だんぼーるせんき (ワイルドフレームいいよね)
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プロローグ
時は2055年。
手のひらサイズの小型ロボット「LBX」は世界最高のホビーと称され、プロリーグの設立などビジネスにおいても大きな存在感を放つ時代となっていた。
LBXの戦場、それはあらゆる衝撃を吸収してしまう未来の箱、「強化ダンボール」の中だった。
そんなダンボールの中で戦う彼らのことを、人は「ダンボール戦機」と呼んだ。
甲板の上。髪をなびかせる風が心地よい。カモメは空を飛んでいる。
そして、艦内アナウンスが目的地に近づいていることを知らせる。
そろそろ、降りる準備をしましょうか。といっても、これといった荷物はありません。するのは心の準備です。
目的地に近付くにつれてはやくなる鼓動。それは、私が楽しみにしていることを示す証拠です。それも仕方ないでしょう。私の夢が叶うというのですから。うきうきしてもなんの不思議ありません。
「ちょっと、そこどいてー!」
ダンッ、と人にぶつかってしまう子がでてしまうくらいなのだから。
というか、
ぶつかられました。いたい。
避けようとしましたが、あっちも避けようとしてたみたいです。しかも避ける方向が一緒。そんなことをしたら、ぶつかります。不可避。
「ごめんごめん、君大丈夫?」
相手も悪いと思っているのか、手をかして立たせてくれました。
大丈夫です。と、伝えると
「いやあ、こいつのメンテナンスしてたら急に動かしたくなってさ。
もう待ちきれなくって。
俺は瀬名アラタ。今日から神威大門統合学園に入るんだ!
もしかして、君も神威大門統合学園に?」
「もしかして、じゃないですよ。この船に乗っているのです。
それは神威大門統合学園に入るということです。
私は星屑ルナ。よろしくお願いします。」
「ルナっていうのか。よろしくな。俺の事はアラタって呼んでくれ。」
かしてもらった手が握手に変わるのに時間はかかりませんでした。
しかし、LBXのメンテナンスしてたら動かしたくなったとは。
気持ちは分かりますが、周りをよく見た方がいいのではないのでしょうか。
まあ、そんなタイプには見えませんけれど。
彼、アラタは私と同じような猪突猛進タイプでしょうね。
「俺たち、これから同じ学園で生活する仲間だな。
もう一人、一緒に転入する生徒がいるって聞いてたんだけど、見当たらないんだよな。」
「そう言えばそうですね。
三人転入する生徒がいると聞いています。
私達で二人、あと一人いるはずですが、見てませんね。」
二人で辺りを見渡してみます。が、見えるのは青い海と甲板の板ばかり。まあ、こんな事で見つかるのなら既に出会っているはずでしょうし。
「......まぁいいか。
それよりさルナのLBX見せてくれよ。」
「そうですね。
じゃあアラタのLBXも見せてください。」
二人でお互いのLBXをみあいます。
このアキレスディード、いいカスタマイズがされてます。
いいメカニックさんが手がけたものでしょう。メンテナンスもきっちりされてますし。
そういえばさっき、メンテナンスしてた、と言ってましたね。
「さすがに、しっかりカスタマイズしてあるなぁ。
LBXのカスタマイズといえばレッグパーツの選択は好みが分かれる所だよな!
やっぱり三段ジャンプができるワイルドフレームか?
それとも移動しながら重火器が撃てるタンクとか?
もしくはオーソドックスな通常の二足か?」
「私のフェンリルを見たなら分かると思いますが、ワイルドフレームですね。この逞しい脚が可能とする三段ジャンプは素晴らしいと思っています。」
「だよな!相手を撹乱できるしアクションの幅も広がるもんな!」
「分かりますか!やはりいいですよねワイルドフレーム!
