【凍結】霧雨さん家の居候 ~死ななきゃ良いってもんじゃねえよ!?~ (みずしろオルカ)
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第1話 俺の周囲は俺に少し厳しい

 どうも、外伝等々が遅々として進まないオルカです。

 初めましての方は初めまして、二度目・三度目の方はお久しぶりでございます。

 今回は個人的に初の試みをしていきたいと思います。

 コメディ!

 私はコメディらしいコメディを書いたことがありません。

 色々とおすすめされて、そちらを読んでは練習しておりまして、今回は読んだ感想をいただければと思い、投稿しました。

 色々としつこいと思うかもしれませんが、この作品は東方饅頭拾転録とは違う世界線です。
 ゆっくり達やあちらの主人公は登場しませんので、ご理解ください。


 突然だが、貴重な薬草はなぜ危険な森や山岳の奥地、危険な動植物の居るような場所にしか生えていないのか?

 

 いくつか理由があるが、人間が乱獲するから奥地の様な人が入らない場所でしか生息できないか、危険な生物にとって必要な植物だったりするからだ。

 

 なんでそんな話をするかって?

 

 現在進行形で危険な生物に追われてます。

 

「のぉぉぉぉぉ!?」

 

「ぐるぅぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 あらやだ、巨漢のクセして森の中を縦横無尽に駆け巡りながら追いかけてきやがるぜぃ!

 (よだれ)垂らしながらとか、お兄さんがそんなにおいしそうなのかね?

 

 やめて! 男と獣の絡みなんて誰も望んでいない!

 

 猛獣の口と男の身体が絡み合う!

 白い液体じゃなくて赤い液体が飛び散るね!

 

 ……全力で逃げよう(真顔)。

 

 居候先の家主から、ここの薬草が欲しいと言われて取りに来たんだから、助けてくれてもいいと思うんだ。

 

 まぁ、本人はたぶん神社に茶菓子たかりに行ってるんだろうけどな!

 

「ぬぅぅぅりゃぁぁぁぁ!!」

 

 太い枝に掴まって、振り子のように身体を揺らしてさらに推進力を上げていく。

 そうしないと、追手との距離がががががが……!

 

「ぐるぅあ!!」

 

 後ろから何やらでかい音がした。

 

 同時に、進行方向の少し先に太い枝の残骸が突き刺さった。

 

「のぉぉぉぉ!? 見た目も声も獣そのものなのに、存外頭がいい!!」

 

 あの野郎、移動先をキッチリと潰してきやがる!

 

 なんとか前転したり、地面を蹴って直角に避けたりと死にもの狂いで避け続ける。

 

 状況の好転の期待を込めて周囲を見回すと、異様な光景が視界の端に映った。

 真黒な、そこだけが夜になったような空間。

 

「ルーミアか!?」

 

 あんな空間を作れるのは俺の知り得る限り、ルーミアだけだろう。

 

 よっしゃしゃ!

 運が向いてきた。

 

「へい、ルーミャ~!」

 

 噛んだ。

 

「その声は、食べられない人類だ~」

 

「何その地味にダメージある表現」

 

 それと、名前の方は無視ですかそうですか。

 見た目も行動も幼女くさいのに、なんで俺に対して辛辣なんだろう。

 

「おにーさんがふざけてるせいだと思うのだー」

 

「ずっと前から思ってたけど、俺ってサトラレじゃないよね?」

 

 会う人会う人、俺の思考を読んでくる。

 うちの家主が顕著だ。

 

「まぁいいや、後ろの奴食べてもいいぞ」

 

「おー、そーなのかー! いただきます」

 

 クルッとそのまま追いかけてきた獣の方へ向かっていく。

 なんか、断末魔とかが後ろから聞こえてくるけど、無視だ無視!

 

 生存することに関してはチートくさい俺の能力だけど、痛いものは痛いのだ。

 

 それに、ルーミアは結構な頻度でこうしてターゲッティングを預けている仲だ。

 侮ることなかれ、人型で知能がある妖怪って妖怪全体から見れば上位層なんだぜ?

 

 だから、獣に近い妖怪ならルーミアの敵じゃない。

 

 ならなんで見届けないで逃げるのかって?

 

 そりゃお前、幼女が獣を丸齧りなんて姿見たいか?

