・・いや、軍曹の葬式である。

結川を命がけで守り、逃しながらも敵と対峙した人間の軍隊からの最上級の儀礼である。伍長昇格予定だったために、急遽伍長昇格、同日名誉の一階級特進で軍曹となった。

つい二週間前に大掛かりな戦時殉職者の合同慰霊祭があったが、それの後、戦時解除での殉職の為、手厚くなっている。

棺に空軍旗の布がかけられ、牧師が聖書を読み、やがてそれが終わると儀仗隊員が一糸乱れぬ動きで空砲を三発、空に打ち上げる。

周りの親類は泣き、同僚だった者たちは次々と棺をふれ哀悼の意を捧げ、そして棺は丁寧に土に埋められる。

そんな風景を少し離れた場所で眺めるはサザンクロス副隊長のホークである。この場に結川は来ていない・・・いや正確には

「ユイカワは来てないか」

声を掛けられ振り返るとそこには珍しい礼装のオリビエだ。バッカス隊の代表として参加している。

「ええ・・・ご遺族の意向です」

ホークの短い返しにすべてを察する。

戦争が終わった後に突如として息子の命が奪われた。たとえそれが人を守るための死だとしても、受け入れることが出来なかった。繰り返すが戦争が終わってもう命の奪い合いをしなくてよいという安堵から一転しての地獄である。

結川は前日に遺族に対面した、その際怒鳴られ、けなされ、罵倒され、救国の英雄でなく同じ殺人者の扱いを受けたという事は同じ軍隊内では光速を越えて伝えられた。

やはりそんな中でこの場に置くのはまずいとして、一時的に基地に謹慎という形となった

「奴はどうなんだ?」

「・・・・・・」

ホークはオリビエの問いに答えない・・・いや答えられないのだ。あまりにも残酷すぎて、そして自分たちの無能を晒す形になるから・・・

軍隊内部では同情する奴もいるが、重要人物になったのに軽率な行動だと結果論から批判する人間も少なからずいる。

そもそも、ウスティオ人でないのに最高勲章とか、エースとか、若造の中佐・・・と今更ながらの責めを噴出させる見苦しい人間もいる。いや、今だからこそ、ここぞとばかりに声を上げる。だが、それを部下たちはどうしようも出来なかった・・・しようにも彼がどうなっているか分からない、気付いても気付かないふりをしていたのだ。

「ま・・・無理もない。奴は若すぎる。なのに戦い過ぎた、やりすぎた、ウスティオ人以上にな・・・残念ながらな、とりあえず今は哀悼の意を捧げよう。そして酒を飲もう・・・それからゆっくり考えればいい・・・あいつの副隊長としてな」

ホークは知らず知らずの内に泣きだしていた。オリビエはホークの肩を叩きながら、

「大丈夫だ、お前らは無能じゃない、あのバカが悪いんだ、お前らの隊は十分強い・・・そしてお前も十分な実力者だ」

とりあえず秘蔵のウィスキー飲ませてやろうと考えた。そして語ろうじゃないか、未来の真の強い部隊の為に

 

ホークはオリビエが

三兄弟はスターたちに

干物はバッカス隊の餌食に

コーノは姉のエリーゼが何とかするだろう

そしてアリチェには・・・仕事をしてもらおう・・・勝手に孤独になる馬鹿を叩きのめしに・・・

 

?????

?????

?????