そういうアラタは通常の二足ですね。アキレスディードに似合っていてかっこいいと思います。いいLBXですね。」
「サンキュ。ルナのもいいLBXじゃん。
あ、そうだ!」
アラタがポンっと拳を手の平にあてました。
「まだ神威島に着くまで時間があるからバトルしようぜ!」
「それはいいですね。私もこの子を動かしたくなっていた所です。」
アラタはアキレスディードを動かし私のフェンリルに対峙します。
私もフェンリルを動かしアキレスディードに対峙させます。
いざ尋常に、
「「バトルスタート!」」
「ルナ!やるじゃん!」
私が勝ちました。V。
負けてしまったのに、アラタはとても楽しそうです。
「やっぱりLBXバトルって最高に面白いよな!」
「はい。私もそう思います。LBXバトルは最高に面白いです!」
だよなー、ですよねー、と二人で擬音だけで盛り上がってしまいます。
それも仕方のないことでしょう。
自分でカスタマイズしたLBXで戦い合う。
戦いの駆け引き、どうカスタマイズしたかまで考えて勝ちにいく。
それはとても楽しい。
世界中の人がLBXバトルにはまってしまうわけです。
「俺の夢はLBXのプロプレイヤーになることなんだ。そのために......。」
《まもなく、本船は神威島へ到着します。お忘れ物の無いようにご注意ください。》
アラタの言葉を船内アナウンスが遮りました。
アナウンスによるとそろそろ到着するようですね。無い荷物をまとめて準備をしなくてはいけません。
「お、着くみたいだな。降りたら落ち合おうぜ。じゃーな!」
「はい。ではまた港で。楽しい時間でした。」
俺もだぜ、と言ってアラタは甲板を降りていきました。船を降りる準備をするためでしょうか。
神威島の神威大門統合学園。
LBXプロプレイヤーの育成を行う唯一の学園。
なんと、島をまるごと育成機関にしているそうです。
そんな学園にプロプレイヤーへとなるために、この島にきました。
これからどんなことが待ちうけてくれるのでしょうか。
今から楽しみでしかたありません。
いざ、神威島に入らん!
と、まあ降り立ったものの全然人がいません。
べ、別に歓迎があるとか思ってたわけじゃないんだからね。
はい、アラタが船から降りてくるのもよく見えます。
とても落ち合いやすいです。
「ふぁあああ......、ついに来たぞぉ。神威島!
そして、この先にあるのは我が新天地、神威大門統合学園!最高のLBXプレイヤー集まる聖地!
......はぁあ、感動だぁ。ん?......あれは?」
アラタの視線の先には金髪の少年がいます。
一瞬女の子かと思いましたが、眼に宿る光がめっちゃギラギラしてます。
やばいです。
あれが女の子ならばいろいろと終わってると思います。
「きっと、あいつがもう一人の転入生だ。話しかけてみようぜ。」
やめた方がいいと思います。
彼、近寄るなオーラ全開ですし。
僕めっちゃきまってるぜべいべな雰囲気ですし。
と、静止するまもなくアラタが彼に近付いていきました。
よっ!、て話しかけてますし
「......君たちは?」
「俺は瀬名アラタ。んで、こいつがルナ。君も神威大門統合学園に入るんだろ?よろしくな!」
「アラタ、こいつ呼ばわりはないんじゃないでしょうか。まあ、いいです。これから同じ学園に通う仲間ですし。
私は星屑ルナ。よろしくお願いします。」
「......まぁね。僕は星原ヒカル。」
「おおっー!仲間仲間!!ん?
星原......、どっかで聞いた事があるような......。」
はい、思い出しました。
星原ヒカル、LBX大会アルテミスの優勝者。
私と似た名前なのでよく覚えていました。
というかアラタ、アルテミスの優勝者の名前を忘れるとは。
結構うっかりしてますね。
「じゃ、急ぐから。」
「あ、おい!