 俺ならごめんだ。

 

 それに数十回丸齧りにされたから、トラウマもある。

 

 その数十回で食べられない人類認定されたのだろうな。

 学習能力は幼女以下か。

 

 そんなことを考えながら、家主からもらった防護術式の刻まれたお守りを確認する。

 

 さすがに、何の防護手段もなしに魔法の森で探索はできない。

 

「おにーさんはしぶといのだー」

 

「さり気に付いて来るなよ」

 

 気づいたら後ろにぴったりと付いて来ていた。

 口元が汚れているのは無視する方向で。

 

「おにーさんは食べられない人類だけど、いつもご飯くれるから嫌いじゃないのだー」

 

 え? あれって餌付け判定なの?

 だとしたら、会う度に餌付けしていたことになるんだけど。

 

 俺ってば人間の知り合いより、妖怪の知り合いの方が多いのねん。

 俺も妖怪という可能性にワンチャン!

 

「無いのだー」

 

「だから、人の心読まないでくれますかね?」

 

 後ろでゴリゴリと硬いものを齧る音が聞こえて来る、ひぇぇ。

 

 今日の目的の希少な薬草は手に入ったし、お仕事しゅーりょー。

 この薬草も俺じゃないと採取難しいタイプだったし、多少の面倒事はしゃーないってな。

 

「おにーさんは本当に人類?」

 

「いきなり何を言い出すんだこのエターナルロリータ」

 

 そのロリ娘の口の周りが赤く汚れているが、脳内補正で無視する。

 生存能力以外は人間だっつうの。

 

「だって、おにーさん死なないじゃん。下手な妖怪より生き汚いのだー」

 

「何それひどい」

 

 軽口をたたき合いながら、居候先の家付近まで歩く。

 護衛感覚で一緒に来てくれたのかな?

 

「もう飽きたから帰るのだー。またご飯おごってねー」

 

 手を振りながらもう片方の手で骨付き肉を見えるように振っている。

 タゲ擦り付けてるだけなんだけどなぁ。

 

 あと、肉振るな。

 色々グロイから。

 

 

********************

 

 

 俺の現状を説明しよう。

 

 俺は、保志(ほし) (たもつ)。幻想入りした人間だ。

 外来人ってやつだ。

 

 色々と情報を集めて、博麗神社が現世へ帰れる手段の一つだと知り、そこへすがったのだ。

 

 結果は、俺がまだこの世界にいることで察してほしい。

 理由は、強力な能力に目覚めたから。

 生存特化の能力だけど、生活にも応用が利くため、外の世界に出せなくなったということらしい。

 

 これは人里で暮らすしかねぇなぁっとか考えてたら、俺の能力に目をつけて彼女が拾ってくれたのだ。

 

「ただいまー」

 

「おお、死ななかったか」

 

「第一声がそれとかひどい」

 

 死ぬ前提で送り出さないでほしい。

 死なないといっても、死ぬほど痛いのだ。

 

 彼女は霧雨魔理沙。

 博麗神社で真っ白になっていたところを拉致してくれた、素敵なお嬢さんだ。

 

 未だにロープ一本でスカイハイした恨みは忘れない。

 

「ほれ、頼まれてた薬草」

 

「おおー、助かったぜ。こいつ、採取してからすぐに水に浸さないと成分変わっちまうんだぜ」

 

 そう言うと、カプセル状のガラス筒に薬草を入れて水を入れる。

 すると、薬草が生き生きとしだす。

 

「タモが一番適任だからなぁ」

 

「いつも思うが、俺はの名前は(たもつ)で、そんな長寿番組の司会をしそうな名前じゃない」

 

「あの人も、タモって名前じゃないだろ?」

 

「あれ? 幻想入りしてんの?」

 

 超長寿番組だったあのお昼の放送の司会者知ってることに驚きだ。

 確かに終わってるけど、幻想入りするほど忘れられてるか?

 

「タモ~、汗臭いから風呂入って来た方がいいぜ」

 

「文字通り必死に仕事してきた相手に失礼な」

 

「タモの事殺せる妖怪の方が珍しいぜ」

 

「死ななきゃ良いってもんじゃねぇよ!?」




 短いね。

 仕方ないね。

 長くコメディ&ギャグを書けるようになりたいです。

 ジメジメと嫌な季節になりました。
 なぜか通勤路の途中の民家の門にキノコが生えてるのが気になって仕方ありません。


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第2話 人間より妖怪の方が優しい気がする

 7/7中には間に合いませんでした。

 第2話です。

 ちょっと、改行を替えてみました。


 

 幻想郷には海が無い。

 だから、魚は川魚か湖の魚しかない。

 

「タモ~、紅魔館に行って来て~。ついでに湖で魚釣ってきて」

「コンビニ行って来てみたいな感覚で助手を死地に送るとは許し難し! かくなる上は、死ぬ前の思い出に今穿いている下着を所望する」

「よし、マスパで上半身吹き飛ばそう」

「すいませんでした」

 

 即土下座である。

 直立状態からの土下座への移行速度が上がっていると感じる今日この頃。

 

「大体タモは死なないだろ~? デスルーラすればいいんだぜ」

「死なないだけでめちゃくちゃ痛いからな? 死ぬレベルの痛みを感じるから」

「生存チートって言われてるけど、案外めんどくさいぜ」

 

 人生そんなもんだ。

 しかし、魔理沙の下着とかも俺が洗っているというのに今更なぜに恥じらうのか?