「・・・・・」

目を開ければそこは白い世界、まーたここに来たのか。

結川は辟易としながら周りを見渡す。必ずいるはずだ。元凶が

「そんな目で見ないでよ。私がしたことじゃないし」

そう、妖艶な漆黒の悪魔、ラーズグリーズだ。

「あんたが部下に反乱されたからだろ・・・いつまでこんなこと演じなきゃいけないんだ?」

「・・・・・、残念だけどまだよ・・・まだ戦争はある」

「いい加減にしてくれ、これ以上俺に何を期待するんだ?」

「期待はしてないわ・・・もうあまりにも世界が動きすぎているもの。ただあなたには戦争を生き延びてもらってこの世界の柱になってもらうしかない」

「勝手すぎるだろ・・・」

結川は頭を抱える。ラーズグリーズもやれやれという表情を浮かべる。

改めて話を整理すれば

ラーズグリーズはこのエースコンバットの箱庭世界において、元は死をもたらして生態系を見守る魔神にして管理人

大きな力を使って眠っていた内に部下に反乱されて、ベルカ悪、オーシア正義のいわゆる正史から離れたこのベルカ正義、オーシア悪の外史世界が作られる。

たまたま日本で殉職した結川が変な調子でこの不安定な外史の箱庭世界の柱にされて、戦争をやらされる。

結川の任務はひたすら戦い、柱が崩れないようにしてこの外史を正当化、もしくは正史の世界とすり合わせる。

出来なければこの箱庭世界は崩れて、結川始めこの世界すべての人類、生態が消滅し、並行世界にも転生出来ずに魂はただ輪廻せず彷徨う存在になる。。

全く以てふざけた話であるが、事実そのために彼は空を飛んでいたのだ。

「全く、確かに私は貴方に勝手な押し付けはしたわ・・・しかしここまで駄目だとは思わなかったは。孤独ぶって一丁前に飛んじゃって」

「ああ?!」

結川が睨む。それに対してラーズグリーズは涼しい調子で続ける。

「確かにあなたは死んだ。だがどこに輪廻するか分からない冥土よりも、己のスキルと最高の環境で戦うことが出来るものを用意した。それは日本で決して味わえない貴方の実力を発揮できる場所を」

「俺が・・・望んでいたと?」

「ええ」

あっさりと答える魔神様

「そうじゃなきゃこんな大きな仕事を受けれるわけないでしょ。手近に居たというプラス点を除いても貴方には適役だった。同時に殉職した人間が居たら貴方を選ぶ、その程度には決まっていたのよ」

「・・・・、違うだろ」

「違わないわ。まあそう言い続けるなら呪詛のように唱え続ければいいわ・・・でもね」

ラーズグリーズは微笑する。

「案外、こんな縛りでも世界は広いものよ・・・狭いなんて言葉を使うのが勿体ないくらいにね」

次の瞬間世界は戻って目が覚める。

 

1300

 

デジタル時計はきっかりその時間を表し、持ち主である結川に暗に寝過ぎだと咎められたような気がする。

いつの間にか寝ていてそしてこの時間まで寝ていたみたいだ・・・。夢に遠慮なく召集掛けるラーズグリーズに辟易するが嫌ではない。体はちゃんと休まってるし。

10時間以上眠ることは少ないので体を軽く解してから部屋を出る。

結局今日、助けてくれた上等兵・・・いや軍曹に挨拶は出来なかった。彼のご両親に責められ、来ないでくれと言われたらそうするしかない。

「世界が広い・・・ねぇ」

自分自身どうなのか分からない。世界は確かに広いが、視野に収められる範囲は意外に狭い。そして今の自分は更に狭いのだろう。自覚しつつも抜け出せない。

食欲は少なく、食堂に行くより外の空気を吸いたい。

彼の足取りは自然に屋上へと向いていった。

 

1305hrs

ディレクタス基地滑走路

3200m滑走路の外周を走る数人。

先方はサザンクロスのコーノ、追いかける形でハートと姉のエリーゼが走る。

軍隊は体力がなんぼ。空気が重いのでハートが姉弟を誘う形で走っているが

「さすがに男性パイロットね。案外体力あるじゃない」

「コーノはあんな暗い感じだけど常に体力検定は上位よ、舐めない方がいいわ、それよりタバコ吸いの貴女は大丈夫なの?」

「空挺舐めるなこのブラコン、あと私の煙草は特別な時だけだ」

挑発するように言うエリーゼに苦笑しながら反論するハート。二人も既に3分の2周5km近く走っていて余裕で会話できる当たり既に域を超えている。コーノに至っては黙々とひたすら走り続ける。恐ろしいまでにペースが変わらず、同じく走っている隊員を追い抜かしていく。