ルナ。俺たちも行こうぜ!」
アラタの静止を無視してどんどん歩いて行ってしまいました。
彼、ヒカル君は、ボッチの才能がありますね。
アラタと一緒にヒカル君の後を追いかけます。
たった三人の転入生。それなのにこうも仲良くできないのは、いかがなものでしょうか。まだ着いたばかりなのに早くも不安になってきます。
なんとかなーれ。
「わ......、この町は......。」
ヒカル君に追いついたアラタは周りを見渡して感動しているようです。
でもそれは仕方のないことでしょう。
「ルナ、見てみろよ。変わった形の家が多いな。」
はい、見ています。とっても見ています。
それとわざわざ指差して家を変な形というのは、いかがなものでしょう。
確かに私達が普段見ることがない風景とはいえ。
なかなか趣きのあるいい家ではありませんか。
趣きとか私よくわかりませんけど。
「この島は1960年代の街並みを再現しているんだ。
日本の高度経済成長期がモデルになっているらしい。」
「そうなんだ。ある意味新鮮だな。
でも、なんでこんな事を?」
「その時代、日本は、目覚ましい発展を遂げた。
当時、物は十分になかったものの、人は明日をより良くしようとする向上心や困難に立ち向かう闘争心に溢れていた。
この環境はLBXプレイヤーの戦闘意欲を掻き立てると考えられている。」
「そこまで徹底しているなんて...。すごいですね......。」
「「さすが神威大門統合学園。」」
アラタとついハモってしまいました。
にしても、ヒカル君は詳しいですね。説明もわかりやすいですし。先生にぴったりです。
と、ヒカル君の説明はまだ続くようですね。
「入学条件は公式大会で三回以上優勝すること。」
「そうそう。俺もその条件を満たして最高のプレイヤーの仲間入り......。」
「どうかな?瀬名アラタ......。
君は1カ月前にやっと3度目の優勝を果たした。
勝ち方は相手のミスによるラッキーな勝利......。」
「えっ?なんで知ってるの?」
「公式大会で1度でも入賞したプレイヤーは僕のデータベースに入っている。
ルナ。当然君の事もね。
星屑ルナ......。君は1カ月前に10回目の優勝を果たしている。
だが、大会は一応公式と認められてる、何でもありの、いわゆる地下大会。
勝ち方は対戦者のLBXと相打ちの同率優勝......。」
はあ、まあその通りなのでなんとも言えないのですが。
あの時の相手はとても強かったのを覚えています。お互いのLBXの武器が壊れるほど激しく戦い、最後は両者の拳が決まり合うという熱い決着でした。
会場もおおいに盛り上がってましたし。
「はいはい、そうですか......。だったらおたくはどうなんですか?」
アラタ、それダメな質問です。
ヒカル君がよくぞ聞いてくれたオーラだしてます
「僕は優勝7回。去年から条件を満たしていた。
アルテミスに出場するために入学を遅らせたんだ。」
「へぇ、アルテミスね......。
ああーっ、思い出した!星原ヒカル!前回のアルテミス優勝者!
どっかで聞いた事ある名前だと思ってたんだよなあ。」
「ちなみに君は予選落ち。ルナにいたっては出場すらしてない。」
「「う......。」」
その時はさきほどの大会で、かなり壊れてたフェンリルを修理していてたので、出場ができなかったんですよね。
アラタは出場できてたのですか羨ましい。
そして、ヒカル君、その僕の勝ちだオーラをだすのはやめてください。
ドヤ顔もやめい
「あー、もう!ルナ。はやく神威大門統合学園に向かおうぜ!」
アラタもイラついてますし。
私達三人、本当に大丈夫でしょうか?
どんどん歩いていってしまうアラタを追いかける私。
涼しげな顔でついてくるヒカル君。
私の学園生活はどうなってしまうのでしょうか。
「照合した。転入生の瀬名アラタに、星原ヒカル、そして星屑ルナだな。」
「「「はい。」」」
山の上に建ってる神威大門統合学園につくと警備員さんがいました。あたりまえですけど。
そしてなんか機械を取り出して私達をみてました。
どうやら照合をしていたようですね。
「では、LBX。それからCCMや携帯端末などはすべてここで預からせてもらう。さあ出して。」
「ええっ?でも学校で使うんじゃ?」
「必要なものは支給される。」
「分かりました。」
いや、わかりませんよヒカル君。LBXですよ!LBX!私達の相棒、いや私達の魂そのもの。それを預けるなど!
やだやだ、とぐずる私。しかし警備員さんも慣れたもので、なだめ、おちつかされ、考えさせられ、説得されてしまいました。
ぐす、じゃあねフェンリル。いい子にしてるんだよ。
となみだながらの私とは違い、二人はもうお互いのLBXを見合っているようです。
「お!ルシファーじゃん!」
「そっちはアキレスディード。ミーハーなんだね。」
「ん?正統派って言って欲しいな。」
フェンリルとの別れはつらいです。
しかし、ここで立ち止まってはLBXプロプレイヤーになるという夢は叶いません。
頑張ります。
LBXを預けました。つらいです。しかし、それをこえてこそでしょう!決意をあらたにしました。
と、学校の玄関口からなかなかインパクトのあるお方が、こちらに歩いてきました。
「あら、ユーたちが今日から入ると言う転入生ね?」
「ジョセフィーヌ学園長!