 これは、洗濯時に使用済みを拝借する計画も……

 

「不穏なことを考えているのはこの頭か?」

「サーセンした!」

 

 180度ターンからのDO・GE・ZAである。

 後頭部に押し付けられたちょっと熱いモノが恐ろしい。

 

 そんなポコポコとミニ八卦炉を向けないでほしい。

 

「恥ずかしいなら下着ぐらいは自分で洗った方がいいと思う」

「研究に夢中になるとついつい……」

 

 恥ずかしそうに視線を反らして、苦笑い気味。

 くそ、写メ取れないのは残念だ。

 

「食事は当番制だぜ!?」

「一人暮らしをしてた女の子とは思えない。まぁ、役得だしいいんだけどね」

「へ、変態だぜ……」

 

 男は総じてそんなもんだ。

 特に好きな女性相手ならな。

 

「その変態に家事の八割任せてる奴の言うことじゃねぇよ」

「その分研究に没頭できるから助かってるぜ」

「その研究にも俺の能力十二分に使ってるのにな」

「タモの能力って本当に使い勝手良いぜ。しかも死なないから地底とか冥界とかにも放り込めるし」

「やめぇい! 死なないけど痛てえんだよ! 戦闘能力も一般人なんだぞ!?」

 

 俺の能力は生存特化だから、戦闘能力はほぼ変化がない。

 身体能力は体力とかには効果を適応できる。

 

「逸般人が何を言っても説得力が無いぜ」

「字が違わねえか!?」

 

 

********************

 

 

 結局、紅魔館に来てしまった。

 居候の立場は弱いからね、仕方ないね。

 

「ドーモ、パチュリー=サン、タモツです」

「あなたは何を言っているのかしら?」

 

 挨拶が片言になっていることは許してほしい。

 後ろからナイフが光っているのが自覚できるから、声が上ずってしまう。

 

「魔理沙から魔導書のお届けです」

「あら、あなたが来てからきちんと返してくれるのは助かるわね」

「ですので、後ろのナイフ構えているミニスカメイドさんをどうにかしてください」

 

 ナイフの刃が冷たいです。

 この人、きちんと手続きをして中に入ったのに、ずっとナイフをチラつかせてておっかない。

 初対面の時に、ミニスカの中確認したのがいけなかったのか、それとも会う度にセクハラしてるのがいかんのか?

 

「両方だと思うわよ?」

「あなたもサトリ妖怪ですか」

「あなたがサトラレなのよ」

「否定できない」

 

 そろそろ本気で心配になってきた俺のサトラレ説。

 

「まぁ、貴方が分かりやすいだけよ。魔理沙関係かセクハラしか考えてないでしょ」

「なぜ俺がそれだけで生きてると分かったし」

 

 ちなみに魔理沙相手にセクハラするのが至福だったりする。

 あいつ、ズボラな癖して耐性が無いのかすぐ赤くなるから、かわいいんだよ。

 からかい過ぎたらマスパで上半身消し炭にされるが。

 

「最近魔理沙があなた用の魔法を開発中だって言ってたわね」

「え、なにそれこわい」

 

 そんなにセクハラが嫌だったか?

 本気で嫌がっているなら、考えなきゃならんが。

 

「威力を下げて、速射性を上げてとか言ってたから、ツッコミ用の魔法じゃないかしら?」

「上半身が消し炭にならないならうれしいが」

 

 しかし、ツッコミ用か。

 死ななくなるなら歓迎だけど。

 

「それでは存様。ご用件が済んだなら、お帰りになられてはいかがですか?」

「露骨に嫌われてるなぁ」

「セクハラがいけないんじゃないかしら?」

「俺からセクハラ取ったら何が残るというのか」

「むしろ、セクハラ以外は優良物件だという自覚あるかしら?」

「オッパチュリーさんは人を見る目無いなぁ」

「良し帰れ」

 