「で・・・隊長を見に行かなくて大丈夫なの?」

ハートが問う。

「まあ、アリチェが何とかしてくれるでしょ・・・とりあえず彼女も何か吹っ切れたみたいだし。見に行かなくても大丈夫よ」

「おや、いい自信ね。ちなみに彼女は最初に何をすると思う?泣く?ハグ?」

「殴るんじゃない」

「殴るのか~」

ハートは走りながら遠い目する。

「彼女の・・・結構強いよ?」

酒の席でふざけた際にアリチェと戦った経験のあるハートだから言える。あの子、細いくせして結構いいこぶし持ってると。

「まあ・・・隊長ですから大丈夫です」

「ユイカワも面白い評価だわ」

二人が話しながら男どもすらも追い抜いて男性隊員たちの心をへし折っていた時

 

「ちょっと階級忘れて殴ります」

「え?」

結川はエリーゼの予想通り、屋上に付いてきたアリチェによってぶん殴られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




初めましての方は初めまして、いつもいらっしゃる方はこんにちわ。
夕霧彼方と申します。

現在進行形で就活で心折れてます。
そして色々あって心折れてます。

さて、そんな話は置いといて、タイトル通り100話目だそうです。
正確には年賀のあいさつ話や削除したお話もあるのでその通りではありませんが、ハーメルン様に掲載してる現時点で100話目です。大台です。

この作品は約5年前、ベルカ最強、オーシアざまぁな作品ないかなと探して、無くて、無いならとりあえず書いてみようとして書いた中二病二次創作でした。
二次創作に関する規約は年々厳しくなり、小説家になろう様→にじファン様→すぴばる様と変遷し、今はここに落ち着いたという形となっております。

今更見返してみると、楽しい作品で、安易な発想で書き始めた高校二年の自分を思う存分血祭りに上げたい気分です。今も成長してない言われたらそれまでですが。

ですが、エースコンバットシリーズ純正品でここまで頑張る人間も中々いないですよ!時代によってはIS、東方、ガルパンにレールガンかクロスさせているなかの純正品ですよ?!

↑読者の言葉につられて飛魂出したり、各作品のいいとこだけ取って煮詰めて、ZEROの世界観をぶち壊すこいつが何か言っています。

さて、置いてきたお話を戻しますが今後についてです。
こんな内容薄い100話に5年ほどの歳月をかけている。お察しですが、一時期は筆を折って、現在もパソコンに向かっても書けない状態が続いています。
高校時代オタク部のくせに無駄に大学デビュー体育会系頑張ったら三年時に目を回してカウンセラー送りになったり、部活内紛したりして楽しい日々を送りました。三年途中から主将代務になりましたし。
現在も夢の企業が大手病企業ばかりで、無い内定になりそうです。
そんな厳しくも素敵な状況でありますので、今は現実にまい進しつつ、何とかこの作品も畳んでいけたらと思います。
素敵な部隊、キャラを作成して下さった方々の好意を無にすることなく、果たしていければと考えています。

最後に
初っ端から除名不可避の利用規約違反を犯し、それに関して猛然とご指摘して下さいました方々、お気に入り、高評価に入れて下さる方、低評価に入れます方、とりあえずの一見様、全ての読者様に感謝を示して後書きを締めさせて頂きます。

ありがとうございました。
またの機会がありましたらよろしくお願いいたします。

夕霧彼方



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101

しばしの眠りのあと、夕霧彼方は目覚める・・・社畜として・・・。


「いった・・・何をするんだ?アリチェ」

「・・・少々修正の意味を込めて一発いかせてもらいました。隊長は実に傲慢でしたので・・・」

アリチェは見た目は細いが空軍の戦闘機パイロット、その体は柔らかい筋肉の塊だ。そんな人間が全身を使って殴れば鍛えてる男とて吹き飛ぶ。

結川は軽くふらつきながら立ち上がる、傲慢だと?