わざわざお出でにならずとも自分達が執り行ないます故、ご安心を。」
「うふふ、そう言わずに。ミーの楽しみなんだから。
アラたんにヒー君、それにルナちゃん。よ・う・こ・そ!神威大門統合学園へ。ミーが学園長のジョセフィーヌよ。」
「ヒ、......ヒー君?」
「ヒカルのことだよ。きっと。」
「君にヒカルと呼び捨てにされる理由も無い!」
「でも、ヒー君と呼ばれる理由はあるのですね。」
「そんな理由も無い!」
笑っていいですよね、笑います。
ヒー君wwwアラタ、ヒー君ですって!ヒー君w
ヒカル君の拳がぷるぷるしています。
そろそろやめましょう。
「元気ね。気に入ったわぁ。でも、これからアラたんとヒー君は仲間なんだから仲良くしなきゃダメよ!」
「仲間?」
「そう!二人は2年5組に入ってもらうわ。」
「ヒカル!仲良くしようぜ!」
「......。」
あら?私は一緒じゃないのでしょうか?
「あれ?ルナも一緒じゃないの?」
「ルナちゃんはぁ。3組よ。
では、それぞれのクラスに向かうように。
丁度今はホームルームの時間だから急いでね。」
アラタと一緒のクラスではないのですか。残念です。
まあ、会う機会は沢山あるでしょうからいいですか。
それにしても、語尾にハートがついてそうな話し方の学園長でしたね。
話している内容は結構大事そうでしたが。
急ぎますか。
「アラタ、ヒカル、ではこれで。私は教室に向かうことにします。
アラタ、バトル楽しかったですよ。
説明分かりやすかったですよヒカル、いえヒー君。」
「おう、またな!」
「僕の名前は星原ヒカルだ!」
彼らの隣を走り抜けます。向かうは2年3組の教室。一体どんな人がいるのでしょうか。
......なんとなくヒカルと呼び捨ててしまいました。まあ、ヒー君よりはいいでしょうが。
あったあった、2年5組。ここですね。さっそく入りましょう。ワクワクしています。ここまで走ってきちゃいました。
これからはアラタのことを注意できそうにないですね。
......アラタが廊下を走ると決めつけてしまいました。
いけませんね。
もしかしたら廊下を歩き、廊下を走る人を注意するタイプかも知れません。
.........それこそありえませんね。
閑話休題。さっそくクラスのドアを開けましょう。木製ですね。これも1960年代の再現でしょうか?
ヒカルに後で聞いてみましょうか。
「......やっと来たか。」
教壇には白衣を着た女性が立っていました。よく見ると、目の下に隈ができています。
よく寝た方がいいのではないでしょうか。
寝不足は美容に悪いと聞きますし。
「私は日暮真尋。このクラスの担任と保健の教科を担当している。」
そう自己紹介した白衣の女性、真尋先生は教室の生徒達の方を向きました
「皆に紹介する。今日からクラスに転入する星屑ルナだ。仲良くするように。
席は、そうだな。そこを使ってくれ。」
簡潔に私を紹介してくれました。というか名前だけなんですね。......いえ、私のことを知らないのですから当たり前ですね。
真尋先生に指定された席に向かうとしましよう。
教室にあるのは横に五席、縦に四席の合計二十席。
私が指定されたのは真ん中の列の前から三番目の席。
前と両横に人がいて、後方の席には人がいない。
結構いい席ではないでしょうか。
「クラス全員の名前をいきなり覚えるのは大変だろう。まずは席の周りを覚えるといい。」
席についた私に、先生はそう言ってきました。
あれ?この教室、生徒数が少ないですね。
他の教室には結構人がいたように思います。
ですがここは、二十席しかない上に、私が座っても四席も余っています。
これならクラスメイトのことを早めに覚えられるでしょう。
「俺は乾カゲトラ。このクラスの学級委員をやっている。よろしく。」
「ウチは金箱スズネ。よろしゅうな、転入生。」
「僕は古城タケル。仲良くしてね、ルナ。」
と、周りの席の三人が自己紹介をしてくれました。
先生の言葉を聞いてさっそく声をかけてくれるとは。いい人達です。
これはなかなかいいクラスではないでしょうか。いえ、そうでないはずがありません。
私の学園生活は明るいです。
いえい。
「......さて、では授業を始めよう。」
三人に私も自己紹介をし終わりました。それを待っててくれたのでしょうか?