 追い出されました。

 

 

********************

 

 

 紅魔館を背に湖で釣りを始める。

 鯉、鮒、鰻、鯰、ヒメマス、サツキマス、アメマス、ニジマス、ワカサギ、海の魚以外にもこんなにもおいしい魚は住んでいる。

 

「おー、クモツが釣りしてる!」

「来たか氷妖精、いい加減俺の名前覚えろ。タモツだ」

「いちもつ?」

「ワザと言ってんのかテメェ」

 

 俺の名前をきちんと呼ぶ相手の方が少ない件について。

 どこをどう聞き間違えたらそうなるんだよ。

 

「遊んでー」

「お前と遊ぶと二回に一回死ぬからなぁ」

「そんなことあったっけ?」

「人の頭にツララぶち込んでおいて覚えてないのがむかつく」

 

 氷精なのに熱くなる性格なのか、遊びに夢中になると弾幕がガチ仕様になる。

 魚の調達ルートが此処か川、あとは人里の干物系になるから、よくチルノに遭遇はするんだが。

 

「大妖精は?」

「大ちゃんは置いて来た!」

「ハッキリ言ってこの戦いにはついてこれそうもない」

「なんのこと?」

「ネタが通じないって悲しいな」

 

 まぁ、ドラゴンボールネタは幻想郷じゃ無理か?

 いや、ありそうな気がしないでもないが。

 

「ねぇねぇ、タコス~。釣れてる?」

「ついさっき始めたばっかりだからな。あと、いい加減頼むから名前覚えてくれ。タモツだ」

 

 もう、こいつは狙ってるんじゃないかと思えてくるが、侮ることなかれ。

 興味の無いことは、十秒と頭に留まらない素敵スペックの幼女だ。

 

 あれ? ってことは俺の名前の重要度ってチルノの中では相当下の方ってことか?

 この前、笹の葉の小舟を作った時に一発で作り方を覚えたから、それ以下ということになる。

 笹の葉以下かぁ……。

 ちょっと涙出てきた。

 

 

********************

 

 

 居候とは、家主の許可を得て住まわしてもらっている立場だ。

 当然、対価は払う必要があるし、俺にはお金を稼ぐ手段がない。

 なので、自然と俺が払う対価は、家事や能力を使った魔理沙の研究の手伝いになる。

 

「タモ~、今日のご飯は~?」

「マスのムニエル、キノコソース仕立て」

「おお、相変わらず凝ったモノを作るぜ」

 

 良いマスが釣れたからね。

 あの後合流した大妖精と一緒にチルノと遊んだけど、危うく死ぬところだった。

 あの氷精、最初はフカフカした雪を飛ばしてくるだけだったのに、後半はツララが飛んで来ていた。

 氷精のクセして、熱くなりやすい性格をどうにかしてほしい。

 

「ご飯食べ終わったら洗濯するから今着てるの脱いでタライに入れておいて」

「おま!? 今朝の今でよくそんなこと言えるな!」

「なんと、魔理沙は下着を替えないで過ごすと申したか!?」

「誰もそんなこと言ってないぜ!? 当然私が……!」

「俺のTシャツをにとりにプレゼントした人が何が申してます」

「ぐぬぬ」

 

 前に俺のTシャツを一緒に洗濯した時に手違いで流されて、にとりに拾われた過去がある。

 親切に届けてくれたよ。

 どうも、妖怪に親切にされている頻度が多い気がする。

 どうしてこうなったのか?

 

「安心しろ。別に下着に顔をうずめて、クンカクンカとかしないから」

「それをしたら、容赦なくマスパでチリ一つ残さず消し飛ばすからな」

「イエス・マム!」

 

 ミニ八卦炉から何やらすごい音が出ていたので、速攻で謝る。

 まぁ、下着なんかよりも個人的には中身を愛でたいので、今後も実行に移すことはないだろう。

 

「何はともあれ洗濯だ。小分けにすると手間なんだから、きちんと出しておいてくれよ」

「ぐぬぬ、無駄に家事スキルが高いのがむかつくぜ」

「失礼な、誰がオカンか」

「タモはタモだぜ。そんなんだからタモツなんだぜ」

「人の名前をまるで蔑称のように使うのはやめてほしいです」

 

 こんなバカなやり取りをしながら、今日も一日は過ぎていく。

 




 改行を変えた感想とか頂けると嬉しいです。

 主人公の能力とかはもう少ししたら出せると思います。

 伏せてる意味?

 特にありません。


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第3話 保志存のスペック

 どうも、ギャグってどうしてこうも難しいのか?
 今度お酒の力でも借りてみようかしら?