「何が・・・言いたい?」

「まだ気づかないのですか?もう一発いきましょうか・・・というのは冗談ですが、ですが、少し・・・いや大分呆れてます。隊長に」

アリチェは今までに見たことないくらいに憤怒の雰囲気を出す。

「この世界はあなたが回してんじゃないのです、神様気分も大概にしろということです」

「!」

アリチェの容赦のない言葉に結川が動揺をする。

神様気分・・・言われてみればそうかもしれない。ラーズグリーズの言葉を聞いて、それが起こり、それに憂鬱になったり切れたり・・・

アリチェは続ける。

「隊長が並行世界の、ここと同じ技術水準の世界の人間で、かつここの世界の神様と繋がってるという話、そしてこの世界を以前から知っていたという話。だからある程度の世界観とこの戦争の行く末を知っている。だから何だって話です。あなたは何ですか?このサザンクロスという部隊の隊長にして私たち8人を率いてくれるリーダーでないのですか?神様気分でオーシアの核の暴走を止められなかったことを自分で責めたり、上等兵が身代わりに死んだも同然なこと、そして批判されていることに屈していたり・・明らかに中佐階級の一個部隊の隊長の領分越えてますよね、それと前々から言いたかったのは・・・」

少し言葉が詰まる。後半から明らかに声が震えている。結川は何も言えない、いや、彼女の言葉を聞かなければならないと感じたから。

「そんなに私たちは弱いものですか・・・」

搾り出された言葉に結川は固まる。そんなつもりは・・・そんなつもりは・・・言いたくて言えない、いや、本能で言う資格がないと悟る。

「私たちは隊長に比べれば技量は未熟です。しかしウスティオ、いやFCMB全軍でも上の方だという自信と誇りはあります。しかし貴方はそんな意識を消し飛ばすほど命令は甘く、そして揺りかごに乗せるが如く私たちを守って飛んでいた・・・ベテランならまだしも年が近い人間にされるのは潜在的に屈辱感も感じていました。そして何より軍人でありながら部下が死ぬことを嫌う面、素敵なことですがそれも自分を苦しめ、私たちを苦しめた・・・!!」

アリチェの言葉の一つ一つが結川を気づかせて、そして突き刺さる。

「死ぬことは怖いです!職務とはいえ私たちは人を殺しています!状況によっては自国も敵国も民間人を傷つけ、死んでいます!ですが・・・ですが・・・」

泣いている、彼女は涙を流しながら、でもキッと私を見る。睨むのでなく真剣な眼差しで

「私は国・・・いいえ隊長を信じて飛んでいるのです、だから死んで天国行けず悪魔の道に進もうにも戦うことが出来るのです!!」

ああ・・・、自分は、自分はなんて愚かだったのだろう。結川は何も言えず、固まる。だが、固まっていては駄目だ。彼女に失礼だ

「済まない・・・いや、ありがとう。こんな自分に言ってくれて」

「本当ですよ!馬鹿隊長!」

ここで引いては駄目だ、正解か分からない、だが、この瞬間を逃してはならない。結川は意を決してそして、彼女を強く抱きしめる。

「・・・・・、隊長?」

「本当にありがとう。俺は、逃げてた、軍からも、部隊からも、そして君からも・・・自分が負担すればいいと思って、仲間を無意識に過小評価したり悲劇の人を演じてみたり・・・だが、もう逃げない逃げてたまるものか。そうじゃなきゃ、君に本当に好きともいえない」