待っててくれたのでしょう。
真尋先生が授業を始めます。
LBXの専門校とはいえ学校には変わりありません。学生の本分は勉強。
初授業頑張ります。
キーン、コーン、カーン、コーン。授業の終わりを告げる鐘が鳴り響きます。
安堵の息をはく人。
寝ぼけ眼をこする人。
緊張の糸を緩める人。
こればかりは学校が変わろうと、変わらないものでしょう。
「本日の授業はこれで終わり。ルナ。これからこの学校の規則について説明する。
準備ができたら校庭に来い。」
私は、終わった〜、と安堵して机に突っ伏すタイプです。
突っ伏している私に向けて先生の呼び出しがかかります。
初授業で疲れたんですが。
あ、だから準備ができたら、なんですね。結構気配りのできる先生なんですね。
意外。
本当に意外です。
隈があって白衣着ている人は自分の研究にしか興味ない人、という先入観をもってしまっていたようです。
いけませんね。
さて、とにかく校庭に行かねば。
クラスメイト達との交流もそこそこに。急いで校庭に向かいます。
クラスメイトと話したいのはやまやまでした。
ですが、呼び出しがありました。そのせいで、クラスメイト達とは自己紹介程度しかできませんでした。
残念
「来たな。......では、説明を始める。少々長くなるので覚悟して聞くように。......おや?」
これから説明を始めようとしていた真尋先生が私の後ろを見ています。真尋先生の視線の先には、
「日暮先生。あなたも転入生への説明ですか?。」
「ええ。見ての通り。」
「おお、ルナも来てたのか。」
「あら、あなたたち、顔見知りなの?」
「はい。ここに来る時にフェリーで出会ったんです!」
アラタandヒカル、そして担任の先生でしょうか?三人がいました。
アラタ、ヒー君、と呼ぶとヒカルの目つきの悪さが酷くなりました。
アラタはとにかく嬉しそうですね。
私も嬉しいです。お互いフェリーからとはいえ、知ってる仲。
知らない人だらけの場所で巡り会えれば嬉しくもなります。
ですよねヒー君。
おう、ヒカルの拳がぷるぷるし始めました。
ここらでやめておきましょう。
なので機嫌を直してくださいヒカル。え、えーと、この学校のドアが木製なのもさっき言ってた学園の工夫なんですかヒカル?
......ふう、ヒカルが得意げに説明してくれます。ご機嫌直し成功でしょう。よかった。
「なるほど......。時に美都先生。いい提案があるのだが......。」
「何でしょうか?」
「......。」
「ま・さ・か。私にこの先の説明をして欲しいという提案ですか?」
「さすが、ジェノックの司令官。察しがいいですね。」
私がふざけている間に先生同士で話しが進んでいきます。
「あれ、お前説明聞いてないの?」
「?」
説明?今からされるのではないのでしょうか?
え、違うのヒカル。マジで?
「......。」
なんかアラタ達の担任の先生、美都先生に可哀想なものを見る目をされました。ため息付きで。
どういうことですか、真尋先生?
「その様子だと、まだハーネスの説明もしていないのですね......。」
「まあ......、な。」
「......。」
二回目のため息。可哀想なものを見る目もセットです。
「......わかりました。そのままだと、その子が可哀想です。」
「感謝する。」
「それに、初戦でロストされた日には目も当てられませんからね。」
いろいろとありましたが真尋先生の説得(?)は成功したそうです。
......真尋先生はいい先生なのか、そうでないのか分からない先生ですね。
「ルナ、初めまして。私は美都玲菜。ジェノックの司令官よ。日暮先生はハーネスの司令官になります。
......もうあまり時間がありませんね。移動しながら説明しましょう。
百聞は一見にしかず、と言いますし。」
たぶん、みんなで喋ってたせいですね......。
と、歩いていく美都先生についていきます。
美都先生が校庭にあった時計塔をいじると
時計塔が動き、
階段が現れました?!