 そういえば、2話から改行を少し変えてみました。
 どうでしょうか?

 いつもの方がいいならそちらにしたいと思います。


 アイツを居候させてから一か月になる。

 霊夢の所に遊びに行ったら、帰れなくなってたタモと出会った。

 

「そういえば、魔理沙の所の居候は元気かしら?」

「タモか? 今日はなんか恐竜に玉乗り仕込んでくるとか言って出かけて行ったな」

「元気でいいのよね?」

 

 元気なんだよなぁ。

 おふざけとセクハラで生きているような奴だけど、憎めないやつだ。

 

「能力フル活用で今日も生き残るだろうな」

「『保存する程度の能力』だったわね」

「生存特化の能力だってよく言ってるからなぁ」

「実際、戦闘能力は無いけど生存確率は高いわよね」

 

 体力を保存して全速力で走り続けるとか、体内の酸素量を保存して息切れを感じなくさせるとか。

 かなり応用が利く能力だ。

 いや、無茶が利く能力と言った方がいいのか?

 

「そう言えば魔理沙」

「なんだ?」

「最近、ずいぶん身嗜みが整ってるわね」

「そうか?」

 

 いつものように、気が向いたから霊夢のところに来ただけなんだが。

 

「髪がサラサラになってるし、肌も張りやキメが細かくなってるわ」

「そ、そんなにか?」

 

 何か変わったことなんてしてないんだぜ。

 

「女の子同士だしね。気を抜いていることが多いけど、最近はそういう抜けたところが無くなってきてる」

「あ~、最近はタモが洗濯ものとか溜めないで全部やってくれるからなぁ」

「アンタ、仮にも女の子なんだから自分の分ぐらい自分でやりなさいよ」

「仮にもとは失礼だぜ」

「あー、これは家事ほとんどやってもらってるんじゃない?」

「巫女のカンか? マジで怖いぜ」

 

 そりゃ、一人暮らしの時は色々さぼり気味だったけどなぁ。

 タモが色々やってくれるから、随分快適になったのは否定できない。

 

「良い家政婦ぶりじゃない」

「でもな霊夢。毎日の様にネタとセクハラが待っている生活だぜ?」

「どの程度よ?」

「とりあえず、最近だと人の下着でどうこうってやつ」

 

 うわぁって表情でこっちを見てくる霊夢。

 そのかわいそうなものを見る目をやめてほしい。

 

「欠点が全てを台無しにしてる感じね」

「家が非常に快適なんだぜ」

 

 床が見えるって素晴らしい。

 パチュリーから借りてる魔導書も返して、交換で別のを借りてきてくれるし、研究にもいい影響が出てる。

 

「今は、魔法の森の奥地の薬草を取りに行ってもらってるぜ」

「あそこって妖獣の住処じゃなかった?」

「しかも、そこの薬草って摘んでからすぐに特殊な水に漬けこまないと成分変わっちゃうんだぜ」

「存は成分を保存できるから適任なのね」

「それもあるけど、最近ルーミアに気に入られてるらしいから、助けられてると思うぜ」

 

 そのせいか、ルーミアの生息地域が魔法の森近辺になっている。

 霊夢もそのあたりは知っているはず。

 

「っていうか魔理沙、アンタは存に薬草取りに行かせてくつろいでるのね」

「割とこんなものだぜ?」

「存のセクハラってストレス発散になってるんじゃない?」

「失礼な。これは霊夢の神社にタモを派遣して炊事洗濯をさせないと」

 

 タモのセクハラを体験してみるといい。

 

「とりあえず、彼の扱いが垣間見えたわね」

「あいつ、咲夜のやつにセクハラして残機減らしてるし」

「勇気あるわねー。なにしたのよ」

「パチュリーが言うには、流れるような動作でスカートをめくったそうだぜ」

「何よその無駄に洗練されているスキルは」

 

 タモはセクハラに命を懸けているのかもしれない。

 

 

********************

 

 

 家に帰ってくると、タモのやつが洗濯を終えた衣類を干していた。

 ヒトのドロワを手アイロンで皺伸ばすなし。

 

「ただいまー、洗濯あんがとなー」

「おかえりー、今日も霊夢の所でお菓子のタカリお疲れさま。ご飯にする? お風呂にする? それとも……わ・た・し?」

 

 マスパ撃ち込んだことに後悔はしてない。

 

 

 