「はい?」

ポカンとする彼女、ああ、タガが外れそうだ。

「本当に申し訳ない。覚悟を決めたと同時に・・・な?」

「どういう心理ですか・・・本当、隊長はよくわかりません」

「同感だ、俺も俺自身がよくわからん・・・もう一発殴るか?」

自分の言葉に彼女は、今までで一番綺麗な微笑を見せる

「いいえ、大丈夫そうですし、それより呪いをかけます」

そして一気に二人の顔の間合いは0になる。

少し離れた給水塔

「あー・・・監視班αより、無事ユイカワは立ち直りました・・・てか、なんかこっちが眩暈しそうな初心な下手なラブストーリーが展開されてます」

給水塔に隠れて監視する筋骨隆々な二人組。

ハート率いる空挺部隊の一番槍にして偵察や最前線を監視する選抜隊員。その高いスキルで無駄に結川とアリチェを見ていた。

そんな命令をして、彼らが文句言わないのは一人しかない。

<<ご苦労様、撤収よ>>

「了解!隊長!」

親愛なるハートの前にして彼らは喜んでそのスキルをフルに使う。

 

同時刻

滑走路

「ま、成功みたいね」

「のんきに一緒に走ってると思ったら・・・、部下を雑に使いすぎでは?」

ハートがあっけらかんに言い、エリーゼが苦笑する。彼女に対して何度苦笑したか

「でも安心したでしょ?弟君の次に大事な人だから」

「・・・まあね、弟が信頼する上司だし、アリチェのふわふわ見てたらね」

エリーゼの言葉にハートは笑う。

「でしょ?じゃっ、問題はひと段落したので、あとは部隊で勝手にやってくださいな」

「ありがとう・・・ハート少佐」

「むず痒いわ、エリーゼ。もう変な同盟仲間でいいんじゃない?」

ハートがにやりとして、そしてエリーゼもつられて笑う。

その後ろで男たちが集まる

「おい、エリーゼ弟」

「なんでしょう先輩方?」

コーノが聞き返す。

「あの二人、見た目美人で談笑し合う姿はとても華がある。だがな、とても怖いんだが?どう思う?」

「あー・・・多分一部以外が被害はないんじゃないんですか?」

「その一部が暴走すれば、なんか俺たちに被害がありそうな気がするんだが・・・がんばれ、弟」

んな無茶な、先輩方の要求に珍しく苦々しい顔を浮かべるコーノの姿があった・・・。

 

 

翌日

 

6/19

1000hms

ディレクタス基地、サザンクロス隊格納庫

朝から呼び出され、8人の部下であり仲間たちが目の前に並ぶ。

結川自身が緊張してしまう。だが言わなければならない。

「あー・・・朝から済まない・・・、えっと」

「どうしました隊長?」

グラッドが聞くが、その口元は少しにやけている。

いや、全員が全員、すでに噂をききつけて、まるで子供を見る生暖かい視線になっている。なお、その中心人物のアリチェは少し俯いている。

もう多方面から質問攻めにされたのは言うまでもない・・・。

「まぁ・・・なんだ。俺は君たちを甘く見ていた。自分で背負えないようなことを背負ったふりして振り回して、組織の力を・・・考えてなかった」

考えてきた、どう言おうか、だが言葉に詰まる。そして考えていたことは本番になればここまで詰まるものかと結川自身驚く。

「これからまだ世界は動く・・・どうか、この世界のため、ウスティオやFCMBのため、そしてお前たちの今後の幸せのため、その技術・・・命、貸してくれ!」

頭を下げる。

皆ははぁとため息を吐きながら

「そんなの決まってるじゃねえですか隊長」

顔を上げる。皆笑っている。

「隊長だったら俺たちの命を無駄遣いしない、「その時」を見極めてくれると信じています。副隊長として最後まで支えさせてください。まあアリチェには及びませんが」

「ホークさん?!」

「おっ、冗談言うんだ、ホークも」

赤面するアリチェ、茶化すグラッド、だが残りの5人は・・・なんかロープ持ってる?