「「「開いた!」」」
「ついてきなさい。」
驚く私達三人。それにお構いなく美都先生は歩いていきます。
待ってください。ついていきますから。
階段を降りた先にあった廊下を歩いていきます。と、壁がガラス張りになっている辺りにきました。
ガラスの向こう側にはコンピューターを必死に操作、確認をしている人がいます。
たくさん。
「これは!?ここで一体何をやっているんですか?」
「戦争よ。」
「「「!?」」」
アラタの質問。その答えに驚く私達を気にせずに美都先生の説明は続きます
「この学校の生徒が果たさなければならない必須事項、義務。それがウォータイムへの参加。」
「ウォータイム?」
「この学校に入った生徒は、クラス別に無作為に選ばれた30のグループに分けられる。グループごとに敵対関係となりLBXバトルを行うの。」
「グループに分かれて戦うバトル。それが[ウォータイム]というわけですか。」
「なんか、面白そうですね!」
確かに。それは面白そうです。
いつもは一対一でのバトル。せいぜい二対二。それがウォータイムでは何十、何百の単位でのプレイヤーによるバトルができるのです。
面白くないわけがない!
「......そうね。アラタ、ヒカル。あなたたちの所属は先程説明した通り[ジェノック]よ。」
「ルナ。我々のクラスは[ハーネス]だ。」
「ここでは仮想国、すなわち架空に設定された国に分かれて戦ってもらうことになるわ。」
「そういう設定なんですね!気分たかまるぅ〜!
ルナ。ライバル同士だけど頑張ろうな!」
ええ、もちろんです。アラタこそ頑張ってくださいよ。
......いえ、アラタの場合頑張らないぐらいが丁度いいかもしれません。
どういうことだよ、というアラタに、ヒカルが説明をしてくれました。
長いので要約します。つまり、
君はバカだよ、です。
はい、アラタとヒカルで言い合いを始めました。
元はと言えば私の発言がよろしくなかったせいなので、私が止めます。
ふう、大変大変。
喋っているうちに、でかい金属の扉がでてきました。
それについて、アラタが先生に質問します。
「この先に、LBXのバトルフィールドがあるんですね。」
「ええ、これがあなたたちの戦場......[セカンドワールド]よ。」
扉が開かれます。そして私達は浮遊盤に乗り込みました。
ラ○ュタみたいですね。どことなく。
「これは......。」
「一体なんなんだ。」
見渡しても壁が見えない程広い空間。あまりの広さにアラタ達は、声が漏れてしまいます。私は絶句です。驚きすぎました。
そして落ちる照明。暗くなってく空間にアナウンスが響きわたります。
《定刻となりました。これよりセカンドワールドを起動します。》
アナウンスが終わると辺りが明るくなり、そして下の地面が見えました。
大小の島があり、島の間には水が流れています。そしてその島達の配置を私は見たことがあります。
それは、世界地図
そして、地平線の向こう側から光が、いえ、太陽が昇ってきました。
「すげぇ......。」
「これが、ジオラマ......。」
その光景の美しさに私は声も出ません。
「全長10Kmに及ぶ巨大ジオラマよ。」
「10Km!?......マジかよ。」
「この地形は......、まさか!?」
「気がついたらようね。ここの地形は地球上の地形と全く同じ。」
「だから、セカンドワールド。......第二の世界。」
「ここに存在するほとんどのオブジェクトが現実世界と同じような機能を持っている。太陽光シュミレーションにより時間経過を再現。さらに、天候まで変化させられるようになっているの。」
「そうなんですか!」
「......もうすぐ始まるわよ。」
《ウォータイム開始まであと20秒。全プレイヤーは戦闘の開始に備えてください。繰り返します。全プレイヤーは戦闘の開始に備えてください。》
「あ、ジオラマの中にLBXが!!」
アラタの言葉通り、ジオラマの中には続々とLBXが現れ、配置についていました。
アラタとヒカルはその光景を、じっと見つめています。
私はふと、空を見上げました。すると太陽の光を反射するものがあり、手をかざして遮ろうとします。
ですが、よく見るとその光はこちらに近付いてるように見えます。
というか、LBXです。
気づいた時には私達の横を通り過ぎていってしまいました。
通り過ぎたのは飛行型LBX。
それも10、いや20近くのLBXです。
そんな数のLBXが飛んでる光景はなんとも爽快ですね。