「今日のご飯はロースステーキと二種類のソース、アリスたんから分けてもらったパンだ」

「おー、豪華だぜ。あと、アリスたん言うのやめようぜ。気持ち悪い」

「女子から気持ち悪いとか言われるのはショックでかいな」

「自業自得だぜ」

 

 ステーキのソースは、キノコソースと大根おろしが入った和風ソースだった。

 アリスのパンは焼き立てだったらしく、モチモチカリカリしてた。

 

「そういえば、なんだかんだ言ってアリスと交流が続いていることに驚きだぜ」

「ああ、お尻触って首飛ばされたからね」

「お前、魔法使いって分かってて手を出す意味が分からないんだぜ」

「魔法の糸って殺傷性高いんだなぁ」

 

 そんな出会いだったから二度と会わせられないって考えてたが、なんだかんだ言いながらしっかり交流しているあたり、タモの社交性の高さが分かる。

 

「首飛ばされてにこやかに交流してるあたり、タモも毒されてるぜ」

「初対面にはとりあえず殺されてる気がする」

「セクハラがいけないと思うぜ」

「俺からセクハラを取ったら何が残るというのか」

「なぜセクハラにそこまで命を燃やすのか?」

 

 社交性が高くて、炊事洗濯もこなして、気配りもできる。

 能力は日常的に応用が可能で、ごくごく稀に甘やかすように膝枕をしてくれるのが本当に心地よい。

 

「女体の神秘! 俺はその探究者よ!」

「その前に生命の神秘も探求してるんだぜ」

「え? 俺、まだ童貞ですが……」

「聞いてないぜ。てっきり、ルーミアあたりとヤッてるものかと……」

「俺、ロリコンじゃないんだけど」

「ペド?」

「よし、喧嘩だ!」

 

 平常運転である。

 

 

********************

 

 

 風呂上り、脱衣所には脱いだ服は無く、綺麗にたたまれたパジャマと下着が用意されている。

 これは人を堕落させる!

 

「タモ~、今日はもう寝るけど、そっちは?」

「俺も寝るわ、添い寝する?」

「下半身残して吹き飛ばされたいか?」

「下半身を残すとはスキモノめ!」

「その返しは予想外だぜ」

 

 いつもの掛け合いに安心して眠れる。

 普段は研究してから寝たり、研究したまま朝になってたりする。

 その時もタモはきちんと朝食や着替えを用意しているから、保存の能力以外にも能力を持っているんじゃないかと思っている。

 

「明日の朝食は和洋中エスニックどれがいい?」

「……なぜエスニックを選択肢に入れたし」

「最近レパートリー増えたから、自慢したかった」

「そこまで言うならエスニックで頼むぜ」

 

 またレパートリー増えたのか。

 正直どこからそんな知識を得ているのかが疑問だぜ。

 今度聞いてみようかな。

 

 




我がカルデアにモーさんがやってきてくれました!

清姫もスキル追加されたし、ウハウハです。

清姫って宝具強いよね。
火傷とスタンを全体でかけられるのは強い。
威力は単体宝具に劣るけど、バーサーカーだから火力も相応に出るし。

ただ、柔らかいのが大変。
抱きついてムニムニしたい。


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第4話 ギャンブル運の無い可愛い少女

 どうも、最近友人からも読者からも、「この作品はギャグというよりは日常系」と言われたオルカです。

 ギャグが書けない体質なのか俺は!?
 そんな訳もなく、単純に下手なのでしょう。

 今回も日常寄りになってしまった。

 それでは、どうぞ。


 

「タモ~、ゲームしようぜ!」

「この俺にゲームを挑むとは愚かな! ババ抜きで勝負だ!」

「えらくカッコつけた割にはショボいぜ。それに、二人でやるゲームではない」

 

 ですよねー。

 せいぜい、トランプの枚数確認が利点かね?

 

「ここはブラックジャックとかポーカーとかが基本!」

「ポーカーフェイスできてから出直して来い、15連敗」

「じ、15連敗じゃない! 12連敗だぜ!」

「よし、今回で20の大台に乗せてやる」

 

 今回はブラックジャックで行くことにする。

 交互にシャッフルしていき、最後にシャッフルした人がテーブル中央に置いて、もう一人が上下2つに分けて入れ替える。

 これでゲームスタートだ。

 

 30分後。

 

「ぐぬぬ……」

「いや、ぐぬぬじゃなくてな……」

「なんで勝てないんだぜ!!」

「ガチな助言をするなら、ブッコミ過ぎ」

 

 19で引こうとするその勇気。

 いや、蛮勇か?