「隊長?ただ頭下げるだけなんて、面白くないでしょ?三つ子やってしまいなさい!」

「「「イエッサー姐御!」」」

「何をするんだ・・・まさか?!」

エリーゼの掛け声で結川が三つ子に捕捉される。エリーゼは実に楽しそうに

「サザンクロス名物、反省の干物」

「そうだろうと思ったよ!」

「ついに隊長も仲間ですね「隊長だけでなく、グラッド、道連れ」まじかい姐さん・・・おっしゃ来い!!」

「受け入れるの早くないか干物さん?!」

「生憎慣れましてね?!」

「開き直った?!」

こうしてサザンクロス隊長にして、FCMB随一のエースと呼ばれた男が格納庫前で宙づりになった、こんな面白い話が出回らないはずもなく、光速で各基地の笑い話として広がっていく・・・。

 

 

だが、世界はゆっくりと、大きくねじ曲がっていく。

空白の3カ月、この間にサピンの政治将校失態による、結川の犠牲や、匿名で配信された国境なき世界の残虐な拷問の黙認

これによりサピン内での軍派閥が少しづつ大きくなり歪になり、ウスティオもゲベートとの国民投票で併合が決定するも今度は州の線引きでもめ始め

ベルカは各国のバランスを取ろうにも、あまりにも国境なき世界に侵食され、エリート若手など流出や綱紀粛正の余波で立て直しが必死になる。

 

そんな時、FCMB、オーシア、ユークの新たな取り決めをする会議がベルカの地方都市で行われた。

警備はFCMB軍が重点的に行った・・・はずなのだが・・・

 

惨劇と悪夢は黒く大きい凶鳥と共にやってくるとは誰も思っていなかった・・・・

 

国境なき世界との最終章が幕を開ける。




お久しぶりです・・・。
何も言い訳はしません。
仕事に追われている中、急に思い出したように書いてしまいました。

現在は社会人として、ブラックとも某掲示板でよくけなされる業界で必死に生きています。
ですが、そんな業界も面白いもので、このお話のように個の力で絶対に果たせないことを、バイトの皆さんの力を借りて組織で何とかやっていく、そんな店長のお仕事しています。
筆は完全に折れていますので次がいつになるかわかりませんが、「あ、こいつ生きてたんだ。」のノリで見て頂ければと思います。
エースコンバット7は久々にやってみようかなと思っています。

では、またいつか。オーレリアとレサスが戦争する前にはまた投稿いたします(笑)



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102

本当ならXBOXの方を買うつもりだったんだ。
だけどナムコの奴、PS4特典にとんでもないやつつけやがって・・・。
本体ごと予約しちゃったよ・・・・。


 

 

9/10

1900hmr

ベルカ連邦西部都市カルン

 

その日、世界は震撼した。そして実感した・・・

真の平和はまだ訪れてないのだと

<<・・・23守備中隊より!この無線を聞いてるもの!どうか・・・どうか逃げてくれ!!>>

その最前線、血を吐き、絶命するその瞬間まで、無線で仲間、そして後方の守るべき都市に向けて繋げようとする。

しかし、その無線は、敵の妨害電波により使い物にならなかった・・・

そう、敵とは、黒鉄の凶鳥とその周りを守護する精鋭集団、「国境なき世界」

それが世界に牙を剥いた瞬間だった。

 

 

 

7/21

0000hmr

 

世界はその瞬間を「奇跡」と呼んだ。

 

7月より始まったウスティオとゲベートの国民投票、その中身は前より話題になっていた、ウスティオ、ゲベート連合案。

長い歴史、血で血を洗う領土拡大戦争、もしくは圧倒的国力を前にして中小国に併合を、はいかYESかで問う国民投票はあっても、両国を尊重しているのは

非常に稀有で、恐らく今後あることは少ないだろう。

ウスティオは工業系の団体を中心に働き手が増えることを期待しているが、保守派がウスティオ国民の職業を奪われることを懸念して反対し、

ゲベートでは労働力の搾取を懸念しながらも、既に外貨獲得をウスティオの出稼ぎに依存しているため、大きな反対はなかった。

結果として、今日、正式にウスティオとゲベートで条約を取り交わし、5年かけて政治経済を統合していき、最終的にはゲベートを4つの州に分けて併合を決めた。

最初は二重帝国よろしく連邦案もあったが、ベルカとの情勢の変化でこれが変わった。

 