飛行型LBX達は地上に向けて飛んでいきます。
何体かは地上からの銃撃によってブレイクオーバーしてしまいました。
が、地上に降り立つものの数の方が多いです。
そして地上のLBX達と激しい集団戦を始めました。
何体ものLBXとLBXのバトル。
それは私達の見たことがなく、そして、待ち望んだものでもありました。
「戦ってる......。すごい!」
「しかも、かなりハイレベルだ......。でも、なぜ?」
「なぜ、わざわざ現実と同じ地形のジオラマでバトルを行うのか?そして、ここまで大規模に行う必要があるのか......。そういう質問かしら?」
「......はい。」
「それは......。これが[世界戦争]のシュミレーションだから。」
「「「!?」」」
美都先生が手元のパネルを操作し、色々なグラフを出しました。
説明が始まります。
「ここでは、世界の主要な国々の軍事力をLBXの数と性能に置き換えて戦闘のシュミレーションが行われている。つまりこれは一種の疑似戦争よ。」
「疑似戦争?」
「保有する資源、各国が結んだ同盟、技術力、様々なデータに基づいて各チームの所持戦力に反映されているわ。もし世界で戦争が起こったらどうなるのか.........。それを知るために。」
「戦争の影響による世界情勢の変化を分析するわけですか?」
「察しがいいわね。そんなところよ。でもこのプロジェクトにはもう一つ大きな役割がある。」
「それは...、なんでしょうか?」
「世界平和の維持、よ。」
「「「平和?」」」
「世界には他国との緊張状態にある国々が数多く存在している。セカンドワールドによって先に戦争の結果を知る事が出来れば戦争の防止につながる......。それが、国連統合政府が推進する[エクスペリメント・リアリズム・プロジェクト]ERPと呼ばれる計画よ。」
「でも、実際にこんなものまでつくらなくてもコンピューターでシュミレーションできるんじゃ......。」
「コンピューターにも計算できないものがある。長年の研究でそれがわかってきたの。」
それは、一体なんなんですか?
「[人の感情]よ。憎しみや怒り、独占欲や支配欲......。それらは[戦争]に大きな影響を与える。そこまでシュミレートしなければ世界平和は維持できない......。」
「だから、最高のプレイヤーが集められる......。兵士として......。」
なんか、とんでもなく壮大なプロジェクトですね。
ルナよくわかんない。
いえ、言ってることは分かります。
あれです。
喋っているのは日本語のはずなのに、その意味が理解できないやつです。
やっぱり、わかっていませんでした。
「さあ、次はこっちよ。」
浮遊盤を降りる私達。
美都先生は歩いていってしまいます。それについていく私。
でも心はこの世界、セカンドワールドにおきざりにしてしまったのでしょうか。
ドキドキとなる鼓動はなかなか落ち着いてくれませんでした。
「うわっ!これは......。すごい数だな。」
確かに。すごい数ですね。ずらっと数え切れないほどのコントロールポッドが置いてあります。しかも、渡り廊下から下の階が何階かあるのが見えます。数えるのは諦めたほうがいいでしょう。
「ここはコントロールポッドルーム。今から、あなたたちはここに置いてあるコントロールポッドに乗り込んでセカンドワールド上でLBXを動かすの。だけど......。その前に......。
日暮先生。いつまで私に説明をさせる気ですか?ここから先はジェノックの機密に関わります。」
「......わかりました。この借りはいつか。」
「そう言って返した事はないですよね。」
「..................。」
「..................。」
「......失礼する。」
「あっ!コラ。」
アラタ数えるのはさすがに無理だと思います。
ヒカルもなんとか言ってください。......ヒカル、なぜ説得が罵倒に変わってるのですか?
ああ、もう。二人ともケンカしないでください。この二人はすぐケンカを始めますね。大変です。
あ、日暮先生達の方も話が終わったようですね。
「ルナ。また後でな〜!」
はい。また後で。
次会うときは戦場で、だったりして。
そうだったら楽しいでしょう。
別れる私達。待っているのはセカンドワールド、
私達の戦場
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