 

「だって、Qと6と3だったから次は2かAが来そうだと思った」

「純粋にそれ以外の確率の方が高い件について……」

「確率なんて飾りだぜ! 臆病な奴にはそれが分からんのだぜ!!」

「お前、薬学魔術研究してるくせに確率論否定すんなよ」

 

 熱くなりやすいのだろう。

 熱中すると周りが見えなくなるタイプだ。

 そのくせ、研究の時はしっかりしてるし、どんな性格だよこいつ。

 ゲームの時はこいつが壊れ気味になるから、俺が逆に冷静になっちまう。

 つか、ギャンブル運無さすぎワロタ。

 

「あれだぜ、タモが強すぎるからいけないんだぜ!」

「いや、そういう問題じゃない」

「霊夢……はカンが強すぎるから、アリスとかパチュリー呼んで来ようぜ」

「いや、アリスはともかくパチュリーは来ねえだろ」

「なら、大図書館でやろう!」

「俺が咲夜に殺される件について」

「いつもの事だぜ」

「最近、魔理沙に殺されないようになってきたのに、わざわざ死地に送るなよ」

 

 これはガチな話だ。

 魔理沙は最近、威力を落として速射性と連射性を高めたマスタースパークならぬ、クイックスパークというものを開発していた。

 ツッコミ専用らしい。

 無駄に洗練された無駄のない無駄な技術だ。

 

「タモってギャンブル運を保存してないか?」

「いや、自分で認識できてないから低い時に保存すると死ぬ目を見る」

 

 高度とか鮮度とか、目に見えて分かるモノは保存しやすい。しかし運とか健康度とか理解し辛いモノをタイミングが悪い時に保存すると、低いまま保存されてしまい、ひどい目を見る。

 試しに運を保存した時は、コントのような展開が小一時間続いたものだ。

 

「あ~、前にタモが一人コントしてた時のあれか」

「見てたのかよ」

「絨毯で滑って転んで、絨毯に乗ってたタライが頭に落ちてきて、視界が塞がれてフラフラしてたらテーブルに足の小指ぶつけてたな」

「ちなみに、転んだ時にケツに画鋲刺さってたからな?」

 

 二度と運を保存しないと誓った。

 高い時に保存したことはないが、それまでにあのコンボがまた来ると思うと、無理だな。

 

「なぁなぁ、誰呼ぼうか?」

「いや、呼ばなくていいって」

「タモとやっても負けてばかりなんだって」

「他人入れれば賭けになるし、賭けになれば魔理沙、全裸にされるぞ?」

「いやいや、そんな訳ないぜ~」

 

 

********************

 

 

「何かコメントは?」

「泣けるぜ……」

「タモツは容赦ないわね」

 

 アリスを呼んで三人でディーラー交代しながらのポーカー勝負。

 ちなみに、魔法を使わなければだがイカサマはバレなければ有りのルール。

 アリスはさすがに指先が器用で、イカサマは気づきにくくて仕方がない。

 

「一応手持ちのコイン12枚ずつ渡してるんだ。そりゃ、衣服も一枚でコイン6枚に交換できるようにしたけど」

「それがダメだったんじゃない?」

「俺は衣服1枚でコイン3枚のハンデもあっただろ?」

「互いにタモツは上着、私はケープで済んだけど……」

「見事に下着になったなぁ」

「うっさいエロタモ!」

「風呂上りと同じ格好だし、見慣れたわ」

「魔理沙……羞恥心とか持った方がいいわよ」

 

 洗濯もしているせいか、魔理沙の下着の種類と枚数を把握しているという状態だ。

 俺、悪くないよな?

 

「いや、タモの家事スキルが高すぎるのが悪いんだぜ」

「ひどい責任転嫁を見た」

 

 羨ましいと思うか?

 だが、日常的にそんな姿を見てたら、ムスコの反応も鈍くなってくるわ。

 お前ら同じネタで何日いける?

 俺は2週間だ。

 

「アリス、こいつ本当に一人暮らししてたのか?」

「料理は上級、洗濯は並み、掃除は下手ってところかしら」

「ちょ、アリスひどいぜ!」

「事実よ」

 

 俺が来たときは、生活空間は少し汚いかなぐらいだったが、研究室はひどいものだった。

 資料や記録、サンプルや検証実験機材などで足の踏み場がない状態だった。

 

「つーか、タモもアリスも思ったより仲良くなったよなぁ」

「そうかしら?」

「そうだぜ、初対面でセクハラして、首飛ばした間柄とは思えない」

「セクハラに対する制裁とはいえ、一回殺しちゃってるからね。それで許さないほど狭量でもないわ」

「そりゃ、死ぬほど痛いからな」

「貴重な体験ね」

「二度と御免だがな」

 