同じくして起きたウスティオの奇跡、それがベルカの大統領による正式なウスティオを一つとしての「独立国」として認める宣言をしたのだ。

 

FCMB軍などウスティオ軍は上位軍の指揮統制を受けたり、国道など軍事上に大きくかかわる権限に関して内政干渉を行い「8割独立」国ではなく「国みたいな地域」という中途半端な状態から

ベルカ軍と対等なウスティオ軍、かつ内政干渉次第国際裁判所に訴える権限を持ち、また、B7Rの資源を格安で輸入と小規模な採掘権ではなく、より大規模かつ強大な権限を委譲されることになったのだ。

もちろんタダではない。

 

ベルカの世界警察計画、もしくはこの世界における国連の組織において発言権を得るため、より多くの、出来れば強い味方が欲しかった。

そこで自分の国力を少し削る代わりに、右腕のウスティオを従属扱いから国連の中枢に送り込める組織に変える必要があった。

また、ウスティオはいつの日かの独立のため、ベルカに隠れて外交を行っていたため、ベルカの寛大な行動にウスティオ賛成派の国の票を集める方に変えたのだ。

ウスティオは独立に悲願の独立であるが、この独立を確固たるものにするため、ゲベートを併合したのだ。

 

ウスティオ独立宣言の日、深夜にかかわらず各メディアはお祭り騒ぎの号外を出し、その勢いにのった国民が喜びを爆発させて

警察が出動しても鎮圧の見込みがたたたな・・・むしろ警察も喜びのハイタッチをしているのだから始末がつかない。

 

さて、そんな世界の情勢の話はどうでもいい。

俺にとって、ここから逃げ出したいのが至上の本音

結川はその時、とある軍事施設にいた。

ウスティオ国防省、将官特別室。

「さて・・・何から話そうかね」

結川は用意されたパイプ椅子に座るが、一刻も早く立って休めの姿勢でいたい。いや、本当に逃げたい。

目の前に並ぶは要人たち、FCMB統合参謀総長、ベルク、同副参謀総長のグラン。

FCMB軍総勢90万を超える大軍のツートップに呼び出しくらったのだ。

 

「緊張するな、鷲使い、何も君を査問するために呼んだのではないからな」

グランが笑いかけるが、結川にとっては苦笑でしか返せない。

「緊張してようがどうか、そんなのはいい、単刀直入に聞こうユイカワ、この世界は君の知っている世界とどこが違う?」

ベルクの言葉に結川はさらに固まる。

「安心しろ、君の実力、国家に対する忠誠はすでに確固たる信頼の元でこれを聞いている」

最高級将官の真っすぐな視線は、それはもう力強くて、畏怖と敬意でそらせない。

特にこの短期間しかいない結川でもベルクの政治に口を出さず、軍派閥の強硬思想にものらず、国家のための軍隊、ベルカ騎士の体現と

呼ばれる軍務ぶりは異常だ。いや、それだけではもちろん将官になれない、様々な人に言えない邪なこともやってもそれでも清廉と見まごうほどの将官なのだ。

「残念ながら国境なき世界はすでにこの大陸の主要人物を口説き、既に並みの大国を凌ぐ情報力と隠ぺい力を持つ。軍事力以上にそれが厄介だ」

元気なベルカの元ですくすく育った国境なき世界、それは世界の正規軍人を大量に取り込み、暗号など世界の軍隊がすべての情報を刷新しなければいけないレベルまで

浸透しているのだ。

「で・・・ですが、どこから、どこまで話せば・・・そもそも小官の知っている世界では・・・」

「それも知っている。だが、話してくれないか?」

どこまでも優しそうなグランも、だが本来ありえない元帥がついているのはウスティオ軍が彼を顧問や非常勤などでなくできるだけ永遠に軍に正規として残ってほしいから。

ベルカの経済崩壊による混迷時、オーシアがウスティオに対して何度かの侵攻をかけた際、そのたびにオーシア将兵を絶望に叩き落した戦術家にして戦略家。

そして当時騎士思想を色濃く残して兵站に希薄だった軍隊に兵站思想を植え付けた軍人。

今回のオーシア反攻が準備の時間の少なさに対して凄まじく強烈だったのは、この補給が十二分に発揮したのだった。

この二人は政治や軍事でなく、単純に国を想って戦ってきた。そんな人間が自分に教えて欲しいと言ってくる。そして結川にとって、軍のトップが聞いてくれるチャンスを

逃してたまるかとなる。

「私の、薄い情報でよろしければ」

「よろしい、勝手に解釈する」

結川は話し出す。

 

ベルカは資源を発見できず完全独立のウスティオが見つけて正史のベルカ戦争が起きること。

ベルカ国内で7発の核が起爆されること。

国境なき世界が暴れること

他にも本来あり得ないエルジアとISAFが共闘してベルカに支援すること

レールガン、エクスキャリバーが健在なこと、オーシアが経済破滅すること

そしてベルカ連邦は本当なら公国レベルまで凋落し、また争いの種を生むことになること・・・・

 

主にゲームの4,5,ZERO,6まで話し切った。

その間、二人は何も言わず、とにかく聞いてくれた。

「これが、自分の知っている世界です」

「・・・・なるほど、大変参考になった、ベルカをここまでもかと言ってくれる以外はな」

「あ・・・いやその」

「ベルク総長、彼はまだ若い軍人だ。それはかなりの脅迫だぞ」

焦る結川、窘めるグラン、そして、凄まじく珍しい、ベルクの少し緩んだ微笑とも取れる顔の後

「正直なところ、国境なき世界は君の知っているものより遥かに強大になった。だが、軍は今、政府によって厳しく管理されている。

申し訳ないが、これからも理不尽なことは続くだろう。だが、それを少しでも食い止める・・・入れ」

「やっと長いお話は終了ですかい」

後ろの扉が開く、そして入ってくるのは数人の男女。

「知っているかもしれないが、改めて、今回、君たちを軍直轄の隊員とし、国境なき世界に向かって最後の戦争をしてもらう。そう、最後の戦争だ」

この人材を引っ張ってくるのにはどんだけの強権を使ったのか。想像につかないメンバー

「特殊戦術航空団、対国境なき世界特別選抜部隊だ」

グランがにやりとする。

 

ウォードック改めラーズグリーズ隊隊長、ジューンシュバルツ

通称黄色中隊隊長、ハンスヨアヒム

メビウス1こと、アイノ・リャークス

そして・・・この戦争の主役だったもの、ガルム1ことレオンハルト。

 

「君たちに任務を与える。最初の任務は同胞の救出だ・・・諸君、世界を変えるぞ」

 

ベルクの言葉に、この後の戦争に覚悟を決めた瞬間だった。

 

そして、この選抜連隊は、この世界の戦争で、空前絶後の伝説を残すことになるが、

それはまた謳われない戦いとなっていく・・・。

 

 




全く話は進みませんが、私のやりたかったこと第二弾がスタートする前フリです。
右も左もエースしかいません。敵から見たら絶望感の塊です。

さて、唐突ですが、なぜ、自分がPS4のエースコンバット7に執着するか。
ずばり特典がエースコンバット5だからで、これが自分のエースコンバット初購入作品だったりして、思い出強いものとなっています。
だからこそ悩んでいることもあり、ほかの作品は当然好きなのですが、5に関しては異常に熱があり、そしてかなりのプレイヤーが心打たれた場面を再現したいな・・・という思いがあるのです。

Journey Home

これだけでお分かりだと思いますが、この場面、自分が初めて攻略本買ったんです。別ルートないのかなと。でもこれはこのルート一本の方がいいんですね。
これがあるからキャラが引き立つわけでないのですが、でも、5にとって、これを外したら5ではないと思うんです。
まあ、何が言いたいか、いつ書くかはわかりませんが、そうなりますとだけ・・・。

では、次いつになるか、もう少しまともな空戦描写が出来ればと・・・。さらば


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