 初めて自分の背中とケツを見たわ。

 首から上無かったけど……。

 

「さすがにこれ以上脱がすのは女性として止めたいのだけど……」

「もっちょっと早くその良心が欲しかったぜ」

「お前の場合は自業自得だ。ムキになって俺とアリスも同じような目に遭わせようとするからこうなる」

「なんだよー、いつものセクハラタモじゃないぞー」

 

 いや、現状が十分セクハラですし。

 パンツとブラのみで立たされている状態は、世間一般で言うところのセクハラ行為だろうに。

 それにこれ以上セクハラすると、この作品のタグにR-18タグを追加しなきゃいけなくなる。

 今だって、R-15かどうか微妙なラインなのに。

 

「魔理沙はセクハラされたいの?」

「……にゃ!?」

「だって、妙にタモツのセクハラに対してやって欲しそうな言動があるじゃない」

「なんだと? なら遠慮なく」

「わー! わー! 『クイックスパーク』!?」

 

 上半身がこんがり焦げた。

 死ななかったが、それなりに痛かった。

 

 

********************

 

 

 気を失ってたせいで、風呂を沸かし損ねた。

 今は外に出て、窯に火を入れて竹筒で空気を送って燃やしている最中だ。

 

「タモ~、ぬるいぜ~」

「はいはい、お姫様。今沸かしてますからね~」

 

 くそう、居候はつらいぜ。

 覗いてやろうか……。

 

「覗いたら『クイックスパーク』だぜ?」

「二度も上半身を日焼けならぬスパーク焼けさせるわけにはいかないな」

「速射性と連射性を上げて威力を下げたツッコミ用のマスパだけど、いい仕事したぜ」

「その労力を研究に使えと思うのは俺だけか?」

「研究は研究で順調だぜ?」

 

 そりゃ、採取の難しい薬草やら保存の厳しい薬品を俺が管理してるからな。

 つか、それらを正確に記憶してる魔理沙の知識量も驚くべき物なのだが。

 

「タモの能力のおかげでお風呂の薪の節約にもなる。タモ様様だぜ」

「様様扱いのやつの上半身をこんがり焼いたのはお前だがな」

「それはそれ、これはこれだぜ」

「くっそう、家主の正論だから何も言い返せない!」

 

 まぁ、言うほど気にしちゃいないのだが。

 クイックスパークを開発したのだって、俺が何度も死ぬほど痛いと言っていたからだろうし。

 ウチの家主は年齢相応の可愛い女の子ってやつだな。

 言ったらまたクイックスパークだろうが。

 

「そろそろいい感じだぜ~」

「了解~」

 

 後は、保存してた火の勢いを解除すれば、自然に消えていく。

 魔理沙が上がった後は、湯の温度を保存してゆっくり俺も入る。

 いつもなら、沸かしておいて保存するのだけど、今日はトラブルがあったからな。

 

「それじゃそろそろ、俺は風呂上がりの一杯を用意しておくよ」

「今日はオレンジジュースの気分だぜ」

「それ、毎日だからな?」

 

 というわけで、霧雨家にはオレンジのストックが大量にある。

 俺が保存できるから食糧庫に入れておくだけでいいし。

 ちなみに、生絞りの100%ジュースである。

 氷はチルノから貰って保存している物を砕いてグラスに入れる。

 

「うん、幻想郷でのちょっとした贅沢ってな」

 

 冷蔵庫なんて無いし、あったとしても電気が無い。

 あったとしても、氷を入れて中を冷やすタイプだけだ。

 そんな文明レベルで、氷を保存できるのはちょっとした強みだったりする。

 

「タモ、上がったぜ」

「おう、では早速俺の生絞りミルクを……」

「風呂入る前にまたスパークするか?」

「ほい、100%オレンジジュース、絞りたてだ」

 

 速攻引き下がる俺。

 まぁ、冗談だしなぁ。

 

「そんじゃ、風呂いただくよ」

「おう、タモの分もオレンジジュース作っておくぜ」

「サンキュー」

 

 ここでセクハラすると、クイックスパークが飛んできそうだったから普通に済ませる。

 危機回避能力も高くなったものだ。

 

 

 

 

 湯船は少しぬるくなっていた。




 お台場のVR体験コーナーを予約してみました。

 ホラーは一人プレイではないようです。
 ボッチには辛い。

 ちょっと楽しみなので、今からワクワクです。


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